Fake/startears zero (雨在新人)
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12/30(ミラ視点)

『あっ、こんにちは!』

 彼を逃がさないように、わたしはそう声をかけた

 目の前に居るのは、たったひとつの想いだけを瞳に湛えていた少年、ザイフリート・ヴァルトシュタイン。わたしが聖杯に召喚された理由ではないかなと思われる、体内に剣士のサーヴァントを宿す人工サーヴァントだ

 けれども、今の彼は宿したサーヴァントとの同調が上手くいっていないのか、それとも……英霊側から彼が耐えられないと抑えているのか、あまりサーヴァントっぽくはない。今、彼を殺せば……彼の中のサーヴァントは、聖杯に呑まれる事無く座に還るだろう

 だけれども、わたしは同時に確信してもいる。今、彼の瞳にあの日の真っ直ぐさは見えない。けれども、きっと本質は……何にも変わってなんか無い。あの瞳が出来るような彼だから、このままであれば何時かサーヴァントに近い存在までも辿り着いてしまう

 だから、わたしがやるべきことは彼を殺すこと

 

 けれども、まだ、聖杯戦争は始まっていないから。まだ、本当に裁定者(ルーラー)が呼ばれるような聖杯戦争の歪みが彼なのかは結論が出せないから。そんな言い訳をして、わたしは彼を殺すのを先延ばしにしていた

 そんな事をしても、いざという時に辛くなるだけだなって、そんなことは分かってる。けれども、もしかしたらという思いを否定しきれなくて……

 

 「……ミラ」

 彼の手にあるのは小さな包みだ。丸薬……というものだろうか

 『ん?それは?』

 聞いてみる。答えが帰ってくるとは

 「……家の方で貰った御飯だ」

 帰ってきた。家とはヴァルトシュタインのこと。思ったことは間違ってなかったらしい

 『美味しいの?』

 「ああ、美味しい」

 きっと、それは嘘ではない。あくまでも、彼の中では。何度か、彼と話してみてよく分かった。彼の言う幸福の基準

 例え泥水であっても、それこそ極論毒であっても彼は美味しいと言うだろう。だって彼は……自分は本来そんなもの得られる訳がないと思っている。自分自身をそう信じ込ませようとしている

 産まれてくることすら本来無かった。そんな自分が何かを食べられる。無に比べれば何でも美味しいし、幸福だ。そうに違いない。いやそうでなければならない

 きっと彼はそう自分を呪っている。……彼の言う幸福なんて一切信じられない。信じたくない

 だから、聞いてみる

 『一個貰っても良いかな?』

 少し迷う素振りを見せた後、彼は大人しく包みから丸薬を一つ取り出した

 「ああ」

 『それじゃ』

 口に含んでみる

 青汁のような……というべきなのかもしれない、何とも言えない不味さが口に広がった

 ただただ単純に不味い。人間が口にする事を考慮していない、単純に効能だけを詰め込んだものだった

 体に、僅かな震えが走る……魔力の活性化

 恐らくは、彼の性能を引き上げる為の……彼をサーヴァントに近付ける為の投薬そのもの、それがこの丸薬なのだろう

 『……あんまり美味しくないね』

 「……そう、なのか?悪い、ちょっと舌が独特って皆に言われててさ」

 彼は首を傾げる

 独特……嘘だ。裁定者として少しヴァルトシュタインに関して調べてはみたけれど、それによると、彼がとある人間を素体に作られたのは4日前の12/26日、わたしが召喚された直前。独特だって言われる程に物を食べている訳がない

 

 『ちょっと、研究させて貰っていいかな?珍しい味だし』

 だから、わたしはそう言う

 とりあえず、この丸薬は危険だった。無理矢理に魔力を活性化させる。それは、彼を彼の中のサーヴァント……恐らくはセイバーに近付けてしまうだろうから。彼がセイバーになるようなら、わたしは聖杯戦争の監督者として、彼を殺さなければならないから。あんな眼を、あんな覚悟をした彼を……こうまでそのまんまの人間が居るなんて思わなかったくらいわたしが昔助けたかった人間の象徴みたいな彼を……この手で消さないといけないから

 だから、せめて、少しでも本当に彼が正すべき歪みなのかっていう結論を延ばしたくて、そんな事を言っていた

 「けれど、食事は」

 『だいじょーぶ、貰う代わりに、わたしが作るよ

 ちょっと近くの部屋で待ってて』

 「……それなら」

 迷いながらも、彼はわたしに包みを渡す

 わたしはそれを受け取って、教会の厨房に立った

 

 厨房の中で、わたしは見回す

 「裁定者、聖ニコラウス」

 声が掛けられる。聖堂教会の神父であり、これから起こるだろう第七次聖杯戦争の監督役。神父アルベールの声

 『うん、今のわたしはこの教会のシスター、ミラ。そういう事で

 バレちゃうからね、色々と』

 言って、厨房の中を探す

 わたし自身、自前の魔力供給として食事はするけれど……そこまで食事に重きを置いていなかったからか、ロクなものが残ってない

 作れるとして……ありあわせのスープくらいだろうか。わたしなら質素な食事には慣れてるしそれで良いけれども、彼に出すにはちょっと考えてしまう

 

 もうちょっと、何か買うかなぁ

 なんて考えて、自分がとても馬鹿な事を考えている事に気付く。まるで、恋する乙女みたいな反応だなぁ、わたし

 彼はきっと、いずれわたしが殺さなければならなくなるのに。あって欲しいとは思っているけれども、きっと彼以外にわたしが呼ばれるに足るだけの聖杯戦争の歪みなんて無いし、そもそも……他に歪みがあったとしても、彼を殺さなくても良いなんてことには……彼がセイバーに近付く前に聖杯戦争が終わらない限り無い。わたしが全力を出しさえすれば、それも出来なくない気がするけれど……それは出来ない。だってそれは、ルーラーであるわたし自身が聖杯戦争を破壊する事になってしまうから

 だから、彼に何かもっと、というなんて、本当は考えるのも可笑しい

 

 気が付くと、スープが出来ていた。作れるものも他に無いし、当然の選択

 お皿に盛って、彼の所に持っていく

 「……美味しい」

 一口食べて、ぼんやりと彼はそう呟く。その声は、思わず口を付いて出た感じで。僅かな微笑みも浮かべていて。作られたその時から自分を呪っているだろう彼からすれば、どこか異質な笑顔だった

 

 出来ない、なぁ

 自分の弱さに呆れ返る。こんなにも、わたしは弱かっただろうか。やらなきゃいけない正しいことがあって、それをやる覚悟を決められないくらい、ミラのニコラウスという存在は優柔不断じゃなかったと思うのに。その笑顔を見ただけで、彼への殺意をどうしても抱けない

 『美味しい?』

 「ああ、有り難う」

 彼が笑う

 胸が締め付けられる。わたしがもしも彼に呼ばれていたら、ザイフリート・ヴァルトシュタインという一人の為に……

 そんな思いを振り払う

 

 『そんなに喜んで貰えると、作り甲斐があるね

 たまに、食べに来る?』

 それでも、気が付くとわたしはそんな事を言っていた

 これは……あえていうならば、凄く弱くなってしまったわたしへの逃げ道

 「いや、それは悪い」

 『ううん?沢山作る方が、色々と作れるからね。少量だとバリエーションが作れなくて』

 嘘じゃない。そんな目的じゃないだけ

 「有り難う」

 そう、彼は言った。けれども、まだまだ隠しきれてはいない瞳の奥には、そんな幸福を貴様が得て良いわけがないという思いが微かに見えていて

 『それじゃ、たまに今日みたいに朝来てね』

 だから、これは賭け。彼を殺さなければいけない、だから新年という節目に彼を……殺す。だけれども、もしもわたしがどうしても覚悟を出来なかった時の次善策

 彼がセイバーになってしまわないように、彼の中のサーヴァントとのズレを大きくし、今の彼の根底を崩すために

 彼の覚悟を弱くする、そんな作戦の第一歩だった



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1/12(ザイフリート視点)

「……フェイ。巻き込まれるぞ」

 ふと、知り合いが近くまで来ている事に気が付き、俺は剣を振るう手を止めた

 

 フェイが森にまで出てくる事は珍しい。何時も彼女は屋敷の中に居た

 まあ、S045……アルトリアを目指したホムンクルスとはいえ、実質的にメイドとして扱われているらしいので、それも当然なのだろうが。寧ろ……俺の目の前に転がっている数体の物言わぬホムンクルスのような戦闘能力は無いらしいのだ、ブリテン領域……魔獣の住み処足り得る領域として用意された森にまで出てくる方がおかしい

 

 『そろそろ晩です』

 「そう、か」

 光の剣を消す。掌を見ると、やはりというか、焼け爛れた皮膚が見える

 振るっている間は気にならないが、落ち着くと血が滲む手が痛む。まともに剣を握ってはいられない

 情けない。本当に情けない。こんな自分が、光の剣を制御出来ず、自分にまで傷が行く弱さがどうしようもなく情けない

 剣を鞘に収め……

 

 「っと!」

 血色の光を纏った手で、襲ってきた獣の首を切り捨てた

 右手に痛みが走る。だが……何とか、なった

 油断も隙も無い。フェイが居るからと思っていたが、俺を使い物にする為のヴァルトシュタインによる修業は終わってなどいなかったらしい

 情けない。終わったと思った俺が、馬鹿に思える。そんな甘さを持っていれば、何時か死ぬだろう。俺の体は俺のものではないというのに、俺の勝手で彼を本当に消してしまう。元々が俺のせいで彼は死んだというのに、それでは彼に申し訳が立たない。だが……剣ではなく、手刀。剣ならざるものをも光剣として振るえたのは咄嗟の事、そうしなければ死んでいた状況に追い込まれたが故。方針としては、間違っていない

 

 『本日の性能試験はこれで終了、お疲れ様です、ザイフリート』

 「試したのか、俺があっさり死ぬかどうか」

 『はい。頼まれたもので』

 「引っ掛かりかけた俺が悪い、か」

 『対応出来た、それで十分です』

 息を吐く。流石に、終わりいう言葉まで疑っても仕方がない

 『改めて、お疲れ様です。帰れば晩御飯なので、何もありませんが』

 「気にしてない」

 何時もは、そもそも誰も来ない。終わりの合図があれば勝手に帰るだけ。フェイが来てくれただけ、今日は恵まれてるといえるだろう

 『今日の晩御飯は、ステーキの切れ端です。まあ、切れ端とはいえ、それなりのものでしょう』

 森の中の道なき道を歩きながら、フェイが言う

 ある日、森の……ヴァルトシュタインの領域の外での事を話したら、『そういえば忘れていました。思えば、彼等が道具の食事内容を考える訳もありませんでしたね。今度からは余り物を用意します』とフェイは言った。以降は、用意した晩御飯の一部をフェイが持ってきてくれるようになり、食事内容は大幅に改善された。本当に有り難い

 

 ただ二人、森を歩く

 気が付くと、フェイが何かを口ずさんでいた

 これは……詩、だろうか。たまにミラが歌っている聖歌……とはまた違うが、綺麗な声だ。英語なので意味は良く分からないが、心地良い

 当然ながら楽器は無いア・カペラ。だが、それだけに、その声の綺麗さが際立つ

 

 フェイの唄が止まる。半端な場所……ではないだろうか。しっかりと詩が終わったとは思えない場所

 「良い、詩だな」

 『……歌ってましたか?』

 「ああ、綺麗だった」

 『歌うつもりは特になかったのですが』

 少し意外そうにフェイは呟く

 無意識の事、だろうか

 

 「何か特別な?」

 『そういう訳でも無いのですが。ワタシの中に残るもの、貴方にもあるような、英霊の残滓……ですかね』

 「そんなもんか、残念だ」

 『残念、ですか?』

 「もう少し、聴きたかった」

 フェイが立ち止まる

 振り向いてみると、フェイは意表を突かれたような顔をして立っていた

 

 「どうかしたのか?」

 『いえ、言うようになったな、と思いまして』

 「なんだそれは」

 意味がわからない

 『まるで、口説き文句ではないですか』

 ああ、と納得する

 確かに、俺らしくもない発言。聞きようによってはそう取られるような発言だった

 青春なんて俺らしくもない。俺が享受するには幸福過ぎるだろうに

 「悪い。変な事を言った」

 『普通に謝らないで下さい。そこは冗談でも「口説かれたか?」と言う所です』

 少しからかうような空気を言葉にのせて、僅かに悪戯っぽい笑みでフェイは言う

 

 そんな風に接してくれる相手は、一方的な命令ではなく、会話をしてくれる存在は、この地ではやはり彼女だけで

 一方で彼女の瞳に俺と同じものも見つつも、それは無視して

 「惚れたか?」

 『そんなわけ無いです。寧ろ呆れました』

 たわいも利益もない会話という過ぎた幸福を噛み締めたのだった



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2/3 フェイのヴァルトシュタインきょうしつ

「そういえばフェイ、かつてのヴァルトシュタインの記録って残っているのか?」

 2月はじめ。珍しく性能試験……という名の俺を追い込む修業の無い休みの日。けれども、森は節分の豆まきから派生したか何だか知らないが鬼ごっこ大会だかに使われており、今更外に出ていくのも憚られる日。というか、謎の大会があるが故に途中で修業が立ち消えた日

 やることもあまり無いので、俺はフェイにそんな事を聞いていた

 

 光の剣の制御修練であれば、今やナイフでも持てば出来るようになっているし、ナイフであれば短いので他者の邪魔にもならない

 それに、話を聞きながら等、自身の集中が乱れた状態であれしっかりと光の剣維持が出来る事が今の目標。研ぎ澄まされた心であれば自身を傷付ける事無く安定しているが、それでは駄目なのだ。実際の戦闘は、心落ち着ける状況ではないだろうから

 

 『一応見たことはありますが。興味あるんですか?』

 「そりゃ、俺が作られた理由にも繋がりそうだしな。大分最初のホムンクルスに近い045のフェイでも数年前ってことは、昔からこのやり方だった訳じゃないんだろ?」

 『ああ、そういう事ですか。はい、ヴァルトシュタインが人工サーヴァントによる人海戦術を行おうとしているのは第七次、この先に起こる最後の聖杯戦争だけです

 原因は……第六次、アサシンを使った30年前の聖杯戦争の屈辱らしいですね』

 「屈辱」

 大丈夫だ。話を聞きながらでも十分に光の剣の制御は出来ている

 『何でも、負けかけたらしいですね、当時の当主

 もう少しで円卓の騎士に聖杯を奪われる所だったとか何とか』

 「それで?」

 負けかけていた……というのは初耳だ。俺が現当主、シュタール・ヴァルトシュタインから聞いていた話では、彼が戦う第七次を含め、正義は勝つべくして当然の勝利をおさめるもの。当然全て完勝という事であった。見栄……もしくは、最後のマスターとなる彼へのプレッシャーとして、負けかけた事は言っていないのだろうか

 『その時は、セイバーのマスターを殺すのがギリギリでアサシンの消滅前に間に合ったらしいですね。マスターの死により何とかセイバーに勝ったものの、次もこうならないようにと思った。そんな所でしょう

 当時のセイバーのマスターを殺したのは、アサシンでも当主でもなく、何処かから浚われてメイドをさせられていた少女だったそうですし、其処から人海戦術を思い付いたのでしょう。サーヴァント以外でも使えばマスターを殺したりは出来て使えるという証明もありましたし

 更にサーヴァントとしての性能まで付加してサーヴァント戦のサポートまで出来れば更に完璧。如何にも子供っぽくて、正義正義なヴァルトシュタインの考えそうな事ですね』

 「そのメイドの子は、どうしてそんな事を?」

 『さあ?そんなことワタシにも分かりませんね。ただ、従うように人質でも取られてたんじゃないですか?』

 「それは……正義としてどうなんだろうな」

 それは、僅かな疑問。或いは俺の中に燻る思い。ヴァルトシュタインを正義だと知りつつも、心の底から心酔しきれない原因……俺を灼く憎悪

 『ヴァルトシュタインなんてそんなものです

 いずれ世界を、未来を救うのだから。数億、いえ遥か未来まで含めて億では足りない程の存在を救うのだから、精々数万程度の犠牲は仕方がない。寧ろよくそこまで犠牲を減らしたと誉めてほしいものだ

 それこそがヴァルトシュタイン。一人の人質なんて、人類の未来とは釣り合わないから無視なんでしょう』

 「……」

 『自分には納得出来ない考えだと思いますか?

 ワタシもです。命全てを完全に平等なものとして、数の大小だけで救うべきものを決める。まあ、一つの基準としてはアリなんでしょうけど』

 「現実はそうはいかない」

 ヴァルトシュタインの正義を認めるというのは、一つの命を……俺になって消えてしまった神巫雄輝の全てを、人類というより多くのものの為だから名誉な事だ仕方ないと切り捨てる事だ。

 (死にたくない。消えたくない。嫌だ、帰してくれ。紫乃に会いたい、まだ俺は、彼女に好きだとさえ言ってないのに。殺さないでくれ)

 そう思いながら、理不尽に全てを奪われた彼の嘆きは、今もザイフリート・ヴァルトシュタインという人形(ニンゲン)を突き動かしていた

 その嘆きを、憎悪を、苦しみを識っているから。世界の為だからと好しとなんて、出来るわけがない。救わなければ、還さなければならない。彼に何の罪があった。彼にどんな落ち度があったというのだ。どうして全ての幸福を奪われ俺になって死なねばならなかった訳があろうか

 無い。彼の幸福が奪われて良い訳がない。彼の全てを奪って、ザイフリートという悪魔がのうのうと彼の代わりに幸福を、世界を享受している現状(げんじつ)等、あってはならないのだ

 

 手を握り締める。強く、強く、血が滲む程に

 「認めない……許さない」

 『ええ、そうですね。世界の為だから犠牲になれ?世界程度とあ……いえ、何でもありません』

 「いや、何か言いかけなかったか?」

 『貴方が釣り合う訳がない、と言いかけました』

 「流石に冗談だろ?」

 『ええ冗談ですね』

 フェイは軽く笑う

 『まあ、それは兎に角、ヴァルトシュタインの正義なんて、自分達はその犠牲の枠から外れてるから言えるんですよ

 世界を救いたい、という思いまでは否定しませんが』



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2/3 続フェイのヴァルトシュタインきょうしつ

『では、ヴァルトシュタインに関して、話を続けましょうか』

 「ああ」

 光の剣を納め、そう返す

 手を握り締めた時、光の剣は強く輝いていた。維持は出来ている、問題ない。寧ろ問題は……このまま光の剣を顕現する修行を続ければ感情の昂りにより暴走し、フェイを傷つけかねないこと。俺の掌がまた傷付いているのはどうでも良いが、フェイにまで被害が及ぶのは避けたい

 

 『とはいっても、ヴァルトシュタインについての資料も多いですし、何について話しましょうか』

 「ならば……ヴァルトシュタインが呼んだというサーヴァント達について」

 俺の中に居るだろうジークフリート等を呼んだのか否か等、気になる部分は多い

 『ええ、良いでしょう。といっても、真名等まで残ってたりはしませんけどね』

 「まあ、そこまで期待はしてない」

 『アヴァロンの魔術師☆M位ですかね、名前が明確に残っているのは。アヴァロンで魔術師でMといえば、まあマーリンでしょう。どうしてか妖精郷から引きずり出され、こんな大掛かりな聖杯戦争を仕組んだ訳ですね

 第二次に呼ばれたのはライダー。騎馬民族の王だか何だったからしいですね』

 「第三次、セイバーは?」

 『残念ながらジークフリートではありません。もしもそうならば、と思ったならば期待には添えませんね』

 「そう、か。俺の中のサーヴァント……もしもかつて呼ばれていたならばとは思ったが」

 そうすれば、ずっと俺の中で眠っている彼……いや彼女?に力を借りれるかもしれないと思ったのだが。一度PCというもので調べてみたが、ジークフリート女性説が頭の中に生まれるだけで終わってしまったのだし。ひょっとしてあの英霊は実は女性だったりするのだろうか、それすらも、俺には分からない

 稀に見る夢は、銀髪の少女が草原を眺めるもの。俺の中のサーヴァントと俺は、かくも遠い。これでは思ったほど強くないとシュタールに言われるのも当然だろう

 『セイバーは、和装の少女を連れた剣士だったらしいですね。恐らくは日本系列でしょう』

 「少女……」

 『気になるのはそこなんですか。ひょっとして、少女趣味とかあります?』

 「無いよ。というか、神巫雄輝(かれ)の恋人……というか、恋人未満、同い年で15歳だったと思うんだが」

 『案外残ってるんですね、その記憶』

 「俺の中に散らばってる記憶の欠片を拾い集めてみたら、案外な」

 『なら、話が終わったらその時の事でも聞きましょうか』

 少し悪戯っぽく、フェイは笑う

 「そういうの、好きなのか」

 『女の子は誰しも、恋の話が大好きなんですよ』

 「俺は、愛と勇気のお伽噺の方が好きだけどな」

 お伽噺ならば、俺になって消えてしまうなんて理不尽で終わる人間なんていないだろう。最後にはハッピーエンド、全部丸く収まって、不幸は取り除かれて、悪は滅びる。そんな綺麗事。良いじゃないか、最高だ、その何が悪い。御都合主義の奇跡でも、理不尽な現実よりもよっぽど素晴らしい

 だから、聖杯をもって御都合主義な奇跡を起こしたくもなる。今の俺には不可能かもしれないが、出来る手立てがあるならば……

 『彼については、あまり資料はありませんね。神剣一閃、呪縛を断つ。とりあえず、従えた恋人らしい呪術師と合わせて他のサーヴァントを圧倒したらしいということだけは確かです。まあ、セイバーに関しては、資料にも「ケモミミ萌えのはしり……きゃー進んでます未来先取りしすぎです」とか、よく分からない走り書きだけは多いので』

 「一気に胡散臭い資料になったな……」

 ケモミミ……。少しだけ考えてみる

 例えば、フェイに狼の耳があったら、ミラに猫の耳があったら……

 

 妄想を振り払う。案外行けるとか、寧ろそれが良いとか、何を考えている俺。そんな幸福な事を考えている何て許されるのか。彼はもう、そんな幸福を感じれないというのに

 

 『ひょっとして、考えました?』

 「進めてくれ」

 『ワタシの狐耳か何かですか?まあ、考えるのは自由ですよ。付けませんが』

 「先に行ってくれ」

 『感想は』

 「進めてくれないか」

 『「ふわふわもふもふの尻尾、何時もより幼」』

 「頼むから進めてくれ」

 『まあ、からかうのはこれくらいにしましょうか』

 フェイはそこで止まる。あくまでもからかい。軽口のレベル。それが、有り難くて

 だから今の俺は……こんなにも弱い

 

 『とはいっても、残りのサーヴァント、ランサーとアーチャーに関しては、話すこともあまり無いんですよね。資料はあまりありませんし』

 「アサシンに関しては?」

 『円卓の騎士に関しての方が多いですね。セイバーとしてパーシヴァルが呼ばれていたようですね。ブリテン領域による補正を受けられて、真っ向からボコられたみたいです』

 「……そうなるのか」

 『ええ。円卓の騎士関連は、貴方も読んでたりしますし割愛しましょうか』

 フェイが立ち上がる

 『では、そろそろ昼食の準備があるので。余り物を持ってくるので、その時にでも貴方になった者の話を続けましょうか』

 そういって、フェイは去っていった



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2/5 新フェイのヴァルトシュタインきょうしつ

『さて、今日は何について話しましょうか』

 

 夜、ヴァルトシュタインの皆に出すものの余りで作られた賄い(今日は、魚の切れ端のポワレ……というものらしい。端とはいえ、作りそのものは何も変わらず、フェイの腕もあってこんなものを食べる幸福があって良いのかと思える)の皿を片付けながら、フェイが呟く

 時間は、未だ夜の8時を過ぎた頃。今日の性能試験は夜闇の中で行うらしく時間は0時半から、更には長期に渡り散発的に戦闘が行われた場合の想定でもあるため、それまでに睡眠は許されていない

 よって、4時間ほど起きていなければならない俺に気を使ってくれたのだろう。だが、一昨日既に気になっていたかつての聖杯戦争について幾らか聞いた訳だし……

 

 「なら、マーリンについて、話してくれないか?」

 だから、俺はそう言った

 始まりの聖杯戦争において、クライノート・ヴァルトシュタインが呼んだというキャスター、アヴァロンの魔術師☆M。恐らく、真名はマーリン……

 このヴァルトシュタインの聖杯戦争という枠組みそのものを産んだという魔術師について、知りたくなった……というのは勿論ある。もしも、何か……正義を裏切り、この手に聖杯をもたらす方法に繋がるものがあれば、という期待もある

 だが、それをあえて聞いたのは……マーリンについて、そして、アーサー王、資料他曰く実は女性で本来の名はアルトリアな彼女について語る場合に、フェイの瞳に不思議な熱が見え隠れするから

 フェイの中に残っているだろう、英霊の記憶について、知りたくなったから。俺の中に居るサーヴァントは、俺に殆ど何も見せてくれないから。妻クリームヒルトだろう草原に佇む銀髪の少女や、何とも言えない不思議な部屋に立つ、ジークフリート自身だろう絶世のとは付かないが美男子な青年等の姿は頭に浮かぶが、それだけだ。結び付きが薄く、力をあまり借りられていない。だからこそ、フェイの中にあるだろう、英霊の熱を感じてみたくなったのだ

 単純に、フェイの心を掻き乱す存在に興味があった、なんて、ふざけた情けない心もゼロではないけれど

 

 『マーリン、ですか?』

 「駄目か?」

 『いえ、別に構いません。ただ』

 「ただ?」

 『マーリンに関してはそれこそ分厚い資料が残っていますので、大体それを読めば分かると思います。面白い話なんて、期待してもムダですよ』

 納得する。アヴァロンの魔術師☆Mは多くを語る質だったのだろうか、マーリンに関する資料は多い。各円卓の騎士に関する資料にも、各騎士のマーリン評等が載っていることもあり、マーリンに関しては、それこそアーサー王の次くらいには多く書かれているだろう。大概は悪口だとか、フェイは言っていたけれども

 「それでも、聞きたい」

 フェイだからこそ、英霊アーサー王を模した……そしてその記憶の欠片を持ち、自我を得ただろうフェイだからこそ、語れる何かがあると思うから

 『ワタシの知っている全てだって、資料はにありますよ?

 アルトリアを模しているワタシだからこその話なんて、期待されてもありません』

 「あるさ」

 『何です?』

 フェイが、僅かに首を傾げる

 「フェイの想い。そして、フェイの中にあるアーサーの記憶の想い。それは、フェイからしか見えないものだから」

 フェイが、微笑(わら)

 『全く、ワタシの事が知りたい、なんて

 恋敵を見つけて焦りました?』

 イタズラっぽく、そうフェイが言う

 恐らく、軽い冗談

 「恋敵マーリンとか、勝てる気しないな」

 『そんなことないと思いますよ、ワタシは

 基本的に、マーリンっていうのは女たらしの糞野郎ですから』

 フェイの瞳に光が揺れる

 これは……分かりにくいが、愛情、だろうか。マーリンは、幼い頃のアルトリアの師であったという。敬愛、愛情、そういったものがあっても可笑しくはない。謎の絵本資料、少女騎士アルトリアの冒険を描いた、何故あったのか分からない、アヴァロンの魔術師☆Mの資料の絵と同系統の絵柄の絵本にも、それは描かれていた。いや、あの本のマーリンは、事態を引っ掻き回していたりと騎士ケイほど格好よくは無かったが

 

 「フェイ、マーリンの事は……」

 『乙女の秘密です』

 揺れる光は……好意ばかりでは、無い……だろうか

 嫌悪、憎悪、あるいは、と悪感情も見え隠れする

 「本当に恋敵だったら、俺が噛ませ犬だな」

 ここまでフェイの心を揺らす相手に、対抗しろというのが無茶だ。俺にそんな権利は無い、最初から有り得ないからどうでも良いが、もしもそんな対決をするとして、良くて二人を引き裂こうとする悪役、悪くて……ヒロインに告白して撃沈するモブだろうか。それだけの強い感情を、フェイ……というより、その根源に確かに居るだろう英霊の記憶に感じる

 『どうでしょうね、ではマーリンについて語りましょうか』

 片付けを終え、食後の紅茶を持って、フェイが机までやって来た



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2/5 新フェイのヴァルトシュタインきょうしつ・その二

『マーリンといっても、何から語りましょうか』

 紅茶を一口飲み、フェイが言う

 

 「語れる事は沢山あるだろうからな……」

 少し、考える

 「恋敵だ何だって冗談を続けるならば、恋愛遍歴か?」

 『そこまで面白いものでもありませんが』

 「別に良いさ」

 『では、まあ、語るとしましょうか』

 一息置いて、フェイは話し始めた

 

 『マーリンですが、資料でも言われている通り、女の子大好きの女たらしの糞野郎です。ええ、文句無しの糞野郎、それがあの花咲か魔術師、マーリンです』

 「言われるほどなのか?」

 『何だと思ってるんです?あれは、半分夢魔の血が混じった混血の魔術師ですよ?人類が、ハッピーエンドが好きだ、というのは嘘では無いでしょうが、間違っても善人だなんて呼べませんね』

 「……酷い言われようだ」

 ここまで、フェイが熱くなるのも珍しい

 『アルトリア・ペンドラゴンを王にしたのも、父ウーサーの悩みを聞き、理想の王を作ろうとしたマーリンのせいですしね

 結果、少女アルトリアは、アーサー王にならなければならない運命を背負わされたという訳です。これだけで、如何にマーリンが糞野郎かの証明にはなるとは思いますが』

 「……王になる運命を、与えられた……」

 『ええ、そうですね』

 アルトリアに関しては、フェイの眼は、いつものあまり表情が無いのが嘘であるかのように表情豊かだ

 「それは、悪いことなのか?」

 『ええ、それはもう。王足りうる素質、土地の主としての力は、既に彼女の姉が持っていた。その上で、彼……マーリンは理想の王たるべくアルトリアを追い詰めた

 

 そして最後は、塔から出ること無く、救う事無く、自ら産み出した王を突き放し、その死を見届けた』

 「……塔」

 話には聞いたことがある

 アヴァロンの塔。マーリンが幽閉されたという、その場所

 「ならば、何故マーリンはサーヴァントとして出てこれた?アヴァロンの魔術師☆M……どうしてだ?」

 『知りませんね、そんなことは資料にも無いですし

 まあ、呼べないはずのサーヴァントを呼ぶための英霊の纒ですし、その関連でしょう』

 あっさりと、そう返される

 

 思考を切り替えるために、俺も一口紅茶を啜る

 やはり、良い茶葉だからか、それともフェイの淹れたものだからか、しっかりと香りが口に広がる

 

 「というか、どうしてマーリンはそんな塔なんかに閉じ籠ったんだ?」

 素直な疑問

 『閉じ込められたんですよ。恋人に、ね』

 「恋人……」

 『アーサー王の姉であり、妖精の子。父ウーサーより、本来ブリテンの主としての性質を次いだ者。モルガン・ル・フェに、ですね』

 「……モルガン」

 『アーサー王を捩った名を、このワタシが名乗りたくはなかったので

 縁者である姉モルガンから取って、フェイ。ワタシの名前の由来にもなった、そんなアーサー王を誰よりも憎んだ、そんな人ですよ』

 「マーリンはアーサー王の師。なのに、か?」

 『……恋に、理由なんて無いんですよ』

 フェイは、吐き捨てるようにそう言った。その声には、何処か……悔しさ、のような感情が混じっていた、気がした

 悔しかった……許せなかったのだろうか。敵である姉に現を抜かし、囚われた師が

 

 「そうして、アーサー王の敵に閉じ込められて……」

 『いえ、閉じ籠ったんですよ、あの花咲か魔術師は

 本気でアーサー王を救いに戻ろうとすれば抜けられたはずの塔に、自ら更なる鍵をかけて

 「罪無き者のみ通るが良い」。自分はアルトリアに悪いことをした、自分は罪人だから塔の出入り口を通れない、とですね』

 「……それは」

 『最後の最後まで、「今までもマーリンは最後には来て解決してくれたのだから、例えモルガンがアーサー王を邪魔するために塔に閉じ込めたとしても、きっと最後は抜け出して、この場を納めてくれる」と信じて、ブリテンは崩壊していったんですよ

 だから、マーリンは糞野郎です。救いようのない、ね』

 ……確かにそれは、糞野郎な気がする

 けれども、それならば

 何故、マーリンはヴァルトシュタインにここまで手を貸したのだろう。7つの聖杯、7つの聖杯戦争、その先に理由は知らないがあるという救世主。そこまでの全ての道筋を、何故用意していたのだろうか

 ……分からない。何処までも、分からない

 

 『……色々と、考える事が出来たようなので、今日はここまでにしましょうか

 マーリンについてもっと私情混じりの言葉を聞きたいというならば、明日以降に話しましょう』

 「ああ、そうだな……」

 寧ろ、謎は増えた。だが、考えれば解けるかもしれない

 

 更に一口紅茶を啜り、俺の思考は0時半まで、マーリンに関してのとりとめもない考察へと沈んで行くのだった



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2/8 アーサー王伝説考

『おや、何を読んでるんですか?』

 その声に、顔を上げる

 声から分かってはいたが、やはりフェイが此方を覗き込んでいた。昼の仕事は終わったようだ

 

 「ああ、これだよ」

 そういって、気になって読み返す段階まで来ていた本をパタンと閉じる

 『これは……ああ、アヴァロンの魔術師☆Mの』

 「そう。円卓の騎士や王を実際に見てきただろうマーリンが書いたアーサー王伝説」

 『ワタシも見ましたが、最近市場に出回ってるらしいものとは色々と違いますね、それ』

 「……とりあえず、〈約束された勝利の剣〉(エクスカリバー)がビーム兵器だなんてアーサー王伝説はそう無いからな」

 だが、真実は此方の方。実際に第六次聖杯戦争に呼ばれたというセイバーも、魔剣ぶっぱを得意としたというのだし

 

 『そうですね。まあ、仕方ない事でしょう

 何か面白い所はありましたか?大分集中していたようですが』

 フェイが近くに座る

 「……いや、幾つか気になる所があって」

 『気になるところ、ですか』

 「なんで、フェイの意見を聞けないかと思った所だ」

 『ええ、良いですよ。聞きたいというならば話しましょう。けれども、ワタシの意見はワタシの意見。別にアルトリアの公式見解なんかではありません

 それだけ』

 「分かってる。何が元だろうと、フェイはフェイだ」

 俺が、ザイフリートであるように

 『なら、良いです』

 そのフェイの言葉を受けて、再び本を開く

 

 「まず気になるのは……」

 指差すのは、始まりの部分。幼きアルトリアを描いた、本当の最初

 「何故、モルガンは此処ではまるで妹思いの良い姉のように描かれているのに、以降は最大の敵となるのか」

 『その変化が分からない、ですか?』

 フェイが困ったように首を振った

 『そんなこと、モルガン本人しか分かりませんよ』

 「だよな。仮説は……いや、これは他の疑問と絡んでるから後でだ」

 『忘れても知りませんよ?』

 「忘れないさ」

 

 次に捲るのは、即位。剣を抜き、キャメロットを築き、王となった後

 「……此処から、アルトリア、とアーサー王、と二つの名前が出てくる」

 『何か可笑しいんですか?』

 「可笑しいさ

 他の騎士は他の名前で呼ばれる事は無い。なのに、彼女だけがアーサー王と書かれたり、アルトリアと書かれたりしている。ガウェインだって太陽の騎士と書かれても可笑しくない場所でも常にガウェイン卿と書かれるなんて、しっかりと別の表現をしないように注意されてるのに」

 使い分けの法則は……仮説はあるが、よく分からない

 『なるほど、ですね。そう言われれば、違和感は無くも無いです』

 フェイの反応に、少しだけ落胆する。この事に関しては、フェイの意見は聞けないだろうから

 『それで、何か法則は見えましたか?』

 フェイが此方を向き、少しだけ首を傾げる

 「ああ。あくまでも感覚……ではあるけれども」

 アーサー王、とされた部分に僅かに感じる違和感。それは……

 「アーサー王、と書かれた部分は人間味が無い」

 『どういう事です?』

 「アルトリア、の部分は心が分かりやすいんだ。困っている人を放っておけなかったからマーリンの力も借りて助けた、みたいに

 けれども、アーサー王の部分は……」

 上手く言葉を探せない。けれども、あえて言うならば……

 「理想の王って機械を書いてる気がした」

 『理想の王……機械、ですか?それはまた』

 フェイの前髪が揺れる

 「王として正しい者ならばこうする、そんな選択を機械的に果たした。個人の意思もなく、それが正しい王だから。そんな風に書いている気が……した

 しただけだけど、な」

 少し、困ったように笑う

 本当に、自信がないのだ。こんな解釈……正しいのか、読み違えているのか

 『……それで、どう思いました?』

 フェイの声も、震えている

 当然か。フェイの心を動かすのはアーサー王とマーリンくらい。その片割れの事だから

 

 ……言いにくい。これは、かの王を否定する言葉だから。フェイにとって、嫌だろう言葉だから

 けれども、そんなことを考えるのは、フェイに嫌われる事を恐れるのは、俺の取るべき行動ではなくて

 「正直、気持ち悪かった。気分悪かった

 ……最初に読んだアルトリア・ペンドラゴンとはかけ離れた遠い存在。アルトリアが、アルトリアで無くなってしまったような……

 

 ……こんな事、言える存在じゃ無いけれども。それでも」

 だから俺は、思った事をそのまま口に出した

 

 フェイは、何も言わない。何も動かない

 その瞳に見える色も、よく分からない

 『……そう、ですか』

 けれども、返ってきたその言葉は……そこまで嫌悪感を含んだものではなかった

 「それで、仮説なんだが」

 『覚えてましたか』

 「ホンの少し前の事だしな」

 『まあ、当然ですね

 

 それで、仮説とは?』

 フェイが尋ねる

 声音に変化は無い。あんなふざけた事を言っても、怒らないのだろうか。それとも、仮説を聞いてから全てを否定する気だろうか

 どちらにしても、言わなければ始まらない

 

 「モルガンは……さ。昔のアルトリアが好きだったんじゃないか、と」

 『……続けてください』

 「アーサー王なんかじゃない、アルトリア・ペンドラゴンが大好きで

 だからこそ、彼女はアーサー王というアルトリアらしからぬ王が、そんな人の心が分からないような行動を取るようになってしまったアルトリアが、どうしても許せなくなった。だから、アルトリアの思い出を汚すアーサー王を、殺したかったんじゃないか?」

 これは、やっぱりあり得ない気がしてならない仮説

 「そしてマーリンは、そんなモルガンに、アーサー王もアルトリアのように好きになって欲しくて近付いた」

 けれど、そうとでも思わないと、モルガンと恋人にまでなったというマーリンが信じられるに足る存在じゃない単なる屑に思えて

 

 『……違いますよ、きっと』

 フェイの声は、確かに俺の耳に届いた

 『モルガンは、最後までアルトリアに戻って欲しかったんです。きっと、ね』

 「……フェイ?」

 その言葉を発したフェイは、何処か何時もと明らかに違って……

 『なんて、名前を取った元だからってモルガンを美化し過ぎですかね。冗談です』

 誤魔化すような、そうでないような笑いを浮かべたフェイからは、すぐにその違和感は消えていた



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2/27 ニュー・フェイのヴァルトシュタインきょうしつ

「……フェイ」

 2月の終わり、世間では雛祭りだなんだと少しだけ騒がしいものの、教会のミラにはほぼ無関係であり、ヴァルトシュタインにもやはり関係がない為、いつも通り。そんなある日……

 ふと、読んでいた資料に気になる記述を見つけ、俺は横でソファーに座り束の間の昼休みの睡眠を満喫しているメイドの少女に語りかけた

 

 『全く……。何ですか』

 俺の右肩に頭を預けたまま、フェイが何時もより生気の無い眠そうな声で応じる

 「質問の前に一つ良いか?何故俺の肩に頭を乗せる?」

 『倒れきっては服が皺になります。後、寒いので暖房代わりです』

 「そうか」

 良く分からないが、フェイが嫌でないならば良いかと、本題に入る

 「……いや、あの人の……クライノート・ヴァルトシュタインの手記を読んでいたんだが」

 後半がかつての聖杯戦争で燃えてしまったという、後ろ半分が焼けた手記を閉じ、俺は言った

 「彼の言う終焉、が気になった」

 『聖杯に触れた際、夢に見たのでは?』

 「……そうなんだが」

 肯定する

 確かに、ヴァルトシュタインの管理する聖杯に触れたその時、俺は見た。世界の終わりを。地上を破壊し尽くした、鋼の軍神の姿を

 けれども、アレが恐ろしい存在だという事は解っても、アレが何なのかは……正直良く分からない

 それは、怖いことだ。言うなれば、強いサーヴァントだと分かっていて、真名を知らぬサーヴァントの対策を考えるようなもの

 「それでも、知らなければならないような、そんな気がした」

 そんな俺の言葉に、銀髪の少女はゆっくりとその翠の眼を閉じて

 『C001、ワタシは眠いので、代わりに』

 そう、告げたのだった

 

 『はい、では語りましょう』

 低く、心に響く声が、蔵書を纏めた図書室に響き渡る

 何時しか、俺の前に……ヴァルトシュタインのホムンクルスの中では成功例に近く、割と絡む方な銀髪狐耳の中性的な青年……C(キャスター)001が立っていた

 呪術師を目指した人工キャスター。自我は薄いが、ある程度の言語機能と、そこらの魔術師を越える魔術の能力を持つその男は……同じく初期シリーズの生き残りだからか、フェイの元で動いている事も割と見掛ける。模擬戦相手の時は和装、それ以外は基本執事用の仕立てられた服なのだが、今は執事服のようだ

 「相方は居ないのか」

 もう一人の狐耳……C002、対として造られたというピンクくて少女なホムンクルスの姿が見えず、俺は聞いてみる

 『相方ではありませんので』

 返ってくる反応はそんなもの。響く声は、どこまでも感情が薄い

 ……もう少し話してくれたら良いんだが、なんて考えても意味はない

 「まあ、良い。教えられるのか?」

 『ええ。ヴァルトシュタインの見た終焉とは何かならば』

 「ならば、教えてくれ」

 

 『それでは語りましょう

 ……アリストテレスという言葉に聞き覚えは?』

 ある。当然だ。神巫雄輝は、馬鹿ではなかったから

 けれども

 「アリストテレス。古代ギリシアの哲学者で、プラトンの弟子。かのイスカンダルの家庭教師でもあったと言われる

 ……じゃ、ないんだろう?」

 口の端を上げて、俺は(わら)った

 どうしてか、そう……興奮しているというのだろう。心が躍る

 まるで、知るべきだった何かを、ずっと探していた真実に、遂に辿り着いたかのように

 

 『はい。便宜上、《アリストテレス》と

 ただ、彼等を総称する際に、そう呼んでいるだけです

 アリストテレス、或いはタイプ・○○。それが、ヴァルトシュタインの見た終焉の()です』

 

 「タイプ・マァズ……」

 ふと、口を付いてそんな言葉が出る

 『……それは、あの鋼の軍神の事ですね。けれども、まずは全体を語らないと分かりません』

 眼を瞑り、完全に俺の右肩に体重をかけながらも、フェイが補足した

 『アリストテレスとは何なのか、と

。恐らくは知りたいのは其処でしょう

 では、星の象徴とは、何だと思いますか?』

 

 「星の、象徴……」

 少し、額に左手を当てて考える。何時もは右だが、もたれ掛かるフェイの邪魔にならないように

 例えば、月。とある平行世界では、月は地上を観測する最大級の魔術機構だという。それほどまでの差異ではなくとも、火星等の環境は、法則は、地球とは異なる。それは、魔術的にもそうだと言われている。実際に辿り着いて観測した魔術師が居ないため、あくまでも推測に留まっているらしいが

 「法則、(ルール)?」

 『ある意味、そうです。そしてそれには、頂点がある。例えば、地球の魔術、魔法に、根源があるように

 他の星という、地球から見れば異常識のルールにも、必ずたったひとつ、絶対的な頂点というものが存在する』

 「つまり……」

 『ええ。そうです

 それこそが、アリストテレス。或いは、星の名を冠して、タイプ・○○

 星の最強種(アルティミット・ワン)。星の代弁者。異なる星という(ルール)そのものを体現する存在です』

 「……地球で言う根源の具現化。意思と姿を持った別の星の根源」

 『少し違いますが、まあ、そんなものです』

 聖杯戦争とは、そもそもが本来根源に触れるために行われるようなものであるという

 で、あるならば。もしも、根源そのものが一個体として存在するならば。万が一、それが世界に、地球に、人類に、牙を剥くならば……

 それはもう、ほぼどうしようもないと言えるだろう

 根源接続者と呼ばれる、根源の片鱗に触れた者ですら、奇跡を起こせる聖人だとされるほどの力を持つ。聖堂教会の言う聖人のうち、聖書にあるような大魔術レベルの奇跡を祈りのみでやってのけた者は、実は根源接続者であったのかもしれない、とアルベール神父は言っていた

 その、圧倒的上位互換能力。アリストテレスとは、ある意味そういうものらしい。どう足掻けば勝てると言うのだ

 

 『ええ。ですから、ヴァルトシュタインは呼ぼうとしてるわけです。彼等を止めうる救世主。人類の味方をし、地球のSOSを止める、完全な地球のアリストテレス(タイプ・アース)を。七度も聖杯戦争を起こしてでも、ね』

 そう、美味しいところだけ持っていくように、フェイが()めた

 「救世主か。けれども、根源がタイプ・アースなんだろう?」

 『いえ。根源はアリストテレスではありません。そもそも、地球に正式なアリストテレスは現在存在しない

 だから、少し違う、訳です。だからこそ、彼等は主こそが、タイプ・アース足り得る偉大なる存在だとしている訳ですし』

 その一念への敬意が、あまり感情を見せない銀髪から、少しだけ感じられた気がした

 「それで、何故彼等は現れる。異なる星の代弁者ならば、その星に居れば良いだろうに」

 ふっ、と、目の前の銀髪が、笑ったように見えた

 

 『それは、人類を見れば分かるのではないですか?

 地球を好き勝手に開発し、破壊し、そして自分等のみ繁栄する

 暫しの未来、地球に限界が来て滅びるその時にも、そんな人類は生き延びようとするでしょう

 ……それを地球が恐怖し、人類を何とかしてくれと星にSOSを送ることに、何の疑問がありましょうか』

 言われて、言葉に詰まる

 その通りだ。人類の行動は、環境という一点から見ればあまりにも悪そのもの。それを否定することなど、出来るわけがない

 

 けれども、でも。生きたいと思うことに、幸せになりたいと思うことに、嘘なんて無い。罪なんて無い。人は誰しも、幸福である権利があるはずなのだから。後は、幸福の中で、対策を考えてゆけば良い。そう思うことも、また確か

 

 要は、人の正義(良心)を信じるか否か……なのかもしれない

 だが、地球は信じない。だからこそ……

 「軍神の星(火星)より、鋼の軍神竜(タイプ・マーズ)が人類の収穫者(ハーヴェスター)として舞い降りる。全ての人類を収穫し、地球を看取る為に……

 という、話なのか。何故、マーズなんだ?他のアリストテレスは、地球が滅びる時まで来ないんだろう?」

 ふとした、疑問。俺はその答えを知っている……気がする

 『……これはヴァルトシュタインの別の手記のお伽噺ですが』

 結局、俺を枕代わりにゆっくりしているだけなのか、フェイが言葉を続ける

 『月が魔術機構の世界において、SOSをいち早く受けて地上に降り立ち、とあるものと戦ったのも、タイプ・マーズだったそうです

 要は、軍神という概念みたいなものを持ってるだけあって、アリストテレスの中でも特に喧嘩っぱやいから、すぐにやって来るんでしょう』

 

 ……違う。何故だろう、そう思った

 

 『はい。今日は此処まで。寝られませんので』

 だが、その思考はフェイの言葉に打ち切られた



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10/31 獣達のハロウィン 1

ハロウィン短編です。重要な事は何も語らないので、設定的には読む必要はありません。単なるおまけです


『……御早う御座います』

 そんな声と、頬をつつく刺激に、目を覚ます

 

 「……フェイ」

 ふと、目を開けると、其所には……

 

 猫が居た

 

 いや、それは正確じゃない。正確には、猫かつメイドだ。より訳がわからない

 「……何やってるんだ、フェイ……」

 軽く頭を振りながら、体を起こす

 ……見事なまでに猫耳である。獣耳自体は、見慣れないものでもない。というか、フェイに近いホムンクルス……キャスター系列の中にも、何人か狐の耳を生やした個体が居たし、バーサーカーの中にも何体か居た覚えもある。だが、フェイはその個体らとは違う。そんな耳など付いていない……はずだ

 ならば、これは……

 『分かりませんか?』

 戸惑う俺にかまわず、フェイはいつも通りの対応を返す

 いや、考えてみれば、俺の眠っているこの……部屋とも呼べない部屋までフェイが起こしに来ること自体もあまり無いことではあるのだが

 考えながら体を起こし、ベッドに座る形になる

 「いや、分からない」

 そんな俺の言葉に応えるように、フェイは懐から何かを取りだし、そして呟いた

 

 『trick or treat、甘いものをくれなければイタズラものです』

 ちいさなカボチャを付き出しながら、そう、今日が何であるか、俺がすっかり忘れていたものを思い出させるように、フェイが笑う

 「……そうか、今日は10/31。世間的にはハロウィンか……」

 そう。ハロウィン。ならば、フェイのあの耳は仮装の一つなのだろう。ヴァルトシュタインが、ハロウィンなんてものに興味を示すとは思わなかったし、そもそも今日も性能試験と称した魔獣相手に数時間森で生き残れ、というタイプの修行はあるし、その結果として俺も忘れていたが、考えてみれば今日はハロウィンだった

 『ええ。なので、せめてワタシの回りだけでも、少しはお祭りしようかと』

 少しだけイタズラっぽく、フェイは笑う

 「そうか、ヴァルトシュタイン自体がやってる訳じゃないのな」

 『ええ。正義正義煩い割に、風情とかあまりありませんからね』

 手にしたちいさなカボチャ……よく見ると紙製のそれを明けつつ、フェイが呟く

 ……猫耳はあるが、ヴァルトシュタインの目指した人工サーヴァント、その心面での成功例でありながらどこか冷たいことも言う、そんな何時ものフェイだ

 

 いや、恐らくはあまり喋らないこと以外は無駄にスペック詰め込んだ能力的成功例、C002辺りが無駄な裁縫能力の高さで作ったのだろう猫耳は、本物のように動かないとはいえ、少し心を掻き乱すのだが

 猫が嫌いな訳もない。中性的な美形ながらC001には流石に見慣れたし心惑わされないものの、見慣れていないフェイが、さも当然のように、何時ものメイドカチューシャの代わりに猫耳を揺らすと、落ち着いてはいられない

 ……少し、触りたくなる

 『……それで、どうです?似合いますか?』

 ふと、フェイが問う。髪に合わせた銀の猫耳が、首を傾けるのに連動して揺れた

 ……当たり前である。言うのも何だが、聖剣を抜いた直後のアルトリア、をモデルにしたと自称するフェイは、美少女である。それに猫耳、似合わない訳がない。神巫雄輝も、幼馴染の紫乃に猫耳付けて欲しいと頼んだこともあるのだから。美少女に猫耳は合う、それは真理である。その時は、恥ずかしがって付けて貰えてなかったが

 ……つまりは、結論としては貴様()がこんな幸福享受してるとか死に晒せ。そのくらいには、目に良いものである

 「ああ、良く似合うよ」

 少しだけ躊躇って、それでも思ったままを言う

 『そうですか』

 何時ものように、けれども、少しだけ照れるように下を向いて、フェイは返す

 『それで、答えは?』

 

 「甘いもの……キスで良いか?」

 トリックオアトリート。その答えとして、冗談めかして、俺は言った

 冗談である。俺にそんな行動を完遂する勇気も、完遂出来る関係の相手も、完遂して良い道理もない

 

 『……っ、な、何を言ってるんですかアナタは!?』

 珍しく、フェイが少し焦ったような返しをくれる。手にしていたカボチャの入れ物が地面に落ちる

 何時もなら、真面目な答えに関して、茶化すようにこういった恋愛方向に繋げ、冗談ですと切り上げるのはフェイの方。なので初めからやってみた訳だが、少し予想外の反応である

 『全く、いきなりですね』

 けれども、戸惑いは一瞬。すぐに立ち直り、フェイは屈んでカボチャを拾い直す

 

 ふと見ると、特に仮装していない、というか狐耳に和装と何時も仮装パーティーな人工キャスター二人が、扉を透視して此方を見ていた。作成時にしっかりと人格形成しきれなかったのか、他のホムンクルスよりはよく喋るがあまり喋らず絡んでこないので無視する。というか、狐耳少女(C002)の方は兎も角、狐耳の男(C001)の方は、今は視界に入れたくない。折角フェイが可愛い姿をしているのだから、せめて今は楽しもう。それが、俺を弱くし、堕落させる事だとしても

 

 「いや、何時もは冗談でも口説くような事を、と言うだろう?」

 『……だからやったんですか。全く、心臓に悪いです』

 「いや、悪かった」

 『せめて、trick or treatと言ってくれていれば、まだ準備は出来たんですが』

 「そんなに衝撃的か」

 『ええ。ワタシ以外にやったら、まず怖さで心臓止まります。只でさえ顔に傷とかあるんですから』

 酷い評価だな、と苦笑して

 「特に、何も無いよ。知ってるだろう、フェイ」

 真面目に、そう返す

 『ええ、なので、今日は……ワタシのイタズラとして、アナタにも仮装して貰いましょうか』



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10/31 獣達のハロウィン 2

「トリックオアトリート、ミラ」

 その声は、わたしの背後から突然響いた

 振り返ると、其所には恐ろしい吸血鬼が立っていて

 『うん、お菓子あるよ、フリット君』

 けれども、流石に正体を見抜けないわたしじゃなくって。だからわたしは、そう返していた

 来るの遅かったなって、そんな事を考えながら

 

 「……悪いな、お茶まで貰って」

 わたしの用意したお菓子と、同じく用意してあった紅茶を手に、フリット君がそう呟く

 『ううん。大丈夫大丈夫、これ、沢山用意しておいたものだからね』

 それに対して、わたしはそう笑う

 嘘じゃない。実際に用意しておいたものだから、不自然さはないはず

 「どうして、用意したんだ?」

 ふと、フリット君が首を傾げる

 『いや、家だって子供たちは来るよ?幾らあんまりいい場所に建ってないといってもね。だって、ここは聖堂教会に関する建物、向こうの風習なハロウィンは、当然のようにやるからね

 だから、ハロウィン用のお菓子は沢山あるんだ』

 「……いや、意外だな」

 吸血鬼のマントを羽織ったまま、フリットくんは呟く

 わたしとしては、フリット君がそんなマントで仮装して来たことの方が意外だったけど。案外、この世界を楽しめてるのかなって、嬉しくなる

 「アルベール神父、そう言うことに興味なさそうだから」

 『うん、そうだね』

 少し、笑う

 『だから神父様、今日は私には向かない日だから任せるってそそくさと引きこもっちゃったよ』

 「……それで真面目な事だけ顔を出す、か。あの人らしいよ」

 そんなわたしの答えに、フリット君は少しだけ愉快そうに笑う

 『わたしとしては、フリット君も似たようなものなのかなーなんて、思ってたんだけどね』

 流石に作りすぎたクッキーだから、わたしも一口。裁定者として、必要ないと言えば必要ないんだけど、楽しめる部分は世界を楽しまなきゃ損だから、わたしは食事は好きだし、フリット君にも楽しんで欲しい

 「……フェイに、イタズラとして今日は、と言われてな」

 そんな事を言うフリット君の表情は、あの日に比べたら随分と柔らかくて。悪くない、と思っているのが見てとれた

 

 『イタズラ、かぁ……。フェイちゃんって、たまに話を聞くメイドのあの子だよね?』

 「ああ。そうだ」

 『結構、仲良いんだね。そんな風に遊べるなんて』

 「……逆らうと怖い、って訳でもないんだけどな

 やっぱり、裏切りたくないから。どうしても、の時以外は」

 『じゃあ、わたしも……』

 少しだけ、迷い

 『トリックオアトリート、フリット君

 一緒に、外行こっか』

 けれども、結局わたしはそう言っていた

 

 『御免ね、待たせて』

 10分後、大体18時になるくらい。わたしは、子供たちを相手にする時に使った魔女っぽい服装で、フリット君の横に居た

 この服装は、袋から取り出したもの。子供たちの願いからのものだから、露出はあんまりない。どちらかと言うと、フリフリがあって魔法少女っぽい感じ

 「……案外、似合うな」

 『フリット君、案外って酷くないかな?』

 別に不満じゃないけど、わたしはそう言う

 うん、わたしにフリフリでピンクの魔法少女服って、フリット君が考えてるイメージからは結構離れてるだろうし

 ……実際には、わたしの裁定者としての戦闘服は、サンタクロースというだけあってモコモコした部分はあるけど、結構可愛い系だったりするんだけど。フリット君は、その事を知らない。修道服の、シスターとしてのわたししか知らない。少しだけ寂しいような、知って欲しくないような。だって、知るときは……わたしが、フリット君を殺して、世界を救うときだから

 「いや、ミラには……もうちょっと、赤い方が似合う気がしてたから、さ」

 『うんうん、これ貰い物だからピンクいんだけどね。やっぱり、赤い方が似合うかな』

 赤いのは、あんまり着たくない。それは、わたしにとてら戦闘に結び付く色だから。だけど、それは言わずにわたしは答えた

 

 「……それで、何処へ行くんだ?」

 ふと、フリット君が問いかけてくる

 『フェイちゃんとは、仮装なんかで遊んだでしょ?

 じゃ、わたしとも遊ぼうって話かな。わたしも、今日は子供たち相手にお菓子を配り続けて疲れたからね』

 まあ、久し振りに……というか、サーヴァントとしてお菓子を配るハロウィンも楽しかったけど

 『ということで、街のハロウィンパレードに参加しよう、って話』

 フリット君に手を差し出しながら、わたしは言った



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12/23 ジングルベルの音色と共に・1

『ジングルベール、ジングルベール、すっずが鳴るー

 明後日は楽しいクリスマスー』

 俺の意識は、そんな綺麗な……というよりも可愛らしい歌声により、ふとした微睡みから起こされる

 「……今日は、じゃないのか」

 『うん、まあね。けど、現実の今に合わせたいじゃん?

 おはよっ、フリットくん!』

 にこやかな、それこそ太陽のような笑顔で、歌いながら敷地内に用意されたツリーの飾りつけをしていた少女は挨拶をしてくる

 「……ああ、お早う、ミラ」

 まだ、意識がぼんやりしている。今は何時で、此処は何処で、俺は何者で、それらが全て曖昧で……

 明確に覚えているのは、目の前に居るのが、ミラという少女である、という事だけ

 いや、理解する。分かる……はずだ

 俺の名はザイフリート、ザイフリート・ヴァルトシュタイン。この少女が暮らす教会に居候する、孤児である

 ……本当に?とは思うが、思い返した所、そんな事しか思い浮かばない

 

 身を起こす。冬の木が落とす半分枯れた葉が、俺の体からこぼれ落ちた

 教会敷地内の広い庭。そこの一角で、俺は眠っていたようだ

 「お早う、ミラ」

 同年代で、それでも自分とは違って正式に教会でシスターとして働いている少女に向けて、俺はそう呟く

 『うん、改めておはよっ!

 まっ、もう昼間過ぎちゃってるけどね』

 言いながら、軽く音をたてて、少女は木の天辺に星を飾るために使っていた脚立を降りる

 「何か、やるべき事が……」

 頭が痛い。俺は、何かを忘れている

 『全く、寝坊助さんかな?終業式は、今日の午前中に終わったよ?』

 「終業式……」

 『うんうん、そうそう。終業式。高校生なら当然だよね

 帰ってくるなりお昼寝始めちゃって、きっと疲れたんだろうなって思ったけどね』

 何だろうか、全くもって、俺とは関係の無い言葉な気がしてならない

 『寝坊助さんなフリットくんには、今からちょっと温かいお昼のスープ持ってくるから待っててね

 それで体をあっためて、頭を働かそ?』

 言うだけ言って、少女はぱたぱたと足取りも軽く教会へと駆ける

 

 ……少し、頭を整理する

 俺の名はザイフリート・ヴァルトシュタイン。ヴァルトシュタインの……ヴァルトシュタインの……何だ?

 思い出せない。いや、思い出した

 記憶喪失の孤児……違う

 

 駄目だ。どうにも、記憶が混乱して……

 ふと、外を見る

 其所に、あるはずの無いものを見た

 俺とほぼ同じ顔。けれども、肌はもっと白く、髪はストレスで白く染まらず、目は色素異常で色を失わず。そうだ。その姿に当てはまる言葉を、俺は一つしか知らない

 リボンで髪を二つにくくった少女の横に居る彼は、神巫雄輝。俺になって消えてしまったはずの存在だった

 

 『ん?どうしたの?』

 「どうして……彼が」

 気が付くと、ミラが戻ってきていた

 ……待て、思い出した。全てを

 ならば、と構えかけるも、魔力を繰れない。光の剣を形成することが出来ない

 『うんうん、物騒なものは無しで、ね』

 「裁定者(ルーラー)、ミラのニコラウス……

 俺に、何をした」

 『何も?』

 「そもそも、聖杯戦争は……」

 こんなのんびりしては

 『やっぱり寝坊助さんだ。はい、スープ』

 だというのに、のんびりと、まるで昔、単なるシスターのふりをしていた時のように、ミラは手にしたカップを差し出す

 『聖杯戦争なら、フリットくんがバーサーカーを倒して終わったでしょ?』

 「は?」

 ……何を言っているんだ?

 一瞬、固まる

 「ならば、俺は」

 『けど、不完全なビーストなフリットくんじゃ、世界を遡るなんて離れ業無理だし、何だかんだ紫乃ちゃんの一年を無意味にしちゃうことに疑問も持ち始めていたからね

 だから、普通に聖杯は第三魔法の使用に使って、あそこの神巫くんを蘇らせて、それで聖杯戦争はおしまい

 ひょっとして、忘れちゃった?』

 「いや、ならば、ミラは……」

 『ん?わたし?フリットくんがそれで死ぬのも嫌だったし、そもそも魂ある程度修復に時間かかるしで……』

 てへへ、とそのかつて裁定者のサーヴァントだった少女は笑う

 『ちょっとルール的にはグレーなんだけど、サンタさんは偉いからね。クリスマスプレゼントとしてもう一個聖杯を用意してフリットくんにあげたんだ

 わたしが居るのも、フリットくんが生きてるのも、その聖杯のお陰』

 あっけからんと、少女は告げた

 聖杯戦争というものを、根底から無意味とするような言葉を

 「ちょっと待て」

 『うん、元々わたし、マスターの為なら自力で聖杯用意出来ちゃうからって、誰にも肩入れしないルーラー以外での聖杯戦争への参加を禁止されちゃってたからね』

 所謂、出禁って奴だねと、笑う

 『けどまあ、そもそもヴァルトシュタインが勝つことが前提って、今回の聖杯は不公平だからね。バーサーカーが負けても尚認めないような駄目な聖杯なら、もうわたしが代わりに何でも願い叶えちゃってもいっかなーって事で』

 「ならば、その奇跡は……」

 『駄目だよ、フリットくん。その先は

 だってフリットくんだって、心の奥底では、幸せに生きたかったんでしょ?

 そうじゃなければ、他人の幸せを奪うことを、あんなに思い悩んだりしないよ。自分の幸せがどうでも良い人は、他人の幸せだってどうでも良いもんね

 もう充分に苦しんだよ、フリットくんは。だから後は、わたしに色々と任せて幸せに過ごしちゃえば良いんじゃないかな』

 彼を、神巫雄輝を本当の意味で救うことに使うべきだ

 そう、言おうとした。そう、言いたかった

 ……けれども、その言葉をつぐんだ

 否定、しきれなかった。あまりにも、俺は弱かったから

 「というか、ならば今のミラってどんな存在なんだ?」

 だから、そんな質問に逃げる

 そうして、左の手で頭を抑えて思い出そうとする

 

 ……そうだ。確か俺は、あの日あの時、12/18日の夜。アサシンの存在と引き換えに、バーサーカーを滅した。そうして、尚も諦めないシュタール・ヴァルトシュタインの首を跳ね、その祖父グルナート・ヴァルトシュタインを三枚におろし、ヴァルトシュタインの血を引く者を全て聖杯の認識する世界範囲からその死をもって抹消する事で、聖杯にヴァルトシュタインの敗北を認めさせたのだ

 そう、そうだった……はずだ

 

 『ん?今のわたし?もうルーラーじゃないよ

 敢えて言うならば、キミと契約したライダーのサーヴァントの亜種、かな?』

 「……亜種、なのか」

 『まっ、そうでもないと、わたしがわざわざ残る理由なんて無いしね。フリットくんとわたしは表裏一体、一心同体……みたいなものかな

 だから、寝坊助さんで色々と忘れてるフリットくんに改めて自己紹介しよっか』

 綺麗な少女の瞳が、俺を覗き込む

 『わたしはちょっと冠位ってものを持ってるだけのライダーのサーヴァント、真名はミラのニコラウス。気軽にミラでもサンタさんでも好きに呼んで良いよ

 今は、フリットくんっていうビーストを、人間のままに抑えるのがお仕事かな。ってことで、宜しくねマスター』

 「あ、ああ……

 そう、だったな……」

 左手に刻まれた、三画の赤い痣を見ながら、俺はそう答えた

 

 本当に?という疑問を、未だに抱えながらも



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12/23 ジングルベルの音色と共に・2

すまない……クリスマスネタなのにクリスマスに間に合わなくて本当にすまない……


『ということで、プレゼントの時間だよ!』

 何処か疑問を抱えつつも、時は過ぎ

 夜が来る。時は過ぎてゆく。止まることもなく

 そうして、多くの者が寝静まっただろうその時。俺の横でホットミルクを飲んでいたミラは、突然立ち上がってそう告げた

 「なんだ、いきなり」

 『何だじゃないよ、クリスマス』

 「いや、イブは明日だろう?」

 違和感、記憶の欠落。それらを解決出来ず、けれども甘えから、ミラの言葉通り教会で厄介になっている

 それが本当に正しいのかは分からないが、それでも

 『まっ、それはそうなんだけどね』

 単なるシスターの少女時代には良く見た明るい笑みを、かつて裁定者だった少女は浮かべる

 『まっ、ある意味慌てん坊のサンタクロースがクリスマス前にやって来るってのは、お約束も御約束だからね』

 「いや、どうなんだそれは……」

 『そもそも、今からプレゼントを配るのは、かつてのサーヴァント達だからね

 一日じゃ終わらないのですよ』

 サーヴァント……言われ、少しだけ思い浮かべてみる

 炎を纏った槍を。あの気の良い兄ちゃんを。結局の所バーサーカーに邪魔だと討たれていたらしい少女を

 「確かに、な」

 大人しく、俺は頷く

 それはそうだ。あんなものへのプレゼント、一筋縄では行かないだろう

 「というか、サーヴァントは退去していないのか?」

 『してるよ?今からプレゼントを渡しに行くのは、その残留思念さんへだからね』

 「……酷い話だな、それ」

 『まっ、正直終わらせ方雑だったからね。尚も敗北を認めない頑固な聖杯を黙らせて、だし

 それを正式に終わらせる感じかな』

 りん、と鈴を鳴らし、ミラは立ち上がる

 その姿は、シスターとしての姿ではなく、いつの間にかあの日々で見掛けた赤い帽子を被った姿、つまりサンタクロースへと変わっている

 「それじゃ、行こっか、マスター」

 そのまま、ミラは手袋に包まれた右の手を差し出す

 「……俺も行くのか」

 『うん、当然。だってマスターはわたしのマスターだからね』

 「契約した覚えは無いんだが」

 『まっ、そこはあのアサシンちゃんと同じような感じかな

 空でならお話出来るから、早く行こっか』

 だが、疑問は却下され、手を掴まれる

 そのまま、外へと引きずり出された

 抵抗は……しない。結局、俺は何も分かっていないから

 「というか、プレゼントって……」

 『うん、今日は三人、明日も三人、合計六人がマスターと配るノルマかな』

 「待て、六人なのか?」

 『うんうん、六人だよ?』

 どうして?とばかりにミラは首を傾げる

 「いや、サーヴァントにならば、そもそも七じゃないと可笑しくないか?」

 ふとした疑問。バーサーカーでも欠けているのだろうか

 だが、サンタクロースの少女は首を振る

 『おかしくないよ?シークレットな一人、セイバーさん、アサシンちゃん、ランサーさん、あのチート、キャスターさんで六だからね

 バーサーカーは完全破壊されたし、ライダーさんは、わたしが代わりのライダーとして居たいかなって頼んだら、プレゼントと引き換えにささっと退去してくれたからね』

 うんうん、こんなの、とミラはいつの間にやら持っていた小さな袋から、一つのカードを取り出す

 それは、概念礼装と呼ばれるだろうもの。一つの概念を魔術的に切り取り、物理的に固定化した神秘の塊。正直な所、ばら蒔いて良いのかそんなもの、と思ってしまう、そんなブツ

 だが、まあ……サーヴァントにならば、良いかもしれない

 『それじゃ、行こっか』

 だが、自身もアーチャー並に可笑しなその少女は、自分が何処か可笑しい事も全く気にせず、外で口笛を吹く

 綺麗な音色が、雪でも降れば幻想的だろうが、特にそんなことは無い少し曇った寒空に響き……

 鈴の音を響かせて、ん、まあ……考えてみれば居るわな、な存在が空から舞い降りる

 即ち、神獣とも言えるだろう、ソリを引き空を駆ける二匹のトナカイ

 「……何でもありだな……」

 『まっ、今のわたしはライダーだからね。ルーラー時とは、使うスキルは一部別かな

 使おうと思えば使えるけどね。わたしはサンタクロースの伝承の大元だもん』

 笑いながら、少女は軽くソリへと乗り込む

 そして、此方に再度手を差し出した

 「……分かったよ、ミラ」

 そうして、俺はその手を取った



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本編おまけ
三日目おまけ あの日の夢を


オレ、は珍しく完全に主観的に物事を見ていた

 これより先は人の時代、神たるオレはあまり干渉するもんでもない、とちょいと別世界に引きこもるようになってから、現世を見る際に良くやっていたのは世界を俯瞰する方法。少なくとも個人の視点から見るものではなく、かつて現世で暴れまわっていた頃を思いだし、何処か懐かしい。かの仏の体を借りているお陰でサーヴァントとして現世に出てきており、主観的に見る感覚は取り戻していたとはいえ、やはり昔取った杵柄では違和感は残る

 

 そして、オレが見ているのは……マスターの過去、であった

 幾らサーヴァントとマスターのパスがあるとはいえ、狙って見るのは難しい……なんてのは普通のサーヴァントの理屈。一応これでも神性、理屈をねじ曲げて奇跡を起こす程度何でもない。それでやることが美少女の過去を覗く事かよ、というのは……まあ、マスターの心が過去に縛られてる以上、それを何とかしようって事で不可抗力で良いや

 見なきゃ始まんねぇからな

 

 とはいえ、今は流石に目を瞑る

 時は2015年12/24日、日没ちょっと前。マスター……多守紫乃(たがみしの)は、(きた)るべき幼馴染……神巫雄輝(かみなぎかつき)との待ち合わせ、というかデートを眼前に控え、幾つもの服を手に悩んでいた

 つまりは、今のマスターはデート用の服を選ぶ着替えの真っ最中で、流石に眼福眼福と見る訳にもいかない。幸せな時期を知ればこそ……と思い、その辺りの記憶から追っていく事にしたが、細かい調整は失敗しただろうか

 

 マスターの思考が流れ込んでくる。幸福感の中に、期待感が多分に、そして僅かな不安感が混じっている

 期待感とは、単なる片想いの幼馴染から一歩進めるかもしれないというもの。不安感は、変な服で行って幻滅されたらどうしよう、というもの。初めて、幼馴染から誘われた夜の街を……クリスマスイブの街を見て回る待ち合わせに、マスターは心を踊らせていた

 マスターにとって、どれだけその幼馴染が大切かが良く良く理解出来る

 まあ、理解は出来る

 

 暫く……大体30分位して、漸くマスターが服を決める

 流石に良いだろうと眼を開く。正確には、自力で遮断していた視覚を復活させる。今のオレはマスターの視点から世界を見ている状態。見るか見ないかしかない。それ以外の自由、他を見たりは流石に無理だ

 

 「行ってきます、伯父様、おば様」

 小さく言い残し、マスターは家を出た

 返される声は無い。他に引き取り手が居なかった、ただそれだけの事で、意に沿わず引き取らされた少女に対し、この家の主達は特に愛情を持ってはいない。確かに弟の娘かもしれないが、やはり自分の子の方が可愛いのだろう

 とはいえ、愛情を注がれていないだけで、特に暴力などを振るわれていない。最低限のものは言えば買って貰えもする。まだマシな環境……ではあるのだろう

 

 だが、それはマスターの境遇を絶対評価した場合だ

 幼くして海難事故で両親を喪ったマスターにとって、親の愛は良く分からないもの。そんな愛に飢えたマスターにとって、家は決して良い場所ではなかった

 

 だからこそ……自分に良くしてくれる、両親の葬式にまで来て励ましてくれた幼馴染にのめり込む……というのも、無理なからぬ事だろう。自分が愛に飢えているからこそ、強い愛を注ぐ。端的に言えばぞっこん、ありがちではある

 

 マスターの思考によると、待ち合わせは夜8時頃、駅前から見える大きなツリーの前。幼馴染のバイト……というか、友人の手伝いが終わってから……という事だ。家のクリスマスケーキやるから、代わりにちょっと手伝ってくれと言われ受けたらしいのは、まあどうでも良いや

 

 兎に角、マスターは割と早くに家を出た訳だ。待ち合わせの一時間前には来るタイプの行動だ

 

 そうして、そわそわしながら待っているマスターに、一本の電話が掛かってくる

 発信者は、神巫雄輝。ひょっとして、8時に閉めると言っていた店が、早めに売り切れたのだろうか。喜び勇んで電話に出たマスターに対しての言葉はしかし、マスターにとってどうしても受け入れられない事であった

 「紫乃。悪いんだけど、約束は無しで良いか?」

 「どういう事なの、かーくん?」

 時間は7時30分。待ち合わせの30分前、そんな時間に突然そんな事を言い出すなんて、どうしたのだろうとマスターが困惑する

 オレ自身は、困惑している当時のマスターとは違い、大体事情は分かるがそれでもどうかと思うような対応方法に思える

 

 眺めている間にも、話はおかしな方向に拗れていく

 神巫曰く、他の約束優先するから帰れ。他の子とデートすることにした。ぶっちゃけ振る気で呼んだけれど、もう口頭で良いや

 言っている事を要約すると大体こうなる

 ああ、バカだ。あの幼馴染はそうでもしなければマスターを返せないと思ったのだろうが、マスターを深く傷つけすぎる。どうしてそんな馬鹿な道を選ぶのか、オレには理解しにくい

 ……ああ。やっぱりあのセイバーのマスター、あいつだわ

 だが、そんな事は納得できた。間違ってはいないのだろうが、どうしてそんな過酷な道を態々選ぶ、その行動は、セイバーのマスターに実にそっくり。アレがどういうものか少し分かっていない部分もあるが、とりあえずよく似ている事は確かだ

 

 そうして、マスターは

 「大嫌い!もう知らない!」

 とだけ言い残して電話を切る。そして、泣きながら家路に付いたのだった

 

 そうして、マスターは泣きはらしたまま、夜が更けていく

 朝になっても、隣の家へ、幼馴染が家へ戻った様子は無かった

 

 マスターが絶望的な気分になる

 そんな中、一人の男が、マスターの元を尋ねた

 「警察のものです」

 昨日の爆発事故について調査していると、男は、そう名乗った

 

 「……爆発……事故?」

 「昨夜8時頃、駅前で爆発事故があり、関係者に話を」

 「……関係者って何ですか」

 警戒するように、マスターは問う

 「爆発事故の原因は、恐らくケーキ屋のガスの閉め忘れ」

 「ひょっとして……なんですけど」

 「はい。貴女の友人が手伝いをしていたらしく、事故後行方不明なので何か手掛かりはと」

 

 此処で、夢は途切れる

 当然だ。この先を、気を喪った当時のマスターは知らないのだから

 だからオレがダイジェストしよう

 

 一日後、意識を取り戻したマスターは、8時に起こった爆発事故の詳細を聞く

 それは、4人の死者を出し、100人以上の怪我人を出した事故についての事。生存者の証言として、ガスを最後に見に行ったのは神巫雄輝であること

 事故現場に血痕こそ残っていたものの、彼の死体等は見つかっていない事等

 

 そうして、マスターはもしかしたら、あの電話は、何か嫌な気配を感じた彼が、自分を遠ざけるためにわざと酷いことを言ったのではないか、という事に思い至る

 だがそれはマスターの救いでも何でもなく……

 傷付いた心のまま、ぼんやりと一年を過ごすのだった

 

 あの手紙が送られてくる、その日まで



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四日目おまけ 終末に見る夢、1(セイバー視点)

「地表が燃えている

 世界が、焼けていく

 

 かつて存在した文明は、全てが焼き尽くされた

 知性ある者達は、対話さえ許されなかった

 

 早すぎる、と正義は(おのの)いた

 負けられるか、と神々は奮い起った

 手遅れだ、と多くの人類は諦めた

 

 でも、まあ、流石に少しは残るだろう、と皆が楽観した

 

 ソレが、姿を現すまでは」

 

 

 『……全くもう、何なのよ、これ』

 相変わらず、彼の……ジークフリートの夢を見れず、私は呟く

 いや、呟けてはいない。この体は、視点を借りているだけのものだから

 だけれども、私はセイバー。しっかりと、自己だけは保っている。だとすれば

 これは、やっぱり彼の……道具(マスター)の見ている夢に違いない

 何故ならば、私はこんな夢は見ないから。見るのは常に、最愛のあの人(ジークフリート)の夢

 だってそうでしょう?誰が()(この)んで、夢でしかもう会えない彼よりも、不快なものを優先して見たりする訳?

 だからこれは、あの中途半端(マスター)の夢。なまじ少しだけ彼に似ているから見捨てきれない、それが腹立たしい、彼の見たユメでしかない

 

 だから、こんなもの……不快感しか催さない

 

 理解出来ない。出来るわけがない

 夢は、夢だ。だというのに、どうして幸福でないものを見るのか。そんな選択が出来るのか、分からないし分かりたくもない

 

 地球は……赤かった

 見たことはないけれども、蒼い星だと思っていた。まさか、そんな色だとは知らなかった

 私は、誰かの視点から、宇宙(ソラ)から、地上を見下ろしていた

 ああ、これは……

 

 やはり、視界は動かせない。けれど、そんな視界の端に映るものから、此処が何処であるかを推測する

 

 ……馬鹿みたい

 結論は、有り得ない事

 此処は月だ。生前見上げていた、夜の星

 端に映る霊子の壁が、その巨大さが、此処が月に作られた、魔術的な巨大装置である事をどうしようもなく理解させる

 だけど、そんな事は有り得ない。どうしてこんな事が有り得るだろう

 あの道具(マスター)が月に行ったことなんて無いだろうに

 

 (……止めろ)

 不意に、彼の意思が流れ込んでくる

 不快だ。本当に不快

 (止めろ……止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ!)

 ああ、煩い。どうして、こうもみっともなく騒ぐのか。仮にもあの人を名乗るならば、もっとしっかりして欲しい

 

 (何の権利がある!ゼロなのは俺だけだろう!)

 うざったい。理由は知らないし何故月から見ているかも分からないけれど、勝手に自己否定していろ

 あの人を目指すのに、道具(マスター)じゃ役者不足に過ぎる。マスター選びを間違えたかもしれない。あんな半端な期待を持たせるなんて、やっぱり何処までもふざけている。諦めてくれたら、期待しなくて良いのに

 

 ふと、視界に何かが映った

 あれは……シャトル、だろうか。聖杯から与えられた現代知識、そこまで詳しくはないけれども、おそらくはそう

 (違う!違う違う違う!)

 心の声は煩すぎて敵わない。ただでさえ彼の夢でなくて不愉快なのだから、少しくらい大人しくしていて欲しい。何が違うというの。あれはシャトル、そうでしょう?

 

 シャトルは、真っ直ぐに此方へ飛んでくる

 これは……月の基地辺りに着陸する月面探索か何かの映像だろうか。本当に、訳が分からな……

 

 突如、シャトルの軌道が変わった

 いや、変えられた

 そうじゃない。捕らえられ、進めなくなった

 シャトルを、何かが捕らえている

 

 あれ、は……あれは

 

 世界を見据えるのは、紅き双眸

 星を覆う背に宿るは、黒き両翼

 鋼の機神……総て破壊する終焉

 

 見た瞬間に、サーヴァントとしての全てが理解した

 アレは、この世ならざるもの、軍神の星からの降臨者だ、と

 (……ダメだ。止めなければ……止まらなければ

 貴様(おれ)に、誰かを死なせる権利など無いだろう!)

 視界がブレる。これを見ている誰かが飛び出そうとする

 (……動け、もう何も無くなったゼロ以下の俺でも、止めること位はぁぁぁぁぁぁ!)

 が、動かない……動けない

 ふざけたよく分からない道具(マスター)の思考も、あっさりと途切れる

 

 機神の胸から溢れだす焔が、シャトルを跡形もなく溶かし尽くした。真空等、お構いなしに

 

 

 ……ふざけるんじゃ、ない!わよ!

 

 怒る

 何にだろう。不甲斐ない彼に?それとも、何に?

 それは、分からないまま

 

 奴が、此方を見た気がした

 その瞳?は……

 あ、ああ、あああああああ!

 

 気が付くと、私は部屋に居た

 一人用の狭いホテルの部屋。仕方ないから許したけれども、正直文句を言いたいランクの場所

 暗闇の中でも映る、便利な時計は、午前3時を示している

 

 『ほんと、最っ悪の夢ね』

 忘れたい、ただただ、そう思った。最後に思ったのは、知ったのは……何だっただろうか

 思い出したくもない。無かったことにするのが一番だ

 『文句言ってやろうかしら。あんな不快な夢見せるなって』

 ぼんやりと、再度夢に落ちていく思考でそう考える

 けれど……まあ、良い。そんな事考えたくない

 起きるまで、あの人の夢を見たい。いや、見る。それだけで良い

 

 私の意識は、また夢に深く潜っていった



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十一日目おまけ 終末に見るユメ・2(セイバー視点)

それは、終末であった

 

 世界を見据えるのは、紅き双眸

 陽を覆う背に宿るは、黒き両翼

 総てを食らう全身は、鋼の機神

 空に輝くは、不吉なる軍神の星

 降臨した終焉は、総てを破壊する

 その姿は、20m級の鋼の人型。背に翼を、胸に竜頭を持つその姿は、神話の悪魔(ドラゴン)を思わせる。黒き姿を銀の光が塗り潰す、鋼の軍神竜

 今なら、私にだって流石にアレが何なのか分かる。あの日、遥かな(ほし)から見下ろしたあの夢が何を意味していたのか、当時の私には分からなかった。あの人の夢を邪魔するものとして、寧ろ殺意しか無かった

 けれども……今は違う

 

 鋼の軍神。タイプ・マァズ……星より来る終焉。この世ならざるもの、ティアマト神の降臨に呼応して現れた軍神の星からの降臨者……そんな訳はない

 ティアマトを呼び出した道具(マスター)を止めるために星がSOSを放ったという認識は完全なミス。だって……アレこそが、ザイフリート・ヴァルトシュタインの辿り着く成れの果てなのでしょう?

 そう、全ては逆。あの日夢から受けた印象のようにティアマト神(ビーストⅡ)を止めるために、軍神が現れたのではない。ザイフリート・ヴァルトシュタインの意志により星を破壊しにこの世界に降臨した巨神を倒すために、ティアマト神が現れたのだ。あの銀光を見れば、それは良く分かる。単純に巨大化するのではなく、巨大な機械の体を作り出して纏うようにした道具(マスター)の姿であろう、というくらいにかの機械の軍神は銀の翼を翻す時代の彼に良く似ている

 

 でも。と、そこで私は疑問に気が付く。私は、彼が聖杯を手にした結果ティアマト神が呼び出されるものだと思っていた。実際、彼の奥底に巣食うバケモノは置いておいて、何故かティアマトの眷族の姿を取れたりと、道具(マスター)ティアマト神(ビーストⅡ)の間には何らかの繋がりがある。まあ、だからビーストⅡ-ifなんて名乗りもするのでしょう。ティアマト神と一切関係がないならバケモノの名を名乗るだけで良いじゃない。あのバケモノが何かなんて知らないし、何故軍神の星と共に降り立つのかも分からないけれども、少なくともわざわざ関係もないティアマトのふりをする意味はない

 だって、何の誤魔化しにもならないもの。世界の敵(終焉の軍神)じゃなくて世界の敵(原初の母神)の使徒と名乗った所で、それいったい何が違うのよ結局単なる世界の敵じゃないの

 

 つまり、よ。ティアマトを名乗る以上、あの道具(マスター)とティアマト神は、どこかで縁があるはず。だから、彼はティアマト神の眷族を模したし、ビーストⅡ-ifと名乗った。そのはず

 だからこそ、未来に星を汚染するように降臨するビーストⅡ本体は、縁のあるザイフリート・ヴァルトシュタインの手によるものでしか有り得ないと、そう思っていた。思考は、此処に帰ってくる

 

 聖杯を使ってティアマト神を呼ぶのは道具(マスター)。ならば、私の野望ーつまりは、最後の最後に私の願いの為に道具(マスター)が手を伸ばした聖杯を使ってしまう。それで聖杯は消え、道具(マスター)世界の敵(ティアマト)を呼べず、回帰を果たせずに消えていくーが成り立つ……はずだった。寧ろあの人には届かなくても英雄よね私、あの人にちょっとだけ自慢できるわねなんて皮算用すらしていた。あの夢は、誰かが聖杯に手をかけるところから始まっていたから

 

 けれども、この事実はその全てを覆すもの。ティアマト神を召喚するのはザイフリート・ヴァルトシュタインではない。呼応するように機神の外殻を降臨させている以上、聖杯を手にさせずとも道具(マスター)の世界の敵化は止められない

 ……じゃあ、あんな世界の終焉を呼ぼうとしている道具(マスター)並の大馬鹿は誰?何をすれば良いの?私は……どうするべきなの?

 

 何も分からず、どうせ世界が終わる夢なんてもう視界に入れたくもなく。ただ私は、昼の一眠りの夢が終わるその時まで、そんな答えの出ない質問を、自問し続けた



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Fake /Material
おまけ FGO風台詞集


fgoっぽく、台詞を書き出しただけの完全おまけです。本当におまけ以外の何物でもないです

ネタバレ要素は多少あります


ザイフリート

召喚時:「……まさか、俺を呼ぶとはな。カルデアの召喚システムもいよいよ末期と見える。

半端者、ザイフリート・ヴァルトシュタイン。クラスはビーストⅡ扱いか、これは。『信頼』の約束に従い、俺が零に回帰するまでは手を貸そう」

レベルアップ:「アクセス、出力を上げる」

霊基再臨1:「……これが、俺の戦闘形態。怖いか?安心しろ、俺は、俺だ」

霊基再臨2:「………………これは。いや、何でもない」

霊基再臨3:「……これが、俺の真実。その鍵は、お前に預ける。どう使い潰すもお前次第だ、カルデアのマスター」

霊基再臨4:「俺が俺で居られるのは此処までだ。これ以上は、邪竜にしかならない。感謝する、俺を……此処まで信頼してくれて。その『信頼』に応えよう」

開始1:「……『回帰』しろ。あるべき、未来に」

開始2:「破壊する、俺の願う現在(イマ)の為に」

スキル1「:我が身は悪……」

スキル2:「まだだ!」

スキル3:「解き放て、コード……4@Altxe_f@(■■■■)Altxa3333(ァァァ)zz02ッ!」

コマンドカード1:「ああ」

コマンドカード2:「良いだろう」

コマンドカード3:「任せろ」

宝具カード1:「破壊する、この力で!」

宝具カード2:「立ち塞がるな、これ以上」

アタック1:「ふっ!」

アタック2:「はっ!」

アタック3:「はぁっ!」

アタック4:「らあっ!」

エクストラアタック1:「夜闇に堕ちろ!」

エクストラアタック2:「<偽典現界・幻想悪剣(バルムンク・ユーベル)>!」

宝具:「顕彰せよ、我が虚空の果ての宿星よ 破壊せよ <竜血収束・崩極点剣(オーバークランチ・バルムンク)>!」

ダメージ1:「まだだ!」

戦闘不能1:「……悪は、滅びるべき……ものだ……」

戦闘不能2:「俺は……まだ……誰も……」

戦闘終了1:「貴様の魂の収穫者になってしまったな」

戦闘終了2「:俺の、勝ちだ」

 

会話1:「俺よりも、他の真っ当なサーヴァントに構うべきじゃないか?」

会話2:「悪いな、俺の記憶なんて、殆ど幸福な事しかない。話せるネタは、多くはない」

会話3:「ビーストなのにカルデアに味方するのか、だって?当然だろう?正しくあるべき未来に世界を『回帰』する獣、ビーストⅡ-if。その目的は、今のカルデアとそう変わらないはずだ」

会話4:「伝説の竜殺しの大英雄……。何というか、縁はあるが……話し掛け難いな」(ジークフリート所属)

会話5:「アルテラ・ザ・サンだと?ん?〔タ〕?……待てよ、アルテラ・サンタ?……助けてくれミラ、訳が、分からない……」(アルテラ・ザ・サン〔タ〕所属)

会話6:「日本の呪術師……。あまり近付きたくはないな。いや、悪い者でないのは良く知っているが、疲れる」(玉藻の前、安倍晴明、タマモキャット所属)

会話7:「白き騎士王……。確かに、フェイの言葉も良く分かるな……」(アルトリア・ペンドラゴン<リリィ>所属)

会話8:「フェイ……。まさか、共に戦う日が来るなんてな」(???所属)

会話9:「マーリン、シスベシ、フォウ。Ⅳ、お前の言葉が、心に染みる」(マーリン所属)

会話10:「聖ニコラウス……いや、ミラ。また会えるなんて、な。いや、正確には別人だってのは、分かってるんだが……」(ミラのニコラウス所属)

好きなこと:「好きなことか。当然、クリスマス。俺を救ってくれた少女が、世界で一番はりきる日だ」

嫌いなこと:「嫌いなもの?理不尽。いや、俺の存在自体も極大の理不尽な事は、分かっちゃいるんだが」

聖杯について:「かつて、その奇跡を目指した事がある。結局は、その聖杯では彼を救いきれなかったけれども。けれども、それで良かったんだと、今は思う」

イベント開催中:「祭か。俺よりも、意中の相手と行く方が楽しいとは思うが……。そんな呑気なものでもないか、行くぞカルデアのマスター」

誕生日:「誕生日、か。精一杯に祝わないとな。結局、俺には縁が無かったものだから、的外れの事をしてしまうかもしれないが」

絆1:「……全く、暇なのか?」

絆2:「ビーストに近付くとはな。悪くはないが、警戒心の無い……」

絆3:「カルデアのマスター?お前は戦わないのか?多少のものならば教えられるぞ?何?サーヴァントの代わりに戦うレベルは地獄だからやりたくない?

……それもそうだ」

絆4:「此処は、暖かいな、カルデアのマスター」

絆5:「全くもって、あの二人みたいだな、カルデアのマスター。俺相手にここまで踏み込んできたのは、これで3人目だ」



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Characters Material

以下は本編登場キャラクターのmaterialとなります。ネタバレを含みます。また、内容は本編に掲載時と変わりません









ザイフリート・ヴァルトシュタイン

読み:ザイフリート・ヴァルトシュタイン

誕生日:12/26 血液型:AB型 年齢:0歳

身長:175cm 体重:84kg(金属部品含む)

イメージカラー:血色

特技:無し

好きなもの:世界、幸福、正義

嫌いなもの:悪、自分

天敵:多守紫乃、自身

fake/startears fate主人公。ヴァルトシュタインに作られた人工サーヴァント、S346 コード:DD

 

略歴

聖杯戦争の必勝を期すヴァルトシュタイン当主、シュタール・ヴァルトシュタインにより、降霊魔術をかつて得意としたものの衰退した魔術師の末裔たる神巫雄輝を核に作られた人工サーヴァント。幾多の失敗作との戦闘経験により、サーヴァント相手にもある程度対抗出来る人工サーヴァント唯一の成功例とされていたが、アーチャーとの交戦時、大きな負傷を引き金にして疑似的な防御宝具が発動。防御宝具により自身を制御する魔術回路、血の疑似令呪が破壊された事でヴァルトシュタインに反旗を翻すことになる

 

人物

容姿は灰髪で赤眼が特徴の青年。核たる神巫雄輝とはそう差は無いが魔力が焦げ付き髪と瞳が変色している。諦めることを知らず、非常にポジティブ。良いことを見つける事に長け、細やかな事に幸福を感じる幸福論者。その性質は戦闘時に僅かな希望を拾い上げる諦めの悪さにも通ずる。だが、その根底にあるのは自身への憎悪であり、ポジティブでありながら、どこまでもネガティブという矛盾した思考をもつ

 

能力

体内に埋め込まれた聖遺物を核に神巫の降霊魔術を起動、常時サーヴァントが体内に召喚されている。その為、元が人間でありながらサーヴァントとしての性質をある程度得ており、一般的な魔術師を単純な出力で凌駕する

が、ある程度改造されているとはいえ人間の体というハードでサーヴァントの力を発揮する為に、全身の血管系、神経系が戦闘時には魔力回路としても使用されており、長時間の全力行動はそれだけで命に関わる

 

 

 

 

 

 

 

 

シュタール・ヴァルトシュタイン

読み:シュタール・ヴァルトシュタイン

誕生日:5/5 血液型:O型 年齢:17歳

身長:170cm 体重:58kg 

イメージカラー:銀色

特技:未判明

好きなもの:正義、勝利

嫌いなもの:悪、敗北

天敵:お祖父様

ヴァルトシュタイン家現当主。世界を救うため、最後の聖杯戦争の勝利という命題を与えられたバーサーカーのマスター

 

人物

容姿は日本人そのものな美青年。日本人の血が混じっているため歴代当主と違い日本人に見えることがコンプレックスであり、ヴァルトシュタインの当主らしくあることを強く意識している。ヴァルトシュタインの正義を信じ、貫く正義の人。正義の味方であり、自身とヴァルトシュタインを正義と信じて疑わない

 

能力

未判明



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Fake/Material

サーヴァントのMaterialとなります。本編最新話までのネタバレを含みます








ライダー

クラス:ライダー 真名:ユーウェイン

マスター:ドゥンケル

性別:男 出典:アーサー王伝説 地域:ブリテン

属性:秩序・善 身長:181cm 体重:70kg

筋力:C 耐久:C 敏捷:C

魔力:B 幸運:B 宝具:B++

 

クラススキル

対魔力:B

三小節以下の魔術を無効化する。大魔術でもなければ、傷つけることは出来ない

騎乗:C++

訓練された騎獣を乗りこなすことが出来る。幻想種には、相手が認めた場合は騎乗が可能

陣地作成:C-

魔力を使い、自身に有利なフィールドを作り上げる。彼のそれは血統によるもの、本格的な修行は行っていない為か効果は不安定

英霊の纏:ー

ヴァルトシュタインの聖杯戦争に召喚されたサーヴァントではあるが、他にモルガンに協力的な円卓の騎士が居なかった為、誰も纏わず単体で顕現している

 

保有スキル

動物会話:D

動物の言っている事がなんとなく理解出来る。また、何となく自分の意思を伝えることも出来る。だが、細かいニュアンス等は分からない

魔術:D

母モルガンの血故か最低限の魔術を行使出来る

竜殺し:D

竜を殺した逸話が形となったもの。獅子との協力での偉業故、単体でのランクは高くない

魔力放出(竜):C

食料に困り食らった竜の血肉が、剣に組み込まれた竜の甲殻と牙が、大地の魔力を増幅する

 

宝具

約条せし帰還の楔(リュネットの剣・改)

ランク:B 種別:対人宝具

レンジ:1 最大捕捉:2人

リュネットに渡された名も無き剣を、母モルガンが地竜素材でもって改良したもの。旅に出る際、必ず無事に帰ってくるように(ねが)いを込めて、自分で用意した名剣とは別に渡された、単純に堅くて折れない事に特化したなまくら剣。刃の通りは悪く、剣というよりも鈍器ではあったが、折れないようにと願いを込めて選ばれただけあり、名剣ですら歯がたたない地竜と対峙した際その堅さ故に折れずに持ち主を守り抜いたという

ユーウェインはそれに感動し、母に頼んでかの剣を……憧れた王の剣のようにビームが出るように改造して貰った。本来の刃の外に纏うように竜の甲殻から作られた外装が取り付けられており、内部の本来の刀身に魔力をチャージ、外装を展開する事で溜め込んだ魔力をビームとして放出する……というのが理想だったが、実際にはその域には達しておらず、外装を展開すると魔力を収束しきれずに爆発するように撒き散らすに留まっている

 

竜を語れ(エクスカリバー)獅子星剣(Limit Extra Over)

ランク:B+ 種別:対城宝具

レンジ:1~10 最大捕捉:30人

エクスカリバーL.E.O。王の星の聖剣を目指して編み出された、大地の魔力による偽物の聖剣。地竜の素材で作られた剣、地竜の心臓を食らった獅子、そういった地に属する力を完全解放、莫大な魔力を纏って獅子に騎乗したまま突進する

 

 

史実での人物像

イヴァンあるいは獅子の騎士の主役、獅子を連れた騎士。ウリエンス王とモルガンの間の息子であり、アルトリアから見て甥、ガヴェイン等とは異父兄弟にあたる円卓の騎士

不思議な泉に現れる黒い騎士に敗れた知り合いの仇討ちをしに泉を訪れた騎士ユーウェインは、かつて助けた侍女の手を借りて騎士を倒すも、その騎士の妻に一目惚れをする。侍女リュネットの策もあり、一旦は未亡人となった騎士の妻ロディーヌと結婚する事に成功する

幸せに暮らしていたユーウェインだが異父兄弟のガウェインに誘われ、一年の約束で冒険の旅へと出掛ける。だが、ガウェインの行動や旅の高揚によりユーウェインは約束を忘れ、思い出した時には期日を僅かに過ぎていた

結果、激怒したロディーヌに絶縁されたユーウェインは発狂するも、母モルガンの薬を持った貴婦人により正気を取り戻す。リュネットと話し、ユーウェインは再び旅に出る。今度は、妻の許しを得る術を見付ける為に

旅の中、ユーウェインは獅子と竜の戦いを見掛け、獅子を助ける。獅子は恩義からユーウェインに従うようになり、以降彼は獅子の騎士と名乗る。獅子の騎士と呼ばれるようになった彼は様々な活躍をもって名前を轟かせ、遂には獅子の騎士としてロディーヌからあの不思議な泉の守護を頼まれる

ユーウェインはその時初めて正体を明かし、リュネットの取りなしもあって復縁。以降は幸せに暮らしたという

 

 

今作での人物像

獅子の騎士ユーウェイン。基本的には史実と同じだが、母モルガンから幼少にアルトリア・ペンドラゴンの冒険談等を聞いて育った為軽度のアルトリアフリーク。自身もフリークであるアルトリアを取り巻く者達の本心等も理解しており、それが災いしてカムランの戦いが起きた際、アルトリアを愛している母(モーガン・ル・フェイ)や素直でないだけのモードレット卿が本気で王を殺すような状況を望むはずがない、誤認だと断定し即座に駆けつけることはしなかった。結果としてキャメロットに駆け付けた際彼が見たのは、全てが終わった後妹の遺体を前に呆然とする母の姿であった。王の仇として斬ることも出来た。恐らく母は大人しく斬られただろう。けれども、どうしても斬ることが出来ず、ユーウェインは逆に母を庇う

そうして母が王の遺体と共に妖精郷へと向かった後、せめて王の願ったブリテンを維持しようと騎士として奔走するも王と多くの円卓の騎士という支柱の大半を失ったブリテンは最早まとまらず、失意のうちに人生を終える

そうして、彼は思うのだ。獅子の騎士だ何だと持ち上げられても、王の最大の危機に駆け付けることすら出来なかった自分が、立派な騎士などであるものか、と。王に償う為、騎士は聖杯を求める

 

 

 

ランサー

クラス:ランサー→バーサーカー 真名:ブリュンヒルト/ブリュンヒルデ

マスター:ファッケル・ザントシュタイン→グルナート・ヴァルトシュタイン

性別:女性 出典:ニーベルンゲンの歌/北欧神話 地域:ドイツ/北欧

属性:秩序・善 身長:170cm 体重:53kg

筋力:B+ 耐久:B 敏捷:B

魔力:C+ 幸運:D 宝具:B+

 

クラススキル

狂化:D→A

本来はバーサーカーのクラススキル。理性と引き換えに驚異的な暴力を身に宿す。彼女の場合は、愛する者を殺す戦乙女の愛憎の影響により、本来の彼女以上に攻撃的に変性しており、かつて自分を辱しめたジークフリート夫妻に対しては、義理の妹とその夫でありかつては悪くない関係であった等の和解の糸口は関係なく完全に聞く耳を持たない。後にバーサーカー化の為に聖杯により強化、全ての理性を喪い、憎悪の焔のみを宿すように変質した

神性:E

神霊適性を持つかどうか。纏った英霊が半神ではあるものの、彼女自身は人間であるため、ランクは低い

対魔力:B

三小節からなる魔術を無効化する。現代魔術で傷つけることはほぼ不可能

騎乗:C

王の嗜み。訓練された騎獣を乗りこなすことが出来る

復讐者:E→C

自身を辱しめたジークフリート、そしてそのことを自身に告げたクリームヒルトに復讐したことから、一応所持している。憎悪のみを増幅されたことによりバーサーカー時は強化される

英霊の纏:C→D

縁深い英霊を纏うスキル。彼女の場合、時に同一視されることもある北欧神話の戦乙女、ブリュンヒルデを纏っている。が、人格の基本は完全にブリュンヒルトであり、ブリュンヒルデの要素は能力以外には無い。バーサーカー化により愛憎はほぼ憎悪のみと化し、結果として乖離が進んだことで弱体化している

 

保有スキル

怪力:B→B+

一時的に筋力パラメータをランクアップさせる。本来は魔獣のみが持つスキルだが、生前から使用可能。バーサーカー化により、憎悪の焔を纏うことで更に一段階強化可能になった

 

宝具

死が分断つ悲愛の理(ブリュンヒルト・トラジェティ)

ランク:C+++ 種別:対人宝具

レンジ:1    最大捕捉:3人

戦乙女ブリュンヒルデの<死が二人を分断つまで>(ブリュンヒルデ・ロマンシア)から派生した宝具。自身が眺めた神々の黄昏の再現。自分が愛用していた槍を核に、黄昏の焔を呼び出す。深い愛憎をにより形成される本来の<死が二人を分断つまで>の憎悪の部分に宝具としての性質が強く移っており、愛ではなく憎悪に心を燃やせば燃やすほどに、槍から沸き上がる焔はより強く激しくなってゆく。その憎悪が強まれば強まるほど、焔の槍ではなく世界をを焼き尽くす焔としての性質は強まり、極限の憎悪の対象相手であれば、真名解放せずとも近くに居るだけで周囲を焼き払う程の性能を発揮する。逆に、自身が好意的な相手、憎悪の欠片も抱いていない相手に対しては、冬場に外から店屋の扉を開けた際に感じる暖かい風より生温い程度しか感じない

 

 

 

 

 

 

バーサーカー

クラス:ヴァンパイア→ランサー 真名:ヴラド三世/ヴァンパイア

マスター:シュタール・ヴァルトシュタイン

性別:男性 出典:吸血鬼伝説 地域:世界全土

属性:秩序・悪 身長:205cm 体重:105kg(武装含む)

筋力:B+ 耐久:C++ 敏捷:C+

魔力:B+ 幸運:C   宝具:A+

 

クラススキル

吸血鬼:EX

ヴァンパイアのクラススキル。狂化互換であり、人としては狂っているがヴァンパイアとしては当然の心であるとして名前だけが変更されている。エクストラクラスではあるが、基本的な事は全てバーサーカーと同一、クラス名が違うだけである

デイウォーカー:A

日中でも活動できるスキル。これを持たないヴァンパイアは、日中に日に当たると消滅する

英霊の纏:EX

本来は召喚出来ない存在を纏い、その存在ともなるスキル。彼が纏うものは吸血鬼伝説そのもの。飲み込まれた彼は、既に武人であり王であった串刺し公としての性質を完全に喪っている

 

 

保有スキル

護国の鬼将:ー

ヴァンパイアを召喚する際に、核としてヴラド三世が使われた事を示す残骸。彼は最早串刺し公ではなく、故に失われた

 

吸血:EX

吸血故に所持

 

 

宝具

夜王伝承・永劫祝福

ランク:A+ 種別:対人類宝具

レンジ:ー 最大捕捉:自身

英雄原則・二律背反と対をなす宝具。吸血鬼伝承そのもの

吸血鬼伝承となるほどに多くの人類の脳裏に刻まれたありとあらゆる能力を得る。また、吸血種も吸血鬼に近いものとしてその能力もある程度までであれば強引にではあるが使用可能。真名解放することで人類種に対する上位種としての資質をもって、かの人類の殺戮者(プライミッツマーダー)の性質すらも引き出すことが出来る万能の力。万能にして絶対の力ではあるが、あくまでも人により成り立つ力であるため、多くの人に否定されることで力を失うという本来であれば人々の心を束ねて放つ力でもなければ突けない弱点を持つ

 

 

アサシン

クラス:アサシン 真名:不明/魔狩人(ヴァンパイアハンター)

マスター:アルベール→ザイフリート・ヴァルトシュタイン(二重契約)

性別:(中心となっているのは)女性 出典:吸血鬼伝説 地域:世界全土

属性:中立・中庸 身長:素は144cm 体重:素は38kgほど

筋力:E~B 耐久:E~B 敏捷:C~A

魔力:E~C 幸運:EX  宝具:A++

 

クラススキル

認識阻害:B

気配遮断に当たる専用スキル。その目から消えた場合、アサシンに関する全ての認識を狂わせ、敵意を減衰する。幸運による判定に成功した場合に限り、それなりの正しい認識を持ち続けられるも、敵意は減衰する

英霊の纏:B

縁深い英霊・幻霊・神霊を纏い、本来召喚されない、或いはされにくいその存在ともなるスキル。伊渡間の聖杯戦争におけるサーヴァントの共通スキル。彼女の場合は、彼女自身も含まれる、魔狩人という英雄物語の主人公達の集合体を纏っている。彼女等一人一人は英霊に満たず、されども魔を狩る者という概念は確かに世界に刻まれているが故に

だがしかし、自分を含む無数の主役の概念を得て現界した結果として、彼女は元々の自分という個を喪失している

 

保有スキル

無し

 

宝具

英雄原則・二律背反

ランク:EX 種別:対悪宝具

レンジ:ー 最大捕捉:自身

アサシン唯一の宝具。吸血種といった悪が居るから魔狩人が居るという、伝承の大原則そのものが宝具となったもの

人々を脅かす魔ある限り、人はそこから救ってくれる英雄を幻想する。魔が聖杯戦争の行われている範囲に存在する限り、倒され聖杯に吸収されようと何度であろうとも再召喚される。また、全ての魔狩人が使った武器を無尽蔵に召喚して使用できる

だが、英雄と悪は二律背反。悪が居る限り英雄が夢想されるように、英雄ある限り悪もまた必要とされる。その為、対象の悪の復活に関する全ての判定に際して、判定にプラス補正をかける。真名解放すると、その矛盾を是正する為、対象の悪と自身を世界から抹消する自爆宝具となる

 

月王顕す影約(ファントム・レガリア)

月王顕す契約(ファンタズム・レガリア)の互換宝具。効果そのものはほぼ同一であり、資質の違いから色が違うくらいであるらしい。詳細不明

 

 

 

 

キャスター

クラス:キャスター 真名:カッサンドラ/アテナ

マスター:久遠錬

性別:女性 出典:ギリシャ神話 地域:ギリシャ

属性:秩序・悪/秩序・善 身長:151cm 体重:39kg

筋力:E   耐久:E 敏捷:D

魔力:C++ 幸運:E 宝具:B

 

クラススキル

陣地作成:C

魔力を使い、自身に有利な状況を作り上げる。得意分野ではない

道具作成:E

魔力を込めたアイテムを作成する。苦手分野であり、まともなものは作成できない

気配散逸:C

何処か現実離れしたスタンスにより存在感を散らし、気配感知を欺くスキル。Cランクであれば、他の存在感が強い者の側にいれば埋もれてしまい感知出来なくなる程の効果を発揮する

英霊の纏:C

自身のとある神罰の逸話を通し、本来は召喚不可能な存在……神霊アテナを纏うスキル。本来のアテナの巫女ではない為、僅かな時間のみ使用出来る

 

 

保有スキル

未来視の呪い:EX

アポローンにより恋人に与えられた神霊の呪い。結ばれる代わりにという体で与えられた力だが、巫女がその力で見たものは、散々に弄ばれて捨てられる自身の姿であった。故に巫女はアポローンより逃げ、誰かに言えども信じてもらえない呪いをかけられる

自身の目を通して、望む望まざるに関わらず未来を幻視する。けれども、見た未来を告げた場合、相手が3度の幸運判定に全て成功しない限り相手はそれを信じることが出来ない。例えそれが、相手自身が啓示等で理解した事と同一であろうとも、告げた瞬間にその未来は相手の中で嘘として処理される。嘘の未来である場合その限りではない

 

 

宝具

戦神神殿・天罰執行(アテーナー・ヘイルダウン)

ランク:B 種別:天罰宝具

レンジ:特殊 最大捕捉:特殊

対象に天罰を下す宝具。カッサンドラ陵辱、およびそれに対する戦神アテナの怒りが宝具となったもの

発動する事で、小アイアスにより自身が陵辱されたアテナ神殿を建造する。自身がその中に居る限り、自身或いはアテナ神殿そのものに対して危害が加えられる度に、その危害の度合いに応じて天罰という形でダメージを跳ね返す。ダメージそのものが神霊による天罰という性質上、アテナを格下視出来る程の偉大な神霊でない限り、何者であろうとも影響下から逃れることは不可能。アテナ真体が天罰を執行している為、アテナそのものを倒さなければ例え神殿ごと跡形もなく一瞬で消し飛ばそうが、止まった時の中で破壊しようが何しようが天罰は下る。また、逸話が逸話だけにセクハラ事項を行った場合は危害の度合いを無視して即死天罰となる



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Fake/Material アーチャー陣営

立ち絵は篠月祐(@cottontonlll)様によるものとなります

アーチャー陣営のみをmaterialから抜き出したものとなります。挿し絵以外の変更点はありません


 

【挿絵表示】

アーチャー

クラス:アーチャー 真名:ハヌマーン/斉天大聖

マスター:多守紫乃(たがみしの)

性別:男 出典:ラーマーヤナ/西遊記 地域:インド/中国

属性:中立・善 身長:202cm 体重:76kg(武装含まず)

筋力:A 耐久:B 敏捷:A+

魔力:B 幸運:B 宝具:EX

 

クラススキル

対魔力:C

二小節からなる魔術を無効化する。多少の魔術では傷一つ付くことはない

神性:A+

神霊適正を持つか否か。大神ヴァーユの息子であり、自身も神に近しい事から、最高クラスの神性を持つ

単独顕現:C

マスターからの魔力供給を絶ってもしばらくは自立出来る能力。彼はそもそも正しい意味でのサーヴァントではない。気になった少女を助ける為に、隠居した世界から分霊体を自力で現界させ、聖杯に働きかけてサーヴァントを名乗っているだけである。その為、実際にはマスターの魔力など一切関係なく、完全に自力のみで存在する事が可能。なのだが、それをやってしまうとほぼ人類悪なので宝具使用等にはマスターの魔力による承認が必要等と自分から枷を嵌めている

英霊の纏:A+

縁深い神霊英霊幻霊を身に纏い、その存在ともなるスキル。彼の場合、纏った神霊ハヌマーン側が、核となった英霊孫悟空の了承を得て主人格をなしている。ランクA+は規格外、纏った側の英霊の大半を(彼の場合は逆に主人格を譲った核となった英霊の能力の大半だが)使用出来る。使えないのは一部宝具の真名解放程度である

 

保有スキル

変化(真形):B

自身の体を変化させる。ハヌマーンの五面八臂ではなく、サーヴァントレベルに合わせて三面六臂となる

千里眼(偽):D

遠くのものを見通す力。彼のそれは魔術ではなく、世界の果てを物理的に見通した、核となった英霊の逸話が形となったものである

七十二変化(へんげ)の術:A

様々なものに変化する孫悟空の術。色々なものに化けることが出来る。また、自分の体の毛を自分の分身へと変化させる等の応用も可能。Aランクであれば、1ランク下がるものの良く知っている宝具にすら変化することが出来る

 

 

宝具

嵐獣よ、刻を喰らえ

ランク:B 種別:結界宝具

レンジ:1~1000 最大捕捉:千人

月を食らい、星の運行を止める事で時を止めて夜しか咲かぬ花を夜のうちには辿り着けぬはずの場所まで運んだ逸話が昇華された宝具。月を概念的に食らうことで、周囲の時間を停止させる。時が止まっている間、止まっている対象には誰も一切干渉出来ない。本編では街の人間を戦闘から護るためにサーヴァントやそれと契約している者レベルの魔力を持つ者以外の時を停止させたが、少しの間であればサーヴァント等を含めて時を止めることも十分可能。本気で殺しに来る場合、時間停止からの宝具解放、当たる瞬間に解除という月が出ている場合ほぼ回避不能な即死コンボも存在する

だが、輝く月を概念的に食べる事で発動する為、月が見えない屋内で天井を壊されないように戦う、月を破壊する、月が夜空に輝いている時間を避ける等で発動を封じることが可能

 

大河鎮定神珍鐵(たいがちんていしんちんてつ)

種別:対城宝具 ランク:A+

レンジ:1~1万 最大捕捉:1万人

海の深さを測り、海の柱とされたという伝説の棒。最大まで伸ばした際は三界を貫く程の長さを誇るという。その真髄は、世界の壁を貫き繋げる神造兵器。星の彼方より来る外敵を滅ぼす為の星の聖剣に対して、異次元より侵攻する者を星の聖剣の前に引き摺り出す星の聖杖である

なのだが、今の彼は真実の担い手闘戦勝仏孫悟空では無い為、星の聖杖として真名解放は不可能ではないが面倒らしい

 

天斉冥動す三界覇(ブラフマーストラ・ヴァジュラ)

種別:対界宝具 ランク:EX

レンジ:1万~ 最大捕捉:10万人

天の理の神威。宇宙に辿り着いた人の手により、魔術の域へと堕ちた神がかつて振るった魔法の一つ。天界より人界を越え冥界すら征する如意棒の真髄。人が手を出すべきでは無かった禁忌の一片。人の手により堕ち、されども畏怖を込められて付けられたその魔術の名は……衛星兵器"神の杖"(ロッズ・フロム・ゴッド)

太陽を手にする為に宇宙(ソラ)へと飛んだ、そして更にはある目的の為に月を喰らった逸話により、地の理の領域を抜け、宇宙(ソラ)より放つが故に使用可能な天の理。かつて太陽を目指した自身を撃ったヴァジュラを、何時かインドラへと撃ち返す為に自力で再現したもの

具体的には、遥か宇宙から地表へ向けて風神の全力をもってある程度巨大化させた如意棒を加速させ、激突させる。風神の加護により減速をほぼせぬ神の杖は、その速度を初速のマッハ10越えより緩めぬまま、より高く、より速く、より重く、全てが人の手による神の杖を超越するものとして炸裂する。そのエネルギーは、遥か地底にある冥界までも届くという

天界(忉利天)から冥界(陳莫)まで届いた如意棒の逸話から、世界を制覇する……対界宝具としての性質を持つが、その性質なくとも全力で撃てば街を滅ぼし、国を滅ぼし、星を滅ぼす力を持つ。本来は如意棒で撃つものではないので、本来よりも更に性能が向上しているものの、元より天の理。規格外の性能は変わらない

 

多守紫乃

読み:たがみしの

誕生日:3/21 血液型:A型 年齢:16歳

身長:151cm 体重:40kg

スリーサイズ:73/55/78

イメージカラー:ハシバミ色

特技:お菓子作り

好きなもの:かーくん、草原

嫌いなもの:海、爆発

天敵:ザイフリート・ヴァルトシュタイン

行方不明の幼馴染を探す少女。ヴァルトシュタインの罠により伊渡間に呼ばれ、アーチャーのマスターとなる

 

人物

容姿はハシバミ色の眼、赤っぽい髪、少し幼く見られる体型。容姿と学力は良いが決断力は無く、体も弱い。幼い頃に両親を海難事故で失っており、それ以来幼馴染にべったりな事から容姿の割に人気はない。クールを演じてはいるが所々にボロが出る。そんな普通の女の子。だったのだが、心の拠り所でもあった幼馴染を一年前に失い、多少精神的に不安定となっている

 

能力

ド三流の魔術師。自身の起源や出来ることすら知らない。魔力量は平均的な魔術師を越えるものの、生かす方法を知らないド素人

初級呪術「ガンド」を愛用する「ガンド撃ち」……というかガンドしか使えない。体力も無いので肉弾戦も苦手と魔術師としては良いとこ無し



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Fake/Material セイバー陣営

セイバー陣営の立ち絵はエターナル14歳(@eternal14sai)様産となります


セイバー

【挿絵表示】

クラス:セイバー 真名:クリームヒルト

マスター:ザイフリート・ヴァルトシュタイン

性別:女性 出典:ニーベルンゲンの歌 地域:ドイツ

属性:混沌・善 身長:161cm 体重:44kg

筋力:D 耐久:E 敏捷:D

魔力:C 幸運:D 宝具:B+

 

クラススキル

対魔力:A-

殆どの現代魔術を無効化する。呪われしニーベルングの財宝の一つである結婚指輪依存の能力であり、一部呪いへの耐性は無い

騎乗:C

王妹の嗜み。訓練された騎獣であれば不自由なく乗りこなせる

復讐者:B

復讐譚の主役として、ブルグントを滅ぼしたものとして、アヴェンジャー適性を持つ

忘却補正:B

人は過去を忘れるが、彼女は復讐心を決して忘れない。彼女に残った全ては、もう居ない夫への尽きぬ愛だけ故に

英霊の纏:ー

この聖杯戦争に限り存在するクラススキル。イレギュラーな存在に呼ばれたが故に、彼女は所持していない

 

保有スキル

黄金率(呪):C-

一生においてどれだけの金銭がついて回るか

夫が与えた財宝により、基本的に不自由は無いが、呪われた財宝を持つ為に幸運が1ランク低下する

 

宝具

喪われし財宝(ニーベルング)

ランク:E-~A- 種別:対人宝具

レンジ:特殊   最大捕捉:特殊

王妹クリームヒルトが結婚の際にジークフリートから贈られたというニーベルンゲン族の財宝

彼女の元から奪われ、ライン川の底に沈められたという呪われた財宝をかつて所持していた縁から一時的に手元にあるものとして扱う、世界を欺く宝具。ジークフリートから贈られた財宝である限りどんなものであれ手元に呼び出し使用出来るものの、本来は既に彼女の手から喪われたものであるため本来より宝具ランクが1ランク低下する。また、使用時間にも制限があり、同じ宝具を使用する際は暫くのクールタイムが必要である。大体は身隠しの布(タルンカッペ)の使用の為に発動される

 

 

喪われし財宝・幻想大剣・天魔失墜(ニーベルング・バルムンク)

ランク:B➡B- 種別:対軍宝具

レンジ:1~30 最大捕捉:300人

喪われし財宝により手元に呼び出した、ジークフリートの剣

一発限りであり、本来のものより劣化していはするものの、Bランクにまで達した聖剣魔剣の両側面を持つ黄昏の剣の威力は、サーヴァント擬きでは辿り着けないはずの領域にまで到達する

真名解放すると剣に蓄えられた神代の魔力(真エーテル)を使い、黄昏の剣気を放つ

 

悪相大剣・人神鏖殺(バルムンク)

ランク:B+ 種別:対人宝具

レンジ:1~3 最大捕捉:五人

幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)の真の姿、人殺しの魔剣

そもそも、本来のバルムンクは竜殺しの聖剣等では無い。かつての持ち主を殺して所有者を転々としてきた、血塗られた人殺しの剣である。大英雄ジークフリートはファフニールを倒した偉業により、聖剣としての側面を産み出したに過ぎない。故に、クリームヒルトが持つ際には、本来の魔剣としての性質のみを顕す

柄の青い宝石には神代の魔力(真エーテル)が蓄えられており、真名解放と共に黄昏の剣気を放つ。真エーテルは神代ならざる時代の人にとっては殺戮の毒であり、人類に対して文字通り鏖殺、即ち皆殺しにする程の特異な効果を発揮する

 

基本設定

好きなもの:あの人(ジークフリート)

嫌いなもの:ジークフリートを殺した総て

天敵:ブリュンヒルト

一人称:私 二人称:アナタ/キサマ 三人称:彼/彼女 マスターの呼び方:道具(マスター)

 

性格

素直で純情。思い込みが激しく激情家で、一途で、愛が重い。現代で言うヤンデレの一種といえる

一度好いた相手にはひたむきな愛情を注ぐが、一度嫌った相手は執念深く憎悪する。また、ジークフリートを今でも深く愛しており、彼以外に恋愛的な愛情を向けることは無い

動機・マスターへの態度

余程の事がない限りマスターを優先する事の無い彼女は、サーヴァントとしては扱いにくい範囲に入る

万が一彼女が召喚される事があるとすれば、それは彼女自身の目的を果たすためであり、彼女の目はその目的のみを見据えているだろうからだ。その目的は最愛のジークフリートに関する事であり、彼女にとってはマスターより余程優先される

だがしかし、彼女に嫌われない限り、彼女が裏切る事はないだろう

 

史実の実像・人物像

「ニーベルンゲンの歌」の登場人物。ジークフリートの妻

クリームヒルトはブルグント王グンターの妹の美少女であり、ジークフリートがブリュンヒルトとグンターとの結婚を手助けする代わりに、ジークフリートの願いにより彼の妻となる。それだけであれば、ジークフリートの英雄譚のクライマックス、ハッピーエンドであった

だがしかし、嫁取りの際のジークフリートの手助けを知らずにグンターの妻で自身の義姉となったブリュンヒルトとの夫自慢の会話の際、その認識の違いからジークフリートをグンターの部下にすぎないと侮辱され、激昂しブリュンヒルトを酷く侮辱し、その結果として彼女は最愛の夫ジークフリートを喪う事となる

そうして、10年以上夫の喪に服した彼女は、フン族の大王エッツェルと復讐の為に結婚し、夫を殺した者達すなわち兄達を含むブルグント族と、フン族が全面戦争を行うように行動する。結果として殆どの相手に対し復讐を果たすも、夫の剣で捕虜となった兄を斬殺した事を咎められ、自身も夫の剣の前に倒れた

 

因縁キャラ

ジークフリート

『大好きな人。彼さえいてくれれば良かったのに』

ブリュンヒルト

『死ね』

 

 

 

セイバーのマスター(ザイフリート・ヴァルトシュタイン)

クラス:セイバー(偽) 真名:???/ザイフリート・ヴァルトシュタイン

マスター:特殊(英霊ではなく人間の為、自身をマスターとする)

性別:男 出典:未判明 地域:未判明

属性:混沌・悪 身長:175cm 体重:84kg

筋力:E+ 耐久:D   敏捷:C+

魔力:C  幸運:不明 宝具:E++

 

クラススキル

対魔力:E--

魔術への耐性として期待出来るようなものではない。セイバーというクラスに付随する為、便宜上持っているというだけの事である

騎乗:ー

ヴァルトシュタインに作られた偽者のセイバー故、未所持

英霊の纏:D

この聖杯戦争の特例、本来召喚出来ないサーヴァントを呼ぶために、召喚可能なサーヴァントを核として別のサーヴァントを纏うスキル。ヴァルトシュタインの目指した人工サーヴァントの完成形。ザイフリート・ヴァルトシュタインというサーヴァント擬きを核に英雄ジークフリートを纏っている……と推定されたが、実際には違う

贖罪の呪縛:D

彼は自身が諦める事を許さない。その先に、果たすべき何かは無いから、ゼロである自分を燃やし尽くそうとも立ち上がれと呪い続ける。自身にガッツ状態を付与する

???B➡D

詳細不明。されども、其は彼の根源を規定する力

 

保有スキル

縮地:C++

幾多の武術、武芸が追い求める歩法の極致の一つ。構えを崩さず、瞬時に距離を詰める

彼のそれは天性の観が生んだ異形の我流奥義である

 

宝具

光の剣(仮)

ランク:E 種別:対人宝具

レンジ:1~3 最大捕捉:一人

本来の宝具を持たない事による特例と思われる力。血色の光が、あらゆる手に持ったものをEランクの宝具とする

 

悪竜の血光鎧(仮)

ランク:D 種別:対人宝具

レンジ:ー  最大捕捉:自身

彼の体を覆う魔力の鎧。あらゆるダメージを軽減し、魔術をガードする

常時発動型の宝具。本格的に起動していない場合は不可視だが、本領を発揮する場合は紅いオーラ(ひかり)として可視化する

 

偽典現界・幻想悪剣(バルムンク・ユーベル)

ランク:E++ 種別:対人宝具

レンジ:1~3 最大捕捉:三人

ジークフリートを目指し、真のジークフリートならざる者が我流で産み出した、偽典の剣。幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)の、劣化再現

 

喪われし財宝・幻想大剣・天魔失墜(ニーベルング・バルムンク)

ランク:B➡C- 種別:対軍宝具

レンジ:1~30 最大捕捉:300人

喪われし財宝により手元に呼び出した、ジークフリートの剣。セイバー(真)との合体技

一発限りであり、本来のものより劣化していはするものの、Bランクにまで達した聖剣魔剣の両側面を持つ黄昏の剣の威力は、サーヴァント擬きでは辿り着けないはずの領域にまで到達する

真名解放すると剣に蓄えられた神代の魔力(真エーテル)を使い、黄昏の剣気を放つ

が、あまりにも当たり前の真理、彼はジークフリートではない、により性能は劣化している

 

 

ザイフリート・ヴァルトシュタイン(覚醒状態)

【挿絵表示】

クラス:ビーストⅡ-if/アンチセル(ヴェルバー02) 真名:ザイフリート・ヴァルトシュタイン/巨神アルテラ

マスター:特殊

性別:男性 出典:Fate/EXTELLA 地域:外宇宙

属性:混沌・破壊 身長:175cm 体重:82kg(金属部品込み)

筋力:D+  耐久:D  敏捷:C+

魔力:EX  幸運:EX 宝具:B++

 

クラススキル

対魔力:ー

悪竜の血光鎧に複合されている為未所持

騎乗:ー

擬似的にセイバーとしているだけの紛い物の為未所持

単独顕現:B➡D

ビースト全体のクラススキル。単体で現世に現れるスキル。聖杯ではなく捕食遊星の管理下にある彼は、ある意味聖杯の補助を受けず単独で現界しているようなものであるためか、ビーストになりきらずとも付加されている。とはいえ、今の彼は、捕食遊星の尖兵が持っていた3つの側面のうち赤、軍神のみを保有する不完全体であり、概念攻撃への耐性は完全では無いが、このスキルは『既にこの世界に存在する』在り様を示す為過去改変やタイムパラドクス系の攻撃を不完全ながら無効化する

ネガ・ジェネシス:E--

ビーストⅥが持つ『ネガ・メサイヤ』と同類のスキル。現在の進化論、地球創世の予測をことごとく覆す概念結界。これをおびた彼は、正しい人類史から生まれたサーヴァントたちの宝具に強い耐性を獲得する

……というのは大嘘。このスキルの本性は文明を喰らう遊星の理。地球の生命を根底から破壊し捕食し塗り替える、遊星の片鱗の発露である。今の状態は、ティアマト神によりそれが歪んでいるだけに過ぎない

英霊の纏:D

この聖杯戦争の特例、本来召喚出来ないサーヴァントを呼ぶために、召喚可能なサーヴァントを核として別のサーヴァントを纏うスキル。ヴァルトシュタインの目指した人工サーヴァントの完成形。ザイフリート・ヴァルトシュタインというサーヴァント擬きを核に英雄ジークフリートを纏っていると推定される。のだが、それは嘘、彼が真に纏うのは捕食遊星の端末、巨神アルテラ……およびその果てに存在するヴェルバー02そのものである

贖罪の呪縛:D

彼は自身が諦める事を許さない。その先に、果たすべき何かは無いから、ゼロである自分を燃やし尽くそうとも立ち上がれと呪い続ける。自身にガッツ状態を付与する

 

保有スキル

縮地:C++

幾多の武術、武芸が追い求める歩法の極致の一つ。構えを崩さず、瞬時に距離を詰める

彼のそれは純粋に一時的に空間を食っているだけ。奥義でも何でもない、特性にものを言わせたごり押しである

 

宝具

悪竜の血光鎧(ブラッド・オブ・ファフニール)

ランク:C 種別:対人宝具

レンジ:ー 最大限捕捉:自身

彼が纏う、血色の光の鎧。彼自身の血を触媒とし、竜の如き光の鎧を纏う。あらゆるダメージを軽減する

英雄ジークフリートが浴び、不死身になったという悪竜ファフニールの血、の代替……だと推測されたが、そうではない。これは、彼を悪竜へと変える力である。その正体は、遊星の力の片鱗。周囲の魔力を自身の血で侵食し、光の鎧として巨神体の初期段階として纏っていただけである。その為、本来はこれだけで宝具扱いはされない。アンチセルとして半端ゆえにこの力だけで一つの宝具として分離している

 

偽典現界・幻想悪剣(バルムンク・ユーベル)

ランク:D++ 種別:対人宝具

レンジ:1~3 最大捕捉:三人

ジークフリートを目指し、真のジークフリートならざる者が我流で産み出した、偽典の剣。自身が世界に刻み込んだ血色の斬撃や周囲の魔力などを束ね、一つの限界を越えた斬撃として撃ち放つ我流奥義。幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)の劣化再現。正直な話、宝具というか基本能力なのだが、便宜上一切の遊星の力無しで使える唯一の切り札の為宝具扱い

 

竜血収束・崩極点剣(オーバークランチ・バルムンク)

ランク:A++ 種別:対城宝具

レンジ:1〜99 最大補足:900人

夢幻召喚し、本領を発揮した彼の扱う旭光のブレス。虚空の何者かと接続し、異次元から現れたキューブを展開。その力の欠片をキューブにより展開した紅蒼翠の三色の魔方陣から照射する。地上からも一応撃てはするが、本来は成層圏から星の涙の如く降り注ぐものらしい。異次元から引きずり出したエネルギーを旭光のドラゴンブレスとして叩き付けるものの為魔力の消耗は非常に少ない。だがしかし莫大なエネルギーに一般的な英霊では霊基そのものが耐えきれない為、照射は一度が限度。更には気を抜くと自身へと向けて旭光が星の涙となって降り注ぐ諸刃の剣でもある

 

その本来の宝具名は、<涙の星、軍神の剣(ティアードロップ・フォトンレイ)>。だが竜血収束・崩極点剣の名前でも問題なく発動する

 

 

 

 彼はゼロより目覚め、その使命感に従って人理破壊(過去改変)を目指す

こんな未来(いま)を認めない。あんな理不尽な過去なんてなければ良い。その方が、あんな辛い事なんて無ければきっと幸せだったはずだ、と

原初の女神により歪められたその悪意(ねがい)をもって、彼の末路は推定された。アンチセルなど肉体(いつわり)のクラス、其は人類が渇望し、されども越えていかねばならぬ最も甘美な大災害

 その名をビーストⅡ。人類が滅ぼすべき七つの人類悪の一つ、『回帰』の理を目指す獣である



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Fake/Material EXTRA

ルーラー等のEXクラスのみを分割したものになります
当たり前ながら最新話までのネタバレを含みます

立ち絵 エターナル14歳様


ルーラー

【挿絵表示】

クラス:ルーラー 真名:ミラのニコラウス/サンタクロース

マスター:なし

性別:女性 出典:史実/サンタクロース伝承 地域:ローマ帝国/フィンランド

属性:中立・善 身長:152cm 体重:40kg

筋力:B+ 耐久:C  敏捷:A+

魔力:B  幸運:EX 宝具:EX

 

クラススキル

対魔力:EX

聖人故の信仰が大元になった力。あらゆる聖堂関係、精神系の魔法および魔術を完全に無力化し、それ以外の魔術に対しては対魔力:B相当の効果を発揮する

神明裁決:C

ルーラーとしての最高特権。聖杯戦争に参加している全サーヴァントに対して、一画分の令呪を行使する事が出来る。また、全サーヴァントの中から一人に対して使用出来る、対象の決まっていない令呪を一画所持する。聖杯戦争に参加しているマスターに対しての令呪の譲渡は、対応するサーヴァントに対する令呪のみ可能であり、空白の令呪一画を除き、各令呪を他のサーヴァントに対して転用する事は不可能。また、もう一人のセイバー、ザイフリート・ヴァルトシュタインへの令呪は保有していない

真名看破:C

ルーラー特権。直接遭遇した全サーヴァントの真名およびステータスが自動的に開示される。但し、隠蔽能力を持つ相手に対しては何となくしか分からない

啓示:A

直感との互換スキル。時に近い未来を見通す程の効果を発揮する。但し、他人には神の御告げとしか説明できない為、他人を上手く説得出来ない

騎乗:A+

天を駆けるトナカイという幻獣すら乗りこなす、最高峰の騎乗スキル。但し、悪魔である竜等には乗れないし、ソリが無いと本気を出せない

英霊の纏:A+

縁深い神霊英霊幻霊を纏い、その存在ともなるスキル。彼女の場合は自身から派生し、子供達の夢という極大の祈りから別の英霊として派生した自分、すなわちサンタクロースを纏っている。英霊サンタクロース自体は彼女とは違い男性だが、原典が自身であることから、その大半の能力を使用出来る。但し、自分の行動が彼の原典だけあって被っている能力が多いため、あまり意味はない

 

保有スキル

無垢の守護者:B

罪なき人を守り、闇を祓う者である事を現すスキル。聖人スキルとは別に、世界の、聖堂教会の裏側での行動がスキルとなったもの。死徒を始めとした人ならざる者を倒し、封印する、人外特攻スキル

祝福を君に(プレゼント・フォー・ユー):A+

聖ニコラウスの奇跡、努力する人々への祝福。彼等彼女等が、越えるべき壁を越えられるように

自分を除く対象単体にスキル一つを付与する。付与されるスキルは対象が直面した危機を乗り越える為に必要であろうと思えるものが自動的に選択されるが、意思である程度までは付与スキルをねじ曲げる事も可能。それだけで越えられはしないだろうが、確実に未来を切り拓く力となるだろう。効果時間は対象が目的を果たすまで、付与出来るスキルは極一部を除いた肉体的な負荷(千里眼等)すら含んだあらゆるスキルとあまりにも汎用性が高く、故に聖杯に危険視されて出禁される一因となっている

 

宝具

夢紡ぐ聖者の鈴(セイント・ニコラス・サインズ)

ランク:EX 種別:対人宝具

レンジ:ー 最大捕捉:自身

胸元のリボン付きの鈴を核として展開されるサンタ服。サンタクロースの象徴。纏う事で、煙突の無い家に入るための物質透過、怪しまれないように両親に化ける為の変身能力、家から家へと飛び回る超高速移動、同時に複数の良い子にプレゼントを配りきる為の分身能力など、サンタクロースとして相応しいだろう力を振るう事が可能となる。又、副次効果として鈴の音を聞いた者に、眠らなければという意識を沸き起こさせる効果も持つが、突如眠り込む事での火災被害等を出さない為に即座の強制力は無い。あくまでも直ぐに眠らなければという思いを産み出し、あらゆるやりかけていた事を切り上げて眠りにつかせるだけである

 

純白の夢嚢(デザイア)

ランク:EX 種別:対界宝具

レンジ:特殊 最大捕捉:特殊

サンタクロースの持つ白くて雪のようなプレゼント袋。宝具名の通り人々の祈るありとあらゆる夢が、渇望が、願いがその袋には詰まっている

自身以外の対象が強く何かを願う限り、その願いを袋内に複製して用意する。それは宝具や……例え聖杯であったとしても関係なく複製される。だが、それはあくまでも他人へのプレゼントである為か、自身は取り出しても使用不能。例外は、その願いが特定個人のものではなく幾多の人類の集合無意識からの願いであった場合のみ。その場合に限り、彼女はアラヤの代理人としてその願いの象徴を行使出来る。(例えば、本編五日目でビーストから人類を守って欲しいという伊渡間市及び周辺一帯の人々の集合無意識によりザイフリートへと振るわれた約束された勝利の剣(エクスカリバー)のように)

 

主の慈愛は神鳴の如く(ドーナ エイス レクイエム)

ランク:EX 種別:祝福宝具

レンジ:1~50 最大捕捉:100人

纏う雷、神の慈愛を象徴する、ミラのニコラウスの宝具。やりすぎて破門されたことから、真名解放後暫くは聖堂教会の秘蹟への対魔力がCまでダウンするという。正体は聖人としての生き方を象徴した、摂理に還す力。雷を受けた者は、その本来の摂理へと立ち返る。死徒であればそうなる以前に、サーヴァントであれば生前にといったように、全てはあるべき姿に戻る。即ち、主の摂理から外れた総ての者に対する特攻概念。その分、物理的な威力は雷自体よりも大分低い。だがしかし、この力はあくまでも摂理への回帰、本来死んでいる吸血鬼やサーヴァントへ向けて振るった場合、人間に戻るのではなく人間の遺骸へと回帰する等、定められた死を無視する事は出来ない



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Fake/Material 真実の聖杯戦争編

第二部以降のサーヴァントのMaterialとなります

いつも通り存在そのものがネタバレです。最新話辺りまでのネタバレを含みます


旧キャスター

クラス:グランドキャスター 真名:モルガン・ル・フェ

マスター:クライノート・ヴァルトシュタイン

性別:女性 出典:アーサー王伝説 地域:ブリテン

属性:混沌・中庸 身長:147cm 体重:38kg

筋力:D  耐久:C 敏捷:D

魔力:A++ 幸運:D 宝具:A++

 

クラススキル

陣地作成:EX

島の主としての侵略の力。周囲の大地に満ちる魔力を変換し、自身に有利な土地であるブリテンへと変える。侵食された土地は、元が如何なる場所であったかに関わらず、彼女の伝説が残る時代……即ち、神秘が残る古代ブリテンの一部へと変化し、幻想として世界から切り離される

道具作成:C+++

魔力を帯びた道具を作成するスキル。優秀な材料さえあれば、宝具すらも作成する。逆に言えば加工能力は高いがその為に要求される素材のランクも高く、低級素材ではロクなものは作成出来ない。ライダー(ユーウェイン)の宝具、<リュネットの剣・改>は、獅子と共にライダーが倒した地竜の素材を使い、彼女が造り上げたエクスカリバーのパチモノである

 

保有スキル

千里眼:EX

島の主としての権限。ブリテンという限られた土地の中に限り、現在過去未来、何れであっても見通す王の力。マーリン等の同格に近い存在が介入しない限り、彼女がブリテンにおいて見通せないものは何一つ無い。それが、絶望の未来であろうとも。魔術を併用する事で、他人にも視界をリンクさせて見せることが可能

 

島の主:EX

産まれながらの王の資質。ユーサー・ペンドラゴンより受け継いだその土地の支配者としての力。ブリテンに存在する限り、全てのステータス、全ての判定に対して補正を掛ける。また、明確に敵対しておらず、かつブリテンの魔力を体内に取り込んだ存在に対し、ブリテンに居る限りにおいて王としての命令権を持つ

 

宝具

約束されざる星光の剣(エクスカリバー)

ランク:EX 種別:対星宝具

レンジ:不明 最大捕捉:不明

アーサー王から謀略でもって奪い取った聖剣の鞘、全て遠き理想郷(アヴァロン)から逆算された宝具。本体よりも重要な鞘が此処にあるならば星の聖剣も存在するはずだ、という理論に基づき、聖剣の鞘に星の聖剣を召喚する。そもそも星の聖剣事態が自身と同じ湖の乙女の力を持つ者が折れたカリバーンを使って剣の姿に製錬したものである事や担い手との血縁である事等を通して、本来の役目を果たすための星の聖剣として使用が可能だが、担い手本人では無いためどうしても出力そのものは低下する

 

全て遠き理想郷(アヴァロン)

ランク:EX 種別:結界宝具

レンジ:-  防御対象:1人

聖剣の鞘。アルトリアを妖精郷へ運ぶ者であり、アーサー王から聖剣の鞘を奪った者でもある彼女は、かの鞘の真の力を解放する権限を持つが、鞘そのものは、ブリテン領域を持続させるために伊渡間の地下深くの竜脈内に埋め込まれ眠っている

 

 

基本設定

好きなもの:アルトリア・ペンドラゴン、ザイフリート・ヴァルトシュタイン

嫌いなもの:アーサー王、マーリン、ザイフリート・ヴァルトシュタイン

天敵:マーリン、アルトリア・ペンドラゴン(リリィ)

 

 

 

 

旧アーチャー

クラス:アーチャー 真名:ウィリアム・テル/???

 

仮面の男

クラス:アンチセル(ヴェルバー02) 真名:アンチセル/ザイフリート・ヴァルトシュタイン

仮面の財布くん。仮面の力により、本来の姿である遊星の尖兵としての部分が強く表に出た状態。その為、常に銀翼状態ではあるが、逆に言えばザイフリートとの差はそれだけである



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対遅筆ネタバレmaterial

あまりの遅筆に、予想などから時間が経ちすぎる等の自業自得が発生するので、その対応として作られたこの作品の真実を語るmaterialとなります
本編最終話までのネタバレを多分に含みます


あまりにも酷いネタバレであるため、楽しんでいる方が見ることは全くもってオススメしません。考察の答え合わせをしたい方、茶番よりも全てを知ってから読みたい方、興味ないけどネタバレ見たい方辺りのみお読み下さい
真実を明かす前の本編全てが茶番に見えてきても責任は一切負いません

































以下、この聖杯戦争の真実



アサシン

クラス:アサシン/ビーストⅡ-if 真名:ザイフリート・ヴァルトシュタイン/魔狩人(ヴァンパイアハンター)

マスター:アルベール→ザイフリート・ヴァルトシュタイン(二重契約)

性別:(中心となっているのは)女性 出典:吸血鬼伝説 地域:世界全土

属性:中立・中庸 身長:素は144cm 体重:素は38kgほど

筋力:E~B 耐久:E~B 敏捷:C~A

魔力:E~C 幸運:EX  宝具:A++

 

クラススキル

認識阻害:B

気配遮断に当たる専用スキル。その目から消えた場合、アサシンに関する全ての認識を狂わせ、敵意を減衰する。幸運による判定に成功した場合に限り、それなりの正しい認識を持ち続けられるも、敵意は減衰する

単独顕現:B

ビースト全体のクラススキル。単体で現世に現れるスキル。このスキルは『既にこの世界に存在する』在り様を示す為、過去改変やタイムパラドクス系の攻撃を不完全ながら無効化する。又、このスキルを持つものは既にビーストとして存在する、逆説的に産まれたその時からビーストであることこそが正しいものとして、ビースト覚醒前の世界線を剪定する効果をも持つ。だが、それは誕生と同時に消滅した有り得ない状況が生んだバグのような効果である。完全にサーヴァントである彼女の場合、幾度死のうが甦ってくるのは宝具ではなく、このスキルの力である。既に存在するという在り様を覆さぬ限り、幾度であろうとも魔狩人は顕現する。その願いを、果たすために

ネガ・ジェネシス:D

ビーストⅥが持つ『ネガ・メサイヤ』と同類のスキル。現在の進化論、地球創世の予測をことごとく覆す概念結界。これをおびた彼は、正しい人類史から生まれたサーヴァントたちの宝具に強い耐性を獲得する

……というのは、本当は嘘。このスキルの本質は地球の創世予測には無い、捕食遊星の理。純粋な魔力を除く全てを文明と定義し、自身の血を媒介として吸収する。巨神アルテラの魔力吸収の劣化再現である

英霊の纏:B

縁深い英霊・幻霊・神霊を纏い、本来召喚されない、或いはされにくいその存在ともなるスキル。伊渡間の聖杯戦争におけるサーヴァントの共通スキル。彼女の場合は、彼女自身も含まれる、魔狩人という英雄物語の主人公達の集合体を纏っている。彼女等一人一人は英霊に満たず、されども魔を狩る者という概念は確かに世界に刻まれているが故に

だがしかし、自分を含む無数の主役の概念を得て現界した結果として、彼女は元々の自分という個を喪失している

だが、今回の彼女(かれ)に限り、一つだけとても強い記憶が存在する。それが、彼女のもう一つの真名。即ち、本来の世界でバーサーカーという吸血鬼をニアと名を与えた魔狩人のサーヴァントと共に滅ぼし、そして旧ランサーにより殺された最も新しい、無かったことにされた近い未来のヴァンパイアハンター。ビースト覚醒する前の本来の時間軸のザイフリート・ヴァルトシュタインとしての記憶である。故に彼女は、ザイフリート・ヴァルトシュタインの為に動くのである。本来の世界、結局救えなかった自分(マスター)の願いを、今度こそ果たさせる為に

 

 

保有スキル

無し

 

宝具

英雄原則・二律背反

ランク:EX 種別:対悪宝具

レンジ:ー 最大捕捉:自身

アサシン唯一の宝具。吸血種といった悪が居るから魔狩人が居るという、伝承の大原則そのものが宝具となったもの

人々を脅かす魔ある限り、人はそこから救ってくれる英雄を幻想する。魔が聖杯戦争の行われている範囲に存在する限り、倒され聖杯に吸収されようと何度であろうとも再召喚される。また、全ての魔狩人が使った武器を無尽蔵に召喚して使用できる

だが、英雄と悪は二律背反。悪が居る限り英雄が夢想されるように、英雄ある限り悪もまた必要とされる。その為、対象の悪の復活に関する全ての判定に際して、判定にプラス補正をかける。真名解放すると、その矛盾を是正する為、対象の悪と自身を世界から抹消する自爆宝具となる

というのは大きな嘘……でもないが、本来の姿からは、ビースト覚醒の影響によりそれなりに歪んでいる

 

 

クラス:ビーストⅡ-if/アンチセル(ヴェルバー02) 真名:ザイフリート・ヴァルトシュタイン/巨神アルテラ

マスター:無し

性別:男性 出典:fake/startears fate  / fate/EXTRAシリーズ 地域:日本/ムーンセル

 

クラススキル

軍星の紋章(偽):EX

タイプ・マーズを破壊した事で変性した遊星の紋章の派生。タイプ・マーズ、即ち火星の最強種、アリストテレスである事を現すスキル。一万と四千年の昔、ソラより来る収穫星は他の天体より降り立った軍神(マァズ)すらも破壊し収穫、新たなる火星の最強種となった。このスキルを解放する事により、ヴェルバー02の外殻は軍神、最強の力の象徴として、ザイフリート・ヴァルトシュタインの思い描いた最強のイメージ、人であり龍である者、悪魔(ドラゴン)のごとき姿となる

単独顕現:B

ビースト全体のクラススキル。単体で現世に現れるスキル。このスキルは『既にこの世界に存在する』在り様を示す為、過去改変やタイムパラドクス系の攻撃を不完全ながら無効化する。又、このスキルを持つものは既にビーストとして存在する、逆説的に産まれたその時からビーストであることこそが正しいものとして、ビースト覚醒前の世界線を剪定する効果をも持つ。だが、それは誕生と同時に消滅した有り得ない状況が生んだバグのような効果である

ネガ・ジェネシス:D

ビーストⅥが持つ『ネガ・メサイヤ』と同類のスキル。現在の進化論、地球創世の予測をことごとく覆す概念結界。これをおびた彼は、正しい人類史から生まれたサーヴァントたちの宝具に強い耐性を獲得する

……というのは、本当は嘘。このスキルの本質は地球の創世予測には無い、捕食遊星の理。純粋な魔力を除く全てを文明と定義し、自身の血を媒介として吸収する。巨神アルテラの魔力吸収の劣化再現である

英霊の纏:D

この聖杯戦争の特例、本来召喚出来ないサーヴァントを呼ぶために、召喚可能なサーヴァントを核として別のサーヴァントを纏うスキル。ジークフリートと思われていた纏っている英霊の真名はアルテラ。ジークフリート亡き後のクリームヒルトの夫である

 

保有スキル

無し

 

宝具

月王顕す契約(ファンタズム・レガリア)

ランク:EX 種別:対界宝具

レンジ:特殊 最大捕捉:特殊

彼の心臓部に埋め込まれた、ライン川の底から見つかった、ニーベルング族の財宝だと思われていた指輪

その正体は、2030年、英霊アルテラを救うために岸波白野が時間を遡った際、介入したBBにより、何時か地上にセンパイが復活するようにと、記憶を刻み込まれてムーンセル無き平行世界に落とされ、この世界のアッティラによって拾われ結婚指輪とされた、レガリアの欠片である

レガリアとしての性質は喪われておらず、別次元に存在するムーンセルからの情報の引き出し、ムーンセルに封じられたヴェルバー02との同期などを、世界を越えて可能とする。蒼く煌めき大半の事を見通す右目は、彼という外部要因を得てヴェルバー02にハッキングされたムーンセルからの情報端末である

 

竜血収束・崩極点剣(オーバークランチ・バルムンク)

ランク:A++ 種別:対城宝具

レンジ:1~99 最大捕捉:900人

旭光を放つ宝具。本来の宝具としての真名は、<涙の星、軍神の剣(ティアードロップ・フォトンレイ)>。この世界で起動する為にレガリアの機能を通している為キューブから放っているが、その性能はヴェルバー02の尖兵である彼自身を本来狙って照射されている事すらも含めて軍神の剣と同等。但し、世界を渡る際に威力は幾らか減衰している

 

涙の星、軍神の竜(Harvest Star Desire)

ランク:EX 種別:対星宝具

レンジ:ー 対象:自身

完全なる尖兵の力。巨神体の便宜上の宝具名

終末の夢に現れた鋼の軍神とは、マルスを、そしてタイプ・マァズを喰らい、その力をザイフリート・ヴァルトシュタインという新たな尖兵により形作られた新たなる星船の姿。即ち、ザイフリート巨神体である。かの夢は、救世主が現れる前にザイフリートによりティアマト神が復活し、更には最強種まで現れたのではない。ザイフリートという遊星にして最強種を止める為、ティアマト神(救世主)が降臨した夢というのが、真実である

 

 

『後悔は悪い事ではない。それは未来への糧となる

 しかしそれは戻らぬ事に意味があるもの。やり直せ無い失敗ゆえに後悔し、人は立ち上がる

 しかし人を愛し、理不尽に怒った英雄の成りそこないがムーンセルを掌握した時、ザイフリート・ヴァルトシュタインは覚醒した

 現在を否定しようとも、過去を破壊して悲劇から人類を救い出す。後悔を糧に生きるより、そもそもを無かった事にすれば良い。我が身はそれを為す、文明の破壊者(ヴェルバー02)なのだから。悲劇という文明を破壊しよう 

 果ても識らず、堕落も知らず、ただただ、無間に存在するあらゆる悲劇の概念を破壊し、人間の魂を救済する収穫者(ハーヴェスター)

 

 その(あい)をもって、彼のクラスは昇華された。ヴェルバー02など肉体(いつわり)の星

 其は人類史の果てより来たる、最も人類が渇望し、されども越えていかねばならぬ大災害。原初の母ティアマトとは異なる終焉(はじまり)の使徒

 その名をビーストⅡ-if

 七つの人類悪の例外、『回帰』の理を得た獣である』

 

 

 

 

アンチセル

クラス:アンチセル 真名:ザイフリート・ヴァルトシュタイン〔オルタ〕

 

クラススキル

捕食召喚:B

降臨の前提。対象の一部を捕食し、対象と同一クラスとなって降臨するスキル。後天的に二重召喚状態となる

単独顕現:B→C

オルタ化によって劣化している

ネガ・ラグナロク:C++

ビーストⅡの持つネガ・ジェネシスの反転した固有スキル。世界の終末予測を覆す遊星の理が捕食した人類のエゴの象徴。ありとあらゆる予測を無視し、未来を切り開く。即ち、滅びることを許さない、どんな状態でも未来を歩む事を世界に強いる、世界自身による自殺すら許さぬ最強格の世界の危機特攻である。尚、彼自身も最大級の世界の危機である為、何らかの方法で他者がこのスキルを得た場合は彼自身に対しても効果を発揮する

クリプター等の別世界による危機のような特攻が最大限発揮される相手であれば、「選ぶ権利は無い。滅ぼす権利もありはしない。だが、選ぶ力はある。故に滅びろ、俺は俺のエゴで、あの優しい世界を選ぶ』と異聞帯(ロストベルト)毎問答無用で因果地平の彼方まで消し飛ばす程の効果を発揮するが、この世界ではそこまでの力は発揮出来ない

 

保有スキル

人理の防人:D

 

宝具

月王顕す契約(ファンタズム・レガリア)

ランク:EX 種別:対界宝具

レンジ:特殊 最大捕捉:特殊

彼の心臓部に埋め込まれた、ライン川の底から見つかった、ニーベルング族の財宝だと思われていた指輪

その正体は、2030年、英霊アルテラを救うために岸波白野が時間を遡った際、介入したBBにより、何時か地上にセンパイが復活するようにと、記憶を刻み込まれてムーンセル無き平行世界に落とされ、この世界のアッティラによって拾われ結婚指輪とされた、レガリアの欠片である

レガリアとしての性質は喪われておらず、別次元に存在するムーンセルからの情報の引き出し、ムーンセルに封じられたヴェルバー02との同期などを、世界を越えて可能とする

 

涙の星、軍神の竜(Harvest Star Desire)

ランク:EX 種別:対星宝具

レンジ:ー 対象:自身

尖兵の本領。異次元に眠る星船そのものの一部を巨神の外殻として顕現させ振るう宝具

 

本編での設定、行動

最後の最後、遊星の尖兵として彼は総ての願いを叶える力を得た。だが、その時、彼の心に一つの棘が刺さった。本当に、これで良いのか?と

かくして、心の中での闘いは始まり……彼は勝利する。人として当然の抑えつけていたけれども消しきれなかった想いを、遊星に託した願いを撃ち破り、此方に出てきた部分の遊星諸共滅ぶことを決めたザイフリート・ヴァルトシュタインの中にずっと眠っていた良心。銀翼こそが本来の人格であるザイフリート・ヴァルトシュタインが時折見せていた人間らしい弱さ、神巫雄輝が残し、ミラのニコラウスとモーガン・ル・フェイが育てた人としての心の残骸……それが、ザイフリート・ヴァルトシュタイン〔オルタ〕である

全ては、世界の為に。本当の自分は弱くて、結局自らを消滅させてまで世界なんて救えない、だからこそ産まれた反転体。自分を含むあらゆるものを切り捨てて世界を未来(明日)へと進ませる英雄。されども、そんな存在は既に人ではなく……

引きずり出した自身との交信記録を持つ遊星の欠片、世界を護りに現れた世界の危機(ティアマト)と共に、人であるために人を捨てた英雄は消えた。遊星が自身のデータを得て覚醒する事の無いように、存在した事実を含めて、全てから

かくして聖杯戦争は終わりを告げる。かつて彼が口にしたように、ザイフリート・ヴァルトシュタインという存在の完全消滅をもって。世界は傷付きながらも、明日へと進む。きっと、未来はそう悪いものでも無いだろう。少なくとも、多くの犠牲はあったけれども、一年の時を経て漸くまた会えた二人にとっては。ザイフリート・ヴァルトシュタインという存在は既に何処にも無くとも、彼が願った二人の未来は、確かに此処にあるのだから

 

 

 

 

クラス:アーキタイプ・アース/ビーストⅡ-R(real) 真名:ティアマト/デミウルゴス

性別:女性

 

クラススキル

蒼星の紋章(偽):EX

未完成の地球の最強種、アーキタイプ・アースであることを現すスキル。ヴァルトシュタインの願いにより行われた、七つの聖杯戦争を越えた七騎のサーヴァントによる大聖杯戦争。その本来の聖杯戦争を遥かに越えた49のサーヴァントの魂をもって、あらゆる生命の母にして創造主であり、地球最強の存在として、主の代わりに降臨したティアマトは、聖杯の力により最強種としての性質を持つ。その為、純粋なビーストⅡではなく、人類すらも子として慈しむ心を持つが、彼女にとって人間はまず母の元に還すべき母離れした罪深き息子であり、彼女の祝福下へと回帰した人間は、かつてアトラス院等が滅びの回避方法として考えた新たなる超人類へと変革し、最早人間とは呼べなくなる



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編纂事象(一周目)の欠片
六日目断章 『序章 始まりの夢』


ふと、気が付く

 ……これは夢だ、と。明晰夢という奴だろうか。何度か経験した、記憶を夢見る感覚。さて、今回はセイバーのものか、それとも……

 

 と、考え、どうしようもない違和感に気が付く

 サーヴァントとの繋がりを通して見る夢は、サーヴァントの視点であるはずだ。当然である。サーヴァントが見てきたものを、俺が覗いているのだから、彼女の視点でなければ可笑しい。だというのに、此処は……

 あの森、俺がセイバーと出会った、ヴァルトシュタインの森だった

 違和感は無い。俺は俺、ザイフリート・ヴァルトシュタイン。俺の視点で、俺を見る明晰夢

 

 有り得ない。だが、叫ぼうにも言葉が出ない。これは、誰かの記憶を覗き見る、あの明晰夢の特徴

 これは……誰の記憶だ?どうして俺が俺を見る?何故、こんなものを見る?これは、俺が俺として完全にサーヴァント擬きになった証だとでもいうのか?

 ……分からない。答えなど、今出るわけがない

 

 そんな中、とりとめもない思考は置いておいて、世界は進んでゆく

 ……強烈な違和感

 こんなもの、俺は見たことがない。こんな場面、こんな視点、俺が遭遇した訳がない

 夢の中の俺の眼前には、木にもたれ掛かり、魔獣に腕をかじられ今にも消えそうな一人の少女が居た。いや、これはボロボロの男性だ

 そんな訳はない、彼女は線の細い長身のイケメンだ

 

 ……ああ、そうか。一人納得する。最近は俺の前では認識阻害を抑えているのか、それとも大体フードを取っているからか、或いは単純に見なれただけなのか、基本的には核とした誰からしき青髪に澄んだ赤い瞳の少女の姿としてしか認識していなかった以上違和感があるが、この正しい認識の出来なさはアサシンの特徴。つまり、眼前の達人らしき死にかけの老人の正体はサーヴァント、アサシン。だが、まだ森に居た頃の俺は、そんな事は知らず……

 いや、待て、可笑しい。そんなはずがあるか。俺が俺として森に居た頃に、セイバーと契約する前に、アサシンと遭遇などしていない。こんな過去はあったはずはない

 そもそも、アサシンはサーヴァント。こんな、ヴァルトシュタインの魔獣なんてサーヴァントにとっては雑魚同然の有象無象扱いされうる存在に、一方的にかじられ消滅しかける程に弱くはない、はずだ

 

 「っ、らぁぁっ!」

 俺の体が、切っ先を地面に向けた体勢から剣を跳ね上げる。纏われた淡く赤い光が飛刃と化し、アサシンをかじる獣の首を、半ば両断した

 

 ……弱い。あのレベルの魔獣擬き、俺でも首を跳ねられたはずだ。無理矢理の夢幻召喚を経て俺という存在の基準が上がった上で語っている以上少しはズレがあるかもしれないが、こんなにもあの時の俺は弱かっただろうか。まともに俺の中のサーヴァント(推定ジークフリート)の力を振るえていない。まるで一年前、俺が俺となった直後のように

 

 『……何、故(どう、して)?』

 体を食らっていた獣が倒れ、解放されたアサシンは、ぼんやりと濁った碧眼で俺を見上げる。フードは、既に取れている。だというのに、最初からフードを被っていなかったというのに、俺という明晰夢視点ですら、アサシンの姿はぼんやりとしていた

 此方を見上げる濁った黒目を見返しながら、夢の中の俺は返す

 「理由がいるのか?」

 と

 

 生気が無い。意思もない。なにもない、虚無の瞳。どれだけ外見を認識し続けられずとも、一瞬の後に認識する姿が別人に変わり続けようとも、そこだけは一切変わらない絶望のみを湛えた眼。俺の知るアサシンの、澄んだ赤い瞳とは完全に別物。一瞬だけ、あのアサシンとほぼ同じ姿をした瞬間があったが、あの瞳は決して綺麗だなんて言えはしない

 

 『価値、ない』

 「そんな事はない」

 俺の体が、勝手に首を振る。干渉出来ず、ムービーを見せられている感覚

 「理由が要るか?と言ったが、こちらに理由がある」

 反応はない。アサシンは何も反応を返さない。俺の知るアサシンなら、あまり口数はなくとも、しっかりと理由を聞くだろうに

 「俺はサーヴァントが欲しい」

 ……それは、明らかに俺であって俺でない者の発言だった

 

 俺がサーヴァントを当てにした事は、セイバー召喚以前にはまず無い。自力で片を付けるしか無い、最低限それが絶対に不可能ではない力はある、最悪他のサーヴァントと同盟も上手くすれば行けると認識していたのだ。そもそもセイバーと契約できた事自体が嬉しい誤算に当たる

 だというのに、アサシンに向けてそんな言葉を吐くのは可笑しいのだ。そもそも、この言葉からすれば、これはセイバー契約前なのだし

 

 『役立たず』

 「例えそうでも構わない。今はそうで良い

 だから、召喚されたというアサシンを追ってきた」

 アサシンが、眼をしばたかせる

 『「わたし(ボク)」は、「()」は……』

 「誰でもない、俺と同じだな」

 自嘲するように、夢の中の俺が、そんなことを呟く

 不意に、少しだけアサシンの瞳に光が揺れた

 「誰でもない、自分ですらない。ならば、俺のモノになれ、サーヴァント、アサシン」

 アサシンが、応じるように、木にもたれ掛かったまま右手を延ばす

 

 雲の切れ間から、ふと淡い月光が射し込んだ

 夢の中の俺の背側から、アサシンの足元までが、微かな光に包まれる

 「何もないというならば、問いかけはしない」

 延ばしたアサシンの手だけが、暗がりを出て光に照らされる。その手は、一瞬の後に変化する事はなく、あのアサシンの姿のままで……

 

 「言おう、俺がお前のマスターだ」



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