ONE PIECE ~青天の大嵐~ (じんの字)
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いわゆるテンプレってやつですよ
プロローグ


親というものは偉大だ。

 

絶対に  のためになるからこれだけはやりなさい。

 

勉強をすれば将来  は幸せになれるはずよ。

 

私たちは  のことを応援しているから。

 

父さんと母さんは必ず俺のことを考えてくれる。色々な話をしてくれる。

 

僕はそれが嬉しかったし、父さんと母さんのいうことをきいていれば必ず幸せになれるんだからだったから喜んで受け入れた。

 

両親に言われたことは何でもやり、学校でも一番をとり続けた。意味がないから、とマンガとかテレビは一切見なかった。

 

というか、元々俺にはそれ以外の選択肢はなく、だから疑問に思ったこともなかった。

 

 

 

 

でも、ある日すごいマンガと出会ったんだ。

 

ある日、近所の本屋さんにいったんだ。

 

貯めたお小遣いで何か買おうと本を読んでいた。

 

と、近くで同い年ぐらいの男の子達が興奮して何かを話していた。

 

うるさいなあ、本屋さんでは静かにあいろよ。僕はそう思いながら彼らに聞き耳を立てた。すると彼らはこんなことを言っていた。

 

「すげえよな!ルフィ!!」

 

「俺はゾロが好き!!」

 

ルフィ?ゾロ?何の話をしているんだ?

 

すると、店長が話しかけてきた。

 

「あれ、  くんONE PIECEしらないの?」

 

ONE PIECE?何それ?

 

「最近はやってきてるよねー、どうだい?最新刊あるけど買う?」

 

まあ、お小遣はたくさんあるし、みるなといわれてるけど一冊ぐらいいいだろ。俺はそう思い店長さんが勧めてきた一冊を買った後家に帰って読んでみた。

 

そして、僕の中で電気が駆け巡った。

 

 

 

 

 

おもしろい!!

 

 

 

 

 

ゴムゴムの実をたべてゴム人間になった少年ルフィ。そして愉快で強い仲間たち。強い敵、その世界観、重厚なストーリーそのすべてに僕は酔わされた。

 

発売している単行本すべてが欲しくなった僕は翌日開店とともに本屋さんに飛び込み、置いてあった単行本を買い占めめ、徹夜して読破した。

 

それから毎日僕はONE PIECEを読みふけった。何度、麦わらの一味に入れたら、と思ったのかもわからない。

 

 

友達に勧められるまま他の漫画や、小説を読み漁る日々が続いた。

 

 

そして、時は経ち

 

 

僕は

 

 

俺になった。

 

 

親に言われるまま勉強を続けるが、その裏で適当に理由を付けて図書館や本屋に通うのが日課だった。

 

相変わらず家は厳しかったが、それでも本や、マンガ、そして隠れてみるテレビが俺の麻恵だった。

 

そんな日々が続いたある日、家に帰ると家が燃えていた。

 

火事か

 

慌てて家の門を開けると、それは火事ではなかった。

 

 

ボウボウと燃える俺のマンガ、本の山

 

 

俺には何が起こったのか分からなかった。ただ呆然とするしかなかった。

 

俺の存在に気付いた父さんはこちらを見つめ、何の感情も浮かんでいないその眼のまま、他のものもだしなさい、といった。

 

お前には不必要だから。なんでこんなくだらないものを持っているんだ?  には必要ないだろう。お前は将来私たちに家を買ってくれるんじゃないのか?あんなものただのゴミでしかない。そんなもの読み漁るくらいなら参考書を読んで、勉強しなさい。

 

俺にはなんで父さんと母さんがこんなことを言うのか分からなかった。

 

急に後ろから母さんの声をかけてきた。

 

あなたこんなに。

 

母さんの手には僕のONE PIECEを含めて俺のコレクションが握られていた。

 

父さんはそれを受け取ると新たな焚火の火種にした。

 

そして、次の瞬間にはある結論に至った。

 

ああ、この人たちは僕のことをかんがえてたんじゃない。

 

自分のことを考えてただけなんだ。

 

俺のためといったのはうそ。

 

本当は自分たちが将来いい思いをするために、ただ自慢をするために俺は使われていただけなんだ。

 

俺は人形?

 

オレハアナタタチノニンギョウナノカ?

 

イイヤ、ソンナコトハナイ

 

オレハオレダカラ、ソレヲヒテイサレルリユウハナイ

 

 

急に両親が何か人間ではないものに見えた僕は家の玄関を押しのけ、道へと飛び出した。待ちなさい!という声が聞こえたけど無視した。自分でもなんでこうなってしまったのか分からない。

 

 

ビリビリと破かれたONE PIECE

 

 

あの光景が脳裏でチカチカと瞬きこびりついて離れなかった。

 

 

あの時

 

俺がもう少ししっかりと話しておけば、、

 

両親がもう少し理解ある人だったら、

 

急に道路に出た僕を車が僕をひかなかったら、

 

 

未来は少し変わったかもしれない。

 

 

最期に見た光景は

 

 

眼を思わずつむってしまう程の車のライト

 

俺と、そして僕は死んだ。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「うん?」

 

俺は何もない真っ白い部屋でいすに座った状態で目が覚めた。

 

あれ?なんでここに座ってるんだろう。俺は

 

 

死ンダノダカラ。

 

 

「!?」

 

 

いきなり頭の中で声が響いた。何だったんだ、空耳か?

 

アア慌テナクテモイイヨ。

 

再度声が響く。やはり、誰かが俺に語りかけているのだ。一体どこのだれが話しているのだろう?

 

ボク?ボクハ神様ッテヨバレテルヨ。

 

「神様!?」

 

ソウダヨ。

 

「え?じゃあここは死後の世界?」

 

ソウイウコトニナルネ。

 

「俺は本当に死んじまったのか?」

 

ソウダヨ。間違ナクキミハ死ンダ。車ニヒカレテネ。

 

「そんな!俺は父さんと母さんのために一流大学に入ってちゃんと就職しなきゃいけないんだ!!さっきのこと謝らないといけないんだ!!」

 

ホントニ?デモ、君ノ大切ナ本ヲ焼イテシマッタノハ誰ダイ?

 

「え?」

 

君ガ死ンデシマウ要因ニナッタノハ誰ダイ?

 

俺は何も言えなくなってしまった。今まで疑問に思ってこなかったけどなんでぼくはあの人たちの言う事を聞いてきたんだろうか。親だから?分からない。

 

すると、何も言えなくなった俺にまた声が響いた。

 

何モイエナクナッテシマッタネ。キミニトッテアノ人達ハボクノヨウナソンザイダッタンダロウネ。

 

「でも父さんと母さんは」

 

すると、声はため息をついた後、悲しそうな声で言った。

 

悲シイナア。君ニハ自分ノ価値観ッテイウモノガナインダネ。君ノモッテイルモノハスベテオトーサントオカーサンノウケウリダネ。

 

「そんな!!こと・・・は・・。」

 

その言葉を否定しようとするが、それ以上の言葉が出てこない。

すると、その声は俺の心の中の戸惑いを見透かしているかのように冷めた声で続けた。

 

 

アルヨ。ダカラ、コノママ君ヲ輪廻ノ輪ニ戻スノハ僕トシテハ心苦シインダ。

 

「どういうこと?」

 

キミヲ転生サセテアゲヨウト思ッテネ。

 

「えっ!?」

 

キミハ自分シカデキナイ生キ方ガデキナカッタ。全テヲ隠シ、自分ノ生キガイヲ守ロウトシタ。当タリ前ダネ。ダッテ、君ハソレヲ許サレテナカッタノダカラ。

 

 

 

ダカラ、

 

 

僕ハ、数多アル世界ノ中デ最モ自由ナ世界ニ君ヲ放リ込ム

 

 

ダカラ今度ハ自分シカデキナイ生キ方ヲスルンダ。

 

 

誰ヨリモ自由ニ生キテゴラン

 

 

僕ハココデ君ノ活躍ヲジックリト楽シマセテモラウヨ

 

「ちょ、ちょっと待って…」

 

その声に質問する暇もなく、身体全体に落ちるような感覚が襲った。

 

 

 

 

そのまま、落ちる…

 

 

 

落ちる…

 

 

 

落ちて…

 

 

 

そして、俺はこの世界にやって来た。

 

 

 

 



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幼少期編:まだまだ弱いよ!!
暗い路地


 

目が覚めると目の前が真っ暗だった。それに地面がボコボコしているし、さらには視界が黒く塗りつぶされている。どうやら、何かにスッポリと覆われているようだ。

 

(…)

 

しばらくゴソゴソと蠢いた後、俺は目の前を覆っている何かを取り払った。

地面に音も立てずに落ちたものは端がボロボロになり、一部に虫食いが出来ているいかにも使い古された毛布だった。

かなり年季が入っているようで、カビ臭い。

身じろぎすると、今すぐにも崩れてしまいそうな木の板が俺の体の動きに合わせて軋んだ。

 

うむ、これからどうするべきだろうか。

そう思った次の瞬間、妙は寒気を感じた俺は自らの身体を見つめて思わず目が飛び出そうになった。

 

「うぇっ!?」

 

ボロ毛布を頭からかぶりなおす。妙に寒いと思ったら…スッポンポンだったんだよ…

いや、待て、誤解しないでほしいが、俺は変態じゃない。

そう言う趣味も一切ない。

だが、何故裸なのかは説明できない!!

神の野郎!!次会ったら散々文句言ってやる。いや、いつ会えるのかは知らないけど…

 

うん、まぁ、とりあえず

 

ここからはすぐに出て行った方がいいのだろう。

どこか街の通りのようだが、薄暗くて俺の毛布の臭い以上に凄まじい匂いがするし、道端には明らかに何かをやっている人々が倒れ伏して、宙を見上げている。

ヤヴァイ場所ですね、本当にありがとうございます。

地面の冷たさを直に感じる裸足のまま、冷たい路地から若干の明かりが見える通路へと歩き出した。

途中、どこからか怒声と悲鳴、そして銃声が聞こえたが気にしない。

今俺は俺の命を守ることで精一杯だ!!

 

誰かが俺を追いかけてくるような音が幻聴のように耳元で木霊する。

俺はその音から逃れるように行く宛もなくひたすら走った。

しかし、どこをどう走ったのかは分からないが、気力と体力はすぐに尽きてしまった。

何故かいつも以上に体力がなくなっている気がする。そんなことを考えながら、俺は地面に倒れ伏した。

 

カミサマが言ってた言葉を思い出す。

若干は期待していたんだ。自由というものに。

楽しませてもらおうとか少しは信用してたんだよ?まあ、ジョーク?ブルックのスカルジョークみたいな感じのゴッドジョークだって。・・・ゴッドジョークってなんかエネルっぽいな。

 

『ヤハハハハハ!!ゴッドジョーク!!』

 

あれ、何だか面白いぞ。…じゃなくて。

少し期待してた俺はどうやらいきない裏切られたっぽいことに気づいた。

 

あの野郎せいぜい楽しませてもらうとか言いながらいきなり見放しやがった。

死神が常に寄り添っているような場所にいきなりパンピー放り込むなっての。

薄れゆく意識の、短い(?)一生だった、次はもっと幸せに生きられること仏様あたりに願った。

 

そのまま意識は暗闇に飲み込まれていく…

 

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

目覚めると木造りの天井が見えた。いや、あの形状からして屋根だろうか?

窓の外では目を思わずつぶりたくなるような朝日の輝きと共に、チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる。どうやらここで一晩寝ていたようだ。

いつの間に?

 

頭の中でハテナが踊っていると、階段がたわむ音がした。誰かが階段をのぼってくるようだ。

 

「おう」

 

やってきたのは、全身傷だらけ、ついでに強面のいい年したオッサン。ご丁寧に懐には銃らしき形。明らかに大丈夫な人ではなかった。というよりも、そちら側(ダークサイド)人らしい。

 

「…そんなにおびえるこたねぇじゃねえか。こちとら命の恩人だぞ。」

 

いつまでたっても何もしゃべらずに震えている俺に戸惑っているのか、少し悲しそうな声でその人のほうから話しかけてきた。

おや、今この人は何と言ったのだろうか?

 

「命の恩人?」

 

「あ?お前行き倒れていたんだぞ。この街にはオメエ見てぇなガキが腐るほどいるが、商売の邪魔だったのでな。勝手だが、無理矢理捕獲させてもらったぞ」

 

なるほどどうやら文字通り行き倒れていたところをこの人が助けてくれたようだ。

というか、捕獲とはなんだ捕獲とは。こちとられっきとした人間だぞ。一応、一応な?

 

「下に飯を用意してるからとっとときな。あと…」

 

こちらの話も聞かずに階下に下りて行こうとしたそのオッチャンは、そこでいったん言葉を区切ると、露骨に嫌な顔をした。

 

「オメエ、自分ではわからないだろうが凄まじい臭いがするぞ。飯食う前に外で臭いを落として来いよ。でなきゃ、即効で家からたたき出すからな…」

 

そう言い終わると、その人は木造づくりの階段を軋ませながら階下へと下りて行った。

 

ちょっと自分の体臭を嗅いでみる。

 

悲しみの香りがした。

 

 

外に出て一階に降りてみるとマスターがご飯を用意していた。

今まであまり指揮していなかったが、用意されている料理を見た途端俺は急にお腹がすき、がっついて目の前の料理を食べた。

何のことはない、酒場で出されるような酒のツマミのような料理だったが、その分いくらでも食べることができた。

 

ご飯ってこんなにうまかったのかと思ったぜ。

 

「よく食うなあ、小僧。しかし良かったな。あのままだったら、殺されるか、良くて銃の的にされて海賊達の遊び道具にでもされていただろうなぁ。」

 

いやっ

 

今ものすごく聞きたくないことを聞いた。それ、何てバイオレンス!!

というか、それってどちらに転がっても俺絶対に死んでたじゃないか!!

この人には本当に感謝感謝だ。

 

でも、この後俺はどうするかが問題だった。

 

「なんだどうした」

 

「あのぉ…」

 

困った俺は恩人に嘘をつく事に後ろめたさを感じながらも、自分には記憶がなく、行き先もない、という話をした。

そして、このまま外に出ても行くあてがないので俺は住み込みで働かしてほしいといった。

 

その人は少し考えたようだが、「まあいいだろ」と許してくれた。

丁度従業員が欲しかったんだ、と。

それを快く承諾してくれたこの人はカミサマよりカミサマらしいと思う。

何故世の中はいやらしいことを考える人よりも優しい人が少ないのだろうか。理不尽ここに極まれり。

 

さて、とりあえずは酒場のアルバイトとして俺の第二の人生がスタートしたわけだが、

 

けど、次が問題だった。

 

「そう言えばお前名前は?」

 

正直に言おうとしてすぐにやめた。

今まで使ってきた名前なんぞ、考えてみればあの人たちのことを思い出してしまってどうも気が滅入る。

 

「すいませんそれも思い出せないんです。」

 

「マジか?ホントに記憶喪失なんだなお前。」

 

そして、マスターと相談して新しく名前を付けることにした。というわけで、何かいいものはないかと考えていたらこの酒場の名前が目に入った。

 

この酒場の名前は”アオイヒ”

 

安直だが、そこから”グンジョー”という名前をいただいた。青に近い色、群青色からそのまま取ってグンジョー、というわけだ。

 

今日から俺はグンジョーだ。グンジョーとしての第二の人生が始まる。

 

この先どうなるか分からないけど、俺にしかできない俺の生き方をしていこう。

 

 

 

 



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重大な事実!!

 

「おい、エールとツマミできだぞ。さっさと行け。」

 

「ハーイ。」

 

というわけで恩人の酒場で数日間働かせてもらっているグンジョーです。

 

 

我が救世主の名はレッドさんというらしい。自己紹介をして知った。その時俺に自己の名前なんぞなかったが。

聞いたところによるとここは酒場のようだ。前世では、何のアルバイトもしたことはなかったが、まぁ、人並みには健康的な肉体をしているから、それなりには動けるし仕事の面ではおそらく大丈夫だろう。

 

ああ、そういえば一つ報告しなければならないことがある。

 

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!!

 

俺は今10歳前後の身長だ。

 

な…何を言っているのか分からねーと思うが(ポル略)

 

まぁ、説明のしようがない事実そういうわけだ。

目覚めた時から気になってはいたが、敢えて気にしないようにしていた。

 

俺の手はこんなに柔らかそうな手をしていたのだろうかと。

目測180cmあたりのレッドさんが見上げるようだったと。

その答えは簡単俺の身長が縮んでいたからだ。

 

レッドさんに言われて気付いた俺は、鏡の前で愕然とした反面少しうれしくもあった。

まるで人生そのものがリセットをしたみたいだ。まぁ、その通りなのだけど。

 

さて、

 

 

 

 

 

さっそくですが、拝啓クソ神様感謝しますこの野郎よくもやってくれやがりましたありがとうございますでございますですゴラァ。

 

 

 

 

 

…俺がここまで機嫌が悪いのには少し理由がある。

先日俺はとんでもないものを見てしまった。

それは、レッドさんの酒屋でアルバイト中、お客さんの読んでいた新聞のとある記事が目に入ったことがキッカケだった。

丁度頼まれていたエールとそのツマミをそのお客さんに届けた後、俺はそのお客さんに話しかけた。

 

『お客さん。ちょっと、その新聞見せてもらっていいですか?』

 

『あん?』

 

赤ら顔なそのお客さんは一瞬俺の顔を不快気に見た後、「すぐに返せよ」という発言付きでその新聞を渡してくれた。

その新聞の表一面に記載されていたものを俺はまさしく目を皿にするようにして一言一句逃さないように見続けた。

 

 

 

 

 

『世界政府、加盟国への外遊訪問中 ドラム王国にて国王と面会』

 

 

 

 

 

う  そ  だ  ろ  お  い

 

『レッドさんレッドさーん!!』

 

すぐさま厨房に駆けこむと、丁度厨房から出ようとしているレッドさんと鉢あった。

 

『どうしたグンジョー。注文取り終わったんなら、新しい料理持って行けよ。あと、俺の事は店長とよべ』

 

『あ、分かりました店長。…じゃ、ないんですよレッドさん!!これは一体どういうことですか!?』

 

新聞(借りてきた。後ろで何か聞こえるが気にしない)の一面をレッドさんの顔の前に見せると、レッドさんはそれを払いのけながら、新聞に目を落とす。

 

『あ?こりゃあ、今日の新聞じゃいないか。これがどうかしたか?』

 

冗談じゃない!!

レッドさんは事も無げに言っているが、俺にとっては死活問題だ!!

 

『ここここここの世界政府ってのはどういうこと何ですか!?』

 

『あ?…あー、お前は記憶喪失らしいから言っても意味がないのかもしれないが、つまり世界を取り仕切っている奴らの事だ。普通に生きていたらまず関わることはねぇと思うから気にすんな。』

 

違う、今気にしていることはそう言う事じゃないんだ。

それよりももっと重要な事なんですよ。

 

『レッドさん、もしかして世界政府の下部組織に海軍っていらっしゃいます?』

 

『…お前、どうしてそんなことを知ってんだ?』

 

『えっ!!…いや、その!!人づてに聞いたんですよ!!』

 

一瞬心がドキリとしたら、適当に見寛う。

 

『ふーん、まぁいい。確かにあるぜ。けったいな政府の下っ端だがな。』

 

俺に注文の料理を渡した後レッドさんはケッ、と毒づきながら手元の焼き鳥の串を回す。

 

『あと、政府の戌と言ったら“王下七武海”ってやつらもいるぞ。あいつらは、海賊のプライドを捨て去った奴らで…ほとんどが名のある連中か、“悪魔の実”を食っているらしいが、俺は何も知らん。で、それがどうしたのか?』

 

『…ハハハハ。』

 

あるんだ“世界政府”、そして、やっぱあるのか“悪魔の実”!!

間違いない!!何という事だ。そううことだったのか。神の野郎分かっててやりやがったんだな!!

 

「ここは!!ONE PIECE(・・・・・・・・)の世界ということなのか~~~~~~~~ッ!?」

 

『うるせぇ馬鹿野郎!!さっさと仕事しろ!!』

 

店にいる全員のツッコミが入った。華麗なるユニゾンツッコミでした。

 

それが数日前のこと

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「何か武術を教えてほしいだと?」

 

仕事終わりの早朝。

店じまいをしてから、貸し与えられている寝床である屋根裏にレッドさんを呼んだ俺は、思い切ってレッドさんに打ち明けてみた。

 

「ハイ、そうなんです。是非とも教えてほしいんです!!」

 

「お前、この前ドアホゥみたいに叫んでから妙だぞ?どこかそわそわして落ち着きがないというか、何かにおびえているみてぇだ。」

 

「いいえ、これからは護身術が必須ですよ!!この街を見てください。どう見ても何か技術がなければ生き残れないっすよ!!」

 

ここ数日だけだが、この街の特色はハッキリと分かった。

この街はヤヴァイ。

はじめてこの街に来た時に感じたあのまるで殺意そのものような雰囲気は実はあの場所だけではなく、この街全体を包んでいたことが分かった。

 

少し歩けば、喧嘩に始まり、追剥、強盗、スリ、殺しの現場何でも見つかった。そもそもそれがこの街の気質らしく、一言でいえば本編に出てきたジャヤそのものだった。

 

何かしら生き残るすべでもなきゃ、こんな街で生きていけるわけねぇだろ!!

 

「というわけなんですよ。お願いします!!」

 

「あ、うーん、でもなぁー…」

 

「うるせぇごちゃごちゃ言い訳してんじゃねぇ馬鹿野郎!!こちとらとんでもない場所に叩き込まれたと知ってから毎日気kが気でならねぇんだよッ!!どこから変な奴が襲い掛かってくるか分からないのに、こんな呑気にチンタラしてられるかい!!分かったらさっさと俺に戦闘技術を教えんかいデクノボー!!

 

とは言わない。怖いし、雇い主だし。…ちょっと思ったけどサ。

 

「あー、理由は知らねぇが、そういう経験なら、一応ある。」

 

「あるんですか!?」

 

「おう。といっても、心得程度だがな。」

 

「ぜひお願いします!!」

 

そう言ってレッドさんに土下座!!

 

 

待っていろルフィ!!

 

俺はお前に会いに行く!!

 

そして、お前のゴムゴムの頬をさんざんビヨビヨして遊んでやる!!

 

あ、ついでに出来れば仲間にして欲しいなぁ…。

 

と思っていたら手から棒がすっぽ抜けた。

 

「あ。」

 

ガシャンという悲しい音を立てて窓から棒がフライアウェイ。

 

「…給料から引いとくぞ。」

 

「…そうしてください。」

 

とりあえずは目の前の事をコツコツとしていこうか…

 

 




ワンピの本質はユニゾンに見つけたり。


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これがいわゆる時代錯誤ってやつですか

青天の大嵐はどんなネタでも許容できる紳士と淑女が見る小説だよ!!


 

 

さて早速ですが、前の話で、海賊王の仲間になる!!とか宣言しましたが…

 

 

 

 

時代がね、一世代違いました。

 

 

 

 

先日レッドさんに、

 

「大海賊時代は危険が一杯ですから、自分の身は自分で守れるようになれないといけませんね!!」

 

と、剣を振り回しつつもホクホク顔でそう宣言したら、微妙な顔をしたレッドさんに、

 

「大海賊時代とは何だ」

 

と真顔で聞かれました。

 

こちとら、大ショックですよ。ええ。

ルフィの仲間になる気満々でいたのに、え、レッドさんどうしたのその道の通みたいな顔をしながらどうしたのボケたのそれにしては少し早すぎませんか冗談にしては中々面白いですよアハハハハと笑っていたら、

レッドさんは可哀想なものを見る目で(失敬な)俺を見下ろしてその口を開いた。

 

曰く、

 

「そんなものは無い」

 

だと。

 

 

何のこっちゃ―――――!!

 

 

とりあえず、俺の知っている単語を片っ端からレッドさんにぶつけてみた。

 

拳骨のガープ、仏のセンゴク、冥王シルバース・レイリーそれ以外にも知っている限りの原作用語を捻りだしてみた。

 

そして、海賊王ゴールド・ロジャー(本当はゴール・Dだけど)と、ワンピース(一つなぎの大秘法)も…

 

もしかしたら大海賊時代という単語が一般的に普及していないのではないだろうか、そんな期待を含んでいたのだが、それに対するレッドさんの答えはのきなみ

 

ノー(・・)

 

なるほど、今この時代は、海賊王さんをはじめとして、白ひげやら金獅子さんやらもまだまだ有名じゃないんだ、という事になる。

 

 

何てこった!!

 

つまり来たるべき時に備えて日々鍛錬をしてきた私はまるでアホの子みたいじゃないですか!!

違う!!断じて違うぞ!!俺はクールアンドセクシーポジションを目指しています!!

 

オーアールゼット

 

 

…しかし、興味がないと言ったら嘘になるかもしれない。

 

世界最強の海賊

 

その力は一騎当千

 

マリンフォード頂上戦争の描写で、子供達が歌っていたあの童謡が特に印象的だ。

 

物騒な事態にならなくて良かった、と思う反面。後の世まで語り続けられることになる彼らに一度会ってみたい、とは思う

 

マンガや画面越しにでしか、その姿を“見る”ことができなかった彼等が一体何を考え、そしてこの世界で何を成し遂げるのか

 

…いかんいかんあいつらに会っても生き延びることができる自信は全くない!!

 

片方は、超人系最強の地震。マリンフォードでのあの地震攻撃はダイナミックすぎてジャンプ読者の度肝を抜いた。

 

片方は、一度でも触りさえすれば無機物を自在に操ってしまう能力で、映画版strong worldの悪夢を覚えている人は多いだろう。

 

考えてみれば、白ひげが食べたグラグラの実と金獅子が食べたフワフワの実って、どう見てもチート能力だしな。

 

俺も自然(ロギア)系の能力があれば…覇気で斬られて終わりですね分かります。

 

 

さて、大海賊時代がはじまってないということは原作知識はあまりあてにならないということになる。

 

 

だって、ロジャー達がいないということは、もちろんそれを追いかける側である海軍のガープもセンゴクもいないわけじゃないですか。

というか、原作のルフィもゾロもナミもウソップもサンジもビビもチョッパーもロビンもフランキーも、もちろんいません。生まれてすらいません。生まれて数らいないという事は、そもそも彼らのパパとママが○○○して××を△△に解き放っていない、ということにもなる。

 

…そんなクズをみるような目で見ても俺は興奮しかしないぞ!!

 

でも、ブルックは微妙だな

 

西の海(ウェストブルー)のどっかの国の音楽家の家系なんだっけか

 

最悪、今まで出してきた人物達でさえ生まれてきていない時代だったらどうしよう?

 

うん…まぁその時はその時で

 

うん、まぁ、とりあえず俺は来たるべき時に備えて剣を振り回すことしかできない、という事はよく分かった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「甘ぇぜ!!このヤロウ!!」

 

「ギャウッ!?」

 

鉄のパイプをおきく振り上げてから思い切りそいつに振り下ろすと、悲鳴を上げて熊が吹き飛んでいく。

木にぶつかった地面に転がったそいつには、もはや命の鼓動はない。

よし、今日は熊鍋だな!!

 

「ニシシシシシ!!」

 

やっぱ肉はサイコーだな!!

熊肉を堪能知た後、地面に寝転がった俺は膨れた腹をさすりながら満天の星空を見上げた。

 

「暇だなー。この森も何か味気なくなってきたし。何か面白いことでもねーかなー。」

 

そういえば、口うるさく自分を叱ってくるあの海兵は今何をやっているだろうか。

この森で遊びまわって遭難してから何日たったかは知らないが、とりあえず、明日の朝飯は何にするかを考えながら俺は眠りに落ちて行った。

 

 

 

どれだけ賞をとても、どれだけ神童だと褒められようとも、私の心には揺るがぬ何かがある。

 

それは悪党を憎むこの気持ちだ。

 

人は無意識に秩序を破壊したがる。

 

しかし、その秩序こそ人間の社会にとって最も重要なものなのだ。

 

「父上、母上。自分は海軍にて奉公をしてまいります。いつの日か、悪党がのさばらない世の中を作り上げてみせます。」

 

涙ぐむ父と母に若干後ろ髪をひかれる思いになりながらも、私は海兵達、これから先輩になるであろう諸先輩方の待つ軍艦へと向かった。

 

包んだ父譲りの風呂敷には、母の弁当、そして金賞を取った“戦国”の文字

 

 

 

「オリャア!!」

 

「痛え!!」

 

ボコリと相手を殴ると、そこから伝わってくる衝撃。そして、後ろから響いてくる歓声。

 

「どうだ!!これ以上痛い目に会いたくなかったら皆をいじめないと誓え!!」

 

大きく手をふるってポーズをとる。

気分はスーパーヒーローだ!!

 

「悪かった悪かった!!俺が悪かったからこれ以上殴らないでくれぇ~~~!!」

 

すると、そいつは悲鳴を上げながら走り去っていってしまった。

やっぱり、正義(・・)の味方は強いんだ!!

 

「俺の名前はZ!!正義の味方だ!!」

 

すると、後ろから聞こえてくるみんなの歓声がひときわ大きくなった。

 

 

海賊の全てが悪?

 

俺はそうは思わないね!!

 

東の海(イーストブルー)から偉大なる航路(グランドライン)に入るためのすぐ近くにあるこの街には、様々な海賊たちが訪れる

 

だから治安はハッキリ言って最悪だ。

 

俺も喧嘩で海賊どもとやりあった数なんてとうに数えるのも忘れている。

 

だが、それがどうした!?

 

支配を望む海賊達はハッキリ言っていけ好かないが、俺はそれと同じくらい海賊の自由さを知っている!!その度胸を知っている!!

海賊とはこの世で最も自由な奴のことを言うんだ!!

 

 

「だから俺は海賊なってやる!!」

 

 

俺は頭の麦わら帽子越しに太陽を見上げた。

 

 

 

「ハァ…」

 

目が覚めて一つ欠伸をする。

今日はやけに眠い。体調を壊してなければいいが…。

俺は傍らに置いてあった眼鏡を静かに取り上げて顔にかける。

 

「さてと」

 

昨日盗ってきたばかりの船を操ってできるだけ遠くにある島を目指す。

 

「できれば、何事もない毎日を過ごしたいものだな…」

 

盗人である自分が言っても何の説得力もないが。

近い将来、厄介ごとに巻き込まれそうな予感を感じつつも、船を急がせた。

 

 

 

 

「どうした坊主。ここはテメエが来るような場所じゃねぇぞ。」

 

目の前には明らかにゴロツキの顔をした強面の男達。

 

「聞こえなかったか?ここはテメエみてえな坊やが来るような場所じゃねぇって言ってるんだよ。」

 

「…オメエ等の仲間になりてぇ。」

 

そう言った俺に対して帰ってきたのは嘲笑だった。

 

「オイオイ分かってるのか?俺達は泣く子も黙る海賊だぞ?つまり、悪党(・・)だ。少なくとも、テメエみてえなガキが好き好んでなるようなものじゃねぇんだよ。」

 

「それでもだ…。」

 

そんなこと、関係ねぇ。

 

「俺を仲間にしてく…ださい。」

 

俺は頭を下げた。

一瞬の沈黙の後、頭にキャプテンハットをかぶった男が出てきた。おそらく、こいつがこの海賊団の頭領なのだろう。

 

「お頭…。」

 

「まぁ、いいじゃねぇか。おい、坊主。1つ質問していいか?」

 

そいつは口元に笑みを浮かべながらも、真剣な目で俺の緯線を見返してきた。

 

「お前が海賊になりたい理由は?」

 

そう聞かれた俺は迷わず答えた。

 

家族が欲しい(・・・・・・)。」

 

オメエがそんな顔をしても関係ねぇや。

俺は家族が欲しいんだ。

 

 

 





あえてノーコメントで。


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弱いやつの戦い方

「人参ピーマン鶏肉ごぼうにトメィトォ、竹串ついでに時短でチョチョイのチョイと~~~。」

 

フンフンと鼻歌を歌いながら、街を練り歩く。

ここは、街の中でも比較的治安のいい地域にいる。

今は

 

「オッチャン。野菜おくれ。」

 

「お、レッドさんとこの小間使い君じゃないか。今日は何を買ってくんだ?」

 

目の前にいるのは八百屋のオッチャン。俺の働き始めにはすでに常連になっていた気のいいオッチャンだ。

 

「割引してくれたらレッドさんに頼んで酒代まけてもらえますけど?」

 

「カーッ!!嬉しいことを言ってくれるね。だが、今月は無理だ。うちのカカアが毎晩家の戸口で見張ってるから夜は家から一歩もでれねぇんだよ。」

 

「あら、それは災難ですね。」

 

と、世間話しながら買い物を済ませる。

 

うん、でもまぁ、あくまでもこの通りは他に比べて治安がいいというわけだから、他の街と比べたら最悪なわけで。

 

「おい、ちょっと待てそこの八百屋にいるガキ。」

 

ほら来たやっぱりこうなるんだ…

 

 

振り返ると、そこには明らかに悪いことが大好きですよ、という顔をした三人組がニヤ桁顔でこちらを見下ろしていた。

 

「お前、結構金持ってんだろ?よければ、貧乏なお兄さんたちに寄付してくれないかな~?腹減って死んじゃいそうなんだ。」

 

嘘つけ、テメエら明らかに健康的な体してるじゃねえぇかよ。

俺みたいな10代前後のだって働いてるんだ、オマエ達みたいなやつらはより働かないといけないだろうが!!

 

「いやですよ。自分達で金稼げばいいじゃないですか。」

 

というわけで俺は正論を言うことにした。

しかし、どうやらその言葉は彼らの逆鱗(と呼んでいいのかもわからない幼稚なものだが)に触れてしまったらしい。

 

「あ?テメエ、自分の立場分かってんのかゴラ!?」

 

「あ~、もういいじゃん、手っ取り早くやっちゃおうぜ。」

 

…こいつらメンドくさっ。

八百屋の主人に目配せするが、とっくに他の客の接待を始めていた。

 

コノヤロウ

 

来月店に来たら料金倍額にしてやる。

 

「ああ、そうかじゃあこっちもやるしかないよなぁ…。」

 

俺は決心すると、腰に下げていた木刀を引き抜いた。

 

「アン?」

 

それを見たチンピラ達が目に見えて俺を警戒し始める。

 

「ハッ、テメエ一人で俺達全員相手に出来ると思ってんのかよ?」

 

「へぇ…?逆にあんたらは、俺が何の対策も講じずにこの場に建っているとでも思っているわけ?そりゃ全く心外だな」

 

俺の挑発に乗ったのか、相手も俄然やる気になったようで懐からメリケンサックを取り出して、構えた。

 

「上等だぜ。その喧嘩買ったぜ。代金はお前の命だ。」

 

「ほう。」

 

そうなったのなら話は早い。

俺は木刀を天高く掲げそして

 

「せりゃあ!!」

 

思い切り相手にブン投げた。

 

「「「ハアッ!?」」」

 

俺は走るぜ!!脱兎のごとく!!

 

急に回れ右をして駆け出した俺を呆気にとられたように見ていたチンピラ達だったが、すぐに俺を追いかけ始めた。

 

「「「ちょ、ちょっと待てやクソガキィ!!」」」

 

俺の方が幼く、そして脚が遅いことは分かっている。

だから、すでにトラップを撒かせてもらったぜ!!

 

「そら、くらえ!!」

 

チンピラ達の進行方向には、レッドさんに頼まれていた買い物袋をグチャグチャにしたものサ!!

 

「ギャ!?」

 

「グエッ!?」

 

「グボッ!?」

 

ある者は食用油に滑り、ある者は思い切り踏んづけたトマトに滑って転がり、ある者は前を走る2人に足を引っ掛けて地面に転がった。

 

「ハッ、ざまあねぇぜ。」

 

しかし、この行為はチンピラの腐った頭に怒りの火を注いでしまったようだ。

 

「「「クソガキ殺す!!」」」

 

キャアア、殺すですって奥さん。なんてバイオレンスな!!

 

…だがこれいいいのだ。

 

この場所だからこそ意味がある!!

 

「ハハーン!!頭がアホな奴はどうやら視界までアホになるらしいな!!よく周りを見てみろ!!」

 

そう、

 

 

この場所は、海軍派出所の真ん前なのさ!!

 

 

 

「「「な、何ィ~~~~!?」」」

 

こうなってしまった時のために、街の地形図を頭に叩き込んでおいたのサ。

びっちゃけ、全部を覚えたわけじゃないけど、街の使えそうな機関を覚えておいて正解だった!!

 

「助けてください!!変な人たちに追いかけられているんです!!」

 

俺は迷わず派出所の中に飛び込むと、中で勤務をしていたと思われる海兵さんが飛び出してきた。

 

「「「テメエ、小坊主汚ぇぞ!!」」」

 

汚い?実に結構!!使えるるものなら俺は何でも使ってやるぜ!!

 

自分に助けを求めてくる少年と、明らかに風貌の悪い(それにて汚れている)三人組を見比べて、その人はどうやら事態を察してくれたようだ。

 

「よし、どちらが悪いのかはよく分かった…。お前達!!ちょっと中まで来てもらおうか!!」

 

「チッ!!だが、数の上なら俺達の方が有利だ!!おい、ついでにあの海兵の野郎もついでに畳んじまえ!!」

 

ここまで来て往生際が悪い!!

 

しかし、やはり神は俺にスマイルどころか、ウィンクを送ってくれているようだ。

 

「おい、署の前で何を叫んでいるんだ?」

 

「何があったのか?」

 

チンピラ達にとって悪いことに、休憩を取っていたと思われる海軍の兵士達が中から出てきた。

その数約10名。

 

「「「…ドチクショゥめがぁ~~~~!!」」」

 

「あ、コラ、待て!!」

 

圧倒的に不利な事をようやく悟ったのか、今度はチンピラ三人の方が回れ右をして逃げ出した。それを見て追いかける海軍の軍人達。

トムとジェリー方式ここに再現されり。

 

いつの時代もお上とおかっつぁんには勝てないという事ですな。

 

一しきりその姿を見て笑った後、俺はレッドさんの家に戻ることにした。

 

「あ、買ったもの全部犠牲にしたんだった…。」

 

前門の虎後門の狼

 

帰ったら帰ったでレッドさんにドヤされそうだ…。

 

 




感想随時受付中


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いきなりとか言わないで!!

飛びます飛びます
時系列が飛びます飛びます


今日も今日とてとある街の裏路地にある酒場アオイヒは常連客から、海を旅する商人達挙句の果てにはならず者の海賊まで様々な人物たちが酒を楽しみ、思い思いの時間を過ごしている。

 

騒いでもよし、歌ってもよし、ツマミの味もよく、特に酒の類はこの辺りでは良い品を出す。

その味は、アルコールのみを求めるのんべえ達をも虜にしてしまうと噂だ。

 

そんな優良店では犯罪以外のほとんどのことが許されている一方で唯一禁止されてい事がある。

 

 

それは、店舗内での“乱闘騒ぎ”

 

 

乱闘と言ってもささないな喧嘩事だ。それこそ、やれお前今俺の足を引っ掛けただろう、だとか、人の彼女に手を出しやがってだとか、日常的かつ子供の喧嘩にも劣るようなそんなくだらない理由が原因になっているものだ。

 

しかし、一部では、無双を誇った海賊だとか、凶悪な犯罪者だと噂されているこの店の店長はその行為をすこぶる嫌っている事は事実だ。

 

もし仮にその決まりを破ってしまったらどうなるだろうか?

 

それは簡単な話だ。店長の忠実な手先である従業員がその猛威をふるいに来るのだ。

 

常連達はそれを恐れて一切の騒ぎを起こさない。結果がどうなるか身をもって(・・・・・)知っているからだ。

 

 

 

「なんだてめこらぁ!?」

 

「やんのかゴラァ!?」

 

 

その日は別々の海賊グループがそれぞれ酒場に来店していた。

 

いったん話が変わるが、東西南北別々の海から偉大なる航路(グランドライン)へと突入してきた海賊達は常にしのぎをけ削りあっているが、その二組の海賊達は丁度偉大なる航路(グランドライン)に来たばかり。

いわば、お互いの上下を心得ていない狂犬のような集団だった。

彼らがお互いが同業者であることはすぐわかったようで、やれあっちの海賊団はいかにも弱そうだとか、向こうの海賊団は人望がなさそうだと言ったような口喧嘩を始めた。

 

この酒場では口げんかやバカ騒ぎは茶飯事だ。

 

だが、それ以上の事をは容認されていない。

 

しかし、彼らはこの店の慣習をしらず、そのまま口喧嘩をヒートアップさせた結果、銃器まで持ち出した大喧嘩に発展させてしまったのだ。

 

この街に馴染んでいない人間達はすでに青ざめた顔をしていたが、常連達はやはり苦笑気味に笑いながら事の成り行きを見守りつつも黙って口元に酒とツマミを交互に運んでいた。

 

 

どうせ結果は見えている。

 

 

不思議そうな顔をしている商人達に常連達はそう言いかえした。

 

すると、すぐに厨房の方から一人の若い男が。

 

新世界にあるという“ワの国”の着流しを身に纏い、銀の髪を鉢巻でまとめ上げ、片手に木の棒を持ったその店員は今にも一触即発と言った空気の中に割って入ってきた

 

「オキャクサマ。」

 

「「あ?」」

 

青筋を顔に張り付かせたまま2人の海賊は店員を見下ろす。

自分達の邪魔をするこいつは一体なんなんだ?と言わんばかりの顔だ。

しかし次の瞬間その2人は凍りつくことになる。

 

「ウルセエでございますよ?ここは紳士たちの社交場。喧嘩なら外でやっていただけませんかねぇ?」

 

こいつは…

 

最初にただこの店員の言動に呆気にとられた。

こいつは、自分達が海賊達だと知ってなおこのような言葉を発したのかと、ただ呆れた。

しかし、静寂の後、銃器を持った海賊2人の中で同時に何かが切れる音がした。

その店員の言葉は、一瞬冷静になった思考に再度ほとばしるような怒りを再燃させるのに十分なものだった。

 

「「じゃあ、テメエから死ねや!!」」

 

目の前のコイツを殺す前にこのクソナマイキなガキを殺してしまおう…。

 

迷わず銃の撃鉄を起こし、それを店員に向かって構えた。

 

成り行きを見守っていた商人達から悲鳴が上がる。

ある者は目を閉じ、ある者は何もできずt黙ったまま事の成り行きを見ているしかない。

 

しかし、店員はそれを少しも慌てず、むしろ少しほくそ笑んでいた。

 

そして…

 

 

ゴキリ、という鈍い音が店内に響き渡る。

 

 

それは、銃弾が物に穴をあけたというよりも、何かが強制的に折れ曲がったような音だった。

 

目を瞑っていた商人達が次に目を開けた時、そこには宙を舞う二丁の銃と、あらぬ方向へと曲がった海賊達の腕

 

そしてすでに木刀を振り終わったと見える店員の姿だった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

まあ、骨折ってやったのは騒いだ罰という事で、悲鳴を押し殺して俺を射殺さんかりに睨みつけてきたのでちょっとムカついたから仲間ともども叩きだしてやった。

 

 

というわけで…

 

 

修行がんばろー!!から早10数年ほどたちまちた。

 

 

みんなのグンジョー君ですよーーーーー!!!

 

 

元日本人の貧弱なガキンチョは今や目の色、銀色の髪が似合う好青年になりました。

ハイ、いきなり調子に乗ってすいません。

 

さて、最近なんと!!ゴール・D・ロジャーとかの話、というか悪名?を聞くようになってきたんですよー!!海賊王の称号も近いね。少し安心した。このまま誰も知らないONE PIECEの世界を堪能して何が面白いのかと…。

 

んーでも逆に言えばこの頃からやヴぁい人たちが各海で大暴れし始めるっちゅうわけだ。恐ろしいね。

 

さてルーキー達が頑張っている間、伊達に給仕してボーッといきてきたわけじゃねえんだわサ。

 

何してたかっていうと頑張って自分の生存フラグもとい剣技を鍛えてました。

結果的にある程度の相手には対抗できるようにはなったんじゃね?

 

で、俺のしたことだけど手始めに、ゾロみたいに筋トレとか基礎体力をつけることにした。基礎は重要だからね。

 

朝起きて店がはじまるまでとにかく筋トレ素振り&手伝い。

 

手伝いなんだけど酒樽は地味に重いから筋トレに役に立った。

 

基礎体力をつけた後(これが長かった)、剣の練習をしたんだけど、これが木刀なんだけど最初のころは木刀がすっぽ抜けてどっかいっちゃうこともあったね。

 

で、なんとか剣をコントロールできるようになった時は俺の部屋はボロボロになってた(泣)。

 

まあ、多少の犠牲を元に独学で剣を覚えていきました。

 

覇気は無理。とりあえず、あるとは思うんだけどできた気がしない。

 

いや、構えなんて適当だよ?剣両手でもって構えるのが剣道のスタイルだと思うけど、俺なんか鞘がない居合っぽい状態で下から上に切り上げるからね。

 

一応元海賊やってたレッドさんがちょくちょくアドバイスしてくれたけど、それも役に立った。いやぁ、亀の甲より歳の、え?レッドさんなんでもないっすよ。歳?俺そんなこと言ってないすけど?

 

で、訓練に付き合ってくれたレッドさん(ガチで斬りかかってきた)に礼を言った後しばらくしたら実戦。

 

やり方は簡単。街に出て喧嘩吹っ掛け倒す。これだけ。で、がんばってやるんだけど時には1対10とかあってスゲー大変だった。いや、勝ったけどね。

 

でもいかんせん、木刀じゃ威力が不足しているってことに気づいた。

 

日本刀欲しいなあ・・・、って思ったので、海賊の客が置いて行った忘れ物をパクッてモノホンの日本刀手に入れた。いやー神々しいねえ。後でそのお客さんが来て騒いでたけど、レッドさんがぶっ飛ばしてた。

悪いことしたなぁ。嘘だけどね。

 

で、本物も手に入れたからモットガンバロー、って感じで何年かそれでやってたら、ある日いきなり刀身から衝撃波が出た。

 

おい、マジか。

 

ブンってふったら目の前のガラス瓶がスパンってなったからね。相手してくれた人おびえてたし。

ついに俺も化け物の仲間入りかと。

いや、転生してからスゲェな俺。

 

ほんでもってここ最近で自分の剣術を確立させた。

剣自体を速く振り回すか、時には自分が高速で移動してぶった斬ったりする。

うん。明らかに集団戦闘用だね。オーバーキルともいう。

俺の剣術の明日はどっちだ?

 

そんでもってレッドさんに見せたら俺の剣は疾の剣とか言われてるらしい。

なるほど、柔でもないし剛ってかんじでもないしね。

で、剣の腕を鍛えつつ暴れる客を(物理的に)鎮めるのが俺の仕事。

前はレッドさんがやってたけど、俺が成長して強くなってきたのでその役割は俺になり、給仕&用心棒をしている。

 

 

 

さて、俺もこの街で長い間生きてきた。

 

 

 

で、

 

 

 

この街今の俺には弱すぎじゃね?

 

はじめてこの街に来た時はどこの地獄だよ、とか思ってたけど、いざ成長してみるにつれてそのレベルが低く感じた。

 

それはそうだ。後から知ったのだが、この街は偉大なる航路(グランドライン)の中で、入口に最も近くにある街。

 

あの試練を超えてきたとはいえ、偉大なる航路(グランドライン)の真の恐ろしさを知らないつまりヒヨっ子しかいない、ということだ。

 

というわけで、俺は相手のレベル不足に困っている。

いやねえ、戦っても戦っても戦闘の英才教育(?)を受けてきた俺には弱いのしかいねえんだわ。

 

うーん、困ったなあ。

 

 

 

 

「そうだ、海へ出よう。」

 

 

 

 

京都気分で決めちゃいました。

 

というか、ONE PIECEの世界に来たのに海に出ないのってどうよ。それこそカミサマのご意思に反してんじゃないの?

 

昔は生きていくために剣術を学ぼうとか思ってたけど、ある程度場数を積んだ俺は、強い相手と戦いたい!!という欲求が生まれた。まあ、調子に乗ってるのだが…。

 

さて、戦った相手に少額(と言っても一人数十万~数百万ベリー程度だが)賞金首もいたので、ある程度の蓄えはある。

 

船は酒場の常連である知り合いの船にでも乗せてもらおう。用心棒としてなら喜んで雇ってくれるんじゃないのか。

 

問題はレッドさんだな。世話になったから出て行くのも忍びねえなあ・・・。

とりあえず、今日の仕事終わったらレッドさんに話してみるか。



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旅立ちの日に

久々の投稿です。
最近忙しかったから、他の小説も全く更新できない…。


「レッドさん。」

 

「何だ。」

 

今は皿洗いしてるレッドさんの後ろたたずんでいます。別に奇襲するわけではないよ?格上に奇襲をするもんじゃない。

経験者は語る。

 

なぁに、ちょっとO☆HA☆NA☆SHIしようと思ってね。

 

「お願いがありまふ。」

 

「言ってみろ。」

 

何てクールなんだレッドさん!!そこに痺れるあこがれ!!…ないか。

 

フッ、でも俺には分かっている!!その洗い物をしている右手から繰り出される伝家の宝刀ツッコミビンタ!!俺がはっちゃけた瞬間にそれが襲ってくるぅぅぅぅぅぅぅ!!

 

未来はすでに見えている!!さらに、今日の俺は中々冴えてるんでね!!いつもどおりにはいかない!!いくぜ!!

 

ズバッ ザシュ!!

 

「レッドさん!!グンジョー君が海に出るんで許してくだひゃい!!」

 

ジャンピングドゲザァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

 

我が故郷ジパングに伝わりしDOGEZA!!さらにそこにジャンプを加えるという画期的だが伝統的な要素を取り入れた斬新of斬新なお願いだぜ!!

 

さあどうだレッドさん!!かくなるうえは強制的にO☆HA「いいぞ。」・・・・?

 

「え?」

 

なんてったこの人。

ミーノエアイアーデースカ?

 

「お前がみたいなクソ従業員がどうしようと俺にゃ関係ねえよ。好きにすりゃいいさ。バーカ」

 

ブぅわかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

いやいや、軽く予想外なんすけど。ぽっきり、いやてっきりふざけんなこのドアホウが!!で、ツッコミビンタが襲ってくるものかと私は思ったのですが。何でツッコミガこないの!?ボケとツッコミの関係があって成り立つもんでしょうよ!ここツッコミどころでしょうよ!!さあ早く俺にト○さんもビックリの欧米か的なツッコミをぉオイぉぉぉぉぉぉ!!

 

「ほらいつまでこんなところに座ってるんだ。さっさと荷物まとめて出てけぇ!!」

 

腕力で外にポイポポポポポーイされる俺。

 

俺は出てくなら出てくでちゃんと挨拶してきたかったんだが。何この態度。仮にも10数年の付き合いの俺に対して何て仕打ちだよ!?

クソ従業員て。従業員の前にクソがつくて!!

 

「ブルワぁぁぁぁぁーカ!!おいぼれジジイ!!ボケがいなくてツッコミ病で死んじまいなヒィィイィィィィ!?」

 

必死になってよけると、俺の元いた位置にザクザクとフォークやらナイフ、挙句の果てには包丁が突き刺さった。

何というクレイジーなヤローだ!!まさか、人殺しの真似までするとは!!

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!本格的にくたばっちまえ!!」

 

俺はプンスカ怒りながら港のほうへ走っていった。

 

俺はこの後、旅に行くつもりだ。

 

よくレッド氏、いやあれもうジジイでいいや。

ジジイの店によく常連として来てくれてる商船の船長に一言言って用心棒として他の島まで運んでもらうようにしてもらった。

その際に発した言葉は、ほんの一言だけだ。

 

うちの近所に住んでいるジェファニーちゃん(18)に入れ込んでいることを、お宅の商船に乗っている奥さんにバラしますよ…と。

 

そしたら協力してくれる気と言ってくれた。それも、最大級の謝罪方法で。全く、渡る世間に鬼ばかりでないんだねぇ。俺涙出ちゃいそう。

港に着いた俺は船に腰をおろした。ったくあのジジイ今度会ったらただじゃおかねえ。

 

「おーい、グンジョークン。そろそろ出航する準備を整えておいてくれよ?」

 

「ハ~イ、分かりました。ありがとうございます」

 

「アハハハ、元気でよろしい。…で、ジェファニーちゃんの事は…」

 

「はい(今は)言いませんよ!!」

 

「マ~イダ~リ~ン?そろそろ行きますわよ~?」

 

「ッ!!ハハハ、ハニー!!今行くから待っていてね!!…ハァ」

 

商船長さんは何故か溜息を吐きながら自分の奥さん(現在)のもとへと向かっていった。何があったんだろうか。俺は難しいことは分からない。

 

「やれやれ…」

 

小腹もすいたことだし、ちょっと休憩するか。

そう思って、愛用のズタ袋の中で俺は袋の中で触り覚えのない不意に何かあたったのを感じた。

 

「何だ?」

 

興味を持ったので一応引っ張り出してみる。

袋の口に引っかかりつつも取り出すと、それは他でもない刀だった。

 

鞘は効率を重視して作られたなんちゃって品ではなく、一から作られている。暗闇の中でも、街灯のランプに照らされたそれは、まさに一級品の品だ。手持ちの柄は、黒で織られ、まるで使用者の手に吸い付くかのようだ。

 

安物とはいえ、色々な刀を見てきた俺には分かる。これはとてもいい剣だ。

 

だが、俺にはこんなもの買った記憶がない。

どこから盗った?いや、こんな高級品を盗ったんならとっくに売りさばいている。

はて、ではこの刀は一体何なのだろう?

 

そう思って刀を眺めていると、鞘に括り付けられてあるヒモに手紙が括りつけられていた。

無地?

潮風に揺れるソレをひっくり返してみると、端の方に申し訳程度に字が書かれていた。

 

『グンジョーへ』

 

これはレッドさんの字?

 

『この刀は業物の一工 ”虎丸”

 

この前、この街に来てた海賊からすってやった。

 

たぶん今のテメエに最適な一本だろう。俺が持ってたって何の意味もないからな。

 

思えば十年。長いようで、短かった。

最初は何だこのみみっちい坊主は、とか思っていたが、次第に店の事も、ついでに荒事も頼めるようになった。

 

俺の身体が老いていく一方で、お前は次第に実力を高めていく。

 

だから、こんな日が来ることは昔から分かっていた。

若者は、いつか自分の実力を試したくなる時が来るものさ。俺もそうだった。昔、退屈な生活に耐えられなくなって、故郷の島を飛び出したまま、すぐに海賊家業だ。

 

色々な無茶もやったし、いろんな奴と戦った。同業者の海賊はもちろん、西の海にあるとある国の剣士と闘い、とある島に住む部族の戦士、挙句の果てには海軍の、それも精鋭たちとも何度も戦った。

 

まぁ、今のテメエの実力じゃ、ある程度の奴には負けはしねぇよ。

 

だがな、いつかはそれも終わりがやってくる。

 

闘争よりも逃走の道を選び、戦闘よりも安全を求める。

 

まぁ、老いって奴さ。気にすることはない。それも、人生ってやつの醍醐味の一つだ。

 

だがな、人生ってのは老いるまでに何をやるかでその人生に彩りを加えられていくんだ。

 

ま、気楽にやんなよ。

 

若い奴にはまだまだ時間がある。その溢れた時間をどのように使うかはお前の自由だ。

 

説教臭くなっちまったな。ま、せいぜい頑張んな。

 

ニュース・クーでお前の記事が載るのを楽しみにしてんぜ。

 

では、またさらばだ。

 

 

 

 

 

 

  ”息子よ。”

 

 

 

 

 

     』

 

最後の文章はクシャクシャになっていた。

 

手紙を畳んでポケットにしまい、鞘から“虎丸”を抜いた。

手に取ってみると、改めて感じる。これは、スゴイ刀だ。オーラみてえのを感じる。成程、こいつは業物の名を関するだけはあるな。

 

すると、港の別の場所が騒がしくなってきた。

 

「…全く、感動の別れってヤツが分からないのかねぇ」

 

帽子を押さえながらその方向を見ると、海賊達が暴れていた。

 

「オラ、かかってこいやゴラァァァァ!!」

 

「日頃の恨みとかいつかボコボコにされた恨みも含めて、いっぺんにはらしてやるぜェェェェェェェ!!」

 

よく見ると、酒場で暴れていた海賊達だ。

 

「グンジョー君なんとかしてくれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「分かりました!!」

 

鞘を左手で持って背に構え、左手を腰の柄に手を添える。

 

 

・・・この景色に俺は誓おう。

 

 

「旋風」

 

 

これから俺は強くなります。今度はもっと強くなってこの街に戻ってきます。

 

 

「スクランブル!!」

 

 

だから、また会おう。

 

 

俺は虎丸を低く構え、一気に海賊達に斬りつけた。

 

 

 

 



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閑話休題:店主として、人として、親として

 

グンジョーの奴の様子がおかしいとは思っていた。

 

いきなりブツブツつぶやき始めたと思ったら俺のこと歳だとか言いやがった。俺はまだまだ現役だこのタヌキ野郎。用心棒だってちょっと疲れたからあいつにやらせてるだけだ。

 

あの日のことを今でも思い出す。

 

俺は元々海賊だったが、怪我がたたって戦闘ができなくなっちまった俺はある街で船を降りた。本当は仲間と一緒に行きたかったが迷惑かけられなかったからな。

それに…偉大なる航路後半の海である新世界…。あそこを乗り切る自信は俺にはなかった。

 

で、流れに流れてこの街で酒場を開くことにしたんだが、偉大なる航路前半の海、それもリヴァースマウンテンの近くにあるにしては、中々危険な街だ。

ま、俺には関係ねえけどな。

 

思えばあいつには初めて会ったときのことは忘れもしねえ。酒場を開いて間もないころだ。

 

まだ小せえガキが道端にぶっ倒れてたから驚いた。まさかこんなガキがこの街にいるなんてな。あのままじゃ危なかった。

 

そんで、起きたら起きたで俺のことこわがりやがる。失礼な。俺はこれでも仲間の間じゃ優しいやつで有名だったんだぜ?見た目が怖いのは否定しないけどな・・・。

 

俺が作ってやった飯をうまそうに食った後に話を聞いてみたが、記憶喪失ってやつでどうやら行くあてがないってんだ。海賊の親にでも捨てられたか?ま、ちょうど従業員雇おうと思ってたから、この店で雇やった。給料もいらないって言うから儲けもんだと思ったんだがな。

 

何日かしたら今度は剣の腕を磨きたいとか言いやがった。なるほど、こんなちんまい奴にとって、この街は危険だから護身術ぐらいできたほうがいいかもしれない。せっかく見つけた労働力がポックリ逝くのはゴメンだからな。暇なときに俺も協力してやるか。

 

で、鍛えてやったんだが初めのうちはだめだった。トレーニングまでは良かったんだが、あいつが木刀をふるとどっか飛んでくんだぜ?当人の顔面に直撃したのも一回じゃなかったな。

コイツ大丈夫か?

青あざ作りながら剣を振り回すコイツを見て、かなり心配になった。

 

だが、1年くらいしたら、いつのまにやら剣術を使えるようになってた。

俺に隠れて練習してたのは知ってたし、まあ当然の結果だろう。しかし、自己流だがら粗削りんおはしかたがないか。だが、中々スジがいい。事実、この頃から街に来る荒くれ者相手に喧嘩をおっぱじめる様になって、討ち取ったソイツらを、小銭を稼いでいたみたいだ。

 

俺が知らないとでも思ってるのかバカめ。

 

だが、野試合での戦闘は、確実にコイツの実力を高めていった。元々剣術はこいつに合った才能だったんだろうな。

 

で、そのあと暇を見つけては街に出かけていくようになった。

さらには、街のゴロツキだけでなく、街にやってくる悪党ども相手にも喧嘩を吹っかけはじめた。店の仕事をさぼるなよ?と忠告したら、何、実地訓練だ?何のだ。

…全く最初の頃のビビリがまるで嘘のようだな。でもこの街は危険だぞ?

 

というか、一方的に喧嘩を売ってそれを買ってもらって一方的にボコボコにしてるって本人が言ってたな。

 

とんでもねえ奴だ。コイツ本当に人間か?グランドラインに来たばかりとはいえ、こいつが仕留めた奴等は、全員海賊だぜ?

 

自分で捕まえた賞金首の話をしながら飯を食ってるこいつを見て俺は一瞬そう思った。

 

そんで10年たったらコイツにかなう奴はこの街にいなくなっちまった。なんてこったグランドラインの危険な街の欠片すらねえや。

 

ま、そりゃそうだな、毎日毎日修行しているこいつに勝てるゴロツキがいるなら見てみてえや。

 

さて、ビビリだったガキもいつのまにか一人前の大人になっちまった。最近ここら辺の敵じゃつまらなそうにしているのが、俺にわからねえと思ってんのか?

 

コイツはこんな場所にいるべきじゃねえ。こいつの腕ならまだまだ上にいける。そう、あの最悪の海、”新世界”でさえもしかしたら通用する実力を持っている。

 

でも、そんな事は俺の口から言うことじゃねえ。こいつがどういってくるかだな。

 

そしたら、決心がついたらこいつのために賭けで海賊から奪ってやった”あれ”をやろう。

 

中々いいもんだそうじゃねえか。

 

こいつが旅するうえで役に立つだろう。

 

お前の活躍はいつでも聞こえるようにしとくからよ。

 

「レッドさん!!グンジョー君が海に出るんで許してくだひゃい!!」

 

最初に合ったころとは想像できないぐらい口調になったなこいつ。まあいいか。

 

「いいぞ。」

 

「え?」

 

なに意外そうな顔をしてやがる。男の旅を止める奴はいねえよ。

 

「お前がどうしようと俺にゃ関係ねえ好きにすりゃいいさ。」

 

何ポカンとしてやがる。言ったからにはさっさと行動しろ!!

 

「ほらいつまでこんなところに座ってるんだ。さっさと荷物まとめて出てけぇ!!」

 

ったく、行動力は人一倍なくせにこんな所は尻つぼみなのかこいつは?

 

「バーカ!!おいぼれジジイ!!ボケがいなくてツッコミ病で死んじまいなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

おうなんだ元気じゃねえか。

 

俺から言うことは何もねえ。

 

 

 

 

 

グランドラインにあるとある街

 

その街は10数年までグランドライン最初の悪夢、”暗黒街”とも呼ばれる程の無法地帯だった。

 

しかし突如現れた謎の人斬りによって海賊といった無法者たちが狩られ続けていくうちにその数は徐々に少なくなり、今では海の住人たちの羽を休める場所として、その平穏を保っている。

 

そして、人斬り事件がなくなった現在でも、その街では有志で募った自警団が守っており、そして自警団の団長はとある酒場の店主が務めている。

 

彼は言う「せがれが笑顔で帰ってこれるような街にしてるだけだ。」

 

氏は老齢だが、まだまだ現役でいくそうだ。

 

なお、この島出身人物の中には、新世界、そして世界中では名を知らぬ者がいない大海賊がいる、という話がある。

 

しかし、その情報は定かではない。

 

 

 



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賞金稼ぎ編:あいつとの旅路
グンジョ~は~やつに~出会った~


「こんちはー」

 

「「「「「!?」」」」」

 

とある海賊船の甲板からお送りしております。

 

「テメエ、どっから入ってきやがった?」

 

「イヤ、普通に船体よじ登ってきたんですけど。」

 

「嘘つけ、うちの財宝を狙ってきやがったな?上等だ今すぐ海の藻屑にしてやるぜ!!」

 

「え?財宝があんの?それじゃネコソギ・・・、間違えた。おすそ分けして頂こう」

 

「ふざけんなテメエ!!」

 

「やっちまってくださいお頭!!」

 

「おいお前うちの船長は懸賞金5000万ベリーの賞金首だぞ!!降参するならいまのうちだぜ!!」

 

「あっそ、まあどうでもいいさ。」

 

船長さんが突っ込んでくるけど気にしない。俺は虎丸を鞘から抜きつつ深く沈み、居合に似た状態まで持っていく。

 

準備完了 離陸準備よし この距離でも十分当たる

 

「旋風」

 

後は相手に向かって一気に振りぬくだけ!!

 

「スクランブル!!」

 

「!ギャぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

振りぬいた刀身から放たれたX字の衝撃波が船長を切り裂く!!

 

「お、お頭!!」

 

「ヤベエこいつ強いぞ!!」

 

「あ!ちょっと待てコイツ“辻斬り”のグンジョーだ!!」

 

「その前に衝撃波がこっち向かってきてねえか!?」

 

「や、やべそうだった!!ギャアアアアアアアアアアアア!!」

 

人間が秋風に吹き散らされる紅葉のように、宙を舞った。

 

「明らかなオーバーキルだね」

 

俺は、自分以外誰もしゃべらなくなった甲板でボソリとつぶやいた。

でも、そんなの関係ねぇ。

取り敢えず、この海賊団が溜め込んでいるであろお宝を頂戴しに俺は船内へと降りていった。

 

 

 

 

「スパゲッティウマウマ」

 

潮風を浴びながら港の近くのカフェーでエスプレッソ。

 

どうも、無双後の昼飯はウマイ。グンジョーです。

 

さて、生まれ故郷?を出て数ヶ月が経ちました。

 

最近の日課として海賊船を見るたびに喧嘩を売って、そんで買ってもらってをくりかえしています。

商船を降りたあと、こんな感じに海賊とかならず者に喧嘩を売った後仕留めて換金する生活を送っている。

実戦の経験もできて、お金も稼げるというお買い得なお仕事です。

 

いや、でも最初は正直舐めてた。

 

海賊って言ってもたいして強くないんだろう?そんな感じで襲いかかったんだけどね?いやぁ、強かったわ。今まで戦ってきたゴロツキとはいろんな意味でレベルが違った。そのゲスさ含め。

というか、1対100とかおかしくない?そんなのざらにあんだぞ?

 

時々いる能力者も恐いし。いや、本当にビックリ人間だなあいつら。まぁ勝ったけどね。

 

そんでもって、こんな感じで海賊なら誰しも構わず喧嘩吹っ掛けてぶっ倒していくうちに俺にはいつのまにか二つ名がつけられていた。

 

その名も“辻斬り”

 

かかわった船の船員ほとんど倒しちゃう事からもこの名前がついたそうな。いや、反省してますよハイ・・・。

 

今では海軍の人たちまでそう呼んでるし、耳をすませると、どこかで“狂犬”とか陰口されてた。

 

・・・物騒だし、失礼だな。

 

ふう、そんで日々経験値を稼いでんだけど、

 

強くなってる気はするんだけど、使う技がね・・・。

 

いや、俺の使う技は“疾”の剣で、自分の走る速さとか、剣をふる速さとかで威力が上げてんだけど、使う技のそのほとんどが対大人数向けの大規模殲滅技なんだよね。

 

さっきの“旋風スクランブル”も考えた技の一つだ。ま、他にも試したんだけど、どれもこれもオーバーキル。

 

敵に囲まれたときとかに便利なんだけどね。

 

でも、俺の技はまだまだ威力が上がる気がする。

 

順調に化け物値上がってきてんな俺。

 

元一般人ってのが嘘みたい。

 

どうでもいいけど、そろそろタイマン用の技も欲しいなぁ。

 

 

 

さて、

 

昼飯食い終わった後、俺は手配書を見ていた。

 

ま、次はどこのドイツを狙ちゃおっかなー、って感覚なんだけど。まぁ、賞金首の手配書をコレクションするのも、前世のカード集めみたいで面白い。

 

そう考えていた時、ある手配書の前で俺の手が止まった。

 

“エドワード・ニューゲート”

 

後の大海賊“白ひげ”の名前がそこにあった。

 

あれ?でもひげなくね?ああなるど、彼はまだ若いんですね。

 

どうでもいいけど

 

 

 

・・・一度あってみたいな。できれば喧嘩もしてみたい。

 

 

 

こういう風に考えるようになった俺はだいぶ人間やめてきたと思う。

 

刀を振るうだけで衝撃波がおこる時点でおまえ何なんだってレベルなんだけど。

 

ま、いいか、さて賞金首でも

 

 

チュドーン     ドカン!!

 

 

何かの飛来してくる音、そして大爆発して炎上する灯台。

 

「あ?」

 

「海賊だぁー!!海賊が攻めてきたぞー!!」

 

「キャー!!」

 

「逃げろーーーーー!!」

 

「海軍に連絡しろ!!早く!!」

 

・・・どうやらカモがネギをしょってきたようで。

 

俺は港のほうを見つめながら虎丸を抜いた。

 

 

 

 

 

 

「暴風ウォークダウン!!」

 

高速で虎丸振りぬくと、俺を中心に刃の竜巻が起きる!!

 

ズバッ!!

 

「「「「「「「ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!」」」」」」」

 

・・・弱い。

 

海軍基地が近くにある街を襲撃したのだからめちゃ強いのか、それとも、地形図も把握しておらず、ただ単に暴れたりないお馬鹿さんかどっちかだと考えていたんだが、限りなく後者に近かったようだ。

 

とりあえず沖合にいたこいつらの船に乗り込んだんだけど乗り込んだら乗りこんだで、なんだお前はー!!こっちくんなーっ!!てんで、えっちらおっちら船室から武器持って木始めるし・・・おかしいでしょ?大砲ぶっ放すことしかでけへんの?ちゃんとした戦闘の準備くらいしておきなさいよ。

 

「テメエ顔しってんぞ!!海賊専門の賞金稼ぎで、確か“辻斬り”!!」

 

「ちょ、ちょっと待てよ、辻斬りって、な、なんでこんな場所にいるんだ!?」

 

「そんなこと俺は知らん。まずは、自分達の行動を省みてから言え。」

 

「ふざけ<ズバッ>ギャアアアアアアアアアアアアア!!」

 

ハイハイ死人に口なしね。意味違うか。

 

さて、ただ暴れる事しか脳のない海賊にはハズレが多い。悪い事するならもっと意地悪くやりなさい。懸賞金が悪どい事した分だけ上がるから。

うん、今回も完全ハズレだったな。適当に金品奪ってから船ごと沈めてやるか。

 

 

虎丸を鞘にしまい、沖合の方に向いた時だった。

 

 

 

ドォーーーーーーーン!!

 

 

 

・・・?

 

なんだ?

 

この船よりさらに沖合にいったところ、に何か起こって!?…えっ、ちょっと待って、何あれ大気が・・・割れてる!?

えっ、嘘、オイ、マジで!?

 

俺の知識の中でこんな芸当できる奴は一人しかいない!!

 

てかその前に津波キタ!!

 

「アアアアアアアアアアアア!!“旋風スクランブル”!!」

 

目の前の津波を剣圧で押し返す!!

 

「旋風スクランブル旋風スクランブル旋風スクランブル旋風スクランブルゥゥゥゥゥ!!」

 

虎丸を目の前で往復させて旋風スクランブルを連発!!それでもなお、止まらなィィィ!?

 

「だぁらクッソ、なら奥の手じゃい巻き上げろ、暴風ウォークダウン!!」

 

船から飛び出して、暴風ウォークダウンで渦巻く斬撃の回転を津波にぶつけた!!

ガギゴゴゴゴ

ズバババババ

 

ヒィィィィィィ、何か周囲で、凄まじい音が聞こえる!!

 

「こなくそーーーーー!!」

 

しかし、俺は恐れない逃げない泣いちゃダメ!!

回転を維持したまま剣を振り続けた。

 

ススススーーーザザザザ

 

荒れ狂っていた海は元の穏やかな姿に戻り、俺は海面へと落ちた。

 

「ぷわっぷ、ぷわぷぷっ!!」

 

・・・ヤベー!!チョーヤベー!!色々な意味でヤベ―!!二桁に入る前にこのお話終わるところだった!!

 

いや、何言ってかわかんね―けど!!

 

 

と、その時馬鹿でかい声が響いた。

 

 

 

 

「グララララララララララ!!俺の攻撃を“斬る”たぁどこのどいつだ?」

 

 

 

 

・・・ヤッパリディスカ。

 

俺はいつのまにか近くまで来ていた小舟に乗っている大柄な人物を見据えた。

 

やれやれ、俺は願い事が叶っちゃうとってもラッキーマンらしい。まあ、ハッピーかどうかはこの際おいとくがな。

 

 

でも、どうでもいいさ。会いたかったよ。俺は嬉しくってニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

「“白ひげ” エドワード・ニューゲート」

 

 

 

 

 

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ヒゲヒゲ団って知ってる?ボンバーマンの。え、ボンバーマンを知らないだって?全く近頃の若いのは(ry

化け物の階段の〜ぼる〜、君はまだ超新星さ

 

どうも、“白ヒゲ”に睨まれた“辻斬り”ことグンジョーくんです。

 

 

ついに出会っちゃた後の大海賊。

 

ほんとーはもっと違う人に会いたかったなー、とは言わない。

 

言ったけど。

 

そうこうしているうちにエドワードさんが船の近くまでやってきました。

 

どうやってここまでくるのかな・・・、俺みたいに昇ってくるのかな?って思ってたけど、小舟からジャンプしてくるが正解でした。

 

え?高さ3メートル以上あったよね?

 

・・・・大海賊パネェ!!

 

あと、船が結構揺れたのに平然としている俺もパネェ!!

 

 

そして、ついに俺と対峙するエドワードさん。あ、このときはまだひげないんだ。

 

と、いきなり俺のことを凝視していたエドワードさんが口を開いた。

 

「・・・おめえ“辻斬り”グンジョーだな。」

 

おや、知ってんのか。なら話が早い。

 

「そうだよ。あんたみたいな大物にも名前がしってるなんて光栄だね、エドワード・ニューゲート。」

 

エドワードは一瞬キョトンとした後、何故か大声で笑い出した。

 

「グララララララララララ!!俺みてえな小物に大物なんてつけるたあオメエどんだけ謙遜してんだ!?」

 

おお、自分を小物呼ばわりする白ひげ。レアじゃね?

 

「そうだな、ところでエドワードさん。」

 

「あ?」

 

 

 

「テメエ、いきなり何さらしとんじゃオラア!!」

 

 

 

不意打ちからの回し蹴り!!キマッタ!!

 

「うおわ!?」

 

軽く吹っ飛ぶエドワードさん。ハハッ、ざまぁねぇぜ。

 

この光景を未来の息子さんたちが見たら

 

『えええええええええええええええ!?』

 

とか大口開けてキョドってるんだろうな。

 

というか、回し蹴りで吹っ飛ぶ白ひげは中々シュールだな。一眼レフは何処かに無いのだろうか。ウツルンデスでも構わん。

 

「テメエいきなり何すんだアホンダラア!!」

 

なんとか、船のヘリにつかまってやがった。海に落ちなかったのか。

 

チッ

 

「オメエ今舌打ちしなかったか?」

 

「ザケンナ!!そっちこそアホか!?いきなり津波起こして攻撃するたぁどうゆう頭してんだぁ!?」

 

「あ?いいじゃねえか無事だったんだしよ。」

 

「そんなんですむか!!一歩間違えたら海の藻屑だわ!!」

 

「グチグチうるせえなぁ、女々しいやつだ。お前本当に男か?」

 

 カチン

 

「あ?テメエこそ、いきなり津波起こしやがって、何だ色々溜まってんのか?お?」

 カチン

 

「テメエ、こっちがした手に出てりゃいいきになりやがってキャンキャン吠える狂犬野郎!?。」

 

「なってねえしそっちが先にやったんだろうがこの振動中毒?」

 

「「・・・・・・・。」」

 

「「やんのかゴラア!?」」

 

 

 

とゆーわけで

 

 

 

近くに丁度あった小島で決闘です。

 

てか、この展開まじか。

 

(・・・)

 

死へのカウントダウン?

 

ノー、ノー

 

大戦争へのカウントダウン。

 

まがりなりにも地震使いの化け物。こっちはまだ手加減ができないヤンチャぼーず。

 

さて、この2人が激突したらどうなったでしょう?

 

 

大災害ktkr

 

 

というか、距離はあるけどあの街大丈夫かな。あそこのパスタもう一回食いたいんだけど。

 

「質問だが。」

 

「何?」

 

「津波を斬ったのはお前か?」

 

「そうだけどそれが?」

 

「そうか。」

 

グラララと笑った後、エドワードさんが不敵に笑う。ヤバイ惚れそう。

 

「久々に手加減しないで済む。」

 

・・・やっぱ今のなし!!

 

例の振動発射体勢をとるエドワードさん。

 

いきなりか!?っ、仕方ねえ!!

 

虎丸の斬撃を“飛ばす”のではなく、俺の目の前に“停滞させた”。

 

「ウェアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

「“烈風エマージェーシー”!!」

 

襲いかかる振動。

 

それを俺は目の前に作った斬撃の壁で防ぐ。

 

「!?」

 

「うおわ!?」

 

俺の“烈風エマージェーシー”と振動が一瞬拮抗し、その後地震エネルギーが破裂して吹き飛んだ。その余波を受け俺は数m吹き飛んでしまった…なるほど、さっきの意趣返しってわけか?子憎たらしいやつめ!!

 

「ほぅ…オメエが初めてだぜ、俺の振動に負けるでもなく拮抗したってのは。」

 

「いんや、こっちが負けたよ。さすがだな、グラグラの実は!!」

 

「何?お前知ってるのか?」

 

「あぁ、だがこっちも吹き飛ばされたからおあいこさ!!じゃ、今度はこっちからいくぜ!!」

 

これじゃあ、ただの“旋風スクランブル”だったらまず攻撃にもならんがな…。

 

「ならば!!」

 

俺は虎丸をいつもより深く構えなおし、高く上空へと飛び上がる。そして、その間に溜めておいた一撃を身体を回転させつつ解放!!

 

「“爆風ナマズスクランブル”!!」

 

俺が放ったのは“旋風スクランブル”よりも遥かに巨大な一撃。一撃が重い分、いくぶんか速さは落ちるが、旋風に比べたら、その威力は軽く数倍に跳ね上がるのだ!!

 

「吹っ飛べデカブツ!!」

 

グハハ、未来の大海賊“白ひげ”に黒星をつけてやるわ!!

 

「…ハッ」

 

だが、そこは白ひげさん普通じゃなかった。

 

何を思ったか“爆風ナマズスクランブル”に突っ込んで来やがった!!そこは、普通コマンドよけるを選択しろよ!!危なすぎて海賊達にもまだ使ってないんだぞこの技!!

 

しかし、俺の心の叫びもよそに爆風ナマズスクランブルと白ひげの距離はグングン縮まり、そしてついに両者は激突した。

 

…え、激突!?

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

ここにきてやっと俺は白ひげが何をしているかに気付いた。

 

コイツはもともと真正面から爆風ナマズスクランブルを打ち破る気だったんだ!!それを証拠に、白ひげの右腕と左腕にはいつの間にやら、それぞれ振動エネルギーが蓄積されていた。

それを、自分ごと“爆風ナマズスクランブル”に突っ込んで、相殺する気なのか!?

馬鹿ななんて無茶苦茶な奴!!疾風スクランブル以上の剣圧を誇る、爆風ナマズスクランブルを本当に正面から突破しようってのか!?

 

そしてついに、白ひげは“爆風ナマズスクランブル”を…打ち破ってしまった。

 

「わぶ!?」

 

破られた爆風ナマズスクランブルの余波が、地面の土を抉り取り、粉塵としてまだ宙にいる俺の顔面を直撃する。

ホコリを振り払おうと顔を振ったのもつかの間、何かが俺の頭をつかんで、地面へと叩きつけた!!

 

「捕まえたぞアホンダラ!!」

 

そう!それは、他の誰でも無いエドワード・ニューゲート、その人だったのだ!!

奴は俺がひるんだ一瞬の隙をつき、視界が塞がるのも厭わず、無防備になった俺を捉えに行ったのだ。

 

「この、放しやがれー!!」

 

「グラララ!!それで放すバカはいねぇよ!!」

 

地面に押し付けられている俺には、巨大な白ひげの左手に隠れてほとんど視界が無い。

しかし、それ以外の感覚が働き、俺の身体に迫るも何かの情報を伝える。

 

砂埃の舞う音、

 

虎丸が手からこぼれ落ちる感触、

 

そして、空気を無理矢理圧縮させたような…異音

 

「ウェアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

次の瞬間、白ひげの右腕に圧縮されていた地震エネルギーによる超振動が俺の身体中を駆け巡っていた。



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天災の結末

 

 

「ハッ」

 

辻斬りの野郎を見下ろして荒い息を吐く。

 

終わったか。

 

中々いい腕前だった。少なくともこの偉大なる航路で戦てきた中では上位の強さに入るだろう。

ここらへんにのさばっている程度の海賊なら地震一発で船ごと沈めてきたが、これはいい意味で予想を裏切られたな。

 

「ガッ!!」

 

チッ、さっき受けた傷が疼きやがる。

振動を使って無理やり突破口をこじ開けたが、実際とんでもないダメージが蓄積されているようだな。やれやれ、俺はこんなに無茶をする人間だったか?

…いや、とりあえずは、さっさと街に行って傷を治すとするか。はたして間に合うかどうかだなぁ…。

 

俺はもう一度ピクリとも動かなくなったそいつをもう一度見降ろした後、乗ってきた小舟に向かって歩き出した。

 

 

死して屍、何も語らず。

 

 

コイツともう少し戦いたかったが、動かなくなってしまっては仕方がねぇ。今生の別れになるのが口惜しいが、俺の一撃を直に受けたからにはもう起き上がらねえんだろう。

 

…こいつのことは“強敵”絶対に忘れねえようにしよう。後で墓でも作ってやるか。

 

 

 

 

 

 

ガシャ!!

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

絶対もう無理だろうと思った。俺の振動が直撃したんだ。よほど鍛えてるか、能力者じゃなければ…いや、例えそいつらだとしてもマトモに食らって生きていられるハズがねェ!!

 

しかし、剣を支えに目の前のこいつは立ち上がろうとしていた。

 

この闘争の世界、常に全力で殺り合う世界、一人しか生き残れない世界。

 

結局、生き残る奴はただ強いから、って理由だけじゃねェ。それ以外の何かを持っていやがる。折れそうになる気骨を支え続ける絶対的な何か(・・)

 

こいつが持っているのはなんだ?

 

「おうい?海賊さんよ、ゴフッ。勝ったつもりになるのはまだ早いと思うんだけどなぁ〜?」

 

手負いの獣が何言ってやがる。…いや、俺も他人の事を偉そうにいう事は出来んか。

 

「クソ生意気な・・・。」

 

上等だ。

 

俺はもう一度、戦うために向き直った。

 

 

 

 

 

やべえ、目がかすむ。体中がいてえ。

 

どうも、(ガフッ)決闘してボロボロになってるほうのグンジョー君です…。

 

白ひげさん。白ひげさん。なんで白ひげさんは僕の体に全力で地震エネルギーをたたきこんだの?

 

A.それはね君がムカついたからだよ?

 

…やっぱり?

 

やっとる場合か!!

 

さて、今俺に起こってるのは人生最大のピンチ。

なんてこった、原作史上最強クラスの強い一発をモロもらっちまった。どうすんだよコレ、身体全体がキシキシいってるぞ?

というか、意識はまだあるがぶっちゃけヤベエ今にも色々吹っ飛びそう。たとえば天国とか。

 

スカイハイ!!

 

フライアウェイ!!

 

・・・冗談も言っていいときと悪い時があるよね?

 

というか、何ドヤ顔して勝った気になっちゃって歩き出してんだよエドワード・ニューゲートォォォォォ!!俺はまだ負けちゃいねぇぇぇぇぇ!!

 

俺は虎丸を杖代わりに起き上がる。

 

何ビックリした顔してんだよ。俺はまだ死んじゃいねえぞ?

 

「おうい?海賊さんよ、ゴフッ。勝ったつもりになるのはまだ早いと思うんだけどなぁ〜?」

 

やべ、血でた。てか、負け惜しみにしか聞こえねえ。

 

「クソ生意気な・・・。」

 

「生意気で結構。でもさ、あんたもフラフラじゃん?俺の“爆風ナマズスクランブル”受けて立っていることが未だに信じられないんだが・・・。あんた本当に人間?」

 

「いや、その質問は俺がしてえよ。武器から衝撃波飛ばすたぁ、どうやったらできんだ?お前さんこそ人間の皮被ったなんかじゃねえのか?よかったら今度教えてくれ。」

 

「いいよ、俺に勝てたらな。」

 

「なるほどな、グラララララララララ。」

 

つか、ヨロヨロのけが人達が何言ってんだ。もし、今これで一発喰らったら俺死ぬるぞ。…一発?

 

「エドワードさんとやら、提案があるんだが。」

 

「なんだ?」

 

「お互い全力の一撃を出し合ってそれで終わりにしなか?」

 

「…なるほどな」

 

相手にもここままやってもらちが明かないってわかったみたいだ。理解が速くて助かる。

 

「ふぅ」

 

俺は力を抜く。

 

心に波風一つ立てることなく。

 

これは奥の手だ。

 

今までは剣をふりぬく“速さ”で技を放っていたが今度はそれに、“俺自身の速さ”を加える。

 

大規模破壊ではない、“最終決着用”の技。

 

失敗、自己犠牲をいとわず、恐怖を恐れず、真っ向勝負!!

白ひげも振動発射態勢をとっている。それも、さっきより深い構えだ、言葉通り、この一瞬で決着をつけるつもりか!!

 

「なら!!」

 

低く腰を落としたまま―――加速

回転、遠心力、そして速度!!すべての要素は整った!!

 

 

 

 

 

 

「いいぜ、かかってきな強敵(アホンダラ)!!」

 

 

 

 

 

「上等だ、首洗って待ってろよ、大海賊!!」

 

 

 

 

 

「「俺はお前に負けない!!」」

 

 

 

 

 

「ウェアアアアア!!」

 

 

「カミカゼ“嵐”!!」

 

 

 

その時、

 

 

 

 

上空の雲が割れた

 

 

 

 

 

 

 

 

え?結果?

 

結果は相うち。

 

俺はあいつの全力の振動をくらって、

 

あいつは俺の全力の斬撃をくらって。

 

見事に体力尽きて、地面に倒れ伏している。

 

「…オイ。」

 

「…何だ。」

 

「お前に聞きたいことがあるんだけどよ」

 

「飛ぶ斬撃についてなら、いつの日か教えてやるよ」

 

「グラララ、そいつはありがてえな。でも、俺の言いたいことはそれじゃねえ」

 

「じゃあ何?」

 

「なあ、お前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の……家族(・・)になってくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ハァ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

グランドラインにある、とある孤島。

 

そこは、近くに大きな街がある以外、潮風の運ぶ海の香りや、ウミネコの鳴き声が聞こえる、他の島とも何の変りもない普通の島だ。

 

しかし、この島は偉大なる航路で生き残る唯一の術である、記録指針(ログポーズ)の指針を逆らってでも訪ねる海賊たちが後を絶たない事で有名である。

さらには、この島への道筋を示す永久指針(エターナルポース)は高値で取引されていることは一部の者たちにとって常識と化している。

 

 

それは何故なのか?

 

理由は簡単だ。

 

 

 

 

“地震”

 

 

 

“大嵐”

 

 

 

この二つの天災が歴史上初めて激突した場所だからだ。

 

しかし、天災と言っても人々が考える災害そのものの事ではない。

 

それは、世界から見たらとても小さな個…しかし、その()自体が人の枠に収まらない、化け物二匹による激闘、そして闘争の幕間劇。

 

しかし、その幕間劇が徐々に徐々に姿を変え、最終的には世界を相手にした千客万来の大公演へと姿を変えたのだ。

 

ならず者は夢見る。自らが世界の覇を唱えんとすることを。

 

その島の名前は、“地嵐島”エドワード・ブルート島

 

必勝祈願の祈り場所として名高いこの島は、いつしか崇拝され、島全体がまるでご神体のようにあがめられている。

 

 



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病み上がりだコノヤロー暴れたりないぜ!!

・・・今日はさわがしい1日じゃの。

 

ここで長いこと働いているが、今日ほどやかましい日はなかった。

 

昼間は急に海賊が襲ってきた。

 

街の連中は山のほうまで逃げて行ったが、わしはここから動かんかった。わしは医者じゃ!!もし、この街が戦場になったらみんなを誰が助けるんじゃ!!

 

診療所にそのままいたんじゃが、海賊はいつになっても襲ってこんかった。どうやら、海軍がおっぱらってくれたようじゃの。やれやれこれで仕事に集中できるワイ。

 

さてと、もう一仕事しようカノ。していた時だった。一瞬大気がリン・・・とつっぱた音がしたと思ったら、沖合からこの世のものとは思えない轟音がした。

 

 

なななななななんじゃ今のは!?まるで、地震と嵐が一辺にきたみたいな音じゃったゾ!!

 

 

さすがのワシも診療所から飛び出した。

 

ワシが港に来たころには、街のやつらがすでに集まっていた。まったく、こんな時だけ現金なやつらじゃワイ・・・。

 

で、さっきの轟音の正体なんじゃが、分からずじまいじゃった・・・・。何が起こったのかのう。この年にして1つ謎が増えたワイ・・・。

 

ドンドンドンドン

 

?急患のようじゃな。こんな時間帯に来るとは、近所のワルガキどもか、はたまた海賊か・・・まあエエワイ。

 

「先生お疲れでしょう?私が出ます」

 

「ああ?よろしく頼むワイ」

 

やれやれ、また今日のカルテでも、

 

「キャーーーーーーーーーー!?」

 

ドンガラガシャーン

 

・・・まったく今日ほどさわがしい1日はないワイ。

喧嘩という名の決闘から何日か過ぎた。

 

血まみれの俺たちを初めて見たときは悲鳴をあげてた女性も今はちゃんと介護してくれる。

 

・・・そんなに怖かった?

 

治療してくれた医師に言わせると、片方は全身に多大なダメージが及んでおり、もう片方は刀傷から出血多量。普通は歩けないどころか、死んでるワイ、だそうだ。

 

一応全治1ヶ月とかいわれたんだが、翌日には平然と歩いてるから、つくづく化け物だな俺たち。

 

で一週間ほどその街にいることになったんだが、その数日の間に色々なことがあった。

 

まず、海軍がこの街に来てた。

 

なんでも、最初にいた海賊のために派遣されてきたそうな。ワッフルメーカー中尉ってのが指揮とってるらしいんだが、その人の命令で海賊の残党は即逮捕だそうだ。

 

そういえば、白ひげって海賊だよな。

 

・・・え?

 

俺は賞金稼ぎですけど?

 

で、その人の部下の海兵がおれたちのいる診療所にきたんだけど、お医者さんがここには海賊なんていないって言ってくれました。

 

いやはやお医者様はカミサマです(泣)。

 

その後、昼間にすさまじい轟音がしたんだけど知らないか?って言われた。

 

イッタイナンノハナシダロウナー?

 

ちなみに、白ひげさんの家族にならないか?って話は

 

「うーん、遠慮しとくー。」

 

お断りさせていただきました。

 

白ひげ、お前にはすぐ大切な家族ができるよ。だから、俺みたいなのをスカウトする暇があったらマルコとかジョズとかにしてやんな。

 

「そうか、でもおりゃあまだあきらめねてえぜ?」

 

白ひげさん。何故そこで燃える?

 

で、1日で完治させた(お医者さんに、お前ら化け物か!?って言われた。知ってる。)俺たちは適当に宿をとって休むことにした。

 

その後2回程海賊の襲撃があったんだが、1回目は白ひげの津波で、2回目は俺の斬撃でご退場いただきました。

 

改めて言おう。

 

お前はは化け物だ。「テメエもだろう。」・・・やっぱり?

 

さて、出発当日になった俺達ですが、

 

 

 

 

 

「パスタウマウマ」

 

「・・・」

 

例のカフェーでランチタイムとしゃれこんでいました。この後何するか話したかったしね。てか、昼間っから酒飲んでんじゃねえ白ひげ。

 

「あんさんはこの後どうすんの?」

 

こいつにニューデートって呼ぶのも何か新鮮だな。

 

「おりゃあまず家族探しだな。まだ見ぬ家族達が俺を待ってんだ。」

 

「ふーん、まぁそうなるわな。」

 

「おめえはどうすんだ?」

 

「…うーん」

 

それを今俺も考えていたのだ。

このままこの街に残るのもいいが、そろそろ別の街に行って色々な敵とも戦ってみたいとも思っている。

どうするべきか。

考えてはいるんだけど、どれもつまんなそうだしな。

 

「おい?」

 

「なんだ?」

 

「今すぐ家族になれってわけじゃねえが、1つ提案がある。」

 

「聞こうか。」

 

ニューゲートはかたわらにある酒を飲みほした後こう言った。

 

 

 

 

「オメエ俺と一緒に旅をしねえか?」

 

 

 

 

「…ああ?」

 

家族に慣れ発言から一転いきなり“旅をしないか?”どういうことだ?

 

「もちろんオメエのこともあきらめてねえぞ?」

 

「いや、多分そうだとは思ってたけど。というか、そう言う発言ってちょっと語弊があるけどもやめてやめて振動はやめて」

 

右腕に溜めていた振動エネルギーを解いた後、一呼吸置いた後、白ひげはゆっくりとしゃべりだした。

 

「お前はおもしれえ奴だ。初めてテメエと腹の内見せあった仲だからよ。一緒に旅ができたら楽しいと思う。それに、まだ飛ぶ斬撃も教えてもらってねえしな。」

 

…俺は少し考える。

後の大海賊“白ひげ”

 

しかし、彼はいうなればまだまだ若輩者だ。

 

こいつがどうあの稀代の怪物に成長していくのか?

 

断然見てみたいだろ!!!

 

「うん、分かったいいぞ。」

 

「そうかそうか、グララララララ。オメエさんが家族になる第一歩だな。」

 

「いや違うし。」

 

「俺は魔術はできねえが・・、オメエは俺の“家族”になる。そんな気がする。」

 

「それは気のせいだ。」

 

 

 

よし、じゃあゆっくり行くとしようか。

 

 

 

こうして、

 

 

 

後の“大海賊”との旅がはじまったのだった。

 

 

 

「ところで、船はどうする?」

 

「そうさな、俺とお前の2人のりじゃ小舟じゃ入りきらねえもんな。」

 

「主にお前の大きさだと思うが・・・。何食ったらこんなにでかくなんだ?」

 

「どうでもいいじゃねえか。ところで、沖合にちょうどいい大きさの海賊船があるな。」

 

「本当だ。サイズもタイミングもちょうどいいな。」

 

「…やりすぎてブッタ斬んなよ?」

 

「いや、おめえこそ沈めんじゃねえよ」

 

 

 

俺は見ていた。

 

“地震”と“嵐”が競り合った瞬間

 

轟音とともに海が、空が、その衝撃で割れたのを。

 

彼らは今もある海賊船の上で自分たちよりも大人数を相手に戦っている。

 

強いな・・・。

 

「おい、どうした?」

 

ああ、お前か。

 

「いや、強そうな奴らだなと思ってな。」

 

「ん?何の話だ?」

 

「いや、今はどうでもいいじゃねえか。さっさと仲間たちのところに行こう。どうせまだ宴やってんだろ?」

 

「ああ、まだはじまったばかりだがな!!」

 

ハァ・・・、まったくこの一味をまとめるのは疲れるな。

 

「のみ過ぎて死ぬんじゃねえぞ?」

 

そしたら、我らが船長は<キャプテン>はニヤリと笑った後こう言い放った。

 

「俺は死なねえぜ?“相棒”。」

 

まったくお気楽な奴だ・・・。

 

俺はもう一度海のかなたを見る。

 

一度でいい。

 

あいつらと戦ってみたい。

 



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感じるな、考えろ!!

 

きままにシンガソング。どうもあなたのグンジョーです。

 

さて、俺は今甲板で釣りをしている。エレファントホンマグロでもつれないかね。

 

この船は今次の街へと歩を進めている。

 

え?白ひげ?

 

あいつはさっきからなんかしてる。実験だとか言ってたけど。

 

ん?あれは俺の虎丸じゃん。何すんの?

 

と、白ひげが明らかに自分の手よりも小さい虎丸を思いっきり振り上げ

 

「ウェアアアアアアアアア!!」

 

「何やってんのオマエェェ!?」

 

虎丸をブン投げやがった!!錆びる!!

 

そう思った瞬間、俺は海面にダイブしてた。

 

 

 

 

「いまいちその感覚ってのがよくわかんねえんだよな。」

 

グラグラ笑ってんじゃねえよ。俺結構今怒りおさえてるんだよ?海水の冷たさで若干冷静になりつつも若干キレぎみだ。

練習に俺の命に等しいもの使うってどんな神経してんの?馬鹿なの?死ぬの?

「そっか・・・、俺も試し斬りしてた時に突然出たから驚いたもんだよ。俺が掴んでいる感覚が分かれば早いんだけどな。というか、俺の虎丸がを濡れてしまったんだが・・・。」

 

「気にすんな、アホンダラァ。」

 

「気にするわ!!テメエ俺ともう一戦決闘やりてえようだな!?やるか!?」

 

俺たちはとある町に物資の補給のために立ち寄っていた。ま、大人2人だけでも、結構もったがやはり食料の底は来る。・・・・というか、白ひげ。おまえバカスカ酒飲んで平気なの?アル中にならないの?死にたいの?

 

「オメエは今まで剣の訓練して手に入れたんだろ?それをオメエよ一回で俺ができちゃあ、剣士の立場ってもんがねえだろうよ。」

 

 グララララと笑う白ひげ。・・・うん。俺は別に気にしないけどね。

 

「でも、一々あんな隙だらけのモーションばっかやってたらいつか死んじまうぞ?」

 

「ハッ、俺の能力は超人系<パラミシア>じゃ最強らしいぜ?それに俺は頑丈だしな。すぐには死なねえよ。」

 

実際死ななかったしな、グラララとか言ってるけど、この人が言うとなんか納得してしまう。

 

あのセンゴクさんが、世界を滅ぼす力っていってたしね。その気になればこいつ世界征服できんじゃねえの?

 

「というか、武器買おうよ武器。」

 

「武器だぁ?」

 

「そうだろ。てか、素手でできると思ってんの?さすがに、それができたら俺は死ぬる・・・。」

 

「まぁいいか。でも、俺に合う武器があるのか?並みの武器じゃ俺には合わねえがな。」

 

それがあるんですよねぇ。漫画で見た白ひげはいつも巨大な薙刀を持っていた。白ひげの振動能力や、あれだけドンパチやっても壊れなかったあの薙刀は絶対すごい武器なのだろう。

 

でも、どこで手に入るかがわからん。そんな描写なかったからな。

 

いっそ、一から作ってもらおうか?いや、でもあの薙刀は並みの職人じゃ作れないだろう。腕のいい職人・・・それもすごいやつ。鬼徹とかしか浮かばないけどな。

 

「おい、何黙ってんだ?」

 

「ああ、ゴメン。少し考え事をね。」

 

「ほう、ま「オイ!でこみてやがんだ!?」何だ?」

 

目の前を見てみると、海賊達が一般人の人に因縁をつけている。

 

「テメエ、俺がセイアツ海賊団副船長アンデルセンと知ってんのか!?」

 

「ヒイイイイすいません!!」

 

「副船長こいつ調子乗ってやがりますぜ!?」

 

「なにぃ!?お前調子に乗ってたのか!?」

 

「の、のってませんよ!?」

 

「生意気な野郎だ!!」

 

「誰か!!た、助けて!!」

 

なるほど、この副船長ってやつは脳筋だな。部下の言うこと鵜呑みにしてやがる。このまま手を出してもいいけど、・・・あれ?白ひげ?

 

「ウェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「そけぶ!?」

 

「「「「「「「「「「何やってんのお前!?」」」」」」」」」」

 

いきなり白ひげが副船長をぶったたいてた。というか、今のツッコミ街の人とハモッたな。キングオブコントねらえるかな。今は関係ないな。

 

「テメエ何しやがんだ!?」

 

「・・・見りゃわかんだろ。」

 

「ふざけやがっておりゃあああああ!!!」

 

「ふん!!」

 

剣をふりあげて向かってくる敵をぶん殴って通りの向こうまで吹っ飛ばした。スゲエ・・・。

 

「てめえら・・・、恥ずかしくねぇのか?」

 

「「「ハ、ハイ?」」」

 

おーおー完全にビビってやがる。そりゃそうか、強さはどうか知らないが副船長ってのは実質一味の?2だ。それが一撃でのされちゃったんだからな。

 

「海賊ってのはなぁ、“仁義”ってもんがあって成り立つんだろうがぁ!!テメエらみてえな姑息な真似してる奴を見るとイライラすんだよ!!なんならここで俺がぶっつぶすぞ!!」

 

・・・うおぉ。スゲーカッコイイ。

 

「「「し、失礼しましたあああああああああ。」」」

 

ドピューン、って感じで気絶したままの副船長+αを抱えながら逃げてった。スゲエ速さだ。

 

「ありがとうございました。」

 

近付くと白ひげがお礼言われてた。さすが、大海賊。一般の人には絶対に手はださないんだな。

 

「ああ、構わねえよ。俺が好きでやっただけだ。」

 

「でも、よろしかったんですか?」

 

「なにがだ?」

 

「あのセイアツ海賊団は艦隊をもってまして、狙った獲物は逃がさないことで有名なんですよ。」

 

「それがどうした。」

 

と、その人は口をつぐんでしまった。

 

「非常に言いにくいのですが・・・。」

 

「言ってみろ。」

 

なになに?俺も気になる。

 

「あなたは、確かに強いですけど、それでも“アイツ”には勝てないと思います。」

 

「あ?」

 

「アイツって誰?」

 

会話に参加させてもらおう。

 

「そいつの名前は・・・。」

 

 

 

ズシン

 

 

 

という音が響くとともに大きな振動が来た。

 

「うわ、きた!!」

 

街の人たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまう。

 

「え?何これ、ニューゲートお前か?」

 

「いや、俺じゃねえ。」

 

白ひげは海の方角を睨みつけている。

 

何だ?

 

何が起きているんだ?

 

ズシン、ズシンという音と振動が徐々に近くなってきてついに止まった。

 

突発的な地震か?俺がそう思ったのもつかの間、

 

 

 

目の前の家が崩れ落ちた。

 

 

 

「は?」

 

思わず俺の口からそんな声がこぼれたが、白ひげは冷静だった。まるで、音の正体がわかってるみたいに。

 

崩れ落ちたところには人間がいた。

 

でも、ただの人間じゃなかった。

 

「よう、うちの船員をかわいがってくれたのはオメエさんかい?」

 

「そうだが?」

 

「そうか。」

 

相手をにらみつけてる白ひげ。

 

俺はため息しかでてこない。

 

そして、その口からあまり聞きたくなかった言葉が聞こえた。

 

「俺はセイアツ海賊団船長“大球”のロッキー。見ての通りの

 

 

 

 

             “巨人”だ。」

 

 

 



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大きくなると、色々縮む定義

 

巨人

 

彼らを知らない人はいないだろう。

 

この世界ではエルバフとか、そしてその戦士懸賞金1億ベリーの“赤鬼”ブロギ―“青鬼”ドリーが有名だろう。

 

俺もこの世界に来てからは一度も見たことがなかった。

 

はい、只今第1種接近遭遇をはたしました、グンジョー君です。

 

俺の目の前には噂の巨人がいる。

 

しかし、・・・デケエな。

 

身長差がありすぎでしょ。

 

ところで白ひげさん?あなたはなぜ巨人さんにガン飛ばしてるんですか?

 

「オメエがセイアツ海賊団ってのの船長ってわけだ。」

 

「ああ、いかにも。」

 

グフグフと笑うロッキーさん。わぁ、息がすでに突風レベルなんですけど。

 

「テメエは部下のしつけをちゃんとしてんのか?カタギの連中にたいしての教育がなっちゃいねえようだな。」

 

「グフグフ、おかしなことを言う。略奪するのが海賊の流儀だろう。ま、ウチは少し事情が違うがね。」

 

「何だと?」

 

「我々はこの町を“襲わない”。」

 

「「!?」」

 

何言ってやがんだこいつ!?じゃあさっきの海賊たちはいったい何だったんだ?明らかに言ってることとやってることが違ってるだろ。

 

「ああ、言い方が違ったな。“襲わないようにしてやってる”のだ。」

 

「どういうことだ?」

 

「簡単なことさ。俺たちはここら辺一帯の海を支配していてね。毎月こいつらチビ人間達に上納金を納めさせているかわりに見逃してやってんだよ。」

 

・・・なるほどな、アーロンがナミの村でやってたみたいにしてるわけか。一瞬でもこいつはイイヤツなのでは?と思った俺がバカだった。おもしろくねえ・・・。

 

「グフグフ、何故そんな顔をしているのだチビ人間よ。これはビジネスだ。あいつらは、自分の命を金で買ってるだけなのだよ。」

 

 

・・・クズだ。

 

 

さすがの俺も本気でカチンときたぞ。

 

「そうだ!よいことを思いついたぞ!!チビ人間よ、お主ら我らの仲間にならぬか?今ならよい待遇を用意するぞ!!」

 

「・・・ふざけるな。アホンダラ。」

 

白ひげの顔に青筋が浮かんでいる。

 

同感だ。

 

「素直にワビいれんだったら許してやろうと思ったが、気が変わった。テメエ見てえな海賊の風上にも置けねえ野郎は、誰でもねえこの俺自身がつぶす!!」

 

白ひげがしゃべりだした瞬間俺が虎丸を構え一気に走りだす。

 

できるだけ、威力が高いやつ、あれだ!!

 

「“つむじ風パトリオット”!!」

 

虎丸から複数の飛ぶ刃が放たれる。

 

「む!?」

 

ロッキーはそれを受け止めた。

 

さすがは巨人族たいしたタフネスだ。

 

「グフグフ確かにたいした威力だが、これだけだは俺は倒せん!!」

 

分かってる。

 

後は任せたぞ。

 

“白ひげ!!”

 

「ウェアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

俺にやったみたいに白ひげはロッキーを殴った瞬間、振動を相手に叩きつけた。

 

よし決まった!!

 

「なるほどな。」

 

!?あの攻撃をくらって無事だと!!

 

いや、よく見てみると白ひげの攻撃はヒットしていない。寸前でロッキーに腕を掴まれてる!!

 

「グッ、テメエふざけるな!!」

 

白ひげは残った腕でもう一度地震のエネルギーをためようとしているが、ロッキーはそれを平然と見ている。

 

まさか・・・!?

 

マズイ!!

 

「ニューゲート!!逃げろ!!」

 

虎丸を構えなおし、一気に放つ。

 

「“旋風スクランブル”!!」

 

「なめるな!!」

 

ロッキーは片手をつきだし、“旋風スクランブル”を防ぐ。

 

「オリャア!!」

 

その内に白ひげは自分をつかんでいる手を無理矢理外し地面に飛び降りる。

 

「キサマら・・・。」

 

ロッキーはどうやら怒ったようだ。面倒くさいことになってきた。

 

「おい、ここはひくぞ!!」

 

「ふざざけるなぁ!!こいつを倒すまでオリャアここから逃げねえ!!」

 

「逃げるんじゃねえ一時撤退するだけだ!!それにお前も分かってんだろ!!お前のでかいモーションはすでにアイツに見切られてる!!」

 

「あ!?んわけねえだろ!」

 

「グフグフ、つまらないお話は終わったかねチビ人間諸君?」

 

ロッキーは容赦なく攻撃してくるつもりだ。本気でまずいな・・・。

 

「ニューゲート!!このまま戦っても絶対に負ける!!海賊の敗北は“死だ”!!こんな奴に殺されて、お前の意志は、夢はどうなるんだよ!?頼むから自分の死に場所を間違えないでくれ!!」

 

「・・・・クソッタレが。」

 

悔しそうにしながら唇をかむ白ひげ。でもそれでいいんだ。

 

「逃がすと思うか?」

 

「「!!」」

 

巨大な脚で踏みつけようとしてくるロッキー。

 

「俺の相手は俺じゃないが・・・、でも今は逃げさせてもらうぜ。“烈風エマージェーシー”!!」

 

「うおっ!?」

 

剣の壁を出現させて相手の攻撃をはじく。今のうちだ!!

 

俺たちは通りに面した小道に入ってそのまま逃げだした。

 

----------------------------------------------------------

 

「クソッタレが・・・。」

 

何とかあの場からの逃亡に成功したが、白ひげは先程からこの言葉を繰り返し呟いている。

 

それもそうだろう。

 

彼の海賊としての信念である“仁義”。それをもってしても通用しない相手が現れたのだから。

 

あのロッキーという海賊だが、後で調べてみたら賞金額1億ベリー。ドリーとブロギ―並みということか。

 

確か俺の記憶では今の白ひげは5000万ベリー前後。格上との戦いになるわけか。

 

「グンジョー。」

 

「何だ。」

 

「お前に誓うぜ。俺はあんな海賊には絶対にならねえ。海賊の“仁義”にかけてあの野郎はこの俺がぶったおす!!」

 

「そうだな。」

 

そうだ。白ひげはそうでなくては。

 

すると、近くから足音が聞こえてきた。・・・敵か?

 

「もし、先程海賊ロッキーと戦っていた方はおられますか?」

 

(・・・)

 

罠だろうか?

 

「何のようだ?」

 

「おい!ニューゲート!!」

 

分かってやってんのか?本当に大丈夫なのか!?

 

「ああ、いらしゃったか。はじめまして。私は町長のメディッシュと申します。」

 

町長さんが何故俺たちに何の用だ?

 

「単刀直入に言わせていただきます。」

 

 

 

 

 

 

 

「早くこの街から出て行ってくれませんか?」

 

 

 

 

 

 

 



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癇癪と鍛冶

「早くこの街から出て行ってくれませんか?」

 

 

 

「そりゃ・・・どういうことだ?」

 

すると、はため息をつきながらこう言った。

 

「我々はもう…誰も失いたくないのです」

 

「「は?」」

 

疲れたと出ていけって関係なくない?

 

すると、メディッシュさんが語り始めた。この町でなにがあったのかを。

 

「今から1年前程前、あの海賊が急にこの町にやってきて、こう言いました。

『殺されたくなかったら金を持ってこい』 低抗する者や、金が払えない者は、海賊たちに殺されて行きましたよ。 しばらくすると、海軍の船が来ました。よかった、これで救われるとだれもが思いましたよ。ですが、あの 巨人には誰もかなわなかったんです。しかし、悲劇はここからだったのですよ。彼等は言いました。『お前たちが、こいつらを呼んだのだな?』と…」

 

その時、男の眼から涙が零れ落ちるのを見た。

 

「我々はもちろん無実を訴えました。しかし、彼等は聞く耳を持ちません。我々の中から一人が連れ去られ、翌日酷い姿となって戻ってきました…その後も賞金稼ぎがしました。別の海軍の船もきました。けど、彼らはことごとく敗れさり、殺されて行きました。その度に、我々は…!!」

 

男は振り返ると、そのまま歩き出しながら言った。

 

「あの巨人にはだれも勝てやしないのです。もう我々に期待させないでください。

 だから「だから何だ?」え?」

 

「だから何だってんだ?」

 

俺は、身体の奥底から何かドロリとしたものがこみあげてくるのを感じた。

 

「こんの…クソッタレどもが!!」

 

あのアホンダラの巨人のことじゃない。

 

こいつらは、期待しない、とか、あきらめてしまったとかぬかしているが、結局は抵抗の意志を折られて死んでるだけじゃねぇか!!

 

「お前らがあきらめてしまった理由なんざ俺はしらねえ。知りたくもねえしな。だが」

 

俺は町長の胸ぐらをつかみこう言った。

 

「そんなもんは、オメェラがそうやって線引きして勝手にあきらめてるだけだろうが!!自分達が勝手にあきらめたくせにそれを人のせいにしてんじゃねえ!!オメェラはそうやって逃げてるだけだ!!」

 

「!!ですが、我々には何のチカラも「ウルセエ!!」」

 

「ゴタゴタ言い訳してんじゃねえ!!海軍本部から戦力でも引っ張ってくればよかっただろうが!!いいか?こうなっちまったもんは仕方ねえ。俺らよりも先に負けた奴のことなんか知ったこっちゃねぇ!!だがな、俺たちは強い!!さっき逃げたのはあいつの実力がわからなかったからだ!!すでに攻略法は見えてる!!

 

テメエらが命預けるってんなら、

 

俺は!!

 

俺たちは!!

 

あのアホンダラをぶっ潰してやる!!」

 

「…本当ですか?」

 

ようやく分かったようだな。こいつらは助かりたいくせに、それをずっと他人任せにしてテメエらは逃げてきたみてえだからな。

 

「本当に倒してくださるんですか?」

 

「もちろんだ。」

 

何度も言わせんじゃねえよ。

 

「…っ。ありがとうございますっ。」

 

ハッ!!大の男が泣いてんじゃねえよ、みっともねぇな。

 

「決まりだな。」

 

急にグンジョーがしゃべりだした。そういえば、コイツ一言もしゃべらなかったな。

 

何故かにやりと笑いながら呟いた。

 

「武器がいる。」

 

 

 

白ひげっぱねぇぇぇぇぇ!!

目の前の人物が白ひげなんだなって、改めて感じました。

 

白ひげは逃げずに立ち向かう。それも、誰よりも先に自分がだ。だから、町長さんの逃げ腰の姿勢が許せなかったのだろう。たぶん、こういう人だからこそ白ひげ海賊団の皆さんはついてきたんだろうな。

 

さて、こいつの地震モーションは相手に完全にみきられてるはずだから、そこはなんとかしなきゃな。

 

というか、半ば巻き込まれた感じがしなくも追ないのですが・・・。

 

それは置いといて、

 

「決まりだな。武器がいる。」

 

「武器ですか?」

 

「そう。こいつの攻撃は隙がでかいからそこをカバーしてくれるような武器がいるわけよ。」

 

原作を見てみると分かるが、白ひげ地震が振りかぶる地震攻撃と、薙刀を使った地震攻撃とでは若干隙が異なるし、俺の記憶では前者は敵との間合いが広いところでやってたような気がする。さっきみたいな、敵が近すぎると効果をうまく使えないのかもしれないな。

 

そう、この戦いではその隙を補いつつ、俺というイレギュラーがいるこの世界を原作どおりにするという一石二鳥作戦をとることにしよう。

 

「だが、武器ったってそんな都合よく俺にあるような武器があるねえだろ?」

 

うーん、それもそうか。

 

「・・・心当たりがあります。」

 

おう、町長さんマジか。

 

「教えてくれないか?」

 

と、町長さんが山のほうを指さした。

 

「あの山なのですが、一人腕のいい刀鍛冶がいるんです。いるんですが・・・」

 

「いるんですが?」

 

「気難しい性格でして・・・。」

 

なるほど、THE職人ってやつだ。

 

「でも、頼むっきゃねえでしょ。」

 

今回の一件。そのカギはその職人にかかっている。

 

ここで引き下がれるわけがねえ!!

 

「彼は山の中腹に工房を持っています。」

 

「そうか、ありがとう。」

 

早速行こうとしたんだが、

 

「今日はもうやめたほうがいいかもしれない・・・。」

 

「え?どゆこと?」

 

「いや、あの山の夜は危険なんですよ。」

 

なるほど、でも今は時間が惜しい!!いくぞエドワード!!」

 

「分かってる。」

 

走っていく俺たちを見て、町長さんは「大丈夫かなぁ」といっていたが、人間の道を外れかけている俺たちには関係なかった。

 

 

 

 

「なるほど、こういうことだったのか」

 

「だな」

 

俺たちは怪物たちに囲まれていた。それも変なのばかり。

 

ギザギザの歯がいっぱいついたウサギとか、舌なめずりしているゾウとか。君ら草食だよね?

いや、生物の起源を辿っていけば草食っぽい肉食の生物も…いないか。

 

「グンジョーおりゃあ思い出したことがあるんだが」

 

「どうしたいってみろ」

 

「こいつら全員肉食ってんだろうな」

 

でしょうね。

 

でも、今はそんな時間ねぇ!!

 

「とりあえずどいてもらうぞ!!“暴風ウォークダウン”!!」

 

「「「「「「ギュニャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」」」」」」

 

うんうん一掃にはこれが便利だ。

 

「一気に走りぬけるぞ!!」

 

「グンジョー」

 

「何だい」

 

「後ろからまたきてんぞ。」

 

振り返ると新手が追いかけてきた。

 

「イヤアアア!!!!」

 

「ちっしょうがねえな。」

 

振動で応戦する白ひげ。でも、敵は次から次へとやってくる。こっちは時間ねえのに、どうすりゃいいんだ!?

 

しかし、俺が気付くといつのまにか動物達の動きが止まっていた。

 

 

 

しかし、次の瞬間動物たちは地面に崩れ落ちた。

 

 

 

 

「!?」

 

「何が起きたんだ!?」

 

「カッ!!オメエラ!!なにわしの庭に勝手にはいっとんだ、カッーーーーー!!」

 

後ろを振り向くとそこには、明らかに気難しそうなジイサンがいた。

 

俺たちは一瞬にしてこう思った。

 

((こいつが刀鍛冶だな・・・。))

 



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やられたらやり返す!!倍返s、あ、ちょっと何をする、やめ(ry

ふう、何とか説得は成功した。

 

ネゴシエーター☆グンジョーです。

 

あの後、オメエラあの海賊どもの仲間じゃろ!!だったら作らん!作らんもん!!とか言われたので、

 

「俺たちは違うよ。」

 

って言ったら何とか機嫌を直して承諾くれた。

 

つうか、ジジイの“だもん”ってこんなに殺意が湧くとは思わなかった。

 

今度戦闘の際に使わせていただこう。

 

 

 

さて、俺は武器づくりを見学させていただいている。

 

武器作ってもらう本人は“メシ食ってクラァ”とかいって狩りに出かけた。ニククイウサギの肉はとてもおいしんだそうな。俺は食いたかねえけど。

 

「おまえさん剣士だろ?」

 

爺さんが話しかけてきた。

 

「そうだよ。よく気づいたな。」

 

「ああ、オメエさんが来てる服を見たらすぐに気付いたわい。」

 

マジか。職人だけが持つスキルか?

 

「それも、“疾”の剣士じゃな。」

 

あんたはなんなんですか?なぜそこまで分かるんですか?

 

俺が、どこの世界も職人SUGEEEEEEEEと思っていたら爺さんがポツリと呟いた。

 

「『天に届く霊峰で青空を見た』」

 

「あ?」

 

「いやいやなんでもないんじゃよ。」

 

ごまかしたみたいですけど、ちゃんと聞こえましたよ?『天に届く霊峰で青空を見た』どういうことだ?

 

あ、急に眠気が・・・ZZZ

 

 

 

「できたぞい!!」

 

ああやべ寝てた!!

 

ていうかできたの?見たい見たい!!

 

「遅かったな。」

 

先に白ひげがいた。そりゃそうか。

 

そして、白ひげの手には、

 

・・・

 

例の薙刀が握られていた。

 

常人の背丈ほどはありそうな大きさ。俺の顔ほどありそうな大きさの巨大な刃。

 

スゲエ。

 

三次元でみると、その存在感がよりリアルだ。

 

「俺は初めて武器を持ったはずなんだが、やけにしっくりくるな。」

 

そりゃそうだ。

 

この後あなたの人生で相棒ともいえる武器になるんだから大事にしなさい。

 

「よし、オマエラ!!さっさとハエどもをぶっ潰して来い!!」

 

ジイサンに気合を入れてもらった後、俺たちは町に向かった。

 

 

 

 

 

「ああああよくぞご無事で!!」

 

町長さんが山のふもとまで来ていた。

 

「人数は集まったか?」

 

「それが重要なんだよな。」

 

「はい!必死で説得したら町の男たちが一緒にやってくれるって!!」

 

そうか。彼らはまだ完全にあきらめていなかったんだな。

 

「責任重大だなグンジョー。」

 

そりゃそうさ。この戦いにはこの町の命運ってやつがかかっているからな。

 

「よし!!集まってくれてありがとう!!只今より、『ドキッ☆海賊大掃討作戦!!とりあえず全滅しろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!大作戦!!』を開始する!!」

 

『………』

 

「返事は!?」

 

『………ォ』

 

「声が小さい!!」

 

『オオーーーーーーーーーーーーーー!!』

 

後で白ひげにお前ネーミングセンス無いって言われた。ほっとけ。

 

「おお、何だ昨日の奴らじゃねえか!!逃げだしたんじゃなかったのか?」

 

あーめんどいのいた。

 

「見ての通りだよ。」

 

「船長がお怒りだぜ!?逃げんなら今のうちにギャボ!?」

 

「「うるせえ。」」

 

斬らせていただきました。

 

さて、港に出てみると、海賊の艦隊が見える。そんで目の前にいるのは

 

「よお、テメエらか。」

 

「・・・ロッキー。」

 

いきなり船長のお出ましとはね。まあいい手間が省けた。

 

やってやれ!!

 

「か、海賊はこの町から出ていけ!!」

 

町長の掛け声とともに町民たちが口々に叫ぶ。

 

「そうだ出ていけ!!」

 

「もう俺たちはお前には屈しないぞ!!」

 

「出てけ!!」「出てけ!!」「出てけ!!」「出てけ!!」「出てけ!!」「出てけ!!」

 

町民たちの出ていけコール。うん、怒ってる怒ってる。

 

「・・・そうか、金は払うから今までは見逃してやったんだがな。」

 

ロッキーは船団に呼び掛ける。

 

「皆殺しにしろぉぉ!!」

 

『ウオオオオオオオ!!』

 

スゲーときの声。うんうん、生きがいいね。斬りがいがある。

 

「ニューゲート、船長を頼む。俺は船全部沈めてくっから。」

 

「ああ、任せとけ。」

 

俺は虎丸を引き抜きながら、白ひげは薙刀を構えながら言った。

 

戦いの火ぶたが切って下された。

 

 

 

俺は建物を利用して一気に飛びあがった後、虎丸をふりぬく。

 

いけ!!

 

「“暴風ウォークダウン”!!」

 

竜巻に巻き込まれ早くも一隻が再起不能の状態になる。

 

「な、なんだあいつ!?」

 

「竜巻が起きたぞ!!」

 

「能力者か!?」

 

「残念外れ。」

 

俺は一隻の船に飛び降りる。

 

「こっちにきたーーーー!?」

 

「構わねえやっちまえ!!」

 

俺の周りに船員が集まってくる。でも、雑魚にはこれで十分。

 

「“旋風スクランブル”」

 

『ギャアアアアアアアアアア!!』

 

直線状にいた敵がまとめて吹っ飛ぶ。雑魚的には相変わらずのオーバーキルぶりだね。

だが、そんなの関係なぇ!!

 

「ヒ、ヒイ?化け物!?」

 

「化け物上等だコラア!!」

 

俺は手当たり次第敵を斬ってゆく。これが“辻斬り”真の姿ですよ。最近は白ひげのせいで影が薄かったけど俺も活躍できるもんね!!

 

白ひげは大丈夫か?

 

横目でチラリとみてみると、白ひげの振動と巨人の拳がせり合っている。いや、わずかに白ひげが有利だ!!

 

「よそみしてんじゃねえぞ!!」

 

「うおっと!?」

 

自分に向けられた攻撃をさっとよけると、そこには例の副船長<ザコキャラ>がいた。

 

「ザコキャラって言うな!!」

 

「電波拾いました?」

 

「何をわけを分からないことを言っている!?俺を馬鹿にしているのかそうなんだな?」

 

副船長は手に持っている剣を構える。

 

「俺の剣術を受けてみろ!!」

 

いや、受けません。俺は全身の力を抜く。

 

「馬鹿め!負けを認めたな!?」

 

いや。違うし。まあいいや…

 

「“辻斬り風」

 

「?」

 

副船長が滑稽な顔をして周りを見渡す。

彼には、恐らく俺の姿が消えたように見えたのだろう。しかし、もう遅い。

 

「ステルス”」

 

「ガ!?」

 

副船長を一瞬で切り捨て俺は自分のいる船を潰す。副船長をやっちゃったてことはもう強いのいないのか。もう一般兵だけか。

じゃあ、もうめんどいな。一気にやるか。

 

俺は一気に上空と飛び上がって、虎丸を背中に思い切り逸らした後、重力に乗って一気に振り下ろした!!

 

「“断頭風エアーパワー”!!」

 

スカカカン

 

 

小刻みのいい音がして、船が輪切りになった。



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闘いの決着…そして

 

「アホンダラァ・・・。」

 

白ひげとロッキーは睨みあっていた。お互い実力は拮抗しているだろう。しかし、精神的余裕は断然白ひげにあった。

 

なぜなら、自分よりも力が劣るはずの人間がこれほど強いとは思わなかった方だ。

それも、今彼を戦闘で負かしている目の前の人間のみが、ではない。この広場に攻め込んできた人間達が自分の海賊団を圧していたのだ。

 

「よくも今まで散々してくれたな!!」

 

「こうしてやる!!」

 

今まで支配していた人間達が一斉に牙を剥き、そこらにある石や板切れを皮切りにそれぞれの家から持ってきたレンガや腐った卵、挙句の果てには調理用のフライパンを投げつけていた

 

「ヒャアアア!!」

 

「もう勘弁してくれ!!」

 

一方でロッキーの部下は今まで見たことのない勢いに飲まれて完全に勢いをそがれている。

中には屋根の上から銃で民衆を狙撃しようとする者はいるものの…

 

「疾風スクランブル!!」

 

「あぎゃあ!?」

 

「ばほふ!?」

 

そういったものは、逆に辻斬りことグンジョーの手によって真っ先に撃墜されていた。

 

(馬鹿な!俺の艦隊が1つ残らず全滅だと!?)

 

もはや、海賊団は壊滅状態だ。

主船を含めて船は全て一刀両断され、船員(クルー)達は地面に倒れているか、必死に逃げようとするが、捕まって袋叩き似合っている。

 

「よそ見していいのか?」

 

「!?」

 

白ひげはすでに薙刀を使って振動発射態勢をとっていた。

 

「無駄だ!」

 

突っ込んでくれることを予想して、前みたいに腕を掴んでやろうとしたが、

 

「ウェアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

白ひげはそれをみこしてそのまま振動を放った。

 

「グオッ!?」

 

巨人族の持つ巨体でも吹き飛びそうになるほどの衝撃波。並みの人間だったらそれで戦いが終わってしまうだろうが、それでも耐えきったのはロッキーの船長としての意地だろう。

しかし、例え身体が大きくても所詮は人間。その身体には大きなダメージが刻み込まれいた!!

 

(な、何だこいつは!?本当に人間か?)

 

ロッキーは自分と対峙している相手が格下の相手とは思えなかった。

 

いや、そんなことがあるはずがない!!俺が最強だ!!

唯一の心の支えのみが、ロッキーの戦闘意欲を支えていた。

 

 

「チ、チビ人間んんん!!お、お前ぇぇぇぇぇ!!この、俺を怒らせたな!?」

 

ロッキーは懐から鉄球を取り出した。といっても、一つ一つが普通の人間ほどの大きさがある。

 

「貴様をこれでつぶしてやる!!」

 

一気にすべての鉄球を投げる。

 

ドン!!

 

その一つが白ひげに当たった。

 

(勝った!!)

 

ロッキーはそう確信した。

 

衝突で薪上がった粉塵がはれてくると…

 

(薙刀だけ!?)

 

そこには、白ひげの武器である巨大な薙刀のみしかなかった。

そう、身の丈ほどの薙刀を囮にして、白ひげ本人はすでにロッキーの懐にはいってきていたのだ。

 

「な、何をする!?」

 

白ひげの腕に振動エネルギーが溜まっていく!!

 

「自分の行動を省みてみな。ま、俺はいまさら許す気はねえけどな・・・。アホンダラア」

 

「う、うわああああ!!やめてくれ、やめてくれ!!頼む、お宝は全部やるし、すぐにこの島から立ち去るからそれだけは勘弁してくr、ギャアアアアア!!」

 

次の瞬間、振動を帯びた白ひげの両腕が、弁明をするロッキーを無慈悲に、そして容赦なく…・そう、まるで対象物を挟み込む万力のように、ロッキーの顔に突き刺さった。

 

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 

・・・・えげつねぇ。

 

白ひげとロッキーの決着を見ながらそう思った。

 

どうも、チキンハートことグンジョー君です。

 

俺もあれくらったんだよな?よく生きてられたな俺…。まあとりあえず戦闘は終わったみたいだし。

心なしかフラフラしている白ひげに話しかけてみた。

 

「ダイジョブー?」

 

「ああ」

 

「しかしすげえな。武器持っていたとはいえ巨人を倒しちゃうなんて」

 

「お前な、一応お前の発案だろ?信用してなかったのかよ」

 

「…いやしてたどもさ」

 

「何故一瞬口ごもったんだアホンダラ」

 

とりあえず戦いが終わったことを知らせなきゃな。

 

「お〜い、終わったぞ〜」

 

「だ、大丈夫ですか?すごい音がしましたけど!?」

 

直ぐ近くにいた町長さんが走り寄ってきた。

 

「おう、全部終わったぞ。」

 

町長さんの後ろからゾロゾロと他の町民達が続いてくる。

 

彼らはまず、気絶しているロッキーを見、そして沈没した船を見た後、お互いの顔を見たり、驚いたりしている。

 

「や。」

 

「や?」

 

「やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

そして、次の瞬間には町長さんの歓喜の声が漏れていた。

 

「やった!!」「ロッキーが負けた!!」「俺たちは自由だ!!」「自由よ!!」「よかったー!!」

 

「フン、クソッタレどもが・・・。」

 

嬉しそうじゃん白ひげ。

 

こいつも気に入らない奴ぶっとばせてよかったのかもしれない。

 

まあいいさ。

 

「グンジョー。」

 

「何だ?」

 

「後は頼む。」

 

そしてバッタリ倒れこむ白ひげってえええええええええええええええええええ!?

 

「ゴー…ゴー」

 

寝てやがるコイツ。

 

よく見るとクマがある。

 

昨日は寝てなかったのか?

 

いや、ちょっと待て。

 

「」

 

そういえば、この町に来る前ずっと一人で飛ぶ斬撃の練習してた気がする。

 

あれ、俺が起きた時にはもうやってたから早起きしたんだと思ったんだけど、まさかこいつ寝ないでずっとやってたのか?

…アホだ!!未来の大海賊が形無しだ。この人の将来が非常に心配になってくる。

 

…でもま

 

「お疲れ様でした、っと」

 

 

 

 

 

 

ロッキーを倒した後、すぐに宴になった。

 

この1年間で溜まっていたものを発散するように町民達ははしゃいでいた。遠慮したのだが、俺と白ひげは主役だ何だとかいって一番いい席に座らされた…。

 

まさか、こんなふうになるとはな。(ちなみに、白ひげはいつの間にか起きて酒飲んでた。アル中め!)

 

で、酒を飲んでフラつく身体を無理矢理引きずるように俺は気晴らしに散歩してるんだけど…。

 

「ンゴー、ンゴー、ンゴー、ン…ンガッ!!」

 

「…」

 

人が倒れていた。それも、道端で仰向けに。あれ、というかデジャブ。最近こんな光景見たことある。

 

「ンガァァァァァ、ギリギリギリリ…」

 

「…」

 

てか、背中に“正義”って書かれている・・・海軍か?やれやれ、関わり合いにはなりたくないが、目の前で寝続けられるのは若干面倒だから、とりあえず起こしてやろう。

 

「すいません。起きてください」

 

「ンゴ・・・」

 

「こんなところで寝てると風邪をひきますよ」

 

「ンガ?」

 

ヒュゴッ!!

 

「おわあ!?」

 

バコン!!という音がして石造りの床が壊れた!?何この無駄なパワー!?寝ぞう?ただ寝ぼけているだけなのか!?

何という才能の無駄遣い!!

 

「む?」

 

パチンと鼻提灯が割れる音がすして、男が目を覚ました。

 

「お前誰だ?」

 

「あ?」

 

「俺はなんでここにいるんだ?」

 

「いや、質問したなら聞けよ。」

 

「そうだドーナツを8日間ぶっ続けで食ったからだった!!」

 

「自己解決してんじゃねえか。」

 

「そうだ、俺のドーナツは!?」

 

「…もういいや。」

 

何かこいつと話してると疲れる。というか、このノリ、そして雰囲気。それにmどこかで見た顔なんだよな?気のせいかな?

 

「あ、そう言えばお前、誰なんだ?」

 

「はい?」

 

「はじめて人に会ったら自己紹介が鉄則だろうが!?」

 

「いや、お前がいうなよ!!」

 

そしたらガハハハハ、そうか?などと言い出したので、思わずコケた。

…全く、気が滅入る。

 

「…分かったよ。俺の名前はグンジョー。賞金稼ぎだ。」

 

「そうか、俺はモンキー・D・ガープ(・・・・・・・・・・)。海軍本部准将だ。よろしくな!!」

 

「…ええ?」

 



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現れのはァ、あいつだ!!

 

「・・・え?」

 

いや、なんもいえねえグンジョー君です。

 

今、北島○助と完全にリンクした。気分だけど。

 

つか何でここにいんの?

 

中将なんて偉い人がここにいるわけないじゃん!!

 

「え?いや今なんと?」

 

「で、お前は俺のドーナツを知らないか?」

 

「モンキー・D・ガープって言いました?」

 

「何で俺の名前を知ってるんだ?」

 

「いや、今自分でいったじゃん・・・。」

 

まちがいないな・・・。

 

この人は“英雄”モンキー・D・ガープだ。

 

つうか、若!!

 

こんな若々しい(いつも若々しかったけど)おじいいちゃん初めて見たな。

 

あーもーやだこの人。

 

「あ!そうだお前、海軍の船を見なかったか?」

 

いきなりだな。

 

「それなら、さっき出てったよ。あの海賊のロッキーってのを連れてね。」

 

「何!?先に行っちまったのか!?」

 

「知らなかったのか?そりゃ寝てたからか・・・。」

 

短時間しかこの人と交流してないが、ここ一週間分のエネルギーを使いきった気がする・・・。

 

センゴクさんの苦労が今わかった。

 

「おう、こんな場所にいたのか。」

 

いつのまにやら後ろに白ひげがいた。

 

ああ、助かった。この人に何とかしてもらおう。俺じゃ手におえん。

 

「ん?」

 

「あ?」

 

白ひげとガープの顔が・・・戦闘態勢になっていく?

 

「アホンダラア・・・何でここに筋肉バカがいるんだあ?」

 

「海賊が何の用だ?」

 

お二人ともお知り合いだったんですか?

 

「グンジョー、ガープを知らねえのか?こいつは大砲の球を自分で投げて海賊船叩き潰す化け物だぞ?」

 

「お前こそ素手で振動を起こす最強の超人系<パラミシア>の化け物のくせして何を言う?・・・ちょっと待て“グンジョー”?」

 

あ、やべ何かいやなよかん。

 

「お前賞金稼ぎ“辻斬り”グンジョーか?」

 

今気付いたのか?でも、ここはしらばっくれたほうがいいな。

 

「イヤー、ツジギリ?ダレソレ?ナンノコトダカワカンナイナー?」

 

「グンジョー・・、その言い訳は苦しいと思うぞ?」

 

やっぱり?

 

「そうか、なるほどな。お前

 

 

 

 

 

 

 

俺と戦わねえか?」

 

 

 

 

 

 

ゴウッ!!   その瞬間“何かの力”がガープから溢れ出した。

 

「!?」

 

ビリビリとその力が俺にぶち当たるのを感じる。こいつ何をしやがった!?

 

「ほう・・・俺の“覇気”を受けて平然としているとは、ますます戦いたくなったな。」

 

じょ、冗談じゃねえ!!

 

・・・今のが“覇気”

 

それも

 

“覇王色”の覇気。

 

 

こんば化け物と戦えるか!!命が死ぬわ!!

 

やっぱおじいちゃんの拳骨は“愛”じゃなくて“覇気”だった!!

 

明らかに臨戦態勢になる目の前の二人。

 

俺もやらなくちゃいけないようだな。

 

虎丸を構えなおす。

 

一触即発の空気だ。

 

プルルルルルル、プルルルルルル

 

?何だ今の音・・・お!あれは電伝虫か!?初めて見た。

 

「ガチャ」

 

「はいもしもし俺だ。」

 

『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァープゥ!!』

 

「「「!?」」」

 

耳がキーンってなった。

 

何これ?今ガチバトルの雰囲気でしたよね?

 

…いや、何となく分かった。あーこれ、あれだわたぶん今のは俺の予想だとあの展開だわ。

 

「なんのようじゃい“センゴク”!?」

 

『戻ってきた船にいないと思ったら貴様どこをほっつき歩いとるかぁぁぁぁぁぁ!?』

 

ああ、やはりあなたですか。

 

“仏”のセンゴク。

 

「センゴク…成程な」

 

おや?白ひげもう知り合いなの?

 

「最近、策を考えるのがうまい准将がいる・・・という話を聞いたことがあるだけだ」

 

あ、さいですか。

 

『ガープ!!今度の会議は例の超新星<ルーキー>ゴール・D・ロジャーとエドワード・ニューゲート。そして、ニューゲートと行動を共にしてる“辻斬り”についての重要な話し合いだとあれほどいっただろうが!!』

 

え?俺も話題になってんの?いやーなんか照れるね。

 

「あー気にすることはないゼンゴク。」

 

『何がだ!?』

 

「その内の2人が俺の目の前にいるからな。」

 

『…戦闘中だったのか?』

 

「いんや。これからするところ。」

 

『…いや、いい。今はやめておけ。この先また会う機会もあるだろう。とりあえず早く帰ってこい。これ以上かばいきれん。じゃなきゃまた罰則だぞ。』

 

「何!?それはいかん!!帰る!!今すぐ帰る!!」

 

・・・戦闘は回避できたみたいだな。よかった・・・。

 

「おい。」

 

「!?」

 

いつのまにか近くまで接近していたガープ。ヤベッ、殴られる!?

 

「ほいこれ。」

 

受け身の態勢をとっていると何か差し出された。これは紙?いや、でも何か書いてある。

 

「いつでも電話してこいよー。相手しちゃる」

 

そうすると、腕をサムズアップして帰って行ってしまった。…なんなんだ?

 

すると、白ひげがグラグラと笑っていた。一体どした。

 

「よかったなお前。」

 

「あ?」

 

「あのガープに目えつけられたみてえだな。」

 

俺はその言葉を反芻した後、ムンクの叫びになった。

 

 

 

一週間後。

 

 

賞金首

 

エドワード・ニューゲート

 

懸賞金1億ベリー

 

ここまではいい。賞金額アップオメデトウ。だが、問題は次だ。

 

 

 

wanted!!

 

“辻斬り”

 

グンジョー

 

懸賞金7000万ベリー

 

DEAD or ALIVE

 

 

は?

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

いや、は?

 

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

 

「お、おいどうした?」

 

フルフル

 

フルフル

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァープゥ!!」

 

 

カモメがなく空に向かってバインドボイス(大)を打ち上げろ!!




あまり、ああああああああとか連続で多く書くなと言われても、ガープさん相手だったあああああああああとかなっちゃうのは仕方がないよね…


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マリンフォードよりお送りします

『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァープ!!』

 

電伝虫の向こうから怒声が聞こえた。

 

相手はだいぶ怒っているな。

 

「おお!!そっちから電話をかけてやろうと思ったところだ!!」

 

対して怒鳴られている本人はガッハッハとか笑っている。

 

…またか。

 

だが、いつものことだ。

 

この男とは長年の付き合いだが、外にも内にも様々な敵を作っている。

 

外はいわずもがな海賊たち。

 

しかし、内部からの敵は、・・・まぁ始末書や書類を無視して逃げていることが原因というところか。

 

この悪い癖を部下達に移らなければいいが・・・。

 

『何で善良な賞金稼ぎの俺が狙われる賞金首になってんだよ!?説明しろ!!』

 

「あ?それは俺が推薦しただけだだぞ?」

 

『フザケンナ!!そんな昇格みたいなやり方でお尋ねものにされてたまるか!!』

 

「ガッハッハ!!これで一々始末書を書かなくても海賊討伐という大義名分でお前と戦えるということだ!!もっとお前も喜べ!!」

 

『喜べるかぁ!!!!あれから何回賞金稼ぎの襲撃にあったと思ったんだ!?詳しい説明がねえとこれからマリンフォードに殴りこみに行くぞ!?こっちは本気だ!!覚悟しとけ!!』

 

なるほどな。電伝虫の向こうの人物が誰なのかが分かった。部下に言って数日前の新聞を持ってこさせる。

 

その間、私は一週間前の会議のことを思い出していた。

 

 

 

〜 一週間前 海軍本部マリンフォードのある一室〜

 

 

 

「即刻逮捕するべきです!!」

 

センゴクは今後マークすべき人物を決める会議に出ていた。

 

本来ならば少将以上の海軍の重要人物しか出席できない会議なのだが、彼は今まで実行てきた策略や成果が評価され、立場はまだ准将という立場にいながら、この会議に出席が許されていた。

 

卓上には今世間を騒がしているルーキーや、行動が予測できず危険な賞金首たちがリストアップされている。

 

しかし、彼が悩んでいることはそれだけではなかった。

 

1つ目はもちろん今行われている会議について

 

2つ目は、

 

(またか・・・)

 

自分の隣の席が空席であるということだった。

 

彼の同期であるとある人物は自分と同じく准将の地位が与えられ、この会議への出席が許されている。

 

センゴクと同じくらい戦闘の面では優秀であるのだが、いかんせんサボりがちなうえ、その行動の予測が不能という点では卓上の海賊たちと大差がないほどであった。

 

数日前彼がいないことに気付いたので、部下達に聞いてみると海賊団の巨人の船長を逮捕に行った帰りにいつの間にかいなくなっていたそうだ。

 

また、いつもの癖が出たか。

 

焦っている部下に対して彼は幾分か冷静だった。

 

この前遅刻した際、何とかかばってやった時、「もう二度とこんなことしない」とか言ってたが、それを信じた自分が馬鹿だったのだ。今度は絶対にかばわない。

 

ちなみにその部下に当時の話を聞いてみると、「その時のセンゴク准将の顔は“仏”とは真逆のものでした(泣)」と言っている。

 

さて、センゴクはとりあえず、この怒りを少しでも発散させようとその男に電話をかけた。

 

しばらくすると、目当ての男が電話にでた。

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァープゥ!!」

 

『なんのようじゃい“センゴク”!?』

 

そう。

 

モンキー・D・ガープ

 

災厄(間違いではない)の隣人の名前だった。

 

「戻ってきた船にいないと思ったら貴様どこをほっつき歩いとるかぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「『いや〜。ドーナツを食っててな』」

 

「ガープ!!今度の会議は例の超新星(ルーキー)ゴール・D・ロジャーとエドワード・ニューゲート。そして、ニューゲートと行動を共にしてる“辻斬り”についての重要な話し合いだとあれほどいっただろうが!!』」

 

「『あー気にすることはないゼンゴク』」

 

「何がだ!?」

 

「その内の2人が俺の目の前にいるからな。」

 

ガープの声の雰囲気からセンゴクは瞬時に状況を察した。

 

彼は今戦闘中だったのだ。

 

相手はおそらく、エドワード・ニューゲートと“辻斬り”。最近その海域の近くに出没したという情報を知っているからだ。

 

『・・・戦闘中だったのか?』

 

「いんや。これからするところ」

 

確かにガープは強い。

 

あの年で無意識ながらに“武装色”の覇気を使いこなし、あまつさえ“覇王色”の資質さえあった。

 

しかし、今回は少し相手が悪い。

 

エドワード・ニューゲート

 

白髪の大柄な男で悪魔の実の能力者。

 

詳しいことは分からないが振動を使い、津波や地震を引き起こせるという。

 

これだけでも脅威だが、敵は1人だけではない。

 

“辻斬り”グンジョー。

 

灰色の目と髪を持つ剣士。

 

賞金稼ぎだがその腕は確かで、賞金首なら誰しも構わず襲いかかり、仲間と船ごと皆殺しにする通称“狂犬”。

 

噂によると、どちらも海賊の艦隊相手でも一人で戦えるという。

 

うちの馬鹿犬もそれぐらいはできるが、戦闘力でみればこの2人を相手にするのはやはり1人だけでは厳しいだろう。

 

「…今はやめておけ。この先また会う機会もあるだろう。とりあえず早く帰ってこい。これ以上かばいきれん。じゃなきゃまた罰則だぞ。」

 

「『何!?それはいかん!!帰る!!今すぐ帰る!!』」

 

どうやら、戦闘を避けられたようだ。

 

すでに船を向かわせているからすぐに帰ってくるだろうと思ったが、

 

(やはりこうなかったか)

 

やはりどこかで買い食いでもして部下を困らせているんだろう。

 

「センゴク准将?センゴク准将?」

 

ここでセンゴクは自分を呼ぶ声で我に返った。

 

「あなたはどう思われますか?ゴール・D・ロジャー!!シルバース・レイリー!!十分我らの脅威になりえると思われるが、あなたはどうお思いか!?」

 

少し意識が遠のいていたようだ。しかし問題ない。

 

「そうですね・・・」

 

センゴクは自分の意見をスラスラと述べる。短時間の間であれば少し考え事をしていても問題ない。“智将”の名前は伊達ではないのだ。

 

「うむ、そうか。では、次の海賊たちに「いやーすんません!!」」

 

入口のほうを見ると、見知った顔があった。それがガハハハと笑っているからセンゴクは余計にイラッとくる。

 

「ガープ遅いぞ。」

 

「いや、すんませんコングさん。」

 

モンキー・D・ガープがやっと会議に出席したのだった。

 

 

 

s

 

「ゴホン。ガープ准将、君も誇り高き海軍の一員なら「はい分かってますよ。」・・ならいいんだ。」

 

まったく、正義正義言う上官たちの相手も疲れる・・・。もっと自由にすればええのにな。

 

そう!俺のように!!

 

「さて、会議に戻りますが。この2人の海賊たちについてなのだが。」

 

お!こいつらは!

 

「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」

 

「分かった分かったガープ准将、君の意見を聞こう」

 

さて、俺が遅刻した理由も交えて話して行こうか。コングさんのお仕置きは御免だ。

 

「単刀直入に言いますと先日こやつらと会ってきました。」

 

上官たちの間で少しどよめきが起こる。

 

「ガープ准将、それで戦闘になったのか?」

 

「いいえ、相手が悪いんで逃げだしてきました。」

 

「貴様!敵前逃亡とはそれでも海軍の軍人か!?」

 

ハイハイ分かってますよ。これだからタカ派の上官は困る。

 

「で?続きがあるんだろガープ?」

 

「ハイ、そうです。今回は少々訳ありでしたので。」

 

「訳ありとは?」

 

「先日、あのロッキーが捕まりましたな。」

 

「それは、すでに周知の事実だ。あいつはインペルダウン送りになったな。」

 

「そう、そのロッキーなのですが、ロッキーをその一味ごと倒したのは海軍ではないのですよ?」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」

 

「それは一体誰なんだね!?」

 

ここまで言って分からんのか?

 

「その人物たちこそこのエドワード・ニューゲートと“辻斬り”なのです。」

 

「何!?」

 

明らかに上官たちの間にどよめきが起こった。

 

「何を言っているのだ?海賊がそんな事をするはずがない!!名を上げるために決まっているだろう!!」

 

「いや、そうとも限らないのです。町民たちに話を聞いてみましたら、彼らが率先してやってくれたと。町を救ってくれたんだ、と言っていました。」

 

タカ派の上官たちは口々に「馬鹿な!!」とか「ありえない!!」とか言っとる。まったく、これだから頭の固い連中は・・・。

 

「少しいいかな?」

 

コングさんがしゃべりだした。

 

「コング大将殿、何か?」

 

「君たちは頭ごなしに海賊を“悪”というが・・・、必ず“悪”と言い切れるのかどうか疑問に思ってね。」

 

「何を言ってるのか分かりかねますな大将殿。海賊共の行動からすれば「では」・・・なんですか?」

 

「我ら海兵が“絶対正義”である、とはどうして言いきれるのだ?」

 

会議場に重い空気が流れる。

 

それはそうだ。海軍の士官の中にも海賊と結び付いて、報告をしないような不正を行う輩もいる。俺が言いたかったのはそういうことだ。

 

「つまりはそういうことだよ。」

 

「この世に絶対正義はありえない、ということですか?」

 

「いや、それもあるが、今までの彼らの行動を見てみるとそれを裏付けることができる。」

 

コングさんは手にもっている書類をパラパラとめくる。

 

「エドワード・ニューゲート。ある海賊団に所属し、襲いかかる海軍や海賊の船を撃沈させたというな。」

 

「!ではそいつは完全に「“襲いかかってくる船”のみだ」・・・。」

 

「降りかかった火の粉をはらいのけるのは、当然の行動だろう。自分から襲いかかった記録は今のところない」

 

コングさんの反論に手も足も出ないようだな。

 

「そしてこの“辻斬り”」

 

「海賊と一緒にいるだけで罪だ!!」

 

「確かにそれはあるかもしれないが、彼にいたっては一般人を襲ったという記録はないではないか。」

 

うむ、コングさんの言うことはもっともだが、この人の発言が何か引っかかるな。

 

「コング大将!!あなたは海賊を擁護するのですか!?」

 

「いや、少し私に考えがある。」

 

?どういうことだ?

 

しかし、次の発言に俺たちは度肝を抜かれた。

 

 

 

 

 

 

 

「こいつらを・・・七武海にしようと思うんだが」

 

 

 

 

 

『え?』

 



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マルンフォードより…コングの発言

コングさんの意見に私以外の人物が驚いた。いや複数人、何か考えている風にはしているが。

 

「コング大将!!あなたは何を言っているのですか!?いきなりこんな訳の分からない若造どもを七武海にできるわけないでしょう!!」

 

それもそうだな。並みの海兵が聞いても反対するだろう。

 

「俺は賛成です!!」

 

おい、ガープ。今の今まで寝ていたくせに何故急に起きた?どうせ、こいつの事だから、これで毎日手合わせできるぜ!!とか考えてるのであろうが(正解です)。

 

「いや、ふざけるのではなく私は本気だ」

 

「つまりこういうことですかな?コングさん」

 

私にも考えが読めた。

 

「こやつらは海賊の割には脅威が薄い。しかし、それぞれが持っている戦闘力は中々評価すべきところがある。このまま放置しているのはおしい・・・ということですかな?」

 

「そうだ。ただでさえ最近は海賊の数が増えてきている。このような逸材がいるなら早急に確保し、この海の平和のために有効利用してやろうと思ってな。それに海軍への入隊については私の権力を使えば問題ないし、元帥にも言っておくしな。」

 

海軍大将の権限は大きい。それを使うのならば問題ないだろう。

 

「しかし、こいつらがその誘いに乗るとお思いですか?」

 

今まで黙っていた中将の1人が口を開く。それもそうだ。こいつらは海賊。いきなり海兵になれ、と言われても罠だと思ってそう易々とは出てこないだろう。

 

「そこも考えてある。」

 

「といいますと?」

 

先ほどコングさんに反論していた少将がくいつく。“戦力”という言葉に惹かれたか?

 

すると、一拍おいた後コングさんはこういった。

 

「こいつらを高額の賞金首にすればいい。」

 

全員の頭に?マークが浮かんだ。

 

「えっと大将。今のあなたの意見は、先ほどの意見と矛盾していませんか?」

 

「そうでもない。つまり、交換条件というやつだな」

 

「手配書のせいで賞金稼ぎや他の海賊に追われたくなかったら七武海にはいれ、さもなくばお前らはずっと賞金首のまま。海軍やら賞金稼ぎ、海賊がワラワラやってくるぞ、さあどうする?ということか。・・・なるほどの!!そういうことか、コングさん賢い!!」

 

ガープ!!お前コングさんの部下だろ!!

 

・・・まぁ、だがそういうことだ。

 

多少強引であったとしても、もし今の交換条件を元に、この2人が海兵になれば我々の戦力が増す。そうでなくてもおそらく根は善良なので、目立った行動はとれないだろう。つまりどちらにせよ我々の思った通りに進む、ということか。

 

「しかし、逆に自暴自棄になることは考えられないのですか?」

 

「いや、彼等はそのようなことはしないだろう」

 

「でも、もしそうなったら!?」

 

「例えもしそうなったとしても、私が止めるさ。」

 

「少しよろしいですか?」

 

私はそのような方法を使うことができる人物を知っている。

 

「ゴール・D・ロジャー、シルバーズ・レイリー。この2人にも同じことをしてみてはどうですか?」

 

「いや、彼らはだめだ」

 

(!?)

 

この2人も大した被害は報告されていないはずだ」

 

「こいつはすでに知っていしまっているからな」

 

私には何を言っているのか分からなかったが何か事情があるということだろうか?しかし、この話題には触れない方がよさそうだ。

 

「コングさんコングさん。俺はあやつらに電伝虫の番号を渡して来たぞ!!」

 

「そうか、よくやったガープ。おそらく一週間後くらいには手配書が発行され、おそらく“辻斬り”が怒り狂って電話してくるだろうから、いつでも出られるようにしておけ」

 

「分かりました!!」

 

嬉しそうだなガープ。そんなにこいつらが気に入ったか?

 

「えー、では次の賞金首に…」

 

まあいいか、さて次の賞金首は…

 

 

『そういうことか・・・。つまり俺が賞金首になったのは海軍としての総意だと』

 

「そういうことだ!!ま、俺はお前らが海軍になろうとなるまいと万々歳だがな!!」

 

『なわけあるかぁ!!責任者呼べ!!責任者を!!俺自らがダンガン的な速度でロンパしてやるわ!!』

 

ガープがニヤニヤしながらかわれと無言で言ってくる。まったくしょうがない。

 

「もしもし。」

 

『!テメエはセンゴクか?』

 

ほう、すぐに気付いたが。

 

「いかにも海軍准将センゴクだ。」

 

『さっきも聞いたが、本当にこの一件はガープが勝手に決めた事じゃないんだな?海軍全体の意見、ということだな?』

 

「そうだ。」

 

電話の向こうからため息が聞こえた。

 

その後に、俺はオリ主だぞ・・・、とか死亡フラグ・・・、とか聞こえたが何の事だろうか。

 

「言っとくが」

 

いつまでたっても相手がしゃべれならいのでこちらから言わせてもらおう。

 

「確かに君たちがこの世界の抑止力に加わって欲しいというのは我々の強い望みであることは間違いない。しかし、それと同時に君たちを危惧しているのだよ。君たちが将来我々の大きな脅威にならないとは言い切れない。それをふまえて今回の決定をしたのだ。」

 

「『ソウデスカ…』」

 

「で?今君はどう思ってるか聞かせてもらっていいかね?」

 

『…』

 

その後沈黙が流れたが一体なにがあったんだ?

 

『だ』

 

「だ?」

 

『だーーーーーーーーーれが七武海になんてなるかブワァーーーーーーーーーカ!!』

 

ガチャ!!

 

「…」

 

「たはは失敗か!!よし!センゴク!!さっさと出航の準備をしろ!!あいつらに喧嘩しにいくぞ!!」

 

ハァ・・・こいつはなぜこれほど能天気なのだ?

 

とりあえずコングさんには報告するとして問題はこの山猿だな…。

 

またしても胃がキリキリと痛むセンゴクであった。

 

 

 

一方その頃・・・

 

「まて!“辻斬り”!!エドワード!!貴様らを逮捕する!!」

 

「チクショーーーーーーーーー!!」

 

グンジョーは白ひげとともに突如襲ってきた海軍の船を撃破していた。

 

高額賞金首への道は近い!!

 




じの字です。

私は帰ってきた!!

今夜の連続更新、いかがでしたでしょうか…。といっても、まだまだ新話は先なのだがね。

いやー、小説を書くのって楽難しい!!

さあて、そんなこんなでグンジョー君が賞金首になっちゃいました。海軍に良い意味でも悪い意味でもマークされちゃったわけですね。

元々、海軍の最高戦力とのガチバトルはやってみたかったのですが。これをどう主人公と絡ませるのか、すごく悩みました。
いきなり主人公を海賊にするのは何かヤダし、海軍に入らせるのも気に入らない。でも、賞金稼ぎのままでも話は進まないし・・・、と練りに練った結果こうなりました。

なんか納得いかない人すいません・・・。

ガープじいちゃんのタカ派嫌いですが、僕的に彼は海賊の中にもシャンクスみたいなイイヤツはいること、海軍は必ずしも正義ではないことを知っているのです。

天竜人が殴られてはしゃいでましたものね。

なので、人を肩書きとか、情報のみで判断したり、海賊は絶対悪!!と言い切る人たちも嫌いなはずなんですね。

以上独自解釈でした。


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伝説の海賊達(仮)編:全員集合!!
何かもう色々やってんないんだぜ!!


 

 

 

 

「だーちくしょ!!かったり!!」

 

 

 

訳のわからない理由で賞金首にされてからもう1ヶ月。

 

ある島にいけば

 

「逮捕だ〜!辻斬り〜!!」

 

船に行けば

 

「待ってたぜ辻斬り!!」

 

「その首もらった!!」

 

海を行けば

 

「グヘヘヘヘ、ニューゲートとグンジョーじゃねえか!!」

 

「テメエらをぶっ殺して名をあげてやる!!」

 

 

そう、あれから敵が異常に増えた。

 

犬も歩けば、とかいうけど…狂犬は歩いただけでこれですか!?

 

うっぷんがたまった俺には襲ってきた奴らが贄にしか見えなかった。腹いせに1つ残らず沈めてやりましたけどね。ちなみに海軍の船は後が怖いから船だけ沈めたけど。海賊は知らん。

 

というか、海軍の上層部!!特にガープ!!覚えてろよ!!いつか攻め落とす!!

 

 

「俺としたら退屈しねえから丁度いいけどな。」

 

 

何を言ってる!!そんなお気楽でいいのか!?

 

 

「あんたは前から海賊だからいいけど、こっちはそんな悪党じゃないの!今まで平穏に暮らしてたの!善良な一市民なの!!お前のせいでロビンもビックリのとばっちりをうけてんだよ!!」

 

「嬉々としながら船とその乗組員をたたっ斬る奴を、善良な一市民とはいわねえ。」

 

 

え?やだそんな嬉しそうだった!?

 

 

「ま、お前も賞金首になったとはいえ海軍のスカウトを受けている身だぜ?この際自分の進路もしっかり決めたらどうだ?我らが同胞になるか、敵になるか、な。」

 

「絶対ヤダ!!海賊になるのもヤダけど、海軍になるのもヤダ!あいつらスカウトすんなら直接すればいいじゃないか!!回りくどい上に、人に迷惑かけるようなやり方をするエゲツナイ事する集団に誰が入ってやるものか!!つかお前が入れ!!」

 

 

白ひげはグララララとか笑って「冗談だ」とかいってるけど俺には冗談じゃない!!

 

じょ〜うだんじゃないわよ〜う!!・・・いかん!!誰か乗り移った!!

 

 

「俺は海軍なんぞには入んねえ。俺は自由に生きてえから海賊になったんだよ。お前だけ入れ。もう一戦やるのも楽しそうだしな。グララララ」

 

「入んないって言ってんでしょうが。というか、もう一戦やりたいなら無人島用意しな。」

 

 

そう、あれから修行を続けた結果お互い攻撃の威力がまた上がるというトンデモ事態が起きている。

 

白ひげの地震攻撃は海軍の大型船の艦隊を全て飲み込むほどになり、俺の斬撃は鉄でできた船を一撃でズッパシいった。

 

何それこわい。

 

でも、マンガで見た津波はマリンフォード1つ飲み込めそうな大きさだったし、まだまだ成長すんだろうなー。

 

俺は何か怖い。いや、修行はするけどね。

 

そして、今の俺たちが前のテンションでやったら本当に大変なことになる。

 

 

島1つ崩壊する。

 

 

そして、騒ぎを聞きつけた人が海軍に通報。

 

「おーい!!グンジョー、喧嘩しようぜー!!」おじいちゃんが来て拳骨流星群。

 

あ、俺終わった。

 

 

「何があったかは知らんがそんな落ち込むな。そこの酒場で一杯おごってやるよ。」

 

 

地面に手をついていた俺を見て哀れに思ったのか、白ひげは酒場に誘ってくれた。

 

だめだ、今のおれはネガッ鼻状態になってる・・・。何とかしていつもの自分に戻らなけらば・・・。

 

 

「ヘイいらっしゃい。」

 

 

酒場・・・。オヤジ元気かな・・・。ああ、故郷<クニ>に帰りたい。・・・やっぱネガティブだ。

 

「俺には・・・そうだな、ワイン。こいつには気分が盛り上がるやつをくれ。」

 

「ヘイ。」

 

白ひげさんそれもしかしてヤバイ品では・・・。

 

 

「よお。おめえ“辻斬り”グンジョーだろ?」

 

急に隣にいた客がが話しかけて来た。

 

なんだよ見ず知らずの人まで辻斬り辻斬りっていう。

 

世知辛い世の中だな・・・グスン。

 

でも、よく見るとこの葉巻をふかしている金髪の男は中々強そうだ。

 

おそらく2刀流。それもかなり強いな。

 

手合わせした、ゲフンゲフン!!いかん。こんなことばっかやってるから“辻斬り”なんて呼ばれるんだ。自重。

 

 

「そうだよ?実に不本意だけどね。」

 

「ああ、お前の悪名は聞いてるぜ。気に入らねえ奴は女子供関係なく全てブッタ斬っちまう“狂犬”だろ?ジハハハハハ生きがいいじゃねえか!!俺はそういう奴は好きだぜ!?」

 

 

ナ、ナンダッテー!?

 

根も葉もない噂たっとる!!…いや、根はあるか。もしかしたら葉もあるかもしれない。

 

でも、俺はそんな殺人狂じゃない!!

 

ただ強くなりたい一心でがんばっていただけだ!!

 

そうだ!!白ひげも何か言え。

 

…?白ひげ?

 

 

 

「どうだ?お前俺の傘下に入らねえか?富、名声、そして世界を独占してやろうじゃねえか!!

 

「いや、自分そういうの興味ないんでいいっす…」

 

「そうつれねえこと言うなよ!お前はどうだ?ニューゲート!?」

 

「断る」

 

 

何であんたはさっきから薙刀構えてんの?

 

 

「ジハハハハ!!何だよ失礼な連中だな!!まあいい。この後世界はこの俺という存在にひれ伏すことになる!!お前らも覚えておけこの金獅子のシキを!!」

 

 

へーそうですかってエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!?

 

 

 

〜その頃この酒場の近くで〜

 

 

「おい。今日も宴をするのか?」

 

「いいだろ別にい、食料はたんまりあるんだからよ!!」

 

 

通りを2人組の男が歩いていた。

 

会話してるというより、1人の男がもう1人の男に付き合わされているという感じだが。

 

 

「オイ酒飲んでばかりじゃないか」

 

「うるへえ!!海賊船をしずめて金はたんまりあるんだ!!これが飲まずにいられるか!!」

 

「訳のわかららないことを言うなよ・・・」

 

 

銀の髪の男はすでに疲れきった顔をしている。

 

一方で黒髪の男はよほど酔っているのか若干呂律がまわっていない。

 

 

「お!あそこに酒場があるじゃねえか相棒!!」

 

「まだ飲むのかお前?」

 

「当たり前だ!!今日は死ぬまで飲むぞ!!」

 

「はあ、いい加減にしないとまたみんなが怒るぞ?」

 

「そん時はお前が何とかしてくれ“レイリー”!!」

 

「…分かったよ“ロジャー”」

 

 

2人はそのまま、混乱が荒れる酒場へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

ONE PIECEを手に入れ後に王と呼ばれる男 海賊王    ゴール・D・ロジャー

 

 

海賊王の片腕にして、副船長         冥王     シルバーズ・レイリー

 

 

ロジャー亡き後、最強と呼ばれる海賊     白ひげ    エドワード・ニューゲート

 

 

空飛ぶ海賊として恐れられる         金獅子    シキ

 

 

そして今は不確定な要素を含むもう1人

 

 

この町に“伝説”として名を残す大海賊たちが集まった。

 

この先何が起きるのかは全く分からない。

 

ただ1つだけ言えること

 

 

 

 

 

この出会いは世界を覆い尽くし、巻き上げ、根底を壊す未曾有の“大嵐”の序章であった。

 

 

 

 

 



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役者は揃った

 

カランカラン

 

店の扉が開閉する音も今の俺には全く耳に入らなかった。

 

目の前にいる男

 

“金獅子”のシキ

 

別名 空飛ぶ海賊、フワフワの実の能力者で、後に伝説の海賊の1人として恐れられている人物だ。

劇場版ストロングワールドの悪夢を覚えている人は多いはずだ。ルフィをその能力で苦しめ、一度勝利した、ということは覚えている。

 

しかし、まだこの時点ではまだ頭に車輪は刺さってない。それはそうだ。エッドウォーの海戦は怒っていないから当たり前と言えば、当り前なのだが…。

だが、その行動の1つ1つがその場を制圧するための布石のようにも感じる。

 

さすがは後の伝説の海賊!!

 

 

「どうした?こっちはスカウトしてやってんだぜ?何か言ったらどうだ?」

 

「うるせーよ竹〇ヴォイス。お前の話なんか聞くかよ、笑いながら怒ってろ。」

 

「フザケンジャネーヨ、バカヤロー!!」

 

「できんの!?」

 

やばい、コイツ以外とノリがいいぞ!!好きになってしまいぞーだ!!

 

「グンジョー気いつけろ…トボケているが、コイツはとんだ策士だ。隙を見せたらオシマイだぞ」

 

「・・・・分かってる。」

 

虎丸は用意しておこう。一瞬とぼけて見えるものの、今の時点でも実力は本物なのは間違いない。それに、こいつはさっきこの店にタッチしていた。

フワフワの実は触ったものを浮かべることができたはずだから、つまり今すぐにでも俺たちごと店を浮かべることができるということだ。

 

こりゃかなりマズイな。…やられる前に、やってやるか?

 

「ジハハハハハハハ!!何を警戒しているんだよ。別に今戦おうとしてるわけじゃねえ。だが、返答しだいじゃ(ドゴッ)ゲブガァ!?」

 

シキー!?

 

金獅子のシキが突然殴られカウンターの奥まで吹っ飛んで行った!!い、イッタイ、ナニガオコタンダー(棒)?

 

「ガハハハハハハムカつく奴がいたから“つい”なぐっちまった!!」

 

「敵とはいえ、いきなり殴ることはないんじゃないのか?というか殴るのを“つい”で済ますなよ、そのうちお前寝返りをうつ度に者壊してるんだから…」

 

「心配するな!俺はまだまだいける!!」

 

「少しは自重しろ!!」

 

急に変な集団キター!!何か1人すでにベロベロに酔ってて、それをもう一方が介抱している。

と、俺と白ひげの横のカウンター席にそいつら座ってきた。

 

「ウィスキー。それとツマミ。こいつには適当な酒を見繕ってくれ。」

 

「ヘ、ヘイ。」

 

マスターはおっかなびっくりしながら酒を出した後、マスターが厨房に入った。かわいそうに、彼も生きた心地がしないだろう。

 

というか、この状況何なんだ!?

 

伝説の海賊が吹っ飛び、吹っ飛ばした本人は酒飲みながらまだ何かウダウダ言っているが、相方の1人の男は静かに酒を飲んでいる。

というか、未だに煙が待ってる。これ、シキは絶対死んだんだろうな…。

 

「てめー何しやがんだ!?」

 

あ、生きてた。ツマンネ。

 

「ガハハハハ!!テメエこそ何でここにいやがんだシキ!!」

 

「それはこっちのセリフだロジャー!!」

 

何か殴られた本人はピンピンしてるし、殴った本人はピンピンしえいるし、何だこれなんだこの状況。

 

「ここであったが100年目だ!!いい加減俺の部下になれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「だが断る!!」

 

いきなり取っ組み合いを始める2人を眺めながら何とも言えない気持ちになっていた。

 

全く何喧嘩してやがんだ知り合いか?

 

え?ちょっと待って。

 

 

 

“ロジャー”?

 

 

 

「やあ」

 

頭の中で?と!が舞い上がる中、隣で飲んでいた話しかけてきた。

 

「どうも」

 

「初めましてだな」

 

「そうですね」

 

眼鏡をかけた白髪の男。いや、白髪だと思ったが、灰色に近い色をしている。むぅ、まさか…

 

「失礼ですが、お名前を聞いてよろしいですか?」

 

「ああ、構わないが」

 

酒をゴクリと飲みほした後、その男は口を開いた。

 

 

「俺の名前はシルバース・レイリー。で、あそこで喧嘩をしているのがうちの船長ゴール・D・ロジャー。俺たちはロジャー海賊団だ。よろしくな、“辻斬り”」

 

 

 

 

海軍基地 G-11支部

 

 

 

「『クインテッド中将』」

 

 

近くの島に潜伏している部下から報告が入った。

 

 

『ゴールド・ロジャー、シルバース・レイリー、エドワード・ニューゲート、金獅子のシキ、辻斬りグンジョー全員を確認。指示を待ちます』

 

「ふむ、御苦労」

 

 

事の発端は数日前部下の海兵から複数の報告が入ったことだった。

 

 

『中将!!船が素手でたたきこわさギャアアアアアア!!』

 

『助けてぇぇぇぇ!!船が浮かんでる!!』

 

『津波が斬撃がぼぼぼぼぼぼぼb』

 

 

近辺の海を監視していた複数の船が全く別の地点で破壊された。

 

この後調査をしてみると、今この海を賑わせている海賊達の仕業であるということが判明した。

 

ゴールド・ロジャー、シルバース・レイリー、エドワード・ニューゲート、金獅子のシキ、辻斬りグンジョー、それぞれ悪名高い海賊たちだ。

そして、こいつらは今近くのある島に集まっているという。これはこいつらを一網打尽にするチャンスだ!!

 

私は1ヶ月前の会議を思い出した。

 

海賊を海兵にする!?

 

そんなことできるわけないだろう!!

 

あの後、一応賞金を懸けると追うことで決着したが、それでも私にはあの発言だけはいまだに納得できない。

 

そもそもコングさんは海賊に甘すぎる。

 

この世界では海賊という肩書がある限り海賊は絶対悪だ!!ここで私があいつらを捕まえ、あの人の策を失敗に終わらせてやる。

ヤツの面子さえつぶしてしまえば、、次の大将の席に座ることになるのはこの私だ!!

 

私はそう決心しながら連絡用電伝虫をとった。

 

 

「G-11支部の海兵全員に告ぐ。総員戦闘準備。賞金首を打ち取るぞ。」

 

 

さあ海賊どもめ。血祭りにあげてやる。

 



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緊急事態

 

「あんたがシルバース・レイリー…ってマジ、モノホン?」

 

 

今日は何だがすごい日だ!!金獅子に勧誘されたと思ったら今度は海賊王本人と副船長だと!?盆と正月が一緒に来ちまったゼイ!!祭りだ祭りだー!!

 

「うるせえばかやろう!!」

 

「何だとこの野郎!!」

 

「ウルセエなアホンダラどもが…」

 

「全くうちの船長は…」ヤレヤレダゼ

 

「oh…」

 

 

すでにMA★TU★RIでした。喧嘩してる2人と黙ってその隣で酒飲んでる3人。その周りで騒ぎながら賭けごとしているダメ大人ズ。何だこのカオス的な空間わ!!

 

あんたら知らんと思うけどこの人たち未来では本当にすごい人たちなのよ?

 

軽く頭を振った後、傍らのカクテルを一気に飲み干す。

イッキはだめだけど、口の中に砂糖とレモンの汁を含み、そこにお酒を入れて口の中で混ぜるというものだ。(※お酒は二十歳になってから!!byじんの字)

こういうちょっとした工程がいる食べ物飲み物は好きだ。

 

「…あ?」

 

お酒を少しずつ嚥下しているとき、そこでふと気付いた。いままで気にかけもしなかったが、一番奥の席に帽子を被った変な奴がいたのだ。

一般の人かもしれないが、それにしてもこんな海賊のばか騒ぎが起きている酒場によくいられるものだ。それに、何でこんなとこに電伝虫持ち込んでんだ?

 

『・・・まて。・・・ま、・・ししろ。』

 

「はい、分かりました。」

 

電話を切ると、視線をこちらに向けてきた。

 

何だったんだ?

 

すると、白ひげが急に立ち上がった。

 

「あ、おい、どうした?」

 

「ああ、ちょっとな。おい、そこのお前」

 

白ひげが急にそいつの胸元をつかみ空中にぶら下げた。てか何やってんのお前?暴力はイクナイヨ!!

 

「ヒイ!な、何ですか!?」

 

「それこっちのセリフだアホンダラ。オメエ今誰と話してやがった?」

 

「そ、それを話す義理はない!!」

 

ちょ、ちょっと!!片手に振動エネルギーが溜まってる!!ここでグラグラすんのマズイって!!

その様子を見ていた男は焦ってしゃべりはじめた。

 

「待て!!言う!言うからそれだけはやめてくれ!!」

 

「じゃあ吐け」

 

いつの間にか喧嘩は収まり白ひげの動向に全員が注視していた。

 

というか、

 

「明らか怪しいとはいえいきなり振動使うとかないわ・・・。」

 

あ、口に出ちゃった。

 

プルルルル プルルルル

 

急に電伝虫がなりだした。

 

「出ろ」

 

「え、ハイ?」

 

「さっさと出ろ」

 

「ハ、ハイ!!」

 

ガチャ

 

『やあ、ボガード君。海賊たちはどうかね?』

 

「ク、クインテット中将!」

 

中将?電話の向こうは中将なのか?

 

『1人でも逃げてしまったら作戦は失敗なのだよ。例の作戦までしっかりと見張ってくれたまえ』

 

「ちゅ、中将殿!!」

 

『いいか、くれぐれもばれるんじゃないぞ

 

ガチャ

 

そこまで言って電話は終わった。は~い、す〜でにばれてま〜すよ~。

 

「おい。海兵。作戦というのは何だ?」

 

「っ・・・・・」

 

成程、黙秘権ですか?

 

いつまでたってもしゃべらない海兵の男にいらついたのか白ひげがまた振動チャージを始めた。

 

というか、やめたげてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!男の人がいろいろしんじゃぅぅぅぅぅ!!

 

「分かった!分かった!言うよ、言えばいいんだろ!?」

 

知識があるからか振動に以上におびえる海兵。

身を持って体験したから言えるけど、振動攻撃はハッキリ言ってもの凄く痛い。しかも、白ひげはあれから振動の威力を上げている。

 

一般人には想像を絶する激痛になるだろうな・・・。

 

「さ、作戦名は…」

 

おっと、意識が飛んでる間に話が進展していたようだ。

 

「その名前はバ…“バスターコール”。」

 

 

 

 

 

“バスターコール”

 

 

 

 

その言葉をこの場所にいる誰もが反芻していた。酒場を一気に重苦しい空気が包む。しかし次の瞬間には酒場に面した通りは、まるでハチの巣をつついたような状態になった。

 

「バスターコールだあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

人々は口々にバスターコールと叫びながら通りから逃げ出していく。

 

「バスターコールが発令されたらしいぞ!!」

 

「何!?」

 

「早く家族を連れだすんだ!!」

 

「逃げるんだ早く!!」

 

「船を出せ!!急げ!!」

 

「ヒイイイイイイイイイイイイイイお、お助けぇぇぇ!!」

 

店主まで出て行ってしまった。

 

 

『……………』

 

 

うわ〜大変なことになっちゃったな〜。

 

原作ファンの皆さんはご存じでしょうがとりあえず。

 

 

 

“バスターコール”

 

 

 

うろ覚えだが、海軍中将5人が10隻の艦隊を率いて大砲打ちまくる作戦。

 

確か狙われた島は関係者とかそんなの関係ねえとばかりに皆殺しだっけか。

 

エゲツねえ…どっちか“辻斬り”だよ。

 

というか、死亡フラグ…orz

 

「…ははははは」

 

海兵の口から笑い声が漏れた。

 

「お前らは終わりだ!!今に中将殿が艦隊を率いてこの街にやってくる!!それだけじゃない、この街の海兵に先ほど連絡を入れておいた。お前らは捕縛され、生きながらにしてバスターコールの業火に焼きつくされるんだ!!」

 

「うるせえ」

 

「ふがふっ!!」

 

とりあえず斬って黙らせますた。え、暴力はいけないだって、何だそれ誰の話?

 

「安心せい峰打ちじゃ・・・。」

 

言ってみたかったんだよねこれ。

 

しかし、ヤベーなーバスターコールかー。

 

まさか、海軍がそこまで本気だとは思わなかった・・・。

 

 

「で?あなた達はどうするつもりだ?」

 

 

レイリーが口を開いた。

 

どゆこと?

 

 

「バスターコールが発令され、正直我々の命は絶体絶命だ。しかし、このまま黙ってやられるつもりなのか?と聞いている。」

 

 

う〜ん、そういわれてもなあ…。

 

 

 

 

「海賊ども!!民間人を解放して大人しく投降しろ!!」

 

 

 

 

 

とりあえず店の外に集まっているあいつらをとっちめるのが先じゃないのかね?

 



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海賊王は空気じゃないから気にしちゃダメよ!!

 

 

あ〜たいへんなことになっててまんな〜

 

ああ、どうもどうも最近いろいろ萎え気味のグンジョー君だよー。

 

前回の話

 

伝説の海賊の皆さんに会った。

 

以上!!

 

説明苦手なんだよ俺・・・。

 

で、今酒場から出てきたんだが、海兵が軽く100人以上はいるな・・・。

 

この島や他の島に駐在している海兵ありったけかき集めたのだろう。

 

無駄な努力を。

 

 

「とりあえず俺が掃除してくるわ〜。」

 

 

と言って掃除を始めようとしたんだけど、

 

「オイ待てテメエ!!」

 

「おい、グンジョーおれにもやらせろ!!」

 

「俺も“辻斬り”とエドワード・ニューゲートの実力に興味がある。」

 

「おいさけがたりねぇーぞ!!」

 

 

即席海賊パーティが編成されました。

 

というか、うるせえ戦闘狂軍団。

 

いや、1人関係ないの混じってたな。

 

酒場を出ると右からロジャー、レイリー、シキ、白ひげ、俺の順番で並ぶ。

 

ちなみにこの順番はじゃんけんで決めるぞ!!というシキ発案の元こうなった。

 

どこのアイドルグループだ。

 

 

「貴様達5人には逮捕状が出ている!!大人しく海兵を解放しろ!!そしてインペルダウンでその罪を悔いるがいい!!総員構え!!」

 

 

階級が一番高いと思われる海兵はそれを無視して怒鳴り散らすと同時に、ガチャチャ!!と、海兵たちが一斉に銃を構える。

 

嘘つくなし。その仲間の海兵がバスターコールとか言ってたぞ。殺す気ではないか。

 

殺る気マンマングローブということですか?

 

ま、こちらとしてもこのまま死ぬ気はないんで。

 

 

「抵抗させてもらおう。」

 

 

虎丸を抜き放つ。

 

数では負けてるけど、この面子で負ける気がしねえ。

 

 

「ところでシキ、“辻斬り”、エドワード・ニューゲート。」

 

 

レイリーが口を開いた。

 

 

「すまんが、この戦いが終わったら俺から1つ話しがあるのだが、いいかね?」

 

「別に構わないけど?何の話?」

 

「ああ、それは」

 

 

ドン!!という音がして足元に銃弾が撃ち込まれる。

 

 

「・・・後でにしようか。」

 

「そうだな。」

 

 

俺たちはそれぞれ戦闘態勢に入る。

 

 

「あ、何だ?」

 

「ふう、酒を飲んだ後はあまり運動をしなくないのだがね。」

 

「ジハハハハハ!!海兵ども俺にひれ伏せ!!」

 

「ハナッタレ共が・・・。」

 

「とりあえずO☆HA☆NA☆SIしようや。」

 

 

状況がよく分かっていないのも1人いたが、構わず海兵の群れに躍りかかった。

 

 

「総員迎え討て!!」

 

 

海兵達は一斉に銃を発砲してきた!!

 

 

「ジハハハハハ無駄だ!!」

 

 

シキは剣を抜きながらフワリと空中に浮き上がる。

 

 

「気をつけろアイツ能力者だ!!」

 

「そうだな。上ばかり見てはいかんな。」

 

「え?」

 

 

叫んだ海兵がいつの間にか近寄っていたレイリーに斬られる。

 

 

「貴様!!」

 

「よくも仲間を!!」

 

 

今度はレイリーに複数の海兵が接近してくるが

 

 

「オラア!」

 

酔っ払ってたはずのロジャーが海兵を殴り飛ばしていく。何だこいつらいいコンビネーションじゃん。

 

 

「ロジャー!!お前はまだ酔ってんだからおとなしくしてろ!!」

 

「うるせえレイリー!!俺の相手は俺が倒す!!お前の相手も俺が倒す!!」

 

 

あれで仲いいのか?

 

と、

 

 

「エドワード・ニューゲート!!観念しろ!!」

 

 

白ひげは海軍に包囲されていた。

 

俺も海軍の相手をしていたが、助けたほうがいいかな?

 

しかし、白ひげは何を考えたのか地震エネルギーを溜めるとそれを一気に地面にたたきつける!!

 

 

「ウェアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

ビシビシ、という音がして白ひげを中心にひび割れができ、そして地面が崩れ出した。

 

 

「逃げろ!!」

 

「巻き込まれる!!」

 

 

そうこうしている間に白ひげの周りにいた海兵は地面の穴に巻き込まれて全滅してしまった。

 

恐るべきグラグラの実ェ・・・。

 

 

「死ねえ!!」

 

「うおっと」

 

 

考え事してたら海兵に斬られそうになった。

 

もう、何するザマス!?

 

 

「“辻斬り”グンジョー!!大人しく逮捕されろ!!

 

 

そう言って、今度は俺を囲む。チョコザイナ。

 

ま、実験にはちょうどいいか。

 

というわけで剣をふりぬき

 

 

斬撃を飛ばしました。

 

 

「ゴオッ!?」

 

剣撃にあたった海兵は他の海兵を巻き込みながら家屋まで吹っ飛ぶ。

 

そう、これが今の俺の実力。

 

あれから毎日鍛錬をし続けるうちに通常攻撃に斬撃飛ばしが付加され、ついでに他の技の威力も上がっていた。

 

努力する人は成功するっていうけどこれは・・・。

 

「とりあえず一気に決めるか・・・。いくぞ!!“暴風ウォークダウン”!!」

 

「!!!!!!ギャアアアアアアアアアアア!!!!!」×たくさん

 

「え、ちょ、まっ、アアアアアアアアアアアアア!!」←シキ

 

 

高速で剣を振り切った箇所から巨大な空気の渦が生まれ海兵たちを飲み込む。何か巻き込んだが気にしない。

 

いや、この技もなんつー“チート技”になっちまったんだよ・・・。

 

 

「テメエ!!何しやがんだ!!」

 

 

チッ、生きてたか。

 

 

「お前今舌打ちしなかったか?」

 

「気のせい気のせい。」

 

「そうか、・・ってそんなわけねえだろ!!危うく死ぬところだったぞ!!あんな技使うんだったら一言言ってからやれ!!」

 

「おいグンジョー俺の獲物まで持ってくんじゃねえよ。」

 

「いやはや、驚いたな。これが“辻斬り”の実力か・・・。」

 

 

今の一撃で他の奴が相手していた海兵を掃討するどころか、近くにあった建物を半壊させてしまった。正直やりすぎたな。

 

 

「さて。」

 

 

気を取り直して、とレイリーが話し始める。

 

 

「おそらくこの島は、あの海兵が言った通りバスターコールのようなものがおこなわれるだろう。」

 

「ああ。早く逃げなきゃヤベエな。」

 

「待て。まだ続きがあるんだろ?」

 

「さて諸君突然だが、

 

 

 

 

我々ロジャー海賊団と同盟を組むつもりはないかね?」

 

 

 

 

「「「「何で?」」」」

 

 

いや、ロジャーお前まで言うなよ。

 



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激闘の予感

 

「よう。」

 

 

私が刀の手入れをしていると辻斬りが話しかけてきた。

 

 

「こうやってちゃんと話すのは初めてだな。グンジョーだ。」

 

「昨日話したばかりだが、何か用かね“辻斬り”」

 

 

私が答えると“辻斬り”グンジョーはひどく傷ついたような顔をした。

 

 

「頼むからその2つ名とセットで言うのはカンベンしてくれ。自分が狂ってるような気がしてくる。」

 

 

せめてグンジョーって呼べ、と向こうが提案してきた。

 

おかしな奴だ。

 

自分の2つ名をここまでいやがる奴も見たことがない。

 

この男を見ながら、私はある記憶を思い出していた。

 

 

地震と嵐の激突

 

 

遠目でしか見れなかったが、2つの災厄が拮抗した瞬間

 

 

 

全ての音が死に、

 

 

 

海が割れ

 

 

 

大地を裂き

 

 

 

空が悲鳴を上げ

 

 

 

気づいたら彼らがいた島は半壊していた。

 

 

 

それほどにこの男は強い。

 

そう、私が一度実力を見てみたいと感じるほどに。

 

だから、酒場で再会できた時は素直に喜んだし、それと共に恐怖をも感じた。

 

今回の同盟はその点も加えてのことだった。

 

おそらく、だがこの場所にいる海賊の頭たちはそこらにいる海賊ではない。

 

全員が全員、災害クラス。

 

彼らが共同で戦線を張ってくれたらどれだけ心強いことか。

 

即席とはいえ、あのバスターコールだ心強い味方は多いほうがいい。

 

私をこの世界に誘ってくれたロジャーのためにも今回の戦いで負けるわけにはいかない!!

 

 

「おーい、聞いてんのか?」

 

「ああ、すまない。」

 

 

どうやら考え事にふけっていたようだな。

 

 

「まあいいけど。ところでさあんたの剣術は独学なのか?」

 

「そうだな、まあ昔少しかじったものを自分なりに派生させた。」

 

「はあ、なるほどね。」

 

「君のもか?」

 

「俺の場合は適当に剣ふりまくってたらいつの間にかできるようになってた。」

 

「」

 

 

この男は・・・。

 

あの絶大な威力を誇る剣術がただ剣をふり続けた結果だというのか!?

 

偉大なる航路に来てから様々な謎を見てきたが、この男が何故こうなったのかも大きな謎だな。

 

目の前の男をもう一度見る。

 

おそらくロジャーと同い年のはずの灰色の髪灰色の目の男。

 

もし、彼が普通にどこかの流派で真剣に剣術を習ったのだとしたら、おそらくその流派の歴代最強の剣士になっていたはずだ。

 

カミという奴は何ともったいないことをするのか。

 

 

「おい、レイリー!!何が起こってるんだ!?」

 

 

そういえばこいつがいたな。

 

 

「ロジャー今起きたのか!!というか、話し全然聞いてなかったのか?」

 

「ああ、昨晩から何も覚えてねぇ。・・・ところでお前誰だ?」

 

「ええ!?」

 

 

私の隣にいたグンジョーが悲痛な声を上げた。

 

おそらく、本当に何も覚えてないのだろう。

 

しょうがないのでもう一度説明してやることにした。

 

 

 

 

「ところでお前誰だ?」

 

「ええ?」

 

 

空気だった人に空気扱いされた悲しきグンジョー君です。

 

一晩明けて広場に来たのだが、そこでレイリーをみつけたのが話の発端。

 

昨日は色々あってスルーしていたが、思えばコイツは海賊王の片腕だ。

 

そして、約50年後、窮地に立たされたルフィ達を救う大恩人の一人でもある。

 

一度色々話してみたいじゃないか!!

 

というわけで会話を繰り広げてみたが(泣)

 

ちなみに、約50年後というのは色々計算して導きだした原作開始前までの時間である。

 

…というか、50年後って地味に長んじゃないかな。うまく生きられてもオジイチャンじゃないか。

 

〜予想〜

 

「俺はルフィ!!海賊王になる男だ!!」

 

「ほうか〜、そらがんばらないといかんのう。飴ちゃん食べるかい?」

 

〜〜

 

こんな会話が繰り広げられるのだろうか。もちろん俺がお爺ちゃん状態でリアルタイムでルフィを見ていた自分としては少し残念でもある。

絶対ボケてるんだろう…いやだな…。

 

 

「おうおう、成程な!!つまり海軍の船をぶっとばしゃいいんだな?」

 

「うん、まあそういうことだ」

 

大雑把だなロジャー

 

 

「で、お前は誰なんだ?」

 

 

今その話をするのか!?…そういえば、そんな会話もしてたね。

 

 

「俺はグンジョー。剣を手に適当に海をさすらっているただの一般人だ。」

 

「「一般人は嬉しそうに人を斬らねえ(ない)」」

 

「ハモられた!?」

 

 

まさか、船長副船長のダブルツッコミされるとは思わなんだ!!

 

 

「というか、お前起きてたのか!?」

 

「いや、戦闘は意識がハッキリすんだよ。というか、お前剣の腕スゲーな!!どうだ、一度戦ってみないか?」

 

「…いや、今は海軍と戦うことを考えようよ。」

 

「そうだな。いつまでも酔ってんじゃないぞロジャー。」

 

 

ポンポンとロジャーの肩を叩くレイリー。

 

でも、俺は知ってる。

 

戦ってみないか?って言った瞬間の俺を見るこの人の目は猛禽類(殺る気)の目でした。まるで、手合わせしたくてウズウズしてるみたいな。

 

…何それコワイ。

 

すると、上空から怒り顔のオジサンがフワフワと降りてきた。

 

言わずもがな、金獅子のシキである。

 

 

「ロジャー!!」

 

「テメエ、シキ!!いつ俺に面を見せていいといった!?」

 

「一々オメエに許可をとる必要はねえ!!」

 

 

ポカポカと殴り合いを始めるいい大人2人。

 

 

 

「…こいつらはいつもこうなのか?」

 

「基本的にそうだな。」

 

 

…本当にこの男は海賊王になれるのだろか?

 

 

「海軍の船が見えたぞーーーー!!!」

 

戦闘前のピリピリした雰囲気にミスマッチな子供の喧嘩にさすがに俺も何とも言えん感じになっていた俺たちの前に見張りをしていた海賊がやってきた。

 

 

「沖合に海軍の船が現れた!!数はおそらく10隻!!レイリーが言った通りだ!!」

 

「そうか、やはりな。かき集めてもそれぐらいだろうな。よし、総員戦闘準備!!」

 

「ちょっと待て、総大将は俺だぞ!!」

 

 

レイリーが指揮するが、そこに喧嘩をしていたはずのシキが横やりをいれてくる。

 

いや、そこまで張り合わなくても。

 

そこに白ひげがあるいてきた。

 

エモノの薙刀もキチンと手入れがされ、いつでも使えるようにしてある。

 

 

「グンジョー。おそらく、敵は強い。今まで戦ってきた海軍の比じゃないほどにな。気い引き締めていこうぜ。」

 

「ああ、そうだな。」

 

 

俺は酒が飲めればいいけどな、グララララ!!とか笑っている白ひげだが、薙刀を構え気合は十分だ。

 

その姿を見て俺は改めて虎丸に目を移す。

 

手入れは万全だ。抜かりはない!!

 

 

「さて、じゃ行きますか。」

 

 

レイリーの合図の元、3つの海賊団が一斉に立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

その日の朝は霧が立ち込め、視界は良好とは言えなかった。

 

しかし、それを無視して彼らは対峙し、そして睨みあう。

 

 

一方の海軍   軍艦 10隻

 

対して海賊連合 海賊船 3隻

 

 

 

片方は敵をせん滅するために

 

 

 

片方はこの場から生き残るために。

 

 

 

海賊側に圧倒的に不利なこの戦いは後の群雄割拠の時代まで伝わること、

 

そして海軍本部から海軍の艦隊が出航したことは

 

今この場にいる誰もが知らなかった。

 



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開戦

「海賊を滅ぼせ!!」

 

「世界のクズどもめ!!この世から消し去ってやる!!」

 

「我ら海軍に栄光を!!」

 

 

かなり距離が離れているはずなのだが、この位置からでもどなり声が聞こえる。

 

人体って不思議。

 

 

「…好き勝手言ってるなぁ。」

 

「しょうがねえだろ。曲がりなりにも“正義”を司る集団だからな。」

 

 

ちなみに、俺たち即席海賊同盟は海軍の艦隊と対峙している。

 

隣には金獅子海賊団とロジャー海賊団の船が並んでいる。おおう、何と荘厳な光景。

 

金獅子海賊団の船は船首がライオンになっている。映画版で見た船のミニチュア版みたいだな。ゴツゴツした岩じゃなくてちゃんとした木だけど。

 

ロジャー海賊団の船は普通のガレオン船。何というか普通だな。オーロジャクソン号が見たかった、とは言わないでおこう。

 

さて、問題は・・・と、目の前の船団を見る。

 

今まで戦ってきたのは、見回り中に襲ってきたと思われる海軍船一隻。

 

もちろん、俺たちの敵ではない。速攻でご退場いただいた。

 

でも、今回は少し状況が違う。

 

敵は海軍の艦隊10隻。

 

もちろん、これほど相手にするのは初めてだ。

 

しかも、未確認情報だが、今回は今までの雑魚とは違う“実力者”がいるという話だ。

 

これまで大尉まで戦った事はあるけど、あの船には明らかにそれよりも上位の兵士がいるのだ。

 

いや、負ける気はないけどさ。

 

「“辻斬り”とエドワードの旦那。」

 

「何?どうかした?」

 

今話しかけてきたのは、そのロジャー海賊団からレンタルした人員の1人、オニキス君。

 

ちなみに、何故かりてきたかというと、レイリーの策で俺たちが海軍船で大暴れすることになった際、うちらはいいけど、誰がお前らの海賊船まもんの?というレイリーの意見にロジャーが「じゃあ持ってけ!!」とかしてくださいました。別にいいのに。当人たちは真っ青になっていたけどよかったんだろうか…。

 

てか、スパロー辻斬り言うなし。斬るぞ。

 

「何故か殺気を感じるのだが…。まあいいか。ところであんたらはどう攻める気なんだ?」

 

「どうって何が?」

 

「レイリーさんはああ言ってたが…。船長格だけで海軍の船に乗り込んで全て潰すなんてできるわけないだろう。あんたらなりに策があるんだろ。一応俺たちは味方なんだ。それぐらい教えてくれたっていいだろ?」

 

「いや、なにいってんの?俺達いつもその方法で勝ってきたんだけど。」

 

「え」

 

「エドワードが津波で船ごと沈めるか、俺が斬撃ぶっ放して船ごと斬るか、2人で乗り込んで全員倒すか、だよな。」

 

「え」

 

「というか、普通海賊ってそうするもんでしょ?俺は海賊じゃないけど。」

 

「」

 

 

何で絶望的な顔してんの?この世界の海賊ならそんなことサクッとやっちまうもんでしょうが。

 

 

「グンジョーとエドワードの旦那!!」

 

「「何だ?」」

 

「自分、強くなるっす!!」

 

オニキス君はいい笑顔で定位置に戻って行った。

 

後になって知ったのだが、この時の俺はだいぶ海賊の常識を逸脱した考えを持っていたのだった。

 

と、今の俺が知る由もない事実に首をかしげていると、伝令役の海賊が走ってきた。

 

 

「レイリー副船長から報告です!!全海賊は海軍との戦闘に備えろ!!」

 

「分かった。」

 

 

その報告を聞いた白ひげは船を操作しているロジャー海賊団の面々に指示を出した。

 

 

「戦闘準備!!手すきの奴は船を守る用意をし、帆を進めろ!!」

 

「…!!おう!!」

 

 

一瞬、命令すんな!!的な雰囲気を出したが、即座に指示に従うロジャー海賊団の皆さん。いやはや、すっごく優秀だね。

 

さて、俺も命令してみよう。

 

初命令だったり。ドキドキ。

 

 

「全速前進!!海軍艦隊の目の前に陣取れ!!」

 

 

決まった!!俺カッコイイ!!

 

しかし、何故かロジャー海賊団の皆さんの動きがピタリと止まる。

 

「?どうした?」

 

「あんた馬鹿かーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」×14

 

総ツッコミ!?

 

「つくづく変な奴だと思っていたがこれ程とは!!」

 

「俺に任せろ!!全力でこの人の思考を人並みに戻してやる!!」

 

「いや!!こいつは“辻斬り”だ!!俺達まで巻き添えにするつもりなんだ!!」

 

「なに!?そんなことになったらロジャーさんとレイリーさんが黙ってないぞ!!」

 

え?なに?何で俺怒られてんの?

 

とりあえず彼らの話をまとめると、海軍の集中砲火を浴びるそんな作戦できるわけないだろう。俺たちゃいつでも死ぬ覚悟はできてるけど、そんな犬死だけはしたくないんだ。それなのになに考えてんだオマエ。バカー、タコー、アホー、ヒトデナシー、ヒトデヤロー。以上。

 

「上等だ。ならば、俺を倒してから先に行け!!」

 

さっきも言ったがこの時の俺はだいぶ海賊の常識を逸脱した(以下略でも、こうしていてもなにもはじまらないしね〜。殴って無理やりやらせるけども

 

 

「グンジョーの旦那。これでいいですかい?」

 

「グンジョーやっておいたぞ」

 

「おう、エドワードとオニキス君お疲れー」

 

 

もう目の前まできちゃってるしね。

 

 

「!!」×14

 

「よし、ほんじゃ逝ってみよー。」

 

「人殺しーーー!!!」×14

 

 

うるせえ、黙ってふんどししめなおせ。

 

しかし、しつこいようだが、この時の俺は(以下略

 

「全くお前は面白い事を考えるな」

 

「何が?」

 

「普通こんな馬鹿げた作戦しねえぞ?それにに乗った俺が言うのも何だがな。ま、一番槍ってのもわるかねえ。」

 

 

 

 

こちらに向かってくる2隻の軍艦をニヤリと笑って見つめながら白ひげは言い放った。

 

その手には薙刀が握られ、もう片方の手には振動エネルギーを溜めていた。

 

さてと、では俺も行きますか。

 

 

「「開戦だ」」

 

 

 

 

 

「バピエル中将!!海賊船が前進してきます!!」

 

 

この膠着状態を崩したのは海賊側からだった。

 

他の船よりも小さい海賊船がゆっくりと近づいてくる。

 

私はそれを確認しながらほくそ笑んだ。

 

馬鹿め!!自分からやられにくるとは!!

 

私が指示を出す前に2隻の軍艦がすでに撃破に向かっていた。優秀な部下たちだ。

 

しかし、歯ごたえがなかったな。悪党ならもっと抵抗してから散ってくれるのが一番よいのだが。

 

この作戦は私の存在感と共に、“能力”を上に見せ付けるチャンスでもあるのだからな。

 

 

「しばらく船内にいる。一段落したら報告せよ。」

 

「はい。」

 

 

そう言った後私は船内に戻った。

 

私がいなくてもクインテッドが何とかするはず。

 

私はあいつらが全滅するまで待っていよう。船長格はこの手で打ち取るがな!!

 

背もたれに身体を預け、手に持ったコーヒーを飲もうとした時だった。

 

 

「ちゅ、中将!!」

 

「何だ」

 

 

海兵の1人が私にあてがわれた部屋に飛び込んできた。

 

 

「そ、それが・・・。」

 

「一体どうしたというんだね?」

 

 

どうせたいした報告ではない、と思っていた私は次に聞いた彼の言葉を理解できなかった。

 

 

 

 

「軍艦2隻が・・・たった2人に破壊されました。」

 



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ホラーはすでに遅い

「・・・・」

 

 

俺は思わず目の前の光景に言葉を失っていた。

 

 

 

 

これは何だ?

 

 

目の前には津波に飲み込まれて今まさに海底に沈んでいく船。

 

一刀両断されてすでに航海できる状態ではない船。

 

何より信じられないのは

 

 

「早くも八対三になったねー。」

 

「今の船には強い奴ぁいなかったのか?ったく、つまんねえな。」

 

 

これをやったのは、たった2人の男たちということだ。

 

こんなことを一瞬でできてしまう目の前の男たちは人間なのか?

 

元々、レイリーさんから、エドワード・ニューゲートと“辻斬り”の話を聞いたことはあった。

 

“嵐”と“地震”が激突した、とか何とか訳が分からない話だったから適当に聞き流してたのだが・・・。

 

うちの船長と副船長も化け物じみた強さだし、何度かやりあった金獅子も同じくらい強い。

 

だが、俺はそんな猛者がこの海にゴロゴロいるわけがない、そう思っていた。

 

そうだとすると、こいつらは何なんだ?

 

1人は悪魔の実の能力者で間違いないだろう。

 

だがもう1人は何なんだ?

 

ただ空を斬っただけで、直線状にあった船をブッタ斬っちまった。

 

 

「スパロー君。」

 

「!?ハ、ハイ!!」

 

 

唐突に呼ばれた俺は飛んでいた意識を戻し、自分を呼んだ男を見る。

 

自分と同じ普通の人間のはずなのに、その実力は天と地ほどもある。

 

 

「全速前進する。他の呆けてる皆さんを覚醒させて。あと、大砲が来ようが何が起ころうがたたっ斬るから心配すんなって言っといて。」

 

 

「ハイ!!」

 

 

俺も鍛えればこの男のように強くなれるのだろうか。

 

 

「シキの親分!!」

 

「ああ、わかっとる。」

 

 

手下たちは目の前の光景に息をのんで操作を忘れている。

 

一番槍をとられたのは気に食わねえが、一度あいつらの実力を見たかったから丁度良かったのかもな。

 

しかし、海軍将校が乗船していなかったとはいえ、あいつらたった一回の攻撃で海に沈め、一刀両断するとは。

 

一応あいつらの実力は予想していたつもりだが、それを良い意味で裏切ってくれるとは・・・。

 

 

「中々おもしれえじゃねえか。」

 

 

あいつらに目をつけたのはどうやら間違いじゃなさそうだな。

 

是が非でも傘下に収めたいところだ。

 

 

「親分」

 

「おう。」

 

指示を出し船を前に進める。

 

とりあえず今は協定通り、目の前の敵を倒すことにするか。

 

 

 

「ほぅ…」

 

「ガッハッハ!!あいつらやるじゃねえか!!」

 

 

レイリーは何故か黙っているが、俺はおもしろくって仕方がねえ!!

 

初めて会った時はよく分からない奴だと思っていたが、あいつら結構強えじゃねえか!!

 

シキの奴はムカツクからブッ倒したくなるが、あいつは純粋に1対1で戦ってみてえな。

 

それに、あいつはまだまだ強くなる!!

 

俺のカンは当たるんだ!!

 

というか、何で斬撃があんなに威力が出るんだ!?後で聞いてみっか!!

 

「ロジャー。ご機嫌なところすまないんだが、そろそろ俺たちも戦闘に参加しないか?」

 

「おお、そうだな!!全速前進!!海軍をつぶすぞ!!」

 

あいつとは良い仲になれそうだ!!

 

 

 

 

 

「さてと。」

 

とりあえず、相手の頭数は減らしたから後は順次潰していくだけだろう。

 

他の海賊団はそれぞれ別の船に衝突し、それぞれ戦闘がはじまっている。

 

いきなり、大規模破壊技使っちゃった俺としては少し後悔している。

 

いや、いきなり全滅じゃつまんないじゃん。

 

手ごたえのない相手と戦って勝つのも一方的なので少し相手を選びたいと思います。

 

 

「というわけでエドワード、どこかに強そうな奴はいない?」

 

「そうだな。」

 

 

白ひげの鋭い視線が鋭くなり、それが艦隊の一番奥のほうに鎮座する2隻の軍艦に向く。

 

 

「あの2隻の軍艦・・・、あそこに強え奴がいる、ような気がするな。」

 

「なるほどね。」

 

 

確かに、その軍艦を囲むように他の軍艦が守っているように見える。なるほどあそこに、ボスがいるって考えていいわけね。

 

 

「お二方!?敵艦が接近してきてるんですけどー!?ついでに大砲つきー!!」

 

 

気づいた時には他の軍艦がこちらに接近してバカスカ大砲をうってきているところだった。

 

 

「あー、とりあえず斬るか。みんな大砲の弾はまかせた。」

 

 

本当はすぐにでもボスクラスと戦いたかったが、贅沢は言ってられん。

 

甲板で軽く助走をつけると、思い切ってジャンプ。

 

「さあて、誰がいるかなー?」

 

いきなり飛び移ってきた俺に一瞬驚いた海兵の皆さんだったが、俺を取り囲んで一斉に銃を構えてくる。

 

「貴様“辻斬り”だな!?」

 

「いかにもたこにも。」

 

「問答無用だ、うて!!」

 

 

掛け声とともに弾丸が大量に発射される。

 

ま、俺には意味ないんだけどね。

 

 

「ホイッ!!」

 

 

ヒュッ

 

虎丸を一振りして、自分に向かってくる弾丸をすべて斬り伏せる。

 

 

「球をすべて斬っちまった!?」

 

「構わない打ち続けろ!!」

 

「させると思う?」

 

 

海兵たちに高速で接近した俺は一撃で全員を沈黙させた。対して俺はあまり疲れていない。だって、傷一つないんだもん。

 

 

「ふう、案外弱かったな。」

 

「おりゃああああああ!!」

 

「うおおおおお!?」

 

 

つい今まで俺がボーッとしていた場所に、金棒が撃ち込まれた。

 

 

「あぶね!!何すんだお前!!」

 

「それはこちらのセリフだ!!よくも部下達をぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

そいつは、俺に斬られて気を失っている海兵を見て号泣している。

 

何なのコイツ?

 

 

「う〜ん、何かモブキャラっぽいけど、どうでもいいや。あんた強そうだし付き合ってやるよ。」

 

「調子に乗るな!!この海軍准将ワッペン!!海賊などに負けはしない!!」

 

 

あらま、今のガープとゼンゴクと同じ地位の人か。じゃあ、少し本気を出していいよね?

 

 

「覚悟!!」

 

「“旋風スクランブル”!!」

 

「!?おぼぼぼぼぼぼぼぼb」

 

 

“旋風スクランブル”に巻き込まれたワッペンとやらはそのまま船のヘリに激突し、そのまま海に落ちて行った。どうやら、同じ准将といっても、その強さはピンキリらしい。

 

「まあ、別の強いやつを探すか。」

 

早くも蹴りがついてしまった自分の戦場をさっさと去ろうとしたその時、

 

 

「待て」

 

 

後ろから声が掛けられた。

 

振り返ると、そこには、髪を全体的に伸ばした貞○みたいなやつがいた。いや、貞子はゴーグルはつけないか。というか、身体が常にフラフラと動いていて、なんかイラッとくる。

 

しかし、よく見ると、腰にそりが激しい日本刀をつけている。こいつ剣士か。

 

 

「へえ、いつからそこにいたんだ?ぜ~んぜんわからなかったぜ」

 

「…私はずっとここにいた。“辻斬り”グンジョーと見た。」

 

「そういうお前は?」

 

「私は“柳木”のマツ。海軍本部少将だ。」

 

「…いいねえ。」

 

 

少将クラスか。初めて少将とは戦うな。しかし、中々おもしろそうじゃないの。

 

 

「・・・いざ、勝負だ。」

 

「望むところ!!」

 

 

お互い剣を構え一気に走りだした!!

 

 



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柳木のマツ

 

ギィン!!

 

甲高い音を立ててマツと俺の剣が衝突した。

 

「…!!」

 

「どうしたどうしたそんなんじゃエースは狙えねえぞ!!」

 

確かにマツは強いと思う。

 

構え方といい、その所作と言い、武人としての強さが伝わってくる。

 

だが、力比べならば負ける気がしない。

 

そもそも、マツは明らかに細腕なので力なんぞ出るはずがない。

 

故につばせり合いならこちらは負ける気がしない!!

 

「そうらよ!!」

 

「…クッ」

 

力で押し切った後、マツに高速で接近!!

 

ヒュロリ

 

「!?」

 

俺の刀はマツを斬る、というあと一歩のところで空を斬ってしまった。

 

…今のは何だったんだ?

 

まるで、斬られるのが分かっていたかのような動きだった・・・。

 

「…もう終わりか?それではエースは狙えんぞ。」

 

(カチン)

 

意趣返しってわけですか?

 

上等ですなぁ!?

 

「テメエヌッ殺すぞゴラア!!“旋風スクランブル”!!」

 

さっきの准将を一撃で倒した“旋風スクランブル”を放つ。例え、少し身のこなしがよかろうと、この距離なら反応できまい!!

 

ヌルリ

 

しかし、それもかわされてしまう。

 

「チクショー!!何だテメエ、さっきからヌルヌル動きやがって!!ウナギかお前は!?俺の相手がそんなに避けるのが上手いわけねえだろゴラア!?」

 

「…先程から何を言ってるかは分からないが、お望み通りずっと避け続けてやろうか?ウナギのように。」

 

(カチン)

 

「テメエ絶対に斬る!!」

 

「…できるものならな。」

 

接近して斬りかかるが、それもかわされてしまう。

 

「…弱い。非常に弱い。噂の“辻斬り”も所詮この程度か?」

 

「ふざけんな!!ヌルヌルしてないでかかってこいオラ!!」

 

「…フム、ならばいかせてもらう。“柳下”」

 

「あ?」

 

すると、マツの身体がぼやけ、最終的には俺の視界から忽然と消えた。

 

(!?)

 

慌ててあたりを見回すが、マツの姿はない。心なしか生ぬる〜い風が吹いているような気がする。

 

「何だってんだ?」

 

「…“御岩”」

 

「え!?」

 

いつのまにか、マツは俺の後ろに立っていて、すでに大きく刀をふりかぶっていた。

 

「…フン!!」

 

「やべ!!」

 

ガン!!

 

刀と刀がぶつかり合う。

 

しかし驚くのはまだはやかった。

 

(押されている!?)

 

その一撃は、先程のマツの一撃はとは比べ物にならないほど重い一撃だった。

 

というか、このままだと押し負ける!?

 

(一体コイツのどこにこんな力があるってんだ!?)

 

「…不思議でたまらないようだな。おそらく、一体コイツのどこにこんな力があるってんだ。とか、考えているのであろうな。」

 

「テメエ!!」

 

そっくりそのまま心の中よみやがってこのサイコメトラーが!!

 

「…そっくりそのまま心の中よみやがってこのサイコメトラーが。フム、なるほどな。確かに、この力は読心術と言えばそうだな。」

 

「な!?」

 

こいつマジで心の中を読んでやがるのか!?

 

「…こいつマジで心の中を読んでやがるのか。まあ、半分正解半分不正解と言ったところか。この力はそんなものじゃない。」

 

「クッ!!オラア!!」

 

必死にその一撃を押し返し、刀を使って体勢を立て直す。

 

「…よく耐えきったな。普通の海賊ならば、私の細腕をなめてかかり、ここで斬り殺されるのだが、立て直すあたり、さすがは噂の海賊の1人と言ったところか。」

 

「それはどうも」

 

ふう、クールに、クールになるんだ。

 

何も考えずにに斬りかかったらおそらく俺は殺される。何か策を練らなければ!!しかし、今の一連の流れどこかで見たことがある気がするんだよな。

 

「…気を抜くと殺すぞ?」

 

「おわ!?」

 

いつのまにか接近していたマツにあやうく斬られかける!!というか、髪ちょっと斬れた!!

 

「テメエ、容赦ないな!?」

 

「…これでも、殺す気でかかっているのでね。もう少し警戒を出してもらえないかな?」

 

「ウ○トラマンと仮○ライダーの敵だってもう少しは待つ余裕あるよ!?」

 

「…やはり何を言っているのか分からないのだが」

 

「そうは言って、っと!?オッ、アブね!?」

 

情け容赦なくマツの斬撃が続く。そして、その一撃一撃はとてつもなく重い。

 

てか、ちょ、ちょっとたんま!!

 

「…させると思うか?」

 

「すいません、俺が言えなかったっす!!」

 

「…しかし、力を使えないお前がまさかここまで逃げるとはな。もしかしてすでに目覚めているのか?」

 

「一体何の話ですか!?」

 

くそう、相手の手が読めねえ!!よし、ここは一か八か!!

 

「もう一度!!“旋風スクランブル”!!」

 

不安定な態勢の中、どうにか“旋風スクランブル”を放つ。しかし、その一撃も簡単にヌラリとかわされてしまう。

 

まるで、本当に俺の手の内が分かっているみたいに。

 

攻撃の来る場所が最初から分かっているみたいに。

 

(…)

 

もし、

 

細腕から考えられないほどの力と、俺の攻撃をよけきる力が、同じものだとしたら。

 

1つだけ。

 

1つだけこんなことをできる力を俺は知っている。

 

「…ああ、それで正解だ。」

 

「え!?」

 

まさか、本当に!?

 

少将でも“アレ”使うことができるのか!?

 

「…改めて名乗らせていただこう。」

 

俺から少し距離をとり、マツは自分という存在を改めて名乗り出した。

 

「私はあらゆる攻撃を柳の如く受け流し、一方私が振るう剣撃は一瞬であらゆるものを一刀両断する!!この力は悪魔の実にあらず!!これは“覇気”!!私は“覇気使い”海軍少将“柳木”のマツだ!!」

 

さて、とマツがもう一度刀を構えなおす。

 

「これは、私が認めた相手しか名乗らない名乗り方だ。お前は私が名乗るにふさわしい相手だとみなした。ありがたく思え。しかし、それでも運命は変わらない。では、海賊。その運命にあらがってみせよ!!」

 

言葉をはくやいなや、今度はマツが突進してくる!!

 

「そうか」

 

未だ自分が未到達での領域“覇気”

 

そして、敵はそれを使う“覇気使い”

 

おそらくは勝てないかもしれない相手

 

だがそれがいい!!

 

強くなるために、少しは格上の相手とも戦わないとなぁ!!

 

「こい!!“柳木”のマツ!!」

 

俺はマツを再度迎え撃った。

 

 



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少将を少々と十回繰り返してみな!!

 

ある大型軍艦の甲板で2つの影が激突した。

 

しかし、ぶつかった瞬間に1つの影は遠くまで吹き飛び、一方のは細い影は平然としている。

 

前者はグンジョー、後者はマツ。

 

体格だけで見るのならば明らかにグンジョーの方が有利だろうが、能力的な面でみるならばマツの勝利だ。

 

それは“覇気”の力の恩恵と言える。

 

この状況では覇気の使えないグンジョーはそのありままる体力を使ってマツに食らいつくしなかった。

 

------------------------------------------------------------------------------

 

side グンジョー

 

 

「グアッ!!」

 

 

今度はよけられるどころか、そのまま吹き飛ばされた。

 

 

「・・・呆れた体力だな。」

 

「どういたしまして!!“旋風スクランブル!!”」

 

 

虎丸から“旋風スクランブル”を放つが、それも見事にヌラリとかわされる。

 

 

「・・・さっきも言ったが、私はお前の行動が読める。故に、その程度の技では私に一撃もあてることはできない。」

 

「うっせ!!」

 

 

“旋風スクランブル”を交わしたばかりのマツに斬りかかる。

 

 

ガキイ!!

 

「…ヌン!!」

 

「うおっ!!」

 

一時的に刀は衝突するが、それも覇気ではじかれる。

 

「・・・また早くなったな。」

 

「おほめ頂き光栄でごぜえます!!」

 

高速で動き、マツに接近する。

 

「…“柳下”」

 

「うわ!?」

 

激突する瞬間にまたしても霞のように消えてしまう。

 

「“御岩”」

 

「なっ!?」

 

いつのまにか死角に現れたマツが刀をふり下ろす。

 

「グガッ!!」

 

何とか反応して斬撃を受け止ようとするが、受け切れず、斬撃をくらってしまう。

 

ビシャ!!

 

斬られた箇所から血が吹き出る!?

 

「…!?」

 

しかし、吹き出た血がマツに当たり、一瞬動揺したように見えた。あれ、チャンスじゃね!?

 

「そいや!!」

 

「!?」

 

マツが慌てて身を引くが、すでに斬撃はマツに届いていた。

 

「どうだ会心の一撃ぃ!?」

 

「…油断したな。」

 

「そうだな、油断ついでに俺お前の倒し方分かっちゃったもんね!!」

 

「!?」

 

「さてと、おそらくお前はは覇気は使えるものの、それをまだ制御しきってないんだろ?何故ならさっきから読めるはずの俺の斬撃を見切らずに受け止めたり、今みたいに避けきれていないからだ。」

 

「…」

 

「どうやら図星みたいだな。それに、無意識のうちにはなった攻撃にも反応できないんだろ?さしずめ、まだ覇気を知ったばかりのヒヨっ子ってところか。」

 

「…知った口をきくな。私はこれでも、一年近く覇気を学んでいる。この力で数多の海賊を斬ってきた。故に、覇気を使えぬお前に私が負けるはずがない!!」

 

マツが初めて口調を荒げた。おそらく、こいつは自分の努力を馬鹿にされるのが嫌いらしい。

 

「アホか。そこら辺の職人だって自分の技術を磨きあげるのに何十年もかかってんだ。そこらへんの一般人がちょっとやそっとでできたら、この世界天才だらけだろ。ヒヨっ子がいきがんな。」

 

虎丸を構えなおし、マツを睨みつける。

 

「確かにお前は強いよ。でも、俺は強い、という考えと、だから絶対に負けない、というのは別の話だ。テメエがそう思い続ける限り、お前はその程度だってことだ」

 

しばらく間を開けた後、マツが話しだした。

 

「…貴様の言いたいことは分かった。確かにその通りだな。貴様に言われたとおり、私はこれからもおごらず、自分の力を研磨していくことにしよう。」

 

「あそ。俺には関係ないけど。」

 

「…改めて貴様に敬意を表し、私も本気を出す」

 

チン!チン!

 

腰のあたりにくくりつけていた何かを下に落とした。

 

「…これは(ダイヤル)。実際に存在するのかどうかは知らないが、空島という空に浮かぶ島で使われている道具らしい。旅の商人から買ったものだ。炎貝(フレイムダイヤル)と呼ばれるものを使った」

 

「それで蜃気楼を起こしていたんだろ?」

 

「…そうだな。ちなみにこれを使ったのは初めての経験だ。中々有効だったが、やはり私には合わない戦法だったようだ。」

 

「嘘つけ」

 

ノリノリで使っていたじゃないか!!

 

裁判長!!この人です!!

 

「…私の持つ全力の覇気をもって貴様をつぶす。」

 

「ほう」

 

どうやら決着は近いみたいだな。

 

と、ゴウッ!!という音がしてマツの振りあげた刀に何かの力が溜まっていくのが分かる。

 

「…ではいくぞ。“柳下四ツ谷斬り”!!」

 

刀は1つのはずだが、それが覇気の力により4つの刃が迫ってくる。

 

しかも、今までと比べ物にならない速さでマツが突っ込んでくる!!

 

・・・あー、あれくらったら終わりだな。

 

こんな状況なのに俺は落ち着いていた。

 

 

「ふう」

 

 

目を閉じて、軽く息をつく。

 

圧倒的な力“覇気”

 

自分にはそれが使えない。

 

しかし敵は覇気を纏い自らを斬り伏せんと突っ込んでくる。

 

 

「どうした!?あきらめたのか!?」

 

間合い、

 

 

「抵抗せずとも斬る!!」

 

 

雰囲気、

 

 

「ハアアアアアアアアア!!」

 

そして風!!相手のすべてを読み、そして斬る!!

 

「“辻斬り風ステルス”!!」

 

「!?」

 

マツは何が起きたのか分からないようようだった。

 

ザシュッ!!

 

しかし、次の瞬間には俺が斬った箇所から血が噴き出す。傷は浅い。そうするように調整したからだ。

 

「…なるほどな」

 

「何が?」

 

「…覇気でも反応できないほどの速度で移動したのか。いや、私はまだまだ未熟だった、という事だな…。お前能力者だったのか?」

 

「いや、俺はうまれてこのかた非能力者だよ。」

 

「…そうか、人間はやはり限界というものはないのだな。」

 

「それは否定しないけど、お前もお前だと思うぞ」

 

「…そうか」

 

マツはヨロヨロと振り返った。

 

 

「…実に有意義だった。海賊風情にしてはよい志と曲がらぬ意志、そして力と高潔な精神をを持っているのだな」

 

「ハッ、それはお前もだろう。あの騒ぐだけの上官と違って、お前は比較的まともに見えるが?」

 

「…私は、上官の命令に従っただけだ。だが、次お前に会いまみえるときは、自分の意志で戦わせてもらおう。次こそ、その首貰い受ける」

 

「ハッ、オメーみたいな陰気な奴にはできれば今後二度と会いたくねえよ。」

 

ハア、と思わずため息はこぼれる。

 

「良い勝負だった。ありがとう」

 

俺が歩き出すと同時に、マツもバタリと倒れる。こうして強者との戦いは終わった。

 

 

 

「ッ。」

 

 

思わず持っていた双眼鏡を握りつぶす。

 

「ちゅ、中将!!」

 

焦った声を上げる部下の声も耳に入らない。

 

「これは…これはァ、一体どういうことなのだぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁ!?」

 

目の前の戦場は明らかに海軍が劣勢だった。

 

最初は10対3で限りなく有利だったはずの海軍。

 

しかし、最初に出撃した中型の船は一瞬で切り裂かれてまたは津波によって沈没し、今もまた3隻の大型軍艦が海賊の手によって沈黙した。

数は確かに海軍が多かったが、いかんせん相手が悪すぎた。海賊側にはたった一人で軍艦を相手にできる人間が5人以上いたのだ。

 

「許さん、許さん、許さん、許さん、許さんぞぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」

 

電伝虫を乱暴に引っ張り出し、別の艦に乗っているクインテッドに連絡をする。

 

「クインテッド中将!!そろそろ我らも出るぞ!!!」

 

『え?でもそれにはまだ時間が』

 

「そんなものどうでもいい!!あの調子に乗った海賊どもを私の手で捻り潰してやる!!」

 

電話を斬ると船を操作している海兵を怒鳴りつける!!

 

「全速前進だ!!」

 

海兵たちが慌てて動き始める。

 

「海賊ども覚悟しろ…!!」

 

さあ、この私自らが能力を使って戦いを終わらせてやるぞ!!

 

 



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へィろー冥王

『中将!!マツ少将の船が落とされました!!』

 

「何ぃ!?」」

 

 

な、なんということか!!

 

マツは私が納める支部の中でも一番の実力者。

 

このまま順調に育っていけば、将来は中将に・・・と考えていた人材だった。

 

しかし、海賊にやられただと!?

 

ふざけるな!!

 

海賊に負けるような輩を私の部下になどしたくはない!!

 

この戦いが終わったら東海<イーストブルー>あたりにでも左遷してやる!!

 

だが、これだけ戦えば海賊共も疲労しているはず。

 

そして、疲れ切った海賊どもをこの手で始末する。

 

そうすれば、海軍内での私の地位も上がり、遂には大将、いや元帥にも・・・。

 

そのためには、もう少し時間を稼がねば。

 

 

「もう少し、もう少しなんだ。」

 

 

しかし、

 

プルルルルル プルルルルル

 

電伝虫が急になりだした。

 

 

「何なんだこんな時に!!」

 

 

つまらないようだったらただじゃおかんぞ!!

 

そう思って受話器を取った私に届いたのは、この場にいるもう1人の中将の怒声だった。

 

 

『クインテッド中将!!そろそろ我らも出るぞ!!!』

 

 

(!?)

 

パピエル中将!?

 

一体どうなされたのですか!?

 

いつもは冷静なパピエル中将にしては珍しく、その声は怒気に満ち溢れていた。

 

しかし、このままでても確実に海賊どもを倒すことはできない!!

 

そう思った私は焦ってパピエル中将に応答した。

 

 

「え?でもそれにはまだ時間が」

 

「『そんなものどうでもいい!!あの調子に乗った海賊どもを私の手でつぶしてやる!!』」

 

 

ガチャ!!

 

すさまじい音を立てて通人が終わった。

 

駄目だ。あの人完全に血が上っている。

 

こうなった時、あの人は自分の悪魔の実の能力を使って、あらゆるものを破壊してきた。

 

自分もそれに巻き込まれなければいいのだが・・・。

 

こうなっては仕方がない!!

 

 

「お前ら武器を持って戦闘準備!!ついでにあれを用意しておけ!!海賊どもを駆逐するぞ!!」

 

 

 

 

 

「お〜い、待ってくれよ〜。」

 

 

何とかマツを倒した俺は、空を舞いながら自分の海賊船に飛び降りた。

 

ちなみに、今どうやったのかというと、

 

?“旋風スクランブル”の要領で自分の後ろ側に思いっきり斬撃を飛ばす。

 

?反動で俺の身体がロケットのように吹き飛ぶ

 

これだけ。

 

まあ、ジェット噴射みたいなもんですよ。

 

この前できるかなー、と思ってやったら出来ました。

 

さすが、超人世界ONE PIECE。パネエ。

 

 

「おい、今あの人空飛んでこなかったか?」

 

「噂に聞いたCP9の“月歩”って奴かな?」

 

「だとしたら、あの人まんま化け物じゃねえか。人間じゃねえ。」

 

「いや、そんなことは・・・あるかもしれない。」

 

 

向こうでロジャー海賊団の皆さんがヒソヒソいってるけど気にしない。

 

分ってるよ?

 

自分でも、できるかなー?で出来ちゃう自分がちょっとおかしいな〜、とは思ってるよ。

 

けどさ、

 

いざ現実に直面すると落ち込むんだわ、これがー!!

 

 

「何orzしてるんだお前は・・・。ほかの海賊団が頭数減らしてっから今攻め時だぞ。」

 

「うん、分かってる。いつか自分自身についてちゃんと考えなきゃいけないってことはわかってるから。」

 

 

ハア、と白ひげはため息をつくと、目の前に鎮座する4隻の海軍船に睨みをきかせる。

 

 

「聞いた話では、今出てきた2つの海軍船に1人ずつ中将が乗っているらしい。で、お前はどっちを狙うんだ?」

 

「・・・強そうなほう。」

 

 

俺がボソボソ呟いたセリフを聞くと、2隻の船に目を向ける。

 

 

「分からねえが、どっちも強いと思うぞ。」

 

「じゃあ、どっちかいく。」

 

 

ヨロヨロと立ち上がると、一方の軍艦を見てみる。

 

適度な強さ・・・だな、。弱くなければ強くもない感じ。

 

 

「しゃあねえ。じゃあ俺はお前が選ばなかったほうを行ってやる。」

 

「あんがと。じゃあがんばってー。」

 

 

白ひげを乗せた船は俺が選んだのとは違うもう一方の軍艦に向かっていった。

 

ちなみに、俺は例の“風圧ジャンプ(名前はまだないのだ)”でもう一方の軍艦に向かっていった。

 

言ったそばから実践しちゃうなんて。

 

 

「俺ってホントバカ・・・。」

 

 

さて、某薄幸魔法少女のセリフをぼやいているうちに、中将の乗った軍艦に近づいてきた。

 

 

「どうもー、おじゃましま」

 

 

ドガガガガガガガガガガガガガ

 

 

「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」

 

 

機関銃ぶっ放してきやがった!!

 

何とか“烈風エマージェーシー”で全ての弾を防ぎきったが、たまらず海に落ちてしまう。

 

 

「プハ!!やべ!!」

 

 

銃口がこちらに向いていると気づいた瞬間、もう一度海の潜る。

 

その瞬間、今俺のいた場所に銃弾の嵐が撃ち込まれる!!

 

あぶねー!!

 

 

「やったか!?」

 

「ざまーみろ海賊!!あの世で罪を悔いな!!」

 

 

あんにゃろー!!今悪口言った奴、絶対後でボコる!!

 

とりあえず、必死で泳いで近くにあった海賊船のヘリにしがみつく。

 

 

「グンジョー大丈夫か!?」

 

 

声に反応して上を見上げると、レイリーがこちらを見下ろしていた。

 

 

「たーすけてー、怖いオジサン達にタマぶち込まれそうになったよー。」

 

「…その割には元気そうだな。」

 

なんやかんや言って助けてくれるロジャー海賊団の皆さん。

 

ほんとありがたいっす。

 

「あれ?ところで、ロジャーは?」

 

肝心の船長はいなかった。

 

「ああ、あいつは…、あっちのほうがおもしろそうだ!!とかで泳いで向こうの軍艦に行ったよ。」

 

「なるほど合点…」

 

体力バカだコレー!!

 

「で、私たちはこれからあの船を倒しに行くのだが、君も一緒に行くかね?」

 

この発言に一瞬思考が停止した。

 

最初は自分で倒しに行くつもりだったけど、たった今目的が変わりました。

 

冥王シルバース・レイリーの若い時及びロジャー海賊団の戦いを生で見たい人!?

 

ハイハイハイハイハイハイ!!

 

じゃあ、レイリーと一緒にもう一度戦ってみたい人!?

 

ハイハイハイハイハイハイ!!

 

よし、決まりだ!!

 

「いいだろう、その戦い、この“辻斬り”も参加せていただくでおじゃる」

 

出来るだけ緊張を隠さないで行こうとしたのだが、案の定語尾が変になってしまった。てかなんだよ、おじゃるって…。

おじゃ〇丸か!!

 

「分かった。協力感謝する。」

 

レイリーは今銃をぶっ放してきた軍艦に目を向ける。

 

 

「あの軍艦には大砲だけでなく、機関銃が搭載されている。あれで撃たれたらひとたまりもないな。今我々が近づくことができない理由でもあるが・・・。どうしたものか。」

 

「あ〜じゃおれがやろうか?」

 

 

すると、キョトンとした顔でレイリーが俺と目を合わせた。

 

 

「どういうことだ?」

 

「いや、だからさ。俺が撃ってくる弾全部撃ち落とすから、あの船に近付けてくれない?」

 

 

 

「…ええ?」

 

 

 

レイリーが訳が分からないよ、という顔になる。

 

ちなみに、レイリー以外のロジャー海賊団の皆さんは口をアングリと開けたまま身じろぎもしていない。

 

うん、なぜか分からないが、俺の言っていることが理解できないみたいだな。

 

 

「いや、だからさ、そのままの意味だよ。俺が大砲だろうが、機関銃だろうが全部ぶった斬るっていっとるのだよ。」

 

「あんたさっきから何を言ってるんだ!?そんなことできるわけないだろう!!この船の乗組員を皆殺しにするつもりか!?」

 

 

近くにいた船員が口調を荒げて突っかかってきた。

 

 

「大体そんな作戦」

 

「いや、やってみよう。」

 

「!レイリーさん!!」

 

俺の意見に賛同してくれたのはレイリーだった。

 

さっきは分けがわからないよ、という顔をしていたのだが、何故か今は落ち着いた顔をしている。

 

「この男にかけてみよう。どの道、あの弾幕をどうにかしなければ我々に勝機はない。」

 

「しかし!!」

 

「おい、お前。」

 

反論を続ける船員に俺は声をかける。あまりにうるさかったからなんだけどね。とりあえず、黙らせることにしました。

 

 

「お前は俺を誰だと思ってんだ?」

 

「…え?」

 

「俺は“辻斬り”だぜ?」

 

その時俺がしたドヤ顔は後に俺の黒歴史の一つになるのだが、それはまた後の話。

 

しかし、その時はその船員は黙ってしまった。

 

「“辻斬り”。一つ条件がある。いいか?」

 

「何?」

 

黙ってことの成行きを見ていたレイリーは頃合いを見計らって俺に話しかけてきた。

 

「私もその矢面に立つ。」

 

「…」

 

なるほどな、仮にも一海賊団の副船長だ。誰とも知らない男に任せるのは不安なのだろう。

 

「分かった。けど、気をつけろよ。」

 

「ご忠告ありがとう。命は大切にさせてもらうよ。」

 

そういった後、俺たちは船首の方まで歩いて行った。

 

 

・・・・・・・ちなみにその頃・・・・・・・・

 

 

「よっ」

 

「ああ?誰だお前。」

 

後の大海賊、“海賊王”と“白ひげ”の2人が初めて話を交わし、

 

「シキー!!」

 

「待てー!!

 

「ウゼエぞお前ら、だが相手になってやろうジハハハハ!!」

 

シキの海賊船は2隻の軍艦に挟み撃ちにされていましたとさ。

 



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白ひげと海賊王

グンジョーが空を飛んで行ったあと、もう一方の軍艦に向かっていたのだが、いきなり船のヘリから男が出てきやがった。

 

一瞬海兵か?と思ったが、

 

 

「よっ。」

 

 

態度からして、どうも違うようだな。

 

 

「…ああ?誰だお前。」

 

「船長〜!!なんでここにいるんですか!?」

 

 

すると、その男の声に、反応して船を動かしていた船員がワラワラと寄ってきやがった。

 

さっきの話を聞く限り、この男は、こいつらの船長らしい。

 

 

「なるほどな、お前がゴールド・ロジャーか。」

 

 

そういえば、話し合いをしている時、はしゃいでいたやつの中にこいつがいた気がする。

 

いや、それより前に金獅子と喧嘩をしていた気がするが、すっかり忘れていたな・・・。

 

このアホンダラが船長だったのか?

 

 

「しかし、どうして中々強そうじゃねえか。」

 

 

思わず口に出すと、

 

 

「違う!!」

 

 

ロジャーは声を張り上げて否定してきた。

 

何だ謙虚なやつなのか?

 

 

「俺の名はゴール・D・ロジャー!!ゴールド・ロジャーは海軍が勝手につけた名前だ!!間違えんな!!!」

 

 

どうやら、名前の間違いを指摘したかっただけらしい。

 

…何か調子狂うな。

 

「ん?お前エドワード・ニューゲートか?」

 

「ああ、そうだ」

 

ロジャーも俺のことを知ってるらしい。

 

「グラグラ実の能力者…イロモノ揃いの超人系の中じゃ中々強いらしいが…、お前自身は強いんだろうな?」

 

「グラララララ、酔っ払いだけには言われたくねえよアホンダラ。」

 

ゴールド・ロジャー、いやゴール・D・ロジャーか。面白そうなやつだな。

 

「あ、あの〜。」

 

俺達のやり取りをかたずを飲んでみていた船員の1人が話しかけてきた。

 

「船を動かしたいんですけど・・・いいすか?」

 

「おう!お前ら!!行くぞ!!」

 

「「「「「はい船長!!」」」」」

 

ロジャーの雄たけびとともに船員が働き出す。

 

やはり、こいつの命令の方があいつらにとっては動きやすいいのだろう。いつかは俺も。あいつと共に。

 

「おいエドワード!!船が近くなってきたぞ!!」

 

「おう、わかった。!!」

 

 

愛用の武器を手に取り、目の前の軍艦を睨みつける。

 

すると、船員が急に叫んだ。

 

 

「せ、船長!!」

 

「どうした!?」

 

「上を見てください!!」

 

 

ロジャーが上を見上げるのにつられて俺も上を見上げると、赤い点が見えた。

 

いや、あれは紙?

 

赤い紙がフワフワとこちらに舞い落ちてきやがる。

 

それも、一枚じゃねえ。

 

何十枚、いや、何百枚?

 

「何だこりゃァ…」

 

思わず声が出るのも仕方がない。

 

およそ戦場には不似合いな光景だった。

 

フワフワを舞い降りてきた赤い紙。

 

それが船の床に触れると…紙が輝きだし…

 

ドン!!

 

「!!」

 

爆発した。

 

なぜ紙が爆発したのか?

 

それを考える暇もなく、ここにいる全員は瞬時に悟った。

 

“今降ってくる紙はヤベエ”!!

 

「ウェアアアアアアアアアア!!」

 

「おりゃあああああああああ!!」

 

ロジャーが拳を振りぬき、俺は振動を使う。それが上空にある紙に当たると、そこで一気に紙がはじけ飛ぶ。

 

ドンドンドンドンドン!!

 

「うわあ!!」

 

これは誰の悲鳴だったかは分からねぇが、結構な衝撃波が来た。

 

もしあれ全部が、この船に落ちていたら・・・

 

「さすがにやばかったな。」

 

俺は能力者だから泳げねえ。だがらこの船がなくなったら俺はそのまま沈むしかねえ。

 

「ガハハハハハハ!!愉快なやつが敵にいるみてえじゃねえか!!」

 

「船長!!そんな気楽でいいんですか!?」

 

「いいんだ!」

 

一方、ロジャーはなにもなかったみてえに大笑いしてやがる。

 

こいつはおそらく能力者ではないのだろうが・・・余裕過ぎやしねえか?

 

「おそらく…能力者がいるな。爆発する紙なんてきいたことがねえ。」

 

「あ?そうだな、まあどっち道殴るだけだ。」

 

相手の能力もわからずにただ殴るとは・・・。

 

こいつはただ馬鹿なのか?

 

それとも大物なのか?

 

「いやー、今の一撃を交わすとはさすがに驚いた。ほめてつかわすぞ海賊諸君。」

 

「「!?」」

 

急に船のヘリから声が響いた。

 

驚いて声がした方も見ると、1人の男がこちらを見ていた。

 

平均的な体格に海軍の正義のコート。

 

ニコニコと笑っている顔。

 

しかし、醸し出されるオーラは明らかにつええ奴が持つ特有ものだ。

 

とりあえず、俺はこいつを知らねえ。少し話を聞いてみるか。

 

 

「オメエは誰だ?」

 

「海賊程度に名乗る義理はないが、この心優しい私は違う。いいだろう、私はパピエル。海軍の中将だ」

 

中将…、なるほどこいつほどの地位ならばこれぐらいの無茶できんだろうな。それに、いつの間にか軍艦もさっきよりも近くに来てやがる。

 

あの紙野郎に対応していた時に近寄っていたのか?

 

…クソッタレめ。

 

「ほう、オメエが今回の一件の引き金を引いたものか?」

 

「失礼な!私は何もしていません。あなた達がここに来たから私は攻撃した。ただそれだけですよ」

 

「バスターコールとか言ってじゃねえか。住民も皆殺しにするつもりだったのか?」

 

「生意気いってんじゃねえよ海賊風情が!!」

 

パピエルが急に語尾を荒げ、眼を限界まで見開きながらまくしたてる。

 

「そもそもお前らは生きてるだけで社会にとって邪魔なんだよ!!それなのに、それなのに、“正義”たる俺の作戦を邪魔しやがって!!挙句の果てにこっちが下手に出てやれば何をほざいたやがる!!お前らと関わった時点であいつらも同罪なんだよ!!」

 

成程な、笑顔がウソくせえと思ったら本性を隠してやがったか。

自分を保つために、他の人間を平気で排除する。人間のクズめ…

 

「仲間の海兵も結構迷惑な話だと思うが?」

 

「黙れ!!私の前に個人の感情などどうでもいいのだ!!私は!!海軍全体の私の“正義”のために戦っている!!そのためにはある程度の犠牲もやむを得ない!!」

 

こんなやつが海軍の中将とは、堕ちたな海軍!!こいつは、結局自分の都合に振り回しただけじゃねえか!!

 

 

「アホンダラ!!テメエの都合で殺されたりしてたまるかよ!!それに」

 

 

薙刀を構えなおしながら、パピエルとかいう中将を睨みつける。

 

「“正義”ってやつはそいつの心のありようだ。他人から押し付けられるものじゃねえ」

 

「黙れ黙れ黙れ!!“赤紙”!!」

 

パピエルが怒鳴ると、体から紙がペリペリとめくれて出てきた。

 

そしてそれがフワフワと舞いながら俺に接近してくる!!

 

「ヌン!!」

 

ボッ!!

 

薙刀の刃先でそれに触れると、すぐに紙は爆発した。

 

こいつが能力者か!!

 

「私は“ペラペラ”の実を食べた“紙人間”!!私は体から自在に紙を出し、それを使って攻撃することができる!!“赤紙”は爆発する紙だ!!しかし種類はまだまだあるぞ!!」

 

すると、パピエルはまた紙を体から作り出す。

 

「圧倒的な手数にどう抗えるのかな?」

 

作り出した紙を操りながら余裕綽々で近づいてくるパピエル。

 

仕方ねえ。腹くくるしかねえか。

 

薙刀に振動をため始める。間に合うかはギリギリだな・・・。

 

「死ね!!」

 

クソッタレダメか!?

 

さっきの爆発する紙がこちらに接近してくるが

 

「ヌン!!」

 

「グホッ!?」

 

横から飛び出してきたロジャーがパピエルを軍艦にまで吹き飛ばした。

 

主人を失った紙はフラフラと床に落ちる。

 

「…ロジャー」

 

「エドワード。俺は今最高に機嫌が悪いんだ。話しかけんなら気をつけな」

 

当たり前だ。今俺もテメエと同じ気分だからよ。

 

「あいつを潰すぞエドワード」

 

「ああ、任せろロジャー」

 

2人の海賊は軍艦に向けて跳躍した。



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それぞれの沸点

 

「くらえ“赤紙”!!」

 

 

船に飛び乗った瞬間、パピエルの指示のもとさっきの爆発する紙が襲ってくる。

 

何度も同じ手をくらうか!!

 

即座に手に振動を溜め

 

 

「ヌン!!」

 

 

ドン!!

 

振動の波を発生させ、紙を爆発させるか、進路をそらせる。

 

<ドドドドドドドン!!>

 

衝撃波に当たった紙が一斉に爆発し、それによって立ち上った煙が消えると、そこには青筋を立てたパピエルがこちらを睨んできた。

 

 

「エドワード・ニューゲート!!地震人間か、なかなか面倒だな」

 

 

パピエルが手を頭上に上げると、パピエルの周囲を飛び回っていた紙がつられるように頭上に集まってくる。

 

いったい何をするつもりだ!?

 

 

「俺もいることを忘れるな!!」

 

 

ロジャーが攻撃される前にパピエルを殴ろうとするが

 

 

「“黒紙”」

 

「うお!?」

 

 

急にパピエルの体から出てきた黒い紙に体を拘束された。

 

「アホンダラア!!」

 

まだパピエルとの距離は十分に開いているので急いで回収に向かうが

 

「“折神”」

 

その一歩手前でパピエルが動いた。バピエルの身体から剥がれ落ちた紙が、パタパタとひとりでに折られていき…最終的には折り鶴の群れが出来ていた。

 

「“紅鶴”!!」

 

<ドンドンドン!!>

 

轟音を立てて鶴がこちらに突っ込んでくる!!

 

 

「クソッタレめ!!」

 

 

俺は何かあると踏んでいたので、再度手に溜めていた振動を放つ。

 

順調に鶴の数を減らしていくように見えたが、途中で鶴の群れが方向を変え、振動を避けながらこちらに襲い掛かってくる。

 

「グッ!!」

 

何発かモロに爆発が当たってしまった。

 

「オラオラ、まだまだいくぞ!!」

 

容赦なくパピエルが赤い折り鶴を使って攻撃してくる。

 

薙刀をふるい、時には振動を使い大多数の鶴を撃ち落とすが、それでもいくつか撃ちもらし、それが俺の懐に入り、そこで爆発する。

 

「ヌウ…!!」

 

思わず膝をつくと、

「今だ!!こいつらを捕縛しろ!!」

 

 

海兵がやってきた。

 

少しマズイか!!

 

何とか立ち上がろうとしながらそう思っていると、

 

「余計なことしてんじゃねえよ雑魚共がぁ!!」

 

<ドン!!>

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

俺たちを捕縛しようとした海兵が爆発した!!

 

「ちゅ、中将!?」

 

「ふざけるな雑魚共!!元はテメエ等がしっかりと俺の作戦を実行してなければこんなことにはならなかったんだよ!!それをテメエ等…。どこまでも使えないゴミクズが!!何もできないくせに手柄だけ横取りしてんじゃねえぞ!!」

 

「中将!!我々はそんなことは!!」

 

「言い訳は聞きたくねぇ!!何なら今すぐ全員今ブッ殺してやってもいいんだぞ!?どうせ、海賊どものせいにするしな!!テメエ等何か俺にとっちゃいてもいなくてもどうでもいい!!変わりはいくらでもいるんだ!!それがこの俺に口答えすじゃねえ!!」

 

<ブチッ>

 

それが聞こえたのは俺の頭からだったのか、それともロジャーからだったか

 

「ふざけんじゃねえぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

ロジャーが自分の拘束を突き破り、天に向かって吠えた。

 

 

<ゴウッ!!>

 

 

その瞬間ロジャーの体から風が吹いた気がした。

 

「うっ」

 

「あ」

 

周りにいた海兵たちがバタバタと気絶していく。まるで、肉食の動物を目の前にした草食動物、いや蛇ににらまれた還るの究極系、といったところか…

確か今の感覚前にもあった。

 

沸点を超えた頭のどこか冷静な部分でそう考えていた

 

「クッ、何という事だ!!噂に聞きし覇王色の覇気!!」

 

「一応聞いておこう。こいつらは“仲間”じゃねえのか?」

 

「ハア?仲間?そんなわけないだろ!!こいつは俺の正義を実行するための手駒だ!!“仲間”というのは俺と共通の正義を持ってそれを実行せんとする者たちのことだ。こいつらは違う!!」

 

「だが、同僚だろ?」

 

「ふざけるな!!こんな弱くて、海賊にビビッいるようなうやつらが“仲間”なわけあるか!!」

 

「「…」」

 

お前の話はよくわかった。

 

そしておれたちの結論も出た

 

 

「「ぶっ殺す!!」」

 

 

 

 

 

<ドガガガガガガガガガガガ!!>

 

 

「うおおおおおおおおおおお!?」

 

 

俺?

 

絶賛逃亡中だってばよ!!

 

 

「ハハハハ!!海賊め!!お前らはそうやって機関銃から逃げ惑ってるほうがお似合いだ!!」

 

「うるせー!!いつかお前ブッタ斬ってやるから覚えてろ!!」

 

「野蛮な!!だから海賊は嫌いなのだ!!お前ら、打つ量をもっと増やせ!!」

 

「「「ハッ!!」」」

 

「え?ちょっとまってこれ以上はラメェ!!」

 

 

チクショー!!この弾幕じゃ一方からしか防げない“烈風エマージェーシー”でも無理だ!!かといって“暴風ウォークダウン”は隙がでかすぎる!!

 

で、なんでこうもグンジョー君が逃げ回っているのかというとさっきレイリーに

 

 

「お前陽動、俺ら雑魚潰し。」

 

 

と言われからなのである。

 

ちなみに、

 

 

「拒否権は?」

 

「「「「ナシ」」」」

 

 

だそうです。せめて発言する権利は欲しかったよい。じゃあオラちょっくら逝ってくるわー…。

 

「で、こうなっちゃったわけですかー!!イヤー!!」

 

「撃てー!!」

 

 

機関銃の猛攻を“必死に”逃げながらチラリと白ひげとロジャーが向かった船を見る。

 

さっきから大きな爆発音やグラグラの実の振動がこちらにまで響いてきていた。

 

おそらく、あちらもこちらと似たような状況になっているのだろう。

 

 

「少し心配だな…」

 

「隙あり!!」

 

 

一番近くにある銃口がこちらにむく!!

 

 

「死ね“辻斬<ガン>・・ギャア!!」

 

「人にすぐ死ねと言ってはいけないよ、海兵君。」

 

「レイリー遅いわ!!死ね!!」

 

「…“辻斬り”、今の私の話を聞いていたかね?」

 

悲しそうな顔をしたって関係ないね!!

 

「副船長!!掃除終わりました。」

 

「よし、よくやった。後はあそこにいる中将1人だけだ。」

 

いつのまにか機関銃の撃ち手を掃討し終わったのか、船員の皆さんが集まってくる。

 

「な、何?」

 

余裕ぶっこいていたクインテッド中将がさすがに焦った顔になる。

 

プギャーいい気味!!

 

「さてと、どうする?やる?」

 

さんざん囮をやらされたので言外に「オメエやれ」と言っておく。

 

「…」

 

レイリーが冷や汗かいている。

 

「わかった私がやろう」

 

レイリーが剣をスラリと抜いてクインテッドに歩いていく。

 

「近づくな海賊!!」

 

クインテッドも剣を抜くな明らかに逃げ腰である。

 

「ク、クソ!!これもどれもあいつのせいだせっかく少将にしてやったのに!!あのクズのマツめ!!」

 

(・・・あ?)

 

「そうだ!!全てはあいつのせいなのだ!!私が手塩にかけて育ててやったのに全く使えない男だ!!手駒にしては使えると思っていたのだが、期待ハズレもいいところだ!!あいつもわれらの同志にはふさわしくなかったようだ!!」

 

「…おい」

 

「覇気の扱い方も教えてやったのにあの雑魚は海賊なんぞに負けやがって!!馬鹿が!!逆に早く倒されてくれてありがたい程だ!!これで私も別の手駒を育てられる!!」

 

「おい」

 

「そうだ、その前に貴様らを手土産にまずは大将になって」

 

「おい!!」

 

「!?」

 

最近俺の沸点は異様に低いような気がする。

 

でも、あいつと一度戦った者として今の暴言を見逃せるだろうか?俺には無理だ。

 

 

「テメエ今・・・・・」

 

 

最初から、最初から気に食わなかった。

何か気取ってるし、すかしてるし、エラソーだし、ムカツクやつだし…。

 

 

だが

 

 

あいつは、

 

 

「マツはなぁ、強かったよ。もしかしたら俺よりも強かったかもしれない。」

 

 

あいつは強かった

 

確かに“覇気”に頼っているところおあったけど、誰よりも強くなろうとしていた。強くなりたいと願っていた。

 

「だからよォ…」

 

手合わせしてみてわかった。あいつの力は毎日の鍛錬で芽生えた力だ。だからあいつは強かった。

 

「テメエ如きの口だけのやつが馬鹿にすんじゃねえよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ゴウ!!>



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決着

 

「「ウオオオオオオオオオオ!!」」

 

「舐めるな!!“折神 爆手裏剣!!”」

 

 

なんかこっちのほうが強そうだったから来てみたものの・・・

 

会ってみたらメチャクチャムカツク野郎だった。

 

一発ぶんなぐらなきゃ気が済まねえ!!

 

それに、あいつがムカツクのはこいつも同じらしいな!!

 

いい仲になれそうだ!!

 

と、いろいろ考えてたらパピエルが紙を手裏剣にして飛ばしてきやがった!!

 

 

「それはこっちのセリフだアホンダラ!!ウェアアアアアアアア!!」

 

 

<ドン!!>

 

<ドドドドドドン!!>

 

 

震動を使って紙をすべて爆破させる!!

 

ほう!!やはり、震動を使う能力か。

 

最初は衝撃波でも飛ばすだけかと思っていたが、なかなか強そうじゃねえか!!

 

 

「まだだ!!“折紙 黒兜”!!」

 

 

今度は兜か!?

 

 

「ヌン!!」

 

 

<ガキン!!>

 

だが、この程度の装甲じゃ俺にとっては意味がないぜ!?

 

 

「馬鹿な!?」

 

「いや、事実だ。そして・・・」

 

「隙だらけだ、ウェアアアアアアアアアアア!!」

 

<ドン!!>

 

 

「ガッ・・・」

 

 

一瞬唖然としていたパピエルをエドワードが殴り飛ばす!!

 

パピエルはそのまま船の室内まで吹っ飛んで行った。

 

・・・っチ、俺ももう一発殴りなかったな。

 

 

「終わったようだな。」

 

「なんでえ見てるだけか?」

 

「いや、本当は俺も一発入れたかったんだが、今回は譲ってやる。だが、今度お前と戦わせろ!!」

 

「アホンダラが・・・。」

 

「ま、まて!!」

 

 

気づいてはいたが、まだ戦う気があるようだ。パピエルは血だらけになりながらこちらを睨みつけてくる。

 

 

「こ、これで終わったと思ったか?」

 

「お前ボロボロじゃねえか。このまま戦っても面白くねえし、何より俺のプライドが許さねえ。」

 

「・・・“黄紙”」

 

 

黄色の紙が傷口に触れると、たちまち傷が癒えていき、代わりに黄色の紙が破けた。

 

 

「黄紙はあまり使いたくなかったのだがね。数が少ないし何より1日の使用回数が1回のみだ。」

 

 

確かに、外の傷は治ったようだが、口からは未だ血が滴り落ちている。

 

おそらく内部で回復はできないものなのだろう。

 

 

「ここまで追い込んだことはほめてやるが・・・貴様ら、貴様らだけは絶対に許さない!!」

 

 

次の瞬間パピエルの体から先ほどまでとは比べ物にならないほど大量の紙の束が生み出された。

 

ほう、窮鼠猫をかむってところか?

 

 

「アホンダラ、こうなりゃ俺が「待て」…あ?」

 

「俺にやらせてもらおうか。」

 

この俺が直々に本当の強さを教えてやろう。

 

「クククククでは貴様から消し炭にしてやる。」

 

「なあ、お前は仲間はいないと言ったな。」

 

「あ?」

 

「俺の仲間は俺の海賊団全員と、そしてまだ見ぬ俺の船の船員たちだ。」

 

「だからそれがどうした!?」

 

「それがどうした、だぁ?じゃあ教えてやるよ。だから俺はあいつらのためにここで負けるわけにはいかねぇんだよ!!」

 

「!?ならば、お前を殺した後で貴様の仲間とやらをすべて皆殺しにしてくれよう!!」

 

「やってみろ!!できるもんならな!!」

 

今、俺は見えぬ“鎧”を纏う!!

 

「赤紙“大火災”!!」

 

「“覇気”!!」

 

俺の振りぬいた拳と爆発する紙の群れが激突するが、一枚の紙が爆発すると同時にほかの紙も連動して消し飛ぶ!!

 

 

「そんな!!」

 

「よそみしてんじゃねえぞ!!」

 

「!?グガアアアアアアアアアアア!!」

 

 

覇気を纏った拳がパピエルの顔面に突き刺ささる!!

 

 

「オリャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」

 

 

<ドン!!>

 

 

次の瞬間パピエルは島のほうまで吹っ飛んで行った。

 

 

 

「何故だ何故だ何故だ!?」

 

 

高速で接近してクインテッドと戦闘中です。

 

つうか、遊んでます。

 

最初はドヤ顔で「俺の剣を見よ!!」とか言ってたけど、今その顔は焦りしかない。

 

いやだってわかりやすいんだもん。

 

つうか、マツよりも遅いし、何より太刀筋が単純。よけてくださいと言っているようなものだ。

 

ヒョイヒョイとクインテッドの剣をかわしていく。

 

これで、マツ馬鹿にするとか・・・

 

万死に値するわ!!

 

 

「何故だ?何故当たらないのだ?」

 

「ああ?どうせ、自分の力量を見誤って、鍛錬もしてなかったんだろ?毎日鍛えてる俺にテメエが勝てるとでも?そんなんじゃマツにも勝てねえよ。」

 

「ちょ、ちょ、調子に乗るなあ!!」

 

 

クインテッドが懐に手を突っ込むと、大砲を取り出した。

 

つうか、それどこに入ってた!?

 

 

「死ね!!」

 

「死なぬ!!」

 

 

つうかよけるまでもねえ!!

 

 

「“旋風スクランブル”!!」

 

 

<ズバッ!!>

 

 

一瞬で大砲ごと一刀両断する。

 

 

「うわっ!!」

 

 

およそ中将とは思えないような悲鳴を上げながらその場にこけるクインテッド。

 

ダサイ…。

 

原作ONE PIECE何かは見ただけで、「あ、たぶんこいつ強いわ。」みたいなのがあったけど、こいつには何も感じられねえ。うん、ザコキャラ。踏み台。

 

というか、今の海軍の戦力レベルってどうなの?仮にも海賊を海軍に誘うとかよっぽど人手が足りないの?

 

「三流海賊が図に乗りおって!!こうなれば、私の最強の技を持って始末してやる!!」

 

「…あー、そういえばまだいたね」

 

戦ってみたら予想以上の自惚れキャラでなおかつ弱い。

 

だが、容赦はする気はないよ?

 

「“喜劇四十奏”!!」

 

「“辻斬り風ステルス”…」

 

<<ギィン>>

 

 

 

 

「辻斬り御免」

 

 

 

 

「グハッ…」

 

「マツと比べても全然戦った気がしなかった。もう一回出直してこい」

 



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閑話休題:世界への余波

 

[偉大なる航路<グランドライン>とある島]

 

 

とある町は今や廃墟になっていた。

 

この町はつい最近までおいしいお菓子で有名だったのだが、とある理由によって壊滅してしまった。

 

理由はたった1つ。

 

ある海賊団が要求した“お菓子”を期日までに用意できなかったからだ。

 

そして、その海賊団を率いる女海賊はお菓子が揃わなかったことに怒りながらただただ用意されたお菓子を食べていた。

 

<ボリボリボリボリ>

 

 

「ママー」

 

 

<ボリボリボリボリ>

 

 

「・・・ママー?」

 

 

<ボリボリボリボリ>

 

 

「ママー!!」

 

「・・・何だい?」

 

 

彼女は自分に話しかけてきた部下を睨んだ。

 

 

「これを見てくれ」

 

「?今朝のニュースクーじゃないか。これが一体」

 

 

次の瞬間、彼女は生まれて初めて息を飲む、という体験をした。

 

新聞の紙面には一面で『海軍大きな敗北!!作戦に加わった中将は左遷か!?』というニュースが乗っていた。

 

海軍が海賊に負けた?それも大規模な被害を伴って?

 

 

「これは本当かい?」

 

「間違いないよ!!情報屋のお墨付きだ!!」

 

 

“海軍と戦うかかわるべからず”

 

海賊にとってそれは常識だ。

 

下手に倒して中将以上の海兵を連れてこられでもしたら、その場で殺されるか、インペルダウンに投獄されるかだからだ。

 

だから海軍とは戦わない。

 

その時は全力で逃げろ。

 

しかし、こいつらは中将と戦って勝利してしまった。

 

 

「・・・中将以上は強さは異常と言っていたが、もしかしたらそうでもないのかもしれないねえ。」

 

 

今度海軍か政府の船を狙ってみるか、と彼女はその程度しか思ってなかった。

 

「・・・ママがお菓子以外のことを考えるなんて初めて見た。」

 

「ほう、食われたいのかい?」

 

「え!?ちょ、まっ、ギャアアアアアアアアアア!!」

 

 

ボリボリボリボリ

 

------------------------------------------------------------

 

 

「ヘイ、まいど。」

 

「ありがとう。」

 

 

その女海賊はニュースクーに金額を支払い新聞を買った。

 

彼女はある情報が気になっていた。

 

彼女が滞在する町でもすっかり話題になっていた。

 

 

『海軍の艦隊が海賊に負けた』

 

 

海軍の存在はこの世界において絶対の存在だ。

 

一般人は海軍のおかげで海賊に襲われるかもしれない、という恐怖を頭の隅に置きながらも生活することができる。

 

よって、こういった情報は逆に海軍の信用にかかわる。

 

 

「“海軍と戦うべからず”・・・とはよく言ったものね。」

 

 

最近出会うたびに砲丸の流星群を飛ばしてくる海兵の顔が頭に浮かぶ。

 

確かモンキー・D・ガープといったか。

 

自分からしたらあいつのほうが危険だ。

 

そう思いながら新聞を見ていると、今回の実行犯という欄に目がとまる。

 

どれも最近活躍している超新星達。

 

なるほど、もしかしたら彼らならば本当にやってのけるかもしれない。

 

 

「こいつは顔がきついからパス。・・・こっちはう〜んまあまあかしら?というかこの2人、シルバース・レイリーに“辻斬り”ちゃんか。おもしろそうね、ファンになっちゃおうかしら?」

 

 

1人、フフフと笑う。新参者の海賊が出てくるたび、彼らがどのような末路を迎えるにしろ彼女は心が躍った。

 

 

「もういい加減海賊も飽きてきたし・・・あともう少ししたらバーでもやろうかしら?」

 

 

彼女はコーヒーを啜りながらそんなことを考えていた。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

西の海<ウェストブルー>

 

「すげえ!!」

 

 

3歳になる少年は目の前の記事に胸を躍らせていた。

 

あの絶対的な海軍を海賊が倒してしまった!!

 

これほど面白いことはない!!

 

そもそも、海軍は気に食わなかった。

 

正義をうたいながらも平然と一般人を殺すこともある。

 

あんな偽善集団よりも海賊のほうが何倍も勇敢だった。

 

 

「おれもかいぞくになりてぇ・・・。」

 

 

頭の中で計画を練っていく。

 

自分じゃこの世代には追い付かない。

 

しかし、次の世代はこのおれが貰う!!

 

そして、この紙面に載っている海賊全員に認められ、俺は海賊王になるんだ!!

 

 

「たのしみだな、キシシシシシ!!」

 

 

まだ見ぬ未来に胸が膨らんだ。

 

 

---------------------------------------------------------

 

[聖地マリージョア]

 

 

世界政府を作った王達の子孫天竜人。

 

しかし、その実態は権力に酔いしれた愚か者と大差はない。

 

さて、彼らの住む聖地マリージョアでも一際目立つ建物がある。

 

世界政府本部。

 

そして、内部には世界を動かすとある5人のための部屋があった。

 

 

「この中将達はどうする?」

 

「何、考えが浅はかであるとはいえ、一応海軍の戦力であることに変わりはない。」

 

「そうだな、南か北の海辺りにでも飛ばせばよい。」

 

「それがいい、では彼らの後釜だが。」

 

「それはすでに選んでいる。そして空きが出た少将には准将のガープとセンゴク2人に入ってもらう。」

 

「実質ガープを制御しきれているのはコングとセンゴクだけだ。この2人は将来海軍の戦力になってくれることは間違いないだろう。」

 

「今は一時的にそがれた海軍、そして世界政府の信用を取り戻すことが重要。」

 

「左様。各地の海兵たちに海賊は見つけ次第叩き潰せ、という命令を出そう。」

 

「では、海賊共の件だが・・・。」

 

「情報によると未だ近くの町に滞在しているという。」

 

「すでにコングが動いている。あともう少しで到着するそうだ。」

 

「1人か・・・それとも全員打ち取れば十分見せしめになるだろう。」

 

「そうだな、それでも十分に信用は回復するだろう。」

 

「私も同意だ。」

 

「私も。」

 

「ふむ、ではそういう事で。では次の話題だが・・・」

 

 

こうして世界は廻っていく

 

--------------------------------------------------

 

 

後の歴史学者たちはこの戦いこそが真の大海賊時代の始まりであり、歴史の転換点である、と主張している。

 

この戦いには海賊側に“海賊王” ゴール・D・ロジャーを中心とした名だたる海賊達が戦闘に参加しており、事実後の新世界を中心にこの世界を世界政府の意思とは関係なく回していく海賊ばかりだったからだ。

 

しかし、こう考えるものもいる。

 

 

「この戦いで海賊が負けていたら?」

 

 

そうなれば海賊王ゴール・D・ロジャーを始め、白ひげの時代も来なかっただろう。

 

海軍はタカ派の勢いが増し、海賊たちは駆逐される。

 

もしかしたらそういう時代が来ていたかもしれない。

 

そう考えると、惜しいと歴史学者たちは口をそろえる。

 

しかし歴史は無情にも起きた現実を糧に進んでいく。

 

この流れはだれにも止めることはできない。

 

未来とは不確定要素の塊であり、何が起きるかは全く予想できない。

 

歴史学者たちはしめくくった。

 

 

 

そう。

 

 

 

 

未来とは本来予想はできても見通せないものだ。

 

 

 

 

本来は異分子である存在がいるこの世界でもそうだ。

 

 

 

 

故に、これからグンジョーに起こることも、

 

 

 

 

グンジョー達に迫る海軍の艦隊も、

 

 

 

未来がいったいどうなるかは、

 

 

 

誰にもわからない。

 

 

 

 



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ドキッ★〇ヶ島編:死ぬ気しかしない…
それは突然に


 

「そこでな、あの人は言ったんだ。」

 

「「「「「ほう。」」」」」

 

「“辻斬り御免”」

 

「「「「「ブハハハハハハハハ!!!!」」」」」

 

「笑うなよう!!そんなことで笑うなよう!!」

 

「わー辻斬り御免が起こったー!!」

 

「にっげろー!!」

 

 

どうも、戦闘は終わったのに体よりも心のほうがボロボロのグンジョー君です!!

 

あれから海兵達を全員縛り上げて、宴をやっているよ!!

 

さらりと海賊のうたげに混じる俺。最近違和感なくなってきたな・・・。

 

白ひげは勝手に酒樽を空にしているし、シキは1人だけ中将と闘えなかった腹いせにロジャーと喧嘩してる。

 

何というかいつも通りの光景が戻ってきた感じだな。

 

俺?

 

俺はあれですよ、酒飲めないから。うん、酒のめへんねん。あー、困ったな酒飲みたいのになー。

 

 

「おお、グンジョーここにいたか・・・プッ。」

 

「笑ったよね?ねえ、今笑ったよね?人前でどうどううと笑ったよね?よっしゃ“辻斬り御免”じゃあ!!」

 

 

はあ?酒が飲めない?んなわけねえだろ!!

 

 

 

“恥ずかしいんだよ!!”

 

 

 

あそこの輪に加わったら絶対“辻斬り御免”がきたーwwって馬鹿にされるだろ!!一体どこのイジメだよ!!

 

白ひげにさえ

 

 

「おまえ“辻斬り御免”って・・・ww」

 

 

って馬鹿にされたんだよ!!

 

何なんだよ!!このいやな話が高速で広がる様は!!

 

あれ?そういえば前世でも“親のおもちゃ”とか“ガリ勉”とか言われたような気がするorz

 

 

「あー、グンジョー?落ち込んでいるところ悪いんだが、少し見てもらいたいものがあるんだが?」

 

「わかった。おれがんばるお・・・。」

 

 

ネガティブモード☆モード再☆発☆動!!

 

とりあえず、悲しみを乗り越えて渡されたものを見てみるお・・・

 

 

「今朝のニュースクー?っ!?これは!?」

 

 

そそそそそそこには!!

 

 

「ああ、俺たちが起こした事件がすでに新聞に載っているんだ。」

 

「・・・・。」

 

「驚くのも無理はないな。本来世界政府は自身の失敗は公表することは少ない。私の予想だが、今回は海軍内の派閥争いが関係しているのだろう。おそらく、彼ら中将の所属していた派閥を潰すため・・・、内部粛清も兼ねて海軍の戦力の増強を行うつもりだろう。まったく海賊にとっては厄介なことが増えたな」

 

「そんなの関係ねえ!!」

 

「は!?」

 

「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

 

 

 

              いつのまにか俺が奥超えになってんだーーーーーー!!!!!」

 

 

そう、そこにはほかの賞金首とともに

 

 

“辻斬り”グンジョー  1億4000万ベリー

 

 

そう書いてあった。

 

 

「良かったじゃないか、悪名が上がるのはいいことだぞ?」

 

「フッザケンナ!!また海軍やら賞金稼ぎやらにねらわれるじゃないか!!」

 

「初めて会ったときから思っていたが、不思議な奴だなお前は。海賊が平穏を望むなんて将来生きていけないぞ?」

 

 

うるさいやい!!

 

俺は平穏をのぞむんだ!!

 

例えそれが一時の夢であっても!!

 

俺はそれをのぞむんだ〜〜〜〜〜〜〜!!

 

 

「みんなーーーーーーー!!大変だーーーーーー!!」

 

 

1人オペラをしている俺と、それを呆れて見ていたレイリーに向かって海賊が駆けてきた。

 

 

「どうした?」

 

「あ!副船長!!」

 

 

どうやらロジャー海賊団の人らしい。

 

そういえば、この人たちは常に苦労しているイメージがあるな。

 

 

「そ、それが・・・」

 

「ロジャーとシキの喧嘩がひどくなりすぎて町を破壊するレベル担ってきたのか?」

 

「今回は違います!!」

 

 

前はあったのかよ!!

 

ゼエゼエと荒い息を整えながら、船員は声を絞り出す。

 

 

「沖に、海軍の軍艦が現れました!!戦闘の船には“大将”コングが乗っています!!」

 

「「何!?」」

 

 

---------------------------------------------------

 

side コング

 

 

 

 

船の船首で霧に覆われた海をにらむ。

 

我々自身が暴走した中将を潰す予定だったのだが・・・

 

海賊どもが勝ってしまったことによって作戦は変更になった。

 

 

敗北した中将および海兵の回収

 

 

おそらく、事態の収拾を図るとともに海軍の威厳を取り戻すためだろう。

 

彼らは口だけ達者で碌に訓練もしないから気元々に入らなかった。

 

ともかく、うるさかったタカ派の将校をそぐことができるのはいいことだ。

 

しかし、もう1つ指令も出た

 

 

可能ならば海賊を捕縛せよ

 

 

しかし、これは可能ならばだ。

 

一部の者はともかく、ほかの海賊とはできるだけ、海賊とは問題を起こさないようにいきたいのだが・・・。

 

 

「島が見えたぞー!!」

 

 

そろそろ目的の島に着くようだ。

 

戦闘も考えて一応準備をしておかなければな・・・。

 

 

「コングさん!!」

 

「コング大将、何かお呼びですか?」

 

「おう、待っていたぞ。」

 

 

そういえばこいつらを呼んでいたのだった。

 

ガープ、センゴク

 

おそらくこいつらは次世代を支える海兵になるはずだ。

 

ゆっくりと育てていかなければな。

 

 

「で?話というのは何でしょうか?」

 

「ああ、そうだった、お前らの昇進が決まった。」

 

「おっ本当ですか!?」

 

「!?」

 

「時期的にもそろそろいいのではないかという意見があってな。センゴク、これからもガープを頼むぞ。」

 

「任せてくださいコングさん!!」

 

「お前は世話される側だろ!!」

 

 

はしゃぐガープの横でセンゴクは頭を抱えている。

 

やはり、こいつらはいいコンビになるな。

 

 

「そろそろ上陸だからお前らも準備しておけよ。」

 

「分かりました!!」

 

「・・・分かりました。」

 

 

さて、俺も準備に入るかな?



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大将接近そして遭遇

 

海軍を発見してから少し後。

 

当初は混乱していた海族側だが、ようやく落ち着いて港に集まっている。とりあえず、戦闘態勢でいることも忘れない。何が起きるかわからないしな。

 

というわけで、俺は虎丸を抜いてそいつをいつ斬り飛ばそうか考えている。

 

 

「よお、グンジョー久しぶりだな!!」

 

「・・・・」

 

「何だ?なぜしゃべらないんだ!?風邪か!?」

 

 

そうこの能天気クサレ昼寝スケコマシヤローをどう調理してやろうかと。

 

 

「」ハラハラ

 

「どうした?もしかして、あれか!賞金首にされたことまだ根に持ってんのか!?ガッハッハお前もまだまだガキンチョだな!!」

 

 

<ブチッ>

 

 

「ぬっ殺してやるぞおんどりゃあああああああああああ!!!!!!!!」

 

「グンジョーさんがご乱心だーー!!」

 

「ここで海軍と喧嘩するのはマズイぞ!!」

 

「早く!!取り押さえろ!!HAYAKU!!」

 

「まったくなにやってんだオメエは、アホンダラ・・・。」

 

 

そこ!!勝手に呆れない!!あんたも当事者だろうが!!

 

 

「ガープゥゥゥゥゥゥゥゥ!!俺は未だに忘れてないぞ!!あの時の屈辱を!!怒りを!!善良な一般市民を悪人にしたてやがって!!海軍はどう責任とってくれるんですか!?」

 

「善良な一般市民?」×100

 

「綺麗にハモってんじゃねー!!」

 

 

人事だと思いやがってこいつら!!

 

そう、目の前にいる男はモンキー・D・ガープ

 

原作ONE PIECEの主人公モンキー・D・ルフィの祖父にして英雄!!

 

大砲の弾をどっかの競技の弾と勘違いしている熱血修○野郎!!」

 

何より俺の敵!!

 

こいつのせいで俺がどれだけ苦労してきたか・・・(泣)

 

俺の手でこの山猿だけは潰す・・・!!

 

というか、久々登場どうもお久しぶりです!!でも、そんなの関係ねー!!

 

 

「ところで中将達はどこにいるんだ?」

 

「こっちの話は無視ですか!?」

 

「ああ、それならここに・・・。」

 

「お前らも乗ってんじゃねーーーーーー!!」

 

「ちょ、ちょっとグンジョーさん!!すいません!!ちょっと作戦タイムで!!」

 

 

スパローが俺を裏につれてゆく。

 

 

「グンジョーさんちょっと何を考えてるんですか!?」

 

「いや、どうやってあの猿を料理してやろうかと・・・。」

 

「ブッ、何言ってんすか!!そんなことしたら後々大変なことになるっすよ!!」

 

「何が?」

 

「何ってこの前のは中将の独断でしたけど、今回は海軍の総意っす!!そんなことしたら大将が出てきちゃいますって!!」

 

「こいや!!大将に対象にされようが大勝して返り討ちじゃい!!」

 

「もうだめだこの人ーーー!!」

 

 

うがー、と頭を抱えるスパロー。

 

貴様俺に怒りをがまんしろと言うのか!?ストレスはお肌の天敵ですよ!!

 

 

「おーい、もういいか?」

 

 

ガープが間の抜けた声で言う。

 

しかし、それと同時に怒鳴り声が聞こえた

 

 

「おい、ガープ!!姿が見えないと思ったら何をやっている!!余計なことをするなと言われたろうが!!」

 

「何じゃいセンゴク!!お前こそ余計な事をするな!!」

 

「馬鹿か!!お前は馬鹿か!?」

 

 

この声は・・・

 

そういえば、あの山猿の被害を被っている人を俺は俺以外にもう1人知ってる

 

目の前にはガッハッハと爆笑しているガープともう1人、キレルアフロヘアーがいた。

 

いや、違うかあいつは

 

 

 

「智将“仏”のセンゴク」

 

 

 

すると、むこうもこちらに気がついたようで

 

「辻斬り!」

 

「どうも、はじめまして」

 

 

そういえば、こいつとは初めて会うな。とりあえず、一言言わせてもらおう。

 

 

「お疲れ様です」

 

「ああ・・・お互い苦労するな。」

 

 

うん、こいつとは仲良くなれそうだな。

 

 

「・・・で?中将回収して終わり?」

 

「『そうだな、表向きな指令としてはこれで終わりだ。』」

 

「そうか、じゃあ帰れ。今すぐ帰れ。でもガープは置いてけ・・・ん?」

 

 

今の声はセンゴクの声じゃなかったぞ?

 

というか、電子音みたいな・・・。

 

 

「『センゴク、ガープ。聞こえるか?』」

 

「はい。」

 

「もちろんだコングさん!!」

 

 

よく見ると、センゴクの手の中に電伝虫が握られていた。というか、今のコングってどこかで

 

 

「おい!今のもしかして大将コングか!?」

 

「間違いねえ!!あいつらがそう言ってんだがらそうなんだよ!!」

 

 

コング、

 

・・・コング、

 

コング!?

 

 

まさか“大元帥”コング!?

 

 

「まさか・・・大将コングか!?」

 

「大将?」

 

 

そうか、この頃はまだ大将なんだ・・・。

 

 

「お前流石に大将知らないわけないだろう?」

 

「まあ、知らないわけじゃないけどさ。」

 

「『今から裏の指令を言い渡す』」

 

 

話している間に向こうも話が進んでいたらしい。

 

というか、裏の指令?

 

何それ?おいしいいの?

 

 

 

 

 

 

「『つつがなくこなせ、“超新星を含め海賊達を全員逮捕せよ。”』」

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

海賊達に動揺が走る。

 

え、何いきなりどういうことだ!?

 

 

「ハイ、了解しました」

 

「よし、じゃあやるか」

 

 

何!?一体どういことだ!?

 

いきなりのことに混乱している俺にガープが高速で接近してくる。

 

不敵に笑うその笑みを見ながら、俺はどこか冷静な部分でこう考えていた。

 

やばい!!

 

 

 

 

原作が壊れる!!

 

 



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裏切り後戦闘

 

「!!」

 

真っ先に異変に気付いたのは“白ひげ”エドワード・ニューゲートだった。

 

振りぬき様に手から振動を放出する。

 

フルパワーとまではいかにいものの、衝撃が2人に向かって放たれる。

 

しかし、

 

 

「おう、“グラグラの実”中々じゃあねえか。だが・・・まだまだじゃい!!」

 

 

ガープが突き出した正拳突きが振動にぶち当たり、そして

 

 

「ヌウイ!!」

 

 

振動の方向をずらしてしまった。

 

 

「何?」

 

「受け切らなくてもこうしてしまえばいまないぜ!!」

 

 

ガッハッハ、と爆笑するガープ。

 

しかし、そこに1人の海賊が現れた。

 

 

「ガープ!!」

 

「お!?」

 

 

<ドン!!>

 

 

ぶつかり合う拳と拳。

 

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

「船長から離れろ!!危険だ!!」

 

 

海賊団が避難する中で、

 

 

「久しぶりだなガープ。元気してたか!?」

 

「おおロジャー!!お前こそ最近暴れとるようじゃあないか!!」

 

 

この伝説コンビはガハハハハと笑っていた。

 

・・・うん、あそこはロジャーだけでいいな。

 

 

「おい!!“辻斬り”!!お前とも戦いたいが、生憎先客がいてな!!他の奴と適当に戦っていてくれ!!」

 

「言われなくてもそうするつもりだよ!!」

 

 

全く!!あいつと戦っていると、一瞬ここがどこだが忘れちまう!!

 

 

「・・・そろそろ私も動こうか。」

 

 

状況を冷観していたセンゴクが行動を起こした。

 

センゴクの体が巨大化をはじめ、そして体が黄金色の光を帯び始める。

 

 

 

「何だありゃあ!?」

 

 

海賊の1人が悲鳴を上げる。

 

しかし、それも無理はないだろう。

 

人を超えたその姿は、動物系とは全く違った・・・そう、神といっても差し支えないほどの存在だった。

 

 

ヒトヒトの実モデル“大仏”。

 

自然系以上に希少な幻獣種!!

 

 

「ヌン!!」

 

 

センゴクの手のひらからの衝撃波が放たれる。

 

 

「ぎゃあああああああ!!」

 

「お頭!!」

 

 

海賊達がそれに巻き込まれてゆく。

 

手下達が吹き飛ばされてゆく中、それをほくそ笑みながら見ていたシキも動き出した。

 

 

「ジハハハハハ!!中々面白くなってきたじゃねえか!!あいつは俺のエモノだ、“シシオドシ”!!」

 

 

獅子の顔を持つ土の波がセンゴクに襲いかかる

 

〈ゴガアアアアア!!〉

 

 

「ヌン!!」

 

 

しかし、それは衝撃波によって根こそぎ削り取られてしまう。

 

 

「チッ!!」

 

 

空に浮かびながら舌打ちをするシキ。

 

 

「あいつはヤベエな。真っ向からの攻撃じゃ俺の振動も効くかどうか・・・。」

 

「そこでなんだが、ついでにロジャー海賊団のみなさんもチョッち内緒話、コショコショ。」

 

「!?お、お前そんな簡単に言うができるのか?」

 

「まかせてー。」

 

「・・・まあ、やってみるか。」

 

 

よしっ!!決定。

 

ついでに、手すきなようなので、レイリーさんには港で船を用意してもらうように言っておいた。

 

 

「私も加わりたいが、うちの船長とお前らだけで十分だろう・・・。」

 

 

適材適所ってやつです。はい。

 

 

「中々の技だが、私には相性が悪い!!」

 

 

再度衝撃波を放とうとするセンゴク。

 

 

 

「じゃあ、こういうのはどうだ?」

 

「!?」

 

 

目の前の攻撃ばかりに気を取られてたらいけませんぜ!?

 

高速移動、高速接近、高速斬撃三拍子そろった俺を忘れちゃあかんで!!

 

 

 

 

「“爆風ナヴァスクランブル”!!」

 

「グッ!!」

 

 

至近距離で放つ大規模破壊技!!

 

しかし、その一撃もセンゴクは完全に防ぎきった。

 

 

「甘いな“辻斬り”。この程度で私に傷を負わせることができるとでも?」

 

「いやー、そんなこと思ってないよ。ね?みなさん?」

 

「ああ、その通りだな。」

 

「グンジョーさん準備オーケーっす!!」

 

 

センゴクが慌てて視線を目の前に戻すと、そこには振動を手に再度帯びさせた白ひげと、どこからか持ってきた大砲やらバズーカ砲をセンゴクに向けているロジャー海賊団の面々がいた。

 

 

「貴様等!?」

 

「いいけいけいけ!!」

 

「ウェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

<ドンドンドンドン!!>

 

<ズドドドドドドドドドドドド!!>

 

 

次々に着弾し、または振動の破壊力がセンゴクに叩きつける。

 

 

「・・・そろそろいいかなー?」

 

 

攻撃の影響でモウモウと上がる土煙。

 

いやー、よくしらんけどいくら大仏でもひとたまりもないはず。うん。

 

 

「そうだな。今度はこちらからいかせてもらおう。」

 

「!?」

 

 

馬鹿な!?

 

後ろに飛ぶ俺に向かって今度は衝撃波が襲いかかった!!

 

 

「グハッ!!」

 

 

衝撃波をもろに食らってしまった俺は吹き飛び、家屋に激突する。

 

 

「グンジョー!?」

 

「グンジョーさん!?」

 

「うおおお、油断してたぶんエドワードの時以上の痛みが・・・。」

 

 

うっすら目をあけると、慌ててこちらに走り寄ってくる白ひげと、向こうで未だにピカピカ輝いているセンゴクが目に入った。

 

 

「マジで何なの?あんだけ食らってほぼ無傷とかおかしくない?」

 

「動物<ゾオン>系をなめるなよ?身体能力という面なら悪魔の実の中で最強だ。」

 

 

それに、と手のひらを握りながらセンゴクが付け足す

 

 

「私はすでに覇気を使うこともできる。・・・言っておくが、私とガープは貴様等が倒した中将以上の力だ。舐めてかかるとそうなるぞ?」

 

「…なーるほどね」

 

 

フラフラに成りながら立ち上がる。

 

我ながら恥ずかしいね。最近あまり攻撃を食らってないもんだからなめてかかっちまった。

 

攻撃をあてさせないことは戦闘の基本だが、防御もうまくなくちゃだめじゃん。

 

今後の課題が増えたな

 

 

「さてと、それじゃもう一回戦いくか!!」

 

「すまないが、それは無理だ。」

 

 

センゴクがそれを手で制した。

 

 

「?どうした?俺を逮捕するんじゃないのか?」

 

「・・・我々もそうしたいのだがね、すまない上司が来てしまった。」

 

 

センゴクの目線につられ、振り向いたその後ろには

 

 

 

 

 

 

ボロボロになり、全身血だらけのレイリーとそれを引きずる“大将”コングがいた。



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また会おう

 

「レイリー・・・。」

 

 

 

目の前の光景が信じられなかった。

 

あのレイリーが

 

原作でも十分強い、いや覇気を含めれば俺以上の強さかもしれない、あのシルバース・レイリーが半死半生の状態になっているなんて。

 

 

「レイリーーーーーーーーー!!!!」

 

 

今までガープと拳を交えていたロジャーが激昂しながらこちらに跳んできた。

 

あまりの衝撃に咄嗟に動けず、俺はそれを見ることしかできなかった。

 

 

「少し黙っていてもらおうか。」

 

「!!」

 

 

レイリーを掴んでいない片方の腕をロジャーに向かって振り下ろした。

 

 

「ヌッ!!」

 

 

ロジャーは咄嗟にガードしたが、

 

 

「!!」

 

 

そのガードを突き抜けロジャーを地に叩きつけた。

 

 

「ガハッ」

 

 

たった一発

 

 

そうたった一発ただの拳を当てただけのはずなのに、その威力はすさまじく、ロジャーが血ヘドを吐きながら昏倒してしまった。

 

 

「船長!!副船長!!」

 

「どういうことだよコレ・・・。」

 

 

ロジャー海賊団の面々がうめき声ともとれるような悲鳴を上げる。

 

 

「っは」

 

 

ここでやっと固まっていた自分の体が動き出した。

 

 

「エドワード!!いくぞ!!」

 

 

「っ、分かった!!」

 

 

ガープとセンゴクの近くにいた白ひげもこの状況に固まっていたらしい。

 

俺が怒鳴ると同時に動き出した。

 

俺が駆け出すと同時に振動をその手にまとわせ始める。

 

 

「ウェアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

ある程度たまったところでそれを地面にうちつけた。

 

 

<ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!>

 

 

白ひげを起点として地面に放射線状にヒビが入り、崩れだす。

 

それと同時にコングを支えていた地面も崩れだした。

 

 

「まかせたぞグンジョー!!」

 

「よしきた!!」

 

 

こうなった場合、敵は攻撃に巻き込まれないように地面から離れるしかない。

 

事実、後ろにいるセンゴクとガープは跳躍をしている。

 

そして、空中では攻撃のために安定させる場所がないから必然的に無防備になる。

 

そして、そこに勝機がある!!

 

 

「よし、浮かべ!!」

 

 

虎丸を限界まで構える。

 

俺の最強の一撃で仕留めてやる!!

 

 

「ふむ、ルーキーにはちょうどいいハンデだな。」

 

「え?」

 

 

しかし、

 

俺は甘く見ていた。世界最高峰の力を。

 

あろうことか、コングは上に飛ばず、崩壊して足が埋まってしまった体勢で俺を迎え撃とうとしていた。

 

 

「なっ」

 

「作戦通りにいくと思ったか?ルーキーにしては中々いい作戦だとは思ってやるが。この程度で私に“海軍大将”に通じるとでも思ったのか?」

 

「関係あるか!!そうなった以上そのまま身動きはとれないだろ!?」

 

「ほう、ならば抗ってみろ・・・。」

 

 

コングはそのまま拳を打つ準備をとる。

 

 

 

 

 

「カミカゼ“嵐”!!」

 

 

 

俺は“嵐”だ!!

 

レイリーには“災害”と称され、白ひげの地震と拮抗した、確かにこの世界に存在する“嵐”!!

 

例え、お前が俺たちを抑えようとしても、この“嵐”が吹き続ける限り、この世界の法則に抗い続けてやる!!

 

 

「くらえ!!」

 

 

暴風を纏いながらコングに斬りかかる!!

 

 

「なるほどな・・・。」

 

 

しかし、それを前にしてもコングはただ冷めた目で俺の嵐を見つめているだけだった。

 

 

「この世界の嵐と全く同じ威力・・・賞賛してやろう。」

 

 

だが、とひいていた拳を一気に突き出しながら言った。

 

 

「“嵐”程度私の敵ではない。」

 

 

次の瞬間、その拳から飛び出た拳撃は俺のカミカゼ“嵐”を消し飛ばした。

 

 

「え?うわ!!」

 

 

俺は斬りかかる態勢のまま吹き飛び、地面に激突する。

 

 

「っ!!クソッもう一度だ!!」

 

 

すぐに態勢を立て直しもう一度カミカゼ“嵐”を放つ準備を

 

 

「グハッ・・・」

 

「エドワード・ニューゲート。やはりたいしたことないか。」

 

 

「・・・・。」

 

「金獅子のシキ確保。」

 

「残りは一般船員だけだな!!」

 

 

崩れ落ちる白ひげと、地面に倒れ伏したシキ。

 

 

「・・・・え?」

 

 

残ったのは俺だけだった。

 

 

「船長!!」

 

「俺たちはどうなるんだ!?」

 

「副船長なんとかしてください!!」

 

 

喚いている船員たちが目に入る。

 

どうやったらこの状況を打開できるか?

 

どうやったら切り抜けることができるのか?

 

そもそも、逃げれるのか?

 

 

 

 

俺はすべての問いに答えることができなかった。

 

 

 

 

原作知識はある程度ある。

 

でも、伝説の海賊たちが活躍していた黄金期はまだ俺は知らない。

 

彼らがどのような道筋をたどったのかも。

 

でも、このままいけば1つだけ確実なものがある。

 

 

 

大監獄インペルダウン

 

 

 

一度入れば脱獄不可能の絶対要塞。

 

もし、彼らがそこに入れられたら?

 

間違いなく、原作ONE PIECEは終わる。

 

しかし、自分は逃げられるだろう。

 

そもそも自分はこの世界にはいなかった存在。

 

この世界の展開も知っているから、この先大人しくしていれば海軍側もどうこうするわけではないだろう。

 

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

それでいいのか?

 

それで自分だけの人生を満喫したと言えるのか?

 

 

 

 

 

 

答えはノーだ!!

 

 

 

 

 

 

「おい、スパロー・・・。」

 

「!!グンジョーさん。」

 

 

剣を構えているスパローに声をかける

 

 

「あいつらは俺が止めるから倒れてるやつら引っ張って船まで逃げろ。」

 

「そんな!!そんなことできるわけ」

 

「うるせえ!!たった1人の犠牲と全員全滅するのとテメエはどっちがいい!!」

 

 

唇を噛みしめながら俺の話を黙って聞いている。

 

 

「・・・分かったか?俺が攻撃するからお前は言われたとおりにするんだぞ?」

 

「・・・・ハイ。」

 

「声が聞こえない!!」

 

「ハイ!!」

 

 

そんな泣いてんじゃねえよ、別れぐらいすっぱりいこうや。

 

 

「さてと、海軍の諸君。」

 

 

目の前にいる海軍達を睨みつける

 

 

「いや〜、噂に聞いていたけど不意打ちなんてずいぶんセコイことするじゃない?」

 

「・・・耳が痛い話だな。」

 

 

コングが苦笑する。

 

確かに彼らにとっても海の秩序を守るという名目上どのような手段をとっても海賊を駆逐しなければいけないのだろう。

 

そこに正義はあるが心があるのか?

 

原作を読んでいるときにそう考えたことは何度もあった。

 

おそらく、彼らも同じことを考えているだろう。

 

じゃなきゃこんな人がこんなことをするはずがない。虎丸を改めて構えなおす。

 

 

「でさ、一つ聞きたいんだけど、俺を倒したらどうするつもり?」

 

「…それはまた軍艦に乗って奴らを追いかけに行く」

 

そうか

 

「じゃあさ」

 

軍艦をつぶせば、少しは時間が稼げるよな?

 

「何っ!?」

 

「断頭風エアパワー!!」

 

飛び上がった俺は虎丸を振りかざし、軍艦に向かって切りかかった。

 

そう言った後、コングに向かって走りだした。

 

 

-----------------------------------------------------

 

 

報告

 

“大将”コング

 

“准将”センゴク

 

“准将”ガープ

 

 

○月×日

 

 

“指令”

 

中将達の確保、及び事件を起こした5人のルーキー及びそのクルーの逮捕

 

 

 

 

中将達の確保後、海賊達と交戦。

 

 

ゴール・D・ロジャー、シルバース・レイリー、エドワード・ニューゲート、シキが逃走。

 

 

“辻斬り”グンジョーは確保 その際手配した軍艦のほとんどが半壊。上記四名の逃走を許す。

 

 

“事後処理”

 

 

当人は戦闘により意識もない状態なのでしばらく安静の後インペルダウンに搬送

 

 

予定通りセンゴク准将、ガープ准将は少将に昇格の上船を一隻与える。

 

、以上



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このまま50年間フェードアウトすると思った?m9(^Д^)

m9(^Д^)ハハハハハハハ


「コラー!!待てー!!辻斬りー!!」

 

「クソッ、いつの間に逃亡したんだ!?」

 

 

ぎゃははははははは今更気づいても遅い!!

 

俺はすでに虎丸を取り返して絶賛逃走中だもんね!!

 

ハンターには捕まらんさ!!

 

 

で、今俺がどうやって海軍船から逃げおおせたのかというと

 

 

1、覚醒

  ↓

2、近くにいた海兵をアベシ

  ↓

3、服を拝借、代わりに牢獄にぶち込む

  ↓

4、アーツジギリー?ナニモナカッタデスヨーhahahahaといいつつ見張り交代

  ↓

5、あ、こんなところに虎丸が!!食料も!!脱出用小型ボートも!!

  ↓

6、逃走中←今ここ

 

いやーうまくいった!!

 

ここまでうまくいくと逆に怖いっすね!!

 

グンジョー君は自分の運が怖い!!

 

(・・・・)

 

 

聞いた話によると、俺が逮捕されてから二カ月はたったらしい。

 

あの後うまくあいつらが逃げおおせたとすると・・・・うん、十分じゃね?

 

少し心残りはあるけど、彼らとの冒険は少しおあすけだね。

 

・・・シキはstrong worldの件もあるから潰した方がよかったかもしれない。

 

ま、それはその時のお楽しみということでー

 

ふと、後ろを振り返ると大監獄インペルダウンが見える。

 

あと、一歩遅かったら俺一生あそこにいたんだ・・・怖っ!!

 

つうか、インペルダウンに入れられたらどうなるんだよ!?

 

このままルフィがくるまで待てと!?

 

その頃、俺おじいちゃんだよ!!

 

何の準備もないままそのまま頂上決戦とか死亡フラグにもほどがあるわ!!

 

もう、何も言うまいと思ったけど、カミサマ俺を転生さてといて扱い適当すぎるだろ・・・

 

 

「お前ら!!早く辻斬りを追うんだ!!というか・・・もっと・・・もっとアツクナレヨ!!」

 

「ネッケツ中将すいません!!」

 

 

何か修○みたいな人がいるんだけど、てかあれ修○じゃん!?

 

え、なんで修○がONE PIECEにいるの!?

 

なんかもうどうでもよくなってきた・・・

 

 

さて、そうこうしているうちに目の前に外壁が近づいてきた。

 

ここで今の実力を測るとしましょうか

 

 

「久しぶり〜虎丸。」

 

 

鞘を抜くとリィィィィィィィン・・・と鳴る

 

ああ、2ヶ月もほったらかしにされたのか埃まみれじゃないか、一仕事終えたら整備したげるからね!!

 

 

「とりあえず、“旋風スクランブル”!!」

 

 

<ドガァァァァァァァァァァ!!>

 

 

「もういっちょう、“爆風ナヴァスクランブル”!!」

 

 

<ドゴォォォォォォォォォォ!!>

 

 

「おっ?まあいいか、もひとつおまけ、“暴風ウォークダウン”!!」

 

 

<ズガガガガガガガガガガガ!!>

 

 

はい完了〜大穴をぶちあけてやりました

 

 

「ううむ、ブランクってやつは怖いな・・・」

 

 

これくらいだったら“旋風スクランブル”とはいわないけど、“爆風ナヴァスクランブル”で決めたかったな。

 

今思ったけど、一般人では考えられないような贅沢すぎる悩みじゃねえぇかなコレ・・・。

 

とりあえず、

 

 

「待てー辻斬りー!!」

 

 

うん、逃げよーか

 

というわけで、今開けた穴から逃げます。エスケープ!!

 

・・・あれ、でもなんか忘れているような?

 

 

 

 

 

 海軍本部

 

 

あれから海軍内でも様々な変化が起きた。

 

まず、タカ派の中将たちの粛清。

 

今回の一件は一応彼らの派閥から起きたことなので責任をとることは当然だ。

 

派閥のリーダー達は偉大なる航路以外への派遣、という名の左遷。

 

次に、優秀な人材の確保。これによって人員不足を解消する。

これらはコングさんが指揮をとって行った。皮肉にも、彼らのおかげで海軍内にはびこる嫌なムードを一掃できたということだ。

 

で、

 

代償にコングさんは最近寝てない。辻斬りを逮捕した直後からずっと置きっぱなしだ。・・・大丈夫かこの人?

カヒュー、カヒューって言ってるし。

 

さて、作業が一段落したころ電話がかかってきた。

 

嫌な予感がしたが・・・その通りだった。

 

 

「…なるほどな。」

 

「『ハッ!!申し訳ございません!!私がついていながら、まさかこのような事態になるとは!!』

 

「いや、私達が捕えた時はすでに辻斬りは意識がない状態だった。いつ目覚めるのかどうかも分からなかった。からな。仕方がなかろう」

 

『っ!!も、申し訳ございません!!捜索を続行します!!では、<ガチャ>』

 

「…」

 

コングさんが頭を抱えている・・・今は何も言うまい!!

 

 

「ガハハハハ辻斬りは逃げたか!!相変わらずネッケツさんは暑苦しいな!!」

 

「ガープ!!それはいっちゃイカン!!」

 

「いや、いいんだ…もう、どうでもいい」

 

「コングさん!!最近色々大変なのはわかりますけど、思考を放棄しないで!!」

 

 

コングさん溶けてる!!

 

というか!!いつのまにか私のツッコミの分担が増えている!!

 

 

私達が口論している間、コングさんがボソリと呟いた言葉を私は聞いていなかった。

 

 

「どーせ、あそこ一帯の海は…」

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃グンジョー

 

 

「いやあああァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああおかあさんああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 

<バオオオオオオオオオオ!!>

 

 

様々な種類の海王類に遅いかかられていましタとサ…



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能ある鷹は・・・タカハシさん?

「グボアッ!!

 

 

海水を吹き出すと同時に意識が急速に覚醒する。

 

 

「ハッ!俺はいったい何をやって」

 

 

しかし、どうやら無事に島に着いたらしい。

 

 

「なんとか助かったのか…」

 

 

その時、頭の中で本能で無理やり封じていたはずの記憶が脳裏によみがえる。

 

思い出されるのは地獄の記憶

 

 

急に揺れる海面

 

 

急浮上する小舟

 

 

怪物たちの群れ

 

 

絶叫とともに消え去る意識

 

 

「・・・・・・怖かった。」

 

 

原作知識があるのに忘れていた。あの海は凪の海<カームベルト>。

 

凪ゆえに風が吹かない・・・、というのは問題でなく、真の恐怖はそこではない。

 

あそこは海王類の巣があるのである。

 

昔、北欧の海にいたクラーケンという怪物が出現の際、海が凪になり、船が急に止まる、というのを聞いたことがある。

 

あの時俺は昔の船乗りのみなさんと思考がリンクした。

 

 

 

あ、俺死んだわ。

 

 

 

あの状況で生き残れたのは奇跡と言えよう。

 

どうやら破壊された小舟の木片につかまって漂着したらしい。

 

 

「ところで、ここどこ?」

 

 

あたりを見回すとうっそうとしたジャングルが目の前にあった。

 

ちなみに、初ジャングルである。

 

 

「とりあえず・・・。探索を始めよう。」

 

 

グンジョー探検隊いっきまーす。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ブヒブヒブヒブー!!」

 

「で、こうなるわけだが。」

 

 

目の前には巨大な豚、もとい猪。

 

腹をすかしているらしく涎を垂らしている。

 

なるほど、グンジョー君を今日のランチにするつもりですね?わかります。

 

 

「って分かってたまるか!!」

 

「ブヒ!?」

 

 

拳骨一発殴り倒す。

 

 

「ブー!!」

 

「もうめんどくさいわ。“辻斬り風ステルス”!!」

 

 

<ズシャッ!!>

 

 

「辻斬り御免っと、さて、俺のランチにしようかね。」

 

 

とりあえず、ワイルドにそのまま焼いて食うぜ〜

 

テッテレテレレテッテレテレレテッテレテッテレテッテレテッテレテテテテテン♪

 

上手に焼けました〜

 

 

「腹ペコ!!」

 

 

ガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツガツ

 

 

「御馳走様でした!!」

 

 

たいへんおいしゅうございました。

 

さてと、

 

骨のみになった猪と膨れた腹を見ながら物思いにふける。

 

とりあえず、修行だな。よくは分からないが、これから未来の七武海やら四皇やらが出てくるだろう。

 

いまのままじゃ新世界どころかシャボンディ諸島でも死にそうな気がする。いや、俺のことだから天竜人には絶対喧嘩を売るだろう。

 

自制ってなに?おいしいの?

 

だから、死亡確率を低くするためにも頑張らなければ。

 

うむ、そうと決まれば、ここがどこの島だかは知らないが、さっさと脱出するに限る。

 

とりあえず、ビート板にしろ、小舟にしろ、何にしろさっさと脱出するに限る。

 

 

「う〜む、大味すぎて食感がいまいちだったな・・・。」

 

 

その前に何か別のものを食いたいな。

 

 

 

・・・おや?あれは?

 

 

 

 

 

「あれは何?」

 

 

見ると煙のようなものが立ち昇っていた。

 

山火事だったら大変なことになる・・・、もしかしたら、誰かが食事をしている可能性もあるけど、一応見に行くことにしましょうか。

 

 

「一応見に行きましょうか〜。」

 

「ええ、そうね。」

 

 

木々を抜けていくと誰かが倒れていた。

 

 

「ちょっとあなた大丈夫?」

 

 

返事がないただの屍のようだ・・・じゃなくて全身キノコだらけ!?

 

 

「え?これカラダカラベラボウニキノコガハエルダケじゃない!?大変!!体からキノコがべらぼうにはえてきて死んじゃうわ!!」

 

「あら〜それは大変。」

 

「村に運ぶわよ!!」

 

 

急いで運搬しなくちゃ!!

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「で、運搬してきたってわけ?」

 

「うん、たぶんこのままじゃ死んじゃうわ!!」

 

「う〜ん、でもカラダカラベラボウニキノコガハエルダケって中々おめにかかれないのよね、学者としてはすっごい興味があるんだけど、しょうがないか、人命第一だもんね。」

 

 

彼女はおもむろに懐から油の小瓶を出すとその人に振りかけて・・・マッチに火をつけた?

 

 

「ホイッ。」

 

「ぎぃやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「ちょ、ちょっと何やってんの?」

 

「こうしないとキノコが取れないの。ちなみに、体から取れたキノコはおいしくいただけるからたべちゃっていいわよ。」

 

「え〜本当?あ〜おいし〜。」

 

「と、とりあえず川で体を洗ってくるわ・・・。」

 

いきなりう突拍子もないことをするから学者の彼女は苦手だ・・・。

 

とりあえず彼女を川に連れてゆき体を洗うことにする。

 

 

「しかし、どうしたのかしら全身傷だらけ。何か恐ろしいことでもあったんでしょうえね・・・。」

 

「そうね〜。ん?あら〜?ここにキノコのこってるわよ〜?」

 

「あら本当だ。また焼かなくちゃ・・・。とりあえず彼女を連れてきてくれる?」

 

 

いや、そのまえにひっこ抜いちゃいましょう。

 

 

「ウググググ・・・だめだ深く根を張ってるみたいで取れないわ。」

 

「あらー大変刀で斬っちゃう?」

 

「まあ、それも考えてみましょうか。」

 

「はい、お待たせ・・・て何してんの?」

 

「キノコが残ってるから切り落とそうかと。」

 

「え?おかしいわね?さっきので全部燃え尽きたはずなのに・・・。よく見せて?」

 

 

いつの間にやら人ごみができてるわね?噂が早く広まったみたい。

 

と彼女の動きが止まった。

 

 

「?どうしたの?」

 

 

懐の本を取り出すと血走った目でページをめくりだす。

 

 

「うそ・・・・。でも間違いない。」

 

「何があったの?」

 

「信じられないだろうけど・・・・」

 

 

急にあたりに重苦しい空気が流れ始める。何があったんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この子“男”よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・え?

 

 

「「「「「「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」」」」」」」」」」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

凪の海に浮かぶ島

 

アマゾン・リリー通称“女ヶ島”

 

もし、君が男なら

 

決して夢見ることなかれ

 

決して立ち入ることなかれ

 

君がまだ

 

命が惜しいと思うのなら・・・・・・

 

 




ヒギィ!!二次のフラグってどうすればいいかわからないでゲスぅ!!


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あああ、やっちまった

ちょっと少なめ


98円のキャラメル味だと!?マダムシンコのバウムクーヘン・マダムブリュレを買ってこいといっといたやろがい!!」

 

「きゃあ!?」

 

 

む、どうやら夢だったようだ。

 

さて、どうもみなさん今日も寝覚めがよろしくないでおなじみグンジョー君です。

 

 

「というかここどこ?」

 

 

四方八方石石石石石石造り。何でこんな場所に?という疑問が浮かぶ。

 

最後の記憶はキノコを食べた後、何だか気分がよくなってきて寝てしまったこと。

 

それから・・・

 

 

「!?」

 

 

下を確認。ふぅ、良かった問題がなさそうで。

 

今でも夢の内容を思い出すだけで身の毛がよだってくるよ!!

 

火をつけられ・・・そして・・・そして・・・鋏が・・・

 

 

 

 

鋏が〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!

 

 

 

 

ふぅ、ブレスレット、ブレスレット、少し取り乱してしまったようだ。こんな状態クールが売りのグンジョー君らしくないじゃないか。どうしてしまった自分。

 

 

「ねえ。」

 

「?」

 

 

下を見てみると、幼女がいた。しかも、かなりきわどい格好の。

 

幼女(際どい)

 

俺(裸)

 

 

「・・・・・。」

 

「ねえ、大丈夫?」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「でも、大丈夫みたいね。よかった、うなされてたから心配してたの。」

 

「おおおおおおおお嬢ちゃん。」

 

「何?」

 

「間違いは・・・起きなかったよね?」

 

「?」

 

 

ああああああああヤヴァイヤヴァイ、この状況傍目から大変なことになる。読者がひく、俺と(作者の)品性が疑われる、PTAがくる。

 

クライミライしか見えない!!

 

何とか誤解(今の状況)を解かなければ!!

 

「間違いって何?」

 

「えっ!?いや、なんと言うか、少しタグに別のものを入れなければいけない事態というか、なんというべきか・・・。」

 

「?私はご飯を運んできただけだよ?」

 

「そ、そうかそうか。」(っぶねー!!)

 

「うん。じゃあ、私はもういくね。」

 

 

そういった後、幼女は扉を開けガチャリと鍵をかけた。

 

 

「あれ!?」

 

 

もしかして、俺って捕まっちゃってます?

 

いや、何で?

 

俺なんか悪いことしたっけ!?・・・・したか。

 

あ、でもここに着てからは何もしてない・・・ハズ!!たぶん・・・。

 

 

「いや、でもこの状況何かデジャビュってるんだよなー。」

 

 

う〜ん、これ何フラグでしたっけ?

 

 

「ここまで、ででるんだよな〜。」

 

 

すると、大勢がかけてくる音が聞こえた。

 

 

「男が目を覚ましたというのは本当か!!」

 

「早急に処理せねば。」

 

「戦士たちを集めろ!!」

 

 

何かいろいろ聞こえるけど、多すぎてうまく聞き取れんな。

 

硬いベットの上でジーッとしていると、目の前にある集団が現れた。

 

 

 

全員女だった

 

「…え?」

 

知ってる。俺この展開知ってるぞ。それと、すこぶる嫌な予感もついでにしてきた…。

 

「目覚めたか男」

 

リーダー格らしい背の高い黒髪のお姉さんが質問してきた。

 

というか、ちゃんととした服着なさい、すっげー恥ずかしいんですけど。後、ゴミ虫を見る目で見ないで、地味に傷つく。

 

「ふふふふふ」

 

でも、俺は知ってる!!こういう時はちゃんとした挨拶をしなければだめだ。

 

良い交流は第一印象からってね!!誰かさんの受け売りだよ。

 

さて、俺もそれを実践することにしよう。

 

「どうも!!はじめまして!!それがし、名前はグンジョーと申すものでござる!!以後よろしくおねがいしたいで<ヒュンヒュン>、ご、ざ、る?」

 

<ドゴオオオオオオオオ!!>

 

恐る恐る後ろを振り向くと、崩壊した石壁に刺さっている矢。ついでに、ツーと血がたれている俺の頬。

 

ギギギギギと視線を元に戻すと、ギリリと弓を引き絞っているお姉さん。

 

「男…お前がどのような目的、経緯を持ってこの国に侵入したかは知らぬが、“男子禁制”はこの国の掟。潔くあきらめよ。」

 

ああ、やっぱり、やっぱりか。そういうことですか、神様。あんた、ここまで私を苦しめるきですか、そうですか。

 

「一つ質問をよろしいですか?」

 

「何だ?」

 

「この国の名前を教えていただいてよろしいですか?」

 

「なんと白々しい…まあ、冥土の土産というやつだ教えてやろう。この国は女人国アマゾン・リリーだ!!」

 

 

……俺、オワタ!!

 



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男尊女卑も女尊男卑も行けないと思うよ

 

やあ、グンジョーお兄さんだよ!!

 

いまおれが何をしているのかというとね。

 

 

「追われてるんだよんねーーーー!!」

 

「待て男!!」

 

 

あの後、飛んできた矢をよけながら、うまく標準を壁まで誘導して破壊。

 

グンジョー君はその穴から逃亡したのでした。

 

脱兎のごとく。

 

そう、脱兎のごとく!!

 

 

<ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン>

 

 

しかし、後ろからは“覇気”をまとった物騒な矢と、さらに物騒なお姉さま方が追いかけてきます。

 

下手すりゃ死ぬる!!

 

 

「虎丸!!…で反撃しようにも“ない”から意味ねー!!」

 

畜生!!剣がない剣士はただのヒトですか!?

 

ゾロみたいに無刀なんてできるわけないし、万事やかん、いやきゅうすか!?

 

「ヌン!!」

 

「うお!?」

 

考え事をしていたら目の前の大柄なお姉さんが攻撃してきました。正直やばかったっす。ハイ。

 

「ちょこまかと逃げおって…だが、もう逃げられないぞ男!!」

 

「その男っていうのやめてくんない!?グンジョーさんにはグンジョーさんっていう名前がありますのことよ!!」

 

「男の名前など呼ぶ必要もない!!」

 

「すさまじき、女男差別!!」

 

女尊男卑ここにきわまれり!!ってところか。

 

思えば原作でもルフィがすごい逃げ回ってたっけなぁ…。あいつなんであんな笑顔で逃げれたんだ?

 

ルフィさんマジリスペクトっす!!

 

「さて、そうこうしているうちに囲まれちゃったな…」

 

気づいたら男(←俺)包囲網が出来上がっていました。

 

この連携度に行動力。ううむ、できる!!

 

「さて、覚悟はいいか男?」

 

「いやあ、絶対絶命やねぇ…」

 

ギリリと引き絞られる弓。まあ、この状況普通の人ならオワタなんだけど…

 

「生憎こちらも死なれないものでして。」

 

「!!あたしの剣!!」

 

ええ、斬られたときに先ほどもう一本のほうを拝借いたしました。覇気には覇気でしか勝てん!!ならば覇気使いではない俺は…、徹底的に防御の方に回らせてもらおうか!!

 

「撃て!!」

 

「“暴風ウォークダウン”!!」

 

<ゴオオオオオオオオオオ!!>

 

作り出した斬撃の竜巻に次々と矢が突入し、お互いをせめぎ合い相殺しあう。本来は攻撃用だが、こういう状況ではこの技が一番と踏んだ。

 

「しかし、若干威力が弱くなっているような気が…」

 

前に比べて威力が低くなってる…いままであまり運動してこられなかったから、これくらいはしょうがない。

 

「でも、効果は十分みたいだ、ねっ!!」

 

「っ!!」

 

<ガキイ!!>

 

「うわ!!」

 

ガードには成功したものの、少し吹き飛んでしまった。急いで立ち上がり、目を凝らすと刀を振るったのは黒髪のお姉さんだった。

 

「ちょっと、お姉さん、この状況で斬りかかってくるとかどんだけブレイバーでクレイジーなんですか!?」

 

「黙れ!!この国に侵入したばかりか、護国の剣士から武器を盗むとは!!もう、生かしておけぬ、即刻その首切り捨ててくれる!!」

 

こわ!!この姉さんこわ!!女性はやっパ怖い!!

 

「いや…あの…この国にはわざと侵入したわけじゃないんですよ。信じてください!!」

 

「男はこの国に入っただけでも大罪だ!!」

 

「どんだけアンフェアなルールなんだよ!!」

 

「アリッサ!!援護するよ!!」

 

そうこうしている内にほかの皆さんが弓を携えながらこちらに走ってきた。再度こちらに矢の標準を構えられる。

 

「えと…アリッサさん…とやら?ここは休戦なんてどうですかって、どうわ!?」

 

「軽々しく私の名前を口にするな男!!今すぐ叩き斬る!!」

 

ぶねー!!今ちょっとかすったぞ!!

 

「チッ、ここではあまり問題を起こしたくてはないんだけども…こうなりゃ本気出すしか…」

 

望まない戦闘はしたくないけど、致し方あるまい!。

 

「みんな、何をしているの?」

 

殺伐とした雰囲気に似つかわしくない声が響いた。

 

「アマリー!!来ちゃだめって言ったじゃない!!」

 

「でも、心配だったから…」

 

出てきたのはさっきの幼女。おお!!もしや、あなたは、天使様ですか!?

 

「でも、そのおとこのひとはたぶんわるいひとじゃないよ」

 

「何…?」

 

集団の視線が幼女に集まる。

 

なんか話してるけど、あの幼女おれのことを弁護してくれてるっぽい。

 

「アマリー!!この国に男はいてはいけないんだ!!」

 

「でも!!けんぶんしょくでそのひとのこえをきいたけど、なにもわるいことかんがえてなかったよ!!このしまにきちゃったのは、ぐうぜんだって!!」

 

そうだよ!!グンジョーさんは紳士(変態ではない)なんだよ!!とは口が裂けても言わない。

 

「うるさい!!そんなの関係あるか!!」

 

「でも!!」

 

「これは我々護国の戦士の話だ!!子供は黙っていろ!!」

 

「…グスッ…ちゃんと…みだんだもん…」

 

あー泣き始めちゃった。あんな剣幕でまくしたてるから…。

 

とりあえず、このチャンスを逃すわけにはいきませんからね。グンジョーさんはこのすきに逃げます。バイビー、アドュー。

 

「!男が逃げたぞ!!」

 

 

あ、結構早く気が付いた。しかしだが、but、ヌハハハハ!!気づいてももう遅い!!ワシはにげーる!!…あ。

 

 

「あいやー、虎丸の場所聞いておけばよかったな…」

 

 

これぞ、音に聞こえし、あふたーふぇすてぃばる。とりあえず、どうにかしてこの島から脱出しなければ…。

 

俺の貞操が!!

 

ついでに命が!!

 

ア   ブ ナ イ

 



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やかましいわ!!

 

「ハァハァ何とか逃げきったか?ガハッ、しばらく運動してなかったから体に毒だぜぇ…」

 

 

怒れる女鬼人達から何とか逃げ切った俺は、藪の中に隠れながら息を整えていた。

 

かっこ良く海軍に捕まってみたものの、最終的に辿り着いたのが、女々島。

 

例えるなら、最高に気が立ってる状態のオオカミの群れに生まれたての子羊を突き落とすようなものだ。

 

もはや、己の運命を呪うしかあるまいに。

 

ま、恥ずかしながら俺にも夢はあったさ。

 

昔(といっても大まかにしか覚えてないが)は、特に何の感情も浮かばなかったけど、二十歳超えのグンジョーさんとしては、ヒャッホー!!水着水着!!なんて俺得だぜ!!的な感じでいたんだが、(その時のエドワードの目は、かわいそうなモノを見ている目だった。解せぬ。)見ると聞くとじゃ大違いだった・・・。

 

あれは、眼福とか言ってる場合じゃない。眼福の“が”の字をいう前に幸福の世界に旅立ってる。

 

というか、ルフィ!!あんた、よくあの中で生き残ったな!!今はあんたが生まれる何年も前だけど、グンジョーさんあんたに敬意を称するわ!!

 

 

フゥ…

 

 

さて、ここで色々整理をしよう。今、俺がすべきことは3つ。1つ、この島からの脱出、2つ、エドワードとの再会、3つ、虎丸の奪還。

 

最優先すべきは島からの脱出だな。このままこの国にいれば確実にぶっ殺される!!

 

というか、ルフィの場合色々あってやっと信頼を得るまでに至ったのだが、俺にはあそこまでする勇気はない。

 

グンジョーさんはチキンなのだ。笑いたくば笑うがいい!!

 

で、虎丸は出来れば取り返したいが…まぁ、難しいだろう。最悪、他の剣を使えばいい。

 

最後に白ヒゲたまだが、あいつは基本後回しで。あいつのことだ、野垂れ死ぬことはないはずだからいつでも会えるだろう。でもなー、あいつ寂しがりさんだからなー、どうしよかっなー。しょうがない、基本3D2Yでいこう!!

 

まぁ、その分、戦闘面での問題は山積みだ。剣技をさらに極めるだけでなく、

 

 

「覇気の習得だよなぁ…」

 

 

次の時代が求めているのは、学歴でも何でもない。

 

 

 

時代の最先端は覇気だ!!

 

 

 

実際、前の事件で、俺はガープ、センゴク、コングの覇気使えますヨ組に完膚なきまでフルボッコにされたのはいい例だ。

 

俺の武器は刀や、体の早さ。凄まじいスピードで敵を撹乱し、斬る。しかし、それだけではこの先の海を渡って行くことは難しいだろう。

 

例として、斬撃打撃が効かない自然系の能力者や、覇気を使いこなす強敵が出てくる。俺の攻撃が予測されるどころか、無効化されてしまう可能性もあるのだ。

 

そうなったら今のグンジョーさんには勝ち目ねぇよヤベェよ!!というわけである。うむ、我ながらなんと単純な理由。

 

というわけで、必ず覇気が必須なのだ。

 

というか、俺は忘れてはいない!!あのガープとかガープとかガープとかのどうよ?俺覇気使えるの羨ましいべ?って感じのドヤ顏を!!

 

クソウ、クソウ!!俺だって俺だって覇気を習得してやる〜!!というのが、ほとんどの理由なのだが、今は割愛しよう。

 

しかし、覇気を学ぶためには練習が必要なわけで、

 

練習するには、まずこの島から脱出しなげればいけないわけで。

 

 

「さて!!というわけでね、目の前に立ちふさがる壁をロッククライミングでもいたしましょうかなとグンジョーは「ねぇ、あなた」おひょー!?」

 

 

ババッ、と後ろを振り向くとそこにいたのは黒髪の幼女!!平らな胸を張り、ドヤ顏を浮かべながら俺を見上げている!!

 

ヤベェ!!服は露出が多いのに何も感じねぇ!!

 

というか、しまったー!!追っ手が後ろにいるのに全然気付かなかった!!

 

よし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

攫うか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?ムッ!!」〈ドゴッ〉

 

「ソボロッ!?」

 

「今何か変なこと考えてたでしょう…」

 

「イエ、メッソウモ、ゴザイマセヌ」

 

腹部を強打されて喘ぐ男と、それを見下ろす幼女の光景がそこにはあった。というか、俺だった。

 

 

「ゴッ、ガッ、ギッ」

 

ちょ、ちょっと待て!!重たっ!?今の攻撃子供が放ったものとは思えないんですが、グンジョーさんが可笑しいだけ!?

 

「フゥ、まあいいわ。あなたいい人みたいだし、こんかいだけはみのがしてあげる。でも、つぎは」

 

スゥ…、と振り上げた幼女の足は、再度俺の腹部をロックオン。

 

別世界のお父さん、お母さん。そして、今も頑張ってらっしゃるであろうレッドさん。

 

俺は今までの敵で、目の前の幼女が1番怖いです!!

 

「で、あなただれ?あ、うそついたらまあ、けるよ。」

 

「や、やめれ!!その振り上げた足を元に戻して!!グンジョーさんのライフはゼロよ!!」

 

何とか怒れる幼女を納めつつ、何とか痛みから回復して自己紹介を始める。

 

「えーと、名前はグンジョー。一応海賊…かな?」

 

「何でぎもんけいなの?ふーん…、まぁいいわ。こうていもかいぞくよ。いまはいないんだけど…」

 

知ってる、とは言えなかった。ん、というか、あれれ?

 

「皇帝いないの?」

 

「あっ!?」

 

目に見えてうろたえる幼女。あまり突っ込まない方がいいのかもしれないけど、俺的にそんな反応されると逆に気になるじゃないか!!

 

「で、先代がどうしたの?」

 

「いっていいのかな?まぁいいか。」

 

で、聞いた話によると

 

この国は、遠征による略奪をよく行っているらしいのだが(知ってる)数年前、先代の皇帝が、遠征先で、とある海賊の男に恋をしてしまい、『恋はハリケーンなのじゃ!!』とかでそのままついていってしまったらそうな。

 

そんなことがあったので、国は大混乱。紆余曲折あって、平穏な暮らしに戻ったらしいのだが、この国の人々は未だに、男=たぶらかし天然ジゴロの、覇気も使えねーのにいきがってるクサレ雑魚野郎、という方程式が成り立ってしまっているらしい。

 

「なるほど…。で、俺が男とわかるなり、ブッ殺そうとしたと」

 

「うん」

 

「な、なんて迷惑な」

 

…というか、男として言わせてもらおう。そんな男はぁ、ほんの一握りしかいねーんだよ!!(血涙)

 

 

「あー、なら俺早く逃げなきゃしじゃね?」

 

「そうだね、わたしは“けんぶんしょく”のはきがうまれつきつよくいからわかるの。ぐうぜんでこのしまにきちゃったんだよね?」

 

おお、やはり天使はここにいた。

 

いや、待てよ?・・・キュピーン!!

 

そうだ!!ここは女々島じゃないか!!見聞色の覇気が分かる人がいるなら、その人に俺がこの島に流れ着いてしまった事をわかってもらえば万事解決なんじゃ!?

 

ほんで、外に出してもらうついでに、覇気を教えてもらえば完璧じゃん!!やった、俺天才!!

 

「あ、それはむりだとおもう。おねえちゃんたち、おとこをみえればつかまえるか、ころしちゃえっていわれてるから」

 

「あっ、そうですか」

 

「そうだな、特に目の前で人目もはばからずに騒げばすぐに見つかるのは必然だな?」

 

えっ、と声の方向に顔を向けるとそこには、完全武装の女々島護国の兵士達軍団がいらっしゃいました。

 

 

「」

 

 

ギリリ!!と引き絞られる弓弓弓弓。

 

あれ、どうしよう。皆さんの水着コスが完全武装の鎧に見えるよ。

 

心なしか全員の後ろに般若が見える。いや、芸人ではなく。少なくとも、今はズグダンズンブングンゲームをする空気ではない。

 

 

「さて男。大人しく一我々と緒にきてもらおうか?」

 

 

先頭には口元を微笑ませつつも目が笑っていないさっきのお姉さんが。

フッ、OKOK。さてと、この状況での俺の選択肢を確認してみようか。

 

 

ライフガードッッ!!

 

 

1、大人しく処刑を待つ

 

 

2、何とか抵抗を試みて、矢(覇気つき)で射殺

 

 

3、レ・ミゼラブル

 

 

アカン!!暗い未来しか見えん!!どうする?どうすればいい!?そう、とりあえず俺のする事は!!

 

「すいませんでした。」

 

見事なジャンピング土下座だった。

 

目の前の女性陣がポカンとしているのが分かる。なるほど、惚れ惚れするほどの素晴らしいジャンピング土下座だったらしいな!!伊達に土下座を訓練してきたわけじゃないぜ!!

 

ククク!!そして、これも全て俺の計算通りよ!!男といえども、素直に謝る人間に

 

「捕えろ」

 

「いやー!?」

 

ダメでした。通じませんでした。

 

思わず逃亡するが、

 

「ヘブゥ!?」

 

何かが俺の足に絡まった!?

 

慌てて足元を見ると、そこには愛らしい白蛇がシュルシュルと俺の体を拘束していた!!というか、身動きの取れなくなっているぞ!!いや、何これマジで動かねぇぞ!?

 

クッソ!!これが覇気の力ってことか!?

 

「さてと、男よ。この島に侵入してタダで済むと思うなよ?せめて、闘技場で華々しく散りなさい」

 

ワイルド美人のワイルドスマイルですね?分かります。

 

というか、その前にだれでもいい!俺を助けてくでー!!

 



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俺は生きる

「ねぇ」

 

「…」

 

「ちょっと」

 

「…」

 

「おーい、お姉さん?」

 

「…」

 

「綺麗で美人なお姉さん?」

 

「…チッ」

 

「トイレいきた〈ゴッ!!〉」

 

「…私に話しかけるんじゃない男。殴るぞ」

 

「す、すいませんですた」

 

やめて下さいお姉さん。すでに殴った後に言い返すのもなんですが、覇気をまとったその拳と笑顔が怖いです。

 

さて、とっ捕まえられてどこにいくのかと思いきや、いきなり袋を被せられて運搬される惨めなゴミムシですよあたしゃー!!

 

運搬されてる途中も、相変わらず蔑んだ目を向けてくるお姉さん方。

やめろ!!興奮するじゃないか!!違った、悲しくなるじゃないか!!

 

いや、バカやってる場合じゃないのはわかってるんだけどねぇ・・・。

 

 

「男…、できることならこの私が直々に処刑してやりたいのだが」

 

やりたいのだが!?やりたいのだが何!?

 

そこまで言ったあと、お姉さんはニヤリと笑って言い放った。

 

「喜べ。皇帝がお前を使って遊戯をしてくださるそうだ。良かったな。来世で自慢するといいぞ」

 

来世―ッ!!

なるほど、俺は死ぬ前提ってわけですね?って、良くない!!断じて良くない!!誰かたーすーけーてー!!

 

助けを求めて縛り付ける蛇に必死にウィンクしたら威嚇されました。解せぬ。

 

これは本格的に死を覚悟した方がいいのだろうか?いや、

と、無駄な抵抗をしている間にどうやら闘技場についたようです。

 

…うわぁ。すでに観衆は興奮状態のようで、控え室らしき場所にいるのにうっすらと声が聞こえる。

 

 

「良かったな。護国の戦士達の見せ物で死ぬ事ができるとはお前も幸せだろう?」

 

「いや、幸せじゃないです。」

 

「貴様の意見は聞いてない!!」

 

「っ!?」

 

 

ガン!!と、袋詰めのまま蹴り飛ばされる。理不尽…

 

「おぅふ…」

 

「フン、もう少し蹴り飛ばしたいが、どうせもうすぐ死ぬのだ。情けはかけてやろう」

 

ありがたく思え、という言葉に思わず反応しかけるが、結果は見えてるので、やめておいた。

 

そして、いよいよ闘技場に運ばれる。

 

というか、乱暴にもぶん投げられた。

 

「ブハッ」

 

思わず肺から空気が漏れるが、何とか袋を頭から取り外す。そして、そこに広がっていたものを見て俺は戦慄した。

 

『死刑!死刑!』

 

一方的に敵視するような目

 

『死刑!死刑!』

 

俺を見せ物としか見ていないような目

 

『死刑!死刑!』

 

あざ笑っているような目

 

『死刑!死刑!』

 

そのどれもがこの世界に来て初めて味わう純粋な悪意だった。

 

改めて言おう。

 

 

 

ルフィさんあんたァマジですげぇよ!!

 

 

 

シュプレヒコールを全身に浴びながら改めて未来の海賊王に敬意を表していると、野次が次第に小さくなっていった。

 

何だ?

 

それと共に、どこからか、カツン、カツン、とヒールを打ち鳴らす音が闘技場に響く。

 

 

「誰じゃ一体…」

 

 

あ、パンダ。

 

 

「妾の通り道に…」

 

 

パンダかわいいよパンダ。

 

 

「子パンダを置いたのは!!」

 

 

〈キューン!?〉

 

 

「パンダーーーーーー!?」

 

 

あれ!?何!!俺この展開!?

 

蹴り飛ばされて転がるパンダを目の端で追いながら、思わずと言った感じで目の前の背の高い女性を見つめる。

 

つぅか、空いた口がふさがらん・・・。

 

他人の空似か?

 

いや・・・

 

 

『キャー蛇姫様ー!!』

 

『ステキー!!』

 

 

「九蛇皇帝ボア・ローズマリー様のおなーりー!!」

 

 

間違いない、あの美貌、高身長、絶対あの人の関係者だ!!

 

目の前にはスラリと背の高い長身黒髪の美女。その両脇には大蛇と黒豹が控えている。明らかにバキュラとサロメモドキですね!!

 

というか、この人も皇帝なの!?凄まじい血筋だなオイ!?

 

 

「ンフフフフフ」

 

 

微笑みながら俺に笑いかける皇帝サマ。

 

あー、よく見ると、顔が微妙に違う。遺伝って不思議ですね。

 

 

「蛇姫様が微笑んだ!!」

 

「ああ、何とお美しい!!」

 

 

ング、クソウ…。ぶっちゃけ、その意見には同意です!!

 

 

「お前が侵入した“男”か。」

 

 

辛辣に、特に男の部分を強調してきました。目も俺を完全に馬鹿にしている。やっぱりか!!うっかりその美貌に騙されるところだったぜ!!これは、あれだな、適当に嘘をついたところを射殺すパターンですな。

 

だが、そのフラグ見切った!!

 

 

「そうだ」

 

 

だから正直に答えたのだが。

 

途端に周りの殺気が鋭くなったのはなぜだ!?

 

「蛇姫様に何という言葉遣いを!!」

 

「最低だ!!」

 

ええ、何それ口のきき方が気に入らなかったらしいです。

 

というか、やめて!?サムズアップの逆はリアルにやられるとかなりキツイ!!

 

「良い、許す。」

 

何とか、皇帝の指示で何とかその場を諌めた。しかし、観衆の怒りは未だ収まらないようで、弓を引き絞っている人もいる。

 

適当な理由で殺されたらたまらないので、さっさと本題に入らせてもらおう!!

 

 

「頼みがある。俺をこの国から出してもらえないだろうか。」

 

『!?』

 

この発言に闘技場がざわつく。

 

「命乞いか?」

 

「違う。誤解が生じているが、俺がこの島に流れ着いたのは本当に偶然なんだ。そもそも、不法入国したつもりも、君達と争うつもりない。だが、俺には行きたい所があり、死ぬわけにはいかないんだ。だから、頼む!!」

 

そう、ここで一か八かのルフィ式送ってもらっちゃおう作戦を決行したのだ!!思えば、俺は悪いことは何もしていない!!

 

ならば、そこに活路がある!!

 

 

「嘘をつけ!!」

 

「蛇姫様騙されてはなりません!!この男は何かしらの目的があって我々を欺こうとしているのです!!」

 

だー、うるせー!!本当の事言ってんのに嘘とか言うなや!!軽くウソップの気持ちがわかったけど!!

 

「ンフフフ、面白いことをいう。不法入国を偶然といい張り、それだけでなく、妾に旅路の足要求をするとは。」

 

さぁ、どうくる?反応を見る限りでは少なくとも交渉はしてくれそうな気が

 

「だが、断る!!」

 

「何…だと!?」

 

まさかの断り方!?

 

「この島は女々島。男子禁制は掟じゃ。その掟を破り、侵入しただけでも許し難い。というか、妾は、男という存在自体が嫌いじゃ。」

 

「んな、馬鹿な!!」

 

「先代の皇帝も弱い男なんぞに騙されおって・・・、あのような軟弱ものは九蛇にはいらぬ。まぁ、今となってはこれで良かったのかも知れぬがな。」

 

フフフと笑いながらさりげ酷いことを言ってる美女。

 

話は終わりとばかりにスッ、と手を上げると俺の後ろからゴゲッ、ゴゲッという不吉な鳴き声が聞こえる。

 

 

〈ッ!!〉

 

 

危険に気がついたのか、縄になっていた蛇がシュルシュルと拘束を解いた。

 

体は自由になったけどさぁ・・・。

 

嫌な予感がひしめいてるんだけど・・・。

 

 

「中枢の海の怪物。鶏から生まれた蛇、“バジリスク”じゃ。この国では、強い者こそ美しい。本来なら見ることさえ嫌じゃが、特別に見届けてやろう。さぁ、潔く戦い、散れ。」

 

〈ゴゲー!!〉

 

振り返るとそこには、正真正銘本物の…怪物がいた。

 

 

「オイオイ・・・。」

 

まがりなりにも剣士を名乗っている俺は正に武器専門。

しかし、虎丸どころか南部気もない状況なのに、この相手!!一体どうすればいい!?

 

「さぁ、行けバジリスク!!」

 

〈ゴゲー!!〉

 

そんな困惑をよそに怪物が俺に襲い掛かってきた!!

 

しかし…ドスドスと突っ込んでくるバジリスクに対して俺ができたことは急いでその場から飛び退くことだけだった。

 

 

〈ゴゲ!!〉

 

「うわぁぁ!?」

 

 

俺のいた位置に鋭い嘴が突き刺さると共に地面が陥没する。

 

何つー威力だ!!今の状態であの一撃を食らったらひとたまりもないぞ!!

 

 

「男逃げるんじゃないよ!!」

 

「正々堂々と戦え!!」

 

 

興奮した観衆から野次が飛ぶが、俺にはそれに答える暇もない。

 

刀がないと、俺はこんなにも弱いのか!?刀を持たない剣士は脅威に抗う力すらねぇのかよ!!

 

俺はいままでかんじたことのないような恐怖を感じた。

 

それとともに、脳裏にあの時の記憶が蘇る。

 

 

 

ロジャー、レイリー、そして白ひげ。

 

 

 

ボロボロになった彼らを背に海軍最強の実力を持つ海兵に立ち向かった。

 

本当は俺も逃げ出したかったさ。

 

でも、なんであの時、俺の体は敵の前に出てしまったんだろう?

 

 

 

 

『自分にしかできない生き方をしろ』

 

 

 

 

 

今更だけど思い出す。

 

この世界にくる前に聞いた言葉。

 

俺はそれが分からず、ただ流されるままに生きている。

 

分からない。

 

未だ、俺は何をすればいいのか?

 

何をするべきなのか?

 

 

 

 

 

でも・・・これだけは言える。

 

 

 

 

 

 

俺は生きたい!!

 

 

 

 

願う!!

 

 

 

また、彼等にに会いたい!!

 

 

 

もっと、彼等と語り合いたい!!

 

 

 

だから…俺は生き残る!!

 

 

 

 

 

十分な距離を取った後、俺は皇帝を睨みつけた。

 

 

「何じゃ?」

 

 

不快そうな顔をしながら皇帝は俺を睨む。

 

少し息を吸ったあと、俺は静かに地面に膝をつき、頭を下げた。

 

 

「刀をください。」

 

 

一瞬闘技場が静まり返る。

 

 

『・・アハハハハ!!』

 

しかし、次の瞬間辺りでまた笑い声が起こった。

 

そりゃそうだ。今俺は最高に無様だろう。

 

地面に手をついて土下座。

 

こんな光景自分でも笑っていたに違いない。

 

 

「ほう、武器をよこせと申すか。」

 

「刀がいいです。そしたら俺は逃げません。正々堂々と戦います。」

 

 

俺は黙って土下座を続ける。

 

その光景を見ていた皇帝はそれをおかしそうに見下ろしながら、侍女に合図を送る。

 

すると、俺のいる場所に剣が投げ入れられた。

 

「男。約束は守れよ?さぁ、・・潔く散りなさい。我らが見届けてやる。」

 

皇帝の言葉と共に、観客のボルテージが最高潮に達する。

 

『死刑!死刑!』

 

彼女達は俺が魔獣に喰われる場面しか想像してないのだろう。

 

投げ渡された刀を拾った俺は、フゥ・・・、と軽く息を吐いた。

呼吸を整えつつ、ゆっくりと刀身を鞘から抜き取り、刀身ごしに相手を睨みつける。

 

叫ぶ群衆、こちらを見おろす皇帝、涎を垂らしながら俺を喰わんと突進する魔獣。音が消え、感じる五感のその全てが、否、世界そのものが俺を残してスローモーションになる。

 

思えばこの感覚も懐かしい。殺すか、殺されるか。勝つか、負けるか。斬るか、斬られるか。命をかけた真剣勝負。上等、それが俺の生きている世界。誰でもない、俺が望んでここにいる世界の姿。

 

 

 

 

バジリスクを見据え、俺は小さく口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旋風

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脱力した状態から一気に腕を動かす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スクランブル!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、風のない凪の海に一陣の風が吹き抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『!?』

 

 

 

 

 

 

 

流石に魔獣。その命の鼓動は人のそれを超える。そして、その体はまさしく生きた鎧。その気配は強者の証。常人には到底太刀打ちできない絶対的な暴力。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう斬り終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈グゲッ!?〉

 

刀を鞘にしまった鋭い音ともに轟音を立ててバジリスクが崩れ落ちた。

 

 

『えっ!?』

 

 

そこ光景に女々島を護る勇敢な戦士達は言葉を失った。

 

 

 

 

 

「何を驚いてるんだ?」

 

 

 

 

 

しかし、俺は心外だと観客を睨みつける。

 

確かに俺は弱いし、この世界で何をすればいいかわからねぇ。そもそも剣がなきゃ何もできない。この世界の厳しさとか、未だに理解できねぇ。酒を飲み交わした中だけど、未来の大物達の中に混じっていてもいいのかも心配になる小心者だ。それに、自分がこの世界で何をすればいいのかわからん。自分にしかできない生き方をしろ?そんなものどうすればいいのかさえ分からねぇよ。

 

けどさ、

 

「知ってるか?」

 

俺は剣をゆっくりとあげて、剣先で皇帝を指し、不敵に笑った。

 

「俺は、”大嵐”だぜ?」

 

けどさ、今だけ…、ちょっとくらい格好つけさせてもらっても構わないよな?

 



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閑話休題:女帝の苦悩

全話に加筆修正いたしました。


 

男は嫌いじゃ

 

男は弱い

 

 

 

 

そう思い始めたのはいつだったであろうか。

 

幼少の頃は、男とはどのような生き物なのかをさんざん聞いてきた。

 

 

 

 

 

覇気も使えず

 

 

 

 

 

勇気もなければ

 

 

 

 

 

弱く

 

 

 

 

 

ただ逃げることしかできない

 

 

 

 

 

当時、私は、男とはどのような生き物なのかを聞きつつも深く考えたことはなかった。

 

しかし、成長し・・・初めて見た九蛇海賊団の遠征。

 

そこで、初めて男という生き物を生で見た。

 

当時すでに九蛇海賊団の悪名は中枢の海に広がっていた。滅多なことでは戦闘は仕掛けられないし、「九蛇の海賊船を見たら逃げろ」というのは、この海で生きる者にとっては絶対と聞いた。

 

しかし、戦闘を仕掛けてくるものはいた。

 

それが男だった。

 

 

「金をよこせ!!」

 

「おとなしくしろ!!」

 

 

・・・何じゃこいつらは?

 

覇気も使えない癖になぜこんなに偉そうなのじゃ?

 

 

「うわぁ!?」

 

「な、何だこいつらは?」

 

 

あまりの弱さに少し蹂躙すれば、すぐに弱気になり、立ち向かってくる勇気もない。

 

 

「助けてくれぇ!!」

 

「命だけは!!」

 

 

そしてただ逃げだすことしかできない。

 

・・・何じゃこの生物は?

 

 

 

 

 

覇気も使えず

 

 

 

 

 

勇気もなければ

 

 

 

 

 

弱く

 

 

 

 

 

ただ逃げることしかできないできないか。

 

 

 

わらわの男に対する見識は九蛇の思想と相まって確固たるものとなった。

 

それからというもの、わらわは襲いかかる男すべてを根絶やしにすることにした。

 

誰よりも男の海賊を打ち取り、誰よりも男が統べる商船を襲いかかった。

 

 

女よりも男は弱い。

 

 

九蛇海賊団は強くあるべき。

 

 

故に九蛇は男になどなびかぬ。

 

 

故に、全皇帝がいきなり男を追いかけて国を飛び出したときは、驚きと共に怒りに襲われた。

 

男なんぞに傾倒し、国を捨ておって!!

 

彼女の強さを尊敬しただけに軽蔑した。

 

そして、わらわは皇帝に選ばれ、そして徹底的に男は排除せよと命じた。

 

 

わらわ達は最強の九蛇海賊団!!だれよりも強い!!

 

 

我らに男はいらぬ!!

 

 

なぜなら、男とは醜いものだからじゃ!!

 

 

じゃから、遠征から帰った時、この国に男が侵入したと聞いたとき、一体自分はどのような顔をしていたであろうか。

 

下賤な男がこの島にしたじゃと?

 

 

ふざけるな!!

 

 

怒りのまま護国の兵士に命じ、即刻捕えさせ、見せしめのために闘技場で殺してやることにした。

 

予想通り、捕えられた男は、覇気も使えず、勇気もなければ、弱く、ただ逃げることしかできないできない。

 

わらわに頭を下げた時もその認識が変わらず、潔く戦うと言った時も、何か方法を用いて逃げようとしているのだと思った。

 

いつも通りだと・・・。やはり、男とはこの程度なのだと思った。

 

でも・・・目の前の男は何じゃ?

 

 

『えっ!?』

 

 

凪のないはずの凪の海で一瞬風が吹き、次の瞬間バジリスクが崩れ落ちていた。

 

今の一撃・・・。一瞬にして刀を振り、そこから鋭い剣撃が飛び出したのが見えた。

 

あの男は何なのじゃ?

 

逃げずに目の前の敵に立ち向かい、あれほどの剣の腕を持ち、不敵に、そして勇気に満ち溢れた顔、そして・・・あの刀は何じゃ?覇気?いや、武装色ではない!!もっと別の何か。でなければ、刀があれほどの質量を纏うことなぞ出来るはずがない!!

 

 

「知ってるか?」

 

 

いつの間にかこちらをみつめていた男に気付き、慌てて平静を装う。

 

 

「俺は“大嵐”だぜ?」

 

 

自信に満ちたその顔に、今まで感じたことのない気持ちが現れた。

 

あの男は何なのじゃ?

 

何なのじゃこの気持ちは?

 

 

「蛇姫様?」

 

 

ハッ、と気付くと侍女が怪訝な顔をしてこちらを見ていた。

 

 

「どうかなされましたか?」

 

「い、いや、何でもないのじゃ。」

 

 

改めて男を見る。

 

緊張を解くことなく、あたりを警戒しているのが分かる。

 

目の前の敵を倒しても尚油断をしないとは、中な・・・なっ、いや、そんなことはない!!

 

男は弱いのじゃ!!

 

覇気も使えぬ分際で調子に乗り、すぐに逃げる生き物なのじゃ!!

 

そんなもの認めぬ、そんなもの認めぬぞ!!

 

 

「おい!!」

 

「ハイ!?」

 

 

思わずとい言った感じで侍女を怒鳴りつける。

 

 

「“アヤメ”を呼びつけよ!!」

 

「へ!?アヤメ様ですか!?」

 

「そうじゃ!!あやつは護国の戦士の中でも一番強い!!あいつと、あの男を戦わせるのじゃ!!」

 

「し、しかし」

 

「早くせよ!!このまま男に負けてよいのか!?」

 

 

それを聞いた侍女は、慌ててアヤメを呼びに行った。

 

 

「何じゃ・・・一体何なのじゃ・・・。」

 

 

今怒っているのは、男に負けたのが悔しいのか、今自分が抱いている感情が何なのか、わらわには分からなかった。

 

 



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俺はどちらかというと犬派

 

刀を取り戻して大分いつもの調子が戻ってきた。

観衆を一瞥するが、今だポカーン、という顔をしている。

ONE PIECE世界の皆さんは顔芸が得意でいらっしゃる。

さて、そろそろ脱出方法を探さなければな・・・、と思っていると、不意に背後に気配を感じた。

 

「…何だ?」

 

そこには先程俺を蹴ってきたお姉さんがいた。いや、気配を気づかせないまま後ろから現れるとは、結構な実力者のようだな。

 

「アヤメ様よ!!」

 

「アヤメ様か男の相手をなさるわ!!」

 

途端にお姉さんの存在に気付いたギャラリーが騒ぎ始める。

よく分からんが、やはりこのお姉さん強いらしい。とりあえず挨拶。

 

「どうも、さっきぶりだね。」

 

「…」

 

答えない、そりゃそうか。

 

「まさか、バジリスクが倒されるとはね。珍しい生物だから強いとは言えないのかしら?」

 

「お?」

 

と思ったら急にしゃべり出した。

なんだ、噂に聞くツンデレか?

 

「だけど、私は感謝してるの」

 

「何?」

 

「これで、思う存分あなたを蹴り飛ばせる!!」(ビュン!)

 

「アブねっ!?」

 

何となく危険を感じてバックステップで咄嗟に下がる。

 

〈バゴン!!〉

 

気付いた時には、闘技場の床が砕け散っただと!?

というか、かかと落としでクレーターができるってどんな威力だよ!?

これも覇気の力なのかー!?

 

「この島では、私は蛇姫様の次に強い。しかし、私は、遠征には参加できないの」

 

それはね、と続けるお姉さん。

 

「少し…、やりすぎてしまうからよ!!」

 

「!?」

 

再び足技の攻撃が繰り出される。一発一発が重く、それだけではなく、速い!!

 

「ぼさっとしてるんじゃない!!」

 

「のっ!?」

 

回し蹴り、回転回し蹴り、正面蹴り、次々と俺に攻撃が叩き込まれる。

・・・というか、今すごく困ってる。いや、なんというか、・・・ちょっ、見え・・・る、いや、見えない!!

簡単に言えば、お姉さんが蹴りを放つ度に何かが、見えそうになるんだが、見えない。見えないんだよー!!

何だ、男心をくすぐるような攻撃は!?

でも、見に行ったら確実に刈り取られる!!

ジ、ジレンマ!!

 

「ふん、見聞色でも使えるのかしら?でも、動きが悪いわね。やはり男はその程度ってこと?」

 

不満そうにため息をつきながら彼女は一時的に距離をとる。

 

「イヤードウデショウネ。」

 

ゼーゼー言いながらなんとか答えるが、うまく答えられない。

色々と葛藤していたからです、とは死んでもいえないからな!

一方、お姉さんはその反応にニコリと笑いながら手を握り、開いた。殺る気満々ですね!!

 

「まぁ、いいわ。本気を見せてあげる。」

 

ん?何すんの?いや、待てよ?

この展開、…まさか。

しかし、その悪い予想は当たる。

突如、彼女の体がザワザワと騒ぎ始める。

 

「出たわ!!悪魔の力!!」

 

「これで男なんか楽勝ね!!」

 

「…あー、なるほど。」

 

「そうよ。私は海の悪魔が入った果実を食べたの。」

 

次の瞬間、黒い影が俺の前を通り過ぎたような気がした。

 

「え、なっ、ガハッ!!」

 

突如背後から襲いかかる衝撃。攻撃された、と判別する暇もなく、そのまま吹き飛ぶ。

しかし、眼下には剣山!!マズイ!!

 

「っづあっ!!あぶね!!」

 

柵に捕まり勢いを殺す。

 

「ふー。アブねー。」

 

「余所見していいのか?」

 

「えっ、グガッ!!」

 

腹に蹴りが叩き込まれる!!

 

「あっ」

 

マズイ、意識が飛びかける……。仕方ない、オラッ!!

 

「いってぇぇぇぇぇ!!」

 

「!?」

 

刀の柄で思い切り自分を殴る!!

俺の奇行に彼女が一瞬にして飛び退く。おかげで意識も戻ったし、間合いもとれた。

で、最初は視認できなかったその姿も確認できたんだけど、喜ぶべきか、どうするべきか…。

 

「あー、なるほどね。見たことある。ネコネコの実?ってところか?」

 

言葉の通り、目の前には黒猫人間がいた。今までまぁ、少ないとはいえ、色々な能力者を見てきたが、動物系は初めてみたな。

 

…かわいいじねぇかチクショウめ。

 

「そうよ?ネコネコの実、モデル“黒猫”。機動性においてはこの国で敵う者はいない!!」

 

再度跳躍!!動きは素早いがその動き見切った!!だが、

 

 

「ハッ!!」〈ビュン!〉

 

「んなっ!?」

 

空中で加速だと!?おい、マジかよ!?

 

「ちょ、お前それ!!」

 

「あぁ、中枢の海に行った時に覚えた。知っているのか?」

 

「…」

 

何も言えねぇ!!俺何も言えねぇぞ!!それ、思いっきしCP9の剃じゃねぇか!!九蛇海賊団一体何と戦ってるんだよ!!…は、ともかく。

 

〈ビュンビュンビュンビュン!!〉

 

動物系は身体能力と言う点では最強とは良くいったものだ。動きが目で追えん・・・。

これは、少しやる気を出さなきゃいけないね。

 

「おい、九蛇皇帝さんよ!!」

 

あらん限りの大声で叫ぶと、背後でビクリと反応が返ってくる。

 

「な、な、な、なんじゃ?」

 

いや、そんな驚かなくてもいいじゃないですか。

 

「さっき、言ったよな?俺を処刑するって。だが、俺がこいつに勝ったらどうするつもりだ?」

 

「っ!?それは…」

 

よしよし、勝つなんて想定外だったろうからここで一気に丸め込む!!

 

「じゃあ…、もし、勝ったら俺をこの島から解放するってのはどうだ?あ、もちろん旅の足つきで。」

 

『!?』

 

闘技場に衝撃が走る。

これには、俺を再度攻撃しようとしていたお姉さんも動きを止めざるをえなかったようだ。

 

「何と愚かな事を!!蛇姫様、男の言うことを聞いてはなりませぬ!!」

 

ええい、余計なことを言うな!!いや、でもそんなの関係ねぇ、一気に畳み掛けてやる!!

 

 

「おやぁ?この国は強い者の言うことは絶対何じゃないんですかぁ?あれですか、俺が男だからダメってことですかぁ?それは、この国の根本的なルールを破っちゃうことになひますなぁ!!」

 

「っ!!」

 

 

ギリリと歯をかみしめながら、皇帝が悔しそうにしているのがわかる。

よし、乗っかってきたー!!

 

 

「もう一度言うぜ・・・。俺がこいつを倒したら俺を自由にしろ。」

 

 

さぁ、どう来る?

 

 

「・・・いいじゃろう。ただし、貴様が負けたら即刻その首斬りおとしてくれる!!」

 

 

オッケ!!その言葉を待っておりました!!

 

 

「さぁて、じゃあ一丁頑張りますか。」

 

 

子猫ちゃん、俺と遊ぼうぜってな?あ、ついキャラ間違えた。いや、でも安定なのだろうかどうなのだろう?

 

 

まァ、いいか!!

 




オダッチ、マーガレットさんの原案である黒猫をモデルにしました。
猫可愛いよ猫。
最近猫カフェを体験しましたが、中々どうしてプロ意識の高いネコちゃんたちでした。


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特典ではない、裏付けされた力

「調子に乗るなぁ!!」

 

「っ!!」

 

約束はしても勝負はついたわけじゃない。

余計な攻撃はかわして、何とか相手の隙をみる。慣れてきたおかげか、先ほどよりもスムーズに相手の動きが見えるようになってきた。

 

「ちょこまかと!!」

 

「いいね、調子でてきたよ!!」

 

地面に思いきり拳を突き立てる。

そして、割れた石を持ち上げ・・・そらくらえ!!

 

「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!!」

 

ゲヒャヒャヒャヒャヒャたーのしーいー!!

これですよ、こういうんのを戦いって言うんですよ、リビドーが溢れてくーるー!!

 

「貴様そんな力どこから!?」

 

「気分!!」

 

「」

 

そうです、モチベーションの問題ですが何か!?

 

「だがっ・・・問題ない!!」

 

おお、投げた石の上を渡ってきている!?

しかし、あまり時間はかけられないな。

 

「なら、これで決めさせてもらおう!!」

 

「上等!!」

 

腰を落とし、鞘を構え呼吸を整える。

さぁ、お前を斬る!!

 

「カミカゼ“嵐”!!おらぁ吹き飛べ!!」

 

「ハアッ!!」

 

神速の刃と音速の刃が激突!!

あー、あの中に入って行ったら死ぬな・・・。普通の人なら逃げますが。

 

〈ガォォォォォォォォォォォォォォォォ!!〉

 

『キャアアアアアアアア!?』

 

「まだまだぁ、“辻斬り風”!!」

 

だが、俺はあえてその中に突っ込む!!

 

「え?」

 

「“ステルス”!!と見せかけて」

 

トス、

 

「あ・・・・・。」

 

「おおっと危ない。」

 

よくある首トンで意識を刈り取らせていただきました。もちろんアフターケアも忘れない。

女性の柔肌に刀傷つけるわけにはいかないからね。グンジョー君はジョントルマンですのことよ!!褒めろよ!!

 

「・・・。」

 

「お?」

 

おや、皇帝さんが唖然としている。

 

「おーい。」

 

「っ!!な、なんじゃ!?」

 

「勝ったよ。約束は守ってよ?」

 

「・・・もちろんじゃ。」

 

良かったそれだけ聞ければいいんだ。何せ俺すでに

 

「ガタガタだしぃ・・・。」

 

後はよろしく。

消え去る意識と共に最後に映ったのはこちらに駆け寄ってくる女ヶ島の戦士たちだった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

side ボア・ローズマリー

 

護国の戦士の中でも最強の戦士が負けてしまった・・・。

あまりのショックに呆然としていると、男が話しかけてきた。

 

「おーい。」

 

「っ!!な、なんじゃ!?」

 

「勝ったよ。約束は守ってよ?」

 

「・・・もちろんじゃ。」

 

それだけのやり取りをした後、男の体が傾き、

 

「ガタガタだしぃ・・・。」

 

そのまま倒れてしまった。全く無謀というか何というか、訳のわからなぬ生物じゃ・・・。戦士に回収に行かせたが、そこで国民達から不平不満の声がこぼれた。

 

「蛇姫様、今すぐその男を死刑にして下さい!!」

 

「このままでは我々の面子が丸潰れです!!」

 

クッ・・・それは、分かっておるが・・・。

 

「蛇姫様?」

 

「・・・もうよい止めよ!!」

 

荒々しく席を立ち、思わず怒鳴り声をあげていた。

 

「この国では強き者の言うことは絶対じゃ。わらわは約束を守る。」

 

そう言い残した後、城への道を歩く。

・・・いきなり怒鳴るとはわらわらしくなかったな。はしたない。

そう思いながら闘技場に背を向けた、その時だった。

 

「蛇姫様!!」

 

侍女がこちらに走ってきた。

 

「・・・・どうしたのじゃ?」

 

「ハッ!!実は処刑用に捕まえていた猛獣が檻を脱走しまして!!」

 

「何っ!?」

 

マズイ!!捕えている猛獣はどれも凶暴な生物ばかりだぞ!!

 

〈ウオオオオオオオオオオオオオウ!!!!〉

 

「遅かったか・・・。」

 

闘技場から響いた獣の吠える声。

そこには、黒い体毛をした巨大な豹が入場用の門を突き破り、闘技場に侵入したところだった。

 

「全員逃げよ!!」

 

わらわの声が響くとともに国民達が出入り口に殺到する。しかし、これでは確実に犠牲者が出る!!

 

「きゃあ!!」

 

しかし、逃げ遅れた子供が倒れる。マズイ!!

 

〈ガァァァァァァァァァァァァァウ!!〉

 

豹は彼女を標的にし、闘技場から一気に飛びかかった。

 

「キャアアアアアアア!!」

 

マズイ、このままでは!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈−−−ォ〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾッ、と背筋に寒気が走った。

それはまごう事なき“恐怖”

わらわが今まで生きてきて、今まで感じたことのないような濃密なものだった。

それがすぐ近くにいる…怖い!!

 

〈−−−−−−−−−−−−−−〉

 

〈ウ、ガルゥゥゥ〉

 

 

豹が冷や汗をかき、ガタガタと震えながらその場に伏せる。

 

〈−−−!!−−−−−−−−−−−!!〉

 

〈ウァゥ〉

 

そして、一言二言呟くと、そのまま豹が気絶してしまった。

 

何?

 

そこにいたのは…何?

 

人?

 

人ならあの背後から現れた“あれ”は何なのじゃ?

 

剣を持った何か(・・・・・・・)”?

 

それは2対の双眸、そのまま気絶した豹を見つめた後、フッと何もなかったかのように消えてしまった。

 

 




スタ○ド…?いや、化○?まさかまさかのアスラ○キーナ?詳細は次章、シャボンディ諸島編で!!


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少し立ち止まって力を付けろと過去人は言った

身体が動かん。それどころか、指一本動かせん。何だこれどんな状況だ。

 

 

「…何コレ。」

 

 

なるほどね合点が言った。

今現在包帯グルグルミイラ男。

そりゃ動かないわけだよ!!だって全身拘束されてるんだもん!!俺縛られる趣味ないからこの状況を素直に喜べない!!

とりあえずベッドから起き上がろうと柔らかいベッドに手をつk

 

 

「ッ!!!!!!!!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イダぁぁぁぁぁああああああああ!!!???」

 

 

途端に腕から頭へと一気に駆け上る激痛。ジ〜ンジ〜ンとまるで波の揺り返しのように響く

 

 

「ここどこだっけ?」

 

 

おかしいちょっと前までの記憶がない。俺そういえばどうしたんだっけ?私はどこ?ここは誰?

海軍にフルボコられて・・・あ、思いだしたら急にムカっぱらたってきた。あの山猿と金色大仏とパリラいつかシメル。

まぁ、とりあえずこの話題は・・・

 

(そっとしておこう。)

 

ですよね。

さて、その後逮捕された俺はインペル投獄手前で華麗なる大脱走・・・。あ、ちょっと今度は震えが止まらなくなってきた。海面から迫る無数の巨体。涎を垂らすキバ。この記憶は思い出しちゃいけないと身体のどこかがアラームを発している!!

そう、先人は言った!!

 

(そっとしておけ!!)

 

というわけで再び元の話題に戻ろう。

そして、何とか“根源たる恐怖”から逃げだした俺はみんなの憧れ、男の夢、桃源郷、ガンダーラ、“女ヶ島”アマゾン・リリーに流れ着いた俺は逃げて逃げて捕えられ罵られシメられ

 

よし、結論は出た。

 

(撤退だ!!)

 

「了解たぜリーダー!!」

 

瞬時に生命の危機を察知した俺はベッドから華麗にジャンプして目の前の床に着地…して体中に衝撃が走りすぐさま卒倒した。

 

「あ!足が!!ぁ、腕までも!!ついでに体中のあらゆる部位が電撃属性で部位破壊ぃぃぃイイいいぃぃい!!」

 

そのままの体勢でゴロゴロと床の上をローリング!!そしてローリングでさらに体中に広がる激痛!!

マズイこのままでは本格的に意識を失いかねない!!

 

「あら〜?あなた何やってるの〜?」

 

「げっ!?」

 

見つかった!?何という最悪のタイミング!!おもれ、この世には神も仏もいないのか!?このままではナース帽をつけた悪魔に消された男としてギネスに載ってしまうではないか!?

 

「あなた〜。え〜と〜〜〜〜?」

 

「ちょ、ちょっと待って!!ゴメンナサイ!?」

 

「あのね〜。蛇姫様がね〜〜〜〜〜?」

 

「すいません!!ちょっと諸事情あってまだ死ぬわけにはいかないんです!!」

 

そのまま背後の窓にダイブ!!

わほ〜〜〜このまま逃げてやるぜ…あれ?何か忘れ

 

「あ」

 

しまったぁぁぁぁぁぁぁ!!俺重傷でいつもの身体能力ないんだった!?というか、このままだと俺激痛で絶対ハゲる!?

 

「やべえェェェェェェェェェェ、え、え、あれ?」

 

しかし、宙に飛びだした瞬間に身体がピタリと停止した。

 

「あのね〜〜〜〜〜?」

 

「え?」

 

服の襟を引っ張られている感触を感じて後ろを振り返ると、先の看護師さんが相変わらず頬に手を当てながらニコニコとこちらを見下ろしていた。

 

「話を〜〜〜聞いてほしいのよ〜〜〜〜〜?」

 

「…分かりました。」

 

(行って来い)

 

 

その笑顔に拒否権は、ない。

 

 

 

 

「話があるのなら先に行ってくださいよ…」

 

「何か〜〜〜言ったかしら〜〜〜〜〜?」

 

「いえ、何でもないっす」

 

 

あの後、冷静に聞いてみると俺の誤解だということがよく分かった。

満足に回復していない状態で行く共の戦闘を繰り広げて気絶した俺はその後3日間ほど気絶していたらしい。

というか、最近俺気絶しすぎじゃね?気のせいだよな?

 

ハァ

 

というわけで、皇帝に約束した件について話さなければいけないらしい。

そういえば、戦闘後のルフィもハンコックに呼ばれていたっけ・・・。今となっては何とも懐かしい記憶だなオイざっと20年前か?

 

「さっきから〜〜〜呆けてるけど〜〜〜どうかした〜〜〜?頭〜〜〜ぶつけたの〜〜〜?」

 

「あ、いや大丈夫ですから懐から出したその怪しげな薬をしまってください早急に!!」

 

というわけで俺は皇帝の間の前にいる。

まぁ、俺の身体とか人目を外れるためとか色々な理由で必死に隠れて来たんだけど割愛。

途中「男はどこだ〜〜〜!?」とか言ってる物騒な集団がいたけど僕は何も見てないヨ。

と、あたりが騒がしくなってきた。

 

「皇帝陛下のおな〜〜〜り〜〜〜!!」

 

カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ、ドスン!!

高いハイヒールを鳴らしながら奥の部屋からやってきた長身美女はデカイ蛇のクッションに荒々しく腰かけた。

 

「…」

 

メッチャこちらを睨みつけてきます。どうしよう怖い。なまじ美人だからすっごい怖い。

でも、俺は男の子!!

やればできることを証明してやるぜ!!

 

「…」

 

「…」

 

アカン!!空気何このアウェー感!?話しが続きませんですけど!?

 

いや、これが向こうの作戦か!?こうやって俺を混乱させるつもりなのか!?どんどん俺をジリ貧にさせようという噂に聞く孔明の罠なのか!?

 

もしかしたらこれか再度処刑するつもりなんですか!?いやだ!!もう蹴り飛ばされるのはいやだあぁぁぁぁぁァァァァァ「話を聞け!!」

 

「スボロッチ!?」

 

隕石の激突もかくやという音を立てて床に埋没する俺の頭。

アカン、即刻処刑されるとは思わなかった。すまねえおやっさん俺はもう

 

「さっさと起きよ!!」

 

「いでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

耳が!!グンジョーさんの耳が身体とお別れをするハメにいいいい!?

 

「フン、この妾が話しかけているのに無視するでない。今のは“罰”じゃ」

 

「スイマセンスイマセン!!!!ゴメンナサイ!!!!!」

 

「…何もそこまで謝罪しなくてもよい。妾達はもうそなたには何もせぬわ」

 

「ゴメンな…え?」

 

い、今何とおっしゃいましたか?

 

「この国では強き者こそ絶対。強き者こそ美しい。お前は勝負に勝ったのだからもう妾達はそなたにはなにもすることはないのじゃ。」

 

え、あ、あれーーーーーーー!?これって救済フラグ!?

 

 

「殺さないの?」

 

「では、逆に聞こう。お前は殺されたいの「いえ、滅相もございません!!」ならばよい。」

 

やったー!!これで当面は命の心配はねえ!!頑張って戦ってよかったなぁ!!でも、あまりパッとしないな。約束があるとはいえ、あれだけ殺す殺すといっておいて急に手のひらを返したような態度。

何か裏があるような?

 

「そなた…最近行方不明になった“辻斬り”グンジョーじゃな?」

 

「っ!?」

 

 

俺を知ってるのか!?というか行方不明になってんの俺!?

思わず動揺してビクリと強張った俺を、おもしろそうな顔をしながら見つめた後、皇帝は命じて召使いに数日前の新聞を持ってこさせた。

その新聞には

 

    『大罪人“辻斬り”グンジョー凪の海で行方不明!?

                      生存可能性は皆無か!?』

 

という見出しと共にデカデカと俺の顔が載っていた。

 

「やはりそうか。お主が噂のエドワード・ニューゲートとコンビを組んでいた海賊じゃな?」

 

「うん、まぁ海賊には“なった”というか無理矢理“ならされた”んですけどね」

 

「ほほぅ?その話詳しく聞かせてもらいたいものじゃのう。」

 

何か妙に興味深々だな?

まぁいいやと思い、無理やり海賊に仕立て上げられてしまった一件を話し始めた。

しかし、人間ってやつは一度話し始めると10を語ってしまうものらしい。

 

 

 

この世界に来て(記憶喪失と偽ったことにした)レッドさんの世話になったこと

 

 

街中のならず者たちに片っ端から喧嘩したこと

 

船出した先々で賞金稼ぎの日々

 

 

そして・・・後に伝説の大海賊と呼ばれる、“白ひげ”エドワード・ニューゲートとの遭遇と決闘

 

 

海賊を倒したり、賞金を懸けられて海軍の追手を退けたりといった旅の日々

 

 

あの島で金獅子、冥王、海賊王との出会い

 

 

そして、自らの力不足が招いた“結果”

 

「つまり、貴様は他の海賊を逃がすための囮になったと?」

 

「まぁ、そういうことになりますね。」

 

そうあれは単純な力不足。

覇気を習得していなかったとか、そんな言い訳の前に立ち塞がった単純な実力の差が招いた“結果”だ。

 

「俺は…弱かったってわけですねぇ…」

 

「フン。まぁ、妥当な判断じゃろうな。貴様の言った他の賞金首が貴様よりも強かった。結果、貴様は切り捨てられた。それだけの話じゃ。」

 

「だよなぁ…」

 

それにしても“覇気”か。

 

 

「あぁ、ちょっといいですか?」

 

「何じゃ?」

 

「覇気というものは武装色とか見聞色を含めてすぐにマスターできるものなんすかねぇ?」

 

「…貴様何故覇気の種類について知っておる?」

 

あっヤベッ

 

「いや、ホラ単純に前聞いたことがあったって話で…!!」

 

「…まぁよいじゃろう。」

 

 

しばらくジト目で俺を見つめた後、ため息をつきながらこう言い放った。

 

 

「妾達九蛇の戦士たちは生まれながらに覇気を扱う資質を持ち、そしてそれを伸ばす修業をしておる。貴様のような覇気を知らず育ったような男は、そう・・・少なくとも2年。もしかしたら達人レベルになるまでに一生を使いきるかも知れぬ。」

 

「…そうか」

 

 

そんなに時間がかかるのか。

 

でも、もしかしたらもっと時間がかかるかもしれない。

 

 

なんせ、俺は元々この世界にはいないハズの存在。それに、ベースは凡人。悪魔の実の能力者でもない。

 

そして、おそらく、この世界の誰よりも、そう誰よりも弱い。

 

 

俺がこの先の海を生きていくことは限りなく困難だ

 

 

だから

 

 

誰よりも努力しなければいけない

 

 

今の現実を受け入れ

 

 

俺は膝を折り、圧倒的強者に願いを伝える。

 

 

 

「お願いがあります」

 

 

 

名声を轟かせる?

 

 

誰も見たことのない宝?

 

 

全ての海を支配する権力?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなものクソくらえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を鍛えてください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はこの世界で生きる“グンジョー”という男であるために

 

 

 

 

 

背中を預ける戦友を救うために

 

 

 

 

 

俺にしかできない“生”を生きよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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シャボンディ諸島編:新たなツレと覇気覇気いこう!!
3Dでも2Yでもない、驚異の3Y


とある島で起こった海賊達の捕縛作戦から約三年の時が流れた。

 

 

“海軍本部”マリン・フォード

 

 

巨大な岩山の谷間を縫うように建設されたそれが、この世界の正義の象徴である“海軍”の大砦だ。

新世界の強国“ワの国”の建造様式を真似て作られ、全体が朱色に塗られたそれは、一件その建造物独特の美しさを感じさせるが、一方で海軍の砦であるという一種の畏敬の念を抱かせる。そして、万人は言うだろう。

 

“これが世界の秩序を守る正義の象徴である”と

 

そして、その建造物の中を部下を引き連れ一人の男が歩いていた。

紫色の髪に、ガッシリとした体格。そして、背には“正義”と書かれたコートを羽織っている。

その姿はまさに歴戦の勇士を連想させる。

彼は急に何かを思い出したように宙を見上げながら不意に男がポツリと呟いた。

 

 

「あれから三年か…」

 

「…?どういたしましたか中将?」

 

「あぁ。ロジャー、レイリー、シキ、シャーロット・リンリン、そしてエドワード・ニューゲート・・・。今新世界で暴れまわっている海賊達がシャボンディ諸島に集結したの時があっただろう?その時のことを思い出してな。」

 

「ハッ。小生もあの時の事はよく覚えております。」

 

「何せあの時の奴らときたら、一人一人が一国の兵力と同じクラスの戦闘力を持っているからな。事実、ロジャーは一国の軍隊を壊滅させている。“仲間を馬鹿にされた”何て言う子供の戯言にも劣る理由でな・・・。」

 

 

そういった男の顔には怒り、というよりも子供の悪戯に呆れるような困ったような表情があった。

 

 

「えぇ。あの時は何もできずにいましたが、我々は変わりました。力量と共に地位も上がり、あなたも海賊討伐のために一個大隊を動かせる身になり、海兵達の教官の任も務めておられます。こうしている間に世界では海賊の被害が増えてきているのです。まずは、自らの手が届く範囲でやるべき事を実行すべきかと。」

 

「そうだな。私も人間だ。正義を守ることも、下のものを教育する事も重要だろうがまずは・・・。」

 

そう言って、今度は若干疲れた顔をした後、自らの進行方向でギャイギャイと口喧嘩をしているアフロと山猿のような同僚二人に視線を向けた。

 

 

「ガープ!!貴様はまた訳のわからなぬ理由で兵を動かしおって!!」

 

「仕方ないだろセンゴク、一々許可なんぞとっておったら間に合わん!!」

 

「だからって何の報告もなしに船をいきなり奪う奴がおるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!あの時、我に戻った少将の彼ををなだめるのは大変だったんだぞ!!」

 

「ええだろ、減るもんじゃないし。」

 

「減るわ!!主に予算とか、人員とか、それと船の使用期間が!!」

 

「ケチ!!」

 

「ケチではなぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!貴様こそ中将としての誇りを持てぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

そう言ってセンゴクと呼ばれた男が青筋を立てながら山猿もとい、ガープに殴りかかる。

それをガープがヒラリヒラリとかわし、よせばいいのにアッカンベーとして尻を叩くものだから、アフロがよりキレて、その能力を解放しようとした。

 

 

「ガープぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「わ、待てセンゴク!!それは建物の中ではさすがにマズい!!」

 

「そうだぞセンゴク少し落ち着けよ。ガープも素直に謝ったらどうだ?」

 

「「む?」」

 

そう呼ばれたところで喧嘩をしていた二人が後ろに立っていた紫髪の男に気づく。

 

「あぁ、何だお前か」

 

「お前らの喧嘩が日常茶飯事なのは今に始まったことではないが、少し場所を選んだほうがいいぞ…」

 

「私のせいではない!!そもそもこの男が上からの命令を聞かぬからだ!!」

 

「それは一連の下りで理解した。というわけでガープ。お前の事はコング大将に連絡しておくからな。」

 

「!?」

 

 

カラカラと笑いながらセンゴクと歩いてゆく男をガープはまさに絶望という顔をしながら必死に追いかけた。

 

 

「いいぞ。俺からじゃなく、お前からも言ってくれれば罰は二倍に増えるだろうな…」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ頼む!!それだけは勘弁してくれ!!」

 

「ハハハ、さぁ今日も仕事だ」

 

「今日はシャボンディ諸島に天竜人殿が訪問するらしい。その辺りの子供よりも行動が読めん。あの諸島はハッキリ言って危険だ。一応、部下はつけているが少々心配だな…」

 

「…いや」

 

そう言って険しい顔をした後、彼は廊下の窓からシャボンディ諸島の方角を睨んだ。

 

「…嫌な予感がする」

 

何かと言われてもうまく答えることはできない。しかし、驚異の去ったハズのあの海で何か飛んでもない事が起きるような気がした。

 

 

 

 

海風に吹かれて海賊旗がはためく。

髑髏に9つの蛇が絡みついたマーク。“九蛇海賊団”アマゾン・リリー。

その差異はあれど、その名を知らないものはいない。

 

 

曰く、最も美しい海賊団

 

 

曰く、最も強い海賊団

 

 

曰く、最も恐ろしい海賊団

 

 

海王類でさえ恐れる巨大な毒蛇、“遊蛇”にひかれた九蛇船は現在、偉大な航路のシャボンディ諸島にきていた。

水着のような衣装を着て、警護や船の捜査をしている彼女達の中に黒いローブを羽織った人物がいた。

 

「ついにきたなー。シャボンディー。いーやここまで長かった」

 

フワフワと近づいてきたシャボンに触ると、パチンとはじける。

 

「にいちゃーん。」

 

「にいちゃん、何やってんのー?」

 

「おぅおぅどうした童ども」

 

抱きついてきた子供の頭をなでていると、カツカツという音とともに“九蛇皇帝”ボア・ローズマリーがやってきた。

 

「そろそろつくぞ。」

 

「あら、そうか。」

 

「…え?」

 

「兄ちゃんどっかの行っちゃうの…?」

 

「ああ、ちょっとね。」

 

「「いっちゃやだー!!」」

 

「うん、分かった。分かったから。締まってるから首。首が呼吸できない。助けてー」

 

首に抱きついた腕がさらに力み始めるの(覇気つき)を何とかひきはがし、グズる彼女達を近くにいた兵に任せる。

こう見えて、出会った当初は、腹と頭に蹴りを入れられたのは今となっては懐かしい話だ。

 

「まぁ…三年もお世話になったね」

 

「気にするでない。最初におうた時はどうなるかと思ったが、何とかものになったな」

 

「いや、これもすべてボアさんのおかげだよ。」

 

「お、お前なら名前で呼んでよい!!」

 

ムキになるローズマリーを軽く笑った後、船のヘリに足をかけた。

 

「あぁ、もうここでいいや」

 

「え?早くないか!?も、もう少し乗っていても」

 

「いや、九蛇の船がシャボンディに来たら大変でしょ?あの島何かと物騒だし。ここでいいよ」

 

 

そういった後、必至に制止するローズマリーを無視して何もない海面に飛び降りた。

 

 

 

 




ここまでがアットノベルスさんに投稿していたところです。原作では終盤。だが、本作品ではまだまだ序盤!!というか、まだ原作主人公組とも対面していない!!

この先どうなるのでしょうか!?


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期間限定とか、〇〇限定とかに弱い

新話第一話ですぞよ


 

「シャボンディペナント、シャボンディ饅頭に、シャボンディアイス?どれもこれも限定商品ってか!!こいつぁ、人を馬鹿にしてやがるぜ!!というわけでオッチャン、シャボンディ饅頭とシャボンディアイスをおくれ」

 

「…はいよ」

 

訝しげな顔をされたけど、しょうがない気になるんだから。ただのクラーマーかと思ったか?全く失礼な話だ。

 

別にお土産にする人もいないので、その場でシャボンディアイスを口に入れてみた。

 

「うまっ」

 

何これ何これ!!この、何ともいえないモチモチ感、そして、口に広がる何ともいえない甘さ。でも、スタンダードな餡子みたいな甘さではない。なんつーの、新感覚。

 

「これ、俺好きかもしれない」

 

店先のベンチに座りながらアイスを食べつつ、シャボンディ諸島の街並みを眺める。ここら辺りは、比較的治安がいい地域なので、刀を抜く必要もないので背中に背負っている。

 

こんなにゆったりした気分になったのは、久しぶりかもしれない。前の世界では根暗だったこともあり、こんな賑やかな街でハイカラするのも初めてか…。

 

「新世界ねぇ…」

 

ぶっちゃけ、俺はONE PIECEの記憶は頂上決戦までしか知らない。それ以降、ルフィ達麦わらの一味がどうなったのかは知らない。

二年後、彼等は無事に成長できたのだろうか。

 

「ま、50年過去のこの世界にいる俺がグチグチいってもどうしようもないか」

 

でもでも、やっぱり気になるよね!!楽しみだぜ、魚人島!!ビバ、ビューティフルマーメイズ!!

悪いね、麦わらクン、そしてオカマになっているであろうサンジクン!!お先に楽園を堪能させてもらうぜぇ!!

 

「けど、深海にあるんだよね魚人島…」

 

俺は船を持っていないので、今、船着き場の近くである程度丈夫そうな船を見繕ってもらい、それをコーティング職人に頼んでコーティングしてもらっている。

大型のガレオン船ならともかく、荷物を積めば人が2、3人しか乗れないような小さい船だから、1日、2日たたずに完成すると言われた。

同時に呆れたような目で見られたけど。曰く、こんな船で新世界に突入しようとするなんて頭のおかしい奴のすることだという。

 

とりあえずそんなことお前には関係ねぇだろ、と文句を言ってベリー札を叩きつけてきた。

 

例え小舟だとしても、こちらには強力な味方(・・・・・)がいるのだよ。この島に来たのも彼の力を頼って…うん、今度紹介しよう。

 

「兄さん兄さん」

 

「は?」

 

誰じゃお前は、俺には兄弟も姉妹も○兄弟(ピーー)になるような経験もない、そうツッコもうとして後ろを振り返ると、ニコニコ顔の婦人がお盆にお茶を持ってきていた。

 

「あ…ども」

 

アイスにお茶…うん、まぁあまりいい組み合わせとは言えないけど、ご好意に甘えさせていただこう。

ズズズ…と、お茶をすすると、緑茶とはまた違った苦みが校内を満たす。

 

「ほゥ…」

 

「兄さん見ない顔だねぇ、観光の人かい?」

 

「あ、観光?いやいや、魚人島に行きたくてね」

 

「魚人島?はー、こりゃまた大変な場所に行くのねェ。あんな場所に行くのは、余程の物好きか、海賊みたいな悪党しか行かないわよォ?」

 

「俺、その物好き」

 

「ハハハ、冗談はよしとくれよ!!」

 

「いや、冗談かどうかは、そっちの受け取り次第だよ…おっと」

 

すると、通りの向こうから銃を持った制服を着た海兵がやって来た。

コートを目深に被り、顔を下に落して食事に集中していると、海兵は店先にいる俺を無視して右から左へと通っていった。

 

「ふィー、危なかった」

 

「…もしかしてお兄さん、賞金首が何かなのかい?」

 

おばちゃんが怪しい者を見るような目でこちらを見てくる。

俺はムズ痒いような感覚に襲われた身体をはたきつつ弁明した。

 

「え、それって俺が危険人物に見えちゃったりとか?ヤダナァ、よしてくれよ、こんな人畜無害そうな奴が悪いことなんかできるわけないじゃないの!!」

 

「ハハハ、自分で言ってちゃ意味ないさね!!…でも、お兄さんがいい人でも悪い人でも気を付けた方がいいわよォ?この島には、危ない場所がいくつもあるから、奴隷の取引、何て物騒な事をしている連中もいるくらいだし」

 

「へェ、その話、少し聞きたいね?」

 

やっぱり、餅は餅屋だね。

滞在期間は少ないとはいえ、情報はやっぱり欲しいね。

 

「兄さんやっぱり物好きな人だねェ…。いいかい?この島には未だに、奴隷文化が根付いてんのサ。まァ、確かにこの島は新世界に繋がる唯一の玄関口とも言っていいさね。人が来るし休憩施設とか、需要があるのは当り前さ。…問題はそこに違法な物品もまざって取引されてることなのヨ。魚人島が近くにある事だし、それも理由にあるのかしらねェ。ほら、若い人魚の娘って、美人が多いじゃない?」

 

「あ、それ言えてるかもしれない」

 

「それに、この島には天竜人の奴r、いや方々が…」

 

天竜人?…ああ、あの、だえー集団か。今まで忘れていたな。

たぶん、ONE PIECE読者は総じてあいつらの事が嫌いだと思う。俺もそうだったし。あいつらの初登場シーンを見て気分がムカムカしたことも思い出した。

 

「天竜人って、あの世界政府を作ったっていう?」

 

「そうそう、まァ、王族か何かは知らないけども、この島には頻繁にやってきてやり放題やっているわけなのよ」

 

「やり放題って、そんな海軍とか政府が黙ってないでしょ?」

 

「その海軍と政府がバックについているから、奴等の権力を笠にして好き放題やってるのよ…。全く、何もしないで手を咥えてみてれば、悪行三昧だし、手を出したら出したで大将が飛んでくるか、インペルダウンにブチこまれちまうし、やってられないよ…」

 

へえ、やっぱりこの時から好き放題やってるんだ。本当に救いようがないなあいつら。

海軍も正義をうたっといて、権力にはペコペコかいな。

ハッ、片腹痛いわ。

 

「おーい、いつまで表に出てるんだ、はやく接客せいよ!!」

 

「あ、御免よお父ちゃん!!…ハハハ少し長話になっちまったねェ」

 

「いや、大丈夫。こっちも中々楽しかったし。それじゃ、お茶はここに置いとくよ。ありがとうね」

 

「はいよ、また来てね!!」

 

アイスのコーンを口の中に放り込み、咀嚼して飲み込む。

団子は、まァいつか食べるか。

さて、俺はゆっくりと歩き出す。

 

やる事も済ませたし、もうここら辺の観光は結構。

シャボンディパーク…もいいや。大の大人が一人で行く場所ではないからな。

 

今からは、この島の影の部分に足を踏み入れさせてもらおう。

 

無法地帯?

 

大いに結構

 

「闇側の人間は自然にそう言う場所に集まる習性でも持っているのかねェ?」

 

時間はある。

 

焦らずいこう。

 

「お、おおおォおぅ?」

 

…というか、何かまだムズムズするような気がする。気のせいですかね?

 

 



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饅頭こわい…

お気に入り件数1000件突破!!ありがとう!!


ふぅ、何とかうまくいったのれす。

 

仲間たちとはぐれてしまって焦っているのに、中々人目が多すぎて進めなかったのれすが、こんなところで渡りに船。

隠れやすそうな服を着た大人間がいたとは、本当にラッキーれした。

 

(うまく利用させてもらうのです大人間…お、何か甘い匂いがするのれす?丁度、小腹がすいていたのです)

 

このまま大人間につかまって、仲間とはぐれた場所の近くまで向かいましょう。

生地の裏側につかまりながら、少し休憩するのれす。

 

 

 

~~~シャボンディ諸島 10番GR~~~

 

 

 

俺は、やや汚れてしまった手をパンパンとはたいて汚れを落とした。

 

「お前らさァ…」

 

腰に手を当てて呆れている俺の足元には、100人ほどのバカどもが寝っ転がっていた。

 

「ううう…」

 

「イ、 イデェ…」

 

ここら辺の島に入ったあたりからだれかに尾行されているのは分かっていたけども…全く、観光都市とは…だれが言い出し始めたのかね!!こんなに治安が悪いのに!!

いきなり飛び掛かって来たので、殴り飛ばしてやりました(正当防衛です)。前はどうだったかは知らないけれど、今ならこんなザコ共に態々こった技も使う必要もない。

 

とりあえず、いきなり襲われてムカついたので、手近にいた一人を踏んづけてみる。

 

「ねェ、ちょっと聞いてる?」

 

「イデ、いででででd」

 

ハッ、貴様の感じている痛みなど、それ以上にズタボロな俺にとっては関係ないね!!こちとら、心の傷を負っているんだ。心の傷は中々治らないんだぞ!!

 

「こちとらよォ、人畜無害な人間なのよ。分かる?人畜無害さん。略してジンチクさん。いや、誰がジンチクさんだよ!!」

 

「ひでぶっ!!」

 

額に向かって水平チョップ!!全く、失礼な話だ。誰がジンチクさんだ。そんな失礼な事を教えた記憶はお父さんにはないぞ!!

 

「あ、あんたが勝手に言い出したんじゃないか…」

 

「うるせェ、お前の意見は聞いてないのだよ。ワトソン君」

 

というか、こいつらはもしかして馬鹿なのだろうか。

最初の奴が、ワンパンチでKOされたのを見て何故襲撃をあきらめなかったのか?何がヒャッハーやっちまえ!!だよ。俺がやっちまったじゃねェか。

 

「最近不景気なので、もうここら辺歩いてるやつならだれでもいいや…的な感じで」

 

「お前らそれドアホウだろ。…ったく、もうどうでもいいや。運動したら、喉乾いちった。なァ、ここら辺に喫茶店とかないかね?」

 

「き、喫茶店?そんなものはないけれども、確か向こうにバーがあったような…」

 

「ばー?うん、もうそこでいいや。ありがとうなオマエラ」

 

そう言って、サクサクと草の根をかき分けて進行方向に向かって歩き出すことにした。

 

「くそぅ、縄張りに一人で入って来たから、拉致ってヒューマンショップかオークションに売り払ってやろうと思ったのに…」

 

「それどころか、とんでもねェ化け物だったぜ…」

 

「でも、今からでも襲っちまえば、案外アッサリ捕まえられるんじゃねェか?」

 

「いや、やめとけ。アイツ俺達の相手をしている時、息切れもしてなかったぞ…」

 

「賞金首ではないみてェだけどな。しかしあの強さ…恐れ入ったぜ」

 

「やっぱり、追いかけて捕まえれば高く売れるんじゃねェの?」

 

聞こえてる聞こえてるお前らの邪悪な思念がここまで聞こえてきてるぞ。でも、一々戻ってブン殴るのも面倒だから放置という無難な形にしといてやる。ありがたく思え。

 

 

 

「えええええええ!?」

 

その店の看板には、こう記されていた…。シャッキーの`SぼったくりBARと。えェェ、嘘でもあれって…いや、でもありえるのか。

 

シャッキーことシャクヤク。

 

原作では、ルフィ達を助けてくれた年齢不詳のお姉さん(←ココ重要)である。

確かこの店を開店したのが40年前以上…。この時期に開店していてもおかしくない。…うん、いかんせん野次馬根性が湧いてきた。

せっかくだし、良いお酒でも堪能させてもらいましょうか。

 

「お邪魔し、どわァァァァあああァァあ!?」

 

バーの玄関に何かいる!!ゴミ?人間?まるでゴミのようだ!!

 

「な、何?」

 

少し心配になったので男達の顔をのぞき見ると、誰もが引くほど顔が膨れ上がっていた。

 

「もしも~し、大丈夫?」

 

「…」

 

うん、大丈夫そうだ。よしよし、安心した。

 

「そいつらなら念入りにやっちゃったからしばらくは起きないわよ?」

 

「ッ!?」

 

何奴!?バカな今一瞬でも人がいる気配はなかったぞ!?

 

「あらあら、そんなに警戒しないでくれないかしら?」

 

「…いやーいきなり背後にいるとはビックリしてね。結構気配には敏感な方だと思っていたんだけどね。もしかして今を時めく忍者さんですかね?」

 

「フフ、ワの国の忍者はもっとうまく気配を消すわよ?」

 

「おやおやまるで知っているような口ぶりですね?」

 

「さァ?どうかしらね」

 

そう言って、彼女は今しがた壊れたばかりの扉を通って、店内へと入っていった。

 

「あ、それと…」

 

「?」

 

「初めましてね。この島はどう辻斬りちゃん?…いや、グンジョーちゃんって呼んだ方がいいかしら?」

 

「っ!!」

 

「とりあえず、立ち話も何だし店の中でお話ししない?」

 

「あ、ハイ。分かりました」

 

ああ、やっぱりお見通しだったのですか、シャッキーさん。というかすぐばれてたんだ。というか、昔見た時の本人と全く変わっていないのはどういうことか?

 

俺はそんなことを考えつつ、取り敢えずカウンターの席の前に腰掛けて頬杖をつく。視線を右にずらせば、大破した机と椅子。うん、何があったのか聞くのは野暮ってもんだな。

 

「ご注文は?」

 

「え…?あ、とりあえず生」

 

「トリアエズナマ?」

 

「あ、違ったわ。ビールで」

 

「あらそう。じゃあ、ちょっと待っててね」

 

そう言ってシャッキーは冷蔵庫からキンキンに冷えたグラスを取り出し、樽から麦酒を注ぎこんだ。

 

「ハイ、どうぞ」

 

「あ、いただきます」

 

グラチの口を唇に押し当てて、注ぎ込む。

 

「うんめェ~~~、この、ちょっとした暑さにこの冷えたビールはたまらんね…あ、そういえば」

 

ここぼったくり(・・・・・)何てものそ、物騒な名前がついてたんだっけか…

 

「あ、その、お代の方は…」

 

「あら、大丈夫。今日は私のおごりよ?どうせ、お金はさっきの奴らからせしてめてきたし。それに、何だか今日は祝いたい気分なの」

 

「おぅ、そいつはラッキー。それなら安心して飲めるね」

 

でも、このままじゃ少し好意に甘えすぎかな?…あれがあるか。

 

「これ、ツマンネーもんですけど、シャボンディ饅頭って奴です。どうぞ、食べてください」

 

何だか重量が妙に偏っているような気がするけど、移動中に寄ってしまったのだろうか?でもまァ、いいだろう。

 

「あら、これは?フフフ、ありがとう、でも気にしないでね?血に飢えた狂犬さんの、復活祝いってところかしら?」

 

「ハハハ、手厳しいねェ」

 

「それにしても、よく生きていたわね?海軍に捕まって、その後行方不明って聞いたから、てっきりインペルダウンに放り込まれたか、どこかで野垂れ死にしているか、とか思っていたけど?一体、どこで何をしていたのか、興味あるけど」

 

「…ああ、ちょっとそれは秘密?」

 

「あら、少しくらいなら教えてくれたっていいじゃない。そのビール、お値段1000倍にするわよ?」

 

「やっぱり法外なの!?」

 

ったく、外見が変わらないみたいだとはいえ年はそう変わらないはずなんだけどなァ…雰囲気っての?

精神年齢を含めたら俺が年上のはずだが、すでに、俺以上の貫録があるように見える。

 

「それとね、グンジョーちゃん?」

 

「あい?」

 

「さすがに、こんなものを渡されても食べれないんだけども…」

 

「え?」

 

饅頭が腐ってたのかな?いや、今さっき買ったばかりの品だ。そうそう、腐るような事はないだろう。

いや、もしかして…あの店B級品売りつけやがったのか!?

 

「全く、どうしたのかなァ…あ?」

 

そこには、四角い箱に入っているはずの6こ入り饅頭の姿はどこにも見当たらなかった。

代わりに、そこにいた(・・)のは…

 

「けっぷんこ」

 

空になったシャボンディ饅頭の箱の中には、饅頭の代わりに、丸々と腹を膨らませた小人(・・)が…いました、とさ、とさ…

 

「あー、満腹れす。大人間のご飯も中々うまいのれすね…あれェ?」

 

満足そうに腹を摩っていたそいつと、俺の目線が重なり合う。

 

「だ、誰だお前―――――――――――!?」

 

一瞬の静寂の後、俺は目ん玉が飛び出さんばかりに見開き、大声を発していた。

 

「あらあら」

 

「えーーーーーーーーーー何故ばれたのれすか!?」

 

「そんなことォ!!知ったこっちゃねェよ、このアホンダラァァァァ!!」

 

 

 



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未確認生物物体でUMAだっけ?あれ、なんか多い?

 

「…」

 

「ぅ、うぅ…ゥう」

 

涙目の小人がカウンターの上で震えながら正座している。そして、彼の目の前にいるというか、胸より下の位置にいる彼(男らしい)を凄い顔で見おろしているのは、何を隠そうこの俺様なのである。

まァ、はた目から見てみれば、何というシュールな光景なのだろうか、と思うけど。

 

ほんの数十分前―――

 

「ななななな、何だお前!?小人!?小人って実在していたのか!?」

 

俺は盛大にキョドっていた。

シャッキーさんにお土産と渡したシャボンディ饅頭の中には饅頭ではなく、謎の物体X…でもなく、小さな小さな小人さんが入っていたのだ。

 

大人の手の平よりも小さなその身体。つぶらな瞳と、これまた小さいお手て、鼻は面白い感じに尖っている。それに、お尻?には普通の人間にはついてない筈のモコモコの尻尾がついている。

何だコレ、何だこの愛玩動物。

ファンシー生物、ここに極まれり!!

 

「大人間に見つかってしまった!!やばいのれす!!」

 

一方、騒ぎの中心人物である小人は、何か口走るや否や、シャボンディ饅頭の箱から飛び出して、Barカウンターから飛び降りると、そのまま机の下などを縫うように走り始めた。

というか素早い!!え、あの小さな体躯でどんだけスピード出せるんだ!?

 

「お、おい、ちょっと待ちなさいよアンタ!!」

 

「いやなのれす!!僕はまだ捕まるわけにはいかないのれす!!」

 

そんなわけにはいくか!!勝手につまみ食いされた俺の気持ちは無視かコノヤロー!?

 

逃げたハムスターを両手でとらえるノリで、捕まえようとするのだが、小人君は、そこからスルリと逃げ出してしまう。

ドッタンバッタンと室内で暴れ回る2人を見てもシャッキーは我関せずと煙草をふかしてる。いや、あんたも手伝ってくれよお願いだから!!あんたのお店だろうがァァァァ!!

 

「とう!!」

 

「な、何ィィ~~!?」

 

俺が気付かぬうちに、いつの間にか窓際にある机から飛び上がり、窓辺におり立った、だと!?何と空中回転からの着地!!10点10点10点!!ウルトラCィィ!!芸術点はそれ以上!!

 

「うわはははは!!さらばなのれす大人間!!お饅頭は後でツケといてくれなのれす!!」

 

「くゥ、俺でさえツケで飲み食いしたことがないのに、この態度とは見た目に反して何ともふてぶてしい奴!!でも、甘いわ!!“見聞色”!!」

 

確かに早いが、その程度のスピードではまだまだ俺の追跡を逃れることはできない。鍛えた俺の目と、辺りに張った()の前では、蟻の子一匹逃れることは不可能!!

 

「とうわけで、ほいキャッチ」

 

窓からダイブしようとした小人君を左手一本でナイスキャッチ。このファインプレーは毎年進撃しているあの方々からお声掛けされちまうかね。

 

「ェえっ!?どうして!?何で僕の事を捕まえられたのですか?」

 

「ハハハ、説明は以下略だ!!」

 

というか、意外と力も強いのね。成人男性一人、いやそれ以上かな?…イテテテテやめやめろその手を放しやがれ、俺も放すから。…いや俺は放したらダメか?

 

「は、放してくらさい!!僕は何もしてらいのれす!!無罪らのれすー!!」

 

「ハイ、その意見は賛成多数で却下されました。ていうか、今さっき饅頭ツケとけっていったばかりやろがい!!もっと分かりにくい嘘をつきなさい。ハイ、そういうわけでね、気張っていこうじゃないか裁判所!!」

 

「そ、そんなー!!」

 

というわけで、一番最初の描写に戻るのであーる。

ちなみに、シャッキーは厨房から事の成り行きを見守っている。何だか、こっちから事の成り行きを見ていた方が面白いんだそうな。

 

「…で?」

 

「ッ!!」

 

「どうして君は俺のシャボンディ饅頭の中に入っていたのかな?」

 

「…え、あの、それは…」

 

しもどもどろになって話をごまかそうとしているなコイツ。なら、こちらにも考えがある。

 

「じゅー、きゅー、はーち、あ、カウントがぜろになったらデコピンね」

 

「えっ!!」

 

「なーな、ろーく」

 

「言う言う!!言いますからデコピンは勘弁してくらさい!!」

 

「よろしい」

 

やはり、カウントダウンの魔力はいつの世も健在という事か。よろしい。ならば、早く事情を話してみなさい。

 



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小人裁判と、動き出したアクイ?

グ、グロ注意?


「…実は、僕はこの島には好きで来たわけれはないのれす」

 

「ほう?」

 

その小さな小人君が話し始めたのは、何やら悲しい悲しい理由があるようだった。

彼は元々冒険家で、十数人の仲間と一緒に冒険の旅に出ていたが、そこをとある大人間…―――つまり人間だわな―――に、捕まってしまったらしい。

その後、隙を見て、彼だけ脱出に成功したものの…

 

「ここ数日、さらわれた仲間達を探して歩いていて、何も食べていなかったのれす。それで、おいしそーな匂いがしたので、ついフラフラと歩いて行ったら、この大人間がいたのれすがいたのです」

 

「だから、この(・・)というなと。で、それからどうなったんだ?」

 

「何故かうつむいて食べていたので、こんな所で渡りに船、こんな間抜けそうな人間ならバレないかなと思って、その大きなコートに入ったら、丁度その箱が目に入ったのれす」

 

「それで…空腹になったお前は、ついついその箱の中身、すなわち饅頭を食べちゃったわけなのか」

 

「食べちゃったわけなのれす…」

 

「…なるほど。ですが、罪を許すわけにはいかないな。裁判長!!そこら辺のご判断はいかがいたしましょう?」

 

「え、無罪でしょ?」

 

なぬ!?

 

「ありがとうなのれす!!あの大人間はいい人なのれすね!!」

 

「ちょ、おま、仮にも命の恩人に対して、あの(・・)呼ばわりはないだろうよ!!」

 

「そして、この大人間は悪い人なのれす!!」

 

「うるせェ!!俺をこれ呼ばわりするのではない!!」

 

うだー、調子が狂う!!そもそも、俺はツッコミキャラじゃないんだよ!!

 

「いえいえ、気にしなくていいのよ。カワイイものを嫌う人間なんかいないわ」

 

なるほど、カワイイは正義って奴ですね。って分かるかァァァァ!!日頃いろんなノリに付き合っているグンジョーさんがなんにでもツッコムと思ったら大間違いやで!!

 

「無罪~♪無罪~♪無罪~♪」

 

「…」

 

謎の無罪ダンスなる踊りを踊る小人君を目で追いながら、俺は軽くため息を零すのだった。

 

 

 

 

 

一方その頃―――

 

「おォ、お頭お頭ァァ!!」

 

一人の男がシャボンディ諸島のとあるBarに飛び込んできた。

 

「お頭ァ、大変、です。大変でずゥぅ!!」

 

ゼイゼイと荒い呼吸を肺から吐き出して辛そうにしている所を見かねた近くの仲間からコップ一杯の水を差しだされると、男はそれをひったくるように受け取り、一気に飲み干した。

 

暗がりの中、室内の奥の小部屋にはこれまた巨大な体躯の大男は、息を切らす部下を眺めながら、ワインの入った大樽に、右手で手をかけ、それを手酌で豪快に飲み干した。

 

整えられてはいないが、豊かに蓄えられた口髭を代表に、毛深い男の身体には、戦闘で負ったと思われるいくつもの傷がついていた。

しかし、それらも男の貫録を感じさせるには、十分だった。

 

「どうした、オメエそんなに慌ててどうしたんだィ…」

 

「ヘ、ヘイ、実はさっき、捕まえようとした男に逆にボコボコにのされてしまいまして」

 

「何ィ…?」

 

頭と呼ばれた男の目がゴーグル越しに歪んでいるのを男は見逃さなかった。

 

「め、面目次第もねェっす!!」

 

「このバカ野郎がァァァァ!!」

 

「ヒッ!!」

 

大男の怒声に身をすくませた。

 

「タイマンならともかく、大勢でのされたのか!!このカスッタレ坊主が!!」

 

「ス、スイヤセン…」

 

「で?そいつはどこのどいつだったんだ?アン?」

 

頭領の追及の言葉に男は口ごもる。

そんなこと考えてはいなかった。ただ彼はその場の空気を流されてあの男を襲撃しただけなのだ。

 

「す、すいやせん…それも、ヒャイ」

 

投げた柄杓がBarの壁に当たる高い音が鳴り響く。

 

「ハッ、たくこの野郎がァ…。俺達の仕事は早く、正確に、価値の高い者を、だろうが!!海賊の船団一つ分ならともかく、訳の分からねェパンピー1人に構ってるんじゃねェよ、このバカが!!」

 

頭領からの怒りの声にますます縮こまる下っ端の男だったが、ガチャガチャと何か機械類をいじるような音に顔を上げた。

そこでは、何と自分のお頭がショットガンや大砲をはじめとした銃器類を身体中に括り付け始めているではないか。

 

「だが…ハッ。部下をそんなにボコボコにされて平静でいられるほど俺は帝国な人間じゃねェのよ。案内しな。その、調子に乗った野郎の元によォ…。この人さらい、“弾丸エレファント”の頭領(ヘッド)ドヘム様が、そのクソッタレをとっ捕まえてやるぜィ」

 

店の中にいる仲間達に行くぞ、と一言声をかけた後、ガハハハ、と大笑いしながら店の外へと大股歩きで歩き出す。

この危険区では人の命は軽い。少しでも油断すれば簡単に殺されてしまうし、奴隷売買も流行しているくらいだ。その中で、この頭領は自分達のために命を張ろうとしてくれている。

彼はもう一度、ドヘムに忠誠を誓うのだった。

 

「ヘ、へい!!」

 

しかし、外に出た傍から、ドヘムは妙な声を立ててその場にうずくまってしまっていた。

 

「どうしやしたお頭?」

 

急に立ち止まったドヘムの姿を、まるで奇妙なものを見るような目で部下の男が見上げる。何やら様子がおかしい。おまけに身体も奇妙な具合に小刻みに震えている。

 

「…ぅ」

 

「う?」

 

「ぅう」

 

「ぅう?」

 

うめくような嗚咽を繰り返す、頭領に向かっておずおずと手を差し出した、次の瞬間だった。

 

「ギボヂバブゥェ(ピーーーーー)」

 

先程まで豪快に笑っていたドヘムの口から盛大に(ピーーー)が溢れだした…。

 

「お、お頭ァ~~~!?」

 

突然の事態に思わず悲鳴を上げると、その声を聴いたのか酒場の中からドヘムと一緒に酒を飲んでいた彼の仲間たちがワラワラと飛び出してきた。

 

「あーあ、やっちゃったやっちゃった」

 

「だ~から言ったんすよおりゃァ~~。お頭ァ、酒が弱いのにそんな酒豪ぶるな、無茶すんなってェ~~~。でも、カッコつけてカパカパ飲むんだからァ~~~」

 

「おいお前余計な事を言うんじゃない。お頭の名誉に関わるだろうが!!…お、お頭、大丈夫ですかい?」

 

「だだだだいだいだい、大丈夫だ…!!でもそのまま背をさすってくれぅおろろろろ」

 

 

島中に巨大なヤルキマンマングローブの木が生える、偉大なる航路、シャボンディ諸島。

その中でも、1番GR~29GRに跨る強盗、窃盗、人さらい、そして海賊、この世に蔓延る全ての悪がその場所には蔓延る危険区域がある。

 

しかし、その中にあってもやはり人は人だという事なのだろう。

 

大の男が介抱されている、という何ともいえないシュールな光景が広がっていた…。

 

「こ、このボォレがうぼ(ピーーーーー)」

 

『いや、もうあんたしゃべんなよ!!』

 

 




お酒はほどほどに。飲みすぎ、飲酒運転ダメ絶対!!


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嫌な予感がする…

「僕の名前は、ラクーンと言うのれす!!よろしくなのれす大人間!!」

 

「いや大人間言うなし」

 

一悶着あった後何故か自己紹介をされた。どうやら彼はラクーン君と言うらしい。

 

「饅頭はおいしかったのれすよ!!」

 

「そもそも感謝される覚えは俺にはないというか返せコノヤローあれは元々俺のだコンニャロー!!この口か、食ったのはこのクチなのかンン!?」

 

「あ、やめるのれす!!判決決定後の裁判は不可能なのれすよ!!」

 

「何で知ってるんだよそういうことをよォォォォ!!」

 

2人の喧嘩がまた再燃しかけた時、カウンターの中から絶対零度のお声がかけられた。

 

「グンジョーちゃん、ラクーンちゃん。お店で暴れないで、これ以上お店を無茶苦茶にされたらさすがの私も…ね?」

 

「「ハイ!!」

 

こえー!!ザ、鶴の一声!!

 

「あ、あの大人間は怒らせてはいけないのれすね…」

 

「いやァ、さすがの俺もそれにはハゲ同」

 

とりあえず仲直りすることにしました。え、単純?うっせえ、余計なお世話だ!!

 

「ウフフフ、そういえば自己紹介を忘れていたわね。私はシャクヤク。よろしくね、ラクーンちゃん?」

 

「シャクヤク。ではシャクランドを呼ぶのれす!!で、そっちのデカブツは?」

 

「もはや悪口にしかなってねェじゃねェか!!」

 

…あーもうでもどうでもいいや。ツッコミつかれた…久々にこんなにツッコミをした気がする。ああ、女ヶ島(温室)が懐かしい。あそこは、心にも、目の保養にも最高の場所だったのに…世間はやはり荒波なのれすね。

 

「俺はあれだ。グンジョーだよ。よろしくしたくないけど…」

 

「グンジョー?言いにくい名前なのれすね。じゃあ、僕がいい愛称をつけてあげるのれす。そうだなぁ、ではグンランドなどはいかがでしょう。む、グンランド?いや、やっぱりジョーランド…?むむぅ、やっぱりどれもイマイチなのれすね…」

 

「うふふ、別にグンジョーって名前で呼べばいいんじゃないの?」

 

「何を言うのれすかシャクランド!!これは、我らの祖先を救いし大人間の英雄の名に基づく、れっきとした最高の愛称なのれすよ!!中途半端になんかできないのれす!!」

 

「いや、こっちはそんなこと全く知っこっちゃねェし。というか言いづらいなら…そのあれだ。同じ寒色系列で“アオランド”とかでもいいんじゃないの?」

 

「それだ!!」

 

「即決!?」

 

たたたた単純!!このラクーン君とやら、予想以上に単純すぎだぞ!!

 

「では、よろしくなのれすアオランド!!」

 

「うっせえ!!」

 

そんなアフォなやり取りをしていた時だった。

 

ドンドンドン!!

 

Barの外側から大砲を連射する音が木霊した。

 

「ッ!?」

 

「な、何事なのれす!?」

 

「あらあら…」

 

むむぅ、いつの間にか囲まれていたのか。100…いや、200人近くはいるかな。ここにいる俺に分かるように、しかもBarの目の前で大砲を発射するなんて…成程ねェ、噂のお礼参りってやつ?

中々大勢の人数を引き連れてきたようで…、まぁツブ揃いってわけでもないみたいだけども。

 

「シャクヤクさん。どうやら俺狙いっぽいですわ。…コイツのお礼も含めてなんですけども、これ迷惑代だと思って受け取ってください」

 

しかし、懐から出した札束をシャッキーは俺の手元に置いて握らせた。

 

「いいえ、これは受け取れないわ。さっきから言ってるけど今日は私のおごりよ。分かる?あなたは今日お客様なの。お客様からお金を取るわけにはいかないわ。それに…あかの有名な、辻斬りの実力を最高の場所で見学できるんだもの。むしろお釣りが出るくらいよ」

 

「アハハハ、そいつは良かった」

 

「それに、私の事を呼ぶときはシャッキーでいいわよ?グンジョーちゃん」

 

「あじゃあ勝利のお酒はよろしく。シャッキー…」

 

俺は笑みを浮かべた後、虎丸に手を添えながら面へと歩き出した。

 

 

 

 

 

「あー!!」

 

Barから出たら出たで、変な男が俺の事を指差しながらバタバタとそこらを走り回っていた。失敬な、人の事を指差すんじゃないよのさ。

おや、あいつは…

 

「俺にたった一人でボコられた奴の一人ジャン?」

 

「ッ!!お頭ァァァ!!こいつ、こいつです!!こいつが俺らの事をイジめたんすよ!!」

 

「なぁるほどなぁ…テメエかぁ、うちの部下達をボッコボコにしてくれたっていう青臭いガキンチョわぁ!!」

 

「うぉ」

 

いるわいるわザコ共がァァァァァ!!じゃなくて、今結構俺は驚いている。

覇気の力では、人の気配を感じることはできても、その人物毎の実力を図っていく事は難しい。覇王色の才能がある者はそれを使いさえすれば、簡単に判別できるが、それでは隠密もヘッタクレもない宣戦布告と同等だ。

 

だから、俺はBarから出て初めてこいつらと対面することになったのだが…どいつもこいつも大砲や銃を筆頭に重火器類で身体中を覆ってオイル。まぁ、よくぞここまでガッチガチの装備で固められたものだと、俺は少し感心している。

そして、目の前で腕を組んでいる口髭ゴーグルの男がこいつらの大将という事だろう。暑苦しいわ!!

 

うむ、しかし大将…あまり聞きたくない言葉だな。出来ればお会いしたくもない。

 

「俺が気分よく酒を飲んでいたら可愛い手下が泣きながら飛び込んでくるからヨぉ、聞いてみたら一人にのされたという。で、どんな奴かと期待してきてみたら、何だこのチンチクリンは!!」

 

「チンチクリンじゃねェよ身長180近くはあるわ!!」

 

「はっ、俺より身長低い奴は全員チンチクリンだボケが!!」

 

「なるほど、それは気が付かなかった…ってやらせるなアホが!!」

 

だーもうここ最近ツッコミ役になっている影響か、無駄に空回りしてしまう!!俺はは本来はボケだ!!ボケてナンボ!!グーグーナンボ!!

 

「というか…一人でシャボンディの危険地帯に来るとか、お前さんよほどの死にたがりかコラ?」

 

「ハッ、別に危険地帯をもろともしない実力があるから特に問題はねェ。テメエらみたいに群れなきゃ世知辛い世の中を渡っていけねェザコとは違うんだよ!!」

 

カチン、と言う音がそこら中から聞こえてきた。

 

「あ、あのヤロー!!言わせておけば好き勝手言いやがって!!」

 

「お頭やっちゃってくだせェ!!」

 

俺の言葉にその低い沸点を刺激されたのか、口々に取り巻き達が騒ぎ始める。

しかし、対照的に頭領は腕を組んだまま微動だにしていなかった。

 

「…ホゥ、お前この人数を前にしてよくそんなデケェ口叩けるじゃねェか。実力に裏打ちされた真の戦士か、ただのドアホウのブレイブメンかだがな…」

 

もうゴタゴタ言い合うのはメンドウだ。こちとら口げんかはあまり得意ではないのでね。

 

「で、あんさん達は俺をどうするつもりなんだ?」

 

その言葉に頭領は不敵な笑みを浮かべた。

 

「それを俺に言わせるのか?そんなもん、決闘に決まってんだろうが。こんのバカチンが!!」

 

「上等!!」

 

はてさて、知らない人物を相手にした戦闘は本当に久しぶりだ。どうなることやら…

 



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久々の戦闘~左手だけで相手をして差し上げまショウ…~

 

「くらえい!!“ドヘム式炸裂ガトリング祭り”!!」

 

まず先に動いたのはドヘム。

背負っていた二丁の拳銃のうち、一丁を取り出した。

ベースは普通のマシンガンなのだろうが、改造が加えられており、銃口が複数準備されている。それを、俺のいる辺りに向かって乱射し始めた!!

 

ガガガガガ!!

 

「ぬおっ!!!!」

 

狙撃されるのは慣れっことはいえ、さすがにあたれば痛い。

先読みの力で銃弾を避けつつ同時に攻撃の準備を始める。

両腕に覇気を纏わせ始めると、手から肘にかけてまるで鈍く光る鉄のように黒く染まり始めた。これは、武装色の覇気を纏った際にその部位が黒化するという特異な現象だ。

しかし、俺の場合さらにそこに改良を加えている。外側の皮が鋭く尖り、まるで刃のような鋭さになった。

 

「名付けて“武装色手刀”」

 

そしてそのまま―――

 

双子剣の歩み(ジェミライズスウォード)!!」

 

キンキン!!

 

硬化した両腕を振い、飛んでくる無数のマシンガンを切り落とす。

 

「何だあいつ!?」

 

「腕が黒くなったぞ!!」

 

「何かの能力者か?」

 

…あ、そうか覇気の能力は一般的ではないのか。傍目から見たら何かの能力者に見えてしまうのも当たり前だよな。

メタメタの実の鋼鉄人間ってところか?

 

「何のマジックかトリックか能力者かは知らんが、そんな手品遊びごときでなめてもらっちゃこまるぜ!!」

 

おっと、今は戦闘中だったな。

 

「だが…、能力者相手なら都合がいい。とっておきのヤツがあるぜ!!オラァ、くらいやがれ、“ドヘム式ミズミズ爆弾”!!」

 

「あ?」

 

大砲から打ち上げた妙な形をした弾がゆっくりと天に向かって登っていく。というか、弾速遅ッ!!俺に当てる気あんのか?

うむ、ミズミズ?もしかしたらあの中から極限まで圧縮されていたパチンコ玉が弾けるとか、そういう全体攻撃的な攻撃である可能性も否めない。一応両手を構えていつでも対処できるようにするが…

 

その攻撃は予想外の形で訪れた。

 

ポン、ドパン!!

 

間の抜けた音と共に、爆発したミズミズ爆弾の中から溢れ出したのは、釘でもない、ましてや凶器でさえなかった。

 

そう、それよりももっとタチの悪い…ヌルヌル(・・・・)の液体だった。

 

「あ?…ギエピィィィィ!!」

 

顔面を中心に身体中からその液体を浴びた俺は、地面を滑ってコケてしまった。

何だコレ!?滑って動けないし、粘液が無駄に粘ついて動けない!?

 

「グワハハハハ、ざまを見やがれィ!!ドヘム式ミズミズ爆弾には、ヌルヌル&トリモチ成分100%の特性ローションがこれでもかと詰め込まれているのだァ!!」

 

何だその〇〇(ピー)で喜ばれそうな無駄親切設計!!

 

「くそが、ヌルヌルしたモンぶちまけやがって!!そっちこそ遊んでんのか!?」

 

「遊んでねェよ、こっちは大マジメだ!!だが、刹那の闘争にユーモアを入れるという画期的な戦闘方法を取っているがな!!」

 

「それが遊んでるっていうんですけど、俺の勘違いでしょうかァン!?…というか、あんたの子分も影響を受けてますけども?」

 

「何ッ!?」

 

ドヘムが振り返ったそこには、謎の液体Xに思いっきり巻き込まれている手下たちがいた。

 

「親分そういう変な発明使うなら先に言ってくだせェェェェェ!!」

 

「うわ、何だこれ、ヌルヌルで動けねぇ!!」

 

「助けてェェェ!!」

 

「おまえらァァァァァァァ!?」

 

男達が謎の粘液で滑って転んで大騒ぎ。そりゃそうだ。あんなもん上空からバラまいたら被害が拡大するわ!!

しかし、当人はそんなこと全く気付かなかったのか、オタオタしているけども。いや、自分の発明のウィークポイントくらいちゃんと考えておけよ…。

というか誰得だこの状況。誰も得しないよ。ドヘムが頭を抱えて絶叫してるんだけど、…ウン後の祭りって言うのかねこういうの。

 

というか、こんなに隙を作っていいのかね?ま、俺には知ったこっちゃないんだけども。

仰向けに寝転がったまま、まだ武装色の覇気をかけたままの両手を静かに持ち上げ、高速で振り合わせた。

 

ギャギャギャギャギャリンギャリン!!

 

鋭い刃をこすり合わせたことによって、両腕の間に膨大な摩擦熱が発生する。

常人ならこれ程の熱量を感じると、恐怖を感じて中断してしまうだろうが、俺は違う。むしろ、そこが狙い目。

 

ボッ、ゴゴゴゴゴ

 

そして、発熱、着火。それに応じて―――腕に纏っている覇気が炎の特性を帯び始めた。

 

「この世の全てに…じゃねェや、手刀“手合い”焔遊び(ホムラあそび)!!」

 

「な、何ィ!?」

 

突然発火を始めた俺の腕を見てドヘムが驚愕(ゴーグルのせいで目は見えないけども経常的に目をひん剥いてるに違いない)の顔をしていた。

俺はそんなこと気にせず、発火させたままの腕で、そのまま身体中に纏わりついていたヌルヌル成分を熱した刃で取り除いていく。

 

「ふぅースッキリした。やっぱり、こんな公衆の面前でヌルヌルプレイはするものじゃないね」

 

「の、能力者は水に浸かったら身体から力が抜けちまうんじゃなかったのか!?なのに、何故お前はそんなにピンピンしていられるんだ!?お、お前は一体何者なんだ!?」

 

「誰でもいいだろそんな事!!騎士の試合じゃあるめェし、お前に名乗ってやる名前なんぞねィ!!」

 

「ヌ、ヌォォォォォォォ!!」

 

ドヘムが新たな弾を大砲に装填して構えるが、もはやそれも徒労!!俺はすでに攻撃可能距離まで来ている!!

くらえ、十字に重ね合わせた炎を帯びた手刀の回転!!

 

遊戯(ゆうぎ)焔風火遊扇(ホムラかぜかゆうせん)”!!」

 

「ぐあァァァァァァァ!!」

 

ドヘムの身体を通り過ぎる瞬間に打ち込まれた炎を纏った剣撃は、ドヘムの武器そのすべてを焼き、切り刻み、そしてその持ち主であるドヘムの身体へと襲い掛かった。

 

 

 

 

「す、凄いのれす!!自分の二倍もある上背の男を、ただの一瞬で倒してしまったのれす!!」

 

「フフフ、さすが辻斬りね。イイモノを見せてもらったわ。さすがはグンジョー…いや、辻斬りちゃんね」

 

シャッキーは、興奮げに窓際で飛び跳ねるラクーンを手でせいしていた。

 

「でも…彼まだまだ本気じゃないわね」

 

「え、何故そんなことが分かるのれすか!?」

 

ラクーンの質問に、シャッキーは微笑むながら答えた。

 

「何故って、彼は剣士よ?剣士は剣で戦うもの。でも、彼は剣すら抜いてない。でも、素手での戦闘でこれ程の力。…本来の実力はどれほどのものなのかしら、興味あるわね」

 

「あれで、全然本気じゃない?」

 

ラクーンは腕の炎を振り払いながらドヘムに近付くグンジョーを見おろした。

 

「もしかしたら…もしかしたら彼ならば…」

 

ラクーンの振り絞るようなその声をシャッキーは聞き取ることが出来なかった。

 

 



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おしい、ここまで出てる!!

また更新遅れちゃってスイマセンね!!


桜吹雪の舞い散る中、一人の男の前に短刀が差し出される。男はそれを見つめると、潔くシャツをめくりあげ、自分の腹を外気へとさらした。

 

「人間五十年~~~…以下略」

 

男は短刀を手に取ると、鞘から刀身を引き出す。そう、男の決意は最初から決まっていた。戦闘による敗北は死。…だが、それも名誉の戦死だ。

 

「オイ兄ちゃん!!この勝負、俺の負けだァァァァァァ!!新世界は、ワの国のやり方に乗っ取り俺は腹ァを切る!!お前らァ、今まで世話になったなァ…だが、それもここまでだ。達者でな、アバヨ!!」

 

『お、お頭ァァァァァ~~~~!!』

 

「やめんか、バカタレ!!」

 

『お頭ァァァァァ~~~~!?』

 

何なんだこの流れは。思わずして展開された空気をぶち壊すために、俺はドヘムの頭を思いきりはたいた(覇気付き)。

 

「イデェェェェ!!」

 

なっ、軽くとはいえ、覇気付きのビンタを耐えやがった!!

オツムのほうはともかく、タフさは中々のようだな…とか、考える前に俺は事態を収拾することにした。

 

「バカかお前は!!お前はバカか!!」

 

「お、おいあんちゃんこれから潔く散ろうとしている男に向かって、その態度はあんまりってもんだゼ!!」

 

「知るかそんなこと!!こっちは急な超展開についていけずに、取り残されとるんじゃ!!少しは事態の説明をせんかいワレェ!!」

 

キレて怒鳴りつけると、ドヘムはその大きな口を三日月形にひん曲げて

 

「お、おいあんた!!組織の者でもない人間にとやかく言われたんじゃあこっちも面目ってもんが」「アアン!?何かいったか!?」ヒッ、分かりました。分かりましたよー!!」

 

余計な話をグチグチ言おうとしたヤツを一睨みで黙らせた。これ以上謎展開に翻弄されてたまるか!!

 

「何て慈悲深いお方だァァァ~~~~!!この弾丸エレファントの頭領(ヘッド)、ドヘム!!旦那の雄々しいお姿に感服いたしやしたぜ!!あんちゃん、いやさ、旦那と呼ばせておくんなせい!!」

 

「あ~、あ、そう」

 

面倒な奴に目を付けられちまったな~。何か目がキラキラしてるし。何なんだコイツは。

 

「で、願わくば旦那の名前をお聞きしてェんですがよろしいですかい?」

 

「え、何で俺の名前を?」

 

「何をおっしゃりますかい旦那!!俺のハートにビンビンひびかせいぇくれちゃった男の名前を是非ともお聞きしたいんで!!ヘイ!!」

 

「え、そう言われても困ったな…」

 

この、時代劇から抜け出してきたかのようなドヘムのテンションもわずらわしいことこの上ないが、それ以上に名前について答えてしまっていいのだろうか。はて、困ったさてどうしよう。

ここで辻斬りである俺の名前を出したら、こいつらの事だ。この諸島中に俺の生存の話が伝わっていくに違いない。人の口に戸はたてられぬ、とはよく言ったものだ。

結果的に、海軍の奴等にも聞かれたらそれこそたまったもんじゃない…。それで、中将、いやさ大将まで連れてこられたら…。

ブルルルル、何か今から寒気がしてきたッ!!

 

「お~い、アオランド~~!!」

 

未来に対する恐怖におびえていた時、Barの方から魔の抜けた声が聞こえてきた。

 

「お、ラクーン…」

 

「おぅ、こいつは珍しい。小人族とは、おりゃあ初めて見ましたぜ。確か新世界のどこかの島で隠れ住んでいる、っつー話を聞いたんだけどな。何でこんな場所にいるんだ?」

 

人にとっては登っていくのも一苦労な階段でも、中々の機動力を持っている彼にとっては楽勝だろう。

しかし、地面に降り立ったラクーンはその大きな目をいっぱいに開いてガクガクと震えはじめた。

 

「ッ!?ななな、何か大人間がいっぱいいるんれすけど!?」

 

ラクーンはあまりに大勢の人間を見たからだろう。俺のコートの裾から俺の服の中に入り込んでしまった。

 

「おい、勝手に入ってくんなよ…くすぐったいなオイ」

 

「…で?旦那の名前は何とおっしゃるんで?」

 

あ、もしかしたら使えるかもしれない。

 

「お、俺の名前は…そうだ。“アオランド”だ」

 

「アオランド?…そうですか!!では、アオランドの旦那!!もし何か困りごとがあったらいつでも俺を訪ねてくだせェ!!あ、これ俺の電伝虫の番号でッス」

 

無理矢理右手を開かれて電伝虫の番号を無理矢理握らされた。

 

「不肖このドヘム!!いつでもお助けしやすぜ!!じゃあ、旦那いつか近いうちに!!…オイオマエラさっさと帰るぞ!!」

 

『ヘ~イ』

 

「頭ァ、次はちゃんと前もって武器の説明してくださいよ!!」

 

「あ?そんなこと言ったらオメエ、浪漫がねェじゃねェかよ!!ここぞって、時に俺様の必殺兵器がだなァ…」

 

そう言いながら、ドヘム率いる弾丸エレファントはゾロゾロと列をなして帰って行ってしまった。

全く、面倒な奴らとかかわりを持っちまったものなのれすねェ…。

 

 

 

 

「あれ?」

 

帰り際、ドヘムの部下である一人の男が何かを思い出したかのように呟いた。

 

「どうした?」

 

「そういや~アオランドの旦那の顔ってどこかでみたよ~~~な気がするんスよねェ~~」

 

「アオランドの旦那がァ?」

 

それを聞いてドヘムもグンz、ゲフンゲフンいや、アオランドの顔を思い出してみる。一見、ある程度整った顔をしていた。が、あの程度の男なら、探せばどこにでもいそうな気がする。

 

「ブァカかオメェ!!そんなもん、気のせいに決まってんだろ!!それに、どこかの貴族なのか、ビッグネーム賞金首がこの島に入って来たのなら、すでに噂になっているだろうがィ!!」

 

「あ?あ~、そう言われてみればそうっすねェ。う~ん、やっぱ俺の気のせいっすネ」

 

「ガハハハハ!!そんなツマンネェこと考える前に酒だ酒、また飲むぞォい!!」

 

「お頭勘弁してくださいよ、後始末するの結局俺達なんすから!!」

 

一同の笑いの渦によって、アオランドへの疑問は、霞みの彼方へと消え去っていった。

 

 



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細かいこと気にしたらあかんゼヨ!!

遅れました。モンハン4買いました。取材です。レイア亜種さんどしたん。取材です。広島残念だった。取材です。お母さん!!取材です。


とある酒場で人さらい集団が騒いでいる。

この光景はシャボンディ諸島では珍しい光景ではない。人をうった金でのみ騒ぎうたう。非人道的ともいえるが、この世界、特にこの場所では当たり前の事だった。

 

そして、そのトップであるドヘムもまた宴を楽しんでいた。最近は、目立った賞金首がこの島には来ない。例え来たとしても小物程度だ。一昔、いや二年ほど前の事だが、憶越えの賞金首が複数来たときは心躍った。

早速、部下を派遣したが彼等は泣きながら帰ってきた。あまりの惨状に何があったのか聞くと何と彼等は、憶越え通しの喧嘩に巻き込まれたのだという。と言っても、一撃で地面が大きくえぐれ、さらにはその地面が塊となって飛び交う、という有り得ない光景だったらしいが…。その時、ドヘムは身分相応と言う言葉を知った。

 

完全敗北。

 

そう今日の様に。

 

ドヘムは未だに痛む頭をさすった。

 

そして、早く今日の事を忘れようと、ワインの栓を開けて口に運ぼうとした時だった。

 

ぷるるるる、ぷるるるる

 

おもむろに、彼の手元に置いていた電伝虫が鳴り始めた。

構わずワインを飲もうとするが、それでも鳴りやむことなく永遠となり続ける。一口飲みほした後、流石にわずらわしく思ったのか、ドヘムは受話器を取り耳に押し当てた。

 

「もしもし?」

 

『やぁ、ドヘムおれおれ』

 

どうやら、電話の向こうの人物は男の様だ。

しかし、少なくない数の顧客や知り合いがいるドヘムにとって、向こうが名乗らない限り特定の人物を判断することは難しい。

 

「誰だが知らねぇが、詐欺はお断りだぃ」

 

だから、そう言い返したのだが、向こうはどうやらそれがお気に召さなかったようだ。

 

『テメエ、また燃やすぞ!!』

 

「…すいやせん!!」

 

一瞬にして、ドヘムはワの国に伝わるという所謂土下座の体勢になった。

“燃やす”と言う単語にはドヘムは今若干敏感になっている。何せ、ついさっき燃えるような痛みを味わったばかりなのだ。

 

「で、どうかなさったのですかい、アオランドの旦那」

 

少し咳払いをした後、向こうの人物はゆっくりとしゃべり始めた。

 

 

「どうか、仲間を探すのを手伝ってほしいのれす!!」

 

「うん、いいよ」

 

「うんうん、そうですよね、僕もいきなりこんなことを言って、いきなり受け止めてもらえるとは思ってはいないのれす。でも、こうしている間にも仲間達が…えっ」

 

一仕事…いや、仕事にも満たないないい汗をかいて帰ってくるなり、ラクーンに彼の仲間の捜索を協力するように頼まれたから頷いてやった。どうして意外そうな目をしているのであろうか、ゲセヌ。

どうせ、コーティングが終わるまで少し暇だし、それにラクーンの願いを断る理由がないしな。小人君達を見つけて、奴隷商人から奪い返すだけの簡単なお仕事だ。決して小人がかわいいから尻尾をモフりたいとかそんなんではない…おい、そこツンデレ言うなし!!

 

「ほらね、やっぱり言ってみて正解だったでしょう?彼相当のお人好しでしょ?」

 

「まさかとは思ったのれすけど、ここまでだとは思わなかったのれす…」

 

ニコニコと笑うシャッキーの横でラクーンは何故か呆れたようにため息をついていた。

 

「おい、そこの二名、本人の前でよくそんな裏話できるな。さては、俺の運動中に何か作戦でも練ってやがっただろう」

 

「あら、何の事かしら?」

 

すっとぼけやがって、コンニャロー、マジでこの店経営面でに潰したろか!?

 

「しかし…お前達、一体どうして捕まってしまったんだィ?あんなにすばっしこいなら、普通の人間なんかにゃ、捕まらないのだろう」

 

実際、覇気を使わなければ俺の目にも捕えられなかったし。修業中の身とはいえ、俺もまだまだという事か…。

 

「おいしそうなにおいにつられて出てきたら、すぐに捕まってしまいました」

 

なるほど、見た目通り単純な生き物と言うわけなのだろうか。

 

「今、何か失礼な事を言われた気がするのれす!!」

 

「気のせいだ」

 

頭から蒸気をプシーとだして怒るラクーンを無視して、壁に貼られていたシャボンディ諸島の地図をシャッキーに許可を取って持ってくる。

 

「で、どうするんだ?お前ほどじゃないけれど、この島は普通の人間にとっても十分広い」

 

実際、シャボンディ諸島は巨大な樹木、ヤルキマンマングローブを中心に形成されたいくつもの島からなる。

それぞれのGRで多い建物は知っているが、それでもただ多いというだけで、そこにべつの建物がないわけじゃない。

 

「何の手がかりもなしに奴隷オークションハウスを手当たり次第ってのも、中々メンドうだぞ。それに、向こうが大人しくその日の商品を教えてくれるわけないしな」

 

さぁ?それは入ってからのお楽しみですよ、とかはぐらかされてオシマイだろう。ぶっちゃけ、手当たり次第にぶっ壊して、ここじゃない、次!!と言う強引突破的方法を取ってもいいのだが、そうすると、海軍本部さんがくるじゃないですかーヤダヤダ。

 

「うっ…」

 

「あー、もう泣くなよ。どうにかすっから」

 

涙目になるラクーンを何とかなだめていると、厨房で煙草をふかしていたシャッキーがおもむろに口を開いた。

 

「案外楽に見つかるかもしれないわよ?」

 

「え?」

 

ラクーンと同じ?が浮かんだ顔をしてシャッキーを見つめると、彼女は微笑みながら口を開いた。

 

「あたしも、この島に来てから長いわけじゃないけれど、昔からこの島でそう言う家業をしている連中なら、独自の情報網とかで商品の取引とかをしてるんじゃない?とか思って」

 

「え?それってつまり?」

 

そう聞き返すと、シャッキーは呆れたように首を振った。

そんな事されても分からないんだからしょうがないじゃないですか。鈍感とかいうなっ。

 

「鈍いわねぇ…。うまり、餅は餅屋ってわけ。分かる?そして私たちは…、いえ、正確に言うのなら、あなたはそういう連中を知ってるんじゃない?」

 

彼女は空いた手をヒラヒラとまるで回遊魚の様に揺らしながら俺の手を、いや正確に言えば、俺の手の中に握られているドヘムの電伝虫の電話番号が書かれた紙を指差した。

 

「えっ」

 

「うふふ、その通りよ」

 

「そんな昨日の今日どころか、さっき会ったばかりの奴に会いたいって一回電話する、とかそういう話じゃないですよね!?」

 

「いや、そうだけど?」

 

えっ、何それハズカシッ!!

 

「ヤダヤダ、そんな恥ずかしいことはしたくない、したくないよー!!」

 

「するの?しないの?」

 

「します」

 

KOE―!!

い、今本気の本気顔だったぞ!!あれはヤバイ、刈り取る者の目だった!!野生の本能に目覚めた動物園のライオン、的な!!

 

「ハぁ…まったく、もう…」

 

背後からヒシヒシと感じる圧力を感じながら、俺は受話器を取った。

 

 

 

 

 

「確かにおりゃあいつでも力になる、とは言ったぜ?でもなぁ、おれたちゃついさっき会ったばっかだよな?いくらなんでも少し早すぎやしませんか?」

 

『それをいうな恥ずかしい。こっちだって好きでやってるんじゃないやい』

 

電話向こうの声は微妙に震えていたような気がした。彼なりに羞恥心を感じているのだろう。ドヘムはこれ以上この話題に触れないことを決めた。

 

「で、アオランド旦那はあっし達に何をお望みで?」

 

電話をかけてきたのだから、おそらく自分達の力を借りに来たのだろう。頼ってもらえることによく感じるであろう、優越感にも似た何かと喜びを感じていた。

しかし、それと同時に向こうの呼吸のトーンが少し早まったことも感じた。

 

『端的に言えば仕事だ。最近、どこかのヒューマンオークションで珍しい種族、小人族が入荷したかどうか調べてほしい。なに、一応、礼はちゃんと(オークションハウスから奪ったお金で)払う』

 

「…今、何か含みを持たせませんでしたか?」

 

『気のせいだ』

 

それだけ聞いた後、ドヘムは酒場で騒ぐ部下達に視線を送った。その合図に気付いた一部の幹部たちが手を打ち鳴らすと、次第に酒場の中が静まりかえる。トップはやや便りがないが、一応激しいシャボンディ諸島を生き抜いてきたのだ。上からの命令に瞬時に判断し、理解する。彼等は一つの生き物として常に動いている。

 

「で、仕事はいつからはじめればいいのんで?」

 

ドヘムの言葉に、電話の向こう側にいる人間がほくそ笑んだような気がした。

 

『そりゃできることなら、今すぐにでも』

 

その言葉を言いたドヘムは、豊かなヒゲの中に隠した大きな口を、三日月の様にニヤリとひしゃげさせた。

 

「なら、2時間で十分ってわけだな」

 

『…そんな時間で大丈夫か?』

 

「あたりきよ、俺を誰だと思っているんでぃ」

 

『知らない』

 

「…」

 

少し悲しかったが、ドヘムは話を続けることにした。

 

「というわけで旦那、電伝虫を話さないようにしておくんなせい。すぐに情報を持ってくるからよ」

 

「そうか、じゃあよろしく頼む」

 

そこで電話は途切れた。

仕事を終えて眠りにつく電伝虫の背に受話器を置いた後固唾をのんで会話に耳を澄ましていた部下達に指示を放つ。

 

「野郎ども、仕事だ!!」

 

『ヘイ!!』

 

その言葉を合図に、ドヘムの部下達が動き始めたのだった。

 




取材です!!


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泣きっ面にス〇アーのミサイルばりっっ!!

ドヘムの電話からキッカリ二時間後のこと、

 

『旦那』

 

ドヘムの部下の一人から電伝虫に電話がかかってきた。

 

『妖精さん9人、見つけやしたぜ』

 

「OK」

 

電話を切ると、俺は外へと飛び出した。

 

 

「それにしてもすげえな、まさかこんな短時間で小人さんを発見できるなんてなぁ」

 

「そりゃそうですぜ旦那。こう見えて、部下だけは多いんで、情報だけは結構入ってくるんでさぁ!!」

 

「いや、お前ら酒飲み集団止めて情報屋になればいいんじゃねェのマジで「うほー!!すごいすごい、まるで飛んでいるみたいなのれすね!!」え、…あー、すごいね確かにすごいすごい」

 

俺が来ているコートの中から顔の実出して、目をキラキラと輝かせているラクーンだが、話を残しを折られるという何とも言えない屈辱と共に、俺は不満な顔をラクーンに向けた。

 

「でぇ、旦那ぁ。どうするつもりですかい?」

 

「えぇ、何か言った?聞こえないよ」

 

肩で風を切るのはオード〇ーの春〇さん。しかし、今の俺はもろに風を感じている。電話をした後、何故かすぐにシャッキーの家の前にやってきたドヘム軍団…ならぬ、爆走軍団に無理矢理連行されて、実際に風を切るような感覚でいます。…まぁ、バイクに乗ってるんだけどね。

 

楽しい?んなわけないだろ!!

 

こちとら地味に生きていかなきゃいけないから、あまり目立つような真似はしたくないんだ!!…まぁ、時間の短縮になるからありがたいことなのだが、それを差し引いてもやはり恥ずかしい。この光景、まるで前世のテレビで見た、暴走族のようなものじゃあ、ないですか!!

 

…ちょっと、そこ!!そこの遠くから何事かとこっちを見ているギャラリー集団、露骨に「うわ…」みたいな顔するんじゃねぇよ!!コイツらと俺は一切何の関係ないっての!!一緒にしないでくださるかしら!?

 

「ったく、胸糞悪いなぁ…もうぅ」

 

「まぁまぁ、旦那。こういう爆走も、慣れれば結構楽しいもんですぜ?」

 

「その話してんじゃねぇよ!!というか、爆走じゃない、ほぼ暴走だよね!?…ハァ、いや、ちょっぴりお前らと同族にみられるの嫌だな、とは考えていたけれども」

 

ヒデぇ!?と呻くドヘムを無視して電話で話した内容を思い出す。

まぁ、捕まって無理やり連れてこられたという話から

 

「で、旦那。悪いニュースとめっさ悪いニュースがあるがどっちから聞きたいですかい?」

 

「じゃあ、悪いニュースで…って、結局どっちも悪いニュースなのかよ何でだよ!!」

 

こういうのって、普通ならいいニュース、悪いニュース、Dotch or Dotch?とかいうパターンじゃないのかよ!?

もういやだ、こんな生活。レッドさんには「困っている人がいたら、なるだけ助けてやんなさい」、とは言われているけれども、それが俺の習性になってはいないだろうか。だとしたら、俗に言う、厄介ごとに首ツッコんでカッコいいとか思っているヤレヤレフェチと思われちゃうじゃないですかーヤダー!!

 

「俺はそんなニヒルなキャラは目指してない!!」

 

とりあえず、怒りのままドヘムの頭をポカリと殴ってやった。

 

「イデエエ!!何すんだ旦那!!」

 

「うるせぃ!!いいから黙ってバイク飛ばしやがれ、頭部の毛を丸ごとひっくるめて永久脱毛させんぞ!!」

 

「ヒぃぃぃ!!な、何か一段と旦那がヴァイオレンスだ!!」

 

おびえて悲鳴のような声を出す光景を部下たちは、酒には弱いはいえいつも頼りになる親分が、一方的に苛められているが、相手が相手なので、何もすることができないという何とも言えない物悲しげな顔で見守っていた。

 

「…で、そのにゅーすとやらを聞かせてもらおうか」

 

「ああ、その話だったな…まずは、小人さん達がいるオークションハウスのオークションがすでに始まっている」

 

その言葉に、高揚していた気持ちが一気に静まりかえり、それに代わってまるでマグマのような怒気の塊が、俺の中でくすぶり始めるのを感じ取った。

 

「もしかして小人がいるのって…」

 

「へェ、この島の名物の一つ、闇の商売、世界政府の隠したい部分“ヒューマンオークション”にいるんでさ。ま、奴等は珍しい種族なので、登場は最後の方みたいですがね」

 

思わず握り拳を太ももに突き立ててしまった。知らずに力がこもっていたのか、口の奥から歯がギリギリと軋む音が響いた。

 

「ひゅーまんおーくしょんとは何ですかアオランド?」

 

唯一事情を知らないラクーンが無邪気な声で俺に問いかけてきた。

 

「ああ、置いてけぼりにしてしまったな。スマンスマン」

 

「それはイイですけど…どうしたのですか、アオランド。なんだかすごく怖い顔をしているのれすけれども…」

 

マジか感情が顔に出てたか。うむ、こういうところはまだまだ修行が足りない、といったところか…。

 

「いいかい、ラクーン」

 

何とか気持ちを落ち着けた後、ラクーンの疑問に答えることが出来た。ドヘムは俺の気持ちを汲んでかさっきからずっと黙っている。こういうところは、妙に勘の鋭い奴だな。

まぁ、いい。やや嫌な気分がするが、こいつにも教えてやる事にしよう。

 

「ヒューマンオークションてのはな…捕まえてきた人間奴隷の競り(・・・・・・・)をする場所だよ」

 

この綺麗な世界の中で、暗く濁ったクソッタレな話をな。

 

 

 

“奴隷”

 

 

 

人として当たり前の権利がなく、“物”として売買される人間達の事である。

そもそも、過去の時代から奴隷というは存在していた。敗北した国が勝者の国に連行されて奴隷として働かされたのは、誰しもが知っている事だ。

しかし、その待遇は地域、時代で様々である。鞭で叩かれ、一日に何時間も無理矢理労働させられたりされたものがその最たる例もあれば、中には幸運に恵まれて奴隷身分から解放されたり、中にはローマの剣闘士のように、自らの力で自由身分を勝ち取るような例もあった。もちろん、日本でも旧世、中世でも人狩りなどで攫われた人々が戦力や労働力として働かされ、江戸時代にも遊郭に遊女として口減らしされた。中には海外に売られる例もあったという(後に豊臣秀吉のバテレン追放令によって禁止された)。

 

しかし、この世界で知られている奴隷の扱いとは、俺達が考えるイメージ通りそのものだった。いや、それよりも悪い。

この世界の人々はただの人間だけじゃない。魚人を筆頭に、巨人、小人、足長族、手長族と様々な人種に富みすぎている。金持ちたちはオークションハウスに足を運び、そこで様々な奴隷を手にする。

その種類は様々だが、労働奴隷、愛玩奴隷etc…etc…。こんな行為だけでも反吐が出るが、何とこの世界では、珍しい人種を持つことがステイタスなのだそうだ。

 

…やはり、思った通りの事をしてくれちゃってるな世界政府。奴らは、この状況を知りつつも事実上黙認しているのだ。遥か昔に廃れた奴隷と言う悪しき文化を、今に伝えている。確かに世界的秩序を保つためにバラバラになった世界中の国々をまとめ上げ、海軍を組織することはいいことなのだろう。

しかし、その抱えている闇は相当深い。

彼等は世界の盾であると同時に、その盾の裏にどうしようもない矛を抱えている。まぁ、人の良くは限りないともいうが、個人的にはあのクソッタレ一族がその大きな原因名のような気がするけれども。

 

 

「…酷いのれすね!!」

 

俺の語った政府の悪行の数々聞いたラクーンが憤る。

 

「せかいせーふめ!!えと、あと、そのててててん?そいつらもいつか、僕が直々に成敗してくれるのれす!!」

 

「ハハハ、お前ひとりじゃ無理だよ。ま、いつかは世界政府に対して直に文句言える日が来るかもな。いつかは」

 

「剣呑な話をしている所悪いがいいですかい旦那?さらに悪いニュース…」

 

「あ~、そんな事もあったねェ。この際、もう何が起きても驚かないからな俺」

 

「あ~、実はな、そのオークションハウスに何だが――――がいるみてェ何だよ」

 

「アアハハハハ、もうやだ何なんですかね。前言撤回させていただきますわ…」

 

風切り音と共に聞こえてきたそれに、思わず俺は天を仰ぎ見た。ヤルキマンマングローブの木々にシャボン玉、そしてお日様が見えた。

 

「いつか全部ぶった切ってやるゥ…」

 

「へ、何の話ですかい?」

 

お前は気にスンナ。さっさと、目的地まで急げ!!

 

 

 

小人たちが捕まっているというヒューマンオークション会場の前につくと、すでに入り口前が騒がしい。遠くの方から見守っていると、ドヘムの部下らしき皮ジャンを着た男数人が、オークションハウスの前にいる紳士服を着込み、腹がでっぷりと膨れて逆に足がヒョロリと細い奇妙な体躯の小男に詰め寄っていた。

 

「おい、どうしてだよ、そいつらは俺達の知り合いなんだって、本当だよ!!」

 

「ヒフフフ、一体何をおっしゃっているのやら、そうは問屋が許しませんよ。こちとらお金を払って、商品を買わせていただいたのです。はいそうですか、と返すわけには行きませんよってに、ハイ」

 

「じゃあ、どうすればいいんだよ!!」

 

「…そうですねェ、小人1人50万ベリーで買ったので、8人分で400万ベリー。儲けの事も考えますと、是非とも1000万は欲しいですねェ。ハイ」

 

「そんな金あるわけねェじゃねェか、ボッタクリか!!」

 

「いえいえ、お商売のお話ですよ。我々もどうしてもお金が欲しいもので、ハイ。それに、知り合いを取り戻すためには、それ位のお金容易いでしょう?」

 

「テメエなめてんのか!!」

 

全額俺が立て替えるから、買い戻してくれ、といったが、やはり目論見が甘かったようだ。奴等、予想以上の金額を引っ掛けてきやがる。小人の奴隷1人レートが70万として、全員買い占めるとなると560万。ほぼ倍の金額を吹っかけてきている。俺の所持金でも…うむ、無理だな。

 

というか、チッ、さっきから聞いてれば反吐が出てくるような会話しやがって。

 

「あー、もう結構です。あなた達の話は現実味はなく、ただ邪魔です。それにもう聞き飽きました、ハイ」

 

小デブが軽く手を叩くと、彼の後ろに構えていた屈強な大男2人が皮ジャンたちの前に進み出た。

 

「これ以上我々の手を焼かせると、あなたたちどうなっても知りませんよぉ?それに、今日は天竜人(・・・)の方々もいらしてまして、騒ぎを起こすと…あなた方どうなると思いますか、ハイ?」

 

「うっ…」

 

その言葉に皮ジャンはずるずると引き下がる。

弁舌戦は終わり。誰の目から見ても、勝敗は明らかだろう。

 

「ドヘムもういい。彼等を帰らせろ。これ以上は面倒くさいことになるぞ」

 

「…ヘイ、丁度今、俺もそう思っていたところでさぁ」

 

俺が指示を出すでもなく、ドヘムは子電伝虫に手をかけていた。

 

 

 

 

今日は何と幸運と面倒事が一緒にやって来た。

このオークションハウスの支配人を初めてもう数年になるが、先日世界政府から直々に連絡が来たときは心底驚いた。遂にこの日がやって来たのかと。あの方々は癖が強いが、気に入った商品を見つけた時、ポンと多額のベリーを払っていく。それも、一般人が一生かけても到底払いきれるようにない額をだ。

その分、失礼のないようにしなくてはならない。過去には、他のオークションハウスの住人が銃で撃ち殺されたり、聖地マリージョアに連れて行かれたりしている。

曰く、顔立ちが気に入らなかった、美人で気に入った。嫁にしてやる、と。

一般人からしたら狂気の沙汰かもしれないが、彼らのように生まれた時から常識や、人として当たり前の事を教育するものがいないで育つと、ああなってしまうらしい。

 

世界政府の傘を借りた豚めが…

 

そう思う事もあったが、現在彼等は大事な金ヅルであることは確かだ。

そのために、奴隷を仕入れてきて天竜人のために特別なビップルームを不眠不休で作らせたのだ。

 

そして、海軍の面々が護衛するかのようにやってきた親子の天竜人の方々を出迎える二至った。…その際、彼らが連れてきた家臣の騎士達と、移動代わりにでもしてきたのか、まるで家畜の様に四つん這いになっている男の奴隷と首輪をかけている踊り子のような女の奴隷たちは無視して。

 

『お父様、コイツもう弱っちいからいらないアマス!!』

 

『お前はまた奴隷を壊しおって。“物”はあまり壊すなと言っているはずだえ』

 

『でも、私はもっと強い奴隷が欲しいアマス!!今度は奴隷を使って人間神輿を作りたいアマス!!それに、人魚と魚人のコレクションも欲しいアマス!!』

 

『まぁ、仕方がない。おい店主。こいつはもういらんえ。ただで売ってやるから適当に処分するえ。ホラ、行くぞオマエら』

 

『ウッ…』

 

『ハ、ハイ。ありがとうございます』

馬鹿が!!こんな傷だらけの奴隷なんぞ、誰も見向きもしねェよ!!

そう舌打ちと共に怒鳴りつけたい気持ちを抑え、奴隷を引き連れていく天竜人の方々に笑いかけながら話かける。彼等を怒らしたら大変だ。まるで臣下のように接し、ビップルームにお連れ致した。

彼らが希望する人魚たちの奴隷はいないが、そのかわりに魚人族や巨人族の奴隷や、小人族の奴隷たちが複数入ってきている。

特に、魚人族は高い値段で買われることであろう。

この品揃えには、彼等も満足してくれるだろう。…そう思った時だった。

 

「おい、ここに小人の奴隷は入ってきてないか!?」

 

いきなり、複数人の男達がバイクで乗り付けてきたと思ったら急に私に詰め寄ってきた。

チッ、この手のタイプはメンドウくさいタイプだ。一部人気の奴隷を買い付けて、他のオークションハウスで高値で売りさばくタイプか、知り合いが奴隷として売りさばかれそうなタイプ。前者はともかく、後者は厄介だ。

 

「ええ、小人の奴隷は複数入ってきていますが?」

 

「お、マジか!!そいつら、もしかしたら俺達の知り合いが探してる奴かもしれないんだよ。出来れば面通しさせてくれねェかな?」

 

チッ、後者だったか!!

この手の連中は厄介だ。返してくれだの何だのとごねてこちらに迷惑をかけてくる。その人は家族なんだ早く返してくれだの、全く、こっちは高値を出して奴隷を買ってるんだ。今更返せとか言われても知らねェよ!!お前らの自業自得だろうが。俺には関係ねェ!!

こういう連中は脅して丁重におかえりいただくに限る。サングラス越しに後ろの男達に無言で指示を出すと、自分のエモノを引っ張り出した。

 

その後も散々ゴネてくる男達に適当な金額をふっかけかわしてもう、強引にお引きとりいただこうとしたその時、男達が持っていた子電伝虫に連絡がかかって来た。どうやら、こいつらのボスらしい。成程、言いがかりをつけてうちの商品を盗ろうとする魂胆だったのか、全くこれだから人間ってのは信用ならない。

 

やっとうるさい奴が帰ったと思ったら、彼等と入れ替わるように先程よりも規模が大きい集団がやって来た。

何だ?こいつら言葉でダメなら力で奪おうってか!?上等だ。こっちには、何人もの賞金首を狩ってきた賞金稼ぎコンビと、天竜人の手下である海軍共がいる。ここでこれ以上の騒ぎをおこせばどうなるか分かってるんだろうなぁ!?

懐から銃を取り出して身構えている私の予想に反して、その頭と目される男はフレンドリーに話しかけてきた。

 

「よう、すまねェなぁ!!まだ奴隷の売買はやっているかい?」

 

「ハイ?」

 

ああ、そういえばコイツ…見たことある。どっかの人さらい集団のボスで確かドヘムという名前だ。討ち取った賞金首を海軍ではなくヒューマンショップに引き渡し、そのお金で飲んだくれる下戸の男。

何故か頬に殴られたようなあざがあるが、恐らくこいつを討ち取ったときに出来たものだろう。

今更次から次へとやってくる海賊どもをそんな古風な方法で捕えるとは、何を考えているのだあいつは…オークション仲間からは、半ば不気味な存在と言われている。ソイツが急に奴隷の売買だと?

 

「ハ、ハぁ、成程そう言うわけですか…。所で先程の彼等はお知り合いか何かで?」

 

例えそんな話を聞かされてもこちらはハイ、そうですかとはいかない。子分の後に親分が登場と言うのはよくある話だ。未だ警戒は説く気はない。

 

「…いんや、知らねェ奴らだな。何だ、お前らの知り合いじゃないのか?」

 

ドヘムが去っていく男達を振り返りながらそう言う。…ふむ、あくまでシラを切るか。まぁいい。話を本題に移すことにしよう。

 

「で、奴隷はどちらに?」

 

「おうおう、そうだな、おいお前らさっさと連れてこい!!」

 

ドヘムの怒鳴り声と共に、後ろで控えている部下と目される男達が鎖でボロ雑巾のような粗末な毛布をかぶった男を連れてきた。

 

「ああ、こいつはなぁ、俺達の酒場で騒いでいたバカヤロウだ。奥越え賞金首だというからな、買ってみたら何とびっくり300万の賞金しかかかってないってんで、ふざけんじゃねェよここは東の海かっ!!って事で連れてきたまでだ。精々灸を据えてやってくんな」

 

毛布を取ると、そこには中肉中背程度の男が鎖に繋がれていた。

ふむ、こういう場合、奴隷どもは泣き叫び、許しを請うが、この男はそれがない。眼光は鋭く、健康体で体も引き締まっている。

ふぅむ、ただのハッタリなのか、どうなのか、しかし、この海で300万程度ではお話にもならない、その程度の海賊という事だろう。

労働奴隷にしようか…いや、賞金首海賊のコレクションを集めているという愛好家も確か客の中にいたはずだ。よし、さっきからそこでヘばっている元天竜人の奴隷として売ってしまう事にしよう。

 

「なるほど、そうですかハイ。では、お幾らほどで買い取ればいいので?」

 

「…んあ?あ、別にいいぜそんなの、お前が決めてくれ」

 

…ほゥ、中々どうして自分の立場を弁えている。

オークションが始まってからも割り込みの依頼はいい金額が突かないことも多い。だが、それでも諦めきれずにゴネるやつもいるが、そう言う連中の商品は買い取らないか、逆に値段を引き下げて焦らせるという手段をとる。

しかし、ふぅむ、礼儀ものか、ただの馬鹿か、それとも何か裏があるのか…。まあいい。

 

「では、飛び込み料引きで20万で買い取らせていただきましょう。いかがですか、ハイ?」

 

「おうおう、それでいいぜ。交渉成立だ」

 

「了解いたしました。オイ、お前達!!」

 

視線で呆気にとられていた後ろの男達に指示を送ると、奴らやっと状況を理解できたのか、懐からベリーの札束と、奴隷用の首輪を取り出してこちらにやってきた。

 

「ではお金を」

 

「おう」

 

20万の札束を渡すと同時に、奴隷の身体のボディチェックをさせる。ダイナマイトのような危険な道具で強盗をやらせないための保険だが、今回はどうやら機器的なものは持っていないようだ。

頷く男を合図に、もう一人の男が首にガチャリと首輪をかけた。

これで、勝った!!

 

「毎度ありがとうございます。またどうぞ御贔屓に」

 

「おう、じゃあな飛び込みで悪かったな。今度はもっといい品を持ってくるからよ!!」

 

そう叫んで汚い口を半月上に歪めて一団は立ち去っていく。やれやれ、とんだ取り越し苦労だったな。まぁいい。首輪さえかけてしまえば、こっちのものだ。どんな策を練っていたとしても、首輪が外れてしまえば中に仕込まれた爆弾が起動する。時間が立てば木端微塵だ。コイツに出来ることは何もない。

 

「おい、こいつを商品の部屋まで連れて行け。しっかりと檻をすることを忘れるなよ?」

 

「ヘイ」

 

リーダーの男の合図を境に、別の屈強の男達がボロ頭巾をかぶせられている合われた奴隷候補の手首に繋がれた鎖を引っ張り中へと連れて行った。

 

これで、今日出荷できる商品が増えた。流石に天竜人の方々は買わないと思うが、中にいる進行役が観客達を盛り立てあの商品の値段を釣り上げてくれる事だろう。

私は近々昇進をしているであろう未来を喜びながら、天竜人のいるビップルームまで身を翻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おし、第一段階終了」

 

「なのれす」

 

ボソリとそう呟いた二人の言葉を聞いた者は、その場にはいなかった。

 

 

 




誤字訂正12/5

数段→集団 すいませんでした


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ぽっしぶる前提のみっしょん?

前話を一部チェンジ。奴隷に魚人さんが加わりました。


 

店員達が男をオークションハウス内へと連れて行く中、その様子を遠くから見守っている人間達がいた。言わずもがな、ドヘムとその部下達である(もちろん、人間を売りに来たのもドヘムの部下だが)。

 

「よし、OKだ」

 

折り畳み式の双眼鏡で、男がオークションハウスの裏口から入っていく様子を確認すると、隣で同じように双眼鏡でオークションハウスの様子を見守っていた子分が一人がドヘムに話しかけた。

 

「しかし、アオランドの旦那大丈夫かねェお頭ぁ。あれほどの強さとはいえ、あの中でひと暴れするとなると、かなり大変じゃありやせんかい?しかもそれだじけじゃねェ、うまく逃げ出せとしても海軍の団体さんと、しかもあの中にゃ天竜人がいる。何かしでかしたら、世界政府をそっくりそのまま敵に回すことなりやすぜ」

 

「ああ確かにそうだなぁ…」

 

ドヘムも政府の内情の情報まで走らないが、天竜人の名前はよく知っていた。

 

海軍陸軍を含め、世界の秩序を統括する世界政府。その巨大な組織を設立するにあたり、その中核を担った王達がいた。世界秩序のために、それを統治する組織を作りたい。そう願ったであろう彼らの意志は、今や最悪の形で働いているともいえる。今、彼ら過去の王達の権力と発言力、そして海軍や政府の武力を悪用しているのが天竜人達だからだ。

その所業を現すのであれば、“傍若無人”その一言に尽きる。常に偉そうに振る舞い、邪魔だからと通行人に襲い掛かり、目障りだからと家を一棟丸々壊すことは当たり前、さらに美人と見れば例え既婚であったとしても奪い去る。

彼等には何の文句を言う事は出来ない。なぜなら、彼等の権力にかかれば、平然と人を殺しても罪に侵されないどころか、撃たれた側が“天竜人の前を横切った”という罪が着せられるほどだからだ。

故に、天竜人の名を知る者は決して彼等に手を出さない。もし仮に怒りにまかせてて手を上げてしまったのならば、その人物はもう二度と明日の光を拝むことはできない。このシャボンディ諸島の隣接した土地にその居を構える“海軍本部”から大将が直々に無礼者を捕まえにやってくる。そして、裁判所にて一方的な裁判の元、死刑に処されるのだ。

 

彼等は人が死ぬ姿を見て何も思わない。むしろ、それを見て喜んでさえいる。

 

暴君ここに極まれり、生まれながらの人格破綻者と言っても過言ではないだろう。

 

事実、天竜人が原因で、悪党の道に堕ちる人々もこの諸島では珍しくないのだ。

 

「…中から取り返すっつっても、あの首輪取り付けられたんじゃ手遅れじゃないか?」

 

「ああ。あの首輪を付けられたんじゃ、もう手の施しようがねェ。あの首輪は、つながれている鎖が外された瞬間、中身の時限装置が爆発する仕組みなんだからな?」

 

「ああ。逃げ出した奴隷が目の前で爆発する光景は、今でも思い出す時がある。トラウマもんだ、おりゃ二度と見たかねェぜ…」

 

「だから俺は言ったんだ、四の五の言わず、欲しいものは盗んじまえばいいんだとよ!!」

 

「そう言ったらお前、旦那に殴られたんじゃねェか」

 

「でも、あの自信満々な顔で俺にされちゃあ断れないようなァ」

 

子分たちが雑談を始めたのを見計らってドヘムは子分たちを諌めた。

 

「おぅ、お前ら。ガタガタ言ってんじゃねェ。誰であろう、あの旦那本人が言い出した作戦だ。それに、お前らも気付いているだろう。あの人は、今まで俺達が戦ってきた奴等とは違う。もっと大きな何かを持っているお方だ」

 

ドヘムの言葉に子分たちはそれぞれの顔を見合った後に、頭を縦に振った。目の前の人物は曲がりなりにも自分達のボスであり、その人が認めた男ならば、自分達も信じるのがスジだろう。

 

「それによぉ…俺は楽しみなんだ。これから何が起きるのか、と思うとな」

 

そう言うとドヘムは大きな口を歪ませてガハガハと笑った。

 

「よしお前ら。とりあえず、あのオークションハウスの周りの所定の位置で待機していろよ。たぶん、“旦那”から何かしらの合図があるはずだからな」

 

オオー!!と声を張り上げた後、子分たちがそれぞれのバイクへと飛び乗って持ち場へと向かっていく。その光景を見守った後、ドヘムはもう一度双眼鏡を取り出して、オークションハウスの入り口を監視した。

そこには、強盗対策に鍛え抜いた身体を持つ男達が入口を見張り、その手前には武器を担いだ海軍たちが全員直立不動のまま天竜人の帰りを待ち続けている。

 

「天竜人の飼い犬共めが…」

 

そう忌々しく舌打ちした後、ドヘムは旦那からの合図を今か今かと待ち続ける。

ドヘムは直感的に理解していた。

 

今日、世界を驚かせるような何かが起こる…と。

 

「頼むぜェ旦那ぁ…。天竜人に、この世界に一泡吹かせてやってくだせェ…」

 

相手は、圧倒的な組織、世界政府、そして政府の傘を背景に傍若無人に振る舞う天竜人。彼らに向かって拳を振り上げる勇士の姿が彼と重なって見えた。

 

 

 

 

 

「ほら、お前はここにいろ」

 

原作通りと言うべきか、イメージ通りと言うべきか、屈強な男に引っ張られて連れてこられたそこは、哀れな奴隷候補たちの事を人ではなく、商品としてとらえる、そう言った彼らの意志と腐った精神を現しているような、健康管理をまともに考えていないような、暗く薄汚れた部屋だった。

ポイポーイと俺はその一室に乱暴に放り投げられる。もちろん手首は鎖で繋がれたままだから、まともな受け身を取る事は出来ない。アイタッ!!

 

「そこで暫く待っていろ、すぐ未来のご主人様がお前を助けてくれるだろうよ」

 

そう言って男は檻の鍵をかけると、すぐにここから去って行った。…あのヤロウ、覚えていやがれ、この鍵を取ったらすぐにでもグーでパンチしてやるからな。…いや、パーでチョン切ってやるか。

 

密かな決意を決めた後、俺は胸ポケット辺りをチョンチョンと叩く。すると、胸が急にモコモコッと膨れ上がった。…いや、別に性別を隠してたとかホルホルの実とかじゃないからね。ヒ~ハ~なあの方の特権として持っといてもらおう。それに、俺バタフライとか得意だし。

 

一方、ふくらみは段々上にせり上がっていく。そして、スポンという小刻みのいい音と共に、小型の人形のような物体が飛び出た。

 

「ぶは~~~息苦しかったのれす」

 

「やかましいわ。お前、俺がボディタッチされてるとき、身体中逃げまわってたろう。あれ、めっさくすぐったかったんだからな!!」

 

「ヘッ、そんなこと知ったことではないのれす」

 

「ッ!!こんの、クソギャアアアアア!!」

 

まぁ、すでに気付いていると思うが、渦中の人物ラクーン君である。

当初、プランB(Brast:強行突破)を主張するラクーンとドヘム一味だったが、当初の情報を考慮するといささかその手段を無謀と判断し、俺は待ったをかけた。

というわけで俺の考えたプランは、Cすなわち(Catch:捕獲)である。俺がわざと捕まって、中から小人たちを助け出す。これなら、プランBよりもはるかに安全だし、何より成功率が高い。それに、上手いこと行けば、海軍たちと一戦交えずに無事にオークションハウスから逃げ出すことも可能だ。

 

ま、これを言い出したときは猛反対を喰らったんだけどさ…。ま、常人からすれば楽観的すぎる考えとも取られかねないんだけどもネ。

でもまぁ、責任とか信用とかO☆HA★NA☆SHI★紆余曲折を経て何とか納得してもらえたんだけどもね!!

 

「よし、じゃあラクーンは仲間達を探してきてくれ。見つけ次第、俺は拘束を外してチャカチャカっとここからトンズラこくとしようぜ」

 

「…そんな簡単にいくのれすか?やっぱり、その考えはいくらなんでも楽観的すぎると思うのれすが…」

 

「ハハハ、3年間を経てパゥワァアッップしたグンジョーさんのいう事を信じなさいって」

 

ケタケタと笑う俺を訝しげに見た後、ラクーンは檻の僅かな隙間を縫ってトテトテと廊下に飛び出していった。

 

「さァーってと…、ラクーンが帰ってくるまで俺は待ってるといたしますかね」

 

ジャラジャラと音を立てる手錠を組んで寝ていると、辺りからすすり泣く声や、くぐもった声、そして悲鳴にも聞こえる呻き声が聞こえてきた。

 

(…)

 

時々、もしかしてという事を考えることがある。

もし、俺があの時インペルダウンに収監されていたら、もしあのときロジャーたちに会わず、一人であの大艦隊をニューゲートと2人で相手にすることになっていたら、そもそもニューゲートと会わなかったら、俺がレッドさんに拾われていなかったら…

 

「いや、考えていても仕方がないか」

 

今はそう言う事を考えないでおこう。どうやって逃走ルートから安全かつ無事に逃げ出すか…だ。

全くやれやれだぜ、とゴロンと寝返りを打った瞬間、こちらを見おろす大きな双眸と目が合った。

 

「…」

 

「…」

 

ぎょぎょぎょ、魚人族!!何でこんな所に…って捕まって鎖に繋がれているのか。

普通の人間とは明らかに違う肌のお色に、腕と何もはいていない靴には水かきがついている。特に特徴的なのは、そして口から見えるギザ歯だ。何か肉食系の魚さんなのでしょうか。

普段海の中にいるイメージがあるから地上にいるのは少し珍しいと思ってしまった。というか目合ったのなら、何かしゃべれよ!!空気、空気が重苦しいよ!!

先に言っておきますけど、俺KY何で、空気は読みませんよ、俺からはしゃべりませんからね!!

 

「…」

 

「…あ、どうも」

 

無理でしたスイマセン!!お若いとはいえ、さすがは魚人族。コワモテ、そして威圧感がハンパないんだよ!!ナイス貫録、チクショウ欲しいなァ俺もそういうの!!

 

「…むぅ」

 

「?」

 

彼は俺の身体をまるで興味深いものを見るような目で観察していた。

 

「…これは個人的な興味なのだが、あんたは何故こんな所に捕まっているんだ?認めたくはないが、あんたは魚人族である俺よりも強いだろう。先程のチッコいのと何か関係あるのか?」

 

「おぅ?ん、まそんなところかな」

 

だんまりかと思ったら、コイツそんな事を考えていたのか。

魚人族も人と同じく十人十色だが、彼は十中八九戦闘タイプだろう。身体から感じる雰囲気的にそう簡単に捕まるタイプだとは思えないが…。

 

「でも人の事気にしていいのか?あんたは、これから自分の身に降りかかるであろう不幸を覚悟しといたほうがいいんじゃない?確か魚人族の奴隷って相場結構髙いんだろ?しかも、今日天竜人が来てるらしいじゃん。お前かなりピンチかもよ?」

 

「…かもな。だが、お互い様だろう」

 

おやおや、これは一本取られたかな?

俺達が会話を終えた瞬間、どこからかマイクで拡張された声とともに、弾けるような大歓声が聞こえてきた。

 

『決定ぃぃ~~~~ッ!!ローランドタイン出身のジェニーちゃんを落札したのはドロンズ王国の貴族、カラスキー氏!!65万2000Bだァァァァ!!』

 

『ワァァァァァァァァァァァァァ!!』

 

「…」

 

「…」

 

何と言えばいいのかねェ。万引きの光景を目の前で見て何もできないような感覚。今から大声を出せば、俺が出ていけば即解決なんでしょうけども。…ゴメンね。名も知らぬ誰かさん。今は面倒事は勘弁何で、後々力をつけたらそのドなんとか王国ぶっ潰しに行きますので。

 

「フン、金持ち共の欲望を満たすためのヒューマンオークション…か。政府は犯罪者と政府非加盟国民しか扱わず、職業安定所と称しているが…遥かに廃れた奴隷と言う悪しき文化を今に伝えているという点では、彼ら犯罪者以上に悪ともいえるな。特に我ら魚人族からすれば、汚れきった人間の持つ欲望を煮詰めた鍋のようだ」

 

「ま、言えてるネ。でもまァ、捕まっているうちに何を言っても、そんなものはあがきにしかならないだろう?」

 

そう言い終わらないうちに、むこうから高い靴音を立てながらオークションハウスの店員と思わしき男が大男を連れてやって来た。

音に聞き耳を立てていると、俺のいる隣の隣、すなわち魚人さんの隣辺りの加護の前で止まった。

 

「おい、次はお前の番だ。さっさと用意をしろ」

 

「っ!!」

 

おっ、どうやらその檻の住人が出品されるらしい。

 

「嫌だ!!俺は奴隷になんかなりたくない!!」

 

「いい加減にしろ、借金のカタに売られた時点でお前の人生は終わっているんだよ!!」

 

「嫌だ嫌だぁぁぁぁ!!」

 

喚く男に対して2人の大男が近づくと、おっむろに彼の頭を殴りつけた。

 

「グッ…」

 

「チッ、往生際が悪いぜェ…。おい、いすを用意しておけ。猿轡を噛ませてでも、おとなしくさせろ」

 

「「ハイ」」

 

やれやれ乱暴なもんだなぁ。改めて、こいつらの異常性を理解したような気がする。そう考えているうちに、大人しくなった男を大男2人が引きずっていった。

あーもうここにいたくない。早く魚人島に行きたいよー。

 

 

 

 

 

グンジョーがこの世そのものに絶望しかけていたころ、ラクーンは仲間達を探して走り回っていた。

 

静かに、されどすばやく、その素早さは目の前の檻を通った奴隷たちが視認できないほどだ。

そもそも、彼ら小人族は元々身軽な一族であり、その動きは常人ではまるで追いつけないほどの素早さであり、例え目で負えたとしても、簡単にとらえることは難解である。

(ちなみに、その素早さで彼等は時々人間にイタズラを仕掛けることもあり、ある島では妖精伝説として彼等は語りつがれている)

 

しかし、その素早さをもってしてもラクーンは未だに仲間達を探し出せずにいた。その理由は簡単。廊下を行きかう人の数が多すぎるのだ。

 

(中々メンドウなのれすね…)

 

先程から何人もの人間が行ったり来たりしているが、姿を隠す場所が少なすぎるため、慎重に行動せざるを得ないのだ。

しかし、例え急いでいるとしても、ラクーンは誰にも見つかるわけにはいかない。仲間達のためであることはモチロン、自分一人では不可能だったであろうお願いを手伝ってくれたばかりか、、危険を冒してまで自分をここまで連れてきてくれたグンジョーに合わせ顔がない。

 

しかし、このままでは時間が過ぎていく一方。どうにかして移動できるような手段はないものなのだろうか…。

 

そう考えていた時だった。

 

 

「おい!!出品予定の奴隷が目を覚まさないらしいぞ!!」

 

「あ、どうしたチビリすぎて失神でもしたのか?それとも、舌髪切って自s…」

 

「馬鹿そんなんじゃねェよ!!支配人が檻から出す時に奴隷が暴れたらしくって、無理矢理抑えつけたんだと。その時、頭を打ったらしくって、揺すっても叩いても起きないんだとよ!!今、会場は一時的に中止しているがな」

 

「おいおい、まじか。でも、案外無理矢理黙らせるために少し乱暴した、なんてことも考えられるけどなぁ」

 

「ククッ、それ言えてる!!」

 

その会話だけでも、ラクーンは湧き上がってくるような怒りを感じた。まるで、人を人として扱っていないようなそんな態度がありありと見て取れた。

今すぐにでも出ていき、殴り飛ばしたいが、今はグッとこらえて2人の会話に集中することにする。

 

「おい、そいつが出品できる状態じゃないってことは、じゃあ次の出品はどうするんだ?」

 

「おう、それがさぁ…この次に出す予定の奴隷を今から出品するんだと。そrで一応間に合わせるらしいぜ」

 

「ああ、そうか。で、次の奴隷班案の種族だ?」

 

「ああ確か…小人(・・)の奴隷だったよな?」

 

その言葉にラクーンの小さな胸がドキリと跳ね上がった。

 

(な、何ですって!?)

 

人の前に滅多に姿を現さない小人族がそう簡単に何人も捕まるわけがない。間違いない、ラクーンの仲間達だ!!

 

すると、そこに2人とは別の男が息を切らしながら駆け寄ってきた。

 

「おい、そろそろオークション再開するらしいぞ。お前らも持ち場につけ!!」

 

「え、マジでか?」

 

「ああ。あいつら、結構暴れ回ったらしいが、何とか捕まえることができたらしい。今箱に詰めて連れて行ってるところだと!!」

 

「おう、そうかじゃあさっさと行くか」

 

(ッ!!こうしてはいられないのれす!!)

 

呆気にとられていたラクーンだったが、慌てて男の一人の服に張り付いた。そのまますすすと男の身体を木登りするかのように進むと、背中に張り付いた。体重も軽いので、バレることもないだろう。

 

(アンズ!!コーン!!レプラ!!シャム!!みんな、待っていて、すぐに助け出してあげるのれすよ!!)

 

 




次回から戦闘パート!?


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キッタリハッタリデンキビリビリ

『皆様、お待たせいたしました!!少々手間取りましたが、お次の人間をご紹介させていただきます!!西の海出身のフィードル君です。特技は…』

 

さて、途中時間が開いた者の、どうやらオークションが再開したらしい。一体、何があったのか、そんな事ァ一切考えたくはないが、逆に言うとそれだけラクーンの仲間探しのために使える時間が伸びたともいえる。

さっきまでのペースから考えると、奴隷が出品されて買い手がつくまでの時間は10分~30分くらいといったところか。それぐらいなら時間を稼げるだろう。

 

『…とご紹介したかったのですが…えー急きょフィードル君が恥ずかしがりであるため、また後日ご紹介と言う形になってしまいました。いやはや、残念。真面目な人間ほど、人前に出るのが苦手なのですね』

 

『ハハハハハ……』

 

「なにっ」

 

何だと!!どういうことだ!?…いや、でも普通にありえるか。人間を含め、頭部への攻撃は人体に大きなダメージを及ぼす。さっきの音からして、脳震盪をおこしても不思議ではないはずだ。ともすれば、そう簡単におきるはずがない。普通ならば即刻病院に入院させなければいけないハズ、ヤツらからしても苦渋の決断と言うわけなのだろうか。

 

『では、次の方の紹介になります。いえ、違いますね彼らのご紹介です!!』

 

「…」

 

兎にも角にも先程の彼が無事だといいが。しかし、どちらにせよラクーンの探索の時間が短くなってしまったことに変わりはない。無事に見つかればよいが…。

 

『彼等はヒトとは違い、とても小さな背丈を持っている珍種族です。さあ、ご覧ください“小人族”の方々です!!』

 

「ファッ!?」

 

ちょちょちょちょちょちょちょい!?今何てった!?ま、まさかその小人族ってラクーンの探している小人族たちの事じゃないよな!?

 

「おい、あんたのツレが探しているのってまさか…」

 

「ぐぐぐ…やっぱりそう思います?」

 

どこかから湧き出した、“そんなはずがない”というそんな思い、そして一瞬にして沸騰しかけた感情を心の奥底へと追いやった。万が一にもここで爆発してしまったら、計画は元よりせっかく今まで隠し通してきた俺の正体がばれてしまったりと、色々と終了のお知らせだろう。

しかし、冷や汗が凄まじい勢いで溢れてくるのが分かる…。状況が変わらないってことは分かっていても、焦燥感のみ広がってくる!!

 

『彼らは遠く新世界からやってきたそうです。滅多に人前に姿を現さない彼等とお会いすることが出来たお客様はとても幸運でいらっしゃいます。鑑賞用に籠や檻の中に入れるもよし、猛獣と同じ檻に入れて鬼ごっこを楽しむもまた一興かと存じます。では、皆さんどうぞふるってご参加ください、オークションスタート!!』

 

チッ、これは完全に俺のミスだ!!オークションがすでに始まっていることは知っていたが、それを考慮してもある程度の時間的余裕はあるものだと踏んでいた…。しかし、思っていたより数段進行が早まっていたか。それに、先程の仕打ちから見ても、コイツらの奴隷に対する日ごろの行いは容易に想像することはできる。おそらく…今の様に適当な理由を付けて隠蔽を行ってきたのだろう。

とにかく、ここにいても時間の無駄だし、どこかでラクーン落ち合ってどうにか小人たちを取り戻す手段を考えなくては…。

 

「そうと決まったら、さっさと首輪を外さなきゃな…ヌンッ!!」

 

邪魔だった手錠をバキリと引きちぎると、首輪から伸びた鎖に手をかける。こういう機会を取り外すには色々とコツがいるんだよなぁ。鍵開けはレッドさんに教えてもらったけど、レッドさんみたいにうまくいくかどうか…。

そう思って首輪の鍵穴部分をガシャガシャとイジっていると、その手が急に隣の檻から伸びてきた手にムンズと掴まれた。

 

「お?」

 

水かきのついた眼をたどっていくと、そこには困り顔をした魚人さんがいた、いきなり掴まれて少しビックリしたのだが…何かご用でしょうか?

 

「お、おい。一体何をやっているんだ?」

 

「あ?何って言われても…見ての通りだよ。脱走の準備?いや、むしろサーチアンドデストロイといったところかな…」

 

そう答えると、魚人君は呆れたような顔をして俺を静止してきた。

 

「…あんたは自分の状況が分かっていないのか?今はずそうとしているその首輪…。無理矢理外すと爆発するぞ」

 

「ああ、それなら知ってるぜ。時限式の爆弾だろ?前に一度爆発するシーンを(漫画で)見たことがあるからな」

 

「それならどうして…」

 

「他はどうかは知らないが、少なくとも失敗しないからだよ。…ホラ」

 

片腕を掴まれながらも、すでに俺は首輪を外すことに成功していた。

覇気応用×鍵穴外し。どうだ、便利だろう?

 

「…え?」

 

「さぁてと、外した瞬間から爆発までのカウントダウンが起動するんだっけか。武装色で守ってもいいけど、それだと疲れるし、何よりガードしきれるかどうかわからないからなぁ。というわけで、明日に向かってポ、ポ、ポ、ポーンっと」

 

カチカチと爆発へと時を刻む首輪を宙に放り投げる。それは、腹が立つほど綺麗な放物線を描きつつ、檻にぶち当たり、

 

カチカチカチ、ピピピピピ――ドン!!

 

凄まじい破裂音とともに中に仕込まれた強力な火薬が爆発し、強固な檻を何と一撃で吹き飛ばした。

 

「おースゲェ威力だ。面倒だからって、爆弾をそのまま起爆させなくて正解だったな。よし、それじゃ、チャチャチャっと終わらせますか!!」

 

燻る爆弾の残骸をよけながら、檻から飛び出す。

そんな俺の姿を呆然と見守っていた魚人さんが慌てたように俺に問いかけてきた

 

「あ、あんたは一体何者なんだ!?」

 

何を動揺してるか知らないけれども、その質問って結構愚問じゃない?

 

「ん?それはヒミツだ」

 

さて…そうこうしているうちに、扉の向こう側がドタドタと騒がしくなってきた。どうやら、やっこさん達も騒ぎに気付いたのだろう。ま、これだけデカい爆発音させれば当然だけどな!!

 

「今の音は一体何だ?」

 

「奴隷が脱走しようとしたのか?」

 

大慌てでやって来たので、労いもかねて挨拶してやる事にした。

 

「あ、どうも。()奴隷です」

 

彼等には、未だもうもうと煙を吹きだす首輪の残骸と、檻から抜け出してにこやかに笑ってご機嫌そうに手を振るおれの姿が同時に目に入ったであろう。

店員共の顔が焦りから一転、怒りと侮蔑の色へと変わった。

 

「奴隷が…どうやってあの檻から逃げ出した!?まさか、他の奴隷の首輪を無理矢理外したのか!?」

 

「どうでもいいさ、あいつを捕まえろ!!」

 

「おい、お前らはこの部屋の奴隷たちが騒ぎに乗じて逃げ出さないように見張っておけよ!!」

 

一際高そうな服を着たチョビヒゲ男の指示の元、銃器を手に携えた店員達がジリジリと俺との距離を狭めてきた。包囲網でも作っているつもりなのかね?こちらは何も持っていないし、人海戦術をとり、最終的に十分な距離をとったところで一気に襲い掛かるつもりなのだろうが…確かにただの(・・・)奴隷一人を捕まえるためならば良い手だ。

が、俺にとっては最悪の一手だったな。あなた達が牙を剥いたのは、兎ちゃんの皮をかぶった狼さんです。俺は銃口がこちらに向いている事も構わず店員共に向かって走り出した。

 

「なっ、コイツこっちに向かってくるぞ!!馬鹿なのか!?」

 

「構わんこの程度の商品が一人消えた所で我々には何の損害も出ん!!撃て、撃ち殺してしまえ!!」

 

チョビヒゲの気味悪い高笑いと共に男達が持つ銃器から銃弾がばらまかれる。一発一発が人を死へといざなうその凶獣の牙は、俺の身体を引き裂きバラバラに―――しなかった。

 

「“覇気手合い”辻斬り御免」

 

「は?」

 

「え?」

 

男達の持つ銃が何も弾みもなく崩れ落ちた。そう、銃口から銃座まで、まるでしっかりとのりづけされていなかったジクゾーパズルのようにボロボロと解体された。彼ら一般人の目では、何が起こったかまるで理解することはできないだろう。そう、自らの身体に今起こっている事でさえも…

 

ビシッ!!

 

「ぎゃ!!」

 

「ぐあっ!!」

 

氷にひびが入るような嫌な音を立てて男達の身体に無数の切り傷が刻まれた。

男達の手から鉛玉の弾幕が張られた瞬間、人の視覚の上での死角に潜り込んだ。即ち、普段特に意識を向けることが少ない足元の下を駆け抜けた俺は、鋭利な刃物と化した手刀を幾度も交差させていたのだ。

 

「ふぅ、やれやれ銃持っただけの一般人じゃ俺の相手にもならないか。うん、君ら運が悪かったってことで…おや」

 

うずくまって呻いている男達をすり抜けて扉に向かおうとした時、目の前にあるはずの扉が何故かふさがっていることに気付いた。…いや、そうじゃない。扉の目の前で、見上げるような大男が俺の進行方向を塞ぐかのように対峙していたのだ。

 

「…ふむん」

 

ムッキムキ筋肉の上半身を中心にまるで風船のように(その実筋肉風船か)膨張したような出で立ちで、髪を一部刈り上げた上に、達磨を連想させる縁取りと赤色のペイントをしている。

 

「お前さん、たかが300万だと思っていたら中々やるだナ。やはり、事前の情報は嘘だったっぺか?」

 

いやはや、予想通りというか、ナマリがきついなオイ。しかし、ドヘムの言葉をそのまま鵜呑みにするとはアフォな奴らだ。少しは人の顔くらい見とけっての。あ、俺の正体がばれちゃ失敗なのか!!

 

「はん、事前の情報?そんなもんに頼ってんならあくまで二流だろ。本気で殺る時は、はじめて向き合って時点でソイツの実力から力量を計れ」

 

ま、相手が自分より遥か格上だったら、あんたはその時点で死亡だけどな、そう言い返すと、達磨男は不満げにフンと鼻息を出し、まるで大木の幹のような両腕を振り上げ興奮したゴリラのようにドラミングを始めた。

 

「ハッ、口だけなら何とでもいえるナ!!オラは、このオークションハウスに雇われた賞金稼ぎ“赤肌”ギュウベエだっぺ!!見よ、このオラ自慢の両腕を!!」

 

ギュウベエはまるで見せびらかすかのようにその腕を振り上げた。

 

「今までこの両腕を武器に、偉大なる航路(グランドライン)を渡り歩いてきたっぺ!!今まで、1000人以上にも渡る賞金首を仕留めてきたこの両腕は最強だナ!!即ち、オラは最強の賞金稼ぎなんだっぺ!!今から新世界で試すのが楽しみだナ!!」

 

「そうですか確かに素晴らしいお腕ですね(棒)」

 

そう言ってやると、ギュウベエは何を勘違いしたのか、鼻をさらに荒くフンフンと鳴らしながらドラミングを始めた。お前はゴリラか。

 

「そうだべそうだべ!?そして喜ぶがいい、お前もこの腕に倒され、オラの英雄伝説に名を刻むんだっぺ!!」

 

そう宣言すると、上半身よりも遥かに小さい両足を必至に動かしながら、やかましきドタドタとこちらに突進してきた。

まぁ、確かにその鍛えられた肉体は称賛に値するだろう。だが、あくまでもそれだけ、見かけ倒しだ。例え、何人もの賞金首を葬ろうともその程度では、新世界には…まるで届かない。

 

「“覇気武装”」

 

左手で右腕の裾をめくり上げた後に大きく振りかぶる。人が瞬きをする時間よりも早く、一瞬のうちに右腕に覇気を纏わせると、腕がまるで鍛えられた鉄のように黒く変化する。

そのまま迎撃態勢を取ると、あろうことかギュウベエがそのまま突っ込んできた。

…無策にも程があるだろコイツ。こう、何か相手が奇妙な行動をとっていたら警戒すべきだろ。本当に賞金稼ぎか?まぁどうでもいい。

 

「ムぅん、“一撃必殺パンチ”!!」

 

突き出してきたギュウベエの拳に合わせて俺も右手を突き出した!!

 

「“覇気正拳”!!」

 

ガァン!!

 

鈍い音を響かせて、俺とボーガンの拳がぶつかり合う。俺の拳のゆうに5倍はあるんじゃないかと言う拳。全くオダッチ世界の人間は本当に意味が分からんな。普通なら俺の負けなんだろうけども…今回はさすがに相手が悪かったな。

 

「ギャアアアアアア!!」

 

ズズン…と言う重苦しい音と共に、ボーガンはもんどりうって倒れこんだ。

 

「イデエエエエ、イデエエエよぉ!!」

 

そのままゴロゴロと地面を転がる。…子供か?

 

「ば、ばばば馬鹿ナ、有り得んベ!!こんなの絶対ありえんっぺ!!」

 

「いやはや、ありえるんだよなこれが」

 

俺の拳がめり込んだ後をクッキリと残し、そこから吹き出る血を抑えつつ、呻く様に声を絞り出しながら立ち上がった。

何故だろう。先ほど自身満々だったこの大男が遥かに小さな昆虫のように見える。

 

「な、なにをしたっぺ!?まさか、能力者だっただか!?そうだ、そうじゃなきゃありえんべ!!俺がこんなチッコイのに拳の勝負で負けるわけないんだナ!!」

 

「…言っておくが、俺は能力者じゃない」

 

「嘘だっぺ!!」

 

「嘘じゃねェよ。俺は能力者じゃない。元はな、武器持たなきゃ何にもできない剣士だよ」

 

「んな、んな馬鹿な!!」

 

故に、俺は今全く何の本気を出していない。もともと、剣がない状態でも戦えるよう、護身術程度に九蛇海賊団の皆さんから習った程度だ。…でも、何を勘違いしたのか、皆さん滅茶苦茶にやってくるんだよなァ…。あれは教える気なんかサラサラない。手加減する気もない。

完全に殺す気だった。

手加減できないムエタイ男か貴様んらは!!

 

でも、まぁ拳撃は俺みたいな本職じゃない人ても、ある程度の観察眼と覇気操作センス、そして度胸さえあればこの程度の芸当は誰でも出来る、ということだ。それをどのように発展させていくのかは、その人次第だが。

 

「うぬぅ、認めんっぺ!!そんなフザケタ事、最強であるオラが許さないんだナ!!」

 

「いや、特に誰にも認めてもらう必要もないと思うんだが」

 

激昂しながら負傷していない左腕を振り回し始めるギュウベエ。

 

「オイラの技はこれだけじゃないっぺ!!我が奥義“一撃滅殺ラリアット”は、海王類の骨をへし折るほどの威力なんだナ!!」

 

「…へェ」

 

俺はそう呟いた後、深くため息を吐いた。何だかもう疲れた。自分と相手の実力を認めるどころか激昂し、襲い掛かってくるなんて…。これ以上コイツと闘っても何も得ることはないだろう。

でも、まぁ…

 

「新技の実験体にはなってもらおうかな」

 

そう言って俺は、片腕に覇気を纏うと、まるですすを掃うかのようなそぶりでそれを服と高速でこすり合わせはじめた。

 

「ッ!!な、何を…」

 

小学生の時に遊んだことがある人も多いだろうが、下敷きを脇に挟んでこすり、それを髪の毛などの毛に近付けるとあら不思議、毛がまるで吸い寄せ荒れるかのように下敷きに引っ付くというものだ。

気電遊びは、その強化版と形容していい。焔遊びと同様に硬化し、鋭利な刃物のごとく尖った手刀をこすり合わせる、と言う点では似ているが決定的に違うことは、火花を出す量だ。

焔遊びが工場のカッターが金物を切断する際に生じる迸る火花をそのまま火炎に変化させるのではなく、気電遊びは黒化した腕を服にこすり合わせることによって、いくつもの電子を移動させ、まるで雷が発生しているようなそんな現象を引き起こす。触れたものに変化する、と言う性質を持つ覇気を今回は電気に変化!!

 

 

バチバチバチバチバチ

 

 

「“覇気手合い気電遊び”」

 

 

片腕に纏った覇気が、まるで神々しく咲き乱れる白の花々のように激しく音を立てる電気を纏い始めた。

 

「何が起こっているんだっぺ!?やはり能力者だっぺ!?」

 

「ちげーよバカ。そろそろ現実を見やがれ」

 

俺は電撃を纏った覇気の手刀をギュウベエにつきつけた。

 

「あんたは、自分の肉体に自信を持ちすぎだ。持つなとは言わんが、それでも最強は言い過ぎ。“最強”なんて言葉は、他人から呼ばれて初めて“真”に変わる。…あいつみたいにな」

 

瞼の奥に俺に背を向けて立つ、あの男の姿が浮かんだ。

 

「いままで俺は、最強何て最初から自称する奴が強い何て知らん」

 

「やかましい、この田舎出のイモ野郎がぁぁ!!」

 

どっちがだ、と俺が言わないうちにギュウベエが突っ込んできた!!

 

「“一撃滅殺ラリアット”!!吹き飛ぶがいいっぺ!!」

 

…あっそ。じゃあ上等じゃねェか!!

一直線に向かってくる腕を静観しながら俺は構わず音速で駆け抜け、ギュウベエの身体を引き裂いた。

 

「“雷花摩居太刀”!!」

 

「っ!!」

 

東北地方には、この妖怪は常に3匹で行動し、最初の一匹が人間を転ばせ、2匹目が人間を斬り、そして最後の一匹が止血をするという、行動理由が一切不明なイタズラ好きな鎌鼬と言う妖怪の伝承がある。

そして、雷花摩居太刀はその鎌鼬をモチーフとした電光石火の早斬り技だ。

 

「名に傷を残したくない、それなら何もしないでおいてやろう」

 

敵を斬った瞬間、電気が切り口を焼くことによって無理矢理止血させる。つまり、切り口を強引に焼くことによって切り口を焼失させるのだ。

 

「代わりに、痕が残る火傷を負ってもらいますがね…」

 

死なないために、激痛を伴う一撃。まさしく、真剣による殺し合いとは違う、人を生かすための“手合い(お遊び)”、傷つかぬ斬撃だ。

この程度、今の俺からしたら本気ですらない、まさしく手合せ程度の力と言うわけだ。

 

「グググッ…」

 

プスプスと肉が焼き切れる音と臭いを出しながら、ギュウベエは崩れ落ちた。

 

 

 

 

男のジャケットに掴まりオークション会場に辿り着いたラクーンは、彼にとっては何処かのスタジアム並に広い空間内に唖然とし、さらにその空間がゾッとするほどの闇に包まれ、そこに目を日はるほどの数の大人間がいたことに驚いた。

 

(ここまで来たのなら、後は皆を見つけ出すだけなのれすね)

 

アオランドの事だから、すでにオークションが始まっていることに気付いているはずだろう。

そう自分に言い聞かせ、辺りを注意深く見回したラクーンは舞台上に複数の小瓶が無造作に置かれていることに気付いた。

 

(あれは…?)

 

暗闇なのでよく視認できない中、じっと目をこらしてみると、その瓶の中に何か入っている事に気が付いた。そして、それがすぐに何なのかラクーンは理解してしまった。

 

「ッ!!」

 

『オークションスタート!!』

 

瓶の中に閉じ込められた仲間達、そして非常にも鳴らされたオークション開始の合図を聞いた途端、ラクーンの思考の中からグンジョーを待つ、と言う選択肢は消失していた。

 

「みんなー!!」

 

男の服から手を離すと、仲間達の元へと駆け出していた。

 

「な、何だアイツは!!」

 

突如としてステージに現れたラクーンの姿に騒然となる観客だったが、進行は冷や汗をかきつつも、冷静に部下に指示を出した。

 

「チッ、奴隷が一人逃げていたのか!!チッ、あの小人を捕まえろ!!」

 

進行の合図と共に、小太りの男達が壇上に飛び出し…そのまま上空へと吹き飛んだ。

 

「ハッ!?」

 

「な、何が!?」

 

ラクーンを含め、進行や観客が唖然とする中、部隊の奥からその男は姿を現した。

 

「スマン、遅くなったな!!」

 

煌びやかなこの場所とはおよそいるべきではない、着流しのその男はニッカリと笑顔を浮かべていた。

 

「さぁてと、当初はあまり騒ぎを起こさないようにして切り抜ける予定だったけど、ハハハ、これはもぅ無理っぽいな。そもそも、俺は頭脳労働したりするのは苦手なんだよな。やっぱりキッタリハッタリした荒事の方が向いてるな。ま、でもこうなっちゃったなら、もう一蓮托生ってやつだ。野を超え山を越え、銀河の果てまで付き合いますよってね。…というわけで」

 

男は、先程の笑顔とは似ても似つかない凶暴な笑みを浮かべて、観客いや獲物たちに向き直った。

 

「貴族、世界貴族及び世界政府の豚ども!!宣戦布告だゴラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

その咆哮は、世界政府の歴史に刻む災厄、いや再びの悪夢の始まりであったことは言うまでもないだろう。

 



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王の資質

あけおめ!!


「何なのアイツは!?」

 

「我々を侮辱しおって…許せん!!」

 

「おい、この場所に来てよいのは我々貴族階級の人間だけだぞ!?」

 

「おい、守衛はまだか!?早くあいつを処分しろ!!」

 

プライドが高い奴ほど、沸点が低いことはよく知られている。

その例にもれず、貴族たちは俺を指差し、あるものは悲鳴を上げ、ある者は怒号を上げて俺を侮辱している。

こいつらも何一つろうなど知らない、とんでもない温室育ち中々のクズ野郎どもだ。しかし、世の中には温室どころではない、超絶快適なビップルームで、生まれた時から非常識な教育を受けた奴らもいる。さて、彼らが持っているプライドのみが空気を入れられた風船のように膨れ上がったクズが少しでもじぶんを侮辱されたらどうなるだろうか。

 

「お父様!!何だかよく分からないけど、あのオッサンむかつくアマス!!生け捕りにして、うちのタマのエサにしちゃおうアマス!!」

 

「殺せ―!!わけのわからぬ、あの愚か者を血祭りに上げろ―!!我々を侮った愚か者として、世界中にその死にざまを晒してやるえー!!」

 

クズ!!キング・オブ・クズ!!いや、むしろ天竜人・オブ・クズ!!

いや、おそらくあいつらのことだから、みんながみんな自分達が神様のように偉いと錯覚しているのだろう。だが、そんなもの俺は知らん。俺は無神論者なんでね。困った時の神頼みだけども…。

ともかく、爆発した風船は勢いよく宙を飛び回る。それを拾ってやるのも俺の役目だ。飛び去る鳥は後を汚さないと聞くからな。

…ところで、タマって何?猫?

 

「貴様、天竜人様に何ていう口をきくのだ!!その罪、万死に値する!!」

 

「いや、生け捕りだ。生け捕りにしろとのご命令だ!!」

 

…何だか命令系統に混乱が生じているようだが、やろうとしていることがヒドい事には大差はない…。というか、五十歩百歩だ!!

 

「“覇気手合い蟹甲羅外し”!!」

 

というわけで、ゴタゴタとしている間に一発やらせていただきました。

鉄の刃と化した手刀を振い、素早く兵士達の間を駆け抜けた。だが、俺は兵士達を斬ったのではない。彼らが纏う鎧の結び目だ。

 

「はっ!?」

 

「へっ!?」

 

俺が通り過ぎた刹那、鎧の結び目がちぎれ飛んだ。結果、自らを結びとめるため繋ぎの部分が消えた結果、鎧は子の星の重力に従い、のバラバラと物悲しい音を立ててオークションハウスの床へと転がり落ちた。そして、鎧の下に着こんでいた服も同時にちぎれ飛ぶ。念には念を入れすぎただろうか。

 

『…』

 

闘争とはまた違った、重苦しい静寂がオークションハウスを包み込む。

外気に晒された、大砲、ピストル、水鉄砲。服を着ているものと来ていないもの。みながみな、振動に揺れて悲しげに揺らいでいた。パオーン…。

 

『う、うわァァァァァァァァァァあん!!』

 

そして彼等は何ともいえない哀しみを持ってオークションハウスからまるで追われるかのように逃げ出していった。

ウン、自分でやっておきながら何だけど、あれは辛いわ…。本当、ゴメンね敵だけど。

 

「は、破廉恥な!!」

 

「やっぱり変態だわ!!」

 

「ちょい待て誰が変態やなん!!」

 

「変態がしゃべったわ!?」

 

「ちょい待て!!俺はしゃべる事すら許されないのか!?」

 

そんなやり取りをしていると、ドタドタと慌てた様子で外の扉から銃を持った男達が飛び込んできた。

そいつらは、観客席で佇む俺の姿を発見した途端、手持ちの銃を掲げ、銃口を俺に向けた。

 

「動くな!!この狼藉ものめ!!」

 

「客たちを解放しろ!!」

 

「この外にはどの道お前には助かるという選択肢はないのだよ!!」

 

勝口々にそう脅し文句を発しながら、まるでヒーロー見参と言わんばかりにドヤ顔をする店員達に客たちは歓声を上げた。

 

「やった!!これで助かる!!」

 

「狼藉ものは死んでしまえ!!」

 

 

静かにたたずみ、俺と対照的に、恐怖から解放されたと思ったのだろう、観客たちが口々に騒ぎ始めた。

 

「我々の奴隷を持つことはステータス何だ!!今日は、質のいい奴隷を買う予定なのだ邪魔をするな!!」

 

「俺はわざわざ南の海から奴隷の買い付けに来たんだ!!その邪魔をするな!!」

 

その言葉を筆頭に、会場がオークションとは違う熱気の渦に包まれた。

俺一人に侮蔑の言葉を浴びせるそいつらの顔には、人を人とも思わぬ、そんな醜い人間の本能がありありとにじみ出ていることが見て取れる。

 

「本当にお前らって野郎どもは…」

 

奴隷が聞いてあきれる。

世界政府非加盟国と唄っている時点で、政府が主導している闇取引だという事を露呈している。それに、奴隷の中には世界政府傘下に加盟している魚人島こと、リュウグウ王国の住民達、人魚や魚人が公然と取引されていることに対して人々は疑問に思わないのだろうか?

…いや、彼等は少数の権力者を欲望を満たすために、無理矢理口を閉ざさせられているのだろう。

 

自由?

 

平等?

 

解放?

 

安全?

 

フザけんなよ世界政府!!

お前達がやっていることは結局、人間そのものじゃないか!!

まるで、心の奥底から猛獣が檻を食い破ろうとしているような感覚。ここに来てから抑え込んでいた溶岩が、今再びグラグラと煮え立ち始めた。

 

「…もう黙れよ」

 

「ゲラゲラゲラ、ガッ!?グッ…」

 

俺が血走った目で睨んだ瞬間、今まで笑っていた観客の一人に異変が起きた。目をグルンと回転させて白目になりつつ。そのまま泡を吹いてまるで持ち主が手の手から離れた人形のようにその場に崩れ落ちたのだ。

 

「ヒッ!?」

 

「い、一体、何が起こったんだ!?」

 

いきなりの異常事態に観客席のあちこちから悲鳴が上がるのを無視しつつ、俺は階段を一歩一歩踏みしめながら歩みを進める。目標は勿論、あのクソ天竜人の所だ。

 

「ギャッ!?」

 

「グガッ…!?」

 

俺が歩く度、俺が動くたび、まるで世界が俺の怒りを代弁するかのように、周りにいた観客達の意識を次々と刈り取っていく。

 

「人が人を買う?そんな狂った理屈通るわけがないだろう」

 

「撃て!!撃て~~~~!!」

 

飛んできた銃弾を弾き飛ばし、銃の引き金を引いた順番から飛ぶ斬撃を食らわせていく。

その姿は何てこともない。玩具の銃で武装した兵士に立ち向かう子供そのものだった。

 

「ヒ、ヒィ!!来るな!!来るんじゃない!!」

 

「お父様!!怖いアマス!!」

 

観客が次々と倒れる中、最後まで残っていた天竜人親子ズは、先程までの威厳が嘘のようにブルブルとおびえ、懐から取り出した黄金の銃を連射した。

もちろん、こんなものよけるまでもない。

 

「どうした?全然当たらないじゃないか。温室育ちは銃の一つも扱えないのか?ハン、いつもは標的に元気がないとかで簡単に撃ち殺されるんだろうが、残念だったな。今の俺はムカ着火ファイアー状態なんでね。…じゃあ、俺をここまで怒らせてくれたお礼に、二つ…いや三ついいことを教えてやろう」

 

常人では黙視できないほどのスピードで天竜人父に近寄ると、その手に持つ黄金の銃を奪い取った。

 

「あっ…」

 

「銃ってのはな、ただバンバン撃てば当たるってもんじゃないんだよ。安全カバーを外し、撃鉄をおこして、あとはしっかりと狙いを定める」

 

そう言って俺は天竜人の脳天に標準を構えた。

 

「ヒッ!!や、やめ!!」

 

「そして、引き金を…引く!!」

 

「お、お父様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ターン!!という雷が落ちたかのような音が響いた。モクモクと煙が宙に舞い上がっていくと同時に、鼻にツンとした火薬の臭いが届く。

 

「ギャアアアアアアアアアアアア!!」

 

その場には、俺が撃った天竜人が足を抑えてその場をゴロゴロと転げまわっていた。

 

「うううううううう痛い!!痛い痛い痛い!!死ぬ、死んでしまう~!!」

 

「お父様だ、大丈夫ですか!?」

 

そう、俺は弾丸を脚にブチ込んだだけだ。決して殺してはいない。というか、元々そんな事をする気もない。

 

「とある人間が言っていた。ブッ殺す、と思った時にはすでに行動が終わっているとな。詳細はよく覚えておらんが…。分かるか?キッタハッタも分からない、命を物とみなすテメエらクソ素人に引き金を引く権利はねェ」

 

そう言葉をかけて趣味悪い黄金の銃をソイツの近くに放り投げた後、俺は転げまわる天竜人に背を向けて階段を下りることにした。

 

「こ、この狼藉ものがぁぁぁぁぁ!!」

 

ある程度痛みが引いたのだろうか。天竜人父が銃を手に取り再度俺へ銃口を向けてきた。全く、筋金入りの馬鹿だな。俺の言ったこと分からなかったのか?

 

「死ね!!」

 

「断る」

 

“覇王色の覇気”

 

『オオオオオオオオオオオオ!!』

 

俺を中心に吹き荒れる突風にも似た波動が解き放たれ、モロに天竜人に直撃した。

 

「ぎゃっ!!」

 

「ひっ!!」

 

その時、彼らには俺の姿がどのように見えたのだろうか。まぁ、そんな事どうでもいい。重要なことは、あいつらが二度と復讐しようなどと、あまっちろい考えを持たないようにすることだけだ

 

「さて…ん?」

 

「…」

 

ゴキゴキと肩をもみながら歩いている途中、ポカンと口を開き、アホみたいな顔をしているラクーンと目が合った。

 

「…で、どうだった?」

 

「あ、え、ウン。それは大丈夫れす。みんな無事だったのれす…」

 

「そうか、そりゃあ良かった」

 

ラクーンは安堵したように重く息を吐き、何故だか攻めるような視線で俺を見つめてきた。

 

「何だか怒涛の展開すぎて、訳が分からないのれす…」

 

「ああ、それは言えてる」

 

「で、これからどうするのれすか?」

 

「ウーン…」

 

どうすっかなぁ~~~。うーむ、取り敢えずやる事は一つだろう。

俺は壇上で伸びている男のポケットから奴隷を入れるための檻の鍵を取り、それをラクーンに放り投げた。

 

「わ、わっ!!」

 

慌てて鍵をキャッチするラクーン。その間、俺は眠るような顔をしているラクーンの仲間達を回収して、懐に納めた。

 

「こっから逃げ出すうまい方法と…あと戦うための戦力ではないですかな。というわけで、ラクーン。先に行って鍵を開けてきてくれる?」

 

「分かったのれす!!」

 

そう言うや否や、ラクーンはステージ奥へと消えていった。いや、分かっていたことだがやっぱりあいつは素早いのな。

 

「…ん?」

 

「お」

 

そんな事を考えていると、腕に抱えていた小人族の一人が目を覚ました。丁度いい、事情を説明して彼等にも檻の鍵開けを手伝ってもらう事にしよう。

 

「よう、起きたか「いやーーーーーっっ!!大人間ーーーっ!!」え、ちょっとちょっと、たわばっ!!」

 

目を覚ました女性の小人族っさんの尻尾ビンタが俺の顎をクリーンヒットした。顎へのダメージは直接脳へのダメージへとつながる事は知られているが、それにしても威力強すぎだろ!!一瞬脳が滅茶苦茶にシェイクされたぞ!!

 

「テ、テメエ!!いきなり何をしやがんだゴラァ!!」

 

「それはこっちのセリフよ!!よくも今までイジワルしてくれたわね!!許さないんだから!!」

 

あれ?コイツもしかして、俺の事をオークションハウスの人間だと思っていないか?

 

「いや、ちょっとヤメテ違うから!!俺は違うから!!だから、お願いだから尻尾ビンタをヤメレ!!」

 

「何が勘違いなのれすか~~~!!」

 

「いやああああああああ!!」

 

 

オークションハウスの地下にある一室。そこに一人の男がとある女性の首元に手を伸ばしていた。もちろん、男とはグンジョーである。

彼は今、女性の首につけられた爆弾首輪を外そうとしているのだ。

 

「ヒッ…」

 

グンジョーが首輪をつまんだ瞬間、女性から思わず恐怖の吐息が漏れだす。それもそうだろう。ここにいる人間ならば、この首輪が持つ恐ろしさは十分に理解している。首輪を繋ぐ鎖が外された瞬間、内蔵された時限式の爆弾が起動し始め、一定時間がたった後、木端微塵に爆発する。

鎖を外し、自由になれたという一筋の希望から一転、爆発、そして死と言う悪夢へと叩き落される。悪ければ死、例え生き残ったとしても、所有者たちに殴られ蹴られ、応急処置もされないまま結局苦しんだまま死んでしまうだろう。

しかし、グンジョーは女性に優しく語りかけた。

 

「ふぁいしょうふ」

 

「えっ?」

 

涙目の女性が顔を上げると、真剣な目をしたグンジョーが彼女を見おろしていた。

 

「おれを信じふぇ」

 

「…ハイ」

 

「ふぁーい、ふぁそのままゆっくりしふぇふぇね(はーい、しゃそのままゆっくりしててね」

 

「ハ、ハイ…」

 

左手を首輪に添えたまま、右手を奴隷の首輪の鍵穴に添える。一拍空気を置いた後、首輪に添えられたグンジョーの手が一瞬ブレた。

 

カシュ   ボッ!!

 

「ヒッ!?」

 

女性の首輪が一瞬にして後方に弾きとび、壁に当たるとそのまま爆発した。爆風と共に、暗い地下が爆風の光で照らされ、首輪が外された女性の白い首を照らしだした。

 

「ふぁい、これで終ふぁり」

 

「え…?」

 

女性が恐る恐る自分の首に触れる。自らを縛っていた首輪がないことを確認すると、女性はポロポロと大粒の涙を流しながら顔を手で覆い、その場に崩れ落ちた。

 

「ここにいる奴らふぁ全員首輪を外したな。…よひ」

 

そう言ったグンジョーは檻の周りで事の次第を見守っていた他の奴隷たちに向き直った。

 

「でふぁ、作戦決行と行こうか(キリッ)」

 

「言動がその顔のせいで台無しなのれすね」

 

「うるふぇい。取り敢えふ湿布かカットバンをよこふぇ」

 

そう、彼の顔はまるで空気を入れられた歪な風船の如く腫れ上がっていた。そうなってしまった原因は特に語る必要もないだろう。敢えて言うなら、何故か土下座を繰り返す女性の小人、アンズの事だけ教えておこう。

 

「よ、よおアンチャン。でよぉ、これから作戦はどうするんだ?」

 

腫れ上がった部分にカットバンを貼って応急処置をしていると、最初に助けた豊かなヒゲと上半身裸が特徴的男が話しかけてきた。

 

「作戦って?」

 

ポケッとした顔でそう返すと、その男を含め、奴隷たちがえっ、という表情になった。

 

「な!?作戦ってそのままだろ!!このままオークションハウスから逃げ出すなんて無理だぞ!!オークションハウスの前には海軍の一団、しかも天竜人に手を出してしまった何てことが分かったら、大将がこの島にやってくる!!そんな事になったら俺達このオークションハウスに逆戻りだ!!」

 

その言葉に、奴隷たちがパニックになったかのように騒ぎ始める。

 

「そんなの嫌よ!!」

 

「俺はもう海賊をやめる!!故郷に帰るんだ!!」

 

「お父さんとお母さんに会いたい!!」

 

一しきり騒がせた後、俺は軽くぱんぱんと手を打ち、彼等を静止させる。

 

「落ち着け皆の衆。焦っていても何も変わらないぞよ。そう、平和な凪の海の様に落ち着きなさい。この俺の様に」

 

『あんたが異常なんだよ!!というか、凪の海はどちらかというと危険な場所だろうが!!』

 

おお、ワンピース名物ユニゾンツッコミ!!…あ、今は喜んでいる時間じゃないか。

 

「まぁ、安心してくれ。お前らがこの後にどのような人生を歩むのか知ったことではないが、どうやってこの島から逃げ出すのかはすでにプランは練ってある」

 

俺の言葉に安心したのか、全員から安堵の息が漏れる。おいおい、お前等安心するのはまだまだ早いと思うぜ?

 

「問題は…ここからどうやって出るかなんだよなぁ。一応、外に仲間がいるにはいるんだが、あんたが言った通り、外にゃ海兵がいる。あいつらの事だから、どうせこのオークションの出入り口は塞いでいるハズだろう。正にアリの子一匹通さない…ってわけだな?」

 

すると、途端に盛り上がった雰囲気が落ち込んでいく。コイツらテンションの浮き沈み激しすぎるだろう。ま、それも分かるんだけどね。

 

「じゃ、じゃああんたはどうするつもりなんだ?」

 

「あ?それは勿論方法は一つだけだろう」

 

俺は近くにあった武器を近くにいた男の一人に放り投げた。

 

「え?」

 

「プロジェクトブラスト。パート2だ」

 

俺は黒化させた腕をギャリンギャリンと擦り合わせた。

 



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俺は醤油派だ

 

「よし、お前等よく聞け!!」

 

奴隷オークションの会場だった会場の椅子に腰かけ、俺は腕を組む。それを真剣に聞いているのは、いずれもこの偉大なる航路の海を度いてきた屈強な海の男達。そして、その周りにいるのは、不安そうにした怪我人や女性たち、所謂非戦闘容認の方々だ。ま、それでも戦闘を希望する人には武器を取っていただいているが。誰しもの目にも殺る気満々と言った意思が見て取れる。ま、不当な理由で拘束されたんだ。当然と言えば当然ともいえるな。

ちなみに、オークションハウスにいたクソ貴族どもは全員拘束して檻にブチ込んである。世界的に禁止されている悪法を実行しようとした罰だ。しばらくそこで大人しくしてやがれ。ついでに言っておくと、鍵はスペアを含めてこの世から滅したが。

 

「では、これより、さくせんTKGを遂行する!!全員みな心して聞く様に!!」

 

「な、なぁ旦那。その前に質問だあるんだが…」

 

何だよもう、人が気分よく話している時に、水を差すなよ!!

 

「何か用かなモブA!!つまらない内容だった軍法会議ものだぞ!!」

 

「モ、モブ…。というか、TKGってなんの略だよ」

 

その言葉に全員が頷いた。全く、この程度理解できないとは、とんだ恥さらしどもめ!!俺は手の焼ける部下に呆れつつ鼻を答えてやることにした。

 

「そんなもの、TタマゴKカケGゴハンに決まってんだろ!!」

 

『そのまんまなのかよ!!』

 

むふー、と鼻息を荒くする俺に滅茶苦茶突っ込んでくる。全くなんなんだコイツ等は。あれほどシンプルでウマイ飯は他にはないのだぞ?

 

「というのは冗談で、TトツゲキKコウゲキGゴーゴーの略です」

 

『無理矢理すぎんだろ!!』

 

うるせいわい。語呂がよかったんだよ!!

 

「さて、諸君。そんなこんな、あーたらこーたらで作戦を決行する時は来た。全員武器は持っているな?」

 

『…おう!!』

 

武装している全員が刀やピストル、そして大砲と言った己のエモノを掲げる。

これらは、俺達が捕えられていた牢屋と同じフロアにあった貯蔵庫と思われる部屋。そこには、いくつもの武器が無造作に置かれたいたものだ。

銃を筆頭として、刀、槍、さらには大砲、火炎瓶まであった。多分、奴隷として連れてこられた人間達から取り上げ、彼らが蜂起した場合の鎮圧用に使うつもりだったのだろう。この分じゃ、武器持ってここに来てもよかったかもしれないな。というか、しっかり管理しとけよ!!無造作すぎてあやうく引き金に足引っ掛けで暴発させかけたんだぞ!!というか、万が一にも爆発物に火をつけでもしたらどうするつもりだ!!

というか、こういう点にしろ警備にしろ、こういう人には見えない場所にしろややずさんさが目立つ。にわかってやつなのだろうか?

こやっさんが言ってた。最悪のケースを予想しろと。そして、事態はその斜め上をいくらしいよ。

 

そんな馬鹿な事を考えつつ、適当に拾った兜をイジリ、爆発物を詰まったポーチに触れる。

 

「ラクーンMAXアーマー!!」

 

『わー!!』

 

緊張感もない奴らが約10人ほどいるが、俺は気にしない。グンジョーシャボンディアイランドstyleとか乗っかりそうになったけど、それは言わないでおこう!!というか、ラクーン!!お前、武器を着るというか埋もれてんじゃねェーか!!

 

「おい、ほどほどにしとけよ。お前らの持ち味はその素早さなんだから、重い武装は邪魔だぞ」

 

『ハーイ!!』

 

何だろう。遠足の先生になった気分だ。しかし、こいつらどうするんだ?普通の武器じゃ、こいつらには扱えないだろう。

そう思っていたのだが、その考えはすでに杞憂に終わった。

 

「えいっ!!」

 

槍の先端を手刀でバキリとへし折り

 

「とー!!」

 

それを適当な棒にしゅぱぱぐるぐると巻きつけ

 

「できましたー!!」

 

やだ、何この子達怖い!!

彼等はすでに槍を模した武器(自作)を振り回し、座席の間を高速で駆け回っている。何これ、何かのスポーツ?というか、手先器用なんてレベルじゃないぞこいつら!!

ポジション的には、こいつらが銃弾や砲撃による牽制、ラクーン達が斥候ポジション、そして俺が広域破壊…と。中々いい感じじゃないのか?

 

「あー、何だかもうおかしなテンションになって来た…。で、本題に戻すけど、事態は刻一刻を争う。ぶっちゃけ、ボヤボヤしている時間はない。ハッキリ言ってヤヴァイ」

 

天竜人に手を出しちゃったしねー。と付け加えると、盛り上がった一同のテンションが一気に低下する。そうなのだ。おそらく、近いうちこの島に海軍大将がやってくるだろう。ONE PIECEを知っている方はご存じであろうが、天竜人に手を出す=死の由縁がここにある。

今の大将はあまり知らないが、おそらく原作時代の自然系三人衆に匹敵する奴が来るとみて間違いない。今の実力で、どこまでやあれるかどうか。無双ヒャッハーはまだまだ遠いぜ。…あ、ちょっとトラウマ思い出した。

 

「だってよーありえないじゃんかよー未来の英雄2人に大将とか何のコンボだよムリゲーすぎんだろーがよー」

 

「おいおい旦那大丈夫か?」

 

「ウン、だいじょぶ。がんばゆ」

 

そう、俺は過去を振り返らない男だぜ!!哀しみの過去に背を向け…俺は明日に向かって走り出すぜ!!

 

「さて、というわけで時間はありません。すでに色々な下準備は整えているし、外にはま今は少ないですが一応の味方はいる。あとは、海兵どもを制しつつタイムリミットである大将襲来まで全員気張って気張って走り抜いて船を奪って逃げろ!?」

 

『イエー!!』

 

「やる気十分、気合十分!!OK!!テンションアゲテケ、レッツパーリィィィィ!!」

 

『イ、イエー?』

 

「レッツパーリィィィィィィ!?」

 

『イエー!!』

 

扉が開け放たれ、外の光がこぼれる。ああ、久々のシャバの空気だぜ。俺は感動のあまり腕を交差させた。ラーメン。

 

「覇気“手合い”旋風スクランブル!!」

 

『ギャアアアアアアア!!』

 

『…』

 

覇気を纏った手刀を高速で交差させ、扉に向かって飛ぶ斬撃を飛ばす。本来ならば虎丸を使って初めてできるこの技も流石に、剣を使った時よりは威力は落ちているが、それでも銃を持った下級海兵の集団程度ならこのままで十分だろう。

というか、案の定この一撃で前衛の兵士達を一掃できた。

 

「よし、一撃必殺。やっぱり不意打ちは闘いの基本だよねー。シチュエーションにもよるけど、ま多勢に無勢だし、大丈夫でしょ」

 

『何さらしてくれ飛んじゃワレー!!』

 

ええっ!?何でここでユニゾンツッコミ!?俺何か悪いことしてくれたかしらン!?

 

「何突然攻撃してるんですか!?何かする前にちゃんと言っていただかないと!!いきなりにも程があるでしょう!!」

 

「引き金ひかせてよ!!ここは、突撃、そして弾幕の展開でしょうが!?この熱く滾りきったリビトーを鎮めさせてくれ!!」

 

分かった分かった!!何か赤穂浪士的な討ち入りっぽいのがやりたかったのね!?了解したから、その銃口をこっちに向けるのやめてくれ!!痛いから!!生身だとそれシャレにならないから!!

 

「大丈夫大丈夫だよ。それに…ホラ見てみなよ」

 

『え?』

 

旋風スクランブルで舞い上がった土煙が晴れると、そこには斬撃が直撃したと思われる海兵達がバタバタと倒れていた。しかし、その遠くにはそれを超える数の海兵達が鋭い眼孔のまま直立している。その姿は、こちらの出方をうかがっているように見えた。

 

部下がよく鍛えられているのか、それとも上司が優秀なのか。もしくはその両方ってところか?ふむ、さすがは海軍本部の海兵…ってところか?

 

「やっぱり一筋縄じゃいかないってところだネ」

 

「へェ、向こうもやるじゃねェか…」

 

「ヘヘヘ、腕が鳴るぜィ!!」

 

おやおや、テンションが上がっているようですねェ。おっちゃんも嬉しいよ。さて、次にどう出るかなぁ…と思案に暮れていると、向こうから海兵のトップと思われるイカつい顔をした海兵が進み出てきた。トボけた顔をしている電伝虫のマイクを取ると、顔に似合ったドラ声を飛ばしてきた。

 

『自分は海軍本部中佐リーメン中佐であーる!!さぁ、反乱を起こした奴隷ども!!大人しく罪もなき民間人を解放し、天駆ける竜、大人しく天竜人の方々を引き渡せ!!大人しくしていれば危害は加えん!!大人しく投降せよ!!』

 

思わず鼻で笑った。というか大人しく多いなオイ。

こいつらが罪もなき民間人だと?バカいっちゃいけねェ。こいつらは世界政府と言う裏側でアクドい事をし続けた筋金入りのカスどもだぞ?

 

「民間人は全員牢屋にブチ込んであるよ~!!鍵はオークションハウスの中に置いてあるから(嘘)、勝手にとれ!!ついでに、俺達急いでるからさぁ。早くどけやゴラぁ!!」

 

そう大声を張り上げると、中佐さんはここからでもわかるほど露骨に顔をしかめ、再び電伝虫のマイクをとった。

 

『そういう問題ではなーい!!貴様らは罪を犯した大罪人であーる!!よって逮捕、拘束すーる!!』

 

うん、まぁこういう反応はある程度予想通りだった。

ま、一応保険もかけておきましょうか。

 

「ちなみに、奴隷だった人は今解放したらちゃんと保護して元の場所に戻してくれるー!?」

 

『…』

 

中佐はここで電伝虫を切った。そして、片手を振り上げると、後ろで控えていた海兵達が銃器を一斉に構えた。

 

「成程。やるんなら徹底的にやるってわけか?いいじゃん、そのほうがこっちもスーッとする」

 

後ろでおびえている女性の奴隷たちをかばい、他の奴らに指示を出す。こちらもバズーカやら銃器を海兵達にロックオンさせる。

やってやろうじゃん、正義の戌ども。

 

「総員前へ。作戦はナシ。撃って撃って撃って撃って撃って撃って撃ち飛ばせ!!活路は開くもの、運命は掴み取る者。そして、左手は添えるだけ!!ファイヤー!!」

 

どちらの集団が最初であっただろうか。撃鉄が弾かれ、火薬が爆発し、凶弾が放たれる。一瞬にして、その場は激戦と化した。

 

「小人軍団は俺に続いて銃弾を避けつつ海兵に接近!!オメエラは、そのまま弾幕はって俺らを援護してくれ!!間違っても俺達の背中に当てるんじゃないぞ!!」

 

『ハイ!!』

 

「それから…」

 

俺は今まで黙ってついて着ていた魚人さんを視線を送る。すると、魚人さんはそれに気づいたのか、俺の顔を見返してくる。

 

「あんたも、こっち側に来てくれるとうれしいんだけど?」

 

そう希望を伝えると、彼は黙って長袖をめくりゴキゴキと両手を鳴らした。よし、どうやらやってくれるらしい。もしかしたら、初めて魚人と共闘するかもしれない。

 

「頼りにしてるよん」

 

「…ん」

 

よし、じゃあ作戦決行と行くか。

 

「行くのれすよーみんなー!!」

 

『おー!!』

 

「よっしゃ、一発オトしてやっか!!」

 

「…むぅ」

 

覇気で硬化させた両腕を振り回し、銃弾の雨の中を閃かせる。覇気で鋭くなった俺の手刀は、そんじょそこらの刀では太刀打ちできないほどの鋭さを誇る。ただの鉛の弾丸程度ならなおさらだ。一歩進むたび、俺の歩いた後には切り裂かれた弾丸の小川が形成されていく。

 

「何だあの男!?」

 

「両手が黒く変色してる!!」

 

「間違いない…あの男、覇気使いだ!!」

 

おっと、その程度分かったところで俺の進撃は止まらないぜ!?

 

「怯むなー!!あの男に攻撃を集中させよ!!さすれば、隙が出来る!!」

 

すると、慌てた兵士を一括するように先程の中佐とは違う男が一般兵達に指示を飛ばす。彼も覇気の脅威は知っているのであろう。しかし、それでもまだ経験浅はかという事だろうか。自らの足元で蠢く影に気付けなかった。

 

「アオランドばっかりに気を取られてはダメなのれすよ!!」

 

「何っ!?」

 

彼が慌てて足元を見ると、自身を見上げているいくつもの目があった。

 

「な、誰だお前達は!?」

 

「僕らは愉快な小人族!!いくぞみんな!!」

 

『おーう!!』

 

次の瞬間、シュバババッ!!と凄まじいスピードでラクーン達の姿が掻き消えた。いや、消えたんじゃない。言うなればマッハ反復横跳び。彼らは高速で一定位置を往復しているだけなのに、それだけで残像が見えるほどのスピードだ!!

 

「故郷で鍛え上げた“イタズラ”を甘く見ないでほしいのれすね!!」

 

「こ、この!!…あれ?」

 

ラクーンが立ち止まったのを見て捕まえようとする海兵。…あー、本人は気づいていあんだろうけど遠くからだと丸見えだ。

ま、一応言っておいてやるか。

 

「おい志村―。下、下」

 

「ほへ?」

 

ゆっくりと自らの姿を見おろした彼は驚愕の表情を浮かべる。それはそうだろう、そこにあったのは、海軍制服の上にマントを羽織ったいつもの姿ではなく、パンツ一丁のスッパンポン姿だったのだ。

 

「あ、なな、ななな~~!?」

 

では、彼の服は何処に消えたのか?それは、勿論ラクーン達の手に渡っていた。ズボンやネクタイ、そしてマントを握りしめたラクーン達がニヤニヤと笑ってエモノを見せびらかしていた。

 

「ほーれほれほれ取り返せるかなー?取り返せますかなー?」

 

「このっ、小人ごときが!!」

 

海兵が激昂してパンツのままラクーンに襲い掛かるが、甘い。すでに決着はついたであろう。

 

「「「“尻尾ハンマー”!!」」」

 

「うげろ!?」

 

小人たちの尻尾が男の顎を打ち据えた。あの、一見モフモフに見えるあの尻尾は予想に反してメチャクチャに硬いうえ、当たると物凄く痛い。成人男性なら、尻尾一発でK.O.だろう経験者は語る。

 

「もう一撃!!」

 

「っ!?」

 

しかし、それだけでは小人達の怒りは収まらなかったらしい。尻尾を使って空中に打ち上げた海兵の頭上には、すでに数人の小人たちが槍の柄を振り下ろしていた。

 

「「「えいっ!!」」」

 

「ぐがぼっ!!」

 

下と上からの攻撃になすすべもなく海兵は意識を手放した。

 

『やったー!!わーい!!』

 

確かに、身体は小さいが彼らにはそれを容易に補えるほどのスピードと見かけに反し常人以上の腕力を持ち、さらにはチームプレイを得意としている。ある意味、普通の人間よりも遥かに強いかもしれない。

 

「貴様達、何て事を!!」

 

すると、その光景を見ていた海兵達が武器を構えてワラワラと集まってくる。おいおい、小人相手に大人間がそんなに大人げない対応していいのか?まぁ、彼らだけでも問題ないとは思うが、一応フォロー出しておくか?

 

ラクーン達の方へ向かおうとするが、小人たちの方へと走っていた海兵が突然宙に吹き飛んだ。

言わずもがな、その犯人は、誰であろう魚人さんである。

 

「…」

 

無言の魚人さんはさらに両腕を振り回し、周囲にいた海兵さんを打ち据える。拳が一陣の風を作り出すたび、数人の海兵達が四方八方へと吹き飛ぶ姿はある意味圧巻だ。その様は、鉄球を振り回すムロ〇シそのものである。

 

「貴様魚人!!」

 

味方が一方的にボコられる様が気に入らなかったのか、激昂した海兵が刀を振り下ろす。その様をまねて他の海兵も同時にカタンを振り下ろすが、魚人さんはそれに対して慌てるどころか、巨大な口を大きく開けて、複数の刀に食いついた!!

 

『なっ!?』

 

「おやおや」

 

人の口とはいわば急所の一つである。生命の維持に必要な呼吸器官が通っていると同時に、生物が生物たる由縁である脳がすぐに近くにあるのだ。仮に、普通の人間があんなことすればただじゃすまない。まぁ、ただの人間であればだが。

 

「…ガッ!!グシャグシャ!!」

 

「馬鹿なっ!?」

 

魚人さんが口を開閉させると、口の中にいくつもの鋭く尖った歯が見て取れた。彼が咀嚼すると、それに応じて口に突っ込まれた刀が悲鳴を上げて粉々に粉砕される。おそらく、歯の強度が刃の強度よりも格段に上という事なのだろう。そのまま口から刃のカスを吐き出すと、彼らも同じように拳を叩き込んだ。

 

「歯の強度が強い魚…。鮫さんの魚人か?」

 

「…ワニザメだ」

 

「成程。合点がいった」

 

「死ね奴隷!!」

 

そんな軽口をたたいていると、近くにいた海兵達が同時に攻撃してきた。久々の戦場で勘が鈍ったか?少しナマクラが入っているようだな。

 

「ま、俺のは磨くと輝きますけどね!!」

 

「ぎゃあ!!」

 

手近の海兵に拳を叩き込む。ソイツを踏み台に一気に上空に飛び上がる。

 

「馬鹿め!!格好の的だ、ハチの巣にしてやる!!」

 

ガシャガシャと銃口を上に構える海兵達。

ハン、逆なんだな。俺にとっちゃただ攻撃しやすくなったのだよ。

 

「覇気“手合い”爆風ウォークダウン!!」

 

宙で体を回転させ、刃を交差させると、刃の竜巻が発生した。

 

『ギャアアアアアア!?』

 

吹っ飛ぶ吹っ飛ぶ、まるでダイ〇ン吸い込まれるゴミのように空中に吹き飛ばされていく。サイクロンなんたらー。人がゴミのようだー?

 

「キエエエエエエ!!」

 

地面に着地した俺に突撃してくる海兵の一団。チッ、ワラワラいるからメンドウくせえ。もう一撃食らわせてやるかともう一度刃を振り上げたその時、海兵達が何故か爆発した。

 

『ぐわっぷ!?』

 

衝撃と火炎と共に吹き飛ぶ海兵を見送りつつ、後ろに目を向けると、奴隷の一人が手を振っているのが見えた。何だよアイツら。中々やるじゃん。

軽くサムズアップして感謝しておく。

 

「さて、次の敵は…と」

 

「ふむ…」

 

視線を横にずらすと、そこには腕を組んで感慨深げにこちらを見ている中佐が目に入った。

 

「奇妙だ…。これ程の実力があるのであればある程度名が知られているハズだ。しかし、全くその実力を知られることなく偉大なる航路、前半の海の最後の島であるこのシャボンディ諸島に辿り着いた…。仮に厄介ごとを起こさずとも、我ら海軍が人相名前も知らぬという事はおかしい」

 

「…ほ~う」

 

中々の分析力と言った所だろうか。

こっちは、特に騒がず魚人島入りする予定だったんだけど、持病のシャクがね…。感知は難しいかもしれない。

 

「まぁよい。どちらにしろ、貴様はここで倒す。奴隷たちも元の持ち主たちの元に戻す。それが政府のルールであるからにして。大人しくするがよい。それが海軍の大義、そして正義」

 

「はぁ?何言ってやがんだテメエ。御託抜かしてねェでさっさとかかってきやがれ。時間の無駄だ」

 

「それもそうだな…」

 

後ろにいた部下達がガタガタと巨大な2本の棒を運んでくる。どうやら、あれが奴の武器なのだろう。

中佐は、その二本の棒の端から突き出た持ち手を掴みを持つと、棒をグルグルと回転させ始めた。成程トンファーって奴。性能上、クセは強いが、その分防御にも攻撃にも使えるので、慣れれば中々使い勝手がいいと聞く。

 

「海軍本部中佐“剛鉄”のゴーケツ!!名も知らぬ悪党よ、ここで鎮める!!大人しくせよ!!」

 

「ほう、そうか。果たして大人しくなるのはどっちになるかなァァァァ!!」

 

剛鉄か関鉄かはしらないが、ある程度の実力はあると見た。成程、新世界へのウォーミングアップには丁度いいかもな!!

 

 



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骨が贈る鎮魂歌

 

「覇気“手合い”三蓮スクランブル!!そらそらそらっ!!」

 

「ハッ!!」

 

ガキィン!!と高い音を立てて俺の放った斬撃が中佐のトンファーにぶつかり四散する。

 

「どうした剣士、この程度か!!」

 

「ケッ、そんなわけねぇだろボケ!!」

 

相手の実力を推し量る。ふぅむ、中々の強さといったところだろうか。

だが、考えてみるとそんなおかしい話ではない。中佐ってことなら准将、または少将そして大佐のすぐ下になる。未来の海軍の戦力を担う一端として、ある程度の強さを求められるのは当然の話だろう。

 

「ぬぅむ!!」

 

「おわっと!?」

 

ヒョイ、とよけるとそこにトンファーの一撃が振り下ろされる。ボゴン!!と激しい音と共に地面がひび割れクレーター状に陥没した。

 

「覇気“手合い~~~”旋風スクランブル!!」

 

俺が飛ぶ斬撃を飛ばしても、高速で回転させたトンファーでことごとく防がれてしまう。雑魚海兵程度なら簡単に消し飛ばせる一撃を防ぐとはなかなかだな。どうやらあの中佐自身も覇気も使えるようだが、それ以上にあのトンファーに使われている素材の強度自体がかなり高いみたいだ。

 

「無駄だ!!我が相棒“カシノキ”は、新世界の鉄の森に生える大樹モンキーオーウッドの根幹、すなわち最も固い部分を使用したものだ。人体にはもちろん、普通の刀も木端微塵!!」

 

成程、文字通り相棒ってわけね。棒だけに。…ゴホン、それは置いといて、このままだと少々厄介だな。さぁて、どうやってこの状況を打破すべきだろうか。このまま素手のままで戦うってのも結構ジリ貧だろう。

武装色で硬化させて打ち合おうかとも思ったが、向こうも覇気を使う手前、もともと剣士である俺には素手での喧嘩はキツすぎる。というか、手がカチ割れるだろう。

 

「でも、逃げてばっかりじゃ何も始まらないよなッ!!」

 

「むっ!?」

 

地面を蹴って中佐に高速で接近。拳ではなく、右腕の肘を集中的に黒化させて全力で振り下ろす!!

 

「即席攻撃、名付けて“肘鉄(アイロンハンマー)”!!」

 

中佐が×字にガードしたトンファーと肘がぶつかると、ビリビリという振動と共にかなりの威力が腕部を伝って身体全体を揺さぶる。

 

「うおっ、やべぇ!!」

 

中佐がもう一方のトンファーを横薙ぎに構えるのを見て、慌てて黒化させていた脚の進行方向をズラそうとするが、瞬きした後にはトンファーが高速で振われる。

 

ヒョイヒョイと振り下ろされるトンファーの猛攻をよけきると、俺はトントンとバック回転を披露しながらで中佐から距離を取る。

トンファー使いの敵は初めてではないが、それでも前に戦った連中よりも技術の完成度が遥かに高いうえに、こちらは刀がないと来た。

 

「チッ、やりづれえなぁ…あん?」

 

ふと人の気配を感じて後ろに軽く視線を送ると、コートを羽織っていない下っ端海兵達が、中佐と俺を囲むように円を描いている姿が見えた。

一瞬俺に睨まれた海兵は一瞬ビクリと肩を強張らせるが、すぐさま銃を構え直す。

 

「へェ、良く鍛えられてんじゃん。優秀な上司がいると、部下が優秀になるって事かい?」

 

その割に銃を構える手がプルプル震えていることをあえて無視してそんな風に茶化すと、中佐はここからでも分かるぐらい鼻の穴を広げてフンと荒く鼻息をついた。

 

「海賊に褒められてもうれしくないが、我が隊の海兵達はこれしきの事で狼狽えはしない!!だが敢えて言っておこう。我が海兵の練度は世界一ィィィィ!!」

 

メチャメチャ喜んでんじゃないですか!!あれか、あんた実は中佐じゃなくて少佐だろ!!もしくは、大佐でも可だ!!

 

「…ふむ、余興はこれくらいにしておくか。貴様の実力はだいたいわかった。ここから本気を出してもかまないだろう」

 

「ありゃ、やっぱりそうだった?」

 

そう言って中佐は高速でカシノキを回転させ始める。先ほどとはまるで別次元のような速さだ。あそこに遠心力とか加わったら…。

 

「あれはさすがに痛いだろうなぁ…」

 

「痛い?フン、我が本気の一撃は大型の海賊船を木端微塵にする。“痛い”などと感じさせる前に肉塊に変えてくれるわ!!」

 

そう言った中佐は、カシノキの片方をブン投げてきた!?アブね!!

 

「いよっと!!」

 

何とか身体を右に逸らしてトンファーを交わす。見切った!!そう思って中佐の方を向くと、そこはすでに無人。

 

「チッ!!」

 

―――ッ!!

一瞬の隙を突かれた。

まるで隕石が落ちたのかのような衝撃を後頭部で感じつつ、俺は覇気で身体を硬化させた。次の瞬間、人間の身体を容易に破壊する暴力的な(ハンマー)が俺の身体に食い込んできた。

 

「“ウッドハンマー”!!」

 

「ぐがっ!!」

 

ミシミシと言う音と共に身体が内側から吹き飛んでしまうような感覚が襲い掛かる。

 

「―――グガァァァァァァァ!!んなろ!!」

 

衝撃で体がズリズリと後退させるが、下っ腹に力を入れて一撃を耐えきる。しかし、結構なダメージが身体に入ってしまった。

膝に手を付き、荒い呼吸を吐く俺に対して、中佐は冷めた目でこちらを見おろしている。しかも、いつの間にか拾ったのかもう片方のトンファーももってやがる。ちゃっかりさんめ。

 

「…ふぅむ、必殺の一撃を受け立っているか…。余程鍛えているようだが、何発も連続でくらえばどうなるかな?」

 

その言葉に、苦笑いを浮かべながら額の汗を拭った。

確かにこのまま一方的に殴られ続けたのなら流石に俺でも耐えきれる自信がない。さて、どうしたものか。電伝虫で連絡しといたから、そろそろあいつもこちらに到着してもいいはず何だけどなぁ…。

 

「貴様に絶望を植え付けるつもりはないが…。もし、味方を待っているのであれば期待しないほうがよいぞ?このヒューマンオークションの周り及び、この諸島はすでに海軍によって包囲されている。さらに、海軍本部三大将の方々にも事情はすでに通達済みだ!!」

 

あ、そっか。天竜人に手を上げたら大将が軍艦を率いてやってくるんだっけ。マズイなすっかり忘れたよ。

 

「“水皇”ハイドラ大将、“炎君”カリュウ大将、そして“雷帝”コング大将!!そして、今すぐにでもどなたかがこの島にいらっしゃるだろう!!いかに貴様が強き力を持つ者でも、私に苦戦しているようでは大将殿たちの前では塵も同然!!大人しく、私に倒されれば、楽に死ねるぞ?」

 

「楽に…死ねる、だと?…冗談!!こちとら、こんなところで死ぬ気はさらさらないんでね」

 

俺の言葉に中佐は眉をひそめる。海軍本部大将と言えば、海軍の正義の要。その武力は、海賊の誰しもが恐れる存在だ。しかし、大人しく降伏するでも命乞いする事でもない、あくまで希望を捨てない俺の姿を奇妙に思ったらしい。

そう思いたくば思っておけ。こっちは隠し玉がいくつも残っているんだ。

 

「それにあんたこういったな。“無駄な時間稼ぎ”だと?あんた、確かに実力はありそうだがそう言う所の着眼点はまだまだだなってない。俺がいたずらに時間稼ぎをしてるように見えたんだったら…残念だが、それは間違いだぜ?」

 

「何…?」

 

状況的に俺は遥かに不利。しかし、それでも余裕を失くさない俺の態度に、中佐は勿論の事、銃器を構えていた海兵もが身構えた。

 

「…ふぅむ。つまり、貴様は今までこの状況を打開してくれるだけの力を持っている仲間が来るまでの時間稼ぎをしていた、というわけか?そう考えると…ほう、言葉通り無駄な時間稼ぎではなかった、というわけか。しかし、果たして思惑通りにいくかな?」

 

鼻の穴を広げて、フンと息を吐き出す中佐だったが、俺はチニィとニヤけさせた。

 

「50点」

 

「…何?」

 

訳が分からないよ、と言う中佐に俺は再び事実を告げてやる。

 

「こう言ったのさ。50点ってな。半分正解けど、半分不正解。つまりはギリ赤点ってわけさ」

 

「何を言っているのだ!!この期に及んで訳の分からない負け惜しみを言うな。貴様はすでにチェックメイト。いわば終わりだ。敗者の負け惜しみほど醜いものは無いぞ!!」

 

「違うね。俺はそんな事を言ったつもりは全くないぜ。事実、ホラ聞こえてこないかい?」

 

「何?」

 

俺の真剣な瞳に、中佐の表情が徐々に歪んでいく。“こいつは何を言っているんだ…”そう思っていることが手に取るように分かる。

しかし、何で分からないかなぁ。勝負に集中しすぎてんのか?俺にはハッキリ聞こえるんだけどなぁ…。

 

「あんたが今まで語ってくれた事実、十分俺にとっては脅威だ。けどよォ…俺はそれでも絶望する気はないぜ?」

 

すでに痛みは治まっていた。五体は満足に動く。俺は中佐に向かってゆっくりと歩き出した。

 

「人ってのは不便な生き物でな。生きてりゃいつかは天に召されちまう。波乱万丈、海あり山あり谷あり…ってなもんで人生は、どれだけキャリアを生きたんじゃなくて、どんな奴に会ったか、どんな経験をしたかで幸せか不幸か決まるってよ」

 

俺がニンマリと微笑んだまま一歩ずつ歩を進めるたびに、中佐は逆に後退していく。

 

「いろんな奴に出会ったんだよ。変な奴もいたし、その中でも味方になる奴もいた、逆に敵になった奴もいたな」

 

いつも陽気に笑う人たち、利己主義な海賊達、正義を振りかざすバカな海兵、そして未来の大海賊達

 

「今までやりたいこともできなかった分、俺は今生きている人生に満足しているんだ」

 

まだ見ぬ景色がある、話したい奴らがいる、会いたい友がいる

 

「どうしたんだい中佐?さっきまでの威勢はどこにいった。これなら、お前の背後でプルプルと震えている海兵諸君の方がまだまだ頼もしいぜ?」

 

「…クッ!!」

 

得体のしれないものへの恐怖、と言った所であろうか?中佐の目には、俺がまるで異次元の生命体の様に映っているのかもしれない。ま、実際そうなのだが…。

 

「今までの話をひっくるめて…俺は今死んでも後悔は死ねェ。だけど、まだ死ぬわけにはいかねェ。絶望何てしてる暇はねぇ!!例え、それがいばら道でも、その先に一筋の光が見えたのなら、俺は、いや俺達(・・)はまだまだ進んでいく!!なぁ、そうだろ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「ヨホホホホ~~~♪ハイ、その通りですよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場とは相応しくない呑気な声と共に、一陣の黒い風が辺りを吹き抜けた。

 

―――ッ!?

 

不意に後方から響いた声に中佐が慌てて振り返った中佐は自らの目を疑った。

何という事だ。包囲網を築いていたはずの海兵達が力なく地面に倒れ伏していたのだ。

 

「いったい何が起こった!?」

 

衝撃

 

どうしてこんなことになった?敵はどうやってここまで来た?いつ背後を盗られた如何にして海軍の包囲網を突破した?そもそも、敵はいつ攻撃したんだ?

謎、謎、次から次へと新たな疑問が中佐の脳内を圧迫し、冷静な部分を塗りつくしていく。

 

“鼻唄三丁”

 

ふと中佐の耳にそんな声が聞こえた。

そう、先程と同じあまりにもバカらしくて、普段なら聞き逃してしまうような…そんな“声”。だが、まるで意志を持つように、その声はすぅ、と中佐の耳に吸い込まれた。

 

「そんな馬鹿な…」

 

そのままの体勢で中佐はゆっくりと振り返る。

 

奇妙ななりを持つ長身の男だった。

やや煤けた礼服を着こみ、歩みを進める度に履いた靴がコツンと甲高い音を立てる。何より目を引くのが頭の上に乗っているモジャモジャとしたアフロ(・・・)

 

男は、杖を、いや杖に仕込まれた剣をゆっくりと掲げ鞘に戻していく。

 

瞬間、中佐は悟った。

 

体温、呼吸、臭い、動き、風が当たる音、水が打ち付ける音、大地を踏みしめる音…。全ての育む存在達は、誰しも少なからず“気配”を持っている。目の前の男にも、もちろん気配は存在するだろう。しかし、五感及び、第六感では感知できないほど気配がか細い存在がある。

 

そう、それは、死体だ。

 

すでに魂が抜けきった彼等育まざる者は、気配すら失せる。例え気配を感じたとしても、それは恐怖を勘違いしたものだろう。

 

しかし、中佐はこう考えた。

 

“すでに、目の前の男はすでに死んでおり、その死体が理不尽な理由で勝手に動いている”

 

そう納得してしまう程、男の気配は無に等しかったのだ。

 

「黄泉からのメロディー。死者を黄泉へと誘う鎮魂歌(レクイエム)…」

 

 

―――ヨホホホ~♪ヨ~ホホ~ホホ~…

 

「お聞きになりましたか?」

 

“矢筈斬り”

 

「まぁ、私ガイコツだから耳はないんですけどー!!ヨホホホホ!!」

 

再びの衝撃と共に中佐の腹部に裂傷が刻まれる。

徐々に薄れゆく意識の中、見上げた男の顔は…何故かガイコツのような形をしていた。

 

 

 

 

「ヨホホホホ~~~!!これはこれはグンジョーさんお~つかれさまで~す!!緊急事態につき、咄嗟に動いてしまいましたが、よろしかったですか?」

 

「いやいい。グッジョブだブルック。でも、少し遅かったな。途中で何かあったか?」

 

「ああ、ハイ。言われた通りドヘムさんと会えたのですが、いきなり驚かれまして。“お前みたいな人間がいるか!!”何て、私傷ついて心に傷が…あ、私死んでるから心臓ありませんでした!!」

 

「知らねえよそんな事!!そもそも、心臓と心は別物だろ!!」

 

「あ、そうでした!!ヨホホホホ~~~」

 

…うん、言い訳をさせてくれ。まだ状況を把握できてないジェントルメンとレィディースがいるかもしれないが、これはありのままの事実だ。

 

“鼻唄”のブルック

 

彼の名前だ。

そう、麦わらの一味の音楽家として働くことになるであろう男、正にその人、人?うんいいやその人である。

どうしてこんなことになったか?有体に言えば、“スカウト”してきました。…ま、そんな話は後日談ってことで。

 

「ちなみに、女性に向かってパンツ見せてくださいとか何とか言って無駄に道草を食っていたとかはないよな?」

 

「ヨホホホホ~~~。最近の女性は中々どうしてナイスバデーな方が多いですね~~」

 

「やっぱやりやがったな!!このエロ骸骨!!」

 

「おやおや、これは手厳しィーーーーー!!

 

ため息を吐きつつ、俺はヨホヨホと笑うブルックに手を差し出した。

 

「分かった分かった。とりあえずドヘムから預かった俺の武器返してくれ?素手じゃハッキリ言ってキツイんだわ」

 

先程電伝虫で指示を出したのだが、ブルックには俺の武器をドヘムから受け取っておくように頼んでおいたのだ。

こんな成りをしているので、上陸→「パンツ見せてください」→「ヤダ変態」→海軍来る→「あれは辻斬りだ、生きてたのかー。コングさんこっちです」→海兵大将中将come、と言う流れは目に見えていたので、あえて待っててもらっていたのだが…くそぅ作戦失敗だ!!

 

「あ!!ハイハイそうでしたね。いや~、グンジョーさんはいつもこんな重い武器を振ってるんですね。私もここまで持ってくるのに骨が折れそうでしたよ。本当に折れたら困るんですけど!!」

 

「分かったからさっさとくれよ!!」

 

(無駄に)長身のブルックから武器を受け取り、愛刀“虎丸”ともう一本の長槍を抜き放った。

 

「ああ、落ち着く…。やっぱり剣士は剣を持ってナンボだわ」

 

「長年使った武器は肌になじみますからねぇ。あ、私もう肌ありませんでした!!」

 

「…見りゃわかるわ、一々言いなさんな!!」

 

四六時中明るい彼が近くにいると、滅茶苦茶に疲れるという事がネックだ…。まぁ、暗い気分の時に近くにいてもらえると凄く助かるのだが。

 

「ンガぁぁぁぁぁあああああああ!!」

 

武器の握りを確かめていると、ブルックに仕留められた中佐が気合の掛け声とともに起き上がった。

 

「海軍はぁぁぁ…ま、負ケン!!この世に、悪が栄えたためしはナシ!!ただ世界平わォのためにィィィィ!!」

 

「いやはや、気骨のある方ですねぇ~」

 

眼は血走って脚は小鹿の様にブルブルと震えているが、トンファーを支えにして立ち上がる。その姿を見てブルックが感心したように呟いた。

 

「確かにな。海軍の将校何てもんは、結局は俺らと同じ根っこを持っているってわけだ」

 

おぼつかない足取りながらも口から一筋の血をふき、一歩つつ前進し、両手のトンファーを回転させる。

 

「もはや私の事などはどうでもィィィ、貴様の逮捕は後の方々に任せるぅぅ。貴様は、こおでわだじが倒ズぅぅ!!」

 

「へぇ、自己犠牲の精神っての?」

 

虎丸を地面に突き刺し、残った槍を両手で構えた。

 

「我が名刀、虎丸に続く我が新武器。お見せしましょう。変化の鬼、その名も“蛇牙(だが)”!!」

 

動かない俺を標的にして中佐は振ったトンファーをX字に振り下ろした。

 

「“トンファ~~~~クラッジュ”!!」

 

武器がゆっくりと迫っている姿を確認しながら、蛇牙を突き出した。

蛇牙の握り手にある出っ張りを押しこむことで、蛇牙の内部から、仕組みが起動する振動が伝わってくる。

ガコン、と言う音と共に蛇牙の柄が伸びた(・・・)

 

「ぬおおおおおおおおお!?」

 

蛇腹剣をご存じだろうか。攻撃の瞬間、刀身が伸びて広範囲を攻撃できるというふれこみを持つあの武器だ。現実世界では伸びる部分をどういう素材で作るつもりだ、剣を引き戻す時どうするんだ、等々不平不満が溢れ出いるがお忘れだろうかここはONE PIECEだぞ?

 

「槍の先端及び胴体は世界一固いウーツ鉱でできているッ!!スイッチ一つ押し込むことで、内部の機構が作動ゥゥゥ!!伸縮自在のフォーミン鉱石製の鉄線が伸びながら相手に向かって一直線!!さらに、仕掛けはそれだけじゃない!!さらに、再度スイッチを押しこむことによってッ、今度は形状記憶鉄鋼フィクス合金により、限界まで引き延ばされたフォーミン鉱石製の鉄線が引き戻されるゥゥゥゥ!!フォーミン鉱石とフィクス合金の合体が最も難しかったが…最終的にッ!!投擲武器としても使えつつ、鞭のようにしなる機能を持っている!!可変も可能のという全く新しい武器が完成したッ!!」

 

ONE PIECEの技術力は漫画界一ィィィィィ!!

 

出来んことはないィィィィィ!!

 

「な、何ィィィィ!?」

 

中佐が攻撃を中止してトンファー2つを盾にしようとするが、如何せんその程度では相手が悪すぎた。

凄まじい爆発力により、まさに爆進した槍は、トンファーを粉々にすると、中佐の生身に斬撃の波が突き刺さった。

 

「ぬおおおおおお、ぐほっ!!」

 

標的を捕え続けてもなお、槍は彼を逃すつもりはないらしい。そのままの勢いで中佐を宙にうかせ、周りでへばっていた海兵の頭上を飛越そのままヤルキマンマングローブの幹へとブチこんだ!!

「YEAAAAAA!!」

 

ミシッ、ミシッ、という嫌な音を立てて少しづつ、少将が幹の中に埋没していく。

 

「蛇牙リターン!!」

 

もう十分と判断した俺は、スイッチを再度押すことによって、蛇牙が元の槍へと戻した。流石にやりすぎたか、中佐は白目をむいたまま身体の半分がスッポリと埋まってしまっている。

 

「ま、こんなところか。尖端は潰してあるから死にはしないだろう。しかし、対人戦としては予想以上のデータだ…しかも鉄線の具合からして、まだ伸びるな…」

 

思わず感心する俺に対して新武器蛇牙が、まるでドヤるように太陽を浴びて煌めいた。

 

「ヨホホホホ、どうやら海兵側も事態を察知して撤退するようですよ。ひとまず安全と言う所ですかねぇ」

 

「おう、そうか」

 

ブルックの見つめる(もう眼はないが)方向へと眼を蛇牙から切り替えると、奴隷たちと戦闘を繰り広げていた海兵達がまるで波が引くかのように撤退していく姿が見えた。

 

「奴らはこんくらいじゃ諦めん。おそれく、何か対策を練ってくるはずだろう。こっちもうかうかしてられんな。ブルック俺達も早く行動に移すぞ」

 

「ハイ。シャクヤクさんにもすでに連絡済です。あ、そういえばもう聞いてくださいグンジョーさん!!私めがお聞きしたところ、今日のシャクヤクさんのパンツは何と(自主規制)」

 

「聞いたのか!?お前それを聞いちゃったのか!?お前一回お馬さんに蹴り飛ばされてこい、この好色ガイコツ!!」

 

「ヨホホホホ、これはこれはテキビシィーーー!!」

 

記憶に違いがなければ、俺はボケキャラだったはずなのだが。最近、ラクーンとか骨のせいでツッコミ側になってきちゃった気がする。何だかなあ。

 

 




皆さんお久しぶりです。とりあえず、原作改変反対派の皆さんごめんなさい。ヨホホホホ~~~!!


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覇道 生道 剣道

「それじゃあ。みんな計画通りにね」

『おう』

 ドヘムの部下と奴隷たちが、いくつものグループに分かれてオークションハウスのある広場から散っていく。もちろん、バイクは使わせない。あんな爆音発しながら移動する乗り物使ったら速攻で囲まれてしまうわ。飛ぶトビウオでも持ってこい。

「さて、お前らも俺が言った通りに頼むよ」

「ヨホホホホ、かしこまりました」

「やるれすよ~!!」

 シルクハットを手でもち軽く会釈するブルックと、その下でウオー、と叫ぶラクーン一味。当初はこの10数人で計画の第二段階を行うつもりだったが、もう一人この作戦に名乗りを上げた者がいた。

「しかしねえ、あんたまで来ることはなかったんじゃないの?そもそも俺が勝手にやった事だし」

「関係があるかどうかは、あんたではなく、俺が勝手に判断するところだろう…」

 そう、先程活躍した魚人さんである。彼も普通に逃げればよかったのに、なぜか残って一緒に戦うと言い出した。彼に言わせると、「借りがある」とのこと。律儀だねえ。まあ、人種差別が色濃く根付すこの島で、魚人が混じった集団がいると、嫌でも目を引くだろうしねぇ。木の葉を隠すなら森の中ってか?

「しかし、グンジョーさんよかったのですか?」

 苦笑いをしている俺に話しかけてきたのはブルック。普段陽気な彼だが、今回ばかりは不安そうだ。皮膚のない頭蓋骨をカタカタと動かしながら、眉間を寄せ…って、肉なくてもできるんかい!!相変わらず器用な骸骨だなお前は。

「いくらグンジョーさんがお強いとはいえ、今回の相手は海軍の大部隊。しかも、海軍中将、それどころか、大将がいます。彼らはともかく、私たちはグンジョーさんと共に行動した方がいいと思うのですが…」

「ああ、それはいいよ。何より、作戦上俺が単独行動する方がいいし」

 

明日には悠々と魚人島を目指すつもりだったのに、俺の勝手で、本来ギリギリまで別の船で待機してもらう手はずだったブルックの力まで借りてしまったからな。

「ヨホホホホ、それならば私からは何もいうことはございません。預けているグンジョーさんの小舟を受け取り、待ち合わせの場所まで行けばよろしいのですね?」

「そうゆうことだ。まぁ、危険度でいえばお前らの方も中々危ないんですけどねぇ」

 

こいつらは見た目のせいで、嫌でも目立つからな…。まぁ、俺が上手くやれば海軍に捕まることもないだろう。そう、考えたところで、耳元で風切り音が響いた。

 

「ん?」

 

眼前を通過する寸前、左手でその何かを鷲掴みにする。アチッ、これ弾丸じゃないか。

 

「見つけたぞ下手人どもめ!!」

 

弾丸がきた方向へ視線を移すと、土が小高くなっているところに狙撃兵らしき海兵が腹ばいになっており、その後ろには指揮官らしき男と、巨漢の海兵がたむろしていた。

「うわ、気づかなかった。見聞色はやっぱり不得意だな俺…」

 

「おやおやヨホホホホ」

 

頬を人差し指でかく俺の隣では、ブルックが陽気に笑っている。

 

「我々は暴徒鎮圧部隊だ。貴様ら大人しく投降し、天竜人殿とゴーケツ殿を解放せよ!!さもなくば、正義の鉄槌が貴様らを叩き潰すであろう!!」

 

「ほーう」

 

暴徒鎮圧部隊…そんな奴らが海兵にもいたのか。道理で、武装は盾や警棒…機動隊のような格好をしていると思った。

 

「チッ、感心している暇はないか。お前らは先にいけ。俺が手早く「…待て」、おっ?」

 

俺を押しのけて、ずずいっ、と前に出たのは例の魚人さんだった。

 

「おいおい、あんた何をしているんだ?」

 

「…自ら望んだ事とはいえ、狭い部屋に閉じ込められていたのだ。こちらもフラストレーションが溜まっている。あの程度の海兵程度では満足できん。俺にも戦場をよこせ」

 

「…ぅえーぃ」

 

 意外にクレイジーな奴なのか?魚人の中には確かに暴れる事が好きな奴も多いらしいが、この人は八つ当たりとかしなさそうなタイプだと思ってたんだけどなぁ…。

 

「それに…」

 

「あ?」

 

「…あんたが大暴れしてくれれば、それだけあいつらが安全に船のある場所までたどり着ける…と思うんだが?」

 

「…へえ」

 

 成程、それが本音ってわけね。やっぱりいい奴じゃんコイツ。ま、自分勝手な人間に怒っているってのもあるかもしれないが。

 

「そう言う事ならこの場は任せた。じゃあ、俺は行くから。ブルック後よろしく!!」

 

「ヨホホホ、お気を付けて!!」

 

 ブルックの声を背に、鎮圧部隊に向けて駆け出す。「突っ込んでくるぞ!!」とか、「応戦しろ!!」とか言ってるけど、残念俺は戦う気はないんだよなぁ。

 

「ほいっと」

 

「なっ!?」

 

 振り下ろされる警棒を避けて相手の身体の隙間に潜り込んで腰に結びつけてある刀をスルリと抜き取った。

 

「おっと、これ拝借するよん」

 

「あっ、俺の刀!!」

 

 鞘を抜いて刃を見てみる。あー、安物だなコレは。見ろ、よく見ると波うちが驚くほどバラバラだし、何より刃こぼれがひどいじゃないか。

 

「返せっ!!それは10万ベリーもする名刀だぞ!!」

 

「プギャー、それは残念!!偽物掴まされちゃったねー!!」

 

 顔を真っ赤にして無茶苦茶に警棒を振り回す男をあざけってみる。軌道も滅茶苦茶になるくらい取り乱す、という事はつまりこの刀を同僚に散々自慢したのだろう。何と言うか、武器はその人のレベルにあった物を使うべきだよね。

 

「これはナマクラだけど。お前には、高価な品を使うにはまだ早い!!」

 

「うげぇ!?」

 

 空中で一回転しながら踵を男の後頭部に叩き込むと、男は呻き声と共に地面に倒れ伏し、そのままピクリとも動かなくなった。どうやら気絶したらしい。

 

「よし、じゃあ使わせてもらいますか。でも、あともう少し欲しいな」

 

「コノヤロウ!!よくも仲間を!!」

 

 先程の男にも勝るとも劣らないほど顔を真っ赤にした男達が俺に向けて警棒を振り回す。おっと、こいつらも一応刃物持っているのか。いいね、じゃあ少し失敬しよう。

 

「貴様らの相手はこの俺の筈だが…」

 

「えっ、グアアア!?」

 

 しかし、俺ばかりを注視していた海兵達は軒並み横合いから襲い掛かった魚人さんの剛腕の餌食になった。綺麗な弧を描いて吹っ飛ぶが、その前に刃物類を失敬しておく。

 

「お前…そんな盗人のような真似をする奴なのか?」

 

「ああ、ゴメンゴメン。悪い気分にさせちゃったかね。どこかに売りさばくなんて小金稼ぎをするつもりはないぜ?ただ、この武器全部この場で使い切る」

 

 顔に疑問を浮かべる魚人さんに会釈しながら武器を帯や背中など身体中に括り付けてある場所に向けて駆け出した。

 

 

 

 

 

「さて…」

 

 グンジョーいや、アオランドの後ろ姿を見送った魚人の男、カフカは海軍の重歩兵部隊に相対した。

 

「貴様よくもやってくれたな!!」

 

 仲間が一方的に倒されて怒り狂う海兵達に対し、彼は非常に冷静だった。元々、彼は感情の起伏がそれほど激しいほどではない。だから、先程グンジョーにはフラストレーションが溜まる、と言ったのも真っ赤な嘘である(彼は、向こうにはバレていないと思っている)。

 

「だが余計な時間をかける暇は我らにはない。おい、貴様!!今すぐ道を譲るのであれば、貴様のしでかしたことは今の所不問にしておいてやろう!!さもなくば、貴様をうち鎮め、主犯の一人としてインペルダウンにブチ込むぞ!!」

 

 指揮官の脅し文句にカフカは思わず眉をひそめた。どうも、先程から言動の端に、この男は自分より格下である、と言う根拠のある差別意識を感じる。

“出る杭は打たれる”とは言ったもので、人間は自分より才能をある者に嫉妬をする生き物だ。魚人や小人族の例に漏れず、自分より格下とみなしたものは徹底的に差別する、それが人間なのだ。そして。この男はその冷害に漏れず、下らない男なのだろう。

 

(…気に入らんな)

 

 その態度は勿論、何でも思い通りになるという思想も気に入らない。それに、自分はあの男に恩を受けたのだ。ならば、この道を通す義理はない。

 

「断る。俺は、ここを通すつもりはない。貴様らこそ、さっさと帰れ」

 

「何ぃ!!」

 

 顔を真っ赤にして激怒する男の分かりやすい反応に、思わず笑みがこぼれそうになり、上がりそうになる降格を何とか抑えつける。

 

「俺は誇り高き魚人族だ。受けた恩は必ず返す…。だが…受けた仇は拳にて返す!!」

 

「…殺せっ!!」

 

 指揮官の合図に従って数人の海兵が武器を振り上げながら躍り出た。

 

「ぬかせ魚類!!」

 

 魚人に切りかかる海兵。その動きは、並の海兵以上、まさに鍛えられた精鋭部隊のものだったが、今回はさすがに相手が悪かった。

 

「ふん!!」

 

「くぱえっ!?」

 

 攻撃の起動を呼んで回避した魚人はすれ違いざまに一撃海兵の腹に拳を叩き込む。魚人の身体能力は人間の10倍以上。この力をフルに活用した徒手空拳は、並の人間ならば身体がはじけ飛ぶほどの凶器だ。案の定、その海兵も痙攣を起こし、白目を剥きながら上向けに倒れた。

 

「何をしているっ!!撃て、撃ち殺せっ!!」

 

「駄目です、あの乱戦では味方に当たって…ぎゃあ!?」

 

カフカがまるで石ころのように投げ飛ばした海兵に押し潰されてカエルのような鳴き声を発しながら潰される狙撃兵の姿を見ながら、歯を噛み砕かんばかりにギリギリと歯ぎしりする指揮官は、手を振って合図した。

「重盾隊前へ!!」

 指揮官の合図に反応して、後ろから巨漢の男たちが現れた。彼らは背負っていた常人の身の丈程もあるソレ単体でも十分武器になるだろう巨大な盾を地面において固定する。同時にドスン、という鈍い音が響いた。

「本来は、集団制圧用の切り札だが致し方あるまい。目の前の敵を無力化させることが先決!!」

 苦虫を潰したような顔で男は言い放つ。まさに彼ら鎮圧部隊の切り札ともいえる戦法を持もちいて目の前の魚人を潰そうというのだろう。重盾隊を前に、ジリジリと接近する。

カフカは彼らの姿を一瞥すると、ゆったりとした動きで拳を構えた。

 

「“魚人空手”」

 

右腕を引き、逆に左手を突き出して、脚を大きく広げ、猫足立ちの構え。この世界に住む魚人族、彼らの奥義の一つ、“魚人空手”の伝統的な構えだ。暴動制圧部隊として幾多の悪党と戦った海兵達は、もちろんその動きをよく知っており、警戒して防御を固めはじめる。

 

「問題ない!!このビッグシールドは鉄に特殊素材をコーティングした新兵器だ。魚人族でも、破壊は不可能な強度だ!!」

 

 しかしカフカは、それに構わず海兵達に向けて走り始めた。

 

「こっちにくるぞ!!」

 

「応戦せよ」

 

 カフカに向けて銃を発砲する海兵達。無数の弾丸がカフカの身体に襲い掛かる。“仕留めた!!”歪んだ笑みをゆがめる海兵達に内心侮蔑の感情が浮かび上がるも、カフカは左手を思いきり薙いだ。

 

「“撃水”!!」

 

 打ち出された水の弾丸は銃弾にぶつかると威力を殺して次々に撃ち落としていく。

 

『えっ、え~~~っ!?』

 

 予想外の事態に眼をかっ開いて驚く海兵達。しかし、その隙にカフカは盾隊の眼前までやってきていた。

 

「“千枚瓦”」

 

 “撃水”の時に振りかぶった左手を右手に添えて、大きく振りかぶる。

 

「…ッ!!」

 

いち早くカフカの接近に気付いた指揮官が慌てて部下達に指示を送ろうとするが、もはやその指示は手遅れだった。

 

「“正拳”!!」

 

 機動隊の保持している盾の数倍の強度をもつその盾は、本来ならば銃撃でも傷一つつかない代物だ。しかし、丸太のようなカフカの剛腕が唸りを上げて盾にめり込み、まるでガラスのように粉砕した。この盾で、いくつもの暴動を鎮圧し、“自分達は強い”と錯覚してきた海兵達。しかし、長い年月をかけて鍛え上げた“伝統”はその自信を打ち砕き、死を意識させるに十分だった。

 

「ぶっ飛べ…!!」

 

 拳の一撃、そして発せられた衝撃の余波が周りの海兵達を軒並みに吹き飛ばす。その様には相手に対する一切の慈悲がない。

 

「た、助けてくれぇぇぇぇ…」」

 

 周りの仲間達が軒並み倒された中、一人何とか無傷で生き残った者がいた。海兵の指揮官だ。カフカの鋭い双眸で睨まれた指揮官はどうやら腰が抜けてしまったようで、地面に尻もちを付き、脚がガクガクと震えている。後ろにゆっくりと後退しながら命乞いをするその姿は先程の威厳は皆無で、生まれたてのか弱い小鹿のようだ。

 

「ヒィィィィィィ!!」

 

「…」

 

 まるで子供のように鳴き喚く指揮官を一瞥したカフカだが、とどめを刺すことなく指揮官に背を向けて歩き出した。命乞いまでしている男にわざわざ手をかけるまでもない、そう判断しての行動だったが、指揮官はこれを好機と取ったようだ。隠し持っていた小刀を振り上げてカフカに振り下ろした。

 

「敵に向けて背中を見せるとは、甘いな魚人!!死nあぐぁっ…」

 

カフカは後ろを振り返ることなく、指揮官の顔を裏拳が射ぬき、顔面を陥没させた。

 

「な、何故後ろからくると分かった…貴様、まさか…」

 

「違う。おれはそんなものじゃない。ただ、貴様のような男なら、この程度はしてくるだろう…、そう思っただけだ」

 

 振り返らずにそう言ったカフカは、目の前でパチパチと拍手を送るブルックとラクーン達に気付き、恥ずかしげに頬を掻いたのだった。

 

 

 

 

 

「止まれ!!」

 

「おっ」

 

 襲い掛かってくる海兵達を打ち倒して武器を盗りながら目的地に向かって進んでいると、一人の海兵に出くわた。背中にマントをつけていることから、どうやら階級的にも高い地位にいる者らしい。

 

「貴様、その武器は何処から手に入れた、よもやそこに倒れている仲間体達から盗み取った物ではあるまいな!?」

 

「あ?その通りだけど何か?」

 

 正直に話したのだが、それを聞いた海兵は顔を大きくゆがませた。

 

「貴様…天竜人殿に暴行を加えたばかりか、盗人のような真似をしまで何をしたいんだ!?」

 

「あ?そんなもん決まってんだろうが」

 

 倒れている海兵から武器を拝借すると、刀身を地面にさす。

 

「お前は、困っている人がいたらそいつを助けてやらないのかい?それとも、ついさっき知り合ったばかりの人間には手を貸さないってか?…いかんなぁ、それじゃ正義の味方失格だぞ、海兵さん」

 

海兵さんの部分を強調する言い方をすると、傍らにいた別の海兵が銃を構え発砲してきた。そんなに気に障った?

 

「すぐにキレるのも悪いクセだな。…ま、それは俺にも言える事だが、なっ!!」

 

振り上げた足で刃の背を蹴りあげると、空中に弧を描きながら剣が回転し、発射された弾丸を弾いて再び俺の手元に戻ってくる。

 

「いやァ…これは国民性てか、俺の人格(ビョーキ)のせいかな?これのせいで、肝心なところで頭が沸騰しちまうし、だれかれ構わず攻撃を加えちまう。それに、いつも他人に迷惑を駆けちまうし…。だけど、俺はこの病気を結構気に入っている?偽善?お節介?上等だぜ。知り合いの知り合いは全員仲間だ。俺はこの後、テメエらの基地でひと暴れする。んでもって、この島から逃げ出す。その後は、すぐに魚人島に向かおう。マーメイドパラダイスに浸れるっての悪い話じゃないし。その後は悠々と…新世界入りだ」

 

まぁ、貴様ら海軍にも恨みはあるが、今全力で暴れる必要もないし、ここである程度の体力は温存しておくか。

 

「もういい!!思い上がりもいいところだ!!オイ、よく聞け!!新世界は貴様のようなただ暴れたいだけの人間が入っていい場所じゃない!!第一、常識では考えられないほどの気候、現象は我々海軍でも把握できていない!!何より、新世界を跋扈する猛者たちの前では、貴様のようなちっぽけな存在などすぐにかき消されてされてしまうだろう!!今の新世界はそんな超危険地帯なのだ!!貴様のような男は必ずこんなことを言い出す。偉大なる航路一周!!ハッ、馬鹿な。そんな夢物語を語る暇があるのなら、今すぐ故郷に帰って畑でも耕しておけばよいのだ。お恐れた夢を見るな馬鹿者が!!」

 

「へぇ…」

 

 今の話…やはり、いつの時代も新世界は恐怖の対象として見られているようだ。まだ見ぬ人々と会い、まだ見ぬ者を見、何を知り、何を感じるか。それって実に…。

 

「そそるねぇ…」

 

「は?」

 

 何を言っているのかわからない、という顔になる海兵に向けて俺は言い放った。

 

「そそるねぇ、と言ってるんだよ。いいじゃねぇか、理不尽?上等だよ。不可能?そんなわけがねぇ。人間が思い浮かべたものは、たいてい本当になるって相場は決まってるんだ!!」

 

 俺はそう言って手にした50本以上にもなる剣すべてに手をかけると、それを一気に空中に向かって放り投げた。

 

「自分の全力が果たして通用するのかしないのか、最初からあきらめる奴には分からないだろうがよ。何人たりとも俺の良く道を阻む奴はゆるさねぇ!!我が覇道、そして剣道!!そこに俺の生きる道を見つけたり!!果たして新世界で俺の剣は通用するのか、実に興味があるね!!」

 

そう宣言した俺の前に宙に投げた刀が雨のように降り注いだ。

 

「前世知識を駆使した技術だ。名付けて無窮有限刀流、是非とも感想聞かせてくれや!!」

 

目の前に落ちた剣を掴み、海兵に向けとおきく振りかぶった。

 

 




更新遅れてすいません。これはワンピースのに二次創作ですが、この作品はその設定を持った別の物語なんだと思ったら気が楽になりました。


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素晴らしき先人達の知恵

 

“俺の剣技はすでに人のそれを逸脱している”

 

 

 

「グンジョー、お前は自分の力で剣を殺すつもりか?」

 

「あ?」

 

 その事を指摘されたのは、2年前での修業をしている最中だった。

当時の俺は日々、島の獣たち相手にした武者稽古や、素振りや覇気習得のため鍛練に勤しんでいた。

まぁ、凪の海のド真ん中にあるこの島に来るなんて定期的に島にやって来ては、料理と称した海王類の肉等の生活用品を置いていく九蛇女帝(別に自分の飯くらい俺だったが、そこは頑として譲らなかった)及び海賊団の皆さんか、某人気キャラと一文字違い、見たらビックリド〇エモン位なものだ。漁師さんは豊漁の兆しなどお言ってあがめている、と言う話は聞くが、残念ながら俺は嫌だ。スゲェ臭いするし。

そして、今日も今日とて、突然やって来たローズマリーさん。未来の大剣豪ゾロ式ブートキャンプの序章、虎丸を使用した素振り1000本ノック中の俺を見るなり、眉をひそめて前述の言葉を言い放ったのだ。

 

「剣を殺すってのはどういう事?何かの比喩表現?」

 

「いや、比喩でも何でもない。そなたの力は、自身の剣を殺そうとしているようにしか見えぬ」

 

「…」

 

 訳が分からないよ、という顔をする俺にローズマリーは一本の剣を放り投げてきた。おそらく、今日俺との鍛練のために持ってきてくれたのだろう。これがどこで作られたのか分からないが、中々いい艶をしているし、反りもいい。工場で作られた一般数千ベリー程度の代物ではないだろう。

 

「それを使うてみよ。思い切りで構わぬ」

 

「ぇ、そう?じゃあ遠慮なく」

 

 とりあえず剣を握り、腰を落とし、居合の構えを取る。どうしようか、よし、目の前の木で試し切りするか。

 そう決めて俺は、思い切り剣を抜き放った。

 

「旋風スクランブル!!」

 

 疾の剣による高速の刀捌きにより、刃先から飛ぶ剣撃が放たれた。ここまでは普段通り。が、問題はここからだった。

 

「えっ!?」

 

剣を完全に振り切った瞬間だった。悲鳴のような音をたて、刀身に突如、縦に大きなヒビが入ったのだ。

 

「これは…」

 

 思わず目線が手元の刀に向けるが、俺の両目に映ったのは、すでにヒビが刀身全体まで広がり、刃先がボロリと地面に落ちる瞬間だった。

 その間に両断された木の上方は、音を立てて地面に倒れていた。威力事態には問題はない…。じゃあ、この状況はいったいどういう事だ?

 

 茫然としたまま突っ立っていると、近づいてきたローズマリーが俺の刀を手に取った後、刀身をしげしげと眺めると、眉間にやや皺を寄せながら視線をあげて俺を見つめた。

 

「わらわは剣士ではない故、詳しいアドバイスなどは言えぬが…傍目からみると、お主が剣を振うさまは荒々しいのじゃ。そう、まるで荒れる獣のような…原理は分からぬが、お主の使う剣術は、どうやら剣自体にかかる負荷がかかるようじゃ」

 

獣て…、そんな人を化け物みたいないい方しよってからに、って似たようなものなのか?

 

「いや、でも虎丸を使っても全然影響ないぞ?さっきもそれで獲物をしとめたしな」

 

そう言って顎をしゃくり、木陰の方向を指す。そこには、馬鹿デカい大きさの猪が転がっていた。

 

「いや、むしろ逆かもしれぬ。普通の刀であれば、すぐにでも砕け散っていたであろうその刀のようにな」

 

「そんな…マジかよ?」

 

 あまりの事に呆然となる。

 

「お主の“業物”虎丸だったこそ、原形を保ちながらお主を支えてこれたのかもしれぬ」

 

 ローズマリーの話を聞きながら鞘から虎丸を引き抜く。なめらかな銀の刃が太陽光を反射して瞬く。

 

「…そうなのか?そうか、気づかないうちに、お前には苦労かけてたんだな…」

 

 この時の俺には、虎丸が泣いているように見えた。それが、どのような感情なのかは分からないが、とにかく刃を照らす光が、涙の滴のように見えた。

 

「…グンジョー、気に病むことはない。モノは不変ではないのじゃ。いつかは、錆びて使い物にならなくなろう。それが早いか、遅いかと言う問題だけじゃ」

 

最後にいい方悪いがの、と付け加えてローズマリーは黙り込んだ。確かに彼女の言いたいことは分かる。モノは所詮、他人である。あると便利だが、なくてもあまり困る事はないだろう。

 

「それに、品質に目を瞑れば、虎丸の代わりなどいくらでもあろう」

 

「ウン、いやね。こいつには結構愛着を持っていたからさぁ。使わないとなると、少し難しいかなあ、とか思ってさ」

 

しかし、しかしだ。それでも、“愛着”は別の話だろう?レッドさん、この世界での育ての親。彼から餞別に渡されたこの刀は、数年を経ていわば戦友とも呼べる存在になっていた。別の刀を使う事は簡単だ。しかし、それはなんだか悲しい気がする。

じゃあ、虎丸を使うか?それはノーだ。このまま使い続け、肝心な時に折れて使い物にならないなんて目も当てられない。それに、今の話を聞かされて使い続けるなんて俺には出来ない。どこのブラック企業だって話だ。

 

「そうなると、別の刀が必要になるなぁ」

 

しかし、振う限度は2,3回だけに同じことが起きる。そのためには、さらに別の刀を買い求める必要があり、その後にまた刀を消費して、その次に――ん?

 

「最初から多くの刀を持っていれば、消費を気にする必要はない…のか?」

 

 不足分はその度に戦場から補給すればいいし。こちらから斬りこむなんて方法もある。逆に一つの場所に陣を作り、襲い掛かる相手を打ち倒してもいい。

 

「あれ、もしかしたら結構いけるかもしれないな」

 

「どうしたのじゃ?」

 

「いやさ、昔の話。ちょっくら考えていたことがあったんだよね」

 

まぁ、ありきたりな厨二病ですが、と付け加える。???という顔をしているローズマリーに苦笑しながら、まずは何が必要かを考えてみる。取り敢えず、大量の剣に、後それを入れる籠のようなもの。そして、それを身体に縛り付けるヒモか?

まぁ、いきなりファイトスタイルを変えるのは大変な事が、その分、戦闘時における対応力や応用力はあるのではなかろうか。まぁ、偉大なる先人型の名に泥を脱無ないように努めてみるか。

 

 修業を始めて一週間。俺がこの世界から一時的に姿を消した僅か一カ月の話だった。

 

 

多いというのはいいことだ。

 

闘いの上では、数をそろえた方が有利になるのはもちろん、金も多く持っていると、何かと便利だ。頭数が多い、という事はその分有利になると言えるだろう。

それは、剣士の世界でも言える事だ、

 

剣士は剣を使って戦うという事は、誰もが知っている当たり前の事だろう。二刀流の剣士や、大剣一本で戦う剣士もいるし、遠き未来には両手に一本、口に剣を咥えるという異色の三刀流の剣士がいる。が、今ここで彼について触れる必要はないだろう。

しかし、時々人智を超える数の刀を扱う剣士がおり、彼らは彼らの住む世界で最強、または最強の一角と呼ばれていた。

 

ある世界の剣士は、武神と呼ばれ、最強の名を欲しいままにした。

 

ある世界の巫女は、千本の刀を操り、襲いくる敵と戦い、反面、虐げられてきたものを癒した。

 

ある世界の赤き英霊は、幾万もの剣を瞬時に作り出し、主人と共に敵の英雄と戦った。

 

彼らと同じように、数多の剣を扱う戦術を考案した剣士はいたが、その多くが机上の空論と鼻であしらわれ、または実際に戦場で生かし切れずに、命を落とした。

 

彼らが失敗した理由は簡単だ。そこに構想があっても、身体が、そして脳の処理がついて行かなかったからだ。子供が自転車に乗ると最初は転んでばかりな様に、人は行動する際“慣れ”が必要になるとも言われている。慣れるまでの時間を計算すれば、費用も掛かる多刀流よりも普通の剣士になった方がよいという事は火を見るよりも明らかだろう。

 

 

故に、その剣士が自分の前に現れた時、異様だとその海兵は思った。

 

 

洋手の携えた剣だけではない、腰のベルトに取りつけた籠に、何処から持ってきたのか数えきれないほどの剣が収められている。

 

「通達があった天竜人様襲撃事件の犯人と特徴が一致している!!総員構えろ!!」

 

上官の叱咤でその海兵は武器を抱え直し、再び相手への警戒度を上げる。あまりにふざけた姿が、彼は天竜人を襲撃したタイ罪人。一瞬の油断は命取りだ。最大限の警戒をしながら、次の指示を待つ。

 

「伝令兵は早く本部に」

 

上官がそう言った瞬間だった。

 

「“一閃旋風スクランブル”!!」

 

男が両手に持った剣をふるっただけのように見えた。しかし、それだけで、爆弾が落ちたかのように地面がえぐれて、衝撃波で自分を含めて周りにいた仲間達が全て吹きとんだ。

 

(何!?今何が起きた!?)

 

着地、そして衝撃。痛みと共に肺から空気が抜け、頭が真っ白になる感覚が襲う。

待機場所からか遠いところへと吹き飛ばされてしまったらしい。ゲホゲホとせきこみながら襲撃者の方を見るも、そこには無残な状態になった基地の入り口と崩壊した部隊が転がっていた。しかし、襲撃者の姿がない。奴め、どこにいったと必死に立ち上がると、ふと次の瞬間

 

 

 

 

 

大口を開けた竜に頭を喰われた

 

 

 

 

 

「―――……!?」

 

悪寒などと言う生ぬるいものではない、例えるなら、夜に広がる闇。底の見えない穴を覗いた時のような感情。人間が感じる中で最も根源的な恐怖が一瞬視して身体全体を支配した。

あまりの恐怖で悲鳴すら出ない中、ゆっくりと傍らに振り返る。怖いもの見たさと言うのだろうか?見たくない、見たくないと思っているのに、自分の石が自分の身体を制御することが出来ない。

そして、自身のすぐそばにソイツはいた。倒れた兵士から刀を取り、籠の中に入れていた。

 

「おっ」

 

「っ!?」

 

 自らがそいつを視界にとらえて数秒。しかし、男は自身の存在に気づき、振り返ってニッコリと笑みかけてきた。

 

「よぅ、見たところ新入りの海兵さんみたいだな。あんたみたいな若い奴がまだ死ぬのは早い。さっさと司令室かどっかに行ってさっさとこの状況を伝えてきな」

 

 その言葉に何故か無性に腹が立った。お前なんぞ兵士ではない。自分の存在を全否定された様な気がする。内心の恐怖を無理矢理屈服させ、大声で張り上げた」

 

「ふざけるな!!俺は海兵だ!!確かに新兵だが、海兵魂は俺も持っている!!俺は死を恐れない!!」

 

「そうか?その割に手がブルッブルに震えてるじゃないか」

 

「ッ!!」

 

震える左手を右手で抑えつける。

 

「まぁ、この話は引用なんだけどね。ノミが自分よりも大きな動物を襲う。それは果たして勇気というのかな?違うよな。それは勇気じゃない。虚栄心だよ」

 

 そこでいったん区切ると、彼は自分を鋭い眼で睨みつけ、言い放った。

 

「安っぽい虚栄心何てドブに捨てちまえ。戦場で生き残るは、結局ずる賢い奴と運がいい奴。そして、真に強き者のみだ」

 

 思わず反論しようとしたが、口からは何の言葉も出なかった。彼の言った内容を否定する言葉を持っていない。

 

「…お、お前は何者だ」

 

 そう言葉を捻りだすので精いっぱいだった。

 

「…しがない子悪党さ」

 

彼はそう答えると、ニヤリと笑った。

 

 

 

「“千本通し(せんぼんどおし)”!!」

 

 空中に飛び上がった俺は、籠の中から何本かの刀を掴むと、海兵達の集団に投げつける。

 

「“千形(せんけい)”!!」

 

着弾した剣をたどり、周囲にいる海兵達を薙ぎ払った。

 

「オラッ!!」

 

「ギャアッ!!」

 

「グアッ!?」

 

 刀を振るう度にあちこちから悲鳴が上がり、使えそうな剣を少しづつ補充しながら、海兵達の中を斬り結んでいく。

 

「畳み掛けろ!!」

 

将校海兵の指示が飛び、四方八方から襲い掛かる中、両手に剣を取って身体を捻りながら、剣を振り上げる。

 

「“暴風ウォークダウン”!!」

 

『ギャアアアアアア!?』

 

刀でできた螺旋の竜巻が、兵士達を上空へと巻き上げた。

 

「威力は十分でも」

 

 両手に持った刀がバキリと中ほどから折れて刃が地面に突き刺さる。

 

「刀が保たないか…」

 

壊れた刀を放棄して、別の刀を籠から手に取る。

 

「しっかし、ねぇ。こうまで作戦がうまくいくと、逆に不気味になって来るね。あいつらは大丈夫かな…。ま、気にするだけあいつらに失礼か」

 




お久しぶりの更新です。一気に更新を進めるのでよろしくお願いします。上手くいけば、今日か明日にはシャボンディ編完結できるかもです。


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デッドウォーズ

『海軍の支部に殴り込み!?』

 

およそ1時間前ブルックやドヘム達に作戦を告げた所、何故か猛反対になった。

 

「旦那、さっきの戦闘で鉛玉が頭に当たってたんですかい?そんな、イカれた話冗談でもこんな場所でばぶっ!?」

 

うるさかったから、デコピン(覇気付き)で、ドヘムを吹き飛ばす。

 

「でやあああああああ!?な、何故か痛い!?ただのデコピンなのに無茶苦茶痛い!?」

 

『お頭ぁぁぁぁ!!』

 

 部下達が心配して地面の上を転げまわるドヘムの元に走っていくが、俺は気にせず話を続ける。

 

「さっきから言っているが、大将がこの島に車でもう時間はねぇ。脱出するための船の確保は…まぁ、最悪適当な海賊団から巻き上げればいいとして、問題はどんなルートをたどって脱出するかだ」

 

地図を剣の柄でトントンと叩く。

 

「こちらが早く島を出たいと思っているのは、奴らには筒抜けだからな。おそらく、どれだけ早く船を確保しても、最終的には島のお気にいる海軍船に拿捕されるのがオチだ。だから、ここで陽動を行い、敵さんの戦力を割く」

 

 ポケットの中にあるベリー硬貨を取り出して地図に置く。

 

「あいつら、まさか海軍の基地に噂の犯人が来るなんて夢にも思わないだろうよ。その結果、兵が基地に戻る。その分、兵士達の作戦系統に混乱が生まれ、結果的にお前らが逃げるチャンスが増える」

 

 そこでもう数枚のコインを取りだし、地図の上で動かす。

 

「で、チーム分けが簡単に言えば、さっき言った通りだ。俺が海軍の本部に斬りこむから、その間に君達が逃げる。ブルックは一番危ないが、船を海軍基地沖まで持ってきてくれ。ハイ、オッケー。じゃ、次行ってみよう」

 

『ちょっと待てい!!』

 

 何故か総ツッコみが入った。いつの間にか復活したドヘムも加わっている。君たち仲がいいのね。

 

「それが無茶だって言ってるんですよ!!そもそも、相手は海軍!!世界のポリ公だ!!たった一人で海軍の基地に殴りこむなんて無理がありやすよ!!」

 

 ドヘムの言葉に周りがウンウンと頷いている。ったくもー、こいつら心配してくれてんのは分かんだけどさー。

 

「じゃあ、聞くが…。お前等、俺の足を引っ張らずにひたすら“暴れ続ける”なんてことが本当に出来るのか?」

 

『ッ!!』

 

 今までのおちゃらけた雰囲気と打って変わって、虫さえ殺せそうな鋭い殺気を纏う。ついでに、相手を威圧しすぎないように調節しながら微量の覇気を込めてみる。

 

「誰かを守りながら何て俺には無理だぞ。防衛戦ならともかく、これはガチガチの攻撃だ。しかも、俺はそこまで器用なタチじゃない。そんな俺についてお前等、銃弾の雨の中で自分の身を守れるのか?海軍将校と斬り合って生き残れるのか?俺にはそうは思えないがな」

 

『…』

 

皆が一様に黙る。おそらく、彼らは瞬時に現実と、俺の本気を察したのだろう。

 

「それでも来たいなら来いよ。だが、俺は自殺志願者と組む気は全くないからな」

 

 周りはそこで完全に黙りこむ。俺はプレッシャーを放つのをやめた。

 

「ま、気にスンナ。仮に中将や大将クラスが来ても、俺は死なねぇよ。適当に引っ掻き回してさっさとトンズラするだけさ」

 

そこでニッカリと笑うと、ドヘムに顔をむけた。

 

「スマネぇな。さっき会ったばかりなのに、お前には滅茶苦茶迷惑をかけるな」

 

「いやいや、気にしないで下せぇ。世界政府に喧嘩を売るなんて歴史的な瞬間に立ち会えたんだ。こっちはさっきからゾクゾクしっぱなしでさぁ!!」

 

「アハハハ…そう言ってくれると助かる」

 

そこで話を区切り、全員の顔を見る。

 

「というわけだ。ま、精々…これからの未来をしっかりと見据えておいてくれや」

 

全員、首を縦に振り、決意を新たにしたのだった。

 

 

 

 

 

「ま、このような形になりまして、俺は海軍基地にカチコミをかけているわけだが…、こいつは一体どういう事だ?」

 

 適度に暴れながら海軍基地内を動き回っていると、大きな広場のような場所に出た。道中、何度か海兵の姿を見かけたが、俺の姿を見ると戦いもせずに逃げ出していた。彼らを無視して道を突き進む。

 人が多くいる場所に向けて走ると、俺がその場所に着く事に集団は別の場所に移動している。最初は、大将が来るまでの時間を稼ぐ戦略的撤退かな?と思っていた。しかし、これを何度も繰り返すうちに流石に気付いた。

どこかに誘導されている。

 

(もしかして大将や中将がすでに控えているのか?9

 

 そんな考えが浮かんだ。昔ならここで経過して歩みを止めていただろうが、昔と今とでは俺は今背負っている者が違う。俺が前進しなくては、俺を信じてくれた人にどうやって顔向けすればいい?

 小走りの速度から一気に速度を増し、見聞色の覇気で辺りの気配に注意しながら前傾姿勢で走り出す。

 

―――鉄拳流星群―――

 

「ッ!?」

 

 聞き取れるか、聞き取れないかの小さな声。その声に気付いた瞬間、俺はその場から飛び退いた。

 次の瞬間、俺のいた場所に巨大な大砲の弾が落ちてきて、地面を破砕した。

 

(遠距離攻撃!?クソッ、こちらに場所を悟らせず、それでいて一方的に攻撃するとかどんだけ性格悪いんだチクショウ!!)

 

 空中に飛び退きながら、地面に着地する。すると、再び弾が2発―――!!

 

「チッ、ある程度予想してたとはいえ、ここまで一方的なものになるとは!!」

 

 剣を逆手に構え、剣を振う。

 

「“烈風エマージェーシー”」

 

剣の壁に阻まれて爆散する大砲。煙の陰に隠れて建物の間を抜ける。しかし、それでもまるで俺を追跡するかのようにいくつもの砲弾が背後に降り注いだ。

 

(どんな技術を使っているかははっきりとしないが、俺の姿をはっきりととらえ、なおかつ俺に命中させず(・・・)に大砲を発射できるほど腕の立つ人間がいる…)

 

俺の知識にはそんな事が出来る人間は数人しかいないが、今は逃げる事に徹することにしよう。ペースを落とさずに走り続けると、開けた場所に出た。おそらく、普段は兵士達の運動場に使われるだろうその土づくりの場所は、建物に囲まれた作りになっており、白線のラインが引かれ、鉄棒やダンベルといったなどが設置されている。

 

「成程…つまり、“暴れる事”前提でこの場所におびき寄せられた、ってわけね」

 

 顔の汚れを袖で拭いながら、目の前の男に話しかけた。

 この世界では見慣れた紫の髪、逞しい肉体でありながらスピードを殺してしまう程の無駄な筋肉は一切なく、“一撃の威力”よりも“戦闘”を重視したものだ。そして、見慣れたコートと、胸元の勲章は、彼がただの一般兵士ではなく、海軍の中でも上位の階級である事を意味していた。

 

「…」

 

 ピンと張ったような緊張感が相手との間を支配する。久々の強き者の気配に、思わず背筋に汗が伝う。ゆっくりと、刀の柄に手をかけ!!

 

「…ハッ!!」

 

 唐突に戦いの火ぶたは切って落とされた。ドン、と爆発したような踏込と、土煙と共にこちらに向かって一直線に突っ込んでくる。猪突猛進タイプなのか?何かしらの作戦のための伏線なのか?まぁ、いい反撃だ!!

 

「“一閃旋風スクランブル”!!」

 

刀を振るって相手をけん制するが、霧散した衝撃波の間を縫うようにして、大きな影が俺の前に降り立ち、黒い腕を振るって俺に襲い掛かってきた。

 

「“黒拳”!!」

 

 男の腕が黒く変色する。成程、覇気使い、しかも素手(ステゴロ)専門か!!

 

「チッ、蛇牙!!」

 

体勢を低くした状態から蛇牙を伸ばして、相手の拳に叩き付ける。あちらさんはどうか知らないが、こちらはウーツ鉱で出来た最硬の槍だ。そう簡単にやられるわけが…え?

 

「なっ、押し負けてるだと!?」

 

キシキシと金属が軋む音を立てて蛇牙と黒い碗が激突していた。

んな馬鹿な!?蛇牙は至近距離なら30ミリの鉄板を突き破れるほどの威力があるんだぞ!?しかも、こっちは蛇牙に覇気を纏わせているから、威力なら大型海王類を一撃で貫く程だ。だが、拮抗し、いや押し負けている!!

驚愕としている俺に対して、男はもう一方の拳が振り下ろされた。

 

「もらった――!!」

 

「させっかゴラァ!!」

 

素早く縮小させた蛇牙を投げ槍の要領で、相手の顔に向かって叩き付ける。顔面を黒化させた男は難なく受け止める。

 

「ちょこざいな真似を…」

 

「悪かったね、そう言う処世術なのさ!!“爆風ナヴァスクランブル”!!」

 

視界が隠れた相手に向かって巨大な斬撃を放つ。

 俺が尊敬する人は北欧神話のロキ、または戯言いーちゃんさんだ。不思議の森のぐっさんドラシルでも可。

とにかく、生き残るためにこっちは必死なんだ!!しばらく気絶してもらうぞ!!トリックスターに俺はなる!!

 

「ッ!!」

 

 すると、ナヴァスクランブルが激突する瞬間、相手は軽く体勢を立て直すと、ステップで飛び退いた。顔の一部を掠めつつも、ナヴァスクランブルはそのまま直進し、進行先にあった建造物を軒並み切り裂いた。

 

「かわされた?」

 

 視界が隠れた状態なのに、俺の殺気を敏感に察知し、反応した。偶然とは思えない。あの黒化した手と言い、かなり鍛えられているなぁ…。思わず感心してしまう。

 

「少し驚いている。あいつらから話は聞いていたが、ここまで実力があるとは思っていなかった。考えを改めよう。しかし…」

 

「あいつら?」

 

 誰か共通のお知り合いでもいるのだろうか。海軍、知り合い…ああ、もしかして…。

 

「あいつらって、もしかして“山猿”と“動く大仏”だったりします?」

 

「何だ、ちゃんと知っているじゃないか。では、やはりお前にはこれは不要だな」

 

 男は、傍らの蛇牙を手に取ると、両端を持ってグッと力を籠めはじめた。おいおい、何をするつもりだ?

 

「フンッ!!」ボギッ

 

「あんぎゃあ!?」

 

だだだだだだだだ、だーーーーー!?コイツ、蛇牙を素手で折りやがった!!んな馬鹿な、鉄なんか軽く超えるほどの硬度を持つ蛇牙だぞ!?その前におにゅーの武器があっという間に真っ二つ何てどういうことだ!?あああ、せっかくローズマリーが無茶言って作ってくれた武器が!!あいつになんて言い訳すればいいんだ…。

 

「俺は、不相応な人間や、自分に出来ない事を自信満々の顔でする人間が嫌いでな」

 

 呆然とする俺を無視して、男は、蛇牙…だったものを投げ捨て、黒い拳を開け閉めさせながら言った。

 

「チェスのようなものだ。ルークは縦にしか進めない。ビショップはナナメしか動けない。戦いを知る人ならば、自身の長所をできるだけ伸ばすよう努力すべきだ」

 

「つまり、俺が蛇牙を使うのは不相応だと?」

 

 怒りを隠さないままそう尋ねると、男は笑んで頷いた。

 

「お前は剣士だろう」

 

 次の瞬間、双眼が鋭く窄まる。

 

「何故今更棒術などを身に着けようとしている」

 

「…」

 

「明確な矛盾だ」

 

 そこで、俺は黙り、腰の籠から先程壊れた日本の剣を引き抜いた。成程、身のこなしも一級。おそらく得意な武装色だけではなく、見聞色も鍛えている。やはりというか、一筋縄ではいかないか。というか…

 

「というか、お前らもさっさと出てこいや!!山猿と大仏が!!さっきからちょいちょい話題に出してやっているのに、俺の親切に気付けないのか!?さっきから高みの見物かゴラ!!」

 

さっきから気になって気になって仕方がなかったので、吼えながら呼びかける。すると、背後と前方で動きがあった。

 

「ガッハッハ!!やっぱりバレとったか!!」

 

「フン、やはり見聞色の覇気は習得済みか」

 

 跳躍した男達が、俺の背後に降り立つ。

 

「よう、久しぶりじゃないの~。どっちも、出世したみたいで、ガープさん、センゴクさん」

 

 背後を見ると、ニカニカと笑ったいたずら小僧がそのまま育ってしまったような野生児そのままの顔と、あきれた顔アフロヘアーの今すぐ斬り飛ばしたい顔1、2が揃って並んでいた。

 

「がーはっはっはっは、久々に会ったな!!だがやはりしぶとい奴だ!!」

 

「へっ、こちとら普通の人生歩んでないんでね。人並み以上に悪運はあるんだよ」

 

「そうか!!納得した!!」

 

「全く、貴様は大人しくしていればいいものを…。やはり、貴様の捜索を中止したのは間違いだったが…」

 

「おかげさまで、自分を見つめ直すことが出来たから、こちらとしたら御の字だけどな」

 

 そうやって自分の昔の出来事を思い出して微笑む。本当、色々あったんですよ。色々…(泣)。

 

「貴様が凪の海からどうやって生還したかは追々聞くとして…だ」

 

 センゴクはそこで眼孔を鋭くし、冷静でありながら威圧のある声で言った。

 

「“鬼人”ロジャーを筆頭に、空飛ぶ海賊、“金獅子”のシキ、“ビッグ・マム”シャーロット・リンリン、そして、貴様もよく知る“白王”エドワード・ニューゲート。奴らを含めた通称“黄金の世代”と呼ばれる海賊達が、新世界に渦巻く住人達と小競り合いを引き起こし、災いを引き起こす種となった」

 

「…で?」

 

「わざわざ新たな火種を新世界に持ち込ませはしない!!」

 

「成程。昔のよしみで見逃してくれはしないかな、とは思ったけど、やはり望み薄か」

 

「貴様となれ合った記憶はない!!」

 

 気合いと共に金色の光を身に纏いながら巨大化して獣形態へと変化したセンゴク。大気がビリビリと震え、とてつもない威圧感を放出するが、俺は背後の男に警戒しながら、センゴクをただ睨みつけた。

 

「俺が素直に言う事を聞くとでも?」

 

「そうなるのであれば、俺達の仕事が楽になるな!!」

 

 爆笑するガープにセンゴクは呆れた眼を向ける。そこで、背後の男の叱責が入った。

 

「貴様ら!!仮にもここは戦場だ。一流の兵士になりたいのであれば、一瞬でも気を抜くべきではない!!」

 

「む、そうだな。すまないゼファー」

 

「ガッハッハ、お前は相変わらず固いなゼファー!!」

 

 今のやり取りで、何となくこの3人の力関係が見えた気がする。というか、目の前の人。新キャラ、ゼファーさん。何だろうこの人の声、何処かで聞いたような気がする。モブ声じゃなくて、大御所っぽい感じなんだけど。

 

「あんたと会うの初めてだよなぁ」

 

「ふむ、紹介が遅れたな。俺は海軍本部少将ゼファー。通り名は“黒碗”のゼファーだ。お見知りおきを辻斬り君」

 

 待て…この声やっぱり聞き覚えがあるよ!!コレは間違いない!!

 

「…まさかのホウチュー!?」

 

思わず迸って叫んでしまった言葉にその場にいた全員がポカーンという顔になる。

 

「ホ、ホウチューとは何だ?」

 

「あ、いや、何でもないですこっちの話」

 

取り敢えず混乱させてしまった事を謝る。

 

「コイツの言う事を気にするな!!時々よく分からないことを口走る奴なんだ!!一々反応していたらきりがないぞ!!」

 

「そ、そうなのか」

 

「ソウナンデス」

 

「…お前がふざけていることは理解した」

 

 おっと、予想していた反応と違う。おちょくられたのかと勘違いしたのか、ぶっ潰すと言わんばかりにゼファーさんは黒い腕をグルングルンと振り回し始めた。

 

「全く、どうして海軍は短気が多いのかね。もう少しゆったりと事を構えようぜ」

 

「はっ、悪党がおかしなことを言う。我らが迅速に行動しなくては、救える命も救えないではないか」

 

「ふーん、その割にお前ら世界政府加盟国の奴隷もちらほら見かけたけど、それはどういう事なんだ?」

 

「…」

 

 おっ、何かしらの琴線に触れたっぽい。センゴクとゼファーの額に青筋が浮かんで、おっかない目つきをしながら歯をギリリとくいしばっている。―――ちなみにガープは、退屈な表情をして小指で鼻をほじっていた。ホンマ、あんた同僚2人を見らないなさいよ…。

 

「ま、今の問いに即答できないようなら、君らはまだまだという事だな。何なら、“天竜人様のため”とか言ってもらえた方が思い切りがいいと思うけどな。…ま、そんなことほざいた瞬間、俺がテメーらのドタマかち割るけどな」

 

「貴様の正義と…我らの正義は違う!!」

 

「そうか、そうなら俺は俺の正義を実行するだけの話だ!!」

 

 結局、こいつらと俺の考えている事は違うという事だ。人の対立は、その人たちが持つ信念と信念とのぶつかり合いである。この世界の正義である海軍の掲げる信念、この世界の悪である俺が掲げる信念。大きい(信念)が勝ち、弱い方を飲み込む。

 

(ならば俺は、俺と言う俺を守るために、全力で立ち向かう所存!!)

 

「こっちも少し…本気を出さなきゃだなぁ」

 

 腹の丹田に力を込め、そこから発生すると言われている覇気を全身へと行き渡らせる。体内から対外へ、そして大気へ、余剰された覇気を再び呼吸で体内に戻すように循環させる。次第に、表皮にこびりつく程度の量だった覇気が、まるで風船にガスを入れるかのようにどんどん膨れ上がる。

陽炎のように立ちあがる覇気。そして俺の背後には、鬼のような模様が浮かんでいた。

 

 




「センゴク?声変わりした?」

「それは言うな…」

こんな形ですが、ご冥福をお祈りします。


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失われし王の威厳

 

 

 

ヒトと言う生き物は、迷うことなくこの世界の“王”である。

 

 

 

 

 

人が王たりえる所以とは一体何か?

その果てしなき欲望か、想像溢れている源泉たるその頭脳か、そして、それを叶えるための身体、手、脚、そして体か

 

ヒトと言う生き物は、迷うことなくこの世界の“王”である。

 

彼らの手にかかれば、百獣の王とさえ呼ばれるライオンでさえ檻の中に閉じ込め、使役し、見世物と化すことが出来る。

猛牛も馴鹿も狼も像も河馬も虎も彼らの前ではただの見世物へと成り下がる。

 

 

 

 

 

ヒトと言う生き物は、迷うことなくこの世界の“王”である。

鉄の巨躯を持つ鋼の化け物を使って木々を倒し、爆発する火薬を使って弾きだした弾丸で動物を、そして同族である人間でさえ撃ち殺す。

 

 

 

 

 

ヒトと言う生き物は、迷うことなくこの世界の“王”である。

 

 

 

 

 

しかし、その王もある状況では、平民以下、下僕以下、奴隷以下、動物以下、虫以下、いや微生物以下の存在に成り下がる。

 

それは、彼らが何も持たざる時だ

 

何もなければ何も作れない。武器もなければ戦えない。

広大な平原、人も住まぬ山奥、出入りが閉ざされた雪山、島なき大海の中央。

持たざる王は、虐げられてきたものにとって裸の王様だ。彼等はただのエサへと成り下がる。

牙で 爪で 嘴で その全てで引き裂かれ八つ裂きに食われる。

まがい物ではない、強き者、強き者の威厳、強き者の覇気に巻き込まれ、小さな波が大きな波に喰われるように巻き込まれ、その血肉は生物達に味あわれ、そしてかつて統べた世界の一部へと替える。

 

 

 

 

 

ヒトと言う生き物は、迷うことなくこの世界の“王”である。

 

 

 

 

 

けど、王は自分では何もできない、弱い王だと知っている。

 

だから、憧れる。何ものも頼らない、絶対的な生物に―――

 

体を鍛えた、精神を磨いた、強くなろうとした―――

 

しかし、彼等は知っている。

 

それでもまだ、まだまだまだまだ足りはしない、と。

 

あくなき欲が、知識が、そして体でさえ欲した。もっと、強い身体が欲しいと。しかし、当たり前のことだがそんな事出来ない。それは常識、事実、暗黙の了解。

 

 

 

 

 

ヒトと言う生き物は、迷うことなくこの世界の“王”である。

 

 

 

 

 

本来抑えつけていた平民(野生)に歯向かわれたのであれば、簡単に食い殺されてしまう(奴隷)である。

 

 

 

 

 

だが、仮にもし、その野生を(奴隷)が持つことが出来たらどうなるであろうか。

 

 

 

 

 

優れた頭脳と自我を保持したまま、洗練された牙、爪、そして身体を巧みに使いこす。罠を張り銃器を使い、刀を振り回す。

 

そして、(奴隷)は王に戻る。野生の、威厳を取り戻す。いや、それはすでに王ではなかった。

 

それは神だ。生物を超越した存在だ。

 

人は、すなわち、王は神になる。神に。天界から、誤ってこの大地へ堕ちてきてしまった罪多き神に―――そう、悪神に。

 

 

 

 

 

『オオオオオオオオ!!』

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

「な、何ぃ!?」

 

異変を感じ取った、3人の少将達がそれぞれ、思わずといったように俺から距離をとった。

後ろにさがりながらも、臨戦態勢を崩さないことはさすがだが、それでも気圧されたことに変わりはない。しかし、ソレも仕方がないことだろう。

俺が放つ陽炎のような覇気にまるでシャボンディ諸島全体、いやが呼応しているかのようだ。ヤルキマンマングローブの木々や、草が風にあおられたかのようにざわめき、鳥達が翼を広げ、慌てて空へと逃げ出す。大気が震え、シャボンが一斉に湧き立ち、そして一斉に破裂する。

まるで、世界がこれから訪れるであろう嵐に怯え、震えているかのような光景だ。

 

「ヒ、ヒィ!!」

 

「いいいい、一体何が起こっているんだ!?」

 

「おいおい、こりゃあどういうことだ!!あいつの身体から出ている湯気みたいなのは一体なんだ!?」

 

突然の異変に、周囲から事の成り行きを見守っていた海兵達からも悲鳴が漏れる。それほど、今の状態は異常だった。いや、何よりも異常な事がある。

 

「センゴク!?あれは!!」

 

「ああ、間違いない。どうやったかは知らないが…あれは覇気だ!!」

 

「馬鹿な、体外で可視化できる覇気など聞いたこともないぞ!!」

 

「あの男!!一体何者なんだ!?オイ、センゴク、ガープ!!お前達はアイツと戦ったんだよな!?」

 

ゼファーの問いかけに、ガープとセンゴクは沈黙で答えた。

 

「…いや、分からん。私の知る限り、こんなことができる男ではなかった!!」

 

「一体アイツ、三年で何をしやがった!?」

 

中将が、海兵が、誰もが固唾をのんで見守る中

 

「…皆様大変お待たせいたしました」

 

先程とはうって変わり、晴れ晴れとした口調のまま、俺は笑った。

虎を背後に従えた狐は、普段以上に増長するというが、今はまさにそれだろう。何せ、俺の背後には魔神がいるのだから。

 

「いやー、ネ。さすがに3年間はキツかったー、あーしんどかった。何度死にかけたか分からんもん。何度天に召されたか分からんもん」

 

そのまま、剣を握ったまま両手を開閉する。海兵たちには、その態度だけで、彼の身に何があったのかを理解することはできない。だが、その一挙手が、一投足が、まるで力を溜め込んでいるかのような所作に見えた。

 

「…“覇気”は誰しもに備わっている力だ」

 

お前らもそれは知ってるだろ?そう、ニヤリと三日月上に笑みながら俺は海兵たちに向かって歩き出した。

 

『ッ!?』

 

その姿に海兵たちは一斉に後ろへと後退し始める。

 

「だが、その力を人は知らない。例え、知っていても、その力を引き出せずに一生を終える…と。だけど、それは当たり前の話としておく。本題はここからだ」

 

片目を閉じ、小指を使って耳をほじり始める。戦闘の最中に何をやっているんだと思われつつ、気だるげに片目を開いた瞬間、

 

グオッ!!

 

一陣の風が彼らの間を通り抜けた。

 

「うっ!?」

 

「あっ!?」

 

「お前ら、一体どうした!?」

 

一般海兵達には何が起こったのかは理解できない。しかし、一定以上の地位を持つ者ならば、この現象を容易に理解することが出来た。

 

「今のは、覇王色の覇気!!数百万人に一人しか使う事が出来ぬ“王”の覇気だ」

 

「やはり持っていたのか」

 

 俺はその反応を満足げに見つめると、ゆっくりと頷いた。

 

「その通り。これは、武装とも見て聞く者とは違う、王の覇気だ」

 

そして…そう話を続ける。

 

「王の威厳、いやこの場合は威圧なのか?確かに便利だけど、同時に俺はこう思った。覇気ってこんなものなのか、ってね」

 

俺はゆっくりと頭上の鬼神を指差した。

 

「そこにあるのに、誰も気づかない覇気。もしかしたら、大昔の人はそれに最初から気付いていたんじゃないか?で、時代が経るごとに世界が平和になり、こんな戦闘以外に利用法のない力は廃れていく。まるで、野生のイノシシが牙を抜かれ、豚になるようにな。…だが、つまり、そこに真理があった」

 

双眸で海兵達を射抜く。

 

「人が忘れてしまった力、それを今一度、自分の身に宿す、復活させる。覇気と威厳と野生と人が元々持っていたもの全部ひっくるめてな。そうすれば、人間は今一度取り戻す。不要として捨てたものを、王の威厳を、恐怖を…。そして、そうなった人間はどうなるのか?」

 

そう言い終わった後、グンジョーは未だゴウゴウと燃え盛る炎のような鬼神を見上げた。

 

「そして、これは“天”を“覇”した“神”を模した力、そう、まるで“神”その猛威を振るうかのような、王を超えた、名付けて神域の覇気、俺の捨てる前の牙を抜かれる前の本来の姿、故に俺はこう名付けた」

 

 

 

 

 

神覇天王色の覇気!!

 

 

 

 

 

失われし、王の威厳そのもの!!

 

 

 

 

 

数の上で葉圧倒的に有利なはずの海兵達。しかし何故だ?目の前で、たった一人でいるだけの海賊が、まるで偉くおそろしい怪物に見える。全身を震わせながらガタガタと膝が笑っていた。

その光景をしばらく眺めた後、グンジョーは剣を高く掲げ、そして素早く振り下ろした。

ヒィィィィィン…、という甲高い金属音が辺りに響き渡る。

 

「最初に言っておく。今、俺を見て恐怖の感情しかないヤツは覇王色で気絶した奴を連れてこの場を去れ。悪いことは言わない。軍規だとか、プライドだとか、そんなみみっちいもんにすがりついても、ポッキリ無残に折れるだけだぜ」

 

グンジョーは、鋭い眼、そう猛禽類のような目で集団を睨んだ。

 

「ここからは人間上位者同士の戦いだ」

 

撃ち、貫く弾丸のようなその言葉。その言葉によって、位の低い海兵たちは完全に飲まれた。

 

一瞬の静寂の後、海兵達の一部がバタバタと地面に武器を落としていく。次第に、彼等は気絶した仲間達を担ぎ、船へと帰っていった。

 

「少将殿…すいません」

 

そう兵士に語りかけられたセンゴクには、彼等を責めることはできなかった。彼の知る限り、グンジョーはやり通すべきところをやり通す男だ。おそらく、背後を見せた相手に剣を振り下ろす男ではない。しかし、ここは激戦になるのもまた事実だ。

 

「…お前達も先に帰っておけ」

 

そう、最後まで残っていた最初の10分の1にも満たない数の海兵達に語りかける。

すると、彼等は一瞬驚いたような顔をした後、ニコリと笑い返した。

 

「何を言っているんですか!!あなた方が倒れてしまったら、誰が奴を船まで連行するのですか?」

 

「左様左様。中将殿は、ただその正義の拳を振っていただければいいのですよ。その後の事は我らにお任せください!!」

 

「…我々の事は心配ご無用にて」

 

その言葉に、センゴクは僅かに笑んだ。彼らが将来大物になってくれるような予感をさせながら。

 

「…そうか」

 

 数瞬思考した後、センゴクは首を縦に振り、今共に戦う仲間達の元へ、そして敵の元へと戻った。

 

「一応、さァ」

 

その瞬間を待っていたかのようにグンジョーがしゃべり出す。

 

「まだ未完成で手加減できないから、気を付けろよ」

 

 本来のバトルスタイルである二刀流、居合の方を捨て、両手で剣の鞘を持ち、相手に構える姿はまさに荒武者そのもの。そして、先程までの人を小ばかにしたような笑みをけし、まるで震える獲物を前に勝利を確信する肉食獣のような獰猛な笑みに、この場を率いる将校たちは、身震いさえ感じた。

 

「ッ!!ガープ、ゼファー!!あの男はここで殺して構わん、責任は私が取る!!一切手を抜くな!!このまま中途半端に逃しでもしたら、奴は必ず再び私たちの前に現れ、海軍…いや世界政府だろう!!」

 

もはや、逮捕をするとか、選択を選んでいる暇はなかった。確実に士気が衰えつつある海兵たちを叱咤激励し、こちらに向かって跳躍する人、いや鬼神を見上げながら、センゴクは拳へと力を込めていた。

 

「私は、最初からそのつもりだ!!」

 

「ハッ、久々に楽しい戦いになりそうだな!!」

 

ここで、いつかあの人が言った事と同じことを言わせてもらおう。グンジョーは大きく息を吸い込み、言い放つ。

 

「苦難上等」

 

 いつか、自分の前にやって来るであろう“世界最強”に向けて。

 

「好むものなり修羅の道!!」

 

 空中に漂う青色の覇気が渦巻き、鬼の頭部を形成し、吼える。

 

『オオオオオオオオオ!!』

 

背後に大きく振りかぶったグンジョーは、加速と重力と本能の導きのまま、剣を大地に振り下ろした。

 




新技命名経緯

じんの字 「さてどうするべかー、イタすぎるのもなんだしなー」

中学二年生「無双だ無双だ!!カッコイイ名前を付けよう!!」

師匠   「そんな事よりオサレしようぜ」

じんの字 「えーでも、流石に本能の赴くままに描くのツライわー」

中学二年生「堕、とか、魔、とか、天の文字は外せないな!!」(hshs)

師匠   「そんな事よりオサレしようぜ」

じんの字 「いや、ダークサイド系は恥ずいわ…」

中学二年生「厨二厨二!!厨二こそ」

師匠   「オサレーーーーーーーッ!!」

てな事がありまして、こんな形になりました。正直今見返しても手もかなり恥ずかスぃ…


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島揺るがす攻防

「“魔神旋風スクランブル”!!」

 

 ただ振りかぶり、振り下ろしただけの一撃。

しかし、その一撃は先程までと全く違う。青色の闘気を纏いながら、大地を引き割きながら、今まさに飛び掛かろうとしていたセンゴクに襲い掛かった。

 

「ッ!?」

 

 飛び跳ねかけた足を四股を踏む要領で無理矢理大地に抑えつけながら構えると、手の平から衝撃波を発する。飛ぶ斬撃と、衝撃波が激突。本来なら、一撃で軍艦を海の藻屑にかえる2つの力。そがぶつかり合った事で、周囲の土砂を吹き飛ぶほどの爆発がその場にいた4人を包む。

 

「アイツの力は将来的に大将に通じるものがあるが、一定の範囲内でしか冷静さを保つ事が出来ないというのは欠点だな。

 

ゼファーは身を翻すと、ガープの間近まで飛ぶと、覇気の力で黒く変色した拳を地面に叩き付けて大地を抉り、大穴を穿った。

 

「ガープっ、頼むっ!!」

 

「応っ!!」

 

 ゼファーが両手を重ねて丁度お椀のような形にすると、そこにガープが突っ込み、その速度のまま脚をゼファーが作った両手の中に叩き付ける。

 

「「うおおおおっ!!」」

 

 ゼファーは全力で両手を振り、ガープは勢いを殺さず跳躍。2人の人外が繰り出したそのコンビネーションは、爆発の効果範囲の上空へとガープを送り出すのに十分だった。

 

「あの野郎、ますます力をましてやがる。こりゃ、大剣豪と呼ばれる日もそう遠くねぇかもしれねぇな…。まぁ、そのためにはいくつもの障害があるが…さて」

 

 土煙がもうもうと上がり視界がゼロの状況の中、空中で一回転したガープは、先程グンジョーがいた場所を確認する。すると、ガープが空中で何度も飛び跳ねた。常人なら、目を疑うような光景だが、政府やその関連機関に身を置く者ならなんてことはない。世界政府直下CP(サイファーポール)の技術の一つ、“月歩”である。勢いよく空中を蹴りつけることで、空中を“踏んで”移動することが可能になるこの技術で、良い高さまで飛び上がると、ゆっくりと落下を始めた。

 

「隕石拳!!」

 

 ゼファーと同じように覇気で黒化された拳を振り下ろす。落下、そして再びの衝撃。先ほどのセンゴクやグンジョーと遜色しないほどの威力が吹き荒れる。

 しかし、普段のやかましい雰囲気とは一転し、ガープは冷静だった。土煙の中、目を閉じ、嗅覚や聴覚、そして苦手な見聞色の覇気まで総動員し、辺りの気配を探る。

 

「見えたっ!!」

 

地面を蹴って跳躍し、気配を感じた場所に突撃。

 

「ここだぁ!!」

 

 土煙の中移る人影に向け、両手の拳を黒化させ、出し惜しみのない、全力の拳のラッシュ。

 

「“鉄拳機関銃(アイアンマシンガン)!!」

 

人影を拳の暴風が襲う。並の人間なら、一撃で全身が砕け散る攻撃が何度も遅い、人影をまるで土くれのように吹き飛ばした。土を穿った時のようなボロボロとした感触がガープを襲う。

 

「なっ、土!?」

 

 正確には、人ほどの大きさまで盛られた土に、グンジョーが愛用しているコートがかぶせられていた。

 

「クソッ、臭いにも頼っちまったことが仇になったかっ!!…じゃあ、奴は!?」

 

 その問いは、すでにセンゴクが答えを導き出していた。

 

「“幽影剣”」

 

「っ!?」

 

 背後から響いた、ゾクリとするような低音に背筋が泡立つ。視界の端で相手(グンジョー)を捕えた瞬間捕えた瞬間、センゴクは大きく腕を薙いだ。

 

「チッ、あの衝撃波の中、憶せずに立ち向かってきたか!!」

 

「まぁね、あの一瞬で早く動けるなら、次の手が打ちやすくなる。しかし、流石に海軍将校か。失敗失敗。もう少し、気配を隠せるように努力しないとなぁ。いや、そもそも技名を叫ぶ馬鹿がいるかって?バカヤロウ!!それが浪漫なんじゃないか!!」

 

「貴様は何の話をしている!!」

 

「ただの独り言です!!」

 

 おちょくるのが上手い男だ、とセンゴクは思う。今も、拳を振る自身の隙間を縫うようにして、攻撃を避け、なおかつすぐに攻撃を取れる最適な距離を取っている。

 

「っ!?」

 

 一瞬、グンジョーの身体がブルリと震えたと思うと、剣を抜き背後で交差させた。すると、剣の刃に黒化した拳が叩き込まれて両方の剣にヒビが入る。

 

「…ほぅ」

 

「油断も隙もあったもんじゃねぇな!!」

 

「隙だらけで悪かったねバカ!!千本通し千形(せんぼんどおしせんけい)離刃陣(りはじん)!!」

 

 グンジョーは手に持った剣をすぐさま放棄すると、籠の中から別の剣を一度に何本も弾く。抜身の剣が飛び、ゼファーに襲い掛かる。操る者がいない剣とはいえ、そこにはハッキリと姿が見える程の濃厚な覇気が纏わりついている。

想い出してほしい、覇気が付加された木製の弓が、岩をも穿つという事を。それが、例え売上効率を重視して作られた安物とはいえ、鉄製の刃が驚くようなスピードで放たれた場合どのような結果になるか?

 

「くっ!?」

 

 ゼファーはすぐさま身体全体を黒く変色させ、防御態勢を取る。

 その姿を確認sヌルまでもなく、籠から刀を引き抜いたグンジョーは目の前の戦国に襲い掛かった。“かわす”という選択肢もあったが、状況にもよるが、本来ならどちらを選んでも不正解ということはないだろう。しかし、今回ばかりはゼファーの行動は正解となる。

 

「グッ、ガッ!?」

 

 開店する刃がゼファーの身体の周りを通り過ぎ、中には直撃するものがある。すると、ゼファーの身体にいくつもの裂傷が生まれた。

そう、これが目の前の男の恐ろしい部分。常識で考えられないような事象を平気で起こす。…彼らには言えないことだと思うが。

 

(纏わりついただけの覇気で俺に傷を負わせるとは…覇気なしで直撃だとどうなるんだ!?)

 

 事実、剣の周囲には特異な気流が乱れ、不可視の刃である“鎌鼬”が発生していた。もちろん、それだけでは傷をつける程ではないが、覇気が加わると、その殺傷度を軒並み跳ね上げる。仮によけに徹していたのならば、状況を把握する前に全身を切り刻まれていただのろう。その点では、ゼファーの黄泉は正しかったともいえる。

しかし、その一撃はゼファーが恐ろしい未来に一瞬身体を硬直させるのに十分だった。そしてその隙に、グンジョーは刀を振り回し、飛ぶ斬撃をセンゴクに向けて飛ばす。

 

「魔神二閃旋風スクランブル!!」

 

「っ!!覇ッ!!」

 

再びの衝撃波の激突。グンジョーは地に足を踏みしめて疾走。そのまま、何と吹き荒れる衝撃波の中に突入した。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「何ッ!?」

 

 思わず目を見張る程のバカげた行為。しかし、吹き荒れる嵐に吹き飛ばされず、そのまま自身の攻撃を自身で浴びながら直進するグンジョーに、センゴクは一瞬動きが止まってしまった。

 

「白ひげのグラグラアタックを耐えきった俺を舐めるなぁっっ!!」

 

 獰猛な笑みを浮かべながら、剣に手をかける。

 

「“魔神カミカゼ嵐ッ!!…”「「くらえっ!!」」のばっ!?」

 

 突然横合いからの衝撃。もちろん、それはガープとゼファーが横合いから襲い掛かったからだ。

 

「ぐがばっ!?」

 

「なっ!?」

 

「のりたまっ!?」

 

 しかし、悲鳴を上げたのは同時だった。グンジョーは殴り飛ばされた頬を抑えながら立ち上がり、ガープとゼファーは、若い頃鉄を殴ったときのようなジンジンとした痛みが手を襲い、若干悶えている。

 

「くぅーーーーっ!!久方ぶりの痛みだぁっ!!」

 

「このっ、貴様俺達が攻撃を仕掛けてくるのを見て、咄嗟に防御したなっ!?」

 

「へへへっ、ご明察だよ。手前等が一気に来るのは何となく分かったからな。ヒットするであろう直線状に剣を構えた」

 

(正直ギリギリだったけどな…。あぶねー、というか鼻血垂れてるよなぁ。あれ、傍目から見たらかなり滑稽?)

 

 内心よく分からないことで冷や汗を出しているグンジョーに対し、ゼファーは拳を何回か振って汚れを払った後、小さく呼吸をしながら未だ冷静な目でグンジョーを見つめる。汗や汚れなどダメージも見受けられるが、その眼とは気は全く衰えていなかった。

 

「ふむ、大体わかった。貴様の攻撃は確かに脅威だな。しかし、その分身体(からだ)にかなりの負荷がかかっているようにも見えるな」

 

(ッ!!)

 

 それを聞いたグンジョーは、鼻血と…、滝のように流れる額の汗をぬぐった。

 

「成程、未だ安定した力はないという事だな」

 

「…ッ!!」

 

 ガープはゆっくりと舌を垂らしながら笑い、センゴクはゆっくりと頷いた。すると、グンジョーは若干ひきつった顔をした。

 

「ああーっ、そこに気づいちゃったか。隠すつもりはなかったんだけど。この力、馬力は凄いんだけど、その分燃費が悪くてね。長い間使うわけにもいかないから、早めに決着をつけたいときに使うんだよね」

 

 エヘヘ、と頭をかきながら、頭を掻くグンジョー。

 

「いや“ぼくのかんがえたさいきょうふぉーむっ”!!というのも、実現するとなるとなかなか難しいものでね。この形態維持するだけでも酷何だわ。あれ、弱点ネタバレ乙って思う?」

 

 ニコニコと笑いながら、自分の圧倒的不利を自虐する。しかし、その笑みが決してこの状況をあきらめていないことを物語っている。彼に相対する海軍将校たちもまた、それを敏感に感じ取っていた。

 

「けど…本領は、ここから」

 

笑みを崩さぬまま、黒化させた右腕を刀に押し当て、一気に擦りあげる。金属音と共に火花が飛び散り、刀が着火する。

 

「ッ!?」

 

「何も恐れる事はない。覇気の使い手の中には、この程度の事をする者はいる。…まぁ、ある程度戦闘に慣れ、一流の覇気センスを持つ者に限られるがな」

 

 やや驚愕に顔を変えるガープを諭すゼファー。しかし、全身が覇気の宝で黒くなっており、何が起きても対応できるようにしており、センゴクもすでに大仏の形態に移行している。

 

「覇気に自然界物質の“属性”を纏わせる、ってのはやれば誰にもできる事。しかし、燃料の量、質によって、火の色や燃焼度まで変わるのもまた事実。…さて、俺はこれを神覇天王色に日の性質を纏わせる。すると、どうなるか」

 

ボボボッ!!

 

 グンジョーの身体全身を炎に包まれる。しかしそれはグンジョーに着火することなく身体の周りに滞留する神覇天王色の覇気に着火し、青色だった覇気の色が、一瞬にして燃え上がる焔の色に変色する。

 

〈ゴオオオオオオ…〉

 

青い色の鬼は、色と共に消え去り

 

〈〈グオオオオオオオオオオオオオオ!!〉〉

 

覇気の渦の中から現れ出たのは鎌首をもたげる2頭の竜。

実体はない筈の覇気そのものが、ガープ、センゴク、ゼファーを血走った目で睨み、今にも食いつこうとする様だ。

 

「ここからが真の決着だ。天紅く燃え、大地に緑満ちよ!!焔風“双竜乃番(ソウリュウノツガイ)”イイイイイガアアアアアアア!!」

 

 その瞬間、グンジョーの理性は飛んだ。

 




「親友のためなら、衝撃波の中を泳ぎきる程度余裕です!!」

「誰!?」

「あれ、その金ぴかさんはもしかして“がまごおり”先輩ですか!?」

「私はガマゴオリなる男ではない!!」

「そんなに大きいのに何で先輩じゃないんですか!?」

「いやだから誰!?」


やってみたかっただけです


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地には緑 空には赤 双竜の激

 

「ぐああああああっ!!“火竜牙突(かりゅうがとつ)”!!」

 

白目をむきながら素早く引き抜いた剣から放たれる貫く斬撃がガープ達に襲い掛かる。

 

「回避っ!!」

 

 ソレが間近に迫ったとき、センゴクは思わず叫んでいた。実際その判断は正しかった。放出された火は地を焦がし、進行先にあった建造物を何棟を貫きながら直進し、沖合で状況を見守っていた海軍船の一撃に衝突。鉄製の壁を一部焦げ付かせながら船を大きく傾かせた後、ようやく停止した。

悲鳴をあげながら叫ぶ仲間を見ながら、その場にいた海兵の誰もが“今島に寄ったら死ねる!!”と思い、陸に近付かないことを決めた。しかし、それ故に目が離せない。人生で何度見れるか分からない、“怪物”対“怪物”の戦い。恐怖を感じながら、彼らは陸へと視線を外すことはできない。

 

故に、背後から近づく一隻の商船に海兵達が気付くことはできなかった。

 

 

 

「“火竜乱翼(かりゅうらんよく)”!!」

 

 場面は戻り再び戦場。グンジョーは刀を振り回し、炎を纏った斬撃を360度全ての方向へ撃ちはなった。

 

「クッ!?」

 

 何重もの刃をよけるセンゴク達。しかし、打ち寄せる波の如く怒涛の攻撃に対して警戒を怠ることはない。特にゼファーは先程の事から刃の射線上からもさけ続ける。

 

「あいつ、我武者羅に攻撃しているわけじゃないのか!?」

 

ガープもまた、隙を見て攻撃をしかけようとするが、それでも攻撃のために突き出した拳を防御に回すのに手いっぱいだった。グンジョーから放たれている攻撃は、よく言えば豪快。逆に言えば、大振りで隙だらけのように見える。鼻血を吹き出しながら白目をむき、天を吠えながらの攻撃は、威力だけのようにも見える、が。

 

「ああ、適当に攻撃している“よう”に見える。しかし、あれは理性じゃない。本能的に俺達の位置を的確についてきやがる。“理性”を“本能”で押し切った、人間の第六感的“本能の一撃”!!」

 

このままでは埒が明かないという事を察したセンゴクは、素早く2人の前へと躍り出る。

 

「俺があいつの攻撃を封じ込める。その隙に、渾身の一撃をあいつに叩き込め!!」

 

「センゴクッ!?」

 

 驚愕するゼファーだが、センゴクは何も言わず身構えた。

 

「あの攻撃はいつまでも続くわけはないだろう。すぐにでも体力の限界が来ると思うが、それまでに俺達が倒れてしまっては元も子もない。…なぁに、獣系(ゾオン)は体力や身体能力に秀でている。それに、俺が一撃で沈むように見えるか?」

 

「見えんっ!!」

 

「よし、ならばやれっ!!」

 

 拳を大地につきおろし、踏ん張った状態で構える。輝かしい金色の体色が徐々に黒色に染まり、攻撃力と硬度が上がる。センゴクの奥の手である武装色の覇気と獣系特有の身体能力を重ね合わせた絶対防御及び絶対攻撃の構え。

 

「攻撃は最大の防御、防御は最大の攻撃ッ!!私の後ろに控える者は、何者も傷つけさせやせんぞ!!覇ッ!!」

 

気合いと共に突進。

 

「ぐうううううううっ!?」

 

 幾重もの攻撃がセンゴクに叩き付けられる。しかし、センゴクは歯を食いしばる。痛くない筈はない。何しろ、覇気操作に熟達したゼファーが本能的に攻撃を避ける程の攻撃だ。しかし、センゴクは自身が盾となることで、攻撃を集中させる。

 

「行け2人とも!!」

 

「「応っ!!」」

 

 センゴクの脇から飛び出し、拳を再度硬化。もちろん2人に火炎が襲い掛かるが、手を大きく振りおろしたセンゴクが手のひらを壁とし、目の前の攻撃に即対応する。

 

「センゴク今だどけぇ!!“鉄脚乱打(アイアンガトリング)”!!」

 

ゆっくりと手をどけた戦国の手の陰からは、脚を硬化させてニヤリと笑ったガープが構えていた。剣にも憶せず、硬化させた足を振り上げ、幾獲もの蹴りを叩き込む。一発二発三発。片足でさばきながらブリッジの要領で上半身を倒すと、両指で地面を掴んで全体重を支えると、野生児特有の驚くべき身体能力で腕を一気に回し、地面に腕を叩きつける。

 

「うおおおおおおお、“回転鉄槍大隕石(スクリューアイアンメテオ)!!」

 

ドン!!という音共に、勢いよく打ち出されたガープの身体は回転を駆けられ渦を生み出しながら、グンジョーに迫る。

 

「“火竜爪激”!!」

 

 危険を察知したグンジョーは、無差別的に繰り出していた攻撃をいったん停止し、すでに焼け焦げボロボロになった剣のまま頭上に振り上げた剣をガープに叩き込む。回転するガープとの間に膨大な摩擦熱と、金属を高速でこすり合わせる異音が生じる。

 

「この瞬間を!!」

 

 だが、攻撃が一瞬疎かになったその隙をゼファーは見逃さなかった。勢いをつけて飛び出したゼファーは、拳を唸らせ、グンジョーの顔面へと叩き込む。

 

「意識を散らせ狂犬野郎!!」

 

 しかし、攻撃は一撃に留まらない殴る殴る殴る殴る殴る。怒涛の拳のラッシュが、グンジョーに襲い掛かる。

 

「カ…」

 

ザシュ、という音共に、ゼファーの腹を剣がかすり、大きな傷をつける。顔全体から血をしたたらせながら、動きを停止させるグンジョー。しかし、容赦のない狩人は、獲物が息絶えるまでその動きを休める事はない。

 

「ほぅれどうした。動きが止まってるぞ」

 

 ガープが、今まで競り合っていたガープは地に足を付き大きく振りかぶっていた。ガープの位置からはグンジョーの顔は見えない。しかし、この一撃を決めれば決まると確信していた。

 

「お主がこれまでどのような修行をしてきたのか、想像する事すら難しい。…しかし、お前が進歩しているように俺達も進歩しているのだ!!忘れるな、貴様が悪事をもくろむたびに、海には俺達がいるという事を」

 

 拳を握り、叩き下ろす。単純ながら、必殺の一撃!!

 

「もう一度出直して来い!!」

 

 勢いに乗ったその一撃は、グンジョーの骨を砕き、内臓に大きなダメージを与えた。彼がこれからも生きる限り、彼から受けたダメージは一笑加瀬となって残るだろう。…仮に、彼が生きていればの話だが…。

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

その一撃は、おもむろに振り下ろされた手によって容易に打ち払われた。

 

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 驚愕、そして動揺。今まさに己の手を弾いたのは、ゼファーではない。センゴクでもない。その一撃は目の前の、ゼファーの攻撃を受けて息も絶え絶えとなっているグンジョーの腕だった。

そして、顔をあげたガープの眼に飛び込んできたのは、ゆっくりと振り返り満面の笑みを浮かべるグンジョーの姿だった。

 

「聞いたぜぇ…テメエらの連携攻撃も、その拳も!!」

 

「な!?」

 

 に!?と、驚く間のなく、グンジョーが刀を振り下ろす。それをさけながら後ろに下がったガープに幽鬼の如くグンジョーが迫る。

 

「待っていたぜ、この瞬間を!!」

 

「お前、今まで意識が飛んでいたんじゃないかのか!?」

 

「飛んでたぜぇ、今の今までなぁ。この技使いすぎると、体力が著しく消耗する上に、意識が飛んじまうんだよなぁ。殴ってくれたおかげで頭がスッキリした!!ありがとうよぉ!!そして…ブチのめす!!」

 

 発火させ、逆手に構えた剣をソフトボールの下投げのように放出する。

 

「地を迸る息吹、走破する雌火竜の逆鱗“火竜剣”!!」

 

太刀筋に焔が浮かんだその一撃は、地を這いまるで地割れのような速度でガープに迫る。

 

「クッ!!」

 

 必殺の一撃を交わされたことに動揺したガープは、一瞬対処が遅れて動きが止まり、慌てた時にはすでに地を這う剣撃がすぐそばまで迫っていた。両手を交差させて防御に徹するガープだが、彼の前に別の男が立ちはだかった。

 

「ガープ逃げろ!!」

 

「ゼファー!?」

 

 先程斬られた腹から血を流しながら、黒碗の男ゼファーが立ちはだかる。

 

「あいつは、本能に呑まれた理性を逆に飲み込み返した。はからずも、俺のサポートが裏目に出てしまったようだ…。故に、この戦場は、俺が殿(しんがり)を務めさせてもらう!!センゴクを連れてお前は早くされ!!」

 

「何を言い出す!!ここは、3人で対処に当たるようにと上層部(うえ)に言われただろう!!責任は俺たち全員にある!!」

 

後ろで倒れているセンゴクを確認しながら、ゼファーに怒鳴り返すガープ。しかし、突如として頭上が明るくなったことで、2人は会話を止める。

 

「「ッ!!」」

 

目の前の一撃に集中していた2人は、樹上を見上げ、そして気付いた。地を這う斬撃はあくまでも(カモフラージュ)だったのだ。本命の一撃は、今遠くて近い場所にあった。

 

「火竜剣」

 

皇と、光が瞬く。バチバチと飛び散らせた火花が咲き、そして火花の性質を纏った覇気が、燃え上がり天を衝く。まるで、ガスコンロの火力を一気に弱火から一気に強火にしたかのように、今までがの一撃は何だったのかと疑うような、まるで小さな太陽のような燃える火球。

 

異世界に住む飛竜。彼等は、雌雄一匹で狩りを行うという。

 

地を歩む雌が獲物を追い詰め

 

披露した獲物を

 

空を舞う雄が確実にしとめる!!

 

グンジョーは舞い上がり、天高く燃える凄まじき焔の大剣を一気に振り下ろした!!

 

「莉王烈宇須《リオレウス》!!」

 

業、と光が周辺を包み込む。火球が破裂し、一気に拡散、尋常ではないほどの熱と共に、炸裂した面の太刀筋が一気に2人に、いや海軍基地に襲い掛かる。全てを火の海に飲み込みながらゆっくりと消え、辺りが静寂に包まれたころ、そこに立つ者はいなかった。

 

 

 

 

 

「ヨホホホ~~。どうやら戦闘が終わったようですねぇ」

 

 海兵に混じり、その光景を双眼鏡越しに見守る者がいた。言わずもがな、歌う骸骨ブルックと、その足元にいるラクーンと愉快な仲間達である。

 

「「「「「一括りにされた!?」」」」」

 

「まぁまぁ、どうかお気になさらず。私は回収に向かいますので、船の方を守ってもらって大丈夫ですか?」

 

 落ち込む仲間達(笑)を諭しながら、船のヘリへと歩くブルック。

 

「ええ、大丈夫れすよ。仲間達が見てくれるそうれす…それよりも」

 

 ラクーンは心配げに海軍基地の方向を見た。そこからは、煙が上がり大きな激闘が起きたことを察するに十分だった。

 

「アオランドは本当に大丈夫でしょうか?僕も、彼の実力を疑っているわけではないのれすが…。けど、あれほどの事が起きて無事かどうか…」

 

「ラクーンさん」

 

 目を潤ませるラクーンは、優しげな声の方へと顔をあげる。そこには、ブルックが屈んで彼を見おろしながら真面目な顔で――白骨死体なせいで表情はよく分からないけれど――真面目な雰囲気で彼を見おろした。

 

「グンジョーさんは絶対に大丈夫です。身体を酷使することはあっても、絶対に死ぬ人ではないですからね。彼はどの様な場所でも生き残れる“程度”の運と、言った事を実現させる“有り余る”行動力、そして何故か言った事を信頼してしまう“不思議な”雰囲気をお持ちですから何も心配することはありませんよ」

 

 そういって白骨した手にラクーンを乗せたブルックは立ち上がり、彼を肩に乗せると素早くヘリから飛び出し海へと飛び降りた。

 

「それではみなさん待っていてくださいねーっ!!」

 

「「「「「えーーーっ!?」」」」」

 

 見守っていた一同が驚愕する中、ブルックは脚を高速で動かし海面を走るという荒業を繰り出す。

 

「ヨホホホホ、それに彼の事を心配するだけ無駄無駄!!彼なら、たとえバスターコールの中でもケロッとした顔で生還するでしょう!!だから、私達に出来る事は、笑顔で彼を迎えに行く事!!今はそれだけ考えましょう!!」

 

 陽気に笑うブルックに一瞬呆気にとられたラクーンだが、陽気な雰囲気に当てられていつの間にか笑っていたのだった。

 

 

 

 

「あ、ボロちゃんさんも待っていてくださいねー」

 

『ジュララララー』

 

 海底からのっそりと顔を出した遊蛇も笑顔で彼らを見守った。

 

 



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