独裁者の聖杯戦争 (マルルス)
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プロローグ 始まりへの一歩

初めましてマルルスと言います。
多くのSSを見てきて自分もSSを書いてみようと思い投稿しました。

初めて書いた小説ですので自分でも出来が良いとは思えません。沢山の捏造とご都合主義があります。それでも良い人はどうぞ見てください。



今から二百年前、アインツベルン・マキリ・遠坂の三つの魔術家系があらゆる願いが叶う万能の釜

すなわち聖杯を降臨させる魔術儀式を行った。しかし願いを叶えることが出来るのはたったの一人だけだった…。

御三家は協力関係からから一転、壮絶な殺し合いに発展した。 マスターとなった魔術師は聖杯の力で座に召し上げられた英雄を召還しサーヴァントとして使役し最後の一組になるまで戦い聖杯を手に入れる。この魔術闘争はすでに三度行われているが未だに聖杯が降臨した事がなく次の周期で四度目の聖杯戦争が始まる。

 

「ふむ… これが聖杯戦争の概要か…」

男は聖杯戦争について書かれた資料をデスクの上に置いた。部屋には壁には多くの勲章がそれみよがしに飾られ数多くのライフルが掛けられている。 中央には大きなアンティーク風の机と椅子が置かれている。

その椅子に一人の男が座っていた。軍の制服を身に着け胸に階級章と勲章が付けられ服の上からも分かる鍛えこまれた肉体を持ち国の頂点に立つ風格 オーラとでも言うのか凄みを感じさせる。

 

男の名はリカルド・ベルブランコ

南米大陸の太平洋側にある小さな小国ザンディアナ国の大統領である

「遥か昔から近代まで偉大な功績を残した英雄達を使い魔として使役するとは… 何とも恐れ多く罰当たりな儀式があったものだ…」

リカルドは呆れた声を出す。

 

「その通りで…」

リカルドのそばに立つ男はそうつぶやく。 彼の名はペノルティーモ。リカルドの補佐を務めとぼけた感じをさせるが雑務を初め重要な案件などを難なくこなし国の状況の資料制作や何らかの危機が起きた時の対策などのアドバイスや他国のトップとの会談のセッティングなどこなすリカルドにとってまさに右腕とでもいう人物で彼から絶大な信頼を置かれている。

「そのような儀式にまさか大統領が選ばれるとは… このペノルティーモは驚きを隠せません」

ペノルティーモはそう言うしかなかった。

 

「しかし余りにも早すぎます…。 次の聖杯戦争が始まるのは一年後だというのに」

リカルドに忠誠を誓う女性魔術師カロリーザは驚愕が混じった声を出す。

 

彼の右手には聖杯に選ばれた証である令呪が刻まれていた。それだけでも驚きだがその時期が問題だった。

本来、令呪は早くても数か月で現れるはずなのだがリカルドに刻まれた令呪は何と聖杯戦争開始から一年前なのだ。過去の聖杯戦争を調べてもこのような事例はなかった。 数多くの怪異や魔術の対処を行ってきたカロリーザでも一体何が起きているのか見当がつかなかった。

 

「だがその戦いに君は参加するのだろう? リカルド…」

ソファーに座る男 ロドリゼスはリカルドに向って気さくな声を出す。

ロドリゼスはリカルドの護衛を務めておりまた彼とは幼いころから友人で戦場では共に背中を預け助け合ってきた仲だ。彼ら二人は兄弟同然でリカルドにとって半身とも言える存在だった。

 

 

「そうだ友よ… 私は聖杯を手に入れる そして更なる力を手にする。これは始まりだ… 我が野望の最初の一歩なのだ」

自分は欲しいものは全て手に入れてきた。時には力づくで手に入れた。今回も変わらない… 入念に準備し敵を始末する。誰にも邪魔はさせない!

あらゆる願いが叶う万能の聖杯。これを手にし更なる力を得る。この小さな島国が世界を制するのは夢ではない!

誰にも邪魔はさせない! 阻むものも許さない! あらゆる手段を講じてこの戦争に勝利して見せる!

世界を制す…かつて多くの王が成し遂げられなかった偉業…!このリカルド・ベルブランコが成し遂げてみせる!

 

彼の眼には野望の炎が刻々と燃え上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

独裁者リカルド・ベルブランコ…

 

この男の参戦によって第四次聖杯戦争はどのような結末を迎えるのか… それはまだ誰も知らない…。

ただ一つ言えるのは第四次聖杯戦争は第二次世界大戦の中で行われた第三次聖杯戦争に勝るとも劣らない苛烈な戦いになるという事だ。




徐々に文字数が沢山かけるようになりたいです。
空いた時間でコツコツ書いているので次の投稿は未定です。
気長にお待ちになっていただけると嬉しいです


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一話 考察

お待たせしました。
まず最初に話はあまり進んでません…

今回の話は聖杯戦争に参加すると判明した魔術師達をリカルド大統領が考察するものです
文章はリカルドの視線で書きましたがおかしな所があるかも知れません…。

追記
ちょっと原作と似たような文章だったので少し修正しました。


聖杯戦争開始まであと半年となった…。

私は国の政治をこなしながらロドリゼスとカロリーザが作成した聖杯戦争に参加する可能性がある魔術師のリストに目を通していた。

まずは御三家の一つである遠坂家。

当主は遠坂時臣。

彼は宝石を用いた魔術師で今は廃れてしまった魔術師として正道を貫いており正に本物の貴族というべき人物。

こういった人物はプライドが高く品位など華やかさを求める。 故に暗殺を主としたアサシンクラスと魔力消費が多く制御が難しい不安要素が多いバーサーカーは召喚しないはずだ。最弱と呼ばれるキャスターも除外される。

残ったのは剣・槍・弓・騎の四つのクラスのどれかだ。

更に経歴を見ると戦闘経験はない。 生粋の根源への探究者というところか。遠坂時臣は策を練ったとしても想定外の状況に陥ると上手く対処ができない可能性が高い。

上手くそこを付け込めば仕留められそうだ。

 

間桐家

間桐家は魔術師の家系としてもはや没落しており、聖杯戦争に参加してもサーヴァントを制御できるどころか令呪が宿るのか不明だ。 ただ出奔した間桐の次男が突然戻ってきたそうだ。

間桐の翁が呼び戻したのか? それとも聖杯に縋るほどの願いを持ったのか? どちらにしてもこの男は魔術の鍛錬はしてこなかったのだ。実力は三流程度にしかないだろう。 例え強い英霊を呼んでもすぐに魔力切れをおこすのがヤマだ。なら魔力量が少なく強固な陣地作成が出来るキャスタークラスを呼び出すのがベストだ。ありえない話だが逆に魔力消費が多いバーサーカーを呼び出したらこいつは正真正銘の馬鹿だろう。

 

アインツベルン家

錬金術を修めておりホムンクルスという人造生命体を作る事に関しては右に出る魔術師はいないという

御三家で聖杯を用意する一族で彼らがいなければ聖杯戦争は始める事が出来ない。御三家の中でも最も重要な存在と言えるだろう。

また御三家の中で破格の財力を持っている。 つまり金に物を言わせて強力な英霊の触媒を手に入れる事が出来るのも強みだ。

ただ彼らは錬金術の特化したせいか戦闘能力が低く、そのため過去の聖杯戦争では必ず敗北していたそうだ。それを示すかのように前回の聖杯戦争では真っ先に脱落してる。

その事があってか今から十年前、純血の誇りを捨てて外部から魔術師を迎え入れた。

 

迎え入れた魔術師の名は衛宮切嗣。 「魔術師殺し」と言われた男で多くの魔術師が彼によって屠られてる。

その手段というのがまた悪辣で狙撃や毒殺などはマシな方で酷いものになると標的を公衆の前で爆殺 標的が乗り合わせていたというだけで無関係な一般人ごと撃墜。レストランに神経ガスを流し込みこれまた一般人ごと標的を毒殺…。もはやテロリストと言っても過言ではない。

更に資料を見ると気になる箇所を見つけた。衛宮切嗣は各地に紛争地域にも傭兵として参戦してたようで多くの民族浄化、つまり虐殺に関与してた疑いがある。

………アインツベルンも随分ととんでもない男を迎え入れたものだ…。それほどまでに切羽が詰まってるというのか…聖杯に掛ける願いが大きいという事か…。

 

とにかくこの衛宮切嗣という男の戦い方は資料を見る限り、間違いなくお行儀よく正々堂々などはしないだろう。 逆に正々堂々と戦ってる相手の背中をまってましたばかりと狙ってくるタイプだ。または無関係な人間ごと殺しにくるか… 周囲には深く用心した方がよさそうだな。

 

 

ではアインツベルンが召喚するサーヴァントを予想しよう。

誇りを破ってまで外部から戦闘に特化したテロリスト同然の魔術師を迎え入れたのだ。ならばサーヴァントも戦闘に特化した英霊なのかもしれない…。 もしくは衛宮切嗣に相性がいい英霊を呼ぶのか…。現段階ではまだ分からない… 引き続きロドリゼスとカロリーザに情報を集めさせよう。

 

続けて資料をめくる。御三家とは関係がない外来の魔術師のだ。

 

 

 

ケイネス・エルメロイ・アーチボルト

イギリスの魔術師の名門アーチボルトの九代目当主で若年ながら時計塔の一級講師を務めている。

幼いころから様々な分野の成果をあげ続けており周囲から天才・神童と称えられている。

聖杯戦争に参加する理由は自身の経歴に武勲という箔をつけるためか…。

魔術属性は「風」と「水」の二重属性で降霊術、召喚術、錬金術に深い知識を合わせ持つ。

なるほど…。 まさしく天才だ。さらにこれほどの経歴なのだ。それを完璧にするために武勲を付けたいのも当然とも言えるだろう。

 

魔術回路も九代も続いてるから相当な物だろう。 召喚するサーヴァントの知名度次第ではステータスも相当な物になるかもしれない。 おそらく今回の聖杯戦争に参加する魔術師の中で最強の部類に入る。武装してくる魔術礼装もかなり性能を誇っているかもしれない… 最悪、我がザンディアナの魔術部隊でも勝てるかどうか… 例え勝てても大きな被害を出すかもしれない。 かなりの強敵だ。

敵として来る以上、迎え撃つが……。だがもしもチャンスがあればだが… 彼を生かして我がザンディアナ連邦の魔術部門に迎え入れたい。ケイネスの才能は素晴らしい物だ。もし彼がこの国に来てくれればこの国の魔術組織にとって間違いなく大きな前進になるだろう。

それ故、彼ほどの天才がこの戦争で死んでしまったら大きな損失にもなるだろう。

どうすれば彼を我が国の魔術組織に入れる事が出来るのか…。

 

 

 

 

言峰綺礼

今回の聖杯戦争の監督を務める言峰璃正の息子であり参加者の一人である遠坂時臣の弟子だったが。令呪を授かった事により師と決裂して今は対立状態にある。

 

それだけなら気にも留めなかったが、彼の経歴を見て顔が強張った…。

何とこの男は聖堂教会の異端討伐部隊に所属、「代行者」まで任命されてる。

代行者… 死徒と呼ばれる吸血鬼やグールといった人外を屠る事が出来る者…。はっきり言えば人の形をした殺戮兵器とでも言える。

かつて代行者の部隊と戦った事があるが一人一人が超人とも言える強さを持っていた。何とかこちらが勝ったがその際、多くの兵が殺された…。

やれやれ… この男も一筋縄ではいかなそうだ…。

 

 

 

 

 

これが今の所、判明してる参加者達だ。こいつ等をどう片付けいくか…。 皆と相談しながら決めるとしよう。

私は資料を机の上に置き、そばに置いてあったココアが入ったカップを手に取り、ふちに口につけココアを呑んだ。




リカルド大統領は甘いものが好物です




できるだけ原作に早く突入できるよう頑張りたいです。


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二話 準備 英霊召喚へ

お待たせしました。ようやく二話が出来ました。

結構、難産でした…。

タグに追加しましたが大統領陣営はオリジナルサーヴァントです。


聖杯戦争が始まるまであと一か月半となった。

 

「失礼します 大統領」

執務室の扉を開け入ってきたのはペノルティーモとロドリゼス、カロリーザだった。

「何か御用でしょうか?」

 

「ペノルティーモ。 来月には日本に来日する。 そこで忠蔵《ただくら》首相と会談する。

そのためのセッティングを頼む」

 

「かしこまりました」

ペノルティーモは準備のため部屋を出ていく。

 

部屋に残ったのはリカルドとロドリゼスとカロリーザの三人。

口を開いたのはリカルドだ。

「ロドリゼス、 部隊と装備の準備はできたか?」

 

「すでに現地に先行として50人ほど送っている。 武器・弾薬も同じくだ

日本政府の協力もあってスムーズに進んだよ」

 

「同じく我が国の魔術部隊も30人にほど送り込んでいます。 ただ冬木は遠坂家のテリトリーですので用心を重ねて隣の町に待機させてます」

 

「そうか。 ご苦労だった」

 

聖杯戦争の参加する事にしたリカルドはまず行ったのは日本政府の協力を取り付けることだった。

聖杯戦争ではマスターとなった人間が日本に集まるのだが…。 ここで問題がある…リカルドはこのザンディアナ連邦の大統領なのだ。向こうの政府に知らせないまま来日するのははっきり言って大問題だろう。 何より他国にこの国の軍隊である「ザンディアナ連邦軍」を大隊規模まで兵士達を送り込むのだからどの道、協力は必要不可欠だった。

 

「それにしても特殊部隊を200人も動員するとはな。 冬木市を魔術師ごと焼き払うつもりか?

こういっては何だが魔術師共なんざ時代遅れの遺物……… あっ…いや お前にいったわけじゃない そう怖い顔しないでくれ」

ロドリゼスはいくら何でも過剰ではないかと思っていた。魔術師とは何度かやり合った事があるが、確かに最初は魔術というものに面食らったが今はどういう種なのか理解できてる。 そして近代兵器の前では魔術などカス同然だという事も。

ただロドリゼスの言葉に気に障ったのかカロリーザは怒気をこめてロドリゼスを睨みつける。

 

 

「それは油断ですよロドリゼス。魔術は時として近代兵器を上回る事もあります。舐めてかかると命取りになりますよ」

 

魔術師を甘く見るロドリゼスにカロリーザは釘をさす。

 

「確かに魔術師だけならここまで動員はしない しかし今回、奴らには英霊がサーヴァントとしてついているのだ

こちらも相応の準備もしなければならない」

 

英霊の強さは文字通り一騎当千と言ってもいい強さだ。たった一騎だけで一国の軍隊を壊滅させることができる。

200人程度の兵だけではハトの豆鉄砲にもならないだろう…。

 

「だがマスターは別だ サーヴァント… 英霊とい言っても無敵の存在ではない。サーヴァントはマスター無しでは現界し続ける事は出来ない」

 

魔術師は魔術を使える事を除けば人間とは大差ない。 頭部や心臓を破壊されれば確実に死ぬ。

聖杯戦争は一対一で戦う決闘ではない。 生き残りをかけたバトルロワイヤルだ。アサシンを召還しマスターを狙うのも立派な戦術のひとつだ。

 

そしてサーヴァントは魔力で構成されている。 つまり魔力がなければ現界が維持できずに消滅してしまうのだ。

中にはマスターを失っても現界し続ける事もあるがそれも所詮、ほんのわずかの間のだけだ。

故にサーヴァントにとってマスターの存在はどれほど大切なのか分かるだろう。

 

「カロリーザ。 今夜、私は英霊召喚を始める。 準備をしてくれ」

 

リカルドの言葉にカロリーザは驚く。

 

「しかし閣下… まだ触媒となる聖遺物はまだ見つかっておりません

それに聖杯戦争が始めるまでまだ一か月半です。 急ぐ必要はないかと…」

 

「いや、聖杯戦争は英霊とマスターのチーム戦だ… ならば互いにどういう人物なのか知っていた方が後々のためになる」

 

サーヴァントは道具ではない 彼らは意志と心を持った存在だ。互いに教え合いコミュニケーションを行い信頼を築いてく… そうして初めてお互いの背中を任せられるのだ。

リカルド自身、一人では一国のトップにはなれなかった。信頼する同士と自分に忠誠を誓ってくれる仲間がいたからここまでこれたのだ。 それは例えサーヴァントでも変わらない…。

 

「そして触媒なのだが問題はない。これを使う」

 

リカルドは後ろに置いてあった細長い木箱を机の上に置く。 ガコンと音がなり蓋が開けられる。

中に入っていたのは大きな長剣だった。

 

「これは… 相当な業物だな… 引き寄せ寄せられてしまうほどの美しさだ」

 

感嘆したように剣に見とれるロドリゼス。

 

「そんな… なんという神秘…… これほどの物は見たことがありません」

 

カロリーザは驚愕に染まった顔で剣を見る。

 

「この剣は大昔、ベルブランコ家の祖先が見つけた剣だ。 この剣は1000年以上の前にも作られらたもので多くの騎士または王が使っていたそうだ」

 

「馬鹿な! これが1000年前のものだというのか!」

 

ロドリゼスは先ほどと打って変わって驚愕した。 普通、剣は千年も経てば跡形なく消え去っているはずだ…。

だがこの剣は傷どころか刃こぼれすらしてないのだ。にわかに信じられないと様子のロドリゼスだった。

 

「いえ… これほどの神秘を持つ剣はもはや一種の概念… 朽ちる事はないかと…」

 

逆に冷静に分析するカロリーザ 。 魔術師として数多くの超常現象を見てきた彼女は落ち着いてた。

 

「これを使えばこの剣に縁がある英霊を呼び出せるでしょう。 これほどの剣を使っていた者です。 その強さも相当なものなのかも知れません」

 

「という事はセイバークラスか。 最優のクラスを引けるぞ!」

 

ロドリゼスは興奮したようにしゃべる。 何せセイバーは七つのクラスで最強と呼ばれる存在だ。過去の聖杯戦争では最後まで生き延びたことを見れば疑いようがないだろう

 

「しかしセイバークラスで呼ばれる英霊は誇り高く卑怯な事を嫌うでしょう…。我々の戦術についてきてくれるのでしょうか?」

 

剣の英霊は騎士だった英霊が多い… 彼らは卑怯を嫌い相手と正々堂々と互いに全力を尽くす事を好むかもしれない。

対しこちらは主にマスター殺しを目的とした暗殺や不意打ちを中心とした作戦なのだ。 現代戦は正々堂々なんてものは全くない… 如何に相手を出し抜くかの化かし合いなのだ。

誇り高い英霊はそんなやり方に賛同してくれるだろうか…? 反発して座に帰ってしまうか… 最悪、こっちが殺されるかもしれない…。これはもう価値観の問題だ。

それためカロリーザは心配で仕方なかった…。

 

「カロリーザ。 君が心配するのはよく分かる

しかし召喚される英霊は聖杯に願い事があるからこちらの召喚に応じて現世に来るのだ。

彼らだって聖杯が欲しい。 我らのやり方にある程度は容認するはずだ。そしてこちらも向こうの戦い方にある程度は容認する 勿論、魔力供給や治癒、令呪のサポートもする。

さらに言えばそういった問題をなくすために早めに召喚して信頼関係を築かなければならない」

 

「なるほど、そうでしたか。そういう事でしたら我々は閣下を全力でサポートします。

では召喚の準備に行って参ります」

 

カロリーザはリカルドに一礼して部屋に出て工房に向かう。

 

部屋にはリカルドとロドリゼスに二人だけになった。

 

「随分と楽しそうな顔だな。リカルド

そんな生き生きとした君を見るのは久しぶりだ」

 

リカルドは笑み浮かべていた。この顔を浮かべる時はこれから起きる戦いに高揚してる証拠だ。

これは長い間、死線を共にしてきたロドリゼスしか分からない事だった。

 

「当然だ。 この聖杯戦争は今までやってきた戦いとはわけが違う。 歴史上の英雄、または神話や御伽話に出てくる英雄がこの世に現れ互いの武を競う。こんな夢のような出来事に興奮しない者などいない。」

 

「それもそうだな。

だが、忘れないでほしい。 君はこの「ザンディアナ連邦」の大統領なんだ。

君の代わりなどいないんだ… 傭兵時代のような突撃は出来るだけ控えてくれ」

 

リカルドは大統領になる前はロドリゼスと共に傭兵として世界各地の戦場を駆け巡っていた。

彼らの戦い方は、特にリカルドの戦い方は無謀を通り越して超人とも言えるものだった。

 

まず敵の野営地または基地にリカルドが単身で突撃し敵を次々と倒していく。 ロドリゼスは敵がリカルドに注目をしてる間に狙撃手として敵兵士を始末していく。 そうして敵軍の損害を出していった。時には壊滅させた事もあった。

さらにリカルドは顔を常に覆面して隠していたため相手は敵が何者であるかも分からなかった。そのため相手はリカルドを「悪魔の化身」として恐れた。

そうした戦いをこなして金を荒稼ぎしてその資金でリカルドは軍隊を作り上げていった。

軍隊を出来た後もリカルドは後方ではなく常に味方の兵と共に最前線で戦い続けていった。ロドリゼスは彼の為に後方でサポートしていった。

 

「それは分かっている。

だが…正直に言えば敵マスターとの殺し合いを興じたい気持ちはある」

ナイフで剣で相手の心臓を穿ち、首を断ち切り、拳で骨を砕く… そう言った気持ちもある

フッ… しばらく戦いから離れていたがこればかりは治らんな。今の仕事もそれなりに気に入ってるが、やはり互いの命の削り合う戦いこそ面白い」

 

獰猛な笑みを浮かべるリカルド。 それを見たロドリゼスもまた笑みを浮かべる。

 

「変わらないな君は…。 だけどそれでこそリカルド・ベルブランコだ」

 

「ありがとう友よ。 さて今夜は忙しくなるぞ

そっちの準備は怠るな」

 

「わかっているよ。 それじゃまた」

 

ロドリゼスは部屋に出て行った。

 

一人だけになったリカルドは椅子に深く腰を下ろし思考する。

 

(いよいよ始まる… 今夜、私は最初の一歩を踏み出す…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が沈み夜中の一時頃になった。

 

リカルドはロドリゼスと共にこの国の魔術組織「ティニエブラス」のもとにヘリコプターで移動していた。

 

ティニエブラスは山奥にあり周囲は鬱蒼としたジャングルで覆われ大昔に建てられた遺跡と洞窟を再利用して使っている

ヘリコプターが本部に着きヘリから外へ出ると遺跡の入り口にカロリーザと彼女の背後に20人程の魔術師がいた。

 

「お待ちしておりました。大統領閣下」

 

カロリーザと魔術師達はリカルドに向けて拳を左胸に当て頭を下げる。

 

「準備は?」

 

リカルドも彼女らに向けて敬礼する。

 

「はい閣下。すでにできております。

こちらへどうぞ」

 

カロリーザの先導の元、リカルドとロドリゼスは彼女に着いていく。

 

中に入り地下に深く潜っていく。 中に入り数十分は経っただろうか?

大きな扉がある部屋に着き重厚な音を立てて開いていく。

 

「ここです」

 

カロリーザに案内され部屋の中に入っていく。

大きく広い部屋だった。 中には魔術師達が更に50人程いた。彼ら彼女らは外でカロリーザ達がやったように

リカルドが部屋に入ると拳を左胸に拳を当て礼をする。リカルドもまた彼らに敬礼をする。

 

「ご苦労だった諸君。いよいよ英霊召喚を行う。

今夜、我々は… この国は大いなる偉業への最初の一歩を踏み出す」

 

リカルドの言葉に周囲に緊張が走る。一体どのような英霊が来るかは分からないからだ。

 

「今の時間は1時50分… 10分後の2時に召喚を行う。

カロリーザ。英霊召喚の手順を教えてくれ」

 

「はい。 ではまずコレを覚えてください」

 

カロリーザはリカルドに召喚するための詠唱が書かれた紙を手渡す。

 

「あとは魔法陣のそばに立ち、その紙に書かれた詠唱を行って下さい」

 

「それだけか? 随分と簡単なんだな…。」

 

英霊を召還するのにしては簡単な手順にリカルドは少々、呆気にとられる。

 

「英霊を招き寄せるのは聖杯で閣下は現れた英霊が現世の留められるように魔力供給するだけです。

 

「なるほど」

 

そもそも英霊という規格外の存在をただの魔術師が呼び出すなんて不可能だ。 聖杯の力をもって初めて成せるのだ。 そう考えればこちらがやる作業が簡単なのは当然なのだろう。

 

「閣下。 五分前となりました。」

 

そばにいた魔術師が報告する。

 

「わかった。 では諸君、私の補佐を頼むぞ」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

 

リカルドは魔法陣のそばに立ち、詠唱の準備を始める。

 

「10秒前です。 9、8、7、6、5、4、3、2、1… 二時です」

 

リカルドは詠唱を始める。 体の魔術回路を起動していく。

 

降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 

「告げる――」

「――告げる。

汝の身は我が下に、我が運命は汝の剣に。

聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ――」

「――誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者――」

「――汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――」

 

陣の中心に眩い光が集まっていく。そして突風が吹き荒れていく… それは聖杯の力を通して英霊の座に繋がっていく。 大きくなっていく光にロドリゼスとカロリーザと周囲の魔術師達は腕で顔を覆う。

光が結束し今度は突風が吹き荒れる。 徐々にだが光が消えていく…。 そしてこの場に尋常なる存在が現れる。

 

リカルド達は魔法陣の中心に何かがいる事を感じた。

まず最初に目に付いたには馬だった。

滑らかさを感じる美しい黒毛を持ち、黒い体格に反してその眼は燃えるような宝石でいうルビーのように赤々と輝いていた。

目を凝らして見ると何かが馬に乗っている…。 それは重厚な鎧を身に着けていてよく見ると所々、美しい装飾が施されている。肩には赤いマントを羽織り腰には長剣を携えている。

 

そして顔を見ようとしたその時、リカルドを初め全員が驚愕した。

何故なら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その騎士には顔が…頭部が… 首がなかったのだ…。




ちょっと解説

Q 主人公の単身突撃について

A これは後々、小説で明かしますが傭兵時代のリカルドは単身突撃の際、自分の身体能力を大幅に強化する魔術を使用しています。いくら彼でも何にもしてない状態で突撃するのは無謀ですから。
その時の彼の戦いは「鋼の錬金術師」のキング・ブラットレイみたいな動きをイメージしてます。

Q 主人公のサーヴァントについて

A これが一番、悩んだ事です…。当初はキャスタークラスでメディアさんを召還しようと思いましたが他のzeroのSSだとすでにメディアさんを召還していて「なんか被るな…」と思いメディアさんは諦めました。それで誰をどのクラスで召還しようかずっと悩んでいましたが一向に決まらない…。
そこでSSを書いてる友人に相談したら「ならいっその事、オリ鯖にしたら? 二次小説って自分が思うように書けばいいんだし」その言葉で吹っ切れました。
ならば自分が大好きなキャラを出そうと思いました。そう首無し騎士です。
以前、ティム・バートン監督の映画「スリーピーホロウ」で首無し騎士のカッコよさに惚れ込んでしまい、それ以降、首無し騎士というキャラクターが大好きになりました。
ただFateの設定では首無し騎士は「幻霊」ですから英霊には至らないとの事でしたが
まぁそこらへん無視して大統領のサーヴァントとして出しました。

長々書きましたがこんな感じです。

次回はキャラ設定などを投稿しようと思っています。


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三話 日本へ

急いで書いたので誤字が沢山あるかもしれません。

追記

結構、酷い文章だったので修正しました。
これで少しは良くなったと思いたい…。


リカルドは政府用の飛行機に乗り、目的である日本に向けて世界最大の海である太平洋の空を飛んでいた。

いよいよ聖杯戦争が始まる日だ。 久しぶりに感じるこの緊張感が心地よく感じる…。

 

「閣下。三時間後、日本に到達します。」

 

黒髪の長身の女性がリカルドに報告する。彼女の名前はアヤといいペノルティーモの娘である。ペノルティーモはリカルドが不在の間、ザンディアナの統治を任せられる。 その代わり、リカルドが日本に滞在してる間、娘のアヤがリカルドの補佐を務めるのだ。

 

「アヤ。 今日のスケジュールを教えてくれ」

 

「はい。 午後から忠蔵《ただくら》義人《よしと》首相と会談。 その後、経済協議を行います

夕方から天皇陛下を始めとした皇族の方々と夕食です」

 

「ありがとう。 私は少し休む。 何かあったらすぐに起こしてくれ」

 

「かしこまりした」

 

リカルドは疲れを癒すため目を閉じ眠りについた。

 

 

 

 

 

 

飛行機が東京の空港に着陸してリカルドは飛行機から降り、大勢の護衛に囲まれながら特殊防弾加工された車に乗り込み首相官邸に向かう。

しばらく経ち、目的地である官邸に到着する。

 

「はるばるよく来てくれました。リカルド大統領」

 

リカルドの手を握り笑顔を浮かべる男の名は忠蔵《ただくら》義人《よしと》

まだ40歳という若さで日本国の総理大臣(首相)に上り詰めた人物である。

 

「こちらこそ。日本は我が国に大きな発展を手助けしてくれた国です。

あなた方には感謝が絶えません」

 

リカルドもまた笑顔で首相と握手する。

大勢のマスコミが押し寄せ二人にカメラを寄せている。

リカルドと忠蔵首相の二人はカメラに向けて笑顔を浮かべ手を振るう。

 

その後、官邸でリカルドとザンディアナの首脳部と忠蔵首相と日本の首脳部と経済協議を行う。

ザンディアナにしか取れない希少な鉱石を日本に輸出する代わりに日本もザンディアナに経済支援を行う事になった。

 

夕方になり皇族達と夕食を行い、日本との関係などを話し合った。

 

夕食を終えリカルドはホテルに戻る。国に関係する仕事を終わった…。 次はいよいよ例の話をする事だ。

 

リカルドは再び官邸に行き護衛官の案内の元、忠蔵首相の部屋に入る。

 

「やぁ、待ってたよリカルド」

 

昼間と違い敬語はではなくタメ口で話す忠蔵首相。

 

「待たせてすまない。 早速、本題に入るとしよう」

 

リカルドもまた敬語はなくタメ口で話す。

 

「忠蔵首相。 まずは君に礼を。 君のおかげで我が国の精鋭達を送り込む事が出来た。これで我々の有利を確保できた。」

 

「気にしないでくれ。 私は君の夢に賛同してる。君が聖杯を持ちかえれば私に利にもなるからな」

 

気にしなくていい、忠蔵はそう告げる。

 

「それにしても聖杯戦争とはな… もう魔術では驚かないつもりだったがこれにはまいった…。

最初、君にそれを聞かされた時は反応に困ったよ

しかもそれが日本で行われる聞いたら…。」

 

忠蔵は当時の事を思い出す。彼は魔術の素養がない一般人だが魔術の存在をある程度は知っていた。だがリカルドに聞かされた聖杯戦争について聞かされた時は心底、驚いた。

 

「それで忠蔵。空港の首尾はどうだ?」

 

「問題ない。すでに冬木市の空港にエージェンシーを多数、送り込んである。

聖杯戦争の参加者が来ればすぐに報告が出来る

まぁ参加すると判明してる奴に限るが…。」

 

「それでいい。 そこからどこに行くかしっかりと監視を頼む

後は我が精鋭達が始末する」

 

「分かった。だが余り派手にやり過ぎないでくれ。 後始末が大変だからな。

民間人の被害も出さないでくれ」

 

「こちらは善処するが、向こうが分からない…。 サーヴァントを強くするために魂食いなどやらかすかも知れん。」

 

魂食い…。 人間を殺しその魂を食らう事によってサーヴァントをステータスを上げる事である。

 

「それは禁止されてる事か?」

 

忠蔵がリカルドに問う。

 

「いや、 神秘の秘匿… つまり魔術師のルールが守っているなら罪に問われない。 監督役の聖堂教会も何もしないだろう」

 

つまりルールを守っていれば、幾らでもやっていいという事だ。胸糞が悪くなる話だが普通の魔術師から見れば何でもない当たり前の事だと以前、カロリーザから聞いた。

 

「もう一つある。英霊の宝具というものは町を消し去る事が可能と聞いたがそれも本当なのか?」

 

「ああ…。 英霊によってはだが、町ひとつ消し飛ばすのは簡単だろうな」

 

英霊の宝具は凄まじい… 比喩でも何でもなく本当に周囲を灰塵化するのだ

 

「ううむ…」

 

忠蔵は腕を組み、ため息をつく。

 

「人がいない深い山奥や無人島でやるならばまだいい…。

だが数万人が住む町でやるとは… 頭が痛くなるな…。」

 

「仕方あるまい。 冬木は世界でもトップレベルの霊脈があるのだ。だからこそアインツベルン・マキリ・遠坂の御三家はここを選んだだろうな…。」

 

冬木の霊脈は規格外だ。さらに魔術協会や聖堂教会など目が届きにくい極東にある。

当時は人がいなかっただろうし、正にうってつけの場所だったのだろう。

だが時が経つにすれ人が段々と住み着き始めて今の都市に至るわけだ。

 

「悔しいが… 私は魔術師ではない。 奴らに対しては全くの無力だ。例え聖杯戦争を中止しろなど言っても連中は聞きはしないだろう… むしろ逆に殺されるかもしれない」

 

「だが唯一の救いは君がこの戦争に参加する事だ。 君なら魔術師共なんぞ敵ではないしな

聖杯を手にすればこの世界は君のものになり、私の目的も達成される。

だから私も裏から君を出来る限り最大限サポートする」

 

「感謝する。この見返りは必ず。」

 

忠蔵はリカルドの野望に賛同する一人だ。 彼の目的はあの「大日本帝国の復活」。

失われたかつての栄光を取り戻す事だ。

こんなものを聞いたらただの時代錯誤な男でしか見られないだろう。

忠蔵首相は夢は狂ってるかもしれない…。だがリカルドはそれを気に入ってた。

この世に生まれた以上、夢は大きく持つのは当然の権利だと思っている。それが野望でも覇道でも…だ。

何より、リカルド自身、世界を手にするのが夢だ。それを叶えるためにこの聖杯戦争に参加している。

 

 

「話を変えるが… リカルド。君はもう英霊… サーヴァントを召還したのか?」

 

「ああ。先月、召喚した」

 

「少し見せてもらってもいいかな…? 英霊に好奇心があってな」

 

「構わない… だが、見たら驚くぞ。

騎士よ、姿を見せてくれ」

 

リカルドは自身のサーヴァントに現れるよう命じる。

瞬間、騎士が姿を現した。

 

騎士の姿を見た途端、リカルド達が最初、驚愕したように忠蔵も目を見開いて驚愕する。

無理もないだろう… リカルドは苦笑する。 正直、誰だって驚くだろう。

何故なら騎士には首がないのだ。

「首無し騎士」それがリカルドが召喚したサーヴァントなのだから。

 

少し落ち着いてきたのか忠道は口を開く。

 

「首無し騎士とは… これでは会話などできないだろう…」

 

「そうでもない。 念話というのか騎士の言葉が頭に浮かぶのだよ

だからコミュニケーションは出来るぞ」

 

騎士は口がないから喋る事は出来ない。 その代わり、念話でリカルドと会話するのだ。

声が聞こえないがリカルドの頭に急に言葉が浮く。

『霊体化する』

そう文字が頭に浮かび上がり騎士は消える。

 

「ふぅ… 今のが英霊か… 何というか途方もない存在感だったぞ…」

 

忠蔵は全身から汗が噴き出ているのが気づく。初めて英霊というのを見たのだ。その圧倒的な存在感に身動きが全く取れなかった。そして騎士の真名を考える。

 

「それで首無し騎士だから… よぉし、当ててやろう。彼の真名はアメリカの都市伝説に出てくるスリーピーホロウのドイツ人傭兵のヘシアンだろう!

どうだ!」

 

忠蔵は得意の顔で解答するが…。

 

「 半分正解だ。だがあの騎士は独立戦争よりもっと古い時代の出身だ」

 

自信満々で答えた忠道だったがリカルドの答えを聞いて少し気落ちする。 しかしリカルドの言葉に引っ掛かりを感じた。

 

「まて。半分正解だと言ったな? つまり彼はヘシアンでもあるがヘシアンではないという事か?」

 

「そう。彼は召喚される際、ほかの伝承に出てくる首無し騎士と融合してしまったらしいのだ。

その中にはそのヘシアンも混ざっている。

なぜそんな事になったのか、私の部下であるカロリーザが言うようには本来、首無し騎士という存在は英霊になる事はないそうだが聖杯が彼を現界させるために他の首無し騎士を融合させて霊基を強化したのではないか?だそうだ」

 

首無し騎士は本来、英霊になる事はない。カロリーザは聖杯が彼を融合させたのではないかと予想したが実際の所、分からないというのが現状だ。

 

「それで真名だがどうも彼にはそれが無いようだ」

 

「真名が…ない?」

 

「彼が言うには遥か忘却の彼方に消えたそうだ」

 

真明がない… それは聖杯戦争ではまずいのでないかと忠蔵は思う。 何故なら戦う相手は恐らく世界に名を馳せた英雄なのだ。 リカルドの英霊はいわば無名の亡霊だ…。果たしてそんな存在で世界に名を馳せた英雄達に太刀打ちできるのか?

ただリカルドの事だ。何らかの対処はしてるかもしれない。

真名は置いて忠蔵はクラスを聞く。

 

「では彼のクラスは何だ? 剣を持っていたからセイバーか?」

 

あの長剣を見れば剣を使うサーヴァントだろう。故にセイバークラスと予想した。

だが…。

 

「いや、違う。 我が騎士のクラスは

 

 

 

アヴェンジャーだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ… 凄いものを見せてもらった。

さて、少し早いが祝杯をあげようじゃないか」

 

忠蔵はテーブルの上に日本酒を置きグラスに中身を注ぎ込む。

 

「それは?」

 

リカルドが問う。

 

「これは日本でも、少数しか作られない高級物だ」

 

「ほう。 ならば頂こう」

 

二人は酒が入ったグラスを持ちそれをカチンと当てる。

 

「「この世界の新しい秩序のため」」

 

「「そして我らの野望の為に」」

 

 

 

 

 

 

 

乾杯




大統領のサーヴァントはアヴェンジャークラスです。
首無し騎士って復讐者の要素とかあると思いそうしました。

中々、原作に入れない… だけど次回で入りたいです。




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四話 監視

モチベーションが落ちていて中々進みませんでした…
相変わらずの駄文ですがどうぞ



東京

一台の車が大勢の警護に囲まれ空港へ向かって走行していた。

 

『では少し間、代わりを頼むぞ。

ペノルティーモの指示を聞いて動いてくれ』

 

「はッ! 閣下の期待に応えて見せます」

 

今日、リカルドはザンディアナ連邦に戻る日だ。車は空港へと向かってる最中だが、車内にはリカルドが電話で通話していた。しかし彼は本物のリカルドではなく彼に扮したフエンテスという男だ。彼はリカルドの身長・体格が似ていた役者で顔を整形して本物そっくりに変えた(彼には10億の金が渡され厳重な守秘義務が課せられている)。 本物のリカルドが聖杯戦争に取り掛かっている間は彼、フエンテスがザンディアナでリカルド・ベルブランコとして活動してくれる。

 

一方、本物のリカルドは今、車で山道を走っていた。

 

「ホテル・アルファまであとどれくらいだ?」

 

「はい。もうじき到着します」

 

「ロドリゼスとカロリーザは?」

 

「お二人とも基地に居ます」

 

走り続ける事、10分… 細道から広い広場に出る。そこには小さいが基地が建てられていた。これこそ聖杯戦争中、リカルド達の拠点となる場所「ホテル・アルファ」である。

基地の中にはザンディアナから送り込まれた精鋭部隊「ジオダット」の兵士達が活動していた。

更にこの基地の周辺は人除けの結界と強力な魔術結界が張っているため一般人はまず近寄る事はない。車が基地に入り、リカルドは車から降りるとロドリゼスとカロリーザそして兵士達が一斉に敬礼する。

 

「諸君、いよいよ聖杯戦争が始まる。 この日の為に我々は一年の時間をかけて備えてきた。

そして日本政府の協力もある。我々は敵と比べて圧倒的な優位に立てていると確信している

この戦争の間、私はザンディアナの大統領ではなく一介の兵士として動く。今から私の事はコマンダンテと呼ぶようにしろ。

我々は必ず聖杯を手にする… 故に諸君の活躍を期待してる。以上だ

 

ザンディアナに栄光を!」

 

「「「「「「「ザンディアナに栄光を!!!!」」」」」」

 

演説を終えたリカルドにカロリーザとロドリゼスが近くによる

 

「首尾の方は?」

 

「はい。ジオダットと魔術部隊はいつでも行動できます」

 

「偵察機の準備もOKだ。使い魔も町中に放っている」

 

「うむ。ご苦労だった。

しかし、一年でよくここまで作り上げたものだ…。

忠蔵には感謝しなければな」

 

この基地の建設には日本政府も一枚噛んでいる。でなければ小規模とは言えここまで作るのは不可能だ。更にザンディアナから大量の武器・弾薬の持ってこれたのも日本政府のおかげだ。

 

「それと閣下。 報告ですが実は昨日、アサシンが遠坂邸を襲撃したのですが遠坂時臣が召喚したと思われるサーヴェントがコレを迎撃しアサシンは脱落しました」

 

「なに? アサシンが脱落したというのか?」

 

「その時の映像もありますがご覧になられますか?」

 

「あとで見せてもらうが… ふむ、アサシンが脱落したという事は暗殺を警戒していたマスター共はこれで動き出すだろうな」

 

アサシンはその名の通り暗殺を主目的とした英霊だ。そのアサシンがいなくなったため暗殺を恐れていたマスター達は安心して動き出すのは間違いないだろう。

 

「こちらも状況に応じて動き出すぞ。二人ともいつでも動けるように準備は済ませておけ

おそらく今夜から各陣営が本格的に動き出すぞ」

 

「分かった」

 

「畏まりました」

 

二人は返事をする。

 

「アヴェンジャー」

 

リカルドがそう言うと自身のサーヴァントである「首無し騎士」が現れる。

 

「いよいよ君の出番だ。我々は最大限サポートする

必ずや私に勝利をもたらしてくれ」

 

リカルドはアヴェンジャーを見る。彼なら必ず期待に応えてくれると信じていた。

アヴェンジャーもまた自身の願いの為、また異形である己に信頼してくれる彼の為に敵を一人残らず倒すと決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬木市。

近年、急激に成長した都市で外国の移民も多い事で有名な都市だ。

そんな冬木市だがに二人の女性が歩いてた。

 

一人は白いコートを着て銀の髪を持ち、赤い目を持った女性

アインツベルンのホムンクルスにして聖杯の運び手でもあるアイリスフィール・アインツベルン。

 

もう一人は金色の髪に翡翠の目をしてダークスーツを着て男装した少女。

彼女こそアインツベルンが召喚した剣の英霊、アルトリア・ペンドラゴン。あのブリテン王国の騎士王「アーサー王」その人である。

 

「ねぇ! セイバー 次はあそこに行きましょう!」

「アイリスフィール 待ってください!」

 

二人は今、冬木市をあちこち見て回っていた。 アイリスフィールは生まれてからずっとアインツベルンの城で過ごしてきた。彼女は本や映像でしか世界を見れなかった。そのため自分の足で歩き、手でも物を触り、目で見て回る事は初めての経験だ。 今まで知識でしか知らなかった彼女は楽しんでいた。

一方、セイバーは彼女をエスコートしていた。

 

そんな二人だったが、道行く人々に視線を釘付けにしていた。 だがそれも当然だ。何しろ彼女達は美しすぎる容姿の持ち主だったのだ。

しかし二人を見つめる者は一般人だけではなかった。

 

「あれが例のアインツベルンだな」

「あぁ 資料に書いてある通りの容姿だ」

 

彼らはザンディアナ連邦の諜報組織に属する者達だ。冬木にはザンディアナの諜報員だけではなく日本の諜報員も活動しており聖杯戦争に参加するマスター達の監視をしている。

 

「よし、リカルド閣下に報告をする。引き続き監視を頼む」

「了解した」

 

そういって一人は報告の為に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜、冬木の埠頭の倉庫街に二騎のサーヴァントが対峙していた。

一騎は長槍と短槍をもった美丈夫。

もう一騎は見えない剣を持ち蒼い装束を身に着けた少女だ。

二騎の戦いに遥か上空で一機の無人偵察機がその戦いをカメラに収めていた。

このカメラは映像だけではなく魔術で音声の拾える優れものだ。

そしてカメラに収められた映像はホテル・アルファの指令室に写される。

 

「凄いな… これが英霊同士の戦いか…。なるほど、人間では間違いなく太刀打ちできない」

 

「はい… まるで巨大な嵐です」

 

二騎の英霊が刃を交えるたびに周囲が破壊されていく。その凄まじさにリカルドとカロリーザは戦慄した。

 

『司令部。 こちらストライク1 配置に着いた。』

 

『こちらストライク2 こちらも配置に着いた』

 

ロドリゼスはチームを率いて倉庫街にいるが彼もまた英霊達の戦いに肝を冷やしてた。

 

「今の所、姿を見せているのはあの女だけか」

 

リカルドは映像に映し出されている人間離れした美しさを持つ銀髪の女を見ていた。

 

「はい。今日の昼間に届けられた情報では名前はアイリスフィール・フォン・アインツベルン。ドイツから遥々この国にやってきたようです」

 

「アインツベルンか… 召喚したサーヴァントはセイバーだな」

 

最優と呼ばれるセイバー。 アインツベルンは当たりを引いたようだ

 

『司令部。今ならセイバーのマスタ―と思われる銀髪の女を撃てるがどうする?』

 

「まだだ。 もう少し待機してくれ」

 

『了解』

 

リカルドの言葉にカロリーザは驚く。

 

「何故です? 司令官。 今ならアインツベルンを仕留められます。 強敵のセイバーが脱落するのですよ」

 

「引っかかるのだ」

 

「えっ?」

 

「サーヴァントに狙われたら幾ら腕が立つ魔術師でもひとたまりもない。 ランサーのマスターが姿を隠しているのはむしろ当然の行動だ。

だがアインツベルンは何故あんな無防備に突っ立ってる? あれでは狙ってくれと言ってるようなものだ」

 

リカルドはどうも違和感が感じていた。 あのアイリスフィールという女はどうしてあんな堂々と姿を晒しているのか? ほかの陣営に自分はセイバーのマスターだと公言してるようなものだ。

セイバーを召還した自信の表れか? ただの目立ちたがりの考えなしか? それとも目立たないといけない理由があるのか。

 

「偵察機を倉庫の上あたりに写してくれ」

 

リカルドは無人偵察機を操作するオペレータに指示を出す。 偵察機のカメラが倉庫の上を映し出すが何もない。

次にカメラはコンテナの上を映すと…

 

「司令官。コンテナの上に誰かがいます。」

 

「ズームしてくれ」

 

コンテナの上に男が狙撃銃を構えていた。

 

「この男は確か… そうだ。 アインツベルンが雇った傭兵、衛宮切嗣だな

そうか…そういう事か。これで分かった」

 

「私にも分かりました。 アイリスフィールとセイバーは()ですね」

 

「そうだ。 敵が彼女らに目を向けている間に奴は背後から奇襲するわけか

そこは我々と同じだな。 さて奴は誰を狙っている?」

 

衛宮切嗣がライフルで何かを狙っているようだ… どうも倉庫の上を見ているようでリカルドはオペレータにもう一度、倉庫の上を映すように指示をするが先ほどと同じく何も映ってなかった。

リカルドはオペレータにある指示をした。

 

「カメラを赤外線に切り替えろ」

 

オペレータは指示通りに映像を赤外線に切り替えると、するとどうだろうか。先ほどは何も映ってなかったのに赤外線に切り替えたら人がバッチリと映っていた。

 

「なるほど… 自分の周囲に幻影の魔術を使っていたようですね…

おそらくあの人物がランサーのマスターの可能性が高いかと」

 

「ふむ。周囲から自分を見えなくしたのはいいが自分の体温まではごまかしてなかったな

ランサーのマスター」

 

魔術師はどうも近代技術や化学を毛嫌いする所がある。魔術は化学なぞに負けないと思い込んでる。だが科学や近代技術は日々進歩しているのだ。現にランサーのマスターが仕掛けた幻影の魔術を破って見せている。

 

「ストライクチーム。

コンテナの上と倉庫の上に敵を発見した。 場所は…」

 

リカルドはストライクチームにランサーのマスターと衛宮切嗣の場所を教える。

 

『ストライク1 ランサーのマスターとコンテナの狙撃手を確認した』

 

『ストライク2 コンテナの上にいる狙撃手を発見したがランサーのマスターは死角になっていて確認できない』

 

「了解した。ストライク1はランサーのマスターを撃て ストライク2は狙撃手だ。 同時に始末しろ」

 

自分の背後を狙ってくる敵は厄介だ。こういった敵は早めに潰して安全を確保しないといけない。リカルドの指令を受け取ったロドリゼスは両チームに合図の開始をする。

 

「よし。1・2・3の合図で撃て。 外すなよ」

 

「了解」

 

「1…」

 

「2…」

 

「3…」

 

撃て と命じようとしたとき突然、司令部から通信が入った。 こんな時になんなのだ!と思いながら通信を聞く。

 

『攻撃中止だ。 クレーンの上にアサシンがいる 繰り返す、クレーンの上にアサシンがいる』

 

ロドリゼスは双眼鏡でクレーンの上を見て戦慄する…。昨日アーチャーによって死んだはずのアサシンが何事もなかったように見下ろしていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり生きていたか… 怪しいと感じていたが…」

 

アサシンがを見つけたのは偶然だった。 偵察機がクレーンの上を映した時、人影があり確認したところ何と遠坂邸で死んだはずアサシンがいたのだ。

 

「おそらくですが… アサシンには分身など作る能力があるのではないでしょうか…? あの時、死んだ見せかけて我々を油断させるための罠だったと…」

 

「そう考えるとアサシンのマスターは遠坂と協力関係だったとしか言えないな」

 

今考えれば遠坂邸の一件は余りにも出来過ぎていた。 気配遮断を持つアサシンをなぜアーチャーは見つける事が出来たのか? まるで最初から来ると分かっていたような感じだった。

 

「確かアサシンのマスターは教会に保護されていたがそいつの名前は?」

 

「言峰綺礼といい今回の聖杯戦争の監督役を務める言峰璃正の一人息子です」

 

「あの代行者か…」

 

言峰綺礼。 遠坂時臣の弟子だったが令呪を授かったことで師と決別したそうだが… なぜ遠坂はアサシンを失った裏切り者を殺さず教会に逃げ込ませたのか? アーチャーに追撃させればいとも容易く始末できたはずなのに関わらずだ。

だがこれも協力関係だったと分かれば納得いく。言峰綺礼に関しては後で考えるとして今は…

 

「あのアサシンをどうするかだ…」

 

アヴェンジャーに始末させようと思ったがおそらく殺してもまた分身を送り込んでくる可能性が高い…

悩むリカルドはある決断をする。

 

「チーム1 チーム2

そこから撤退しC地点に待機だ」

 

『了解。撤退する』

 

リカルドは撤退を指示した。優秀な兵士を失うわけにはいかないからだ。

指示をした時、オペレータから報告が入る。

 

「コマンダンテ! 東方向から何かが接近してきます」

 

それは古代に使われた戦車【チャリオット】だった。それはセイバーとランサーの間に入り、戦車に乗る巨漢が高らかに叫ぶ。

 

『双方! 武器を収めよ。 我が名は征服王イスカンダル!! 此度の聖杯戦争でライダーとして現界した!』

 

そして聖杯戦争では真名は隠さなければならないのに彼は堂々と己の真名を明かした。

 

「…………」

 

一体どこの世界に大切な真名を明かす者がいるのか? カロリーザは呆れて声が出せなかった。

 

「これはこれは、かの征服王が参戦とは… 全く一筋縄ではいかないなこの戦争は」

 

言葉と裏腹にリカルドは笑っていた。

 

聖杯戦争はまた始まったばかりだというのに混沌がますます深まるばかりだった。




全く展開が進んでいません(汗)

文字数は多く書けるようになりましたが…



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五話 埠頭

四か月もほったらかしにして申し訳ありません…。
仕事が忙しかった事と書く気力が湧かなかったのが原因です…。

結構飛ばし気味ですがどうぞ。



イスカンダル。またはアレクサンドロス大王。世界征服をするため小国だったマケドニアを巨大帝国までのし上げた大王だ。まさかの真名を暴露したライダーに呆気に取られる一同の中、ライダーの独走は止まらない。

 

「聖杯に招かれし英雄達よ! 今ここに集うがいい!! それでも顔見せが出来ない臆病者はこの征服王の侮蔑を免れぬものと知れ!!」

 

周囲に響き渡るようにライダーは声高く叫んだ。

 

 

 

ヒヒーン!!!!

 

雄々しい馬の鳴き声が周囲に響いた。倉庫の上から何かが下りてくるのを全員が見た。新たなサーヴァントか…?

全員が警戒し身構える。そして月明かりに照らされて徐々に乱入者の全貌が見えてくる。

黒い毛と赤い目を持つ馬。それに乗るのは騎士だった。全員は顔を見ようとして戦慄した。

 

「なぁ…! く、く、首が…首が…!」

 

「首が…ない…!」

 

ライダーのマスターであるウェイバー・ベルベットとセイバーの仮のマスターであるアイリスフィールはその異形に震えていた。

 

「これはまた… 何とも面妖な奴だのう…」

 

流石のライダーもこればかりは呆気に取られてしまう。

セイバーとランサーもこの不気味な乱入者に冷や汗が流れる。

 

「征服王。 アレには勧誘しないのか?」

 

「かけようにもありゃあ…首がないからのう…」

 

ランサーの冗談を律義に答えるライダー。さてどうしたものかと全員が考える中、新たなサーヴァントが現れる

 

「フン… 王を名乗る不埒者が一夜にして二匹も現れるとな」

 

不機嫌そうな声を出し外灯の上に黄金の鎧を纏う赤い目を持つ男が現れる。遠坂家のサーヴァントでアサシンを倒したアーチャーの英霊だ。

 

「そこまで言うなら名乗ったらどうだ? 貴様も王と名乗るならば自信をもって告げたらいいではないか?」

 

ライダーは黄金の英霊にそう言うと黄金の英霊、アーチャーの真紅の目は怒りに包まれていく…。

 

「この我に問いを投げるか? 我が拝謁の栄を前にしてこの面貌を知らぬというならそのような愚か者なぞ生かしておく価値はない」

 

アーチャーの周りの空間から次々と武器が出てくる。 一目見ればどれこれも伝説級の武器ばかりだった。

それらをライダーに向け今まさに発射されようとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時臣のサーヴァント…! 殺せ…! あのアーチャーを引き裂け! バーサーカー!!」

 

明かりが差さない下水道で一人の男の…間桐雁夜の憎悪が籠った声が轟く。

 

 

 

 

 

 

 

突如、周囲から荒れ狂う魔力の暴風が一か所に集まりそれが徐々に一つの形に変わっていく。

 

「■■■■■!!!!」

 

狂気に呑まれた獣のような荒々しい咆哮が轟く。 間桐雁夜が召喚したサーヴァント「バーサーカー」が乱入した。

 

 

凶獣バーサーカーの登場で倉庫街は混沌が深まる。 何せ今、六騎の英霊が集結しているのだ。 こうなっては迂闊に動けない…。誰も彼もが互いに隙を見せないように神経を張り巡らせる。

 

しかし… その硬直はすぐに途切れた。

 

「狂犬。誰の許しをえて我を見ている? そこの亡霊もだ」

 

動いたのはアーチャーだった。 バーサーカーは兜越しにその赤く不気味に光る眼でアーチャーを凝視し首無し騎士はアーチャーに剣の切っ先を突き付けていた。

 

「せいぜい散りざまで我を楽しませろ そして疾く失せよ。 雑種共」

 

アーチャーから数本の剣・槍がバーサーカーと首無し騎士に向かって解き放たれる。 ただ適当に放たれたものだがその威力は凄まじかった。 コンクリートでできた地面が大きく抉り周囲は粉じんと煙に覆われた。

 

煙が晴れ誰もがバーサーカーとあの首無し騎士は消滅したのではないかと思った。

だがバーサーカーは健在だった。右手にはアーチャーが放った剣を持ち地面には剣と共に放たれた槍が突き刺さっていた。

 

「理性無いというのになんと芸達者な奴よの」

 

「なんて奴だ… 本当にバーサーカーか…?」

 

「一体何が起きたんだ…」

 

ランサーは驚愕しウェイバーは何が起きたのか分からなかった。

 

「なんだ? 見えなかったのか。 奴は最初の一撃を難なくつかみ取りそこから第二撃を防いだのだ」

 

正に神業と言っていいほどの精工な動きだった。狂化で思考が無くなるバーサーカーとは思えない動きだった。

 

「だが、奴はそうでもなかったようだがな」

 

ランサーが目を向けた先には放たれた剣と槍に体を貫かれて落馬し地面に倒れた首無し騎士だった。

ここにいる誰もが首無し騎士は脱落したと思っていた。

 

しかし… 首無し騎士は何のこともなく起き上がった。

 

「えっ…?」

 

誰のつぶやきなのか分からない…。 いや、誰もが目を疑った。

間違いなくアーチャーが放ったのは間違いなく一級とも言える武器だった。 それに体を貫かれて無事なわけがなかった。間違いなく致命傷だったはずだ。

なのに…あの騎士はまるで何ともないように起き上がったのだ。

 

「一体どうなってるの…」

 

「分かりません… アレほどのものに貫かれて無事な訳はないはずです」

 

誰もが困惑している。一体どうなっているのか…。 しかしただ一人、アーチャーは怒りを隠せてなかった。

 

「汚らわしい手で我が宝物をつかみ取る狂犬に我の決定を無視する亡霊が!」

 

先ほどとは更に倍になった宝具がバーサーカーと首無し騎士に殺到する。しかしバーサーカーはそれすらも先ほどと同じように華麗に捌いていき、騎士の方はただ何もせずアーチャーの攻撃を受けながらゆっくりとアーチャーに近づいていく。

 

「一体どうなってんだよ!!あの首無しは! 何であれだけの攻撃を食らっているのに平然してるんだよ!」

 

「むぅう… 恐らく宝具なのかもしれん じゃなければ説明がつかん…」

 

ウェイバーは叫びライダーは唸りながら考察する。一方アーチャーはすっかり頭に血が昇っていた。

 

「おのれ! ならば磨り潰してくれるわ!!」

 

アーチャーの怒りに合わせるように彼の背後から先ほどは比べ物にならない数の宝具が現れる。

だがいくら数を増やしてもバーサーカーは先ほどと同じく次から次へと飛んでくる宝具を捌いていき、首無し騎士は手に持った剣でアーチャーの宝具を叩き落としてる。バーサーカーのように全ては防げないがこちらもまた体が貫かれも平然としアーチャーに向かって前進してる。

 

「あの金ぴか…融通が利かん奴だな。どんなに量を増やしても奴らには効果がないと分からんのか」

 

無駄だというのに同じ事を繰り返すアーチャーの工夫のなさにライダーは呆れていた。

アーチャーもまたバーサーカーと首無し騎士に己の攻撃が通じない事に怒りが燃えていた。ここで引いたら自身のプライドと己の沽券に関わるからだ。

更なる猛攻を繰り出そうとしたその時だった。

 

「ぐッ!」

 

突如アーチャーの顔面に何かが飛来した。それはアーチャーが投擲した戦斧だ。アーチャーはすぐに身をかわすが僅かに遅れた。戦斧はアーチャーの頬を斜めに長く薄く斬って闇に消える。

戦斧を投げたのは首無し騎士だ。更にバーサーカーもアーチャーが乗ってる外灯を奪い取った宝具を投げて切断した。

顔に傷を負ったが切断された外灯から難なくコンクリートの地面に着地したアーチャーだが…その体はワナワナと震えていた。勿論、恐怖だからではなく怒りだ。

 

「痴れ者共が… 天を仰ぎ見るこの我を同じ大地に立たせるばかりかこの貌に傷をつけるか!!!!」

 

アーチャーの背後から空を埋め尽くすほどの宝具が現れた。倉庫街にいる全員が戦慄した…先ほどは完全に手加減していたと理解する

 

「雑種共!! 貴様らの塵ひとつ残さぬと思え!!!」

 

首無し騎士とバーサーカーの絶大なる侮辱に怒り狂うアーチャーの苛烈なる攻撃が始まら…なかった

 

「貴様如きの諫言で我の怒りを収めろというのか時臣…!」

 

都市がある方角に首を向けるアーチャーだったがその顔に怒りと屈辱に塗れてた。おそらく令呪で命令されたのだろう。

不機嫌な表情のアーチャーだが殺意が無くなったのだろう 手を翳すと彼が放った宝具が金色の粒子に変わり消えていった。

 

「雑種共。次までに有象無象を間引いておけ 我と見えるのは真の英雄のみでよい。だが!」

 

アーチャーは怒りを隠さず顔を向けた。そこにいたのは首無し騎士だ

 

「貴様はこの我自ら消し去ってやる! 覚えておけ!!」

 

そう言いアーチャーは霊体化した。

 

「フム どうやらアーチャーのマスターはそう剛毅な者ではなかったようだな」

 

アーチャーは去ったが厄介な存在が二騎もいた。そうアーチャーの攻撃を圧倒的な技量で捌き切ったバーサーカーと攻撃を受けても何ともなかったあの首無し騎士だった。

 

 

 




独裁者の聖杯戦争はまたチラ裏にしました。やっぱりチラ裏の方がふさわしいかと思いまして…


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六話 埠頭②

埠頭編その2です。

原作と展開は変わりませんが投稿優先しました。


アーチャーは去ったが不気味で得体のしれない二騎のサーヴァントが残っていた。そう、バーサーカーと首無し騎士だ。誰もが緊張する… 特に緊張していたのはセイバーだ。なぜなら彼女はランサーとの戦いで右腕に治癒できない傷を負ってしまっている。この場にいる中で不利な状態だ。もしも誰かがセイバーに襲い掛かったら他のサーヴァント達も一斉にセイバーを潰しにかかってくるかもしれない。だからこそ彼女は最大限の警戒をしていた。

そんな中、アーチャーが去ってからユラリと佇んでいたバーサーカーだったが何故かセイバーを凝視していた。そして小さく「■■……■■■■」と何かをつぶやいた瞬間、一目散にセイバーに襲い掛かった!

 

「くっ…!」

 

ガキン!と剣でバーサーカーの攻撃を防いだがいかんせん、ランサーにつけられた傷が響いて防戦一方だった。

驚くべき事にバーサーカーが使っている獲物は先ほどアーチャーが立っていた外灯の鉄柱なのだ。そんな()()()()でかの星の聖剣と打ち合ってる。

 

「なるほどな… 奴が手にした物は何であれ宝具になるということか」

 

ライダーの分析通り、バーサーカーが持ってる鉄柱を見ると鉄柱がどす黒く赤い血管のようなものが浮かんでいる。

さらに言えばそのようなガラクタを手にしてもまるで自分の使い慣れた得物のように扱ってる事であろう。バーサーカーは思考能力をないクラスだがそれを感じさせない洗練された武の極みだった。

一方、セイバーは片腕が封じられている中、必死にバーサーカーの猛撃を防いでいるが心中、焦燥に駆られていた。

今、ここで誰かがバーサーカーに加担すれば間違いなく自分は脱落する。勿論、自分だけなら撤退することが出来るが己のマスターの妻であるアイリスフィールがいる。だからこそセイバーは引くわけにはいかなかった。

 

「でやぁぁ!!!」

 

セイバーは自分に気合を入れてバーサーカーに剣を打ち込む。確かに自分は窮地だ…。 だがこのような危機など自分は何度でも乗り越えてきた。故国の救済、王としての責務、騎士としての誇りをかけて負けるわけにはいかなかった。

動かない片腕を魔力放出で補い、先ほどの防戦一方だったセイバーだったが今度は自分から斬り込んでいく。

セイバーの猛攻撃に今度はバーサーカーが防戦に回った。

 

「はぁっ!!」

 

セイバーは魔力放出から渾身の一撃を放つ バーサーカーはそれを防ぐが大きく跳ね飛ばされる。

 

(隙あり!)

 

僅か一点の隙… セイバーはバーサーカーに一撃を討ちこむために突進する。

 

だが…

 

隙を晒しているのはバーサーカーだけではなかった…。

 

「ッ!」

 

セイバーは咄嗟に剣を前方に突き出し風を出しその反動で急ブレーキを掛ける。

その瞬間、横回転しながら斧が飛んできた。もしもこのまま突進などしてたらセイバーの首は斧によって切断されていただろう。

 

「首無し騎士…!」

 

斧を投げたのはあの首無し騎士だった。そして彼は剣をクルリと回しセイバーに襲い掛かった。

セイバーも迎撃するが首無し騎士の剣の腕はセイバーと互角または匹敵していた。

一撃、一撃が重く早い… 例え両手が使えても苦戦は必須だった。

 

「■■■■■■!!!」

 

「うっぐぅ…!」

 

最悪な事に態勢を立て直したバーサーカーが再びセイバーに襲い掛かる。

只でさえ一対一でも苦戦するというのに二人同時に襲い掛かってきたらいくら最優のセイバーでも敗北は確実だった…。

 

「アイリスフィール… 私が出来るだけ時間稼ぐのでその間に貴方は逃げてください」

 

故にアイリスフィールだけは助けなくては… セイバーも覚悟を決めた。

そしてバーサーカーと首無し騎士は同時にセイバーに襲い掛かる。 セイバーは一秒でも時間を稼ぐために奮起しようとした時だった…。

 

ガキーン!!

 

首無し騎士の剣が弾かれ、バーサーカーが持っていた鉄柱が切断された。

 

「そこまでにしてもらおうぞ バーサーカー! 首無し騎士!」

 

セイバーを救ったのは先ほど命のやり取りを交わしたランサーだった。

 

「そこのセイバーにはこの俺との先約があってな… これ以上、つまらん茶々を入れるようなら俺は黙っていないぞ?」

 

「ランサー…」

 

ランサーを見たセイバーは感極まるものだった。 バーサーカーと首無し騎士と協力して自分を倒す事が出来るはずなのに彼は騎士道に誇り高く奉じていた。

更に言えばランサーに赤の長槍『破魔の紅薔薇』(ゲイ・シャルグ)は宝具に掛かっている魔力を断ち切る事が出来る。つまりバーサーカーとは相性は抜群なのだ。

しかし… そのランサーの行動にイラついていたのは他ならぬランサーのマスターであるケイネスだった。

 

「何をしている ランサー! 今がセイバーを討つ好機ではないか!」

 

何もない空間からケイネスのイラついた怒声が響き渡る。 今なら強敵であるセイバーを脱落させることができるはずなのに、それを無視してセイバーの助太刀をしたのだ。一体、何をかんがえているのか? ケイネスにはランサーの行動が理解できなかった。

 

「このセイバーは! 必ずやこのディルムッドの誇りを懸けて討ち果たします!」

 

この騎士王とは尋常な勝負で勝ちたい。だからこそランサーは声高に叫んだ。

 

「お望みなら先にこの狂戦士と首無しを仕留めてご覧に入れましょう。 故にセイバーとの勝負はどうか尋常に…」

 

「ならぬ! もういい。 令呪をもって命ずるバーサーカーと首無し騎士と協力してセイバーを殺せ」

 

「主よ…!」

 

ランサーの悲痛な声が出る。令呪はサーヴァントに対して出来る絶対命令… これを使われた以上、もはや本人の意志など関係ない。 ランサーの槍はセイバーに襲い掛かる。その顔を屈辱と無念に染まっていた。

 

「くっ…!」

 

「すまん…セイバー…」

 

首無し騎士・バーサーカー・ランサーの三騎に囲まれるセイバー…。 もはや彼女の敗北は確実になった。

 

「アイリスフィール! 早くお逃げを!」

 

「セイバー…!」

 

三騎がセイバーに襲い掛かる。セイバーは最後の抵抗を試みる

しかし…

 

「アァァァァラララライッ!!」

 

地表から稲妻が走った。それはライダーの戦車の疾走だった。ランサーは間一髪で避けたがセイバーに集中してた首無し騎士とバーサーカーは戦車に轢かれてしまった。

 

「■■■■■■……」

 

バーサーカーは唸り声をあげて立ち上がろうとするがダメージが大きいのか立ち上がれずそのまま体がぼやけていきスゥーと消えていった。霊体化して退散したのだろう。

一方、バーサーカーと同じく戦車に轢かれた首無し騎士だが何事もなかったかのように服に着いた埃をパンパンと払いながら立ち上がった。

 

「神牛に踏みつぶされ戦車に轢かれたいうのに何ともないとは… 全く呆れた奴だのう…」

 

『神威の車輪』(ゴルディアス・ホイール)

対軍宝具並の威力があるというのに首無し騎士はそれすらも効かない…。

 

「まぁ黒いのにはご退場してもらったが…」

 

ライダーは空に向けてギロリと睨むと威圧するようにランサーのマスターに問いかける。

 

「ランサーのマスターよ。何処から覗き見てるかは知らんが下衆の手口で騎士の戦いを汚すではない…だが魔術師風情では言っても分からんか…」

 

威圧するかのように含み笑いを見せながら続ける。

 

「ランサーを引かせろ。それでもこいつに恥をかかせるなら余はセイバーに加勢するが… どうする?」

 

「ッツ…!」

 

ライダーの挑発にケイネスは怒りに包まれるが…。

 

「撤退しろ ランサー。 今宵はここまでだ…!」

 

それを聞いたランサーは安堵の息を吐いて得物を下げた。

 

「感謝する征服王…」

 

「なぁに、戦場の華を愛でるはタチでな… それで」

 

ライダーは視線をランサーから首無し騎士に向ける。

 

「貴様はどうする?首無し騎士よ。 暴れたいならこちらも付き合うが?」

 

首無し騎士=アヴェンジャーは考える。この肉体は文字通り不死身だ。戦えば負ける事はないが…同時にライダーを確実に仕留められるかはまた別だった。朝日が昇る前に決着つけられるか分からなかった。

またライダーだけではなくセイバーもこちらに剣を向けている…。二人掛りだと正直、厄介だった。

どうするか悩むアヴェンジャーだったが念話が届く。

 

『アヴェンジャー。我らもここらで引き揚げよう。拠点に戻ってくれ』

 

マスターであるリカルドの指示を受けてアヴェンジャーは撤退を選んだ。指をパチンと鳴らすと彼の愛馬の漆黒の馬が寄ってくる。

アヴェンジャーは馬に跨り手綱を振るうと愛馬は走りだし闇に消えていった。

 

 

 

こうして英霊達の最初の戦いは終わった。誰も彼も皆、強敵だった。そして次なる戦いに備えてつかの間の休息を取るのだった…。

 




埠頭編 終了です。次回から大統領陣営を本格的に動かしていきたいです。

原作キャラを動かす・喋らせるのは難しかったです。特にランサー…
漫画版と小説のzeroを読みながら書いてますがランサーが良くわからないキャラです…。
彼はケイネスに忠誠を誓うと言いながら何故かケイネスに言う事を聞かなかったり自分の感情を優先してないか? 本当にケイネスに忠誠を誓っていたのか? と疑問に思いながら書いてました。


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七話 ホテル・アルファ基地

明けましておめでとうございます。

これからもよろしくお願いします


「アヴェンジャー。 今夜は見事な戦いだった。君を呼んだのは間違いではなかった」

 

夜、リカルドはホテル・アルファ基地に戻ってきたアヴェンジャーを称賛を言葉をかけた

 

「これから会議を行う。君も同席してくれ」

 

ホテル・アルファでリカルド達は作戦会議を始めた。

 

「今夜の戦いで真名が判明したのは

ランサー・ディルムッド・オディナ

セイバー・アーサー・ペンドラゴン

ライダー・アレクサンドロスまたはイスカンダル

の三名です」

 

カロリーザは埠頭の戦いで判明した英雄達の名を上げていく。

 

ディルムッド・オディナ。

ケルト神話の英雄であの大英雄フィン・マックールに仕えた戦士で数々の武勲を立て妖精から女性を魅了する黒子を授けられた英雄である。

 

アレクサンドロス(イスカンダル)

マケドニアの王で若干20歳で王位に付き大帝国のペルシャ帝国を倒し以後エジプト、西インドといった広域の地を征服し、小国だったマケドニアを巨大帝国に築き上げた大英雄である。

 

 

 

アーサー王

 

ブリテン島の伝説の王で名前を知らなくても彼女が持っていた剣は世界中で有名であるあの「エクスカリバー」だ。

当然というべきか最優のセイバークラスで召喚されてステータスも幸運を除けば高ランクだ。間違いなく今回の聖杯戦争の最強の部類に入るだろう。

 

「これは凄い英雄達が召喚されたな…。ランサーはともかくセイバーとライダーは文字通り世界中でその名を知れ渡ってる英雄だぞ。 歴史家がみたら仰天しそうだな」

 

「そうだな… 特にあのアーサー王が女だったなんてだれが予想できたんだろうな。歴史家達は頭抱えるぞ」

 

リカルドは感嘆を声を上げ、ロドリゼスは驚きを混じった声をだす。

 

「ともかく、六騎の中で三騎の真名が分かったのだ。後先の良いスタートと言えるだろう」

 

ライダーは勝手に真名をバラしたが、ランサーとセイバーの真名を知れたことで相手の宝具も分かった。

 

「一番の問題はあのアーチャーだな。 一級レベルの宝具をあんな雨あられと撃ってくるとはとんでもない奴だ。アーチャーの真名はどうにか突き止められないか? カロリーザ。」

 

「現在、情報班が調べていますがまだ時間がかかります。」

 

「そうか」

 

ミサイル並みの威力がある宝具を機関銃如く撃ってくるアーチャーにリカルドは恐怖した。不死身のアヴェンジャーでもアーチャーを倒すのは相当、骨が折れるだろう。だからこそ最優先でアーチャーを始末したかった。

そしてあのアーチャーは特徴があり過ぎる英霊だ。何より王という存在に絶対の自負を持ってる男でプライドも高く慢心もしてる。生前は相当な王だったに違いない。

連邦の情報班はそれらの特徴からアーチャーの真名を調べている。

 

「だがあのバーサーカーは使える。アーチャーの宝具を次々と捌いていったあの技量は見事としか言いようがない。アレは対アーチャーの突破口になるかもしれない」

 

リカルドが目を付けたのはバーサーカーだった。超人的な技量でアーチャーの猛攻を防いだのだ。アーチャーを打倒するためにバーサーカー陣営と協力関係が必要だった

 

「バーサーカーのマスターは誰だ? 協力関係に持ち込みたい」

 

リカルドの質問に答えたのはロドリゼスだった。

 

「それなんだが… マスターは間桐雁夜という男だ。」

 

バーサーカーのマスターの名を聞いてリカルドは耳を疑った。

 

「何だと? あの三流未満のマスターではないか。間違いではないのか?」

 

「使い魔で監視して彼がバーサーカーに指示を出しているのが確認できましたからまず間違いないかと」

 

現在、遠坂と間桐には複数の使い魔が監視しており雁夜が家から出てきた所を遠くから監視・追跡していた。

 

「信じられん… 間桐雁夜は今まで一般人として生きてきた素人だ。それなのに魔力消費が多く制御が難しいバーサーカーを呼び出すなど正気か?」

 

バーサーカーは弱い英霊にパワーアップさせるために狂化を施すクラスなのだがその分、魔力消費が多くなり制御が難しいのだ。過去の聖杯戦争でバーサーカーを呼び出した者は魔力切れで敗退してる。

 

「使い魔で見ていましたが彼は魔術師になるために相当無茶をやったようです。 体内に何かが潜んでいて魔力を使うたびにのたうち回っていました あれではもう長くないでしょう」

 

カロリーザによると半身は麻痺しており皮膚も血の気がなくまるで死人のそれで間桐雁夜は医学的に生きてるのが不思議なくらいのレベルで魔術を使うたびに激痛でのたうち回るなどいつ死んでもおかしくないとの事だった。

 

「おいおい… そんなんでよく聖杯戦争に参加したな… ほっといても間桐は勝手にくたばるじゃないか」

 

カロリーザの報告を聞いてロドリゼスは呆れるしかなかった。

 

「だがかと言ってバーサーカーをそのまま失うのは困る… すぐに会う必要があるな。雁夜は今、どこにいる?」

 

「少々、お待ちを… 彼は今、マンホールから出てきたようですが蓋を閉めるのにかなり手こずっています」

 

カロリーザは使い魔と視覚を同調し雁夜の様子を見る。そこにはマンホールの開け閉めに苦戦してる雁夜がいた。

女性でもすぐに終わる作業が出来ない程、消耗してるようだった。

 

「そんな有様では間桐家に戻るまで相当掛かるだろう。

よし、カロリーザ、部下と共に雁夜のもとへ行け。アヴェンジャも同行させる。 そしてセクター拠点に連れていくのだ」

 

「畏まりました。」

 

リカルドの指示を受けたアヴェンジャ―とカロリーザはすぐに部下と共に雁夜のもとに行った。

 

「さて… 次はロード・エルメロイだな…。奴は今、どこにいる」

 

「ケイネスはハイアットホテルの32階にいて下のフロアを丸ごと貸し切って強大な魔術工房に作り替えている。

突破にするにしても多くの犠牲が出る上に最悪、犠牲を出しただけで終わる可能性が高い」

 

ケイネスは財力を物に言わせて高級ホテルの一フロアを貸し切りそこを工房に作り替えたのだという。

ロードの称号を持つケイネスの工房だ。さぞ強固な物に作り上げているだろう。

 

「使い魔が確認したところ奴はランサーを召喚したようだ」

 

「かのロードはランサーを召喚したか… 」

 

「さらにケイネスは婚約者のソラウ・ヌァザレ・ソフィアリを連れてきてるようだ」

 

「婚約者を連れてきているのか? わざわざ実戦の経験のない足手まといの素人を?」

 

「まぁ大方、婚約者にカッコいい所を見せたかっただろう。」

 

命がけの戦場に普通、婚約者など連れてくるのか? そんな大切な存在を人質に捕らわれたら?もしくは死んでしまったらどうするのか?

ケイネスは行動にリカルドは呆れるしかなかった。

 

「ケイネスの事は分かった。 次は言峰綺礼だ」

 

言峰は脱落と見せかけて教会の安全地帯からアサシンに諜報活動させている。 この基地は厳重な結界が何重に渡って守られているからアサシンと言えど突破は難しい。

とは言えアサシンが脅威なのは事実…。どうにかして言峰・アサシンを始末したい。

 

「無人機を使って教会ごと消し飛ばすというのはどうだ? 聖堂教会は中立を破っているしな… 名分はある」

 

ロドリゼスの案は無人機のミサイル攻撃である。確かにこれなら建物ごと言峰綺礼を始末できる。

 

「良い案だが市内でミサイル攻撃はいくら何でも目立ちすぎる。出来れば綺礼が教会から出てきた所を始末出来ればいいのだが… だが手詰まりになった時はミサイル攻撃をしよう」

 

ミサイル攻撃は手っ取り早いのだが如何せん大きく目立ちすぎる上に平和な国である日本で行われたら忠蔵首相も後始末が大変だろう。

 

「アーチャー討伐を優先とし他の連中は動き方次第で順序片付けていく… この方面で行こう」

 

「部下はいつでも動けるようにしておく。」

 

「頼むぞ」

 

ロドリゼスも会議室に出ていく。

一人残されたリカルドは懐から携帯電話を取り出し電話を掛ける。

 

「ヴァル。私だ ()()()()()()()()()()()()()()()

 

『はい閣下。すでに5()0()()は終わっています。 あと一日あれば我らの制御下に置けます』

 

「そうか。御三家の連中には気づかれるな」

 

『言われるまでもありません。 朗報をお待ちください閣下』

 

リカルドは通話を切り椅子から立ち窓に映る夜空を見る。

 

(もうじき私の手に聖杯が手に入る… 最強の力が私の物になる)

 

他陣営のマスター達よ、覚悟をするがいい…。 我らザンディアナ連邦軍はお前達を叩き潰す。

 




大統領陣営はアーチャーを最優先で倒す事に決めました。実際アーチャーは凄い強い英霊ですから…。

12月29日に「英霊剣豪七番勝負」をプレイしていたんですがめっちゃキツかった…
特に黒縄地獄と衆合地獄が文字通り地獄でした…。

いよいよFGO第二部が始まりましたね。新しいオープニングを見てテンション上がりまくりです。


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八話 同盟

お待たせしました。相変わらず酷い文章ですがどうぞ。


深夜。人気もなくどこの家も電気を消して就寝しており外灯だけが辺りを照らしている。その中で一人の男が壁に手をつけながら歩いていた。パーカーを深くかぶって息を苦しく吐き、口から血が流れている。左手はダラリと垂れ下がり左足はズルズルと引きずっていた。顔は血が通ってない死人にような肌で片方の眼球は白く濁り光を宿しておらず顔の半分はマヒしているのか唇が半分空いていた。その男、間桐雁夜は拠点である実家を目指して歩いていた。

 

(くそ…! たった一回の戦いでこの有様か…)

 

雁夜は歩みを止め先刻の戦いを思い出す。 アーチャーにバーサーカーをぶつけて撤退させたのは良かったがバーサーカーが突如、暴走してセイバーに襲い掛かったせいで体内にいる刻印蟲が躰を蝕み始めた。あの時、ライダーがバーサーカーを攻撃していなければ雁夜は確実に死んでいただろう。

 

(だが聖杯を手にするまで俺は死ぬわけにはいかない…!)

 

雁夜は聖杯を絶対に手にしなければいけなかった。聖杯を手にし大切な思い人の子を地獄から助け出さなければいけないのだ。そうして雁夜は再び歩き出そうとした時…。

 

「使い魔で見ていましたが直に見ると本当に酷い有様ですね。間桐雁夜さん」

 

後ろから女の声が聞こえた。雁夜はすぐに後ろ振り向くとそこに数人の男を引き連れた女性が立っていた。

 

「だ、誰だ! どうして俺の名を!!」

 

雁夜は叫び、警戒する。聖杯戦争の関係者か? どうする!?

 

「失礼しました。自己紹介をしましょう。私はカロリーザ・クエンスと言います。

後ろにいるのは私の部下です。 私達は貴方と戦いに来たわけではありません」

 

カロリーザは手を上げ戦う意思はないと見せる。

 

「戦いに来た訳じゃないのなら俺になんの用だ?」

 

雁夜は警戒しながら問う。

 

「率直に言えば貴方と協力関係を結びたいのです」

 

「協力…? 同盟を結びたいと言うのか?」

 

「はい。」

 

雁夜は目の前の女に警戒から疑問が湧いていく。なぜ自分なのだ? その目的は? その真意はなんなのか?

 

「しかし、ここではなんですから一旦、場所を変えませんか? 安心してください。先ほど言ったように我々は貴方を害を与える気はありません」

 

カロリーザはにこやかに笑みを浮かべるが雁夜は信用できなかった。

 

「ふざけるな…! そう言って俺を殺す気なんだろう!」

 

雁夜はバーサーカーを実体化させようとしたがそれより早くカロリーザの前にアヴェンジャーが実体化し剣を抜く。

 

「なっ!首無し騎士…!」

 

「バーサーカーを実体化させますか? その体が問題ないというのならどうぞ」

 

「うっ…」

 

今、雁夜は埠頭の戦いで酷く消耗している。バーサーカーを実体化させてもすぐに魔力切れを起こして終わりだ。

または体内の刻印蟲に躰を食いつくされて絶命するかのどちらかだ…。

さらに言えばバーサーカーはライダーによって大ダメージを負っているためまともな戦いにもならないだろう。

手詰まりだった…。

 

「分かった… 付いていけばいいんだろう」

 

「ありがとうございます ではこちらへ。」

 

カロリーザに言われるまま黒いバンに乗り込む雁夜。

 

「申し訳ございませんが目隠しさせてもらいます。」

 

目に布を巻かれ何も見えない中、車が走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走り続けて30分は経つ頃、車がゆっくりとスピードを落としていき停車する。

雁夜は目隠しされたまま車を降りカロリーザの部下達に引っ張られるように歩かされた。ガラガラと門が開く音が聞こえる。どこか建物に入ったのか外の空気とはまた違う空気を感じる。そこからほんの数分は歩いただろうか?

急に歩みが止まり目隠しの布を外される。視界が自由になって雁夜は辺りを見渡す。そこはそれなりに広く上と下はコンクリートで出来ていて窓は一切なかった。おそらく地下室だろう。部屋の中央には椅子とテーブルがありテレビが設置されていた。

 

「どうぞお座りくいださい」

 

カロリーザに言われるまま椅子に座る雁夜。カロリーザの部下達はテレビの横にある機械を構っていた。

 

「準備ができました」

 

部下の男性はカロリーザにそう言い。

 

「始めて」

 

「はっ」

 

男がスイッチを押すとテレビが付き画面にマスクをかぶった男性が映し出された。

 

「司令官。間桐雁夜様をお連れしまいした」

 

『ご苦労だった。

始めまして間桐雁夜。 このような所に連れてきて申し訳ない。本来なら直に会って話をしたかったのだが画面越しで話をする事を許してほしい」

 

男は雁夜にそう謝罪した。

 

「お前は誰なんだ…? 目的は何なんだ?」

 

意を決して雁夜は画面の男に話しかけた。

 

『まず自己紹介をしよう。私の事は()()()()()()を呼んでくれ。 首無し騎士…アヴェンジャーのマスターだ。そして目的はカロリーザから聞いていると思うが君と同盟を結びたい』

 

「どうして俺と手を組みたいんだ?」

 

『あの黄金のアーチャーを倒すためだ。君も知ってると思うがアレは間違いなく今回の聖杯戦争に於ける最強のサーヴァントだ。 何しろあのギルガメッシュ王だからな。君も名前ぐらいは聞いたことがあるだろう』

 

アーチャーの真名を聞かされた雁夜は驚愕した。まさかあのアーチャーはそんな大英雄だったとは…。

 

『君のバーサーカーは強力な英霊だがこのまま挑んでも間違いなく負けるぞ。断言してもいい』

 

「そんなこと…!」

 

そんなことはない!と叫びたかったがあのアーチャーがあのギルガメッシュ王だとするならそうは言えなかった。今思えば埠頭での戦いでは自分は本当に勝ったのか? 冷静に考えればアーチャーは去らずあのまま戦っていたら間違いなく自分は蟲達に食いつくされて死んでいた…。あの時、アーチャーは全力ではなかっただろうし、さらにひとつのダメージも負ってない。対し自分は文字通り死にかける程の消耗してた…。

バーサーカーだってもしもアーチャーが本気をだして星の数ほどの武器で攻撃してきたならいくら神業の等しい技量をもつバーサーカーでも捌き切るのは無理だろう。

はっきり言ってあの時は見逃されただけだ。アーチャーから見ればバーサーカーはいつでも始末できる存在なのだ。

 

「ッ…!」

 

雁夜は歯ぎしりする。画面越しの男、コマンダンテの言う通りこのまま一人で挑んでも確実に負ける。アーチャーを倒すのには他の陣営の協力が必要だ。そう必要なのだが… 懸念がある。

 

「あんたの言う通り、俺だけじゃ時臣を…アーチャーを倒すの無理だ…。あんたのサーヴァントと協力すれば勝てるかもしれない。だけど…。」

 

『アーチャーを倒したら自分は用済みとして消されると言いたいのかな?』

 

「ッ…! そうだ…。」

 

雁夜の懸念はソレだった。仮に協力してアーチャーを倒したらすぐさま彼らは自分を殺す気なのではないかと疑っていた。聖杯戦争は最後の一組になるまで潰し合う儀式だ。共通の敵がいなくなれば最早、互いに用はない… 即座に殺し合う関係になるのだ。

 

「その事は心配しなくていい。 我々に敵対しないかぎり君に危害を加えないと誓おう。どうしても心配ならば()()()()()()を使ってもいい」

 

「自己強制証明…? なんだそれは…」

 

魔術世界に疎い雁夜は分からないようだ。そばにいたカロリーザは雁夜に説明する。

 

「魔術師達が使う呪術契約です。分かりやすく言うと決して違約不可能な取り決めを出来る代物で貴方を【殺す事を禁じる】と契約するとコマンダンテは()()()()()()()()()()()()()()。さらに例え命をさしだしても、次代に継承された魔術刻印がある限り、死後の魂すらも束縛されます。」

 

とんでもない代物だ…。だがこれがあれば自分は殺される事はないという事だ。雁夜が安心してるとコマンダンテはさらに驚愕の事を告げる。

 

『そして聖杯だが手に入ったなら()()()()()。私には必要がないものだからな。』

 

「なっ!!」

 

コマンダンテの発せられたとんでもない言葉に雁夜は椅子から起き上がり目を丸くしてた。今、この男は何て言った?理解ができない。聖杯戦争に参加してるのなら目的は聖杯のハズだ! なのにこの男は自分に譲ると言ったのだ。

 

「ま、待て! あんた達は聖杯を手に入れてる為にこの儀式に参加したんだろう! なのに…なのにどうして俺に譲るんだ! い、いや…確かに俺は聖杯を必ず手に入れなけばいけないが…。」

 

『言った通りの意味だ。 ()()()()()()()()。私の目的は別の物だ。』

 

雁夜は考える。雁夜は魔術師としての実力は三流に近いと言っていい。 故に協力者が欲しいのは事実…。そして聖杯をこちらに譲るという条件付きだ。はっきり言えばこの同盟を結ぶのはリスクはあるがメリットは破格だ。

 

『どうする? 我々と協力すればアーチャーを倒せる。勿論、アーチャーのマスターもだ』

 

アーチャーのマスター…!

 

(遠坂時臣…!! 桜ちゃんを地獄に追いやり葵さんに涙を流させたあの人でなしに引導を渡さなければならない!)

 

雁夜の心に潜む憎悪の炎がふつふつ燃え上がる。そうだ…あの男だけは許してはならない! 迷ってる場合じゃない、危険はあるだろうが構うものか!

 

「わかった。 俺はあんた達と()()()()。」

 

迷いを振り切り、間桐雁夜はコマンダンテと同盟を結ぶ事を宣言した。

 

『結構。 今から我々は盟友だ。互いの目的の為にこの戦争に勝利しよう』

 

「他のマスター共はあんた達に任せる。ただし、アーチャーのマスター、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() 奴は俺自身の手で殺す…!。それだけは絶対に譲れない」

 

憎悪も滾る眼を見せながら雁夜はコマンダンテに言った。

 

『君は随分と遠坂時臣に執着してるな。 彼とは何があったのか?』

 

すると雁夜の貌は激しい憎悪に塗れていく…。

 

「そうだ…! アイツは葵さんに悲しませ、桜ちゃんを間桐に売り飛ばしてあの子を絶望に叩き落したんだ!

あぁそうだ…あの時、彼女は微笑んでいた。だから身を引いたんだ! だから敗北を受け入れた!なのに…!なのにあの男は…!時臣は!!」

 

一度、吐き出した憎悪の言葉が次々と出されていく。雁夜は怨嗟の言葉をブツブツと喋り出していた。

 

(相当なものだな。 それに女絡みときた。まぁ利用出来ればそれでいいが)

 

マスクの男コマンダンテと名乗っていたリカルドはそんな雁夜の様子を静かに見つめていた。

 

『君が遠坂に対して強い憎しみは分かった。遠坂時臣だけは君の前に連れてこよう。

ただ資料を見た限り、遠坂時臣は一流の魔術師でそれなりの抵抗はされるだろう。安全の為に多少は傷みつけなければいけないが構わないか?』

 

「生きていればそれでいい。」

 

『分かった。 では早速、これからの事を話そうか』

 

リカルドはこれからの方針を話すことにした。

 

『まず、君の肉体を何とかしなければいけないな…。 どうも君は魔力を使うたびに死にかけるそうじゃないか。

大事な時に突然、あの世に逝かれるというのは困る』

 

最初の問題は雁夜に躰だった。間桐雁夜はいつ死んでもおかしくない状態でそんな有様で敵と戦ってる途中でポックリ逝ってしまうのはリカルドからすれば堪ったものではない。

 

「それは分かっているが…だが俺はこうでもしなければマスターになれなかったんだ…。」

 

雁夜自身もそれを分かっているがどうしようもなかった。何しろ魔術に嫌悪して家を飛び出したので当然ながら魔術の鍛錬などしてこなかったのだ。だから体内に刻印虫という魔蟲を入れ魔術回路を拡張し肉体の崩壊という代償にマスターの資格を得たというのだ。

 

『なんと無茶をしたものだ。とにかくまずは君の治療からだな』

 

「無理だ…もうこの躰は死んでいる。治せないんだ…。」

 

『安心したまえ。私は治癒に特化した魔術師を多く連れてきている。そこにいるカロリーザもそうだ。君の躰は通常の医療だけでは無理だ。だがそこに魔術を加えれば治せる。』

 

「ほ、本当なのか…? 本当にこの躰が治るのか?」

 

もう長生きしようなど捨てていた雁夜だがコマンダンテの言葉に揺れ動く。

 

「完全とまではいきませんが少なくとも人並みに生きられる躰に戻してあげます」

 

カロリーザはそう宣言した。

それを聞いた雁夜は決心した。今の躰ではいつ死んでもおかしくない。怨敵に引導を渡すまで死ぬわけにはいかない。

 

「俺を躰を治してほしい あんた達の言う事も聞く。」

 

雁夜は頭を下げ頼んだ。

 

『ではカロリーザ、あとは頼んだぞ。それでは間桐雁夜、近いうちにまた会おう』

 

モニターに電源が切れ画面は真っ黒になった。

 

「では間桐さん 早速、移動しましょう」

 

カロリーザに連れていかれ雁夜は部屋を後にする。

 

こうしてリカルドはバーサーカー陣営と同盟を結ぶ事に成功した。

 

 

 

 




大統領陣営は無事に間桐雁夜と同盟する事が出来ました。

※間桐雁夜

小説とアニメを見ていて、聖杯戦争中の彼って桜を救うというより遠坂時臣に引導を渡したいという考えが強いって感じがします。
原作で埠頭の際、バーサーカーを出す必要なんてなかった思うんです。運よくバーサーカーの技量が凄かったから良かったけど、もしアーチャーが全方位から発射してきたからいくらバーサーカーでも脱落してたとじゃないかと…。よしんぼ防げても雁夜が持たなかったと思いますし…。

キャスターが巨大な海魔を召喚して他陣営達が必死に何とかしようとしてるのに彼だけアーチャー陣営に特攻していて「あんたはアレが(巨大海魔)見えないのか!? 空気読めよ!」って言葉が出ちゃいましたね…w

なんというか間桐雁夜は考えなしのイメージがあるんですね…。
雁夜好きの人は気分が害したら申し訳ありません…。

次回も気長にお待ちください


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九話 襲撃

今回は時列は大統領が雁夜と同盟について話し合ってる辺りです


埠頭での戦いを終えてそう間もない頃、セイバーの真のマスターである衛宮切嗣はランサーのマスターのケイネスの始末するために彼が宿泊してる冬木ハイワットホテルという高級ホテルに赴いた。 ケイネスの工房は正攻法で挑めばまさしく難攻不落の等しいモノだ。 しかし衛宮切嗣は通常の魔術師ではない。故に正攻法で挑むなぞありえない。

まず切嗣は部下の舞弥にケイネスの監視を頼み、自分はホテルでボヤ騒ぎを起こしホテルの宿泊客をケイネス以外の全員を追い出した。そこからホテルを()()()()したのである。

 

ホテルが瓦礫の山に変わり果てた事を見届けた切嗣はすぐさまその場を後にした。

部下の舞弥がアサシンのマスター・言峰綺礼に襲われるというアクシデントがあったが何とかその場を切り抜けた。

その後、舞弥と共に拠点であるアインツベルン城に向かって車を走らせていた時だった。

後ろから猛スピードで追いかけて来る車が現れそこから軍用ライフルを撃ってきたのである。

 

前を走る車の窓からセイバーの真のマスターである衛宮切嗣が身を出して後方から追撃してくる車二台に向けて拳銃を発砲する。しかし二台の車は防弾加工しているのか車体に穴をあける事が出来ない。

そして仕返しとばかりに数人の男達が車の窓やサンルーフから身を出し軍用ライフルである「FN FALライフル」と「M16ライフル」を発砲する。

 

「捕まって下さい!」

 

車がライフル弾で穴だらけになりながらも運転手の舞弥は車を更に加速して敵から距離を取ろうとする。

しかし相手もスピードを上げ喰いついてくる。さらにライフルの銃撃に危機に陥っていく。

 

「くそ! 奴らは何者なんだ!」

 

切嗣は悪態をついた。 まさか自分達以外に近代兵器を持ち込んでくる者達がいるとは…。

応戦するが如何せん武器が貧弱だった…。拳銃と軍用ライフルとは火力が違う。人数も向こうのが上だ。

このままだとやられる… 令呪でセイバーを呼ぶべきかと思ったが、そうなるとアイリスフィールが孤立してしまう。彼女もまた自分達と同じ敵に襲撃されてるかもしれないのだ。

切嗣は彼女とセイバーを囮にして敵を不意打ちする作戦を立てていた。確かにこの作戦なら敵を背後から襲撃するのにはもってこいだろう。更に隠密のために切嗣は部下の舞弥の二人で行動していたのだがこのように多人数で攻撃されてしまうと不利になってしまう。ここにきて作戦が裏目に出てしまった…。

 

「なんだ…? 奴らはどうして追ってこない?」

 

何とか打開策を考えていた切嗣だったがここにきて敵が襲撃者達が車のスピードを落としていった。

自分達はフルスピードで走ってるため、みるみると敵との距離が離れていった。

 

「何かあったのでしょうか…?」

 

「分からない… だが油断はできない」

 

相手の不可解な動きに不気味に感じる切嗣と舞弥。

しばらく走り続け二人が乗る車はトンネルに入った。後ろを振り返ると敵は姿はない。

どうやら振り切ったようだ。ほんの少しだが緊張がほぐれて躰を休める事ができた。

 

「連中は何者だったのでしょう?」

 

「恐らくだが奴らは傭兵だろう。アインツベルンが僕を雇ったように誰かが連中を雇ったんだ。問題は誰かかだ…。」

 

敵は自分達の作戦に気付いていたのだろう。あっという間に襲い掛かってきたのだから待ち伏せもしていたはずだ。

 

厄介な事になった…。切嗣は愚痴る。

切嗣は魔術師の裏をかく事に特化してる。魔術師が嫌う銃器類を使うのもその理由のひとつだ。魔術師相手ならこの戦法はとても有効なのだが銃器や近代機器を使ってくる、つまり現代戦に通じてる相手だとその戦法があまり通用しないのだ…。更に自分の切り札の礼装は魔術師相手には絶大な効果があるのだが先ほど敵のように銃器を中心に攻撃してくる相手だとそれも効果がない。そういった相手だと自分のアドバンテージは生かせない為に不利になりやすいのだ。

 

「作戦の練り直しが必要だ…。とにかくアイリとセイバーと合流しよう」

 

「はい。アインツベルン城へ急ぎましょう。」

 

舞弥は拠点であるアインツベルン城を向けてアクセルを踏んだ。トンネルの出口が見えた。

なんの異常もなくトンネルを出ると突如、風を切り裂くような爆音が二人の耳に響いた。

一体何事なのかと切嗣と舞弥は空を見る。そしてそれを見た二人の表情が変わる。

 

「そ…んな…」

 

「馬鹿な…ありえない…」

 

驚愕から絶望の表情に変わる切嗣と舞弥…。

切嗣は数多くの戦場へ出向き舞弥は彼の部下として共に戦場へ出向いてきた。

だからこそ二人は()()()()()()()()()()()()()()()()

二人が見えた物…それは…

 

 

AH-64 アパッチ攻撃ヘリだった…。




どうもしばらくぶりに投稿しました。
とはいえ文字数はたったの1800文字程度で展開は飛ばし気味です…




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十話 襲撃②

お待たせしました


AH-64 アパッチ。

 

アメリカ合衆国が開発した攻撃ヘリで幾多の実戦経験を得ている兵器だ。

強力なチェーンガンとロケット弾を武装しており戦車すら破壊できる。当然、人間など一瞬に肉片に変えてしまう。

そんな恐ろしい兵器が今、自分達に向けられてる事を理解した切嗣と舞弥は恐怖するしかなかった。

 

「そんな…ありえません…。紛争地ならともかくこの平和の国であんな物が…」

 

舞弥は震えながらぼやいていた。とにかくあの攻撃ヘリから逃れるためにアクセルを思いきり踏み込み車を猛スピードで走り出した。

 

「一体どうなってるんだ! あんなとんでもない兵器をどこからもってきたんだというんだ!」

 

この時ばかりは切嗣も冷静ではいられなかった。彼自身あの攻撃ヘリの恐ろしさ理解していたからだ。

そして先ほど襲撃者達が引いていったのはこのためだったのだとようやく理解した

 

とにかくあまりの予想外な出来事に二人は混乱するしかなかった。

切嗣はこの聖杯戦争に備えて数多くの銃器や爆薬を揃えていたが相手はそれを上回るものだった。というよりこの日本で攻撃ヘリを出してくるなど誰が予想できるのか…。

 

そしてアパッチ攻撃ヘリは狙いを定め二人が乗る車にチェーンガンを撃ってきた。放たれる弾丸はコンクリートの地面を紙を引き裂くように抉っていく…。アパッチヘリから放たれる死の(弾丸)を恐怖しながら舞弥はそれを四苦八苦しながら躱していく。

一発一発が恐ろしい威力がある弾丸が高速で放たれるのだ。舞弥はかつてある紛争地に居た時、民兵の集団があのチェーンガンによってトラックと装甲車ごと粉々になったのを見たことがある。

連続で当たったらなんの強化もしてないこの車など自分らもろとも細切れにされてしまうだろう…。

 

切嗣は何も出来なかった。というよりこちらの武装は9mm弾の拳銃しかないのだ。当たり前ながらこんなものであの攻撃ヘリに通用するわけがない…。あのヘリを撃ち落とすには地対空ミサイルやロケットランチャーや対空砲なければ無理だ。勿論、そんな強力な武器などこの冬木には用意はしてない…。

 

(どうすればいい…! このままだと確実にやられる…。 なんとかあのヘリの視界から消えなければ!)

 

切嗣は必死に打開策を考える。

 

セイバーは呼ぶべきかもしれないが先ほど考えた通りそれをしたらアイリスフィールが孤立してしまう。彼女はこの聖杯戦争で重要な人物でありキーパーソンなのだ。敵に奪われる、または殺害されたらお終いなのだ。

 

Uターンしてトンネルに戻るか? トンネルに入ればヘリの攻撃を凌げるかもしれない…。 だがそのトンネルに敵が待ち構えていたら? そうなったら切嗣達は挟み撃ちにされて終わりだ…。それ以前にUターンという隙を敵が見逃すはずがない… ターンする隙にあの機銃でバラバラにされるか またはロケット砲で木端微塵にされるかのどちらかだ。

 

考えほんの数秒で多くの案を考えては消えていく…。切嗣はもう一度、辺りを見渡した。一方は土砂崩れを防ぐためにコンクリートに補強された斜面。もう一方はガードレールが敷かれた下に降りる斜面で奥には森林が広がってる。そこで切嗣は一か八かの一つの考えが思いついた。

 

「舞弥! ガードレールを突き破って森林に入るんだ!」

 

「はい!」

 

切嗣の考えたのは下に降りる斜面を降りてその先の森林に入り森に入ってヘリの視界から消える事だった。

舞弥は切嗣の指示に戸惑いなく従う。思いきりアクセルを踏み込めガードレールへ向かって突っ込む。ヘリの銃撃の受けたせいかガードレールは脆くなっており簡単に突き破る事が出来た。

限界までアクセルを踏んだため車はかなりのスピードになっており突き破ると大きく空を飛び落下していく…。

そして地面タイヤが付いた途端、凄まじい衝撃が二人を襲う…。

舞弥は大きくズレるタイヤをハンドルで必死に軌道修正しながら森へ突っ込んでいった。

そして大きな爆発が起きた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「爆発だ ターゲットは確認できるか?」

 

アパッチヘリを操縦するパイロットは副操縦士に聞く。

 

「木々がジャマで良く見えない… 赤外線でも車の炎で判別しづらい」

 

「了解した。 ストライクチーム応答願います」

 

『どうした? 奴らを仕留めたのか?』

 

「ターゲットは森林に突っ込み車は爆発して炎上してるがターゲットは生死が確認できない」

 

『そうか。ホーク1は基地に帰還しろ。後はこちらが引き受ける。ご苦労だった』

 

「了解。ホーク1はこれより基地に帰還する」

 

アパッチヘリは切嗣達に捜索を止めどこかへ去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリが去ってから少し経った後

 

二台の車が現れ中から武装した兵士が現れた。

 

「陣形を崩さず慎重に行動しろ。 まだ近くに居るかもしれんからな…」

 

兵士達に指示をする男、ロドリゼスは崖の下から爆発し炎上してる車を見る。

 

「まさか、飛び降りるとは…な。 さすがに一筋縄では行かないか」

 

ヘリから逃れるためにガードレールを突き破って飛び降りるとはロドリゼスも驚きを隠せなかった。

 

少し時間が経ち、無線機から通信が入る。

 

『隊長。車内に死体はありません。辺りも捜索してますが人影は見当たりません』

 

「そうか。 もう少し探索を続けてくれ」

 

『了解』

 

(おそらく奴らはもうすでに逃げているだろう。ここに来るまで少し時間がかかったからな)

 

「失礼します隊長。冬木警察署長からお電話です」

 

思案してる中、部下が携帯電話をロドリゼスの前に持ってきてそれを受け取り耳に当てる。

 

「変わりました。Rです」

 

『Mr.R。私だ。すぐにそこから離れた方がいい。部下がそちらに向かっている。あと十五分そこらで到着する』

 

「そうですか。感謝します。

総員、まもなく警察がここに来る。捜索は中止し急いで撤収しろ」

 

ロドリゼスは部下達に撤収の指示を出した。今、警察と鉢合わす訳にはいかない。撤収の指示を聞いた兵士達は急いで車に戻り車を発進させた。

 

「今日はここまでだ。我々も基地に帰還するぞ」

 

ロドリゼスは基地の帰還を命じた。

 

車内でロドリゼスは再び電話の相手と会話を始める。

 

『それでMr.R。例の相手は始末出来ましたかな?』

 

「いいえ…恐らく逃げられました。ヘリまで出したというのにとんだ失態ですよ」

 

『そうか… ただ我々も通報を受けたからには動かざるにはいかないのでね。そこは分かってもらいたい』

 

「構いません。 あなた方に協力にコマンダンテを初め我々は深い感謝をしています。」

 

『いやいや…首相直々に命令だからな。冬木警察は連邦の勝利のために全力を尽くそう』

 

『それと報告だが君たちの情報どおり【HOTEL冬木】の703号室から大量の銃器と弾薬および爆薬が見つかった。

あとで資料を送るが部屋を借りた女は【久宇舞弥】という女で監視カメラからも衛宮切嗣がその部屋に出入りしてるのも確認できた。明日には奴らは冬木市には歩く事は出来ないはずだ』

 

 

HOTEL冬木の703号室に武器商人が取引に来てる

 

その通報を受けた冬木警察だったが当初は半信半疑だったが署長の迅速な命令でホテルに大勢の警察官に完全武装した特殊部隊や機動隊がホテルを囲んだ。折しも高級ホテルが爆破される事件が起きたばかりで現場はかなりの緊張に包まれた。

そして特殊部隊は部屋に突入。武器商人はいなかったが室内から大量に武器弾薬や爆薬が見つかった。

署長はホテル爆破事件で衛宮切嗣と久宇舞弥の二人が関与してる可能性が高いと発表し二人を緊急指名手配した。

 

『衛宮切嗣だけではなく他のマスターの監視を続けている。何があったらすぐにそちらへ報告する

それでは失礼する。コマンダンテによろしく。」

 

プツリと電話が切れる。

ロドリゼスはふぅと息を吐き出した。

 

(指名手配か… 今夜は奴を仕留められなかったがこれで大幅に行動が制限できた。 リカルドは間桐と同盟を結べただろうか?)

 

考えてると眠気を感じてきたロドリゼスは部下に少し眠ると言い瞼を閉じた。




戦闘シーンはやっぱ難しいです…。イメージを文字にするのって大変…。

ケリィとマウヤ 二人仲良く指名手配され日本中で人気者になりました。



[署長]
名前は大滝敏孝{おおたき としたか} 42歳

冬木警察の署長を務める男。 首相である忠蔵とは同じ学校で学んでいた事があり卒業した後でも連絡とり合っている仲である。
今回の聖杯戦争では友人である忠蔵首相の願いで連邦の勝利の為に動いてる。

ちなみにいつか冬木市の市長になり政界進出を夢見ている。




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十一話 思惑

間桐家と同盟を結んで一日経った。

連邦陣営は小さな廃ビルで現状の確認と作戦会議を行っていた。

 

「バーサーカーの制御はまだ掛るのか?」

 

リカルドはカロリーザに質問する。

 

「サーヴァントの完全制御はまだ掛ります。もう少しお時間を下さい。」

 

カロリーザは気まずそうに答える。 リカルドは少し息を吐いて腕を組んだ。

間桐雁夜には秘密にリカルドはバーサーカーの支配下に置くためにカロリーザと魔術師チームに制御を急がしていた。

バーサーカーは血に飢えた獣同然だが支配下に置ければこちらの勝利の可能性がグンと上がるからだ。

もとより間桐雁夜など期待してない。戦いの素人で私怨ですぐ暴走する可能性が高いからだ。

だがバーサーカーを現界させておくための依り代として利用価値があった。

勿論、聖杯という報酬は渡すつもりだ。

 

「今の所、脱落者はまだ出てないか。」

 

「はい。埠頭以来、大きな戦いはなくどの陣営も拠点に籠り様子を伺っているのでしょう」

 

埠頭での戦いが終わって一日は経つが以前、どの陣営も動いていなかった。 セイバー陣営のマスターである衛宮切嗣はランサー陣営を潰すためにアレコレ動いていたが昨晩、連邦軍が襲撃を掛けたが途中、邪魔が入り死体などは確認できなかったという報告を受けていた。ただ連邦陣営の協力者である冬木警察の署長の指示で衛宮は部下らしき女性とともに指名手配されニュースなどでその顔を全国に晒された。どの道、奴はもう迂闊に冬木にうろつく事はできないだろう。

 

遠坂時臣は相変わらず工房でもある自宅に引きこもっている。リカルドとしてはそれは有難かった。下手に人込みに隠れてくれるよりは同じ場所にとどまってるくれる輩は始末しやすいからだ。

しかし彼のサーヴァントはこの聖杯戦争で間違いなく最強の存在であるあのギルガメッシュ王だ。あの黄金の王を何とかしなければこちらの勝ち目はない…。

 

ライダーのマスターであるウェイバーベルベットの行方はまだ掴めていなかった。何故なら彼はライダーの戦車と共に乗り高速で走り去るために追跡が出来なかった。さらに冬木市のホテルに宿泊してるという痕跡もなかった。ウェイバーは意外と隠密性に長けた男であるようだ。

 

ケイネスは工房としていたホテルが爆破解体されたためにその戦力を大幅に失った。 しかし依然、ランサーがいるので油断は出来ない。それにケイネスは神童と呼ばれた男で工房を失ってもまだ何か切り札があるかもしれない。 現在、ケイネスと婚約者のソラウは偵察機で確認したところ市街から離れた廃墟を新たな根城にしてる。

 

リカルドにとってこれらのマスターより言峰綺礼が最優先で排除したかった。 あの男は父である監督役と遠坂陣営と結・託・しており安全地帯である教会からアサシンを市街に送り込んで情報収集に勤しんでる。早い所、言峰とアサシンを潰さないとこれからの作戦に支障がでるかもしれない。

 

(とにかく、今はバーサーカーを支配下に置かなければ話にならない…)

 

だが他陣営のサーヴァントを支配下に置くのは先ほどカロリーザが言ったとおり時間がかかる。アレコレ考えても仕方がない…

 

「私は一旦本部に戻る。出来るだけ急いでくれ」

 

「承知いたしました」

 

リカルドは部下を連れて本部であるホテル・アルファ基地に戻ろうとした矢先、体中から寒気が感じた。

一瞬で懐から回転式拳銃を取り出し部屋の隅に向けて発砲した。

リカルドの突然の行動にカロリーザを初め護衛の部下達は驚くもすぐに銃や杖、黒鍵を構える。

 

「やれやれ… 年寄りに随分と乱暴ではないか。」

 

しわがれた声が部屋に響き黒い影が徐々に人型に変わっていく。

現れたのは和服を着込んだ小柄な老人の男性だった。

 

「おぞましい気配を感じたんのでな。何者だ?」

 

リカルドは銃を謎の老人に向けて警戒しながら問う。

 

「失礼した。儂は間桐臓硯という者ですじゃ。司令官殿。

愚息が世話になってるようでしてな 様子を見に来たのじゃ」

 

間桐臓硯

報告書によると間桐の真の当主と言える人物で数百年は生きている魔術師である。

様子を見にきたというが怪しい物である。

もしかしたら息子である雁夜を取り戻しに来たのかもしれない。

リカルドは最大限警戒して様子を伺いながら臓硯に質問した。

 

「息子の危機を感じて助けに来られましたかな? 臓硯殿。」

 

それを聞いた臓硯だが小さく笑った。

 

「助けにきたですと? 呵々。何をおっしゃいますか。 雁夜などという出来損ないのために貴方方と争うなど百害あって一利なしですぞ。」

 

確信したわけではないがどうも違うようである。しかし考えてみればこの老人がその気になったら何時でも取り返しせる感じはする。

 

「助けに来たのではないのなら無いなら何故、我々の前に現れたのだ?」

 

リカルドは間桐臓硯の真意を知るために理由を聞く。

 

「コマンダンテ殿。単刀直入に言いましょう。 我ら間桐家は貴方方、連・邦・と協力したいのです。」

 

間桐臓硯の口から出たのは予想外の事に協力関係を結びたいとの事だった。

しかしそれよりもこの老人は我ら連邦の存在の知っている…!

リカルドは顔は無表情だったが銃の引き金にそれとなく力が入った。

カロリーザや周囲の部下達もまた一段と緊張が走った。

僅かな動揺を知られないようにリカルドは口を開いた。

 

「協力? すでに我々はご子息である雁夜殿と関係を結んでいるのだが。」

 

「ククッ 何とも意地悪な事をおっしゃいますな。貴方方が欲しいのは雁夜のバーサーカーであって雁夜自身など使い捨ての道具に過ぎないでしょう。

それでもまだ生きていたのなら自分達に必要のない物を褒美として授ける、程度の存在でしかないのでしょうに。」

 

「…。」

ニタニタしながら臓硯は話す。それに対してリカルドは沈黙する。

だが臓硯の言う通りでもある。欲しいのは彼のバーサーカーであって雁夜など用はないのだ。先ほど言ったとおり生かしているのはバーサーカーの依り代として価値があったからだ。

というよりそれしか価値がないのだが…。

 

「だが自分は違いますぞ。 儂なら貴方方に大きな貢献が出来る。

そう… 例えば貴方方が制御に時間が掛かってるバーサーカーをホンの数分足らずで支配下の置くことなど容易いですぞ」

 

その言葉にリカルドを初め全員が驚いた。自分達が全力を尽くしても多くの時間を使わざるに得ないのにこの老人はたったの数分で出来ると言ったのだ。

 

「あり得ない… 我々が全力を尽くしてもこれだというのに出まかせを…!」

 

カロリーザは顔が屈辱が浮かぶ。臓硯の言葉はプライドを傷つけるには十分だった。

 

「やめるんだ。落ち着かないか。」

 

怒りに燃えるカロリーザにリカルドは嗜める。

 

「失礼しました…」

 

リカルドの言葉に頭を冷やしたのか、カロリーザは後ろに下がった。

それを見たリカルドは再び臓硯に顔を向けた。

 

「さて…数分で出来ると言うが本当なのか?」

 

嘘は許さぬという気配を放ちながらリカルドは臓硯に聞く。

 

「勿論。そもそもサーヴァントを制御下に置くために令呪を編み出したのは我ら間桐ですぞ。その事に関しては一日の長がありますからな。

では早速始めるとしましょう」

 

そう言い臓硯はバーサーカーがいる部屋に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論からいって臓硯は自身が言った通りバーサーカーを数分で連邦の支配下に置かせることに成功した。

これに対しカロリーザを初めとした魔術師達は苦い顔をしていたが大きな障害をすぐに乗り越えられバーサーカーを自陣営に完全な支配下に入った。これで対アーチャー戦に備える事が出来た。後は機を伺いながら遠坂陣営の攻撃の時を待つのみだった。

 

リカルドは間桐臓硯と協力関係を結ぶ事になった。事実、間桐臓硯は強力な同盟相手と言えるし敵に回すのは厄介な人物とも言える。ならば互いの利が一致しているなら敵対など避けるべきだ。

それにあの老人はこちらの計画に感づいてる節があった。もしも他の御三家や教会にその事を告げ口されたら面倒な事になる。

とにかく今回の同盟はリスクはあるがメリットは大きい。

そろそろこちらも本格的に動き出すとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side間桐臓硯

 

(手間はかかったがようやく連邦と手を結ぶ事が出来た。)

 

間桐臓硯は人気がない道路を歩きながら帰路に付いていた。

臓硯が連邦の存在に気付いたのは偶然だった。あの埠頭で雁夜がもがき苦しむ姿を見ていた臓硯は雁夜が謎の集団に連れていかれた時だった。当初は無視しようと思ったがちょっとした好奇心で雁夜の体内にいる自身の使い魔で連中の話を聞いていた。そしてあの連中の首領と思われる男…コマンダンテを見た時、臓硯は前回の第三次聖杯戦争を思い出していた。

 

前回の聖杯戦争は第二次世界大戦中に行われた。聖杯を手にするために日本とドイツが軍を送り込んだ。

戦いは苛烈を極めたが結局、誰も聖杯を手にすることが出来なかった。

臓硯はその時、国家の力や正規軍の力を思い知った。一歩間違えば間桐家はドイツ軍や日本軍に滅ぼされていたかも知れなかった…。

コマンダンテを見た時、その時の感覚を思い出していた。軍人特有の気配というか軍隊の匂いというべきか…

そんな気配を感じたのだ。

 

臓硯は町中に使い魔を放って連中の事を徹底的にまた慎重に調べた。彼らの陣地…基地というべきか、それらには厳重な結界が敷かれており思うように事が進まなかったが臓硯は遂に彼らはザンディアナ連邦の軍隊と分かったのだ。

これには臓硯も焦った。先にいったように臓硯は国家の正規軍の恐ろしさを理解してる。雁夜が何らかの拍子で連邦を裏切ったら間桐は一族ごと連邦に滅ぼされるかも知れないのだ。

別に一族が根絶やしになっても臓硯自身が生きていれば問題はないのだがしかし魂の腐敗の影響で肉体は日に日に腐り果てていく…。この仮初の不死を聖杯で完全なものにするまではやはり一族は必要だ。

だから臓硯は自ら動き雁夜よりこっちの方がずっと役立てる事を証明した。連邦に令呪のシステムを明かす羽目になったが連邦と同盟出来れば安い出費だった。

 

(それに彼奴らの計画は面白い。 このまま有用性を示せば何らかのおこぼれがもらえるはずじゃ…)

 

連邦を調べていくうちに臓硯は彼らのある計画に気付いた。全容は分からないがかなり大掛かりでこの聖杯戦争で最も重要な物が関わる計画だ。

臓硯はその事をチラつかせながら連邦と同盟の足掛かりに利用した。

 

(此度の聖杯戦争は様子見だったが思わぬ収穫があった。 連邦の同盟は今後の聖杯戦争に大いに役立つはずじゃ… ククッそう遠くない未来に儂の手に聖杯がある)

 

臓硯は不気味に笑いながら闇に消えていった…。

 

 

 

 

連邦と間桐の同盟…。

第四次聖杯戦争は今、大きく動き出そうしていた

 



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十二話 攻撃

冬木市街から遠く離れた場所に深い森がある。そこはアインツベルンが仕掛けた結界が張られた場所で奥に日本には馴染みのない欧州風の城が建っている。それはアインツベルンが冬木の聖杯戦争で自分達の拠点にするべく資金力を物にいわせて作成した城であり陣地である。

 

アインツベルン城の一室で衛宮切嗣と久宇舞弥、切嗣の妻であるアイリスフィールと最優のクラスのセイバーがいた。

 

「切嗣…。 もう躰は大丈夫なの?」

 

アイリスフィールは切嗣の体調を心配して声をかけた。

 

「あぁもう大丈夫だよアイリ。心配をかけたね。それに一日も時間を潰してしまったんだ。すぐに後れを取り戻さないとね」

 

切嗣はアイリスフィールを安心させるために微笑んだ。昨夜、切嗣と舞弥は傷だらけの状態で城に入ってきた。

二人とも全身を血で濡らし手や足など骨折してあちこちの骨が罅が入っていた。アイリスフィールは急いで治療を施し二人を部屋に休ませた。

それでもまだ全身が痛むが切嗣は体に鞭打って動いた。本当ならまだ休んでいけなければいけないのだが敵は待ってくれない。

 

「それで…どうするの…? 切嗣と舞弥さんはもう町を歩くことが出来ないんでしょう…」

 

あのホテル爆破は朝から大ニュースとして放送された。

現在、切嗣と舞弥は指名手配され二人の顔が冬木どころか日本全国に知れ渡ってしまった…。アイリスフィールは城に設置してあるテレビでそれを知ったがこれを見た時、アイリスフィールはショックが大きすぎて気を失いそうだった。愛する夫が犯罪者としてテレビで放送されるなど堪ったものではない…。

 

「僕と舞弥は指名手配されるし敵陣営の中に僕達の作戦に気が付いてる奴がいる。だから君とセイバーが表で華々しく戦って僕と舞弥が背後から襲撃するという作戦だったけどはもうコレは使えない…。」

 

敵にバレてる作戦を使い続けるのは自殺行為だからね、切嗣はそう言いその顔は僅かに歪めていた。

切嗣がこの奇襲戦術を練ったのは魔術殺しの自分を特性を生かすためと()()()()と一緒に行動しないためだ。 何故なら切嗣はセイバーを嫌っている、いや英雄そのもの憎んでいると言っても過言ではない。

しかし、そうは言ってられない状況だった。昨夜の襲撃者の事だった、奴らの武装はもはや軍隊並みだ。セイバーを連れずに今度襲われたら確実に死ぬだろう…。

 

「ここは特に使う予定がなかったが計画を変更してこの城で相手を迎え撃つ事にする。アイリとセイバーと一緒にここに居てくれ。もう二手に分かれるのは危険すぎる。」

 

「分かったわ。貴方もそれでいいセイバー?」

 

「はい。私もそれがいいかと。」

 

セイバーも同意する。だがアイリスフィールは不安があった。この会議中、切嗣はセイバーを一切目を合わせなかった…。あらゆる手段を使って敵を倒そうとする切嗣と騎士道精神が溢れ正々堂々と尋常な戦いに望むセイバーは正に水と油の関係だった。だからこそアイリスフィールは二人の間の緩衝材として役目を務めてる事にした。

この機会に切嗣とセイバーの溝がなくなるきっかけになればと思うアイリスフィールだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アインツベルンの森に目指して二人の男性が歩いていた。

 

「情報ではアインツベルンはあの森に潜んでいるそうだな。」

 

ランサーのマスターで時計塔のロードの称号を持つ男、ケイネスは自身のサーヴァントを連れて進撃していた。

 

「ランサー 埠頭での失態をここで晴らせ。 失敗は許さんぞ」

 

ケイネスは己のサーヴァントであるランサーに目を向けた。

 

「はっ このディルムッド。 必ずやマスターに首級を捧げます。」

 

ランサーはケイネスに頭を下げ闘志を燃えただせた。ランサーは埠頭では決着つけられなかったセイバーの再戦を喜んでいた。

 

情報では御三家の一角であるアインツベルンはこの森の奥に拠点を構えているというものだ。ケイネスはホテルの爆破で用意してきた魔術礼装を失ったがまだ切り札とも言える礼装があった。

ケイネスがこの聖杯戦争に参戦したのは己の経歴に武勲という箔をつけて完全なものにすることだ。

これから戦う相手は長い歴史を持ち錬金術に秀でたアインツベルン。ケイネスにとって相応しい相手だ。

 

「不愉快な出来事があったがこの私の秘術をとくと見せてやろう。待っているがいいアインツベルン」

 

これから起きる戦いにケイネスは意気揚々と踏み出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬木市街。

 

アサシンのマスター言峰綺礼は深夜の町を走っていた。

目的はアインツベルンの拠点がある森だ。

アサシンの諜報でケイネスが森に向かっている事を確認した綺礼はこれをチャンスと見て教会から飛び出した。

彼の目的はアインツベルンに雇われた傭兵である衛宮切嗣だ。彼と会い彼の出した答えを聞くためだ。

自分の空虚の人生に答えが見つかるかもしれない…。 長きに渡る苦悩に終止符がつくかもしれない…。

言峰綺礼は答えを得るためその突き進む。

 

 

 

 

 

 

 

しかし彼らは自分達が逐一監視されてる事に気づいていただろうか?

そして()()()()()刻々と近付いてるのが…。

 

 

 

 

 

 

 

アインツベルンの森から少し離れた場所で連邦軍の精鋭部隊である()()()()()と連邦の魔術協会に所属する魔術師達の戦闘部隊が戦いの準備を進めていた。

 

総司令官のリカルド

 

ジオダットを指揮するロドリゼス

 

魔術師達を指揮するのはカロリーザ

 

そして各部隊の隊長達

 

それらがテントの一室で集まりブリーフィングを行っていた。

 

「聖杯戦争が始まって二日目だ。ようやく敵のマスターが穴倉から出てきた。

アサシンのマスター言峰綺礼とランサーのマスターケイネス・エルメロイ・アーチボルトの二名で今夜、最低でも一人は仕留める。ミスは許されん… あらゆる手段を使って仕留めるのだ」

 

リカルドは一同を見渡しながら話す。

待ちに待ったチャンスである。これを逃せばいつ仕留められるか分からないからだ。

すでに()()()()()()()が始動しており時間は掛けられない。迅速に動かなければならない…。

 

「ロドリゼスのアルファ部隊はケイネスをカロリーザのブラボー部隊は言峰綺礼だ。

アルファにはバーサーカー ブラボーにはアヴェンジャーを付ける。

相手がサーヴァントを出して来たらこちらもサーヴァントで迎え撃て。

念を押してブラボーには私の護衛部隊の内、()()()()もつけさせる。」

 

「アインツベルンは如何しましょう? セイバーは片腕が使えませんがそれでも脅威です」

 

「理想としてはセイバーもここで仕留めておきたい。ケイネスと言峰綺礼を手早く始末しアヴェンジャーとバーサーカーの二体で叩き潰したいところだが…

奴らも自分達が置かれてる状況を理解してるはずだ。無理に掛ればこちらに犠牲が出るかもしれん…。

今夜はケイネスと言峰をどちらかを仕留めればいい。」

 

アインツベルンには衛宮切嗣がいる。今や日本中にその顔を知れ渡ってるいるがあの男の事だ。何か用意してるに違いない。奴らのテリトリーを侵さなければ攻撃はしてこないだろう。

 

「攻撃はアインツベルンのテリトリーの外で行う。

以上だ。諸君の幸運を祈る」

 

会議が終わりそれぞれが自分の持ち場についていく。

 

聖杯戦争が始まって二日目… 連邦軍の本格的な攻撃が始まろうとしてた。



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十三話 脱落①

言峰綺礼は衛宮切嗣に会うために目的地であるアインツベルン城に向けて疾走していた。市街地を抜けて森に入ろうした。

「もうじき長年探し求めていた答えが見つかる…」

己の心を満たす空虚を消すためにあらゆるモノを手をつけたが結局見つからなかった答え…。言峰綺礼は答えを得るために突き進んでいた。

しかし森に入ろうしたその瞬間、殺気を感じその足を前に進むの止め素早く横に跳躍して地面に躰を伏せた。

先ほど自分が立っていた場所に銃弾の嵐が過ぎていく。代行者として数多くの修羅場にくぐり抜けて得た直感がなければ確実に死んでいた。

(待ち伏せか…。銃声から察するにライフル弾か…? )

綺礼は銃声から銃の種類を理解する。綺礼は身を伏せながら素早く近くの木に身を寄せる。

(厄介だな。拳銃弾なら防げるがライフル弾となると前に出るのは自殺行為…。)

綺礼が身に着けてるのはただのカソックではない。戦闘用に作られた戦闘服で防弾耐性についてるものだ。

それに数々の死線をくぐり抜けてきた綺礼の強靭な肉体を加えれば拳銃弾程度なら突っ込める程だが流石にライフル弾となると無理である…。

 

どうするべきか…と悩む綺礼。アサシンを使ってここから脱出すべきなのだろうが…そうすると相手側にアサシンがまた健在だとバレてしまう。()()()()()()()()()から綺礼は教会に保護されてるのだ。

それがアサシンはまだ()()だとバレれば他の陣営は教会に押し寄せて来るだろう。中立だと言っても相手は耳を貸さないだろう…。何しろ中立である教会が()()してるのだから…。

綺礼を悩ませてるのはもう一つある。

それは衛宮切嗣の事だった。衛宮の答えを問うチャンスがやっときたのだ。ここを逃すと次はないかもしれないのだ。

 

「ぐ…!」

 

腕に鋭い痛みが走った。ライフル弾が木を貫通して綺礼の左腕を貫いた。

少し考えているうちに敵は接近してきてる…。 もはや迷ってる場合ではない

 

「アサシン! 私は撤退する。 時間を稼げ」

 

「承知」

 

綺礼の呼びかけに応じて四人のアサシンが実体化する。アサシンは時間稼ぎのために相手側に突撃していき綺礼は銃弾の雨から逃れるために障害物が多い森に入っていく。

 

四人のアサシンは(マスター)の為に敵の前に現れ始末する止めに疾走する。

戦闘の力が低いアサシンクラスでも相手が只の人間なら恐れるに足らない…。何故ならサーヴァントに何の神秘もない銃弾など通じないのだから。

故に此処はアサシン達の一方的な殺戮が始まるだろう。そう…始まるはずだった。

 

「ガッ…!」

 

四人のアサシンの一人が突如、苦悶の声を上げながら斃れる。その胸には矢が刺さっていた。

残るアサシン達は一体何が起きたのかと驚く。

 

「ギッ…」

 

また一人アサシンが斃れる。

 

残ったアサシンが飛んできた矢の方向を見るとそこにはあの()()()()()()馬に乗ってボウガンを構えていた。

騎士は淡々とボウガンを残った二人のアサシンに向けて矢を放つ。

アサシンも短剣で矢を弾くが次の瞬間、それなりに距離が離れていたというのに騎士の馬は風のようにあっという間にアサシンに接近し騎士が手に持った剣で二人のアサシンの首を切り落とした。

アサシン達は何が起こったのか分からず消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

一方アサシンが時間稼ぎも出来ず斃された知らない綺礼は全速力で撤退していた。

 

(ようやく衛宮切嗣と問う絶好の機会だったというのに…!)

 

本来、()()()として教会の地下に身を潜めなければならない状態ながらそれを無視して外に出るほどの待ちに待ったチャンスが謎の襲撃者によって台無しにされたことに強い怒りと殺意を感じながら走っていた。

 

(教会に戻ったらアサシンにどこの回し者なのか調べてもらおう。

何度も邪魔されたら面倒だ。最優先に始末するとしよう)

 

そう考えながら綺礼は森の外に出るため足を止めず疾走する。だが…

 

「!?」

 

綺礼の前方に何かが飛来する…。綺礼を手に持った黒鍵でそれを防いだ。

カラン…と綺礼は足元に落ちたモノを見ると目を見開いた。

 

なぜならそれは自分が使用する同じ武器だったからだ。

 

(黒鍵だと…! まさか!)

 

前方から何かがやってくる。綺礼は己の武装である黒鍵を取り出し身構える。

現れたのは綺礼と同じく修道服を着こなし顔をフードで覆い隠している六人の男性だった。

綺礼は彼らは何者かすぐに理解した。

 

()()()か。 教会から派遣されたとは聞いていないが?」

 

綺礼の質問に彼らは答えなかった。そして無言で一人の代行者が目に見えぬ速さで綺礼目掛けて黒鍵を投げる。

常人なら何が起きたか分からず黒鍵がその躰を貫いただろう。しかし綺礼は彼らと同じ代行者として幾多の死線をくぐり抜けてきた猛者だ。

飛来する黒鍵を先ほどと同じく難なくと払い落し綺礼も代行者達に向けて黒鍵を飛ばす。

しかし彼らもまた代行者…。綺礼と同じく高速で飛来する黒鍵を容易く払う。

だが僅かな隙をついて綺礼は一気に代行者達の距離を詰めた。そして一人に拳を腹に叩き込んだ。代行者の一人はその威力に大きく飛ばされていく。

残った代行者達は黒鍵だけではなく懐からナイフやハチェット、背から剣を取り出し綺礼に接近する。

手練れの代行者数人相手の猛攻に流石の綺礼も防戦一方だった。僅かの隙をついて代行者の躰に拳を叩き込むが…。

 

(先ほど打ち込んだも時もだが…この感触… 奴らは服の下に何か仕込んでいるのか?)

 

綺礼が放つ拳は文字通り人間の肉体を容易く破壊し絶命させる凶器そのものである。その綺礼が感じた違和感…。

拳を彼らの肉体に打ち込んでも衝撃が吸収されていき散っていく感触だった。そのせいかダメージはあるものの致命傷に至ってないようですぐに戦線復帰するのだ。

 

厄介な…。

黒鍵はどっちかというと投擲用で接近戦ではあまり使い勝手が良くない。その接近戦に備えての拳法なのだがそれが今一つ効果が発揮してないという状況だ。

そして六人の代行者相手に流石の綺礼も徐々に押されつつあり躰の傷も増えていく。綺礼の焦りが生じる。

 

(不味いな…。何とか隙をついてこの場を抜けなければ…!)

 

どうにかして打開策を考える綺礼だが六人の代行者は綺礼の動きに慣れてきたのか僅かな隙すら見せなかった。

少しずつ六人の代行者達は綺礼を追い詰めていく。

 

「ぐッ!」

 

ナイフを持つ代行者が綺礼の足を、黒鍵を持った代行者が綺礼の左腕を投擲した黒鍵で貫く。

この傷が綺礼の動きを鈍くする。 勝機を見た代行者達が攻勢を強めた。

もはや綺礼が代行者達に勝つことは無くなった。故に綺礼は…

 

「…! 已む得ない… 令呪によって命ずる! アサシン!」

 

来い!

そう言おうと時、肉体が動かなくなる。全身が麻痺したかのように指一つ力が入らなくなる。

 

これは…?

綺礼は突如、自分の躰に異変に戸惑う。

そしてそんな隙を代行者達は見逃すはずがない。剣を持った代行者が綺礼の令呪が刻まれた左手を切り落とした。

切り落とされた痛みに顔に苦悶に歪める綺礼。 別の代行者は地面に落ちた綺礼の左手を拾いソレを奥に投げた。

そして飛んでくる左手をキャッチしたのはカロリーザだ。

彼女は綺礼の左手に自身の手で覆い詠唱を唱えた。

すると左手に浮かぶ令呪が輝き出した。そしてカロリーザは言葉を出す。

 

「令呪に命じる。 アサシン、自害せよ」

 

カロリーザに言葉に反応した令呪の一つが消える。

冬木市に散らばるアサシン達は手にした得物で自身の霊核を貫いた。アサシン達は何が起きたか分からず消滅した。

 

(これでアサシンは脱落したはず… さてマスターの方は)

 

カロリーザはアサシンのマスターである綺礼を視線を向ける。

綺礼は代行者達によって心臓を剣と黒鍵に貫かれ頭部はハチェットが深く叩き込まれていた。

これで綺礼は息絶えたのだが一人の代行者が念を押して大型のナイフで綺礼の首を切り落とした。

 

幾ら代行者とは言えどもアレでは完全に死んだろう。

安心したカロリーザは代行者達の近くまで近づいた。

 

「ご苦労でした。貴方達はアルファチームの援護に行きなさい。

後の始末は私達がやっておきます」

 

カロリーザがそう言うと代行者達は森の奥へ走り去っていく。

 

(念のためにと思ってガンドで援護したのですが上手くいってよかったわ)

 

あの時、カロリーザは綺礼に向けてガンドを放ち彼の肉体を麻痺させたのだが別に自分が援護しなくても言峰綺礼は代行者達に仕留められただろう。

まぁ早く仕留められたのだからこれで良かったのだろう。

 

(それにしても第三者が令呪を発動させられるとは… 間桐の秘術は侮れないですね… )

 

間桐臓硯から伝えられた秘術は相手の令呪を第三者が強制発動するものでカロリーザはこれを使い言峰綺礼の令呪を発動させたのだ。

正直、間桐臓硯は全く信用できない存在だが連邦の確実な勝利の為には仕方がない。大統領もそれを理解してるだろう。

 

(さてロドリゲスは大丈夫でしょうか? あの男の事だからヘマはしないと思いますが)

 

カロリーザは指を鳴らすと炎が綺礼の死骸から炎が上がり燃やし尽くしていく。

 

 

 

 

アサシン陣営 マスター言峰綺礼はこうして脱落した。




代行者達

「猟犬」の名を持つ連邦軍の特殊部隊で魔術師や代行者などの討伐を主任務としている。

元々は聖堂教会に属していたが連邦軍との戦いの際に捕らわれ捕虜になった。
リカルドとザンディアナ連邦軍は彼ら代行者の実力を知っており彼らを自陣営に引き込む事ができないか?と思い数々の説得または買収しようしたが当然ながら強い信仰心を持つ彼らは全て拒否した。

このままでは代行者を引き込む事は出来ないと悟ったリカルドと連邦軍は彼らをある組織に預けた、
それはザンディアナ連邦の諜報組織である「連邦総合情報局」だった。

連邦総合情報局は代行者達を連邦の領土である孤島に連れて行き彼らを底が深い穴倉へと閉じ込めた。
深い穴倉へと閉じ込められた代行者達に情報局は毎日、彼らに毒を混ぜた食事を出し続けた。
食事が終われば穴倉から代行者達を出し肉体への拷問、魔術と薬物を使った精神への拷問を昼夜問わず続けられた。
強靭な肉体と精神力をもつ代行者達だが毎日続けられる凄惨な拷問に徐々に心がすり減っていく。
一週間になり遂に心が打ち砕かれて廃人寸前なる者が現れた。
情報局はその者に薬物と魔術で新たな思想を植え付けた、否、作り替えたというべきか。
「ザンディアナ連邦に忠義を尽くせ」
「連邦に害をなす者を殺し尽くせ」
これらを代行者の心に刻みつけ洗脳していく。
こうして連邦は代行者を狩る代行者を作り上げたのである。


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脱落②

本当に亀更新ですが頑張って書いていきますのでこれからもよろしくお願いします。


ケイネスはランサーと共に森へと突き進んでいた。

拠点であるホテルを爆破され持ち込んだ道具もほとんど失うという痛手を受けてる状況だ。

しかしまだケイネスには自慢の礼装がまだ一つ残っておりランサーも健在だ。

そして魔術師の神聖な決闘である聖杯戦争を()()な物を持ち込んでそれを汚す輩に怒りが満ちていた。

 

(下賤な手段でこの神聖なる戦いを汚す愚か者共も制裁を下してくれる…!)

 

ケイネスはこの聖杯戦争で己の秘術を思う存分に発揮し相手を恐怖と畏敬で打ち倒すのが目的だった。それなのに相手は神秘もへったくれもない火薬など用いてきたのだ。

聖杯を手にするために魔術師としても矜持も誇りを捨てそのような行いをする輩は断じて許すわけに行かない。

魔術師としての誇りと怒りを胸にケイネスは恐れもなく突き進んでいく。

 

 

ケイネスのサーヴァントであるランサー=ディルムッド・オディナもまたその胸に闘志の炎を大きく燃え上がらせていた。

 

(セイバー… 今宵 我が槍はお前を討ち取る)

 

埠頭で戦いで清爽な闘志を持ち己に挑んできた誉れ高き騎士達の王 アーサー王。

かの王との尋常な決闘は己の戦士の血を大きく高ぶらせ何より心地が良い戦いだった。

途中、邪魔が入り決着は流れてしまった。だから今夜は余計な邪魔が入らず騎士王との決着をつけたい。

 

「ランサー 敵のマスターはこの私自ら誅罰を下す。貴様はサーヴァントの邪魔が入らぬよう動け」

 

「ハッ! 我が槍にかけて必ず!」

 

それぞれの決意と意気込みをかけて進撃を続ける二人だったが…。

 

「主!」

 

ランサーは前方から膨大な魔力の気配を感じてケイネスを守るように立つ。

ランサーとケイネスの前方に全身に黒い甲冑を身に包んだ者が現れた。

 

「バーサーカーだと?」

 

あの時、埠頭に突如現れたサーヴァント・バーサーカー。

あの黄金のアーチャーが放つ宝具を超人的な腕前で次々と捌いていった英霊だ。

それが何故、自分達の前に現れたのか?

 

「!?」

 

銃声が響きランサーは槍でケイネスに目掛けて飛んできた銃弾をはじき返した。

バーサーカーは何もしていない…。つまり考えられるのは…

 

「下衆が。 大方アインツベルンが雇った下賤な輩共だな…

ランサー、 貴様はあの狂犬を始末しろ!

奥に居る愚か者共はこのロード・エルメロイが直々に誅を下してくれる!」

 

「承知いたしました。」

 

ケイネスはバーサーカーをランサーを任して自身は銃撃を行った敵がいる森の奥に突き進んだ。

しかしケイネスはコレが自分の生死を分ける結果になるとはこの時は知りもしなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ターゲット「K」はこちらに向かって来てます。」

 

『よし。このまま奴を例の地点に誘導しろ。出来るだけ犠牲は出さないように動け』

 

「了解。作戦遂行します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイネスは懐から銀色の液体が入った試験管を取り出し呪文を唱える

 

    -自動索敵-

    

―自立防御ー

 

     ―指定攻撃ー

 

試験管を傾け中に入った液体が地面へと落ちていく。

 

するとどうだろう。僅かな量の液体がみるみる増えていき巨大な球体へと変化した。

これこそ神童ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの自慢の水銀を使った礼装の月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)である。

傍に己の礼装を展開しケイネスは奥に隠れてる連邦軍兵士達に見据え告げる。

 

「さて、下賤なドブネズミ諸君。 諸君達にはこのロード・エルメロイの秘術をとっくりと堪能させてやろう。」

 

不敵な笑みを浮かべるケイネスに連邦軍の特殊部隊「ジオダット」はケイネスに一斉射撃を開始した。

突撃銃(アサルトライフル)から放たれる銃弾の嵐… まともに受ければ絶命は免れない。

しかしケイネスは何の焦りも恐怖も感じていなかった。何故なら…。

傍に展開していた水銀の球体が()()()()()()ケイネスの前に(まく)状の形になり連邦軍の突撃銃(アサルトライフル)から放たれた銃弾を全て防ぎったのだ。

これには連邦軍の兵士達は驚愕する。拳銃弾なら兎も角、撃った弾丸はFN FAL自動小銃(バトルライフル)の7.62 x 51 mm弾とM16A1突撃銃の(アサルトライフル)5.56 x 45 mm弾である。

ライフル弾を完全に防ぎったケイネスの礼装にはただ驚愕するだけだ。

 

「フン、理解したかね。貴様らの下賤な武器では我が礼装は破る事は出来ん。」

 

何の恐れもなく不敵の笑みを浮かべながら歩み始める

連邦軍も再度ケイネスに銃撃をするが先ほどと同じく水銀はケイネスを守護するかのように銃弾を防いでいく。

ならばこれはどうだと兵士達はケイネスに複数のM26手榴弾を投擲する。複数の手榴弾はケイネスの足元に落ち爆発するがそれすらもケイネスの礼装は防いでしまった。

 

『こちらチーム1 こちらの攻撃が通じない。後退の許可を』

 

『了解した。チーム1 ターゲット「K」をC地点へとおびき寄せつつ後退しろ』

 

『了解。 C地点へと後退する』

 

 

攻撃が通じないと分かり連邦軍はケイネスから離れるように後退した。

それを見たケイネスは敵は己に恐れたのだと考える。

 

「馬鹿めが。逃がすと思うか! ire:sanctio(追跡抹殺)

 

ケイネスがそう命じると水銀はケイネスがそう命じると水銀は触覚をのばした。

この水銀は主を自動で守るだけではなくこうして逃げた敵を追跡したり隠れた敵を見つけ出す事も出来るのだ。

水銀が触覚を伸ばして間もなく敵を探知した。どうやら森の奥へと逃げているそうだ。

 

「ふん。愚か者共が…。このロードエルメロイから逃げられると思うのか!」

 

ケイネスは逃げていく者共にどのような処刑をしようか考えながら追跡する。

 

 

 

 

一方、目標地点へと後退した連邦軍はケイネスを確実に仕留める準備を終えていた。

 

「チーム2 準備はいいか。」

 

「こちらチーム2 いつでもいけるぞ」

 

「よし。合図をだしたらぶっ放せ。」

 

「了解」

 

後は相手を待つだけだった。

 

 

 

一方、ケイネスは自分がおびき寄せられている事に知らず悠々と敵を追っていた。

仮にケイネスはこれが罠だと分かっていても魔術が銃器や爆弾などといった近代兵器が負けるわけがないと高を括っていたし相手がどんな罠を張っていても神童である自分ならそのようなモノなど打ち破って見せる自信があった。

自分の自慢の礼装であるこの月霊髄液(ヴォールメン・ハイドラグラム)ならばと。

 

(フム この先に奴らがいるが…随分と数が多いな。 馬鹿め、幾ら数を増やそうが無駄だ)

 

躊躇なく恐れもなくケイネスは連邦軍が待ち受けている場所へと突き進む。そして…。

空気を切り裂く鋭い音と火薬が爆発する音が周囲を覆った。

 

 

 

「ターゲットが来たぞ。総員構え!」

 

ジャキと連邦軍兵士が銃を構える。ケイネスは目視できた瞬間。

 

「攻撃開始!」

 

命令された兵士達が一斉に銃撃を開始した。

しかし先ほどと同じく水銀がケイネスを守るように膜を出し銃弾を防いでいく。

だがこれは予想どおりである。

 

「チーム2。攻撃開始だ」

 

支持を受けたチーム2の兵士達はケイネスに向けて発砲する。

チーム2が発射するのは突撃銃(アサルトライフル)ではない。チーム2が使うのはそれよりもっと大きく破壊力があるものだ。

それはこう呼ばれる

 

 

M2重機関銃と。

 

 

 

 

 

 

ケイネスは水銀が銃弾を防いでいる間、連邦軍をどのように処刑するか思案していた。

奴らが恐怖でどのように顔を歪めるのか楽しみだった。

 

(さて、そろそろあの愚か者共に誅罰を下すとするか)

 

礼装である月霊髄液に攻撃を命じようとした時だった。

 

バキリ!

何かが砕ける音が聞こえた…。

 

「へっ…?」

 

音が聞こえた方へと目を向けると自分の()()()()()()()()()()…。

 

それを見たケイネスが悲鳴を上げる前に再びバキリ!と先ほどと同じく悍ましい音が聞こえた。

今度は()()()()()()()()()()

一体何が! 何があったというのか! 異常はすぐに分かった。

今まで自分を守っていた月霊髄液の膜に()()()()()が開いていたのだ。

そして次々と風穴が開いていく…。

 

 

・・・ケイネスの過ちは()()()()()()を過信しすぎた事に尽きる。

確かに月霊髄液は銃弾より早く主を守れるほどの速さを持ち銃弾を防ぐ防御力があるのだが絶対に防げるという物ではなかったのだ…。

小銃弾を防げてもそれよりもっと大きく破壊力があるM2重機関銃の50口径をまでは防げなかったのである。

 

 

 

 

「撃ち方止め」

 

隊長格の兵士の号令で攻撃を一斉に止める兵士達。

砂埃と硝煙が辺り一面に漂い先が見えない。連邦軍は警戒しながら辺りを確認する。そして

 

「まだ生きてるぞ!」

 

一人の兵士がボロくず同然のケイネスを見つけた。

 

「50口径が何発も当たったというのなんて奴だ…。」

 

ケイネスの状態は酷いを通り越していた。

両腕は無く下半身は()()()()()()()()上半身に頭部がついてるだけだった…。

そんな状態だというのにケイネスはまだ()()()()()のである。というより生きてるのが不思議なレベルだ…。

しかしもう虫の息でその表情は恐怖と涙と血でぐちゃぐちゃだった。

 

「ァ…ァぁ…」

 

助けてくれ… 殺さないでくれ…。

 

そう懇願するような顔だったが連邦軍にはそんなの知ったこっちゃない。

 

⁻止めを刺せ‐

 

命令を受けた一人の兵士は背中に装備していたソードオフモデルのショットガンを抜きケイネスの顔面に銃口を突き付けた。

 

⁻今、楽にしてやるよ⁻

 

そして一発の銃声が響いた…。

 

 

 

ケイネス・エルメロイ・アーチボルト

 

神童と呼ばれ華々しい将来も約束されてた男は武勲という箔をつけるためこの聖杯戦争に参加したのだが待っていたのは武勲という箔ではなく余りにも悲惨な最期だった。

 

 

 

 




ケイネス先生はここで脱落です。

M2重機関銃が使う50口径ですがアレ、ライフル弾よりずっと大きいのでもしもあんなものに撃たれたら体に大きな風穴が開くかまた体が千切れるじゃないかと思いあのような接写にしました。

月霊髄液でも50口径までは防ぎきれないじゃないかと思います



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称賛

大分遅くなってしまいました…


「■■■■■!!!!」

 

「ハッ!!」

 

辺りに響き渡る金属の奏でる嵐。

ランサーとバーサーカーは死闘を繰り広げていた。

長槍と短槍を巧みに操り怒涛の連撃を行うランサーとそれを戦斧で防いでいくバーサーカー。

互いに傷ついていきその躰を紅く濡らしていく両者。

数えきれない打ち合いの末、両者は一度離れ互いの隙を伺った。

 

「見事なものだ。狂戦士。 理性を失いながらもその武芸、その佇まい… さぞ名のある騎士だったのだろう。」

 

ランサーはバーサーカーの実力に感服する。狂戦士でありながらその見事な武芸に魅せられた。

 

「………」

 

バーサーカーは何も答えない。

 

「お前ほどの剛の者に出会えた巡りあわせに感謝すべきだろう。故に!」

 

「バーサーカー! 今夜、このディルムッド・オディナがお前を討ち取る! 覚悟!」

 

「■■■■■■■■!!!!!」

 

ランサーとバーサーカーは再び死闘を交えようとしたその時だった。

 

「ケイネス殿!?」

 

バーサーカーと戦っていたランサーはマスターであるケイネスの異変に気付いた。

マスターとサーヴァントのある繋がりがプツリと途切れたのだ。

コレが何を意味するのか…ランサーはすぐに理解した。

 

「そんな…主よ…」

 

ランサー・ディルムッドオディナは願いは{生前、忠義尽くせなかった故に今度こそ主への忠義を尽くす事}だった。

しかしソレがマスターであるケイネスの死によって終わった…。その事にランサーの心に失意と絶望が覆っていく。

 

「俺はまたしても…!」

 

歯をギリッと食いしばりランサーは己の無力を呪った。

そしてその怒りはバーサーカーに向けられた。

 

「バーサーカー せめて貴様だけでも討ち取らせてもらう!」

 

残り少ない魔力量でランサーはバーサーカーに突撃する。

最後の力を出し惜しみなく使い怒涛の勢いでバーサーカーに猛攻するランサーにバーサーカーは少しづつ押されていく。槍と戦斧ではリーチが違うということもあった。

バーサーカーは傷つきながらも致命傷にいたる攻撃は防いでいく。

 

そして徐々にだがランサーの躰は光の粒子が出しながら消えていく。

マスターであるケイネスが死んだことによる魔力のパスが消えている中、怒涛の猛攻撃にただでさえ残り少ない魔力が失っていくのだ。当然の結末だった。

 

(頼む…! もう少しだけ持ってくれ…! 我が主の名誉のためにもせめて一騎だけでも…!)

 

自分を召喚してくれたケイネスの為にランサーは何としてでもバーサーカーを仕留めるつもりだった。何より武人としてこのまま首級を挙げずに消えていくのは余りに情けなかった。

 

「オオオオォォォ!!!!」

 

大きく声を上げ己の現界を超えた攻撃を繰り出すランサーの猛攻にバーサーカーは完全に押されていた。

 

「これで…終わりだ!!」

 

そして一瞬の隙を見つけたランサーは紅い長槍をバーサーカーの心臓を貫いた…はずが…

 

「ガァッ…!」

 

ランサーは突然、背中に鋭い痛みが走るのを感じた。次に右足、左足と激痛が走った。

一体何が起きたのだと己の両足は矢が突き刺さっていた。

背中にも矢が刺さっていた。

一体誰がと後ろを見るとクロスボウをもった首無し騎士(アヴェンジャー)が立っていた。

 

「首無し騎士… そうか貴様らは手を…組んで…いたのか…」

 

息も絶え絶えに悔しそうに顔を歪めるランサー。

残り少ない魔力の中、限界を超えた攻撃を仕掛け背中と両足にクロスボウの(ボルト)で貫かれたランサーはもはや立ち上がる事が出来なかった。

彼に出来る事はせいぜい狂戦士(バーサーカー)首無し騎士(アヴェンジャー)を睨みつける事しかできなかった。

首無し騎士(アヴェンジャー)は右手で鞘に納めていた剣を引き抜きながらランサーに近づいていく。

ランサーは迫りくる死に何もできない…。

 

「ここまでか…」

 

弱々しく声を上げランサーは無念を滲ませた表情を見せていた。

バーサーカーはランサーは動くことが出来ない事を確認するとランサーが持っていた短槍の宝具である必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)を奪い取った。

 

「か…返せ…!」

 

奪われた愛槍を取り返そうとするも最早、腕どころか指先一本も動かせなかった。

 

「く…!」

 

この地に召喚され生前の願いを叶えようと意気込み新たな主の為にその己の武と忠義を捧げようとした。

しかし現実はどうだ…。 己の武は只一人の首級も挙げられず、忠義を誓った主であるケイネスを守り切れなかった。

なんと無様なのだろう…ランサーは己の愚かさと無力にただ嗤うしかなかった。

 

 

「いや ランサー・輝く貌のディルムッド・オディナ

貴殿はよく戦った。負けたのは運がなかっただけだ」

 

「…!? 貴…様は…?」

 

ランサーは突如、現れた男を見る。

黒い迷彩服を着こなしボディアーマーを身に着け顔をバリスティックマスクを付けた男だった。

男の背後には同じ迷彩服をきて武装した兵士が大勢いた。

 

「そうだな… 君のマスターであるケイネスを始末したものだよ

おっと…正確には仕留めたのは私の部下だな。」

 

「何…!」

 

つまりこの男が今世における主人であるケイネスを討った者だということか…!

 

「くっ…貴様がケイネス殿を…!」

 

目の前にマスター(ケイネス)の仇が居るというのにランサーの躰は動くことが出来ない。

出来るのは無意味な殺気を籠った貌で睨みつける事だけだった。

 

「ハハハ。 怖いな。そう睨みつけないでくれ。

心臓が止まるじゃないか」

 

後ろの兵士達も笑った。

 

「貴…様ら…!」

 

ランサーは今すぐにでもこの男どもを皆殺しにしたいが最早、それは出来ない。

歯を食いしばり悔しさを打ち震える。

 

「失礼した…すまない許してくれ。

君には不愉快かもしれんが言わせてほしい。貴殿の戦いぶりは見事なものだった。現にバーサーカーをあと一歩の所まで追い詰めたのだからな。

何より今回の敗北は君のせいではない。君は騎士としてケイネスに忠義を誓いその武も捧げたのだ。君に落ち度はない」

 

「だが… 俺は…ケイネス殿を…マスターを守り切れ…なかった…」

 

嘲笑われる思っていたランサーだが仮面の男からは自分への称賛の言葉が降りそそいだ。しかし結果的にマスターを守れなかったの事実だ。

ランサーはただ戸惑っていた。

ランサーは懺悔するかのように力なく言う。

 

「いや、君はマスターであるケイネスの命令に従ってバーサーカーを挑んだ。

悪いのはケイネスだよランサー。何の疑いもなく我々に突っ込んでいき敗死したんだ。

君の躰は一つしかないのだ。サーヴァントと戦いながら遠くに離れていったマスターを守るなど不可能だ。」

 

「しかし…。」

 

 

「先ほども言ったが君には幸運の巡り合わせがなかった…。本当にそれだけだ。

もしも君の心意気と騎士道を信じてたマスターだったならこんな結末ではなかったかもしれん…。

だからこそ私は君を称賛するのだ。最期までマスターであるケイネスに忠義を誓う貴殿を。」

 

「……。」

 

ランサーは何も言わずゆっくり光の粒子になって消滅した。仮面の男、リカルド・ベルブランコの称賛の言葉に何を思って逝ったのかはそれはランサーしか分からないだろう。

 

 

 

「アレは本心なのか? 司令官。」

 

護衛として傍に控えているロドリゲスは司令官のリカルドに問う。

 

「勿論、本心だ。

私は英雄を何よりも尊敬してる。

力なき者達の為に立ち上がった者

悪の行いをして結果的に信仰され英雄となった者

己の欲望の為に動き偉大なる事を成した者

皆、この星の歴史に刻まれた尊敬すべき偉大なる者達だ。」

 

リカルドは幼いころから英雄という存在に憧れていた。常人には不可能な事をやり遂げ歴史にその名を刻んだ彼らに尊敬の念を強く持っていた。

彼らのようになりたい・彼らのように歴史に己の名を刻みたいとソレを原動力にして今まで歩んできたのだ。

 

「ふっ… 相変わらずだな。

それにしても今夜は大戦果だな。ランサー陣営と厄介なアサシン陣営を討ち取ったんだ。

アサシンが居なくなったことで俺達は自由に動き回れる」

 

「そうだ。もう暗殺の恐怖に怯える必要もない。

この戦争は我々に完全に有利になった。」

 

アサシンが消えた事でもう今までように必要以上に警戒する必要は無くなった。アサシンは弱いサーヴァントだがそれでも人間ではまず太刀打ちできないためにリカルドを始めとした連邦軍は移動するだけでも大いに苦労していた。

だがそれも今夜で終わりだ。

 

「それにしてもセイバーは出てこなかったな…。

ランサーとは尋常な勝負をしていたからてっきり救援にくるかと思ったよ。

奴らご自慢の騎士道というやつでな」

 

「急いできたのですがもう終わったようですね」

 

現れたのは猟犬部隊を引き連れたカロリーザだった。

結局、セイバーは討って出てこなかったようだ。

対セイバーに備えて迅速にランサーとアサシンを仕留めたがどうやら無駄骨だったようだ。

 

「討って出ると危険と判断したのだろう。大方、マスターの方が許可しなかったかもしれん。

どっちにしろセイバーは右手は以前、()()()()()()()だ」

 

リカルドはバーサーカーの方を見る。彼の手にはランサーの宝具である必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)があった。

本来ならランサーの消滅と共に消えてておかしくないのだがバーサーカーの宝具である騎士は徒手にて死せず(ナイトオブオーナー)のおかげで未だに現界していた。

そのため本来ならセイバーの右手の傷は治癒してるはずだが未だに治ってない。

 

「出てこない以上、ここに居ても仕方がない。

全隊撤収するぞ」

 

リカルドの命で連邦軍は速やかに森から消えていった。

 

 

 

 

 

 

こうしてザンディアナ連邦軍はランサー陣営と厄介な陣営だったアサシンとそのマスターを屠る事に成功した。

 

ニ陣営の脱落は第四次聖杯戦争を大きく動かしていく。




ランサー陣営とアサシン陣営はここで脱落です。

次回も気長にお待ちください


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十六話 恐怖と失意

連邦が引き上げていく所をセイバー陣営は見ていた。

歴史と優美を感じさせる城の一室でアイリスフィールが魔術で写す水晶玉でランサー陣営とアサシン陣営が謎の勢力によって滅ぼされる所を…。

 

それらを見ていたセイバーの真のマスターである衛宮切嗣は冷や汗を流れ戦慄していた。

 

(ケイネスともかく、言峰綺礼… この聖杯戦争における最大の怪物がああも簡単に…!

言峰を仕留めたのはあの代行者達…一体どういう事なんだ…!

あの謎の部隊は聖堂教会に所属する奴らなのか…? くそ…! 何にしても情報が足りない…! このまま戦えば確実に敗北する…。

何とかして奴らの事を知らなけばならない! )

 

当初、切嗣はこのアインツベルン城に籠り相手陣営を攻めて来る事を待っていた。

そしてランサー陣営が攻めてきた事は予想通りだったがアサシン陣営…言峰綺礼まで来ることは予想していなかったがそれでも対策は取っていた。

万全状態で迎え撃つはずだったのが突如、謎の部隊が現れランサー陣営とアサシン陣営を攻撃。

結果、ランサー・アサシンの二陣営は敗北した。

 

切嗣にとって言峰綺礼は今回の聖杯戦争における最大の異物にして脅威だった.

それがあっけなく死んだ…。 あの男と同じく()()()()の手によって…。

ケイネスは大口径の重機関銃であっという間に粉砕された。

 

今や切嗣の脅威は死亡した言峰綺礼ではなくなりあの謎の武装勢力になっていた。

更に厄介な事にあの未だに正体が知れずクラスも不明な首無し騎士に()()()()()()が謎の勢力の従っていた事だ。

埠頭での戦いぶりにあの二騎のサーヴァントはどれも自身の駒であるセイバー相手に互角また匹敵する実力の持ち主だ。

ランサーの消滅で消えると思っていたがあのバーサーカーは埠頭で見せたように相手の宝具を己の物にする能力でそれを使ってランサーの不治の呪槍を未だに現界させている。

そのためにセイバーの右手は依然と治ってない…。

 

(最悪な状況だ…!

右手が使えない為に切り札であるセイバーの宝具は放てない…

マズい…。 何かもが手詰まりになりつつある…! どうすればいいんだ…!)

 

もしもあの武装勢力が攻めてきたどうすればいいのか…?

訓練された人間が相手でもセイバーなら難なく蹴散らす事が出来る。しかし相手は馬鹿じゃない…。

そうなったら向こうもサーヴァントを繰り出してくるだろう…。 今のセイバーは右手が封じられて宝具が撃てない…つまり戦闘能力が一段と下がっている。

それに対して相手は万全の状態だ。それもニ騎もだ。

戦闘になったら相手はあの首無し騎士とバーサーカーの二騎をセイバーにぶつけてくるかもしれない。そうなったら最優のセイバーだって長くは持たない…。

敗北の可能性は非常に高い。

もしくは首無し騎士かバーサーカーの一騎をセイバーの相手にさせてもう一騎をマスターである自分を差し向けるか…。

勿論、切嗣にはサーヴァント相手に戦えるわけがない。

考えれば考える程、自分達がどれだけ危険な状況なのが分かってしまう…。

それでも切嗣は何とかしてこの状況を乗り越えるために必死に考えを巡らせる。

 

「・・・ ・・・嗣! マスター!聞いているのですか!! 何故、目を合わせてくれないのですか!」

 

セイバーの叫ぶ声によって切嗣は思考の世界から現実へと戻ってきた。

一体なんなのか思いながらも切嗣はセイバーを見なかった。

 

「ッ…! マスター! 今すぐ討って出るべきです。奴らを逃がしてはなりません!

このまま放っておけば取り返しのつかないことになる気がするのです!

ですから…!」

 

セイバーだって何も何も考えずに言っているわけではない。セイバーはこのままあの武装勢力を逃がしたら手が付けられない存在になる…。

どういう事なのか言葉に詰まるが彼女自身の直感が鋭く大きく告げているのだ。決して逃がしてならないのだと…。

だからこそ必死に自分のマスターに伝えているのだ。

しかし…

 

黙殺… 切嗣は決してセイバーに目を合わせず話すこともない

切嗣の態度にセイバーは怒りをこみ上げていた。

このままでは不味いとアイリスフィールは急いで切嗣に話しかける

 

「き…切嗣…! セイバーの話をちゃんと聞いてあげて…! 彼らをこのまま逃がしていいの!

セイバーの言う通りに出るべきじゃないの…?」

 

「それは出来ないよアイリ。君も見ただろう?

ケイネスどころかあの言峰綺礼が呆気なく倒されたんだ。

更に奴らはサーヴァントをニ騎も従えている。そんな奴ら相手に右手が使えず宝具も撃てないセイバーを向かわせるなんて愚の骨頂だよ。」

 

切嗣はセイバーではなく妻であるアイリスフィールに話しかける。

 

「切嗣!! 貴方は!!!」

 

今まで抑えてきた怒りが爆発したのかセイバーは切嗣のコートの襟を掴みかかった。

 

「セ…セイバー!!」

 

アイリスフィールの悲鳴が部屋に響いた。それを無視してセイバーは切嗣に怒りと不満を言葉にだした

 

「召喚以来、貴方は己のサーヴァントである私に一向に目を合わせず話しかけようともしない!!一体私の何が気に食わないというのですか!!!

私だって状況は見えています! だからこそ奴らを逃がしてはならないと進言しているのです! このまま逃がしたら取り返しのつかない事になると私の直感が告げているのです!! 」

 

セイバーの鬼気迫る言葉に切嗣はただ冷めた目でセイバーを見ていた。

 

「セイバー!! 落ち着いて!!」

 

アイリスフィールはセイバーを宥めようと近づきセイバーと切嗣の間に割ってアイリスフィールは入り二人を引き離した。

 

「切嗣!貴方もいい加減にして!! セイバーだって私達のように心があるし感情があるのよ!

なのにそれを全部無視するなんて一体何を考えているの!」

 

流石のアイリスフィールも切嗣のセイバーの対応の仕方に我慢が出来なかった。彼女は切嗣とセイバーの二人の顔を見合わせる。

 

「今、私達はとても危険な状態なんでしょ? だからこそ私達は互いに協力して団結しなくてはならないのよ。

でもこれじゃあ勝てる戦いも勝てない… それどころか自滅して終わりよ。そうでしょ…?」

 

マスターである衛宮切嗣とサーヴァントであるセイバーは正に水と油の関係だ。何かの拍子で決裂してしまう危険性が高かった。 故にアイリスフィールは二人の間の緩衝材になる事を選びそして今その役目を果たしている。

彼女の言葉に切嗣とセイバーは頭を冷やす。アイリスフィールの言う通りだ。こんな事ではとてもじゃないがこの戦争に生き残るとなど出来はしない…。互いに相成れない関係でも最低限の協力しなければならない。

セイバーは自分の浅はかさを二人に謝罪する。切嗣は一言謝り部屋から出ていきこの日の作戦会議は終了した。

 

 

 

 

それからしばらくしてアイリスフィールはテラスに佇む切嗣を見つける。ただ何か様子がおかしかった…。

アイリスフィールは一体どうしたのか思い彼に近づき声をかける

 

「切嗣…?」

 

アイリスフィールも声に気付いたのか切嗣は彼女の方に見向きする。その顔をみたアイリスフィールは息を呑んだ。

なぜならその表情はどうしようもなく恐怖に震えていたからだ。それは10年間共にしてきた愛する夫の見た事もない表情だった。

そして切嗣はアイリスフィールを強く抱きしめた。その腕からは大きく震えていることも分かった…。

 

「怖いんだ…。 最大の強敵だった言峰綺礼が死んだいうのにその言峰を上回る相手がいるという事に…。

奴らの何者なのか一体どれぐらいの力を持っているのか何もかも分からないんだ…。

今回は奴らは攻めてこなかったけど次は間違いなく攻めて来る…。

そうなったら僕はどうやって戦えばいいのかも分からない…!」

 

それは切嗣が初めて妻であるアイリスフィールに見せた弱さだった。

自分に世界というものを教えてくれて生きる意味を教えてくれた切嗣。

そんな最愛の夫が小さな子供のように怯えて震えていた。

 

「切嗣…。」

 

アイリスフィールはそんな切嗣の為に優しく抱きしめた。

 

「大丈夫よ。 貴方は一人じゃない…。 私もいる。舞弥さんもいるしセイバーもいる。

私達が力合わせればきっと切り抜けられるわ。だから…そんなに怖がらないで切嗣。」

 

慈愛に満ちた表情で自分を優しく抱きしめてくれるアイリスフィールに切嗣もまた先ほどと違い優しく抱きしめ返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

冬木市に拠点を構えてるアーチャーのマスターである遠坂時臣は自室で悲痛な面持ちでアンティーク調の椅子に力なく座り込んでいた。

 

「神父… それで綺礼は…。」

 

『霊器盤でアサシンの消滅、そして先程アインツベルン城の周囲のにある森の中で綺礼の…息子の遺体が発見された。』

 

ある魔術を使った連絡器に言峰綺礼の実父である言峰璃正は悲しみと失意に耐えるような声が流れる。

 

「何という事だ…!」

 

時臣はズキリと痛む頭を手で額を覆った。予想外の事態だった。

何しろまだアサシンは残る陣営の情報を調べなければならないというのに脱落してしまったのだ。

戦いにおいて情報は何より重要な存在…。情報があるとないかで大きく違うのだ。

本来ならアサシンに全て陣営の情報を集めその情報から敵陣営の対策を取り相手を撃破していくはずだったがそれが出来なくなってしまったのだ。

時臣は大きなアドバンテージを失ってしまった事に必勝を期した戦略がガラガラと崩れていく感覚を感じた。

時臣は失意と焦りと同時に弟子である綺礼に怒りが沸き上がっていた。

 

「神父。綺礼は何か貴方に言っていませんか?」

 

『いえ…。 アレは私には何も…』

 

「そうですか…。こうなった以上、仕方がありません…

作戦の練り直しが必要だ。また後で連絡を」

 

「わかりました…。」

 

そう言い璃正は連絡器を切った。

時臣は目を瞑り深いため息をついた。

 

「綺礼… 何故、私と神父に何も言わずに何という浅はかな…!」

 

そう言って苛立ちを晴らすかのように机に拳を握った手でダン!と叩きつけた。

勿論、綺礼には綺礼なりの考えがあったかもしれないがせめて師である自分や父である璃正神父に一言入れて欲しかったのだ。

代行者なりの流儀があったかもしれないがいくら何でも勝手に過ぎる…。そのせいで作戦を練り直す必要が出てしまった。

 

(落ち着くのだ…!私はなにをやっている? 【どんな時でも優雅たれ】の家訓を忘れたのか!

綺礼とアサシンを失ったのは痛いが私は最強のサーヴァントであるギルガメッシュがいる。

かの王の力ならどんな相手でも勝利を掴むこと出来る…!)

 

そう考え時臣を苛立ちを抑え作戦の練り直しを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、時臣を通信を終えた言峰璃正は失意と悲しみに暮れながら椅子に座っていた。

 

「綺礼…」

 

呟くのは一人息子である名前だった。

息子は年老いた後から授かった神の恵みだった…。

綺礼は愛する子であり自身にとって喜びであり自慢であり誇りであった。

それが失ってしまった…。璃正自身は息子が聖杯戦争に参加する以上は最悪な事が起きる事も覚悟の上だった。

勿論 綺礼も覚悟していたはずだ…。

しかしそれでも息子を失うのは耐え難いものだった…。

 

「私は…間違っていたのかもしれない…!」

 

父として聖杯戦争の参戦を止めるべきだったのかもしれない。例え盟友である遠坂の要請でも…!

そうすれば綺礼を失わずの済んだのかもしれない。

 

(馬鹿な…! 何を私は何を考えているのだ…。 このような考えなど綺礼への侮辱だ!)

 

()()の為にただひたすらと苦難の道のりを歩んできた息子への冒涜そのものだ!

そのような考えを持ってしまった璃正は己を恥じた。

 

(綺礼…! お前の死は決して無駄にはせぬぞ!)

 

必ず遠坂の勝利へと導く! 決意をした璃正は涙を拭い疲労した肉体を休めようと床に就こうした時だった。

 

「うん?」

 

部屋からけたましく電話の着信音が鳴り響く。

こんな時に… 仕方なく璃正は電話を取る。

 

「もしもし?」

 

『璃正神父! 私です… 神田です…!』

 

神田仁平(かんだじんぺい)

聖堂教会の一員で璃正の部下である男だ。

 

「神田君か… どうしたのかね?」

 

『神父! すぐに()()()を通って|()()()()()()()に避難してください…!』

 

その言葉に璃正は顔が強張る…。その言葉が出るという事は…!

 

「どうした! 何かあったのか!」

 

一体どんな事態が起きているのか神田の聞こうとするが…

 

『時間がありません! ()()は徹底的にやるつもりです…!

明日の夜に詳しくお話します。楽園《エデン》で落ち合いましょう』

 

「待ちたまえ! ()()とはなんだ! 神田君…! 神田!」

 

しかし電話が切られたのか返事はなかった。

 

「一体どうなっているのだ…?」

 

璃正の言葉に答える者は誰もいなかった…。




明けましておめでとうございます。
できれば31日に投稿したかったのですが気力が付きて年が明けてからの投稿になりました

相も変わらず遅筆ですがこれからもよろしくお願いします。


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十七話

ケイネスと言峰綺礼が脱落した次の日の夜…。

アインツベルン城ではマスターである衛宮切嗣。

サーヴァントであるセイバー。

切嗣の妻で聖杯の守護するアイリスフィール。

切嗣の部下である久宇舞弥。

 

マスターである切嗣は何とか動けるまで回復した舞弥と作戦の立て直しと城のトラップの確認・調整をしながら過ごした。

セイバーは城の周囲を見回っていた。

アイリスフィールは森の結界が異常が無いか確認などしていた。

 

「結界の異常はないわね…。これで最後。」

 

フゥ…と息を吐出しアイリスフィールは作業を終えた。正直、結界に異常は無いと分かっていたがそれでも何か体を動かしてないと落ち着かなかったのだ。

それでもアイリスフィールの胸の中は大きな不安が渦巻いていた。

それは昨日の夜、あの武装勢力を追うか追わないかで切嗣とセイバーはとうとう一瞬即発になってしまった。

幸いアイリスフィールが何とか場を収めたがあれ以来、切嗣とセイバーはギスギスした関係がより一層高まってしまいセイバーはマスターである切嗣への不信感がより強まってしまい切嗣も切嗣でますますセイバーを遠ざけるようになってしまった。

 

(聖杯戦争はマスターとサーヴァントが互い協力しあっていかないといけないのに…)

 

このままだと自分達は自滅するのが時間の問題だ…。

勿論、アイリスフィールも何とかしようとしてるが切嗣とセイバーの二人に出来た溝は埋めるのは彼女だけでは不可能だった。自分に出来る事は二人の溝はこれ以上、深くならないように場を持つだけだ…。

 

(私達はこの聖杯戦争に生き残ることが出来るのかしら…。)

 

考えれば考える程、どうしようもない状況に不安と恐怖が沸き上がっていく。

憂鬱の中、アイリスフィールは疲れた体を休める為に自室へと戻りベッドに身を預けた。

 

 

 

 

それからしばらく経った頃。

 

「マダム。お休みの中、申し訳ありませんが起きてください」

 

アイリスフィールは自分の体が揺さぶらっていることに気付き目を覚ます。

 

「あっ… 舞弥さん。 ごめんなさい 今起きるわ。」

 

舞弥に起こされたアイリスフィールは服を着替える。窓を見ると外は日が落ち暗闇が広がっていた。

 

「舞弥さん。今、何時かしら?」

 

「今は夜の8時です。マダム」

 

どうやら随分と寝ていたようだ。

 

「マダム。切嗣が部屋に集まって欲しいとの事です。セイバーも向かっています。」

 

「分かったわ。」

 

支度を終えたアイリスフィールは舞弥と共に自室を後にし切嗣が待つ部屋へと向かった。

 

数分の時間が経ちアイリスフィールと舞弥は切嗣が待つ部屋に到着した。

部屋の中には夫の切嗣とサーヴァントであるセイバーと見慣れない男性が椅子に座っていた。

 

「マダムをお連れしました。」

 

「ごめんなさい切嗣…。遅れてしまって…。」

 

アイリスフィールは謝罪し切嗣は構わないよと言う。

 

「それで切嗣どうしたの? それにその人は?」

 

アイリスフィールは椅子に座る一人の男性が気になっていた。恐らく切嗣の知り合いだろうと考えていた。

 

「アイリ、紹介するよ。彼はジャック・ライゼン。

僕の友人でこの聖杯戦争の参加者など調べてもらっていたんだ」

 

切嗣が紹介するとジャックは椅子から立ち上がりアイリスフィールにぺこりと頭を下げた。

 

「初めましてMrsアインツベルン。

ジャック・ライゼンと言います。以後お見知りおきを」

 

「初めまして。Mr.ライゼン

衛宮切嗣の妻でアイリスフィール・アインツベルンです」

 

互いに自己紹介を終え全員、着席した。

最初に口を開いたのは切嗣だった。

 

「それでジャック。ここに何をしに来たんだ?

君との連絡は全て電話か手紙、FAXのハズだ。それなのに直にきたという事は

何かあったのかい?」

 

切嗣の問いにジャックは重い表情しながら答える。

 

「切嗣…まず全員を集めてもらって済まない。本来なら電話などで伝えるはずだが傍聴の可能性あったからこうして直に来たんだ。あんた方にどうしても伝えなければならなくてな…。」

 

「それは一体…?」

 

自分に狩りを叩き込んでくれた師に紹介されたからジャックとはそれなりに長い付き合いだ。

用心深い彼がわざわざ冬木に来たということはよっぽどの事だ…。

そしてジャックは切嗣に方に向き重い口を開いた。

 

「切嗣…単刀直入に言う。

今すぐセイバーを()()させて奥さんと一緒にこの冬木市から逃げろ。」

 

「なっ! 貴様!!」

 

ジャックの発言は決して見逃すことが出来ないものだった。

セイバーは不可視の剣を手に持ち今にも斬りかかろうとしていた。

 

「待って! セイバー!」

 

アイリスフィールは急いでセイバーを制止させる。

 

「……説明してくれるかい?」

 

切嗣はジャックを殺気が籠った目で睨みつける。

セイバーもまたジャックを睨みつけていた。次にふざけた事を抜かせば躊躇なく斬り捨てるといわんばかりだった。

常人ならショック死してもおかしくない殺気と視線を真っ直ぐ受け止めるジャックはただ冷静に口を開いた。

 

「この聖杯戦争にザンディアナ連邦が関与している

お前ならこの意味が分かるはずだ…。」

 

ザンディアナ連邦…。

ジャックが放った言葉に切嗣は自身の心臓の鼓動が早くなっていくのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言峰璃正は教会から随分と離れたある地下施設にいた。

そこは楽園(エデン)と呼ばれ聖堂教会が建造した所謂シェルターで聖杯戦争で監督が身の危険を感じたらそこに避難するためのものだ。

現在、楽園(エデン)には監督役の璃正と部下である神田を始めとした複数の部下がいた。

璃正は神田の連絡で教会の地下にある秘密の通路を使って楽園(エデン)に入った。そして神田から告げられたのは璃正にとって最悪なものだった。

 

’今回の聖杯戦争に独裁国家ザンディアナ連邦が参戦している’と…。

 

「その情報は間違いないのだな…。神田君」

 

「間違いありません。日本政府と関わり持つ者に聞きましたし何より私は実際()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…。」

 

神田は躰はあちこち傷が付き包帯を巻いている状態だった。彼は連邦の猟犬部隊に襲われ辛くも逃走することに成功したのだから。

 

「何という事だ…! よりによってザンディアナ連邦が参戦してくるとは…」

 

璃正は焦燥に駆られた顔を両手で顔を覆った。今回の聖杯戦争は最早、最悪なものに変わってしまった。

聖堂教会にとってザンディアナ連邦は不俱戴天の敵だ。

事実多くの代行者が殺され挙句の果てに洗脳され連邦の配下となったのだから…。

 

「璃正神父! 一刻も早く聖杯戦争を中止にすべきです!」

 

「自分も同じです! このままいけばザンディアナは聖杯を手にするのは確実です!

もし連邦が聖杯を手に入れたら…!」

 

「只でさえ連邦は強大だというのに聖杯を手にしたらそれこそ文字通り太刀打ち出来ない存在になるでしょう…。」

 

ザンディアナ連邦の恐ろしさを理解してる部下達は璃正に聖杯戦争を中止すべきと進言した。

 

「神田君…。 君の意見を聞かせてくれ」

 

璃正は神田に顔を向ける。

 

「私は…聖杯戦争を続行すべきです」

 

その言葉に周りはどよめく。

 

「神田さん!正気ですか!」

 

危険すぎる! 何を考えているのですか!

部下達は神田に非難を言葉をぶつけてきたが神田は手で制した。

 

「皆が言いたいことはわかっている。

だが聞いてくれ! 例え聖杯戦争を中止を宣言したとしても連邦はそんな事はお構いなしに続けるぞ。

それに連邦以外の参加者はいきなり中止だと言っても素直に首を縦に振ると思っているのか?」

 

「むぅ…」

 

璃正は小さく息を吐き周りは押し黙る。

神田の言う通りだ。ザンディアナ連邦は中止を宣言してもやめるような連中ではない。他の参加者だって同じだろう。

 

「しかし! このまま何もしないという訳には行きません!」

 

「分かっている。神父…自分に考えがあります」

 

「何だね?」

 

神田は少し間をおいてその案を皆に聞かせる。

 

「まず監督権限で一旦聖杯争奪を止めて残りの陣営と協力して連邦陣営を討伐するというものです」

 

 

 

この夜、聖杯戦争は更に混迷を深めていくのであった…。

 

 

 

 

 

 



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