やはり俺がFクラスなのはまちがっている。 (スキート)
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第一章 試召戦争編
第一問 こうして、俺のFクラス行きが決定する。
「ふぁ〜〜」
俺こと比企谷八幡は目を覚ます。
今日は、俺が通う学校、文月学園の、進級テストがある。進級テストとは、文月学園のみで行われるテストであり、このテストの結果によって文月学園に存在する
多分俺は、多く見積もってもBクラス以上には入れるだろう。
そんなことを考えていると、俺の部屋のドアが開く。
「八幡、起きてるー?」
「ん?優子か、おはよう」
こいつの名前は木下優子。俺の幼馴染の少女であり、同じ文月学園に通う同級生だ。優子は俺より頭がいいのでAクラス入りは絶対だろう。優子とは、家が隣同士で、昔から仲がいい。毎日のように朝俺の家に来れば、朝ごはんを作って起こしてくれる。
「もう朝ごはんあるわよ」
「おう、今行く。んで、秀吉は?」
「下にいるわ」
「わかった」
木下秀吉。もう一人の俺の幼馴染にして、優子の双子の弟だ。女のような顔立ちをしている。
「もう私たち食べ終わってるから先に学校行っちゃうわね」
「了解」
俺を置いて行っちゃうんだなあと思いながらも、俺は下に降りた。
─×─×─×─
俺は、優子が作ってくれた朝飯を食べて、作り置きしてあったお弁当を手に取り家を出る。
振り分けテストの復習はそれなりにやったつもりだが、数学が不安だ。優子から、勉強を教えてもらっていたにしても、数学だけは不安である。
俺の予想だと、俺がB、優子がA、秀吉がFだろうと思っている。
……秀吉に関しては姉に全部持っていかれた感が否めないが、多分秀吉の方ができるやつが一杯あるだろう。例えば歌などは、優子のは聴いていられないレベルである。
そんなことを考えていた俺は、ふと立ち止まる。信号が赤だから当然っちゃ当然なのだが、俺はついつい見てしまった。
横断歩道のど真ん中に立つ犬を。中学時代にも、この光景を見たことが一度だけある。あの時は、アホな飼い主が犬のリードを離してしまったことだ。俺は無意識に走り出して
ガン!そんな鈍い音と、犬の鳴き声が聞こえた気がした。
===================================
バカテスト 数学
【第一問】
問 以下の問いに答えなさい。
『2x^2yー4xy^2を因数分解しなさい。』
木下優子の答え
『2x^2yー4xy^2=2xy(xー2y)』
教師のコメント
正解です。特に言うことはありません。
木下秀吉の答え
『2x^2ー4x^2=2x(xー2)』
教師のコメント
君はyに何か恨みでもあるんですか。
比企谷八幡の答え
『 』
教師のコメント
数学だからって諦めて埋めないのはやめましょう。
==================================
「─────ちまん!は────ん!」
「────────────八幡!」
「ん?」
見知らぬ天井。俺の天井を見る視界を遮るのは二人の天使………じゃなくて、優子と秀吉が俺を覗き込むように見ていた。(いや、確かに天使なのだが)
「お、起きたわね⁉︎」
「ワ、ワシがわかるか?」
「……ひ、秀吉と優子だろ?」
俺はベッドから起き上がろうとすると、足に激痛が走り、つい「いっつ……」と声を漏らしてしまう。………中学の時もこんな感じだった気がする……。
「八幡。じっとしてて足を折っちゃったみたいなの」
「退院は明日らしいから、それまでじっとしているんじゃぞ」
「わ、わかった」
俺はもう一度ベッドに横になる。そして、それと同時に俺は重要なことを思い出す。
「……なぁ、俺の振り分けテストって……」
「なしよ」
「Fクラス決定じゃの」
「…………ん?聞こえなかった。もう一度言ってくれ」
「再テストはなしよ」
「Fクラス決定じゃの」
「嘘………だろ⁉︎」
「「本当よ(じゃ)」」
はぁ……。結構勉強は頑張ったんだがな……。この事故のせいで俺は
「……秀吉。一緒にがんばるか」
「何でワシがFクラス確定みたいな流れになっておるのじゃ⁉︎」
「いや、あんたはFクラス確定でしょ」
「何を今更言ってんだよ。秀吉」
「あぁあ‼︎ もううるさいのじゃ‼︎ あ、」
突然、秀吉が何かを思い出したような顔をする。
いや、いきなりどうした。口をポカンと間抜けに開けて。まぁ、なんか可愛い気もしなくはない。ていうか可愛い。
「八幡」
「?……どうした?」
「そういえばさっき明久から聞いたのじゃが───────明久も姫路さんもFクラス確定だそうじゃ」
「…はぁ⁉︎姫路が⁉︎」
俺はついつい大声を出してしまう。
姫路瑞希───Aクラス相当の頭脳を持つ少女。
吉井明久───学年一の大バカ者。
今のを見ればわかるだろう。姫路という少女は頭がすごくよく、通常なら余裕でAクラスに入れるであろう頭脳を持っているはず。学年2位を維持するだけあって学年次席は取れたはずだろう。
「…
「明久が言うに、熱で倒れたらしいのう。それで倒れた姫路さんを保健室に連れていくために……とか言ってたのじゃ」
「熱ならしょうがないな……」
「そうじゃの……」
「ねぇ、私も会話に入れてくれる?」
俺と秀吉の会話に優子が入ってくる。そういえば忘れてたな……………。
「てか、優子がそんな素直に言ってくるなんて………」
「姉上も成長したのう………」
「そ、そんくらいはできるわよ」
あ、やべぇ、お怒りになっておられる。
「それじゃあ、八幡。また明日くるから姉上は頼んだのじゃ」
「お、おい。待て秀吉。お、おい!」
「は〜ち〜ま〜ん〜」
「お、おいちょまって、お願いだから!」
その日、この病室からは、恐ろしいほど長い悲鳴が聞こえたという。
。。。
文月学園、1年生入学、2年、3年のクラス替え発表の日。俺は無事退院して、足の骨折も軽いものだったので、すでに治っていた。
桜が芽吹き、俺たちにとって2回目の文月学園の春が訪れた。
クラス振り分けについては俺はもうすでに諦めている。その理由はテストの日に交通事故にあったため、強制的にFクラス行きとなっているからだ。まぁ、一応同じクラスの奴らが気になるけど。
─×─×─×─
「比企谷、木下、木下、受け取れ」
木下2人いるんだから呼び方変えろよ。と思いつつ、今話しかけてきた先生・西村先生から封筒を受け取る。
この先生のあだ名は『鉄人』。
声がドス黒く、肌が浅黒い。そして、あだ名は趣味のトライアスランから来ているらしい。
「比企谷、今回は本当に残念だったな」
先生の言葉を聞き、俺は封筒を開け、中身に入っていた紙を見てみる。
『比企谷八幡……Fクラス』
俺の予想通りの文字が記されていて、秀吉と優子のを見てみると、
『木下優子……Aクラス』
『木下秀吉……Fクラス』
そう、記されていた。
こうして、俺と秀吉の最底辺のクラスでの生活が始まる。
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第二問 つつがなく、自己紹介は進んで行く。
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バカテスト 英語
【第二問】
問 以下の英文を訳しなさい。
〔I hope this accident will bring home to him the danger of drunken driving.〕
木下優子の答え
〔彼がこの事故をきっかけに飲酒運転の危険性を思い知ることを私は望む。〕
教師のコメント
正解です。長い英文にもしっかり対応出来ています。
比企谷八幡の答え
〔彼がこの事故をきっかけに交通事故の危険性を思い知ることを私は望む。〕
教師のコメント
惜しいです。君は交通事故の危険性を思い知っていそうですが。
木下秀吉の答え
〔彼が飲酒運転をして事故をする事を私は望む。〕
教師のコメント
君は一体何を望んでいるんですか。
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1度も上がってみたことがなかった3階に俺たちは足を踏み入れる。
突然、視界に広がったのは、バカでかい教室、Aクラスだった。
Aクラスには、冷暖房完備、リクライニングシート、電子黒板、個人用のエアコン、ノートパソコン、冷蔵庫、冷蔵庫のお菓子など。これでもFクラスと学費は同じという卑怯なやり方。怖いったらありゃしない。教室の広さはFクラスの何倍もあるという。
「私はここまでね」
「じゃあな、優子」
「それではなのじゃ。姉上」
俺たちは、優子がAクラスに入るのを見送ると、奥にあるFクラスの教室まで足を運んだ。設備どんなんだろうな………。はぁ………。
─×─×─×─
「設備ひっど……」
俺の口から最初に漏れた言葉がそれだった。
Fクラスの教室をみると、壊れかけのボロい卓袱台。腐っていてカビくさい畳。Aクラスとは段違いの設備である。窓は割れているし、綿がぬけぬけの座布団だし。
そんなことを思っている俺に話しかけてくる男子生徒が1人。
「ん?おお八幡と秀吉か」
「坂本か」
「雄二おはようなのじゃ」
今話しかけてきたのは、坂本雄二。高身長で、吉井の親友&悪友。小学校時代は『神童』と呼ばれ、天才だったが、小学校の時、何かがあったらしくわざとバカになったらしい。
「で、なんで教壇たってんの?」
「先生が遅れるらしいからだ」
「そ、そうか……」
遅れるという言葉を聞き、俺は時計をみると────あっ、時計ないんだ。
すると、ドアが勢いよく開く。そこにたっていたのは────
「すいません、ちょっと遅れちゃいましたっ♪」
「早く座れ、このウジ虫野郎」
───そう。
「聞こえないのか?あぁ?」
坂本がドスの効いた声を放つ。まだ吉井は坂本が教師だと思っているような様子だった。バカすぎんだろ……。
「……雄二、何やってんの?」
あ、ようやく気づいた。
「先生が遅れているらしいから、代わりに教壇に上がってみた」
「先生の代わりって、雄二が? なんで?」
「一応このクラスの最高成績者だからな」
「え? それじゃ、雄二がこのクラスの代表なの?」
「ああ、そうだ」
坂本の口角がニヤリと不敵に上がる。流石にバカの中に入っていても、坂本はバカの中では頭が良い方らしい。まぁ、当たり前か。
「これでこのクラスの全員が俺の兵隊だな」
こいつ……。絶対考えている事が腹黒そうだよな。こいつ。
そして、ボロいFクラスの教室を見回した吉井は話す。
「それにしても……流石はFクラスだね」
「えーと、ちょっと通してもらえますかね?」
不意に吉井の背後から覇気のない声が聞こえてきた。
そこには寝癖のついた髪にヨレヨレのシャツを貧相な体に着た、いかにも冴えない
「それと席についてもらえますか?
どうやら、この男がこのクラスの担任の先生のようだ。
「はい、わかりました」
「うーっす」
吉井と坂本はそれぞれ返事をして席に着く。
そして、先生はタイミングを見計らって、ゆっくりと口を開いた。
「えー、おはようございます。2年F組担当の福原慎です。よろしくお願いします」
先生は、名前をチョークで黒板に書こうとしたらしいが、やめた。チョークさえ用意されてなかったらしい。チョークなかったら他に何あんだよ。あるもん探す方が大変なんじゃね?
「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されてますか? 不備があれば申し出てください」
先生の言葉を聞き、Fクラスの連中が、先生に話しかける。まぁ、不備だらけだよな。
「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってないですー」
「あー、はい。我慢してください」
「先生、俺の卓袱台の脚が折れています」
「木工ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」
「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど」
「わかりました。ビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」
おい。先生の対処の仕方ひどいな。何で窓が割れてんのにビニール袋とセロハンテープ支給すんだよ。直せよ。
ことごとくFクラスの要請は砕かれ、1つしか不備扱いされなかった。
「必要なものがあれば極力自分で調達するようにしてください」
なんてめんどくさい学校なんだ。自己調達とかありえないだろ……。
「では、自己紹介でも始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします」
福原先生の指令で、廊下側の席の人が立った。
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」
あ、秀吉だ。と、呑気に考えていたら、俺は秀吉の後ろの席だったことを思い出す。
「比企谷八幡でしゅ」
『wwwwwwww』
俺が噛んだことでクラス中から笑いが起こる。特に吉井と坂本。後で覚えとけよ……。
「…………土屋康太」
俺が恥ずかしい思いをしながら、座っていると知り合いの名前が聞こえる。
今のが土屋康太。愛称は『ムッツリーニ』。保健体育が大の得意だ。盗撮や盗聴をよくしていて、鼻血をよく吹き出す。保健体育だけなら、学年トップの成績を持つ。
で、少し考えているといつの間にか知り合いの番になっている。
「──です。海外育ちで、日本語は会話できるけど読み書きが苦手です」
「あ、でも英語も苦手です。育ちはドイツだったので。趣味は──」
「趣味は吉井明久を殴ることです☆」
いや、☆じゃねぇよ。ちょっと吉井ビビってんじゃねぇか。俺もだけど。
今のが島田美波。国語も英語も苦手だが、数学が得意だ。
ちなみに、吉井のことは嫌いではないが、暴力をついついふってしまうらしい。多分だけど。
そして、着々と自己紹介が終わり、次は吉井の番になった。
「──コホン。えーっと、吉井明久です。気軽に『ダーリン』って呼んでくださいね♪」
『ダァァーーリィーーン‼︎』
クラスのバカどもの声がこだまする。
吉井は返事が返ってくるのが予想外だったのか、少し気持ち悪そうに床に座る。お前バカだろ……。帰ってくると思ったかよ……。
「──失礼。忘れて下さい。とにかくよろしくお願いします」
いきなり律儀になるなよ………。少しびっくりしちゃうだろうが………。
吉井が吐き気を耐えるようにしてる中、Fクラスのドアが開く。
「あの、遅れて、すいま、せん……」
やけに息を切らして入ってきた少女にみんなは目をやり、『えっ?』という声を漏らす。
そこに立っていたのは───────
───このクラスでの1番の天才・姫路瑞稀だった。
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第三問 躊躇いもなく、坂本雄二は戦争の引き金を引く。
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バカテスト 歴史
【第三問】
問 次の( )に正しい年表を記入しなさい。
『( )年 島原の乱』
比企谷八幡の答え
『1637年』
教師のコメント
正解です。忘れていましたが、数学以外の成績は普通なんですよね。
吉井明久の答え
『438ら年』
教師のコメント
いつの時代ですか。
木下秀吉の答え
『幕府をなめたらアカンぜよ‼︎』
教師のコメント
君は何を言っているんですか。
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息を切らして、その場に立ちっぱなしの姫路に先生が声をかける。
「丁度よかったです。今自己紹介をしているところなので姫路さんもお願いします」
「は、はい! あの、姫路瑞希といいます。よろしくお願いします……」
小柄な身体をさらに縮こめるようにして声を上げる姫路。
肌は、新雪のように白く、背中まで届く柔らかそうな髪は、優しげな彼女の性格を表しているようだ。保護欲をかきたてるような可愛らしい容姿は、男だらけのFクラスで異彩を放っている。
でも、Fクラスの連中はその容姿を見て驚きの声をあげたんじゃない。
「はいっ! 質問です!」
既に自己紹介を終えていた男子生徒がたかだかと手を上に上げる。
「あ、は、はいっ。なんですか?」
いきなり、質問された姫路は未だテンパっている。
「なんでここにいるんですか?」
聞きようによっては失礼な質問が浴びせられる。
でも、ここにいる全員はそのことを思っているだろうし、秀吉からこのことを伝えられてなかったら、俺も今頃疑問に思っていたことだろう。
「そ、その……」
まだ緊張してる面持ちは、見てるこちら側を心配になる程だった。
「振り分け試験の最中、高熱を出してしまいまして……」
その言葉を聴き、クラスの連中は『ああ、なるほど』と頷いた。
試験途中の退席は例外なく0点になる。姫路もそうだが、吉井もだろう。
姫路が来たことで騒ぎ始めた
そして、姫路が吉井と坂本と話している最中、先生に「はいはい。そこの人たち、静かにしてくださいね」と遮られる。そして、先生がその時叩いた教卓が、
バキィッ バラバラバラ……
と、崩れ落ちた。軽く叩いただけで壊れる教卓とかボロすぎだろ。やっぱり設備が酷すぎる。
「え〜……替えを用意してきます。少し待っていてください」
気まずそうに告げると、先生は足早に教室から出て行った。
その後、吉井と坂本も教室を出る。一体何を話しているんだろうか?
─×─×─×─
壊された教卓を替えて、気をとり直してHRが再開される。
「えー、須川亮です。趣味は───」
その後も自己紹介が進み、ついに坂本の番になる。
「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれ」
そして、坂本は淡々と話を進める。少し口角が上がってる……。絶対何か企んだ顔だよあれは……。1年間同じクラスだったからこそわかる。
「さて、皆に一つ聞きたい」
坂本がFクラスの教室をゆっくりと見回す。
間の取り方がうまく、全員の視線はすぐに坂本の方は向いた。ってか、間の取り方は稲村淳二並みに上手いな。
そして、坂本は、クラスの各所に視線を移す。
かび臭い教室。
古く汚れた座布団。
薄汚れた卓袱台。
俺らもついつい坂本が向けた視線の先を見てしまった。
「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが──」
一呼吸おいて、静かに坂本は告げた。
「──不満はないか?」
『大ありじゃぁっ‼︎』
2年F組生徒の魂の叫びが教室に響く。
「だろう? 俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」
『そうだそうだ!』
『いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ! 改善を要求する!』
『そもそもAクラスだって同じ学費だろ? あまりに差が大きすぎる!』
一気に皆の不満が教室を飛び交い始める。まぁ、俺も多少は不満がある。体が弱い人にはこの教室はあまりにも害だろう。最低でも普通の教室ならよかったが、埃かぶってるカビ臭い教室となると話は別だ。
「みんなの意見はもっともだ。そこで」
皆の反応に満足したのか、自信に溢れた顔に不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「これは代表としての提案だが──」
「──FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」
この提案がさっき吉井と廊下に出た時話していた内容らしい。この提案は、体が弱い姫路のためだろう。
『試験召喚戦争』───に年生から使用できる制度。文月学園特有の制度で、クラス同士で試験召喚獣というのを召喚して、戦争をする。勝ったクラスは負けたクラスになんでもいうことを聞かせることが出来る。
坂本は、このルールを利用して、FクラスとAクラスの設備を入れ替えるらしい。坂本らしいっていや坂本らしい。
……代表には、逆らえないしな。
そして、躊躇いもなく、坂本雄二は戦争の引き金を引く。
─×─×─×─
Aクラスへの宣戦布告。
同意するものもしれば、賛成しないものもいた。賛成しないのも納得出来る。それは、AクラスとFクラスの戦力差が違いすぎることだ。
文月学園は、上限のないテストが始まってから四年が経っている。
このテストには一時間という制限時間と無制限の問題数が用意されている。その為、テストの点数には上限がなく、能力やスピードで無限大に成績を伸ばすことが出来る。
また、科学とオカルトと偶然により完成された『試験召喚システム』というものがあり、テストの点数に応じた『召喚獣』を喚び出して戦うことが出来るシステムだ。
そして、『試験召喚戦争』で勝敗を左右する点数は、Aクラスの方が圧倒的に上であり、Fクラスが勝てる可能性がとても低い。
「そんなことはない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせてみせる」
圧倒的な差を知っていながらも、坂本は強気に宣言する。
『何を馬鹿なことを』、『できるわけないだろう』、「何の根拠があってそんなこと』、など、反対の意見が飛び交う。
「根拠ならあるさ。このクラスには試験召喚戦争で勝つことのできる要素が揃っている」
坂本のこの言葉に、クラスはざわめき始める。
「それを今から説明してやる」
それに関しては俺もわかっている。絶対にAクラスに勝てないわけじゃないことを。
坂本は壇上から皆を見下ろす。
「おい、康太。畳に顔をつけて姫路のスカートを覗いてないで前に来い」
「……………‼︎(ブンブン)」
「は、はわっ」
スカートを覗いてないと必死に首を横に降るのは土屋康太だ。
「土屋康太。こいつがあの有名な、
「……………‼︎(ブンブン)」
土屋康太、という名前は別に有名なわけじゃない。だが、ムッツリーニは別だ。男子生徒からは畏怖と畏敬を、女子生徒からは軽蔑を持たれている。
土屋がムッツリーニということをいう知ったクラスの連中はざわざわと騒ぎ始める。
「姫路のことは説明する必要もないだろう。皆だってその力はよく知っているはずだ」
「えっ? わ、私ですかっ?」
「ああ。ウチの主戦力だ。期待している」
姫路がこのクラスだと一番の力を持っていることは間違いないだろう。普通ならAクラス行き確定だったわけだし。全員がそのことをわかっているはずだ。
「木下秀吉だっている」
秀吉については成績は悪いが、他のことでは結構な有名人だ。
「それに、このクラスで姫路に次ぐ力を持っている比企谷八幡だっている」
俺かよ。確かにお前らの中では頭が良い方だとは一応思っとくけど。ていうか、絶対に二番目ぐらいの成績は取れる。
「こいつは、数学はてんでダメだが、国語は最強だ。他の教科も悪くない」
「八幡の穴を埋めるように、数学が得意な島田美波だっているんだ」
「当然俺も全力を尽くす」
土屋康太。姫路瑞希。比企谷八幡。木下秀吉。島田美波。坂本雄二。それなりにやらなくはない面子だ。
どんどんクラスが行けそうだ、と思い始めている。
そして、坂本は最後の畳み掛けに────
「それに吉井明久だっている」
坂本がそう口にした瞬間、盛り上がっていたクラスは一気に静かになった。
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第四問 やはりFクラスはバカばかりである。(ダジャレじゃないよ!)
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バカテスト 化学
【第四問】
問 以下の問いに答えなさい。
〔顕微鏡を発明した人物を答えなさい。〕
比企谷八幡の答え
〔ロバート・フック〕
教師のコメント
正解です。
坂本雄二の答え
〔アイザック・ニュートン〕
教師のコメント
万有引力を発見した人ではありません。
吉井明久の答え
〔ケンビ・キョウ〕
教師のコメント
君は舐めているんですか?
===================================
「それに、吉井明久だっている」
坂本がその言葉を口にした瞬間、教室の盛り上がっていた雰囲気は、一気に収まり静かになる。
「ちょっと雄二! どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ! 全くそんな必要はないよね!」
『誰だよ、吉井明久って』、『聞いたことないぞ』などの言葉が聞こえてくる。
「ホラ! 折角上がりかけてた士気に
「そうか。知らないようなら教えてやる。こいつの肩書きは《観察処分者》だ」
坂本が言った《観察処分者》、という言葉にみんなが反応する。
『……それって、バカの代名詞じゃなかったっけ?』
クラスの誰かが、致命的な発言をする。
そして、その言葉に吉井は焦ったように
「ち、違うよっ! ちょっとお茶目な16歳につけられる愛称で」
「そうだ。バカの代名詞だ」
「肯定するな、バカ雄二!」
《観察処分者》というのは、簡単に言えばさっき誰かが言った通りバカの代名詞である。色々問題があったり、成績の悪い者が貰える肩書きだ。そして、それに当てはまるのは、学年屈指のバカ、吉井明久なのである。
「あの、それってどういうものなんですか?」
姫路が首を傾げていた。頂点に近い場所に位置する彼女には、《観察処分者》などという不名誉な単語は馴染みないのだろう。
そして、姫路の質問に坂本が答える。
「具体的には教師の雑用係だな。力仕事とかそういった類の雑用を、特例として物に触れるようになった試験召喚獣でこなすといった具合だ」
坂本のいった通り、《観察処分者》の試験召喚獣は物に触れることができる。逆にいえば、俺たち一般生徒の試験召喚獣は物に触らないのだ。
一応、学校の床に特別な処理がされているらしく、試験召喚獣は立っていることだけはできる。
「そうなんですか? それって凄いですね。試験召喚獣って見た目と違って力持ちって聞きましたから、そんなことができるなら便利ですよね」
「あはは、そんな大したもんじゃないんだよ」
姫路の言葉に、吉井は手をブンブンと横に振った。
そこまで大したもんじゃないのは俺でさえも知っている。確かに、吉井ほどの酷い点数でも、力は強いが、試験召喚獣がくらった苦痛を本人もくらう羽目になっている。
簡単にいえば、吉井と吉井の試験召喚獣はリンクしている状態なので、重いものを持てば、吉井にもその感覚は来るし、痛みだってきてしまうのだ。
「気にするな。どうせ、いてもいなくても同じような雑魚だ」
「雄二、そこは僕をフォローする台詞を言うべきところだよね?」
「とにかくだ。俺たちの力の証明として、まずはDクラスを征服してみようと思う」
「うわ、すっごい大胆に無視された!」
本当にこいつら仲いいな。
「皆、この境遇は大いに不満だろう?」
『当然だ‼︎』
「ならば全員
『おおーーっ‼︎』
「俺たちに必要なのは卓袱台ではない! Aクラスのシステムデスクだ!」
『うおおーーっ‼︎』
「お、おー……」
クラスの雰囲気が盛り上がり始めて、姫路も小さく拳を上げた。
「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」
「……下位勢力の宣戦布告の使者ってたいてい酷い目に遭うよね?」
「大丈夫だ。やつらがお前に危害を加えることはない。騙されたと思って行ってみろ」
「本当に?」
「もちろんだ。俺を誰だと思っている」
坂本は、力強く宣言する。
「大丈夫、俺を信じろ。俺は友人を騙すような真似はしない」
「わかったよ。それなら使者は僕がやるよ」
「ああ、頼んだぞ」
クラスメイトの拍手と歓声を浴び、教室を出てDクラスの教室に向かう吉井。吉井………お前はもう、騙されてるぞ…………。
─×─×─×─
数分後、吉井が「騙されたぁっ!」といい、教室に転がり込んで来た。
「やはりそうきたか」
坂本が転がっている吉井を見ながら平然と言い放った。
「やはりってなんだよ! やっぱり使者への暴行は予想通りだったんじゃないか!」
「当然だ。そんなことも予想できないで代表が務まるか」
「少しは悪びれろよ!」
そんなボロボロの吉井に、姫路が声をかける。
「吉井君、大丈夫ですか?」
「あ、うん。大丈夫。ほとんどかすり傷」
「吉井、本当に大丈夫?」
島田も吉井に声をかける。モテモテじゃねぇか……。
「平気だよ。心配してくれてありがとう」
「そう、良かった……。ウチが殴る余地はまだあるんだ……」
「ああっ! もうダメ! 死にそう!」
島田の言葉に吉井は焦り、即座に腕を抑えて転がりまくる。
「そんなことはどうでもいい。それより今からミーティングを行うぞ」
そういい、坂本は扉を開けて外に出て行った。どうやら、他の場所でミーティングを行うらしい。そして、俺たちは雄二の後を追う。
「どうじゃ八幡。Fクラスは?」
「……まぁまぁ、かな。秀吉、お前は?」
「ワシは結構好きじゃぞ」
「あ、そういえば秀吉。お前テストの合計点いくつなんだ?」
「……………………まぁまぁじゃ」
「そ、そうか……」
そんな会話を秀吉としていると、坂本は屋上の扉の前で止まり、こう言った。
「明久。宣言布告はしてきたな?」
坂本がフェンスの前にある段差に腰を下ろす。
「一応今日の午後に開戦予定と告げて来たけど」
そして、俺らも腰を下ろす。
「……んで、ここで昼飯食うってことでいいんだよな?」
俺が坂本に問いかける。
「その通りだ八幡。まずは腹ごしらえからするぞ。明久、今日の昼ぐらいはまともな物を食べろよ?」
「そう思うならパンでもおごってくれると嬉しいんだけど」
「えっ? 吉井君ってお昼食べない人なんですか?」
吉井の言葉に姫路が驚らいたように話す。
「こいつの場合は、『食べない』じゃなくて『食べたくても食べられない』なんだけどな」
「いや。八幡。一応食ってるよ」
「……あれは食べていると言えるのか?」
「何が言いたいのさ?」
「いや、お前の主食って───水と塩だろう?」
坂本の哀れむような声。
「坂本。それは違うぞ。──こいつの主食に砂糖だって入っている」
俺は坂本の発言に一言付け足す。
「八幡の言う通りだ! きちんと砂糖だって食べているさ!」
「あの、吉井君。水と塩と砂糖って、食べてるとは言いませんよ……」
「舐める、が表現としては正解じゃろうな」
「ま、飯代まで遊びに使い込むお前が悪いよな」
「し、仕送りが少ないんだよ!」
今の発言の通り、吉井の両親は海外にいて、家にはいない。なので、毎月仕送りがくるのだが、遊びのためにお金を使ってしまい、飯代や生活費が足りなく、まともな生活ができないでいる。自業自得なのだが。
「……あの、良かったら私が弁当作ってきましょうか?」
「☆▲○?」
姫路の言葉に吉井は戸惑ったかのように言葉を返す。
「本当にいいの? 僕、塩と砂糖以外のものを食べるなんて久しぶりだよ!」
「はい。明日のお昼で良ければ」
「良かっじゃないか明久。手作り弁当だぞ?」
「うん!」
坂本のからかいの言葉も気にせずにこにこして素直に喜ぶ吉井。
「……ふーん。瑞希っ随分優しいんだね。吉井
一方的に島田が睨みつける。やめてあげろよ……。吉井が弁当食べられなくなったら本当に死ぬかもしれないんだぞ…。
「あ、いえ! その、皆さんにも……」
「俺たちにも? いいのか?」
「はい。嫌じゃなかったら」
「それは楽しみじゃのう」
「…………(コクコク)」
「……お手並み拝見ね」
それぞれがそれぞれの感想を述べる。
吉井、坂本、ムッツリーニ、秀吉、島田、俺、そして、自分用の姫路の分を含めるとお弁当を七人分作ってくることになる。
「……姫路、1ついいか?」
「え、あ、はい。どうぞ」
「俺は養われる気はあるが………施される気はない。………っていうことで俺の分は無しでいいぞ姫路。多分明日も優子が作ってくれるから」
そう。俺は、優子の作ってくれたお弁当を毎日のように食べている。なので、「明日はいいや」なんて言いにくい。てか言えない。
「あ、はい。わかりました」
「おい、八幡。お前まだ専業主夫になるつもりなのか?」
「坂本。今更何を言っているんだ?お前は」
「……あ、す、すまん……なんか……。……話がかなり逸れたな。試召戦争に戻ろう」
坂本を含め、皆が忘れていたことを口にする。………さて、聞かせてもらおうか…坂本の作戦とやらを。
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第五問 Dクラスとの試召戦争は案外楽勝だったりする。
合計文字数1,2000突破!UA合計合計5700突破!お気に入り件数110件突破!
これからも頑張ります!
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バカテスト 地理
【第五問】
問 世界にある3つの大きな海の名前を答えなさい。
比企谷八幡の答え
〔太平洋、大西洋、インド洋〕
教師のコメント
正解です。
坂本雄二の答え
〔大平洋、太西洋、インド洋〕
教師のコメント
比較的ありがちは間違えで先生はびっくりしてます。
吉井明久の答え
〔ビーフカレー、キーマカレー、インドカレー〕
教師のコメント
先生はカレーの種類を答えてと言ったつもりは無いんですが…。
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「さて、話がかなり逸れたな。試召戦争に戻ろう」
「雄二。1つ気になっていたんじゃが、どうしてDクラスなんじゃ? 段階を踏んでいくならEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろう?」
秀吉の言葉に、姫路も「そういえば、確かにそうですね」と首を縦に振る。
「まぁな。当然考えがあってのことだ」
「どんな考えですか?」
坂本の言葉に姫路は質問する。
「色々と理由はあるんだが、とりあえずEクラスを攻めない理由は簡単だ。戦うまでもない相手だからな」
「え? でも、僕らよりはクラスが上だよ?」
吉井がそう思うのは当然のことだろう。現に、俺らよりEクラスの連中の方が少しは頭がいい。
「ま、振り分け試験のや時点では確かに向かうの方が強かったもしれないな。けど、実際のところは違う。オマエの周りにいる面子をよく見てみろ」
「えーっと……」
坂本の言われた通り、吉井は俺たちを見回す。
「美少女2人と馬鹿が3人とムッツリが1人いるね」
「誰が美少女だと⁉︎」
「ええっ⁉︎ 雄二が美少女に反応するの⁉︎」
「…………(ポッ)」
「いや、俺は馬鹿じゃないだろ」
「どうしよう! 僕1人じゃツッコミきれない!」
「まぁまぁ。落ち着くのじゃ、代表にムッツリーニ」
「そ、そうだな」
「いや、その前に美少女で取り乱すことに対してツッコミ入れたいんだけど」
「ま、要するにだ」
坂本の奴話晒しやがった。俺も美少女で反応したこと気になってんのに……。
「姫路に問題がない今、正面からやり合ってもEクラスには勝てる。Aクラスが目標である以上はEクラスなんかと戦っても意味が無いってことだ」
「? それならDクラスとは正面からぶつかると厳しいの?」
「ああ。確実に勝てるとはいえないな」
「だったら、最初から目標のAクラスに挑もうよ」
吉井の言う通り、俺たちをFクラスの目標はDクラスを倒すことではなく、Aクラスを倒して設備を交換することだ。だが、坂本がやることだ。考えがないわけじゃ無いだろう。……てか、きっと性格悪い坂本は、結構腹黒いことをしそうだ。だが、坂本はDクラスに挑む本当の理由を隠し、嘘の理由を口にする。
「初陣だからな。派手にやって今後の景気づけにしたいだろ? それに、さっき言いかけた打倒Aクラスの作戦に必要なプロセスだしな」
坂本の言葉に姫路が疑問に思ったのか、話しかける。
「あ、あの!」
「ん? どうした姫路」
「えっと、その。さっき言いかけた、って……吉井君と坂本君は、前から試召戦争について話合ってたんですか?」
「ああ、それか。それはついさっき、姫路の為にって明久に相談されて──」
「それはそうと!」
廊下で話していたのは、やはり試召戦争のことについてだったか。
「さっきの話、Dクラスに勝てなかったら意味がないよ」
「負けるわけないさ」
吉井の言葉を聞き、坂本は笑い飛ばす。
「お前らが俺に協力してくれるなら勝てる」
そして、坂本は続ける。
「いいか、お前ら。ウチのクラスは──最強だ」
案外ありえなくはない話だ。学年次席を取れるはずだった姫路。保険体育が大の得意なムッツリーニ。数学が得意な島田。演劇部などて活躍中の秀吉。かつて《神童》と呼ばれた坂本。《観察処分者》の吉井。そして、国語が得意な俺。
「いいわね。面白そうじゃない!」
「そうじゃな。Aクラスの連中を引きずり落としてやるかの」
「…………(グッ)」
「が、頑張りますっ」
「…まぁ、やってもいいか…」
打倒Aクラス。
少々無謀かもしれないが、やってみなくてはわからない。俺らの負けか、
「そうか。それじゃ、作戦を説明しよう」
涼しい風がそよぐ屋上で、俺らは坂本の作戦に耳を傾けた。あ、今から作戦なんだ。俺、前の回で『作戦を聞いてやろうじゃないか(どやぁ)』な感じのことを心の中で思っていた気がする。
。。。
「八幡! 戦争開始じゃ!」
「ああ」
今、俺がいるのは、秀吉率いる先行部隊だ。
現在展開されている科目のフィールドは生物。得意でも不得意でもない。俺はさっきまで、この戦争の為に姫路と回復試験というものを受け、テストの点を回復していた。
回復してきたのは、数学、国語、化学、生物だ。ていうかこれ以上は回復する時間がなかった。
だが、数学以外はそれなりの点数を取ってきたため、対処はできるだろう。
まあ、Dクラスの連中なら俺の生物の点数でも打ち倒せる。
俺の試験召喚獣の見た目は、スーツ姿に、手には少しは長めの刀を持っている。
「八幡! 大体の敵は倒してくれると助かるのじゃ!」
「お、おう。わかってる」
俺はそう言いながら、目の前にいたDクラスのやつを斬りふせる。
「ヒッキー! 勝負だよ!」
「ん、誰?」
「きょ、去年同じクラスだった由比ヶ浜結衣だよ! ヒッキー最低!」
「そ、そうか……」
こいつは由比ヶ浜結衣というらしい。ていうか、初対面によくこんなに話しかけられるな……。コミュ力マジパネェ。
「ヒッキーはてっきりBクラスぐらいにいると思ってたよ」
「お前は顔からバカそうだもんな」」
「わ、わたしそこまでバカじゃないし! ヒッキーのバカ! キモい!」
「まぁ、そんなことは置いといて……、勝負だ。由比ヶ浜」
由比ヶ浜の試験召喚獣は、アイドルのような格好に、銃を持っていた。………いや、組み合わせおかしいだろ…。
由比ヶ浜の試験召喚獣が放つ弾を俺の試験召喚獣が持っている刀で全て切り落とす。
そして─────────
『Fクラス 比企谷八幡 VS Dクラス 由比ヶ浜結衣
化学 196点 VS 82点』
「ヒッキーそんな点数高いの⁉︎」
「まあな」
そして、由比ヶ浜の試験召喚獣を倒し、俺は由比ヶ浜に勝利した。
「戦死者は補習!」
あ、由比ヶ浜鉄人に回収されていった。
─×─×─×─
吉井の部隊のサポートもあり、俺はどうにか生き残ることができていた。
すると、校内アナウンスが流れる。
《船越先生、船越先生》
この声はおそらく須川のものだろう。
《吉井明久君が体育館裏で待っています》
《生徒と教師の垣根を越えた、男と女の大事な話があるそうです》
俺の後ろにいる吉井がビビる。船越先生というのは、婚期を逃してしまい、最近では生徒に手も出した噂まで流れている。
俺はそんなことを気にせず、戦争を続けていた。
……予想以上に敵は弱く、科目が変わっても回復試験を受けていたやつなので、今までセーフゾーンにいる。
未だ、戦争は続く。
─×─×─×─
「坂本。今どんな感じだ?」
「少し俺らが押されてる感じだ」
俺は坂本と吉井のところに来て、坂本の援護をしている。
「…ん? いや、俺らが押してるな……」
そんなことを呟いた坂本の声をかき消すかのように、一つの声が響いて聞こえて来た。
「援護に来たぞ! もう大丈夫だ! 皆、落ち着いて取り囲まれないように周囲を見て動け!」
この声は…………誰だっけ?
「…おい。あいつ誰だ?」
「Dクラス代表の平賀君だよ……。それくらい覚えといてよ。八幡」
どうやら、Dクラスのやつの援護に来たのはDクラスの代表の平賀というやつらしい。
「Dクラスの本隊だ! ついに動き出したぞ!」
ウチのクラスの誰かの声が聞こえる。
これでおの廊下にはDクラスとFクラスの主戦力が集まっていることになる。
「本隊の半分はFクラス代表坂本雄二を獲りに行け! 他のメンバーは囲まれている奴を助けるんだ!」
『おおー!』
平賀の命令の下、平賀が下した命令の通りに動くDクラスの連中。
「Fクラスは八幡以外全員一度撤退しろ! 人ごみに紛れて
坂本の声が廊下に響く。ってかあいつ今何つった?俺以外撤退しろっていわなかったか?
「八幡! 少し頼む!」
「……いや、頼むじゃないでしょ……」
「逃すな! 個人同士の戦いになれば負けはない! 追い詰めて討ち取るんだ!」
平賀の声を聞いたDクラスの連中は、真っ先に一人でいる俺に襲いかかってくる。
「…Dクラスには負けねぇぞ」
「なっ⁉︎」
「つ、強い⁉︎」
俺の試験召喚獣が、襲いかかってきた相手の試験召喚獣二匹を討ち取る。
「流石だ八幡! この調子でそっちは頼む!」
「…はぁ…」
手を上げて俺のことを褒める坂本に少しは腹がたち、ため息をつく。
…俺が何人倒してると思ってんだよ…。かれこれ10人以上は
それ以前に、化学の点数が結構削られてきている。そろそろ決着をつけてもらはないと、俺が補習送りにされてしまう。
そんなことを思っていると、ある報せが俺に届いた。
Dクラス代表 平賀源二 討死
『うぉぉーーっ!』
後ろからは、Fクラスの雄叫びと、Dクラスの悲鳴が混ざった声が妙に耳に響く。
後ろを見てみると、倒れこむ平賀の前に姫路が立っていた。…なんか平賀が可哀想に感じる…。圧倒的な差を見せ付けられてボコボコに負けたんだろうなぁ…。
─×─×─×─
Dクラスとの試召戦争が無事終わり、俺は坂本に気になっていたことを聞いてみた。
「おい坂本。まさかお前、クラスは変えないとかいわないだろうな?」
「お、八幡。流石にわかってたか」
「そりゃあ、まぁな…」
俺の予想通りの返答が坂本の口から帰ってきた。
「どういうことさ雄二! 折角Dクラスの設備が手に入るってのに…」
「それぐらいは自分で考えろ。そんなんだから、あ前は近所の中学生に『馬鹿なお兄ちゃん』なんて愛称をつけられるんだ」
「なっ! そんな半端にリアルな嘘はつかないでよ!」
「おっとすまない。近所の小学生だったか」
「……人違いです」
「まさか……本当に言われたことがあるのか……?」
吉井。墓穴掘ったな。
─×─×─×─
まぁ、なんだかんだで、坂本はDクラスの設備に手を出さず、Bクラスのエアコンを壊してと依頼したらしい。Dクラスにとっても、設備を入れ替えなくていいのは幸運だっただろう。
「八幡。今日は帰ろうかの」
「おう」
俺は秀吉とともに帰路に着く。こうして、Fクラス対Dクラスの試召戦争は幕を閉じた。
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