どうやらヒキタニ君が本気を出すようです、まる (包み焼きハンバーグ)
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プロローグ的な何か
プロローグ
ーーーかの有名なシェークスピアはこんな名言を残している。
『誠の恋をする者は、みな一目で恋をする』と。
俺はこれを聞いた時になにか感慨深い思いだったのを今でも覚えている。よく巷で言う「一目惚れがどうだー」とか、「ヤバい運命だよこれ
ー」とか頭の悪そうな女子が言っているがそういう意味ではないだろう、多分だが。
あまり上手くは言えないが、俺はその言葉を知ったときにとても影響というかなんというか、…………取り敢えず「そうだなー」と思った。最も、どーせ自分なんてそんな機会ないと自負していたし、夢物語くらいにしか考えてなかったのも事実だ。
だってそうだろう?
普通に生きててラブコメなんざあるのは大抵顔がいい『イケメン』と呼ばれる人種か、ムードメーカー的なやつ…………まぁ俗に言う『リア充』って呼ばれるやつだけだ。万年ぼっちを決め込んできた俺なんかでは到底たどり着けない領域だぞ、あんなの。…………いや、別にたどり着きたくはないけどさ。
それでも悲しき男の性か。鏡の前に立つとつい髪型とか気にしちゃうし、電車とかで隣に女子校生とかが座ってくると意味もなく緊張してしまう。
おいこらそこ! 残念そうな目でこっち見ない! 俺だって最初からこんな残念な子じゃなかったんだぞ? 小中高と輝かしいぼっちのエリート教育を受け、現在に至るのだ。いわば俺はエリート!一人でなんでも出来るぼっち界期待の新星という訳だ。…………なんか自分で言ってて悲しくなってきた。
そんな残念エリート街道まっしぐらな俺だが、これでも一応ごく一部の女子と話をしたりしている。……いや嘘じゃないよ? ここ笑うポイントでもなんでもないからね?! ホントだよ?
…………っと、柄にもなくハイテンションになってしまったが話を戻そう。
俺はとある部活に所属している。さっき話した一部の女子ってやつもこの中に含まれている。てかぶっちゃけこの中にしかいません、ハイ。
……てかなんの話だっけ? なんか俺の黒歴史の話になってるが本題に戻そうと思う。
ーーー最近一人の少女がとても気になっている。
ソイツはやたら俺に対して毒ばっか吐くし、なにかと俺に対して否定してくる。そのくせ猫やパンさんの事になると本気で、そんな姿が見ていて微笑ましい。
いつも凜としていて、自分が正しいと思った事を貫き通すその姿は男の俺から見ても充分カッコいいと思える。
その反面、時折見せるあの悲しげな瞳……遠くを見ているようで何も見ていないようなあの悲しい目。あの表情を見ていると、こう……胸の奥の方が締め付けられるようななんとも言えない気持ちになる。
なんとかしてやりたいという気持ちと自分なんかじゃ無理だという気持ちが交差し、混じりあった絵の具のように俺の心のなかで蠢き、そして巣食う。
『どうせ自分なんかじゃ無理だ、諦めよう』
『誰か他の人がやってくれるさ』
実にいい響きだ、最高だね。
他人任せと人は言うかもしれないが、だからそれがどうした。自分一人で出来ることなんて実際限られてるし、そもそも人間なんて他人任せの生き物と言ってもいいくらいだと俺は思う。
だからだろうか。なんでも一人でこなし、周囲を寄せ付けないあの少女が気になったのは。ふと、何気ない仕草一つに目線がいったりしてしまうのは。
『もう恋なんてしない』
そう、中学のあの頃そう誓ったではないか。痛い経験をし、成長したのではなかったか?
だからこそわからない。この胸の高まりが一体なんなのか……俺は……
「恋……かぁ……」
「どうしたの? 比企谷君。いきなりその腐った目して恋がどうとか……正直気持ち悪いわよ? 」
そう言って目線を読んでいる本から離さずに呟く少女ーー雪ノ下雪乃はそう口にした。
…………前言撤回、やっぱこいつ可愛くねーわ。
総武高校奉仕部、今日も1日平和です。
暖かい感想カモン!
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比企谷八幡の華麗なる日常
2,
どーも。最近両親から「あんたまた影が薄くなったんじゃない? 」と言われ影の薄さと眼の濁り具合が板についた
季節は秋ーーー辺りは紅葉が目立ち、『食欲の秋』だとか『読書の秋』とか呼ばれる季節となって参りました。……って、俺は一体誰に説明してんだ? …………まぁいいか、話を戻そう。
てか、マジでどうでもいい話だが『読書の秋』だとか『食欲の秋』だとかって一体誰が決めたんだろうな。少なくとも俺の生まれた頃にはもうそういう一種の文化があったことだけは確かだ。
他にも地方によって様々な言い方(?)があるらしくポピュラーなやつは『スポーツ』や『芸術』などがある。なんでも、秋は気温的にも過ごしやすいため色々な事がやり易い季節だってなんか先生が言っていたような気がする。いや、俺も詳しくは知らんけどさ。
確かに秋だとか春だとかの季節の移り変わる季節ってのはこう…………言葉にし難いなんとも言えない気持ちになるよな。授業中とか、こう窓から差し込む暖かい日差しが心地よくついウトウトしちゃったりとか。
「で、比企谷? 今日の遅刻は一体どんな理由なんだ? ……殴る前に聞いておいてやる」
という訳で秋の穏やかな空気をベッドでまどろんでいた俺は、絶賛遅刻を噛ましてしまった訳で只今教室の目の前で先生とマンツーマンでご対面ってな感じだ。その前においこら教師。体罰は禁止されてんじゃないのか?それともなに? あれなのか? 俺だから殴ってるとかそういうアレなのか? え?
なんだがそう考えると、何だか微笑ましい気持ちになった。
俺は先生と向き合い軽くニコッと笑う。先生も笑う。なぁんだ、これで一件落着、ワーイワーイ。そのまま俺は、先生を横切り教室内へ…………「ガシッ! 」デスヨネー。
「……で、比企谷? まだ話は終わってないんだが君は一体どこにいくのかね? 」
そう言って俺の肩を現在進行形で握りつぶす(間違ってはいない)位の力で掴んでいる先生ーーー
ふと気になり、平塚先生の腕を触ってみる。ぺたぺた。
「ひゃんっ?! ちょ、おま比企谷?! 」
何だか非常に可愛らしい声が聞こえたような気もするが、きっと気のせいだろう。続けてもう一度…………
ぺたぺた。
「だから止めろと…………んっ! 」
ぺたぺた。
「はっ! ……ん! …… 」
ぺたぺた。
「いい加減止めんかい! 」
「あたっ!」
どうやら調子にのり過ぎたようだ。平塚先生の頬は赤く染まり、肩で息をしていた。てか、どうでもいいけどマジで色っぽいな。あやうく遅刻早々前屈みで教室に入らなきゃならないところだったぜ。
「………で、比企谷はもういいとして……おい、後ろの川崎はどんな理由て遅刻したんだ? まさかお前もこの
そう言って手をパンパンッと埃を払うような仕草をした先生は、俺の後ろに問いかけた。はて、入ってきた時は確か一人だった筈だが……
疑問に思いながらも先生のありがたい
「…………何? 」
「いや……別に」
長く背中にまで垂れた青みがかかった黒髪、余った裾の部分が緩く結びこまれたシャツ、蹴りが鋭そうな長くしなやかな脚。印象的なのが遠くを見つめるような覇気のない瞳。そして、職人芸で刺繍されたかのような黒いレース。
比企谷八幡、只今絶賛賢者タイムである。
「そう……じゃあそこどいてくんない? 入れないんだけど」
そう言って少女はどうでもいいものをみるかのような瞳で俺に向かって話しかける。いや、違うな、この言い方は正しくない。
まるでどうでもいいモノに向かって話しかけるような…………そんな印象を俺は受けた。人としてじゃなくあくまでモノとしてだ。
存外に「あなたそこ邪魔です」と言われ少しむっときたが、あちらの言ってることは至って正論なので素直に道を譲る。これが俺ーーー比企谷八幡と少女ーーー川崎沙希との出会いだった。
ちょうど始業のチャイムもなり、各々が自分の席へと戻っていく。川崎も、まるで何事もなかったように自分の席についた。
川崎の態度になんだか釈然としない気もするが、悲しきかな。改めて自分の立場というかなんていうの? 身分の違いってやつを思いしらされた。畜生…………ぼっちに住みにくい世の中になったもんだぜ。
なんだか沈んだ気持ちになりながらも自分の席につく。はぁ……
「あ、比企谷は放課後遅刻した件について反省文提出な」
…………世界はもっと俺に優しくしてもいいと思う。
誰に言うのでもなく、心のなかで俺はそう呟いた。
感想、評価よろ!
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