この世すべてに愛を (紫藤 霞)
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1

「其処だ!」

 

 弾ける音と共に敵の足を射抜く。

 膝をつき動けなくなってしまう

 其処に更におまけとばかりに女騎士が近づき

 

「命脈は無常にして惜しむるべからず…葬る! 不動無明剣!」

 

 足が動けなくなった相手に追い討ちを掛けるように聖剣技を打ち放つ

 其れで息絶えたのか、もはや動かなくなる相手騎士

 

 其処は戦場であった。

 だが今其の最後の敵が倒れ、クリスタルとなった

 

「ふぅ」

 

 ラムザは一つ大きく息を吐く。

 漸くあの独特な緊張感から解き放たれたのである。

 すると

 

「んぁぁぁ~~、ラムザ~、つ~か~れ~た~」

 

 そうやってラムザに寄り掛かる女騎士。

 

「シーラさん、戦闘が終ったばかりで哨戒に出た人たちが戻ってきてないからね?」

「そんなのはエバンズに任せておけば良いんだよぉ。私が疲れたんだからどうにかしろ~」

 

 なんともむちゃくちゃなことを言うシーラと呼ばれた女性。

 彼女は本来はなんでもない一般の女騎士であった。

 だが、アグリアスの聖剣技を見て目を輝かせ、アグリアスに何度もせがみ見せて貰いなんと其れをマスターしてしまったと言うのだから驚きである。

 

「俺一人では無理だっての、ほら遊んでないでいくぞ、シーラ」

 

 其のそばにやってきたのは同じく騎士のエバンズ

 しかし彼もまた騎士でありながら騎士とは言い難い装備をしていた。

 確かに其の身に纏うのは騎士の鎧である。

 だが、其の手に持っているものは騎士剣はおろか剣すら装備していない

 其の手に収めている物はフォーマルハウト

 つい先日、闘技場で戦った際の商品として手に入れた紛れもない”銃”である。

 騎士なら剣を使えと思うが其処は其れ

 本人曰く

 

「こっちの方がシックリ来る」

 

 といって銃を手放さなかったのであった。

 しかもムスタディオに銃技を習い機工士しか扱えない筈の狙撃まで覚えてしまったのである。

 そして、二人の異端の騎士を指揮するのはラムザ・ベオルブ。

 

 

「ラムザ、哨戒に行ってきたぞ。このあたりは問題ない状況だ。それとシーラ、だらしないぞ」

 

 そして新たに2人が其の輪に加わる。

 哨戒から帰ってきたホーリーナイト、名はアグリアス・オークス

 彼女こそシーラがごねて技を見せたあまり技を盗まれてしまった聖剣技の持ち主、ホーリーナイトのアグリアスであった

 アグリアス自身、見よう見まねで出来るものでもないだろうと思って何度か見せた。

 そして戦闘中にも何度も技を繰り出してはいた。

 しかしそれだけで技が使えるようになってしまうなど考えもしなかったのであった。

 そして帰ってきたのはもう一人

 女忍者のアリスであった

 

「アグリアスさん、アリスさん有難う。それなら此処を出発しても問題はないね」

 

 今は、この5人で旅をしている。

 本当はもっと居た

 だが彼らはとある伝説と対峙する事になってしまった。

 あるものは伝説とであったことで恐怖し

 またあるものはアグリアスやラムザの説得でしぶしぶ隊を離れることになったのである

 

 彼らが出会った伝説。

 それは”ゾディアックブレイブの伝説”に登場するルカヴィであった。

 其の為にラムザは部隊を一旦解散し、自分ひとりだけで其の伝説に対抗しようとしたのであったが

 

「何を馬鹿な。お前さん一人では無理だから私も手伝うに決まってるだろうに」

「同意権だな。あれだけ強大な敵だ、一人では無理でも二人、三人と数が射ればどうにかなるだろう」

「私はお前の剣になると決めたのだ。一人だけでは行かせはしないぞ?」

「私では、私ではお力になれないでしょうか!?どうか、どうかお側に居させて下さい」

 

 と言う事でシーラ、エバンズ、アグリアス、アリスの4人が残ったのであった。

 

 

 その夜、ラムザ達が眠り夜の番をしているシーラとエバンズ

 

「なぁ、エバンズや」

「どした、シーラ?」

「部隊を解散させたのは良いとして、人数少なすぎる気がしないか?」

「ラムザが熱心に皆を解放しちゃったからなぁ。ボコだっていやいや出て行っていたし」

「何より致命的なのが白魔法使いもアイテム使いも居ないことだよなぁ」

 

 アグリアスもアリシアとラヴィアンの説得がそうであったように、ラムザの説得もまたは其れは其れは凄かった。

 

 ルカヴィ

 

 悪魔の意とするゾディアックブレイブに出てくる伝説の生き物のはずだった。

 だが、ドラクロワが持っていたそのクリスタル、聖石をドラクロワ自身が使い異形の生き物に成り下がったのである。

 

 不浄王キュクレイン

 

 それがドラクロワが手にしたルカヴィの力であった。

 辛くも倒すことに成功したラムザ達であったが、相手が伝説の生き物とあれば普通の人間には太刀打ちできない

 そう思ったのであろう、ラムザは必死になって仲間達と話し合い必死に残ると言っていたメンバーを除名して言った。

 其の中でも運良く

 と言うよりも口で適わないシーラとエバンズの二人

 自らはラムザの剣でありどんな相手であろうともラムザの見方をすると決めたアグリアス

 泣き落としで必死にすがりついたアリス

 

 この4人が部隊に残ったのであった

 

「んでシーラ?なにか策でもあるのか?」

「多分、ラムザは自分が何時死んでもいいと無意識に思っている。ならば其れを引き止める人物が必要だと思う」

「アグリアスさんやアリスさんみたいな?」

「アグリアスさんやアリスさんみたいな」

 

 ふむ、とエバンズが思案顔になる。

 確かにアグリアスやアリスのような人材は必要だろう。

 だが、現実問題その様な人間が他に居るのだろうか?

 

「其の事だけど1人、確実にラムザを止めてくれる人が居る」

 

 シーラがそう言うとエバンズを見る。

 エバンズも其れを見てふっと一人の少女を思い出した

 

「妹君か?」

「ん、アルマなら引きとめてくれるだろうて」

 

 其れもそうかと思いながらどうやってメンバーに加えるのか、シーラと共に相談することにしていくのであった。

 ただでさえラムザは妹を大事にしているのだ、そうそう簡単にメンバーに入るとも思えない。

 と言う訳で

 

「兎に角、女をあてがえばどうにかなる!筈!」

「大雑把だなぁおい」

 

 そんなこんなで、ラムザハーレムの結成を仕切る、シーラであった。




チートキャラ説明

 シーラ(女)
 ラムザの事は弟のように思っている。
 背は低くラムザの胸くらいしかない

 ゲーム基準で言えば一応汎用キャラ
 ただしアビリティに聖剣技を身に着けた汎用キャラ
 汎用キャラでありながら汎用キャラの枠から飛び出た存在。
 アグリアスと違い聖剣技全ては使えないが不動無明剣、無双稲妻突きの二つを使うことが出来る。
 右手にディフェンダー、左手にエクスカリバーと二刀流を習得しているまさに転生のアタッカー。
 
 エバンズ(男)
 ラムザパーティーでラムザ以外の男性
 シーラ同様にラムザを弟のように思っている。
 死んで欲しくない為にシーラのいうラムザハーレム計画に賛同する

 ゲーム基準で言えばこちらも一応は汎用男性キャラ
 ただしアビリティに狙撃、銃装備可能をセットしている
 装備はフォーマルハウト。
 此方は機工士であるムスタディオからしっかりと技術を学んだことでゲームで言う「足を狙う」「腕を狙う」「邪心封印」の三つ全て使える。
 本家ムスタディオ互換バージョン
 騎士装備をしながらの銃装備なのでラムザやアグリアス達が逃した相手や魔法が飛んできても其の身で受け止めることが出来る。


 アリス(女)
 ラムザに捨てられたくない一心で必死にすがり付いて部隊に残った人。
 忍者として生まれ育ち今もなお忍者と居て生きている彼女はラムザとはなれるのを兎に角恐怖しているのであった。

 ゲーム基準で言えば普通の汎用女性キャラ
 ジョブ忍者
 アビリティは戦技
 能力的には特に変わった事は無くシーラ、アグリアスと共に前線に出て物理攻撃や戦技を叩き込む。


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2

文字数が安定しないのはなんでだろうか?



 ばちばちと火花が散る。

 焚き火の炎は未だ消える気配はない

 

「現状を加味すればアグリアスさんとアリスさんの二人はハーレム入りだな」

「そうなのか?」

「そうなのだ」

 

 そういうことに疎いエバンズ。

 まぁ、シーラがそういうのならそういうことなのだろう

 

「後は魔法使いがほしい。できれば早急に白魔導士辺りが」

「居なくても戦えているが?」

 

 火の中にまきをくべながら真剣な表情をするシーラ

 戦えているのになぜ必要なのかと問いかけるエバンズ

 そしてシーラの重い口が開く

 

「戦った後のポーション漬けは飽きた」

「それが本音か」

「だってなぁ~」

 

 まじめに考えていたのがそれであった。

 ただエバンズもまたそれにはある意味賛成でもある

 

「ま、ポーション代も馬鹿にならないからな。白魔道士はほしい所だな」

「ラムザが指揮しているとはいえ基本脳筋の集まりだからなぁ」

「それをお前が言うか。まぁ、その問題もどうにかしないとな」

 

 だよなぁという声とともに夜の警戒に戻る二人。

 翌朝

 

「と言う訳でラムザ、白魔道士位は欲しいんだがどうにかならんかね?」

「どうにかと言われても」

 

 返答に困ってしまうラムザ。

 何しろその白魔道士を除名したのは紛れも無く自分なのだからどうにかと言われても困ってしまう

 確かに、指示をしながら敵の攻撃をすべてかわすことは困難を極める。

 だがそれ以上に問題なのは

 

「仮に、メンバーに入ったとしてルカヴィはどうするつもり?」

「んなもんこのメンバーで脳筋アタックを」

「まじめに聞いてるんだよ?聖石があんな強大な魔物を生み出すのなら被害を受けるのは少ないほうが良い。だから僕はみんなを」

「いや待てラムザ、割と今のは割と間違いではないぞ」

「エバンズ?」

「記憶に新しいだろ、ルカヴィと戦ったこと思い出せ。魔法の詠唱を狙われてノックスがやられただろ。脳筋アタックと馬鹿みたいな名前を言っているが大まかには間違いではない。それに魔法よりもアリスの二刀流の攻撃の方が相手がよろめいていたぞ」

 

 それを聞いたラムザはひとつ悩む。

 確かにドラクロワが変身したルカヴィに魔法の効果は薄かった。

 それに対してアリスの二刀流やエバンズの銃撃は効果があったかのように思える。

 そして相手は広域の魔法をチャージ無しで打ってきたこともあった。

 それらを加味すれば確かに脳筋アタック、詰まる所物理攻撃を主体にすべきだと言うことなのはわかる

 

「だからこそ、魔法使い、可能なら白魔道士が欲しい。もともと居たノックスはルカヴィとは戦いたくないと言って出て行ったのだから新しい白魔道士が、だ」

「だけど難しいのではないだろうか?これから先、またルカビィと戦う羽目になるとも限らないだろう?」

「だから欲しいんだけどね~。脳筋部隊だけで戦えるほど甘くないと思うからのぉ」

 

 エバンズ、アグリアス、シーラの順にそう話す。

 ラムザも成程、と一つ頷いてから

 

「でも、加入してくれる人居るかな?殆どの人は説得して除名しちゃったし」

「除名したメンバーはあのままで構わんだろう。元々ノックスとゴルドン以外は物理系職業者ばかりだったしな」

「でも、ルカヴィは」

「守れば良い。魔道士たちを守れなくてルカヴィが倒せない状況があるだろうからな」

 

 その後、小一時間程魔道士加入希望のシーラ、エバンズの説得とその説得に納得したアグリアスによる説得でラムザが折れた。

 さらにそこからシーラはいう

 

「それと、可能なら魔道士は女のほうが良い」

「?それはどうして」

「元々の素養、と言うべきなのか男性より女性の方が魔法の素質が高い」

 

 これもラムザが士官学校時代に習ったことの一つである。

 何故だかは知らないが基本的に男性は前衛物理攻撃職、女性は後衛魔法職が向いていると習ったからである

 

「欲しいのは白魔道士。このメンバーに置いて回復できると言うのが居ないからな」

「戦闘中ならモンクのチャクラで回復も出来るけどやっぱりこういう風に戦闘中じゃないときはのんびりと白魔法で回復したほうが傷の直りが早いからな」

 

 其処まで言われてしまうと確かにと思ってしまうラムザ

 とは言えだ

 

「そういう人材が居たらね。今はチャクラで我慢して?」

 

 ラムザも現状がわかったとはいえ今は譲歩して欲しいと願う。

 シーラとエバンズの二人も現状を把握しているため早めに頼む、と言うだけに止まった。

 なかなかどうして、難しい問題だなと思うラムザ

 

 ラムザは知らない。

 これがラムザハーレムの一環である事を 



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3

 白魔道士問題はひとまずおいておき、ラムザの兄に会いに行くことにしたラムザ一行。

 途中炭鉱都市ゴルランドにてオーラン・デュライという青年と出会い盗賊団を倒すことになったが何の問題も無くあっさり撃破。

 そしてそのオーランとまた会おうと言う約束をしてから王都ルザリアに到着したラムザ一行。

 兄である聖騎士ザルバックにはラムザ一人出会いに良き自分達はお留守番をすることに

 

「ラムザさん、大丈夫でしょうか?」

「何も心配することは無かろう。で、シーラは何をやっている?」

「ん?ラムザハーレム計画の概要でもまとめようかと」

「らむ、なんだと?」

 

 アグリアスが厳しい表情でシーラを睨み付ける

 アグリアスにとっての剣であるラムザの事だ。

 しかもハーレムと来た物だからかなりご立腹のご様子

 

「アグリアス、アリス。誤解の無い様に聞くが今のラムザを見てどう思う?」

 

 死に急いでいるようじゃないか?

 そう問われた二人は眉をひそめる

 ディリータと出会い、ルカヴィと戦ったラムザ。

 そのラムザを最も近くで見てきた二人にはその心当たりが無いわけではなかった

 

「だが、それとハーレムとどう繋がる?」

「生き抜いて貰うための方法だそうだ。俺も賛成している」

「エバンズ、お前までか」

 

 アグリアスにあきれた様な様子で言われてしまう。

 だが、実際にラムザの様子を見れば死に急いでいるのと大差はない。

 あの伝説のルカヴィにたった一人で挑もうとしていたのだ。

 死にに行くのといったい何が違うと言うのか

 

「そこでアグリアスとアリスの出番わけだな」

「あの、シーラさん?私たちに何をさせようと?」

「エッチな事してラムザを篭絡させようと思っている」

「なぁあ?!」

「えぇえ!?」

 

 アグリアスとアリスの口から驚愕した声が出る。

 それも当然だ。

 いきなり寝耳に水な事を言われてしまえば誰だってそうなる。

 やっぱり驚くよなぁとうんうんと頷くエバンズ

 

「な、何を?!わ、私はラムザの剣でありそんな」

「そ、そうですよ!確かにラムザさんからは離れたくありませんがそんな」

 

 無理無理、無理だと言う二人。

 とは言えここまでは予想道理でありシーラも想定していたこと

 

「よく考えろ二人とも。ハーレム計画を実行に移すのは確定としてお前さんたちの参加も重要なんだぞ?」

「だから!いきなりそんなことを言われても困ると言っている!」

「ラムザに死んで欲しくないからな。急ぎもするさ」

 

 基本的にラムザの戦い方は兎に角前線に出て敵と真っ向勝負をするのが普通である。

 別にそれが悪いとは言わない。

 だが、それが良いとは決して限らないのである

 

「本当なら指揮官は後ろでデデンとして欲しいのに前に出ると言うのはなぁ。それにあの戦い方じゃぁいつか死ぬぞ?」

「それは、そうかも知れませんけど」

 

 前衛に居ながらの指揮

 これほど難しいものは無い。

 それを簡単にやってのけるのはラムザだからであり他のものには真似出来ない事である

 だが、その代償もまた看過出来る物でもない

 パーティーメンバーで一番怪我の多いのは誰であろうラムザなのだから

 

「ラムザの事だから私達に死んでもいい、なんて欠片も思っていないだろう。だから私たちに怪我をさせたくないとばかりに前に出ているラムザだ。どうにかこの世に未練の一つ二つ残させないと本当に帰ってこなくなるぞ」

 

 これは直感ともいえる確信であった。

 この先、何が起こるかわからないがラムザが遠くに行ってしまうかも知れない。

 そう思うようになっているシーラ

 その言葉を聴いてアグリアスもアリスも黙ってしまう

 

 話を続けようとしたときに声が聞こえてきた

 ラムザとアルマが話をしているのが城門の外から聞こえてきた

 

「あの馬鹿、私たちをここに置き去りにするつもりだな」

「急いでいくか」

 

 荷物を持ちラムザを追いかけようとした次の瞬間、また、城門の外から声が聞こえた。

 誰かわからない声の主

 誰だとアグリアスがエバンズとシーラに顔だけを向けて問いかけるがどちらも知らぬとの事

 話が続けばなんとラムザを異端者扱いし始めたではないか

 

「異端!?異端審問官だと!?」

「何でそんな奴が出てきたんだ」

 

 驚く四人

 話を聞けばドラクロワの殺害容疑だと言うではないか

 

「確かに言われたら其の通りだけど!」

「ドラクロワがルカヴィという化物に変わったので倒しました、なんていって聞くはずは無いか」

 

 荷物を捨てるように投げ捨て戦闘体勢に移行する四人

 其の間にもラムザはアルマを庇いながら戦いを始めるのであった

 

 

 戦闘が終了し、アルマが一時的に仲間になった。

「アルマ・ベオルブです。少しの間ですがよろしくお願い致します」

「うぃ、よろしく。だが、もっと砕けた口調で構わんぞ」

「そうそう、ここにい居るメンバーは君よりも格下何だからね」

「いえ、そんな事は。でも、砕けた口調の方がらくだからこっちにさせて貰うわね」

「改めて宜しくだな、アルマ嬢」

 

 シーラとエバンズの二人がアルマに挨拶する。

 この二人、仕官学校時代に顔を合わせる機会があった。

 だが、話す機会は無かったのが、顔を合わせる機会があった事が功を奏して打ち解けあうのにそんなに時間はかからなかった

 アグリアスやアリスは緊張していたがそれでも多少は打ち解けることが出来るようになっていく。

 そしてシーラはラムザハーレムの事をアルマに切り出した

 

「そうね、確かに兄さんには必要かもしれないわね」

「だろ?ちなみに候補はこのアグリアスとアリスの二人だ。出来ればアルマもハーレムに入れば良いんだが」

「私? 妹なのに?」

「ラムザはどうもシスコンのけがある気がしてならぬ。お前さんの為なら命だって掛けそうなんだよなぁ」

「アルマ嬢はそういうこと感じたことあるのか?」

 

 シーラは砕けた口調で、エバンズも砕けた口調に加えアルマに嬢とつけて話をしていく。

 アルマ曰く、そういうのが思い当たる節があるらしく妙に納得していた

 

「心の其処では大切な家族なんだと思うが恋人でも問題ないと思わぬか?」

「良いわね、兄さんの恋人っていうのは。其の案、載ったわ」

 

 アルマも大概良い性格であった。

 ハーレムについても特に問題は無い様子でありラムザなら妾だなんだで愛する事を差別しないだろうということである。

 それはいつものラムザを見ていればわかる。

 そんな感じでラムザハーレムは本人の知らぬ所で着々と進められていくのであった。




アルマって、実は味方にいる時期が凄く短いキャラなんですねぇ


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4

「ちぃ、傷が治らん」

「まだ動くな、傷が治りきってないんだからな」

「チャクラもこういう傷を治すのには向いてないからなぁ」

 

 オーボンヌ修道院での連戦から一夜明け貿易都市ドーターで傷の手当を行っているラムザ一行。

 ラムザはアルマがさらわれたことで落ち込んでおり今アグリアスとアリスがそれを慰めに行っている

 オーボンヌ修道院では色々な事があった。

 あり過ぎる位あった

 

 アルマが連れ去られ

 ウィーグラフが聖石と契約を果たし化け物となり

 シモン先生から協会の不正を暴くゲルモニーク聖典を託されたのだ

 それらを考えるだけでも色々な事がありすぎてたまらない

 

「エバンズ」

「なんだシーラ」

「あの聖典、本当なんだろうな」

 

 ぽつりと零すシーラ

 エバンズも一つため息を零してから

 

「シモンさんが命がけでラムザに渡して、それとアルマを交換だと言われたからには本物なんだろうな」

「グレバトス教の敬虔な信者って訳じゃなかったがそれでも英雄の聖アジュラの事はそれなりに信じていたんだがなぁ~」

 

 ゲルモニーク聖典

 それは聖アジュラが神の御子等ではなくただの間者であった事

 そう、神格化された人間ではない存在であった筈の聖アジュラがただの人間であった事を示したものであった

 グレバトス教が真実だと信じるものは少なくない

 というよりも、この地に住む者たちにとって基本的には経験ではないにしろ信者の一人であるのは間違いないのであった

 

「俺はそれよりも聖石が化け物を作る道具だった事の方が驚きだったがな」

「ウィーグラフか」

 

 ウィーグラフ

 オーボンヌ修道院で確かにラムザが倒したはずだった相手。

 だが、聖石が突然しゃべりだし契約を交わしたウィーグラフが化け物へと変化したのであった。

 

「アルマ誘拐に始まってウィーグラフの化物化、ゲルモニーク聖典どれもこれも正直面倒な事だな」

「アルマ、無事だと良いんだけど」

「ゲルモニーク聖典がこっちが握っている以上、そう易々と手出しは出来んはずだから大丈夫だと思うしかないだろう」

 

 とは言え、やる事が増えてしまったのも事実。

 最初はラムザのハーレムを作れればそれで良いと思っていた。

 だというのにアルマは誘拐される

 ウィーグラフと其の一味は聖石で確実に化物になっているで間違いない

 そしてゲルモニーク辞典

 今まで信じていた聖アジュラがただの人間で間者(スパイ)だった事

 何を信用すればよいのかわからなくなっていく

 

「取り敢えずは、だ。俺たちはラムザを信じるとしよう」

「だな」

 

 ラムザを信じてここまで来たのだ。

 ならば最後まで信じるのが筋というものだろう

 

 傷を手当しながらエバンズはふと妙な声を聞く

 

「なんだかラムザの部屋が騒がしいが、何かあったのか」

「おぉ!とうとうやったか!」

「おいこら待てや怪我人」

 

 エバンズが思わずシーラの頭を握り締める

 握力はそれなり以上あるエバンズ、しかも相手のシーラは怪我人である。

 抵抗しようにも抵抗できないシーラ

 

「あ、あはははは」

「さぁ、いえ、あの二人に何を吹き込んだ。生真面目なアグリアスさんまで巻き込んだのだ、ただ事では無いんだろう?」

「あ、痛い、怪我が、怪我が悪化するぅううぅうう!?」

 

 ぎりぎりと頭を握り締める力を強くしていくエバンズ。

 観念したのかシーラがぎぶぎぶと言い、何を吹き込んだのかを言うといったので力を弱める。

 

 ようするに、だ

 

「ラムザが傷心しているから文字通り”身体”で慰めればよいといったのだな?」

「うむ!ラムザハーレムの為に必要だと思い二人を説得したのだ!あ、痛い!力強めないでぇぇ!」

 

 はぁ、と一つため息を零すエバンズつまり今ラムザの部屋はそう言う事をしている真っ最中なのだろう

 確かに落ち込んでいるラムザには必要な事かも知れないがそれをほんとに実行に移すか普通

 そう思いながら力をこめてシーラの頭から手を離す

 

「はぁ、ラムザがねぇ」

「こういう時の女は強いのだ!えっへん」

 

 ここにも女がいるが、どうにも強い風には見えない。

 まぁそんな事はさておいてだ

 

「ラムザたちが動けないというのならこちらで動ける事をしよう。白魔道士探しだ」

「戦士斡旋所にいるかねぇ?」

「いや、其処じゃない。酒場で話を聞いたのだがアラグアイの森で白魔道士と黒魔道士が修行しているとの話だ」

 

 噂話の一環ではない

 昨日白黒魔道士の二人の女性がアラグアイの森に行くというのを酒場のマスターが聞いていた。

 妙齢な年齢のきれいな女性たちだから良く覚えていたという

 

「其の二人を説得しに行くぞ」

「なぁ、エバンズさんや」

「何だ、シーラ」

「私、怪我だらけなんだけど」

「本当ならラムザたちと一緒に行くつもりだった計画をだめにしてのは誰かね?」

 

 うぅ、意地悪~!

 そんな声を出しながら渋々とアラグアイの森に行く事になったシーラ

 ラムザ達、特にラムザには戦力増強が急務と言う事で許可を貰っている。

 あんな化物相手に前衛職だけでは勝てない。

 やはり仲間が必要だと説いてある。

 なので白魔道士と黒魔道士の二人の説得をしに、一路二人はアラグアイの森に向かう事になるのであった。



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5

 アラグアイの森に到着した二人。

 馬車を借りて、其の中でもしっかりとシーラの怪我を治しておくのを忘れていなかったエバンズ

 森の中をうろうろとしているとまず見つかるのは当然

 

「魔物だわな」

「そりゃ此処戦闘区画だからな。行くぞ」

「応ともさ」

 

 前衛二人、と言ってもエバンズは何気に後衛だったりするが、の戦闘が始まる

 先に動くのは当然射程の長いエバンズ

 狙いを付けこちらに寄ってくるボムを狙い打つ。

 接近を許せば最後自爆されかねないからだ。

 其の思惑道理かどうかは知らないが其の一撃で仮死状態に迄持っていく

 

「相変わらずな威力な事で」

「装填に時間が掛かる事以外は文句ない一品だと思うぞ?そして行って来い。ラムザが居ないから指揮なんぞ出来ん」

「こう言う時やっぱりラムザの偉大さを思い知るよなぁ。兎に角馬車に近づけないようにするから馬車守るように」

「確約は出来んが、な!」

 

 再装填が終わりさらにゴブリンに向かって発砲。

 これまた命中して仮死状態になる。

 この調子で行けば問題は無いが

 

「ちっシーラ!左から足の速いのが2つ!」

「任せろ!」

 

 両方の気試験を抜刀。

 利き腕に持つエクスカリバーの聖なる力によりヘイスト効果を得るシーラ

 即座に向かってくるレッドパンサー系バンパイアとレッドパンサーの2対に切りかかっていく

 

「まず、一つ!」

 

 すれ違いざまにエクスカリバーを横薙ぎにしてレッドパンサーの切捨て

 レッドパンサーは悲鳴もあげる暇も無くその場で倒れ仮死状態へと移行

 

「んでもって、二つ!」

 

 返す刀でディフェンダーでバンパイアに斬りかかる。

 だが、ひらりと攻撃をかわされてしまう。

 流石はレッドパンサー系最高位、通常モンスターとでは比較にならない強さが其処にはあった

 

「って言うか何で居るんだよバンパイア!其処動くなよ!大気満たす力震え、我が腕をして閃光とならん!」

 

 詠唱を唱えながら距離をとるバンパイアにエクスカリバーを向け

 距離など関係が無いとばかりに思い切り突き放つ!

 

「無双稲妻突き!」

 

 大地からは剣気が、天空より稲妻が走りバンパイアを倒していく。

 仮死状態になったのを確認してからすぐ周りを見渡せば足の速いのはもう居ない。

 今、空を飛んでいたキュベレーを落としたのが最後の一匹。

 後は足の遅いゴブリンだけ

 

「とは言えブラックゴブリンもか、怪我治ったばっかりなんだがなぁ」

 

 はぁ、とため息を一つ零しながらゴブリンとブラックゴブリンの群れに突撃していく。

 一つ、二つと斬り進めてもどうしても隙が出来てしまいタックルや回転パンチを受けてしまう。

 タックルはまだいい、タイミングさえ合えば交わせる。

 だがゴブリンから進化したブラックゴブリンの回転パンチが問題であった。

 あれが交わせない。

 だからこそ先にブラックゴブリンを叩く事を決めたシーラはそのままエクスカリバーでタックルを受け、反対のディフェンダーで反撃を行う

 戦闘は、終始シーラ達の側に傾いていた

 

 

 

「あぁぁ~~。う~ご~け~な~い~」

「はいはい、お疲れ様。ポーション飲んどけよ」

「身体動かしたくない。飲ませろ~」

「はいはいっとに、年頃の娘さんがはしたない」

 

 無事に守りきった馬車の中で思い切りだらけて横になるシーラ

 今回の数は何時もなら普通以下、雑魚的扱いなのだけれども2人だとやはり勝手がまるで違った。

 ともすれば、魔法使い二人でどうやって戦っているのかが気になる

 どちらかが前衛役をやっているのだろうか?

 

「基本的にエバンズみたいに後ろに居る事が多いはずなんだけどなぁ。前に出ても良い事あんまり無いし」

「ま、其の辺りは直接あってみてだな。」

 

 ふと辺りを見て違和感を覚える。

 先ほど戦ったモンスターに上位種が居た事。

 さらにゴブリンの数が妙に多かったことだ。

 そして今目の前の森の中をゴブリンが走り去って言った。

 本来そういうことはありえない。

 自分達よりも別の戦闘を優先しなければいけない戦いがなければ

 

 

「居たみたいだな。しかも戦闘らしいぞ」

 

 それを聞いてがばりと起き上がるシーラ

 先ほどまでだらけていたのが嘘の様に飛び起きる。

 すでに臨戦態勢、と言った所だ。

 

「状況は分かるか?」

「判断できるのはラムザ位だ。だが」

 

 空を見上げれば空を見上げれば綺麗な青空が見える。

 それをさえぎる厄介な敵は居ないと言うのは見て取れる

 

「しいて言えばキュベレー系は居ないと言う事位だな」

「チョコボ急がせて、加勢できるなら加勢するぞ」

「ん、任せろ」

 

 エバンズは返事をすると馬車の動きが早くなり戦闘音が聞こえてくる。

 氷魔法の炸裂する音が多い

 と言う事は

 

「ゴブリンの集団に出会ったか?」

「それもそれで厄介だな。さっき戦った奴等が偵察隊だとしたら」

「本体の可能性が出てくるわけか。このアラグアイの森ってこんなに荒れてたっけ?」

「情報が無い。って事はつまり」

 

「「此処に来た奴が全く居なかったか、来た奴ら全員が全滅しているかのどっちか」」

 

 情報が無いとはそう言う事である。

 ならば可能性が高いのは

 

「後者!エバンズ馬車を切り離せチョコボだけで行くぞ!」

「あいよ、馬車が帰りまで壊れてない事を祈るとするか!」

 

 二人は馬車を引っ張っていたチョコボに飛び乗りそのまま馬車を引っ張っていた部分を断ち切る。

 軽くなったチョコボは先ほどよりも速いスピードで戦闘音のする場所に向かっていく

 徐々に音が近づいていくうちにゴブリンがちらほらと散見し始めていく

 

「おいおい冗談過ぎるぞ、これだとこの辺りいったいのモンスター集まってくるぞ!」

「撤退戦になる、先に潰せるのは潰す。チョコボの操縦を頼む」

「任された。外れても良いから兎に角撃ちまくれ!」

 

 フォーマルハウトをしっかりと構え、森から出たと同時に乱射とも言えるほどの速度で打ち始める。

 しかしそれが全てゴブリンに命中しているのだから其の技量は計り知れない

 数匹は殺す事が出来たが其の十倍の数のゴブリンの手や足を吹き飛ばしてみせるエバンズ。

 早々簡単に再生など出来ないゴブリンはキーキーと声を上げるだけでこちらを追いかけようともしない。

 

 そのまま駆け抜け戦闘の中心部に漸くたどり着いた二人

 いくつもの宝箱やクリスタル、そして其の倍以上の仮死状態のモンスター達

 そして、それ以上に多くのゴブリンと退治しているのが件二人の魔道士なのであろう

 

「エバンズ!」

「応!」

 

 黒魔法使いは既に精神力を使い果たしているのであろう、肩で息をして必死に逃げている。

 白魔道士が盾になっているがそもそも体力が前衛職とは違うためこちらも必死に戦いながら逃げていた。

 其処にいくつもの銃撃音とともに現れるは

 

「騎兵隊の登場じゃぁ~!」

「ぇ、ぇ?」

「な、何!?味方!?」

 

 チョコボを下りてそのままエクスカリバーとディフェンダーを手に取る。

 それだけで彼女の時間は、他とは一線を画す

 ヘイスト状態になり一気に敵陣営に飛び込めば

 

「不動無明剣!」

 

 簡易詠唱と共に放たれる聖剣技。

 そして二人のそばにはエバンズが近寄る

 

「援軍、と思ってもらって構わん。クリスタルはいくつもそこ等辺にあるが、どうする?」

「逃げるわ。私とクラウディアはもう限界なの」

「了解。チョコボに乗れ、途中に馬車置いてきたからそれに乗って一気に逃げるぞ」

「御免なさい、乗った事無いわ、あなたも騎士なの?」

「一応はな。詳しい説明は後だ、二人ともチョコボには乗れないのか?」

 

 其の言葉に首を縦に振る二人

 確かにチョコボに乗る機会なんて早々あるものではない。

 騎士や盗賊なんかはチョコボを多用するが、一般的にチョコボなんてものは一般人が乗るようなものではない

 

「撤退戦、この数相手にするにゃぁ、ちと厳しいぞ」

「それなら私達の事を見捨てても」

「馬鹿を言うな、何のために二人のお嬢様を探しに来たと思ってるんだって事だ」

「詳しくは後で聞くわ。指揮、任せても?」

 

 エバンズは考える。

 正直ラムザのようにうまく指揮をすることが出来るなどかけらも思っていないからだ。

 こう言う時、ヒーローは遅れてやってくるものなんだがな、と言葉を漏らすと

 

「それなら、勝手に二人で行かないで欲しかった、かな?」

「なぬ?」

 

 すぐ背後には、チョコボに乗ったラムザたち三人の姿があった




毎回今回くらいかければなぁ


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6

戦闘シーンって、長くなるなぁ。



「アラグアイの森に二人で行くって書置きがあったかでしょ?なんか嫌な予感がしたから三人で追いかけたんだよ」

「何と言うか本当にヒーローは遅れてやってくるもんなんだな。ラムザ、全体指揮をシーラは今突撃している真っ最中」

「うん分った。アグリアスさん、アリスさん二人とも前に、魔法使いの二人の方も僕の指揮下に一時的に加わってもらえる?」

「生き残れるならなんだってするわよ!目標は?」

「此処に居るゴブリンたちの殲滅。そんな難しい事じゃないから大丈夫だよ」

 

 ラムザが難しい事ではないというのなら、そうなのだろう。

 エバンズにはあそこまで言う自信は無い。

 何時もは優男みたいな感じなのに事戦闘になるとまるで別人のようになるからラムザは凄いのだ

 魔法使いの二人

 白魔法使いがクラウディア

 黒魔法使いがシンシア

 という名前だそうだ

 

「ならクラウディアさんとシンシアさんはすぐにクリスタルに行って回復後は一時待機してて。戦線に戻れる様なら追って指示を出すから」

「分かったわ!」

「分りました!」

 

 二人が回復に向かうとアグリアスとアリスの二人はチョコボに乗ったまま突撃する

 

「エバンズさんは狙撃を、出来るだけ足を狙って打って」

「了解した」

 

 いったん休憩に入っていたクラウディアとシンシア。

 だがすぐに戦線に復帰する。

 そのためラムザはクラウディアにはケアル・プロテスの魔法、シンシアにはブリザラの魔法を使うのを指示すると自らも突撃していった。

 戦局はこれにより大きくパワーバランスを崩す事になった。

 撤退戦も危うかったエバンズ達だったが本来の前衛であるラムザ、アグリアス、アリスの三人と合流した事で連携を取り戻し

 さらに魔法使いの魔法によって傷を癒し、あるいは敵を氷で貫いていく

 ゴブリン、ブラックゴブリンの数は見る見るうちに減り始め次第に集まっていたゴブリン達の方が逃げるようになっていく。

 

 そんな中、ゴブリン達を指揮するものを見つけたラムザ

 

「皆、ガルブデガックだ!あれを倒せばゴブリン達は崩れるよ!」

 

 ガルブデガック

 ゴブリン種の最上位モンスターで滅多に其の姿を確認する事は出来ない。

 多くのゴブリン、ブラックゴブリン達を引き連れ人を襲う事で有名であった。

 成程、ここに来た者たちはこいつらにやられたのであろうと考える

 白黒魔法使いのクラウディアとシンシアの二人は詰まる所非常に運が悪かった、という事だった

 

 シンシアのブリザラが多数のゴブリン達が変化したクリスタルや宝箱の山を作り

 聖剣技を使うアグリアスとシーラが同じ位のクリスタルや宝箱の山をやっぱり作り

 ラムザは指示を出しながら何と其の倍の量のゴブリンやブラックゴブリンを倒してクリスタルや宝箱の山を生み出していく。

 あたり一面、回復するに困らないどころか移動しながら無限回復できるレベルでクリスタルが生み出されていった

 

「やっぱり、ラムザの強さが異様だな。なんだあの強さ?あれで見習い戦士だって言うんだからジョブってわからねぇなぁ」

「本当だな、私とアグリアスだってがんばったのに何でその山よりも多くの敵倒せるんだろう?」

 

 タイミングよく、シーラが回復に戻ってきたところでちょっとした会話をする。

 ラムザの方をよくよく見れば其の異常性についても納得出来る物が見えてくる

 アグリアスやシーラ、シンシアはたびたび回復に戻っているのに対してラムザはほぼ常に前線に立ったままでしかも全体指揮までしているのである。

 回復に戻る回数が極端に少ないのだ。

 だからこその討伐数なのであるがそれを見ているシーラとエバンズからみれば

 

「やっぱり、死に急いでいるようにしか見えん」

「確かにな。引き止める行為があまり効果を発揮していないのか?」

「いや、一応あれで何時もよりも討伐数が少ないからそれなりには効果あるだろう」

「アグリアスさんとアリスさんの援護に回っているところもあし、止めをシンシアさんに任せている部分も大きいか」

 

 いつもなら単機突入単機撃破が常だったラムザの行動に変化は確かに見受けられる。

 エバンズの言ったとおり、援護にも入るようになり劇端数は減った。

 確かに減ったのだがそれでもアグリアスやアリス、シーラよりも多くのゴブリンを倒しているのであった。

 

「あ、やっぱり魔法が間に合ってない」

 

 シーラが前線に戻り、二刀流+聖剣技で倒しながらラムザの様子を見る。

 やはり急造のコンビネーションとなるラムザ・シンシアペアの援護が間に合わない事が多い。

 このままだと危険と判断したシーラはさっと飛び出すとラムザの補佐に入る

 

「シーラさん?」

「お前の怪我が治らんうちに新しい怪我とか見たくない。援護に入るから暴れて来い」

「うん、ごめんね?」

「誤る位なら後方援護に徹して欲しいがな。っラムザ一歩下がれ!不動無明剣!」

 

 シンシアの魔法を潜り抜けてきたゴブリンに聖剣技を叩き込む。

 ラムザも其の声に反応して下がっていたので無傷、対応できなかったゴブリン達は聖剣技で一掃される。

 ラムザはさらに其処から近くに居るゴブリンに斬りかかっていくラムザ

 

「皆!あと少しの辛抱だから耐えて!エバンズさん!狙撃中止、攻撃に回って!シンシアさんと同じ敵を狙うように!」

 

 返事の変わりにシンシアの魔法に耐えたゴブリンに銃を向け其の頭を吹き飛ばす。

 さらにエバンズはシンシアのほうに寄ってシンシアの狙うゴブリンを攻撃し始める

 たまに援護なしで倒しているのを見てシンシアは

 

「凄いですね、奥の2体、狙えますか?」

「ん、任せろ」

 

 

 こうして、ガルブデガック率いるゴブリン集団の壊滅は成功。

 馬車に戻ったメンバー、特にクラウディアとシンシアはもうだめとばかりに馬車で横になることに。

 それ以外のラムザパーティーはアラグアイの森をゆっくりと西へ、貿易都市ドーターに戻るのであった。

 



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7

 ドーターに戻っている真っ最中のラムザ一行。

 シーラ、エバンズ、ラムザ、アグリアス、アリスの順番で自己紹介。

 相手もクラウディア、シンシアの順に自己紹介。

 そしてシーラがラムザを引っ張って作戦た~いむ

 

「勧誘」

「いや、でも相手も嫌がるかも知れないし」

「ルカヴィの問題もあるがあの二人も危ないぞ?世間知らず、とは言わないが魔法使い二人旅なんぞ命捨ててるような物だし」

 

 それはそうかも知れないけど、とラムザは抵抗の意思を見せるがシーラがそれを許さない。

 兎に角、勧誘してみてOKならゲルモニーク辞典を見せ、ルカヴィが居る事を教える

 そうすれば良いと言い放つ

 ラムザはそれでも僕は、と言い続けるがシーラが全て遮断する。

 魔法使いが必要なのは前回の戦闘ではっきりしたことでもある

 さらに言えばあの二人は行動こそ危なっかしいが実力は間違いなくある部類である。

 どうしても欲しい、とラムザに有無を言わせぬ勢いで行けばラムザは渋々折れるのであった。

 

「と言う訳で、二人とも異端者の私達とくるかぇ?」

「「異端者!?」」

 

 馬車の中での相談でよかった、と思うほど二人の声が大きかった。

 流石に異端者である事を最初に言うとは思っていなかったエバンズやラムザたちは驚くがそれを尻目に話を続けるシーラ

 

「色々あってな、ラムザ・ベオルブの名前が異端者で乗ってるんだよ」

「そんな風に全然見えないです」

「事実、やってる事は正義の為だったりするから困る」

「それなのに異端者なの?」

「うむ。さて、此処まであった事を話そう。これは嘘偽りないことだ。2人共ゾディアックブレイブの伝説は知っているか?」

 

 其処から話すは聖石の事、ルカヴィの事、ゲルモニーク辞典の事

 それらを話した最初のほうは伝説は伝説だとクラウディアは言っていた

 だが徐々にそれが現実味を帯びてきている事に気が付き、信じられないという表情をとる。

 シンシアはそれに対して冷静であった。

 ルカヴィの事に特に反応しており

 

「聖石がないのでなんともいえませんが聖アジュラの事は分りました。確かにこれが世に出れば大変な事になりますね」

「だ~な。んで、それで此処まで言って勧誘だ。どうする?」

「勧誘ですか?」

「魔法使い居ないからな。ルカヴィとやりあうのも大変そうだし」

「ちょ、ルカヴィとやりあうつもりなの!?」

「既に遣り合ってるし、アルマの妹君も連れ浚われてるしな。どうする?」

 

 言う事は全て伝えた。

 特に、ルカヴィとやりあうのが確実だと言う事もだ。

 此処まで言ってOKを出すのはそうそう居ない。

 シーラも流石に無理だろうと思っていたのだが

 

「分りました、協力させてください」

「シンシア?!」

 

 何とシンシアの方が了承したのであった。

 流石に一緒に居たクラウディアが驚くも

 

「助けて貰った恩もあります。」

「だけどシンシア、それだけじゃ伝説の化物とやりあうには」

「大丈夫クラウディア。私達には奥の手があるのは知っているでしょ?」

 

 奥の手?

 はてそんなもんがあるのだろうか。

 いやよくよく考えてみればあの猛攻の中どうやって生き残ったのか気になってはいた

 

「良いの?僕達に其の奥の手を見せても」

「はい、これから一緒に行くのですから覚えて置いていただけると。見てください『ケアル』」

 

 次の瞬間に回復魔法が”即座”に発動する

 これを見たラムザとエバンズは驚きのあまりシンシアのほうを凝視してしまう

 アグリアスは驚愕のあまり動けなくなり

 シーラとアリスは何が奥の手なのか分ってなかった

 

「ノンチャージだと?!それは実在したのか」

「はい、クラウディアも使えるんですよ」

「シンシアあんたはもう、はぁ、えぇ使えますよ。それと私の得意魔法は回復・補助魔法です。シンシアは逆に黒魔法です主体ですが攻撃魔法全般使えると思ってください」

 

 ノンチャージ

 本来魔法を使うのには時間が掛かる。

 それは魔法の特性の一つであった。

 時魔法使いにヘイストやショートチャージと言った行動を速める魔法や魔法自体の時間を短縮する技術はある。

 あるにはあるのだがノンチャージは別。

 これは本来ありえない技術の一つ

 魔法発動を早めるでもなく、短縮するでもなく魔法を即座に発動させるのである

 

「なるほど、だからあの時あそこまで追い詰められながらそれでも倒せていたのか」

「はい。危ない所でしたけれども」

「とは言え他の魔法使いに見つかったら異端者扱いでしょうけどね」

 

 遺失している技術の一つだ。

 下手に知られれば今行われている戦争の戦局を文字通りひっくり返す事も可能なのである

 魔力の回復さえ出来ればそれだけで強力な魔法を、或いは回復魔法を好きなだけ使える技術。

 正直、存在だけは知っていたがそれが実在するとは思っていなかったラムザとエバンズ

 

「2人とも凄いんだね」

「まぁね。伊達にオーボンヌ修道院に籠もっていた訳じゃないのよ」

 

 えっへんとクラウディアが大きな胸を張る。

 と言う事で、新たに魔法使い2人がメンバー入りしたわけだが

 

「魔法使い用の装備がねぇ」

「あらあら」

 

 元々魔法使いの装備はノックスとゴルドン用に少ししか買っていなかった為予備がないのだ

 如何するかとなった所で本人達の装備が普通にあるからそれで問題ない、というのでそのままにする事にした。

 

 さて、パーティーメンバーになったクラウディアとシンシア。

 当然シーラは隙を見てラムザハーレムの事を切り出す。

 勿論、ラムザの居ない所で、だ

 

「はい、喜んで」

「シンシア、貴女本当にそれで良いの!?」

 

 再びシンシアからは快諾を貰い、クラウディアがそれに抗議する形となる。

 とは言え、それは当然ともいえる。

 あって間もない人のハーレムメンバーに入るかと?と問われて入りますとすぐに言うのだから

 

「でもねクラウディア?」

「何よ、何かあるっていうの!?」

「ラムザ君、格好良いわよ?」

「それだけ!?」

 

 流石のクラウディアもそれだけでハーレムに入るのかというのは問題があった。

 ありすぎた

 

「わ、私は入らないからね!そりゃぁ、危ないところを助けてくれて嬉しかったし、格好良かったけどハーレムなんてそんな」

「ふむ、クラウディア嬢も問題なく入る、と」

「い、言ってない!言ってないわよ!」

「でも、悪い勘定持ってないだろ?」

「そりゃぁ、この短時間で悪い印象持つわけ無いじゃない」

 

 シーラは思った。

 ツンデレだ!まさかのツンデレ枠が来た!と

 何しろ顔を真っ赤にさせてそっぽ向いているのだから

 

「其れならしょうがない、取り合えずラムザハーレムの事はおいておいて、これから宜しく頼むぞ」

「はい、宜しくお願いします」

「まぁ、宜しくね」

 

 ラムザハーレムへの道がまた一歩近づいたのであった。

 

「くっくっくっくっく。これだけ居ればラムザもそうそう一人で暴走など出来まい」

「シーラ、何かたくらんでいる顔しているが何を企んでいる?大丈夫なのか?」

「全く持って問題なし!」

 

 不安だ、と一言零すエバンズ。

 弟の様なラムザがどうなるのかが気がかりでならない。

 兎に角、何かあったら助けようと思ったエバンズなのであった

 

「見ていろラムザ!この世の男達の夢をかなえさせてやろう!は~っはっはっはっはっはっは」

 

 割と本気で、何かあったら好みに変えても守ろうと思った、エバンズであった。

 

「本当の本当に大丈夫なんだろうなぁ!?」

「は~っはっはっはっはっはっは!」

 

 

 




チートキャラ説明

シンシア
黒魔法を主体とし時魔法、召喚魔法を得意とするキャラ
おっとりとした性格だが決断は早い。
ラムザハーレムに入るのにも何のためらいも無かった

クラウディア
シンシアが攻撃なら此方は回復、補助がメイン。
特にクラウディアは魔力が高いのかケアルの魔法で普通の魔術師のケアルラクラス迄高い回復力を誇る。

ノンチャージ
チートアビリティ
本来は敵しかそれもボス級でなければ使えない筈の技術
どれだけがんばっても、原作では覚えません


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8

「あ~驚いた。まさかゼクラス砂漠でベヒーモス級とやりあう事になろうとは」

「ルッソとか言ったな。本当に1人で大丈夫なのだろうか?」

「ドーターまでくれば後は如何にでもなるって言ってたし大丈夫じゃないか?」

 

 ルッソ。

 モブハンターという特殊なジョブに就いていた人物である。

 最初こそラムザたちと一緒に旅をすることにしていたのだがなんとドーターの酒場で仲間の情報を得るや否やパーティーを抜けると言い出したのだ。

 無論、其の事に異を唱える事などないラムザ。

 とは言えだ、折角ドーターに来たのだからと裏路地の看板をくぐる

 

「親父ぃ、いるかい?」

「あいよ、どうかしたかね?」

 

 いかにも厳つい、かたぎの人間ではないような店長が現れる。

 彼は此処ドーターに拠点を置く毛皮骨肉店の店主である

 

「なんか良いの入った?」

「今お前さん達の持っているの以上によいのなんざそうそうねぇな。そうだな、これなんかどうだ?」

 

 ひょいっと此方に投げられたのはリボン。

 女性用装備である

 

「何故にリボン?」

「そいつは素材が特殊でな、大概の状態異常から身を守ってくれるんだぞ?3万な」

「うぉ、たっけぇ。エバンズ?」

 

 口を閉じていたエバンズ。

 彼がラムザ部隊の財務係でありラムザより武具購入は彼が一手に担っている

 

「親父さん、1個4万Gでも良いから5つ揃えられない?」

「値段については3万Gのままで構わんよ、が、数が足りんな。3つまでなら今すぐ出せる」

「買う。9万だな」

 

 即金で購入を決定したエバンズ。

 それに驚いたのはシーラだった

 何時ものエバンズならそんな高価なものを買うなんてことは滅多にないからである。

 

「良いのか?ラムザに相談しなくても」

「知らんのか?リボンという装備は本当に貴重な品だ。あるときに買っておくに限る。女性専用なのがちと勿体無いがな」

 

 そういって銭の枚数を数え終えた店主が問題ない、といい交渉が成立した。

 これで帰ろう、と思ったところで待ったを掛けられる

 

「お前さん、盾を装備するか?」

「ん、まぁ一応戦士だしな」

「こいつはどうだ?掘り出しもんだぞ」

 

 ひょいっと投げられた盾

 レバリーシールド。

 これの何処掘り出し物なのか良く分らないエバンズ

 シーラのほうを向いても首を振る

 

「親父さん、こいつ何?盾なのはわかんだけど」

「レバリーシールドッつってなその辺の盾以上に軽くて丈夫な盾だ。持って見ても分るだろう?」

「確かに。ダイヤシールドよりもずっと軽いし不思議な魔力を帯びてるな」

「伝説の最強盾、エスカッションには及ばないもののそいつは全属性魔法攻撃半減ってのが付いてるんだよ」

 

 もう一度レバリーシールドを見る。

 これがそんなに凄いのか?

 基本的に物理系攻撃系の知識しかないシーラとエバンズにはそれが本当かどうか眉唾物であった。

 

「ちなみにそいつも3万Gな。一品物だから今逃すと買えないぞ?」

「んじゃ、一応買う。後で売りに来るかもしれないけど」

「まいど。後は何かあるかね?」

「あ~それじゃぁ」

 

 後はいくつかの消耗品を購入して置く。

 此処は自分達で密漁しないと手に入らないアイテムを購入する事が出来るお店なのである。

 他にもいくつか店内を見て回ると

 

「?!ちょ、おやっさんこれ売り物!?」

「ぁ?あぁ、売り物っちゃ売り物だな。さっき要らんといって売ってきた奴がいた。そんなに珍しい品か?」

「すっごく!買ういくら?!」

「5G」

「買った!」

 

 シーラの手にしているのはデュランダル。

 騎士剣の一つで戦闘時永久プロテス・シェルが掛かるものなのであった

 ホクホク笑顔で買い物を済ませラムザたちに合流

 

「へぇ、珍しいものを買ってきたんだね」

「まぁな。リボンが全員分無いからラムザの判断に委ねる。で、問題はこれなんだが」

 

 レバリーシールドを見せるエバンズ

 これは?とラムザも首をかしげる

 実はな、と先程の話をしてからラムザに手渡す

 

「うん、盾としては問題無い所かかなり良い感じだね。ただ属性防御のほうはちょっと分らないな。シンシアさん?」

 

 魔法についての知識ならシンシア、クラウディアに勝るものはこの場に居ない

 と言う訳で盾を渡して調べてもらう事に

 其の間にラムザはリボンをアグリアス、シンシアの二人に手渡す

 そしてアリスに手渡そうとしたところで待ったが掛かった

 

「なぁ、ラムザや」

「? どうしたの、シーラさん」

「これ、お前さんがつければ良いのでは?」

 

 ふと、何気なくそんな一言を漏らす。

 ぴたり、と動きを止めるラムザ。

 ぎぎぎ、とさび付いた機械人形のようにシーラのほうを向いて

 

「僕は其の、男性、だよ?」

「だが、似合わない事はない」

「で、でもほらアリスさんにも着けてもらわないといけないし」

「指揮官が状態異常になる方がよっぽど問題だと思うんだが」

 

 でもね、だからな?

 とラムザとシーラの攻防が続く。

 其の間にアグリアスとシンシアは素直にリボンを装着。

 兜や帽子を装備していた事もあり多少の違和感もあるがこれで状態異常になら無いなら問題は無いだろう

 ラムザに綺麗だといって欲しいな、と思っている二人はラムザのほうを見れば

 

「ど、如何したラムザ?!」

「ラムザ君、大丈夫?」

 

 四つん這いになり、リボンを綺麗に髪につけられているラムザが其処にいた。

 口での争いにラムザがシーラに敵う筈もなかった

 

「はい、大丈夫です」

 

 少々目が虚ろなラムザだが頭を振って思考切り返す。

 改めてアグリアスとシンシアを見て

 

「やっぱり、お2人には良く似合いますね」

「そう、か?こういう物は着けたことが無いのでな」

「そう言って貰えると嬉しいですラムザさん。ほら、アグリアスさんも」

「う、む。ラムザ、有難う」

 

 顔を赤くしてお礼を言うアグリアスとニコニコと笑みを浮かべるシンシア

 2人の視線はそのままラムザの頭に向かい

 

「ん、ラムザもリボンをつけるのか」

「可愛いですね」

「お願いだから見ないで、シンシアさんも其の感想は」

 

 涙目になって二人の言葉を遮る様に言うラムザ

 実際ラムザにリボンは似合っていた。

 これほどに会う男性も少ないだろうってくらい似合っていた。

 うむうむと頷くシーラに対してエバンズはため息を一つ零してから

 

「それじゃぁ出発するとしようか。ラムザ目的地は変わらずリオファネス城で良いんだな?」

「うん、グローグの丘、城塞都市ヤードー、ユーグォの森を抜けた先にあるんだ」

「結構な距離だな。なぁラムザ、地図見るとこれってフォボム平原からもいけるんじゃないか?」

 

 地図を見ながらラムザに質問するシーラ。

 アリス、クラウディア、シンシアも地図を見て確かにいけそうな雰囲気はすると思う

 だがそれをラムザは今は無理だと返答する

 

「僕達は異端者で、北天騎士団にも追われてるからね。ガリランドを経由して行くのはかなり危険を伴う事になると思うんだ」

「だから王都ルザリアからなのか。敵に見つからないと良いのだが」

「そうだね、無事にリオファネス城に辿り着けると良いんだけどね」

 

 この時ラムザは、そうそう邯鄲には辿り着けないかもしれない、という不安があった。

 あの時、ゲルモニーク辞典とアルマを引き換えに交換だといってきた青年。

 彼とも戦う事になるのではないかと思っていたからだ。

 出来る事なら、戦いたくは無いのだが

 

 

「まさか、脱走兵と戦う事になるとわ思いもよらなかったな」

 

 南天騎士団

 ラムザの兄たちの所属している北天騎士団と戦争をしている者達。

 そのものたちはラムザが第一級の異端者であると言うことを知り襲い掛かってきたのであった。

 もっとも、脱走兵と言う事もあり雑兵にラムザたち少数精鋭部隊が負けるはずも無かった。

 だが、ラムザにとって見ればそれは戦わなくても良かった戦い。

 其の心情は、如何程の物だったのか

 

「っと、あれは……オーラン?」

「あいつ南天騎士団だったのか」

 

 戦う意思を見せずただ1人でラムザの前に進んできたオーラン。

 彼らの話を聞いて此方からも手を出さない事にした

 細かい話の内容は此処からでは聞こえない。

 それでもオーランは最後にラムザに放った言葉だけは聞こえた

 

「ラムザ、君は独りじゃない!

君には仲間が居る!命を賭して戦ってくれる仲間がいる!

僕もその仲間の一人だっ!」

 

 其の言葉を聴いて一瞬呆けてしまう。

 だが、其の言葉を聴いて笑みをうかべ笑ってしまう

 

「あのオーランという男、中々見所があるじゃないか」

「あぁ、私は改めて、ラムザの事を信じる事にしようじゃないか」

 

 シーラとアグリアスが

 

「そうね、ラムザだから此処まで来たものね」

「短い時間だけど本当に信用できる人だもの」

 

 シンシアとクラウディアが

 

「この命に代えても」

「それはラムザ悲しむぞ」

「え、え?で、でもでも」

 

 エバンズとアリスが心を新たにするのであった。



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9

「ラファです。すみません、兄が」

「気にしない気にしない、悪いのはお前さんじゃないしな」

「まぁ、大公はどうにかしないといけないがな」

 

 ラムザと二人きりにした後兄マラークから指名された二人。

 さて、如何したものかと思うが、実際のところ逃げる、と言う手段は取れるわけも無いので

 

「まぁ、叩き潰すのみだな」

「でも実際如何する?攻城戦と成ると人数が明らかに足りないぞラムザ」

 

 ずっと黙って何かを考えているラムザ。

 そのラムザに声をかける

 

「うん、多分それは問題ないと思うんだ」

「ふむ、なら何を悩んでいるラムザ」

 

 はて、何を考えているの後シーラは問いかける。

 ラムザは少しだけ考えてから

 その口やはり閉ざした

 

「言い難いことか?」

「うん、ちょっとだけ、ね」

 

 何を考えているのかはわからないが、悩んでいる事は判る。

 ならばやる事は一つだとばかりにシーラは近づいてアグリアスとアリスにごにょごにょと耳元で囁いて

 

「あの、その、あ、アグリアスさん?アリスさん?」

 

 ダブルアタックを決めさせるシーラ

 その光景を見てため息をつくエバンズ。

 これは止めなければいけない流れかと思い声を掛けようとしたがふと視線を感じる。

 その視線の先にはシンシアとクラウディアが居た。

 シンシアはその輪に入りたそうにしており

 クラウディアは顔を赤くしてちらっちらっとラムザの方を見て羨ましそうにしていた。

 詰まる所、2人共羨ましいのであろう。

 ラムザの左右はアグリアスとアリスで埋まっている。

 ならば

 

「シンシア、クラウディア、お前達も甘えて来い」

「良いんでしょうか?」

「な、何で私が」

「ラムザの前後があいているから問題は無いだろう。後、クラウディアはもう少し視線を隠す努力をしような」

 

 そういってエバンズもまたシーラ同様にシンシアとクラウディアをラムザの前後に配置した

 シーラはそれを見てエバンズも中々やるよのぉ、と言いうっせぇと返答する。

 それをされて困るのはやはりラムザであって

 

「あの、その、こ、これはどういう」

「悩んで答えが出ないときはこれが一番!さぁラムザ、ハーレムに甘えたまへ!」

「待って、待って、何そのハーレムって」

 

 だが、ラムザの言葉はかき消されアグリアスやアリス、シンシアが積極的に甘え始めクラウディアがちょこんと甘える。

 流石のラムザも女の扱いに離れていないのでその中に埋もれていく。

 その様子を見てラファは本当に大丈夫なのだろうかとちょっと心配になって行く。

 

「安心しろ、ラファ嬢、あれで戦闘になれば凄まじい強さなのは知っているだろう?」

「そうそう、ラムザなんかものすごい強いんだぞ~」

 

 そう言われても、目の前では女性に囲まれて困っている様子の青年の姿しか見えない。

 本当に、これで大丈夫なのだろうか?

 

「大丈夫大丈夫、其の為の私たちでもあるんだからな」

「援護なら任せろ」

 

 明らかに、安心できない要因なのだが本当に大丈夫なのか?

 それを心配するラファに

 

「次の戦闘、楽しみにしていろ。面白いものが見れるぞ」

 

 そういったシーラであった。

 

 そして、本当に凄まじいものを見せ付けられるラファ。

 本来指揮官というのは後方に立ち全体を見渡して指示を出すものなのだが、ラムザは前衛にたち、そのまま指示を出しているのであった。

 

「凄いですね」

「いったろ、ラムザは凄いとな」

 

 ユーグォの森。

 此処は多くの死した霊の集まる場所でもある。

 そんな中、エバンズとシンシアの2人は次々とモンスターや死人たちを石化していく。

 さらにラムザたち前衛も敵が動けないように行動をしていく。

 ラムザの強さの片鱗を知ったラファ。

 これならばいけるかもしれない。

 そう、ラファが思うほどの強さが、其処にはあった



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10

 リオファネス城までやってきたラムザ一行。

 そこでマラーク率いる敵と戦ったのだがどうも様子がおかしかった。

 そして、戦闘が終わった直後、何と中から城門が開いた。

 息絶えた戦士が残した言葉

 

 化物が出た

 

 その言葉は、詰まる所

 

「ちぃ、ルカヴィか!」

 

 城の中から剣戟が聞こえるがそれ以上に悲鳴が聞こえる。

 ルカヴィ相手では普通の人間では相手にならないからだ

 そして何を思ったのかラムザは1人アルマを探しに走り去ってしまった

 

「あぁ、もう、こういうときに限って!」

「シーラ落ち着け、現状を簡潔に言えばルカヴィが中で暴れている、アルマが危ない、これで間違いは無いな?」

「はい、その筈です。早くラムザ様の所に行かないと」

「少しだけ待て」

 

 アリスの言葉に待ったを掛ける。

 エバンズが精神統一をする。

 本来の精神統一は攻撃をはずさないものであるがエバンズのそれはもう一段上で

 

「敵の数は最低でも2、片方に向かってラムザが向かってる」

「最大はいくつだ、エバンズ」

 

 アグリアスの質問に対して渋い顔をする

 確証をえられない、こんな数の数え方は分からないが

 

「最大で7か?よく分からん気配が城の中をうろついていて確定できん」

「それだけあれば十分だ、兎に角ラムザのところに急ごう。敵を迂回していけるか?」

「任せろ」

 

 場内は死体の山だった

 それも唯の死体ではない。

 ふつうならありえない、まさしく化物が倒したであろう死体。

 その光景は、想像を絶する、と言う言葉がぴたりとはまる

 

「ひどい有様ね。シンシア大丈夫?」

「えぇ、大丈夫よ。ラムザさんは無事かしら?」

「この先で剣戟とラムザの声が聞こえる。突入するぞ」

 

 その言葉を聴いて全員が戦闘体勢になる。

 アリス、シーラ、アグリアスを前衛に

 エバンズ、シンシア、クラウディアを後列にして扉を蹴破って中に入る

 其処にいたのは満身創痍のラムザと

 

「「ウィーグラフ?!」」

 

 神殿騎士団である、いやルカヴィであるウィーグラフが其処に排他のであった

 満身創痍のラムザにクラウディアが近寄りノンチャージでケアルガを書けその傷を治していく

 

「ほう、われらと同じ技術を持っているとはな。さて、ラムザよ仲間が来たのならば私も本気を出そう」

 

 聖石を取り出し空に掲げると多くの怨霊が集まってくる。

 そして怨霊の集まったからだが変化をとげルカヴィへとその体を変化させていくのであった。

 醜悪な姿

 不浄王キュクレインよりはましとは言え、魔人ベリアスもまた、人とは遠い姿をしているのであった。

 

「あれが、ルカヴィ」

「伝説の、怪物なのね」

 

 シンシアとクラウディアは始めてみる化物

 その姿から凶悪な力を感じ取っている。

 キュクレイン以上の力

 キュクレイン以上の魔法を打ってくる。

 羊の顔に四つ腕のベリアス

 

「はぁぁぁぁあ!」

「ダブル!マジックブレイク!」

「天の願いを胸に刻んで心頭滅却! 聖光爆裂破!」

 

 前衛の3人が健闘しているがベリアスの攻撃が止まらない。

 アリスとアグリアスが直接攻撃を

 シーラがあいて物魔法を封じるべく魔法力を奪っていくがそれでも相手の召喚魔法、リッチが飛んできてしまう。

 そしてその一撃だけで半壊する前衛部隊

 さらにアルケオデーモンの強力な攻撃を前にして防戦一方になってしまう。

 がしゃこん、と弾をつめてフォーマルハウトを打ち続ける

 

「クラウディアさんはケアルジャを掛け続けて!シンシアさん、召喚魔法には召喚魔法を!バハムートで押し切って!」

 

 二人はその言葉どおり範囲系回復魔法ケアルジャと召喚魔法バハムートを召喚する。

 リッチvsバハムートは本来ならばバハムートに天秤が傾く筈が、魔力の差なのであろうリッチと互角の魔力勝負となってしまう。

 それでも範囲攻撃を防げるのはありがたい。

 ラムザも前衛に突撃してベリアスに攻撃を仕掛ける。

 

 一見すれば互角の戦いを繰り広げているが、その実負けているのはこちらの方である

 

「2人とも魔力は持つか?!」

「御免なさい、次で最後です!」

「私も今のケアルジャでおしまいよ!」

「ちぃっ!ラムザ!」

 

 エバンズからの声だけで状況を把握したラムザ。

 ならば狙うは一点集中

 

「シーラさん攻撃変更!二刀流でアリスさんと一緒にごり押しして!アグリアスさんは斜線が出来たら聖剣技を!」

 

 その指示と同時に前に出るラムザ。

 三人の邪魔はさせないとアルケオデーモンのギガフレアにダークホーリーがラムザ襲う

 それを見たエバンズは咄嗟に一匹のアルケオデーモンの腕を狙い一撃だけは食い止める事が出来たが

 

「ぐふっ、ぁ」

 

 ギガフレアとダークホーリーの同時攻撃を前に倒れ掛けるラムザ

 さらにギガフレアを撃ったアルケオデーモンがラムザに近づくが

 

「うおおおおおおおおおっ!!馬鹿な…、たがか人間ごときに…!」

 

 その背後、エバンズたちの正面でベリアスは倒れた。

 それと同時に魔界から呼び出されたアルケオデーモン達もまた、消えていなくなったのであった

 

「ラムザ!」

 

 シーラが一番に駆け寄りその傷の状況を確認する。

 暗属性に純粋な魔力ダメージのために身体がぼろぼろの状況のラムザ

 

「クラウディア!」

「任させて……此処まで来てるならケアルジャでも足りない、アレイズ!」

 

 

 その魔法と共にラムザの傷が癒えて行く。

 ラムザの傷が癒えてようやく動けるようになったと同時に

 

「っ、アルマ!」

 

 がばりと起き上がるラムザ

 

「待って!まだ傷が」

「駄目だ、アルマの方が優先しないといけないんだ。皆分かってほしい」

 

 そうまでし立ち上がろうとするラムザをエバンズが押さえ込みシーラが座らせる

 

「時間がないのも判るが回復が終わるまでは待てその状況だとアルマを奪還できん」

「急がば回れだ、今は傷を癒せ」

「でも!」

「代わりに俺達が行く。」

「皆はラムザを見ていて。エバンズと私で声のした方に向かうから」

 

 前衛1人に後衛1人で行くと言うシーラ

 それに反対の意を唱えるラムザをきって捨てる。

 

「今のお前は完全に足手まといだ。傷がいえてから動け」

「ラムザ、追加情報。屋上に妙な気配がある。もし動けるように成ったら行って見てくれ」

 

 言葉を残してから、2人はアルマ奪還のために城の中を駆け出していくのであった

 

 それが既に、手遅れである事を知らずに



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11

「まさか、聖石にあんな力があるとはなぁ」

「正しい心で使えば伝説は正しい心に反応するという事か」

 

 マラークが大公に殺されたが、ラファの祈りに聖石が反応した。

 遅れて屋上にやっていたラムザたちはエルムドア卿との戦闘を行った後、その奇跡を見たという。

 残念ながらその時はシーラとエバンズは城の中を駆けずり回り見ていなかったが

 

「ゲルモニーク辞典、もしこれが完全に翻訳されていれば状況が変わっていたかもな」

「シモンさんが生きていれば、だがな」

 

 惜しむは時間もなければシモンも亡くなっている事であろう。

 今あるゲルモニーク時点を必死に読み解くしかない現状

 書かれている文字の解読には時間が掛かる。

 戦闘の合間に解読するのは少々難しいといわざるを得ない

 

「まぁ、でも嫌な奴ではあったがマラークが生き返ってよかった、と言う所か」

「ラファにとっては大事な兄だからな」

 

 ラファ、マラークの2人は後はひっそりと暮らしたいという事でパーティーからもう既に外れている

 元々敵であったこともあるし特に誰も反対はしなった。

 特殊な魔法をつかう、というのは魅力的なものではあったが

 

「それにしても今回はシンシアとクラウディアの欠点が露見したな」

「ノンジャージで魔法使う場合、あんなにも早く魔力を息切れするとは思ってなかったからな」

 

 そう、戦闘において課題も出来たのである

 シンシアとクラウディアの2人

 この二人の魔力回復がうまく回らないのであった。

 アラグアイの森では敵が山のようにいたし回復用のクリスタルも大量にあったためごり押しが出来たが魔力回復が出来ないとなるとかなり不利になる。

 エリクサーを使う、と言うのも手段の一つではあるのだが

 

「アイテムがなぁ、多分ルガヴィ戦では足りなくなるんだろうなぁ」

「其処だよな。一度ドーターによってもらうか?」

「毛皮骨肉店か?あそこはいい品があるが量がなぁ」

「2人とも、何か問題があったの?」

「ラムザか」

 

 そんなことを言っているとラムザが現れ話に加わる

 毛皮骨肉店で仕入れるものありと言えばありなのだが絶対量が足りない事を説明。

 このままだとルガヴィ戦でシンシア、クラウディアがどうにもならないことを説明

 

「確か、あの2人……暗黒騎士になれるんだよね」

「なぬ?」

 

 暗黒騎士。

 最近見つかった新しいジョブであり、その条件もあいまいなジョブなのである。

 それでもラムザ、アリス、アグリアスの三人はその条件を満たしているらしく暗黒騎士になれるのであるが

 以前ガフガリオンの剣技であった暗黒剣をさらに強化したものであった。

 

「剣、かぁ。ルーンブレード装備が一番か?或いは二刀流もって入れば楽なんだが」

「2人とも前衛職はそれしかもっないって。剣装備は出来るからルーンブレードに成るんじゃないかな?」

「あの2人も大概反則だよなぁ」

「アグリアスさんしか出来ない聖剣技を覚えたシーラさんがそれを言う?」

 

 取り合えず、魔力回復については問題は解決、と言う事にした。

 後問題なのは

 

「エルムドア卿が敵、か」

「うん、ちょっと信じられないよね」

「あの人、ちょっとやそっとの実力ではこっちが手痛い反撃を受けるからな。なんで骸騎士団にさらわれたのか謎が多いが」

 

 そう、実はラムザには黙っていたが其処が一番の謎だったりするのだ

 何しろ実力ではかなり上位

 それをさらうと成るとウィーグラフクラスでも梃子摺る。

 いや、ウィーグラフの骸騎士団時代の装備を考えれば不可能だった筈。

 それを簡単に浚ったとなればやはり裏があると考えざるを得ない

 

「考えたくは無いけど」

 

 ラムザがポツリとつぶやく

 その言葉にシーラもエバンズもその先を待つ

 多分、言葉にするのもためらう事なのだろうと思いながら、その言葉を待った

 

「ダイスダーク兄さんが裏で手を引いていたんじゃないかなって思う」

「根拠はあるのか?」

「当時の情勢を考えると、エルムドア卿っていう札は敵に回したくないものだったと思うんだ」

 

 エバンズは多分それが当たりだろうと思っている。

 ダイスダークとラーグ公辺りが手を組み、其処から骸騎士団に流した、と考えるの妥当だろう。

 此処まで来たのだからまず間違いは無い。

 妙な確信を持ってそれが正解だろうと心の中で思う。

 口に出して言うには、ラムザには厳しい事だろうから

 

「兎に角、そのことは後回しだな、エルムドア卿を追わないといけないだろう?」

「もう、卿なんてつけないでエルムドアで十分な気がするがな。如何するラムザ」

「追うよ。アルマが居るかも知れないから」

「とは言え何処に行けばよいのやら」

 

 情報が少なすぎて何処に行けばよいのか皆目検討も付かない。

 そんな折ラムザは既に次の目的地を考えていた

 

「ゼルテニア城に行ってディリータに会おうと思う」

「ディリータ、成程教団、神殿騎士団に所属している奴なら何か知っているかもな」

 

 シーラは納得したように言い、ラムザの意見に賛成する。

 ラムザはエバンズのほうを向いてどうかと聞いてくる

 

「ラムザが一度決めた事だ、反論する理由はないな」

 

 こうして、ゼルテニア城へ行く事が決まったのであった



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12

 ドグーラ峠にて南天騎士団と出会い交戦となった。

 だが、唯でさえ反則的な強さを誇る此方のメンバーが正規軍とは言え一般の南天騎士団に敵う筈も無くあっけなく勝利。

 そのまま自治都市ベルベニアへと脚を進めるのであった

 

 その間にもシンシア、クラウディアと相談

 

「難しい、と言えば難しいのよ。使える事は使えるわよ、暗黒。でも実践運用できるかって聞かれると」

「そう、ですね、元々魔道士として知識を蓄えてきた身としては中々難しいものがあります。」

「私はまだましよ。陰陽術の魔吸唱があるから時間さえあれば回復は出来無いことも無いわね。でも」

「私にはそういった類の術がありませんので」

 

 回復魔法のクラウディアに魔力回復方法があるのは運が良かった。

 問題は攻撃魔法担当のシンシアだ。

 暗黒をつけないのを如何するべきか

 

「ラムザ~、何かいい案無いか~?」

「僕に言われてもあぁ。暗黒がまともに付かないならアイテムに頼るしか無いんじゃないかな?」

「やっぱりそうなるかぁ~」

 

 基本的にはノンチャージは強力な能力である。

 だが、その分魔力を膨大に消費する

 それこそ、ルガヴィクラスでなければ長期戦になれば成程不利になるのは間違い無い

 それをどうにかしたいラムザ一向なのだが

 

「ど~う~に~も~なら~~~ん!」

 

 シーラが叫ぶ。

 暗黒騎士になれ、剣装備まで出来るが剣の扱いが不向きな事。

 そして何より魔法攻撃力が極端に落ちるために暗黒を使う状況に持っていけないのである。

 とりあえずは

 

「クラウディアさん、エリクサーで我慢してね?」

「判ってるわ。そろそろ今日のキャンプ地を探さないといけないわね」

 

 言われてみれば天気が怪しい。

 日とめくる前にテントを張ろうと言う事になった

 

 が、其処得ちょっとした問題が

 

「だから!ラムザは自分のハーレムメンバーと一緒にいればよいのじゃ!」

「聞いてないよ?!アグリアスさんたちと一緒のテントだなんて」

「いい加減覚悟決めろ~!アグリアスさんとアリスさんとは一線超えたくせに!」

「な、なな」

 

 ラムザが動揺している隙にアグリアスとアリスが左右に張り付いて

 

「シンシア、クラウディア。今夜は少々眠れないかもしれないが、かまわないか?」

「覚悟は出来てるわ」

「楽しくなりそうですね」

「楽しいの、かなぁ?」

 

 アグリアス達がテントへと向かっていく。

 それあら数十分後、テントが騒がしくなっていく

 

「始まったか」

「今夜は寝ずの番、か」

 

 パチパチと火に木をくべて物思いにふけるシーラとエバンズ

 よくまあ、此処まできたものだと思うのであろう。

 

「ルガヴィ、後何体いるんだろうな」

「さて、エルムドアとヴォルマルフの二人は確定だろうな」

「三人目がいるかどうか、か……厄介この上ない」

 

 パチパチと焚き火が燃える。

 それを二人そろってみているとテントの中の動きがまた変わった

 

「今回は止め無いんだな」

「ラムザの無茶がかなり進んでいるからな。本気で今回のルガヴィ戦は死んだかと思ったぞ」

「攻撃を全部受け止めていたからなぁ。ケアル系で回復できなくてレイズ系使わないといけないと知ったときには驚いたもんな」

 

 先の戦闘の話をする2人。

 如何すればラムザの無茶を止める事が出来るのか。

 2人して考えるが答えが出ない

 

「やっぱり、今みたいな状況をもっと大人数で作るべきか?」

「いや、これ以上の大所帯になると割と敵に見つかる。しかも唯でさえ女性が多いんだし」

「だよなぁ」

 

 こればかりは如何する事も出来ない事であった。

 どうにかラムザの手綱を取る事が出来る相手がいないものか

 

 それを考える、シーラとエバンズであった

 それから少しして、自治都市ベルベニア、フィナス河を経てあと少しでゼルテニア城の近くまでやってきたラムザ一行。

 そこでシーラがふとかなり遠くに何かがあるのを見つける

 

「ラムザ、ちょっとあっちまで行かない?」

「流石にあの距離はちょっと難しいかな?でも」

 

 ラムザが遠くを見つめる。

 その瞳には何が移っているのか

 

「何でだろうあそこに行かないといけない気がする」

 

 ラムザの発言を聞いて首をかしげる一同。

 だが、いくと決めたからにはゼルテニア城を迂回してネルベスカ神殿に向かう。

 

 神殿は静かなものである。

 何かを祭る神殿なのだろうが誰もいず何もいない。

 一応、2人一組となってあたりを捜索してみるが何かあるわけでもなし

 まぁ、何かがあると思っても期待したわけじゃないから行くか、と思ったところで悲鳴が聞こえた

 

「何も無いなっと、ん?」

 

 

 普通に話していたシーラが剣に手を掛ける。

 それに伴いエバンズもシーラの見ている方向を見れば

 

「戦闘、か?」

「多分な。行くか?」

「エバンズ頼む。私はラムザ達に増援要請してくる」

 

 援護が早急必要なら3発連続で空に打て

 そう伝え終わったシーラはラムザたちのほうへと向く。

 エバンズもそれに納得したのか戦闘している場所へと向かっていく。

 

 其処では1人の女性に対して数人の男性が襲い掛かっている場面であった

 エバンズは何も言わず男性の1人の頭を吹き飛ばす

 

「援護に来た、後は任せ、ろ?」

 

 その顔を見たエバンズは思わず銃を落としてしまいそうになった

 なぜなら其処にいたのは

 

「有難うござます。援護、お願い痛います」

 

 ティータ・ハイラル

 自分達の目の前で死んだ筈の、女性だったのであった

 直ぐに頭を切り替えて3発空にうち敵を打ち倒していくエバンズ

 

「今度は、死なさん!」

 

 一度は死なせてしまった命。

 別人だとしても、罠であったとしても、何があっても死なせないとばかりに撃ち続けた。

 シーラ達が来たときには既に敵は壊滅していた。

 肩で息をしているエバンズ

 そのそばで心配そうにしているティータを見て

 

「冗談……きついぜ、神様」

 

 思わず、天を見上げて今の状況を如何すればいいのか頭を悩ますシーラであった。

 

「ティータ、ティータなの?!」

「は、はいラムザさん」

 

 ラムザは1も2も無くティータを強く抱きしめる。

 そのぬくもりは、間違いなくティータのものそのものであった

 

「よく、よく生きていたね。僕もディリータも死んだ物とばかりに」

「はい、私にも良くわかりませんが気が付いたら此処に」

 

 もはや何がどうしてという状況のシーラとエバンズ

 残りのメンバーはティータを見た事がなかった

 

「これから、ディリータに会いに行く。一緒に来ないかな?」

「兄に会いに行くのですか?是非に!」

 

 こうして、ティータが一時敵意仲間になったのである。

 このことがディリータの運命を決定的に変える事になるのであった



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13

「待て待て待て!ラムザ、如何にも怪しいだろうが!」

 

 ティータを連れて行くことに反対のエバンズとシーラ

 珍しく2人がラムザの行動に反対の意思を示している

 

「でも、ティータは間違いなく、僕達の知っているティータだよ?」

「確かにそうだが、もう一年以上前の話だぞ?アレイズでさえ復活できないぞ」

 

 アレイズで復活できる傷はクリスタルや宝箱へと変化する前まで

 それ以降になってしまうといかに熟練の魔法使いでも治すことはできない。

 するとティータがとあるものを取り出した

 

「あの、近くにこれがあったのですが何か関係あるのでしょうか?」

「「聖石?!」」

 

 ティータが取り出したそれ。

 それは聖石であった。

 だが、こんな辺鄙な場所にあったとしてもここまで相当な距離がある。

 どうやって復活したと言うのか

 謎は深まるばかりである

 

「信じていいと思うか?」

「僕は信じたい」

 

 シーラの問いに正面から受け止めるラムザ。

 はぁ、とため息をついてから

 

「なら、しょうがないか。ゼルテニア城に行くぞ。ディリータが其処にいる筈だ」

「兄さんが?」

「城に着くまでに説明しとくか」

 

 それからティータには様々な事を話した

 今ディリータが教会、神霊騎士団にいる事

 ゾエィアックブレイブの伝説が間違っていた事

 聖石の使い方の事

 自分達の事

 

 全てを話し終えてからティータは静かに、泣いた

 

「兄は、私の死をきっかけに変わってしまったんですね」

「変わって無いよ」

「ラムザ?」

「ディリータは、変わって無いよ」

 

 遠くを見つめながらそうつぶやくラムザ

 いったい何を思い、何を見ているのか

 それは此処に居る誰にもわからなかった

 

 

 そしてゼルテニア城郊外の教会にてザルモゥを倒してから

 

「てぃ、てぃー、た?」

「はい、にいさん」

「ティータ!」

 

 ぎゅう、と強くティータを抱きしめるディリータ。

 たった一人の肉親

 あの時、死んだと思っていたはずのティータが生きていたのだ

 どれほど嬉しい事か計り知れない

 だが、何故生きているのか、それと問うたディリータ

 

 

「だ、だがお前なあの時……!」

「これが、守ってくれたようなんです」

「聖石!やはり妹はあの時に」

「信じてください、兄さん」

「ディリータかも~ん」

「な、ちょ、ちょっと待て!?」

 

 

 ラムザ、シーラ、エバンズの三人がディリータを引っ張る

 流石のディリータの体格でも騎士2人にラムザでは抵抗も出来ない

 

 と言う事でかくかくしかじか

 

「聖石で生き返る、だと?ルガヴィに成るだけではないのか」

「どうもそうらしい。つまり神殿騎士団にはこの情報は無いということか」

「あぁ、無いな。それは良い事を聞いた感謝しよう……で、何故ティータが?あの時ティータは間違いなく俺が埋葬した筈なんだが」

「そのことだか何処に埋葬した?あの爆発でお前も死んだと思ったらティータに助けられたと聞く。それなら埋葬するのはジークデン砦の近辺だと踏んでいたんだが」

 

 そのことでディリータは一度口を閉ざす。

 ラムザたちは次の事はを待ちながら考えを頭に浮かべる。

 多分、ジークデン砦で間違いは無いず。

 ならば何故、ジークデン砦の思い切り東、孤島になっているネルベスカ神殿にいたのか?

 

「すまないが何処に埋葬したかはいえない。だが、ネルベスカ神殿ではない事は確かだ」

「それだけ判れば十分だ。最後にネルベスカ神殿に行ったのは何時だ?」

「あそこは基本何も無いからな昨日行ったのが最後だ」

「ねぇ、ディリータ」

 

 其処まで沈黙を保っていたラムザが口を開く。

 

「やっぱり、嬉しいんだね」

「っラムザ、俺はな」

「判るよ、だって僕はディリータの親友なんだもの」

「くっ……そうだ、嬉しいよ、ティータか戻ってきて」

 

 其処にはシーラ、エバンズの知らない、ラムザの顔があった。

 

 と言う訳で

 

「ティータは無事にディリータに預ける事が出来ました」

「んが、もんだいもはっせいしました、と」

 

 北天騎士団と南天騎士団の正面からの衝突が近い事をディリータから教えてもらった。

 如何するか考えた結果

 

「オルランドゥ伯に合いに行こう。あの人なら、止められる。」

「会いに行こうといって会える人か?下手したらべスラ要塞の一部を突破せにゃならんぞ」

「皆と一緒なら、大丈夫」

 

 そういうラムザは少しだけ何時もと違って見えた。

 そんな感じでべスラ要塞、オルランドゥ伯に会いに行く事になったのであった

 

 



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14

「あ~、まだ頭がんがんする~。クラウディア~」

「そんな事言っても解毒はちゃんと出来てるわよ。後は気合よ気合」

 

 べスラ要塞へと進む途中、ベッド砂漠にて神霊騎士団に遭遇。

 毒を散布し北天騎士団の身動きを取れなくしようとしていた。

 その指揮を執っていたバルクを倒したは良い物の、バルクたちが使った毒が未だに辺りに蔓延しており中々先に進めないのであった。

 

「まさかこんなところで足止めをされるとは」

「しょうがないよ。でも」

 

 兄さん達は無事、かな。

 ラムザの言葉を聞いたエバンズは何もいえない。

 既に、ベオルブ家から勘当されているにも等しい状態なのに兄達の身を案じるラムザ。

 それがラムザらしいと言えばラムザらしいのだが

 

「進軍はいったん中断だな。べスラ要塞も北と南、どっちから攻めるか考えないといけないからな」

 

 エバンズが場をまとめる。

 べスラ要塞

 三方を切り立った崖に囲まれた天然の要塞。五十年戦争では最前線基地として使われた場所である。

 其処を攻略するのだから並大抵の事ではない。

 無論、オルランドゥ伯が素直にあってくれるのであれば問題は無いのだが

 

「うん、やっぱり嫌な予感がする。」

「ラムザのそういった勘は当たるからなぁ。戦闘になるんだろうな」

 

 シーラがそう言うと各々は装備の確認を行う。

 この中で一番の火力持ちはシーラ。

 ついでアリス、ラムザ、アグリアスと続いていく。

 前衛部隊でラムザがこの位置に居る事事態異常ではあるが実際一番敵を倒しているのでこの位置であったりする。

 もっとも、一撃で倒す事に関してのみ言えばシーラとアリスが突出しているが

 そんな訳でシーラとエバンズは本当にラムザが死ぬんじゃないかと毎回はらはら見ている訳である。

 

「ラムザの特攻癖は未だに直らんな」

「どうにかしたい物なんだけどなぁ~」

 

 シーラとエバンズの悩みは続く。

 最も、ラムザに何もしていないと言う事はなく今日は全員毒にやられたという事もありテントを造って此処にとまる事に。

 やる事といえば後は残りは見張りだけ

 と言う事でラムザのテントにアグリアス、アリス、シンシア、クラウディアの四人が集まっているわけだが

 

「本当にあれで良いのか最近悩むな」

「問題ない、女は偉大なのだ」

 

 無い胸をえっへんと張るシーラ

 まぁ、女性のシーラが言うならと思いながら

 

「で、メンバーはこれで全員と言う事でいいのか?」

「あとはなぁ、臨機応変に1人2人くらいなら味方にしてもいいと思っているけどそれ以上だとラムザが解散させちゃうからなぁ」

 

 地味に問題は其処である。

 ラムザは数が多くなるとルカヴィの被害を食い止めようと動く為人数をそれほど多く出来ない。

 今だってルカヴィとやる前と比べても半分程度しか居ないのだから問題と言えば問題である。

 

「まぁ、しょうがないと言えばしょうがないだろう」

「そういうものならしょうがないな。 んで、べスラ要塞は如何見る?」

「突破できなくは無いだろう。が、出来れば戦いたくは無いところなんだよなぁ」

 

 あの50年戦争の時の要所の一つである。

 其処を攻めるのにはやはり二の足を踏んでしまう

 

「攻めるなら北から正面突破か南から裏門突破かの違いになるか?」

 

 それを聞いてから一泊置いてエバンズは今の言葉に対して質問を述べる

 

「北って正面か?」

「正面、だと思うんだけどなぁ~」

 

 実の所構造が良くわかっていないのでどっちを通るにせよ敵との邂逅は免れないと思っている。

 さてさて、どうしたものかと考える

 

「まぁ、ラムザがどうにかしてくれるだろうて。今までもそうだったように、今回もどうにかなるだろう」

「そんな楽観的で良いのやら」

 

 ため息を一つ零すエバンズに問題ない、と答えるシーラ

 実際、シーラも戦闘は裂けて通れない道だと思っている所なので問題は無い

 無いのは無いのだが

 

「ラムザの嫌な予感って、何だと思う?」

「神殿騎士団がいるか、ルカヴィが出張ってくるか、と言う御話か?」

「かも知れん。先のバルクも毒ばら撒いていたからなぁ」

「とは言え、神殿騎士全員がルカヴィに変身するわけじゃないのがわかっただけでも儲け物、ではあるがな」

 

 

 先の戦闘で毒をまいた張本人はルカヴィにならなかった。

 適性が無いのかそれとも聖石が無いのか

 

「出来る事なら、聖石が無いほうが良いんだけどなぁ~」

「確実に持っているのが2人、エルムドアと神殿騎士団の親分」

 

 それだけでも面倒だな、とはシーラの言葉。

 つい先日ウィーグラフ相手に殆どこっちが壊滅的な打撃を受けたばかりだからだ。

 このままでは勝てないかも知れない。

 そう考えてしまうのもしょうがない。

 最もエバンズの考えは少々違うようでは在るが

 

「それもあるが、敵が何でアルマ嬢を浚ったのかって問題もあるぞ?」

「ん?ベオルブ家の人間だからじゃないのか?」

 

 それ以外に何の理由が要る?と問いかければ必要ないだろうとの答え

 

「必要ない?」

「ティータって前例を思い出してみろ。言い方は悪いがラムザの兄、特にダイスダークとか言う長兄は自分の妹でも見捨てるぞきっと」

「まさか、血を分けた妹だぞ?」

「少ししか見た事無いが、あれは権力にとらわれている部類の人間だ。切り捨てて上に上がれるなら切り捨てていくぞ、たとえ友でも何かあったら殺すぞ」

 

 その言葉を聞いて黙るシーラ。

 確かに、ダイスダーク長兄であればそれをやりかねないと思う節があるからである。

 

「ラムザには言えんなぁ」

「言えないな。そしてテントが静かになったんだがそろそろ終わったころなのだろうか?」

「四人相手にしても普通に出てきそうなんだけど」

「いや、まさか」

 

 でもラムザだしなぁ、なんて言っているとひょっこりとラムザがテントから外に出て川に向かうのが見えた

 

「ラムザ、そっちの方面でもすげぇのか」

「俺は何も言わん」

 

 驚愕するシーラとエバンズをよそにテントの中の人の身体を拭くのであろう布を濡らして戻ってきたラムザ。

 やはり、四人相手をしてなおそんな気遣いが出来る事に驚愕を隠せない二人であった。

 

 それはそれとして

 

「全員がかりだと緊急事態に対応できないから辞めろといった記憶があるんだが?」

「ギブ!ギブギブ!頭痛いぃいぃいいい?!」

 

 今日も今日とてエバンズのアイアンクローがシーラに繰り出されるのであった。



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15

「んでまぁ、オルランドゥ伯に会いに来たのは良いとして、だ。何故か牢獄の中に居て私達戦う事になったんだけど」

「ため息ついてないで、敵が来るよシーラさん!」

 

 シーラのため息にラムザの檄が飛ぶ。

 オルランドゥに会いにきたラムザ一行

 だが話は厄介な方向に進みよりにも寄って投獄されているオルランドゥに会いにきてしまったのであった

 その為、北天騎士団を疑われさらには暗殺者だとまで言われてし合う始末。

 出来れば戦いたくは無いのだが

 

「降りかかる火の粉は、払いのけるのが道理って事か。ラムザ突っ込むから援護宜しく」

「うん、任せて。其れと突っ込むのは忍者、弓使い側で進撃ルートを確保して」

「任された!」

 

 シーラがひょいっと壁を登っていく。

 この辺りは騎士なのに何の問題も無いのが不思議である。

 そして騎士の投げてくるアイテムを剣で弾きながら聖剣技を繰り出していく。

 一方反対側にはアグリアスが既にエバンズ共々制圧しルートを確保していた

 

「アグリアスさん、こっちは後任せて反対側に行ったほうがよいと思うぞ、敵の動きがあっちに集中しているみたいだしな」

「ん?そうか、ならばすまんがここは任せた」

「任されよう」

 

 アグリアスがそちらに向かうと此方もこの位置から狙える相手を狙っていくエバンズ

 騎士に向かって銃を放つも盾により防がれてしまう

 最も、アグリアスがラムザたちと合流すればそれで決着する程度の敵ではあったのだが

 

「両軍が激突する前に何とかしなければ…!!」

 

 ラムザのその言葉

 どうにか両群を止めたいのだが如何する事も出来ないのも事実。

 何時に無く、焦っているラムザ。

 このまま両軍が激突してしまえば其れこそ死者は半端なものではない。

 だが、だからといって両軍のど真ん中に躍り出て止めようとした所で意味は無い。

 万事休す、と言うのはこの事かと悩むラムザ

 

「ちぇい」

「いたっ、なにするのシーラさん?早くしないと」

「えぇい、如何にかしないといけないのは分かったから一旦落ち着け」

「落ち着いていられないよ、このままだと」

「分かってる、様は戦えないようにすればいいんだろうが」

 

 シーラがラムザを叩いて目を覚まさせる

 焦っていてラムザは視野搾取の状態だったのだから答えが出なかっただけだ

 

「何時ものお前さんなら出来るだろうが。ラムザ、焦るな慌てるな。まだ両軍は激突して無いんだぞ」

 

 その言葉を聞いて漸く焦りを抑え始めるラムザ。

 だが、この瞬間にも両軍は激突してしまうのも事実。

 後は如何すればよいのか

 

「そうだ、水門だ」

 

 と、叫ぶラムザ

 

「水門?そんなのがあるのか」

「うん、このべスラ要塞には水門がある、その水門を空けて身済みの水を下流に放出すれば水浸しになって戦いどころじゃなくなるだ」

「よっしゃ、ならばその水門を開けに行くしかないな」

「猶予は殆ど無い、か。敵が居ない事を祈るばかりだが」

 

 そのまま、急いで水門に向かうラムザ一行。

 途中

 

「っ!ラムザ足止めて息を止めろ!他の皆もだ!」

 

 シーラがそう叫んだ。

 一体何事かと思いながら息を止め、足を止める。

 するとラムザにも其れが何を意味するのか理解する。

 毒が、漂っているのである。

 あの神殿騎士が本当に狙っていたのは此処だったのだ

 

 どうする?と目でラムザに問いかけるエバンズ。

 このままだと先ほど同様に毒にやられてしまう

 かと言って、このまま足を止める事は出来ない。

 それならば、無理矢理にでも通るほか無い

 

「緊急事態だから強引に通る。クラウディアさん、全員にリジェネを。毒を中和しながら強引に進もう」

「?! ……了解よ、森羅万象の生命を宿すものたち 命分かち 共に在らん!『リジェネ』」

 

 その詠唱と共に淡い光に身体が包み込まれていく。

 これで毒を解除できるのである。

 といっても解除できるのはリジェネが聞いている時間だけ。

 時間切れとなれば毒に侵されてしまうのは目に見えている

 だからこそ時間との戦いだと駆け抜けて良くラムザ一行

 

「んで?! 本当に水門なんてあるのか!?」

「うん!この奥に湖をせき止める為の水門があるんだ!」

 

 そして、漸く其処にたどり着いたは良いが

 既に南天騎士団が配置していたのであった。

 

「ラムザ様!どうなさいますか?!」

 

 アリスの叫びに一瞬だけ周りを見る。

 それだけで、ラムザにとって見れば戦術を組むには十分であった

 

「皆!水門の両端にいる騎士に集中攻撃!後は僕が水門を開けるよ!」

「了解!」

 

 掛け声と共に二手に分かれる。

 ラムザ・アグリアス・アリス組

 シーラ・エバンズ・シンシア・クラウディア組

 どちらも敵を相当する必要は無いということを理解している。

 祖の為に騎士だけを遠距離から集中狙いする。

 無論、騎士に攻撃する為に南天騎士団の面々とやりあう事になるが其れは二の次である。

 ラムザが水門を開くまでの間、防戦となるシーラ達

 ……そう、普通ならば

 

「ふ~っはっはっはっは!ラムザに指一本触れてみろこちとらさっきの毒で頭に来てんだからなぁぁぁぁ~~~!」

 

 完全な八つ当たりである。

 毒を撒いたベッド砂漠であったあの名も知らぬ神霊騎士団のメンバーの1人

 そいつの残した毒を突入するのに無茶をやらされた八つ当たりを南天騎士団の面々にぶつけるシーラ

 

「思う所が無い訳ではないが、之も定めと諦めよ」

 

 アグリアスもまた、毒にやられてさらにまた毒の中を突っ切る事に抵抗があった。

 祖の為八つ当たり気味に2人の聖剣技があたりを激しく蹴散らしていくのであった

 

「何と言うか、女性陣怖い」

「待って、あの枠に私を入れないで」

「お2人とも、毒に強くやられていましたのでしょうがないですよ」

 

 シーラとアグリアスの2人だけで南天騎士団を吹き飛ばしていく様はまるで暴風に見舞われたかのようであった。

 そして敵を一掃したと同時にラムザが水門を抉じ開ける。

 それだけで下流に一気に水が流れていく。

 

「取り合えず、これで両軍の全面戦闘は避けられた形になったということか?」

「うん、その筈だよ」

 

 べスラ要塞に向けて移動していた北天騎士団

 べスラ要塞にこもっていた南天騎士団

 そのどちらもが被害と言った被害のないまま、戦闘を行えない状況になったのであった。

 

 そして此処でとある人物と再びである事になる

 

「ラムザ!」

「オーラン?!どうして君が此処に?」

 

 なんと、オーランと再びであったのである。

 いや、よくよく考えれば南天騎士団である彼と出会っても不思議ではない。

 だが、其れと同時に

 

「えっと、ディリータと一緒に居た女性となんで一緒に?」

「彼女が此処に義父上が居ると言う事を教えてくれたんだ」

「義父上って事は、お前さんオルランドゥ伯の息子?!」

 

 シーラが驚きの声を上げる。

 ラムザの味方となるといったその男。

 その男がまさか此処まで来て出会おうとしていたオルランドゥの息子だとは思っても見なかったからだ

 

「なら、急いだほうが良いだろう。ラムザと一緒に居ると面倒な事になるぞ」

「君達がラムザと一緒に旅をしているんだね。判った、彼女が義父上の事を知っているから」

 

 そう言うとバルマウフラに付き従いべスラ要塞の中を進んでいく。

 南天騎士団は水門が開いた事により大混乱をしている真っ最中で誰もラムザたちの事を気にも留めなかった

 そして、オルランドゥと合流したラムザ一行であった



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16

新年明けましておめでとうございます。
ナメクジ並の更新ですがどうぞお許し下さいorz


「剣聖かぁ、師事されてみたかったなぁ」

「あぁ、御歳になられてなお顕在の妙技の数々、見てみたかったな」

 

 珍しく、シーラとアグリアスがちらちらとラムザを見ながらそんな事を言っていた。

 

 オルランドゥと合流したラムザ一行は無事べスラ要塞を抜け出る事に成功していた。

 そこで、ラムザがオーランと分かれる直前に、やはりオルランドゥも一緒にオーランと居た方が良いと提案したのであった。

 無論、之はオルランドゥが邪魔だといっているわけではない。

 戦力的に見れば仲間になってもらえるだけでかなりの戦力アップが望めるのは間違いない。

 だが、ラムザが追っている神殿騎士団はあのルガヴィになるのだ。

 簡単に戦力を増やすわけにはいかなかった。

 之には流石のシーラも反対意見を述べるのであったが、何よりもラムザが心配していたのは

 

「出来れば、私の友を助けていただきたい」

 

 ラムザが気に掛けている相手。

 当然ディリータである。

 そして、不思議復活を遂げたティータ。

 この2人をどうにかして生きていて欲しい。

 そう願ったからこそ、ラムザはオルランドゥに頼み込んだのだ。

 最初こそ渋った物の、ラムザの本気の意志を汲み取り一路オーランと共に行動をすることになったオルランドゥ。

 そのことで、シーラとアグリアスからちょっと言われるようになったのであった。

 

「あぁ、もう。2人とも終わったことなんだから諦めてよ」

「終わったことだからこそ諦め切れんのだぁ!」

 

 シーラとしては多くの剣技を知るオルランドゥから習いたかったのであった。

 最も、一般の剣士で覚えられるのは数少ないのだが。

 と言うか聖剣技とは言え覚えられるシーラが可笑しいのだが

 

「そういえば、エバンズは如何したの?」

「ん?あぁ、ベスラ要塞で自分の攻撃で相手を倒しきれない事が多く合ったからちょっと銃をいじってみると言っていたぞ」

「そっか。銃ね。本当はボクもどうにかしてあげたいんだけど、でもあれ以上の銃となると」

 

 そう、エバンズの持っている銃以上、となると早々簡単には見つからない。

 そもそも今もって居るフォーマルハウト自体、店で売っているものではない。

 これ以上のものとなると話に聞く魔法銃くらいでは無いだろうか?

 

「まぁ、エバンズも援護に徹するのが一番だと判ってはいるみたいだからな。高い威力を求めすぎる事はあるまいて」

「エバンズには何時も助けられているしね」

「私ほどじゃないがな!」

 

 えっへんと無い胸をはるシーラ

 その様子を苦笑しながらランベリー城を目指すラムザ一行。

 

 ザーギトスを抜けてさらに先に進もうとしたところで山賊に出会ってしまう。

 相手は山賊・爆裂団。

 この界隈では有名な盗賊の一味である。

 とは言え、此処まで百戦錬磨、さらには怪物の相手までしてきたラムザたちがそんな雑魚になど負けるはずも無く

 

 「不動無明剣!不動無明剣!不動無明剣ったら不動無明剣んん!」

 

 八つ当たり気味のシーラの聖剣技で一振りで1人ずつ相手を倒していくラムザ一向。

 シーラの独壇場となったこの場面では特にやることが無い。

 有るとすれば討ちもらした敵が来るのを倒す事だが、それはエバンズが見逃す筈はなかった

 

「まぁ、剣士としてみればあいつの気持ちも判らないでも無いからな」

「エバンズでも、やっぱりそうなの?」

「獲物は銃とは言え剣も扱えるからな。もし可能ならオルランドゥ伯に師事して貰いたかった、かな?」

 

 そんな事を言いながら忍者・シーフ・弓使い等で形成されている爆裂団はこの日完全に壊滅したのであった。

 こうしてゲルミナス山岳にて思わぬ襲撃を受けたラムザ一行。

 とは言え損害らしい損害は受ける事無く、そのまま先に進んでいく

 

「だぁ!復活してくるぅぅ!エバンズ早く援護よ~こ~せ~!」

「今やってる真っ最中だ!我慢しろ!ラムザ次は?!」

「僕とシーラさんの方は大丈夫だからアグリアスさんのほうに!」

 

 ポエスカス湖では聖石を狙った幽霊の集団に襲われる。

 行く先々で敵に遭遇しているラムザ一向。

 今回は少々厄介でエバンズの持つ機工士の邪心封印で石化しないと倒せない相手であった。

 無論、全てが全てエバンズだけが倒せる、と言うわけではないのだが相手は幽霊。

 しかも、この世に未練を残した相手である

 そういう相手は中々成仏する事が無く復活してくるのであった

 

「うがぁぁぁぁ!ラムザちょっとチェンジ!」

「シーラさん我慢して!アグリアスさんはアリスさんの援護に回って!クラウディアさんとシンシアさんは幽霊にケアル・レイズ系で!エバンズは残りの魔物を優先、封印して!」

「なんか私に厳しくないかラムザぁぁぁぁぁ?!」

 

 そんな、シーラの声を湖に響かせながらポエスカス湖の敵を石化、封印していくのであった

 

 

 そしてランベリー城まで一息の所で一度休息を取る一行

 

「さて、ランベリー城まであと一息と言った所だけど、どうする?やっぱり正面突破?」

「うん、幾つか案が無いことも無いけど人でも足りないし」

「この面子で城攻めは容易では無いんだがなぁ」

 

 シーラの意見は最もであるが、数がいないことにはしょうがない。

 まぁ、正面突破を仕様と言う事で話はついた。

 そしてもう一つ

 

「エバンズや」

「ん、どうした?」

「寝ずの番、私達2人でいけるか?」

 

 その言葉の裏の意味、ラムザハーレムに乱交させても良いかと言う問いである。

 返答に詰まってしまい喉の置くからぬぅ、と一声出してしまう。

 本来なら此処まで来たなら止めさせるべきであろう。

 だが、これからの事を考えるならば

 

「構わないだろう。ここまで強行軍だったんだ、一息入れた方が良いだろう」

「よし!ラムザラムザラ~ム~ザ~!」

 

 エバンズの返答も受けたシーラは笑みを浮かべてラムザを呼ぶ。

 なんだろうと思ってラムザ来た時にはラムザハーレムが揃っていてシーラがとても良い笑みを浮かべていた

 

「あの、えっと」

 

 きょろきょろと辺りを見回しエバンズを見つけるとアイコンタクトで

 

(エバンズ、助けて)

(諦めろ、ラムザ)

 

 そう、会話して見せたのであった。

 そしてアグリアスを筆頭にずるずるとテントに連れ込まれるラムザ。

 一緒に入るアリス、シンシア、クラウディア

 計五人が一つのテントに入りもぞもぞと蠢き始めていく

 

 

 はぁ、とため息を一つ零してから

 

「慣れていくって、怖いな」

「? どしたのエバンズ」

 

 ため息に反応したシーラがエバンズに問いかけるもエバンズは何も言わず首を唯左右に振って

 気にするな、と返答した。

 エバンズがそういうならそうなのだろうと特に気にしないで寝ずの番をする2人。

 話題は特に無い

 いや、無い事も無いが特に今話さなければならない事は無い

 そんな中エバンズの口が開かれる

 

「ランベリー城、どうみる?」

「今迄で一番の激戦、だろうな」

 

 ランベリー城攻略作戦

 正面突破と決まった時から其れはわかりきったことだ。

 たった七人。

 たったの七人でその数十倍以上の敵を相手にしなければいけない。

 しかも、その上でルガヴィが出てくる可能性さえある。

 最悪の最悪を考えれば人数が足りないではすまない

 

「とは言え、だ」

「ん?」

 

 次はシーラが口を開く

 その内容はランベリー城の事ではなくラムザの事

 

「ラムザ、今回は特攻するのを少し躊躇う場面が幾つか観られたのはやはりラムザハーレム計画がうまく言っている証拠だな!」

「そう願いたいがな。まぁ、幾つかの前線をお前やアグリアスさんたちに任せるようになってきたからな」

 

 それでも討伐数は変わらないのだからラムザの強さは何処にあるのだろうかという疑問がわく

 とは言え、だ

 

「以前はあと1人2人入れる必要があると思っていたけど入れなくても良いかも知れないな♪」

「有れ以上だとラムザが物理的に使い物にならなく」

 

 其処で言葉を切って前回の様子を思い浮かべるエバンズ

 多分、1人2人程度増えても大丈夫だと思い直してしまいそうになる

 

「まぁ、ラムザ次第、だな。」

「あとはアルマ嬢、助けられると良いな」

「なんでアルマ嬢をさらったのかも判らない以上、下手に手を出せないのが痛いところでは有るがな」

 

 アルマが聖石に反応した事を知らない二人

 いや、ラムザ一向。

 もしそのことを知っていれば是が非でもアルマ嬢を奪還していたかもしれない。

 だがその事を知るのはまだ先のお話

 

 



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17

 ランベリー城にたどり着く少し前。

 敵情視察と相手の情報を集めるべく部隊を分けて情報収集に当たったラムザたちであったが此処で思いもよらぬ事に遭遇する。

 

 なんと、ランベリー城にはすでに兵は無く廃城となっている、と言う情報なのであった

 

「私とエバンズの2人で行ってきたけど見張りの兵1人としていなかったぞ」

「ついでに、人の気配と言うか人の住んでいる様子は伺えなかった」

 

 先行して敵情視察をしてきた2人の情報

 そして自分達で手に入れた情報を元に困り顔になるラムザ。

 攻城戦、と言う事を想定していただけに肩透かしを受ける事になった。

 だが、ランベリー城にエルムドアが居る以上、確実に罠を仕掛けてくる筈である。

 此処で打って出るべきか、もう少し慎重になるべきか悩んでしまっているのであった。

 

「ラムザ、下手に悩むのは時間を無為に使うだけだぞ?」

「そうは言っても」

 

 躊躇いがちにエバンズのほうを向いてから

 

「罠があるのは間違いないとして、其れ含めてどうにかして見せるぐらいの意気込みでいかんで如何するかね」

「シーラさん」

 

 確かに二人の言う通り、此処で立ち止まっていても事態は好転しない。

 だからと言って、無意味に突撃するのは蛮勇となってしまう。

 さらに、中にはエルムドア。

 ルガヴィに返信する相手が居るのだ。

 下手を打って全滅してしまう危険があった。

 だからこそ、躊躇ってしまっているのだが

 

「ラムザよ、取り敢えずは城門まで全員で行ってみるのは如何だろうか?」

「何かあれば全力で逃げ出す準備をしておけば大丈夫かと」

 

 アグリアスとアリスの二人の意見。

 

「私もその意見に賛成よ。ルガヴィが居ると分かっている以上伏兵が居るなら逃げるのもありだと思うわよ?」

 

 クラウディアも同じ意見。

 ただ、どうしても逃げられない理由もある

 

「もし、アルマが居るなら、蛮勇であろうと逃げられないかな」

 

 苦笑いをしながらランベリー城を見るラムザ。

 その事に関しては誰も何もいえない

 そう、言えない筈なのだが

 

「アルマ嬢、アルマ嬢なぁ」

 

 エバンズが頬を掻きながらラムザに対して自分で疑問に思っていることをいう

 

「アルマ嬢、居ないかも知れんぞ?」

「え?」

 

 その返答は予期していなかったラムザ。

 何で居ないのか、と目で聞いてくる

 

「さっきシーラと敵情視察に行ったとき敵の数を知ろうとしたんだが」

 

 此処で一旦言葉を切る。

 躊躇いながらそれでもうむ、と言いながら

 

「俺にはどうしても居るように感じなかったんだよなぁ。逆になんと言うか、ルカヴィに近い怨念の様なものが感じられたが」

 

 そんな事を言い出したのであった。

 それには困惑の色を隠しきれないラムザ。

 アルマの為にここまでやってきたのにそのアルマが居ないとなると話は別である

 

「どうする?突入はやめておくか?」

「確かな事はエルムドアは確実に居る、だけどアルマは居るかどうか分からない、と言う事だな」

 

 一応の補足説明を付け加えるエバンズ。

 エルムドアが居るのは分かるのにアルマが居るのだけは分からないのだ。

 

「エルムドアは居ると此処にアルマが居ると言い、エバンズは居ないと言うか」

「エバンズ、其れは本当?」

 

 ラムザの質問に曖昧に答えるエバンズ。

 居る、と言われれば居るのかもしれない

 居ない、と言われれば居ないかもしれない

 その教会が曖昧なのである

 だから必ず居ないとはいえないエバンズ

 だが、彼が感じた感覚では居ない可能性のほうが高いと言う事である

 

「今までこの感覚を信じて戦ってきたから居ない、と断言したいところではあるが」

 

 頭をガシガシとかきむしるエバンズ。

 だがそれでも意見自体は帰ることが無く

 

「今回ばかりは保障できん。ルガヴィ以外のモンスターも多く居るみたいだから確実に居ない、とは言えん」

 

 ラムザは其れを聞いてしばし熟慮する。

 このまま突入するかしないか、今までのエバンズの経験則は頼れるものだからもしかしたら本当にいないのかもしれない。

 だが今回は其れが外れて、もしも居たらどうするのか

 必死に悩んだ挙句、ふぅ、とため息をついてから

 

「やっぱり行こう。アルマが居る可能性があるなら少しの可能性でも賭けてみたい」

「よし、ならば今から突撃だな!」

「うん、皆、奮起していこう」

 

 ラムザが決めた事に基本的に口を出さないエバンズはその意見に反対をすることは無い。

 ただ、ラムザに先程の怨念の様なものには注意が必要だと伝える

 其れにも気をつけるといい、ラムザ一行はランベリー城に突入するのであった

 



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18

 結論から言えば、やはりアルマは居なかったのであった。

 

「ごめん、エバンズ、もっとボクがしっかりしていたら」

「気にするな。ルカヴィ所か死んだ筈の奴まで出てきたんだしょうがない」

 

 そう言って、頭を撫でるエバンズ

 

 結論から言えばアルマは居なかった。

 アルマが居る、と言うのは唯の嘘でありラムザを呼び寄せる為の罠であった。

 さらにティータ同様に死んだ筈のアルガスまで出てきてかなりの苦戦を強いられたラムザ達。

 メリアドールと言う剛剣使いの彼女が来なければかなり危うかった。

 敵はゾンビナイトにアルテマデーモン、その上デスナイトとなったアルガスまでもがいた。

 無論、エルムドアはルガヴィであり、彼がルガヴィへと変身したのであった

 ランベリー城での戦いは熾烈を極めるも、何とか倒しきったラムザたち。

 

 そんな訳で、アルマが居なかった事を信じ切れなかったエバンズに謝るラムザであった。

 最もエバンズはそんな事気にもしていないが

 

「んで、ラムザ次は如何する?」

「メリアドールさんが言っていたんだ、ダイスダーク兄さんにも聖石を渡したって」

 

 とすると次はイグーロス城かぁ、と呟くシーラ

 今回の件でヴォルマルフが独断で行っていることを知った為メリアドールには神殿騎士団を抜ける事にしたそうだ。

 イグーロス城はこのランベリー城と対極にある城。

 急ぐ必要は無いにしろ、そうそう時間もかけられないラムザ一行はチョコボ馬車に乗って一路イグーロス城を目指すのであった

 

 

 

 

 

 その頃、南天騎士団のとある城で一つの出来事があった。

 それは、ディリータの運命を変える出来事である

 オーランが独房から脱出し、女王となったオヴェリアに全てを打ち明けようとしていた。

 だが、南天騎士団に運悪く見つかってしまい深手を負ってしまう。

 それでもオーランは如何にかオヴェリアの元へとやってきた。

 オヴェリアの部屋にはオヴェリア以外にティータもその場に居た。

 自分の父であるオルランドゥ伯が暗殺をしていない事を打ち明け、真実を言おうとした時南天騎士団がオヴェリアの部屋に突入してきたのであった。

 もはやこれまで、と思っていたオーランであったがなんとそのオーランの始末をしようとしたのを止めたのは誰でもないディリータであった。

 そしてオヴェリアに部屋を出るように促すディリータ。

 だが

 

「兄さん、教えて。兄さんが知っている全てを」

 

 決意を胸に秘めたティータの言葉

 

「ふむ、其れはわしも聞きたいところだのぉ」

 

 オルランドゥ自ら其処にやってきたのである。

 ティータの護衛として名を変えていたオルランドゥであったが全てを知る権利がオヴェリアにはあると主張

 ディリータは反論するがそのままオーランは全てを語る。

 ラムザ達がルガヴィと戦っている事。

 父オルランドゥが罪をかぶせられた事

 そして今直ラムザ達がルガヴィと戦っている事

 

 彼の知る全てを話し終えたとき、オヴェリアは信じられないと言う表情をしていてた

 自分の境遇だけで全てであったオヴェリアはそんな真実があるとは故にも思っていなかったのだから。

 そしてその言葉を聞いたディリータはため息を零すとオーランの言葉が真実であるとオヴェリアに伝える。

 

「さぁ殺せ、言いたい事はすべて言った」

「オルランドゥ伯の居る前で殺すわけが無いだろう?お前は俺に仕えるんだよ」

 

 最初こそ笑って損なのはごめんだと言っていたオーランだったがディリータの本気の表情を見てその考えを変える

 

「本気なの、か?」

「俺は北天騎士団を倒す。倒して畏国を平定する。そしてオヴェリアの国を作るんだ。今は教皇の犬だが勿論教皇も倒す。オヴェリアの為にな」

 

 血なまぐさい話が続く。

 オヴェリアの為、祖の為にならなんだってすると言うディリータ

 

 そして運命の言葉

 

「祖の為に、お前は全てを利用する?」

 

 オーランのその言葉

 これが本来であればオヴェリアに間違った伝わり方をしただろう。

 打が此処には本来居るはずの無い人間がいる

 

「兄さん、それでは兄さんの国を作る為にオヴェリア様を利用するだけではないですか!」

 

 ティータがディリータの言葉に異議を申し立てる。

 オヴェリアが真っ青な顔で、それでも自分に見方がいる事に安堵してディリータを睨み付ける

 

「違う!俺の国ではない、オヴェリアのだ!祖の為ならば何でも利用するというだけの事。おれ自身さえも利用して、オヴェリアの為に国を作る。それが俺が王になった理由だ!」

 

 ディリータは心の其処からそう叫んだ。

 オヴェリアの物

 祖の為にならば自分自身さえ利用すると言った事。

 本来なら間違って伝わった筈の言葉は、此処に正しく伝わるのであった

 ティータはさらに兄にとかける

 

「なら、オヴェリア様の為に兄さんの命も?」

「当然だ、オヴェリアのためならばこの命さえいらん」

 

 どれだけオヴェリアを好いているのか、そして祖の為にどれだけのものを捨てることが出来るのかを語るディリータ。

 

「それは、私だからですか?偽者のオヴェリアだから利用としているのではないのですか?」

 

 ディリータの言葉に質問を投げかける

 当然だとディリータに返事をされてオヴェリアの体から力が抜ける

 自分は、本当にディリータを信用して良いのだと

 自分が、本当に信用できる人間を、目の前にしているのだと

 

 此処が、ディリータの運命を変えることになるとはディリータ自身夢にも思っていなかった。

 之以降オヴェリアは献身的にディリータの行動に必要な事をするようになりディリータ自身も様々な事がうまくいくようになっていった。

 ティータの一言。

 それがディリータの運命を変えたのであった 



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