戦女神達の戦争 軍団、『彼の地にて』 (電話圏外)
しおりを挟む

GATE、彼の地にて 『軍団』暗躍セリ
 戦女神達の戦争 軍団、『彼の地にて』


薄暗いカラオケルーム、そこには50人前後の女性が所狭しと詰めていた

 

 

茶髪の少女が女性たちの列の前に立っている

この少女がこの集団のリーダーのようだ

 

 

「はい!皆さん、一応リーダー張らせてもらってます!『八神はやて』のような。野村です!気持ち!ナイトやってます!」

 

 

集団から野村へまちまちと

 

「元ネタ的にどうなんだ」

 

「どうしてそうなったー」

 

などと笑いと定番のヤジが飛ぶ

 

 

 

「はい、今回我々が飛ばされたのは、『GATE 彼の地にて戦えり』です!因縁深い銀座に移動する前にこの集団で使えるボックス席を予約しておきました、『先行偵察班』の『リーネ』ちゃんのような篠崎さんに拍手ー!」

 

 

立ち上がって礼をするおさげのイギリス系の少女に

パチパチと拍手が起こる

 

 

「えーと、この後は皆さんには"なじみ深い"日本観光です。認識阻害が掛かっているとは云え、ハメを外し過ぎないようにー」

 

 

笑いが起きる

 

 

「今晩はバス移動の後、都市部外れの先行組のリフォームしたホテルです」

 

 

「その後、19:00からは、魔力組、魔術師組、科学者組、政治家組はミーティングを行います。その後19:30からは兵士組、戦闘職組で会談、21:00からは一般人組で懇談、23:00には兵士、戦闘職、魔術師、政治家組含めて洗い直し、12時には一般枠含めた全体交えて会議です」

 

 

 

「また、観光の際の引率としてそれぞれの組に必ず大人の魔法使い並びに魔術師が組みます」

 

 

 

 

 

「はい、ほんなら怪我無いよう、私ら【 軍団 / レギオン 】のいつも通りの『戦争』しましょー」

 

 

 

遊びの様な勢いで戦争と言ってのける狂気

 

その場の面々は尊敬の意を込めそれぞれの敬礼を返す

 

違う世界ならば本来 『転生者』 と 呼ばれる者達の軍団であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日は都内各所で猛暑日

 

 

遊園地、映画館などで特撮、ヒーローものを楽しんだり

 

 

アニメ、漫画。限定品の購入

 

 

最後に食糧、衣料品の買い出しで終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

18:00

 

 

「八神軍団長、入室!」

 

総勢12名の女性が従業員用ホールに入った『野村/八神』の姿を認めると立ち上がり答礼

 

八神はパイプ机とパイプ椅子の即興の会議場、机の前で全員に返礼を行う

 

全室中央前面に腰かけると着席の合図で全員が席に着く

 

 

「では、レギオン隊長クラス会議、始めましょか」

 

 

会議は滞りなく進んでゆく

 

 

「魔術組、世界各国の主要人物への精神掌握、すり替え完了、それに加え当世界とは異なる異斑魔力波を確認したわ」

 

 

 

各々の目の前のタブレット端末には資料の写真に各国首脳クラスが映し出されていた

 

 

 

「科学組、現地高次元精神生命体への情報解析完了、魔術元素を利用し戦略への転化も可能」

 

 

 

 

「政治組、ゲート向こうへの干渉は、ドロイド、ホムンクルス、クローン、魔術・科学組の協力によりあらゆる手は滞りなく進んでいる」

 

 

 

「統合すると『物語』の日付が近いと思われる」

 

 

「ご苦労さん。続きは明日やね。ついさっき銀座で捕えた捕虜については魂を複製、各所テンプレ通りの然るべき対処をお願いします」

 

 

「では、本会議を終了する」

 

 

 

 

 

 

一通りの会議が終わり

ホテルの上層から遠くに見える都会の光を野村は眺めていた

 

 

後ろから声がかかり振り向くと管理を任せている転生者の一人だ

 

「子供組はもう寝たわよ、あなたももう寝なさいな」

 

 

「ああ、警備まですまんなあ、ほーしょーさん?」

 

「あら、そっちのが好みかしら?」

 

 

「あー、今回は手を掛けさせたね」

 

「ふふ、現地通貨を稼ぐぐらい苦労の内には入らないです」

 

 

ガワが艦これの鳳翔っぽい転生者はベッドに腰かけると和服の襟を崩し、ぽんぽん、と優しく膝をたたく

 

コイツとは共に戦場を駆け抜けた古い付き合いだ

 

 

甘い吐息に期待を孕んだ艶やかな瞳

 

そういうことだろう

 

八神はドアのカギを掛けた所でスイッチも入ったようだ

 

エアコンの掛かった部屋が"熱帯夜"になってしまい、逆に夜が遅くなってしまったのは致し方ない

 

 

 

 

余談として翌日、子供組を連れて近くの遊園地のヒーロー・ヒロインショーに向かう

互いにハリ艶の良い肌の八神隊長と鳳翔警備主任が見られたという

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達は世界に認識されず暗躍を行う

 

 

様々な工作は異界、世界双方共に着々と準備は進む

 

 

 

 

彼女達『レギオン』がどの様な行動を起こすのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




多分いつか続きがあります


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話

 

 

私達の大隊が到着した二日目のその夜

 

 

 

物資補給の為ホテルの各階フロアのエレベーターホールは大賑わいだった

 

 

 

 

「まったく、世界移動して『本局』からの資材を魔術工房を設立するっていうのに毎度この混雑具合はどうにかならんかね……」

 

私は思わず苦笑いを返す

 

「あはは、なんか人によっては空間移動で運べない慎重に扱う計器とかがあるそうで」

 

 

「ちょっと階段上って科学組と兵士組に手伝いを要請してくるよ」

 

 

 

 

そう言ってターニャ・デグレチャフこと谷口さんは上の階へと駆け上っていった

 

 

「お~い、アリスちゃーん」

 

「ああ、ども、何人か振り返ってますけど」

 

「あ、ごめんごめん、こっちのアリスちゃんね」

 

そのまま全員作業に戻っていく

 

 

「で、どうしたんですか。マルタさん」

 

特殊戦略部に加え、魔術科に所属する『 Fateのマルタ 』こと本田さんが階段から駆けてきた

 

「今、科学班のホテルの外にちょっとコンクリ砕けそうなくらい重たいヤツあってね」

 

「工房に入れたいんですか?」

 

「慎重に時空間魔法使える人、数人がかりでね。一人でも加わってほしくて」

 

「他のアリスにも声かけますね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホロさんちっす」

 

「おお、こんばんわ。ヌシとは北米以来じゃな」

 

狼と香辛料のホロの様な補給基地中継地から補給班の方に語り掛けた

 

 

 

立ち話をしていたら子供系のありすが抗議の声を上げた

 

「眠いよ~…」

 

「私一人でも大丈夫よ?」

 

アリスが眠気に耐えられなくなりそうなFateのありすを抱える

 

「すまんが、慎重に頼みたい。じゃが、これで終いじゃ、これは科学班のフロアの7階エレベーターホールまで飛ばしてほしい」

 

 

この場の上官であり『女神転生シリーズ』の『魔人アリス』であり『アリス大尉』として魔術班各員に指示を行

 

「この場の魔術班、アリス、ありすは軽量化魔法を。他の魔導士各員は『テレポ』を使

用、場所は指定されたエリア、最終確認は私が行う。はい、各員、属性により五芒星を

描くように配置ー」

 

それぞれが魔術宝石を置いたり魔力を合わせたり、キリ良く動いていく

 

「皆、手慣れておるの」

 

「まあ、前回の次元『まどマギ』で鍛えられたのでしょう」

 

「そちらの旅団も大変そうじゃな」

 

「噂ではそちらも珪素生物と一戦交えたとか…?」

 

「侵略の元から断っただけよ」

 

苦笑いを浮かべるホロさん

 

そこで準備OKですとの声

 

「じゃあ、行ってきます」

 

 

最終確認に至るまで3分

 

「スペル間違いも魔力の練り上げも問題無いし、よろしい」

 

 

「転移魔法起動ー、注意されたし」

 

魔導士の一人が声を上げると周囲は目標物から少し離れていった

 

すると、光の粒が指定の機械に浮き上がり、消えていった

 

 

「成功しました、フロア内の何名か向かってます」

 

「ああ、ありがとう、今日の所はもう無いよ」

 

「やっほー、進捗状況はどないや?」

 

 

「八神准将!」

慌てて二人と周囲の魔法使いは敬礼を行う

 

八神は返礼

 

「ハイ、それで。これで終わりか?」

 

「はい、参謀本部からは以上です。こちらがリストです」

 

「補給も十分、今回はかなり腰入れとる」

 

書類を捲り確認を行った

 

「それは…」

 

「心配あらへん、米軍や他国とは事構えん事は確定しとる」

 

「あ、これはオフレコやで」

 

「イエスマム!」

 

お疲れ、と温泉棟へと去って行った

 

「喰えない人だ」

 

「あの人は古参兵だからな。撤収!ベッドに入る前に着替えろよー」

 

全員宿へと帰って行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八神は棟が連絡通路で繋がっている温泉に来ていた

 

脱衣室で服を脱いでいると

 

浴場からかぽーん、と桶の当たる音

 

「誰やろ」

 

赤を基調とした服がバスケットに入っていたが複数人居るので分からない

 

「おーい、邪魔するでー」

 

 

「ああ!?あ、八神隊長」

 

キレ気味に返されたが何かあったようだ

 

「そうやよー、アスカちゃんに凛ちゃん。二人とは珍しい組み合わせやねえ」

 

エヴァのアスカにFateの凛ちゃんにこの組み合わせ。ツンデレ連合?と茶化される

 

 

「だーれがツンデレですか!」

 

ざばあ、と湯船から立ち上がる

 

「落ち着けー『明石』」

 

「アスカちゃん落ち着けー」

 

噛み付いてくる獣を扱うように手で押さえる

 

ふーっ!と威嚇する猫のようなアスカ

 

 

そこに頭にチョップの一撃が後ろから加えられる

 

 

「風呂場では静かになさい」

 

 

湯気の中銀髪が特徴的な女性ニャル子っぽい娘が現れた

 

「ニャル子さん…威力、強すぎて…痛い」

 

加減位してるわよ、と立ち上がり、では。と去って行った

 

「ニャルさんクールやなあ」

 

 

「大人ね」

 

 

 

その後は三人でワイワイとのぼせるまで風呂で喋っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日目、12:09[銀座]

 

 

 

「近いねえ」

 

 

 

 

「ええ、喉元です」

 

 

交通量の多い人の歩く街並み、本来、来週にもここは地獄となる

 

ここは国の中心点、千代田区、西に霞が関、手前には皇居

 

 

八神隊長とニャル子中佐副官補佐は車が行き交う道路を眺めていた

 

 

「"ゴジラ"でも使うか?」

 

 

「ふふ、ご冗談を」

 

通行人はスマホに集中し何も考えずに通り過ぎる

 

「それで、何体集まった?」

 

八神の目つきが鋭くなる

 

「『一億』、ですキリの良い数を揃えました」

 

 

「グッド…ええやん、まずはここから、やな」

 

 

「『イタミ・ヨウジ』ですか…」

 

同様に動きますかね?

 

「その為に名作作家を用意したんだよ」

 

ニャル子中佐は資料を覗く

「餌も十分、釣られますね」

 

 

 

 

「逃げ惑う人々、死に往く無残な骸…ああっ!」

 

ニャル子中佐は恍惚の表情で書類を持った手事赤らめた顔を押えている

 

「趣味はいいが、殺気を抑えろ」

 

スマホに撮られるところだった

 

「09、よくやった」

 

 

八神の後ろにはスマホを持った若い男の死体が頭に風穴をひとつ開けて倒れていた

 

 

一人自衛隊普通科戦闘服姿の女性が駆け寄り死体を死体袋に入れていった

 

「アレは回収して使い廻す。車両を」

 

右腕をクルリと回すと複数人が現れ、目の前に大型のトラックが留まり、遺体袋と彼女

たちを後部のコンテナに収容すると血の跡も何も跡形もなく消えていった

そこには影のように地面から人型が生え、また歩き出した

その人物は先程歩いていた同様の姿だった

 

 

 

 

 

 

 

 

20XX年 8月

 

 

 

 

 

 

「伊丹洋二、目標通り行動開始。」

 

 

部屋に明かりは大型スクリーンのみ。

 

そのオペレーションルームに声が響く

 

 

 

 

 

「電車の遅延無し、歩行者の誘導確認…」

 

 

 

 

 

「敵目標、帝国軍複数、確認」

 

 

 

「帝国軍、作戦エリアに侵入」

 

 

「死者既に100突破」

 

 

「帝国軍、誘導通り、北と南、分離成功」

 

 

「死者500」

 

 

 

「自衛隊出動しました」

 

 

 

「自衛隊、拡散する敵に対応しきれません」

 

 

 

「"入れ替え"、順調に進んでいます。現在70%」

 

 

 

「予定より早いですが自衛隊、米軍爆撃機出動」

 

 

「アルヌスの丘よりGATEへ向けて追加戦力投入、数約1000」

 

 

「自衛隊、補給が間に合いません、米軍、熱核攻撃を示唆」

 

 

「銀座、赤坂、九段坂。周囲に包囲網を築きつつあり」

 

 

「ゲリラ、立てこもり、複数発生、治安維持活動に米軍が戦力を投入」

 

 

 

 

「19時間29分、国連の賛成可決で東京都に国連軍参入」

 

 

 

 

 

 

「これで、トウキョウは屈指の危険地帯と化した…」

 

 

 

 

 

『現在、"帝国"と名乗るテロ集団が発生、5200名の被害が出ており…』

 

 

『在日米軍、沖縄、グアムからも追加の部隊が到着します。これにより…』

 

 

『総理はこれを防げなかったと!?何名もの不明者を…』

 

 

 

『うわー!コレウマーイ! ホントニー? ウフフ、大げさですヨー!』

 

 

 

 

つづく?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話

 

 

 

初代大統領様(エイブラムス)が日本の大地を戦争の為に侵攻するとはな…」

 

 

「ここは紛争地ですからね、何時ものデモすら来やしない」

 

「今はどうも言ってられん、首相は責任逃れの方が急いている。このままでは体の良い米国の本土と化すぞ…」

 

 

「不思議な魔法少女でも現れれば、ですね」

 

「彼か、政治には向いていないが、まあ、現場の判断だ。目をつむろう」

 

魔法少女のプリントされたTシャツで彼が撮影された一枚

それに隣国のトップの写真の記事だ

 

「何々、ああ、この記事か。隣国の書記長が急に乗り込んだっていう」

 

「民間人が大丈夫なら…だそうだ」

 

「今はあの集団のことについてだ」

 

 

 

 

「奴らたっかい高級スーパの肉食ってたってSNSで流れてましたよー」

 

「生き残りがまだ居るのか…」

 

 

 

「こっちは面白い事が分かった」

 

ササガワ参議院補佐官は二台操作していたスマホの右側を見せる

 

「なんだ、防犯カメラの映像…?」

 

「面白いことに、この行為に二次加工するまで、誰も気が付かなかったという事だ」

 

スマホの映像には

 

少女二人にスマホを構えた男が近くに寄っていく

 

次の瞬間、男は血を流し、倒れていた

 

死体袋に詰める軍服の大人、それに集まる集団に指示を出して最後にはトラックのコンテナに去って行く姿まで映っていた

 

 

 

「酷えな…」

 

「これは…」

 

男たちは絶句していた

 

 

国際競技(・・・・)で防犯カメラの設置台数が増えたからな、様々さ」

 

「これが世間にばら撒かれるのも、総理の更なる責任追及も時間の問題」

 

「内閣解散は確実となった、ま、現在のパワーバランスから言って内容は変わらんがな」

 

「選挙をしている暇などないから…緊急時適応でお偉方の先生の繰り上げだ」

 

 

 

「これは、世界も日本も荒れるぞ…」

 

若き議員たちは国を憂いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先の映像から割れたトラックを警視庁一課の刑事が追っていた

 

「カーナビ…地図も古いわけじゃあないんですけどねえ」

 

「這ってでも行くしかないだろ、お前はヘリに指示しろ」

 

「了解」

 

車で向かった刑事二人の前には工事止めの看板と雑木林が並んでいた

 

刑事のそれは最早執念に近かった

 

 

 

 

 

 

 

 

「連絡によるとジャパンもフェイクを掴まされたようです」

 

「上層部はこれ以上この件には関わるな、と」

 

遠い米国の地でも国の内部問題と関わりの有る"新兵器"の出所を追っていたFBIも悔しさを滲ませていた

 

もう既に労働勤務時間外、優秀な部下も帰って宜しい、と声を出した

 

 

 

「ビッチ!あのゴーストは一体、世界で何を企んでいる!?」

 

 

各国諜報機関も追っている『謎の美女達の亡霊』

 

 

彼女たちが目立ったのはここ数ヶ月の事であった

 

 

 

 

 

 

 

「資金の動きに問題は無いか?」

 

 

「ダー、同志。彼女たちのマネーロンダリング(資金洗浄)は完璧です」

 

 

「よろしい、今度は我々が北上する番だ」

 

 

 

『彼女達』に接触を果たしたロシアの自治組織

 

暗躍することで、北の地でも新たな火種が生まれる事に為る

 

 

 

 

 

 

 

「世界を掌に廻している…全く以て恐ろしいお方だ」

 

 

まだ、まだ

 

 

 

 

 

 

まだ、世界は流動する、とシナリオライターの彼女は呟いた

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話

 

 

 

 

 

 

暗い部屋、ただ一つ、机に置かれているバーボンとグラスのセットを呑む白いタキシードの男と

 

 

黒スーツ、短髪の血だらけの男が鎖に繋がれ、吊り上げられて小さな照明に当てられていた

 

 

 

 

男は吊られることで垂れ下がる首を筋肉の疲労も無視し、無理やり上げる

 

 

 

「はァ…はあ…、一体、お前らは何物だ…」

 

息も絶え絶えに男はその謎の人物に睨み、問う

 

当然だ、藪だらけの施設に入った途端女に襲われた

 

 

 

 

「お客人だ、目が覚めた」

 

老齢の男性の声、暗がり、照明の陰になっていて顔は判らない

 

彼が暗闇に声を掛けると、遠隔操作か鎖が外される

 

男はそれによりどしゃ、と思い切り倒れこんだ

 

男はグラスをワンセット両手持ち、男へとゆっくりと歩いて行く

 

 

 

「君の地球産だ…ゆっくりと飲みなさい…」

 

男は傍で酒の入ったグラスを顔の前まで差し出す

 

 

それを奪い取って急いで飲む

 

当然、度数も高い酒なので咳き込む

 

 

 

 

「テメエらは…何者だ!」

 

 

「元気が宜しい。人類はそうではなくては…ね」

 

 

「はあ…はァ…人類…?何様のつもりだ!」

 

 

「それには、こう答えよう」

 

 

 

「君達の隣に居る者だと」

 

後ろからの大きな音に振り返ると

 

部屋に明かりが入る

 

全体が真っ白な部屋

 

ここは何かの施設のようだ…地下か…余りに近未来的だ

 

 

 

男の顔が映し出される

 

巷に出れば『この世の善』を映し出したような顔だと云われるだろう

 

 

 

「ヤバいもんでもキメたか?」

 

 

「何、君達人類の…」

 

 

「いい加減にしろ!お前はどう見ても…っ」

 

 

「うーむ、何と説明すべきか…正義の味方…では陳腐だな…」

 

 

 

 

瞬きをすると、男がもう一人、椅子に座っていた。そして何か悩んでいる

 

目の前、ここに笑顔で立っているのに

 

 

 

『並び立つ、支援者』

 

 

 

 

「「そうだ、良き隣人としよう」」

 

 

 

 

 

 

 

そしてソイツと同じセリフを同じように言った

 

 

 

「君達に言った一万年前のセリフだ、大分翻訳(・・)しているがね」

 

「そう、キミに判るように言うと人類が『アレ』を自ら破壊した頃のね」

 

私は何もしていないのに。いやあ、落ちぶれていったなあ、と近い出来事をした友人を懐かしむように笑う

 

 

まさか、コイツは…

 

 

「ワタシについては。何を言っても君達には判らないし、どう言っても(・・・・・・)バカらしい…」

 

男は二面性を感じる強烈で悪辣な笑みを浮かべる

 

 

「ならば、君たちの友人でいいじゃないか」

 

この存在にだけはこの表情をさせては『イケナイ』…本能的に感じるのだ

 

「さあ、久々の友人の到来だ。ステーキか?ああ、秘蔵酒を出そう!」

 

 

いつの間にか…もう何度になるか。

 

男は目の前に笑顔でニコニコと座っており

 

俺は身体の傷は消え、卸したての新品の黒いタキシードに着替え、胸エプロンまで付けていた

 

これは…

 

 

 

 

「その時に、キミの先祖(・・)の夫の方はこう言った!勇敢な漢だ!とね!あの時は可笑しくて…」

 

どうしたんだい?と

 

一方的に話していた男は上の空の俺を見て悲しそうな顔をしてしている

 

 

アンタは…と口から洩れる

 

何でも言ってくれ給えよ、とソイツは話の続きを促す

 

 

「アンタは……世界をどうするつもりだ」

 

世界!と驚いたような声を出す男

 

 

 

「ボクはキミ達(・・・)を守る…」

 

 

「俺達()何をするんだ…俺達()何をするんだ!」

 

落ち着きなさい

 

一気に沈静化する精神、これはもうダメ、か

 

コイツにマインドコントロールを把握されている、若しくは何らかの影響を強く受けている…

 

 

 

 

 

「見たまえ」と男が掌を空間に晒すと

 

 

「君達の肉体は保存している!」

 

 

 

瞬き一つ

 

きっちりと整列した人間が保存容器らしきものに保管され、整列して浮んでいる

 

 

「お前…」と何も言えなくなる

 

 

「これは怪しいもの(・・・・・)でもなければ、海外の映画でもない」

 

容器の一つを手繰り寄せる

 

「キミの両親だ」

 

若い子供、両親のアルバムを見れば判るだろうが

 

「手のひらのそばだよ、ほら」

 

こんな風に…と男が手を顔に振れる

 

顔だけが老けていく、死に際になり。おっと、と一気に戻す

 

 

 

 

キミもここに(・・・・・・)一人、ほら、アレだよ」

 

 

 

 

「確かに俺の顔だ」

 

 

 

ん?ディナーは気に入らなかったかね?

 

 

 

 

「ああ、テメエ(・・・)が特にな」

 

 

「ギンザだけでも殺人教唆、脅迫、死体損壊、殺人ほう助ォ…数えきれないぞぉ…、カミサマ(原初の犯罪者)ァ!」

 

最近出来た『テロ等準備罪』もなあ!

 

と一刑事として『ドウジマ警部』は机を蹴り上げ

 

人類の敵(犯人)に俺は拳を構えた

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

IF END 世界の果て
世界の果てで見たもの IF END


振り上げた拳は正確にコイツの鼻っ面を叩き折る

 

良かった、RPGみたいに物理有効だ!

 

 

「ど、どぼじで…」

白く輝く血を流している無様なこいつに

 

 

応えに拳を振り被る

 

「俺の父親は依存症だ」

 

再びストレート

 

「母親は酔っ払い運転に巻き込まれて事故でバラバラになって死んだ…」

 

フック一発頬に

 

「まともな顔しているハズが無いんだよっ!」

 

 

腹に一発

 

ゲロも輝いてらあ

 

 

「ぎ、ぎざま…」

 

 

 

「転生…だったか?」

 

 

「ど」

 

フックを腹に、膝を着く

 

「彼女達の一人が出頭して来たよ」

 

 

「周りは取り扱っちゃあくれなかったけどなあ!」

 

蹴り上げであごをノック、ノシちまった…

 

 

 

「おーい、誰か頼むわ」

 

白い空間に向かい声を掛ける

 

おっ、和服姿のカワイイ女の子

 

 

 

「アナタはどうして…」

 

悲しそうな顔で…まあ

 

「どうしても何も」

 

 

 

「この人をどうするつもり?」

 

 

 

「犯罪犯した大人は罪償わなきゃ…いかんでしょ」

 

 

 

 

 

女性は腕と脚を鎖でぐるぐる巻きにして目の前に持ってきた

 

「結構力あんのね」

 

 

「ええ…こんなのでも、兄、ですから」

 

 

「それじゃ」

 

 

 

「ここってどうやって出るんだ?ったくヒダの野郎…ヘリでも寄越せ…」

 

 

 

「転送装置まで使いこなして…彼は何者なの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[栃木県]

 

 

「おばーちゃーん、ここどこ?」

 

 

「あ、あんた何者だい!?」

 

畑の除草用のカマを向けられる覚えは…

 

あったわ

 

 

肩にこいつ担いでるの忘れてたわ

 

胸ポケットに…

 

 

「東京都、警視庁公安部の者です」

 

 

 

「こ、交番なら向こうの角に…!」

 

親切に教えてくれて

 

 

 

 

 

事件は『主犯』は逮捕出来ても『共犯者』の消失

 

紛争は『共犯者の転生者』が消え去った時点でゲート向こうに簡単に押し返す事が出来た

 

まるで『IQが下がったかのよう』に

 

 

 

 

届け出が出ているだけで行方不明者・死傷者含め『五万六千人』

 

ひとつの災害に匹敵した

 

ゲート向こうに国連軍が派遣され、間もなく、首都東京は強行的な政策により、米国の支配下に降り

 

 

 

「トウキョウの名前だけ、残ったか」

 

 

 

 

 

 

[霞が関とあるビル屋上]

 

 

 

一部だけ小さな町の名前として残った飛び地の霞が関、最後の東京だ

 

屋上でタバコを吹かす。

 

ま、全館禁煙だけれども

 

「先輩、テンセイシャの洗い出し、終わりました」

 

後輩と言い張る同期のヒダ、タキシード姿の俺を見て、犯人見て腰抜かした

 

「大量に居るなあ…国際機関にマークされるだろうな…ま、もうボロを出す連中じゃあないだろうが」

 

タバコ、

 

 

「で、彼女とはどうなんだい?」

 

 

「い、嫌だなあ!」

 

 

 

「私も嫌よ」

 

 

後ろから声がかかる

 

美女と言っても過言ではない白髪の女性

 

 

コイツは?とタバコを一本差し出すも

 

 

「ここ、禁煙だって」

 

知ってました、と言いつつ足で踏み消す

 

彼女に足を踏まれる

 

「知らなかった、じゃない?」

 

 

頼むから情けない声を出すな…そんなんだから自他称後輩なんだぞ…

 

 

「メンドクサイ女に惚れられたものね?」

 

 

「やさしいー女性が好きだなあ…ホラ、この人みたいな!」

 

写真の一部のめっちゃ笑顔の銀髪の女性を指さす

 

「残念、彼女。殺人犯よ、常習のね」

 

嘘は言ってない…

 

 

「ここは、ハリウッド式に?」

 

俺の言葉に肯き、ええ、とキス顔のこの女は喜んでいるが…

 

 

「残念!孫子の言葉に従うが勝ちだよーう!!」

 

三十八計逃げるに布かず!

 

 

 

笑顔で追う彼女、泣き顔の後輩

 

 

 

結局、あの男は国に引き取られ、分割され

 

 

『右手は西洋』

 

『左手と頭は中東』

 

『胴体に半分ずつ右はロシアが左は中国』

 

『右足はオーストラリア』

 

『左足はインド』

 

 

 

と"彼"は『分割』され研究対象となった

 

 

 

 

 

 

その後、第三次世界大戦が勃発

 

核戦争こそ起きなかったものの、何発かの核が使用され

 

戦争中、テンセイシャの何人かがまた、研究材料としてホルマリン漬けになった

 

 

 

世界の戦争は一年と三か月と短く終了した

 

その後の世界の地図は大きく描き替えられたが、それは当人たちの歴史だ

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1章 始まった戦い 抗う者達は
5話 刑事の場合 ー 狂気の殲滅者となりて


 

 

 

 

 

 

「警視庁一課、フミジマ・ヨシヒコ警部…」

 

「この女郎…っ」

 

仮面とローブに一本縦筋の入った可笑しなこの女、的確に無効化する為に脳を揺らして来やがった…

 

「落ち着きたまえ、キミの予測不能な行動は、いや、全く以て理解できない」

 

 

「オヤジのようにか!」

 

ダメだ、この女に殴られて、視界が揺れる…

 

くそ、腰に力が入らん、見上げることしか出来ん…っ

 

「『シマイ』、ありがとう。助かりました…危ない処だった…!」

 

倒れる俺に見えたのは

 

この野郎に銃剣を首筋に宛がっている

 

その本気の証拠に野郎からは赤黒い血がドクドクと流れ、顔は汗だらけ

 

先程までの勢いはどうした。青褪めてらあ

 

「冗談は、ぶ」

 

何か固い物を無理やり歯で噛み千切ったかのようにブチブチと音がする

 

犯人…男の死体はこの女の斬撃で首が千切れた

 

その後聞こえたのは、なんとでもないような殺人の感想だった

 

 

 

「ふむ、この剣は使いずらい、です」

 

 

 

ぷっつんシチマッタ

 

 

「貴様あアアア!」

 

先程の音速の剣を構える女、構わん!

 

ストレート!真っすぐ!

 

 

 

 

 

 

 

 

血みどろに女に倒れ掛かる俺

 

「まさか」

 

 

「それを言わせたかったのさ…!」

 

速度じゃあ敵わんから頭突き噛ましてやった!

 

 

「仮面が割れた程度、対してあなたは」

 

「腹の一本、二本掻っ捌いったって…っ構いやしねえ!」

 

取り敢えず、コイツのツラは割れた、あとは…

 

「アナタは何処までも…」

 

 

「脱出、出来るとお思いで?」

 

呆れた、と溜息を吐く、青髪、長髪、顔は…

 

「そりゃ、な。オンナには判らねえ、男の矜持ってもんだ」

 

笑っているのは判る…細かく見えねえ…

 

「唯の意地っ張り、でしょう?」

 

女は俺を優しく抱え込み、降ろす

 

 

身体が冷たくなってきた…ヒエイ…ヘリ…ヤバイ…こいつらは…

 

「にげ……ろ」

 

 

「最期の言葉、ですか?」

 

 

「ワタシも強い戦士には、好意を持ちますね」

 

顔がハッキリと…!

 

「ちゅっ」

 

「なん…」

 

キス…で、顔がハッキリと、見えた!

 

「おバカな男の最後くらい、ごほーび、です」

 

跪く俺に離れる犯人

 

 

「殺人…さ、さつ…はん………ほ」

 

意識が、持たない…

 

 

 

黒く意識が塗り潰される前に、見えたのはオンナの笑顔と、迫る鋸状の刃だった

 

 

「ケイジサン…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとキミ!!」

 

 

おおう、目が覚めたときと同じセリフ…

 

 

「おう、戦場のオフィスでブルマーとは判ってるねぇ…」

 

 

「ああ、お気になさらず、コーヒーの銘柄っスよ」

 

 

 

『交通安全課までコーヒーセビリに来る所轄なんてセンパイくらいですよ』

 

 

そう、オレは束の間に霞が関、交通安全課の元後輩にコーヒーを恵んで貰っている

 

 

「目立つのはな。可愛い後輩女性刑事とエリートコースでヤングのバリキャリお若くカッコイイオニーサン刑事なんてそう珍しい組み合わせじゃねえぞお…」

 

 

『『ヤブに入って美女が出る』なんて誰が想像できますか?最早創造の域ですよ』

 

 

 

 

そんなやり取りをしていた(・・・・)

 

 

ええと、と、後輩は仕事通り手元の書類を確認する

 

 

その通り、ああ、分かっているさ

 

 

『アナタの名前は姫川さん』

 

『弟さんの行方が気になったあなたは『あの藪の近くで』近隣を捜索中のフミジマ刑事に説得し、車でこの署に護送中、『テログループに襲撃を受け』、意識を失った』

 

『お伝えしにくいのですが、弟さんの件で、銀座に最後に入ったのは事件当日、現地の防犯カメラで死の間際までキッチリと収まっています』

 

『顔認証が間違いだったとして、捜索手続きも無ければ、戸籍も…失礼』

 

『弟さんは遺体を預かっています』

 

 

 

 

 

「正直に言いましょう」

 

 

 

「センパイの名前と、誰も知らない筈の先輩の家族内容まで騙るどっかのバカの情報を持った『情報提供者』さん?」

 

 

「アナタは少し休憩して、診て貰った方が良い」

 

「今…、10時、11時には西東京まで出る装甲車が到着します、そちらに乗って頂ければ、一時避難施設を開設しています」

 

 

「避難者支援金等のお話は…お姉さん忙しいけど、確りしなさいね?」

 

 

それじゃあ、二番休憩所で待機してください。

 

 

その言葉に、俺は打ちひしがれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女、綺麗な娘だったな…」

 

サクラ色の光彩を放つブロンド髪、同様の桃色の瞳に長い同色の睫毛

 

グラビアかってぐらいスタイルも肌も良いし、女として負けた気分

 

 

 

「ええ、ああいう子が増えるでしょうね…」

 

 

でも、あんなのが、ギンザで壊滅(・・・・・・)した『鬼の一課の鬼神』と呼ばれた敏腕刑事とあんな処まで態々似せてまで騙るなんて怒りを覚えたし、片思いの人を馬鹿にされた様で許せない

 

でも、こんなご時世に唯一の家族の弟さんまで亡くしたあの子と犠牲になった先輩どちらも攻め立てることは出来ない

 

「立派な人でした…」

 

黙って肯く係長

 

「アカサカ料亭前、バリケードの件で!電話入ってます」

 

廻して!

 

と彼らは仕事に戻っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オレは…」

 

「わたくしは…」

 

何度か話していると自称が入り混じる

 

トイレに行った時の感覚に

 

 

 

身体は婚前交渉は論外のタチだったが

 

確認に腹を触らせてもらう

 

 

 

「この口調…このご時世に」

 

幼い喋り方、視線も顔の唇に行きがち

 

着ていた服は新品、だが、下着は汚れていた

 

「『この身体の感覚』に『そういう職業』だったってのは判るが」

 

 

 

今まで、大人に振り回されて大変だったな。お疲れさん

 

 

身勝手だが、恨みは返す、平和に眠ってくれ

 

そう心の中で呟くと肩の力が軽くなる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、これからは…いち、一匹の "戦士" だ…」

 

 

「これで、拳は軽くなった」

 

この娘の商売柄柔らかいしなやかで"男以上のスタミナ"に確りと付いている筋繊維の拳を握る

 

これなら、複数人殺陣(太刀舞われ)る!

 

 

あの時のデカチョウとの約束(不殺の誓い)消えた(時効)

 

 

「オメエ達の望む殺し合い(せんそう)、やってやんヨ…ォ」

 

 

"前"には小学生ながら組織を幾つも潰すという桁外れな経歴元を持つこの女

 

 

狂気とも謂える怒りの波動により、彼女の身体のポテンシャルを含め

 

 

"前"よりも圧倒的に強化されている

 

 

だが、相手(害虫)の戦力は俺のチカラを上回っている

 

 

悩んでいても仕方ない(一殺の道も一歩から)

 

 

取り敢えず降車場の近くのジムを利用(・・)することに決めた

 

 

 

独り言の清楚なお嬢様が醸し出す異常な殺気と語る物騒な小言により

 

 

装甲車の中の少年少女は怯えきっていたのを姫川ヨシノは知らない

 

 

 

こうして、一人の組織の男は

 

一人の戦士として文字通り、生まれ変わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くには硝煙と火災の煙、発砲音が遠くから響く

 

 

 

 

イケブクロ、その数多のひとつ、ビルの上から、女性は呟く

 

 

 

『ホシの一人目』 と書き置きを残し

 

 

 

 

 

 

 

高所特有の風に煽られ

 

 

 

 

 

呟いた女性は翌日、物言わぬ死体となって落下死による自殺と断定される

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話 長官、戦の行方を担う運命と出会う

 

 

[東京 総理官邸] 11:09

 

 

 

総理官邸、その一室で目を覚ました金髪の美女は腹痛に耐えかねて蹲っていた

 

 

直ぐに警備員がやって来る

 

その女性は救護室へと移動し、その場の警察官により何故招いた覚えもないのにここに

居るのか、と質問を行う

 

 

「何故!?why!?ニホンジンがここまでレヴェルが低いとは思いませんデシタっ!」

 

 

「…落ち着いて、アナタはどなたですか?」

 

 

「ベリーFBI長官…元…」

 

 

「今は?」

 

と、尋ねられると狼狽え

 

「何故かこの状態よ!」

 

本人は日本に捜査協力に当たる為ここに呼ばれた一人だと騒ぐが

 

FBIはもとより来客の予定もないとのことで

 

その後電話、ネット対応により、国籍、戸籍、諸々当たってみるも存在そのものが無いようで

 

多摩川沿いのホームレスの情報に都内の市役所でヒットした

 

 

 

「えー、貴女は『ベリー・M・アタゴ』一家離散した直後から連絡が途絶えています」

 

務めていた企業は解体され、恋人も居らず。父親の借金で首を括ろうとしていた処を一

時保護、ギンザのジュエリーショップで現在働いていました

 

 

「つまり、ワタシは身元が無いってとこネ?」

 

 

「どうやら、記憶の混濁も、です」

 

 

「ホスピタル…は大丈夫、確りしているわ」

 

重い鉄の扉を開く音が静かな取り調べ室に響く

 

「彼女については、我々が引き取ろう、ありがとう警備部のみなさん」

 

 

「シノサキ議員…」

わかりました、と被りを振って警備員は別室へと向かった

 

 

ドアが締まりきるのを見た黒スーツの一般的な日本人の顔立ちの彼は

 

 

「Mr …アナタは…」

 

 

「どうも、ミセス、ベリー」

その言葉にベリーは目を見開いた

 

「シノサキ・ススム国会議員、といっても若手ですがね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「出してくれ」

 

 

「乗り心地は良くないかもしれないが、道路事情は大分優れているよ」

 

 

「息子さんと娘さんはどう対処する?」

 

 

「ご本人からメールを打っていただこう」

 

 

「失くしたと思ったのに…」

 

 

「今は静かな物置部屋と化した警察庁の一課のオフィスにあったよ、『彼』も訪れたよ

うで…」

 

 

「鬼のフミジマがまだ生きている…それは本当なのか?」

助手席のササガワは驚いていた

 

「フミジマ…?あの地の果てまで犯人を追い、海外だろうと捕まえるというあの?」

ベリーまでも聞き覚えのある有名な男のようだ

 

「ああ、『それらしきモノ(バケモノ)』をスポーツジムで見かけたって情報があああ」

 

ダッシュボードに載せているスマホを見つつ運転していた情報処理担当の環境省政務課

に所属するオコタ政務員

 

咄嗟の判断で急ブレーキを駆ける

 

 

「どうした、って!バックバック!切り返せ!」

 

どうしたことか目の前には2mはあろうかというワイバーンがビルの横から転がってき

たのだ

ササガワが指示する前にバックを行う

 

唸りを挙げてタイヤが輪転するが空振る

 

大きなコンクリート片の上に後部が乗り上げたようだ

 

 

ベリーは急いでドアを開け、それに驚く男性達を尻目に身体をワイバーンに向け、右腕

を指し伸ばす

 

 

 

「何をしているんだ!戻れ!」

 

彼女は目の色を変え、仁王立ちの体制で何度もその右腕を上げる動作を行う

 

「おいっ!シノサキ!」

 

シノサキ議員も降り、彼女の隣に立つが目の前にはワイバーンの揃った歯が口を開け

 

その顎を喰い破らんとする直前だった

 

 

「…て」

 

 

「逃げ…」

 

 

 

 

撃てーーーっ( F i r e )!!」

 

 

 

 

直後、響くのは戦艦の大砲の轟音だった

 

 

「見事に…ミンチだなこりゃ…おい、手伝…ありがとう 」

 

「いいえ、問題ない、先を急ぎましょう」

 

肉の塊と化したソレを彼女は片手で歩道へ投げ、車の後部を軽々と持ち上げ元の位置に

戻し、後部座席へと戻った

 

 

静かに運転を開始したオコタはシノサキへと尋ねる

 

「彼女、何者(・・)なんですぅ…?」

 

「彼女は…」

 

 

 

蘇った死者(・・・・・)だ」

 

彼女も俯き両手を見て何かを感じているようだ

 

「これからは俺達の指揮所で話す」

 

 

 

オコタはこの人に着いていって正解だったのだろうか、と何度目かのため息を吐いた

 

 

 

「今、拠点となっていると聞きましたがアキハバラ…という処はどうなったのですか?」

 

先程とは明らかに仕草も様子が違うベリー

 

「位置的には絶対防衛線ですね。貴女がた死者の勢力によって築かれています」

 

シノサキの共犯者ササガワ

 

 

「我々は其処へ向かいます」

 

何を考えているやら、シノサキ

 

 

 

 

 

 

『我々は、生き延びる戦いを行う』

 

 

着いてこられるか?

 

 

ギンザの混乱の中言われた言葉

 

 

 

「隊長の為ならどこへでもどうぞぉー…」

 

まあ、構わないだろう

あの人に連れられなければオレもあそこ(ギンザ)で死人になっていたところだ

 

 

軽快なラジオでも流そう、雨が上がった今は米軍のラジオでも流れている筈だから

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話 偽りの世界 集う戦力、転生者達の戦争

 

 

[アキハバラ 男装執事カフェ ジェームス's] 事件発生から五日 11:20

 

 

 

「んー?パパのご飯は気に入らなかったかなあ?」

 

「殺殺殺殺殺殺殺さつさつさつ…むぐむぐ」

 

料理を口にするとおいしー!と言わんばかりに怖い顔の少女は微笑む

 

 

「ジェームズさん…」

 

「男装していない今は『ノーラ』よ連邦の連中に比べれば可愛いもんよ!それに今度は娘が欲しかったの!」

 

 

 

「カレーライスお代わりだそうです!」

 

 

「ここはとっくに閉店済みなんだがな…あい分かった!」

厨房の『凰鈴音』っぽい転生者が今日はここの調理担当だ

 

秋葉原名物高架橋 傍のビル 五階

 

カモフラージュの偽装網が窓際テラスに掛かっておりミリタリーショップに見えなくも

無い

 

テラスには鈍色に光る対戦車ライフル程もあろうかという戦艦砲塔を装備した女性が紅茶を飲みつつ、白いデッキチェアに座り待機していた

 

 

「陸奥大尉!お疲れです!今度のコードは… f―――09です!」

 

 

はい、と陸奥と呼ばれた女性は立ち上がり砲塔が自立しているかのように動き出す

 

「斉射、二回…弾道計算…中央統合思考システムAIへコンタクト…弾道計算…誤射の

恐れ、コンマ単位での脅威無し…」

 

彼女の装備からジリリリリリリリ、と周囲に大きなベルの音が鳴り響く

 

「射撃に際し、周囲警戒されたし!」

 

はいはいー、とジェームズはテラス席の窓のサッシを閉める

 

「撃てーーーぇ!」

その号令に轟音と共に一撃目、間を置いて二撃目の砲撃が成され、数秒でギンザ突入部

隊の取り残された人員を援護した

 

 

 

 

「不肖、確認しましたところ…敵損害12名ですね」

いやー、電脳は実に便利でありますなあ!と喜ぶどこかの白い制服姿の少女

 

 

 

 

 

「最早このようにマスゲームと化している…と?」

 

 

「そう、我々転生者にバトドルイド(戦闘人造人間)で組織し、貴族や亜人と言った向こうの位の高い馬鹿共と殺りあっているのが現状だよ」

 

 

そう、銀座の死人は実情居ない

先程の突入部隊も既に街角で残酷な車での暴走運転の加害者の男性一人でクローンで構

成されている

 

「そこの刑事の望みは断たれたけどね」

 

八神は転移魔法と拘束、スキルダウン、数多の縛りを用意して首から下を極冷凍魔法で

動くと砕けるまで凍らせて、何とか交渉に持ち込んだ

 

 

 

「あんた方の狙いは?」

オコタが尋ねる

 

 

 

「取り敢えずは出来るだけ死人を出さずに、向こうを殲滅する…やね」

 

 

「えーーーぇえ!?それだとロウリィさんやテュカさんがあ!!」

部下の『秋山』の空気を読まない話題に、クスクス、と上品に笑う八神

 

「交渉済み、やよ」

 

 

今頃は…

 

 

 

 

 

 

ビル一つがアニメショップの店に伊丹とゴスロリの少女、

 

このゴスロリかわいい…

 

このフィギアキレイ…

 

等と言った異国の言葉が並んでいた

 

 

 

「何が何やら…」

 

 

 

「イタミー!何しているの!早く速く!」

 

国から提示された勅令によりこの異国の亡命大使二人を案内することとなった

 

あいあい、と頷く事しか出来ない伊丹であったが

 

これを機に布教を考え始めていたりしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通りの笑顔を造りつつ

『シナリオ通り…B-20発動せよ』

 

念話で上級士官に次の作戦指示を下す

 

水面下での八神のシナリオは未だ続いているようだ

 

 

 

この場で全て見抜いている者も直ぐ傍に居る事も含め…

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話 狂気の中の本質

グロ注意


[ギンザ異界]

 

 

 

 

判別がつかないどこか不安定な鼻歌が響く

 

 

 

黒い空間、異次元的な世界

 

 

 

仔山羊の母神の心音と中心の父神の白痴のリズムで、鼻歌が響く

 

 

 

軸もない上下逆さま、何方か判らない世界を一人の女の子が歩いていた

 

 

白いボディースーツが特徴的なスレンダーな女の子だ

 

 

そのまま、いつか長い/短い移動を掛けて"虹色の様な泡立つ林"に入っていった

 

 

暗がりに佇む目的の人物を見つけた

 

「ああ、此処に居たんですね。狭間さん」

 

 

 

 

 

 

ぶじゅ!びゅー!

 

 

と音をたてて彼女の眼前より色とりどりの形容しがたい体液が顔に飛び散った

 

 

 

 

 

 

ぴちゃ

 

 

 

 

 

 

ぴちゃ、くグち

 

 

 

 

 

「これで、『本体』は抑えられますね。全く、閣下の無茶振りも困ったものだ」

 

 

 

 

びちゃー!ぐじゅ、じぎびじゅ

 

 

「深海に眠る彼も今彼女たちが対処していますが…私達はちょっとだけここで"祈祷"だそうです」

 

触手の生えた奇形のイノシシ

 

ぴぷぎ!ぴきー!きー…!キ!

 

 

カサキキィキチキチ…キャァオぁぁァあー!

 

存在が忌諱されるおぞましい蟲

 

 

 

 

目にし、正気を失い、死に至るおぞましい人類も想像だにしない化け物

 

 

 

 

 

ギギギーーーー!ぎぃぃぃぃいいいいい!

 

 

 

 

 

 

死そのものと謂える物質畏怖根源

 

 

「しかし、貴女も悪食というか、雑食と言うか…おいしそうにたべますね、くちっ、もぐもぐ」

 

「アナタたちは、もともと、依代でしたが、あなたのように、巫女(・・)の中で個性が強いのは…んっ」

 

 

 

 

 

珍しいですねえ

 

 

ね!ニャル中佐?

 

 

 

 

 

 

緑、黄、黄金、黒、透明、様々で感覚そのものがズレておりどれも喩えがたい、他にも色とりどり!

 

形様々な私達にも"判る"ような臓物肉片のようなものや!

 

 

嫌悪するリズムで発光鼓動する鱗、毒蟲の様な毛が生えた異臭を放つ悍ましく鮮やかな革、神経が震える皮膚、厭悪させられる血液、"異なる体液"、人神が世界である"筈"の人類存在への冒涜的なゲルといった理の外のもの

奇形の欠片を口に含んで嚥下している黒髪の美女であった

 

 

 

絶世の、それはもう奇跡の光景とも謂うべき美貌の彼女が。

 

人類の意図も及ばぬ悍ましい背筋のそそり立つ供物を自己の血液臓器に取り込む血肉とする食事を行為するその様は

 

 

 

 

 

 

一種の死生を連想させる。

外なる神の美であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろでへたり込んで、目を目の前の光景を捉えつつ痙攣している桃色の女子に気が付いた

 

 

「あら、あらあらどうちたんでちゅか~?」

 

 

白の女が撫でる手先は

 

 

「ヒメちゃん」

 

 

死力を尽くした『闘争』を終えた後の燃え尽きた(・・・・・)戦士だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[シンジュク高層ビル カフェテリア 11:20]

 

 

 

「あの方に…ひひひひっひっ」

 

 

 

「八神少将、笑い過ぎでは…?」

 

八神は目の端の涙を拭うと

 

「あー、ひひっ、すまん、くくっ、あの『ニンゲン』が『邪神の一柱にダメージを与える』とは思いも寄らんかった…」

 

「『閣下』は大変お喜びに、それはもう、娶りたいとまで…」

 

止めましたけどね、と溜息を吐く

 

 

八神はドン引き、同情した顔で

 

「あの方にそこまで気に入られるとは……」

 

 

「部下ですけど、あんな男とヤですよ」

 

 

「あー、せやなあ、あの姿を見て正気を保っていられる人間…欲しいな」

 

 

「部下にですよね」

 

 

「勿論、でも、『白の彼女』でも癒せんかあ…」

 

 

「魂魄が大分酷い捻じれ方してるみたいですよ」

 

 

「『産れ直す』とか…?」

 

 

「あの精神が気に入っているそうで、『白の彼女』が熱望しても"上"が差し止めです」

 

 

「壊れてるんじゃあなあ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くの席からがらんどうの喫煙席から彼女たちの会話を二人の男が聞いていた

 

 

 

 

「壊れた人間を残念がる八神、彼女達にはもう人間の精神は残っていないかもしれないな」

 

バケモノどもの会話の内容にストレスを感じ、数年ぶりのタバコに咽るシノサキ

 

「一本だ」

 

付き合いでやっただけだとササガワの差し出した二本目に拒否を示した

 

 

「最後の希望のケイジサンもイカレちまったしなあ、彼女たちに手先に回られてりゃあ、どーしよーもない」

 

 

「『閣下』とやらは何をするつもりなんだかな」

 

 

「人類抹殺…八神一人で簡単にできるな」

 

 

「スペック上彼女は地球位の惑星ならば氷漬けに出来る」

 

 

「ああ、だが、我々は生き残る為の戦いを行う」

 

 

「だが、こーなっては、絶望だな」

 

 

 

「でも、これは…アレ、じゃないか」

 

ササガワは謎のジェスチャーを示した

 

壁かけテレビにはニュースが甲子園の球場が今年は中止の意図を告げていた

 

「ああ、夏の選抜はカープかな…?」

 

互いにニヤリ、と笑う

 

次には毎年の式典の映像に切り替わり

そこには広島が映し出されていた

 

 

席を立つ二人、女性陣に近づくと

 

 

「お二人とも、すまないが我々は外食に行くよ」

 

 

「おや、どちらにです?」

 

 

「新幹線でちょっとね」

 

 

「行き先も告げてください」

 

 

「我々は…!」

 

「いい、広島だ、本場の広島焼を食べにね」

 

 

 

「どうぞー、シノザキ本家のお参りでしたらゆっくりと」

 

「この女っ!」

 

 

「どうした、ササガワ、行くぞ」

 

ちっ、と舌打ちして去って行く彼らを二人はドアまで眺めていた

 

 

 

 

 

 

「見え透いた動きだ、『正義は我らにあり』 だったか」

 

 

 

 

 

彼ら二人が行っていたジェスチャーを手慣れたように"八神が"行っていた

 

 

 

「なんです?それ」

 

 

 

「気にするな、言うなれば黒歴史、というヤツかな」

 

 

「標準語の方が言い慣れてますね」

 

 

 

昔取った杵柄だ、と八神一人で含み笑いしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い夜を駆ける車窓を眺め、遠く過去となった『親友』を思い出していた

 

 

「おい、ビールこぼれてるぞ」

 

 

 

「ああ、すまん」

 

 

「しかし、アツアツじゃないのも…あ、いいなむぐ」

 

 

二箱目のシュウマイ弁当を食べているササガワにいつの間にか笑っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まもなく、岡山、停車します…お降りの際は…」

 

 

 

「おい、どうした、広島だろう」

 

スーツ上着を着用しだしたシノザキ

 

「ちょっと立ち寄る場所がある」

 

 

 

 

二人は世界の運命のサイコロを振っていた

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話 子供たち描くは黒い笑顔

お久しぶりです、荒が多いけど許してください!

後ほど余裕があれば加筆修正します


新幹線のホームから降りて静まり返る人気のない深夜の駅

 

シノサキに思わず問いかける

 

「おい、どうするんだ、向こうで予約したタクシーとか、ホテルは?」

 

 

 

 

「大丈夫だ、居るんだろう。野村」

 

「野村?」

 

どうも、と胡散臭い笑顔を貼り付けて陰から現れたのは『転生者』の八神准将

 

「目的の場所も判って居るんだろう?」

 

「ボクをアシ代わりに使うなんて」

 

「お前は男だったろ」

 

「はて?」

 

 

「こいつは何者だ?」

 

 

 

「"シノザキのクラスメイトだった"『野村 マコト』と言ったほうが宜しい?」

 

「それは…」

 

 

「県内甲子園予備選で出ることのなかった…あの中学選抜で現れた無敗伝説の投手か」

 

「そう、彼との縁も。白球を追い続けたあの頃の元、親友だよ」

 

「それより、何方に行かれるんです?」

 

「想像は付くだろう?野村、お前の故郷さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

『偶然』乗り場にやって来たタクシーに乗り行先も言わぬまま発進した

 

 

「お前の中学時代の?」

 

「ああ、コイツとは中学時代一緒だった。だが、チームの移動中、バスが事故を起こし遺体は何故か行方不明に」

 

「そして」

 

「 "生きていた" 」

 

「 推薦先の高校も決まって、もうそろそろ修学旅行な頃だったなあ 」

 

 

「 事故に巻き込まれてね、乗っていたバスの前面はスピードを出していてコンクリート壁に直撃、酔い易かったボクは一番前の席に座っていたおかげで身体はぐちゃぐちゃ、死んだかと思った」

 

「死体が残らない事故なんて摩訶不思議な出来事とは思っていたが」

 

「そう、[自称カミサマ]を名乗る男に『転生』させられた」

 

しかし、と野村は告げる

 

 

 

『ギンザ事件の前の月、国会審議の中ほど』

 

彼女は現れた

 

 国会の中でササガワと先の総理の質疑応答について話し合って居た時

 

目の前に彼女が現れ、八神と二人は誰にも認識されていなかった

 

魔法でも見ているかの様な出来事に困惑していたが

 

彼女は警告を込めた情報を語り始めた

 

『組織の詳細は教えることはできないよ』

 

「元より承知だ」

 

「君たち二人に接触した通り、我々の力で悲劇は避けられる…代償に」

 

『構わんとも』

 

二人は『八神』を見て肯いた

 

 

これから始まる悲劇を頭脳に直接見せられ

 

即座に二人は決めたのだ

 

犠牲に為る筈の人間をカミサマへ召し上げる

 

当時、どこか可笑しかったのか、そういう契約を結んだ

 

 

 

 

ハズだった

 

 

 

 

「構わん、とはなんだったのか……」

 

「ふふっ。何、悪魔との契約には規約の穴を通して望みを叶える。それが『人間(生者)』のやり方ではないか?」

 

「 ……誰かに教えられた、二枚舌、いや。随分と口が達者になったようだ 」

 

政治家の特権カナ? とササガワを睨む

 

明らかに美少女の見た目。

 

しかし、歴戦の本職の軍人に睨まれたササガワは思わず視線を逸らす

 

 

「余り、虐めてくれるなよ」

 

「アハー、可愛くってつい、ね?」

 

舌を出す八神にシノサキは八神を睨み返す

 

「君達程度のイレギュラーが我々の構成作家が造りだした新しく編成する歴史を変えられるとは思わないよ」

 

 

ハア、とシノサキは深くため息をつくと

 

「その気はない。だろ?お前が昔みたいに無茶やってないか心配になって来たよ」

 

「委員会に部活三つを掛け持ちしていた頃かい?」

 

「今じゃあ魔王様だ」

 

やはり、この親友ならではの感覚は懐かしいな。と八神は笑顔になった

 

「ボクなんて、中ボスが精々だよ」

 

久方ぶりに感じる信頼感に八神はクスクスと笑った

 

「バーカ」

 

 

「車が揺れるから前を向け、お前の魔法よりもデコピンの方が即物的に痛いぞ」

 

前を向かないならオレが前の座席になる

 

おー怖い怖い嫌だから前向こうっと

 

 

直ぐに車は舗装されていない山道に向かっていく

 

 

「……ふふ、忘れてない……よ」

 

 

『…うっぷ、気分悪いなら前行けよ~……』

 

『いや、食べ合わせ悪い物をバイキングで選んだ君の方が調子が悪いじゃないか』

 

『お前はエースとか抜きで寝不足なんだから太陽の光が当たる前側に配置してやろう』

 

『キミが吐いても自分で責任とれよ~』

 

 

 

その時の言葉が…

 

『構わん…」

と彼女が言葉を零し、彼として確固とあった心情を幾億経とうとも彼女は覚えていたようだ

 

知らないキミの友人とその台詞への

 

 

 

 

 

……嫉妬かな

 

 

 

 

 

 

車は一メートルも見えない深い霧の中で三十分ほど山を登っている。

 

携帯の電波も通じない

 

バカップルのようなやり取りに毒気を抜かれたのか

グワングワン振り回すような酔いを誘発するカーブの多い中でも図太い神経のシノサキの顔色も良くなってきた

 

「少し、聞いてもいいか?この先に民家は有るのか?」

 

 

「無いよ、人も住んでいない」

 

 

「そんな場所が故郷……?」

 

 

 

「今から行くのは廃墟さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車から降りると子供の遊びまわる声が聞こえる

 

 

だがソコは誰も居ない

 

粗雑に金板が積み上げられたバラックの敷地だ

 

 

八神は両手でようこそ、と手を広げ振り返る

 

「 この世界で異能的な能力を誇った子供たちの故郷 」

 

 

[こども保護施設跡地]

 

入口正面の柵の錆びだらけの看板にはそう書かれていた

 

「軍事、科学、宇宙学。歴史上のあらゆる点で国を都合のいいように人々を操る。

そんな超人的な[人形(・・)]の製造を目的とした秘密裏の実験、それが『成果の一つの』ボクさ」

 

 

「 国のプロジェクトで進められていた、通称 黒い時代を描く子供たち計画(プロジェクト・ブラックタイプライター)

 

 

「この世界は醜い、だから 、オレを殺し、生まれ変わる。予想外だったけど、彼女(・・) に頼った」

 

「神、という奴か」

 

 

 

 

 

 

正式に言うならば

 

『母なる女神』(シュブ=ニグラス) だよ」

 

 




次話は不明です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その異世界の鳥はみていた。黄色の少年嗤っていた

ゲートをくぐる。

 

金色、青、紫。様々な色の流星のように空間を流れて行く

 

 

眩い清潔な出口には青空に照らされ。

 

硝煙と黒煙に塗れた巨大な塔がはるか遠く聳えていた。

 

『ゲート』の周囲には自然の息吹は感じられず、赤茶けた荒野が連なっていた

 

そして巨大構造物からは幾重もの小気味よく鉄の『がしゃがしゃ』といった駆動音が鳴り響いていた

 

荒野の周囲を鳥は空から見まわすと小さな点のように見える二メートルほどの二足歩行無人機が闊歩しており

 

その異彩を放つ高層物から周囲の点在する小さな町はすっかりと寂れていた。

 

その様子を子細に見るように鳥は四角い真っ白な家に僅かにある細長い窓辺に近づいた

 

 

そこには薄い布にくるまったやせ細った子供が、いや。おそらく人間であろうものが端々に細かい息をしていた

 

そのソウルを見渡すとそれは間違いなくこの世界の≪元≫住人であろう。

 

鳥は目を細めた後高く羽ばたき塔へと近づいてゆく。

 

よくわかる。自然が。

 

風が、見るも無残に果てた自然たちの

 

死に絶えた様子がみるみる判る。

 

 

鳥は全容が見えない上の上、遥か彼方まで翼を動かす。

 

 

塔は建設中のようで何機かの無人機器が動いていた。

 

そこからは何かの幕のように薄い膜を噴出していた。

 

 

その場所に彼女は降り立った。と同時に自身の後ろに三人が転移していた

 

 

 

「愚かだねえ、―■は。」

 

「愚行だぞ、化学人間。」

 

 

「で、なになに。ここで、なにをやってるか。聞きたいの?」

ハーフアップの黄色の髪色。これも同じ黄色頭巾の少年が悪戯気ににやりと笑っていた

 

「キミたちの魂のエネルギーを糧に」

 

彼女はそれを聞き届けず巨大な槌を振り下ろしていた が

 

 

「上位者さまに献上しているんだよ。」

 

再度試みるも力が反射され。槌ごと透明な何かの膜に跳ね返る

 

「ねえ、どうしてか。ゲートにつないだ先の世界もこうなるんだよ」

 

「そっちについてはボクはこの加工場の末端因子だからしらないんだけれど。」

 

巨大な重力を伴った魔力の渦が彼女から瞬時に収束する

 

 

「あ」

 

光の細かい線が円形を描き彼の受胎肉(・・・)をごっそりと掻き取った

 

 

あ”ーあ”。せっかくまともにはなしがでででえでででええええええええ!!!!

 

 

できると

 

 

おもったのになあ

 

 

『こんにちは、黄布の端末です。』

 

彼女は再び

 

 

 

できなかった

 

彼女は瞬時に脳髄と眼球を引きずり出されてカプセルに詰め込まれてた

 

彼女は意味も分からず眼球が360度ぐるぐると自由に回り続けていた

 

彼女は理解した

 

ここから出ることも自害することも手足を出すことを文字通り許されない

 

そのうち研究ラボに回され苦痛などの刺激を受けることとなったが彼女は文字通り考えることを辞めた

 

 

 

『あ”あ”!つまらないつまらないつま”わ”ら”なーい”』

 

『ニンゲンってこんなあにオロカ。』

 

『魂根源焼却エネルギー炉塔はせいじょーにさどう"してお”ります』

 

「いずこかの責任者に定期連絡を告げました。っと」

 

「あの力を渡したなりそこないどもは我々にどんな娯楽をくれるかなあ。」

 

 

「ああ、喉元がかきむしるくらい。たの”しみた” 」

 

その場所から聞こえるは理外の狂笑

 

 

せいぜい愉悦に浸っていろ

 

 

我々は  プレイヤー同士(キャラクター) 番狂わせはお得意だ

 

トウキョーの天井には  儀式(ごっこあそび) は着々として進んでおり

 

 

うごめく大量の肉塊(終末の予感)が戦闘により真黒と化した上空静止軌道上に浮かんでいた

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。