究極の救いは歌と共に (ザミエル(旧翔斗))
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始まってしまったstory

リハビリがてらに投稿。
あらすじの通りだったのに何故か滅茶苦茶シリアス物になってしまいそうな謎。


―――世界には、人間の天敵がいる。

 

 人だけを狙い、人だけを襲い、人だけを殺す極彩色の怪物――『ノイズ』。

 神出鬼没で、物質を透過する能力を持ち、自身の身体を変形させて空中、地上問わず襲い掛かってくる化物。兵器も通用しない、唯々人類を殺すためだけに作られたとしか思えない異形。それがノイズと呼ばれるもの。

 

―――だけど、人は唯襲われるだけを、恐怖に暮らす日々を待つだけをよしとはしなかった。

 

―――ノイズに対抗するために人々は知恵を振り絞った。例え何を犠牲にしたとしても、大多数が生き残れるようにするために。

 

 

 

 

「……実験体番号『9610』番、術後経過は良好、今までの実験体と比べ抗炭素転換、並びに対位相差障壁の肉体適合率も好調。拒絶反応もなく特に異常は見られないため実験は次の段階へと移る」

 

 痛いのは嫌。苦しいのは嫌だった。だけど現実は非情だからまた痛いことがあるのだろう。そう思うと身がすくむ。歯がカチカチと音を鳴らせて、足は痙攣したかのように震える。本当は今にも逃げ出したくなるくらいで、でも逃げ出す事なんて出来やしないと諦めていた。

 

「……研究内容を確認。本研究は対ノイズのために調べたデータの元、ノイズの力を持ってノイズを制するために人間に人工的に再現できたノイズの機能の一端を移植し、抗生機能を発現させ、それを元に開発した対ノイズ兵装を纏わせ撃破するという趣旨の元、第一段階を機能の移植と適合、第二段階は対ノイズ兵装と実験体の適合を目的としている」

 

 だけど、そんなアタシでも諦めきれないものがあった。

 

「今までの実験の結果第一段階を突破できたのは10名未満。既に上への報告期日も迫っている事から第二段階においては第一段階で最も一番適合率の高かった『9610』番を使い、成功率をより確実なものとして行う」

 

―――この場にはアタシ以外の人がいた。

 

アタシと同じ、この場所で虐げられていた人々がいた。朝起きて誰かがいなくなっている、静かな部屋の中に誰かの悲鳴が響き渡り、直ぐに鳴りやむこともあった。

 

「ではこれより実験を開始する。各々、最善を尽くせ」

 

―――そうなってしまった人の中に、大切な人もいた。

 

 悲しくて、苦しくて、怒りたくて、でもアタシにはまだ大切な人がいて。だから、せめてその人たちを守るためにアタシは何でもしようと思えた。頑張ろうと、どんなに苦しくても耐えて見せようって。皆がいるなら、皆を守れるならきっと頑張れるはずだって思ってた。

 

 

 

 

 

「メーデーメーデーメーデー! 実験は、失……」

 

 

 

 

 

―――なのに。

 

 気付いた時にはたった独りぼっちだった(No one’s around)

 

 

 

 

 

―――……

 

 

 

 

 

「あーらら、これはまた随分酷いものねん」

 

 少し間伸びた口調で、しかし口元は欠片も歪ませないままその女性――『櫻井了子』は乗ってきた車から降りると同時に目の前に映る惨劇の跡地に言葉を残した。視界の先には多数の炭化した物質と、多少原型は残しているもののほとんど倒壊している建物がある。この世界で数年生きているものならば誰もが知っている、ノイズによる被害が起きた後でよくある被災地の光景だ。

 

 しかし、それだけであるならば本来彼女、了子が出張るような事由にはならない。何故ならば彼女は科学者だからだ。救助に関して一般以上に知識があるとしても、言い方は悪いが本来ならばたかがよくある被災地に彼女が足を向けることはあり得ない。専門分野が違うから当然であり、しかし、故に彼女がこの場所に足を向けなければならなかったという事が、この場所が特異な事があるという事実を指し示していた。

 

「幻夢研究所……対ノイズ技術の研究をしていたらしいけれどそのノイズにやられちゃったってことはまさしく夢幻でしかなかったみたいねぇ。……最も、一定の成果はあったみたいで、そのせいで機密情報保護観点から『特異災害対策機動部二課』の研究者であるアタシに話が来たわけだけど」

 

 全く。出来る女は辛いわ。と、ぼやきながら了子は外観を眺めることを止め、近くで指示を取っていた茶髪でスーツ姿の男性、二課の実働班の指揮者である『緒川慎次』に声を掛ける。

 

「了子さん、お疲れ様です。どうかしましたか?」

 

「んー簡単でいいから今の状況からまず教えてくれるかしらん。非番だったのに急に弦十郎君に呼び出されてきたから状況が把握しきれてないの」

 

「わかりました。―――まず、此処幻夢研究所から一時間ほど前に緊急警報が発せられました」

 

「緊急警報? ノイズ警報じゃなくて?」

 

 早速の疑問点に了子は首を傾げた。この場の惨劇はどう見てもノイズの物であり、しかしながらノイズ出現と同時に発せられる警報ではなく、それ以外の異常事態に発生させられる警報が鳴るのはおかしい。間違いじゃないのかという疑問は、しかし慎次が頷いたことで違うと分かる。

 

「理由は分かりませんが緊急警報が鳴り響いたためにまず一課が出動、現場到着と同時に大量の炭化物質を発見したためにノイズ絡みだと判断されその場で付近の避難誘導に切り替わり、二課内部で待機していた自分たちとその場に居合わせた奏さんが緊急出動。しかしノイズの姿は発見できないま研究所は沈黙を保ち、今に至っています」

 

「なるほどねぇ……怪奇小説か何かを読んでる気分だわ」

 

 現実だから始末に負えないが。と、ぼやきつつ了子は原因を探ろうとして推測をいくつか浮かべるも、しかしどれもまだ情報が少な過ぎて到底絞り込めそうにない。直接調べるしかなさそうだと判断する。

 

「研究所内部は安全なの?」

 

「恐らく、です。一応今奏さんがギアを纏った状態で中を確認中で――――」

 

 慎次がそこまで言った所で、建物の方から小さな音が響く。了子も慎次も知っている音楽、了子が作り出した研究品であるFG式回転特機装束――『シンフォギア』が奏でる音楽だ。そして、今この場でそのシンフォギアを持っているのは慎次が挙げた一人、鳥の羽のような橙色の髪を持つ少女――『天羽奏』しかいない。徐々に音は大きくなり、やがて崩れかけの建物から音を引き連れながら奏は慎次と了子の前に軽やかに着地した。

 

―――長い緑髪を持つ少女を抱えて。

 

「緒川さん生き残りだッ! 意識がねえ!」

 

「―――わかりました。直ぐに手配しますっ!」

 

 にわかに慌ただしくなり始めたこの場所で、しかし了子の思考はその少女の登場によって研究所に対する不信感が募った。

 

「研究所に年端も行かない女の子ねぇ……」

 

 冷静に考えて研究施設にそんな子供が理由もなくいるはずもない。で、あるならば相応の理由がいる。例えば―――モルモットとか。

 

「まあ、今は全貌を掴むことが先ね」

 

 何が起きていたのかを全て知るまでは判断を下すべきではない。しかし、唾棄すべきものであるという予感を感じながら了子は動き始めた。

 

 

 

 

 

―――……

 

 

 

 

 

 幾何か日にちが経ち、検査を済ませた後に少女は漸く目を覚ました。了子がその報を受けた時、既に研究所でほとんど壊滅していたデータ類以外で残っていた紙の資料や研究の過程で作られた物の解析を行い終えていて、報告書を纏めている時だった。その後呼び出されて、了子は数点の書類を片手に少女の元へと向かい、

 

「―――まあ、予測できてたことだけどこれは酷いわねぇ」

 

 治療されていた少女のために用意された部屋の入口へと辿り着いた時、了子は目の前の光景に溜息を吐きながらそう言葉を漏らした。

視線の先には両手足を拘束され、猿轡を噛まされてなおもがきながら逃げようとする怯えた表情の少女の姿がある。酷い光景だと小さく息を漏らし、それが聞こえていたらしい近くにいた男は苦々しげに口を開いこうとし、機先を制して了子はそれを止めた。

 

「予想はついてるから言わなくていいわよ、弦十郎君。大方目覚めると同時に錯乱して暴れたために自殺防止などを兼ねてこうしているんでしょう?」

 

「……ああ、そうだ」

 

 了子の言葉に頷いた男、特異災害対策機動部二課の司令官である『風鳴弦十郎』はこの光景に痛ましさを感じているのか普段は柔らかく、男らしい快活な笑みを浮かべている顔ではなく眉を顰め、口を一文字に噤んでいた。

 了子は、両方に一度目を向け、その後近くに立っていた慎次に目配せをした。頷いて、慎次は了子の耳元でそっと囁く。

 

「保護した後に調べましたが彼女についての情報はありませんでした。行方不明者などの方からも調べましたが今のところは該当する人物はなく、『存在しない』人間です」

 

「そう。じゃあ、後は聞いてみるしかないわねん」

 

 了子の言葉に慎次は頷き、部屋に入ると少女の口を覆う猿轡を丁寧に外した。

 

「―――ひぃ」

 

 外した途端に漏れでたのは喉の奥から掠れるような恐怖の声。扉越しに聞えたそれとガチガチと歯がひっきりなしに震えているその様子は何があったのかを弦十郎や了子に想起させるには十分だった。了子は、この後に手に持っていた書類を弦十郎に渡し、先にこれを読んでおいてと言った後、部屋の扉を開いて中に入り、ゆっくりと手を広げて全身を見せるようにし、少女へとゆっくり語り掛けた。

 

「安心して頂戴。アタシたちは貴女に危害を加えないわ」

 

「……」

 

 警戒の色に緩みはない。人を信用しようとする色が何一つなく、信頼するという事を忘れてしまったかのような瞳だった。しかし、了子はそれを気に留めず、言葉を続ける。

 

「改めて初めまして。アタシは櫻井了子、出来る女と評判の三十代よん。よろしくねん。で、ここは今まで貴女のいた研究所じゃないの。早速で悪いけどお名前を教えて欲しいんだけど教えてくれるかしら?」

 

「……山風、白露山風(はくろやまかぜ)

 

 警戒している割に言った言葉には恭順。従順というよりかは諦観の色が強いみたいだと了子はこの短い間にこの少女、山風がどういう存在か理解し始めていた。心を閉ざして、従順に。相手の一挙一動に目を向け、何かされないか警戒している。酷いことをされ続けてきた、人間として扱われていないものの所作だった。

 

「そう、じゃあ山風ちゃんって呼ばせて貰うわね。何歳なのかしら?」

 

「……多分11」

 

「家族は?」

 

「……ノイズに襲われて、もう、いない」

 

「そう、つらい事聞いちゃったわね……研究所にはなんでいたの?」

 

「……パパとママがいなくなった後に、研究所の人が来て、拾われた」

 

「研究所では何を?」

 

「実験。……ノイズに対抗するための何か」

 

 そうしていくつか質問していき、それに打てば響くように山風は答えていく。しかしそれは機械的で知っていることをただ吐き出しているだけ、考えないようにただ反射で答えているだけなのは見れば明らかだった。

 

―――踏み込むべきかしら?

 

 恐らくこれ以上尋ねても今以上の情報は望めないだろう。更に言えば山風の様子は危うい。それこそ一歩間違えれば破裂しかねない程である。これ以上聞くのは危うく―――しかし了子は、あえて火中の実を拾う事を選んだ。

 

「―――ねえ、山風ちゃん。ちょっと教えて欲しいんだけど……あそこの研究所、アタシたちが見た時壊滅してたんだけど、何か知ってないかしら?」

 

「……え?」

 

 了子の踏み込んだ質問に山風の表情が初めて変わる。目を見開き、呆けて、信じたくないと言っているかのような表情に。

 

「嘘……そんな、嘘……なんで?」

 

 呆然と呟くようにそう言葉を発する姿を見て、やはり時期が尚早だっただろうかと了子の脳内に一瞬浮かび上がる。しかし、いずれ知れることだと湧いて出た甘えを切り捨てた。

 

「貴女以外に生存者はいないの」

 

「あ……ああ……あああああああああ!!!?」

 

 壊れたように叫び始める山風に対して、慎次の動きは迅速だった。すぐさま山風に駆け寄り、錯乱したまま舌を噛まないように口を布でそっと抑える。暴れていた山風だが、やがてふっと力が抜け、ゆっくりと意識が落ちていった。

 

「―――ごめんなさい、緒川君。ありがとう」

 

「いえ、これも仕事ですから。……しかし、今の事を伝えるのは時期尚早だったかと」

 

「いつか話す事なら後に伸ばすより先に話して、時間で癒した方がいい場合もあるわ。まして今回の事は多分、きっとアタシたちが思っている以上に深い傷よ。なら、一度に開けて一気に直した方がダメージはきっと少ないわ。……けど、やるせないわね」

 

 慎次は口を開け、しかし噤んだ。そしてその言葉を飲み込み、今日はもう終わりにしましょうといって、部屋の外に出た。扉が閉まる音が響き、誰かが小さく息を吐いた後、弦十郎が咳ばらいを一つし、書類を片手に了子に声を掛けた。

 

「……了子君、この書類に書いてあったことは本当なのか?」

 

 その瞳には信じたくないとありありと書かれている。そう言ってあげられたらどれだけ楽だったのかしら。と、了子は内心で吐露しつつ、現実を告げた。

 

「ええ。彼女は幻夢研究所で行われていた対ノイズ理論『ネガノイズ』の研究で扱われた実験体よ」

 

 了子は内心で吐露する。どうして人はこうも愚かな実験を行えるのかと。

 




ほんとなんで山風と嵐でマイティブラザーズしたかっただけのにこうなるんですか(白目)


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始まってしまったstory2

 伸そうとした腕を一瞬止め、らしくねえぞと呟きながら橙色の鳥の羽のような髪型をした少女、奏は目の前の扉に触れた。電子的な解除音の後扉は自動で開いていく。開ききった扉の向こうには、病床に伏せた緑髪の少女、山風がいた。

 

「あーその、なんだ。……よう、元気か?」

 

 言ってから、いや、元気じゃねえよなと奏は小さく自身の言葉に突っ込みを入れるも山風から反応は返って来ない。遠目で見てもわかるほどに生気がなく、奏が歩いて近くで見れば瞳は虚ろにただ光を反射している。

 

「アタシは元気だ、お前は……少し痩せたみたいだな」

 

 奏の記憶にある山風の姿は二つある。奏が幻夢研究所から救出した時の姿と、今の姿。両方を比べてみれば一目瞭然で、今の方が痩せ衰えていた。

 

「もちっと飯食って動かねえと大きくなれねえぞ? ちょっとでいいから出来る時に動いた方がいいぜ」

 

 反応は、ない。しかし、奏はそれを気にせずに口を動かし、話しかけ続けた。

 

「―――い」

 

 やがて黙っていた山風の唇が小さく動いた。しかし、話を続けることに意識を置いていていた奏は気付けずに、そのまま言葉を続ける。

 

「だからよ、結局体力がなきゃ何も出来ねえんだ。それに此処にいるだけなんてそんなの詰まらねえだろ? ちょっとは外に出て―――」

 

「――さい」

 

「……ん? お前、今なんか―――」

 

 奏がようやく山風が小さく、けれども確かに言葉を発していると気付いた時、山風は下を向いたまま叫んだ。

 

「煩いッ!」

 

 吐き出すような叫びに、奏は何故と戸惑いを覚えた。何故、どうして怒っているのか、それがわからずに唯首を傾げ、しかし、直後に投げられた枕を反射のままに掴んだ。

 

「これ以上、アタシに話しかけて、頑張らせないでよ……。必死に頑張って、必死に耐えて、その結果が誰もいない今なのに。これ以上、アタシに何をしろっていうの。もう、放っておいて、構わないでよ……」

 

「――――――」

 

 息も絶え絶えにゆっくりと緩慢な動作で顔を掌で覆った山風の姿に奏は咄嗟に口を開き、しかし言葉を出せないまま噤んだ。何を言っても意味がないだろうと。

 

「―――悪い、また来るわ」

 

 そうしている内にやってきた面会時間の最後に、出せた言葉はそれだけで、奏は退出する前にもう一度だけ山風の姿を見てから扉を閉め、同時に寄りかかって息を吐いた。

 

「何やってんだろな、ほんと」

 

 悪態を吐きながら項垂れる様に顔を前に倒し、しかしその一瞬に視界の端に何かが見えた気がして奏はそちらへとゆっくり顔を向けた。道の曲がり角に、一本に纏められた青い髪が見える。

 

「……翼? 何やってんだ?」

 

 間違いなく、奏が知っている少女、同じシンフォギア装者にして風鳴弦十郎の甥である『風鳴翼』の後髪だ。事実、図星を突かれたらしくびくりと震えて、やがて観念したかのように罰が悪そうな表情で翼は陰からおどおどと出てきた。

 

「えっと……その……御免なさい」

 

「いや、別に謝るようなことしたわけじゃねえだろ?」

 

何に謝ってんだこいつと首を傾げつつ、どうしたんだと奏は尋ねる。伏し目がちに、翼は口を開いた。

 

「あの子、白露さんの所に行ってたんだよね? 気になっているみたいだって了子さんに聞いて、それで少し気になって。その……どうして?」

 

 なんだそんなことかよ。と、言いながら、しかし奏は口に出そうとして言葉を止めた。

 

「……理由がないの?」

 

 奏の様子に困惑したような表情でまさか理由がないのか? と、聞く翼にいや、そういう訳じゃないと返しつつ、奏は自分がどうして山風を気に掛けるようになったのか思い返した。

 

 

 

 

 

―――……

 

 

 

 

 

 山風が目覚めた日に直ぐに起きた了子による質問の後、著しく体調を崩した山風は入院することになった。それから数日経ち、幻夢研究所の壊滅から一週間が経過した頃。了子は研究所崩壊後に回収されたデータを纏めた書類を上に報告した。が、幻夢研究所で行われていた研究、ネガノイズ理論についての情報はあまりにも少なかった。

 

それは了子達が研究所を捜査した時、研究所のデータの大部分はノイズに襲われたときに『何らかのアクシデント』があったのか大部分が失われていたからであり、その時何があったのかを撮っていたはずの監視カメラにさえ記録が残っていなかった。それにはもはや何らかの作為が見え透いており、しかし誰が、どうしてそうしたのかが研究所が既に壊滅していることもあり、何処までも不透明だった。

 

 故に、了子が知るのは政府に要求して開示された研究の概要と、僅かに残ったデータと研究所に残っていた遺留品から調べて得た物、そして入院中の山風の口から面会時間を使って僅かなれど聞き出したことを総括して推測出来ることのみになる。だが、それだけでも十分だと言いたくなるほどに、幻夢研究所の研究は黒だった。

 

調べた結果を誰かに伝えるのを良しとしたくないと思う程であり、しかし、了子は自身の職務上の立場から、弦十郎や慎次に翼。そして本人の要望があった事もあり、奏を含めた数人の人員にその内容を伝えた。

 

「―――幻夢研究所でしている事の概要は此処、特異災害対策機動部と同じ対ノイズ研究よ。ノイズの炭素転換能力と位相差障壁。楯と矛であるこれを解析し、無効化する能力を持ってこれを正面から打破するというもの。これだけなら私の開発したシンフォギアとやっていることはあまり変わらないわ。違いは実績があるかないかだったみたい。しかし、それは表面的な話に過ぎないわ」

 

 では裏はどうなっているのか。その答えは、山風と言う存在と、僅かに残っていた資料がその答えを表していた。

 

「人体実験、それも国に黙って違法のね。……奏ちゃんの合意の元とは言えシンフォギアの適合化を図る人体実験を行ったことのあるアタシが言えたことじゃないけれどこれは完全非合法。当然犯罪行為でばれたら研究所の首が全員飛んでたわね」

 

 まあもう全員首ではなく灰になったのだが。

 

しかし重要なのはそこではなく研究内容。僅かながらに残っていた資料に書かれていたそれは了子をして狂っているとしか思えない内容であり、驚愕を隠せない内容だった。

 

「ノイズに対処するためにノイズの位相差障壁と炭素転換能力を観測し、解析。それの反転させる機能、つまりノイズの力を行使させないための空間を精製して、それを発生させる機能を山風ちゃんたちの体内で生み出せるように改造、専用の機材を用いてそれを展開すると共に敵を武力を持って打ち倒すというものだったわ」

 

 ざわり。と、どよめく。その反応は一種、あり得るのかという事に集約されており、事実そのような声が上がってくる。何故ならそれは二課の根幹である櫻井理論とシンフォギアシステムの優位を奪うものであり、同時に了子並かそれ以上の研究者がいることを示していたからだ。

 

「出来る出来ないで言えば―――出来たんでしょうね。何せ成功例は私たちが保護した山風ちゃんその人みたいだから……けど、世紀の大研究はそこまで都合がよくなかったみたい」

 

 そう、その部分こそが了子が何処までも狂っていると言いたくなった原因たる事由。

 

「回収された書類によると山風ちゃんは実験体番号『9610』みたい。……さて、つまり1番から9609番はどうしたのかしらね?」

 

 了子の問いかけるような口調に一瞬静まり返り、直ぐにまさか。と、声が上がる。その声の持ち主たちの想像が現実であるというかのように了子の表情は険しく、苦虫を噛み潰したような表情で下手な真実を、誰もがそうであって欲しくないと望む真実を告げた。

 

「死んでるのよ。移植手術に耐えきれずに炭化消失、あるいは位相障壁の暴走によりこちらの世界に還れなくなってしまった」

 

「―――そんな、馬鹿な」

 

 信じたくないと誰かが声を上げた。嘘だと言ってくれと誰もが声を上げずとも言っていた。了子とて、こんなふざけたことが事実だとは思いたくなかった。

 

「本当に、信じられないわよね、この研究所にいた人たちの頭は。シンフォギアシステムだって人をかなりえり好みするけれどこれは人の命をただ悪戯に消費し、弄んでいただけだもの」

 

 了子が作ったシンフォギアも人を選ぶという点ではこのネガノイズ理論同じくらい、否それ以上だと言われても了子は否定しない。なにせシンフォギアは、先史文明期の遺物である聖遺物――分かりやすく言いかえれば神話として語られるような物の欠片と、それを扱う適性を持つ人間である適合者が必要だからだ。

 

適合者が現れる確立としては万分の一以下。つまりネガノイズ理論より低い。だが、了子の作ったシンフォギアはその優秀な性能と、規格外の機能、そして何よりもアンチノイズプロテクターとして打ち立て続けている功績がある。それに対してネガノイズ理論は所詮飽くまで理論。未だ成し遂げられていない以上机上の空論でしかなく、現実における唯一の成功例が山風一人だけであり、それでもまだ途中過程の話でしかない。行っていることに対して、成果が釣り合っていなさ過ぎた。

 

「国内の年間のノイズによる平均の死者の数よりも多い数の犠牲を出して生み出せたものは山風ちゃんという一人の存在と、あとはこの二つだけよ」

 

 そう言いながら了子は研究所から回収していた二つの物体を全員の見える位置に取り出した。蛍光色の翠で彩られ、桃色のレバーが前面にある四角い箱型の物体、上面を見ると何かを入れるようなスロットが二つ付いている拳二つ分程の大きさのそれと、持ち手に相当する部分が黒と紫色で塗られ、そこから四角い透明な板が伸びている掌サイズのスイッチがある何か。

 

「了子さん、それは一体?」

 

 形を見てもそれが何なのか理解できなかった奏が首を傾げて了子に尋ねる。了子は、若干苦々しく、これについてはまだちょっとわかっていないことがあるんだけど、と一言おいてそれが何なのか、言葉に出した。

 

「これが幻夢研究所で作られていたノイズを倒すための道具。ネガノイズ理論の移植手術適合者にしか起動できない、事実上山風ちゃん以外にしか使えない物、ゲーマドライバーとガシャットと呼ばれる物よ」

 

「……なあ、了子さん。それ、どうすんだ?」

 

 ゲーマドライバーとガシャットの話を聞いて、奏は了子に問いかけた。問われた了子は伏し目がちに答えた。

 

「そうね……。解析した後は一旦保管、状況次第では山風ちゃんに返して戦ってもらう事になるかもしれないわ。……事由はどうあれ彼女はもう普通ではいられない。そして対ノイズの戦力が足りていないのも、また事実。――ままならないわよね、あんな子に、戦いを強要しなきゃいけない日が来るかもしれないなんて」

 

 寂しげに、悔し気に了子はそう呟いた。そしてそれは、その場にいた皆が抱いていた思いだった。

 

 

 

 

 

―――……

 

 

 

 

 

「結局のところ、アタシはちょっと重ねて見てたのかもしんねえな」

 

 病院の屋上、フリースペースになっているそこで奏は柵にもたれかかりながら翼にそう言った。それに対して翼は、あまり理解できなかったのか首を傾げて続きを促した。

 

「つまりだ、アタシはアイツもアタシと同じ復讐とかを思うんじゃないかって、考えてたんだよ」

 

 奏の戦う理由、それは分かりやすく、ありふれたものである復讐だ。ノイズの被害者である彼女は、両親と妹を失っていた。奏はそんな悲劇を生み出したノイズが許せず、全てのノイズを殺すと誓い、戦いに足を踏み入れた。そして、山風もまたノイズによって家族や親しい人を殺されたと聞いた。

 

「なら、あいつもきっと、いつかノイズを殺すことを願うんじゃないかと思って、ならまずは元気になって動けるようにならなきゃならねえってことを先達として伝えようと思ったんだ」

 

 そう言う奏の表情は暗い。違ったの? 翼がそう問いかければ、奏は頷いた。

 

「アイツは、山風はもう疲れてたんだ、戦う事に。……そりゃそうだよな、望まない実験で、命すり減らして、それで全て無くしちまったんだから。もう何もしたくねえんだろう。でも、そんなことにも気付かず、アタシは頑張れって言っちまってさ、『これ以上何を頑張れっていうのッ!』って怒鳴られたんだ」

 

ホント、何言ってるんだろうな。そう自嘲する奏に翼はどんな言葉を掛けられるのかわからなかった。暫しの沈黙は、唯々重い空気が漂っていた。

 

「……悪い、カッコ悪いとこ見せちまったな」

 

 やがて、はっと息を小さく吐いて笑う様に奏はそう言った。

 

「ううん……ゴメン。私、何にもいえなくて」

 

「いや、聞いてくれただけで楽になったわ。サンキューな、翼。……もう、帰ろうぜ」

 

「うん……」

 

 奏に押されるまま、病院の上から去ろうと歩き始めた時、

 

 

 

―――サイレンが鳴り響いた。

 

 

 

「―――ッ! このサイレンは!」

 

 酷く聞きなれた(・・・・・)サイレンに翼は振り向き、病院の柵に駆け寄り、下を見た。

 

「ああ、こいつは――――ッ!」

 

 奏も振り返り、下を見下ろす。間違いない。このサイレンと視界に映るそいつらが、今この場で何が起きているのかを示していた。

 

「「ノイズの襲撃だッ!」」

 



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始まってしまったstory3

 

 病院に送られ、入院してからの山風は最初に暴れたことなどもあり、精神安定剤などを投与される等の事があったものの、その後は概ね平静と言って差し支えはなかった。

 入院直後は質問等によって冷静さを失うことはあれど、一週間もすれば時間の経過が彼女にある種の冷静さを与えた。それがいい事なのか悪い事なのか、その判断は誰にとっても難しかった。

 

「山風ちゃん、おはようございます。もう朝食の時間だから、起きてもらって大丈夫かな?」

 

 朝、奏たちが来る数時間前に若い男性の医師がそう声を掛けても山風はゆっくりと起き上がる。生気のない表情で、一言も発さずに起き上がった彼女は、そこでそのまま動きを止めた。

 

「今日はいい天気だし窓開けとくね。それから、これが今日の朝食だよ。焦らず、ゆっくりと食べてね。食べきれなかったら、そのままにして置いてくれれば後で回収に来るから」

 

 声を掛けられて、山風は腕を動かし、朝食をゆっくりと口にする。一口、二口と淡々と食べ、全体が半分量程になった所で手を止めた。

 

「食べ終わった? もう片付けちゃって大丈夫かな?」

 

 問いかけられ、山風は頷く。医師はそれを受けて、彼女の前に置いていた朝食を下げた後、問診へと移った。

 

「今日の気分はどう?」

 

「体調は大丈夫?」

 

「ちょっと舌を見せてもらうね?」

 

 ゆっくりと、丁寧に問診は進められる。山風はただされるままにそれを受け続け、返答をしなければならない時のみ小さく答えるという事を繰り返し、やがて終わる。

 

「では、今日はこれで終わりになります。山風ちゃん、もし何かあったらいつでも呼んでね?」

 

 医師はそう言ったが、山風が呼び出しを行うことはないだろう。今の山風を見た誰もが彼女の虚ろな様子を見ればそう思うと考えられるほどに何処までも人形めいていた。

 

「じゃあ、また来るね?」

 

 医師はそう言いながら扉を閉める。これがいつもの朝の光景だった。

 

 

 

 

 

―――……

 

 

 

 

 

「毎日毎日悪いわねぇ、でもどうしてそこまで献身的になれるのかしらん?」

 

その日の朝、いつもより少し遅い勤務の前に、自身が此処に作り置きした薬などを取りに荷物を片手に医療施設に赴いた了子は、偶々であった医師にそう尋ねた。

 普通の医師なら介護ともいえるこのような事は自身の仕事でないと拒否するようなことまで医師は普通に、当たり前のようにこなしていた姿に何を考えているのか少しの疑問と、興味を持って。

 

「別に、僕はそこまで献身的じゃないですよ。寧ろ独善的です」

 

 困ったように医師はそう答え、了子は困惑した。彼の仕事の様子を聞いても何処にも独善的に見える部分なんて見えなかったからだ。医師は、苦笑交じりにその困惑に買いを示した。

 

「僕は唯、患者さんに、山風ちゃんに笑顔でいれる様になってほしいだけなんです。どれだけ苦しくても、どれだけ辛いことがあっても、いつかは笑顔で笑えるようになってほしい。だから、手を伸ばし続けるって決めてるんです」

 

 答えを聞いて、了子は笑った。

 

「全く貴方は、お医者様の鏡ね」

 

 何処か眩しいものを見つめる様に笑いながら了子の言った言葉に医師は自分なんてまだまだだと返しつつ、その場で別れようとして、

 

――――そのサイレンが鳴った。

 

「このサイレンって、ノイズ発生のッ!?」

 

「うっそ、そんなッ!? いくら何でも病院にノイズは不味いわ……ッ!」

 

 ノイズ発生を示すそれの発生した場所、この場所は医療施設であり、入院している患者なども、山風のように当然いる。このままだと大量の被害者が出るのは確定していると言ってよかった。

 いけない。と、直ぐに二課に連絡をしようと了子は端末を取り出した。

 

その時に医師は、その場から駆け出していた。

 

「ちょっと危ないわよッ! 何処からノイズが現れるかもわからないのにッ」

 

「患者さんが、此処には多くの人がいるんですッ! 一人でも助けに行かないとッ!」

 

「あ、ちょっとぉッ!」

 

 了子の静止を振り切り、医師は駆け出す。息を荒げて走る医師の耳に入る音はノイズの特有の足音と、どこかから聞こえる人の悲鳴。途中、人とすれ違う事もあるがそれを気にも留めず、偶に落ちている炭素の塊に、かつて人間だった、ノイズに襲われた死体に痛まし気に目を細めながらも前へと進み続ける。そうして、山風の病室へと辿り着いた彼が、扉を開けた先には、

 

「あ……あぁ……っ」

 

 ベッドから転げ落ち、震えながら頭を抱えて縮こまっている山風が目に映った。

 

「山風ちゃん! 大丈夫ッ!?」

 

「いや、いやぁ……」

 

 怯えている。一目見てただけで誰もがそう分かるほどに彼女は怯懦に濡れ、身体を震えさせている。山風がどういう理由でこの場にいるのか知っているため、彼女がノイズに対して、何かしらのトラウマを抱いているのだと、医師は理解した。

 

「―――山風ちゃん、ちょっと失礼するね!」

 

しかしこのままこの場に留まるのは不味い。そう判断した医師は、山風に一言断ってから、身体を横抱きに持ち上げる。抱き上げた身体はガクガクと震え、拒絶するように医師から離れようとする。それを無理やり抑えて、医師は扉から出ようとして、しかしその足を止めることになった。

 

―――扉をすり抜けて、極彩色の化生であるノイズが現れたからだ。

 

「どうするッ!?」

 

 唯一の扉から現れたノイズに、道は完璧に閉ざされた。何処かに道はないのかと首を左右に振り、ふと目に開け放たれた窓が映る。

 

「南無三ッ!」

 

 ゼロコンマの思考で医師は窓へと駆け出した。直後に背後に聞こえたノイズが医師の元居た位置に飛び掛かる音に肝を冷やしつつ、ここは二階だから大丈夫と呟きつ窓から飛び降りた。

 

「――――っ、ぐぅぅぅぅううううッ!」

 

 嫌な音を足が立てた。いくら二階とはいえ人一人を抱えての飛び降りは無茶だったのだろうかと男は一瞬考え、しかし直ぐに命を救えるなら安いものとゆっくりとだが歩き出そうと前を向き、目の前の光景に愕然とした。

 

「嘘だろ……」

 

 飛び込んだ先は虎の口と言うべきか、部屋にいた以上の数のノイズがおり、こちらへと無機質な表面を向けていた。

 

「あ……あぅ……」

 

「――――っ!」

 

 死ぬ。そんな一寸先の未来に男は胸に抱いた山風を守る様に強く抱きしめ、

 

 

 

 

 

「や、ら、せ、る、かぁぁああああああああああッ!」

 

〈君ト云ウ音奏デ尽キルマデ〉

 

 直後に聞こえてきた歌声が、目の前にいたノイズを一陣の風の元撃ち払った。

 

「――――歌が、聞こえる?」

 

 何処か惚けたような声の山風の言葉に、医師は誰が来たのか理解した。

 

「あ……奏ちゃんッ!」

 

 見間違えるはずもない鳥のような羽の少女、奏が風の中心にいた。しかしその身に纏う装束は平時の物とは一線を画している。

 黒と白と橙で彩られたインナーに、両足を包む装甲、そしてヘッドホンのようなギアに、胸部のインナーに展開された赤いペンダント。それら全てよりも目につく巨大な長槍。それこそが、奏の持つシンフォギア『ガングニール』だ。

 

「待たせたなッ! 医者のあんちゃん! ここはアタシに任せて早く逃げろッ! こっから少し離れた所で翼が倒した空白地があるッ! ここのノイズは―――アタシが殺すッ!」

 

 言葉を残して駆け出した奏は紫電を纏い、歌いながらそのまま長槍を振りかぶり、一足で10間ほどの間を詰めながらノイズへと槍を突き立てていく。流れるような動きで一体、二体と切り倒していく姿はまさしく戦場の歌女。しかし、その姿に紫電が奔ることから、それは危ういものであると医師は理解していた。

 

「あの紫電……まさか『Linker』なしでッ!?」

 

 紫電が奔る度に、奏の動きは鈍くなる。それは所詮『時限式適合者』でしかない奏というシンフォギア装者の宿命だった。

 

「はぁぁぁぁ――――――っぅ!」

 

 苦悶に奏の顔が歪む。

 シンフォギアは聖遺物の力を装者の歌声で引き出す装備である。しかし、力を引き出すためには聖遺物の適合者の歌でなければならない。そんな中、奏は本来聖遺物の適合者にはなりえない適正値しかもっていなかった。しかし、そんな彼女を適合者まで押し上げたのが『Linker』と呼ばれる一種のドーピング薬だった。

 

―――しかし、今の奏は火急事態だった故に『Linker』を打つ暇がなかった。

 

 その代償は、力を扱うたびに全身に走る紫電が、寿命を削りながら戦っているのであると示していた。

 

「――――くそッ!」

 

 止めなければと医師の心が叫ぶ。だが今止まれば皆が死ぬとまたわかっている。故に医師は自分が早くこの場から居なくなり、戦場に留まることで余計な負担を奏に掛けないようにすることが最大のサポートだと理解して、遅々とした歩みでだが離れようと動き出した。一歩踏みしめるごとに両足が酷く痛むのを歯を食いしばって堪えて歩く。

 

「どうして……?」

 

 ポツリと、小さな声が聞こえた。それは山風の声で、ふと気付けば先程までノイズに襲われていた時の震えていた様子とは違い、少しは平静さを取り戻した様子だった。

 

「……山風ちゃん、どうかっぅ! ……したの?」

 

「どうして、そこまでアタシを助けようとしてくれるの?」

 

 それは医師が聴く初めての理性的な意味を持つ言葉で、自分が助かると思っていない悲しい言葉だった。

 

「アタシなんて、いなくてもいいのに、置いて行って、逃げてもおかしくなかったのに……どうして、そこまで一生懸命にアタシを助けようとしてくれるの?」

 

「……はは、なんでかな」

 

 医師は困って、少しだけ苦笑いした。実の所、そこまで深い理由を医師は持っていなかった。

 

「……僕は君に笑顔を取り戻してほしいだけなんだ」

 

「……それだけ?」

 

 信じられないと言った様子で、山風は尋ねる。嘘としか思えないと。だが、それでも医師にとって助ける理由は十分な理由だった。

 

「君みたいな子が、幼い子が、笑えない世界なんて絶対間違ってる。そう思ったから僕は医者になろうと思ったんだ」

 

 苦しむ顔が見たくない、誰かの傷つく所が見たくない。それだけが、若い医師の動機だった。薄っぺらく見える、とってつけたように見える。だけど医師の譲れないたった一つの思いだった。

 

「だから、もし君がここで死ぬのが運命だとしたら、その運命は僕が、僕たちが変えて見せるから。だから、君に元気になってほしい。例えどんなにつらいことがあっても、いつかは笑えると信じて、生きていてほしい。君が笑えない人生(運命)は、君自身の手できっと変えられるから」

 

「―――――ぁ」

 

 山風は口を開いて、しかし何も言えなかった。唯、医師が言った言葉が脳内をぐるぐると回って―――。

 

 

 

「―――――っ!? しまったッ! 逃げろ二人ともぉぉぉぉおおおおおおおッ!」

 

「―――ッ!」

 

 焦った様子の響いた声に山風の脳内が真っ白になると同時、山風を抱えていた医師が山風を突き飛ばす様に放り投げ、その瞬間医師の身体をノイズが貫いた。

 

「――――え?」

 

 惚けたように山風は今の一瞬を理解出来なくて言葉を失い。

 

「山風ちゃん……生きて」

 

 医師はそう言葉を残してノイズと共に炭素に帰った。

 

「あ――――あぁ、ああああ……嗚呼アああぁぁああああああああッ!!?」

 

「この―――ド畜生がぁぁぁぁあああああああああああッ!!!」

 

 山風の慟哭のような叫び声と奏の血を吐くような怒りの声が響き渡った。

 

「うぁぁああああ、アタシの、アタシのせいだッ!」

 

 頭を押さえ、山風は泣き叫ぶ。自分なんかがいたせいで医師が死んでしまったと。胸が痛かった。心が痛かった。精神が辛かった。何故、どうして、言葉がいくつもグルグルと頭で空回りし、しかし現実は告げる。また(・・)、自分のせいで人が死んだのだと。

 

「クソが、クソがッ、クソガァッ! ふざけんじゃねえよノイズどもッ! アタシの目の前でまた命を奪いやがって……ふざけてんじゃねえぇええええええええッ!」

 

 頭を掻き毟り、奏は怒り狂う。何よりも自分の不甲斐なさに。そのせいで医師が死んでしまったと。頭が痛かった、胸が軋んだ、何よりも自分自身の弱さにマグマのような怒りが燃え滾り、しかし現実は告げる。お前にこれ以上戦える力はほとんど残っていないと。

 一体ずつ倒していく奏を嘲笑う様に、未だ20を超えるノイズの内数体が山風へと歩を進める。

 

「ちっくしょぉ……おい、山風ッ! 早く逃げろぉおッ!」

 

 駆け寄ろうとも爆発物を投げて牽制するノイズのせいで動けない奏は叫ぶような、祈るような声で山風に呼びかけ、その状況を涙を流しながらも理解していた山風は、ゆっくりとだが立ち上がった。

 

「―――ない」

 

 遅々とした歩みでだが、山風は逃げようと歩く。

 

「死ね、ない」

 

 暫く寝ているだけだった身体は何処までも重たく、つらかった。

 

「死ねないッ!」

 

 ノイズは既に5m以内に近づいている。死は何処までも近づいていて、それでも山風は叫んだ。たとえそれに意味がなくとも。

 

「だって、だって―――今ここでアタシが死んだら、なんの意味もなくなっちゃうッ!」

 

死ぬ瞬間まで、命を費やした医師の意思を無駄にしたくなかった。かつて、研究所で生き延びた理由を無駄にしたくなかった。故に最後まで足掻くと決め、ノイズが襲ってくる瞬間に倒れこむように前に転がり、紙一重で交わした。

 

「アタシは―――アタシは―――アタシの運命は、アタシが、変えて見せるっ!」

 

 泣きながら、転げながら、それでも最後まで生きる事を諦めないと叫んだ。

 

 

 

「―――なら山風ちゃん、これを使いなさいッ!」

 

 その瞬間に、上から声と共に山風の前に小さなトランクが落ちてきた。

 

「ひぃ……て、これッ!?」

 

「リョーコさんッ!?」

 

 目の前に落ちたそれに驚く山風の声と同時、奏が示した人物が病院の窓からトランクを落としたのだと理解させる。落ちた拍子で開いたトランクからは、ゲーマドライバーと()色と黒で塗られたガシャットが零れ落ちた。それを、山風は知っていた。

 

『これより実験第二段階を開始する。ドライバーとガシャットの準備に移れ』

 

「――――っ!」

 

 リフレインする記憶に山風は一瞬動きを止め、しかし弾かれる様に動きを再開して山風はドライバーとガシャットを掴み、立ち上がりながら腰にドライバーを当てた。自動で巻き付き、フィットすると同時、右手の中指に引っ掛けたガシャットを回しながら顔の高さまで持っていき、止めると同時にスイッチを押した。

 

〈マイティアクション X !〉

 

 ガシャット起動音と共にネガノイズエリアが展開されてゆく。チリリ、と山風の脳内が痛んだ。しかし、身体がまるで何かと入れ替わったかのように滑らかに動いていく。右手を一旦引き、左前へ突き出した後、大きく弧を描くように右後ろへと戻し、向きを変えながら左腕でガシャットを掴んだ。

 

「変身!」

 

 山風は叫びながらゲーマドライバーにガシャットを突き刺した。

 

〈ガシャット!〉

〈レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!? 〉

 

「―――アイム、ア、カメンライダー」

 

 山風が小さく呟くと共に、此処にシンフォギアとは異なるアンチノイズプロテクター。仮面ライダーが誕生した。

 




タグに要介護主人公と入れるべきでしょうか?


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始まってしまったstory4

 

 

 

 

 

 ゲーマドライバーにガシャットを挿し、自身の周囲を回るパネルの一つに触れると共に山風の全身を光が包み、それが止んだ時に一人の戦士の姿を映し出した。

 

「あれが……山風のノイズをぶっ潰す力?」

 

 奏が何処か呆けた声を出したのは、先程までの山風の姿からは遠くかけ離れた姿からか。山風の姿は全く見えず何処かデフォルメしたと思わせるような二頭身の戦士。山風の全身をすっぽりと覆う堅牢な白い装甲に、頭から出ている頭髪のような桃色のパーツが特徴的なその装束。それが山風の戦う姿、仮面ライダーだ。

 

「――――行くぜッ!」

 

〈ガシャコンブレイカーッ!〉

 

 ベルトから発せられた音声と共に山風の掌に小型の槌が現れる。構えると同時に山風は叫び、周囲にいたノイズに狙いを定めて一足の元にその距離を5から0 に縮め、横殴りに槌を叩きつけた。殴られた場所から破裂するようにノイズは四散していくが、崩壊していくその様を気にも留めず、殴りぬけるままに山風はステップを踏むように次のノイズへと殴り掛かり、斜め四十五度から一気に地面へと打ち付け、その反動を利用して宙に跳躍し、更に近くにいるノイズへと打撃を叩きこむ。

 

「はは、なんだよ。やるじゃねえか……し、アタシもまだやってやろうじゃねえかッ!」

 

 負けていられるか、と奏は自分も戦おうと槍を構え、そこで違和感を覚え、周囲のノイズを見渡した。

 

「なんだ、こいつら。動きが急に鈍く……?」

 

 極彩色の化物であるノイズはその精彩を欠いていた。それは動きだけではなく、色合いという意味でもだった。シンフォギアによって調律され効果を失った位相差障壁がある時の様に、とまではいかないが色を失っており、動きも、反応も、鈍くなっている。だが、事由等どうでもいい、気にする前に殺ると奏は槍をノイズに突きたてる。了子はノイズが精彩を欠いた事由を理解して、感嘆に息を吐いた。

 

「『ネガノイズエリア』。ノイズの動きを、機能を、その全てを低下させる領域を展開するシステム。……確かにこれが量産出来ていたら従来の対ノイズ戦略が一変するわね」

 

 ノイズは本来触れられる相手ではない。それは物質透過能力とも次元の位階差ともいえる位相差障壁と炭素転換能力の二つがあるからだ。それに対してシンフォギアは位相差障壁を音の波で調律しこの世界に無理やり本体を出して、炭素転換能力を音の壁で無力化した上で叩くのに対し、仮面ライダーはその機能を機能不全に陥らせるエリアを展開し、炭素転換能力を無効化した上で叩く力。

 

その力に差異があるとすれば、シンフォギアは位相差障壁を全面的に無効に出来るが炭素転換能力は自身に掛かるものしか無効化出来ない。仮面ライダーは炭素転換能力を完全に無効化できるが、位相差障壁を機能停止に追い込むことで逆に本来の世界に追い込み、強固にしてしまう。

 

「―――で、あれば。この二つの力が両方機能した時どうなるのかしらね?」

 

 何処か面白そうに了子は笑いながら戦う二人の姿を見続ける。

 

「シンフォギアと仮面ライダー。二つの力が合わさる時、位相差障壁も炭素転換能力も無効にした究極の救う力(EX‐AID)になる……仮面ライダーエグゼイドってとこかしら」

 

 果たしてそうなれるかしらねえ……。呟きながら戦闘を追う先には山風の、エグゼイドの姿があった。

 

「オゥラァァァァアアアアア!」

 

 叫びながらエグゼイドは縦横無尽に戦場を駆け巡る。地上だけでなく、跳躍からの一撃や、ノイズを踏み台にして更に別のノイズに一撃を加えていくというその姿に似合わない一撃離脱の高速移動の連続技であり、その一撃一撃で確実にノイズを一体ずつだが減らしていく。数分と経たないうちにノイズは当初の数の半数を減らしており、疎らになった隙間を縫う様にエグゼイドは奏の後ろにいたノイズを殴り飛ばしながら着地した。

 

「っ! ……サンキュー、山風」

 

「気にすんな、こっちにとってもノイズは敵、それだけのことだからな」

 

 軽口に返された軽口、しかしその荒々しい言葉遣いに奏は驚きに目を見開く。少なくとも奏が覚えている範囲での山風はそういう口調ではなかったはずだ、と。そう、少なくない違和感を覚えるも、直後にいや、と首を振った。

 

「翼も戦う時はアレ(防人)だし、戦う時に性格が変わっても別に可笑しくはねーか。……シャッ! 残り片付けんぞ! 山風ェ!」

 

 叫びながら奏は槍を手に腰を低く、腕を引いて突撃の構えを見せる。

 

「わかってるッ! ―――俺も一気に決めるさッ!」

 

 言葉を返すエグゼイドの、山風の視界には周囲一帯の人間と、残存ノイズの量が映っている。ゲーマドライバーによってリアルタイムで映るその情報には、近場に残っているのは自身と、奏と、了子とノイズだけ。故にさっさと敵を倒すため、エグゼイドは手に持った槌を放り投げ、両手を左右に伸ばした後胸の前で交差させ、掛け声とともにベルトのレバーを引いた。

 

「大ッ! 変身ッ!」

 

〈レベルアップ!〉

〈マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクション ―X!〉

 

 音声が鳴り響くと共に宙へとジャンプしたエグゼイドの装甲が弾け飛ぶように消え、中からスマートな蛍光色の桃色のスーツと翠色のラインで彩られた特徴的な装束を身に纏った山風が現れ、着地する。

 

「姿が変わった!? それが本気ってわけか!」

 

「レベル2――レベル1とは一味違うぜッ!」

 

 エグゼイドレベル2。レベル1とは違い軽装甲だが、それはつまり先程までの鈍重そうなレベル1も高速戦闘が可能だったという事考えると、更に早く戦えると考えてもおかしくはない。負けてらんねえと、奏は高ぶり、構えの姿勢から一気に踏み込み、襲い掛かるノイズへと槍を向けた。

 

「ぶっ飛びやがれぇ!」

 

 持ち手より先が高速で回転し竜巻のような渦を発生させそれを目の前に放出する。 

渾身の力を振り絞ったそれは反動がきつく、奏の口内に鈍い鉄の味が広まるも威力は絶大。奏の目の前にいたノイズを抵抗すら許さず一撃のもとに大半を削り飛ばした。

 

「こっちも一気にッ!」

 

 エグゼイドは先程放り投げた槌を再び精製、同時に側面に着いたボタンを押すと、土の先から刃先が伸び剣となった。その剣の鍔ともいえる槌の部分のボタンが着いていた側面とはまた別の側面にあるスロットにベルトに刺したガシャットを抜き取ると、差し込む。

 

〈キメワザッ! マイティ―クリティカルフィニッシュッ!〉

 

 音声と共に剣先に可視化するほどの膨大なエネルギーが溜まり、エグゼイドの視界内にいつでも必殺技が撃てると浮かび上がる。それを見てエグゼイドは腰を低く屈めながら突進するように駆け出し、刹那の内に10間は離れた一にいる一体目から数えて20を超える敵を切り刻みながら進み、振り返りながら跳躍するとエネルギーを解放した。

 

「オゥリャァァァアアアアアアアアアッ!!!」

 

 叫び声と共に地面に向けて放たれた一撃はその場にいたノイズを全て消し去り、炭素へと還す。その後に残ったのは、エグゼイドと奏の二人だけ。何十、何百といたノイズは全て消失していた。

 

「……はは、ははは。やったぜ。ザマーミロ、ノイズども」

 

 笑おうとしても熱が冷めてしまったかのように頬は吊り上がらず、奏の胸の奥には重たいしこりが残ったままだった。理由は、わかっていた。

 

―――また、目の前で人が死んじまった。

 

「……クソ、畜生がっ!」

 

 ノイズに向けて/自分に向けて、そう言葉を吐きだした。口内に残っていた血が零れ、地面を少量なれど赤く染めるが、そんなことが気にならないくらい奏の中は暗雲としていた。ノイズに対する怒りよりも、自分の無力さに怒りが抑えきれなかった。

 

「……」

 

 エグゼイドは無言でドライバーのレバーを戻し、ガシャットを引き抜いた。解除音が鳴り響き、装束は霞に溶ける様に光となって消え、後に残るのはドライバーを腰に着けたまま、言葉もなく佇む山風の姿だった。

 

「…………」

 

 戦いの最中に言葉を荒げていたのが嘘の様に静かになった山風は何も言わなかった。ただぼんやりと立ち尽くした状態から、やがて糸が解けたかのように急に姿勢を崩し、倒れこんだ。

 

「―――山風? おい、山風! 大丈夫か、しっかりしろ! おい、おい、山風ッ!」

 

 異変に気付いた奏が叫ぶも、反応は返って来なかった。

 

 

 

 

 

―――……

 

 

 

 

 

「山風ちゃんが倒れた原因は恐らく過労ね。心的、肉体的どちらをとっても今回の事件は影響が大きすぎたんでしょう。また、暫く安静にしてもらうのが一番の療養よ」

 

 山風が倒れた後、すぐさま二課本部内に搬送し、倒れた理由を検査した後、了子は奏にそう伝えた。良かったと小さく笑みを零す奏だが、その姿はベッドの上で横になっている状態であり、今行った事は奏にも言えることであった。了子は溜息混じりに怒りの口調を強めて奏へとにっこりと笑顔を向けた。

 

「それで? どうしてリンカーを打たないままあんな無茶をしたのかしら?」

 

「悪いとは思ってるさ。……でも、ああしないとあの場ではノイズを潰せなかったからな」

 

 怒りが目に見えそうなほどの了子に対し、気圧されつつも奏はそう答えた。その答えを予想していた了子は、呆れ混じりの溜息を吐き、いい? と言葉を前置く。

 

「もし仮に貴女があそこで戦ってくれなかったら多くの人が死んでいたかもしれないわ。それこそアタシも山風ちゃんもね。……けど、時限式とはいえ適合者の貴女が無茶して寿命を削ったらそれこそ救える命も救えなくなるわよ?」

 

「……それでも、目の前で誰かが襲われそうなら、アタシは戦うよ」

 

 真っすぐとした視線でそういう姿に、全く言う事を聞く気がないんだからと了子は溜息を吐いて、暫くは絶対に安静よと言い残してから病室を去った。

 

「ほんとに、誰も言う事を聞いてくれないんだからねん……」

 

 困っちゃうわと言いながら了子は自室へと足を進める。その途中で思い返すのは、やはり病院でのことだった。

 

―――想定外に次ぐ想定外。しかし、利もまたあったか。

 

 内心でそう悪態を吐きながら了子はしかし、と今回の襲撃は悪いものではなかったと考える。ノイズが現れたのは完璧に想定外であり、色々な危険があったが、ゲーマドライバーの性能を実際に確認できたのはかなりの収穫だった。ネガノイズ理論についてはデータが少なかった以上、少しでも確認できるのは喜ばしい事であったいう事もあるが。

 

「―――何よりも、今回の収穫で一番だったと言えるとすれば」

 

 言葉を小さく漏らしながら了子は自室の扉を開け、ロックが掛かったことを確認してから眼鏡を外し、視線を険しくしつつ脳内を整理するかのように言葉を吐きだす。

 

「ゲーマドライバーが机上の空論ではなかった以上、やはり錬金術師(・・・・)が関与しているという事が確定したことが大きい」

 

 ゲーマドライバーを解析するにあたって発見した了子からしてもある種未知の理論。しかしベースとなった技術は既知の物であり、故に理解できたその理論からは、一つの組織が関与していると見て間違いがないということを了子に理解させた。

 

「―――パヴァリア光明結社か。それから派生した何かか。いずれにせよ400年前に潰したはずと捨て置いたが、気付かぬ間に此処(日本)でこそこそと何かをしていたようだな……」

 

 しかし、現状自身のやる事には変わらないと了子は判断する。だが、侮っていいレベルでもないと、いざという時の布石を打っておくこともまた重要だともまた判断した。

 

「取っておきたくない取っておきだが、止むを得んな」

 

 来るべき日に備えて、了子は準備を進めるべきだと動き始めた。

 




シンフォギアAXZ二話を見た結果、突っ込まなければいけなくなった台詞が増えるスタイル。
なお、四期までは行く予定はありません。あったとしても三期です。


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