思いつき倉庫 (羽撃鬼)
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HORIZON NEGI ZONES
プロローグ


色々と終わってないのになにしてんだって感じなんですけど、つい書いちゃったので投稿します。


魔法世界の英雄ナギ・スプリングフィールド率いる紅き翼(アラルブラ)によって戦争が終わった。

 

紅き翼の高実力者数人が旧世界、つまり地球出身の者ということに目をつけたメガロメセンブリア元老院の者達は旧世界へ優れた人材を求め侵攻を開始した。

 

魔法による侵攻、彼等にとって一般人過ぎなかった地球人はなすすべもなく制圧できると思われていた。

 

しかし、今までメガロの息のかかった者達に迫害されていた者達が立ち上がったのだ。

彼らの反撃により魔法使い達の侵攻は止まった。

それを好機とばかりに、各国の軍隊が異形の者達に援護したのだ。

魔法使い達は自らの占領地まで撤退し、強固な壁を造り引きこもったのだ。

 

世界がこうなっている時、日本も同じように東の魔法使い達と西の異形達+能力者達が争っていた。

本来ならば魔法使い達を嫌っている陰陽師達も魔法使い側として戦っていた。

 

理由は簡単だ。

紅き翼(アラルブラ)の一人である近衛詠春が魔法使い達を異形達から守ったのだ。

その結果、魔法使い達からは味方と認識され、異形達と守るべき市民からは敵として認識されたのだ。

 

世界中の魔法使い達が壁を造ったとき彼等も同じようにした。

 

 

こうして日本は東西に二分された。西暦が終わった瞬間である。

 

 

西暦が終わり、魔法と言う神秘が世に現れたことであらゆる特異現象が魔法として世界に広まり、世界中の土地神達が信仰を失った。

彼らは魔法使い達への最後の抵抗として、魔法使い達と敵対する者達へ祝福を贈ったのだ。

 

結果、魔法使い達にとって意図しないことが起きた。

魔法使いと敵対する者全てに贈られたため、魔法世界の亜人達、幻想種達が幻想でなくなったのだ。

彼等は地球でも一つの肉体を持って降りてこれるようになった。

それだけではなく、共に戦った異形と人間の間に子が出来、今までには無かったハーフ特有の能力が発現したのだ。

 

それが魔法を物ともしない強靭な体を持つ異形

 

 

AMAZON(アマゾン)

 

 

と、呼ばれる存在達だ。

 

 

そして数年後、物語は始まる。この歪みきった世界の中で、一人の【AMAZON(アマゾン)】が作り出した機械により、自称正義の魔法使い達がこの星で民に向けて行ったように彼らが蹂躙される。

 

これは英雄の息子が、世界を救い名実共に英雄と呼ばれる物語ではない。

 

これは英雄の息子が、学園の生徒を導く物語ではない。

 

そして、これは魔法が人々の希望となる物語ではないのだ。

 

何の物語かと言うと、

 

異形と人間の内に生まれた超越者達の物語だ。



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EP1 機械の洗礼

連続投稿です。


天に届きそうな巨大な壁の前で数人の者達がいた。

 

 

「諸君!君達は優れた魔法使い達だ!そんな君達に頼みたいことがあるのだ!それは、この壁の向こうの調査だ。先日、調査に出ていった者達が帰らない。出来るならば彼等と合流し情報を共有せよ!西日本は今やあの化け物共の巣窟に成っている。我々はこれを奪還するために情報を欲しいのだ!」

 

 

隊長らしき人物は体を大きく動かし強く伝えた。彼の言葉に一人の隊員らしき人物が、

 

 

「あの我々だけで討ち果たしてはいけないのでしょうか?」

 

「「「そうだ。そうだ。」」」

 

 

話した疑問に他の隊員が賛同する。

 

 

「む。それもそうか。では、そうしよう。」

 

 

隊員は彼等の言葉に頷いた。

それを見ていた隊長の上官が、

 

 

「君達。いくら君達が奴等を軽く殲滅出来るのだろうが、確実性を増やすために今回は情報をしっかりと入手して欲しいのだ。わかったね?」

 

 

自分達よりも上の人物に言われてしまったのならしょうがない。故に彼等は、

 

 

「「「了解しました。」」」

 

「よろしい。」

 

 

了承した。

彼等は準備を整え、壁の外側に降り立った。

 

そこには雄大な自然が広がり、数年前には人の文化圏があった痕跡がほぼないほど、素晴らしい景色が広がっていたのだ。

 

彼等はこの光景に見とれた。一部は写真に修めていた。

そうして彼等は探索を始めた。ふと、歩いていると一人が何かの音が聞いた。

 

 

「どうした?」

 

「何か物音がしたので。」

 

「えっ?何処?」

 

「あっちです。」

 

 

物音を聞いた隊員は音の方を指差した。

彼等はその方向に向かっていった。そこには、動物のようなシルエットが見えた。しっかりと見てみると、大きな目のようなレンズを持ち二足歩行している機械がいたのだ。

 

 

「何だ?アレは?」

 

「機械?」

 

 

ふと、隊員の一人が大きな目のようなものを持った機械の側に何かを食べているような動きをする機械を見つけた。

それをしっかり見てみると一瞬にして顔を青ざめた。それを見た仲間が、

 

 

「おい!どうした?」

 

 

青ざめた隊員は原因の方を指差し、

 

 

「あの機械が貪っているのは人間だ!」

 

 

他の隊員達は弾けるようにそこを見た。そこには、ローブを着ている明らかに魔法使い然とした人物の死体が、

 

 

「あのやろう!」

 

 

一人が大声を上げて死体に向かって走り出した。

大きな目のようなものを持った機械が大声を上げた隊員に気付いたようだ。すると機械は、

 

 

『ギィッ、ギギギーーーっ!』

 

 

と警戒音を発した。大きな目のようなものを持った機械は隊員を視認すると今まで青く光っていたレンズを赤く光らせ、向かってきた。

そして、死体を貪っていた機械も、たぶん近くにいたのだろう数体の機械が先程の機械の警戒音を聞いて集まってきた。

 

 

「食らえ!魔法の矢!」

 

 

一人が機械に向けて魔法を放った。しかし、機械にあたる直前、かき消えたのだ。

 

 

「なっ!くそォ。総員!撤退!撤退!」

 

 

隊長は逃げながら号令を発した。だが、機械の攻撃により負傷し動けなくなった隊員に機械達が殺到する。

 

隊長は何人かの隊員と共に逃げて逃げて遂には一人になった。

 

 

「何だ!何が起こったのだ!俺達は化け物共を倒すために調査に来たのだ。だが、あんなのは聞いていない!」

 

 

ドシンドシン

 

 

と、足音が聞こえる。

 

 

「あ、あ、もう駄目だ。」

 

 

彼の脳裏には走馬灯が浮かんでいた。

 

 

『グルルルゥ!』

 

 

ザシュッ グチャ

 

 

隊長はこの地でその生涯を終えたのだ。

 

 

 

西日本の何処かの一室

 

 

モニターでその様子を確認している者がいた。彼は見終わって、

 

 

「ハッハッハ、マジか。あの魔法使い達、【ウォッチャー】と【スクラッパー】相手に全滅かよ。まぁ隊長らしきやつは【ソウトゥース】の生息域に入らなければ生き残れたのにな!いや、数が足りねぇ。その内くたばるか。」

 

 

彼が大声を上げて笑っていると一人の男の子が部屋に入ってきた。

 

 

「どうしたん?兄ちゃん。」

 

「いやな、魔法使いの糞共が攻めてきたみたいでな。」

 

「た、大変やん。だいじょうぶなんか?」

 

「ああ。壁近くで機械獣に殺られてほとんど全滅したんだよ。しかも、一人は逃げた結果、【ソウトゥース】の生息域に入って死んだ。」

 

「そうなんか。そうだ!兄ちゃん!」

 

 

男の子は彼の説明を受け納得し、別の要件を思い出した。

 

 

「兄ちゃん。俺のフォーカス出来たんか?」

 

 

彼はその言葉にモニター前の机から小さい三角形の物を取り出し、男の子に渡した。

 

 

「ほら、お前用にカスタムしといたやつだ。」

 

 

フォーカスを嬉々としながら受け取った男の子はそれを自分の右の耳近くに当てた。するとフォーカスは独りでに耳の近くに張り付いた。

フォーカスは電子音を響かせ、男の子の視界に文字を浮かび上がらせた。

そして、男の子は彼の机を見た。フォーカスは解析音を発し解析終了後、

 

 

【アマゾンズドライバーγ(ガンマ)

 

 

という文字を浮かべたのだ。



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EP2 調査報告

連続投稿です。


メガロメセンブリア魔法協会麻帆良支部

 

 

本来ならば麻帆良学園と呼ばれる都市にある。学園が並ぶはずの場所には軍の施設らしきものがある。その中の一室では、

 

 

『どういうことかね?近衛支部長?何故、壁の向こうに魔法使いを派遣したのに何の報告も無いなんて。』

 

 

魔法世界のメガロメセンブリア元老院から報告を求める声が来ていた。しかし、

 

 

「第一次派遣組も、第二次派遣組も出発してから何の連絡も来ていないのです。」

 

『じゃがな、本国も何か進展が欲しいと他の元老院の者達も言うておる。』

 

 

そこに一人の男が駆け込んできた。

 

 

「支部長!」

 

「何じゃ!今は取り込み中じゃ!」

 

「大変です!派遣した魔法使いから音声メッセージが!」

 

『何じゃと!そこの者。早く再生せよ。』

 

「はっ!了解です!」

 

 

男は何か操作し、準備した。

 

 

「では、再生します!」

 

 

ジジジ

 

 

「『壁外調査一日目 壁の外は雄大な自然が広がり、人が生活していた痕跡がほとんど無くなっていた。建物の跡から見るにまるで、1000年放置しているかのような崩れ方だった。』」

 

「『壁外調査二日目 昨日記録しなかったが川の水は澄んでいた。夜、高台より確認した所、遥か遠くに灯りが見えた。人間若しくは知的生物が居るところだろうと思い、これを確認に向かうことにする。』」

 

 

「ふむ。人の暮らす痕跡を見つけたのか。素晴らしい戦果だ。」

 

 

「『壁外調査三日目 何か音が聞こえ、その方向へ向かってみると鹿のような機械が動物の死体を貪っていた。その後、我々は音を発ててしまったが、機械は一目散に逃げていった。』」

 

「『壁外調査四日目 今日は二足歩行している頭部に大きな目のようなレンズを付けている機械を見つけた。この前、機械が逃げていったため、調査員の一人が隠れていた茂みから音を発てた。用心して姿は見せなかったが。すると、その機械は音の原因を探るようにこちらに向かってきた。我々は息を潜めた。機械は何も無かったようにもとの場所へ歩いていった。その後観察を続けると、あの機械の動きには一定の法則があることがわかった。』」

 

 

そしてここから悲劇が始まった。

 

 

「『壁外調査五日目 一人が死んだ。調査員の一人があのデカ目のヤツに見つかった。するとヤツは他の機械を呼び寄せ、襲ってきやがった。見つかった調査員は責任を感じたのか囮に成って機械共に殺された。』」

 

「『壁外調査六日目 俺だけ生き残った。機械共の強襲だ。俺は昨日の機械共がいた方向がよく見える高台でヤツらの見張りをしていた。他の調査員の声が聞こえたため、下るともうそこには機械の群れがいた。俺は咄嗟に隠れて確認すると、仲間は全滅していた。俺は恐くなり音を発てずに逃げた。』」

 

 

これはどういう事だろうか。派遣した魔法使いは皆高位の実力者だったはずだ。それが一方的に殺られるだと!

 

 

「『壁外調査七日目 現地住民に会った。俺が機械に襲われもう駄目かと思ったとき彼女は現れた。彼女は原始的な槍と弓で機械共を倒したのだ。その後、彼女が教えてくれたのだが俺達が襲われる原因は魔法発動媒体にあったらしい。これらから変な信号が出ていてこれがレーダー持ち機械に気付かれたらしいのだ。』」

 

「『壁外調査八日目 彼女は親切にも機械のことを教えてくれた。あのデカ目が【ウォッチャー】で、鹿のようなヤツが【グレイザー】、レーダー持ちのヤツが【スクラッパー】というらしい。彼女は機械を狩り生活しているようだ。機械は野生生物の様なものだと教えてくれた。物騒だな。後、機械から採れるシャードというのがこちらのお金に当たるようだ。』」

 

 

『機械か。少しはわかったが何故他のものが全滅したのかわからんな。』

 

 

「『壁外調査九日目 高台より壁の方より複数の集団が現れたのが見えた。もしや救助か?と思い、向かうことにする。彼女も着いてきてくれると言っているので安心だ。しかし、女性が助けてくれるから安心だと言うのはカッコ悪いな。』」

 

「『壁外調査十日目 駄目だ。彼らも全滅した。一人が大声を出したことにより機械に見つかったのだ。機械に見つかることを恐れ発動媒体を捨てた俺には向かうことも出来なかった。たぶん、発動媒体が有っても役に立たなかったと思う。ヤツらは魔法が通じていなかったからだ。すると、一人身なりがいい者がこれまで彼女が避けた方角に向けて走っていった。これは助けられるのではないかと思い彼女に尋ねると、あそこには一流の狩人が命を落とすことがある狂暴な【ソウトゥース】という機械の生息地らしいのだ。彼女は装備が潤っていれば狩れるらしいのだが、最近【ソウトゥース】を三匹同時に相手したらしいので無理だそうだ。くっ、すまない。』」

 

 

これで事実上第二次派遣組も全滅したという事がわかったのだ。しかも、魔法が通じないという事実!

 

 

「こいつはこれからどうするのだ?」

 

「まだ続きがあるようです!」

 

 

 

「『壁外調査十一日目 彼女が作ってくれた槍や弓でイノシシや七面鳥などの野性動物を狩った。その後、料理して出すと高評価だった。趣味が料理でよかった。改めて彼女を見ると素晴らしい女性だと思った。彼女は(長くなるので割愛・・・、だから素晴らしい!これが口に出ていたらしく、顔を真っ赤にしていた。俺もだが。彼女を顔を見て愛しく感じその事を正直に話した。彼女も俺の事を気に入っていたようだ。その日、俺達の影は一つになった。』」

 

「『壁外調査十二日目に成るのだろうか。だが、俺は壁内に帰還する気も無かった。俺はこれから彼女と共に行きようと思う。音声で悪いが魔法使いは廃業だ。いずれ彼女を守りきれるような男になってやる!』」

 

 

ブツッ ザザザ

 

 

「ここまでのようです。」

 

「何と言えばいいかのう?」

 

『そうだな。個人的にはは素晴らしく応援したいが、上司的に見ると…うむむ。』

 

「彼は好青年だったが自分を抑え込んでいるところがあったから、個人的には良かったが…はぁ。」

 

『本国には全滅したと通知しておこう。』

 

「助かります。それと。」

 

『うむ。次壁外に派遣するためには魔法より物理的攻撃が得意なものが必要だな。そちらも候補を探して見てくれ。』

 

「はっ!了解です。」

 

『それと、来月にはイギリス支部より見習いの英雄の子供をそちらに派遣する。教育を頼むぞ!』

 

「かしこまりました。」

 

 

そして通信が切れた。この支部の支部長は長い顎髭を触りながら、

 

 

千の呪文の男(サウザンドマスター)の息子か。英雄本人が行方不明になった今、新しい風を起こしてくれるのだろうか?」

 

 

と、かの少年に期待を寄せていたのだ。



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EP3 肉を取り戻した亡霊と元英雄夫妻

西日本、元四国と呼ばれた地域の村

 

 

 

そこには、巨大な農園が有った。

この西日本が拡大した時気候も変わったため本来ここでは育たないであろうものを栽培しているのだ。

この農園の主は農園の隣のとある神殿の出張先であり、神殿の主に仕える神官の一人であった。

 

 

彼の名前はテルティウム。

毎日コーヒーを10杯飲むカフェイン中毒者だ。

だが、栽培しているのはオルヅォという古代種の大麦で、イタリア伝統の麦茶と呼ばれるものの茶葉だ。この茶は深い香りと濃厚なコクもコーヒーとそっくりであり、体に優しいノンカフェインのコーヒーとして人気を誇る物である。

因みに彼は元九州地区で神官をしているセカンドゥム(バカ)とは仲が悪く(向こう方が一方的に嫌っているだけだが)、本殿の主にいい格好見せようと張り切っているのだ(セカンドゥム(バカ)だけだが)。

 

 

神殿、本殿の主はかつて魔法世界を救おうと迷走した者達【完全なる世界】のラスボスである。【造物主(ライフメーカー)】、【始まりの魔法使い】の呼ばれた者、その名も【ヨルダ・バオト】。

世界中の土地神達の最後の贈り物が魔法世界や本来幻想だった亜人種や幻想取に影響したため目的を失ってここいる。

そのため見た目や言動は若いのに中身はおじいちゃんなのである。

因みに神殿には神官長のデュナミスと巫女(マスコット)(ニィ)がいる。

 

 

ここで始めの農園に戻る。

ここには、【ヨルダ・バオト】が肉体を持ってしまったことにより解放された男、少年か?否ショタジジイと彼を解放しようとしていた弟子と弟子の妻がいた。弟子の方はこの農園で毎日汗水垂らして働いている。

弟子の名前は春原ナギ。魔法世界で英雄と持て囃された男ナギ・スプリングフィールド本人だ。今の彼は英雄でも何でもなく、ただ妻の為に働き稼ぐ社会人そのものだった。

妻の春原アリカ。かつて災厄の女王アリカ・アナルキシア・エンテオフュシアと呼ばれていた本人である。

彼らは【ヨルダ・バオト】を倒すために故郷に息子を預け、旅だったが、【ヨルダ・バオト】が肉体を持ち目的を失い、かつ師匠のショタジジイも解放された今息子を取り戻す事が優先的だったが、東日本の、メガロメセンブリアが建造した壁のせいで行き来が出来ず日々の生活を送っていた。

だが、最近彼は息子の事以外で嬉しいことが起きていた。

 

 

「おい!ナギ!嬉しいのはわかるがちったあ仕事に専念しろぉ!」

 

 

ナギに一喝したのは同僚の宍戸 甚兵衛。ナギを少し老けさせた見た目をしている男だ。彼は昔人魚の肉を食べたため弱めの不老不死になっていた。しかし、ナギとの歳はかなり違うのに近所の者達からはナギは甚兵衛の弟でアリカの所へ婿入りしたと思われているのだ。

 

 

「ハハハ。わりぃ、わりぃ。」

 

 

彼らの仲はかなりいいためお互いが否定していても周りからしたら兄弟だと認識されるのだ。

 

 

「じゃあ、向こうは頼むわ!」

 

「おう!りょ~かい。」

 

 

彼らは定時になるまで働き続けたのだ。

彼らが従業員室で休んでいると、

 

 

「すみません。ここに春原ナギさんはいらっしゃいませんか?」

 

 

女性が駆け込んできた。

 

 

「俺だが。どうした?」

 

「はぁよかった。大変です。奥さんが産気付きました。来てください!」

 

「ほら!ナギ!行ってやれ!報告とかは俺がやっておくから!」

 

 

甚兵衛の言葉に、

 

 

「サンキュー!甚兵衛!今度奢る!」

 

 

といい、農園の従業員用の駐機馬場に向かい、個人用バイクと化している改造【ストライダー】に乗って走っていった。

 

 

数時間後ナギはアリカのいる病院へ着いた。

すぐに彼女の部屋に行くとそこには赤ん坊を抱いているアリカの姿があった。

彼女はナギを方を向き笑った。

 

 

これから数年後壁から向こうからこちらを調査するために調査員を派遣し全滅した。

そしてそこから物語が始まり出すのだ。




子供の性別及び名前を募集しようかと思ってます。


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天保異聞妖奇士
説一


幾つか纏めます。


ある日のこと。

 

 

 

自室で寛いでいると、

 

 

「藤丸くん!大変だ~!」

 

 

カルデアのドラえもんこと万能の人ダヴィンチちゃんがいきなりドアを開けた。

 

 

「ハァハァ、本当に大変なんだよ!今すぐに来てくれ!」

 

 

俺はダヴィンチちゃんに連れられていった。

その道中、

 

 

「いきなりどうしたんですか?」

 

「また、新しい特異点が観測されたんだ!」

 

「またですか!本当にいい加減にしてくださいよ!」

 

 

幾らなんでも発生し過ぎでしょう!只でさえこの前、ぐだぐだ明治維新とか終わったばっかりだよ!少しは休ませろよ!

 

 

 

観測室

 

 

「あっ!マスターさん。こんにちは。」

 

「む!おお主らやっと来たか。」

 

「よう。待ってたぜ!」

 

 

観測室には沖田さん、ノッブ、土方さんがいた。するとダヴィンチちゃんが、

 

 

「すまないね。では、これから説明しよう。彼らを呼んだのは特異点が日本だからだ。そしてこの前のぐだぐだ特異点と近い時代であるからだ。」

 

 

ダヴィンチちゃんが話していると沖田さんはノッブの方を見ながら、

 

 

「えっとあなたまた何かやったんですか!」

 

「おうおう、人斬り。儂は何もやってないぞ!。」

 

「話しているとこ悪いけど今回ぐだぐだ因子は確認されていないよ。」

 

「ほら見ろ!儂は無実じゃ。」

 

「そうですか。チッキリソコネタ。」

 

 

いつもながら彼らは仲良いな。

これに見かねたのか土方さんが、

 

 

「ほら、次を聞こうぜ。」

 

 

と言えば二人とも黙る。

 

 

「では、話を戻して。今回の場所は前回と同様に江戸の町だ。そして、時代は天保14年。分かりやすく言うとそこの土方くんがまだ少年だった時期だ。」

 

「なっ!」

 

「この時代に歴史では記されていない何かが起きたと言うことだろう。それを調査し沈めてほしい。今回の特異点は新宿と同じ修復しなくてもいいものだ。それでも行くかい?」

 

 

幻想として作られた特異点でもそこにいる人々が助けを求めているならば当然、

 

 

「「「「行きます(行くぜ)(行くのじゃ)!!!」」」」

 

 

ダヴィンチは目を閉じ一度頷いた。

 

 

「よし!では、これよりこの特異点の攻略に入る。今回は君たちだけしか行けないが幸運を祈る。さぁ!コフィンに入って!」

 

 

ダヴィンチちゃんの言う通りコフィンに入りレイシフトした。

 

 

 

【天保異聞妖奇士】

 

 

 

目を見開くとそこは森の中だった。

 

 

「こっちじゃ!」

 

 

ノッブに言われて彼女のもとへ向かうと眼前に江戸の町が広がっていた。

 

 

「よし!皆行こう!」

 

「そうじゃな!」

 

 

俺とノッブは江戸の町に向けて走り出した

 

 

「待て(待ってください)!」

 

 

が二人に止められた。

 

 

『どうしたんだい?』

 

 

モニターしているダヴィンチちゃんも疑問のようだ。

 

 

「すみませんけど二人とも着替えてもらいます。今の時代洋服は駄目です。」

 

 

えっとほんとに着替えないと駄目?

 

 

「ああ。死にたいならそのままでいいんじゃねぇか?」

 

 

そこまで!

 

 

「そうです。ダヴィンチちゃん。私たちのより少し良い和服を送ってもらえますか?」

 

『わかったよ。少し待って!』

 

 

それからダヴィンチちゃんが送ってくれた着物を着た。

 

 

「設定はどうします?」

 

「それなら俺が没落寸前の武家の出であるマスターが家を再興するために江戸に学びに来たでいいんじゃねぇか?俺や信長はその護衛ということで。」

 

 

土方さんがこの時代での表向きの設定を決めた。だけど、

 

 

「あの!土方さん!私は?」

 

「ん?ああ。お前はマスターの妻だ。」

 

 

ええっ!

 

 

「ええっ!私なんかで良いのでしょうか?マスターは嫌ですよね。」

 

 

全然大丈夫だからむしろ今すぐにでも貰いたいです。

 

 

「そっ!そうですか!では、ふつつかものですがよろしくお願いします。」

 

 

こちらこそ!

 

 

「こいつら結婚した方がいいんじゃないかのう。」

 

「そうだな。」

 

『ここにマシュがいなくて良かったよ。』

 

 

藤丸と沖田がイチャついているなか。

土方は、

 

 

「やはりここは。」

 

 

ノッブが彼の様子に気付いて、

 

 

「どうしたんじゃ?」

 

「なんでもない。」

 

「そうか。」

 

 

そして全員で山を降りていった。一度土方は振り返り江戸の町を見た。

 

 

「ここにはあの人が。」

 

 

彼はかつて少年だった時に会った一人の男を思い出していた。

 



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四代目逆十字
一夢 発症


「ガァァァ!アァァァ!」

 

 

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ

 

 

自我が実った時には地獄だった。無数に迫り来る痛み、苦しみ。この周期的に来る痛みに馴れることはない。しかし、痛みが来る前の僅かな時間が彼の平穏だった。

 

 

「何故だァ!何故ェ、俺は苦しまなければならん!」

 

 

ここは病院。これだけ叫んでいれば看護師が来てもおかしくない。しかし、彼の場には誰も来ない。定期的に点滴を換えるために医師が来るくらいだ。

 

 

「何故だァ!俺が何をしたというのだ!」

 

 

彼の名前は兵藤一誠。一年前には健康としかいいようがない普通の存在だった。

 

 

何故こうなったのかそれは彼にはわからない。彼がこうなったのは夏に彼の姉と幼馴染みで遊んでいた時だった。

 

 

 

一年前の夏、とある教会の敷地内

 

 

彼は一つ上の姉である兵藤瑞希と幼馴染みである紫藤イリナと共にヒーローごっこをしていたときだった。

 

 

「よ~し、行くぞ~!」

 

「こ~い!」

 

 

何の特別なこともない。ただの日常。しかし、この日だけは違った。

 

 

「あれっ?」

 

「どうしたの?イッセーくん?」

 

 

一誠は何か視界に違和感を感じた。

 

 

「ちょっと大丈ょょょ、グァァァ!」

 

 

イリナの言葉に返答しようとしたとき彼を激痛が襲った。

 

 

「あ、アァァァ!」

 

「イッセーくん!」

 

 

一誠が叫び、イリナは彼に駆け寄ろうとしたが、

 

 

「イリナちゃんは紫藤さんを呼んできて!」

 

「えっ!うん!」

 

 

瑞希の頼みに彼女の父親を呼びに行った。

 

 

「イッセー。」

 

 

瑞希は一誠に語りかけた。

激痛を浴びながら一誠は大事な家族である。姉の言葉を聞こうとした。だが、

 

 

「やっとか。遅ぇんだよ。何でこんな時に発動すんだよ。めんどくせぇじゃねぇか!」

 

 

普段の姉にあるまじき言動だった。口調も粗っぽかった。

 

 

「くっくっく、イッセーよぉ!苦しんでくれよ?ハッハッハ、そうだ。お前の物語は俺が貰ってやるからな!」

 

 

一誠は反論しようとしたが、迫り来た激痛によって返事はできなかった。

 

 

「母さん達に言ってもいいぜぇ!言えるものならな!」

 

 

更に来る痛みによって意識が遠のいていった。最後に聞こえたのは、イリナの叫び声とイリナのパパの心配する声そして、猫被っている(げんきょう)の心配するような声だった。

 

 

 

病院にて

 

 

「どうなんです!イッセーは?」

 

 

一誠の両親は医者に向かって叫んだ。すると医者は顔を暗くし、

 

 

「普通は有り得ないことが起きてます。」

 

「「それは?」」

 

 

医者はとんでもないことを言った。

 

 

「一誠くんは死病と呼ばれるものにかかってます。それも、複数。」

 

 

両親は目の前が真っ暗になった。だが、それだけではなかった。

 

 

「本来すぐにでも死んでしまう筈が、死病同士が相殺しあって激痛が彼を襲っています。それでも彼の寿命は長くはないでしょう。」

 

 

両親は音も一時的とはいえ聞こえなくなるようなことに陥った。

 

 

 

少しして、

 

 

「○○さん!」

 

 

一誠の両親を訪ね、若々しい老夫婦がやって来た。

 

 

「お義父さん!お義母さん!」

 

 

一誠の父親は老夫婦のことをそう呼んだ。

そして二人を一誠の所へ案内した。そこでは、未だ一誠は苦しみ叫んでいた。

 

 

「アァァァ、グァァァ!」

 

 

老夫婦、否、一誠の祖父は苦しんでいる一誠の手を握り、

 

 

「お祖父ちゃんはここにいるぞ。頑張って!」

 

 

と涙声に元気付けようとしていた。

それとは別に一誠の祖母である世良南天(なんてん)は、一誠の症状を見て聞いて、

 

 

「(何で!逆十字の病みは希釈されたじゃない!もう、こんなことにはならない筈なのに!)どうしよう?ハッ!石神先輩に応援を!」

 

 

世良南天、旧姓緋衣南天はかつて(°∀。)y─┛による事件を最後まで知っているもう一人に連絡した。

 

 

『ん?この電話番号は?世良さんのもの?』

 

「石神先輩!力を貸してください!」

 

『どうしたというのだ。いや、いい。場所を教えろ、今すぐ行く。』

 

「はい。○○県○○市駒王町の○○○○です。」

 

『あい、わかった。では、後ほど!』

 

 

南天は通話を切った。そして彼女の先輩が来るのを待った。南天はもう盧生の眷属ではない。夢は使えないのだ。彼女は力が使えないこの事を歯痒く思ったのだ。

 

 

 

神祇省

 

 

「あい、わかった。では、後ほど!」

 

 

石神先輩こと、石神静乃は通話を終え、

 

 

「座標移動の用意を!」

 

「「「は!」」」

 

 

未だ現役な彼女はこの日本神話直轄組織であり国の機関である神祇省の部下に転移の用意をさせた。

 

 

ここでこの世界の神祇省について説明しておこう。神祇省は上記に記した通り、日本神話の直轄組織であり国の機関である。そのため昔から日本の裏事情の総括を行ってきた。更には大正時代、英雄柊四四八と共に行動した壇狩摩がここの元締めであったため、世界大戦が起きるのを防いだことから国際的に表社会にも名が広まっているのだ。有名になったことにより、その名声に見あった功績もあげなくてはいけなくなり各国に蔓延る寄生虫(あくま)害虫(だてんし)の駆除作業を行っているのだ。その事が更に認められ、組織自体が大きくなっているというループが起きているのだ。

 

 

では、その事は置いといて。

 

 

 

再び病院

 

 

「来たぞ!世良さん!」

 

 

石神静乃一時間もせずに到着。

 

 

「石神先輩!」

 

「こらぁ!ここから先は関係者しか………って貴女は神祇省の!」

 

「そうだ。診させてもらうぞ。」

 

 

それから石神静乃による診断が始まり終わった。

彼女は別室に彼らを連れていった。そして、

 

 

「結論から言おう。神レベルの呪いがかかっている。」

 

 

石神静乃の言葉に南天が、

 

 

「なら!それを解けば!」

 

 

と呪いを解くという手段について言った。しかし、

 

 

「それだけはない。希釈し消え去ったはずの逆十字の病みがこの呪いで再発しているようだ。呪いを解こうとも彼は苦しむことになるだろう。」

 

 

それは聞いている一誠の両親や世良夫婦にとって最悪の答えだった。

 

 

「私も出来うるツテを全て使ってでも彼を助ける方法を探してみる。何、絶対助けてやる!」

 

 

だが、石神静乃のこの言葉により少し光明が晴れたのだ。



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二夢 再来

一誠が発症してから一年と半年が過ぎた頃

 

 

時間とか日付とか関係なく彼は激痛によって苦しんでいた。度重なる激痛に彼の精神性は変わっていった。

 

 

「俺は死なん。生きるゥ!役に立てよォ!貴様らァ!」

 

 

彼以外いない病室で彼は叫んだ。しかし今日に限って普段は誰も来ない病室に何処からともなく男が現れたのだ。

 

 

『ほう。これはこれは。ふむ!懐かしい。』

 

 

いきなりその男は現れて何かを考え込んでいた。そして顔をあげ、

 

 

『君は兵藤一誠と言ったか?君は生きるのを止めたいか?』

 

 

この男は何を言っている!そんなのは否だ。

 

 

「お、俺は。グッゥゥゥ、生きるゥ!」

 

 

男は嬉しそうに、

 

 

『そうか。ではまず始めに君と同じ境遇だった者達について知って貰おう!』

 

 

と言った。彼がこちらに手を向けた瞬間意識が沈んでいった。

 

 

 

そうして一誠は、自分の家系ルーツを遡った。自分の祖母である三代目逆十字こと緋衣南天のこと。英雄柊四四八の異母兄弟である二代目逆十字こと緋衣征志郎のこと。そして、緋衣征志郎と英雄柊四四八の父親である初代逆十字こと柊聖十郎のことを。

 

 

そして彼は船の中のような場所にいた、

 

 

『戻ったか。どうだ?』

 

 

男は愉快そうに聞いてきた。一誠は、

 

 

「チッ!俺は健康な身体を手にいれる。そして、俺を陥れたあの女に死より最悪な罰をくれてやる!ここまでやられたんだ。必ずやり返してやる!」

 

 

男は笑顔を浮かべ一誠がやられたらやり返すと、言ったことを思い浮かべ、

 

 

『アハハハ、お前は俺の楽園(ぱらいぞ)に相応しい!よいぞ。眷属(・・)の許可を与えよう!』

 

 

男の許可が出されたことで一誠の身体は嘘のように軽くなるのを感じた。

 

 

現実に戻り、一誠は点滴を針を乱暴に抜き取り、立ち上がった。

そして、一誠は行方を眩ましたのだ。

 

 

数時間後、点滴を換えに来た医師は一誠が消えたことを両親に報告した。両親は呆然とし、姉である瑞希は他者が見えない影で歯軋りした。世良夫婦と石神静乃は神祇省の力で数年探しても見つからなかったのだ。

 

 

 

『さあ!俺にお前の勇姿を魅せてくれ!四代目逆十字よぉ!ハッハッハ!』

 

 

 

数年後各国では噂が流れていた。

 

 

曰く、その者全てを台無しにする者である。

 

 

曰く、彼の前では全てが等しく病み落ちる。

 

 

曰く、その容姿逆十字の再来なり。

 

 

これは転生者によって狂わされた運命に立ち向かう物語。ではない。

 

これはとある男が復讐ついでにいろいろと他者から才能を男からバッドステータスを交換(強制)していく物語である。



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三夢 英雄墜ツ

逆十字もの三話です。


某国

 

 

件の噂の元となった男である兵藤一誠、否、緋衣誓慈(せいじ)は黒いスーツを着て、英雄を目指す集団と対峙していた。

 

 

「えっと、君は俺たちに喧嘩を売っているのか?神器も無いのに?」

 

 

誓慈が神器持ちでないことを知ると彼らは笑った。槍を持った男が、

 

 

「君は何で俺たちに歯向かおうとするんだい?」

 

 

誓慈は淡々と槍を持った男にたいして答えた。

 

 

「八層の試練が神滅具(ロンギヌス)持ちをどんな方法でもいいから倒す。とのことだからな。」

 

 

それを聞いた槍を持った男は、

 

 

「何を言っているかはわからないけど、力の差もわからず挑んで無様に死ねよ。」

 

「「「そうだ。そうだ。神器持ちで無いくせに。」」」

 

 

彼は何度も誓慈のある力の発動条件の基準を満たし続けている。

 

 

「憐れんだね。俺を!」

 

 

 

英雄派

 

 

今俺達の前には一人の男がいる。

神器を持たぬその男は見ているだけで不安になる雰囲気を纏っている。まるで、本能がこいつを認識してはいけないと叫んでいるようだった。

だが、俺達は英雄。

こんな奴でも慢心なく相手しなければいけない。しかし、無意識に神器を持たないことを見下し、最強の神滅具(ロンギヌス)を持つ俺に勝つことは不可能だと思っていた。故に彼にこう言った。

 

 

「何を言っているかはわからないけど、力の差もわからず挑んで無様に死ねよ。」

 

 

周りはそれに賛同するように声をあげた。

だが、彼の顔が歪んだように見えた瞬間、今まで感じたことのない悪寒が背筋を通り抜けた。

 

 

「憐れんだね。俺を!」

 

 

何かがヤバイと感じた。先ほどと何かが違う。彼は口を開き、

 

 

「ああ。確かに俺は神器を持たぬし、貴様らのように強靭な身体を持っていない。だからこそ、俺はお前らが羨ましい(・・・・)ぞ!」

 

 

言い表せない不安が押し寄せてくる。周りの何人かはこの圧に呑まれ始めている。いかん!と思い俺は槍を構え、この男に一突きしようとした。だが、俺の攻撃は不発に終わった。ヤツがとある詠唱をした瞬間、本能的に後ろに下がってしまったからである。

 

 

 

ああ、羨ましい!羨ましいぞ!英雄の生まれ変わり?英雄の子孫?なんだそれは!そんな理由で肉体が強靭になるなら平等ではないだろうが!奴等が俺を見下しているのも我慢ならん。何が神器だ!神器を持たないから雑魚扱いだと、笑わせるなよ。自分達は神器の被害者だから同じ神器使いを助けようだと?貴様らは神器とか言う玩具の力に酔っているだけだろう?英雄なら万人を救って見せろ!貴様らが英雄と言うなら何故あの時(・・・)俺を救ってくれなかった!

奴等は屑だ!自分達は英雄と嘯きながらやっていることは屑そのものだ。何故わからぬ!貴様らの行いが世界を混乱に導いているのだと!

俺は俺の行い生き方が万人には屑そのものだと理解はしている。俺など総じて塵屑だ。だが、俺は生きるのだ。

我も屑。彼も屑。故に平等に病みを与えよう!

 

 

 

「『干キ萎ミ病ミ枯セ。盈チ乾ルガ如、沈ミ臥セ』」

 

「『――急段、顕象――』」

 

「『生死之縛・玻璃爛宮逆サ磔』」

 

 

ここに同じ名だが、仕様が異なる略奪に特化した二代目の力ではなく、病みを与えることに特化した初代の力が発動した。

 

 

 

危険な雰囲気を纏ったその男が何かしらの力を発動した瞬間、何かおぞましい物が辺りに出現し始めた。そのおぞましい物はこちらに向かって広がってくる。俺は咄嗟に後ろに下がった。何人かは神器でそれらを振り払おうとしたしたが、それらに触れた瞬間、

 

 

「あ、あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」

 

「痛い、痛い、痛い!」

 

「リーダー、助け、ァァァァ!」

 

 

彼らは体を縮こまらせ、地面で転がり回っていた。俺は男に向かって、

 

 

「貴様!一体何をしたァ!」

 

 

男は人を不安にさせる笑顔で、

 

 

「なに、俺の病みの一端を与えただけだ。お前達は英雄なのだろう?当然、俺のような塵屑に宿る病魔程度耐えきれる筈だろう?なぁ?」

 

 

俺は男に気を取られていて、彼らと同じそれをくらってしまった。

 

 

なんだこれは、痛い、こんなもの一人に宿る量ではないだろう、痛い痛い、それにこれが一端だとあり得ない!ぐっ、駄目だ!痛い痛い痛い、痛みしか考えられなくなる!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ

 

 

「「曹操!」」

 

 

他の幹部が彼に駆け寄り回復魔法やアイテムを使い始めた。それにより、

 

 

「ぐっ、お、俺は?」

 

 

彼らは治療を一端終え、曹操に語りかけた。しかし、

 

 

「曹操、大丈夫か!」

 

「あ、ああ。なんとか、っ!グァァァ!」

 

 

治療を止めて少ししたらまた発症し出した。彼らは再び治療を再開する。曹操は治療を続けることにより耐えきれる程度の痛みになった体を起こし、男の方を向いた。男は歪んだ笑顔のままその場を動いてなかった。

曹操は幹部に、

 

 

覇輝(トゥルース・イデア)を使う。治療を続けてくれ!」

 

 

幹部は今の状況を乗り越えるにはそれしかないと思い治療を続行した。

 

 

「ぐっ、俺も奥の手を使わせて貰おう!」

 

 

曹操は槍の穂先を自分の心臓の位置へ向け、

 

 

「槍よ、神を射抜く真なる聖槍よ」

 

「我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの狭間を抉れ」

 

「汝よ、遺志を語りて、輝きと化せ」

 

 

曹操はこの状況を打破するために一発逆転の可能性があるこの力を発動しようとした。しかし、この時彼は致命的なミスを犯した。それは希望(・・)を抱いてしまったことだ。かつて逆十字の中で希望を抱くことが発動条件の一つである力の使い手がいたということを。その男、四代目逆十字たる緋衣誓慈はその力さえも使えるということを、

 

 

「築基・煉精化気・煉気化神・煉神還虚・還虚合道――」

 

「以って性命双修、能わざる者墜ちるべし、落魂の陣――」

 

 「ーー急段、顕象ーー」

 

「雲笈七籤・墜落の逆さ磔」

 

 

覇輝(トゥルース・イデア)という【都合のいい希望を抱いた者を現実にぶつける】という力が発動した。

 

それに、その詠唱の一部である【落魂の陣】というところに曹操は反応した。その概要を知っている者だからこそ、不安を抱いてしまった。

その瞬間、曹操は奈落にいた。

 

 

落ちる

 

落ちる

 

落ちていく

 

 

彼の体感でそれだけでも数時間に及ぶように感じた。

仲間が助けてくれると希望を抱けば彼を痛みが襲う。希望を抱けば抱くほどダメージとなって彼に襲いかかるのだ。

その内曹操は考えることを放棄しだした。

 

そして、曹操の意識は完全に途絶えた。

 



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四夢 到達とタタリ

ヤツ、曹操の意識が消えたことを感じた誓慈は、曹操が消えたことで自らの中に宿るものを感じた。

 

 

「これはヤツが持っていた【黄昏の聖槍】とか言うやつか?ハハッ!ありがとう曹操とやら、お前は俺の役に立ったぞ!」

 

 

誓慈の手には黄金の光を放つ槍があった。

 

 

「それは曹操の!貴様アイツに何をしたァ!」

 

 

英雄派の幹部は誓慈が彼らとリーダーの槍を持つ時点で何かしら察したが認められなくて問いかけた。

 

 

「ああ。そういえば貴様達もいたのだなぁ。お前らのリーダーなら消えたよ。」

 

 

誓慈は彼らのことを特に考えてはなかった。曹操を下した瞬間、甘粕とのリンクが消えた。しかし、邯鄲の夢は使うことが出来ていたからだ。すると声が聞こえた。

 

 

『おめでとう。君は試練に打ち勝った。これからは五代目盧生「逆十字」と名乗るといい。』

 

 

阿頼耶(アラヤ)からの声に誓慈は笑った。逆十字初の盧生となったことを歓喜した。盧生となっても彼は変わらない。彼の生は痛みと共にあり。そして誓慈は手の中の槍に目を向けた。

 

 

「まず、手始めに!」

 

 

槍に自らの病めを流し込んだ。無限に存在する病みの一端を流し込んだ所で病みの総量は変わらない。病みを流し込まれた槍はその姿を変えていった。

赤黒く色を変えて、さぁ、皆に与えてやろう。俺の(やみ)を!

 

 

「黄昏の聖槍が姿を変えていく!」

 

「色も形も!」

 

「あれはもう聖槍ではない魔槍だ!」

 

「魔なんてそんなものじゃないそれ以上に邪悪だ!」

 

 

周りも聖槍が姿を変えていく様子に驚き騒いでいた。

誓慈は槍を彼らに向け、

 

 

「盧生となったのだ。【廃神(タタリ)】くらいは確保しなければな。」

 

 

と言い、近場にいた英雄派のジャンヌを貫いた。

 

 

「えっ?」

 

「お前の魂を核とさせて貰おう。」

 

「キャァァァ!」

 

 

ジャンヌは黒い炎に包まれた。炎が止むとそこには容姿や服装が変わった女性がいた。

彼女は黒い服を纏い、龍を型どった紋章を記した黒い旗を持ち、邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 

「ジャンヌ?」

 

 

英雄派の幹部の一人が彼女の名前を呼んだ。すると、

 

 

「ハッ!私をあの聖女様と一緒にしないでくれる?私は龍の魔女、【廃神・魔炎聖女(ジャンヌ・オルタ)】!」

 

 

彼女は別の存在になったのだ。

それを見て信じられないように英雄派の面々が騒ぎ始めた。

 

 

「何いってるんですか?ジャンヌさんは俺達の幹部でしょ!」

 

「そうだよ!一緒に曹操の仇を討ちましょう!」

 

「お、おお!素晴らしい!聖処女よ!共に神に報復を!」

 

 

英雄派の面々は動揺が酷く、一人は歓喜していた。

【廃神・魔炎聖女(ジャンヌ・オルタ)】はクスリと笑い、彼らに向けて手を向けた。

英雄派のこの事が信じられない者達は、その手をとろうと歩み寄った。

 

その光景を眺めていた他の者達は彼女が一瞬邪悪な笑顔に成ったことに気づいた。

 

 

「ダメだ!止まれぇ!」

 

 

制止の言葉も間に合わす、彼らは【廃神・魔炎聖女(ジャンヌ・オルタ)】に塵も残さず燃え尽きた。

 

 

「アハハハ、あ~あ。信じた相手に殺される者を見るのって最高!殺したのは私だけどぉ!」

 

 

彼女は本当に愉しそうに嗤っていた。彼女がこうなった原因の男もこちらを嘲笑っていた。

 

 

「オルタ。」

 

「ハイハイ。わかりましたよ!さぁ、次は貴方達の番ですよ!悲鳴を聴かせてちょうだい!」

 

 

彼女は元仲間を嬉々として虐殺し始めた。

何人かの者達が、

 

 

「幹部の皆さんは撤退してください!ここは俺達が抑えます。時間稼ぎが精一杯だと思いますが、お願いです。生きてください!」

 

 

幹部の者達は「待て」と言おうとしたが、それよりも早く転移させられた。

 

 

「「「行くぞぉ!」」」

 

 

幹部を逃した英雄派の面々はここで散った。

 

 

 

そして、

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ。」

 

 

かなり離れた場所に跳ばされていた幹部達が戻ってきた。しかしそこにはもう誓慈やジャンヌは居なかった。ほとんどの英雄派の構成員は灰とかしており、残った者達ももう助からない傷を負っていた。彼らは死にかけている者の側へ駆け寄った。

 

 

「あっ、ああ!何で!俺たちを逃がした!俺達はお前らを道具扱いしていたんだぞ!」

 

 

幹部の一人は本音をさらけ出した。それに対し、

 

 

「解ってました。でも!貴方達は俺達の希望です。だから!俺達は皆さんが英雄になる手助けが出来たら良かったんです!」

 

「そうです。私達にとっては皆さんが、英雄なんです。」

 

「僕達は貴方達と一緒に行動できて悔いはありません。」

 

「「「だから!皆さんは生きてください。」」」

 

 

そう言って彼らは息絶えた。

幹部達は涙が止まらなかった。自分達をこんなに思ってくれていたのだから!

 

 

「俺達はお前らの死を無『カット!』にしな、えっ?」

 

 

唐突に声が響き渡った。

 

 

『Oh、キミタチのお蔭でいいフィルムが撮れたネ~!』

 

 

空中に座っている男がカメラを幹部達に向けながらそう言った。

 

 

『だけど、you達の出番はもう無いシ~、用済みの役者は退場して貰おう!』

 

 

その男は愉しそうに笑っていた。

幹部達は彼から変容したジャンヌと同じ感覚を得ていた。故に彼らは警戒していた。そんな彼らに男は、

 

 

『アッ、でも、キミタチの最期は記録してあげよう、さぁ!サイコーにスペクタクルなショーを始めようジャナイカ!』

 

 

男の名はベトール。元英雄派の構成員にて現代では無用となった神器である【遠くの姿見】という今でいうドローンそのものを宿していた故にハズレ神器として見下されていたのだ。それが今回、誓慈に自ら仕えることで廃神としてだが強力な力を手に入れたのだ。




祝PSO2EP5実装!しかし、ダウンロードが終わらねぇ!


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五夢 増殖恐怖のマスコット

『オイオイ、どうかしたのかヨ!英雄派の幹部が俺のような相手にビビってんのカヨォ!』

 

 

彼等の前に具現した元仲間だった彼は、お荷物でただ飯ぐらいだった彼は、今幹部達よりも強大な存在として彼等の前に立っているのだ。

 

 

『ん?ん~~、おいおい、マサカとは思うがヒビってんのカヨォ!』

 

 

そして彼は幹部達を見渡した。彼の言葉に動揺している者もいる。

 

 

『マジかよォ!あ~、オレの手で終わらせようかと思ったガ、ほらヨォ!』

 

 

彼の言葉と同時に爆発が起こった。爆発の中心に光が集まり何かを形成していく。

 

 

『オマエラ、フィルムは撮っておくから、こいつの殺られて無様な死に様を!見せてくれヨォ!』

 

 

光が形成し、その生物?の形がわかってくる。

上半身は顔だけで、巨大な丸いメロンパンのようにむくんでおり、まるでサメのような鋭い歯が等間隔に並んでいる。更には子供がひきつけを起こしかけない怪しさに満ちていた。

 

 

「熊?いや違う!あの体は!」

 

 

その姿を見た幹部達は何かが削られていく感じを味わった。

それもそうで首から下はぬらぬらと不気味な光沢を放ち、人の腕ぐらいある触手が無数に生えているのだ。

触手の内、右腕にあたる部分には麺切包丁、左腕にあたる部分には真奈瀬と書かれた蕎麦の入った丼を持っている。移動する際にはぐにゃぐにゃと怪しげな足取りで、ねちゃねちゃと音を立ててこちらに向かって来ている。

 

 

そしてその生物?は口を大きく開き、

 

 

「僕はお蕎麦の妖精、そばもん!」

 

 

この生物の名前はそばもん。鎌倉にある真奈瀬という蕎麦屋のマスコットキャラクターである。因みに、この真奈瀬という家系の女性はこのそばもんを可愛いものと認識しているという不可思議な家系である。

 

 

「って!何処が妖精じゃぁぁぁ!妖精つーか、お前は!熊クトゥルーだ!」

 

 

彼?の見た目に英雄派の幹部達はキレて正論を言い放った。

 

 

「ソババン」

 

 

そばもんは項垂れた。そして、

 

 

「いいもん。いいもん。そばもん、判って貰えなくてもいいもん。そばもんは蕎麦神様に仕える妖精だそばもん!」

 

 

そばもんは拗ねた。

すると英雄派の幹部の一人が、

 

 

「って!語尾がそばもんかよ!キャラが安定してねぇぞ!固めてから来いよぉ!と言うか蕎麦神様だと?んな神存在しねぇだろ?」

 

 

こう言い放った。それに対してそばもんは、

 

 

「いるもん。いるもん。蕎麦神様はいるもん!蕎麦神様は全長500メートルの不定形で七色に光る触手持って………………。」

 

 

そばもんの説明を聞いている者達、英雄派の幹部達とベトールは思った。

 

 

「『(それって蕎麦神じゃなくね?)』」

 

 

この時、彼らは敵対していても心が一つに成ったのだ。

 

 

幹部の一人はこの時こう思った。

 

 

「(あれ?こいつ油断しすぎじゃね?)」

 

 

それを他の仲間に小声で言うと、彼らは頷き、数秒後、そばもんに向かって総攻撃した。

 

 

しかし、

 

 

「えっ?何かした?」

 

 

そばもんにダメージは無かったのだ。更には、

 

 

「え~と、えい!」

 

 

と言う掛け声に応じてそばもんの触手はぐしゃりとのめりながら英雄派の幹部の一人を捕らえた。そうして、

 

 

「話の途中で攻撃する悪い子にはお仕置きだそばもん!」

 

 

そばもんはそう言って片手に持つ麺切包丁でその者の、

 

 

ザシュッ

 

 

首を斬った。

 

 

「そ~ば~ば~ん!」

 

 

そばもんのもう片方の手にある丼ぶりにその死体は吸い込まれた。そして、

 

 

「次は君だ!」

 

 

別の者が触手に捕まる。そうしてそばもんは捕まえた者に丼ぶりを近づけ、

 

 

「さ~あ!召し上がれ!」

 

「ぐっ、や、やめ!」

 

 

捕まえられた者は必死に抵抗したが、元仲間が入った蕎麦を無理やり食べさせられた。

 

 

「ぐっ、お、おえっ!ん?な、なんだ!うわぁぁぁぁ!」

 

 

その蕎麦を食べさせられた者は身体の異常を訴え、息絶えた。

 

すると突如死体より、

 

 

グボォグチャリグチャリ

 

 

という音を響かせ触手が死体の内側より這い出てきた。その触手は集束し姿を変えた。

 

 

「僕はお蕎麦の妖精、そばもん!」

 

 

彼を無惨な死体に変えた化け物が増えたのだ。

すると、新たに現れたそばもんの所にもう一体が近づいた。

 

 

「僕もお蕎麦の妖精、そばもん!」

 

「「そばばん!」」

 

 

その二体のそばもんは挨拶し、幹部達の方を向いた。

幹部達は恐怖で動けない。そんな彼らのもとにぬちゃりぬちゃりと音を発てて近づくそばもんは恐怖そのものだった。

 

そして、その数時間後にはこの場に更に三体のそばもんが誕生したのだった。




やっと書けた。
にしてもFGOの水着ガチャ当たらないな。メイドとメジェトリスが来ただけましだが。


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六夢 それぞれの幕間

幕間のようなもの。


「はっ、はっ、はっ。」

 

 

彼女は暗闇の中を走っている。

黒い影、実体の無い無数の何かが追ってくる。

 

 

「まだ!追ってくる!」

 

 

彼女の後ろからは複数の虫が飛ぶ音が聞こえてくる。

追ってくるのは虫の集合体、しかし、ただの虫の集合体ではなくハエやゴキブリといった害虫の集合体だ。

そして、

 

 

『ああ!やっとだ!やっと、君に会えるよ!僕のマリア!待っててね!近い内に会いに行くから!』

 

 

聞くのも不快な虫の群れがざわめく様な声が聞こえると視界が白く染まり、夢から覚めるのだ。

バサッと彼女は飛び起きる。

 

 

「ハァー、ハァー、ハァー。」

 

 

彼女は荒い息を吐いた。

すると、彼女の左手の甲が光り、

 

 

『どうした相棒。またあの夢か?』

 

 

彼女に宿っている神器である赤龍帝の籠手に封印されている赤き龍ドライグが話しかけてきた。

彼女は頷き、

 

 

「前は感じなかったけど、何か近づいてくる感じがするかな。」

 

『まぁ、何か有ったら俺を頼れ、俺たちは相棒だろう?』

 

「うん。ありがとう、ドライグ!」

 

『ふん。』

 

 

赤き龍は照れながら彼女の内へ戻っていった。

 

 

彼女の名は兵藤瑞希。グレモリー眷属の兵士にして今代の赤龍帝である。

グレモリー眷属として堕天使を優位に殲滅し、主の婚約者のフェニックスを華麗に討ち果たした者でもある。

因みに、最近の悩みは転生して長年、女として暮らしてきた結果、思考だけでなく口調や倫理観も女に成ってしまったことだ。更に、主の元婚約者から毎週プロポーズを受けていることぐらいだ。

 

そうして、瑞希は着替えて学校へ登校した。

 

 

 

所変わって鎌倉

 

 

誓慈は昼間なのに閑古鳥が鳴いている蕎麦屋にいた。

 

 

「う~ん。ナァ、リーダー。ここ、こんなにも旨いのにガラガラなのは何故なのかヨォ?」

 

 

先程から黙々と蕎麦を食べていたベトールが疑問をあげた。

 

 

「あれのせいだ。」

 

 

誓慈が指差した方向にはベトールが呼び出したことのある生物?であるそばもんがいた。

 

 

「チョッと待てヨ。オレ、力は使ってねぇヨ!」

 

「あれがオリジナルだ。因みにここのマスコットだ。」

 

 

ベトールは声を荒上げ、誓慈は補足した。

 

 

「なっ、ナァァァァ!」

 

 

ベトールは驚き大声を上げた。すると、

 

 

「落ち着きなさいよ、ベトール。他に客は居ないとはいえここは飲食店よ。」

 

 

共に蕎麦を食べていたジャンヌ・オルタは文句を言った。それに、

 

 

「オオウ、わかったヨ。」

 

 

ベトールも窘められる。

 

 

「それに……………可愛いじゃない!」

 

「「ハァッ?」」

 

 

まさかの発言に二人は声を揃え上げた。

そうして、

 

 

「「お前、正気か?」」

 

「何言ってんの?私たちは元から正気では無いけど?」

 

「「それもそうか。」」

 

 

そうしてこの後、そばもんが可愛いのか、そうでないのかの疑問が討論された。その討論は蕎麦屋の娘が学校から帰ってきた時から更に苛烈となったがそれは別のお話。

 




FGO メイド・オルタの最終再臨姿がエロい件について。


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七夢 第三の顕現とじゅすへる

というわけで原作入りです。
エクスカリバー編は一話で終わらします。


グレモリー眷属は駒王学園の前に来ていた。

彼らは教会より聖剣を強奪したコカビエル一味の野望を止めるためにここに来たのだが、

 

 

「何かがおかしい。結界の反応も無いし何の力も感じない。」

 

 

彼らの主のリアス・グレモリーはこの状況の分析しようとした。しかし、何の成果も上げられなかった。

すると、彼女に一人の少女が近づいてきた。

 

 

「リアス!」

 

「ソーナ!これはどういうことなの?」

 

 

近づいてきた少女もといソーナ・シトリーに尋ねた。しかし、

 

 

「わかりません。私達も調べてみましたが何故こうなっているのか検討もつかないのです。」

 

「とういうことは中の様子はわからないの?」

 

「いえ、入り口付近ならわかりました。ただ、現在。中は別の空間が広がっています。出入りは可能だったのでわかったことですが。」

 

 

ソーナ・シトリーの調査内容は、

先ず、この先は別の空間である。

次に、入り口は出入り可能。

最後に、安全が確認できなかったので奥には行ってない。

 

ということである。

 

 

「ソーナ!私達は行くわ!」

 

「なっ!危険です。」

 

「わかってるわよ。でも、私はコカビエル達を止める!」

 

 

リアス・グレモリーの意思は硬い。それ故止めることは不可能だと悟ったソーナ・シトリーはただ一言、

 

 

「わかりました。では、無事を祈ってます。」

 

 

ソーナ・シトリーの言葉を背に聞き、

 

 

「グレモリー眷属、行くわよ!」

 

「「「応!」」」

 

 

 

入り口より入った空間は、神殿もイメージするような場所だった。

白く静かなそこにはやはり人の気配は無かった。

 

 

「朱乃。索敵を!」

 

「はい。部長。」

 

 

リアス・グレモリーは自らの女王である姫島朱乃に索敵を命じた。

 

 

「はっ。部長、奥に生命反応が!」

 

「行くわよ!」

 

 

彼女達が向かった場所には玉座があり、その前にコカビエル一味が息絶えていた。

 

 

「何で、コカビエル達が!」

 

 

リアス・グレモリーは声を荒上げた。

すると、この惨状の原因が声を発した。

 

 

「ふむ。来たか。」

 

 

声が聞こえた場所を見ると最初に目に付いた玉座に女が座っていた。

その物は金の髪を靡かせ、軍服を着こなし、鞘に収まった軍刀を身体の前で杖のように手を支えていた。

 

 

「貴女は何者。何処の勢力の者なの!」

 

 

リアス・グレモリーは問いかけたが、答えは帰ってこず。その者は別の言葉を発した。

 

 

「待っていたぞ。水樹(みずき)。」

 

 

その言葉に兵藤瑞希は一瞬、悪夢を思い出したが違うと断定した。

 

 

「貴女は誰?」

 

 

瑞希は彼女に何か懐かしいものを感じたため、そう問いかけた。

 

 

「む。そうか。ここはあの時より更に先の時代(ばしょ)か。」

 

 

彼女は何か納得するのように呟いた。そして、

 

 

「では、名乗ろうか。我が名はクリームヒルト・レーベンシュタイン。近しいものにはヘルヘイムと呼ばれている。」

 

 

彼女の自己紹介を聞き姫島朱乃が、

 

 

「何ですって!柊四四八と共に世界大戦の危機を救った。あの!クリームヒルト・レーベンシュタインですって!」

 

「そうだ。盧生である私は邯鄲を通してここに存在するため本人である。」

 

 

彼女の名前に反応し、彼女もそれにお答え補足した。

 

 

「それに水樹(みずき)。いやこれは違う。兵藤瑞希よ。君の先祖である世良水樹の友でもある。」

 

 

その重大発言はグレモリー眷属達を騒がせた。

 

 

「瑞希!貴女は柊四四八の仲間の英雄の子孫だったの?!」

 

「瑞希先輩、本当ですか?」

 

「あらあら、瑞希ちゃん。どうして教えてくれなかったの?」

 

 

グレモリー眷属の言葉に問い詰められているのを見てクリームヒルトは、

 

 

「そう責めないで欲しい。瑞希はこの事を知らされてなかったのだ。祖父の家系を知らせるなら祖母の家系も知る必要があるのだから。」

 

「祖母の家系?」

 

 

クリームヒルトの言葉に疑問を覚えたが、

 

 

「その話は両親に聞くといい。本題に入ろう。」

 

 

クリームヒルトは息を整え、

 

 

「先ず、私は本来君たちの前に現れるつもりは無かったが状況が変わった。ただ一つのことだ。大雑把に言うと、【邯鄲】が復活したのだ。」

 

 

今の世界は邯鄲のことは物語として伝わっている。少しのことは一般人でも知っているほどである。

 

 

「今回、邯鄲が復活した理由が、瑞希、君に関係しているということだ。私は公平な立場にいるため理由等は教えられないが警告として君達に告げに来た。」

 

 

第三盧生が直々に来たのだ。何か重大なことであると感じた瑞希は、クリームヒルトの言葉を待った。

 

 

「君達に告げたいことそれは、新たな盧生の誕生だ。本来あり得ないことだ!逆十字が盧生に!成るなど!」

 

 

えっ?盧生が誕生した。更に逆十字って確か数多の病みに犯され、盧生を目指した物語の悪役!数多の病み?まさかっ!

瑞希を恨む彼を思い浮かべた。

すると、声が響き渡った。

 

 

『行ってこい。蝿声厭魅。』

 

 

かつて自分が陥れた弟の声が彼女を恐怖に陥れた。

 

 

「あ"、あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁーーーっ!」

 

 

だが、それだけでは無かった。

瑞希に逢いたがっていた悪夢が解き放たれたのだ。

 

 

『さんたまりあ~、うらうらの~べす!』

 

『さんただ~じんみちびし、うらうらの~べす!』

 

 

不気味な声が聞こえる。この声は瑞希にとって悪夢そのもの。だがら、

 

 

「イヤァァァ、来ないでぇぇぇ!」

 

 

瑞希は叫ぶ。これから来るものを見たくもないために、これから来るものの声を聞きたくがないために。しかし、それは無駄に終わる。

そして、顕現するのは、神祇省より祟りの最上級に指定されている存在。第八等指定廃神・蝿声厭魅(さばえのえんみ)が、

 

 

『あんめいぞぉぉぉ、ぐぅろぉぉぉりあぁぁぁす!!!』

 

 

この世の汚物を凝縮した様な存在がここに顕現したのだ。

 

 

『ああ!逢いたかったよ!僕のマリア!君に逢いたくて主から彼のもとに出向させて貰ったんだから!』

 

「そうか。君は今回は甘粕の下では無いのだな。」

 

 

瑞希の前に立ったクリームヒルトはそう問いかけた。

 

 

『ん?ああ!君か!そうだよ。彼は面白いんだ!考え方は似ていてもその本質は異なる。今の彼は病みを治す気は更々無いからね!セージは、やっぱり逆十字は面白い!』

 

「そうか。現れて悪いんだが、此度は退いてもらえると助かるのだが。」

 

 

クリームヒルトの提案に蝿声厭魅否、神野明影はうーんと考える仕草をし、

 

 

『いいよ。僕でも盧生と戦うのは歩が悪いしね。じゃあね、僕のマリア!あっ、そうだ。忘れ物。』

 

 

神野はコカビエル一味のフリード・セルゼンの死体を持って虚空に消えていった。

そして、

 

 

「すまないが瑞希。わたしが出来るのもここまでだ。健闘を祈らせてもらう。」

 

 

そう言ってクリームヒルトはここから去っていった。

 

 

ここにエクスカリバー強奪事件は終了した。

しかし、本来なら起こり得なかったことが起きてしまう。それは、

 

・コカビエルに早期死亡による神の不在暴露が起きず、教会二人組は聖剣を持って帰還。

 

・バルパーと木場裕人の問答が無かったため禁手に至らず、聖剣に対しての憎悪持ち続けることになったこと。

 

・フリードの死亡とその死体の持ち去り。

 

主にこれらのことにより彼女達の物語は更に過酷となる。

 

 

 

「あれ、オレっち死んだ筈じゃあ。」

 

「へ~。なら殺しまくっていいの!」

 

「カカカ、殺戮を楽しませてもらおうかぁ!」

 

 

そうして殺人鬼は殺塵鬼と成った。




これで廃神は
・魔炎聖女 Fate
・幻想監督 PSO2
・殺塵鬼 シルヴァリオ・ヴェンデッタ

出向者
・蝿声厭魅 戦真館

の四体です。じゅすへる以外に四体出す予定が一体決まらないのでどうしようか迷い中です。気分次第でそばもんが廃神に昇格するかも。


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八夢 祖と魔王

魔王再登場。


兵藤家にて

 

 

そこには両親に詰め寄る少女がいた。

 

 

「母さん!父さん!お祖父ちゃんやお祖母ちゃんの家系のこと!教えて!」

 

 

二人はビックリして、

 

 

「「どうしてその事を!?」」

 

 

瑞希はそんなことどうでもいいように、

 

 

「いいから!教えて!」

 

 

彼女のその懸命な姿に二人はう~んと考えてため息を吐いた。

そして彼女の父が、

 

 

「わかった教えよう。」

 

 

了承した。

そして彼女は父の語りを一字一句逃さぬように真剣に聞いた。

内容は以下の通り

 

 

祖父の名前は世良信明。

祖父は第二盧生である柊四四八の学友にして戦友である世良水樹の子孫。

 

 

祖母は旧姓は緋衣で名前は南天。

祖母は元三代目逆十字であり、柊四四八の異母兄弟である二代目逆十字である緋衣征士郎の子孫。

 

 

まとめるとこの通りだった。

因みについでで教えてくれたことだが、一誠が倒れたとき助けを求めたのが祖母の高校時代の先輩、石神静乃である。彼女は柊四四八の仲間である壇狩摩(だんかるま)の子孫であり、この国の裏組織、正確には裏の存在に対抗するための組織である神祁省の重鎮だそうだ。

 

 

後日、部長に神祁省のことを聞くと、

神祁省は国の機関であるため日本国内においては有名で悪魔、天使、堕天使達も彼らと交えるのは避けるほどらしい。

 

 

両親に話を聞いた夜、私は夢を見た。

そこには私に似た人物と英雄柊四四八達があるもの達と対峙していた。

一人は影で顔を確認することはできないが、もう一人否、もう一体はあの神野明影だった。

それから私は彼らの戦いを眺めていたが、

 

 

「おや?」

 

 

誰かの声が聞こえると映像が止まった。

そして背景が真っ白に成ったと思うと、何処かの部屋の中にいた。

 

 

『ここは何だ?精神世界ではないのか?』

 

 

ふと、ドライグの声が聞こえ、声がした方を見ると蜥蜴サイズのドライグがいた。

 

 

「ほう。現実に存在した龍を見るのはこれが初めてか?空亡の神の姿はどちらかと言えば竜だからな。」

 

 

いつの間にか前方に人がいた。

その姿に瑞希は驚いた。

何故なら彼は一般人でも知る有名人だからだ。英雄柊四四八の敵である第一盧生、魔王甘粕正彦なのだから!

 

 

「貴様がもう一人(・・・・)の我が友の子孫か。ふむ。容姿からして柊四四八の仲間の少女の血を深く継いでいるようだな。」

 

 

甘粕からは敵意は発せられてないようだが、その素の威圧感により喋ることが出来ない。

すると瑞希を代弁するかのように、ドライグが話しかけた。

 

 

『魔王と呼ばれし人間よ、貴様は何故相棒を招いた?』

 

 

ドライグの問いに甘粕は、

 

 

「なに。貴様の弟は俺が求める楽園(ぱらいぞ)に相応しい存在だった。ならばお前はどうだろうかと見極めに来たのだァ!。」

 

 

甘粕は片手を大きく挙げ、

 

 

「さぁ!超えて見せろぉ!お前が人でなくなろうとも我が友の子孫だ。俺にお前を愛させてくれぇぇぇ!」

 

 

部屋は光と共になくなり彼女は夜の森にいた。

彼女は視線を感じ空を見上げた。

すると、

 

 

「目?」

 

 

女陰めいた眼がこちらを覗いていた。

眼が開いたり閉じたりしながら声が聞こえてきた。

 

 

「か~ご~め、か~ご~め。」

 

『か~ごのな~かのと~りは。』

 

「い~つ、い~つ。」

 

『で~あ~う。』

 

「よ~あ~けのばんに。」

 

『つ~るとか~めがす~べった。』

 

「うしろのしょうめん、だ~あ~れ。」

 

 

少女のような声と老人のような声が交互に聞こえてきた。

 

 

「あはは、ははは!」

 

『あひゃひゃひゃひゃひゃ!』

 

 

その声は絶望そのものだった。

 




やべぇ、ネギまの方思い浮かばない。大雑把には考えているけど内容は難しい。


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真短編
アナザーエデン 人理を救う猫


ふと、思い付いたから書きました。続きません。


声が聞こえる。

 

 

助けを呼ぶ声が聞こえる。

 

 

僕は消えそうな彼女の魂を掬い取る。

 

 

大丈夫。

 

 

君は消えない。

 

 

安心して、君は死ななかったことになる。

 

 

本当は僕のエゴで君たちの世界に干渉することは出来ない。でも、人理定礎が崩れた今ならそれが出来る。僕は⚫⚫猫⚫⚫⚫。君を助けた者だよ。

 

 

え?聞こえなかった?ごめんね。まだ、そちらの世界に上手く干渉できたとはいえなかったみたいだ。

 

 

え?ああ大丈夫だよ。僕達はまた、出会うだろう。そのときに改めて名乗ろう。でも、君が僕の正体に気づくまでは僕は俺として接しよう。

 

 

ああ。もう時間だ。君は彼らの元に戻るだろう。でも、君は彼らの前で消滅した。その事実だけは残っている。それでもなお、君は生を望むかい?

 

 

うん、わかったよ。さあ、目覚める時だ。

 

 

あっ!忘れてたけど着地には気を付けてね。

 

 

 

「えっ?」

 

 

青い光が彼女を包む。

 

 

一瞬浮遊感が身を包む。

 

 

そして、

 

 

「きゃあ!」

 

 

地面にダイブした。

 

 

彼女は周りを見渡した。そこは、彼女にとって全てだった。信頼していたが裏切られた技師や頼りないけど優しい医師と共に過ごした優しい日々が甦る。

 

 

「私は、ここに帰って来れたのね!」

 

 

ここに立った最期は彼女は失敗は許されないことを行おうとしていた。しかし、それは失敗した。人理を守ろうした彼女は、友であり師である大事な人によって、

 

 

燃やされたのだ。

 

 

その宝を、その命を、全てを、

 

 

そして、人理を焼却されたのだ。

 

 

身を焦がす炎を彼女は覚えている。

 

 

肉体が滅んだ後、その意識が消失していく恐怖を彼女は覚えている。

 

 

彼女は手を伸ばした。

 

 

信じられなくて、全幅の信頼を行う友が裏切ったことが信じられなくて、

 

 

自分を助けようした未熟者達よりも、裏切った相手に向けて、

 

 

そして、近づいてくる声に思考が中断された。ドアが開かれる。そこにはかつて未熟者だった彼とが成長したと思われる雰囲気に包まれている彼と彼に付き従う英雄達がいた。

 

 

彼は私がいるのをその目で捉えた。

 

 

彼はとても驚いていた。共にいた少女は私を見て、その目に涙を浮かべ、

 

 

「所長!」

 

 

ああ!私はこんなに近くに信頼出来る者がいたのだ。

 

 

「「「オルガマリー所長!」」」

 

 

ああ!私はこんな近くに私を認めてくれていた者達がいたのだ。

 

 

ああ!本当に私は気づかない内に欲しかったものを手に入れていたのだな。と、感じた。

 

 

 

 

「君の助けを求める声に導かれた。」

 

 

古風な格好した、

 

 

「俺の名はアルド。」

 

 

剣を持った青年は彼女の嘆きに現れた。

 

 

「世界を救う救世主(セイヴァー)だ。」



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灰色の音楽家

ふと思いついたネタ。原作D×D オリ主→サリエリ。イッセー→アマデウス


ああ!

 

何故だ!

 

何故貴様は音楽を辞めてしまったのだ!

 

かの天才の再来と呼ばれし、貴様が何故!

 

私は貴様に追い付くため、努力し続けてきたのに!

 

なに?音楽よりエロスだと!

 

ふざけるな!ふざけるなよ!

 

 

私はこんな奴に憧れていたのか!

 

私はこんなクズに追い付こうとしていたのか!

 

 

 

赤い光が私を包む。私の慟哭が形をなして我が身を包んでゆく。

 

 

 

ああ。

 

そうか。

 

そうだったのか。

 

私は貴様を殺すために存在していたのか。

 

 

私は堕ちた貴様を殺そう。

 

私は我が存在にかけて貴様を殺そう。

 

 

だからこそ、貴様が人類悪の一部になる前にその生を終わらしてやろう。

 

 

だから待っていろ、イッセー(アマデウス)

 

 

 

 

「もう辞めろ○○!」

 

 

楽器の意匠がみられる赤き龍の鎧を纏った男が叫んだ。

 

 

お前(きみ)アイツ(かれ)じゃないだろ!」

 

 

しかし、その叫びは彼と相対する赤き異形には届かなかった。

 

 

「私は貴様を殺すもの。私は天才を殺した者。私の名はサリエリ。貴様を恨み殺す者。いや……私は何を言っている。私とは……何だ?私は……誰だ。」

 

 

「わからない。だが、私は貴様を殺さねばならない。それが私だ。それこそが私なのだ。ならば!私は他のものはいらない。貴様を殺すことそれだけが私の存在意義なのだ。故に、」

 

 

「私は貴様を殺すぞイッセー(アマデウス)よ。」

 

 

「吾は死だ!」

 

「吾は神に愛された者を殺すのだ!」

 

「|至高の神よ、我を憐れみたまえ《ディオ・サンティシモ・ミゼルコディア・ディ・ミ》」

 

 

赤き異形は精神と肉体の双方を蝕む破滅の曲を奏でた。

その調べを聴くものが消えた時、彼の前には彼が死を望んだ者の死体が存在していた。

 

 

「ああ。やった!やったぞ!私は彼を殺せたのだ!ああそうだ!私は!私は!私は……何をしたのだ?」

 

 

「私は友を殺した。何故殺さねばならなかった?私はサリエリ、アマデウスを殺す者。いや……違う彼はアマデウスでない。私はサリエリであるがアントニオ・サリエリではない。私の名は……何故だ!何故思い出せない。わ、私は……誰なのだ!」

 

 

赤き異形は赤き龍に感じていた感情を目的の達成のためほとんど失っていた。しかし、彼は彼に宿る霊器に呑み込まれ、己の名どころか己の意思すらも霊器によって上書きされていた。

 

 

自分の名が思い出せない。

 

 

家族のことを思い出せない。

 

 

彼以外の友のことが思い出せない。

 

 

彼は過去を思い出そうとする。しかし、望んだものは浮かんでこない。何か別の声が聞こえる。それは一人だけではない。もっと多く、

 

 

『貴様がアマデウスを殺したのだ。』

 

 

『かの天才の才能に嫉妬したのだ。』

 

 

『あの男を恨んでいたのだ。』

 

 

違う。そうじゃない。彼は、彼とは……何故だ!何故私が彼を殺さねばならない。私は彼を殺してはいないのだ!私は!

 

 

『『『【サリエリ】が【アマデウス】を殺したのだ!!!』』』

 

 

私は殺してはいないのだ。私は、

 

 

彼はふと意識を戻した。

眼前には彼が殺したイッセー(アマデウス)の姿があった。

 

 

『『『ああ。やはりだ。【サリエリ】は【アマデウス】を殺したのだ!!!』』』

 

 

やめろ。

 

 

『『『恨んで殺したのだ!』』』

 

 

やめろ。

 

 

『『『彼の才が恐かったのだ!!!』』』

 

 

やめてくれェ!

 

 

『『『ならば!その目で確かめてみろ!貴様がした行いを!!!』』』

 

 

どんなに否定しても彼の前には友の死体がある。

 

 

「私は!私は!あ、あ、あ゛あ゛ァァァァァ!」

 

 

赤き異形は空へ向かって吠える。

 

 

彼が行ったことは紛れもない悲劇だ。

 

だが、彼はいや、彼に宿る霊器はこうなることを運命付けられていた。元の彼が友を殺していなくとも大衆は【彼が殺した】と認識し、その認識が正しいと決めつけた。それにより彼に宿る霊器はこうなることが存在の証だと言う風に運命付けられたのだ。

 

これもまた数多の者達が彼に与えた悲劇そのものなのだ。

 

 

彼が彼の友を殺したことにより彼の友の仲間達は、彼に対しての復讐を決意したのだ。

 

 

数年後その復讐は果たされた。

 

彼女達は冥界の英雄の仇をとったと冥界の者達に称賛された。

 

 

しかし、彼が殺されるところを見ていた者がいた。その者は裏の人間ではなく完全な一般人だった。その者は彼の音楽家としてのファンの一人だった。その者は彼を殺した者達の写真をネット中に拡散した。

 

 

それを見た者の中に彼のファンは少なからず存在する。その中に権力を持つものがいた。その者は彼を殺した者達を権力を使い探させ殺した。

 

 

こうして彼女達の家族は激怒した。

 

 

悲劇の連鎖は止まらない。

 

 

後に、彼は人の世では【悪魔を殺した英雄】

異形達の世では【英雄を殺した大犯罪者】と記されることになる。



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