俺は神風に「お兄ちゃん」と呼ばれたい。 (LinoKa)
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第1話 お兄ちゃんの日

 

ロリコン、という言葉がある。

小、中学生以下の少女に手を出す、所謂、変態と呼べる人種のことだ。この人種は本当に死ねば良いと思う。だって考えてもみなよ?単純にキモいだけじゃない、無邪気な女の子を邪気のある目で見てるって事だよ?こんなの、キモいどころかキショイだろ。俺は絶対そんな風にはなりたく無い。

そんな事を思いながら、録画したエ○マンガ先生の最新話を見つつ、今日の報告書や書類を終わらせ、背もたれに寄り掛かった。

 

「………ふぅ」

 

疲れた。後は遠征メンバーが帰って来るまでここで待機するしか無い。………あ、アニメ終わっちまった。天使と言っても過言では無い白髪の妹キャラが洗濯機の前で踊っている。おへそ可愛い。

………これが終わったら、少し暇になっちまうなぁ。たまには鎮守府の中でも見回ろうか。

執務室を出て、演習場の中を覗いた。戦艦や重巡洋艦の皆様が、駆逐艦を指導している。場所によっては軽巡洋艦も指導に当たっていた。

 

「む、提督?」

 

指導していた利根から声が掛かった。

 

「よ、利根。みんなの様子はどう?」

「ふむ、新人も皆懸命にやっておる。練度も着実に上げて来ておる。心配はいらん」

「そうか」

「提督は何しにここへ来たのだ?」

「暇潰し」

「ひ、暇潰しか………」

 

まぁ、みんな調子良いならいいか。

この前のイベントでドロップした神風型もみんな頑張って………あれ?ネームシップだけいないじゃん。

 

「利根、神風は?」

「来てないぞ?」

 

確かに、今日神風は非番だけど……面倒見の良い人だから、妹達が演習してたら、神風も一緒にいるもんだと思ってたが……。まぁ、そういう日もあるか。

 

「というか、神風は遠征に出ているだろう。提督が命じたのではなかったか?」

「あーそうだっけ?遠征メンバーとかサイコロで決めてたから覚えてなかった」

「お、お主は………」

「まぁいいや、邪魔したな」

 

俺は財布から3000円取り出して、利根に渡した。

 

「? これは?」

「演習終わった子にアイスでも飲み物でも奢ってあげて。駆逐艦優先で。余ったら他の奴も好きなの一つずつな」

「おお!ありがとう、提督!」

「いえいえ」

 

テキトーに返事して、演習場を出た。

さて、もう少しぶらぶらするか。腹減ったし、間宮さんのところにでもお邪魔しよう。………あ、ダメだ。今、金渡しちまったし、プレミアム切れてるからぷそのカードも買いに行かなきゃいけないし。

仕方ないので、自室に戻る事にした。俺の部屋は、艦娘絶対立入禁止の場所だ。何故なら、中には高坂桐乃、白、結城みかん、小鳥遊なずな、平沢憂、ファイヤーシスターズなどといったフィギュアが並んでいるからだ。こんなもん、艦娘に見られた暁には死にたくなる。重要なのは、中学生以下の妹、だということだ。一回でいいからお兄ちゃん、と女の子に呼ばれたかったものだ。

でも、流石に就職する歳になって母親とかに「妹が欲しい!」なんて言えるわけもないし、諦めるしかないよなあ。あ、言っとくけどロリコンなんかじゃないからね?中学生以下の妹が好きなだけだから。

 

「………はぁ」

 

深くため息をついて俺は自室に向かった。部屋の扉を開けたときだった。

 

「………あっ」

「っ」

 

中で、俺妹の原作を読んでる神風がビクッとしながらこっちを見た。

 

「……………」

「……………」

 

顔を合わせたまま、お互い何も話さない。ただ、無言で見つめ合っていた。

えーっと、何これ?どういう状況だ?俺の部屋に神風がいて、俺妹を読んでて………?えっと……まぁ、とりあえず、

 

「…………お前何してんの?」

 

質問した。

 

「あ、いえっ、これはっ、その………」

「見た?」

「えっ?」

「この部屋、どれくらい見た?」

「…………ひ、一通り」

「全部?」

「全部………」

「……………」

 

これは、うん。もうあれだな。

 

「ちょっと、天国旅行行って来る」

「お、落ち着いて下さい司令官!謝ります、謝りますから待ってください‼︎」

「いや、そういう問題じゃないし。もう死ぬしかないだろこれ。ていうか死ぬわ、うん。サヨナラ」

 

懐から拳銃を取り出し、こめかみに当てた。

 

「⁉︎ だ、ダメェ〜‼︎」

 

拳銃を握る俺の拳に神風は突撃し、銃口は上を向いて、飛び出した銃弾は天井にめり込んだ。

 

「危ねぇよ!」

「危ないのは司令官よ‼︎落ち着いて下さいってば!」

「落ち着いてるよ!その結果、死のうと……!」

「落ち着けてません!誰にも言わないって約束しますから死なないで下さい‼︎」

「…………本当だな?本当に誰にも言わないんだな?」

「言わないわよ!………そ、そもそも、私だってルールを犯してここに入ったわけですし……」

 

ああ、それは確かに。お前なんでここにいんの?

 

「何してんだよお前」

「ご、ごめんなさい司令官………。だけど、執務室に司令官がいないから、この部屋にいるのかと思って、つい………」

「………それで入ったのか」

 

畜生………魔が差して出掛けたりなんてしたばっかりに……!額に手を当てて全力で後悔してると、神風が質問して来た。

 

「あ、あの……司令官?それで、なんでこんな妹モノのものばかり……」

「やっぱ死ぬわ」

「わー!わー!お、落ち着いてください!別に責めたりなんてしないから!」

「いや、もう部下の女の子に性癖見つかった時点で俺に残された道は死しかないと思うんだが……」

「も、もう面倒臭いなぁ!うちの指令官は‼︎」

 

神風はため息をつくと、恥ずかしそうに頬を赤く染めながら言った。

 

「そのっ……わ、私もです……」

「死ぬにはやっぱ首吊りかなぁ……え?何が?」

「私も、お兄ちゃんが欲しいんです!」

「…………はっ?」

「ほら、私って一番お姉さんじゃないですか。だから、一回でもいいから甘えられるより、甘えてみたいんです………」

「…………」

 

………それは正直意外だ。しっかり者の神風も誰かに甘えたいとか思うんだなぁ。

 

「………だから、司令官も同じですよね?」

「まぁそうだな。俺は妹キャラが好きというより、妹が欲しいんだけどな」

「そうなん、ですか?」

「ああ。一回で良いから、自分より年下の女のコ……それも中学生以下の子に『お兄ちゃん』『兄ちゃん』『お兄』と呼ばれたかった……」

 

あ、メイド喫茶のオプションとかは別な。あんなババァどもにお兄ちゃん呼ばれても嬉しくないわ。

しみじみと思ってると、神風が顔を赤くしたままの状態で、上目遣いで口を開いた。

 

「あっ、あのっ……」

「?」

「も、もし、よかったら………」

「何」

「わ、私を……妹に、してくれません、か……?」

「…………はっ?」

 

何言ってんのこいつ?血迷った?

 

「ほ、ほら!私はお兄ちゃん欲しいですし、司令官も妹が欲しいならちょうど良いじゃないですか!」

「……………」

 

………ふむ。神風、駆逐艦。年齢はどれくらいだろうか……。

顔は幼い、中学生くらい。

しかし、胸は大きい。高校生くらいはある。

続いて、着物も着てるし、大人っぽさに拍車が掛かってる。

身長は普通くらいだから、中三〜高一くらい。

中学生+1で高校生くらいなんだよなぁ………。公式設定で中学生とされている妹は、どんな外見でも気にならないが、年齢不詳だと外見は気になってしまう。悪くない提案だったかもしれないが、ここはやはりお断りして………。

そう思った時だ。床に落ちてる鏡が反射して、神風の袴の下を映した。

 

「ーッ⁉︎」

 

く、クマさんパンツ、だと………⁉︎しかも『神風』という名前付き⁉︎

クマさんパンツ、幼さの象徴、それに「下着に名前を書く」という追加ダメージまで重ねて来やがった!

これによって、中学生-1くらい、つまり小学六年〜中学一年くらいに下がった。少なくとも、高校生では無い。

俺は神風に向けて親指を立てた。

 

「採用」

「! ホントですか⁉︎」

「ああ。でも、みんなの前では普通にしてろよ」

「は、はい!分かりました、お兄ちゃん!」

「………おうふ」

 

拝啓、おふくろ様。

わたくしは23歳になって、妹が出来ました。

 

 



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第2話 人は欲しいものを手にした時、意外にも無力なものだ。

 

 

「…………俺は一体、何の約束をしてんだ」

 

翌日、俺は仕事しながら全力で後悔していた。なんだよ、妹になるって……義理の妹って事?何にせよおかしいだろ………。あんなんじゃ、少なくとも神風にはドン引きされただろうなぁ………。兄が欲しいとか言ってくれたが、何故あの時の俺は、俺に合わせて兄貴が欲しいと言ってくれたと考えなかった?あそこは艦娘に甘えちゃいけない所だろ。どんだけ妹欲しかったんだ俺。

いや、今からでも遅くないか。断ろう。問題は、向こうも性癖を晒してくれてるということだ。恥ずかしい思いまでしてくれたのに、断るのは少し申し訳ない。

どうしたものか、両腕で挟むようにして頭を抱えてると、コンコンとノックの音がした。

 

「………どーぞ」

「さ、失礼するわね……」

 

返事をすると、神風が入って来た。あー、まぁ丁度良いな。とりあえずお断りしよう。

そう思って口を開きかけた時、先に神風が声を発した。

 

「お、お兄ちゃん。お疲れ様。差し入れにクッキー作って来てあげたわよ」

「いただきます」

 

断るのはまたの機会にしよう。

俺は立ち上がって、ソファーとテーブルの方に移動し、紅茶を二人分淹れた。

神風も俺の向かい側に座り、テーブルにクッキーを置いた。

 

「いただきまーす」

「いただきます」

 

クッキーを一枚摘み、口の中に運んだ。

 

「どう?美味しい?」

「ん、美味い」

「良かったぁ」

「……………」

「……………」

 

無言でクッキーをかじり、たまに紅茶を飲む。

………あ、あれ?兄妹ってどんな感じなんだ?何すりゃ良いんだこれ?俺が望んでた妹との生活ってどんなんだったっけ?なんだ、これ……なんか、こう……違うな。

神風もどうしたら良いのか分かってないのか、顔を赤らめたままモジモジしていた。

良し、こうだ。過去の妹キャラのルーツを辿ろう。例えば、その、何。俺妹から?確か、あの妹は運動も勉強も出来て、モデルもやってるにも関わらずオタクだったな。

 

「神風」

「な、何?」

「秋葉原とか、行きたくないか?」

「別に行きたくないけど……」

「そ、そうか………」

「うん」

「……………」

「……………」

 

そうじゃん、別に神風はオタクじゃないじゃん。俺妹はダメだな。他の妹モノのアニメか………いや、この際、妹モノじゃなくても良いか。

他のアニメだな。エロマンガ先生……はそもそもラノベ作家じゃねぇし、絵師てもねぇしな……。あれ?これマジでどうすりゃ良いんだ?

 

「あ、あの、お兄ちゃん?」

「ん?」

「私もどうすれば良いのか分からないし……とりあえず、お互いにしたい事をまとめてみましょう」

「したい事?」

「私はお兄ちゃんに要求する事、お兄ちゃんは私に要求する事をそれぞれ言うんです。それが、兄妹のする事になるのでは?」

「………なるほど。じゃあ、少し待ってて」

 

俺は業務用机の上に束ねてあるいらない紙を二枚手に取った。

 

「うし、とりあえずこれに書きおろすか」

「………それはちょっと恥ずかしいんだけど」

「大丈夫、俺が保管しておくから。他の奴には絶対見られない」

「………お兄ちゃんに見られるのが、一番恥ずかしいんだけどなぁ」

「どうせ後で見せるんだから良いだろ」

「………むぅ、やむを得ないか……」

 

え、何そのキャラかわいい。武人系の妹キャラも探してみるか。

俺はとりあえず自分の欲望を書き下ろしてみた。

 

『妹としたい事

・宿題を教えてあげたい。

・背中を足で踏んでマッサージしてもらいたい(その際、スカートの中を覗きたい)。

・雨の中、出掛けた先に傘を持って迎えに来てもらいたい。

・「お兄ちゃんとけっこんするー!」って言われたい。

・夜中にトイレについて行ってあげたい。

・一緒に風呂に入りたい

・着替えてるところに遭遇して、「変態!」と罵られたい。

・ていうかもう愛でたい。

・背中をなぞりたい。

・脇腹をつつきたい。

・胸のことを相談されて「揉めば大きくなるよ」って提案したい。

・で、揉みた』

 

そこで俺は紙をくしゃくしゃに丸めた。

 

「っ⁉︎ し、司令か……お兄ちゃん⁉︎どうしたの⁉︎」

「いや、ちょっとやり過ぎた」

 

危ない危ない。ドン引きされるところだった。ただでさえ異常な状態なのに、こんな所でさらに性癖バラしてたまるか。大体、艦娘に宿題とかねーし。

新たな紙を取りに行って、もう一度書き直した。

で、10分後、とりあえずお互いに書き終えたようなので、紙を交換した。さて、神風の要望とは何だ?

 

『お兄ちゃんにしてもらいたいこと

・頭を撫でてもらいたい。

・肩に頭を乗せて眠りたい。

・怖い話を見たとき、一緒に寝て欲しい。

・ダラダラしてるところを叱りたい。

・部屋の掃除を手伝ってあげたい。

・マッサージしてあげたい。』

 

こんな感じだった。所々、消しゴムで消してある箇所を読みたくなる俺は、やはり変態なのだろうか。いや、俺は断じて変態ではない。これくらい、みんな良く考えるはずだ。

神風は俺の顔を覗き込むように見て来た。

 

「ど、どう……でしょうか………?」

「いや、うん。これくらいなら別に。そっちは?」

 

描き直した俺のやつも、ほとんど似たようなものだ。じゃ、早速どうするか。

 

「じ、じゃあ、その……マッサージしましょうか?」

 

マッサージはアレか。俺がパンツの部分を消した奴。あれ書いてたら即憲兵だった。

 

「ああ、頼む」

 

ソファーの上に寝転がった。その上に、神風は跨ぐように座った。

 

「あの……流石に踏むのは良くないと思いますので、押してマッサージさせていただきますね」

「えー、踏まれたかったのに?」

「え?今なんて?」

「何でもなーい」

 

あぶね、口が滑った。まぁ、跨がれるのでも良いか。

………いや、待てよ?これ、俺が背中を小刻みに動かす事によって、神風のお尻の感触を味わえるんじゃないか?ってバカ。俺は何を考えてる。妹と言っても基本は部下だぞ。死ね、俺。

 

「じゃ、やりますね」

「んっ」

 

肩甲骨の辺りを親指でグリグリと押した。おっ、中々……気持ち良い………。何が気持ち良いって、腰の上の尻の感触と小さなお手てが一生懸命俺の背中を刺激しようとしてる辺りがもうね。

 

「どう?お兄ちゃん」

「気持ち良い……」

「本当に?良かった。もっとガンガン行くわね!」

「お尻の感触が………」

「っ!も、もう!えっち!」

 

あ、やばっ。声に出た。でもその罵り、可愛くて最高です。まぁ、声に出してしまったお陰で、神風は膝立ちになってしまったが。

次は背中を手のひらで押され、あまりの心地よさに眠気が襲って来る。

 

「ん。もう大丈夫、ありがとう神風」

「うん。それで、その……」

「? どした?」

「頭、撫でてくれると……」

「……………」

 

あれ?神風ってこんなに可愛い子だったの?すごく甘えて来るし、でも羞恥心は忘れないし………普段のしっかり者の神風を知ってるから、ギャップ萌えしてるだけか?いや、にしてもこれは………。

 

「お兄ちゃん?」

「お、おう!悪い……!」

 

呼ばれて、慌てて神風の頭を撫でた。サラサラの髪に指が透き通り、なんかすごい良い香りする。頭を撫でられ、若干恥ずかしさはあるのか、顔を赤くしながらも決して抵抗しない神風の表情も、また可愛さがある。

 

「………んぅっ」

「っ」

 

変な吐息を漏らすなよ。ムラムラするだろうが。あー畜生、どうしようこれ。神風が可愛すぎて生きるのがツライってこういう事か。すごい共感する。畜生、可愛いなぁ畜生。

すると、神風がふと時計を見た。もうお昼の時間を回っている。

 

「お兄ちゃん、お昼は食べた?」

「まだ」

「じゃあ、作って来ますね」

「え、いやそれは流石に………」

「良いの良いの。任せて?」

「………それなら、他の奴に見られると不味いし、執務室のキッチン使って良いぞ」

「本当に?ありがとう」

「エプロンはあそこの棚に入ってるから」

 

神風は鼻歌を歌いながら、エプロンを取りに行った。

いやいやいや、待て待て落ち着けや俺。な?お前は大人だ。大体、妹と言ってもこれはごっこ遊びの妹みたいなモンだろ。あんな年端のいかない女の子にそれはねぇって。弁えよう、俺。

………よし、大丈夫!落ち着いた。そう思って、神風の方を見た。エプロン姿の神風が立っていた。

 

「なん、だと………⁉︎」

 

に、似合い過ぎるだろ………。

俺の中で、何かが吹っ切れた。

 

 



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第3話(神風) あんた確信犯ですよね?

 

 

 

アレから一週間が経過した。私は一人で廊下を歩いていた。辺りを警戒しながら。いつ、あの人が襲い掛かって来るか分からない。

 

「ふおおおお!神風ええええええ‼︎」

 

直後、後ろから声がした。パッと振り返りながら防御姿勢に入るが、後ろにあるのはラジカセだった。

 

「っ⁉︎」

 

と、思ったら前から誰か、というか司令官に抱きつかれた。

 

「きゃああっ⁉︎」

「神風は可愛いなぁああああああ‼︎」

「ちょっ、司令官⁉︎ダメよ!こんな人の通る所で………!」

「じゃ、俺の部屋に行こう。そこで妹的にもペット的にも性的にも愛でてやろう」

「せ、性的⁉︎な、何するつもりよ⁉︎」

「行こうか!俺達のエデンへ!」

「エデンはあんたの頭の中でしょ⁉︎ていうか、良い加減にしなさい‼︎」

「っ⁉︎」

 

私はカッとなって司令官を力任せに背負い投げした。司令官は投げられながらも、腰を曲げて足を着地し、ブリッジの姿勢になると、そのまま立ち上がって逆に私を持ち上げて抱えた。つまり、私の頭は下になって腰を抱えられている。

 

「ああああ!攻撃したのに逆襲される神風たん萌ええええええ‼︎」

「ちょっ、離しなさい!」

「嫌だよ。神風が投げたからこうなったんじゃん」

「っ!」

 

な、なんでこんな人の運動神経が良いのよ………!あ、軍人だからか……。

 

「あ、パンツ見えた。今日のパンツにも可愛く名前が書いてあるね」

「っ⁉︎み、見るな変態!」

「いやいやいや、袴が捲れるから仕方ないっちゃ仕方ないんだよ。あー、股間から良い香りがするんじゃー。ねぇ、この中に頭突っ込んでも良い?」

「このっ………‼︎離せって言ってるじゃない‼︎」

「あふんっ⁉︎」

 

私は手を離させせようと、脚を振り回した。が、司令官は手を離すことなく、踵が鼻の頭に直撃した。司令官は私を抱えたまま後ろにひっくり返り、私も司令官の上に落ちた。

 

「ごふっ……!い、今のは効いた………‼︎」

「ち、ちょっと……!なんで手を離さなかったのよ……⁉︎」

「だって、あの状態で手を離したら神風が怪我するだろ………?」

「ーっ!」

 

こ、この人はズルい………‼︎変態の癖にちゃんとそういう所に気が回るとか反則よ………。お陰で嫌いになれない。

顔を赤らめて俯いていると、なんか下半身がスースーしてる事に気付いた。

 

「………?」

 

下を見ると、司令官が私の袴を捲ってパンツを眺めていた。

 

「っ!ば、バカ‼︎」

「顎が痛い‼︎」

 

司令官の顎を蹴り飛ばし、私は立ち上がった。

 

「もうっ、最低‼︎」

 

そう怒鳴りつけて、私は自分の部屋に向かった。………何と無く気になって後ろを見ると、司令官は微動だにしない。

 

「………一応、明石さん呼んどいてあげよう」

 

執務室に向かった。

 

 

++++

 

 

明石さんに司令官を医務室に運んでもらい、ベッドに寝かせた。艦娘の本気の一撃を顎に喰らい、意識が飛んでいるらしい。

 

「気絶してるだけで外傷はありませんね」

 

………艦娘の一撃を喰らって外傷がないのはどうかと思うけど。この人、本当に体力お化けだなぁ。

 

「自分で気絶させておいて助けを呼びに来るなんて、神風ちゃんも変わってますねー」

「そ、それは………!怪我させた本人が呼ぶのは当たり前ですよ。でも、絶対に謝りませんからね!元はと言えば司令官の自業自得なんですから!」

「それは別に良いと思いますよ。実際、自業自得ですし。ていうか、ここ一週間ずっとじゃないですか?この人に何があったんですか?」

「そんなの私にも分かりませんよ………」

 

本当にどうしたんだろう。やっぱり、妹にして、なんて頭のおかしい事言っちゃったから、かなぁ………。

 

「でも、神風ちゃん。気をつけた方が良いですよ」

 

明石さんに言われ、私はドキッとした。それは分かっている。仮にも私の上司にいる人間だし、あまり暴力を振るってると、解体されてしまうかもしれない。例え正当防衛でも、上官に手を挙げたのは事実だ。もう少し我慢できるようにならないと………。

 

「提督の事を医務室に運ぶようになって、一週間ですよね?」

「………はい」

「提督の対物理ダメージ耐性が上がって来ています」

「………はい?」

 

わけのわからないことを言い出した。

 

「最初に提督が神風ちゃんにボコボコにされて運ばれて来た時は顔の形が変形する程でしたが、運ばれてくる度に腫れ上がった箇所が減って来ています。今日なんて気絶以外は無傷ですから。このまま行けば、提督にはあらゆる物理ダメージは効かなくなります」

 

何それ怖い。サイヤ人か何かなのかしら?

 

「い、いやまさかそんな………」

 

口では否定してみたものの、事実、司令官の身体に傷はない。私の頬に冷たい汗が流れた。

 

「このままいくと、あと一〜二週間後には艦娘の拳での攻撃では、提督にダメージを負わせることは出来なくなってしまいますよ。そうなると、神風ちゃんは今以上にやり放題されてしまうのでは……?」

「……………」

 

想像するだけで鳥肌が立ったわ今。

 

「あ、あかっ……明石さん………!私、どうすれば………‼︎」

「長門さんや武蔵さん、日向さん達のような脳き……素の体力も鍛えてる方に修行してもらうか………」

 

修行って………バトル漫画ですかこれは。しかもセクハラ上司を倒すための修行ってすごい斬新ね。

 

「もしくは、物理ダメージ以外で提督を黙らせるか、ですね」

「………超能力でも使えるようになれって言うんですか?」

 

それは流石に無理でしょう?

 

「違いますよー。あくまで提督の体にダメージを負わせる考えなんですね?」

「だ、だって!あんな風に迫られたら動きを封じるしか……!」

「いえいえ。そんな物騒な事しなくても動きは止められますよ?」

「………どうやって?」

「精神的ダメージとか」

「………?」

「例えばですね………」

 

明石さんは私の耳元でどうやってダメージを与えるか呟いた。

 

「………です」

「……え?そんな方法で、ですか?」

「はい。効果は抜群だと思いますよ?」

「……………」

 

疑わしいけど、そこまで言われたら試してみるのも良いかもしれないわね。自意識過剰みたいであまり好きな手ではないけど。

すると、ちょうど良い事に司令官が目を覚ました。

 

「おおう……痛て……顎が、顎が砕けるかと思ったぜ……」

「大丈夫ですか?提督」

 

明石さんがコップに水を注いで司令官に手渡した。

 

「悪いね、明石。どのくらい寝てた?」

「ほんの20分くらいですよ」

「遠征とか出撃は?」

「遠征はまだですけど、出撃メンバーは帰って来て、念の為待機していただいてます」

「なら、今日はもう休みでいい。怪我した奴らは入渠だ」

「了解しました」

 

そういえば、司令官が私にセクハラするようになってから、医務室で寝てる事が増えたので、明石さんが秘書をするようになっている。

明石さんも完全に仕事に慣れた様子だし、息はバッチリ合ってるように見えた。司令官も仕事してる時はキリッとしてるし………何か気に食わないわね………。

あれ?待てよ?明石さんが秘書艦で、司令官が私にセクハラしに来るということは、少なくとも明石さんは私へのセクハラを黙認しているということになるんじゃ………。

色んな意味でムカついて来てムスっとしてると、司令官が私を見ているのか気付いた。

 

「………あっ」

「自分で怪我させといてお見舞いに来てくれる神風たんマジで可愛いーーーー‼︎」

「ちょっ、きゃあっ⁉︎」

 

しまった!司令官の前で油断するなんて………!

司令官にギューッと抱き締められ、私は司令官の顔を掴んで引きはがそうとするが、剥がれない。

すると、明石さんが「今、今」と口パクで言ってるのに気付いた。そうね、試すには絶好の機会だわ。私は抱き締められながら言った。

 

「し、司令官!」

「何?脇の下の匂い嗅いでも良いって?」

「ちっがうわよ‼︎」

 

私はツッコミを入れてから耳元で叫んだ。

 

「あんまりそういう事してると、嫌いになるわよ⁉︎」

 

直後、司令官はピタッと止まった。まるで時間が止まったかのようにピクリとも動かない。

と、思ったら声が聞こえて来た。

 

「………………マジ?」

「ま、マジよ………!」

 

どうだ、効果の方は………効かなかったら明石さんは後で尋問してやる……逆な効いたら不問にしてあげよう。

すると、司令官は静かに離れた。何よ……まさか本当に効果あり?ほのかに喜んだ直後、司令官はベッドの横の棚の上に置いてあったボールペンを掴み、芯を出して自分の首に押し当てた。

 

「って、ちょちょちょッ、待ちなさい!」

 

慌ててその手首を掴み、首元から引き離した。

 

「な、何やってるのよあんた⁉︎」

「神風に嫌われるなら死んだほうがマシだああああああ‼︎」

「き、嫌わない!嫌わないから落ち着いて!」

 

なんで一々自殺したがるのかなこの人は⁉︎って、明石さん!笑ってないで止めなさいよ!

 

「………嫌わない?」

「嫌わないから………。けど、少しは弁えてよね。あんなにベタベタ触られるのはどんな女の子だって嫌なんだから!」

「…………はい、すみませんでした」

 

………まったく、これじゃあわたしが姉みたいじゃないの……。

 

 



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第4話 本気を出せばなんでもできる変態はタチが悪い。

 

 

例えばの話をしよう。ゲームセンターでやりたい放題やっているヤンキーがいたとしよう。クレーンゲームの景品を低コストで乱獲し、格ゲーで相手の事を完膚無きまでに叩き潰し、ジャックポットでメダルを掃除機のように回収し、レースゲームでは一位と二位の間を大きく引き離してゴールし、銃ゲーでは常にスコアランキング一位をキープ、カードゲームではレアカードを連続で引き当てる。

だが、それは決して悪い事ではない。それだけの実力があるのだし、本人だってちゃんとお金を払っている。周りの奴らがそれを憎むのなら、それは嫉妬という奴だ。

 

「それとセクハラは同じだ。俺は殴られるというリスクを払っているのだから、抱き締めようが股間の匂いを嗅ごうが入渠シーンを覗こうが問題ないはずだ。加賀、あなたが俺を怒ると言うのなら、それは嫉妬だ」

「八つ裂きにするわよ」

 

提督取締委員会、その筆頭に俺は怒られていた。憲兵とは別の組織である提督取締委員会は、うちの鎮守府にしかないものだ。というか、一週間ほど前、俺が神風と仲良くなってから艦娘達が勝手に作りやがった治安組織である。治安組織なのに、俺の行動しか制限する気がないあたり、異議を申し立てたい。

その会長が、この加賀だ。正座して俺の論理を説明したが、どうやら通じなかったらしい。

 

「良い加減にしなさいよ。何やってんですかあなたは」

「だーかーらー、ゲーセンで暴れ回ってんのと同じなんだっつの」

「いや違うでしょう。バカなんですか?それとも憲兵に突き出されたいんですか?」

「ごめんなさい行動を改めます」

 

ベストアンサーとも取れる謝罪をすると、加賀はため息をついた。

 

「まったく……つい一週間前までは、信頼できる提督でしたのに……何があったらこうなるんですか?」

「神風が可愛過ぎるのが悪い」

「なんで人の所為にしてるんですか。………こうなると、神風の方にも提督との接触を制限してもらう必要がありそうね」

「おい加賀。良い加減にしろよ?やって良いことと悪い事があるぞ」

「何逆ギレしてるんですか?」

 

チッ、分からない奴だな。これだから頭の固い奴は……。テメェみたいな奴が冗談通じなくて、カッとなって殺人を犯すんだよ。

 

「鬼ババァ」

「…………何か言いましたか?」

「何でもないっス」

 

こっわ!目力強過ぎて幻術に掛かるかと思った!

 

「とにかく、次このようなことがあれば、あなたの肛門に矢をねじ込みますからそのつもりで」

「えっ………加賀ってそんな趣味あったの?普通に引くんだけど……」

「あなたの事を異性として見てないという意味です。死んで下さい」

「なら、憲兵に差し出せば良いだろ」

「あなたの指揮に勝る他の提督が存在すればそうしていますが」

「お?今褒めた?」

「褒めましたよ」

 

うわあ………正直に答えられた。照れもせずに答えられたということは、どうでも良い相手に本音を言った感じだ。加賀に少しでも好意があれば、多少照れが入るはずだ。

 

「はいはい……分かりましたよ」

「では、今回の罰を発表します」

「えっ、なんかあるの?」

「あります。歯を食いしばって下さい」

「?」

 

直後、脳天に手刀が降って来て、床に頭からめり込んだ。いくらなんでもやり過ぎじゃないですかね………。まぁいいか。

頭を引き抜き、俺はとりあえず仕事に戻ることにした。執務室に入ると、明石の姿はなく、神風がいた。

 

「神風?どうしたの?結婚したいの?」

「違うわよ。………そ、その、今は……妹、だから」

「……………」

 

あんな目に遭っておいて、まだそれでも妹になろうとするなんて………!

 

「神風ええええええ‼︎」

「ちょっ、待って待っていきなり抱きつくのはムギュッ!」

「おーよしよしよし。お兄ちゃんだぞー。結婚するかー?」

「んーっ!んーっ!」

「はははは!そうかそうか、一緒にお風呂入りたいかあはははは!」

「ンーッ‼︎ンーッ‼︎」

「はははは!冗談だから腹パンはやめてくれ泣きそうあはははは!」

 

良い加減、腹筋がつらいので手を離した。すると、すぐに神風は離れた自分の胸を庇うように抱いて、俺を睨んだ。

 

「何するのよ!ていうかそういうのやめて!」

「悪い悪い。あまりにも神風が可愛いもんだから」

「ッ!す、すぐに可愛いって言わないで!」

「可愛い」

「〜〜〜ッ!お、お兄ちゃんのばかぁ………!」

「…………お前わざとやってんだろ」

「な、何がよ⁉︎」

 

こ、こいつ………!ダメだ、落ち着け。さっき怒られたばかりだろ。とりあえず、膝枕でもしてもらおう。

 

「神風、実は耳クソが半端じゃない気がするんだ」

「な、何よ急に………」

「耳掃除してくれない?」

「……………」

 

少し悩んだ後、小声で「ま、まぁそれくらいなら良いか……」と呟き、神風はソファーに座って膝をポンポンと叩いた。

 

「どうぞ?お兄ちゃん」

「ヒャッホーイ!」

「ひゃっ⁉︎」

 

ソファーに飛び込んで、後頭部や側面ではなく、顔面を神風の太ももの上に置いた。

 

「ちょっ……お、お兄ちゃん⁉︎なんで顔を埋めるの⁉︎耳掃除は⁉︎」

「実は昨日耳掃除したばかりなんだ」

「っ!………もう、膝枕して欲しければ、そう言えば良いのに……。いや、これ膝枕じゃないわよね」

「神風の太もも超良い匂い」

「へ、変態!良い加減にしてよそういうの⁉︎」

「んー……ねぇ?このまま袴脱がし」

「それより先言ったら嫌いになるわよ」

「…………ごめんなさい」

 

明石の入れ知恵の所為で、神風が嫌な技を覚えた。まぁ、普通なら宣言なんかしなくても嫌うんだろうけど。

…………ああ、それにしても心地良いなぁ、顔面太もも枕。ここが俺の墓場だったら良いのに。

 

「………俺もうここに住むわ」

「バカなこと言ってないの。それより、仕事はしたの?私にセクハラして気絶して、加賀さんに怒られてこうして膝枕してるわけだけど」

「仕事?やってないよ?」

「ダメじゃない!仕事もしないで遊んでたら!」

「大丈夫だよー。俺優秀だから二秒で終わるし」

「そういう問題じゃないの!先にやる事やらなきゃダメじゃない」

「気分じゃないしー。大丈夫、今日中に終わらせるから」

「……………」

 

神風は黙り込んでしまった。気になって、チラッと神風を見上げると、頬を染めたまま目を逸らして、覚悟を決めたように言った。

 

「………し、仕事終わったら、その………一緒に、お風呂入って、あげるから…………」

「よーし、久々に本気でやろうか」

「っ⁉︎ い、いつの間に机の上前に………⁉︎」

 

とりあえず、10分で終わらせようか。

 

 

++++

 

 

仕事を5分で終わらせた。

 

「は、早い………!呆れるほど早い………」

 

神風が引いていた。仕方ないよ、君とのお風呂のためだもの。

 

「さて、お風呂‼︎」

「なんていうか、提督って驚く程欲望に忠実ですね……。まぁ、私が言い出した事だし………良い、けど………」

「俺の部屋の風呂で良いよね⁉︎さぁ、お互いの全てを曝け出そうか!」

「わ、分かったから大声出さないで‼︎」

 

行くわよ!と、神風は執務室の出口に向かった。

 

「あ、待った」

「な、なに?」

「みんなに見つかるとまずい。屋根から行こう」

「屋根から⁉︎」

「ほら、おいで」

 

俺は神風の前に背中を向けて座った。神風は頭上に「?」を浮かべる。

 

「あ、あの……何を?」

「何って………おんぶ」

「え、な、なんでですか⁉︎お尻触る気ですか⁉︎」

「それもあるけど、屋根の上なんて女の子には危ないでしょ」

「っ!」

 

何故か顔を赤くする神風。俺は背中に神風がチョコンと乗っかたのを感じ、立ち上がった。ふひひ、オッパイが背中に当たってる。

窓に脚をかけると、一気に跳ね上がり、屋根に手を掛けてグルンっと屋根に上がった。

 

「神風ー、落ちてないかー?」

「だ、大丈夫だよ。お兄ちゃん……」

「そうかー。俺は恋に落ちたぞー」

「恋っ⁉︎」

 

可愛くリアクションする神風を背中に乗せたまま、自室の真上に向かった。自室の窓から侵入すると、神風を下ろした。

 

「さて!脱ぐか!」

「だから堂々と言わないでください!本当に変態なんですから‼︎」

「まぁ、その、なんだ。とにかく、浴室に来い」

「は、はい………」

 

誘うと、神風は後ろからついて来た。浴室に繋がるドアを開け、中に入った。その時点で、俺はタオル一枚になっていた。

 

「き、きゃああああああ⁉︎」

「悲鳴可愛い!どうしたの?」

「な、なんでいきなり裸になってるのよ⁉︎ていうかいつ脱いだのよ⁉︎」

「俺、着替えだけは早いんだよね」

「脱いだだけじゃない!」

 

着替えだよ。心の着物に着替えたんだ。さて、次は神風の番だ。俺はウキウキしながら神風を見た。神風は若干、震えた声で聞いてきた。

 

「………ほ、ほんとに入るの……?」

「え?うん」

「…………わ、わかったわ。……ぬ、脱ぐ………脱ぐんだから……」

 

涙目になりながら、真っ赤な顔でつぶやく神風。

…………なんか流石に申し訳なくなって来たな。ていうか、人としてこれは流石にどうなんだろう。うん、断ろう。

 

「神風、いいよ別に」

「ふえっ⁉︎」

「無理しなくていいよ。神風だって嫌だろ?」

「でも……約束したから………」

「そんなもん『今すぐ入る』とは言ってない。別にいつでも良いから。今は嫌だろ?」

「いつでも嫌なんだけど………」

 

さて、寒くなって来たし、服着るか……。いや、寒くはないな。神風の前で裸になってんのある意味で興奮して来たわ。

そんな事を考えてると、神風の両手が震えたまま和服の襟に掛けられた。

 

「? 神風?」

「や、約束したもの!約束は守るわ!」

「お、おいおい!」

 

マジかよ!大体、お前に脱がれたら俺、我慢しきれるか分かんねーぞ⁉︎いや、そこは流石に死んでも我慢するけど………‼︎

 

「とにかく、入るわよ!」

「あ、ああ……わかっ」

「そのためには、服を脱がなきゃね」

「あ、あわっあわわわ………」

「? 司令官?」

 

俺の視線の先にいるのは、神風ではない。神風の後ろで仁王立ちしている加賀だった。

 

「………バスルームで裸で神風と何を始めるつもりですか?提督」

「あ、あわわわわ………‼︎」

「か、加賀さん⁉︎」

「な、何故、ここが………‼︎」

「屋上に彩雲を配置して正解だったみたいね」

 

こ、このクソ女ァ………‼︎けど、これは弁解のしようが………‼︎

 

「さて、では肛門に矢を捩じ込むから。覚悟しなさいよ」

「ま、待て待て待て!今回の事は神風の方から………‼︎」

「遺言は死んでからになさい」

「いやそれ遺せてな……⁉︎」

 

この後、なんとか神風の説得で助かったけど、翌日から加賀の視線は虫を見る目になっていた。

 

 



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