雷魔法少女のヒーローアカデミア (ヴィヴィオ)
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1話

 

 

 04:00

 

 

 身体に高圧電流を流されて起床。拘束された身体が暴れ回る。その後、薬を注射。身体を開かれ、壊されて再生を確認され改造される。

 

 

 07:00

 

 

 朝食。口に液体を流し込まれる。同時に高圧電流を流される。

 

 

 08:00

 

 戦闘訓練のバトルロワイアル。四方八方から銃撃など様々攻撃にさらされる。雷を使って必死に耐える。生き残るためには頑丈さより速さが大事。あたらなければどうということがない。

 

 

 15:00

 

 

 戦闘訓練で生き残ったら、死んだ者達の身体を植えつけられる。適応できなければ死んで同じ。気付けば朝になる。

 

 

 以下エンドレス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのはずだった。でも、その日は違った。警報が鳴り響き、研究所が慌ただしさを増していく。研究員達は逃げる準備をしている。私は姉妹達と一緒に指示を待つだけ。

 

「教授、どうなさいますか?」

「奴が来るまでに適応できるか?」

「可能かといえば厳しいかと」

「やるんだ。別に死んでも構わないからね。それと私は足止めをしてくるよ」

「了解しました」

 

 教授と呼ばれた人が去り、私は、私達は実験体としての役目を果たす。今回の実験は私達の最後の実験になるようだ。

 

 

 

 

 

 気が付けば身体が痛い。実験は終わり、生き残ったようだ。身体を起こして周りを確認する。ガラス越しに白衣の男が興奮している。ガラスには私の姿も写っている。

 長い金色の髪の毛に変化した赤い瞳。相変わらずの小さな身体。何も着ていない。

 

「気分はどうだね、684号」

「……問題、なし……」

 

 身体が動くか確かめる。でも、なんの問題もなく動く。雷も出せるし、大丈夫。

 

「ふむ。流石はかの者の素体を使っただけはあるか。今回、君に植えつけた"個性"は自己進化だ。前回と前々回で、自己増殖と瞬間再生で君の力はより強靭になった。他にも力を発現するかもしれない。何せ君は683体分の力を持っている訳だからね。これも私の"個性"、人体融合の力が大きい。まったく、この力が私自身にも使えれば……」

 

 身体を確認したので、黒いボディースーツを着ていく。

 

「ああ、外に侵入者がいる。敵は君が生み出された目的そのものだ。しっかりと殺してくるがいい」

「ん」

 

 外にでると激しい戦いが行われていた。教授と金髪の大男。

 

「投降してくれないかね?」

「断るよ。ああ、丁度いいのがきた」

「?」

 

 不思議がっていると教授が私の首を掴んで彼にみせる。

 

「幼気な少女を人質にとろう。これで動けないだろう?」

「君って奴は……」

「大人しくするがいい」

「いやだね」

 

 瞬時に接近した大男は教授を殴り飛ばして、私を抱える。教授は視線で私にやることを伝えてくる。だから、触れている大男の脇腹を雷の剣で突き刺して破壊する。

 

「なっ!?」

「さて、オールマイト。このくらいで私は失礼するよ。君の相手は彼女がしてくれる。彼女は私から君へのプレゼントだ。精々、楽しんでくれたまえ」

「まっ」

「ああ、684号。命令だ彼を殺せ」

「はい」

 

 雷の剣を持って突撃する。相手はすぐに対処してくる。

 

「やめっ、やめないかっ!」

「命令、された」

「ちぃっ!」

 

 でも、戦っていると私の方が弱いことがわかる。でも、何度も身体を壊されても大丈夫。だって、再生するから。

 

 

 



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2話

 

 

 

 殴られるのは痛いので回避する。しかし、風圧だけで吹き飛ばされる。相手の拳の速度は銃弾並み。なら、こちらはそれよりも速く動く。私の雷を使えば速く動ける。教授は電磁誘導とかなんとか言っていたけれど、それを使えばいい。

 

「止めるのだ少女よ! 身体が持たないぞ!」

 

 凄い風圧で身体が軋む。それでも瞬間再生で傷が治るので大丈夫。離れては接近して、斬っては逃げるを繰り返す。周りを縦横無尽に移動する。

 

「致し方あるまいっ!」

 

 ダメージを無視して突撃してくる。それに対して雷の剣を投げて対応する。でも、相手は剣が刺さろうが、気にせずにこっちにやってくる。すぐに逃げて離れる。でも、追ってくる。空から雷を降らせても気にせずにやってくる。速度は私の方が上だけど殺さないといけないから、逃げきれない。

 だから、空へと移動してから最大速度で突撃して剣を突き刺す。私も死ぬだろうけど、運が良ければ生き残れる。肉を貫く感触がした。

 

「捕まえたぞ、少女よ」

「っ!?」

 

 掌から腕に剣を突き刺し、私の腕を掴んでいる。離れようとして電撃を放ちながら、大きな腹を蹴ってなんとか逃げようとするけれど離れない。そのまま押し倒されて動きを封じられる。もう、動けない。私もこれで終り……後は殺されるだけ。でも、簡単には死ぬことはできない。

 

「もう大丈夫だ。後は私に任せてくれ。君の安全は私が保証する。だから、大人しくしてくれないかな? できたら子供を傷つけたくない」

「殺さないの?」

「殺さないさ」

「私は殺そうとしたのに?」

 

 殺し殺されるのが当たり前。負けたら殺される。それだけ。でも、安心する。

 

「うむ。なにせ私はヒーローだからな。君のような子供を助けるのも私の使命だ」

「助ける……?」

「そうだ。だから安心するがいい」

 

 向こうの方からサイレンが聞こえてくる。すぐに誰かがきて私に手錠を嵌めていく。

 

「彼女のことを頼むよ」

「はい。すぐに精密検査をします。それに施設にも派遣していますので、すぐに病院へ……」

 

 それから、複数の人に囲まれながら研究所みたいなところに搬送された。ここでも実験みたいなことをされるの?

 

 そう思っていたけれど、全然痛いことはされなかった。血を抜かれて薬を飲まされたくらい。後は何かの力で調べられたくらい。

 

 

 

 

 

 オールマイト

 

 

 

 二週間。私の怪我も治って彼女についての話を聞きに行った。

 

「彼女の検査結果はどうだったんだね?」

「薬物反応有り、人体改造の形跡有り。それに施設に残された資料から彼女はクローンのようです」

「クローンか。禁止されているはずだが……」

「はい。人体実験もかなり行われていたようです」

 

 渡された資料を読んでいくと、予想以上にやばい内容だ。検査結果もかなり酷い。顔から下は継ぎ接ぎだらけで、崩壊と再生を繰り返している。しかし、細胞の適合は比較的高いようだ。そもそもが同じ細胞だったようだから、それも納得だ。

 

「人工の命とは……彼女は助かるのか?」

「身体は大丈夫です。崩壊する度に再生し、強靭な肉体に生まれ変わっているようです」

「そうか。それならひとまずは安心か。それで、彼女の様子は?」

「最初は暴れたりもしましたが、今は大人しいです。実験の内容も喋ってくれます」

「それでこの資料か……」

 

 毎日高圧電流を流され、殺し合いをさせられる。それも自分と同じ顔、同じ人とだ。

 

「さて、オールマイト。貴方を呼んだのは他でもありません」

「なんなんだ?」

「彼女のDNAです……」

「ちょっ!?」

 

 渡された資料は驚きを禁じ得ないものだった。

 

「やってくれたな、オール・フォー・ワンっ!」

 

 これ、あっちはどうなるんだ? 先生とかに相談しないと駄目だな。うう~む、これはどうすればいいのだろうか? とりあえず、間違いないかもう一度確認してもらう。結果を聞いてから急いで先生の場所へとやってきた。そして、話し合いと実験の結果、どうやらあちらの方は問題ないようだ。それは良かったが、はたして彼女をどうするかという問題が浮上した。

 

 

 

 

 



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3話

 

 

 

 捕まってからの生活は今までと全然違った。痛いことをされないのはとても楽で、殺し合いもしなくていい。閉じ込められている部屋も、牢屋じゃなくて普通の部屋で、テレビや本、ぬいぐるみとかいうのもいっぱいある。それに服もいっぱい用意してくれている。ボロ布一枚だけじゃなくて、ワンピースとかをもらった。

 でも戦闘訓練をしないとむずむずするので身体は動かして、いっぱい雷を集めて自分の身体に流していく。もう、これがないと落ち着かない。だから、部屋の中で雷を扱う。終わってからは勉強を教えてもらったり、勉強をしていく。

 

「お邪魔しますね。今日の診察の時間よ。お薬はちゃんと飲みましたか?」

「はい、飲みました」

 

 検査が終ったら、お菓子をもらってから文字の読み書きの練習する。読み書きの練習をしていると、部屋の扉が開いて目標が入ってきた。

 

「や、やぁっ! こんにちは。私はオールマイトだ」

 

 近付いて斬りかかろうとするけれど、すんでのところで止める。もう、戦う理由はないから。彼はテーブルを挟んで私の対面に座りました。

 

「……こんにちは……」

「気分はどうだい? 不便なことはあるかな?」

「平気、です」

「そうか。実は……いや、その前に名前はなにかわかるかな? 資料にはないとのことだったが……」

「684号」

「それは番号だろう」

「それしかない」

「じゃあ、つけないとな。これから生活するうえで必要になるからね。何がいい?」

 

 名前。なにがいいかな? 悩んでいると、目標……オールマイトが持っていた資料があった。そこには色々と文字が書いてある。そこから適当にとってみる。

 

「F,a,t,e?」

「フェイトかな?」

「ん、それでいい」

「では、今日から君はフェイトだ」

「はい」

「フェイト君にはこれから私と暮らしてもらう。というかだね。私は君の父親になる」

「パパ?」

「そうなる。正確には遺伝子的に私の娘になるので、引き取ることにしたんだ。それとフェイト君が暴走した時に止められるのは私を含めたトップヒーローくらいだろうし、保護した私が担当することになった。わかるかはわからないが、これが遺伝子の証明書だ」

 

 見せられた書類を見てもちんぷんかんぷん。でも、図形を分解してみせてもらったら半分が同じということがわかった。私達のオリジナルがそうなんだろう。

 

「という訳で、これからよろしく頼むよ」

「ん、わかりました」

「さて、話にも聞いていたと思うが、殺すことは一切禁止だ。"個性"を使うのも出来れば控えて欲しい」

「それは嫌です」

「なら、使う場所を限定する」

「はい。それならかまいません」

「じゃあ、他の事はおいおい決めていこう。私も子育てをしたことがなくてね。というか、娘を勝手に作られているなど思うはずもないからね。だが、君は確かに私の娘だ。だから、私がきちんと育てる」

「はい、パパ」

「うむ」

「ママは誰ですか?」

「ママは居ない。既に亡くなっているからね。すまないが、我慢してくれ。なに、こう見えても家事は得意だ」

「はい」

 

 色々と教えてもらって、必要最低限のことができるようになったらここから出してもらえるらしい。道徳の勉強やカウンセリングとかも行っていくことになるみたい。

 

 

 

 半年後、私は試験に合格して施設から外に出ることができた。黒色のワンピースと帽子を被ってオールマイト……八木俊典(やぎとしのり)、パパと一緒に外に出る。空から太陽が降り注ぎ、眩しい。

 

「しばらくは保護観察となる。だから、監察官とも一緒に生活することになる。まあ、なんだ。流石に女の子のことは全然わからないのでね。女性の保護観察官を手配しておいた」

「私は中島銀河。よろしくお願いしますね」

「はい。フェイトです」

 

 綺麗な女の人が私の監察官みたい。動きからみて、この人は強い。

 

「では、行きましょうか。とりあえず、衣服の買い物からでいいですよね」

「ああ、お願いします。家具とかの手配はすんでいるのですが、そちらの方は全然なので」

「ぬいぐるみとかもいいかもしれませんね」

「お任せします。お金はあるので」

「じゃあ、命一杯おめかししないとね」

 

 それから、お店に連れていかれて着せ替え人形にされた。最終的にゴスロリのワンピースとかいうのを何着か買ってもらった。あと、動きやすい服や下着も買ってもらった。

 

「いい時間になったので、食事にしましょうか。お世話になったので奢りますよ」

「いえいえ、経費でおちるので気にしないでください。フェイトちゃん、何が食べたい?」

「えっと、なんでもいいです」

「遠慮しなくていいからね。好きなものをいいなさい」

「好きなものがわからない……ごめんなさい」

「いやいや。どうすればいいかな?」

「そうですね。施設で食べた中で、どれが美味しかった? また食べたいと思った?」

 

 出されたご飯でまた食べたいと思ったのは二つ。

 

「黄色いへんなのと、お肉の塊」

「えっと、カレーライスとハンバーグですね。お肉の塊というのはハンバーグです。ステーキやカツとかでてないですし。じゃあ、両方をあわせたのにしましょう」

「っ!? いい、の?」

「大丈夫ですよね?」

「ああ、構わないよ。そうだね、じゃああそこのレストランでも入るか」

 

 レストランとかいうところで、食べたのは凄く美味しかった。とっても楽しい気分になって、顔が綻んでいく。すると頭を撫でられた。嫌じゃないのでされるがままになる。

 

「ところで、渡された本は読みましたか?」

「はい。10冊とも読みましたよ」

「では、次の追加の本を手配しますね」

「子育ては大変ですね」

「ええ。ですが、頑張らないといけません」

「この子のような娘を生み出さないために頑張らないとだめですね」

「はい」

 

 ご飯を食べてから、パパと手をつないで車で向かう。途中で寝てしまった。到着して起こされた場所は山奥のログハウスで、周りには民家なんてない。

 

「ここが今日から私達の家だ」

「山の中ですか?」

「ごめんね。保護観察が始まったばかりのフェイトちゃんをまだ街に居させる訳にはいかないの。フェイトちゃんを奪還しようと襲ってくる人達がいるから」

「警護は大丈夫かね?」

「はい。軍とヒーローの方から護衛を出しています。オール・フォー・ワンは危険ですから、奪還されるのはなんとしても防がないといけません。お二人は必ず守ります」

「了解した。そちらは任せるよ。私ももっと傷が癒えたら手伝えるのだが……」

「貴方もヒーローの方と聞いていますが、その負傷ではまだ無理でしょう。こちらに任せてください」

「そうだね。っと、どうやらお姫様はおねむのようだから、中に入ろうか」

「ん……」

「そうですね」

 

 家の中に入って、ベッドに案内される。そこで着替えさせてもらってすぐに眠る。次に起きたら部屋は様変わりしていた。ぬいぐるみが沢山置かれていて、服とかがクローゼットに収められている。ウサギのぬいぐるみを抱いて、目を擦りながら部屋から出て、いい匂いのする一階に降りる。するとパパがエプロンをつけてご飯を作っていた。

 

「おはよう。顔を洗っておいで。それから朝ご飯を食べようか」

「ん……」

「洗面所はこっちだ」

 

 連れていってもらって、やり方を教えてもらいながらこなしていく。それから、朝ご飯を一生懸命に食べる。

 

「これは箸の使い方も教えないと駄目か」

「まだ慣れないです」

「おいおいでいいからね」

「はい」

 

 食事が終ったら、着替えて訓練を行う。

 

「ああ、電気を放出するならバッテリーが用意してあるからそっちに頼むよ。それを使わせてもらうからね」

「わかりました」

 

 家の裏にある発電機のバッテリーに沢山の電気を入れていく。その後は見守られながら戦闘訓練を行っていく。

 

 

 

 

 

 




中島銀河はアレです。ギン姉です。なのはの時系列、年齢などは無視しております。なのはキャラはほぼ出さないと思いますので。出すとしてもマテリアルのシュテルかな~。なのはじゃないのかと言われると、私がシュテルの方が好きだからです。


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4話

 

 

 

 04:00

 

 

 起床。隣で寝ているパパを起こさないようにベッドから出て、寝間着から用意しておいた服に着替える。白いシャツとスパッツを着てから洗面所に移動する。そこで眠い顔を洗ってからタオルで拭いて、長い髪の毛を後ろで二つに分けてリボンを結ぶ。

 台所に移動して、果物を一つ食べてからお薬を飲んでリュックサックにタオルとタッパー、ロープ、植物図鑑、ペットボトルを入れてから外に出る。夜明け前で、周りは暗いけれど大丈夫。まずは柔軟体操をして、身体を解す。注がれる視線を無視して、森に向かって走る。

 

 

 05:00

 

 

 森に入った私は地面を蹴って勉強した理論をもとに電磁誘導を使って木々の間を高速で走り抜ける。"個性"を使って木の側面を蹴ってどんどん加速していく。

 

「ふぎゃっ!?」

 

 速度と目算を見誤って腕をぶつけて、木を粉砕しながら地面に転がる。腕には木の破片が刺さって血がいっぱいでてくる。痛いのを我慢して破片を抜いて超再生を発動する。すると傷口が逆再生するかのように綺麗に戻る。次に失った血を戻すために自己増殖の"個性"を使って血を増やす。

 

「う~再開……」

 

 木々を蹴って加速を再開する。移動先の選定と指定、電磁誘導を使って移動しながら情報を集める。考えながら行動することで対応力を身に付けていく。

 

「難しい……やっぱり、あれを試してみよう」

 

 本で読んだ方法を試す。神経の内側と外側の電位差を利用することで身体を動かす電気信号をだしているって載ってた。だったら、もっと速く、高出力にしたらもっと速く動けて反射神経もよくなるはず。

 

 

 06:00

 

 

 試したら、気づいたら地面に寝ていた。周りをみると血の海。肉片もみえる。身体が耐え切れずに吹き飛んだみたい。超再生が発動したみたいだから、自己進化も発動させて耐えれる肉体に作り替える。

 何回か試して気絶から回復したら、荒い息遣いが聞こえてきた。目を開けると目の前には大きな茶色の物体。それが私の上に載って噛みつこうとしていた。だから、腕を口の中に突き入れて雷の剣で脳を串刺しにして焼き斬る。巨体が倒れてくる前に電磁誘導を使って無理矢理に脱出する。身体のあちこちが地面で怪我をしたけれど平気。傷を治してから殺した熊の頭を斬り落として、焼いた部分に手を入れてえぐり取る。沢山の血がでてくるけれど、気にせずに身体を縛って木の上に電磁誘導で飛び上がる。木にロープを通してから飛び降りて逆さ釣りにしてから木にしっかりと結んでおく。

 次に森の中を移動しながら図鑑を確認しつつ、山菜を取ってリュックサックに入れていく。そのまま山頂にある湧水の場所でお水をペットボトルに入れて、リュックサックに仕舞う。

 今度は小川を下ってそれなりに深く、広くなっているところに到着したらリュックサックを置いて、そのまま川に入る。首まであるところまで進むと川の勢いに逆らってしっかりと立つ。その中で身体を動かして身体を鍛えていく。同時に血も汗も洗われて丁度いい。

 

 

 08:00

 

 

 川の中で修行をしてから、ゆっくりと身体を押さえて精神を集中する。それから自然と一体になるような感じで待ちながら通った魚を河原まで弾き飛ばす。10匹くらい取れたら外に出る。濡れた服が肌にひっつく。魚をタッパーに仕舞ったら、電磁誘導による高速移動を行って水滴を弾き飛ばしていく。

 熊を倒したところまで移動して、降ろした熊をロープを使って引っ張って家に戻る。

 

 

 09:00

 

 

 家に戻ると、家の前でパパが食事を作って待っていてくれる。

 

「これはまた大物を仕留めてきたね」

「大量です」

 

 食材を渡して、私は椅子に座ってテーブルにある果物を食べ、飲み物を飲む。パパは朝食をすぐにだしてくれるので、それを食べる。その間にパパが熊を捌いて、川魚を焼いてくれる。

 ご飯を食べていると森の方から息も絶え絶えな人達がでてくる。彼等は私の監視と護衛の人。

 

「遅いぞ」

「無茶言わないでくださいって。無茶苦茶速いんですから」

「まあ、ご苦労さん。ほら、水と食事だ」

 

 この山自体を買ったらしいので、敷地内では自由にしていいと言われている。でも、外に出ることは駄目で、監視用の装置が沢山取り付けられている。(ヴィラン)に利用された人を更生させる施設にも使うらしいので、私が第一号になる。

 

 

 10:00

 

 

 朝食を終えてから、ワンピースに着替えて勉強をする。パパや護衛の人達に勉強教わる。基本的にパパに教わっていく。

 

「さて、歴史についてだ。復習だが、わかるか?」

「中国の軽慶市(けいけいし)で発光する赤子が生まれたことを始めとして、人類の八割以上が超人となったこと」

「そうだ。そして、ほとんどの人が特殊な力、"個性"を持つ超人社会を持つ超人社会となった今、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が脚光を浴びている。それが私の職業でもある、ヒーローだ。悪行を行う(ヴィラン)を倒し、人々を救うことを役目としている。フェイト君が居た場所も(ヴィラン)により運営されていた。人体実験などもってのほかだ」

「……私達は、生まれてきてはだめでしたか……?」

「そんなことはない。生まれてくる命や子供に罪はない。悪になるように強制した(ヴィラン)が悪い。だから、フェイト君はなにも悪くないよ」

「ん」

 

 パパが抱きしめて撫でてくれる。それだけで不安が消えて温かい気持ちが溢れてくる。

 

「じゃあ、私、パパみたいなヒーローになる」

「あ~それは」

「パパの代わりになる。だって、その傷……」

「いやいや、大丈夫だよ。だから、フェイト君はフェイト君が望むように生きてくれ」

「ヒーローになる。これは私の願いです」

「やれやれ。それじゃあ、もっと厳しくいかないとな」

「ん」

 

 お勉強をしてヒーローになるために頑張る。

 

 

 

 12:00

 

 

 昼食とお昼寝。

 

 

 13:00~18:00

 

 

 お勉強。社会についてや道徳、"個性"の強化方などを学ぶ。私は電気や身体のことについて色々と学んでいく。

 

 

 19:00

 

 

 食事とお風呂。パパと一緒に入って、頭を洗ってもらう。最後は湯船でゆっくりする。

 

 

 20:00

 

 

 録画されたテレビやアニメをみる。

 

 

 21:00

 

 

 色々と話して欲しい物を伝える。

 

「日本刀が欲しい」

「日本刀っ!?」

「ん。私に必要な武器です。あと大鎌とかも使ってみたい」

「そうだね……じゃあ、模造品を手配しよう。流石に本物はまだ駄目だ」

「はい」

「まあ、訓練用の道具も色々と作るか」

「やった」

「しかし、遊んで欲しい部分もあるから、訓練と遊びが同時にできるアスレチックを作るか。っと、私はまだやることがあるから先に寝ていなさい」

「はい。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

 

 ベッドに入ってぬいぐるみを抱きながら眠りにつく。眠ってる最中に自己進化で肉体を改造するのも忘れない。

 

 

 

 04:00

 

 

 起床。

 

 

 

 基本的に以下エンドレス。たまに病院にいくぐらい。それとパパが仕事でいなくなる日は銀河さんや他の人がきてくれる。今までとは違って充実していて幸せな感じがする。

 

 

 

 



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5話

 

 

 八木俊典(オールマイト)

 

 

 

 作ったはずのない血が繋がった娘ができて、一年が経った。フェイト君は精神的に順調に育っている。肉体面では傷は消えて綺麗になっているが、成長はしていない。それに少しずつだが、薬を大量に飲まなくてもよくなってきている。

 しかし、娘は可愛いもんだ。親の気持ちがわかる。問題はマジで賢くてもう教えることがほぼないってことなんだよね。戦闘訓練に付き合ったり、訓練メニューを決めてあげるくらいだ。もっとも、それもすでに必要ないのだろうが。

 

「おや、エンデヴァーじゃないか」

「オールマイトか」

「君の所にも息子が居たよね」

「ああ、そうだ。貴様を超える息子がいる」

「奇遇だね。私のところにも私を超える娘が居るよ」

「ふん。犯罪者の小娘か。良く引き取ったものだ」

「血が繋がっているし、それに子供に罪はないさ」

「貴様を襲ったのだろう」

「命令を聞く様に教育されていたからね。それで、子育てについて色々と聞きたいんだけど……」

「誰が教えるか」

「あっ、待ってくれよ!」

 

 エンデヴァーはさっさと帰ってしまった。仕方ない。こちらも報告書と申請書を出してさっさと帰ろう。フェイト君が待っているしね。

 

 

 政府施設から出て待ち合わせの場所まで移動する。しかし、悲鳴が聞こえてきたのでヒーローとして、隠れてマッスルフォームへと変化して救助へと向かう。(ヴィラン)が銀行強盗をおこなっていたので、突入して押さえる。捕まえた犯人を引き渡す。

 フェイト君のところに向かおうとすると、今度は火災が起きて救助活動を行う。全てを終えてフェイト君の待つ喫茶店へと移動する。そこでは足をブラブラさせながら、暇そうに待っていた。隣には中島君が居る。

 

「はぁはぁ……すまない、待たせたね」

「……遅いよ……」

「まあまあ」

「すまないね。中島君もありがとう」

「いえいえ。それじゃあ、私はこれで失礼しますね」

「ああ、ありがとう」

「またね、フェイトちゃん」

「ばいばい」

 

 さて、二人っきりになったので頑張って機嫌を取らないとな。まあ、どうにかなるだろう。

 

「さあ、買い物に行こうか」

「買い物?」

「ああ、そうだよ。欲しい物はあるかな?」

「なんでもいいの?」

「ああ、いいよ」

「じゃあ、剣術を習いたい」

「剣術か。どちらかというと刀を使うものだよね」

「そうだよ」

 

 今も模造刀で練習しているんだ。刀術の方がいいだろう。確か、フェイトに合いそうな技術を持ったヒーローがいたな。ニンジャマスターか、彼がいいだろう。確か、今らは来日していたはずだ。ヒーローではないが、戦闘能力はトップクラスの一人だ。

 

「服はどうだい? 欲しいのあるかい?」

「えっと、あるよ。ヒーロースーツが欲しい」

「それはヒーローの資格を取らないと駄目だな」

 

 法律で禁止されている。ヒーローの衣装を勝手に作って着るのは禁止されている。コスプレは特別な会場では認められているがね。

 

「じゃあ、丈夫で動きやすい奴……あっ、水着が欲しい」

「水着かい?」

「うん。何時も川に入ってるから」

「それもそうか。他にも色々といるだろう」

「うん……あ、あれ食べたい」

「アイスか。まあ、いいよ。買っておいで」

「うん」

 

 フェイト君と一緒にアイスを食べながら、本屋へと向かう。そこで大量の本とパソコンなどを買っていく。これらはフェイト君の勉強のために必要だ。

 

「ああ、携帯も買わないとな。好きなのを選ぶといい」

「じゃあ、これ……」

「高いのでもいいから、防水と性能がいいのを選びなさい。あと、頑丈で電気の"個性"に対策をされた特別仕様をね」

「そうだね。すぐに壊れちゃうし」

「ああ。これなんかはどうだい?」

「可愛くない」

「そうか……うん。じゃあ、これは?」

 

 猫のスマホを見せると、気に入ったようで嬉しそうにしている。携帯を購入してレストランへと移動して食事を行う。その後は公園を散歩してからマッスルフォームでフェイト君をかついで帰る。途中でトゥルーになって移動する。護衛についている者達は私の正体を知らないからね。

 

 

 

 



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6話

前の話に少し追加


 

 

 

 

 今日はアスレチックで訓練してから、模造刀を使って練習する。鞘に入れた模造刀に電流を流して超電磁砲の原理で抜刀する。高速で抜き放たれた模造刀は空気の焼ける音と臭いと共に目標を斬り裂く。

 

「ほう、確かに才能はありそうだ」

「だろう?」

 

 声が聞こえて後ろを振り向くと、パパと一緒に金髪碧眼で顔に斬り傷がある男性。腰に1本、背に6本の合計7本の軍刀を持っている。服装は軍服。その隣では茶色の髪の毛をした私ぐらいのショートヘアの女の子もいる。私が見ているのに気付いたのか、頭を下げてきたので私も下げる。

 

「お父様、お話をしてきてもよろしいですか?」

「ああ、構わない。私はコイツと話しをしている。好きに行動するといい」

「ありがとうございます」

「やれやれ、君は娘に対してもその態度か」

「当然だ。娘だからこそ、厳しく鍛えねばなるまい。もっとも、剣の才能はなく、別の才能があるのだが……」

「君なら才能など関係ない。努力と気合で乗り越えられるといいそうだけどね」

「当然だ。才能などスタートにおけるハンデでしかない。たゆまぬ努力と精神力で限界を超えればいいだけだ」

「HAHAHAHA、確かにその通りだ。Plus Ultra(もっと先へ、もっと向こうへ)だね」

「そうだ。我等に歩みを止めることは有り得ない。過去を振り返らずにひたすら前へ進むこと。後の人々が我等の跡に続くのだから」

 

 あちらを置いて、こちらにやってきた女の子。彼女は私の元へとくるとお辞儀をしてから挨拶してくれる。

 

「こんにちは。私はシュテルと申します。あちらにいる人の娘です」

「私はフェイトです……」

「はい、聞いています。これから頑張ってくださいね」

「え?」

 

 シュテルは私の肩を掴んでそんなことを言ってきた。何を頑張るの? 真剣な表情だから、本心から言っていると思う。

 

「お父様は加減という言葉を知りませんからね」

「えっと……」

「刀の使い方を教えるということでしたが……」

「あっ、パパにお願いしました」

「はい。日本の"英雄"であるオールマイトのお願いということで、EUの"英雄"たるお父様がきました。教師としては……ちょっと、いえ、かなり問題がありますが、頑張れば実力はつきますよ」

 

 つまり、あの人はパパと同じクラスの人ってことだよね。そんな人に教えてもらえるなら、確かに実力はつきそう。

 

「そうなんだ」

「はい。まあ、死ぬかもしれませんが」

「え?」

「何度生死の境を彷徨ったことか……」

 

 シュテルが虚ろな瞳でガタガタと震えている。私は彼女を抱きしめて頭を撫でてあげる。

 

「ありがとうございます。大丈夫です、一緒に頑張りましょう」

「うん……あっ、はいだった」

「ああ、敬語はいいですよ。同じ年くらいですし、これから一緒に生活するのですから。私のは教え込まれているだけですから」

「ありがとう。そうするね」

 

 話していると、パパ達も話し終えたのか……こちらにやってきた。

 

「フェイト君、紹介するよ。彼はヴァルゼライド。ヒーローの資格は持っているけど、どちらかというと軍人だ」

「ヴァルゼライドだ。これから俺が君を鍛える。君はヒーローになりたいそうだな。なら、私が最適であろう」

「最適なんだけど、普通は死ぬからね。でも、フェイト君なら生半可なことじゃ死なないからいけると思う。辛かったら止めてもいいからね」

「阿保か。動き出したら止まるな。目指した理想へと邁進する。それこそがヒーローであろう」

「そうなんだけど、子供にはまだ早いよ」

「子供も大人も関係はない。付いて来れないというのなら、置いていくだけだ」

 

 ちょっと怖い。

 

「だが、彼女はすでに素質を持っている。渡された資料から読んだ限りだが」

「こちらとしては幸せになって欲しいだけなんだが……」

「だが、ヒーローになるのならば生半可は許されない。生半可であれば死ぬだけだ。我等はそれだけ恨みを買っている」

「そうだね。確かにその通りだ」

「ましてや、俺を呼んだのだ。諦めさせることも考えているんだろう?」

「うん、まあね」

「パパ?」

 

 パパの言葉は私をヒーローにしたくないと言っている。

 

「いいかい。彼の修行についていければフェイト君はヒーローとしてやっていける。いや、トップヒーローにもなれるだろう。だけど、決して簡単なことじゃない。辛いことの連続だ。それでもやるかい?」

「うん、やる。パパと同じヒーローになる」

「そうか」

「よかったです。これで道連れができました」

「お前はまだそんなことを言っているのか。個で構わんだろう」

「お父様みたいなきち……こほん。狂人と同じにしないでください。だいたい、私は後衛です。一人で(ヴィラン)の大隊を全滅させるなんて……」

「できるであろう。お前の"個性"は広域殲滅に特化している。撃てば生半可な連中なら一瞬で消滅だ」

「だ・か・ら! 殺したら駄目なんですって!」

「それこそ、ヒーローにならなければいいだろう。軍人になれば問題ない」

「お断りです。お父様と比べられて同じ扱いをされるとか、絶対に嫌ですから」

 

 シュテルはシュテルのパパのことが嫌いなのかな?

 

「まあ、先に荷物を片付けようか」

「いや、必要ない。まずは森で訓練する」

「早速っ!?」

「ああ。滞在できる時間は少ないのでな。使い物になるのなら、連れていってもいいのだが……」

「おい、待て。まさか君は娘を戦場に連れていったりしているのかい?」

「そうだが? それがどうした。シュテルは固定砲台として優秀だからな」

「おいこら」

 

 パパ達が言い合いを始めたので、私はシュテルを案内することにした。

 

「こっちだよ」

「助かります」

 

 家の中を案内しながら、互いのことを話していく。

 

「私の"個性"は雷と超再生、あとは自己進化。名前は決まってない」

「三つとは凄いですね。私の"個性"は核融合(

 Nuclear fusion)。お父様の"個性"、核分裂(

 Nuclear fission)の強化型ですね」

「どちらも凄く強力そうだね」

「強力ですよ。とっても。お父様の刀は受けることができませんし、私のは使い方を誤れば地球の一部が確実に消し飛ぶそうです」

「大丈夫なの?」

「コントロールの訓練はちゃんとしています」

「じゃなくて、身体は大丈夫?」

「身体は……結構、危険です。色々とつけたり、薬で押さえたりしているので」

 

 強い力は身を滅ぼすんだよね。私も身体が簡単に壊れていくし。

 

「ですが、痛みとかは耐えられますし、精神力でコントロールしきりますのでもんだいないです」

「凄いね」

「これでもお父様の娘ですから。わからないでしょうが」

「うん。これから知っていくよ」

「はい。私としてはオールマイト、八木さんの方がいいんですけどね。お父様は父親としては失格ですから」

 

 シュテルと話しながら案内していく。外に出ると何故かパパとヴァルゼライドさんが戦っていた。周りの被害が凄い。

 

紅炎(プロミネンス)

 

 シュテルの腕から深紅の炎が放たれると、二人は慌てて飛び退った。

 

「何をする」

「危ないなぁ~」

「それはこちらの台詞です。ここを消滅させる気ですか?」

「意見の相違は戦って決着をつけるべきだ」

「この頑固者をわからせるのには戦うのが……」

「駄目です! だいたい、ここは日本なのですよ。国際問題に発展します」

「ちっ、致し方あるまい」

「ここまでだね。まあ、訓練は頼むよ。私は食事の用意をしてくる」

「わかった。二人共、先ずは基礎訓練だ。ここから山頂まで登って降りて来い」

 

 簡単だけど、どういうことだろう?

 

「ちなみに妨害してきますよ。お父様が」

 

 血の気が引いてくる。さっきのを見た限り、凄く強い。

 

「さっさと行け。10秒だけ待ってやる」

「っ!?」

「行きましょう!」

「うん!」

 

 二人で森へと走る。シュテルは熱を利用してか、空を飛んで高速で移動していく。私も同じように雷で磁力を操作して飛んで行く。

 

「避けてください!」

「っ!?」

 

 瞬時に止まって別のところに移動する。先程までいた場所が斬り裂かれ、大地に裂け目ができた。

 

「この程度は回避するか。ならば、もう少し上げていこう」

 

 信じられないことに一瞬で追いつかれた。明らかに私よりも速い。悔しい。

 

「ああ、別に反撃をしてもいいからな。それとガンマ・レイは切っておいてやるから安心して斬られるといい」

「絶対に嫌です」

 

 シュテルの放った炎をなんでもないかのように斬り裂くヴァルゼライドさん。化け物だよ。二人で攻撃しながら必死に逃げる。でも、気づけば隣に居て腕が斬り落とされる。私には容赦ない斬撃で斬られるけれど、シュテルは刀身とは反対の場所で殴り飛ばされる。

 

「超再生があるのだ、殺さないように加減をしつつ徹底的に追い詰めてやる。なに、オールマイトの娘ならば耐えられるであろう。奴は俺と同じくらいはできるからな」

 

 パパ、それぐらい凄いんだ。あの時、確かに先制攻撃で傷を負わしても負けたし。その前も戦ってたんだよね。先はまだまだ遠い。

 

「フェイト!」

「俺を相手に考え事か。阿保が」

「っ!?」

 

 身体中を一瞬で斬り刻まれて角切りにされた。すぐに再生するけれど、この人やばいよ!

 

「さて、今回は何回殺されるか見物だな」

「消し飛んでくださいっ! フレアっ!」

 

 シュテルが大規模な爆破攻撃をする。その間に私とシュテルは急いで逃げる。

 

「フェイト、私を抱えて全速力で逃げてください。私がお父様を牽制します!」

「了解!」

 

 シュテルを抱き上げて全力で逃げる。後方で無数の爆撃音が聞こえてくるけど、ちらっと見ただけで爆撃の中から無傷のヴァルゼライドさんが走ってくる。避けているのか、斬っているのかはわからないけど、無茶苦茶怖いよ!

 

「いい考えだ。だが、その程度では俺から逃れられると思うなよ」

「フェイト、ごめんなさい! 近距離で爆破します!」

「!?」

 

 近場で爆発されて爆風で吹き飛ばされる。それを利用して即座に加速する。シュテルがブースターになってくれたので、どうにか山頂まで到着することができた。

 

「でも、問題はここからだよね」

「そうですね。如何にしてお父様を突破するかです」

 

 そう。私達の目の前には仁王立ちするヴァルゼライドさんがいる。下手なことをしたら一瞬で斬り殺される。二人でバラバラに逃げたらどうにかなるかもしれないけれど、それはヒーローとして駄目だ。だから、雷の剣を出して対峙する。シュテルも炎を出して戦う意思を取る。二人で連携しながら突撃する。

 

 

 結果? あっさり斬り殺されれて終わりました。

 

 

 

 




変更点
クリストファー・ヴァルゼライド:シルヴァリオヴェンデッタより。我等が光の英雄、総統閣下。現在EU所属の軍人。ヒーロー資格も持っているが、主に国連軍などにも参加しつつ紛争地域を文字通り壊滅させている。娘のシュテルも戦場にひっぱりだしている。"個性"は核分裂。切られれば放射線で汚染され、激痛に苛まれながら相手は死ぬ。また、おそらく超再生や限界突破……覚醒の"個性"を所持していると疑われる。というか、これはこの人の標準装備。
シュテル:クリストファー・ヴァルゼライドの娘になっており、"個性"は核融合。ぶっちゃけ太陽。やったね。デストラクターの名を欲しいままにできるよ! 炎熱関係から太陽に超強化。シュテルは桃色の魔王にも引けを取らない。


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7話

 

 

 

 温かいぬくもりで目が覚める。目の前にはシュテルの顔がある。私とシュテルは抱き合いながら寝ていた。でも、これは正確にいえば夜間訓練で気絶した私達をヴァルゼライドさんかパパがベッドに入れてくれているだけ。後は気温が下がってきたので、互いに抱き合っているだけ。

 

「シュテル、朝だよ」

「ん……おはようございますフェイト」

「うん、おはよう」

 

 ベッドから出て着替えていく。着替え終わったら、外に出て二人で柔軟体操をおこなう。互いに身体を押してから、一緒に今日も頑張る。柔軟体操が終ると、ヴァルゼライドさんがやってくる。

 

「さて、今朝はフェイトに俺が抜刀術を教える。シュテルはオールマイトに体術を鍛えてもらえ」

「よろしくね」

「「はい!」」

 

 マッスルフォームのパパがシュテルの相手をして、私がヴァルゼライドさんに抜刀術を教えてもらう。どちらもとても厳しくてちょっとでも間違えれば斬られる。

 

「"個性"ありで"個性"なしの俺を超えてみろ。刀の軌道をしっかりと意識しろ。お前は"個性"に頼り過ぎている」

「う~」

「難しいのなら、ひたすら抜刀と帯刀を繰り返して効率化しろ。そうだな。"個性"を使って一万回行え」

「ひぃっ!?」

 

 高速で引き抜いてすぐに戻す。ただひたすら行う。自己進化をふるに使って必死にこなしていく。一週間ほどでようやく合格をもらえた。

 

「では、次は"個性"なしでやってみろ」

「あう~っ!」

 

 午前中は基本的に戦い方を教えてもらって、午後からパパやヴァルゼライドさん相手に厳しい戦闘訓練をシュテルと組んで行う。夕食後に反省会をシュテルと行って駄目な点を洗い出して報告して合格をもらえば普通の勉強。もらええなければ反省のやり直し。常に自分達で考えて駄目なところを改善するように教えられる。

 勉強が終るころにはくたくたになって仮眠を取る。深夜にヴァルゼライドさんが襲撃してきて、たたき起こされる。その後は森に連れていかれて夜間訓練。気絶したら、パパ達に身体を洗われてからベッドに寝かされる。そして、朝起きてまた繰り返す。

 本当に厳しいけれどどんどん実力がついていっているのがわかる。だから、頑張って頑張って、強くなる。

 

 

 

 数日後、汗を大量にまき散らしながら必死に刀を振るう。今は一刀ではなく二刀の練習をしている。一刀の練習だけでもしんどく辛いけれど、二刀だとさらに辛くなる。それでも一振り一振り効率化していく。

 

「一振り一振りに魂を、意思を込めろ。意思の籠っていない一撃など、軽すぎて話にならん。理想は一刀が一刀が必殺の一撃となるのが理想だがな。かまえろ。教えてやる」

 

 構えを取って警戒する。

 

「っ!?」

 

 高い技術で高速で抜刀された一撃は私の刀をすり抜けるように斬り落とされる。反撃しようとするけれど、そのまま切り飛ばされる。そのまま戦うけれど、本当に一撃一撃が必殺の一撃の威力となって致命傷を与えられる。

 

「理解したか? 先ずは俺の攻撃を身体で覚えろ。次にそれを再現しろ。ただし、込める思いはお前自身のものだ。お前は俺ではない。お前自身の心を込めろ」

「はい」

 

 模擬戦を徹底的におこなってヴァルゼライドさんの剣戟を覚える。覚えた剣戟は一生懸命に再現して、駄目だしをもらいながらも頑張る。とても厳しいけれど、構わない。

 

 

 

 更に数日が過ぎ、私とシュテルは数ヶ月ぶりの休日を過ごしている。今日は遊園地にやってきているの。というのも、銀河さんが私達の現状をしって激怒したから。二人は似たところもあって、やりすぎてしまったらしいの。私とシュテルは平気だけど、子供には遊ばせなさいということ。そんなわけで、シュテルと一緒に遊びにきています。

 

「さて、どれから乗りましょうか」

「楽しそうだね」

 

 無表情なんだけど、瞳だけはとっても楽しそう。心なしかわくわくしている。反面、後ろの両親二人はベンチでぐったりしている。

 

「あ~説教が長かったね。まあ、私達が悪いんだが」

「確かに飲み込みが良いのでやり過ぎたな」

「技術的にはどうなんだい?」

「そこらの雑魚に遅れはとらん。すでにトップとはいかんまでもそれなりに使える。そもそも空を飛べるのだ。上空からの攻撃に対処できなければ瞬殺だ」

「うむ。空を自由に飛ばれるのは厄介極まりない」

 

 行く場所が決まったので、パパ達のところにいく。

 

「パパ、ジェットコースターに行きたいです」

「お前達は普通に空を飛べばジェットコースターになるだろう。行く意味がわからん」

「あははは、いっておいでと、言いたいんだけど身長制限があるからね」

「「っ!?」」

「ああ、あと私達はこういうところは苦手でわからないから、保護者は別の人を呼んでおいた」

「え?」

「どういうことですか? お父様」

「お前達を鍛えるのに休暇をほぼ使ったからな。仕事が色々と入っている。保護者をつけるから、三人で行って来い」

「なるほど」

「ごめんね。私も色々と仕事があるんだ。もう傷もほぼ癒えたし、フェイト君の保護観察も終わった。だから本格的に復帰することになる」

 

 確かにそれは仕方ないよね。むしろ、今まで殆ど独占していたんだから、我慢しないと。それに一人になるわけじゃない。シュテルも一緒だし寂しくない。

 

「っと、来たようだね」

 

 パパの視線の先からローラースケートみたいなので滑ってくるお姉さん。その人はテレビでも何回か見た事のあるヒーローさん。

 

「こんにちは~。はじめまして。私は中島スバル。レスキューヒーローをしています。お姉ちゃんからお願いされて、今回はお二人の保護者としてやってきました!」

「ありがとう。悪いね」

「いえいえ、正式な依頼になってますからね」

「依頼?」

「お前、俺とシュテルは一応、国外からの来賓だぞ」

「あっ、なるほど。シュテル君の護衛か」

「ああ、そういうことで頼んでおいた。まあ、必要ないだろうがな」

「なんだ。娘のことを心配しているんだね」

「当然だ。シュテルも俺が守るべき国民だからな」

「国のためなら平然と犠牲にするでしょうけどね」

「それも当然のことだ」

「やれやれ」

 

 お姉さんはやれやれっといった感じで、こちらにやってきて私達の手をとった。

 

「それじゃあ、大人の人達はおいておいて。お姉さんと一緒に遊ぼうか、フェイトちゃん、シュテルちゃん」

「「はい」」

「それで、何からいきたい?」

「ジェットコースターです」

「フェイトちゃんもそれでいい?」

「うん。お願い」

「じゃあ、行きましょう」

 

 スバルさんにジェットコースターに連れてきてもらった。ちゃんと乗れたけれど問題はあった。あんまりおもしろくなかった。

 

「悔しいですが、お父様の言った通りこれなら自前で飛んだ方が面白いですね」

「そうだね。全然速度が足りないよ。すくなくとも三倍は欲しいよ」

「いやいや、普通に速いからね? 一部じゃ速度は120キロ超えてるからね? 360キロオーバーとか無理だから。これだとジェットコースターは駄目だね。別のところにいこうか。何がいい?」

「じゃあ、これ。魔法使いの城」

「本当に魔法が使えるみたいですね」

「えっと、ここか」

 

 移動してからローブと杖をもらって魔法を使ってみる。でも、声に反応して映像と音がでるくらいだった。杖に乗って飛ぶのも今一だった。

 

「……駄目だ。この子達を楽しませるのはなにかないかな……今度はこっちに行こうか」

 

 船に乗ったり、食事をしたりした。あとは映画をみたり、楽しい時間を過ごした。美味しい物が多かった。

 

「た、楽しかった?」

「美味しい食べ物が多かったですね」

「そうだね」

「……食べ物が一番よかったって……遊園地だよ? 遊園地なんだよ?」

「スリルが今一足りません」

「なんだか不完全燃焼だったね。後で空を飛ぼうか」

「夜間飛行は特に綺麗ですからね」

「えっと、"個性"の使用は禁止だからね?」

「敷地内ですから」

 

 敷地内なら、まだ許されるんだよね。"個性"が勝手に発動したりする時もあるから、訓練するために申請して許可がでれば大丈夫なんだよね。ヒーロー免許や自衛隊など特別な免許をもってる人は取りやすい。

 

「まあ、いいか。それより、遊園地の次は服を買いにいこうか。成長なはずだし……」

「それが……」

「全然成長していないんだよ。シュテルもだよね?」

「まあ、原因はわかっていますし、気にしませんけど。飛ぶのに大きくなると邪魔ですし」

「確かに体重が増えると動きづらくなるし」

「いやいや、それは……」

「こんな錘をつけることになりますしね」

「そうだね」

「ちょっ!? 痛いっ、痛いからっ!」

 

 スバルさんの胸を鷲掴みにしてみた。柔らかい。ちなみに私は成長するかどうかもわからない。寿命も短いと思うし。まあ、運が良ければ自己進化と自己増殖で細胞も常に新しく大量に作っているから生きられるとは思うけど。

 

「そういえばスバルさんの"個性"ってなんですか?」

「私? 私は振動破砕。掴んだ物に振動を与えて破壊する"個性"だよ」

「強力ですね」

「これ、レスキューヒーローとして便利なんだ。瓦礫とかを簡単に壊せるからね」

「そうなんだ。あと、格闘技とかやってる?」

「ストライクアーツって奴をやってるよ」

「一手、お手合わせをお願いします」

「私も相手をしてもらいたいです」

「時間があえばいいけどね。正直、私じゃ相手をするのも辛いんじゃないかな~私の"個性"って人に対しては使えないから」

「なるほど」

 

 相手のことを思っているんだね。私もシュテルも気にしないけど、レスキューヒーローとしては駄目なんだろうね。

 

「あ、こっちもいいかな。フェイトちゃんは黒がいいよね」

「うん」

「じゃあ、こんなのも可愛いね」

 

 ゴシックドレスとかいうフリフリのを渡された。シュテルも同じで、着せ替え人形みたいにされる。銀河さんも合流して、いっぱい女の子の服や小物を買う。帰ってからパパ達にみせてみる。

 

「うん、いいんじゃないかな」

「俺にはわからんが、問題ないだろう」

「お父様は軍服しか着ませんしね」

「当然だ」

「HAHAHA。さて、フェイト君。話がある」

「なに?」

「君、留学してみる気はあるか?」

「留学?」

「もしかして、EUですか?」

「それか、アメリカだな。どちらにしろ、飛び級制度がある国だ」

 

 つまり、私に飛び級制度を利用しないかって提案だよね。

 

「俺とシュテルはそろそろ帰国する。これ以上、本国を開けて仕事をすることができないのでな。まあ、シュテルはおいていっても構わないのだが……こちらの制度では飛び級もできん。無駄な時間を過ごすくらいなら、連れて戻ったほうがいい」

「そこでだ。フェイト君も一緒にシュテル君と一緒に向こうにいってみないかい? 私は日本国内で居るので、一緒にはいけないが……」

「パパは一緒じゃないの?」

「ああ。代わりにシュテルが一緒だ」

「ヴァルゼライドさんは?」

「俺は基本的に仕事だ。休日は剣技を見てやってもいいが、いい加減部下共が五月蠅いのでな」

「つまり、私とシュテルだけで生活することになりますね。私はフェイトと一緒がいいです。一人は寂しいですから」

「ちょっと、考えてみるね」

「まあ、明日明後日辺りに決めるといい。来週には彼等は帰国するからね」

「はい」

 

 一旦、別れてから空を飛んで雲を超えて綺麗な夜空を見ながら考える。パパと別れるのは嫌だけど、でもパパの役に立つにはヒーローの資格はいる。それを日本で取るには時間がいっぱいかかる。でも、海外だとそんなことはない。私の実力はヴァルゼライドさんやパパに捨て身で一撃を入れられるくらいはある。シュテルと組んでなんとか戦えるくらい。

 

「フェイト」

「シュテル」

 

 振り向くと、シュテルも炎の翼を作って飛んでいた。下に向かって常に炎を出して重力を振り払っている。

 

「私はフェイトと一緒にヒーローになりたいです。フェイトはどうですか?」

「私も一緒がいい」

「なら、一緒にいきましょう。オールマイトなら大丈夫です。今はまだ、ですが」

「え? どういうこと?」

「彼の傷はかなり深いです。おそらく、ヒーローとしての限界は後数年でしょう。それまでに彼の代わりになるヒーローにならなくてはいけませんよ」

「そのためには早く免許がいる……」

「そうです。私と一緒に飛び級して取りましょう。大丈夫です。取ってから、こっちに戻って学生生活をするのも問題ないでしょう。とりあえず、免許と卒業資格だけとって、何時でも"個性"を使える状態にしておけば問題ないと思います」

「確かにそれだったら、パパを助けやすい……うん、わかった。一緒にいくよ」

「では、景気づけに一戦やりましょうか」

「負けないよ」

「こちらこそ」

 

 私は刀を構え、シュテルは炎を出す。シュテルが放つ爆撃を雷を纏って高速で移動して斬り払う。互いに笑いながら雷撃と炎をぶつけ合う。楽しい遊びは幾つもの軌跡を空へと刻んでいく。次第に雲が吹き飛んで地上の光が見えてくる。

 

「あ、どうせなら競争しようよ」

「競争ですか?」

「一番最初に地面に到着した方の勝ちだよ」

「いいですね。いきます」

「あっ、ずるい!」

「ハンデです。速度は圧倒的にフェイトの方が速いですから」

 

 二人で極限まで速度を高めて落下する。地面がすぐ近くになり、あと数十センチというところで止まる。私のところはそうでもないけど、シュテルのところは地面に大きな焼け焦げ、陥没した。

 

「やはり競争は勝てませんか」

「速さじゃ負けないよ。でも、やっぱりジェットコースターより、こっちの方が楽しいね」

「速度が全然違いますしね」

「言い訳はそれでいいかな?」

「「え?」」

 

 振り向くと、パパがマッスルフォームで立っていた。家の方をみると、風圧で窓が割れ、ログハウスの一部分が壊れていた。

 

「二人共、危険なことをしたお仕置きだ」

「「お、お仕置き?」」

「子供へのお仕置きはお尻ぺんぺんだろう」

「「ひっ!?」」

 

 二人で急いで逃げるけれど、すぐに捕まってしまってお尻をいっぱい叩かれた。おかげで次の日は二人してろくに動けなかった。流石に瞬間再生で私だけ治すのはシュテルに悪いしね。

 

 

 

 

 

 

「いいかい? くれぐれも生水には気を付けて。後、不審者にはついていかないこと。それとそれと……」

 

 パパは私を抱きながらいっぱい注意してくる。別に大丈夫なのに。今は空港にいて、銀河さん達も来てくれている。

 

「大丈夫だよ。シュテルもいるし」

「そうだね。だけど、毎日一回は電話して……いや、私が取れないか。一週間でいいから、しっかりと連絡をくれ。あと、毎日どちらかがヴァルゼライドに連絡をいれること。何かあれば彼が対処してくれるだろうし……いや、チトセ君に頼んでおく。ヴァルゼライドはこういうことでは役に立たないしな」

「う、うん……」

「おい、そろそろ飛行機の時間だ」

「いきましょう」

「はい。行ってきます」

「気を付けていっておいで。別に寂しくなったら戻ってきていいから」

「大丈夫。今度会う時はヒーローになってるから」

「本当に実現しそうだね」

「もちろんだよ」

 

 別れをしてから、銀河さん達から食べ物や服を渡される。

 

「また遊ぼうね」

「訓練ばかりじゃ駄目だからね」

「はい。がんばります」

「もう」

 

 お二人と別れてから政府専用機に乗って移動する。報道陣がいっぱい写真を取ってくるけど、気にせず乗り込んでいく。これから楽しい日々が送れますように。そう思っていたのだけど……まさか、寝ている間に無人島で放置されるとは思ってもみなかった。

 

「シュテル?」

「お父様からです。現在この無人島では軍大学の入試試験が行われているようで、参加者を殲滅しろとの命令です」

「軍、大学? ヒーロー育成校じゃなくて?」

 

 シュテルが投げ渡してきたアダマンタイト製の軍刀を二つ受け取る。ヴァルゼライドさんからの餞別かな。

 

「ええ、そうです。でも一応、ヒーロー科ですので問題ないかと。それよりも、オーダーは殲滅です」

「殲滅って殺してもいいの?」

「構いません。ですが、捕らえた方がポイントが高いようなので、捕らえましょう」

「そうだね。こちらの実力を教えてもらおう」

「がっかりしそうですけどね」

 

 私とシュテルで一緒になって他の参加者を倒していく。どの人も話しにならなくて、ほぼ"個性"を使わず、使っても最低限で終わってしまった。なんていうか、刀一つで事足りたよ。サバイバル一週間を行って、その次の試験会場へと移動する。流石に強くなってきて、"個性"を使わないと勝てない。それでも順調に勝ち進んで、私とシュテルは見事に合格して飛び級に成功した。後は必死に勉強するだけ。国が変われば法律も変わるし、言語も違うので覚えるのが大変だよ。でも、ヒーローになるために頑張る。

 

 

 

 



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8話

 

 軍大学に通っている私達は街の中にある家で暮らしている。ここはシュテルの持ち家で、家賃も全部シュテルが払っている。シュテルはヴァルゼライドさんに連れられて軍でのお仕事もしているので、お金を持っているの。私も一緒にアルバイトをさせてもらっている。そのおかげでパパからの仕送りもあって有意義な生活ができている。ここは都会なので自給自足ができないのが問題だよね。

 現在、リビングで必死に勉強している。もうすぐテストだから頑張らないとだめ。

 

「フェイト、休憩にしましょう」

 

 シュテルが飲み物とお菓子を持ってきてくれる。テーブルの上に置かれたカップにはラテアートで可愛らしい猫の親子が描かれている。お菓子は焼き菓子で、シフォンケーキの上に生クリームが塗られていて、生クリームの上に可愛い猫達が描かれている。それはもう、芸術作品で売れるレベル。

 

「相変わらず凝り過ぎで、食べるのが勿体無いよ」

「そうですか?」

「うん」

 

 家にある家具も含めて、全てが高級品に見える芸術作品。でも、それらすべてはシュテルが作ったもので、売りにだすだけで一つ数十万から数百万になる。その筋では有名らしい。

 

「さあ、食べましょう」

「あぁ~」

「はい、あ~ん」

 

 別けられていくにゃんこちゃん達。そして、一口差し出されるのでパクっと食べる。口の中でとろける美味しいケーキ。カフェラテを飲んでいく。

 

「勉強はどうですか?」

「順調だよ。もう英語も覚えたし、後は歴史とかだけかな」

「単位の習得も問題ないですしね」

「うん。一年でだいぶ取ったから」

 

 入学して一年でほぼ単位を修得してある。戦闘関連の単位は簡単に取れたから、戦闘の授業時間を他の時間にあてた。夜と朝の鍛錬だけで大丈夫だからね。

 

「まあ、軍大学ですから卒業してから数年はここに居ないと駄目ですけどね」

 

 流石に軍大学の卒業生を簡単に海外に流すわけにはいかないよね。まあ、私は日本からの留学生だから、任務をこなせば大丈夫なんだけどね。私の後ろ盾はシュテルのお父さんであるヴァルゼライドさん。ヴァルゼライドさんは軍のトップになったから特に大きいよね。

 

「日本に早く帰りたいから、さっさと卒業して免許を取らないと」

「ですね。ああ、それと晩御飯は何がいいですか?」

「ハンバーグがいい」

「では、任せてください」

 

 シュテルの料理はとっても美味しいから、頑張れるしね。沢山の読書をしながら勉強する。シュテルも一緒になって勉強する。

 

「そういえばフェイトは衣装を決めましたか?」

「衣装?」

「ヒーロースーツですね。我が国の技術力は高いですよ。日本とも技術提携をしていますしね」

「そうなんだ。でも、特にイメージとかないからシュテルにお任せしていいかな? シュテルのデザインなら信頼できるから」

「いいですよ。フェイトは高速戦闘が得意ですから……装甲は削って……可愛さも両立させて……」

 

 シュテルがデザインを書いてくれている横で、私は電子回路の勉強をする。武器に電子回路を刻み込んでそこに電流を流すことで効率化を計れればいいね。

 

「フェイト、こんなのはどうですか?」

「可愛いけど、これは?」

「魔法少女をイメージしてみました」

「シュテルもやってくれるよね?」

「えっと……」

「私だけじゃ嫌だよ」

「私はこちらですね」

 

 私は黒色のワンピースの水着みたいな感じで真ん中に白色。薄い桃色のスカートにベルト。ガントレットと黒いニーソックス。それにグリーブと裏地が赤色で白いマント。シュテルは黒色と赤色で構成された制服のような感じ。

 

「シュテル、私の露出が多いのは?」

「フェイトのは装甲を減らしています。逆に私は装甲を厚くしていますから」

「なるほど。まあ、高速戦闘だと邪魔になるし……」

「構わないですよね? もうこれで出してしまいますよ」

「任せたわけだから、いいよ」

「わかりました。任せてください。完璧なスーツを作ってもらいます」

「お願い」

 

 それにしても、魔法少女……確か日本でシュテルと見たし、どうせなら近づけた方が楽しいよね。よし、そうしよう。となると、魔法陣の開発もしよう。電子回路を魔法として再現してみるのもいいかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数年後

 

 

 

 

 

 無事に国際免許も習得し、規定の任務も終了して私達は無事に日本に帰国できることになった。それとお父さんから手紙がきた。なんでも、後継者をとったみたい。お父さんの"個性"は引継ぎ方で、その人に譲ったみたい。私に渡してくれなかった理由は、ヴァルゼライドさんが私の戦闘データを送っていて、それを見た感じでは必要ないと判断したらしい。それに雄英高校で働くことにもなったとのこと。

 

「フェイト、帰るのですか?」

「うん。帰る。お父さんが大変みたいだから、私が手伝うの」

「では、私もいきましょう」

「いいの?」

「ええ、問題ないです。それで、どこですか?」

「雄英高校だよ」

「雄英高校……日本のヒーロー育成校ですね。では、連絡を入れましょう」

「え?」

「任せてください。ですので、私の分も準備してくださいね」

「うん、わかった」

 

 こちらでの手続きはシュテルの方が得意だし、任せよう。トランクに二人の下着や衣類を入れていく。

 

 

 

 二日で準備を終わらせて、お仕事で忙しいヴァルゼライドさんのところに挨拶にやってきた。

 

「帰るのか」

「はい。お世話になりました」

「シュテルもいくのだな」

「はい。日本でフェイトと一緒に過ごします」

「そうか。これが滞在ビザだ。すでに話は通してある。それと技術部からお前達用の装備ができている」

「装備ですか?」

「可変式の実験装備らしいから、データを送ってこい」

「ありがとうございます」

「フェイトのは逆刃刀にしてある」

「助かります」

「餞別だ。気にせずに持っていけ。ああ、しいていうなら生温い日本に思い出させてやれ。平和が崩れるということを」

「了解です」

 

 ヴァルゼライドさんは立ち上がって、私達の頭に軽く手を置いてからさっさと部屋から出ていった。秘書の人が後ろについていっていることから、すぐに仕事のようだ。

 

「お父様も身体には気を付けてくださいね」

「いらぬ心配だ。自分のことを考えておけ」

 

 ぶっきらぼうだけど、優しい。シュテルも嬉しそうにしている。

 

「では、いきましょうか」

「うん」

 

 二人で手をつないで反対の手でウエポンケースを縛り付けたトランクを持って空港へと向かっていく。飛んだ方が速いかもしれないけれど、流石に辛いし密入国になるのでこのまま向かうことにする。

 

 

 

 

 

 




シュテルはそのまま。フェイトは無印にマントだけ色違い。

USJ乱入か、体育祭からか考え中


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9話

 

 

 

 僕の名前は緑谷出久。"無個性"である僕はオールマイトの"個性"、ワン・フォー・オールを受け継いだ。そのおかげで僕もヒーローへの道が開けた。それからというもの、頑張って身体を鍛え続けている。

 今も自室で鍛えながら、テレビをみているととんでもないニュースがあった。

 

『本日、最年少で国際ヒーロー免許を習得した二人の女の子が来日しました』

 

 テレビに移されているのは小さな女の子二人。一人は茶髪のショートカットで、もう一人は金髪の長いツインテール。どちらも小学生くらいだ。

 

『どちらも飛び級で大学を卒業しているそうですね』

『はい。それも軍大学ですね』

『軍大学ということは軍人でもあるということでしょうか?』

『そうなります。国内と加盟しているEUでの活動がメインですね。もっとも、そのうちの一人は日本国籍を持ちながらも留学を認められたようですが。その時の契約で数年はかの国で活動するとのことでしたが、その契約が終わったようで帰国となったみたいです』

『しかし、最年少とはいえ……その実力はどうなのですか?』

『かなり強いですよ。なにせ一人はその力から二つ名が殲滅者(デストラクター)ですからね』

『殲滅者ってどれだけなんですか』

『彼女がでてきたのは数年前ですが、戦場で数千の敵を容赦なく殲滅する広範囲攻撃を使うことからつけられた名ですね。まあ、二人で行動するようになってきてからですが、ヒーローネームは星光と雷光です』

 

 ヒーローネーム、雷光と星光を名乗っているけれど、どちらも殲滅者が後ろにつくほど(ヴィラン)を撃破している。そして、華憐で可愛らしい容姿と、二人共空を自由自在に飛んで瞬く間に魔法のように事件を解決することからーー

 

『黒と赤の魔法少女。そう呼ばれています』

『これ、どちらがどちらなんでしょうか?』

『黒の魔法少女が雷光で、赤の魔法少女が星光ですね。黒の魔法少女はかの有名なヴァルゼライド総統のお弟子で、おそらく彼女が総統の娘でしょうね』

『では、あちらの茶髪の子が日本国籍の子ですか?』

『え? 違う? 申し訳ございません。茶髪の子が総統の子で、金髪の子が総統の弟子のようですね。日本国籍は金髪の子のようです』

 

 普通は逆だと思うよね。日本人だったら茶髪の子の方があってる。それにしても、すごく強いみたいだ。この年齢ですでに国際免許を持ってるなんて。ヒーロー国際免許は国連に加入している国ならどこでもその免許が使える。その為、とても厳しい試験がある。また、偉い人の後ろ盾がないと取れない。そもそも、もしヒーローが問題を起こせば国際免許は発行した国にも責任がいく重大な免許だ。ちなみにコネでは取れない。確かに推薦はコネクションがいるが、その後は国連が主導するとても難しい試験を超えないといけない。少なくとも最低で五カ国の言語を話て書けないと駄目だからだ。合格者は世界中で1000人いるかいないかだ。ヒーローの最高峰といえる。ちなみに日本ではオールマイトとエンデヴァーが習得している。

 

『しかし、魔法少女ですか? なんだかアニメみたいな話ですね』

『はい。彼女達は魔法陣をわざわざ構築したり、見た目にもこだわっているんですよ。こちらが戦闘の映像です』

 

 画面には金色の閃光が無数に走って、多数の(ヴィラン)を逮捕している。他には金色に光る円形の魔法陣みたいなものを展開して、そこから攻撃している。それにこの女の子は美少女で露出が多い。スカートも短く、下着が見えるみたいに感じる。だけど、あれは水着やレオタードみたいなもんだよね。

 

『すごく速くないですか?』

『本気だともっと速いらしいですよ。この2人、軍大学ではよく模擬戦をしていたみたいで、有名らしいです』

『その映像は……?』

『入手できませんでした。まあ、軍施設ですからね』

 

 それは仕方ないよね。でも、ヒーローとしてはすでにトップクラスっていうところなんだろう。すごいや。

 

『さて、空港に中継が繋がりました』

『はい。こちらでは今、降りてくるようです』

 

 到着した飛行機から降りてくる二人の女の子。このまま報道陣のところまでいくかと思ったら、二人共、かかりの人に何かを話したら空を飛んでいった。

 

『あれ?』

『あ~どうやら、ここからは飛んで移動するようですね。ヘリで追ってるそうなので……あ、速度が違いすぎますね』

『瞬く間に消えていきましたね』

『おそらく、あのまま大使館に移動するのでしょう。そこで生活するかはわかりませんが、しばらく張り込んでみようと思います』

『お願いします。それにしても可愛らしい少女達ですね』

『ええ。ですが、実力は高いです。これからはオールマイトの活躍と共に期待がもてます。若い人がどんどんでてきてますからね。まあ、彼女達は若すぎるのですが。資料を見る限り、12歳以上なのは確実なんですけどね』

『小学生低学年くらいにしか見えませんが……』

『成長が遅いのか、他に原因があるのかはしりませんが、年齢はそうなっています。まあ、あちらで数年すごしているのですから、当然ですね』

 

 同い年なんだ。どう見ても年下にしかみえない。彼女達が僕達の先輩だ。そういえばオールマイトが紹介したい子がいるっていってたな。

 

「出久、ご飯よ!」

「はーい!」

 

 ご飯を食べて、学校へと向かう。今日も一日頑張ろう。日々、ヒーローを目指すために頑張らないと。まずは"個性"をコントロールすることからだけど。

 

 

 

 しかし、僕達はその日の授業で恐ろしい目にあった。レスキュー訓練でやってきたウソの災害や事故ルーム、略してUSJで(ヴィラン)の襲撃を受けた。相澤先生や僕達が必死に戦って、オールマイトが駆け付けてくれた。そして、驚いたことにオールマイトが無茶をして脳らしき機関がむき出しになっている上半身裸の男を吹き飛ばした。

 

「さあ、まだやるかい?」

「どうしますか死柄木?」

「ちっ、ゲームオーバーだ。撤退するぞ」

「逃がすと思ってるのか?」

 

 轟君がそんなことをいう。このままワープで逃げられる。でも、あっさりと撤退を選んだ。あんなにむしゃくしゃして、頭を掻きむしっていたのに、手を沢山つけた主犯は冷静に言っている。

 

「逃がすも逃がさないも、お前達はどうすることもできねえよ。確かに俺達はゲームオーバーだ。だがな、俺達だけだと誰がいった?」

「どういうことだね?」

「どうもこうも、我々は第一陣ということですよ、オールマイト」

「使い捨ての後詰めはちゃんと用意してるんだよな、これが。黒霧」

「はい」

 

 ゲートが開き、そこから数人の女の子だと思われる子がでてきた。彼女達はバイザーを装着し、黒い鎧を着た青髪ツインテールの女の子達。

 

「その娘達はまさかっ!?」

「オールマイトは知っているよな? なんせ、アンタの娘なんだからよ」

「「「ええええええええっ!?」」」

「あの研究施設で全て破壊したと思ったんだけどね」

「ああ、おかげで遺伝子情報の一部しか持ち出せなかったそうだ。だから、どっちかっていうとクローンのクローンだとよ。まあ、使い捨ての兵士には充分だ。命令だ。殺せ」

 

 青いツインテールの女の子が大鎌と大剣を構えて、僕達に突撃してくる。その間に連中は悠々と撤退していった。絶望的な状況だけど、先生達が到着した。

 

「目標の増援を確認。排除する」

 

 彼女達はすごい速さで先生達に襲い掛かっていく。僕はその間に急いでオールマイトに駆け寄っていく。

 

「オールマイトっ!」

「緑谷少年。無事だったか」

「はい。でも、オールマイトはもう時間が……」

「ああ、そうだね。このフォームを維持するのが限界だ。そして……」

 

 すぐ近くに青いツインテールの女の子が青色の雷を放ってくる。

 

「ぐぅっ!?」

 

 オールマイトがボクを庇ってくる。しかし、オールマイトはすでに限界で、姿が戻ってしまった。幸い、他の人にはばれていない。こうなったら、僕がやるしかない。

 

「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」

「待ちたまえ緑谷少年っ!」

 

 足を壊して全力で加速して突撃する。同時に拳を放つ。しかし、相手は微かに首を傾げただけで、壊せたのはバイザーだけだ。そして、そのまま綺麗な無表情な顔にみられながら大鎌が僕の頭を切り落とすために振るわれる。

 怖くて怖くて、これで終わりだと思うと身体が震えて眼を瞑ってしまう。でも、その時に轟音が響いた。

 

「え?」

 

 (ヴィラン)もヒーローも驚いて一点をみる。そこはUSJの真ん中で、巨大の炎の柱が生まれており、周囲の温度を一気にあげていた。そして、炎が消えると巨大な穴が天井にできていた。そこから女の子がふってくる。

 

「オールマイト、空から女の子が……」

「そうだね。しかし、君は結構余裕だな」

「そうだったっ!」

 

 慌てて青髪のツインテールの女の子を殴り飛ばそうとするが、その女の子はすでにいなかった。降りてきた女の子、金髪ツインテールの女の子に殺到したのだ。

 

「危ないっ!」

 

 僕が叫んだら、彼女はこちらを見た。その瞬間、そらから赤い光が無数に降ってきて、それらが青髪の女の子の手足を触れるそばから消していく。

 

「なに、あれ……」

「上だよ」

 

 オールマイトの声に従って上をみると、遥か上空に一人の女の子が魔法陣みたいなものを展開していた。

 

「オールマイト、あれは……?」

 

 振り返るとオールマイトはいなかった。

 

「オールマイト!?」

 

 ボクが慌てている間にも事態が動く。

 

「さて、投降してください。貴女達に勝ち目はありません。大人しく投降すれば命と身の安全は国際条約に乗っ取り、保証させていただきます」

「ただし、投降しない場合は身の安全は保証できません。どうやら、投降の意思はないようですね。殲滅しますか、フェイト」

 

一部の人が攻撃を開始し……というか、青いツインテールの女の子は止まる気配すらない。

 

「できるかぎり殺しちゃ駄目だよ。日本ではヒーローは捕まえることが前提だから」

「国際条約に則って、降伏勧告は行いました。ですので、国際条約のテロリストに対する条約を適応します。日本も加盟国ですから」

「シュテルってその辺りは容赦しないよね」

「民の安全を脅かす(ヴィラン)に容赦する必要はありませんから」

「その辺りはヴァルゼライドさんの娘だってわかるよ。さて、時間だね。いこうか」

「はい。私が敵を排除します。フェイトは救助をお願いします。パイロシューター」

「了解」

 

 緋色の雨が降り注ぎ、金色の閃光が走り回る。身体に衝撃を感じたと思ったら、すでに入口にみんなと先生達に囲まれていた。

 

「やれやれ、アレが秘蔵っ子達ですか」

「そのようだな……」

「アッハッハッハ、相手になってないね」

 

 たった二人の女の子が、沢山の数がいる(ヴィラン)の青髪ツインテールの女の子を無力化していく。他の(ヴィラン)もどんどん倒されていっている。

 

「先生、あの子達って……」

「あの子達は新しい君達の先生であり、生徒だよ」

「え?」

「聞いてませんよ」

「いや~彼女達から打診があったんだよ。雄英高校で教師をしたいって。で、校長であるボクは言ったんだ。生徒もするんだったらいいよって。だって、彼女達、どうせまともな学生生活なんて送ってないしね」

「本音はなんですか?」

「我が校のレベルをあげられるし、なにより彼のサポートをしたいって言われたらね。ボクには親を思う娘の気持ちを無下には出来ないさ」

「彼女達は優秀だ。自らこちらに来てくれたのだから喜ぶべきだ」

「問題は、あの子達って基本的にヒーロー兼軍人だからか、いざとなったら殺すことも躊躇しないんだよね。実際、日本以外では認められているところもあるし」

「法律的に文句言えないように国際条約をだして、投降まで呼びかけやがったからな」

「それを生徒に真似されたら困るんだよ」

 

 どうやら、二人の魔法少女は劇薬でもあるみたいだ。でも、こんな間近でみられるのは運がいい。掲示板とかで自慢できるレベルだ。惜しむべきは録画できないことか。でも、能力の考査はできる。しっかりと覚えないと。

 

「やべーなんだよ、あれ。完全に俺の上位互換じゃん!」

「くそがっ!」

「……」

 

 上鳴君と、かっちゃんと、轟君がなんともいえない表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 




青いツインテールの女の子はいったい誰なんだろう(ぁ


フェイトmarⅡ量産型
"個性" 青い雷
戦闘能力 先生達よりちょっと下。ただし、数が多く、連携をしてくる。攻撃を喰らうとスタンする。
「本当のボクは強いぞー! オリジナルなんかに負けないんだから!」


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10話

 

 

 

 

「お父さん、こんなことになっているなら連絡をしてくれてもよかったのに……」

「いや、父親としての見栄がね……」

「知らない」

「はははは」

 

 病室のベッドの上でお父さんが頬をかきながらばつの悪そうな顔でそっぽを向く。私は頬っぺたを膨らませている。ここは雄英高校の医務室。本当は病院に運ぼうとしたのだけれど、リカバリーガールがいるとのことなのでここにした。ちなみに後始末は全部シュテルに丸投げしておいた。こういうのはシュテルの方が得意だし。

 そもそも、到着した飛行機の中で入国手続きを終えてたので、マスコミを撒くためにそのまま飛行して雄英高校を目指していた。その途中で雄英高校の校長先生から緊急連絡を受けて私達は現場に急行。

 シュテルの先制攻撃で天井を破壊して、そこから中に入ってみると私と同じ姿の女の子がいて、私は最優先でお父さん達の救助を行った。助けたお父さんはすでにマッスルフォームを解除していたので、隔離して助けておいた。久しぶりにみたお父さんは痩せていて病人のような感じだったので、終ってから慌ててここに運び入れたのだ。

 

「それで、彼女達はどうなったんだい? まさか、殺してないよね?」

「全員、ちゃんと生きてるよ」

 

 お父さんが私の頭に手をポンと置いて撫でてくるので、そのまま撫でられながら話していく。

 

「シュテルの攻撃は全てコントロールされているから、切断と同時に焼いて止血もしているの。それは私も同じ。基本的に逆刃刀で殴って感電させて確保しているけど、斬ったとしても傷口を焼いて止血までしてる。だから、誰も死んでないよ」

「今度からは手足の切断もやめてあげて欲しいな」

「シュテルにとってはそれが一番効率的だからね。斬られて焼かれる激痛で対外の人は気絶してそのまま確保されるから」

「やはり、預ける人選を間違えたか……」

 

 お父さんが色々と悩んでいるみたい。

 

「まあ、あの前に進むしか考えていない馬鹿に預ける時点で間違ってるさね。はい、お茶だよ」

「ありがとう」

「ありがとうございます、リカバリーガール。それで、お父さんの容態はどうですか?」

「悪いね。今回のことでもさらにまずくなるね」

 

 リカバリーガールから説明を聞いていく。かなり悪いようで、日常生活は大丈夫みたいだ。

 

「つまり、お父さんをこれ以上戦わせなければいいんですね」

「そうだね」

「いや、それは……」

「ああ、一つだけ治す方法があるかもしれない」

「フェイト?」

「お父さん、私を食べてみる?」

「ちょっ!?」

「オールマイト?」

 

 お父さんが凄く慌てて、リカバリーガールが冷たい目をしている。私はよくわからなくて、小首を傾げている。

 

「フェイト君、どういうことかね?」

「えっとね……」

 

 私が伝えると、お父さんはなんともいえない表情をした。リカバリーガールも同じだ。私が提案したのはそれほどおかしいもの。というか、かなり危険がある。

 

「それは最終手段にしようか、うん」

「まあ、確かに治せそうな可能性はあるがね」

「そもそも、私の"個性"は引き継いだからね」

 

 こんな話をしていると、扉が開いて急患が運ばれてきた。それは緑色の髪の毛をした少年だった。

 

「お、オールマイト……それに魔法少女……」

「また怪我をしたのかい。仕方ないから治療してやるかね」

 

 隣のベッドに寝た彼を置いて、お父さんの世話をしていく。

 

「あの、オールマイト?」

「治療が終わったようだね」

「ああ、終ったよ。二人共、しばらく安静だ」

「はい。さて、緑谷少年。紹介しよう。彼女はフェイト。私の娘だ」

「むっ、娘ぇえええええええええぇぇぇぇぇぇぇっ!? でも、でも、彼女の顔って(ヴィラン)の中にいた子とそっくりで……」

「そうだね。だが、まあ……色々と極秘情報があるんだよ。それで、彼は緑谷出久君。私の弟子だ」

「フェイトです。よろしくお願いします」

「はっ、はいっ! 緑色出久です! こちらこそよろしくお願いします!」

 

 頭をなんどもふってくる。ちょっと面白い。女の子に慣れてないのかな? まあ、でも……

 

「一つだけ言っておく。お父さんの"個性"を引き継ぐに値しないと判断したら……」

「し、したら?」

「引き渡してもらう。拒否したら……どうしよう?」

「考えてないのか!」

「うん。でも、引き渡すように誘導する手段なんていっぱいあるって、向こうで習ったから……大丈夫。どうにかできるよ」

 

 握り拳を作って、大丈夫だとお父さんにみせる。緑谷君は何故か頭を抱えていた。

 

「あ、お父さん。シュテルも一緒に家で住んでいいよね?」

「ああ、いいよ。そういえばシュテル君はどうしたんだね?」

「事後処理しているとおもうよ」

「そうか。私はもう大丈夫だから、手伝っておいで」

「本当に大丈夫?」

「私が見張ってるから大丈夫さ。いっておいで」

「うん。お願いしますね、リカバリーガール」

「任せな」

「し、信用ないな」

「数年間も大丈夫だ、心配ないって嘘を言い続けてたお父さんに信用なんてないもん」

「あぁ~~」

 

 項垂れているお父さんを放置して、シュテルのところに向かう。警察の人とあって、事情聴取を受けてから校長先生に挨拶をしにいったり、色々とやっていく。

 

 

 襲撃から数日。私とシュテルは学校の会議に参加しています。

 

「え~彼女達は臨時講師として雇い、仕事のない時はクラスに生徒として通うことになっている。まあ、彼女達には戦闘訓練の補佐役だね」

「つまり、普通の授業はしないということですね」

「そうだよ。戦闘訓練は必要ないし、その時は講師側に立ってもらう。(ヴィラン)としてね」

「まあ、それは適任だろうね」

 

 私達は戦闘技術を教えることはしない。だって、日本には正直言って不適合だから。国際免許を習得すれば別だけど、日本国内だけで活動するのなら捕獲をメインにおかないといけない。これが他国から日本は平和ボケしていると言われる一つの原因。お父さんの抑止力が高過ぎるという問題もあるんだけどね。

 

「この子達なら(ヴィラン)の考えも勉強しているから、そういう対応になった。さて、本題を話そう。これからの対応だ。まず雄英体育祭は開く。これをもって(ヴィラン)にはまけないことを示すつもりだ」

「では、その雄英体育祭。私達は障害として立ちはだかっていいですよね? 流石に生徒として参加するのは問題がありますから」

「それでたのむよ。しかし、くれぐれも手加減をしてくれよ」

「もちろんです」

「ああ、それと一つお願いがあるんだよ。というか、これは絶対ね」

 

 ネズミの学園から告げられた内容に私とシュテルは愕然とした。

 

「マイク、頼むね」

「おうよ。俺に任せておきな!」

「くっくっく、これで今回の体育祭の集客はばっちりさ。国外からもいっぱいきてくれるだろう」

「黒いですよ、校長」

「これでも経営者だからね。集客効果があるところはしっかりとしないとね」

 

 私とシュテルは手を繋ぎあって、不安に震える。ある意味で、ヴァルゼライドさんの修行より無茶ぶりされた。シュテルはともかく、こんなの私には無理だよ。

 

 

 

 



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11話

 

 

 

 

 怪我も治り、毎朝、臨海公園で訓練していると綺麗な歌声が聞こえてくる。歌をききながら練習に励み、時間が経てば家に戻ってからシャワーと朝食を取って学校へと向かう。

 学校では僕達は教室で席に着きながら先生を座って待っている。

 

「まさか、魔法少女がここに来るとは思わなかったな」

「そうだね。彼女達はエースだから、普通なら国外にでることないんだけど……」

「まあ、そのうちの一人は日本の国籍をもっているからじゃないかしら」

 

 飯田君と梅雨ちゃんと話す。フェイトちゃんは確かにオールマイトの娘らしいし、日本にいるのがいいのかもしれない。

 

「しかし、一体何をしにきたのだろうか?」

「目的は一切、わからないのよね」

「でも、小さいのに強かったな」

「それはそうよ。国際免許を持っているのだから、トップクラスよ」

「トップクラスといっても、ピンキリだけどね~」

「国連加盟国で本当のトップはオールマイトやエンデヴァー、ヴァルゼライド、マトリックス、アヴェンジャーズ。他にもいるけど、とりあえず、この人達が有名かな」

 

 どの人達もとても凄いヒーローだ。例えばマトリックスというヒーローは全身が液体金属でできており、瞬時に再生したり弾丸を通過させたりする。その上で力が強いので色々な隙間に入り込んで、救助したりできる。どの人達も人類の限界を超えたような強さをもっている。

 

「そんな彼等に近いっていうんだから、小さいのに凄いよな」

「アイツはオールマイトの娘らしいからな」

「なんだと!?」

「本当なのか、轟!」

「くそ親父が言っていた。確実だろう」

 

 轟君はエンデヴァーの息子だから流石に知っているみたいだ。オールマイトの娘ってみなが驚く。

 

「ねえ、出久君」

「どうしたの?」

「オールマイトの妻って誰なのかな?」

「さ、さあ?」

 

 話していると扉が開いた。しかし、誰も入ってこない。前の席の人は驚いている。教壇から頭が少しみえた。

 

「なんだ?」

 

 立ち上がってみると、魔法少女の二人が制服姿で入ってきていた。フェイトちゃんが教壇の後ろに椅子を置いてその上にのった。その横にもう一人の子も乗る。二人はかなりくっついている。

 

「おい、あれって……」

「はい、静かにしてください。私はシュテルと申します。こちらはフェイトです。私達は怪我を負った相澤先生の代わりに副担任となりました。よろしくお願いいたします」

「フェイトです。よろしくお願いします。これから出席をとります。シュテル」

「はい。では、順番に返事をしてくださいね。騒いだら焼きます。基本的に軍隊式しかしらないので容赦はしません」

 

 シュテルと名乗った女の子の指先に炎が灯る。かなり恐ろしいことを言っている。その後ろでフェイトちゃんがぴょんぴょんして黒板に文字を書こうとしている。しかし、制服姿なのはなんでだろうか? サイズがなかったのか? 今のも少し大きそうだが。

 

「ああ、可愛い……」

「そうだね」

「台が一つしかないのね」

 

 次第にバチっという音がしてフェイトちゃんの身体が浮き出した。そのまま名前を書いていく。フェイト、シュテルという名前が書かれていく。

 

「ああ、質問はあとにしてください。とりあえず、出席です。一番……」

 

 出席が取られていく。

 

「17番、爆豪君」

「けっ」

「欠席っと」

「おい!」

「18番」

 

 完全に無視して進めていくシュテルちゃん。凄い怒っている。これ、やばい。だけど、シュテルちゃんは気にしていない。

 

「では、続いてですが……皆さんには殺し合いをしていただきます」

「「「ぶっ!?」」」

 

 無表情なシュテルちゃんの言葉に僕達は噴き出して、慌てて周りをみる。皆、騒然としたり、一部は睨み付けています。

 

「冗談ですよ? おかしいですね。日本の有名な映画監督の言葉だったはずですが……すべってしまいました」

「だからやめようって言ったのに……」

「バトルロワイアルかよ!」

「正解です。まあ、冗談はおいておいて、それに近いことはしてもらいます」

「近いこと?」

「はい。黒板をご覧ください」

 

 いつの間にか黒板には雄英体育祭と書かれていた。

 

「はい。これが何時書かれたかわかった人はいますか?」

「え?」

「えっと、シュテルちゃんが殺し合いって言った時?」

「麗日さんですね。正解です。あの時、視線が私に集中しました。その隙に書かれたものです。さて、何がいいたいかわかる人はいますか?」

「はい」

「八百万さん」

「視線を誘導され、その間に気づかれずに準備されたことです。これは(ヴィラン)との闘いにおいて隙が生まれるということですね」

「そうです。どういう手段かはさておき、相手の視線を誘導し、意識の空白を作り上げてしまえばことは簡単に運びます。くれぐれも視野を広くもってください」

「この技術はヒーローとしても、(ヴィラン)としても、どちらにとってもとても有効です。ヒーローは人質の救助や物の奪還などに、(ヴィラン)はヒーローの逆ですね」

 

 シュテルちゃんの言葉をフェイトちゃんが引き継ぐ。確かに視線を集められれば、可能なんだろう。

 

「どれくらい恐ろしいかと言われれば、今の一瞬で皆さんの半数が何もできずに死ぬくらいです。足元をみてください」

「っ!?」

 

 僕達の足元には紅炎の玉が浮かんでいた。それらはすぐにシュテルちゃんの所へと戻っていく。

 

「これの威力はこんな感じです」

 

 開いている窓から光の一つが飛び出し、途中で爆発を起こす。それは人ひとりを吹き飛ばすには十分の威力をもっていた。

 

「わかりましたか? こんな風に殺されるので気をつけましょう」

「シュテルの言葉は極端かもしれないけれど、ヒーローになるとどうしても(ヴィラン)から恨みを買うの。逆恨みした(ヴィラン)やその家族が襲撃してくる時もあったよ。それにヒーローを倒すことで名をあげようとする(ヴィラン)も襲い掛かってくるの。だから、ヒーローになるのなら何時でも戦える準備をして、普段から周りを気にして視野を広くとるといいよ」

「人は感情がある生き物です。時には合理的な選択をとれなくなります。こちらは人類の戦争の記録が証明しています。何がいいたいかというと、常在戦場を意識するように。それができるようになったら、メリハリをつけてコントロールできるように。普段からずっとだと疲れますからね」

「少なくともこれは覚えておいて損が無いことです」

 

 逆恨みや名声を求めて襲われる。確かにそんなことが起きている。何回かヒーローの家族が捕らえた(ヴィラン)達に襲われるという事件も報道された。ヒーローコスチュームで姿を隠しても見つける手段なんていくらでもある。特に捜査系の"個性"を持つ相手がいたら筒抜けだろう。

 

「まあ、常に気を張るのは無理だから、ヒーローでもツーマンセルやスリーマンセルを組むといいよ。これなら一時的でも警戒を任せられるからね。だから、私とシュテルはずっと組んでいるの」

「ヒーロー単独としても背中を預けられる友、戦友を作っておいたほうがいいです。っと、脱線がすぎましたね」

「話は雄英体育祭だよ。年に三回、行われてヒーローになるためにプロの人やスカウトの人にみてもらえるのは知っているよね」

「喜んでください。中止ではなく、警備を大幅に強化して開催されることになりました。」

 

 つまり、この二人も警備の強化要員ってことなのかな。

 

「あの、二人も参加するんですか?」

「私達は先生側で参加するよ」

「正直言って、私達が生徒として参加はできません。私達はすでに国際免許を持っていますし、学校に雇われているのでスカウトされる必要性がありませんし、あくまでも学生の祭りですので」

「まあ、まだ私達じゃ相手にもならないだろうし……」

「私とフェイトは別のことで忙しいのもありますけどね……」

「そうだね……」

 

 フェイトちゃんとシュテルちゃんはどんよりしている。なんだか、急にテンションが下がっている。

 

「っと、仕事仕事。えっと、訓練施設の使用とか申請がいるので早めにだしてくださいね」

「"個性"の個人練習は問題ありませんが、教師の居るところでお願いします。事故が起こった場合が大変なので。特に模擬戦は事前に申請が必要です。もし、やぶった場合は体育祭期間中の停学や退学だと思ってください」

 

 かなり厳しいな。でも、仕方ないか。あんな事件があったんだし、納得だ。

 

「ヒーローに最短でなりたいなら準備はちゃんとしてくださいね」

「じゃあ、次は質問を受け付けるね」

「はい!」

「蛙吹さん」

「ずばずば聞いちゃうけど、オールマイトの娘って本当なの?」

「本当だよ。私が娘です」

「誰が妻なんだ!」

「オールマイトの私生活って!」

 

 一斉に質問が飛び出す。黙っていると思ったのに、まるで気にしていない。

 

「ごめんなさい。お母さんはしらないの」

「え?」

「私は(ヴィラン)によって盗まれたオールマイトのDNAを基にして製造された人造人間やデザインベイビーだから、血の繋がりはあるけどちゃんとした娘じゃないの」

「「「「(思ってたのより重い!)」」」」

「こないだ襲ってきた青い髪の子は残っていた私のデータの一部から培養したクローンみたいだよ。あの子を相手にする時は気にせず攻撃していいからね? 寿命もほぼないみたいで、捕まえたあとにすぐ死んじゃったらしいから」

「強制的に成長させて使い捨ての量産兵器として作ったようです。もしも、襲われた場合は命を最優先にするようにお願いします。フェイトと同じ顔の人が知り合いを殺す姿はみたくありませんので」

 

 かなり重いことを平気でいってくる。というか、これって教えていい情報なのかな?

 

「教えた理由は皆さんが関係者だからです。上にもちゃんと許可をもらっています。フェイトと同じ顔を見たのですから、不信感を募らせて敵だと判断される場合があると困りますからね」

 

 疑心暗鬼に陥って、変な所に情報がいったらまずいからか。いや、そもそも国際免許を持っているんだから、その程度の情報は簡単に覆せるんだろう。というか、プロパガンダにできそうな内容だよね。オールマイトが娘と認めたことで、美談にできるし。フェイトちゃんも助けてもらった恩を返すためにヒーローになって頑張ってるんだから。

 

「それで、お父さんの私生活は……数年、離れていたから小さい頃になるけどいいいかな?」

「「「いまでも小さい……」」」

 

 それから、引き取られてからの話を色々と聞いていくと、なんていうか過保護なお父さん。でも、その印象は本格的な修行を始めてからは変わった。彼女自身も物凄い訓練をしていたが、オールマイトも参加しだすと無茶苦茶厳しい。というか、ヴァルゼライドさんとシュテルちゃんがきてからとっても厳しくなっている。僕がやった修行なんて生温いんだ。もっと頑張らないと。

 

「英才教育にもほどがあるわね」

「英雄クラスのヒーロー二人に鍛えられたら、あの強さも納得だな」

「そういば、皆さんは体術を使えるのかな?」

「体術?」

「必要か?」

「希望する人に教えてあげるよ。戦いの基本は身体の動かし方。ヒーローになるのなら、覚えておいた方がいいから」

「特に接近戦を考えている方は受けた方がいいです。遠距離の人も護身用に覚えるといいでしょう。はっきり言って、接近戦ができないと死亡率がかなり高くなります。接近されて終わりだと、ワープやテレポートの"個性"持ちとあたったら何もできずに死にますからね」

「あ、といってもこれは基本的に体育祭が終ってからです。基礎訓練のメニューくらいは作ってあげられますが、私達も体育祭は忙しいので……ごめんなさい」

 

 二人があやまってくるが、それほど忙しいのか。何かするみたいだから仕方ないよね。しかし、戦い方の勉強か。確かに強くなるためには必要だよね。でも、できたらオールマイトに教えてほしいな。

 

 その後、麗日さんと飯田君と食事を取ろうとするが、オールマイトに呼ばれて僕は一緒に食事をすることにする。部屋に入ると、フェイトちゃんにシュテルちゃんがいた。

 テーブルの上には沢山の料理が並んでいる。どれも料亭のような料理でとても美味しそう。いや、匂いだけでも美味しいってわかる。

 

「いらっしゃいませ。どうぞ」

「あ、はい」

「お父さん、身体は?」

「大丈夫だよ。フェイト君は心配しすぎなんだよ」

「だめ」

 

 オールマイトがフェイトちゃんに無茶苦茶世話をされている。食事を終えてから、僕はオールマイトに雄英体育祭で目立つように言われた。僕が来たってことを全世界に知らしめるように言われたのだ。でも、"個性"をコントロールできない僕には難しい。色々と考えないといけない。

 

 

 

 




相澤先生は強制的に治療に専念です。
あんな怪我で仕事させられるか!
どんなブラックなんですか!
まあ、実際の中学校と小学校もブラックらしいですが。


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12話

 

 

「これより、雄英体育祭を始めます! まずは代表者挨拶!」

 

 雄英体育祭が幕を開けた。私とシュテルは部隊の下で待機している。

 

「大丈夫かな?」

「練習はしましたし、大丈夫です」

 

 隣にいるシュテルと互いに両手を握り合って、おでことおでこをくっつけながら話す。私とシュテルの服装はフリルたっぷりの可愛らしい服装。

 

「はい。とても個性的な挨拶をありがとう。では、雄英体育祭開催を記念して、生徒達へのパホーマンスを行う」

 

 ミッドナイトさんが鞭を叩くと、私達の居る場所がせり上がっていく。同時にドライアイスの煙がでる。

 

「さて、いきましょうかフェイト」

「うん、頑張ろうシュテル」

 

 会場全体に音楽が響き、私とシュテルは飛び出して爆炎と雷光を背後に放つ。同時に空を飛んで会場に無数の魔法陣を生み出し、歌う。物凄く恥ずかしいけれど、これもお仕事だから頑張る。アイドルと同じように歌っていく。

 空を飛びながら演出も行いつつ、私とシュテルのデュエット。イメージは日本のアニメであったマクロスやシンフォギア。あれを完全再現する。私達の声ならいけるらしい。

 

「「「うぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」

「あの噂は本当だったのか!」

 

 一曲が終わり、空中で留まって服を掴んで引っ張ると同時に発行して、瞬時に柱の陰にある隠しスペースで衣装を変えて光の中からでる。魔法少女の姿になって空中で歌いながらシュテルと対になるように飛行しつつ、互いの武器を合わせて戦っているようにも演出する。

 最後にはアリーナの出口付近に着地して、炎の柱と雷の柱を生み出してアーケードを作り出す。

 

「「それでは、皆さん。頑張ってください。障害物競争スタートです」」

 

 私達がそう言っても反応しない。少しして1-Aの轟さんや爆豪さんが走りさる。すると、他の人も走っていく。皆が出たあと、私達は観客席を一周してからステージの後ろへと戻る。

 

「やあ、ご苦労様」

「はい、タオルとドリンク」

「「お疲れ様です」」

 

 私達を向かえてくれたのは校長先生と、タオルとドリンクを渡してくれるお父さん。

 

「どうでしたか?」

「ちゃんとできてました?」

「アイドルデビューしても問題ないレベルだね、うん。お陰様で集客率アップだよ」

「よかった」

「本職ではないんですけどね」

 

 ドリンクを飲んでいると、お父さんが後ろから頭をタオルで拭いてくれる。そのままされるがままになる。

 

「素敵だったが、無茶はしないでくれよ」

「大丈夫だよ。これぐらい楽だから」

「それにまだやることはありますからね」

「本当にやるのかい?」

「「はい」」

「今年は難易度が高くなるね。まあ、全然いいけどさ」

「わかった。糖分もしっかりとっておくんだよ」

「「はい」」

 

 甘いケーキを食べてから直ぐに飛び立つ。目指すは障害物競走。あくまでも歌はついでだよ。

 そのまま空を飛んで彼等を追っていく。見ていると、大きな機械を突破するようだ。

 

「どう思う?」

「ぬるいですね。相手になっていません」

「じゃあ、第二関門ですね」

「うん。先頭はもういってるみたいだし、担当するよ」

「お願いします」

 

 さらに加速して先頭集団を追い越す。第二関門は渓谷。間にある石の柱とロープを使って進んでいく。落ちたら、奈落。一応、ロープが張り巡らされ、下はマットが引いてあるので落ちても大丈夫。それに復帰用の縄梯子も用意されている。

 

「あれは……」

「あ? あのムカつくガキどもじゃねえか」

 

 でも、これだけじゃ駄目だよね。もうちょっと厳しくするよ。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス。煌きたる天神よ。今導きのもと降りきたれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル。撃つは雷。響くは轟雷。アルカス・クルタス・エイギアス ハァ!」

 

 渓谷全体に巨大な魔法陣を作って、弱い威力の雷を法則に基づいて降ろしていく。命中しても少しダメージを受ける程度。むしろ、光と音の方がメインだし。ちなみに詠唱なんて必要ないけど、あくまでも魔法少女っぽくするためだよ。

 

『ただの綱渡りだと思ったか! 残念、落雷を避けながら進め!』

「ふざけんな!」

「ちっ!」

「あの、ちゃんとコントロールしてあるので受けても大丈夫ですから……」

『実際、すこしピリッとするぐらいだから問題なし! にしても、今年は難易度が高い!』

『今までが温すぎただけだ』

 

 みんなが頑張って通っていく。その中でもお父さんの弟子の人をみる。彼は装甲の板を背負いながら進もうとしている。

 甘いよ?

 そういいたいけど、だめだよね。案の定、雷に撃たれた。それでもロープを外さずに頑張ってすすんでいく。

 

『さあ、先頭は最終ステージだ! そして、黒の魔法少女がいたら、赤の魔法少女も当然いる! ということで、地雷原に陣取っている嬢ちゃんの罠を潜り抜けていけ! 地雷は競技用の奴だから威力は大したことないぞ……って、なんじゃそら!』

 

 シュテルの陣取っている方をみると、地雷原なにそれ、美味しいの? という感じで、炎の龍が動き回っていた。

 

『おい、その威力は問題だろう』

「問題ありません。ゆっくパターンにそって進みます。空は……フェイト」

「うん」

『空は雷、地は炎の龍。どっちを通ろうとしてもやばいぞ!』

『確かにどちらもゆっくりだ。ちゃんと見て避ければ問題ないだろう。ただし、地雷にも気を付けないといけないが』

 

 轟君が地面を凍らせて突き進んでいく。そこに炎の龍がくるがそのまま避けて進んでいく。まあ、そうだよね。このまま進ませても問題ないか。

 

「さて、相手をさせてもらいましょうか」

「ちぃっ!?」

 

 先頭集団がシュテルと戦いだした。シュテルは杖と体術のみで対応していく。吹き飛ばされたら地雷で飛んでいく。しかし、対応できる人数に限りがあるので、他の人を囮にしてそのまま進んでいくことができる。

 

 

 



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13話

 

 

 

 

「うぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「っ!?」

 

 空を飛んで待機していた私は声が聞こえた方をみる。すると、緑谷君が装甲板で地面の地雷を叩いて吹き飛んできた。普通なら有り得ない爆発量からして、おそらく集めたみたい。こちらが張っている雷よりも遥かに上に飛んでいる。これは放置するしかない。そこまで対応したら流石にだめだと思う。

 軌道計算をしたら問題ないので視線を下にもどす。下では相変わらずシュテルが妨害している。

 

「やばっ!? 避けてぇぇぇぇっ!」

「え?」

 

 振り向くと緑谷君が凄い速度で飛び込んできていた。彼の後ろでは空中でピンク色の爆発がある。地雷を空中で爆発させたみたい。そのせいでこちらの計算がくるったみたい。

 考え事をしていると、目の前に緑谷君の顔があってもうキスしそうになっていた。冷静に電子信号を加速させ思考を加速。同時に身体の一部を加速させて背後に回って抜刀してそのまま攻撃しそうになる直前で止める。同時に足掻いてた緑谷君の手が私の腕を掴む。攻撃していたら何の問題もなかったけれど、流石にそういうわけにはいかない。私の速度のせいで腕に傷ができて、血しぶきが舞う。血しぶきは緑谷君の驚いた顔にべったりとついていく。その一部は驚いて口をあけている中へと入っていく。

 ゆっくりと吹き飛ぶ緑谷君は私を申し訳なさそうにみる。現状を考えるとこちらは問題ないのだから、手で行くように指示する。すぐに身体が再生するので、軽く見せる。

 

「行って」

「わかった。ありがとう」

 

 落下しながら緑谷君は更に地雷を取り出してそれを装甲版で叩き、爆風を利用する。どうやら、シュテルとの闘いを避けるために地雷の予備を持っていたみたい。そのまま地面をうって更に加速。シュテルを抜けていった爆豪さんと轟さんに追いつき、そのまま追い越していく。そして、そのままゴールして一番になった。

 

「彼、一番ですね」

「お父さんの力を継いだのなら、これくらいはしてくれないと」

「そうですね。しかし、フェイトの血を飲みましたか」

「うん」

「では、経過観察が必要ですね」

「適応するのかな?」

「可能性はありそうですけどね」

 

 私の遺伝子情報を取り込んだということは私の"個性"を習得している可能性がある。というのも、お父さんの傷を治すために自己進化を行って、超再生を私のDNAをもつ存在に与えられるようにしてある。といっても、まだまだ実験が必要。そして、そういう意味ではワン・フォー・オールをお父さんから受け継いだ緑谷君は可能性がある。お父さんのDNAを取り込んでいるんだから。まあ、多分発現なんてしないと思う。

 

「しかし、あれですね」

「なに?」

「感染兵器ですか、フェイトは」

「違うよ! 私はただの女の子だから」

「フェイトがただの女の子なら、人類は危ない人……平和を願う人だらけですね。お父様の弟子なのですから。笑えない冗談です」

「酷いよ、もう」

 

 っと、そろそろ戻らないと。次は騎馬戦の予定だけど、これは見ているだけでいいし、次のトーナメントも同じ。ここからは二人で楽しんだらいいだけ。

 

「出店周りしようか」

「そうですね。タコ焼きとか食べてみたいです」

「じゃあ、行こう~」

 

 体育祭とはいえ、お祭りだから楽しまないとね。

 

 

 



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