外伝・短編集(仮題) (幻龍)
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RAVE編
前編 新生?


思いつきネタその1です。

2500文字くらいで前編と後編の二つしかありません。主人公は一応ザフトの名参謀? キラ・ヤマトの中の人が再び転生した話です。


 前世で原作を崩壊させて自らに降りかかる死亡フラグを全て叩き折り、平和を謳歌し外宇宙を旅したキラ? は最後は平穏の無事のまま人生を終えるときが来た。

 

(これで終わりか……中々波乱万丈の人生だったが悪くない人生だった……)

 

 こうして外宇宙で機体と共に粒子となって彼は人生に幕を降ろしたのであった。

 

 

 ――筈だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……今日はこれぐらいにしておくか」

 

 12歳ぐらいの金髪の少年は手に持っていた剣を地面に刺して近くにあった岩に腰を掛ける。

 日課の素振りと一通りの修行を終えて一息ついていた。

 彼は水を飲んで喉を潤し、軽い食事をする。

 

「何でこんなことに……」

 

 その理由はこの世界での自分の状況に由来する。

 まず、目が覚めたら寿命が尽きて消滅した筈なのに身体があることに驚き、更に何故か監獄に入れられている境遇に愕然とした。

 しばらく、思考停止していると徐々に霧が晴れるかのように頭の中の違和感が取れていき、全てを悟ることになった。

 

「まさか、RAVEの世界とは……おまけにラスボスであるルシアに生まれ変わるなんて……」

 

 ルシア・レアグローブ。

 レアグローブ王国の王族で現行世界の生き残りの血を引く者。DBを極めしダークブリングマスターであり、原作主人公のライバル兼ラスボス。

 それが今の自分の境遇である。

 

(どうしてこうなった? 確かに某宇宙人さんが例の能力を習得した時、生まれ変わる運命にあるとか遠まわしで言っていたような気がしたけど、何でラスボスに生まれ変わったんだ!?)

 

 新たに転生したことにも驚いたが、ラスボスに生まれ変わってしまった己が境遇を呪いたくなる。

 幸い前世で得た経験や知識・力等は使える上、シンクレアが力と知識を与えてくれるので確実に強くなっているが、強くなれば強くなるほど自分がラスボスであることを自覚させられる。

 

「やるしかないのか……」

 

 主人公達を倒して並行世界を消し去るということは、この世界で生きる者達の存在そのものを消すということだ。

 戦争やテロ等足元にも及ばない最悪の所業を実行する役目。

 例えそれが遂行できても滅んでいる現行世界を再生しなければならないという重労働が待っている。

 正に詰みの状態である自分の境遇に半ば絶望したくなるが、冤罪で牢獄にずっと閉じ込められる境遇等御免である。

 

「だが、俺は死にたくない……」

 

 平行世界とこの世界の人達の為を思うのならこのまま時の流れに任せるだけでいい。

 最終的にハル・グローリーが自分を倒すのだから。

 しかし、それは自分の消滅=死。消滅させられたエンドレスと融合するせいなのか、ラスボスは消滅するという王道物語のお決まりに従ったのせいなのかはわからないが、最終的にエンドレスと共に自分も跡形もなく消えてしまう。それは自分にとってはバットエンドである。絶対に許容できない。

 

「フリーダムを出してこの星から脱出する計画はエンドレスに阻まれてできない」

 

 ルシアに生まれ変わったことを知った時、前世で得た能力を使いこの世界を脱出することを考えた。

 だが、それはエンドレスというかマザー(シンクレア)に阻まれた。己の役目を果たさない限りそれは許さないと。

 並行世界を消し去った後なら好きにしてもいいと言われたが、この最終手段が封じられた所為で並行世界を消滅させる道しか自分には残っていなかったのである。つまり、最初から詰みの状態でどんなに抗っても意味がないのだ。

 

「逃げ道はない。誤魔化しもできない。生き残る為にやるしかないな」

 

 空を見ながらそう呟き、俺は絶望しそうになる心を奮い立たせる。

 これから待ち受ける自分の運命に精神が何度も擦り切れそうになった。だが、最早覚悟を決めるしかない。

 

「古来より勝った奴が正義。それが万物共通の価値観。それならばどっちが生き残るか戦いで決着をつけるしかない」

 

 尤も勝つだけならそう難しいことではない。

 一番簡単なのは魔導精霊力を持つエリー(リーシャ)を始末してしまえばいい。今は魔導精霊力研究所の地下で眠っているが、ジークが襲撃した後エリーは少しの間気絶するからその時を狙って襲撃すれば片が付く。

 罪も何もない少女を直接手に掛けるのはなるべくやりたくないが、己が生き残る為なので割り切りしかない。

 

 幸いRAVEは対の関係を徹底させているせいか、自分が勝利してもおかしくない未来も造ることが可能なことが唯一の救いである。

 

「取り合えず今は力を蓄えるしかない。できれば実戦経験を得たいけどハードナーと戦うことを考えるとな……」

 

 原作知識は基本的に都合のいい所だけ利用し、それ以外は無視するつもりでいる。だから、ハル達が勝手に闇の組織を倒してくれるのなら邪魔をするつもりはない。少なくともドリューはレイヴマスター一行に倒してもらい、そこを襲撃すれば難なくシンクレアを手に入れられる。

 一番の問題はBGの首領のハードナーの持つシンクレアの力。持ち主をほぼ不死身にさせる再生力も厄介だが、一番恐いのは、再生の力で敵の今までの傷を全て再生させ、相手を倒す 極限の痛み(アルティメット・ペイン)だ。

 

「この技のことを考えると下手に傷を負えない。だが、地力をつけないと羅刹の剣にやられるからな」

 

 TCM第九の剣・ 羅刹の剣(サクリファー)

 原作のルシアはシンクレアの力を使いながら、この剣で戦ったハルに手も足も出なかった。

 無論最初から全力で奇襲して剣を使わせる前に勝負をつけることもできるが、レイヴマスターであるハルにDBを持つ自分の気配を悟られずに奇襲できる保証はないので、この案はすぐに却下した。

 

 羅刹の剣に対処すべく死ぬ気で修行するか、 極限の痛み(アルティメット・ペイン)を食らうリスクを避けるべきか。

 3日以上どちら選択すべきか悩んでおり、思考の海に沈むことが修行中に多々あった。

 

「まだ、時間はある。焦る必要はないか。今はとにかく修行に打ち込んで地力をつける。大怪我を負わない様に注意しながら」

 

 再びネオ・デカログスを手に持ち修行の為だけに生み出したDBを使い、専用空間で誰にも邪魔されずに修行を再開する。

 

「現行世界が勝つか、平行世界が勝つか。どちらが勝つかは時が交わる日に答えが出るだろう。その時を待っていろレイヴマスター」

 

 前世とは比べ物にならないくらい最悪の状況を打開すべく修行に懸命に取り組む。

 破滅の未来を回避する為に手を抜くことはできない。

 それが平行世界の破滅と引き換えだとしてもだ。

 

「国家の安全と国益の為に前世で散々やったのだ。今更いい子ぶるなど寧ろ己の人生の侮辱だな」

 

 誰もいない空間でそう呟きながら、幻術で作られた戦士を斬り捨てるのであった。

 

 

 

 

 




最初は話として書こうと思ったのですが、主人公の性格上こうするだろうと結論づけた結果、前編と後編しか書けないことを悟ったのですが、暇つぶしの一環として投稿しました。


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後編 終了

思いつきネタの後編です。


 リーシャ・バレンタイン。

 俺の目の前で気絶している女性の名であり、DBに対抗する兵器RAVEを造った人物。

 彼女は大魔導士ジークハルトの雷魔法を受けて気を失い目の前に倒れている。前世のミラージュコロイドを参考に、気配と姿を完全に消すDBを使用してジークハルトに気付かれず無事接触に成功したのだ。

 

「これも運命。許せ」

 

 俺はサイレンサーの付いた銃を彼女の眉間に銃口当て引き金を引いた。

 彼女は眉間を撃たれて即死。念の為脈を確認するがどうやら完全に死んでいる様だ。

 銃弾で始末すると魔道精霊が暴走する可能性もあったが、それは彼女が魔道精霊を持っていると自覚している場合。証拠にジークハルトの魔法を受けても暴走等していないし、意識がなければ感情で暴走する危険性はない。

 

「平行世界が生まれてから続く因縁もこれで終わりだ。安らかに眠れ」

 

 俺は物言わぬリーシャに手を合わせる。

 彼女の遺体を回収して誰もいない場所で火葬を行う。

 灰を地面に埋めて墓を造る。

 

「DCが一度崩壊するまで後僅か……。ここからはシンクレアの争奪戦に力を注ぐ」

 

 DBワープロードを使いこの場から去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 リーシャを始末して時が少し進んだ。

 RAVEマスターであるハルはリーシャ関連以外は俺の頭の中にある原作知識通りに行動していた。

 問題は守るべき女の子であるリーシャがいないので、色々と問題に対処できない場面もあったが先回りして第三者を装ったりする等成長フラグをへし折るなど苦労したが概ね予定通りだ。

 そして、DCがキング自らの手によって崩壊し、闇の権力争いが開始され、同時にDCの残党が六祈将軍を中心に復活を遂げるべく、水面下で活動を活発化させている。

 尤も六祈将軍の連中に対しては、お前達の組織は崩壊したのだから素直に諦めろよと思ったが、他の闇の組織とぶつかってくれれば漁夫の利を狙えるので放置しておくことにした。

 

「まずは、シンクレアを入手して他の連中に差をつける」

 

 最初の目標に選んだのは鬼族の王オウガと鬼神の連中だ。

 理由はシンクレア持ちで居場所が判明していることと、単純に相性がいいからである。

 ラストフィジックスは全ての物理無効という強力無比で厄介な能力だが、魔法等物理以外の攻撃は防げない。

 つまり俺が持つマザー(シンクレア)のディストーションを防げない。金術も同様だ。物理攻撃でない以上ディストーションを無力化することはできない。

 

「気配と姿を消してワープロードで潜入。そこで問答無用にシンクレアの力で要塞ごと消滅させる」

 

 ワープロードと俺が持つシンクレアの力を組み合わせた奇襲はまさに敵対する者にとって悪夢の一言だ。

 長年の修行の結果、大都市を軽く消滅させるだけのディストーションを容易に放てる様になり、この奇襲攻撃を実行できるようになったのである。

 

「では、行くか」

 

 ワープロードを使い鬼神の基地であるリバー・サリーに潜入。一応この基地シルバーレイをコピーしておく。後々役に立つかもしれないからな。

 オウガのいる場所へと息を潜めて接近。オウガが中にいることを確認した後ディストーションを放った。

 オウガと近くにいた鬼神の参謀長であるゴブは何が起こったのか理解できず消滅する。

 

「海水が入って来たか!」

 

 この基地は海底にあるので、当然ディストーションで破壊してできた傷跡から海水が入り込んできた。

 俺は闇の音速剣で素早く移動し部屋にあったラストフィジックスを回収、ワープロードでこの場を離脱する。

 

「案外あっさりうまくいったな」

 

 手に持っているラストフィジックスを見ながら呟く。

 オウガは他のシンクレアの主より隙が多いからある意味当然だが、やっぱり決め手は相性だろう。

 しばらく海を眺めていると海水が膨張して火山が噴火したように水が打ち上げられる。そして、海面から要塞から逃げて来たと思われる鬼共が出てきた。

 

「そ、それは総長が持っていたDB!? 貴様の仕業か!」

 

 鬼共は自分が持っているラストフィジックスを見て、今回の騒動の原因が自分であると理解したらしい。

 鬼共は全員が雄たけびを上げ激高しながら襲い掛かって来る。

 

「消えろ」

 

 俺はディストーションを鬼共に放ち大半を消滅させる。

 鬼共はこの惨状に恐怖したのか顔が真っ青になっており、慌てて逃亡を図るも、闇の双竜の氷と炎で追撃し処理していく。

 鬼共が襲ってこなくなったのを確認した後、ワープロードを使いササベルク大陸から隠れ家がある街へと帰還する。だが、予定外の事が起こった。何と戻った場所に六祈将軍(ディープ・スノーを除く)の連中が待ち伏せしていたのだ。

 俺は連中に情報は与えていないのに拠点がばれたことに少し驚いたが、シンクレアで連中のDBを自壊させて、悠々と始末した。ジェガンとレイナは剣で急所を貫き、べリアルとユリウスはディストーションで彼等がいた空間ごと消滅させた。

 ハジャは無限の魔力のカラクリが破られたので、形勢不利を悟ったのか空を飛んで逃走を試みたようが、闇の真空剣で真っ二つにした後、動けないジェガンとレイナと共にディストーションを使い消滅させた。

 

「何とかなったな」

 

 厄介ごとが一つなくなったので安堵した。

 これでDCは再び壊滅したも同然だ。

 俺はDCのトップになる気はないし、頭がいなくなったから自然に消滅していくだろう。

 ちなみにジェガンの側にいたジュリアはそのまま飛び去っていった。レットの元にでも向かったかな。レイヴの竜人は鼻が効くらしいし。

 

 

 

 

 

「俺の勝ちだな。ハードナー。シンクレアの力を過信したな」

「金髪の悪魔……。てめぇ……よくも俺様の邪魔をしてくれたな!?」

 

 レイヴマスター達が他のシンクレアの主を打倒した所を狙ってシンクレアを奪取することを続けた(アスラの持つシンクレアは奴の元に行ったら献上された)。

 そして、最後のシンクレアを持つハードナーが、魔界でエンドレスと融合するべく儀式を行う場所に予め潜入しておき、レットが奴に敗れた後ハードナーに戦いを仕掛けた。

 

 ハードナーはアナスタシスの力を過信して、俺から他のシンクレアを奪ってやると宣言したが、ネオ・デカログスを使いヒット&ウェイで攻撃する俺を捕らえきれず、再生能力の限界がきてしまい敗北した。

 

「うるさい。お前は邪魔だから消えろ」

「がぁ!?」

 

 ハードナーを祭壇から蹴り落とし、近くにいたルナールを闇の真空剣で同じ場所に落とす。

 これから起こることに水を差されたくないからだ。

 

 全てのシンクレアが揃ったのでエンドレスがこの場に現れ、次元崩壊のDB《エンドレス》が完成した。

 エンドレスを自分の胸元に吊るした直後、レイヴマスター達が祭壇にやって来た。

 

「お前はドリューのシンクレアを奪っていった奴!? ここで何をしていたんだ!」

「レイヴマスターか。一足遅かったな。ハードナーは俺がきっちりと倒してやったぞ」

 

 俺の言葉にハルは驚いた表情を浮かべる。

 自分が苦戦したハードナーをあっさりと倒したのだから驚くの無理はないか。

 

「俺は目的を達したからこれで失礼させてもらおう。この勝負ダークブリングマスターである俺の勝ちだ」

「何だと!? どういう意味だ!」

 

 俺はハルの言葉を無視してそのまま魔界から人間界に帰還した。

 そして、エンドレスを使用した。すると世界にメモリーダストが広がっていき、全ての記憶を忘却させながら世界を崩壊させていく。

 

「レイヴマスター達がここに来るのが早いか、エンドレスが大崩壊で平行世界を消し去るのが先か……競争だな」

 

 レイヴマスター達は恐らく間に合わないだろうし、例え間に合ったとしても聖剣レイヴェルトもない、リーシャがいない以上レイヴを一つの完全な形に戻すことも不可能だから俺の勝ちは揺らがない。

 

 案の定レイヴマスター達は間に合わず平行世界は消滅した。

 俺は現行世界に到達し、完全融合を果たしたエンドレスの力を使い現行世界を再生させ、創造神として君臨した後波乱に満ちた人生を閉じるのであった。




最初は長編の物語を予定していましたが、主人公の性格を考えるとこうなってしまいました。
 シンクレア(ディストーション)+気配と姿を消すDB+ワープロードのコンボは最強。ダークブリングマスターだからできる反則技だなと書いていて思いました。
 手段を選ばなければ原作でもルシアの勝ちだと思います。そもそもエンドレスは世界的には悪ではありませんし、DBの魔力に取りつかれるという設定がありますが、寧ろ逆なのでは? と考えています。DBという強大な力を得たために心が歪むのでは? と解釈できなくもありませんし……。


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うちはサスケに転生しました。これより生き残りと一族復興を目指して頑張ります if end
if BADEND


当初は本編の方に載せる予定でしたが、色々と検討した結果、ネタとしてこっちに投稿することにしました。

サブタイトル通りBADENDになった場合です。


 第四次忍界大戦が終わった数ヶ月後の火の国辺境。

 

 そこには任務を完了して帰国しようとしたうちはサスケが、突如現れた襲撃者を片っ端から始末していた。

 

「これで終わりか……。だが、次に大人数で襲われたら一環の終わりだな」

 

 任務終わりによる疲労とほぼ尽きかけたチャクラ量。更に襲撃者が使用したと思われる特別な毒を受けたせいで、柱間細胞適合者特有の回復力が上手く機能せず、サスケは満身創痍になっていた。

 

「まさか、俺を始末する為だけに火影に黙って他里や他国を巻き込むとは……。御意見番や根の連中の愚かさを見誤っていたのかもしれんな」

 

 サスケは自分が始末し、既に事切れて転がっている霧の暗部や岩隠れの忍達を眺めながらそう呟く。

 

 当初は何故襲撃されるのか分からず、写輪眼で根の暗部から情報を引き出したら、今回の件は御意見番と里の上層部、根の暗部が仕組んだものだと白状したのである。

 

「連中の保身と第四次忍界大戦に対する他里の忍へのガス抜きの為の生贄……。――所詮うちはは信用できないということか……」

 

 サスケは里に対して恨みや復讐心はあるが、それを抑え込んで働いてきた。――だが、その結果訪れたこの最悪な結末に、己の不甲斐なさを自嘲するしかなかった。

 ダンゾウが消え、御意見番も失脚したから暫くは大丈夫だろう――そうした楽観的な考えが生まれ、警戒を緩めた結果が、今の絶望的な状況である。

 

「さて、これから如何するべきか……!?」

 

 サスケはこれから如何するか思案しようしたが、それは中断される。

 

 草陰から突如黒い蛇? の様な物が出てきて――サスケに対して襲い掛かってきた。

 

 サスケは刀でそれらを切り払う――斬られた黒い蛇? はそのまま四散して黒い液体の様な撒き散らす。

 

「この匂い……。――墨だと? ――鳥獣戯画の術か!」

 

 サスケは瞬時にこの術を理解し、敵の気配を感知して位置を把握――複数いたが輪廻写輪眼で分身体を看破して、本体を万象天引の術で容赦なく引き寄せる。

 

「っ!?」

 

「やはり根の忍か……。――消えろ!」

 

 不可視の引力に引き寄せられた暗部の面を被った忍――原作ではサイというコードネームを与えられた同年代の忍に対して、サスケは容赦なく千鳥を放つ。

 それに対して根の忍は急に己がサスケに対して引き寄せられていることに混乱し、千鳥に対処することができず――呆気なく急所を雷を纏った手刀に切り裂かれ、口から血を吐いて地に倒れる。

 

「呆気な過ぎる……。まさか!?」

 

 サスケは咄嗟にその場から離れようとしたが、暗部の忍の身体が膨張して大爆発を起こした。

 

 サスケは何とかその爆発を躱すが、瞬身の術を使用した為チャクラが更に減ってしまう。

 

「自爆……。何とか助かったがもうチャクラが限界に近い……。――それに里へ帰ってもただでは済まないはずだしな……」

 

 サスケは大木を背もたれにして座り、己の人生の限界を悟る。

 

 この場を潜り抜けても、今回の黒幕が自分を見逃すとは思えない。御意見番や他里が相手では里優先のカカシでは強く出れない。今回の件について自分に対して口を閉じ、耐えるように要請してくるだろう。

 

 それだけならまだ良いが、根本的な対策を適当な理由をつけて取らず、永遠に事あるごとに命を狙われ続ける立場を、無自覚に一生強要してくる可能性が高い。

 

「潮時か……。――この術を使う時がこんなに早く来るとは思わなかったが、このまま里に帰還してジリ貧になるよりは賭ける価値はあるか……」

 

 そして、こういう万が一の時の為に備えて、大蛇丸の研究データや穢土転生等を基に開発した術――天・輪廻転生術の使用時と判断し、サスケは印を組み術を発動させた。

 

「もし、この世界に戻って来ることがあるのなら……。――必ず、仕返ししてやるからな」

 

 うちはサスケはそう最後に言い残し、光の粒子となってその場から消滅した。

 

 

 

 

 木の葉にうちはサスケ行方不明の報が入り、木の葉は軽く混乱することになった。

 

 六代目火影で師匠でもあったカカシは、サスケ程の手練れがやられたことに疑問に思い、無論調査を命じたが、手掛かりが殆どない上、任務を完了したこと以外、証拠が全く見つからなかったので、一週間後には予算や人員の関係上捜査を打ち切る。

 

 それに対してナルト等同期は納得せず、カカシに直談判したが里の復興等の優先すべきことがあると諭されると、彼等は里の決定を渋々受け入れるしかなかった。

 

 ナルト達が火影室が出て行った後、カカシは暗部から入ってきた別の報告書に目を通す。

 

「まさか、こんなことになっていたとはね……。――済まないサスケ。だらしない先生で……」

 

 うちはサスケの行方について――実はカカシは真実を掴んでいたが、余りにも関与した人数が多すぎて、この件を公開すれば里間の融和ムードに罅が入ると考え、己の心を殺して今回の件を闇に葬ることにしたのである(サスケに対して心の中で何度も謝罪しながら)。

 

「二度とこんなことがないように、根の暗部は再教育を施す。御意見番の2人に関しては今回の件を使って勝手なことをしないよう釘をさすしかないな……。まずは他里との意見調整からだけどね……」

 

 隠居しても里の一定の影響力を持つ御意見番に対して、どうやって話を持っていくか考えながら、カカシは取り敢えず他里に対して、今回の件について話し合いの場を持ちたい――という書簡を送る手筈を整えることにするのであった。

 

 

 

 

 カカシが色々と政治のことで動いている頃、裏ではサスケの関係者は彼が消えたことを知り、彼から生前頼まれていた事後処理に奔走し、彼が研究していた物は全て破棄され、彼の財産を手に入れようと画策した者達は梯子を外されることになる。

 サスケの財産の一部であるこの研究資料は、サスケが親しくしていたとある商人からカカシに送られ、木の葉の発展に寄与することになる。それによって後年火影を引退したカカシは益々後悔する羽目になったが、今更事件の真実を公表する訳にもいかず、この件に関しては自分の胸の内にしまっておくことにした。

 そして、うちはサスケのことは数年後、木の葉里で彼と親しかった者達以外からは忘れ去られ、第四次忍界大戦の立役者・うちは最後の生き残りということだけが資料に記されて、うちはの歴史は一旦幕を降ろすことになった。



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ようこそ並行世界の忍がいる教室へ
ようこそ並行世界の忍がいる教室へ 


取り敢えず久しぶりに投稿。

連載を望む声や、自分のやる気があれば独立させて書くかもしれません。そして、どういう方向に話を持っていくか検討中なので、連載になった場合、全く違う展開になるかもしれません。何せ所属クラスを何処にするかで未だに悩んでいるので……。


 平和というものは尊く素晴らしい。

 唐突に始まった転生人生は悉く殺伐とした世紀末な世界。それ故に、この言葉の重みを改めて俺は実感できたのである。――そう、例え半ば実験モルモット人生だろうと。

 

 ホワイトルーム。

 人工的に天才を創ることを目的にした施設。

 俺は三度転生(今回は自力で)したが、両親不明のまま孤児院に捨てられ、今の養父や養母に引き取られたが、直ぐにこの施設に売られたのである。

 

 最初はこの現状に凄く絶望したが、数分後には常に命を狙われていた忍世界よりマシと考え、精神を持ち直した。そして、ホワイトルームでカリキュラムに従い、強制的な英才教育に打ち込む日々を過ごす。

 その教育は人権完全無視といえる過酷さで、あらゆることを学ばされ、中には発狂する者も現れ、同期は次々と脱落していった。忍世界の最低な世紀末な人生を過ごしていなければ、俺でも耐えられなかっただろう。

 

 最終的に第四期生で残ったのはこの施設(ホワイトルーム)の創設者の綾小路氏の息子で、最高傑作と称賛されている綾小路清隆と俺だけになった。

 

 そんな英才教育に日々費やす人生を過ごしたが、ある日、俺は綾小路氏から直々に全てのプログラムを終了したと告げられ、晴れてホワイトルームを卒業することになり、孤児院から俺を引き取った義理の両親の元に戻ることになった。

 家に帰宅したら、俺を売って得た金で事業に大成功した義理の両親は、償いのつもりなのか俺に大金をくれた。

 それを使ってホワイトルーム仕込みの投資技術を使い、大金を稼ぐことに成功したので、もしもの時に備えて複数の銀行に口座を作りそこに資金を預ける。――役に立つ日がいつか来るだろし、金はあって損はないからな。

 

「……今日は手持ちの金を使って豪遊するか。忍術まで使ってプログラムを消化したんだ。来年度からは高校生だしな」

 

 俺はネガティブな思考を頭の中から消し去り、ストレスを解消するべく街に繰り出す。

 昼食はラーメンに餃子と炒飯、デザートはアイスクリーム屋でアイスクリーム5つ食べた。

 本屋で暇つぶしの本を数冊買い込み、そろそろ帰ろうかと思った時、――少し挙動不審の少女が目に付いた。

 ストロベリー色の長い髪を肩まで伸ばし、容姿端麗で胸が大きいスタイル抜群の美少女で、少女は注意深く周囲を確認している。

 その様子が気になった俺は、周囲の人々や彼女に気取られないように、気配を消して彼女の側に近づき観察する。

 彼女はそのまま女の子用のヘアピンをバックに入れて、そのままレジがある店の出入り口方面へ向かうと思ったが、レジではなく出口の方へと向かって歩いていこうとしていた。

 

「なるほどな……」

 

 彼女はバックに入れたヘアピンを万引きするつもりらしい。

 見てしまった以上は止める必要があるだろう。忍世界にいたのなら用心して何もしないが、ここでは無駄に勘繰られる心配もないので、店員ばれる前に止めるか。万引きを見逃したことが第三者にばれたら面倒だしな。

 俺は怪しまれないよう美少女に近づき、さりげなく声を掛ける。

 

「レジは向こうだ。行先が違うぞ」

「っ!? ……何のことかな?」

「惚けるな。鞄の中に商品を入れているのを見た。――今ならまだ、成立していない。レジに向かうか、それが無理なら売り場に返してこい」

「はい……」

 

 万引きがばれたことに彼女は驚いた顔をしていたが、俺の言ったことに素直に頷き、そのままヘアピンが置いてあった売り場に戻っていく。如何やら根は悪い子ではないらしい。

 

「この後、如何するかな……。取り敢えず訳を聞くか」

 

 もし、スリルを味わいたいという下らない理由なら、親御さんに報告するつもりだ。

 今回は防げたが、万引きは繰り返すことが多いからな。

 そう考えながら彼女が戻って来るのを待ち、彼女が俺の所に戻って来る。

 

「余計なお節介だが、訳を聞いていいか?」

「うん。……止めてくれてありがとう」

「そうか。少し待って貰えるか? 買いたい物があるからな。この近くに公園がある。そこで待っててくれ」

「分かったよ」

 

 彼女は先に俺が指定した場所に向かった。

 俺はある物を購入した後、店を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

「事情は分かった。見ず知らずの人間を信用して、家庭の事情を話してくれたことに感謝する」

「ううん。止めてくれてありがとう」 

 

 周囲に誰もいない公園で、俺は彼女が何故万引き未遂を起こした理由を聞くことができた。

 彼女の名前は一之瀬帆波といい、互いに自己紹介して友達になった後、事情を聴くと話してくれた。

 このような行為をしたのは家庭の事情で、妹へのプレゼントを買えなくなってしまったことで、妹にプレゼントをどうしても与えたかったようだ。

 

「そうか。赤の他人に言われて腹が立つと思うが、家族のことを思うのなら、万引き等金輪際するべきじゃない」

 

 しかし、彼女の行動は幾ら何でも短絡過ぎる。折角特待生として私立の高校へと入学が確定しているのに、それを棒に振る行いだ。家庭の事情を鑑みれば猶更するべきではなかった。

 

「そうだよね……。今は何でこんなバカな行動したんだろうと自分でも思っているよ……」

 

 俺に指摘に一之瀬は頷き、激しく落ち込み、声も小さく弱弱しいものになっていた。

 ちょっと言い過ぎたと思ったが、彼女のようなタイプの人間は、他人から悪くないと励まされても、引きずるようなタイプなので、はっきりと言ってやった方がいいだろうしな。

 

「もう夕方になる。あんまり年頃の女性が帰るの遅くなるのは良くないだろう。これは友達になってくれたお礼だ」

「これって!?」

 

 俺はそう言って一之瀬に紙袋を差し出す。

 一之瀬はそれを受け取り、袋の中身を見て驚愕する。――何故なら自分が万引きしようとしていた物が入っていたからだ。

 

「素直に受け取っておけ。自分ことを大切にしてくれる家族は大事しろ」

「……うん。本当にありがとう。サスケ君」

 

 俺の言葉に一之瀬は頬を少し赤く染めて紙袋を受け取る。

 

「サスケ君。電話番号交換しない? 折角友達になったんだし……」

「あー。――実は携帯を家に忘れてきてな……」

「そうなの? じゃあ、私の番号を渡すから、登録しておいてね。今日は本当にありがとう!」

 

 別れ際に携帯の番号を書いたメモを受け取り、歩いて自宅へと戻る。一之瀬は俺が見えなくなるまで手を振って見送ってくれた。

 

「あそこをさっさと卒業して正解だったな……。俺も明日からまた、今の生活を満喫するか。その前にあの学校へと願書を出さないとな」

 

 俺は術を使ってでも、ホワイトルームを卒業したことは間違ってなかったと思いながら、自宅の門を潜るのであった。

 

 

 



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