ポケットモンスター紫 (鯖風味鯵)
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技1

  
 初めまして。鯖風味 鯵(さばふうみ あじ)です。閲覧感謝です。
 ぶっちゃけ完結させる自信ないですが、それでもよければご覧ください。


 

 ポケットモンスター。縮めて、ポケモン。

 

 

 

 知ってるよな? ポケモン。まあ、誰しも聞いたことくらいあるだろ。

 なに、知らないって? アレよアレ。代表的なのは黄色い電気鼠で「ぴっぴかちゅー」とか鳴くやつ。

 アニメもゲームも大人気。ポケモンの種類は数百以上。ゲットしてバトルしてコレクションしたりする超有名シリーズだ。

 俺も、何年か前まではなあ。シリーズもだいたい揃えてたし『厳選』なんていう面倒な作業もやってたっけ。努力値だとか個体値だとかね。いや~必死だったよバトルに勝つために。もうやめてるけどな。

 

 そう、やめたんだけどな。なのに気づいたらポケモンになっちまった。

 

 

 

 ざけんなよポケモンになっちまってた。

 

 

 

 いやほんとマジふざけんな。アタマオカシイって罵倒されようが何だろうが何度でも言ってやるよふざっけんなよ気づいたらポケモンになってました。くそったれ。

 

  

 意味わからん。なんでポケモン? 唐突すぎる。

 

 

 厄介なことに記憶もない。体型に合わせて脳みそまでちっちゃくなったのか。

 いや記憶っつってもあるにはあるんだよ。ポケモンってゲームを遊んでたとか、友人とのポケモンバトルではしゃいでたとかっていう、そんな記憶。

 なのに自分のことは思い出せん。家族の顔もだ。もちろん、友人も。そいつの顔面にメガトンパンチをぶちかましたっていう記憶はあるのにな。…なんで殴ったのかって? 改造ポケモンを使ってきやがったからだ。  

 

 

 あー困った。どうすんだこれから。

 

 

 現在、俺はでかい木の根元に身を寄せてぼけっとしている。周りには草…ポケモン風に言うなら「くさむら」が茂りまくってる。草だらけで視界悪すぎ。

 空を見上げる。夕暮れだ。鳥の群れが飛んでいる。あの鳥、ポッポじゃね? わお。

 

 

 てか、ポッポて。雀じゃねえよなあれどうみても。そうか、ポッポかぁ。

 

 

 

 嫌な情報だぜおい。てっきり俺は、自分自身がポケモンに変化して、現代地球のどっかで途方に暮れているんだなっていう現況把握をしてたってのによ。ポッポの群れときやがったか。

 

 

 じゃあ何か。

 

 

 俺はポケモンになっちまった挙句、ポケモンの世界に迷い込んでしまったと。

 

 

 ははは、ないって。

 

 

 あ。あかん。頭いたい。ちょっと寝る。

 

 

 

 

 

 よし、納得した。

 

 目が覚めた。深夜だろうか。虫の鳴き声以外聞こえない。

 

 いろいろ夢の中で考えていたが、もう俺は考える事を放棄していた。

 

 気づいたらポケモン。自分以外にもポケモンがいる。記憶は曖昧。こうなった原因も過程も何にも分らんという分らん尽くし。

 このまま一人(一匹)でうんうん考えていても、そもそも考察する材料がなさすぎてまったく進展しない。せいぜい俺が腐っていくだけだ。心身共に。

 

 だから、ひとまずは保留。保留な。

 

 原因と過程。こいつらは後回し。今は生きることに集中してみようや。

 別に過去の自分がどうでもいいとか、自棄になってるとかじゃねえぞ。うじうじぐずぐずするのは嫌なのだ。時間の無駄だと思う。ポケモンの厳選作業だって同じだしな。初代ポケモンの、トキワシティで通せんぼしてたおっちゃんだってこう言ってたじゃないか。「たいむいずまねー ときは かねなり か」ってね。

 

 おっしゃ。そうと決まったら動くかね。

 




主人公はポジティブ


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技2

サクサク進めたいなあ


 

 こんちわ ぼく ポケモン

 

 ちゃうわい! いや、違わないんだよなあ。

 

 

 歩き出してから数十分くらいか。夜だし外灯なんてもんもないから完全な真っ暗闇に近いはずなんだが、思いのほか苦も無く歩けている。

 なんだろな、五感がすごい。見えないこともないし、耳も鼻も利きすぎるくらいだ。

 特に、耳。大きい耳だからか、地面を這う虫ケラの足音まで拾ってくれる。

 

 

 

 そういや俺が何のポケモンになってるか教えてなかったな。

 ニドラン(♂)である。

 そう、あのニドラン。どくタイプでムラサキな角兎だ。かの「技のデパート」ことニドキングの進化前である。

 

 

 なんでニドラン? と思ったりもしたが、よくよく考えりゃかなりの優良物件だよなこれ。四足歩行の安定感パナイ。

 もしも変化先が虫やら魚やらだったらテンションやばかっただろな。悪い意味で。ゼニガメとかならバッチコイだが、コイキングとかだったらもう自殺もんである。いやコイキングが嫌いとかいうんじゃなくて、ギャラドスに進化するまで生き残れるとは思えないのだ。はねるってお前。

 

 個人的にゃあヒコザルみたいな猿型ポケモンが一番の理想だったんだが。手が使えるってのがでかいし、最終進化系のゴウカザルがやたら強いしな。アニメでも優遇されてたっけか。とはいえニドラン(ニドキング)もお気に入りポケモンの内の一匹だし、本気で厳選作業したことのあるポケモンでもある。使える技くらいはだいたい覚えているんだぜ?

 

 

 そうだ、技だ。

 

 

 俺はニドラン、ポケモンである。

 ポケモンなら技が使えるはずだ! おおお、ちょっとワクワクしてきたな。

 とはいえニドランが使える技なんてたかが知れている。つか、いま何レベルなんだ? 仮に卵から孵ったばかりの赤ん坊、つまりレベル1だとしたら、「たいあたり」や「つつく」くらいしか使えないってことになるぞ。体力…HPもすこぶる低いってこったな。うわ、たいあたりしたら反動で自分がダメージ喰らうんじゃね? いやそれは「とっしん」か。

 

 

 んん? 待てよ、技ってどうやって覚えるんだ?

 

 

 ゲームなら、普通にレべリングしてたら普通に覚える。他にも、技マシンやら教え技やら思い出しとか。遺伝もあったな。

 遺伝かあ。おあああ、遺伝かよおい。そうだよ俺って、つまりニドランの俺の親ってどんなだったんだ。まさかメタモンとかじゃねえだろな。技は? 個体値は? 持ち物は性格は特性はてか両親どこにいるんだよ!

 

 

 

 

 落ち着こう。

 ふと、隣を見ると野生のサンドと目があった。どうやら、唸りながら地面を転がりまくってたのをがっつり見られたらしい。「うわ、キモ」とでも言いたげに目を細め、さっさといなくなりやがった。

 

 

 サンド、直に見るとけっこう可愛いのな。

 変人を見る目だったのは許せんが。

 というか、さっきのがポケモンとのファーストコンタクトかよ。なんの感動もない。やっちまったなこりゃあ。

 

 

 切り替えよう。技だ。

 アニメとかじゃ、主人公のサトシくんがポケモンと共に訓練して技を覚えさせたりしてたよな。

 俺はどうなんだろう。特訓したらいいのか、単純なレベルアップでいいのか。

 そもそも、この世界だ。重大なことに気づく。

 

 

 この世界は、ドコだ?

 

 

 何言ってんのって感じだが、かなり重要だ。この世界がアニメの世界なのか、ゲームの世界なのかで、技に関する事情は大きく違ってくる。ポッポやサンドがいたのだから、地球ってわけではあるまい。実はここは前人未到の秘境で、ポケモンは実在してたんだよ! てか。ないな、それはない。一応、完全否定はしないが、九割九分ないだろな。

 

 

 アニメの世界なら特訓で技が身に付くのかね。ゲームの世界が基準なら、技マシンとかが道端に落っこちてたりして。

 いや、あったとしても技マシンは落ちてたりしないか。あんな貴重な物、俺なら絶対に無くさない。万が一、落ちてるのを見つけたら、もう神速でネコババするね。だれにも譲らない。

 

 

 とにかくアニメかゲームか。〇〇地方のどの辺りだ? 或いは、ポケダンの世界って線も。人間がポケモンになって不思議ワールドに迷い込むなんて、いかにもって感じじゃん。

 …なんだか、当然のように痛い推測してんな。ナンデコンナコトニ。

 

 

 あーいかんな。やはり判断材料が少なすぎる。コミックの世界っていう可能性もあったか。めんっっどくせえなおい。

 

 

 両親や遺伝技に関しては、もう考えないようにしよう。生まれがどうのとか思春期じゃないんだから。

 どんな世界かってのも、これから知ってきゃいいさ。

 

 

 とりあえず、これからやるべき事だが。

 まずは生きる。

 そんで鍛える。

 バトルする。

 勝って進化を目指す。

 

 

 これだな。とにかく、強くならなきゃ話にならん。人間がいるならペットにでもしてもらえればいいが、ニドランは毒タイプ。トレーナーならともかく、一般人が手を出すには躊躇われるだろうしな。

 

 

 まあペットにせよバトルパートナーにせよ野生のポケモンにせよ、強けりゃいいのよ。アニメもゲームもコミックも、ポケモンはバトルとは切っても切れない関係にあるしな。強けりゃその分、出来ることも多くなる。

 

 

 よし決まった。まずは、生きる。生きるぞ。

 

 

 鍛えるのはこの体やサバイバル生活に慣れてからだ。まずは、大自然でも生きていけるタフさを身につけよう。某有名漫画のナメック星人も似たようなこと言ってたしな。

 充分に体が出来上がったら修行開始だ。技については、色々と試してみたいことがある。

 

 

 おっしゃ。ふんっと鼻息を一つ。夜空を見上げてみる。

 

 

 …月だ。三日月だ。

 

 

 そういや月の石ってどこにあるんだろう。

 

 

 

 




ニドキング大好きです。その次がペンドラー


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技3

 

 弱肉強食。ポケモン世界でも、それは変わらんね。

 

 

 生きる、と決めてから数日たった。いろいろ新発見やら予想通りやらで忙しい。

 

 生きるために必要なのは食い物だ。これについては特に問題なかった。

 その辺の草を食えたし、果物や木の実なんかもいける。毒タイプだからか、多少やばそうな見た目の木の実もがつがつ食えた。

 毒タイプ、いいな。なんというか、逞しい。サバイバルするにあたって、かなりの強みだぞこれは。

 

 

 小川を見つけたから水問題も解決。地面で寝る事にも抵抗がない。生きるだけなら簡単楽ちん、お茶の子さいさい屁の河童だ。

 

 

 うん、生きるだけならね。

 

 

 弱肉強食。くどいようだが、自然界ではやはり真理である。

 見ちまったんだよ。

 ピジョンがキャタピーを連れ去っていくのを。こう、死角からブァサーッて。

 

 

 あのキャタピー、やっぱりそういう目的で襲われたんだよな。うんいや、字面だとなんか破廉恥に見えるが。つまり、食糧としてお持ち帰り。

 ああああ、はややああああああ。かなりキタなあれは。そうだよポケモン図鑑にもそんな事ちらほら記されてあったよな。これが現実なのかよ。

 アニメは夢を壊さないよう配慮していたのか。うわあポケモン恐い。キュートな外見のくせして立派に野生動物だ。ポケモン恐怖症になりそう。

 ハアアッ!? そういや俺もポケモンかっ。いや自分は恐くないな。

 

 

 とにかく、そういうことよ。弱いやつは捕食される。

 幸い俺は毒タイプ。標的にされるってこたあ、なかなかないだろう。だが過信は出来ん。毒でもなんでも食っちまう偏食暴食家だっているだろな。ベロリンガとかマルノームとか。こわっ。

 

 

 食うのが目的じゃなくたって、危険がないとは限らん。強いやつってのは、存在そのものが脅威だ。オコリザルみたいな暴れん坊なら近づかなきゃそれでいいが、バンギラスとかだと回避はかなり難しい。

 

 何でそこでバンギラスかって?

 

 やっこさん、山一つが私有地なんだぜ。もし、気づかず迷い込みでもしたら…ひょおおお!

 

 

 嫌な想像は三角コーナーにポイだ。

 

 はああ、ポケモンはみんな優しいって、そんな風に考えてた時期が俺にもありました。いや捕食は必要なことだからしょうがないんだけども。

 逃げて隠れて、こそこそ食べて。そんな生き方なら、毒タイプってこともあって何とか生きていけるだろうよ。

 

 つまらん。つまらん! そんなのはつまらんぞ! 認めんぞ俺は。

 

 やはり早急に体力をつけるべきだな。そして特訓、レベルアップだ。今はまだニドランだが、進化してニドリーノになればそこそこ自由に生きれるはず。

 

 

 よし、食うぞ。とにかく食って、でかい体を手に入れる! 

 手始めに、眼前の林檎(と思われるものが実ってる)の木だ。

 あ゛あ゛あ゛、木登りうまく出来ないぃぃ。くそが、気合だ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 林檎は食い尽した。

 そして、俺の特性も分かった。

 どくのとげ だ。接触されると一定確率で相手を毒状態にするやつ。

 

 いやね、林檎を貪ってたら、マンキーに襲われたんすよ。

 うわやべえってなもんで、頭抱えて守りに入ったら「はたく」を喰らった。相手もレベル低かったのか、大して痛くなかったのが幸いだった。

 

 で、豚猿野郎は(メスだったかもしれんが)ステップ踏んで「オラオラかかってこんかい!」と息巻いていたが、途端に顔をサーっと青くしてふらふらしはじめたのだ。そのまま青から紫に変色しはじめたのでちょっと心配したんだが、直後に鳴き声をあげながら逃げてしまった。慌ただしいなおい。

 

 

 少しの間ぼけっとしてしまったが、ピンときた。奴め、俺の特性で毒を喰らったのだ。ザマァ。

 

 思わぬ形で特性が判明したな。にしても、毒の棘か。どうなんだろうか。

 

 ニドラン、いや将来的にニドキングの特性だが、選択肢は三つある。

 

 「どくのとげ」「とうそうしん」「ちからずく」だ。

 

 どくのとげ はさっき説明したとおり。

 とうそうしん は、同性へのダメージ補正が1.25倍、異性なら0.75倍になる。

 で、夢特性である ちからずく は、技の追加効果がなくなるかわりにダメージ補正1.30倍なるという代物だ。

 

 うーん。こうしてみると、リアルで生きてくんなら どくのとげ が一番安定してるな。ちからずく も強いが追加効果がなくなるってのは後々痛い目を見そうである。とうそうしん なぞ論外だ。バトルの相手が性格最悪のメスだったらどうすんだ。

 

 でもなあ、どくのとげ、か。

 特性のオンオフって可能なのかね? 機会あって他のポケモンに触れることもあるだろうに、意図せず毒状態にしちゃいましたとか気分悪いぞ。誰だよ どくのとげ が一番安定してるとかいったの。

 

 

 そういや、さっきのマンキーって倒したことにならんのかね。経験値が…ないだろなあ。自爆だもんなあれ。俺も、バトルする時には相手の特性に注意しとかないとな。

 

 

 うーし食ったから寝るか。林檎の木の根元をちょいっと掘れば、寝床の完成である。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 穴から這い出てこんにちは。毒兎だよ。

 

 穴の中で丸まっている時に自覚したが、体が強くなってた。

 どうやらあのマンキー、ちゃんとバトルで倒したことになってるらしい。マジか。

 倒したってかバトルしたってか、追い払ったが一番正しい…のかな?

 

 まあいい。すこーし強くなった事に変わりなし。心なしか目線も高くなったような。うっそ信じらんねえ成長速度! ポケモンすげえな。

 

 興奮しながらバカ犬みたいにその場でグルグル回ってたら、またしても野生のポケモンに喧嘩を売られた。

 

 ビードルである。

 うあー虫かよ。つーかビードルって毒もってたよな。

 毒タイプのニドランが毒を恐れるこたぁないか。が、「いとをはく」には要注意かね。生理的にも虫の糸なんざ受けたくない。

 

 逃げるという選択はない。

 それに、なんだか負ける気がしないんだよ。

 タイプ相性的に泥仕合になるかもだが、それなら気迫で勝れば負けはないだろう。昨日までの俺なら逃げもありだが、今の俺ならやれそうだ。それに、勝てればレベルも上がるかもしれん。

 

 人生、いやポケ生初バトルか。相手も毒針振り回して闘志むき出し。

  

 さて、いっちょやったるかね。

 

 

 

 

 

 勝った。

 

 苦戦っつうような苦戦もなかった。拍子抜けだ。ガチで泥仕合を覚悟してたんだが。

 

 「いとをはく」は頭を上げる予備動作で見切れるし、ならばと頭を下げたら「どくばり」による突貫なのでこれも対応。

 空いた横腹に二度「つつく」。これで勝ち。楽勝だった。

 

 そう、「つつく」があったのである。威力が低いとはいえ、効果抜群の飛行技。しかも低レベル時の戦闘での弱点特効。もたぬわい。

 

 

 しっかし普通に使えたな、技。

 なんか、『技!!!』って思い浮かべたら、ポンと脳内に使える技リストが浮かんだのである。あとは本能に従って技を使うだけ。正直、技が使えなかったら単純な取っ組み合いをやらかすつもりだったよ。

 

 

 ちなみに、現在俺が使える技だが

 

 「にらみつける」

 「つつく」

 「きあいだめ」

 「にどげり」

 

 もう四つ覚えてたんだよなあ! 

 

 というか「にどげり」て。たしかレベル9は必要だった気が。どうなんこれ。どうなってんのよ。

 異常事態だ。バトルなんて、マンキー戦を加えても二回だぞ。原因はなんだ。元から俺はレベルがそれなりにあった? それとも、やはりマンキーか。あいつの経験値か?

 

 マンキー、実はかなり強かったのかね。ビードルは弱かったし、それしかありえないか。

 

 

 ま、いいか。技が多いに越したことはない。

 「にどげり」はかなり有用だ。硬い敵にもバツギュンの かくとうタイプ技。硬すぎる相手なら逃げるしかないけど。

 

 レベルも上がってるみたいだし、これは早速特訓もありだな。アニメのように、特訓による技の習得も試してみたいしな。

  

 そうとくりゃ今日からやったるぜ。「たいむ いず まねー」だ!

 

 

 

 

 




主人公はふしぎなアメを気づかず拾い食いしましたが、にしたってこの成長速度は異常です。マンキーも、レベルは3くらいです。


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技4

この作品は設定ガバガバです。物語の矛盾は出さないようにしたいですが、ポケモンの矛盾は出るかも。


 

 森の中を走り回り、森の恵みを貪り食らい、売られたバトルは積極的に買う。

 そんな生活を一月以上続けている。三十日目からは、日数を数えるのをやめた。

 

 毎日の走り込みは欠かさない。とにかく体力、まずは体力だ。動けば動くほど、この体も世界の事も分かってくる。

 

 ポケモンボディ、マジ優秀。息が上がっても少し休めばまた動けるし、ダメージを受けても木の実を食べれば即回復。ひゃあ、木の実! 美味くて便利でヤメラレネェ!

 

 また新たに技を覚えた。「どくばり」と「みだれづき」だ。

 「どくばり」は現状唯一のタイプ一致技だが、いかんせん威力が…。

 威嚇にはなるんだがね。ぐぎぎ、アニメのアーボみたいに吐き出すタイプだったらなあ。

 「みだれづき」はよく分んねえ。連続で突こうにも、相手がそれを許してくれん。弱いものいじめには使えるかもだが、それは気分が悪い。

 

 

 これで、覚えた技は六つ。

 四つ簡単に超えちゃったんだが、いいのかな。

 またまたアニメの設定だが、四つ以上の技を使ってたポケモンもいたし、もしかしたら個体毎の賢さによるのかもね。

 まあ俺的には大歓迎。何れは技のデパートと呼ばれる存在になろうってんだから、たくさん使えた方が良いに決まってる。

 

 …なんだが、いったいどれだけの技を覚えられるんだろう。

 多くの技を使えたとしても、使いこなさなければ意味がない。お客様の広いニーズに応えてこそのデパートだ。

 

 

 そうだ、バトルについてだが。

 

 勝ったり負けたりを繰り返しているが、概ね好調。負けるにしても、そこそこ手こずらせたりとかはしてる。

 いやー、変化技はきついね。一番厄介だったのはスリープかな、今んとこ。

 野郎、初っ端「さいみんじゅつ」かけてきやがった。眠らされた直後に「ねんりき」がクリーンヒット。痛いってもんじゃない。

 ちなみに「ねんりき」がどういう技だったかというと、念動力で浮かせられて障害物に叩き付けられるって感じだった。抵抗しようと思えば出来るみたいだが、悲しいかな毒タイプ。エスパー技はやっぱり苦手だね。

 

 その次に印象に残ったのがディグダ。

 タイプ一致の「あなをほる」エグい。めっちゃ素早いし。

 じめんタイプだからか「あなをほる」のが上手いんだよな。地中からの奇襲に備えようとしても、振動一つ起こさずディグダグしてやがるから予測が難しい。腹に良いの喰らっちまったぜ。

 

 あと厄介なのは鳥ポケモンか。頭上を取られるとまさしくお手上げ、飛び道具が無いのが悔やまれる。このバランスのいいニドラン選手が…。

 

 

 逆に、肉弾戦を好む個体との勝負なら勝率がいい。

 

 正面衝突の戦い方ばっかりだ。こちらも負けじと真っ向勝負したり、あえて横からどつく戦法を取ったり。肉体言語で語り合うの楽しいっす。

 

 

 で、この世界についての新情報。

 モンスターボールを見つけました。

 

 

 モ ン ス タ ー ボ ー ル を み つ け ち ゃ っ た 。

 

 

 きたぞこれは。

 人間が存在することは確定だぜ。

 アニメかゲームかはまだ判別つかんが、どちらにしろこんな道具を使うのは人間しかいない。ついでに、ボングリを使ってるような時代じゃないって事実も判明。

 

 藪の中で中身を空けた状態で発見したんだが、ウガアアおしいなあぁぁ! 一度投げてみたかったのによぉモンスターボールっ。今じゃ俺が捕まえられる側なんだよこんにゃろお!

 ゲットだぜ! とか、実際ポケモン捕まえて言ってみたかった。ポケモン世代のお兄さんお姉さん方なら、この気持ちを分かってくれるはず。

 holy shit! この四足歩行体型じゃ無理なんだよ。残念無念。

 

 

 とりあえずモンスターボールは放置。誰かに拾われてくれ。

 

 人間がいるんなら、街もあるはず。ちょっと見てみたいな、ポケモン世界の街。

 でも方角とかワカンネ。人間を見かけたらついてってみるか。ゲットされそうになったら逃げる。

 

 とはいえ人間だって良い奴ばっかじゃねえんだよ。元人間は語るぜ。

 特に気を付けなきゃならんのは、シリーズ毎に必ず出てくるらぶりちゃーみーな敵役、〇〇団とかだ。

 

 …此処って、ほんとどこなんだろ。地方によって活動してる連中も違ってくるし、行動理念もバラバラだからな。ロケット団なんかは最悪のポケモンマフィアだし、お近付きにはなりたくない。

 ニドランなんて毒タイプだし、下っ端の奴隷にうってつけじゃないか。やだやだそんなの。

 

 まあロケット団は無視すりゃいっか。襲われても、下っ端くらいなら返り討ちに出来るほど強くなればいいさ。

 

 

 

 そこそこのタイプのポケモンと戦ってはっきりした。

 飛び道具がほしい。

 ニドランはレベルアップでは飛び道具を覚えないのだ。

 

 「れいとうびーむ」「10まんボルト」「ヘドロばくだん」

 覚えられるバリエーションは富んでいるが、技マシンがなければ…。

 確定した訳ではないが、たぶん、技マシンは存在しないと思っている。

 根拠はないよ? でも、甘い希望は持たない方がいい。本当に無かった時の絶望がやばいからね。

 

 技マシンが無いなら、どうするか? 決まっている。

 特訓である。

 

 やはりこれしかないかぁ。

 んでも、どうすっかな。技の特訓自体はやろうやろうと思ってたんだが。

 いやお前さ、考えてもみろよ。

 自分の体から電気出したり、体積を超える水を吹きだしたりとかって、そんなん想像できるか!

 

 けど、ポケモンだしな。案外どうにかできるかも。

 

 どうにか。

 

 

 

 

 そうだな。

 

 うん。閃いた。

 

 

 技を、受けてみるか。

 

 

 

 

 




第三世代でポケモン引退した友人に色違いのギガイアスを見せて
「こいつが今作の伝説ポケモンw」 
て嘘ついたら信じてしまった思い出。だましてすまぬ


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技5

閲覧感想、お気に入り、誤字報告感謝します。うれしはずかし


 

 い、痛い。

 思い立ってから一週間。肉体を使った実験は続いている。

 

 何してるのかといえば、単純明快。相手のポケモンの技を喰らいまくっているのだ。

 

 いや被虐趣味に目覚めたとかじゃないよ。勘違いやめれ。理由は今から説明する。

 

 待望の非接触技だが、やっぱ自分の体からそんなのを撃ち出すイメージが湧かない。

 イメージ不足なのは体験した事がないからだ。当たり前だが。

 だから、それっぽい技を使えるポケモンに勝負を挑み、同系統の技を使ってきたら敢えて受けてみるのだ。それで技を使うイメージを掴もうと。まさに茨の道。

 

 

 アホか、俺は。

 

 

 でででも技を教えてくれる奴なんていないし、自分が痛い目にあって学習した方が習得が早くなるんじゃなかろうかと。

 

 「殴られもせず一人前になるやつがあるか!」

 

 ほらこんな台詞きいたことあるでしょ? あるよね?

 

 ああうん、それとこれとは事情が違うよね。

 

 

 …やり方、間違ってるのかな。

 

 

 だが馬鹿な俺では他に方法が思いつかん。麻痺火傷なんかの状態異常で瀕死になりかけた事もあったが、そこは森の恵み、木の実様に助けてもらっている。

 

 昨夜はたまたまデリバードが飛んでるのを見つけたので、呼び止めて「れいとうビーム」を撃ち込んでもらった。死ぬかと思った。

 いやいやしかし、氷状態はやべえ。寒いし身動きとれないし、強力な攻撃だからか氷もなかなか溶けない。冗談抜きで、死を覚悟したね。

 つーかあのデリバード、なんでこんな所の上空を飛んでたんだろ。あいつってもっと寒い地域に生息してるんじゃね? わからん。

 

 にしても、せっかく「れいとうビーム」の直撃を受けたってのに、技のイメージがまったく浮かばぬ。

 

 強い技の使い手は珍しいのだ。

 ここらのポケモンは比較的弱めのが多いらしく、威力の高い技を覚えている奴も滅多にいない。

 

 せいぜいが「でんきショック」「みずでっぽう」「ひのこ」くらいか。くそ、どれもニドランが覚えられる技じゃねえぞ。

 

 それでもイメージの助けにはなるかと期待してたんだが。うむむ。

 

 

 特訓場所を変えてみるか? 

 

 もっと強いポケモン、強い技を覚えている奴のいる…。

 

 いや、ダメだ。

 

 血迷うなよニドラン。あの「れいとうビーム」の恐ろしさを忘れたか。

 

 

 地道にやってくしかないかな。

 つっても、今ですら体を虐めすぎてるっぽいし。

 考えてみりゃあ、俺ってポケモンとしては子供も子供。ガキんちょなんだよな。たぶんだけど。

 

 徒に寿命を縮めてるだけなのかなぁ。

 この辺のポケモン達も、なんだか変態を見る目で俺を遠ざけようとしはじめたし。

 マズイな。これじゃあ、ニドキングじゃなくてマゾキングに進化しちまう。いやん。

 

 あああ、せめて先生がいたら! 「ここはこうしてあーするんだよっ」ってご教授して戴けたらよおお。ティィィチャァァァァ!!

 

 

 

 無い物強請りはやめろ。

 

 現実を見ろ。逃避するな。二日前にトランセルがピジョンに連れ去られたのを見たじゃねえか。

 俺も、ああなりたくないなら頑張るしかない。

 

 ぬおおおやったるぜオラァ!

 

 ヘイ、そこ行くポケモン! 俺を的にしてみないかい!!

 

 

 

 

 

 さらに数日。

 キ〇ガイじみたイメージトレーニングは成果を結んでいない。

 

 レベルアップ技は覚えたんだがなぁ。「つのでつく」と「てだすけ」。

 手持ちの技で単発最高威力の「つのでつく」は、まあいい。

 

 でも「てだすけ」って。どないしろと。

 

 確か、仲間の技威力を1.5倍にアップさせるんだっけか。

 いや仲間いねぇじゃん! 今のままじゃ役立たずだな。

 

 …待てよ。「てだすけ」って、何レベルで覚えたっけ。

 

 俺、もうニドリーノに進化出来るんじゃね?

 

 あるぇぇおっかしいぞお。どうなってんだこりゃっ。

 

 ま、いっか。

 

 何で進化できないのか、理由は皆目見当がつかないが、ニドランもニドリーノも覚えられる技に大差は無い。

 能力値で劣るのは痛いが、その分、早くレベルアップ技を覚えられるはず…はず。

 

 

 うーん、それにしても困った。

 

 一向に技を覚えられる気がしない。

 

 やり方、変えるか。いやいやもうちょっと続けてみるか。

 

 最近、相手の攻撃がパンチ力不足なんだよね。さすがに俺のレベルも上がってきたし、こうも毎日攻撃喰らってたら耐性もついてくるっていうか。

 スリープやディグダも、ゴリ押しで勝てるようになったしな。

 相変わらず鳥ポケモンがウザいが、上空への対応も身についてきた。目を逸らさなきゃいいのだ。で、目への攻撃は避ければいい。簡単じゃねえがな。

 

 

 どうすっかね。やっぱ場所を変えるか? そこそこ強くなったし、ちょっとばかし強力な個体が相手でもなんとかなりそうな…。

 

 

 

 あ。

 

 

 

 そうか、その手があった。

 

 一つ閃いたぞ。

 

 お、お、これいけんじゃね?

 

 おっほいいぞこれは! 逆転発想ウルトラCじゃねえか! 天才ニドラン我ハ此処二在リ!

 

 あでも冷静になれば何の解決にもならないっていうか。

 

 いやイケる! ヤレルヤレルキモチノモンダイダゼッタイデキル!

 

 と言っても、ちと博打だなこれは。下手すりゃ大けがですまないかも。念の為、木の実を多めに持ってくか。備えあればなんとやらだ。

 

 

 

 

 




主人公は決してマゾではありません。


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技6

 

 失敗しました。くっそおおおおおお!

 発想からして出落ち感やばかったし、仕方ないっちゃ仕方ないが。

 

 やった事は、そう難しいもんじゃない。「てだすけ」を活用するのだ。

 パンチ力が足りないなら、こっちから威力を上げてやればいい。技を使ってくる相手に「てだすけ」をして、破壊力を上乗せしてやろうと思った訳。

 

 で、1.5倍になった攻撃を喰らう…って。

 

 はあ、ばっかじゃねえの俺。

 

 相手の技威力はこれっぽっちも変わらなかった。仲間じゃないんだから当然やね。

 それ以前に、こんなゾクゾクマゾ実験が正しいのかどうかも確定してないってぇのに。

 

 攻撃受けすぎて頭パ~になっちゃったのか。深夜のテンション染みた閃きなんざこんなものよな。ほんと冷静になってみりゃ、なにをトチ狂ってたんだ俺は。

 

 ダメだ、さすがに今回は心も体も疲れた。神は残酷だ。神といってもポケモンの神はアルセウスだけど。

 

 ちょっと休むか。息抜きも必要だよ。亀仙人の修行を見習って、リフレッシュしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 起きた。

 

 どうやら、丸一日以上は眠ってしまったみたいだ。

 

 んんん、気分爽快お通じ快調! 腐った自分にさよならして、新たな俺の船出が始まるぜ。

 

 とにもかくにも技チェック。朝起きた時の習慣にしてる。

 ニドランは「いびき」と「ねごと」を覚えられるから、寝てりゃ都合良く覚えるんじゃね、と。どちらも睡眠に関係する技だし、もしかしたらって期待している。まあ、この二つは教え技なんだけどもね。

 

 予め土に埋めておいた木の実を掘り返し、もちゃもちゃ食べながら自身の習得技を思い浮かべる。

 

 

 「にらみつける」「つつく」「きあいだめ」「にどげり」

 「つのでつく」「てだすけ」「どくびし」

 

 

 お、おおお? レベル技が増えた! 

 

 覚えたのは「どくびし」か。「てだすけ」よりかは断然、役に立つな。

 ある意味じゃ、飛び道具より重要だぞ。行動範囲の阻害、牽制、持久戦。様々な面で使い所はある。

 注意すべき点は、特性「ポイズンヒール」「こんじょう」持ちか。「からげんき」もあったな。後は、対毒タイプでは無意味ってとこか。

 

 逆に言えば、制限はそれだけ。いやー、良い技頂いちゃったぜ。

 

 …ちょいと、マジなバトルがしたいな。昨日までのサンドバッグ君みたいなおふざけではない、まともなバトルが。

 「どくびし」の使用感も確かめたい。どっかに手ごろな相手はおらんかね。

 

 あ。一応言っておくけど、無理矢理バトル仕掛けたりとかはしてないよ、俺。

 

 基本は『買い』だよ。先方の都合ってものがあるし、元人間として、ポケモンに一方的な乱暴は働きたくないんでね。

 

 とりあえず、森の中を散歩してみるか。

 

 バトル、仕掛けてきてほしいなあ。このところみんなに避けられてるからな。

 

 

 

 

 

 

 またスリープかよ。

 

 あいつだけは苦手意識が拭えん。あの変態的な顔も、恐怖を煽ってくる。全世界のスリープファンには悪いがな。

 

 ん? バトル? 勝ったよ。相変わらず「ねんりき」がいってぇ。

 

 てか「どくびし」が大活躍。戦闘開始と同時にばら撒いたんだが、それだけで一気に有利になった。あいつ、「ねんりき」の固定砲台にならざるをえなかったもんな。

 

 それにしてもあのスリープ、かなりの強さだった。

 「どくびし」を撒いた途端「かなしばり」で封印してきたし、「ねんりき」の威力もやたら高かった。さらには、土壇場で「サイケこうせん」までぶちかましてきやがったからな。肝が冷えたぜ。

  

 あいつめ、結構な場数を踏んでやがったか。

 最後の最後、「サイケこうせん」の直撃を受ければ俺の負けだった。

 あのスリープより強いポケモンとも戦った事はあるが、「さいみんじゅつ」の有無もあって最も危険な相手だったかもしれん。

 

 

 やー、それはともかくとして。

 俺もちぃぃっとは強くなったもんだ。前までは、スリープにボコボコされてたんだが。

 

 強くなった実感もあるが、うん。そろそろ時期がきたかね。

 

 

 ここら近辺のポケモンとはだいたい戦った。

 もっと色んな種類のポケモンとバトルして、経験を積んでみたいと思う。飛び道具を習得するっていう願望も捨てていないし、ニドキングに進化するために月の石も探さなきゃならん。あと、ついでの世界観光。

 

 このままこの森に居座って一生を過ごすってのは、あまりに勿体無い。

 せっかくポケモンの姿になってポケモンワールドに居るんだぜ? あれやこれやと体験してみなきゃ損でしょーがよ。 

 

 故に、旅に出なければ。

 

 非接触技の一つでも覚えてから…と考えていたが、しゃーない。

 

 それこそバトルと特訓しまくって、何が何でも身に着けてやるぜ。

 

 

 つっても、何処に行く?

 

 まずは、この森を抜けないとな。その先に海があるのか山があるのか、それこそ自分の目で確かめなけりゃ分んねえ。

 くそ、飛行タイプだったらなあ。ピューっと飛んで一発なのによ。手先が器用な体って訳でもないから、我らが木の実様を持っていく事も許されない。

 

 角に刺していくか、木の実。それなら一つくらいは。

 

 あかんあかん、バトルの時に邪魔にしかならねえじゃん! 

 「つのでつく」しながら敵に木の実プレゼントするニドランとか、意味不明だろが。

 

 ちっ。しゃーない、木の実は諦める。手ぶらでGO! だ。

 まあ木の実含め、食糧問題はあまり気にしなくても大丈夫だろ。あまりに過酷な環境とかじゃなければ何とかなるべ。

 

 

 さて、行くか。ひとまず森を抜ける。

 

 心配事は山盛りだが、いちいち気にしてられん。いつもいつでも上手くいくなんて、保証はどこにも無いものさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フィジカル面が既にかなり鍛えられてる主人公。いつになったら進化できるのか


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技7

 

 

 電気技って対処しにくいよね。避けにくい痺れる威力あるの三拍子だ。

 

 いやピカチュウがね、うん。

 森を彷徨ってたらエンカウントしたんでバトルしたんだが、やっぱ「でんきショック」がウゼェ。特性「せいでんき」も厄介だ。勝ったけど。

 

 いいな~飛び道具。俺も欲しい。あらゆる状況に膨大な数の技で対応して、どや顔晒したい。はぁ。

 

 

 森を抜けるためにうろうろし続けて数日。

 

 出口が分からず迷ってしまった。

 こ、これがリング・ワンダ・リング…! いや、厳密には今までも迷ってたようなもので、気にしなかっただけなんだが。

 

 どうすっかね。目標物も道案内も望めないし、このまま永遠に森の中をぐるぐるしなきゃならんのか。『森のキノコにご用心』が聞こえ始めたぞ。

 

 んん、道案内? 

 

 そうだよ、案内頼めばいいじゃん。

 

 

 ポッポの群れに事情を話して、案内を頼んでみた。

 

 快く引き受けてくれた。やだ、ポケモン優しい。ついて来いとばかりに飛び発ったので、地上から後を追うことにする。

 

 

 上空のポッポの群れを追いかけ続けること数時間。今まで足を踏み入れた事の無い領域に突入。木々が疎らになり、森を両断する一本道を発見。なんぞこれ。

 

 道案内は此処までらしいので、手を振ってポッポ達と別れる。今度会ったらお礼しなきゃな。記憶に残ってたらだが。

 

 ひとまず、その道に沿って歩く。この森に道らしい道なんてあったのかよ。初めて知ったぞ。

 

 

 道なりに進んでいると日が暮れたので、朝まで眠って休息。

 起きて道端の草を食みながら(美味しくはない)黙々と進む。太陽が頭上で踏ん反り返る頃に、ようやっと森を抜けることが出来た。ポッポ様々である。

 

 

 

 さて、森は抜けたが。

 まさかと思ってたが、もしかしなくても此処って「トキワの森」だったのか?

 

 ピカチュウ、ビードル、キャタピー、ピジョン。それらしいポケモンが多かったからな。

 バタフリーやスピアーもいた。苦戦したからよく覚えてる。マンキーは…トキワシティ近辺から流れてきたのかな。

 

 でもトキワの森だとしたら、原作ゲームにはいないポケモン達が何種類かいたぞ。スリープとかディグダ、それ以外にも何匹か。ディグダは、ディグダの洞穴が近くにあるだろうから許せるとして、あの変態顔は解せぬ。

 

 ま、ゲームの知識ってのも信用しすぎちゃ駄目なのかもね。

 ポケモンだって意思を持った生物だ。諸々な事情で住処を変える事だってあるだろうし、俺みたいに故郷を持たない奴だっているだろう。ゲームとリアルは違うってか。

 

 …技マシンも見つからねーし。

 

 いいさ、別に。努力で何とかしてやるもんね。

 

 舗装された道が続いていたので、その脇を歩いて進む。

 しっかりとした道が作られてるってこた、やっぱ人間がいるんだな。

 今まで遭遇しなかったのは、俺がうろついていたのが森の深部だったからか? 

 

 途中の草むらで見かけたプリンに癒されつつ、挑まれたバトルを無傷でこなして歩く歩く。

 

 おおお、耳が反応している。懐かしい感じのする音が近づいてきたぞ。人の喧騒だ。

 

 そしてこれは! この、申し訳なくも邪魔ったらしくそびえ立つ木製の看板は!

 

 標識じゃないかあああ! ヒヒヒッ、訳も分からず変な笑いがでちまったぜ。

 

 ここで、浮かれはじめた脳がクソ真面目に待ったをかける。

 

 

 標識があるから、何? お前読めんのソレ。

 

 

 ああ、そっすね。ちっさいクセに冷静だなマイ・ブレイン。

 

 物は試しと、看板を読んでみる。

 

 

 「 この先 ニビシティ 

   ニビは はいいろ いしのいろ」

 

 

 おう、そうか。

 

 ニビシティなのか、この先。

 

 じゃあ、さっきの森はやっぱりトキワの森で、反対側の道に進んでたらトキワシティ方面に向かってたんだな。

 てかカントー地方だったのね。世界の謎が一つ解けたわ。

 

 そしてヒイィィィィヤアアアアアァ!!!

 

 読める、読めるぞ! ニドランにも文字が読める!

 

 だから何って話だが。

 

 言語は同じなのか。または、都合良く読めるように脳内変換してるのか。どっちでもいいか。

 

 

 何はともあれニビシティだ。この世界に来て初、人間の街。探索してみるっきゃないでしょ。

 

 そういやタケシって、この街にいるのかな? 一目見ておきたいんだが。

 

 

 

 

 

 

 噴水広場を見つけたので、水分補給。

 

 都会って程じゃないな、ニビシティ。やっぱでかい街っていったらタマムシ、ヤマブキとかになるのかね。

 

 ポケモン一匹で街中を練り歩いてみたが、別段騒ぎになることもなかった。

 街の住民には、不思議そうな目を向けられたが…。なんだろう、野生の個体にしか見えないのに、堂々と闊歩していたからかな。

 

 いや、でもちょっと感動したね。

 

 なにせポケモン世界の街だ。人とポケモンが、当たり前のように共存し、その日常を謳歌している。ゲームで散々見てきた光景だが、実際に目にすると心に来るものがある。生きてて良かった。

 

 

 なんてニヨニヨしながらポケモンワールドを眺めていたら、ジュンサーさんに絡まれた。なんでよ。

 

 俺、なにもしてないよ。あれか、毒タイプだからか。毒兎だからあかんのか?

 

 いきなり捕獲されて保健所にぶち込まれる、なんて事にはならなさそうだったので、ひとまずジュンサーさんの仕事振りを観察。美脚っすね貴女。

 

 なになに、通報があった? 傷だらけのニドラン? 通常よりやや巨体? 目つきが悪い? トレーナーの姿がうんだかんだ?

 

 ほん??? 聞き慣れないワードがたくさん。

 

 そのニドランって、俺のことか? 傷だらけでやや巨体、ねぇ。

 

 傷かぁ。特訓やバトルの傷、まともに治療したことなかったなそういえば。木の実で賄った程度じゃ、傷痕くらい残るわな。

 やや巨体、に関しても特に突っ込む気はない。野生において、大きさは強さだ。

 

 でも目つき悪いってのは聞き捨てならん。許さんぞ、人間のクズめ! …は言い過ぎだな。

 

 こちらが睨みつけている間にもジュンサーさんは無線であれこれ会話していたが、無線機を閉じたと思ったらおもむろに俺を抱え上げようとした。

 

 当然抵抗。驚いた声がして、あっさり解放。

 

 ヒュウウ、とりあえず逃げるぜ! よく状況が理解できんからな!

 

 

 

 

 

 





 というわけでカントー地方でした。まずはカントーを舞台としたお話になります


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技8

主人公はポケモン廃人ではありません。『普通に気に入ったポケモンだけを育てて対戦していた』だけの一プレーヤーです。
故に、膨大な知識がある訳でもないです。


 

 思わず逃げちゃったけど、悪い事したかもしれない。

 あのジュンサーさん、たぶんだけど俺を保護しようとしたんじゃなかろうか。

 

 傷だらけで目つきのわる…影のある面構えしたニドランが、トレーナーに連れられもせずうろちょろしてたんだからな。そりゃただ事じゃないって判断するわ。

 

 でも、保護された所で何が嬉しいって訳でもないしな。

 安定した食事を与えられるくらいか。それだって長くは続かんだろう。

 

 うむ、悪いなジュンサーさん。まだまだ助けは必要じゃないみたいだ。その好意だけは受け取ってやろう。

 

 

 そろそろニビシティともお別れか。

 半日程しか滞在してないが、見るべき場所は既に見たんだよな。博物館とニビジム。

 博物館、外見は立派なもんだ。中は知らん。入ろうとしたら、受付の兄さんに止められたからな。

 …入場料、ポケモンでも必要なのか。野良は入れないだけかもしれんが。

 

 ニビジムも見てきた。タケシ居るかな~なんて期待したが、どうやら留守らしい。挑戦者であろう、二人組の少年トレーナーが「明日また来ようぜ!」とか言ってたから、まず間違いない。

 

 くっそ、いないのかよタケシ。あわよくば勝負してもらおうと企んでたんだが。

 勝負たって、流石に勝てるだなんて自惚れちゃいない。寧ろ、その逆だ。

 徹底的にコテンパンにのしてもらって、自身の戦い方の反省をしようって寸法だ。

 

 どーも最近、バトルに緊張感がないからな。ここらで一つ痛い目を見といた方がいいと思う。ジムリーダーなら実力も申し分無し、スカッとぶっ倒してくれるはず。

 …勝負してくれたら、の話だけど。言葉を喋れないって不便やね。

 

 

 ま、いないんならどうしようも無い。

 ジュンサーさんが追っかけて来るかもしれんし、ささっと街を出ますかね。

 

 えー、あっちの方向がトキワ方面だから、こっちが東か。

 

 向かうはおつきみ山。目的は勿論、月の石。

 

 トレーナーとのバトルもやってみたい。タケシがいたら、それも含めて一石二鳥の経験だったんだが。

 

 そう、タケシ。あの糸目。お姉さんと岩タイプが大好きな、やたら主婦力の高いあいつが…って、

 

 

 あれ?

 

 

 おつきみ山の方角からこっちに来てるのって、タケシじゃね?

 

 

 うお、ちょま、ヘイ!

 

 タケシ、おいタケシ! 勝負ショーブバトルしろこらお前ほんとタケシなんだな糸目の人間なんて初めて見たってかこっち来いバトルすっぞオラァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 てなわけで。

 

 戦ってまいりました、タケシと。街の外れまであいつ引っ張ってな。服の裾がビロビロになってた。

 

 向こうも最初は戸惑っていた。何がしたいんだこのニドラン、てとこだろう。

 だから、角を振り回して前足で地面を蹴るという、猛牛みたいな動きをやって見せた。すると、ガラリと表情を変える…いや、あんま変わってなかったな。雰囲気、そう雰囲気を変えた。スイッチが入ったようである。

 

 ポケモンは何を出してくるか。まずはイシツブテか? と身構えていたら、違ったんだよなぁ。

 

 いきなり イ ワ - ク を繰り出してきやがった。

 

 で、そのイワークに 勝 っ ちゃ っ た 。

 

 勝っちゃったよおい…。「きあいだめ」からの「にどげり」がウィークポイントにダブルヒットだよ。が、当然それで終わらない。

 

 「俺としたことが。相手の力を見誤っていたみたいだ」

 

 そんな使い古された台詞の後に繰り出されたのは、またまたイワーク。

  

 

 

 デカい。

 

 

 

 すんごぉくデカい。もう最大金冠確定ってぐらい。

 まあ、イワークを生で見たのはこの戦闘が初めてなんだけども。迫力がやべえってこったよ。

 

 そのイワークはくっそ強かった。とりあえず「どくびし」を撒いたが、すぐさま「すなあらし」で「どくびし」を吹っ飛ばされた。そんなんありか。

 で、「あなをほる」で奇襲してからの巨体を活かした「しめつける」。あ~、最初期のアニメを思い出すな懐かしいな。

 

 「すなあらし」のスリップダメージと「しめつける」で早くも絶体絶命。自力での脱出は不可能。ほぼ詰みかけていたんだが、今しがた覚えたばかりの「おだてる」を発動。イワークを混乱状態にしてなんとか脱出。

 ちなみに「おだてる」がどういう技かと言うと…

 

 「いや~イワークさんヤベェパネェ最強すぎ! よっ この色男! ニクイね~! 大統領!」

 

 これで成功した。マジで。ポケモン言語だから、タケシにはギャンギャン叫んでただけにしか聞こえんかっただろうがな。

 

 イワークがフラフラしてる間に再度「どくびし」。ついで「にらみつける」。

 もう少し時間を稼げると踏んでいたんだが、

 

 「しっかりしろイワーク!」

 

 タケシのコレで即座に素面に戻る。ひでぇ。

 

 「ストーンエッジ」が指示されたので、スタコラと射線から逃れる。

 胴体に「にどげり」するが、硬すぎて効きが悪い。ならばと「きあいだめ」して集中力を上昇させ、攻撃後の隙を突いてやろうとタケシの指示を待っていたんだが…。

 

 

 タケシが、イワークにちらりと目配せ。

 

 

 直後に、ノーモーションから「たいあたり」が襲ってきやがった。

 

 完全に不意を突かれた。

 あんなデカい岩の塊が、猛スピードでぶつかってくるんだぜ? 

 

 避けられもせず、直撃。それで気絶。

 

 まあ何だ。期待通り、コテンパンにされました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダメージはタケシが「かいふくのくすり」を使ってくれたので全快。

 やー、にしても実りあるひと時だった。

 

 ジムリーダー相手に、善戦した方だと思うぜ。そこそこ本気っぽかったしな。

 

 そして反省点だが。

 まず、どうしようもなく地力が違う。身に染みたね。「にどげり」何発喰らわせたら倒れるんだよあいつ。

 

 トレーナーの指示から攻撃を予測していたのも見抜かれたな。決め手のびっくり突撃がそれだ。

 そこらの凡骨トレーナーなら、それで終始優位に立てただろうが、甘くなかった。

 にしたって見抜かれるの早すぎじゃありません? 伊達にジムリーダーやってないってか。

 

 こんな指摘も貰った。「お前は、後の先を取ることに拘りすぎだな」

 

 …そうなのか? あまり意識してなかったが、言われてみりゃそうなのかも。

 相手が動いてから対応する、てのは確かに俺の癖かもしれん。

 攻撃を、敢えて受けたりしてたからだろう。自然とそんな戦法ばかり取っていたようだ。

 

 別にそれが悪いってんじゃなかろう。ただ、今の俺には分不相応なやり方だったのだ。

 

 対等な敵ならそれでいいかもしれんが、今回みたいな格上相手じゃ通用しない。

 自分より強くて経験ある奴の『後の先』なんざ、そうそう突けるもんじゃない。なるほどねぇ、勉強になったわ。

 

 色々と得るモノが多くて満足。とにかく精進あるのみだな。

 

 

 じゃあ、と背を向けようとしたら、タケシから意外な一言。

 

 「お前、俺の所に来ないか?」

 

 おう、なんと。まさかまさかのスカウトキタ!

 

 

 丁重にお断りします。

 

 

 旅はまだ始まったばかりだからな。

 トレーナーの手持ちになれば、不便は減るだろう。だが面倒も増える。まだまだ自由に振る舞いたい。

 てか俺って岩タイプじゃないんだよおおお! タケシは気にせんでも、俺が気にする。

 

 よし、もう話は終わりか? おん、まだある? 

 

 勝手に、首に白い布きれを巻かれた。なにこれ手拭いか?

 

 「誰かにゲットされそうになっても、これがあれば誤魔化しにはなるだろう」

 

 理解した。仮の首輪だな。ノーノー私野生チガウYO! ってことね。

 

 若干、恩に着せられた気分だが、必要になりそうなので貰っておく。

 

 じゃ、今度こそニビシティにさよならバイバイ。

 

 

 

 振り向くと、タケシが手を振っていた。イワーク×2も尻尾を振っている。

 前足を振りかえしておいた。

 

 ジムリーダーの手持ちか。勿体無かったかもしれんが、しょうがないか。

 

 

 





ちなみに作者は初代でヒトカゲを選び、ニビジムで地獄を見た(元)ちびっこの一人です


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技9

閲覧、お気に入り、感想、まこと感謝します。
タケシがイシツブテを使わなかった理由ですが、単純にイシツブテでは敵わないと判断したからです。


 恐ろしい体験をした。

 おつきみ山の洞窟内にパラスがいて、喧嘩を売られたから買ったんだよね。

 手こずることなく「つつく」で圧倒したんだが、その後よ。

 

 突然、パラスが光った。

 フラッシュとかじゃない、もっとほわほわした輝きだった。

 

 光が収まると あら不思議。

 

 

 パラセクト、 降 臨 。

 

 

 アイエェェェェェェ?!!!

 

 

 バトル中に進化っておまえ。タケシのイワーク程じゃないが、凄まじい強さだった。

 攻撃受けても怯まないんだもん。強くなりすぎだろ。

 

 「どくばり」ぶち込んだり「つつく」で四倍弱点狙ったりしたが、近接攻撃すると特性「ほうし」が舞ってめっちゃ戦いにくい。テンパってる間に「キノコのほうし」が直撃。しまった、と思う間もなく夢の中へ意識がフェードアウト。

 

 

 …痛みを感じて目を覚ますと、パラセクトに「きゅうけつ」されていた。

 

 

 鳥肌。絶叫したね。

 

 かなり体力を奪われてしまったので、作戦変更。三十六計逃げるが勝ちだ。

 

 当然追いかけて来る寄生茸野郎。鋏を鳴らしながらガサガサ迫ってくるその姿は、昨今のモンスターパニック映画顔負けの恐怖だった。どこのシザーマンだよこいつ!

 

 洞窟を滅茶苦茶に走り回りつつ後方に「どくびし」を撒きまくるが、構わず追ってくるパラセクト。いや毒だぞ少しは躊躇しろよ。

 毒ダメージが蓄積して動きが鈍りはじめたら方向転換、勝負に出る。

 

 一転攻勢! 無我夢中で「つつく」しまくった。接触技は特性「ほうし」の危険があったんだが、そんなの考える余裕なかったんだよ!

 

 気が付けば、パラセクトはひっくり返って足をピクピクさせていた。

 俺の勝ち。ああああ恐かった。

 

 

 

 いやほんとキツカッタ。

 なにがキツイって「キノコのほうし」が…眠らせる技がマジキッツイ。

 

 離れたら「キノコのほうし」、近づいたら特性の「ほうし」。なんなんだよこのキノコ蟹。どんだけ菌まみれなんだよかもすぞ。

 

 非接触技欲しい。タイプ相性的には良好なはずなのに、フィジカルと技の有無でこんなに違うのか。パラスの時は楽勝ムードだったのになぁ。これが、最終進化系の恐ろしさか。

 

 

 まいったねまったく。てか、ここっておつきみ山のどの辺だ。やべ、迷っちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 洞窟を歩く。襲ってくるポケモンは、だいたいがズバットだ。

 

 「きゅうけつ」しようと下降して来た所を「つのでつく」で迎え撃っているんだが、ちょい違和感。

 「つのでつく」、威力上がってね? 検証のしようが無いから、感覚的な話だが。

 

 「つのでつく」をやろうとしたら、得体の知れない力にほんのり後押しされてる気がする。ほんのり、ね。劇的な変化って訳でもない。

 

 威力が上がる技は、「つのでつく」と滅多に使わない「みだれづき」だけだ。他は変わりなし。どういう作用が働いてんだ? 原因は? おつきみ山に、ノーマルタイプ技を強化させるフィールドギミックなんざ無かったよなぁ。

 

 うーん、でもピッピの住処だしな、この山。あの不思議ポケモンの謎に満ちた生態を考えたら、そんな事があり得てもおかしくないっていうか。

 

 …威力が上がる、ね。技の威力が上がる条件って、何だっけ。

 

 特性、積み技、天候、持ち物、ドーピングアイテム。

 

 

 持ち物???

 

 

 まさか、おい。首に巻き付けられた手拭いを見る。タケシからの貰い物だ。

 

 これって、シルクのスカーフだったの?

 

 いやいやマジっすか? 嘘だろ、非売品だぞ。

 

 でも、それなら納得がいく。「つのでつく」と「みだれづき」のみ、気持ち威力が上がっている。この二つはノーマルタイプだ。

 

 …ええぇ、じゃあほんとにシルクのスカーフかよ。貴重品じゃん。なんでタケシがそんなモノ持ってたんだ。あ、タケシもトレーナーだから、ポケモン用の持ち物を所持してても変じゃないか。

 

 完全に、手拭いだと思ってた。タケシからシルクのスカーフって、イメージしづらいだろ。専門が岩タイプだもんな。

 

 聖人かよあいつ。今度会ったら礼をしなきゃ。

 

 技マシンが見つからない今、「つのでつく」が最高威力の俺には嬉しすぎる代物だ。

 もう少し鍛えたら「どくづき」を獲得するだろうが、同じ毒タイプなどを相手にする時は「つのでつく」が一番の有効打となる。こりゃニビシティに足を向けて寝れねえな。

 

 頭の中で感謝。口に出したら、鳴き声に刺激されたズバットが攻撃してきて鬱陶しいからだ。

 

 

 洞窟を抜けると、おつきみ山の外壁に出た。ちらほら植物が生えていたので、腹も減ったし食べることにする。

 相変わらずただの草は美味くない。食えるだけマシだが。

 

 腹が膨れたので休憩。うとうとしていると、人間の話し声が聞こえた。

 

 眠気が吹っ飛んだ。聞き耳を立てる。ニドランの聴力を舐めんなよ。

 

 声は、山の麓から聞こえてくるようだ。それなりに人数もいるな。

 話してる内容がどうもきな臭い。月の石を探せ、化石を探せ、邪魔する奴には容赦するな、など。

 

 これは、あれだな。きやがったかロケット団。

 

 

 どうすっかな。

 

 ロケット団がおつきみ山で活動開始したってこたぁ、近いうちに『主人公』さんが現れて成敗するだろう。レッドかサトシかは分らんが。

 

 なら悪者退治は彼らに任せればいいんだが、俺の目的は月の石。

 正義の味方は遅れてやってくるもんだし、手をこまねいていれば連中に先を越されてしまう。あいつらも狙っているみたいだしな。

 

 

 というか、そもそも『主人公』なんて存在が本当にいるのか。

 どうもこの世界、ゲームともアニメとも違う気がする。どちらの知識も、当てにしすぎると痛い目をみるのだ。主人公が現れないって可能性も無きにしも非ず。

 

 むむむ、でも俺一匹で戦ってもな。あいつら絶対集団でボコってくるタイプだろ。勝てんて。つーか捕獲されそうだ。

 

 タケシ譲りの手持ちアピールスカーフなんて、善良なトレーナーにしか効果ないだろうしな。悪の組織が盗みを働くのに、他人のものだからって遠慮などせんだろう。スカーフ諸共手に入れてラッキーてなもんだ。

 

 

 悩んでも仕方ないか。あいつらより先に月の石を見つけよう。

 

 月の石をみつけたらどうするかだが、その時に考える。考えてみりゃあ、俺は正義の味方って訳でもない。

 

 まあでも、見つかってしまったら戦うしかないか。あのパラセクトの恐怖に比べたら、マフィアの下っ端なんぞ可愛いもんだぜ。

 

 

 

 ところで、月の石ってどんな見た目だっけ?

 

 

 

 




面倒くさがりな鯖風味は、すべての感想に返事をすることはないでしょう。それでも有難く読ませていただいてます。

 ポケモンの思い出

 小さいころは技PPの存在を理解していませんでした。「わるあがき」しかしなくなった手持ちに失望した思い出。勝手なもんです


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技10

誤字報告感謝します。気づかないもんだなぁ


 モンスターボールを構えてポージングする下っ端。

 無駄にキビキビしたバレエじみた動き。顎が外れるくらい大口開けて、

 

 「俺こそロケット四兄弟の一人!!!」

 

 知らねえよ…。

 

 

 月の石探し開始から数分と経たず連中に見つかってしまった。

 俺って、普段の生活で姿隠したりとか全然意識してなかったからな。スニーキングの心得なんてシラナイデス。野生にあるまじき醜態である。

 

 見つかったら仲間を呼ばれると思ったが、こちらを舐めてるのかそんな気配は無い。ニドラン一匹程度、単独でどうにかできるってか。普通そうだよな。

 にしたってこの下っ端、野生のポケモンに遭遇しただけでキメテきたんだが、いつもそうなのか? 構成員向いてないんじゃなかろうか。

 

 ポケモンの捕獲も任務の内ってのは、ゲームなどと同じらしい。腰に下げてるモンスターボールを掴もうとしていたので、問答無用で奇襲。ボディに「にどげり」を喰らわせた。

 「ひ、卑怯なぁぁぁ」とか叫ばれたが、突っ込む気もおきん。「どくばり」にしなかっただけ有難く思ってくれや。

 

 「ま、まあいい。弟達が仇をうってくれ、る…。」

 

 気絶した。何だったんだコイツ。

 

 

 見つかったのがバカで助かった。この下っ端、ポケモンも出さずに山の中を徘徊していたからな。ポケモンがいたら、バトルは必至。騒音で仲間も集まってくるだろう。

 

 ロケット団を警戒しつつ、探索再開。

 月の石の形状が思い出せん。どんなだったか。

 やたら食い意地の張ったピッピが出てくる漫画では、三日月の様な形をしたひじょ~に分りやすい見た目だった記憶なんだが。

 

 ゲームのグラフィックだと、思いのほか地味な石だという印象が。ううむ。

 

 どちらにしろ、ゴキブリみたいに走り回ってるロケット団を避けながらってのは、かなり難しいぞ。あっちこっちにいるらしく、さっきから耳がピクピクしっぱなしだ。

 

 

 いっそ諦めるか、月の石。

 

 

 俺ってニドランだしな。ニドリーノに進化しなきゃ持ってても意味が無い。

 いつ進化できるのかわからん状態で、荷物を持ち続けるってのもなぁ。邪魔にしかならんよ。

 

 あ~あ。進化、いつになったら出来るんだろう。レベルは足りてるはずなんだが。

 

 レベルじゃないなら、原因は何だ。

 

 …わからん。本当にわからん。何が足りないのか。

 

 ま、もう少し探すか。気がすんだら下山すりゃいい。

 

 進化してないから何だというのだ。サトシのピカチュウはライチュウにならなくても充分すぎるほど強いじゃないか。

 

 主人公補正? ナニソレオイシイノ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ゛あ゛あ゛あ゛、石ばっかりじゃあああもういやぁぁぁ!

 

 クソが! こんな暗い洞窟の中で、どんな見た目かもはっきり覚えてない石ころを探せだぁ? やってられっかっ。俺はどっかの御曹司みたいな石マニアじゃねーんだよ!

 

 やめだやめだ。埒があかねえ。さっさとおつきみ山を降りよう。石はまた次の機会でいいや。

 

 …降りるって、どこに?

 

 はい迷ったよ。笑うしかねえHAHAHA。

 

 ああもう面倒だな。また誰かに道案内でも頼むのか?

 

 いや、それはやめておくか。今回は周囲のポケモンに協力を望めそうにない。何故かって? おつきみ山のポケモン達が、俺に敵意の眼差しを向けているからだ。

 理由は、言うまでもなくロケット団。奴らとあまり変わらないタイミングで訪れた為か、グルだと勘違いされてるみたい。冗談きついっすわ。

 

 くっそー、ウザいなロケット団。石探しでも下山でも邪魔しやがる。もう化石でも何でも見つけて、さっさといなくなってくれよ。

 

 ぐちぐち悪態つきながらも、山を降りるため歩く。

 

 現在、俺は洞窟の中を進んでいる。おつきみ山は鉱石が特殊なのか、洞窟内でも周囲がぼんやり見える。

 

 そこらの石ころに、ちらちらと視線が行くのはご愛嬌。欲しいものは欲しいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 パラセクトが道案内を引き受けてくれた。

 

 そう、あのパラセクトである。再会した時は画太郎作画で悲鳴を上げそうになったが、なんとか堪えた。

 

 てかお前ダメージ平気なのかよ。あ? パラス仲間に木の実貰った? さいで。

 

 

 促されるまま菌蟹の後ろをついていく。

 

 俺の事は、ロケット団の仲間だとは思ってない…って、そいつは嬉しいがどうしてよ?

 

 どうやら、俺が下っ端を蹴っ飛ばしているのを目撃したらしい。

 なるほど、味方同士ならあんな事しないってか。単純ながら説得力あるな。でも注目すべきところはそこじゃない。

 

 

 

 見てたのだ、こいつは。

 

 あの時には既に回復していて、俺を付け回していたのだ。

 

 

 

 こええ! つーか、そのあと月の石を求めてうろうろしてた時もずっと傍にいたことになる。

 

 足音しなかったんですけど。一応、周囲を警戒してたのに気づきもしなかった。

 

 ねぇ付け回して何する気だったの? バックスタブろうとしてたの?? 絶対そうだよね?

 

 …何も答えてくれない。

 

 今更ながら、信用していいのかなこの蟹。俺はお前という恐怖を一生忘れねえぞ。

 

 

 というか何で協力してくれるんだろうな。

 昨日の敵は今日の友って古い言葉がポケモン主題歌の歌詞にもあるけどさ。あんな体験した後じゃ、ちゃんとした理由が解らないと不安になる訳よ。

 

 思い切って訊いてみたら、あっさり教えてくれた。

 

 自分が進化できたのは、あのバトルがあったから。だから、そのお礼、と。

 

 それはそれは。有り難くも羨ましいこって。

 

 

 

 

 

 

 その後。ロケット団に出くわす事もなく、山を抜ける事ができた。

 

 道が続いている。俺の知識通りなら、この先にハナダシティがあるはずである。

 

 案内をしたパラセクトに礼を言う。

 気にするなと鋏を振ってくれた。なんだ意外と気さくなええ奴やん素敵やん?

 

 別れ際に、質問。

 

 どうしてお前は進化出来たんだ? 進化って、どうやるんだ?

 

 是非とも聞いておきたかった。俺だって進化したい。

 

 特別勿体振る事もなく、パラセクトはどこ見てんのか判別つかない両目をこちらに向け、言った。

 

 

 こいつだけは、絶対にぶちのめしてやる。絶対に。

 そう思ったからかもしれない。

 

 

 逃げた。全力で。

 あいつとは二度と関わりたくない。感謝はしてるが、それ以上は無いからな。

 

 

 

 

 

 




 ピッピの出番はなし。もちろんギエピーもなし。


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技11

閲覧、お気に入り、感想、誤字報告感謝します。
火曜日は更新できません。それ以外の日は毎日更新したいですが、鯖風味の性格では厳しいです。ですが、なるべく毎日続きを掲載したいと思っております


 ハナダシティに到着。

 ピッピを一目見れなかったのは心残りだな。生「ゆびをふる」を拝見したかった。何が起きるかわからんけど。

 

 ともあれ、ハナダシティだ。ここは見所が多いぞ。

 

 まず、『おてんば人魚』ことカスミがリーダーを務めるハナダジム。

 カスミかぁ。やっぱ、可能なら勝負してみたいよな。スターミーに勝つ算段がまったくないけど。

 

 次に。ハナダシティ内にあると言えないかもだが、ポケモンマニア「マサキ」の家。ゲームプレイヤーなら誰もがお世話になったであろう、ポケモン預かりシステムの開発者である。

 こいつ、本当にポケモンに変わってしまうのだろうか。元人間として、どういった経緯でそうなるのか、とても興味深い。

 

 で、忘れてはいけないのが、アレだ。

 

 

 ゴールデンボールブリッジ。

 

 

 

 ゴールデン  ボール  ブリッジ  !!!

 

 

 

 二回言った。

 いや、改めて思うけどすっげぇネーミングセンス。脱帽。

 

 この橋では、連続でポケモン勝負を挑んでくるトレーナー達が有名だ。

 まあ俺はトレーナーじゃないし、勝負を吹っかけられることもなく橋を渡れると思うが。

 「きんのたま」? 煮ても焼いても食えないアイテムなんぞいらん。ポケモンに金はいらない。玉は、ご想像にお任せしよう。俺は子供たちの夢を守る。

 

 

 下ネタはこのくらいでいいとして。

 

 ハナダシティの名所。最後の一つは、やはりハナダの洞窟だろう。

 

 

 

 …行かねぇよ??

 

 

 

 行くわけないじゃん。アホみたいな高レベル個体がわんさか出てくる魔境だぞ。わざわざ自分から地獄に突入する事もなかろう。

 

 いずれは、行ってみたいけどな。修行場所としては、これ以上に適当なダンジョンはあるまい。シロガネ山より簡単に入り込めそうだしな。

 

 てか、いるのかなミュウツー。あいつって今どういう状況にあるんだろう。

 俺ってミュウツーほどじゃないが、かなり特殊な境遇に居るよな。けっこうシンパシー的なものを感じなくね? もしかしたら仲良くできるかも。

 

 いや待て。ポケモン図鑑の説明だと、どのシリーズでもおっかない記述しかなかったぞ。アニメのミュウツーが理性的すぎるのかね。

 つーか、そんなポケモンがエスパータイプなのが一番の問題だよ。

 毒タイプ不利じゃねえか。タイプ一致の「サイコキネシス」なんか喰らってみろ。木端微塵になって汚ねぇ花火になるわ。

 

 

 よし決めた。ミュウツーなんか、俺知らない。世界に一匹しかいないポケモンだし、遭遇する事もまずないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴールデンブリッジ、何てことない橋だったな。バトルもイベントも無かった。

 

 五人組のトレーナーがいたが、みんな俺をチラ見するだけで絡まれもしなかった。「あのニドラン、一匹で何してんだ?」「散歩中じゃない?」てな具合だ。

 

 一人、橋の終点で突っ立ってる男だけは、品定めするかの様な熱い視線をくれたが。

 この男、ゲーム通りならロケット団だな。目つきがやばい。利用価値があるか無いか、それだけしか考えてない目だ。

 

 無視して通り過ぎようとしたが、こちらに向かってモンスターボールを振りかぶろうとしたので「にどげり」をかます。危ねぇぇ、手に持ってるのハイパーボールだぞこいつ!

 

 騒ぎになる前に退散! ポケモンを出す気だったのか捕獲目的なのか謎なままだが、嫌な予感がしたから蹴らせてもらったぜ。

 

 ただのトレーナーだったかもしれんが、まあいいだろ。ポケモンにだって、トレーナーを選ぶ権利くらいある。

 

 

 

 さて、マサキの家だ。

 

 玄関をノックしてみたが、反応がない。留守か?

 

 或いは、いるけど出られないってか。技術者ってのは集中すると意識が隔絶されるっていうイメージがあるし、今がまさにその状態なのかもしれん。

 

 じゃあ邪魔しちゃ悪いか。でも、せっかく金玉橋越えてまで会いに来たのに、このまま引き返すってのもな。

 

 だからと言って、下手に騒いで集中力を切らせてしまうのもどうか。何てったって、あの預かりシステムを開発したマサキだ。俺が騒いだおかげで何らかの研究がぽしゃりましたなんて事になったら、全国のポケモントレーナーに顔向けできない。考えすぎかもしれんけど。

 

 ちょっと、中の様子だけ窺ってみるか。こんな時に役立つのがニドランの聴覚。壁に寄り添って室内の物音を探る。

 

 どれどれ。…おん、何やら叫び声が聞こえる。

 

 

 誤作動。ポケモンと繋がって。あかん助けて。どないすりゃええねん。 …ほうほうなるほどね。

 

 

 そうか、災難は既に起きていたのか。頑張れよマサキ。

 

 

 前足で十字を切り、マサキ邸を後にした。

 

 

 助けないのかって? 馬鹿言っちゃいけない。

 

 俺だってそこまで人でなしじゃない。一瞬、助けに行くかと思ったよ。でも踏み止まった。

 

 今の俺は、ポケモンだ。

 

 人間なら苦も無く出来る事が、ポケモンの体だと難しくなったりする。

 例えば、そう。機械のボタンをポチッと押すだけの作業とかね。

 

 俺の前足は、足であって手ではないのだ。

 精密な動きが可能な「指」というモノがない。隣のボタンを誤って押して、さらにカオスな事態を引き起こす、何て事をやらかしそうで怖い。

 マサキの体がチビクロで不定形グループなバターみたいになっちゃうかも。そうなってからでは遅いのだ。

 

 うむ。やはり薄情かもしれんが、新たなメシアの到来を待ってくれたまえマサキよ。面倒だっていう理由も少なからずあるけどね。

 

 

 でも、ポケモンと繋がってしまったってのは、本当に興味あったんだがなぁ。

 

 ブルーな気分はごめんだからあまり考えてなかったが、人間の俺に戻りたいって気持ちはやっぱある。日に日に薄れていくが。

 

 マサキの研究がどんなものか理解できんだろうが、それでも人間に戻れるヒントか何かが得られるかと思ったんだが…。

 

 

 あ? でも、マサキ事件ってポケモンと人間がくっついたのであって、人間が丸々ポケモンになった訳じゃないよな。

 

 人間の体とポケモンの体。両方が失われずに残っていたから元に戻れた。

 

 じゃあ、人間の体が無い俺は、同じやり方では戻れない。そうだよな、そりゃそうだ。なんだよ考えてみりゃあ当たり前のことじゃねえか。元からあまり期待してなかったけど。

 

 

 ま、仮にここで俺が助けたら、次に訪問するかもしれない主人公(いるかどうかは分らない)が豪華客船のチケット貰えずに困るかもしれないしな。

 

 すまんが、マサキにはしばらく耐えてもらおう。

 な~に、ポケモンの姿ってのも、慣れるとけっこう面白いぜ? 

 

 用を足すのが、ちと屈辱だがな。

 

 

 

 




人間に戻る気はあった主人公。ですが、あまり拘ってないようです


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技12

毎日続けたいと言ったそばから一日空ける。


 さらばハナダシティ。次来るのは、もっと強くなってからだな。

 

 カスミとはバトル出来なかったが、今やりあう必要ねーんだよな。出来たらいいねって話で。出来たら、ね。

 

 まあスターミーに勝てる要素が皆無だから、逃げるようなもんだが。対抗手段がないんだもんよ。

 

 

 いやぁ、見ちゃったんだよね、カスミのバトル。挑戦者の少女を圧倒してた。

 

 どうやってハナダジムに入ったのかって? 自動ドアだからね、あのジム。

 

 使用ポケモンは二体。女の子が使ってたポケモンは、ウツドンとコイルだ。なるほどタイプ相性は悪くない。ポケモンの士気も高かったし、俺が見た感じでは「勝てるんじゃね?」と思わせた。

 

 が。カスミが一体目から出してきたスターミーが、やばいくらい強かった。

 

 まずさあ。浮いてるんだぜ、あの合体ヒトデ。

 飛行タイプや特性「ふゆう」でもないのに浮くって、反則だろ。特殊技が主力だから近づいてこないだろうし、その時点でハンデありまくりだが、単純な強さも当然たっっっかい。

 

 まず素早さ。なにあれUFO? 空中で自由に動きすぎだろ。

 さすがにずっと浮いてるって事はないと思いたいんだが、挑戦者が倒されるの早すぎたのかポケモンを入れ替えた時ぐらいしか降りてこなかった。

 

 そして耐久力。ウツドンやコイルのタイプ一致技を受けてもダウンしなかった。少なからずダメージはあったみたいだが、倒れるほどじゃない。

 

 トドメに、技の威力と多様性。使ってた攻撃技は、確認した限りは「サイコキネシス」「バブルこうせん」「れいとうビーム」だ。

 

 半ガチ仕様じゃねーか! どれを喰らっても死ねる自信がある。

 

 つーか最大の難点は変化技よな。「じこさいせい」は使われるとマジ辛い。女の子、半泣きになってたぞ。無理ゲーにも程がある。

 

 こいつは勝てんって事で、退散してきたのだ。竹槍で戦闘機を落とせるか? 答えはノーだ。

 

 あの化け物とまともな勝負をしようってんなら、最低限こちらも非接触技を使えなければならん。向こうが接近してこないのだから、必然そうなるわけだ。

 

 

 

 うーむ、あのスターミーの対抗策かぁ。あるにはあるんだよね、一応。

 

 主な策は「10まんボルト」などの電気技、「ふいうち」による奇襲、「ちょうはつ」での変化技阻止。

 

 しかーし、これらの策は技を覚えてるっていう前提なんだよな。

 

 「ふいうち」はタマゴ技だから、習得するのは絶望的。

 「ちょうはつ」はどうだろう。これからのバトルで相手を煽りまくってたら覚えるかも。

 

 いやダメだあああ。「ちょうはつ」はニドキングに進化しないと覚えられない。ぐおおお、ここでも進化というワードが俺に立ちふさがる! 

 いいかげん進化したいな。どうしてニドリーノになれないんだ。誰かがBボタン連打してんじゃないか? 誰かって誰だよ、ほんと。

 

 残る手段、「10まんボルト」。

 

 これが一番現実的だなぁ。ニドランでも覚えられるし、威力命中共に優秀。

 

 何より、ポケモンでもトップクラスの知名度を誇る技ってのがグッド。是が非でもモノにしたい。

 

 最悪レベル差によるゴリ押しってのもあるが、どんだけ鍛えりゃいいのかわからん。

 「つのドリル」を覚えるくらいならいけるかもしれんが、それなら何も考えず「つのドリル」連発すりゃいい話である。当たるまで何発でも。

 

 それはつまらんか。「つのドリル」、覚えても封印するかな。通常のバトルでは頼らないようにしよう。

 

 とにかく、そんなこんなで「10まんボルト」が必要だ。なら、向かう場所は決まっている。

 

 クチバシティ、クチバジム。そこのリーダー、マチス。

 

 奴のポケモンなら「10まんボルト」を使えるだろう。何がなんでもマチスと勝負して、コツを掴ませてもらうぜ。

 

 でも、そうなったらまたあのゾクゾクマゾ実験をしなきゃならんのか。他の手があればいいんだが、思いつかないんだよなぁ。

 

 ぐぐぐ、今回はかなりの難題だぞ。まず、あの用心深い性格のマチスに勝負してもらわなきゃならん。

 上手く勝負に漕ぎつけたら、今度は奴の手持ちから「10まんボルト」を使えるポケモンを引きずり出さなきゃいかん。ライチュウとかな。

 で、その「10まんボルト」を何回も受けて、体内に電力を生み出すコツを掴む…って。

 

 

 うわぁ、無理くさ。不可能だろこれ。

 

 

 が、まるで勝ち目のないスターミーに挑むよりかは、まだやれる気がするぞ。

 

 とにかくやってみますかね。まずはクチバに着かなきゃならんな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クチバへの道中、何度か野生のポケモンとバトルする。ニャースやアーボ、サンドと戦った。

 

 ニャースは「ひっかく」してきたが、あのパラセクトの鋏に比べたら玩具の爪も同然である。真向から受け止めたら「どくのとげ」が発動、泡吹いてひっくり返った。

 

 アーボは取っ組み合い。目が合った瞬間、脱力感を感じたので「いかく」持ちであろう。

 まあそれでもこっちの方が力が上だったので、「まきつく」を引きはがして尻尾を咥え、振り回して地面に叩き付けた。

 

 サンドは「あなをほる」をしてきた。地面タイプの「あなをほる」は振動を感じられないので厄介なんだが、岩の上に避難することでやり過ごす。「あれ??」てな具合に地面から頭を出したサンドに容赦なく「つのでつく」。卑怯とは言うまいね。

 

 ほぼノーダメージでやり過ごした。順調に強くなってるぞ。良きかな良きかな。

 

 野生のポケモンなら、そうそう負けはしないレベルになってきたな。それでも、タケシのイワークやカスミのスターミーには及ばんけど。

 

 さらに数回バトルし、日が暮れたので適当な木の根元を掘って寝床とする。この穴掘りにも慣れたもんだ。

 朝まで眠り、日の出と共に起床。健康的な目覚めで良い気分。

 

 で、久々の技チェック。

 そろそろ「どくづき」覚えてくれないかな~なんて期待しつつリストを頭に思い浮かべる。

 すると、二つの新技を会得していた。その二つってのが、

 

 

 「どくづき」

 「あなをほる」

 

 

 …………。

 

 

 ん? 

 

 なんか、違うの覚えてる。

 

 

 

 




苦労しておつきみ山を越えたと思ったら、金玉橋前のライバルにボコられる。
じゃあ先にジムだ! と突撃したら、「バブルこうせん」に消し飛ばされる。
一番最初のポケモンの記憶。思い出すものですね


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技13

誤字報告感謝します。設定はゴリ押すもの。メリハリは必要。


 

 

 おれは いまから ほるぜ !

 

 

 うひょおおお「あなをほる」楽しいいいい。もりもり掘れるぜどうなってんだポケモンの技ってぇのはよおお!??

 

 ほれほれどうしたマダツボミ! さっきまでの威勢はどこ行ったんだ食虫植物め!

 

 ああん「つるのムチ」か?! 「あなをほる」で避けちゃうもんね残念でした。

 

 地中を進み、マダツボミの真下に到達。おお、おお、狼狽えておるわい。

 

 

 1、2の3。 ドーン! はいドーン!! 俺の勝ちーー!!!

 

 

 お次はサンドか?! かかってこいやつぶらな瞳ちゃん。

 

 早速「あなをほる」か。「あなをほる」合戦しようってか? 上等だコラァ!

 

 

 

 俺の負け。本職には敵いません。

 

 

 

 調子に乗るなって目をしてたな、あのサンド。地中でものっそい「ひっかく」された。すいませんでした先輩。

 まあ「あなをほる」では負けたが、その後の地上戦で制したけど。

 

 

 ふう、落ち着いたぜ。久々にテンション上がりまくったな。

 

 いいね、地面技。「つのでつく」しか有効打のない対毒タイプ戦で、大活躍してくれる。まあ今まで主力技として頑張ってくれた「つのでつく」や、それに恩恵を与えるシルクのスカーフの影が薄くなるのは寂しいが。

 

 やっぱ地面技は優秀すぎんよ。毒炎岩鋼電気と弱点特効の範囲も広い。

 

 当然、欠点はある。

 浮いてる敵には当たらない。これは常識だな。

 一度地面に潜る必要があるから、その分攻撃に移るまでにタイムラグがあるってのも無視できないところだ。攻めを途切らせたくない場合は、今までどおり「つのでつく」などに頼る事になるだろう。

 

 あと、潜ってる時に「じしん」などで地面を揺らされる事。あまり想像したくない。

 そんな事されたら、体ぐちゃぐちゃになるんじゃなかろうか。ひええ。

 

 

 しかし、ほっとしたぜ。

 

 行動の繰り返しや、特訓によって技を覚えられるってのが立証されたからな。これで、技のデパートに一歩近づいたな。

 寝る前や、木の実を隠す時なんかにちょいちょい穴を掘ってたから覚えたんだろう。日々の習慣に感謝。

 

 にしても不思議なもんだ。「あなをほる」で地中にいる時なんだが、地上のどの辺りに敵がいるのかがぼんやりと解るのだ。

 で、どういう原理なのか、いざ攻撃しようとしたらジェット噴射みたいに地上へ急浮上できるのである。理屈もくそもない。スゴイね、ポケモン。

 

 使い手が地面タイプならば、もっと自由に地中で行動できそうだ。ニドキングは毒地面の複合タイプだし、進化が待ち遠しい。

 

 あ。そういや「どくづき」も覚えてたな。ゴメンね、「あなをほる」が嬉しすぎて。

 

 

 もちろん「どくづき」を覚えたのもデカい。

 

 何たって、タイプ一致の物理技。追加効果の毒も素晴らしい。

 

 うん、素晴らしいんだけどね。覚えるべくして覚えたっつーか。すまん「あなをほる」のインパクトが強すぎたよ。

 

 物理火力が増したのは素直に嬉しいんだけど…って、なんだありゃ?

 

 ジュンサーさんが、息急き切ってやってきたぞ。お供にガーディを連れている。なにを焦ってるんだ、あのねーちゃん。

 

 例によってニドランの聴力に頼る。

 

 なになに、「穴を掘りまくって五番道路を荒らしてるポケモンがいる」 か。どこのどいつだよ。

 

 

 

 俺だ。

 

 

 

 ヤバい、どうしよう。草むらだから、見つかってはいないが。

 

 あ。ガーディがこっちの方を見てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤマブキシティへのゲートを発見。ゲームやってた頃は、いつになったら通行止めってのが解除されるんだよ! とヤキモキしていたなぁ。

 

 

 にしても、ガーディ恐い。犬並みの嗅覚でどこまでも追いかけてきやがる。

 

 警察のポケモンに手荒な真似など出来るはずもなく、あっさり御用。めっちゃ怒られた。

 ガーディにも「おまえはしょうがない奴だ!」と肉球パンチをべしべし喰らった。すんません反省してます。

 

 その後、一人と二匹で俺が無意味に掘り返した穴を埋め(これってジュンサーさんの仕事なの?)、さらにちょっとした小言を受けて解放された。

 保健所行きじゃなくて良かったぜ。自由気ままなポケモンのする事、よっぽどな事件でもない限り捕まえるようなことはしないらしい。コレ、『よっぽど』な内に入らないんだ。

 

 別れ際に「傷だらけのニドラン? どこかで聞いたような…」と呟いていたので、ダッシュで逃げたがな。ニビのジュンサーさん、ちゃんと報告してたのね。

 

 

 ゲートの警備員にジュースを渡す事もなく、あっさり通過。街の中へ。

 

 おおお、さすがはヤマブキシティ。カントー一の大都会!

 

 何でか知らんが、長〇剛の『とんぼ』が脳内に鳴り響く。そこは『大都会』じゃないんかい。どうでもええわ。

 

 さて。せっかくのヤマブキシティだが、残念ながら今回は素通り。

 

 まあヤマブキにも名所はあるんだけど、今はクチバシティ優先だ。ナツメ? 勝てねーって。

 

 でも、ジムの場所くらいは把握しとくか? 

 

 

 てことで、一日中ヤマブキを走り回った。

 

 広いよ、ヤマブキシティ。まさに人工迷路。植物なんて生えてないから、何も食えてない。路地裏に入り込んだらニャースの群れに追い掛け回されるし、さんざんである。

 

 空腹に耐えながらも、ヤマブキジムを発見。隣にあるのは、格闘道場か?

 

 あ~、なんとか目的は達成できたな。えらい疲れたけど。溜息を吐きながら引き返そうとしたら、ジム前のベンチに腰かけていた少女が口を開いた。

 

 

 「来たのね。来てしまったのね」

 

 

 んあ?

 

 

 何やねん? と振り向いたら、ベンチに座っていた少女が立ち上がり…うおおぉ?! 

 一瞬で目の前に?! ヤードラット星人か!

 

 「あなたが来る予感は、二か月以上前からあったのよ」

 

 俺を見下ろして、そう言う。なにこの娘、サイコさんなの?

 

 …いやいやちょいまち。

 

 この娘、もしや本物の「サイコ」かも。いや危ない奴って意味じゃなくて。

 

 赤い服に同色のスカート、黒いタイツといった格好。長い黒髪。

 

 まさか、ジムリーダーのナツメ?

 

 「ヤマブキジムリーダーのナツメよ。私とバトルしに来たのね。分っているわ。今日は挑戦者もいないから、特別に」

 

 ごめんなさい。さようなら。そんな元気ないです。前足を顔の前で振って拒否。

 

 「…ポケモンフーズ、食べる?」

 

 目の前に、美味そうな匂いのする固形物を差し出される。

 

 いらないっす。なぁなぁで勝負にもつれ込むのが見えてるんで、遠慮しときます。まだ勝ち目がないだろうし。

 

 いや~びっくりした。まさか、ナツメが待ち構えていたとは。本物の超能力者は違うね。さっきのって、テレポートだろ? この人、格闘タイプのポケモン相手なら生身で勝てるんとちゃいますか?

 

 ささっと退散。後ろから「あ」って声が聞こえたが、無視させてもらった。

 

 しかし、あのナツメ。思ったより理性的な目をしてたな。アニメのホラーちゃんが嘘のようである。

 

 人混みをするすると抜け、ヤマブキシティの南のゲートに到着。おえ、街の騒がしさに酔ったかも。大自然の空気が恋しいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あなたがクチバを目指している予感は数日前からあったのよ」

 

 回り込まれていたよおおおおお! エスパー少女こええ! キャリィィィィ!!

 

 戦慄していると、ナツメがモンスターボールを掌の上に呼び出した。表現、間違えてねえぞ? 呼び出したのだ、本当に。

 

 中から出てきたのは、フーディンだ。うっそやろお前。

 

 マジでバトルすんの? ニドラン対フーディンって、苛めなんてもんじゃないぞ。

 

 げんなりしていたんだが、今回はバトルはしない、と言う。え、どしたの?

 

 …嫌がっている相手と無理矢理バトルはしない。って、いやそれはそうと言うか、俺だってそうなんだが。

 

 じゃあ何のためにフーディンを? 

 

 「あなたの中に、微弱な念動力を感じる。それを起こしてあげる」

 

 勝手に何か言ってるぞおい。なんなの何する気なんだよ恐いんだけど。俺、どうしてもアニメのあんたのイメージが強く残ってて拭い去れない恐怖心ががが。

 

 フーディンが、目を閉じて両手のスプーンをこちらに向ける。

 

 集中してんのか? 攻撃するってわけじゃなさそうだが。

 

 

 おや? 体に違和感。ぶるぶる震えてる。

 

 

 

 あ、痛い。

 

 

 あたま痛い。

 

 

 痛い痛いすっごく痛いなんか脳みそグネグネしてる感覚あるんですけどこれ大丈夫なんってか気持ちわるウォエボボボボ。目ん玉が勝手にグルグルグル。

 

 

 …そんなこんなで。

 

 

 

 

 「ねんりき」覚えました。

 

 

 タマゴ技のはずなのに。

 

 

 

 




初代最メジャーの一角、フーディン。ナツメもライバルも、最も警戒しないといけないのはこの髭です。


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技14

サンムーン、買おうか迷ってます。
このお話がbw2までのシステム構成というのは変わらないですが。


 「ねんりき」を覚えたのは思わぬ収穫だった。

 

 が、使いこなせるかどうかは別問題である。

 

 痛いのだ、頭が。

 

 「ねんりき」を使おうとすると、頭がやばいくらい痛い。

 

 どういう事かとナツメを見ると、目が泳ぎまくっていた。彼女にしても、誤算だったらしい。

 

 とにかくモノに出来なければ意味が無いので、フーディンから「ねんりき」のレクチャーを受ける。知能指数が離れすぎてると会話にならないって聞いた事あるが、非常に分りやすく教えてもらえた。これからはマスター・フーディンと呼ばせてもらおう。

 

 

 

 やはり、先生がいると違うな。程なくして及第点を戴けた。

 

 その間ナツメは突っ立ってるだけで何もしなかったが、時たまマスターとアイコンタクトを取っていた。こいつらテレパシーも使えるのか?

 

 しかし、「ねんりき」を使えるようになったとはいえ、頭痛が完全に収まったわけでもない。

 

 あまりに質量のある物を対象にしようとすると、発狂しかねない激痛が襲ってくる。リアルで北斗神拳を喰らったらこんな感じなんじゃなかろうか。笑えねえ。

 

 俺が毒タイプだから、拒否反応的な痛みなのだろうか? いや、違うだろう。タイプが一致しないから拒否反応とか、ポケモンという生物からしたらあり得ない話だ。

 

 どういう事っすかね? エスパー技を覚えたてのポケモンって、皆そうなの?

 

 マスター・フーディンを見る。彼は、俺の視線をパスするかのようにナツメを見た。ナツメは一つ頷き、俺の傍に歩み寄って言う。

 

 

 「たぶん、だけど。あなたが超能力を信じていないから」

 

 

 え、そんな理由? 

 

 

 てかフーディンさん通訳できんのかよやべぇ。簡単な意思疎通だけ? ナツメの超能力がずば抜けているから?? それでも凄いって。

 

 

 話を戻す。

 曰く。超能力とは、素養さえあれば誰でも使えるもの。万人が、とまではいかずとも、鍛えれば多くの者が扱えるようになる、と。

 

 引き継ぐようにフーディン。お前は心の奥底で、「使えるはずがない」と思い込んでいる。そんな者に、半ば無理矢理「使えない力」を与えたから頭が混乱しているのではないか。

 

  

 …なるほど。難しい話じゃないな。俺なりに、言われた事を紐解く。

 

 ナツメ達の説明は、ある意味正しい。

 

 

 

 俺は、いまだに信じてなかったのだ。

 

 

 

 この世界、ポケモン、自分という存在。成って初日で納得したつもりだったが、しょせんはつもり。夢のようなものだと捉えていた。

 

 

 「今の俺はポケモンだ。完全に認めてなかったが、それを認めなさい」

 

 

 こういうこった。全てを受け入れろの精神だ。

 

 

 …もしや、今後の技事情にも関わってくる問題かも。

 

 レベルアップ技だけを順調に覚えてたのは、姿がニドランだったからか?

 ニドランならニドランの技が使えて当然、そんな考えだったから問題なかった。頭部に毒針があるという動きようのない事実があったから、毒タイプの技が使えたのかね。

 

 が、元人間という感性が、それ以外の技の習得を邪魔しやがるのか。「あなをほる」ならともかく、人間が「10まんボルト」を発電する? そんなの無理、とか考えていたのだろう。深層心理で。

 

 

 初日で納得してたはずだったんだがなぁ。結局は、つもりだったのね。

 

 

 ニドランの皮を被った人間。それが、俺だ。

 

 

 ポケモンになった、という現実を、心の底から受け入れてなかった。「高度なモノマネ」を楽しんでただけなのだ。

 

 

 だから、「ねんりき」をうまく扱えない。ポケモンには出来て人間の俺には不可能っぽい技だと、出来なくて当然と思い込んでしまう。タマゴ技を無茶な方法で覚えさせたって理由もあるかもしれんがな。

 

 

 

 あああ、なんだかなぁ。今まで無意識に目を背けていた現実を突きつけられたな。

 

 暗いのは嫌いだから悲観する気はないが、それでもちょっと堪えた。今夜はいつもより深く穴を掘って眠ろう。気持ちの整理をしたい。

 

 

 

 そういえば。ナツメが言っていた、俺の中にある微弱な念動力って、何だろな。

 

 本来ならタマゴ技とかで覚えていたはずの「ねんりき」が俺の心構えのせいで覚えられなかったから、その残滓ってか未練やら何やらが残ってたのかね。

 

 まあ俺の存在そのものがオカルトの極みだし、あんまし深い意味はないか。ポケモン世界では、超能力って普通に認知されてるもんだしな。

 

 

 てか、そもそもナツメはどうしてこんなお節介を?

 

 訊いてみたらそれこそ深い意味ではなかった。

 

 

 ヤマブキジムは超能力者の養成施設でもある。だからという訳でもないが、素質ある者に手解きを受けてもらいたかった。

 

 

 うん、そうか。そりゃ有難い。タケシといいナツメといい、ジムリーダーってお人好しばっかなのか? ゲームでの彼らを思い出すと、あながち間違いでもなさそうだ。

 

 でも、あんな痛い目に合わせられるとかね。てか強制だったやん? 感謝してるけどさ。

 

 

 またしても目を泳がせるナツメ。

 

 

 この娘、意外とポンコツなんじゃないかな。強い力を持つが故に、ちょいとコミュニケーション能力に難があるようだ。致命的ってほどでも無いと思うんだが。

 

 

 誤魔化すようにポケモンフーズを貰った。いやバトル展開はもうないだろうし腹も減ってるから食うけどさ。

 

 この娘が、数年後には女優になってるかもしれんのだから、世の中分らないもんである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南のゲートを抜け、ヤマブキシティを去る。

 

 なんだかんだ良くしてもらったし、次来た時にはナツメとバトルしないとな。

 

 マスター・フーディンも「戦える日を楽しみにしているぞ」とかって強者オーラ全開だったし、こりゃエスパー対策を本格的にしとかないといかん。

 

 というかあのフーディン、何者だったんだ。

 

 「ねんりき」の指導を受けている時に「考えるな、感じろ」とか言ってた。お前はエスパーであって格闘タイプじゃないだろと。

 

 別れる時も「決して諦めるな。自分の感覚を信じろ」って…。どこの遊撃隊だよ。任〇堂繋がりか?

 

 

 つらつら考えながら六番道路の草むらを歩いていると、野生のナゾノクサに遭遇。戦闘に入る。

 

 ちょうど試し打ちしたかったので、早速「ねんりき」発動!

 

 

 

 うがあああ痛いいぃぃぃ!!!? 頭が割れるぅぅ!!!

 

 

 

 ナゾノクサを浮かせ、地面にズドン。倒すには倒せたが、頭痛と吐き気が…。てか吐いた。ナツメから貰ったポケモンフーズ、消化しきれなかったよ。

 

 くっそ、やっぱりキツイな。こりゃ簡単には慣れそうにない。

 

 「ねんりき」は攻めて良し守って良しの万能技(ゲーム以外の作品では)だが、使いこなすには相当な熟練が必要だ。自分の体を浮かせたりとか、敵の攻撃の軌道を変えたりとか妄想を膨らませていたのになあ。

 

 まだまだポケモンになりきれてないって事なんだよね。自覚する度に、SAN値が削れてる気がする。いかんいかん、危ない危ない危ない。

 

 

 色々と吐き出しながら、その日は就寝。道路の目立つ場所に穴は掘らない。またジュンサーさんに追い掛け回されたくないしな。

 

 

 

 翌朝。喉が渇いたので近くの川で水分を取る。

 

 したらヤドンがいた。ヤドンだし、こっちから刺激しなけりゃ大丈夫かな、何て呑気に構えてたら襲いかかってきた。血気盛んな奴が多いなポケモン。

 

 水エスパーの複合タイプなので、仮想スターミーに…。

 

 ダメだなこりゃ。当たり前だが、素早さが違いすぎる。

 

 ヤドンが「ねんりき」を使ってきたが、相変わらずタイプ一致の弱点は痛い。体力も増えてきただろうし、一撃で倒されるなんて事はないが、痛いものは痛いのだ。

 

 頭痛を堪えて「ねんりき」対決してみたりもしたが、普通に押し負けた。パワーも技術も足りない。てか、俺が頭痛に耐えられないんだよ! 課題が山盛りだ。

 

 とりあえず「どくづき」で倒す。「つのでつく」、いよいよ出番がなくなってきたなぁ。

 

 

 ヤドン数匹を相手に「ねんりき」の練習。途中、乱入してきたギャラドスには度肝を抜かれた。お前こんな所に生息してたんかい!

 

 戦わなかったけどね。だって、水から上がろうとしないんだもん。

 

 俺の「ねんりき」ではギャラドスをどうこう出来ないので、逃走。後ろからものすごい吠えられた。

 

 

 …朝っぱらからうるせえってか。そりゃ切れるわな。

 

 

 

 

 

 




第二世代のフーディンは、三色パンチを使いこなす武人でした。当時は特殊技扱いだったのです。


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技15

サンムーン、買いました。プレイ中です。


 一週間ほどクチバに滞在しているが、マチスには会えず。

 

  

 

 クチバジムはギミック有りの施設だ。アホみたいな数を用意されたごみ箱の中から、ジムリーダーへと通じるゲートの開閉スイッチを二回連続で引き当てなければならない。

 

 ポケモンである俺も、マチスに会いたいなら例外ではない。クチバジムのごみ箱を漁る毎日。他の挑戦者に混じってゴミ漁りするニドラン。シュールである。

 

 最初は、野良犬の如く煙たがられていたがな。邪魔したりせず大人しくゴミを漁っていたら、いつの間にか受け入れられてた。うむ、トレーナーたる者、ポケモンには寛容でなくちゃならん。ジム所属のトレーナーである電気グループの兄さんや、ジェントルマンのおじ様とは既に顔馴染みだ。たまに木の実くれるんだぜ。

 

 

 

 思ったけど、クチバジムって無駄にハイテクだよな。

 

 このゲートシステムとか、ほんと技術の無駄遣いだろ。プッシュされる度にごみ箱間を移動するスイッチとか、誰がスイッチを押したのかを完全に認識してるとか、謎技術すぎる。どういう仕掛けなんだこれ。指紋認証とかしてんのか?

 

 

 

 あ? クチバジムに入るのには「いあいぎり」が必要?? 

 

 

 

 ゲームと違って、アグレッシブな動きが許されるからなぁ。木登りはトキワの森で習得済みだ。

 

 ま、あの木も謎要素の一つだが。斬ったそばからにょきにょき生えてくる。ト〇ロでもいるのかな。

 

 

 そうそう、ジムトレーナー専用の地下通路があるのよね。いちいちあの木を斬ってジムに入るのは手間だから、それを配慮したのだろう。関係者以外は立ち入り禁止っつーか、存在すら知らされてないけど。

 俺はニドランの聴力で盗み聞きした。まあ知ったところで使えないけどな。出入り口、私服のスタッフが見張ってるから。

 

 

 実は待ち伏せ作戦なんかも試したんだよ。地下通路出入り口の前で丸一日出待ちしてみたり。

 

 

 が、ダメ。勤務帰りのジェントルマンがこっそり教えてくれたが、マチスは独自のルートでジム内外を行き来しているらしい、と。

 どうやって、どんなルートで、なんて情報は部下にも教えられていないらしく、それ故に、彼に会うなら挑戦者達と同じように面倒な作業をこなさなければならない。

 

 

 マチスの野郎、回りくどい造りにしやがって。

 

 

 つーか、第二スイッチみつからねぇぇぇ!!

 

 

 第一スイッチまではいいんだよ。でも第二はマジ見つからない。

 

 第一を押したら、約十秒程の第二スイッチ受付時間があるんだが、これが無理。もたもた探してたらすぐタイムオーバー。

 

 うーん、ゲームと同じならば、第一の隣に第二スイッチが隠れてるはずなんだがな。この世界はそうでもないのか。

 

 スイッチも、なんでゴミ箱の底に張り付いてあるんだよ。探しにくいわ。

 

 俺ニドランだからさ、人間みたいに長い腕でゴミかき分けるってのが不可能なんだよね。頭から突っ込んで探さなきゃならん。そんな事してるもんだから、十秒ぽっちだとゴミ箱一つ漁るのが精一杯なのだ。

 

 あかんイライラしてきた。叫びたい。寧ろ一週間も我慢したのを褒めて……。

 

 

 お!? 第一スイッチ発見! ポチッとな。

 

 

 おっしゃ急げ急げ。とりあえず右隣のゴミ箱を漁って…。

 

 

 無い。そして時間切れ。ゲートがロックされる。

 

 

 

 

 ……ぬうううぅ、ふ お お お お お お ! !

 

 

 

 

 お の れ  マ チ ス ! ! !

 

 

 

 「うおおおおああああああ見つけたぞおぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 は!!?

 

 

 青年のトレーナーが、映画『プラトーン』を想起させる姿勢で雄叫びを上げていた。

その場にいる全員が、即座に理解する。彼は、勝ったのだ。この理不尽極まりない運ゲーを打ち破ったのだ。

 

 

 ワッと歓声が上がった。皆が、惜しみない拍手を送る。俺も前足を叩いて祝福した。

 

 

 「ありがとう! 俺、行ってくるよ!」

 

 

 満面の笑みを浮かべ、開いたゲートを潜る青年。

 

 彼について行ったらいいんじゃね? なんて考えてはいけない。普通に警備員いるからね。

 

 数多の視線に見送られた青年。ゲートが閉じて数分後、出てきた彼の頭は電気技によるためか立派なアフロヘアーとなっていた。

 

 

 …負けたんだな。てか、なんでお前まで電撃を受けている。余波か。

 

 

 しょうがないよね。ジムリーダーだもん。簡単には勝てないわな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。ジムが閉まるので、すごすごと引き上げる俺と挑戦者達。

 

 トレーナーとの戦いも経験したかったので、彼らにはバトルを申し込み、そして勝利している。

 

 

 対トレーナー戦についての感想だが、特筆すべきは二点。

 

 

 まず一点。トレーナーの指示から相手の攻撃を予測できる。これはタケシ戦でもある程度通用した戦法だな。

 

 いや卑怯かどうかって言われたら卑怯だけどさ。しょうがないじゃん、聞こえちゃうんだから。

 

 ポケモントレーナーって、どんな無口な奴でも基本は大声で指示をだすからな。「〇〇、オーロラビーム!」とか「あやしいひかり!」なんて言われたら対処しちゃうでしょ。

 

 タケシがイワークに無言の指示を送っていたが、あれこそが卑怯というか異常なのだ。トレーナーとポケモン、よっぽど以心伝心してなきゃあんなのは不可能である。

 

 

 で、二点目。トレーナーという存在の鬱陶しさ。

 

 

 どういうことか。例えば、俺とトレーナーのポケモンがバトルしていたとする。

 

 俺は自分で考え自分で行動し、死角に回られた時も自身の判断で咄嗟の対抗策を用意、実行せにゃならん。その場その場での臨機応変なアドリブが必要なのだ。

 

 が、相手のポケモンにはトレーナーという言わば『第三の目』に相当する存在が味方している。だから攻撃だけに専念しやすい。お分かりだろうか、この圧倒的なアドバンテージ。

 

 

 戦場の情報は(トレーナーを介してだが)全て相手に握られてしまっているのだ。

 

 

 俺が死角に回り込めばトレーナーに教えてもらえるし、「あなをほる」等をすれば「下からくるぞ、気を付けろォ!」と注意喚起される。

 「どくづき」しようとしたら、回避に徹しろと助言。さらには、弱点や癖なんかも見抜かれる。たまったもんじゃない。

 

 まあそれもトレーナーの力量によるが。初心者トレーナーなんて、ポケモンに攻撃させることしか頭にないからな。虚を突く裏をかく、やりようはある。

 

 タケシみたいなレベルになってくると、手持ちも強力な個体なのでゴリ押しも難しくなってくる。ポケモンも考えて行動するからな。こちらが自分で考えて即座に動けたとしても、それは相手のポケモンも同じ。強い奴なら指示を待たずして対応してくる事もあるだろう。

 

 うむ、トレーナーにもピンキリはあるよね。対トレーナーなんてまだそんなに経験してないから、分らない事も多いと思うけど。少なくとも、クチバジム所属のトレーナーとマチスへの挑戦者達には俺は負けてない。だからって天狗にはならないがな。

 

 

 ちなみに、何人かに「ゲットさせてくれ」と迫られたが、シルクのスカーフを見せびらかすと大人しく諦めてくれた。タケシ様々である。

 

 「じゃあ、お前のトレーナーは何処にいるんだ…?」と当然の疑問も呟かれたりしたが、そこは追究せんでください。無闇な詮索は嫌われますぜ。

 

 

 

 

 一匹で、夜のクチバシティを歩く。海が近いので、潮の香りが仄かに漂う。嫌いじゃないぜ、この匂い。

 

 さっさと街を出て草むらに穴掘って寝ますかな。

 

 て考えてたら、街の入り口付近でピカチュウに絡まれた。なんやねん俺眠いねん。

 

 ぴっかーぴかぴかちゅーちゅー。あ~うるせぇ、何をそんな張り切ってんだよ電気鼠。夜だぞ近所迷惑だろ。

 

 バトル? 嫌だよダルいよ。

 

 いつもなら断る理由はないんだが、今の俺はお疲れなのだ。相手はピカチュウだし「10まんボルト」を覚えているなら習得の参考になるかもしれないが、眠気という最強の欲求には勝てない。

 

 

 一日中ゴミ箱漁ってて、神経すり減ってんだよあらゆる意味で。ほれどいてくれ。

 

 

 …一向に退いてくれない。ほっぺの電気袋をバチバチ鳴らして臨戦態勢だ。なんだこいつ。

 

 めんどくさいので、無視して通り過ぎる。そしたら、ケツに「でんきショック」を喰らわせてきやがった。なにしやがんだコラ!

 

 振り向くと「ヤル気になったか?」とドヤ顔晒すピカチュウ。問答無用で攻撃しておいてドヤるとか、通り魔か己は。

 

 青筋浮かび上がらせて睨むと勝手に何かを納得したのか、ピカピカ語り始めた。興奮しまくってて全部は聞き取れなかったが、要約するとこうだ。

 

 

 「トキワの森で世話になったピカチュウだ! なんやかんやで色んな経験と出会いがあって偶然お前を見つけたぞ! ここで会ったが百年目、いざリベンジ!」

 

 

 こんな感じ。こいつ、トキワの森に棲んでたピカチュウかよ。よくまあここまで来たもんだ。出会いがなんだって言ってたから、誰かの手持ちになったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 というかね。

 

 

 

 

 

 

 

 知るかよ!! トキワの森にピカチュウ何匹いると思っとんのじゃ!!

 

 

 俺がどんだけの数のバトルをあの森で経験したと思うてけつかる! ピカチュウなんざ、数えきれんほどバトルしたわ。そんな一匹一匹区別して覚えてられるかよ!

 

 

 お前なんざ知らん! 正直に吐き捨てたら、逆上して襲いかかってきた。

 

 無意味に発光しやがって、眩しいんだよ。もういい俺も怒った。迎え撃ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピカチュウが全身を震わせ、電気を発する。先の「でんきショック」とは電圧が桁違いだ。もしや「10まんボルト」か。

 

 一瞬「ほうでん」かとも思ったが、電気が明確に俺を狙ってきたので違うだろう。

 

 反射的に喰らいにいった。痛い。が、存外ダメージは受けない。

 

 痛いっちゃー痛いんだけどね。俺、けっこう頑丈らしいからな。クチバのトレーナー達も、その点にやたらビビッてたし。

 

 

 とにかく「10まんボルト」を受けれたが、刺激が足りない。「おだてる」でも使って特攻をブーストしてやるか?

 

 

 もっと撃ってこい! と催促してみたんだが、あまりに何度も受け続けるとさすがに厳しいので、切り替えて即決着をつける事に。

 

 「10まんボルト」って、全力で放電してるためか撃ってる方は身動きが取りづらいらしい。そこを突く。

 

 挑発されたと思ったのか、目つき鋭く空中に飛び上がったピカチュウ、発電。電撃が襲ってくる。

 

 「10まんボルト」を直撃されるが、意に介せずそのまま直進。飛び上がり、胴体に「どくづき」をぶちかました。

 

 それぞれ、落下。

 

 ピカチュウは地面に叩き付けられたが、俺はそのままの勢いで「あなをほる」。ダメージで怯んでいたピカチュウに地中からの攻撃がヒット。

 

 これでピカチュウはダウンした。リベンジならず。先に仕掛けたのは向こうなので、文句はなかろう。

 

 

 

 

 

 ふんっと鼻息。あ~あ、アドレナリンどばどば出ちゃったじゃん。これから就寝のつもりだったのによ。

 

 

 苛立ちと興奮が収まらずうろうろしていたら、少年の叫び声が。やばい、誰かきた。

 

 

 すぐさまその場を離脱。傍から見れば、俺がピカチュウを一方的に襲ったように取られるかもしれんからな。てか誰だってそう思う。悪党ご用達の毒タイプと、みんなのアイドル『ピカチュウ様』だぜ? そういうタイプ差別なんか無いと断言したいところだが、今回ばかりは相手が悪い。

 

 

 走ってきた人物とすれ違い、逃走。街から離れる。なんだか、こっちが敗者みたいだな。

 

 

 去り際、ちらりと後方確認。気絶したピカチュウに寄り添う人物…少年か?

 

 

 あのピカチュウのトレーナーなのだろうか。モンスターボールを取り出していたが、捕獲かボールに戻すためなのかは分らん。

 

 暗くて表情も見えなかった。ま、いいか。他人事だしな。

 

 

 

 




 自分にしては長めになりました。次回からは文字数が減るかもです。


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技16

 謎の通り魔ピカチュウを退けた、その翌日。

 

 

 魔の二段スイッチ地獄を突破した。運ゲーは運ゲー。いつかは攻略できるもんだ。

 

 

 で、奥の部屋でついにマチスと御対面。巨大モニターでジム内の様子は筒抜けだったらしく、会うなり「ベイビー、ゴミ漁りは楽しかったデスカ? HAHAHA!」と大笑いされた。よし、殺……倒す。

 

 倒すのが目的じゃなかったんだけど、ムカついたから。こんなにも人間に対して「どくばり」をぶっ刺したくなったのは初めてだ。

 

 

 

 ひとまずバトルフィールドへと移動する。ポケモン単体でのチャレンジャーなど珍しい、と俺に興味深々な元軍人。いや珍しいってか、まずいないと思うんだけど。んな事より、前を歩くマチスの尻に自慢の毒針を突き立ててやりたくてしょうがない。ケツの穴増やしてあげたいです。

 

 

 廊下をちょこっと歩き、バトルフィールドに到着。フィールドの両端に互いが陣取ると、審判役の兄さんが現れる。俺の方を落ち着かない様子でチラ見しているが、まあ当然の反応だよね。トレーナーがいないのだから。

 

 フィールド中央に立った審判が、バトル開始の宣言をする。

 

 

 「これより、ジムリーダーのマチス対、チャレンジャーの…。あ~、ニドラン(♂)のジム戦を開始します!」

 

 

 律儀だなおい。ニドランでいいよ。いちいち(♂)とか言ってたらテンポ悪いよ?

 というか、しっかりチャレンジャー扱いなのね俺。いいのかこれ。別にバッジは欲しくないんだけどさ。

 

 

「戦場を共に駆け抜けたエレクトリックポケモン、見せてやりマース!」

 

 

 こっちはこっちでベタベタな喋り方だな、マチス。いい具合にイライラさせてくれる。

 

 

 でもいきなり ライチュウ 出してくるとかね! こいつ、たぶんだけどマチスのエースだろ? 最初はビリリダマとかその辺じゃねえのかよ?!

 

 

 あ? 挑戦者が手持ち一体だから、初っ端全力でお相手します? そーですかそーですよね。手持ち一体ってか単騎掛けというか。俺自身がポケモンだからややこしいな。

 

 

 で、バトルしたんだが。うん、そりゃあ強かった。

 

 

 今回はかなーり頑張ったんだがなぁ。ライチュウそのものが強大な敵である事に加え、ジムリーダーというトレーナーがその後押しをしている。言い訳かもだけど、二対一みたいなもんだ。健闘した俺を褒めろ称えろ。

 

 

 

 

 バトル開始直後、搦め手の応酬。俺は「どくびし」相手は「でんじは」。

 

 

 麻痺状態がどんな感じかってったら、説明に困る。電気のせいで動悸が激しくなる、とかじゃないな。とにかく動きにくいんだよ。時たま体の感覚がなくなるというか。

 

 

 動きが鈍くなったところに、容赦なく「10まんボルト」が飛んでくる。避けようがなかったので受けざるをえないんだが、これがまたなぁ。

 

 

 

 痛い。

 

 

 

 いっっっっったい!! くそいてぇぇぇ!!

 

 

 

 先日のピカチュウなぞ比べ物にならん。あまりの威力に身動きできない、立ってられないと一発で大ピンチである。これ程までとはね。

 

 早速グロッキーだ。相手も毒状態になってるので長期戦に縺れ込めば何とか、なーんて考えてたよ。甘かった。技のコツを掴むとか言ってられないぞこいつは。

 

 ダメージから立ち直る時間が欲しい。とくれば、コレだ。

 

 相手の目を見て、熱い魂の叫びを迸らせる。

 

 

 「ライチュウゥゥゥラァブリィィィ! ピカチュウなんか目じゃねぇぜ! すばらし! うつくし!」

 

 

 

 「おだてる」。特攻をブーストさせるので、下手すりゃ自分の首を絞めかねないが。

 

 成功したのか、目をパチクリさせて怯むライチュウ。心無しか赤面しているような。え、なにその反応。

 

 そして、わけも分らず自分を攻撃しはじめた。尻尾で頬をビンタしまくってる。すげえな、どうなってんだ混乱状態。

 

 マチスが叫ぶ。「NOOOOライチュウ!!」。 ノーってあんた。

 

 この機を逃す手は無い。「きあいだめ」をしてから「あなをほる」。地面に潜る瞬間、ライチュウが正気に戻るのを確認。だから立ち直るの早すぎだって。

 

 

 地中を掘り進んで相手の真下に。そのまま飛び出して攻撃するが、

 

 

 「ジャンプだ!」

 

 

 マチスゥゥゥ! 良い指示するじゃねえかこの野郎! 麻痺状態じゃなかったら当たってたかもしれんのに。いや「きあいだめ」が余計だったか?

 

 

 地面から飛び出した俺の、さらに上を取るライチュウ。「アイアンテール」が襲ってくる。

 

 体をぐねって避けたが、落下と同時に地面に押さえつけられ、マウントポジションを取られる。

 

 ヤバい。くそが、どけやこのデカネズミ! 重いんだよお前。

 

 

 

 ……。あ。ライチュウ、怒った。

 

 

 もしかして地雷踏んじゃった?

 

 

 

 マチスが「10まんボルト」の指示を飛ばす。いかんいかん、このライチュウ目が据わってやがる。このままだと、バトルにかこつけて殺されるかもしれん。

 

 ぐおお南無三! 「ねんりき」発動。

 

 

 痛い、頭いったい! 浮け浮け浮けデカネズミ浮けぇぇぇッ。

 

 

 「オー! ニドランがエスパー技使ったネ?!」

 

 

 笑い顔で驚くマチス目掛け、ライチュウを吹っ飛ばす。吐き気と痛みと麻痺で震える体を鞭打ち、追撃の「どくづき」を敢行。が、尻尾を盾にしろ、というマチスの機転で胴体直撃には至らず。

 

 

 ライチュウに「でんこうせっか」が言い渡され、咄嗟に身構えたが、これは悪手だった。「でんこうせっか」は近接攻撃ではなく、距離を取るのが狙いだったのだ。後方へ一足飛びされる。やべ、こちとら麻痺状態なのに、遠距離戦は絶望的すぎる。

 

 相手の顔色が悪くなってきたので、毒がようやく影響を与えてきたみたいだ。とはいえ今更感は拭えない。相棒の様子に眉を顰めたマチスが、素早く指示を出す。

 

 遠距離技で確実に仕留める気なのか、トドメの「10まんボルト」が襲ってくる。直撃したらお終いなので回避せにゃならんのだが、麻痺のせいで瞬発力が落ちている。こなくそ、もうヤケだ。

 

 

 「ねんりき」で軌道を逸らす。

 

 

 気持ち悪さで盛大に吐いた。

 

 

 やはり完全には上手くいかない。かすった。それだけでも大ダメージだが、戦闘不能にならなかっただけ御の字だ。ふらつきながらも突撃。

 

 

 もう、一発分しか技を出す体力がない。まあ、ダメージの半分程は「ねんりき」による自爆だが。

 

 

 ゲロを吐きながら走ってくる俺に、ライチュウはドン引きしているようだ。その隙に渾身の「どくづき」を叩きこめれば、もう一泡吹かせられるかも。これが鼬の最後っ屁となるか?

 

 

 「ゴー、ライチュウ! かみなりパンチ!」

 

 

 マチスからの、非情な迎撃命令。

 

 すっげえ嫌そうな顔のライチュウ。「えー…」てな面しとる。また「ねんりき」で妨害されるのを警戒しての接触技なのだろうが、ここで「かわせ!」と言わない辺りに、ジムリーダーとしての矜持を感じる。

 

 走るのをやめたら立てなくなる俺も止まれない。どことなく申し訳ない気持ちになりながらも、激突。技と技の正面衝突だが…。

 

 満身創痍な俺と、毒状態だがまだ余裕のある相手。さてどちらに軍配が上がるか、火を見るより明らかだろう。

 

 

 結果。俺はぶっ飛ばされ、バトルフィールドの壁に叩き付けられた。

 

 

 まだまだ、ジムリーダーの壁は厚い。久しぶりの敗北だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バトルが終わり、マチスが俺に「かいふくのくすり」を使ってくれた。うーむ、既視感。

 

 

 「ユーはストロング! いい勝負でしたね。びりびり痺れるバトル、素晴らしいです! ベイビーなどと言ったお詫び、させてくだサーイ!」

 

 

 で、やたらとマチスに気に入られた。前足を握られてぶんぶん上下に振られる。ちょ、やめて。まだ頭痛くて気持ち悪いのよ揺らさんどいて。

 

 ライチュウさんにも健闘を称えられたが、その間にもマチスのぶっとい腕で背中を叩かれる。だからやめろって。吐くぞ。ぶちまけちまうぞ。

 

 

 上機嫌に語るマチス。ここ数か月、歯ごたえのある挑戦者はいなかったので、暫くぶりの緊張感あるバトルに感謝している、と。だったら、あの面倒なジムのギミックをどうにかしやがれ。運ゲーに勝てずに諦めたトレーナーだっているんだぞ?

 

 にしても、そこそこ勝負にはなってたのね。そいつは良かった。俺としても、今日の敗北は明日以降の糧として大事にさせていただきたい。

 

 豪快に笑うマチスとは対照的に、ライチュウは膨れっ面だ。この個体、どうもメスだったらしい。デカネズミだの重いだの言われて傷ついた、と責められた。

 ゲームでは、基本的にトレーナーの性別と同じに設定されてるからなぁ。知らぬとは言え、悪い事したみたいだ。ちゃんと謝っておく。

 

 

 さて、バトルは終わった。勝てはしなかったが、ちゃんとした勝負にはなっていたので上出来だろう。ここから本題に入らなければ。

 

 

 マチスに本来の目的を伝えようと思ったが、俺は人の言葉を喋れない。なので、まずはライチュウさんを頼ろう。と思って近づいたら、口を「へ」の字に曲げて一歩距離をとられた。なんで。

 

 

 何の用か知らないが、まず顔を洗うのが先だって?

 

 

 ですね。ゲロまみれだったのを忘れてた。

  

 

 

 




「どくびし」撒いた後に「あなをほる」でずっと地面に潜る、という作戦があったのですが、あまりにもあんまりなので不採用としました。


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技17

申し訳ないです。少し日が空いてしまいました。


 「10まんボルト」習得の特訓は、苛烈を極めた。

 

 

 ライチュウに「10まんボルト」を覚えたいと頼み込み、その旨をマチスに身振り手振りで伝えてもらう。面倒な依頼だが、二つ返事で引き受けてくれた。

 

 

 早速、特訓開始。やる事は単純明快。ただひたすら高電圧の電撃を受けまくる。

 

 そう、習得の過程で言えば、今までのゾクゾクマゾ実験の方向性は間違いではなかったってこった。その内容はこれまでの被虐的修行が鼻くそに思えるくらい過酷だったが。

 

 

 で、肝心の習得状況だが。まず俺は殺風景な小部屋に突っ込まれ、全身に電線をひっつけられる。

 

 その電線が続く先には、ゴテゴテした悪趣味なヘルメット。それを被るのは、マチスのライチュウだ。

 

 絶縁体がなんだのと説明された台の上に互いが乗り、スタンバイ。準備OK。

 

 

 …これから何が始まるかって? 

 

 

 ご想像の通りだよ。

 

 

 マチスが「電気になりきれ」とか「ユーはエレクトリックだ!」とか意味不明な声援を送っていたが、なんのアドバイスにもなっとらん。ガチで生命の危機を感じたね。

 

 電撃を受けて小休止を挟み、また電撃を受けて小休止を挟む。ダメージでグロッキーになった俺に容赦なく傷薬が投与され、傷が癒えたらまた電撃。拷問だよ拷問。望んだのは俺だけどさ、もうちょっと何とかならんかったもんかね。

 

 かつて電気椅子で笑いながら死んだ変態被虐趣味カニバリストがいたらしいが、俺にはそんな真似できんな。痛いわ苦しいわで体が痙攣するから、笑顔なんて維持できるはずがない。マゾを極めし者はナニかを超越してるのかもしれん。

 

 

 話が逸れた。

 とにかく、数時間はそんな事を続けていたと思う。ジョーイさんとかが見たら、卒倒するなんてレベルの光景じゃなかっただろな。

 

 電気漬けになる内に、俺の中で「電気」というモノに対する認識が書き換えられていく感覚が。なにそれやばい。

 

 ライチュウが一際強烈な「10まんボルト」をぶち込んできたのを最後に、意識を失ったのである。

 

 

 

 意識を失っていたのは少しの間だったらしい。覚醒と同時に技リストを確認する。

 

 新たな技は増えてないかな。お? 真新しい文字列が脳内に浮かび上がる! 

 

 

 これは、まさか…!

 

 

 

 

 

 「ゆうわく」

 

 

 

 

 

 ふざけんなよ。

 

 

 なんだよ「ゆうわく」って。ここにきてレベル技とか空気よんでくれよってかどうしてレベル上がったんだよくそったれだよ。

 

 そもそも俺が「ゆうわく」してる姿が想像つかん。ニドランだよ? 

 

 つーか今更だけど、なして「ゆうわく」をレベル技後半に設定したんだゲーフリは。ニドランが兎モチーフとか言われてるのが理由か?

 

 兎、性欲凄いって聞くもんな。子孫残しまくるためには、オスもメスも相手を選んでられないってか。誰彼かまわず「ゆうわく」して仲間を増やす必要があるのかね。

 

 でも俺、ポケモンの姿になってから別段性欲って湧いてこないけど。

 

 

 …やめよう。ポケモンは全年齢対象だ。

 

 

 さておき「ゆうわく」かぁ。確か、異性の特攻を二段階下げる、だったかな。

 

 

 異性。異性、ね。

 

 

 そこにいるじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うん、夢だったと思いたい。

 

 俺は臨死体験なんてしていない。心此処に在らずな俺を地獄へと引っ張るゲンガーが「んん~? 間違えたかな?」とかいうざ~とらしい独り言を漏らしてたなんて事は一切なかった。ないったらない。

 

 まあ、あれよ。「ゆうわく」って、やっぱれっきとした技なんだなって。ものは試しとライチュウさんに向けて使ったら、あっさり効いてしまったのだ。

 

 どういう風に『誘った』のかって? 「もっとお前の電気が欲しい!(意味深ではない)」と「ゆうわく」付きで言ってみただけだ。

 

 そしたらまあ、なんという事だ。目を真ん丸にして硬直するライチュウ。かとおもえば赤面するわ慌てるわグルグル無意味に回り始めるわで収拾がつかなくなった。致命的な勘違いをした上に、パニックを起こしたようである。んな大げさな…。

 

 

 正気に戻った途端、怒涛の攻撃を喰らった。ライチュウ、怒りの電撃。

 

 

 特攻が下がったとはいえ、弄ばれたと憤るライチュウの「10まんボルト」は破滅的な威力だった。結果、先の奇妙な体験である。臨死じゃない!

 

 うん、悪い事した。不意打ち気味に技を使ったって時点で言語道断だが、それ以前に相手がまずかった。怒りが収まったかと思いきや、こちらに背を向けて壁と話しているライチュウ。謝っても無反応。やらかしたなこりゃ。魔が差したなんて言ったらどうなるか。

 

 

 が、ここで急展開。

 

 

 「10まんボルト」を覚えたあああああ!

 

 

 どうやらさっきの攻撃で覚醒したようである。「ゆうわく」したのは無駄ではなかったのだ。

 

 

 おおおライチュウさん俺やったよ! あんたのおかげで念願の技を習得できたよ! 

 

 あ? なんだよ小声でボソボソと。聞き取り難いよ何て言ってんの? ほ~らライチュ…。 

 

 

 

 

 

 「死ねば?」

 

 

 

 

 

 ごめんなさい。ほんとすみませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マチスは語る。全てのポケモンが、対応した技を覚えられるわけでは無い、と。

 

 ポケモンだって生き物だもんな。ゲームみたいにはいかない。誰にでも向き不向きがあるのだ。

 

 使える奴は、呼吸するかの如く多彩な技を使う。逆に、電気タイプなのに電気技が使えない奴だっているし、そんな悩みを抱えるポケモンを世話した事も何度もあるらしい。

 

 

 今回、俺に施した訓練(?)はかなり無茶苦茶な部類なんだと。短時間で、かつ高確率で技を覚えるには、アレが一番だとか。ただし訓練に耐えうる体力がなければ話にならない。なんというスパルタ。

 

 

 普通は教師役のポケモンを用意して、そいつと一緒に教えるんだってさ。その方が安全だし、時間はかかるが教える側にも負担は少ない。

 

 じゃ、なんでそうしてくれなかったの? 

 

 ユーなら乗り切ってくれると信じていた?

 

 そいつはどうも。お陰様で覚える事が出来たよ感謝してるぜくそったれこの野郎ありがとよ。

 

 

 

 

 さて、お別れだ。ちょうど新たな挑戦者が現れたらしいので、用事の終わった俺は邪魔だし失礼させてもらうとする。

 

 

 「ユーは素晴らしいタフネスとソウルの持ち主ネ。この二つがあれば、ハードな困難だろうとノープロブレム! 覚えたエレクトリック技、これからも有効に使ってあげてくだサーイ!」

 

 

 マチスからの激励。それはいいんだが、背中をバンバン叩くのはやめろ。「どくのとげ」が発動しちゃうぞ。

 

 ジムトレーナーである電気グループの兄さんと、ジェントルマンのおっちゃんもお別れを言いにきてくれた。おお、有り難いぜちくしょう。

 

 で、ライチュウさんだが。

 

 …どうしたのよあんた。

 

 ついさっきまでは「お前は最後に殺すと約束したな? あれは嘘だ」とでも言いかねない顔してたのに、一変ギャン泣きしはじめた。感情の起伏が激しすぎるだろ。つか、まだ知り合って一日程なのに、そこまで込み上げるモノもないと思うが。

 

 

 うるさい死ね、せいぜい長生きしろ! って、どっちだよ。反応に困る。なんとかしろよマチス。

 

 

 あ? こいつも向こうで色々あったから察しろ?

 

 

 向こうってどこよ。ああでも、マチスが「戦場を共に駆け抜けた」とか言ってたっけ。ライチュウさん、苦労したんだろうな。

 

 本気で許されない事しちゃったのか、俺。性質の悪い冗談が過ぎたな。う~ん、謝っても謝りきれん。

 

 マチスが冗談めかして「生きて帰ったらまた会いにきてくれ」と突っ込み所満載な台詞を言ってきた。ここで即了承すればいいんだろうが、生憎と俺はアホだからな。

 

 

 

 一言。そんな約束は出来ん!

 

 

 

 死ぬだのなんだの誇張だとは言わない。悪の組織が暗躍し、伝説のポケモンが暴れ回るのがポケモンワールドだ。いつ、どこで、どんなゴタゴタに巻き込まれるか分かったもんじゃない。

 

 そんな時、一ポケモンにすぎない俺が、果たしてどこまで『何』を出来るというのか。逃げる事すら叶わない状況に追い込まれた時、たかがニドランの俺にどうしろと言うのか。

 

 格好つけてこんな達観してるんじゃないぞ。伝説のポケモンなんて、自然災害みたいなもんだ。避けようがないケースもあるだろ。遭遇したらアウトだ。

 

 

 そんな非常時のためにも、強くなるに越したこたぁないんだがな。

 

 

 つーわけで、確実に果たせるって約束じゃないから、イエスとは言えません。ごめんよ。

 

 と伝えたら、今度は大笑いするライチュウ。電気鼠百面相。笑い方がマチスに似てる。

 

 

 

 そういうのは嫌いじゃない、と。

 

 

 

 マジで、過去に何があったんだろなライチュウさん。少しは機嫌直してくれたみたいだが。

 

 

 訊かないでおこう。笑顔で別れようや。

 

 

 

 

 




サンムーン、ストーリークリア。
ラストバトル、相手のZ技を気合で耐えたアシレーヌが、残体力1の状態で専用Z技を使って反撃、勝利をおさめました。
アニメのような展開がリアルでおこってびっくり。バックのBGMもあってか、やたら感激してしまいました。


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技18

またしても日が空きました。失踪しないよう頑張ります


 

 ダグトリオに負けた。

 

 

 苦手なタイプの練習になるかと、軽い気持ちでディグダの洞穴に入ったのが間違いだった。速いし強いしで翻弄されまくったわ。洞穴の入り口に引き返したら追ってはこなかったが、もしかすると見逃してもらっただけなのかもしれん。

 

 かなり戦い慣れしてやがったな、あいつ。「おだてる」したら地面に潜ってやり過ごし、「どくびし」を撒けば「どろかけ」の泥で毒を覆う。

 

 度肝を抜かれたのは「だいちのちから」だ。ダグトリオの特攻で「だいちのちから」って聞けば大した事ないって思うだろうが、それだって使い方次第よな。洞穴の天井に移動して、こっちが手出し出来ないのをいいことにバカスカ撃ちまくってきやがった。逃げ惑うしかなかったね。

 

 苦手な相手で、しかもこっちは完全なアウェイ。つーかあの野郎、あの素早さで洞穴内を縦横無尽に走り回るんだもんな。どうしろってんだよ反則だろ。あれじゃ「あなをほる」じゃなくて「かべをすすむ」だ。ホームグラウンドの利点をこれでもかと見せつけやがって。

 

 それでも、勝負にはなっていた。「つのでつく」が久しぶりに頑張ってくれた。地面タイプ相手なら、まだまだ出番があるな。

 奴の特性が「ありじごく」じゃなくて助かったぜ。もしそうだったら、逃げる事すら叶わなかったはずだ。

 

 あいつめ、いつか必ずリベンジしてやる。そんときゃ地面から引きずりだして、あの体の構造がどうなっているのか突き止めてやるからな。首洗って待ってやがれ。首、あるのか分らんが。

 

 

 

 さて、新たな目標が出来た。

 

 地面タイプ対策だ。

 

 地面とその他の複合タイプなら、多彩な技でもって弱点を突けばいい。が、単地面だと一気に辛くなる。

 

 対抗策としては、やはり水草氷などの技だろう。

 

 むむむ。「なみのり」があれば一発解決なんだがなあ。

 

 あ、でもニドキングにならんと覚えないか。

 

 それ以前に、「なみのり」って水が無い所で使えるのか? 無理な気がする。泳ぎは自然と身に付きそうだけど。

 

 草技は無理だし、とするとあれか。やはり「れいとうビーム」か。

 

 欲しい。めっちゃ欲しいぜ「れいとうビーム」。ドラゴンにも効果抜群だしな。

 

 なにより! ビームだぜ、ビーム! 男なら一度はビーム撃ってみたいだろうがよ。「10まんボルト」や「ねんりき」もいいが、ビームには及ばない。なんたって、『ビーム』だもんな。

 

 ま、ニドランが撃つんだから、どうせ口から吐くんだろうけど。どっちかっつうと「れいとうこうせん」か。それでも浪漫があるからいいけど。

 

 かめ〇め波みたいに手から出したかったなぁ。ルカリオが羨ましい。

 

 

 

 でだ。問題は、どうやって習得するか。

 

 

 

 カントーには氷タイプのジムが無いから、マチスの時みたいにはいかん。

 

 一応、四天王カンナが氷のプロフェッショナルだが、彼女に技を教わるとか色々な面で無理すぎて候補にすら上がらない。

 

 

 他に、カスミのスターミーなら使っていたんだが、奴から技を教わる光景がまったく想像できない。

 

 あいつ、何て喋ってんのか理解不能なんだよね。スターミーの言葉を無理矢理文字に表したとするなら「☆★★★☆☆!!」って感じか。うん、解らん。真面目に解析しようとしたら、正気度が下がりそうだ。

 

 ふたご島とかなら、氷タイプのポケモンがたくさんいるだろう。でも、どうやってあそこまで行くの? 海の向こうだよ? というか俺って泳げるの??

 

 以前、運良く出会ったデリバードも、あれから見てないしなあ。

 

 

 ああ、いかんな。八方塞がりか。

 

 

 口惜しいが、「れいとうビーム」は後回しにしよう。対地面はその場その場の判断に任せる。やばかったら逃げればいい。

 

 

 では、次だ。エスパー対策。

 

 

 「ふいうち」が使えればなぁぁぁ。くっそおおなんで覚えてないんだよ俺! これが使えるだけで、対エスパーはグッと楽になるのに。

 

 ニドキングに進化出来れば「メガホーン」や「シャドーボール」も候補に上がる。んが、今の俺はニドラン。ニドランでも使える対エスパー技となると、もう「シャドークロー」くらいしかない。

 

 「シャドークロー」か。ゴーストタイプの技だ。物理技だし、「10まんボルト」以上に習得に苦労するってこたないだろう。たぶん。

 

 

 おし、決まった。次なる目標はゴースト技。

 

 目的地はシオンタウンだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クチバシティの隣、11番道路を抜け、12番水道を北上して目指すルートだ。

 

 カビゴン、いるのかね。道を塞がれてたらどうしよう。「あなをほる」で下から潜ってみるか?

 

 何て考え事をしながら草むらを歩いていたら、唐突にモンスターボールを投げつけられた。危ねっ。間一髪避ける。

 

 なにすんねん。振り向くと、一人の少年がこちらを見つめていた。ツンツン頭に生意気そうな顔。嫌いなタイプの子供だな。

 

 まったく、油断も隙もねぇな。いきなりボールを投げつけるとか、どういう了見だこら。危うくゲットされるところだったぜ。モンスターボールの中がどうなっているのかは、ちょっと興味あるけど。

 

 つーか、このスカーフが目に入らぬか! 

 

 俺、手持ち! 誰かの所有物! ひとのものを とったら どろぼう ! 嘘だけどね。

 

 地面を踏み鳴らして抗議するが、まるで意に介しちゃいないようだ。それどころか、さらなるモンスターボールを取り出して捕獲を続行しようとしてやがる。なんというクソガキだ。

 

 怒り心頭の俺を見下し、キザったらしく鼻で笑う少年。お前が野生のポケモンだって事は、俺には一目で解ったぜ! などと自慢げに宣まう。

 

 

 

 ああそうかい。いい腕してんな坊ちゃん。あばよ。

 

 

 

 逃走! バトルするとでも思ったか小僧めざまーみろヒャヒャヒャヒャ!

 

 などと笑いながら走ってたら、上空からピジョンが追いかけてきた。あいつの手持ちか? めんどくせぇ。

 

 さすがに鳥から走って逃げ切るのは不可能だ。それでも、出来る限り全力で走って逃げる。逃げる逃げる。充分に走り、頃合いを見てUターン。攻勢に出る。

 

  あのトレーナーとピジョンを分断させたのだ。とはいえ、小僧も追ってきているはずなので長期戦は避けたい。「あなをほる」でやり過ごす作戦も考えたが、小僧が地面タイプのポケモンを持っていたら厄介だ。なんにしろ合流されたらウザいので、一気に決める。

 

 ピジョンが「かぜおこし」を使ってくる。

 

 風圧に耐えながら、「おだてる」。素晴らしい鳩胸だね美味しそうだね、と声をかけたら、空中でフラフラし始めた。おし、成功。

 

 追撃。ぶっつけ本番「10まんボルト」。全力でお見舞いしてやったんだが…避けられた?

 

 

 もう一発。が、避けられる。何だ、どうなってやがる。狙いは外してないはずだ。

 

 

 ニドランの聴覚に反応。足音が近づいてきた。ええいくそ、思ったより時間を稼げなかったのか。ピジョンを撃墜する事に拘っちまった。ピジョンを混乱状態にしたら、即逃げるべきだった。

 

 仕方ない。頭が痛くなるので使いたくないが「ねんりき」を発動。これなら避けれまい、って。

 

 

 ええええ?!!! おいおい、どうなってんだ。避けやがったぞピジョンの奴。

 

 

 見たぞ俺は! 念を飛ばした瞬間、ピジョンが空中で酔っ払いのような動きをしたのだ。すると、よく分らんのだが「ねんりき」をスカされたのだ。

 

 ちくしょう、原因が分んねえ。何かの特性か? 混乱状態で…。

 

 

 あ。

 

 

 おああああそういう事か! もっと早く気づけよ俺バカか罰金100万だ!

 

 特性「ちどりあし」。随分とマイナーなもん持ってきやがって!

 

 

 混乱状態のピジョンが、目玉をグルグル回しながらも「でんこうせっか」で突撃してくる。

 

 しめた。避けずに受け止める。けっこうな威力だが、一撃で動けなくなるほどではない。

 

 そのまま、密着しての「10まんボルト」を喰らわす。これなら避けようがない。

 

 大ダメージを受けて怯んだピジョンを突き飛ばし、逃走再開。と思ったら、突然イーブイが現れた。進路上に立ちはだかり、キャンキャン叫びだす。

 

 

 

 「よくもやったな! ピジョンのかた」

 

 

 

 うるせえ邪魔だ! 敵なら容赦しねえぞ!

 

 「にどげり」ぶっぱ。悲鳴と共に吹っ飛んでいった。

 

 

 なんだったんだ、あのイーブイ。とにかく、無事に逃げ切る事はできた。

 

 いやはや焦ったぜ。ポケモンの特性、もうちょっと意識して立ち回らなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 




マッギョを対戦で使ってました。あくび と じわれ を使いこなす嫌な奴でした。ニックネームは「ながさわ」。理由は言うに及ばず。


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技19

 お久しぶりです。半年以上も放置してて申し訳ありません。
 ぼつぼつ更新していこうかと思います。こんな奴が投稿してるような物語でよければ、どうか見てやってください。


 

 

 カビゴンはいなかった。別にいいんだけどさ、やっぱ見てみたかったよな。

 

 

 

 シオンタウンへの道のりは長い。急ぐ旅でもないのでポケモン世界をゆっくり観光がてらって感じでもいいのだが、道中の12番道路には特に気を引く名所なんぞ無いと思われる。ので、さっさと進んでしまおうや。釣りの名所ならそこら中にあるけどなっ。

 

 いやね、だらだら進んでもよかったんだよ俺的には。あのイガグリ頭の小僧がちょっかいかけてこなかったらな。野郎が追いかけてきたらウザいので、進行速度をあげようってこった。

 

 ううむ。今思うと、あの小僧はポケモン主人公のライバルキャラに当たる人物だったのかもな。ピジョンとかイーブイとか、それらしい要素が盛り盛りだったじゃないか。すかした言動とかそれっぽかったじゃん。

 グリーンなのかシゲルなのかは解らんが、サントアンヌ号の船長室前で「ぼんじゅーる!」とか言って気取ってる絵が簡単に想像できる。「テレポート」しか使えないケーシィを繰り出したりとかしてくるのかね。いやそれは金玉橋前だったかな? 

 

 

 どうでもいいか。

 

 

 とりあえず急ぐべし。12番道路から北上すればいいだけの単調な道のりだが、それ故にショートカットは難しい。ここは自前の脚力とタフさで走りまくってみるか。

 

 と、思ったが。ちょい待ち。

 

 12番道路は海に面している。海沿いに進んでりゃ、寄り道する事なくシオンに着けるだろう。じゃあ、あれだ。特訓も兼ねて泳いで行ってもいいんじゃね?

 

 水泳は全身を使う運動だからいいトレーニングになる。人間のアスリートだけじゃなく、競走馬だってプールで調整したりするらしいしな。

 

 というか後の事を考えると泳げるかどうかの確認だけでもするべきだと思う。(なんでか知らんが)進化できない俺だが、ゆくゆくはニドキングになるのが目標の一つでもあるのだ。キングは「なみのり」が使えるわけだし、ってことはつまり水が苦手でも泳げはするって事なんじゃなかろうかと。

 

 まあゲームの設定と現実の差異に絶望するだけかもしれんがな。冷静に考えたら、キングは地面タイプだから水に触れるのもヤバそうだ。アニメじゃ水を怖がらないサイドンとかもいたし、なんとかなると思うのだがってか何とかなってくれおねがいよ。

 

 

 あ~、でもそうか。急がなきゃいけないんだよ今は。んな実験してる時間がなぁ。

 

 そもそも、ニドランの姿で泳げたから何? 進化したら体型変わっちゃうじゃん。俺、四足歩行から二足歩行になるんだよ? 体の動かし方に違いが生まれるのは明白なのだ。

 

 残念だが水泳は諦めるか。当初の予定通り陸路を走っていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なぁんて言っちゃったりしたんだけど、現在海を高速移動中なんだなこれが。

 

 困った時のポケモン様よ。水面から頭だけ出してるメノクラゲがいたもんだから、タクシー役になってもらったのだ。いやいや流石は水タイプ、ギュンギュン飛ばしてくれるぜっ。大波小波もなんのその、『波乗りジョニー』の鼻歌をBGMに、優雅で刺激的な海の旅ってもんだ。背中にしがみ付いてるだけで目的地に着くのだから楽なもんである。

 

 にしてもこの世界のポケモン優しすぎ。一応、お礼はするって言ったけどさ、こんな簡単に協力してもらってよかったのかな。

 

 お? 同じ毒タイプの誼みだろって? 嬉しいこと言ってくれるじゃないの。お前は良いクラゲだ、間違いない。

 

 

 話してみると、所属していた群れから逃げ出したメノクラゲなのだという事が解った。

 こいつの群れはボスのドククラゲがジャイアニズムしてる恐怖政治なのだという。乱暴なボスだが、バトルは強いし長生きもしてて無駄に頭がキレるらしいので誰も逆らえないのだとか。それが嫌になって抜け出したって? 苦労してるねえ。

 

 で、海岸近くで無気力に漂っていたら俺に声をかけられた、と。送り届けるついでに自分も新天地に住処を探しに行こうって腹か。なるほど考えてやがるな。

 

 まあいろいろ苦労する事も多いだろうが、お前さんも頑張んなさいよほどほどにね。

 旅ってのはいいもんだぜ? やる事成す事ぜ~んぶ自分の責任になるが、それさえクリアすれば夢と冒険のポケットモンスターの世界が待っているのだ。

 

 

 って偉そうな台詞をほざいちゃったけど、たぶんこのメノクラゲの方がポケモンとしては先輩だよな。

 

 

 ままま、細かい事は気にしない! 旅は道連れ、短い付き合いになるだろうが仲良く行こうや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、気づいたら夜になってた。

 

 無事にシオンタウンの間近まで連れてってもらったのだが、泳ぎの練習に熱中してたらこんな時間である。

 

 案の定まともに泳げなかった俺は、この機を逃すまいとクラゲに水泳の特訓パートナーになってもらったのだ。もう水タイプ様々である。実際は泳ぎ方を教えてもらったとかそんなこたぁ一切なく、メノクラゲをライフセーバー代わりにしてひたすら泳いでただけなんだけどね。

 だって俺ら、体型が違いすぎるんだもん。泳ぐ時に体のどこをどう使うとか、相違点がありすぎるんや。 

 

 

 ついでにバトルのお相手をお願いされた。いいぜ、来いよ。

 

 これから一人立ちしようという若鶏・・・いや若海月の実力、見せてみんさい。

 

 

 と思ってたんだがあるえぇぇぇぇぇぇ!!??

 

 

 一発でダウンしちゃったよメノクラゲ!

 

 あかん、やりすぎた。弱点だからって「10万ボルト」をぶっぱなしたのが悪かったか。

 

 

 いやまあ咄嗟に「ようかいえき」で対抗しようとしたのは凄いけど、こっちの電撃が全部弾き飛ばしたからな。互いの技に威力差がありすぎた。

 

 気絶寸前のメノクラゲに、近くの木に生ってたオボンの実を食わせてやる。すると、

 

 

 「ほっほあー! ほー、ほー!! フオオオオオォ!!」

 

 

 奇声と共に復活したクラゲ。と思ったら、うまいうまい連呼してボリボリ実を貪りはじめた。がっつきすぎだろ。確かにオボンの実は貴重な品だが、そこまで血相かえるほどでもあるまいに。

 

 と思ってたが違うらしい。なんでも、海に棲むポケモンにとって、木の実はなかなか口に出来ない嗜好品だとか。ははあ、なるほどね。川から流れつくか、口に咥えた鳥ポケモンがうっかり海に落とすか。入手経路としちゃそんなもんだろうからな。

 

 ま、喜んでもらえて何よりだよ。なんならもっと持ってきてやるぜ? タクシー代としてもこの上ないだろうしな。

 

 そう言うと、もの凄い迫力で「おかわりを持ってこい!」と叫ばれた。

 

 いいね。食欲があるのは元気な証拠である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両の触手にオボンの実を巻き付けたシルエットが遠ざかる。

 

 水面に沈む月を目指すその姿は、新たな生活に胸躍らせて生き生きとしていた。達者でな。

 

 去り際に、

 

 「次に会ったら俺がお前を一撃で倒してやる」

 

 と宣言された。頑張れよ。海と陸という生活圏の都合、次ってのが何時になるかはマジで分らんけどな。

 

 

 さあ、俺も行くか。目的地は目の前である。

 

 

 みんなのトラウマがぎっしり詰まったシオンタウン。初めてお目にかかるゴーストタイプ、どんなもんだろうか。

 

 

 

 




 突貫工事でUPしました。お見苦しい点もあると思います。すんません。

 ウルトラサンムーンは買う予定はありません。ドラクエが忙しいのです。


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技20

苦手な描写はほんと苦手です。ビバ手抜き!
がしがし展開はやくします。(はやくしたい)


 

 降り注ぐ日差し、命の抱擁。

 

 ポッポたちの戯れ、鼻孔をくすぐるモーニングの香り。

 

 慈愛をもって頬を撫でる風が、希望の朝の到来を告げる。

 

 嗚呼、神様仏様ネイティオ様、日々の恵みと平穏に感謝致します。檻に囚われしニドラン、翼をもがれるも生の喜びを今ここに綴ります。まる、と。

 

 

 

 ・・・ざっけんなよコラ! どういう状況だこいつあ?!

 

 

 

 寝て起きたら拉致られプリンセス。まるで意味がわからんぞ!

 

 待て待て落ち着け。昨晩の事を思い出せ。

 

 といっても大したことはやってない。夜のシオンタウンの不気味さにちょいビビりつつも寝床を探し、良さげな公園をみつけたから砂場で就寝しただけだ。

 

 で、起きたらごらんの有様。これはあれだな、やっぱ拉致られたか。

 

 水泳の疲れやらでめっちゃ眠かったから、穴掘って寝床を確保したりとかしなかったんだよね。それがあかんかったかー。はああ、ほんと警戒心無いな俺。まさか、こんな間抜けな醜態を晒しちゃうなんてよ。

 

 

 うむ、考えるのは後だ。とにかく脱出しなければ。

 

 俺を閉じ込めている檻だが、そんなに頑丈そうには見えない。犬や猫なんかを病院に連れて行く時に使うような、例のアレっぽいのを想像してもらえば分りやすいか。

 

 とりあえず、試しに入り口を押してみる。まあ開かないよな。開いた。

 

 

 え。おいおい開くのかよ! がばがばじゃねーか!

 

 

 そっと顔を出して周囲を窺う。

 

 ふうん、こいつはもしや人間の家か? 家屋に調度品。観葉植物なんかもある。

 

 鼻をひくつかせる。どこからか美味そうな匂いが漂ってくるが・・・。さっきから気になってたが、やっぱ何かしらの料理の匂いだよこれ。俺の中の人間が、そう断定して譲らない。

 

 部屋の中からは、物々しい雰囲気も感じない。なんだ、どういうこった?

 

 身構える必要はないのか? 最初はロケット団とか頭のイカレた集団とかに捕まった事態を懸念していたが、そういうわけでもなさそうだ。

 

 冷静になって考える。無理矢理ゲットされたってんなら、俺は今頃モンスターボールの中にいるはずだ。今いる空間がボール内部って線もあるが、それは無いと思われる。そんなのいくらポケモン世界でもびっくり技術すぎるだろ。いやゴージャスボールとかならあり得るかもしれんけど。

 

 ボールを使われてないかもって事はもしかして保護? 俺、レスキューされたの??

 

 現状、そう考えるのが自然か。甘い希望は持つべきではないが、ギチギチに拘束とかされてるわけではないので、そう捉えていいのかもしれん。なんだよ、焦って損しちゃったじゃん。

 

 いや! いやいや! 油断するなニドラン。相手の顔も勢力も何も分っちゃいないんだぞっ。簡単に心を許しちゃだめだ。

 

 

 そう、鼻息荒くしていたのだがなぁ。扉を開けて部屋に入ってきた面子と、そいつらの会話を聞いて一気に脱力してしまった。

 

 

 モンスターボールの模様を付けた緑の頭巾を被った、やぼったい少女。その少女が抱えているエサ入れに興味津々そうなポケモンたち。そして、その後に続いて姿を現した老人。

 

 

 彼らは、こちらの姿を見てわっと声を上げた。コラッタやらポッポやらがキャーキャー言いながら俺を取り囲み、持てはやす。テンションについていけないが、歓迎はされてるようだ。

 

 「目が覚めたのか。驚かせてしまったね」

 

 言いながら、しゃがんで俺に微笑みかける爺さん。やつれた顔は優しく、そして少し疲れているように見受けられる。

 

 その老人の名前は、フジというらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マジかよ。驚きだね。

 

 俺はポケモンハウスに保護されたみたいだ。

 

 言わずと知れたボランティアハウス。『謎の』老人フジが、人間に捨てられたりしたポケモンを引き取り世話をしている場所だ。

 

 ポケモンハウスで活動しているのは、爺さんだけではない。緑頭巾の女の子はポケモンブリーダーで、ハウスの活動の手伝いをしているとか。さらにもう一人、ポケモンレンジャーの青年がいるらしいが、今は出払っているとのこと。んでもって、俺を勝手に保護したのもそのレンジャー君。

 

 余計な事をしやがって。だが、まあしゃあないよなぁ。

 

 だって俺、全身傷だらけだし。相棒のトレーナーもいないし。目つき悪いらしいですしぃ? 悪くねえよ、陰があるって言え。

 

 とにかく、そんなポケモンが夜の公園で一匹寂しく寝ていたら、誰だって厄介事を悟る。虐待されたのかと思っても無理はないってこった。ニビのジュンサーさんにも、そんな感じで連れてかれそうになったしな。

 で、そのまま俺を発見したレンジャー君に保護されたと。あらら、人騒がせなニドランである。やはり穴を掘って寝るべきだった。

 

 「ほら、ごちそうだよ~」

 

 申し訳ないやら情けないやらで固まってたら、ブリーダーちゃんの声。目の前にポケモンフーズが盛られた皿を差し出された。色とりどりの固形物がデンと威圧感を放つ。

 

 げえ、凄い量だな。現実にこんな山盛りのモリモリにされた飯を拝む日が来ようとは。く、くれるのは嬉しいが、どうやって食ったらいいんだよ。ジェンガみたいに崩れてきそうである。

 

 周りを見ると、他のポケモン達は既にガツガツと飯を頬張っていた。食ってないのは俺だけである。

 

 誰も俺の分を奪おうともしないし、見向きもしない。間違いなく、この山全てが俺の取り分だ。待て、明らかに量が他のと違うんだが。ちょいとこれは食いきれん。他の連中は食べやすいサイズに盛られているのに、なんで俺だけこんな超物量なの? まさかの新人いびりなのか?

 

 

 あの、ご厚意は嬉しいけどこんなにいらないんですが。

 

 

 老人と一緒に自分達の朝飯を皿に盛り付けているブリーダーに抗議の目を向ける。彼女はキマワリも裸足で逃げ出すような眩しいニッコリ笑顔を見せつけ、

 

 

 「遠慮しなくていいんだよ。誰もとらないからっ」

 

 

 はあああ!? 

 

 うっっっぜ! 違うわ、そんなやりつくされた勘違いコントなんざ求めてないんだよ多すぎるってんだよこんなん食ったら破裂するわってーの!

 

 

 鳴き声を上げて訴えるが、取り合ってもらえない。というか理解されない。「警戒されてるみたい。よっぽど酷い扱いをうけてたのね」とさらに勘違いを拗れさせる始末。オギャアアアアアア!! 違うっつってんだろふざけんな!

 

 フジ老人も「ここには君の敵はいないよ。恐がることはないんだ」などとのたまってやがる。ああくそが、分ってたよあんたが助け舟を出してくれるなんてそんな展開これっぽっちも期待してなかったよ。

 

 

 

 ・・・まあいい。せっかくの施しだ。無下にはできない。

 

 

 

 今更、犬みたいに飯を食う事に忌避感が~とか、人の親切心を~だとかでうだうだ言うつもりはない。

 

 食えるものは食える時に食う。食わねば飢える。自然の掟だ。

 

 久しぶりの団欒、大人数でいただく食事だ。考えてみりゃ、感動的じゃないか。今までさんざん行き当たりばったりなサバイバル生活を続けていたのだから、こういう事があってもいいだろ。俺は束の間の安寧を手に入れたのだ。たぶん。

 

 

 感謝、感謝だ。ポケモンハウスに、フジ老人に、ブリーダーとレンジャーに、全ての生きとし生けるモノに感謝を。いただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 うん、ペロリといっちゃった。腹八分目ってとこかな。自分でも驚きである。間違いなく自分の体積以上の量をたいらげたはずなんだが、苦しくもなんともない。クラピカもびっくりだ。

 

 

 飯が終わってちょい時間が経ったころ、ジョーイさんがハウスにやってきた。おほー、生ジョーイさん。

 

 で、身体をあちこち触られて診察されるポケモン達。もちろん俺もだ。

 

 診察の結果、衝撃の事実発覚。なんと栄養不足だと言われた。誰が? 俺が。

 

 

 それが分ってたから、あの特盛フードだったのかね。どのくらい食べるか解んなかったから大目に盛ったってとこか。

 ごめんねブリーダーちゃん、ボロクソに言っちゃって。

 

 

 




これからちょっと賑やかになります。


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技21

お話が進みません。表現したいことの取捨選択をまじめにしないからです。
鯖風味の表現力不足、構成力不足はこのあたりから顕著になると思われます。全てをどうにかするのは無理っぽいので、お見苦しくなるかもですが、よければこれからもお付き合いください。


 

 ポケモンハウスに拾われて二日経つ。穏やかな日差しが降り注ぐ中、数匹のポケモンがじゃれ合っている。

 

 コラッタ、ポッポ、コダック、ロコン、カラカラ。ハウスに保護された哀れな被害者達である。

 

 庭で楽しそうに追いかけっこしてる彼等だが、かつては人間に捨てられたり痛めつけられたりと散々な目に合っていたらしい。それなのに、ここにいれば相棒のトレーナーが迎えに来てくれると信じて疑わないのだ。

 

 

 まったく、なんて無垢な心の持ち主なんだろうか。やれやれ、世も末だねぇ。見ちゃいらんねぇぜ。

 

 

 ポケモンを解放しろ、だとかのたまう悪役団体が出たシリーズを遊んだのが最後だったが、今ならその思想にも賛同しちゃいそうだ。

 

 そりゃ全てのポケモンが人と関わって不幸になるとは言わんが、それってつまり間違いなく不幸になってる奴もいるってこったよ。永久に解決しない問題だろうが、何とかならんか、とは思うわけよやっぱりね。

 

 

 思うだけで行動に移すこたぁないがな。だからこそ、ハウスで頑張ってる三人にはガチでリスペクトだよ。

 

 

 俺の隣でポケモン達の戯れをぼうっと見つめてるストライクの兄ちゃんも、そんな人間の毒牙にかかった一匹だ。

 

 何度か会話を挟んで打ち解けてきたと判断したので、親交を深めるためにもバトルしてみないかと誘ってみる。したら、いつものクールなイケメン顔を一瞬で曇らせて断られてしまった。

 

 

 もう、バトルはいい。戦いたくない。

 

 

 そう答える彼の顔がとても印象に残る。顔は仮面のようなのに、目はあふれ出る感情を隠そうともしない。

 

 ぽつりぽつりと語ってくれたが、なかなか重い話だった。

 

 なんでも、以前はダチのカイロス、ヘラクロスと共にブイブイ言わせてたやんちゃボーイズだったとか。

 それがある日、黒い恰好した人間の軍団にゲットされて生活が一変。来る日も来る日も、ろくな治療も受けられずにある『恐ろしいポケモン』とのバトルを強制させられていたのだ、と。

 

 見た事もない恐ろしいポケモンが何匹も、と鎌を震わせて言う。そいつらとの連日バトルのせいで、なんとカイロスとヘラクロスはお亡くなりになってしまったのだ。

 他の連れてこられたポケモンもどんどん倒れていく。自分の自慢の鎌もボロボロになり絶望していたが、人間共の一瞬の隙をついてなんとか逃げ出してきたんだと、という事らしい。

 

 なんとも胸糞悪い話だ。ひでえことしやがる。鬼畜の所業とはこの事だぜ。

 

 情報が少なすぎて決めつけに近いが、まずロケット団の仕業に間違いあるまい。マジで何の証拠もないが、他にそれっぽい事をやらかす連中がカントーにはおらんだろう。悪事ばっかしてっからこういう時に疑われるのだ。

 

 そして気になるのは、見た事もない『恐ろしいポケモン』という存在。

 

 なんだ、ナニモノだ?

 

 別の地方のポケモンとか、か?

 

 ストライクに訊こうにも、その存在が完全なトラウマとなってるだろうから必要以上に刺激してやりたくはない。ううむ。

 

 凶暴なポケモンなんざごろごろいやがるから、こればっかりは特定は無理だな。確実なのは、間違いなく強力なポケモンである、ということだ。

 

 恐ろしくて、強力で、ロケット団と関わりのある奴。

 

 

 もしかして、ミュウツー? 

 

 

 あまりに突拍子も無いが、アニメじゃサカキに唆されて悪事に加担してたしな。

 戦闘訓練のために、大勢の野生ポケモンが捕獲されて奴と戦わされている、なんて?

 

 しかし、ストライクは「何匹も」とも語ってくれた。

 

 まさかミュウツーが複数匹? あり得ないが、あり得なくもない。あり得てほしくないんだが。

 世界に一匹しかいない、なんて設定もあるが、んなもん人間の悪意が絡めばぶっちゃけどうとでもなる。だってミュウツーってミュウの子供をいじくりまわして生まれたポケモン、だったかな? あまり覚えてないが。そうだとしたら、ミュウが子だくさんだったなら何匹かいたっておかしくはないのだ。

 アニメの出自みたく、ミュウの子供ではなくクローンだとしたら? ミュウから得られた細胞の量によっては、複数生成も可能だろう。どっちにしろとんでもないが。

 

 ダメだな、全てが推測にすぎない。そも、ロケット団の仕業だと確定してるわけでもないんだし結論を出すには至らない。俺の中ではロケット団が完全に黒だけどな。

 

 しっかし我ながらとんでもな発想だな。ミュウツーのバーゲンセールとかゾッとするぜ。そんなのはオンライン対戦だけにしてくれよ。

 

 なあストライクさんよ。本当に、本当に悪いが少しだけ教えてくれ。その恐ろしいポケモン達ってのは、みんな同じ姿だったりするのかね? エスパー技とか使ってくるポケモンはいなかったか?

 

 あん? はっきりしない? そりゃどういう・・・。

 

 

 「奴らは全身に防具のようなものをつけてたからな。エスパー技を使ってくる奴もいたかもしれない。確かなのは、翼のあるポケモンもいて・・・」

 

 

 ここまで話してストライクは顔をよろしくない色に変えはじめたので、会話を中断せざるをえなかった。すまんね、嫌なこと思い出させて。ありがとうよ。

 

 

 

 翼、翼か。飛行タイプって事か? 少なくとも一匹は空を飛べる奴なんだな。

 

 そしてエスパー技ね。

 

 つーか防具って何よ。拘束具? 奴らって言ってたから、全員が身に着けてたのか?

 

 それによって操られていたとか・・・。あぁんわからん!

 

 

 これ以上は考えてもしかたないな。やめやめ。

 

 

 が、やはりミュウツーの存在は気がかりだ。

 やっこさんが複数存在する、なんてのは俺の妄想だが、悪事に利用されてる可能性はゼロではない。悪の組織と最強のポケモン、組合せとしちゃ最高にベターだ。杞憂だといいんだが。

 

 そこらへんどうなの? いずれ問いただしてみるかな。地面に「ミュウツー」とでも書けば教えてくれるだろうか。なあフジの爺さんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、唐突だが。

 

 

 このまま食っちゃねしてるだけでは最低の居候ニートの完成である。

 

 なので、ハウスの手伝いも合間を見つけてこなすようにする。

 

 世の中には、真っ当に働いて人様の役にたっているポケモンが大勢いるからな。ポケモンだからって働かない理由にはならないのだ。人の良心に付け込んだ生活してるからっていう負い目も、もちろんあるが・・・。

 

 

 とりあえず体力仕事は積極的に請け負う。庭の草抜き、荷物の持ち運び、保護ポケモン達のリハビリバトルの相手等々。

 んが。いつまでもハウスでの生活に甘える気はない。タイミングを見計らってバイバイするつもりだ。

 

 だがその前に、どうしてもやらせてほしい事がある。「シャドークロー」の習得? 後回しになったから違うんだな。

 

 

 

 

 それは・・・特訓だよ!

 

 

 

 

 ポケモンハウスを拠点に、走り込みや技の熟練度アップなどのトレーニングを徹底的にこなす。

 

 トキワの森以降、体を苛め抜く機会がなかったからちょうどいいぜ。今の自分がどのくらい動けるのかを知り、覚えた大量の新技を完全なモノにする。

 

 安心安全、衣食揃った優良物件に身を置いてるからこそ出来るのだから、利用させてもらわな損ってもんだ。ついでに進化できればウハウハである。

 

 完全にポケモンハウスに依存したプランだ。我ながらクソだな。

 

 

 早速、次の日からトレーニングを開始した。

 

 

 シオンタウン周辺の森、水辺、イワヤマトンネル付近の悪路などを走る走る走る。

 限界まで走り込み、もう体が動かない死んじゃう~てな次元に達してもさらに運動を続ける。

 

 そう、これよこれ。肉体が動くかどうかの瀬戸際の感覚。自分の限界を攻め、さらにその先に踏み込む。

 

 もう動けない、体力がないなどと、真剣勝負のバトルでは言い訳にならない。勝つためには、例え体力がなくなっても動き続け、意識朦朧になっても正確に攻撃を当てなきゃならん。ベストコンディションで戦えりゃそれでいいが、突発的な野生とのバトルではそれも難しいのだ。逃げるにせよ戦うにせよ、やはりまずは体力、体力だ。

 

 

 相手が良識的なトレーナーなら、こちらが動けなくなったら攻撃の手を止めてくれるだろう。

 

 が、ロケット団や一部の凶暴な野生ポケモンはそうもいかない。奴らは、ルール無用で痛めつけてくる。野良バトルにジャッジなんざ必要ないのだ。安全にやり過ごすには、逃げるか勝つしかない。

 

 ・・・今までの生活で再認識した事だ。トキワの森での発想は真実であり、体を鍛えてなんぼの世界ってこった。

 やっぱ厳しいぜ、ポケモン。バトルが日常化されてんだから、おっかなくて当たり前だ。

 

 

 

 一日中走り回った。途中、野生のポケモンから売られたバトルを何度か買う。戦いの最中、ちょっとした隙に小休止を挟んだりしてエネルギーのやりくりを鍛えるのだ。連続でのバトルや長期戦では重要なことである。

 

 へとへとのボロ雑巾になってポケモンハウスに帰還。そんな俺の様子を見たブリーダーちゃんがワーキャー騒いでるが、欲しいのは悲鳴じゃない。エサを強請る。大量の飯をかっ食らい、軽く運動して膨れた腹を絞り、就寝。

 

 

 翌日。起きて食事をし、ハウスのお手伝いをしてからまた走り込む。バトルする。変な効率化を避けるため、走るルートを少し変える。

 

 帰ったら飯を食って寝る。泥のように寝る。

 

 で、翌朝起きる。また飯を食う、お手伝い、走る、戦う、寝る。

 

 

 このサイクルを繰り返した。ひゃあ、なんだか楽しくなってきたぜぇぇぇ!

 

 

 




一応、保護ポケモンそれぞれの嫌な思い出エピソードも設定してあるんですが、必要ないと判断して載せてません。
 


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技22

 

 イワヤマトンネル付近に屯するゴース、ゴースト共を相手に実戦訓練することで晴れて「シャドークロー」を習得。

 

 頭痛に悩まされてきた「ねんりき」も、文字通り血反吐をぶちまけながらの練習を繰り返すことで熟練度を上昇させた。

 

 各技の威力、精度もグッと上がった。当然、俺自身の総合的な強さも大幅にレベルアップだ。

 

 それもこれも、ポケモンハウスの面々が全面協力してくれたおかげである。

 

 ブリーダーちゃんはしかめっ面しながらも俺の栄養管理に気をつかってくれた。

 

 保護ポケモン達は、トレーニングの付き添いなどを頼んでもないのにやってくれた。まあこれは喧しかっただけかもしれんけど。

 

 ストライクの兄ちゃんなんかは「シャドークロー」習得に一役買ってくれたんだぜ。

 

 自慢の鎌を使った戦い方の経験をもとに、どうやったら「シャドークロー」を覚えるのか一緒に考えてくれたのだ。マジで恩人ならぬ恩ポケ。

 

 ストライクよぉ。あんた、バトルはもうやりたくないっつってたけど、なんだかんだ未練があるんじゃねえのか? 

 

 

 他には、何の用事か分からんけど暫く遠出してたポケモンレンジャーの兄貴がハウスに帰ってきたりしたので、そいつの相棒ポケとバトルしてみたり。結果は俺の勝ちだが、不戦勝みたいなもんだ。レンジャーの相棒であるリーフィアは、毒タイプのポケモンが大の苦手だったのである。腫れ物みたいな扱いされるのって、けっこう傷つきますよね。

 

 

 

 で、だ。ほぼ全てが順風満帆にいって、さらに自身も強くなったことに調子乗ってたのがいかんかったのかね。ある日、事件が起きたのよ。

 

 ポケモンハウスが襲撃された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いやはや、やられたね。

 

 襲撃者共は誰なのかっつったら、そこはもうご想像通りロケット団よ。マジで許せねえ。

 

 みんなが「さあ寝よう」と就寝の準備をしている最中に押し入って、ポケモン達とフジ老人をかっさらっていきやがったのだ。突然の犯行すぎてどうしようもなかったね。

 ハウスのポケモン達、無事にしてるかな。ブリーダーちゃんやレンジャー君は今頃どうしているだろうか。

 

 あ? 俺? 俺は襲撃時なにしてたのかって?

 

 まあ、はい。寝てましたよ。正確には眠らされた。そんで捕獲された。現在、絶賛モンスターボール生活を満喫中。

 

 いやいや言い訳くらい聞いてくださいよ。すっげぇ手際が良かったんだぜあいつら。

 

 まず、奴らの手持ちであろう、ドガース軍団がダイハードの如く窓をぶち破って「どくガス」「えんまく」で目くらまし。ズバットの「ちょうおんぱ」で混乱され、とどめにスリープの「さいみんじゅつ」が炸裂ときたもんだ。奇襲であんなんされたらどうしようもないって。

 

 

 結果、眠っている間に捕獲されちゃったみたいだ。なんという屈辱だろうか。真正面から戦って捕獲されたのならまだしも、不意打ちからの搦め手でついでのごとくゲットされるとか。

 

 無理矢理ボールから飛び出してやろうともしたが、錠前ってーのかギプスみたいなのが取り付けられているらしく、ボールが震えるだけで何の効果もない。連中の話し声は聞こえてくるので、それでだいたいの事情は把握できはしたのだが。

 

 いや~やっちまった。

 

 原作ゲームではフジの方からロケット団に絡んでいたらしいから、じいさんが変な気を起こさないか俺なりに神経尖らせてはいたんだがなあ。まさか向こうから問答無用で襲ってくるとはね。

 

 ちなみにボールの中の環境についてのコメントなんだが。

 

 うん、まあ、なんだ。ぶっちゃけ悪くはないよ。寧ろ良いよ。とても良い。

 

 ある程度自由に動ける広さの球状な空間なんだが、別段圧迫感なんかも感じないしストレスもない。外の光景もぼんやりとだが見える。

 

 気味が悪いくらい居心地がいいってのが感想だな。

 

 しかしあれだな、この程よい密着感。俺に何かを思い出させる。

 

 そうだ。

 

 とお~い昔に、まだ俺が鼻たれだったころに、今や顔すら思い出せない母ちゃんに抱っこされてるのを思い出しちゃった。なんでだろうなあ。

 すまんちょっと泣いた。この感情がロケット団によってもたらされたのだという事実に気づいて再びホロリ。最悪だよ。

 

 そういやアニメのピカチュウなんかは、ボールに入るのを嫌がってたよな。何故だ? こんなに居心地いいのに。変わり者だぜアイツは。

 

   

 

 

 話を戻す。現実に目を向けよう。

 

 トレーニング後で疲れてたところに強制催眠を食らったのがいけなかったのか、かなり長いこと眠っていたらしい。外から聞こえる会話内容から察するに、三日は経っている。

 

 

 ロケット団側の目的も盗み聞く。何やら、理想の達成のためにフジの知識が云々などとのたまっている。ろくでもない理想に違いないぜ。

 

 つーかこいつら! 「ハウスのポケモン達はおまけで捕獲」みたいな事をほざいてやがる! くそったれ共が。お前ら人間じゃねぇ!

 

 俺や、ハウスの保護ポケモンたちは所詮おまけかい。棚ぼた感覚で拉致りやがって。とんだ地獄の片道切符だぜ。

 

 

 今すぐにでもボールから飛び出してこいつらを毒漬けにしてやりたいが、相変わらずボールの開閉が固定されてるのか外に出られない。

 

 もしかして俺、このまま捕獲された状態で放置されるのかな。うわああやめてくれ~。

 

 最近運動ばっかしてたから、満足に体を動かせないとムズムズしてしょうがないのだ。確かにボールの中は快適な空間だが、走り回るくらいのスペースはやっぱ欲しい。

 

 てか、このロケット団共は俺をどうしたいんだ? 今後どういう扱いをされるのか。他の捕獲されたポケモン達は大丈夫なのか?

 

 よくてサファリゾーン送りかね。或いはスロットゲームの景品。それって完全に物扱いだなあ。

 

 ロケット団の傘下に加えられるって線もあるか。奴らの手持ちなんぞには断じてなりたくない。絶対にいうこと聞いてやらんからな。反抗しまくってやる。

 つーかこのボールを破壊してやる。外に出されたら即やってやる。俺はマジでやるぜ躊躇わねえぜ? マスターボールだろうとぶっ壊す!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモンハウスの面々の安否を気にしつつ、脱出の機会を窺う。

 

 

 はああ、フジのじいさんは無事かねぇ。ロケット団はフジを攫うことが主目的だったようだが。

 

 つーかさ、今更だけど此処ってどこなんだよ。

 

 ボール越しだとあんまり鮮明には見えないから何とも言えんが、たぶん屋内、かな? 

 

 おおほらほら! なんか「我らがロケット団のアジトへようこそ」とか聞こえるぜ。隠れ家か何かかね。

 

 

 

 おん? アジト??

 

 ロケット団の???

 

 

 

 っつーことはだ、もしかして寝てる間にタマムシシティまで運ばれたのか?

 

 

 おいおい勘弁してくれよ。事態が一層面倒になっちゃったじゃねえか。

 

 

 というかロケット団のアジトってこた、此処はスロットゲームセンターの奥地っつうわけか。俺、やっぱりスロットの景品にされちゃうのかな?

 

 

 ……ああ? 何だ? 外から騒音が聞こえてくる。

 

 

 ふーむ。どうやら、誰かがポケモンバトルしているらしいな。

 

 

 おお! 黒服の人影が数人、一気にぶっ飛んでいったぞ。ロケット団を懲らしめんとする正義漢の登場か?!

 

 

 「私に歯向かうなら、痛い目にあってもらう」

 

 

 なんか偉そうな奴っぽい声も聞こえるな。つか、この声めっちゃ近くで聞こえたんすけど。いやちょっと待って。超絶急展開で思考が追い付かないんだが、嫌な予感だけはビンビンに感じるぞおい。

 

 直後に、パチン、と音がした。何かを外した音だ。これって、俺が入れられているモンスターボールを開放した音じゃ、

 

 

 「行け! ニドラン!」

 

 

 ほわっつ??

 

 

 いきなりの浮遊感。視界が一気に鮮明になる。

 

 

 「世界中のポケモンを悪だくみに使いまくって金儲けするロケット団―――」

 

 

 背後から、ドヤり感満載の声。ちらり、と確認してみれば……。

 

 

 

 「私が、そのリーダー サカキだ!」

 

 

 

 げ、ゲェェーー!??

 

 サカキ!? なんで!?

 

 

 ちょ、どういう事やねん! 俺は今までサカキの腰にくくり付けられてたってこと?! つうことは、俺ってサカキの手持ちにされちゃってたのか??

 

 

 いやいやちょい待ち! 俺がサカキの手持ちとして繰り出されたって事は……。

 

 

 正面を見る。

 

 赤い帽子を被った少年が、足元のピカチュウと共にこちらを見据えていた。

 

 

 うええ、マジかよ。完全にヒール側じゃん。

 

 

 しかもあのピカチュウ、以前会った奴だな。ほら、クチバシティでの通り魔ネズミ。親の仇みてぇなツラで俺を睨んでやがる。

 

 

 参った。こりゃ参った。どうする? 相手絶対主人公ポジションじゃないか。俺だって被害者だってのに、なんでこんな事になっちまったんだ。

 

 

 




長く放置してましたが、最新話投稿となります。申し訳ありません。
おそらく、鯖風味はこのお話を完結させることはできないでしょう。以後、長期で放置することになれば、感想もしくはタイトルに報告することにします。


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技23

相変わらずの鈍亀更新です。皆さんの感想は全て読ませていただいてます。ですが、返事を返すことはもうないかもしれません。お許しください。


ニドランがいない剣盾をややテンション下がり気味に遊んでましたが、追加DLの情報をみて発狂。アニメでミュウに煽られていただけかよと愚痴っていただけに、嬉しさも一押しです。


 

 落ち着け。そんでもって決断即実行だ。

 

 

 裏切り! 俺は悪の手先にゃならねえよ!

 

 

 サカキの手にあるボールへ「どくづき」。驚いた様子で狼狽えるサカキを尻目に落ちたボールを咥えて距離をとり、赤帽子少年の横へ移動する。

 

 おおう、よく見ればこのデザインってハイパーボールじゃねえか? なかなかの優良物件だが、残念。大家が悪党じゃ、LDK揃ってても住みたいとは思わねえな。

 

 

 「手持ちに反抗されるとは。昔を思い出す」

 

 

 ポケモンには好かれる質なのだがな。呟き、腕を抑えて苦笑するマフィアのドン。毒針がかすったらしいな。ざまあねえぜ。

 

 

 「戻ってこい。お前には最強になれる素質がある!」

 

 

 横のピカチュウが何とも言えない表情で見てくるのを無視していたら、サカキ様が熱いアプローチをぶっ込んできた。聞く耳持たぬと言いたいとこだが、一応今の俺のマスター(?)でもあるのでほんの少しだけご清聴。

 

 

 お前の事は評価しているだの、あらゆる能力データが一般のニドランを遥かに凌駕しているだの、いろいろと褒めちぎってくる。能力データ? 眠っている間に色々と調べられたようだ。

 

 

 一流のトレーナーでもあるサカキにそう言われるのは悪い気がしない。

 

 

 だが、うん。やっぱないな。ごめん聞くだけ無駄だったわ。

 

 

 「サカキ」というキャラクターは、ポケットモンスターの登場人物の中では個人的にかなり好きな部類だ。こんな状況じゃなけりゃ素直に尻尾を振っていたかもしれんし、この世界に来た直後にサカキに拾われていれば、特に何の抵抗もなく下っていたのかもしれない。お気に入りのキャラに煽てられちゃ、そりゃ良い気分になるってもんよ。

 

 

 が、それはそれだ。俺は既にロケット団の悪行をこの目で見てしまった。紛う方なきリアルな悪人であるサカキに、俺が靡くことはない。

 

 

 俺が好きなのはサカキというゲームキャラなんだよな。目の前のこいつはただのポマード臭い悪党である。

 

 

 自信満々で「戻ってこい」と促す御主人様。捕獲されたポケモンは基本的に従順になるから、適当によいしょしてやれば従ってくれるとでも思っているのだろう。

 

 

 悪いな。そうはいかねえんだ。

 

 

 純粋なポケモンならどうだったかわからんが、お生憎様。こちとら人とポケモンの交じりモノである。雑種は悪の大ボスに似合わねえぜ。

 

 

 咥えたボールを落とし、前脚を乗せる。一つ間を置いた後、見せつけるようにハイパーボールを踏み壊した。

 

 

 ははは、俺の帰るボールはもう無いってか。感動もなにもありゃしない。

 

 

 つーか罪悪感っ。ボール壊す時の躊躇いがパねぇ!!

 

 

 なんだこれ。愛着ある我が家に重機ぶちかましてるというか、大事な宝物を自らスクラップに変えちまったかのような悲壮感と後味の悪さ!

 

 

 モンスターボールって、ほんとポケモンの本能を上手く突いた商品なんだな。知らぬ間に捕獲された俺でもここまで精神を揺さぶられるもんなのかよ。こりゃ、よっぽどのへそ曲がりでもないかぎりトレーナーに懐いちゃうのも納得ってもんだ。魔性のアイテムやでぇ。

 

 

 真顔でこちらを見つめる元御主人さま。睨み返す俺。

 

 

 「何だこの展開」と困惑する少年とピカチュウ。すまんね、ちょっと置いてけぼり感あったねごめんね。てかさっきの間にサカキにダイレクトアタックしてもよかったってのに、お行儀のいい坊やだな。

 

 

 ま、そういうことだ。お前さん方は気に食わんかもしれんが、ここは共同戦線といこうぜ?

 

 

 このまま逃げてもいいんだが、こちとら世話になったポケモンハウスを襲撃され、さらに雑に捕獲されてお冠である。一度正面から叩きのめしておきたい。

 

 

 まず少年を見る。赤帽子が似合う、顔面無表情常時固定化エンチャントされてそうな小僧。が、俺と目が合うと優しそうに微笑んでくれた。ポケモン垂らしな顔してやがる。

 

 

 お次にピカチュウ。嫌っそうに唾を吐いていた。え??

 

 

 

 「気に入った。やはりお前は私の下へ来るべきだ」

 

 

 

 ニヤリと笑って言い放つサカキ。直後に投げられたのは、新たなモンスターボール。

 

 

 繰り出されたのは、一匹のポケモン。

 

 

 ドサイドンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はへ~。巨体を見上げる。まさに山の如し。それでいて、強者特有の圧がビシバシ伝わってくる。

 

 

 冷静に、戦力分析。「ステータス」ではなく、今までの戦闘経験によって培った洞察力によるものだが。

 

 

 

 

 やっべ。これ無理だわ。

 

 

 

 

 ドサイドンが、こちらを見下ろす。威風堂々たる佇まいだ。たった三匹の蟻が恐竜に睨まれ竦んでいる。

 

 

 勝てん。でもやるしかない。分かっちゃいるがなぁ。分かっちゃいるけど、ううん。

 

 

 俺が今まで見てきたポケモンの中での最強面子と言えば、当然ジムリーダーのエース達だ。イワ―ク、スターミー、マスター・フーディン、ライチュウ。鍛えに鍛えまくった今の俺でも、彼らに勝てるかどうかは分からない。

 

 

 が。このドサイドンは、違う。そういう次元じゃない。

 

 

 絶対に勝てない。俺とピカチュウが組んでも無理。何なら少年の手持ち全員を一気にぶつけたとしても、簡単に蹴散らされるだろう。というか先に挙げたエース達を総動員したとしてもどうなるか怪しい。

 

 

 完全に、格が違う。根性論でどうにかなるもんじゃない。

 

 

 デカブツを気にしつつ、少年の顔を横目で窺う。恐怖というより、驚きが強い表情をしている。

 

 

 ピカチュウは、と。全身の毛が逆立っている。明らかに気圧されている。あ、目が合った。

 

 

 

 

 どう思うあれ? 反則じゃね?? つーかお前のメインウェポンであろう電気技、効かねえぞ?

 

 

 え、マジ? 「でんじは」も?

 

 

 マジマジ。「アイアンテール」とか覚えてねえの?

 

 

 いやそれはまだ練習中で。イワ―ク相手に一度成功したっきりでよ。

 

 

 

 

 ……。これは本当にまずいぞ。

 

 

 

 

 「お前は後だ。まずは、レッドといったか。君が先約だったな」

 

 

 何がやねん、と視線を向けると同時に、サカキが指をパチンと鳴らした。

 

 

 何の合図だ? 下っ端の増援でも呼んだか? 

 

 

 ドサイドンに気を取られていたためか、周囲の警戒が疎かになっていた。突然、斜め後ろから一撃をもらう。何かに突進されたようだ。いやいやこれはしょうがないでしょあのドサイドン相手にしながら他に注意しろとか無理ゲ―もいいとこだよ。

 

 

 はっとした少年の叫びが聞こえる。俺に一撃くれた輩は、さらに勢いを増して加速。少年達と引き離された。お互い揉み合いに近い形で転がり、周囲の物体と騒音を巻き込みながら隣の部屋まで押し出されてしまった。

 

 

 ええい邪魔じゃい! やたらと角ばった感触の不届き者を押しのけようとしたら、目がチカチカする独特な色合いの光線で抵抗されてさらに吹き飛ばされた。これって「サイケこうせん」じゃねえか?! 痛いっつーの。

 

 

 

 「性能テストと躾も兼ねた良い機会だ。適度に痛めつけてやれ」

 

 

 

 サカキの声。自動ドアか何かが閉じる音がする。

 

 

 頭を振って正面を見れば、閉じられたドアの前に陣取るずんぐりむっくりな物体を捉える。

 

 

 赤と青のカラーリングが特徴的な、箱のようなポケモン。

 

 

 おお、こりゃ間違いねえ。

 

 

 俺も、お前を手に入れようと躍起になってコインを集めていた時期があったぜ。

 

 

 世界初の人工ポケモンとされている、ポリゴン。お会いできて光栄だ。是非ともサインの一つでもと頼みたい所だが、ちょいとタイミングが悪い。今は急ぎの用事があるのだ。

 

 

 そこをどいてくれないか?

 

 

 尋ねてみる。まあ、当たり前だが無反応だわな。知ってた。

 

 

 「あなをほる」。堅い床だがなんとかいけんじゃね? ポリゴンの下を素通りして少年達の所へ戻ろうとしたら、奴めとんでもない行動に出やがった。

 

 

 轟音、振動、衝撃。ぐえええ全身がいてえええ。

 

 

 あの野郎無茶苦茶しやがる!! 床に潜ろうとした俺目掛けて「はかいこうせん」をぶっぱなしやがった! 粉々になった床ごと宙に放り出されたわ!

 

 

 だが「はかいこうせん」は絶大な威力を持つが故に、撃ったら行動に支障がでるというデメリットがある。その隙を突けば奴を無視して少年と合流できるか? 着地と同時に駆け抜けてやればいけるか。

 

 

 が、そうは問屋が卸さぬってか。背後から二体目のポリゴンが現れた。俺の尻目掛けて「サイケこうせん」が襲い掛かる。間一髪回避。

 

 

 二体のポリゴンに挟まれる形だ。どうも、ちょっくら相手をしなきゃならんらしい。

 

 

 面倒だが、やるしかないか。というか、無視したとしても、俺を追いかけてきてそのままサカキのドサイドンと合流されたら万に一つの勝ち目もなくなっちまう。

 

 

 こいつらはここでダウンさせなきゃならん。腹を括りますか。

 

 

 

 

 

 




駆け足展開、だと思っています尚個人差。
更新頻度がおっそいので、その分物語は進めていきたい。


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技24

久しぶりに投稿します。本当にお待たせしました。今回は二つに分けようと思っていた話なのですが、一つに無理矢理まとめました。はやく(???)今回のシーンを終わらせたかったのです。


 

 

 

 

 戦闘は前置きなしに始まった。仮にだが、扉を守っている破壊ぶっぱ野郎をポリゴンAとしよう。後ろの、俺の尻を狙っているストーカー野郎はポリゴンBだ。

 

 

 二匹のポリゴンが絶え間なく攻撃してくる。

 

 

 前から「サイケこうせん」、後ろから「でんじは」。

 

  

 技のチョイスは素晴らしいが、ちょいと弾速が遅い。

 

 

 弱点技と状態異常を同時に使ってくるのは中々にいやらしいな。当たるわけにはいかんので、やや大げさな動きで全て回避する。扉を守ってる奴は固定砲台と化し、後ろの奴が動き回って常に挟み撃ちしてくる作戦か。鬱陶しいぜ。

 

 

 とはいえ挟み撃ちされてる間は「はかいこうせん」を撃たれる心配も薄いといえる。余波が凄いからな、あのビーム。反動もでかいし、もし撃ち漏らしたら実質タイマンになるからおいそれとは使えないだろう。

 

 

 体力には自信があるから、このまま避けまくって耐久戦をしてもいい。「どくびし」を撒いて逃げに逃げまくり、毒ダメージと技の撃ち疲れでへばったポリゴン共をちょいと突いてやれば、双方不要なダメージを受けずに戦闘を終わらせることができる。

 

 

 が、それはダメだ。こちらには時間がない。

 

 

 こうしてこいつらと戯れている間にも、赤帽子の少年(やっぱレッドって名前だった)がドサイドンとかいう暴力の権化にボッコボコにされてるのかもしれんのだ。短期決戦でこの場は切り抜けなきゃいかん。

 

 

 幸い、俺の見立てでは、このポリゴン達はドサイドンに比べて遥かに強さが劣ってそうなので、一気に攻め込んでやれば勝負はすぐにつくと思われる。

 

 

 サシの勝負ではまず間違いなく負けない。こいつらもそれが解っているのなら、二対一の構図は崩そうとしないだろうがな。どうやろね。

 

 

 一応、無駄だと分かっているがポリゴン共に何度か声をかけた。「今のうちに退いた方がいいぞ」的な台詞だが、やっぱりというか無視された。

 

 

 その代わりに「サイケこうせん」が十字砲火で飛んできた。しゃがんでやり過ごし、二匹を睨みつける。

 

 

 ソレが返答ってわけかい。なら、しょうがない。一応、忠告はしたからな。

 

 

 気持ちを完全に切り替える。こいつらは、敵だ。

 

 

 ロケット団の犬だ。そんな連中に容赦はしない。

 

 

 強くなるためにバトルするのではなく、ただぶっ倒すためにバトルする。

 

 

 この世界に来て初めて、俺はポケモン相手に敵意を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 扉を守るポリゴンAの首から上だけが、ぐりぐりと駆動して常にこちらを捉えている。感情とかまったくなさそうな面してやがんな。そんな目でみないでくれよ。気味悪いぜ。

 

 

 ポリゴンAの「サイケこうせん」。床を焦がしながら迫るソレを、大きく回り込むように走って避ける。

 

 

 そんな俺を、高速起動で追いすがってきたポリゴンBが至近距離から「でんじは」で挟撃しにきた。

 

 

 麻痺状態にはなるわけにはいかない。逆方向に跳ねて距離をとる。目標を逃し、つんのめるポリゴンB。

 

 

 その脇腹に「どくづき」を突き立てる。が、防御技で防がれた。これは「まもる」だな?

 

 

 半透明の防御膜に阻まれた俺に対して、隙ありとばかりにポリゴンAの「はかいこうせん」が発射された。

 

 

 バックジャンプで避ける。逃げ遅れたポリゴンBが光の柱に飲み込まれたが、「まもる」のおかげでノーダメージだ。なら、そこを攻めさせてもらう。

 

 

 「はかいこうせん」から生還した奴に「どくづき」をぶちかます。

 

 

 「まもる」は強力な防御技だが、連発することは難しい。ツールアシストのゲーム動画ぐらいでしか、そんな光景はお目にかかれない。

 

 

 防御膜が無くなり、「どくづき」が胴体に直撃した。予想外のダメージに慌てたのか、ポリゴンBが悲鳴のような電子音を上げた。ありゃ、なんだ。やっぱポリゴンにも感情ってあるのかね?

 

 

 焦った相手が後退しながら「でんじは」を使ってきたが、甘い。攻撃中は「まもる」を使えないのだ。飛び跳ねて避けつつ「ねんりき」を発動させる。逃がす気はない。

 

 

 宙に浮かされ、足と思われる部位をもぞもぞと動かして抵抗するポリゴンを、床に思いっきり叩きつけた。バチッと電気が弾けた音がし、体を硬直させた相手に対して、追い打ちの「にどげり」を放った。勢いよく床を転がり、力なく倒れ込むポリゴンB。

 

 

 瀕死になったかと様子を窺う。弱々しく目を点滅させているが、それ以上動く気配はない。

 

 

 おし、一匹倒した。まあまた動き出すかもしれないので、警戒はしておくけどな。で、残り一匹。

 

 

 ポリゴンAを見れば、奴は妙に静かになっていた。何も仕掛けてこない。つーかこいつも目をチカチカさせてやがるな。

 

 

 仲間がやられて放心したのだろうか? それとも交信かなにかをしている?

 

 

 とにかくこっちから攻撃するかって、おっと。

 

 

 視界が光に染まった。いやこれって……。

 

 

 ここでまた「はかいこうせん」かよ?! うおおああ危ない!

 

 

 極太のビームを横っ飛びでやり過ごす。やべぇよあいつ。そんな大技をポンポン撃つかよふつう。

 

 

 ともあれこれで奴はクールタイムに入るはずだから、そこをオギャアあああああ!!!

 

 

 痛い! いったい! な、ホワイ、へぇあ!? 

 

 

 何が起こった?! 「はかいこうせん」を喰らっちまったぞ!

 

 

 

 

 落ち着け、冷静になれ。大ダメージは受けたが、まだ倒れる程じゃない。

 

 

 

 

 

 そうだ落ち着け落ち着け冷静冷静脳みそ絶対零度クールクールクゥゥゥゥル。深呼吸だ。体から焦げ臭い煙があがっている。おえぇっ。

 

 

 さっきのアレはなんだ? 「はかいこうせん」だ。では何で避けたのに当たった?

 

 

 薙ぎ払われた? 正面はよく見ていたからそれは違う。俺は真横から衝撃を受けた。

 

 

 床に視線を落とす。「はかいこうせん」の馬鹿げた威力のせいで、その射線上が抉れている。その破壊跡を辿ると、俺が避けた所から直角に曲がっていた。つまり、光線が曲がって横っ面にぶち当たってきたってことになる。

 

 

 なんでやねん。こんなん絶対当たるやん。そう、絶対必中の攻撃だ。

 

 

 

 

 ……「ロックオン」だな?

 

 

 

 

 問いかけてみるが、当然これも無視。無機質に見える眼だが、なんだか若干の怒気を含んでいるように感じられた。仲間をやられて怒ったのかね?

 

  

 やるじゃない。しかし、さっきのちょっとした間だけで「ロックオン」できるか?

 

 

 さてはこいつ、ポリゴンBがボコられてる時には既に狙いを付けていやがったな。非情な作戦か、或いは熱い連携なのか。

 

 

 ともあれ、もう撃たせはしない。「10まんボルト」を放つ。

 

 

 「ロックオン」という技は、発動完了までに時間を必要とする。猶予はもう与えない。

 

 

 このまま畳みかけて、ケリをつける。

 

 

 こちらの「10まんボルト」に対しポリゴンAは「サイケこうせん」で応戦してきた。が、威力の差がデカい。光線を貫き、電撃が刺さる。

 

 

 ポリゴンの体が傾く。近接攻撃で終わらせようとしたら、なんと向こうからダッシュして接近戦を挑んできた。

 

 

 てっきり扉を守るだけの不動明王と思っていたから驚いた。が、使ってきた技は渾身の「たいあたり」。ダメージにすらならない。というか技の「たいあたり」ですらないぞこれ。ただ死に物狂いでぶつかってきただけだ。

 

 

 「どくづき」で迎撃し、仰け反ったところに「にどげり」。定位置の扉前まで吹っ飛んで戻るポリゴンA。

 

 

 かなりの痛手を負わせたが、奴は怯まない。俺に目を合わせてチカチカさせてきたので、すぐさま「10まんボルト」で黙らせる。恐らくだが、あれが「ロックオン」の予備動作なんだろうな。

 

 

 そろそろトドメか?

 

 

 奴はまだ倒れてない。扉に尻を預けるようにして寄り添い、こちらに向き直っている。

 

 

 何をそんな必死になっているんだか。あんな男の命令にそこまでの価値があるか?

 

 

 そう考えて、口に出しそうになったが、やめた。

 

 

 俺だって知っているからだ。ポケモンって、そういう生き物なんだよな。

 

 

 そう思った直後に、四度目の「はかいこうせん」が発射された。

 

 

 「ロックオン」はされていない。回避だ。

 

 

 「はかいこうせん」は俺の横を通り過ぎたりはせず、直角に曲がって当たりにきた。

 

 

 

 ぐえええええ!!?? な、なんでやねん……っ。

 

 

 

 衝撃で壁に叩きつけられた。さすがにダメージが大きい。吐きそう。吐いた。

 

 

 何が起こった? 「ロックオン」はされてなかったはずだ! ぜーぜー言いながら立ち上がり、視線を上げる。

 

 

 ふと、ボロクズのように倒れているポリゴンBが視界に入った。相変わらず動き出す気配はないが、首から上だけはこちらを向いており、目はチカチカと点滅し続けている。

 

 

 ああ、はい。なるほどね。

 

 

 閃いた。そういうことか。

 

 

 違うかもしれんが、そうとしか思えない。あれ? 「ロックオン」ってそんな使い方出来たっけ?

 

 

 ……恐らくだが、ポリゴンBが「ロックオン」して、その情報を奴ら独自のやり方で共有し、ポリゴンAがノータイムで使用したのだ。

 

 

 よくやるぜ。流石はバーチャルポケモンだ。いやシージーポケモンだったか? とにかく、かがくのちからってすげー……。

 

 

 まだサカキ戦が控えてるってのに、ちょっと傷を負いすぎたな。ああもう、体が痛い。ふらつきながらも立ち上がる。

 

 

 眼前に光の塊が迫ってきていた。おい、ここで反動無視して連発かよ。

 

 

 ヤバい、これを喰らうわけにはいかん。

 

 

 だが避けれない。相殺もできないし、俺には「まもる」とかいう便利な技すらも使えないときた。八方塞がりだ。

 

 

 くそったれ、こうなったら仕方ない。

 

 

 受けて、耐えるしかないな。

 

 

 正確には、耐えられる体に成るのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 「はかいこうせん」が、俺の体を飲み込んだ。

 

 

 構うもんかよ。直進する。川の流れに逆らうように、足を動かす。

 

 

 進化に必要な条件とはなんじゃろか? 

 

 

 レベル、道具、天候、懐き度。他にもあったかな。

  

 

 どうして俺は進化できなかったのだろう? 答えは解っていた。単純に、覚悟が足りなかったのだ。

 

 

 進化なんぞしてしまったら、もう後戻り出来ない。ポケモンの進化はやり直しがきかないからな。

 

 

 根拠は上手く言葉に表現できんが、進化してしまうと、もう元の世界に戻れなくなるのではないかと怯えていたのだ。体は進化する準備を整えているが、俺の精神がそれにまったをかけていた。

 

 

 本当に情けない話である。あれだけ進化出来ないとボヤいてはいたが、愚痴ってるだけで本人にはまったくその気がなかったのだ。ここまでの状態に追い詰められなければ、俺は進化という選択を選ぼうとすらしなかっただろう。

 

 

 ああ~、何となく見えてきたぞ。ポケモン世界に来る前の俺がどういう人間だったのかがな。自身の生態に関する記憶はあまり覚えてなかったが、人間としての本質はポケモンになっても大して変わってないみてぇだ。ヤマブキシティで一度踏ん切りつけたつもりだったが、結局は何も変わろうとしてなかったんだよなあ。

 

 

 

 つーわけで、今変わるぜ。

 

 

 

 覚悟完了。肉体が一気に盛り上がる。

 

 

 活力が爆発した。心臓の動機が激しい。なんかすっげえ興奮してきた。「はかいこうせん」の中に居るというのに、俺は咆哮を上げていた。

 

 

 光線の波を切り裂き、走る。この先にいるであろう敵を叩きのめしたくて堪らない。

 

 

 走る、走る走る。走って、跳び掛かかった。

 

 

 光をかき分けた先には、ポリゴンがいた。不合理なゴリ押しで襲い掛かる俺を呆然と見つめている。

 

 

 何が起こったか分からないってか? そりゃ驚くだろ。いい気味だ。

 

 

 技も糞もない。勢いに任せて飛びつき、牙を剥いた。

 

 

 衝突する。奴が背にして守っている扉にぶつかり、ぶち破った。ポリゴンに覆いかぶさり、頭部に噛り付いた体勢のまま隣の部屋に滑り込む。

 

 

 おっと、あんまりにも興奮しすぎてかなり不格好なトドメになっちまった。思わず噛みついていたぜ。ニドリーノに進化したからか、血の気が多くなっちゃったのかね?

 

 

 体もかなりでかくなったなあ。倍近くは大きくなったんじゃないか? 見渡す景色もまた違うぜっと、そんな事は今はどうでもいいか。

 

 

 眼前。レッド少年とサカキの勝負は、今まさに決着が付かんとしていた。

 

 

 余裕綽々といった風のドサイドンが、少年の手持ちだと思われるゼニガメの甲羅を掴んで持ち上げている。ゼニガメはぐったりとしていて動かない。

 

 

 膝をついて悔しがる少年。彼の足元にはいくつかのモンスターボールが転がっている。その近くで、くたびれた様子のピカチュウが倒れ伏していた。

 

 

 

 「進化したのか。やはり見込みがある」

 

 

 

 サカキが横目で俺を見やり、薄く笑う。

 

 

 

 あ、嘘。これ間に合わなかった??

 

 




なんでニドキングにダストシュートを与えてくれないのか。


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