艦シーメールの鈴谷になってとある鎮守府に着任した少年の話 (ゔぁいらす)
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艦シーメール鈴谷着任ス!(前編)

 俺は鈴木鉄矢(スズキテツヤ)

男でも男性機能を持ったまま艦娘になれる技術が政府から公表され、なんの取り柄もなかった俺に適性がある事がわかり、誇れる特技も将来の夢も無かった俺は艦娘になる事を決意し志願した。

そんな事があって俺は麻酔をかけられ今艦娘になる手術を受けている最中なのだ。

そして

「終わったわ。気分はどう?」

そんな声が俺の意識を暗闇から引きずり上げる。

「はい・・・・大丈夫です。」

俺はその声にそう返した。

手術を受ける前から投薬を始められていた俺は薬のせいか日に日に声も高くなり、身体付きも少しづつ丸みを帯びて来てはいたが、自分の発した声は最早以前の自分の物ではなく完全に女性の物になっている。

それにその声はどことなく今俺に話しかけている声に似ている気がする。

「そう。最終調整は成功みたいね。これであなたは今日から私達艦娘の仲間入り!おめでとう鈴谷」

その声はそう言った。鈴谷。そうか。それが今日からの俺の名前。今日から俺は鈴谷という艦娘なんだ。

初めて呼ばれたその名前だったが不思議と違和感はなかった。

しかしまだその名前を自分の物だと完全に認識するまでには少し時間が必要だろう。

俺はまぶたを開けたその先には俺に話しかけた声の主、そして病室の天井が見えた。

「色々ありがとうございました夕張さん。」

彼女は艦娘になるまで俺の事をサポートしてくれた。そしてサポートしてくれた人はもう一人。居たのだが彼女の姿は見当たらない。

「あの・・・夕張さん。明石さんは?」

俺は彼女にそう尋ねた。

「ああ明石?明石なら昨日から一晩中君の最終調整手術の準備とかで寝てなかったから寝ているわ。それで私が君の看病してたって訳」

「そうですか・・・色々お世話になったので一言お礼が言いたかったんですけど」

「別に今じゃなくたって良いじゃない。これから私達同じ鎮守府で一緒にやっていく仲間なんだから!そうだ。君は私と明石が発案した適合手術で艦娘になった初めての艦娘なの。これから身体にどんな変化があるか逐一レポートを出して欲しいんだけど良いかしら?それと・・・まだ手術が終わってそれほど時間も経ってないんだからもう少しお休みしてて。その間に君の制服とか準備しておくから。」

そう言って夕張さんは出て行ってしまった。

「あっ・・・はい。それじゃあお言葉に甘えて。おやすみなさい」

俺はそう言って再びまぶたを閉じた。

 

それからまたしばらくすると

「鈴谷・・・起きてください!」

という声に起こされる。まだ余り鈴谷という言葉が自分を示しているものだとは認識しきれていない。

「んっ・・・あっ・・・明石さん。」

その声の主は夕張さんと共に俺をサポートしてくれた明石さんだった。

「おはよう鈴谷!どうですか身体の方は?痛い所とか無いですか?」

明石さんはそう言って俺を舐め回すように見つめた。

「えっ・・・ああはい。今の所は特に・・・でも少し胸にまだ違和感があるかなってくらいで・・・」

俺がそう言うと

「胸も自然に大きくなってくれて良かったですね。でも大丈夫ですよ。すぐに慣れます。そうだ!夕張が色々準備してくれてるんです。立てますか?」

そう言って明石さんは俺に手を差し伸べた。

「はい。ありがとうございます」

俺は明石さんの手を取りベッドを降りる。まだ少し足下がおぼつかないが明石さんに手を引かれ俺は別室へと通された。

「鈴谷!待ってたわ。あなたの制服とか一式揃えておいたわよ」

その部屋には夕張さんが居て、なにやら制服の様な物を持っている。

もしかしてアレを着るのか・・・?

「えーっと・・・これは?」

俺は恐る恐る尋ねる

「今日からあなたの着る制服に決まってるじゃない」

夕張さんはそう答える

今日からこんな服を着て生活しなきゃいけないのか!?

「だ・・・だってそれ・・・・・女物で・・・」

「当たり前じゃない。あなたは今日から艦娘なんだから!ほら。サイズは多分これで合ってるはずだから着てみてちょうだい」

夕張さんは手に持っていた服を俺に手渡してきた。

「あっ・・・ありがとうございます。」

俺はそれを手に取った。

「それじゃあ着替えてみてくださいよ!」

明石さんが俺にそう言う

「えっ!?ちょっと待ってください、俺・・・一応男なんですよ!?そんな2人の目の前で着替えろだなんて・・・」

俺はもう身体付きや声見た目はどれをとっても女性と寸分違わぬ身体にはなっていたもののいまだにそれを否定するかのように男性器が股のしたからぶら下がっている。これが今の俺の唯一の拠り所と言っても良い。しかしそれは本来艦娘に有ってはならないものだ。俺はそんな物を果たしてこの2人の前に晒していいものなのかと躊躇ってしまう。

「大丈夫大丈夫。私達気にしないから!あっ。それとこれ、下着ね。付け方わからなかったら教えてあげるから着替えてみて。」

夕張さんはそんな俺に追い打ちをかけるかのように女性ものの下着を手渡す。既に最終調整を受ける以前から胸は膨らみ始めていて、スポーツブラ的な物は既に着けてはいたのだが、こう言ったフリルのついたパンツやブラジャーを身につけるのはこれが初めての事なのでなんというか緊張してしまう。しかしこのままでは埒が明かない。

「わっ・・・わかりましたよ。でもあんまり見ないでくださいね!!」

やはり人前で、それに異性の前で女の子の服を着ると言うのは今までに経験した事が無かったからなのかとても恥ずかしい。俺は着ていた病衣を脱ぎ捨て、まずはパンツに足を通した。そのパンツは男物に比べぴっちりと股にフィットするがどうしても異様な膨らみが出来てしまう。

「どう?女性ものの下着を履いた感想は?サイズは大丈夫だった?」

夕張さんはそう聞いてくる。

「サイズは大丈夫なんですけどあの・・・何より恥ずかしいです・・・それにちょっと股間が変な感じで・・・」

俺は顔を真っ赤にしてそう応える。

「良かったぁサイズは明石の見立てた通りみたいね。あと股間の違和感はそのうち慣れるわ!大丈夫大丈夫」

夕張さんは俺の方をとんとんと叩きそう言った。そして俺は次にブラジャーを着け始めた。スポーツブラはシャツの要領で手を通せば良いだけだったのだがホックがしっかり止まらず苦戦してしまう。何やってんだろ・・・俺

俺はそんな事を思いながらとりあえずブラジャーを着けた。なんだか男としての大事な何かを失った様な気がした。

それを見た夕張さんがこちらに歩いて来て

「あっ、そんな付け方じゃおっぱいの形悪くなっちゃうわよ」

後ろから俺の胸を掴んできた。

「うひゃぁ!ななな何するんですか!!!」

俺の胸には今までに感じた事の無い感覚が走り、俺は情けない声を出してしまう。

胸が膨らんだせいで少し敏感になっているのか!?

「驚かせちゃった?ごめんなさい。私がブラの付け方教えてあげるからちょっとくすぐったいかもしれないけど我慢しててね?」

夕張さんはそう言うと慣れた手つきで俺の胸をブラジャーの中に収めていった。

「はい。これでおしまい!どう?何も着けてない時よりちょっと大きく見えるでしょ?」

俺は鏡で自分の胸をまじまじと見つめる。俺・・・男なのにこんな谷間まで作れるくらい胸がデカくなってしまったという現実を突きつけられ情けなさに苛まれる。そんな事を知ってか知らずか

「それにしても鈴谷もう私よりおっぱいおっきくなって羨ましいわ」

夕張さんはそう言って俺の胸を揉み始めた。

再びくすぐったいんだか気持ちが悪いんだかよくわからない感覚が俺を襲い

「うぁっ!?ちょっ・・・ひゃめっ・・・」

また情けない声が出てしまう。

それからしばらく夕張さんは胸を揉んだ後

「うん!感度も良好みたいね!形も柔らかさも問題無し!!」

夕張さんは親指を立てた。

「もう!そんなの急に調べないでくださいよ!」

俺は自分の胸を押さえてそう言った。

「ごめんなさい。綺麗だったからつい・・・」

夕張さんは頭を掻いて誤摩化した。

「それじゃあ次は制服ですね!」

明石さんが催促するように言った。

俺はあまり気は進まなかったがその制服に袖を通す。

そして鏡には制服を着た緑髪の少女が立っている。

「これが・・・俺・・・」

今まで自分がどんどん男らしくなくなって女らしさが増して行き自分が自分でなくなるようで怖くてあまり鏡は見ないようにしておりこうまじまじと久しぶりに鏡を見ると、それが自分だとわかるまでに数秒の時間を要した。そして完全に自分は以前の自分ではなくなってしまったんだと寂しさを覚えた。

「よし!制服のサイズもバッチリですね!似合ってますよ鈴谷!」

後ろで見ていた明石さんがそう言った。

「ええ・・・はい。ありがとうございます。」

俺は頭を下げる

「それじゃあ準備もできた事だし今から提督に挨拶しにいきましょっか。」

夕張さんはそう言った。

「ええ!?夕張さん、もう行かなきゃいけないんですか?俺・・・まだ心の準備が・・・それにこれ・・・股がスースーして・・・・」

俺は心の準備ができていなかったので少し緊張してしまう。それにスカートと言う物にはまだ慣れない。手術を受ける前から慣れておいた方が良いとスカート付きの服なんかを着せられた事は何度かあったがやはり履き慣れておらず、抵抗もあるので落ち着かない。

すると夕張さんがすこし真面目そうな顔をして

「鈴谷、言い忘れてたけどこの鎮守府にはもちろん女の子の艦娘も沢山居るわ。そんな娘達にあなたが男だってバレたらお互いに気まずいでしょ?だからちゃんと女の子として振る舞うようにね!大丈夫!スカートも最初は変な感じかもしれないけどすぐに慣れるから!!それにもう私達仲間なんだから夕張さんなんて水臭い呼び方しないで呼び捨てで呼んでよ。ね?」

と言った。

「あっ・・・はいわかりまし・・・わかったわ。夕張さ・・・・夕張」

俺はたどたどしい女言葉を使い返事をした。

「よろしい。それじゃあ私が一緒に挨拶しにいってあげる!明石はまだ工廠のお仕事残ってるんでしょ。もう私に任せてくれればいいからそっち行ってて」

夕張は明石さんにそう一言言うと

「はーい。それじゃあ夕張後はよろしくね!あっ!そうだ。鈴谷、これ差し上げます。着任記念・・・と言ったらちょっとささやかなんですけど余ってた鋼材で髪留め作ったんです。きっと似合うと思いますよ。それではまた!何かあったら相談乗ってあげますから工廠に来てくださいね!それじゃあ頑張って!」

そう言って明石さんは俺に髪留めを手渡して部屋を後にした。

「あら。可愛い髪留めじゃない。私が付けてあげる」

夕張は髪留めを俺の髪に着けてくれた。

「うん。流石明石が作っただけあって似合ってるわ!」

夕張はそう言って俺の髪を撫でた。

「あっ・・・ありがとう・・・」

「いいのいいの!それじゃあ行きましょうか」

夕張は俺の手を引き提督が居る執務室へと案内してくれた。

そして提督への挨拶が終わり

「はぁ・・・・俺の挨拶どうでした?変な所なかったですか?」

俺は夕張に聞いた

「だーかーらーもっと女の子らしくだって!挨拶は問題無かったからもっと自信もって!!」

夕張はそう言って俺の頭をこつんと叩いた。でも自分の事を私とかアタシと言うのはどこか抵抗がある。それならばと

「すっ・・・鈴谷の喋り方・・・あんな感じで良かったの・・・かな?」

俺は自分の名前を一人称にする事にして、またたどたどしく夕張に聞いた。

「ええ。まだちょっと危なっかしい所もあるけどこれから慣れていきましょ!次は鈴谷がこれから住む部屋に案内するわ。こっちよ」

そう言って夕張は俺の手を引き部屋の前まで連れて来てくれた。

「はい。この部屋が今日からあなたの暮らす部屋!私と明石はその向かい一つ左の部屋に居るから困った時はいつでも相談に乗るわ!それにもし身体に変わった事があったらすぐに教えてね!しっかり私と明石がメンテナンスしてあげるから!それじゃあ今日は色々疲れたでしょうし部屋でゆっくり休んでたら?それじゃあまたね。」

「はい・・・じゃなかったうん!鈴谷今日はゆっくり休むよ。夕張、今日は色々ありがとう。これからもよろしくね!」

俺は夕張に頭を下げた

「ええ。こちらこそ改めてよろしくね鈴谷。それじゃあごゆっくり」

俺が部屋に入るのを見届けて夕張は何処かへ行ってしまった。それを見届けた俺はベッドに倒れ込み

「あ”ああぁああああああ女の子の振りするとか必要以上に疲れたぁぁぁぁ」

と一人ぼやいた。そして落ち着かなくなり部屋を見渡すと

「あれ?あっちにもベッドが有る・・・なんでこの部屋ベッド2つもあるんだろ・・・?誰か同室の娘とか居るのかな?嫌だなぁ俺ずっと女の子の振りしなきゃいけないじゃん・・・」

俺はそう不満を漏らしていた。それからしばらくベッドでゴロゴロとしているとコンコンとドアを叩く音がするので

「はーい。カギなら空いてるよ〜」

と俺は少し声を高めにして返事をする。どうせ夕張か明石さんだろう。そう思った刹那

「失礼致します」

という声と共にドアが開かれポニーテールの少女が部屋に入って来た。なんて可憐で可愛らしい娘なんだろう・・・どことなく気品すらも感じる。ってそんな事考えてる場合じゃない!

「だっ・・・・誰!?」

俺は突然の来客に慌てふためいてしまうすると

「あらあら。元気の良い人だこと。ごきげんよう、わたくしは最上型重巡、熊野ですわ。あなたがルームメイトの鈴谷さん・・・ですの?」

熊野と名乗る少女はそう言って俺を見つめる。何か気の効いた返しをしなければ・・・・

「えっ!?ええはい!そうだよ!鈴谷だよ!!よろしくねー!!ってええ!?ルームメイト?今ルームメイトって言った!?」

俺は彼女の発した言葉を聞き返す。

「うふふ・・・本当に変わった方だこと。そうですわ。提督にこちらの部屋にいる方とルームメイトになるからと言われましたの。鈴谷さん、それでは今日からよろしくお願いしますわ」

熊野は少し笑みを浮かべた後深々と頭を下げた。

「うっ・・・うん・・・・・」

こんな上品そうな娘と同じ部屋で暮らすだなんて・・・・俺は男である事を隠し通す事が出来るのだろうか・・・・そんな不安感が俺を包んでいた。



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艦シーメール鈴谷着任ス!(後編)

 熊野が部屋にやって来た事によって俺の平穏は完全に破壊された。部屋の中では女の子の振りなんかしなくていいと思ってたのにもうこんなの気の休まる所が無いじゃないか!!

ともかくこのままだと気まずい・・・・なんとかして会話をしなくては・・・ところで女の子ってこういう時どんな話をするんだろうか?俺がそんな事を考えていると

「あのー・・・・よろしいかしら?」

と熊野が俺に話しかけてくる

「はいぃっ!何か鈴谷にご用!?」

俺はそうおどおどしながら返事をする。もしかして男だってバレてる!?いやいやそんなはずは・・・・

「ふふっ!そんなびくびくしないでくださいな。わたくし今まで同年代の方とお話する機会があまりありませんでしたの。なので鈴谷さん・・・もし宜しければわたくしとお友達になって頂けませんか・・・・?」

彼女の口から放たれた言葉は予想外の物だった。この年齢まで同年代の子と話した事があまり無い?今時そんな娘居るんだなぁ・・・・それにしても気の毒だ。俺は少し彼女を可哀想に思えた。折角の良い機会だしあちらから話しかけて来てくれた上に距離を縮めようとしてくれるとは願ったり叶ったりじゃないか!何より拒否する理由も無い。

「うん。いいよ。熊野・・・さん」

俺はそう頷いた。すると

「本当ですの!?わたくし嬉しいですわ!!」

熊野はそう言って俺の両手を取り俺の顔を見つめる。

「あっ・・・うん・・・ちょっ・・・・近いよ熊野さん・・・」

俺は異性に手を握られ顔が約5cm程前の距離にあるこんな状態で早速ボロが出そうになってしまう。

「あら失礼しました。わたくし初めてお友達ができて嬉しくて・・・でもお友達というのはさん付けでお互いを呼び合わない物なのでしょう?わたくしの事はどうぞ熊野とよんでくださいな!!」

熊野は嬉しそうにそう言った。

「そ・・・そうだよね・・・熊野」

俺はそう言った

「ひゃぁ!初めてお友達に呼び捨てて頂けましたわ!!わたくし本当に嬉しいです!!」

熊野は再び俺の両手を握りしめ顔を俺に近づける。

「だっ・・・だから熊野・・・近いよ・・・・」

俺は恥ずかしくなり離れようとするが

「あら鈴谷?顔が赤いですわよ?熱でもあるんじゃなくて?」

そう言って熊野は俺の額に額を当てた。

「!*※□◇∠#△!!!!!!!」

俺は声にならない声を出してしまった。

「あらあら少しお熱があるようですわ。お風邪を引いているの?」

熊野は心配そうに俺を見つめるが俺はそんな事など関係無しに鼻血を噴出させてしまう。

「鈴谷!?どうしましたの!?鈴谷?鈴谷ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

俺は薄れ行く意識の中必死に俺の名前を呼ぶ熊野の声が頭に響いていた。

結局その日はそのまま寝てしまっていた様で早速初日から大失態を犯してしまった。これから先が思いやられるよ全く・・・

 

・・・・・・

「なんて事があったんだ」

俺は次の日早速夕張や明石さんに話を聞いてもらうため工廠へ来ていた

「鈴谷ったらおでこくっつけられただけで鼻血出しちゃうなんてウブなんだから」

夕張はそう言って笑った。

「そんな。からかわないでよ!!」

俺はそう言った。

「まあでも最初はみんなそんなもんですよ?目のやり場とか困るんですよねぇ。でもこれも慣れですよ。はいコーヒー」

明石さんがコーヒーを淹れてくれた。

「あっ・・ありがとうございます。」

「もう、私にも夕張と同じでそんな気を使ってくれなくていいですから。私の事も呼び捨てで良いですよ。」

明石さんがそう言った

「そう・・・ですか。それじゃあ明・・・石」

俺はぎこちなく彼女の名前を呼ぶ。

「はいよく出来ました鈴谷」

明石はそう言って俺の頭をなでた。

「もう!子供扱いしないでくださいよ!!」

俺は少し怒る。しかし少し引っかかる所がある。前からすぐ慣れるとか目のやり場に困る・・・とかあたかも自信が経験したような口ぶりだ。思い切って聞いてみる事にしよう。

「あの・・・・明石?」

「ん?何ですか鈴谷」

「明石さっきから目のやり場に困るとかすぐ慣れるって言ってたけど鈴谷以外に男の艦娘からの相談とかって受けてたの?」

そう明石に尋ねると

「いえ。鈴谷が初めてですよ」

明石は首を横に振った。

「じゃあなんでそんなわかったような事を?」

俺は更に突っ込んだ質問をする。

「それはねー」

明石はそう言って俺の顔を見つめる。その時

「私達も鈴谷とおんなじだから!!」

夕張が突然声を上げた

「あ〜夕張ったら!私が言おうと思ってたのに!!」

「えー良いじゃない明石〜」

二人はきゃっきゃウフフと俺をそっちのけで話し始めた。一体どういうことなんだろう・・・・

「あの・・・鈴谷と同じってどういう・・・・」

「だから〜私も夕張も元は男の子だったって事!」

明石はそう言った。

「えっ!?ええええええええええええ!!!!」

俺は驚きの声を上げる

「そんな驚かなくても良いじゃない。私達高校の頃からのクラスメイトでお互い機械弄りが好きで運がいいのか悪いのか2人一緒に鎮守府からスカウトが来てね。ほらこれ昔の写真」

夕張がそう言いながら手帳に挟まっていた男性が2人写っている写真を見せて来た。

「あー懐かしいわねこの写真・・・こっちが私でこっちが夕張ね」

明石はそう言って写真を指差した。

「はっ・・・ははは・・・・・」

俺の口から乾いた笑いが出てしまう。

「だから。鈴谷の苦労はわかるなんて偉そうな事は言えないですけどわからない事も無いので困った事が有ったらいつでも相談に乗りますよ!」

「ええ!私もいつでもOKなんだから」

明石と夕張はそう言って笑った。しかし自分が現に艦娘になっているのだから少なからず自分と同じ境遇の艦娘は居るとは思っていたのでそこまでショックだったと言う事ではなかった。なので早速気を取り直して相談をしてみる事にした。

「それじゃあ相談なんだけど・・・」

「はい。何何?私と明石に答えられる事ならなーんでも言ってね!」

夕張は胸をポンと叩いた。

「女の子と同室ってどうすれば良いの・・・?ほら。ボロが出ないか心配じゃん?」

俺がそう質問すると二人は首をかしげ

「うーん・・・私は来たときから夕張と同室だったので・・・・」

なんだよ!!早速役に立たないじゃないか!!

「でっ、でもやっぱり慣れよ慣れ!!デンと構える事が大切だわ。あんまり恥ずかしそうにしてると逆に怪しいし私達も必死で努力したのよ!?ひとまずもっとお話する所から始めたらどうかしら?私もそうしたら女の子のお友達が一杯出来たわよ?さらにそうなったらバレちゃいけないって尚更思うようになるしボロも自然と出てこなくなるから。」

夕張が明石のフォローに入った。

「うーん・・・そっかぁ・・・やってみる。ありがとう。早速熊野と話してみるよ!」

俺は少し自信なさげに返事をする。

「うん!よろしい。最初はみんなそんなモンよ。もし進展が有ったらまた私達に教えてね。いつでも相談乗るから!!」

夕張はそう言った。経験者は語ると言った所か。少しは不安感が薄れたような気がした。

そして俺は2人にお礼を言って工廠を後にし、部屋へと戻ろうとすると

「あっ、そうだ忘れてたわ!はいこれ」

夕張が思い出した様に紙袋を手渡して来た。

「なに・・・?これ・・・?」

俺は袋の中身を確認してみるとフリルの付いた可愛らしい服が入っている

「あなたの寝巻きよ。昨日渡し忘れてて届けにいったんだけどあなた制服のまま寝ちゃってたみたいで起こすのも悪いかなーって思って渡しそびれてたの。今日からはこれを来て寝てね。ほかのお洋服はまだ届いてないんだけどジャージとかも入ってるからそっちも使ってちょうだい」

こんな可愛らしい服で寝なきゃいけないのか・・・少し落ち着かない様な気もしたが制服のまま寝たり下着で寝たりするよりはマシか・・・でも当分はジャージで寝る事にしようかな・・・

「あ・・・ありがとう夕張。それじゃあ鈴谷行くね」

俺は二人に別れを告げ、部屋に戻った。

「熊野ーただいまー」

しかし返事が無い。あれ・・・?どこか行ったのかな?

俺はあたりの様子をうかがうとシャワールームからシャワーのながれる音がする。シャワーを浴びてるのか。

結構早い時間にシャワー浴びるんだな熊野。

俺は熊野がシャワーを浴びている所を想像してしまう。

「あー何やってんだ俺・・・じゃなかった鈴谷!!これ以上熊野と気まずくなったらどうすんの!?」

俺はそう独り言を言った。それから少ししてシャワールームの戸が開く音がする。おっ、もう上がったのか。それじゃあ何を話そうかなぁ・・・そんな事を考えていると・・・

「私とした事が・・・・洗顔を鞄に入れっぱなしでしたわ・・・・」

裸の熊野がシャワールームから出てくる

「ちょっ!?くっ熊野!?」

俺は顔を手で覆った。

「ひゃぁ!?鈴谷!?帰ってましたの!?」

熊野も俺に気付き驚きの声を上げた。

「ごっ・・・ごめん!!鈴谷何も見て無いから!!!」

俺はそう言った。

「ほんとにおかしな方・・・別に女の子同士なのですから良いではありませんか。お父様にあまり他人に裸は見せる物ではないと言われていますが鈴谷はお友達ですから別に恥ずかしい事はないですわ!」

熊野は笑った。流石にこのまま顔を覆ったままだと逆に怪しまれる。俺は恐る恐る顔から手を話す。目前には一糸まとわぬ熊野の姿。胸は今の俺よりも小さくぺったんこ・・・・それに・・・・ん?アレは・・・・!?熊野の股下には見覚えのある物がぶら下がっている。

「くっ・・・熊野!?それ・・・・・」

「はい?なんですか鈴谷。わたくしシャワーに戻りたいのですが・・・・」

それを見られた熊野は一切動じなかった。普通男だとバレれば少なくとも動揺する筈だ。

俺がもし熊野の立場ならそうなっている。

「熊野"も"男だったの!?」

俺は単刀直入に聞いた。

「鈴谷?何を言ってますの?」

熊野はそうすっとぼける。

しかし熊野も男だったとは。そう言う事なら先に言ってくれればこっちも無理に気を使う事も無かったのに・・・でも俺が男だっていってないんだから当然か。このままお互いに男である事を隠すくらいなら俺も熊野に男だって伝えておこう。

そっちの方がお互いに楽になれる筈だ。

「いや何をって・・・熊野男の子だったの?実を言うと・・・・」

俺がそう言いかけた瞬間

「おかしな事言うのね鈴谷。わたくしはれっきとした女ですわよ?」

ん?なにかがおかしい。どう考えても彼女の股にぶらさがっているアレは男の象徴だ。

それに熊野が噓を付いている様にも男である事を誤摩化して足掻いている様にも見えない。

寧ろ俺の発した言葉こそが間違いだと言わんばかりに熊野は首をかしげている。

「熊野・・・女の子にはそんなオチンチンなんて生えてないよ?女の子ならなんでそれが生えてる訳?」

俺はそうさらに踏み込んだ質問をする。すると

「ああこれですの?鈴谷何も知らないんですのね。これは女の人にも生えていて、大人になったら縮んでなくなりますのよ?」

熊野は得意気に言った。

んん?熊野は何を言っているんだ?

彼女の表情には一切の迷いも無くそれこそが真実であるかのようだ。

「えーっとその・・・それはどういう・・・?」

俺は訳がわからなくなり熊野に聞き返す。

「鈴谷あなた本当に知らないんですの?これはお小水をする所で女性は大きくなるに連れてオタマジャクシの尾の様に無くなって行くんですのよ?お父様がそう言っていましたの!」

熊野の親父さんは一体どんな教育をして来たんだ!?もうこれは事実を打ち明けるしか無い!!

「熊野!!そんなのウソだよ!ホラ見て!!鈴谷にも生えてるの!!これは鈴谷が女の子だからとかじゃなくて鈴谷・・・実はもとは普通の男の子だったからなの!!熊野の言ってる事は間違ってるよ!!」

俺はそう言ってパンツをずらしスカートをたくし上げた。そして部屋は静寂に包まれたが

「ふふっ♪」

熊野の笑い声によってその静寂はかき消される。なんで熊野は笑ってるんだ?こんな・・・ルームメイトが実は男だなんて聞いたら驚くだろ?実際俺がいまそうなんだけど。

「鈴谷・・・あなたが男だなんて面白い事を言うのね。そんな冗談に騙されるわたくしじゃありませんわよ!どう見ても鈴谷は女の子じゃありませんこと?大丈夫ですわ。少しわたくしのより大きくて本当に無くなるのかどうか心配かもしれませんがきっと無くなりますから。そんな心配しなくて良いですわよ鈴谷。くしゅん!あらいやですわ。湯冷めしてしまうのでわたくしはシャワーを浴び直して来るわね。」

熊野はそう言ってシャワールームへ向かった。いやまあ・・・ココ以外はそんなもんなんだけど・・・・駄目だ。熊野は完全に自分の事を女だと思い込んでいる。いや話を聞く限り父親にそう"育てられた"ようだ。そんな十数年そんな歪んだ常識の中で彼女は生活して来たと言うのか?そんな彼女に俺は何と言ってやれば良かったのか・・・その時の俺にはわからなかった。



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大浴場突入作戦

 俺が鈴谷として鎮守府に着任してしばらく経ち、自分自身女の子が板に付いて来たと思っている。

明石や夕張の言っていた私服も届き、最初は抵抗があったが今はもう少し身なりに気を使う余裕や女物の服に対する抵抗も無くなって来ている。

しかし悩みの種は尽きない。主に自分ではなく熊野に関しての事だ。

「ちょっ!?熊野待って!!なんで服脱いでんの!?」

俺は脱衣所で他の艦娘と楽しそうに話をしながら服を脱ごうとしている熊野を追いかけて呼び止める

「なんでって決まっているじゃない。わたくしこれから古鷹さんたちとお風呂に入るからですわ」

熊野はあっけらかんとしてそう言った。

もうこれで何度目だろうか?いつもこうして俺が熊野を呼び止めている。

「あら鈴谷じゃない、あなたも一緒にお風呂に入らない?」

古鷹は私にも声をかけて来た。相変わらず綺麗な人だ。できることならこんな人と一緒にお風呂に入りたい所だがそれは叶わない。なんたって俺も熊野も男なのだから。それがバレるのだけはなんとしてでも阻止しなければいけない。

「いっいやぁ鈴谷今日はアレの日でさぁ〜熊野もそうなんだよね〜だから止めに来たんだ〜だからごめんね古鷹!お風呂はまた今度!!じゃあね〜」

俺は精一杯の言い訳をして熊野を脱衣所から連れ出す

「なっ何するんですの鈴谷!それにアレの日って何ですの?」

全く・・・こっちの気苦労も知らないで呑気な奴だ。

あれ以来何度熊野は男だと伝えても全く信じてもらえないので俺は頭を抱えていた。少し目を離せば他の艦娘と一緒にお風呂に行こうとしたり服を着替えたりしそうになるし・・・

最初は友人以外には余り裸を見せたくないと言っていた熊野だったが、彼女は予想以上に人当たりが良く、すぐに他の艦娘達と友達になっていった。

なので俺の気苦労は日に日に増していく。

それっきり俺はもう彼女に性別の事を説得する事を半ば諦め、熊野が男だとバレない様に彼女に付きそう事にしているのだ。

そして熊野を連れ部屋に戻ると

「もう鈴谷!!何故わたくしが他の方と入渠ドックに行くのをいつも止めるのです?わたくしも広いお風呂に入りたいですわ!!」

彼女は俺を睨みつける。

「それはずっと言ってるじゃん!熊野は男なんだって!だから・・・」

俺がそう言うと

「もうその話は聞き飽きました!私は女性です!いくら鈴谷と言ってもこれ以上言うなら怒りますわよ!?」

熊野はそう言った。なんで私が怒られないといけないのか?俺はただ熊野の事を思ってやっているだけなのに・・・

「ああそう!なら怒れば!?鈴谷は熊野の為に言ってあげてるんだよ!?それを無視するならもう熊野なんて知らない!!」

俺はついカッとなってそう吐き捨て部屋を飛び出し工廠へ向かう。

「あっ、鈴谷じゃない。どうしたの?また熊野の事で相談?」

そこではいつものように夕張が艤装弄りをしていた。

「ねえ聞いてよ夕張〜熊野がさー」

俺は熊野に対しての愚痴等ををいつもこうして先輩である夕張や明石に聞いてもらっているのだ。

いつも2人は好意的に俺の話を聞いてくれて直接的ではない物の打開策を一緒に考えてくれる。

「って訳でさー・・・・はぁ・・・鈴谷どうすれば良いのかわかんないよ・・・」

私はそうため息をついた

「鈴谷、あなた喋り方自然になって来たわね」

夕張は言った

「えっ、そうかな?」

自覚は無かったがそれだけこの艦娘としての自分に慣れて来たと言う事だろうか。

褒められて少し嬉しい反面なんだか寂しい気分にもなる。

「ええ。最初はたどたどしかったけどもうそれなら大丈夫だと思うわ。私が言うんだもの間違いないわよ!!」

夕張は太鼓判を押してくれた。

「そう・・・ありがと。多分熊野が男だってバレない様に鈴谷も結構気を使ってたからそのせいかも・・・」

俺は苦笑する。

「色々大変ね・・・あっ、そうだ!良い事思いついたわ!」

夕張が手をポンと叩く

「なになに?教えて」

「それはね・・・」

夕張はもったいをつけて俺をじっと見つめた

「それは・・・?」

そして夕張は少し黙り続けた後

「あなたが一緒に大浴場に入ってあげれば良いのよ!」

そう得意げに言った。

大浴場に入った所を他の艦娘に見られたら一巻の終わりだ。今までの苦労も俺の夢も水の泡になってしまう。

「なっ!?なんで!?それに2人であんな広いお風呂入ったら鈴谷たちが男だってお風呂に居る他の子達にバレちゃうじゃん!」

俺はそう夕張を問いつめた。

すると

「もちろん皆がいる中ズカズカと入れなんて言わないわ。ただ熊野は誰かと一緒にあのお風呂に入ってみたいんでしょ?それなら一応男である私と明石も含めた4人で一緒に入れば良いじゃない!そうすれば熊野に女の人の裸を見せる事もないし私達の裸を他の艦娘に見られる事も無いでしょ?」

と夕張は言った。

なるほど・・・それなら熊野も満足してくれるかもしれない・・・

「でもどうやってあのお風呂を貸し切り状態にするの?」

俺はそう夕張に尋ねる

「あーそれはね・・・・私達お風呂のボイラー室のメンテナンスとかもやってるんだけどその間お風呂入れなくなるじゃない?そのメンテナンスが終わった直後にお湯を入れて一番風呂を浴びるの。他の艦娘達はみんなメンテナンス中だと思って入ってこないから明石といつもそうやってあのお風呂を使ってるのよ。こんどのボイラー室のメンテナンスがある時に2人も呼んであげるわ」

夕張は言った。

いつ俺私達の事を気にかけてくれて・・・本当に良い人だな・・・・

可愛いし。でもこの人も俺や熊野と同じで男なんだよなぁ・・・・

でも俺も今はこんな恰好だし・・・これくらい良い・・・よな?

「ゆ・・・夕張・・・・・ありがとう大好きっ!」

俺はは夕張に抱きついた。女の子同士ならこういうスキンシップもする事があるみたいだし別にいいよね?

だって外野からは女の子同士がキャッキャウフフしてる様にしか見えないんだもーん!

「ちょっと鈴谷!?もう・・・しょうがないんだから」

夕張はやれやれと言う感じで笑っていた。

そういえばそのメンテナンスっていつやるんだろう?

「で、その次のメンテナンスっていつなの?」

俺は夕張に尋ねる

「明日よ」

「へっ?」

即答だったので俺は聞き返す

「だから明日だって。明日の25時から2時間くらいかけてやるわ。だから27時くらいになるわねー」

27時・・・つまり午前3時って事?熊野いつも夜の10時には寝ちゃうけど大丈夫かな・・・・

「まあ急だから無理に来なくても良いけどもし良かったら27時くらいに熊野も連れてお風呂に来て」

夕張は言った。

「う・・うん・・・でも熊野いつもその時間寝ちゃってるし・・・」

熊野は流石お嬢様として育てられていたからなのか非常に生活リズムが規則正しい。

いつも朝の6時半に起きては消灯の夜の9時には眠りに就く。

俺は最初の頃は熊野が寝た後電気も消した暗い部屋の中でこっそりテレビにイヤホンを繋いで夜中まで起きていたがいつも熊野が6時半に起こして来るので今は仕方なく熊野に合わせている

「そう。あの子結構生活リズム正しいんだ。まあ一晩くらいの夜更かしなんて事無いわよ!私なんていつも徹夜だし高速修復材を水で薄めた奴こっそり飲んでなんとかやってるんだから!あっ、これ明石にはナイショね」

夕張ウインクした。

「う・・うん。わかった。それじゃあ熊野を誘ってみるよ。ありがとね夕張ちょっと元気でた。それじゃあまた」

俺は夕張にお礼を言って足取りを軽く工廠を後にして自室へ向かった

怒って出て行っちゃったけど熊野また大浴場に行ったりしてないといいけど・・・そんな事を考えていると何処からかストン・・・という音がする

「なんだろ?」

俺は気になってその音のする方へ足を運ぶ。

そこは空母の人たちが良く使っている弓道場だった。

どんな人が弓を射ているのか気になった俺は気になったのでその弓道場を覗いてみる事にする。

そこではサイドテールの凛とした女性が淡々と的を見つめ弓を射っていた。その眼差しは透き通っていて的のその先まで見通している様にも思えた。

「綺麗だ・・・」

気がつくと俺はそう呟いていた。するとその女性がこちらに気付く

「あら?あなた空母ではないわよね?何か用事?」

彼女は私に話しかけてくる

「あっ!!ごめんなさい・・・その・・・ちょっと気になって・・・」

俺は急な事だったので焦りながらもそう返事をした

「気になる?何が気になったの?こんなものを見ていても何も面白くないでしょう?」

彼女は更に聞いてくる

「それは・・・その・・・貴女の弓を射ってる姿がとても綺麗でつい見とれちゃって・・・」

何言ってるんだ俺・・・そんな見とれてたなんて言ったらもっと変に思われるじゃないか!!

すると

「あらそう・・・変わった子ね。私は加賀。貴女は確か・・・」

加賀と名乗った彼女はそう言って首を傾げる

「じゅ・・・重巡洋艦の鈴谷です!最近ここに着任しました。よろしくお願いします!」

俺は頭を下げた。

「そんなかしこまらなくて良いわよ。そういえば最近重巡洋艦娘が2人着任したと提督から伺ったわ。それが貴女なのね。もう1人は?」

そうだ熊野!熊野のところへいかなくっちゃ!

「もう1人は・・・その・・・今部屋に居て・・・」

俺がそう言うと

「そう。まあ別にどうでも良いのだけれど」

加賀さんは興味無さげにそう言った。

結構サバサバしてる人だなぁ・・・

でももの静かでやっぱり綺麗な人だ・・・・

俺は彼女に再び見とれていた。

すると

「私の顔に、何か付いていて?」

加賀さんがそう尋ねて顔を近づけてくる。

ちっ・・・近い・・・!!

「いっ、いえ!なんでも無いです!それじゃあそろそろ邪魔になっちゃいけないので鈴谷はこれで失礼しますね!!お邪魔しました!!」

俺は恥ずかしくなってその場を逃げる様に立ち去った。

「加賀さん・・・か」

綺麗な人だったなぁ・・・またここに立ち寄るのも良いかもしれない。それに弓道を教えてもらえばあの人ともお近付きになれるんじゃ・・・いやいやいや今の俺は鈴谷って女の子なんだからそんな不純な動機で女の人と関わったりする訳にはいかない。

そして部屋に向かって歩いていると

「あら鈴谷じゃない」

古鷹から声をかけられる

「古鷹ちーっす。さっきはごめんねー」

俺はいつもの調子で話をした。

古鷹は良く俺や熊野に話しかけて来てくれるとてもいい子だ。

「いいの。そんな事より鈴谷、生理・・・結構長引いてるみたいだけど大丈夫なの?」

古鷹は心配そうに俺を見つめてくる。

毎回ことあるごとにそれを理由に古鷹の前で裸になる状況を回避しているから当然と言えば当然か。

しかし俺は生理について余り知識が無い。

保健体育の授業をもっと真面目に受けておくべきだったなぁ・・・このまま行けばボロが出てしまうもしれない・・・ここはなんとしても話を合わせなければ・・・

「う・・うん!鈴谷結構長引いちゃう方でさ〜大変だよ〜もう血がどばどば出ちゃってさ〜あはは・・・・」

こんな感じで大丈夫だろう。俺は笑いながら話した。

すると

「そうなの!?本当に大丈夫なの?」

古鷹は泣きそうな顔で俺に詰め寄って来た。

本当に俺の事を心配してくれている事はわかるのだがその善意が今の私には痛い。

「だ・・・大丈夫だよ〜!レバーとかめちゃくちゃたべてるしぃ〜鉄分は足りてるから」

俺はそうおどけてみせる

「そ、そう・・・でも体だけには気をつけてね?そうだ!これ。もし良かったら使ってね」

そう言って古鷹は何かを取り出した。

「タン・・・ポン・・・?」

アルバイトをしていたコンビニの生理用品売り場で見た事はあったが用途は皆目見当もつかない。

「あら?鈴谷知らないの?これ着けたら生理の時でもお風呂入れるのよ?この間買い出しにいったんだけどその時加古の分も買ったんだけど私はナプキン派だからいらねーって言うから余っちゃってて・・・だからもし良かったら使って」

古鷹は笑顔で俺にタンポンを手渡して来た。

「あ、ありがと・・・」

善意で渡された物を突き返す訳にも行かず俺はそう言ってタンポンを受け取った。

「そうだ鈴谷、タンポン知らないんでしょ?もし良かったら付け方教えてあげようか?」

古鷹は言った。

付け方・・・・・・私の頭の中でよからぬ妄想が広がる。付け方・・・これを一体何処に付けるって言うんだ・・・・・まさかこれをああしてあそこに・・・・・そんな・・・・古鷹のアソコ・・・・ムフッ・・・・ああダメだ!男の部分が出てしまう!俺は今すぐにでもOKしたかったがそれにそんな事をしたら俺が男だとバレてしまう。

俺は今の古鷹との関係を壊したくはないので

「あっ・・・いいよ!鈴谷のアレめちゃくちゃグロいからさ〜あんまり他の人に見られたくないんだよね〜だから帰ったらネットで調べるよ〜ありがとね古鷹〜それじゃあ」

俺はまた逃げる様にその場を後にした。

古鷹の下着姿を見れるかもしれないチャンスだったのに惜しい事をしたなぁ・・・いやいやこれでいいんだ・・・これで・・・

それにしても俺の架空のアレがグロいという事になってしまった。

古鷹はそんな子じゃないとは思うけど変なウワサにならないといいな・・・・

俺はそんな事を考えながら部屋に戻った。

部屋では熊野が頭にバスタオルを巻いて部屋着に着替えていた。

「あっ、鈴谷・・・ごめんなさい。わたくし言い過ぎましたわ・・・」

彼女は俺を見るなり謝って来た。もしかして俺の言ってる事を遂に信じてくれたのだろうか?

「鈴谷もキツく言い過ぎてごめんね。熊野・・・受け止めるのは大変だと思うけど鈴谷が一緒に居てあげるから・・・」

俺は熊野に寄り添った。

すると

「あら?何の事ですの?」

彼女は首を傾げる。

「えっ・・・何の事って熊野も鈴谷も男だって事を信用してくれたんじゃないかって思ったんだけど・・・」

もしかしてその事ではないのか?じゃあ一体何の話なんだろう

「まさか!そんな冗談信じる訳ありませんわ。ただ鈴谷は鈴谷なりに私をおもしろがらせようとしてやってくれていたのでしょう?それなのにあんな事を言ってしまった事を謝ったのですわ。それに免じて今日はお部屋のお風呂で我慢して差し上げましたの」

熊野は言った。

なぁんだ・・・そんな事か・・・しかし何処まで強情なんだこの子は・・・

「そ、そっか・・・は・・・ははは・・・」

俺はバカバカしくなって笑った。

そして夕張の言った事を思い出す。

「そうだ熊野、お風呂の事なんだけどね?」

「何ですの?また大浴場には近付くなって言うつもりですの?」

熊野は私を睨みつける。

「ううんその逆」

「と言う事は大浴場に入って良いんですの!?」

熊野は嬉しそうだった。

「でも・・・鈴谷ね、熊野の裸をあんまり大勢の人に見られたくないの・・・だから私と一緒に入って?」

俺はそう提言する

「鈴谷・・・そんなわたくしの事を束縛するだなんて・・・わたくしたち女の子同士ですのよ?」

いや男の子同士なんだけど・・・でもまあそう言う事にしておいた方が良いだろう

「でも鈴谷・・・・熊野のこと他の子に見られるのは嫌なんだ・・・だから・・・お願い!」

俺は熊野に手を合わせた。

「んもう・・・しょうがないですわね鈴谷は・・・・わたくしも・・・・貴女の事嫌いではありませんし・・・?」

熊野は顔を赤くして言った。

よし!これで後は夜中にお風呂に誘うだけだ!

「それでね・・・明日大浴場のメンテナンスが終わった頃にお風呂に入れてもらえる様に夕張にお願いしたんだ。だからその時に一緒に入ろ?」

「ええ!わかりましたわ!わたくし今から楽しみです!!」

熊野は快諾してくれた。良かった・・・上手くいったみたいだ。

 

そして次の日約束の時間になり、俺のスマートフォンに夕張から連絡が入ったので、もう寝てしまっていた熊野を起こすことにした。

「熊野ーお風呂行くよ〜」

俺がそう声をかけると

「んんっ・・・・お風呂ですの・・・・?」

熊野は眠そうな目を擦る。

「うん!お風呂!!熊野がずっと入りたがってた大浴場だよ」

俺がそう言うと

「そうでしたね!わたくし楽しみですわ!!」

熊野は目を大きく開き飛び起きる。

そして用意を済ませ大浴場へ向かうと大浴場には電気が付いているが扉の立て札には整備中と書かれた札がかけられていた。

俺は試しに扉を開いてみるとカギはかかっておらずそのまま中に入る事が出来た。

そして熊野とともに服を脱ぎ、熊野の方を見るともちろん熊野も裸になっていて、そんな熊野の身体はフラットな胸に引き締まったお尻、それに細いけど硬そうな腕・・・そして下腹部にぶら下がる女性である事を否定する男性のシンボル。

お世辞にもその姿は女性には見えない。

でもなんでだろう・・・?少しだけ綺麗だと思えるしこちらも変な気分になってしまうそなんだか眼のやり場に困ってしまう。

すると

「なんですの鈴谷?わたくしの身体をそんなチラチラと見てに変な所でもございまして?」

と熊野は尋ねてくる。

「べっ・・・別になんでも無いよ!!さっ!早くお風呂入ろ!!」

俺は誤摩化す様に熊野を浴室へと誘い、浴室に入るとそこには既に先客が居た。

「あっ、鈴谷!遅かったじゃない」

「待ってましたよ〜」

仕事を終えて一番風呂を優雅に浴びる夕張と明石が私と熊野を迎え入れてくれたのだ。

「ごめんごめん熊野が寝ててさー」

俺は2人にそう言った。

そして熊野は大浴場を眺めて目を輝かせている。

「ここが・・・大浴場ですの・・・・!?凄く広いですわー!!」

熊野はもう大はしゃぎだ。

「こーら熊野、大浴場で走っちゃだめだかんねー」

俺はそう釘を刺しておく

「熊野嬉しそうで良かったわね」

「ホントですよ。」

2人はそう言ってくれた。

「明石も夕張もほんとにありがと!これで熊野も少しの間は満足してくれると思うよ」

俺は2人にお礼を言った。

すると

「それじゃあ私達はお邪魔なのでそろそろお先に失礼しますね」

明石はそう言うと浴槽から出た。

おっぱい大きいなぁ・・・・でも股間には俺と同じ様にアレがぶら下がっている。

「うん!じゃあまた後でお風呂の感想聞かせてね!」

夕張も明石の後を追う様に浴槽から出た。

「熊野ーそれじゃあ私達は先に上がるから鈴谷と裸の付き合い・・・楽しんでね!」

夕張は言った。

そして2人は大浴場から出て行ってしまい俺と熊野の2人っきりになってしまう。

「せっかくなので鈴谷・・・?お背中の洗い合いをしませんこと?」

熊野は言った。

「うん!良いよ!」

俺は熊野と体を洗い合った。そして2人で浴槽に浸かっていると

「ほら!わたくしの言った通りおちんちんは女性皆についているのですわ!今日鈴谷以外でおちんちんの生えている方を2人も見れたのですから私の中でこれは確信に変わりましたの!」

熊野は嬉しそうにそう言った。

ああ・・・明石と夕張の案が寧ろ熊野の思い込みを悪化させる結果になってしまうとは・・・俺の気苦労が絶える事はなさそうだ。

でも熊野がたのしそうだからまあ今日の所は良っか!

俺は熊野の笑顔を見てそう思った。

そして

「鈴谷そろそろ上がりたいんだけど・・・・」

「わかりましたわ鈴谷、わたくしあともう数分程浸かっていたいので先に帰っていてくださります?」

熊野は言った。

流石に熊野を1人にする訳にもいかないし脱衣所で待ってようかな。

いつも入浴を部屋の狭い風呂で済ましていたので久しぶりに足を伸ばして入る風呂は格別だったなぁ・・・・

「はぁ・・・気持ちよかったぁ〜」

俺はそう呟き大浴場を出た。すると何やら人の気配を感じる。

「あら・・・?こんな時間にお風呂に入る物好きの子が私以外にも居たのね・・・」

そこには夕方弓道場で合った加賀さんが立っていた。

「やば・・・・」

俺は一糸まとわぬ姿だ。それに下半身もそのまんまで・・・クソッ!いつも細心の注意を払ってたのに油断した・・・・!!でもなんで?今メンテ中でお風呂入れない筈じゃん・・・俺・・・加賀さんに男だってバレちゃった!?



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バレちゃった!?

 「あら・・・?こんな時間にお風呂に入る物好きな子が私以外にも居たのね・・・」

加賀さんはそう言って俺を見つめくる。

ヤバいって・・・早くなんとかしなきゃ・・・私だけじゃなく熊野まで男だってバレちゃう!

俺はとっさに股間を手で覆う。

しかしそれも時既に遅しで

「あなた・・・男だったのね」

加賀さんがそう言った。

やっぱり見られてた!!どうしよう!!もし皆に言いふらされたら・・・・!

『私達の事ずっと騙してたの・・・?』

『二度と古鷹に関わるんじゃねーぞこの変態野郎が!!』

古鷹と加古の軽蔑の視線が俺の脳裏に真っ先に浮かんだ。だめだ・・・せめて秘密にしてもらわなきゃ・・・・

「あっ・・・あの・・・これは・・・」

俺があたふたしていると

「別に私は気にしないから」

加賀さんはそう言った。

「へっ・・・?気にしないって・・・!?それはどういう・・・」

予想だにしない言葉に俺は呆気にとられ、俺は加賀さんに聞き返す。

「だから別にあなたが男だろうがなんだろうか気にしないと言ったのだけれど。それより私はお風呂に入りたいの。そこを通してくれないかしら?」

しかしまだお風呂には熊野が居る・・・ここは退くわけにはいかない!なんとしてでも一旦ここから加賀さんを遠ざけないと・・・!

俺がそう考えていた瞬間

「鈴谷〜まだ服を着ていなかったんですの?風邪引きますわよ?」

そんな熊野がのんきな声と共に浴室から姿を現す。

なんて最悪なタイミング・・・・・こっちの苦労も知らないで・・・いや、でも幸い熊野はバスタオルをしてる・・・!これなら熊野だけでも誤摩化しが効くかもしれない!!足早にここを立ち去らなきゃ!!

「あら?その子は?」

加賀さんが尋ねてくる

「わたくし熊野と申します。よろしくお願い致しますわ」

熊野は頭を下げた。

「この娘が例のもう一人の娘なのね。私は加賀。よろしく」

加賀さんもそう言って頭を下げる。よかった・・・熊野の事は気付かれてないみたいだ・・・!ここはこのまま流れで!!

「熊野ー!!加賀さんの邪魔しちゃ悪いし早く部屋に戻ろー!!それじゃあ加賀さんお先に失礼しまーす!あははははは・・・・」

俺は急いで服を着替え熊野と共に外へ出ようとすると

「ちょっと鈴谷」

突然加賀さんに呼び止められた。

「はいぃ!!」

振り向くとそこには一糸まとわぬ加賀さんの姿があった。

道着を来ているときから主張していたその豊満なバストは道着から解き放たれても重力に逆らうようなハリをしている。

ってそんな冷静な分析をしている場合じゃない!!

「ちょっ加賀さん!?なんで裸なんですか!?」

俺は顔を手で覆う。

「何言ってるの?今からお風呂に入るんだから当たり前じゃない」

そっか・・・そうだった・・・それにしてもやっぱり綺麗な人だなぁ加賀さん・・・俺がそんな事を思っていると

「あなた・・・・明日空いている時間はあるかしら?少しあなたとお話したい事があるのだけれど」

と加賀さんは言った。話したい事・・・!?もしかして男だってバラさない代わりに何かしらの要求をされるんじゃ・・・そうなると断る訳にもいけないし・・・

「は、はい。」

俺は渋々頷いた

「そう。なら明日、弓道場へ来て。それじゃあおやすみなさい」

加賀さんはそう言うと浴場へと入って行った。

はぁ〜なんとか熊野が男だって事はバレずに済んだみたいだ・・・

でも俺・・・これからどうすれば良いんだろう?

そんな俺の苦労を知ってか知らずか

「鈴谷?何をそんなくたびれた顔をしていますの?」

熊野が声をかけてくる本当に呑気な子だ・・・熊野が自分の事を男だって認めればこんな事しなくて済むのになぁ・・・・

でも何で加賀さんは入ってきたんだろう?メンテナンス中の札がかけてあったはずなのに

「よかったですわ!メンテナンス中の札がかけっぱなしになっていましたので外しておきましたの!!外していなければ加賀さんがお風呂に入れない所でしたわね!良い事しましたわ。それにしても夕張さんと明石さんこれを外し忘れるなんてうっかり屋さんだこと」

熊野は得意げにそう言った。

熊野のせいだったのか・・・・・そう考えるとなんかさっきまでの事がばかばかしくなってきた。

「そうだよね・・・ははは・・・・」

俺は呆れてそう言う事しか出来なかった。

初の大浴場突入はこうして幕を閉じたのであった。

 

その次の日

俺はまた工廠を訪れていた。

「ええー!加賀さんに男だってバレた!?」

夕張は驚きの声を上げた

「しーっ!!声大きいって夕張!!でも別に気にしないって言われて・・・それで話したい事があるから今日弓道場に来いって」

「そうなんだ・・・でもあの人何考えてるかよくわかんないから・・・」

夕張はそう言った。

「夕張は加賀さんとあんまり喋らないの?」

「ええ。あの人あんまり他の人と話さないのよね。それに元々他の鎮守府から転属してきたみたいで他の子と話してる所は見た事無いの。それなのに話したい事があるって鈴谷を呼び出すなんて一体何を考えてるのかしら?まあ他の人にあなたの事を言いふらしたりする人じゃないとは思うんだけど・・・」

夕張は首を傾げた。

「とにかく行くしかないじゃん?今から弓道場行ってくる!」

俺は覚悟を決めて弓道場へと向かう

「終わったら何があったか教えてねー!」

夕張はそう言って俺を見送ってくれた。

その道中また古鷹に出くわす。

「あ〜鈴谷!その後どう?しっかり着けれた?」

着けれた?一体何の事だろう・・・?ああ!あのタンポンとかいうやつの事かな・・・・とりあえず適当に答えておこう。あそこに入れるものなんだからちょっと痛かったりするんだろう・・・うん!きっとそうだ!

「う・・・うん。ちょっと痛かったけどなんとかなったよありがと古鷹!」

「痛かった!?大丈夫?」

古鷹は心配そうに俺を見つめてきた。

だめだ・・・また古鷹を心配させてしまった。なんとかしなきゃ

「う・・・うん!ヘーキヘーキ!今は気持ちいいくらいだよー!」

これで大丈夫・・・だよね?

「気持ち・・・いい?そう・・・それなら良かった。私もあげた甲斐があったわ。またわからない事があったら聞いてね。私が力になれる事なら力になってあげるから」

古鷹はそう言って笑った。すると

「おーい古鷹ー!」

遠くから声が聞こえる

「あっ、加古!どうしたの?」

その声の主は古鷹といつも良く一緒に居る加古だ。

「おお古鷹、探したぜー。おっ、鈴谷じゃん。古鷹から聞いたぜー生理キツいんだって?色々大変だろ?」

これは面倒な事になった。ここでまた変な事を言ったら最悪俺の事バレちゃうかも・・・

「う・・・うん。大変なんだー」

俺はそう話を合わせる

「そうかー。辛いときはいつでも言ってくれよな!アタシも手助け出来る事ならしてやるからさ!!」

加古は笑顔でそう言ってくれた。

かっこいい人だなぁ・・・かっこいい!?俺・・・今なんて!?いや・・・あくまで女の人としてかっこいいなって思っただけで・・・

俺がそんな事を考えていると

「ん?どうした鈴谷?顔赤いぞ?熱でもあるんじゃないか?」

おもむろに加古が俺の額に手を当て顔を近づけてきた。

「ひゃっ・・・・!」

ちっ・・・近い・・・!それにひゃっ・・ってなんだよ!?なんで俺こんな情けない声出してんだ!?

「うーん・・・熱はないみたいだな。でもまだここにきて間もないんだから身体だけは気をつけろよな!」

加古はそう言って俺の頭をぽんぽんと優しく撫でて笑った。

はぁっ・・・加古様・・・・・って何この感情・・・俺・・・もしかして心まで女の子になってきてる!?いや・・・加古は女の子なんだしそんなことは・・・あくまで俺は男として加古をかっこいい女性だって思っただけで・・・

俺は自分にそう言い聞かせる。

「それにしても古鷹酷いよなーアタシいつもナプキンなのに間違えて買ってきちまってさー鈴谷はナプキン派だよな?」

加古はそう聞いてきた。

「えっ!?ええ!?鈴谷・・・まだ着けたばっかりでわかんないかな・・・」

私はやんわりとそう返した。

「んーそうか?あんなモノアソコに入れて生活するなんて考えただけでも気持ち悪りぃよなぁ?」

加古は言った。

「もー出撃とかでおトイレ行けなかったりするしあっちの方が便利なんだってばー!!」

古鷹は加古に言った。

「あーはいはい。その話は前聞いたからさー」

2人は言い合いを始めてしまったので俺はそのどさくさに紛れてその場を立ち去った。

そして弓道場の前にたどり着いた俺は

「とにかく・・・落ち着いて・・・・」

呼吸を整え覚悟を決めた。

「たのもー!!」

そんな勇ましい一言とともに俺は弓道場へと足を踏み入れる。

するとそこでは前に来たときと同じ様に加賀さんが1人で弓を射って居た。

そして加賀さんはこちらに気付いたのか弓を構えるのを止め

「あら、ずいぶんと仰々しい挨拶をするのね」

そう言うと弓を片付け

「まあそこに座って」

弓道場の隅に座布団が置いてあり、そこに俺は通された。俺がそこへ座ると加賀さんは黙って俺の目の前に座り、俺をただじっと見つめてくる。

一体何をされるんだろう・・・・

俺はそんな不安と沈黙を破る様に

「そっ・・それでお話ってなんなんでしょうか・・・?」

と話を切り出した。

すると

「ええ。あなた男なのよね?」

加賀さんはそう尋ねてきた。今更誤摩化しても意味は無いし

「はい・・・・」

俺は正直に頷いた。

すると

「そう。色々大変でしょう?」

加賀さんはそう言った。

「は・・・はい」

あれ?俺もしかして心配されてる?

そして次に加賀さんの口から発された言葉は驚くべき言葉だった。

「実は私も昔はそうだったの」

え?俺はそんな言葉に耳を疑う。

昔は?昨日裸を見たときは良く見て無かったけど確かに加賀さんにアレは生えていなかった。

一体どういう事なのだろうか?俺が呆気にとられていると

「ごめんなさい。いきなり言って驚かせてしまったわね。私も昔は男の子だったの」

私は突然の事に言葉を失った。一体どういうことなのだろう?

「えっ!?それはどういう・・・?」

俺は尋ねる。

「私、最初は戦艦の艦娘になる予定だったの。でも施術が終わった後に戦艦を減らすという方針が打ち出されて急遽私を艦娘にする施術は途中でストップしてしまったの。その時の私はもうただの人でも艦娘でもない中途半端な存在になってしまって・・・もう後戻りも出来なくなって私は懇願したの。戦艦じゃなくても良いからとにかく僕を艦娘にしてくださいって」

加賀さんはそう続けた。

「それで・・・どうなったんですか?」

「その時私にはもう一隻適合する艦娘がいると言われたの。それが空母の加賀。でも既に戦艦になる様に施術され始めていた身体で艦種の変化にはとても負担がかかるし前例も無いから何が起こるかわからないと言われたの。でも私にはもう戻る場所も何も無い。結局私は頷く事しか出来なかったわ。そして目が覚めたら私は晴れてこの身体になっていたの。でもこの身体になって数ヶ月は私の身体を突然激痛が襲ったりもしたわ。後で聞いた所によれば艦種が大幅に変わった事による副作用という事だったのだけれど・・・」

加賀さんはそう言った。そんな事が・・・・でもなんでそれを俺に話してくれたんだろ?

「なんでその話を私に?」

俺は加賀さんに尋ねた。

「それはあなたが男の子だからよ。それにいつも熊野・・・だったかしら?あの子と仲良さそうにしているのを見かけたから・・・私はもう身体は女性だから何も心配する事は無いけれど男の子の身体のままだと色々大変でしょう?それに女の子と同室なんだから尚更・・・だから私が元男としていつでも相談に乗ってあげる。だから困った事があったらいつでもここにいらっしゃい。それが言いたかったの。それに・・・私も話し相手が欲しかったから・・・・」

加賀さんは恥ずかしそうに言った。

よかった。熊野の事は気付かれていない様だ・・・それに冷たそうな人だと思ってたけど結構面倒見の良い人なのかもしれない。

「はい!よろしくお願いします!」

俺はそう笑顔で返す。

すると加賀さんは静かに微笑んだ。

その時加賀さんの笑っている所を初めて見たかもしれない・・・こんな顔するんだ・・・正に聖母と言った様な微笑みだった。それにしても元は男だった事なんか微塵も感じさせないなぁ・・・

それから俺は加賀さんと好きだったアイドルの話や中学生の頃の性の目覚めの話なんかのたわいもない会話をして、そんな話も一段落し俺は自分の部屋に戻る事にした。

「それじゃあそろそろ帰りますね。練習をあんまりお邪魔しても悪いですし熊野を放っておくと何しでかすか分からないですから」

俺がそう言うと

「そう、残念。また・・・来てくれる?」

加賀さんは少し残念そうに尋ねてくる。

ここまで好意的にされたのだから断る理由も無い。

「はい!わかりました!また来ます」

俺がそう言うと

「そう・・・それじゃあまた・・・来てね・・・あっ、私が元男だって事は2人だけど秘密にしておいてくれると嬉しいわ」

加賀さんはまた微笑んでそう言った。

加賀さんも俺の事黙っていてくれるんだから俺もそれくらいしなくっちゃ・・・そう心に決めた。でも夕張になんて言おう・・・・?

そんな事を考えながら弓道場を後にして俺は部屋へと戻るや否や突然熊野に詰め寄られる

「すーずーやー!!!」

「どっ、どうしたの熊野!?」

一体何をしたというのか?急な事で何故熊野が怒っているのか分からない。

「古鷹さんに聞きましたわ!たん・・・ぽん・・・?という物を貰ったらしいですわね!!それがあれば古鷹さん達とお風呂に入れると聞きましたの!!そんなものを独り占めするなんてズルいですわ!!それをわたくしにも渡してくださりませんこと!?ところでせいり・・・?とは一体なんなんですの!?おーしーえーなーさーいー!!!」

熊野はそう言って俺の肩を揺さぶった。

なんて説明すれば良いんだろう・・・・

「あーえっとそれはー・・・」

まだまだ俺の悩みの種は尽きそうにない。でも加賀さんに励まされてまだなんとかやっていけそうな気もしてきた。

「早く教えなさーい!!」

「あーそれはね・・・」

俺はいつもの様に適当な噓を付いて熊野を軽くあしらった。

 

 

それから熊野に悩まされつつも出撃任務や演習等をこなしていき、艦娘としての生活にも慣れてきてしばらくした頃、突然熊野と俺は提督の元に呼び出された。

「改装・・・ですの?」

提督の言う事には俺と熊野は練度が上がったので改装をする計画が出ているから工廠へ向かう様にとの事だった。

改装・・・一体これ以上何をされると言うのだろうか?でも改装するのも夕張と明石みたいだしそこは安心かな・・・

そんな楽観視をして俺と熊野は提督に言われた通り工廠へと向かった。

 



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胸囲の格差社会?

タイトルを変更しました。理由は回りくどいタイトルよりも一目でどんな内容なのか分かる様なタイトルの方が良いかなと思ったからです。
それと鈴谷のモノローグの一人称も俺に統一しました。そっちの方が熊野や他の艦娘に振り回される鈴谷の気苦労や戸惑いなんかが分かりやすいと思ったからです。
これからもよろしくお願いします。



 工廠に入ると明石と夕張が俺達を迎えてくれた

「あっ、鈴谷に熊野。待ってたわよ!」

「それではそこに座ってくださいね」

明石に用意されていた簡易的な診療スペースの様な場所に通される。

そこでなにやら2人は注射機を用意し始めた。

そういえば俺が鈴谷になる前もあんな注射器で麻酔を射たれたんだっけ

「あの・・・改装というのは何をするんですの?」

熊野が不安そうに尋ねる

「あーそれは私から説明するね!」

夕張が今回の改装についての説明を始めた

「これからあなた達には航空巡洋艦になる改装を受けてもらうの!それで来てもらったんだけど少し艤装の換装に伴ってまた手術を少し受けてもらう事になるわ。でも大丈夫。前回程大規模ではないからすぐに終わるわ!」

夕張はそう言った。

しれっと言ったがまた手術を受ける事になるのか・・・・

そんな時脳裏に加賀さんの言っていた艦種が変わった副作用で本当に女になってしまったという話を思い出す。

そんな・・・俺の約20年間も付き合って来た相棒とこんなにも急に別れなければいけない事になるのか!?

でも艦娘になる道を選んでしまった以上ここで引く訳にもいかない。

それにもし女の子になれたなら古鷹達ともっと仲良くなれるかもしれないし加古にもかわいがってもらえるかも・・・・って何考えてんだ俺!!前者はともかく後者はおかしいだろ・・・やっぱり最近毒されてるのかなぁ・・・

それに何より熊野が女の子になるのなら俺の気苦労も無くなるし他の艦娘とお風呂だって一緒に入れる様になるじゃないか!

さらば相棒・・・お前と過ごしたこれまでの事・・・・忘れないぜ!

俺は今はショーツに包まれている下腹部の相棒に別れを告げた。

そして

「それじゃあチクッとしますよ〜」

明石が俺に麻酔を射つ。

横では夕張が熊野に麻酔を打っていた。

そして麻酔が効いて来たのか意識が遠くなってくる

薄れゆく意識の中

ああ・・・これで俺の男としての人生も終わりか・・・・

せめて教えてくれれば最後にシコるくらいの餞別はしてやれたろうになぁ・・・

ごめんな相棒。童貞のままお前を先に逝かせてしまって・・・・

そんな事を考えているうちに意識は完全にブラックアウトした。

 

 

それからどれ位経ったのか意識がじわじわとハッキリとして来て俺は重い瞼を開く

「う・・・・ここは?」

俺が見たのは艦娘になって初めて見たのと同じ天井だった。

試しに手足を軽く動かすといつも通りの反応を手足は返してくる。

よかった手術は成功したらしい。

俺は真っ先に股間を確認すると触り慣れた感覚が股間と腕から脳に伝わって来た

「相棒!よかった・・・・俺・・・男のままだ・・・」

俺は自分が今は艦娘だと言う事も忘れ相棒との再会を喜んだ。

そして嬉しくなった俺はベッドから起き上がろうと身体を起こそうとすると

ぶるん

と何かが俺の胸で揺れた。

ん?なんだろう・・・胸に凄く違和感がある。なんというか・・・重い

俺は恐る恐る胸の方を見つめてみるとそこには小高い丘・・・いや山が2つそびえ立っている。

「もー夕張と明石のいたずら?何か病衣に詰めてあるじゃん」

俺は目の前のそれを信じる事が出来ずそう呟いてその膨らみを触る。

するとその膨らみを触った手には柔らかな感触、そしてその膨らみを触ると何故か胸がこそばゆいような変な感覚が伝わって来た

「ふわぁっ!」

なっ・・・なんだ!?変な声出ちゃった・・・というかこれってもしかして・・・・いやもしかしなくても!!

俺はベッドから飛び降り、病室にあった鏡の前で病衣の胸元を勢い良く開いた。

すると開かれた胸元からはたわわな肉の塊がぷるんと飛び出す。

「な・・・・・なんじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

俺は驚きの声を上げた。

なんで・・・なんで俺こんな巨乳になってるんだ!?

確かに艦娘になって胸は少し大きくなった。

でもこんな急に巨乳になるなんて・・・・これが換装の影響なのか・・・?

俺は恐る恐る鏡に映った自分の胸の膨らみに触れた

「んぁうっ・・・♡やわらかい・・・」

ダメだ・・・何だこの未知の感覚!?クセになってしまいそうだ。

そんな感覚を覚える度自分が更に男と言う生物から遠ざかった様な気がした。

そしてそのまま俺は自分の胸を触り、そして鏡の中で胸を触って悶える少女を見て変な気分になっていた

「あぅっ・・・♡何だよこの感覚・・・んひぃ♡だめっ・・・早くやめないとっ・・・あっ♡俺・・・・私・・・・・変になるぅ・・・・」

そんな甘い息を吐いていると突然

「鈴谷!どうしたの!?」

という夕張の声と共に病室のドアが勢い良く開く

「あ・・・・・・・・!!」

俺はその声で正気に戻り、鏡には胸を触っている自分がまざまざと写っている

「あっ、ごめんなさい・・・取り込み中・・・だった?失礼しましたー」

そう言って夕張は出て行こうとするので

「ごっ・・・・ごめんなさい!行かないで!!取り込み中じゃないからぁ!!!」

すかさず胸をしまい込み必死に彼女を呼び止め、なんとか夕張を呼び止めると彼女は病室に置いてあった椅子に座り、俺に話をはじめた

「どう・・・・?航空巡洋艦になった感想は」

感想を求められるが急な事に自分自身もよくわかっておらず

「ええっと・・・その・・・感想って言われても・・・急にこんなおっぱいが大きくなるなんて・・・」

俺はしどろもどろにそう答えた

「そうよね〜私も男の子だし憧れちゃう・・・でも女として嫉妬しちゃうわその胸!まさかそんなに大きくなるなんて」

夕張は他人事の様に言った。

「これが・・・その・・・艦種変更の副作用奴なの?」

俺は夕張に尋ねる

「え、ええ。そうよ。説明が省けて助かるわ。でも何で鈴谷がその事知ってるの?」

それはもちろん加賀さんから聞いて居たから・・・でも聞いてたのと違う・・・

「それは・・・」

その時加賀さんに自分が男だった事は秘密にしておいて欲しいと言われた事を思い出し

「それは・・・その・・・本で読んだの!こう見えても鈴谷ベンキョー熱心だからさぁ・・・あはは・・・」

そう誤摩化した

「そう・・・なんだ。まあ良いわ。あなたと熊野は航空巡洋艦になる手術は無事成功したわよ。これからあなた達は今までより沢山の水上機が乗せられる様になったの!簡単に言うと空母と重巡のハイブリッドって所かしらね」

夕張はそう言った。空母と重巡のハイブリッドかぁ・・・それなら俺も加賀さんみたいに・・・

俺の脳裏に道着を着て弓から華麗に艦載機を繰り出す鈴谷(おれ)の姿が浮かぶ。

もしかしたら加賀さんに弓の使い方を教えてもらえたりして・・・

『鈴谷、腰はもう少しこう引いて・・・』

『あっ・・・加賀さん・・・胸が当ってますよ・・・・・』

『あら・・・しょうがない子ね・・・でもあなたも男の子だものね。少しくらいなら良い・・・わよ・・・?』

そんな加賀さんに弓を教えてもらう妄想が俺の脳裏によぎる

「それじゃあ鈴谷も加賀さんみたいに弓でヒコーキを飛ばしたり出来るの!?」

俺は希望に満ちあふれて鼻息を荒くしながらそう夕張に問いかけた。

すると

「それはないわ」

夕張は即答し俺の希望は即座に砕け散った。

「ええーそんなぁ・・・」

「あら?残念そうね。本当の空母になるにはとても大手術が必要なのよ・・・それにあなたを空母にする計画なんて今は無いし・・・別に私達の好き勝手にしてもいいならあなたを空母っぽい何かに改造して上げても良いけど・・・?」

夕張は不敵な笑みを浮かべて言った。

そんなよくわからない手術受けられるか!

「いっ・・・いや・・・遠慮しとく」

俺はそう答えた。

「そう。残念。新しい研究が出来ると思ったんだけどなぁー」

夕張は心底残念そうな顔をしている

「鈴谷はモルモットじゃないんだから!」

「あーごめんごめん!冗談だって」

夕張はそう言って笑う

冗談にしても笑えない。

そういえば熊野はどうなったんだろう?

「ねえ、夕張 熊野はどうしてるの?」

俺は夕張に尋ねると

「ああ。熊野ならもうあなたより先に目を覚まして部屋へ戻ってるわよ」

そう答えた。

俺の身体にこれだけの変化が起きてしまったんだ。熊野には何が起きているか見当もつかない。

もしかしたら本当に女の子になっているかもしれないし俺みたいにナイスバディーになっているかもしれない。

そう考えると居ても経っても居られなくなったので

「夕張、ありがと。それじゃあ鈴谷も部屋に戻るね!!」

俺はそう夕張に言い残し病室を出て部屋に向かった。

「熊野ー!!ってあれ?」

彼女の名前を呼び部屋へと入るがそこにはさっきまでと余り変わらない様に見える熊野が居る。

「あら鈴谷・・・ってその胸どうしましたの!?」

熊野が俺の胸を見るなりこちらに駆け寄ってくる

「あ、あの・・・航空巡洋艦になった副作用でこんなになっちゃったんだって・・・あははは・・・」

俺がそう熊野に説明すると

「きぃーっ!!羨ましいですわ・・・でもわたくしも少しですけど胸が大きくなったんですのよ!?」

そう言うと熊野はおもむろに服を脱ぎ始める

「わぁ!ちょっと熊野!?そんな急に服脱がないでよ!」

俺はとっさに手で顔を覆う。

あれ・・・?熊野は男の筈なのになんで俺恥ずかしがってるんだ・・・?

「見てくださいまし!」

熊野のそんな声が聞こえたので俺は恐る恐る熊野を見た。

しかしその胸は以前同様真っ平らなまま・・・・というかなんだか更に胸板が厚くなってる様な・・・・それにさっきまで気付かなかったが熊野ってこんなに背、高かったっけ?さっきまでは俺より背が低かったのに今では俺と同じくらいの身長があった。これが彼女に対する艦種変更の副作用なのかなぁ・・・?

「何黙ってるんですの?大きくなってますわよね!?」

熊野はそう尋ねてくる

「いや全然」

俺は考え事をしていた事もあってかそう即答してしまった。すると

「きぃー!!鈴谷だけズルいですわ!!そんなに大きなお胸になって!!わたくしにも分けてくれませんこと!?」

そう言うと彼女は俺の胸をがっちりと鷲掴みにした

「んひゃぁっ!」

自分で触った時とはまた違う感覚が俺を襲う。

くすぐったいと言うより痛い・・・熊野・・・こんな力強かったのか・・・なんだか熊野が俺の知っている熊野から変わってしまった様な・・・そんな気がして何故か俺の中に恐怖心の様な物が生まれていた。

「いっ・・・痛いよ熊野・・・」

俺はすり切れそうな声でそう言うと

「ご・・・ごめんなさい鈴谷・・・!わたくし、そんな力を入れたつもりはなかったのですが・・・」

熊野は申し訳無さそうに俺の胸から手を離して頭を下げた。

そんな熊野を見て何で自分がそんな気分になったのかが分からなくなり

「だ・・・大丈夫だよ・・・鈴谷もこんなにおっぱいが大きくなって自分自身で一番戸惑ってるから・・・」

と言うと

「もー!心配した側からイヤミですの!?もう知りませんわ!ふんっ!」

怒ったのかベッドでふて寝を始めてしまった。

「ごめんって熊野ー、別に嫌味とかじゃないんだってばー!だからそんなに怒らないでよ〜」

きっとさっきの恐怖心はきっと熊野に対してでなくここまで変わってしまった自分の身体に対してだと言い聞かせ、俺は熊野のご機嫌を取ろうと熊野に謝った。

これが杞憂で済めば良いんだけど・・・・

俺の心の片隅にはそんな不安感が影を落としていた。




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意外な一面?

 結局あれから熊野は口を聞いてくれないどころか本当に寝てしまったようだ・・・どうしよう・・・暇だなぁ

そうだ・・・胸の事は加賀さんに相談してみたら良いんじゃないかな・・・まだ弓道場に居るだろうか?

流石に病衣でうろつく訳にも行かないので俺は服を着替えようと下着を取り出し身につけようとした。

しかし

「・・・・あれ・・・?入らない・・・・」

ブラジャーがキツい。そりゃそうだ。胸がでかくなったんだからサイズが合わなくなっていて当然だ。

どうしよう・・・これじゃあ制服もロクに着れそうもないなぁ・・・?

あの制服も明石に貰ったものだしどこで買えば良いのかもわからないしこのままノーブラで過ごす訳にも行いかない・・・・とりあえず明石か夕張に聞きにいかなくちゃ!

どっちみち外に出なければいけない分けだけど一体どんな恰好で出歩けば良いんだろう?部屋着で出歩いて男だってバレたら嫌だし・・・いやこれだけ胸があるのに男だって疑われるかな・・・?寧ろ胸が急に大きくなった事の方が怪しまれそうな気がするなぁ・・・・

よし、良い事思いついた!

「えーっとたしか・・・・・」

俺は古鷹が着任祝いにくれた救急箱を物色し、そこから包帯を取り出した。

「よし!これなら・・・」

漫画とかで見た事あるぞ!胸に包帯みたいなのを巻いて男装したりする奴・・・・これで胸をぐるぐる巻きにすれば胸が大きくなった事に気付かれないのでは?

俺はそう考え早速胸を包帯でぐるぐる巻きにした。

「ぐ・・・・ぐるじい・・・・」

でも背に腹は代えられない。

俺はぎちぎちに胸が締め付けられるのを我慢して制服に袖を通した

「こ・・・これでよしっと!とりあえず明石か夕張に会わないと・・・」

俺は自分に言い聞かせる様に鏡に向かってそう言って部屋を飛び出す。

そして明石達が居るであろう工廠へ向かって歩いていると

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

という聞き覚えのある声の悲鳴が聞こえた。

きっとこの声は古鷹だ!一体何があったんだろう?

俺はすかさず古鷹達の部屋の方へ走った。

「古鷹!?大丈夫!?」

俺は勢い良く扉を開くと誰かがこちらに凄まじいスピードで走ってきた。

「ひゃぁっ!なっ!?古鷹!?」

急な事に俺はそんな声を出してしまう。

ひゃぁっ・・・・?なんで俺ナチュラルにこんな女の子声出してるんだろ?

そ・・・そんなことより古鷹に抱きしめられてる!?そ・・・そんな・・・・

落ち着け俺・・・下手するとボロが出てしまうかもしれないぞ・・・・

俺は・・・いや鈴谷は女の子・・・鈴谷は女の子だから古鷹に抱きしめられても大丈夫・・・女の子同士だから大丈夫・・・・

自分自身にそう言い聞かせていると

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!こわいよぉぉおぉぉぉぉアタシああいうのだめなのおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

彼女は俺に顔をうずめ涙混じりにそう言った。でも古鷹がこんなに大泣きするなんて一体何があったんだろう?

とりあえずなだめないと・・・

「も〜古鷹ぁどうしたの・・・ってあれ?」

抱きしめられた事に精一杯でしっかりと彼女の姿を確認していなかったが俺に抱きついている彼女の髪の色は古鷹の物でなく黒い髪だった。

黒い髪・・・・もしかして

「えっ・・・?加古!?」

そう。今俺の胸の中で泣いているのは古鷹ではなく加古だ。

「うわぁぁぁぁぁぁん鈴谷ぁ・・・・怖いよぉ・・・・あたし・・・・あたし・・・」

いつもは凛々しくてかっこいい加古だが今目の前に居るのは何かに怯える少女だった。

なんだろう・・・いつもと全然違って可愛い・・・・

ギャップ萌えって奴なのか・・・?こんな可愛らしい一面が加古にあるなんて・・・

って何考えてるんだ俺は!!

とにかく何があったか聞かないと・・・それにいい加減離れてもらわないと胸が元々締め付けられているのと相まって苦しいし・・・・なにより恥ずかしい!!

「加古・・・・どうしたの?それにちょっと苦しいよ・・・」

「あ・・・ご・・・ごめん・・・・あの・・・・お風呂に変な虫がぁ・・・・アタシ虫怖いのぉ・・・・」

加古は涙目でそう答える

あのいつもは凛々しい加古が虫を前にするとこんな風になっちゃうなんて・・・

でもここは加古に良い所を見せるチャンスかもしれない!

「大丈夫だよ安心して加古!鈴谷にまっかせて!!鈴谷がその虫取ってあげるから!!」

俺は加古の頭を撫でる

「う・・・うん・・・お願い・・・・」

加古は涙を拭ってこちらを見つめてくる。

か・・・可愛い・・・!!ダメだ・・・・このまま見つめられてたら本当に俺の男の部分が出ちゃうかもしれない!早くその変な虫を取ってこの場から離れなきゃ!!

「そ・・・それじゃあお風呂場行ってくるから待っててね!」

俺はそう加古に言い残して風呂場に向かった。

「うーん変な虫ってどんなのだろ?ゴキブリとかかな・・・・」

別に虫が特別得意と言う訳ではないがゴキブリくらいならなんとかなるだろうと風呂場を見渡すと何やらタイルに黒い紐の様な物が引っ付いている

「ん?なんだろこれ・・・?」

その紐のような物触ると妙に軟らかく、それは触った途端ににょろっと蠢き先端の頭(?)のような部分をうねうねと動かし始める。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!なにこれ!?ヌメヌメするぅ!!!」

未知の生命体を前に俺はまた情けない声を出して尻餅をついてしまった。

こ・・・・これが加古の言ってた変な虫!?な・・・なにこれ!?

鈴谷は未知の生命体を前に恐怖で身を強張らせる

タイルで蠢く黒い紐のような謎の生命体を前にして完全に恐怖してしまっていた。

いつも深海棲艦という異形と戦っては居る物の逆に目の前に居るものはサイズが小さい上に何か全くわからない分逆に気持ち悪く思えてしまう。

こ・・・これどうやって退治すれば良いの?

鈴谷はもう一度恐る恐るそれを指でつついてみるとまたその生命体はにょろりと蠢く

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!鈴谷もこれダメ・・・・」

鈴谷・・・艦娘になって情けなくなっちゃったのかな・・・・虫くらい大丈夫だろうって思ってたのに・・・・

加古に良い所見せようとしてたのに・・・こんなのかっこ悪過ぎるよぉ・・・・

鈴谷が諦めかけたその時

「鈴谷!?大丈夫?加古の悲鳴を聞いて急いで戻ってきたんだけど・・・・」

という声が聞こえ、その方を向くと古鷹が居た。

「ふ・・・古鷹ぁ・・・・怖かったよぉ・・・・」

鈴谷はその姿を見て古鷹の胸に飛び込んでいた

「よしよし・・・怖かったね」

古鷹は鈴谷の頭を優しく撫でてそう言ってくれた。

あれ・・・?鈴谷なんだかとてつもなくいけない事をしているような気がするけど・・・・

それより今はあの黒いのをなんとかしなくちゃ!!

あの加古でさえああなっちゃったんだから古鷹が見たら気絶しちゃうんじゃ・・・・

しかしそんな鈴谷の心配をよそに古鷹はその黒いなぞの生命体をつまみ

「あ〜この子ね。クロコウガイビルていう生き物でね、ヒルって名前だけど別に人の血は吸ったりしない害はない子で、じめじめしてる所が好きだからたまに入ってきちゃうの」

そう片手でそのクロなんとかビルをつまみニコニコして鈴谷にそう説明した。

そんな古鷹の手のひらの上ではそのクロなんとかビルがうねうねしている。害があるとか無いとかじゃなくてとにかく生理的に無理ぃ!!

「せ・・・・説明は良いから早くそれどっかやってよぉ!!!」

「別に悪い事しないのにね〜もう来ちゃだめよ?」

古鷹はそれに語りかけると風呂場の小窓からそのクロなんとかを逃がすと

「はい!これで大丈夫!!」

古鷹は鈴谷にそう言って笑いかけた。

「あ・・・ありがと・・・・」

鈴谷は目の前で起きた事が信じられずただただそう言うしか無かった。

「でもなんで鈴谷がここに居るの?」

「あ、あの・・・古鷹の悲鳴が聞こえて・・・」

「私の・・・?うふふっ!そんなに加古の悲鳴私の声に聞こえた?」

「う・・うん・・・鈴谷逆に加古はこう言うの全然平気だしあんな声出すと思ってなかったからてっきり古鷹になんかあったんじゃないかって」

「加古は虫全然ダメで虫見るとああなっちゃうの。だからいつも私が逃がしてあげてるんだけど。でも私を心配してきてくれたんだよね?ありがとう鈴谷」

古鷹はそう言って鈴谷に笑いかけてくれた

「で、でも鈴谷結局何もできなくて・・・」

「良いの良いの。気持ちだけでも嬉しいわ。でも鈴谷・・・なんだか意外だわ。私、あなたがどこか男の子っぽいところがあるのを誤摩化して無理してると思っていたんだけど・・・・ちゃんと女の子っぽい所もあるのね!」

「そ・・・そんなことある訳無いじゃん!鈴谷は正真正銘おん・・・・・」

女の子みたい?そりゃ当たり前鈴谷は・・・・ってあれ・・・?鈴谷・・・・?違う俺だ・・・あれ・・??俺・・・さっきまで自分の事鈴谷って・・・・俺・・・やっぱり改装受けてから何か変だ。

もしかしてこのまま本当に心まで艦娘に・・・・女の子になっちゃうんじゃ・・・・

「どうしたの鈴谷?なんだか顔色が悪いけど?」

その声で俺ははっと我に返る

「え、あ?ううん!大丈夫!さっきのクロなんとかが怖かっただけだから・・・・」

「そう・・・それなら安心した。わざわざ心配して来てくれてありがとね・・・ってあら?鈴谷・・・あなた胸そんなに大きかったかしら?」

そう古鷹に言われて胸を見るとさっきまでそれどころでなく気付けなかったが包帯がほどけたのか大きくなった胸が露になっていた。

「うわぁあ!そ・・・そんなこと無いよ?気のせい気のせい!!それじゃあおr・・・鈴谷は明石達に用事があるからそろそろ行くね!!じゃあね!!加古にも宜しく伝えといて!お邪魔しましたぁ!!」

俺は胸を隠しながら古鷹達の部屋を後にして工廠へ向かった

 

そして工廠の扉を開けると

「あら鈴谷じゃない。来ると思ってたわ」

そこでは俺が来るのをわかっていたかの様に夕張が椅子に座っていた。

「わかってた・・・?」

「ええ。だって新しい着替えとか渡す前に鈴谷ったら帰っちゃうんだもん」

「そ・・・そうなんだ・・・ごめん」

それならそうと早く言って欲しかった。

「今ノーブラなんでしょ?」

夕張は不敵な笑みを浮かべる

「そ・・・そうだけど・・・」

「やっぱりね!そうだと思ってとりあえず前より大きい下着を用意しておいたわ!とりあえず前まで付けてたDカップより2サイズ大きいFカップの奴から試してみる?」

そう言って夕張は袋からブラジャーを取り出した。

俺・・・前までDカップだったのか・・・・

「って夕張!?俺・・・鈴谷の胸の大きさいつ計ったの!?」

「あ〜今俺って言いましたね・・・まあ私だから良いですけど。そりゃもちろんあなたを艦娘にする手術が終わって寝てる間に制服とかのサイズを調べないといけないから調べさせてもらったわ」

「ね・・・寝てる間に・・・!?」

俺は何故だか恥ずかしくなってしまう

「まあそんな事良いじゃない。さあ早くこのFカップのブラ付けて私に感想聞かせてよ。そこに鏡も置いとといたから」

夕張は話を誤摩化す様に俺にブラジャーを押し付けてきた

「あ・・・うん・・・」

俺はブラジャーを受け取り服を脱ぎ鏡の前に立つ

やっぱり急にでかくなったなぁ・・・俺の胸・・・・

自分の胸にぶら下がる大きな2つの肉の塊を再び目の当たりにしてもう俺は後戻りできない所まで来てしまったと再認識させられてしまう。

えーい!!今更こんな事考えてたって仕方ない。早く終わらせてしまおう。

俺は慣れた手つきでブラジャーをつけようとするが・・・

「うーん・・・これじゃダメみたい・・・・」

「やっぱりダメかぁ・・・それじゃあGカップでどう?これなら入る筈よ!」

夕張はまた袋からブラジャーを取り出して俺に渡して来るのでもう一度それをつけようと試みた。

しかし

「う・・・・一応入ったけどなんかキツい・・・かも・・・」

「え〜Fカップもだめなの!?ごめんなさいもうこれより上のサイズは用意してないわ・・・」

「えっ・・・それじゃあ・・・鈴谷今日はノーブラのまま!?」

「そ・・・それじゃあとりあえずサイズ計らせて!少しくすぐったいかもしれないけど」

そう言うと夕張はポケットからメジャーを取り出し俺の胸の周りに巻き付けた。

「んぅっ・・・・♡」

メジャーが乳首に触れ、その冷たさで変な声が出てしまった

「あらぁ?感じてるんだ?」

夕張が意地の悪そうな顔でこちらを見つめてくる

「そ・・・そんなんじゃないし・・・メジャーが冷たくてびっくりしただけだし!!」

俺はそう誤摩化す

「はいはいそーですか。うーん・・・とここがこうで・・・・」

夕張は俺の誤摩化しを軽く受け流しサイズを淡々と測っていった。

「よし!計れたわ!今のあなたの胸のサイズはHカップよ!!それにしても大きくなったわね・・・・」

H・・・!?こっそり買ったグラビア雑誌の表紙にHカップの爆乳が・・・・とか書いてたけどそのHカップなのか!?

まさかそんな物が今俺の胸に引っ付いてたなんて・・・・・嬉しいような悲しいようなよくわからない感覚だ。

「うーん困ったわ・・・今から注文するにもすぐ届かないし・・・・」

「ええ!?そんな・・・鈴谷このまま当分ノーブラって事!?」

「ごめんなさい。こんなに大きくなってるとは思わなくて・・・それに私達男でしょ?胸板の広さが女の人よりあるから胸だけ見ても判別し辛いの・・・・」

夕張はそう説明した。

「そ・・・そう言われても」

「とりあえずできるだけ早いうちになんとかするから・・・今日はこれで我慢して」

夕張はそう言うとロール状に巻かれた布を袋から取り出した

「なにそれ?」

「ああこれ?サラシよ。胸に巻けばブラの代わりになるわ」

「えっ!?サラシって包帯の事じゃなかったの!?」

「あら?鈴谷も勘違いしてたんだ。明石もこの姿になりたての頃同じ事言ってたわ。詳しい説明は後々。とりあえず巻き方教えてあげるわ」

そして俺は夕張からサラシの巻き方を教わった。

「これでよしっと!」

夕張は俺の背中を叩く。

さっきみたいに無理矢理ぐるぐる巻きにしている訳ではないのでさっきほど苦しくはなかった。

「あ・・・ありがと・・・」

「うん!これでひとまずは大丈夫そうね!できるだけ早めにブラジャーは用意できる様にするからちょっとの間だけそれで我慢しててね」

「うんわかった。出来るだけ早くしてね」

俺はそう言って夕張に別れを告げた。

あれ・・・?なんか他にも相談したい事があったような気がするけど・・・まあいいや。とりあえず加賀さんに会いに行こう。

俺は加賀さんを捜しに弓道場へと向かった。



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