ダンジョンに衛宮親子の力をもらったものがいるのは間違っているのだろうか (all)
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1話

俺、鷹峰志騎は転生者という存在だ。ある日ポックリ死んで、神様に転生させられた。特典を持って。

特典を選べと言われたとき俺はこういった。

 

『fateの衛宮切嗣の固有時制御と英霊エミヤの能力をくれ』

 

俺の申し出を、神様は承諾し、俺は異世界に送られた。

《ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか》に原作知識のみを消されて。

 

**

 

「クソッ!どこだあのクソ牛!」

 

ダンジョンの上層に俺、level8の冒険者、シキ・タカミネは狩り逃したミノタウロスを同じロキ・ファミリアの一級冒険者、アイズ・ヴァレンシュタインとベート・ローガと共に始末するため走っている。

 

「ったく!こんな上層まで逃げるなんてありかよ!」 

「あと一匹。早く見つけないと」

「急ぐぞ!」

 

別れ道をベートが右、俺とアイズが左に別れる。

それにしても、冒険者が少ないな。これなら被害も恐らくないだろう。

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!』

「今のは…!」

「ッ!わかってる。アイズ、先に行くぞ」

「うん、よろしくシキ」

「ああ、任された。『固有時制御・四重加速(time alter square accel)』!」

 

自分の体内の時間経過速度を操作する魔法を使用して普段の四倍の速度で悲鳴のする方へと向かう。

 

「見つけた…」

 

ミノタウロスとそれに教われている白髪の少年を確認する。固有時制御を解除して、俺のもう一つの魔法、投影の準備をする。

 

投影(トレース)開始(オン)

 

二小節の詠唱を行うと、俺の両手には白と黒の夫婦剣、『干将・莫耶』が握られている。俺は自らの全力を持ってミノタウロスに接近する。

干将でミノタウロスの背中を縦に切り裂く。

ミノタウロスが汚い悲鳴のような声をあげ、血を出す。そのまま莫耶でミノタウロスを横に真っ二つにする。

返り血がかからぬようにバックステップで離れる。ミノタウロスは血を噴水のように吹き出して、消滅した。

 

「シキ、やった?」

 

俺がミノタウロスを倒したところに、ちょうどアイズが追い付いてきた。

 

「アイズか、今終わった。…っと、少年、大丈夫か?」

「あの、大丈夫ですか?」 

 

アイズが座り込んだままのすっかりミノタウロスの返り血を浴びてしまった少年に手を伸ばす。

 

「立てますか?」

「………」

「?どうしたんだ…?」

「………………う」

「う?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」

 

怯えてえしまったのか、少年は返り血を浴びたまま、アイズの手や俺の声かけも無視して逃げていった。

 

「クックククク…ハハハ!アハハハハ!逃げられたなあ!アイズ!アハハハ!アイツも!アイツでよー!トマトみたいになってやんの!!」

「笑いすぎだ、ベート」

「むぅ…」

 

こちらに合流したベートが、先程の少年を笑い飛ばす。いや、責任はこちらにもあるし、怯えさせたのも俺だ。だから、アイズさん。別にそんな頬を膨らませなくても…。可愛いだけですよ?

 

**

 

「遠征隊、今戻った。門を開けてくれ」

 

ダンジョンから地上に上がり、ホームの門の前まで戻り、ロキ・ファミリアの団長、level6のフィンが門番の男にそう告げる。門番は、はっ!と勢いよく返事をして、門を開ける。するとホームの奥からなにかが、というより、我らが主神、ロキがすごいスピードで向かってきた。

 

「おぉぉぉかぁぁえぇぇぇりぃぃぃいい!みんなぁぁああ!無事やったかーーー!!?」

 

そのまま跳躍。団員はみな、何時ものことなので普通に避けていくが、レフィーヤだけはそれに対応できずに押し倒され、胸を揉まれる。おい、あんたもうただのおっさんだぞ。

 

「強く生きろよ、レフィーヤ」

 

そう言い残して俺はみんなより一足先にホームに入った。夕飯の支度をしなきゃいけないからな。



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2話

「みんな!ダンジョン遠征ご苦労さん!今夜は宴や!」

 

ダンジョン遠征から帰った日の翌日。俺たちロキ・ファミリアはダンジョン遠征の打ち上げをするため、『豊穣の女主人』に来ている。

 

「思う存分飲めぇぇぇぇえええ!!」

『オオォォォーー!!!!』

 

主神ロキの音頭によって宴は始まり、各々が酒を飲み、料理に舌鼓をうち、会話を楽しむ。

そんな中、俺は五人用のテーブルで副団長のリヴェリア、エルフのレフィーヤ、アイズ、ベートと一緒に座っていた。

 

「アイズ、剣はどうだった?」

「5日はかかるって…。それまではこれを使うことになった」

「そうか、ちょっと見せてくれよ」

「いいよ。はい」

 

アイズから剣を渡される。俺はそれを受け取り、手で剣に触れる。

 

解析、開始(トレース・オン)

 

ふむ、構造を見たところ、不壊属性はついてないものの、かなりの業物だな。けど、アイズの剣技についていけるほどのものではないな。また壊してしまうだろう。そろそろあそこのじーさんにも悪いし、俺がデスペレートを投影してアイズが使った方がいいんじゃないか?

 

「ありがとう、アイズ」

「どうだった?」

「業物だけど、お前が使ったら折れるだろうな」

「…そうなんだ」

「なんなら、俺がデスペレートを投影してやろうか?」

「うん、あまり迷惑かけたくないし、壊したらお金もかかっちゃうからお願い」

「ん、OK」

 

やはり、アイズも常々その事については感じていたようだ。

ふと、周りを見渡す。店内にはロキ・ファミリアの団員で埋め尽くされていたが、カウンターの一席に白髪の少年が座っていた。あの時、ミノタウロスに襲われていた少年だ。一言、昨日の事を謝ろうと飲み物を持って席を立ち、少年の近くに行く。

 

「少年、隣失礼するぞ」

「えっ!?シ、シキ・タカミネ!?」

「俺のこと知ってるのか。まあ、それはいい。少し言いたいことがあってな」

 

少年は緊張しているのか、背筋を伸ばし、顔を強ばらせている。

 

「昨日は…」

「よっしゃあ!アイズ!そろそろ例のあの話、みんなに披露してやろうぜ!」

「あの話?」

 

俺が謝ろうとしていた所に、ベートの大声が店内に響いた。少年は目を大きく見開いてベート達の方を見ている。

 

「あれだって、帰る途中何匹か逃したミノタウロス、最後の一匹、シキとお前が5階層で始末したろ?そんでほら、そん時いたトマト野郎の!いかにも駆け出しのヒョロくせえガキが、逃げたミノタウロスに追い詰められてよお!」

 

ベートが言葉を発する度に、少年の顔は暗くなっていく。酔っているな、ベートのやつ。

 

「少年、気を悪くしないでくれ。少し酒が回っているみたいなんだ」

「……」

 

少年に俺の声は届いておらず、顔を俯かせて、唇をこれでもかというほどに噛み締めている。

 

「例えばだ!俺とあのトマト野郎、どっちを選ぶってんだよオイ!」

 

俺がどうしようかと悩んでいる間も、ベートの話は続く。

 

「雑魚じゃ釣り合わねぇんだ!アイズ・ヴァレンシュタインにはなぁ!」

 

この言葉を聞いた少年は、椅子から勢いよく立ち上がり、店の外へと走っていった。 

 

「お、おい!少年!」

 

俺が呼び止めようと店の外に出ると、もう少年の姿は消えていた。level1にしては中々速いな。そんな場違いなことを思ってしまった。

 

「シキ、今のは…」

「ああ、あの時の少年だ。一言謝ろうとしたけど、ベートの話を聞いてショックを受けたのか、逃げちまった」

 

少年に気づいたのか、アイズも外に出てきて、俺に話しかける。

 

「まあ、またいつか謝れるだろ。そん時はアイズも一緒に行くか?」

「うん」

 

まあ、それにしても…

 

「ミアさんの店で食い逃げなんて、いい度胸だなぁ。あの少年」

「……うん」



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3話

あの宴の日の三日後の早朝、ロキ・ファミリアのホームにある人気のあまりない広場で、黒のスーツに黒のネクタイ、灰色のYシャツというダンジョンの時も地上にいるときと同じ服装のシキとアイズはお互いに剣を持って向かい合っている。

 

「…シキ、いくよ」

「いつでもいいぞ」

 

シキがそういうとアイズは自身の最高のスピードを持って間合いを詰めると、シキが投影したデスペレートを振るう。

シキはそれを冷静にただの剣で対処していく。

 

「フッ!」

 

アイズの力を込めた攻撃を剣で受け止める。が、その衝撃でシキの持つ剣は壊れてしまった。

(…やるな、アイズ)

成長した弟子の姿に少し感嘆したが、それも一瞬。すぐに剣を投影して、次の攻撃に備える。

 

「ッ!」

 

アイズはシキの立て直しの速さに驚いたのか、少し隙を見せる。その隙はわずかなものだったが、シキがアイズを斬るには十分すぎる。シキはアイズのデスペレートを剣で弾きあげ、がら空きになった首に剣を振るい、ギリギリのところで止めた。アイズがデスペレートを手放し、降参と言うように両手をあげる。シキは首筋から剣を離して、勝ち誇った笑みでアイズに話し掛ける。

 

「今日も俺の勝ち。惜しかったな」

「…また負けちゃった」

「まあ、今回は一瞬ヤバかったな。剣を砕かれたとき。アイズはあの時の一瞬俺が無防備になったとき攻撃を仕掛けるべきだったな」

「でも、壊してもまたすぐに剣を作るから」

「あー…大丈夫。こんなのできるやつ基本いない。まあ、だからといって、武器一つを破壊してもまだ他の武器を隠し持ってる場合もあるから、油断はするなよ。

っと、そろそろ戻るか」

「うん」

 

シキが歩き出すと、アイズがそのほんの少し後ろを付いていく。シキの後ろを付いていく様は、まるで兄妹のように見える。

これはまだ小さい頃のアイズがロキ・ファミリアに入った時に教育係を担当したのが年が少し上だったシキだったためだ。先程の稽古もそのときからやっていたことだ。そのため、アイズの剣の師匠はシキと言ってもいい。

 

「…元気になったみたいでよかった」

「…何が?」

「聞こえてたのか」

 

聞こえないように言ったつもりの呟きは距離が近いアイズの耳はしっかり捉えていた。シキは聞かれたことに対して恥ずかしさを覚える。

 

「いや、なんだ、最近元気なかっただろ?多分あの少年のことだろうが」

「うん。でも、もう大丈夫」

「そうか」

 

それ以上会話は続かず、シキとアイズはホームの中を歩いていく。アイズはともかく、シキも積極的に自分から話題を振る性格ではないため、お互いにこの沈黙も気まずいものではなく、心地いいものと感じているだろう。

 

**

 

俺は今、アイズ、ティオナ、レフィーヤと相席して夕食を食べている。女性側は怪物祭の話で盛り上がっている。

 

「怪物祭、か…」

「なになにー?シキは怪物祭嫌いなの?」 

「え、そうなんですか?シキさん」

 

ティオナとレフィーヤが意外そうに言ってくる。

 

「別に嫌いという訳じゃない。ただ、好きというわけでもないけど」

「なんでー?」

「いや、モンスターをわざわざ地上に連れてきて調教するなんて、おかしな話だろ」

「だけど、屋台がいっぱいある」

「アイズの場合はジャガ丸くん狙いだろ?」

「うん」

 

即答かよ…。けど、アイズのジャガ丸くん大好きは今に始まったことじゃあないしな。

 

「屋台か…それならいいかもな」

「本当?なら…」

 

アイズがそこまで言って、言葉を止める。なら、なんだ?思い付かんな。

 

「どうした?」

「ほら、アイズ言っちゃいなよ」

「ア、アイズさん!頑張ってください!」

「うん。シキ…」

「なんだ?」

「怪物祭、いっしょに行こ?」

 

顔をほんのり赤く染めながらそう口にする。ヤベエ、俺の妹分マジ天使。めちゃくちゃ可愛いじゃん。これは断れないな。うん。

 

「ああ、もちろんいいぞ」

 

この後、パアッと顔を明るくするアイズの可愛さに悶えながら飯を食った。



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