グランブルーファンタジー【REDHIANT MYTHOLOGY】 (RYOU)
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第一話~忘却者~

色とりどりの紅葉の葉が舞う森。

その中に立つ一軒の平屋と金属音と炸裂音が響く鍛冶工場。

 

????

「・・・・・・」

 

そこに腰まである長髪を裏で縛り、その手には大型の拳銃を持った青年が一点を見つめる。

 

???

「いくですよ~!アー兄~!」

 

そして木の上には青いフード付きのコートを羽織った小柄な少女がいっぱいに薪を持つ。

 

???

「いっけ~です、こんちくしょう~!!」

 

いつもながらの大慌てっぷりに苦笑しつつもその薪群に精神を集中させ、引き金を引く。

刹那に炸裂音が響き渡り、ほぼ同時に薪全てが吹き飛ぶ。

 

???

「ぴゃあああああ?!?やっぱでけぇ過ぎるです、ここここ、こんにゃ、わひゃー!?」

 

だが落下した小柄な少女が地面に落ちることなく何かに引っかかった感覚が来る。

 

????

「まったくクムユは相変わらず驚き癖は直らないみたいだな」

 

柔らかい笑みを浮かべながら見てみると指に引っ掛けて担ぐような形で助けたようだ。

この少女の名前は『クムユ』。

頭には牛のような2本の角が生えている膂力と器用さに長けた種族ドラフの少女だ。

 

クムユ

「す、すまねぇです、アー兄~。うぅ、クムユ、やっぱビビりすぎですー・・・・」

 

かなり臆病であわてんぼうで大きな音や大声などが鳴るたびにすっとんきょな毛を上げて

しまい、そのたびに自己嫌悪に陥っている。

 

???

「アーサー兄~!ご飯で来たよ~!クム坊もおいで~!!」

 

そして工房の方から元気いっぱいと分かる明るい声が聞こえてきて振り返ってみると駆け

て来たのはこの工房で暮らすもう1人の少女『ククル』。

短めの銀髪に青いリボンをツーサイドアップに束ね白いベレー帽をかぶり、青と白で纏ま

った上着とミニスカート姿に不釣り合いなリボルバー二丁を携える。

 

アーサー

「ああ、今行くよ、ククル」

 

クムユ

「朝ごはんです、やっほーい!」

 

この青年の名前は『アーサー』。

だが実際の名前なのかはわからない。

彼は1年前に近くの河原に流れ着いていたのをこの工房の親方であり、2人の父親に救わ

れて一命を取り留めたのだが自分の名もどこから来たのかも記憶を失っていた。

唯一、彼が握りしめていたペンダントに『δυνατό φως~Arthur~』と書かれており

解読できた方の名をそのまま名前として使っている。

 

「おう、どうだ、アーサー!お前用に作った特製のリボルバーは!」

 

「あんた、銃の事を聞く前にさっさと食べなよ!あんたらも席に座りな!」

 

ククル・クムユ

「「はーい!・がってんでい!」」

 

いつもの賑やかな食卓に笑みを浮かべながら席に座って調整している銃を置く。

 

アーサー

「うん、俺の感覚通りに動いてくれて感触がとてもいいよ、ラムレイ」

 

磨き上げられた銀色の二連マガジン式の大型拳銃で彼女達にいるもう1人の姉、

というより姉代わりの女性が彼の名前がかつて存在した英雄王と同じなのでそれに

由来して灰色の跳躍者の異名をもつ彼の馬の名を取った1つ目の愛用武器。

 

ククル

「でもこれの調整ってすごく難しいよね、極限にまで連射性能を高めた調整に

 してあってアーサー兄の早撃ちに対応させるのに凄く苦労したもん」

 

「もう片方はもう少し調整が必要みたいだから旦那にもうちょっと時間頂戴ね、アーサー」

 

アーサー

「ええ、俺ももっと鍛錬を積まないと。旅に出るにも万全の状態にしたいし」

 

記憶は失っているもののその戦闘能力はかなり高いようで野盗に襲撃された際は

本人曰く『体が覚えていた感覚』だけで制圧してしまったほど。

だが動きに身体のほうが追いつかないのかすぐに疲労してしまうのが難点だ。

 

「お前がここに来てからもう1年になるのか。俺は息子も欲しかったから一緒に

 暮らすようになって嬉しいもんだったぜ」

 

アーサー

「親方と御上さんには感謝してるよ。いきなり流れ着いた俺を息子のように接して

 くれたし、こうして旅に出るために色々と協力してもらえたし」

 

「何言ってんだい、今更水臭いねぇ~?それよりさっさと食べちゃいなー!」

 

クムユ

「はや~く食べようってんだい~!ククル姉、アー兄~!」

 

アーサー

「はいはい、食いしん坊のクムユにどつかれる前に食べるとしますか」

 

ククル

「ははー♪そうだね、食べよう、食べよう~!」

 

クムユ

「ククククク、クムユは食いしん坊じゃねぇーです、ぴゃああああ!!」

 

一同

「はっはhっはっはっはっは!!」

 

賑やかな笑い声が響く食卓の時間は穏やかに過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサー

「・・・・・・すぅ・・・フゥ・・・」

 

それから日が天から降り注ぐ頃にアーサーは2人をつれて滝の下までやってきた。

彼の手には持ち手に鍔も白くだがその刃は青に白、そして金で装飾された鞘に入っ

たままの剣を持ちながら精神を集中させる。

 

アーサー

「(感覚を研ぎ澄ませ・・・感覚を剣に乗せて・・・)」

 

彼の身体を包むように白いオーラが包み込んで段々とその光が強さを増す。

 

アーサー

「(解き放つッ!)」

 

跳躍すると同時にそれは常人のそれを遥かに上回る跳躍で滝の上部まで飛び上がる。

そしてその白いオーラを剣に纏わせ、一心に斬撃に乗せようとしたのだが・・・。

 

アーサー

「げッ・・!?」

 

しかしオーラが消えてしまって一気に重力に身体を引かれて下に落ちていく。

 

クムユ

「ややややややや、やべぇーーです!?あっち、こっち、そっち、どっちだ、りゃー!?」

 

ククル

「わわわわーーー!?アーサー兄!?あぶなぁあああい!?」

 

即座に手を翳すと地面目掛けて何かが放出されてそれが反発し、身体が浮き上がる。

 

アーサー

「あ・・危なかった・・・・」

 

ククル

「もう~、びっくりさせないでよ、アーサー兄~(汗。」

 

クムユ

「クムユの心臓に悪いってんだい、ですー」

 

アーサー

「ごめん、ごめん。だけどこの覇気って力はまだ使いこなせないな・・・。前に

 工房に来た老獪の剣士が一部の人間にしか持てない力だって言ってたけど」

 

世界に名を遺した偉人達のほとんどが何かしら覇気の力を持ち合わせており

それを持つのは大いなる力を持ち合わせている証拠というらしい。

 

ククル

「ってことはアーサー兄もすっごい有名人になるのかな~!わたしその妹って事で

 わたしも有名人になっちゃったりするのかな~!?」

 

クムユ

「わわわわわ、わたしも有名人ですか、こんにゃろう!恥ずかしってんだー、あう!?」

 

アーサー

「お前達・・・頼むから少し落ち着いてくれ。話が飛躍し過ぎだから(汗。」

 

その素質はあるもののまだまだ使うには修業が足りないようで最近になってようやく

短時間ではあるが瞬間火力を上げる強化技程度にはなっている。

 

アーサー

「それにしても俺の持ち物だったんだろうけど・・・何なんだろうな、この剣は」

 

白い陶磁器のような美しさを持つ広刃の大剣。

彼が流れ着いた時に所持していたものの1つなのだが鞘としっかりと連結されてし

まっているせいで刃を抜くことが出来ないので剣というよりは打撃武器に近い。

 

ククル

「わたしやお父ちゃんでも全然、重くて持てないのにアーサー兄だけはそんなに

 軽々と持てるってのも不思議だよね~?やっぱ凄い人だったんだよ!」

 

クムユ

「今でもアー兄はめっちゃ強くてかっこいいです!クムユも憧れてるぜ、です」

 

憧れの瞳で見つめる2人の妹の頭に手を置いて優しく撫でる。

 

アーサー

「さて・・・それなりにいい修業は出来たし戻るとするか。行こう、2人共」

 

クムユを肩に担いでククルの方は腕にしがみついてきて一緒に歩き出す。

 

クムユ

「ひゃわわ~~~!高い、高いってんだ~!いい眺めですー!」

 

アーサー

「ほら、クムユ、あんまり暴れるとこの前みたいに落ちるぞ~?」

 

ククル

「ははははは~♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。

 

アーサー

「特殊鉱石を受け取りにいけばいいのかい?」

 

「ああ、アウギュステに行ってそこによろず屋がいるから受け取ってきてもらい

 たいんだ。ちょっとした旅だが予行練習にはいいだろうよ」

 

「おつかいみたいなもんだけど旅がどんなもんかを体験するにはいいんじゃない?」

 

アーサー

「分かった、準備して明日にでも取りに行ってくるよ。そうだ、銃の調整を頼むよ」

 

「任せとけ、明日までにはしっかりと状態にしあげておくぜいッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

家族が寝静まった夜。アーサーは1人、星空を眺めて物思いに耽っていた。

 

アーサー

「いまだに昔の記憶は戻らない。1年前に記憶を失った状態で気絶していたのを

 親方と御上さんに拾われて・・・家族が出来て兄妹も出来て・・・記憶を失う

 前の俺もどこかで家族や仲間に囲まれていたんだろうか」

 

唯一、自分を記したのは胸に付けているペンダント。

この世界にはない文字でこちらと一致していたのは自分の名前『アーサー』とい

う事だけ、だが持っていた剣からすればそれに準じた世界で生きていたのだろうか。

 

「(コンコン)」

 

部屋のドアをノックする音が聞こえて入るように促すとそこに立っていたのは

ククルで寝間着姿で入ってくると無言でベッドに上がってきた。

 

アーサー

「どうした?怖い夢でもみたのか?」

 

ククル

「も、もう・・・わたしそんな子供じゃないもん。ちょっと気になっちゃって」

 

少し考える仕草をする彼女の次の言葉を待つが何とも意外なものだった。

 

ククル

「アーサー兄は旅に出てもし記憶が戻って帰る場所が見つかったらもうこの家には

 帰ってこないのかな・・・?クムユとかすっごく寂しがるし、お父ちゃんとお母

 ちゃんも・・・わたしもチョッチ、さ」

 

アーサー

「もしかして今回の遠出の事か?ちょっとしたおつかいだぞ?」

 

ククル

「ほら、今回じゃなくていつか本当に旅に出た時の事だよ」

 

彼女はクムユに憧れの姉、両親から誇れる娘とそれを自覚しているせいかそれに対

する努力を惜しまず、それによって無茶をする事もあるのだが彼が家に居候となっ

てからは家族も彼に頼る事も多くなり、上手く彼女をフォローしていた。

 

アーサー

「まったく・・・相変わらず人からの好意や期待に応えるのは得意なくせに誰かに

 頼ったり、背負って貰ったりするのは下手っぴだな」

 

そういって頭に手を置いてワシワシと撫でる。

 

ククル

「こうやってなんからしくない感じになっちゃうのアーサー兄の前だから・・・

 わたしなりには頼ったり、おぶってもらったりしてるもん」

 

アーサー

「それでもまだまだ下手過ぎる。俺だって思う事があればお前やクムユにだって相

 談してるだろ・・・まぁ、全部ってわけでもないがその俺より酷いぞ、ククル」

 

ククル

「うぅぅ~~~」

 

月明かりが差す中でククルを促すと自分の膝の上に座らせて2人で空を眺める。

 

アーサー

「心配しなくていい、確かに自分の事を知りたいとは思うし、俺には生まれ故郷が

 あるんだろうけど俺にとって、今はここしか知らないが俺の第二の故郷だ。

 そしてここで出会ったククルにクムユ、親方に御上さん達が俺の家族だよ」

 

落ち着かせるように労わるように撫でて彼女に微笑む。

 

ククル

「約束、だよね」

 

アーサー

「あぁ、約束だ」

 

安心しきったように体を預けてくるククルを支えながらしばらくして落ち着いたようだ。

 

アーサー

「さぁ、落ち着いたなら部屋に戻りな。もうゆっくり眠れるだろ」

 

ククル

「・・・・・、えい!」

 

だがククルはそのままアーサーのベッドにもぐりこむと顔だけだして手招きする。

 

アーサー

「妹の憧れの姉になるって息巻いてるのにそんな事してたら子供っぽくなるぞ~?」

 

ククル

「いいじゃん、別に~。アーサー兄の前は『妹』のククル、子供っぽくていいんだもん」

 

苦笑いしながら寝床に彼も潜り込んで寝る体勢になるとククルが寄り添ってくる。

なんとも嬉しそうな顔でじゃれつくのだが少ししてゆったりとした寝息が聞こえてきた。

 

アーサー

「・・・・・やれやれ。まだまだ手のかかる『妹』だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木漏れ日が差す朝。

まだ寝息を立てているククルの乱れた前髪を指先で直し、布団をかけ直す。

 

アーサー

「こうしてみるとまだまだ子供だな・・・いってくるな、ククル」

 

部屋を出るとすでに親方と御上さんはすでに起きていて机には彼の2丁拳銃が

置いてあった。

 

親方

「おう、準備は出来たか。銃の調整も出来上がったぞ」

 

御上さん

「行く前にささっと食べてっちゃいな。飛空艇の出る時間までもう少しあるから」

 

アーサー

「ありがとう」

 

クムユ

「うぅ~・・・・おはようでふ・・・」

 

寝床から色々とだらしない感じで起きてきたクムユが皆に挨拶をする。

 

アーサー

「って、こらこら、クムユ。ちゃんと服を直せ、てか枕を持ってこないの」

 

やれやれとクムユから枕を預かってそのまま洗面台まで連れて行って顔を洗わせ

目を覚まさせる。こちらもまだまだ手のかかる妹のようだ。

 

アーサー

「やれやれ、さてと・・・そろそろ行かないとな」

 

立てかけていた剣と二丁の銃『ラムレイ』と『パッスランド』をホルダーに

入れ、それに御上さんが仕立てたという特製のロングコートを持ってきた。

 

御上さん

「わたしの自信作だよ。やっぱり見た目もしっかりとしなきゃ締まらないだろ?」

 

アーサー

「ありがとう、御上さん。んっ、ククルも起きたか」

 

そして起きてきたククルも妹同様にいろいろとだらしない事になっていた。

 

アーサー

「あぁ~もう、姉妹揃って似なくていいとこまで似てるな、ほら、顔洗って

 さっぱりしてこい。ほれ、クムユ、寝ぼけて指をくわえるな」

 

親方

「はっはっは!!お前もすっかりこいつらの兄貴だな、アーサーッ!」

 

アーサー

「まだまだ目が離せなくて旅におちおち出てられないよ、まったく」

 

苦笑しながらも荷物をまとめて家を出ようとしたら姉妹2人がお見送りする。

 

クムユ・ククル

「「いってらっしゃ~い・・(です~)」」

 

アーサー

「やれやれ、本当に締まりがないな(汗。あぁ、いってきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはこの島にある飛空艇港。彼自身もこの1年をここで過ごしていたがこう

して外の世界に出るのは初めての事でかつての自分は見ていたのかもしれない

が飛び立つ飛行艇から見るどこまでも続く空の世界はとても真新しく映った。

 

アーサー

「おぉ・・・島があんなに小さく見える。考えたら島から出るのも初めてだな」

 

ククルとクムユは以前、ある騎空団に所属していてしばらく外の世界を見て回

ったらしく、そこを考えると2人に比べて世界は知らない。

だからなのか2人から聞く外の世界の話は兄ながらとても興味を惹かれていた。

 

アーサー

「島から多少は見えていたけどそれ以上に点在してる無人島やら岩島が多いな

 たまに島にいない魔物が現れるがああいうところから飛来してくるのか」

 

基本的に無人島や岩島にも魔物は生息しており、質量や元素量の問題で気流に

流されてくる島群もあるのでそこから自分の島に落ちてくるものもいる。

 

それから調整の終わった愛銃のもう1つ『パッスランド』を引き抜く。

この銃は実を言えばこの世界には無い技術で作られたモノらしく、親方もこれ

の調整はかなり苦労したらしくオーバーホールできるのだが通常の銃よりさら

に扱いが難しい、言ってしまえば実弾銃ではないのだ。

 

アーサー

「俺の魔力と気を吸収して弾として撃つ・・・そう説明はされたけどこの剣と

 同様に何で俺がこんな武器を持ってるんだ、昔の俺は何してたんだかな?」

 

だが確実に言えるのはこの2つの武器は自分の手足のような感覚で扱える武器

で重さも感じない程に自分にフィットしている武器で他の人間が持つと最早、

重厚な巨石でも乗せられたような状態になる。

 

アーサー

「・・・・やめておこう。今、これを考えてもしょうがない・・・。ちょっと

 中でも見てみるかな、確か飛空艇ごとに色々と特徴があるらしいし」

 

 

 

 

 

 

 

アーサー

「本当にこれがこんな値段なのか・・・?いや、こういう場所はこういうもんか?」

 

売店のような場所に来たのだが自分の島で見慣れたモノがこういった場所では

恐ろしく高値で売られているのに何故か、ある意味の外の怖さを知った気がした。

 

店員

「Aセット、1000ルピになりますー」

 

アーサー

「(これ俺なら半分の値段で作れる・・・なんて言えないよな)どうも」

 

普段から台所なども手伝っているので価格的に納得がいかないアーサーだった。

 

??????

「は、離してください!」

 

????

「姫様、今すぐお戻りください。ご自分の立場をお考えください」

 

アーサー

「・・・・(汗。このトラブルからやってくるのは疫病神でもついてるのか?」

 

あまり関わらないようにと思って席に座り、目的地につくまで厄介事でつかいを

滞らせないように極力気配を消していたのだが。

 

??????

「わたしはどうしても彼に伝えないといけない事がッ!」

 

????

「それはわたし達で通達をすると言ったはずですが、聞き分け下さい」

 

??????

「できませんッ!そういって何もしてくれなかったではありませんか!」

 

????

「・・・・・あまり駄々をこねるようでした手荒な真似になりますが・・・?」

 

その直後。

 

????・????

「ぶお!?」「あちゃああああ!?」

 

見事に1人の少女に言い寄っていた甲冑の男達の顔面にケーキと熱々の紅茶が

直撃して目潰しと高熱地獄を食らった2人は悶絶していた。

 

??????

「????」

 

アーサー

「騎士の癖に女の子の扱い方くらい習わなかったのか?あんまり荒い男はモテ

 ないと思うんだけどね?」

 

????

「き、貴様ーーー!!」

 

????

「栄光あるザーフィアス帝国騎士に!このような愚行をッ!!」

 

しかしこの手の対処法は慣れたモノで先手必勝である。

そんな前口上をした直後に前蹴りから回し蹴りの連打で2人揃って即KOする。

 

帝国兵1・帝国兵2

「うべ!?がは・・・ッ」「ぐがっ!?・・・ッ」

 

アーサー

「御託並べる前に相手倒すくらいはするんだな、栄光ある騎士様よ」

 

少しして途中の停留場についたので密かに2人は飛空艇の外へと放り出しておいた。

 

アーサー

「やれやれ・・・早々にこのゴタゴタとは。やっぱり疫病神でもついてるのかな」

 

??????

「あ、あの・・・・ッ」

 

振り返るとさっき兵士に追われていた女の子が現れる。

見たままのお姫様というような上等な生地で出来ているドレス調の服を身に

まとっている桃色髪と翡翠色の眼が特徴的だった。

 

??????

「あなたにお願いしたい事があるんですッ」

 

アーサー

「ちょ、ちょっと待てッ。いきなりなんなんだ、てか君は誰ッ?」

 

慌てすぎた事を理解して少し息を整え、凛と姿勢を正して自ら名乗る。

 

エステリーゼ

「ザーフィアス帝国皇帝第一候補、エステリーゼ・シデス・ヒュラッセイン

 と申します。あなたの腕を見込んでお願いがあります、わたしを城砦都市

 アルビオンまで連れていって欲しいんです!」

 

突如として現れた皇帝第一候補と名乗る少女『エステリーゼ』。

彼の旅路は最初から波乱の幕開けとなった。

 

 




次回のREDHIANT MYTHOLOGYは

「どうしてもアルビオンにいって伝えなければいけないことがあるんです!」

帝国兵に追われていた少女『エステリーゼ』を助けたアーサー。
少女のあまりの必死さにある意味、折れる形で同行することになる。

「俺はアーサーだ」

「改めてお願いします、アーサー」

しかし突如としてもう1つの大国『エルステ帝国』の船に襲撃される。

「悪いんだけどそこのお姫様を渡してくれるかな~?じゃないと殺すよ
 、僕の殺戮兵器『アドウェルサ』でさぁ!」

エルステの少将と名乗るハーヴィン族の帝国幹部とその兵器との対峙。

「お前みたいな世間知らずの役立たずが皇帝になれるわけないだろ~!
 僕が上に上がるために兵器の部品になってればいいんだよ、はは~♪」

         
             第二話~満月の姫~



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第二話~満月の姫君~

とある島の町工房に居候している記憶喪失の青年『アーサー』。
工房の親方達から鉱石を取ってくるように頼まれ一路、アギュウステを目指していた。
しかし、その飛空艇で1人の少女と出会った。


 

 

突如として自分をアルビオンへと連れていけと言い始めた少女に困惑するアーサー。

 

アーサー

「あ、アルビオンに?待ってくれ、いきなりそう言われても困るぞッ」

 

エステリーゼ

「す、すいませんッ!でもどうしても皆に伝えなければならないことがあるんです

 じゃないとアルビオンにいる皆が大変なことにッ!」

 

アーサー

「皆?大変な事?落ち着いて、1つずつ説明してくれ、俺も整理できないぞ」

 

そして彼女の口から語られたのはアルビオンで今、エルステ・ザーフィアス

アルビオン領主による会談が行われており、彼女の仲間の騎空団がザーフィアス

の代表である彼女の友人の護衛についているという。

 

アーサー

「待て、それじゃ何で君がここにいるんだ。君は第一候補なんだろ?なんでそこ

 に皇帝候補って名義の友人がいってるんだよ」

 

エステリーゼ

「エルステの少将とザーフィアスの議会長の密談を聞いてしまったんです。

 騎士団側の推奨候補である彼や邪魔になる上層幹部をその会談会場ごと

 攻撃して自分達の有利な状況にしようとしているって」

 

アーサー

「・・・つまりさっきの騎士達は逆に君を人質にそれをやめさせようとしたか」

 

エステリーゼ

「えっ?」

 

その反応にあまり自分の立場やどういう状況なのかを把握していないようだった。

 

アーサー

「君は評議会側の押しが強いんだろ?だったら騎士団側にとっては自分達の候補

 を護るための盾にもなるし、人質にとれば後々、相手側を脅す矛にもなる。だ

 からさっきの騎士は躍起になって君を捕縛しようとしたんだろう」

 

エステリーゼ

「でも彼らはフレンの騎士団に所属していて信頼出来ると思ったんです。でも話

 を取り合ってもらえなかったんです」

 

当然だろう、自分達にとって有用な駒をみすみす危険な場所に行かせるわけがない。

 

アーサー

「隠れていたけど見つかって・・・そこに俺が居合わせたってわけね」

 

エステリーゼ

「烏滸がましいというのは分かります、ですが他に頼れる人がいないんです!

 お願いします、手を貸してください、皆を助けたいんです!?」

 

確実に関われば面倒どころか、国絡みの大事に首を突っ込まなくてはならない。

ただのおつかいだったはずなのに話が途方もない方向へと向かってしまった

自分のある意味の運の無さを嘆いてしまう。

 

アーサー

「(・・・またあいつらに怒られそうだな・・・)(汗。」

 

深いため息をはいて顔を上げる。

 

アーサー

「分かった、とりあえずアルビオンの君の仲間の元までは送っていこう」

 

エステリーゼ

「本当ですか!」

 

アーサー

「あぁ、だがそこまでだ。それ以上の事はその騎空団の仲間に頼む事、いいな」

 

エステリーゼ

「ありがとうございます、ありがとうございます!」

 

おもいっきり頭を下げて感謝されてしまったのだが皇帝候補としてはどうにも

まだまだ威厳だとか知識がないなと思う。

自分もそこまで詳しくはないがさっきのだけでも自分ですら考察は行きつく。

 

アーサー

「自己紹介がまだだったな、俺はアーサーだ」

 

エステリーゼ

「よろしくお願いします、アーサー!わたしの事は『エステル』と言ってください」

 

それが仲間内からの愛称らしくそちらの方が呼ばれなれているらしい。

 

アーサー

「分かった、よろしく頼む、エステル。ところで・・・・」

 

まず第一の問題があった。それを主張するのは腹の虫。

 

アーサー

「とりあえず腹ごしらえさせてくれ、さっき食べようとしたのを兵士らにブン投げ

 ちゃってな・・・・」

 

だがもう一匹、主張する腹の虫がいた。

 

エステル

「(・・・・////)」

 

アーサー

「・・・もしかして慌てすぎて何も食ってなかった・・・か?」

 

エステル

「は・・・はい」

 

しめて2000ルピになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサー

「やっぱりどうにも高すぎる・・これなら半分で作れる、間違いなく」

 

エステル

「そうなんです?」

 

とりあえず2人で食事をとることにしたアーサー。アギュウステまではもう少しで

到着するがまずは使いの品と家にその知人の商人経由で一報を入れることにする。

 

エステル

「アーサーはどこ出身の方なんです?」

 

アーサー

「あぁ、ここから少し離れた群島の1つにある銃工房で世話になってるんだ」

 

自分が記憶喪失でその銃工房の親方たちに拾われる以前の記憶がなく、今はその

両親の依頼で鉱石を取りに行くところだったのを伝える。

 

エステル

「す、すいません。わたし、自分の事ばかり主張してしまって」

 

アーサー

「別にいいさ、自分で首を突っ込んだのもある。俺の被もあるさ」

 

ここまで来ると逆に目的がはっきりとしたので動じることもなくなっていた。

 

アーサー

「逆に俺から質問なんだがその騎空団の仲間ってのはどんな人らなんだい?」

 

エステル

「皆です?はい、えっとちょっと皮肉屋でぶっきら棒ですけどとっても頼りに

 なるユーリに、後、素直じゃないですけど優しいリタ、頑張り屋で騎空団の

 ボスをしているカロル、それと大人で頼りになるジュディス、それとさっき

 話した騎士団の団長をしているフレンです」

 

そして彼らとの冒険やあった話を楽しそうに話すエステル。

それを聞いているだけでもこの状況下ですら頼りにしているかが分かる。

 

アーサー

「・・・・」

 

エステル

「どうかしたんです、アーサー?さっきから雲海を見つめていますけど」

 

アーサー

「んっ?あぁ、何でもない。気にしないでくれ、いつもの気のせいだ」

 

エステル

「?」

 

どうにもさっきからいつもの『気のせい』が敏感に『悪意』を感じ取っていた。

彼には覇気の他にもいろいろと不思議な力が備わっていたがこれもその1つで

人の『直接の悪意』だったり、何かに擦りついている『間接的な悪意』を感知

することが出来る、ある種の危機察知能力が高いのである。

 

アーサー

「(工房でも野党達の悪意を感じ取って待ち構えてたりしたけど・・・・この

  感じ・・・今まで感じたことがない、どす黒い陰湿な『悪意』・・・)」

 

微かではあるがそれを雲海の向こうから感じている気がしていたのだ。

 

アーサー

「少し外の空気でも吸ってくるか、頭をすっきりもさせておきたいし」

 

エステル

「わたしもご一緒します」

 

2人は甲板へ向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外へ出て大きく体を伸ばす。

エステルも流れる風に靡く髪をかき上げながら広がる空の風景を見る。

 

エステル

「そういえばアーサーはそんな物凄い大剣を使うんですね、カロルみたいです」

 

話によればカロルという少年はハンマーのような大物を使うらしい。

 

アーサー

「こいつはどうにも不思議な武器でね。俺以外が持つと巨石のように重く

 なるんだ、試しに持ってみるか?」

 

彼からその剣を手渡された瞬間に一気に沈み込んだのだがすぐにアーサーが

持ち直したので手がスプラっタな展開にはならずに済んだようである。

 

エステル

「本当にアーサーが持つと羽根のように軽々と使えるんですね、不思議です」

 

アーサー

「さっきも言ったけど俺自身にも分からないんだ、記憶を失った俺にあるのは

 いくつかの能力とこの大剣と銃、このペンダントくらいだ」

 

エステル

「でもわたしはアーサーは記憶を失う前もとてもいい人だったと思います」

 

アーサー

「その心は?

 

エステル

「わたしのお願いを聞いてくれました」

 

それだけで会ったばかりの他人をいい人認定というのは世間知らず過ぎかとも

思うのだがこれだけ純粋というか、正直な人間も初めてな気がする。

自分ですら初めて会った者には警戒する、師匠からの教えでもある。

 

アーサー

「お前の仲間は大変そうだな」

 

エステル

「?どうしてです?」

 

アーサー

「エステルみたいなタイプはこうと決めたら譲らない頑固タイプな上に

 何となくだがお姫様っぽいし、珍しいモノにフラフラとしちゃって仲間

 からもっと落ち着けだの、疑う事を知れとか言われないか?」

 

エステル

「うぅ・・・・」

 

アーサー

「図星か」

 

エステル

「そういう飄々と人のいたいところをついてくるところはユーリに似て

 意地悪です、アーサー」

 

会ったばかりではあるのだが何とも不思議な子だなとも思った。

 

アーサー

「――――ッ」

 

その時、さっきより強く『悪意』を感じ取って周囲を見渡す。

 

エステル

「どうしたんです?アーサ・・―――」

 

突如として自分達のいる場所が暗くなり空を見上げるとそこにはこの飛空艇

より巨大な恐らくは軍用の飛空艇が真上につけており、ハッチが開いた。

 

アーサー

「あれは・・・エルステ帝国の軍艦!?」

 

エステル

「帝国兵の人達が降りてきます・・・ッ」

 

飛来してきた帝国兵が次々に降りてきてエステルとアーサー達を取り囲む。

 

アーサー

「随分と物騒だな、エルステは民間の飛空艇まで襲う気か?」

 

帝国兵1

「そちらのエステリーゼ様を渡してもらおう。そうすれば命は奪わん」

 

全員が武器を抜いてアーサーに突き付けてくる。

 

アーサー

「悪いんだがこっちの姫様とは約束をしててね。彼女の仲間の騎空団の処まで

 は送り届けないといけないんだ・・・邪魔はしないでくれるかな?」

 

帝国兵2

「どうやら自分の立場というのを理解していないようだ」

 

帝国兵3

「この船は完全に我が軍で制圧している、他の民間人も巻き込みたいか?」

 

妹からエルステの評判などは聞いていたがそれ通りの軍勢のようだった。

 

エステル

「アーサー・・・」

 

アーサー

「心配するな、すぐ終わる」

 

帝国兵4

「構わん、こいつはさっさと始末しろ。エステリーゼ様さえ手に入れば―――」

 

刹那、響き渡る炸裂音と硝煙の匂い。

 

帝国兵一同

「!?」

 

気づいた時には帝国兵達全員の武器が吹き飛ばされており、振り向いた先には

いつの間にか引き抜いていた男の銃が煙を上げていた。

さらには身の丈ほどの大剣を振りかぶり、警戒態勢を取る前に振り抜かれる。

 

アーサー

「風塵衝ッ」

 

風の衝撃波を壁のように自分の前方に放ち、周囲の帝国兵を薙ぎ払った。

騒ぎを聞きつけて中に入っていた帝国兵も次々に甲板へと上がってくる。

 

帝国兵

「こいつ、かなりやるぞッ!」

 

帝国兵

「早く姫様を連れて行かなければ少将に何をされるか、早く奴を殺せ!」

 

鬼気迫る表情で襲い掛かろうとしてくる帝国兵をゆったりと見つめる。

 

アーサー

「さてとまずはお掃除からだな」

 

エステル

「わたしもお手伝いします!」

 

アーサー

「あんま無理するなよ、俺がメインでやる。危なくなったらすぐ下がれ」

 

エステル

「これでも剣と昌術には覚えがあります。サポートはお任せを」

 

少し笑みを浮かべて銃を構えるとそれを構えて戦いの口火を切る。

 

帝国兵

「かかれ!かかれ!畳みかけて物量で押し切れ、相手は2人だ!!」

 

アーサー

「ッ」

 

得意の早撃ちで武器を叩き落とし、即座に親方が作った特別製の軽量弾倉を

装填し直してさらにもう1つの愛銃『パッスランド』を構える。

 

アーサー

「こいつはちょっと暴れ馬でな、気をつけろよ」

 

この銃は魔力を吸収していくつかの技を発動出来る。それも感覚的に覚えて

いる技だったのだが銃弾を必要としない魔導武器だ。

 

アーサー

「薙ぎ払うッ!」

 

帝国兵2・帝国兵6

「「うわああああっ!?」」

 

自分の周囲を薙ぎ払うように銃弾を前方に浴びせかけて素早く踏み込みながら

エネルギーをチャージした魔弾を至近距離で撃ち込む。

 

エステル

「銃弾が当たったのに致命傷になってないですッ」

 

アーサー

「こいつは俺の意志でその弾丸の性質も変えれるのさ、くらいやがれッ!」

 

しかしそれを搔い潜って兵士の1人がアーサーの後ろを取る。

 

エステル

「アーサー!」

 

だが瞬時に裏へ一歩引くと相手の懐へ完全に入り、タイミングをずらされた

相手は自分の腕を肩で防がれてしまい、剣を振るえず隙を露呈する。

 

アーサー

「ご苦労さん」

 

顔面に銃の特殊なパーツを付属した銃身部分で素早く体を回転させ強烈な

打撃でノックアウトした。

 

アーサー

「パッスランドの銃身は師匠の剣技にも耐える強度でな、打撃武器でもあるのさ」

 

基本的に彼は接近主体ではあるが銃を活かした中距離・遠距離、さらには

その距離での弱点である接近戦でもパッスランド、そしてそれに合わせて

ラムレイも工房で手に入る最硬度の素材で作っており同様に使える。

 

エステル

「今のうちに体力を回復します、聖なる活力よ 此処へ ファーストエイド」

 

アーサー

「なるほど、タイプ的にはヒーラーって感じか」

 

エステル

「そこまで大きな術は使えませんが補助を精一杯やりますね」

 

だが今度は魔力の波動を感じる機械兵が数体、飛空艇からこちらに降りてくる。

 

帝国兵

「機械兵で圧し潰せ!」

 

破壊力のある両腕による攻撃に加えてその中央の眼のような部分から光線を放つ。

 

エステル

「まさからあれは魔晶ッ」

 

アーサー

「なんだ、それは?」

 

エステル

「星の民の技術を帝国が模倣して作った結晶と聞いています、確か空の世界に

 存在するモノを変換する力があるとか・・・・」

 

アーサー

「厄介な力ってのは分かった」

 

帝国兵

「貴様のそんな豆鉄砲ではこの機械兵は倒せんぞ!」

 

しかしその観察眼はその機械兵のウィークポイントをすでに割り出していた。

関節部の隙にピンポイントで銃弾を撃ち込み、中の配線などを破壊して火花が

散り、動けずにその場に平伏す。

 

アーサー

「馬鹿力はあるが随分と鈍足だな、隙を伺う時間はたっぷりとあった」

 

 

 

 

 

 

そんな中、アーサーを狙う眼差し。

 

帝国兵

「よくねらえ・・・外せば次はないぞ。一発で仕留めろ」

 

そして引き金に指をかけ、引こうとした瞬間。

 

 

 

 

 

帝国兵1・2

「うわああああああ!?!」「ぐあああ?!」

 

アーサー

「?」

 

振り返ってみると飛空艇の上層から2人の兵士が落下してきて気絶している。

 

エステル

「な、なんです?まさか上にも敵が」

 

???

「余計かと思いましたが手助けさせていただきます」

 

そしてその上層から降りてきたのは青と白の薄手の冒険者服とマント、そして

二刀の剣を携えた女性で涼しげだが凛とした眼差しと表情、白銀のショートヘ

アーで何となくだが自分と同じ力を感じる。

 

アーサー

「いや、助かる。共闘、頼めるかい?」

 

ティア

「任せてください、わたしはティアです。あなた達は?」

 

アーサー

「アーサーだ」

 

エステル

「エステルと呼んでください」

 

二刀を抜いて敵兵達を見据えるとアーサーと共に応戦を開始する。

 

ティア

「それでは行きますよ、アーサー、エステル」

 

アーサー・エステル

「ああ」「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

民間飛空艇につけている帝国飛空艇内の一室。

 

?????

「いつまでかかってるんだい?たかだか1人の姫様を連れてくるのに」

 

帝国兵

「はっ・・・何やらエステリーゼ様について妨害をしている男と女がいるとかで

 かなりの手練れである――――ぐがっ!?」

 

?????

「御託はいいんだよ、御託は。さっさと連れて来いって言ってるんだ、屑」

 

帝国兵

「は、はっ!」

 

?????

「面倒だなぁ~・・・そうだ、アレの試運転も兼ねて的にしちゃおうかな~?

 姫様だけいれば別に飛空艇なんて落としてもどうでもいいし」

 

不穏かつ非道な言葉を吐いた小柄な人物は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサー

「妙だな」

 

エステル

「どうしたんです、アーサー・・・ッ!」

 

アーサー

「こいつらの戦い方が変わった。最初のあの躍起になった戦い方から防御に

 比重を置いたやり方になっている・・・露骨な時間稼ぎだな」

 

ティア

「無理に攻めてくる気配がなくなりましたか」

 

高い観察眼から瞬時にその変化に気づいたのだがさすがに何のためにその行動に

出たのかまで推測が難しいところだ。

しかしこの状況を動かすだけの「ナニカ」があるのは間違いがなさそうだ。

 

エステル

「ならここを離れた方が・・・」

 

アーサー

「どこに逃げるんだ?こっちは足がこの艇だけ、しかも空の上だ。戦況なら

 俺らが押してるかもしれないが状況はこっちが袋小路にいる」

 

ティア

「あの規模の飛空艇の人数を考えると恐らくそう人手は多くないはずです」

 

飛空艇の大きさを考えてもそれなりの人数は削った。艇の稼働を考えればそ

れに必要な人数を残しておかなければならないし、そろそろ撤退する頃だろう。

 

?????

「随分と派手にやってくれたようだね。僕の手駒をこれだけ倒すなんてね」

 

ティア

「回避!」

 

アーサー

「!」

 

エステル

「アーサ―――――――、きゃっ!」

 

即座に反応したアーサーはエステルを抱えて飛びのき、側転も交えて回避する

のだが目の前にいた兵士やその場所が銃撃の雨で吹き飛ばされ凄惨な光景が広がる。

そして視線を向けるとほかの兵士とは違う煌びやかな軍服を着た小柄なハーヴィン

俗の男性がにやりと笑みを浮かべてこちらを見ていた。

 

?????

「思ったより感がいいんだね~?丁度いいから姫様以外は全部掃除しようと思った

 のに掃除できたのは役立たずの囮役だけか」

 

エステル

「い、今すぐ回復を・・・ッ、アーサー・・?」

 

首を振るアーサーを見て改めてみるすでに全員が絶命していた。

 

?????

「悪いんだけどそこのお姫様を渡してくれるかな~?じゃないと殺すよ

 、僕の殺戮兵器『アドウェルサ』でさぁ!」

 

黒いボディーに大口径の砲門と武装を備えた大型の兵器のようだった。

 

アーサー

「その服装、エルステの幹部クラスか。仮にも自分の部下を躊躇なく・・・」

 

だがこれに高笑いしながらさらに下衆にも似た言葉を吐く。

 

?????

「部下~?部下っていうのは僕のために有意義な結果や功績を運んでくる優秀

 な人材を言うだよ。こいつらなんかただの駒になるか、ならないかさ~♪」

 

ティア

「この下衆が・・・ッ」

 

エステル

「酷い・・・」

 

アーサー

「お前らも何であんな屑のいう事を聞いてんだ、少しは抵抗しろよッ」

 

帝国兵

「あの方の・・フュリアス少将の恐怖を知らぬだ・・・姫を・・差し出せッ」

 

大体は何か弱みを握られているか、何かを押さえられていていう事を聞くしか

後はその処遇が下衆なのか、多少の事は考えることが出来た。

 

エステル

「わたしは・・・・」

 

アーサー

「その先の言葉吐くなよ、そういうのは自己犠牲じゃない、唯の虚栄だ」

 

そして武器を構えてそれぞれの事情を知った上で剣気を放つ。

 

アーサー

「郷に入って郷に従った時点で同情の余地はない・・・斬り抜ける」

 

フュリアス

「いいねぇ~、この駒より君の方がよっぽど部下としての素質あるよ。どう

 かな?今までの無礼極まりない行動は目をつぶってあげるよ、僕の忠実な

 部下となるなら寛大な心で――――」

 

しかしその返答は炸裂音で返された。そして吹き飛ぶメガネ。

 

フュリアス

「・・・・・・・」

 

アーサー

「他人を容赦なく斬る割には自分はしっかりと守備を固めてるか、見た目も

 人格も小さい奴だな」

 

フュリアス

「・・・なんだって・・・?もう一度、言ってくれるかな・・・?」

 

帝国兵

「(ま、まずいッ!?)おい、貴様!口を慎――――」

 

だがそんな制止もお構いなしにばっさりと目の前の少将の評価を下す。

 

アーサー

「言動で大体想像がつく、自分の手を汚すのを嫌い、そのくせ人の不幸や苦痛

 を楽しむ典型的な小悪党・・・見た目通りな小物だろ」

 

フュリアス

「・・・はっはっはっは!!!!!!いいよ、君、最高にむかつくよ!!!

 ここでバラバラに艇ごと空の底にばら撒いてやるよぉお!!!!」

 

またもや無差別な攻撃を仕掛けてくるのに対して回避しながら巻き込まれる

敵だった兵士達に向けてパッスランドを構える。

 

帝国兵

「ぐお!?」「ぐあ!?」「な、な―――ッ!?」

 

帝国兵を殺傷力のないパッスランドの銃撃でさっき開いた穴へと吹き飛ばした。

 

アーサー

「これで的が減って戦い易くなるぜ、敵とはいえ気分が悪いからな」

 

ティア

「・・・あなたは少々、甘いですよ」

 

アーサー

「自覚してる、よッ!」

 

だが無差別攻撃は止むことなくさらにアーサーへと襲い掛かる。

 

エステル

「きゃああああああ?!?!」

 

フュリアス

「はっはっはっは!!別に姫様は生きてればいいいんだし~?手足の1つが

 無くなっても医療班に延命させればいいだけだからな!ほら、ほら!逃げて

 無様にボクに許しを請え!お前はもう処刑確定だ!!」

 

アーサーの方はパッスランドとラムレイを構え、エステルは首にしがみ付かせる。

 

フュリアス

「そんな玩具で何が出来るんだよ~ッ?でもいいね、いいね~!そうやって

 もっと必死に抵抗しなよ、足掻いてもがく姿はとても最高さぁ♪」

 

そしてその巨大な砲門に光が宿り、轟音を轟かせて瞬時にアーサーは回避する。

巨大な閃光が放たれてアーサーのいた場所が抉られるように破壊されて浮遊して

いる無人島に直撃して岩石群に変えてしまう。

 

アーサー

「ちっ、本当に他がどうなろうとお構いなしだな」

 

エステル

「目的はわたしのはずです・・・ッ!アーサー達は関係ありません、わたしに

 何かあったらそれこそ話し合いの余地もなくなりますッ!」

 

しかしこの発言にさらに高笑いしながら彼女を罵倒する。

 

フュリアス

「お前みたいな世間知らずの役立たずが皇帝になれるわけないだろ~!

 僕が上に上がるために兵器の部品になってればいいんだよ、はは~♪」

 

アーサー

「兵器の部品だと?」

 

フュリアス

「星の民が作った最高最悪の兵器さ、かつてこの世界を覆うほどの災厄すら

 薙ぎ払った星の民の強力な兵器にその姫様、いや満月の子達の子孫が鍵と

 して必要なのさ、僕が調べすでにその施設も手中に収めたからね」

 

そして下衆な笑いを浮かべながら上機嫌に愉悦に浸っている。

 

ティア

「話は聞いたことがありますがあんなお伽噺のモノを信じているのですか」

 

フュリアス

「だから実際に手中に収めたって言ってるだろ~?途方もない力を秘めた

 まさに話に合致する代物、そしてその姫様の一族がその軌道に必要な子孫

 の末裔・・・さらにその力を色濃く受け継いでいるのさ」

 

 

 

フュリアス

「君も馬鹿だよ、これだけの圧倒的な戦力差があるのにたてつくなんてさ!

 これだから下層の奴らは見るに堪えない愚かさなんだ」

 

アーサー

「あぁ、そうかい・・・なら」

 

ティア

「ッ。それは?」

 

腰に携帯していた球体を取り出すと2つをアドウェルサの足元に放り投げた。

 

アーサー

「さっさと退け」

 

放り投げた球体に重弾を撃ち込むと閃光と共に轟音が響いて大爆発が起こる。

 

フュリアス

「なっ!なんだ!何が・・!何をしたんだよ、お前ッ!?」

 

アーサー

「さっきのは俺の妹特製の爆弾でな、小型だが破壊力は抜群。お前が玩具と

 笑っていたこいつらで周辺を撃ち続けて足場を脆くしておいたんだよ」

 

そこに爆弾の衝撃も加われば必然と結果は出る。

アドウェルサの比重に耐え切れなくなった足場がそのまま抜け落ち、落下する。

 

フュリアス

「・・・な~んちゃって~!」

 

しかしアドウェルサは飛行機能もあるのかそこから浮上し、また砲台を向ける。

 

フュリアス

「起死回生だったのかもしれないけど残念だね~♪死ねよ、ゴミが!!!」

 

エステル

「アーサーッ!」

 

アーサー

「やれやれ・・・だから小物だっていうんだ。自分から不安定な場所に上がるかよ」

 

その砲門に向けてもう1つ持っていた爆弾を素早く放り投げるとその爆弾が

砲門の真下、そして砲撃が放たれるベストのタイミングで引き金を引く。

 

エステル

「きゃ!?」

 

フュリアス

「なっ・・なっ!馬鹿なッ?!」

 

爆発と同時に発射してしまったために衝撃で後ろに跳ね、さらに砲撃の衝撃で

余計に後方へとボディが回転してその場で青天する。

 

アーサー

「ティア、行くぞッ!」

 

ティア

「はいッ」

 

完全に態勢を崩したアドウェルサに向けて2人が同時に武器を構え突進する。

 

アーサー

「自分の兵器でブッ潰れろ、フュリアス!」

 

ティア

「これで最後です・・消えなさい!」

 

ティアの双剣に光が宿り、アーサーも自身の持つ技の体勢に入った。

 

アーサー

「瞬迅剣・疾風!」

 

ティア

「空破絶掌撃!」

 

一度目の踏み込みから刹那にもう一歩踏み込みさらに加速した牙突に同じよう

な2度の踏み込みに合わせた強烈な牙突二連が追撃する。

青天と同時に砲撃してしまいそれが自分達の飛空艇に直撃して爆発炎上する。

 

フュリアス

「ぼ、僕の船がぁあああ?!!」

 

帝国兵

「いかん、このままでは墜落ッ――――ごああああああ!?」

 

気づいた時にはフュリアスとまとめて帝国兵はパッスランドの銃撃で吹き飛ば

され炎上している飛空艇へ。

 

ティア

「落ちなさい、ハァァッ!!」

 

そして双剣をこちらの飛空艇とドッキングしていた足場を斬り払った。

 

フュリアス

「お、覚えてろよぉ!!お前は絶対にぶち殺してやァ――――――・・・・」

 

爆発炎上しながら帝国の飛空艇は硬度を下げて下の方に浮遊していた無人島に

墜落していき、森の中へと消えていった。

 

アーサー

「あぁやって結局無人島に墜落するあたり小物らしい悪運だな」

 

エステル

「どうにか・・・助かったんです・・・?」

 

ティア

「そのようですね」

 

それぞれ武器をしまい一息をはく。

 

アーサー

「そういえばティアはどこにいたんだ?この船を少し見て回ったが見かけなかったぞ」

 

ティア

「この飛空艇には多少だけど就寝室がいくつかあるの。仮眠を取っていたら

 この騒ぎで・・・中の帝国兵を殲滅して表に出たらあなた達がいたのです」

 

従業員

「皆さん、本当にありがとうございました」

 

どうやら飛空艇の従業員のようで数人でアーサー達に礼を言いに来た。

 

アーサー

「別に構わないさ、それよりアルビオンまでは―――あ、あれ・・・?」

 

しかし言葉を言い終わる前に片膝をついてしまうアーサー。

 

エステル

「アーサー!?大丈夫ですか?まさか怪我を・・・?」

 

アーサー

「いや・・・いつもの事だから大丈夫。(まだ動きに身体が・・・)」

 

気を張っていたから感じていなかったのかもしれないがかなりの数の帝国兵

や機械兵にあの大型兵器との連戦で予想より酷使していたようだ。

 

ティア

「恐らく肺活量と戦闘能力に身体の機能が追いついていないのでしょう。わた

 しにも経験があります、わたしの呼吸に合わせてください」

 

彼女の呼吸リズムに合わせてアーサーも呼吸をする。すると呼吸が整う。

そしてエステルの回復昌術で体力と怪我もある程度回復したようだ。

 

ティア

「ですがもう少し休んだ方がいいでしょう。たしか次の停泊所があったはず」

 

アーサー

「そうもいかないんでね・・・このお姫様を連れて行かないと・・・」

 

エステル

「ダメです!」

 

しかしそれを止めたのは当人のエステル本人でそれに呆れ顔を見せる。

 

アーサー

「あのな、お前の目的は仲間を助けに行くことだろう。手段のために目的を

 忘れるな・・・それじゃ皇帝なんて地位についたらとんでもないぞ」

 

エステル

「わたしは皆を助けに行きたいです。でもそれでアーサーを酷い目に合わせて

 助けにいっても皆から怒られます。まずはあなたの回復が先です」

 

完全にてこでも動かない、何があっても聴きませんモードだ。

 

ティア

「こうなっては仕方がありませんね。この船も少し修理が必要でしょうし

 故障でなにかあっては遅いですから一度休息をとりましょう」

 

アーサー

「・・・分かったよ、てかいう通りにするから腕にしがみ付くな、エステル」

 

エステル

「あっ、す、すいません(汗。」

 

3人はアーサーの回復と飛空艇の修理のために次の停泊所で休息を取る事にした。

新たに現れた謎の女剣士『ティア』との共闘で難を逃れたアーサーとエステル。

しかしエステルという少女は何なのか、フュリアスの言った『満月の子』と

そして古代の兵器の『鍵』という言葉。

謎が深まるばかりだがこの先に待つであろう戦いのために休息をとるのだった。

 

 

 




次回のREDHIANT MYTHOLOGYは


「あなたの覇気はまだ芽生えたばかり・・・故に馴染まずあなたが傷つく」

「お前はこの力の事を知っているのか・・・?」

休息を取った停泊所の街。そして月明かりの中対峙する2人。

「わたしもあなたと同じ力を持っているからです・・・今はまだわたしの方が強い」

そして覇気の力の使い方を知るティアがその力を見せる。

「これが覇気の力の一片・・・『極限の精神』。あなたも持っていた力です」

「これが本当に人間の動きかよッ!?この力を俺が――――」

『あなたは誰にも負けない。わたし達の希望の光だよ、アーサー』

魂に残る少女の声と笑顔。そして託されていた欠片が目覚める。

「・・・・・・・・」



             第三話~片鱗~





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第三話~片鱗~

突如現れたエルステ帝国、その少将のフュリアス。
殺戮兵器や機械兵に苦戦しつつも新たに現れた女剣士『ティア』との共闘。
辛くもフュリアス率いるエルステ帝国軍を撤退させたアーサー達。
先を急ごうとするアーサーだったがエステルとティアの提案で一路、近くの
停泊街で休息を取る事になった。



突如としてエステルを狙って襲撃してきたエルステ帝国少将フュリアスを退

けたアーサーだったが疲労の蓄積から一度、途中の停泊所で休息を取っていた。

 

エステル

「・・・・・・」

 

アーサー

「・・・・・・」

 

エステルが回復昌術をアーサーに展開して持続的な回復を行っていた。

 

ティア

「食事を貰ってきました、今はとりあえず鋭気を養いましょう」

 

アーサー

「鍛えてきたつもりだったがまだまだイメージと体が一致しないな」

 

考えてみるとあれだけ激しい戦闘をしたのは初めてだったかもしれない。

気を張っていたのもあるだろうが今までにない疲労感だった。

回復を終えたアーサーはエステル、ティアと食事をとる事にした。

 

エステル

「そういえば2人はどこか同じ流派で鍛えていたんです?」

 

ティア

「どうしたのですか、エステル?」

 

エステル

「あの戦いで2人共同じような光を纏って戦っていました。アーサーは白で

 ティアは黒い光だったと思います」

 

アーサー

「俺もあまり詳しく知ってるわけじゃないが『覇気』って力だ」

 

エステル

「覇気・・・です?」

 

ティア

「長い歴史上で名を遺す者達の多くはその覇気を操る者だったと言います。

 先天的にその血を継いでいる者が強い覇気を纏う、わたしの祖先も彼の

 祖先も元々から覇気を纏う人物だったのでしょうね」

 

だがティアを見ていると自分より遥かに操っているように思える。

 

アーサー

「俺は一瞬だけ力の強化に使うくらいでほとんど持続力がない。ティアのを

 見てると適材適所で覇気を操っていた、あの戦いでもそうだったろ?」

 

ティア

「強力な力はそれだけリスクが伴う。わたしも長時間は使えませんから」

 

同い年くらいにみえるのに随分と落ち着いていて自分より戦い慣れしている

ように思える。

それに同じ二刀流の師を持つからその剣術の腕の高さも窺い知れる。

 

アーサー

「男としてはちょいと情けないがティアには敵いそうにないな」

 

ティア

「・・・いえ、あなたはわたしより強いですよ。まだまだ力を知らないだけです」

 

エステル

「なんだか、ティアはとても大人っぽいです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月明かりの照らす停泊街。

アーサーは大剣を持って外に出ていた。そして1人座り精神統一をする。

 

アーサー

「・・・・・・・・・」

 

覇気を練り、自らに纏わせる。かつてに比べては安定してはいるがティアの

それを見せられると自分の覇気は随分と安定性はない。

 

ティア

「やはりまだ安定していないようですね」

 

アーサー

「・・・ティアか」

 

振り返るとそこには鎧を外し、インナー姿のティアがやってきていた。

 

ティア

「そういえばアーサーは何故、あの飛空艇に?」

 

アーサー

「元々はアギュウステに鉱石を取りに行くことになってたんだがそこでエステル

 と会ってな。あとはあの大騒ぎだ、ここでシェロとあえてよかったよ」

 

『シェロ』というのはこの世界の行商を取り仕切っている商人の愛称であり

彼女経由で家には少し遅れるという連絡を入れることは出来たらしい。

 

アーサー

「ティアは何で1人で旅をしているんだ?」

 

ティア

「自分自身を探す旅・・・とでもいいますか。実は以前の記憶がまるでないの

 です、気づいた時には小さな教会のシスターに手当されていました」

 

アーサー

「なんだか俺と似たような感じだな。俺も1年前以降の記憶がないんだ」

 

自分がここに至るまでの出来事やククル達家族の事も話した。

 

ティア

「とてもいい子達なのですね、それにとても大切に想っている」

 

アーサー

「俺のはっきりとある記憶の中で初めて出来た家族だからな、感謝してるよ」

 

そんな談笑をした後にティアが少し真剣な顔で話を切り出す。

 

ティア

「アーサー、あなたのこれからのために覇気のさらに一線を越えた本来の力を

 今からあなたに見せます」

 

アーサー

「何・・・?覇気をさらに超えた力・・・?」

 

ティア

「わたしがこの前の戦闘で瞬間的な覇気の発動をしていたのは効率よく無駄の

 ない戦闘をするためですが本来の使い方ではありません」

 

一刀を抜いたティアが少し間をあけて立ち、アーサーも剣を背に携える。

 

ティア

「あなたは本来の覇気の力を忘れているだけで実際は既に使う事は出来ます。

 忘却しているが故に引き出せず中途半端に覇気を使ってしまっている」

 

するとまずティアは自分の身体に前も見た漆黒の覇気を纏って見せる。

 

アーサー

「(やっぱり俺みたいにぶれてない。安定して纏わせている)」

 

ティア

「あなたの覇気はまだ芽生えたばかり・・・故に馴染まずあなたが傷つく」

 

そしてその覇気が段々と小さくなっていき、ついには纏っていた光がなくなった。

 

アーサー

「お前はこの力をどこまで知っているんだ・・・?」

 

ティア

「わたしはあなたと違って1つだけ薄っすらとですが持っている記憶がありま

 す・・・それはわたしにこの力を教えたと思われる人物の背中、その背には

 あなたが今持つその剣が携えられていた」

 

アーサー

「!?」

 

まさかの展開だった。それが真実の記憶なのか、そうではないのかはわからない

がまさか自分の過去に繋がるかもしれない言葉を聞くとは思わなかった。

 

ティア

「わたしもまさかとは思いました・・・ですがその背中とあなたはとてもよく

 似ている・・・だから確かめるためでもあった」

 

その眼がうっすらとだが開かれていく。

 

ティア

「力の引き出し方を知っているのはその人からの教えがあったから。そして

 あなたと同じ力を持つからです、そして今はわたしの方が強い」

 

開かれた眼には一筋の黒い光の放出されて彼女の雰囲気が一変する。

 

ティア

「力の使い方を教えましょう」

 

アーサー

「―――――――――ッ―――――!」

 

瞬間、背筋を突き抜けるような悪寒と威圧感が突き刺さって体の危機感知力が

フル稼働し、瞬時に戦闘態勢を取ったはずだったのだが・・・・。

 

アーサー

「・・・・・」

 

気づいた時には自分の頬を刃が通過しており、少し切れたのか血が流れる。

 

アーサー

「・・・・・ッ」

 

ティア

「参ります」

 

そこからはすでに防戦一方。いや防戦すらも儘ならない。

 

アーサー

「・・・・ッ」

 

ティア

「遅い」

 

来ると思った方向に防御した時には既に裏を取られて峰内をくらう。

 

アーサー

「・・・ッ、オォォオッ!!!」

 

一瞬見えた影に渾身の牙突を繰り出し、それに手ごたえがあったのだが見ると

自分より遥かに体格も小さいティアに二刀でしかも踏ん張るわけでもない

唯の直立不動で渾身の牙突を止められていた。

 

アーサー

「なっ・・・」

 

ティア

「ハァァッ!!」

 

アーサー

「ぐっ?!」

 

逆に弾き飛ばされてすぐさま態勢を整えて構えを取り直す。

 

アーサー

「たくっ・・・そんな強さがあるならあの時も俺と共闘しなくても1人で

 あんな奴ら、完封勝ち出来ただろ」

 

ティア

「これは力の消耗が激しいのです。それにあれぐらい倒せないとこの力の

 そのものを引き出すのもできません」

 

圧倒的な強者は向こう、弱者はこちらだった。

涼しい表情を常にしているがそれは強者が故の余裕と経験があるからだろう。

自分より世界を経験して強い者も知っているだろうし、自分が戦った強者と

言えば師匠くらいであとは魔物か野盗ぐらいなものだ。

 

アーサー

「唯のおつかい程度だったのがいきなり世界の広さを知る羽目になるとはなッ」

 

やはりどうあがいても防戦すら儘ならない蹂躙戦のようになる。

 

ティア

「恐怖を持ちますか?それとも世界へは自分には不可能とも・・・?」

 

肩から息をして剣を両手でまた構えなおす。

 

アーサー

「まぁ・・ここまで自分の力が通用しないとは思わなかったがね・・・お前

 みたいのがまだまだ世界にいると考えたら・・・・」

 

ゆっくりと上げられた表情は憂いは無かった。

 

アーサー

「熱くなってきた・・・俄然知りたくなったよ。俺の記憶もそうだが世界に

 いるもっと強いあらゆる意味の強者とやってみたくなった」

 

自分より強い者はこの世界にいくらでもいるだろう。だが『勝てない』相手は

いない、どんな相手だろうと可能性はあるし、これからの旅にある困難でも

必ず乗り越える可能性はある。自分が不可能など思わなければすべてそうだ。

 

アーサー

「だが覇気にそんな使い方があるのは知らなかったよ」

 

ティア

「これが覇気の力の一片・・・『極限の精神(ゾーン)』。あなたも持って

 いた力です。覇気を知るわたしの師も使う事が出来ていました」

 

アーサー

「『極限の精神(ゾーン)』?」

 

ティア

「単純にして最も効果の高い力、全ての膂力と反応速を100%以上引き出せるモノです」

 

そこからも防戦は続くのだが少しずつその攻撃を何とか弾く回数が増えていく。

 

アーサー

「これが本当に人間の動きかよッ!?この力を俺が――――、!」

 

ティア

「逆です」

 

刹那の金属音。

見るとアーサーは少しこちらに視線を移した状態でラムレイの銃身を使いティア

の一撃を受け止めていた。

 

アーサー

「多少反応できたが破れかぶれでどうにか防ぐのがやっとかい・・・・ッ!」

 

ティア

「フッ・・・やはりあなたは強い。この短時間でも吸収している」

 

一度、距離を置いてまた剣を構える。

 

ティア

「あなたらな何者にも負けない戦士になれるかもしれませんね。かつて数多と

 いた偉人達のように皆を導く光に」

 

アーサー

「ここでぜぇ、はぁ、言わされてる男がそうなるとも思えない――――」

 

刹那、頭にフラッシュバックしてきた映像。

どこかの海が見渡せる丘。

どこまでも蒼いこの世界にも似たどこまでも続く空。

そして自分の前で微笑む雪の結晶の髪飾りをつけた少女の横顔と言葉。

 

『まだ戦いは続くけど・・・不安はないよ。皆もいるあなたもいる』

 

『―――――――――』

 

その映像の自分の言葉は出てこない。何を言っていたのかが思い出せない。

 

『あなたは誰にも負けない。わたし達の希望の光だよ、アーサー』

 

次に出てきた映像は真逆の火に包まれた場所。

そして自分の手の中で動かないさっきまで微笑んでいた少女。

 

『あなたの命は・・・わたしが繋ぐよ。いつか世界を救う英雄に・・・この

 世界と皆を・・笑顔に・・・お願いね、アーサー』

 

『護りたい・・・もっと強ければ・・・何者にも負けない強さがあれば』

 

アーサー

「―――――」

 

最後にはっきりと聞こえた、自分の声。

そして直後に自分の頭、いや身体全身に響くような自らを動かす声。

 

            加速せよ

 

            加速せよ

 

            加速せよ

 

            何より速く

 

            何より強く

 

           何よりも輝く光に

 

ティア

「いきます――――」

 

集中力が不必要な外界を遮断する。

 

目の前の相手の動きに反応し身体が動き、そして膨張する速度で静止にも近い。

 

瞬発する肉体が今まで知る自らの風景をあっさりと超えていく。

 

アーサー

「・・・・・・・・」

 

ティア

「―――――ッ(寒気・・・!この感覚、野生の獣を前にしたような)」

 

アーサーと視線が合う。

さっきまでとは違う、それは自分と同じ、だがまだ小さな光。

だが確かに今まさに壁を越えて自分と同じ世界へと足を踏み入れている。

 

アーサー

「・・・・・―――――」

 

ティアが加速しようとした瞬間に迫る大剣。

 

ティア

「ッ」

 

間一髪で避けたが既に追撃、そしてそこからは視認など最早意味を成さない

感覚と瞬発の攻防。

同じ力であっても秘めたアーサーの膂力が最大限に出されたのもあって

速度が自分と同じほどになっている。だが加速し、速度はまだ上だ。

だが破壊力は圧倒的な差が生まれている。

元の得物が大剣なのもあるが『極限の精神ゾーン』によるリミッター解除

による元々の膂力がかなり鍛え上げられているようだ。

 

アーサー

「・・・・・・」

 

ティア

「・・・・・・」

 

互いに剣を構え、踏み込もうとした瞬間。

 

エステル

「ティア!アーサー!」

 

その声に互いに『極限の精神ゾーン』状態が解除されて武器を下げる。

 

エステル

「2人共、まだ回復して間もないのに何をしているんですか、無理は駄目です!」

 

ティア

「ごめんなさい、エステリーゼ。ちょっと体を動かすだけだったのですが」

 

エステル

「わたしが巻込んでしまったとは言え、しっかりと休んでください、アーサー

 も・・・・アーサー?どうしたんです?」

 

アーサー

「・・・・・・」

 

自らの手を見つめながら呆けたように立ち尽くしていた。

さっきの『極限の精神(ゾーン)』状態にも驚いたのだがもう1つの方だった。

 

アーサー

「(あの時見えたのは・・・俺の昔の記憶・・・?俺は護れなかったのか?)」

 

感覚の世界の映像で何故か心情だけは窺い知れた。

倒れる少女を抱きかかえる自分の中には鋭い痛みと悲しみ、怒りが渦巻いていた。

それが本当ならば自分はどこかで多くの仲間やその少女と共に戦っていて

だが何かがあって仲間や少女を護れずあの場所に流れ着いていたのだろうか。

 

エステル

「-ッ!アーサー、聞いているんですか!」

 

アーサー

「ッ・・・んっ?あぁ・・・悪い、ちょっとぼぉーとしてた」

 

やっと応えたアーサーに安堵した顔をしつつ胸に手を当てて回復を始める。

 

ティア

「まずは1つ壁を超えたようですね、アーサー」

 

涼しげな笑みを浮かべてアーサーに話しかける。

 

アーサー

「あぁ・・・だけどこれに頼るわけにもいかないな。あれだけの時間でこの

 疲労感・・・俺自身が強くならなきゃ。じゃないとまた・・・・」

 

あの映像が本当の記憶なのか、いやそうでなければみる事もないのかも

しれないが昔の自分にあったように今の自分にも護らないといけないもの

はある。映像の少女と話す自分は世界を護っていたようなことを話して

いたが大そうなものじゃない、今の自分にできた家族、妹達だ。

 

アーサー

「今はまだ分からないけれど今ある護らなきゃならないって想うモノは

 俺自身が強くならないと駄目だ、それに・・・あいつらのためにも」

 

エステル

「あいつら・・・です?」

 

アーサー

「俺には妹・・・って言っても本当の兄妹じゃないが俺を憧れと言ってくれる

 妹が2人いる、だからあいつらがずっと目指して憧れるような強い兄貴に

 なってたいんだ、だからこの力に頼らなくてもいいくらいになってやるさ」

 

ティア

「ふっ・・・あなたならわたしのように自らの意志で『極限の精神ゾーン』になれるように

 なりますよ。それに頼らず自らの力を高めようとするならば」

 

エステル

「一体、なんの話をしているんですか、2人共?」

 

アーサー

「まぁ、気にするな。それよりもうちょい回復頼むよ、お姫様」

 

そういってぽんぽんと頭を叩いて宿屋へと戻っていく。

 

ティア

「それでは行きましょう、エステリーゼ。さすがに夜で冷えてきました」

 

エステル

「は、はい。って待ってください、アーサー!ティアー!」

 

慌てて2人を追いかけていくエステル。

かつての自分の記憶に想いをはせるアーサーだが今の自分がするべき事に頭を

切り替えて今は休息を取り、明日に備えることにする。

自らの持つ覇気の力の片鱗を解放したアーサー、そして一片の蘇る記憶とその

中に現れた1人の少女、彼の過去に何があったのか、それはまだ分からない。

今は唯、次に待つ戦いの渦中へと進んでいく。

 

 




次回のREDHIANT MYTHOLOGYは


「ここが城砦都市アルビオン」

まさに要塞とも言える強固な護りを誇る空中都市へとやってきた一行。

「気を付けてください、どうやら街中にも魔物がいるようです」

しかしそこは既に魔物が侵入し、戦闘が各所で行われていた。

「だがなんだ・・・この大きな力と纏わりつくような『悪意』は・・・」

「早くユーリやフレン達と合流しないと・・・ッ!」

仲間の元へと急ぐエステルとアーサー達だったが立ち塞がるのは街を護るはずの
アルビオン兵とまたもや現れたエルステ帝国兵。

「どうやらつるんで悪巧みしているのは間違いないようだな」

退け続ける3人だったがその道を助けるように響き渡る炸裂音。

「この弾丸・・・まさかッ!」

「久しぶりだな、アーサー」



             第四話~鷹の眼~



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第四話~鷹の眼~

~前回のあらすじ~
美しき女流剣士『ティア』と第一王女候補『エステル』と一先ず休息を取るために
立ち寄った停留港でティアから語られた『覇気』と『その先の力』。

それは『極限の精神(ゾーン)』と呼ばれるものだった。

アーサーも防戦一方にするのがやっとという圧倒的な力を見せる中で自分にもそれ
と同じ力が宿っていると話すティア。
刹那、覚えのないはずのビジョンに映る少女と心へ響く言葉に彼の中に眠っていた
力が片鱗を垣間見せ、自らの過去にさらなる謎が増えるのであった。



休息を取ったアーサー達はついに城砦都市アルビオンに到着した。

だがすでに中は騒然としていて規制などもしかれ始めていたので3人は兵士

達の眼を盗みつつ内部へと侵入する。

 

エステル

「早くユーリやフレン達と合流しないと・・・ッ!」

 

アーサー

「それで仲間のいる場所は見当がついてるのか、エステル?」

 

エステル

「はい、恐らくあの丘の上にある古城がそうだと思います。確かアルビオン

 の領主の住居が会談場所といっていました」

 

ティア

「それではまずはあそこを目指しましょう。ですが・・・」

 

先ほどから気になっていたのは兵士だけならいざ知らず何故か魔物までが

街中を徘徊しているという点だった。

 

エステル

「元々、この都市には鍛錬のために魔物が放し飼いになっていると聞きました」

 

アーサー

「まったくもって迷惑極まりない鍛錬方法だな、このままじっとしてても埒があかない」

 

ティア

「最低限の敵を倒しつつ、前進することを最優先にしましょう」

 

 

それぞれ武器を構えるがアーサーはラムレイとパッスランドを構える。

 

アーサー

「俺が後衛で援護する、エステルは支援、ティアは前衛を頼めるか?」

 

ティア

「お任せを」

 

そしてそれぞれ飛び出して一直線にアルビオンの城へと駆け出す。

 

アーサー

「だがなんだ・・・この大きな力と纏わりつくような『悪意』は・・・」

 

妙にざらつく感覚を覚えつつも目の前の戦況に集中し直す。

ティアが前衛として道を開き、裏からエステル、最後尾からアーサーが銃で

2人の援護をしながら魔物の群れを薙ぎ払っていく。

 

アーサー

「ッ」

 

得意の早撃ちで一度に数体の動きを制止、撃破を同時に行い走る速度を損なわない

援護射撃にエステルも速力補助の昌術で2人を補助する。

 

ティア

「ストップ!!」

 

エステル

「な、なんで―――きゃっ!?」

 

即座に気づいたアーサーがエステルの前に出て大剣を盾にし、即座にリロード

目の前の建物に向かって早撃ちを撃ち込む。

すると窓を破って数人の兵士が落ちてきたのだが見た事がない鎧兵士に見覚え

のあるエルステ帝国の兵士もいるようだった。

 

アーサー

「こいつら何でつるんでるんだ?話的には敵対勢力じゃなかったか?」

 

ティア

「考えられるのはそれぞれの兵士内で派閥が違う・・・といったところですか」

 

アーサー

「どうやらつるんで悪巧みをしているのは間違いなさそうだな」

 

瞬間、察知する『悪意』。

 

アーサー

「(!)そこ――――」

 

まだいた兵士に気づいて引き金を引こうとしたのだがそれより早く兵士は

狙撃されたのか鎧が砕けてその場に倒れてしまった。

 

エステル

「いきなり兵士が倒されてしまいましたッ」

 

ティア

「まさか・・・狙撃?でもどこから?」

 

アーサー

「・・・・・・・」

 

撃たれた状態から方向を割り出し、そちらに視線を注視すると高い塔の窓口に

何か光が煌めくのを見つけて何となくだが察するものがあった。

 

アーサー

「2人共、一度、あの塔を目指すぞ」

 

ティア

「何かあるのですか?」

 

アーサー

「恐らくこっちにとって好転するきっかけになる・・・と思う」

 

エステル

「ッ!また魔物です!」

 

さらなる魔物の襲撃で今度はアーサーが先頭を奔り、ティアが最後尾につく。

だが向かってくる魔物に怯むことなく足を止めず走り続けるが数体薙ぎ払い

1体がアーサーに飛びかかる。

 

エステル

「アーサー、右――――」

 

しかし次の瞬間には魔物は何者かに狙撃されたのか撃ち落とされていた。

さらにラムレイの早撃ちを目の前にある塔目掛けて放つと直後にまた銃声が

聞こえてきて金属同士の激突音と共に裏の建物へと跳弾で飛んでいく。

 

ティア

「んっ・・・ッ。どうやら建物の中にもいたようですね。ですが跳弾で全員を

 寸分たがわず撃ち抜くとは」

 

アーサー

「相変わらずの鷹の眼ってところだな。まさかこんなところで会うとは」

 

すると塔の上からロープが降りてきてそれをつたい、1人の女性が降りてきた。

 

????

「久しぶりだな、アーサー」

 

長い銀髪の髪に青と白を基調とした服にロングブーツ、背中には大型の狙撃銃

を背負った長身の女性だった。

 

????

「まったくいきなり全弾撃ちとは少し驚いてしまったじゃないか」

 

アーサー

「よく言うよ、人の最速を軽々と跳弾で的に当ててるくせに」

 

そしてお互いに拳を突き合わせて笑みを浮かべる。

 

アーサー

「やはり鷹の眼は伊達じゃないな、さすがの狙撃だ、シルヴァ」

 

シルヴァ

「君も以前よりさらに腕を上げているな、アーサー」

 

どうやら彼女はアーサーの知り合いらしく『シルヴァ』というらしい。

 

ティア

「聞き覚えがあります、確か全空一とも評される狙撃の名手だったかと」

 

シルヴァ

「全空一かはわからないが狙撃の腕には覚えがある。そういう君こそ確か

 ここ数年で名を轟かせている凄腕の女剣士じゃないかな?」

 

ティア

「それに関してはあなたと同じ意見という事にさせていただきます」

 

エステル

「アーサー、この方とお知り合いだったんです?」

 

とりあえず移動しながらシルヴァとの関係を説明していく。

 

アーサー

「ここに来る前に俺が世話になっている工房の妹2人の話をしただろう?

 シルヴァはその2人にとって姉みたいな存在なんだ、俺も2人経由で彼女と

 知り合ってな。それ以来は妹達含めて四姉弟(兄妹)みたいになってるんだ」

 

シルヴァ

「そういえばククルとクムユは元気にしているかい?」

 

アーサー

「元気過ぎて困るくらいだよ。まぁ、まだまだ目が離せないって感じだが」

 

シルヴァ

「だが何故、アーサーがこんな激戦区に来ているんだ?まさか騎空士に?」

 

そして自分が今に至るまでの過程をかいつまんで説明し、それに苦笑する。

 

シルヴァ

「相変わらずのお人好しのようだな、アーサーは」

 

アーサー

「ほっとけ」

 

目的地の城へと進軍する4人。

そしてティアはアーサーの確かな変化を感じていた。

 

ティア

「いい集中状態ですね、アーサー」

 

アーサー

「んっ?」

 

ティア

「『極限の精神(ゾーン)』とまではいきませんが精神が非常に乗っている状態

 になっているようですね。その状態でも高いパフォーマンスが発揮できるはずです」

 

一度、『極限の精神(ゾーン)』にはいってから精神統一のために欠かさずしてい

る座禅の時に今までより早く深い集中状態になれるようになっていた。

無論、戦闘においてもそれは+のようで感覚が研ぎ澄まされているのが分かる。

 

アーサー

「(まぁ、確かに戦闘が始まってからいつものように集中してても妙に落ち着いて

  るし呼吸も乱れない、それにこれだけ動いても汗もほとんどかいていない)」

 

エステル

「でも確かにアーサー、今までよりとても落ち着いているように思えます」

 

アーサー

「だからと言って過信し過ぎるなよ、そこまで背負えないからな」

 

シルヴァ

「安心しろ、君たちの後ろはわたしが護る」

 

アーサー自身もシルヴァの腕は知っている。全空一の鷹の眼が後ろを護って

くれるというのだからこれほど心強い事はない。

そのまま隊列を組んで目前に迫る城へとひた走る4人。

 

シルヴァ

「しいばらく見ない間に鍛え直したようだな、アーサー。前と動きが格段に

 よくなっているよ」

 

アーサー

「まぁ・・・俺も兄貴だからな。鍛えないといけないところでもあるのさ。

 そっちは友達の弓の使い手には会えたのか?」

 

シルヴァ

「・・・各地で名を馳せてはいるがまだ出会えていない。会ったとしてもまだ

 自分がどうしたいのかもよく分かっていないからな」

 

アーサー

「・・・そうかい」

 

だがいつものような軽い笑みに小生意気な言葉を口にする。

 

アーサー

「まっ、あんまりカッコ悪いtこ見せんなよ?ククル達に姉と兄という立場で

 かっこが付かないからな、一応は年上だろ、シルヴァ姉ちゃん?」

 

少しおどけたような揶揄う口調で言うとやれやれという表情のシルヴァ。

 

シルヴァ

「ならそちらもカッコ悪いところは見せるなよ?見せたら2人に報告だ」

 

アーサー

「言ってろッ」

 

激しい戦闘の中、久方ぶりの仲間『シルヴァ』と再会し城へと走るアーサー。

しかし彼の前にはさらに強大な『悪意』が待ち構えているのだった。

 

 




次回のREDHIANT MYTHOLOGYは



「すでに城でも戦闘か・・・エステル、会議の場所は分かるか?」

「いきましょうッ」

城内部でも帝国兵同士、さらにアルビオン兵の三つ巴の戦闘が繰り広げられていた。
そんな中、敵の罠によって分断させられるアーサー達。

「キャッ!?」

「・・ッ(――――蒼破刃ッ)―――ッ、蒼破ッ!!」

蘇ってくる感覚に戸惑いつつもそこでまた1つの出会いをする。
それは1人の少女と1匹の竜だった。

「ありがとうございます」



          第五話~蒼き少女と紅き竜~




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第五話~蒼き少女と紅き竜~

アルビオンへと侵入したアーサー達はエルステ・ザーフィアス・アルビオンの三つ巴の
戦いに巻き込まれる事になり、激しい戦闘を繰り広げる。
そんな中で銃工房の姉妹の姉代わりでもある女狙撃手『シルヴァ』と再会する。
そして彼女を仲間に加え、さらに場内へと進撃するのであった。


城へと侵入したアーサー達は物陰に隠れて一度、中の状況を確認する。

 

アーサー

「なんだ?見慣れない奴らと兵士達が戦っている?」

 

見てみると城の門の前で複数の兵士達と恐らくは騎空士であろう数人が戦闘を

繰り広げており、どの人物も手練れのようだ。

 

シルヴァ

「あれはわたしの世話になっている騎空団のメンバーだ、心配はない」

 

ティア

「彼らを利用するようですが今のうちに別ルートからエステル達の仲間を探し

 ましょう、わたし達の目的は元々そちらです」

 

だが騎空団と兵士に加えて両勢力の兵士同士も戦闘をしており三つ巴になっている。

 

アーサー

「すでに城でも戦闘か・・・エステル、会合の場所は分かるか」

 

エステル

「はい、内部については知らせを受けています、いきましょうッ」

 

乱戦の中、草叢を抜けて正面の扉から離れた城側面を行き、そこから中を

見えて人の気配がないのを確認し、窓の止め具部分をパッスランドで撃ち抜く。

彼の意志で性質や形状も変えられるので静音式で音も少なく窓を開ける。

 

シルヴァ

「今はそっちの銃も使いこなしているようだね」

 

アーサー

「前は起動させることもできなかったが今はかなり便利な相棒さ」

 

だがさすがに乱戦の最中だからかすぐに兵士達がやってきた。

 

アーサー

「ッ」

 

まず即座の全弾早撃ちで兵士達の武器を叩き落としたのだが既にその後ろにいた

兵士達に向けて弾奏を2つ宙へ。

 

アーサー

「・・・・・」

 

寸分違わぬタイミングで装填後、瞬間的に見えた刹那にさらに全弾早撃ちから

落ちてきた最後の弾奏を体勢を低くしながら装填し、トドメに全弾早撃ちの

3連コンボを炸裂させて一気に敵を無力化する。

 

ティア

「エステル!無罪の剣よ。七光の輝きをもちて降り注げ!」

 

エステル

「はい!煌めいて 魂揺の力」

 

同時にティアとエステルが昌術を発動する。

 

ティア・エステル

「プリズムフラッシャー!」「フォトン!」

 

まとめて兵士群を薙ぎ払って制圧し、それに一瞬、気を緩めたエステルに

倒れていたが起き上がった兵士が斬り掛かる。が即座に銃声。

 

シルヴァ

「勝って兜の緒を締めよ、油断をしてはいけない」

 

エステル

「は、はい」

 

そしてエステルの案内の元、会談が行われている大広間を目指す一行。

 

エステル

「こっちです」

 

大広前へと続く回廊を抜けようとする4人だったがアーサーがすぐにこちらへ

向けられている『悪意』に気が付いて反応するがすでに遅かった。

直後に爆発音が聞こえて回廊が崩れ、足場が不安定になる。

 

エステル

「あっ―――」

 

シルヴァ

「しまっ――――」

 

アーサー

「チィッ!!」

 

即座に反応し、剣を引き抜くと側面を使ってシルヴァとエステルを柔らかい

捌きで押し込むようにティア目掛けて放り投げる。

 

ティア

「ハッ!」

 

エステルを抱えてティアが崩れた足場を奔り、シルヴァも瞬時に瓦礫の足場

を蹴り、何とかティア達の手も借りて向こうの回廊へと渡る。

しかしアーサーの方は2人を助けたのもあり、逆の回廊へ戻るだけだった。

 

アーサー

「くそっ、分断された―――、ッ!」

 

また襲ってくる火の魔法弾をパッスランドで迎撃し、エステル達に声を上げる。

 

アーサー

「俺もどうにかそっちに行く道を探す!先にエステル達の仲間のところへ行け!」

 

エステル

「そんなッ、駄目です、アーサー!」

 

アーサー

「何度も言わせるな!!手段のために目的を忘れるなと言っただろ、早く行け!」

 

シルヴァ

「ここはわたし達も前に進もう、ここでは的になってしまう」

 

ティア

「アーサーはあの程度でやられるほどやわな男ではありません、いきますよ」

 

そういってエステルを促し、心配そうな顔の彼女とティア達を見送る。

アーサーの方も一度別ルートを探すために白の内部へと戻っていく。

 

アーサー

「にしても勢力図がバラバラだ、エステルとシルヴァの騎空団に加えてさらに

 エルステとアルビオンの連合軍でその中に細かい派閥同士の争い」

 

あまりにもこの戦場にあらゆる勢力が詰め込まれ過ぎている。

こんなにも都合よく大乱戦になるような状況になるのも考えにくい、それを

考えるとこの一件はさらに厄介事になっているように思える。

 

アーサー

「俺の方も人の心配してる暇はなさそうだな、ワラワラと出てきやがってッ」

 

すぐに兵士達が現れて戦闘に入るのだがこの戦闘に入ってから不思議な感覚に

囚われていた。

それは頭に浮かぶ容姿までは分からないが人物の動きとシンクロするというもの。

 

「―震―――虎――――」

 

掌に気を集めてそれを相手へ叩き付けるイメージ。

 

「旋――――ッ―――華」

 

花びらが乱れ咲くが如く気を込めた剣で周囲を回転しながら薙ぎ払う。

 

アーサー

「(蘇ってくる・・・戦いの記憶だけだが・・・今までにない感覚が)」

 

それに突き動かされるように今までやれなかったような動きと戦闘スタイルを

駆使しながら敵陣を突き進んでいく。

だが別のルートから声が突如として聞こえてくる。

 

アーサー

「人?女の子?ってなんだ、あの小さい飛ぶトカゲは・・・って言ってる場合じゃない」

 

だが距離的に少し遠くパッスランドに手をかけたのだがまた感覚がよみがえる。

 

アーサー

「・・ッ(――――蒼破刃ッ)―――ッ、蒼破ッ!!」

 

いつの間にかラムレイを引き抜いていてそこから蒼い気弾が発射されて女の子と

空飛ぶトカゲに襲いかかろうとした魔物に直撃して吹き飛ばす。

 

アーサー

「なんだ今の・・・?ラムレイで技が発動した・・・ってそれより」

 

襲われていた少女と紅いトカゲの元に駆け寄ると自分達を助けてくれた事に

敵ではないと判断したのか安堵の表情を浮かべる。

 

アーサー

「君達、なんでこんな危険な場所に?どう見ても騎空士にも見えないし」

 

??

「あんだとぉ~!オイラ達は立派な騎空団の一員だっての~!!」

 

???

「ビィさん、助けてくれたのにそんな言い方は駄目ですよ!」

 

なんとも場違いとしか言いようがない。見た感じではどう考えても戦闘向きと

も思えない。というより武器すら持っていない。

そして透き通るような肌と綺麗な青髪の彼女は『ルリア』と言い、トカゲと思

っていたのは竜らしいのだがそれを告げると小さい赤い竜『ビィ』はムカッと

した表情で怒りだした。

 

ルリア

「わたし達、騎空団の皆と離れてしまってそれで仲間を探していたんですけど」

 

アーサー

「つまりは君の仲間が囚われていてそれを助けるためにここに来たと?」

 

エステル達の騎空団とは違うようで話によると元々はこのアルビオンの出身で

突如団から離脱してしまい、それを追いかけてきたらこの戦闘になったという。

それに加えてザーフィアスにエルステも絡み、混沌としているようだ。

 

アーサー

「本当にこいつは俺の思った以上に厄介な事になってるみたいだな」

 

ルリア

「あ、あの・・・!」

 

その少女の顔を見た時にどこかで見た事があるようなデジャブに襲われる。

 

アーサー

「・・・まさか仲間を助けてくれって?」

 

ルリア

「えっ?な、なんで言う前に分かったんですかー!」

 

アーサー

「まぁ・・・似たようなのに付き合ってここに来たんでね・・・」

 

だがそれより早いかラムレイを引き抜いてノールックで狙撃する。

 

ビィ

「な、なんだぁ!?」

 

アーサー

「ゆっくりと話してる暇はなさそうだな、とりあえず移動するぞ、適当に

 部屋ぶち破って中にいないか確認する。おっかなびっくりついてきな」

 

ルリア・ビィ

「は、はい!」「おうよッ!」

 

そこから1人と1匹を護衛しながら彼女の仲間という女性騎士の捜索とティア

達との合流を主な目的として行動を開始する。

今度は目の前に数人の兵士達が現れ、ラムレイを構えて銃口を向ける。

 

アーサー

「(さっきの感覚のまま・・・)―――ッ、蒼破衝!」

 

蒼い一直線に発射された気弾が兵士の布陣を切り裂いて薙ぎ倒し、駆け出して

大剣を大きく振り抜く。

 

アーサー

「風塵衝ッ!」

 

廻りの壁に叩き付けて気絶させ、ルリア達をを促しさらに前進する。

しかし今度はいきなり目の前の扉がぶち破られて兵士達が吹っ飛ばされている。

 

ビィ

「な、なんだ!?」

 

アーサー

「前に出るなッ!俺の後ろに隠れてろ、チッ、次から次へとッ!」

 

煙の上がる先に銃口を向け、相手の出方を待つのだが突如として何かがその

煙を突き抜けてこちらにやってくる。

だがそれは人ではなく槍の切っ先で頬を掠ったが回避し、銃撃を見舞う。

 

アーサー

「ッ」

 

?????

「ッ」

 

元から強度の高いパッスランドとラムレイを二刀流のように使って接近戦を

繰り広げるのだが懐に入られてしまう。

 

?????

「崩蹴月!」

 

アーサー

「ぐおっ?!」

 

?????

「こんなのはどうかしら?残月!」

 

アーサー

「チィッ!!―――――オラッ!!」

 

?????

「ハッ!!」

 

上にいったのを反応したアーサーが宙に飛びながら蹴りを見舞うのだがそれ

は槍の持ち手部分で防がれる。

 

?????

「貰ったわ」

 

アーサー

「誰がだッ」

 

しかしそこから無理やり体を回転させて繰り出してきた突きを避けてさらに

回し蹴りを放ってこれは腕で防がれたがそのまま力で蹴り飛ばす。

 

?????

「くっ――――」

 

間髪入れずに槍を蹴り飛ばして武器を弾き、さらにラムレイの銃撃で槍を天井

に衝撃で突き刺してパッスランドを相手に向けて止まる。

見てみると普通のヒューマンとは違うとがった耳に見た事がない装飾の服なの

だが色々と目のやり場に困る自分よりは年上に見える女性だった。

 

アーサー

「それなりの手練れみたいだがタイミングが悪かったな、さて話を聞こうか」

 

??

「ジュディスッ!」

 

アーサー

「ッ」

 

声に振り向いてみると今度は少し小柄なエステルぐらいの歳に見える少女が

現れてその周りに赤い魔法陣が現れて火球が数個現れる。

 

??

「ぶっ飛べ!!」

 

アーサー

「遅い」

 

突然の事に少し驚いたが速度が遅く、『ジュディス』と言われていた女戦士に

警戒を続けながらでもやすやすと銃撃で迎撃する事が出来た。

 

??

「なっ、見もしないでファイアボールをッ―――、なっ・・・」

 

しかし気づいた時には自分の首筋にナイフの刃が寄せられていて視線だけを後

ろに向けると自分より背の高い妖艶な女性が笑みを浮かべて立っていた。

 

????

「悪いのだけれどそこの子はわたしの連れなの、手荒な真似は止めてくれるかしら?」

 

ルリア

「ロゼッタさん!」

 

それぞれがそれぞれに警戒をするのだが今現在の状態を知るアーサーからする

とこのメンツをみて何か思うところがあったようで警戒しつつ話を振る。

 

アーサー

「これはどうにもそれぞれに誤解があったと思うんだが、どうだい?綺麗なお姉さん達?」

 

話の分かりそうな目の前の『ジュディス』とルリアの仲間であろうもう1人の

女性『ロゼッタ』に目くばせをして返答を求めてみる。

 

ジュディス

「・・・どうやらそのようね、あなたもそちらの方も敵対心は最初からないようだし」

 

ロゼッタ

「これは一度、お互いに情報を整理してみた方がいいと思うわ」

 

パッスランドをホルダーに戻して何かに気づいたようにラムレイを真上に

向けて放ち、天井に撃ち上げていた槍の付近に当てて壁を崩して落とす。

丁度、ジュディスの元に槍が落ちてきてそれをキャッチした。

 

ジュディス

「あなた相当に強いのね、まさかあれだけやられるとは思わなかったわ」

 

アーサー

「まぁ、一応は鍛えてるんでね」

 

ロゼッタ

「手荒な真似をしてごめんなさいね、それと大丈夫だった、ルリア、ビィ?」

 

ルリア

「はい、アーサーさんに助けてもらいました!」

 

ビィ

「この銃使いの兄ちゃん、かなり強いんだぜ~!」

 

そしてそれぞれの持っている情報を持ち寄って今現在を整理してみる。

 

リタ

「エステルと一緒にいたの!?なんでちゃんと見てないのよ!!」

 

アーサー

「すまんな、あの橋が崩れる状況じゃ向こう岸に吹っ飛ばすので精一杯だった」

 

そしてリタとジュディスはエステルの言った騎空団のメンバーらしく、この

場に共に来た皇帝候補の1人である『ヨーデル陛下』の護衛で来たようだ。

そしてルリアとロゼッタ、ビィの3人は旅の途中で騎空艇の整備で訪れたのだが

その際に仲間の『カタリナ』という女騎士がここに捕まっているらしい。

 

アーサー

「(―――――ッ)」

 

凍り付くような寒気、いや『悪意』を感じて視線を向ける。

 

ルリア

「ど、どうしたんですか?アーサーさん?」

 

感じた『悪意』は今までとは違うあの少将など可愛く思えるような粘く深淵を

感じる重い『悪意』、そしてそれに寄り添うようにある『強大な力』。

 

アーサー

「ロゼッタ、ジュディス、こいつらを頼むぞ。それとこっから動くな」

 

そういって1人、その『悪意』を感じる方向へと走っていく。

 

リタ

「あ、あんた、待ちなさいよ!」

 

ルリア

「アーサーさん、1人じゃ危ないです、わたし達も―――」

 

だが2人をロゼッタとジュディスの2人が止める。2人もアーサーまでとはいか

ないが無いか大きな力が徐々に存在感を放ち始めているのを感じていた。

 

ジュディス

「1人では少し心配だけれどこちらもそうは言っていられないようね」

 

ロゼッタ

「出来るだけ早く片付けて彼を追いましょう、この力は・・・『星昌獣』よ」

 

ルリア

「感じます・・・物凄く大きな力・・・」

 

そしてアーサーのように感じ取っている唯一の少女ルリアもそれに震えた。

 

 

 

 

 

 

 

????

「ふふふっ・・・もう少し、もう少しで私は全てを手に入れられる。早く

 早く私の物に・・・さぁ、害虫駆除としましょう、シュバリエ」

 

重く粘いオーラとその傍らに寄り添う小さくも強大な圧を持つ光。

その狂喜にも満ちた笑みを浮かべて欲するモノを掌中に収めるために最後の

仕上げに入ろうとしていた。

 

 

 




次回のREDHIANT MYTHOLOGYは



「君は・・・・?」

「なるほどあんたがルリアの言っていた女騎士か」

場内を『悪意』の元へ走っていたアーサーは途中、ルリア達の仲間で掴まっていた
女騎士『カタリナ』と出会った。

「その方から離れていただけますか?あなたのような下等な存在が触れていい方では
 ないのです・・・さぁ、死になさい」

「分かりやす過ぎなんだよ、その粘りつくようなどす黒い『悪意』はな」

そしてこの乱戦の首謀者でカタリナの後輩と名乗る女騎士『ヴィーラ』が現れる。

「わたしは償わなければならないんだ、彼女の想いと期待を裏切ってしまった」

苦悩するカタリナ。

「あいつとあんたに何があったかは知らないがな。ただ言えることは・・・ッ」

そんな彼女を叱咤し、全ての首謀者たる『ヴィーラ』との対峙。

「私のお姉様にかける想いは何よりも強く、尊いものなのです。あの少女の
 陳腐な想いとは違うのです」

「想いの強さは認めてやる、だがお前のそれは一方的だ。少なくとも俺の知る
 誰かが誰かに与える『愛』とは違う、それだけは確かに絶対だ」

「だが・・わたしは・・・ッ」

「てめぇがその剣に護ると決めたもんぐらいちゃんと見ろッ!!!




            第六話~狂愛と星の騎士~




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第六話~狂愛と星の騎士~

途中で知り合った少女のルリア、そして飛竜のビィ。そしてエステルの仲間達と
合流したアーサー。
だがその中でアルビオンを包む強大な力に一抹の不安を覚える。
そんな激戦の最中、狂気の愛が動き出そうとしていた。


アルビオン城の一室で1人、騒然とする外を見つめる女性騎士。

 

????

「わたしは・・・・」

 

迷走する思考と心に引っかかる2つの約束。しかし答えはでない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサー

「ここはなんかの資料室か?・・・星昌獣・・・シュヴァリエ、一体化・・?」

 

その資料をさらっと目を通し、古い資料所の横に真新しい資料書があり、そこには

以前戦った帝国の兵器『アドウェルサ』だった。

 

アーサー

「なんともきな臭い事になってきたな・・・やれやれ、唯のおつかいだったんだが」

 

外で声が聞こえて振り返りざまにラムレイを抜いてドアに向け警戒する。

 

帝国兵

「ぐおぉ・・・・・ぐっ・・・」

 

しかしドアをゆっくりと開けたのは何者かにやられた帝国兵でその場で絶命する。

 

????

「大丈夫ですか?どうやら帝国兵や騎空団の方々ではないようですが」

 

入ってきたのは金髪を髪飾りでまとめ、赤い鎧を纏った女騎士だった。一瞬

捕まっているルリアの仲間かと思ったが特徴が違うようだ。

 

アーサー

「んっ・・・あぁ、あんたもエステルやルリアの仲間か。悪いがこっちには

 あいつらはいないぜ、途中ではぐれちまったんでな」

 

そういいつつその資料に目を通し、他の資料も軽く目を通していく。ただし

まったく『警戒』を解かずに。

 

????

「そうですか・・・・―――好都合です――――」

 

響く金属音と炸裂音。

 

????

「・・・・・・・・・・」

 

アーサー

「・・・・・・・・・・」

 

その場には武器を弾かれた女騎士と硝煙を上げる銃を構えたアーサーがあった。

 

????

「突然、婦女へ向けて発砲とはなんて礼儀をしらない殿方でしょうか」

 

アーサー

「なら人に鋭利な刃物向けるのは礼儀に入るのかい、綺麗なお姉さん?」

 

だがその返答はその女騎士ではなく虚空から突如として何か光の筋が伸びてきて

それをラムレイの銃身で受けて一度、距離を置く。

 

????

「あら、なかなかいい反応ですね。それ相応の鍛錬をしておられるようで」

 

アーサー

「そりゃどうも・・・(『極限の精神(ゾーン)』状態とはいかないがいつもより

 高い集中状態を維持していたから反応出来たとはいえ何だ、今のは)」

 

最早、加減を出来る相手ではないと判断しラムレイが火を噴く。

だがその銃撃が全てさっきの光の筋のようなものに落とされてしまった。

 

????

「見事なものですね、あの一瞬で6発全弾を撃ってくるとは。ではこちらも

 加減などは必要ありませんよね・・・?」

 

その眼には狂気すら感じる殺気が込められ剣閃と光の筋が一度に襲い掛かってくる。

大剣では不利とパッスランドも抜いてその強度を利用した接近戦に入る。

 

????

「ほとんどが帝国兵と騎空士の雑兵だけかと思いましたがあなたのような

 手練れが紛れているとはあながち馬鹿には出来ないものですね」

 

アーサー

「生憎、俺は巻きこまれた口でね。無関係と思うなら見逃してくれよッ」

 

????

「残念ですがまだ未完とはいえその力は放置しておくと私の障害になる可能性

 もありえますので・・・お受けできませんね」

 

その口調からこの騒動について首謀者に近いモノだと判断できた。

 

アーサー

「この大混戦の一端はお前かッ。その話しぶり、どちらも敵対のようだが」

 

????

「なかなか感もよろしいようですね、ますます見逃せません」

 

ラムレイのリロードをしようと弾奏を弾いて空中装填をしようとするがそれ

を光の筋に弾かれてしまい、弾奏が転がる。

 

????

「リロードの時間は与えませんよ。さぁ、華麗に踊りなさいッ」

 

アーサー

「悪いがリロードは必要ない、生憎、弾の構築時間はたっぷりあった・・・・」

 

そういってパッスランドを構えるとにやりと笑みを浮かべて性質・形状を構築する。

 

アーサー

「ここは一先ず逃げさせてもらうぜ」

 

炸裂弾を構築して目の前の女騎士目掛けて放ち、さすがにイメージを構築する

パッスランドの散弾は密度も高くさっきまで構築に時間をかけていたので

威力も十分、さらに天井目掛けて砲撃型を撃って天井を叩き落とした。

 

????

「小癪・・・・ッ」

 

さらにはご丁寧に煙幕弾まで撃ち込んで来たので視界も塞がれて見失う。

 

 

 

 

 

 

 

 

????

「な、なんだ、今の音は・・・ッ!?」

 

一室に監禁されていた銀の鎧を纏う女騎士は突如聞こえた轟音に驚き立ち上がる。

直後に聞こえてきたのは裏の窓ガラスが割れて砕ける音だ。

 

アーサー

「たくっ、本当に俺何しに来たんだか・・・ッ。いきなり大戦闘に巻きこまれるは

 一国レベルの覇権争いに首突っ込むは、変な狂乱女に取っ掴まるわ・・・」

 

????

「あ、あの落ち込んでいるところ済まないが君は・・・敵か?味方か?」

 

アーサー

「えっ?」

 

そこで漸く目の前の女性騎士に気が付いて改めてみるとどこかで聞いた装いだった。

 

アーサー

「あんた、もしかして・・・あんたが女騎士のカタリナさんか?」

 

カタリナ

「君は・・・・?な、なぜわたしの名前を」

 

ここに来る前に仲間の騎空団メンバーに会ったことを話し、今は別行動と説明した。

 

カタリナ

「ルリア達が・・・もうわたしには関わるなと言ったのに」

 

とりあえず銃に弾丸を補充し、残りの弾奏など装備を確認する。だが無言で

パッスランドの引き金を引いてその弾がカタリナの顔の横を通過する。

 

カタリナ

「い、いきなり何をッ」

 

アーサー

「あんたに何があるのかは知らないがルリアちゃんに聞いたのとだいぶ違って

 素人みたいな状態だな」

 

すると扉が何かに開けられてそこには気絶した帝国兵が倒れていた。そして

中に兵士が複数入ってきたのだが入り口は1つ唯の的だ。

広範囲に拡散させる形質変化を加えた銃撃で薙ぎ払い、ホルダーにしまう。

 

アーサー

「ここは戦場だぜ、雑念で気抜いてる暇があるなら剣構えて自分の身くらい守れ」

 

カタリナ

「・・・すまない・・・」

 

そしてそこからはカタリナと共に行動を始めたのだが彼女の動きが仲間から

聴いているのと大きく違い、心ここに在らずというか迷いが動きにそのまま

直結して出ているようで危うい場面が多く、援護に回らざるえなかった。

 

カタリナ

「くっ・・・ッ!」

 

エルステ兵

「この裏切り者がッ!――――ぐあっ――――」

 

アーサー

「寝てろ」

 

集中が散漫になっていてアーサーの方も気が気ではない。敵に応戦しながら

カタリナの援護に集中を割いているので彼も集中できない。

 

アーサー

「たくっ、本当に帝国に喧嘩売った騎空団のメンバーかよッ。修業する前の

 俺より酷いぞ・・・―――おいッ!!裏ッ!!」

 

カタリナ

「しまッ―――」

 

???

「幻狼斬ッ!」

 

しかし今度は別の人物がその真裏から現れて敵兵を斬り払いアーサーの前で止まる。

 

???

「その大剣に二丁拳銃、エステルの言っていたアーサーってのはあんたか」

 

名前を言われて目の前の青年を見ると彼も覚えのある容姿だった。

 

アーサー

「黒髪に黒ずくめの服、それとその刀。もしかしてユーリ・ローウェルか?」

 

ユーリ

「どうやらお互いに援軍に出会えたみたいだな、そちらさんも仲間か」

 

アーサー

「まぁ、別のグループの仲間だよ。ついでに救出を頼まれてたんでな」

 

そこからは3人で行動を開始した。

 

ユーリ

「しかしまぁ、数は多いが大した事が無い奴らばっかで歯応えが無いぜ」

 

アーサー

「いや、そうでもない。得体の知れない女騎士が1人いる、なんか妙な能力持ち

 でいきなり何もないところから光の筋みたいなのを飛ばしてきた」

 

カタリナ

「まさかそれはシュバリエ・・・?」

 

アーサー

「何か知ってるのか、カタリナさん」

 

そして彼女が話したのはその正体は『星昌獣シュバリエ』であり、その女騎士は

その正当な主でこのアルビオンの領主『ヴィーラ・リーリエ』。

かつての彼女の後輩であり、姉と慕っていた人物だという。

 

アーサー

「随分とあぶねぇ後輩持ってんだな、味方の演技していきなり襲い掛かってくるは

 見ず知らずの相手にその星昌獣・・・か?嗾けるとか何なんだ」

 

彼自身も星昌獣というのは話には聴いていたが初めて目の当たりにするものだった。

 

カタリナ

「しかし君はシュバリエの攻撃から逃れてきたのか?」

 

アーサー

「まぁな、とは言ってもいつもより高い集中状態で感覚が研ぎ澄まされてたのもある」

 

ユーリ

「それ聴くとお前も結構やる奴なのな。一手やりあいたいもんだぜ」

 

アーサー

「それはこの大騒動が終わってからにしてくれ――――――」

 

しかし最早、理解するより身体と五感が反応して即座にその存在に剣を向ける。

 

ヴィーラ

「その反応、やはり唯の銃剣士ではありませんね。こちらが攻撃に意識が転じた

 瞬間に行動してくるとは・・・最早、野生の獣にも似たものです」

 

アーサー

「分かりやす過ぎなんだよ、その粘りつくようなどす黒い『悪意』はな」

 

そのまま弾き返す。

 

アーサー

「随分とお早い再会で涙が出そうだよ、ヴィーラ・リーリエ・・・・」

 

カタリナ

「ヴィーラ・・・ッ」

 

ヴィーラ

「あぁ・・・お姉様、申し訳ありません。邪魔な俗物をまだ処理しきれて

 いませんからもうしばらくお待ちください、そうすればわたしとお姉様

 だけの居場所を取り戻すことが出来ます、さて・・・・」

 

そして構えだけを取る。だが攻撃をしようとはしない。

 

カタリナ

「(警戒は解いていないが何故、攻めてこ――――)」

 

答えはすぐ目の前にいた。

 

アーサー

「・・・・・・・・」

 

ユーリ

「(すげぇ集中力だな、見ただけで感覚が研ぎ澄まされてるのが分かるぜ)」

 

彼自身も頭がさらにクリアになっていた。一度、戦い彼女と圧倒的な存在感を

放つ星昌獣の力を目の当たりにして焦りなどが生まれるかと思ったのだが驚く

ほどに冷静になっている。

 

アーサー

「ここは俺がやる、ユーリとカタリナさんは先に仲間と合流してくれ」

 

カタリナ

「ヴィーラの実力は底知れないッ。1人では危険だぞ、アーサー」

 

アーサー

「さっきからまともに自分の身も護れてない奴が一緒の方が危険だよ、そういう

 事はしっかり覚悟が出来てから言うんだな、さっさと行ってくれ」

 

そしてユーリがカタリナの背を押して無理やりその場から引き離しにかかる。

 

ヴィーラ

「その方から離れていただけますか?あなたのような下等な存在が触れていい方

 ではないのです・・・さぁ、死になさい」

 

しかしヴィーラの攻撃が2人に迫る前に大剣の刀身で弾き、その剣捌きの流れ

から掌底を構え、闘気を込めて彼女へ叩き付ける。

 

アーサー

「烈震虎砲ッ!」

 

今度はパッスランドとラムレイを構えて小回りの利く接近戦主体に切り替えた。

 

ヴィーラ

「(メイン武器に思える大剣よりこちらの二丁拳銃スタイルの方が動きが

  いい。というより銃使いといよりむしろこれは)」

 

細かいフェイントでシュバリエの攻撃を散らし接近しては高硬度の二丁を

使った体術と至近距離からの銃撃の奇襲も加えたスタイルで戦う。

そして互いの剣と銃がぶつかり、火花が散る。

 

ヴィーラ

「どちらかといえばそちらのほうがお得意の様子・・・今までは加減ですか?」

 

アーサー

「使い勝手はこっちがいいんだよッ。師匠も同じ”二刀流”でね」

 

さらに激しい攻防を繰り広げる中で言葉を投げかける。

 

アーサー

「おい、お前!なんでそんなにあのカタリナって人に固執する」

 

ヴィーラ

「?」

 

はっきり言って彼から見ても異常とも取れる粘着のある執着心だ。さっきも

彼女を連れようとしたユーリに殺気を放っていた。

自分以外の近づくものスベテヲ排除する、そんな狂気すら感じる。

 

アーサー

「彼女のそばにいたいなら一緒に騎空団やればいいだろ、少なくともこんな

 騒動を引き起こす必要もないはずだ」

 

ヴィーラ

「シュバリエは元々星の民を守護する星の守護騎士、それが今はこのアルビ

 オンの守護を司る騎士となっているのです」

 

そこから乱撃戦を繰り広げながらシュバリエと自分について語る。

 

ヴィーラ

「その地に縛られる性質を持つ星昌獣であり、それに選ばれた者はその場から

 動く事は出来ずその死を迎えるまでその地を守護する役目を科せられるのです」

 

アーサー

「それと彼女への固執に何が関係あるッ。はっきり言って異常なんだよ」

 

ヴィーラ

「このシュバリエは最も強い騎士を宿主として顕現する、かつてわたしとお姉様

 はその主の座をかけて戦いわたしが勝ち、その座につきました」

 

アーサー

「?」

 

だが話を続けるヴィーラの表情が一瞬だが哀しみを帯びた気がした。

 

ヴィーラ

「お姉様は手加減をし、わざと負けて私にその座を譲った。恐らくはこの

 地に縛られるのが嫌だったのでしょう、そして私の元を去りました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタリナ

「わたしは償わなければならないんだ、彼女の想いと期待を裏切ってしまった」

 

ユーリ

「それで今頃、罪滅ぼしをしにこんな騒ぎ起こす事態になったってわけかよ、

 とんだ大迷惑だぜ、蒼破ッ!」

 

一方でユーリとカタリナは迫りくる帝国兵を蹴散らしながら仲間との合流を急ぐ。

 

ユーリ

「んで中途半端で置いてきた後輩のために今度はあのルリアって子を中途半端に

 投げて同じ眼に合わせるってわけかい、随分と誇り高い騎士様だな」

 

カタリナ

「ッ」

 

その時、目の前にはアーサーと別れていたルリアと彼の仲間のリタ達が小隊と

応戦をしていてそこに2人も駆けつける。

 

ユーリ

「よう、随分と手こずってるみたいだな、手はいるかよ?」

 

ジュディス

「あら、随分と遅い到着ね。あなたの取り分もしっかりと残しておいたのよ?」

 

リタ

「減らず口叩いてないでさっさとぶっ飛ばすわよ!!」

 

ルリア

「・・・カタリナ・・・・」

 

カタリナ

「ルリア・・・・」

 

互いに何を言っていいのか分からなかったが心配させまいとルリアが振るまう。

 

ルリア

「心配したんだよ・・・でも・・・おかえり、カタリナ」

 

帝国兵

「ぐはっ・・・・ッ」

 

しかしそれを書き消したのはうめき声でそれはロゼッタが迫っていた兵士を倒したようだ。

 

ロゼッタ

「感動の再会は後にしましょう、今はこの状況を切り抜けるのが先よ」

 

ユーリ

「・・・チッ!おい、カタリナさんよッ!」

 

カタリナ

「?」

 

ユーリ

「あんたは結局どうしたいんだ、あの女騎士助けたいのか、それともルリアを助

 けたいのか!今のあんたはどっちからも逃げて自分が傷つかないようにしてる

 ようにしか見えないぜ。禄でもない事はいい加減やめとけよ、おい」

 

ビィ

「おい・・・言い過ぎじゃねぇのか?確かにすげぇ複雑なんだろうけどよ」

 

ユーリ

「関係ねぇな、少なくとも今のこいつは何も護る気はないだろ。現実何も出来て

 ない上に今の今までも俺やアーサーに護られてばかり。本当にこんな奴があの

 大帝国エルステ相手に女の子1人を護ると啖呵きった女騎士とは思えないね」

 

ルリア

「そんな言い方・・・・ッ」

 

だが彼はそういう性格なのだ。人想いだがそれ故に時に言葉は厳しさを帯びる。

 

ユーリ

「お前も何でもかんでも良しとするのは寄せよ。それで傷つくのはお前1人じゃ

 ねぇんだ。他の仲間もそしてあいつを取り戻すって事はあのヴィーラって女

 騎士から奪わなきゃならない、そうすれば今度はあいつも傷つく」

 

応戦をしながら厳しくも諭すようにルリアとカタリナに語り掛ける。

 

ユーリ

「皆が傷つかずに・・・なんて甘い考えはもしこの先に行くなら少しは捨てる

 覚悟も持つんだな・・・・それはいつか全て滅ぼしかねないぜ?」

 

その的確についた言葉にルリアは沈黙し、カタリナも頭を項垂れる。

 

カタリナ

「だが・・・わたしは・・・・ッ」

 

まだ逃げようとする彼女に激情と共に叱咤の言葉を叫ぶ。

 

ユーリ

「てめぇがその剣に護ると決めたもんぐらいちゃんと見ろッ!!!

 

カタリナ

「ッ!」

 

ユーリ

「お前の隣にいる女の子はどんな顔してる!あの女騎士はどんな顔してる!いい加減

 に!そいつらの事、しっかりと見てやれよ!!」

 

そう叫び、敵へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴィーラ・アーサー

「ハッ!!」「オオッ!!」

 

そして今度はまた思い出したように狂喜の表情を浮かべる。

 

ヴィーラ

「ですがまたお姉様がこの地へとお戻りになったんです、だから今度こそ

 放しません、もう離れ離れにならぬように迷いなど生まぬように未練も

 枷も全て我がシュバリエで薙ぎ払い討滅する」

 

アーサー

「・・・たくっ、あのスカタン騎士がっ・・・・」

 

ある意味で真っ直ぐな想い。ただ彼女の傍にいたい、あれこれと理由で飾

り立てているがそれが根底なのだろう。

だがそれは曲折を経て大きく捻じ曲がり、全てを敵視してしまっている。

 

ヴィーラ

「お姉様が護ると言っていた少女・・・ルリアさんと言いましたか?あの方

 はお姉様を大切な人だとだから諦めないと啖呵を切ってきましたがあんな

 ものは醜い未練でしかありません、お姉様は私を選んだのですから」

 

アーサー

「・・・・ッ」

 

その想いの強さに比例するように斬撃は重さと鋭さを増し、気圧される。

 

ヴィーラ

「私のお姉様にかける想いは何よりも強く、尊いものなのです。あの少女の

 陳腐な想いとは違うのです」

 

それは怒り、そして目の前の愛情を忘れた少女へと悲しさだった。

 

アーサー

「あいつとあんたに何があったかは知らないがな。ただ言えることは・・・ッ」

 

鋭い大剣の一閃がシュバリエとヴィーラの攻撃ごと全て弾き飛ばす

 

駆け出して鍔迫り合いをしながら痛烈に言い放つ。

 

アーサー

「お前はただ、孤独に耐えられなくなったんだろ。だからこそ唯一の繋がりを

 カタリナさんに求めた、二度と孤独にならないように何重にも謀略を企てて

 大切と言った奴の傷口まで痛めつけ、それでよく『愛』なんていえるなッ」

 

ヴィーラ

「あなたに何が分かると・・・ッ!」

 

感覚は鋭さを増し、次第に相手の動きは速度に遅れ、徐々に制止していく。

 

ヴィーラ

「(馬鹿なッ!?完全に見切られた・・・今までは避ける程度だったのに)」

 

アーサー

「道を見るのも開くのも諦めたお前にとってはそれが一番簡単だよな。過去の

 過ちを掘り起こしてそれに縋り付くのが、何もない故にその場所に縋り付く

 のがお前にとっては一番、楽で居心地がいいだろうよッ!」

 

ヴィーラ

「黙れッ!!」

 

しかし精細を欠きつつあるヴィーラの動きは文字通り止まって見えた。

シュバリエの攻撃も主の迷いと共に鋭さを欠き、回避も容易だ。

 

アーサー

「想いの強さは認めてやる、だがお前のそれは一方的だ。少なくとも俺の知る

 誰かが誰かに与える『愛』とは違う、それだけは確かに絶対だ」

 

ヴィーラ

「分かったような口を・・・ッ、シュバリエッ!!星の騎士たるその力今こそ

 我が前に示せ!」

 

そして今まで分離状態で攻撃していたシュバリエをヴィーラは纏って見せた。

 

ヴィーラ

「主の剣となりて、盾となりて!我が悲願の道に立ちはだかるものを斬り払えッ!」

 

圧倒的な存在感と威圧感を持って星の騎士・ヴィーラが目の前に迫る。

 

アーサー

「・・・・・・・」

 

しかしそれに慌てるでも臨戦態勢を取るでもなく、ただスッと目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサー

「・・・・・・」

 

何もない真っ白な空間。その目の前には鍵が壊れた巨大で重厚な扉が聳え立つ。

 

アーサー

「何となく感覚で分かる。この少しの隙間から漏れ出す力、それが今自分が

 発動している力・・・限りなく近い力」

 

そしてその扉に手を賭ける。これは既に一度、開いた。今度は自分の意志で開く時。

 

アーサー

「全ての因縁と全ての運命に・・・決着をつけるためには・・・・」

 

力を込める手に合わせてその扉はゆっくりと重低音を響かせて解放されていく。

そしてそっと自分の背中をその扉の奥へと押す手の感触があり振り向く。

顔は見えない、逆光を受けて見ているようなその輪郭は霞んで見えるがその

人物は笑って、何も不安のない笑みを浮かべて言葉を投げかけてくる。

 

(大丈夫だよ、あなたには恐れも不可能もない。どこまでも行ける―――)

 

完全に扉は開かれてその体は浮遊するような感覚へ変わり、その先に広がって

いたのは底も何もわからない一面の白、そして身体が感覚がその白に溶けて

全てが一体となっていく。全てが溶けてしまいそうな感覚の中を進む。

 

アーサー

「不鮮明ではっきりとは思い出せない・・・だけどこの想いだけはしっかり

 と思い出した。この力は、恐れも不可能も振り払い、勝って護るための力」

 

この戦いと例え敵であろうと縛られ進む事を忘れた1人の少女の因果を断ち切

るために。思い出した自らの力の原点がさらにその先へ連れていく。

そしてその前に広がったのは遥かなる蒼、その蒼の世界へ足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

一瞬だった。

 

ヴィーラ

「シュバリエ、敵を貫けッ!」

 

剣閃と無数の光の剣による多段攻撃をしかけ、回避困難な一撃のはずだった。

 

ヴィーラ

「(――――ッ、どこへ――――)」

 

剣閃は空を切り、光の剣は何もない地に突き刺さる。

そして気づけばアーサーは後ろに背を向けて立っていた。

 

ヴィーラ

「(いつの間に・・・ッ。どうやって私の後ろへ―――、ッ)」

 

少しこちらへ向けたその横顔と全身から溢れるオーラが変貌していた。

その眼からは白と蒼の混じった光の筋が伸び、さらには全身から圧倒的な

威圧感と存在感を放ち、そして自分のいる位置がどれだけ危険かを瞬時に

判断させる。

 

ヴィーラ

「(馬鹿なッ!?この位置で既に彼の間合いにッ)」」

 

武を鍛える者ならばそれぞれ自らの間合いを持つ。その範囲はまさにその

者の最大の力を出す領域、だが今目の前にいる戦士の間合いは常軌を逸し

たレベルで普通の近接戦闘を主体とする戦士の間合いなど軽く超えていた。

 

アーサー

「・・・・・・・・――――――ッ」

 

気づいた時には既に目の前にまで迫り、完全に間合いを崩された。

 

ヴィーラ

「なッ・・・」

 

しかしシュバリエが光の剣を無数に伸ばして前に壁を作った。

 

ヴィーラ

「速過ぎる、何故、突じょ――――がはっ!?」

 

気づいた時には真裏から衝撃が奔って視線を向けると既にアーサーがその大剣

を振り抜いて凛と立っているところだった。

 

ヴィーラ

「くっ・・・一体、何が」

 

外面的には何も変化はない。だが確実に纏うものは変化していた

今までに見られなかったその眼には蒼と白の光の筋が伸びて眼力が増し

その表情からは無駄な感情と思考が消え、極限にまで感覚が研ぎ澄まされて

いるのが見て取れる。ここまで極まっている状態を見た事がない。

 

エステル

「アーサーッ!」

 

そしてどうにこちらに合流してきたエステル・ティア・シルヴァ。

 

ティア

「今、援護を―――、ッ」

 

シルヴァ

「(なんだッ、この圧倒的な威圧感・・・あれは本当にアーサーかッ!)」

 

エステル

「何ですか・・・?アーサーの雰囲気が少し怖くなっている気がします」

 

ティア

「『極限の精神(ゾーン)』にはいっている・・・」

 

シルヴァ

「『極限の精神(ゾーン)』・・?」

 

そして今の彼の状態を簡潔に説明する。自らもそれに入れる事、覇気を纏う

者だけが入れる究極ともいえる領域の力だという事を。

 

ヴィーラ

「(シュバリエの剣が震えている・・・こんな事は初めての事)」

 

彼の威圧感と覇気で刃が磨がれているような感覚すら受ける。

 

アーサー

「・・・・・・」

 

ヴィーラ

「(・・・・来る、間違いなく・・・恐ろしく静かではあるが・・・)」

 

ゆったりとした体の動きで次の挙動に備える双方。

 

アーサー

「―――――、ッ」

 

ヴィーラ

「―――――、ッ!」

 

完全に『極限の精神(ゾーン)』の扉を開いたアーサー。

全ての因縁に決着をつけるためその秘めた力を解放し、戦いに挑む。

 

 




次回のREDHIANT MYTHOLOGYは



「馬鹿な・・・シュバリエが・・私が圧倒されるなんて・・・ッ!」

「終わりだ」

「終わるのはお前だよォッ!!たっぷりと借りは返してやる、この屑がッ!!」

「彼女とはわたしが決着をつける」

そして全ての因縁に決着をつけるためヴィーラに相対するカタリナ。

「行きますよ、アーサー。今度はわたしがあなたについていきます」

「一気にケリをつけるぞ」

渾身の一閃が戦いに終止符を打つ。

「終焉の剣劇・・・舞いましょう」

「祈る余裕は与えんッ!」

「全てを斬り裂くッ!断ち切れッ!!」



          第七話~全てを賭して~





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第七話~全てを賭して~

アルビオンでの激戦で2人の女騎士と出会ったアーサー。それはこの戦火を総べて
巻込んでいた根源だった。
カタリナを得るために全てを利用し犠牲にする『ヴィーラ』と対するアーサー。
しかしそんな中、彼の覚醒仕掛けていた本当の力が遂に目覚めようとしていた。


 

ヴィーラ

「はぁぁああッ!」

 

アーサー

「―――――」

 

双方が駆け出し、正面から突っ込んで来たアーサーへカウンターを合わせようとする。

しかしヴィーラの一閃は完全に空を切った。

トップスピードと思える突進からいきなり急停止して即座に再加速してきたのだ。

 

ヴィーラ

「馬鹿なッ、あの速度であんな急停止からの加速、身体が悲鳴を上げるはず」

 

そこにまた斬撃を合わせるのだがロールで回避したと思った直後に背後を向けたまま

加速してきて振り向きざまに肘打ちをくらう。

怯んだところにその場で空中後転と共に足を蹴り上げてさらに追撃をいれる。

 

ヴィーラ

「このッ!」

 

アーサー

「・・・・・・・・・」

 

表情1つ変えることなく完全に攻撃を見切り、回避する。

 

エステル

「す、すごいです。アーサー・・・あれだけの手数の攻撃が一撃も当たらないなんて」

 

シルヴァ

「彼女の攻撃に対して観てというより、身体が反応しているような感じだ。危機察知

 が常人を超えている・・・まるで歴戦の獣王のような」

 

ティア

「彼には元々から言葉にすると野生の本能、そして感知能力の高さがありました。さらに

 今は『極限の精神(ゾーン)』に入っていて全てのパフォーマンスを余すことなく使える状態です、

 それらの能力が引き出されて予知のような感覚で避けているのでしょう」

 

さらにここでアーサーが驚く行動に出る。

 

アーサー

「我が閃弾は焔・・・火杭と共に灰燼となれ」

 

彼の周りに魔法陣が展開されて構えたパッスランドに紅いエネルギー弾が収束していく。

 

ヴィーラ

「この男・・・魔法まで使えたのですかッ」

 

シルヴァ

「アーサーはほとんど魔法は使えなかったはず。あんな技は見た事が無いぞ」

 

そして銃撃音と共にその閃弾が放たれる。

 

アーサー

「ヴォルカニック・レイ」

 

螺旋の閃光を纏ったエネルギー弾は一直線にヴィーラへと向かい何とかシュバリエの

剣と自らの剣で軌道を反らし直撃は免れたが弾き飛ばされてさらに反らしたエネルギー

弾が直撃した壁は融解でも起こしたように溶けてしまっていた。

 

ヴィーラ

「攻撃にまだ甘さがあったが・・・今の一撃、完全にわたしを倒しに来ていた。さっき

 の攻撃をまともに受けていたらああなっていたのはわたし達ですね・・・」

 

だが油断した刹那。

 

ヴィーラ

「――――――ッ!?」

 

目と鼻の先にアーサーの顔が迫っていて咄嗟にシュバリエが光の剣を伸ばす。

しかしそれをステップと体の回転で即座に回避しつつ旋回しながら一撃を見舞う。

 

エステル

「あれってユーリの技です」

 

さらに今度はラムレイとパッスランドに持ち替えて得意の二丁流へと切り替えた。

そして今度はティアの二刀流の動きと剣技を模倣し始めていたのだ。

先ほどのユーリの技しかり、今現在のティアの剣技もほぼオリジナルを再現している。

 

ヴィーラ

「ッ、今度はわたしの攻撃をッ!」

 

その高い硬度を活かした牙突にタイミングをずらすように銃撃まで加えてリーチの差を

剣より遥かに長い射程の銃撃と物理攻撃の組み合わせでヴィーラの動きを再現している。

 

シルヴァ

「ティア、君もあんな風に相手の動きを模倣して使えるのか?」

 

ティア

「言え、わたしが『極限の精神(ゾーン)』に入ったとしてもあれほどまでに完璧な再現までは出来ませ

 ん。わたしが動きに入れる体の流れや足さばきまで完璧に模倣している。圧倒的な

 性能を手に入れてそれによりあらゆる動きが可能になったのかも」

 

なんとか距離を取って構えなおし、息を整える。

 

ヴィーラ

「はぁ・・はぁ・・・!(くっ、駄目だ、あまりにも差が圧倒的過ぎる。こんな、こ

 んなことがッ!シュバリエの力も以てしても追いすがることもできないとは)」

 

大きく息を乱すヴィーラに対してあれだけの多次元的な動きをしているはずの彼は

まるで息一つ乱さずただこちらを見つめ、平然と仁王に立つ。

 

カタリナ

「ここかッ」

 

???

「待って、カタリナ!」

 

???

「皆、戦闘態勢を崩さないでッ。油断せずに行きます!」

 

するとそこにカタリナを初めとして数人見慣れない人物達も次々に乱入してくる。

 

シルヴァ

「団長、ジータ!皆も無事だったんだな」

 

軽装の鎧姿の少年はシルヴァの入っている騎空団の団長を務める『グラン』。そして

もう1人の少女はその幼馴染の『ジータ』で副団長を務めている。

 

グラン

「あの人がカタリナさんを助けてくれた剣士の人?」

 

カタリナ

「あぁ、だが・・・なんだ、少し前とまるで雰囲気が違っている・・・」

 

ユーリ

「たく、ようやく見つけたぜ、エステル」

 

エステル

「ユーリ、皆!」

 

リタ

「よかった、エステル・・・。もう勝手に行くじゃないわよ!」

 

しかしそんな中、彼らを追ってきたエルステ帝国兵も雪崩れ込んでくる。

 

エルステ兵

「大人しくその青い少女をこちらへ渡せ!もう逃げられるんぞッ!」

 

ジータ

「しつこい人達ね、皆構えてッ」

 

グラン達が戦闘態勢を整え、帝国兵達も構えたのだが全員に一気に悪寒が奔る。

帝国兵達もそれ相当の戦地はくぐってきた、その悪寒がどこから発せられているのか

ぐらいはすぐに理解できる。

 

アーサー

「・・・・・・・」

 

ゆったりとした動作で兵士達を一瞥する。

 

エルステ兵

「(―――ッ!?なんだ、この男はッ、こんな若造に戦慄するなど――――)」

 

そしてパッスランドの銃口を向けて警告する。

 

アーサー

「今、この女と取り込み中でな、相手をしてやる暇はないんだ。10秒くれてやる」

 

圧倒的な威圧感と圧力を持った視線が帝国兵を貫き、眼前に立つだけの青年に恐怖する。

 

アーサー

「消えろ」

 

だが今まで多くの戦場で戦ってきた帝国兵士としての意地もあるのかその恐怖を

無理矢理に体を稼働させて何を言うでもなくアーサーへと剣を向けさせる。

標的だったはずのグラン達など目にも入らず、ただただ圧倒的な存在に全ての感

覚は向いてしまい、ただ防衛本能が生き残るために働いている。

 

アーサー

「警告はした・・・我が閃弾は狂風 荒ぶ葬刃に慚愧せよ」

 

先ほどと同じような魔法陣が展開され今度は銃口に翡翠色のエネルギー弾が収束する。

 

アーサー

「ハヴォック・ゲイル」

 

螺旋を描いた翡翠色のエネルギー弾が帝国兵群で炸裂し、猛烈な嵐に巻きこんで

さらに風の刃がその体を切り裂いて四方八方に弾き飛ばされた。

 

カタリナ

「戦い方まで変わっている。わたしといた時は損傷が少ない衝撃弾だったが完全に

 仕留めるための攻撃だ」

 

そして彼の温厚な表情を知っているルリアも彼の変化に驚いていた。

 

グラン

「どうしたの、ルリア?」

 

ルリア

「わたしとビィさんを助けてくれた時、口調は乱暴でも凄く温かい雰囲気というか

 感覚だったのに今のアーサーさん・・・なんていうか、とても似ているんです」

 

今まで何度か戦ってきたこの世界の大きな力であるその存在達と同等の存在感だった。

 

ルリア

「怖いぐらいの威圧感がそっくりです、今まで闘ってきた星昌獣達に・・・」

 

敵を一掃したアーサーはまたヴィーラへ向き直る。

 

アーサー

「そろそろ決着つけるか」

 

ヴィーラ

「くっ・・・ッ!シュバリエ!!わたしの身体などもうどうなろうとこの男を

 打ち崩す力をッ!!」

 

身体すら悲鳴を上げる程の力を身にまとい咆哮を上げるシュバリエとヴィーラ。

しかしその時壁を撃ち砕く音と共に双方を襲う光の塊が飛来してくる。

 

アーサー・ヴィーラ

「・・・」「!」

 

ジータ

「皆、衝撃波に備えて――――ッ」

 

衝撃波が襲う前にグラン達の元に即座に移動したアーサーが大剣で一払いにする。

 

グラン

「今まで凄い人達は見てきたけどこの人、動きがもう人間レベルじゃない」

 

ジータ

「さっきの攻撃で瓦礫が多く舞っている中をぬって即座に目の前に現れるなんて」

 

そして現れたのは以前に大破させたはずの帝国の兵器『アドウェルサ』だった。

 

フュリアス

「こんなところで出会えるとは思わなかったよ、アーサー」

 

そしてそこに現れたのは以前、倒したフュリアスで因縁の相手を見つけ笑みを浮かべる。

 

アーサー

「・・・・生きてたか、悪運だけは強いみたいだな」

 

フュリアス

「そんなことを言ってられるのも今のうちさ、お前は負けるんだよぉッ!!」

 

そういうと手に持っていたのは黒い禍々しい光を放つコアのようなものでそれを

ヴィーラへと向けるとその光のせいなのかシュバリエとの融合した姿が幻影のよ

うに消え始める。

 

ヴィーラ

「馬鹿な・・・ッ!?貴様、一体、シュバリエに何―――ああああああああ!?」

 

その体からシュバリエが消え、なんと同じような魔法の文様がアドウェルサに描

かれて兵器であるはずのアドウェルサからシュバリエのオーラが発せられる。

 

ヴィーラ

「シュバリエが・・・わたしの中から消えた・・・ち、力が・・・・ッ」

 

フュリアス

「はっはっは!!これが僕の研究の成果、星昌獣を魔晶で使役し、その力を持った

 殺戮兵器『アドウェルサ・マージュ』の完成さッ!!」

 

星昌獣とアドウェルサが融合した生体兵器を前に双方の力を知っているグラン達に

緊張が走る中でアーサーは表情1使えることなくその前に立つ。

 

フュリアス

「さぁ、アーサー!前回の恨みをたっぷりと晴らしてあげるよ!死ねよ、糞が!!」

 

その砲門からシュバリエと魔晶の力を込めた砲撃をアーサー目掛けて放つ。

 

アーサー

「我が閃弾は光刃 天よりの至光は断罪の剣 シャイニングスピア」

 

銃口に集まった光のエネルギー弾を放つと同時に一直線に向かう槍へと変化して

その砲撃をも突き破ってアドウェルサに直撃して後退させる。

 

フュリアス

「そ、そんな馬鹿なッ!僕の創造したこのアドウェルサ・マージュの砲撃をあんな

 簡単に撃ち抜けるはずない!!何をしやがったんだ、お前ッ!!」

 

アーサー

「いい加減にお前の茶番にもうんざりする・・・・終わりだ」

 

最早、相手にすらしていないという口調と態度にフュリアスが激高する。

 

フュリアス

「・・・・!!終わるのはお前だよォッ!!ぶっ潰してやる、この屑がッ!!」

 

決着をつけるために構えるアーサーの左右に共に戦う者達が並び立つ。

双剣を抜き、自らも彼と同じ領域『極限の精神(ゾーン)』へと入った。

 

ティア

「行きますよ、アーサー。今度はわたしがあなたについていきます」

 

シルヴァ

「わたしも君の動きについていこう、君の背中はわたしが護る」

 

一気にティアとアーサーの2人がアドウェルサに接近し、シュバリエの光の剣と

機関砲の弾幕を張ってくるが軽々と回避し、息もつかせない連続攻撃を連携させ

てその装甲と武装を削り取っていく。

 

ティア

「不思議な感覚ですね。まだ会って間もないというのにもう何年も一緒に戦って

 来たような彼の動きに自然と理解して合わせられる、いつもよりさらに深い

 領域に沈んでいける」

 

彼女の中ではアーサーとは別のイメージがあった。それは扉を開けると水の中に

潜ったような感覚になり沈めば沈むほど深く『極限の精神(ゾーン)』に入り込めるのだ。

さらにそこへシルヴァも狙撃を合わせるが彼女は最早、必死に食らいついていた。

 

シルヴァ

「今まで前衛と連携した狙撃も何度もあった、だがティアとアーサー、この2人は

 他者とは次元が異なっているッ、一瞬たりとも緊張と冷静を解く暇がない」

 

フュリアス

「糞が!糞が!糞がぁッ!!潰せ、そんな奴、圧殺してミンチにしちゃえッ!!」

 

その巨体を生かしてアドウェルサが突進をしかけてくるがアーサーは構えを取ると

その瞳の閃光が強さを増し避けるでなくそれを真正面から迎え撃つ。

 

アーサー

「ぬぅぅぅぅッッッッッ――――――――――剛ッ!」

 

二回り、それ以上はあろうかというアドウェルサをアーサー1人で止めてしまう。

 

ジュディス

「恐ろしいパワーね、あの体格であんな兵器を止めてしまうなんて・・・!」

 

ロゼッタ

「リミッターが外れた状態と言ったところかしら、それを抜いてもとんでもない力だわッ」

 

そして咆哮と共に逆に相手を押し返し、剣を持つ両手に力を込める。

 

アーサー

「――――魔神剣!!!」

 

全霊の力を込めてその巨体を上段斬りで叩き伏せてさらに振り抜くと同時に射程が

短いが巨大な気の斬撃刃でアドウェルサがバウンドする。

隙も与えずさらに深く踏み込んでその掌中に闘気が集まり拳を振りかぶる。

 

アーサー

「烈震虎砲ッ!」

 

その一撃によってバランスを崩していたアドウェルサをまた青天させた。

 

ティア

「シルヴァさん、奴をまず落として指示系統を絶ちます、援護をッ!」

 

シルヴァ

「任せろ、外しはしない」

 

青天させられたことで無差別に光の剣と機関砲を乱発するがそれを掻い潜っていき

フュリアスの元へと駆け走り、シルヴァはその狙いを定め、引き金に指を置く。

 

フュリアス

「このお前らもうざったいんだよ、死ねよ、全員死―――がっ1?」

 

シルヴァ

「行けッ!ティア!」

 

彼女の狙撃が直撃すると同時にティアがその懐に入り込み、断罪を下す。

 

ティア

「もうあなたの愚行に付き合うのも苦痛です、絶たせていただきます」

 

ティアの『極限の精神(ゾーン)』の輝きが強い閃光を放ち、力を双剣に収束させる。

 

フュリアス

「く・・・糞がああああああああああああああああああああああああ――――」

 

ティア

「参りますッ!」

 

刹那、その姿が消え剣閃が奔る。荒れ狂うが如く斬撃がフュリアスとアドウェルサを襲う。

 

ティア

「終幕の剣劇、舞いましょう!剣嵐に呑まれて散れッ!これがわたしの!」

 

最大戦速で斬り貫けて二刀を納刀する。

 

ティア

「刹戟武荒剣ッ」

 

そしてシルヴァはアーサーの一撃とティアの奥義によって生まれた亀裂から中の

コアを瞬時に確認してその銃口を向け、銃弾に力を込める。

 

シルヴァ

「祈る余裕は与えんッ!ヒューネラル・ブリット!!」

 

特別製の特殊弾頭と己の魔力を込めた砲撃レベルの狙撃を放ち、寸分の狂いもなく

その亀裂に弾丸が直撃し、ボディから火花が散り、その機体からシュバリエが分離

されるとルリアの身体が光を放ち両手を翳し精神を集中させる。

 

アーサー

「なんだ?」

 

シルヴァ

「ルリアには星昌獣を使役する力がある、そして星昌獣を吸収する事が出来るんだ」

 

ルリアがシュバリエの力を吸収している中、ヴィーラが立ち上がりまだ戦おうとしている。

 

アーサー

「止めておけ、星昌獣ありで俺に圧倒されたお前がそれなしでまともに戦えると思うのか」

 

ヴィーラ

「わ・・わたしは・・・ッ!お姉様をッ・・・!全てを取り戻してッ・・・ッ!!」

 

最早、それだけが今の彼女を突き動かす唯一のモノ。それは引くに引けないものだ。

 

アーサー

「なら・・・これで終わらせる」

 

止まらないなら叩き折ってでも止めるしかないと考え、剣を構える。

だがここで静止の声が掛かる。

 

カタリナ

「・・・・・」

 

アーサー

「なんのつもりだ」

 

カタリナ

「彼女とはわたしが決着をつける。いや・・・わたしがやらなければならないんだ」

 

アーサー

「・・・・・覚悟を決めたならあんたがやるといい。全てはそこからだろうしな」

 

その眼から蒼白の光が消え剣を引くとヴィーラとの勝負をカタリナへ預けた。

 

ヴィーラ

「お姉様も・・・わたしが邪魔になったのですか?その子を護るために」

 

カタリナ

「いや、君の事も今度こそ救い出してみせる。今まで私は自分しか見ていなかった」

 

駆け出す双方の剣がぶつかり合い火花を散らす。今まで離れ、違え過ぎたモノ全てを

ぶつけるように激しくも鮮烈な火花と想いが散らされる。

 

ヴィーラ

「もう遅いのです、時間を違え過ぎた。もう力で縛る以外に分からなくなったッ!」

 

カタリナ

「あの時、わたしは全ての柵を嫌って逃げた。自分よがりに。そして今度も同じ

 過ちを犯しルリアも傷つけた・・・大きく回り道をしてやっと君の前に立つ」

 

鍔迫り合いを繰り広げ、弾きあって呼吸を整えて構えを取る。

 

ティア

「迷いが消えたとはいえ、侮れない相手・・・勝てるでしょうか」

 

アーサー

「あいつから縛る星昌獣は消え、今は唯の騎士だ。となれば縛っているのを断ち切れる

 のはあいつが一番縋り、心音では守ろうとしたカタリナだけだろう」

 

カタリナ

「今、決着をつけよう。そして今度は君も連れていく、ヴィーラ」

 

ヴィ―ラ

「なら・・・砕いてみせなさい。アルビオン最高の騎士たる、私を」

 

双方が地を蹴り、互いに握る剣に己の想いを乗せて最大の技がぶつかり合う。

 

ヴィーラ

「貫けッッ!リストリクションズ・ネイルッ!!」

 

カタリナ

「これが我が奥義ッ!アイシクルネイルッ!!」

 

蒼と紫苑の閃光が激突し、激しい衝撃波と爆風が空間を奔り、同時に金属音が響く。

 

アーサー

「・・・・・・終わったか」

 

ティア

「決着がついたようですね」

 

宙を舞いアーサー達の前にカタリナの剣先が突き刺さり、噴煙の先にいたのは仰向けに

倒れ込んでいるヴィーラと折れた剣を持ち肩から息をするカタリナの姿だった。

 

カタリナ

「やはり君は強いな、ヴィーラ。心が乱れていてこれだ、平常心なら負けていた」

 

ヴィーラ

「・・・前に比べれば少しは強くなれていた・・・のでしょうか」

 

ただ外の光が差す天窓から見える空を見つめるヴィーラ。全てを失ったように思える

のに何故か妙に気分的なモノは前より軽くなっていた。

何かが自分の中で壊れたがそれを絶望的には思えず、何故か気は晴れてきていた。

 

ヴィーラ

「これからどうなされるんですか・・・・?」

 

カタリナ

「・・・わたしは団長達と旅を続ける。ルリアを護るため、そして彼女が知りたが

 っている自分自身を見つけてあげるためにも」

 

ヴィーラ

「ならあなたの元妹分として言わせてもらいます。もう護るモノを泣かせないでく

 ださい。わたしが慕うカタリナという強い騎士はそういう人です」

 

カタリナ

「・・・・ああ」

 

倒れる彼女を起こすために手を差し出した時、2人を突如として衝撃が襲う。

 

ヴィーラ

「きゃああああ!??!」

 

カタリナ

「ぐっ!?ヴィーラ!!」

 

ティア

「!」

 

グラン

「コアを撃ち抜いたのにあの兵器、まだ動いてるッ!?」

 

アーサー

「――――――」

 

そして高笑いをしていたのはフュリアスでその手にある魔晶を請われていたコアに

無理矢理設置させて強制的に機能させているようだ。

 

フュリアス

「ッハッハッハ!!馬鹿が!これぐらいで僕のアドウェルサが止まるわけないだろォ

 ッ?!星昌獣の力が消えてもこいつの火力ならお前らは散り屑だ――――」

 

吹き飛ばされてしまったヴィーラの前に駆けつけたアーサーが大剣を構えて相対する。

 

フュリアス

「自分から死にに来るなんてお利口だね!!消えてなくなれ、主砲発射ッ!!!!!」

 

アーサー

「いい加減に・・・・・――――――」

 

鋭く開かれた眼からは再び激しい蒼白の光が奔り、溢れ出す覇気が螺旋を描いて

大剣が光り輝きしっかりと止められていた留め金が砕け散ってその鞘であった部

分が溶けるように消え去りそこから本当の刃が現れる。

 

アーサー

「全てを斬り裂く!!断ち切れッ!!」

 

ユーリ―

「なんつう風圧だッ、あんな力まで隠してやがったのか!」

 

ジータ

「一体、なんなの!?」

 

咆哮と共に炸裂する覇気がアドウェルサの砲撃を完全に防ぎ、真の刃の名を告げる。

 

アーサー

「無葬白刃」

 

それは陶磁器のような透明度のある刃紋の鍔のない大剣へ変化しておりその剣から

凄まじい量の覇気があふれ出しそれが瞬時に刃に収束される。

 

フュリアス

「ま、まちなよッ。これまでの無礼は許してやるから話を――――」

 

アーサー

「消えろ、小悪党。葬刃・・・天衝ッ!」

 

振り抜かれた刃から高密度に圧縮された覇気の斬撃が放出されてアドウェルサの砲撃

をも飲み込むように閃光が襲い、その光と轟音の中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

視界を覆いつくす閃光の後に訪れる静寂。段々と煙が晴れてきた。

 

グラン

「一体・・・どうなったんだ?」

 

ジータ

「み、見てッ」

 

ジータの声に一同が視線を向けるとそこには陽の光が差し込んでいた。先ほどまで

戦火の狼煙と重苦しい雲に包まれていたはずのアルビオンの空は青く澄んでいた。

だがそこにアドウェルサ、フュリアス、アーサーの姿はなかった。

 

エステル

「わたし達・・・勝ったんですか?」

 

ユーリ

「たぶんは・・・な」

 

そしてティアとシルヴァの2人は切り開かれたように晴れた空を見上げる。

 

シルヴァ

「あれだけ漂っていた暗雲が消えている・・・あの兵器も影も形もないがまさか・・・」

 

ティア

「恐らくその名の通り天を突いたのでしょう。外敵ごとこの戦火すらも」

 

リタ

「あの・・・男は・・・・?」

 

カタリナ

「彼は・・・一体、何者だったんだ・・・?はっ、ヴィーラ、ヴィーラはどこだ?」

 

姿を消した通りすがりの風来剣士に困惑を覚えつつ戦いの終わりに安堵する。

そしてそれを見つめる視線。それはその風来剣士だった。

 

アーサー

「・・・で本当にこれでよかったのか?」

 

裏を振り向くと壁に凭れ掛かっているヴィーラに視線を向ける。

あの一撃を放ち、アドウェルサを撃破した直後にヴィーラに頼まれて彼女を抱えた

ままカタリナ達の前から姿を消して戦いが完全に決したのを見届けていたのだ。

 

ヴィーラ

「今、お姉様と顔を合わせても何を言っていいのか、わかりませんから。今まで

 そういうやり方しかしてこなかった・・・おかしな話です。あれだけ欲してい

 た人の隣にいれるのに仕方が無くなっただけどうしていいのか分からない」

 

アーサー

「まぁ、今までが今までだ。結局は厄介なんだろうけど結局は簡単なんじゃないか」

 

さっきまで敵意を向けていた男が飄々とした笑みを浮かべて語り掛けている。

 

アーサー

「つまるところはお前がこの先でカタリナさんの隣に立ちたいのか、否か、だろ?」

 

ヴィーラ

「あなたは・・・本当に解せない男ですね。敵だったわたしを諭すなど」

 

アーサー

「お前自身も『敵だった』なんて言ってんだ、お前の方こそ解せない性格だろうさ」

 

??????

「アーサーさん~、ご用は済んだんですか~?」

 

なんとも間延びした声が聞こえて振り返ると縄が掛っていてそこから小柄なハーヴィン

族の女性が昇ってくる。それはこの世界では知らない者がいない、世界の流通を取り

仕切る商人『シェロカルテ』だった。

 

アーサー

「あぁ、おかげさまでな。悪いんだが帰りはこいつも一緒に乗せてくれ。後、頼んだ

 手紙はしっかりと彼女達に届けておいてくれよ」

 

シェロカルテ

「はい~ お任せください~」

 

ヴィーラ

「どういうことです?ちょっ、いきなり何をッ」

 

有無を言わさずヴィーラを抱きかかえるとシャロの用意した縄を足場に下へさっと

降りて彼女の案内の元、騎空挺のある裏の港まで歩くことにした。

 

アーサー

「どっちみちあっちには行けない上にここにいても面倒だろ。話によれば秩序の

 騎空団が取り仕切るらしいし、この島も治安は確保されるだろうし、お前は

 とりあえず療養も兼ねて俺の故郷に連れていく」

 

ヴィーラ

「お姉さま方に届けろと言っていた手紙というのは何なのですか?」

 

ここで彼の口からとんでもない内容が語られる。

 

アーサー

「お前の身柄は俺が預かっておくから鍛え直して取り戻しに来い、ってな」

 

ヴィーラ

「・・・・・・・・・(唖然。」

 

シェロカルテ

「アーサーさん、それは完全に悪役がいうセリフですよ~?」

 

アーサー

「まぁ、大事な妹分取り返したかったらさらった悪党倒せるぐらいに鍛えてこい

 ってだけの話さ。そうすりゃ一応は時間もとれるだろうよ」

 

ヴィーラ

「そこまで啖呵を切ったのですからちゃんと身柄の取り扱いはしていただけるのかしら?」

 

アーサー

「そこまで減らず口叩けるなら一安心だな。後は本当の意味で鍛え直せよ、お前もな」

 

先ほどまで命の取り合いをしていた男とこんな減らず口を叩いている自分というのも

何とも可笑しく思えるのと何とも不思議な男だとも思った。

不思議と話してもいいと思わせるなんともそんな雰囲気のある人物だった。

 

ヴィーラ

「・・・・ぅ・・・・・・すぅ・・・・・すぅ・・・・」

 

激戦だったのもあるのかゆっくりと目を閉じてすぐに寝息が聞こえてくる。

 

アーサー

「たくっ、人質にはしたが俺は移動式の寝床か・・・?呑気な奴だぜ」

 

シェロカルテ

「しょうがないですね~、アーサーさんが自分で出した船なんですから責任もって

 与らないと駄目ですよ~?特に女の子は大事にしないと~」

 

アーサー

「こいつがそんな大事にされるほどやわな女とも思えないんだがね、まぁ・・・」

 

腕の中で眠る少女と落ち着きを取り出した街並みをもう一度、一瞥すると笑みを浮かべる。

 

アーサー

「帰るとしますか」

 

腕の中の少女をまたしっかりと抱え直すとシェロカルテの騎空挺に乗り込み、

アルビオンを後にし、故郷への帰路につく。

初めての大きな戦いの中で自らの記憶の鍵の一片と力の一片を取り戻したアーサー

彼の長く険しい旅路は今、ようやく扉が開いた程度である。

これから待つ旅路の果てに彼は自らの宿命やその戦いへ身を投じていくことになる

わけだがその時はまだ先の事だ・・・・・。

 

 




次回、REDHIANT MYTHOLOGYは・・・





             第八話~再起の騎士と追憶の剣士~




                        お楽しみに。


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第八話~再起の騎士と追憶の剣士~

ククル

「・・・・・」

 

兄のアーサーが両親に頼まれた鉱石を預かりに出て数日が立っていた。1、2日程度の

距離なのに一向に帰ってくる気配がなかった。

そんな中でようやくシェロカルテから来た連絡は乗っていた船が帝国兵に襲われたとい

う知らせとどうにか一命は取り留めたという連絡だった。

 

ククル

「クム坊にも心配をかけないように誤魔化しておいたけどそろそろ限界かな・・・」

 

その時、御上さんの張った声が外から聞こえてきた。

 

御上さん

「ククルー!アーサーが帰ってきたわよ~~!!」

 

ククル

「!本当!?」

 

勢いよく飛び出した先にはいつもの飄々とした顔のアーサーガ立っていてすでに

クムユが飛びついていて片腕で抱きかかえられていた。

 

アーサー

「おっと帰りが遅くなったな、今帰ったよ、ククル。ってクムユ、苦しいっての」

 

クムユ

「だって、だって船が攻撃されたってクムユ、し、心配するの当たり前だぁ~い~!?」

 

アーサー

「悪かった、悪かった。この通り、ちゃんと無事だし、元気だよ。1人おまけはいるがな」

 

ヴィーラ

「あなたの付属品になった覚えはありませんが。失礼極まりない男ですね」

 

裏から現れたのは紅い瞳に腰まで流れる美しい金髪に端正な顔の持ち主。赤と黒の

リボンをしている。 すらりと伸びた手足でスタイルもよい女性騎士だった。

 

アーサー

「まだ見た目はそこそこなんだから少しは慎み持てよ、まだ可愛げがでると思うがね」

 

ヴィーラ

「あなたごときに可愛げなど見せる必要性はないわ、気安いですよ」

 

憎まれ口は叩いているのだが何となくアーサーに気安い、聴慣れさを感じる。

 

アーサー

「人の金でしっかり三食食った奴の言うセリフか」

 

ため息を吐きながら抱き着いていたクムユを抱え直して歩き出すのだがククルに振り返る。

 

アーサー

「どうした、ククル。いくぞ?」

 

ククル

「あっ、う、うん!今行く!」

 

とりあえず今は兄の帰りを喜んで今までのように「指定席」に飛びついて言葉をかける。

 

ククル

「おかえり、アーサー兄」

 

アーサー

「ああ、ただいま」

 

ヴィーラ

「・・・・・これが・・・兄妹なのでしょうか」

 

慕われ妹を護る兄と想われ慕う妹達、なんとなくだが自分が憧れる関係に想えるヴィーラ。

 

御上さん

「まったく、あんたって子は心配させんじゃないよ!このバカ息子!!」

 

アーサー

「あいったッッ!?つぅぅぅ~~~ッ、なんかこの旅で一番ダメージでかい気が・・・」

 

御上さん

「何か言ったかい?」

 

アーサー

「いえ、なんでもありません。すいませんでした」

 

ヴィーラ

「あれだけ偉そうだった男が簡単に屈するとは情けない男ですね」

 

だがいつものペースを崩されるのはヴィーラの方もだったらしい。裏にいたヴィーラを

頭から足先までじぃ~と見つめてくる。

 

御上さん

「そういうのに興味なさそうに思えたけどなかなか見る眼はあるじゃないか、アーサー」

 

アーサー

「いや、御上さんの見る眼が無さ過ぎるよ。俺が拒否するわ、こんなサイコパス女」

 

ヴィーラ

「あら、こんなところにいい、木人人形がありますね。剣の鍛錬に良さそうです」

 

アーサー

「お前は一回、目を治療してもらえ、ついでに頭もな・・・・・ッ!!」

 

斬り掛かってくるヴィーラをラムレイで防ぎつつ罵り合いに発展する2人。

すぅ~と近づいてきた御上さんがククルに耳打ちをしてくる。

 

御上さん

「お前ももうちょっと頑張んないとこの別嬪さんにアーサー取られちまうよ~、ククル~?」

 

ククル

「な、何言ってんの、おかあちゃん!?」

 

御上さん

「さぁ~ね~?」

 

親方

「いくらお前と言えどそう簡単に娘は渡さねぇぞ、アーサー・・・・・」

 

アーサー

「いや、親方も何言ってんの!?つうか、俺の敵増えてるんですけど!」

 

妙な流れから敵を増やして帰って早々にハードな運動をする羽目になったアーサーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてヴィーラが来て数日が経ち・・・・。

 

アーサー

「―――――ッ、フッ!」

 

ヴィーラ

「―――――――、シュッ」

 

早朝から2人は彼がいつも修業している滝の近くで模擬戦形式で手合せをしていた。

意外にもヴィーラからの提案でアーサーの普段からやっているアップメニューや他の

修業のメニューもこなして実戦の修業に入っていた。

 

アーサー

「スー・・・ハー・・・スー・・・ハー・・・」

 

一度距離を置いた瞬間に呼吸を整えて次の瞬発と加速に神経を研ぎ澄ませる。

 

ヴィーラ

「・・・・・・、―――――(弱い光だがあれはあの時に類似していますね)」

 

肉体の瞬発と共に周りの風景が加速に離され、ゆっくりと流れその中を駆ける感覚。

 

アーサー

「―――――、ッ」

 

ヴィーラ

「(この緊張感の中での修行、久しく忘れていました・・・・。この男の雰囲気、

  あの時と限りなく近いがあの時ほど威圧感がない、使いこなしてはいないのか)」

 

さらに上を見たせいか、格段に動きのよくなったアーサーにも対応し、自分自身も

磨がれていく精神と瞬発する肉体の動きを感じている。

弾け舞い飛ぶ水滴すらも羽根が落ちるような感覚で映るほど磨がれていた。

それからしばらくして・・・・。

 

アーサー

「ほら、飲めよ」

 

ヴィーラ

「礼は言っておきましょう」

 

実戦練習を終えた2人は岩場に座って彼が持ってきた果実飲料を飲みながら休息していた。

 

アーサー

「さすがに元アルビオン№1の騎士なだけあるな、冷や冷やさせられる部分も多かった」

 

ヴィーラ

「まぁ・・・あなたの戦闘技術だけは認めておきます。久しい緊張感のある鍛錬でした」

 

彼自身も普段は1人で修業しているので緊張感や競合うような修業は出来ていなかった

のもあってか、ヴィーラが来てからは内容も濃い修業が出来ていた。

それもあってか、先ほどの戦闘でも見せた変化を少しだが使えるようになっている。

 

ヴィーラ

「あなた、わたしと戦った時に使った・・・『極限の精神(ゾーン)』でしたか?さっきの鍛錬でも

 それに近しい状態でしたが手加減して抑えているのかしら?」

 

果実飲料を飲み干しながら汗を拭い、質問に答える。

 

アーサー

「あれは『極限の精神(ゾーン)』じゃないさ。まぁ、限りなく近い状態・・・ってのかね。扉は開いて

 いるけど完全に開放は出来てないってところだよ」

 

ヴィーラ

「扉・・・・?」

 

アーサー

「あくまでイメージの話だ、精神が研ぎ澄まされていった時に目の前に巨大な扉が

 あってお前との戦いの時はその扉を完全に開けてその中に入った、んでまずは

 雲の中を進んでいく・・・こいつはティアとの戦いでも入れたんだが」

 

最早、それは感覚というか瞑想の中のような話ではあるが独特の状態なのだろう。

 

アーサー

「あの時はその先、雲の中を突き進んで恐らくは昔の記憶なんだろうがその映像と

 共に力の使い方を思い出して・・・そしたら雲を抜けてどこまでも蒼い空へ

 出たんだ、後はどんどん上へ昇った。まぁ、途中で解けて扉の前に戻ったが」

 

ヴィーラ

「昔の記憶の映像?そういえば飛空艇の中でも記憶がどうとか言っていましたね」

 

そして自分が何故この工房に世話になっているのか今までの経緯を説明した。

 

ヴィーラ

「あの大剣も妙ではありますがあの剣に刻まれた文様・・・?多くの国や銘家の

 紋様も覚えていますけど類似したのも見た事がありませんでした」

 

アーサー

「そしてあの時、俺と戦ってた二刀流の女剣士がいただろ、あいつも俺と同じ力

 を持ってて同じ記憶喪失なんだが記憶の中で自分に教えていた人物が俺と同じ

 紋様の剣を背負っていたらしい」

 

ヴィーラ

「彼女とあなたは元は同じ場所にいたという事ですか?」

 

アーサー

「いや、そこまでは分からない。後姿だけでぼやけた記憶らしいし、俺が見た記憶

 のいくつかにはティアは出てこなかった。俺も見た事が無い女の子だったからな」

 

話ながら手に持っているパッスランドの紋様をなぞり乍ら話を続ける。

 

アーサー

「俺にあったのはこのパッスランドとあの剣・・・確か無葬白刃か、そして俺の

 名前のもとになったこのアクセサリーだけだった」

 

そしてその剣の本当の名『無葬白刃』というのも記憶になくあれからその力も扱う

事が出来なくなっていて今は以前と同じ打撃武器の状態になっている。

 

??????

「キーキッキッキ、しばらく見ない間に随分と覇気が馴染んどるみたいじゃな」

 

??????

「ほう、この青年がお前の言っていた、秘蔵の弟子か」

 

その声に振り返ってみるとアーサーにとっては懐かしい人物達で武の道を歩んで

来たヴィーラからすれば驚きの人物2人がそこにいた。

 

アーサー

「師匠!こっちに来ていたんですか、えっとそっちの人は・・?」

 

ヴィーラ

「なっ、あなた方は・・・・、剣聖『ヨダルラーハ』、それに伝説と称される剣豪の

 『アレーティア』!?まさかあなたの言っていた師匠とは」

 

アーサー

「あぁ、俺の言ってた師匠、ヨダルラーハ。もう1人の人は初めて見るがそんな凄い

 人だったのか。てかお前、よく知ってるな」

 

武を志す者なら名なら聞いた事はあるはずというが彼はこの島からようやくでた程度

で外の知識もさほどないので驚くのも無理はないだろう。

 

ヴィーラ

「銃の二刀流はヨダルラーハ殿からの師事が元という事ですか」

 

ヨダルラーハ

「キーキッキッキ、まぁ、教えてたのは短い月だったがのぉ。しかししばらくしない

 間に腕も上がったが高め合う良き相手も得ているようじゃな」

 

アーサー

「まぁ・・・いろいろとかくかくしかじかあったので・・・・(汗」

 

だがここでやはり老獪な物腰そのままにさらりと看破してくる。

 

ヨダルラーハ

「アルビオンでの大騒動で確か帝国、アルビオン兵相手に大立ち回りを繰り広げ、

 事件の首謀者も薙ぎ倒し、領主行方不明の重要参考人で手配されるほどに腕を

 上げ寄ったようじゃの~?」

 

アーサー

「知ってたんすか、師匠・・・・」

 

ヨダルラーハ

「キーッキッキッキ!わしはそれなりになんでもお見通しということよ」

 

アレーティア

「そこに追った者達の話で色々と聞いておる。身の丈ほどの大剣の使い手だとか

 人間離れした力で戦地を駆けていたとか、斬撃で天を割ったなども聴いたぞい」

 

事実もあるのだが尾ヒレがついて話が進んでいる部分もあるようだ。

 

ヨダルラーハ

「さて話はあとでゆっくりやるとして我が弟子の成長を確かめに来たんじゃったの」

 

アレーティア

「ワシも新たな時代の芽の力強さを肌で感じたくてな、久方ぶりにあったのでこうして

 一緒に来たというわけじゃよ」

 

アーサー

「いいね、何だか燃えてきた。師匠に加えて伝説の剣豪と一槍交えられるとはね」

 

ヴィーラ

「私もやらせていただきます、これほどの手練れとの一戦はそうそうできませんからね」

 

そういってそれぞれに武器を構えて相対する。

 

ヨダルラーハ

「キーキッキッキッ!さぁ、ぶつかり稽古といこうか。かかってこい、弟子達!」

 

アレーティア

「常に研鑽を重ねねばな、この若き力とのぶつかりもまた更なる研鑽となりそうじゃわい」

 

アーサー

「そんじゃ、行きますかッ」

 

ヴィーラ

「わたしの邪魔はしないでくださいね、アーサーッ」

 

アーサー

「そっちがなッ!」

 

伝説の剣豪と剣聖にぶつかり稽古で向かっていくアーサーとヴィーラ。

憎まれ口を叩きあい、ぶつかって時折は互いに支援し合いながら実践稽古を続ける

2人だったのだがお互いに共に鍛錬する者がいるのは悪くないと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサー

「・・・・んぁ?」

 

気が付くと自分は仰向けに倒れていて空も少し夕日がかっていた。

 

ヴィーラ

「気が付きましたか」

 

視線を上げてみるとヴィーラが隣で座っておりぽとりと自分の腹部にタオルが落ちた。

どうやらとりあえずは手当てをしてくれていたらしい。

 

アーサー

「そういえばあの2人の技をもろに食らって吹っ飛んだったか・・・・?」

 

ヴィーラ

「ええ、ものの見事は吹っ飛びっぷりでしたよ、面白いものがみれました」

 

アーサー

「お前は本当に人の不幸は蜜の味を体現してるよな、このヒステリック女子が・・・」

 

なんとか起き上がるとさすがに体に痛みが奔った。

 

アーサー

「いつぅ・・・・(汗」

 

ヴィーラ

「まったくお節介にもほどがあります。人の前にいきなり現れて2人の攻撃を受けきろうとは」

 

前よりは覇気の力を使いこなしているので防御に当てたのだがやはり伝説の剣豪と剣聖

の技を一度に受けては守り切れずに吹っ飛ばされたようだ。

悪態をついておきながら体が勝手に動いてカバーに入ってしまったのも自笑するしかない。

 

アーサー

「しっかし・・・世界ってのはやっぱり広いもんだな。お前にある程度、勝てて

 たしそれなりに強くはなってたんだろうけど・・・相手も悪かったか」

 

ヴィーラ

「なぜ、そこでわたしが出てくるんです」

 

アーサー

「性格はあれだが剣の腕と力は間違いないだろ。それに勝ててるんだから俺だって

 強く放ってると思ったんだけどな、まだまだ甘かったわ」

 

ヴィーラ

「わたし程度をあの剣士2人の物差しに使う自体が間違いでしょうッ。あなたと

 言う人はたまにとんでもない理論を持ち出し来ますね」

 

アーサー

「まぁ、考えてみれば俺もお前も完全に防戦一方だったもんな~・・・」

 

ヴィーラ

「・・・・・・・」

 

少しの間自分が長く愛用しているレイピアを見つめ先ほどの一戦を思い返す。

意図せずまさか伝説の剣士2人と手合せするとは思わなかったが自分もアルビオンで

修練は怠ってはいなかった。

しかしこれほどまでに世界に名を馳せる剣が高い存在とは島を出なければ感じる事も

なかったし、自らの現状の頭打ちも図ることは出来なかっただろう。

 

ヴィーラ

「しかしあなたにそう思わせてしまったのはわたしの実力不足でしょうから」

 

すっと立ち上がって横顔だけを見せながらもその顔は今までより柔らかい笑みが見えた。

 

ヴィーラ

「そう思わせない程に強くなりましょう、今度はわたしが護ってさしあげますよ」

 

今までに見た事が無いような表情ですこし面食らってしまったがすぐに悪態をつく。

 

アーサー

「女に前に立たれたら面子がないだろ、隣なら経つのを許可してもいいがね」

 

ヴィーラ

「ならあなたがわたしの隣に立てるくらいになるのですね」

 

アーサー

「可愛くない奴」

 

ヴィーラ

「それはお互いさまという事にしておきましょう、ふふっ」

 

互いに可愛げのない『悪友』にほんの少し距離感が近づいたのを感じるのであった。

 




次回、REDHIANT MYTHOLOGYは・・・





             第九話~新たな縁と空へ立つ~




                        お楽しみに。




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