ガンダム0082鉄黒の狼 (木乃 薺)
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奪取戦1

一人の少年がコックピットの中から地球を見下ろす

0080の終戦協定からだろうか、全てが狂ってしまったのは、いや、もっと前からだったかもしれない

強襲用高機動ゲルググと呼ばれる機体の中で彼は地球に寄生する連邦軍を見下した

そして、彼は強襲部隊が降りて行くのを見ながら笑顔を浮かべる、少年が浮かべるような無邪気な笑いではなく、歯を見せて笑う悪魔のような笑みを浮かべていた

連邦開発基地

周りを砂漠に覆われるこの基地の周りに多くのMSや地上戦艦がジオンの奇襲に備えてビームスプレーガンや主砲を構え、待ち構えている

そんな中で、開発基地に最も近い場所で三機のモビルスーツが各々の武器を持っている

「初めての地上戦はどうだ?ナキ少尉、やっぱり重力下じゃ、機体が思うように動かんか?」

ジムコマンドを元にして作られた高出力ジムの隊長機のパイロットは30歳くらいだろうと思われる声で、たどたどしい操作をする一機の機体のパイロットに話しかける

「は、はい、でも、隊長たちの足を引っ張らないように頑張ります」

たどたどしい動きの、新型ガンダムの試験用に作られたジムカスタムは答える、その声はまだまだ若く、10代から20代と言った感じの声だ

「心配すんなよ、ナキ少尉、俺たちの仕事は表面上は新型機体による敵機との交戦によるデータ収集だが、あのMSの壁を越えられるやつはまずない、ま、地上に馴れるための練習だと思えば、気楽だろ」

へらへらとした、とても戦う人間ではないようなセリフをジムスナイパーⅡのパイロットは言う、声からして30代から40代と言った声だ

「まぁ、そうだな、だからと言ってフライ中尉みたく気を抜くなよ、ジオンの奇襲でわかっているのは、今日のこの時間に開始するという事だけなんだからな」

隊長機のパイロットはフライ中尉の所だけ強調して言い、敵機を待ち構えている

「かぁ〜っ、手厳しいねぇ、サニー隊長は、まぁ、お前が上手く動けなくても、俺たちがいるんだ、安心して自分の前だけ向いてろよ」

面倒くさがりだが決して悪い人ではないようだ、そう思いながらナキ少尉は自分の方向を見張る

すると、前方から砂ぼこりを巻き上げながら高速で接近する機体が微かに見えた

「高熱源体三機!こちらに近づいてきます!機体照合……ジオンのドム三機です!」

前の方で護衛するジム隊の一人がそう叫びながらジムのビームスプレーガンで応戦するが、相手のドムの色がデザート仕様のためか、見辛く狙いにくいため、なかなか当たらず

「う、うわぁっ!?!」

ジム隊は為す術なく、撃たれ、倒れていく、何体も何体も当たらない事に対する恐怖が増していき、上手く当てる事が出来ずに次々と倒れていく

「ちくしょう!何だってんだよ!あのドムは!」

ジムコマンドに乗った隊長は強化ビームスプレーガンを構えて撃つがなかなか当たらない

「ジム隊は下がれ!地上戦艦で蹴散らしてくれる!」

そう言って地上戦艦は主砲をドム三機がいる場所に向き、撃とうとしたその時だった、地上戦艦の上にマントを身に纏うモノアイが怪しく光り

「な、なんだ!い、いつからそこ………」

言い終わる前に戦艦全てに貼り付けられたチェーンマインが爆破し、戦艦は全て爆散していく

「なんなんだ!?MS母艦からMSをもっと出せ!こうなったら数で応戦するぞ!」

作戦指揮官はそう叫んだ、しかし、ナキ少尉はMS母艦の上空に大気圏から入ってくる物を見た、ミサイルのような形の物の中から何かが出て、脱け殻となったミサイルは母艦に向けて落ち

「MS母艦大破!?な、何が起きているんだ!?」

かなり居たMS部隊、地上戦艦、MS母艦、全てが破壊されて連邦の指揮官は混乱し、残ったのは三機の実験部隊しか残されていない

「クロウ、戦線に突入した……新型ガンダム奪取作戦を開始する」

少年は高機動ゲルググの中で、そう呟いた




文章能力もガンダムに詳しいわけでもない作品なので、本当のガンダムファンさん、本当にすみません、初めて出した作品なので、あたたかい目で見てくれたら、本当に嬉しいです


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奪取戦2

連邦軍開発基地

基地内の研究員も慌てていた、そんな中でも作戦隊長は研究長を先に逃がし、研究員や基地内で警備をする兵を逃がすために必死で指令を出している、その様子は作戦隊長の鏡とも言える状態であったが、その必死さが研究員たちの不安を煽り、基地指令部は混乱していくばかりだった

しかし、その老人だけは違っていた、車イスに座り目をつぶり眠っているようにも見える白衣を着た老人が居た

「何事だ、騒がしいな、研究者なら少しは落ち着いた行動ができないのか」

老人はお付きに車イスを押させながら作戦隊長のいる基地指令部にそう言うと、すっと声は途絶えた

「ナージ研究副長!ここにおられては危険です、すぐにでも研究長と共にこの基地を脱出してください!」

作戦隊長は副長の護衛に着くと言って逃げるつもりだった

しかし、ナージ副長は

「私は逃げも隠れもせん、逃げて生き延びたければ勝手にするといい」

まるで、心を読んでいるかのように言い当てる、いままで隊員を救うのに必死だった作戦隊長は冷や汗を流し目が泳ぎ始めるが必死に弁解をするように、相手を洗脳をするように言い訳をする

「な、なにをおっしゃっているので、ですか!わ、私は逃げようなどとは思っておりません!」

その様子は決して先程の作戦隊長の鏡のような人物とはかけ離れていた

「副長も早くジオンの奇襲攻撃を見てください!こんな状態で逃げないなんて命を捨てるようなものです!」

作戦隊長は少しだけ焦りから戻った自分の判断力を使い副長が今の基地周辺の様子を見れば先程のような減らず口も出ない、そして怖くなって逃げ出す、それに乗じて自分も逃げようという、生きるために大量の部下を見殺しにしようという事に罪悪感さえ感じずになっていた

すると、ナージ副長は呆れたようにため息をつき

「知っとるよ」

とだけ言い続けて

「私があのMSを作ったのだから」

と言った、その瞬間

マントからモノアイを覗かせる機体が指令部の壁を貫いていた

「じ、ジオンのイフリート………」

誰が言ったか分からないが震えたような声でそう言って

「案外、早かったな、お迎えご苦労だった」

ナージ副長はイフリートに向けてそう言うとお付きが車イスを押してイフリートに近づいていく

「ふ、副長!き、危険です!」

一人の研究員がそう言うがナージが座る車イスはイフリートに近づいていき、目の前で止まると、イフリートのコックピットは開き

「フラッグ博士、勝手な真似は困ります、こんなことをしなくても我々で成功できた物を…」

二十代から三十代くらいのジオンパイロットが出て来てナージ副長にそう言う

「すまんな、私も連邦軍の開発技術に興味があったが期待はずれだった、しかし、迎えに着たことは感謝する」

周りの全ての人間が状態を理解できないまま、ナージ副長と呼んでいた白衣の有力者はコックピットの中へと消えていきお付きの人物が置き土産として投げた高性能爆弾の爆破によって指令部の人間は皆、爆破の中に消えたのだった

 

開発基地周辺

サニー隊長たちの試験機部隊は奇襲を仕掛けて来たジオン奇襲部隊と交戦していたが、状況は劣勢の一言だった

「なんで旧世代のモビルスーツに攻撃一発も当たらねぇんだよ!」

フライ中尉はジムスナイパーⅡで援護射撃を続けるがデザートドムが起こす砂嵐によって標的はずれ、それ以前にその三機が発射する砲撃を避け続けなければ動かないただの的になってしまうため撃てるチャンスが少ない

「フライ中尉は避けることに専念しろ!そして隠れられる場所を探して、そこから援護射撃を開始してくっ!………ぐっ!」

サニー隊長はなんとか指揮を出そうと努力するが懐に入って来た高機動ゲルググに隙を突かれビームナギナタで斬られそうになるがビームサーベルでなんとか防御をするが防御をした瞬間蹴りを受けて高出力ジムは後ろに飛ばされる

「っ!!まるで、死神だな………」

サニー隊長はコックピットの中で汗をかきながら相手をしている物に恐怖を覚えた

ジムコマンドに高機動ゲルググがとどめを刺そうとしたその時

「はぁぁぁぁぁぁあ!!」

ナキ少尉が叫び、高機動ゲルググの腹部に思いっきりタックルをした

高機動ゲルググのパイロットである少年は突如の事態に少しだけ対応が出来なかったが、すぐに立て直しビームナギナタを構える

それに対をなすようにナキ少尉のジムカスタムもビームサーベルを構えて

「ナキ少尉!やつは並みのパイロットでは太刀打ち出来ない!君では無理だ!」

そうナキ・ナズナは地上戦は今回の作戦が初、宇宙戦とはまるで違う重力下の戦闘に馴れていないのだ、そんな人間が地上戦の中でも死神のように立ち回る並外れたパイロットとまともに交戦出来るはずもないのだ

「運動性能なら、このジムカスタムは新型ガンダムと同じ設計なんです、必ず………倒します」

ナキ少尉は隊長の声とは裏腹に落ち着いた声でそう言う、しかし、ナキ少尉の心臓は未知の戦場で未知の敵と対峙しているというだけで恐怖と焦りが脅しをかけるようにドクンドクンと鳴り続いている

「…………わかった、フライ中尉!俺たちでドムを倒す、援護を頼む」

サニー隊長はそう言って高機動ジムを起き上がらせてビームサーベルを構えて砂嵐の方に走らせていった

 




バトルの書き方がすごく難しいので見苦しいかもです、でも頑張って書きます


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奪取戦3




隊長のジムコマンドと離れた後にナキ少尉のジムカスタムと高機動ゲルググは睨み合っている

どちらか動けば戦いが始まる、先程までとはまったく違う

戦場で静寂が睨み合う二人のパイロットを包んでいる

しかし、そんな中で聞こえてくる頭にまで響くドクン、ドクンという心臓の音が聞こえる

ナキ少尉が聞けるその音の中に聞こえてくるのは

無邪気に笑う子供の笑い声だった

それをナキ少尉が理解した瞬間、目の前の高機動ゲルググはビームナギナタを構えて魂を刈るためにとりついた死神のようにコックピットを切り裂こうとしていた

…………………だめ!

頭の中に新しく響いた声は優しく透き通るような女性の声だった、その時、ゲルググの動きは一瞬だけ戸惑ったように止まり

「っ!させるか!」

それを見て、はっとした、ナキ少尉はゲルググのビームナギナタと自分の機体の間にビームサーベルを入れて押し込んで、顔の前で両者が刃を交えるような形で止まり

…………うざい……

また、子供の声、今度は鮮明に聞こえてくる、そしてその声はゲルググのコックピットから発せられている事に気がついた

「ま、まさか、君なのかゲルググのパイロット…」

思わず口に出してしまった、すると、相手のゲルググのビームナギナタを構える力は少しだけ緩んだ目の前で刃を交えているパイロットと自分の思いが通じ合っているような気がしたからだった

「聞こえているんだろう!ゲルググのパイロット!僕は戦いたくなんかないんだ!」

心で思っていることを言うと、高機動ゲルググは一歩踏み込み力を先程より込める

「な、なんでなんだ!」

ナキ少尉はそれに耐えるようにビームサーベルで攻撃を防いでいるが、相手のパイロットに叫ぶようにそう言うと

 

 

俺は……強化人間………戦って戦って

 

俺を作った博士の邪魔をするやつを排除する

 

 

頭の中に声が響いた、その声そのものは少年の声であったが声と同時に響いたイメージは少年が殺した連邦軍や反逆者の殺されるシーンだった

そのイメージは一気にナキ少尉の頭を恐怖心で埋め尽くして、操作をする腕が震え、ビームサーベルを握る腕の力は弱まり、押し負けてジムコマンドのビームサーベルを構えていた腕を切り落とされる

「…………終わり」

高機動ゲルググの少年の声が鮮明に聞こえて、ナキ少尉は為すすべ無く、恐怖心の中で殺される、そう思った瞬間

「そらそらそらぁ!ジオンの死に損ないが前に出るんじゃねぇ!!」

コックピットのマイクから勢いのある十代くらいの声がコックピット内を響いて、陸戦ジムに大きなバーニアを着けたジムが高機動ゲルググ向けてバズーカを撃ち、それをゲルググが慌ててビームナギナタでバズーカ弾を切断して後ろに下がる

そのジムには肩装甲の部分に連邦マークの十字の後ろにクロスマークがある過激派連邦軍の象徴マークが描かれていた

「あ、あのマーク………過激派連邦なのか?」

ナキ少尉が呆気をとられていると巨大な爆発音が聞こえて、新型高機動ガンダムが起き上がり

そのガンダムを守るようにジオンのマントからモノアイを覗かせる機体がバズーカを構えている

 

高機動ゲルググのコックピット内

 

「クロウ、アッシュ、マージ、セロント、作戦成功だ、博士も無事救出した、撤退だ」

隊長の声がコックピット内蔵の無線機で聞こえる

そのままクロウの乗るゲルググも奪取した機体を守るように周りにつき、デザートドム三機はスモークグレネードを投げて周りにつき、開発基地後を去った

「………あいつ、次は潰す………」

クロウと呼ばれる少年は高機動ゲルググのコックピットの中でそう呟いた




バトル書きづらいぃい、あとジオン側と連邦側の切り替えが難しい、直していかないとダメですね


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戦場の休息

「おい!ナキ!ナキ少尉!大丈夫か!」

隊長の声がする……ここは…どこだ?

ナキ少尉はうっすらとある意識を覚醒させ、目を開けると、救護室の天井が見えた

ナキ少尉は一、二回程、訓練でへまをして入って同じ天井を見ているので覚えがあるが、今回はいままでの二回とは違う天井に見えた、それは重力下で初めて入るから、そんな感じがするのかもしれないが

敗北したという事実が救護室の天井を見ると強く感じてしまった

「ナキ少尉、大丈夫か?どこか痛む場所はないのか?」

横を見るとサニー隊長が心配しながらこちらに話しかけて来ている、その隣の椅子では壁に寄りかかりながらコクンコクンと寝ているフライ中尉が見えた

どうやら、高機動ゲルググとの交戦後、意識が途絶えてしまったようで、救護室に運ばれたようだ

「自分は大丈夫です、隊長たちは大丈夫でしたか?」

あのドム三機を二人で相手したのだから隊長とは言え苦戦を強いられたのではないだろうか、と思い聞いてみる

「あぁ、砂嵐を巻き起こしながら我々の攻撃を避けて我々を的確に狙う射撃、恐ろしい相手だった……」

先程のドム三機の強さについて端的ではあるが的確に伝えてくれた、彼らはエースの中のエースと呼ばれるパイロット、アムロ・レイやシャア・アズナブルと呼ばれるパイロットに匹敵する強さを持つパイロットだろうと推測する

「こら、フライ中尉、起きないか」

ナキ少尉が推測しているうちにフライ中尉が寝ている事に気がついた隊長が頭を軽く叩いてフライ中尉を起こすと

「はいぃっ!私は寝てなど………って隊長さんかよ、びっくりさせんなよな」

いきなり椅子を倒しながらフライ中尉が起きて立ち上がり敬礼をしたが、隊長だと分かると敬礼を解き、ぐったりしながら、ナキ少尉の方に近づいて

「やっと目が覚めたか、コックピットの中で気絶して見つかった時は死んじまったのかと思ってひやひやしたぜ」

まるで、冗談を言うようにヘラヘラとしながらいつもの調子でナキ少尉に言う、彼なりの励ましのようだが、その瞬間、あのゲルググの最後にコックピットを切ろうとした姿がフラッシュバックする

「どうした、ナキ少尉、顔色が悪いぞ」

隊長が心配してそう聞いてくる、どうやらフラッシュバックした恐怖感で顔が青ざめていたようだ

「な、なんでもありません……大丈夫です」

そう言うと

「なんだよ、あんな旧式の機体でトラウマ植え付けられるなんて、コロニーから来た連邦兵はあまちゃんしかいないのか?」

自分の視界から入っていない位置から自分がゲルググにやられる直前に聞こえた若々しく男の声ながら少し幼い高さを残す少年の声が聞こえた

少し長い赤い髪を紐で一まとめにして括ってる軍帽を被った少年がこちらに近づいてきた

帽子の影のせいでか、よく顔は見えないが青色の瞳が自分を見下しているように見えた

「自分を助けてくださり感謝します、ナキ・ナズナ少尉です」

体を起こして、敬礼をしながら感謝の意をそのパイロットに伝えると

「別に助けた訳じゃない、ジオンの前にたまたまあんたがいただけ、それにあんたみたいな雑魚に感謝されても全然誇れねぇし」

見下しながら、そう答えられて、ナキ少尉は自分の弱さを実感する

「おいおいおい、坊主、てめぇ、敵さんが撤退する直前に来て倒せなかったわりには偉そうに言うじゃねぇかよ?」

フライ中尉はナキ少尉に対して偉そうな態度をとる少年に対して喧嘩をふっかける不良のように少年を煽る

「うるさい、なんにも出来なかったおっさんは黙ってろよ」

フライ中尉より身長が小さいが睨みながら強気な態度をとる

「んだと、このガキっ……」

反論をしようとすると

「やめろ、フライ中尉、それに君も、病室では静かにしたまえ」

サニー隊長が両者を止めて

「もとより、うるさくするつもりないよ、雑魚に雑魚って言ったら勝手に反論してうるさくなっただけだし」

フライ中尉を睨みながら、嫌みのようにそう言って病室を退室しようとする

「待ってくれ、君の名前は何て言うんだ」

ナキ少尉は無意識のうちに退室しようとする少年に対して聞くと

「………レイン・リスキー少尉、二度と俺の前に来るな、目障りだ」

それだけ言ってドアを閉めた

「なんなんだよ、あの坊主は、まともに戦ってもねぇのに偉そうに、気にすることねぇぜ、あいつ連邦軍の内からもあんまり気に入られてねぇって有名なんだぜ?」

フライ中尉はナキ少尉を励ますためにフォローするが陰口のようになっていて

「やめないか、フライ中尉、レイン少尉はうちの部隊に配属になるんだ、そう言う陰口のようなものは控えたまえ」

隊長が言った言葉に対して、フライ中尉は嫌な顔をすると

「上からの命令だ、仕方あるまい」

隊長はそう言って会話は終了した




2000文字に近いくらい書いた、そろそろガンダム本編とかのキャラ出してみたいと思ってます
あと、三人もお気に入りに追加してもらってることを知ってすごい嬉しかったです、頑張ります


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休息の砂漠

今回は鉄黒の狼側です


砂漠の夜は冷える、だが町の光がないから星がよく見える、少年は星に手がとどきそうで伸ばしてみるが

そんなことはない、とどきそうでとどかないこの距離を実感するだけだ

…………なんだろう、この感覚……

「どうしたんだ、クロウ、こんな時間に起きて、地上から見る星が綺麗だったか?」

隊長と部隊員から慕われる男、アモン・ヒイラギは星を見てい少年に話しかける、手にはココアの入ったマグカップを握っていて

「………別に…、俺にそんな感情は備わっていない」

クロウと呼ばれる黒髪の少年は静かに静かに答えて、自分の真っ赤な目に星を映しながら

「………綺麗だな……昔、仲間と見た戦線下で見た星とは大違いだ……」

そう言いながら、アモン隊長はココアの入ったマグカップをクロウに渡して座りながら空を見る

たくさんの小さな星が集まっている場所や赤く光る星、青白く光る星、そして他の星とは離れた位置にある青白い星、さまざまな星が空を埋め尽くしている

すると、そんな星の海の中に一筋の光が走る、流れ星だった

「お、クロウ、流れ星だな、地球でしか見れないもんなんだぜ?」

後ろからデザートドムのパイロットの一人、マージ・ホプキンスはクロウに流れ星を指さしながら後ろから話しかける

「地球圏に入ろうとして連邦軍に倒された機体の残骸や連邦軍の機体の残骸が引き寄せられて燃える、パイロットたちの命の炎……」

クロウは流れ星を見ながら、静かにそう呟く

「そんな悲観的に言うなよな、ほら、流れ星は三回お願い事言えると願いが叶うっていうんだしよ」

マージはクロウを盛り上げようと頑張っているが一向に笑う気配はなかった

しかし、次の流れ星が流れた時だった

クロウは下を向きなにかを三回唱えるようにお願いをしたのだ

「お、クロウ、なに頼んだんだ?」

するとさぞ当たり前かのようにクロウはマージの方を向き

「博士の盾になれますようにと願ったんだ、俺は寝る……」

クロウはそれだけ言ってテントの方へ戻って行った

「仕事熱心だなぁ、クロウは」

マージがそんな事をぼやくとアモン隊長は砂の上に置かれてもう冷たくなったクロウに渡したココアのマグカップがあるのを見つけた、中身は一滴も飲んでいなかった

「クロウにとって唯一の家族いや、命をかけてでも守らなくてはならない生みの親なのだから…ジオン初の強化人間開発計画が生んだ新しい可能性なんて、綺麗事を並べただけの理想でしかない……」

隊長はそう言って立ち上がり、他の連中も起きているのか?とマージに聞くと

「アッシュは火を見てる、セロントはその火でチーズ溶かしてる、一緒に食うかって誘ってこいって言われたけど、逃げられちまったな」

マージは笑いながら、隊長を誘い、そのままテントを建てている中央で火を焚いていてスープや焼けるパンのいい匂いが立ち込めている

「遅かったなマージ、なんだ、結局クロウ、誘えなかったのか……しょうがない、アッシュ、食うか?」

茶髪に深い緑色の目を持つ男セロント・マッシーは料理を作りながら隣で火を見てる黒髪で肌の色が褐色の男アッシュ・ロベルトに問いかける

「俺、そんな腹減ってねぇからスープ一杯でいいって言わなかったか?」

アッシュは火を見ながら料理の出来具合に合わせて火の強さを調節しながら答える

「あぁ、大丈夫大丈夫、俺が食うから腹減ってるって言ったの俺だしな、あぁ、酒飲みてぇな」

マージがそう言いながらぼやいて空を見上げる、火の光によって煙が天へと上がって行くのが見える

「次の作戦が終われば基地に帰還できる、そのときにみんなで祝杯をしようじゃないか」

隊長はそんなことをぼやくマージにそう言うと、四人の話は次の作戦について話は動いた

「地球にまだ残っているジオン残党がいるジャブロー付近の森林に向かい、地上部隊を脱出させるか……上手くいくもんかねぇ?」

マージがそう言いながら首をかしげて焼き上がったパンを取りチーズを溶かしてパンの上に乗せて食べる

「それは、俺たちの手にかかっている、やり遂げなければ、多くのジオン残党を見殺しにすることになる」

アッシュは出来たスープを入れ物にいれ飲みながら答え

「なんにせよ、俺たちで必ずやり遂げなくちゃダメなんだ、必ずやり遂げよう」

隊長が最後にそう言って、全員が深く頷く

「それで、なんだ………セロント、頼みがあるんだが……」

隊長は真剣な顔でセロントを見て、アイコンタクトをしながら

「俺にもパンとチーズをくれ」

隊長がそう言って、セロントから受け取り旨そうに食べながら

星空の下で四人の狼と呼ばれる男たちの夜はふけていった




今回はジオン側のキャラクター紹介みたいな話です
一話から機体に乗って活躍してるのに会話シーンなんかが少ないなぁと思い、書いてみましたが難しいですね、しばらくは連邦側でストーリーを進めていきたいです


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戦場の休息2

ナキ少尉が目が覚めた夕方に退院して、サニー隊長の指示でナキ少尉とレイン少尉でしばらく行動を共にするように命じた

表面上ではナキ少尉の身体の状態が悪化してもすぐに救護室に連れていけるように、しばらくの間、レイン少尉は付き添うというとのことだが、実際は少尉同士から仲良くなってもらいたいというのが狙いである

「言っとくけど、これは命令だからやるだけでお前が倒れても引きずりながら連れていくから優しさなんざ期待すんなよ」

隊長……さすがに無理があるんじゃないだろうか……

ナキ少尉は頭の中でそう思いながらレイン少尉と一緒に基地内を歩いている

「とりあえず、連れって行ってくれるだけでも感謝するよ」

ナキ少尉は力なく笑いながら、それに対して受け答えをする

「ふん、ヘラヘラしやがって、俺はお前が何で少尉になれたのか、わかない、実力もないし、指示する力もない、戦場で必要なものひとつも備えてないやつがなんで、俺と同じ階級なんだよ」

その質問に答えられないというか、答えが見つけられない、確かに戦場で役立つような力はナキ少尉は持ち合わせていない

「それは…………」

「ふん、自分でも分からないなんてとても連邦軍の人間とは思えないな」

しばらく考えているとそう言って吐き捨てる

しかし、ナキ少尉は連邦軍、連邦軍と連邦軍兵の事をいい続ける彼の言い方にふとした疑問を覚えた

「レイン・リスキー……過激派連邦所属少尉……」

なぜか、ナキ少尉はそう言ってしまった、その瞬間、 いままで見下すようにしている少年は身に付けていた軍服から巧みに隠しナイフを握りナキ少尉の肩を掴み物陰の床に押し倒して逃げられないようにし、ナイフの刃を首に当てている

「どこから聞いた!言え!言わなければお前の首を飛ばすぞ!」

その表情は先程のとは違い、焦りと知られた人間を消すために放つ殺意に満ちていた、押し倒して首の肌にナイフの刃が当たり切れて血が一筋流れる

「お前が…援護に来たときに乗っていた機体にあった…マーク……連邦軍の十字の後ろにばつ印のあるマークだ……」

自分が見たものをそのままナキ少尉が話すとレイン少尉はナイフをしまい

「そうか…あの時か……他の連中に言ってみろ、首を飛ばすからな……」

レイン少尉の軍服は先程押し倒した衝撃で少し乱れていて被っていた帽子が取れて落ち、ナキ少尉に見えたのは女のように長く透き通るような綺麗な赤髪に、レインの軍服の中には男にはないはずの小さく膨らんだ胸元が見えた

「!貴様!見たなぁ!知ってはいけないものを見たな!」

レイン少尉はその視線の先に気付き叫びながら目を潰そうとしてくるのを、ナキ少尉は必死の思いで掴んで止めながら

「消せ!お前の脳内からさっきの俺の姿を、俺の胸を消せ!」

目を潰そうとする手にレイン少尉が力をいれながら

「ちょっ、目を潰しても記憶は消えないよ!落ち着け!」

頑張って潰されないようにナキ少尉はレイン少尉からの理不尽な暴力行為に抵抗している

「うるさい!なら、脳を消滅させる!」

レイン少尉とナキ少尉がそんなこんなをしているとどちらも力尽きて、ナキ少尉が立ち上がり押し倒していたレイン少尉が転がって

「あ、すまない…立てるか?」

転がったレイン少尉に手をさしのべて立ち上がらせるとまだ顔が赤いレインは

「…………過激派連邦軍の事も………俺の秘密も………口外したら首を飛ばす………」

そう言って服を着直している

「わかったよ、二人だけの秘密にしよう、俺はそんな口軽くないし」

力なく笑いながら、そう答えて落ちていたレインの帽子を取り渡すと、レインはぼそっとありがとうと呟いた

二人だけの秘密というものがナキとレインの人間的な二人の距離を縮めたのも、また事実なのであった




レインが女の子っていうのは、自分の趣味です
あ、更新ペースは一週間に一回から二回くらいです、短い文章しか書けないので、もっと長くしてみようかなと思う日々です


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ジャブローへ

一週間に一回じゃなかったです、すみません、出来るだけ更新していきたいです


レイン少尉の秘密を知ってから数日が過ぎた、体の方も特に以上はなく、現場に復帰することができた

そんなナキ少尉の元にサニー隊長がやって来た、復帰祝いと次なる指令を伝えに

 

「ジャブロー基地…ですか……」

伝えられたナキ少尉は少し驚き、考えながら隊長の伝えた基地の名を復唱する

「そうだ、お前の乗っていたジム・カスタム性能実験機のデータ輸送のためにジャブロー基地に向かう事となった、それにジオンのあの襲撃部隊、彼らがジャブロー基地を襲撃する可能性があるとの情報が入った」

それを聞いた瞬間、ナキ少尉は立ち上がり、隊長はそんなナキの目を見て頷き

「君なら反応すると思ったよ、あのゲルググか?」

「………自分は彼らの事を知りたいです……過激派連邦じゃない、終戦して、もう戦う必要のない彼らが何故戦っているのか……」

ナキ少尉は自分の目を見て言う隊長に力強く頷きながらそう答えた、あのゲルググ……そしてゲルググのパイロットのあの少年……ナキ少尉は彼のジオン残党兵という存在を、彼らの戦う意味を知りたいと思っていた

「おいおい、隊長さんよ、俺は嫌だぜ?隊長さんだってわかってんだろ、あいつらの強さは異常だ、作戦を選ぶのも隊長の権利なら、その責任や重みはちゃんとわきまえてんだろうな、ナキもレインの坊主が寸前で助けに入ったから生きてっけど、次にあいつらとやり合って生きてる保証ねぇんだ、わかってんのか」

立ち上がりナキ少尉と同じ目線になったフライ中尉はナキ少尉を睨みながらそう言った、しかし、今までのへらへらとした言い方じゃない、それは警告だった

「自分はあのゲルググと戦いたい訳じゃないんです、これは自分なりの……一つのけじめみたいなものなんです、行かせてください」

ナキ少尉はその睨み付けるフライ中尉の目をまっすぐに見つめていた、その目には熱意や情熱以上にも強く強く人を動かす信念のようなものがあった

フライ中尉は睨む目を緩めてしまい、目をそらして背を向け

「……………勝手にしろ…」

そう言ってフライ中尉は出ていってしまった

ジャブロー付近旧基地跡

「………技術者ギニアス・サハリンか………良いだろう、彼を第一に脱出させろ、私は先に行って待っている、頼んだぞ、クロウ」

一人の車椅子に座る白衣の男は目の前の黒髪の少年に向かってそう言っていた

「はい、博士」

少年はまるで機械だった、あれをしろと命令されればそれを最速の手段で行うロボットのようなそんな光のない目だった

「フラッグ博士、私はメカニックと衛生兵として残ってはいけませんか?」

車椅子を押していた男は車椅子に座る博士にそう聞いた、その男は見た目は20代くらいに見える中々の好青年で博士に似た白い髪を持っていた、しかし、博士とその男は家族同士ではなく、博士が彼の髪色を気に入り、鉄黒の狼部隊に引き込んだそうな、元は衛生兵だったが、博士が技術を教えてメカニックとしても技能がついたのだった

「構わんよ、そろそろ自動可動システムの実験を行おうと思っていたところだ」

博士はそう言うと車椅子は誰にもこがれずに一人で走りだしシャトルの中へと消えていった

「僕の名前はウェルター・サッチー、ウェルターでいいよ、よろしく頼むよ、クロウ君」

その男はシャトルに博士が入ったのを確認してクロウの方を向いて手を差し出して握手を求めながら

「………………握手はしない、お前はお前の仕事を全うしろ、馴れ合いは不要だ」

クロウはそう言って相手の握手の手を払い背を向けて自分の機体の方に向かった

「あらら、つれないなぁ」

ウェルターは苦笑しながら撃ち上げられる脱出用シャトルを見ながらそう呟いた



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密林戦

忙しくて書けない日が続いてしまい申し訳ありません、これからは少なくてもいいから書いていきたい


ナキ少尉は、ジャブローに向かうと宣言し機体を乗せたトラックに揺られていた

彼が目指す場所は連邦軍基地ジャブロー、地球連邦軍の中心拠点と言われる鉄壁の基地である

ナキ少尉が乗って性能面の実験用に使っていたジムカスタムの機体性能情報を本部に提出するために向かっていた

暗号通信による機体情報の提出でもいい気がするが、ジャブロー基地周辺の密林地帯にはひっそりと息を潜めるジオン残党が情報を奪取し本国に渡しかねない

それと、このジムカスタムを設計した博士が情報で見るより実物を見た方が早いという理由らしい

連邦にも頭がおかしい科学者もいるもんだな、情報だけで充分だろうにな

フライ中尉が居たなら…きっとそう皮肉を言っているんだろうな……

フライ中尉はジャブローには同行しなかった、ガタンゴトンと揺れるトラックの中でナキ少尉は彼の忠告を思い出していた

「ナキ少尉、あんまり気を落とすなよ、フライのおっさんがいない分は俺がカバーする、心配することねぇよ」

隣に座るレイン少尉はナキ少尉の暗い顔を見て、そう言ってフォローした、レイン少尉は人を励ましたり、フォローするという経験はなかったが、彼女なりの精一杯の励ましの言葉だった

「あぁ、ごめん、レイン少尉、別に落ち込んでる訳じゃない、フライ中尉の考え方は正しいよ、俺は自分の意思で生きるか死ぬかの戦地に向かっている、常人の発想じゃない、下手をすれば戦闘狂のような判断だ、フライ中尉は正しいよ…」

ナキ少尉はレイン少尉の言葉に対してそう答えた、戦力や技術の話ではなく、フライ中尉からは精神的に支えられていたところがあったのかもしれない、今さらだが痛感させられる

「…………自分の判断に評価つけてんじゃねぇよ、お前の判断に俺もついて来た、俺はそれを間違いだとか、馬鹿げてるとかそんな風に思わねぇ、やるなら最後まで付き合ってやるから精々感謝しな」

レイン少尉は暗い顔をしているナキ少尉に対して軽く肩を叩き、ニッと笑ってそう言ってくれた

レイン少尉の励ましのための言葉ではなく、レイン少尉がナキ少尉に対して思っている素直な意見だった

「ありがとう、レイン少尉」

ナキ少尉の心はその言葉と笑みで軽くなり、微笑みながらレイン少尉を見た

「ば、バカ、別に俺はてめぇみたいなザコに感謝されても嬉しくねぇっての…」

ナキ少尉の微笑みに対しレインは少し顔を赤らめながら目線を落とし強気な発言をしていた

と、その時だった、ナキ少尉の頭の中に強い痛みとこちらをすり抜ける光の筋のようなものが見えた

どこかで、見覚えがある………この光は……

ナキ少尉の頭の中に一つのトラウマが甦る、コロニーに侵入したジオン軍を銃撃戦で一掃しようとした時に味方が何人も殺られた、スナイパーライフルのレーザーサイトに近い、人を狙う時に現れる光がレイン少尉の額に当たっていた、レイン少尉の額だけじゃない、自分の後ろの機体の装甲、トラックのタイヤ、バックミラーとバラバラだった

恐怖を感じたナキ少尉は隣に座るレイン少尉を押し倒した

「な、何しやがる!?てめぇ!?」

押し倒されてレイン少尉がナキ少尉に声を荒げて顔が真っ赤になった、その直後、いや、直後というには少し0.5秒ほど遅れて、さっきの場所に銃弾が当たっていった

「レイン、さっきのレーザーサイトの光だけど……」

「レーザーサイト?そんなはずはねぇよ、あれの光は感覚で分かるように覚えさせられた、それにさっきの銃弾の着弾地は全部バラバラだが一斉放射じゃなく、連発式でどこでもいいから攻撃したように見える、そんなやつがレーザーサイトなんか使うようには思えねぇ」

ナキ少尉がレイン少尉にレーザーサイトの光が見えた事を話すと、レイン少尉は今までの訓練や戦地で経験した事を元に解説した

「じゃあ、あの光は一体………」

ナキ少尉はそう言うと、一人の少年を思い出した、そう、さっきの感覚はゲルググのパイロットと通じあった時と似ていた

自分が徐々に人間ではなくなり、違うなにかになっていくような感じがして考えることをやめた

「大丈夫か、二人とも、ここからはジャブロー基地周辺の密林地帯になる、ジオン残党からの攻撃に注意してくれ」

前の運転席の窓からナキ少尉たちが乗っている荷台に話しかけた

ジャブローから逃げ遅れたジオン残党……、彼らはなぜ戦うんだろうとナキ少尉は考えた

 

生きたいからだ、生きたいと思うからだ、勝敗は二の次だ

ふと、その時、頭の中に他人の声が流れた、しかもこの声は聞き覚えがある

それでも俺は、勝敗を一番に考える

そう、ゲルググと戦い、頭の中を流れた、少年の声

 

俺は勝利し、博士に功績の光を与えて見せる、それが俺の生きる意味だ

 

それが聞こえた、その瞬間、レーザーサイトの光が無数に現れた

「レイン!」

ナキ少尉はそう叫んで銃弾の当たらない機体の影にレイン少尉を引っ張り隠れた

さっきまで居た場所に銃弾が当たっていく

ナキ少尉は居ても立ってもいられず、アサルトライフルを構えてトラックを降りて声を元に密林の奥深くへと駆けていった



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密林の出会い

ナキは声の方に走っていた

彼と、あの少年と会って話がしたい、コックピット越しではなく、正面から

密林地帯の足場の悪い道を走っている、滑りそうな湿った道を踏みしめながら無我夢中で走っている

どっどっどっと心臓の音が徐々に早くなるのを感じる

アサルトライフルを握る手が熱い、そして重い、人を殺す道具の重さだ

重い、これじゃ、彼にたどり着けない!

そう思い、護身用のアサルトライフルを捨てて走り出し、しばらくして密林の少しだけ開けた場所に来た

「………いるんだろう、出て来てくれないか、俺はお前と話がしたいんだ」

正直、勘だった、なんとなくであり、動物的直感のようなものでもあるような感覚だった

「見ての通り丸腰だ、それはお前もわかっているんだろ、俺はお前と話がしたくて来たんだ」

見えない相手に対して、そう説得した、というか事実を伝えただけだった気もしなくもない

「俺はお前と話す義理はない、死にに来たなら殺してやる」

頭を流れた少年の声と同じ声が木々の向こうから聞こえたが、なんだ、この感じはどこかで聞き覚えがある、それもこの前とかじゃなく、もっと前に

「俺は、お前のこと、この前よりもっと前に会ってる気がするんだけど……

「あり得ない、俺は強化人間、0082の作戦のために、博士に勝利の栄光をもたらすために造られた、お前のことなど知らない」

ナキの疑問に対して、少年は切り捨てた、そして強化人間という聞きなれない言葉が聞こえた

「そして、お前も人間じゃない」

「!どういう意味だ………」

少年はナキに対し、そう続けて、最後に「時期に分かる、この言葉の意味が」と言って木々の向こうから走り

去る足音が聞こえて、慌ててナキは走って行った彼を追いかけようとした瞬間、足を何かで刺された感覚と、体が痺れて動かなくなっていく感じを味わった

ここは………………どこだ……………

手足が動かない…………縛られているのか…………

頭の中で様々な言葉が行き交っている、混乱しているのか、冷静なのか分からないが客観的に感じていた

するとガチャンと音がなり、足音がこちらに近づいてくる、頑張って目を開けてその相手を見ようと考えた

足音は小さく、目を開けると長い金髪を揺らして肌が黒く、深い青い瞳を持った少女が目の前に立っていた

服は麻のワンピースを模した服装をしていた

「えっと…………英語分かる?」

ナキは目の前の少女に意志疎通をとろうと試みた、ここがどこで、目の前の少女は誰で、今の自分の状況はどういう状況にあるのか、様々な疑問が行き交っている脳内をどうにか処理したいと思っていた

目の前の少女はコクリと頷いた事に対し、少しの安心感を覚えた、しかし、一つ疑問に思ったことを彼女は答えてくれた

「あなたの、話している、日本語、分かる、大丈夫」

少女の澄んだ声が狭い部屋に小さく響いた

「そっか、じゃあ、まずは君の名前を教えてくれるか?俺の名前はナキ、ナキ・ナズナだ」

コミュニケーションの初歩として、まず、名前を知り合うことから試みた

「私は、アンリ」

アンリという少女は自分の名前に続けてこう言った

「ナキ、あなたは、私の、婿に選ばれた、ボスが決めた」

それをナキは聞いてしばらく時が止まってしまった



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密林作戦

数ヶ月も休んですみませんでした

書き方を前の方に近づけました、さらに頑張っていきたいです


アンリという少女が言った事をナキは理解できず頭の中で様々な思考が広げられたが、それらは逆に混乱を呼ぶだけであった

「ごめんなさい、私みたいな、子供じゃ、嫌だろう、けど……ボスには、逆らえない……」

アンリは申し訳なさそうな、泣きそうな顔をしてナキに頭を下げた、それを見てナキはさらに慌てて

「い、いやっ、そうじゃなくて、ビックリしたんだそれに、今の俺の状況もよくわかってないからさ」

ナキは焦りながらま冷静な判断をとり、泣きそうな少女に慌てながらとりあえず今、俺がおかれている状況の確認をとろうとした

「……貴方は、この近くで見つかった、ボスの手下が、数日前に連れてきて、私に、貴方の婿になるように言って、ボスに報告に行った、あと3日で、帰ってくる」

アンリの話し方は片言だが理解できない程ではなかったが、色々な単語が出て来てナキは少し考えた

「報告……そのボスってやつはここにはいないのか?」

3日で帰ってくるという発言に対してナキは疑問に思いアンリに質問するとアンリは空を指差して

「ボスは、空の上にいる、らしい」

(空の上…宇宙か…それも3日で向かえるって事は月の近くってことになるけれど月近辺は連邦軍が見張ってるはずだから、あんまりでかい顔は出来ないはずだ…)

(まさか……連邦軍の中にこの事実を揉み消しているやつがいるのか……)

ナキは無言で思考を働かせているとアンリは急に喋らなくなったナキが気になったのか、近づいて

「どうか、した?」とアンリは首をかしげて、俺を見てそう聞いてきた、その時にハッとしてナキは目の前にアンリが来ていた事にやっと気がついて、少しびっくりするが顔には出さずに

「いや、なんでもない、それより君はこの小屋に住んでるのか?」

そう聞くとアンリは首を横に振り、今度は右側を指差して

「この近く、私の住む村がある」と片言ながらアンリはそう答えてくれた

「なら、そこに案内してくれないか、もっと色んな人に事情を聞きたいんだ、頼めるかい?」

ナキがそう聞くとアンリは嬉しそうにコクンと頷いて、ナキを拘束していた縄をほどいた

「ついてきて」そう言って俺の前を歩いてどんどんと森の奥へと進んでいく

 

そうして進んでいくと、一つの小さな村にたどり着き村に入り、村を見て分かった事はアンリを含めて全員が大体同じような肌の色をしていないというところだった

そんな事を考えているとゆっくりと奥から初老の男性がこちらに向かってきて、自分の前で立ち止まる

「ようこそ、私達の村へ、歓迎しますよ軍人さん」

初老の男性はアンリよりも日本語が上手く、顔なども日系人系の顔立ちで、アンリのような黒人系ではない

「……ナキ・ナズナ少尉です」と、とりあえず簡潔に自己紹介をして

「ケンイチ・リンと言います、この村で貴方のような人に事情を説明する爺さんだと思ってください」

そう言ってケンイチさんは弱々しそうに微笑んで、俺と握手をした

「では、こちらへ、何にもない村ですが、お茶くらいはお出ししますよ」と言ってゆっくりと行だして村を少し歩く

村を歩いていると生気がない男性や、畑仕事をする10歳もいってないように見える子供、涙を流した後を残して呆然と座り込んだ女性、そのどれもがやっぱり違う人種のように見える

そして村の中をしばらく歩いて小屋の前にたどり着いた

「どうぞ、ナキさん、中へ」そう言いながらケンイチは小屋のドアを開く

「お邪魔します……」

ゆっくりとナキは小屋の中に入り、小屋の中を見ると、まるで独房のような質素な作りだった

「どうぞ、そこにお座りください」

 

そう言って彼は手前の椅子を指差し、ナキが座るとケンイチさんも奥にある正面の椅子に座り、しばらく無言が続いた後にケンイチさんの口が開き

「……いきなりの事でびっくりしたでしょう」

とナキに聞いてきたのでナキは「……まぁ、はい」と曖昧な返答をしてしまったが、実際問題、びっくりしたというよりは焦りの方が強かったとナキは心の中で言った

ケンイチさんは申し訳なさそうな困ったような顔をして、その後、正面に座っているナキに対して頭を下げ

「申し訳ない、 この村は……いや、ここの人達は皆、人質に捕らえられていると考えてくれ、私達は奴等に太刀打ちができないんだ」

アンリの会話にも出てきた奴等という者達に疑問が生じて、この人なら答えられるだろうと思い、ナキはケンイチさんに「………その、奴等というのは…」と質問すると、ケンイチさんは下げていた頭を上げて、また困ったような、難しい顔をして

「……ヴェンデッタだ」

とだけ答えた

「ヴェンデッタ?」とナキは聞き慣れない名前を繰り返しながら首をかしげるとケンイチさんは続けて

「知らないのも無理はありません、ヴェンデッタはいわゆる裏組織、表向きは宇宙でファッブロというジャンク屋を装っています」

ナキはファッブロという名前には聞き覚えがあった、確か連邦にもジオンにも所属しないジャンクパーツを扱う企業だった気がする

「ファッブロには聞き覚えがあります、しかし、なぜ彼らが人質なんかを」

そうナキが聞くとケンイチさんは少し唸って

「……表向きはジャンク屋ですが、奴等の本来の仕事は戦争屋、我々のような人間をジオンや連邦に売り飛ばしたり、新型兵器の実験に使ったりするのが本来の目的です」

そしてケンイチさんは少ししてゆっくりと深呼吸をして、ナキを一瞬にして恐怖させる事を言い放つ

 

 

「ジオンが衰退し、過激派連邦のみが力をつける、今、ヴェンデッダは新たな勢力として宇宙を、そして地上を手に入れるつもりです」



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密林作戦2

久しぶりの投稿です、しばらく前回の書き方で書いていきたいと思います


ケンイチさんは机に肘をつけて自分の頭を両手で抱えながら震えて

「奴等は遊んでいるんだ、私達、戦争難民で…」

「戦争難民?」とまた聞きなれない単語というか、そういう人たちが居ることは知っていたが疑問に思い復唱すると、ケンイチさんは自分の頭から手を放して頷きながら

「えぇ、オーストラリアだとか連邦軍とジオン軍との戦争で出ていくしかなかった人達、それが私達、戦争難民です」

話には聞いたことがあったがまさか、彼らがそうとはとナキは内心、驚きながら

「ここに来る途中、畑仕事をしている子供がいたの気づきましたか?」

それを聞いてあの少年を思いだしナキはコクンと頷く

「彼は両親をコロニー落としで失ってね、さらに兄さんが連邦に召集でジオンと戦って死んでしまったんだよ、まだMSが公式導入される前だから61式戦車に乗ってて連邦の指揮官の指示で囮に使われた…」

「彼はこの事実を知らない、でも、この話をすれば、きっと彼はジオンも連邦も恨み続けるでしょう……」

ナキはその話を聞いた時に当たり前だが、こんな時代だからこそ忘れてしまうような事、ジオンも連邦も、どちらも結局、正義じゃない、彼らからすれば両方悪なんだと気づかされた

そして、そんな当たり前な事を今さらだが、知ってヴェンデッタという強大な悪の存在がいること、そんな事実を今まで、俺は知らなかったんだと思うと避けていたような感じがしていた

ナキがそんな事を考えている間にもケンイチは話を続けて

「そしてヴェンデッタはモビルスーツを使って居ます…力を持たない私達ではとても太刀打ちできませんよ…」

ナキはモビルスーツという単語が出てきた時にびっくりしながら「モビルスーツ!?じ、ジオンのモビルスーツですか?」と焦ったように質問をした

「い、いえ、ジオンでも連邦でもない、でも……デザインは連邦の物に似てますね…」

その言葉でアンリの言っていた月に本拠地があるというのと、連邦軍の手回しという推理は外れていない事がわかった、そして、その推理から新たな推測、ヴェンデッタと連邦との関係性には、"過激派連邦軍が荷担しているのではないか"というのがナキの頭のなかを過っていた

 

そして、そんな事を考えていると外から喧騒が聞こえて来た、かなり近い、この小屋の真ん前でおきているようだ

「なにか起きたんですかね……少し見に…」とケンイチさんが立ち上がろうとすると畑仕事をしていた少年はドアを蹴り開けて入ってきて、アサルトライフルを向けて、銃口はナキの方を向いている

「お前………俺の……俺の、兄ちゃん、殺した!」

少年は震える手で、自分の身長と見合わないような大きさのアサルトライフルを抱えている

「!バルドっ、やめなさい!それを下ろすんだ!」としばらく反応できなかったケンイチさんはバルドという少年にそう言うが、バルドはアサルトライフルを下ろさない

「兄ちゃん、死んだ、お前らのせい!」

 

 

そうだ、俺が知らないだけで一年戦争という戦争は、連邦は、多くの人間の命を奪ってきた

 

俺が知らないだけで

 

知らないんじゃない

 

知ろうとしなかっただけじゃないか

 

俺は過激派連邦の事も戦争難民の事も

 

知っていても、深入りしないように、目を塞ぐようにしていたんだ

 

だが、もう塞ぎたくない

 

ナキの中で何かが弾けながら、銃口をこちらに向けて構えて震える少年のアサルトライフルを恐れる事なく近づいて、震える体をナキは抱き締めていた

「……ごめん………お前の兄ちゃんの隣に居れないでごめん……お前の兄ちゃんを助けられなくて、本当にごめんな…」

ナキが優しく抱き締めたままそう言うと少年はアサルトライフルをゆっくりと手放して泣きじゃくった

「でも、もう助けられないのは嫌なんだ」ナキはそう言って少年と顔を見合わせて

 

 

「俺に君たちを助けさせてくれ」

 

 

そう言って泣きじゃくっていた少年を見ると少しだけジオンのあの少年のように見えたのは、どうしてだろうかとナキは思った



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密林作戦3

あの後、バルドはケンイチさんに凄く怒られたが、ナキはケンイチさんを頑張って説得し、駆けつけたアンリの手伝いもあり、ケンイチさんを説得出来た

「以外とケンイチさんって怒ったら恐いんだな……」

人は見かけによらずとは、昔の人は今でも実感するような言葉を残してくれているものだなどと考えながらバルドにアサルトライフルのあった場所を聞いて、二人でその場所に向かっているのだった

そして歩いているとアンリと最初にあった質素な小屋に戻ってきたのだった

バルドは小屋に入り、慣れた手つきで椅子の下に敷いていた敷物を退かすとマンホールの蓋のようなものがあり、その中から俺の所持品を出してくれた

「よくここにあるってわかったな、ありがとう、バルド」とナキがバルドに向かっていうと、バルドは満足げに頷いて

「あいつら、ここに入れる、見た、まとめて、売るため」とかなり片言に答えてくれた

そして、蓋を外された穴を見ると、他にも三丁ほどライフルや拳銃があったのでなんとなく疑問に思い「……これらの持ち主は?」とナキは聞いた

するとバルドは俯きながら

「連れて、いかれた、嫁にされた、女も、連れて、いかれた、あと、お前の、報告、行った」と片言に答えた

「………俺は連れ戻すまでは出来ない……でも、戦うよ、守るために…」と言ってバルドの頭をわしゃわしゃと撫でると、バルドは嬉しそうに目を細めて

「死亡、フラグ」とまだ軍人じゃなかった頃によく聞いた単語が出て来てナキは笑った

「誰だよ、それ教えたの」

ふたりで笑いながら蓋と敷物を治して小屋を出て、村へと歩きだした

「そうだ、他に武器はないの?なんでもいいから」とナキはなんとなくバルドに聞くとバルドは嬉しそうに立ち上がりナキの手を引いて走った

ジャブローの森林を走り、村より少し離れた開けた所に出たと思ったが、そこは地面ではなく人工芝や広い集めた葉などでカモフラージュされたジオンのMSや戦艦の射出ハッチだった

「こっちだ」とバルドはそれだけ言って近くにあった地下に降りるための階段を使い、中に入ると、使われずに廃棄されたジオンのザクやドム、そしてかなりの大きさの戦艦があった

「このデカいの、ワニ!」とバルドはかなり大きな戦艦を指差して

「わ、ワニ?」とまたナキは首をかしげて復唱する

「クラカディール、ワニ!」とバルドはそう言うと大体意味がわかった、クラカディールとはロシア語でワニという意味だ、確かに言われてみるとワニに見えなくもないような気がする

「あぁ、なるほど、この戦艦の名前がクラカディール、だから、ワニなのか」と再確認するようにバルドに向かってそう言うと、バルドは頷いていた

そして、またクラカディールという戦艦を見ると、装甲にルナチタニウム合金が使われて居た所を見ると連邦軍基地の用にも思えるが置いてあるモビルスーツがそれは違うと訴えている

という事はジオンの人間がここでルナチタニウム合金をかき集めて作ったんだろうか、だとしたら凄い執念だなぁと感じずにはいられないなとナキは思った

「こいつを動かせるの?」とバルドに聞くとバルドは首を横に振ってかなり古く使い込んであるようなノートを渡してきた

そのノートには事細かく、操縦の仕方や武装の使い方等が日本語で書いてあった

「俺、その字、読めない、だから、わからない」とバルドは申し訳なさそうに言いながら、言ってきた、確か、あの村の人々の言葉はケンイチさんに教えてもらってるらしいし、ケンイチさんに読んで皆に分かるように説明してもらうのが一番だが

「これはケンイチさんには言ってるの?」とナキが聞くと

「言ってない、大人達、怖がり、だから、これバラして、奴らに、持っていく、思った」とバルドは答えた

それを聞いて、やっぱり村の人々を縛り付けているのは恐怖か、でも、バルドはその恐怖に立ち向かおうとしている、この子は強いんだとナキは心の中で思った

「バルド、君はこの村を救うために、人殺しになったとしても、ヴェンデッタと戦う覚悟はある?」

そう、ヴェンデッタが悪であってもヴェンデッタと戦うという事はすなわち人を殺す悪に染まるという事なのだ

だが、バルドはその問いかけに対してぶれずに、力強く頷いた

「俺、兄ちゃん、守れなかった、だから、もう、守れないの、嫌だ!」

ナキを見上げるバルドの瞳には決意の熱がこもっていた

「わかった、これの操縦を教えるから、まず村の大人達を呼んでくるんだ」

そう言うとバルドは少し戸惑った、やはり大人達をまだ信用できてないようだ

「大丈夫、今のバルドなら大人達を味方につけられるはずだから」

そう言ってバルドを村の方に向かわせてクラカディールの状態を細かく見ていると後ろから声が聞こえてきた

「お疲れ様、です、ナキさん」

そう、アンリだった

「アンリか、バルドはどうなったんだ?」と信じて送り出したものの、やっぱり気になるようでアンリに聞いてみて

「ケンイチさんに、話して、村の人達、集めて、話し合ってる、けど、もう答えは、出たと思う」と片言に返答を返した

「そっか、なら良かった、後さ、無理して片言にしなくて良いよ」

ナキがそう言うと、アンリは少しビックリしたような表情をして

「気づいていたんだ…」と片言ではなく普通に言ってみせた

「まぁね、なんとなく、バルドと話してると、ケンイチさんに習ったと思うけど、単語を並べて喋るのに対して、アンリは無理やり区切りをつけてる感じがしたから」とナキはアンリに向かってそう言うとアンリは俯きながら

「父親がオーストラリア出身で母親が日本人だった、母親が生きている間は日本で過ごしたけど、母親が亡くなってからは父親の実家のあるオーストラリアに住んだ、コロニーが落ちたのはそれから三年程経ってからです」

そして、アンリは自虐的に笑いながら

「父親似で良かったですよ日系は人気があるみたいで順番は先延ばしになりました」

やっぱり、アンリの話し方はどこか自虐的だった

「私みたいなただ呆然と人の別れに冷たい人間が最初に行けば良かったんです……」

「………嘘だよね」とアンリに向かってナキは言うとアンリはナキを睨んだ

「ほら、やっぱり、諦めきれてないんだ」

「アンリは本気でそんな事を思ってない、自虐的な言動の後ろにあるのは後悔と取り戻したいっていう気持ちなんだ」

アンリはそれを言われると自分の本心を見透かされているような感じがして睨むのを止めてゆっくりとうつむいて少し恥らったようになった

「皆で取り戻そう、自由を笑いあえる日々を」とナキはアンリの顔を見ながら笑ってそう言うと、アンリは今まで我慢していた分、泣いた



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ジャブローの古傷達

久しぶりのジオン側の話です


ジャブローの旧ジオン基地付近息を潜め、機体と共に鉄黒の狼部隊達は待機する

 

ケルゲレンにジャブローに残ったジオン残党兵を乗せる作業に他の連中が追われる中でクロウの新しい機体の調整が行われていた

 

クロウ「………白い……悪魔か…」

 

そのモビルスーツはジオンの名だたるパイロットや高性能なモビルスーツを葬ってきた、それに俺は乗るんだ

 

今まで連れ添ってきた高機動ゲルググは解体され、アモンの乗っていたイフリートモヒルとこの高機動ガンダムの部品に使われるのだそうな

 

そんな事を考えながら周りをもう一度見渡すと鉄黒の狼部隊ではない男がガンダムを睨むように見ていた

 

その男の身体には服の上から分かるほどの管が刺さっており、呼吸器を付けて、車椅子に乗っている死に損ないの兵士のようにも見える

 

だが、関係者以外はケルゲレンに乗り込むよう指示されている、それにガンダムに対して強い殺意や怒りを持ったジオン兵がガンダムと共に心中などされては空にいる博士が困る、そう思い、クロウは男に近づいた

 

クロウ「そこのお前、ジオン残党なら列に戻れ、警告は一回までだ、さっさと戻れ」

 

そう言うと男は車椅子を振り返らせてこちらを見て、少し残念な面持ちをし

 

男「はぁ……違うか……」

 

そう言って警告を無視し、またガンダムの方向を見た

 

クロウ「俺は、警告は一回までと言った」

 

そう言って拳銃を相手に向けると何かを一瞬で感じ取った、強い殺気のような何かを

 

ウェルター「おーい、ギニアス博士ー、探しましたよー」

 

ウェルター・サッチャーがこちらに向かって走って来て、クロウがギニアスという男に銃を向けているのを見て飛び上がり

 

ウェルター「ク、クロウくん!?なんて物を向けてるんだい!」

 

クロウ「ケルゲレンの列から離れ、敵兵スパイの可能性を考慮し警告を行ったが、警告に従わなかった為、銃殺が適切と判断した」

 

ウェルター「違うよー、新しく僕らと一緒にモビルスーツ開発に参加してもらうギニアス・サハリン博士だ、仲良くしてよ」

 

ウェルター・サッチャーは釘を指すようにクロウに言って

 

ウェルター「というか、博士、勝手に居なくならないでくださいよぉ、ここの基地、広いから探すの大変でしたよぉ」

 

ギニアス「………そんなに私を探していたなら車椅子に取り付けられたGPSを使えば良いだろう」

 

そう言って車椅子を動かし、こちらにギニアス・サハリンは近づいてきて

 

ギニアス「君がこの機体のパイロットのクロウ君か」

 

クロウ「……だったらなんだ」

 

ギニアス「この機体のジェネレーター出力は一機で従来のガンダム六機分に相当する、それ故の運動性能だ、この機体は必ず本国に持ち帰りジオンの技術の進歩の為に生かしたまえ」

 

クロウ「………了解した、ギニアス博士」

 

ギニアス「あぁ……任せたぞ……」

 

すると、ギニアスの額に汗が滝のように流れ落ちていくのがわかった

 

ウェルター「あ、ギニアス博士、お薬の時間ですから、向かいましょうか」

 

ギニアス「そうだな……また君と話が出来る事を楽しみにしておくよ……」

 

そう言ってギニアスは車椅子を押されながら奥へと向かうのだった

 

ギニアスの睨んだ白い悪魔と呼ばれたモビルスーツ、ガンダムはギニアスの傷をえぐりながらも冷めたような無表情で前を向いていた

 

クロウもそんな白い悪魔を同じように睨んで自室に戻った

 

アモン「………あれがギニアス博士か……フラッグ博士は一体彼を何のために宇宙へ上げる気なんだ…」

 

そう言ってアモンも急ぎ足で部屋へ戻った



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密林作戦4

ボルドーの熱意により、村の人々の決意はこの小さな火種から、燃え上がる炎のように強くなり、ヴェンデッタと戦う覚悟が出来ていた

 

ケンイチさんを筆頭に、クラカディールという戦艦の修理作業を行う事になった、ジオンのMSも動くようで、操縦方法を村の人々が学ぶなどをしていた

 

そんな中、ナキはアンリに教えてもらい、ジャブローの連邦軍基地の本部へと向かっていた

 

サニー隊長ならきっと力を貸してくれると信じ、夜も近づくジャブローの森林を歩いていた

「……………大丈夫?」

アンリが歩きながら声をかけて来たのでナキは「何が?」と返した

「…………うぅん、なんでも…」

しばらく間を開けてアンリは口を開け、なんとも言えないような返答をした

「…………なんか、難しそうな顔してたから、どうしたのかなって思って……」

アンリはまたしばらくして、ナキにそう言った

「あー……ごめん、考え事してたからさ」

と、ナキは申し訳なさそうに笑いながら返すが、考えていた事は笑えるような話ではなかった

 

ナキが考えていたのは、この村に入る前から気になっていた事、そう、ヴェンデッタという組織に連邦軍が荷担している事だった

確かに、アナハイム社と連邦軍の繋がりは聞いてはいる

 

ファッブロはジャンクパーツを扱うアナハイム社の子会社の一つだが、アナハイム社の子会社が人身売買、さらにそれを軍事利用なんて許すわけがないし、連邦軍もそんな人間の軍事利用なんて考えられない……

 

だが、近年でて来た得体の知れない組織、それで説明すれば全てに納得がいく

 

「過激派連邦軍」

 

連邦軍の裏で暗躍する彼らなら、と

 

ナキは頭を働かせていながら、森林を歩いていると、周りが森林から徐々に開けてきて、最後に少し急な坂を登ると連邦軍基地ジャブローがナキの前に姿を表した

 

「わぁ……ここが…ジャブロー……」

と、その大きさについ、ナキは感嘆の声を上げてしまった

「ナキはジャブローに来たの、初めてなの?」

感嘆の声を上げたナキに対してアンリは首をかしげながら聞いた

「うん、俺、コロニー生まれだったからさ、本物見るの初めてなんだよ」

ちょっと子供っぽかったかとナキは思いながら、アンリに返答するが、連邦軍の兵でないアンリが入って良いものかと考えて

「ちょっと待ってて、アンリも入れないか聞いてくるから!」

アンリにナキはそう言ってジャブローに走って行った

 

なんとかアンリも入れないかと連邦軍に話をしたが、身元のわからない人間を入れる訳にはいかないと言われてしまったので途方にくれていると

「ナキ・ナズナ少尉?」

と後ろから懐かしい声が聞こえてきてナキが振り向くとそこには真っ赤な帽子をかぶったレイン・リスキーという知り合いが驚いたように立っていた

 

 



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密林作戦5

密林作戦が長引きそうで怖い……

個人的には宇宙編を早く書きたいのですが、しばらくは地上編が続きそうです


連邦軍の心臓部であるジャブロー、周りが森林に囲まれた場所にその基地はある

彼はそんなジャブローの入り口を見張る連邦軍の名もない兵士で、この役職について二年の月日が経っていた

先程のように、ジャブロー付近の飲み屋で知り合った女を連れ入れようとする者も時にいる

彼も昔は人並みに女遊びを経験したが、まったく持って女とは恐ろしいもので、酔いつぶれて起きたら財布の中身が全て取られて、店の外に放り出されていたという苦い思い出があるのだ

故に若い兵士にそんな思いをさせないため、ジオンのスパイから連邦軍のジャブローを守るために、この役職を止めることは出来ない

決して嫉妬しているわけではない

 

そしてしばらくして二人の女性兵士が二人、こちらに近づいてきた

 

片方は短い赤い髪で青色の瞳をしたボーイッシュながら、まだ少し幼さを残す女性で

 

片方は黒い髪に黒い肌で目の青色がよく映える可愛らしく連邦軍の軍服が似合わないような少女にも見えるような女性だった

 

女性兵達は見張る連邦軍の兵士の前で立ち止まる

 

「すみません、この子の探し物をしていて後から来る人も手伝ってもらいました」

 

と、赤い髪の女性兵はそう言って黒髪の女性兵の肩を組んでそう言って

 

「あぁ、わかった、君たちの……

 

「私達の所属は開発部ですから、それに載ってないですよ、あ、でも後から来る知り合いは実戦部隊ですから、じゃあ」

と赤い髪の女性兵は彼が話す前にそう言って頭を下げて黒髪の女性兵の手を繋いで基地の中に入って行った

 

少しして、先程のナキ・ナズナ少尉とか言う若僧が来た

「……なんだ、何度来ても、部外者を入れる程、連邦軍基地の検査官は甘くないぞ?」

 

そう言うとナキという若僧はえーっとから始めて

「自分、先程来た二人組の付き添いなんですけど……」

と腰を低くしながらそう言いナンバープレートを確認する

「………確かに少尉ナンバーだな……疑って悪かった……だが……」

だが?というのにナキは首をかしげながら

「だが!あんな可愛らしい女性兵と知り合いながら、他の店の女に走るとは、なんともけしからん!羨ましいのもあるが、なんともけしからん!」

見張りを二年間してきたがここまで女遊びが激しい奴は見たことがないため、声を荒げながら怒った

「えっ……ご、誤解です!彼女達とはそんな関係じゃ!」

ナキは必死に訂正しようとするが相手はもう話が通じる状態ではない

「そうやって彼女達をたぶらかしたのか!もう我慢ならん!こっちに来い!俺がみっちり説教してやる!」

顔を真っ赤にして見張り兵は仕事を忘れてナキの腕を掴んで連れていこうとするとすっと赤い髪の女性兵が間に入って来て

「放してくれない?この後、こいつと大事な用事があるんだけど」

その一言で見張り兵はすっと平常に戻った

「行こ」と赤い髪の女性兵はそう言ってナキの手を握り走ってジャブロー基地の中に消えていき、見張り兵はそれを呆然と見ることしか出来なかった

 

 



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密林戦6

密林戦だけで10以上行きそうな勢い

マンネリだけは避けたいなぁと思う日々です


「ったく……なんであんな見張り兵程度に捕まるんだよ」

ナキの隣で歩く赤い髪のボーイッシュな女性兵はイラつきながらナキを睨んでいる

「それは、俺にもわからないよ、急に話を聞いてくれなかったんだから」

理不尽にイラつかれるのが嫌だったのかナキも反論をすると「言い訳するな」と切り捨てられた

「………にしても……一瞬、誰だか分からなかった…」

ナキがそう言うと赤い髪の女性兵は鼻で笑いながら

「いつもがこんなんじゃないから気色悪いか?」

するとナキは首を横に振りながら

「いや?普通に綺麗だなーって思っただけだよ?」

ナキの発言に赤い髪の女性兵は驚いたような表情を見せた後に俯いた

「やっぱ、あんた説教受けてきた方が良かったんじゃねーの」

しばらくしてニヤリと笑いながらナキをからかった

ナキは初めて彼女が、レイン・リスキーが笑った顔を見たような気がする

 

「上手く行きました?」

しばらく歩くと、ナキ達を待っていた変装したアンリが居て、話しかけてきた

「上手く行ってなかったらナキを連れてこれてるわけねぇだろ」

とレインは、呆れたように言っている、いつも通りの口調に戻ったようだ

「じゃ、俺、着替えてくるから、ちゃんと隊長と話つけてこいよ、ナキ少尉」

ナキを煽るようにそう言ってレインは自分の部屋へと戻って行くのだった

「さてと、とりあえず隊長に説明するから着いてきてよ」

そう言ってナキはアンリを隊長の部屋へと案内した

アンリはジャブロー基地の内装などが珍しいからか夢中になって辺りを見渡している

たまにナキに質問をして色々な知識を得ていた

「ここがサニー隊長の部屋だ、俺が話をつけるからアンリは詳しい説明を頼む」

ナキの顔には緊張が見られたが声は落ち着いていた

「はい、分かりました」

アンリはナキの質問に頷いてそう答えるとナキは隊長の部屋を開けた

「サニー隊長、失礼します、ナキ・ナズナ少尉であります、お話をしに参上しました」

ナキがそう言うとサニー隊長はナキの顔を見て

「……久しぶりだな、ナキ少尉、君が隊長に無断で単独行動とは、ずいぶんと私たちの隊を危険に陥れたいようだな」

サニー隊長がナキを睨む、かなりご乱心のようだ

それもそうだ、隊員の勝手な判断による単独行動は隊の壊滅も招きかねない

ナキが何か言おうと口を開けるとサニー隊長は「言い訳は言わなくても良い」と言って発言をさせない

「君に決断する自由を与えよう、チャンスは一回だ」

サニー隊長の重い口が開いてナキにそう言った、ナキは息をのみながらサニー隊長の言葉に聞き入っていた

「責任を取り、この隊を去るか、責任を取り、軍を抜けるかだ」

サニー隊長はナキを睨む、ナキを試しているのだ、軍人として、一人の男として

この二つの選択肢、ナキがあのゲルググの少年を追うのなら前者を選ぶべきだ、だが、本気で責任を取るなら後者を選ぶべきだ

アンリはナキの後ろでドキドキとナキの判断を待っていた

「…………自分は…この隊を出るつもりはありません」

ナキが選んだのは選択肢以外の選択だった

「……それは、お前が決められる事じゃない、なんなら宇宙のコロニー開発部に飛ばすことも出来るんだ」

ナキの判断にサニー隊長は睨みながらそう言ってくる、しかし、ナキは動じない

「サニー隊長は信念を持ち目標を目の前にしている隊員にそんな事をするような人じゃありません」

すると、サニー隊長はふんっと鼻で笑いながら

「何をもってそんな事が言える、根拠はなんだ」

そう聞かれるとナキは真っ直ぐにサニー隊長を見て

「信じているからです」

「信じる?青臭い若僧が言いそうな考え方だな」

サニー隊長はナキの回答を鼻で笑った、しかし、ナキはやはり真っ直ぐにサニー隊長を見ていた

「サニー隊長も青臭い若僧が言いそうな考え方を信じているから、自分はサニー隊長を信じているんです」

ナキがそう言うとサニー隊長とナキの間に一分程の沈黙が流れていく

「ナキ・ナズナ少尉、君は良い勘をしていた、無事に帰還したのを嬉しく思う、よって我が部隊での復帰を命ずる」

サニー隊長が沈黙の中、そう言って優しくおかえりとナキに言った

そこには、先程までの厳しそうな隊長の姿はなかった

「ところで、隊長、お話したいことは別にもう1つあるのですが良ろしいですか?」

そこからナキは今まで、アンリの村の話やヴェンデッタについても話した、アンリもナキが説明できない細かな事も伝えてくれた

「なるけどな……話はわかった、それで私は何をすれば良いんだ」

大体の事情を伝え終わり、サニー隊長はナキにそう聞いてきた

「敵の戦力は未知数です、それに敵は連邦のモビルスーツを保有しています、だから、隊長やレインやフライさんの力を借りたいんです」

ナキがそう言うとサニー隊長は少し考えた

「………わかった、だが、そんな大きな敵なら本部に応援をかけた方が良いんじゃないか?」

サニー隊長がナキにそう聞くとナキは暗い顔になりながら

「敵は連邦軍の深層部で繋がっている可能性があるんです」

サニー隊長はそれを聞いた時に一瞬、驚いたような顔を見せたが大きく頷いて「わかった」と力強く了承してくれた

「そういえば、ナキ少尉、君のジム試験機が改装されたというのはここに来るまでに聞いたかね」

ナキにとっては初耳の情報だった

「試験機から正規導入も可能な性能測定機としての改装が決まったらしい、更なる戦果を期待するよ」

ナキにそう言って、ナキのジムがある場所のカードキーを手渡した

「多分だが、そこにはそのジムの開発の第2責任者がいるが、変わった人だが、悪い人ではない、彼に機体の説明を聞いてくれ」

それを聞き終える前にナキはそのジムの場所へと走って行った

「やれやれ、私も若いと思っていたが、あれほどの若さはないな」

サニー隊長は優しそうに笑いながらナキの背中を見守っていた

 

 

 

 



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ジャブローの古傷達

投稿にかなり遅れてすみませんでした。

書こう書こうとしていると色々な行事が重なり忙しかったのと、パトレイバーを見るのに夢中になっていたらいつの間にかこんなに時間が流れていました。

これからも、読んでくれると有り難いです。


ジャブローの夜は開発区に比べて比較的、静かだった

風の音も、野鳥の鳴き声も、虫の声も、宇宙出身のクロウには新鮮なものだった

だからといって目を輝かせたりはせず、静かに環境の変化を感じとりながらケルゲレン護衛の任務を明日に控え、静かに目を閉じた

目を閉じると開けているときより多くの感情がぐちゃぐちゃと入ってくる

クロウはそれらを、制御する事が出来るが、しばらくはうるさい

でも、最近は、誰かがクロウの耳を塞ぐように優しくぐちゃぐちゃとした感情が塞がれていくような感覚がある

それが誰なのかは分からないが、連邦の実験機ジムと対峙した時の違和感に似ている、博士の言っていた通り、強化人間であるクロウとニュータイプである何者かの仕業なのか、と頭の中で疑問を解決させようとするが、徐々に睡魔が自分の意識を夢の中へと流していき、眠りについた

 

 

 

ギニアスは新型高機動ガンダム奪取成功を聞いた後、とある計画のために救援信号を出した。

それは、この地球に来てから叶えようとして失敗に終わったアプサラス計画の続行、そして、自分に傷を負わせたシロー・アマダと自分を侮辱し、裏切った妹、アイナに対する復讐心だった。

復讐のために薬で苦痛や病状を誤魔化しながらアプサラスⅣを作り上げた、しかし、アプサラスを浮かせるための発電効率の良いジェネレータが調達出来なかった。

しかし、連邦軍が開発していた新型高機動ガンダム、あの機体のジェネレータがあればアプサラスⅣを浮かせる事が出来る、あれさえあれば、アプサラスⅣを浮かせる事が!

そんな時だったジオンの部隊が新型高機動ガンダムを奪取したという情報を耳にした

そして、MSを搭載して地球を脱出するためにこの基地に来ると知った時、ギニアスはこれ程までに好機を実感する瞬間はなかった

そして、この好機を逃せば、二度と復讐と美しさを持つアプサラスⅣは起動しない

今しかない、そのためギニアスは新型高機動ガンダムを起動させようとしていた

「来ると思っていたよ」

暗闇から声がした、誰だか分からない声、いや、正式には誰にでも当てはまる声と言うべき声だった

「だ、誰だ!そこに居るのは誰なんだ!」

分からないという恐怖はギニアスを襲う、ゴーストなどは信じて居ないが、そんな物の存在すら感じさせてしまう

「俺だよ、俺、そう怯えんなよ」

ギニアスの前に現れたのは、自分の知人である、ユーリ・ケラーネという男だった

「馬鹿なっ!貴様はあの時、確かにっ!」

そう、ユーリ・ケラーネはギニアスが自分の手で殺し、その死に様も自分の目で、確かに見ていた

しかし、この男はここに居る、何故だ、何故なんだ

「そう騒ぐなよ、久しぶりに飲もうぜ、アイナは今日はいないのか?」

この馴れ馴れしく、嫌悪感を感じずには要られない話し方、間違いない、本物だ

本当にゴースト等というものは存在していたのか、それとも過労から来る一時的な幻影なのか

「ユーリ・ケラーネ少将、今のギニアス様のお身体にお酒を進めるのは少々、配慮に欠けるかと」

ギニアスの前に次に現れたのは、サハリン家に遣え、単独で出撃し死んだ、ノリス・パッカードの姿だった

「ノリスっ!?貴様は確か……」

なんだ、今、自分の周りで何が起きているんだ、一体、なにが

ギニアスは状況を理解しようとしたが、その状況は決して理解できるものではなく、ギニアスの混乱をさらに加速させた

そして、二人の姿はぐにゃりと歪んで行き

「ギニアス、久しぶりだな」

そう、誇るべき父と

「ギニアス、大きくなりましたね」

恨むべき母の姿に変わった

「母上、貴女には二度と会わないと思って居ましたよ、いや、会いたくもなかった」

ギニアスは母に対して、睨みながらそう言った

「ごめんなさい、ギニアス、決して許されないと思うけれど」

母だった女は困ったような顔して自分にそう言って来た、申し訳なさそうな素振りを見せれば許してもらえると考えているのだろうか

「愛などという粘膜が作り出す幻影にすがり、私達、家族を捨てた女を今さら謝られても許すものか」

ギニアスはこの女が嫌いだった、サハリン家が衰退したのも原因として、最終的に行き着くのはこの女なのだから

「愛にすがっているのは貴方ではなくて?ギニアス」

その女は微笑みながらギニアスにそう言った

「ふっ、何かと思えば、私に対する仕返しか、そんな根拠もない発言に踊らされる程、この私は幼稚ではない」

ギニアスは微笑みを浮かべている女に対して睨みながらそう言った

「ギニアス、貴方も粘膜の作り出した幻影によって生まれた一つの命なのです、その事くらい、分かるでしょう?」

ギニアスにとって恨むべき女は首をかしげながらギニアスにそう言って妊婦のように膨らんだ腹部を触る

「そして、貴方はまた、母の子宮の中へと戻りたいと望んでいる、違いますか?」

ギニアスに対して両腕を広げて微笑みながら戻って来ても良いのですと優しく訴えるようにしている

「っ!黙れ!そんな世迷い言でこの私が惑わされてたまるものか!」

そう言うと父と母の隣に妹だったアイナと妹を惑わしたシローとか言う男が現れた

「くくっ、待たせたなアイナ……これが夢幻の類いであっても、その男と貴様を葬れる日を楽しみにしていたのだからな!」

ギニアスは笑いながら妹だった女とその隣の男を睨む、二人ともギニアスに対して悲しい目をしていた

「なんだ、私にそんな目を向けるな!私をこれ以上愚弄するのか!これ以上、私に!」

「同情するな、ですか?」

ギニアスが言いかけて止めた言葉をアイナは悲しそうにそう言ったその悲しさは兄に対する同情であり、優しさでもあった

ギニアスはその優しさが、自分を包み込もうとする優しさに恐怖した

「貴方は優しさと、愛を求めている、しかし、求めている事を認めてしまったら自分を捨てた母へすがる惨めな部分が浮き彫りにされてしまう、それを恐れているのですね」

母の言う言葉にギニアスは図星だった、彼が愛を否定する理由の根源はその思いにつながっていた、もう否定する術を持たないギニアスは反論出来ず

「でも、良いのです、貴方にもう一度、母の体の中の優しい温もりと、愛をもう一度与えましょう」

そう言って母は妊婦のように膨らんだ腹部を半分に割ると、緑色のドロドロとした液体がビチャビチャと音をたてながら落ち、床を汚した

「さぁ、貴方のために用意した、本当の子宮です、そんな冷たい鉄の子宮を捨て、私の中へ戻りなさい、ギニアス」

母は緑色の液体を一歩、ギニアスに歩み寄る度にビチャビチャと音をたてながら床に落ち、ギニアスの恐怖心を煽った

「来るな!来るなぁぁあ!そんなもの要らない!私には必要ない!」

恐怖で車椅子を動かすことの出来ないギニアスは叫ぶ、しかし、誰も来ない、目の前に現れたゴースト達は微笑みながらその様子を見ている、狂喜、狂気、凶器、そこから来る恐怖心、そしてその恐怖心はギニアスを飲み込む優しさとなってギニアスを襲う

「来るなぁぁぁあ!!」

ギニアスは最後の抵抗でそう叫ぶ、母はギニアスの目の前に来て

「おかえりなさい、ギニアス」

 

 

「!、はぁ、はぁ………何だ、今のは……」

クロウは凄まじい悪夢を見ていたようで汗をかいて目を覚ます

人のイメージが自分の中に入って来ることは多々ある、しかし、今のは鮮明過ぎる、並のイメージじゃない

しかし、恐怖で目覚めた後、その夢を思い出すことは出来ない、思い出そうとする度に記憶が滑っていく

「…………まだ……2時か……」

時計を確認すると、まだ夜中で、とりあえず、かいた汗を流そうとシャワーを浴びる

人のイメージが夢に影響する、悪夢なら苦しんでいるイメージ、幸せな夢なら温かいイメージ、しかし、幸せな夢は見た事がない、それはクロウが強化人間として作られた存在で感情が無いからと考える、しかし、そうなるとさっきの悪夢はなんだ

恐怖に目を覚まして起き上がる、強化人間は恐怖という感情はあるのだろうか、任務が終わったら博士に聞いてみよう

そんな事を考えながら、シャワーで汗を洗い流して、また部屋に戻り、クロウは眠りについた

 

翌日、ギニアス・サハリンがコトリバコと呼ばれる箱にバラバラで収納された死体で発見された

 

事態は確かに大きな事だが、ケルゲレン出発の日程をずらすわけにはいかないという事で、その事件は未解決のままケルゲレン出発の準備を急いだ

 

 



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絶対防衛線

久しぶりの投稿のため半分リハビリのような駄文になっていますが、それでも温かい目で見てくださる方がいるなら幸いです


作戦開始まであと一時間、このジャブローの奥地で自由を勝ち取るための作戦が今まさに、開始されようとしていた。

 

 

 

作戦外出撃、新型MSの勝手な利用、これだけで軍から逮捕命令が下って当たり前だというのに、隊長は無理を承知で、この出撃を最後にしようとしていた

 

 

 

ゲリラ軍のMS隊と、トーチカ隊にも緊張が走り、刻々と時間は過ぎていった。

 

 

 

「あんたほどお人好しな軍人を見たことがないよ、俺は、それともコロニー生まれのコロニー育ちは皆、こうなのかい?」

 

緊張しているナキにレインが話しかけた、緊張を解すために話しかけたのかもしれないが、いつもの口調で嫌みっぽくなってしまいながら

 

「いや…ここまでお人好しなのは俺だけだよ、隊長も巻き込んでしまったし、俺も除隊を受ける覚悟だよ…」

 

ナキは、やはり気にしていたのだった、サニー隊長を自分の勝手なお人好しに巻き込んで軍を抜けさせてしまうことを

 

すると、レインはナキの頭をポカッと軽く叩いて

 

「バカ、聞いてねぇのかよ、隊長はずいぶんと前から軍を抜ける事を考えてたんだよ、良い口実が出来たって言ってたぜ?」

 

レインはそう言って苦そうに笑い、あの人の腹の内は結局、あんまり理解できなかったとぼやきながら続けて

 

「あんたが、今、集中すべきは目の前のお人好しな軍人のお人好しな戦いだ、間違っても死ぬなよ、お前は俺がいつか殺すんだからな」

 

そう言ってナキにコップに入った飲みかけの水をかけて、自分の陸戦ジムのコックピットに入って行った

 

 

 

「お人好しな戦いか……」

 

ナキはレインに言われた言葉を繰り返して、濡れた髪を掻き上げて、自分の機体に走って行った

 

 

 

 

 

『こちら、指令部、皆さん、聞こえますか?』

 

通信機からアンリの声が聞こえた、マイクで聞こえてると返す

 

『これから、私が皆の指揮を執る、サニーだ、全員、ここまで来たなら後には退けない、最初から出す命令は一つだけだ、絶対に死ぬな、それだけだ、健闘を祈る』

 

隊長機からの通信が入り、全員に緊張が走り、死ぬなという言葉をあんなに重く感じたことはない

 

 

 

そして、絶対防衛戦線はトーチカの発砲音と共に始まった

 

『敵の数は10機!ザクとジムの複合部隊だ!』

 

トーチカに居た兵士が叫び、トーチカによる攻撃を終了し、トーチカから脱出、その一分後、山の反対側からトーチカに砲撃が加えられ、隊長の指揮通りに物事が進んでいく

 

『次!モビルスーツ部隊、スタンバイ!』

 

そう言って隊長率いるMS射撃部隊が、シールドを構えながら一斉放射の構えをとる

 

そして、敵のモビルスーツ部隊だ上半身を見せた瞬間に一斉放射をかけて、進軍していく

 

『ビームを持った奴らは俺たちで叩く!行くぞ!ナキ!』

 

そう言ってレインの陸戦ジムとナキの実戦型ジムが敵の頭上を飛びながら、ビームを持つ敵のジムを3機潰して、ビームサーベルを下に向けて構えながら敵のジムにビームサーベルで穴を開けて、怯む敵にビームサーベルを構えて差し込む

 

 

 

『ジム隊、撃破した、第二波が来る前に一気に肩を付けるよ!』

 

レインが通信に向かってそう叫び、敵の後方で待機していた遠距離支援型MSもどきを破壊しに特攻隊として、レイン専用陸戦ジムとナキの高機動ジムが先行していく

 

 

 

ヴェンデッタMS母艦 司令部

 

 

 

「えぇい!早くモビルスーツを出して出して出しまくれ!相手はたった二機ではないか!」

 

ヴェンデッタ地上指揮官であるアダマス・ワーカーは焦っていた、目の前でMSをばったばったと斬り倒していく二機の見たことのない高性能機に追い詰められているという現実に、精神的に追い詰められていた

 

 

 

これ以上のMSの損失を出せば本部からのお叱りが来る、最悪、打ち首だ、なんとしてでもそれだけは回避しなくてはならない…と頭の中で考えて全力で指揮を出す

 

しかし、指揮官が元連邦だろうと、操作する人間が作業用すらまともに動かすのがおぼつかないジャンク屋達でとても敵うはずがないのだった

 

「ちぃ!ならば巡洋艦による殲滅戦を開始する!全員!戦闘配備!」

 

三隻の巡洋艦が砲撃を開始、MSもそれを援護するように射撃戦を開始したのだった

 

 

 

クラカディール船内

 

『アンリ!現れたぞ!第二波モビルスーツ十二機、巡洋艦三隻!』

 

ナキの声が外の銃声を聞かせながらクラカディールの司令部に響いた

 

「クラカディールの出撃準備を開始!彼らにこの森の恐怖の遺産の力を知らしめるのです!」

 

アンリがそう言って兵士の士気を高めながら、クラカディールが、眠っていたワニが今、目を覚まそうとしているのだ

 

「ジェネレータ出力安定、主力兵器装填完了!敵艦を捕捉!いつでも!」

 

味方の副司令のその言葉にサニーは頷いて、アンリに合図を出し、そしてアンリは息を吸い込んで

 

「主砲!放て!」

 

と叫ぶ、その声を合図に無数の対艦ミサイルが放たれて、突然のミサイルに襲われて、三隻の敵巡洋艦は予期せぬ攻撃を受けて撃沈、アダマスを乗せたMS母艦も中破、そしてヴェンデッタ軍勢のMSは先のミサイル放射とナキとレインのMSにより大半が撃破され、ゲリラの圧勝と言うに相応しい戦況となっていた

 

 

 

ヴェンデッタMS母艦 司令部

 

 

 

ヴェンデッタ地上部隊指揮官、いや、アダマス・ワーカーという男は大きな決断を強いられていた

 

兵力を持たない無力な戦争難民をMSや戦艦などで脅し、捕獲をして月で売買をする、これが彼のするべき仕事である、そのためこのような事態は想定されているものではなく圧倒的な敗北を前にしてこのまま月に撤退するというのは中間管理職である彼にとって立場をかなり危うくされるものである、しかし、自分がMSを使い前線に出た所で今の損害は全く変化しない

 

しかし、しかし、ここで退いても、攻めても状況が変わらないならば

 

「私のザクⅠ改は出撃できるな」

 

低い声で俯いたままアダマスは部下にそう問うた

 

「出せますが、まさか艦長、出撃なさるおつもりですか」

 

部下は俯くアダマスに対してそう聞くが、数秒間の沈黙が続き

 

「この被害を月まで持ち帰れば、あの方は私を必ず殺すだろう、私が時間を稼ぐ間に残ったMS部隊と君らで月に戻りたまえ」

 

部下は、「しかしっ」と何かを言いかけたが今回の被害を招き、責任を取るとなるとこの組織であまり表立っては聞かないが命による償いが強制される、艦長は失態で処刑され死ぬような哀れな最期よりも仲間のために美しく散ろうと、男として、散ろうとしているのだ

 

部下はその男に「分かりました、ご武運を」とだけ言い、戦場に残る僅かなMSや艦内の部下に指示を出して撤退の準備を急がせた

 

そして、アダマスは自分の愛機にコックピットに入り、一年戦争以来乗っていなかった機体の操縦を握り

 

「アダマス・ワーカー、ザクⅠ改、出撃する」

 

そう言って、戦場に赴いた

 

 

 

ナキ視点

 

 

 

敵のほとんどをクラカディールのミサイルが破壊し、戦況はこちらの圧勝を言うに相応しい状況となった、敵残党も逃しても良いくらいに減少しているが、レインは陸戦ジムを起こして、残党狩りを始めようとしていた

 

「レイン、深追いの必要はない、彼らに抵抗できる戦力は残されていないんだ」

 

それにこれ以上接近し、残ったMS母艦が防御網を張り巡らせば、最悪の場合被弾し必要の必要のない被害を出す可能性もある

 

「うるせぇ!敵が弱った今こそ攻め落とす絶好のチャンスじゃねぇか、いまさら怖気づいてんじゃねぇよ!」

 

レインは出撃の時になると血の気が強くなるようだと、ナキは思っていたその時だった

 

「!敵MSの反応あり!レイン!目の前だ!」

 

その瞬間に砂煙の中からジオンのザクⅠにそっくりな機体がレインの機体に突っ込んで来て、レインの陸戦ジムを吹き飛ばした

 

「くっ!死に損ないが!」

 

レインは上半身を起こして、マシンガンを撃つが避けられ、レインの陸戦ジムにワイヤーを射出し、電気系統をショートさせた

 

このパイロットはいままでのMSパイロットとは違う、明らかに戦い慣れしていると実戦経験の少ないナキにも一瞬で理解し、レインの陸戦ジムに接近するザクⅠの前に出てビームサーベルで貫こうとするが、ヒートサーベルによって逸らされ、切り上げが来ると予想したナキはバルカンで敵を一度怯ませ、レインの陸戦ジムを抱えて後ろに一度退いた

 

そして、再び目の前の敵を見る

 

ナキは一年戦争の初期に使われていた機体の後ろに恐ろしい死神の姿を見て、あの少年とは違う強さを前に息を呑んだ



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