幻想殺しと電脳少女のボンゴレ生活 (軍曹(K-6))
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幼少期編
第一話 カミツナ、目覚める!


続きの話を投稿開始。隔日投稿を守る馬鹿です。

どうも軍曹(K-6)です。上条・貴音の二人の過去話。
霊夢の奇病を治すために二人は何十年何百年という時間を過ごす覚悟で地面に立つ。

大仰なこと書いてますが、漫画読んでて不満に思った所を納得がいくよう書き換えるだけなので、読みたくないやって人は今すぐブラウザバックしてください。


おk?











(どこだ? ここ)

 

“上条当麻”は目を覚ました。どうやら自分の家のようだが、その体は幼児。五歳ぐらいだった。焦りながら上条は鏡を確認する。

黄色がかった茶色に、琥珀色の瞳。鏡に映った姿はそんなものだった。

 

「だ、誰だ・・・これ」

「(どうやら、転生した見たいですね。ご主人)」

「(エネ! お前無事なのか!?)」

「(ええ、何とか。それと調べた情報によると、その体はご主人の新身体(ニューボディ)。その子の名を綱吉、姓を沢田と言うそうです)」

「(家庭教師ヒットマンREBOON・・・・・・)」

「(その通りですよ)」

「(ならねーぞ!? マフィアになんかなるもんか!)」

「(ま、頑張ってくださいねー)」

 

そう言って一方的に脳内会話は終わった。思わず上条は両手をついてうなだれる。その時、駆け寄ってくる足音が聞こえた。

 

「ツッ君。どうしたの? 大丈夫」

「大丈夫だよ?」上条は心の中で顔を引きつらせて(辛い! 子供ってどうやったら子供なんだっけ!? 尊敬するぞ工藤新一!!)

「そう。良かったわ」

(良かねーよ。なんで俺がまた子供に逆戻りなんだよ!)

 

ふと頭に持っていった右手が、額に触れた途端。何かが上条の中で燃え上がった。

 

(!? こ、これは・・・・・・この俺に秘められしチカラ・・・・・・! ・・・・・・はいはい。中二病に目覚めるには早いですよーっだ)

 

上条改めツナはまだ始めの一歩を踏み出したばかりだ。

 

 

「・・・ほっ。とぉ!」

「じょーずねぇ」

 

ツナはよくある幼児向けのヒーロー番組を見ながら、それの真似をしているという大義名分で、自分の体になじもうとしていた。

 

(・・・正拳突き。百万分の1!!)

 

それでも、フォ! と、風を切る音がする。ツナは思わず“上条当麻”の力に恐れを抱いた。

 

(ものすごい抑えたのに・・・・・・通常のパンチで鍛えた人間並み!? しかも幼児の体だぞ!? 早いトコこの体に精神体をなじませないとやばいかも・・・・・・)

 

眠ったふりをして考え事をするツナ。思わず、本当に寝てしまったのは幼児の性か。

 

 

―――その夜。

 

(→↓➘+P!)「とぁっ!」

「おふっ!?」

「あう・・・」(すまん親父!)

 

心の中で土下座するツナ。かくいう彼は、父親の股間に拳を叩きこんでいた。最初は足をボコボコ殴っていたのだが、調子に乗って頭の中でコマンド入力したのが間違いだった。昇龍拳を股間に叩き入れたのだ。

 

「え? え?」

「き、気にするな。ツナ、ぱ、パパは大丈夫だから・・・・・・」

「だいじょぶなの? よかったー」(たくましい、たくましいぞ親父)

 

ツナは心底自分の父親に敬意をもった。子供の前とはいえ、ブツを潰され転げ回ってもおかしくないのにそんな様子を見せない(強がっていると分かる)。のが、ツナ的にポイントは高かった。

 

「よかったよかったー」

「うっ! ふぐうっ!!」

 

ツナはほぼ無自覚で、父親の股間を撫でようとしてベシベシと叩いていた。そのたびにビクビクと親父が震えていたのにようやく気付き。それとなく別に興味が移ったように手を離す。

 

(あっぶね~。俺がトドメ指してたよなあれ。あーヤバいヤバい。俺は今回も妹が欲しいのに、できなかったらどうしようかね)

 

ツナは、その日はそのまま寝る事にした。




次回は隔日投稿できないかもしれません。

ですがこのお話も駆け足で、なるべく早く終わらせます。目標一年以内(無理)


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第二話 いざ、イタリアへ!

やっぱり隔日投稿出来ませんでした。待ちきれないこの思い。

何度二十二時前に投稿ボタンを押そうとしたことか。

その思いは前書きでは収まらない―――っ

(文はここで途切れている。


「・・・・・・。ここ、どこ」

 

ツナは気がついたらお屋敷の前にいた。周りには黒服を着た怪しい男達ばかり、きれいなドレスを着た女性もいるが、どこか上品さには欠ける。

 

(・・・・・・こういう時って場違い感が半端ないんだよなぁー)

 

ツナはあくまで子供らしく振舞いながらその会場を歩いていた。

 

「・・・・・・わーすごー・・・い」(ゆか・・・・・・た・・・?)

 

その時、ツナはつまらなさそうにしている可愛らしい少女を見かけた。その子が着ていたのは驚く事に日本の衣装、浴衣だった。

 

「ねぇ、何してるの?」

「つまんないの。みんなたのしそうなのに、わたしだけ」

「僕もおんなじだよ。じゃあ何かして遊ぼうよ」

「あそぶ? いいの?」

「みんな楽しんでるのにつまらないなんてダメだよ! もっと、楽しまなくちゃ!」

「うん。そうだね!」

 

ツナは少女を連れてお屋敷の中に入って行った。

 

「ここは君の家?」

「ううん、ちがう。わたしもしらない」

「ふーん」(ってぇあの紋章。ボンゴレの系列か?)

「ねぇ、あなたのなまえは?」

「綱吉だよ。ツナって呼んで」

「ツナ・・・ヨシ・・・? もしかしてにほんじん?」

「うん。そうだけど、ここは日本じゃないの?」

「ここはイタリアだよ。わたしにほんがだいすきなんだ! あなたは、なんでここにいるの?」

「お父さんが連れて来てくれたから、よく分からないんだけどね。そう言えば君の名前は?」

「わたし? わたしはねかのん!」

「かのん? それともカノン?」

「にほんごのひらがなだよ。かのん。かのん=N=アポローニっていうの」

「アポローニ・・・?」

 

改めてかのんを観察してみると、美少女の類に入る方だった。桃色の髪に赤みがかった目、ちょっとクセ毛が目立つが、とても可愛らしい少女だった。

 

「ところでNって何?」

「なかがわ、わたしのにほんのみょうじだよ」

「日本の名字? なんで?」

「わたしね、おとうさんがイタリアじんで、おかあさんがにほんじんなの!」

「それで、名前の間に日本の名字が入ってるんだね」

 

二人が、廊下を歩いていると。

突然。パシュッ、と空気の抜けるような音が聞こえた。その音に続けて何かが倒れるような音がする。

 

(今の音は何だ!?)

「? どうしたの?」

 

ツナが前方を注意してよく見ていると、二つ向こうの部屋の扉が開いて、余裕そうな表情で男が出てきた。

 

「・・・・・・な、ガキ」

「・・・おじさんどうしたの?」

「・・・何してたの? みんなあそこに集まってるのに」

 

かのんは素、ツナはあえてとぼけて庭のパーティ会場を指して見る。

 

「あ、ああ。おじさんも今から向かう所なんだ。トイレを済ませてね」

「へぇーそうなんだ~」

「ツナヨシくん?」

 

ツナは歩いて去ろうとする男の背中に向かっていった。

 

「僕てっきり、おじさんがスパイであの部屋でデータを盗んだと思ったけど、違ったのか~。でも、サプレッサーの音がしたよね。誰か、撃ったんでしょ」

「・・・・・・何の事だろうね。おじさんはただトイレに」

「ごまかすんじゃねェよ。トイレなら一階にもある。わざわざ二階まで来る必要はないはずだぜ? ねぇ? お・じ・さ・ん」

「それ以上話すんじゃねーよガキ」

 

ツナの目の前にサプレッサーつきの銃が突き付けられる。

 

「わお」

「それ以上喋ったらぶっ殺す。というか、二人ともぶっ殺す。目撃者は殺しておかねーとな」

「できんのかよ。ってかやらせると思ってんのかよ」

 

そういったツナは、その頭部とその両手に綺麗なオレンジ色の炎を灯していた。

 

「え、ツナ、ヨシくん?」

「おま、まさか。ボンゴレの・・・・・・!」

「くらえ、普通のパンチ!」

 

炎での加速+いつもの撃ち方で、ツナの拳の威力は銃弾よりも速く、鉄球よりも強い威力で放たれた。それは子供の身長という事で、男の急所を正確に打ち抜いていた。

 

「おグゥッ?!」

「あ」

「え・・・・・・」

 

白目をむいて気絶した男を、ツナは憐れそうな目で見ていた。

 

(すまん。名もなきスパイよ。今の威力は使い物にならなくなったかも知れないな。ごめん)

「す、すごいよ。ツナヨシくんすごい!」

「え? そう?」

「うん。なんかタダモノじゃないってかんじ」

「ああ。そう? ってか見つかったらマズイから逃げようぜ」

「うんっ」

 

二人で屋敷内を逃げ回っていると、スーツを着た小さな赤ん坊や、優しそうなお爺さんとすれ違ったが、ツナはそんなこと気にしてはいなかった。

 

「ねぇツナヨシ・・・ううん。ツナくん」

「は? え? 何?」

「わたしね、おおきくなったらツナくんのおよめさんになっていい?」

「ん? ん? いいけど」

 

ツナには『いい?』の部分しか聞こえてなかったので、素直に返事をしたのだが、よく考えてみるとこの状況でいい? は一体何を表しているのか。ふと彼女の顔を見てみるとふにょふにょと頬が緩んでいた。彼は首を傾げるが、その時は大して気にも留めなかった。

しばらく進んでいると、突きあたりの部屋に着いた。何がいてもツナ的に怖くなかったので、豪快にして慎重に、ドアを開けてみる。

 

「・・・・・・あれ? 誰?」

「・・・こっちのセリフだ。ドカスが」

 

高校生ぐらいの強面のお兄さんがいました。

 

「あ、あわわ・・・・・・」

「ねぇ、お兄さん。あなた強い?」

「あ? 当り前だろうが、俺はXANXAS。ボンゴレの十代目を継ぐ男だ」

「へぇ~強いんだ? じゃ遊ぼうよ。 ザンザス」

 

ツナは鋭く目を細めると、その眼から殺気という殺気を一点集中でXANXASに向ける。

 

(!? コイツ・・・並の殺し屋でもできねェ事を・・・後ろのガキはビビってねェって事は、殺気を視線に乗せて送ってきてやがるのか。恐ろしいガキだ・・・一体どんな奴の息子なんだ!)

「おーここにいたのかXANXAS。探したぞ」

「ジジイ」

「おっ。ツナ、お前もここにいたのか」

「あ、おとーさん」

「なっ」(門外顧問(チェデフ)の息子!?)

「カノン。帰るぞ」

「はーい。じゃーね。ツナくん」

「うん。じゃーね」

 

ツナは極めて普通に、そう普通に別れの挨拶をした。

 

 

―――帰り道。

 

「楽しかったかー?」

「うーん。どうだろー。でもかのんちゃんとは仲良くなったよ?」

「コーデリアさんとこの一人娘か・・・・・・。あの子は美しいというよりは可愛いの方に育ちそうだよな~」

(それな)「おとーさん。結局みんな何してたの?」

「パーティといってな、楽しいものだぞ」

「へぇー」(マフィア同士のパーティ? どうせ腹狸共の腹の探り合いだろ)

 

なんともかわいくない子供である。




それでは。

バイチャ! (最近のブーム)


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第三話 古美術商の男。古里真

隔日投稿ができない自分が恨めしい。

え? 毎日投稿してるだろうって? アイディアに技術と力量が足りてない証拠です。


パーティからの帰り道、運悪くも迷子になってしまったツナは、道路沿いにあった一つの店へと入っていった。

 

「・・・すみませーん」

 

遠慮がちにそう言いながら店内に足を踏み入れるツナ。外のショーウィンドウを見る限り開店時間なのだが、中には誰もいなかった。

それでも外は雨が降りだして、少しでも濡れたくなかったツナは、とっさに近くにあったこの店に入ったのだった。

 

(・・・・・・誰もいないのか? いや、でも開店時間だったし・・・)

 

ツナはそんな事を考えながら店内を見渡す。骨董品、アンティークが立ち並ぶその棚から視線を横にずらした時、椅子に置かれた一体のビスクドールにツナは小さく悲鳴を上げる。

 

(・・・あーっ! びっくりしたーっ!! 西洋人形かよ。いや、日本人形も怖いけど。あ、日本人形(フィギュア)なら大丈夫だぜ)

 

一体誰に言っているのか。心の中でそう言うツナの後ろ姿に近づく影があった。

 

「・・・あれ、もしかしてお客さんだったかい?」

「うわっ!?」

 

飛び退くように振り向いたツナは後ろにあるビスクドールに肩が当たって、台から落としそうになる。

 

「わっ、わたたっ。わっわっ!」

「あはは。大丈夫かい?」

 

両手の上でぴょんぴょんと跳ねるビスクドールを何とかしようとするが、笑いながら店主さんに奪われた。

 

「あ、う・・・・・・」

「さて気にしなくていいよ。滅多に客が入らないからつい作業に没頭していた私が悪いんだしね、こういう場合」

「あ、ありがと・・・」

「キミは迷子かな? 名前は?」

「ツナ。おじさんは?」

「私はこの骨董店を営んでいる、古里真と言います」

「こっとーてん?」

「こういう・・・アンティークを扱うお店の事だよ」

「あんてぃーく・・・」

 

ツナは興味が少し引かれたように時計を見るが、その思考は全く別の場所へ飛んでいた。

 

(古里真。まぁ間違いなく、(ツナ)の親友・古里炎真の父親だ。古里炎真。

 

シモンファミリー

 

それはボンゴレ初代・・・ジョットがその先駆けとなる自警団を作るきっかけを起こした人物のファミリーだ。そのファミリーを起こし、ジョットの友人で在ったシモン・コザァート。彼はD・スペードの策略のせいもあり、自らマフィア界の影となることを選んだ。その道はとても辛く、子孫である炎真たちも沢山苦しんでいた。それでも、デーチモの時代であるツナ達の時代で、漸くその存在を公にすることが出来るようになった・・・だったか)

 

そんな未来での親友とも呼べる存在になる人間の父親と、何の因果か知り合ったツナは、骨董品についていろいろ聞いていた。

 

「いやー。私にも君と同じくらいの息子がいてね。仲良くなれると良いけど」

「うん。会ってみたいな」

 

ボンゴレのせいで、シモンファミリーは家族を喪った。ボンゴレのせいで、炎真は目の前で家族を殺された。それを行ったのは主にD・スペードだったが、ツナがボンゴレを継いだ以上、その罪の意識は絶対に持ち続けなければいけない。

 

“こんな間違いを引き継がせるくらいなら、俺がボンゴレをぶっ壊してやる!!!”

 

未来で、ボンゴレの業を見せられた時にツナが宣言した気持ち。

おそらくだが何よりも、炎真たちの存在を知って、苦しみを知って、より強く思うようになったであろう。マフィア界の浄化とボンゴレの解体を。強者によって、弱者が虐げられることにならないように。一部の者だけが笑って、その陰で誰かが泣かないように。そんな信念を。

 

(つまる所、炎真達(シモンファミリー)の全員を助けてやろう。原作改変をしよう。という事である)

 

「ツナヨシ君!」

「あ・・・かのんちゃんのお父さん」

「ツナ君!」

「かのんちゃん!」

「お迎えかい?」

「うん」

 

ツナは立ち上がるとかのんと話を始める。かのんの父親は少し険しい顔をすると真さんに近づいていく。

 

「・・・もしかして。古里さん」

「ああ。コーデリアさんか」

「ツナヨシ君の事ありがとう御座います」

「彼は?」

「ボンゴレの・・・門外顧問の子供です」

「へぇ。それは凄いね」

「えぇ、なかなかな境遇に生まれた子供で・・・」

「おとーさん! ツナ君空港に送るんでしょー?」

「あ、ああすまんすまん!」

「謝ってるの!?」

「謝ってます」

「ありがとうございました」

「またおいで」

 

優しく手を振る真に手を振り返し、ツナはイタリアを去った。




少し間隔を開けさせてください。流石に毎日は無理でした。


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第四話 救出! シモンファミリー

はい、間隔は開けさせてもらいました。隔日投稿再開です(なるべく)


小学一年生の頃。

ツナはイタリアへ真に会いに飛んでいた。

 

(あー久しぶりだなー。今回はいよいよ! 新居に招かれて炎真に会えるんだよな。うん、楽しみだ)

 

そんな事を考えながら空港を出たツナは、地図を貰っていたので新居へと赴く。

途中途中で全力疾走したのは良い思い出らしい。

 

「ここ・・・だな」

 

ノックをしようと扉に手を伸ばすと、鍵が開いている事に気付いて。

中から音がすることに気付いて。ツナは、慌ててドアを蹴り飛ばして中に入る。

まずは一人目と二人目。真の奥さん。たしか・・・美恵さんだったか。まだ息があるのを確認して、肉体的な怪我を妖術を使ってゼロにする。安全な(博麗の結界で保護された)部屋に彼女が抱いていた子も一緒に寝転がらせて、更に走る。

 

「おじさん!! ・・・おとう・・・・・・さん?」

「お? ツナ! 大丈夫か? いや、父さんもびっくりしてなー」

「逃げろ・・・ツナ君逃げろ!!」

「おじさん? おとうさん?」

「大丈夫だツナ。もうすぐ医者が来る」

「おじさん助かるの?」

「もちろんだ」

 

ツナは笑顔で顔を上げると、子供とは思えない殺気に包まれた声でこう言った。

 

「助ける気もないに良くそんな事が言えるなD」

 

そして、素手の状態でX BURNERを放った。

 

「ぐっ!?」

「ゾンビみたいに長生きしやがって。いい加減成仏しろよクソ霧が」

「おやおや、これは驚きましたねぇ。私の幻術を見破るとは・・・その姿と言い、初代霧の守護者の名を知っているといい、貴方は何者なんでしょうねえ?」

「沢田綱吉。アンタが成り代わってたクソ野郎の(不本意だが)息子だよ」

 

ツナはそのまま額と両拳に炎を灯すと、満身の力を込めて。Dの肉体の一部に強撃を加えた。

 

「ッッ!!?」

 

そこはもちろん、男としては狙われたらお終いな部位で、まあ、つまり、股間であった。

 

「ッ! ヌフフフフ・・・! これは・・・ん・・・これは手酷く・・・やられました・・・っ・・・貴方と今戦うのは分が悪い・・・お暇させて・・・もらいましょう・・・!」

「・・・待てよD!!」

 

なんてことを言ってみたが、今のツナに彼を追う気は全くない。すぐさま踵を返し、真へ駆け寄る。

 

「おじさん、大丈夫!?」

「あ、ああ。大丈夫だ」

「・・・馬鹿言ってんじゃねー。エネ!!」

「了解ですご主人!!」

 

虚空から現われた青いジャージ姿の少女。エネは真に近づくとその体に触れる。

 

「ちょっと体中が痒くなりますよー」

「は? え?」

(あ、奥さん気絶してたから何も言わなかったけど、細胞を無理矢理活性化させて自己治癒力を上げてるから痒くなるのか)

 

ツナはそう思い当たると、一応救急車を呼んでおく。

 

 

 

それから一夜経って。

 

「命に別状は見られませんが、一応一晩泊まって行きなさい」

 

という医者のありがたい御言葉によって、古里家は一部屋に固まって入院していた。

 

「いやいや。助かったよツナヨシ君」

「あ、お礼ならエネに」

「ご主人が助けてって言うから私は助けたんです。ご主人がお礼言われてください」

「・・・・・・じゃあ、おじさん。あの時見ず知らずの俺を雨宿りさせてくれたお礼と、今後の付き合いの貸しという事で」

「・・・アハハ! いいよ。その代わり、ほら、炎真」

「初めまして」

「初めまして。俺、綱吉!」

「ぼ、僕炎真」

「わたし真美!」

「よろしく!」

「よろしく・・・」

「よろしく!」

 

何だかんだで、予定通り古里炎真と仲良くなり、父親も母親も救う事が出来たツナだった。

 

「ツナ兄!」

「いや、真美ちゃんのお兄ちゃんは炎真でしょ」

「ツナ君・・・」

「ね。炎真も何か言ってあげて」

「真美をよろしく・・・?」

「・・・・・・。真!! 炎真に何を教えたぁあぁああ!!」

「いやーツナヨシ君怖いなー」

 

はっはーと笑いながら聞き流す真と、炎真の教育について強く語るツナの姿がそこにはあった。

 

「・・・エネ姉!」

「お、私はお姉ちゃんですか?」

「あー・・・はいはい」




大人っぽいツナに誰も突っ込まない恐怖。

ツッコミの重要性は計り知れません。


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第五話 潰せ! いかれたマフィア“エストラーネオ”

ツナの毎日は過酷だった。

現在小学三年生のツナは、ほとんど毎週のようにイタリアへ行っていた。その理由は一つ。強くなれそうだから、である。少しボロボロの服を着て、髪の毛をボサボサにしておけば、ストリートチルドレンと思われるのだから、相当治安が悪い街に行っているのだろう。

なぜ、そんな毎週のようにいけるのかというと、とある時、三分の時間制限付きで会えた貴音が渡してきたリングのおかげだった。

 

その名は『夜のリング』

なんでも夜の炎という特殊な炎を灯す事ができ、遠くへの移動も楽となる。これが毎週旅行の方法である。

治安が悪い国では、大してパスポートの有無など気にも止められなかったりする。特に子ども一人だと。

 

それとなく、小学校に上がるまで身体能力の向上を目指し、スポーツテストではっちゃけ、紆余曲折を経て。現在にいたっている。

 

(流石に、反復横とびで影分身はマズッたかなぁ。先生の疲れ、で何とかなったけど。ちょっと調子のり過ぎたよな。あの時は)

 

ツナはイタリアの路地裏を歩いていた。かなりのストリートチルドレンがいるが、ツナ自身もお金は持っていないので、別に気にする事はない。

そう、本来なら。

少し向こうの集団に、何か選別をするような男達がいた。

奴隷にでもするつもりだろうか、とツナは思ったが関係ないと思い。通り過ぎようとしたところで、

 

「いきが良いのがいるじゃねーか」

「オヤスミ」

 

流暢なイタリア語でそう言われた。このヤロ、と思ったが時すでに遅し、スタンガンとクロロホルムのダブルコンボで、身体は完全に動かなくなった。

 

 

――――――

―――

 

目が覚めると、そこは何かの実験施設のようだった。ツナの前にも眼鏡をかけた少年や、やんちゃそうな少年もいた。が、皆何かに脅え、必死に耐えているように見える。

 

(なるほど。マフィアか何かの実験室か。見るところによると、人体に対する特殊な兵器の開発。といったところだな)

 

すると、ツナの前で一人の少年が右目に眼帯をして戻ってきた。何か手術でもしたのだろうか。だが、どこか悲しそうな目をしていた。

 

(当たり前。か・・・・・・)「・・・・・・さて、どうする・・・・・・」

「オラ、そこのガキ。ボサボサ頭のオマエだよ。コイッ」

「・・・・・・」(俺か)

 

ツナは渋々研究者についていった。どうやらファミリーの子供では少なくなったから、実験に使えそうな子供をストリートチルドレンから選別してきていたようだ。彼は呆れたような溜息が出る。

 

「さて、お前はこれだ」

 

そう言って取り出されたのは大型の拳銃。見えているのだろう。カーテンの向こうから息をのむ声が聞こえる。ちょっと意地悪をしてやろう。と思ったツナはとりあえず身構えた。

 

「さて、どうだ」

 

ズガン! と、ツナの額に銃が撃ち込まれる。彼はそのまま宙を舞うと、地面に激突した。

 

「・・・・・・ふむ。駄目か」

「さて次は・・・・・・」

「終わったと決めつけるな」

 

たっぷり三〇秒待ってからツナは体を起こした、その頭部に炎を灯して。

 

「おぉ!? ・・・・・・待て、その炎は・・・・・・!」

「行くぞ」

 

ツナは遠慮はしなかった。最初から研究者達を異形の怪物としてみた彼は、何の抵抗もなく拳を放っていた。暫くして彼が目を開けると、彼は死体後の海の中にいた。

 

「掃除終了っと。あ? 何だテメーら」

 

ツナは死体の海の中からこういった。

 

「見てんじゃねーよ。何なら俺の(シモベ)になるか?」

 

ツナはそう言うと、その場を後にしようとしたが、ゾロゾロと少年少女達がついてくる。

 

「んだよおめーら」

「ついていきますマスター」

「・・・・・・マジ?」

 

ツナに生まれて初めてのファミリー候補ができた。

 

 

 

彼は、とりあえず彼等を住まわせる所が必要だと思い。研究所の屋敷ごと壊滅させ、新しい組織を作る事にした。

 

「お前ら、なんか提案あるか?」

「ツナ組」

「ツナヨシファミリー」

「ツナヨシ会」

「・・・・・・あのさ。何で俺の名前入れる訳?」

「「「「だって、ボスだから」」」」

「マフィア基準で考えんな! もっとこう、マシな名前はないのかよ!? 例えばこう秘密結社“影組”とかさ」

「それで行きましょう」

「賛成だびょん」

「さすが綱吉様」

「・・・・・・おまん。わいはちょっとおんしらの将来が心配ぜよ」

 

暫くして、ツナは屋敷の中を歩き回ってある物を探す。

 

「何してるんですか、綱吉様」

「ああ。千種か。リボルバーとオートマティックを探してる。まだ俺は影を使えないからね」

「何を言っているのですマスター。あなたはもう。影組のボスなんですよ?」

「そーゆー意味じゃねェよ骸。影を操れてないって言ってんの」

「綱吉様。あそこの部屋が確か武器保管庫だったはずです」

「マジで? よっしゃ」

 

早速部屋に飛び込むツナ。どうやらトラップが仕掛けられていたらしく。爆風で廊下に戻ってきた。

 

「マスター!」

「綱吉様! 大丈夫ですか」

「うんうん。大丈夫大丈夫。さて、探索探索」

 

武器庫をあさるツナ。その屋敷には危険が迫っていた。




深くは突っ込まないでほしいです。


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第六話 溶けない氷、これは何?

ツナが意気揚々と武器庫をあさり、目的のものを見つけてはほくほくしていたころ、マフィアの間でのウワサはあっという間に広まった。

 

・エストラーネオファミリーが壊滅したこと。

・そこの子供たちが今は屋敷を我がものにしているということ。

 

それでどうやら刺客が来たようだ。こっそりとしているんだろうが、ツナの神の眼はごまかせない。

 

「正門四人。他は誰もいない・・・・・・」

「マスター、どうします」

「綱吉様一人ではやはり」

 

周りの子たちもうんうんと頷いているが、こんなチャンスはめったにない。

 

「安心しろ。必ず帰ってくっからよ」

 

ツナはそういうと、両手の炎の推進力で一気に庭を飛び越えた。

 

「おじさん達ってもしかして僕らの平穏を壊しに来た人?」

「・・・・・・ガキ一人か」

「他にまだいるかも知れねぇ!」

「答えろよ。クソ野郎が!」

 

ツナは迷いなくリボルバーの引き金を、六回引いた。それも、高速で。だから銃声は一発だった。だけど撃たれた弾は六発だった。撃たれた場所も六か所だった。

死んではいないが行動不能になったのが一人、他のが銃を撃ってくるが、ツナはひょいひょいとかわす。

 

(なんか・・・・・・、良い技ないかな~)

 

その時、両手から出していた炎が一瞬にして、冷気に変わる。

 

「ん?」(冷気・・・・・・凍らせられる?)

 

何を思ったのか残りの三人の真ん中に立ってチカラを込めると、そこら中の空気と共に、男達が固まった。

 

文字通り氷付けになった男達を見下ろして、ツナは思う。

 

「この技、強い(確信)」

「マスター。素晴らしいです! まさか、炎だけでなくそのような技まで使えようとは」

「たった今使えるようになったんだけどね」

 

ツナは凍らせた男達の包む氷に触れてみる。それはもちろん冷たく、それ自身も冷気を放っているのだが、どうも溶けている様子がない。

 

「ちょっと砕いてみてくれる?」

「分かりました!」

 

影組のみんながそれぞれの技で壊そうとするが、どうも壊れる様子もない。

 

「・・・・・・これ、か?」

 

片手に灯した炎を近づけると、表面が溶けていく。

 

「おとと。この氷、この炎じゃないと溶けないのか」

「なるほど。封印などに役立ちますね!」

 

骸の素直な感想になるほど、と思いつつもツナはそろそろ帰らないとなーなんて考えていた。

 

 

数時間後、ツナは一通りのものを持ってみんなを集めていた。

 

「えーまあ騙してたわけじゃないんだけど。俺故郷が外国にあるんだよね」

「!?」

 

ガタッ。と大広間の床が変な音を立てる。なんか骸が影組のリーダーポジションに収まっているが、それでみんないいんだろうか、とか思ったりもする。

 

「俺さ、日本人なんだよ。今日はたまたま遊びに来てた所を連れ去られた感じかな」

「で、では綱吉様は帰ってしまうのですか?」

「どうだろうな。ここのところ週一でイタリアに来てるからな。また来た時によるかもしれねェな」

「マスター!?」

「お前らも、日本語勉強してみろよ。中学までに頑張ってみろ。また、連絡だけはしてやるよ」

 

ツナはそう言って、夜の炎のゲートを通って日本へと帰って行った。




影組爆誕!


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リボーン編
第七話 イタリアからやってきたアイツ


「リボーンか・・・、またオヤジに呼び出されたようだな」

「人気者はつれーなー。今度はローマか? ベネチアか?」

日本(ジャッポーネ)だ」

「!! なに!!」

「オヤジのヤツ。とうとうハラ決めやがったのか」

「長い旅になりそうだ」

 

 

―――日本・並盛

 

「ツナ、パスいったぞ」

「へぶっ」

 

バスケのパス、顔面キャッチをした少年。そう沢田綱吉である。

 

「あいたー」

「またかよー」

「たのむぜツナ!」

 

「お前のせいで負けたんだからなーっ」

「・・・ごっごめん」

「とゆーことでおそうじたのめる? オレ達貴重な放課後は遊びたいから」

「えっ」

「んじゃ頼んだぜーっ」

「ファイトだダメツナ!!」

「ちょっ待ってよっ」

「テストは?」

「入学以来全部赤点」

「スポーツは?」

「ダメツナのいるチームはいつも負け」

 

ギャハハハ、と笑いながら去っていくクラスメイト達にツナは。

 

「自分達もさして勉強できてないだろ・・・・・・。放課後に遊ぶって・・・勉強もしろよ・・・」

 

引き受けた仕事なのでキッチリやろうとするツナ。

 

「どーせオレは馬鹿で運動音痴ですよ。・・・・・・あーなんというダメツナライフ。サイコーじゃねーか。この地位を獲得するのにどれだけ努力したことか」

 

ある程度キッチリ掃除を済ませて、授業も何となく受けて家に帰るツナ。

 

「綱吉―――。あんた将来どうするつもり?」

「急に何だよ母さん」

「母さん別に、いい高校や大学に行けって言ってるんじゃないのよ?」

「知ってるよ」

「あんたみたいに退屈そーに暮らしても一生。楽しく暮らしても一生なのよ! ああ生きてるって素晴らしい! と感じながら生きてほしいのよ」

「大丈夫大丈夫。俺は今の生き方がちょー素晴らしいから。生きてるって実感してるから」

「ツーっ君。・・・・・・今日家庭教師の先生くるの」

「・・・・・・。・・・・・・家庭教師!?」

 

ツナはたっぷり考えてから叫んだ。

 

「ポストに面白いチラシが入っててね。お子様を次世代のニューリーダーに育てます。学年・教科は問わず。リボーン。ステキでしょ? こんなうたい文句見たことないわ」

「胡散臭いよ! なんだよそのあいまいな目標は!! 大体次世代のニューリーダーって何だよ! 社長か!? 会長か!? はたまたどっかの組の組長とかいうんじゃないだろうね!?」

「大丈夫よ。きっと凄腕の青年実業家庭教師よ! 母さんこういう先生に見てほしかったの」

「何を、俺の駄目っぷりをか? そうだろうな、並大抵の家庭教師や塾なら尻尾巻いて逃げ出すぜ? 何やっても赤点しかとらないんだからな! オレ家庭教師なんて絶対ヤだからな! どーせ何やったって無駄なんだって!」

「ちゃおっス」

「あ?」

 

声は足元から聞こえてきた。ツナが足元を見ると黒いスーツでビシッと決めた赤ん坊がそこにいた。

 

「三時間早くきちまったが特別にみてやるぞ」

「ボク・・・どこの子?」

「ん? 俺は家庭教師のリボーン」

「・・・はぁ?」

「まあ!」

「胡散臭い広告の主がどんな奴かと思ったら赤ん坊か!?」

「お前がツナか」

「だったら悪いか。お前に教わる事なんてねーよ」

 

ヒュオッ! と、リボーンの回し蹴りが空を切る。

 

「短足。届いてないぞ」

「・・・・・・まあいいか。この部屋だな、そんじゃー始めっか」

 

 

―――暫くして

 

「おい、いつまで居座る気だこの野郎」

「スピーッ」

「・・・・・・おい。起きろ! 赤ん坊だからって許さないぞ!」

 

リボーンと名乗った赤ん坊の襟を掴むツナだが、逆にネクタイを持って投げられてしまう。

 

「いってーっ! 何だこのガキー!!!」(スキがない。どっかのマフィアの手先か?)

「オレにスキはないぞ。本職は殺し屋だからな」

「は?」(やっぱり)

「オレの本当の仕事は、お前をマフィアのボスにする事だ」

「はあ!? マフィアだって?」(って事はボンゴレの手先か)

「オレはある男からお前を立派なマフィアのボスに教育するよう依頼されてんだ」

「・・・断われよ。ってか頭大丈夫か」

「やり方はオレに任されてる。一発撃っとくか?」

「いいぜ。俺も別に死ぬ事に未練ないし。来いよ」

「でも今じゃない」

 

そう言うとリボーンは腹の虫を鳴らしてどこかへ消えていった。

一安心したツナだったが、どうやら自分の成績が上がるまで住み込むらしい。

 

 

「それで、リボーンさん? お前はなんだってついてくるんだよ。家庭教師だろうが」

「殺し屋だからな」

「だから俺の命でも狙ってんの?」

 

と、ツナは何かに気付いたように身を隠す。前からやってきたのは学校のアイドル的存在、笹川京子だった。

京子はリボーンを見つけるとしゃがみこむ。

 

「きゃ―――っ、かわいい―――っ」

「ちゃおっス」

「ぼく、どーしてスーツきてるの?」

「マフィアだからな」

「わあ―――、かっこいい―――っ」

(スゲェな赤ん坊パワー。ガキは女子に好かれるとは聞いたがマジな話だったのか)

「がんばってねバイバーイ」

「ちゃおちゃお。・・・マフィアモテモテ」

「だから?」

「ツナ、あの女に惚れてんだろ」

「お前にカンケーないだろ?」

「オレは読心術を習得している」

「へぇ?」(マジでよめてるの!?)((殺し屋ってのはそこまでできんのか? コイツが特別?))

「ああ、マジで読めるぞ」

「読めてんだな」(だがどうやら深層心理俺の会議室だけは読めないみたいだな)

「告白したのか?」

「する訳ないだろ! 笹川京子はわが校のアイドルだよ? どーせ俺なんか眼中にないよ。告白するだけ無駄だって」

「すげーな、その負け犬体質」

「ほっとけ」

「やっと俺の出番だな」

 

リボーンはそういうと、一丁の大型拳銃を取り出した。

 

「死ね」

「は? オモチャだろ?」

「いっぺん死んでこい」

「おい・・・っ。いつまでも年上をからかうなよ? 大体殺される意味が分かんないぞ!」

「死ねば分かる」

 

ズガン! と、撃たれた銃弾がツナの額に直撃した。

死にながらツナは考えた。

 

(オレ・・・死ぬんだな・・・。これでこの世とお別れか・・・アディオス。アリーヴェデルチ! グッバイ現世)

 

気楽な事を考えていたら、そのまま倒れた。周りの人が騒ぐが、リボーンはすでに拳銃を隠していた。リボーンは暫く様子を見ていたが、いつまでたっても変化のないツナを見て、つまらなさそうな溜息をついた。

 

「まさか。死ぬ間際に後悔もしない奴だったとはな。すまねーな」

 

トコトコとその場を離れるリボーン。ツナの事はほったらかしで。

 

それから五分ほどして、ツナは体を起こした。

 

「・・・・・・勝手に殺すなっての。まあ、これで俺がマフィアになる事はないだろ」

 

ツナは額から銃弾を取り出すと、それをまじまじと眺める。

 

「死ぬ気弾・・・ボンゴレファミリーの特殊弾か・・・・・・。後悔した内容で生き返るっていう。まあ、アイツも想定外だろ。行くところまで行ったダメ野郎は何も後悔することなんてないんだぜ?」

 

ツナは暫く考えていたが、なんとなくで京子の後を追いかけていた。

 

「さ、笹川京子ちゃん!」

「・・・・・・? ツナ君?」

「俺と、つきあってください!」

「え?」

 

敢えて普通の告白だったのだが、後ろから猛スピードで近付いてきた剣道部主将、持田先輩に、思いっきり殴り飛ばされた。

 

「てんめぇ! 京子は俺のだ! テメェには渡さねェ!」

「グハッ!」(ってぇ~。な? 別に死ぬ気じゃなくても告白できる。でも成功する訳がないんだよ。だってオレ、ダメツナだもの・・・・・・。ダメツナじゃないな。だってオレ、死んだもんな)

 

ツナは頭部に大きな炎を灯すと、こう言った。

 

「ダメツナは一度死んでカミツナになった。ダメライフは終わりだ」

 

 

 

ツナはその日は外泊をした。そして、次の日。

 

「・・・さて、一体どんなウワサになっているのか」

「パンツ男のおでましだー!」

「ヘンターイ」

「電撃告白!」

「持田センパイに聞いたぞーっ」

「めいいっぱい拒絶されたんだってな―――」

(したのは持田先輩であって、京子ちゃんがどう思ったのか俺は知らないけど、あの野郎盛ったな? んだよパンツ男って)

 

呆れて一八〇度逆を向いたら、剣道の道着を着た人が数人いて、持田先輩が道場で待ってるとか言って、ツナを担いでいった。

周りのギャラリーもそれについて道場へと向かう。

 

「きやがったな変態ストーカーめ!! お前のようなこの世のクズは、神が見逃そうがこの持田が許さん!! 成敗してやる!!!」

「お前どんだけ偉いんだよ」

「心配するな。キサマのようなどアホでもわかる簡単な勝負だ。キサマは剣道初心者。そこで一〇分間一本でも俺から取れば貴様の勝ち! できなければ俺の勝ちとする! 賞品はもちろん、笹川京子だ!!!」

 

その言葉に京子がむっとするが、どうやら持田先輩は黒い男だったようだ。ツナは防具はいらないです。といって、重たい竹刀だけ受け取っていた。

 

「・・・・・・むっ。沢田、防具はいらんのか?」

「いらないでしょ。にしても竹刀って持った事ないですけど結構重いんですね」

 

クルクルと竹刀を回すツナに持田先輩は眉をひそめるが、試合開始の号礼の指令を出す。

 

「それでは、始め!」

「そんじゃま、やりますか」

 

ツナはそういうと、素早く一歩踏み込み真横に竹刀を振るう。それは持田先輩の胴の防具を砕く勢いだった。ドゴッ。という鈍い音と同時に持田先輩は丸まって動かなくなった。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・ねぇ、動かないんだけど。一本は入らない?」

「・・・・・・剣道の、る、ルールを知らないのか?」

「・・・えー。めんどくさいな。今の体勢じゃ面も打てないだろうし・・・」

 

そう言いながらツナは、持田先輩の髪を掴むと一気に引っこ抜いた。

 

「へ?」

「え?」

「・・・一〇〇本ぐらいはあるぞ? ダメ?」

「・・・・・・あ、赤!!」

「旗が・・・あがった・・・」

「スゲェ!! 勝ちやがった!」

「・・・・・・よっと」

 

動かない持田先輩の上にものすごく重たい竹刀を落すツナ。そして彼はそのまま特に何も言わないままみんなに囲まれた。

近づいてきた京子はツナを呼ぶと、

 

「ごめんね。返事は待ってもらえるかな。でもすごいねツナ君って、ただ者じゃないってかんじ!」

「あ、そう?」(あれ、このセリフ以前言われた希ガス・・・)

 

こうして、ツナのダメライフは幕を閉じた。

 

(今頃あいつどうしてんだろ。俺をマフィアにするのは諦めて、別の候補でも探してんのかな~)




神ツナなので。


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第八話 獄寺隼人

持田先輩を倒してから、ツナに対するみんなの態度は変わっていた。不気味がる奴もいるが、ダメツナと誰も呼ばなくなり、一目置かれるようになっていた。

 

(リボーンもいないし、いいねぇ)

「沢田~」

「お、おはよう」

「あのさっお前に頼みがあるんだ!」

「え? 俺に頼み?」

「実は今日の球技大会のバレ―なんだけどレギュラーが欠けちゃって、お前に出てほしいんだ!」

「俺が?」

「持田先輩を倒した時のおまえ、まじかっこよかったよ! その力を貸してくれ!」

「いやいや。オレ以外にも適応者はいるって」

「なあ頼むよ頼む! どーしても勝ちたいんだ」

「オレ球技苦手だから。あの時見たいにうまくはいかないからやめとく」

「頼むって」

「言っておくけど、球技は下手くそだからな!? それでいいならやってやるよ」

「マジ!? 先輩を倒したヒーローが加入してくれれば恐いものなしだぜ!」

「ヒーローねぇ」

 

 

 

「ツナ、始まるぞ」

「はいはい」

 

そして、結果的にツナのチームは勝った。ツナは確かに最初の二、三球はとれずに落としていたり、あらぬ方に飛ばしていた。

が。

 

「ツナ~大丈夫かよ」

「ああ。今のでコツは掴んだ」

 

そのセリフの後は、動きが決定的に違った。サーブ・レシーブ・スマッシュ。全てがプロ並みに上手くなっていたのだった。

そう、つまり結果的に勝ったのだった。

 

「ツナすげぇよ! 何で最初から本気出さなかったんだよ」

「出してたよ。相手の動きをみて、撃ち方とかルールとか考えてた。だから下手だった」

 

ツナはそう言うと、体育館を静かに去っていく。

 

 

次の日。ツナのクラスに転入生がやってきた。

 

「イタリアに留学していた、転入生の獄寺隼人君だ」

(イタリアっていうと、ボンゴレや骸達がいる所か)

「ちょ・・・かっこよくない~?」

「帰国子女よ」

(どう見ても不良ですけどね!)

 

その後、眼があったその少年は、ツナの席を蹴ってから自分の席に座った。

 

(あんだァ? コイツ・・・・・・。一番弱そうな奴からシメとこうって算段か。ああそうですか!)

 

 

休み時間。

 

「んだよあの転入生は」(こうなったら骸達もここに入れてやろうか。千種はともかく、犬と骸は飛んで喜びそうだよな。あ、でもヒバリさんがいるのかー)

 

考え事をしていたツナは、誰かにぶつかった。

 

「おー、いて。骨折しちまったかも」

(三年の不良か・・・)「骨弱いんだな。カルシウムとった方がいいんじゃねーの?」

「あ? 何だテメー。お前がぶつかったせいで骨が折れたんだよ! 治療代はらえ!」

「だから言ってんだよ。人とぶつかったぐらいで折れるような骨の持ち主なら病院での治療をお勧めするぜ? その前にホントに折ってやるよ」

 

ツナはそのまま相手の左腕と左肩を持つと、ゴキッ! とそのまま肩の骨を外す。

 

「ぎゃぁぁぁ! 本当に折りやがった!!」

(外しただけだっての。調子のった奴は適度に懲らしめないとな)

 

ツナはその場をそそくさと離れると、校舎裏に隠れる。

 

「あっはっは! 脱臼だっつうのに骨折とか! 保険の勉強やりなおせよwww」

「おい」

「あ、転入生」

「お前みたいなカスを一〇代目にしちまったらボンゴレファミリーも終わりだな」

「だよね~」

「俺はお前を認めねぇ。一〇代目にふさわしいのはこのオレだ!!」

「うんうん。君がどうしてボンゴレの事を知っているかなんて、この際どうでもいいから一つだけ訂正させて。俺、ボンゴレ継ぐつもりないからね!?」

「球技大会から観察していたが、貴様のような軟弱な奴をこれ以上見ていても時間の無駄だ」

「ん。だから?」

「目障りだ。ここで果てろ」

「わお。爆弾」

 

ツナに絡んできた少年(確か獄寺)は、ダイナマイトを二本取り出すと、咥えた煙草で導火線に火をつける。

 

「あばよ」

「よっと」

 

捨てるように投げられたそれを、ツナは両手で受け止め凍らせた。

 

「危ないなぁ」

「!」

 

ツナは夜の炎を使って、凍らせたダイナマイトをどこかへワープさせると立ち上がる。

 

「くっ。果てろ!」

 

さらに二本放られたそれは、導火線が銃弾によって切られた事で事なきを得る。

 

「・・・・・・」

「ち」

「ちゃおっス」

「! リボーン。オマエ、帰って来たのか」

「ツナ、どうやったかしらねーが。オマエが生きてるんでな。再教育しに来てやったぞ」

「いらないよ! ってかコイツ誰。なんでマフィアの事知ってんの」

「ああ。俺が連れてきたファミリーの一員だ」

「は? 誰の?」

「お前のだぞ、ツナ」

「・・・・・・ならないっつてんだろ。リボーンそれに家庭教師はもういらない。俺はダメツナじゃないからな」

「何を言ってんだダメツナ」

「ダメツナは一度死んで生き返った。神になったのさ」

「ふざけた事言ってねーで戦え」

「・・・・・・アイツ後でシメよう・・・・・・」

「沢田を殺れば俺が一〇代目内定だというのは本当だろうな」

「ああ、本当だぞ。んじゃ、殺し再開な」

「・・・よし殺そう・・・」

 

ツナは仕方ないと言った具合でゆるく構える。

 

「果てろ」

 

獄寺はそう言うと、大量に煙草を咥えてさらに大量のダイナマイトに火をつける。ツナは不思議そうに呆れたように。

 

「どこから出したんだよ」

「獄寺隼人は体のいたる所にダイナマイトを隠し持った人間爆撃機だって話だぞ。またの名をスモーキン・ボム隼人」

「へぇ、体に火を着けたら面白くなりそうじゃん」

 

ツナはそう言うと、右手に大きな炎を灯して、それを振りまいた。

 

「なっ。果てろ!!」

「果ててたまるか。よっと」

 

ツナの炎をかわした獄寺は、手に持ったダイナマイトを投げてきた。それをツナは左手の冷気で全てこおらせる。

 

「無駄だ」

「なっ! 2倍ボム!」

「無駄だだと言ってるだろ?」

「3倍ボム」

 

そう言って取り出されたのは両手いっぱいのダイナマイト。やはり量が多かったのか、ポロポロと落ちていった。

 

(ジ・エンド・オブ・俺・・・)

「よっと」

 

地面が一瞬でこおり、そして溶けた。その氷は全てのダイナマイトの火を消していた。

 

「なぁ、リボーン。もう終わりで良い?」

(今のは死ぬ気の炎・・・。無意識のうちに使えているのか?)

「リボーンっ!!」

「!? つ、ツナ。悪い。なんだ?」

「もう終わって良い? アイツももう戦意喪失してるみたいだし」

「・・・・・・ああ。良いんじゃねーか?」(コイツ・・・初めて会ったときとはまるで違うな・・・まさか、本当に一度死んで生き返ったのか?)

「・・・一〇代目!! あなたについていきます!! なんなりと申しつけてください!!」

「はあ!?」

「・・・負けた奴が勝った奴の下につくのがファミリーの掟だ」

「ええ?」

「オレは最初から一〇代目ボスになろうなんて大それた事考えていません。ただ一〇代目が俺と同い年の日本人としって、どーしても実力を試してみたかったんです・・・・・・」

「はぁ」

「でもあなたは俺の想像を超えていた! 敵である俺も助けてくれたあなたに、オレの命預けます!」

「い、いや、そう言うのはできればやめてほしいな~なんて」

「そーはいきません!」

「死ぬよ? 確実に死ぬよ? 地獄道からの修羅道で殺されるよ?」

「何言ってんですか? オレは大丈夫ですよ」

「・・・・・・じゃあ俺は、知らないからね」

 

ツナ、初めて? のファミリーゲット。




骸達はファミリーに入るのでしょうか・・・?


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第九話 退学クライシス

ツナの授業で今日は理科のテストが帰って来ていた。

 

「川田」

「はい」

「栗原」

「はい」

「近藤」

「はい」

「沢田」

「はい?」

「ち」

 

ツナがテストを受け取ろうとしたとき、そのテストは取れなかった。

 

「? あの?」

「あくまで仮定の話だが・・・・・・、クラスで唯一、二十点台をとっていた生徒がいたとしよう」

「はぁ」

「その生徒が突然点を上げてきた。これはカンニングの線も疑われる」

(・・・実力ですけど?)

「エリートコースを歩んできた私が推測するに、そういう奴は学歴社会において足を引っ張るお荷物にしかならない」

(・・・いや、してないし)

「次からするなよ」

 

ペラリ、とクラスのみんなに見えるように見せられた点数結果は案の定、百点。

 

「見えた!」

「わ。百点!?」

「ダメツナお前何した!?」

「次、鈴木―っ」

 

席に戻ったツナはそのままテストをカバンにしまうと、そのまま窓の外を眺めていた。

 

(っていうか根津の野郎・・・。あくまで仮定、仮定と念を押すのはそいつのことは言っていないと言い訳するためだろ・・・腹立つなぁ・・・・・・。何か締め上げる方法はないかしらん?)

 

そんな事をツナが考えていると、教室のドアが開き獄寺隼人が入ってくる。

 

「コラ! 遅刻だぞ!! 今ごろ登校してくるとはどういうつもりだ!!」

「ああ!?」

「う・・・っ」

「やっぱこえーよ。あいつ・・・」

「先輩達をしめ返したって話だぜ」

(ビビってるけど、あれじゃ足りないんだよなー)

 

ツナはそのまま窓の外を眺めるつもりだったが、獄寺はズイズイツナのほうに近づいてきて、

 

「おはよーございます十代目!!」

 

と、お辞儀をした。

 

「なっ」

「どーなってんだ!?」

「いつの間に友達に?」

「いや・・・きっとツナが獄寺の舎弟になったんだよ」

「・・・・・・」

 

来るところまで来たなーと思ったツナはとりあえず思った事を言うことにする。

 

「・・・おはようございます? この時間に登校してか?」

「じ、十代目?」

「せめて時間通り登校しろよ。会議などに遅刻するようなファミリーはいらねーぞ」

「・・・っ!」

 

獄寺はツナのその雰囲気に何か感じたのか、少し黙る。

 

「あくまで仮定の話だが、平気で遅刻してくる生徒がいるとしよう。そいつは間違いなく落ちこぼれのクズとつるんでいる。なぜなら類は友を呼ぶからな」

「おっさん。よく覚えとけ」

 

根津のその言葉に獄寺はズイズイと教卓に近づいて、根津の襟をつかみ上げた。

 

「十代目沢田さんへの侮辱は許さねぇ!!!」

「!」

「!」

「・・・・・・」

「あくまで、仮定の話だと言ったはず・・・だ・・・・・・・・・っ。ガハァ」

「仮定。です・・・か」

 

ツナはそう言った。その言葉にクラスの視線が全部ツナに向く。

 

「目の前にその仮定を体現する人物がいる場合、それは仮定ではないと思いますが? 根津先生。あなたは“仮定の話”という事によって、言い逃れの、言い訳の口実を作っているだけです。それがあなたが“エリートコース”で学んだことですか? だったら俺は平凡でいい何だったら底辺でもいいですよ。目の前のことから逃げながら生きることを教える道より、壁に当たったら乗り越える方法を教えてくれる平凡な道がいい」

 

 

 

 

 

 

「貴様等退学だ―――っ」

「落ち着きたまえ。根津君」

「これが落ち着いていられるか! 私に暴力をふるったのですぞ!!」

 

ツナ達は先ほどのことで校長室にいた。

 

「連帯責任で沢田ともども即刻退学にすべきだ!!」

(・・・なんで俺まで・・・)

「しかしですな。いきなり退学に決定するのは早計すぎるかと・・・」

「!! では猶予をあたえればいいのですな」

「は?」

「たしか校長。十五年前グラウンドに埋めたまま見つからないタイムカプセルの発掘を業者に委託する予定だとか」

「あ・・・ああ。それが何かね・・・?」

「それをこいつらにやらせましょう。今日中に十五年前のタイムカプセルを掘り出せば今回の件は水に流してやる・・・。だができなければ、即 退学だ!!!」

「そんな無茶苦茶な・・・」

 

ツナは廊下を歩きながら考えていた。

 

(まぁ別に退学でも構わないけどさ。あ、でも京子ちゃんに会えなくなるのか・・・。そもそもリボーンが許すはずないしなー)

 

「······探すか」

 

ツナはため息をつくと、神々の義眼を開き辺りを見回す。

 

(あれは···違う。あれも···違う。······あ、れは。あれなら、あいつを追い詰められる!)

 

何かを発見したツナは、廊下を全速力で走り出した。

グランドまで飛びだしたツナは()()を掘り返す。

 

「・・・・・・よしっ。これなら・・・。あとは騒ぎを起こして・・・」

 

ツナはそう言うと、地脈に死ぬ気の炎を撃ち込んだ。

 

「・・・ん? これでいけるよな?」

 

ツナはそう疑問に思ったが、何の問題もなかった。

その後すぐに、地脈によってグラウンドが割れ、地下を流れていた地下水が噴き出した。

 

「うひゃ~。・・・・・・そういえば。これは十五年前のなのかな?」

 

地下水の雨が降るグラウンドで、ツナはタイムカプセルと思われる入れ物を開ける。

 

「・・・・・・んん? 根津銅八郎? 四十年前のだな・・・・・・」

 

ツナはニヤリと笑う。

 

「良いね」

 

その時丁度、先生達が駆けつけてくる。

 

「グラウンドで何をしてるかーっ。即刻退学決定・・・」

「数学二点。国語零点。英語六点。十五年前のカプセルは出てこなかったが、かわりに四十年前のカプセルが出てきたぜ。なーんでエリートコース(笑)のお前のテストが平凡なうちの中学のタイムカプセルに入ってるんだ? なぁ。根津銅八郎」

「そ、それは・・・・・・!」

 

この後、根津は学歴詐称によって解任となった。

 

「一件落着だな」

「流石っす十代目!」

「ダメツナはわざとか?」

「ああ。そっちの方が過ごしやすいんだよ? 絡んできた不良から逆カツアゲとかできるし」

「・・・・・・そうか」




ツナは元からこういう性格で、プリーモ達の予想を裏切ってるんじゃないかと思います。


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第十話 山本 武

「チーム分けは終わったか?」

「あと一人です」

「だから、ダメツナはお前達のチームにくれてやるって」

「やだね! 負けたくねーもん」

「バレーは凄かったけど野球が超下手なのは分かってるからな」

(はっはー! ならその幻想をぶち殺してやろうじゃないか。さあ、どちらかのチームに入れてくんろ)

「いーんじゃねーの? こっち入れば」

「!」

「?」

「マジで言ってんの山本~っ。何もわざわざあんな負け男」

「ケチケチすんなよ。俺が打たせなきゃいーんだろ?」

「山本がそう言うんなら、まいっか」

(山本・・・一年なのに野球部レギュラー。クラス全員から信頼も厚い・・・。リボーンが目をつけそーだなぁ)

 

ツナは華麗に現実逃避していた。

その後。

 

(見よ! 俺もバカスカ打ってバシバシ守って。だがトンボ掛けを買って出る! このパシリ精神!! あれ? ダメツナってこんなんだっけ?)

 

ツナが自分の存在意義について頭をひねっていると。後ろに人の気配がした。

 

「助っ人とーじょーっ」

「山本・・・。野球部期待の星が何の用だい? こんな負け体質の俺によ」

「気にすんなって。頼むぜ俺の注目株!」

「?」

「最近お前スゲーだろ? 剣道の試合でも球技大会でも、今回の野球でもさ。俺、お前に赤丸チェックしてっから」

「え? いやいや・・・そんな」

「それに引き換え俺なんて、馬鹿の一つ覚えみたいに野球しかやってねーや」

「何言ってんだ。お前はその野球がすごいんだろ?」

「それがどうもうまくなくってさ」

「?」

「ここんとこいくら練習しても打率落ちっぱなしの守備乱れっぱなし。このままじゃ野球始めて以来、初のスタメン落ちだ」

(スランプ?)

「ツナ・・・。俺どうすりゃいい?」

「おおう?」(俺に聞くの?)

「なんつってな。最近のツナ、頼もしーからついな・・・・・・」

「そうだな。山本。まずはしっかり休んでみたらどう?」

「なっ! そんな事言うのか?」

「野球の選手。イチローが言ってたことだよ。『まず、身体をゆっくり休めて、野球がやりたくなるまで待ちます』ってね。ひとまず自分の気持ちを整理するために、積極的休息は大切なことなんだと心に決めて、休息をとってみたらどう? そして野球がやりたくなるまで待つ。「野球が好き」「野球がしたい」「こういうプレーができる野球選手になりたい」という気持ちが湧いてきたら、自分は何がしたいのか言葉にしてみるのさ。で、その言葉を書き出して見えるところに貼りだしたりする。よく目にする日誌の表紙の裏などに記してもいいと思うけどね。気持ちの切り替えができたら、新たな気持ちで練習に復帰する。スランプってのは悪い状態のスクリュー状態だからね。一度別の練習メニューを試してみるのも吉だけど、でもやっぱり休息は悪い事じゃないんだから。誰だって疲れたら休まないと体が壊れちゃうんだから」

「・・・・・・なるほどな! しっかり休んで気持ち新たに、か! よし。でも今日は練習していいか?」

「俺に聞くなよ。やりたいならやればいい。俺がしたのはあくまでアドバイスだからね」

「おう、ありがとな!」

 

 

 

―――その夜

 

「お前、本当にダメツナか?」

「言っただろリボーン。俺はお前に殺されて生まれ変わった。神ツナだって」

厨二病(そっち系)でも止めはしねーが、聞いていた情報と全く違うからな。それと、お前のクラスの山本だがな」

「何? 部下にしろとかいうつもり?」

「・・・・・・俺のセリフをとんじゃねぇ」

「知るか!! で? お前は俺のクラスメイトまでマフィアにする気か? 山本は野球をやってるんだ。邪魔するのも悪いだろ」

「そんなの俺には関係ない」

「相手の都合を考えろド阿保!!」

 

 

―――次の日。

 

「大変だー!! 山本が屋上から飛び降りようとしてる!!」

「「「エェッ?!」」」

「山本ってうちのクラスの?」

「あいつに限ってありえねーだろ!」

「言っていい冗談と悪い冗談があるわ」

「あいつ昨日一人で残って野球の練習してて、無茶して腕を骨折しちまったらしいんだ」

(・・・阿呆かアイツは・・・)

「とにかく屋上に行こうぜ」

「おう!」

(えー。元気だなぁ中学生)

「ツナ君いこっ!」

「おーう・・・」

 

やる気のない声で返答し、ツナも現場に向かう。

 

「オイオイ。冗談きついぜ山本ー!」

「そりゃやりすぎだって」

「へへっ。わりーけどそーでもねーんだ。野球の神さんに見捨てられたら俺にはなーんにも残ってないんでね」

「まさか・・・」

「本気!!?」

「ったく。休まないと体壊すって言ったろ。山本、オマエ人に助言頼んどいて全部無視したね?」

 

人の波をかき分け、ツナがため息をつきながら登場する。

 

「ツナ・・・。止めに来たなら無駄だぜ。お前なら俺の気持ちがわかるはずだ」

「お?」

「ダメツナって呼ばれてるお前なら。何やってもうまくいかなくて死んじまったほーがマシだって気持ちわかるだろ?」

「・・・例え分かっても、分かりたくない気持ちだな。それは」

 

ツナのその言葉に山本はムッとしたようで。

 

「さすが最近活躍目覚ましいツナ様だぜ。俺とは違って優等生ってわけだ」

「否定はしないけどさ。治ったらまた野球ができるって言うのに。この場で死んじまって未来を無にするっていうその気持ちは俺には理解できないな」

「!?」

「昨日言ったろ? 休息が大切だって。その骨折、こうは捉えられないか? 野球の神様が頑張り過ぎのお前に、少し休めって言ってるってよ」

「・・・!」

「どうしても死ぬって言うなら俺は止めないさ。山本武っていう一人の人間の一生。どう生きようが君の勝手だからね、山本。んじゃ、やめるならフェンスを乗り越えてからみんなに謝るんだよ」

「待てよツナ」

 

背を向けて立ち去ろうとしたツナを山本が袖を掴んで引き止める。そこで運悪くツナの足が滑った。

勢いよくフェンスにぶつかった彼の体は、もろくなったフェンスを突き破り、山本と一緒に空中に投げ出された。

 

「おっっと!!」

 

空中での高速機動“雷迅”。一瞬の発動しかできない技だが、山本を掴んで屋上の床を掴むのには十分だった。

 

「ちょっ! 誰か・・・引き上げて・・・・・・ッ!!」

「おわっ!? つ、ツナ大丈夫か!!」

「大丈夫じゃないから! は や く助けて!!」

「お、おう!!」

 

こうしてツナと山本は屋上へ引き上げられた。

 

「はぁ~。死ぬかと思った」

「ツナ! お前すげーな」

「そう?」

「お前の言う通りだ。少しは休まなくちゃな。オレ、どーかしちまってたな。せっかくアドバイスもらったのに。馬鹿が塞ぎ込むとロクな事にならねーってな」

「ま、思い直してくれて良かったよ」

 

こうしてツナに親友が出来た。

だがもちろんリボーンはそうは思ってなかった。

 

(ファミリーゲット)

 

ちなみにその後。

一瞬の雷迅でほぼ外れた全身の骨をはめ直す作業をツナは細々とやっていた。

 

「いってー」




貴音が再度かけ直したので骨は外れます。


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第十一話 泣き虫ランボ

お気に入りとUAが増えていく・・・。何か嬉しい。気付いてたら増えていたとあるの頃とは全然違う・・・。
けど、

いい!

これからもよろしくお願いします。m(__)m


「答えは・・・、さ・・・三?」

「はずれ」

「んぎゃあぁあ」

 

ツナの部屋で爆発が起こる。煙の中で起き上がったツナはリボーンを睨みつける。

 

「おいリボーン。そもそもこれマフィアの勉強だろ! 何で俺がこんな事学ばなくちゃいけないんだよ!!」

「お前がマフィアの十代目になるからだぞ」

「なるかぁあぁああああ!!!」

 

ヒステリックに叫ぶツナだったがリボーンは聞き流す。

 

「もう良いよ。どうせリボーンには何言っても無駄なんだ」

「死ね、リボーン!」

「は?」

 

ツナは窓の外を見て、すぐさま意識の外に追いやった。

 

 

 

 

「久しぶりだなリボーン! おれっちだよ! ランボだよ!!」

 

ランボと名乗ったのは、先刻木の枝の上で拳銃を放とうとしていた子供だった。真っ黒な髪がもじゃもじゃと固まり、アフロの形となっている。ちなみに一度その木の枝が折れ地面に激突している。

 

「これは覚えておけよ」

 

しかし名指しされているリボーンは、その子供に見向きもしない。ツナもそれに習う。

 

「こらー! 無視すんじゃねー!!」

 

子供・・・ランボからしてみれば、ショックだったのだろう。叫び声と、共に取り出した何かを手に、ツナ達に向かっていく。キラリと光が当たったことで、辛うじて刃物だということをツナは知った。

だが、

リボーンは無造作に手を振り上げランボを壁に叩きつけた。

 

「おーいて・・・ 何かに躓いちまったみたいだ」

(無事なのか)

「イタリアから来たボヴィーノファミリーのヒットマン。ランボさん五歳は躓いちまった!!  大好物は葡萄と飴玉で、リボーンとバーで出会ったランボさんは躓いちまった!!!」

 

一生懸命自己紹介し始めたランボはガハハと笑う。悪い奴ではなさそうだが、いかんせん性格が悪い。

 

「・・・・・・ってことで、あらためて。いよぉ! リボーン!! おれっちだよ! ランボだよ!!」

「ちゃんと覚えとけよ」

「あ、んん」

 

改めて自己紹介をし出すランボ。ウザいが基本的に良い奴なので、鍛えればそれなりに強くなる。そんな人材なので、なるべくいや、勝手に引き込まれるだろう。と、折り合いをつけてツナはしたくもないマフィアの勉強を教えられるのだった。

と、

 

「あららのら。これ何かしら?」

 

そう言ってランボが取り出したのは手榴弾だった。

 

(家の中で出すなよ・・・。反応しといてやるか・・・)「げ!! 手榴弾!!?」

「大当たり!! 死にさらせっリボーン!!」

 

手榴弾は窓の外で爆発した。

リボーンに投げる。リボーン弾く。ランボに当たる。ランボそのまま窓の外へ。空中で爆発。

が一連の流れである。

 

「死んだんじゃねーの?」

「良いんだよ。どっちみちボヴィーノファミリーって言ったら中小マフィアだ。俺は格下は相手にしねーんだ」

(かっちょええ!!)

「ツナー」

 

奈々に呼ばれ、一階に降りるツナ。

 

「ん? 何?」

「ちょっとちょっと。リボーン君のお友達でしょ?」

「・・・・・・」

「ケンカしちゃった?」

(そんなレベルじゃねーよ)

「ツナは二人よりお兄ちゃんなんだから。ちゃんと仲裁に入ってあげて。母さんご飯作るからお願いね」

「あー。はいはい。で? リボーン呼んでこようか?」

「あぁあぁあぁああああ!!」

(恐怖刻まれてんなー)

 

現実逃避を少しするツナ。場所を変え、家からちょっと離れた土手に二人で座る。

 

「ほら。飴玉好物なんだろ?」

「・・・・・・ラ・・・ランボの夢はボヴィーノファミリーのボスになって・・・、グス。全人類を跪かせること・・・」

 

しゃくり上げながら、物騒なことを宣言するランボに、ツナは言葉に詰まる。

 

(この夢は・・・本気なんだろうか?)

 

バカにするつもりはないが、あまりにも現実味がなさ過ぎる。

ボヴィーノファミリーのボスになること、迄ならばまだ分かる。そのファミリーの一員ならば、ボスに後継者に指名されるということも、ないわけではないだろう。

 

(だが、それで全人類が跪くって、どんな状況だ?)「・・・・・・まぁ、頑張れ」

 

迷った挙げ句に、かなりありふれた言葉をこぼしたツナを気にすることなく、ランボは続けた。

 

「だけどそのためには、超一流のヒットマン、リボーンを倒せって、ボスに言われた」

「一流? あいつが?」

 

思い浮かべたのは、これまでのリボーンの奇行の数々。確かに奇行ではあるが、どれも利に適っていた。そういう意味では確かに一流ではある。性格が決して良くはない事は置いておいてだ。

 

「・・・強くなりたいのか?」

「・・・! ランボは強くなりたい!」

「んじゃ、気が向いて暇だったら鍛えてやるよ」

「本当か!?」

「ああ。気が向いたらな」

 

この約束が後々大変な事になるとは、この時のツナは知るよしもなかった。

 

 

「いいじゃない。大勢の方が賑やかで」

(良くねーよ! 何が嬉しくてガキに囲まれて飯を食わなきゃならないんだ)

 

暫くして、ランボが自分の顔にバズーカを向け始めた。

 

「え? 自殺!?」

 

爆発と同時、煙の向こうには青年が立っていた。

 

「ふ~、やれやれ。どうやら十年バズーカで十年前に呼び出されちまったみてーだな」

 

煙から出てきたのは、長身の伊達男。カールした黒髪に、垂れ目の瞳には、確かにあの幼いランボの面影はあるが。

 

「え?」

「お久しぶり。若きボンゴレ十代目。十年前の自分が世話になってます。泣き虫だったランボです」

「ら、ランボ!?」

「十年バズーカで撃たれた者は十年後の自分と五分間入れ替わる事が出来るんです」

(マジかー。これがあのランボかー)

「よぉ、リボーン。見違えちゃっただろ? 俺がお前にシカトされ続けたランボだよ」

「モグモグモグモグ」

(あ、シカトしてる)

「・・・やれやれ。こうなりゃ実力行使しかねーな。十年間で俺がどれだけ変わったか見せてやる」

 

そう言うと大人ランボは二本の角を着ける。

 

「サンダー、セット。俺のツノは百万ボルトだ」

「おぉ!?」

「死ねリボーン!! 電撃角(エレットゥリコ・コルナータ)!!」

 

リボーンに向かって突進するランボ。だが、リボーンがフォークをランボの進行方向に突き出す。

 

(あ、これ刺さる奴だわ)

 

と、ツナでさえ思ったのだが、その手前。ランボの姿が消え、逆方向からリボーンに攻撃が加えられた。

 

「!? 何しやがんだっっ!!」

「当たったな」

「・・・マジかよ」(・・・ていうか、今の愛気? ランボが使えるようになってるの?)

 

ボン。という音と共にランボの姿が元に戻る。

 

「・・・チッ」

 

リボーンは舌打ちするとどこかへ行った。

 

(愛気だな。ランボ・・・そうか。強くしたのか・・・。ヘェ・・・)

 

ツナはツナで愉しそうに笑っていた。




後継者がいたことにツナはテンションが上がっています。


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第十二話 入ファミリー試験

「・・・ふぁ~。眠い」

「よぉツナ」

「山本。おはよ」

「なんだ、寝不足か? クマできてんぞ」

「ちょっと勉強をね・・・」

 

中学生らしい言い訳をしたつもりでいたツナだったが、山本は何故かとても驚いていた。

 

「ツナが・・・勉強!? そ、そう言えばこの前テストで百点取ってたよな!」

「あ、うん。そうだけど」

「俺にも教えてくんね?」

「あはは。山本は本当に野球()()なんだなぁ」

「おまえ~」

「「あははははは」」

 

二人で笑い合っていたツナと山本だったが、それを遠くから見ていた人物がいたらしく。

 

「っつーわけで、獄寺を納得させる為にも、山本の『入ファミリー試験』をすることにしたんだ」

「俺が納得出来ーん!! そもそも俺マフィアになる気なんてないし! 勝手に決めんなし!!」

「もう獄寺に山本を呼びに行かせたぞ」

「はい?」

 

(・・・回れー右。位置について・・・。行く先に八九寺がいると考えろ・・・。よーい。ドンッ!!)

 

ツナは地面を蹴って高速で走り出した。

 

(はぁあぁあちくじぃいぃいぃいぃいぃいぃいいい!!!!!!)

 

心の中で愛しの少女を呼びながら。

 

 

ちなみに、そんな速度で走って、急ブレーキをかけた物だから原作通りスケボーで付いてきていたリボーンが吹っ飛ばされたのはまた別のお話。

 

「はいはい二人とも何も起きてないね!?」

「十代目!」

「よぉ」

「何そいつ。ツナの弟?」

「は?」

「ちゃおっス」

「あ、リボーン」

 

トコトコと戻ってきたリボーンを指して山本が問う。ツナがどう答えるかと悩んでいたら。

 

「弟じゃねーぞ。俺はマフィアボンゴレファミリーの殺し屋リボーンだ」

「・・・それで、俺の家庭教師で腕利きの殺し屋(ヒットマン)。俺をそのボンゴレファミリーの十代目にする為にわざわざイタリアから来たんだって・・・。俺なる気ないのに・・・・・・」

「ハハハ。そっか。そりゃ失礼した。こんなちっせーうちから殺し屋たぁ大変だな」

「そーでもねーぞ」

「よーしわかった。んじゃ俺も入れてくれよ。そのボンゴレファミリーってのに」

「あ、え? 入るの? 止めようよ。まだ中学生じゃん。バイト禁止だよ?」

「で、なにすりゃいいんだ?」

「まず入ファミリー試験だぞ」

「俺の言葉はガン無視ですかそうですか・・・」

「っへー。試験があんのか。本格的じゃねーか」

「試験に合格しなくちゃファミリーには入れないからな」

(あ、これ多分。ボスと威厳を見せろとかなんとか理由をつけて俺も参加させられる奴だ。今の内に小手着けとこう)

 

ツナは隠れてコソコソと金属製の小手を着ける。

 

「ちなみに不合格は死を意味するからな」

「ハハハ。マジでお前面白いな。気に入ったぜ」

「試験は簡単だ。とにかく攻撃をかわせ」

 

言いつつリボーンは二丁のサブマシンガンを取り出した。

 

(おいおい。いきなりハードル高いな)

「んじゃはじめっぞ。まずはナイフ」

「うおっ」

(投げナイフも可能・・・マジでリボーンすげーな)

「ボスとしてツナも見本を見せてやれ」

「んん?」

「そいつぁーいい。どっちが試験に受かるか競争だな」

「んんん?」

 

ツナはため息をつくと、投げられたナイフを地面にははたき落とす。

 

「・・・別に、避けなくても良いだろ?」

「ま、そうやり続ける事が出来たらな」

(簡単だっつの)

「おっと。いい肩してらー」

「流石野球で鍛えてるだけあるな。反射神経バツグンだ」

「そーっすかね~」

「しかし最近のオモチャってリアルだな―――。本物のナイフにしか見えなかったぜ」

「本物なんだよ! アイツはマジで殺す気で投げて来てんの! アイツ絶対赤ん坊じゃない!!」

「次の武器はボウガンだ」

「ゲッ。先回り」

「やるね-」

「ガハハハハ、リボーンみーっけ!!」

「今度は何だ?」

「ランボか」

「おれっちはボヴィーノファミリーのランボだよ!! 五歳なのに中学校に来ちゃったランボだよ!!」

「ボヴィーノ? 聞かねー名だな。リボーンさんどうします?」

「続行」

「はぁ」

 

リボーンが撃ってきたボウガンの矢の軌道を、ため息交じりに小手を使ってさばいていくツナ。

だんだんとリボーンが腹を立てているのが分かる。

 

(あー。大人しく逃げ回っとけ。って感じなんだろうな)

 

ランボのミサイルも、リボーンのサブマシンガンも全てさばききるツナ。

 

締めと称し、リボーンはロケット弾を持ち出してきた。

獄寺のダイナマイト。リボーンのロケット弾。ランボのミサイルがツナに襲いかかる。

が、

 

「あーあー。爆発するぞ? これ」

 

ツナはそう言うと、全部リボーンに向かって弾いた。

 

(あ、やべ。肩外れかけてやがる)

 

そう思って止めた瞬間。弾き零れがあったらしく、ツナの方に数発向かってきていた。

 

(あーやべ)

「あぶねっ!」

「わっ?!」

 

 

「・・・すげーのな! ツナって」

「あ、まーね」

「馬鹿ツナが!」

 

何とかかわしたのだろう。勢い良くツナに跳び蹴りをしてきたリボーンだったが、直前で勢いをゼロに殺された。

 

「そう、何度も蹴られるかってんだ」

「・・・まあいい。試験合格だ。お前も正式にファミリーだぞ」

「サンキュー」

 

何とか獄寺も山本の事を認め、一件落着といった所だろう。




ツナ「認めないって言ってるだろ!?」
リボーン「山本自身がやりてぇって言ったんだぞ?」
ツナ「・・・・・・」


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第十三話 ビアンキ

「・・・」(暑いな)

 

とある夏の日。降り注ぐ陽射しを色んな意味で恨めしく見つめながらツナは歩いていた。

と、そんなツナの後ろから自転車がやってきた。

 

(ママチャリ? メット? ゴーグル? ハイヒール? いや、何もかもがおかしい!)

 

自転車に乗っていた女性はメットとゴーグルを外すとツナにジュースを投げてきた。

 

「よかったらどーぞ」

「あ、ども」

 

受け取ったツナはそれを飲みながら家に帰る事にした。

 

「ういっすリボーン。ただいま」

「んっ?」

「お前・・・カブトムシついてんぞ」

「これは俺の夏の子分達だぞ。情報を収集してくるんだ」

「便利だな」

「おかげで情報が掴めたぞ。ビアンキがこの街に来てる」

「ビアンキ・・・? 誰だよそれ」

「昔の殺し屋仲間だ」

「へー」

 

ツナは飲み終わった缶を捨てに行くついでにピザの受け取りに赴く。

 

「あれ? 貴女はさっきの?」

「お待たせしました。アサリピザのお届けでーす」

 

彼女はガスマスクを着けるとピザの蓋を開ける。

 

「召し上がれ」

「・・・いや、召し上がれって言われても・・・。代金も払ってないし・・・食べて良いの? ・・・でも特徴的な匂いだなぁ?」

 

全く苦しむ事なくピザに手を伸ばすツナだったが、銃声によってピザの箱は吹き飛んでいった。

 

「リボーン?」

「ちゃおっスビアンキ」

「リボーン」

(あー。この人がビアンキなのかー)

 

ツナは遠くを見ながら現実逃避を実行していた。

 

「迎えに来たんだよ。また一緒に大きい仕事しよ。リボーン。やっぱりあなたに平和な場所は似合わない。貴方のいるべきはもっと危険でスリリングな世界なのよ」

「言ったはずだぞビアンキ。俺にはツナを育てる仕事があるからムリだ」

「・・・・・・。・・・・・・かわいそーなリボーン。この十代目が不慮の事故か何かで死なない限り。リボーンは自由の身になれないって事だよね」

(あー。そう取っちゃいますかー。いやはや面倒だな)

「とりあえず帰るね。十代目を殺・・・十代目が死んじゃったらまた迎えに来る・・・」

「リボーン。俺、十代目になりたくないんだ。だから、ビアンキの所に行ってあげなよ」

「嫌だぞ」

 

 

 

「・・・・・・・・・で? 何なんだよ。あの女は」

「アイツは毒サソリ・ビアンキっていうフリーの殺し屋だ。アイツの得意技は毒入りの食い物を食わすポイズンクッキングだ」

「へぇー。あ、じゃああの缶ジュースもピザも総じてポイズンクッキングだったって事?」

「缶ジュースってお前が飲んでた奴か?」

「うん。既製品のはずなのに変な味がして結構首を傾げてたんだよね」

「そうか」

 

 

次の日。ツナは朝から京子ちゃんに会っていた。

 

「おはよツナ君」

「おはよー。京子ちゃん」

「今日家庭科おにぎり実習なんだー。楽しみー」

「へー」(おにぎりってただ握るだけだよな?)

 

 

 

 

―――――――――

――――――

 

「今日は家庭科実習でつくったおにぎりを、男子にくれてやるーっ」

「「「「「「オ―――!!!」」」」」」

「変な行事っすね」

(ってか要らねー!)

「ツナ。誰にもらうか決めたか」

(いや、だから要らねーって)

 

と、その時ツナは京子の影に隠れるビアンキを見つける。

ビアンキはそのまま京子のおにぎりとポイズンクッキングを入れ替える。

 

(あ、これ喰ったら死ぬ奴だ。誰が喰うんだろ)

 

なんて思っていたツナはいつの間にか数歩前に出ていた。

 

「ツナ君。食べる?」

「へ? 俺?」(まぁー俺は死なないと思うけど・・・)

「積極的だな。おい!」

「いやさー」

「あ。シャケ嫌いだった?」

「そんな事もないんだけど・・・」(まず見た目がなー。毒にするにしてももっと見た目を何とかして欲しいよ。全く・・・・・・)

 

文句を言いつつもおにぎりを食べるツナ。

 

(うーん。これでオイシイって言っても別に京子ちゃんを褒める訳じゃないしな・・・。かといって味が悪い事を指摘したら京子ちゃんヘコむだろうし)

「十代目。俺も良いすか?」

「そーだな獄寺」

「あ、おい」

「いただくぜ」

 

ツナはおにぎりを食べようとする山本と獄寺を交互に見て。

 

(別にポイズンクッキングで誰が死のうがどうでもいいが、目の前で友人が死ぬのは嫌なんでね!)「食べたら死ぬぞ!」

 

おにぎりを奪い取り全部食べるツナ。

 

(ま、これでいいだろ)

 

 

―――ちなみに。

 

「そんなことないよ・・・」

「いいや。間違いないわ。アレは沢田の告白ととるべきよ」

「えー!?」

 

「男らしかったっス。十代目」

「?」

「やるなーツナ」

「?」

 

みんなツナの「食べたら死ぬぞ」という言葉を、

 

『俺が京子からもらったおにぎりを食った奴はぶっ殺すぞコラァ!!』

 

ぐらいにとっていた。

 

「流石十代目っス」

「?」




ツナ「みんな何言ってんの?」
リボーン「気付いてないのか」
ツナ「?」


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第十四話 三浦ハル

とある日のこと。ツナ達がいつも通り登校していた時のこと。

ツナ達の前から・・・というか、リボーンが歩く塀の上を同じように向かいから歩いてきた。

 

「な、なんだ・・・?」

「こんにちは―――っ」

「ちゃおっス!」

「私・・・三浦ハルと申します」

「知ってるぞ。ここんちの奴だろ?」

「お友達になってくれませんか?」

「いいぞ」

(関わり合いになりたくないな・・・。今の内にリボーンから離れるチャンスだぜ)

 

ツナはコソコソと足音を消し、なおかつ高速で離れていく。後ろの方で奇声が聞こえた気もするが彼は気にせずに前に突き進む。

 

(よし。リボーンから逃走完了。家を知られてるからまぁ完全に逃げることは不可能だろうけど・・・。まあいざとなったらイタリアの基地にでも)

 

その後、ツナがリボーンから聞いた話によれば、どうやらあの少女はツナに対してかなりの怒りを抱いているらしい。

 

(殺し屋だのマフィアだの全部この赤ん坊が言い出したことなんだけどなー・・・。というか、まず赤ん坊がスーツ着て喋ってることを疑問に思おうぜ)

 

三浦ハルと名乗った少女に心の中で突っ込みを入れるツナだった。

 

 

 

―――次の日。

 

「暑いな・・・・・・。太陽一度でいいから消えてくれないかな―――」

 

太陽を恨めしげに睨むツナの耳にガシャガシャと金属音が響いてくる。

 

「あれ・・・。あまりの暑さに耳鳴りが・・・・・・」(いや、耳鳴りじゃ・・・ない)

「おはよ―――ございます」

「何だアンター!!?」

 

ツナが振りかえると、そこにはアイスホッケーのスティックを持ち、バイクのヘルメットを抱え、甲冑のような物をまとった昨日の少女が居た。

 

「昨晩頭がぐるぐるしちゃって眠れなかったハルですよ」

「寝不足だとそういう格好しちゃうのかよっ!?」

「違いますーっ。それじゃ私お馬鹿ですよ」

「・・・ん?」

「リボーンちゃんが本物の殺し屋なら、本物のマフィアになるツナさんはとーってもストロングだと思うわけです」

「・・・はぁ」

「ツナさんが強かったらリボーンちゃんの言ったことも信じますし、リボーンちゃんの生き方に文句は言いません。お手合わせ願います」

(・・・しょうがねぇ。風歩とか使うまでも無く簡単にあしらえるだろう)

 

ツナは特に深いことも考えずに暇つぶしにプチプチを潰す感覚で少女の攻撃をさばいていく。

 

「あ、言っておくけど俺はマフィアのボスにはならないからね」

「じゃあリボーンちゃんをもてあそんでるんですね!!」

「いやいや。マフィアのメッカ、イタリアの組織が俺をマフィアのボスにしようと送り込んできたのがリボーンなんだよ。俺悪くない。悪いのイタリアンマフィア」

「十代目。さがってください!」

「え。あ、獄寺君・・・!」

「果てろ」

「あれ? どかーんってやつですねー」

 

その通り。獄寺の投げたダイナマイトが爆発し、爆風でハルの体が欄干を越えて川に落ちる。

 

「あーあー。落ちちゃったよ・・・」

「これでもう大丈夫です」

「一応カタギの人間なんだけどなぁ・・・」

「ブハッ。なんであんなもん持ってるんですかーっ。! ・・・・・・。たすけ・・・ゴボッ。助けてぇーっ」

「あちゃーっ」

「ん?」

「助けてやる」

「・・・リボーン」

「駄目です! この川は、リボーンちゃんが泳げるよーな」

「ツナ」

「あー・・・。面倒臭い」

 

ツナは気怠げにそう呟くと、少々格好つけ気味に欄干を飛び越え川に飛び降りる。

 

「溺死とかくだらない死に方すんじゃねーよ」

 

そう言いながらツナはハルを河川岸に引き上げる。

 

 

「ありがとーございました・・・」

「ったく、十代目に何かあったらオメーこの世に存在しねーんだからな。反省してんのか?」

 

獄寺が少し怒ったようにそう言ったが、ハルはまったく気にせずツナに惚れていた。

リボーンの代わりに飛び込んだから。気怠げなところがカッコイイ。などと細部は違うものの、結末は変わらなかったようだ。

 

「ハハ・・・不幸だ」



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第十五話 入江正一

素麺って味がしないから好きです。


「・・・また素麺? 最近お中元の残り物ばっかりだね・・・」

「も・・・文句言わないの! いいじゃない、経済的で」

「アレだね、お中元=素麺っていう方程式をそろそろ崩すべきだよな。じゃないと毎年夏は素麺ばっかりになっちまう」

「オレはママンの作ったソーメン好きだゾ」

「私も好きよ」

「まあ、ありがとう。流石リボーンちゃん。ビアンキちゃん!」

「素麺ってただ茹でるだけじゃん。つゆも市販のものを水で割っただけだしさ。例えオレが作っても味は変わらないよ」

 

そんなことを言ったツナのおでこにフォークが飛んできた。だが、ツナは箸でそれを掴み机に置いた。

 

「リボーン。いくら手が滑っても、フォークは危ないからしっかり持っておいてね」

「チッ」

「それに・・・もう一人ソーメン好きが居るのよ。ほら来た」

「ガハハハハハ!」

「おい・・・まさか」

「オレっちだよ! ランボだよ!!」

「角ぐらいちゃんと着けてから来い! みっともない」

「くぴゃ! わざとだもんね。一応なおすけど・・・。本当にわざとだもんね!! リボーン()ね―――!!」

(照れ隠しにミサイルランチャー撃つなーっ!!)

 

撃ち出されたミサイルはリボーンが箸で挟んで止め、ランボに向かって投げ返す。それはランボの頬にめり込むと、窓の外。遠くまで飛んでいった。

 

「アレは先端にセンサーが積んであるミサイルでは無いのか? と言うか何故起爆しない・・・」

 

ツナは思わず頭を抱えた。というか、これでもし胃が弱かったら穴が開いていたかもしれない。

 

(もう少し図太く生きた方が良かったのかなぁ・・・。って言うかこれ正一君来るやつじゃん。ちょっと迎えに行ってこよ)

 

そう思った矢先。ツナの脳内に着信があった知らせが届く。

 

「・・・こんな時に。はい、沢田ですが」

『あ、ツナ君。ちょっといいかな』

(炎真君?)「ん? どうかしたの?」

『僕のシモンファミリーのことなんだけど』

「聞くよ。何かあったの?」

『ツナ君の影組と同盟を組んでもいいかな。骸君に頼んでみたんだけど、「マスターに聞いてください。我々のボスはあの人ですから」って言われちゃって・・・』

「ハハ・・・。いいよ。仲良くする分には問題ないし、助けあっていこうよ」

『あ、じゃあ今度マフィアっぽく同盟の証みたいなの作ろうよ』

「アハハ・・・。じゃあそうしようか」

『あ、ゴメンね急に電話して。それじゃ』

「うん。またね」

 

電話を切ってツナは玄関から外に出る。するとそこには木箱を持ってランボを背負い、キョロキョロとツナ達の家をのぞき込む赤毛の少年の姿があった。ツナはその姿に遠い未来の彼の姿を重ねて思わず笑う。だが、すぐさま柔らかい笑みに顔を変えて出迎えることにする。

 

「あの。家に何か用ですか?」

「わぁ!」

「あ、あはは・・・。驚かせちゃいました? えっと、ここの家の綱吉と言いますが。何かご用でしょうか?」

(誰だ!? あんな丁寧なやつオレ知らねーぞ!?)

 

とはリボーンの談である。

 

「あ・・・あの。リボーンさんを・・・」

「リボーンに何か用?」

「・・・・・・。あ、家にこの子が突っ込んできて」

「はぁ」

「ここの住所が書かれた紙を持ってて」

「ふんふん」(沢田りぼ~ん? ・・・アンニャロォ)

「それで・・・この箱を返しに・・・」

「・・・・・・お詫びの品って書いてあるじゃないですか。素直に受け取っておいてください。ご家族の方にもそう伝えておいていただけるとありがたいです」

「で、でも」

「うんそれでもうこの家庭には関わらない方が良いですよ。最悪な結末しか見えないですから」

「・・・・・・ぁ」

「ロメオォオォオォオォオ!!!」

「ほら、もう逃げた方が良いよ」

 

冷静にいいながら手につけた小手でビアンキが撃つノーコン銃弾を弾いていくツナ。それから立て続けに怒るトラブルを解決したと思ったらいつの間にか正一はいなくなっていた。

 

 

「今回も何とかなったな」

「それよりリボーン?」

「ん? なんだ?」

「リボーンはいつの間に俺の家族になったの?」

「・・・ん?」

「沢田りぼ~んなんて、お前はただの家庭教師のはずだよな? 何で俺の姓勝手に名乗ってんの。いつの間に家族になった気でいるのさ。良くて居候だろ? な、リボーン?」

「あ、いや。その、だな」

 

ツナの天使のような悪魔の笑みにタジタジになるリボーン。そして、自身が豪語するネッチョリよりも恐ろしい罰を受けることになった。

 

リボーンは語る。

 

「ツナは本気で怒らせちゃいけねぇ!」

 

と。

 

そして、ツナに対してのおふざけは軽めにしておこうと心に誓ったリボーンだった。




優しく対応したツナでした。

友好度を上げておく。


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第十六話 笹川了平

「は―――ぁ。始業式から寝坊だよ」

「急げよ」

「あーはいはい。・・・・・・・・・うおおおぉ! 死ぬ気で登校するー!!!」

「自分で死ぬ気になれんのか。どんどんボンゴレボスに近づいてやがるな」

 

全速力で学校に走って向かうツナ。途中で誰かに腕を掴まれたが、気にせず全力で学校まで走った。まあ、要するに間に合ったのだった。

 

「ふぅ」

「―――紛れもない本物・・・」

「!? だ、誰?」

「聞きしに勝る、パワー・スタミナ! そして熱さ!! やはりお前は百年に一人の逸材だ!!」

「は?」

 

勢い良く起き上がってツナの方を向いたのは、髪を短く切り揃えた年上っぽい少年だった。

 

「我が部に入れ。沢田ツナ!!」

「綱吉です・・・。ってか何で俺の名前・・・」

「お前のハッスルぶりは妹から聞いているからな」

「い・・・妹?」

「お兄ちゃーん」

「どうしたキョーコ!?」

「キョーコ・・・? とってもなじみ深いような・・・」(えっと、この人ボクシング部に所属してる笹川了平先輩・・・。笹川・・・キョーコ)

 

ツナは頭をひねって考え、答えにたどり着けそうになったが、答えは向こうの方からやってきた。

 

「も―――。カバン、道におっことしてたよ!」

「! 京子ちゃん!? 」

「あ・・・ツナ君。おはよ!」

「スマン」

「おはよ?」

「? 何で二人でいたの? あ。まさかお兄ちゃん、ツナ君捕まえてメーワクかけてないでしょうね!」

「ない!」

(や、迷惑結構かかってます。なんかいやな予感がびんびんします)

「ツナ君。お兄ちゃんのボクシング談義なんか聞き流していいからね」

「あ、うん」

「そう言えば自己紹介がまだだったな。オレはボクシング部主将。笹川了平だ!! 座右の銘は“極限”!!」

(熱いな・・・)

「お前を部に歓迎するぞ。沢田ツナ!」

「綱吉です」

「駄目だよお兄ちゃん。ツナ君を無理矢理誘っちゃ―――」

「無理矢理では無い! だろ・・・・・・・・・? 沢田」

「いえ。結構強引です了平さん」

「・・・・・・では! 放課後にジムで待つ!!」

「強引だなぁ・・・・・・」

「ガサツでしょ? あー見えて意外と優しい所もあるんだよ」

「まあ誰だってそういう面はあるだろうけど・・・」

「でもツナ君凄いな。私も嬉しくなっちゃった」

「へ?」

「あんな嬉しそうなお兄ちゃん久しぶりに見たもん」

「へーそれはよかったですね(棒)」

 

断りにくくなってきたなぁ。と、ツナは他人事のように思ってしまっていた。

 

 

―――放課後、ボクシング部室。

 

「さて、いかにして断ろう・・・」

「おお、沢田。待ってたぞ!」

「あ、はい」

「お前の評判を聞きつけて、タイからムエタイの長老まで駆けつけているぞ」

「は? タイの長老・・・? タイから日本まで半日はかかるんだけど・・・」

「パオパオ老師だ」

「パオ―――ン!」

(てんめー!!!)

 

像の被り物をしただけという簡易コスプレで声を変える努力もしていないリボーンに若干のいらつきが見え始めたツナであった。

 

「オレは新入部員と主将のガチンコ勝負が見たいぞ」

「えー。何を言ってるんですかパオパオ老師さん。私めにボクシングをやらせる気でしょうか?」

「当たり前だ。ちった―――強くなりやがれ」

「っていうか、ボクシングとムエタイは関係なくないですかねー」

「うむ。オレとのスパーリングは沢田の実力を計るいい方法かもしれない」

「えー。了平先輩までそんな事を言ってしまわれるんですか。俺にボクシングをやれと」

「ツナ君頑張ってー!」

「負けんなよ」

「十代目~!」

「み、皆さん来ていらっしゃるので・・・」(っていうか、()()簡易コスプレで何故みんなリボーンだと気付かない!? 馬鹿か!? 馬鹿なのか!?)

「パオ~ン」

 

 

「ゆくぞ、沢田ツナ!! 加減などせんからな!!」

「綱吉です・・・。あと、ボクシング部入部は断らせてもらいますっ!」

「ほーぅ・・・。オレは細かい詮索などせんぞ。何故なら男同士拳で全て語り合えると信じているからな。入部しろ沢田!!」

「断る!!!」

「“極限ストレート”をかわすとは! ますます気に入ったぞ!! なおのこと入れ、沢田!!」

「絶対! 嫌だ!!」

「すげー。笹川先輩の“極限ラッシュ”をかわしてる・・・・・・・・・!!」

「あいつ、何者だ!?」

「かわすツナもすげーが、あのラッシュも常人のものじゃねーな・・・」

「ありゃあ殺し屋のそれだ・・・」

「入れ入れ入れ入れ!!」

「やだやだやだやだ!」

「入れ!」

 

最後の一撃。了平が放った“極限ストレート”がツナの顔の真ん中にめり込んだ。

 

「「「!」」」

 

ツナの体は少しよろけ、ロープに寄りかかる形になる。

 

「・・・沢田?」

「・・・・・・了平先輩。熱くなっていたんでしょうけど、流石にジャイアンパンチはないんじゃないんですか?」

 

地の底から響いてくるような低い声でツナは言った。

 

「さて、じゃあ反撃の狼煙を上げるとしようか・・・・・・」

 

ツナはそう言うと軽く踏み出し了平との距離を詰める。

 

「むっ!」

「連続「普通のパンチ」♪」

 

一瞬のことだった。見えた人間が少ないかもしれないほどの一瞬で、ツナの拳が質量を持った残像でそこに出現し、了平の上半身を余すところなく叩いた。

 

「ぐはあぁ!!」

「・・・・・・・・・ッ!」(っっってぇえぇえええ?! 肩がぁ! 肩がぁ! ちょっと手加減しようと変な動きしたからか!? 外れやがったこのバ関節!)

 

バレないように関節をはめ直すツナ。そう言えば・・・。と了平の方に目を向けてみると、割れたガラスの破片の中に沈んでいる彼の体があった。

 

(わお)

「素晴らしい! 極限に気に入ったぞ、沢田! お前のボクシングセンスはプラチナムだ!! 必ず迎えに行くからな!」

「もー。お兄ちゃん嬉しそうな顔してー!」

「いえ、結構です」

「オレも気に入ったぞ、笹川了平」

「?」

「お前、ファミリーに入らねーか」

「「?」」

(また・・・コイツは・・・)

 

貪欲なリボーンだった。




ツナはボクシングをすると誤って人を殺めそうです。

なのでスポーツ全般やる気が彼にはありません。


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第十七話 雲雀恭弥

「秋だねぇ~・・・。夏が終わって秋が来て。一年が終わるのももうすぐなんだろうなぁ」

「なんか、ツナ難しい事言ってねーか?」

「アホ牛がブドウブドウって最近ウザくねースか?」

「栗もうまいぞ」

 

飛んできた毬栗がツナの背中に刺さる。

 

「て! てて! リボーンってぇ―――っ!!」

「ちゃおっス」

「刺さってる! 何じゃそれは!」

「これは秋の隠密用カモフラージュスーツだ」

「百人が百人振りかえるぞド阿呆! お前は本当に一流の殺し屋(ヒットマン)なんだろうな!?」

「ファミリーのアジトを作るぞ」

「また突拍子も無いね!? ・・・お前がそうやって突然言い出したことには絶対裏があるんだよな・・・」

「へー。面白そうだな、秘密基地か」

「子どもかおめーは! アジト、いいじゃないスか! ファミリーにアジトは絶対必要っスよ!」

「あー・・・うん」(影組のアジトがもう転々とあるからなー。正直イラナイ)

「決まりだな」

「どこに作るんだ? 裏山か?」

「なわけねーだろ!!」

「学校の応接室だ」

「「「!?」」」

「応接室はほとんど使われてねーんだ。家具も見晴らしもいいし、立地条件は最高だぞ」

(コイツ、雲雀恭弥と俺たちを絡ませる気だな!?)

「まずは机の配置変えからだな」

「オレ、十代目から見て右の席な」

(ハァ・・・マジか)

 

未来が何となく見えてきたツナだった。

 

 

―――応接室。

 

「へ~、こんないい部屋があるとはね―――!」

「君、誰?」

(コイツは・・・、風紀委員長でありながら不良の頂点に君臨するヒバリこと雲雀恭弥・・・・・・!!!)

「なんだあいつ?」

「獄寺、待て・・・」

「風紀委員長の前ではタバコ消してくれる? ま、どちらにせよただでは帰さないけど」

「!! んだとてめ―――」

「消せ」

 

前に出た獄寺のタバコの先だけが綺麗に吹き飛ばされる。

 

「何だコイツ!!」

(聞いたことがある・・・。ヒバリは気に入らねーやつがいると、相手が誰であろうと、仕込みトンファーでめった打ちにするって―――・・・)

「僕は弱くて群れる草食動物が嫌いだ。視界に入ると、咬み殺したくなる」

(こいつ・・・)

(やっかいなのにつかまっちまったぞ・・・)

「・・・へー。はじめて入るよ。応接室なんて」

「待てツナ!!」

「え?」

「一匹」

 

トンファーで叩かれ、ツナは応接室の奥に転がっていく。

 

「のやろぉ!! ぶっ殺す!!」

「二匹」

「てめぇ・・・!!!」

 

獄寺とは違い、何とか雲雀の攻撃をかわす山本。

 

「ケガでもしたのかい? 右手を庇ってるな」

「!」

「当たり―――三匹」

 

山本も気絶したところで、ツナの目が覚める。

 

「えーっと、獄寺くん? 山本? ・・・これって、どういう事?」

「起きないよ。二人にはそういう攻撃をしたからね」

「そういう攻撃しかできなかったの間違いじゃ・・・・・・」

「む。君、ムカつく」

「短気は損気ですよ・・・」

「咬み殺す」

 

雲雀のトンファーを両手の小手で受け止めるツナ。

 

「ワオ、素晴らしいね。君」

「対してお前はそうでも無いな」

「?」

「殺すって言う単語を口に出しておきながら、殺気がまったく見られないって言うのは、案外珍しいものだよ。本当に殺す気が無いのか、それとも殺すって言う単語をカッコイイと思って使ってる中二病患者かのどっちかかな?」

「・・・ねぇ、殺していい?」

「だぁかぁらぁ~。“殺す”って言う時は相手に殺気を向けないと・・・・・・」

 

ツナは雲雀に対して何の感情も持っていないように見える。なのに、

 

()()()

「ッ?!」

 

その一言で雲雀が恐怖で後ろに数歩下がるぐらいの殺気は出せるようだ。

 

「うまい人はさ、相手に何の感情も持って無くても、殺すって言う単語を使わなくても殺気を出せるらしいよ」

 

自分のことを棚に上げて言うツナ。それとも彼は幼少期の暴挙を忘れているのだろうか。

 

「君、何者?」

「沢田綱吉。それ以上でもそれ以下でもないよ。雲雀さん」

 

語尾に音符が着きそうな軽い言葉遣いなのに、ツナから向けられる殺気のせいで蛇に睨まれた蛙のように動けない雲雀だった。

 

「じゃあ、獄寺くんと山本連れて帰ることにするよ。勝手に入ってごめんね」

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

「さて、リボンヌ。訳を聞こうか」

「ツナ。オレの名は」

「リボンヌ。お前、応接室は雲雀さん達風紀委員の拠点だって知ってたよな?」

「ツナ」

「なあ。雲雀さんにワザと会わせたよね? リボンヌ」

「・・・キケンな賭けだったけどな。打撲とスリ傷ですんだのはラッキーだったぞ」

「ふーん。そんなキケンな賭けに俺たちをかり出したんだ・・・」

「お前達が平和ボケしないための実戦トレーニングだぞ。鍛えるには実戦が一番だからな」

「リボンヌ。お前、今うまくごまかせたとか思ってない?」

「ちくしょー、あんなやつに・・・!」

「目をつけられるのが狙いだよね? まあいいか」

「ヒバリは将来必ず役に立つ男だぞ」

 

 

 

「・・・あの小動物。また会いたいな」




別に雲雀さんが殺気を出せてない。そんなワケじゃありません。

ただ、ツナが雲雀の殺気をものともしていない。ただそれだけです。


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いろいろ編
第十八話 棒倒し


体育祭の季節ですね。ここ並盛中でも体育祭は超ビッグイベントです。準備期間中から学校の雰囲気がガラリと変わって私もわくわくしてます。我が校では縦割りでA・B・C組に分かれてチームを作るのですが、組同士の対抗戦はとても白熱するんです! 特にクライマックスに男子が行う“棒倒し”は総大将が棒のてっぺんに登り、相手の総大将を地面に落としたチームが勝ちという変則ルールなのですが、「これこそ体育祭の華であり、男子にとって一年で一番の見せ場なんだ!!!」と、毎日お兄ちゃんに聞かされます。そのお兄ちゃんはというと・・・・・・・・・。

 

「“極限必勝!!!”」

 

相変わらず燃えています。(ここまでのモノローグ担当京子

 

「これが明日の体育祭での我々A組のスローガンだ!! 勝たなければ意味はない!!」

(あぁ・・・縦割りのせいで了平さんと同じチームに・・・あの人絶対棒倒しで俺を総大将にとか言ってくるよ・・・。それにしても了平さんは今日も熱いな・・・。ほら、妹さんの京子ちゃんが心配そうに見てますよ)

「ウゼーっスよねあのボクシング野郎」

「・・・獄寺くん」

「十代目?」

「了平さん、先輩・年上。もっと敬意を持って接しようよ。ね?」

「は、はい」

「ん」

 

年上である了平に敬意を払えない極寺を微量の殺気混じりで注意するツナ。微量の殺気はカリスマに変わると学習済みだ。

 

「今年も組の勝敗を握るのはやはり棒倒しだ」

「ボータオシ? ってなんですか十代目」

「地面に立てた棒をみんなで支えて、相手の棒を倒した方が勝ちって言うのが一般的なルールだけど。並中では棒倒しの上に大将を据えて大将が地面に着いたら負けって言うルールなんだ」

「例年、組の代表を棒倒しの“総大将”にする習わしだ。つまりオレがやるべきだ。だがオレは辞退する!!!」

「「「「!! え゛!!?」」」」

「オレは大将であるより、兵士として闘いたいんだー!!!」

((((単なるわがままだ―――!!!?))))

(も~、お兄ちゃん・・・!)

「だが心配は要らん。オレより総大将に相応しい男を用意してある」

「え。笹川以上に総大将に相応しい男だって?」

「一のA、沢田ツナだ!!」

「いや、だから綱吉です・・・」

「な!?」

「おおおっ」

「十代目のすごさを分かってんじゃねーかボク・・・」

「獄寺くん」

「了平先輩はっ!」

「・・・何で俺・・・・・・」

「賛成の者は手を上げてくれ! 過半数の挙手で決定とする」

「一年にゃ無理だろ」

「オレ反対~」

「負けたくないもんねぇ」

「つーか、冗談だろ?」

「笹川がやった方が良いだろ~」

「ツナ? 何言ってんだ?」

「わっ山本」

「手を上げんか!!!」

((((命令だー!!!))))

「うちのクラスに反対の奴なんていねーよな」

「おい、おまえっ」

((((こえ~っ))))

「獄寺君の意見に賛成―!!」

「サンセー―――!!」

「この勢いならいずれ過半数だろう。決定!!! 棒倒し大将は沢田ツナだ!!」

((((この人メチャクチャだ―――!!))))

(・・・ついでだ。全員潰すか。風歩くらいならできるだろうから・・・居合い払いもできるか?)

「すげーな、ツナ!」

「さすがっス」

「ビビったっス」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・ちゃおっス」

「・・・・・・・・・」

「こっち見ろツナ」

「・・・・・・」

「総大将つったらボスだな。勝たねーと殺すぞ」

 

赤ちゃんの体で並中の制服をきたリボーンを徹底的に無視するツナに、リボーンは少しさみしさを感じながら構ってもらおうと頑張ったのだった。

 

「先輩達から白い目で見られるし・・・。総大将か・・・・・・、不幸だなぁー」

「やれんのか?」

「ん? 何で?」

「無理だとか、駄目だなんてオメーが言わなかったからだろうが」

「・・・まぁ、棒の上にただ乗ってるだけならいいんだよ。引きずり下ろすために殴る蹴るの暴行が行われるんだぜ? 重火器持ち出したいな・・・・・・」

「恐ろしいこと言い出すんじゃねー」

 

ツナは何かを撃つ構えをしながら家に帰る。

 

 

 

―――次の日。

 

ツナは家族みんなに見送られ、体育祭へとかり出された。

百メートル走で三位くらいをとってツナは棒倒しに備えることにした。

だが、何の因果か獄寺と了平によってC組大将高田が倒された。

 

そして。

 

『各代表の話し合いにより、今年の棒倒しはA組対B・C合同チームとします』

 

原作通りの流れとなった。

 

「B・C連合の総大将、誰にする?」

「サッカー部の坂田だろ?」

「レスリング部の川崎も強いぞ」

「僕がやるよ」

「「「「ヒバリさん!!」」」」

「あ、制服のままでっ」

「「「うわああっ」」」

「向こうの総大将とは、もう一度闘ってみたかったんだよね」

 

「それでは棒倒しを開始します。位置についてください!」

 

「あはは―――。すっげー数の違い」

「ツナさんファイトー!!」

「がんばって―――っ」

『用意。開始!!!』

 

開始と同時。B・C連合の人間が早々にツナのいる棒まで上ってくる。

 

「おう。もう来たの?」

「っしゃあ!」

 

引っ張られ、揺らされ、ツナは落ちそうになるが何とか耐える。

 

(というか、これってヒバリさんを直接叩きに行った方がいいんじゃ・・・。じゃあそうしようか)

 

ツナはそう決めると、自分自身の跳躍力に死ぬ気の炎の推進力を加えて棒から大きく飛び立つ。

 

「!? 十代目!?」

 

「ワオ。君の方から来てくれるなんてね」

「それがお望みでしょう? 雲雀さんは」

 

棒の上の狭い土台の上で踏ん張れる雲雀と、空中で彼のトンファーを捌くしか無いツナ。

だが、十数度弾きながらもそこに留まっている時点で実力の差は歴然だろう。

 

「余裕そうだね。君」

「まさか、落ちないように気を遣ってるんです。ギリギリですよ」

「ウソ。君笑ってるじゃん」

「あ、やっぱり分かっちゃいます?」

「良い性格してるよね、君って」

「あはは。雲雀さんにそう言われると褒められてる気はしないなぁ」

「小動物・・・? 肉食動物・・・?」

「さあ? どっちでしょうね」

「自分ではどっちだと思うのさ」

「オレは草食ですよ。でも、シマウマやヌーなんかとは違う。古代の、肉食動物にだって楯突いた草食恐竜ですね」

「へぇ」

「自分からは手は出しませんけど、降りかかる火の粉は払うつもりなので」

「それで、草食恐竜ね・・・」

「そろそろ終わりにしましょうよ。雲雀さん」

「嫌だよ」

「お断りします」

 

ツナの放った居合い払いで雲雀の体が空中に投げ出される。

 

「くっ!」

「あはっ。俺の勝ちだ」

 

雲雀が地面に落ち、A組の勝利が決まった。

だが。

 

「おいでよ草食恐竜。もしかしてもう闘えない?」

 

その挑発に乗ったツナは棒から降りてくる。

 

「もう棒とか関係ないですね。ただの余興です」

「いくよ」

 

トンファーの連撃を弾いてかわすツナ。雲雀は弾かれていることにムカついたのか、弾かれないような位置へとトンファーを撃ち込むが、同様に弾かれる。

 

「トンファーって腕ごと動かさなきゃいけないから意外とかわしやすいよね。刀とかだと手首のスナップで斬る向き変えたりできるんだけど」

「咬み殺す」

「じゃあぶち殺す」

 

ちなみに、二人の闘気に当てられたのか、周りでは乱闘が起こっていた。

 

「すごい出し物ですね」

「思い出に残る体育祭だな」




雷迅は使ってません。これ重要。多分


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第十九話 隣町ボーイズ

並盛中学校の生徒が順番に襲われ、カウントダウンが進むころ。ツナは一人でほくそ笑んでいた。

 

(ケケケ。まさか本当にここまで計画通りにいくとはねぇ~)

 

ツナは先ほど学校でリボーンから聞いた内容を思い出していた。

 

 

「良いかツナ。今回の事はおそらく、イタリアで起きた集団脱獄が原因だ」

「集団脱獄?」

「ああ。二週間前に大罪を犯したマフィアばかりを収容している監獄で、脱獄事件が起きたんだ

脱獄犯は看守と他の囚人を皆殺しにしやがった。その後、マフィアの情報網で脱獄の主犯はムクロという少年で、部下二人と日本に向かったという足取りがつかめたんだ。そして黒曜中に三人の帰国子女が転入し、あっという間に不良をしめたのが十日前の事だ。リーダーの名を六道骸」

「・・・脱獄犯を捕まえろって事?」

「そうだ。九代目からも直々に命令書が届いてるぞ」

「脱獄囚を捕獲って?」

「そうだ」

 

 

(骸達ちゃーんとつかまって、ちゃんと脱獄してきたんだ。俺が指示した通りボンゴレに関係ある人間を並中から探してくれてるし、千種に凄い驚かれたけど。とりあえず、骸からの連絡待ちかな)

 

と、そこでツナの携帯電話が鳴った。

 

「ん。どしたの?」

『どしたの? じゃありませんよマスター。マスターがボンゴレ十代目ってどういうことですか!』

「言ってなかったっけ? 俺門外顧問の息子で、ジョットの子孫なんだよ」

『・・・血統。ですか』

「そーそー。それで、俺の敵になってほしいんだよね」

『なっ! 正気ですか!?』

「これからの流れを説明させてくれる?」

『はい』

「まず―――」

 

 

 

―――次の日。

 

「リボンヌ。本当に行くの?」

「だから俺の名前はリボーンだ」

「ごめんリボーン。噛んじゃった」

「ワザとだろオメーの場合」

「かみまみた!」

「・・・ワザとじゃない?」

「さあ行こうリボーン」

「まずはみんなと合流だな」

 

そして、ツナ達は集合場所にそろう。

メンバーはツナ・獄寺・山本・ビアンキ・リボーンだ。

 

「十代目! 似合ってます!」

「え? そう? マフィアっぽくしてみた」

 

黒のスーツに橙のシャツ。黒いネクタイを結び、気持ち顔を引き締めたその姿は裏の世界の人間だった。

 

「なんかそうしてると本物のマフィアみたいなのな」

「そう?」

 

そんなこんなで一行は黒曜センターに向かうことになった。

 

「・・・ねぇ。本当に倒すの?」

「何言ってやがる駄目ツナ。今更ビビってんじゃ無いだろうな」

「いやーだって。マフィアの監獄から脱獄した人間だよ? それに他につかまってた人達を殺して・・・。勝てるのかなーって」

「弱気になってんじゃねーぞ! まあ、ヤバいかもな」

「だろ? レオンがマユになる時って生徒にピンチが訪れるんだろ? 大丈夫かな・・・」

「やれるだけやってみろ」

「・・・分かったよ」

 

その後、山本が動植物園に落ちて犬と戦うと言うイベントがあったが、原作と同じ流れだったのでカット。

 

「あそこで飯にしましょう十代目!」

「あ、うん。俺もお腹すいたから・・・」(犬は大丈夫かなー・・・。ビアンキ容赦なかったから・・・)

 

ツナは一応仲間である犬の容態を気にしながらお昼ご飯の山本の寿司を頬張る。

 

(今の内に全部食べとこ)

「ツナ。緑黄色野虫のコールドスープ」

「虫ですか・・・できれば植物が良かったかな・・・。後、見た目・・・例え毒じゃ無くても見た目が悪かったら誰も口に入れてくれないよ・・・」

「なるほど。勉強になるわ」

 

と、その時。ビアンキの持っていたスープが沸騰したように泡立ち爆発した。

 

「何このポイズンクッキング。タイマー爆薬?」

「私じゃ無いわ」

「ビアンキじゃないんだ・・・」

 

と、そこでこの現象の原因に気付いた獄寺がダイナマイトを投げる。派手な爆発音に砂煙。それが収まるとクラリネットを持った少女がその場に現れた。

 

「ダッサイ武器。こんな連中に柿ピーや犬は何を手こずったのかしら」

「アレは黒曜の制服・・・」

「ってことは」

「しかし敵は三人組だったはず」

「~~~~~~~~ッ!」プルプル

「私だって、骸ちゃん(ツナくん)の命令じゃなきゃ、こんな格好しないわよ。だから・・・そこ、笑わない!」

 

リボーンがお昼寝しているのを良いことに、元々のM・Mを骸伝に知っているツナはお腹を抱えて笑っていた。ちなみに、その格好の指示を出したのは骸だが。骸はツナの命令に従っただけなので、M・Mとしては、アンタの指示だろーがと怒鳴ってやりたいのだ。

 

「あーうん。笑ってごめんなさい。とても似合ってると思うよ」

「え、あ・・・。そう?」

「敵を口説いている場合?」

「ぐえっ」

 

ビアンキに後ろ頭をはたかれたツナは無様に地面に顔面着地する。

 

「っ。そうだったわね。私はあんた達をあの世に送って、バッグと洋服買い漁るだけ!」

 

ツナだけは、副音声で私のツナくんになにしてんのよ阿婆擦れ。と聞こえた気がしたが、無視していたことを記述しておこう。

 

「・・・あーあ。マフィアの癖にさえない格好ね。そこの男はそれなりに自覚はあるみたいだけど。やっぱり男は金よね」

「聞き捨てならないわね・・・。男はね・・・金よりも、愛よ!」

 

と、M・Mの言葉に反対意見を述べたビアンキは、ポイズンクッキングを持って突っ込んでいく。

 

「そこまでよ! ラストショートケーキ!!」

「キャアアア!! ―――なんて、言うと思って? 残念ながら、接近戦も得意なの!!」

 

中間当たりで分解されたクラリネットで殴り飛ばされる直前。ビアンキの仕掛けた攻撃に唯一気付いた獄寺が目を見開く。

 

「おいっ!」

 

その戦いに割り込もうとした山本を獄寺が止める。

 

「まて、山本・・・。もう・・・触れたんだ」

「!?」

 

獄寺の言葉に首を傾げる山本。そしてツナは、“触れた”という単語で思い出した。

 

「・・・脳味噌沸騰させてあげる」

 

ニヤ、と笑ったM・Mがクラリネットを口に含んだその時、クラリネットがポイズンクッキングへと変わる。

 

「あ・・・。触れたものをポイズンクッキングにする究極料理」

「そうっス。アネキが結婚式の時に習得した・・・(セン)()(ドク)(バン)(コウ)!!」

 

敵を倒して安堵したのも束の間、すぐさま次の敵が現れる。

 

現れた敵、バーズは何も知らない京子達を人質に取るという、卑怯な手段でツナ達を追い詰めるも、リボーンが手配していたシャマルやランボ、イーピンのおかげで何とか危機を脱した。

 

「ははっ、命じてる本人は弱っちーのな!」

「ふん、卑怯ばっかりで大したことねー野郎だぜ!」

 

山本と獄寺が始末を終え、と言ってもその辺にほかしただけだが。ツナの元にやってくる。

 

「大丈夫ですか? 10代目」

「・・・うん。まあね、もう誰もいないかな」

「いるわよ。隠れてないで出てきたら? そこにいるのはわかってるのよ」

 

ビアンキが何かに気付いたのか林の方へ声をかける。すると、木の影からフゥ太が姿を現した。

 

「ま・・・まって。僕だよ」

「フゥ太!」

 

安堵の為に表情を緩めたツナ達だった。が、ツナが帰ろうと呼び掛けた時、フゥ太はそれを断り骸についていくと言い出した。

 

「さよなら・・・」

 

決別の言葉を口にして走り去ってしまったフゥ太。それに不審を抱いたツナはフゥ太を追いかけて行く。

 

「10代目!!」

「ツナ!」

 

獄寺と山本が追おうとしたその時、巨大な鉄球が2人を襲う。

 

「「!!?」」

 

振り返った獄寺達の前にいたのは、写真で確認した三人のうちの一人・・・今回の事件の首謀者と思われる・・・六道骸、その人だった。




詰め込みすぎた気もしない。

ツナの掌で踊らされるリボーン。さすがっス。


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第二十話 新アイテム

一方、フゥ太を追っていたツナは森の中でフゥ太を見失ってしまう。

 

「・・・フゥ太! ・・・まったく、どこ行っちゃったんだよ!」

 

明らかに様子がおかしかったフゥ太。それに嫌な予感を覚えたツナはどうしても探し出し、フゥ太と話をしなければいけないと思っていた。

なかなか見つからないことに焦りを覚え始めた頃、草むらから人影が出て来る。

 

「フゥ太!? ・・・何だ骸か・・・」

「マスター!」

 

ツナは楽しそうな笑みで骸に近づいていく。

 

「計画は順調そう?」

「え、えぇ・・・。しかし、本当に良いのですか?」

「大丈夫大丈夫。全部上手く行ってるはずだから」

 

ちなみに。あの場にフゥ太がいたのも、フゥ太を探しにツナが一人で森に入るのも、森の中で骸と会うのも、全部ツナの書いた筋書き通りである。

 

「先に謝っておくね。復讐者の牢獄に入っちゃうことになるから・・・」

「ええ。構いません。それがマスターの計画を進めるためであるならば、影組一同でサポートさせてもらいます」

「大丈夫? その後のことも分かってる?」

「任せてください」

「なら、よし!」

 

ツナは微笑むとその場を後にした。

 

その後、演技で骸を悪い奴と全員に認識させたツナは、みんなで黒曜ヘルシーランドへ向かう。

 

(しかし、骸に確実に復讐者に捕まってもらうためとはいえ、ランチアさんのファミリーには悪いことをしたなぁ・・・。ま、いいか)

 

楽観的に人の生死を捉えたツナは獄寺に千種を任せ、六道骸と対峙していた。

 

「クフフ。六道輪廻という言葉をご存知ですか? 僕の身体にはその全ての冥界を回った記憶が刻まれていましてね? 六つの世界から、六つの戦闘スキルを授かったんです」

 

ギン! と見開かれた右の紅い瞳の中に一の数字がうかびあがる。と同時に建物が音を立てて崩れ始める。

 

「ん? んん? 頭が痛・・・、幻覚かっ! 確か第一の道は地獄道・・・」

「ほう。面白い見破り方をしますね。確かに幻術は脳に作用する。そこから見破るとは・・・」

「・・・・・・」

 

リボーンには恐らく言葉通り聞こえている。しかしツナには、いつも通り骸が自分をべた褒めしているようにしか聞こえない。

 

「・・・では、これはどうです?」

 

骸はそう言って瞳に三の数字をうかばせる。するとツナの上から毒蛇が降ってきた。

 

「幻覚? ・・・いや、本物! 第三の道は・・・畜生道」

 

ツナはこの蛇たちをどうするか悩む。零地点突破を使っても良いが、それだとつまらない。

 

「さぁ、生徒が危機を迎えましたよ? ・・・先生は攻撃しないんですか?」

「・・・掟だからな」

「クフフ、マフィアらしいお答えですね」

 

クツクツと笑う骸に突如何かが投げつけられ、骸はそれを咄嗟に振り払う。

 

「っ・・・トンファー?」

「10代目! 伏せて下さい!!」

 

その声と共にツナの頭上でダイナマイトが爆発する。その爆風で蛇が吹き飛び、煙の向こうから声がかかる。

 

「遅く・・・なりました!」

「・・・獄寺君。・・・雲雀さんも!?」

 

そこにいたのは雲雀と雲雀に支えられて立っている獄寺だった。

 

「ふ、こういうことだ。・・・俺の生徒はツナだけじゃねぇ」

「ほう・・・これはこれは外野がぞろぞろと。犬と千種はどうしました?」

「へっ、あいつらは外でノびてるぜ? ・・・ま、俺がやったわけじゃないけどな」

 

獄寺の視線は雲雀の方を向いている。それだけで状況を把握したツナはホッと息をつく。

 

「よかった・・・」

「・・・借りは返したよ?」

 

雲雀が呟き、獄寺の身体を放り出す。

 

「のわっ!?」

(うわぁ・・・。投げ捨てたよ、この人。慈悲ないなー)

 

こんな状況であるのに思わず呆れてしまったツナは、呆けたまま骸に殴りかかる雲雀を見つめる。

酷い怪我のせいでいつものキレはないが、骸を圧しているのは確かで。その時骸の右目に一の数字がうかぶ。

現れたのは天井一面の桜。それを見上げて目を見開く雲雀に骸は得意げに言う。

 

「クフフ・・・さぁ、もう一度跪いて戴きましょうか?」

「・・・雲雀はシャマルのトライデント・モスキートでサクラクラ病にかかってやがったからな」

「あ、そっか。・・・それで一度は負けて捕まってたんだ」

 

圧倒的に雲雀が不利な状況で二人が余裕なのは、雲雀のサクラクラ病への処方薬を獄寺が持っていたことを知っていたからだ。

だから、二人一緒に現れた時点で既に回復しているだろうことが知れて安堵したのだ。

そんな会話をしている間に雲雀のトンファーが骸を殴り飛ばす。沈黙する骸を一瞥した雲雀はそのままふらりと倒れ込んだ。

 

「・・・こんな重症でよくやるよ。雲雀さんマジすげー」

 

倒れた雲雀の傷の確認をしたツナが呆れた声で呟く。

 

「最後の方はほとんど無意識で戦ってやがった。・・・一度負けたことが余程悔しかったんだろうな」

「雲雀さんって負けず嫌いそうだもんね。・・・で、リボーン。医療班は?」

「もうすぐ到着する予定だぞ」

「クッフフフフ・・・その必要はありませんよ? なぜなら生存者は誰もいなくなるからです!!」

「しぶてぇやつだ。まだ動けるのか?」

 

復活した骸を睨み、リボーンは呟く。

ツナも身構えていつでも応戦できるようにしていたが、そんな彼らに笑みを見せ、骸は己のこめかみにその銃をあてた。

 

「・・・では、また後ほど・・・Arrivederci(さようなら)

 

銃声が響き、骸はその場に倒れた。

 

「・・・できれば・・・生かして捕らえたかったんだがな」

 

リボーンのその言葉にツナは首をひねる。

 

「先生。特殊弾って死ぬ気弾だけなの?」

「? どういう事だ?」

「いや、もしアレが死ぬ気弾だったら復活して面倒だなーって」

「・・・なるほどな。ツナ、何か感じねーか?」

「骸が増えた?」

「やっぱり。憑依弾は禁弾のはずだぞ。どこで手に入れやがった」

 

憑依弾。それはエストラーネオファミリーが製造していた悪魔の武器。今は危険視されて廃棄されたハズのもの。

そしてほぼ同時に、ビアンキや獄寺、更には獄寺と雲雀に倒された犬や千種までもが骸に“乗っ取られて”ツナに襲い掛かる。

 

「ツナ! レオンはもうマユなんだ。後はお前の言葉で羽化させろ! お前の気持ちを言え、それがボンゴレの答えだぞ!」

「・・・・・・だったら、昔から決まってる俺はやるべき事がある。こんな所で負けてられない!」

 

ツナのその言葉で、レオンの変化が始まった。

 

「ついに羽化したな。あの時と一緒だ。ディーノが“跳ね馬”になった時とな」

 

ツナ専用のニューアイテムを吐き出す準備段階のレオンは蛹のような状態になっている。

 

「・・・非常に邪魔ですね」

 

余裕を見せるリボーンによからぬ気配を感じたのか、犬を乗っ取った【骸】がつっこんで来てレオンを真っ二つにする。

 

「レオン!」

「大丈夫だ。レオンは形状記憶カメレオンだからな。・・・それよりも上を見ろ、何か弾かれたみたいだぞ」

 

ひらりと落ちてくるものを見てリボーンが笑みをうかべ、それを手にしたツナはキョトンとする。

 

「これ・・・毛糸の手袋!? これで・・・どーやって・・・たた・・・か・・・。あー、なるほどね」

「何か分かったのか?」

「まーね」

「最後まで面白かったですよ、君達は」

 

とりあえずで着けた手袋ごと、ツナはその攻撃を防ぐように手をかざした。

金属同士がぶつかるような、毛糸の手袋ではありえない音がする。

 

「攻撃を、弾かれたのか・・・?」

「いってー・・・。あれ? 痛くない? ・・・何か入ってる。・・・・・・指輪?」

 

ツナが右手の手袋から取り出したのは綺麗な宝石がついた指輪だった。

 

「何に使うのさ」

「さーな。とりあえず手袋と一緒で着けとけ」

「う、うん。あと・・・これ弾だよね?」

(特殊弾!?)

「そいつだな・・・。よこせツナ」

「撃たせるわけにはいきませんよ」

 

【骸】が三叉の剣を振りおろす。リボーンはそれを避け、ツナから弾を奪って銃に変化したレオンに装填する。

 

「仕方ない――ボンゴレの身体を無傷で手に入れるのは諦めました」

「ツナ!!」

 

獄寺を乗っ取った【骸】は己がダイナマイトを放り投げた後にリボーンが銃を構えるのを見て、せせら笑う。

 

「間に合うものか!!」

 

派手な爆音と爆煙にリボーンは目を眇める。

煙が晴れると同時、そこには額に炎を灯したツナが膝をついてだが起き上がっていた。

 

「骸・・・。お前を倒さなきゃ・・・・・・死んでも死にきれねぇ!」




新アイテムは手袋と指輪。


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第二十一話 Xグローブと大宇宙のリング

切りが良い所までかきたいことをかいていたら長くなる不思議。


「・・・その頭部の闘気(オーラ)。なるほど特殊弾が命中していたのですね。・・・ですがランチアと戦っていた時とは違うようですが・・・」

「小言弾はツナの静かなる闘志を引き出すんだ。死ぬ気弾とはまるで違う全く新しい力を秘めた弾だからな」

「ふ、僕には戦意を喪失しているようにしか見えませんがね」

 

そう言って殴りかかってくる犬を退け、千種の幻術を見切り、本当の居場所を探り当てるツナに、獄寺を乗っ取った【骸】は驚愕する。

 

「どういうことだ。・・・先程よりも精度が上がっている?」

「死ぬ気弾は外側から強制的にツナのリミッターを外すのに対し、小言弾は内側から全身のリミッターを外す。ツナは今まで無意識の内に抑え込んでいたブラッド・オブ・ボンゴレがフルパワーで使えるんだぞ」

「なるほど。・・・だが、お忘れですか? これはお仲間の身体だ。君は手をあげられるんですか?」

 

そう言って【骸】は獄寺とビアンキの身体を操り、ツナをサンドバッグのように殴り始めた。

無抵抗のまま殴られているように見えるツナだったが、獄寺とビアンキを傷つけないように急所を避けて攻撃を受け流していたのであり、攻撃を躊躇っていたのではなかった。

ツナは一瞬の隙をついて2人を沈黙させ、そっと2人を横たえるとリボーンに視線を向ける。

 

「リボーン、処置を」

「急にいばんな」

 

口ではそう言いつつ素直に二人の容態を確かめるリボーンに、ツナは安心する。

 

(さて、どう化けた?)

 

超直感に死ぬ気の炎。リボーンは正体を知らないが死ぬ気の零地点突破まで。全て使えていたツナだったが、生憎人間単体で出せる出力には限界がある。肉体の損傷を気にしなければそこそこいけそうだが。しかし、そんなことを気にせずとも使えるよう、武器は手に入れた。リボーンは己の生徒がどう成長したかを見極めようと、目を向ける。

 

「・・・・・・」

 

一方ツナは、己の右手に填まる指輪に目を落とす。羽がついていたりドクロが着いていたりなど、パンク風のものではない。だが、大きなベージュ色の宝石の左右に六色の宝石が配置されたもの。原型(オリジナル)のボンゴレリングと似たような形をしているが、全て色が違う。ベージュ色の宝石の奥にはゼブルスペルらしきものが飾ってあった。

 

(・・・ベージュ? 大空が青。ベージュ色・・・宇宙か!)

 

これは余談だが、宇宙の平均色はベージュだといわれ、「コズミック・ラテ」と名付けられている。

 

「・・・いつまでそこで寝転んでるつもりだ骸」

「・・・―――クフフ。格闘センスが格段に向上していることは認めましょう。だが、この程度で図に乗ってもらっては困りますね」

「・・・・・・」

「僕が持つ六つある戦闘能力の内、まだ一つだけ発動していないことにお気づきですか?」

「第五の道。人間道だな」

「その通り、我々の生きるこの世界が人間道です。そして実は六つの冥界の内、もっとも醜く危険な世界だ。皮肉ではありません。故に僕はこの世界を嫌い、この能力を嫌う。できれば発動させたくなかった―――・・・。この人間道は最も醜く」

 

彼はそう言うと己の右目に指を突っ込み血を流す。そして次にその目が見えた時にその数字は五となっていた。

 

「最も危険な能力ですからね」

「!!」

「どす黒い闘気だな」

「見えますか。闘気を放出しながら戦うタイプの戦士にとって、吹き出す闘気の強さがすなわち強さ!」

 

強大な力を手にした骸が襲いかかり、ツナは壁に叩きつけられる。

 

「クフフ、脆いですねぇ。・・・ウォーミングアップのつもりだったのですが」

「で、なくっちゃな・・・・・・・・・」

「なっ!」

「お前の力がこんなものなら、拍子抜けだぜ」訳)もっと来いよ骸。お前の力はそんな物か?

「クフフフフ。まったく君は、楽しませてくれる」訳)マスター。ここからが僕の本当の力ですよ。

「Xグローブは死ぬ気弾と同じ素材でできていて、死ぬ気の炎を灯すことができるんだぞ」

「まるで毛を逆立て体を大きく見せようとする猫ですね。だが、いくら闘気の見てくれを変えた所で無意味ですよ」

「死ぬ気の炎は闘気じゃない」

「ほう・・・。面白いことを言う。ならば見せて・・・、もらいましょうか!?」

 

襲いかかる骸の三叉槍の柄を熱で折り曲げ、その顔に炎を浴びせるツナ。

 

「つっ!!!」

「死ぬ気の炎と闘気ではエネルギーの密度が違うからな。限られた人間の目に見えるだけの闘気と違って、死ぬ気の炎はそれ自体が破壊力をもった超圧縮エネルギーだ」

「そのグローブは焼きゴテというわけか・・・」

「それだけじゃない」

 

そう言ったツナは骸に殴りかかる。が、骸が三叉槍を振り下ろした瞬間その姿が消えた。

 

「!? 消えた!?」

 

目を見開いた骸の背後に現れたツナは、骸の顔めがけて拳を繰り出す。咄嗟にそれを三叉槍でガードした骸だったが、壁際まで吹き飛ばされる結果になった。

 

「何だ、今のは・・・? 奴は一体、何をしたんだ・・・?」

「ウォーミングアップはまだ終わらないのか?」

 

ツナのその質問に、骸は悔しそうに表情を歪める。が、次の瞬間、哄笑した。

 

「クフフ・・・クハハハ! これ程までとは嬉しい誤算だ。これならば知略をめぐらせずともマフィア間の抗争を起すことができる!」

「それがお前の目的か」

「――おっと。これ以上話すつもりはないですよ。君は、僕の最強形態によって僕のものになる。見るがいい!!」

 

骸が影を放つ。

それを幻覚と見破ったツナは、そのすぐ後その幻覚に混じった石つぶてを死ぬ気の炎で振り払い、その噴射の力で高速スピードで移動し骸の背後に再び現れた。

ガードが遅れツナの拳をまともに顔で受けた骸は床に叩きつけられる。

 

「クフフフ。これがボンゴレ十代目。僕を倒した男か・・・殺せ。マフィアに捕まるくらいなら、死を選ぶ」

「・・・お前、俺のファミリーにならないか?」

「!?」

「!? ・・・ツナ?」

「リボーン。確か負けた奴が勝った奴の下に着く、それがマフィアのルールだったよな」

「だがそいつはマフィアを追放されている。その掟は通じないぞ」

「・・・・・・でも、殺したくないんだよなぁ」

 

クルリと背を向けた瞬間、ガッと骸に腕を後ろ手に取られ身動きが取れなくなる。

 

「クフフ・・・その甘さが命取りです」

 

骸に腹部を蹴られ、その衝撃で壁へと吹き飛ばされる。

 

「飛ばされる先を見るがいい!!」

 

その言葉に後ろを向けば、先程千種の手から弾き飛ばした三叉槍の先端部が壁に刺さり、突き出ていた。

 

「空中では受け身が取れまい。・・・君は、そのくだらぬ優しさで己を失くすのです!」

「いけ、ツナ。今こそXグローブの真の力を見せてやれ」

 

リボーンのその言葉に、ツナは手を壁の方向に向けると掌から炎を逆噴射した。

 

「なっ・・・、炎を逆噴射だと!?」

「死ぬ気の炎の推進力を使った高速移動だ」

 

リボーンの言葉に、骸はようやくツナが突如背後に現れたカラクリを知った。

ツナは逆噴射を利用してそのまま骸に突っ込み、骸の顔面を鷲掴みにしてそのままステージまで突っ込んでいく。

その間に炎が骸の邪気を浄化し、そのままステージの下に叩きつけられ昏倒した。




大宇宙のリングはツナ専用のリングなので、ツナの炎の出力に合わせてリング自身も成長していく特殊仕様です。おそらく。


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第二十二話 終わりとそれから

「終わったな」

「・・・・・・ああ」

「ご苦労様だぞ。ツナ」

「みんなのケガは?」

「心配ねー。ボンゴレの医療班が到着したらしいしな。ランチアの毒も持って来た解毒剤で間に合ったそーだ」

「良かった・・・。それに、骸もなんとか死なせずに済んだしな」

「ったく甘い奴だな。お前は」

「近づくんじゃねぇびょん!! マフィアが骸さんに触んな!!」

「あ、良かった。まだ動けるんだ」

 

犬と千種が床を這いツナ達に向かってくる。骸に身体を乗っ取られ利用されていたにも関わらず、その忠誠は変わっていないようだ。

その後、三人の生い立ちについて語られた。まあ、この場で彼らの生い立ちを知らないのはリボーンだけなのだが。

 

「じゃあ口が利けるみたいだから聞いておく。君達、俺のファミリーになる気ない?」

「ツナ・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・骸さんに聞くびょん」

「そっか。じゃあ最後に一つ、ごめん。そしてありがとう」

「「?」」

「? ・・・ツナ?」

 

呆然とツナを見ていた犬と千種だったが、突如現れた謎の人物達の放った鎖に捕らわれてしまう。

 

「うわっ。趣味悪っ。全身グルグル包帯だらけで黒ずくめとか・・・誰得だよ」

「“復讐者(ヴィンディチェ)”マフィア界の掟の番人で、法で裁けない奴らを裁くんだ」

「牢獄に突っ込んだりして?」

「ああ。その通りだぞ」

「殺されたりはしないの?」

「さぁな」

「しないよな・・・?」

「しねぇ方が良いけどな」

「だよね」

「俺達マフィアの世界は甘いもんじゃねぇ。・・・あいつらは厳しい罰を受けることになる」

 

リボーンの言葉に頷き、ツナは三人が消えた扉を見つめていた。

 

「それでもさ。俺は―――」

「ツナ・・・?」

「お待たせしました! ケガ人は!?」

 

復讐者と入れ替わるようにしてやってきたボンゴレの医療班に、ツナほっと息をついた。仲間達が無事だと分かって安堵しているようだ。

 

「・・・ねぇ。もしかしてランチアさんも? 他の脱獄グループも?」

「ランチアは解毒後に復讐者に連れて行かれたらしい。後は知らね」

「そ、そんなぁ・・・」

 

ツナは疲労が溜まっているのかその顔には疲れが見え始める。そして、眠るように倒れた。

 

「・・・相当疲れていたのか? 寝ちまいやがった。でも、九代目の司令はクリアだぞ。良くやったな、ツナ。俺も家庭教師として・・・、ねむい・・・ぞ」

 

二人仲良く担架に乗せられ運ばれていったのだった。

 

 

 

・・・・・・一ヶ月後。

球場にて、野球部秋の大会が開かれていた。

 

「「「わ―――っ!!」」」

「ホームランです!!」

「流石山本。野球の事となるとピカイチだな・・・」

「それ以外は駄目っすけどね」

「勉強とか特にね。後、獄寺君」

「なんスか! 十代目?」

「何でダイナマイト握りしめてるのかな?」

「あ、いや! これは・・・クセっス! 何か握ってないと落ち着かないというか!」

「ならいいや。もしかしたら獄寺君が山本の試合に水を差そうとしてるんじゃないか、って勘ぐっちゃったよ」

(は、はは・・・)

 

そんな事を野球の試合から目を離してわいわいやっていた時だった。

 

「―――ッ。ん・・・・・・? ・・・・・・・・・」(どいつだ?)

「?」

 

悪寒を感じたツナが心当たりを探してキョロキョロするが、当たりは見つからなかった。

 

「! ・・・・・・・・・一人は寂しそーだな。またいつでも相手になってやるぞ」

「また・・・いずれ・・・」

 

 

 

―――十数日前。

珍しくリボーンの監視がない状態でツナは学校から帰っていた。もちろん近くに獄寺、山本の姿もない。

 

「何かがあるな」

 

超直感でも何でもなく、ツナはそう思った。

と、ツナの目の前で反対車線の歩道から道路に猫が飛び出した。その様子に彼は納得する。

猫が轢かれる。そう思った時、歩道から少女が猫を助けるために飛び出した。

 

(ゲッ)

 

ツナも釣られて飛び出し、自らの意思で死ぬ気になり少女と猫を抱え歩道まで飛んだ。

 

「・・・・・・ふぅ」

「あ、あの」

「何やってんだ馬鹿! 道路に飛び出すとか自殺志願者か!?」

「ね・・・猫が」

「猫がどーした!? そんな事で死んだら元も子もねーだろっ!? 自分の命が大切じゃないのか!?」

「でも」

「デモもストライキもねーんだよっ! 馬鹿か!? 馬鹿なのかお前は!」

「ごめんなさい・・・」

「謝るなら最初からするなって話だろ!? お前が謝るべきなのは誰だ。親か? 俺か? 違うだろ! 大切にできなかった自分自身に謝りやがれ!」

「うぅ・・・」

 

ツナの怒鳴り声にどんどん小さくなっていく少女。と、その時。

 

「・・・? 誰?」

「・・・・・・? 何言ってんの、キミ」

 

疑問を感じたツナは、気配感知と精神感応を最大限に使って当りを探す。と、

 

「クフフフ。散歩はしてみるものですね」

「骸!?」

「おや、マスターも私が見えるのですか」

「いや、辛うじて声が聞こえる程度だけど」

「・・・貴方は、この変な髪型の人と知り合い?」

「だ、誰が変な髪型ですかッ! マスターも何とか・・・笑ってる!?」

「い、嫌。だって・・・ククク。ごめっ・・・そ、そうだよ。骸と俺は主従関係。で? 骸、何か考えがあったんだろ?」

「ええ。彼女は適性がある」

「・・・・・・ねぇ、キミ名前は?」

「・・・凪」

「よっし凪! 俺はお前を誘拐だっ!」

 

ガシッ。と少女、凪を小脇に抱えてツナはその場を立ち去った。

 

 

―――場所は変わって、影組日本基地。

 

「よっ。お前等」

「「「「!!」」」」

「ツナ様!」

「お帰りなさいませ」

「この子の部屋を作ってやってくれ」

「? 誰ですか? この子」

「六道骸の端末になれる子だよ」

「有幻覚・・・」

「クフフ。全く、気絶した少女に僕を取り憑かせるなんて、相変わらずマスターのやる事は読めませんねぇ」

「読まなくていいんだよ。読まれると面倒だからね」

 

上条はその後何故か凪になつかれた。

 

「というか犬と千種は普通にそこにいるんだね」

「骸さんが逃がしてくれたんだびょん」

「犠牲になった・・・」

「でも、綱吉さんのおかげでまた会えたびょん」

「流石綱吉様」

 

相変わらず持ち上げてくるなぁ・・・と、ツナは思ったそうだ。



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リング争奪編
第二十三話 嵐の予感


ツナが晩ご飯の遅さにしびれを切らし、ダイニングに降りてくる。と、そこにはおびただしい数の料理があった。

 

「え? 何これ、すげーごちそう・・・。しかもまだ作ってるし・・・」

「ツナ。これはどういう事?」

「ツナ兄が100点取ってきたとか?」

「そんな事じゃ母さんはここまでしないよ・・・。恐らく、これは・・・・・・」

「ランランラー♪」

「母さん!」

「あら、ツっ君~♪」

「包丁危ないから! どうしたんだよ。何か、態度変だよ?」

「あら、そうかしら・・・? そーいえばツナにまだ言ってなかったわね。二年ぶりにお父さん帰ってくるって」

「え? 父さんが帰ってくる?」(ヴァリアーがもう少しでくるのか・・・。こりゃ、凪の修行を早めなくちゃ・・・。あとランボの修行も。もう十分強いけど)

 

 

―――翌日。

「へー。良かったじゃねーか。親父さん帰ってくるなんて」

「うん・・・まあね・・・・・・」

「十代目のお父様がご健在だとは・・・。帰ってこられた暁にはご挨拶に伺います!」

「いやいや、いーよ! オレが一番関わりたくない面倒事の原因だし・・・」

「ハハハ。何だよ面倒事って」

「おぼろげな記憶なんだけど、父さん。多分ボンゴレ関係の仕事をしてると思う」

「「!」」

「ボンゴレって・・・」

「マフィアごっこじゃねーの?」

「・・・山本はそうだったね。もうそれでいいよ」

「マジですか?」

「恐らく、俺の記憶が正しければ。だよ、獄寺君」

 

その後、何故か中学生メンバーとちびっ子メンバーで街中に繰り出し遊ぶことになった。

 

「・・・まだかな」

「・・・? 何が? ツナ君」

「あ、いや。何でも」

「・・・でも良かった。私、ツナ君が黒曜から帰ってきた時ホッとしたんだ」

「はえ?」(フラグって回収しないと先進めないの?)

「もっと恐い感じになっちゃうかと思ったけど、ツナ君はいつものツナ君でなんかホッとしちゃった」

「あ、そ、そう?」(恐い感じって何だろなー?)

「・・・・・・ねぇ、ツナ君」

「ん?」

「何の音だろ?」

「爆発音?」(来た)

 

近くのビルが爆発し、ツナの元に一人の少年が飛来してきた。それを、ツナは冷静に対処し勢いを殺して地面に着地させた。

 

「ふぅ」

「す・・・すみませ・・・。!! ・・・・・・おぬし・・・・・・!!」

「・・・二十一世紀におぬしって・・・」

「十代目ー!!」

「大丈夫か、ツナ!!」

「大丈夫、そんなに頼りなく見える? 俺」

「いえ、そんな事は・・・」

「ゔお゙ぉい!! なんだぁ? 外野がゾロゾロとぉ、邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!」

「あぁ!?」

「・・・・・・」

「・・・なんなのさ。一体」

「嵐の予感だな」

 

そう言った後、リボーンは京子やランボ達を冷静に避難させる。

 

「すみません沢田殿」

「ん? その謝罪は何? これからしこたま迷惑掛けること? それとも、あのオモチャを俺から取り上げようとしてる?」

「・・・へ?」

「ゔお゙ぉい。もう鬼ごっこは終わりにしようや」

「そうだな。おい、ロン毛。俺と遊べ」

 

金属製の小手を両手に着けたツナは笑う。

 

「貴様ぁ・・・、このガキとはどーゆー関係だぁ? ゲロッちまわねーとお前を斬るぜ」

「出来るものならやってみな」

 

と、その時。上からダイナマイトが降ってきた。

 

「!! ―――なんだぁ?」

「その方に手を上げてみろ。たたじゃおかねぇぞ」

「ま、そんなとこだ。相手になるぜ」

(あっれー? 邪魔しないでってば・・・)

「てめーらもカンケーあんのか。ゔお゙ぉい、よくわかんねーが一つだけ確かなことを教えてやんぜ。オレにたてつくと、死ぬぞぉ」

「その言葉、そのまま返すぜ」

「ありゃ剣だろ? オレから行くぜ」

「やめてください! おぬし等の敵う相手ではありません!!」

「ん?」

「!」

「マジで?」

(なんでツナ嬉しそうなんだ・・・)

「後悔してもおせぇぞぉ」

「行くぜっ」

 

二人の剣が交わる。何度も何度も打ち合ううち、ロン毛が何かに気付いた。

 

「貴様の太刀筋。剣技を習得していないな」

「だったら何だよ」

「軽いぞぉ!!!」

 

その瞬間。剣から何かが飛び出し爆発を起こした。

 

「! 火薬!!?」

「山本!!」

 

直撃ではないにしろ、全身の所々に焦げ後を作って地面に倒れた。

 

「ヤロッ!!」

「おせぇぞ」

「!?」

 

煙幕の中から現われたロン毛が獄寺のダイナマイトを纏めて切断する。そして、蹴り一発で沈んだ。

 

「ぐあっ」

「獄寺君!」

「ゔお゙ぉい。話にならねーぞぉ。こいつら。死んどけ」

 

ロン毛が振るう剣を、ツナは余裕の表情で防いでみせる。さらに続けて連撃が放たれるが、その全てを捌いてみせる。

 

「え? 何これ。つまんね。力業だし・・・よっわ」

「ゔお゙ぉい・・・。なんだとてめェ・・・」

「じゃあ今度はこっちの番♪」

 

ツナはそう言うと、即。攻撃に移る。瞬間的にロン毛に近づくと、数百にも近い「払い」を繰り出した。

 

「なっ」

「ここからお台場当たりまで飛ばしてあげようか?」

 

ツナはさらに

払いを強め体勢を崩していく。

 

「な・・・にぃ・・・」

「リボンヌ。山本のバット、二本ない?」

 

余裕そうな笑みを崩さないツナは、どこにいるかも分からない相手にそう聞いた。すると、どこからともなくバットが飛んできた。

ツナはそれを拾い上げ、山本が持っている刀も拾う。

 

「山本、借りるよ・・・。ありがとリボーン」

 

ツナは勢いづけてバットを振り、刀の形にして構える。

 

「ゔお゙ぉい!! 俺相手に剣術かぁ? 悪いが二刀流の剣士なんて山ほど見てきたぜぇ!」

「あ、そう?」

 

そしてツナは高速で回転しながらロン毛に突っ込んでいく。

 

「ゔお゙ぉい。それじゃあ子どもに考えさせた必殺技のレベルだぁ!」

「ふーん」

 

ロン毛が横薙ぎに払った剣をかわすように空中で回転を続けたまま、飛び越してかわす。

 

(?!)

(今のは・・・!? まるでUFO・・・!)

 

が、

 

「あ」

 

勢い余って近くのガラスに突っ込んだ。

 

「って、窓に飛び込みやがった!?」

「あ、あれも何かの技のうち・・・!!」

「いや、違ぇだろ」

「!?」

()()。良く分かんねぇ空中機動に、「刀」という重さの遠心力を加えたのか。ぶっつけで大失敗したが)

 

ガラスの奥からツナが出てくる。

 

「おー、いってー。なかなかやるなチミィ」

「ただの自爆だろ」

(相変わらずこの技は難しいなぁ。新しい体で出来るようになるまで一体どれほどかかるのやら・・・・・・)



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第二十四話 ハーフボンゴレリング

前書きって何書いたら良いんでしょうね。


ツナは二本の刀をチンチンと鳴らしながら前に出る。

 

「さぁ、カモーン」

「なんなんだぁ貴様はぁ? なぜこいつのカタを持つ」

「誰のカタも持たねーよ? 俺は面白い方に流れるだけだ」

 

子どものチャンバラのような斬る気が全くない剣術を繰り出すツナ。

 

「うおーーーー~~」

「ゔお゙ぉい! 幼稚すぎるぞぉ!!」

「その幼稚な剣術に対抗出来てないのはどこの誰かな?」

 

ツナはそう言うと剣をその辺の地面に捨てる。

 

「手が疲れてきた。やっぱこっちの方がやりやすい」

 

そう言ってツナが出した手には27と書かれた手袋がはめられている。そして自力で死ぬ気に変わった。

 

(・・・Xグローブ。Vr.UR(ウラヌスリング)

 

ツナのグローブは骸の時と違ってエンブレムがXから宝石に変わっていた。

 

「ゔお゙ぉい。なんてこった・・・。死ぬ気の炎・・・、まさかお前。噂に聞いた日本の・・・。そうか・・・・・・、お前と接触するために・・・・・・。ますます貴様等、何を企んでんだぁ!? 死んでも吐いてもらうぞぉ。オラァ!!!」

「死んだら吐けねぇだろ、馬鹿か!!」

 

ツナのストレートの拳でロン毛は遠くに飛んでいく。

 

「馬鹿だな。アイツは馬鹿だ」

「沢田殿。すみません、拙者はバジルと言います。親方様に頼まれて沢田殿にある物を届けに来たんです」

「は? 俺に・・・? 何を?」

「これです」

「指・・・輪・・・?」(大宇宙の指輪(ウラヌスリング)があるから要らないんだけどなぁ)

「何かはリボーンさんが知っています」

「リボンヌが?」

「これを持って逃げてください!」

「えー? 逃げる必要ないじゃん」

「ゔお゙ぉい。テメェ、このまま、逃がすと思ってんのかぁ!!?」

「復活、早!」

(スペルビ)・スクアーロ。相変わらずみたいだな・・・。子ども相手にムキになって恥ずかしくねーのか?」

 

その声がした方をツナ達が見ると、ロマーリオさん達を連れたディーノが立っていた。

 

「!?」

「ディーノさん!」

「! 跳ね馬だと!?」

「その趣味の悪い遊びをやめねーって言うんなら。俺が相手になるぜ」

(日本のこのガキ、跳ね馬とのコネを持ってやがるのか・・・。こいつを相手するとなれば一筋縄じゃ行かねーな)「ゔお゙ぉい、跳ね馬ぁ。ここでお前をこいつらもろともぶっ殺すのも悪くねぇ。だが、同盟ファミリーとやり合ったとなると、上がうるせぇからなぁ。今日のところは大人しく・・・、帰るわきゃねぇぞぉ!!」

 

ツナは腕を掴まれスクアーロに持ち上げられる。

 

「いったいなー・・・」

「ゔお゙ぉい!! てめェ等、何しようとしてんだぁ!?」

「んな事、知らねーよ。ただ、一つ言える事があるぜ」

「あ゙ぁ?」

「お前の負けが確定したって事がね」

 

スクアーロが消えた。周りの人間はそうとしか見えなかった。もしこの場で誰かがビデオを撮っていたら、何が起こったか分かっただろう。

ツナは片手と両足をフルに使って、居合い払い“奈惰嶺”を繰り出していた。

 

「・・・なーんだ。足でも払える程度か」

「ツナ! 大丈夫か?」

「ディーノさん。俺は大丈夫です。指輪はとられちゃいましたけど」

 

盗られた、というのはウソだ。払った時にロン毛の服の内ポケットに突っ込んでおいたツナだった。

 

「そうか。とりあえず廃業になった病院がある。そこでバジルの治療をしながら話を進めよう」

「はいはい。まーた面倒事か・・・」

「その割には顔が笑ってるぞ」

「楽しいからね。一方的な戦いほどつまらないものはないから」

「大丈夫か、ツナ!」

「いったい何なんすか? 奴は?」

「あ、二人とも」

「お前等の戦闘レベルじゃ足手まといになるだけだ。とっとと帰って良いぞ」

「「!」」

「まぁ、一撃でやられちゃったしねぇ・・・」

「「!?」」

「行くぞ」

 

リボーンに引っ張られて二人から離されるツナ。

 

「お前がトドメさしてどーする」

「リボーンだって分かってるでしょ? あれだけ一方的にコテンパンにされて、なおかつ俺に足手まとい呼ばわりされたんだよ? それこそ“死ぬ気”で強くなってくれるんじゃない?」

「お前、性格悪くなってきたな」

「誰かさんのおかげでね」

「・・・・・・」

 

 

 

―――病院。

 

「バジルはどーだ? ロマーリオ」

「命に別状はねェ。傷は浅いぜ、ボス。よく鍛えられてるみてーだ」

「で・・・。一体全体何が起こってるんですか? 厄介事なのは確かなんでしょうけど・・・」

「リングが動き出したんだ」

「リング? 貞子が何かしてくるの?」

「映画の話じゃねぇ。お前が奪われたヤツだ」

「?」

「正式名をハーフボンゴレリンクというんだ。本当は三年後までしかるべき場所で保管されるはずだったボンゴレの家宝だ」

「ハーフ? 二つ併せて一つのリングって事?」

「そうだぞ。長いリングの歴史上、この指輪のためにどれだけの血が流れたか分かんねーって言う、いわく付きの代物だ。値はつけられねーぞ」

「何それ、恐っ。なくてよかった」

 

胸をなで下ろすツナだったが、ディーノが申し訳なさそうに声をかけてくる。

 

「それがなあ・・・、ツナ・・・」

「まさか・・・」

「ここにあるんだ」

「・・・・・・囮? 誰だよ。そんなサイテーなことさせたヤツ」

「あー・・・。親方様ってヤツだ」

「親方様ぁ? ディーノさん。それ誰? 一発殴らないと気が済まない」

「そ、それは教えられないなぁ」

 

目をそらすディーノにツナはため息をつく。

とりあえず、と箱を開けたツナは眼を開く。

 

「あれ? 真ん中の青いリングだけ・・・?」

「他のはお前の守護者(ファミリー)に配られてるんだ」

「え、えぇ・・・?」

 

ツナは顎に手を当てて何かを考えるようなそぶりをした後、

 

「リボーンがファミリーって言ってたのは・・・。獄寺君、山本、了平さん、雲雀さん・・・ランボとか?」

「あと一人、足りねーな」

「誰だろう・・・。無理矢理にでも吐かせようか」

「誰から?」

「親方様とやらだよ。目星はついた」

「ちなみに誰だと?」

「父さん」

「! ・・・・・・外れてたらとばっちりだぞ」

「小学校に上がる前のおぼろげな記憶の中に、女の子と出会ったパーティがある。その時ザンザス・・・だったっけ・・・っていう人に会って。その人がボンゴレって言ってた気がするんだよ」

「へ、へぇ・・・」

「なーんでうちの父さんがボンゴレと関係があるのかなぁ・・・って今思った。全部アイツのせいな気がしてきた。お礼も込めて踏んづけてやろう」

「ツナ・・・手加減はしてやれよ・・・?」

「いやいや・・・。止めろよ、リボーン」

「嫌だぞ。俺だって自分の身が一番カワイイからな」

 

世界最強の殺し屋にそんな事を言わせるなんて自分の弟弟子はどれだけなんだ。と、ディーノは尊敬と恐怖を同時に抱いた。




後書きって何書けば良いんでしょうか。


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第二十五話 沢田家光

家に帰ったツナが見たのは、大量に干されたつなぎ。泥だらけの長靴、ツルハシとヘルメット。酔っ払った子ども達と・・・リビングで寝転がるダメ親父の姿だった。

 

「・・・・・・」

「ツナ?」

 

リボーンの心配そうな顔に、ニコリと微笑むツナ。良かった。とリボーンが安堵したのもつかの間。

ツナの姿がかき消え、無防備な家光の腹部に掌底を叩き込んだ。

 

「ぐぼぉっ!!」

「やあおはよう父さん。俺としては今からつもりに積もった鬱憤晴らしという名のHA☆NA☆SHI☆A☆Iをしたいんだけど」

 

突如愛息子に叩き起こされ、なおかつそんな事を言われた家光は目を白黒させた。

 

「・・・つ、ツナ?」

「ああ、安心して。母さんは父さんが食べ尽くした料理の追加を買いにいってるから。うん、今なら全部話せるからゲロッちゃおうよ。父さんの仕事とか、俺がどんなことに巻き込まれてるのかとか、二年間イタリアで何してたのか。とかをね? スッキリすると思うよ? 母さんには内緒だからねー」

「つ、つつ、つつつっつつ、つ、ツナ!?」

「しっかりしなよ父さん。俺の名前に、“つ”は十個も要らないし、小さい“っ”なんかもっと要らないから。で、結局アンタ、イタリアで二年間何してたの。やっぱり父さんの仕事ってボンゴレ(マフィア)関連? ま、それが打倒だよね。バジル君のいう“親方様”ってのも父さん? 囮役をさせるなんて上司として大丈夫? しっかりしてよ? 何か知らないけど聞いた限りじゃボンゴレピンチじゃん。ダメダメだなぁ。俺よりダメなんじゃないの? (笑)」

「―――ッ?! リボォオォオォオォオオンッッ!!! お前、俺の愛する息子に要らんこと教え込みやがったなぁあぁあぁあッッ!!?」

「っるせぇぞ家光! 俺じゃねぇ! 元々だ! ・・・って聞こえてねぇみたいだな」

 

怒りと悲しみと憎しみと、色んなものが混じり合った叫び声をあげた家光は、凄まじい勢いで繰り出されたリボーンの跳び蹴りによって、地に沈められた。

そんな家光の様子を見てツナはため息をついた。

 

「ちょっとリボーン。確かにO☆HA☆NA☆SHIには肉体言語(そういうやり方)もあるけど手加減してよ。守護者の情報とか、父さんのこととか、色々聞きたかったのに」

「俺がこうしてなくても、どちらにしろ家光は暫く再起不能だったぞ? ・・・というか、自分で探せ。こんなのに頼らなくてもツナならできんだろ」

「・・・意図的な情報封鎖だよ、全く・・・。情報を集めるのも楽じゃないんだよ?」

「できんじゃねェか」

「じゃあちょっと部屋に戻ってる・・・」

 

面倒だなぁ。と言いながら階段を上っていくツナを見届けてから、リボーンは家の床に伏している家光を見る。

 

「・・・いつまでそうしてるつもりだ。家光」

「・・・友よ。・・・俺ぁ、暫く立ち直れない」

「慰めの言葉はかけてやんねーからな」

 

リボーンは床に伏したままそういう家光に冷たい言葉を言ってリビングの奥に消えていった。

 

 

―――次の日。

朝四時。

 

「ツナ―――!!!」

「あ?」

「朝飯取りに行かねーか!?」

「父さんの証言なら取っても良いけど」

「失礼しましたッ!」

 

釣り竿と網を持って入ってきた家光は、ツナの言葉にそのままUターンして消えていった。

 

(・・・? 何だったの?)

 

ツナはとりあえず寝なおし、七時ぐらいに普通に起きる。

が、起きてそうそう家光がランボに酒を飲ませようとしたため、慌てて止める羽目になる。

 

「うおっすツナ。で、どーなんだ、どーなんだ? 学校は」

「え?」

「さんすうだっけ? あれ笑っちゃうだろ!?」

「そりゃ中学生だからね・・・。流石に小学生の問題で唸ってられないよ・・・」

「そっかそっか。父さん、今回の滞在中にさツナに父さんの色んな経験談を聞かせようと、色々メモってきたんだぞ」

「ん? ついに吐く気になったんだ。いいよ、聞いたげる」

「―――っと思ったけど読めねぇわ! 俺の字汚すぎっ!!」

 

ツナはころころ行動を変える家光に首を傾げる。と、そこで。

 

「おぉ? なんだ、ツナ。色気づいてんな。それ指輪だろ?」

「ん? あぁ、ウラヌスリング?」

 

ツナは自分の左手の中指に填まるそのリングに目を落とす。

と、同時。自分の首にかけられたボンゴレリングに気付いた。

 

(あっれー!? 机の上にとりあえずで放置してたんだけどなぁー?)

 

ツナは何度か頭をひねった後、朝食を取り学校へと向かった。

その途中でバジルの様子を見に病院によった。

 

「失礼しまーす」

「おっす、ツナ」

「おはようございます! 10代目!」

「獄寺君に・・・山本・・・? 何してんの」

「いや、妙なことがあってよ」

「そーなんスよ」

「?」

「ポストにこんなもんが入っててよ」

「もしかしたら昨日の奴がらみかと思いまして。跳ね馬に、ここの場所は聞いてたんで」

「あ、ハーフボンゴレリング」

「知ってんのか?」

「やっぱ十代目も持ってるんですね!」

「あー・・・。その指輪はさ。ハーフボンゴレリングって言って・・・詳しくは知らないけどボンゴレファミリーに配られるものらしい・・・」

「じゃあ詳しく説明してやるぞ!」

「リボーン! ・・・ディーノさんも!」

「ボンゴレリングは全部で七つある。そして、七人のファミリーが持って始めて意味を持つ。ツナ以外の六つのリングは―――

 

 

 

 

―――次期ボンゴレボス沢田綱吉を守護するに相応しい六名に届けられたぞ

 




最後の一文が大きいのは、獄寺達が感じた衝撃をあらわしてるです。


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第二十六話 それぞれの家庭教師

「ボンゴレリングは初代ボンゴレファミリーの中核だった七人が、ボンゴレファミリーである証として後世に残したものなんだ。そしてファミリーは代々必ず七人の中心メンバーが七つのリングを受け継ぐ掟なんだ」

「へー」

「十代目!! ありがたき幸せっす!! 身の締まるおもいっす」

(めっさ喜んどるし・・・)

「獄寺のリングは『嵐のリング』、山本のは『雨のリング』だな」

「何それ、なんかカンケーあるの?」

「あるぞ。初代ボンゴレメンバーは個性豊かなメンバーでな。その特徴がリングにも刻まれているんだ。

 

初代ボスは全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する。大空のようだったと言われている。ゆえにリングは「大空のリング」だ。

 

そして守護者となる部下達は、大空を染め上げる天候になぞらえられたんだ。

 

荒々しく吹き荒れる疾風          「嵐のリング」

すべてを洗い流す恵みの村雨        「雨のリング」

何ものにもとらわれず我が道を行く浮き雲  「雲のリング」

激しい一撃を秘めた雷電      「雷のリング」

実態のつかめぬ幻影  「霧のリング」

明るく大空を照らす日輪          「晴のリング」

 

っつっても、お前達の持ってるリングだけじゃまだ・・・」

「本調子じゃないんだろ? ハーフボンゴレリングって紹介された時点で分かってるよ」

「・・・」

「いって! 蹴ることないだろ!?」

「あの・・・、わりーんだけどさ・・・。オレは野球やるから指輪はつけねーなー。話しよくわかんねーし・・・」

「まぁそれ持ってたら昨日のロン毛がまた狙ってくるしね・・・」

「「!!」」

「遅くて十日後に・・・」

「アイツ・・・来んのか・・・。十日・・・」

「ん? どーしたの二人とも」

「これ、オレんだよな。やっぱもらってくわ。負けたまんまじゃいられねー質みてーだな。オレ」

「オレも十日でこのリングに恥じないよう生まれ変わって見せます!! 次は奴をぶっ飛ばします!」

「あ、うん。ファイトー・・・・・・」

 

二人を見送ったツナはとりあえずバジルのお見舞いに行こうとした。が、

 

「ちなみにもうすぐ「晴のリング」を持つ奴が来るぞ」

「晴・・・?」

「よしっと」

(何だっけその恰好・・・ぱお「パオパオ老師!!」・・・ん?)

「オレを鍛え直してくれるというのはまことか!!?」

「あ、やっぱり了平さんか・・・。確かにこれ以上ない晴だけど。どっピカーンだけどさ・・・」

「おっ、沢田。おはよう!!」

「おはようございます了平さん。それで・・・そのリングのこと、分かっていますか?」

「敵を迎え撃つのだろ!? 相当緊迫しているらしいな!! 昨日の出来事十日後のこと、指輪の話も聞いたぞ・・・・・・」

「え」

「全部忘れたがな!!」

「たちまち意味ね―――!! ・・・とりあえずオレからもう一度簡単に説明します」

「お、頼む!」

 

ツナは、これでもかというほどかみ砕いて現状の説明をした。

 

「では、このリングは沢田が跡を継ぐ、ボンゴレというマフィアの証なんだな?」

「はい。が、どうやら今着けているそれだけでは意味がないようでして。俺の前任のボンゴレ九代目と、門外顧問が別々の人間を推薦したため、それを奪い合う形になっています」

「モモンガ・・・顧問?」

「門外顧問です。モモンガ顧問ってどんな顧問ですか」

「むぅ・・・。極限に理解不能だが、これだけはわかるぞ! 要するに俺達はこの戦いに勝って、このリングを守り抜いた上で、相手のリングを取り上げれば良いんだな!?」

「おーっと、極限に短縮、簡略化した説明をありがとうございます。・・・でも、まあ。今はそれを理解して頂ければ充分です」

「・・・で、このリングだがそれぞれ種類が違うのか? ・・・お前がつけているのとは別物のようだが」

 

了平がツナが着けているリングを見つめ、訊ねてきたのでツナは頷く。

 

「そのハーフボンゴレリングは晴の守護者のリングです。確か晴は、“明るく大空を照らす日輪”ファミリーを襲う逆境を自らの肉体で砕き、明るく照らす日輪となること。・・・それが役割です」

 

だよね。と小声でリボーンにツナが確認すると頷きが返ってきた。

 

「ふむ。それで先程俺を晴だといったのだな!」

「はい。了平さんの明るさは皆を太陽のように、明るく照らしてくれる。・・・だから、晴の守護者には貴方が相応しいと思うんですが・・・」

「・・・そのかけられた期待に、是非とも応えないといかんな」

「お任せしても良いですか?」

「極限任せろ!!」

(あーっもう。ホントまぶしいよ!)

「そうだ。パオパオ老師、今日は俺のために幼馴染みを呼んでいただいたとか」

「幼馴染み・・・?」

「腐れ縁だぞ」

 

リボーンがそう言うと、おしゃぶりが光り出す。

 

(あ、もしかして。コロネロ?)

「久しぶりだな。コラ!!」

「あ、やっぱり?」

「元気そうだな、コラ」

「その蹴りも相変わらずだね♪」

 

ツナは楽しそうにコロネロの蹴りを小手で防いでみせる。

 

「あ・・・。俺ちょっと学校に出向いてくるよ」

「ん? まぁ行ってこい」

 

 

 

―――学校。

応接室。

軽くノックをすると、中から単調な返事が返ってくる。

 

「誰?」

「沢田です」

「・・・入って良いよ」

「失礼します」

「一人?」

「わざわざ雲雀さんの前で群れるとでも?」

「まぁ、妥当な判断だろうね。・・・もしかして君が尋ねてきたのってこれが理由?」

 

そう言って、雲雀が掌をツナに見せてくる。案の定というか、そこにはハーフボンゴレリングが載せてあって、ツナは溜息をついた。

 

「その指輪はどこで?」

「この机の上に置いてあったよ」

「なんつーテキトーな・・・」

「誰の仕業か知ってるの?」

「不法侵入とかで咬み殺そうとか思ってるんなら、やめてください・・・お願いしますね。で、見せてもらっても?」

 

雲雀の許可をもらいツナはリングの刻印を確認する。

 

「これは・・・雲? 雲雀さんの性格も考えたらこれが適当な役割だろうなぁ・・・」

「? 何の話だい?」

「えーっとですね・・・」

 

ツナは一通りボンゴレリングについて説明する。

 

「・・・それで、その雲のリングは“何ものにもとらわれず我が道をいく浮雲”。何ものにもとらわれることなく、独自の立場からファミリーを守護する孤高の浮雲となること。というのが役割なんですよ」

「ふぅん・・・つまり、君達とは群れなくて良いけど。その守護者にはなってもらうっていうこと?」

「あ、イヤなら別にそう言ってくれていいんですよ。他の人を探しますから」

「何言ってるの? さっき君が言ったんじゃない。これは僕の役割だ。って」

「あれ、聞いてたんですか」

「強い相手と戦えるんでしょ? なら、やるよ。・・・弱い相手ばかりを噛み殺していてもつまらないだろ?」

「ええ。せめて自分と同列か、さらにその上と戦ってみたいですよね」

「・・・君」

「はい?」

「君となら、群れても楽しそうだね」

 

誰も見たことないであろう優しい微笑みでそう言われたツナは、一瞬でテンパりそして落ち着いた。

 

「え? 何ですかそれ。俺を『強いヤツをおびき寄せるホイホイ』みたいに思ってます!?」

「思ってるわけないじゃん」

「じゃあ何で群れても楽しそうとか、雲雀さんが言うんですか・・・」

「純粋にそう思ったからだけど」

「・・・・・・まぁ。嬉しいから良しとしましょう」

 

ツナは失礼しますと言って応接室をでる。家庭教師の旨も伝えて。

 

(山本は恐らくお父さん。雲雀さんはディーノさんかな? 了平さんはコロネロ。獄寺君は・・・? ま、いいか!)



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第二十七話 レッスン開始!

暇つぶしで書き始めた小説がヒートアップしてる。感想はちゃんと読んでるけど返信が出来ていない状態です! しっかり読んでいます! 励みになっているのでこれからもごひいきに!


「さて、ツナ」

「ん? 何?」

「お前も俺が鍛えてやろうか?」

「うーん。じゃあ一週間ほどかけて体のエンジンかけていこうか!」

「・・・・・・は?」

「死ぬ気弾撃って良いよ~。リミッター外してどんどん行かないと。体が温まらないからね!」

「そんな気楽に死ぬ気弾撃たれるヤツ俺は初めて見たぞ」

 

そんな事を言いながらリボーンは躊躇無く銃を撃つ。

復活したツナはズボンとシャツはちゃんと着ていた。

 

「ふっかーつ!! 死ぬ気で鍛える!!」

「死ぬ気でやれよ。もし後継者争いに敗れたら、お前だけじゃない。お前の仲間も皆殺しにされちまうんだからな」

「・・・その時は、ボンゴレ壊滅させてでも止めるさ」

「できそうで怖ぇーぞ」

 

 

 

 

「・・・ん? どこここ」

 

気がつくとツナは崖の上にいた。

 

「何ここたっか!」

「早くも第一段階突破か。しかしホント基礎体力だけはあるな」

「舐めんなよリボーン。俺はそんじょそこらの人間とは違うんだから。神ツナだぜ?」

「いっぺん死んでこい」

「鉛球を撃つなし!!」

「死ね」

「ストレート?! そんなに神ツナが不満ですかぁ!?」

 

暫く、というか一日リボーンとのお遊びで時間を費やした。

ちなみに、帰ってきてすぐに家光は布団で眠っていた。

 

 

―――次の日。

 

「さて、ツナは基礎体力が十分って事は証明されたからな」

「確認のためだけに、四回もクライミングさせられたからね・・・」

「つーことで次は第二段階だ」

「ほぼワンツーステップで第一段階突破なんだけど・・・。実感わかないなぁ」

「沢田殿!! 順調に第二段階とは、流石ですね!」

「バジル君・・・。体は大丈夫なの?」

「ええ。ロマーリオ殿と親方様の薬草のおかげでかなり良くなりました」

「で、なんでここに?」

「沢田殿の修行のお手伝いに来ました」

「てつ・・・だい?」

「第二段階はスパーリングだぞ。バジルをダウンさせたらクリアだからな」

「では始めましょう」

「なんか勝手に進んでいく・・・・・・」

 

ツナは思わず頭を抱えた。その横でバジルは飴玉のようなものを飲み込み死ぬ気モードへと移行する。

 

「手合わせ願います」

「死ぬ気モードなの・・・?」

「バジルもガンガン攻撃して言いからな」

「はい」

「と、とりあえずルール作ろう! ルール!」

「じゃあ俺が作ってやる。

 

一、回避可能な攻撃はしっかりと回避しろ。

二、ふざけずにマジメにやれ

三、バジルに気を遣うな

四、バジルが戦闘不能になるまで続けろ」

 

「・・・え。マジでそのルールでやるの?」

「ったりめーだ。俺はお前の本気がみてーんだぞ」

「沢田殿! 行きますよ」

「いいよ。いつでもどうぞ」

 

ツナのその言葉を開始の合図に、バジルが突っ込む。勢い良く拳を振るうが、ツナは軽くかわしてしまう。それを見たバジルはさらに連続攻撃をと移行するが、ツナは防ぐことなくすべてをかわしてしまう。

続けて放たれた叩き付けの攻撃を、後ろに跳ぶことで回避するツナ。バジルも攻撃の度に死ぬ気になり、攻撃力と速度を上げているがツナには届かない。

地面をこするような足払いを繰り出す。が、少し後ろに下がりかわされる。

追撃で飛びかかるような拳を繰り出した。が、体をひねることでかわされた。

勢いそのままに体をひねり裏拳を放つ。が、体を反らし避けられた。

そのまま一回転をし、もう片方の手で上から下へ叩き付けるような拳を打つ。が、後ろに高く跳んでかわされる。

空中では身動きが取れないと思い、地面に転がる石を大量に散弾銃の如く投げつける。が、空気を蹴り飛ばし避けられた。

 

「あぶねー。服がボロボロになる所だった・・・」

 

手合わせ、という名目だったのにバジルもだんだん本気になってきたのか、速度を上げて突っ込んでくる。それをかわし続けるツナ。崖を殴っていたバジルがツナがいないことに気付き辺りを見渡すと、地面をタタタ・・・と走っていた。

勢い良く突きを放ったバジルだったが、彼の目の前にはツナはおらず。振り返ろうとすると、指で頬を突かれた。

 

「よし、俺の勝―――」

 

その瞬間振るわれた拳をツナはかわす。

 

「沢田殿・・・。この戦いのルールを忘れたんですか?」

「・・・いや?」

 

今度はツナが動く番だった。一瞬で距離を詰め、バジルのケリを避け後ろに回った。

そして、バジルが振り返った時。感じたのは、

 

 

 

 

―――死。

 

 

 

 

その一つである。

だが、ツナの拳がバジルにあたることはなく、止められた。寸止めされたのだ。

 

「お腹すいた。ご飯にしようよ。リボーンに言ってみよう」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。そうしましょう」

 

バジルはもうどう返せば良いのか判断が間に合わず、肯定することしか出来なかった。

だがこれだけは分かる。自分は完全に負けて───ツナには勝てないという事が。

 

「・・・・・・・・・」

 

背後を見る。

視界に映った光景は、先ほどの寸止めの衝撃で吹き飛ばされ、跡形も無く破壊された山だった。

 

「え。なに? イヤなの?」

 

ちなみに、勝負の途中から家光がいた。

 

「なぁ、リボーン」

「なんだ?」

「あれは俺の息子なんだろうか・・・」

「一言で言えば化け物だろうな。なんてヤツを育て上げちまったんだ」

「俺は何もしてねーよ・・・」

「でも気になるな。あのツナが、死ぬ気の状態であの拳を振るったらどうなるのか」

「世界が消えるんじゃねーの・・・?」

「ありえねー話じゃねーから怖ぇな」

 

ツナは気付いていなかった。手合わせを楽しんでいたから。



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第二十八話 邂逅

十日後まで来ないと言っていたヴァリアーが来ていた。ちなみに、ツナは死ぬ気の零地点突破はリボーンの満足する程度には習得出来ている。

 

「さーて。ランボはどこかなぁ~」

 

亜音速で並盛を駆けるツナ。これで死ぬ気の炎を使ってもいなければ、死ぬ気ですらないという。

 

「お、いたいた」

 

ツナがランボ達を見つけて近づくと、丁度了平、山本、獄寺の順に敵を倒して登場した。

 

「あっはっはー」(チッ。愛気の技を久しぶりに使いたかったのに。多人数技とか使ってないんだよなぁ久しく)

「十代目!」

「しかし思ったより骨のない連中だな」

「部下の部下みたいなもんだからね」

「! 来るぞ」

 

闇から男が現われる。

 

「・・・・・・・・・。お前達がやったのか」

「「「「!!」」」」

「雷のリングを持つ俺の相手は、パーマのガキだな」

「!」

「邪魔立てすれば皆消す」

「「「!」」」

「待てェ、レヴィ」

 

止めに入ったのはヴァリアー仲間。彼らはレヴィにこう言った。

 

「一人で狩っちゃダメよ」

「他のリングの守護者もそこにいるみたいなんだ」

「ゔお゙ぉい!!! よくもだましてくれたなぁ、カスども」

「あ、よく無事だったね」

「!」

「あんにゃろう」

「雨のリングを持つのはどいつだぁ?」

「オレだ」

「なんだぁテメーか。三秒だ三秒でおろしてやる」

 

ピリピリした空気の中、ツナは眠そうに目をこすっていた。

 

「のけ」

「でたな・・・。まさかまたヤツを見る日が来るとはなXANXUS(ザンザス)

「「「「!!」」」」

 

XANXUSは殺気を霧散させ、全員の行動を封じる。

 

「沢田綱吉・・・」

「なぁに?」

「まさかボス・・・アレを!?」

「オレ達まで巻き込む気か!?」

「ヤベーぞ! (ツナ以外)逃げろ!」

「死ね」

「お前が死ね♪」

 

変声期が来てない声で放たれたその声は、XANXUSの殺気を一回りも二回りも上回り、その場を支配する。敵味方含めて誰一人動けなくなった。

ツナの子どもらしい笑顔では想像出来ない圧力の殺気に、その場の全員は重力すら感じていた。

そのまま。笑顔のままツナは拳を握る。死ぬ気の炎も何も纏っていないただの拳。

 

()()

 

この場にいたリボーンそして駆けつけた二人はその威力を、恐ろしさを知っている。

飛び出して拳を振るおうとしたツナの目の前にツルハシが刺さった。それでも拳の勢いを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が響き、空気の塊が可視化して天に昇っていった。

 

「なんだありゃ・・・」

「アイツ、大空だろ・・・。なんだよこの威力・・・」

「・・・ツナ。そこまでにしておけ」

「あ、アイツは・・・」

「ここからはオレが取り仕切らせてもらう」

「なーに格好つけてんの? 邪魔しないでよ父さん」

「なっ、十代目のお父様!!」

「家光・・・!」

「て・・・てめー、何しに」

「XANXUS、お前の部下は門外顧問であるこの俺に剣を向けるのか。・・・それと、命の恩人に礼くらいは言ってほしいな」

「ハァ? 命の恩人だぁ?」

「お前はツナの拳を受けて生きていられたのか? 言っておくが、ツナは拳圧だけで山一つ吹き飛ばしたからな」

「何それ・・・。晴の守護者より強いんじゃないの・・・?」

「流石です十代目!」

「獄寺君。いつもの調子に戻るのが早いよ」

「今更、門外顧問の出番でもねーだろうがよぉ!! 家光ッ!!」

「いいや、ここからは俺達門外顧問が仕切らせて貰うぜ」

「ねぇねぇ。面倒だから全員ぶっ飛ばしていい? それか暇つぶしにヴァリアーの下っ端数十人貸して」

「ツナ。落ち着け、黙ってろ」

 

リボーンの忠告を無視してツナは突っ走る。

 

「あ、じゃあこうしよう! 同じリングを持つ守護者同士一対一のガチバトル!」

「はっ、良いだろう。一対一で敵うのか?」

「全部取られても取り返せる自信はあるよ?」

「なら、同じリングを持つ者同士で、正々堂々ガチンコバトルだ!」

「「お待ちください」」

 

 現れたのは、顔の上部分を覆面で隠した同じような容姿をした女性二人。

 

「ここからは、我々チェルベッロ機関が仕切らせて頂きます」

「ここに、九代目の死炎印もあります。・・・異存はありませんね?」

「・・・待て、俺はお前達の組織のことは知らないぞ」

「我々は九代目直属の機関です。沢田家光氏、貴方の力の及ぶところではありません」

 

チェルベッロ達はXANXUSに視線を向け、XANXUSが何も言わないことを確認すると、無表情ながら満足そうに頷いた。

 

「ご納得頂きありがとうございます。・・・それでは、明日の夜並盛中にてリング争奪戦の第1戦目を行います。対戦カードはその際に発表致します」

 

チェルベッロ達がそう宣言するのと同時に、ヴァリアーの幹部達は光に包まれ、その場を去った。

 

「・・・・・・・・・おやすみ」

「寝るな! 獄寺、山本、了平、お前らは修行を続けろ。まだ、完璧じゃねー奴もいるだろ。ギリギリまでやれ。じゃねーと・・・死ぬぞ」

 

それは脅しではない。あちらは『ヴァリアー・クオリティー』なんて呼び方がつく程一流の暗殺者だ。

 

「争奪戦となりゃ奴らも本気でくる。・・・覚悟してかかれよ」

「寝て良い?」

「お前はもちっと緊張感を持ちやがれ!」



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第二十九話 守護者対決 晴と雷

そして、リング争奪戦が始まった

 

第1戦目は、ボクシングVSムエタイと格闘家対決となった晴の守護者戦。

ヴァリアーの先鋒として現れたルッスーリアに有利かと見られた戦いだったが、京子達の乱入により力を得た了平の伝導率100%の“極限太陽(マキシマムキャノン)”により、左足に埋め込まれた“メタルニー”を砕かれてしまった。

 

「私はまだ闘えるわ!! ・・・さぁ!早くやるわよ!!」

 

余裕なく叫ぶルッスーリアをゴーラ・モスカの指から放たれた弾が容赦なく打ち抜き、ルッスーリアはその場に倒れた。

 

「・・・なっ!」

 

驚愕する獄寺達だが、それがヴァリアーの最強たる所以であるとリボーンに言われ、沈黙した。

そして、晴の守護者戦はルッスーリアの戦闘不能により了平の勝利となり、一時はコロネロによって校外に連れていかれた京子達が戻ってくる。

と、言っても気付いたのはツナだけだったが。

 

「どうしたの京子ちゃん?」

「つ、ツナ君。ホントのこと教えて? お兄ちゃん何をしてるの? ・・・本当に、危ないことじゃないの?」

「えーっと。見ての通り異種格闘技戦で・・・」

「異種格闘技戦?」

「そうそう。了平さんはボクシングがとても強いよね。それを生かした試合をしてたんだよ。ただちょっと向こうの人が厳しいって言うか容赦がない人だったみたいだけど・・・アハハ」

 

何とかそれでごまかせたツナだった。

 

 

 

―――翌日の夜。

ランボは善戦していた。ツナが内緒で鍛え上げたその実力はまだまだ未熟なものの、翻弄し鋭い一撃を入れることは可能となっていた。

 

「おい、アレってツナの技じゃねーか」

「うん、そうだね。教えたのは俺だけど」

「ランボの家庭教師はツナだったんだな」

 

ランボの技にレヴィはやられていく。

 

「くっ・・・。こんなガキに!」

「ランボさんサイキョー!」

「あっはっはー。やれーランボー」

 

ツナは間の抜けた声で応援する。鍛えたのは自分だが、まさかここまで行くとは思いもよらず、できれば自分が介入して失格するような状況になってほしいというのがツナの本音だったりする。

 

そして、結果はランボの圧勝。と思われた所で、雷がランボの体にスタジアムを通して浴びせられた。

 

「あ!」

「電撃皮膚のおかげでダメージは少ないとは言え、ヤバいな・・・」

 

リボーンのその言葉通り、ランボは十年バズーカを使って未来のランボと入れ替わる。だが、愛気の技を使えると言っても、準備の時間を与えてしまっていた。レヴィの電撃で再度十年バズーカを使ったランボは二十年ごと入れ替わるが、時間切れで元の子牛に戻ってしまった。

 

「・・・あ、アイツ」

「・・・・・・ツナ?」

 

リボーンはツナのただならぬ気配をただ一人感じ取った。

 

「ランボを蹴りやがった。あんな幼い子を・・・足蹴にしやがった・・・・・・」

「おい、ツナ」

「ぶち殺す」

「待てっ!」

 

ツナは一瞬で死ぬ気モードになるとサーキットの一番外側の鉄線を“焼きゴテ”と称されたXグローブで掴んで熱伝導でステージを壊して見せた。

 

「目の前で大事な仲間を失ったら、死んでも死にきれねぇ」

 

周りでツナの変化に驚くものが大多数だったが、ツナはそんな事は気にせずに言葉を紡ぐ。

 

「いくら大事だって言われても、ボンゴレリングとか、次期ボスの座とか、そんな道ばたに吐き捨てられたガムと同じくらいくだらないもののために俺は戦わない」

「「「!」」」

「だが、俺の友人が・・・仲間が傷つくのだけは許さねぇ!」

「ほざくな」

 

ツナのほぼ背後から攻撃が飛んでくるが、ツナは死ぬ気でもないまま軽く左手を降るって攻撃をかき消した。

 

「・・・やぁXANXUS。重役出勤かな? 遅刻はよくないと思うなぁ?」

 

軽口を叩きながらもツナの目は鋭くXANXUSを射貫いている。

 

「なんだ、その目は・・・。まさかお前、本気でオレを倒して後継者になれると思ってんのか?」

「後継者になんかなるもんかっ! オレは、テストで赤点取って、犬に追っかけ回されて、母さんに怒られて、ダメダメなダメライフを送りたいだけだっ!」

「・・・・・・あの馬鹿ツナ・・・」

「だから・・・。この戦いで、仲間を誰一人失うわけにはいかないんだ!」

「そうか・・・てめぇ!!」

「・・・やるよ。XANXUS」

 

XANXUSの攻撃の斜線上にツナはハーフボンゴレリングを放る。それだけでXANXUSは攻撃をやめてしまった。

 

「はっ。良い判断だ」

 

XANXUSは自分の指に完成したボンゴレリングを着ける。だが、一方でツナも指にリングをはめていた。

 

「これがここにあるのは当然のことだ。オレ以外にボンゴレのボスが考えられるか」

「それはそれはご自由に、いつかお前と戦うのを楽しみにしてるよXANXUS」

 

ツナはそう言って笑った。

XANXUSはそのツナの表情に何かクるものがあったのか、顔をしかめた。

 

「他のリングなんてどーでも良い。これで、オレの命でボンゴレの名のもとお前等をいつでも殺せる」

「「!!」」

「その時は、身体中から体液という体液が流れ出るくらいに痛めつけてあげる」

「・・・ツナならやりかねないぞ・・・」

「今気付いたけど肩にコートかけるって・・・あれ? 厨二病? 痛いコなの?」

「カッ消す!」

「できるものならやってみろ! XANXUS!!」

 

意気込んだツナだったが、リボーンと家光に必死になって止められ、屋上の隅でいじけていた。

 

(・・・ワリーなツナ。まだあいつ等に、ウラヌスリングの事を知られるわけにはいかねーんだ)

「・・・どうせオレなんかお飾りボスだよ・・・・・・」

(ボンゴレリングと似たような機能を持つ、死ぬ気の炎専用増幅装置(のブースター)。ツナが言う通りならボンゴレリングよりも高い出力をたたき出せる。それが本当なら、無知なアイツが持つ低出力ボンゴレリングと、知識のあるツナの持つ高出力のウラヌスリング。これが今の戦い一番の勝負のつきどころだ!)

 

二戦目はツナとランボの敗北で終わった。



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第三十話 守護者対決 嵐・雨

三戦目は嵐の守護者対決。

ツナ達からは獄寺隼人が、相手からはプリンス・ザ・リッパーの異名を持つベルフェゴールだった。

獄寺は時間ギリギリ到着という少々遅刻敗退が危ぶまれたが何とかなった。

その後、ステージの説明を受け円陣を組んだ。

 

「それでは嵐のリング。ベルフェゴールVS.獄寺隼人。勝負開始!!」

 

バトルが始まってすぐ、ツナが異変に気付いた。

 

「ねぇ、リボーン。助言って失格かな?」

「良いんじゃね。もうお前は盗られるものは何もない」

「・・・だね」

 

ツナは観客席の声が届くことに思わず笑った。

 

「獄寺君。良いこと教えてあげる。()()()()()()早く払っちゃいな」

 

ツナのその言葉に、大半の人間が首を傾げた。

 

(糸くずを払う? 十代目・・・。!)

 

その言葉で気付いたのか、獄寺は先程ベルフェゴールに触られた肩を払う。するとワイヤーが地面に落ちた。

 

「・・・流石です。十代目」

 

「―――もしかして今のって反則?」

「いえ。ヒントですから、良しとしましょう・・・」

「うぃうぃ」

 

だが、キレたプリンス・ザ・リッパーの実力に獄寺はだんだん追い詰められていく。ツナはもしかしたら勝つかなー? と希望的観測を持っていたのだが、結果は原作通り。ツナの一言で帰ってきてくれた。

 

「それでは嵐の守護者戦の結果を発表します。嵐の守護者戦はリングを奪取したベルフェゴール氏の勝利とします」

 

チェルベッロが改めてそう言えば、獄寺達が落胆する。ツナは何故か頷いていた。

 

「そして第4戦目は、雨の守護者戦とします」

 

その言葉に山本は表情を引き締め、己の相手となるスクアーロに視線を向けた。

 

「俺の相手はてめぇだな。この時を待ってたぜぇ刀の小僧!! やっとかっさばけるぜぇ!! 前回の圧倒的力の差を思い出して逃げんなよ」

 

そう言ったスクアーロに、山本は不敵な笑みをうかべた。

 

「その心配は要らねーぜ。楽しみで眠れねーんだからな」

「失礼します! レヴィ隊長! ただ今、何者かが学校内に侵入し、雷撃隊と交戦。ほぼ、全滅です!!」

「! 何!?」

 

レヴィが眉を顰める。

 

「そんな事ができるのって」

「アイツしかいねーぞ」

「アイツ?」

 

山本が不思議そうに首を傾げると、ツナはオモチャを前にした子どもみたいに笑って。

 

「並盛の秩序であり並中の支配者、雲雀恭弥さんですよ」

「ねぇ。君達、ボクの学校で何してるの?」

「たった今、嵐の守護者戦が終わったんです」

 

ツナは雲雀の怒気に臆することなく話を続ける。

 

「ふぅん。校内への不法侵入及び校舎の破損。連帯責任でここにいる全員咬み殺す」

「あっちゃー。そうだった。この人校舎大好きっ子だった!」

 

ツナはあちゃーと額に手を当てるが、特に気にした様子はなく、暫くは雲雀の好きなようにさせた。

そして、山本と対峙しようとしたその時。ツナの払いが雲雀を止める。

 

「・・・・・・なんだい草食恐竜」

「これ以上暴れられるのはちょっと・・・、と思いましてね。等価交換と行きましょう。ここで暴れるのを我慢して、守護者戦で見事勝ったら。一つだけ、オレが言うことを聞いてあげます」

「・・・へぇ。どんなことでも?」

「流石に死ねとかは無理ですけど。本気で戦えというのであれば、雲雀さんと全力で戦いますよ」

「・・・・・・分かった。校舎は完全に直るの?」

「はい。我々チェルベッロが責任を持って」

「綱吉」

「・・・あ、はい」

「僕の言うことを聞く前に、猿山の大将に負けないでね」

「オレが負けるとでも?」

「・・・じゃあね」

「ええ。では」

 

「ゔお゙ぉい! 刀小僧!」

 

ホッとしたその現場にスクアーロの大声が響く。

山本は緩んでいた表情を再び引き締めて振り返る。ツナはいつも通りヘラヘラとしていた。

 

「貴様その動きどこで身につけたぁ!! 気に入ったぁ! だが、お前が勝つ可能性は万に一つ。いや、億に一つか!!」

「・・・やってみなきゃ、わからねーさ」

「例えソレが那由多の彼方でも、山本には十分だよ」

「おう!」

 

ツナの言葉に頷いた山本を見てスクアーロは笑い、ヴァリアーを連れて去って行った。

 

「・・・ところでツナ」

「んー?」

「那由多ってなんだ?」

「ッ!? や、山本・・・知らないで頷いたのか!?」

 

つつつ・・・と呻きながら獄寺が驚く。

 

「おう。で、なんなんだ?」

「一、十、百、千、万。この後は?」

「億、兆・・・?」

「京、垓、杼、穣、溝、澗、正、載、極。恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議。ッスよね十代目」

「そ。アイツは万に一つか億に一つか。つまり、万分の一、億分の一の確立しかオレ達は勝てないんじゃないか。って言った。だから那由多分の一より小さくても山本は勝ってみせるよ。って言ったんだ」

「ちなみに那由多分の一って言ったら、零が六十個あるんだぞ」

「ははっ。そんな低確率でも勝てってツナは言うのか」

「諦めが人を殺す。諦めなければ人はどこまでも強くなれるんだよ。山本」

「・・・・・・なんか頑張れそーだわ」

 

 

 

―――次の日。

第四戦。雨の守護者戦が始まる。

 

「『型にはまった剣・流派。それらを超えられなければスクアーロには勝てない』・・・か」

「ツナ・・・」

「深く考える必要ないと思う。で、俺から言えるのは一つ。山本にしか振れない剣があるはず」

「俺にしか・・・振れない剣」

「そ。頑張ってね」

 

戦いはスクアーロの優勢だった。時雨蒼燕流は昔潰した流派だ。と、スクアーロは自慢げに言っていた。お前のやっていることは無駄だ、と。だが、山本は時雨蒼燕流の完全無欠最強の理由を知る。そして―――

 

「時雨蒼燕流・・・攻式九の型」

「ゔお゙ぉい! 野球でもするつもりか?!」

「・・・あいにく、これしかとりえが無いんでね」

 

 

―――うつし雨。

 

山本の放ったその攻撃は、ツナ達の勝利を意味する一撃だった。

その後、スクアーロは放たれた鮫に、助けようとした山本の厚意を振り払って、食べられた。

 

「スクアーロ!!!」

「」

「」

「」

「」

「ぶは―――っははは!!! 最後がエサとはあの―――――ドカスが!! 過去を一つ精算できた」

「アハハ。アハハハハ! まさに死闘。だね!」

 

お互いの大空のボスはどこか微妙にずれている。

 

「明晩の対戦は、霧の守護者同士の対決です」

 

対戦のカードは今日も切られる。

 

(いよいよ・・・か。獄寺君とかすごく反対しそー・・・)



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第三十一話 守護者対決 霧

ツナはいつもの修行場所から少し歩いてジュースを買いに行く。

 

(どーせついてきてんだろーなー・・・)「ん? こんな所に黒曜生・・・」

「っひゃ~。このガムうまそー~!!」

「さっき買っただろ?」

「らってガムってフルーティーだから、みんなのっくんじゃうんらもん」

「・・・じゃあ一箱買ってこ」

「当たりつきのイチゴ!!」

「レシートいい。めんどい・・・・・・」

「・・・ちなみにあまりガムは飲み込まない方が良いぞ。病気になるとかじゃないけど、ガムが原因で全く違う病気になったりする可能性があるんだからな?」

「・・・あぁん? ・・・って綱吉さん!?」

「よっす。何してんの? お前等。凪は?」

「今は・・・雲雀恭弥を・・・・・・見に行ってます・・・・・・」

「アイツが・・・? 雲雀さんに見つかったら大騒ぎになるぞ!? ・・・まぁ、そんな状況も楽しんでるだろうけどさぁ・・・あの馬鹿は・・・・・・」

 

ツナは自分の霧の守護者に思いをはせる。自分を敬愛するナッポーと自分に強い好意を持っている少女。あれほど霧の守護者に相応しい二人はいないだろう。

 

 

―――その日の夜。

体育館。

なかなか姿を現さない。と、他の仲間がイライラする中ツナは一人笑顔だった。

 

(なーぎにあっえる♪ なーぎにあえるっ♪)

 

リボーンが来てから心安まる日がなかったという彼にとって、彼女は癒やしに近いものなのだろう。

 

「こっちの霧の守護者のお出ましだぞ」

「ホント!?」

 

ツナの期待の声に、守護者のみんなも笑顔になる。が、現われた城島犬、柿本千種の二人を見て、顔色を変える。

 

「あいつらって・・・!」

「バカな!!」

「落ち着けお前達。こいつらは霧の守護者を連れてきたんだ」

「何いってるんスかリボーンさん! だってこいつら・・・。! ま、まさか。霧の守護者というのは・・・」

「六道・・・骸!?」

「クフフフフ。クフフフフフフ。Lo nego() Il mio nome e’ Chrome(我が名はクローム) Chrome(クローム) 髑髏」

「六道骸・・・」

「じゃない・・・?」

「なっぎちゃぁあぁあぁんっ!!」

「「「「?!」」」」

 

シリアスな空気の中、ツナだけが興奮した様子でクローム髑髏と名乗った少女に抱きついた。

 

「会いたかったよぉー! あぁ、俺の癒やし・・・」

「きめぇぞツナ」

「ヘブッ!」

 

リボーンの蹴りを(ワザと)食らいツナは床に転がる。

 

「・・・ボス、大丈夫?」

「うん。大丈夫だよぉ~。ちょ~大丈夫」

「・・・ツナが『ママンを前にした家光』みたいになってるぞ」

「・・・た、確かに」

「そう見えるっす」

「さ、凪。あのチッコイのサクッとヒネっちゃって。無理だったらアイツに全部投げれば良いから」

「うん。頑張る。見てて」

「よし、では。円陣行くぞ!!」

「え、あ。そういやそんな制度あったね・・・」

「よっしゃ」

「いい。いらないよ、そんなの」

「カックイイィ! 任せたよ~」

「いってきます」

「いってらっしゃい! 終わって戻ってきたらただいまを所望します!」

「うん。分かった」

 

終始緊張感に欠けるツナのしゃべり方にリボーンがイライラし始める。

 

「それでは、霧の対戦。マーモン対クローム髑髏。勝負開始!!」

 

「・・・へぇ。君が霧の守護者?」

「うん。あの方のため・・・そして、ボスに良い所を見せるため・・・クローム髑髏、行きますっ」

 

クロームが三叉槍を床にトンと軽く打ち付ける。と、そこからヒビが入って床が崩れていく。

 

「うわ!」

「ひゃっぽい!」

「ぬお!!!」

「やはり、僕と同じ術士か。でもこんな子供だましじゃ、僕から金は、とれないよ!」

 

マーモンのフードの中から触手のようなものが伸びてきてクロームを拘束する。そのまま持ち上げられたクロームは苦しそうに表情を歪める。

 

「な、なんだありゃぁ!」

「触手ってさ、卑猥だよね」

「は?」

「・・・特に女の子をああやって触手であんな事やこんな事をして辱めヘブッ!!」

 

中学生の教育によくないことを言い出したツナをリボーンの蹴りが黙らせる。

 

「弱すぎるね。見せ物にもなりゃしない」

「誰に話してるの。私はこっち・・・・・・」

「え!?」

「お・・・女がバスケットボールになったぞ!!」

「なあ!?」

「いえーい凪さんマジかッけぇ!!」

「復活が早いぞ。馬鹿ツナ」

 

リボーンがツナの再起速度にツッコミを入れる。周りはそんな事に構ってはいられないみたいだが。

 

「一体何が・・・」

「幻覚だぞ。互いに譲ることなく幻をつくりだす。息もつかせぬ騙し合い。こんなすげー戦いはめったに見られるもんじゃねーぞ」

「・・・・・・? つまり?」

「クロームさんマジクローム!!」

「訳が分かんねーぞ!」

 

ツナの酔っ払ったディスク・ジョッキーのような調子を何とか止めようとリボーンは奮闘する。だが、回復エリア()が目に見える範囲にいるこの状況でツナの調子はすぐに回復する。

そんな二人の前では、いつの間にかマーモンがアルコバレーノバイパーとしてそこにいた。

 

「ツナのせいで見逃したぞ!」

「しらねーよそんなこと!」

「誰だろうと・・・負けない」

 

クロームが連続で攻撃をし、火柱を上げてマーモンを飲み込んだ所まではよかったが、その火柱が()()()凍らされてしまった。

 

「火柱が・・・凍った」

「なんだ、この寒さは・・・・・・!?」

「不覚にも幻術にかかっちまったぜ。コラ」

「オレもだぞ。流石バイパーだな。もっとも、規格外なツナ(格上の相手)には効いてねぇみてェだけどな」

「な!?」

「うん? どーしたの二人とも」

「ツナ。お前は・・・()()()()()()()()()()?」

「全部見てるよ? 何いってるのさ。体育館の床は割れたし、凪はボールに。火柱は氷に変わった」

「・・・それでもお前は、幻術を()()()()なんだな」

「まーね」

 

と、そこで痛めつけられたクロームに気付いたツナは

 

「(もういいよ(上出来です)お疲れ凪(可愛いクローム)バトンタッチだ(君は少し休みなさい))」

「・・・・・・は・・・い・・・」

 

その瞬間。クロームから煙が吹き出してクロームの身を包む。

 

「なに、死を覚悟した女術師によくあるパターンだ。・・・自分の醜い死体を隠そうとする」

 

余裕の態度でそう解釈を述べていたマーモンが、ピクリ、と反応する。

 

「―――クフフフ」



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第三十二話 守護者戦 霧 二

分けたら短くなった


「クフフ。クフフフ」

「!!?」

「ムム? 男の声・・・?」

 

その声の後、床が割れ、マーモンに攻撃が襲いかかる。

 

「ムギャ!!」

「クフフフ。随分いきがってるじゃありませんか。僕のマスターに逆らう、愚かなマフィア風情が」

「だ・・・」

「誰だ・・・?」

「んー?」

「娘が・・・」

「六道骸・・・!! 間違いない」

「や。骸」

「お久しぶりです。舞い戻ってきましたよ。輪廻の果てより」

 

そして、マーモンと骸の幻術での戦いが始まった。

激しい幻覚の応酬に、汚染の症状を訴える守護者達に苦笑し、ツナは骸へと視線を向けた。

 

(しかし・・・本気で戦ってるよなーどう見ても。クロームとの戦いで本気で挑まないといけない相手だとふんだってところかな)

(そう。僕がこちらにいられる時間は限られています。ただし、マスター。全力でなければ勝てないわけではありませんよ。時間の短縮、ただそれだけの理由です。勘違いなさらないでください)

「ふふっ。知ってるさ。全く、俺の部下は負けず嫌いが多いね」

 

そう呟いた言葉に反応したリボーンが、ツナに視線を向ける。

 

「ツナ?」

「ん? あー。骸がとても負けず嫌いな発言してるからさ。あいつにもそういう面があるんだな。って」(知ってたけど)

「骸との精神感応だったか?」

「心の読み合いともいうね。ただ、戦闘中にこっちに意識を向けるって事は意外と余裕なのかなぁ」

 

彼ほど人生を楽しんでいる人間もいないだろうというほどの笑顔で、先程からツナは笑っている。

一方で、XANXUSはどこか不機嫌そうだった。

実のところXANXUSは幼少期の頃のツナの暴挙に憧れと尊敬の念を抱いていた。そんな彼と、同じような事ができる、そんな骸に嫉妬の炎が燃え上がる。

 

「・・・お前のせいでボスの機嫌が最悪だ」

 

徐々に圧されつつあったマーモンが骸を睨む。

 

「そんな事は知りません。クフフ。マスターと僕はただただ上司と部下の関係。余計な感情を抱いているのはおたくのボスだけですよ」

「そうだよ。だから早く終わらせろよ骸。俺は凪のただいまが聞きたいんだから」

「ヤー、マイマスター」

 

骸の最大出力と言っても過言ではない幻術がマーモンを襲う。

 

「堕ちろ。―――そして巡れ」

 

大きな音を立てて破裂したマーモンの身体を見て、ヴァリアー側も獄寺達も同様に表情を強張らせた。

 

「霧のリング。これで・・・いいですか?」

 

チェルベッロに向かい骸は完成させた霧のボンゴレリングを見せる。

それに対して、彼女達はクロームの勝利を告げた。

 

「ヘイむっくん」

「マスター、もちろん殺してはいませんよ。流石アルコバレーノ、逃げるだけの余力は残していたようですから」

「流石だぜ!」

 

その言葉にXANXUSは振り返らずにゴーラ・モスカを呼ぶ。

 

「戦線離脱とみなす。争奪戦後、マーモンを消せ・・・方法は任せた」

 

了承の意なのか、目の部分が光った。

そんなXANXUSを見て、骸はフ、と笑みをうかべた。

 

「まったく君は、マフィアの闇そのものですね。XANXUS。君の考えているおぞましい企てはこの僕ですら畏怖の念をいだきますよ」

「・・・」

 

骸は何も返さないXANXUSに肩をすくめ、

 

「いえ、別にその話に首を突っ込むつもりはありません。僕は良い人間ではありませんので。ただ一つ・・・、僕達の大空が君の計画の排除を決めたなら、僕は全力で君の企てを潰します。そして彼を舐めない方が良い。彼はその身一つで、宇宙中を敵に回しても笑っていられる男だ」

「・・・あんまり無責任な事言わないでくれないかな。骸」

「貴女が言ったことですよ?」

「その“あなた”、女って字を使ってない? 俺は男! 確かに昔お前達に言った記憶はあるけどさ・・・・・・」

「クフフ」

 

そこで、骸は何かに気付いたようで。

 

「ではマスター。この娘を、頼みます」

「オッケー」

 

ツナは倒れてきた凪をキャッチすると、そのまま胸の前で抱え上げる。所謂お姫様だっこだ。

 

「じ、十代目・・・」

「ん?」

「それ、できるんですか・・・・・・?」

「当たり前だろ!? まったく、女の子一人支えられなくて男が務まるわけないだろうに」

「その意見は賛成だな」

「・・・これで三勝三敗。次の守護者戦で決まる・・・のか?」

「はい。引き続き守護者戦は行われます」

「明日はいよいよ争奪戦最後のカード。雲の守護者の対決です」

「・・・・・・おい、XANXUS。次、雲の守護者戦でそちらが負ければ否応なしにツナの勝ちだ。・・・大人しく負けを認め、ボンゴレ10代目の座を諦めるんだろーな」

「あたりめーだ。ボンゴレの精神を尊重し、決闘の約束は守る。雲の対決でモスカが負けるようなことがあれば、、全てをてめーらにくれてやる」

「・・・そして全てを奪い返す・・・」

「ん? ツナ、何か言ったか?」

「いや、何も。行こう、リボーン」



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第三十三話 ツナの決意

雲の守護者戦

結果から言って、それは一瞬で終わった。

が、もちろん雲雀がモスカだけで満足するわけもなく、原作通り。モスカは暴走を始めていた。

 

(あーあーあー。面倒だなー。どうしようか。まあいいや、全力全開でぶっ壊す!)

 

覚悟を決めてツナは突っ込んだ。

ピンチに現われたヒーローを演出して。

 

「よう。お前等、これいったいどういう状況?」

「じ、十代目!!」

 

ツナは憎ったらしいほどの子どもっぽい笑みを浮かべて。

 

「来いよ木偶の坊。銃なんか捨ててかかってこい」

 

ツナはどんな相手でも()()()倒せる力を持っている。逆に言えば、加減を間違えば例え人間でも一撃で肉片に変えることができる。

 

(ま、いつも通りこれでもかと言うほど手を抜いてやれば良いんだよ)

 

ツナはニヤリと笑って本当にいつも通り拳を繰り出した。その拳圧は、何度も何度も放ってきた。原理は放つ自分自身でも分からない。ただ、幾度となく放って。その放ち方で、寸止めをすると何が起きるか、ツナはよく知っている。

 

その一撃は、神を宿した拳で振るわれた。

 

肉体以外の全てを破壊するその物理法則もへったくれもない神の鉄槌が、非人道的な機械の化け物に叩き込まれた。

ゴーラ・モスカの外側を吹き飛ばし、中に入っていた。動力源とされていた九代目が地面に落ちる。

 

「・・・えーっと。このおじいさん誰だっけ」

「九代目!」

「ああ。そうだ九代目だ。・・・ってことはこのおじいさんが俺が十代目を継ぐよう仕向けたの? なんか許せねぇ」

「くだらねー事言ってる場合か」

「ロマーリオ! 九代目を診てくれ!」

「わかった、ボス!」

「「九代目っ!」」

 

更にディーノ達やバジルも合流し、九代目の介抱に加わる。

慌ただしい大人達を光のない目で見つめていたツナは、不意にXANXUSに視線を向けた。

 

「ねぇ。お前はこんな事してナニがしたいの?」

「沢田綱吉。てめェはじじいに手をかけた」

「まあ、俺は助けたつもりだけど」

「・・・」

「瀕死の状態まで追い込んだのはお前達だし、まあもし俺が、俺じゃなかったら。望み通りの結果になったかもしれないね。でもあえて言わせてもらうよ『だから、僕は悪くない』」

「・・・・・・そう・・・だ・・・。悪いのは・・・・・・、私だ・・・・・・」

「ノーノ・・・」

「やっと会えたね・・・、綱吉君・・・」

「できれば違う形で会いたかったです」

「すまない・・・。こんな事になったのは全て私の弱さ故のこと・・・私の弱さが・・・・・・。XANXUSを長い眠りから目覚めさせてしまった・・・・・・」

「!!」

「え。なに、アイツ吸血鬼とか?」

「ツナ・・・オメーな・・・・・・」

「綱吉君・・・。・・・・・・いつも・・・、いつも君のことは・・・、リボーンから聞いていたよ・・・。・・・・・・好きな女の子のことや・・・学校のこと・・・・・・友達のこと・・・・・・。君は、マフィアのボスとしては・・・・・・あまりにも不釣り合いな心を持った子だ・・・・・・。君が、今まで一度だって喜んで戦っていないことも知っているよ・・・・・・。いつも、眉間にシワを寄せ・・・・・・祈るように、拳をふるう・・・。だからこそ私は君を・・・・・・、ボンゴレ十代目に選んだ・・・・・・」

「ノーノ・・・?」

「すまない・・・。だが、君で・・・・・・よかった・・・」

「ノーノ。ちょっ・・・ノーノ!!」

 

ツナはなんか自分の評価が大変なことになってるなーとか思いながら、リボーン本当に余計なことも伝えてるなーとか。様々などうでもいい思惑の中、ただ一つ。浮かんでくる思いがあった。

 

「よくも九代目を!!!」

「は?」

「9代目へのこの卑劣な仕打ちは、“実子”であるこの俺と崇高なるボンゴレ精神への挑戦と受け取った。・・・お前がしたこと(ボス殺し)の前ではリング争奪戦など無意味。俺はボスである我が父のため、そしてボンゴレの未来のために、沢田綱吉、貴様を倒し仇を討つ!!」

「な!? ・・・何言ってやがる! お前が9代目を!!」

「これが目的だったのか!」

 

獄寺達が叫ぶ中、ツナはXANXUSをじっと見つめる。沸々と、何かがわき上がってくる。

 

「憶測での発言は慎んでください」

「全ての発言は我々が公式に記録しています」

 

今まで黙っていたチェルベッロ機関の二人が口を開いた。

 

「あいつら・・・!」

「やはりチェルベッロはXANXUS側についていたんだ!」

 

山本と獄寺が怒りの形相で叫ぶ。

 

「・・・好きにしやがれ。俺はもうキレてんだ」

「「!!」」

 

リボーンの怒気を含んだ言葉に、チェルベッロ達が怯む。

 

「九代目との誓いだ。俺は手をださねェ・・・生徒の勝負にはな。俺がそう言っても、戦いが嫌いな? 俺の生徒がどーするのかは知らねーけどな」

「XANXUS。大空のボンゴレリングは・・・・・・、返してもらう・・・・・・。お前に、九代目の後は継がせない!! ―――こんな事をしてまで、お前がボンゴレボスになろうって言うんなら・・・まずはそのふざけた幻想をぶち殺すっ!!」

「ツナ。よく言ったぞ。最後のは余計かもしれねーけど

「ボンゴレの歴史に刻んでやる。XANXUSに楯突いた愚かなチビが一人いたとな」

「誰が豆粒ドチビかァ―――ッ!!」

「?! どうしたツナ!」

「言ってみたかった」

「自由だな。相変わらず」

「・・・一人じゃあないぜ! 十代目の意思は」

「俺達の意思だ!!」

「・・・個人的に」

「素直じゃないなぁ雲雀さん」

「うるさいよ草食恐竜」

「あはは・・・。じゃあボンゴレの歴史にこう刻んどいて。XANXUSに楯突いて、見事に打ち破った愚かだった少年がいたってね!」

「・・・・・・」

「来るかガキ共!!」

「いいねぇ」

「反逆者どもを根絶やしにしろ」

 

低く呟いたXANXUSの言葉に、ヴァリアーの面々が殺気を膨らませた。

その時、チェルベッロから制止の声があがった。

 

「お待ちください! 9代目の弔い合戦は」

「我々が取り仕切ります」

「なぁ!?」

「我々はボンゴレリングの行方を見届ける義務があります」

「何言ってやがる!XANXUSの犬が!!」

 

獄寺が叫び、チェルベッロを睨みつける。が、

 

「口を慎んでください。我々は9代目の勅命を受けています。我々の認証無くしてはリングの移動は認められません」

 

そう言ってチェルベッロが見せた死炎印が押された証書を憎々しげに見やり、バジルが叫ぶ。

 

「よくもぬけぬけと! その死炎印は9代目に無理やり押させたものだな!」

「我々は勝利者が次期ボンゴレボスとなるこの戦いを」

「「大空のリング戦と位置づけます」」

「すなわち、今まで行ってきたリング戦の七戦目ということになります」

「いかがでしょうか、XANXUS様」

「・・・悪くねェ」

「なんで毎回毎回誰も俺に確認を取らずに事を進めるのかなー。ま、良いけどね」

「それでは明晩、並中に守護者全員でお集まりください」

「あーらら、モドキに執行猶予を与えちゃったよ」

「なに!」

「テメー・・・!!」

「フッ。明日が喜劇の最終章だ。せいぜい足掻け」

 

指で弾いた大空のハーフボンゴレリングが、ツナの手に収まった。

それを確認したXANXUSは、憤怒の炎が放つ眩い光と共に姿を消した。

 

「・・・遅かったか!!」

「ディーノさん!」

「跳ね馬!」

「お前等!! 九代目とケガ人を!!」

 

キャッバローネの手により九代目は運ばれていく。

バォン。と、空間が歪む音がした。ツナが守護者戦を提案したあの日放った拳が空間を引き裂いたのと似たような音が。その音の発生源はツナの右手。強く握られたそれが、音を生み出した。

 

(掌に高速で握り潰された空気が音を出した・・・。ツナ、お前は・・・()()()()

「―――ねぇリボーン。今、俺が強すぎる。って考えたでしょ」

「! ・・・なんで分かった」

「その考えだけは、簡単に読み取れるよ。何度も何度も聞いてきた。『お前は強い』って言われてきた。だから、その考えだけは誰が考えてても分かる」

「・・・・・・そうか」

「知ってる? 最強と無敵は違うって」

「ああ。最強はもっとも強いだけ、無敵は敵がいないそれだけの強さ」

「俺はこう思う。無敵になったひとの周りには・・・さ。“()()”しかできないんじゃないかな」

「・・・・・・なるほどな。ツナにしちゃまともな考えじゃねーか。とにかく、今日は学校に行けよ」

「あ、うん」

「自分が帰ってくるべき場所(日常)をしっかりと目に焼き付けてこい」

「・・・うん」




この小説の雲雀さんはツナに対して好意的です。


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第三十四話 大空のリング戦

「いってらっしゃーい!」

「いってきまーす」

 

ツナは一週間ぶりに並盛中学に登校していた。といっても毎晩来ていたのだが、昼間来ていなかったので何となく違和感はある。

 

「・・・・・・」

「おはようツナ君!」

 

ツナが屋上で黄昏れていると、後ろから声をかけられた。

 

「京子ちゃん。おはよう」

「! ・・・・・・。あ・・・、リボーン君がここにいるって」

「リボンヌが?」

「・・・ツナ君。みんな、何してるの?」

「知りたい?」

 

ツナの問いに京子はこくりと頷いた。

 

「じゃあ、誰にも内緒にするって約束して。絶対に言わないって。もちろん了平さんにも」

「うん。分かった」

 

ツナは話した。ダメダメな自分のところに家庭教師として、マフィアのボスが殺し屋を送ってきたこと。そして、色んな事に巻き込まれたこと。今回の戦いも、その延長線上だということ。

 

「・・・と、こんな感じ。でも安心して、了平さんにもう怪我はさせないから。危ない目には遭わせないから。例え、この命に代えてでも」

「・・・ツナ君もだよ」

「へ?」

「ツナ君も。ちゃんと笑顔で帰ってくるんだよ! いい!?」

「・・・分かった。山本も獄寺君も、雲雀さんも了平さんも、ランボもクロームも。みんな笑って帰る、この日常に。俺は帰ってくるよ、京子ちゃんに笑顔を見せに。ね」

「・・・・・・。あ、えと。そ、そうだ! これ、ツナ君に」

「お守り・・・もしかして」

「そ、そう。ツナ君達の戦いでケガ人が多いでしょ? だから安全祈願! と必勝祈願も!」

「ありがとう! オレ、次の戦い。負けるわけにはいかないから」

「うん。絶対、勝って帰ってきてね」

「了解しました。ご主人様」

 

ポン。と、ツナの手が京子の頭に乗る。天然な京子は自分が抱く気持ちに気付けていないが、顔が熱くなるのを感じ、その場の撤退を試みたが、屋上にハルが入ってきて逃亡は叶わなかった。

 

「ツナさん!」

「ハル。どうしてここに?」

「今日学校がお昼からなんで、お守りを配るために潜入しちゃいました!」

「潜入って・・・並中の制服着てるし・・・」

「ビアンキさんが用意してくれたんですよー」

「殺しに比べればチョロいもんよ」

「ツナ兄」

「無駄なものに無駄な技術を注いでるんじゃねーよ・・・。見つかったらどうする気だ・・・」

「そん時はそん時よ」

「ポイズンクッキングはダメだからな! 一般人に向けたら絶対ダメだからな!!」

「分かってるわよ」

「絶対分かってないな! その顔は!」

 

―――そして、最終決戦の夜は来た。

獄寺達は並中への道を歩いていた。

 

「・・・あの。ディーノ殿から聞いた話なのですが・・・。ゆりかご以前・・・ボンゴレボス候補は沢田殿も含め六人いたらしいです。そしてその中でも年長の三人は誰もが十分な才能に恵まれていましたが、九代目と門外顧問を除く上層部の全員が支持したのはXANXUSだったそうです・・・・・・・・・。それほどXANXUSのボスとしての資質は圧倒的だと・・・・・・」

「おい・・・その恵まれた三人に十代目は・・・?」

「入っていません」

「うむ」

「なるほどな」

「ま、なかあねえ話だろーな」

「・・・ところで極限に疑問なのだが」

「はい?」

「その“最後の一人”はどんな奴なんだ?」

「最後の一人・・・?」

「・・・恵まれた三人・十代目・XANXUS。確かにもう一人候補が余るな」

「どんな人間か。それは誰にも分からないそうです。その力を強く継いでいた少年の父親が、彼を連れて遠くに逃げたそうなので」

「・・・臆病者。って事か?」

「ただ、ボンゴレが調べた所。少年の祖父がこう言ったそうです。ヤツは天災だ。死ぬ気の炎も重力も操って見せた。と」

「「「重力?」」」

「詳しいことは分かりませんが、小学校に上がる前の子どもが大人を簡単に投げ飛ばして見せたそうです」

「化け物かよ・・・・・・」

 

そして。守護者全員が集められた。

大まかなルールが説明され、リングが回収された。

 

「それでは大空戦のルールを説明いたします」

「大空戦は他の守護者同様、リングを完成させることが勝利条件の一つとなります。今回のフィールドは学校全体」

「・・・広ぇな」

「広大なフィールドでの戦いを観戦できるよう、各所に小型カメラを設置し、観覧席以外にも大型ディスプレイを」

「そして守護者の皆様にはカメラ搭載型モニター付きリストバンドを用意しました」

「・・・なるほど、小型テレビか」

 

了平が感心したようにリストバントを見つめる。

 

「ハハッ。ツナがドアップだぜ」

「え?」

 

山本も与えられたリストバンドの機能を楽しむ様子を見せる。

 

「・・・では守護者の皆様は、リストバンドを装着し次第、以前各守護者戦が行われたフィールドに移動してください」

「フィールドだと? ・・・今更、どういうことだ?」

「質問は受け付けません。従わなければ失格となります」

「ったく、ムカつく女だぜ」

「観てるだけじゃなさそうじゃん、楽しみ」

「では、やるなら今しかないか・・・」

「え?」

「円陣だな」

「気合い入れましょう!」

「そうか。そうだね」

「あ。お前達はそこにいればよいからな。十メートルルールに改訂したからよいんだ!」

「なにそれ」

「十メートル以内に入ったものは円陣を組んだと見なす極限ルールだ」

「すっげ!」

「よーし。行くぜ!!」

「「「沢田ファイッ!!」」」

「「「「オ―――!!!」」」」

 

「では、後で」

「ボス、気をつけて」

「頑張れよ!」

「・・・Zzz」

「無茶すんな」

「・・・(怒)」

(じ、十メートルルールに怒ってる・・・?)

 

「いよいよだな!」

「! ・・・シャマル! コロネロ!?」

「骨拾いに来てやったぞ」

「野次飛ばしに来たぞ」

「感じ悪!! っていうかオレが負けるの前提?」

「守護者全員、各フィールドへ到着したようです。

「各フィールドに設けられたポールの上には、フィールドと同じ種類のリングがそれぞれ置いてあります」

「まさか、また奪いあえって言うんじゃねぇだろうな」

 

己のフィールドで呟いた獄寺に向かい、ヤル気満々のベルがナイフを取り出す。

 

「ってことはさ―――俺達も闘えちゃうわけ?」

「どうぞ、ご自由に」

「・・・ただし、できればの話ですが」

 

その言葉と共にリストバンドが“作動”した。途端に苦しみ出した守護者達の様子に、ツナは気付く。

 

「・・・リストバンドに、何を仕込んだ!?」

「毒です」

「なんだって!?」

「毒!?」

「デスヒーターと呼ばれるこの毒は瞬時に神経を麻痺させ、立つことすら困難にします。そして全身を貫く燃えるような痛みは徐々に増していき、30分で絶命します」

「なんだってこんな事するんだ!? これは大空戦だろ!?」

「大空であるボスの使命だからです」

「全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する。つまり、ボス同士で守護者の命を賭けて闘えってこと? うわっまどろっこしい」

「毒の進行を止める方法はただ一つ。守護者のしているリストバンドに同種類のリングを差し込めば、内蔵されたデスヒーターの解毒薬が投与される仕組みになっています」

「ナルホドな。この戦いでは大空のリングだけじゃなく、他の守護者のリングも奪い合わなきゃなんねーのか」

「大空戦の勝利条件はただ一つ全てのボンゴレリングを手に入れることです」

「このチェーンに全てのボンゴレリングをセットできます」

「分かった。急ごう。そうこうしてる内にみんなが!」

「では、最後に一つだけ。勝負開始後は一切の部外者の外部からの干渉を禁止します特殊弾もしかりです」

「了解したぞ」

 

リボーンがそう言った後、ツナの用意が完全にできる前にXANXUSが攻撃を加えた。

吹き飛ばされたツナは、校舎の壁を破壊してとまる。

 

「沢田殿!」

「ざ、XANXUS様! まだ・・・!」

「早く始めたいと言ったのは向こうだぜ」

「は・・・、それでは・・・!」

「しかし今の攻撃で沢田氏が・・・」

「卑怯だぞ、XANXUS!!」

「あぁ? 特殊弾を撃つ前はマズかったか?」

「舐めんなよ。俺を誰だと思ってる」

 

瓦礫の中から炎が吹き出し、ツナが姿を見せる。

 

「沢田殿!!」

「ツナ、XANXUSは片手間に戦える相手じゃねーと思え。六人の守護者を救出しながらの交戦はいくらお前でも命取りとなる。まず・・・・・・」

「分かってる・・・・・。先にこいつを片付ける」



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第三十五話 沢田綱吉VS.XANXUS

「片付けるだ? 昨晩の、あの程度の力でか?」

「昨日・・・? あぁ、寝ぼけ眼で使ってたあの力か」

「・・・!」

「「!」」

「観覧される方はこちらへ! 急いでください!」

 

「それでは大空のリングXANXUSVS.沢田綱吉。勝負開始」

 

「とりあえず大空戦・・・リング一つゲット」

「?」

 

そう言ったツナの右手中指には大空のボンゴレリングが着けられていた。

 

「! いつの間に」

「さっきお前が俺を飛ばした時、奪っておいた」

「はっ。まるでスリだな!」

「勝てば良いんだよ。勝てば」

 

そこからは原作通りに事が運ぶ。

 

ツナがXANXUSの憤怒の炎を避け、鉄筋コンクリートの校舎が風化した。その炎の特性についてリボーンが説明し、ツナとXANXUSは炎のガチンコ勝負をした。結果はツナが勝ち、XANXUSが武器を取った。

 

「カスごときに武器を取るとはな・・・」

「オレがカスじゃなかっただけの話だ」

 

そこからも概ね一緒だ。リボーンが観覧席でその場の全員にボンゴレボスの炎の特性と武器の話をする。そして、XANXUSが銃により高速移動を可能とした。

体育館の方に向けて撃たれるはずの銃をツナは避けながら蹴り飛ばすことで打ち出される方向を変えた。

XANXUSの施しで嵐と雷のポールが壊れた。

そして戦況は原作通りに移り変わっていく・・・。

 

ツナが死ぬ気の零地点突破を使おうとした所でXANXUSはキレ気味に怒涛の攻撃を仕掛けてきた。

そして、XANXUSの一撃がツナに直撃した。

爆炎が上がる。

煙が晴れるとそこには、ボロボロのツナが横たわっていた。

XANXUSは勝利の余韻に浸りながらぶつぶつと呟くが、その彼の目の前で、ツナは大きな炎を出して起き上がった。

 

リボーンは満足そうにその技、死ぬ気の零地点突破。について説明するが、XANXUSは死ぬ気の零地点突破がどんな技か知っているらしく、豪快に笑い飛ばす。

 

そしてツナは死ぬ気の零地点突破 改を編み出した。

XANXUSはツナに連続で攻撃を撃ち込みタイミングをずらしていく。

そして死ぬ気の零地点突破 改は完成した。相手の力を自分の力に変換する大空の使命そのままの技が。

その力の差にXANXUSはマジギレした。

と、言ってもキレたのはツナにではない。自分自身にだ。初めて会った時、幼子であったにもかかわらず殺気を自在に操り、年上の自分でも敵わないと思わせた沢田綱吉に追い付きたいと覚悟を決めていた。だが、どこまで行っても遠かった。久しぶりに見たツナは殺気で重力を作り出すほどに成長し、力も段違いだった。情けなくて自分が情けなくて、超える目標を前にして。XANXUSは本気を出した。

 

 

 

だが、死ぬ気の零地点突破はツナが元々自在に使えていた技だった。

炎の逆の状態、つまり冷気を放つ初代死ぬ気の零地点突破。

 

原作通りにツナはXANXUSを氷付けにした。

そこでツナが気力の限界を迎え膝をつく。

 

「おい!」

「ツナの奴・・・、珍しく気力の限界らしいな」

 

ルッスーリアとレヴィの幻覚を見破ったツナ。そこにはやはりマーモンがいた。

 

「よく見破ったね。でも、もう。戦う力すら残っていないようだ」

「ムダだ・・・。XANXUSは眠りについた・・・・・・」

「それはどうかな?」

「?」

「むしろボスが次期ボンゴレの後継者になるための儀式の準備が整ったのさ」

「?」

「ボスは再び復活する」

 

マーモンの手には全ての守護者のリングがあった。彼の説明によると、リングには力があるという。九代目の零地点突破が溶かされた床には七つの小さな焦げ跡が残っていたそうだ。

 

「誰がやったかは定かではないが、その経過は一つの仮説を立てるのには充分だ」

 

マーモンの掌の上でボンゴレリングが徐々にその力に目覚め出し、それぞれの属性の色の炎を発し始める。

 

「思った通りだ。見るがいい」

 

マーモンはそう言って氷漬けになっているXANXUSに向き直る。

勢い良く燃え上がったリングの炎が、零地点突破の氷を溶かし始めた。

 

 

が、全ての炎が溶けきった時、ボンゴレリングは全て砕けて消えてしまった。

 

「「「「?!」」」」

「ど、どー言うことだ! なんでリングが砕けるんだ!!」

「い、いったい・・・・・・」

 

マーモンとベルフェゴールはもちろん。起きたXANXUSも、駆けつけたツナの守護者達も、見ていた部外者のみんなも、全員が全員驚いていた

 

「へぇ~・・・、大いなる力を後継者にねぇ。面倒なことが大好きなのかな? ボンゴレファミリーのご先祖様は」

「「「「!!?」」」」

「・・・・・・フッ」

 

どこからともなく聞こえた沢田綱吉の声に、全員がツナの方を見る。だが、彼は軽く笑っているだけだった。

慌てて当たりを見渡すと、校舎の縁に腰を掛け足をプラプラさせながら、ツナは腰に着けたチェーンを守護者のリングで全て埋め、手の中で大空のリングをもてあそんでいた。

 

「沢田・・・綱吉ッ!!」

「十代目!?」

「ヤッホーみんな」

 

気力が尽きていたと思われるツナが、大きな一つの死ぬ気の炎となって屋上に座る“ツナ”の元へ飛んでいく。それをツナは死ぬ気の零地点突破 改で吸収し、残った一枚の人型をした紙を持つ。

 

「なん・・・なんだテメー・・・・・・!」

「なんだ手前と聞かれたら、答えてあげるが世の情け! 世界の平和を守るため、宇宙の平和を守るため、愛と真実の悪を貫く! ラブリーちゃーみーな敵役! ・・・なーんてね。ネタばらしをすると、今までXANXUSが戦ってたのは俺のコピー。それも失敗作で俺の百分の一ぐらいしか力が出ないんだよね・・・。だからさ、適当なピンチの場面で入れ替わるつもりだったんだけどまさかまさかの勝っちゃったからさー。思ったよりXANXUS弱いね」

「・・・ッ!」

 

オメーが強すぎるんだバカ。と、観覧席で呟いたリボーンの声はツナには届かない。あ、でも。とツナは付け足す。

 

「XANXUSは弱くない。とっても強いよ。だってヴァリアーのボスになれたぐらいだからね」

「!」

 

XANXUSがツナに認められたという事実に少し嬉しそうな顔をした。そして、ツナは飛び降りながら右手の指に大空のリングをはめた。

 

「そう、決してXANXUSは弱くない。ただ、俺が強すぎただけだ」

 

ツナはそう言って、ボンゴレリングから大いなる力を受け取った。

 

「へぇ・・・大いなる力ってそーゆー? 俺にパワーは十分とふんで・・・こーいう物を渡してきたかー・・・」

 

ツナの呟きに全員が首を傾げる。と、ツナの次の言葉は想像だにしないものだった。

 

「もう、さ。邪魔する奴は片っ端から肉片に変えていいんじゃないかな?」

「・・・性格面での力を与えやがった!?」

 

リボーンが愛する生徒の急激な変化に対応できず悲鳴に似た叫びを上げる。

 

「ハッ・・・おい沢田綱吉」

「なに?」

「楽しかった。敵わなかったが、これだけは言える・・・。てめェは裏の社会の頂点に立つような人間じゃねぇ」

「そう?」

「裏の世界も表の世界もひっくるめてぶっ壊し、自分の都合の良いように作り替えるような人間だ」

「そこまで非道じゃない気がするんだけどなぁ」

「・・・いずれ分かる」

「オッケー。考えとく」

「だが。このまま俺が終わると思うか?」

「思わねーな。まだなんかあるの?」

「お前の言う通り、全部ぶっ壊すだけだ」

「?」

「今回の件に関係した者、全ての抹殺のため・・・総勢五十名の生え抜きのヴァリアー隊が間もなく到着する」

「?」

 

それぞれの守護者が殺気立つ中、チェルベッロがヴァリアーの失格を宣言する。さらに、リングに適正のあるツナが全てを揃え大いなる力を受け取ったことも踏まえてツナの勝利だ。

だがXANXUSの計画は止まらない。そうなることも計画の内だったのだろう。

共に闘おうとする観覧席の面々だが、細工された観覧席から出ることが叶わず、ただ見ていることしかできなかった。

 

そして到着したのは、ヴァリアーの隊服を着た男達。

挟まれた形となった獄寺達が警戒を強めたその時だった。バタバタとその男達が倒れ、一番大柄な男が呻くように報告する。

 

「報告します。・・・我々以外のヴァリアー隊全滅! 奴は強すぎます! 鬼神のごとき男が、まもなく・・・」

 

その報告の途中に巨大な鉄球が飛来して、男達をなぎ倒した。

 

「ぼ、暴蛇烈覇!」

「!!?」

「あの人・・・ずっと骸様の話しかけてた」

「奴は・・・!」

 

クロームが呟き、獄寺が目を丸く見開いてその姿を見つめる。

 

「取り違えるなよ、ボンゴレ。俺はお前を助けに来たのではない。

 

 

礼を言いに来た」

「・・・ランチアさん」

 

愕然とツナが呼んだ名を聞いたマーモンとスクアーロが顔を青ざめさせた。

 

「・・・アイツ、何者?」

 

ベルフェゴールが首を傾げ、スクアーロがモニターを凝視しながら呟く。

 

「北イタリア最強と恐れられたファミリー惨殺のランチア・・・」

「あ、アイツ、あんなに強ぇんらっけ?」

「強いよ」

 

犬が以前とは比べ物にならない力を見せるランチアに驚愕していると、千種はそう答えて俯く。

 

「他人に操られるのではなく、自分の意志で闘うアイツには迷いがないからな」

 

そしてツナは炎を拳に灯して言い放った。

 

「俺、ボンゴレ十代目になるつもりないからね?」

「・・・・・・一つだけ言っとくぜ。綱吉」

「あんだよ」

「誰にも、負けんじゃねぇぞ」

「様子見のコピーが負けることはあるかもしれないけどねん」

 

こうして大空戦の勝者はツナに決定した。

守護者同士のリング争奪戦もこれにて終了。



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第三十六話 パーティ

(昨日は・・・色々あったなぁ・・・・・・)

 

しみじみそんな事を考えながらツナは起床した。いつも通り階段を降りてリビングに向かうと、目的地から笑い声が聞こえてきた。

 

「世話になっているぞ」

「ランチアさん。その、昨日はどうもありがとうございました。というか、どうして・・・?」

「その話は後だ」

「ツナも着替えなさいよ」

「出かけるからな」

「出かけるってどこへ?」

「ぱーちーだ」

「・・・・・・ッ!」

「笑うんじゃねぇ」

「昨日何があったかもう忘れちゃったの? おめでたい事あったでしょ?」

「え? 昨日・・・?」(ヤバい。リング争奪戦ぐらいしか分かんねぇ!)

「ランボ君が退院したでしょ?」

「あー。そっち」

「山本ん家集合だからな」

「山本の家って・・・寿司屋?」

 

言われた通りツナは準備をして山本の家に向かう。

 

「・・・こんばんは」

「へいらっしゃい。ツナ君御一行!」

「ツナ君!」

「ツナさん!」

「十代目!!」

「みんなそろってるんだ・・・」

 

呆れたように言うツナに、獄寺が駆け寄ってくる。

 

「十代目っ。表向きはアホ牛の退院祝いスけど、間違いなく今日は祝勝会スから!! リング争奪戦の!!」

「あ、うん」

「やりましたね!!」

「あ」

「だな!」

「うむ」

 

獄寺や山本達はそう言って指に着けたり、ネックレスとして首からかけたボンゴレリングを見せてくる。

 

「もうみんなに行き渡ってるんだ・・・」

「ヒバリとクロームにも行ってるはずだ。ほれ、これがお前のだ」

「俺にはウラヌスリングがあるんだけどな・・・」

 

ツナは渋々ボンゴレリングを受け取ると右手の中指にはめる。ウラヌスリングは左手の中指にはめる事にした。

 

「しかし最後までボンゴレ十代目にはならねぇなんて言いやがって」

「当たり前だろ。俺はマフィアになんてならないの」

「ハハハ。往生際の悪い奴だな」

 

ツナとリボーンがそう言っていると、ディーノが笑いながら会話に入ってきた。

 

「それに九代目は無事だったんだ。今すぐツナが十代目になるわけじゃないぜ?」

「そーゆー問題じゃないんですよ・・・・・・」

「あんなチビもやる気なのにか?」

「は?」

「この指輪ねぇ。ツナからもらったの」

(うそつけー!!)

 

ディーノの視線の先には、京子とハルに雷のリングを見せながらそんな事を言うランボがいた。

 

「アホ牛の奴。シメてやろーか!!」

「まーまー。ランボも頑張ったじゃねぇ―か」

「ったく・・・。まあいいっス! 十代目!! んじゃあ今日は未来のファミリーについて熱く語り、盛り上がりましょう!」

「え」(それは盛り下がるなー・・・。っていうか、将来マフィアやるつもりないし・・・)

「聞いたよツナ君! 相撲大会、勝ったんでしょ?」

「う、うん・・・」

「そのお祝いもしよーね」

「ありがとう。お守りも、ありがとね」

 

ツナはお礼を言って、少し前に出る。すると、耳元で京子の声が聞こえてきた。

 

「お帰り、ツナ君」

「ただいま、京子ちゃん」

「イチャイチャしてる暇があったら食べなさい」

「え!? い、イチャイチャしてるわけじゃ・・・」

「じゃあいただきまーす」

 

慌てる京子に対し、ツナは何も気にせずビアンキのポイズンクッキングを口に運ぶ。獄寺はしっかりと心構えを持っていればビアンキの顔を見ても平気になっていた。

 

「うん。毒だから仕方ないのかもしれないけど、もう少し味と見た目を何とかしてほしいな。食べるこっちの身にもなってほしいよ」

「そ。考えておくわ」

「ありがと。・・・どしたの京子ちゃん」

 

ツナが振りかえると、何故かふくれっ面になった京子がいた。ツナは何をしたいのかよく分からなかったため、そのような質問をしたのだが、返ってきた答えは

 

「・・・なんでもない」

 

つん。と顔をそらした上でのそんな一言だった。

 

「・・・?」

 

と、そこでツナの携帯電話が着信を知らせる。ツナはその場の全員に謝って一度店の外に出る。

 

「・・・はい。沢田です」

『・・・ボス?』

「やっぱり凪か。どうしたの?」

『・・・おめでとう。やったね・・・! って言いたかった』

「・・・・・・ッ」(何この可愛い生き物ッ!)

『・・・ボス? あ。もしかして電話の向こう綱吉さんれすか? ・・・そうだけど。 変わるびょん! ・・・うん。 ・・・あ、もしもし綱吉さん?』

「犬? どしたの?」

『特にないんれすけど・・・。その、お疲れ様でした』

「ん? ありがと」

『綱吉様。おめでとう』

「千種・・・、ありがとね」

 

と、そこでツナのケータイにキャッチフォンが入る。

 

「ご、ごめん。キャッチフォンが入った。用事も済んだみたいだから切るよ!」

 

ツナは一度黒曜組の通話を切り、新しく入った方の電話に出る。

 

「はい。こちら沢田―――」

『お兄ちゃーんっ! おめでとー!!』

「ま、真美ちゃん!? どうしたの!?」

『聞いたよ、聞いたよ! 私はいろいろ聞いたんだよお兄ちゃん』

「な、何を聞いたのかな・・・?」

『ふふん。聞いて驚いてね? お兄ちゃんがシモンと因縁の深いボンゴレの子孫だという事をね!』

 

ふっふーん。という得意げな鼻息と共に聞こえてきた衝撃発言に、ツナは思わず笑ってしまう。

 

『お兄ちゃん?』

「・・・ごめん。どこで知ったのか知らないけど、まだみんなには秘密にしててほしいな」

『お兄ちゃんと私の秘密?』

「そ、秘密。もちろん炎真にも」

『炎兄にも・・・。うん、分かった。指切りしよっ!』

「こんなに離れてるのに?」

『大丈夫! じゃあ行くよ!』

『「指切りげんまんウソついたら「大空の冷気で氷漬け♪」(『大地の炎で押し潰す♪』)指切った!!」』

「・・・・・・」

『・・・・・・』

「・・・何言ってんの? 真美ちゃん? 大地の炎(それ)は洒落にならないよ?」

『お兄ちゃんこそ。大空の冷気(それ)は冗談じゃないよ?』

『「約束を守ればいいんだよ。・・・・・・だね」』

 

―――この時ツナは、寿司屋から聞こえてくる喧噪に耳を傾け、こんな日々が続くと考えていた。

 

まさか。

 

「リボーン!! どこだ!! ・・・どこに行きやがったんだよ!! リボーン!!」

 

リボーンがこの世からいなくなる日が来るなんてまったく考えもせずに。



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未来編
第三十七話 消えたリボーン


全てはあの日に始まった。

 

「待って!」

 

ツナは制服を着て朝から走っていた。

 

「待ってよ。二人とも!」

「沢田殿! リボーンさん!」

「ボンゴレか」

「な、何も言わずにイタリアに帰るなんて・・・」

「すいません。急な招集がかかったんです。みなさん、お忙しいと思いまして・・・」

「オレは、湿っぽいのが苦手でな」

「ランチア。クロームに聞いたんだが、お前が骸に呼ばれてきたってのは本当か?」

 

リボーンのその言葉にランチアは何か思う所があったようだが、すぐに取り繕う。

 

「・・・。いいや。骸とはあれ以来一切接触がない。ただ、大空戦の前日に妙な虫の知らせがあったのは確かだ。奴に長時間操られていたために、他の人間よりも奴の考えを感じ取りやすくなっていたとしたら、皮肉だな」

「・・・ランチアさん」

「気にするな。骸を許す気はないが、これでお前の役に立てたのならば本望だ」

「また・・・亡くなられたファミリーの家を回る旅ですか?」

「ああ。一生をかけて償う事しか、オレにはできんのでな」

「・・・・・・」

「そうだ。こいつをお前にやろう」

「へ?」

 

ツナはランチアから黒い指輪を受け取った。

 

「オレのボスの形見だ・・・・・・。ボンゴレリング程立派なもんじゃねーけどな」

「は!? そんな大事なもの・・・!」

「遠慮はするな。これはオレの意志だ・・・・・・」

「これは拙者からです。沢田殿に合うか分かりませんが、もしもの時使ってください」

「へ?」

「見送りはここまでで結構です」

「ああ」

「で、でも」

「あ」

 

ツナが引き留めようとした所で、彼の足元を黒いアフロが通り抜ける。

 

「ランボさんもピクニック行く!!」

「あ! こら! ランボッ!!」

「では」

「・・・気を付けて!」

「バイプゥ~!」

「ったくランボは・・・」

「本当ウゼーな。・・・ところでバジルに何もらったんだ?」

「ん? ・・・そう言えば・・・。! これは・・・、死ぬ気丸!」

「アメ玉っ」

 

ランボの反応を無視してツナは落ち込む。

 

「これ・・・もらっても使い道ないよ・・・」

「そんな事は・・・あるかもな。オメーは自分の意志で死ぬ気になれる。だが、とっさの時にそれを飲めばいいだろ」

「なるほど・・・」

「ちょうだい」

「アメ玉じゃないんだぞ!? 食べたら死ぬ気になるからダメだ!」

「それに死ぬ程ウザくなる」

「あら。リボーン! 今のコチンときた」

「・・・それを言うならカチンだろ?」

「チンコ?」

「どんな耳してんだよ」

「やっぱウゼーな。・・・・・・」

 

リボーンの手の中でレオンが何かに形を変えていた。

 

「暴蛇烈覇!!」

「ぐぴゃ」

「蛇鋼球!?」

「が・・・ま・・・、うあぁあぁ!!」

「何やってんだよリボーン・・・」

「堪忍袋の緒が切れた」

「キレやすいなぁ・・・。ランボはまだ退院して日が浅いんだぞ・・・?」

「リボーンのバカ者がー!! タレマユのくせに!!」

「十年バズーカ!? ちょっ待てランボ!」

 

ツナが慌てて止める横で、リボーンは地面から手頃な石をとった。

 

「星になれ」

「ぐぴゃっ!!!」

 

リボーンが投げた石で十年バズーカはあらぬ方向に撃たれ、弾が方向転換してツナ達の方に飛んでくる。

 

「と、飛んできた・・・」

「ん・・・・・・? やべーな。動けねぇ」

「は? ・・・じゃあ未来を楽しんでおいでよ。未来のオレがどんな人か教えてね」

「ふざけてねーで助け―――」

 

リボーンがそう言うが、時既に遅し。ミサイルはリボーンに直撃し、煙を上げて消滅した。

しかし。

煙が晴れたその場所には10年後どころか、現在のリボーンすらも存在していなかった。

 

「あれ。リボーン・・・? 消えた・・・? 十年後ってリボーンいないの・・・? ま、五分後には帰ってくんだろ! なーんだ期待したのに損した気分だぜ。かーえろ」

 

 

―――翌日。

ツナは私服で街中を駆け回っていた。音速の域で。

 

「なーんでリボンヌは帰ってこないかなー?」

 

そんな風に飛び回っていると、ツナは遠くに獄寺達を見つけた。

 

「なんで獄寺さんもツナさん家行くんですか!?」

「通販で買った土産の生八つ橋をお渡しするんだ!!」

「通販はお土産じゃないです!」

「ちょっといい。二人とも」

「ツナさん!」

「十代目!!」

「あのさ。リボーン見なかった?」

「はひ?」

「リボーンさんが、どーかしたんスか?」

「実はさ、帰ってこないんだよ」

「帰ってこない?」

「十年バズーカに撃たれたのは昨日だよ? ・・・まだ帰ってこない」

「昨日!? ・・・っていうか十年バズーカって何ですか?」

「知らないなら知らないでいいよ・・・」

 

ハルは知らないんだったなー・・・。なんて遠い目をしながらツナは言う。

 

「・・・ッ。とにかくリボーンさんを探しましょう!」

「あ、そうだね」

「はひ・・・」

「オレは学校に行きます!」

「ハルは山本さん家に!」

「じゃあ・・・、俺は公園の方でも」

 

ツナはそう言いながら跳んだ瞬間。名案が出てきた。

 

(大人ランボに聞けば一発じゃん!)

 

靴を履いたまま窓から帰宅し、ランボに話しかける。

 

「ランボ! 十年バズーカで入れ替わってくれないか!?」

「何言ってんのツナ。ランボさんは十年バズーカなんてシ・リ・マ・セ・ン」

「ランボが知らなくてもこっちは知ってるんだ! 急いでるんだ。貸してくれ!」

 

頭から出ている十年バズーカを引っこ抜いて、ランボと奪い合うツナ。その拍子に十年バズーカは発射された。

 

(あ。・・・これもしかして未来行くヤツ? 十年後かー。どんな風なんだろ?)

 

 

そして、ツナは十年後に転移した。

 

「ソロモンよ! 私は帰ってき痛ァッ!?」

 

勢い良く身を起こしたツナは天井に頭をぶつけた。

 

「・・・いやいや。棺桶じゃん。俺は確かに吸血鬼だけどさぁ・・・」

 

ツナはぶつぶつ文句を言いながら狭い箱の蓋を外す。

 

「もしかしなくても十年後・・・。これはあれだ、俺氏死亡www」

「あ・・・・・・、あなたは・・・!」



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第三十八話 十年後の平行世界

「あ、獄寺君?」

「十代目!」

「はいはい。綱吉さんです」

「・・・おちついて、いらっしゃいますね?」

 

その言葉にツナは確信を一つ持つ、そもそも沢田綱吉(神上の統魔)が簡単に死んでいる時点でおかしいのだ。

 

「まぁね。・・・もしかして。ひとつ聞いてもいい?」

「は、はい。なんでも」

「六道骸ってどんな奴?」

「・・・守護者ですけど。マフィアを恨んでる。そんな男です・・・?」

「あ、なるほど。これは平行世界だわ」

「へいこ・・・?」

(そもそも。『マーレの大空と甘味を仲良く食べた過去』がある時点でこの事件ないと思ってたんだけど、そうか・・・平行世界に飛ばしてきたか・・・)

 

どうも自分の暮らしていた時間軸とはかなり違う歴史を刻んでいると知り、ツナは余計なことを口にしない方が良いと判断する。

 

「いいですか、十代目。過去に帰ったら、この男を探してください」

「へ?」(正一君大人っぽくなったなー・・・)

「こいつさえいなければ・・・ミルフィオーレも・・・白蘭もこれほどまでには・・・・・・」

「白蘭・・・」(マーレの大空ってそんな名前だったよね。ビャクラン)

「次に念のためですが・・・」

「獄寺君」

「な、何でしょう」

「ありがとう。そんなになるまで俺の事心配してくれてたんでしょ? 大丈夫。俺が何とかするから」

「十、代目っ!」

 

と、そこで目の前の獄寺が煙に包まれる。

 

「十代目ぇ・・・?」

「獄寺君・・・」

「あ。十代目も十年後に来てたんですか・・・」

「同じ時間軸かな?」

「?」

「獄寺君。俺の拳は?」

「空気も潰しますっ!」

「うん。同じ時間軸だ」

 

ツナは納得したように頷くが、どうも獄寺は理解できていないようで、

 

「何が起ってるんですか?」

「えーっとね。ここは違う過去から派生した未来・・・所謂平行世界ってヤツなんだよ」

「はぁ・・・なるほど」

「この状況。一言で言うとCHAOS(カオス)だね・・・」

「カオス・・・ですね」

 

ツナはお腹が減ったのか、影の中からパンを出して食べ始める。

 

「しかし、ここ・・・どこなんスかね」

「並盛じゃない? ってか並盛希望」

「日本じゃないってことも考えられますね」

「外国かぁ・・・」

「・・・やはり」

「! 誰だ!」

(誰だ! 誰だ~♪ なんて言ったら怒られるよね)

「初めまして、さようなら」

「ん?」

「敵!! 十代目!! 下がってください。ここは俺に!」

「じゃ、未来での力量試しと行こうよ!」

 

ツナは軽くそう言って、バックステップでその場を離脱する。獄寺はダイナマイトで攻撃をするが、攻撃を返され。さらに拘束された。

 

「おーい。獄寺君大丈夫?」

「すみません・・・」

「やはりリングを使いこなせないのか・・・。宝の持ち腐れだな」

「リングを使いこなす・・・?」

「何それ」

「オレを恨むな。死ね」

「お前が死ねよ。もう」

 

ツナはそう言って、相手と一気に距離を詰める。そして力を最大限に抜いた手刀を叩き込んだ。

 

「ゔっ」

「よっと」

「ぐぅっ」

「・・・どしたの?」

「なる・・・、ほどな・・・」

「女!?」

「なかなかどうして。見所はあるようだな沢田綱吉。オレが全力を出してもお前の戦闘能力には及ばないだろうぜ・・・。最も・・・・・・、旧時代的においてな」

「?」

「それだけではこの時代。生きてはいけないぜ!」

 

撃ち出された弾丸に混じってツナの前に姿を現したのは、

 

「む、ムカデ・・・!?」

 

うぞうぞと動く多足の虫、大きさをのぞけばそれはムカデと称するものだ。

だが、大きさは最大種の数倍あり、頭部に何やら紫色の炎のようなものまでまとっていた。

 

「10代目!」

「はぁ・・・。ムカデだけは苦手なんだよなぁ・・・」

 

そう言ったツナは、自らの周りを囲むムカデを初代零地点突破の両手でつかみ、凍らせた。

 

「―――ッ。なるほど、どうやら聞いていた情報よりできるようだな」

「・・・あんた誰? こっちはまだ死ぬ気にすらなってないんだけど?」

「!? ・・・オレの名はラル・ミルチ」

 

獄寺を拘束していた罠が解除され、ツナの方に駆け寄ってくる。

 

「十代目、お怪我は!?」

「してないよん」

「派手に暴れすぎた。このままでは奴らに見つかるのも時間の問題だ」

「奴ら・・・?」

「敵でしょう」

「これをボンゴレリングに巻き付けろ。マモンチェーンといって指輪の力を封印する鎖だ」

 

その鎖を拾ったツナはポツリと呟く。

 

「これさ。マーモンがおしゃぶりに巻いてたのと似てない?」

「マーモン、チェーンですから、働きは似たようなものなんでしょう」

「帰れたら聞いてみようか。これの仕組み」

「今から対策を練っておくのもいいですもんね!」

「・・・・・・?」(こいつらヴァリアーと仲良しなのか・・・?)

 

その後暫く、歩いて夜が深くなってきたので野宿をすることにした。

 

「えー? マジで?」

「文句を言うな」

「どこにあるかさえ分かれば走って行けるんだけどなー・・・。一人で

「置いていかないでくださいよ、十代目!?」

「大丈夫大丈夫」

 

何が大丈夫なのか小一時間程問いただしたくなった獄寺だが、ツナ相手にそれもできないため断念する。

 

「・・・お前達のことは、写真でしか見たことがない」

「「?」」

「だが、十年バズーカの存在と面影で、何者か識別できた」

「「・・・・・・?」」

「時間ができたんだ。知ってることを話してやる」

「あ、ありがとうございます」

「オレは、ボンゴレ門外顧問の組織に所属している」

「父さ・・・沢田家光の?」

「じゃあ、お前は・・・味方なのか」

「ああ・・・。ボンゴレ全体に緊急事態が発生したため、十代目ファミリーの状況を調べる命を受けやってきた」

「緊急事態?」

「そうだ。ボンゴレ本部は二日前に壊滅状態に陥った」

 

その言葉に驚いた二人だが、状況が聞きたかったツナが獄寺を黙らせ続きを促す。

大体の状況を聞いたツナが質問を口にした。

 

「つまり、そのミルフィオーレとかいうファミリーがボンゴレを潰しに来てるってことですか?」

「ああ、そうだ。・・・アルコバレーノはリボーンも含め皆死んだ。その他にも何名か関係者が死んでいる」

「そう・・・ですか・・・。何か音が聞こえない?」

「音?」

「―――!!」

「?」

「敵だ! 感傷に浸ってる場合ではなくなった。奴らは強い! 見つかったら終わりと思え!」

「マジ?」

「喜ばないでくださいよ十代目・・・」

 

岩の影に隠れたツナ達は、視線の先につい最近見た機械兵を見つけた。

 

「ゴーラ・モスカ!」

「ゴーラの二世代後の機体だ。ストゥラオ・モスカ」

 

彼らが息を潜めながら話していると、突如モスカがこちらを向く。

 

「気付かれた?」

「見つかるか。ストゥラオはリングの力を感知するシステムを搭載しているが、マモンチェーンでリングの力は封じているだろ?」

「こっち来てるけど・・・」

「? バカな・・・。お前達、ボンゴレリング以外のリングは持っていないな!?」

「あ! あー・・・。昨日ランチアさんにもらったリング・・・」(あとウラヌスリング・・・)

「そのリングは・・・! 何故話さなかった!?」

「これも力あるリングだとは思わなかった・・・としか・・・・・・」

 

ツナはカラ笑いしながら目線をそらす。

 

「三人でも倒せる相手じゃない! 全滅だ・・・」

「へっ弱気じゃねーか。自慢のリングの力とやらは役に立たねーのかよ」

「戦いは力だけではない! 相性が重要なんだ!!」

「―――確かに相性は大事かもしれないね。でもさ」

 

一瞬の間を置いて、爆発音がその場に響く。獄寺達がその方を見ると、腰すら入ってない腑抜けた体勢で拳を振り抜き、燃えるモスカの残骸の前に立ったツナがいた。




相変わらずの破壊力(小並感)


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第三十九話 アジト

「じ、十代目!」

「や」

「っと・・・助っ人は要らなかったみたいだな」

「あ、山本・・・は、まだ入れ替わってない、と」

「・・・? あぁ、十年バズーカ!」

「それそれ」

「まぁ、行こうぜ。アジトまで」

「おい・・・。走らないのか? 歩いていては朝までかかるぞ」

「そっか。言ってなかったな。お前の知ってるアジトの在処の情報はガセなんだ」

「・・・・・・?」

「もし敵に捕まって情報を抜き出されてもウソの情報が渡るように、だね」

「ん。オレを見失わないように着いてきてくれ」

 

スーツから小箱を取り出しす山本。そこから何かが飛び出すと、ポツポツと雨が降り始めた。

 

「防犯対策のカモフラだ。よそ見はするなよ?」

 

山本の言葉と同時に、雨がシャワーのように強く激しく降り始めた。

 

「いって! イテテッ!」

「こっちだ」

 

山本の言葉に導かれて、そこに向かえば草むらに隠れて地下通路の入り口があった。

 

「え」

「マジか・・・」

「アジトって地下にあるの?」

「ああ、そうだぜ」

 

ツナは物珍しそうにキョロキョロ見回す。

 

「ここはボンゴレの重要な拠点として、急ピッチで建造中だったんだ・・・。今んとこ六割方できてるってトコだな」

「ボンゴレスゲー・・・」

「ハハハ。いいこと教えてやろっか? この時代のツナがぜーんぶ決めて、作らせたんだぜ」

「え? つ、つまり・・・。予想してたけどこの時間軸の俺、ボンゴレ継いでんのーっ!?」

 

うわーっ。とかあんまりだーっ。とか叫びながらゴロゴロ転がるツナ。リボーンがいたら突っ込んでいただろうが、守護者達はツナの突然の行動に慌てるばかりだった。

 

「・・・ま、俺がボンゴレを継がなきゃいいだけの話か」

「ハハハ」

「おい、あの装置はなんだ?」

 

 ラルが指さす方を見れば、ゲートのようなモノに光の柵が張ってある。

 

「ああ、あれはメカニックのジャンニーニの作った、なんとかって物質をさえぎるバリアだそうだ」

「・・・・・・。うっ。うぐっ・・・」

 

突然倒れたラルを見て、山本がその傍にしゃがみこんだ。

 

「おまえもだったのか・・・!」

「えーと? もしかしなくてもこのバリアのせい?」

「ああ・・・、環境の急激な変化のせいでショックを受けたんだ。・・・ここは彼女達にとって外界とは違う作りになっているからな」

「ふーん」

 

山本の案内でさらに基地内を進み、ツナと獄寺は応接室のような部屋に通される。

 

「おせーぞ」

「!」

「ちゃおっス」

「り、リボーン!」

「だきしめて~♡ ・・・こっちよ!!」

 

背後から攻撃する気満々でリボーンが飛び蹴りをしているのに気づいてから、ツナは行動を開始した。流れるような動作で彼の攻撃を避けたツナは、その頭を鷲掴みにして宙ぶらりんにする。

 

「こっちが心配になって探していれば、そっちはコスプレして楽しんでたってのか? いったいどういう了見だ。あ゙ぁ゙!?」

「あ、いや。その・・・ちょっとした出来心で・・・」

 

殺気よりも怒気を強く放出するツナに、思わずリボーンも敬語になる。

 

「へぇー。何だかとっても危険な状況だっていうのに、随分と余裕だね。流石最強の殺し屋といった所かなぁ? センセイ?」

「いや、ホント。スイマセン」

「うん。別にそんなに怒ってないし。いいよ」

 

家光が怪我を理由にイタリアから帰ってこなかったため、ツナに作文の練習として家光宛の手紙を書かせたリボーンは、原稿用紙数百枚分(二百からは数えていない)にぎっしりと書かれたツナの日頃やリング争奪戦の件の不満、文句を綴ったお手紙をイタリアにいる家光に送る羽目になった。(途中書きながらツナがクフフとか笑っていたがリボーンは無視した)

後でリボーンは知ることになるのだが、ツナが書いた手紙の最後には送られた相手が読み終わると同時、用紙全てが発火するという術式が書かれていて、その事でまた一悶着あるのだが。(この事を知ったリボーンはこれまで以上にツナに対して節度を守って接しようと決めるのだった)

 

「悪かったな」

「ま、いいよ」

 

ツナはリボーンの体を比較的柔らかそうなソファーに向かって軽く投げる。

 

「よっと。・・・危ねぇ」

 

綺麗に着地したリボーンだったが、その時足元が少しふらついた。

 

「調子・・・悪いのか?」

「まぁな。このスーツを着てないと体調最悪だったんだ。外のバリアもオレのために作らせたんだぞ」

「そのスーツ意味があったんだ・・・」

「そうだぞ。まぁ、期待してたらワリぃがオレにも分からない事だらけでな」

「ここは? 並盛? 並盛だよね?」

「・・・そうだぞ。ここは並盛。だから、お前達の問題だ」

「何が起きてるのさ」

「現在、全世界のボンゴレ側の重要拠点が同時に攻撃を受けている。もちろん並盛(ここ)でもボンゴレ狩りは進行中だ」

「ボンゴレ・・・」

「狩り・・・?」

「お前達も見たはずだぞ。ボンゴレマークのついた棺桶を」

「あ、俺が出てきたヤツか」

「平行世界の十代目は軟弱なんですかね」

「多分ね。殺されてはないと思うけど。黙って殺されるような人間じゃないからね。沢田綱吉って人間は」

「・・・・・・なんかツナがチゲーのな。昔だってのに今のツナを相手にしてる気分だ」

「平行世界だからね。違う部分も多々あるさ」

 

ツナはあっけらかんとそう言った。そして、急に真剣な顔になるとこう言った。

 

「向こうの人間の目的はボンゴレ陣営の人間を全員消すことでしょ? だったらまず・・・こっちの世界にもいるであろう、守護者を集めないとね」

「他の奴らは?」

「ランボ&イーピンは、俺がラル・ミルチを迎えに出て行くのと同時に、笹川とハルを迎えに行った。ビアンキとフゥ太は情報収集に出ている」

「ふーん。何か情報はないの? 特に雲雀さんとか」

「あるぜ。といってもこれだけだけどな」

「・・・これってバーズの鳥・・・?」

「今はヒバリが飼っていて、ヒバードって言うらしいぞ」

「それ誰の命名だよ・・・」

「ま、並盛大好きのアイツのことだ、この辺りにいるに違いねぇぞ」

「うん、そだね。とりあえず外に出る前に・・・、山本、匣兵器とリングを見せてもらえる?」

「ん? 良いぜ」

 

山本から手渡された物を見るツナと獄寺。

二人してあーでもないこーでもないと言いながら仕組みを理解しようとするその姿は、どこか子どもらしさを感じた。

と、そこで山本は獄寺の持つアタッシュケースに目を向けた。



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第四十話 再会

「おい、獄寺。それ・・・」

「ん? あぁ、未来(こっち)のオレの所持品だったみたいだから勝手に持ってきた」

 

獄寺はそう言いつつ、テーブルの上でケースを開ける。ツナも気になるのかのぞき込むように近づいてきた。

 

「メモ帳、筆記用具に、タバコ、ハンカチ・・・髑髏のアクセサリー・・・なんだ・・・? これ」

 

コケむした箱と、封筒を発見する獄寺。

 

「手紙?」

「はい。十年経っても紙の手紙かよ・・・。!?」

「何が書いてあるの・・・? 絵? これなら紙の手紙で納得だね」

「これはG文字だ!!」

「G文字?」

「ゴクデラ文字といって、中一の時授業中にオレが考え出した暗号です」

「何やってんの、授業中に・・・」

 

ツナは授業をマジメに受けろよと続けたかったが、自分のことを棚に上げるわけにも行かず、口を閉じた。

 

「えーと・・・。シュ・・・ゴ・・・シャ・・・ハ・・・・・・シュウ・・・ゴウ・・・。ダメだ、途中で読めなくなってます」

「守護者は集合? ・・・まぁ、そのまま捉えて召集命令でも出すんだろうね」

「かもしれませんね・・・」

「それで、こっちは・・・ボロっちぃけど、匣兵器?」

 

ツナが獄寺の手の上に乗るコケむした箱を指して言う。

 

「あ、そういや・・・アイツ、スゲーのを見つけたって言ってたような」

「スゲーの、か・・・コレは死ぬ気の炎で開くんだろ?」

 

獄寺がそう訊けば、山本は獄寺やツナの前にリングをはめた手を差し出す。

 

「人間の体には、血液だけじゃなく見えない生命エネルギーも波動となって駆け巡っている。リングにはそれを死ぬ気の炎に変換して生成する力があるんだ。・・・こんなふうにな」

 

山本が填めたリングに青い炎がボッと燃え上がり、彼はそれを匣兵器の穴にはめた。すると、青い炎をまとった燕が山本の肩に乗る。

 

「それ、ラル・ミルチのムカデは紫の炎だったぞ」

「そう言えばバジル君の死ぬ気の炎と同じ色・・・」

「あ。言い忘れてた。この波動には七つの種類があって、自分の素質に合致した波動が出るようになってる・・・。守護者の役割と同じと思ってもらえれば」

 

ツナと獄寺の疑問に答え、山本は燕を匣兵器の中に戻した。

 

「獄寺君。鬼が出るか蛇が出るか分からないけど、その匣兵器開けてみない?」

「これをっスか?」

「そうそう。どうやら俺達はミルフィーユって言うマフィアを倒さないと過去に戻れそうにもないからね。この時代の戦い方を知っておかなきゃ。俺には必要なさそうだけど」

「ハハ。十代目は無敵っスから」

「あと、ミルフィーユじゃなくてミルフィオーレな」

「え。そうなの? あっぶね。向こうの人に失礼になる所だった」

「えっと・・・リングに炎を・・・」

 

獄寺はぐっと拳を握りしめてリングに集中するが、リングには何の反応もない。

 

「獄寺、イメージだ。覚悟を炎に変える、そうイメージしろ」

 

山本が口を開く。

 

「覚悟・・・か。なるほどな」

 

山本のアドバイスを聞いて、笑った獄寺は、肩の荷が下りたようにリングに視線を向けた。

獄寺はとうの昔に覚悟ができていた。沢田綱吉の守護者として、自らの命を無駄にせず、ボスをファミリーごと守り抜く。それが獄寺の覚悟だった。

その瞬間。赤く荒々しい炎が獄寺のボンゴレリングに灯される。

山本の静かな青い炎とは全く違うその形状に、獄寺は守護者の役割を思い出した。

 

「常に攻撃の核となり休むことのない怒濤の嵐・・・か。だったスよね?」

「合ってるよ?」

「属性を持つ死ぬ気の炎にはそれぞれ特徴的な力があって、大空は調和、嵐は分解、雨は沈静、晴は活性、雷は硬化、雲は増殖、霧は構築だ。匣兵器もそれに合わせた力を持つ場合が多いんだ」

「ってコトは、俺は・・・・・・、分解の力を持ってるってわけだ。物質の“分解”っていうんなら、攻撃力は結構ある方なのか?」

「そうだな。嵐は攻撃力で言うなら六属性随一だ。・・・・・・大空は絶対数が少ないから、比較対象には出来ねェし」

「大空は貴重なんだねー」

「十代目、開けてみてもいいですか?」

「うん。いいよ」

 

ツナに何故か確認をとった獄寺は見よう見まねで匣兵器に炎を注入する。そして、匣兵器が開くと、獄寺の腕にドクロ型のガントレットのようなものが装着された。

 

「イ・・・・・・イカスぜ」

「そういうデザイン好きなんだね・・・流石獄寺君というか何というか・・・」

「ハハッ、こういうトコは俺の知ってる獄寺のまんまなのなー」

「で? 結局どう使うんだ? コレ・・・」

 

獄寺が使用方法に首を傾げた時、ガントレットの上部に文字が浮かび出る。

 

「・・・あ? 弾を食わせろ?」

「弾になりそうなものなんてあったかな?」

「うーん・・・ダイナマイトとか食わせてみます?」

「いいね!」

「・・・おい、オメェら。分かってると思うがここで試すなよ?」

 

今にも何かやっちまいそうな雰囲気のツナと獄寺にリボーンが注意をすれば、二人して心底残念そうな表情をうかべた。

 

「そうっスね・・・、ここじゃ危ねェでしょうし。ヤるなら思いっきり撃てるトコがイイっス」

「ハァ。いい的さえあればなぁ・・・。獄寺君にぶっ放させるのに」

 

ツナはため息をついてぶつぶつと文句を言ったあと、空気を変えるためにも一度手を叩いて明言する。

 

「じゃ、とりあえず守護者を集めよう」

「はい!」

「そうだな」

「ま、ツナもいることだし特に心配してねーが、死ぬなよ」

「なーに。お前達はこの時代の俺達が失ったすんげー力を持ってんじゃねーか」

「失った? 力・・・?」

「・・・・・・お前達は希望と共に来てくれたんだ。ボンゴレリングっていうな」

 

 

 

―――外。

ツナ達が次にでた地上は先程の森ではなく、五丁目にある工場跡だった。

 

「で、山本。結局ボンゴレリングはどうなったの?」

「あー。大分前にリングを砕いて捨てちまったんだ」

「捨てた? また誰が・・・」

「うちのボスさ」

「あ、俺がしたんだ。まぁいいや」

「軽いっすね」

「必要ないって思って砕いたんだろうよ。今じゃ必要不可欠になってるみたいだけど」

「そのとーり」

 

と、その時。視線の先で爆発が起きる。

 

「「「!!」」」

「こっちです!」

「急いで!」

「?」

 

噴煙の中から飛び出してきた声にツナが「目を凝らす」。

 

「あ。ランボ、イーピン!!」

「誰かを連れてるな」

「それって・・・・・・」

「京子さん、ハルさん。逃げて!! ここは私が!!」

「でも!!」

 

そこに嵐の炎が叩き込まれ、再度爆発を起こす。

 

「きゃあ!!」

「上か!!」

「あれって下手な兵器より強いんじゃ無いの・・・? 厳重な取り締まりが必要だね・・・」

「とどめを刺してこい」

「まかしてよ。兄弟(ブロー)

 

そこには炎をまとったブーツで空を飛ぶ、隊服なのだろう揃いの黒の服を着た男達がいた。



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第四十一話 覚悟とリングの力

「ミルフィオーレのブラックスペル」

「ブラック・・・スペル・・・?」

「京子ちゃん達もあそこにいるんだよね?」

「いくぜ! ボンゴレリングからマモンチェーンをはずせ!」

「「!!」」

 

ツナと獄寺はとりあえず言われた通り行動する。

 

「じゃあオイラがもらう! 手ェ出すなよ、太猿兄貴」

「しっかりやれよ野猿」

「くっ」

「うわああん!!」

「うろたえないでランボ!! 京子さんとハルさんをお願い!!」

「その体じゃ無茶だよイーピン!!」

「へっへー」

 

野猿は匣兵器から死神の持つ鎌を取り出した。

 

「じゃあ行くぜ! オイラの得物達!! ショアッ」

 

野猿が鎌を振るい、死ぬ気の炎を飛ばす。が、その攻撃が拡散されたエネルギーに吹き飛ばされる。

 

「十代目。どーっスか? この赤炎の矢(フレイムアロー)の威力」

「うん。純粋にすごいと思うよ」

「兄貴。誰だこいつら」

「抹殺者リストに載ってたかも知んねーが、消えていく人間をいちいち覚えちゃいねーな」

「だよなっ!」

 

山本が獄寺に変わり戦う。経験の差か、ツナ達の知る山本とは似ても似つかないその洗練された腕に、ツナは安心して任せられると思い、みんなの方へ駆けていく。

 

「みんな大丈夫?」

「しっかりしろよ」

「ボンゴレ! 獄寺氏も!」

「だから言ったじゃないですか。絶対ツナさん達が助けに来てくれるって」

「おぉ・・・十年後ハル・・・」

「はひ? 何だかハル・・・。急に背が伸びたみたいです!」

(中身は成長してないようで・・・)

「・・・・・・! あれ? た、大変! 京子さんがいない!」

「え!!」

「もしかしたら・・・、さっきの爆風で・・・!」

「探してくるよ」

 

ツナは京子を探しにその場から消える。最も消えたように速く動いただけなのだが。

 

「前言撤回だ野猿。くだらん雑用任務に転がり込んだ久々の大物。見逃す手はねぇ。手を貸すぜ」

 

再度攻撃が始まった。

 

 

「京子ちゃーん? 笹川京子さーん?」

 

ツナは倉庫の中をキョロキョロと探す。

 

「京子さーん・・・?」

「あ」

「お」

「ありがとう。来てくれたんだね、ツっ君」

(ツっ君? どれだけ仲良くなってるのこの時間軸・・・)

「ごめん・・・。私足くじいちゃった」

「え? そりゃ大変だ」

「・・・あれ? なんだろう。何か幼くて懐かしい感じがする」

「とりこぼしは無しだぜ」

 

京子(天然)がいたことでほのぼのした空間だった場所に、野太い男の声がする。

 

「なぁに、すぐに済むさ。雨の守護者(メインディッシュ)を待たせらんねーからな」

「・・・・・・!!」

「下がってて」

「ツっ君・・・」

「やらせはせん。やらせはせんぞっ!」

 

ツナが格好付けた時、後ろで音がする。

 

「へ?」

「ツナ君・・・?」

「あ、え!?」

「ツナ君だ! よかったー。みんなで探してたんだよ。リボーン君と獄寺君も。あれ? ここ、どこだろ・・・?」

 

と、そこに炎の刃が飛んでくる。

 

「少し後ろに!」

「う、うん!」

 

その一瞬で立ち位置が変わり、ツナが身を挺してその炎の刃から京子を守った。

 

「ツナ・・・君」

「はっ! 痛くも痒くもねーな・・・」

「ほう。その炎の色は大空の属性・・・、なかなかのレアだぞ小僧。だがタラタラと相手してやるつもりはない。向こうに雨の守護者ってでけー得物を、待たせてるんでなぁ」

「あぁ、こっちも長く戦うわけにはいかないさ」

「まさか勝つつもりか?」

「当たり前だ」

「格好つけたいお年頃か、小僧!」

 

そう言って、太猿は炎の刃を放つ。それをツナは死ぬ気の零地点突破 改で受け止める。

 

「好きな女の子を守るって言う状況でぐらい、格好つけたっていいだろう?」

 

ツナはそう言って大空のリングに死ぬ気の炎を灯した。

 

(炎が変わりやがった・・・。ただデカくなったんじゃねぇ・・・、純度の高い大空の炎になっている・・・。経験で分かる。あーゆーのはやべぇ・・・)

「怖じ気づいたか?」

「ぬっ!! ふざけるな!! 女と炎は使いようだ!! テメーのようなうるせーハエには、殺虫剤をまくだけだ!」

 

匣兵器から高速回転する飛来物が飛んでくる。それをツナは飛んでかわすが、ホーミングのようでツナを執拗に追い回す。

 

「逃げ切れるものか!! 黒手裏剣(ダークスライサー)はお前だけを貫くぞ!!」

 

逃げるようにして、その場に残した炎に反応するそれを見て、ツナは答えに辿り着く。

 

「炎に反応する・・・。まさに追尾ミサイルだな」

「その通り!! お前の発するようなデカい炎のみを追尾し、炎を吸収する度に加速する!! そしてしまいには目標物の1.5倍の速度に達する!! 回避は不可能だ!!!」

「―――ねぇ。誰に説明してるの?」

「なっ!?」

 

太猿が慌てて振り向くと、簡略化された髑髏が描かれた紋章(ゼブル・エンブレム)の上に立つツナがいた。

 

「バカなっ!」

「思った通り、炎を消したら追ってこなくなったよ。流石に光速までは着いてこられないみたいだし」

 

そして、ツナはその手を太猿に向けてのばす。その手からは冷気が漂っていた。

 

「―――ッ! バカな!! ほ・・・、炎を・・・。凍らせるなど!! こ・・・・・・、これではまるで噂に聞いたボンゴレ十代目・・・!! 貴様何者だ!!!」

 

死ぬ気状態じゃないにしろ、零地点突破は元から使えていたツナは、振り下ろされた鎌を凍らせる。

 

「のわっ!!」

「並盛中学校二年A組、沢田綱吉。ボンゴレ十代目(仮)だ」

「ぬおぉ!!」

「連続 普通のパンチ」

 

そして、ツナ達は。気絶した彼らを捕虜として捕まえた。

 

「・・・なんで捕虜として捕まえるんすか? 十代目」

「敵から有益な情報を得るっていうのは、いつの日も常套手段なんだよ? 獄寺君」

「ですが」

「拷問なら任せて! 口答えする度に下半身からゆっくり、ゆっくりと凍らせていって・・・くふふ」

「十代目、楽しそうですね!」

「でしょ!? 何かこっちが悪者みたいだけどな!」

「よっしゃ。そうと決まりゃ抵抗出来ないように、リングや匣兵器も根こそぎ取り上げときましょう!」

 

二人がワイワイやっている後ろで、山本達は何が何だか分からないといった様子だった。



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第四十二話 ツナの独白

Date

沢田綱吉

並盛中学 二年A組

ボンゴレファミリー(仮)

十代目ボス(仮)

大空のボンゴレリング(精製度A以上)

ランチアのリング(精製度?)

大宇宙のウラヌスリング(精製度S+以上)

 

―――そんな男は今現在、意外と素直にリボーンの前で正座をしていた。

 

「なァツナ。オレが何を言いたいか分かるな?」

「捕虜として彼らを捕まえたこと?」

「身体検査もきっちりしてから連れてきたのは褒めてやる。だがな」

「うん」

「情報を引き出すために氷漬けにするのはどうなんだ。って話だ」

「一番確実な拷問方法だったんだよ? 視覚化した恐怖が体を蝕んでくるんだから」

「・・・もういい」

 

ツナの言い分にリボーンは呆れ、説教を取りやめた。

 

「しかしなぁ・・・リボーン。ハル達にどんな説明したんだよ」

「ん?」

「デストロイとか、平和な並盛とかいってたよ? 俺としてはこっちの世界の方が殺伐としてて、過ごしやすいけど」

「そりゃお前の感性だ。一般人(ハル達)はそんな事考えもしないと思うゾ」

「こんな状況下だからこそなんだろうけど、現在カレー作りしてるからね」

「・・・ツナ。闘えそうか?」

「余裕だよ。死ぬ気の炎に頼ってる戦闘なんて、現代兵器の足元にも及ばないよ」

「何言ってやがる?」

「鉛玉の方が、炎よりも生身には恐ろしいって意味だよ。じゃ、ちょっと京子ちゃん達の方みてくる」

「ああ」

 

ツナが出ていったドアの方をみてリボーンはため息をつく。

 

(・・・何か、この時代の奴らが可哀想になってきたぞ。散々同情は甘いとか言ってきたが、こればっかりは言わずにはいられないな。違う時間軸とは言え、ツナは理不尽に未来に拘束された上、自分が殺されてるんだ。かなり頭にきてるんだろうな)

 

 

―――キッチン。

ツナがそこについた時、ちょうど悲鳴が上がった。

 

「どうしたの?」

「な、流しの下に・・・」

「何かいるの・・・」

「え?」

 

黒い塊が流しの下で動いていた。そして、ツナ達の方に飛び出してくると、人の声が聞こえてくる。

 

「いや―――、抜けました。あ、私。ボンゴレファミリー御用達、武器チューナーにして発明家のジャンニーニでございます」

「あ、武器をおかしくする」

「お久しぶりですボンゴレ十代目。私もすっかり立派になりまして、今や超一流のメカアーティストに成長いたしました」

「相変わらず太ってるみたいだけどね」

 

ツナの辛らつな言葉にジャンニーニは乾いた笑いを漏らした。

 

「えーっと、料理大丈夫?」

「あっ! ごめんなさい! 火、消し忘れてた!」

「はひ! ギリギリセーフです!」

「よかった」

「火・事!! 火・事!!」

「うるさいよ、ランボ。本当の火の恐怖教えてあげようか?」

「え、遠慮するもんね!」

 

片方の手に炎を灯してツナがそう脅せば、ランボは慌てて部屋の隅に退避する。

 

「・・・ツナ君・・・」

「ん? どうかしたの? 京子ちゃん

「・・・また教えてほしいなーって・・・」

「・・・分かった。今晩俺の部屋に」

「・・・うん」

 

ツナはそう言うと廊下に出る。そこには獄寺達がいた。

 

「何かあったんすか! 十代目!」

「遅いよ。何があったって・・・、ジャンニーニが流し台の下で点検してたのを見つけた京子ちゃん達が驚いただけだよ?」

「そ、そうだったんすか。てっきり敵襲かと」

「センサーも何も反応してないのに、何かあるわけないじゃないか」

「で、ですよね」

「でも、そんな風にして忍び込んできた相手は中々殺りがいがありそうだけど」

 

ツナがそう言って笑っていると、リボーンが話しかけてくる。

 

「ジャンニーニがトレーニングルームに案内してくれるらしい。ほら、行くぞツナ、獄寺、山本」

「はい!」

「えー?」

「わかったのな!」

 

そしてトレーニングルームがある下の階に行くためにエレベーターに乗り込む。

 

「このアジトは公共の地下施設を避けているため、いびつな形状をしています。総面積は、イタリア・サンシーロ・スタジアムの約1.5倍。電力は地熱を利用した自家発電で供給しています」

「へぇー。法律とかどうなんだろうね。科学的にもよく分かんないし。本当に足りてるの?」

「大丈夫です。おや、つきましたよ。ここです」

 

ジャンニーニの案内でツナ達が着いたのは広さには十分余裕がある場所だった。

 

「俺が暴れるための広さは十二分にあるね」

「まぁ、それを考慮して設計されてますから・・・」

「ふーん」

「ツナ」

 

キョロキョロと周りを見ながら何かを考えるツナに、リボーンの言葉がかけられる。

 

「何?」

「お前の戦闘能力はハッキリ言って化け物だ。何も心配はしてねぇ。だから、()()()()()()()()()()()、ヒバリを探しに行ってこい。一人で」

「・・・。ま、俺一人の方が機動力もあるしね。分かった」

「おい、リボーン。本当にこんなガキで大丈夫なのか?」

「お前はみたことないのか? ツナの原理の分からねぇ攻撃力を」

「・・・・・・!」

「あるみてーだな。あれがあるから俺はツナの心配なんてしてねぇ。ついでだ、ツナ」

「ん? っと。匣?」

「その箱を開匣しろ」

「ん、分かった」

「おい、リングに炎を灯すことができなければ開くことさえ・・・」

 

が。ツナは既に右手に填めたボンゴレリングに火を灯し、匣の穴に突っ込んでいた。

 

「お? 崩れる?」

 

そして、出てきたのはマモンチェーンが巻かれたおしゃぶりだった。

 

「これって・・・アルコバレーノの・・・?」

「ふっ。リングと匣の使い方は分かったか?」

「え? まぁね」

「じゃあ行ってこい」

「・・・分かった」

「っと、その前にメシにするぞ」

「あれま」

「ハラへったな」

 

そしてメンバーはカレーを食べてその日を終える。

 

 

―――夜。

ツナは自分の部屋に取り付けられたカメラや盗聴器、センサーの類いを全て破壊し彼女を待っていた。

 

「・・・ツナ君」

「こんばんは、京子ちゃん」

「ごめんね。ワガママ言って、でも」

「俺なら教えてくれる。そう思ったんだよね」

「うん」

「じゃあ、掻い摘まんでだけど説明するよ。今、俺達の身に起ってることを」

 

そしてツナは、十年バズーカの仕組みから始まり、未来がどんな状況か、そしてこれから何が起きるのかはまだ未知数であることを教えた。

 

「そう・・・なんだ」

「うん。これから何が起るかは俺にもよく分かんないんだけど、これだけは言える。みんな無事で過去に帰る。その為に全員守ってみせるってね」

「ふふっ。ありがとう。・・・私ね、不安だったんだ」

「?」

「ツナ君達がいなくなって、突然ツナ君に会って、よく分からない内に巻き込まれちゃって・・・。この時代じゃお兄ちゃん・・・行方不明なんだって・・・・・・」

「うーん。極限な了平さんが妹さんに何の情報も渡さずにいなくなったりするかなぁ・・・」

「?」

「分かった、何かヒントがないか探してみるよ。明日、俺外に行くから。京子ちゃんはアジトにいて、絶対。俺の手が届く範囲から出ないでね」

「うん・・・。? どういう意味?」

「気にしない気にしない。言葉のあやだから」

 

その後、京子の部屋まで彼女を送り、自分の部屋に戻らずに出口に向かったツナだった。



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第四十三話 待ち受けるもの

(確か原作ではD出入口・・・。あった!)

 

ツナはハッチの中に飛び込んで外の世界へ繰り出した。

 

 

すっかり日が昇った並盛町。

 

(うっわー・・・黒服のお兄さんがいっぱいいるぜぇ・・・!)

 

ツナはまったく隠れようともせず、堂々と街中を歩いていた。

 

「おい、そこのボウズ」

「ハゲてないけど何ですか?」

「この家の娘、知らねぇか?」

「笹川京子っていうんだが」

「残念ながら知りませんです。俺基本的に引きこもり何で」

「時間とらせたな」

「いえいえ」

 

ツナはボサボサの黒髪頭をかきながら、道を進む。

 

(こりゃ、京子ちゃんちで情報収集は無理そうだな・・・。仕方ない、事情を話しても大丈夫そうな・・・黒川の家にでも行ってみるか)

 

黒髪黒目の()()()()()()()()()純日本人容姿の少年は、並盛町内を歩いていく。

黙って出てきたアジト内で凄まじい混乱が起きていることも知らずに。

 

 

(っと、ここが黒川の家かな?)

 

ツナは礼儀として一度インターフォンを鳴らす。

 

『はい? どちら様?』

 

そしてツナは、声だけ沢田綱吉に戻して。

 

「あ、黒川? ちょっとお願いがあるんだけど・・・」

『・・・? まぁ、いいけど』

 

玄関先に招かれたツナは変装を解く。

 

「ねぇ、沢田。あんた何しに来たの?」

「えっと一から情報を話してたらキリが無いんだけど・・・」

 

言いながらツナは夜のリングを介して炎を発生させる。そして、半ば強制的に京子をその場に呼び出した。

 

「! ツナ君!? みんな探してるんだよ?」

「ちょっと野暮用でね。黒川、一応京子ちゃんも俺達の事情を知ってる。協力してほしい。男達じゃできないことも多いんだ」

「・・・・・・。分かったわ。その代わり、ちゃんとあんたの口からも説明しなさいよ」

「もちろんさ。モード上条当麻

 

二人の目の前でツナの姿が変わる。

 

「それじゃあ、俺は色々と用事があるので。黒川のことだから、了平さんのことも知ってるだろ?」

 

そう言ってツナは家から出て行った。

 

「・・・・・・沢田は、あんな頃からああだったかな・・・」

「え・・・?」

「まぁ、いいや。沢田が頭を下げたんだ。私が教えたげる。あんたの兄貴の情報」

「えぇ・・・!?」

 

 

(それにしても・・・四面楚歌ってこういうことを言うんだろーな。燃えてくるぜッ!)

 

ツナは楽しそうにそう笑う。本来敵に囲まれることは普通に考えて危険な状態なのだが、ツナ・・・いや、上条当麻の思考はそんな事は思わない。「敵に囲まれたのなら、どこに攻撃しても敵にしか当たらないじゃん♪」が、彼の考え方である。

 

「さて・・・、まずは敵のおびき出しかな・・・?」

 

そう考えたツナは、その姿のまま大空のボンゴレリングのマモンチェーンを外し、炎を灯す。

 

「さて、町外れまで着いてきてもらうぜ、強面のおにーさん達♪」

 

 

 

―――どこかの廃工場地帯。

 

「やぁ、あんたらは・・・ブラックスペルとか言う人達かな?」

「・・・何者だ? お前」

「おやおや、俺が何者か分かってきたわけじゃないんだね」

 

そう言って、周りの屋根や地面。空中までも四方八方をブラックスペルに囲まれた状況で、黒髪の少年は笑っていた。

 

「ボンゴレの関係者か。わざわざリング反応まで出して・・・」

「あんたが電光のγさん?」

「・・・俺を知っているのか。バカな奴だ。見たところ高校生のようだが、ボンゴレとどう繋がっている」

「不本意ながら、ボンゴレには世話になってるよ。色んな意味でね!」

 

ツナはそう言うと、五十二枚のカードを取り出す。

 

「トランプ・・・?」

「さてさて、それじゃあ。マジックショーにご案内」

 

ツナはそう言って、手に持ったトランプを空中にばらまく。すると、意思を持ったようにトランプが飛び出し、ツナを囲っていたブラックスペルの内の十何人かに深手を負わせた。

 

「やっぱり」

「あ? 何してんだお前」

「四方を敵に囲まれた時ってさ。とりあえずどこかしらに攻撃しておけばいいと思わない?」

「・・・は?」

「だって、周りには敵しかいないんだから・・・。自分以外の誰が怪我しようが関係ないでしょ?」

 

ツナはそう言って全身から冷気を噴出させる。その一撃で、空中に浮いていなかった人間は工場跡の敷地と一緒に氷漬けにされた。

 

「こっ・・・この技は・・・・・・!」

「死ぬ気の零地点突破 FirstEdition」

「・・・さて、気になることがいくつか出てきた。ボンゴレの十代目はいつ生き返ったのかな? そこんとこ口を裂いても教えてもらわなきゃな」

「あれ? 生きてるとは思わないんだ」

「あぁ、奴が射殺されるところは多くの同士が目撃してるしな」

「それはそれは、大勢でもって人の処刑現場を目撃するなんて、性格悪いよあんたら」

「お喋りはここまでだ。召されな!」

「ビリヤード!?」

 

空中で弾き合い、ツナの周りに着弾したビリヤード球は、ツナに向かって電気を浴びせてきた。

 

「どうだ? ショットプラズマの味は・・・、天国の扉は見えたか?」

「そうだなぁ・・・。発想は十分、威力も申し分ないんだけどなぁ・・・。残念、弾が見えてる時点で沢田綱吉(オレ)には届かねぇよ」

「大空の死ぬ気の炎・・・そうか、やはり貴様がボンゴレ十代目」

「さて、情報を持ち帰られるわけにも行かないから、ここで凍らせておかなきゃね」

「そう簡単に当たるかよ!」

「遅い」

「ッ?!」

 

γが次の攻撃に移ろうとしたその瞬間には、既にツナの掌が肩に触れていた。

 

「ガァッ!!」

「おやすみ。楽しかったよ・・・。あ! いいこと思いついた!」

「なん・・・だと・・・・・・」

 

首から下が氷漬けの状態で、γは問う。もちろん返答があるとは思っていなかった。が、

 

「ねぇ、ここで俺達の捕虜になるのと、ここに全身氷漬けで放置されるの、どっちがいい?」

「・・・」

「そっか。全身氷漬けにされた挙げ句それを砕かれたいっていうんだね? 特殊性癖かな?」

「捕虜になるさ。ったく、ガキがどこで覚えた。そんな脅し方」

「人生の先輩に教わったんだ♪」

 

と、そんな訳で捕虜として連れ帰ったγ達を使って、獄寺達がトレーニングすることになるのだが、それはまた別のお話で。



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第四十四話 合流、試練そして継承

「さて、と。ここでマモンチェーンを巻いても問題ないね」

 

ツナはボンゴレリングの反応を消すと、黒川の家に亜音速で飛び出した。もちろん死ぬ気の炎無しでのことだ。

京子を迎えに行ったツナは、夜のリングでアジトへと戻ってきた。

 

「ただいま。みんな」

「ツナ。どこ行ってやがった! あとあいつ等は何だ!」

「獄寺君達の対戦相手? 何にせよトレーニングの相手にはピッタリでしょ?」

「・・・・・・無茶苦茶だな」

「知ってるよ」

「いいかな。話」

「雲雀さん? あ、見つかったんだ。良かった。でも、ちょっと待ってくださいね。これから雲雀さんの嫌う群れが始まると思いますんで」

「分かった。みないようにしておくよ・・・。って、何か僕の知る小動物と違う」

「違う時間軸ですから。俺は草食恐竜です」

「ふーん」

 

そして、ツナの言った通りビアンキとフゥ太が帰ってきた。

十年前の面影がしっかりと残っているその二人をみて、ツナは思わず笑っていた。

 

「ビアンキ、フゥ太。十年経ってもあんまり変わらないんだね」

「時間軸が違うとは聞いていたけど、ここまで違うものなのね」

「確かに、俺はこの時代の俺とは大きく違うのかもね。だって、多分だけど俺、その白蘭って人と仲良しだもん」

「は?」

「え?」

「ん?」

「はぁ?」

「「「「「えぇえぇえぇえぇえ!!???!!?」」」」」

「どーいうことだツナ!」

「かっ、過去の話だよもちろん!」

「だから俺達がここに呼ばれたのか・・・?」

「カンケーないと思うけど?」

「ツナ、とりあえず何があったのか話せ」

「あーえっと。これは俺が小学生の時なんだけど、白蘭って俺と同い年ぐらいの子と一緒に甘味を食べた思い出が・・・、今でもメールとか電話とかするし・・・」

(((友達かっ!!)))

 

ツナはそれだけの情報を喋ると、トレーニングルームに赴き自主練習を始めた。

 

(さってとぉ~。さってとぉ・・・。どーやって強くなる? とりあえず数日後の試練まで待った方がいいのかな?)

 

ラル・ミルチの指導でツナはその後何日も修行を続けた。

 

―――十三日後。

本日から新しい修行“強襲用個別強化プログラム”が開始されることになった。

山本を鍛えるのはリボーン。

獄寺を鍛えるのはビアンキ。

そしてツナを鍛えるのは―――

 

「気をぬけば死ぬよ。君の才能をこじ開ける」

 

雲のハリネズミで突然襲いかかってきた雲雀恭弥だった。

 

ツナは雲ハリネズミに対抗するように死ぬ気の炎を出すが、押し返すこともできずに壁際で停滞している。

 

「赤ん坊から聞いた通りだ。僕の知るこの時代の君にはほど遠いね」

「・・・じゃっこれでっ!」

 

死ぬ気の零地点突破Fast Edition!

 

「すげぇ!!」

「さすが十代目!!」

 

凍らされていく匣兵器に、山本と獄寺の歓声があがる。

 

「いや、まだだ!」

 

匣兵器が凍りつくよりも先にさらに増殖を始めるのを見て取ったラルが声をあげる。

ツナを雲雀の匣兵器が包み込もうとしていた。

 

「紫色の雲・・・・・・増殖しているのか!?」

「増殖スピードまで化け物ですか!?」

 

全て凍らせるつもりだったが、増殖速度に追いつかず、ツナはすっぽりと匣兵器に包み込まれてしまう。

 

「ツナ!!」

「十代目っ」

「何あれ・・・?」

「ボールになっちゃった!!」

「球針態。絶対的遮断力を持った雲の炎を混合した密閉球体。これを破壊することは彼の腕力でも炎でも不可能だ。密閉され内部の酸素量は限られている。速く脱出しないと、死ぬよ」

 

中に閉じ込められたツナにも、その声は聞こえていた。

 

(そんな事言われたら腕力で破壊したくなっちゃうじゃないですか・・・。まぁ炎で壊させるための処置なんだろうけど・・・。ウラヌスリングは外だし・・・。ボンゴレリングじゃそこまで出力は出ない。恐らく、大空のリングでXグローブVer.化ができないのは恐らくこれで何かを得ないといけないんだと思うんだけど・・・)

 

あえてハリネズミの炎切れを待つために全身凍らせるのもありか? なんて考え出した自分を戒めながらツナはとりあえず酸素切れを狙ってみる。死ぬ気の炎を全開にして、雄叫びを上げて球針態を殴りつけた。

 

「ダメかー。びくともしないんだからもう。ってかこれ、俺が閉所恐怖症とかだったらどうするのさ。まぁ、そんな事ないんだけどね」

 

ってか、酸素薄っ! と、ツナは余裕そうに言うが、肉体は自然と空気を求め、死に近づいていた。

と。そこでツナの頭の中に映像が流れてきた。

 

【殺れ】【「どうか命だけは助けてくれ!! 俺が死んだら、子どもが・・・妻が・・・・・・!! ぐあ!」】

(何これ。リアルな夢・・・。走馬燈? いや、俺こんなおっさん知らない)

【報復せよ】【「ギャアア!!」】【嵌めろ】【根絶やせ】

(あ、これもしかしてボンゴレリングから? ってか何これ)

「ボンゴレの・・・業」

「GO?」

 

ツナの周りにたくさんの人の気配がする。

 

「抹殺、復讐、裏切り、飽くなき権力の追求・・・・・・、マフィアの血塗られた歴史だ」

「あ、(カルマ)のこと・・・」

「大空のボンゴレリングを持つ者よ。貴様に覚悟はあろうな」

「ん?」

「この業を、引き継ぐ覚悟が」

【「助けてください!!」】【「ギャアアア!!」】【「むごすぎる」】【「息子を返せ」】【「ぐわぁ!! 目がぁ!!」】

「目がぁ!!」

 

そしてツナは自分のボケがツボに入ったのか、少ない酸素を使って笑い始めた。

 

「げほっげほっ・・・酸素少ないの忘れてた・・・」

「目をそらすな。これはボンゴレを継ぐ者の宿命。貴様が生を授かったことの意味そのものだ」

「生まれた時から就く職が決まってるとか、昔の日本かっつーの。そもそもこんな酷い事するわけないだろ?」

「代価を払わずして、力を手に入れることなど叶わぬ。偉大なる力が欲しければ、偉大なる歴史を継承する覚悟が必要なのだ」

「自分で自分達のことを偉大なとか言うんじゃねーよ。偉大なる歴史? 自分の私利私欲のために人を殺すことがか!? 偉大なる力? 自分より立場の低いものを苛めるための力がか!? こんな歴史を継承する気なんてさらさらないね!」

「!!」

「何だと!?」

「こんな、人として落ちぶれた間違いを、子ども達に背負わせようとするなら・・・・・・。俺が、

 

 

 

―――そのボンゴレ(幻想)をぶっ壊してやる(ち殺す)!!!」

「・・・・・・」

 

そして、ツナが気付くとそこには。

ボンゴレの歴代ボス達がいた。おそらく、生死が危うい状態になったツナの魂がリングの中に引き込まれたのだろう。

 

「貴様の覚悟、しかと受け取った」

「へ? ・・・あ、はぁ」

「リングに刻まれし我らの時間」

「時間・・・【時】?」

「栄えるも滅びるも好きにせよ、ボンゴレX世」

「どうも」

「・・・・・・お前を待っていた。ボンゴレの証を、ここに継承する」

「・・・身勝手だとは今まで思わなかったの? 自分達の犯した罪をさ、自分で尻拭いせずに子どもにまで押しつけた。その罪は重いぜっ!」

 

 

球針態に大きなヒビが入り、そこから徐々に広がっていく。一度も弱音を吐くことなく、その状態に達したことに、ヒバリは眉を顰める。

違う時間軸の沢田綱吉。果たしてそれだけで説明していいのだろうか。

 

「恭さん。これは!?」

 

雲雀は、球針態のヒビから爆発的に光が漏れるのを目にする。

 

「球針態が・・・・・・、壊れる」

 

その呟きとほぼ同時に、球針態が爆発を起こした。

煙の中から出てきたツナは笑っていた。例えるなら、新しいオモチャを買って貰った子どものように、それはもう無邪気な笑顔だった。



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第四十五話 Ver.V.R.

「《XグローブVer.V.R.》って言った所かな」

 

「この時代の沢田は指に装着したリングを手の甲に宿し、力を引き出していたという・・・。それが、まさか試練の末の形態だったとはな」

「俺もあまり自信はなかったけどな。飛躍的なパワーアップと言われて、この伝説の試練くらいしか思いつかなかった、というのが正直なところだ。もっとも、ボンゴレをぶっ壊すなんて(あんな無茶苦茶な)答えで試練を乗り越えたのは歴代ボンゴレでツナだけだろうがな」

 

ツナがグローブに力を込めると、澄んだオレンジ色をした綺麗な炎が燃え上がる。

 

「ワオ。少しだけ、僕の知ってる君に似てきたかな。赤ん坊と同じで僕をワクワクさせる君にね」

「一緒にしないでくれるかな。そのダメツナとさ」

「・・・ここから先は好きにして良いんだろ? 赤ん坊」

「ああ・・・・・・。そういう約束だからな」

「じゃあ。始めようか」

 

雲雀は懐から匣兵器を取り出し、そこに雲の炎を注ぎ込む。そうして開いた匣兵器から出てきたのは、紫の炎をまとったトンファー。そのトンファーを構えた雲雀から、凄まじい殺気が放たれる。

 

「ふーん」

「ひっ」

「なっ」(なんて炎!! ・・・・・・いや殺気!! 今まで抑えていたというのか・・・!! これが、雲雀恭弥!!)

「この闘いにルールはない。君に選べるのは、僕に勝つか・・・・・・死ぬかだけだ」

「じゃあ雲雀さんも死ぬ覚悟はあるんですよね?」

 

そう言ったツナから重力が放たれた。巨大な手で上から押さえつけられるような感覚。だがそれは、

 

(ツナの・・・殺気!)

「へぇ。やっぱり時間軸が違うとそこまで違うものなんだ」

「当たり前です。しかし雲雀さんも成長したんですね。十年前は何度かこの殺気だけで沈んだというのに」

「ワオ。誰それ」

「ま、これ以上強くすると()()()()()雲雀さんが倒れてしまうかもしれないので、マジメにやるとしましょうか」

 

ちなみに、Ver.ボンゴレリングよりずっとピーキーな特性のVer.ウラヌスリングに慣れているツナからしてみれば、この程度はじゃじゃ馬の内にも入らない。

そして、そんな会話の最中にもツナは動いていた。

 

「よし。特性は掴んだので、さ。瞬殺ですよ!」

「やれるものならね」

 

その場に炎の形跡を残してツナの姿がかき消える。そして、視認できなくなった。

 

「・・・ツナの奴、所々で自分の足で加速してるな」

「・・・? どういう事だ?」

「よーく耳をすませてみな」

「・・・・・・・・・」

 

ほとんど音がしないトレーニングルームの中に、小さな足音が所々で混じる。

 

「!?」

「アイツは死ぬ気の炎も使わず、肉体一つで音速を叩き出す。この勝負、俺達の世界の雲雀ならどうなったかしらねーが。こっちのヒバリにツナが負けるわけがねー」

「それを分かってて、好きにさせたのか!」

 

その言葉のすぐ後には、トレーニングルームの床をヘコませる一撃をモロにくらい雲雀は床に倒れていた。

 

「ほらな」

「・・・」

「リボーン。ちょっと提案があるんだけど!」

「何だ?」

「ちょっと一人で練習しててもいい? 久しぶりに()()()暴れたい」

「・・・・・・(汗) ちょっと待て、ジャンニーニに一番硬いトレーニングルームを聞いてみる・・・」

「あ、うん・・・・・・」

 

と、数分後にツナが連れられてきたのは、先程までいたのとは二回り程小さいトレーニングルーム。

 

「ここは匣兵器などの試運転も兼ねてますので、死ぬ気の炎のコーティングもしてあります。十分暴れられるかと」

「うん。それだけ分かれば十分だよ」

 

そう言ったツナは、魔術を使い部屋を囲う金属をとある少女達と合同で作り上げた演算型・衝撃拡散性複合素材(カリキュレイト=フォートレス)に変える。これは、例え沢田綱吉が全力で拳を振るっても、その衝撃を零にしてしまうと言う言うなれば彼()専用の建材だ。

 

「さて、じゃあ視てることだろうし正真正銘俺の本気でやるかな・・・付き合ってくれるよね? 扇ちゃん」

「・・・もちろん。私が先輩の頼みを断るわけがないじゃないですか」

「一応僕も出ておくよ。万が一もあるしね」

「ん。頼む」

 

そしてツナはその姿を上条当麻に戻すと、忍野扇と向かい合う。

 

「さぁ、扇ちゃん。やろうか」

「ええ。言っておきますが、私も強くなりましたよ?」

「はいはい」

 

そして、二人の人外がぶつかった。

 

「うっはー。相変わらず二人の戦闘は激しいね・・・。カリキュレイト=フォートレスにしていなかったら位置バレしてたかもね」

「「連続普通のパンチ」」

「これカメラ捉え切れてないだろうな・・・。何が起っているのか分かるのは間近にいる僕と、当の本人達だけだろうね」

 

二人の人外の攻撃は空気を叩き潰し衝撃波を生む。その衝撃波単体でも地球を割ることができる威力だというのに、演算型・衝撃拡散性複合素材はその衝撃までも零にしてしまった。

凄まじい速度と力の拳と蹴り。死ぬ気の炎や現代兵器。様々なものがぶつかり混沌とした空間を作り出す。

 

「「・・・フッ。CHAOSだな」」

 

上条と扇は口を揃えてそう言った。科学と魔術、炎と冷気、拳と蹴り。様々な力がぶつかり立ったカオス空間で三人の人外は笑っていた。

 

「いや、僕は確かに人外だけど。彼等を視てると認識を改めざるおえなくなる。僕は人外・・・彼等は人の身に甘んじてる神様だと思うよ」

「クハハ」

「はっはー」

「「必殺マジシリーズ」」

「お、こりゃマズいかも。対象を防御するスキル「全力警護(オールリフレクター)」・・・あ」(ま、反射しても彼等なら大丈夫だろ・・・)「対象はこの部屋の内壁と外壁。外に振動を漏らさないように」

 

人外の二人の両拳に力が溜まっていく。

 

「「両手連続マジ殴り!」」

「うおっ! 僕を守り忘れた。まぁ、いいか。僕は死なないよ「腑罪証明(アリバイブロック)」彼の影の中に避難」

 

そして、部屋の中のカメラは壊れ、壊れる直前に拾った音だけがアジト内に響いた。

 

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「ふぅっ。何とかなったみたいでよかったぜ」

「・・・つ」

「・・・疲れましたね・・・」

「はぁー・・・、久しぶりに全力で体動かしたぜっ」

 

上条と扇は隣り合って寝転がる。

 

「記憶が飛んでるみたいだから報告しとくけど、一時間程戦っていたからね。君達は」

「「WoW」」

 

二人の少女が影の中に戻ると、体を沢田綱吉に戻してから少年はトレーニングルームから出て行った。



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第四十六話 ゲスな男と悪魔

始まりはツナのこの一言だった。

 

「黒曜ランドの方に行ってきても良い? クロームがやってきてる気がする!」

 

リボーンの見解では恐らく超直感が働いたのだろう。だからリボーンは許可を出す。

 

「・・・・・・行ってこい。お前の超直感がそういうならな」

「ありがと! 行ってくるね」

 

そう言ったツナは亜音速で飛びだして、アジトから消えた。

 

 

旧黒曜ヘルシーランド。

途中、商店街で食材を買い占めたツナは黒曜に足を踏み入れる。そしてズイズイと奥へ歩いていく。

 

 

突然現われた津波に、押し流されそうになりながらも彼女はしっかりとその足で大地を踏みしめていた。

 

(これは・・・幻覚? 違う・・・)

「これは現実(リアル)だぞ」

「?」

「雨の属性の匣の特徴は沈静。雨フクロウ(グーフォ・ディ・ピオッジャ)の大波は、炎を消し攻撃を鎮め、人体の活動を停止に近づけ・・・意識を闇に沈める」

 

そんな状況でも、彼女はしっかりとその足で立ち続ける。彼女のボスは彼なのだ。そう簡単に倒れるようには鍛えられていない。

 

「いよいよいただく時間だな。リングと・・・お前をな!」

「私・・・を・・・? ・・・・・・・・・」

 

その言葉を聞いた彼女は何かを考えるような仕草をしたあと、思い出したように手を打って。

 

「・・・変態ロリコン野郎、だ」

「なッ・・・へんた・・・?!」

 

呆れたような、蔑むようなジト目でそう言われた男は、顔を怒りで赤く染めたり、予想外の反応に顔を青くしたりする。

彼の知る彼女とは違い、どうやら彼女は存外図太い神経をしているようだ。

 

「・・・変態は、撃退する・・・んだよね」

 

どこかに確認をとるようにそう言った彼女は、何故か自分で納得した。

その様子に、思わず彼も笑いがこぼれる。

 

「クフフ・・・」

「!? む、骸様!? ・・・どこ、ですか?」

 

かくれんぼ? と、首を傾げる彼女に、骸は溜め息を吐きたくなる。いったい彼女はどうしてこうなってしまったのか。

 

「一つ、アドバイスをあげましょう。クローム。幻術のリアルさは術士のそれと同じこと。お前が一番信じるもの。それが最も強い幻覚となる」

「・・・ムク・・・・・・ロウ?」

「ムクロウ? ・・・まさか!?」

「クフフフフ・・・。そうです、グロ・キシニア。あなたの匣兵器に少し細工をさせてもらいました」

 

そう言って言葉を話すのは、雨の炎ではなく、霧の炎をまとった匣兵器のフクロウだった。

 

(信じる・・・もの・・・。私は、私は・・・)「助けて・・・ボスッ!」(あの時、みたいに!)

 

ボンゴレリングに炎が灯り、霧の幻術が行使される。

だが、

その幻術はガラスが割れるような音と共に消し飛ばされる。

 

「―――んなこと言われなくても手を貸す(助ける)ぜ」

 

そんな風に、霧の幻術を消し飛ばして現われたのは、クロームの心の拠り所。変装した沢田綱吉(上条当麻)もう一人の人外(忍野扇)平等なだけの人外(安心院なじみ)。過去において影組と呼ばれる暗躍型特殊任務実行部隊のボスとその側近がそろっていた。

 

「な、何なんだお前等は!」

「「何なんだお前等は!」と聞かれたら」

「答えてあげるが世の情け」

「影よ!」

「大地よ!」

「大空よ!」

「世界に届けよデンジャラス」

「宇宙に伝えよクライシス」

「天使か悪魔かその名を呼べば」

「誰もが震える魅惑の響き」

「トウマ!」

「オウギ!」

「ナジミ!」

「時代の主役はわたしたち!」

「我ら無敵の!」

「「「影組よ!」」」

 

ビシィ! と、決めポーズをとる三人。

 

「「・・・・・・・・・」」

「ボス、カッコイイ・・・!」

 

グロ・キニシアと骸は呆れ、クロームは目を輝かせていた。

 

「さて、そこのおかっぱメガネ。まだ何か匣持ってるだろ。使って来いよ。俺は全力を持って突っ込んできた相手を正面から叩き潰すのが好きだからさ」

「ふっ。なら後悔するが良い。そこの六道骸が憑依しているのは私のサブ匣、私の真の力はこのメイン匣。雨巨大イカ(クラーケン・ディ・ピオッジャ)にある!!」

 

床下から巨大なイカの足が生えてきた。

 

「うわっデッカ・・・」

「エロいね」

「考え方が思春期男子のそれですよ、なじみ先輩」

「触手はエロいだろ?」

「否定はしません」

「幻覚どもが・・・、植え付けてやる。お前を完膚なきまでに叩きのめすグロ・キニシアの恐怖を!!」

 

イカの足を水が覆う。それはどうも死ぬ気の炎のようだった。

 

「消えて静まれ、まやかしが!!」

「―――誰がまやかしだ、まったく」

 

上条の放った拳は、迫ってきたイカの足を跡形もなく吹き飛ばす。扇の方も同様に。なじみはそのイカの足を輪切りにしていた。

 

「「あ・・・」」

「は?」

「「粉々にしてしまった・・・。味を確かめたかったのにッ!」」

「平常運転だね。それでこそ当麻君達だ」

「幻覚・・・」

「じゃねーよ。おかっぱメガネ。俺達は。今ここに百パーセント実体でここにいる」

 

その証拠を見せてやろうか? といって、上条はウラヌスリングのマモンチェーンを外す。それはS+というトゥリニセッテを遥かに凌ぐ精度(ランク)と力を持つ世界に同じものは一つとして存在しないリング。もし、それに炎が灯されるとどうなる?

 

結果。全世界のリング感知レーダーが前代未聞のリング反応にエラーを起こし、ショートし、爆発をおこした。

 

そして、ツナは淡く炎を纏った両手のまま構え、特徴的な呼吸を始めた。

 

「震えるぞハート。燃え尽きるほどヒート。うぉおぉお! 刻むぞ! 血液のビート!!

 

 

―――山吹色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライブ)!!」

 

連続普通のパンチと同等の速度で放たれた“死ぬ気の炎”と“波紋”を纏うその拳は、グロ・キニシアの身体中の骨を砕き顔面を崩壊させ、人としてあってはいけない体にした上で、死ぬ気の炎が爆発した。



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第四十七話 委ねられた決断

「極限に無事か!?」

「・・・ん?」

「お、笹川・・・」

「了平、だね。ボンゴレ晴の守護者。まだ入れ替わってないみたいだけど」

「こんにちは、了平さん」

「おお。無事だったか! しかし沢田・・・。お前達は一体、何をしているんだ?」

「見て分かりませんか?」

 

ツナ達は黒曜ランドで勝利品の雨巨大イカの足を死ぬ気の炎で焼き、囲んで食べていた。。

 

「・・・極限に食事かっ!?」

「まぁ、そうですね。放って置かれた凪がまともになにか食べるわけがなさそうですし、こうして俺の監視下の元食事中です。ホントに放っておいたら“麦チョコonly”とかコンビニ弁当以下の食生活を送っちゃうので、この子」

「む、そうか」

「ボス、言いがかり」

「事実だよ。・・・・・・さて、じゃあ食べ終わったことですし、アジトに帰りましょうか」

「そうだな!」

 

買っていた食材とイカの足を食べ終えたツナ達はアジトへと、向かうことにした。

ツナを先頭にボンゴレアジトまで帰ってきた彼等の耳を、ある男の声が叩く。

 

『ゔお゙ぉおい!!! 首の皮はつながってるかぁ!? クソミソカスどもぉ!!!』

「こ、この声・・・スクアーロ・・・」

「・・・鮫の人」

『いいかぁ? クソガキどもぉ!! 今はそこを動くんじゃねぇ!! 外に新しいリングの反応があったとしてもだぁ!!』

「ミーティングルームが近いせいなんだろうけど、よく聞こえてくるね・・・。ボリューム下げろよ・・・」

「ボスは動いた・・・、命令無視。あと、あの人の声は下げても大きい」

「うっ・・・。リング反応がある前だったから、良いじゃん、良いじゃん」

 

ツナは指令無視を軽く流す。それをクロームがジト目で見つめる。

 

『シシシ・・・。じっとしてりゃ、そのうちわっかりやすーい指示があるから、それまで大人しくいいこで待ってろってことな! お子様達♪』

「この声・・・ベルフェゴール?」

『「ゔお゙ぉい。てめ―――。何しに来た!」「王子ヒマだし。ちゃちゃいれ」「口出すとぶっ殺すぞぉ!!」「やってみ」「ゔお゙ぉい・・・」「しししっいてっ」』

(相変わらず荒くれ集団なんだな・・・。平行世界でも・・・)

『またこの世で会えるといいなぁ!! それまで生きてみろぉ!!』

 

と、その言葉を最後にディスプレイが切れる音がする。みんなが集まっている部屋が見えてきたので、ツナ達はそこへ普通に入っていた。

 

「やっほ、みんな。ただいま」

「笹川了平、推参!!!」

「クローム髑髏、帰還・・・!」

「十代目!」

「ただいま。あ、リボーン・・・ジャンニーニは?」

「リングレーダーがエラーを叩き出した後、ぶっ壊れたから修復に行ってるぞ」

「・・・・・・そう」

 

ツナはもしかしてウラヌスリングのせいかな? と。当を得た考えに辿り着く。そこに、スクアーロの声を聞きつけた女子組が駆けつけた。

 

「はひっ! スゴイ音でしたけど、何かあったんですか!?」

「皆、大丈夫!? ・・・って、お、お兄ちゃん!」

「おお、京子。十年前はこんなに小さかったか」

「よかった無事で!」

「な・・・・・・泣くな・・・。見ての通り俺はピンピンしている!! なっ」

「うん・・・」

「京子ちゃん、ハル。悪いけど俺、ちょっとお腹すいちゃった」

「あ、じゃあなにか軽いものつくりますね!」

「私も手伝ってくる」

 

あくまで自然を装って、ツナは非戦闘員を作戦室から遠ざけた。

 

「・・・・・・で? 何でお前がここに来るってヴァリアーが知ってたんだよ」

「もちろん。オレもそこにいたからだ! そして伝言を持ち帰った!」

「ベルフェゴールの言ってた指示のことだな」

「一体何すか?」

「それが極限に忘れた!! ・・・だが心配は要らん! ちゃんとメモしてある!」

 

そういってメモを取り出した了平に感心したような声を出す一同。

 

「十年で一つ覚えたな」

「・・・ふむふむ! そーかそーか! ここにいる十代目ファミリー(オレ達)への指示は、五日後にミルフィオーレ日本支部の主要施設を破壊することだ」

「五日後・・・」

「そうだ。それがボンゴレ同盟の首脳が立てた作戦だ。オレはある案件についてボンゴレ十代目の使者としてヴァリアーに出向いていた。そこでボンゴレ狩りが始まったのだ。ボンゴレ本部の方にも十年前から来たお前達の存在は知らされている。そして、お前達がいると仮定しこの作戦が立てられた。この戦いはボンゴレの存亡を駆けた重要な戦いとなる。だが、決行する、しないかはお前が決めろ」

「・・・はい」

「だが現在、ボンゴレ上層部は混乱し、十年前のお前達を信用しきったわけではない。ヴァリアーも九代目の部隊という姿勢だ。お前の一存で作戦全てが中止になるようなことはない。だが、日本のことは主であるボンゴレ十代目が決めるべきだと極限に説得してきた!」

「デカくなったな、了平」

「期限は本日中だ。中止の場合は首脳に俺が伝えに行く。しっかり頼んだぞ、沢田」

 

その言葉にツナは首を横に振る。

 

「その必要はありませんよ了平さん。獄寺君・・・って今更だけど仲間内で余所余所しいね。“隼人”って呼ぶことにするよ?」

「は、はいっ!」

「じゃあ山本は“武”か」

「構わねーのな」

「じゃあ、隼人、武、凪。それぞれ四日・・・いや、三日で今の倍強くなって見せて。ランボは今のままでもいいや。俺の全てを一応伝えてるわけだし。全員五日後のミルフィオーレ襲撃で、勝って生きて帰れるように、一時も無駄にするな」

「はい!!!」

「だな」

「わかった」

「そーと決まればオレは極限にメシ食って寝るっ!!!」

 

ツナの言葉に守護者が強く頷く。それを見た了平はうむ。と、納得納得した様子を見せた後、両手を振り上げ太陽のように光り輝いた。

 

「相変わらず熱いな・・・」

「奴が帰ってくるだけで日本の気温が上がりますよね・・・」

「それどこのテニスプレイヤー(松◯修造)?」



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第四十八話 武器

本日、ツナはまた雲雀と戦っていた。身体能力・攻撃方法に制限をつけ、純粋な死ぬ気の力のみのコントロールを上げるために。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

床に何とか着地したツナだったが、息も切れ切れで膝をついていた。

 

(くっそ。このまま機動力上げても勝てる相手じゃないとか、どんだけ化け物なんだよこの人は!)

「・・・いつまで草食動物の戦い方をするつもり? 君はまだ、武器を使っていないよ。沢田綱吉」

(? 武器?)

「眠くなってきた。そろそろ帰る」

「あ、はい」

「お前三日ほど寝てないだろ。休め、沢田」

「あ、はい・・・」

 

クロームを迎えに行った日の前日からツナは睡眠をとっていない。常人ならそれで限界が来るが、ツナは雲雀と善戦ができるほどには元気だった。

自室まで戻ってきたツナは、ベッドの上に寝転んで目を瞑って思考状態に入る。

 

(武器・・・か)

(「武器って一体どうしたら良いんだろうね」)

(「攻撃方法を変えてみるとかはどうでしょうか」)

(「愛気を使ったら意味ないぞ?」)

(「ですから、炎の使い方を変えるんです」)

(「「炎の使い方?」」)

(「先輩の炎は推進力や焼きゴテとしてしか使えないんですか?」)

(「いや、そんな事はないと思うけど」)

(「・・・なるほど。つまり扇ちゃん。君はこう言いたいわけだね。当麻君の炎をXANXUSのように撃ち出せば良いと」)

(「Exactly! 同じの炎を使う者として、参考にするべき相手です」)

(「うーん・・・。一度やってみるべきかな」)

(「・・・悩んでおっても仕方なかろう。さっさと実行して沈んでこい。あるじ様」)

(「・・・・・・そう、だな。やってみなくちゃ分からねーよな」)

 

ツナはベッドから転げ落ちるように飛び起きると、時間を確認する。

 

(あれから四十分弱)

 

手袋と二個のリングを装備し、服を着替えてツナはトレーニングルームへと駆け出した。

 

 

―――トレーニングルーム。

 

「さて。じゃあまぁ右手から大出力の炎でも撃ち出してみるか」

 

ツナは水平に持ち上げた右手から剛の炎を撃ち出した。が、

 

「ッ!?」

 

勢いが強すぎて後ろへ吹き飛ばされる。何とか両足を地面に着けて踏ん張った彼の元へ声が届く。

 

(「One More Time♪」)

「?」

 

ツナは首を傾げながらも声の通り、再度炎を撃ち出した。

 

「ギャンッ!」

 

踏ん張った後だったので力が入らず後ろに強く吹き飛び、反対側の壁に激突した。

 

(「One More Time♪」)

「は?」

(「「One More Time♪」」)

「おい?」

(「・・・何となく分かりました?」)

「・・・あぁ、剛の炎をただ前方に撃ち出すだけじゃ、後方に強く吹っ飛んじまう」

(「なら、壁を背にしてみるかい?」)

「壁を支えにして、か・・・。いや、戦闘場所が平野だったら意味がない・・・。ん? 支え・・・。それだ!」

(「なにか思いついたのかい?」)

「バッチリな」

 

ツナはウラヌスリングを嵌めた左手を後ろに、ボンゴレリングを嵌めた右手を前に出す。

 

(強力な炎を、前方に撃ち出すには。それを受け止める、支えが必要ってワケだ)

(なるほど)

(柔の炎で支え、剛の炎を―――放つ!!!)

 

そのすぐ後、トレーニングルームを中心に振動が広がった。

 

「いってー・・・。あーいっててて・・・。柔と剛の炎のバランスがこんなに難しいとは、ね」

「ツナ! 大丈夫かよ!?」

「武、リボーン。ハハッ・・・新技を試してみてたんだけど・・・」

「新技!? ど、どーやったらこうなるんだ?」

「おい、ツナ。ものにできそーなのか? その技は」

「難しいと思うよ。でも、できないものじゃあないよ・・・た・・・ぶん・・・・・・」

「おいツナ!」

「バテて寝ちまっただけだろ」

 

ツナはそのままおやすみモードへと突入した。

 

(袖が焦げてやがる。Ver.V.R.の本気の炎を使ったんだな・・・。こりゃあツナの新技、ひょっとしたら、ひょっとするぞ・・・。できればあまり酷い技じゃないと良いが・・・。ま、死ぬ気の炎で出来る範囲内のことなんだと思うけどな・・・)

 

 

 

―――――――――――――――

――――――――――

―――――

 

 

「ここ・・・、は?」

 

ツナは暗い場所で目を覚ました。まだその暗闇に目が慣れていない。

 

(んー・・・。頭の下が柔らかい。・・・ここどこだ・・・?)

「ボス、起きた?」

「・・・・・・? ・・・え!?」

 

ツナは慌てて上半身を起こす。どうやらクロームに膝枕されていたようだ。

 

「なっ・・・こっ・・・!?」(なんでこんな事を!?)

「ボスが倒れてたから・・・膝枕。男喜ぶ・・・!」

「誰情報よ、それ」

「骸様」

「・・・平行世界の未来だから、殴れねぇ・・・」

 

ツナは己の拳を見つめてプルプルと震えた。基本的にツナと凪はボケたり突っ込んだりするどっち付かずなのだが、骸や犬を主とするボケ担当に対しては容赦ないツッコミをしていた。だがここは平行世界で罪のない骸には手出しが出来ないので、ツナは両手膝をついて項垂れる。

 

「・・・ボス。これ」

「骸の槍の先端じゃん。じゃあここは残留思念というか、なにかを伝えるための場所ってことか」

「うん。そうだと思う」

「・・・・・・。・・・凪、その服似合ってるよ」

「・・・?! ・・・ボス、話す話題がなくなったからってそれは卑怯」

「そう?」

「うん」

 

と、そこで三叉槍の残骸が砂のように崩れ、クロームの掌からこぼれ落ちていった。

 

「・・・なるほど、これを伝えたかったのか」

「骸様、素直じゃない」

俺達の世界(こっち)の骸は素直なんだけどなぁ・・・」

 

真っ暗だった空間に、白くて丸い何らかの装置のようなものが出現した。

どうやら起動したらしいそれの中身を二人は目撃した。

 

「へぇ・・・」

「ボス、悪い顔してる」

「当たり前じゃん。何のためか知らないけど、ボンゴレの情報網かいくぐってこれの情報を隠してるんでしょ? 信じてる情報がウソってことになる」

 

ツナは情報を解析しようと、神々の義眼を開いて近づこうとして、とっさに後ろに体を反らした。

 

「近づくな!!」

「危ないなぁ・・・」

「大丈夫? ボス」

「入江、正一? そう、か。これはお前の夢か」

「・・・・・・っ」

 

少年のような風貌だったのが、大人の。現在の入江正一の姿に変わる。

 

「この装置はお前の元にあるのかな? って言うことは俺達を未来に閉じ込めたのもキミ?」

 

ツナの問いかけに、入江正一は息が詰まったような声を出す。

 

「そう、理不尽に俺を殺しあまつさえこんな所に閉じ込めたお礼をしてあげなきゃね」

「大丈夫。ボスは酷いことはしない」

「食べたりしないから。怯えるなよ」

 

胃の痛みを訴えるように入江正一が蹲ると同時、その世界が崩壊していく。

 

「タイムアップか・・・。次会う時はもっと楽しませてくれよ? 入江正一クン♪」

 

ツナの別れ際のその一言に、入江正一は全力で否定の意を表したのであった。



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第四十九話 突入

獄寺・山本・クローム、突撃隊メンバー一応の修行は完了し、いつでも突撃は可能という状態になっていた。

ちなみに、数日前にγ達は解放している。ツナが約束をしたのだ。向こうの“姫”を絶対に助けると。ただ向こうの戦力として戦っても良いし、何もしなくてもいい。本当の意味での解放だった。

 

「さて、みんな大丈夫?」

「ええ」

「おう」

「うん」

「じゃあ説明するわよ。敵のアジトは並盛の地下ショッピングモールにある。そのショッピングモールにあるダクトのいくつかが不自然だったのよ。それが雲雀のところに流れ込んだミルフィオーレアジトのダクトの位置と一致。二つの図面を重ね合わせる事で、敵アジトの正確な位置を把握済み。そして、地下駐車場の発電室ダクトから潜るのがベストよ」

「分かった」

「では、次に私の方から装備の説明をします。まずは“オートマモンチェーンリングカバー”。長い名前ですが、要は使わない時に自動的にリングの力を封じ、敵から探知されにくくなる機能を搭載しています。そして特別製の無線機、一斉に送受信両方の周波数が変化するので盗聴の心配もありませんし、機器同士の周波数は寸分違わずに同調変化しますから音質もクリアなのです!!」

「レオンからもプレゼントがあるぞ。レオンの体内で生成された死ぬ気の炎に強い糸で縫ったシャツだ。・・・ツナは要らねーだろ?」

「まぁ、そうだけどさ・・・」

 

ツナは自らの先生の自分に対する信頼がどこか別の方向へ飛んで言ってるような気がして、思わずため息をついた。

 

「じゃあとりあえず、俺達が本隊と思わせて凪と雲雀さん達があの白くて丸い装置のところに迅速に向かう。そういう手順で良い・・・んだよね?」

「ああ。暴れてこい」

「リボーン! 良いのか!?」

「ツナが静かにジッとしていられるわけねーだろ。特にこういう場合はな」

「やっぱり酷い事言ってるよね。リボーン・・・」

「ボス、この地図の通りに行けば良いの?」

「ん? そうそう、いざとなったら床や壁を無視して進めば良いし。それに、凪なら大丈夫」

「うん・・・!」

 

その作戦会議の日の夜、ボンゴレアジトの倉庫予定地にミルフィオーレが攻めてきたのでツナ達はミルフィオーレアジトの方へ突撃することになった。

ショッピングモールまで見送りに来てくれたビアンキに子ども達を任せ、囮役のツナ、獄寺、山本、了平、ラルの五名はダクトの中へ消えていった。

 

 

「地下三階のC5ポイント、第二格納庫の上だ。よし、図面通りだな。このまま中央の施設を目指すぞ」

「面倒臭くなってきたな・・・」

「おい、バカを言うな」

「だって、凪に暴れるから堂々と侵入しろって言ってきたんだよ? じゃあ暴れなきゃ」

「・・・・・・ハァ」

「武~。一発やっちゃって」

「おう」

 

その場に斬撃音が響き、ダクトが細切れになった。綺麗に着地したツナはみんなの無事を目線で確認していた。

 

「ハァ~~~。モグラでなく人間のガキだ~」

「でけっ!」

「デカいねぇ・・・」

「筋肉モリモリっすね」

「マッチョマンの変態って奴な」

「方法は?」

「瞬殺でいいんじゃないっすか?」

「見てらんねーのな」

「んじゃそれで」

 

その言葉のすぐ後、ツナは容赦なく剛の炎を撃ち込んだのだった。

 

 

 

「よしっ。(地下)()に着いたぞ」

「施設破壊に入る前に、この奥にある警備システムサーバを破壊するんだったな」

「そうだ。警備システムをダウンさせれば、基地内の索敵能力をマヒさせることが出来る。その機に乗じて主要施設の破壊と、入江正一への奇襲をする」

「奇襲・・・ねぇ」

「十代目、まさか。『真っ正面から叩き潰した方が早くない?』とか考えてません?」

「お、良く分かったね」

「やめておけ沢田。いくら想定より基地内の敵の数が少ないとは言え、それは洒落にならん」

「まぁ、確かに。俺達五人がそろって移動できるならまだしも、もし分断とかされちゃったら意味ないしね・・・」

「分断? どうやって」

「そりゃこのパズルでに決まってるじゃんっ!」

「「「「パズル?」」」」

「この地図を見て。どこで区切っても綺麗な正方形になってる。恐らくこれはパズルの匣。基地全体がゴゴゴと動いて―――」

「よし、行くぞー」

「はいっす」

「あ、ちょっ! 待ってよ!」

 

慌ててツナはみんなを追いかけた。

と、次の一本道で魔導師の人形(マジシャンズドール)、ジンジャー・ブレッドと交戦することになった。

 

が、もちろんツナが正直に戦うはずもなく、亜音速で残像すら残さず一本道を通り抜け警備システムのある部屋まで辿り着いていた。

 

「さてさて、頼んだよラル・ミルチ。原作通りになってくれ~。俺がいないのに気付いてもどうしようもないだろうし。さて、このメローネ基地を通して、ミルフィオーレの全世界のアジトに俺の相棒を送り込んでやろ・・・っと」

 

ツナは鼻歌を歌いながら警備システムのコンピューターに影から取り出した一つのタブレットPCを繋ぐ。

 

「・・・さて、起きてるか? 仕事だ“ENE”」

『突然の仕事ですねぇ。以前は何でしたっけ? 古里真とその家族の回復でしたっけ? で? 今回の任務(オーダー)は?』

「警備システムを通してこの基地の全コンピューターの掌握、それが終わったら全世界のミルフィオーレの基地をよろしく」

『え? 何ですかそれ、寝てても出来るんじゃないですか?』

「まぁ、得意分野だろ?」

『ええ。任せてください。私に電脳世界のことで勝てる奴なんかいませんからね』

「じゃあ、頼んだぜ」

『お任せください。ご主人様(マイマスター)♪』

 

電脳世界。それは0と1で構成された宇宙のような空間。そこに存在するCP(コンピュータープログラム)はセキュリティであれウイルスであれ、()()にとってみれば序盤の敵(スライム)と同然の攻略難易度。・・・らしい。ならば、安心して任せられる。例え強敵が現われても、スペルカードがあれば何とか出来るだろう。対プログラム戦闘はクラッキング攻略(上条当麻)よりフルダイブゲーム攻略(榎本貴音)のほうが優れている。

 

 

―――電脳世界。

 

「さーて。私のご主人からのオーダーですから、派手に行きますよ」

 

メローネ基地内の警備システムのコンピューターのとあるデータベースから彼女の侵攻は始まる。

青い少女、エネはその両手に454カスールカスタムオートマティックと、ジャッカルを握って駆け出した。



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第五十話 仮想と現実の同時侵攻

ジンジャーを倒した仲間と合流したツナは、敵の警備システムを爆破し先へと進む。

 

(心配しなくてもアイツのことだ。とっくの昔にメインコンピューターぐらいまでは進んでるんだろうな・・・)

 

そんな事を考えながら、現在ツナは(地下)()の用水路で浮かんでいた。

 

(ストゥラオ・モスカが四機・・・。ま、大丈夫かな)

 

ツナは炎の加速で一機のモスカを掴むと、そのまま膝蹴りを頭部に叩き込んだ。

 

(人型の兵器っていうのは総じて、頭部に重要なセンサーを集めてしまう。だからそこを破壊すれば、行動不能って訳さ。・・・悪かったね。俺、この時空の沢田綱吉じゃないの)

 

そう、全体的に見て“沢田綱吉”用に造られているであろうこの時空の兵器達が、別時空の“沢田綱吉(上条当麻)”に通用するはずがない。

 

追撃をスルスルとかわし、催涙ガスを食らってなおものともしていなかった。

 

(催涙ガスとはまたこしゃくな手を・・・)「ズズッ・・・」

 

訂正。涙は出ているようだ。

 

「・・・・・・・・・。あの男は本物のボンゴレ十代目だ。パンチの炎圧9300FV。推定戦闘力はストゥラオ二機より高い。・・・でも、四機合わせた戦闘力ならウチのモスカ達の方がずっと上だな」

 

(さて、原作通りだと。どれかにスパナが載ってるからな・・・キング・モスカはX BURNERで倒さないとダメな気がするから・・・どこかであのナノコンポジットアーマー相手に素の拳を叩き込みたいな・・・)

 

と、そこで水中にツナは引きずり込まれた。

 

ゴボッ(ハァ)!?」(何でだっ!? 何でこいつ、頭がないのに動けている!?)

 

上から三機、追撃を仕掛けにやってきている。ツナは脱出するために、拳を握った。

 

(用水路ごと破壊する! いたって普通のパンチ!)

 

振るった拳はいとも容易くモスカの腕をヒジから千切る。その後、切断機を優に超す水圧まで圧縮された用水が、用水路の壁を抉る。

が、ツナはそんな事は気にせず、一気に浮上すると初代零地点突破で水路をモスカごと凍らせた。

そのすぐ後、撃ち出された死ぬ気の炎を零地点突破 改でツナは吸収する。

 

『何でモスカのレーザーが死ぬ気の炎だと分かった?』

「・・・初代零地点突破を溶かすことが出来るのは、死ぬ気の炎以外に考えられない」

『やっぱり、そうだよな。零地点突破改で吸収したエネルギーをどれぐらい戦闘力に変換してる?』

「闘る気は、ないのか?」

『ある』

 

氷が割れ、モスカが襲いかかってくる。ツナはそれに対して容赦なく、拳の連撃を浴びせることにした。

 

「連続 普通のパンチ」

 

ウラヌスリングを介して炎を灯した、純度100%ツナの覚悟の拳を。

 

『データ・・・・・・とれた・・・』

「・・・・・・。まだ、壊されたいのか」

『731%だ』

「?」

『零地点突破改で吸収した炎を自分のエネルギーに変換することで、あんたの戦闘力は約7.3倍に跳ね上がった。・・・一つ聞かせて欲しい。あんた人か?』

「何が言いたい」

『まあ、それでもウチのモスカの方が強い』

 

そして、キング・モスカが生まれた。

何とか善戦するツナだったが、スピードに翻弄される振りをしながら(人間アピール)そのタイミングを計っていた。

背中に受けた打撃で空中をゆっくりと飛ぶその間に、ポツリと呟く。

 

「・・・・・・X BURNERさえ・・・・・・」

『【ジジ】・・・【ザー】・・・【ガガー】・・・撃ちゃあいいじゃねぇか』

「!!」

『あるのは剛と柔の炎だけだ。地上も、空中も関係ねぇはずだぞ』

(この声・・・)

『神ツナと言い張るんならやって見せろ。オメーにはそれが出来るはずだぞ』

(・・・そうだな。そうだよな、リボーン。・・・・・・決めてやるぜ)

 

ツナは空中で上下反転したままその構えをとる。

 

「・・・(イクス) BURNER(バーナー) AIR(エアー)・・・!!!」

 

しっかり決め、キング・モスカを倒したツナだったが、その反動で以前と同じように後方へ吹き飛び、気絶してしまっていた。

 

 

 

 

―――十数分前。

ツナとモスカ達が交戦を開始したちょうどその頃。

 

「オラオラオラァ! 邪魔だ見た目だけのスライムセキュリティ!」

 

エネは電脳世界でメローネ基地のセキュリティを簡単に捻っていた。

 

「弱っ・・・。え、弱っ・・・。良くこんなので今までセキュリティ機能させてましたね・・・。ま、サクッと仕事を済ませてしまいますか」

 

エネはその言葉通り、数分後には順調にメインコンピューターのハッキングを完了させ、メローネ基地の面々に違和感を気取られずにコピー体を海外のメインコンピューターにさえ侵入させて終わっていた。

 

「ハァ・・・楽勝でしたね・・・。どれだけ派手に暴れても奴さんは何の対抗もしてきませんでしたし・・・少し派手に動いてみますか!」

 

エネが動こうと重い腰を上げたのと、ツナのX BURNER AIRが炸裂したのはほぼ同時だった。

 

結果。第一通信指令室では大きな混乱が起きていた。

 

「入江様! 全てのコンピューター、応答しません!」

「なに!?」

「この通り、先程からこの画面を映すだけで、メインコンピューターにすらアクセスできません!」

「まさか・・・ハッキングか!?」

「「!?」」

 

映し出される画面にはデフォルメされたような青髪少女の顔が描かれていた。

 

「そうだ! 通信は!?」

「辛うじて、生きています。・・・というよりこれは、意図的に生かされていると言った方がいいぐらい、完全に向こうの掌の上です・・・!」

「何だって・・・!?」(まさかこれも綱吉君達の・・・!? イタタ・・・胃が・・・。って、どうやってハッキングを!? いったいどんな技術者が!)

 

入江正一のその疑問に答えるとしたら、この短時間でそんな事ができる技術者はボンゴレにはもちろんいない。ただ、電脳少女と呼ばれるCP相手には最強の相棒が、その時空の沢田綱吉にはいただけだ。

と、その時。

 

『レッディ――――――ス・ゥア――――――ン・ジェントルメンッ! 並びに紳士でもなければ淑女でもない愚劣凡庸たる一般兵士どもコンバンワ! 突然の侵入者策をお楽しみのところ大変申し訳ございませんお邪魔しまーす!』

 

メローネ基地内の全てのスピーカーから活発な少女の声が響き渡った。

 

『私めが誰か―――はハズカシーのでカット除外省略ッ! 乙女の秘密だこの野郎! もっと好感度を稼いでから出直して! ぶっちゃけわたくしもうとっくにオネムの時間でございますれば、とっととおやすみココアを飲んで布団にダイブしたい所存! でも駄目チェケラッ!』

 

声はメローネ基地隊員を置いてけぼりにして酔ったディスク・ジョッキーのような調子でひたすら一方通行のトークをまくし立てていく。

 

『アーアー、ご存じの通り? 今現在我々がいるミルフィオーレ基地の全コンピュータシステムが何者かの手によりダウンしているのが状況でございますが―――さァてさて? 皆様のオツムに詰まっていらっしゃるのが人間の脳味噌であればもう答えには辿り着いていると思うのですがァ―――どうなのそこんトコ!?』

 

―――まさか。

混乱に混乱を重ねた少女の声を、正しく理解できた者、事態を把握していたわずかな者達は、そろって小さくつばを飲み込んだ。

 

『イエ―――――ァッ! まさかと思った賢いアナタ! ピンポンピンポンちょー正解! まさしくそのまさかでファイナルアンサーでッす!』

 

一斉に停止した通信機構。少女の声を配信し続けるスピーカー。稼働はしているが管理者の制御を外れているメインコンピューター。それらが導くのは、ある一つの結論。

声の主が尊大かつ愉快に肯定する。

 

『本日! 只今! この時をもって! わたくしはこのメローネ基地を中心に全世界のミルフィオーレのコンピューターを掌握いたしましたッ! いえー!』

 

それは死刑宣告にも等しい敗北へのカウントダウンだった。



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第五十一話 囚われたツナ

(・・・夢?)

 

いい夢だったのになー。と若干現実逃避気味にツナは目を覚ます。と目の前に紙が差し出され文字が書かれていた。

【酢花゚】 と。

 

「す・・・はな・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。パ。スパナ」

「ハハッ。本当だ・・・○がついてる・・・。ゴメン、寝ぼけてた・・・」

「気にするな」

「? ・・・・・・って、漢字に半濁点は要らねーよ!?」

 

キレ気味で飛び起きたツナはとりあえず周りを見渡す。

 

「その恰好では風邪をひく」

「・・・? なにゆえ俺はパンイチなのさ」

「これを貸してやる。茶を飲め」

「あ・・・どうも」

 

お茶を受け取ったツナは飲みながらもう一度ゆっくり周りを見る。

 

「あ、俺の服・・・」

「ビショビショだ」

「用水路に落ちたからか・・・。あ、俺の装備一式だ」

 

左手にお茶を持っているため、右手を伸ばそうとして手錠に気付いた。

 

「俺、もしかして拘束されてます?」

「うん。あんた今、行方不明ってことになってる」

「マジかぁ・・・」

 

その後ツナは壁につけられた手錠から、手首同士を繋ぐ一般的な手錠をしてツナギを着ていた。

 

「・・・・・・・・・・・・Sサイズでもでかいな・・・」

「え?! これSサイズ!? うっそー・・・」(俺どんだけチビなんだよ・・・。いや、そもそもそんな丈に作られていないこのツナギが悪い。うん)

「・・・・・・未完成なんだろ?」

「へ?」

「最後のアレ・・・・・・。見た感じバランスが悪くてフルパワーで撃ててないように見えた」

「ん・・・? 撃つ、ってことはもしかしてX BURNERのこと?」

「X・・・BURNER・・・。そう、X BURNERだ! X BURNERが安定しないのは右手の炎と左手の炎の力のベクトルにズレが生じているからだ。左右を完全なシンメトリーになるように工夫を施せばいい」

「あの、突然どうして・・・?」

「・・・・・・ウチは日本人(ジャッポネーゼ)日本(ジャッポーネ)も好きだ。ロボット工学が進んでるから。カタカナや漢字もクールだし、緑茶の香りも神秘的」

「はぁ・・・」(ロボット工学の最終目的は恐らくガン○ムとかを造るためだと思います)

「でも一番興味があるのはボンゴレ十代目の技だ」

「え?」

「あんたの完璧なX BURNER見たくなった。ウチが完成させてやる」

「あ、ありがとうございます・・・?」

 

 

暫くして、ツナはお茶を飲みながら目の前でなにかの作業を続けるスパナを見つめていた。

 

「・・・あの、作業が一段落してからでいいんですが質問してもいいですか?」

 

小さく頷いたのを確認してツナは行動を開始する。といってもお茶と一緒に貰ったアメを咥えただけなのだが。

 

(慌てたってしょうがない。完璧なX BURNERが撃てるなら何だっていいや)

「・・・何?」

「あ、えと。外の様子がどうなってるか、知ってます?」

「外って基地の他の様子のこと?」

「そうです!」

「知らないな。正一はバタバタしてるみたいだけど」

「正一・・・って入江正一のことですか?」

「そう。でも、正一を攻めに来たんだったらやめた方がいい。高校の国際ロボット大会の頃から知ってるけど、正一は相当キレる。いつも全体を見てるスゴイ奴だ」

「へ、へぇ・・・」

「でも、何かメインコンピューターが乗っ取られたみたいだけど」

「へ? ・・・さっきの夢、案外的を射てたのか・・・」

 

楽しそうな青い少女が出てくる夢。いい夢かどうかは置いておいて、あの夢で聞こえた声は現実の声の可能性もある。

 

「あ、あと。何で俺の技を完成させてくれるんでしょうか。ミルフィオーレの人でしょう?」

「技を完成させるのは見てみたいからって言ったろ? あの時あんたを殺さなかったのは気持ち悪くなったんだよね」

「は?」

「モニター越しの殺しは平気だけど、生身はいやだってアレだよ」

「ゲームと現実ゴッちゃ混ぜにしないでもらえます!? そもそも殺しは全面的に駄目でしょ!」

「・・・」

「あ、すみません」

 

と、その瞬間部屋全体が大きく揺れた。

 

「わっ!?」

 

その後も続いて断続的に揺れ続ける室内で、ツナは揺れに規則性を見つけ耐えていた。

ある程度揺れが収まった後、ツナは一応周りを見渡す。そこら中散らかっていた。

 

(っていうかエネの奴、遊んでたな・・・? じゃなきゃこんな事奴さんが出来るわけねーだろ)

 

と、自分の相棒に心の中で文句を垂れたツナはスパナがなにかを探しているのを見つけた。

 

「? どうしたんですか?」

「・・・・・・大事な部品失くした」

「え・・・・・・」

 

呆れたように下に視線を動かしたツナは、手元に手袋等が転がっていることに気付く。

 

(お、じゃあ服でも乾かすか)

 

ツナは手っ取り早くボンゴレリング()ウラヌスリング。そして手袋を着けると、その拳に炎を灯して干してある服に近づけていった。

 

「あった」

「あ、ありました?」

「・・・・・・・・・じゃあハイパーモードになってよ。実際やって試すから」

「あ、はぁ・・・。って言うか逃げるとかは考えないんですね・・・」

「逃げてどうすんの?」

「スパナの言う通りだ。それに俺が見てみてーぞ。完璧なX BURNERって奴をな」

「いや、そんな事は分かって・・・・・・。ん?」

 

ツナは突然聞こえてきたその声に慌てて声の方を見る。するとそこには黒いスーツを着た彼のよく知る赤ん坊がいた。

 

「ただし時間はねーぞ」

「リボーン!?」

「ちゃおっス」

「お前・・・いつの間に? って言うか、ちょっと色が薄い・・・?」

立体映像(ホログラム)だな」

「当たりだぞ、スパナ。俺は本物じゃなくて3Dの映像なんだ・・・」

「もしかしてその為に俺のヘッドフォンだけ大きいの?」

「そうだ。俺はボンゴレのアジトで撮影されて、その映像がヘッドフォンを通してここに映し出されてんだ」

「また無駄な機能を、どうせ俺を驚かそうとか思ったんだろ・・・」

「ああ、本当はもっとは約驚かせようと思ったんだがな。さっき急に電波が良くなった。何かあったのか?」

「パズルが動いたんだと思うよ」

「は? パズル?」

 

ツナの解答にリボーンは目を丸くする。

 

「マップに所々黒い部分があっただろ? アレは多分空間があるんだと思うよ。全ての部屋が正方形にわけられるこの基地の部屋がスッポリハマる空間がね」

「それがズラされて、分断されちまったのか。あいつ等は」

「やっぱり? ほら、俺の言った通りじゃん! まったく、俺の話を聞かないからこういうことになるんだよ・・・」

 

ツナの偉そうな態度にリボーンはため息をついたという。



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第五十二話 侵攻、メローネ基地

コンタクトレンズを何故か目に入れることになったツナは数秒迷った後、綺麗に入れていた。

 

「よし、始めて」

「あい」

 

手錠を壊し、視界を確認するツナ。その視界はコンタクトの透過性が弱く、霞んでいた。

 

「どうだツナ」

「視界が霞んでる」

「やはり調整に時間が必要だな」

「じゃあ頼む」

 

 

 

一方で。

幻騎士と対峙した山本は、相手から漏れ出した殺気に少々気圧される。だが、

 

(ツナの物理的暴力の殺気に比べたら全然甘いッ!)

 

上から押さえつけるものだったり、横から殴りつけるようなものだったり、様々なバリエーションの殺気を笑顔で飛ばしてくる人間が彼等のボスだ。そうそう生半可なことで竦んだりするように鍛えられてはいない。

そしてこれが一番重要だが、山本はリボーンとの修行の後完成度を確かめるためにツナと模擬戦をし、数十回にわたって負けている。数百本の刀を地に刺した状態で戦う、ツナの無限一刀流とは名ばかりの刀による払いの連撃で。

だからこそ、山本は幻騎士程度の剣速なら余裕で見切れる(体がバラバラになって避けているのか切れているのか分からない。なんて事が無いから)し、幻騎士の使う霧の幻覚もクロームとの戦闘で見抜き方を心得ている。

それ故、彼が負けることはなかった。ツナのアドバイスもあったから。

 

【「あの燕特攻(スコントロ・ディ・ローンディネ)だっけ? 突進技って気を付けた方がいいよ。突然の障害物には対応できないから。あ、俺みたいに愛気覚える? もしかしたら避けられるかもよー?」】

 

そう、だからこそ。()()()()()()()()()()見抜けないわけがなかった。

 

「なぜ、幻覚だと分かった・・・!」

「こちとらあんたより一億倍・・・いや、それ以上の強さの相手と戦ったことがあるんだ。こんな所で負けてらんねーよ」

 

だが、山本の体力も限界に近かった。

 

「ハハッ・・・剣の腕では負けなかったけど・・・何か負けた気分だ・・・」

「いや、お前は勝った。剣士としては、な」

 

 

「僕の名前はヤ○坊♪ 僕の名前はマ○坊♪ 二人合わせて○ン○ーだ♪ 君と僕とでヤ○マ○だ♪ 大きなものから小さなものまで・・・・・・」

 

ツナはそう歌いながら服を乾かしていた。その後ろでリボーンがスパナに質問をしていた。

 

「確か時空間移動がらみの・・・所謂タイムトラベル」

「タイムトラベル!?」

(デロリアン乗ってみたいな・・・)

「あ・・・」

「やっと点と点が繋がったぞ」

 

リボーンがなにか言っているが、ツナには聞こえてこなかった。何故なら、

 

『申し訳ございませんでしたァ――――――ッ!!』

「うるせっ」

 

元気いっぱいの電脳少女が全力で謝罪してきたからだ。耳元で。

 

『いやはや失敗ですよ失敗。見逃してました。死ぬ気の炎による強制回路構築で向こうに主導権とられちゃいました』

「取り返してこいよ。馬鹿音」

『あ、もちろんもうコピー体が向かってますよ? 簡単に突破してくれてます。コンピューター側が手に落ちるのも時間の問題っすよゲッヘッヘ』

「何という悪い笑みだろうか。果たして女の子がこんな笑い方をして良いものだろうか。いや、駄目だ(反語)」

 

ツナは一度軽く地面を蹴ると、ハイパーモードになった。

 

「見つけたよ。何にしても時既に遅しさ。あんた達はここで永遠におねんねするんだからさ」

「・・・・・・。アイリスと死茎隊・・・」

「スパナ、下がってろ」

「・・・やめとけボンゴレ。死茎隊は今のあんたが敵う相手じゃない」

「そうか? 知ってるだろ、ツナはお前のキング・モスカと相打ち(笑)するほどの強さだぞ」

「だからだ。前に死茎隊の戦闘データを拝借してキング・モスカとの戦闘シミュレーションをやったことがあるが・・・、ボロ負けだった」

「へぇ・・・」

「ふーん。死の忠告をしてやるなんてお利口じゃないかスパナ。ま、どっちみち裏切り者のあんたもここで死ぬけどね」

「え・・・」

「さぁ、行くよ。下僕ども。燃えてきな!!」

 

アイリスと呼ばれた女性が振るったムチで叩かれた死茎隊は、その肉体を数倍にも膨らませた。

 

「キモっ。何それ」

「増強ってさ」

「で・・・出た・・・。死茎隊、雲の肉体増殖」

(雲属性の炎による増殖で肉体の強化ってとこ? 何にせよ、気持ち悪いのには変わらないけど。涎垂らすな汚いなぁ)

「何だありゃ・・・。人間なのか?」

「・・・・・・・・・。元々はね」

「さあ、ひねっといで。下僕ども」

「プルァ!!」

「かけ声までキモい!!」

 

次々と繰り出されるその奇妙なかけ声に、悪寒が走っていたツナはあっけなく壁を突き抜ける勢いで吹き飛ばされる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・。だから、ムリだって・・・」

「本当にあいつ等人間なのか?」

「死茎隊。ミルフィオーレ人体覚醒部の被験体だ・・・。改造された肉体が全身を覆う特殊なスーツとアイリスのムチの雲の炎によって異常な体質変化を起こし、人体に眠る攻撃能力が覚醒しあーなってる」

「人体実験か・・・。ひでーことしやがるな」

「・・・・・・・・・それは少し違う。あいつ等は自ら進んで肉体の改造をしたんだ。

 

あの被験体達は元々人体覚醒部の博士だった。四人の共通点は一人の助手に惚れていたこと・・・、アイリスだ。彼等は、一番アイリスを喜ばせるのは自分だと、競うようにそれぞれ自分の体にメスを入れ肉体を改造していった・・・。

 

アレはそのなれの果ての姿・・・。生きがいは殺戮と・・・、妖花アイリス」

「よーくやったよ下僕ども」

 

その言葉に死茎隊はアイリスに群がるようにうめきを上げる。

 

「歪な関係だな」

「さぁ、ボンゴレは壁の向こうだよ。開けてやるから腕ごとかっさらっといで!!」

 

その言葉の通り、部屋を仕切っていた壁が開いていく。開いた先には、ツナギから乗り込む時着てきた服に着替えたツナが立っていた。

 

「へぇ。中々しぶといじゃないか」

「スパナ、何をしている。早くコンタクトを完成させてくれ」

「え。・・・・・・・・・」

(アイツ・・・)

「完成時間が変わらねぇのがポリシーなんだろ? 早くつくれ、スパナ」

「・・・・・・でも、死茎隊はキング・モスカより強いって言ったろ? ムダなあがきだ」

「ツナが遊びだした」

「?」

「ツナが遊びだしたら誰も勝てねぇぞ」

「いいや、ムダさね。やっちまいな」

 

大空の炎の推進力を使わずに駆けだしたツナは、襲いかかる死茎隊の腕をワンパンで吹き飛ばすと、肉体に近づいてその拳を叩き込む。

 

(硬くて柔らかい・・・ッ!? 手加減しすぎたな・・・)

 

その後も攻撃をかわしながら、一体また一体と確実に攻撃を当てていくツナ。

 

「何だい? どーなってんだい!?」

「ウチの知るボンゴレとは・・・まるで動きが違う・・・」

「キング・モスカ戦とでは、違う所が二つあるからな。一つはツナが遊んでるってことだ。あの時のツナは足止め役で時間稼ぎなどが目的だった」

「でもあれは、本気とかのレベルじゃない」

「ああ。アイツは今も本気じゃねーぞ。それでも戦えるのはもう一つの理由。相手が機械じゃなく生きた人間だってことだ。生身の人間だからこそ見せる動きや考えの予兆というものがある。ツナはそれを感じ取ってんだ。これがボンゴレの血(ブラッド・オブ・ボンゴレ)に継承される、“見透かす力”またの名を―――

 

―――超直感!!!」



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第五十三話 完璧なX BURNER

「“見透かす”力・・・、超直感。またボンゴレはウチの想像を上回ってきた・・・。ますますそんな男の編み出した――――――X BURNERの完成形を見てみたい! 待ってろボンゴレ」

 

作業を進めるスパナ。その横でツナはつまらなさそうに戦っていた。

 

(弱い。つまらん。X BURNERが綺麗に撃てたら、楽に吹き飛ばせるんだろうなぁ・・・)

「ええい、何してんだいアンタ達!! あんなガキ一人に手間取って!! そーかい、燃えたりないんだね!! アンタ達の研究の成果を見せつけといで!!」

「プルァ!!」

「フォオ゙オ゙!!」

 

死茎隊の姿がさらに変わる。

 

(もう、良くない?)

(あ、ツナが面倒になってやがる)

「行きな!!」

 

死茎隊がさらに襲いかかってくるが、ツナは軽いかけ声と共にもの凄い速さで拳の連撃を繰り出す。そう、ネーミングセンスがなかった誰かにつけられたその名を「連続普通のパンチ」

そこから、死ぬ気の炎で加速し、凄まじい遠心力を起こす新技「Xストリーム」を繰り出した。

 

「すごい・・・新技・・・」

「遠心力で帰還が全部片寄っちまったな。あれじゃ肉の塊同然だぞ」

「ええい、何やってんだい!! カス男が!! あんたらこれしか能がないんだよ!! あたいはゴミは要らないよ!!」

 

三度ムチで叩かれた死茎隊の内一体は、その肉体を元に戻していた。

 

「甘いねぇボンゴレ!! こいつらは死なない限り戦い続けるよ!!」

(なんて奴だよまったくもう)

「スパナ、X BURNER用コンタクトはどうだ?」

「あと、ちょっと・・・」

「待ってろツナ。例のブツはもうすぐ完成だ。完璧なX BURNERならそいつ等だって・・・!」

『ご主人!』

「甘い甘~い。バ~!!」

 

恐ろしい勢いで刃が大量に飛んでくる。それをツナは何とかかわした。

 

「遅いじゃないか!! ジンジャー・ブレッド!!」

「お待たせ♪」

「気を付けろボンゴレ。そのジンジャーは本体じゃない、人形だ。あんたの超直感は聞かない」

「フフッ・・・スパナ。本当に裏切ってんの♪ お節介は死刑決定な♪」

「避けろスパナ!」

 

ジンジャーの攻撃がスパナが居た場所に直撃した。ツナは最悪の事態を危惧したが、煙幕の中からスパナが飛び出してきた。

 

「ウチのメカニック魂をみくびるな。させるといったら必ず完成させる。

「あいつ、妙なもん作ろうとしてるね。先にやっちまった方がいいよ、ジンジャー」

「賛成♬」

「させるかっ! 両手連続ッ」

 

普通のパンチ!!

 

ジンジャーの刃とアイリスの死茎隊。その全てに対抗する拳の連撃をツナが放つ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・。あと少し・・・」

「バイバイスパナ♪」

「できた」

「スパナ、上だ!」

「?」

 

直後爆発が起きた。ツナは慌てて振り返るが、そこには黒煙しか見えなかった。

 

「ハハハハ。これが裏切り者の末路だよ。ざまーみろってんだ!!」

「・・・・・・」

(受け取れ・・・ボンゴレ・・・)

 

所々焦げている。そんなボロボロの姿でスパナはコンタクトレンズが入ったケースを放る。

 

「させないよ♪」

「ボンゴレをつかまえな!!」

 

攻撃を加える二人だったが、死ぬ気なしで亜音速行動を可能とする少年の速度を捉えきれるわけもなく、ツナは無事にコンタクトレンズを手に入れた。

 

「眠るのはまだ早いぞ、スパナ」

「・・・・・・・・・・・・」

「おまえが見たがっていた完璧なX BURNERを、見せてやる」

「・・・X BURNER?」

「何だい!?」

「ツナ、コンタクトの使い方は分かってるな」

「ああ」

「フフッ♪ たいそうもったいつけるけど、要は・・・ハッタリだね♪」

 

ジンジャーの攻撃を避けながら、ツナはスパナの説明を思い出す。

 

【「説明するぞボンゴレ。まずコンタクトはヘッドフォンと音声で連動させてある。コンタクトの情報は耳からも入るはずだ」】

【「耳からも・・・・・・?」】

【「次にディスプレイの見方だが、上のスロットルバーが右手の炎(ライトバーナー)。下のスロットルバーが左手の炎(レフトバーナー)の出力を表している。剛の炎は赤く、柔の炎は緑色に。バーに表示されるはずだ」】

 

ツナは実際に飛び回りコンタクトに表示される情報と、自分の感覚を照らし合わせていく。

 

(・・・・・・よし。正常に作動してる)

 

【「そして、X BURNERだが、「オペレーションX」のかけ声で自動的にコンタクトが発射誘導プログラムを開始する。画面がX BURNER用に切り替わり、両手の位置で動くターゲットが出現し、上下のスロットルバーから中心に向けて出力のバランスラインが伸びる。安定したX BURNERを撃つには、ターゲットを中心に合わせて左右の出力を全く同じにすること。つまり両メーターから伸びるラインを一直線にすることだ」】

 

ある程度確認した所で、ツナは空中で停止する。そして右手を後ろに向けた。。

 

「オペレーション・・・・・・、(イクス)

『了解しましたご主人(ボス)。X BURNER、発射シークエンスを開始します』

「・・・・・・・・・・・・、いきなり空中で・・・?」

「!?」

「!! 炎を逆方向に噴射!?」

『「ジンジャー!! アイリス!! 聞こえますか!? モスカの戦闘記録を解析した所、ボンゴレが起こすその攻撃は、高エネルギーを前方に放つ技だと考えられます」「真っ向から受けては危険だ!! 回避だ! 回避しろ!!」』

 

その様子を冷ややかな目で見ながらツナはウラヌスリングを介して左手に炎を集めていく。

 

『ライトバーナー柔の炎。十五万FV(フィアンマボルテージ)で固定。レフトバーナー柔から剛に変換しつつ、炎エネルギーをグローブクリスタル内に充填』

「アイリス・・・?」

「強力な飛び道具って訳かい。面白いじゃないか。マッスルスクラムだよ!!」

「・・・・・・受けて立つ気か・・・」(バカだな)

『ターゲットロック。ライトバーナー炎圧再上昇。十八万・・・十九万・・・二十万FV!!』

 

ツナは剛の炎によって輝く左手を、標準を合わせるようにゆっくりと彼女らの方に向けて伸ばす。

 

『レフトバーナー炎圧上昇・・・十九万・・・二十万FV!! ゲージシンメトリー!! 発射スタンバイ!!』

「おおっ! X BURNER!!!」

 

放たれた炎の柱は全てを呑み込み、吹き飛ばした。

 

「安定・・・してる・・・。うわっ・・・」

 

「カメラ破損!!」

「なっ・・・」

「大変です入江様!! 第四ドックから三区画が・・・、消滅しました!!!」

「しょ・・・消滅!!?」



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第五十四話 最終防衛区画

X BURNERによって様々なものが無くなった空間で、入江正一の声が通信機から響いていた。

 

『ジンジャー!! アイリス!! ・・・あまり期待は出来ないが・・・、もし無事なら応答してくれ』

「やぁ、入江正一クン♪」

『!!』(この声・・・!!)

「何か色々策を巡らせてるみたいだけど、もう全部終わりにしようよ。じゃあね♪」

 

ツナはそう言うと通信機を握り潰した。

 

一方で、匣実験場で入れ替わった雲雀恭弥が予想以上の善戦をしていた。まぁ、当たり前だろう。雲雀は幻騎士の剣技を超える速度と動きのツナの愛気を何度か捌いている。大抵雲雀が仕掛けてツナが反撃するのが一連の流れだが、その反撃を見切ることが出来るほどに彼は成長していた。

だが、匣の起こす幻術には対抗する術がなく匣兵器の暴走が起きてしまった。

 

「・・・ツナ、草壁から緊急通信が入ったぞ」

「なんて?」

「十年前の雲雀が研究所近くで戦っているらしい」

「あ、じゃあ心配ないね」

「そーか?」

「うん。だってあの人ついこの間には俺の愛気、居合い払いに対抗して見せたからね」

「・・・化け物か」

「かもね。でも、まだ負けるつもりはないよ。俺も更に上があるしね」

「まだあんのか」

「あるよ。奥の手は最後の最後までとっとかないと。じゃ、研究所に向かおうか」

「ウチも連れてけ。ボンゴレ」

「え?」

「X BURNER用コンタクトはデリケートなんだ。ウチにしかメンテナンスは出来ない。それに、足手まといにはならない」

 

準備が出来た彼等は、ツナの機動力で出発した。

 

「大丈夫か? スパナ」

「問題ない」

 

第四ドックから大分進んで。

 

「リボーン。研究所はまだ?」

「ああ。直線ルートならすぐなんだが入り組んでてな」

「X BURNERで道を作るか?」

「それは最終手段だ」

 

と、目の前で仕掛けが作動し、行き止まりとなってしまう。

 

「・・・すごいさすが正一らしい仕掛けだ」

「邪魔」

 

かなり厚い壁なのだが、ツナの拳は簡単に粉砕した。

 

「相変わらず規格外なヤツだな。ツナ」

「そもそも俺規格の奴なんているの?」

「いねーな」

 

と、さらに上からブロック状のなにかが大量に落ちてきた。

 

「はぁ。連続普通のパンチ」

 

左手で撃ち出された連撃は、そのブロックを上方に吹き飛ばし、次の仕掛けのハエトリソウを殺した。

 

「あ、これまた落ちてくるな・・・」

 

再度今度は右手で繰り出された連撃は、ブロックを粉々に粉砕する。

その後、ミサイルに追い回されたりしたが、ツナはたいして気にしていなかった。と、気も抜けないまま前方からロケットが飛んできた。

 

それに対してツナは拳を握ったが、そのロケットは直前で何分割にも分かれると、最後にはトビウオになって襲いかかってきた。

 

「え。何それ面倒くさい」

 

トビウオを回避するためにスパナを切り離したツナは、剣を持った男に襲われた。

 

「ここは通行止めだ。研究所には指一本触れることも敵わぬ」

「幻覚を使うみてーだな」

「・・・あ・・・。ボンゴレ!! そいつが六弔花の幻騎士だ!」

「何でここに? みんなと戦ってるんじゃ・・・」

「・・・みんな? 貴様の守護者のことか。中々手こずったが奴らは今頃、藻屑と化しているだろう」

「あ、そう」

 

ツナはそう言うと、ハイパーモードを解除して地面に降り立った。

 

「諦めたか」

「ああ。ハイパーモードで戦うのを諦めた」

 

言いながらツナは、ウラヌスリングとボンゴレリング手袋も外してポケットにしまう。

 

「だってこうなったら、どっちが勝つかなんて()()()()()()()()()()()じゃないか」

「そうだな」

 

次の瞬間、ツナの体が消えた。幻騎士が驚き気付くと、宙に浮いていたはずの彼の体にツナが接近しており、超強力な拳を叩き込まれた。

 

「来いよド三流。俺とお前の、格の違いってのを見せてやる」

「な、めるなァ!!」

 

一体どうやっているのか。恐らく円形状のこの部屋の壁を蹴って移動しているのだろうが、それを差し引いてもツナの動きは異常だった。空中で停止したり、加速したりまるで空中に地面があるかのように動いていた。

 

「本来の俺の戦い方は死ぬ気の炎とか、匣兵器とかじゃない。純粋な拳の肉弾戦だ」

 

質量を持った残像の拳“連続普通のパンチ”

それの両手版“両手連続普通のパンチ”

ツナが出す前に「必殺マジシリーズ」と言う、恐らくそれなりの全力技。

リボーンが知るだけでも技のレパートリーがあるとは言えないツナの技術。だが、

 

「神宿る拳を掲げ、突き進め。いつか敗北に辛酸を嘗めるまで、闘え。孤独な英雄(HERO)・・・」

「・・・・・・何。それ」

「ツナが言ってた言葉だ。何でも昔、知り合いから聞いたらしい。まさにツナにうってつけの言葉だって言われてな」

「神宿る拳・・・」

 

幻騎士相手に全力すら出さず、ツナは戦っていた。

 

NDK(ねぇどんな気持ち)NNDK(ねぇねぇどんな気持ち)? 弱いと思ってた相手に為す術なく一方的にやられるのってどんな気持ち? 俺は暫く味わってないからさぁ。教えてよ、ねぇねぇねぇ!」

「ッ・・・!」

 

ツナは楽しそうな言葉とは裏腹に、ツナの眉間には皺が寄っていた。

 

「もう、終わりにしよう・・・」

「まだだ!」

「終わりだよ」

 

いつの間にかツナはボンゴレリングもウラヌスリングもはめ直し、手袋を着けてハイパーモードになっていた。そして、煌々と輝くその両手を水平に持ってくる。

 

「時間を稼ぎやがった」

『ライトバーナー炎圧再上昇』

「!! あの炎の逆噴射!!」

『二十三万・・・二十四万・・・更に上昇!! レッドゾーン突入です!! もっと出せるように設定しておけよコラァ!!』

「・・・エネ」

「に・・・二十万オーバー? ・・・ウソだろ? 想定した最大出力を超えてる!!」

『レフトバーナー炎圧再上昇。二十三万・・・二十四万・・・、レッドゾーン突入!!』

「コンタクトは大丈夫なのか!!」

「それよりボンゴレの体が・・・・・・、あの炎圧に持つのか・・・」

「ツナだし、大丈夫じゃね」

『ゲージシンメトリー!! 発射スタンバイ!!』

「ういー」

 

軽い調子でツナはその手から剛炎を撃ち出した。



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第五十五話 真相

幻騎士を倒したツナはスパナにコンタクトを任せ、その彼を牽引しながらX BURNERで破壊した先にあった白くて丸い装置に向かう。

 

「っと。これが・・・?」

「うん・・・。正一の装置だ」

「まさかあの幻騎士を倒すとは、計算外だったよ。沢田綱吉」

「やぁ、正一クン。おひさ~」

「まずは武装解除して貰おうか、話はそれからだ」

 

平静を装って入江正一は話しているが、ツナの笑顔で大分胃がやられている。

ツナは話が進まないと思い、ハイパーモードを解除した。

 

「みんなは? もしかしてもう逝ってる?」

「いや。一応君が抵抗したそぶりを見せた時のために、睡眠ガスで眠らせてある」

「あ、そう」

 

透明なガラスの中に充満していた睡眠ガスがなくなったのだろう。中にいた彼等が目を覚ましてくる。

 

「・・・うぅ。ハッ。十代目!!」

「!」

「捕まっている!?」

「あれは・・・」

「チェルベッロ女!!」

「何で奴らが!?」

「お前達の命は我々が握っている。話をしたいんだ。大人しくしてくれないか?」

「!! 入江正一!!」

「やろう」

「抵抗しようとしてもムダさ。お前達のリングと匣兵器は・・・全て没収した」

 

そういう入江正一の掌にはボンゴレリングを含めた様々なリングが転がっていた。

 

「な!! 何!!」

(まあだろうね・・・。というか、そこに捕まってて良く没収されてないと思ってたね)

「なんてことだ・・・・・・。これでは・・・!!」

「・・・ぐっ・・・、沢田・・・。かまわん!! 貴様の手で装置を破壊しろ!!」

「え? やだ」

「十代目!? そいつをぶっ壊せば過去に帰れるかもしれないのに!!」

「・・・・・・ダメなの」

「そう、ダメ。俺もさ平行世界だからって理由づけたくないけど、自分達を殺すのはどうかと思うしね」

「「「は?」」」

 

ツナは守護者達の意見に首を横に振る。やれやれだぜ。とでも言わんばかりに。

 

「全く、お前達の無知ぶりには呆れるばかりだ。この装置を破壊すれば困るのはお前達だぞ。この装置に入っているのは、十年バズーカでお前達と入れ替わりで消えた・・・、この時代のお前達だ」

「え、俺背が伸びてる。やったね」

「ボス、一度見てる」

「ゆっくり見る機会なんてなかったじゃん。ゆっくり見れる・・・この機械どんな仕組みなんだろ」

「見えている彼等は立体映像のイメージで、実際には分解された分子の状態で保存されているがな」

「え。それ生きてるの・・・?」

「と言うか何でお前が知ってんだよ!!」

「それは・・・十中八九入江正一が、俺達をこの未来に閉じ込めたからだろうね」

「・・・何故だ。何故お前がそんな事を!」

「そうまでして俺達を連れてきてどうするんだ!」

「入江様これ以上は・・・」

「いや・・・、答えよう」

 

激昂する守護者達と冷静なツナ。そんな中入江正一は落ち着いて状況の説明を始めた。

 

「簡単な話だ・・・。白蘭サンがこの世界を手中に収め、もう一つの世界を創るために、ボンゴレリングが必要だからだ」

「「「「・・・?」」」」

「この世には力を秘めたリングが数多く存在するが、中でも「マーレリング」「ボンゴレリング」「アルコバレーノのおしゃぶり」各七つ、計二十一個のリングを7³(トゥリニセッテ)という。そしてこの7³の原石こそがこの世界を創造した礎だ」

(いや、いやいやいや。どんだけ中二病なの白蘭!? アータ俺と出会ってなかったらスゴイイタい子になってるんですけどーっ!?)

「話は以上だ。あとは任せた」

「ハッ」

 

入江正一の前に、チェルベッロの二人が出てくる。

 

「沢田綱吉、大空のボンゴレリングを渡しなさい」

「さもなくば守護者を毒殺します」

「あ、うーん・・・それもいいんだけど・・・こういう場合ってみんなが助からない場合が多いじゃん?」

「これは交渉ではない。命令だ」

「じゃあもう一度砕く!」

「「「「?!」」」」

「そんな器具がないからムリ。とでも言うつもり? 俺のパワーは知ってるよね。いざとなればこんなちんけなリングくらい。簡単に破壊できる・・・!」

 

指輪を握った拳に力を込めるツナに、守護者達が慌てる。一方主犯の彼は、仲間になろうとしてる赤髪の青年がパニックになっているのを見て笑いをこらえるのに必死だった。

 

「三秒以内に渡しなさい。全滅は免れません」

「こっちだって砕く準備は出来てんだぞ・・・!」

「3」

「・・・ッ」

「2」

「いいの・・・? マジで砕くよ?」

「1」

 

次の瞬間には銃声が響いた。ツナはもう我慢できないといった様子で軽く吹き出す。

 

「悪く思わないでくれ。少し眠って貰うだけだ・・・」

「ッッ・・・!」

「はぁ~、・・・暑い。・・・もうクタクタだ・・・・・・。一時は、本当にどうなることかと思ったよ・・・。沢田綱吉君と、仲間の皆さん。あ・・・、キンチョーがとけて・・・ヒザが笑ってる・・・。ふぅ~」

「ついでにツナも笑ってるぞ」

「・・・ッ。・・・・・・ッ!」

「よくここまで来たね。君達を待ってたんだ・・・・・・。僕は君達の味方だよ」

「「「「!!」」」」

「オレ達の・・・味方だと!?」

「う・・・うん、そうなんだ・・・。普段、僕の行動は部下と監視カメラによって二十四時間白蘭サンに筒抜けになってたけど、君達が全てをメチャクチャにしてくれたおかげで、やっとこうしてミルフィオーレの立場を気にせずに話せるよ・・・。はぁ~ずっとこの時を待ってたんだよ。この基地でのこの状況での出会い方こそが、僕らの設定したゴールだったんだから」

 

ミルフィオーレの隊服を脱ぎ捨て、地面に腰をぬかしたように座り込んだ入江正一はそう語り出す。

 

「な・・・何言ってやがる」

「ミルフィオーレがボンゴレリングを奪うために俺達をこの時代に連れてきたのは恐らく事実。その時世界に何らかの干渉をして、平行世界の中でも弱い俺達を連れて来ようとでもしたんでしょ。結果最弱(最強)が来ちゃったけどね」

「うん。綱吉君、君の強さは僕らの予想外のことだ。でも、君達を鍛えて強くなって貰うって目標は達成できた」

「要するに君は、沢田綱吉(オレ)が送り込んだスパイってことだよね」

「まぁ、そういう事になるね」

「信じられるか!」

「そうだ、沢田! 何故お前は信じている!!」

「だってこの人、ウソついてないから」

「あ、そう言って貰えると・・・嬉しいよ」

 

正一のその言葉に、ツナは笑いながらさきほど正一が持っていた銃を手に取ると、懐にしまう。

 

「で。あの甘味バカを止めるためにどうするのさ」

「協力してくれるの?」

「当たり前じゃん? 俺の行動理念はいつの日も最高の結末を見るため(面白いか否か)だよ」

「はぁ・・・。どうやら『扱いにくいけど味方にいたらとても頼もしい』綱吉君が来たみたいだね」

「なにそれh」

「褒めてないよ」



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第五十六話 真六弔花

怪我をした仲間の治療をしたりしていたところで、リボーンが声を出す。

 

「たった今、ジャンニーニからイタリアの主力戦の情報が入ったぞ。XANXUSが敵の大将を倒したらしい」

「「「「オオッ!!」」」」

「マジっすか!」

「せっかくのニュースに水を差すようだが、喜ぶのはまだ早いな。大将を討っても兵力に圧倒的な差がある。ミルフィオーレが新しい大将を立て長期戦になれば・・・」

「その心配もねーぞ。敵は撤退をし始めたそうだ」

「おおっ」

「え!? ってことは! 勝利じゃないか!」

「まーな」

「これならいける!! ボンゴレの戦力は想像以上だ!! 主力部隊を追い込むなんて!」

「急に興奮しやがって・・・」

 

メローネ基地のみんなが興奮に満ちあふれた時、その声は響いてきた。

 

『いいや。ただの小休止だよ。イタリアの主力戦も、日本のメローネ基地も、すんごい楽しかった』

立体映像(ホログラム)・・・)

「白蘭サン!!」

『ボンゴレの誇る最強部隊の本気が見れちゃったりして、前哨戦としては相当有意義だったよね♪』

(・・・前哨戦。あぁ、まだやる気か)

 

ツナは冷ややかな目で出現したホログラムを見ていた。

 

『メローネ基地で僕を欺こうと必死に演技する正チャンも面白かったなぁ』

「!! じゃあ僕が騙してたのを・・・」

『うん。バレバレだよ。確かにこの戦いを逆に利用して、敵に寝返る計画はよく出来ていたし、正直ボンゴレと手を組むなんて思ってもなかったけど、正チャンがいつか敵になるのは想定の範囲内だったからね。だって昔からずーっと正チャン、僕のすることなすこといつも否定的な目で見てたもん。まさかミルフィオーレのメインコンピューターにウイルスを流し込むなんて思わなかったけどね』

「ウイルス・・・? 何ですか、それ・・・」

『あれ、知らないの? 一度本部の全システムが乗っ取られたんだけどね、もう取り戻してウイルスも駆除したよ』

「くっ・・・クククッ」

 

ツナは堪えきれなかった笑いが漏れ出した。いぶかしげな表情で全員から見られるが、ツナは笑うことをやめない。

 

「www・・・なぁ、()()()()()()()()()()()()()のか?」

『沢田綱吉クン。それはどういう事か―――。「はいはいはーい! 水面下での工作終了でーっす! 電脳少女ことエネちゃん復活!!」』

 

白蘭のホログラムがぶれたと思ったら、彼の傍にフヨフヨと浮かぶ青い少女が現われた。

 

「この声・・・アジトのメインコンピューターをハッキングした!」

『正解、正解。その通り! ずーっと水面下で情報抜き取ってたのにミルフィオーレの皆さん気付かないんですもん。私としてはつまらなかったんで、一度暴れたらもの凄い抵抗してくれましてね? 面白いもんだから気取られないように気配を消して行動を再開したらあら不思議。喜びの舞いを踊って平常運転に戻っちゃいました! 傑作でしたよwww』

「ミルフィオーレのメインコンピューターと技術者をそんな簡単に欺くなんて・・・」

『へぇ・・・生きてたんだ。というか、人間味のあるウイルスだね。見た目もまるで本当の女の子みたいだ』

『当たり前です! なんて言ったって私は、超絶プリティ電脳ガールなんですから!』

「あの少女、何者・・・!?」

「恐らくツナが知ってんだろ」

「え? あ、うん。知ってるよ」

「「「「「?!」」」」」

「彼女はエネ。彼女の本当の肉体はちゃんと現実にあって、そこからパソコンを通して全世界のありとあらゆる電脳世界を飛び回れるのが特徴。彼女にとってコンピューターのセキュリティはゲーム感覚で倒せるスライムだって」

『ご主人のためですからね! まぁ、最も張り切るまもなくあっさりと突破できたので不完全燃焼だったんですよ! で、なんか敵の大将がちょー格好つけてるじゃないですか! 思いっきり邪魔してやろうと登場した次第ですっ! っていうかいい加減ゴキブリのように湧いてでてくるのやめてくれません? いちいち潰すのも面倒なんですけど』

『ホント、君厄介だね。何で君ボンゴレにいるの? ウチに来ない?』

『断ります。ご主人がいる所に私ありですから!』

『ふーん。じゃあ、そのご主人とやらを消せばいいのか』

『ご主人を相手に? 無謀すぎですよwww。それこそ無謀です』

 

エネは空中を泳ぐように飛び回ると、光の粒子になって消えた。

 

『アハハ。とっても愉快な子だったね。誰がご主人かハッキリさせて、僕に従順して貰わなきゃ。さ、てと。そろそろちゃんとやろーよ。沢田綱吉クン率いるボンゴレファミリーと、僕のミルフィオーレファミリーとの正式な力比べをね』

(正式な力比べ・・・? ・・・ん? メール?)

『もちろん7³をかけて、時期的にもピッタリなんだ。正ちゃんやこの古い世界とのお別れ会と、新世界を祝うセレモニーにさ♪』

「何お前、もしかして「僕は新世界の神になる」とでも言うつもり? やめときなって、各地にマーレリングが散らばってる状況でどうやって戦うと?」

『う~ん。ま、それが本物ならね』

「分かってたけど偽物か・・・」

 

ツナはかすかに笑っていた。

 

『もちろんそれもランクAのスゴイ石なんだよ? 7³はもっと特別なの』

「って事は他にいるわけだ」

『そ。紹介するね。彼等が本物のミルフィオーレ六人の守護者。(リアル)六弔花♪』

「「「リ・・・真六弔花!?」」」

(まーた中二病くさい名前が・・・)

『んん。彼等こそが僕が新世界を創るために選んだ真のマーレリング保持者にして僕の本当の守護者達だよ』

「知らないぞ!! 僕が知らない人間がミルフィオーレにいたなんて!!」

『正チャンに心配事増やすとメンドくさいからね。僕はこう考えたんだ。ただ腕っ節の強い人間を選んでもたかがしれてる。なぜならリングの力の要はより強い覚悟だからね。そこで、強い上に常人離れした“覚悟”を持った人間を世界中から捜し回ったんだ。しかもその「覚悟」が僕への「忠誠」になり得る人間をね。世界は広いよねー。おかげで彼等と出会えたよ。例えば彼は・・・ご覧のように大自然に恵まれた大変美しい故郷の出身なんだけど、「覚悟を見せてくれないか?」って言った途端。故郷を捨ててくれたよ』

 

そう言った直後にモニターに映ったのは火山が噴火し森が焼け付くとても同一の場所とは思えない光景だった。

 

「まるで地獄絵図だな」

「こんなことが・・・」

『怖いよねー。ここまでアッという間だよ。まさか僕への忠誠を示すために、生まれ育った木も山も村も村人も全部消してくるとは思わないじゃん』

(思っとけよ・・・)

「・・・ツナの方が良心的だな・・・」

「・・・ええ、一撃で地殻ごと吹き飛ばしてくれる方が、精神衛生的にいいっス」

「吹き出したマグマの中になにかいるよ」

 

ツナのその言葉に白蘭は笑顔になると、映像をズームしてくれた。

 

「何だ?」

「動物・・・?」

「「!!」」

「奴だ!」

「口笛を吹いてる!」

「マグマの風呂にでも入ってるつもりか!」

「ありえない・・・。のに、何故獄寺氏達はそんなに落ち着いて・・・?」

「いやぁ・・・だってさ・・・」

「宇宙空間の零気圧の中余裕の表情で手を振るのがウチのボスだからだぞ」

「「「「「!?!」」」」」

「いやいやいや。それは流石に」

「え゙!? ・・・みんな、出来ないの・・・?」

「出来ねーって前もいっただろうが馬鹿ツナ!」

「イテッ!」

 

ツナとリボーンがいつものを繰り広げている隣で、話はどんどん進んでいった。



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第五十七話 帰還

『ということで、僕らを倒したら今度こそ君達の勝利だ。ミルフィオーレはボンゴレに全面降伏するよ』

「白蘭サン!! 力比べって・・・。一体、何を企んでるんですか!!」

『昔正チャンとよくやった。“チョイス”って遊び覚えてるかい?』

「!」

「?」

『あれを現実にやるつもりだよ♪ 細かいことは十日後に発表するから楽しみにしててね♪ それまで一切手は出さないからのんびり休むといい』

「じゃあそうさせて貰うよ。絶対襲ってこないんだな?」

『うん。保証するよ。でも、君達はもう逃げないとね。君達のいるメローネ基地はもうすぐ消えるからさ』

「「「!?」」」

「消える?」

『正しくは基地に仕込まれた超炎リング転送システムによって移動するんだけどね』

「! それって、リングの炎を使ったテレポーテーションシステム・・・? 完成してたのか?」

『まだ、この規模の物体じゃなきゃムリなんだけどね。凄まじいエネルギーと時間がかかるから、一生に一度見られるかどうかだよ。じゃあ、楽しみだね十日後♪』

 

そして輝きと共にメローネ基地は消滅した。ツナ達がいた研究所を残して。

 

「うひゃー。基地が消えたよ・・・」

「テレポーテーションってのはスゲーな」

「極限にここはどこだー!!?」

「あ、了平さん。十年前の!」

「彼が来たことで七つのリングがそろい、結界が出来たことで我々は移動しなかった!」

「ボンゴレリングってすごいんだね・・・」

「何言ってやがる。お前の力に合わせてグレードアップを続けるウラヌスリングの方がスゲーに決まってんだろ」

 

リボーンの言葉にツナは手を打ち、正一は勢い良く振り返った。

 

「う、ウラヌスリングって何だい?」

「え、あ。このリングです」

「こ、これは・・・底知れないパワー・・・まさか! 綱吉君、君もしかして黒曜でこれに炎を!」

「灯したけど・・・」

「それでリング探知機が爆発したんだ! あー・・・そのせいで色々予定が崩れるし・・・」

「なんかごめんなさい」

「沢田、生きていたか・・・」

 

拳を握りしめ、感動に震える様子の了平にツナはタジタジになりながら、

 

「いえ、まぁ・・・。というか俺は死にませんけどね!」

「うむ! そこは心配していない。しかし、これは一体どういう事だ・・・?」

「掻い摘まんで説明しますと、オレ達は今大体十年後の未来にいるんです」

「むっ!? その時点でよく分らんのだが・・・」

「えぇとですね・・・・・・」

 

ツナがもう少しわかりやすくしないとなーと頭をフル回転させていた時だった。

それが飛んできたのは。

 

「でッ!」

 

ツナの頭に勢い良く当たり、手元に落ちてきたそれは、ボンゴレの紋章がついた匣だった。

 

「この時代のボンゴレ十代目より君達に託された、“ボンゴレ匣”だ」

「おーイテテ・・・」

「あ! 大丈夫かい!?」

「いえ、気にしないでください・・・。ただ側頭部に匣が当たっただけなので・・・」

「結構痛いよね、それ・・・」

ゔお゙ぉい!!

「んなっ!?」

 

ツナの耳をスクアーロの声が叩く。周りのみんなは必死に耳の痛みを我慢するツナに首を傾げた

 

『ヴァリアーから通信を繋げとの要請です・・・。ミルフィオーレに盗聴される恐れがありますが・・・』

『いいから繋げェ!!』

『怖いから繋ぎますよ! ヘッドフォンの音量に気を付けてください』

てめーらぁ、生きてんだろーなぁ!!!

「スクアーロ!」

「っるせーぞ!」

『いいかぁ!! こうなっちまった以上、ボンゴレは一蓮托生だ。てめーらがガキだろ―と・・・』

 

無線の向こうで何やら鈍い音がする。

 

『てめっ』

『沢田綱吉』

「!」

「この声・・・」

『乳臭さは抜けたか。十日後にボンゴレが最強だと、証明して見せろ』

「分かった。大人しく座って待ってなよ。XANXUS」

『ッ! ゔお゙ぉい!! そこら辺にまだミルフィオーレがいるんじゃねーだろうなぁ!!』

『シシシ。いねーよ』

『いませんよー』

『ああ? じゃあ今の殺気は!』

「俺だよ俺。沢田綱吉が放ちましたー。よし、八厘でミルフィオーレのボスクラスか。行ける」

 

ツナはよしっとガッツポーズをして小躍りする。その間にも話は進んでいた。どうやらこの場の全員、ツナの行動は無視する方向で話がまとまっているようだ。

 

「ツナ、正一に大事なこと聞いてねーぞ。だから踊るのやめろ」

「あ、うん。何?」

「入江正一。お前、オレ達のファミリーになるのか?」

「あ」

「へ? ダメかい?」

「がっ、あっさり・・・っつーかヌケヌケとー!!」

「ウチも行く所がない。雇ってくれ、ボンゴレ」

「あ、そっか。スパナ・・・」

「どうするんだ? ツナ」

「俺かよ!!」

 

ツナはリボーンの流れるような責任移動にため息をつく。

 

「心のままに言ってやってください。イヤならイヤと、十代目!」

「え。隼人、もしかして俺の身上忘れた?」

「へ?」

「俺は面白いことをするために生きてる。入江さんには色々されたけど、楽しかったし」

(((楽しかったのか!?)))

「このまま入江さんと手を組んでたら、白蘭と戦えそうだからね。俺はいいよ。これからもよろしく」

「あぁ、こちらこそヨロシク!!」

「スパナも頼むよ」

「んん」

「そうと決まれば僕にはやらなきゃ行けないことが山ほどある!」

「正一、技術的な話なら手伝う」

「ありがとうスパナ! さあ、忙しい十日間になるぞ!」

「じゃあ俺達は白蘭の言葉通りのんびりさせて貰おうかな・・・」

「いいっスね!」

「いいな!」

「お前達は修行だ。ツナは足りすぎてるから休憩できるんだぞ」

「「えぇ!?」」

「アハハ・・・。でもすごかったね。あんな身体能力一体どこで?」

「禁則事項でーす」

「なっ、なんだよそれ! 綱吉君!?」

 

一通り正一をからかったツナは、そのまま出口に向かって歩き始める。

 

「さぁみんな。帰ろうよ!」

「「「はい!」」」

 

ツナ達は一応無事にアジトに帰ることが出来たのだった。



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第五十八話 休息

話をしよう。あれは今から三十六万いや、一万四千年前だったか。まあいい、私にとってはつい昨日の出来事だが、君達にとっては多分―――

 

 

―――明日の出来事だ」

『何やってんですかご主人』

「いや、ちょっと地の文から始めようと思ったが始め方がつかめなかったから、それっぽいセリフで誤魔化してただけだ」

『ハァ・・・、相変わらず変わりませんね』

「人間そう簡単に変わらんよ」

 

軽快そうに笑うツナは自室のベッドに転がり、机の上に置いてあるタブレットPCから聞こえる少女の声に返答していた。

 

『って言うかご主人。この休暇どうするんですか? そもそも始めの目的忘れてません?』

「忘れるわけねーだろ。世界を巡って霊夢を助けることが出来る『何か』を探す」

『覚えててよかったです』

「正直死ぬ気の炎(こいつ)だけでも何とかなりそうだけど・・・ついでにもっと色んな世界巡って色んな力手に入れて、絶対確実に救えるようになってから帰ってやる」

『(・・・なんかあれですね。ご主人が枷なしでもチートになりそうな勢いです・・・。いや、別に強いに越したことはないですけど・・・ご主人の精神が持つんでしょうか・・・)』

「(その為に私がいるんじゃないですか)」

『(こいつ、直接脳内にッ!)』

 

楽しそうなことを繰り広げているエネと扇を放って、ツナは立ち上がる。

 

「さて・・・と」

『どこかへ行くんですか?』

「あー、うん。ちょっと準備に」

『なんの?』

「バケモン専用のあれ」

『・・・は?』

 

ツナはそう言うと、自室を出て外へ向かう。Aゲートが確か森に通じていたはずだ。と、彼はAゲートから外へ出た。

 

「・・・よし、この森の中なら・・・ってぇ。バジル君。何してるの・・・?」

「! 沢田殿! 助太刀に参りました!」

「あ、それは純粋に嬉しいや」

「それで・・・恐縮なんですが・・・」

「ご飯・・・食べてく?」

「はいっ!」

 

数分後、食堂に場所を移したツナの前でバジルは人一倍多くの量のご飯を食べていた。

 

「ごちそうさまでした。とてもおいしかったと、京子殿とハル殿にお伝えください」

「あ、うん。きっと喜ぶんじゃないかな・・・」

「それにしても驚きました。本当に並盛の地下にこんな立派なアジトが出来ていたなんて!」

「あれ? 知ってるんだ」

「はい! 全てはボンゴレの勅命である死炎印のついたこの、「助太刀の書」に記してありましたから」

「助太刀の・・・書?」

「はい。このアジトへのルートとこの時代での戦い方が記されており、いざというときは燃えてなくなる極秘文書です。拙者がこの時代に来たのは十日前で、場所はスペインだったのですが・・・。その時、パスポートと匣兵器と共に置いてありました・・・」

「CEDEF・・・父さんのいる門外顧問印の匣兵器か・・・」

 

ツナはバジルの匣を眺めながら彼の話の続きを聞く。

 

「残念ながらここに来るまで仲間には誰にも会うことは出来ませんでしたが、この書と匣兵器のおかげで途中で出くわしたミルフィオーレファミリーを何とか撃退できたんです」

「あ、もう既に戦ってるんだ」

「ええ! 六回ほど戦闘を」

「へぇ~」

「つまり、何者かの指示でバジルはツナ達とは別のルートで鍛えられ、ここに合流したと考えられるわね」

「ビアンキ! 急に・・・というか鍛えるって・・・つまり仲間?」

「その通りです! 「助太刀の書」はこう締めくくられていました。若きボンゴレ達と共に、白蘭を砕けと!」

 

ツナはその言葉に満足そうに微笑むと、何故ここにビアンキがいるのかを尋ねた。

 

「そんなの決まってるじゃない。私は女の味方よ」

「・・・何となく分かった。京子ちゃん達が外に出たいって行ったんだね。恐らく、自分の家に行くために」

「ホント、ツナは話しやすいわ。説明の手間が省けるぐらいだもの」

「茶化さないで」

「じゃあ行きましょ。二人ともお待ちよ」

「え。俺も行くの?」

「隼人達が反対してね。護衛がてら着いてくることになったのよ」

「ミルフィオーレはもういないじゃん・・・。分かった分かったから睨まない! 着いていくから!」

 

というわけでツナはポイズンクッキングで脅されて(半ば無理矢理に)地上探索に連れ出されることになった。

 

『ご主人ご主人ちょっといいですか?』

「・・・・・・なんだよエネ。わざわざバイブレーション鳴らして知らせてきて」

『いえ。最強の体が欲しくなりまして・・・』

「コンピューター制御的な体か?」

『そうですね。ただの肉体でも強いのは自負しているんですが、何かしら強さが欲しいもので』

「ふむん・・・。お前、リングは?」

『持ってません』

「威張って言うことじゃねーだろ・・・じゃあ無属性で出場は出来そうだな・・・」

『え。マジで出るんですか?』

「スパナに頼んでみようか」

『何を頼むんですか・・・・・・?』

「イカロス」

『・・・・・・・・・・・・・・・は?』

 

ということで、ツナは正一とスパナにあるものの技術を伝え、制作をお願いしたのだった。

 

 

―――その日の夜。

 

「何? リボーン。こんな所に連れてきて・・・」

「一体何の部屋っスかね・・・」

「思ったより早く、機動力対策は出来そうだな」

「スパナなんかに負けられませんからね。ここはこの時代の十代目のコレクションルームの一つですよ」

「コレクション?」

「ちょっと失礼しますよ十代目」

 

ジャンニーニはツナの股下にメジャーを当て、短いですね足という。ツナはそれに短くて悪かったね。と返した。

 

「なんなのさ、一体」

「やはりサイズ的にもヴィンテージのあれがいいでしょうね。待っててください、すぐ用意しますんで」

「・・・・・・これは察せないんだけど、何するの?」

「一日早い課外授業って奴だ」

「は?」

 

そして甲高い轟音が響いてきた。

 

「これって・・・」

「素晴らしい。ガソリンエンジンと全く同じレスポンス、これなら行けそうです!」

「バイク!」

「このマシンは私も敬愛するレーサーレプリカですが、最新技術で弄ってあります。死ぬ気の炎を燃料に最高速度のアップ、更に対炎レーダーの対策もバッチリなんです!」

「いいかお前等、匣兵器だけじゃなくてこいつも白蘭との戦いの前に乗れるようにするからな」

「いや、白蘭とか関係なしにのりたくなるよ・・・これ・・・・・・」

「関係あるんだぞ。チョイスの戦場となるフィールドは直径十キロ。機動力が要るんだ」

 

リボーンの言葉に守護者はそれぞれ驚く。と、そこで獄寺が気付いて。

 

「ですがリボーンさん。オレ達ならともかく、すでに十代目は恐ろしい機動力をお持ちですよ」

「お前はこの状態の奴からバイクを取り上げるのか?」

「・・・・・・」

 

言われて獄寺が見ると、ツナはバイクの周りをグルグルと回ったり、エンジン付近に耳を近づけて音を聞いたり、随分気に入っていた。

 

「いえ、何も言いません」

「あ、でも・・・オレ達中学生・・・」

「リボーンさんっ!」

「安心しろ。この時代はのお前達はプラス十歳。ちゃんとこいつが発行されてる」

「ヒャッホォウ!!」

「ほら、またがってみろ」

 

言われて早速、ツナはバイクにまたがった。

 

「えーっと確か・・・左手のクラッチを握って・・・左脚のギアを蹴って・・・アクセルを回して・・・クラッチを離す・・・」

 

ツナは何とかバイクを乗りこなすことができ、それなりに楽しんでいた。



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第五十九話 修行開始

午前中をバイクの練習、午後を了平・バジルの歓迎会に費やした次の日。ツナ達はトレーニングルームに集まっていた。

 

「よしっ、そろったな。今日から本格的な匣兵器の修行だが、リボーンの一番の教え子であるオレが、全体を仕切る家庭教師をすることになった。よろしくな」

「・・・ヘナチョコのあいつなんかに務まるんスかね」

「ディーノさん部下の前だとすごいじゃん」

「ちなみに今回オレはその上の役職“家庭教師の精”だからな」

「妖精なんだ・・・」

「ディーノがヘボい時はオレが制裁を下すから安心しろ」

「いでで。やめろってリボッブッ!!」

 

別にヘボくないのにリボーンに蹴られているディーノに、ツナはある種の同情を感じていた。

 

「って事で始めるが・・・、その前にクローム。意思確認だ。お前はボンゴレ守護者であると同時に、骸の一味でもある。ミルフィオーレとの戦いには味方として数えていいのか?」

「もちろん。ボスと一緒に戦う」

「よし、なら頼んだぜ。それとランボにも本格的な修行をして貰う。白蘭を倒すには守護者全員の力が必要だ」

「まぁ、いいんじゃない?」

「俺はこの時代のツナに聞いて、お前達のボンゴレ匣のことを多少は知ってる。そこから考えてそれぞれに違う修行をして貰うつもりだ。ちなみに雲雀恭弥はオレとの修行をもう開始している」

「あれ、どこかへ消えたと思ったらそんな事してたの?」

「相変わらず可愛くねーじゃじゃ馬だけどな」

 

ツナは雲雀さん結構素直だよ? と、疑問を口にする。

 

「じゃあ沢田綱吉! お前から修行内容を言っていくぞ」

「はーい」

「お前は正しく開匣できるまで一人だ」

「へ? 正しく?」

「大空の匣兵器ってのはデリケートなんだ。頑張れ」

「あ、はぁ・・・」

 

ツナは一人かぁ・・・ボッチか・・・。慣れてたけど・・・辛いなぁ・・・といじけ始めた。

 

「次に獄寺隼人。お前は匣兵器初心者である笹川了平と、ランボの面倒を見てやってくれ」

「なにっ!?」

「おぉー・・・、隼人はもう教える立場なんだ・・・。すごいねー・・・」

「えっ!? ・・・・・・、いえいえいえ。勿体ないお言葉! 自分なんてまだピヨッ子です!! ですが、お役に立てるのなら力の限りやらせていただきます!」

「あ・・・、うん。・・・ピョ?」

「次にクローム髑髏。お前は匣兵器強化のためえに半分の時間をマーモンの幻覚プログラムで修行。残りを格闘能力アップに使う。あそこの二人に手伝って貰ってな」

 

その二人とは、ビアンキとイーピンのことだ。クロームがそちらを見ると、二人が手を振る。

 

「そして山本武」

「うす!」

「お前はパス。待機だ」

「へっ?」

「パス・・・」

「つーか、お前には手ー出せねーんだ。お前に下手なこと教えればあいつにぶっ殺される」

「あいつ・・・?」

「お前の才能を一番理解してる奴が本気(マジ)だぜ。今回の修行、山本武お前スゲーことになるかもな」

 

ツナ達は訳も分からず首を傾げるだけだった。

 

「修行の説明は以上!! 各自修行場所は自分で選べ。バジルは自分の修行と平行してみんなのサポートをしてくれるからな」

「よろしくお願いします!」

「了平!! ランボ!! ノートと鉛筆を持って図書室へ集合!! まずは理論を頭に叩き込む!」

(隼人は相変わらず理論指導なんだね・・・)

「ありゃあ大変そーだな」

「だね・・・。というか武は修行どうするの?」

「まっ、よく分かんねーから修行が始まるまで自主練だな」

「クローム来なさい。鍛えてあげるわ」

「はい」

 

雑談をしながら一度みんなトレーニングルームから出て行く。出ていく前に一度振り返ったツナは、首を傾げて踵を返して歩き出した。

 

 

―――ツナside

 

ツナは以前扇と本気(マジ)でぶつかったトレーニングルームで、ボンゴレ匣と向き合っていた。

 

「これ、普通に開けていいんだろうか・・・」

 

十数分ほど唸っていたツナだったが、悩んでいても仕方ないと思い開けることにする。リングに炎を灯し、匣に炎を注入。その時、ツナの頭の中ではサイコロが回るBGMが流れていた。

炎の塊が飛び出したあと、そこにいたのは大きなライオンだった。

 

「で、でかぁ・・・!」

GURURURU・・・

「あ、ちょっと待とうよ。ね? ね?」

GAOO!!

「ストーップ! NONONONO!」

 

その後、数時間にわたって天空ライオンと鬼ごっこをしたツナだった。

 

「・・・ハァ」

「お疲れ様です十代目!!」

 

シャワー室から出てきたツナに、獄寺が声をかける。

 

「隼人と了平さ・・・ゑ!? 何でそんなボロボロなの!?」

「ランボが匣兵器を開けまして・・・、気付いたら全員気を失ってました・・・」

「今日はもう続行不能だ」

「大丈夫・・・なの?」

「なんとかな・・・。沢田はどうなのだ? 開けたか? ボンゴレ匣!」

「一応・・・。でもこっちの言うこと全く聞いてくれないので・・・」

 

遠い目をするツナ。獄寺は開けたことをベタ褒めしてきていた。

 

「お前等ボンゴレ匣で修行できるだけいいじゃねーか。俺なんかおあずけだぜ・・・」

「武・・・。もしかしたらスクアーロがくるかもね」

「ははっ。そりゃいいや」

 

山本がツナの言葉に期待の笑いを漏らした。

 

「あの・・・、お話があるんですが」

「え?」

「よっ。お疲れ」

「ハル、どうしたんだ? 京子ちゃんも一緒で・・・」

「誤魔化しても仕方ないので、単刀直入に言います。ハル達にもミルフィオーレやビャクランやボックスのこと・・・、今起きてることをもっと詳しく教えてください!!」

「「「!」」」

「あ、やっぱり朝のあの場にいたの二人だったんだ。でもどうして・・・」

 

納得したように手を打ったツナは、とりあえず事情を聞こうと口を開く。

 

「もう誤魔化されるのはたくさんです!! 私達だけが知らない事情を隠しているのは分かってるんです!! ハル達も皆さんと一緒に生活をしている以上、真実を知る権利はあります!!」

「ツナ君、私達も一緒に戦いたいの!」

「権利はあっても義務はない・・・って言ったら怒るよね。ぁあ~! 気持ちの整理がつくまで待ってくれないかな・・・。流石にすぐどうのこうのというわけには・・・、っていうか! もうすぐ全部終わって無事に元の世界に戻れるんだけど・・・・・・」

「わかりました。では私達もそれなりの措置をとらせていただきます」

「んへ?」

「ツナさん達が真実を話してくれるまで、ハル達は家事をしませんし」

「共同生活をボイコットします!!」



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第六十話 ボイコット

京子とハルは、デモを起こした人民が如く看板を持っていた。

 

「悪いわねツナ。私はこの子達につくわ」

「・・・私も・・・、・・・ボスごめん」

「イーピンも!」

「え・・・。えぇ・・・?」

「私達も京子達につくわ。修行しっかりね!」

 

女装したリボーン、ジャンニーニ、フゥ太が女性陣についた。それを確認したツナは溜め息を吐かざるおえなかった。

 

「ハァ・・・。久しぶりに家事しないと行けないのか・・・・・・」

「久しぶり・・・?」

 

 

―――台所。

 

「一応聞くぜ。どうするんだ? ツナ」

「・・・うん・・・。俺的には別に話してもいいと思うんだ」

「そう、なんスか?」

「うん。というか、大空のリング戦の前と十年後に来た日に京子ちゃんには何が起ってるか話したことがあるんだよ・・・」

「京子に・・・話したのか!?」

「流石に相撲大会じゃ納得できなかったみたいで、俺が誤魔化そうと思って異種格闘技戦って言ったんだけど、やっぱり気になったみたいでさ。全部話したことがあるんだ。だから今回も話していいと思う。彼女達はああ見えて強い子だから」

「十代目がそうおっしゃるなら・・・」

「むむぅ・・・京子が自分から聞きたいと言ったのか・・・」

「とりあえず、今日は自分達のことは自分達でして見ましょう。俺こう見えて家事は得意です」

「俺はしたことないっす」

「俺もねーな」

「極限に皆無だ!」

 

ツナは仕方ない。とため息をついた後。家事を始めた。洗濯を完璧にすませ、料理を作る。

 

「あ、の。十代目・・・。これは・・・?」

「え? 本格イタリアンフルコース」

「いや、大丈夫なんすか?」

「あっはっはー。舐めないで。そこらのイタリアンよりうまい自信があるよ」

 

そう言いながら笑うツナは、背中に手を回しズボンに挟んでいた銃を抜き去って撃った。撃たれた銃弾は今まさに料理に手を伸ばしていたリボーンの頬をかすめた。

 

「出て行けリボーン。これを食っていいのは俺達だけだ」

「いいじゃねぇか! 俺も食いてぇぞ!」

「女性陣についたのが間違いだと覚えておきな・・・」

「チッ」

「というか十代目、その銃どこで・・・」

「正一君が持ってた銃」

「チェルベッロを撃ったあの銃ですか!?」

「うん。そーだよー」

 

ツナは言いながら料理の続きを作っていく。リボーンはツナに怒られるのが怖いのか、台所の入り口でさっきの自分の行動を呪っていた。

 

 

―――次の日。

 

「じ、十代目!? 右腕!!どうなされたんですか!?」

「え? 食われた」

「何に!!」

「ボンゴレ匣」

 

いやー。怖いね~と笑うツナは服の袖が二の腕から千切れて無くなり、腕には包帯がグルグルと巻いてあった。

 

「匣兵器が!?」

「前回もそうだったんだけど、開匣した途端に襲ってきたんだよ。上に覆い被さって顔を執拗に舐めてくるから退かそうと手を伸ばしたら食われた」

「は、ハハ・・・」

「振り解こうとしたら腕中に歯が食い込んで血だらけになったんだよ」

 

から笑いをしながらツナは料理を作る。今日のメニューは日本食のようだった。

 

「「「「いただきます」」」」

 

「・・・みんな、ちょっといいかな」

「なんですか? 十代目」

「明日二人に全部話してみようと思うんだけど・・・」

「十代目が決めたのなら異存はありません!」

「まぁ、いいんじゃねーの」

「何かある前に極限に俺達が守ればいいのだ!!」

「その通り。じゃあ、話すことにするよ?」

 

全員から了承の返事を貰ったツナは、どのように話すべきか食器を洗いながら考えるのであった。

 

―――翌日。

 

「あ、ビアンキ。京子ちゃんは?」

「え、あ。外よ。買い物に行ってるわ」

「ありがとね」

 

ビアンキに京子の居場所を聞いたツナは、その場から音もなく消えた。

 

「消え・・・た・・・」

「あれがツナの亜音速行動だ。簡単に目で追うことはできねーぞ。ハイスピードカメラでも捉え切れねーんだからな」

 

京子を探して町中を飛び回ったツナは、京子を見つけた後。全てを話した。

 

「という感じなんだ」

「うん・・・。また、ワガママ言っちゃってごめんなさい・・・」

「いや、いいよ。どうせハルが言い出したことだろうし・・・。話しておいた方が守りやすいって知ってるからね」

「そっか」

「そうさ」

「腰に着けてるのがツナ君の匣兵器?」

「あ、そうだよ。これが俺の匣兵器。今のところでっかいライオンなんだけど、じゃれ方がキツくてこんな風に・・・」

 

包帯が巻かれた腕を見せるツナ。京子は息を呑んでいたが、彼はあまり気にしていなかった。

 

「大丈夫なの・・・?」

「ああ。みんなで無事に過去へ帰る。この思いは変わってないから安心して欲しい」

「・・・うん」

 

アジトに帰ったツナはハルにも同じように今の状況と、そしてこれまでのことを話した。

 

「えーと、ハル? 大丈夫か?」

「は、はい! 大丈夫ですよ! 話してくれてありがとうございます!」

(あー・・・ウソ、だな)

「スゴイ話ですね! びっくりしましたー! あっ。ツナさん今修行中なんですよね。わざわざハルのためにスイマセン! もう行ってOKですよ」

「ん?」

「修行の時間が勿体ないです!」

「あ、分かった・・・」(一人にしてやらないと、か)

 

台所を出たツナはミーティングルームに移動する。そこには全員がそろっていた。

 

「あ、ディーノさん」

「よ、ツナ。修行の進み具合をチェックしに来たぜ。家事ばかりにうつつをぬかしてねーだろーな」

「え、あ。はい。もちろん。こんな事になっちゃってますけど」

 

ツナはつい昨日、右腕の後に噛まれた左脚も合わせて見せる。それを見たディーノはツナの匣はそんな物だったか? と思案する。

と、そこでボンゴレのスクリーンとスピーカーにエマージェンシーのマークが現われた。

 

「!?」

「何だこいつは!」

『緊急事態! 緊急事態です! ボンゴレの回線をジャックするものあり! 現在対抗中ですご主人!』

「それもしかして白蘭か? エネ」

『ええ。その通りです』

「流していいよ。流さないと向こうが文句を言ってきそうだ」

『イエッサー!』

 

少女の声が響くと同時、モニターの映像が割れて白蘭が顔を出す。

 

『ハハハハッ! また邪魔されちゃったね』

「やぁ白蘭」

『退屈だったから遊びに来ちゃった。食べるかい?』

「わぁーい。いただきまぁーす! じゃなくて! 何しに来た」

『“チョイス”についての業務連絡さ。ほら、日時については言ったけど場所については言ってないよね。六日後お昼の十二時に、並盛神社に集合』

「!!」

「分かった。並盛神社だね」

『とりあえず必要な準備して、仲間は全員連れてきてね。少なくとも過去から連れてきたお友達は全員だよ』

「なに!!」

「全員って」

「なんだと!!?」

「まぁ、妥当だよね」

『みんなで来ないと君達は失格だからね』

 

そう言うと白蘭はモニターの電源を落とした。

 

「全員か・・・予想はしてたけど、色々マズいな・・・」

「にしても白蘭はどーやって回線に割り込んだんだ?」

「セキュリティがザルなんだぁ、アマチュア共がぁ」

 

スクアーロの登場によって修行の歯車は華麗に回り出した。



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第六十一話 チョイス開始!!

正装に着替えたツナ達は、並盛神社にて白蘭達を待っていた。

そこに現われたのは黒い雲と、巨大な白蘭の顔だった。

 

『やぁ諸君』

 

瞬間。轟音が響いた。見ると剛炎がツナの手から放たれていた。

 

「X BURNER・・・!」

(早い!)

「あまりにも気持ち悪かったから撃っちゃった・・・」

『ハハッ。元気そうじゃん綱吉クン』

「あ、ごめんね。いきなり撃って・・・」

『うん、別にいいよー。それにしても君のX BURNERだっけ? すごいね。一人で百万FVを超えてるよ』

「「「「!?」」」」

 

白蘭の顔の前に現われたモニターには1000000FVと表示されていた。

 

「何で計測してる・・・? 分かった。それが超炎リング転送システムだな?」

『正解。五百万FV。それが君達をチョイスの舞台へ転送するために必要な炎圧さ。ちなみに綱吉クンのおかげで後四百万FVだよ』

「もう四回X BURNERを撃てばいいってこと?」

『そうじゃない。まだ全員そろってないだろ? 待ってあげるから全員で来なよ』

「それじゃあ・・・行こうか」

『? いいのかい?』

「いいさ」

 

ツナは匣を構える。それぞれ全員が同様に匣を手に持つ。

と、そこで両サイドの林から匣兵器が飛び出してきた。

 

「早くしなよ綱吉」

「待たせたな」

「うっし。ボンゴレ匣!」

「「「「開匣!!!」」」」

 

出た結果は一千万FVオーバー。そしてそれを起こしたのは、若き十代目ボンゴレファミリーだ。

 

「てめーらおせーぞ」

「わりわりー」

「別に、綱吉は気にしてなさそうだけど」

「チッ」

「まぁ、来てくれると信じてたからね」

『じゃあ早速チョイスを始めよう。まずはフィールドの“チョイス”から、君達にチョイス権をあげるよ』

 

天から大量のトランプが振ってくる。まるでマジシャンの曲芸のように、目の前をグルグル回るトランプの一枚をツナは引いた。

 

「これでいいのか?」

『お。フィールドのカードは、雷。じゃあ行こう』

 

その場が光で満ち転送装置が起動する。移動した先は超高層ビル群のど真ん中だった。

 

「やっ。ようこそチョイス会場へ」

「やぁ白蘭」

「何度も会っているような気がするけど、僕と会うのは初めましてかい? 綱吉君」

「いや、別に。()()()()()じゃあないよ」

「何か質問はあるかい?」

「・・・・・・無いみたいだ」

「じゃあ次のチョイスを始めよう」

 

そう言って白蘭が取り出したのは死ぬ気の炎が灯ったジャイロルーレット。

 

「まるでカジノの機械だな」

「アハハ。チョイスってのはそういうものさ。博打と一緒。さぁ、回そう」

「「チョイス」」

 

二人で回して出た人数はこうだ。

ボンゴレ ミルフィオーレ

大空 1    0

晴  0    1(炎)

霧  0    2

雲  0    1

雨  1    0

雷  0    0

嵐  1    0

無  3(炎)    0

 

 

「これで決まったからね。バトル参加者♪」

「これはいい引きが出たって事か」

「そうさ。まぁリング保持者は少ないみたいだけどね」

「大丈夫だ」

「さーて。それじゃあお互いの参加戦士(メンバー)を発表しよっか。あ、ここは唯一相談して決められるとこだからね」

「白蘭サン・・・。リングを持たない僕は・・・、無属性でいいですよね!」

「・・・」

「・・・」

「んん。ま、特別にいいかな」

「だったら綱吉君。僕らのメンバーは決まりだよ」

「そう?」

「ボンゴレの参加戦士は―――、

大空に綱吉君。嵐は獄寺君。雨は山本君。無属性は僕と、スパナが適任だ」

「あと一人は?」

「綱吉君に頼まれた秘密兵器を使おうと思う」

「お、出来上がってますか!」

「いまいち仕組みも分かってないけど、頼まれた回路とプログラムは組んで置いたぞ、ボンゴレ」

「さっすがスパナ!」

 

まだ話は続いているというのに、ツナとスパナは基地ユニットの中から何かを引きずり出してきていた。

 

「さーて、いよいよ一番大事な勝敗のルールだけど。数あるチョイスのルールの中から、最もシンプル勝つ手っ取り早い―――ターゲットルールで行くよ」

「あー。それでルーレットボードに炎がついてるのか」

「流石綱吉君。読みが早いね。その通り、大将はもう決まってる。ミルフィオーレは晴! ボンゴレは無属性に!」

 

もう話を聞いていないツナはスパナと意気揚々に引きずって出してきた箱を開いていた。

 

「バトルが終わるのは“標的の炎(ターゲットマーカー)”が消えたら。どんな理由でも消えたら負けだ」

「それで? このチョイスでかけるものは?」

「もちろん。全てのマーレリングに、全てのボンゴレリング、そして全てのアルコバレーノのおしゃぶり・・・。すなわち新世界を創造する礎となる、僕が今一番欲しいもの7³だよ♪」

「俺勝っても要らないんだけど」

「その場合所有権を放棄すりゃ良い」

「なるほど! じゃあついでにお姫様を貰っていこう」

 

そして更に細かいルール説明が行われている中、()()は起動した。

 

「おはようございますご主人(マスター)

「ん。おはよう。悪いけど今回のバトルに参加してもらえる?」

「もちろんです」

「天使・・・?!」

「アハハ。何それ綱吉君。面白いものを造って貰ったんだね」

「ああ。戦略用エンジェロイド、typeα“イカロス”それがこの子の名前だ」

「よろしく・・・」

「ではメンバーもそろいましたので三分後に開始します。用意してください」

 

 

ボンゴレベースにて、ツナ達は用意をすませていた。

 

「あの、十代目。つかぬ事をお聞きしますが、その・・・イカロスというアンドロイドは役に立つんですか?」

「もちろん」

『三分たちました。・・・・・・それでは、チョイスバトルスタート!!』

「・・・じゃあやっとく?」

「え!」

「ボンゴレファイッ!!」

「「「「おおっ!!」」」」

 

円陣を組んだボンゴレ組は気合いを入れて戦いを始める。

 

「やっぱ気合い入るな」

「久々に凹むぜ」

「これは日本独特ではないよな」

「え?」

「ところで作戦だが・・・」

「簡単だよ」

「え?」

「全員各自その場の判断に任せる! 総員、適当にやっていこう!!」

 

ツナが言い放った一言に獄寺は目を輝かせ、山本は笑顔になり、観覧席の大人は呆れていた。

 

「さすがっス十代目!」

「無茶苦茶だけど良い指示のなのな!」

「わかった。最大限サポートするよ」

「あ、でも一応。攻守分けとこう。俺と武で攻めて、隼人はイカロスとここ守ってて」

「り、了解っす!」

「分かった」

「良いかいイカロス。ここにいるメンバー以外がこのベースに近づいたら遠慮しなくて良いからね?」

「了解」



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第六十二話 ツナの暴走と最終兵器

ボンゴレベースから山本と獄寺がバイクで飛び出し、イカロスは大きく翼を広げてベース前に立っていた。

 

「すごーい! みんなバイクに乗ってる!」

「イメージしてたマフィアの戦いと違います!」

「・・・ツナがいねぇな」

「え? どこだ? どこに行ったあいつ!」

(いつも通りの行動に出やがったか)

 

 

とあるビル角、ミルフィオーレの霧のリングトリカブトが飛んでいた。

と。

次の瞬間。彼の体が高速で地面に落ちていった。

 

「やぁ、トリカブト。だっけ? ヤッホー」

 

巨大な蠅王紋章の上に立つツナは、未だレーダーには移っていない。

 

「素朴の者よ」

「は?」

 

ツナが構えると、トリカブトは自分の体をウミヘビに変えるようにして襲いかかってきた。

 

「え、何これ」

「か弱き者よ」

「え。何こいつ超邪魔くさい。デイジーって奴じゃないなら別の場所に行きたいんだけど」

 

ウミヘビが雷属性の炎を纏っているのを確認したツナは、死ぬ気の炎を纏っていないただの拳を握る。

 

「連続普通のパンチ」

 

ウミヘビを物理的に砕いていくのは質量を持った拳の連撃。

 

「悲しき者よ」

「どっちが」

 

そして握った拳をツナは放つ。

その山を消し飛ばした拳圧を、空間を歪める拳をモロに食らったトリカブトは勢い良く吹き飛んで地面にめり込んだ。

 

『ボンゴレと交戦中の敵の炎反応消滅』

『よくやった綱吉君』

「んじゃ、ターゲットぶっ殺してくる♪」

『・・・ん? 今なんて言った? ちょっと! 綱吉君!?』

 

ツナは再度亜音速で飛び出した。

 

 

数秒後。

 

「見ぃつけた」

「わ・・・きた・・・」

「いっくよー。連続普通のパンチ!」

 

空間を叩いたツナは張られていたバリアを一撃で吹き飛ばした。

 

「ぼばっ」

「アハッ♪ そりゃ!」

 

その一撃で空間が歪んだ。ミルフィオーレの基地ユニットは見るも無惨な瓦礫の山となり、ツナはその中で余裕そうな表情で立っていた。

 

「ふぅ・・・。勝った?」

「お待ちください」

「うわっ! ・・・心臓に悪いなぁもう」

「デイジー氏の標的の炎、消滅と認めます」

「勝った?」

「う~ん。やっぱり死ねないのか~」

 

恐らくどこかで偉そうに誰かが解説していると思うが、ツナの目の前にいるデイジーは不死身の肉体を有していて、死ねないのが悩みだという。

さて、問題。全力が出せる相手が現われたらツナはどうすると思いますか?

 

正解は―――

 

轟音が響き、起き上がっていたデイジーの体が壁を突き破って遠くに蹴り飛ばされた。

 

「マジで? お前死なねーの!? どこまで壊したら死なないのか検証させなァ!」

 

吹き飛ばしたデイジーに着いていくために地面を蹴り亜音速まで加速するツナ。連続攻撃の一撃一撃がツナの普通の威力。その為、デイジーは少しずつボロボロになっていく。

 

「あれ? 何だこれ・・・」

『どうした綱吉君!』

「いやーこれトリカブトの仕業かなぁ・・・幻術世界に閉じ込められたかも」

『何だって?』

「まぁ、出るけどね」

『どうやって!!』

「こうやって―――必殺マジシリーズ マジ殴り!」

 

その一撃で、幻術空間だけでなく、その拳の先全ての空間を塵一つ残さず消し飛ばした。

 

「よっし」

 

「よしっ。じゃねぇえ゙ぇえ゙!! 何だぁその威力!!」

「おい、リボーン・・・。あれ、ツナか?」

「ああ、()()()ツナだ」

「そういや平行世界って言っていたが・・・あんなに違うものなのか?」

「あぁ、俺達の世界はどうやら7³によって強力に秘匿されていたようだ。それにツナと白蘭の仲が良い世界。どっちにしろ情報開示はされてねぇ」

「そりゃあさぞ驚いてるだろうな・・・。死ぬ気の炎を使わずにこの惨状を生み出す化け物と、向こうは戦わなくちゃいけないんだからな」

 

そして一方ボンゴレベースでは。

 

「ハハン。ついに捕らえましたよ」

「くそう!」

「まだ、私がいることを忘れないで・・・」

「そう言えばいましたね」

「可変ウィングシステム・・・安全装置(セーフティ)解除・・・。モード空の女王(ウラヌスクイーン) 起動(オン)。戦略用エンジェロイド、typeα“Ikaros(イカロス)”出撃します!」

「ハハン。何が来ようとムダですよ」

永久追尾空対空弾(アルテミス)発射」

 

翼から撃ち出されたそれは、キキョウの攻撃を意思を持ったかのようにかわし、攻撃を叩き込む。

 

「追尾機能付きですか。ですが、効きませんよ」

「モード変更typeΔ“Astraea(アストレア)” クリュサオル」

 

粒子線で構築された剣をもったイカロスがキキョウに斬りかかる。

 

「ハハン。こんなものが通用するとでも?」

「効く」

 

キキョウが己が身を守るために張っていたバリアを、クリュサオルが切り裂いた。

 

「!? ・・・ハハン。なるほど最終兵器と言われるだけはありますね。それに今ので逃げられそうです。なので先に行かせて貰いましょう。・・・?!」

 

炎のレーダーを確認しようとしたキキョウはその表示がされていないことに気付く。

 

「ムダtypeβnymph(ニンフ)Aphrodite(アフロディーテ)が展開してある。電子機器は無効」

「ハハン。やってくれますね」

 

 

 

―――その一方でツナは、何度も何度も何度も標的の炎を消しては生き返るデイジーを、何度も何度も何度も壊していた。

 

「はっはー。どこまで壊せる? どこまで持つ? お前はどこまで壊せるんだ?」

「ひぃー聞いてないよ! ボンゴレ十代目がこんな奴だなんて白蘭さんに聞いてないよ!!」

「当たり前じゃん♪ 何で俺の白蘭(友人)が友を売るようなことをするのさ。また今度アイツと甘味を食べに行かなきゃなー・・・」

 

ツナはそう言うと右手に力を込める。

 

「どんな形でも、標的の炎(ターゲットマーカー)が消えたら終わりなんだよね?」

「その通りです」

「じゃあ勝てるよ」

 

ツナは言いながら右手に込める力のベクトルを変えた。すると、彼の右手の甲に蠅王紋(ゼブルスペル)が出現した。

 

「それじゃあ、俺達の勝ちだ」

 

ガラスの砕けるような音と同時、ツナの開いた掌が触れたデイジーの胸にあった標的の炎が、マーカーごと()()()()()()()()()()()()

 

「「「「!!」」」」

「お仕事完了♪」

「な、何これ・・・」

「デイジー氏の標的の炎、消滅を確認・・・。復活不能・・・」

「これによりチョイスバトルの勝者が決定しました」

「勝者は―――、ボンゴレファミリーです!!」

「・・・イヤッホォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

ツナはその場で小躍りを始めた。訳の分からない歌まで歌い出してノリノリである。

いつの間にか取り出した笛で曲まで吹き始めた。吹いているのは『みwなwぎwっwてwきwたwww』である。別に禁断症状は出ていない。



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第六十三話 ファレノプシス・パラドックス

「チョイスバトルが終了いたしましたので、全通話回線を開放します」

 

そう言ってツナ達の勝利を祝おうと、観覧席のみんながボンゴレベースの方へ駆けだした。一方で・・・・・・ん? 流れ変わったな。

 

そう、「unicorn」が流れ始めた。

 

改めて、ツナもボンゴレベースの方に移動し、正一達と合流した。

 

「綱吉君! 勝ったんだね!」

「うん」

「やりましたね、十代目!」

「うんっ」

「流石ツナなのな!」

「へへっ。でも、多分()()()()()()()()()恐らく負けていたと思うよ」

「・・・確かにな。もしデイジーが標的になるのがチョイスの運命だとしたら、ツナの最後のあの技がねぇと勝ちはなかったからな」

「ホントギリギリだったんだね・・・」

 

ツナはえへへ~と可愛らしく笑ってみる。その笑顔で何人かがツナを女性と見間違えたのは余談だろう。

 

「いや、負けちゃったね♪」

「そう、僕達の勝ちだ。白蘭サン」

「あーぁ。・・・でもマーレリングを渡したくないな」

「別に欲しくないよ。これ以上奪わないようにして欲しいだけだし・・・」

「それが出来ると思ってるのかな? 案外楽観的なんだね綱吉君って」

「仕方ねーだろ。ツナはこんなんだからな」

 

リボーンがツナの方を見ると、右手を天高く突き上げ空を見上げるツナがいた。恐らく、BGMもクライマックスだろう。

 

「さて、と。じゃあ約束通り7³の所有権は別に要らない。その代わり・・・お姫様は攫っていくよ!」

「ん?」

 

ツナはバックステップでその場を駆けると、どこかへ消える。ビルの曲がり角の先で少女の悲鳴が聞こえた気がするが、理由は分からない。

 

『守護者総員に通達! 全力を持って直ちに現地点を離脱! 並盛に帰還するぞ!』

「はいっ!」

「おう!」

「分かったよ」

「了解」

「んじゃ、リング超炎システムを起動させなくちゃならねーな」

「何をするか分からないけど、逃がすと思ってる?」

「思ってる訳ねーじゃん。だから逃げるんだよ」

 

そう言って笑うツナは、イカロスに抱きかかえられた上でユニをお姫様だっこしていた。

 

「ハハハッ。これは一本とられたよ。いやあびっくりした。ユニを攫うなんてどういうつもり?」

「言っただろ? 俺はお姫様を貰うって。チョイスに買った俺は約束通りこの子の所有権をミルフィオーレから奪取する。それが意味するのはブラックスペルの脱会。かな?」

「・・・あ、はい。その通りです」

「あれ? ユニちゃんすっかり顔色もよくなっちゃって。元気を取り戻したみたいだね♪」

「みんなー、準備良い?」

 

会話中に撤退の準備をすませていた仲間から完了の返事が来たツナは、ユニを抱える手に力を入れ、イカロスに指示を出して飛び出す。

 

「匣、開匣!!」

 

超炎リング転移システムに、来た時同様炎をぶつけた彼等は、並盛町に無事転移した。

 

「よし、イカロス。あれ落とせ」

「了解。アルテミス発射」

 

翼から放たれたミサイルが超炎リングシステムを完全に破壊し、跡形も残さずにボロボロにした。

 

「は・・・はは・・・。つくった本人が言うのも何だけど・・・何あの子」

「ツナのエンジェロイドだろ」

「「「ああ」」」

「ああって何だよ」

「ツナと同類って話だ」

「何それ納得しそう」

 

ツナ達は一度ボンゴレアジトに帰ってきていた。

 

「・・・さて、正一君。今更だけど聞いておくよ? 白蘭に何で勝たなきゃいけなかったのさ」

「あ、そうだね。話さないといけない。本当に簡潔に、一言で言うと白蘭さんの能力によって世界が征服されてしまうからだ」

「能力、だと・・・?」

「どんな能力なのさ」

「普通の人間は平行世界の自分と関わったり交わったりすることはないよね? だけど白蘭さんは同時刻のパラレルワールドにいる全ての自分の知識と思惟を共有できるんだ」

「横の時間軸・・・マーレ・・・海・・・」

「沢田さんは察しが良いですね。もう、分かってしまったんでしょう?」

「うん。マーレは海、幾重に広がる平行世界。ボンゴレは貝、年を重ねる伝統の継承。アルコバレーノは分かんないんだけど・・・ね。ボンゴレは分かった。プリーモが言ってた、リングには時間が刻まれてるってね」

「・・・そう、そして今僕達がいるこの世界だけが白蘭に滅ぼされていなかった世界なんだ」

「・・・それはおかしい。俺達がいた世界も無事だったんだぞ?」

「それは多分、7³によって厳重に秘匿された上でただのもしもじゃ片付けられないほどの何かが君達の世界にはあったんだと思うよ。リボーン君」

「そうか・・・」

(それって・・・)

(十中八九タルカスに殺されるぞ!)

(マジメに答えてあげなよ扇ちゃん。そう、当麻君が憑依していると言うことがイレギュラーだ)

 

ツナが脳内で会話をしている中、正一の昔話が進んでいた。

 

(で、いつぐらいに決着がつくんですか?)

(明日つくよ明日)

(明日っていつの明日ですか・・・)

(さあ?)

「それでお前は、白蘭を倒すにはこの世界しかねぇって言ってたんだな」

「ああ。他のどのパラレルワールドでも7³は奪われ、ボンゴレファミリーも壊滅してるだろうからね」

「他だけじゃなくてこの時代の俺も死んでるじゃん」

 

ツナはため息をつきながらそう言った。そんなツナに反論する声が上がる。

 

「それは違うよ綱吉君。ミルフィオーレで射殺された時に使われたのは“特殊弾”だ。僕がすり替えた“死ぬ気弾”のような弾で、未来の君は仮死状態だったんだ」

「じゃああの棺桶は、敵の目を欺くカモフラージュってこと?」

「十代目は・・・生きてた・・・・・・」

「仮死状態ではあったけど、彼は棺桶の中で綱吉君が来るのを楽しみに待ってたはずだ。彼は処刑の前日に言ってたよ。

 

「もうすぐ彼等がやってくる。この世界の俺じゃないけど、白蘭を確実に倒せる実力を持ったオレが来る」

 

って」

「「「「あー」」」」

「あー。って何さ!」

「・・・・・・それより、これからどうするんだい? 綱吉君」

「そう、だね。とりあえず各自の判断に任せて自由に修行かな。いつ白蘭達がこっちに追い付いて襲ってくるか分からないから、こっちも出来るだけの準備をしとかないとね」

「そうっスね!」

「だな」

 

ということで残されたわずかな時間でのツナ達の最終修行が始まった。



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第六十四話 修羅開匣

『敵襲! 敵襲! 日本沿岸に白蘭の反応ありですっ!!』

 

爆音のアラームと共に告げられたエネのその言葉に、ツナ達は気持ちを引き締める。

 

「襲ってくると思いますか?」

「強引に襲ってくると思うよ。誰が一番に来るか分からないから、とりあえず位置バレしてるこのアジトからは早々に退避したいんだけど」

「あ、でしたらハルに良い考えがあります! ハルの知り合いに不動産屋のおばあちゃんがいるんです! 「隠れ家」にいい物件があるから家出する時は言ってね! ってよく言われてました!」

「不動産屋、ねぇ・・・」

「案外盲点で、いいかもしんねーな」

「「やったー」」

「いいのかよ。じゃあみんなでその不動産屋へ行こうか・・・。と、イカロスは恐らくまとまって行動してるであろうあいつ等の無線とレーダーを破壊してきて。連携をうまく取れなくする」

「了解です。マスター」

 

ツナの指令に頷いて、イカロスは翼を広げてマッハ24の速度で飛び出した。

 

「・・・行かせて良いのかい!?」

「ええ。空の女王(ウラヌス・クイーン)は簡単に堕ちませんからね」

『原作では落とし物でしたけど』

「それを言っちゃあお終いよ」

 

そして一同はその不動産屋へ移動する。

移動した彼等は、やたらと事情通な川平のおじさんのおかげで小学生探偵(ザクロ)を撒き、これからの方針を話し合おうとした所で、キキョウ・トリカブト・ブルーベルの三人が現われ、トリカブトの腕の中にユニが囚われた。

が、もちろんγが王子様の如く救出した。

それでも真六弔花の圧倒的な力にひれ伏してしまうと思われた所で、トリカブトがアッパーカットで飛ばされる。

 

「どこを見ている。お前達の相手はここにいるぜ」

 

「ツナ君!」

「十代目!」

 

「・・・いつも眉間にシワを寄せ・・・、祈るように拳をふるう・・・。あれが・・・ボンゴレ・・・X世(デーチモ)

 

※ウチのツナの場合ただ不機嫌なだけ。

 

「しまった!」

「ボンゴレの奴いつの間にあんなところまで!」

「俺のスピードを甘く見るな」

「哀しき者よ」

 

トリカブトがその服の前をはだけさせ、胸を出す。そこには匣が埋まっていた。

 

「胸に匣が埋まってる!」

「ディーノから連絡のあった修羅開匣だな」

 

「いきますか、トリカブト・・・」

「息止めるから、まった!!」

 

そして修羅開匣が起った。空間を呑み込むような開匣の後、そこにいたのは蛾のような羽を持ったトリカブトだった。

 

「終焉の時」

 

「なっ!! 景色が回り始めた!!」

 

「この幻覚・・・チョイスの時より強いな・・・」

「修羅開匣とは、人間と匣兵器の能力を掛け合わせたもの。蛾の擬態を進化させたトリカブトの目玉模様を見たものは、一瞬にして五感を狂わされ真実を見失うのです」

「消えた!」

 

「何が何だか分かりません!!」

「目が回るよ!!」

 

「くっ。天地がつかめない」

「・・・・・・仕方ないか」

 

ツナは一度目を瞑る。

 

「ムダです。一度模様を見たものは目をつぶろうとこの幻覚を破ることはできない。超直感でも―――」

「――ばーか。誰が目を閉じたままだっつったよ」

 

今一度目を開いたツナの目は、青く光るつくられたような目が填まっていた。

そして辺りを一度見回したツナは一瞬でかき消えると、トリカブトの位置を正確に掴み攻撃を当てた。

 

「何?!」

 

「どーなってやがる」

『凪さんも知ってるでしょう?』

「うん。あれは」

「『“神々の義眼”」です』

「「「「神々の・・・義眼!?」」」」

『その特性は様々。超光速の挙動を捕らえる動体視力に、物体を透過する透視能力。他者の眼球を掌握する視覚操作。そして今回は因果律を操作して世界を書き換えるような幻術であろうと見破る解析能力の恩恵です!』

「もうアイツ一人でいいんじゃねーかな」

『それは言ったらおしまいですよリボーンさん? ご主人は、本当に一人で出来るんですけど・・・。みんなで協力するってのが楽しいんじゃないですか!』

 

「必殺マジシリーズ マジ殴りX BURNER!!」

 

殴った拳を即座に開いてX BURNERを撃つツナ。その威力は計り知れず、真六弔花の面々は撤退を余儀なくされた。

 

「みんなー、大丈夫ー?」

 

間延びした声だが、攻撃が加えられていた仲間を心配するような声をツナは空高くからかけた。

 

「かなりダメージを負っちまったな」

「γ! 皆さんの所へ!」

「ハッ」

 

こうしてまた、ボンゴレの面々は場所の移動をせざるおえない状況に追い込まれた。



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第六十五話 激突

「原点にして頂点」

「リスポーン地点」

「実家のような安心感」

「親の顔より見た光景」

「何言ってんだお前等」

 

ツナと凪の悪ふざけにリボーンが突っ込む。

 

「だってさ、最初に未来に来た森に戻ってきたんだよ? これは原点回帰」

「これが神だ」

「見える奴には見える」

「何か書いとけ」

「死ぬがよい」

「やったぜ」

「いい加減にしろ」

「あ、沢田さん。お話ししておきたいことがあります」

「・・・? 何?」

「私はもう、逃げません」

 

ユニのその言葉に、遠くで話を聞いていたブラックスペルも驚愕する。

 

「決着をつけて良いってこと?」

「はい。明日、夜明けと共に始まる戦いで全てが終わります」

「へぇー・・・」

「白蘭も力の衰えと枯渇で焦っています。この戦いに全てをかけてくるでしょう」

「じゃあ真っ向勝負ってことだね」

「あの、戦いに勝ったら。私達はもとの世界に戻れるんでしょうか」

「白蘭は他のパラレルワールドの自分と考えや知識を共有できますが、裏を返せば全てが繋がっていて、実体は一つしかないと言うことなんです」

 

ツナはそれを聞いて、アイツもそうなのかなーと首を傾げながら別の言葉を口にする。

 

「つまり・・・一つを倒せば全部が消滅する?」

「はい。この世界で白蘭を倒せば、全パラレルワールドの白蘭は消え、もう恐ろしい未来の待つことのない、平和な過去へ帰れるはずです」

「そもそも俺は過去の時点で白蘭と仲良しなんだけど・・・」

「もとから滅びる結末が見えない世界・・・? それはとても良い世界ですね! もしかしたら私の魂が避難していた世界もそこかも知れません」

「え、そう?」(虹の代理戦争どうなるだろ・・・。骸とか、白蘭とか、何気に俺に依存してる気がするんだよなー)

「ツナ、くだらねーこと考えてんじゃねーだろーな」

「お、最近俺の考えてることが何となく分かるようになってきたみたいだね、リボーン」

「・・・ツナ。勝てるのか?」

「勝てる勝てないじゃ、ないんだよ。勝つのさ。この戦いに勝てばみんなで過去に帰れるんだからね」

 

ツナは両手の中指にそれぞれ一つずつ填まるリングを眺めながらそう言った。

 

「ツナ一人なら余裕で勝てるかもしれねーが、全員で力を合わせて勝つってのがお前の目標なら厳しーぞ」

「だ、だよねー。時間も無いし・・・。作戦なんか一つも考えてないんだし、あーっ! もうっ不幸だなぁ!」

「今更何言ってんだバカ」

「ふむ・・・。こういう時の守りの作戦立てるのは、入江正一。元メローネ基地隊長が向いてるんじゃねーか?」

「え!? ぼ・・・僕!?」

「ふざけんな!! 作戦を立てるのは十代目だ!!」

「獄寺君の言う通りだ。僕はチョイスで失敗した。綱吉君や、イカロスさんがいたから何とかなったようなもの。僕にその資格はない。この戦いはボンゴレボスである綱吉君が決めるべきだ」

「い゙っ!?」

 

マジかぁ・・・。と溜め息を吐きながらも、ツナは腕を組んで首を傾げる。

 

「んじゃあとりあえず、イカロス。全員の治療よろしく」

「了解。モード変更。医療用エンジェロイド“Oregano(オレガノ)”起動」

「みんなに対する指示は・・・とりあえず匣兵器で連係攻撃・・・できる?」

「可能だ」

「じゃあそれも実行! 敵は白蘭と真六弔花、全力でこれを排除しユニを守れ!」

「「「「おう」」」」

「戦法は自由! 各自の判断に任せるよ? いい? 総員、適当にやっちゃって!!」

「「「「適当!?」」」」

「またか・・・」

「適当好きだね・・・」

 

そして、夜が明けるまで最後の調整が始まった。

 

 

―――翌朝。

 

各地で戦闘が行われる中、ツナは非戦闘員が要る拠点であくびをしていた。

 

「心配じゃねーのか?」

「んなバカな。全員生きて帰れるよ。それがこの戦いの戦法だから」

「スゴイですね、沢田さん」

「いやいや。あいつ等が強いんだよ。俺なんか必要ないくらい」

「いいえ。ボンゴレ守護者全員がボスであるアナタの元に集まってきている。それが一番スゴいんです」

 

暫くツナはダラダラしていた。が、通信が来て跳ね起きた。

 

「え・・・? ゴースト? 炎を吸い取る真六弔花?」

『そーだ! 奴にはリングの炎も匣兵器も通用しない!! 危険すぎる敵だ! 一刻も早くユニを連れて逃げろ!!』

「・・・・・・」

「行ってこい、ツナ。ここは俺が守っててやる」

「・・・いいの?」

「そんな顔してる奴を留めておける分けねーだろ」

「それじゃ、行ってくる」

 

そう言うと、地面を蹴って亜音速でツナは前線に移動した。

 

「・・・笑ってましたね」

「強い敵ってのはツナにとって嬉しい相手だからな」

「・・・でも、綱吉さんは」

「そう。アイツは強すぎるんだ」

 

 

前線に飛び出したツナは、一瞬でゴーストの懐に入ると死ぬ気の零地点突破 改を発動させる。

 

「あ゙っ。あ゙あ゙あ゙!!!」

「ひゃっはぁ!」

 

ツナの零地点突破は、彼の炎だけでなく肉体すらも吸収した。

 

「吸った・・・」

GHOST(ゴースト)って炎の塊かよ」

「流石十代目!」

「沢田・・・」

「すげっ」

「極限によくやったぞ!! 沢田!!」

「来るな」

「なぬ?」

「え!?」

「おかしい・・・」

「ええ」

 

零地点突破改は敵の炎を吸収して自分の炎に変換する技、なのにゴーストの炎を吸収したツナの炎はほとんど変化していない。真六弔花や守護者やヴァリアーの炎を奪ったゴーストを吸ったにもかかわらずだ。

 

「いやあ。すごいすごい!!」

「!」

GHOST(ゴースト)を倒しちゃうなんてさ♪」

「あ」

「白蘭!!」

「白蘭様!!」

「来たか!!」

 

空を飛ぶ白蘭は相当楽しそうな笑顔をしていた。

 

「また元気な君に会えるとは嬉しいなぁ。綱吉クン」

「やぁ、白蘭」

「ボンゴレファミリーの主力メンバーも勢揃いでますます嬉しいよ! それにしても綱吉クン。君は物好きだなぁ」

「?」

「骸君にXANXUS君。かつて君の命を消そうとしたものを従えてるなんて正気の沙汰じゃない」

「だって俺、こんな奴らに殺されるわけ無いし」

「「「「!!」」」」

 

ツナはそう言うが、やはりこちらの世界の彼等は不満があるらしく攻撃を加えるが、白蘭には全く効いていなかった。

死ぬ気になったツナが高速で攻撃を加えるが、右の拳を白蘭に人差し指一本で止められた

 

「あれ。どーしたの? 君の精一杯(フルパワー)はこんなもんかい?」

「え」

「じゃあ僕の番だ♪ 白指」

 

指から放たれた死ぬ気の炎がツナの体を地面に叩き付ける。

白蘭がいうには、ゴーストが吸収した炎は全て彼の体の中にあるらしい。



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第六十六話 体化物戦闘用拳銃、対“死炎”専用弾

「綱吉クン。これぐらいで参って貰っちゃ困るよ?」

 

「・・・・・・くっそ。ドドン波みたいな技使いやがって・・・」

 

ツナは凄絶に笑いながらゆっくりと立ち上がり、体につけたリミッターを外していく。魂に刻まれた上条当麻の死ぬ気の炎を体に灯す。

その色は薄く明るい茶(ベージュ)だった。

 

「あれ? その炎の色は何だい?」

「行くぜ。これが俺の全力全開。スターライト――――――ブレイカー!!」

 

X BURNERの構えから放たれたのはベージュ色の剛の炎。その威力に白蘭も思わず眉をひそめた。

 

「ハハッ。その炎の色は何だい? 君の炎は大空だろう?」

「複数の属性を持つことは不思議じゃないだろ? 俺は今から全力を持ってお前を倒す! 扇ちゃん。明日って今さ!」

「ハハッ。良い炎だね!」

 

ツナと白蘭(二人)の大空の炎と、ツナの大宇宙の炎が爆発的にふくれあがった時、甲高い音が鳴り響く。まるで、鐘を鳴らすように断続的に。

そして結界が形成された。

 

「ユニ!?」

「綱吉さん!」

「白蘭・・・。お前、これ分かってたな!?」

「もちろん! 大空の炎の共鳴による結界。簡単には崩れないからね♪」

「誰も居ない中での戦闘ねぇ・・・・・・」

 

ツナはつまらなさそうに呟いた。だが、すぐに唇の端を釣り上げると、心底楽しそうに笑い出した。

 

「ごめん、ユニ。ちょっとだけ、遊ばせて」

「え? あ、はい」

 

言うが早いかツナなジャケットの中から巨大な銀色に輝く自動拳銃を取り出した。

 

「銃?」

「おう」

 

撃ち出された銃弾。炎の壁を張り、銃弾を防いだはずの白蘭の頬をかすめてそれは飛んでいった。

 

「・・・・・・ハハッ。何だいその銃は」

「454カスールカスタムオートマティック。特殊弾と同じ素材の銃弾が入っている。十三mm爆裂徹鋼弾が」

「へぇ。死ぬ気の炎をものともしない銃弾か・・・。やっかいだね!」

「だろ? 俺もよく知ってる」

 

ツナは言いながら銃をしまい、一度手を叩く。

 

「よーく。眼を見開いておけよ? 大地の力を見せてやる」

 

そして地面に叩き付けられた手は、地面を大きく変動させると針山のように形を変えながら白蘭に向かって飛んでいった。

 

「おっと♪ 何の真似だいさっきから」

「いや、正攻法(炎圧)で敵わないのは分かりきってるから使わないでやってんの」

「じゃあ行くよ。白指」

 

ツナは再度手を叩くと、また地面に着ける。今度は土の壁が炎を防いだ。

 

「以外と役に立つな・・・この方法。炎だよりのバカが痛い目を見るな・・・これは」

 

ツナはニヤリといたずらっ子のように笑った。

 

「ははっ。本当に面白いよ綱吉クン。君は僕の知る限り一番面白い個体だ!」

「人を実験動物みたいに・・・。言うなっ!」

 

大宇宙の炎のX BURNERが放たれるが、白蘭はかわす。

 

(・・・まともに受けたらマズいと悟って避ける事に専念する・・・か。学習能力はあるんだな。あんなバカっぽいのに、まぁそこは年上の余裕って奴か)

 

その後も善戦を続けていたツナだったが、何かに気付いたように距離を取る。

すると、森の中から飛び出した影が大空の結界の中にあっさりと入ってしまった。

 

「何だい? 君は」

「何度か会っているでしょう? エネと申します」

「ああ! 君かぁ!」

「エネ。お喋りは良い。例の物は?」

「もちろん。出来たらしいです」

「・・・・・・そぉか」

 

ツナは笑う。ようやく、エネの手によって自らの元に届いた、それを見て笑う。アタッシュケースに入っていたそれは、一度装填してしまえば百万発撃てるコスモガンとなるカスールカスタムオートマティックと同型の拳銃。

 

「待たせたな、白蘭。ここからが俺の戦い方パートツーだ」

「何をする気か知らないけど。もう君の銃弾は届かないよ♪」

 

ツナが引き金を引くと、轟音を鳴らし銃弾が撃ち出された。それは白蘭が生み出した莫大な炎圧と単純な圧さを併せ持った炎の壁を、吹き飛ばして彼の腹部を抉り取った。

 

「カハッ・・・。いくら特殊弾でも、これはおかしい、おかしいだろう!? 綱吉クン!」

「純耐炎性マケドニウム加工水銀弾頭弾殻。マーベルス化学薬筒NNA9。十三mm炸裂徹鋼弾。ジャッカル専用弾・・・。完璧(パーフェクト)だ、スパナ」

「へぇ・・・面白そうだね♪」

「なんなら撃ってみるか?」

「良いのかい?」

「ああ、いいぜ?」(結界の外で俺に対するバカとかアホとか十代目とか聞こえてくるけど無視無視)

 

ツナはジャッカルを羽で空を飛ぶ白蘭に向けて放り投げた。それを見事にキャッチした白蘭はオモチャを買って貰った子どものように構えて遊んだ後、ツナに向かって撃ってきた。

 

が。

 

「予想は簡単。そう来ると思ったから銃からは目を離さなかったぜ」

 

もちろん銃弾はツナにあたらなかった。それどころか地面にあたったのは銃弾だけでなく、ジャッカルも白蘭の手を離れ落ちてきていた。

 

「がっ・・・あぁっ!」

「骨でも折れたか? まぁ妥当だろうな。ジャッカルの反動は普通の人間にゃ耐えられない。一発撃っただけで反動によって腕がイカレちまう」

「君のその化物みたいな身体能力が会って初めて使えるってワケ?」

「そーゆー事」

 

ツナは楽しそうに楽しそうに笑う。白蘭の回復を待つかのように動かこうとせずにただそこで何かを待っていた。



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第六十七話 遊戯の終わりと アルコバレーノの復活

「待たせたね。綱吉クン。完全復活さ。そこで提案なんだけど、もう遊びはやめないかい?」

「いいぜ? こっちもそのつもりだったしな。お前にアルコバレーノのおしゃぶりは渡さねぇ」

「できるの?」

「エネ!」

「了解です!」

 

エネはツナの指示に従ってユニに近づくと、その首と手の中からおしゃぶりを奪い取る。

 

「!? あのっ!」

「こういう仕事は命ある人間がすることではないですよ」

「さて、白蘭。俺が何を言おうとするか分かるか?」

「さあね♪」

「じゃあ教えてやるよ。俺が今から使うのはお前を倒すために、みんなが生み出した覚悟の炎だ。無闇矢鱈に人を傷付けたために倒されることを後悔しな!」

 

ハイパーモードになったツナは死ぬ気の炎を強く灯す。

 

「プッ。さっき君の炎が全く通用しなかったことを忘れてない? 君がその炎を灯したってことは身体能力を死ぬ気の炎基準に落としたってこと。つまり、僕と君の力の差は何も変わっていない!」

「どうだろうな」

 

ボンゴレリングが輝き、ホログラムのように人が映し出された。

 

「あの子。色々とボスと似てる」

「血は争えないでござるな」

「究極に面白い奴ではないか」

「ボンゴレに彼が入るのは賛成しませんよ」

「興味ないな」

「・・・・・・。テメェの好きにすりゃあ良いさ。いつものようにな」

「そうだな・・・・・・G」

「!? なんだ?」

「X世よ・・・。お前の考えに俺も賛成だ。俺の真の後継者に力を貸してやりたいが、あいにくそれは出来ない、その代わり―――枷を外してやろう」

 

ツナは思わずこのじいさんをぶん殴ってやりたくなった。未来で継承を行った後からこのじいさん、隔日でツナの夢の中に出てきて自警団時代の武勇伝を語るのだ。

今も、ツナに力を貸す俺カッコイイみたいなドヤ顔をしている。

 

「今のボンゴレリングは仮の姿だ。しかしもうその必要も無い。お前にならこのリングの本当の意味を分かってもらえそうだからな」

 

リングが輝き、原型に変わった。

 

「X世、マーレの小僧に一泡吹かせてこい」

 

そういって、ジョットは消えた。

 

「・・・・・・。・・・・・・」

 

ツナは何かを堪えるような仕草をした後、炎圧全開で空間を殴る。

 

「・・・よし」

「いいかい?」

「ああ、やろうぜ! ナッツ! 形態変化(カンビオ・フォルマ)攻撃モード(モード・アタッコ)!!」

「アタッコ?」

「ビッグバンアクセル!!」

「白拍手!」

 

何度かぶつかった後、白蘭が本気で決めに来た。そしてツナはボンゴレリングの剛の炎を後ろに撃ち出した。

 

「「「「?!」」」」

「大空の剛の炎・・・それだけ本気なんだね!! 消えろ!!!」

「くらえ!!」

 

白蘭の放ったどす黒い炎に対して、ツナはベージュ色の剛の炎を撃ち出した。

 

(右手のボンゴレリングの最大出力と、左手のウラヌスリングの最大出力を撃ち出したのか・・・)

 

炎が消え去った時、残ったものはマーレリングだけだった。

 

「・・・この世界の白蘭(テメー)とも、目一杯遊んでみたかったな・・・」

 

ツナはゆっくりとその場にしゃがみ込む。

 

「私はどうも、この世界の白蘭とウチの世界のアイツが同一個体ってのが信じられないんですけどね」

「・・・大いに違うもんな。エネ、どうだ? 命の炎を燃やした感想は」

「そうですね・・・。ものの見事に命のストック持って行かれましたよ」

「マジかぁ・・・」

「よくやったな、沢田!! コラ!!」

「お、コロネロじゃん。元気?」

「色々説明して欲しいことはあるが、とりあえず置いておくぜ。コラ」

 

そこには五人の赤ん坊と五色のおしゃぶりがあった。

 

「アルコバレーノが・・・」

「「「復活したのか!」」」

「赤ちゃんがいっぱい!」

「どこのベイビーちゃんですか!?」

「あれが7³の一角のおしゃぶりを持ち、7³を監視する役目を持つ最強の赤ん坊、アルコバレーノ。リボーンの旧くからの知り合いでもあるわ」

「マーモンめっけ♪」

「コロネロ・・・」

「師匠!」

「ししょ!!」

「てめーらおせーぞ」

 

ツナとエネが談笑している間に、感動の再会は進んでいく。

 

「ん? もしかしてもう過去に帰れる?」

「ああ。もう、帰れるぞ。コラ」

 

こうしてひとまずツナ達の未来での()()は幕を閉じた。



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第六十八話 さようなら未来

並盛町の地下五百メートル、メローネ基地跡より一キロ地点。

 

「え。この装置で過去に帰れるの・・・?」

「ああ。五分で過去に戻れるはずの十年バズーカの効力をこの装置で妨げているわけだから解いてやれば良いんだ。7³のパワーバランスが正常に戻った今なら、時空も安定していて安全に帰れるはずだ」

「オレ達が十年ピッタリにタイムワープ出来なかったのか、7³のパワーバランスが崩れ時空が歪んだからなんだな」

「今頃気付くとは愚かだなリボーン。もっとも帰りのタイムワープは心配するな。この天才が計算し、ベストな時と場所に帰らせてやる」

「信じて良いのか、ヴェルデ」

「カリは返すさ、沢田にな」

(この二人の雰囲気なんか最悪じゃね・・・? さーて、そろそろみんなこの時代の面々とのお別れはすんだかな? お世話になりました。ってちゃんと言えてるかな・・・)

 

ツナは中学生相手になんとも失礼なことを考えながら、その場を立ち去った。

 

 

―――ボンゴレ十代目の棺桶側。

 

「色々あったな・・・。未来で」

「別次元の未来って事で余計不思議な気分ですよね」

「確かに・・・な」

「さ、沢田さん」

「・・・・・・ユニ?」

「あ、あの・・・その・・・・・・」

「どうしたの? もしかして、大空のアルコバレーノの箔が欲しい?」

「あ、いえ。そういう事では・・・・・・」

「でも、まぁ・・・」

 

エネは何かを呟きながらユニに近づくと、大空のおしゃぶりをその首にかける。

 

「これはアナタの首に収まっているのが一番正しい在り方ですよ」

「だな」

「・・・・・・その、色々ご迷惑をおかけしました」

「何が?」

「その、私達アルコバレーノの宿命に巻き込んだりしてしまって・・・」

「みんな無事で笑っていられるんだから何の問題も無いだろ? 終わりよければ全て良しってやつだ」

「・・・結局。今回ご主人は、何のために戦ったんですか?」

「自分のため、だろ」

 

ツナはそう言ってニヘラと笑う。そのまま踵を返してアジトの方に歩き出した。その後ろをエネがチョコチョコと着いていく。

 

「さーて、オレは次に何をしようかなー」

「何をする気ですか・・・・・・」

「ボンゴレリングの強化かなぁ・・・?」

「へ? 強化ですか?」

「おう、強化。その為にはあいつ等に協力要請を・・・しなくても良いかもな・・・・・・」

「どういう事ですか・・・?」

「さーて、どういう事でしょーか?」

「突然な仕事の舞い込みはやめてくださいね?」

「突然の仕事の後には定期的な仕事の予約が入ってるだろ?」

「“その”突然な仕事はやめろっつってんですよ!」

「お前、口調悪いクセに最後ですつけてる?」

「んな分けねーです」

「ん。パクってないね」

「いずなたんですか!? あの狐耳少女と私の口調を比べてましたね、バカご主人!」

 

 

―――白くて丸い装置の場所。

 

「よーし、みんなそろったね!! そろそろ出発だが、ボンゴレ(ボックス)未来(ここ)に置いていってもらう。取りはずしてくれ!!」

「がお・・・」

「何その我関せずな態度」

「がう」

「は? どうせ会えるだろうって? 未来でだろ、何年かかると思ってる」

「・・・がお」

「おい。んだよ、その『分かってねぇなぁお前』みたいな態度!」

 

ナッツの態度にだんだんキレ始めたツナだった。さらにそんな態度のツナにナッツは冷ややかな目を向ける。

 

「・・・・・・」

「だから何だよその態度! テメェ人生舐めてんだろ!」

「・・・がお」

「だ・か・ら! 急にどうしたんだよ、お前!」

(ナッツの行動には、ツナの深層心理が反映されるんだが・・・。お前、どんだけ自分を嫌ってやがる・・・)

 

それぞれの別れが(ツナが一番長かったくせに別れを惜しんでいたわけではなかった)終わり、ツナ達はもう一度集まる。

 

「じゃあタイムワープを始めるよ!! 別れを惜しんでいたらキリが無いからね!! アルコバレーノは過去のマーレリングを封印してすぐにここに戻ってくる予定だ」

「それじゃあ・・・」

「では・・・。本当に・・・、ありがとう!」

「・・・また。どこかの未来で!」

「タイムワープスタート!!」

 

装置が起動し、ツナ達は十年バズーカの効力が切れたので、その場から消える。

このタイムワープでアルコバレーノのみんなは様々な贈り物をツナ達にした。まず過去のマーレリングの封印、そして一緒に戦った仲間達の未来の記憶を、過去の彼等に伝えた。そして、特別価格の好待遇でナッツ達ボンゴレ匣を過去に連れて行った。ヴェルデの天才科学技術で、今までの匣型から更にコンパクトな指輪型になって、だ。

 

「まっ。みんなこんな所にいたの? てっきりツナの部屋かと思ったわ」

「か・・・、母さん・・・」

「?」

「「ママーン!!」」

「んまぁ、どーしたの。どこかイタくしたの?」

「先を越されたな、ツナ」

「え。すると思ってんの?」

 

ツナの視線に思わずリボーンの背筋が伸びる。

 

「そーだツっ君。今の地震で物が落ちてないか自分の部屋を見てきてちょーだい」

「え? 地震があったの・・・?」

「その後でケチャップ買ってきてくれない? 今晩ハンバーグなんだけど切らしちゃったのよ」

「とことん息子を使うね!? まぁ、良いけどさ・・・」

「ちょっと、なにツナ!? 顔にたくさんキズバンつけて・・・、また転んだの?」

(あ、ナッツの爪痕・・・)

「それにたくさん指輪つけて・・・、獄寺君のマネ? 非行かしら・・・」

「え! いや、これには様々な形容しがたい理由がありまして! つまり、何でもないのであります!」

 

とにもかくにも、ツナ達中学二年生の未来での戦いはこうして幕を閉じました・・・。



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シモン編
第六十九話 至門中学の転校生


ある日の朝。

 

「ツっ君、今日は楽しみね~。集団転校生が来るんでしょ?」

「シューダンテンコーセイって何? どんな味なの?」

「食べ物じゃねーよ、ランボ」

「ほら、ちょっと前に地震があったでしょ? また地震が起きるかもしれない場所に住んでいる子ども達は、安心して学校に通えなくて困ってるのよ。そこで、並盛町みたいな地震が起きにくい土地に、みんなで一緒に転校してくるの」

「ふーんっ。あ、そ―――っ」

「説明求めといて途中から聞いてないな、ランボ!」

 

ツナはとりあえず支度をすませると、声をかけて家を出る。

その通学路の途中で、見慣れない制服を着た生徒を見かけた。

 

(至門中学・・・だったっけ? なんでシモンなんだろーなー。アーデルいるし・・・)「君子危うきに近寄らず。また、触らぬ神に祟りなしともいう」

「自分から話しかけろ、ダメツナ」

「久しぶりに言われたなぁ、それ。・・・で? 学校にお前が来たって事は厄介ごと?」

「違ぇ。こいつがボンゴレ九代目からこいつが届いた。ボンゴレファミリー、継承式開催の通知だ」

「継承式? 一応聞いておく・・・・・・・・・誰の?」

「決まってんだろ。お前が正式に十代目ボンゴレボスの座を九代目から引き継ぐ式典だ。世界中のマフィアが盛大に集うぞ」

「やっぱりぃ? 俺がぁ?」

 

 

―――教室。

 

「任せてください! もし転校生の中に十代目になめた口聞くよーな奴がいたら、十代目の右腕、この獄寺隼人がシメてやります! 腕が鳴るぜ」

「いやいやいや。んな事しなくて良いから」

「俺は転校生、すんげー楽しみだけどなっ」

「あぁ?」

「おはよう武」

「野球好きで野球部入るやつがいつかも知んねーだろ?」

「野球のことしか考えられねーのか、オメーは!」

「私も楽しみだな♪ 友達になれると良いよね」

「あ、うん。そだね」

 

ツナは簡素に答えると、そのまま精神世界に潜っていく。

 

「えぇ、知っての通り今日から我が校に八人の至門中学の生徒が授業を受けに来るが、我がクラスには二人編入することになった、仲良くするように。では、自己紹介して貰おうか。入りたまえ、古里君と・・・シッ・・・シッと・・・・・・ん~?」

 

お爺ちゃん先生がもう一人の転校生の名前に何故か苦戦する中、教室の外から手が伸びてきて言葉を制止する。

 

「マイ・ネーム・イズ、SHITT・P(シットピー)! “しとぴっちゃん”と呼んでクダサーイ!!」

「ほあ?」

(何してはるん。しとぴっちゃん・・・)

「なっ」

「トクギはハッコー」

「八個!?」

「「発光!?」」

「発酵!?」

「コウブツ、ピッ・プププ・ピ―――ッ・・・ブツッ

「方言かしら・・・」

「フランス語かも・・・」

「・・・・・・シグナル!?」

(いや、ほん。何してはるん。あ、何かに気付いた顔してるね、不思議大好き隼人・・・。何書いてんの・・・・・・)

 

ツナは自分の守護者と、友人の守護者にため息をついた。

 

「シット君・・・ご、ご苦労さん。え~、では次君の自己紹介だ・・・」

「・・・・・・。古里・・・炎真・・・」

「ん? 聞こえないよ、もう一度」

「・・・こざと・・・えんま・・・」

「声が小さい!! もう一度!!」

「先生もう耳が遠いんじゃないですかぁ?」

「何だとぉ!? 誰だ。今の言ったの! こらっ笑うな!!」

 

その場を誤魔化して、一人ほくそ笑むツナだった。

 

 

―――帰り道。

 

「リボーンのやつ、学校に着いてきたくせに帰りは着いてこねーのかよ」

「金出せオラァ!!」

「・・・カツアゲ?」

 

曲がり角の向こうからそういった風な脅し文句が聞こえてきた。普段のツナなら面白そうだからという理由で絡んでいただろう。金を巻き上げる不良から逆に金を奪い去るという絡み方で。

だが、それはドスがきいてはいるが少女の声だったので、ツナは『スケバン?』などと考えながら曲がり角の向こうを覗く。

 

そこには―――

明らかに不良といった風貌の並中生が、至門中の制服を着た少女に踏みつけられ、立ち上がることもままならない状態で、必死に抵抗していた。

そばには、どこか諦めたような目で遠くを見る古里炎真の姿もあった。

 

「・・・・・・何やってんの? 真美ちゃん・・・」

「え!? お兄ちゃん!!」

「グフッ!」

 

ツナが声をかけた途端、勢い良く振り返り目を輝かせて彼の腹部にダイビングヘッドした少女を、彼は許さないと決めた。

 

「ゲッ! あれ2-Aのダメツナだ!」

「お兄ちゃんってどういう・・・グエッ!!」

 

真美が左手を不良生徒に向けただけで、彼等の体は再度地面に埋まる。

 

「ガッ・・・!」

「しに・・・たくない・・・」

「あなた達・・・私のお兄ちゃんに何だって・・・? 炎兄をカツアゲするだけじゃ飽き足らず、お兄ちゃんをダメ呼ばわり!? ぶっ殺す!!」

「わー、俺殺すとか言っちゃう女の子は嫌いだなー(棒)」

「あれ? 私何か言った?」

「あっはは・・・。俺から嫌われたくないから発言を揉み消したよこの子。どんだけ好かれてんの俺」

「・・・少なくても、部屋中写真だらけになるぐらいには・・・」

 

真美から少し離れた所で、棒読みでぶつぶつ言っていたツナに、そんな言葉が炎真から投げかけられた。

 

「それってオタク系(安全な方)? それとも・・・ストーカー(ヤバいやつ)?」

「少なくとも真美がいる間は部屋に入ることも出来ないよ」

「OH・・・ヤバいやつぅ」

「お兄ちゃん! あの人達私にお金渡していった!」

(真美ちゃん君中学一年生だよね!? どうしてそんな怖いことになってるの!? ちょっと前まで可愛らしい女の子だったのに!)

(多分、ツナ君に会えたから・・・)

(炎真?! お前、直接脳内に!?)

「と、とりあえず・・・うちくる? 炎真君ボロボロだし・・・」

「あ・・・、う「うんっ! 行く行く!」

「あー・・・じゃあ案内するよ・・・」

 

 

―――沢田家。

 

「ツっ君。よかったじゃなーい。新しい友達が出来て」

「あ、うん」

「不束者ですがよろしくお願いします」

「よろしくね~」

「真美ちゃん! 三つ指立てて挨拶しない! 母さんも母さんで、ただの挨拶としてしか理解してないし!?」

「なん・・・・・・だと・・・!?」

「そこまで驚かなくてもいいんじゃない? 真美」

「炎兄は黙ってて! これは死活問題なの。まさか・・・お兄ちゃんのお母さんが天然だったとは・・・!」

 

頭を抱えて唸る真美に、ツナと炎真は顔を見合わせて思わず笑った。



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第七十話 シモンファミリー

―――至門が来たその日の夜。

炎真と真美の古里兄妹は、ツナの家に泊まっていた。

 

「ツナー。お風呂入っちゃいなさーい?」

「あ、はーい」

「お風呂?」

「そ、炎真君と真美ちゃんも後で入りなね」

 

ツナは遊んでいたゲームを一時停止してお風呂に向かった。

 

 

―――風呂。

 

「ふぅ・・・。風呂は命の洗濯だな・・・」

「お兄ちゃん一緒に入ろ!」

「突然、何言ってんの!? ってかもう脱いでるし!」

 

突然全裸の真美が突入してきた。と言っても胸の前でタオルを持っているので、下の大事な部分は隠れている。胸も隠せと言いたい。

 

「いいじゃんいいじゃん! 兄妹のふれあい!」

「俺真美ちゃんと血も繋がってなければ、戸籍的にもそんな繋がりないんだけど?!」

「じゃあ裸の付き合い!」

「じゃあ?! じゃあって言ったよね!」

「一緒に入りたいの・・・。ダメ?」

「うっ・・・」

(真美ちゃん・・・やりますね)

(うむ。あるじ様の苦手な上目遣い+半泣きのコンボを習得しておるとは)

(中学生の順調な膨らみかけだし)

(ロリコンの先輩にはキツいんじゃないですか?)

(ちょっと黙ろうか? お前等)

(でも、反応しますよね?)

(流石にこの体じゃ・・・当麻の体に戻ったらどうか分からんけど)

((((反応するでしょ))じゃろ)だろ)

(満場一致かよ)

((((だってロリコンじゃん))))

(そうだけど揃ってんのムカつく)

 

脳内で怒涛の会話を繰り返しているが、この間ツナはマルチタスクで真美と会話もしていた。

 

「ダメじゃないから入りな。風邪引くよ」

「わぁい! お邪魔しまーす」

 

とりあえず一緒にお風呂に入って、真美の間違った入浴知識(ソ○プ方式)(ツナ専用)を正そうと奮闘したり、浴槽で執拗に肢体をすりつけてくる真美に溜め息を吐いたりと、異様に疲れた入浴になった。

 

 

―――次の日の朝。

 

「え、うわぁあぁあぁあぁあぁあ!?」

「!? ど、どうしたのツナ君!」

 

ベッドで悲鳴を上げたツナに驚いて、隣に布団を惹いて寝ていた炎真が飛び起きる。ツナの方を見ると、彼に添い寝をするようにパンツとシャツだけ着た真美が寝ていた。

 

「・・・敵襲かと思ったよ」

「どんな勘違いだっ! 俺にとってはこっちの方が死活問題だよ! 昨日の記憶が曖昧でこの状況とかマジでマズい!」

「・・・ただ真美が潜り込んだだけだと思う」

「俺のベッドに?」

「うん」

「・・・・・・不幸だ」

 

 

―――通学路。

ツナ、炎真、真美の三人は並盛中に向けて歩を進めていた。

 

「ねぇ、炎真君」

「真美は僕にも止められない」

「腕から剥がすだけで・・・」

「ムリ」

「・・・真美ちゃん。俺、素直な子が好きだなぁ」

「うん」

「歩きにくいから、腕から離れてくれると嬉しいなぁ」

「うんっ」

 

真美の扱い方が分かってきたツナだった。

そんなこんなで学校に着いたツナ達の前では、校舎に粛正の垂れ幕が着いているというなんともあれな光景だった。

 

「これ・・・は・・・」

「アーデルハイトの委員会活動だよ♪」

「学校の風紀を暴力によって取り締まる粛清委員会の委員長なんだ」

「全校生徒の一割にも満たない人数の転入生で、その中でも一人だってのによくやるよ・・・」

「お兄ちゃんなんか見方が違うね」

「見ろ、屋上! 誰かいる!」

「あ・・・」

「アーデルハイト」

「雲雀さん・・・」

 

ツナは呆れながら校舎の方に歩いていく。

 

「お兄ちゃん、どこに?」

「止めなきゃ。雲雀さんは強い。炎ありでもなしでも、炎真君の大地と俺の大空以外は勝てないよ」

「・・・そんなに?」

「そんなに」

 

真美にはバレているが、ボンゴレ十代目であることを炎真達には隠しているツナ。うっかり口を滑らせないようにしなければ。

 

「――次は君を咬み殺す」

 

ツナが歩いて屋上に着た時には、雲雀はすでにトンファーを取り出していた。

 

「・・・ハァ」

「お兄ちゃん、お願いしてもいい?」

「はいはい」

 

ツナは軽く走りながら金属製の小手を両手につける。そして、次の瞬間には二人の間に入り、攻撃を完全に無力化していた。

 

「何してんの? 君」

「朝っぱらから暴れないでくれますか? 雲雀さん」

「いっ・・・たいどうやって・・・!」

「どうせ見てんだろ、リボーン」

「流石だな、ツナ。無意味な抗争を防ぐのはボスとして当然だぞ」

「らら?」

「赤ん坊?」

「流暢にしゃべっている・・・」

「かわ・・・いい・・・?」

 

突然現われたリボーンに、至門の面々はそれぞれの反応を示す。

 

「何言ってんだよリボーン。学校のケンカに抗争やボスは関係ないだろ?」

「関係大アリだぞ。奴らはお客様だからな」

「客・・・?」

「ああ。こいつらはシモンファミリーっていってな。ボンゴレのボス継承式に招待されたマフィアなんだ」

「へ、へぇー・・・。マフィアなんだー。それをどうして俺に言うのかなー? リボーン・・・」

「昨日の朝いったじゃねーか。ツナは「アーアー聞こえなーい!」・・・どーした」

 

ツナの反応にリボーンは首を傾げる。

 

「残された文献によるとシモンファミリーはボンゴレファミリーと付き合いが相当古くてな、その交流はⅠ世の時代にまでさかのぼるらしい。つっても、今や俺も知らないぐらい小さくて目立たない、超弱小ファミリーなんだけどな」

「くぅ~! 結局ハッキリと言ってくれたな赤ん坊! 貴様、オブラートに包んで話すということを知らんでか!?」

「ああ、知らね」

「結局~!? 継承式に招待されたから来てやったんだぞ―――!!」

 

ボンゴレ守護者達もなぜか驚きの表情をする。

 

「勘違いして欲しくないのは、我々が転校して理由はあくまで地震の危険を回避するためであり、並盛中を選んだのはちょうど同じ時期にボンゴレ継承式の招待状を貰ったからだ。ゆえに我々はこれからも誰にも干渉されることなく、自由に学校生活を送るつもりだ」

「・・・なあ、ちょっと待ってくれよ。さっきから一つ気になってんだが」

「継承式って、どーいうことスか十代目!!?」

(十代目って誰だろなー)

「何か言え」

「んぎゃっ」

 

蹴り飛ばされたツナが屋上の床に転がる。

 

「七日後にここ日本で開催されるボンゴレ継承式は、ツナが正式にボンゴレボスになる空前絶後の式典だ」

「「「おお――――!!」」」

「九代目はお前達の白蘭との戦いのことを全て知っていてな、今回の継承式を決めたんだ」

「ついにこの時がっ。感激っス十代目!!」

「オレ、チガウ。オレ、タダノ、ツナヨシ」

「だが、同じ十代目候補のヴァリアーのXANXUSを倒した時点で、沢田は十代目決定したのではないのか? 今更何が変わるというのだ?」

「極限に分かってねーな、了平は。ボス候補であることと、正式にボスになることでは天と地ほどの差があるぞ。ボンゴレのボスの座に着くということは、全世界の強大なボンゴレマフィアの指揮権を手に入れることだ。それはつまり、裏社会の支配者になることを意味する」

「誰がなるかっ! ・・・あっ」

 

ツナがキリキリと壊れたロボットみたいな様子でシモン側を見ると、全員から冷たい目線というか、『え、ボンゴレボスってオマエが?』みたいな目線を向けられていた。



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第七十一話 継承式までの道のり

屋上という空間から全力逃走を図ったツナは、放課後。どこかの神社で、怒った炎真の大地の炎で押し潰されていた。

 

「痛い! 痛いよ、炎真君!?」

「ツナ君、なんで君がボンゴレ十代目なの?」

「いや、知ったのはオレもつい最近で・・・」

「そういう事じゃなくて、何でツナ君が“あの”ボンゴレの子孫なの!?」

「知らない知らない知りません! そんな、血の繋がりに文句言われても!」

「・・・どうして? 真美だけがその事を知ってたの!?」

「そっち!? まさかの妹に嫉妬!?」

 

今もなお炎真の後ろで小さく舌を出してごめんね。と謝っている真美に、ツナはしゃべったね!? と、思うが先にバラしたのはこちら側なのであの指切りは無効だ。

 

「僕達親友だよね!? どうして相談してくれなかったの!!」

「だって・・・さぁ・・・。炎真君達はさぁ・・・ボンゴレ嫌ってたじゃん? しかもそのボス候補が俺じゃん? なんか、申し訳ないなぁーって」

「・・・・・・ツナ君。申し訳ないって気持ちがあるなら協力して」

「な、何に・・・・・・?」

「ボンゴレの壊滅と、シモンの宝の回収に」

「え゙?」

「お兄ちゃんは普通に継承式を開いてくれれば良い。そこで、“罪”を引き出して欲しいの」

「ここでこうやって僕達が言ってるけど、みんなツナ君に怒ってたから、少しでも反省しているなら僕達に協力して欲しい」

「分かった。大地の炎でぶっ飛ばされるよりはマシだよ」

 

ツナは軽い調子でそう頷く。それが、どんなことを意味するかはよく分かった上で。

 

「あ、でも。俺の守護者を傷付けないでね? リングを破壊するためなら仕方ないとは思うけど、なるべく軽傷で済ませてくれる?」

「ツナ君以外、僕達はどうでもいいんだけど?」

「霧の守護者は骸。それだけでも優しくしてくれる?」

「分かった。ツナ君にとってボンゴレの守護者も友達だっていいたいんでしょ?」

「正解。真美ちゃんも分かっ・・・た・・・?」

「ツナ君を無理矢理十代目にしようとするボンゴレに手加減しなくちゃいけないの!? どうして!?」

「俺が大人しい方が好みだから・・・?」

「分かった!」

 

チョロイン・・・。とツナは思ったが口にはしない。ツナは身体中の汚れを落とすと立ち上がる。

 

「じゃあ俺、凪の所に行ってくる」

「え?」

「アイツ、放っておくと麦チョコしか食わねーから。犬とか千種とかに食事面の注意を促してるんだけど、上手く行ってるのかの確認にね」

「凪って・・・?」

「黒曜の女の子だよ。俺の霧の守護者の片割れ。骸の本体が復讐者の牢獄にいるからね。凪がいないとアイツは現界できない」

「へぇ・・・・・・」

(あれれ~? 真美ちゃんの目のハイライトが仕事をしてない気がするぞ~?)

 

と、そこに雲属性の炎を纏ったペスカファミリーの殺し屋がやってきたが、不機嫌な真美の大地の炎で地平線の向こうにぶっ飛ばされた。

 

「あーあ。真美の機嫌を損ねるから・・・」

「俺?」

「違うよ。まぁ三割はツナ君が原因だろうけど。三人だけのこのほんわかした空間を潰されたのがよほど気に入らなかったんだと思う」

「へぇ・・・・・・」(敵に回したくねーッ!)

 

 

―――暫くしたある日。

 

「あぁ・・・うん。そういう事で・・・なんか知らないけどボンゴレⅨ世に会うことになって・・・。うん。また・・・・・・」

 

ツナは豪華ホテルに来ていた。

 

「こちらです。綱吉様。九代目は最上階におりますので」

 

最上階を貸し切っているボンゴレ九代目に若干引きつつ、日本人に王宮のような広い部屋は似合わない。縮こまった小室で十分である。などと結論を出していた

 

「こっちじゃ、こっち。よく来たね。綱吉君」

「・・・家庭菜園!? 何故(なにゆえ)!?」

「お茶にしよう」

「はぁ・・・」

 

高級そうなソファに座り、ツナはお茶をいただいていた。

 

「えーっと、実はですね九代目・・・」

「好きにしなさい。綱吉君の人生だ」

「へっ? ・・・あぁ、これがレジェンド超直感・・・・・・」

「君がいかにボンゴレボスになるのを嫌がっているかは、よーく分かってるつもりじゃ。リボーンから聞いているだけではない。未来で起きたこと全て、大空のアルコバレーノに教えて貰ったからのう」

「ユニに?」

「うむ。各地で地震が起きた日にわしは夢を見た。白蘭と君達の長い戦いの夢をね」

「夢っすか」

 

見られてたのね。あの戦い。ツナはそう思って黄昏れた。

 

「それが真実で、納得するまで時間はかからなかったよ。そして、あの戦いで沢田綱吉というボンゴレの十代目候補は、マフィアのボスには向いていないと、改めて確信したよ」

「はぁ」

「弱虫で、優柔不断で、優しくて、仲間を想い過ぎる」

(自分より強い人間を探す → 一人はイヤだ。ですか)

(確かに優柔不断だよね。マルチタスクを使ってどれだけ悩んでるか)

(お前等黙ってなさい)

 

ツナは意外と図星な事と、ユニがそこまで自分のことを見透かしていたと言う事実で顔が少し赤くなる。

 

「しかし、だからこそ。綱吉くんなら今の肥大化してしまったボンゴレファミリーを、本来の在るべき姿に戻せるかもしれない」

「自警団に・・・ですか?」

「君がやってきたことによく似ているんじゃよ。変わったのはそれ以降のボンゴレじゃ」

「・・・」

「おっ、そーじゃ。見せてくれんかの? Ⅰ世から授かった原型と言われるボンゴレリングを」

「あ、はい」

「ほう、これが・・・。Ⅱ世以降どのボスでも手にできなかったこのリングを君に託したということは、やはりⅠ世もわしと同じ考えのようじゃな。今のボンゴレを壊して欲しいんじゃよ」

「あの、お話ししたいことは・・・。実は継いだ後(そのこと)、でして・・・」

「?」

 

そしてツナは口を開いた。

 

「Ⅰ世に栄えるも滅びるも好きにしろ。って言われた時、じゃあ俺が壊しちゃえば継がなきゃいけないマフィアなんか無くなるじゃないか。って思ったんです」

「ツナ、お前・・・」

「でも、それをすると、ボンゴレっていう抑止力を失った他のマフィアがどう動くか分からない。って言うのが不安の一つなんです。マフィアがヤクザのように義理人情に溢れていたら、良いんですけど・・・。ヤクザでは堅気の人間に手を出すのは御法度ですから」

「綱吉君。わしは、君なら出来ると信じておる。純粋なボンゴレの意志を継ぐことを」

「九代目。アナタが見たがっているボンゴレが見れるかどうか俺には分かりません。でも、ボンゴレの権力を俺にください。全世界を、制圧し裏から支配するだけの力を俺に」

「!?」

「ツナ!」

「見せてあげますよ。『無血支配』での世界征服を」

 

ツナは継承式を受ける旨を、そのように伝えてホテルを去った。



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第七十二話 継承式

―――継承式当日。

 

「すごいな・・・。城を一つ貸し切りか」

「マジでマフィアって感じだな」

「ったりめーだろ! 十代目の継承式だぞ!」

「・・・ボス、大丈夫?」

「うん、人混みに当たった・・・」

「情けないよ綱吉」

「・・・もう少し多くを想像しておけば・・・、こんな事には・・・」

 

どうやら暫くツナは使い物にならなさそうだ。

 

「・・・ふぅ」

「大丈夫っスか?」

「無理・・・帰る・・・」

「元気か、弟分!」

「ディーノ・・・さん・・・。うっぷ」

「大丈夫か!?」

「人に酔いまして・・・」

「あー・・・。でもまさか、こんなに早くこの日が来ちまうとはな。兄貴分としても鼻が高いぜ!」

「は・・・はは・・・」

 

ディーノの優しさでツナが少し回復していた。

 

ゔお゙ぉい!!

「」

「久しぶりでもねぇかあ!! カス共ォ!!」

「久しぶりか? 沢田綱吉」

「いや、聞かれても・・・困るんだけど」

 

XANXUSに軽く殴られてツナの酔いは完全に冷める。

 

「ふぅ・・・」

「おいゴラ!! 舐めてんのか? クソガキ!! シモンファミリーなんざ聞いたことがねぇ!! ここは青っ白いガキの来る場所じゃねーぞ!」

「我々もちゃんと招待状を貰っている!」

「だとぉ!?」

「そう、彼等もちゃんとした招待客。俺の友達に無礼を働かないでくれるかな? オッサン」

「ッ! ボンゴレ・・・十代目・・・」

「どっかに行け。それで見逃してやる」

「チッ!」

 

ツナの本気の目に、彼等は踵を返して去って行く。

 

「大丈夫?」

「うん」

「弱小だからって酷いよねぇ・・・。というか、真美ちゃんよく耐えたね」

「まぁね。ここで暴れておに・・・ツナ兄の晴れ舞台を邪魔するわけにはいかないから。ね、炎・・・お兄ちゃん」

「うん。ツナ君の邪魔は出来ないよ」

「そっか。ありがとう」(するくせに)

「ごめんね」

「気にしないよ」

 

 

そして、準備が整い、各国のマフィアが揃った式場の扉が開いて、ツナの守護者が入ってきた。

ある程度で一列に並ぶと、三人三人で分かれて立つ。その間を通り抜けて、額に死ぬ気の炎を灯したツナが、周りに立つマフィアに目も向けずまっすぐに、ゆっくりと九代目に向かって歩いていく。その堂々たる雰囲気は、Ⅰ世(プリーモ)の再来と言われるツナが、本当にボンゴレⅠ世に見えるぐらいだ。

ツナに続いてそれぞれの守護者も歩き出す。初代守護者に似ていると、未来で言われた彼等の姿は、まるで初代ボンゴレファミリーがもう一度継承を行うようだった。

 

(・・・ツナ君)

(お兄ちゃんカッコイイ・・・!)

 

「これより、Ⅰ世の時代より受け継がれしボンゴレボスの証である小瓶を、ボンゴレⅨ世(ノーノ)より、ボンゴレⅩ世(デーチモ)へ継承する」

 

座布団のような物に乗せられて、箱が黒服に運ばれてくる。

 

(あの中に罪が・・・? ・・・・・・入ってないね。あの中にあるのは偽物の罪。か)

「では・・・継承を」

 

九代目の手に箱が渡り、その中に入った小瓶と、その血が観衆の前に現われる。

 

「受け継いで貰うよⅩ世」

 

その瞬間、甲高い音が響く。ツナが身につけているヘッドフォンからは、ノイズキャンセラーが流れ始めた。

音波兵器のような物で、人の耳を使い物にならなくし、辺りの無機物を爆発する物。それが何か分からなかったが、とりあえずツナは行動に移る。神々の義眼で辺りを見渡したツナに映ったのは、

 

【ツナ君に“(これ)”は背負わせられない】

 

という、炎真の心の一文だけだった。

音がやんで、煙幕も晴れたところで、ツナは目を元に戻す。

 

「大丈夫ですか、九代目」

「なあに、この程度。かすり傷じゃよ。建物を完全封鎖せよ! 何人も逃がすな!」

「封鎖、完了しました。監視カメラの録画映像の分析を始めます」

「犯人の割り出しには五分とかからないでしょう」

「ボンゴレスゲー・・・」

「しかし綱吉君。君は本当にⅠ世に似ているんだね」

「はい?」

「入ってきた時そう思っただけじゃ」

「はぁ・・・」

 

九代目のほんわかした空気に、ツナも飲まれそうになる。

 

「九代目! 大変です!! 金庫が・・・破られています!!」

「なに!?」

(大地の七属性スゲーな。大空に打ち勝つとか。ま、俺の大宇宙は一属性で十四属性に勝つけど)

「ありえん!! 七属性のシールドはどうした!?」

「破られたようです!!」

 

その後、使用者の手から銃が逃げ出し空中分解したり、氷が跳んできて、雷のシールドを貫いたりしたが、ツナはとりあえず気にしてはいなかった。

 

「七属性の炎で守るなど、“罪”の場所を教えているようなもの」

「!!」

「奴らは・・・」

「シモン」

「炎真君・・・」

「“罪”は返してもらうよ。この血は僕らシモンファミリーの物だから」

「え?」

「はあ?」

「なっ」

「どういう事だ?」

「わからん・・・・・・」

「初代シモンの血なんじゃないの? “罪”っていうのは」

 

ツナの推測にボンゴレ側が驚いてツナの方を見る。

 

「どうしても必要な物だったんだ。力を取り戻して、ボンゴレに復讐をするために」

 

そこから怒涛の炎真達によるボンゴレⅠ世の糾弾が始まった。ツナの方をなるべく見ようとしない炎真だったが、最後の最後でツナの方を向いた。

 

「どうだいツナ君、君の体には裏切り者のボンゴレの血が流れているんだ」

「なっ。てめー、なんてことを!」

「ボンゴレの血が流れているのは否定しない」

「「「「!!」」」」

「過去にボンゴレファミリーとシモンファミリーの間に起きたことは、タイムマシンでもない限り確かめる術はない。絶対無いとは言い切れない・・・だが、それでも俺の魂をかけて言えることが一つだけある。ボンゴレⅠ世はそんな事をする男じゃない!!」

「「!!」」

「兄弟ファミリーを囮に使うなんてことは愚か、助けに行かないなんてことは絶対にしない!!」

「ふざけたことを!! まるであったことがあるかのような物言いだな!!」

「嫌というほど会ってるよ、どれだけ拒絶しても俺の夢の中で自分の武勇伝を聞かせてくるクソジジイにな!!」

 

ツナのその一言でその場が凍った。そうとしか言い表せなかった。



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第七十三話 圧倒

「は・・・?」

「知らないなら教えてやるよ・・・。ボンゴレリングには歴代ボンゴレボスの魂が眠ってる。その中で、一番おちゃめで一番ウザいボンゴレⅠ世が、俺の夢にほぼ毎日出てきてるって言ってんだ!」

「ウソはいけないなぁ。そんな幻、俺達が信じると思ってるわけ?」

「そんなことは考えてない。俺がそんな戯れ言を言うのはこのリングがあるからかもな」

(・・・あれは、ツナ君が僕にリングを壊せって言ってる?)

「だけどなぁ・・・」

(あ、違った。ただ文句言いたいだけだ)

 

ツナは強く拳を握った後、見せつけるように拳を突き出して、

 

「このリングがあるからアイツは人の夢に出てくるし、人の眠りを妨げて武勇伝を聞かせてくるんだ! 外して寝れば良いって思ったヤツ! いるだろ! 何度も試したさ。でもなぁ、何故かやつは俺の夢の中に出てくるんだよ!」

「あ。それオレが嵌めてたぞ」

「リッッッボォオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!! お前か! お前なのか! 俺の安眠を邪魔してたのはぁあぁあぁあぁあ!!」

「わ、悪ぃ! 悪いと思ってるから今はシモンに集中してくれ!」

 

ツナは一度気を落ち着けて、炎真に相対する。

 

「・・・何をするか、なんて言うことは無粋だから聞かない方が良いか? 炎真」

「別に聞いても聞かなくてもどっちでも良い」

「だろうね。こういう時って、ケンカと一緒だと俺は思う」

「だよね」

「「拳をぶつけ合って納得させる!」」

 

炎真とツナの拳が激突する。それと同時、援護に入ろうとした守護者達を真美の大地の重力が翻弄する。

 

「エンマぁあああああ!!」

「ツナヨシぃいいいいい!!」

(大空の死ぬ気の炎単体じゃ無理か!)

(行くよ!)

 

重力に吹き飛ばされたツナは、天井に背中を打ち付ける。

 

(ッ! お兄ちゃん!)

(ごめん、ツナ君!)

「ま・け・る・かぁあああ!!」

 

炎を強く強く灯し、何とか天井を蹴って立ち上がろうとするツナ。だが、重力に押し潰され、上手く立ち上がれない。

 

「帰ろう、アーデルハイト。簡単に殺しちゃいそうだよ」

「そうだな。息の根を止めることなどいつでも出来る。奴らに味わわせるべきは、生き地獄」

「クロームちゃんも連れて行くよ。デートする約束してるからね~ん♪」

「ふざけんな!」

 

ツナは強く手を合わせる。そして合わせた手を天井に叩き付けた。すると、天井が輝き炎真に向かってツナを押し出した。

 

「!! 遅い!」

「ガッ!」

 

ツナのボンゴレリングも砕け、彼の体は床に倒れた。

 

「帰りましょう。聖地へ」

 

「・・・・・・くっ」

「おい、ツナ!! しっかりしろ!! ツナ――――!!」

「おい、しっかりしろ!!」

「タンカを急げ!!」

「怪我人多数だ!!」

「恭弥! 大丈夫か!!」

「寄らないで。平気だよ、プライド以外はね」

「大丈夫ですか!?」

「何の・・・これしき!!」

「動かないでください!!」

「俺なんかより、十代目!! 十代目!! 大丈夫スか!?」

「ツナ」

「・・・うん。大丈夫」

 

 

―――その頃。

 

シモン島に向かう船の中。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。わざわざ偽物で倒された意味は?」

「偽物なら炎真に負けても別に腹立たないし、それに。俺の強さを知ってる連中に、炎真に挑むのは無謀、と知らせられるから。かな」

「本当、焦ったんだからね? ツナ君がいきなり俺達を攻撃して、リングを壊せなんて言うから」

「そっちの方が、面白いんだよ」

「面白!?」

「結局沢田はそういう考え方をするのだな!」

「俺は嫌いじゃない」

「・・・んん。じゃあ予定通り、みんな俺達に試練を与える感じで。俺がいなくなったらこの船のカモフラージュが消えるから、そこんトコよろしく!」

 

そう言ってツナは消えた。唯一ジュリーが不審そうな目を向けていたのにもきっちりと気付いていた。

 

 

―――継承式会場。

 

「わしは何と言うことをしてしまったんじゃ・・・・・・。死んでも償いきれぬ・・・」

「九代目!」

「九代目・・・」

「九代目・・・」

「・・・・・・」

「まだ光は消えとりゃせんぞ」

「「「「!?」」」」

「モノ見えぬこの眼にもしっかりと届いておる」

「!! あなたは・・・!!」

「九代目の小僧よ。老いぼれたのぉ」

 

ツナ達の前に目に黒い布を巻き、マントを羽織ったしわがれたおじいさんが現われた。

 

「タルボじじ様!! おいでくださっていたのですか!?」

「羊の世話でちと遅れたがのぉ」

「なんだ? あのキッタネージジィは・・・」

「九代目の知り合いっぽいけど」

「奴はボンゴレに仕える最古の彫金師、タルボだ」

「ちょーきんしとは何だ?」

「金属を加工し、アクセサリーをつくる職人のことだぞ。めったに姿を見せない仙人みたいなじーさんでな、いつからボンゴレに仕えているのかも謎なんだ。Ⅰ世の頃から仕えてるって事もあるぐらいだ」

「へぇ~」

 

ボンゴレリングに話しかけるタルボじじに、十代目ファミリーは怪訝な顔をするが、すぐにいつも通りに戻る。

 

「おい、九代目よ。どーするね? ボンゴレリングは生まれ変わりたがっとるぞ」

「生まれ変わる?」

「・・・ということは、タルボじじ様。まだボンゴレリングは・・・」

「死んじゃおらん。ガワが壊れとるだけじゃ」

「なんと!」

「「?」」

「お~?」

「?」

「お前が十代目のボンゴレかい」

「てっ」

 

タルボがツナを杖でつつく。

 

「ふぉっほっほっ。リングの言う通りの男じゃ」

「いててっ。リングが? 着けてもいない相手に向かってしゃべるんですか?」

「んな事も知らんで着けとったのか。優れたリングには魂が宿る、魂あれば感じるところもある。その声を聞いてやるのがわしの生業じゃ。ボンゴレリングは次の可能性を示しておるぞ」

「ハァ。ボンゴレリングの強化でもするんですか?」

「そうじゃ。お前達は獣のリングを持っておるようじゃの。わしに見せてくれんか?」

「アニマルリングのことですか?」

「そうじゃ、それとお前さんは(そら)のリングも見せてみい」

 

言われてツナ達はナッツ達アニマルリングをタルボに渡す。

 

「なるほどのう・・・・・・。こやつ等の魂も必要じゃ」

「必要?」

「もちろん奴のあれも必須じゃがな」

 

マントを翼のように広げたタルボ、そこには無数の袋や瓶があった。

 

「ん。あったあった、これじゃ。ボンゴレⅠ世の血“罰”じゃ」

「Ⅰ世の血・・・?」

「“罰”!!?」

「よし。これで材料は全て揃ったわい。成功すればボンゴレリングは今までに無い力を手に入れるじゃろう。だが、失敗すればボンゴレは魂を失い、もう二度と光り輝くことはないじゃろう。確率は五分と五分じゃ。どうするんじゃ十代目よ」

「それ、悩むこと? お願いします。このままボンゴレリングがなかったら困るんです」



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第七十四話 Ver.アップ

ポッキーDay


継承式会場の一室。ツナはゆったりと椅子に腰掛け紅茶を飲んでいた。

 

「十代目。よく落ち着いていられますね・・・」

「慌ててもどうにもならないし、炎真君があんな事望んでするとは思えない。誰かに操られてる気がするんだ・・・。あ、でも。操られてるって言っても骸みたいな操りじゃなくて」

「裏から誰かに指示されてる。ってお前は言いたいんだな?」

「うん。その誰か、は分からないけどそんな気がするんだ」

「まぁお前がどう思おうとこれからお前達はシモンと戦い、命の取り合いをしなくちゃならねぇ」

「そんなの関係ないよ。俺は友達とケンカしに行くんだ」

「十代目!」

「沢田!!」

「その通りっス!! ぶっ飛ばしましょう!!」

「まったくだ!! 極限に勝つ!!」

「負けるわけにはいかないのな!」

 

そのすぐ後、台車の上に岩をゴロゴロ乗せてタルボが現われた。

 

「もしや、そいつがボンゴレリングか?」

「さすがに、勘がええのおアルコバレーノ」

「お、おい。ツナ・・・?」

 

みんながボンゴレリングの強化失敗を悟るなか、ツナはその中の一つを手に取った。

 

「炎を・・・求めてる」

「・・・・・・?」

 

ツナは大きく巨大な炎を灯す。それはオレンジとベージュの混ざった炎だった。

 

「これが・・・綱吉君の炎・・・・・・!」

「なるほど! そうするんスね! 十代目!!」

「極限に理解したぞ!」

「えっと・・・こうか?」

 

そしてツナの指に形状が変わったリングが填まっていた。ほとんど大空のリングVer.Xと同じ形だが、所々パーツの形が変化していた。

 

「名付けるなら―――

 

 

―――大空宇宙(だいくうちゅう)のリング。かな」

「それはボンゴレリング自信が選んだ、お前達の能力に最も適した形なのじゃ。その姿こそがボンゴレ十代目と、その守護者のためだけの専用シリーズ。その名を、VG(ボンゴレギア)

「九代目! シモンアジトの場所の目星がつきました!!」

「そうか」

 

会議室に移動し、その場での首脳が集まって会談を進める。

 

「ボンゴレイタリア本部に連絡し、資料室にあるありとあらゆる蔵書や古文書を調べましたが、シモンファミリーに関する文献はある時代以降全て破棄されていました」

「・・・てことは・・・」

「やはりシモンの連中の言うように・・・、過去のボンゴレ内部にシモンファミリーの存在そのものを抹殺する動きがあったようじゃな」

「で、どうやって分かったんだ? シモンのアジトは」

「初代シモンがボンゴレⅠ世へプライベートで送った手紙が残っていたのです。ただし両ファミリーが結成される以前の手紙で、ボンゴレとは関わりのない遺品の一部として別室に保管されていました。その為破棄を免れたのでしょう。初代シモンはその手紙に海外へ旅に出た時の様子を、綴っていたのです。その中の一つで彼は船が難破し、漂流した末に辿り着いた無人島について記しているのです。初代シモンはその島を気に入り一族全員を住まわす聖地にしたいと言っています」

「聖地・・・」

「場所はどこじゃ?」

「太平洋、強い磁場がありコンパスが利かないとしながらも、初代シモンは予測で出した緯度と経度を記してます。この辺りかと・・・」

「日本からそう遠くない」

「ここならば我々の戦力を集めるのにもそれほど手間取りません」

「そうと決まれば出発の準備じゃ!! シモンが完全覚醒するまで七日しかない!! ボンゴレの総力をあげてシモンと戦わねばならぬ!! ありったけの構成員と武器を集結させよ!!」

 

九代目がボンゴレボスとしての威厳で部下に指示を出そうとしたが、それに待ったをかける声がした。

 

「待ってくれないか、ボンゴレⅨ世(ノーノ)。頼みがある」

「な、何だね?」

 

額に炎を灯したⅠ世に見えるツナ(彼自身に言ったら多分キレる)が九代目の指示を遮って結構偉そうな態度で進言した。

 

「戦うのは俺達、ボンゴレ十代目ファミリーだけにしてくれないか」

「なにぃ」

「何故だ!!」

「俺の言い分はただ一つ。この戦いはボンゴレとシモンの戦争なんかではないこと。俺が、()()()()()()()()()()()()だ」

「・・・・・・・・・!!」

「そういうことなら、俺達も存分に力を振るえますよ!!」

「極限に友人として戦うぞ!」

「友達のために戦うのは当たり前なのな!」

「それと、炎真はたくさんの人を殺したいわけじゃない。あいつは俺と違って心のそこから優しい炎を灯せる。絶対に、人殺しをさせたらいけない」

「君達でだけなど、いくら何でも無理だ!!」

「沢田ぁ!! 甘っちょろいこと言ってんじゃねぇぞぉ!! こいつはマフィア間の大戦争だぁ!!」

「違うな。待っているのは大切な友人だ」

「・・・沢田綱吉」

「?」

「お前の好きにしろ。ボンゴレⅩ世」

「「「「!」」」」

「・・・静かにしたまえ!!」

 

Ⅰ世のような貫禄を持っているツナ以外はその気迫に押し黙る。

 

「継承式が中断された以上、ボンゴレの全指揮権はいまだ九代目のわしにある。皆、わしの命令に従ってもらうぞ!!」

「ハッ」

「シモンファミリーの討伐は、ボンゴレⅩ世(デーチモ)とその守護者に一任する」

「なっ!!」

「クソジジィ」

「しゃっ」

「ただしリボーンも同行すること」

「・・・また来るのか、この家庭教師様は」

「リボーンに命ずる。お前からシモンへの一切の攻撃を禁ずる!」

「わかった」

「以上じゃ。ガナッシュ! ただちに船の用意じゃ!!」

「はっ」

「解散!!」

 

並盛まで帰ってきたツナは、ケーキ屋で見かけた京子とハルに行ってきますの挨拶をしてとりあえず自分の家に帰る。

 

「ただいま」

「あらっ、そのキズ。また転んだの? さっき他の学校のメガネの男の子がツナ君へってこの包みを置いていったわよ」

「メガネの・・・? 入江・・・あ。正一君か」

 

手紙には正一の近況と、包みの中身の話だった。

 

「X BURNER用、新型HP(ヘッドフォン)CL(コンタクトレンズ)・・・」

「準備万端だな」

「もちろんさ」



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第七十五話 開戦

船で座標まで着いたツナ達の目の前で、空間が割れて島が現われた。

島の周りは遠浅のため、大型船から下りて小型ボートで向かうことになった。

 

「見た目より距離があったね」

「流されねーようにしっかりとボートを固定するぞ」

「あ、うん」

 

 

「思ったより早かったね」

「「「!!」」」

「やあ」

「待ってたよ。ツナ君」

「ヤッホー。お兄ちゃん!」

(隠せっ!)

(あっヤベッ)

(本当に君達は・・・)

「・・・君達だけで来たのは正解だと思うよ。大勢で来ればボンゴレ側の夥しい数の死体が積み上げられることになっただろうからね」

「俺達以外のな」

「くっあいつ等・・・。って言うか十代目今なんて言いました?」

「クロームは? 無事なのか?」

「そりゃあもう天使のようなカワイ~イ顔をして、俺のベッドでオネンネ中♪」

「ぶっ殺す!!」

 

ツナの炎が額に灯る、死ぬ気とまでは行かないにしろ、体のリミッターを外した状態だ。

 

「ん!? おい・・・待て・・・。何故奴らまでいる。あの不吉な連中をこの島に呼び入れたのはお前達か」

「?」

「不吉な連中?」

「マフィア界の掟の番人」

復讐者(ヴィンディチェ)!!」

「何しに来た。イェーガー」

「! ・・・何故、貴様がその名を・・・」

「これは俺の予想だが、ボンゴレⅠ世のと初代シモンの約束でも果たしに来たのか?」

「! ・・・・・・・・・・・・」

 

次の瞬間、ツナの首に復讐者の拘束具が取り付けられた。

 

「ガッ・・・」

「テメェ、復讐者! 何のつもりだ!」

「沢田綱吉は、何やら面白そうな情報を持っているようだから連れて来いと言うのがボスからの命令だ。よってお前を復讐者の牢獄に連れて行く」

「十代目!」

「ツナ!」

「沢田!」

「みんな、こいつらには逆らわないで!」

 

ツナはそう言うやいなやポケットから人型の紙を取り出して、投げる。

 

「頼むぞ、コピー体!」

 

そしてツナは夜の炎を潜って復讐者の牢獄へ移動させられた。

守護者対シモンの戦いは本物のツナがいないだけで、原作通り進む。

 

 

―――復讐者の牢獄。

 

気絶していたツナが目を覚まして一番に見たのは、復讐者達に囲まれる自分だった。

 

「我らをアルコバレーノにした奴の情報を吐け」

「知らねーよっ!」

「ならば、あの少女をここに呼べ。彼女なら」

「知らねーよ。アイツも、俺も」

 

ツナがそう答えた途端。復讐者によって普通では考えられない量の拷問が行われた。

 

「ガハッ・・・・・・」

「もう一度だけ問おう。我らをアルコバレーノにした奴の情報を吐け」

「・・・知らねー・・・っつってんだろ・・・。俺は・・・いや、俺達は・・・おしゃぶり(ああいうの)に触れれば・・・その仕組みが分かる・・・。分かれば・・・後は簡単・・・だろ・・・?」

「・・・?」

「・・・おしゃぶりの・・・所持者を・・・書き換えてやれば・・・良い。それ・・・だけで・・・所持者は変わる・・・。そう・・・だろ?」

「つまり、貴様は何も知らない・・・と」

「当たり・・・前だ。なんっ・・・だったら・・・お前等が元アルコバレーノってことも、初めて知ったよ! 初耳(しょみみ)だぞ・・・初耳(しょみみ)

初耳(はつみみ)・・・ではないのか・・・?」

「初耳とも読むだろうが」

 

ツナは身体中ボロボロの状態で拘束されていようと、軽口を叩く余裕はあった。

そこからツナは何日間かに渡って言葉の真偽を確かめるために拷問を受け続けた。

 

「イェーガー君。彼は本当に何も知らないのかい?」

「ああ、そのようだ・・・・・・」

「うわっ。ミニマムサイズの復讐者・・・ってかアルコバレーノ?」

「そうさ。僕はバミューダ・フォン・ヴェッケンシュタイン。元アルコバレーノだ」

「・・・知りたいこと。分からなかったと思うから・・・俺、帰っていい?」

「帰れるとでも?」

「出来る、出来ない。じゃないんだよ・・・やるんだ」

「へぇ・・・」

「緊急脱出用に持っててよかった黒のリング!」

 

ツナが指に嵌めた黒いリングから夜の炎が燃え上がり、ツナの体はシモンの聖地に飛ばされた。

 

 

―――シモン島。

 

「おい。嘘だろ!?」

「エンマ自身がブラックホールに!!」

 

「・・・これ、どういう状況?」

「ツナ・・・君!!」

「よう俺」

「やぁ俺」

「帰ってこい」

「ういーっす。任せた」

「あいよー」

 

軽く二、三言かわして片方のツナが炎と人型の紙に戻る。

 

「さて、炎真君。いま、助けるよ」

「逃げて!」

「俺が今まで逃げたことがあったか?」

「でもツナの奴、どーする気だ!!」

「考えられるとすれば一つ・・・、ブラックホールごとかき消すしかねぇ。ビッグバン並の超パワーでな」

「超パワーっつったらX BURNERっスね!!」

「いいや、それでも足りねぇ」

「な」

「X BURNERより、遥かに強力なパワーが必要だ」

「X BURNERより!?」

 

ツナは胸の前で腕をクロスさせる。

 

「オペレーション―――

 

 

 

 

―――――――――(ダブル)(イクス)

『了解しました、ご主人(ボス)。XX発射シークエンスを開始します。NEWパーツよりカウンターバーナー噴射』

 

「今までのX BURNERと構えが違う!!」

「両手を前に・・・」

「「!!」」

「ま・・・、まさか・・・!!」

「両手撃ち!!」

 

「待ってろ炎真!!」

 

「X BURNERを両手で!?」

「そんな事すれば炎圧で後ろに吹っ飛びます!!」

「その為のVGのニューパーツなんだ。ツナの腕を見てみろ。発射方向と逆方向に反動を受け止める柔の炎が吹き出している」

 

『カウンターバーナー及びLRバーナー、炎圧上昇』

 

【「・・・ん? 両手から剛の炎を出し、前方に放つ?」】

【「そう、もしも・・・なんだけど、背中に何かしらの支えがあれば出来るかな?」】

【「ウチの考えではそんな頑丈な壁はそうないと思う・・・。でも面白そうだ。つぎに作るコンタクトとヘッドフォンには両手撃ち用のプログラムを入れておく」】

【「あ、え? もう過去に帰るんだけど?」】

【「それでも作る」】

【「え・・・」】

 

(ありがとう、スパナ。完璧だ)

『ゲージシンメトリー!! 発射スタンバイ!!』

「はぁっ! (ダブル)(イクス) BURNER(バーナー)!!!」

 

両手撃ちX BURNERを完璧にこなしたツナは、ゆっくりと地面におりた。ツナが地面に降りた瞬間、大地の重力とはまた違った形でツナに重みが加わった。

 

「ちょっ、真美ちゃん!? な、何用!?」

「うへへ、本物のお兄ちゃんだぁ~。お兄ちゃん大好き~」

「いや真美ちゃん? ちょっ、どこ触って・・・!」

「お兄ちゃん怪我してる! どうして!? あ・・・あいつ等か・・・」

(復讐者が復讐されちゃうかな・・・? この子怒るとマジで恐いからな・・・)

「お兄ちゃんあいつ等に何されたの!? 大丈夫?」

「大丈夫大丈夫ー。それよりも真美ちゃんに手当てしてもらいたいなー(棒)」

「・・・うんっ!」

 

大地の炎で飛んでいった真美の背中を見てツナはため息をついた。



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第七十六話 新生D(笑)

「ツナ君、真美の扱い方をよく分かってるね・・・」

「・・・まぁね。真美ちゃん、炎真君より大地の炎使うの上手くない?」

「うぐっ・・・」

 

真美が救急箱を持ってくるまでの間に復讐者が現われ、ツナ達に記憶を見せて消えていった・

 

「お兄ちゃん!!」

「ま、真美ちゃん?」

「また記憶が見えた! あいつ等が来てたんでしょ!? 何もされてない? 大丈夫!?」

「Don't worry.」

「ほ、本当に?」

「大丈夫、大丈夫」

「怪我しないでよ?」

「任せなさい」

「私と結婚してよ」

「オッk・・・・・・え?」

 

ツナは了承しかけて思わずとまる。慌ててツナが真美の方を見ると、顔を真っ赤にして照れていた。

 

「あの・・・さ。俺、了承してないけど・・・」

「何で!?」

「ツナ君。真美をよろしく」

「炎真!? 何で!?」

「ツナ君が真美と結婚すれば、兄弟になれる」

「え?」

「わかるでしょ?」

「分からねーよ!?」

 

ツナの受け売りなのか猫かぶりで首を傾げた炎真に、ツナは叫ぶ。血に染みついたツッコミ属性とはこの事だ。

 

「安心しろツナ、マフィアの中では愛人もありだ」

「安心できねーよ!! 愛人づくりに何を安心しろって!?」

「さすがっス十代目! モテモテっス!」

「男としては羨ましいけど、部下としては誇らしいのな!」

「武が・・・」

「野球バカが・・・」

「「なんか、知的な事言ってる!!」」

「ツナ! 獄寺も! お前等失礼だろ!」

「だって・・・武・・・。補習組じゃん」

 

ツナのあからさまな『自分は違う』目線に、山本は仕返しを思いついた。

 

「ツナは小僧みてーに愛人はつくらないのか?」

「え、あ? どーなんだろ・・・」

「一人だけを選ぶんなら誰が本命なんだ?」

(野球バカっ・・・十代目を!)

(ツナ君・・・大丈夫かな)

(綱吉あの子に半殺しにされるんじゃ)

(脊髄反射的に答えねーといいがな)

 

ツナはその問いに暫く唸った後、一人の少女の笑顔を思い浮かべて頬を赤く染める。

 

「や、やっぱり。京子ちゃん・・・かなぁ・・・?」

「え?」

「「「「あ」」」」

「え?」

「お兄ちゃん・・・私じゃないの・・・?」

 

目のハイライトが消えたくせに、瞳の奥にハートが見える真美がツナを見つめる。

 

「え、いや。だって・・・」

「なんで!?」

「ツナ、諦めて真美とも結婚しとけ」

「それが良いよツナ君。ハーレム」

「お兄ちゃんそうしよ! みんな幸せ! ね?」

「あ、いや」

「ね?」

「あ「ね?」・・・っ「ね?」・・・「ねぇ?」・・・はい」

 

真美の有無を言わさない気迫に、ツナは将来のハーレム結婚を約束させられたのだった。

 

「じ、十代目」

「なに・・・?」

「あ、記憶は・・・」

「見てたよ。Dがみんなを騙してたんでしょ?」

「そ、そうっス。だから・・・つまり・・・」

「そっか。骸とDが戦ってるんだね」

「見に、行きますか・・・?」

「そう、だね。凪にも会いたいし。行こうか」

 

ツナはゆっくりと立ち上がろうとするが、手当てされ中の彼は真美に押さえつけられて動けない。

 

「さ、先に行ってて?」

「僕は残るよツナ君。リボーン君もいれば安心だよね?」

「俺もいれば真美も暴走しねーだろーからな」

「じゃあ十代目! 見に行ってきます!」

「後からちゃんと来いよ? ツナ」

「分かった」

 

 

 

ツナ達が走って骸達がいる所に着いた時、復讐者がD・スペードの処理を獄寺達に頼んでいた。

 

「処理って・・・!!」

「なっ。オレ達が後始末かよ!!」

「・・・いいさ。ボンゴレを継ぐ前に一仕事やっておこう」

「じ、十代目!」

「ジョット・・・!?」

「お兄ちゃんと老いぼれジジイを間違えないで!」

 

あまりにも似すぎたその風格に、復讐者までもがツナとジョットを間違えた。その事実に真美が怒りをあらわにするが、ツナが止める。

 

「その代わり、ボンゴレとシモンの戦いはなくなった。ボンゴレ晴の守護者、シモンファミリーの全員を牢獄から解放しろ」

「「「「・・・」」」」

「・・・・・・。古里炎真、お前の意見は」

「僕も同じだ!!」

「・・・・・・。その眼差し・・・、あの時のジョットとコザァートと同じ・・・。十代の時を経て、ようやく二人の誓いが果たされたということか・・・。いいだろう、Dを倒せば牢獄にいるファミリーを解放する」

「ありがとう」

「ですが十代目! こいつら信用できません!!」

「約束は守る」

「!!」

「あっ」

「あいつは!!」

「過去の記憶でⅠ世とコザァートの誓いに立ち会っていた男!!」

「イェーガー・・・」

「バミューダの輝きと共に、復讐する者」

「くっ・・・」

「・・・・・・・・・。来たな」

 

次の瞬間、莫大な炎圧と共にそこになにかが落ちてきた。

 

「うおぉ・・・。あ、武、隼人」

「ふぅっ」

「う・・・」

「なんて一撃だ。見た目以上に重い!」

「これだけで炎を使い切る勢いだぜ・・・」

「あれは?!」

「夜の炎・・・」

 

爆発の中心に黒い揺らめきができ、そこから奴は出てきた。

 

「ごきげんよう。さあ、終えましょう。君達の世代を」

「あの黒髪が・・・D・スペード・・・、なのか?」

なんか茄子みたい

「プッ。お兄ちゃんその例え最高

「D・・・よくも、シモンのみんなを・・・、僕を・・・騙したな!!」

「ヌフフ」

「クフフの方がマシ!」

「GAO!!」

「・・・・・・・・・」

「あの野郎」

「待ってボス!!」

 

武器を構えた守護者の前にクロームが両腕を広げて立つ。

 

「あれは骸様の体!! 攻撃しないで!!」

「そうも言っていられないのですよ、クローム」

「あっ、骸様!!」

「マスター、うすうす感じているのでしょう?」

「ああ。アイツは化物だ」

「今、持てる限りの全力をもって挑まなければならない相手なんです」

「全力、出して良いの?」

「「「「・・・・・・・」」」」

「やってやれ。ツナ」

「わかった!」

「よし」

「そうと決まりゃ」

「はじめましょうか?」

((速い!!))

 

一瞬で距離を詰められた。その言い方が今最も正しい表現だった。直後、ツナ達の目の前に現われたDが持っていたトランプのジョーカーが爆発し、ツナ・クローム・炎真を庇った獄寺と肩に乗っていたランボ・山本・ジュリーが消えてしまった。

 

「さしあたっての手品です」

「どこかに飛ばしたのか」

「その通りです。彼等はこの穴より、私の創った幻覚世界へ行っていただきました」

「そこで大人しくしてろって事か」

「彼等には語り部になってもらわなくてはならない。今まさに行われる堕落したボンゴレの十代目候補討伐の物語を、新たな伝説として後生のボンゴレに残す私の目的を完遂するために、沢田綱吉の悲惨な最期を目撃し語り継ぐものにね」

 

そこでトンファーのチェーンが伸び、Dを攻撃するが、効果は今ひとつのようだった。

 

「語り継がれるのは、君の死の方だよ」

「ヒバリさん!」

「手を出さないで、草食恐竜」

「あ、いえ。そんな奴の死誰も語り継がないかなーって思いまして・・・」

「お前・・・色々酷いな」

「・・・テヘッ」

「さすおに!」

 

相も変わらずツナを持ち上げる真美。そんな二人を見て、常識人枠であるリボーンと炎真は諦めていた。

 

「・・・と言うかアイツ、どこまで幻術を使えるんだろう・・・」

「元々霧の守護者だ。それに加えて骸の身体。全盛期とさほど変らねーんじゃねーか?」

「それってちょー厄介ってこと?」

「幻術に関して言えば、な」

「・・・つまるところ?」

「ツナにとっちゃ雑魚って事だ」

「雑魚を馬鹿にするな! ちりめんじゃこ美味しいだろ!」

「確かに美味しい」

「なんであんなにご飯に合うんだろうね」

「「確かに」」

「お前等見てやれ。ほら、雲雀が押されてるぞ」

「・・・・・・やっぱり? 舐めプするからだよ」

「雲雀がか?」

「あの人、俺と戦う時はもうちょっとマジな雰囲気出すからさ」

「そか」

「あーあー。トランプに吸い込まれちゃった」

「雲雀恭弥にもまた、愚かな十代目ボス候補の最期を伝える語り部としていき続けてもらいましょう。そして、私が作る新しいボンゴレの目撃者となるのだ」

 

 

 

 

 

 

「え? 俺死ぬの?」

「殺しても死なねーよーな奴が死ぬとは思えねーな」



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第七十七話 殻を脱いだ神上の統魔

「さぁ、そろそろ登場してくれますか? 愚かな真打ち」

「―――なぁ、さっきから誰に断り入れて俺の事愚かっつってんの? 俺の事を愚かっつっても良いのは後にも先にも忍野扇ただ一人しかいないんだけど」

 

「・・・誰だ?」

「影組最高幹部の一人ですよ。雰囲気が真っ黒な少女、マスターと似たような体術を使い彼よりも拳の威力は高い。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そんな風ですけど」

「たまにボスでも負けるぐらい強い」

「・・・マジか」

 

「ヌフフ。・・・少しばかり雰囲気が変わったようですが。出来ればあなたと直接戦いたくはないんですがねぇ・・・」

「知ってるさ。俺も直接拳をぶつけ合ったらつまらない戦いになるのは知ってる。だから()()()()()()()()()()戦ってるから安心しろ」

 

ツナはそう言うと、ゆっくりとその歩を進めて行く。右手の甲に出現した蠅王紋を基点にし、身体中にエネルギーが流れていく。それをハッキリと表すように刺青のような者が刻まれると同時、沢田綱吉が崩れていく、今まで沢田綱吉という殻で縛り付けていた化け物が姿を現した。

 

「『OK。レッツパーリィィィィィィィィィ!!』」

 

そこにいたのは上条当麻その人だった。四方八方に跳ねまくった寝癖だらけの黒髪に、楽しそうに歪められた目と口。一番慣れ親しんだ、手加減も本気も最も調整がしやすい肉体だった。

 

「さぁ、お前の罪を数えろ」

「ヌフフ。数えるほどありませんね」

「数え切れないほどある。の間違いだろ。クソガキ」

「あなたの方がよっぽどガキじゃあないですか」

「Dのヤツ、嵐と雷のボンゴレギアを同時に!」

「行くぞ―――連続・普通のパンチ」

 

上条が放った拳は拳圧で風を生み出し、投げられたダイナマイトを弾き返した。それだけでも驚くべき事だが、リボーン達は慣れてしまっているため、特に何も言う事は無かった。

 

「さーてD。お前には色々と借りがあったなぁ?」

「おやおや。あんな幼少期の事まで覚えているんですか。私の計画の邪魔をしてくれたあの日の事を」

「・・・まさか!」

「そう、そのまさかですよ。炎真、君の両親と妹を殺すはずだったあの日の事です」

「・・・キサマッ」

「真美ッ」

「は、ハイッ!」

「邪魔するな。オレはコイツを潰す」

「は、はぃぃぃ」

 

上条が放った威圧で、真美はその場にへたり込む。上条はそのまま鋭く細められた眼で、Dを睨んだ。

 

「おぉ、怖い。『潰す』言ってくれるじゃあありませんか。わざわざ枷をつけて挑みにくる理由が君にはあると?」

「そっちの方が、俺が満足出来る可能性も上がるし、お前だって勝てる可能性が万が一にでも出来るかもしれないだろ? 俺はそう言うギリギリの闘いがしたいんだ」

「ヌフフ。強くなりすぎた故の悩みというやつですか。面白くない。全くもって面白くない。君という人間はとてつもなくつまらない人間です!」

「良いんだよ他人にどう思われようと! 俺は俺の道、“我道”を行くって決めてんだ!」

 

上条は息を軽く吸うとその眼の色を変える。文字通り変えたわけではないが、車のギアを変えたという言い方が適切だろうか。

 

「なぁ、一つだけ聞かせろ」

「?」

「お前、本当にボンゴレが嫌いなのか? 違うよな。お前が嫌いなのは穏健派だ。何故だ。ボンゴレは元々自警団だろ!? どうして、街の皆を守る組織が、世界中の裏社会を牛耳るような首領に変わっちまったんだよ! どうしてお前は、一世に弓引く必要があったんだ!」

 

『(ご主人の説教キタコレ―――! ろ、録画機器録画機器・・・)』

「はい」

『おぉ、流石なじみさん』

「いやいや、ぼくも気になるからね。この世界で生きる人間とは異なる摂理で生きてきた、彼が放つ説教が」

 

「私とて、最初から一世に反旗を翻していたわけではない。私も、そしてエレナも。あの頃のボンゴレファミリーを何より愛していたのだから」

「それじゃあ、なんで!」

「・・・私は貴族だった。だが、堕落した貴族達に嫌気がさし、地位は泣くとも優秀な人間が社会の中心にあるべきだと考えていた。そんな私の考えに共感してくれたのが、公爵の娘エレナだ。彼女は太陽のように微笑み私を癒やした―――

 

 

 

―――エレナの望み通り、ボンゴレは弱き者達に平和をもたらしたのだ」

「・・・そん」

「ふざけるんじゃねぇぞ!!」

「「「「!!」」」」

「弱き者達に平和? 力を振るって強者弱者関係なく弾圧する事がか?! 良いか、良く考えろ、今のボンゴレがなんなのかを!」

「・・・マフィアだ」

「そうだ。それも、裏社会のトップに立つ幾重の業を背負っている・・・な。そんなお前等はD・・・お前が嫌っていた貴族達と同じだよ」

「なッ!」

 

上条の言葉にDは眼を見開く。そして足を止めていた。

 

「弱者の事は微塵も考えず、自身の保身のためえに力を振るう。そうなるのが肥大化した組織の辿る未来だ。自分達が力を持っているものだから、力を持たないものを虐げる。弱者を踏みつけ豪遊する。D、アンタが嫌っていた貴族を、アンタがその手で作り上げたんだ!」

「そんなはずが無いッ!」

「今のボンゴレを見たらきっとエレナさんは哀しむぜ。弱者に平和なんかありゃしない。リボーンが言ったな。泣く子も黙るボンゴレだと。黙るんじゃない。黙らせるんだ。拳銃やナイフで脅して、黙らなければ殺す。それがマフィアだ。それが血に塗れた力というものだ」

「戯れ言を!」

「現実を見ろ! アンタも、結局は堕落してるんだ。権力という力に溺れ、正しいものが見えなくなってるんだ」

「沢田・・・綱吉・・・。貴様・・・」

「エレナさんが言っていたボンゴレは、マフィアを目指せば絶対にたどり着けない道だ。やるなら皇帝陛下にでもならなきゃ無理な事。綺麗事さ」

「き、キサマァ!!」

「それでも、出来る事はあったはずだ。力で虐げるんじゃなく、優しさで包み込む事ぐらいは出来たはずだ。それを怠ったD、お前は目的を間違えたんだよ」

「貴様にエレナの何が分かるッ」

「何も分かるわけがないだろっ!」

 

Dの攻撃を真正面から受け、右手を振り抜きかき消した上条は歩き出す。

 

 

「ただ、これだけは言える、アンタが覚えていてくれた事、自分のために生きていてくれた事には感謝してる。だけど、間違った方向に導いた事には怒ってると思うぜ。なにせ、望みを叶えてはくれなかったんだからな」

「え、エレ・・・ナ・・・。そん・・・な。嘘だっ」

「信じたくないのは分かる。でも、それが現実だッ!」

「ヌオオ!!」

 

地面を蹴って跳びだしたDに、上条も走り出して接近する。

 

「いいぜ! テメェが、自分の間違いに気付かないフリをし続け、これ以上間違いを犯し続けるって言うんなら―――」

「殺すっ!」

 

 

 

「―――まずはその幻想をぶち殺す!」

 

力を最大限抑えた上条の拳が、Dの顔面に叩き込まれた。甲高い破壊音を響かせ、Dと骸の身体の結びつきが剥がれ、Dの精神が地面に投げ出された。

 

「ガハッ!」

「・・・・・・D」

「沢田綱吉。私は初めから、勝つ気は無かった・・・。ただ、不安だったのだ。エレナが、私の作ったボンゴレを見て、何と言うか・・・怖かったんだと思います・・・。なるほど、怒っている。当を得ている」

「怒られてこい」

「そうします。お前のやり方を見せてもらうましょうか、沢田綱吉。ただし、名を汚すような事があれば許しませんよ。エレナの愛したボンゴレなのだから」




キリが良い気がしたので一時更新を停止して、ため書きをしようと思います。

次再開する時はため書きを一気に消費する。そんな感じになると思います。


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代理戦争編
第七十八話 代理戦争の始まり


お久しぶりです。

正直ネタ切れで、書くのが面倒になってきました。


どこかでブッツリこの話が終わるかも。


Dを倒した一週間後。開き直ったツナは神上の統魔としてのオーラを日常に放っていた。

 

「あー。これは遅刻だわ。まず間違いなく遅刻だわ」

「いつもより早いじゃねーか」

「風紀委員が持ち物検査するらしくてね。30分前登校なのさ」

「だから言ったじゃねーか。ゲームして夜更かしなんかしてると寝坊するって」

「五時間かけてようやく百パーセントクリア出来るって時にお前が電源消したからな。データが消えたショックで絶望してたんだよ」

「ぅぉぉぉおおおおおおにぃぃぃいいいいいいちゃぁぁぁぁあああああああああんっ!!!!!」

「ブベラッ!!」

 

後ろからすっ飛んできた黒色の弾丸によって、前方に吹き飛ばされたツナは地面を滑って停止した。

 

「お。古里兄妹じゃねーか」

「ツナ君大丈夫?」

「大丈夫に見えるのか?」

「うん。いつもの事だし」

お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃぁぁぁん!! 大好きだよぉ! 愛してるよぉ! お兄ちゃんの匂いに埋もれてるだけで私はもう、幸せだよぉ! 私を抱いて、愛して、濡らして、イかせて、昇天させてぇぇぇ!

「やめろ、死ね」

「はうっ」

「ツナ君、真美の属性をこれ以上追加しないで」

 

とある業界では、ご褒美の眼差しで真美は、どこか別の世界への扉を開きかけたが、ツナが頭頂部に手刀を落としたため前後の記憶がどこかへ飛んでしまっていた。

 

(・・・そろそろ別の世界へ飛ぶ事も考えた方が良さそうだな・・・。これ以上何かが手に入る事はないだろうし・・・。どっかで劇的に死亡して・・・いや、ダメだダメだ。普通に転移で・・・やっぱり転生した方が安全か・・・?)

「ツナ、おい。ツナ」

「ん? なに、リボーン」

「お前、何を考えてやがる」

「自分の未来。かなぁ」

「ボンゴレのボスだな」

「ならないけどねっ!」

 

ツナはリボーンにいつも通り言い返しながら、代理戦争を機にこの世界を去る事を決めた。

 

 

 

―――暫くして。

 

(予定通り、お前達の実力を計る。と言う名目で骸達にアルコバレーノの話に乗って全力で俺達とその他のチームと戦う事を指示したし、クロームはとりあえず骸離れするために並盛に転校させたけど・・・。もしかしてツナ離れ出来ない? ・・・まぁいいや。さて、遠目に見て家の前にキャッバローネもいることだし、代理戦争。マジメに取り組みますかぁ)

「どーもっス」

「うぃ」

「待ってましたぜ。沢田さん!」

「こんにちは、ロマーリオさん。・・・ってことはディーノさんが?」

「よっ、ツナ」

「こんにちは。日本に何か用事ですか? ・・・まぁ、リボーンが言ってた頼み事。に関連したことなんでしょうけど」

「まーな」

「元教え子だから当然なんだと」

「で? 結局聞かせてもらってないけど、頼み事ってなんなんさ」

「お前達二人とも、オレのために戦ってくれ」

 

 

 

―――リボーン説明中―――

 

 

 

「こうして男は去り、俺達は目を覚ましたんだ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「なんだかとてつもねー話だな・・・。大まかには分かったが・・・」

「話に何度も出てきた呪いって」

「つまり一言で言うと、オレの呪いを解くためにお前達に代わりに戦って欲しいってこと」

「いや、そいつは分かったが・・・」

「その」

「どうなんだ!?」

 

有無を言わさないようなリボーンの殺気に、ツナ達の次の言葉は続かなかった。

 

「そりゃ、めったにないお前の頼みだし、力になるぜ!」

「面白くなりそうだからのってやるよ」

「そっか。サンキュ。よかったよかった。代理二人ゲット♪ よーしメシにすっぞ」

「「ちょっと待て!!」」

「ハイ?」

「ハイ? じゃない! こっちは一番肝心なこと聞いてねーぞ!」

「アルコバレーノ呪いってのは何なんだ? リボーン」

「まぁ、何となく予想はつくけど」

 

ツナのその一言にリボーンは目を丸くし、ディーノは身を乗り出す。

 

「何だって!?」

「・・・いや、ディーノさん。そもそもこんな赤ん坊が強いこと自体がおかしいんですよ。だったら、逆に考えれば良い。大人が技術と力を保持したまま姿を赤ん坊に変えられた。って」

「そうだ、これはオレの本当の姿じゃねぇ。本当のオレは超カッコイイんだ」

「やっぱり?」

「お前・・・!?」

 

 

とある夜。ツナは屋根の上で月を眺めていた。

 

「―――どうするつもりですか?」

「死に方の話か?」

「ええ」

「ラスボスと相打ちってのが理想だな」

「アホですか」

「もう一個は恨まれまくったボンゴレボスとして討たれるっていうストーリーなんだけど」

「馬鹿ですか」

「だが、次に早く行かないと俺の妹がっ!」

「いつの間にシスコンに目覚めたんですか・・・」

 

エネは呆れたようにため息をついた。が、上条は全く気にした様子は無く、そのまま思案を続けていた。

 

「それで? 今回の代理戦争のチーム分けは?」

「知ってるだろ?

沢田綱吉率いるリボーンチーム

XANXUS率いるマーモンチーム

沢田家光率いるコロネロチーム

六道骸率いるヴェルデチーム

古里炎真率いるスカルチーム

雲雀恭弥の風チーム

白蘭率いるユニチーム

楽しくなってきたなぁ・・・。さぁて、今回はどうやって引っかき回してやろうかな♪」

「もう引っかき回すのは確定なんですね」

「当たり前だのクラッカー!」

 

ツナは夜空に響かせずに大きな声で高笑いをしていた。

 

 

 

「相変わらず、無駄に器用なんですから・・・。って言うかどーやってるんですかそれ・・・」

「ん? 知りたい? 知りたいかい?」

「全然」

「遠慮するなって。教えてやる。良いか? まず声の出し方だが・・・」

「そんな所に無駄な肺活量を使わなくて良いですから。何なら波紋呼吸でもやっちゃってください」

「おっ、良いね。今度はそれを目指すか」

(・・・完全に失言でした)

「どうだっけ・・・」



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第七十九話 ツナチームの挑む代理戦争

遅くなりました。のわりには文章上達してない拙い。読みづらいの三点張り。


リボーンside

 

「ねぇ、リボーン。最強のチーム作っていい?」

 

ツナがそう言ってきたのは今朝のことだった。

 

「んあ? 勝手にしろ」

「うん。勝手にする~」

 

俺も寝ぼけてたんだな。そんな回答しちまって、数分後にその危険性・・・というか、どんなチームが出来上がるか予想がある程度ついて、慌ててツナを探したが見つからず、その日の夜にツナが名簿を書いて戻ってきた。

 

「リボーン。一応、俺のチームに参加しても良いよって人外(にんげん)集めてきたよ」

 

その名簿は明らかにおかしかった。

沢田綱吉(ボス)・ディーノ・獄寺隼人・山本武・榎本貴音・忍野扇・安心院なじみ

 

「ツナ?」

「ん~? あ、それはあくまで仮定だから。でも、やるからには勝たないとね。リボーン?」

「そ、そだな」

 

アイツの男のくせにママンに似た女顔で妖艶な笑みを浮かべられて、俺は思わず頷いちまった。ま、別に呪いを解こうとは思ってねーし。楽しめればそれでいいんだけどな。・・・ツナがうつってきてやがる。

 

Sideout

 

 

日曜の朝―――

 

ランボの笑い声が響くそんな朝。ツナは不機嫌そうな顔で身体を起こす。窓の外に、ランボ・イーピン・家光の三人が見えた所で、ツナは合法的な方法を思いついた。

 

「次は屋根にタッチして帰ってくるぞ!」

「おう!」

「パパサンガンバル!」

「んー、んー、んー・・・・・・。

 

 

朝食もまだ食べてないしなあ。大体俺、あのぐうたらな父親、そもそもあんまり好きじゃないんだよなあ―――いやもう、はっきり言っちゃえば嫌いだし。もう大嫌い。帰ってきたからって声かけるような仲じゃ、そもそもないんだよ。たとえ正面から目が合っても無視するくらいの気持ちがあるだろう。

 

でもまあ、そうだな、血の繋がった息子として、父親相手にそんな態度を取るのも器がちっちゃいか。嫌いな相手ともコミュニケーションが取れてこそ、一人前の男だろう?

 

あくまでも親に接する際の当然の態度として、ちょっとだけ相手をしてやるさ。いやもう本当。全然会えて嬉しくなんかないけど、せめてその振りくらいはしてやるのが最低限の礼儀って奴かな?

 

ふっ、俺も甘い」

 

ツナは服を一瞬で脱ぎ捨て着替えると、クラウチングスタートの姿勢を取る。

そして。

 

一気にかけ出した。

 

「帰ってきたのか、クソ親父ぃぃぃいいいいいいいいいい!!!」

「ぐぼああああああ!!!」

「遭いたかったぞ。このヤロォぉおおおおお!!」

 

ツナの全力の突っ込みと払いが炸裂し、家光の身体がクルクルと宙を舞う。

 

「うおっ?! おおっ?! はああああ!?」

「ああ、もう。全然帰ってこないからさぁ、どっかでおっ死んでんじゃねーのかって気が気じゃ無くってー。だからさぁ、もっと殴らせろ、もっと投げられろ目を回せ!」

「その辺にしといてやれ、ツナ」

「・・・・・・うぃ」

 

宙を舞っていた家光の身体が、庭に叩き付けられた。

 

「グハッ!?」

「ふぅ。スッキリした。さあ朝ご飯だ朝ご飯♪」

「父親の扱いが酷くないか息子よ・・・」

「・・・じゃあ、もっと父親らしいことしてくれる?」

「グッ」

「父子で戯れるのも良いけど、今からお客様がいらっしゃるんでしょ?」

「日曜の朝から? 非常識だなぁ・・・」

「仕事の仲間だ! 船が夜中に着いたものでな。お前達、来なさい」

「はい! ご無沙汰しています」

「よお、コラ!!」

「うわっ。勢揃いしてる。CEDEFとコロネロ・・・って、コロネロの代理が・・・へぇー。ってラル・ミルチ小さい!?」

(呪いのことを理解していないのか・・・?)

 

いや、まあ知ってたけど。と言う言葉は飲み込んで、ツナはまさに今知りましたという演技をした。

 

「よろしくな、ツナ」

「うん。よろしく~」

「歓迎するぞヘボライバル」

「倒しに来たぜクソライバル」

「負けると分かって良く来たな」

「負け戦はしねーぜ、コラ!!」

「おーい。痛くないのかーい?」

「あなた・・・」

「ああ。他の仕事仲間も紹介するぞ。ガタイのいいのがターメリック」

「こんにちは」

「メガネの女性がオレガノだ」

「初めまして」

「仕事の現場では、バジルとオレガノが肉眼で石油を発見し、オレとターメリックがスコップで石油を掘り、コロネロとラルがバケツで運ぶってわけだ」

「シンプルね」

「母さんに間違った知識を与えるな!! ・・・コホン。まず、石油を掘る仕事。と一言に言ってもそれぞれ別の役職が担当しています。

まず、油田の存在の可能性が高いと思われるサイトを、最新科学的知見とデータ分析、電気検層、人工衛星による地質写真、人工地震探査、地上の目視探査、海上からの音響探査などで特定しなければいけません。この全ては地質学者の仕事で」

「もういいだろツナ。博識なのは伝わったから、重箱の隅をつついてやるな」

「俺がつついてんの、結構真ん中辺にあるおかずなんだけど」

「言ってやるな。あれで本気なんだ」

「もうね。了平さん並の誤魔化し方だと思うよ。だって、あの人流れ星にあたって怪我をしたとかいって誤魔化してるんだぜ?」

「言ってやるなって」

「でな、奈々。しばらくバジルとコロネロを家に泊めてやって欲しいんだが・・・」

「はいはい。わかりました」

「え。嫌な予感しかしない」

「家族が増えるよ」

「おい馬鹿やめろ」

「やったねツナ君」

「やめろって言ってんだろ!?」

「相変わらず賑やかで楽しそうだね♪」

「・・・白蘭」

「へぇー。ここが綱吉クン家かー」

 

キョロキョロと家を見る白蘭に、ツナは親のような目線でくってかかる。

 

「来るなら来るで、連絡ぐらい入れろ! 何も用意してないじゃねーか!」

「安心してー。ケーキ買ってきた♪」

「紅茶入れるから座って待ってろ!」

「はーいっ」

 

家の中に入りながらツナが指をスナップすると、庭にテーブルと椅子が出現した。

 

「ケーキ並べておくよー」

「はいはい」

 

ツナは白蘭の突然の行動に、多少ムカついてはいるようだが「まぁ、仕方ないか」といった風に流していた。

 

「・・・で? 何でまた、突然俺の家を調べて尋ねてくるような真似をしたんだよ」

「いやー。ほら、代理戦争」

「・・・なるほど。大空のアルコバレーノの代理か。全く、いつも突然現われるんだから。せめて前日には連絡を入れろっての」

「今回は連絡したんだけど?」

「・・・・・・・・・。午前三時・・・。どこが前日だ!? ホントついさっき入れてるじゃねーか! 五時間前を前日というのかお前は!!」

「寝る前が前日でしょ?」

「ちっげーから。お前デジタル式の時計を買ってよく見てみろ! 午前零時ちょうどで日付が変わるだろうがっ!」

「そう言えばそうだね♪」

「・・・・・・。ハァ。で? お前のことだから、ただ俺に「僕らも代理戦争に参加するから~」って言うことを伝えに来たわけじゃあないんだろ? ・・・つか、美味いなこのケーキ。どこの?

イタリアの有名なとこの。まぁ、ユニちゃんは用があるとかで日本に来るのはギリギリになるみたいなんだ。で、僕にアイディアがあるんだ」

「読めた。白蘭、お前の次のセリフは」

「「同盟組もうよ。綱吉クン♪」だ」

「・・・ハッ。もう、綱吉クンはそうやってすぐ人のセリフを先読みするんだから」

「だったらもうちょっと上手く話の流れを掴ませないようにすることだな」

「どうすりゃいいの?」

「先読みさせないコツは一つ。流れを乱せばいい」

「へぇー」

「そういや、ブルーベルは元気か?」

「うん。元気さ。君に会いたがってたよ」

「俺、なんかしたっけ?」

「相変わらずの朴念仁だね~」

「ふむ。まぁ、受けるか否かの返答はまた後日。俺のチームのメンバーと話し合いをしてからにするよ」

「うん。そうして。僕は首を長くせずに待てるから」

「逆に首を長くして待つことを誰が出来るんだよ」

「骸君とか?」

「あぁ~。幻術組ね。とりあえず、今日はもうお開きと行こう」

「そうだね。それがいい」

 

白蘭は消えるような様子で、ツナは食器を片付けにそれぞれ解散した。



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