異世界攻略のススメ (渡久地 耕助)
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第一章 ガリア攻略のススメ
異世界召喚


 小説家になろうにも投稿してます。
 2014年 現在、改稿&加筆修正中
 先ずは一章を連続投稿です。


 中二病という病気をご存知だろうか? 某巨大掲示板サイトの専門用語で英雄願望とも言う。

 

 アニメや漫画、ゲーム、小説に影響され、自分が特別な人間だとか、設定とか盛り込んで、痛い発言をするアレだ。

 

 俺もスポーツ選手になろうと努力したり、格闘漫画の影響を受けて格闘技を習ったり、ゾンビを銃撃するホラーアクションやファンタジーの世界に召喚されたりしないかと四六時中、妄想したものだ。

 

 だが、現実に俺に超能力や魔法が使えたとして、どうなるだろうか?

 

 超能力、魔術? ヒーローもの?

 

 政府の諜報員か殺し屋として監察課に置かれるか、戦いに駆り出されるか? それか化物と言われて迫害されるだろう。

 

 テレビに出てくる超能力者もスプーン曲げたりするのを見たことはある。

 だがテレポートや人を浮かせる程の念動力を使える人は創作の世界の住人だからこそ、その存在は許容される。

 

 もしそんな力を持っている人間がいたらかなりの脅威だろう……

 自称千里眼や霊能者もちゃんと実在するのなら警察に協力して、誘拐やテロを未然に防げるはずだ。

 

 いたとしても彼らは平穏とは明らかに離れた生活をすることになるし、存在しない。

 

 異世界召喚? 

 

 よくファンタジーで何の取り柄もない主人公が異世界に魔法使いだか王族だか神だかに召喚されて勇者になって世界を救うべく戦うなんてよくある話だが近年、月に行ったり、火星を調査するのに、どれくらいの時間と金、距離があるというのか? 其れを魔法の一言で片付けようとするんだからマジで幻想(ファンタジー)だろう。

 

 仮に俺が異世界に召喚されたとしよう。

 異世界特典、主人公補正の 能力上昇、翻訳能力、ご都合主義の巡り合わせがついたとしてどうだ?

 

 この平和な日本で生まれた俺が魔物を人を殺して英雄になれるか? 答えは無理(ノー)だ。

 ソレができるなら、俺の就職先は教師ではなく、自衛隊だな。

 よくよく考えてみるとファンタジーってのは客観的に見たら面白いが、当事者からしたら相当な不幸ではないのだろうか?

 

 いきなり誘拐されて、殺し合いの場に駆り立てられるのだから・・・・・・

 

 こんな思考に行き着くようになって いつしか俺はそういう妄想を止め、時たまゲームや漫画、自作のネタ、妄想を詰め込んだ黒歴史のノートを懐かしく見返しながら、若かりし頃を懐かしんだ。

 

 ……恥ずかしいな。やはり黒歴史は黒歴史だ。

 

 もしタイムスリップができるなら俺は中二病を患っていた時の俺を殴る衝動を抑えられなかったね。

 自己嫌悪ってやつだ。

 

 そんな事を頭の片隅にぼんやりと思いながら俺は大学を卒業し

 春から赴任する学校の授業計画書やテキストの準備に頭を悩ませ

 其れを卒業祝の飲み会で忘れ去り

 終電に乗り込んでまどろむ平凡で平穏な日々を過ごしていた時……

 

 俺は異世界に召喚された。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 大学卒業式の飲み会の帰り、運よく終電には間に合った。

 終点の駅までうたた寝して、目が覚めたら煉瓦造りの町の路地裏に立っていた。

 

 立ったまま寝てたのか?

 自分に驚くも見知らぬ建物を眺める。

 まだ酔いが醒めていないのかまどろみながら、路地から抜け出す。

 

 一気に酔いが醒めたね……

 

 視界に広がるのは中世ヨーロッパの街だ…… 

 言語学、歴史学に精通してなくても分かる。

 映画や小説で見た街並み

 中世風の服を身に纏う人々

 皮の鎧を着て、腰に剣をぶら下げている人

 猫耳の少女!!

 魔法使いの三角帽子を被った女の子が街を行きかっている。(後で写真撮らせてもらおう。)

 

 因みに夜だったはずなのに今は真昼間だ。

 あれか?時差か!? つかコスプレ祭り? 

 

 ファンタジーを題材にした映画村にでも来たのかと思うが違う。

 それに耳を傾けて、どこの国の言葉か探ろうとするが耳に届いたのは日本語だった。

 

 勘のいい奴なら気付いたろう。

 いや俺も薄々勘付いちゃいるが認めたくない。

 

 というか俺ってドリーマーか?

 薬なんてやったことはおろかみた事もねーぞ!

 俺は中二病はもう卒業したんだよ!

 本日大学卒業した社会人(予定)だぞ! オイ!!

 

 まぁ現実逃避は未だ早い。

 こういう時に人間性は試されると、どっかの誰かさんも言っていた。

 

 情報収集と行こうじゃないか。

 さぁこの街の人たちには只の一歩だが俺にとっては偉大な一歩を踏み出そうじゃないか!

 

「貴族の兄ちゃん。いい服着てるねぇ、ちょっと小遣い恵んでくれや。」

 

 OH……

 

 振り向くと路地裏に引きずり込まれた。

 掴まれた肩に走る痛みに顔をしかめつつ。

 狼藉物を確かめるべく、キッと睨む。

 

 ガタイのいい男三人が俺に相対していた。

 

 チンピラA

 チンピラB

 チンピラCがあらわれた!

 

 エンカウントだとしたらこんな感じ。

 

 目的はやはりカツアゲだろうな……チンピラェ 

 

 最初の異国?異世界?でのファーストコンタクトがこれではがっかりだ。

 あっさり俺の幻想をぶち殺してくれましたよ、このお三方。

 さっきの可愛らしい猫耳ちゃんや魔女っ娘を見た後で魔逆の位置の方々と邂逅。

 

 この落差が激しい事は紳士の皆さんなら理解してくれる筈だ。

 

 というか貴族? 

 どっちかという俺は家では裸族だが、貴族ではないぞ。 

 

 ……まぁ確かにスーツにビジネスバッグを持った姿

 まぁ貴族と言えなくもないか。

 

「生憎、手持ちが無くてね~。金が欲しかったら働けば?」

 

 俺は心底バカにした顔で三人を見やって挑発する。

 昔からこういう輩は嫌いだ。

 

 普通、命が惜しいならここで助けを呼ぶか、逃げるのだろう。最悪、小金を渡して事なきを得る。

 

 だが、俺は違う。

 それにここは見知らぬ路地裏、背後に逃げ、土地勘のない俺では袋小路に追い込まれるのが落ち。

 それを分かっているのだろうから後ろに退路を残しているのだろう。

 

「あぁん? なんでてめえみてーな野郎にそんなこと言われねぇといけねぇんだよ!」

 

 そう言って凄む男達。

 お?ガンつけか?うちの後輩の方が未だ怖いぞ?

 後、無闇に大声を張り上げても恫喝にもならないよ?

 

 大声で人が集まるしやり難いだろう。

 馬鹿なのだろうか?

 それに俺だってお前等と会話もしたくねえよ。

 

 

 やはりチンピラAの声が聞こえたのか、いつの間にか周りには野次馬が集まっている。

 しかし俺を助けようとはせず遠巻きに男達を見てヒソヒソと囁き合う。

 

『やぁねぇ……またあの穀潰共よ……』

『今度は何をしてるのかしら?』

『まったく、いい年にもなって……』

『誰か憲兵呼んでこいよ』

 

 どうやらこいつらは常習犯らしいね。

 つか憲兵は呼んでくれても助けてはくれないのね町人の皆さん。

 

 まぁそれが普通か。

 憲兵、呼んでくれるだけでも恩の字ですな。

 国家権力を舐めんなよ猿ども。

 

 某とんがり頭の不幸な高校生みたく猫耳&魔女のフラグを建てれず。

 不幸だ―と叫びたくなるが、まぁ我慢だ。

 

「そんじゃ、あんたらはカツアゲ、俺の金が欲しくて無理矢理奪おうとしている。これに間違いはないな?」

「分かってるなら話がはええな、さっさと財布でも置いて消えごっ!?ガハッ!」

 

 はい、言質取りました。

 道に迷ったとか、この地方特有の冗談、ドッキリカメラの線が消えました。

 肉体言語を使った物理的な説得に入ります。

  

 俺の肉体言語は流暢で早口だ。

 マシンガントークで行くぞ?

 

 故に相手に最後まで喋らさない。

 右手の抜き手で相手の喉を潰し、そのまま背負い投げで地面に叩きつける。

 相手は受け身も取れず、畳の上でも無い地面に叩きつけられる。

 堪らず、チンピラAは痛みにのたうちまわる。

 そのまま胸を踏みぬき、気絶させる。

 先ずは一人を説得(・・)

 

 この間、数秒足らず。

 ベテランのパートのおばさんのレジ打ちの様に流れる作業だ。

 

 こちとら体育会系のクラブの総元締めだ。

 身体のデカイ体力自慢共を押さえつける術を身につけている。

 荒事には慣れてる。

 

「て、てめ!」

 

 チンピラBが俺に殴りかかってくる。

 遅い、今度は投げずに半身でかわし右手で腕を掴んで左手で相手の右ひじを粉砕する。

 

「ぎゃああああああ」

 

 右ひじを砕かれ膝を突く男の顎を蹴り飛ばし黙らせる。

 

 二人目。

 

 残ったチンピラCを睨む。

 学校では使わないが、闇討ちしかけてくる馬鹿共相手に良く使った技だ。

 普段は鳩尾に肘を叩き込む八極拳モドキだが武器を持っている可能性もある。

 

 あえてエグイ攻撃手段をとって怯ませる。

 そして止めに本気で相手に眼を飛ばす。

 

 言っとくが俺の顔は鷹の眼、三白眼に鷲鼻だ。

 猛禽類並の迫力を持っている。

 

 普段は怖がられるのが嫌だから糸目にして人のいい顔を繕っている。

 だが本気で凄むとチンピラなんぞ俺に絡もうなんて思わん。

 

「ひ ひいいい」

 

 チンピラCは路地の暗がりで俺の顔が見えなかったが漸く効果が出た。

 

 ぼうぎょりょくが がくっと さがったな。

 

 日が差し込み俺の顔+二人を一瞬で倒したことから恐怖で腰を抜かす。

 

「……失せろ」

 

 そう凄むとチンピラCは泡を吹いて気絶した。

 いや仲間連れて帰れっていうつもりだったんだが……

 

 雰囲気にのまれてやっちまったぜ☆ 覇○色!

 地元の人間や学校の連中はもう慣れてくれたが一見さんは耐性が無い。

 

 やはり俺の眼つけは一見さんには効果は抜群だ。

 

 まぁこのまま放っておけば憲兵とやらがこいつらを連れていくだろう。

 さて面倒な事にならない内にトンズラと行きますか。

 

 路地から出ると野次馬が俺を怖がってモーゼの様に左右に別れ道を空ける。

 

「……」

 

 感情的になるな。

 まだ何かを成し遂げたわけじゃない。

 なぜこんなことで傷付いている。

 バカめ!

 

 うん、普通引くよね。

 ダメだ。

 俺は余程、出鼻を挫かれたのが腹に据えかねていたようだ。(←しつこい)

 

 上を向いて額の汗が目に掛からないようにしながら、俺は街に繰り出した。

 

 俺の冒険は未だ始まったばかりだ!!




 心の汗が染みますねw


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ギルドにいこう!

 情報収集を行う必要がある。そして先立つ物はもっと必要である……

 

 ここが異世界?と念頭に置いて行動するにあたってやることがある。

 

 先ずは自分の現状を確認することも大事だが、世の中、金だ。

 

 先立つ物がないと飢えてしまうし、今晩の寝床が野宿となる。

 

 流石にホームレス生活は俺には上級すぎる。

 就職活動から解放された矢先にまた職探しとは、泣けてくるね。

 

 とにかくギルドみたいな仕事の斡旋所か、市役所のような公的機関を探す。

 ここはどこの国だとか、人に聞いて周る。

 この服が執事服か貴族の服に似ている為か

 先ほどの騒ぎを見聞きしたのか街の人たちは緊張した面持ちだったが

 快くギルドの場所を教えてくれました。

 

 

 その他にも集まった情報がこれ

 

 この国は【ガリア王国】王政で神話の【女神】の末裔の【姫様】と女神の加護を受けた民族、

 【クルトの民】という【精霊魔法】を使える部族たちが王家の始まりらしい。

 

 町の名前は【トゥールーズ】

 

 【遺跡】、【ダンジョン】の補給地として発展した宿場街。

 

 大体4つに区分けされていて、  

 

 今、俺が練り歩いている【商業区】に【酒場】【雑貨屋】【服飾店】【定食屋】ところどころに、【屋台】【露天】【娼館】もある。

 

 居住区には【宿泊施設】【宿屋】と【住民の家】が立ち並ぶ。

 

 中央区に【病院】【憲兵団屯所】【自警団屯所】【商人ギルド】 【冒険者ギルド】がある。

 

 【冒険者ギルド】と【宿屋】【娼館】の情報が嬉しいですなぁ。

 

 あとやっぱり【魔法】があるみたいだな。

 

 なんか、屋台のおっさんが指から火を出して着火しているのを見たし、

 転んだ子供に手を光らせて治療?する巨乳エルフがいた。

 はじめにとんがり三角帽子をかぶった魔女ッ娘がいたしな。

 

 うん、これぞ異世界。

 というか美女、美少女の割合が高い。

 この世界の名産は美女と魔法だろうか。

 

 【娼館】に行くのが楽しみです。

 

 【魔法】俺も覚えられるかな?

 童貞でないと覚えられないとかどうしよ。

 

 いや、帰る術を探さなくては。

 情報を纏めていると先程の路地裏での大立ち回りの噂が広まったのか、

 明らかに異国の人間が先ほどから彷徨いているからか住民の視線が集まりだした。

 

 目立って仕方ない。

 ビジネスバックにしまっていた黒のフード付きコートを出し、フードで顔を隠す。

 昨日の卒業式の後、同期の奴らに夜遅くまでの飲み会があると聞き、用意していたものだが、更に目立つなコレ。

 

 まぁ顔を覚えられるよりマシか。

 余計なトラブルに巻き込まれたくない。

 

 先ずは日々の糧を得るため【ギルド】に向かうとしよう。

 話を聞く限り、国の軍隊では手が届かない仕事を行ったり、憲兵と協力して街の自警団の役割も持っている何でもやというところだ。

 以前バイトにいっていた派遣アルバイトの様なものだろう。

 若しくは職業斡旋所。

 

 ……日本語に訳すと、とても残念な響きが感じる。

 このままギルドと呼ぶ事にしよう。

 

 履歴書は手持ちにないが、卒業証書と教員免許証、運転免許証、保険証がある! 

 いざとなったらこれでゴリ押し行けるだろうか?

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ~トゥールーズ ギルド~ 

 

 人を顔で判断しない親切な町人(5人目)にギルドの道を聞いて、やっと到着。

 

 テンプレの様に酒場の様な場所に何かと絡んでくる荒くれ者でもいるのかと思ったが。

 異世界はいい意味で予想を裏切ってくれたな。

 

 小奇麗なホテルの様なロビーに【美人の受付嬢】

 荒くれの冒険者ではなく【アルビノ美女】に【中学生位の少年】がいる。 

 

 流石に朝っぱらから酒を飲む者もいないしな、固定観念に囚われたかな?

 掲示板を見て依頼書を持って受付に歩いていくハローワークを思い出すような静かな忙しさを感じる。

 

 現代と違って電話は……おっと!それらしいものがある。 受話器なのか耳を手に当てて何か喋ってる。

 通信用の魔道具があるのか?それとも念話かな?

 

 うん、これだよ。

 コレこそが異世界だよ。

 やはり、真面目に働いている人をみると心が洗われるね。

 

 ああ さっきバカな三人組を相手にした時の荒んだ心が癒されていくよ。

 

「いらっしゃいませ 本日はどのようなご用件ですか?」

 

 感動に浸っていると受付嬢が声を掛けてくれた。

 カウンターに向かい一礼して応答する。

 

「初めてなんですがギルドの登録に来ました。」

「登録ですね……ではご説明します……」

 

 彼女の説明を要約すると…

 

 1.依頼書に書かれた仕事をこなし、依頼人かギルドの受付に依頼達成を報告し、報酬を受け取る。

 

 2.依頼内容と異なる仕事はしなくてもよい。(依頼外の魔物の討伐など)その際ギルドに報告する。

 

 3.余った素材、薬草、狩猟部位はギルドで買い取ってくれる。

 

 4.ギルドで登録した名以外で他者を騙って依頼を受けるなど犯罪行為は認められない。

 

 5.仕事で死んでもギルドは一切関与しない。 全て自己責任。

 

 6.ギルドカードは身分証を兼ねる。

 

 7.ランク評価があり、E~Aランクの5段階 -+評価があり始めはE-から始めるそうだ。

 

 8.ランクを上げるには依頼を多くこなす、討伐系クエスト、探索クエストが早く上げる近道だそうだ。

 

 9.あとスキルの修得の補助の為、訓練場が解放されており、使用できる。

 

「すいません スキルって何ですか? なにかの技術か資格ですか?」

 

「その通りです、剣術もそうですが【技】や【魔法】もスキルに含まれます。 

【剣術】か【片手剣】のスキルを修得していれば【バッシュ】【スラッシュ】の技が……

【黒魔法】のスキルを修得していれば【ファイアボール】【バリア】を使えます。」

 

「じゃあもしかして【白魔法】を修得すれば【ヒール】とか?」

 

「はいその通りです熟練度を上げ、体内の知識、経験、【魔素】が上がるほど修得できる技のレパートリーが増えていきます。

【調理】スキルも熟練度が上がれば【家庭料理】や【男飯】が【一つ星】など料理のレパートリーやグレードが上がります」

 

「新しい技が増えるか強化されるのか……」

 

 新しい技を覚えるには何かしら条件がありそうだ。

 レベルとか、既存のスキルの組み合わせとか強化は同じスキルを繰り返して使えばいいのだろうか。

 

「スキルにはどんな種類があるんですか? 俺にも覚えられますか?」

「はい。 スキルは大別すると戦闘スキル・魔法スキル・職業スキル・固有スキルに分かれます。

 戦闘スキルは【片手剣】【弓】といった武具の扱いや技のスキルの事を差し正に戦闘に使われるスキルです。

 これは装備してある程度使いこなせれば誰でも修得可能です。

 ここから【剣術】の【バッシュ】【ガード】を修得出来ます。

 職業スキルは【調理】【医療】【騎乗】など免許が必要な専門の職業に必須のスキルです。

 魔法スキルは【黒魔法】【白魔法】【古代魔法】の3種が存在し、魔法を扱うスキルです。 

 最後に固有スキル、これは個人の加護、特殊能力を現す固有スキルで滅多に発現、所持する人はいません【加護】【高速治癒】【精霊化】などが挙げられます。」

 

 

「どうやってそのスキルを修得したかって分かるんですか? 知らない内に修得してしまう事だってあるのでは?」

 

 ゲームじゃないんだから天の声(アナウンス)も流れないだろう。

 アキラはしっぷうぎりをおぼえた! とかな。

 

「昔はそれで頭を悩ます人もいましたね。

ある日突然技を覚えていたり、その為に試験や訓練場でそのスキルを試したりします。

ですがご安心を【鑑定】【洞察眼】【透視】のスキルで知ることが出来ます。

ギルドカードにも自身の所有スキルを確認するスキルが込められていますので閲覧できますよ。」

 

 ふむ、スキルを修得出来ると必殺技や魔法を修得できるのか。

 それと魔素かイントネーションから魔力の素だろうか?

 これはおいおい知ることになるだろうから今はいい。

 

「あと【精霊魔法】っていうのは?」

「分類的には白魔法の奥義です。精霊、神獣を【使役、召喚】する魔法で亜人、クルトの民が使える秘技です。 

 同じく黒魔法にも奥義があり【契約魔法】があり、こちらは悪魔、魔物、召喚獣を【使役、召喚】します。」

 

 召喚魔法!? 手がかりキタコレ!! 

 召喚魔法が存在し俺を召喚した者がいると仮定すれば、送り返す【送還】があるのが自然だ。 

 後で文献でも調べてみよう!

 

「分かりました登録をお願いします。」

「はい此方の書類に氏名 年齢 年齢 種族 職業 賞罰 所属をご記入ください。」

「……代筆頼めますか?」

「はい構いませんでは お名前からどうぞ……」

 

 ◆◆◆◆◆

 

 こうして俺は職につけた。

 こうして見るとホント登録だけだなところは派遣アルバイトに通じるな……

 はやく定職 いやいやここが異世界として、先ずは情報収集と帰還方法の探索だな。 

 

 おっとその前に。

 ギルドカードの機能の一つステータス&スキル確認を使ってみよう!

 

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 氏名 アキラ ワタナベ

 

 評価(ランク)E-

 

 称号 駆け出し教師?

 

 年齢 22

 

 種族 ヒュム?

 

 所属 ガリア王国

 

 賞罰 なし

 

 スキル一覧

 

 戦闘スキル【拳闘術】【現代戦闘術】【投擲】【挑発】

 

 職業スキル【調理】【歌唱術】【速記術】【文才】

 

 魔法スキル なし

 

 固有スキル【魔改造】

 

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 ん? 固有スキル?

 

 



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完成形は忍者?

 ギルドカードを発行してもらい、この世界の身分証明証を手に入れた。

 

 もしかしたら既に習得しているスキルがあるのではとギルドカードを裏向け「スキル表示」と唱える。

 教えてもらった通りに唱えるとカードの裏にスキルが浮かび上がってくる。

 

 ---スキル一覧---

 戦闘スキル【拳闘術】【現代戦闘術】【投擲】【挑発】

職業スキル【調理】【歌唱術】【速記術】【文才】

 魔法スキル なし

 固有スキル【魔改造】  

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 おお! 固有スキル発見 戦闘スキルもそこそこ充実してる!

 

 まずは 【拳闘術】だが拳を用いた戦闘術って事はボクシングだな。 

使える技は【ショートアッパー】【ラッシュ】【カウンター】【ボディーブロー】

 

 対人専用の技だな。 魔物には効果は低そうだ。

 

【現代戦闘術】

 

 現代兵器、軍隊戦闘術を使える

でも現代兵器は手元にないので現在は使えないな。

 

【投擲】

 

 これはパッシブスキルだな 投擲 投げ技に補正がかかるタイプ。

 これが主力になりそうだ。

 

 固有スキル【魔改造】

 

 え~これはないわ~

 

 ①万物《改造対象》の情報を解析する。

 ②対象の経験値(魔素吸収量・吸収効率)増加

 ③スキルを作る(情報連結・蓄積情報改竄)

 ④万物《改造対象》の性能、潜在能力を限界以上に引き上げる。

 

 森羅万象、理、情報を改竄、改造する技能。

 

 うんヤバすぎる。

 

 脇役や村人Aを主人公化することも可能だ。

 フラ○コ計画もビックリ……イヤ、そこまではいかないか?

 

 あと③のスキルを作るだが0からスキルは生み出せない。

 

 あくまで強化が根本にあるスキルらしく、

 魔法スキルを習得していない俺では【魔改造】で魔法を習得することは出来ない。

 

 そこまで強力なスキルと期待しないほうがいいだろうか?

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 スキルの確認をしたところで今後の目標を建てよう。

 

 帰還方法の捜索 

 ↓

 この世界の情報収集 

 ↓

 自身の強化、及び資金繰り

 

 となる、そのため資金集めをはじめよう、街の外には魔物、野生生物、盗賊が跋扈するそうだ。

 今の俺では勝てるかどうか、素手での対人戦なら勝てるが魔法、スキル、武器さらにそれらが徒党を組まれると一溜りもない。

 

 でもその前に服を何とかすべきかな……

 黒いフード付きコートで顔を隠す怪しさ満点の男だ。かと言ってこれを脱ぐと貴族扱い。

 

 ま いいか。

 

 掲示板から雑務クエスト、庭の整備を選び、受付嬢に持っていく。

 

「この依頼受けます。」

 

 まずは依頼に馴れることから始めよう。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 登録してから1週間後 

 

 庭師の草刈、石拾い、荷物運び、子供のお守り、書類整理など。

 主に雑務をこなす毎日だ。

 衣食住も揃え、現在は公園や広場で紙芝居、吟遊詩人として活動している。

 

 ――うん、俺、働き過ぎ。

 

 【魔改造】拾った石を強化し【投擲】 投石や投槍

 【魔改造】で強化した自身での【拳闘術】が主な攻撃手段だ。

 

 近接、遠距離攻撃が可能だが回復手段を手に入れないと。

 現時点で文才、歌唱術で文芸の能力は資金作りに、雑務クエストで情報収集や人々から信頼を得ている。

 

 緑の葉っぱ 赤い葉っぱ 青い葉っぱを磨り潰し

 回復と解毒の効果を持つ調合薬を作る。

 調合した薬品を薬瓶に入れ水、果汁で薄めてポーションを作成する。

 これが錬金術師の【薬品生成】だ。 

 だが、不味い。

 

 この世界の回復アイテムは良薬口に苦しを体現するほど不味い! 

 

 最初に飲んだ時はたまらず吐き出した。

 仕方ないので果汁を混ぜたり、蒸らしたりし、かつ腐らないように試行錯誤して調合。

 保存方法にも気を使いながらやっと完成。

 

 更に武器錬成の方面も試してみた。

 

 路地裏のくず鉄やギルドで冒険者が廃棄した装備品を譲り受け【片手剣】【軽鎧】【籠手】を練成。

 この世界の錬金術は黒魔法と科学が組み合わさったものだが俺は現代知識と【魔改造】で補完し再現している。

 

 そして、重要な魔素だが、

 やはり文字通り魔法の素らしい。

 

 大気に満ちる魔素をミスト、大地からあふれる魔素をソイルと呼ぶらしい。

 

 これらを呼吸や食事で魔素を取り込み、レベルが上がるらしい。

 ゲームでいう経験値にも当たる要素だな。

 

 効率のいい方法として魔物を殺すと魔素が吹き出した魔力(ミスト)を吸引する。

 人間を殺しても同じらしくそれ目当てに対人戦、人殺しに特化する犯罪者もいるらしい。

 

 命を奪わない方法は二つ。

 魔力が溜まるパワースポット(秘境や神殿)でミストを体内に取り込む。

 魔石や魔物の素材を砕くか調理する等してソイルを摂食するか飲み込む方法がある。

 

 後者は魔力変換(レベルアップ)速度は遅々たる物だ。

 その分、魔力が蓄積しやすい為、基礎能力の上昇率は高くなる。

 

 一長一短だな。

 

 それに短期でレベル上げをするにしても安全にレベルが上がる保障は無い。

 戦闘経験といっても路地裏で行った立ち回りで、俺はゴロツキの命を奪っていない。

 

 レベルの上昇も無い。

 町にも出ない俺がこの世界にきて一週間経っても食事や呼吸程度ではレベルの上昇も期待できない。

 だが、これはチャンスでもある。

 

【魔改造】でスキルの習得、強化に努め、基礎能力値と熟練度を上げてからレベルを上げれば如何なる。

 急激にレベルを上げを行なうより能力の上昇率は上がるのではないだろうか?

 

 未だこの理論は検証中だし、この世界で俺が知る限り立証されていない。

 

 貧弱な男と筋肉質な男が同レベルだとしたら、後者の方がレベルアップ時の基礎能力の上昇率は高いはずだ。

 同じように、通信空手を齧ったものと、達人でも上昇の差は大きく開く。

 

 可能な限り、資質と技能を高めてからレベル上げを行なう。

 

 理想はレベル1の状態で熟練度を高める。

 そしてソロで戦い抜ける戦闘スタイルの確立だ。

 

 完成系は片手剣と籠手を用いての接近戦

 

 投石、投槍での遠距離戦

 スキル【薬品調合】【錬金】で作成した毒薬、魔法を武器に仕込んでの一撃必殺の攻撃手段を備える魔法剣士、魔法弓兵だな。

 ダンジョンを踏破、脱出する際、または強敵から逃れるために、偵察職の【逃走】【隠行】【囮】も必要になる。

 

 ……なんか偵察職つーより、斥候、忍者だな。 

 NA○UTOか○空(にん○う)っぽいがまあそれを完成形に頑張ろう。

 

 修行に必要になるから、当分の生活資金を潤沢にするため、そろそろ、露天で薬を大きく売り出しに出るかな。

 

 

 

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【片手剣】片手剣スキル 片手剣術威力上昇 片手剣術指南書

【中級錬金術】中級錬金術を扱えるスキル 錬金術成功率上昇 中級錬金術レシピ 

【薬品作成】 薬品を作成できるスキル  薬品・品質向上 初級薬学レシピ 中級薬学レシピ

【修理】 金物を修理するスキル 

【鍛錬】 成長補正スキル

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バイト戦士

 数日後

 

 未だ街から出ず、スライム一匹狩らずに今日も一日労働に汗を流す男がそこにいた。

 というかその男とは俺だった。

 

 まぁ冒頭から情けないようだがちゃんと理由(ワケ)はあるのだよ明智君?

 

 最近街で評判の黒づくめの薬屋!

 効果が高く、甘く香り高いポーションや携帯保存食を売っているという。

 

 はい、俺のことです。

 

 前に錬金術師の生産スキルに【薬品調合】があるって言ったでしょ?

 そう、作ってみたら苦い、臭い、飲みにくいの三連コンボだったっしょ?

 少しでも飲みやすいように果汁と蜂蜜を混ぜて飲みやすくしたんですよ奥さん。

 

 小児科でよくあるでしょ? シロップ味の薬。

 さらに!漢方やナノベリーみたいに瞬間冷凍で氷漬にして粉砕調合(魔改造で対象の熱を瞬時に奪う。)

 副産物で死ぬほどまずく、凶々しいドクロっぽいオーラがでるポーションも出来たが、此方は後で置いておく。

 とにかく細かく砕いたり、煮出したり試行錯誤して作り比較的上質なポーションを作成!

 

 

 ……で、客集めに一人ポーション5本まで、携帯食料は2個までで限定販売にして露天に出したが直ぐに売れきれた。

 他にもカ○リーメイトを参考にブロック状の携帯保存食を【調理】【薬品調合】のコンボで制作!

 

 妥協はしない。

 

 なぜなら今の俺は元いた世界へ帰る為、この世界でも生き抜くために戦うバイト戦士だ。

 油断したら死ぬ(死因は餓死か病死)

 

 クラスも吟遊詩人、執事、日雇い作業員、薬師、錬金術師、露天商と転々としていった。

 そして現在はステータス表にはバイト戦士と表示されている。  

 

 目標は斥候系、魔法使い系、忍者なんだが…遠ざかってるな。

 いや、生きるためだ。

 この際、しばらくの間はクラスについては考えるのはよそう。

 ステータスも筋力(STR)体力(VIT)敏捷(AGL)技能(DEX)知識(INT)は大きく上昇している。

 

 レベルは相変わらず1のままだが資質と技能の向上は成功した。

 後は金だ。

 マネーパワーを手に入れるのだ。

 

 世の中、金だ。 

 金こそ力だ。

 

「あれ? 兄ちゃん。前に広場で劇や歌を歌ってた吟遊詩人じゃないかい? 薬師だったのか?」

 

 見上げると、初日に見かけた革鎧、片手剣の銀髪青年と魔女っ子がいた。

 この二人パーティだったのか?

 

「いらっしゃい。ええ 副業で今日から露天でポーションや携帯食料を売ろうと思って

 従来のものとちがって効果が高いうえ味と香りを改良して飲みやすくしてあります。値はちょっと張りますけどね?」

 

 営業スマイルで二人の客を呼び込む。

 ふふふ、絶対逃がさん。 

 

「ははは 確かにポーションは苦ぇし。携帯食は味気ねぇな。」

「……マズイ。」

 

 うんうん掴みはOK。

 客とこういう共感を得るのは必要だ。

 

「でしょ? 戦闘中にあんな苦いもん飲めないしね? 味と効果は保証するよ。」

「この携帯食料はクッキーみたいだな?」

「それも味をつけてるし、ハーブも混ぜてある一品だよ。結構腹持ちもいいんだ。」

「色が違うがコレは?」

「白、緑、赤、黄とあるけど、味が違うだけ。

 青は解毒効果付き 従来のポーションの3~4倍以上の効果があるよ。

 携帯食はチーズとフルーツ味がある。」

 

 質問に対して若干、大き目の声で周りの客にも聞こえる様に話す。

 男の声に何人かの足が止まり、人だかりが出来始める。

 

「おいおい ほんとにそんな効果が? うめぇだけじゃなく?」

「ああ 全回復するね? 嗅いでみるかい?」

 

 きゅぽん! とコルク栓を抜きかがしてみせる。

 

「マジかよ? これほんとにポーションか?」

「……いい」

 

 うん、ちょっと怪しいスキルを使って怪しい男が調合したがポーションだ。

 無免許薬剤師が調合したが危なくないよ? 

 

「まぁ、試してみてよかったら宣伝してくれ。」

「ああ、白と黄色、あと青を一本ずつ。いくらだ?」

 

「3000Z 銀貨三枚です。」

 

 大体三千円だな。

 

「高ッ! 普通のポーションの十倍かよ!?」

「美味い いい匂い、効果は3倍以上、適正価格だが?」

 

「むぅ……」

「次来た時、空瓶持ってきたら 一割は割引するよ」

「……買うわ。後ベルトと携帯食をフルーツ味2つ」

 

 おお、さすが魔女娘、薬に関しては一家言でも持っているのか。

 効果を見抜いているのか、迷いが無い。

 

「ベルトはサービスするよ 携帯食は一つ銅貨二枚だから、銅貨四枚になるな3400zになります。」

 

 銀貨3枚半受け取り、お釣りに銅貨を一枚返す。

 

「……携帯食は安いんだな」

「まぁ 嗜好品じゃないんだから食べ物にそこまで値はつけないよ。適正価格だよ。」

 

「いつもこの時間帯に?」

「ああ ティータイムの時間になったらいつもどおり、公園か広場で吟遊興行か紙芝居をやってるよ」

「ははは まぁ早速試してみるか。」

 

 そういって二人は去っていった。

 

 そしてこれを皮切りにさっきのやり取りを見ていた人だかりが、薬と食料を購入していった。

 飲みやすく効果の高いポーションと腹持ちが良く美味い携帯保存食を買っていった。

 

 睨んだとおり、このセットは売れる。

 くっくっく明日は大量に生産しておかねばな。

 

 売り切れたので店を畳み、背中に弦楽器を背負って広場へ移動。

 

「世界に一つだけの花」、コブクロの「桜」を熱唱。

 あと紙芝居で「桃太郎」を西洋風にリメイクして演じる。

 

 御ひねりで小銭を稼ぎ、今日は早くに仕事を切り上げ宿屋へ戻る。

 

 部屋には事前にギルドで補充しておいたと薬の材料と空瓶を大量に揃えてある。

 後はガンガン大量生産しておく。

 

 量産体系を整えるために新しい機材も揃える事を視野に入れておくか。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 翌日、台車を引いて露天を開く俺。 

 くくく、昨日早速試し、昨晩か今朝のうちに一気に広まったのだろう、リピーターを獲得だ。

 行列が出来てるよ。

 

「おい 兄ちゃん昨日のポーション売ってるか?固形食料でもいいぞ!」

「……美味しかった 空瓶返しにきたけど他にも同じサイズの空瓶もあるけどいい?」

 

 昨日の二人組みが行列の先頭で待ち構えていた。

 

「いらっしゃい その分だと満足してもらえたようだね。ああ同じサイズなら割引も効くよ。なかなかヤルね?」

「俺とアニでポーションを全種類二本ずつ計10本と固形食料を二種類ずつ4つ頼む」

「豪勢だなぁ じゃあ ビン十本と交換割引で9000と800zだな」

 

 さては高レベルの冒険者なのだろうか。

 コレくらいポンと出せる様に稼ぎたいね。

 

「……金貨で」

「はい釣りの銅貨2枚と」

 

 因みに両替用の小銭は日ごろの吟遊詩人の活動で大量にある。

 抜かりは無い。

 

「ベルトか袋はいるかい?」

「……用意してあるからいい」

「まいど~♫」

 

 そして巻き起こる狂乱の渦。

 

「俺にも売ってくれ!」

「私も!」

「はいはい~」

 

 うん、でも薬物依存か?ってレベルで客が来た。

 やはり、魔改造をベースに作った薬だからか?

 

 ちょっと気をつけよう。

 



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スキル作成×修行

 前回の一件で市場を混乱に陥れたアキラです。 

 

 うん端折りすぎたな。

 詳しく言うとあのあと薬師や商人、王国の兵士が大量に薬剤と食料を求めてきた。

 それだけなら良かったが権力者とか商人の組合とか出て利権やレシピを聞き出そうとしたりしてきたのだ。

 

 現代知識が在るとはいえ俺の目的は商人として大成する事では無い。

 もともと名を売るつもりも、ありませんでしたしね。

 あくまで活動資金を得る為。

 

 需要に対して供給が間に合わない為、薬師の副業と吟遊詩人を休業してリィーンさんに相談。

 ギルド専属の薬剤師、商店にレシピを開示すると同時に利益の何割かを俺に来るように交渉。

 結果、当面の活動資金を獲得し、市場は一時的に混乱を極めたが、しばらくしたら沈静化するだろう。

 

 正に劇薬の様な効果を齎してしまった。

 異世界は怖いところだべ。

 

 とにかく軍資金を手に入れ、資質とスキル熟練度も高まった。

 次いでに雑務をこなす事で街の住人から信頼も得たし、ギルドに恩も売れた。

 

 後は手付かずの魔法スキル。

 白魔法と黒魔法の習得に入ります。

 

 黒服で貴族風の冒険者

 文芸、商才、薬師、雑務、家事の達人、教養の高さからも安直に

「黒執○」なんて二つ名がついてしまったが……

 

 あくまで、執事ですって…

 あんな完璧執事さんと同類にしないでください! 

 俺はただのしがない(元)教師の卵っすよ!

 ほんと勘弁してください!!

 

 とにかく!

 鍛錬とスキルの熟練、資金稼ぎが目的だったため! 次は魔法の習得だ!

 

 そう魔法使いの弟子って奴だ!

 魔法使いの助手としての錬金術、【薬品調合】【調味料作成】【調理】【鍛錬】【修理】

 

 錬金術は台所から発生したと言われるように料理とも縁が深い!鍛冶師の能力も得られる!

 ふふふ魔法使いなら喉から手が出る程の物件ですよ?

 

 何せ弟子にすれば 高級ポーション、魔法の触媒、美味い飯が付いてくる上に執事っすよ!?

 さ~て 魔法使いの助手を求める依頼はないかなっと 

 いや、自分で探すより、リィーネさんに紹介してもらおう。

 

 できれば露店市場の常連となった魔女

 アニの弟子がいいな。

 あれ? でも相棒のガーコちゃんと付き合ってるのか?

 

 だめだ、三角関係は死亡フラグだ。

 やっぱリィーンさんに相談しよ。

 

 10時頃ならギルドも空いている時間帯だしな。

 朝早くなら、俺、目当てのお客さんもいないだろ。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 ~ギルド~ 

 

「魔法使いの弟子入りですか……」

「はい 本格的に学ぶ為に魔法スキルに長けた人の下で師事したいんです。」

 

 そして出来れば可愛い娘がいいんです。

 ジジババは駄目、合法ロリでもいいよ? とは口が裂けても言えない。

 

「信用のある方が分からないのでギルドから信頼のある魔法使いを紹介してもらおうと思って。」

 

 もしくはイケイケのお姉さんでもよし。

 

「アキラさん 以前教会での雑務クエストを受けたことがありましたよね?」

「あの 丘の上の教会ですか?」

 

 妙に体格のいい神父さんが一人で切り盛りしている孤児院を兼ねた教会だ。

 何度か雑務クエストで清掃や、子供の世話をしに行ったことがある。

 あの子供たち、何回言い聞かせても俺のことをおじさん呼ばわりするやんちゃっぷりだから。

 荒事、専門の冒険者が多い中、この仕事を受ける人も少ない。

 俺、以外だと妖精の涙っていうこのギルドの主力メンバーの一人が受けるくらいだ。

 

「はい、あそこの神父さんが魔法スキルと近接格闘術の達人だった筈です。」

「マグドレア神父が?」

 

 あの見た目、金髪碧眼の爽やか兄さんか

 …なのに俺より10以上歳食ってるのに俺より若々しい神父さんが?

 職業的にはモンクだな。

 

 確かに体つきもいいし、歩き方も達人のそれのようにバランスが良かった。

 でも黒魔法も使えるとは。

 

 魔法拳士?

 

 元いた世界だと、教会の神父が黒魔法を使うなんて、異端どころの話じゃ無いと思うんだが。

 

「光属性の黒魔法は光の大精霊の御技でもありますから十字教徒の方も黒魔法を修めていますしそんなに意外と言うことではありませんよ。」

 

 俺の心を見透かすように、リィーンさんが補足する。

 へ~なんか偏見もってたかも。

 

「では彼に師事します、紹介状とか発行してもらえます?」

「アキラさんでしたら大丈夫だと思いますが……期間はどれくらいで?」

「一ヶ月程、新薬の件で色々、騒ぎを起こしたのでほとぼりが覚めるまでって事で。」

 

 最近じゃ、薬を求めて宿屋に押しかけたり入口で待ち伏せられたりしたからな。

 

「確かにそうですね。それでしたら暫くの間、寂しくなりますね。」

「ははは 時々顔を出しますよ! リィーネさんの笑顔は私の活力ですから!」

 

 おどけて力こぶを出す。

 

「くすくす… ありがとうございます。」

 

 そう言ってお互い笑った後、紹介状を受け取った。

 

 因みに合法ロリもイケイケお姉さんもいなかった。

 残念!!

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 さぁ ギルドを出たら真っ直ぐ教会に向う。

 いざ!魔法スキルを!

 

「ちょっと待ちな 黒執事の兄ちゃん。」

 

 ……なんか既視感 俺が何か決意したときは何かしら邪魔をする決まりでもあるのか?

 

「……なんです?今から仕事に行くんで邪魔しないでくれますか?」

「どうせ また雑務だろ?

 それより今から俺たちのダンジョン探索についてこいよ!

 囮か盾にはなんだろ!」

 

 いやじゃあ

 ライバルの息子を庇ったりしても、お前らの盾はいやじゃあ。

 

「いや 前からこの依頼を探してたから、お断りします。」

 

 そしたら俺の肩を掴んできやがった。

 イラっと着た瞬間、脳裏に戦闘スキルが浮かぶ。

 

 【首狩り】【心臓突き】【拳闘術】【投擲】

 

 

 あまりにも絡まれるので、対人戦闘を想定したスキルを習得しておいた。

 いや前二つは殺傷能力高過ぎる。

 

 俺のレベルは未だ初期状態だがステータス的にはレベル10~20台は軽く超えている。

 加えてドーピングや魔改造された武器、スキルの熟練度が多少のレベル差を覆す程にまで高められている。

 

 一瞬だ。

 一瞬で、ケリを着けれる。

 

 マテ、俺はいつの間にこんなに好戦的になった?

 …落ち着こう、冷静に事を進めるんだ。

 

「離してくれませんかね?」

 

 汚い手で一張羅に触んなよ!

 この世界にゃコインランドリーも無いんだぞ!!

 

「うるせぇ! 黙って付いてくりゃいいんだよ!」

 

 オイオイ、いきなり切れんなよ……沸点低すぎだろ。

 

 ハァ……今迄 ギルドでこういう手合いとは相手をしてこなかった。

 よくみりゃ、俺のことを小銭稼ぎと腰抜けとか陰口叩いている馬鹿どもじゃないか。

 

 同じ冒険者でも、片手剣のガーコルトや魔女っ子のアニとはエライ違いだ。

 大方、最近俺の評判をやっかんできて、絡んできたのだろうが、相手が悪いぞ?

 

 レベルは低いが、装備、技能共に伝説級に鍛えてるんだ。 

 燃えないゴミから作った伝説級の片手剣【稲葉】の錆にしてやろうか?

 

「馬鹿か? そんなこと言われて本気で付いてくるとでも? 

 ダンジョンに潜る前に棺桶にぶち込んでやろうか?」

 

 下手に出て、敬語を使っていた俺の口調が変わったことに馬鹿どもが一瞬怯む。

 

 状況と周囲を確認する。

 周りの冒険者は止めようとしない

 この時間帯に仕事にいかず、ギルドで酒飲んだり、くすぶってるやつらだから当然か。

 それとも俺の実力を確かめようとする猛者……は、無いか。

 

 透視眼でステータスを見ても雑魚しかいない。

 

 目の前の馬鹿どもと同じ穴のムジナだな 程度は知れてる。

 

「んだと!てめぇやる気━━「なんの騒ぎですか?」」

 

 おお、リィーンさん登場!

 流石にギルド職員が止めに入ったな。

 

「この人たちが私の仕事の邪魔をしてくるんですよ。勧誘や親切の名を借りた新人潰しですかね?」

「……アキラさん押さえて下さい。ここで人死にを出すとあなたを庇いきれません。」

 

 …アレ、思った以上に殺気が漏れてた?

 というより、相手側の命の心配もしてる。 

 俺、此処では雑務しかしていない新人でつい最近、薬学で名を売っただけだ。

 まだ、武名は上げてない…

 

 仕事柄、得た慧眼…それか、俺と同じようにステータスを見破る(スキル)を持っているのか

 そこで初めてリィーンさんを警戒し、ステータスを見破ろうと試みる。

 

 見えない……

 砂嵐の様な、霧の様な者が彼女を纏って透視が阻害されている。

 レベル差か、緊急措置として習得した透視眼を以てしても見れない…

 

 何者だ。

 

「……彼は知っての通りギルドに溜まった雑務クエストを消化してくれる優秀な冒険者です。

 また彼はギルドが紹介した仕事にいく途中でもあります。 

 これを妨害するというのならギルドの信頼を損ねる行為と見なしますよ。」

 

「な、なにを」

「どうやら、お忘れのようですね?

 確かに、ギルドは冒険者、探索者で構成されています。

 ですが本来は徴兵義務が科せられた『自警団』『駐屯兵団』です。 

 騎士や兵士等、国が抱える正規兵とは違い、国の予算では無く、民間からの依頼を受けて軍事費を稼がねばなりません。

 その為、雑務クエストも我が兵団を維持するための収入源の一つです。 

 これを害する行為がギルドにとってどういう事か……思いしらせて上げましょうか?」

 

 荒くれのハンター達の顔が青ざめていく。

 組織に身を置く以上、それに仇なす事がどういう事か彼らは俺以上に知っているのだろう。

 

「加えて、今ここにいない冒険者はアキラさんが開発した新薬ポーションと固形保存食の恩恵で生存率、依頼達成率が飛躍的に上昇した者達ばかりです。 

 他の優秀な人材を守ってくた恩人に害をなすようなら容赦しませんよ。」

 

 あ、やっぱそうなんだ優秀な冒険者は金払いもいいし、当然だね。

 

「く……行くぞてめーら!!」

 

 不利を悟ったのか、

 そう言ってギルドを出る馬鹿ども

 どうでもいいけど、あいつらのチーム名なんだっけ?

 

「ありがとうございます リィーンさん。しかし宜しかったのですか?」

「あれぐらい脅さないとまた繰り返します。 それよりお仕事頑張ってくださいね。」

 

 そう言って微笑むがさっきの立ち回りと俺の実力を見破り、ステータスを隠蔽できる事から彼女を少々警戒する。

 

 只者じゃないね。 どうも。

 こりゃ、早く魔法を物にしておかないとな。

 

「半分弟子入りですけどね。 いってきます。」

「はい いってらっしゃい。」

 

 さて今度こそ出発しますか!

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 ~マグドレア教会~

 

 トゥールーズの街 丘の上にある教会

 

 マグドレア神父という子持ちとは思えない見た目、若い神父が運営する教会で、孤児院を兼ねている。

 

 今朝の一件で道中、調べたところ この教会は敬虔な信者と元冒険者達の寄付で運営されており、十字教の総本山のロマリアの影響の無い施設らしい。

 

 僧侶であるにも関らず、戦闘技術に長け、白魔法だけでなく、黒魔法をも使用出来たため、祓魔士としても活躍していたが、精霊信仰と十字教を差別化しない変わり者だったが故に当時のロマリア本国のお偉いさんから不興を買い、破門された為、ガリアに冒険者兼宣教師として移り住んだらしい。

 

 だからこそ、魔法の腕はギルドお墨付きを得たみたいだな。

 

「おや アキラ君じゃないですか? 今日はどのような要件で?」

「こんにちは神父。暫くここで住み込みで修行したいんですよ。 ギルドから紹介状もあります。」

 

 修行とと聞き、神父は俺から紹介状を受け取り目を通し始める。

 

「ふむ。ですが、私も仕事が有りますので、お昼はいつもの仕事を頼みます。

 白魔法、黒魔法の基礎は夜に教えることに成りますがそれでもよろしいですか?」

 

「よろしくお願いします。」

 

 俺として朝から晩まで魔法を学べる王立士官学校やギルドの訓練所で教わってもよかったが、

 今回は世俗から離れた場所という環境が必要だし、魔法を教えるところじゃないからな。

 せっかく時間を作ってくれるのだ。

 これ以上、贅沢は言うまい。

 

 今は静かに修行できる環境こそが…

 

「あ~アキラだ~」

「おっちゃ~ん」

「おじさ~ん」

 

 静かに・・・

 

「あきらおじさ~ん」

「お じ さ ん!」

「できるかー!!!!」

「「「「わぁ~(きゃあ~)」」」」

 

 孤児院って事、失念していた、そりゃ、夜にしか修行できないわ。

 

「はっはっはっは。」

 

 神父さんも笑ってないでお昼寝でもさせて寝かしつければ、修行時間も増えるでしょ!

 協力してくださいよ!!

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 

 結局、元気な子共達は昼寝もせず、遊びと称して調合と調理を手伝わせる。

 

 施設内での仕事が終わった後、子共たちに学問(文字や算術)を仕込みつつ、褒美に出来たクッキーやシロップ味の栄養剤を与える。

 清掃もするのだが、子共が邪魔する事、する事。

 

 追いかけても【罠師】のスキルを無駄に活用し『落とし穴』や草のトラップを仕掛けて逃げやがる。

 やっとのこと捕まえた終わった頃には疲労困憊で、日も落ちていた。

 

 こんな状態が一ヶ月も続いて魔法スキルを覚えれるだろうか?

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 

 ~グレアムの星空魔法教室~

 

 教会の庭の芝生に腰掛ける俺、グレアム神父と何故か夜ふかししている娘さんのクレアちゃん(12)

 

「え~先ずアキラ君は魔法スキルの知識はある程度知っているんだね?」

「はい 魔法スキルは黒魔法、白魔法、精霊魔法、召喚魔法の四つがあり、それぞれ奥義でもある古代魔法(禁止魔法)があります。」

 

 ここら辺はギルド内にあった書物やリィーンさんに聞いたり、アニに餌付けして聞き出した。

 

「そう そしてその違いは何を犠牲にするかは分かるかな?」

 

「黒魔法は自然の魔力、白魔法は自身の魔力、精霊魔法はクルトの民かエルフやドワーフのような精霊に近い人種のみ使用可能な自然物を操る魔法や精霊を使役する魔法でしたね。」

 

 勉学はあまり好きでは無かったが、こういう事に関してはスラスラと頭に入った。

 

 人類は基本的に黒魔法、白魔法のどれかしか使えない。

 

「うん だから黒魔法か白魔法をどちらか選んで覚えるんだけど……」

「白魔法は使えなくなる事があるんですね。」

「そう、白魔法は命を殺めたり、敬虔な心がなくなると使えなくなるらしい。

 その為、殆どの人は黒魔法を習得する。」

 

 その為、冒険者や正規軍など、前線で斬った張ったの戦いをする者には白魔法の使い手は居ない。

 いたとしても軍医見たいに後方で活躍する為、白魔法の使い手は大概が教会か治療院に所属している。

 

「とうさま 両方使えますけど」

「授業妨害する子は出て行きなさい。」

「ごめんなさい!」

 

 クレアちゃんの子共ゆえの素直さにほっこりするな。

 

 彼女の言うとおり、何故かエルフなど亜人や精霊の混血でも無いのに、黒魔法と白魔法を両方使える奴はこの世界でも少数だが存在するし、生きていく上で他の命を奪うことなぞ、日常茶飯事のこの世界で、そんな使いづらい白魔法が黒魔法と対を成すように残るなど有り得ない。

 

 しかし、二つの魔法を使いこなす「賢者」とか「魔女」と呼ばれる例外が世界でも片手で数える程だが確かに存在する。

 

「ごほん 厳密に言えば両方習得できるが黒魔法を使うと白魔法が使えなくなる

 体内の生命力を魔力に変換して使い、黒魔法と比べ、強化、補助、治療、解毒、解呪に優れるのが白魔法。

 自然の魔素と自身の魔力を用いて使う為、汎用性が高いのが黒魔法だ。」

 

「命を与える魔法が白魔法で、奪うのが黒魔法だと?」

「そう捉えてもらって構わない。 

 まぁ、これは十字教の考えで私という例外もある。 

 十字教の言い伝え、教えにある黒魔法で命を奪うと白魔法が使えなくなるというのは何処かに嘘か情報の齟齬があるのは間違いない。

 それを解き明かしたいんだろ? 君は?」

 

 紹介状には黒魔法と白魔法を両方習得したいと記していたからな。

 そりゃ、分かるわな。

 

「はい…まずは白魔法から習得し、次に黒魔法を習得します。

 仮説が正しければ両方操れることが可能になり新スキルの構想が実用化できます。」

 

 グレアムさんはしばらく考え込み、クレアちゃんは息を飲む。

 

「歴史書を紐解き、推理したのですが、おとぎ話や伝説上の英雄は強力な黒魔法の他に、超人とも言える身体能力や不死身に近い治癒能力を持っています。これは白魔法にある回復や強化を使っているのでは無いかと推論しました。」

 

 他にも俺の世界の漫画が参考になっているとは言わない。

 この年で中二病の再発とか泣けてくる。

 それに、固有スキル魔改造の影響なのか、失伝した技能を習得しようとすると、

 俺の中の知識や漫画や小説に出てくる架空武術、ギルドの書庫で呼んだ資料、物語が習得の為のプロセスを補完し、

 理論が俺の頭に展開される。

 

 まるで、その度に、偏頭痛に悩まされるが、スキルの設計図、習得書が頭に浮かぶ

 網膜にはステータスアイコンに新しいスキルが明滅する用に映し出される。

 

 ----

 スキル【源呼吸】の習得条件が開放されました。 

 

 効果 霊力を纏い、擬似的に精霊化状態になる。

  ----

 

 魔改造のスキル作成には、失伝した技能すら再現することができる。

 しかし、いきなり失伝した技能をいきなり使えばいろいろ面倒事が起きる。

 

 もう手遅れな気もするが、保険として神父に先に習得してもらう必要がある。

 

 俺はこの固有スキルによる習得方法を明かさず、ばれない為にも言葉を選び、

 グレアム神父とクレアちゃんにも理論立てて習得できるように話を持っていく。

 

「他にも精霊が自身の魔力と自然界の魔力を同時に行使しているのが決め手でした。

 白魔法は体内から強化しますが、黒魔法は外から強化、鎧を纏う形です。

 白魔法、黒魔法関係なく 魔力を内から外へ発して戦うのが戦士の主流ですが、英雄と精霊はこの両魔法を無意識的に同時に使っているとしか思えない描写が多くあるんです。」

 

 二人は黙って続きを促す。

 

「魔力を内から外へ、そして外から内へ…この魔力の流れの出入り口が『詠唱』『呼吸』を行う『口』の一つだけだから魔力がぶつかり合い、反発するんです。」

 

 つまり、魔力の出入り口を口以外に増やす。

 魔力が一つの出入り口でもぶつかり合わない様にすれば黒魔法、白魔法を同時に扱える。

 

 命を奪う行為を行うと白魔法が使えなくなる

 …というのも目の前の神父や賢者という存在がいる。

 

「内から外に出した魔力を 再びうちに戻し、体表を覆うように循環させる。 

 更に外から内へと新たな魔力を取り込み循環しつつ無限に魔力を生成し続ける半永久機関、名づけて【源呼吸】」

 

 スキル作成の際、参考にしたのは東洋武術だ。

 当時、気とか魔力を使いたいとか言って図書館で調べて実践したのは苦い思い出だ。

 

「なぜ、呼吸と?」

「達人たちの一定のリズムによる呼吸と精霊の拍動、波長が同じでしたからね。」

「黒魔法、白魔法を習得した上で、この呼吸を覚えれば魔力の無駄な消費を抑えることも通常以上の出力を出すことも、魔力の流れを断って気配を消すこともできます。」

「擬似的に大精霊との契約状態を再現するということかな」

「まさしく。 大精霊という供給源がないため不老不死とはいきませんが、若さをある程度保ったり、生命力が強くなる分、頑強になり、病や呪い、毒も弾けるでしょう。 これがグレアムさんが若い肉体を保っていること、両方魔法が使えるという結果につながります。」

「では先ずは白魔法からだが、習得をはじ「私もゲンコキュウを覚えたいです!」・・・」

 

 まぁ女の子だし、父のようになりたいという願望もあるだろう。

 

「……いいですよ。その代わり危険なことは無し、私たちと一緒に行うこと。良いですね?」

「はい おとうさま!」

「俺の修行がメインなのを忘れないでくださいよ?」

 

 そして10日後 俺たちは黒魔法、白魔法を扱えるようになり、源呼吸をマスターした。

 

 新スキル

 

【初級黒魔法】【初級白魔法】【源呼吸】

 



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拾う神

 異世界に落ちて2ヶ月経った。

 才能の格差に全俺が涙した!

 

 マグドレア神父の娘、クレアちゃん…

 

 なんと彼女は一度見た技能を完全に再現、会得する才能を持っていることが【魔改造】スキルの観察眼で判明!

 開花させたところ、俺より早く【白魔法】【黒魔法】【源呼吸】を会得しました。

 

 とにかく彼女のその【観察眼】【洞察眼】【魔力同調】【魔力感知】を統合したスキル【神眼】が開眼し

 晴れて最強の少女(ロリ)(12)を爆誕した。

 

 グレアム神父はというと

 

「さすが私とマリアの娘だ!」と親バカ炸裂。

 自分の技、知識を教え込んでいます。(仕事しろ。)

 

 俺はというと才能の格差を見せつけられ、涙目になったが、

 子供の才能を開花させたと、気持ちを切り替え、

 残りの期間を子供たちと特製ポーションと携帯保存食を作ったり、遊んだり、学習したりして過ごした。

 

 本当だぞ、悔しくなんて無いんだからね!! 勘違いするなよ!?

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 ……で別れの日

 

「また遊びに来てね!おじさん!」 

 

 子共たちに最後までオジサン呼ばわりされながら教会を後にし、荷馬車にお土産(ポーション)をのせてギルドへ向かいます。

 

 

 魔法、源呼吸を習得しここで温めてきた計画を実行に移す。

 

 本格的攻略に移行する。

 

 ①ゾンビ、ゴーレム、悪魔などレベル差に関係なく狩れる弱点を有する魔物を乱獲しレベルを上げる。

 

 ②世界情勢を探り、帰還方法を見つけるため、各地の王家、教会、古代遺跡を調査する。

 

 ③俺と同じ境遇の者の捜索、保護

 

 ④協力者、仲間を作る。

 

 ⑤異世界人とバレないようにする。

 

 

 

 

 

 ①は概念崩壊の法則で弱点を突きまくる、片手剣と鞘に毒の代わりに特性ポーションそれも薬効と教会の聖水をブレンドした一品を仕込む。

 

 ②は帰還方法の手がかり捜索。

 

 ③、④は協力者が必要だが、自重しない馬鹿、危険思想を持っている者がいる場合もあるので情報収集は怠らないようにすべきだろう。

 

 ⑤は③に矛盾するが身の安全のためだ。まだ情報が出揃ってない上で俺の特異性を明かすのは危険だ。

 

 ほとぼりがまだ冷めていないかもしれないのでフードを深く被って、ギルドの裏手の厩に止めて、ギルドの職員に特性ポーションと携帯保存食を出荷し、代金をもらってギルドに入ると何やら騒ぎが起きていた。 なんだろ?

 

 

「頼む! 誰か助けてくれよ!仲間がまだダンジョンに取り残されてんだ救助隊を編成してくれ!!」

 

 ザワザワ

 

「死都に行ったそうだぞ?」

「ラミアテイルズの実力じゃ無謀だろう・・・欲に目がくらんだ冒険者の末路だな。」

「あの亡者の巣窟か・・・・・・ろくな死に方しないと思ったがまさか喰い殺されるとはなぁ」

 

 何だか、物騒な単語が羅列された会話だな。

 

「何かあったんですか? ガーコルト、アニ。」

「ああ アキラか! 何でも高レベルのダンジョンに一山当てようと身の丈に合わないダンジョンに潜って、罠にかかって仲間たちが取り残されたそうだ……

 一人あいつだけ生きて帰ったきたんだが、他の奴らは・・・・・・」

 

「……生存は絶望的 今から救援に行っても犠牲者が増えるだけ。」

 

 ガコライが濁した言葉をはっきり口にするアニ。

 

「ギルドは何て?」

「ギルドは基本不干渉だ。

 こういうのは自己責任だろ? 民間人の救出なら行くが、ギルドメンバーの救出はギルドの依頼内容に不備があったり、依頼外の犯罪に巻き込まれない限り、ここでの生き死には関与しない。 

 規約を破って身の丈に合わない仕事にいった、あいつらの自業自得ってわけだ。」

 

 見ると、教会に行く前にもめてた連中の一人だな

 ……なんかあの中でもパシリが似合いそうな悪ガキ風の少年だ。よく生き残れたな。

 

 それにしても、死都か。

 確か原因不明の魔力災害の後、疫病や不死者の爆発的感染で隔離され、打ち捨てられてダンジョン化した廃墟だな。

 

 これは修行の成果を試すチャンスか?

 最悪、魔改造という保健を使えば死ぬことは無いし、試す価値はある。

 

 あのバカどもを救う義理はないのだが、見殺しは寝覚めが悪い。

 目立つことになってしまうが強くなりレベルを上げていく以上、隠蔽に限界も出てくる。

 

 それに、概念崩壊の法則がこの世界で有効か確かめる必要もある。

 まぁ①と②を同時にこなせるし、行くか。

 

 人集をかき分け、少年の前に躍り出る。

 

 

 

 ■■■■■■■

 

 

「あ あんたは」

 

 少年が泣きはらしてクシャクシャになった顔で黒ずくめの男を見上げる。

 

「救助隊に名乗りを上げよう。 冒険者ランクE アキラ これより、死都に取り残された蛇女の尻尾(ラミアテイル)の救助に向かう。」

 

 騒ぎが静まる

 

 少年は自分達が馬鹿にしていた雑務専門の冒険者が名乗りを上げてくれた。 

 そして遅れて魔女っ子と片手剣の男が続く。

 

「・・・・・・アニ・スコールハート 右に同じく。」

「だぁあああ もう!! ガーコルト・イエーガー右に同じ!」

 

「……俺一人で十分なんだが?」

「……心配」

「どっからその自信が出てくんだよお前は! やばくなったら直ぐに引き返すぞ!」

 

「あ アンタたち……」

「さっさと案内しろ。 仲間を救うんだろ?」

「あ、ああ!」

 

 少年は袖で涙を吹きながら立ち上がる。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「氷結の魔女と猟犬のコンビの銀狼の牙(シルバーファング)に、薬師の黒執事が……」

「アキラさん アニさん! 分かっているんですか?高レベルダンジョンの死都はB-のダンジョン化しています。 あなた達だけでは死にに行くだけです! 」

 

「あの リィーンちゃん俺の心配は?」

 

 流石に止めるか、危険に飛び込むのに一応レベルに見合わない仕事や依頼は断られる。Eランクの俺では受けれてDランクまでが妥当だろう、危険と判断された場合、警告と制止を呼びかけるのだが、アイツ等はそれを無視して死都に向かったんだろう。

 

 それにしても B-クラスか 凄腕の悪魔祓いのグレアムさんがB+相当だから相当なものだろう。

 

 銀狼の牙(シルバーファング)はこのギルドの若手のエースだ それでもランクはC-

 

 その上、生きていても負傷しているであろう救助者がいるんだから生還は厳しいというより普通に考えて不可能だな。

 

「アキラさん……」

「どう死のうが自己責任ですよね。 まぁ死ぬ気は毛頭もありませんが。」

 

 リィーンが俺を止めようと立ちはだかる。

 

「ホント 既視感を感じるよ。」

 

【囮】【認識阻害】【隠行】

 

 デコイを出し、気づかれずに横を通り抜ける。

 デコイが消え、リィーンとギルドの一同が驚く。

 

「じゃ 行ってきます。 」

 

 今度は、いってらっしゃいの声は聞こえなかった。

 

 ■■■■■■■■■■

 

 

 死都 亡者の街 財宝と骸が眠るダンジョン

 

「同心円状に三つの区画に分けられているんだけどその第1層と第2層の中間地点にある朽ち果てた宿屋に立てこもってるはずだ。」

 

「まぁ 生きていれば亡者共がその建物に集まってんだろ? 行きはいいが帰りがなぁ」

 

「ガーコちゃんは怖がりだね~」

 

「……大丈夫あなたは死なないわ。私が守るもの」

 

「うっせ! バカにすんな!」

 

 そうして目的地に向かう俺たち

 

「つか戦力分析したいんだが アキラはどれだけできるんだ?ギルドで見せた残像からそこそこ行けると踏んでいるが実際どうなんだ?」

「本気を出せばスライムと引き分けることができるぞ?」

「笑えねぇよ」

「まぁ 実戦はこれが初めてだな!」

「ほんとに笑えねぇ!!」

 

 まぁガコライが攻撃、盾にしてアニが魔法攻撃、俺が体力、魔法力を薬で回復とオーソドックスなPTだ。

 それに俺には切り札があるし、実験したいこともある。

 

【魔改造】のスキルでパーティー全員の戦闘力、経験値取得量も格段に増えている。

 

 ガーコルトは俺と同じ軽戦士らしく素早い剣さばきでゾンビを翻弄し、アニは炎でゾンビを焼き払っていく。 

 トビ……生き残りの少年は荷物持ち。

 

 二人ともいつも以上の調子の良さ、絶好調の状態に驚いていたが、命の掛かった状況だからと納得したようだ。 

 そして俺は鞘と刀身に仕込んだポーションと聖水ブレンドの剣撃を試し、一撃で仕留めることに成功する。

 どうやら概念崩壊の法則は有効だ。

 

 この辺はゲームみたいだが、後々研究する必要があるな。

 

 

 回復薬、白魔法の回復魔法、治療薬がゾンビには一撃で浄化できる劇薬だ。

 はたから見たら、一撃で狩る凄腕冒険者だ。

 

「人の悪い冗談言いやがって余裕じゃないか!」

「……すごい」

「すげえっす!」

「……先を急ごう。」

 

 なんだろう、別に悪事を働いている訳では何のに罪悪感を感じるね。 

 不思議だ。

 

 

 薄暗い霧に包まれた街 死都 日が暮れれば厄介になる。遭遇するゾンビは殆ど、俺が始末した。

 源呼吸で魔力の霧(ミスト)が充満しているこの地に置いては俺は無尽蔵に魔力が使える。

 遭遇しても白魔法を剣に込めて【首狩り】で狩っていく。

 

 しかも透明化しての奇襲攻撃、遠くにいるものも見つけ次第、【投擲】で投石攻撃で潰していく。

 時折、ゾンビ犬、ゾンビ烏が襲いかかってきてもアニと俺が黒魔法で焼き払い消していく。

 

 そうこうしているうちに目的地へ到着 

 

 宿屋には次々と先ほどとは比べ物にならない紫のオーラを放つゾンビが群れで宿屋を囲み侵入している最中だ。

 

「あの中か?」

 

 トビが頷く

 

【念話】はこのミストの中では通じないから、確かめようがないからな……

 

 結界石か魔物よけの香を焚いているのか持ちこたえているようだが時間の問題だな。

 よしんばあの魔物の群れを突破し、救出しても紫オーラの個体が複数いる。

 雑魚と違い動きが素早く、筋力、耐久力も桁違いに強い。 

 怪我人は足でまといになる。

 

「紫オーラは不味いぜ、見たらすぐに逃げろだ!Bクラス以上の魔素を持ってる。それが三体はいるぞ!」

 

 まぁ普通にやっちゃ不味いよなァ。だが!俺には切り札がある!

 

「まぁ特製ポーションはちゃ~んと用意しているがね?」

「な なんだ? そのおどろおどろしいのは?」

「ふっふっふ 効果だけを重視しして開発した罰ゲー厶用 健康青汁ポーションだ。

 あまりの不味さに花畑が見える程の幻覚効果があるのがたまにキズだが効果は抜群だ。」

「いや それってモロに毒じゃねーか? あのゾンビ共より禍々しいオーラを放っているんだが?」

 

 取り出したポーションは紫オーラのように禍々しいオーラを放つだけでない。

 ボコボコと泡立ち、怨霊のようなオーラと効果音を放っている。

 

 そんなもんあいつらに飲ませる気か? 

 と心配するがゾンビ化していたら味もわからないかと見当違いのことを考えているであろうガーコルト。

 

「ふふふ だからいいのだよ!じゃ行ってくるから、安全確保したら合図するから。」

 

 対アンデッド用に作った人間には劇薬のポーションを剣に塗りたくり、【隠行】で近づき一撃で狩っていく。

 

 ゾンビ化の治療薬はもしもの為に取っておく為だ。

【囮】で幻影では無く、フェロモン、血液の匂いを混ぜた煙幕で注意を引き、纏めて【首狩り】で飛ばし一気に狩っていく。

 

 そして宿屋に入っていきゾンビの群れの中 【完全ステルス】状態で無双しまくる。

 

 結界を張られた一室以外の動くもの全てをサクサクと作業の様に急所を差しまくって行き、

 結界で形成した安全地帯の入口に群がる腐った肉塊どもを血液の匂いを放つフェロモンの煙幕で引き離し、各個撃破していく。

 

 ヒャッハーーー汚物は消毒だ!

 

 作業を済ませ、結界石で封じられた安全地帯へと入る。

 疲労困憊&瀕死状態の蛇女の尻尾の面々が確かにいた。 

 まぁこの極限状態の中、救助が来るまで、自殺もせずに此処まで持ったものだ…少しは見所もあるようだな。

 

 俺を見て、安心したのか気を失ったり、涙を流して喜びだす面々。

 とりあえず、ゾンビの治療薬入りポーションを飲ませて事なきを得た。

 

 どうやら彼らがここまで生き残れたのは逃げ込んだ宿屋の倉庫に打ち捨てられた結界石や古びたアイテムがあったからみたいだな。

 

 窓を割り合図を送り、

 ガーコルトたちと合流、特性ポーションと保存携帯食を泣きながら口に含む面々。

 そしてコクコクとどさくさに紛れてポーションと保存食料を食べるアニ

 

 いや いいけどね?

 

「かたじけねぇ かたじけねぇ!」

 

 生きていることに実感するもの、気を失った者、感謝する者 まぁ最初ムカつく奴らで自業自得ではあったが、自身を犠牲にして仲間を逃す心意気に免じて過去のことは水に流してやるか。

 

 ガーコルトたちはまさか一人であのホラーマンションと化した宿屋のゾンビを全滅させるとは思わなかったらしく、せいぜい俺が囮になって惹きつけているうちに救出するものだとばかり思っていたそうだ。

 

「今回は本当に助かった。執事の兄ちゃんもこの前は済まなかった!そしてありがとう!そうだ!これさっきの宿屋で見つけたアイテムだがアンタらに譲るよ。ほんの礼だ受け取ってくれ。」

「ありがとうございます! 俺の助けを聞いてくれて!本当にありがとうございます!」

 

 ガーコルトは照れてるのかそっぽを向き、アニは携帯保存食の新味、ポテト味に夢中だ。だから代わりに応対する。

 

「同じギルドの仲間なんですから助け合うのは当然ですよ。」

 

 そう言ってアイテム 【道具袋】を受け取った。

 まぁ実際そんな互助精神はあまり無い俺だが、まぁ、ここは空気を読んでおこう。

 

 ■■■■■■■■■■■

 

 その後

 

 凱旋した俺と銀狼の牙は一躍英雄になった。

 

 リィーネさんが涙を流して俺の胸をポカポカ殴り、みんなから生暖かい視線を向けられる。

 

 俺のランクはE-からCまで上がり、銀狼の牙の二人も同じくC評価に上昇した。

 ラミアテイルのリーダーがくれた【道具袋】だがどうやら4次元ポケットのように空間が圧縮された魔法アイテムのようだ。

 

 これを譲ってもらう代わりに、ガーコルトには俺の自作の片手剣を、アニにたらふく奢らされたが、まぁいい収入になったかな?

 

 さて次の目標は②の遺跡調査と情報収集だな。

 同じく死者の巣窟とされる黄泉の入口だな 明日にでも新しい片手剣と今日の魔素を吸い取れるアイテムを用意して 

 攻略に向かうとするか!

 



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黄泉の入り口

 黄泉の入口、ロマリア国境付近に存在する魔王の母になるといわれる大精霊が封印されている隔離指定ダンジョン。

 

 不死者に守られるあの世の入口。

 

 この大精霊だが、彼らは人と交わるとき、自分の分身と英雄を生み出すそうだ。

 それも、必ず双子で生まれ一人は次世代の大精霊、一人は父親を超える英雄になる。

 

 ここに封じられている大精霊も例に漏れず

 クルトの民の中でも優秀な精霊魔導師だった巫女と当代の闇の大精霊との間に生まれた双子として生まれた。

 

 一人は新たな大精霊の娘

 一人は精霊の御子として優秀な精霊魔導師として育っていく。

 

 悲劇の始まりは余所の国で別の精霊の御子が現れた事だった。

 

 ガリアの文献には、強力な力を持ったロマリアが光の大精霊の御子を将に置き

 軍を率いて、各国を侵略したらしい。

 

 結果、ガリアとロマリアはぶつかり合い、闇の御子と光の御子は七日七晩の戦いの末、闇の御子は敗れ去った。

 

 

 其れに嘆いた大精霊は自身に残された全ての力を使い光の御子とロマリアの軍隊に呪いを掛け地下の神殿に封印したのだ……

 残された巫女と娘……巫女は後のガリア王家に……娘はこの悲劇を繰り返さない為に、父の地下神殿に自らを封印したのだった。

 

 自分のまいた種で、人様の世を乱すのは何処の世界、国の神様でも同じだな。

 挙句、娘まで巻き込むとか呆れて、物も言えんな……

 

 

 この話が、勇者と魔王の神話のざっくりとした真相だ。(本当か?)

 

 グレアム神父のとこの教会にあった十字教の経典では当然だが内容は異なり

 光の勇者(ロマリアの精霊の御子)は魔物を率いる魔族(クルトの民)とその魔王(ガリアの精霊の御子)を倒す為に挙兵。

 結果、自身の命と引き換えに魔王と大精霊を封印したとされる。

 

 そして黄泉の入口にはその怒りに燃える新たなる大精霊が勇者に似た哀れな男を攫うという言い伝えができた。

 

 

 そして時は流れ、人々から恐れられたその迷宮に挑む英雄(バカ)が現れた訳だ。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ~黄泉の入口~

 

 不死者を狩る狩る狩り尽くす。

 はっきりいってゾンビに回復魔法(薬)という本来の用途とは異なった使い方による狩り方が有効だと判明した以上。

 後は穴場な狩場で狩りまくるのだ。

 

 人々が恐れて近寄らないこの地下深くへと続く伝説級のダンジョンはいわば、人目を気にせずに狩れる絶好の狩り場だ。

 俺が乱獲しても問題が無く、且つ人目につかない。

 

 これは入らなきゃ駄目でしょ。

 救出作戦以降、霧の深い死都を夜な夜な出向いて狩りまくった。

 

 ヒャッハー!!汚物は消毒だーー!!

 

 人には絶対使えない、副作用、満載の劇薬をゾンビを粘液状に作り鞘や武器に塗る。

 もう、これだけでゾンビ相手に無双状態だ。

 

 更に、掃除道具を魔改造で強化しまくった一品もある。

 そしてこれが現在の俺のステータス。

 

 アキラ 

 レベル58

 22歳 職業 偵察職 鍛冶職

 

 スキル一覧

 

 戦闘スキル

【上級斥候術】【投擲】【認識阻害】【罠師】【挑発】

【片手剣】【拳闘術】【現代戦闘技術】

 

 職業スキル

【錬丹術】【修理】【調理】【歌唱術】【速記術】【文才】

 

 魔法スキル

【初級白魔法】【初級黒魔法】

 

 固有スキル

【源呼吸】【魔改造】

  ----

 

 

 上級斥候術は夜な夜なゾンビを相手にレベル上げしてたら何時の間に習得していた。

  これだけ準備し俺は難攻不落のダンジョンへ挑む頃合だと確信した。

 

 道具袋にも薬品を大量に詰め込み。

 源呼吸でダンジョン内の魔力を使える為、魔力切れは無く、白魔法での対処も可能。

 

 いける。

 

 そして俺は黄泉の入り口へと踏み出した。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ~黄泉の入り口 螺旋回廊~

 

 【斥候術】のスキルにある【索敵】を駆使し、敵を見つけ次第、【穏行】【首狩り】で一撃で仕留める。

 または【錬丹術】で調合した回復薬と【初級白魔法】の治療魔法で不死者の知られざる弱点(ゾンビにお札、回復魔法)を突いて浄化していく。

 

 武器もアンデッド共の武器を奪ったり、

【錬丹術】のスキル【薬品作成】【修理】【鍛錬】で消耗した武具の修理、薬品の補充を行う。

 

 自身で編みだした【源呼吸】での応用技、【認識阻害】と【気配遮断】を行い気配を消しつつ、闘う事で消耗を減らす。

 呼吸で大気中の魔素を残さず吸いつくしていくので、消耗することなく、レベルも上がっていく。

 

 太古のロマリア兵は侵入者に気付くことなく灰になって消えていく。

 

 

 

 そうこうしている内にアキラは地下神殿の広場に到着する。

 神殿の前の広場にはリッチ…自ら不死を求めてアンデッドになった魔術師…

 

 その筈だが、目の前にいるリッチは装備、魔力、殺気、技量が明らかに伝承にきくリッチのそれではない。

 

 伝承にある、闇の大精霊(バカ親父)か勇者(笑)のどれかだろう。

 

 装備から恐らく後者。

 

 魔術師ではなく、戦士、それも大英雄クラスの人間がリッチと化している。

 ただでさえリッチは堅牢な防御力、魔法防御力を備え、

 士気を低下させる恐怖を伝播させるスキルを有し、

 元が貧弱な魔術師ではなく不死身の大英雄とか俺にとっては天敵だ。

 

 ステルスを見破られた時点で勝ち目は無い…

 

「参ったね どうも 【穏行】と【認識阻害】【源呼吸】の【気配遮断】の三連コンボを使っても気配を察知するほどの手練か。」

 

 古の勇者も、上層で次々と消えていく嘗ての配下に気付いており、自我が消え去りつつある中、再び剣を取る。

 そして、ステルスを解除した侵入者の姿を視界に捉えた瞬間、憎悪と怒りの咆哮をあげた。

 

「Aaaaaaaaachilleeeeeeeeeeeeeeeeeeeeees!!!!」

 

 ◆◆◆◆◆

 

「な なんだ?」

 

 アキレウス? いやアキラですけど!?

 

 なんかステルス解除したとたん、リッチが行き成りブチ切れて咆哮をあげた。

 

 あるぇ~何か伝承との性格、行動が一致しません。

 もう、クラスはバーサーカーです。

 

 狂気と憤怒に眼を変え、狂戦士の如く剣を持って襲いかかってきます。 

 汚れてはいるが結構強力な鎧をお持ちですし。

 

 かなりの魔力を身に纏っています。

 

『Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』

 

 咆哮を上げながら猛攻を仕掛けるリッチを片手剣で捌き、かわす俺。

 むぅ【概念崩壊の法則】の一撃を与えるには奴から吹き出る魔素の濃霧が邪魔で届かないな。

 

 だが!

 

「くっくっく こんなこともあろうかと!」

 

 某宇宙戦艦の技術部長のセリフと共に【道具袋】から掃除機を取りだす。

 

「【ばきゅ~む だいそ~ん】この掃除機は魔力と魔素を吸い込むことができるんだ。」←例のあの声

 

 掃除機の首をリッチに向け一気に魔素を吸い込む。

 

「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?」

 

 ふっふっふ濃霧が晴れ、これで攻撃が通るぞ~。

 

「くくく なぁ今どんな気分? 濃霧が晴れて丸裸にされたけどどんな気分?」

 

【挑発】を使い、ドヤ顔をするアキラ。

 勿論、荒ぶる鷹のポーズ。

 掃除機片手に片足挙げてステップする。

 

 怒りに狂ったリッチは突進しアキラに斬りかかり、その体を縦に両断する!

 しかし斬られたアキラはニヤリと口の端を釣り上げる。

 

 切り裂いたのは【(スキル)】で作り上げたデコイ 

 

 リィーンさん相手に言うのは気が引けたし。

 

 魔力で実体を持つ幻影を作りだすスキルだ。

 決して残像ではないが端から見えると残像なのだろう。

 

「残像だ」

 うん、一度行ってみたかったんだ。

 

 背後に回り込み【異世界攻略のススメ】の【概念崩壊の法則】による【心臓穿ち】を叩きこむ。

 

 剣に仕込まれた回復薬

 そして源呼吸と掃除機で手に入れた魔力を俺の力に変換。

 一呼吸で白魔法へ変え、【浄化】【治癒】魔法が剣を通じてリッチの体内に炸裂する。

 

 勝負は決した。

 

 リッチの体が光に包まれる。

 勝ったと同時にリッチの力と魔力が俺の体に経験地として流れ込んでいく。

 リッチはこの世に残った因果とか、未練から開放されたかのよう緩やかに消滅していく。

 

 俺はそんな敵から目を離さない。

 勝つ為に、挑発を繰り返し、正々堂々とかかけ離れた手段で戦う。

 

 固有スキルなんてチートを使って生き残る卑怯者だが、この男の最後だけは目を逸らしてはいけない。

 不思議とそう思った。

 

 やがて、幸せそうな顔をして浄化していったリッチの最後を見届け終えた。

 その灰から湧き出る魔素と掃除機で吸い込んだ魔素、遺された鎧と剣を回収する。

 

 生前は余程の実力者だったのだろう、彼のスキル、魔力を吸収すると自身の力が何倍にも上がった。 

 これがゲームなら今頃レベルアップのファンファーレのオーケストラになっていることだろう。

 

 そして目的の神殿を目指し、俺はその門を開いた。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 私は?

 どれだけの時が流れたのだろう……

 どれだけ後悔したのだろう、王に騙され、魔王を討伐にいったあの日、黒髪の御子アキレウスと七日七晩の死闘を制し倒したが、それがロマリアの王の策略だと気づけず、その行いが侵略の為だと知り、私は悲嘆にくれた。 闇の大精霊は嘆き、悲しみ、愚かな私と軍隊に呪いを掛け地下深くに閉じ込め、彼の妹はその神殿に兄と同じ悲劇を繰り返さない為に……神殿に自らを封印した。

 

 魔物と化した私は神殿の前に立ち、この身が本当に朽ちるまで立ちつくし後悔の念に沈んでいった。

 

 

 

 そして、奇跡は起きた アキレウスが目の前に現れたのだ……

 

 だが、後悔と執念に狂った私はアキレウスに襲い掛かり、その手に掛かって倒されたのだ……

 

 ふふふ あの時は七日も掛かったのに、まさか一瞬で決着が着くとは……

 

 そして このままあの世に帰ることなく消滅していくかと思えば、身体が灰になって浄化していく……

 

 呪いが解け、再び輪廻の輪に帰って行くのだ……

 

 なんと慈悲深い!この男は自分を殺した男を許し、浄化してくれたのだ…… もはや声も出せず、消えていく身体のなか……

 

 仰向けになった私を見下ろし、その最後を見取ろうとするアキレウス、あの時とは立場が逆だが……私は満ち足りていた……

 

 また会おう アキレウス……

 

 こうして古の勇者の魂は人知れず 解放された。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 …………神殿の門が開く音がする。

 

 その懐かしい気配を感じ私の身体は歓喜する。

 

 その声を聞いてもしやと思い耳を傾ける。

 

 薄目を空けて、その顔を見た時、私は奇跡を信じた。 

 

 黄泉から帰ってこなかったお兄様が輪廻の輪から戻ってきたのだ! 

 

 私の愛しい人が迎えに来てくれた。

 

 でもお兄様は私を暫くみたあと意地悪をしてそのまま踵を返して帰ろうとした! 逃がしません!

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 古代魔法 その象徴である上位精霊の女性が石棺で静かに眠っていた。

 

 さて、祝詞をあげるかキスをするか魔力を注ぎ込むかするのが王道なんだろうし

 

 皆さん?もそれを望んでいることだろう。

 

 てか狸寝入りしてね? この精霊?

 

 如何する?

 

 1 接吻   キスキス~

 

 2 祝詞   契約の言葉を述べる。

 

 3 しばく  起きろぼけー!

 

 4 放置   僕は何も見ていない。

 

 

 

 放置で♪ 

 

 リッチも倒したことだし、もう帰ろっと。

 てくてくと転移装置で帰ろうとしますが……装置が動きません

 

 踵を返して神殿の出口から帰ろうとするが……

 

 ……扉が動かない

 

「…………」

 

「…………」

 

 あきらはにげだした。

 まおうからはにげられない。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 普通に起こしました。

 

「まぁ❤この迷宮を踏破し私を救いだしたくださるとは。貴方は私の主に相応しいお方ですね。」

 

「ありがとう。それで君は?」

 

「はい 私は“死と再生を司る精霊姫”闇の大精霊です。契約者(旦那様)に不老不死の法を授け、永久に仕えさせていただきます。」

 

 

 ……スルーだスルーしろ。

 この美人さん契約者に旦那様ってルビ振りやがった。

 あと彼女からは地雷の匂いがする。

 

「そうか、それでこの神殿ってか迷宮から出たいんだけど?」 

「ええ 本契約すると封印が解けて転移装置が稼働します。」

 

「……本契約って?」 

「はい。貴方様に名を与えてもらうこと、そして契りを交わすことです。」

 

 ……おい大人の対応 スルーにも限度があるんだぞ?

 

「私と愛の契りを交わさないと出られません❤」

 

 たのしそーだねー。

 

「優しくしてくださいね?」 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ベッドで私の横で静かに寝息を立てるお兄様の寝顔をみる。

 

 生まれ変わり、記憶を失っていても変わらない愛しい人、以前は兄妹だったから諦めたが今や、私達をさえぎるものは無い。

 

 契約方法を若干変更し契りを交わして契約をなした。 

 

 前世より遥かに強くなった闇の勇者にして闇の御子。

 

 私の愛しい主様、もう逃がしません♡

 



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極秘任務

 契約の際、名前を与えなければならないらしく、日本神話の黄泉の国に封じられた女神から拝借し普段はナミと呼ぶことにした。

 

 

 神殿から帰って自分の部屋に戻り彼女のことを色々知ろうと訊ねてみたのだが

 

「女性の過去を根掘り葉掘り聞くなんて ダメな主様!」

 

 と頬を膨らませて、黙秘してくる。

 

 あの、俺、契約者ですよね? 

 

 

 仕方なく王立学園や教会、ギルドの文献を調べてみると彼女は神話の魔王の妹に当たる曰く付きの大精霊であり、冥界の精霊姫とか次代の魔王の母とか、まぁ調べれば出るわ出るわ、ヤヴァイ情報が・・・・・

 

 まぁ歴史は勝者が残すものだから鵜呑みにはしないが・・・・・・それを信じてる人からすれば脅威なわけで歴史の生き証人である彼女はロマリア、ポルトガ、ゲルマニア辺り十字教圏内では厄介な存在だな。

 

 逆にクルトの民、旧ガリア帝国の祖、彼女の母でもあるクルトの巫女の一族の末裔であるガリア王家とブリタニア王家にとっては信仰されている大精霊、女神として扱われている。

 

 

  ……どっちに知られても面倒だな。

 

 あと大精霊の契約者は強力な精霊魔法を扱うことができ、契約中は殆ど不老不死になるらしい。

 

 精霊化という彼女の魔力を取り込み、魔力の同調(シンクロ)率に比例して中性的な容姿に代わり、行き過ぎると女体化するというおまけ付き……

 

 止めなさいシンジ君! 人間(おとこ)に戻れなくなる!

 

 精霊化の利点は物理攻撃完全無効化、同質の霊的攻撃か。

 俺+イザナミの魔力量を超える攻撃でない限り無効化できる。

 すげぇチート。

 

 デメリットは精霊が異性の場合TS化すること。

 その精霊の弱点の属性までシンクロすることだな。

 

 つまり、精霊化した俺を傷つける方法は同じ大精霊の契約者か古代魔法か光属性の上級魔法攻撃でないと効果がないらしい。

 

 しかも闇と死と再生を司る能力を持つため大精霊本体の戦闘能力も高い。

 俺の概念崩壊の法則と酷似した攻撃手段を持っている。

 

 即死攻撃、死徒(アンデッド)の眷属精製 蘇生、回復魔法を用いたハメ技だ。

 

 つまり、アンデッド化攻撃+回復、蘇生魔法のコンボ攻撃で俺の対アンデッド攻略方法の上位互換の技をもっており、対象の弱点を作り上げ、殺すという俺よりエグイ即死コンボだ。

 

 即死攻撃は視界に入れた格下の対象を確率で即死させる呪いの魔眼。

 

 一撃必殺と弐撃決殺の二段構えの攻撃手段をもつ敵に回すと恐ろしい大精霊である。

 

 闇属性の精霊魔法も身につけることができ、影を用いた転移、分身、道具収納、使い魔作成、分身、武器作成、重力魔法が使えるようになり、呪いの抵抗力が上がるなど色々特典があってこれで攻略に乗り出せるというものだ。

 

 そして彼女だが常に実体化してもらっている。

 

「実体化は私も嬉しいのですが、よろしいのですか?主様の魔力を常に吸収し続けますので、非常時以外は霊体化しておく方が負担もかけないのですが。」

 

「大丈夫 既に擬似的な精霊との契約状態を再現する【源呼吸】があるからナミとの経路(パス)を通して、お互いに魔力を増幅することもできるし、常に魔力を放出し続けておけば、持続力も上がるからな。」

 

「器用ですね主様 妻として鼻が高いです。」

 

【空気読み】【受け流し】← *そんなスキルはない

 

「・・・・・・さて、情報収集にギルドによりますか。実体化して付いてきていいから。」

 

「はい、主様」

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ドドドドドドドドドド

 

 なんか某奇妙な冒険のような効果音が聞こえてくる、ギルドの空気。

 

 目の前には笑顔の受付嬢リィーンさん。

 

 あの救出劇以来からリンと呼ぶ間柄になったわけだが、俺は彼女と付き合ってるわけではない、ただの飲み友達だ。

 

 ガーコルトは下戸だし、アニは未成年(多分)?この世界では十分に飲める年齢だが俺の気が引けるため、二十歳の彼女とは仕事の帰りに酒の付き合いにいくようになった。

 

 そんな受付嬢にして、この国の騎士でもあるリンとナミが笑顔で対峙し重苦しい空気を出している。

 

「アキラさん? こちらの女性は? お召し物から家政婦をお雇いになったのですか?」

「あ~リン。彼女は俺の・・・・・・」

 

 契約している大精霊とは言えない ここはメイドさんが無難だろう、それを理解してかメイド服に着替えてるし。

 

「初めまして リンさん いつも私の主人(・・・・)がお世話になっています。」

 

 ビシィ!

 

 空気が張り詰める 胃が痛くなってきた。

 さっきまで一緒に話していたガーコルトはこの修羅場から離れた席に移動した。

 この様子を見て腹を抱えて笑いを堪えプルプル震えてる。

 アニは渡した道具袋で遊んで興味ない様子。

 

 

 

「……ああ やはりメイドさ「アキラさんの妻です」……」

 

 く! これが逆境か!

 ただギルドで情報交換に寄りに来ただけなのに!

 

「いや 彼女はポーションづくりの助手兼家政婦で 結婚は……」

「ああ やはりそうでしたか。」

 

 そう言って空気が柔らかくなった瞬間、再度爆弾を投下するナミ。

 

「出会ってすぐに契を交わした仲です♥」

 

 周りの男どもが吹き出し、殺気が俺に集中される!

 ナミは絶世の美女だ、その分、独り者の男どもの嫉妬は激しくなる。

 

「そうだ! リン、俺に何か用事があったんじゃ?」

 

 そう!

 リンは俺に話しかけてきたのだ。

 何か俺に用事があるのだろう。

 

「……そうでした。アキラさん、一度、ギルドの応接室に来てください。」

 

 そう言って彼女は心なしか、俺の襟首を乱暴に掴んで引きずっていく。

 

 ドナドナド~ナ♫

 

 目でガーコルトたちに助けを求めるが笑いながら手を振るだけだった。

 この薄情者!

 

 ◆◆◆◆◆ 

 

「国王からの召喚状?」

「はい、アキラさんの新薬と携行食の開発の功績を認められ、国王が報奨と同時にお会いしたいとのことです。」

「……それだけ? 応接室に連れ込んだんだから何か裏があるんでしょう?」

「……私の妹、アリシアは、クラリス王女に仕える侍女兼見習い騎士なのですが……

 彼女の便りから王宮内に不穏な影があるとのことです。

 王政府の中は現国王の座を奪おうと王弟とその息子を担ぎ上げての権力争いが水面下で行われ、

 姫様も危険が及ぶ恐れがある為、家庭教師か顧問医師の名目で護衛に当たらせるのが本来の依頼内容です。」

 

 一介の冒険者(笑)にそんな大役まかせるなよ。

 と言いたいが、取り敢えず最後まで聞こうと思い、続きを促す。

 

「国王直々の依頼ですか……家庭教師、顧問医師のポストに就けてかつ腕に自信のある実力者で俺に白羽の矢が立ったということですか。」

「ええ 銀狼の牙 猫の目 妖精の涙 円卓の騎士 暗部(ギルドナイト)のチームも候補に上がりましたがアキラさんはどこの息にもかからないという点、武器の携帯が許されない宮殿内でも格闘戦に優れる事も考慮に入れた結果選ばれました。」

 

 確かに、魔物や荒くれ者が跋扈する世界で素手でも渡り合える奴はそうはいない…ガコライも数少ない体術、柔術に近い格闘術を有しているらしいが、家庭教師や意思も兼任すると弱い…アニも薬学は少々かじった程度(薬は苦いから勉強しなかったらしい)だから難しい。

 

 それで、両方の能力と実績のある俺に……か。 だが、問題が一つ

 

「長期任務だな……外で待っているナミも連れて行っても?」

「修羅場を演じ、ここにあなたを連れ込む口実にしてもらえましたので聞きませんでしたが彼女は一体? それにどことなく王族の方に似通っている顔立ちなのですが……?」

 

 そりゃ先祖でもあるから子孫が彼女に似るのは当然だろう。というかリンさん、やっぱり王族と付き合いがあるっぽいね、妹が近衛ということは、もしかしたらエリートですか?

 

 能力も受付嬢の筈なのに異様に高いみたいだし……

 

「俺の従者(パートナー)です。 腕も立ちますし、信用できます。」

「では 彼女は助手ということで同行を許可します。 表向き、首都への長期護衛任務で王城では家庭教師兼顧問医師でお願いします。明朝出発しますので アキラさんの滞在している宿屋へ迎えを寄越します。

 あと長期任務ですのでひと月ごとに向こうで契約更新されると思いますのでしばらく帰ってこれません。 拠点の整理も必要ですので、宜しければ部屋の荷造りや整理、管理を職員にさせますが?」

 

「明日の迎えと部屋の管理だけお願いします。 準備や用意は自分でしてきますのでこれで。」

「はい こちらこそよろしくお願いします。」

 

 まさか向こうから接触が来るとは俺とナミの正体をバレないようにしないとな王宮の資料庫に入れるといいんだが。

 

 それに権力争いか、何も起こらないといいんだが。 やっぱり起こるんだろ~な~。

 

『主様。王都で私の子孫に会えるんですね? 少し楽しみですね~。』

 

 この大先祖?がいる前で家族間での争いか……彼女は草葉の陰ではなく俺の影で泣くような事態にならないことを祈るとしよう。

 

 



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アリシア

 明朝

 

「主様、時間です……そろそろ迎えが来ますので支度をしてください。」

「ん~何人たりとも俺の眠りを妨げるものは……」

「……黒○事さん?」

「カハッ!」

 

 やめろ!二つ名で呼ぶな!

 

「ん~外は早朝か……」

 

 そうして天蓋付きのベッドから起きる。

 S級ダンジョン黄泉の入口を攻略して以降、ナミの眠っていた神殿に住居を構えている。

 住み易い様に家財道具を持ち込んだり、改装している。

 

 一応拠点はトゥールズの宿屋の部屋を借りて、其処に影魔法の転移ダンジョンと繋げているのだ。

 外には黄泉の入口が攻略されたとは気づいていない。

 ダンジョンマスターの俺とナミが新たに影分身とナミの分体を配置している。

 ダンジョンも以前より凶悪な仕様に改良している。

 

 俺の罠技術が冴え渡る無理ゲー設定の要塞だ。

 ここなら思う存分研究できるし、訓練もできるからな。

 

「主様。遅くまで転移装置でなんの研究を?」

「いや ちょっと気になる応用方法を思いついてな……それより早く宿屋部屋に転移しないと。」

 

 そう言って自分の影を媒介に転移する。

 

 二ケ月間住んでいた部屋に視界が切り替わり、ベッドに腰掛ける。

 黄泉の入口の亡者狩り、死都での救助でだいぶ実力も上がり、後は竜の墓場、王墓の巨像と狩場が残っている。

 そこそこ必要な素材を集めるに留めておこう、この国の狩場は他の者の為に残しておきたい。

 

 

 コンコンコン

 

「アキラさん お目覚めですか」

「はい?」

「昨日話されていたギルドの迎えが来ておりますが?」

 

 宿屋の店員の若い小坊主が扉越しに声をかける。

 

「すぐ降りる。」

 

【索敵】で外の状況、人数を確認。

 同時に【鑑定】スキルも使い、ステータスを見破る。

……外に二人、そのうち一人は……この気配はギルドナイトか。

 監視か刺客だろうか? 

 今の俺の敵ではないが警戒しておこう。

 

 ギルドナイト

 ギルド職員、メンバー内から選抜された暗部を刺す。

 諜報組織であらゆるところにその工作員がいるっぽい。

 

 受付嬢のリィーンさん。

 ギルドメンバー

 定食屋の店主

 酒場のマスター

 近所の夫婦

 

 俺が確認した人数はこの街では六名だ。

 この街、いや確認は未だだが恐らく国中、下手すれば世界中に存在するんだろうな。

 

 そんな奴が近くにいる。

 通りすがりでは無く、俺狙いで。

 

 ナミと共に宿屋を出て、迎えの職員、初めて見るギルドナイトの女性が俺を迎える。

 

 後になって思い返すとこの出会いが始まりだったのだろう。

 別に運命の出会いって訳ではないが、彼女とは長い付き合いとなった。

 

 ドアを開けると美少女が立っていた。

 見た目は10代前半か中頃だろう。 未だ幼い。

 孤児院の子供達より、少し上くらい。 

 

 金髪を肩までに切りそろえており、美少女と言っても過言ではない程には整った顔だ。

 鋭い瞳に将来を期待させるような未成熟な肢体を持ってる。

 その細身には信じられないほど鍛え上げられただろう力強さと佇まいがある。

 性格はクソ真面目!!って感じ。

 

 この若さでレベルも100の大台を超えている。

 重心も安定しており、体が全くぶれていない。

 ギルドメンバーでもここまでの者は稀だし、それをこの少女が身につけているのに驚いた。

 

 クレアやリン、アニといいこの世界の美少女は化物か?

 ギルドナイトの中ではレベルは一番低いが、それでも水準は超えている。

 流石はギルドナイトというところか。

 

「おはようございます 皆さん 朝早くからお疲れ様です。」 

「お早うございます。 それでは王都に向いましょうか。

 街の外に竜籠を用意していますので、外で乗り換え、王都へ向かいます。」

 

 竜籠、4体の飛竜を使っての空飛ぶタクシーだな。

 移動速度も早いが、運賃が高い!

 竜の食費って高そうだな。

 

 正に王侯貴族の乗り物だな、転移のある俺には無用の長物だが。

 そうして街を出て、竜籠に乗り換え王都へ飛び立つ。

 

竜籠(空の上)でなら聞き耳を立てるものもいませんね。本日あなた達の護衛を務めます

 アリシア=ド=マイヤールです。お話は姉上からよく耳にしています。」

 

「ああ 君がリィーンさんの妹さんか ギルドナイトにしてはずいぶんと若いですね。」

「何故それを……いえ あの姉上が認める人物ですから当然ですか。 

 正確には元です。今はただの侍女兼騎士見習いですね。」

 

 今は引退しているらしい。

 栄転したって事か?

 

「護衛の件ですが、あなた一人でも十分、姫様を守れると思うのですが…

 ……といいますか姫様の元を離れて大丈夫なのですか?」

「騎士団長の父と末の妹が代わりに護衛に入っていますのでご安心を……

 それより彼女は?王妃様や姫様にどこか似た顔立ちと雰囲気があるのですが……」

 

 おおう、クリティカルな質問が来ましたね。

 素直に話すと混乱が起きるな。

 

「俺の従者のナミです。 俺の助手ですね。」

「ナミと申します。主人ともどもお世話になります。」

 

 うん、嘘はついてない。

 

「ご結婚されていたのですね。おめでとうございます。

 姉から聞いたときは未婚と聞いていましたが最近になって挙式を?」

 

 え? リィーンさん俺のプライベート調べて妹に話しちゃってるの?

 ちょっと背筋が冷えたがポーカーフェイスで話を続ける。 

 

「いや違うから。 ナミもいい加減にしなさい。」

「……アキラさんの下で働いている助手のナミです。

 精霊魔法を得意としています。よろしくお願いします。」

 

 そういって得心が得たのかアリシア嬢は一礼する。

 

「同胞の方でしたか、私もクルトの民の末裔です。こちらこそよろしくお願いします。」

 

 クルトの民っていうか精霊そのものです。

 しかも大精霊なんですがあまり気づかれないものだな。 

 まぁ長時間実体化させるなんて普通は不可能っていうからな。

 さらにナミは受肉しているから気づきにくいとは思うが。

 このまま勘違いさせておくとしよう。

 

 そう決意しているとアリシア嬢は仕事の概要を話し始めた。

 

「今回の騒動ですが、要するにお家騒動です。

 クルトの民、神話の巫女の末裔であるガリア王家とブリタニア王家、そして我がマイヤール公爵家

 始祖の血を引いているのは現時点では姫様とマイヤール公爵家です。

 現国王と宰相、その息子は蚊程も通っていませんので次期国家元首はクラリス王女です。」

 

「……結構辛辣な意見だね?」

「辛辣にもなります、権力に取り付かれた宰相に放蕩を繰り返すあのバカが姫様を手にしようと画策しているのです!許されることではありません!」

 

 うん、やはり真面目だった。

 若い為かちょっと直情傾向だな。

 許容範囲だけど。

 

「宰相はともかくその息子の放蕩が周囲を油断させる演技で実は傑物という可能性は?」

 

 うつけと呼ばれた戦国大名が脳裏に浮かぶ。

 こういうタイプって螺子が飛んでるけど天才と馬鹿は紙一重だ。

 意外と傑物だったりする。

 

「そう思い調べましたが、その可能性は微塵もありません権力を笠に着た小物です。

 私が女ではなく男であったなら……クッ」

 

 え~百合っ子ですか~。

 なんてことは口にしない、それ程慕っているのだろう。

 事実、彼女が男だったら問題は無いわけだし。

 彼女の父親である当主と姫様を結婚させるのもアレだしな。

 

 婚約者候補である従兄弟がそれほど残念な奴ということだろう。

 

「依頼に担当医もありましたが……まさか彼女は毒か呪いで?」

「いえ、呪い毒の類ではないそうです。時たま発作や咳を、元々体もあまり頑丈ではありません。

 国中の医者、白魔導士、グレアム神父にも見てもらったのですが原因すらつかめず…」

 

 うん、深刻な問題だそうです。 

 無免許薬剤師の俺に話すことじゃないよね?

 

「ふむ まぁ病弱なお姫様の回復まで、家庭教師と担当医 兼 護衛ってことですか。」

「ええ 優秀な薬師とお聞きしています。 姫様をよろしくお願いします。」

 

「あくまでメインは護衛ですよ? まぁあまり期待しないでください。」

 

(ナミ、どう思う? 治せそうか?)

(見てみませんと何とも言えませんが恐らく可能です。しかし私の正体がバレる危険が出ますよ。)

 

 つまり精霊化もできない、ナミも使えない。

 となるとやはり俺の力、白魔法、錬金術、闇の精霊魔法の出番だ。

 あまり役に立たないが現代の家庭用医学程度の知識も動員して診察するしかないな。

 

 その上、武器の携帯なしでの護衛か…まぁこれは余裕だけどな。

 とにかく血みどろの権力闘争の渦中に飛び込みお姫様を救うとしますか。

 

 王城の中にある資料に帰還方法の手がかりもあるかもしれんし。

 そう思いながら俺は竜籠の窓から顔を出し、近づいてきた王都と王城をみてため息をついた。

 

「ヤレヤレ」

 

 

 



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役者

 王様か~。

 元いた世界で政治家とか会ったことあるけど王様は初めてだ。

 一国の主の謁見とか緊張するかも。

 

 城門を越え、竜騎士隊に先導されながら城に降り立ちアリシアに連れられ、

 等々謁見の間の扉前まで立つ。

 

 まずは予定を確認しよう

 

 ①俺の功績を表彰 

 ②後宮廷で担当医、家庭教師として国王が俺を雇いたいといい、俺が了承する。

 ③お姫様と面会後、診察。

 ④可能なら治療 その後は、護衛 うんぬん

 ⑤偽札探し。

 ⑥姫様の心(とんでもないもの)を盗む。

 

 こんな感じだ。 

 え?

 ⑤と⑥は余計かって?

 

 だって王女の名前がクラリスでこの国には暗部とかいう暗殺のプロみたいなのがいるんだぜ?

 ぜってー狙ってんよ。

 きっとメイドか秘書に扮した美女なスパイもいるだろうし。

 

 

 ん?待てよ? 何か引っかかる。

 斥候職として鍛えられた直感が警報を僅かに鳴らしている。

 

 脅威を予測し、備え、対応しろ。

 

 ―姫様は病弱

 でも大臣とバカ息子は王位を欲している。

 王妃がなくなり、病弱になった姫これを機に王弟が不穏な動きをしだす。

 

 王位を次ぐには配偶者がナミの血族でないといけない。

 加えて種馬は優秀な精霊魔導士でなければいけない。

 

 始祖の血族の生き残りはブリタニア王族のお姫様とマイヤール公爵家

 

 バカ王子の目的は姫様。

 放っておいても婚約者の候補だった筈だ。

 

 マイヤール公爵家に跡取り息子は居ない。

 障害はブリタニア王家か流れのクルトの民だが仮にも王家に婿入りしたクルトの民。

 そこらのポッとでの精霊使いに劣る…は…ず。

 

 …………え?

 

 ちょっと待て!

 姫様を回復する手段を持ち

 強力な精霊魔法の使い手が婚約者候補!

 

 クルトの民が選ばれるのはヒュムで精霊魔法を扱えれるのが彼等、クルト民族しかいないから!

 

 俺はナミと契約し一躍大精霊魔法使い!

 ナミの存在に違和感を感じとれるマイヤール公爵家!

 

 ……あるぇ~もしかして、これって。

 

 おれ、種馬?

 

「……どうかしましたか? アキラ様?」

 

 Summer!?

 アリシアがいつの間にか俺を様付で呼んでいる!?

 

「様? なんで様付け?」

 

「あ」

 

 失言したと、アリシアが顔を背ける。

 流石はに()暗部?

 迂闊すぎだろ!

 

「……おなか痛くなったんで帰っていいかな?」

 

「ここまで来てそういう訳には行きません! もう皆さんお待ちかねですよ!」

 

 正体現すの早ッ!!

 ええい離せ!! いや、離すな!!

 胸が当たってますぅ!?

 

 ああん!

 

「主様?」

 

「――ハ!? 嫌だ、これは罠だ!つか!なんで公爵の令嬢が受付嬢なんだよ! 油断したわ! 嬢しか合ってないんだよ!」

 

「あのダンジョンの監視と流れのクルトの民をスカウトするためです!」

 

 今、明かされる驚愕の真実!

 え? もしかしてもう直ぐ最終回!?

 

「は~な~せ~!」

 

「離しません!王家の為です! 私だって代われるのなら代わりたいです!」

 

「血の涙を流すな! 怖いわ!!」

 

「あの馬鹿に渡すぐらいなら、この際あなたで構いません!いやむしろ好機です!そのまま3Pと称して乱入しますのでよろしくお願いします!!」

 

「行き成り何を言い出すんだこの肉食百合娘は!?」

 

「あの 主様? これは一体?」

 

 事態に付いていけず、困惑するナミ。

 

 おい、ナミ。やはりこの娘はお前の子孫だわ。

 すげぇ血を感じる。

 

 黄泉の入り口での契約がフラッシュバックする。

 

 先祖と同じく強引に関係を結ぼうとしている。

 もうやだ、この民族。

 

 ◆◆◆◆◆

 

「アキレウス・ブラック様のおな~り~」

 

 ぐぅ 結局女の涙(血の涙)ほだされ(恐怖して)謁見に来てしまった。

 

 俺の視線の先には如何にも王様オーラを放つオッサンが玉座に立っていた。

 生の王様を見るのは初めてだが、先の攻防で俺は精神的に疲れていて感動する気力も無い。

 

 緑を基調とした王様服に筋肉質の偉丈夫、紺色の髪の男が王冠を被らずに玉座に座っている。

 

 因みにアキレウス・ブラックは俺の偽名だ。

 

 アキラという俺の名前上、ニックネームは付きにくい。

 あっきーとか、アキ位だ。

 だが死都での一軒で英雄視されるようになってから

 皆、俺の事をアキレウスとかアキリースとか呼ぶ。

 

 ~ウスとヌスとか歴史の王様か英雄みたいな発音だ。

 そういえば、リッチ?も俺の事をアキレウスとか呼んでたな?

 

 流行ってんのか?

 あの世にまで俺の名前って知れ渡ってんの?

 

 え? ブラックは?

 俺の趣味だ!! 文句ある奴は掛かって来い!!

 

 いや、今は俺の呼び名はどうでもいい。

 

 王様だ、王様。

 見た感じ、なんか王様っていうか破天荒な覇王って感じだな。

 そんなガリア国王アルフォンス3世が口元を歪めて俺を見やる。

 

 隣に控えているのはリィーンとアリシアの父親だろうマイヤール公爵。

 立派な軍服の上からでも分かるほど鍛え上げた肉体と発する圧力からスキルを使わずとも強者である事が分かる。

 

 騎士団長は伊達では無い。

 

 始祖の血を引く、彼の戦闘能力は本物だ。

 黄泉の入り口のリッチに近い圧力を感じる。

 ただ、敵意が無い為か苦しくは無い。

 むしろ機嫌は良さそうだ。

 

 余談だが、この国では兵団が三種類存在する。

 

 ギルドと各地方領主に所属、騎士を隊長に編成される駐屯兵団。

 士官候補生など学生で編成される学生連合。

 そして、王都を守る精鋭で編成される近衛騎士団。

 

 中でも近衛騎士団は一騎当千の兵で編成されている。

 アリシアは近衛騎士団の末席に数えられている新兵、見習いだな。

 ガリアは小国故、兵士の数は小さいが騎士団長である彼は元帥に相当する。

 

 今の俺はレベルだけ上げた状態だ。

 訓練を続けてきた彼に正攻法で敵うかは怪しいな。

 要注意。

 

 そして次の人物に視線を向ける。

 

 公爵の逆隣にいるのは王様の威厳を削って悪知恵を働きそうな悪人顔の男。

 彼が王弟にして宰相のルイであろう。

 悪人顔、実に結構、彼とは共感を感じるね。

 

 そして不機嫌そうに睨んでくる王子って格好の男は宰相の息子シャルルだな。

 俺を敵のように睨んでくる。

 

 特筆する点は無い。

 アリシアの云うとおりの人物の可能性大。

 

 クラリス王女は療養中。

 公爵家の長女は現在、ギルドの受付嬢に扮している。

 次女は謁見の間の外。

 末の娘はいる筈だが、国外で留学中だそうだ。

 

 これがガリア王室か。

 王族の半数が此処に集ってる訳だ。

 

 俺は国賓ですか?

 

 国賓といっても種馬っぽいですが。

 

「お主がアキレウスか 表を上げ、楽にするが良い。」

「ハッ」

 

 俺の社会知識、アルバイト経験、映画や小説の知識を総動員して無礼の無い様に勤める。

 未だ、詰んでいない。

 落ち着こう。

 未だ、慌てる時間じゃない。

 

 此処には高校生探偵も、頭脳は大人なガキも居ない。

 しくじるなよ。 俺!

 シラを切りとおすのだ!!

 

「お主の評判はよく耳にする。新薬、携行食の発明に死都での救助、生還など文武、共に優れる冒険者だそうだな。」

「もったいなきお言葉です。」

 

 否定はしない。

 此処までは別に認めて問題は無い。

 う、嬉しくなんか無いんだからね。 

 勘違いしないでよ!?

 

「ふふふ その功績を称え、褒美を取らす。これからも励むが良い。」

「は 有り難き幸せ!」

 

 ぶっちゃけ侍っぽい受け答え、芝居も掛かってるが噛まずに応答できている。

 役者の仕事でもしようかね。

 

「褒美は追って部下に届けさせる。

 それとは別件で聞きたい事がある。

 お主は優秀な錬金術師にして白魔法にも精通しているそうだが……これに相違はないな?」

 

 はい、本命きましたー。

 ジャブはお終いのようです。

 

 宰相と王子の顔が怖いですー。

 視線に攻撃力があったら俺は蜂の巣です。

 

 今の防御力なら問題はないけどな。

 

「相違ありません。」

「では我が娘 クラリスの治療を頼もう。

 いや国王として父親として頼む、娘を救ってくれ。」

 

 うん普通ならこんな馬の骨には治療を頼まない。

 王室の侍医師団がいるだろうに。

 彼らの面子丸つぶれだ。

 

 半ば確信もってるよね。コレ。

 さっきからナミの方に視線向けてるもん。

 リィーンとアリシア同様、王様と公爵がナミにガン見だもん。

 

 事情を知らなかったら、俺の女に手を出すなとかいってドロップキックぶちかます位の熱視線だもん。

 

 

 フム……俺が大精霊の契約者であることを知られているが確証は無い。

 後ろの大臣は兎も角、その息子の敵意が篭った視線が物語ってる。

 

 腹芸をもう少し頑張りましょう。王子君。

 

 しかし分かってもここは断れない。

 表情から見て明らか、これでは断れんなぁ。

 だが諦めない。

 極力ナミなしで頑張ろう。

 

「必ずや姫様を癒してご覧に入れます。」

「うむ! 姫の場所は侍女のアリシアに案内させる よろしく頼むぞ 婿殿(・・・)

 

「……」

 

 無言で退出する。

 婿って言葉はスルーだ。

 ここで反応をとっては詰んでしまう。

 

 扉を開くと、外で待機していたアリシアは満面の笑みで俺を迎えた。

 

 ムカつく!

 

 ◆◆◆◆◆

 

 つまり、黄泉の入口を攻略したことは最初からバレていたのだ。

 ある日、俺が黄泉の入口に入っていくのをリンが確認。

 普通は止めるが死都で無双をやらかした俺ならもしやと思い王都に連絡! 

 

 案の定、宝物庫に収められていた闇の大精霊のグリモアが起動。

 イザナミのらぶらぶ?自動絵日記として赤裸々に書かれ始めたのだ。 

 

 文章は契約者である俺以外読めないようにプロテクトが掛けられていた。

 絵の部分にはプロテクトがかからず思いっきり美化された俺の似顔絵がデカデカと描かれていた為にバレたようだ。 

 

 ナミは私の秘密が~と怒りながらその日記を取り返えそうとするが念話で止めた。

 幸い似顔絵は後でナミに俺の似顔絵を描かせた結果、美化されまくっていた為まだごまかしは効く。

 グリモアはそのあとで回収すればいい。

 

 ちなみにその挿絵の内容から男性に見せるのを憚れる。

 自分の情事を描くとか名に考えてんだこの女!

 

 いや、それはいい。

 問題はアリシアが管理しているグリモアだ。

 大精霊の復活

 俺の人相と名前

 彼女が国王に俺の存在を報告、同時にリンもそれらしい人物を報告し、特徴と時期が一致。

 状況証拠がそろい俺を逃がさないように仕事を斡旋。

 まんまと釣られた俺。

 

 クラリスを巡って不穏な空気になっていた王室に

 大精霊の復活

 婿に申し分のない大精霊の契約者

 しかも年頃の男だという正に葱を背負った鴨である俺を捕らえるべく動いたのが今回の一軒だ。

 

 鴨鍋&種馬エンドは防がなくては。

 

「リンにしても君にしても大した役者だったよ。ハリウッドいや舞台役者顔負けだな。」

「お褒めに預かり光栄です。アキレウス様。」

 

 アキレウス言うな。

 

「主様の浮気モノ~」

 

「いや、俺のせいかこれ?」

 

 君の血は脈々と受け継がれてるね。

 民族揃って肉食系だよ。

 遺伝ってコエエ。 

 

 で姫様とご対面か……

 まぁ結婚とか婿入りはともかく病気は治してあげないとな……

 

 姫様も肉食系だったら、どうしよ。

 そんなクラリス王女は嫌だ。

 

「やれやれ」

 ┐(´∀`)┌ヤレヤレ



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if 自重を捨てた場合。

 ガリア王女クラリスは窓の外で自由に飛び交う小鳥をうらやましそうに眺めていた。

 

 病弱な自分。

 母が亡くなってからかかった病、治癒魔法や解呪、秘薬を飲んでも効果は一時的なもの。

 すぐに再発する病、城から離れた塔に幽閉されるかのように療養する少女。

 

 鳥篭の中に閉じ込められ、自由に飛べない自分。

 

 年の近いアリシアと政務が終わったあとの父との会話が何よりの楽しみだった。

 下心が見える宰相親子には絶対会わずに閉じこもって追い出す少女。

 

 自分の残り少ない人生に絶望する少女。

 

 だがこの日、少女は魔法使いに出会う。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 コンコンコン

 

 本来は上司相手にはノックは四回だが、略式の場合は三回ノックする。

 二回はトイレの時と警官の面接、看守が面会の知らせをする時だけだ。

 

「姫様 先日話していた方をお連れしました。」

 

「……どうぞ」

 

「失礼します。」

 

「初めまして、国王の依頼により、貴女を治療しに来ましたアキラです。」

 

 ふむ 本来は活発でお転婆だったとアリシアの長話を道中聞かされてうんざりしてたが。

 惚気の通り、深窓の令嬢といった感じだな。

 でも少し不機嫌というか、瞳に絶望の色が混じっている。

 

 まぁ好きでもない男の婚約者にされただけでなく病気にかかり、

 更にもう一人別の婚約者(オレ)が現れたら嫌だろうな~ 俺も嫌だ。 

 手早く治療して退散するかな。

 

「【精霊化】」

 

 言葉と同時に俺の髪が伸び、顔立ちが中性化していく。

 この瞬間、俺は人間では無くなる。

 大精霊をも超える人でも、精霊でもない生命体になる。

 

 古代魔法の域の神秘が扱えれる存在へと昇華される。

 

「すみません、すぐに治しますので気を楽にしてください」

 

 声も高くなっている手早く治療するか。

 

【大精霊の息吹】

 

 精霊化状態で使える千年前の古代魔法(キセキ)が今、蘇る。

 精霊の祝福、闇、死、再生を司るナミの能力だ。

 同時に俺の魔改造スキルの診断で彼女を診察する。

 

 待医師団のカルテと現代知識、精霊化の恩恵で病因を把握する。

 

 ウイルス系の病、それも神話の頃から王族に代々遺伝されてきた神代のウイルス。

 王族が強力な精霊魔法を扱えれるように力を求めた故に自ら身体に植え込んだ大精霊の霊破片。

 

 イザナミの残した聖遺物から抽出した遺伝子、魔力因子、霊破片。

 それらの移植による。強大な魔力の暴走。

 体内の魔素量が少ないと霊破片の魔力に耐え切れない。

 

 少しづつ魂と血に蓄積されていく。

 正に代を重ねるごとに凶悪になっていく呪いだ。

 

 更に、戦場から遠のく長らく平穏だったのも原因だ。

 レベルが上がらず、霊破片の増殖に器が耐え切れず肉体が崩壊していったのだ。

 

 だが、本来の霊格の持ち主がここにいる。

 その娘の契約者の俺がクラリスを蝕む霊破片を吸収すれば直ぐに直る。

 しかしそれだと力を全て失う。

 

 王家が代々育ててきた遺産でもある霊破片を易々と奪うわけにもいかない。

 急激な増殖と活動を抑えるワクチン、俺という異物を通して、霊破片のワクチンを精製、精霊の息吹による吐息交換と体液交換で注入する。

 

 つまり接吻である。

 

「ふむぐ! むぐむちゅ♡んちゅ♡こく こく むぅーーんむ/////」

 

 端から見ると美少女と美女のディープな接吻だ。

 クラリスは始め、イキナリ中性的な容姿に変貌した俺に驚き呆然としていた。

 

 その隙を突かれて、唇を奪われ、驚き、戸惑うが次第に目がトロンと溶け恍惚とした表情に変わっていく。

 抵抗する力も失せ、されるがままになった。

 

 やはりこの娘もナミの子孫だな。

 反応が同じだ。

 

 アリシアは顔を真っ赤にしているし、ナミは俺の意図を知っているが面白くない顔をしている。

 

「ぷはぁ ワクチン注入完了。

 これでウイルスの増殖は抑えたから定期的に検診していこう。

 あとは姫様のレベルを上げていかないとって……聞いてないか。」

 

 クラリス王女は治療と称しての舌を舐めあう大人のキスに頭が沸騰し、目を回して気絶、アリシアは羨ましそうに睨んでいる。

 

「起きた時がまた大変だなこりゃ。」

 

「どうでした? ロイヤルキスのお味は?」

 

「レモン味? むぐぅ」

 

 ナミが俺の唇を自分の唇で押し当て、俺の舌を吸いとっていく。

 

「んむ♥むちゅ♥ちゅ♥ぷはぁ 私のキスの味は何味でしょうかね?んちゅ♡」

 

「くぅ! 頼む! 私も混ぜてください!」

 

 乗り遅れた百合娘が騒がしい。

 今は忙しいから、後でな。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 クラリスはなんとか持ち直した。

 ナミはツヤツヤしだした。

 事後状態のアリシアは俺が精霊化を解除したら、泣きそうな顔になった。

 

「アキラ様~♡ 常にその状態(精霊化)でいてください!」

「艶っぽい声を出すな!、耳に息を引きかけるな!! 顔が近いんだよ!!!離れろ!!!!」

 

 この百合娘が!

 

「んん! それで容態はどうですかクラリス王女。」

「は はい! も、問題ありません!」

 

 クラリスは緊張のあまり 言葉がカミカミだ。 

 

 やっぱ怖いよな~。

 精霊化したからいつもの猛禽類?な顔から、刃物のような印象を与える美女に変身して無言で迫ってきたのだ。

 それもイキナリ唇奪ったんだから。

 あ~ダメだ自己嫌悪になる。

 でもあれが一番効果的だったんだよ!

 

「ワクチン《薬》を入れたからこれで命の心配は無い。

 取り除くこともできたんだけど、君たちには必要な力なんだろうから残しておいた。」

 

「では……」

 

「医者としての仕事は終わった、今度は家庭教師としてナミの魔力に耐えられるよう修行だな。」

「ということは、再び、あのお姉様に会えるのですね!」

 

 いい加減にしろ百合娘が!!

 王女一人に絞ってろ!!

 

「不本意だがそうなるな。というかアリシア お前は別に参加する必要が……」

 

「私は姫様の護衛でもありますから常にお側にいますよ?」

 

「なんですか! 主様は渡しませんよ!」

 

「いえ。ナミ様 精霊化した状態の時だけですから。」

 

 ……放っておこ。

 

 うん、ナミが増えた感じだ。

 救いなのはナミ見たく、腹黒くも無く、ヤンデレ属性が無い位だな。

 

「あ そうだクラリス王女? さっきは済まなかった。 治療とはいえあのような方法で」

 

「いえ 必要なことでしたのでお気になさらずに……私も突然のことで驚いただけですから」

 

 そういって顔を真っ赤する王女。

 うん、心が盗まれてます。

 

「助けてくれてありがとうございます。 アキラさん。」

「それを聞いて安心しました。 それでは国王に報告を……」

「ご安心を既に報告済みです アキラ様」

 

 ドタドタドタと走ってくる足音が聞こえるな。

 さてここで親子の感動のシーンを見るほど俺は野暮じゃない。

 

 アキラはクールに去るぜ

 別に責任を取るのが怖いわけじゃ無いんだからね!!

 

 ◆◆◆◆◆

 

 さて、現状を整理しよう。

 

 俺は大精霊しかもクルトの民の守護神である闇の大精霊を使役している。

 優秀な人材は、手元に置いておくか、敵に回るようなら始末するだろう。

 国王は王女の治療と婚約で宰相派の大義名分を消すことに成功しただろう。 

 では宰相派の次の手は?

 

 ①諦める

 ②俺を亡きものにするか、ナミを奪う。

 ③国を裏切り外国の手を借りて内乱。

 

 ②だろうな……

 

 グリモアの確保はアリシアは歓楽済みだから問題ない。

 

 失敗したら③とか 

 まぁカカッテコイ!щ(゜Д゜щ)って感じですね。

 

 返り討ちにしてみっくみっくにしてやんよ!

 

 俺達のハーレムエンドへの長い階段を上り始めたばかりだ!!

 

 未完!!

 



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錬金術師の治療法

 ……精霊魔法を使ってのシミュレーションをしてみた。

 はっきり言ってややこしい事態にしかならない。

 

 国王やマイヤール公爵家は俺を姫様の婚約者にしたいらしい。

 そのあとの大精霊の契約者というネームバリューがマズイ。

 この国の政争や戦争に巻き込まれたり、現人神扱いされるのは困る。

 

 ハッキリ言って状況はヤバイ、相手は俺が闇の大精霊の使い手である事に確信を持っている。

 この上、精霊化や精霊魔法まで使ったら確定だ。

 

 幸い、精霊魔法が使えると言質は取られていない。

 この依頼が俺を王家に取り込む目的だろうが、そうは行くか。

 俺はどの暴君より気ままに生き、元いた世界に帰る!

 

 さて精霊魔法は禁止 これ絶対。

 竜籠の中でアリシアから大まかな症状を聴く。

 ナミに意見では強力な魔素や精霊、魔物の因子を一気に取り込んだ時に起こる症状に酷似しいる。

 所謂、拒絶反応かアレルギー症状。

 

 想像通りナミのような大精霊クラスの霊破片、因子を取り込んでいるなら

 弱点は光属性の黒魔法、白魔法。

 これを用いて因子を破壊するか、同じ大精霊の力が必要になる。

 

 精霊魔法は使えない、大精霊の因子を破壊せずに治療を施す。

 同時にやることは訳はないな。

 

 ここまでがこの世界の住人が行なえる医療行為だろう。

 

 俺は教員免許、普通免許は持っていても医師免許は持っていない一般ピーポーだ。

 だが現代医療の恩恵を受けてきた。

 そしてスキル【魔改造】今ある知識、記憶、スキルを総動員して彼女を治療する。

 

 よしんば大精霊の因子の拒絶反応以外でも全力で治す!

 俺の未来のために!! 

 

「失礼します。 姫様、新しい医者を連れてまいりました。」

 

 患者はどこだ!?

 黒尽くめの無免許医が来ましたよ?

 

 ◆◆◆◆◆

 

 クラリス王女様は、深窓の美少女だった。

 ナミと同じ、濃紺の髪と瞳が印象的だ。

 最も彼女はナミ程のアグレッシブさは感じない。

 

 病人だから当たり前か。

 その瞳には諦観の色が見え隠れしている。

 

 なんというか庇護欲を駆り立てるような印象の少女だ。

 だが、俺は彼女の肌を見て、そのようなピンクな思考がそがれる。

 

 肌には所何処に刺青の様な幾何学模様の回路っぽい痣、斑点が浮かんでいる。

 

 これが、精霊因子の暴走。

 それも大精霊クラスの暴走だ。

 

 通常なら死んでいるが、王室の待医師団の腕か、彼女自身の力か。

 或いは両方の力で危ういバランスで命を保っている。

 

 ……やっぱ大精霊因子の拒絶反応と暴走だよぉ。

 ナミの契約者の俺だからわかる。

 一目見た時にピンときたね! 

 ナミのウイルスだから、Nウイルスか?

 いやイザナミだから Iウイルスと呼ぼう。

 黄泉の入口のゾンビ共みたいにならないだろな?

 

 さて要はウイルスの進行をとめればいいんだ。

 ウイルスの増殖を抑えるにはワクチンだ。

 

 じっとナミを見るが、駄目だナミを使うのは禁止。

 正体ばれる。

 

 自己紹介をそこそこに診断と治療行為を始める。

 

「王女様~採血しますので腕を拝借しま~す。」

 

 お注射の時間DEATHよ!

 

「はい」

 

 王女は素直に腕を差し出し、診断を受けていく。

 ちょっと待ってくださいね~

 

「【キュア】」

 

 白魔法の解毒魔法で消毒してから自作注射器を取り出す。

 

「ちょっとチクッとしますけで我慢してくださいね~」

「アキラ殿! これは一体! というか姫様になにを!」

 

 注射機を見たこと無いのか、慌てるアリシア。

 回復魔法と調合薬がある世界で注射は珍しいのだろうか?

 いや、錬金術があるのだから作られていてもおかしくないと思う。

 

 でもはっきりいって邪魔だから静かにしてほしい。

 

「ナミ~治療の邪魔だから取り押さえて~」

「はい、主様」

「ナ ナミ様!」

 

 ナミがアリシアを羽交い絞めにする。

 アリシアは少し赤面して嬉しそうだな。やっぱ百合か。

 

「じゃ、いきますよ~。」

 

 すぐに採血し、彼女はピクっと震えるが声を上げずに耐えた。

 無免許の俺がお医者さんごっこに興じているだろうと思うだろうが俺は真剣だ。

 どうか白い目で見ないでください。

 

「【ヒール】 はい、協力ありがとうございます~。

 この血液調べますので 今日のところは症状を押さえて、楽になるお薬だしておきますね食後と就寝前に飲んでください。

 このビンのコップ一杯分です。

 あ、もちろん苦いヤツではなく俺の特性ポーションですんで味は保証できますよ~」

 

 安心させるように、怖がらせないように、鋭い眼光を糸目にして緩和。

 患者を落ち着かせるように間延びした声で話す。

 患者を不安にさせず信頼を得るのも治療行為だそうだ。

 

「ふふ アキレウスさんは優秀な薬師でしたわね。」

「よく 間違われるんですけどアキラだよ。 

 まぁ趣味が高じてね~薬ッて苦いもんばっかだろ?

 だから甘い薬があれば子供でも飲めるし、冒険者も飲み易くなるからな。」

 

 功を奏したのか怯えられずに済んだ。

 流石は王女。

 いや、ナミと契約している為か?

 

「あら失礼しました。それではアキラさんと…私もアキラさんと同じで苦い薬は嫌いだわ。」

「良かったな。今日から美味しい薬が飲めるぞ。」

 

 最も、薬を多用するのは、俺の主義ではない。

 思いっきり笑い、上手い飯食べ足りして幸せに生きるのが万病の薬だ。

 

 クスクスと笑う王女。

 

「ふふふ なんだか変だわ。私、アキラさんと初めて会った気がしません。以前どこかでお会いしましたか?」

 

 そういえばいつの間にか敬語を使ってないな。

 なんでだろ?

 

「え?俺、今、口説かれてる? いや、初対面だけどもしかしたら前世であったのかもね。」

「うふふ でしたら前世は恋人か兄妹かしら?」

「さぁ 女王と下僕かもよw」

 

 軽く雑談をしながら鞄から薬瓶と飴玉を出す。

 

「はいよ。特製ポーションは食後に一杯、飲んでな。体力の回復と症状を抑えるから。飴玉はプレゼント。早く元気になるようにってね。

 私は、採血した血液から薬の開発に入るから翌朝また診察に来ますね。」

 

 もう少し、話したいが、そこはアリシアに任せる。

 そういうケアは今日、会ったばかりの強面より幼馴染がいいだろう。 

 俺の正体の事を勝手に話したりするだろう。

 治るかもしれない、治したいと患者が思うのも必要だろう。

 

 ナミの件は証拠さえ残さなければ如何とでもなる。

 

「行くぞナミ。」

「はい主様。」

 

 そう言って二人で与えられた研究室へ向かう。

 

 (よろしいのですか?)

 (これは俺のエゴだ。保身のために確実な方法を取らずにいるんだ。自分が嫌になってくる。)

 

 念話で悪態を吐く。

 精霊化すれば、千年前の力とキセキを体現し、因子を全て除去できる。

 そうなれば、もうごまかしは効かない。

 

 だが精霊化なしでも治療の構想はできている。

 要は体内にある因子を取り出し、拒絶反応を起こさせずに機能だけ残せばいい。

 

「手術の方針は決まった。 後はこの血液サンプルで実験しソレが有効であるかどうかだ。」

 

 ◆◆◆◆◆

 

 翌朝

 

 与えられた部屋に監視も刺客も来ることが無く、存分に研究できた。

 

 血液を調べ、実験の結果。

 構想通りの治療法が使えると分かった。

 

 となるとサッサと治療を行なう。

 

「手術?」

「ああ 姫ちゃんの症状だが、体内にある精霊因子が増殖し続けてるのが原因だ。

 体がそれを異物、毒物と認識して追い出そうとして、咳や魔力の欠乏といった症状が出てる。

 魔力や生命力を回復させるポーションを呑んでもその場しのぎだろう。

 かと言って因子を消滅させる光属性魔法は使えない。

 なら必要最低限の因子を体内に残し、残りの因子を体外に展開できるようにする。」

 

 ベラベラと話すが、少し分かりづらいのか首を傾げる姫ちゃん。

 本職じゃないから上手く、説明できないな。

 

「つまり病気の大半を体の外に追い出して、姫ちゃんの装飾品に閉じ込めて安全に精霊魔法が使えるようにする。」

 

  

 そして懐から赤い結晶を台座に据えた指輪を出す。

 昨日、採決した姫ちゃんの血を結晶化して指輪の台座に嵌めた。

 

 一見、赤紫の宝石の指輪だ。

 台座の底には小さい穴があいており指輪をはめると結晶部分が台座に触れる。

 装備者の体内の魔力と精霊因子が反応しそこを起点にして精霊魔法が使える。

 

「みてろ? 【闇纏】」

 

 指輪を嵌め、パワーワードを呟く。

 すると指輪が怪しく光りだし、俺の体に闇が纏われる。

 如何にも中二病患者が好きそうな闇のオーラが俺を包む。

 

「え?」

「――な!?」

「先ず先ずの魔法ですね。」

 

 指輪の効果に驚く二人。

 子孫の魔力の形に評価を下す先祖。

 

 そう、病気の毒素を取るのが困難なら武器に変えればいいじゃない。

 精霊因子の総量を減らさずに治療するなら病気にならない器に移し替えて、取り外しできるようにすればいい。

 

 アリシアの血の中の精霊因子が俺の魔力と結びついて精霊魔法となる。

 擬似的な精霊契約と同じだ。

 

 精霊を実体化するには契約者の魔力が必要。

 指輪に魔力を込める事で精霊魔法を発動させる。

 

 これが錬金術師の真骨頂。

 病という鉛を魔法という黄金へと錬成する。

 発想の勝利だね。

 

 そして、因子を外に出す方法だが。

 血液を全部抜くには人工心肺が必要だがこの世界にはそんな物は無いし俺にも作れない。

 

 光魔法で消滅しない程度に因子の部分を当てて追い出す。

 あらかじめ献血用、輸血パックを接続して其処に追い立てる。

 後は血液ごと因子を集めて加工すれば完成。

 致死量の精霊因子を体外の器である装備品、装飾品に封印する。

 

 一日に献血できる量は限られているので少しずつ因子と血液を集めて因子を加工する。

 少しづつだが、治療する度に強力な装備品が作れるのだ。

 

 血を媒介にして契約する黒魔法、精霊魔法も存在する。

 それを錬金術で武器化、装飾化して扱えれる礼装にかえて治療するのだ。

 

 くっくっく みたか! 

 俺はやったぞ! 

 これで大精霊の契約者だと言われてもシラを切り通せる!

 

 精々、世紀の錬金術師と謳われるだけだ。

 さぁ オペを開始する!



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スキル考察と今後の予定

ふふふ ミッションコンプリート! 精霊魔法を一切使わない治療に成功した!

 

 背中の翼の付け根、起点と言う名の因子の逃げ道を付け、光魔法を常に発する拘束具を付け、背中の起点に追いやり、そこから6枚羽根の翼に展開出来るようにした。 

 

 あとは定期的に採血した血液を錬金術と黒魔法で翼の器を作っておけばいい。

 

 さて、後は証拠を回収するべきだな。

 

 十字教が台頭して、光属性の大精霊を神、他の精霊を悪魔として扱い、それを封印、使役するための弱点を研鑽研究し精霊のプライベートを自動書記する魔道書(グリモア)が開発された。

 

 精霊の因子を用いて作られた魔道書で本自体が契約者の役目を担いその魔道書は精霊の名前、特徴、弱み等が記載される。

 

 光の大精霊の魔道書(グリモア)は聖書扱いされているが世に出回っているのは、支配者が都合のいいように書き換えた写本であり、原典は失われ、代わりに聖剣、聖具を媒体にしている。

 

 そのナミの魔道書が王宮にあるのなら俺を指名したのにも裏づけが取れる。

 

 ナミの霊破片を持っていた王家だ、魔道書を作っていないわけがない。 というかうちグリモアは何故か絵日記だが……認めたくないがアリシアが管理してる絵日記がグリモアなんだろう。

 

 俺がナミに名前を与え、新たな契約者になったからグリモアの所有権も俺に移り、文字は俺にしか読めない様になっているが挿絵が問題だ……秘密裏に回収し、ダミーとすり替えるか。バレるようなら認識阻害や催眠術、幻術のスキルの重ねがけをする。 まぁ俺を敵に回そうとはあのオッサン(国王)もしないだろうけど。

 

 王女の命の恩人に追求もそこまでしないだろうが、強行していくるならこの国を去るだけだ。

 

 

 まぁ王さんの思惑に乗ることもない、姫ちゃんの治療は問題無い、後は家庭教師と護衛の任務をしながら、俺に害をなす宰相派をからかいながら、城内の図書館の閲覧なり、研究なりして過ごすとしよう。

 

 

■■■■■

 

 昨日与えられた研究室に向いながら俺は異世界に帰る手段と固有スキル【魔改造】の可能性を考えている。

 

 人相の悪い俺が眉間に皺を寄せて考えてるもんだから、怖さに拍車がかかる。後ろにナミが付いていなかったら廊下ですれ違うたびにみんな怯えていただろうな。 グスン

 

 

 閑話休題

 

 

 帰還する鍵は魔法、スキル、古代文明だ。

 

古代魔法、固有スキル、古代文明の遺産に移動系のものを中心に探している。 ナミの神殿にあった転移装置、転移魔法、魔石、まだ全てを集めたわけではないが、これらを【魔改造】で性能を強化すればと考えている。

 

 今現在入ったダンジョンは死都と黄泉の入口の二つしか行っていない

 

 この国で有名なダンジョンは魔石坑、死都、魔の森、竜の墓場、王墓、黄泉の入口だ。

 

 この中で古代遺産、スキルの秘伝書などを探す黄泉の入口は完全に調べ上げたので、残り五つのダンジョンの探索を行う。

 

 この世界が地球に酷似しているから次元移動、時間移動、長距離瞬間移動、平行世界移動のどれかが必要になり、このいずれかを使えるとして、この世界の実態を知る必要がある……古代文明、過去を探すことで実態を調べることとする。

 

 固有スキル【魔改造】人、物、魔法の性能を操作できる能力、極端な話、そこらの村人Aを勇者にでき、魔王をスライムに変えることができるチート能力だ。

 

 只の掃除機が魔素を吸収する兵器【ばきゅ~む だいそ~ん】に改造された。

 

 只の石に【魔改造】で硬度を極限まで下げるとスライムみたいに柔らかくなる。

 

 またスキルを強化することもでき、【認識阻害】を魔改造することで、変身、透明化、ステータス隠蔽もでき、ギルドカードも俺のスキルを隠蔽、改竄することもできるため、俺の正確な能力を知る者はいない。

 

 【魔改造】のスキルと偵察、斥候職と全魔法扱えれる手札の多さが俺の武器だ。

当面は探索とアイテム発明に努め、この国を探索し終えれば、諸外国の歴史探索、遺産と術の回収だな。

 

「……主様」

 

「ああ わかってる」

 

宰相の息子が前方からお供の兵士を二人連れて、俺に向かって歩いてくる。 

 

初めてこの世界で出会ったチンピラ共を思い出すな。

 

……何故か彼らがカツアゲに成功するイメージが沸かなかったが。

 

さて彼らのこれから起きるであろう悲惨な未来を思って俺は彼らと対峙した。

 



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対峙

「やぁ 昨日ぶりだな、私の名前を知っているかね? 錬金術師(金食い虫)君?」

 

 年下の癖に、何だその口の聞き方は? 

相手は身分が上だからしゃあないが姫さんやアリシア、リンは敬語だったぞ彼女らを見習え!

 いや、本来、これ位がスタンダードかも知れん。

 それでも一応、あんた等の女神様の契約者かも(・・)という認識がある筈だが?

 

「……ええ 確か宰相の息子のシャルル殿下ですよね。確か国王の甥に当たりますね。」

「ああ、間違いないよ。王位継承権第3位ということも付け加えておきたまえ。泥棒猫くん?」

 

 金食い虫の次は泥棒猫か。

 なんか俺がヒモか間男みたいな扱いだなオイ。

 

 つか大臣が二位で王女が三位だろそんなに権力が欲しいか?

 あと、泥棒猫って普通、女性に使う言葉では?

 それに散々放蕩して女遊びに励んでるアンタに言われたくない。

 というか…言葉には本当、気をつけたほうがいい。

 

 ウン、ツッコミ所が多い。

 

 隣のナミは顔には出していないが、

 パス越しに彼女が怒っているのを感じる。

 

 コノ死に急ぎ君はキザなポーズをとる前に急いでここから逃げ出すべきだ。

 君の命は今、風前の灯だよ?

 

 と、いいますかナミさん?

 俺のことに関することだけ沸点が低すぎやしませんか?

 オイ!

 

「ああクラリス王女に私が婿入りする件ですか……

 国王の真意は計りかねますが私ごときを高く買っていただいて身に余る光栄ですね。」

 

 とりあえず、隣で噴火寸前の荒ぶる女神の溜飲を下げる為に皮肉で返す。

 

 ポッとでの俺に婚約者候補としての障害、

 しかも彼女の治療のために呼ばれた最近有名な術師が現れたら都合も悪いだろう。

 まぁ彼らから見たら王家を利用しようとする成り上がりを画策する虫に見えるのだろう。

 

 歴史と伝統を誇る貴族達には俺は心底目障りなやつだろうな。 

 多少気持ちは分からないでもないがな。

 

「ふん! 伯父上も困った方だ。彼女に最もふさわしい存在がここに居るのに。」

「全くですな」 

「その通りです殿下」

 

 後ろの護衛は太鼓持ちかゴマをする。

 彼らも大変だな。

 

「それで私に何かご用ですか?」

 

 あんたの名前も知っていたし、今のところ俺へのイヤミと愚痴しか聞いてないぞ?

 

「ああ、そうだ彼女の容態が心配でね。

 担当医の君に彼女と二人きりでの面会できるよう取り計らってもらおうと思ってね?」

 

 ホゥ? 

 彼女のことを曲がりなりにも心配していたのか。

 だが二人きりだと?

 このバカは嫁入り前の娘の部屋に野獣とふたりっきりなんてさせるとでも思ってんのか?

 しかも散々俺をコケにしておいてそれか?

 ふざけんなよゴラ!

 

 いや、落ち着け。

 本当に心配してツンデレっている可能性もある。

 実際、許可を取りに来ているんだ。

 野菜の星、猿の惑星出身のプライドの高い王子のツンデレと思えば許容できる。

 

「面会は許可できませんが、彼女の容態は落ち着いていますのでご安心を。

 あなたが心配していたとだけお伝えしておきます。」

 

「どうやら勘違いしているようだが是れはお願いではなく命令だ。

 逆らうと為にならんぞ?」

 

 あ、やっぱりバカだ。

 バカ王子だ。

 許可を貰いにきたとか行ってたのに命令になってるよ。

 

「私は義父(国王)から王女の治療を頼まれたのですよ。

 コレに反することは王命に反すること。

 今の発言は王への反逆ともとれますねぇ? 

 後、彼女の身を害する者を遠ざけるのは医者としても婚約者としても当然のことですよ?

 シャルル殿下?」

 

 お~怒ってる怒ってる。 プークスクス

 赤面して蟀谷がピクピクしてるね~ 

 ウケル、超ウケる~

 

「……どうあっても引かないか?」

「引く理由がアリマセンネェ~」

「フン、お前たちやってしまえ!」

 

 そう言って護衛の後ろに下がる馬鹿。

部下に任せるんかい!

 

 しかも、部下も宮殿内で抜剣か 

 つか俺を殺すとクラリスの治療が続けられないんだが?

 

「オイオイ 武器を持たない学者相手に抜剣か随分カッコイイねぇ

 プークスクス どうするんです?

 俺を殺すと姫様の治療ができないんですが?それにアンタらもタダじゃ済まないが?」

 

 今の俺、傍からみたら、スゲーむかつくんだろうなぁ

 

「フン 心配せずともお前如き詐欺師に王女の病が治せるものか、

 死体も証拠も残さんお前の助手も私の元で侍らして飼ってやるから心配するな。」

 

 おいおい知らないとはいえ相手はお前らが信仰している女神さまだよ~

 末代まで祟られるどころか即、殺されるぞ? 

 

 さて、このまま放置すれば、ナミがこの三人をブっ転がしかねないので、

 不本意ながら彼らを助ける為

 

 この馬鹿にはちょっと地獄の苦しみを味あわせますか。

 

 それに、このバカは俺の前で口にしてはならんことを言ったな。

 

 さ~て一応 監視の目(・・・・)もあるし、

 強いとこあんま見せたくなかったんだよな~ ハァ

 一瞬で相手の懐に潜り込み【源呼吸】で強化した手刀で取り巻きたちの剣を叩き斬り、

 

 即座に元の位置に戻る。

 

「プークスクス そんな剣で俺を殺せるの? 器用ですなぁ」

「な! 精霊よ! 我の命に従い」

 

 精霊魔法かよ。

 こんなやつに従う精霊もかわいそうだなぁ。

 

「させんよ」

 

 大精霊が此方についている以上、精霊が彼に力を貸すことは無い。

 それだと俺が大精霊の契約者である決定的証拠になりかねんので……別の手段を使う。

 瞬時に護衛達をすり抜けバカの鳩尾に【拳闘術】の【ボディーブロー】を叩き込む。

 

 ズドン!

 うん!拳を打ち込んで出る擬音じゃないね☆彡 

 

 ギリギリ死なないよう気絶しないように苦しみを感じさせる絶妙な一撃だ。 

 衝撃を逃がさず体内に残す弩Sの貴公子のみが使える奥義だね。

 

「いかに優れた魔術師といえど呪文詠唱ができなければどうしようもあるまい?」

「が、げぇ」

 

 バカが崩れ落ち、腹を押さえていろいろ吐き出す。

 うわ~胃酸くせ~。

 

「貴様!」

「よくも殿下を」

 

 おいおいアンタらは馬鹿に無理やり従わせられたと思って武器破壊で済ませてやったのに向かってくるか? 

 

 力量の差に気づけよ。 

 ところで俺はさっきから何回オイオイ言ったり思ったりしたかな?

 暇があったら誰か数えてくれ。

 

「あべし!」

「ヒデブ!!」

 

 まぁ死なない程度にボコにする。

 

「さて、シアちゃん? このバカ共さっさと拘束してね~。」

「やはり気づいていましたか。(シアちゃん?)」

 

 物陰からアリシアがあらわれる。

 

「全く俺が襲われてんのに監視決め込むんだもん お兄さんびっくり。」

「あなたの豹変に私も驚きですが…

 いえ 申し訳ありません。

 このバカの先ほどの発言をしっかり聞く必要があったので。

 本当に危なかったら止めに入るつもりでした。

 とにかく今は彼らを拘束し牢屋にでも放り込みます。」

 

 手際よく、どこらか出した縄と手械で馬鹿三人を拘束するアリシア。

 ふむ……これだけだとチト物足りない。

 

 

「あ、こいつらの顔に落書きしていい?」

 

 定番は抑えておくべきだろう。

 さ~て オーソドックスに額に肉でも書くかな?

 



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エピローグ 任務完了

「くくく やるな~婿殿」

「いえ、患者の身と身内の安全を守ろうとしたまでです。」

 

 つか、婿って言うな。 

 

 あの後、馬鹿どもを縛り上げて顔に落書きして牢にぶち込みました。

 それで俺、ナミ、シアが王さんと宰相の前で事情説明中です。

 まぁ証人も居ますし? 俺に落ち度もないっすからね~

 

「で、宰相よ息子の不始末だがどう付ける?」

「……暫く牢屋で頭を冷やさせ、2ヶ月は登城を自粛させます。

 愚息に身の程を知らしめるべきでしょう……私は甘いですかな?陛下。」

 

 ほほう、愚息は兎も角、宰相はマトモな人らしい。 

 妥当なところだろう。

 自分達が信仰する女神に狼藉を働こうとしたというのを度外視すればだが。

 

「ふふふ まぁこの事を公にしても記録には残さない、これでお前の面子とやらは保たれるであろうよ。後は当事者の彼らが其れを許すかだが。」

「俺はそれで構いませんよ、患者が治るまで守るのも医者の仕事ですし、彼の自粛が解けるまでには姫様の治療も終わります。」

「ん? 待て 治療が終わるとはもしや……」

 

「アリシア殿には私と姫様から口止めしていたのですが、今回の事を未然に防ぐためにも申し上げましょう。

 彼女の体を蝕んでいた精霊因子による暴走。

 便宜的に精霊疾患の治療の目処が立ちました。

 精霊因子を除去せず、錬金術と白魔法による治療で制御できるようにしていますので以前より調子も上がります。

 王妃様よりも長生きするようになりますよ?彼女は。」

 

「誠か!? 是れは朗報であるな! しかしそれではシャルルも早まったことをしたな。」

 

 彼も頭に血が上っていたので聞いていなかったんでしょうね~

 早死するから今のうちに手篭めにってとこか?

 ……もう少し痛めつけても良かったな。

 

「それと、素手で剣を叩き折ったと聞いたが……」

「魔術師が肉体を鍛えているのは盲点でしょうから」

「成程……グレアムを思い出すな。」

 

 王室でも知れ渡るのかあの神父の所業は。

 いや、リィーンさんの紹介だったし、王室が知ってて当然か。

 

「では引き続き、娘の治療の続きを頼む、それでは褒美を取らそう何が良い?」

「はいそれでは……」

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 数日後 そこには元気に中庭で走り回る姫様とそれを追いかける従者のアリシアの姿があった。

 

 俺は姫様に自分が新しい婚約者であると伝えていない。

 国王に彼女に婚約者であることを伏せてもらったのだ。

 白紙にしたかったのが本音だが、彼女に余計な虫が付かない為の配慮と理由をつけて国王も諦めていないようだ。 

 

 俺は彼女に兄のように好かれ、慕われるようになった。

 王宮の仕事が終わったあともチョクチョク忍び込んで会いに行っている。

 

 今は国内のあらゆる施設のフリーパスと免税、ギルドの徴兵義務の解除を申請してもらいその書状を一筆してもらった。

 役職は国家監査官としての役職を得ているが、国からの強制力は無い気軽な役職である。

 仕事内容も水戸黄門的な仕事だ。

 

 彼女が精霊因子を完全に制御出来るようになった以上、婿探しはひとまず見送りになっている。

 そうそうバカ息子は暫く登城を自粛している。

 仮に城に戻ってこれても今の彼女には手出しできないし国王やアリシアがそれを許さないだろう。

 

「主様、これからどうします?」

「いつもと変わらん、帰還方法を探し、故郷に帰る。」

「そうですか、私もお供します。」

 

「そうか……それと自分の子孫達にあった感想は? 王女なんかお前によく似てたろ?」 

「孫や娘というより妹ですね 私の体感時間だと気づいたら千年も経ってたんですから。」

 

「そりゃそうか 話は変わるんだが、城を探検してたらこんなものを見つけてな。」

 

 懐からグリモアを出す。

 それを見た瞬間、ナミの顔が一気に朱に染まる。

 

「あ”ぁぁぁ!! そ、それは!!」

「そ。お前のグリモアです。まぁ今じゃ日記だな」

 

 因みに比喩では無く、タイトルは「なみのにっき」。

 何の冗談だ?

 グリモアは悪魔や高位精霊の取扱説明書。

 対象の弱点、能力、秘密諸々が自動で書かれている。

 

 乙女の秘密が満載という点では日記と表現するのも間違いではない。

 ただ、一言、言いたい。

 ふざけてるのか?

 

「か 返してください! 返して! まさか読んでないでしょうね!」

「おっと 流石にそれは俺の流儀に反するから読んじゃいないよ。 ホラ」

 

 この手の事で意地悪をしても関係が悪化するだけなので直ぐ返す。

 

「う”~~~」

 

 日記を受け取ると声を低くして唸るナミ。

 あ、涙目だ。

 本当に眼を通していないのだら、許して欲しい。

 

「……(お兄様のバカ)」

 

 何を呟いたのか知らないが、パスからは羞恥と安堵が感じられるが敵意は感じないので大丈夫だろう。

 

「さ~てこれで俺達の正体を知る者は居なくなったし、証拠も我が手中だ。いよいよ本格的に攻略に乗り出すか!」

 

 この城での目的も果たした。

 そう、俺達の戦いはここからだ!

 

 未完!!!!

 

 

「いやまだまだ続くけどな!」

 



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死都攻略①

 ~死都~ 

 同心円状に作られた旧・ガリア要塞都市

 

 三重の壁に囲まれたガリアの拠点である。

 魔物の迎撃首都でもあったが、千年前の戦いで陥落。

 一説では当時の五英雄と現人神との戦いが原因という言われもある。

 

 魔力汚染濃度が高い為、死体は魔物に、遺物は強力な魔法道具に代わる。

 ダンジョン化した廃墟である。

 

 現在、外側の防壁、通称【三層】は攻略中。

 濃度の高いミストによりモンスターは凶暴・活性化する傾向アリ

 難易度Bランクのダンジョン。

 

 そして、本日、それに挑む15人の戦士たちがいた!

 

 蛇女の尻尾 ランクD 

ジャック(重戦士)

ギル(シーフ)

ラルゴ(黒魔法使い)

トビ(パシリw)

 

 猫の目 ランクC+  

 

 ミケラン(シーフ)

アーニャ(魔導弓兵)

ナディア(重戦士)

 

 銀狼の牙 ランクB- 

 

 ガーコルト(剣士)

アニ(魔女)

 

 妖精の涙 ランクB 

 

 ノエル(精霊魔導剣士)

 カサンドラ(黒魔法使い)

 テファニア(白魔法使い)

 

 暗部 ランクA 

 リン(黒魔法剣士)

 

 自由の槍 ランクA 

 

 俺(賢者)

 ナミ(精霊魔導士)

 

 このメンツで死都の大規模攻略に打って出る。

 

「はい! 本日はお集まりいただきありがとうございます。本日の作戦を立案しました。自由の槍のチームリーダーのアキラです。」

 

 拍車喝采で迎えられる。

 うん大学のクラブを思い出すね。

 

「今回の仕事は死都の第1層、商業区、居住区の奪還作戦の前哨戦であり南側第1層居住区のゾンビどもを一掃することである。」

 

 その言葉に少々動揺が走る。

 三層からなる死都も第1層だけでB-の驚異のゾンビを一掃するのは容易なことではない。

 まして最近その驚異に晒された蛇女の尻尾と救助作戦に参加した経験がる。

 銀狼の牙はその驚異を身をもって知っている。

 

「だが心配しなくてもいい。我に秘策あり。」

 

 ドヤ顔をする俺。

 プレゼンは未だ始まったばかりだ。

 

「魔物の対処だけどゾンビ、ゾンビ犬、紫オーラゾンビ。是等の習性は人間の捕食による殺害と感染による繁殖。

 こいつらはそろってAHOだな。食欲のみで動く。」

 

 つまり行動がほぼ、ワンパターンだ。

 どうにでも料理出来る。

 

「この習性を利用し、壁上に待機してゾンビを壁際に誘導、一箇所に固まったところを火力の高い魔法や爆弾の投下で一斉駆除することだ。」

 

 直接戦闘が無いことが分かり、Cランク以下の面々の表情に安堵が浮かぶ。

 うん、俺もあんな臭い奴らには極力近づきたくない。

 

「直接戦闘がないのは分かったが、どうやって誘導するんだ?」

「壁上に突っ立てるだけじゃ誘導はできないよな?」

 

 うん、当然の疑問だ。 

 

「誘導は各チームから精鋭特に逃げ足の速いものを選抜し、自身を餌に所定の位置まで誘導する。」

「おいおい囮ってことかよ下手すりゃ死ぬぜ?」

 

 ガコライが周りを見渡して質問する。

 この心配も最もだ。

 だが、俺には秘策があると、既に宣言してある。

 

「心配ない コレを使う。」

 

 そう言って赤い薬瓶を取り出す。

 

「こいつは魔の森に群生する食人花の花粉と動物の血液を混ぜて作った誘引性の高い煙玉だ。」

「こいつを地面に叩きつければ、その臭いを人間の血液と勘違いして集まってくる。要するに撒き餌だ。」

 

 血液中に含まれるフェロモンと魔力を抽出して創り出した秘薬だ。

 つまり任意で魔物を惹きつける。

 

 

「つまり逃げる時の囮にも一網打尽にできる餌にできる代物ってわけかにゃ?」

 

 猫耳ちゃんは理解が早くて助かる。

 

「ああ、ゾンビどもは視力はほぼ無いし主に嗅覚、聴覚を頼りに本能で標的に襲いかかる。

 この煙玉を使って誘導して所定の壁上に誘い込み一気に狩る。」

 

 すると今度はトビが挙手して質問する。 

 

「飛竜を使って空から攻撃するのはダメなんすか?」

「トビ ソレができるのならとうの昔にやってる。 

 死都のような魔力汚染によって濃密なミストと怨念が渦巻いて一種の結界のようになってるんだ。

 比較的ミストの薄い壁上からの攻撃でないと有効な攻撃はできないんだ。」

「す、すいません。不勉強で」

「いや、いい質問だ。俺もその質問をリィーンにして呆れられた。」

 

 ドッと笑いが起きる

 上手く場を明るく出来た。

 

「んん! このように質問は随時受け付ける」

「レベルの低いものが混じっているのは?」

 

 今度は妖精の涙のリーダーが質問をしてきた。

 ダークエルフのノエル。

 

 冒険者の仲でも屈指の剣士が辛辣な意見をのべる。

 おい、明るくなった場でそういう事は言わない。

 空気を呼んで! お願い!!

 

 や、分かってる。

 彼女はかなりの実力者でホントは優しいんだけど言語能力が残念なんですよ。

 今のセリフを補完するならこうだな。

 

「あ~今の彼女の言葉を翻訳します。

『この危険な作戦にレベルの低い物達を同行させては危ないでしょう?なぜ参加させるのですか?』

 と彼女は心配しています。誤解しないで上げてください。」

 

 彼女なりに心配しての意見だったが、彼女の無表情勝つ抑揚のない声で言われると誤解を生む。

 

 場違いな雑魚は失せろ

 足でまといだ消えろ!

 

 この様に取られる。

 

 実際、蛇女の尻尾の面々は自分たちが場違いだという事に肩身の狭い思いをしてる。

 

「彼らを勧誘したのは俺です。 

 今回の任務はギルド内の戦力の底上げも目的にありますし、彼らならこの仕事をやり通せると思って参加させました。

 チーム構成も今回の班の中でもバランスがいいですし仕事が終わった時は化けるかもしれません。 

 それに是れは前哨戦にして試験的に行う作戦です。

 高レベルのものだけが成功できるのではなく、誰にでも出来るようにしなければ戦力の底上げにもなりませんし、

 この死都が絶好の狩場へと変わるでしょう。」

 

 精一杯、フォローする。

 ぶっちゃけ概念崩壊の法則を流出すればもっと楽にできるが今回は自粛する。

 

 簡単に真似できるから故、急激に力をつけて増長した馬鹿が出ないとも限らん。

 そういう意味では蛇女の尻尾は一度死にかけているし、自分の身の程も十分に身をもって知った。

 増長するような馬鹿ではないのでこの作戦に参加させたのだ。 

 

 ……そこまで教えないし面倒も見ないけど。

 

「この作戦が成功した時、蛇女の尻尾の創設者の鮮血の料理人 アデーレ女史に顔向けできる立派な戦士たちが誕生しますよ。」

「成程 理解した。」 

「済まねぇ アキレウスの旦那 みんな 迷惑かける。」

 

 蛇女の尻尾の面々が頭を下げる。

 別にいいのに。

 俺は効率とかを考えて彼らを選んでる。

 謝る必要は無い。

 

「なんのことですか? 俺はこの作戦を成功させるためにベストメンバーを揃えたんですよ?

 もっと自信持ってください。

 ゲルマニアに嫁いだ先代のリーダーにいい武勇伝を聞かせれるじゃないですか。」

 

 彼らが身の丈に合わない依頼を受け続けたのも、鮮血のアデーレ、撲殺神父のグレアム神父に並ぶ実力者に恥じぬように努めたのが原因らしい

 伸び悩んで腐っていったゆえにあの事件を起こしたんだろう。

 それで俺を囮や盾にしようとするのはおかしいし、納得もいかんが、俺は寛大な男だ。

 今回の作戦でチャラにしよう。

 

 それにこの作戦は彼らに実力と自信、誇りを取り戻させるのも目的の1つだったりする。

 

「……アキラこのメンバーの火力で倒しきれないと思うんだけど?」

「アニ 心配はいらない、所定の位置に大量の罠と油、黒色火薬の詰めた樽爆弾を設置して火力をカバーする。

 魔力回復薬の新作も俺が用意している。

 今回はあくまで予行演習だからキリのいいところで引き上げだな。

 ある程度、成果を上げることが目的だ。」

 

 俺の言葉にアニも納得する。

 

「わかった誘導班はどうする。」 

「俺、トビ、ミケラン、ガーコルト、ノエルの5人だ」

「あら 私は連れて行ってくれなのですか?」

 

 リンが意外そうに聞く。

 確かに威力偵察、斥候能力は彼女が抜きん出てる。

 彼女を外すのは俺の保身だったりする。

 国との繋がりが強い彼女には出来る限り手札を隠しておきたい。

 

 ―もう遅い気もするが。

 

「あなたが同行すると本気が出せませんから。」

「ふふふ それは残念です アキラさんの雄姿を間近で拝見したかったのに。」

「あっはっはっは」

 

 まぁ影魔法の影分身と使い魔の大隊編成の人海戦術で殲滅できるし他にも開発武器はたくさんある。

 最近開発した【複製】スキルで製作したアイテムや【ばきゅ~む だいそ~ん】【クレイモア地雷】【銃】もあるがここでは使わない。

  

「それで、質問は以上かな? ……ないようなら作戦、役割、装備を確認次第、死都奪還作戦の前哨戦を行う!」

 

 さぁゾンビがりの始まりだ。

 



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死都攻略②

 壁沿いに移動しながら遠くに見えるゾンビを投石で挑発して引き寄せる。

 危なくなれば煙玉を放り、かく乱する。

 これを繰り返していけば日本の通勤ラッシュの如くゾンビが集まる。 

 

「紫だ!」

 

 魔力活性化固体。

 

 ゲームなら色違いの強力な魔物であろう紫色の魔力を纏う魔物が現われる。

 素早い動きの紫オーラのモンスターと犬のみ戦闘が必要だ。

 

 ガーコルトの叫びに自分の影から槍を召喚する。

 そして群れから抜け出し、走って襲ってくるゾンビ目掛けて投擲する。

 放たれた槍は霧を切り裂きながら黒い閃光となって紫目掛けて飛んでいく。

 

 そして刺さると同時に紫は渦巻くようにその肢体を四散させ消滅した。

 

「す、凄すぎるにゃ 最早、投槍の威力じゃにゃいにゃ」

「ミケラン、訛りがでてる。」

「にゃ! す、すごい腕ですね、投槍の域を超えています。」

「流石兄貴っす。」

「おいおい 前は片手剣か短剣だったろ。 ソレがお前の切り札か?」

 

 紫を容易に倒し、未だ誰一人負傷していない為、全員落ち着いたものである。

 この分だとゾンビがいくら沸こうがそうそう、混乱する事は無いだろう。

 

「もう少し引きつけよう、背後の団体さんは付いてこれてるか?」

「おいおい、あんま俺達を舐めるなよ。」

「ルーキーに心配されてちゃ、あちきらもおしまいにゃ。」

 

 そうだな。彼らは俺の何倍もの修羅場を潜ってきたんだ。

 心配は無用か。

 

「わかった。紫かゾンビ犬がきたら赤玉投げて足止めしてくれ。俺とノエルで狩っていく。

 ガーコルトとミケランは周囲の索敵を…トビは赤玉を投げれるよう準備しておくように。」

 

 こうして外壁を一周しながら散発的に黒魔法や挑発、投石、赤玉を使って注意を惹きここまで集めたのだ。 

 偶に勢いよく走ってくるゾンビ犬と紫は俺とノエルが狩っていく。

 

 俺の投擲とノエルの高速で振り抜かれる大剣を超えるゾンビはいない。

 

 だが、この人数ではこれだけ惹きつけるのがが精一杯だな。

 これ以上は、リスクが高くなる。

 

 今は高火力のメンバーがいるが保険として誘導班には必要だ。

 今後の課題は攻撃力関係なく、確実に誘導する為のアイテムが必要だ。

 この当たりも改善点アリだな。 

 

「よし、所定の場所まで戻ろう。楽しい狩りの始まりだな」

 

 俺の合図に全員、頷き壁まで引き返した。

 此処からは完全に狩りというより作業という感じだな。 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 それぞれ高さ20メートルの壁上をロープで引き上げてもらったり、

 魔法の浮遊や跳躍で壁上に上り他のメンバーと合流する。 

 眼下には俺たちを喰おうと壁際に集まるゾンビども。

 

「お待たせ、何か変わったことは?」

「特にありません。やはり、ある程度注意を引かないと数は集まりませんね。それでも雑魚がチラホラきましたので少々移動して、投擲武器、魔法で仕留めましたね。」

 

 やはり、壁上に居ても多少、魔物は集まるか。

 遠距離攻撃が高いメンバーは壁上に残って誘導班が上る際に邪魔になる魔物を掃討してもらった。

 

 部隊を残していて正解だったな。

 

「ではみんな壁の下に落ちないよう命綱をしっかり身に付けて下さい。鋼鉄のロープを練成していますから切れないとは思います。」

 

 事前に【錬金術】と土魔法を習得したお陰でより完成度の高い鋼鉄のロープを錬成した。

 レベルの高い人間ならロープの重さは苦にもならないし、耐える事もできる。

 

 全員が装着したのを確認し、作戦開始の号令をかける。 

 

「それでは始めましょうか。」

 

 ◆◆◆◆◆

 

 合図と共に、壁の下に集まったゾンビ共目掛けて攻撃が放たれる。

 

 魔法、火矢、松明が地面に設置した樽爆弾、火薬、油に引火しゾンビの大群を焼き払う。

 爆風で引き飛び、炎に包まれ、次々引火しては魔素となって消えていくゾンビ共。

 

 壁上にいる俺たちに彼らの手は届かず完全にハメ殺し状態である。

 

 ははっ見ろ。ゾンビがゴミのようだ。

 ヒャッハー!!汚物は消毒だーー!!

 

 ……ゴホン

 

 これが策。

 ゾンビに知性が無く群れで行動するのが脅威なら手の届かない場所に待機。

 フェロモンを含んだ赤玉で誘引。

 爆薬を大量に容易し、遠距離から一網打尽にする。

 

 半時もしない内に視界に映る全てのゾンビは魔素を吐き出し、

 灰となって消え壁上の俺たちのレベルを向上させる。

 

 特にDランクの蛇女の尻尾の面々のレベルを大幅に上がっていくのを【透視】で確認出来る。

 

 ゾンビが灰と魔素となって消えたのを確認し、地上へと降りる。

 

「作戦は成功です。暫くこの南居住区は空白地帯になりますのでアイテムの回収を2チーム毎に組んで回収しましょう。

 まだ釣りきれなく溢れた魔物もいるかもしれないので慎重にお願いします。」

 

 そうして灰になった山から装備品を回収、無人の居住区のアイテム探索に入る。

 アレだけミストに包まれていたのに今は南の居住区は霧が晴れ切っている。

 この分なら暫く魔物は出てこないだろう。

 

 探索の結果だが……

 参加したメンバー全員が嬉しい悲鳴を上げたのは言うまでも無い。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 探索が終わり、ギルドに戻り祝勝式を上げる一団。

 豪華な料理と酒がテーブルに並び、みんなが杯を片手に俺に注目している。

 

 

 アイテムを回収し終わりホクホク顔の一団。

 無表情のノエルやアニも機嫌がいいのか表情が緩んでいる。

 かなり高額の臨時収入だ、遊びに使うも装備に当ててもお釣りがくるのだ笑いが止まらないだろう。

 

「収穫は一昔前の金貨、銀貨に魔法アイテム、冒険者の遺品でしたね。

 貨幣は現代と違い質がいいので表示されている金額の10倍はしますね。」

 

 とはリィーンの弁。

 

「みなさんお疲れさまでした。 誰ひとりかけることなくこの作戦を完了しよかったと俺も安心しました。 近いうちに今回の反省点を考慮して大規模の部隊編成して総攻撃を掛けるでしょうが第1層の外周を奪還する為に第2層に通じるゲートを封鎖するために土属性魔法か錬金術の【大地隆起】で塞ぎこちらの陣地を増やし奪還していきます。 俺たちの戦いはこれからですが一先ず今晩は、この作戦の成功と勝利を祝いましょう! 乾杯!」

 

「「「「乾杯!」」」」

 

 この一ヶ月後 第1層は完全に解放される。

 1年半後 士官候補生、国軍、ギルドの概念崩壊の法則を駆使し、死都から魔物は消え去った。

 

 死都の名前がアキレウスシティと変わるのだが……それはまた、別の話。

 



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忍び寄る見えざる手

 自由の槍

 徴兵義務の免除、国内のあらゆる施設、ダンジョンのフリーパスとアイテムの独占販売権を有する組織。

 

 表向きは王女の治療で、得た特権。

 真相は黄泉の入口の攻略及びナミとの契約による報酬である。

 

 俺が欲したの徴兵義務の免除だ。

 戦争は俺に現代日本に生きた俺の倫理観からタブーだ。

 

 この世界に来て半年。地盤を固めて、本腰をいれての攻略にかかり、

 先月は死都をギルドの大部隊と俺たちで死都の大一層を開放した。

 

 次は王墓か魔の森の攻略に乗り出し、異世界帰還のスキルの手がかりを探す。

 もしかしたら遺跡に俺と同じ境遇の人物が残した物もあるかも知れない。

 

 この世界は異世界人、それも日本人が残したと思われる文化を感じるのだ。

 服屋では現代にあるような服や水着。

 子供達が遊んでいるサッカーの様な玉遊び

 

 帰る手がかりはある。

 そう確信し、軍資金もレベルも手に入れた。 

 後は世界を巡り帰還方法を見つけるだけ。

 

 全ては順調だった。

 しかし転機という物は誰しも訪れる。

 

 俺に異世界での転機は、家の前に男が倒れていた。

 ブリキのタライを頭にぶつけて。

 この間抜けな男との出会いが、本格的にこの異世界を攻略する事になるとは俺は思いもしなかった。

 

 ◆◆◆◆◆

 

「いやー痛かったわ~。まさかブリキのタライが落ちてくるとは……

 ああ自己紹介せなな!自分は田中・ヨシツグや よろしゅうな! 渡辺君!」

 

 関西弁である。

 つまり日本人、俺と同郷の人物なのだろう。

 だが俺の観察眼とナミの目がこいつは人間ではなく、人形であると頭に訴えている。

 

 人間離れした整った顔。

 ロボットの不気味の谷を彷彿とさせる顔立ちが目の前の男の印象だ。

 

「それで? 同郷の者に会えたのは嬉しいが、その体は?」

「ああ、これ? スキルで作った人形や。

 本体は花粉症でな~部屋から出られへんから、スキルで作った端末や!

 オンラインゲームみたいに美形のアバターつくろ思てつくってんけど、ちょおやりすぎても~てん。」

 

 同郷の日本人がこの世界に来ていることに嬉しくもあったのだが、がっかりした。 

 

 なぜ人形師で男の人形を作る?

 ローゼンメイデンでも作ってろよ!

 

 ……いや、落ち着け。

 国どころか、街から出る前に手がかりが自分の方から来たのだ。

 少々、落ち着きを無くしているな。

 

「いや~このスキルが結構使えてな? 端末を仰山、量産して戦わせて得た経験値や魔素、情報が自分とこ届くんや。

 

 せやから人海戦術でゲーム感覚かつ効率的にレベル上がってな~。

 そんで次いでに世界中に端末配置して情報収集してたら君を見つけてな?

 こら挨拶せなアカン思てここまで来たんやけどな?

 まさか空からブリキのタライが降ってくるとは思わんかったわ。

 避けることも出来てんけど

 関西の血が逃げたららあかんって騒いでもうたわ~

 正に!!俺の弱点を的確に突くトラップやったは!! さては君……プロやな?」

 

 よく喋る奴だなホント。 

 

「情報収集というとやはり帰還方法を?」

「ん~? ちゃうけど?

 自分は美人のおネェちゃんやこれから美人になるロリの子を探しにガリアに来たんや。

 自分この世界を気に入ったからここで住もかと思ってんねんけど。

 どうやら君は違うようやね?超人みたいな力身に付けてんのに。」

 

 当てが外れた。

 そうかこういう考え方を持つ奴もいるのか。

 異世界に行きたいという願望を持つ奴もいるだろう。

 彼は望郷よりこの世界での永住という選択を取ったのだろう。

 

「俺は、帰りたい。そして神隠しの様な異世界に迷いこむ原因を突き止める。

 誰もがこの世界に馴染める訳では無い以上、

 他にも帰りたいと願う人間が迷い込んだ時の為に帰還方法を探す。」

 

 同郷のものを見つけた所為だろうか

 いつもより雄弁になっているな。

 目の前の人形の態度が少し、癇に障ったのも原因かも知れない。

 

「この世界への訪問が事故なのか、それとも召喚という形の営利誘拐なのかは知らない!

 どちらにしても原因を突き止め、この世界の謎を解き明かし、後者なら召喚者をぶん殴る!

 これは家族を友を恋人を全て奪うような所業なんだ!

 相手がこの世界の最強の魔法使いだろうが、神だろうが、宇宙人だろうが絶対にぶん殴る!絶対にだ!」

 

 呆気にとられる田中とナミ

 

 ひとしきり喋って俺も落ち着いてきたところで田中が口を開いた。

 

「ははは なんやちょっと冷めた感じの男やと思ってんけどちゃうみたいやな。

 悪い悪い、渡辺君の意見もようわかるわ。

 そらぁ。もしこの世界にきたのが誘拐やったら俺かて怒るわな。そん時は協力するわ。」

 

 訂正、コイツは軽い奴だが、悪い奴では無い。

 

「いや、俺も少々熱くなったな。それで俺たち以外にもやはり地球人はいるのか?」

 

 懸念事項がある 2度あることはって奴だ。

 

「ああ おるで?全員半年前から各国にソレらしいのが俺らを除いて数人見つけたわ。」

 

 やはり、居るのか。

 だとしたら彼らと合流して帰還を希望するのなら一緒に協力しよう。

 

 だが、次の田中の言葉が俺を凍りつかせた。

 

「どれも各国がその存在を秘匿しとるけどな? 皆、俺らとは桁違いのバケモンになっとるわ。」

 

 国が秘匿、俺達より強力な存在?

 不穏なワードが次々へと出てくる中、俺の中で最悪の事態が浮かび上がってくる。

 

「この世界に来た誤差はあれど大体、時期が一致しているのに。

 各国ってことは一国毎にバラバラに異世界に現れたってことか?それにケタ違いの化け物って。」

 

 

 

「順に話そうか……ロマリア、ポルトガ、ブリタニア、シン、ルーシ、イシス、ガリアの7国に一人ずつ異世界人がおる。

 ガリアは自分で、イシスがワイやな。」

 

 俺達以外に5人、異世界人がいるのか。

 しかし、国外にそれぞれ一人ずつ。 

 ……偶然では無いのだろう。

 

「他の5人やけどな固有スキルが半端ない。

 個人の趣味志向や生い立ちが反映される観たいやけど他の5人は完全に戦闘向けのスキルや。」

 

 教師としての能力に【魔改造】スキルが入るのならまぁ納得はできるな。

 職業が医者で趣味が人形作成、ネトゲだった田中もそれに準じた固有スキルがあるらしい。

 というかその話振りだと三つも取得してるのか?

 

 もしかして一つだけって俺だけか?

 納得いかないが、続きを促す。

 

 田中は指を折りながら他の5人の異世界に来てからの経歴や能力を話し出す。

 

「ポルトガに居るのは海賊と海の魔物を相手取るやっちゃな。

 新型の銃、大砲、高速船、羅針盤を開発し海戦では無敵を誇る艦隊 

 海の義賊ハイブリッジ海賊団船長 高橋・ワタル。」

 

「ブリタニアに彗星の如く現われた悪魔の大軍を指揮する“悪魔使い”

 普段は黒いローブに白い仮面を付けてるので、顔、性別、名前はハッキリしとらん。

 せやけど俺等と同郷と見てええ。

 ゲームやアニメで見たようなこの世界には存在せぇへん幻獣を召喚しとった。

 戦闘力も半端やあらへん。

 ハイブリッジ海賊団を唯一退けた英雄やクラーケンを召喚して撤退させたらしいから召喚士タイプやな。」

 

「じゃあ無敵じゃねーじゃん。」

「ああ公式には突然の津波による災害や言われとる。」

 

 ああそれなら誤魔化しも効くかな?

 災害級の召喚獣を使えると公表しないとならないからか。

 

 双方にとって公にするのはマイナスになるわけだ。

 

「続けるで?ルーシは大男やな。

 鎧の様な筋肉だけども厄介やねんけど、駆動鎧(パワードスーツ)を纏って戦うことから、鉄人呼ばれとる。

 純粋な身体能力なら俺らの中でもトップと違うかな? 

 因みにこいつも悪魔使いに砂を付けられとる。」

 

 強いのなブリタニアの召喚士。

 確かにアイアンマンではゴジラは倒せないだろうしな。

 

「ロマリアには勇者とか言われる聖人が現れたらしい。

 なんか4ヶ月前に聖剣の封印が急に解けたとかで、騒いどる。

 光の大精霊の加護を受けて、魔物退治、悪人退治と戦闘能力とカリスマで急遽力をつけて来た高校生の男やな。」

 

 ―こいつはガチの宗教国家におるから関わりた無い。

 そう田中は呟く。

 

 確かに手が出しづらい。

 既に英雄として地位を確立しているし国は勇者を手放さないだろう。

 帰郷を望むなら助けてやりたい。

 

「そしてシンに戦女神と呼ばれる最強のお嬢ちゃんやな。神業めいた武術に絶世の美女。

 すべてを破壊し尽くす青い炎を放つことから、蒼炎の戦女神って呼ばれとる。

 多分この子は火の大精霊と契約しとるんちゃうかな。この娘は逆に国を則って皇帝になってるわ。

 それに自分の配下も一騎当千級の猛者がそろとっるわ。」

 

 すげぇ 勇者とは逆に国すら支配下に置いたのか。

 しかも俺と同じく大精霊の契約者。

 それ程のポテンシャルをナミも備えているのか?

 

「その情報網には脱帽するな。

 俺は国内の遺跡探索だけに目を向けてた自分が恥ずかしいよ。」

 

 うん、同じ立場にいながらやってる事がせせこましく感じる。

 バイトしていた自分が恥ずかしい。

 

 田中にしたってここまで他国の事を入念に調べているのだ。

 俺、何してんだろ。

 ゾンビ相手にヒャッハーしてました。

 

 

「そら自分の端末使うてんねんから当然やろ

 ……まぁ連中の意図は分からんけど、それぞれの国で上手いことやってたけど最近きな臭くなってきてるで?

 シンの女帝になった子がゲルマニアとルーシに攻め込む準備しとるんやからな。」

 

「おいおい穏やかじゃないな、正当防衛どこいった?」

 

 完全に侵略国家と化してる。それとも先制的自衛権か?

 どちらにせよ、絶対、関わらないようにしよう。

 フラグも建てない。

 絶対にだ。

 

「いや正当防衛らしいで? 

 シンの彼女は絶世の美女でな?

 なんとか手に入れようとしてきた権力者を返り討ちにしていく過程で、女帝にまで上り詰めたんや。

 ゲルマニアの皇帝やルーシの宰相が彼女の美しさを耳にして、ちょっかいかけて来たんやから自業自得なとこあるし。」

 

 正当防衛や緊急避難という大義名分をその少女に与えてはいけない。

 俺の第六感がそう叫んだ。

 

 正当防衛で国を則るなよ。

 九尾の狐もびっくりだよ。

 

 どちらにせよこのままではシンがアジア一帯だけでなくこの大陸全土を支配するのも時間の問題だな。

 その前に世界規模の大戦が起きるだろうが。

 

「まぁ心配せんでもあの娘はそんな悪い子ちゃうからこっちから手出しせんかったら攻めてきたりはせんと思うわ。」

「彼女に会ったことが?」

 

「フ……人形のモデルにさせて~って近寄ったら端末が溶かされたわ……」

「……」

 

 その光景が目に浮かぶな。

 

「情報はありがたい。世界情勢も聞けたし有益な情報に感謝する。それで君はこの世界に関わっていくのか?」

「いやワイは大陸の覇権争いに興味無いしな自分もそうちゃうん?」

「まぁ帰還方法を探すのに殺し合いは……な?」

 

 どいつもこいつも戦争を始めるとか危険すぎる。

 

「せやろ? 全く力をつけたバカは国に踊らされ易いからな~

 力の責任?みたいなことや守るために戦うって奴?

 結果的に敗者を虐げることになるのに気づかへんもんな~。」

 

 それには同意見だ。

 俺が避けようとした事態だしな。

 

 俺はまだ、ギリギリ国からは距離を取れてる。

 戦争を起こす気も無い。

 

「敵を見つけたり作ったりして常に新しい敵を探そうとする傾向があったりな。」

「あ やっぱそう思う? 君とは話が合いそうやな~」

 

 話の長い同郷の男と話しながら思う、各国が異世界人の取り込みに動いている。

 この前もガリア国王からの取り込みの件もある。

 各国のトップが俺たちを召喚したのではないか?

 

 そんな疑念が俺の中に渦巻いていった。

 



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決意

 田中から得た情報を纏めて行く内に疑念が生じる。

 

 俺達がこの世界に来た原因だ。

 

 半年前に同時期にこの世界に訪れたということは、俺たちは何者かに召喚されたということを指す。

 更に召喚されたのが日本人だということも偶然ではないだろう。

 

 召喚されたのなら送還する事も理論上、可能だ。

 人選が無作為だとしても地球の日本という場所から人間を指定して召喚できていることから。

 座標を指定しての召喚の可能性が高い。

 

 召喚対象をこの世界で戦争を起こす為の起爆剤になりうる能力、人格にできるとしたら?

 事実、世界中で召喚された七人の人間のうち、五名が戦争の火種になっている。

 

 この世界に来た原因は事故や偶然が重なったのでは無い。

 人の意思、思惑が合っての人為的な召喚という結論になる。

 

 つまり異世界召喚。

 俺たちは戦争の火種にするべく召喚した奴が居る。

 

「どうやら本当に殴るべき相手がいるようだな。」

 

 本格的に鍛えておく必要が出たな。

 召喚者の目的はなんだ?

 

 いや誰が召喚した?

 

 犯人がこの世界の住人だとして、まず始めに疑わしいのは王族などの権力者達だ。

 

 国家権力者が犯人なら国益のためにその高い文明知識か戦力として、つまり人間兵器として召喚するだろう。

 

 戦うべき敵はどの時代、どの国もが居る。

 

 ガリアもロマリアとは犬猿の仲と聞く。

 

 国通しの戦争では無く人類共通の敵、魔王の存在は現在封印されているか暗黒大陸から出てきていない。

 態々、攻め込ま無い限り問題は無いが、広大な大陸、資源が欲っするのはどの国も変わらない。

 

 これが理由か? 

 

 しかし同時期に各国につき一人ずつ召喚ということは?

 一国が何人でも召喚すれば力を独占できるし世界戦争にはならないだろう。

 

 もし国家が召喚したのなら国家に帰属した時期が異なる理由が見当たらない。

 

 それにシンに至っては地球人が帝国を乗っ取っている。

 

 それに召喚した人間がこの世界の人間なら、俺たちは何故、この世界の言葉を理解できる?

 俺達の世界の言語を知っていなければ召喚対象に言語の翻訳機能はつけれないだろう。

 

 固有スキルが人格や職業、嗜好に繁栄されるのならば、人為的召喚の裏づけになる。

 

 人形師(田中)は 【人形作成】【現代医術】の技術スキルに【分御霊】の固有スキルを持っているらしい。

 俺も【魔改造】という固有スキルを保持していた。

 

 人格は兎も角、能力は国を揺るがす程のものだ。

 戦争の火種には充分なりえる。

 

 現状が召喚者の望み通りにシナリオが運んでいるとしよう。

 魔王などの共通の敵が存在しない以上、各国の世界大戦が起きる。 

 つまり大戦を望んでいるなら、他の国に戦力を振り分ける必要性がある。

 

 俺達の世界の人間がこの世界を戦争で疲弊させる為に尖兵として送った?

 

 いや、それなら事情を知る訓練する人間を送り出すだろう。

 何の説明も無く一般人を地球側は送らないだろう。

 

 つまり犯人は第三者。

 

 異世界でも地球側でも無い。

 

 優れた召喚魔術を持ち、二つの世界を認識し俺たちの世界の文化、言語を理解している。

 スキルなんて超能力じみたものを与えられる神掛かった奴が犯人だ。

 そして、そいつ等はこの世界の権力者では無い。

 

 この世界を守る気も無い。

 世界を滅ぼそうとしていると見ていい。

 

 たかが一個人を召喚して世界大戦が起こるものかと思うが、

 銃や高性能爆弾等でもこの世界で使われれば強力無比な力を持てるし、魔素を限界まで吸収した【臨界者】という存在が史実にある。

 その力は単騎で都市を壊滅できるほどの戦闘能力を有し、あの死都もその臨界者が原因で滅んだという説もある。

 

 召喚された地球人は短時間で臨界者になる可能性がある。

 俺は概念攻略の法則で、通常なら打倒できない大群の魔物や強大な魔物を一瞬で屠ることができるし、

 事実、田中は大量の人形を【分霊】で憑依し、人海戦術でレベルを上げることができる。

 

 他の5人は戦闘能力に長けているらしい。

 つまり、この人間兵器は個人で核兵器並みの戦闘力と兵器と文明を加速度的に発達させる知識を有しているのだ。

 中世では異端者として狩られ可能性もあったのだが、魔法があり、単騎でこれだけの戦闘能力を有するのなら話は違ってくる。

 

 魔女狩りの様な者がいても単騎で返り討ちか逃げ果せる

 国が保護するし、いずれその力を知識を吸収した後に、世界規模の戦争が起きるだろう。

 

 実際、シンはもう動いている。

 

 

 そして世界規模の大戦が起きた時、浮き目に遭うのは俺を手に入れていなガリアだ。

 

 ガリアは魔の森、竜の墓場というダンジョンによる天然の防御網がある。

 仮に戦争になった際、近隣の国に取り囲まれ、魔石、ソイルの結晶たる魔石坑を補給路とする為、食い物にされるだろう。

 このままではガリア王国が戦場になってしまう。

 

 どう動く。

 戦争を止めるには?

 

 仮に召喚者の目的がシナリオ通りに進まなくなったときは? 

 

 何らかのアクションを起こしてくる可能性がある。

 帰還方法はいずれ開発か発見し、自力で帰還することも考えた。

 だが、このままでは俺が帰った後、誰か他の奴が召喚されてしまい何の解決にもならない恐れがある。

 

 召喚者を特定し、召喚方法を破壊、封印する必要がある。

 

 アースにいるのか?

 それとも術者は地球か?

 いや、召喚魔法は魔法だ。

 地球には魔力は無い。

 

 個人で持っている奴は居るかも知れないが、資源として魔力は存在しない事は魔力を使えるようになった今の俺なら判る。

 この世界の何処かに奴等は居る。

 

 とにかく現状の取れる方法はシナリオを変えることで、召喚者の反応を知ること。

 帰還方法を確立すること

 実力をつけることだろう。

 田中の証言も裏を取る為に各国に影分身と影の使い魔を送って調べるか。

 

「俺以外にもこの話を?」

「いや 君だけや、君だけは調べたところ他の皆と(ちご)うて国とは一定の距離を取っとるから話せたんや。」

 

 国と距離をとったのが幸いしたな。 

 

「カグヤとやらにセクハラ紛いの発言さえしなければよかったのにな。」

「せやかて!あんな絶世の美女見たらモデルにしたいって思うって!

 しゃーなかったんや~ワイの純粋(ピュア)な心から彼女の人形を作って愛でたかったんや!」

 

 うん、コイツは戦争の火種にはならないだろう。

 医学知識と諜報能力目当てか?

 能力と知識、技術は高いが人格が戦争とは別のベクトルに行き過ぎてるぞ。

 

 自由すぎだろ。

 

「いや 変態も同然の企みだな。」

「うう、カッとなってやったんや 反省はしとる。ところで隣のお嬢さん!ワイの作品のモd」

「反省はどこいった!!!」

 

 思わず拳骨で殴りつける

 

「が がふぅ!」

 

 人形は余程精密に作られているのか殆ど人間の殴り応えだった。

 

「いたたた」

 

 涙目で俺をみる人形 結構シュールだな。

 

「それで、俺以外にも情報交換しようとしたのは分かった。 

 交戦したブリタニア、ポルトガ、シンは他の地球人の存在を認識していて、現在俺だけが未確認の地球人て訳か?」

 

「そやけど なんや 秘密にしとこか?」

「いずれバレるが、今は公にはしないで欲しい。

 いつでも同郷のものが接触しやすい様に自由の槍という受け入れ先も作ったが予定が変わった。」

 

 まだコイツがこちら側の人間という確証はない。

 情報交換しないまま破壊を選んだカグヤの選択も間違ってはいない。

 

 こいつの能力上、監視役には打って付けの能力を持っている。

 召喚者というか今回の主犯と地球人の誰かが繋がりを持つ。

 共犯者の存在も考えなくてはいけない。

 

 それにコイツは俺の苗字を呼んだ 渡辺と……

 

 俺の性はギルドカードには登録した時、にワタナベと書いている為、ギルド職員は把握しているだろう。

 だが、ナミと契約した際に強化されたスキルの【隠蔽】や【認識阻害】の能力で情報を改竄している。

 

 王宮に呼ばれた時も 「アキレウス・ブラック」と認識されていたし、

 親しい者にも「アキラ」と名乗っても「ワタナベ」とは名乗っていない。

 

 ギルド職員のリンから俺の本名が王宮に報告されていないのも先のスキルで情報を改竄したからだ。

 つまり渡辺という本名をフルネームでしっているのは契約したナミ以外、存在しない。

 

 スキルに【読心能力】いや読心能力があるのなら会話や接触を試みようとはしない。

 なら【隠蔽】を破れる【透視能力】を有している可能性もある。

 確認したいがこいつは人形を操ってここに来ている為、俺の【魔改造】に含まれる才能を見破る透視能力が効かない。

 スキルで作られた人形を見れば【人形作成】【分霊】【現代医術】の3つのスキルで作られたことが分かるが、本体の情報は見れない。

 

 後者の人形越しに相手のステータスを見破る【透視】、異世界人が個性、才能、環境、嗜好に準じたスキルを会得するなら、

 人形、患者を観察、診察することから透視能力を有している事に説得力が増す。

 

 だが、もし前者だった場合、こいつに近寄られるのは危険だ。

 かと言って破壊しては、コイツを通じて主犯への手がかりが消える……泳がすしかない。

 

 クソ! 疑いだしたら全てが敵に見えてしまう。

 

 違う。

 召喚者の目から避けるように暗躍する事を心がければいい。

 この手でいこう。

 

 他愛無いやり取りをした後、田中を俺の嫁に手を出すなと追い出した後、熟考する。

 

 召喚者はぶん殴る。これは決定事項だ。

 他の異世界人と戦闘になった時、個人のスキルや武器が相手に知られても、対策出来ないように仲間を募り、策を練る。

 

 それに俺が召喚者に対して戦争の火種になるならならないは問題ではない。

 ガリアに所属していようとなかろうと、戦争はもう、起きる。

 

 だが、思い通りにはさせない。

 潜伏して、召喚者の思惑をぶっ壊してやる!!!

 

 

 この異世界を攻略すると決めたのだ。

 

 やってやる。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ―誰にでも転機は訪れる。

 

 そして、この日、田中と出会った事、召喚者の事を知り俺が異世界攻略を決意した事は……

 確かにこの世界にとって大きな転機となった。

 

 

 



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間話 クラリス王女の憂鬱

 アキラさんがこの国から姿を消して、5ヶ月が経ちました。

 

 彼と初めて会ってから4カ月間、私は新しい精霊因子の制御法、アリシアには稽古を付けたり、お城にわざわざ驚かせるために私の部屋に忍び込んだり、いたずらのトラップをお父様に仕掛けたりして一緒に近衛騎士団長や宮廷魔術師のじぃやに怒られたり、アリシアを困らせる日々 でも私もアリシアもアキラさんが忍び込んでくるのを楽しみに過ごす楽しい日々を過ごしていました。 きっとお父様や近衛騎士団長、じぃやも何だかんだいって彼が来るのを楽しみにしていたのだと思います。

 

 そしてアキラさんが行方不明になる前日もいつものように忍び込んできたアキラさんはいつものようにアキラさんの故郷の神話やおとぎ話をしてくれ、歌を歌って楽しいひと時を過ごしたのに翌日から彼は行方をくらましました。

 

行方をくらましてから1週間たった時アリシアは

 

「また 何処かの遺跡に潜っているのでしょう」

 

と、ソワソワしながらいいました。

 

一月後

 

 

 

アキラさんが死都を解放する際に提案し、恒例化したギルドとの合同訓練に来ていたノエルさんとガーコルトさん、アニさんが私に聞きましたが私は首を縦に触れませんでした。

 

「な~に、あいつの事だからナミちゃんと婚前旅行先で財布なくして帰れなくなったとかそんなとこですよ。」

 

「・・・・・・有能だけど少しドジ。」

 

「ん 今日こそ決着を付けようと思ったのに。」

 

とアキラさんの友人のガーコルトさんとアニさん。 ダークエルフのノエルさんもアキラさんとの訓練を楽しみにしていたのでがっかりしていました。

 

 

 三ヶ月経ち何だか諸外国の情勢が不安定になってきました。 嘗ての神話に出てくるような異世界人という魔界とは別の世界から現れた英雄が現れ、魔物の討伐や内戦が置き始め、東方のシンに現れた新皇帝 蒼炎の戦女神がゲルマニアとルーシを堕とし大陸の半分以上を征服して ヴァルキュリア帝国を建国したのです。

 

 古代のガリア帝国とロマリア帝国に迫る巨大国家にロマリア、ブリタニア、ポルトガは私達ガリア王国に同盟を持ちかけ、ヴァルキュリア帝国に対抗しようとしています。

 

 戦場になる理由は魔石坑

 アキラさんの功績で発展した医療、軍用物資に富んだガリアが補給地に成りうること。

 戦況の鍵にも魔の森と竜の墓場、元要塞都市の死都がある為防備に優れてることもあったのです。

 

 父様はコレを拒否し、なんとか和平交渉の道を探りました。

 

 そして王宮内にも不穏な空気が流れるようになったのです。

 

 こんな時、自由の槍が…

 アキラさんが居てくれたらと弱音が頭を過ぎります。

 でも、すぐに頭を横に振って考え直します。

 

 アキラさんがいつでも帰ってこれるようにと彼の言葉を思い出します。

 

「子供たちに笑顔を」

 

「王族は自分たちが無条件で助けてもらえる存在と思ってはいけない。

 国民を導く為に責任が求められるんだ。」

 

 戦争が起きないよう、民を導かなければと、

 政治にも参加し、私に出来ることをこなす日々。

 

 英雄に頼ってばかりではいけません。

 救われた命で子供達の顔が曇らないように立ち回らねば。

 

 彼が何時、戻ってきてもいいように。

 

 そして彼がこの国からいなくなって5ヶ月後、事件は起きました。

 



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英雄の帰還

駐屯兵団=王都のギルドメンバー
訓練兵団=王立士官学校生徒
近衛兵団=近衛騎士団  精鋭


 毎朝、国王と王女、宰相、武官、文官が謁見の間にて、机を並べ報告、議論が行われ、国王であるお父様が裁可、却下、再考などの決定を行うのが常である。

 しかし今日は何時もと様子が違った。

 

「ルイ宰相はどうした? 姿が見えんようだが?」

「珍しいですね、時間には厳しいお方なのに……」

 

 そうこうしている内に謁見の間に一人の憲兵が急いだ様子で掛けこんできました。

 

「何事か! 王の御前であるぞ!」

「陛下!!一大事です! 王墓の巨像の封印が解かれ、大量の悪魔の軍勢と邪精霊が何者かに召喚され王都に向かっております!!!」

 

 兵士の鬼気迫る表情からその発言に信憑性が感じさせられる。

 巨像、ガリアの守護神を象った巨大ゴーレム。

 王墓を守る守護者。

 味方である筈のゴーレムが操られるだけでなく、悪魔と邪精霊の大群が敵意を持って王都に向かう。

 

「それは誠か!! 巨像が解き放たれ、悪魔、邪精霊の混成部隊だと!!」

 

 王都駐屯兵、訓練兵団がこれを確認。

 王墓に封印されていた巨像、全長15メートルを超える巨像に大量の悪魔、邪精霊の大軍どれも野外ではなくダンジョンに生息する強力な魔物だ。

 全てCランク以上の魔物で巨像に至ってはAランクの怪物だ。

 

「全て事実です! 現在、駐屯兵、ギルドナイトが先攻し、巨像、悪魔、邪精霊の混成軍を食い止めています!!」 

「近衛騎士団は必要最低限の人員を城内に残し、城下町の人民を避難誘導後、王都城門にて、攻城兵器バリスタ、大砲で迎え撃て!

 駐屯兵団、訓練兵団の援軍に竜騎士隊を投入し救援!

 援護に回れ、魔法騎士団は城壁の魔法障壁を張り、悪魔、邪精霊の侵入を防ぐのだ!!」

 

「「「ハッ!」」」

 

 国王の迅速な決断で謁見の間にいる武官が飛び出していき、

 文官も避難誘導、魔法障壁の起動の為、遅れて出ていく。

 

「父上 私も出撃します……」 

「止むを得ん、詠唱を始めよ。【精霊化】の使用を許可する……娘を戦場に出すのは忍びないがそうも言ってられん。」

 

 大精霊の巫女の奥義、【精霊化】により、寿命と引き換えに体内の精霊因子を活性化させ、

 強力な魔術行使を可能とする荒業。

 しかしアキラの治療によりそのリスクが無くなったクラリスは正に歴代最強の巫女と化している。

 

「元より覚悟の上です。」

 

 兵士の役目は彼女の詠唱が完了するまで時間を稼ぐこと、

 巨像と悪魔、邪精霊を彼女に近づかせずに、王都を守り切れば彼らの勝ちである。 

 そこに大広間の大扉が開いて数人の男たちが現れた。

 

「それは困りますな、王女様にはここで大人しくして頂きませんと…」

 

 ルイ宰相が明らかに殺意をむき出しにして、武装した護衛を引き連れて謁見の間に引き連れて来た。

 非常時とはいえ、武器を持っての入室にマイヤール親娘と部下が臨戦態勢に入る。

 

「ルイ宰相 今までどこにいたのですかな? 

 謁見の間に武器を持って入るとは非常時とはいえ褒められた行動とは言えませんな?」

 

 マイヤール公爵が冷静に言いつつも陛下の前に庇うように立つ。

 謁見の間に残った自分の部下の近衛騎士が国王と王女の周りを固めかばう。

 

「非常時に王位を剥奪する算段でもつきましたか? それともこの騒ぎはまさか……」

 

 王女の護衛官にして元暗部のアリシアが全てを凍てつかせるような鋭い目つきで彼らを睨む。

 静かに、だが確実に怒っている。

 

「ふふふ。ガリア王国の存続の為には西の力を集結する必要がある。

 東方の蛮族共に怯え、戦争に否定的な王など今の時代に求められていない兄上。

 その玉座に飾っている王冠を在るべきところ、私に譲り退任去れよ!」

 

「やはり、この事態を引き起こしたのはお前かルイよ。

 無用に民の命を危機にさらし、ここまでやったのだ覚悟はできているのだろうが、あの巨像は如何するつもりだ?

 悪魔は召喚者が消せるだろうが、巨像は如何するつもりだ?」

 

 激昂する事無く、国の守護者たる王は謀反人に問い詰める。

 

「知れた事、西王国連邦の三英雄の力をもってすれば、あのような過去の遺物、消し去るのは容易い。

 それに異世界人のいないガリア王国の遺産、物資、魔石坑など交渉材料も豊富な上、完全に復活した神代の巫女もいる。

 大精霊の力を使い、私がガリアを導くのだ!」

 

「我らの祖、闇の御子に仕えし戦士の末裔の言葉がこれか…

 さぞ先祖も草葉の陰で嘆いていることだろうよ?」

 

 国王は余裕を崩さないがその目には自身の弟に対する失望の色が浮かんでいた。

 

「黙れ、大局を見誤り、和平など不抜けた事を行う暗愚が! 

 お前たちこの者を殺せ!然る後に我が王となり、正義の革命を世に知らしめるのだ!」

 

 言葉と同時に宰相の兵が前に出る。

 それに応じるように、公爵も号令をかける。

 

「陛下に指一本触れさせんぞ! 

 近衛騎士隊 抜剣! 反逆者を打ち取り、一刻も早く民を守るのだ!」

 

 マイヤール公爵の号令により抜剣し謁見の間で戦闘が始まった。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 城下町は混乱の中にあったが兵士たちの先導により、住民の避難が行われた。

 駐屯兵、憲兵、手すきの近衛兵団が魔法障壁に阻まれ、結界を破ろうとする邪精霊と悪魔を結界の内側から、ボウガン、バリスタ、魔法で内側から打ち込み、撃破していく。

 

 郊外では巨大な甲冑騎士を模した巨像がゆっくりと確実に王都へ迫っていた。

 歩兵が簡易式の爆弾や魔法を打ち込むが全く足止めにならない。

 

 王墓の守護者である巨像は本来、王墓の侵入者、盗掘者が盗んだ王墓の財宝を持っているものをどこまでも追跡するよう創られている。

 結界の外までには出られないのだが、結界が解かれ、王家の財宝が王都にあると認識し真っすぐに誘導されてここまで来たのだ。

 

 彼はただ与えられた命令を忠実に守る為にここまでやってきているのである。

 そして竜騎士、駐屯兵団、訓練兵団の攻撃では巨像を打倒できない。

 

 常に地脈、大気中のソイルを吸い上げて活動した巨像の魔力量と大質量故の防御力が攻撃をすべて弾いてしまう。

 大精霊の力を行使できる王女の詠唱が完了するまでの時間稼ぎが彼らに与えられた唯一の抵抗である。

 

「まだか まだ詠唱は完成しないのか!!」

「大砲もコイツの身体に掠り傷程の効果しかない!」

「攻撃の手を緩めるな!」

 

 彼らが巨像に猛攻を加えていると、それに気付いた邪精霊、下級悪魔が襲い掛かってくる。

 

「くそ 鬱陶しい奴らだ!!」

「数が多すぎるこのままじゃ!!」

 

 彼らが半ば諦め掛けたその時……

 

 空から黒い閃光が走り、巨像の頭部を貫いた。

 

 巨像は、突如その歩みを止めた。

 

 

 

「……何かと縁のある街でな早々潰されると困るんだよ。」 

「まだ主様の逢瀬に使っていない穴場が在るのに、更地にされると困るんですよ。」

 

 闇を形にした様な漆黒の竜に騎乗した漆黒の衣を纏う二人の英雄が現れた。

 

 

 自由の槍 Aランク評価のチーム

 国から独立を許され、死都奪還作戦の英雄のアキレウス、ナミの二人が帰還したのだ。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 その声に、姿に覚えのある訓練兵団、王宮騎士、駐屯兵団が歓声が上がる。

 悪魔は遥か古代の魔王 闇の御子に畏怖し、邪精霊は大精霊の姿を本能的に感じ取り、悲鳴を上げる。

 

「やれ、ナミ。手加減は無用だ。先ずは雑魚共からだ。」

「らじゃー」

 

 気の抜ける返事をしながらも、死と再生、闇を司る、精霊姫の瞳に魔法陣が浮かび、

 その視界に入った悪魔と邪精霊が一瞬で蒸発する。

 

【死の魔眼】

 

 眼で殺す。

 死を体現する最強の呪いを誇る闇の大精霊。

 彼女の魔力が瞳から放たれ、悪魔と邪精霊を視界に入れた瞬間、蒸発する。

 

 格下の霊体、魔物相手に手を下すまでも無い。

 格を超えて次元が違う。

 命を奪うという点に置いて使い魔を使うまでも無い。

 彼女は視界に怨敵を入れただけでその命を奪い去れるのだ。

 

 その中で、彼女の魔眼に耐えきった高位の悪魔に聖水を仕込み純銀のミスリルの槍が取り出される。

 【魔改造】で破魔の性能を強化された槍を大量に【投擲】で投げつけ 銀の槍の雨となって残った悪魔を狩りつくす。

 

「さて、次は君の番だ デカブツ」

 

 その光景を目の当たりにしてようやく空の上の二人を自身の障害として認識した巨像が再び動き出す。

 

 巨像はゴーレムだ。

 頭部を貫いても重要基幹は顕在だ。

 

 右手に持った巨大なメイスが唸りを上げて襲い掛かる。

 

 この圧倒的な暴力を前に英雄は逃げない、回避も不要。

 アキラは純金の槍を持って迎え撃った。

 

 金色の閃光が貫き巨大な質量のメイスが幻の様に消え去る。

 

 金の槍

 

 対巨像用に用意していた石化治療アイテムの金の針を大量に用意して錬成した対鉱物系モンスター用の投擲武器。

 

 鉱物を鉛から金に練成する、錬金術の真骨頂。

 錬金術の英知を極めれば、巨像もタダの土塊同然。

 

 本来は石化した者を治療するアイテムが

 身体を鉱物で構成される魔物を一撃で消滅させる概念兵器となる。

 

 石として存在出来なくなるという存在概念を壊す一撃。

 この戦いこそアキラ。

 死都、黄泉の入り口の亡者を全て浄化したガリアの英雄。

 

「止めだ!」

 

 金の槍に石化治療魔法を込め、巨像の心臓部に目がけて全力で投擲!!

 

 再度金色の閃光が巨像を貫く。

 メイスと同じ様にその質量が幻だったかのように消えていく。

 

 代わりにソイルとなった魔素が足元にいた駐屯兵団、訓練兵団、竜騎士に祝福の様に降り注がれる。

 

 アキラは黒竜から立ち上がり、兵士たちに向かって腕を振り上げ勝ち名乗りを挙げた。

 

「俺の魔素を返せ~!!!」

 

 上空に居る為、声は届かないが、その仕草から勝ち名乗りを上げる。

 祝福の様に魔素を受け取り、勘違いして喜ぶ兵士たち。

 

 自分の失敗に後悔し、叫ぶ英雄。

 

 知らぬが仏である。

 

 兎も角、こうして英雄は帰還した。

 

 



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内戦の結末

 

 巨像が消え去る。

 本来、役目を終えた王族の眠りと宝剣を守護する為に生み出された像が魔力の塵、ソイルとなって世界に還える。

 操られた巨像の最後に英雄はそっと涙を流した。

 だが、英雄には感傷に浸る暇は無い。

 

 彼には未だ、果たすべき使命が残されていたのだ。

 

 ――『黒の勇者の復活』より抜粋。 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 なんか、巨像を倒すゲームのキャッチコピーを思い出すな。

 最後の一撃は切ない……だったか?

 

 だけど今は感傷に浸る暇も、経験値を取り損ねた事を嘆く暇もない。

 王宮の方へ、視線を向ける。

 

「主様……王宮の方に援護は?」

「ぐす……必要ない……王墓の秘宝は偽物だし、巨像をおびき出す餌以外に役立たないし俺が鍛えた弟子もいる。

 勝負はもう着いているだろう。ああ勿体ね~ストックしようと思ったのに~。」

 

 うん、ごめん。

 思ったよりダメージは大きかったようだ。

 冒険の書が全部消えた時のやるせなさを思い出した。

 

 早く、切り替えよ。

 

 王墓にあった古代から伝わるクルトの剣、精霊、魔力を斬る事が出来る霊剣が安置されていたのだが、

 潜伏中に王墓に潜入。

 何故かダンジョンの罠も魔物も無く最深部まであっさり通れた拍子抜けだったのは記憶に新しい。

 

 考えてみれば、王族の遺体を安置する場所なのだから墓参りや納骨?する際には毎度、罠や魔物が襲ってきたらダメだろう。

 となると秘宝を盗んだら動き出すタイプのダンジョンだろうと当たりを付け、宝剣を裏技で複製したものにすり替えた。

 

 推測は的中。

 巨像は動き出さず、まんまと宝剣を手に入れたのだ。

 

「偽物とは知らないとは言え首謀者も報われませんね。」

 

 ナミが王宮にいるであろう首謀者に同情の念を送る。

 

「それより、アレを倒す役割は誰だったと思う? 

 西の三人 いや四人の誰かだろうが悪魔使いはちょっと厳しいから神剣の勇者か?」

 

「あの忌々しい天使の末裔の手先ですか……この場に居れば奈落の底に沈めてやります。」

 

 千年前の勇者と顔見知りだそうだが、今代の勇者とロマリアに厳しいのな。

 

「……まぁ索敵で確認したとこ、悪魔使いらしいのは確認したな。逃げたけど。」

「追わないのですか?」

「召喚者のシナリオに乗る気は無い。

 ここは見逃した方が後々有利になだろ、さて最後の結末だけでも見ていこうか。」

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ---アリシア視点---

 

「……この程度ですか。もう少し手ごたえがあると思ったんですが。」

「うぅ……」

「つ 強い。」

 

 宰相の連れてきた子飼いの護衛は殆ど私の剣の前に斬り伏せられ、地に伏した。

 殺す気で掛かってきた相手を殺さずに制圧できる程に実力に差があったのだ。

 近衛の末席だが、アキラ殿の薫陶を受けた以上、この程度は造作もない。

 

「ルイ、武器を捨て、巨像を止めて降伏しろ。お前に勝機は無い。」

 

 陛下が降伏勧告するが、命さえあれば即座に反逆者の首を落とす。

 いや、彼の政治的手腕は惜しいが、今回の騒ぎを起こした以上、只では済まさん。 

 

「まだ終わらん!私はココまでやったのだ今更後に引けるか!

 兄上か私かどちらかが死ぬまで終わらん!! 

 クルトの宝剣の切れ味を解くと思い知るがいい!」

 

 クルトの宝剣と聞き、周囲に緊張が走る。

 

 王墓の巨像が守っていた秘宝、これが宰相の切り札か。

 如何なる魔法障壁、精霊の加護に守られた王家の罪人を処刑する為に作られた王族を裁く宝剣。

 精霊魔法を封じ今まで斬ってきた罪人上げの血と魔力を吸い上げ、

 切れ味と魔力を増してきた宝剣は既に魔剣の域にまで達し持ち主の力を倍増させる力も持つ。

 

 精霊魔法を扱うクルトの民である我等にとって確かに天敵になりうる武器だ。

 宰相はあの武芸に秀でた現・国王の王弟。

 

 油断は出来ない。

 一瞬の隙を見て、飛び込み、一撃で斬り捨てる。

 

 そう、覚悟を決めた時、悪戯好きな妖精の様で、

 どこか憎めない懐かしい笑い声が聞こえた。

 

「(くすくす)そんな鈍で果たして斬れるかな~。」

 

 どこからともなく聞き覚えのある声が広間に響いた。

 

「ア、アキレウス!?」

 

 その声を聞き、宰相の顔が青ざめる。

 

 アキラさん!

 やはり、来た。 ガリアの窮地に我が師匠が帰ってきた。

 

 い、一体何処から、来るのだろう。

 やはり、扉から堂々と来るのだろうか?

 いや、窓や天井から来るのもありえる。

 

 にゅるん

 

「ただいま~」

 

 ……大臣の影から出てきた。

 感動の再会とか色々台無しだった。

 

 後の歴史書には残せないな。

 ここは脚色するよう、歴史家か吟遊詩人に伝えよう。

 

 ---アリシア視点 了---

 

 ◆◆◆◆◆

 

 大臣の背後に映る影を利用して転移魔法で現れる。

 

 何時も自宅と黄泉の神殿の移動の際使っていたが、衆目の前で使うのはこれが初めてだ。

 

「おっす。ルイ宰相。巨像と悪魔、邪精霊は全滅したぞ? 如何する? 

 降参?それとも足掻くか?」

 

 だらだら能書きを垂れず、さっさと降伏を勧告する。

 一撃で首を飛ばす事も可能だけど、情報は出来るだけゲロしてもらう。

 

 こういう展開だと黒幕はベラベラ自供してくれるんだけど。

 あれか? 崖まで追い詰める必要があるのだろうか?

 

「う 嘘を申すな!!巨像倒れ、悪魔共が消滅しただと!?まだ合図はしておらんぞ!

 それにこんな短時間で巨像を倒すなど、伝説の勇者か闇の御子でも無い限り不可能だ!」

 

 ああ、倒す当てがあったのね?

 後、自作自演(マッチポンプ)する気だったっと。

 

 クルトの宝剣も持ってるし、王家の証である武器を使って自分で倒す気だったのだろうか?

 

「ふん あんな木偶人形、金貨一枚で作った武器が有れば子供でも倒せるわ。

 それに聞こえない?周りの歓声の声が。俺にはとても悲鳴には聞こえないけどな?」

 

 先ほどまでの巨像の足音による地響き、大砲の轟音、兵士の怒号、魔物の叫びも市民の悲鳴が聞こえない筈だ。

 

 歓喜の声だけが微かに謁見の間に届く。

 

「く、貴様は一体、何者だ!!」

 

 宰相の顔が恐怖に染まり問いかけて来る。

 うん、これはアレを披露するチャンスだな。

 

「ふっふっふある時は異国の物語と歌と曲を奏でる吟遊詩人。

 あるときは冒険者ギルド御用達ポーション、携帯食料を作る謎の錬金術師!!

 またある時は、子供たちに玩具を与え、文字や算術を教える教会の教師!!

 時には、王家御用達の傭兵兼探偵事務所 自由の槍のマスター アキレウス・ブラック。しかしその実体は!?」

 

 次々に衣装を替えながら名乗りを上げて行く。

 このセリフを言う為に、ナミから白い目で見られながらも練習してきたのだ!

 ノリノリである。

 

「七人目の異世界人にして闇の大精霊の契約者! 渡辺アキラだ!!」

「そして、その契約大精霊にして始祖(テティス)の娘、ナミ!!」

 

 どぉぉん!!

 

 異世界に来たときから大事にして来たスーツと黒コートをはためかせ、決め顔で宣言する。

 ナミもガリア王家の祖である母、テティスの名前を出し、アキラの影から現れる。

 

 うん、この女神ノリノリである。

 

「お、おのれ!女神様の名を名乗る不届き者めが!魔剣の錆にしてくれる!!」

 

 はい、明確な死亡フラグ頂きました。

 

 そうして、本物のクルトの宝剣を取りだす。

 

「【霊斬剣】!!」

「なぁ!?」

 

 宝剣に記憶されたスキル名を叫び、宰相の贋作を切り裂く。

 元々、【裏技】で複製した贋作だ。

 抗生物質は同じだが、内包する神秘、魔力はオリジナルに及ばない。

 

 いとも容易く贋作の物質結合、魔力結合を切り裂くことが出来た。

 当然、宰相を含め、場にいる人間が国宝である剣が簡単に斬られ、柄だけ残った残骸を見て唖然としている。

 

 あ、やべ。 

 フォロー入れないと不味い。

 

「い、言ったろ? 鈍だって。この剣こそが王の証だ。

 贋作と本物の区別が付かん貴様は王にもなれんし、何者にも勝てん。」

 

 うん、そういう事にしておこう。

 

 ぶっちゃけ倉庫には本物以上に強化した贋作(魔改造済み)がある。

 今後はそれを使うとしよう。

 

 【闇撫】を影から召喚し黒い腕が放心する宰相を拘束する。

 

「あんたの首を撥ねるのは容易いが、あんたには色々尋問することがあるからな……」

 

 そして俺は国王とクラリス達に顔を向ける。

 

「反逆者ルイを捕縛しました。 彼の処遇、国王にお任せします。」

 

 剣も返すから不問にしてね?

 

「うむ 大義であった。王族とはいえ反逆者。

 その罪は死によって償われるが、そなたの言うように背後にいるものを後ほど調べさせる。

 近衛騎士よ、この反逆者たちを捕縛し地下牢に連行せよ!」

 

 横に控える近衛騎士が素早く彼らを捕え、連行していき謁見の間をさった。

 ふぅ、盗掘に関しては不問だそうだ。

 

 

「さて!積もる話もあるだろうが、未だ終わってはいない。

 余は警戒を解除し、怪我人の治療とこの襲撃が終わったことを国民に伝えに行かねばな。」

 

 と国王が謁見の間を出て行く。

 

「お供します陛下」

 

 マイヤール公爵も続いた。

 謁見の間を出る際、ウインクしてきたが、オッサンのウインクを見ても吐き気がするだけだ。

 いや、意図は理解しているし男気も分かるから吐かないけど。

 

「「「「………」」」」

 

 残された俺、ナミ、姫ちゃん、シア

 

「ただいま」

 

 照れたようにそう呟くとクラリスは感極まって俺の胸に飛び込んだ。

 うん、大きく……いや綺麗になったな。

 

「お帰りなさい。アキラさん。」

 



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七英雄

 七人目の異世界人が現れた。

 

 しかもロマリアの勇者同様、千年前の闇の御子魔王の再来として現れた。

 

 クルトの民が待ち望んだ女神の復活というニュースに世界がどよめいた。

 

 

 巨像を一撃で葬り、大軍を相手にしても一瞬で壊滅させるその実力。

 これまでの武勇で、相対した物を一撃でその命を刈り取ること。

 同じ大精霊の契約、加護を持っている。

 

 戦女神、神剣に因み「漆黒の死神」という二つ名が広まり、ガリアの英雄【漆黒の死神】の名は世界中に轟いた。

 

 余談ではあるが、この二つ名を付けられた当人はまた喀血した。

 そして改名を試みる為に奔走するが失敗に終わるのはどうでもいい話である。

 

 ◆◆◆◆◆

 

 ブリタニア 王宮 女王執務室

 

「ううベスちゃ~ん。

 ガリアの漆黒の死神にモノっそい怖い顔で睨まれたッス~。

 クチパクで脅されたッス~! 

 あたしガリアの救援に行っただけなのに~!」

 

 黒衣のローブにデフォルメされた絶叫の仮面をつけた少女が執務室に座る女王に泣きついている。

 

 かなりシュールな光景である。

 

「マリア? そんな仮面で泣きつかれても反応に困るのじゃが…

 まぁ災難ではあったの。」

 

 そう言って自分より大きい、仮面の女を慰める少女。

 

「如何やら我らとガリアを潰し合わせる為に工作した輩が居る様じゃの。

 マリアが本気でガリアを攻め込んでおればたとえ負けはしても、王都など更地であったろうに……」

 

 そうブリタニアはガリアを攻める気は無い。

 同じ、始祖の系譜を持つ友好国である以上、味方にはなれど敵になることは無い。

 

 何者かの情報が歪めれているのだ。

 

「結果的に我が国にとっての神の契約者を見つけれたのじゃから良しとする。それに、わらわが守ってやるから安心するがよい。ほれ何時ものように凛々しいマリアはどうしたのじゃ?」

 

 その口調と異なり、幼い声、容姿をもつ齢13の女王エリザベス。

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■

 ブリタニア 

 佐藤・マリア

 七英雄 【悪魔使い】

 クラス 召喚士・魔物使い

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「グスッむぅ~見てなさいよあの死神め~.

 というか死神って何すか! 卍開でもやってなさいよ!」

 

  ……仮面を地面にたたきつけ、金髪のセミロングの少女の顔が出てくる。

 顔を真っ赤にしてその青い瞳には炎の闘志が宿っていた。

 

「……同胞の国じゃし争い事は無しじゃ。 しかしアノ海の向こうは暫くあれそうじゃの。」

 

 才気、カリスマ、実力を兼ね備えた若き女王は自身の親友にして最強の配下をあやしながら今後の方針を考え始めた。

 

 

 ~ポルトガ 港町~

 

 

「船長さん! ガリアに新たな英雄が出たってよ! 船長と同郷の人間らしいぜ!」

 

 港町、セントパレス港の街では他の海賊と魔物をカモにして戦う一味。

 ハイブリッジ海賊団が滞在している酒場に新聞売りの少年が酒場に掛けこんでくる。

 

「ふふふ どうするんだい船長?こいつに一つ挨拶にでも行くかい?」

 

 船長帽を被り、両腕に海賊の刺青を彫った短パンにビキニタイプの水着で胸を隠し、

 海賊服のコートを羽織る女傑が短銃を片手に好戦的な笑みを浮かべる。

 

 それに呼応するように、酒場の幹部達も同様に笑うが船長は興味が無いようだ。

 

「おいおい 何時から俺たちは戦争屋になったんサ? 

 俺達の目的を忘れんなよ? 

 新大陸の開拓準備が忙しいんだから相手にしね~よ。もっとも?俺達のシマに攻め込んでくるなら容赦はしないがな?」

 

 そう言いながら、日に焼けた褐色の肌を持ち、染色ではなく脱色で色がぬけた茶髪の男が不敵に笑う。

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■

 ポルトガ 

 ワタル・高橋 

 七英雄 【海賊王】

 クラス 剣士・海賊

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 ~ロマリア~

 

「今日はずいぶん張り切ってるね勇者ちゃん 最近現れたガリアの英雄が気になるかい?」

 

 とある山の中で魔術師の格好をした妖艶な美女が巨大な竜の亡骸の上に腰掛けている少年に向かって語りかける。

 

「アナスタシアさん! 勇者様に向かってその口の効き方は!!

 ……というかアナスタシアさん?

 貴方の先祖の神様が相手なんですよ?何か思うところは無いんですか?」

 

 尼服を来た少女がアナスタシアと呼ばれた魔術師の女性の物言いを咎めるが、

 最後は彼女自身を心配する口調になっていることから、根は優しい少女であることが伺える。

 

「そう思ってんなら最初からあんた等と組むわけないでしょうに。」

 

 心配するなと同性でも見とれる笑顔で答える魔女。

 

「大人って大変ねぇ~それで?やっぱ気になる? ガリアの魔王は?」

 

 虎の獣人の女戦士が、呆れながらも勇者の隣に飛び立ち、彼の真意を確かめる。

 

「ええ。」

 

 異世界人にして、最強の聖人認定を受けた少年は満面の笑でただ短く、返答した。

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■

 ロマリア

 山本・シュウ

 七英雄 【神剣の勇者】

 クラス 勇者・聖人

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 イシス

 

「くっくっく やっと動いたかなべやん! 

 待ちくたびれたで。 

 随分長い間引きこもっとたんか知らんけど今ならこの引きこもり生活の気持ちを共有で……ハックシュンン!! ずず、おお鼻水が…」

 

 ちり紙で鼻をかみつつ しまらないセリフを吐くヨシツグ。

 彼は自分の出番はここでは無いと笑いながら、今日も人形を作り続ける。

 彼の研究室には、美しい人形たちが役目を果たすときは未だかと今か今かとその存在を主に無言で訴えていた。

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■

 イシス

 ヨシツグ 田中

 七英雄 【人形師】【神の見えざる手】

 クラス ???

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 ルーシ

 

「ほう 遂にガリアにも動きがでたか これは楽しみになりそうだネェ~ 俺と戦う時も近そうだ。」

 

 トレーニングルームで訓練を続ける筋肉質の大男が嬉しそうにほほ笑む。

 そうなれば近いうちにあの女帝から直々に指令が来るだろう。新型の兵器とこの肉体の成果とテストが出来るいい機会だからだ。

 

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 ルーシ

 ゴウタロウ 鈴木

 七英雄 【鉄人】

 クラス 鍛冶屋・武術家

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 ヴァルキュリア帝国宮殿内 会議室

 

 黒髪の少女

 

「ガリアに私と同じ異世界人がいたってホント!? ユイファン!?」 

「ハッ。シン州の民族とにた黒髪黒眼の特徴に、陛下と同じく強力な魔力を備える青年です。」

「素敵な方でした?」

 

 その質問の意図にユイファンと呼ばれた女性は内心、嘆息する。

 また、悪い癖が始まったと。 

 

「……名前は アキラ=ワタナベ 

 以前はアキレウス・ブラックでしたね。

 鷹のような鋭い眼光と鷲鼻を持つ猛禽類の様な相貌をもつ男です。

 あらゆる魔物を一撃で仕留めその中でも、あの“黄泉の入口”を踏破するなど今まで無名だったのが不思議な男です。 

 そう思って調査した所、国全体に記憶操作を施していた痕跡が見つかりました。

 強力な催眠系、洗脳系のスキルも有していると思われます。」

 

 相変わらず、どこか掴めない主の言葉に面喰らいつつも律儀に報告する宰相・ユイファン

 

「へー。鷹の様な殿方ですか。きっと素敵なご尊顔ですのね。早くお会いしたいわぁ♡」

 

 いや、そこじゃないでしょう。

 と、会議室内の幹部達は内心突っ込みを入れる。

 

 端から見れば年若い女性たちが談笑している光景に見えなくもない。

 だがここは会議室内で、話す内容は軍義であり

 出席しているのは、帝国内の重鎮ばかりである。

 どう考えてもそんな会話をする場ではない。

 

「【黒のアキレウス】っていやぁ聞いたことがあるよ。

 確か、私の古巣のバカたれ共が言ってた恩人だね。

 何でもどんな相手も一撃で殺す英雄で死都解放の立役者だそうだよ。

 あと錬金術での新型ポーションの製作者って話だったかね?」

 

 元ガリアのギルドメンバーにして結婚後引退し旧ゲルマニアの宿屋の女将だった女性。

 

【潜血のアデーレ】が古巣の「蛇女の尻尾」からの便りに記されていたガリアの英雄の事を話し出す。

 当時はガリアの新たな英雄かと思ったが、異世界人みたく国政に関わるわけでもなく、一、冒険者か、学者などこの世界の住人の域を出ない活躍だったのであまり、気にも留めなかったのだが……

 

 まさか自分達の大将と同郷の人間だとは当時は思い至らなかった。

 

「そうですね、私が調べた情報とも一致しています。」

「私は国民にかけた記憶操作が気にかかる。

 一撃で相手を仕留める術より、洗脳系のスキルを有するとは厄介だ。

 正面きっての正攻法に持ちかけられるかどうか。」

 

 騎士といより、剣士といった印象が強いエルフの女性が意見する。

 人種の坩堝と化している帝国では実力さえあれば女性が要職に就くように例えエルフだろうと魔族であろうと将軍になる事も出来る。

 はぐれのエルフであったアリアもその剣士としての実力と狩りの際の統率力を見込まれ、カグヤが直々に将軍に就かせた女傑である。

 

 そのアリアもアキラの異常性、危険度は感じていた。

 エルフであるが故の霊感が、ガリアの英雄にカグヤと似た気配を感じたのだ。

 

「その心配はないです~。彼が用いた記憶操作は自分を別人に認識させるか、存在感を希薄、幻惑する類の者です~。でなければ、私たちは彼を認識できませんし~もし彼に敵意があり強力なスキルなら、今頃私たちはこの世にいないです~。」

 

 間延びした声で褐色の肌の研究員のミーナが答える。

 

 【錬金術師ミーナ】

 中東出身を思わせる褐色の肌の少女。

 将軍とは思えない錬金術師の装いをしているが、彼女は理論上、最強の肉体と頭脳を有していると豪語する錬金術の業が生み出した存在である。

 

  

「偵察職が使う【隠密】のようなハイディングスキルの域を出ないと?」

 

 金髪縦ロールの令嬢、宮廷魔術師のエレノアが確認を取る。

 

「はい~。一度認識していしまえば効果が消えるのもハイディングの共通点です~。」

 

「ガリアと私たちは一応、相互不可侵の協定を結んでいましたね……

 こちらから仕掛けるわけにはいきませんが、ガリアの英雄さんには是非、我が帝国にご招待しませんと。」

 

 新しいおもちゃを見つけたような満面の笑みを浮かべ、【世界最強の女】が動き出す。

 

 ■□■□■□■□■□■□■□■

 ヴァルキュリア帝国

 カグヤ 伊藤

 七英雄 【蒼炎の戦女神】

 クラス 武神・皇帝

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 激突の時は近い

 

 

 

 

 

 

 




一章 ガリア攻略のススメ 完

次章 蒼炎の戦女神


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一章 登場人物紹介

 ~渡辺・アキラ~

 

 元・中二病患者、黒歴史持ち。

 

 就職内定組・教職に就く予定だった。

 卒業式の後、飲み会が終わり、帰路につくが

 眼が醒めると異世界アースにトリップしていた。

 

 高い生産技能(アイテム・クリエイション)と人材育成、指導力を持つ。

 

 加えて、中二心、ゲーム知識、裏技、小技を駆使して異世界を生き抜く青年。

 

 異世界の戦争の駒として、召喚された事に気付き、他のトリッパー達との戦いに巻き込まれていく。

 普段は強面の印象を覆す為、礼儀正しく、丁寧語を使うが、本性はイタズラ好き且つ、お人好し

 スキルを作り出し、急成長させるチートスキル【魔改造】を有するが、使うのを無意識に嫌う。

 

 存在理由や概念を崩壊させる攻撃や弱点を突く攻撃を主軸にする斥候、魔導師型。

 

 

 

 主なスキル 

 格闘術 投擲 錬丹術 源呼吸 精霊化 魔法全般 裏技 魔改造

 

 

 

 

 ~リィーン・ド・マイヤール~

 

 ギルド受付嬢 ギルドマスター クルトの民 ヒロイン?

 

 本来はクルトの民の特徴を現す紺色の髪と瞳を持つが、

 身分と正体を隠す為に、金髪碧眼と偽装している。

 

 ガリア南西部の地方都市を統括するギルドマスターにして、将軍の一人。

 特務部隊・ギルドナイトの指揮官にして国家元帥の娘。

 強力な戦闘力と、斥候術、精霊魔法を使える。

 

 アキラの特異性にいち早く気付き、次第に恋心を抱くが、

 従姉妹の治療の希望、国家の英雄の捜索という主任務に背くことが出来ず、泣く泣く城へと紹介する。

 

 

 主なスキル 

 斥候術 剣術 武器戦闘 精霊魔法 白魔法

 

 

 

 

 ~アニ・スコールハート~

 

 食欲魔女 氷結の魔女 銀狼の牙 魔女っ娘

 

 

 

 組分け帽子に、紺のローブ、マジックハンドな杖を持つ【魔女】の称号を持つ少女。

 花より団子を地で行く少女、相棒のガコライは財布扱いにしているが、にくからず思っている(多分)

 

 よくアキラの作るB級グルメをたかりに来る。

 

 

 主なスキル 

 魔法全般 薬術 占術 暴飲暴食 魔力変換 

 

 

 

 ~ガーコルト・イエーガー~

 

 ガコライ 銀髪銀眼 銀狼の牙 皮鎧の兄ちゃん

 

 若手の中で期待される冒険者

 

 剣術と柔術を駆使するカウンターを得意とする戦士

 アニとは腐れ縁。

 

 アキラに負けず劣らずのお人好しで、面倒見のいい好青年

 この作品で数少ない常識人。

 

 

 主なスキル

 剣術 柔術 ツッコミ

 

 

 ~イザナミ~

 

 闇の大精霊 ヤンデレヒロイン ナミ

 

 通称 ナミ

 

 ガリア王国の女神として祭られる大精霊。

 人間と大精霊の間に生まれた聖女だったが、千年前の戦争で黄泉の入口に封印される。

 

 その際、肉体は消失するも、アキラと契約を結び、魔力供給を始めとした、アキラの尽力により受肉する。

 アキラの正妻を自称する一方、嫉妬深い性格の腹黒である為、アキラを死霊化し、永遠に自分の物にしようと影で画策する。

 

 

 主なスキル

 闇魔法 蘇生術 死霊化 精霊魔法 白魔法 死の魔眼

 

 

 

 

 ~グレアム・マグドレア~ 

 

 元ロマリア人。 トゥールーズの外れ、丘の上の教会で孤児院を運営する神父。 撲殺神父。

 白魔法、格闘術の達人で、一部ではあるが黒魔法も扱える人物。

  娘と孤児たちを分け隔てなく愛する男。

  ロマリアから派遣された神父。卓越した戦闘能力を有するが、クレアの母、マリアと出会い、ガリアに入籍する。 現国王とは古い友人でもある。

 

 アキラの格闘術、白魔法の師。

 

 主なスキル 

 魔法全般 格闘術 源呼吸 対魔戦術 料理 若づくり

 

 

 

 ~クレア・マグドレア~ 

 

 グレアムの一人娘。 シスター

 

 天賦の才に恵まれた少女。 

 観察力にすぐれ、一度見た術、技を再現出来る。

 

 よく教会のボランティアに来るアキラを他の子供たち同様に慕っている。

 聖女の器を持つとされ、数多くの機関に目をつけらているが…?

 

 

 主なスキル 

 素体 神眼 対魔戦術 魔法全般 聖人化

 

 

 

 

 ~ジャック~

 

 アキラに絡んできた三流ハンター 蛇女の尻尾のリーダー。

 死都に取り残されるもトビを逃がすなど心根は腐ってはいない。

 死都奪還作戦に置いて、自信と誇りを取り戻し、実力を上げていく。

 

 

 主なスキル

 

 戦術眼 ヘイト管理 狩り 霊気(弱)

 

 

 ~ギル~

 

 アキラに絡んできた三流ハンター

 

 

 主なスキル 黒魔法

 

 

 ~ラルゴ~ 

 

 アキラに絡んできた三流ハンター

 

 主なスキル 白魔法

 

 

 

 ~トビ・スカウトマン~ 

 

 日に焼けた肌にバンダナを巻いた駆け出しのハンター。

 蛇女の尻尾のパシリ的存在だが、仲間内からは尊敬し、尊敬される仲。

 死都に取り残された仲間の救援を求める。

 

 

 主なスキル 

 索敵 逃走 偵察 パシリ

 

 

 ~アリシア・ド・マイヤール~ 

 

 ガリア人・クルトの民 金髪碧眼の姫騎士

 王族の遠縁に当たり、王女クラリスの護衛官、侍女を務める。

 クラリスの忠誠心は高く、元ギルドナイトと戦闘能力も高い

 クラリスを救うためにアキラを医者、婚約者として推薦するが・・・・・・ 

 

 リィーンの実の妹。

 

 アキラの指導の元、

 近衛騎士の小隊相手に一人で無力化するほどに上達する。

 士官学校にアキラのお目付け役として入学、生徒会副会長を務める。

 

 

 主なスキル 

 隠密 剣術 武器戦闘 精霊魔法 源呼吸 魔法剣

 

 

 ~クラリス・ド・ガリア~

 

 ガリア王国王女。クルトの王族

 夜色の髪、瞳とナミの系譜に当たる少女。

 聖女の器であるが、大精霊の遺伝子、

 精霊因子の暴走で精霊化により病弱になっていく。

 

 深窓の令嬢という雰囲気をもつが本来は明るい少女。

 アキラの治療により全快。兄の様に慕うようになるが…?

 全快してからは【精霊化】のスキルを完全に制御でき、

 ガリア随一の精霊魔法の使い手になる。

 

 

 主なスキル 

 精霊化 精霊魔法 魔力放出 結界術

 

 

 

 ~アルフォンス三世~

 

 ガリア王 クルトの民ではあるが、女神の系譜ではない。 婿養子。

 武人の血を引くが、民の幸せを第一に考えており、豪放ではあるが、聡明な人物。

 アキラを大精霊の契約者という事を見抜きながらも、

 彼の意思、考えを見抜き、見逃す傑物。

 

 主なスキル 剣術 精霊魔法 元素魔法

 

 

 

 ~ルイ宰相~

 

 王弟。 執政能力に優れるが、宰相を勤めているが権力を求めすぎるきらいがある。

 

 兄が王になった事を疎ましく思うも、

 自分の息子を王女と婚約させようと画策し病に倒れた姫に形だけの婚儀をつけ、

 王位を磐石なものにしようと動く。

 

 

 主なスキル 精霊魔法 交渉 外交

 

 

 ~シャルル~

 

 ルイの息子 放蕩者

 

 

 主なスキル 放蕩 

 

 

 

 

 ~ノエル・セイフィート~

 

 銀髪ショートのダークエルフ

 暗黒大陸出身

 

 エルフには珍しく大剣を扱う魔法剣士。

 偏見に抗う女傑。 口下手で誤解されがちだが根は心優しい女性。

 駐屯兵団で一、二を争う実力者。

 

 主なスキル 剣術 怪力 精霊魔法 魔法剣 霊気 魔力放出

 

 

 ~カサンドラ・オルテンシア~ 

 

 はぐれ・エルフ 金髪碧眼 エルフの典型的な容姿で線の細い美人。

 異端な思想故に故郷から追放されるが、ノエルに救われ行動を共にする。

 ノエルの型破りな行動に苦笑しながらも付き合う苦労人。

 ガーコルトとは愚痴を言い合える飲み友達。 

 

 エルフなのに肉付きのいいノエルとティファに軽い嫉妬を覚えている。

 

 

 主なスキル 精霊魔法 錬金術 霊気 ツッコミ

 

 

 

 ~ティファニア・コーラル~ 

 

 ハーフエルフの少女 作中最強のバスト戦闘力を誇る。

 精霊魔法の行使手にして、治癒魔法の達人。

 迫害を避けて森の奥深くの山小屋で生活していた。

 

 しかし、ノエルと出会い、以降は行動を共にする。

 ノエル・カサンドラを姉の様に慕う。

 実は、高貴な家柄、身分らしい……

 

 

 主なスキル 

 白魔法(治癒) 精霊魔法 交渉 狩り 神々の双子山

 

 

 

 

 ~ミケラン・ルージュ~ 

 

 三毛猫の獣人・斥候

 気を貼らないと語尾にニャとなまってしまう。

 

 

 主なスキル 隠密、片手剣 投擲術

 

 

 

 

 ~アーニャ・ルージュ~

 

 黒猫の獣人・魔導弓兵

 潜伏能力と狙撃、射出系の黒魔法に優れる。

 ミケラン・ナディアとは義姉妹。

 

 主なスキル 狙撃 弓術 隠密

 

 

 

 ~ナディア・ルージュ~

 

 

 白猫の獣人・重戦士 

 火力と防御力を生かした槍兵。

 ミケラン・アーニャとは義姉妹

 

 主なスキル 霊気 武器戦闘 魔法剣 嗅覚

 

 

 

 

 ~田中・ヨシツグ~

 

 日本人 異世界アースに召喚された外科医。 変態紳士。 大阪弁。 七英雄 人形師

 

 暗黒大陸の街、イシスに潜伏。

 

 手先の器用さから精巧なフィギュア職人としても有名、ネトゲ好き

 

 花粉症で引きこもっているとは本人の弁

 スキルを駆使し、本人と違わぬ人形すら製作可能。

 

 人形に魂を宿し、遠隔操作で同時に操ることが出来る。

 

 優れた諜報技術、人海戦術を得意とする。

 アキラに異世界人と世界情勢を伝えに来るがその真意は?

 

 主なスキル 

 分身霊 人形制作、治療魔法全般 現代医術 その他 たくさん

 



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