″個性″という『呪縛』 (kwhr2069)
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序章〈始まりと出会い〉
序章ーvol.1


 初めての小説投稿になります!初心者でありながら自己満で投稿するため、まぁ、気軽な気持ちで読んでいただけると幸いです。>_<

 

 この小説は、『ワールドトリガー』を原作とし、『僕のヒーローアカデミア』の要素を入れています。詳しい人物紹介等は、また後ほどしていこうと思っております。

 

 駄文失礼しました。それでは、第一話です。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

第一話

 

 

 まるで、地獄絵図だ。

 

 あたりの家は、元のかたちを完全に失って倒壊。自分の住んでいる町とは思えない有り様だ。僕は、とにかく安全なところへ行くことにした。

 

 

 落ち着いたところまで来た。もうこれでひとまず安心だろう。ふとあたりを見てみると、一人の小さい女の子が地べたに座り込んで泣いていた。おそらく、小四くらいだろう。

 

 迷わずそちらへ向かう。

 

 

「どうしたんだ?お父さんとお母さんは?はぐれたのか?」

 

 そこまで聞いて、ふと思い当たる。そうだ、ぼくのお父さんとお母さんはどこに。探しに行こうと踏み出した足が止まる。

 

 

 女の子に服の袖をつかまれている。

 

 

「ごめんな。お父さんとお母さんを探さないといけないから。」

 

 ダメといわんばかりに首を強く横に振る女の子。

 

「でも...」

 

 

 

 その時だった。

 どこからともなく、巨大な何かが自分たちのところに迫ってきた。おそらく、"ネイバー"と呼ばれているものだろう。

 

 

 その瞬間、僕はすべてを察した。あぁ、死んでしまうのか、と。

 結局、お父さん、お母さんはどこに行ったんだろう。僕と同じように、死んでないといいけど。そんなことを考える。

 女の子が僕の服の袖をつかむ力が強くなるのを感じた。

 守ってあげなければ、と、強く抱きとめて、僕は目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

「『旋空』弧月!!」 ズバァァァン!!

 

 誰か、戦っている?誰?

そんなことを考えたのも束の間、僕は自分の意識が遠のいていくのを感じた。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ

 

 

 目覚まし時計のアラームが鳴っている。僕はそれを止めて布団から起きだす。

 

 

「この夢、久しぶりに見たな。」

 

 僕の名前は、人見操志。高校一年生。昨日、正式入隊したばかりのボーダー隊員だ。まだまだひよっこだけど、これから頑張って、いつかはA級になることを目指している。

 

 さっき僕が見ていたのは、約三年前の近界からの大規模侵攻を受けたときに、実際に僕が体験したもので、僕がボーダー隊員になろうと思ったきっかけでもある。

 

 父と母は、いない。大規模侵攻で亡くなった。一人っ子だったから、家族で僕だけが生き残ったことになる。

 

 

 朝食を軽く取ったあと、向かう先はボーダー本部だ。

 

 今日は日曜日。C級隊員は本部へ行って個人戦ポイントを上げに行く人が多い。

 

「よし、頑張るぞ!!」一人で気合を入れる。

 

 

 さて、何人くらいいるかな~...。同じくらいのランクの人を探す。結構いるようだ。この感じなら、今日で3500ポイントくらいまではいけるかもしれない。

 

 B級隊員に昇格するには、この個人戦ポイントを4000まで上げる必要がある。スタートは、基本的には1000ポイントからで、仮入隊の時にその力を認められると、上乗せされるようになっている。ちなみに僕は、最初は1400だった。これは多少なりとも評価してもらえているということだろうか。

 

 

 個人戦用のブースに入り、相手を選ぶ。できるだけ早くポイントが稼げるように、自分より少し上の人を選ぶ。

 

 僕が使っているトリガーは、弧月だ。それは、三年前のあの記憶。僕を助けてくれたであろう人が使っていたのが弧月だったことによる。まだ扱いには慣れていないが、近い将来、使いこなせるようになる予定だ。

 

 

 今日は、すごく調子がいい。自分がやりたいように戦えている感覚で、すごく気持ちいい。開始時点で、2200ポイントだったのが、もう今や2900だ。

 

 もしかしたら今日で4000まで?いや、さすがにそんな簡単にはいかないだろう。自身のポイントが上がれば、それだけ上がりにくくなっていくからな...。

 

 そんなことを思っていると、

 

「グゥー」お腹が鳴った。時計を見ると、11時30分を回っている。

 

「ちょうどいいし、メシにするか。結構熱中してやってたんだな。」

 

 そこに、対戦の申し込みが。見ると『弧月 2600』の文字。

 断るのも申し訳ないので、受けることに。メシはこの勝負の後だな。

 

 

 転送され、敵と対峙する。

 

 背は...こっちが低い。腕の長さを考えると下手に突っ込めない。まずは様子をうかがうことにする。

 

 振り下ろされる弧月をかわし、ガードし、相手の様子を見る。

 

 あまり、振りははやくない。これなら突っ込んでも大丈夫そうだ。そう判断した僕は、相手の攻撃が少しおさまったのを見て、勝負を仕掛ける。

 

「(間合いに入ったら、右上からと見せかけて右下から払うように切ろう。)」

 

 頭の中でイメージする。

 

「(よし、GOだ!)」

 

 右上からのフェイント。上手く弧月でガードさせて、右下から払うように!!!

 

 

「よっしゃー!」倒した!

 これで3050ポイント。昼食前に3000に乗ったのは嬉しい。上機嫌のまま、食堂へと向かう。

 

 

 それにしても調子が良い。昼食を食べながら思う。

 

 さっきの試合でも完璧にイメージ通りだった。ここまで良いと、むしろ怖くなる。

 

 このままできるだけポイントを稼ぎたい。今日なら、負けることもないのではと思う。もっと上の人とやって、早々と4000に乗せるのもいいかもしれない。というか、そうしよう。

 

 

 それから、戦術等を考えながら食事をし、ブースのある仮想訓練施設に戻る。イメージはたくさんしてきたから、あとはそれをやるだけだ。さぁ、午後も頑張るぞ!

 

 

 調子のよかった僕は、午後もなんと無敗だった。それはもう、自分自身が怖くなってしまうくらいに。が、3850ポイントというところで帰らなくてはいけない時間となり、帰宅。B級昇格は、次に持ち越しとなった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 いかがでしたでしょうか?

 楽しんでいただけましたか?

 

 特に動きもなくすみません。ここから!ここからですので!!

 しっかり盛り上げていきたいと思います!!

 

 感想を残していただけると嬉しいです。

 

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。



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序章ーvol.2

第二話

 

 初めは、ちょっとした憧れだった。

 

 僕を助けてくれた人。僕と少女をネイバーから守ってくれた人。

 

 

 あの日、僕と少女は今も名前の分からないボーダーの人に助けてもらった。

 その人は僕に、『男なんだからもっとシャキッとしてろ。』と言った。

 

 格好良かった。

 

 そして、その瞬間、僕は心に決めた。

 

『ボーダーに入ってこの人のようになる!』と。

 

 

 しかし、僕は父と母を亡くした。涙を枯らすほど泣いた。

 

 ただ、僕はボーダーに入って強くなるために頑張ろうと思えた。

 

 中学校までは体をつくりたかった。僕は背は低くないものの、体が細かった。

 筋トレや体幹トレーニングで体をきたえ、ご飯もたくさん食べるようにした。

 

 高校生になり、仮入隊の日。

 前日からワクワクしていた僕は、あの日助けてくれた人がいないか探していた。

 

 結局見つけられなかったけど、ボーダーには強い人がたくさんいた。

 

 その人たちを見て、よりボーダー隊員になりたい気持ちが強くなった。

 

 

 そして、現在、僕はボーダーの正式隊員となった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 今日は月曜日。高校生の僕は、普通に学校に行く。

 

 厳しい父の教えで、僕は小学生の頃から勉強をかなりさせられ、ニュースも毎日見ていた。その結果、僕は勉強は苦手ではない。むしろ得意なほうだ。

 

 まぁ、あまり好きではないのだけど。

 

 

 いつも通り登校する。が、何やら視線を感じる。

 何だろうと思いながら、教室に入る。と、

 

「おい、聞いたぞ!人見!お前、ボーダー隊員になったんだってな。」

 

「そんなこと俺たち知らなかったからよ、初めて聞いたときびっくりしちゃって。」

 

「ボーダー隊員になるんなら、教えてくれてればよかったのに。お祝いするのにさ。」

 

 

「え!?」

 矢継ぎ早に声をかけられ、驚く。情報がまわるの、早すぎやしないか??

 そんな、誰かに言って自慢したわけでもないのに。

 

 

 とりあえず、自分の席へ行く。

 途端に周りを囲まれる。

 

「なぁ!何で教えてくれなかったんだよ~!」

 

「そうだよ、同じクラスにボーダー隊員候補がいるなんて思ってなかったぜ!」

 

 

「いや、そんな、自分の口から言うことでもないし...。だって僕、目立たない方だから...。」

 

 

「そんな、目立たないやつがボーダー隊員になれるかよ!w」

 

「実際、人見、運動神経良いよな。なんか球技やってたの?」

 

 

「いや、球技はやってなかったよ。運動神経も僕よりいい人はいっぱいいるでしょ...。」

 

 

「なんでもそつなくこなす感じだよな~人見は。」

 

「そうそう。勉強もできるしさ。」

 

「ところでさ、ボーダーの試験ってどういうことするんだ?興味あるんだけど。」

 

 

「えっ、それは...。」

 

 あまりに相手が多く、困ってしまう。あぁ~、予鈴鳴らないかなぁ~。

 

 

 それからも、一躍クラスの人気者となった僕は、質問攻めにあう。

 休み時間から昼休み、そして、放課後まで。

 噂を聞きつけた他クラスの人たちまで来て、それはそれは大変だった。

 

 

「じゃあな!操志!また明日!」

 

「うん。また明日。」

 

 やっと帰れるのか。時計は6時25分。今日は本部に行って4000ポイントに到達させようと思っていたのに。計画が狂ってしまった。

 

 この感じは、今日の様子を見る限り、もう少し続きそうだ。

 当分、本部にはいけなさそうだな...。残念。

 

 

 帰りながら、周りのリアクションについて考える。

 あまりにも急変していた。あまりにも。

 あげく、早速下の名前で呼ぶ人もいた。これについては、驚きを隠せない。

 

 そんなに親しかったわけでもないのに、ここまであからさまに変わられると、むしろ清々しいと感心してしまう。

 

 別に、人と仲良くすることが嫌いとかではないのだが...。

 

 釈然としないまま、僕は家に着いた。

 まぁ、のんびりいこう。気にしすぎてもしょうがないしな。

 

 

 翌日。

 

 思っていたとおり、周りの熱は冷めなかった。

 

 話しかけてくれるのは、なんだかんだ嬉しいことではある。なのだが、彼らの中には面倒くさいお願いをしてくる者までいた。

 

 それは、トリガーを見せてほしい、とか、『トリガーオン』してほしい、とかいうものだ。

 

 言い方は悪いが、一般人にトリガーを見せるわけにはいかない。

 また、『トリガーオン』も、そんな気軽にやっていいものではない。

 

 だから断るのだが、そうすると今度は、『本当はボーダー隊員じゃないのではないか』ということを言ってくる人もいる。

 

 さらに、ほかにも厄介なものがあった。それは...嫉妬の視線である。

 

 

 それから僕は、一つの方法を発見した。

 

 僕によってくる人には、『あまり話したくないからやめてくれ』という目を向けた。

 嫉妬を浴びせてくる人には、「羨ましいならもっと頑張れ。それと、あまりこっち見るな。」という思いを込めてその人を見るようにした。

 

 すると自然と、僕を特異的な目で見てくる人はだんだんと減っていった。

 

 『目は口ほどにものを言う』という言葉があるが、それはどうやら本当のようだ。

 

 

 そして、金曜日。

 

 少しうんざりしたような心もちで学校へと向かう。

 

 

 通学路には、最近見かけていた男子の三人組が見当たらない。今日は遅いのだろうか。何はともあれ、ラッキーだ。

 

 

 教室へと入る。

 

 いつも話しかけてくるメンバーが集まって何やら話をしていたらしく、なんだか少しそわそわしているように思う。

 

 ここでも僕は話しかけられることはなかった。

 

 

 

 今、僕は本部へと向かっている。

 

 朝以降も、話しかけられることはほぼ無く、結果として、ボーダー本部に行く時間ができた。

 

 皆はもう飽きたのだろうか。

 とりあえず、今日は、時間を食われなかったことが何よりもうれしい。

 

 とはいえ、自分の心に嘘はつけないようで、気になっているのはクラスメートのことばかり。

 

 何かしたか?

 話しかけるなオーラを出したからか?

 それでも気にせず話しかけてきていたから、ほかに何か理由が?

 

「ああ、だめだ。わかんねえ...。」

 

 これはもう、思いっきり戦ってスッキリするしかない。そう思って、本部に足を踏み入れた。

 

 

 周りの様子が何やらおかしい?

 僕が仮想訓練施設に来てから、明らかにざわついているように思える。

 

 まぁ、気のせいだと思うことにし、対戦相手を選ぶ。

 しかし...

 

 

 

 どうしてだ?

 

 僕の対戦の申しこみは、ことごとくキャンセルされていた。

 

 前回勝ちっぱなしだったことが原因なのだろうか。

 それでも、それが皆に伝わるなんてことがあるのか?

 

 とにかく、このままここにいても居心地が悪い。今日は諦めて帰るか。

 

 そう考えた僕が、施設から出ようとしたその時。

 

 

「っっ!!!!!」 「わぁぁ!!!!!」

 

 

 突然入ってきた人とぶつかりそうになる。

 

 その子は、小さかった。女子だったのだが、自分の胸と同じくらいの高さの身長だった。

 

「ごめん。大丈夫だった?」と声をかけると、

 

 その子は、僕の方を見て、いきなり尋ねてきた。

 

「もしかして、あなたが噂の人見さんですか?」

 

 

 はい?噂の?どういうことですか?と聞きたくなった衝動をこらえ、ひとまず首を縦に振る。

 

 それを見た少女の顔が輝く。

 

「そうでしたか!あ、いきなりすみません。私、堺田天珠っていいます。初めてあなたの噂を聞いた時からあなたに興味があって、是非一度お会いしたいなって思ってたんですよ!」

 

 そこまで一気にまくしたてられる。

 

「僕の、噂?」

 

「はい!そうです!ってこんなお話してる場合じゃなかった!ということで、今から少し戦いませんか?」

 

「え?君も隊員なの?」

 

「失敬な!ちゃんと隊服着てるじゃないですか!」

 

「それよりも、戦う?僕と君が?」

 

「はい!ってことで、行きましょう、はやく!」

 

「う、うん。」

 

 

 

 いきなりの個人戦のお誘い。しかも、こんな小さい女の子から。噂がどうとか言ってたし...。

 

 

「ほら、はやく~!人見さ~ん!」

 

 向こうから手を振って呼んでいる。

 

 まぁ、ここは、ひとまず戦うか。詳しい話はそれからだな。

 

 

 そうして、僕はブースへと入ったのだった。

 

 

 

「(堺田天珠ちゃんか...。なんか、どっかで見た気するんだけど...気のせいかな。)」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 はい!ということで第二話でした!いかがでしたか?

 

 設定上の話ですが、大規模侵攻の時期は、操志が中一の、冬頃です。

 

 え~、あと、新キャラ堺田天珠(さかいだてんじゅ)は、操志の一つ下です!

 

 詳しいプロフィール等は、後ほどということでご了承いただければと思います。

 

 

 感想のほう、どんなものでもいいのでお待ちしています!

 

 では、ここまで読んでいただきありがとうございました!




次回:あなたってもしかして...!!!

お楽しみに~笑


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序章ーvol.3

第三話

 

 

 唐突だが、皆は"努力"という言葉は好きだろうか?

 

 "努力"。

 それは、成功のためには不可欠なものだ。

 

 僕は、努力することは嫌いではない。

 

 『努力は裏切らない』という言葉があるように、努力をすれば何事もいい方に運ぶと僕は思っているし、実際そうだからだ。

 

 『努力なんて面倒だ』という人もときどき見かけるが、もったいないと思う。

 

 努力しさえすればいいだけなのに、何をくだらないプライドを持っているのだろうか、とも思う。

 

 すまない。毒を吐きすぎた。

 

 

 今度は、違うことを聞こう。

 

 では、あなたは"才能"にあこがれたことがあるだろうか?

 

 "才能"。

 それは、時に努力を凌駕する、恐ろしいものだ。

 

 『才能がある。』『センスがいい。』

 

 これらの賛辞の言葉で、すべての努力が無為に感じられることもある。

 

 

 しかも、残念なことに、これはいくら頑張っても手に入れられないものでもある。

 

 持つ者と持たざる者。

 

 この差は、顕著にあらわれてしまう。

 

 

 正直に言おう。

 

 

 僕は、"才能"という言葉が嫌いだ。

 

 その言葉で他人と比べられることが嫌いだ。

 

 

 こんなことを言う僕は、一生"才能"に与ることはないだろうな、と思う。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 速い。

 

 今僕の目の前には、一人の少女がいる。

 名前は...堺田天珠。

 

 女の子とは思えないほどの強さだ。

 

 スコーピオンの両刀使いで、絶え間ない連続攻撃。

 

 僕は、避けとガードに必死で防戦一方だ。

 

 どうにかしなければ、と思い、とにかく一回大きく後退する。

 

 

 しかし、彼女は僕を逃がしてはくれない。

 

 常人とは思えないほどのスピードで突っ込んできた。

 

「(いや、ちょ、待てよ!こんなんどうやったら勝てるんだよ!)」

 

 

 必死でガードしながら策をねる。

 

「(スコーピオンは耐久性が低い。弧月の一振りでいけるはずだ!相手は女の子だぞ!負けるわけにはいかないんだっ!)」

 

 一度退く。

 

 またも突っ込んできて、すぐさま連続攻撃。休む暇がない。

 

「(せめて、この攻撃が一度でも止まってくれれば...。)」

 

 

 

 すると、驚いたことに隙ができた。

 

 

「(マジか!何で?とにかくチャンスだ!オラッ!)」

 

 

 

 

 勝った。勝ったけど...何だろう、この頃感じる違和感は。

 

 

 ブースから出る。さっきの戦いで、4100ポイントになった。B級隊員昇格だ。

 思っていたより嬉しくないのは、さっきの戦いのせいだろうか。

 

 

 周りがざわついている。それもそうだろう。明らかに不利だった方が突然勝ったのだから。

 

 ここから出ることにしよう。家に着いてからいろいろ考えを整理したい。

 

 

 

「人見さんっ!」

 

 

 声をかけられる。

 顔を向けなくても分かる。天珠ちゃんだろう。

 

 今は、話したくない。申し訳ないが、聞こえていないふりをさせてもらおう。

 

 しかし、

 

 

「人見さん!個人戦楽しかったです!」

 

 

「わあっっっ!!!」

 

 いきなり目の前に現れた天珠ちゃん。瞬間移動でもしたかのような速さだ。

 

「あっ、びっくりさせちゃいました?ごめんなさい、そんなつもりは...」

 

「大丈夫だよ。それで、何?」

 

 名前をわざわざ呼んでいた理由を聞いてみる。

 

 

「あっ、それなんですけど、明日って何か用事ありますか?」

 

「明日?何もないけど、なんで?」

 

「それならよかった!明日の昼11時頃に、✕✕病院に来てくれませんか?」

 

「え!?病院?何で?」

 

「詳しいことは、そこでお話ししますから!では明日、来てくださいね!」

 

「え、ちょっと!待ってよ!」

 

 声をかけるが、去っていってしまった。

 

 

 

 沈黙が訪れる。

 

 明日?病院?どういうことだろうか?

 

 

 考えてもらちが明かない。もう、明日行ってみるしかなさそうだ。

 

「帰るか。」

 そして、僕は帰路に着いた。

 

 

 

 翌日、11時10分。

 

 僕は、言われたとおり、✕✕病院にいた。

 

 今は、検査を受けているところだ。

 

 まだ天珠ちゃんには会っていないのだが、本当に何のために僕はここに来させられたのだろうか?

 

 

 と考えている半面、実はなんとなく理由を察している自分もいたのだった。

 

 

 検査が終わると、一旦解放された。

 

 部屋を出ると、そこには天珠ちゃんが。

 

「こんにちは。人見さん。検査、どうでした?」

 

「検査は受けたけど...。ねえ、これって何の検査だったの?」

 

「まあ、直に分かりますから。そんなに気にしなくていいじゃないですか。」

 

「う~ん...。先に教えてもらってた方が気が楽なんだけど...。」

 

 

 と、こんな話をしている間に、僕の名前が呼ばれる。どうやら検査結果が出たようだ。

 

 

「あの、今回の検査って、どういうことを調べるものだったんですか?」

 

 先生と向き合い、一番気になっていたことを尋ねた。

 

「まあ、驚かないで聞いてほしいんだけどね。君、"個性"って知っているかな?」

 

「"個性"?なんですか、それ?」

 

 唐突に知らない言葉が出てきて戸惑う。

 

 

「一種の特殊能力みたいなものなんだけどね。君は、その"個性"を所持しているようなんだ。」

 

 

 は?

 

 

「"個性"は、この国にはまだ所持者が少なくて、詳しいことは分かってないんだけど...。」

 

 

 おい、さっきから何を言ってるんだよ。わけ分かんねえよ。

 

 

「君、◎◎町に住んでいたことはあるかな?"個性"の所持者はそこでよく見つかっているらしいんだけど...。」

 

 

 そこから先は、何を言われたのかほとんど覚えていない。

 

 

 唯一耳に入ってきた言葉は、

 

 

 

 

 

 

 

 『洗脳』と、『効果時間3分』だけだった。

 

 

 衝撃を受けたまま、部屋を出た僕は、部屋の前で僕を待っていた天珠ちゃんを見た瞬間。

 

 

 

 走って病院から飛び出した。

 

 

「人見さん!逃げないでください!」

 

 後ろから天珠ちゃんが追いかけてくる。

 

 

 『逃げるな』というのは、"個性"と向き合えという意味もあるのだろうか。

 

 

 確かに、今の僕は、ついさっき知った事実から逃げている。

 

 しかし、普通に考えて、逃げないで向き合うなんてできるはずがない。

 

「何でだ!逃げて何が悪い!初めて知ったんだぞ!こうなるのが当然だろ!」

 

 必死で理屈を並べている自分。客観的に見て非常にダサいだろうと思いながらも、僕は続ける。

 

「大体、なんでいきなりこんなこと教えられなきゃいけないんだよ!」

 

 

 と、僕の右側を風が吹き抜けていった、と思うと、そこには、

 

「そんなの決まってるじゃないですか!私と同じような人がいたことが嬉しかったんです!」

 

「っっ!!」

 

 

「人見さんは何も言ってきませんけど、"個性"持ちだったんでしょ?」

 

 

 優しく聞いてくる天珠ちゃん。その瞬間、僕は救われた気がした。

 

 

 

「私の"個性"は、"ダッシュ"っていって、簡単に言うと、速く走れる能力です。」

 

 

 今、僕と天珠ちゃんは、喫茶店で二人で話をしている。

 

「そうか。だからあんなに速く...。」

 

「人見さんは?どういう能力なんですか?」

 

「ごめん。説明のときにさ、ボーっとしててあまり聞いてなかったんだよね...。」

 

「大体の推測はついてるんじゃないですか?」

 

「お見通しなんだね。・・おそらく、アイコンタクトで洗脳に近いことができる、んだと思う。」

 

 

 そうであれば、学校でのことや個人戦での違和感にも説明がつく。

 

 

「天珠ちゃんは、どうして僕が"個性"持ちだと思ったの?」

 

「C級の間で、少し噂になってたんですよ。サイドエフェクト持ちじゃないのに、とっても強い人がいるって。」

 

 まあ、ある程度予想通りだ。

 

「しかも、対戦相手がどういう展開だったかあまり覚えてないなんて言うもんだから、これは明らかに"個性"が絡んでるんじゃないか、って思ったんです。」

 

 なるほど、周りがざわついてたのはそういう理由だったのか。

 

 戦闘中の記憶がなくなるなんて、そんなの恐怖感を感じるにきまってる。

 

「でも、確実な情報が欲しかったので、直接対決して、確かめさせてもらったんですよ。」

 

「それで確信を得て、検査を?」

 

「まあ、そういう流れですね。少し無理強いしちゃって、すみませんでした。」

 

「大丈夫。もういいって。」

 

 謝られると、こっちが申し訳ない気持ちになる。

 

 

 ちょっと気になったことを聞いてみる。

 

「あのさ、ボーダーには他にも"個性"持ちっているの?」

 

「私が知る限りでは、この二人ですよ。」

 

 そういって、僕と自身を指さす。

 

 そっか、二人だけか...。

 

 

「天珠ちゃんが"個性"持ちって知ってる人は?」

 

「う~ん...誰にも教えてないですからね...。なんとなく察してる人もいるかもしれませんし。」

 

「そっか。」

 

 

 そこからは、僕の質問に天珠ちゃんがいろいろ答えてくれた。

 

 

 そうこうしているうちに時間も経ち、僕たちは帰ることに。

 

「う~ん。"個性"か。これからどうやっていこうかな...。」

 

 

 御手洗いに行った天珠ちゃんを待つ僕は、一人考える。

 

 

 考え事をしていたため、前からくる人影に気が付かなかった。

 

 

 ゴッツンン

 

 

 頭と頭がぶつかる。

 

「「痛!!」」

 

 目が合う。相手は、女の子だった。

 

「ごめん!!こっちが見てなかったばかりに!!」

 

 すぐさま謝る。何も言われないので顔を上げると、女の子は驚きの表情で僕を見ている。

 

 

 女の子が口を開いた。

 

 

「ソウ、くん...?」

 

 

 ん?ソウくん?誰のこと?ひょっとして僕のこと?

 

 過去の記憶を探る。探っていると、

 

 

「人見さ~ん。お待たせしました~。って、あれ、ナギちゃん?」

 

 

 女の子に声をかける天珠ちゃん。

 

 ナギちゃん?どっかで聞いたような...

 

 

「もしかして、天ちゃん?久しぶり~!」

 

 

 天ちゃん?またも聞き覚えのあるワードだ。

 

 

 次の瞬間、

 

 思い出した!

 

 

「あーっ!!もしかして、―――。」




はい!!

というわけで、第三話終わりました!!

"個性"のいい感じの名前が思いつかないんですけど、どうしましょう?w

次の第四話で、一応序章完結となります!

感想を書いてくださると、大変うれしいです!!


P.S.原作キャラの出しどころに困ってます笑


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序章ーvol.4

第四話

 

 これは、昔の話。

 

 

 僕がまだ小学校に入る前。

 

 家が近くて、よく一緒に遊んでいた同学年の女の子と、一つ下の女の子、男の子がいた。

 

 僕らはそれぞれ、ソウくん、ナギちゃん、天ちゃん、ユウくんと呼び合っていた。

 

 僕たち四人は、家の近くの公園でよく遊んでいた。

 遊具遊び、鬼ごっこ、かけっこ等。とにかく楽しかった。

 

 

 ある日、一つ下の男の子、ユウくんが引っ越していった。

 理由は、父親の転勤とかだったと思う。

 

 ユウくんは、引っ越すことを僕たちに言わなかった。

 

 僕はそれを、引っ越す当日に知った。

 

 家の前にある二台のトラック。そこに荷物を入れている人たち。

 

 

 信じられなかった。

 

 引っ越すことがではない。

 

 

 

 何も言ってこなかったことが、だ。

 

 

 でもまだ幼かった僕は、問い詰めるなんてことはできず、ただただ黙って引っ越していくのを見送った。

 

 

 そこから、僕たち四人で一緒に遊ぶ機会はもちろん減ってしまった。

 

 小学生になり、二年生になった初日。

 

 

 同級生の女の子、ナギちゃんが春休み中に引っ越していたことを知った。

 

 

 

 僕は、友達というものが信じられなくなった。

 

 

 そんな時、唯一近くに残った小学生になったばかりの天ちゃんが僕を助けてくれた。

 

 僕を慕ってくれたその女の子は、僕にとってのヒーローみたいなものだったように思う。

 

 

 小三の冬。

 

 

 今度は、僕が引っ越すことになった。

 

 

 いざ伝える番になって分かった、別れを告げる側のつらさ。

 

 僕は、何も言わずに去っていったあの二人の気持ちがようやく分かった。

 

 

 結局、伝えられずに迎えた引越しの前日。

 

 

 天ちゃんに、『明日、遊ぼうね!』と言われた。

 

 

 

 引っ越しのことなんて、言えるはずがなかった。

 

 

 そして、引っ越し当日。

 

 何かを察したのか、朝早くから女の子が家に来た。

 

 伝えるしかなかった。

 

 今日引っ越すことになった、と。

 

 

 

 女の子は泣いていた。僕が泣かせてしまった。

 

 

 

 結局、あの三人は今どうしてるか、なんて僕は知らない。

 

 しかも、あだ名で呼び合っていたから本名も分からない。

 

 

 もし会えるのならば、一度だけでもいいから、またあの頃のように四人で仲良く遊びたいと思う。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 僕は、ただただ驚いていた。

 

 まさか、天珠ちゃんが、あの『天ちゃん』だったなんて。

 

 今さら発覚するなんて、気づくのが遅すぎたなと思う。

 

 

 しかも、こんなところでナギちゃんに会うなんて...。

 

 

 僕ら三人は店を出て、思い出話、皆と離れた後どうしていたかという話をしている。

 

 

 その中で驚くべきことを聞いた。

 

 

 なんと、ナギちゃんもボーダー隊員らしい。

 

 しかも、B級13位、柿崎隊のメンバーだそうだ。

 

 

 そして、ナギちゃんは自身の話を始めた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 私が引っ越したのは、両親の離婚が原因だった。

 

 私は、お母さんの方についていって、それからは毎日、普通に過ごしていた。

 

 

 私が中学生になって少し経った頃のある日、ボーダー隊員の人が、広報とかでこっちの街に来た。

 

 格好良かった。憧れた。

 

 私と同じくらいの年齢なのに、私の何倍もちゃんとしてて、すごく大人だった。

 

 

 それで、私はボーダーに入ろうと思った。

 

 親には反対された。

 

 でも、私の決意は揺るがなかった。

 

 何とか説得して、独り暮らしを始めて、ボーダーに入った。

 

 

 私がまだC級隊員だった頃、学校にトリオン兵があらわれた。

 

 もうだめかもって思った時、最初に助けに来てくれた人が、柿崎さんだった。

 

 その時、柿崎隊に入ることを決めた。

 

 正隊員になって、何とかお願いして入れてもらったのは私が中三になったばかりの頃。

 

 

 これが、私のこれまでの話。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 僕たちは黙って話を聞いていた。

 

 ボーダー隊員になるために、独りでこっちに来る。

 

 相当な覚悟が必要だったはずだ。

 

 聞き終えた僕たちは感心するばかり。

 

 

 ただ、一つ気になることが...。

 

「ナギちゃんはさ、攻撃手?それとも狙撃手?はたまた銃手?」

 

 それだ。全く同じことを考えていたのか、僕と天ちゃんは。

 

 

「・・・万能手だよ。」

 

 

 少しの間の後、そう答えるナギちゃん。

 

 

「「え~!!万能手!!??」」

 

「いや、そういう反応はやめてよ~。全然弱いんだし...。」

 

 

 謙遜するナギちゃん。

 

 万能手は弱いっていうようなポジションじゃないでしょ!、と突っ込みたくなる。

 

 

 ナギちゃんにもっと詳しい事情を聞こうとした、その刹那。

 

 

 

 何かの気配を感じた。すると、

 

「ぎゃ~~!!!!」

 

 

 少し遠くから、叫び声が聞こえた。

 

 

「何だろう?」

 と、天ちゃん。

 

「分からないけど、とりあえず行ってみよう!」

 と言い、走り出そうとしたその時。

 

 

「待って!少し遠いし、トリオン兵だと思うから、トリガーオンしてから行った方がいいかも!」

 と言ったのは、ナギちゃんだ。

 

 

 すると、

 

 

『●●町に、トリオン兵が出現しました。』

 という連絡が入った。

 

 

 ナギちゃんが、なんで分かったのかは分かんないけど、今はとにかく、

 

「「「トリガーオン!!!」」」

 

 

 出現したのはバムスターで、少なかったから、三人でやっつけられそうだった。

 

 が、しかし、中学生くらいの男女二人組がいた。

 

「まずは、あの二人を助けないとな。僕が行ってくるから、その間、よろしくね!」

 二人に声をかける。

 

「「了解!!」」

 

 なんと頼もしいことだろうか。

 

 

 二人を安全なところへ連れていき、その後、無事に撃破。

 

 

「お疲れ。二人のおかげで、中学生二人の保護?に専念できたよ。」

 

 

 さっきの戦いを軽く振り返っていると、

 

 

「あの、ボーダーの人ですよね?」

 

 声をかけられた。

 

 見ると、さっきの中学生二人だ。

 

「助けてくれてありがとうございました!あの、格好良かったです!」

 と、女の子。

 

「俺、ボーダー隊員目指してるんですよ!」

 と、男の方が言った。

 

 

 感謝されると、こちらとしても嬉しい。

 

 

 男の方、見覚えある気がするけど、気のせいだよな...。

 

 

「え?もしかして、ユウくん?」

 

 聞き覚えのある呼び名を口にしたのは、天ちゃんだった。

 

 

「うん...?って、え?まさか、天ちゃん、ナギちゃん、ソウくん?」

 

 

 まさかの再会だった。

 

 

 このタイミングで、ユウくんにも会うとは。

 

 

 僕は、運命なんてあるはずないって思ってたけど、もしかしたら本当はあるのかもとか思ってしまう。

 

 

 それにしても、幼き頃の四人でまたこうやってそろうなんて...。

 

 正直、嬉しすぎる。

 

 奇跡だと思う。

 

 

 また、いつか、四人で―――。

 

 

 そんな期待を胸に、僕は眠りについた。




ひとまずこれで、序章は終わりとなりました。

主要キャラは全員出してから本編?の方に行きたいと思っていたので、こういう形になりました。

自分の目から見ても、展開のこじつけ感がすごいような気がするのですが...。
そこは...大目に見てください。

さて、次話からは第一章です。

これからどうなっていくのか...楽しみに待っていただけると幸いです!

あと、第一章最初は、番外編として、登場人物のプロフィールを書いておこうと思います。


ただ、BBF参照のトリガーセット、パラメーターについては、諸般の都合上、第一章が終わってからになってしまいます。
そこはご了承ください。

後書きが長くなってしまいました。

読んでくださってありがとうございました!
感想、待ってます!

P.S.原作キャラ登場第一号は誰なのか...それは誰にもわからない...


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第一章〈僕の個性は〉
第一章ー番外編


予告通り、軽いプロフィール紹介です。


★オリジナルキャラプロフィール

 

 

人見操志(ひとみそうし)ソウくん

 

 本作の主人公。基本的にこの人の目線でストーリーが進んでいく。

 

 現在、高校一年生。11月3日生まれ。15歳。身長166cm。

 

 白髪がほんの少し混じった髪。器用貧乏。

 

 攻撃手。B級。所属隊なし。

 

 個性"洗脳"を持つ。

 

 尚、原作キャラの人見摩子(東隊OP)との親戚関係はない。

 

 

 

堺田天珠(さかいだてんじゅ)天ちゃん

 

 本作のヒロイン。

 

 人見と入隊の時期が一緒、つまり同期である。

 

 現在、中学三年生。10月2日生まれ。14歳。身長143cm。

 

 髪は黒で、ショートヘア。ちっこくてかわいい。

 

 攻撃手。B級。所属隊なし。

 

 個性"ダッシュ"を持つ。

 

 

 

瑠璃川渚(るりかわなぎさ)ナギちゃん

 

 現在、高校一年生。8月23日生まれ。15歳。身長155cm。

 

 髪は、少し茶がかかった黒。ミディアム。すらっとしてる。

 

 万能手。B級。柿崎隊所属。

 

 能力については、詳細不明。

 

 

 

源優星(みなもとゆうせい)ユウくん

 

 現在、中学三年生。4月11日生まれ。15歳。身長159cm。

 

 生まれつきの茶色の髪。目は悪く、コンタクトをしている。

 

 ボーダーに入ったばかりの新人隊員。

 

 なにか、"個性"を持っているようだが...。

 

 

★それぞれの呼び名

 

 第一章からの呼び方になります。

 自己紹介の描写はしていませんが、そのあたりは目をつぶってください...。

 

【呼ぶ人(名前表記です)】➡【呼ばれる人】という感じで把握してください。

 

【操志】➡【天珠ちゃん】

【操志】➡【渚さん】

【操志】➡【優星】

 

 操志は、あだ名で呼ぶのが恥ずかしくなったため、普通に名前で呼ぶように。基本的に女子には、"さん"をつけて呼ぶ子です。

 

【天珠】➡【ソウくん】

【天珠】➡【ナギちゃん】

【天珠】➡【ユウくん】

 

 天珠は、幼少期のまま、あだ名で呼び続けます。他の男子は基本的に、名前に"くん"づけです。

 

【渚】➡【ソウくん】

【渚】➡【天ちゃん】

【渚】➡【ユウくん】

 

 渚もまた、基本的にあだ名で呼びます。他の男子は、名字に"くん"づけで呼んでいます。

 

【優星】➡【操志くん】

【優星】➡【天珠】

【優星】➡【ナギちゃん】

 

 優星は、結構バラバラ。同級生の女子は基本的に下の名前で呼んでいます。

 

 

★その他、時系列など

 

 ・現在

  ...第一章開始時点、6月下旬。

 

 ・大規模侵攻

  ...今から三年前の、冬頃に起こった。

 

 ・操志、天珠の入隊

  ...今年の4月に入隊しています。

 

 ・渚の入隊

  ...一昨年の12月です。柿崎隊入りは、去年の4月頃。




このようなキャラたちとこれから頑張っていきます。
オリキャラたちと一緒に自分も成長していければ...と思ってます!

文章は、拙いところもあると思いますが、よろしくお願いします!

次話から、本編です!


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第一章ーvol.1

投稿、遅れてしまいました。
申し訳ありません。
少し忙しくて...って、言い訳してちゃだめですね。
ごめんなさい。


では、気を取り直して。

第一章、スタートです!!


第五話

 

 

 学校。

 

 通学路。

 

 ボーダー本部。

 

 

 どこに行っても、僕は冷ややかな視線を向けられている。

 

 僕の"個性"のことが、もう皆に知れわたったのか。

 

 僕の近くにいたら、『洗脳』されてしまうとか言われているんだろうか。

 

 

 近寄るな、危険。ってか。

 

 

 特別な能力を持つ人からは、こうやって皆が離れていく。

 

 それが、『洗脳』とあらば、なおさらだ。

 

 異物は、社会からは除外されてしまうのだ。

 

 

 こうして僕は、独りになった。

 

 

 誰も救ってくれない。

 

 誰も手を差し伸べようとはしてくれない。

 

 

 孤独。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 目が覚める。

 

 ほとんど現実に近い夢。

 

 おそらく、今日外に出ればこういうことになるだろうと大いに推測できる。

 

 僕の"個性"は、それほどまでに衝撃的なものだ。

 

 『洗脳』。

 

 人を、自分の思いのままに操る。

 

 

 とんでもない貧乏くじをひかされた気分だ。

 

 そんなことを思いつつ、いやいやながら学校へ行く準備をする。

 

 

 学校では、僕の"個性"のことはもう皆に知られているのだろうか。

 

 『洗脳』される。なんて、噂になっているんだろうか。

 

 

 学校につき、教室に入る。

 

 途端、話し声が一瞬ぴたりとやむ。

 

 視線が僕の方へ向いているのを感じる。

 

 

 おぞましい周りからの目に耐え、ようやく放課後を迎える。

 

 この苦痛がこれから続くのかと憂鬱になっていると、何人かのクラスメイトが僕の方に来た。

 

 何だろうと思っていると、そのうちの一人が尋ねた。

 

 

「人見ってさ、"個性"持ってんの?」

 

 

 何ともド直球な質問。

 

 嘘はつけないと思い、うなずく。と、

 

 

 何人かで顔を見合わせた後、

 

 

「もしかして、洗脳系?」

 

 と一人が聞いてきた。

 

 

 やはり、もう知られていたか。

 

 

 しかし、僕が思っているほど事態は深刻ではなかったようで。

 

「なあ、どんな感じの効果なんだ?」

 

 興味ありげに聞いてきた。

 

 少し、拍子抜けというか。深く考えすぎていたのかもしれない。

 

 

 そこから、自分の個性について、少し話した。

 

 制限時間や発動条件、また、最近自分の個性を知ったことなど。

 

 皆、耳を傾けて聞いてくれた。

 

 どうなることかと思っていたが...取りこし苦労だったようだ。

 

 自分で、悪い方向に考えすぎていただけかもしれない。

 

 

 それから学校では、比較的皆とのコミュニケーションも取れるようになった。

 

 むしろ、ボーダー隊員でさらに個性持ちな僕に、前のように人が集まることもあった。

 

 ちょっと前は、人が集まるのは鬱陶しいとも思っていたが、今の僕にはすごくありがたかった。

 

 

 "個性"。

 

 それは、人を遠ざけてしまう要因になるかもと思っていたが、杞憂だった。

 

 

 

 

 しかし、それは学校での話。

 

 学校では、普通に会話する程度しか人と目を合わせることはないからまだいい。

 

 

 だが、例えば、他人との模擬戦は違う。

 

 しっかりと相手を見て、動向をうかがうことが必要だ。

 

 そこで、僕とガッツリ目を合わせてしまえば...。

 

 

 そう、僕は、ボーダー内では未だに問題児だった。

 

 目を合わせてしまえば終わり。

 

 

 そんな僕と、よこしまな理由で手を組もうとする人もいたが、そういう人を断っていると、僕は独りで浮いてしまっていた。

 

 

 困っていた時、救いの手を差し伸べてくれたのは。

 

 

 天珠ちゃんだった。

 

 

 彼女は、一つの助言をしてくれたのだ。

 

 

 それは、

 

 

「狙撃手に転向するのはどうですか?」

 

 というものだった。

 

 

 僕は、転向ができるということを知らなかった。

 

 そして、これまた知らなかったのだが、現在狙撃手の荒船さんという人は、元は攻撃手だったらしい。

 

 これらのことを初めて聞いた時、もうこれしかないと思い、すぐに狙撃手転向を決めた。

 

 自分のためにも、周りの皆のためにも。

 

 

 転向を天珠ちゃんに伝えると、『頑張ってください!』と言われた。

 

 本当に天珠ちゃんには助けられてばかりで、感謝しかない。

 

 

 その時に垣間見えた、少し悲しそうな表情がちょっと気になったけど。

 

 翌日から僕は、狙撃手としての道を歩み始めた。

 

 

 ただ、僕は知らなかった。

 

 

 一部の人たちの間で、『"個性"捨てるようなもんだろ、それ!もったいねえ!』と言われ、

 

 僕の転向が、軽い噂になっていたことを。

 

 

 それから、月日を経て。

 

 僕も、狙撃手の訓練にようやく慣れてきた。

 

 最初はできなかったことも、最近では上手くできるようになってきた。

 

 今日は、優星が入隊する日、C級隊員になる日だ。

 

 無事に入隊できるようで、良かった。

 

 天珠ちゃんも行くって言ってたし、野次馬がてら、応援しに行くか。




ということで、次に続きます。

シリアスな雰囲気??はでていたでしょうか。

少し鬱が入ると、読む側もつまんなくなっちゃうけど、書く側も楽しくないんですね。
初めて知りました。苦笑


それは、さておき。
次回は、源優星の目線から、この物語を書いていこうと思っています。

彼から見た、この世界。彼の秘めたる能力。

楽しみに待っていただけると、幸いです。

それでは、この辺りで。

感想、待ってま~す!
読んでいただき、ありがとうございました!!


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第一章ーvol.2

予告通り今回は、源優星目線でお送りします。


第六話

 

 

 俺は、源優星。中学三年生だ。

 

 

 俺は昔から、なんでもすぐに出来るようになる子だった。

 

 

 "個性"。

 

 それは、他の人にはない、自分だけの特別な能力。

 

 

 俺は、"個性"を持っている。

 

 『模倣』という個性だ。

 

 

 俺がこのことを知ったのは、小四の時。

 

 その当時、野球をしていた俺は、上手な上級生やプロ選手のプレーを見よう見まねでなんとか上手くなろうと頑張っていた。

 

 数日間の練習でコツをつかみ、できるようになった。

 

 全て、完璧に。

 

 

 ピッチャーをやってみると、変化球も投げられた。

 

 利き手ではない、左投げまでできるようになった。

 

 

 数日間でのこの急成長。

 

 さすがに少し変だと思って病院に行ってみると、"個性持ち"だと言われた。

 

 

 "個性"。

 

 自分だけが持つ能力。

 

 それを自分が持っている。

 

 素直に嬉しかった。

 

 

 

 ただ、それは最初の頃だけ。

 

 なんでもすぐにコツをつかみ、上達する。

 

 そんな人は、人気者にはなれない。

 

 僕の周りから、一緒に遊んでくれる友達は減っていった。

 

 野球もやめた。

 

 僕は、独りだったんだ。

 

 

 独りになって思い出すのはいつも、小学生に入る前の記憶。

 

 天珠、操志くん、ナギちゃん。

 

 あの三人と遊んでいたころが一番楽しく、最も輝いていた。

 

 その三人と、最近再会した。

 

 しかも、三人とも俺が目指しているボーダー隊員になっていた。

 

 

 

 俺は今、最高の気分だ。

 

 今までに感じたことのない幸せを感じている。

 

 

 今日は、C級隊員として初の合同訓練の日。

 

 天珠と操志くんも見に来てくれるらしいし、下手な姿は見せられない。

 

「よし!行くか!!」

 

 気合を入れ、俺は本部へと向かう。

 

 

 

 

 余裕だ。

 

 何度か、こっそり練習してたから、しっかりとイメージ通りできている。

 

 あ、これ秘密ね。

 

 

 合同訓練も終わった。

 

 今は皆それぞれブースに入って、個人戦をしてポイントを上げている。

 

 かくいう俺も。

 

 

「アステロイド!!」

 

「くっ...。」

 

「まだまだぁ!オラァ!!」

 

 

 吹き飛ぶ相手の身体。

 

 

 これで、四連勝。

 

 俺のトリガーは、アステロイド。

 射手用のトリガーだ。

 

 俺は射手を一番やってみたかったし、実際使ってて超楽しい。

 

 

 と、対戦の申し込みが。

 

 『レイガスト 2950』

 

 初のレイガスト使いとの戦いだ。

 

 

 転送。

 

 レイガストは重いかわりに、防御でも攻撃でもそこそこ使えるトリガー。

 

 まずは、

 

「アステロイド!!」

 

 とりあえず、開始早々ぶちかます。

 

 予測していたのか、相手は(シールド)モードでがっちりガードしていた。

 

 こうなると、手が出ない。

 

 いくら攻撃しても盾モードのレイガストは堅いから、勝ちようがない。

 

 俺は、攻撃を四隅に集中させる。

 

 角の方が削れるかなと思ったのだが、あまり変わらないようだ。

 

 

 少し諦めかけていると、ようやくヒビが入ってきたように見えた。

 

 相手もしびれを切らしたようで、俺が攻撃を止めた途端、

 

「盾モード解除!」

 

 と、攻撃する気満々だ。

 

「スラスターON!!」

 

 そのまま、突っ込んでくる。

 

 何とか、ぎりぎり避ける。危ねえ。

 

 

 射手は、近接戦があまり得意ではない。弾を発射するのにも手間がかかるからだ。

 

 だから、近接戦は避けたかったんだが。

 

「アステロイド!!」

 

 とにかく近寄ってこれないようにけん制する。

 

 しかし、じりじりと二人の距離が縮まる。

 

 そして、

 

 

「オラァ!」

 

「おっっと!」

 

 振ったらかするくらいの距離間になる。

 

 上手くレイガストで俺の攻撃をしのぎながら、攻撃の機会をうかがっている相手。

 

「(このままじゃジリ貧だ。ここは潔く負けるっていうのも...)」

 

 こんな考えが頭を巡ったとき、

 

 一つひらめいた。

 

 

「(一旦離れないと。...よし。)」

 

 そして俺は、

 

「アステロイド!!」

 

 地面にそれを打ちつけ、相手から距離を取る。

 

 

 そして、相手と見合う。

 

「(チャンスは、一回。集中。)」

 

 

 相手が動く。

 

「アステロイド!」

 

 しかし、かわされ、

 

「スラスターON!!」

 

 飛んでくる相手。そして、

 

 

「アステロイド!!」

 

 僕は思いっきり上に飛んだ。

 

 背後の壁に弾をぶちかまして。

 

 

 視界を失った相手に、

 

「アステロイド!!!」

 

 上からの弾撃。相手は防ぎきれず、俺の勝ちだ!

 

 

 それにしても、長かった...。

 

 

 戦いにつかれた俺は、天珠と操志くんのところへ。

 

「オッス~、お二人さん、どうよ、俺の戦いっぷりは。」

 

「うん!かっこよかったよ、ユウくん!」

 

「なかなかいいんじゃねえか?優星は、射手なんだな。」

 

「まあね。てか、まだまだ、こんなもんじゃないっすよ。」

 

 

 と、とりとめもないやり取りをしていると、個人戦をしている一人の男の人が目に入る。

 

 俺と同じ、射手。手に巨大なキューブを抱えて弾を撃ちまくっている。まるで、弾バカ...コホン

 

「ねえ、あそこの、個人戦してる男の人って誰?」

 

 気になった俺は名前を聞いてみた。

 

「ああ、あの人?射手2位の出水公平さんだよ。」

 

 2位か。なるほど。通りで強そうなわけだ。

 

 

 その、出水さんの戦いを見ていた次の瞬間、出水さんが両手に抱えていたトリオンキューブを一つにして、撃った。ものすごい強烈な弾撃が相手を襲い、勝利した。

 

「なあ、さっきのあれ!あれってなんなんだ?」

 

 気になった俺は、すぐに天珠に聞いてみた。

 

「あれって、、たぶん合成弾のことだよね?合成弾は、2つのトリガーを合成してより強力な攻撃をするための技みたいなもの、だと思うよ。」

 

「合成弾?俺にもできるんかな?」

 

「難しいらしいよ。あと、少なくともB級に上がらないと無理、なんじゃないかな。」

 

 そうか...難しいのか...

 

「出水さん、優しいから、聞いてみたら?もちろんそれは、B級にあがってからだけど。」

 

「ありがとう!!天珠!じゃ、とりあえずB級になってくる!」

 

 

 こうして俺は、射手界の天才、出水公平さんを知った。

 

 

 俺には、個性『模倣』がある。

 

 教えてもらえれば、数日でできるようになるだろう。

 

 だから、まずそこまでいけるように、とにかくはやくB級にあがろうと決めた。

 

 

 

 それからはや1週間が経ち、俺はB級隊員となった。

 

 これで聞きに行ける!

 

 そう思って本部に行ったが、あいにく出水さんは見当たらなかった。

 

 

 どうしようか迷っていると。

 

「あれ、ユウくん?」

 

 声のした方を見てみると、

 

「ナギちゃん!久しぶり!」

 

「久しぶり~!B級昇格したらしいね。おめでと~!」

 

「ありがとう!これからまだまだ強くなるから!

 

「期待してるよ~。で、誰か探してたみたいだけど、どうしたの?」

 

 おお、聞いてくれましたか。

 

 答えようとして、口が止まる。

 

「(待てよ。B級になったばかりの奴がいきなりランク2位の人に用があるとか、調子乗りすぎって思われたらいやだなあ...)」

 

 そう思った俺は、はぐらかすことにした。

 

「いやあ、なんでもないよ~。それよりも、ナギちゃんはなんでここに?」

 

「私?私は今日、B級ランク戦なの。」

 

「ランク戦?」

 

「知らない?チーム戦なんだけどね、20くらいあるのかな?B級のチームの順位を決める試合なんだ。」

 

「それに、ナギちゃんが?」

 

「うん。試合は夜なんだけど、打ち合わせとか調整もあるから、今から準備しておくの。」

 

「夜に試合が?」

 

「午前、午後、夜の3回に分けて行われるんだよ。見ていったら?B級の人たちを、さ。」

 

「そうだね、せっかくだし見ていこうかな。ナギちゃんが戦ってるとこも見てみたいし。」

 

「私じゃなくて、他の強い人を。ね!試合の様子は、大型スクリーンで映し出されて、実況と解説をしてくれるから、すごく良いよ。夜の部は確か...実況が栞ちゃん、解説が歌川くんと出水くん、だったかな。」

 

 

 なんですと!!出水さんが実況を!?ってことは会える可能性も...。

 

 

「・・・そっか。いろいろ教えてくれてありがとう、ナギちゃん!!おかげで助かったよ!」

 

「そう?それなら、良かった。」

 

「ごめんね。大事な試合前だったのに時間かけてもらっちゃって。ありがとう、応援してるから!」

 

「大丈夫だよ~。後輩をしっかり育てるのも先輩の役目だからね。じゃ!応援、よろしくね!」

 

「任せといて!じゃあね~、また!」

 

 

 そうして、ナギちゃんと別れる。

 

 

 B級ランク戦、夜の部。見に行かない手はない!

 

 

 

 そして、夜。

 

 俺は、B級ランク戦の中継が行われる部屋に来ていた。

 

 天珠と操志くんも隣にいる。俺が誘った。

 

「実況の人が、宇佐美栞さん。今は、玉狛支部の2チームのオペレーターだけど、前は今のA級3位チーム、風間隊のオペレーターしてたんだよ。」

 

 天珠ちゃんが、何も知らない俺に、いろいろ教えてくれてる。

 

「で、その隣に座ってるのが、その風間隊のメンバー、歌川遼さん。元チームメイトだから、宇佐美さんと仲良いみたいだね。」

 

 確かに、歓談していらっしゃる。

 

「そして、端に座ってるのが、出水さん。所属してる太刀川隊は、A級1位だよ~。」

 

 

 知ってる。・・ってえ??

 

 

「A級1位って?」

 

「A級1位だよ。」

 

 

 ・・・合成弾のこと聞くの、やめようかな。

 

 

「あっ、始まるみたいだよ!」

 

 

 そうだな。とりあえず今は、ナギちゃんの試合に集中しよう。

 

 

B級ランク戦、『柿崎隊VS荒船隊VS東隊』スタート!!!




第六話、いかがでしたか?

個人戦は、無理のない展開になっているでしょうか?
コメントお待ちしています!

次回は、瑠璃川渚ちゃんの目線からお送りする予定です。
とうとう、彼女の能力が明らかに...! お楽しみに!

それでは、このへんで。
読んでいただき、ありがとうございました!


P.S.原作を知らない人でも楽しめる作品を目指しています!


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第一章ーvol.3

B級ランク戦、『柿崎隊VS荒船隊VS東隊』の模様。

瑠璃川渚の目線でお送りします。


第七話

 

 

「柿崎先輩、文香と合流しました。」

 

「了解。俺も今そっちに向かってる。」

 

「はい、気をつけてください。」

 

 現在、ランク戦真っただ中。

 

 

 

 ――1時間前――

 

「よし、いいか。最終確認だ。虎太郎、対戦する隊と特徴を言ってみろ。」

 

 直後のランク戦に向け、最終確認の時間。柿崎隊隊長、柿崎 国治(かきざき くにはる)が指揮を執る。

 

「はい。まず、荒船隊は、三人とも狙撃手なので、上を取られると厄介です。あと、隊長の荒船さんは、弧月があるので近接戦も得意です。」

 

「オッケー。じゃあ、対策は?」

 

「とにかく射線に入らないようにすることです。建物で射線をできるだけ切って、対応します。」

 

「そうだな。じゃあ、次、東隊は?」

 

「奥寺、小荒井の二人の攻撃手と、狙撃手で隊長の東さんがいて、攻撃手二人の連携攻撃、東さんの超正確な射撃が肝です。」

 

「対策はどうする?」

 

「こっちもできるだけ早く合流するようにして対抗します。」

 

「東さんの射撃の方は?」

 

「警戒をしっかりして、オペレーターとの連携で何とか防ぎます。それと、気にしすぎないようにする、です。」

 

 一つ一つ、丁寧に質問に答えていく巴 虎太郎(ともえ こたろう)

 

「よし、大丈夫だな。照屋も、大丈夫だな?」

 

 しっかりとうなずく照屋 文香(てるや ふみか)

 

「瑠璃川もだ。東さん対策にはお前のサイドエフェクトも鍵になってくる。よろしく頼むぞ。」

 

「了解してます。」

 

 

 "お前のサイドエフェクト"。

 

 柿崎さんはそう言った。

 

 

 "サイドエフェクト"。

 

 それは、トリオンが感覚器官に影響を及ぼしたことで発現する、一種の超感覚だ。

 

 

 私のサイドエフェクトは、『視覚凝縮』だ。

 

 片目をつぶって、もう一方に意識を集中させると、常人の約8倍の視力になり、透視もできる。

 

 また、最大限能力を発揮できるようにすれば、自分を中心に半径1キロの円の範囲なら、なんでも見えるようになる。

 

 

 私がこの能力を持っていると初めて知ったのは、ボーダー隊員になって少し経った頃。

 

 たまに違和感を感じていたので、サイドエフェクトだったと分かったときはほんのちょっとの驚き、そして納得だった。

 

 

 この能力のいいところは、私自身が使いたいと思った時にだけ使えて、しかも楽ということだ。

 

 私はこのサイドエフェクトが気に入っている。

 

 

 話を戻すと、私が能力を最大限使えば、ほぼ全員の位置を把握でき、それを皆と共有できれば、私たちの死角がほぼ無いということになる。

 

 

「おそらく、ほぼ全員が転送と同時にバッグワームを着用するだろうから、まずは瑠璃川の視える範囲で誰がいるか確認してくれ。そして、できるだけ早く四人合流して、そこからだ。」

 

「了解!」

 

「照屋と虎太郎も。頼りにしてるぞ。」

 

「「了解!!」」

 

 

 

 転送。

 

 

 おおかたの予想通り、柿崎さん、虎太郎を除く全員がバッグワームを着用。

 

 私はけっこう南の方に転送されているようだ。

 

 ひとまずサイドエフェクトでまわりを視る。

 

「文香が近いので、まず文香と合流しますね。範囲内にいないのは、、奥寺くんと荒船さんですね。東さんは転送先が結構高台なので、注意しておいた方がいいかもしれないです。」

 

 分かったことを皆に伝える。

 

「渚~。私、どっちに行くのがいい?」

 

「う~んと。西、なんだけど、そのままだと小荒井君と鉢合わせしちゃうかもしれないから、一旦南の方に向かってくれる?」

 

「南、ね。了解!」

 

 

 普通、こういうことはオペレーターが指示するが、うちの隊は四人編成なので、オペレーターの負担が大きい。そこで、私も眼を使って指示することが多いのだ。

 

 

 その後、文香と合流して現在に至る。

 

「どうなの?戦況的には?」

 

 文香と私は、同級生ということもあり、今ではかなり親しくなった。

 

「そうだね...。荒船さんがまだ範囲内にいないのが気になるかな。あと、穂刈くんと奥寺くんが鉢合わせそう。」

 

 今、私たちは四人になるべく、合流に向かっている。

 

 柿崎さんと虎太郎も合流できたようでよかった。

 

 

「ストップ!文香!こっちから行こう。」

 

 半崎くんの射線に入りそうだった。危ない。

 

 

 すると、一人ベイルアウトしていった。

 

 穂刈くんだ。奥寺くんと鉢合わせそうで、小荒井くんも近くに来てたから、これは、不運というほかない。

 

 おそらく、二人に挟まれてしまったんだろう。

 

 

 直後、もう一人ベイルアウト。

 

 半崎くんが東隊のどっちかをやったのかなと思って視てみると、

 

 

 

 なんと、倒されたのは東さんだった。

 

 倒したのは一度も姿が確認できなかった荒船さん。

 

 高台に行く途中に東さんを見つけ、最後は近接戦で弧月を使ったようだった。

 

 さっきまで東さんがいたところで荒船さんが狙撃準備をしている。

 

 この展開は、かなり予想外だ。

 

 

 その後、私たち柿崎隊は無事に合流。

 

「東さんがやられたのはちょっと予想外だったな。」と、柿崎さん。

 

「そうですね。こうなるとあまり四人でまとまる必要もなさそうですね。」と、文香。

 

「そうだな。・・よし。虎太郎、瑠璃川と行って、半崎倒してきてくれ。」

 

「了解しました。」

 

 

 私は眼を使い、

 

「柿崎さん、東隊の二人、南の方に来てます。迎え撃ちますか?」

 

「そうだな...。荒船に動きは?」

 

「見た感じではなさそうです。」

 

「荒船は北東にいるのか?」

 

「そうですね。北東です。」

 

「じゃあ中央の辺りで、俺は照屋と、二人を迎え撃つ。半崎との戦いが終わったら、こっち側に来てくれ。」

 

「「了解。」」

 

 

 そうして、私たちは二手に分かれた。

 

 

 私と虎太郎はできるだけ射線を切るようにしながら半崎くんの方に向かう。

 

 時々、観察するのも忘れないように。

 

「大丈夫。まだ動く気配はないみたい。」

 

「でも渚さん、半崎さんだってある程度勘づいてるんじゃないですか?」

 

「だろうね。だから...」

 

 バァァンン!! という派手な爆発音とともに、さっきまで四人でいたあたりの建物が崩れる。

 

 

「あっちで戦ってると思われるように、時限的に設置してきたの、バイパー。」

 

「なるほど!これならあっちに意識も向きますしね。」

 

 

 ここで、私のトリガーセットについて触れておこうと思う。

 

 前に言ったように、私は万能手。

 

 攻撃手用と射手用のトリガーをセットしている。

 

 メインは一応、スコーピオン。グラスホッパーもある。それと、アステロイドも。

 

 サブでは、バイパーとハウンドをセット。

 

 眼を使いながらバイパーを使うのが、私の一番得意とするところだ。

 

 

 半崎くんに接近するのは、虎太郎の仕事。私はその援護射撃をする。

 

 死角からの虎太郎の一発目の攻撃を避けた半崎くん。

 

 そこに、私がバイパーを撃ち、さらに虎太郎は距離を詰めて攻撃を繰り出す。

 

 何とかシールドで防ぐ半崎くん。だが、2対1ではやはりこちらが攻勢になるのは当たり前だ。

 

 

 

 しかし、しかしだ。

 

 私は、目の前のバトルに必死で、視えていなかった。

 

 

 

 虎太郎を狙う、荒船さんの姿が。

 

 

 狙いすました一本の射撃が、虎太郎を襲う。

 

 不意を突かれた虎太郎に守る余地はなく。

 

 

 虎太郎、ベイルアウト。

 

 

 手負いの半崎くんを倒し、荒船君の様子を視る。

 

 弧月を手にし、狙撃後の移動中。向かっているのは、やはり中央か。

 

 急いで追いかける。

 

「柿崎さん、文香!今、荒船さんが弧月抜いてそっちに向かってます!そちらの戦況は?」

 

「そうか、荒船が。戦況は、まあ、五分五分ってとこだ。」

 

「あと、すみません!虎太郎がやられちゃいました...。」

 

「謝るなんてよせ。それよりもできるだけはやく来てくれ!頼むぞ!」

 

「分かりました!」

 

 

 

 事態は、思わぬ展開を見せていた。

 

 荒船さんの弧月抜刀による、戦況の変化。

 

 私は、とにかく荒船さんを止めるべく。

 

 

 一対一で戦うことに。

 

 

「『旋空』弧月!」

 ズバァァンン!!

 

 やっぱり、荒船さんは強い。でも、負けるわけには、、いかないっ!!

 

 

「アステロイド!! ハウンドっ!!」

 

 がっちりシールドで守られる。

 

 

 一気に距離を詰めてこられるとまずいので、一定の距離を保つ。

 

 

「(やっぱり不意をつくような攻撃じゃないとダメだ!それならやっぱりバイパーで...)」

 

 

 間合いをはかってくる荒船さん。

 

 

「グラスホッパー!」

 

 空中に浮かんだ状態から、

 

「アステロイド!」

 

 攻撃を繰り出す。

 

 少しは傷を負わせられただろうか。

 

 さらに、「グラスホッパー!」荒船さんに突っ込んでいき、スコーピオンでの攻撃。

しかし、これは弧月での守りに防がれる。

 

「ハァァッッ!!」

 ブオォン!

 

 荒船さんの弧月による攻撃。少しダメージを受ける。

 

 少し離れる。

 

 荒船さんは、まだまだ余裕がありそうな様子だ。困ったなあ。私、結構ギリギリなんだけど。

 

 

 

 

 

 なんてね。

 

 次の瞬間、荒船さんを弾撃の雨が襲う。

 

「っっ!!!」

 

 突然のことに驚く荒船さんを尻目に、私は最後の攻撃をする。

 

「アステロイド!!!」

 

 全力で撃ったそれは、シールドを破壊する。

 

 

 勝った~!ふう、かなり疲れた。

 

 

 決め手となった弾撃は、グラスホッパーで飛んでアステロイドを撃った時に、同時に後ろ手で空中に放出していたものだ。ばれないものかとひやひやしていたが、何とか上手くいって良かった。

 

 

「真登華、柿崎さんのほうどうなった?」

 

 オペレーターの宇井 真登華(うい まどか)に尋ねる。

 

「少し前に終わったわ。文香は倒されちゃったけど、東隊の二人とも、柿崎さんが倒したわよ。」

 

「よかった~。じゃあ、これで...」

 

「ええ。ランク戦、終了よ。お疲れさま。」

 

 

 

「お疲れさまでした~!」

 

 ランク戦後。

 

「お疲れ。荒船さんに勝ってくれてよかったよ、本当に。」

 

「渚~!すごいがんばってたね!かっこよかったよ~!」

 

「渚さん!お疲れさまでした!」

 

「ありがとう、皆。虎太郎、ごめんね。私が視てなかったばかりに。」

 

「いえいえ。その分ポイント取ってたからいいんですよ。注意してなかった俺も悪いですから。」

 

 それぞれの活躍をねぎらう。

 

 

「皆、お疲れ!そして、ありがとう!おかげで、順位を上げることができた!」

 

 柿崎さんは、奥寺、小荒井コンビを倒したというのに、私たちに感謝の弁を述べる。

 

「次回も、相手はまだわからんが、今回のように全力を尽くして、頑張ろう!今日は本当に、お疲れさま!」

 

 最後の締めも終わり、帰路につくことに。

 

 

 

「ナギちゃ~ん!」

 

 天ちゃんの声だ。

 

 見てみると、ソウくん、ユウくんも一緒にいた。

 

「かっこよかったよ~!ナギちゃん!」

 

 うなずく男子二人組。ここまで褒めてもらえると、むしろ、恥ずかしいかも...。

 

「やっぱり強かったね。」と、ソウくん。

 

「うんうん!実況、解説の先輩たちも強いって言ってたし!」これは、ユウくん。

 

 

 そこで私は、自分のサイドエフェクトについて話すことにした。

 

 いつかは話そうと思っていたから、ちょうどよかったのかもしれない。

 

 三人とも、すごく驚いていたし、それならあの強さも...と納得していた。

 

 また、それよりも驚いたことに、その三人はそれぞれ違うものの、皆"個性"を持っているらしい。

 

 

 "個性"と"サイドエフェクト"。

 

 かたちは違うものの、どちらも特殊な能力だ。

 

 それを四人とも持っている。

 

 

 この瞬間。

 

 私たち四人の間には、幼少期の頃よりもずっと強い絆が生まれた気がする。




え~。というわけで、何とかランク戦終わりましたね。
楽しんでいただけたでしょうか?

次回はようやく、われらが主人公、操志くんの目線です。
ここ二話での彼の黙りっぷりは...すさまじかったですね。笑
ぜひとも、彼の活躍を期待して待ってやってください!


読んでいただきありがとうございました!
感想や誤字訂正等、お待ちしております!


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第一章ーvol.4

 更新が遅くなりました。

 実は、打ち込みに使っていたPCが少し故障気味なので、次の更新も、少し間が空いてしまうかもしれません。ご了承ください。


 では、第八話です。主人公目線でお届けします。


第八話

 

 

 僕は、″個性″を持っている。

 

 初めてこのことを知ったとき、ぼくは思った。

 

 

 『もう僕は、これから独りぼっちだ。』と。

 

 

 だけど、違った。

 

 僕の昔の友達、天珠ちゃんと優星も″個性″を持っていた。

 

 渚ちゃんも、形は少し違うものの、″サイドエフェクト″を持っていた。

 

 

 僕は、独りじゃなかった。

 

 

 この四人でいれば、これから楽しいことばかりが待ち受けているように思える。

 

 こんなに心強い味方がいるから。

 

 

 僕は今。

 

 最高に幸せで。

 

 心の底から今を楽しんでいる。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 今日は、狙撃訓練の日。

 

 遠くにある的に向かって、いかに正確に射撃できるかという訓練だ。

 

 最近、ようやくちゃんとできるようになってきたから、今日の訓練で結果を残したい。

 

 

「どうだったか、操志?上手くできたか?」

 

 訓練後、僕に声をかけてくれたのは。

 

 荒船隊隊長、荒船哲次さんだ。

 

「そうですね...。個人的にはもう少し上手くやりたかったんですけど...。」

 

 そう言いながら、結果を見てもらう。

 

「う~ん...。前よりかはちゃんと形になってきてるじゃないか。練習の成果だな。」

 

「いえいえ。もっとできるようにならないといけませんから。」

 

 

 と、そこで、荒船さんがふっと思い出したように手を打って、質問を投げかける。

 

「そうだ、操志。これから暇か?」

 

「え?これからですか?まあ、予定はないですけど...。」

 

「よし、それならこれから攻撃手の仮想訓練施設へ行かないか?」

 

「攻撃手の?誰かと約束してるんですか?」

 

「いや、そういうわけじゃないが、少し練習に付き合ってくれねえかな、と。」

 

 

 僕なんかで練習相手になるんだろうか?

 

 そう思いながらも、一緒に行くことに。

 

 

 荒船さんは、元攻撃手という共通点のある僕に、何かと教えてくれる、頼りになる先輩だ。

 

 しかも、攻撃手でも、現在の本職である射撃手でも、マスターランク越えしていて、ゆくゆくは完璧万能手になるという野望を持っている熱い人でもある。

 

 

「荒船さん、なんで急に攻撃手の練習を?」

 

 思い切って聞くと、

 

「操志、この間のランク戦は見たか?」

 

 と、逆に聞かれた。

 

 この間のランク戦...。

 

「あ、あの東隊と柿崎隊との試合ですか?」

 

「そうだ。俺は柿崎隊の瑠璃川に負けて、攻撃手の練習も、もっとちゃんとやっておかないといけないなって思ったんだよ。」

 

 

 なるほど。新参者に負けてしまったのを気にしてるということだろうか。

 

 

 仮想訓練施設に着いた。

 

 そこで何試合かやった後に、僕が、荒船さんの対トリオン兵の練習の様子を見ていたとき。

 

 

「あれ?操志くん?どうしてここに?」

 

 後ろから声をかけられた。

 

 振り返ってみると、そこには優星がいた。

 

「いや、ちょっと荒船さんの練習に付き合って、って優星は誰かと待ち合わせか?」

 

「いや、俺は出水さん探してるんだけど...。」

 

「あ~、合成弾の件?」

 

「そうです。でもお願いしても聞いてくれるかは分かんないんすよね~。」

 

 と言って、僕のほうを見た後、ポンと手を打つ優星。

 

「操志くん、荒船って人と一緒って言ってませんでした?その人から通してもらうっていうのは無理ですかね?」

 

 

 僕は考える。

 

 荒船さんと出水さん。

 

 もちろん知り合いではあるだろうけど射手と射撃手ってそこまで交流ないしなあ...。

 

 

 そんなことを思っていると、荒船さんが出てきた。

 

 とりあえず事情を話すと、声をかけるところまでは手伝ってくれると言ってくれた。

 

 さすが、兄貴。頼りになります。

 

 

 出水さんはいつも見かける三人組で、個人戦をやっていた。

 

 そのうちの槍弧月を使っていた人に荒船さんは声をかける。

 

「なあ、米屋。」

 

「おお、荒船さん!どうしてここに?」

 

「いや、ちょっとな。出水は個人戦中か?」

 

「そーすね。緑川とやってます。」

 

「交替のタイミングになったら少し来てくれと伝えてくれ。頼む。」

 

「別にいいですけど...。なんか用事でも?」

 

「俺は用事ないんだが、こいつらがなんかお願いがあるとかで。」

 

「ふ~ん...。まあ、分かりました。伝えておきますね。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

 

 少し待っていると、出水さんが出てきた。

 

「荒船さーん。呼ばれてるって来ましたけど、何ですか?っていうか、この二人は?」

 

 優星と僕のほうを見て、小首をかしげる出水さん。

 

 

 荒船さんが質問に答えるよりも先に、

 

「俺、源優星って言います!突然なんですけど、合成弾教えてくれませんか?」

 

 張り切って自己紹介とお願いをする優星。

 

 

 出水さんは、え?という表情を浮かべている。

 

 

 優星は、そこから詳しく説明していった。

 

 自分が射手だということ。合成弾を知ったこと。などなど

 

 途中で、米屋さん、緑川さんも来て、話を聞いていた。

 

 

 一通り話し終わると、出水さんが口を開いた。

 

「合成弾、お手軽にできるものじゃねえぞ?お前がどれくらい戦えるか分かんねえのに、教えることはできねえよ。」

 

 そういわれた優星は、

 

「それなら一回!見せてもらうだけでもいいので!お願いします!」

 

 

 そこから、優星の懇願タイム。

 

 そのお願いは実を結び、見せてもらうことに。

 

 

 他の関係ない四人で、見届けてあげることに。

 

 

 僕はひとり考えていた。

 

 優星なら、見せてもらえればできるようになる。

 

 それに対して、先輩方はどういう反応をするのだろうか、と。

 

 

 出水さんが実践し、イベントは終わったと思っている他の四人の先輩方。

 

 優星は、一人で何やらぶつぶつ言っている。きっとイメージしているんだろう。

 

 

 小声で、OK。とつぶやいた後、

 

 

「出水さん!多分できるので見ててもらえませんか?」

 

 と、今にも帰ろうとしていた先輩方に声をかける優星。

 

 

「はあ?できるってお前、俺の話聞いてたのか?ちょっとやそっとでできるものじゃねえって...」

 

「お願いします!一回!一回でできなかったら諦めますから!」

 

 

 渋々という感じで許可した出水さん。

 

 

 その結果は―――。

 

 

 もちろん、成功だった。

 

 成功した瞬間、四人の先輩方はただただあ然としていた。

 

 そりゃそうだ。

 

 B級隊員なりたての奴が、合成弾を成功させたのだから。

 

 

 僕と優星は顔を見合わせて。

 

 なんでできるんだ?という顔をしている先輩方に、優星の個性について話すことにした。

 

 

 

 話し終わった後も、先輩方は驚きの顔をしていた。

 

 

 一番早く復活したのは緑川さんだったが、彼は突拍子もないことを言ってきた。

 

「ということは、君が、少し噂になってた『洗脳』の人?」

 

 と、僕のほうを指さして聞いてきた。

 

 僕がうなずくと、彼は目を輝かせていった。

 

 

「個人戦しよ!」

 

「へ?」

 

「いや~、噂を聞いてたときから気になってたんだよね~。ここで会ったのも何かの縁だしさ、個人戦、やろう!」

 

 

 困った。

 

 僕は、『洗脳』が嫌で、攻撃手は卒業したのに、誘われては...。しかも、なんか断りにくいし。

 

 

 黙っていると、荒船さんが助けてくれた。

 

「緑川、悪いけど、操志は洗脳してしまうのが嫌で攻撃手をやめてるんだ。あんまり無茶させないでやってくれ。」

 

 

 神ですか、あなたは。

 

 

 一方、優星のほうも交渉は少し難航しているようだった。

 

 やはり、″個性″があるといっても、初心者は初心者だ。

 

 あまり、最初から高度なテクニックを教えるのは、教える側も気が引ける。

 

 

 しかし、何とか教えてもらえることになったようだ。

 

 優星と出水さんはその練習を、米屋さんと緑川さんは個人戦の続きをしにそれぞれブースへ。

 

 僕は、荒船さんとその様子を眺めることにした。

 

 

「操志、攻撃手はもう二度とやるつもりはないのか?」

 

 唐突な荒船さんからの質問。

 

「そうですね。この個性を使うことにやっぱり抵抗感があるので...。」

 

「そうなのか。でも、いざってときに近接戦もできたら強いんじゃないのか?」

 

「そうは思いますけど...どうでしょう?人が寄ってきた段階で洗脳すれば、相手を傷つけることなく追い払うことはできるので...。」

 

 

 少し黙る荒船さん。そして、言った。

 

「操志は優しいんだな。」

 

 

 涙が出そうになった。

 

 それほどまでに、思いやりを感じる言葉だった。

 

 

「それでも、」続けて言われる。

 

「時には無慈悲に相手を斬る、くらいの覚悟は持たないといけないからな。」

 

 

「・・・はい。そうですね。」

 

 

 満足そうにうなずいた後、

 

「ところで、お前は部隊、チームを作る気はないのか?」

 

 と言われた。

 

 

 言われてみればそうだ。

 

 これまで、周りに気を取られて忘れかけていたが、B級になった今、部隊を作る必要がある。

 

 

 言われてみればそうですね。忘れてました。と言おうと思ったその時。

 

 

「ソウくん?ソウくんだ~!なんでソウくんがここに?」

 

 聞きなれた声がした。

 

 これは、天珠ちゃんの声だ。




第八話、読んでいただきありがとうございました!

原作キャラとの絡みをできるだけしっかり描きたいと思い、こんな感じに...。
いかがだったでしょうか?

次話も、主人公目線です。

感想などなど、お待ちしています!


P.S.荒船哲次、かっけえなあ。


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第一章ーvol.5

前回、これまで意識して頑張って続けていた5の倍数の分数(18:35など)での投稿に、自身の不注意により失敗し、一時放心してしまった。

そんな作者が描く、ワートリとヒロアカのクロスオーバー小説です。


えーっと、それはさておき。
第九話、お楽しみください!どうぞ!


第九話

 

 

 B級ランク戦。

 

 B級隊員が大体4人ほどの部隊を組み、そのチーム戦を行う。

 

 同じB級でも、上位、中位、下位とあり、上であるほどもちろん強い。

 

 部隊を組むにあたり、オペレーターが必要になる。これは絶対だ。

 

 もし僕が、天珠ちゃんと優星を誘っても、それだけでは部隊を組む資格がないのだ。

 

 オペレーターは、チーム戦でかなり重要になってくる。

 

 だから、全く知らない人にやってもらうのは気が引ける。

 

 僕にはその当てがない。

 

 だから、部隊を組むのをためらっている。

 

 

 一方で、僕ら三人はそれぞれ狙撃手、攻撃手、射手で、遠・中・近距離がそろっている。

 

 だから、どんな隊と戦っても、そこそこやれる自信はある。

 

 しかも現在、優星は出水さんの指導を受けている。

 

 このまま強くなっていってくれれば...!と思ってしまうのは必然だろう。

 

 

 とにかく、B級隊員である以上は部隊を組む必要があるわけだから、一回確認しておく必要がある。

 

 僕ら三人で部隊を組む気が、天珠ちゃんと優星にあるのかどうか、を。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 声のしたほうを向くと、天珠ちゃんが高3くらいの女の人と一緒にいた。

 

 天珠ちゃんは僕のところへ歩いてくる。

 

「ソウくん!どうしてここに?」

 

「いや、少しね。」

 

 そう言いながら、優星のいるほうを指さす。

 

 

 優星は今も、出水さんに手ほどきを受けているところだ。

 

 天珠ちゃんもそれを見て、少し驚きを浮かべた後、うんうんとうなずいた。

 

「ユウくん、頑張ってるね。」

 

「そうだね。優星には、ぜひ強くなってもらわないと。」

 

「なんでソウくんがそんなこと?」

 

「いや、こっちの話。それはそうと、あの人は?」

 

 と、天珠ちゃんと一緒にいた女の人を指しながら聞く。

 

「ん?あーっ、忘れてた!マリちゃ~ん、ちょっとこっち来て~!」

 

 と、手招きをする。

 

 

 マリちゃんと呼ばれたその人は、髪が長く背は僕より少し低いくらい。眼鏡をかけている。

 

 

「天珠~、久々に会ったのにすぐに放り出して。何様のつもり?」

 

「ごめんごめん。あ、ソウくん、この人はマリちゃん。私の従姉で、高3のお姉さんなんですよ!」

 

「コラコラ。紹介をあだ名でしてどうするよ、まったく...。えっと、ソウくん?私は平尾麻梨菜。」

 

「あっ、えっと、僕は人見操志って言います。」

 

「何か、天珠がいろいろ迷惑かけてるみたいだね。」

 

「ちょっと~、マリちゃん?私は迷惑なんてかけてないよーっ。」

 

 

 仲が良いみたいだ。

 

 僕は、いとことはあまり会わないし、こんなに話せないだろうな、きっと。

 

 それよりも、

 

「天珠ちゃんは今日はどうしてここに来たの?」

 

 もしかして、麻梨菜さんも隊員で練習をしようと誘われたんだろうか。

 

 

 そんなことを思っていると、

 

「そう、そのことなんだけど。・・・あのさ、B級に昇格したけど、部隊は組んでなかったじゃん?」

 

 B級の部隊。確かに組んでないけど、それがどういう...

 

「部隊、組みましょう!ユウくんも入れて、三人で!」

 

 

 !!!

 

 組もうって言おうと思ってたのに、先越されちゃったな。

 

 

「元々自分としてもそのつもりだったけど、急にどうして?」

 

「そ・れ・は...」

 

「それは?」

 

 

 と、天珠ちゃんが唐突に麻梨菜さんの腰をつかんで、前に出してきた。

 

 

「マリちゃんが、オペレーターだったからでーっす!!」

 

 

 一瞬の硬直。

 

 

「え??」

 

「ついさっきマリちゃんから聞いて知ったんですけど、マリちゃんオペレーターだ。って。」

 

 立て続けに話す天珠ちゃん。

 

「だからオペレーターしてもらえれば、部隊も組みやすいかな。って。」

 

 

 唐突すぎる提案に、僕の頭は混乱するばかり。

 

 

「麻梨菜さん?本当にやってくれるんですか?」

 

 とりあえず出てきた言葉はそれだけだ。

 

 

 麻梨菜さんは、天珠ちゃんのほうをちらりと見た後、

 

「まあ、天珠の頼みだし。従姉として、無視もできないから。」

 

「でも、前いた部隊は...?」

 

「それについては大丈夫。最近解散しちゃったから。私が元いた部隊。」

 

 

 嬉しい。嬉しい。

 

 まさか、オペレーターがこういう形で僕たちのもとに来てくれるなんて...!!

 

 

「ね?ソウくん?部隊組みましょう?」

 

 

「・・・そうだね!少しでも知ってる人がオペレーターやってくれるのはありがたいし!組もう、部隊!」

 

 

 こうして、B級部隊、人見隊結成!!!!

 

 

 あ、もちろん、優星も入るって言ってくれました。

 

 

 

 一週間後にはB級ランク戦初戦だというある日。

 

 少し前からちょっと気になっていることがあった僕は、天珠ちゃんに1つの質問をした。

 

 それは、

 

 『どうしてボーダーに入ったの?』だ。

 

 

 天珠ちゃんは、3年ほど前の大規模侵攻がかかわっていると言った。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 その日。

 

 私の両親は仕事で家にいなかった。

 

 4つ年下の弟と二人で家にいるときに、突然あたりが騒がしくなった。

 

 家から出ると、トリオン兵がたくさんいた。

 

 弟は泣き出してしまい、私も泣きたくなったけど、なんとか我慢して、とにかく避難した。

 

 

 その途中、事件は起こった。

 

 私が少し自分のことを考えすぎていたから。

 

 気付かなかった。

 

 

 弟が、いなくなっていることに。

 

 

 弟を探そうとしたその時。

 

 私の目の前に数体のトリオン兵がいるのに気が付いた。

 

 

 もう終わった。と思った。

 

 

 でも違った。

 

 

 ボーダーの人たちが現れ、瞬く間にトリオン兵を殲滅させた。

 

 私でも知っていたその人たちは、嵐山隊。

 

 

 腰が抜けて、動けなくなっていた私を、安全なところまで送り届けてくれた。

 

 

 感謝。憧憬。

 

 私の心は、そういう感情で埋め尽くされていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「それから、弟の件も、連れさられたんだったらボーダーに入れば取り返しにも行けると知って、それで、決めたんです。ボーダーに入って、絶対に弟を取り返しに行くんだ、って。」

 

「「・・・・・・」」

 

「嵐山隊の皆さんには、すごくご恩があるので、それも返せたらいいな、って思ってるんですけど。」

 

「「・・・・・・」」

 

「それともう一人、大規模侵攻のときにあった人ですごく感謝してる人がいるんです。」

 

「「・・・・・・」」

 

「安全地帯に送り届けられた後、弟のことを思い出して泣いちゃってた時、中学生くらいの男子が私を慰めてくれたんです。」

 

「・・・」 「・・!!」

 

 中学生くらいの男子?安全地帯で泣いてた?

 

 どこか引っかかる。

 

「とはいっても、その男の子は名前も知らないので感謝の言葉を伝えることはできないんですけどね。」

 

「「・・・・・・」」

 

「って、こんな暗い話しちゃってごめんなさい。とにかく私は、弟を取り戻すために、これからもっともっと頑張りますから!」

 

 そう言って、話を終わらせる天珠ちゃん。

 

 

 少し気になるところがあったけど、掘り返すのも野暮だし、今はやめておこう。

 

 

 

 それから、僕ら人見隊はボーダー内で一躍有名になった。

 

 デビュー戦を圧倒的な勝利で飾り、その後も破竹の勢いで連勝。

 

 人見隊は、皆の注目の的となり、また、気が付けばB級中位となっていた。

 

 

「では、スピード出世を祝して、」

 

「「「「カンパーイ!!!!」」」」

 

 

 僕ら人見隊の4人は、麻梨菜さんの父が経営している和食屋で、祝賀会を開いている。

 

 

 B級中位。

 

 この速さでの出世は、皆に誇れるものだと思う。

 

 天珠ちゃんのエピソードを聞いてから、僕らの間の結束がより深まったように思える。

 

 このまま勝ち続けられるとよいのだが。

 

 中位に上がった僕らの次の相手は、ガールズチームの那須隊と、

 

 

 あの渚ちゃんがいる柿崎隊だ。

 

 

 苦戦を強いられるだろうと思う。

 

 特に、渚ちゃんのSE『視覚凝縮』。

 

 はっきり言おう。

 

 ムリゲーだ。

 

 

 僕は、『洗脳』を使わないようにしている以上、勝てないのではないのだろうかと思う。

 

「・・・『洗脳』、次戦だけ解禁...。」

 

 やっぱだめだ。使いたくない。

 

 

「どうしたんすか~、操志くん?」

 

「ううん、大丈夫。自分の問題だから。」

 

「平気っすよ。だって...俺がいるんすから!!!」

 

 

 確かにそれは一理ある。

 

 出水さんの手ほどきを受けた優星は、テクニックだけでいえばもう彼に並ぶほどのものがある。

 

 実際、これまでの試合も、優星が点を稼いできている。

 

 

「そうだな。お前がいるんだったな。次の試合も期待してるぞ、エース!」

 

「任せてください!」

 

 

 気にしてもしょうがない。

 

 とにかく今は、細かいことは忘れて喜ぼう!!

 

 やったぜ、B級中位昇格!

 

 これからも、頑張っていくぞ!




これにて第九話は終わり。

新キャラ、平尾麻梨菜(ひらおまりな)です。

唐突な新キャラのぶっこみ、ご容赦ください。

これ以上はオリキャラはもう出てこないと思います。多分。

あくまで今の計画ですので、気が変わったら...分かりません。

第一章終了後、麻梨菜ちゃんのプロフィールや、各オリキャラのBBF参照能力値等を掲載する予定です。待っててください。


さて、次話はランク戦。と言いたいところですが、そうはいかなさそうです。
どうなるかは、次の更新で確認してください!w

それと次話は、天珠ちゃん目線で描く予定です。

天珠ちゃんの操志への言葉遣いが固まっていないのが懸念材料ですね。

どういう口調で会話させるのがいいと思いますか?コメント待ってます!


後書きもこのあたりで締めようと思います。

感想等、お待ちしています!

読んでいただき、ありがとうございました~!!


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第一章ーvol.6

PCの故障で投稿できないかもと言っていましたが、、

普通に進められていますね。

本人が一番驚いています。w


それでは、第十話になります。天珠ちゃん目線です。


第十話

 

 

 嵐山隊の人たちに助けてもらい、安全な所まで送り届けてもらった後。

 

 私は、一人になった。

 

 こんな時はいつもなら、弟がいるのに。今日は...いない。

 

「・・天...。どうしていなくなっちゃったの...。」

 

 思わず言葉が漏れる。

 

 次の瞬間、

 

 

 私の目からは涙が溢れだしていた。

 

 

 堺田 天(さかいだ そら)。私の、大事な大事な弟。たった一人の姉弟。

 

 天のことを考えると、涙が止まらなくなる。

 

 

 その時。

 

「どうしたんだ?お父さんとお母さんは?はぐれたのか?」

 

 やさしく声をかけてきてくれたのは、中学生くらいの男の子。

 

 

 気付けば、彼の服の袖を握っていた。

 

 その子は、何か思うことがあったのか、

 

「ごめんな。お父さんとお母さんを探さないといけないから。」

 

 と言い、離れていこうとする。

 

 

 反射的に首を横に振る。

 

 誰かがそばにいてくれないと、私自身が壊れてしまいそうで...怖かった。一人になることが。

 

 

「でも...。」

 

 と彼は言い、言葉に詰まる。

 

 

 

 その時。トリオン兵が突然現れた。

 

 

 怖くなった私は、守ってもらいたくて、より一層彼の袖を強くつかむ。

 

 すると、その男の子は、守ろうとしてか、私を強く抱きしめてくれた。

 

 

 私は安心したのか、そこで意識が遠ざかっていった。

 

 

 彼の雰囲気に、

 

 

 どこか懐かしさを感じながら。

 

 

 

 まだ、彼にはあれ以降会えていないけど、もし会ったら―――。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「ふう~~~。」

 

 ゆったりと湯船につかる。

 

 

 突然だけど、私はお風呂が好きだ。

 

 一人での~んびりいられる空間。

 

 私だけに与えられた、特別なこの時間が好きだ。

 

 

 風呂に浸かりながら、私はこれまでのランク戦の戦いを振り返る。

 

 

 何と言っても一番は、ユウくんの大活躍だ。

 

 ランク戦のほとんどの得点はユウくんが稼いだ。出水さんのレクチャーのおかげだと思う。

 

 マリちゃんも人見隊の最年長者として、オペレーターとして、皆をしっかりまとめてくれる。

 

 ソウくんは、試合でのポイントこそあまりないけど、相手の対策をしっかりと練って、私たちが動きやすいようにしてくれている。

 

 かくいう私も、個性を使いフィールド内を駆け回り、二人の援護などに駆けつける。

 

 正直に言って、私たち人見隊の戦力は、かなり充実していると思う。

 

 

 でも、B級中位にランクアップして、とうとう次からは相手も手強くなってくる。

 

 次の対戦相手は、那須隊と、柿崎隊。

 

 

 那須隊はガールズチーム。女子の私の目から見れば、すごくかっこいいと思う。

 

 私たち人見隊と同じで、攻撃手・射手・狙撃手の三人編成。射手が一番点取り屋というところも共通している。

 

 

 そういえばユウくんは、那須さんのトマホーク?を見て興奮し、『絶対に教えてもらおう!』って言ってたっけ。

 

 

 ・・・多分、無理だと思うけどな。

 

 

 

 そして、柿崎隊。

 

 万能手三人と銃手一人。中距離戦を得意としていて、今回の三チームでは唯一、戦闘要員が四人いる。数的優位に立たれたら厳しい戦いになるだろう。

 

 もちろん柿崎隊長も強いが、それよりも怖いのは、

 

 

 ナギちゃんだ。SE(サイドエフェクト)『視覚凝縮』で、フィールド内のほとんどの人を把握する。その眼から逃れることはおそらく不可能で、かなり厄介だ。

 

 

 まさか、こんなに早く対決することになるとは思っていなかったから正直、すごくびっくりした。

 

 

 ここでふとソウくんの顔が浮かぶ。

 

 

 負けられない!ナギちゃんにだけは絶対に!

 

 気合を入れ、浴槽からあがる。

 

 着替えをすませて、寝る準備をする。

 

 そして、寝る前に、

 

 

 弟が大好きだったライオンのぬいぐるみを抱きしめて、

 

「・・天。お姉ちゃん、絶対勝ってくるからね!」

 

 そうつぶやいた後、私は眠りについた。

 

 

 

 それからは、来るべき時に備えて対策を練り、戦術をいろいろ考えた。

 

 

 そして、ランク戦当日。

 

 おそろいの隊服を着た私たちは最終確認も済ませ、あとは転送を待つのみとなった。

 

 ちなみに人見隊の隊服は、白を基調とし、所どころに紺色のラインが入った、シンプルなものだ。

 

 

 ソウくんが皆を集める。

 

「今日は初めての中位チームとの戦いだ。正直、苦戦を強いられることになると思う。だけど、この四人でなら大丈夫だ!準備もしっかりやったし、ちゃんと戦えば絶対に勝てる!よし、行くぞ!!」

 

「「「オオオーーーッッッ!!!」」」

 

 ソウくんの鼓舞で一つになった私たち。

 

 さあ、勝負の始まりだ!

 

 

B級ランク戦、『人見隊VS柿崎隊VS那須隊』スタート!!!




ランク戦は、切りよく描きたいので、第十話はこんな感じに。
結構短めになりました。

天珠ちゃんの両親は、生きてます。天珠と一緒に住んでます、もちろん。


大規模侵攻の二人の件ですが、第九話の天珠の話を聞いて、操志はある程度気付いています。
が、天珠はまだ分かっていません。どうなることやら...。


次話のランク戦は、多視点から描く予定です。どうぞ、おつきあいください。


では。感想、コメント、お待ちしてます!

読んでくださり、ありがとうございました!!


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第一章ーvol.7

B級ランク戦、『人見隊VS柿崎隊VS那須隊』ですっ!!

今回は、いろんなキャラの視点から。
こまめに切り替えながらになります。

始まりは瑠璃川渚目線から。

では、どうぞ!!


第十一話

 

 

★瑠璃川渚 side

 

 転送完了。

 

 すぐさま、私は、『視覚凝縮』を使って周りを確認する。

 

 私が転送されたのは、マップ中央の、南寄り。

 

 確認できたのは、天珠ちゃんと文香以外の七人。

 

 那須さんとユウくんが近い。おそらく一番最初に交戦するだろう。

 

 虎太郎は、近くに茜ちゃんがいる。柿崎隊四人の合流は、虎太郎が彼女を倒してからになりそうだ。

 

 そして、熊谷さんは早くも動き出した。おそらく、那須さんと合流するんだろう。

 

 その近くにいたのは柿崎隊長。だけど、死角になっているから交戦することはない。

 

 柿崎隊は、チームの合流を優先している。できるだけ、合流は早めにしたい。

 

 ソウくんは、最初から高台に転送されている。・・運がいいみたい。

 

 天珠ちゃんは...どこにいるんだろう?なんか、不気味だな...。

 

 

 ここまでを、ざっと皆に伝える。

 

 虎太郎との合流は少し遅れるとして、まずは三人で合流することになった。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★人見操志 side

 

 僕の転送先は、高台だった。これはついてる!

 

 狙撃しやすそうなポイントを見て回る。

 

「優星、できるだけ早めに天珠ちゃんと合流してくれ。」

 

「大丈夫です。もう行ってます!」

 

「おう。天珠ちゃんも―――。」

 

「あのっ!那須隊の日浦さん見えたんですけど、追いかけて行っていいですか?」

 

「そうか。・・・よし。追って、できるだけ早めに倒しちゃてくれ。」

 

「了解しました!」

 

「優星も、そっちに行って―――。」

 

「操志くん。それ無理かも。」

 

「何があった!?」

 

 

「・・那須さんと...鉢合わせました。」

 

「・・・。」

 

 マジで...?

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★柿崎国治 side

 

 俺たち柿崎隊の最善手は、やはり四人で合流することだ。

 

 せっかくの四人編成だから、数的優位な状況になりたい。

 

 瑠璃川の情報から、虎太郎にはまず日浦を倒してもらってからこっちに来てもらうことにして、俺と照屋、瑠璃川でまず合流することにした。

 

 

 ここで再び、瑠璃川からの情報が入る。

 

「源くんと那須さんが交戦を始めました!熊谷さんもそこに合流しに行ってます。」

 

「了解。日浦のほうはどうなってる?」

 

「それが、範囲外に行っちゃって確認できなくなりました...。」

 

「そうか。まあ合流優先といったのは俺だから仕方ない。虎太郎のほうはどうなってる?」

 

 

「それが...。日浦さんと今対峙してるんですけど...。」

 

「けど?」

 

「ここに、堺田ちゃんもいます。」

 

 

 !!瑠璃川の視える範囲にいなかった堺田。そこにいたのか...。

 

 

「隊長!私、虎太郎のヘルプに行っても...?」

 

 瑠璃川が聞いてくる。

 

 確かに最悪の事態を考えると...。

 

「そうだな。瑠璃川、念のため、頼む。俺は、照屋と合流してからそっち側に向かう。」

 

 

 頼んだぞ!虎太郎!勝ってきてくれ!

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★巴虎太郎 side

 

 まさか、堺田ちゃんも近くにいたとは。

 

 渚さんは、『不気味だ』って言ってたけど、こういうことだったのかな。

 

 

 とにかく。まずは日浦さんを倒してポイントをとってから堺田ちゃんと戦うことにしよう。

 

 だから、

 

「ごめんな。ちょっと退散してもらうぜ。」

 

 拳銃(アステロイド)で、堺田ちゃんをけん制する。少し距離をとってくれた。

 

 俺には、これがある。中距離は、得意なんだ。だから...負けられねえ!!

 

 

 そして、倒すべき相手に集中。

 

 堺田ちゃんもいるから、できるだけ早く仕留めたい。

 

 そう思い、距離を詰めたその瞬間。

 

 

 俺の後ろを一つの風が吹き抜けた。

 

 

 そして、俺は。

 

 ベイルアウトした。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★堺田天珠 side

 

 ふ~。さっきは、上手くいってよかった~。

 

 

 一旦引いたと見せかけて、グラスホッパーと『ダッシュ』を使って一瞬で移動。そして、斬った。

 

 とにかく、1ポイント。

 

 次は、日浦さん。絶対に、倒す!

 

 

 いい感じ。グラスホッパーも織り交ぜながら攻撃し、相手を削れている。

 

 もう少しで倒せると思ったその時。

 

 

 私たち二人に、バイパーの雨が降り注ぐ。

 

 日浦さんがベイルアウトした。

 

 私も、右腕をもぎ取られてしまった。

 

 

 撃ったのはもちろん。

 

 

 ナギちゃんだ。

 

「天ちゃん、ごめんね。茜ちゃん、私が倒しちゃった。」

 

 にこやかに話しかけてくるが、私にはそんな余裕はない。

 

 

 考えを巡らせた結果。

 

 

 私は、ユウくんが今も尚交戦している方へと向かう。

 

 

 私の個性、『ダッシュ』を使えば、ナギちゃんからは逃げられるはず!

 

 そして、願わくば―――。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

 天珠たち三人が相見えているのと時を同じくして。

 

★源優星 side

 

 俺は今、窮地にたたされている。

 

 理由は、いたってシンプルだ。

 

 二対一だからである。

 

 

 少し前―――。

 

 俺は那須さんと交戦し始めた。

 

 出水先輩の指導の成果か、ほぼ互角で勝負は進んでいた。

 

 俺は、出水先輩に何も合成弾だけを教わっているわけではない。

 

 射手としての戦い方、相手との距離感を考えながら戦うことなども教えてもらっていた。

 

 

 だけど、二対一になれば話は別だ。

 

 しかも、那須さんと熊谷さんのコンビは息ぴったり。

 

 俺が簡単に歯向かえるような相手ではない。

 

 熊谷さんが合流してからは防戦一方だ。反撃の糸口すらつかめずにいる。

 

 せめて、トマホークが見られれば良かったのだが、それもできなかった。

 

 

「(このまま負けちゃうのかな...。)」

 

 そんな考えが頭をよぎる。

 

 

「いや、弱気になってどうすんだよ、俺!」

 

 そうだ。とにかく今は、どう倒すかを考えるのが先だ。

 

 それでも、勝つ想像なんてできない。

 

 やっぱり、一回でもいいからトマホークを撃つところが見られれば。

 

 

 その時。俺を助けてくれたのは、天珠だった。

 

「ユウくん?まだ大丈夫だよね?私今、そっちに向かってるから!」

 

 天珠...。

 

「それでさ、一つ考えたんだけど、ちょっと耳貸して?」

 

 

 

「・・え?天珠?なんでそれ知って...?俺誰にも言ってないはずだぜ?」

 

「・・マリちゃんから聞いたの。」

 

「!本当に?教えちゃったの?マリーちゃん?」

 

「あ~、悪い悪い。お前が変態だってこと、天珠だけには教えておきたかったからさ。」

 

「いや、べつに、俺変態じゃ」

 

「まあまあ、そんなことはいいから。ほら、戦いに集中しないと!」

 

 

 ・・覚えてろよ、マリーちゃん。

 

 

「そういうことだから...さ。だから、」

 

「オッケー、分かった。」

 

「じゃあ、私が言ったら、よろしくね!」

 

 

 まさか、天珠が知っていたとは...。

 

 ただ、おかげで何とかなりそうだ。

 

 

 そして、俺は、その時を待つ。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★那須玲 side

 

 強い。しぶとい。なかなか倒せない。

 

 少し、甘く見ていたのかも。

 

 

 私の今の相手、源優星。

 

 最初から彼が合成弾(ギムレット)を撃ってきたのには、驚かされた。

 

 データは見ていたけど、実際に撃ってくるのを見ると、やはり違う。

 

 

 くまちゃんが合流してくれたから攻め込めているけれど、もう少し合流が遅かったら...分からなかった、と思う。

 

 

「玲。どうする?彼、結構やるじゃん。」

 

「そうね...。」

 

 本当に、どうしようか。

 

 

 とりあえず、居場所を確認して、もう一発お見舞いしようとしたとき。

 

 

 ボッガァァァーーーンン!!

 

 派手な音とともに、私たちの近くの建物が壊され、倒れてきた。

 

 

 まずい!逃げないと!

 

 

 しかし、私たちが逃げ出した先には。

 

 

「っ!!・・瑠璃川さん。」

 

 柿崎隊の中でもっとも戦いたくない相手、瑠璃川渚がいた。

 

「!那須さん、熊谷さん。こんにちは。」

 

 彼女も少し驚いた様子だ。

 

 

 会ったからには...戦わないといけないわよね。

 

 

 間を図り、タイミングをうかがう。

 

「(瑠璃川さんには...茜ちゃんの分までやり返さないといけないんだからっ!)」

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

日浦茜がベイルアウトした頃。

 

★人見操志 side

 

 暇。

 

 

 って、何も言ってないです。はい。

 

 

 とはいえ、本当にそうなのだから仕方がない。許してほしい。

 

 

 柿崎隊長と照屋さんが合流して、一回こっちに来るような素振りを見せたから、準備していたのに、結局向きを変えてマップの東の方へ行ってしまった。

 

 

 これは僕も...移動しなきゃいけないのかな。

 

 でも、あまり人とは戦いたくないしなあ...って、隊長が何を言ってるんだと注意されそうだな。

 

 

 仕方ない。少し移動するか。

 

 幸い、東側にも高台はあるから、そこから狙撃チャンスを狙うことにしよう。

 

 

 そう思っていたのだが。

 

 

 なんで、こうなった?

 

 

 僕が行った高台にはすでに先客が。

 

 柿崎隊長と照屋さんがいた。

 

 

 ・・面倒なことになったな...。

 

 

 今から逃げ出しても、結局最後には戦うことになるだろう。

 

 だから、逃げ出すのはやめて、その二人と対峙することに。

 

 

 さて、どうしたもんかな...。




ランク戦、思ったよりもかかってしまった。一話で終わらせるつもりだったのに...。

ということで、いったんここで切って続きはまた次話ということでお願いします。
すみません。

《現状》
・虎太郎、茜...ベイルアウト

・操志VS国治&文香

・玲&夕子VS渚(VS天珠&優星?)

現状、こんな感じですね。次話で描ききりたい!


それでは。感想やコメント、お待ちしてます!

読んでくださり、ありがとうございました!!!


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第一章ーvol.8

二話に跨ってしまったB級ランク戦。

果たしてどのチームが勝利を手にするのか?

そして、第一章は無事にこの話で完結するのか...!!


更新が遅れ、すみませんでした...


B級ランク戦『人見隊VS柿崎隊VS那須隊』②、スタート!!


第十二話

 

 

★瑠璃川渚 side

 

 那須さんと熊谷さん。

 

 私の目の前には今、この二人がいる。

 

 さっきまで追いかけていたはずの天ちゃんには逃げられてしまった。まあ、個性を使われたし仕方ないと思うけど。

 

 その天ちゃんと、ユウくんが見当たらない。ソウくんの援護に向かったのだろうか。

 

 確認してもいいけど、今の状況で眼を使えるほど私に余裕はない。

 

 それよりも、まずはこの二人を倒す必要がある!

 

「アステロイド + アステロイド = ギムレット!!」

 

 早めに攻撃を仕掛ける。

 

 

 熊谷さんが盾となり、後ろの那須さんから弾撃が。

 

 シールドでガードするも、那須さんが撃ったのはバイパーで、前後左右から撃ち込まれ、少し削られる。

 

 

 一回射線をきって落ち着くため、建物の陰に隠れる。

 

 そこから、バイパーを放った。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★那須玲

 

 瑠璃川さんが一回建物の陰に隠れた。

 

 攻撃もできるが、できるだけ外すのは避けたい。

 

 正確な位置を知る必要がある。

 

 そこで、相手が攻撃してきたらそこにくまちゃんが突っ込み、正確な位置を割り出すことに。

 

 

「っ!!来たね。」

 

「よろしくね。私もできるだけ早く援護するから。」

 

 

「小夜子ちゃん。瑠璃川さんの位置は?」

 

 

 その時、私は警戒を怠っていた。

 

 普通に考えて、攻撃が一度だけなんておかしいはずなのに。

 

 

 私の頭上から迫る弾に、私は、あてられるまで気付けなかった。

 

「っ!!」

 

 まずい。このままではベイルアウトしてしまう。

 

 そう思い、最後の力を振り絞って、小夜子ちゃんの情報をもとにして。

 

「バイパー + メテオラ = トマホーク!!!」

 

そして、それを撃ったのとほぼ同時に、私はベイルアウトした。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★熊谷夕子 side

 

 私は、瑠璃川との距離を一気に詰め、近接戦に持ち込んだ。

 

 瑠璃川は万能手。当然攻撃手用トリガーを持っている。

 

 でも、弧月の扱いでなら、負ける気はしない!

 

 戦いの最中に、玲がベイルアウトしていった。

 

 それと同時に玲が放ったと思われるトマホークが瑠璃川を正確にとらえる。

 

 ここぞとばかりに攻め込もうとしたその時。

 

 

「っ!!」

 

 突然、天珠ちゃんがどこからともなく現れ、私に剣を振るってきた。

 

 

 それを、とっさの判断で守り、素早く振りかぶって天珠ちゃんを斬った。

 

 天珠ちゃんはスコーピオンで対応したけど、耐久力のないスコーピオン、そして、パワーの差でその守りをあえなく破り、天珠ちゃんを倒した。

 

 

 この間、玲のトマホークによって手負いを受けた瑠璃川は、私から距離を取り、中距離戦に持ち込もうという構えを見せていた。

 

 そうはさせまいと距離を詰めたその瞬間。

 

 

 私たちはどこからか撃たれたトマホークにより。

 

 二人とも、ベイルアウトすることになってしまった。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★源優星 side

 

「よっしゃあ!!やったぜ!!」

 

 俺は二人を倒したことに雄たけびをあげていた。

 

 

 俺がトマホークを撃てた訳。

 

 それはいたってシンプル。

 

 俺が、那須さんのすぐ近くにいて、彼女がトマホークを撃つところを見ていたからだ。

 

 それができた理由もいたってシンプル。

 

 

 俺は、オプショントリガーである『カメレオン』をトリガーにセットしていた。

 

 

 天珠が俺に持ってきてくれた案。

 

『ナギちゃんと那須さんたちを戦わせてトマホークを撃つところを見る』

 

 

 俺は、早い段階で那須さんと遭遇してしまい、身を消す暇などなかった。

 

 しかも不幸なことに、その時にトマホークを拝むことはできていなかった。

 

 

 しかし、天珠がナギちゃんを俺たちのいたところへと誘導してくれたおかげで、『カメレオン』を使う状況を作ることができた。

 

 

 そもそも、俺がこの『カメレオン』をセットしたのはいろんな人の技を、自分の姿を消して見て、模倣するためだった。

 

 こんな自分勝手なことをしているのが操志くんや天珠に伝わっては嫌だと思ったから、教えなかったのに、まさかマリーちゃんがばらすとは。

 

 

 まあでも、おかげでトマホークも使えたし、良かったってことで。

 

 

 操志くんがまだ戦ってるみたいだけど、俺の出る幕ではないだろう。

 

 そう思い、援護にはいかず、生存点をもらうことにして、俺はそこで、疲れを取る意味も含めて地べたに寝転がった。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★人見操志 side

 

 さて、どうしたもんかな...。

 

 第一に、絶対に『洗脳』は使いたくない。

 

 二対一は...かなりやりにくいだろう。

 

 まあ、とりあえず、耐えまくって時間切れが妥当かな。

 

 

 やっぱり、二対一はかなりきつかった。

 

 近接戦は、自分にも一応弧月があるからいいものの、柿崎さんと照屋さんは銃手用トリガーもあり、それが二方向から撃ち込まれれば、守るほかに手段がない。

 

 シールドも、無限にできるわけではない。

 

 

 少し考えた俺は、一つの案を思いついた。

 

 これなら使うことにはなるが許容範囲内ということにして、それを実行する。

 

 

 照屋さんと目を合わせる。

 

「(瑠璃川渚の援護に行け。)」

 

 そう指示して、柿崎さんに向き直る。

 

 

 直後。おそらく内部通信しているのだろう。

 

 柿崎さんの顔が困惑する。

 

 

 しかし結局、有無を言わさず照屋さんは渚ちゃんの援護へと向かった。

 

 よし。これでひとまず一対一になった。

 

 あとは、『洗脳』してしまわないように気を付けながら、柿崎さんと戦おう。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★柿崎国治 side

 

 困惑。

 

 いきなり、照屋が瑠璃川の援護に向かうと言い出し、俺の意見も聞かずに向かってしまった。

 

 もう少しで人見を倒せそうだったのに、このタイミングでいきなりどうしたんだろうか。

 

 

 まあ、それは後で尋ねるとして、とにかく人見を倒さなければならない。

 

 柿崎隊隊長として、負けられない!

 

 

 人見は弧月を抜き、攻撃手の間合いを探る。

 

 対して俺は、突撃銃(アサルトライフル)を手にして相手の間合いにさせないように、一定以上の距離を保つ。

 

 人見には弧月のオプショントリガー『旋空』もあるので、その斬撃にも注意する。

 

 

 人見の『旋空』。俺はそれをシールドで対応。

 

 もう一度斬撃が来る。シールドを固め、突撃銃で攻撃する。

 

 

 一対一は、拮抗した戦いになっていた。

 

 

「(このまま続けば、時間切れになりそうだな...。)」

 

 

 そう思っていたのだが。

 

 

 人見が突然、下に飛び降りた。

 

 

 慌てて俺もそれを追いかける。

 

 

 しかし、そこで待っていたのは。

 

 

 手にライトニングを持った人見だった。

 

 

 まずい!とシールドを張った俺。

 

 狙撃銃で最も弾速が早いライトニングにシールドは通用せず、俺の右腕が吹っ飛ぶ。

 

 

 地面に降り立ったが、手負いの俺。

 

「(こうなったら相打ち覚悟だな...)」

 

 そう思い、最後の力を振り絞る。

 

「(最後は弧月で終わらせようとするはず...その時に突撃銃をぶっ放せば...。)」

 

 

 俺は、手に弧月を持ち替えた。

 

 予想通り、距離を詰めてくる人見。

 

 俺の方からも距離を詰める。

 

 

 同時に剣を振った二人...と思われたが、俺はすぐに突撃銃に持ち替えて最期の攻撃。

 

 

 そこで俺はベイルアウトした。

 

 

 その後まもなく人見もベイルアウトしたと知り、安堵した俺だった。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★照屋文香 side

 

 おかしい。

 

 私は、柿崎さんと戦っていたのに、どうして突然、渚の援護に来たのだろう。

 

 さっきまでは、普通に戦っていたはずなのに。

 

 

 謎は解決しないまま、渚が戦っていたところ付近に来た。

 

 

 私がここに来るまでに、ベイルアウトした人が二人いる。

 

 

 誰が残っているのか整理していた時、新たに二人、ほぼ同時にベイルアウトしていった。

 

 急いでそこに駆けつけると、ただ一人残っていたのは...源くんだった。

 

「(嘘...!渚、やられたの...?)」

 

 

 源くんは、勝った喜びを踏みしめているようだった。

 

 

 突然彼は、地べたに寝転がった。

 

「(...!?これって...チャンス...だよね...。)」

 

 

 冷静に源くんを倒す。

 

 

「・・・。」

 

 いや、え?どうなってるの?

 

 

 

 柿崎さんと人見さんが倒れたことで、残ったのは私一人になり、ランク戦は終わった。

 

 

「お疲れ~、文香。」

 

「うん。・・渚は、本当に源くんにやられたの?」

 

「多分、そうだと思うよ。」

 

 

 釈然としないなあ。

 

 

「そうだ、照屋。なんで突然、瑠璃川の援護に行くなんて言い出したんだ?」

 

「・・それが、私にもわからないんです。」

 

「?分からないって、どういうことだよ。」

 

「その...何というか突然、そういう気持ちになって...操られてる感覚でした。」

 

 私の言葉に、はっとする渚。

 

「渚?何か知ってるの?」

 

 

 少しの沈黙の後、渚が言ったこと。

 

 柿崎隊のメンバーは、耳を少し疑った。

 

 

 『人見くんの″個性″で、そういうふうに指示された。』

 

 

 その言葉の真実性を確かめるため、私たちは人見くんから直接話を聞くことにした。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★日浦茜 side

 

 私たち那須隊は、今回のランク戦で最下位。獲得ポイントも少なかったから、順位は下がってしまった。

 

 

「ごめんなさいっ!私が早々と負けちゃったせいで二人にも迷惑かけちゃって...。」

 

 

 ランク戦の反省中、私は最初にそう言った。

 

 

「茜は今回、二人の攻撃手の近くに転送されてたんだし、運が悪かったんだよ。」

 

「そうそう。私たち二人も、結局一点しか取れなかったし、今回の負けも皆の責任よ。」

 

 

 二人の先輩に慰められる私。

 

 情けない。

 

 

 そして話題は相手チームの人に。

 

「今回はさ、源にやられた気がするな~。」

 

「そうね。まさか、あんなに強いなんて思ってなくて、倒せなかったもんね。」

 

「最後もさ、どこからか現れてトマホーク撃ってきたじゃん?ホント、何者?って感じだよね。」

 

「そうですよね!私も見てて、何か強くない?って思いました!」

 

「・・・。そのことなんだけどね。」

 

 ここで、とある推測を話した那須先輩。

 

 

 『源くんには、何か特殊な能力が秘められている』

 

 その内容は、本当にありえないようなことなのに、妙に説得力があった。

 

 

 だから、直接本人に聞こうということになって、その翌日。

 

 

 実際に話を聞いた私たちは、あ然としてしまった。

 

 だって、″個性″なんて、夢の世界の話って思ってたんだから!

 

 そんな、まさか、本当にいるなんて思ってもいなかった。

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *

 

★人見操志 side

 

 無事にランク戦も終わり、俺たちの結果は二位ということになった。

 

 優星がやられてなければ一位だったのに...。

 

 でもまあ、今回も優星が一番点を取ったし、何よりもトマホークができたらしいし。

 

 チャラということにしておこう。

 

 

 かくいう俺は今、渚ちゃんと一緒に柿崎隊の作戦室へと向かっている。

 

 

 突然、話がしたいと言われ、呼び出された。

 

 何となく、話の内容は予想できる。

 

 

 僕はランク戦で、照屋さんを『洗脳』して、渚ちゃんがいる方へ向かわせた。

 

 今日の話は、そのことに関してだろう。

 

 能力のことを話すのはあまり好ましくないが、使った以上、説明する必要はあると思う。

 

 

 柿崎隊の作戦室についた。

 

「柿崎さん、ソウく...、人見くん連れてきました~。」

 

「失礼します。」

 

「おう、来たか。瑠璃川、あだ名が呼びやすいならそっちでいいぞ。」

 

「っ!大丈夫です!」

 

「ハハッ、そうか。んじゃあ、人見、そこら辺に腰かけてくれ。」

 

 そう言いながら、中央あたりのソファーを指さす。

 

 今、この部屋には、他に照屋さんがいて、巴とオペレーターの人はいないようだ。

 

 

 さて、とさっそく話を始める柿崎さん。

 

「今日、呼んだ意味は...分かるか?」

 

「まあ、大体はわかってるつもりです。」

 

「じゃあ、率直に聞こう。人見、お前はこの間の試合で、なにをしたんだ?」

 

 

 嘘をつく必要もないと思い、ありのままを話すことにする。

 

 僕が、『洗脳』という″個性″を持っていること。

 

 その使い方やどれくらいの効果があるのかなど。

 

 また、個人的にはこの能力を極力使いたくはないということ。

 

 自分自身の愚痴も含めて、聞いてもらった。

 

 

「・・なるほど、分かった。」

 

 僕が話し終わると、そう言う柿崎さん。

 

「一つ、いいか?」

 

「何ですか?」

 

「お前はこの″個性″のことを、『呪縛』と表現したな。」

 

 そうだ。僕にとってみれば、この能力は僕を縛り付けている呪いのようだと思う。

 

「今後、どうしても使わなければならない状況が来たら、お前は使うのか?その、『呪縛』を。」

 

 

「・・・。それは、場合によると思います。」

 

 少し悩んだ後、そう答える。

 

 

 柿崎さんは、何か言いたそうな顔だ。

 

 しかし、表情をいつものに戻すと、

 

「俺たち柿崎隊は、今回の試合で『洗脳』を使われたことに関して、感謝してるんだ。」

 

 と、突然わけのわからないことを言い出した。

 

「お前の指示のおかげで、照屋が源の隙をついて倒せたからな。そのおかげで、一位をとれた。」

「って、こんなことを言いたいんじゃなくて。いいか、人見。ランク戦は、『戦い』なんだ。つまらない情けは、かけたところでだれも幸せにはならない。」

 

「・・・。」

 

「でも、『洗脳』を使ったということは、少なからず本気で戦っていたという証明にもなるんだ。」

 

「!!」

 

「だから、俺たちはありがたかった、と思ってる。そしてこれからも、そういう『本気の戦い』がしたい。」

「身勝手かもしれないが、俺たちの意見はこれだ。・・どう思った?」

 

 

 言葉を探す。

 

 まさか、『使ってくれてむしろうれしい』なんて言われると思ってなくて、びっくりした。

 

 僕は、『洗脳』なんてセコすぎる、とか言われたくなくて、使わないようにしていた。

 

 でもそれは同時に、全力を出されていなくて満足できない、ということにもつながるんだ。

 

 

「僕は...怖かったんです。『洗脳』を使ったら、周りから人がどんどん離れていくんじゃないかって。」

「そんなふうに言ってくれるなんて...思ってなかったので...。」

 

 

「・・人見。俺は能力を持ってないが、憧れはもちろんある。」

「なにか特別なものを持つ奴に、目が集まるのは、しかたないんじゃないのか?」

「って、偉そうなこと言いすぎだな、俺。・・とにかく、自分の持ってる力を全部出す方が、皆幸せになるとは思わないか?」

 

 

 柿崎さんの言葉一つ一つに強い思いを感じる。

 

 僕のことをしっかりと考えてくれているんだと思い、嬉しくなる。

 

 

「人見のその能力がすごく大事になる時が、絶対にあるはずだ。その時は、人見にしかないその『呪縛』で、皆を救うヒーローになるんだ。」

 

 ・・・。皆を救うヒーローか。

 

 そんな日が、いつか来るのだろうか。

 

 

 

 

 僕の″個性″は、『洗脳』。

 

 相手と目を合わせるだけで、自分の思うように操ることができる。

 

 

 こんなもの、絶対にいらないって思ってたけど。

 

 ″個性″なんて、ただの『呪縛』だって思ってたけど。

 

 

 僕はこの『呪縛』を、皆が傷つかないように、そして、大切な人を守るために使っていきたい。




第一章、完結!!
いかがでしたか?楽しんでいただけたでしょうか?
上手く、各キャラ描けていたでしょうか?

そして、気付いた時には文字数が6000近くなっていました。
各話、3000文字くらいでまとめる感じだったのに、結局多くなるという...。


次の投稿内容は、BBF参照の能力値等の公開になります。

その後は、第二章へと突入していきます。
ちなみに、対アフトクラトル編の予定です。

今後とも、お付き合いのほど、よろしくお願いします!!

読んでいただき、ありがとうございました!!


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第一章ー番外編②

予告通り、BBF参照の能力値、トリガーセットの公開です。

それと、麻梨菜のプロフィールも一緒に掲載します。


では、どうぞ!


★トリガーセット、能力値

 

※トリ=トリオン量、防援=防御・援護、特=特殊戦術 です。

 

 

◎人見操志

 

 メイン:イーグレット、ライトニング、シールド、FREE

 サ ブ: 弧 月  、バッグワーム、シールド、旋空

 

 トリ:6、攻撃:7、防援:7、機動:5、射程:6、技術:6、指揮:4、特:4、計:45

 

 

 

◎堺田天珠

 

 メイン:スコーピオン、グラスホッパー、シールド、FREE

 サ ブ:スコーピオン、バッグワーム 、シールド、FREE

 

 トリ:5、攻撃:6、防援:6、機動:9、射程:1、技術:5、指揮:2、特:4、計:38

 

 

 

◎源優星

 

 メイン:アステロイド、メテオラ、シールド、カメレオン

 サ ブ:アステロイド、バイパー、シールド、バッグワーム

 

 トリ:8、攻撃:7、防援:5、機動:7、射程:4、技術:7、指揮:1、特:3、計:42

 

 

 

◎瑠璃川渚

 

 メイン:アステロイド、 バイパー 、シールド、バッグワーム

 サ ブ:アステロイド、スコーピオン、シールド、グラスホッパー

 

 トリ:9、攻撃:8、防援:7、機動:6、射程:4、技術:7、指揮:3、特:3、計:47

 

 

 

(参考1)出水公平

 

 トリ:12、攻:8、防援:10、機動:5、射程:5、技:9、指揮:3、特:4、計:56

 

 

(参考2)柿崎国治

 

 トリ:7、攻:7、防援:7、機動:7、射程:4、技:7、指揮:6、特:2、計:47

 

 

※参考1・2は、オリキャラとの比較をするために加えています。

 

 

 

★オリキャラプロフィール

 

◎平尾麻梨菜(ひらおまりな)

 

 天珠の従姉。オペレーター。

 

 現在、高校三年生。1月31日生まれ。16歳。身長160cm。

 

 大学進学予定。ちなみに、教育学部。

 

 髪型は黒髪ロング。眼鏡をかけている。視力は、0.08だそう。

 

 まじめな性格。と思えば、口が意外と軽かったりする。

 

 

 トリ:3、機器操作:7、情報分析:8、並列処理:7、戦術:5、指揮:6、計:36

 

 

 

★″個性″と″サイドエフェクト″について

 

◎『洗脳』

 

 人見操志の″個性″。

 

 相手と目を合わせ、命令すると、その指示通りに人を操ることができる。

 

 効果時間は一回につき三分。洗脳されている間の記憶は無。

 

 基本的には無制限に使えるが、あまりにも使いすぎた場合、人見本人が疲弊する。

 

 

◎『ダッシュ』

 

 堺田天珠の″個性″。

 

 とにかく、速く走れる。スタミナも上がる。

 

 自分の意志でスピード調節できるが、それはまだ上手くない。

 

 疲れきるまでは、際限なく走り続けることが可能。

 

 走っている姿は風。のように見える。

 

 これもまた、使いすぎると、疲弊してしまう。

 

 

◎『模倣』

 

 源優星の″個性″。

 

 自分の目で直に見たものを、再現できる。

 

 一回目の模倣は、三分間のみ有効。

 

 回数を重ねるごとに、模倣できる時間が増えていき、一週間ほど続ければ、完璧にものにする。

 

 完璧に模倣したものを、忘れることはない。脳みそに入る限りは。

 

 

◎『視覚凝縮』

 

 瑠璃川渚の″サイドエフェクト″。

 

 片目で集中して見ると、視力が常人の約8倍になる。その際、透視も可能。

 

 能力を最大限発揮すると、自分を中心とした半径1キロの円の範囲内であれば、何でも見える。

 

 ただし、この時は、基本的に遠くを見ることに集中するため、近くへの注意が散漫になる。

 

 眼を過度に使いすぎると、一時失明に近い状態になることもある。翌日には戻る。

 

 目安は、一日当たりおよそ十回。




″個性″は、結構アニメからそのまま持ってきた要素が強いですかね...?
別に問題ないでしょうか?コメント、お待ちしています。


第一章も終わったということで、少し次の投稿まで日が開いてしまうかもしれませんが、そこはお許しください。

感想や、文の訂正など、あればお送りください!

では、このあたりで。

読んでいただき、ありがとうございました!!


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