不死者の王と害虫の王 (仮面の人)
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第1話

6月18日に脱字修正


Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game通称DMMO-RPG仮想世界で現実のごとく遊べるゲームである。

 

西暦2126年に発売されたYGGDRASIL。このゲームは他のDMMORPGを超える広大なマップ、プレイヤーの自由度が人気を呼び、日本国内で最もプレイヤーを集めたDMMORPGである。2126年発売初日から12年の時が過ぎ、遂に終わりの日がやって来た。

 

 

 

此処はナザリック地下大墳墓、ギルド アインズ・ウール・ゴウンの本拠地。第九階層・円卓の間。此処に居るのは顎に行くにつれ細くなってる骸骨と紫色のスライムが器用に席についている。

 

「いやぁ〜本当にお久しぶりです、モモンガさん」

 

「いえ、此方こそお久しぶりですヘロヘロさん。正直来てくれるとは思いませんでした。2年ぶり位でしょうか?」

 

「そんなに時間が経ってましたか。最近残業ばかりで時間の感覚が変なんですよね」

 

「それ、かなり危ないんじゃ無いですか?」

 

「身体ですか?もう、ボロボロですよ」

 

「うわぁ」

 

「マジで、大変ですよ」

 

二人は、キャラクターを器用に動かしドン引きしているモモンガとくねくねと体を変形させるヘロヘロ。ヘロヘロの愚痴は止まらずモモンガが聞く側に回り話が続く。

 

「いやぁ〜済みません本当に、最後なのにくだらない愚痴に付き合ってもらちゃって」

 

「いえ、忙しい中私が此方に誘ったので、これぐらい何とも思いませんよ」

 

「ありがとうございます、でも………流石に睡魔には勝てないのでログアウトします」

 

「そうですよね。身体、お大事に」

 

「それにしても実際の所、ナザリックが無事だとは思いませんでしたね」

 

ヘロヘロの悪気の無い一言にモモンガの心が軋む。

 

「ナ、ナザリックはギルメンの皆さんで作り上げた我々の誇りですからね。ギルド長として維持するのは当たり前ですよ」

 

「本当、モモンガさんがギルド長で良かったです。モモンガさん、次会う時はユグドラシルIIとかですかね?それはそうと、長年お疲れ様でした。また何処かで」

 

モモンガは一瞬だけ、口ごもり返答がおくれる。

 

「お疲れ様でした」

 

ヘロヘロはログアウトし、残るのはモモンガだけ。モモンガは先程言おうとしていた言葉をこぼす。

 

「今日がサービス終了の日ですし、お疲れなのは理解出来ますが、せっかくですから最後まで残っていかれませんかーーーー」

 

当然返答はなし。

 

「また何処かで、ですか……いつ会えるか分からないのに?…………巫山戯るな!!!」

 

モモンガは激情に身任せ、level100のステータスを振るい、円卓を殴る。

 

「アインズ・ウール・ゴウンは!ナザリックは!ナザリック地下大墳墓は!皆んなで作り上げた物だろ!何で簡単に捨てられるんだ!」

 

そう、僕が所属するギルド アインズ・ウール・ゴウンはユグドラシルではその名を知らぬ者は居ないと言われる程の大きなギルドだった。参加条件は二つ、アバターが異形種である事と、社会人である事である。最大で41人のギルドメンバーが居たけど其の内37人が辞めてしまった。

 

モモンガがギルドに対する想いを叫んでる時、円卓の間の扉が開く。

 

「おや?モモンガさんだけですか?」

 

入って来たのは2メートル越えの巨体。全身が黒光りし、服は修行僧の様な物を着ている。

 

「ローチさん!来てくださったんですね!」

 

「ええ、私がログイン出来ない間、私達家族の家を守り続けたモモンガさんのお声でしたからね。ご無沙汰してました、大体半年ぶりですねギルド長」

 

「はい!お久しぶりですローチさん!」

 

「処で、此処に居るのはモモンガさんだけですか?」

 

「いえ、先程までヘロヘロさんが居ました」

 

「ヘロヘロさんが、入れ違いですか……寂しいですね」

 

「そうですよね………処で仕事は大丈夫ですか?確か職場で横領があったとか」

 

「一週間前に落ち着き始めてましてね。3日前に社長から直接こんな事を言われました。今回の件は、お前だけが活躍した。褒美として一週間の休みと部長に昇進だ、私としてはもう少し昇進させたかったが周りが五月蝿いからな、此れからも仕事に励む様にと」

 

「凄いじゃないですか!部長に昇進って!あれ?ローチさんだけなんですか?活躍したのって」

 

「ええ、他の人は横領した人からお金を少し貰って動かなかったそうです」

 

「うヘェ〜嫌な事実ですね」

 

「全く持ってそのとうりです」

 

二人はたわいもない話で盛り上がる。

 

「おや?モモンガさん、時間が迫って来てますよ?」

 

「あ!本当ですね。最後ぐらい玉座で終わりますか」

 

「でしたら、彼方の杖を持って行きましょう」

 

ローチはそう言い、杖のある方向を指差す。

 

「ですね、最後ぐらいみなさんも許してくれますよね」

 

「ええ、ナザリックを守り続けたモモンガさんなら誰も反論しませんよ」

 

モモンガはローチの言葉を聞き、杖を手に取る。杖は七匹の蛇が絡み合い、その口に色違いの宝玉を咥えてる。

 

「ギルド武器、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。作るの大変でしたね」

 

「はい、中には奥さんと喧嘩してまで素材回収に来た人も居ましたね」

 

「いやいや!有給全部使って参加した人が言ってもインパクトないですよ!」

 

「あーー、実は有給取ったことが無くてですね、上司と同僚に流石に有給取れと言われた後突然先輩が有給申請出しといたぞ?と言われまして。それが丁度素材回収の日とかぶったんですよ、ですから有給全部使って参加してしまえと」

 

「ローチさんって真面目だけど何処か抜けてますね」

 

「会社でも言われますよ。それにしてもモモンガさんがその杖持つと完全に魔王ですね」

 

「それを言ったらローチさんは名前どうりですね」

 

そう、ローチさんの種族は一世紀前に流行った漫画に出てくるキャラクターがモチーフの種族。テラフォーマーと言う種族でぶっちゃけゴキブリである。しかもローチさんは最上位種の祈る者(インヴォーカー)だ。僕の種族は死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の最上位種の死の支配者(オーバーロード)だ。ヘロヘロさんはスライムで最も最強に近い古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)である。

 

「名は体を表すと良く言うでしょう?」

 

「ローチさんの場合そのまんまですよね?それにしても、祈る者になれたのはユグドラシルの中でローチさんだけですか」

 

「まぁ、魔法も使えない、通常のスキルも使えない、常時発動型特殊技術(パッシブスキル)も通常のは余り使えない、装備は今着てるのだけ。武器は専用武器のみ使用可能だけど条件付き、アクセサリーはギリギリ装備可能。癖のあり過ぎる種族ですしね。それに、ゴキブリに成りたい物好きも早々居ませんよ」

 

「その代わり、筋力値と俊敏値、耐久値はユグドラシルのどの種族の中でも飛び抜けて高いじゃ無いですか。後、アレが使いたい放題でしたっけ?」

 

「はい、そのとうりです。まぁ、下手したらlevel50でlevel80後半の敵を素手でワンパン出来ますしね」

 

「下手したらとか言ってますけどそれ、ギルドのメンバーの前で実演した人が何言ってるんですか。たっちさんとか落ち込んでましたからね?」

 

「あれは驚きでした。たっちさんが俺、ワールドチャンピオンなのにゴキブリ負けた………あれ?ゴキブリが正義なのか?とか口走って他のメンバー全員で正気に戻しましたね」

 

「笑い話じゃ無いですからね!それより早く玉座に行きましょう」

 

「ですたら最後ぐらい支配者ロールプレイして見ましょうよ、モモンガさん」

 

「良いですね!」

 

「では」

 

「我が王の意のままに」

 

「付いて来い、我がギルド最強の害虫にして我が友、害虫の王よ」

 

二人は悪役ロールプレイで部屋を出る。

 

「あれは確か、戦闘メイドのプレアデス達であの執事は確かえーと?」

 

「セバスですよモモンガさん、ギルド長何ですから名前覚えてあげて下さい」

 

「ローチさん、もしかしてNPCの名前全て覚えてるんですか?」

 

「家族の名前を覚えるのは当たり前の事ですよ?」

 

「家族……そうですね。此処に居るNPC達全員家族ですよね!」

 

「はい、私達の大事な家族です」

 

「そうですね。だったら、つき従え、最後ぐらい家族で集まって終わるましょう」

 

メイド達と執事を連れて玉座に辿り着いた二人。

 

「いつ見ても此処の迫力には慣れませんね」

 

「僕は割と慣れましたけど」

 

「臆病者なんですよ、私」

 

「意外ですね。さて、待機。確か彼女はアルベドでしたね」

 

「合ってますよ、モモンガさん。彼女はナザリックの守護者達の総括者で、最上位のNPCですよ。ですが流石の私でも設定魔のダブラさんのキャラの設定は覚えて無いんですけどね」

 

「確認して見ます?この杖があれば見れますけど」

 

「お願いします」

 

モモンガは杖を使い、アルベドの設定をスクリーンとして表示させる。

 

「長いですねこれ」

 

「あははは、まぁダブラさんですし。あれ?最後の何だ?」

 

「どうしましたか?モモンガさん」

 

「アルベドの設定の最後にビッチであるって書いてあるました」

 

「流石にそれは予想外でした」

 

「うーん、最後だし少しだけ設定弄りますか」

 

「これは私も賛成ですね」

 

「でしたら、こんなのはどうでしょう?」

 

ローチは空中に浮いているコンソールを器用にタップし、文字を入力する。

 

「こんなのは如何ですか?モモンガさん」

 

「どれどれ?えっ⁉︎何ですか!この設定!」

 

アルベドの設定は、ビッチからモモンガを愛してるに変更されていた。

 

「別に良いじゃないですか、モモンガさんだってアルベドの様な美人に愛されるのは嫌じゃないですよね?」

 

「う!そ、それは……そうですけど」

 

「それより早くしないと強制ログアウトされますよ?最後ですからモモンガさんが締めて下さい」

 

「はい!では、私と同時にアレを」

 

「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!!」」

 

時刻は午前0時ジャスト、モモンガとローチはサーバーダウンによる強制ログアウトを受ける筈だった。

 

 



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第2話

沢山のお気に入り登録ありがとうございます。まさかこんなに沢山の人に読んで頂けるなんて思いませんでした。これからは失踪しない様に書いていきたいと思います。

戸折巣狩さんからコメントを貰い、パンドラズ・アクターの台詞を変更しました。情報有り難うございます。


現在の時刻は0時5分、本来ならばサーバーダウンによりユグドラシルからの強制ログアウトが行われてる筈であった。しかし、モモンガとローチはログアウトしていなかった。

 

サーバーダウンが延期になったのか?いや、それなら運営から何かしらの形で発表される筈。なら、何かしらの要因によってユグドラシルが現実になった?そんなバカな!あり得ない、ならここはユグドラシルIIとか?訳がわからない。

 

モモンガは考えられる可能性全てを現在発生している異常と照らし合わせ原因を考えていく。

 

「これは一体何なんだ!」

 

モモンガの悲痛の叫びに応えられるのはローチだけであったが、ローチは現状把握に忙しく応えられなかったが、モモンガとローチ以外の声が玉座に響く。

 

「如何なさいましたか?モモンガ様、ローチ様?」

 

その声の主は先程まで玉座の前で頭を下げモモンガの指示に従い跪いていたアルベドであった。

 

「失礼いたします」

 

アルベドは立ち上がり、モモンガの側へと歩みを進める。

 

「何かございましたか?」

 

覗き込む様にしてモモンガの顔を見るアルベド。アルベドからは女性特有の香りがモモンガの鼻に届く。

 

「…………GMコールが効かない様だ(嗅覚が働いてる⁉︎アルベドが喋ってる⁉︎表情がある⁉︎あり得ない!NPCが勝手に動いて喋るなんてあり得ない!)」

 

モモンガは冷静さを感じさせる口調でアルベドに返答する、内心は動揺している。

 

「申し訳ありません、無知な私ではモモンガ様の問いであられる、GMコールなるものに付いてお答え出来ません。ですがこなアルベド、この失態を払拭する事が出来るのならそれに勝る喜びはありません。どうか御命令を」

 

アルベドの表情は、モモンガの期待に応えられなかったからか捨てられた仔犬の様な表情をしている。

 

「いや、アルベドが知らないのも無理はない。故に許そう。セバス」

 

「は!何なりと御命令を」

 

「大墳墓出て、周辺地理を確認せよ。もし仮に知的生命体がいた場合は交渉して交友的にここまで連れてこい。交渉の際は相手の条件をほぼ聞き入れても構わない。行動範囲は周辺1キロに限定。戦闘行為は極力避けろ」

 

「了解しました、モモンガ様。直ちに行動します」

 

セバス直ぐに立ち上がりセバス伸ばし、扉に向かい歩く。

 

「待て、プレアデスから一人だけ連れて行け。もしお前が戦闘に入った場合は即座に撤退させ、情報を持ち帰らせろ」

 

「了解しました。では誰を連れて行けば宜しいのでしょうか?」

 

「ふむ…………ソリュシャンが適材か」

 

ソリュシャン・イプシロン。プレアデスの内の一人。種族は不定形の粘液(ショゴス)である。彼女のビルドは暗殺向きであり情報を持ち帰るには持って来いの人材である。

 

「ソリュシャン、頼めるか?」

 

「勿論で御座います。至高の御方の御命令とあらばこのソリュシャンこの身を捧げる所存でございます」

 

「うむ、では行け。一時間後に帰って来い」

 

「「は!」」

 

セバスとソリュシャンは直ぐさま扉から玉座を出て情報収集に勤しむ。

 

「さて、第一関門はクリアしたと考えても良さそうだな。次は《伝言(メッセージ)》」

 

《ローチさん!ローチさん!起きてください!ローチさん!》

 

《は!す、すみませんモモンガさん。余りにも現実離れしていて意識がどっか行ってました》

 

《仕方ないですよ。僕だってアンデット特有の精神鎮静が発動していなかったら意識どっか行ってましたし》

 

《あぁ、だから視界に緑色のオーラが見えてたんですね。殆ど否定しながら見てましたけど》

 

《それより今は現状把握が一番です。セバスとソリュシャンにナザリックの外を偵察に出てって貰っているので後一時間で何が起こってるのか分かります》

 

《でしたら、階層守護者達を何処かに集めて私達の印象を聞くのは如何ですか?》

 

《やっぱり考える事は同じですか》

 

《一時間後に第六階層に集めましょう。序でにスキルとか魔法が発動出来るか実験するにはぴったりの場所ですし》

 

《そうしましょうか》

 

《あ、私は宝物殿に装備取ってきていいですか?もしかしたら外の敵が100Level以上だったら必要なので》

 

《げっ⁉︎ま、まぁ仕方ないですし構いませんよ》

 

《序でに指輪(リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)が正常に動作するかのテストも兼ねて。では》

 

ローチは指輪に意識を集中させ、宝物殿前に転移する。

 

「ふう、取り敢えず指輪は正常に動作するようですね」

 

《モモンガさん、指輪は正常に動作してますよ》

 

《わぁ!!か、確認ありがとうございます。で、では装備の回収頑張って下さい》

 

「何故あんなに焦っていたのでしょうモモンガさんは?」

 

実はこの時モモンガはアルベドの胸を揉んでいた為過剰に反応したのであった。

 

「さて、宝物殿に入りますか」

 

宝物殿に着くまでにあらゆる罠が仕掛けられている、その中で最も脅威を振りまくのがブラッド・オブ・ヨルムンガルドというアイテムで効果は猛毒を振りまくアイテムである。状態異常無効化のスキルを持たない者が此処に足を踏み入れると三歩で毒死する。ローチはとあるアイテムであらゆる状態異常に+50%耐性があるがこれでも宝物殿に辿り着く前に死ぬだろう。そのアイテムは世界級(ワールド)アイテムで名前が緊箍児(きんこんじ)。装備者のステータスを-50%する代わりにあらゆる状態異常に対する耐性を+50%する装備品である。処で話は変わるがテラフォーマーはLevel1で凄まじい速度を出せる、現実換算して一歩目から時速320㎞出せる。ローチはLevel100の祈る者。其処から-50%したとしても一歩目で時速500㎞出せる。つまり何が言いたいかと言うと、ローチは毒で死ぬ前に全速力で走れば毒の範囲から逃れられると言う事だ。

 

「やはりこの身体は凄まじい身体能力をしていますね。確か此処は………アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ」

 

ローチの言葉にはまだまだ余裕が残っていた。ローチが合言葉を言うと宝物殿の扉に英文が浮かび上がる。

 

『Ascendit a terra in coelum’ iterumqne descendit in terram' et recipit vim superiorum et inferiorum』と書かれていた。

 

「やっぱりタブラさんは凝り性ですね」

 

その声色は懐かしさと楽しさが混じっていた。

 

「かくて汝、全世界の栄光を我がものとし、暗きものは全て汝より離れ去るだろう」

 

パスワードを言い終わると扉の真ん中に黒い穴が表れ、扉が穴を中心に呑み込まれて消えていく。ローチは扉が完全に消えたのを確認してから宝物殿に入る。

 

「貴方様は至高の方々のお一人!ナザリックが誇る害虫の王、ローチ様ではありませんか!今日はどの様な御用件で?」

 

「私の装備品を全て回収に来ました。パンドラズ・アクター」

 

「畏まりました!直ぐに持って来ますので少々お時間を」

 

宝物殿の中でローチを待ってたのは顔は鼻などの隆起を完全に摩り下ろした、のっぺりとしたものだ。目と口に該当するところにはぽっかりとした穴が開いている。眼球も唇も歯も舌も何もない。子供がペンで塗りつぶしたような黒々とした穴のみ。ピンク色の卵を彷彿とさせる頭部はつるりと輝いており、産毛の一本も生えてない。服装は黄色の軍服に茶色のコートを片腕だけ通して羽織、頭に軍帽を被っている。

 

「ローチ様!此方に御用意しました!」

 

「感謝します、パンドラズ・アクター」

 

「いえ!至高の方に感謝される程の事ではありません!」

 

「私はそう思いません、ですから感謝しますよパンドラズ・アクター」

 

「勿体なき御言葉有り難うございます。ローチ様、その、私の創造主のモモンガ様は御元気でしょうか?」

 

「元気ですからそんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

 

「御答えして頂き、有り難うございます!」

 

「ではこれで、これからモモンガさんと一緒に階層守護者達に逢いに行くので。後、モモンガさんに此処に来る様言っときますので存分にお話しして下さい」

 

「おおおお!!お気遣い感謝します!ローチ様!」

 

ローチは後ろ手に手を振りながら宝物殿を後にする。

 

《モモンガさん、装備品の回収は終わりました。私は如何すれば?》

 

《今、第六階層で守護者達が集まったのでなるべく早く来て下さい》

 

《了解しました、でしたらモモンガさんが合図を出して下さい。それに合わせて登場するので》

 

《割と無茶振りですね》

 

《モモンガさんなら出来ると信じてますので》

 

《ずるいですよ。そんな事言われたら断れないじゃないですか》

 

《期待してますよ》

 

《えぇ、期待して下さい》

 

二人はこの後少しの間笑いあった。



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第3話

第六階層に階層守護者各員は集まった。

 

「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。御身の前に」

 

「第五階層守護者、コキュートス。御身ノ前ニ」

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ。御身の前に」

 

「お、同じく、第六階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーラ。お、御身の前に」

 

「第七階層守護者、デミウルゴス。御身の前に」

 

「守護者統括、アルベド。御身の前に」

 

各員は身長も体格も異なるのに跪く場所は一寸狂わず同じ。各員の忠誠の度合いがうかがえる。

 

「第四階層守護者ガルガンチュア及び第八階層守護者ヴィクティムを除き、各階層守護者、御身の前に平伏し奉る。……ご命令を、至高なる御身よ。我らの忠誠全てを御身に捧げます」

 

アルベドの宣言と同時にさらに頭を下げる階層守護者達。モモンガは予想だにしない忠誠の高さに翻弄していた。

 

ファッ!何かの忠誠の高さ!こんなの唯の平社員だった僕には耐えられないぞ!はぁ〜どうしよう、まさかこんな事に成るなんて思いもしなかったよ。はぁ〜ホント、どうやって切り抜けよう。

 

「面を上げよ」

 

ザッという擬音が似合いそうな動きで、全員の頭が上がる。

 

「では……まずはよく集まってくれた、感謝しよう」

 

「感謝なぞお辞めください。我ら、モモンガ様達に忠誠のみならずこの身の全てを捧げた者たち。至極当然のことでございます」

 

アルベドの返答にほかの守護者に口を挟もうという気配はない。ただし、アルベドのある返答に少しだけ疑問を覚えた。モモンガは困惑した、自分がナザリックの支配者としての振る舞いが出来るかどうか。

 

「……モモンガ様はお迷いのご様子。当然でございます。モモンガ様からすれば私達の力など取るに足らないものでしょう」

 

微笑をかき消し、決意に表情を固めた凛々しい顔でアルベドは告げる。

 

「しかしながらモモンガ様よりご下命いただければ、私たちーー階層守護者各員、いかなる難行といえど全身全霊を以て遂行致します。創造主たる至高の四十一人の御方々ーーアインズ・ウール・ゴウンの方々に恥じない働きを誓います」

 

『誓います』

 

モモンガは階層守護者各員の思いを受け取り、ナザリックの支配者としての言葉が口の中から出て来た。

 

「素晴らしいぞ。守護者達よ。お前たちならば私の目的を理解し、失態なくことを運べると今この瞬間、強く確信した」

 

モモンガは守護者全員の顔をもう一度見渡す。

 

「さて多少意味が不明瞭な点があるかも知れないが、心して聞いて欲しい。現在、ナザリック地下大墳墓は原因不明かつ不測の事態に巻き込まれていると思われる」

 

モモンガは守護者達の表情をもう一度確認する。全員真剣な表情で話を聞いている。

 

「何が原因でこの事態が誘発されたかは不明だが、最低でもナザリック地下大墳墓がかつてあった沼地から草原へと転移したことは間違い無い。この異常事態について、何か前兆など思い当たる点がある者はいるか?」

 

アルベドはゆっくりと肩越しに各階層守護者を見据える。全員の顔に浮かんだ返事を受け取り、口を開く。

 

「いえ、申し訳ありませんが私達に思い当たる点は何もございません」

 

「では次に各階層守護者に聞きたい。自らの階層で何か特別な異常事態が発生した者はいるか?」

 

各階層守護者が口を開く。

 

「第七階層に異常はございません」

 

「第六階層もです」

 

「は、はい。お姉ちゃんの言うとうり、です」

 

「第五階層モ同様デス」

 

「第一から第三階層まで異常はありんせんでありんした」

 

「モモンガ様、早急に第四、ハ階層の捜査を開始したいと思います」

 

「ではその件はアルベドに任せるが、第ハ階層は注意をしていけ。もしあそこで非常事態が発生していた場合、お前では対処出来ない場合がある」

 

アルベドは深く頭を下げて了解の意を示す。アルベドに続き、シャルティアが声を発する。

 

「では地表部分は私が」

 

「いやすでにセバスに地表を探索させてあたる最中だ。そしてもう一つ守護者達よ。朗報だ」

 

守護者達は全員モモンガの顔を見つめる。

 

「ナザリックが誇る害虫の王、ローチさんが帰還した」

 

モモンガの発言に守護者達は泣き出す者もいれば感激の声を上げる者もいる。そんな中、守護者達の後ろにローチが転移して来た。

 

「モモンガさん、もしかして遅刻しましたか?私。遅刻でしたら謝罪しますが」

 

申し訳なさそうに後頭部を掻きながらモモンガ達に歩み寄るローチ。

 

「いや、時間五分前だから平気だ。《支配者ロールプレイしてるんで口調は気にしないで下さい》」

 

「了解しました《二つの意味で》」

 

突然の出来事で階層守護者達は固まって仕舞う。一番最初に動け、喋れたのはローチのが帰還した事を知っていたアルベド。

 

「ローチ様、謝罪など要りません。私達は至高の方々に忠誠を誓った身。例えどんなに待たされ様と私達は至高の方々が来るまで待つ所存です」

 

ローチはアルベドの言葉を聞き、アルベドに近寄り肩に両手を置きこう答える。

 

「それでもですアルベド。私にとってナザリックに所属する全ての者は家族なのです。家族を待たせる事など私はしたく無いのです。ですから、私は謝るべきだと思った時は立場など関係無く、謝る事にしているのですよ」

 

ローチの発言にまだ幼いアウラとマーレは声を上げ、互いに抱き合いながら泣く。シャルティアはハンカチで涙を拭く。コキュートスは涙を流すが決して拭く事はせずローチにさらなる忠誠を誓った。デミウルゴスは涙は流さなかったが眼に涙を溜めながら血が出るほど拳を握る。アルベドは泣きながらしかし決して笑顔忘れず「はい、了解しましたローチ様」と返事を返す。ローチはまさか泣き出すとは思っておらずあたふたしながらアウラとマーレを中心に慰める。

 

 

 

 

 

少しばかり時が過ぎ、まだ眼が赤いがセバスからの報告を受ける事にした。

 

「では、報告を開始します。まず周囲1キロですがーー草原です。人工建築物は一切確認出来ませんでした。生息していると予想される小動物を何匹かは見ましたが、人型生物や大型の生物は発見出来ませんでした」

 

「その小動物というのはモンスターか?」

 

「いえ、戦闘力はほぼ皆無と思われる生き物でした」

 

「草原の草は鋭く尖っていて、歩く度に突き刺さる。そんな草でしたか?」

 

「いえ、ごく普通の草でした」

 

「天空城などの姿も無しか?」

 

「はい、ございません。空にも地上にも人工的な明かりのようなものは一切ございます」

 

「そうだったな。星空だったな。……ご苦労だった、セバス」

 

モモンガはセバスを労わりながらローチに伝言(メッセージ)送り相談する。

 

《如何しましょう?余り情報が集まりませんでしたね》

 

《そうですね。取り敢えず警戒しながら落ち着いて情報収支に徹しますか?》

 

《そうですね、情報が無いと何も出来ませんし。そうしますか》

 

「階層守護者達よ、各階層の警戒レベルを1段階上げておけ」

 

「後、侵入者は生きたまま捕まえて下さい。理由としては私達の知らない世界の情報を少しでも得る為です」

 

「うむ、ローチさんの言うとうりだ。出来れば怪我をさせずに捕らえるのが望ましい」

 

「アルベド、ナザリックの運営システムって如何なってます?」

 

「各階層の警護は各守護者の判断に任されておりますが、デミウルゴスを総責任とした情報共有システムは出来上がっております」

 

「それは僥倖。ナザリック防衛戦の責任者であるデミウルゴス。それに守護者統括としてのアルベド。両者の責任の下で、より完璧なものを作り出せ」

 

「ハ階層は危険ですから基本立ち入り禁止。私かモモンガさんが許可出した場合のみ立ち入りを許可します。それから九、十階層の警備をお願いします、私達では手が回りませんので」

 

「よ、よろしのですか?」

 

アルベドが驚愕に彩られた声が上がる。後方ではデミウルゴスもまた、大きく目を見開き、その内心を吐露している。

 

「はい、構いませんよ。シモベだとしても私は信頼していますから。彼等は私達に創り出されていませんがナザリックに所属している以上、家族ですので」

 

シモベとはプレイヤーに創り出されたNPCでは無く、自動的にわき出(POPす)るものたちだ。

 

「か、畏まりました」

 

また守護者達が泣き出す5秒前でローチはあたふたし出す。モモンガはそんなローチを見てこう思う「何この叔父さん感」と。

 

「つ、次だ。アウラとマーレよ、ナザリックの隠蔽は可能か?幻術のみだと心許ないし、その維持費のことまで考えると頭が痛い」

 

アウラとマーレはすすり泣きながら顔を見合わせ、考え込む。暫くして口を開いたのはマーレだった。

 

「ま、魔法という手段では難しいです。地表部分の様々なものまで隠すとなると……。ただ、例えば壁に土をかけてそれに植物を生やした場合とか…………」

 

「栄光あるナザリックの壁を土で汚すと?」

 

アルベドが背中越しに声をかける。口調は甘く柔らかいが、そこに含まれた感情は対極のもの。マーレはびくりと肩を震わせ、ローチの背中に隠れ、チラチラとアルベドを見ている。

 

「あ、アルベド。落ち着いて下さい。マーレはナザリックの為を思って提案した筈です、ですよね?マーレ」

 

マーレは背中に隠れたまま、「は、はい」と答える。ローチはアルベドを見てから満足そうにマーレの頭を撫でる。

 

「ま、マーレよ。壁に土をかけて隠す事は可能か?」

 

「は、はい。お、お許しいただけるのでしたら……ですが……」

 

「だが遠方より観察された場合、大地の盛り上がりが不自然に思われないか?セバス。この周辺に丘のような場所はあったか?」

 

「いえ。残念ですが、平坦な大地が続いているように思われました。ただ、夜とういこともあり、もしかすると見過ごした可能性が無いとは言い切れません」

 

「そうか……。しかし確かに壁を隠すとなると、マーレの手が妙案。であれば周辺の大地にも同じように土を盛り上げ、ダミーを作れば?」

 

「そうであれば、さほど目立たなくなるかと」

 

「でしたら、この件はアウラとマーレを中心に進めましょう。アウラ、マーレ出来ますね?」

 

「「は、はい!!」」

 

「うむ、最後に守護者達。我々に対する印象を一人一人答えてくれ。先ずはシャルティアから」

 

モモンガさんと私は緊張しながら皆の言葉を待った。



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第4話

とりのいち様、誤字修正ありがとう御座います。

亜蘭作務村様、誤字修正ありがとう御座います。


ローチとモモンガは今、第九階層にあるモモンガの個室に集まっていた。

 

「…………ローチさん、どうしましょう?」

 

「…………と、取り敢えず。この世界の事を知る為に情報収集しましょうか」

 

「ローチさん……現実逃避は駄目ですよ? きちんと現実を見ましょう?」

 

「そう……ですね。すいません、モモンガさん。自分に対する評価ぎ高過ぎて受け入れられませんでした」

 

階層守護者達にモモンガ達の評価を聞いてみた結果が、予想だにしなかったのであった。

 

モモンガの場合。

 

シャルティア曰く、美の結晶。まさにこの世界で最も美しいお方であります。

 

コキュートス曰く、ナザリック地下大墳墓ノ絶対ナル支配者ニ相応シキ方カト。

 

アウラ曰く、慈悲深く、深い配慮に優れたお方です。

 

マーレ曰く、す、凄く優しい方だと思います。

 

デミウルゴス曰く、賢明な判断力と、瞬時に実行される行動力も有された方。まさに端倪すべからざる、という言葉が相応しきお方です。

 

セバス曰く、至高の方々の総括に就任されていた方。そして最後まで見放さず残っていただけた慈悲深き方です。

 

アルベド曰く、至高の方々の最高責任者であり、私どもの最高の主人であります。そして私の愛おしいお方です。

 

ローチの場合。

 

シャルティア曰く、まさに生命の象徴。ありとあらゆる生物の力を行使するお方であります。

 

コキュートス曰く、ドンナ戦況デモ諦メズ勝利ヲ目指スオ方カト。

 

アウラ曰く、あらゆる昆虫の王に相応しきお方です。

 

マーレ曰く、か、カッコイイお方です。

 

デミウルゴス曰く、あらゆる生物の力を使い、ナザリックを必ず勝利に導く為にも常にナザリックの行き先を祈って下さるお方です。

 

セバス曰く、私の創造主のたっち・みー様と互角以上に闘う方です。

 

アルベド曰く、ナザリックに所属する全ての者をその、深き愛にて平等に接して下さるお方です。

 

「評価高過ぎじゃないでしょうか?」

 

「それは言わないお約束です。ですけどローチさんの評価は割と適切ですけどね」

 

「何処がですか?」

 

「生命の象徴とか、常にナザリックの行き先を祈って下さるお方とかですかね?」

 

「あれは仕方なく祈ってたんですよ。スキルの《神への祈り》の効果が祈ったプレイヤーの周囲のプレイヤーのステータスを、祈る者(インヴォーカー)のlevel掛ける1.2倍にする効果でしたからね。コレが無かったらあの大侵略の時、もっと被害が出てましたよ」

 

「本当にあの時は感謝してますよ。で、これからどうします?」

 

「先ずは情報収集に徹した方が良いかと。情報が無いと非常事態に対して対処できませんから」

 

「そうじゃなくて、ほら、余りにも高過ぎる評価に適した振る舞いをすべきだ!とかナザリックを運営する為の資金だとか。色々ありますし、その辺の所ですよ」

 

モモンガは大袈裟に手を広げて話をする。

 

「えっと、そうですね。振る舞いについては置いといて。資金に関しては一応当てはあります」

 

「え? その当てとは?」

 

「ほら、今私達が居るのは異世界ですよね? でしたら冒険者みたいな職業に就いて資金稼ぎすれば解決すると思うんですよ」

 

ローチは何処と無く怪しかった。具体的に言えば目が泳いでいた。

 

「で、本音は? ローチさん」

 

「綺麗な景色を眺めたり、美味しい物を食べたいです!」

 

「別に良いですけど、その姿でですか?」

 

「そこは大丈夫です、宝物殿に何かしらのアイテムがある気がするんですよ。ほら? 要らないアイテムをポンポン放り投げて仕舞ってたんですよ私。今からパンドラズ・アクターに連絡して探して貰えばワンチャンありますよね?」

 

「守護者達が許すと思います? ナザリックに所属する大半は人間に余り良い感情を持って無いですよ? 絶対アルベド辺りが反対しますよ。後、パンドラズ・アクターはどうしてました?」

 

「モモンガさんも一緒に説得してくれればいけますって! 後、パンドラズ・アクターがモモンガさんの事を待ってますよ? ほら、パンドラズ・アクターにとってモモンガさんはお父さんですからね」

 

「はいはい、分かりました。一緒に説得しますよ。ですが、条件があります」

 

「モモンガさんと一緒に行く事と誰か一人NPCを連れて行く事。ですよね?」

 

「人の台詞取らないで下さい。それと、後ほど宝物殿に顔を出してきますのでその時は守護者達を任せます」

 

「今、パンドラズ・アクターに連絡して、姿か種族を偽れる物を探して貰ってます」

 

「ローチさん、凄くどうでも良いんですけどどうやって連絡したんですか?魔法使えませんでしたよね?」

 

ローチは手にあった黒い板をモモンガの前に持って行く。長方形の形をした板である。

 

「これですよ、これ。これ、魔法が使えない私にはとても重宝するアイテムなんですよ。伝言(メッセージ)を魔力消費無しで使えるんですよ!その代わり、電力を要求して来ますがね」

 

「はい、それ完全に携帯ですね」

 

「ですけどこれ、普通の携帯じゃ無いんですよ?私が祈る者(インヴォーカー)になった際、運営からメッセージが来たんですよ実は」

 

 

「え?運営からメッセージ?」

 

「はい、そのメッセージにはこう書いてあったんですよ。【ユグドラシルを遊んで頂き、まことにありがとう御座います。この度、プレイヤーネームローチ様におかれましては、此方の予想をはるかに上回り、テラフォーマーの最上位種の祈る者(インヴォーカー)に成られた事を記念して、アイテムを送らせて頂きます。よって、ご希望のアイテムがありましたら返信して下さい。余りぶっ飛んだアイテムはご遠慮して頂きたく存じます。 此処からは運営側のぶっちゃけた内容になります。読まなくても結構です。 ぶっちゃけ、テラフォーマーを極める変わり者なんていないって話してたんで、祈る者(インヴォーカー)のデータはワールドチャンピオン以上にぶっ壊れ設定にしてたんで、ステータスを抑えるアイテムを別途に送っておきますね。以上、運営のぶっちゃけた話でした。これからもユグドラシルをお願いします】………運営、ぶっちゃけ過ぎませんか?私、このメッセージ読んで若干心が折れたんですけど」

 

確かに運営はぶっちゃけ過ぎているが、仕方ない事である。何故なら、ゴキブリを極めるなんて誰が予想出来るだろうか、この事は誰も予想出来ない出来事であろう。理由としてはユグドラシルに存在する数ある異業種のなかでテラフォーマーは余り人気の無い種類であった。

 

「え、あ、その、げ、元気出して下さい。ローチさん」

 

「大丈夫ですよ、モモンガさん。心が折れた代わりにこのぶっ壊れ性能を持つアイテムを望みました」

 

「ローチさん!どれだけぶっ壊れ性能なのか教えて下さい!」

 

「落ち着いて下さい、モモンガさん。いくらコレクター癖があると知っていても目の前が骨しか映って無いとか怖いんですよ?」

 

ローチの前にモモンガがかなりの近さで興奮している。人型ゴキブリの眼前で骨が興奮してるとか、考えたくも無い出来事である。

 

「す、すみません」

 

「このアイテムの名前は見た目と性能をそのままに、魔法記憶式端末。基本的な魔法が全て入っています。今入っている魔法は第1位階だけです」

 

「そうですか、あまり凄く無いですね」

 

「ただし!私の部屋にある本体端末に繋いでデータを記憶させれば、第10位階魔法さえも使用可能!」

 

「本当ですか⁉︎チートです!それはチートです⁉︎」

 

「魔法を使う度に電力を消費済ますけどね。魔法の位階掛ける5%消費します」

 

「これで怖いもの無しですね」

 

「でも実際、魔法使うより変態して殴った方が早いんですけどね」

 

「パラポネラは止めて下さい、死んでしまいます」

 

「安心して下さい。私がモモンガさんを攻撃する理由はありません。もし、何かあったら口撃しますので」

 

モモンガとローチは雑談を交えながらナザリックの今後について話し合うのであった。



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