BanGDream!〜Side by Side〜 (音の出るゴミ)
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染谷パート
ありふれた日常


あの日あの時に
鮮明に出てくる記憶。
俺が小学4年生の時にアンプに繋げた親父のギターを
ぶん投げて壊した事だ。
とてつもなく響いた破壊音
とてもじゃないけど耳を防ぎこんでしまいたくなるような爆音。
それでなにかが閃いたんだ。
閃いた内容は忘れてしまったがな。

そして
車に轢かれそうになった香澄を助けた時に轢かれた車に乗ってる親父だ。


子供の時の思い出と本当にトラウマな出来事の夢を見た時は必ず汗でベットが湿っているのも未だに謎だ。

現在4:52

俺は基本的に早起きだ。

怪我が原因でやめた陸上の朝練の賜物。

 

「よっと」

 

朝起きて最初にすることは

ギターを弾くこと

サポートのバンドの曲の譜読みもこの時間にしないと追いつかないし自分のやりたい曲の練習にも時間が避けない。

 

最初のゆっくりしたテンポの中のアルペジオ、ピックスクラッチで入るAメロから急激にテンポアップからのトレモロ。

 

「うん。難しい」

 

こればかりは弾けるこっちゃ弾けるけどかなり手元が狂ってテンポも通りに弾けない感じがする。

 

「もう学校行かなきゃ」

 

時刻は6:45になっていた。

 

 

高校一年生になってからはや1週間が過ぎようとしている頃。

自分は高校二年生になる年だけど事故って一年遅れてる。

ぶかぶかの制服に袖を通し、身支度を適当に済ませて、じいちゃんからもらったドラックスター400に跨る。

中型の免許は16歳から取れるから

金貯めといてよかったと我ながら思う。

江戸川を見ながら走る風景は最高に気持ちよく、サクラが散りそうで散らない風景が一番魅力的だなと思いながらバイクを転がしていくと

都立江戸川第二高校につく

偏差値は57

ちょっと頭がいい自称進学校である。

バイクから降りて学校に向かうと

 

「よお!龍太!」

 

「おはよう早雲」

 

同じ中学の部活の後輩でもあり、同じ高校の中間早雲。

種目が同じ長距離であり、駅伝のメンバーだから仲が良く。俺がサポートしてるバンドのギターボーカルだ。

 

「ライブっていつあるんだっけ?」

 

「今週の日曜日!」

 

「まじで?あの曲難しいからほんと無理だわ」

 

「何言ってんだよ!天下の染谷龍太があの曲弾けないはずがないだろ!お前のギターはほんとにすんごいから!」

 

「やめろやめろ照れくさいだろ」

 

「まあ今度飯とタバコ奢ってやるからさ!」

 

「タバコはもう吸わないって言ってるだろ。お前体壊すしバレたら大変だからな」

 

と一応忠告はする。

それでとばっちり喰らったらとんでもないからね。

 

「そう言えばさ、第1回キチキチ!クラスのモテ女王は君に決めた!に投票してるか?」

 

「やっべ!まだ投票してねえ!お前が投票してる人に投票するわ!」

 

「なら白金燐子さん一択だろ!」

 

白金さんはあのシリアスな感じで大人しくて人が良さそうな人か。

確かに顔もおっぱいもハイレベルで入れる価値はあるが、俺は明るい子が好きだからな。

 

「うーん入れる価値はあるけどもうちょっと明るめがいい」

 

「なら美竹蘭さん!」

 

「美竹さん明るくねえだろ」

 

美竹さんかぁ

ひまりのバンドメンバーの一員か。

同じ中学ぽいけど性格がキツイと言われがちだったようなね〜

しかもモカって子がいない時にサポートでセッションに入った時は怖かったんだよなぁ〜

「負けないから」って言われた時の恐怖感が怖かった。

 

「ひまりが同じクラスならひまりに入れてたんだけどなぁ」

 

「それは言えてる。なんせあのスイーツ(笑)ひまり様だからね」

 

「ちょっとそれどういう意味よ!」

 

「話してたらゴキブリが湧いてきたか…」

 

「どういう事じゃそれはー!」

 

上原ひまりは今どきの女の子って感じだ。

早雲の幼なじみで中学の時にあった子だ。

女子会などスイーツがどうのこうのってうるさいけど顔は普通に可愛くて性格も普通に良いからなにより唯一喋れる女友達って感じだ。

 

「ならさお前が大丈夫って思えるなら香澄ちゃんに入れたら?人気高いよあの子」

 

「そうよ!今のうちにもう笑って許しなさいよ」

 

二人ともそう言ってる

けど俺は決めている。

 

「確かに香澄は俺の特別な存在でもあるし何かあったら守る。つーか守ったから陸上はできなくなったけど、俺はあいつを影から見守ってる方がお互い一番気楽なんだよ」

 

そう笑いながら言うといつの間に教室についていた。

 

「もう過ぎたことだし時分を痛めすぎない方がいいよ」

と俺達のクラスを去っていきながら言ってくれるひまりと

「いつまでも過去の事引っ張ってると彼女ところか女友達もできなくなるぜ」とからかいながらも励ましてくれる早雲。

 

どっちがいいかなんて考えると謝ったほうがいいと高確率で思うけど、俺は香澄に一生傷つくことを言ったと思うし、取り返しのつかないことをしたからこそしゃべれないんだと自分で勝手に言いくるめてる。

 

そうだな、あれは確かに覚えてる。

去年の三月の終盤だったはず。

俺と香澄は付き合ってたんだ。



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過去

あの時を本当に思い出すと、気分が悪くなり、怪我した左足が痛くなる。

あれは俺の言葉のせいで、香澄と自然消滅したし、それはそれで良かったものの香澄のなにかが変わったような気がして、気にしてる俺は自分で自分を押し殺して喋りかけないようにして、香澄に対する思いを封印していた。


3時間目の休み時間。

眺めがいい外側の窓から見る景色。

こちらの方の桜は完全に散っていた。

儚いものだよなほんと。

 

「ねえねえ!市ヶ谷さんって美人でお嬢様って感じだけど、病弱なのかな?」

 

市ヶ谷有咲か。

頭もいいし巨乳でまじで顔が美人で、学校休みがちなか弱い人か。

このクラスのかわいい人投票1位秒読み候補。

けど猫かぶってそうだよな。

俺はなんか雰囲気でわかってしまう。

あれは本当は言葉使いがものすごく悪そう。

はぁ、考え事したら眠くなってきたよ。

休み時間もあと五分しかないけど寝るか。

 

☆☆★

 

あれは、確か中学3年の二学期の9月の月曜日だったと思う。

日曜日が記録会だったから部活が休みだったんだ。

3000mの記録会。

自己記録の8分47秒をかなり下回る9分28秒だして顧問にめちゃくちゃ怒られて、他のみんなには貧血じゃないか?と心配してもらった時だ。

確かに毎日毎日ポイント練詰めで体にガタ来てたんだ。

今日はジョグもせずにゆっくりギターと戯れようと思い、長年お年玉貯めて買ったESPの青色のランダムスター。

陸上の練習がどんなにきつくても弾いてきた相棒だ。

音楽の先生とは仲が良く、第1音楽室はマーチング部が使うから第2音楽室なら使ってもいいって言われ、第2音楽室に行った時。

SGのギターの音と、初めて聞く綺麗に当ててる高音の声。

俺は扉の前で、立ち止まってしまった。

心に直接響き、ぬくもりがあるけど氷のように透き通るような綺麗な声。

その猫みたいな髪型で、明るい性格が滲み出てる可愛い顔。

 

「綺麗な声だな…」

 

思わず声が出てしまった。

その声が大きかったのか、その子に聞かれてしまい。

その子はギターをそっと置いて走って逃げていった。

俺は追いかけないといけないと、思ってしまい、走ってその子を追いかけてしまった。

 

「ちょっと待って!なんで逃げちゃうんだよ!」

 

「恥ずかしいからに決まってるからだよ!」

 

2人とも廊下を仲良く走り、生徒指導の先生に見つかり、怒られ、俺のギターを弾く時間が無くなってしまった。

 

それが俺と戸山香澄の出会いである。

 

☆☆★

 

その出来事から連絡先を交換して次第に仲良くなって、さらに一ヶ月後には俺達は付き合っていた。

付き合い始めてから俺がカホンを叩いて、香澄がギターを弾きながら語り引きをして、それが好評だったのか2人でライブハウスのライブに出たりしていた。

俺的に付き合い始めてから、陸上もかなり上手くいって、駅伝の方は全国の方まで行って入賞して、区間賞をとった。

全ては香澄のお陰であるし、お互いを支えあって理想のカップルなんて言われて嬉しかったな。

 

☆☆★

 

そして、3月の終盤。

 

「親父。もう高校入学式だから新しいギターでも買ってくれよ」

 

「お前俺がくれたお年玉でランダムスター買って使ってるくせに文句言うな殺すぞ」

 

俺の自慢の親父だ。

今はサラリーマンだが、昔はバンドで大きい夏フェスにでた実力者で、有名バンドのサポートも今でもしてる仕事よりも趣味でお金を稼いでる人だ。

 

「龍太、お前もギターの実力も出てきたし、今度好きなバンドのライブのサポート俺の代わりに出たらどうだ?」

 

「いや、無理でしょ」

 

「大丈夫だ。俺の太鼓判貰ってるやつは大体出来るやつだよ」

 

「じゃあそのサポート代わりに出てる時親父は何するんだよ」

 

「来月分のお前の生活費でこの家にデリヘル呼ぶんだよ」

 

「ぜってえでねえ」

 

「ウソだよ。お前は今日香澄ちゃんとスタジオ連か?」

 

「そうだけどなんかあるの?」

 

「香澄ちゃんも呼んで来い、焼肉行こうぜ」

 

「まじで?特上カルビいただきマース」

 

「は?お前には安物の牛タンしか食わせねえよ」

 

このくそ親父が。

 

「まあそういう事だからお互い家を出よう香澄ちゃんを待たせるわけには行かんだろお前は」

 

「そういう親父は営業のアポ遅刻すんなよ」

 

当たり前よと言いながら仏壇の母ちゃんに手を揃える。

母ちゃんも親父と同じバンドのメンバーで、俺が幼い頃に亡くなった。

今じゃ立派親父になっているので見守ってください。

 

☆☆★

 

「香澄、今日は親父が焼肉行こうだって」

 

「ほんと!やったー!!」

 

香澄は飛びっきりな笑顔ではしゃいでいる。

それを見て俺は今の幸せを噛み締めている。

あと2週間で長野の佐久短聖に行くからだ。

お陰様で特待で行けるのが一番親父への恩返しをしたと思う。

 

「けど龍太2週間したらいなくなるんでしょ?」

 

「まあそうだけど夏休みになったら帰ってくるよ」

 

「それでも嫌だよ」

 

そう言って目に涙を貯めて訴えてくる。

俺だって離れるのは嫌だけど親への恩返しのために頑張るしかないんだ。

 

「まあ待っとけって俺がもし大学香澄と同じで箱根言ったらお前が自慢できるんだからそれまで我慢だよ!その代わり高校は長野だから来るなよ!勉強頑張って一緒に大学通おう」

 

「わかった。絶対約束ね」

 

そう言いながらも涙を流す香澄を見るともの凄く心が痛む。

それからしばらく歩くと道端に野球ボールが転がり子供が取りに行こうとしていた。

 

「ちょっと待っててね〜」

 

と香澄が取りに行こうとしていた。

その時、車が猛スピードで香澄に迫ってきた。

 

---危ない

 

そう判断した途端に香澄の所で全力で走っていった。

 

---間に合え!

 

時間がものすごく遅く感じた。

猛スピードで迫ってくる車に呆然としている香澄を突き放し。

俺は車に轢かれた。

車のミラーに映っていた人は紛うことなき俺の親父に似ていた。

俺は車が電柱にぶつかり、ボロボロになる所までは覚えていた。

 

☆☆★

 

ぶつかった車は俺の親父だと判明し、くも膜下出血で即死。

俺の場合は命に別状は無く、アキレス腱断裂、肋骨のアバラを複雑骨折。全治3ヶ月の怪我だけで済み、佐久短聖からの入学を断られた。

香澄の場合はひざのかすり傷だけですんだことが幸いだった。

 

怪我して2ヶ月半が立ち、自殺しようとして何回も飛び降りを決行しようとしても香澄の顔が思い浮かんで未遂に終わった。

香澄は俺のお見舞いに毎日来てだいぶ助かってるが、香澄は以前の明るい性格じゃなくなってるような感じがする。

 

そして俺は香澄に苛立ち始めてとんでもない事を言い放った。

 

「お前は俺のことほんとに好きなのか?」

 

---やめろ

 

「お前のせいで俺の陸上人生、そして俺の父さんの人生も終わったんだぞ。お前の無事だから俺もこう自殺しようとしても生きてこられた。けどな、お前の前のような明るい性格が消えていくのは耐えられないんだよ」

 

---なんで口が止まらないんだ

 

「もうお願いだ。ここに来ないでくれ。そして今は俺に構わないでくれ」

 

---なんでなんだよ

 

それから俺と香澄は会わなくなった。

ほんとに俺は最低なことを言ってしまったし、もう死んでもいいと思った。

 

☆☆★

 

「……やっべ!」

 

気がついたら30分過ぎていた。

背中が汗でびしょ濡れでなっていた。

家庭科だから移動教室か!

やらかした……。

ん?メモ用紙にグローブ袋?

 

『うなされてるから昔の夢見てるのバレバレ。俺からの前払い+ひまりの奢りだ 早雲&ひまり』

 

グローブ袋の中にはセブンスターとカフェラテが入っていた。

本当にあいつらには感謝しないといけない。

 

☆☆★

 

学校の屋上はいろんな景色が見れる。

例えばスポーツ科のスポーツⅠすなわちスポーツ理論でどう体を動かすかっていう実践の授業。

普通の体育はソフトボールをしている。

そして遠くに見える江戸川の景色。

今日はいつも異常に綺麗に見える。

 

「はぁ」

 

俺はさっき貰ったタバコを吹かしながらカフェラテを開ける。

心が落ち着く。

授業が終わるまでここにいるか。

 

「手を上げろ!」

 

「ふぁ!?」

 

突然のことだから、驚き素直に手を挙げてしまう。

 

「お前は誰だ。学年、クラス、主席番号をいえ!」

 

「染谷龍太!1年8組!18番!学科は普通科だ!」

 

「ちっ、同じクラスか」

 

なんだこの見覚えのある金髪のツインテールの人は、あっ

 

「やっぱ市ヶ谷さん猫かぶってたんだね」

 

「は!?かぶってねえし」

 

「じゃあなんでいつもごきげんようとかいってるんですかねぇ?」

 

「え、これには事情があるんだし」

 

「とりあえず手を下ろしていい?」

 

「お、おう」

 

手を下ろした時に一つ言いたかったことを言う。

 

「前から思ってたけど市ヶ谷さん足太いよね」

 

パンっ!

 

俺の頬に手のあとがついた。

まあ当たり前か。



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猫かぶり女と赤のランダムスター

「いってえ!いきなりビンタすることないだろうが!!」

 

いや、いきなりビンタされることはわかってました。

 

「ビンタするに決まってるだろ!そんな事言われると!」

 

ごもっともです。

ありがとうございます!

 

「市ヶ谷さんもサボりか?」

 

「ここは私のサボリスポットですけど?」

 

さも息を吐くように言い出してきたぞこの人……。

 

「屋上は学校の共有物だぞ」

 

「なら未成年ほお前はなんで学校の共有物でタバコを吸ってるんだ?」

 

「うぐっ」

 

「ここから離れないと先生にチクっちゃおうかな〜」

 

「ならお前はなんで屋上でサボってるんだよ」

 

「私は早退扱いになってるからいいんです〜」

 

こいつ……!

成績優秀だから先生に好かれてるからと言って!

 

「なら俺はクラスメイトに市ヶ谷さんが猫かぶってる事ばらすわ」

 

「それは卑怯だから!」

 

「俺はクラスメイトと全員と喋ってる認識があるしみんな市ヶ谷さんの事心配してるし、憧れてるからな〜」

 

「わかったって!だからそれは言うなー!」

 

「なら交渉成立。俺は市ヶ谷さんが猫被ってること言わない変わりに市ヶ谷さんは俺が屋上でタバコをすってたことを言わない」

 

「わかったから!頼むから言うな!」

 

ふぅ。

これで一件落着だ。

 

「で?今市ヶ谷さんはなにしてたの?」

 

「お前にいう必要あるか」

 

「あるよ。お互いサボってるんだから言ってもいいやん」

 

「ったく。わかったわよ。ここの景色見てたんだよ。綺麗だからさ、色々と考えたい時にはここの景色見たら考えがまとまるんだよな〜」

 

「それはわかるわ。俺も今考えたい気分だからな」

 

「頭悪そうな顔して考えることが出来んのか?」

 

と嘲笑うかのように笑って答える市ヶ谷さん。

頭いいからってそこまで言わなくてもいいじゃないか。

 

「当たり前よ。頭悪いけど悩みとか考えたい気持ちがあるんだよ」

 

「どんなこと悩んでるだよ。ここであったも何かの縁だし、相談乗ってやってもいいぞ」

 

「そっか、市ヶ谷さん俺以外に友達いなさそうだし誰にも言わなさそうだもんな」

 

「誰が友達いないだと!?それとなんで私は染谷と友達になってるのよ!」

 

「え?喋った時から友達じゃん?」

 

「うっ!」

 

市ヶ谷さんの顔が赤くなってる。

照れてるのか?

 

「は、今ので照れてるとか可愛いとこあるじゃん」

 

LINEとかなら(笑)ってつけてやりたい。

 

「うるさい!うるさい!」

 

「市ヶ谷さんおもしろいね!」

 

「からかうなばかっ!」

 

そう照れる市ヶ谷さんが可愛く感じて、もっと弄りたくなる。

 

「………有咲でいいわよ」

 

「へ?なにが?」

 

「呼び方よ!呼び方!」

 

久しぶりに大きな声で笑ってしまった。

 

「なら俺も龍太でいいよ!改めてよろしくね!有咲!」

 

「うるさい!……よろしく龍太」

 

最後のところは小声で聞こえなかったけど、あまりいじると可愛そうだからまぁいいか。

 

「まあさ同じクラスメイトのさ戸山香澄って知ってるか?」

 

☆☆★

 

「それ実話か?」

 

「実話に決まってるだろ。嘘でこんな話言えたらとんでもねえ詐欺師になれるぞ」

 

「お前も大変だな、私でも多分龍太の立場になってるかもしれねえからな」

 

「けど最後の言葉一方的に悪いんだよ」

 

「まあ話変わるけどな、その戸山香澄な、昨日うちに来たのよ?」

 

「は?」

 

俺は的外れな答えに驚く。

 

「私の家ね、小さい時にピアノ習ってて1曲出来たら星のシールが貰えるんだ。それが楽しくて何故か電柱とかにどんどん貼ってたんだよ」

 

「お前ん家もしかして流星堂?」

 

「げっ!お前も知ってるのかよ」

 

「当たり前だ。あそこの蔵で眠ってるアンプひとつ俺が買って機械オタクの先輩が直して使ってるんだよ」

 

「なら話が早いわ。その星のシールをたどって行ったんだよその戸山香澄が」

 

「それで?」

 

「ああうちの蔵にあった赤のランダムスターをずっと見つめてな、私がなんで来たのか問い詰めてる時にその赤のランダムスター何円で売ってくれるかしつこくてさ」

 

俺はその言葉を聞くと無意識に

 

「頼む、そのランダムスター安価で香澄に売ってくれ」

 

と肩を掴んで有咲に頼み込んでいた。

 

「な、なんでだよ」

 

「俺は青のランダムスターを使ってるんだ。お前が俺の話聞いてわかってもらえると思うけどあいつと仲直りしたら、色は違うけど同じギターで同じ音を弾きたいんだ。お願いだ譲ってやってくれ」

 

「けどあれは、売る予定だから」

 

「35万!」

 

「は!?」

 

「俺が35万出すから!」

 

親父の遺産を使ってしまうがこればかりは責めてものお詫びだ。

許してくれ親父。

 

「……いやお金は要らないから」

 

「……え?」

 

「いやお金はいいよ。なんか龍太が必死になってるの見て別にいいやって思ってな」

 

「けどあれ手に入れるのめちゃくちゃ大変だったんだぞ?」

 

「なら今日昼飯おごりで許してやるよ」

 

「ほんとか!?よっしゃ!」

 

人様に見られたら恥ずかしいはしゃぎ方をしてしまった。

ほんとに心がすこし晴れたような気がした。

これで香澄に少しでも恩返しを出来たらいいと思った。

いつかは仲直りしてまたあいつと歌いたい。

こればかりは変わらないものだ。



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不仲説の確定

4限目が終わり、昼休憩の時間。

ここの学校は昼休憩が一時間半あり、部活動の生徒は昼練。帰宅部はサッカーとかやったりするので比較的自由な時間である。

俺は早雲と美竹さんが学校休みだったからひまりと昼飯を食べる約束をしていたのでそこに有咲を連れていくことにした。

 

「それでは紹介します!先程友達になりました!市ヶ谷有咲さんです!」

 

「ご、ごきげんよう」

 

と顔がひきつりながら挨拶する有咲。

 

『おい、猫かぶんなよ』

 

『うるさい!わかってるわそれぐらい!』

 

「え?早退したんじゃないの?」

 

人が良すぎる早雲は大丈夫なの?と心配してる。

これ以上誤解を招くわけにはいかないから俺からホントのことを言おう。

 

「ああこいつ猫かぶってるから、だるくて学校早退しただ」

 

ガッ!

 

ケツを思っきし蹴られた。

 

「ど、どうも」

 

「私上原ひまりだよー!よろしくねえー!」

 

「よ、よろしく」

 

あまり人付き合いが苦手な有咲は俺の背中に隠れる。

 

「まあ4時間目はありがとうなお前ら」

 

「どうせまた嫌な夢見たんだろ?」

 

「当たり」

 

「うなされてたからわかるわよ」

 

「けどお前のうなり声は面白かったけどな。動画とったし市ヶ谷さんも見る?」

 

「ちょお前消せ」

 

と言いながら早雲のスマホを取ろうとしたら

 

「はいはい落ち着いてね〜」

 

ひまりに羽交い締めされる。

ちょっとこれやばい!

 

「おい!お前背中当たってるって」

 

「なにが当たってるのよ」

 

「胸だよ!おっぱい!」

 

ゴツっ!

 

今度は膝で股間を蹴られた。

そして動画を見て笑う早雲と有咲。

なんなんだよ今日はまじで……。

 

☆☆★

 

有咲は有咲で、学食で一番高い540円のスペシャル日替わり定食頼む。

こいつ俺のお小遣い少ないってこと知ってるのかな?

けどここの学食はほんとに安い。

A定食で340円ボリューム満点だし、栄養もしっかり取れるし、ご飯大盛りも無料。

ここに入って唯一感動してることだ。

 

「げっ、こんなにあるのかよ」

 

「有咲学食きたことないからビックリしてるんじゃない?」

 

「確かにね、学食は高校生の味方だよな」

 

早雲と俺は陸上してる時から顧問から『食べることも練習だ。たくさん食べるやつほど強いんだ』と言われて送別会の焼肉もどちらが多く食べれるか勝負したのも懐かしい思い出だ。

 

「ひまりも食いそうだけどサンドウィッチだけで足りるわけなんすか?」

 

「足りるわよ!」

 

「嘘だな。こいつ羽沢珈琲店のランチセット平らげるぐらいだから足りねえはず」

 

「羽沢珈琲店のランチセット全部食えるの!?」

 

有咲も驚く羽沢珈琲店のランチセットは学割で無料で大盛りになる。

前に高校入学前に早雲とつぐみでスタジオで練習する前に寄ったんだけど、大盛りはとんでもなく増える。

ひまりはそれプラスパンケーキも食べたんだ。

 

「ただのデブじゃねえか」

 

「でぶじゃないわよ!これぐらい誰でも行けるでしょ」

 

「いや私も食えないわあの量は」

 

「そこは味方してよー!」

 

みんな笑ってる。

今の自分には考えられないほど充実してるんだな。

それとあの話を伝えなきゃ。

 

「話変わるけど早雲とひまりに報告があるんだ」

 

俺は香澄の事を有咲に伝えた事を話、きのうの出来事を伝えた。

 

☆☆★

 

「それはほんとなの!?」

 

「ほんと」

 

「まだギター弾いてるかも知れないんだよ。それだけを聞いただけでも俺は嬉しいんだよ」

 

「また4人で楽器弾けて大騒ぎかもな」

 

そう、ひまりと早雲と香澄と俺で練習する日もあって一番楽しいんだ。

みんなで音を奏でるのが。

ギター二本のリズムとリートが織り成すハーモニーに低音のベースとドラムのリズムが一体になった時はかなり気持ちいいんだ。

吹奏楽もマーチングも同じだ。

例えばの話、倍音が聞こえてくる時の感動と似ているんだ。

けど音がぶつかった時は気持ち悪いんだよな。

それに香澄の歌声は本当に好きだ。

美竹さんの歌声もかなり好きだけど、香澄の声はほんとに綺麗なんだ。

 

「まあそんな感じだ。次の時間何だったけ?」

 

「は?今日は学校4時間しかないんじゃねーの?」

 

と有咲が伝える。

 

「嘘だろ?」

 

「ほんとよ。昨日の夜に携帯のメールで流れてたはずよ」

 

「げ、まじだ。」

 

「龍太と早雲はメールも確認出来ねえの?ほんとバカだよなぁ」

 

「「いや!お前は最後まで受けろよ!」」

 

ここまで綺麗にハモったのは初めてだった。

 

☆☆★

 

4時間で学校が終わり、バイクで早雲を乗せて家まで帰った。

俺の家は家族が残したこのアパートだ。

3LDKの一人暮らしにはもったいない立派な家だ

今となっては早雲達の溜まり場になってる。

 

「で?話ってなんだ?」

 

俺は早雲に訪ねながら珈琲と灰皿を渡す。

 

「ああ俺が組んでるバンドの話だよ」

 

ありがとうと言いながら珈琲を飲みながらタバコに火をつける早雲。

 

「来週のお前がサポートで出るライブを持って解散するんだ」

 

「は?まじで?」

 

早雲のバンドは早雲以外全員三年の先輩で、ギターとドラムの人がかなりの不仲と言う説が流れていた。

バンド自体は人気が高く、ファンク、ハードコアまで何でもこなす凄腕バンドだ。

 

「ああ、やっぱりドラムの先輩とギターの先輩がやっぱり仲悪くてな」

 

と言いながら、紫煙をくゆらす。

 

「そこでだ」

 

「ああ、お前が言いたいことはわかってる」

 

「「バンド組もうぜ!」」

 

俺達は原監督御用達のグーパンチをしながら言っていた。

 

「けど編成はどうするんだ?」

 

「俺はドラムも叩けるからドラムでもいい。お前は左足が悪いからドラムは無理だろ」

 

確かにそうだ。

俺はアキレス腱断裂したせいであまりハイハットペダルは踏めなくなってる。

 

「そうだな。目標は?」

 

「お前が決めろ」

 

「なら親父が高校の時にでた『tenns series in National convention

』だろ!」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

「まずは今週の日曜日のライブ成功させよう!」

 

「そうだな!」

 

俺達はただ全国の舞台に飢えていただけかもしれない。



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香澄パート
コワレタオモイ。コワレルワタシ。


大晦日。
私は龍太と一緒に初詣して、近くの展望台まで競走してたっけ?

「遅いよー!香澄!」

「陸上部なんだから手加減してよー!」

「短距離じゃないからそんな言い訳不要だよ!」

そうじゃれあいながら着いた展望台で見た夜空はこれまで見たことがないような、綺麗な、綺麗な景色だった。

「あのね龍太」

と呼ぶと笑ってこっちを向いてくれる。

「私ね、キラキラしたもの見つけたかったけど、今は龍太と付き合って一緒に語り弾きしてね、なんかよくわからないけどすっごーく!キラキラしてる!」

そう言うと笑う龍太。

「俺もだよ香澄」

そう言うと龍太はこう言ってくれた。

「俺も香澄らしさがあるからこうやって明るく陸上もギターもうまく出来てると思うし、それにね香澄は俺の足りない所って知ってる?」

なにも足りないところなんて無かったから、首を傾げる。

「俺ね香澄と初めて会うまでほんと暗くって親父のために陸上頑張って特待もらう事しか考えてなかったよ。明るく振舞って無理してる自分がいてさ」

「けど香澄が居てくれるからこうやって明るくなった感じがするんだよね。だからさ足りないところは半分こしてもらえてる。いつもありがとね」

そう言って私の頭を撫でてくれた。

3ヶ月記念のこの夜空は、夜空なのに何故か潤んで見えたのを覚えている。


そう幸せに慕っているのも束の間、二ヶ月後に龍太のお父さんを私が死なせて、そして龍太を陸上できない体にしてしまった私がいた。

 

罪悪感が取れぬまま向かった死後三日後にあった告別式に参列していた。

有名バンドの人が多数参加していたのを見て

やっぱり龍太のお父さんはすごい人だと改めて思ったし、私には場違いに見えてしまった。

龍太のお父さんの前にはたくさんの人が笑いながら泣いていた。

ほんとにたくさんの人を笑顔にして来た人の証拠だと思った。

龍太のおじいさんは

 

「香澄ちゃんは悪くない。何も見ずに飛ばしていたあいつが悪いんだから。だから香澄ちゃんは絶対に龍太の側からはなれないでくれ」

 

そう言って私を励ましてくれる。

けど私が原因で亡くなったのは代わりはない。

そう思いながら龍太が見えた。

車椅子で参列していた龍太はただ呆然とした顔で涙を沢山流していた。

私はほんとに痛まれない気持ちになってしまい、本当は寄り添うはずができなかった。

 

葬儀場から走って出て、思いっきり泣こうとした。

涙は出る。

けど声が出ないの。

 

---私は告別式の日から声が出なくなった。

 

☆☆★

 

それから私は、スケッチブックを代用して、春休みが明けるまでは病院にいながら、龍太の傍に出来るだけいた。

そして龍太の進学先、佐久短聖から入学が断られた時は、本当に寄り添って一緒に泣いた。

残念だけど私にはそれしか出来なかった。

出来ないことが多すぎて、自分の明るさは日に日に陰に隠れていき、卑屈さが残るようになっていった。

そして入院して2ヶ月半、龍太は私に対しての怒りをぶつけた。

それは正論だった。

私は何も言えなかった。

ここから出ることしか出来なかった。

そして、家に戻って折角親に買ってもらったSGを見ると馬鹿馬鹿しくなってきた。

SGの隣にある自分で買ったアコギを手に取り語り弾きをやってみた。

歌声も出ないのに、口パクで歌いながらギターを弾く。

 

---なんだ声も出せないのに歌っているのだろう。馬鹿馬鹿しい「馬鹿馬鹿しい馬鹿馬鹿しい

 

もう馬鹿馬鹿しいんだよ!」

 

途中から思っていたことが口に出ていた。

気がついたら私はアコギを投げていた。

幸いアコギは弦が切れだけだった。

 

私は声が出るようにはなったけど

もう歌いたくない。

龍太が私の歌声を褒めてくれることなんてもう無いんだから。

沢山だ。

こんなものがあるから龍太と出会ったんだ。

私がぼろぼろにしたんだ。

 

そう思いながら窓から見る夜空は雨が降り始め土砂降りになっていた。

 

 

 




みなさん!
読んでいただきありがとうございます!
そしてこんな駄文小説をお気に入りに登録してもらってありがとうございます!
ホシノコドウと1000回潤んだ空を聞いて書きたい衝動に駆られました。笑
どちらかというと
香澄はやや小説版よりです。笑
よろしくお願いします!


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