ピンクのおっさんとホイみっ♪ (せーや lv71)
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おきたら ぐわあああーーーーーッ!!

 ついむしゃむしゃして書いた。




 たぶん続かない。


 

 

 おきなさい・・・おきなさい・・・・・・や・・・

 

 

 

 

 なんか声がきこえる。

 「うーんあと10分」

 ねむい、あったかい、きもちいい。よってもう少し。

 

 

 

 

 おきなさい・・・・わたしの・・や・・・

 

 

 

 

 やさしい声がきこえる。

 「あと100分ね~」

 だがおきる気はない、惰眠をむさぼる、しあわせ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おきなさい、わたしのかわいいクロコダインや。」

 

 

 「ほへ?」

 思わず変な声が出た。

 

 何と言った?言われた?

 クロコダイン?ピンクのおっさんがナンだって?

 寝ぼけ眼をこすって開けるとそこには

 

 

 

 「おはよう、わたしのかわいいクロコダイン。あさごはん、できてるからね。」

 

 

 

 

 

 目の前に赤いワニがいた。

 

 思わずフリーズしたおれは悪くないと思う。 

 

 

 

 その姿はまさしくクロコダインのおっさんだった。

 ただし。

 ピンクのフリル付のかわいいリボンをつけてた。

 エプロンつけてた。

 まつげが長かった。

 おたま持ってた。

 女性の声だった。

 SAN値が減った。

 

 

 

 

 

 「みんなおきてるからね。はやくおいでなさい。」

 おれの動揺をよそに、赤いワニさんは二足歩行で部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 「部屋?」

 

 見慣れた自分の部屋ではない。

 見渡すと鏡台があり、のぞいてみるとそこには。

 

 ぷっくりした体系の子供のワニ人間がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「え?おれクロコダイン?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐわあああーーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホイみっ♪

 

 なんか聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん?」

 あたりを見回すと

 

 「ホイみっ♪」

 

 ホイミスライムがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい、どうもクロコダインです。

 初めこそ動揺してましたが、普段の生活がバイオレンスで思い悩むどころではありませんでした。

 

 

 無駄にパワフルな親兄妹たちとご飯を取り合ったり。

 (早い者勝ちで、食器が飛び交う→ぐわあああーーーーーッ!!)

 

 「ホイみっ♪」

 

 

 散歩という名の強行軍に連れまわされたり。

 (年上の言うこと絶対で、兄、姉に引きずられる。片道3,40キロは当たり前。→ぐわあああーーーーーッ!!)

 

 「ホイみっ♪」

 

 

 他の魔物と縄張り争いしたり。

 (魔物社会は実力主義。子供だろうと住処を守るために鉄火場に放り込まれます→ぐわあああーーーーーッ!!)

 

 

 

 

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 こいつがいないと死んでたね、おれ。

 

 「ホイみっ♪」

 

 あ、こいつは相棒のホイミスライムで名前は『ホイみん』です。

 

 転生?トリップ?した時から一緒にいました。それ以来の仲です。

 怪我を治してくれるのはいいんだけど、性格はちょっと黒い気がする。

 

 

 

 さそりばちの巣に石つぶてをぶちかましたあとおれを盾にしたり。

 

 

 そのあとホイみっ♪

 

 

 マッドオックスの足とおれのしっぽを縄でつないで走らせ、引きずらせたり。

 

 

 擦り傷だらけでぶっ倒れてるところをホイみっ♪

 

 

 ガルーダの巣に勝手に昼寝に行って、迎えに行ったおれを親ガルーダにハチ合わせたり。

 

 

 かじられたアタマをホイみっ♪

 

 

 

 転生してからこっちおれの人生、こいつに振り回されてるような気がする。

 「ホイみっ♪」

 こら、都合が悪いからってホイミでごまかすな。

 

 

 

 

 

 原作始まってもやっていけるんだろうか・・・・おれ。

 

 「ホイみっ♪」ドンッ!!

 

 およ?

 油断したところをホイみんに『突き飛ば』され。

 

 

 

 おおアリクイの巣穴に顔面ダイブした。

 

 「ああっ、アリクイの舌が。 鼻に、鼻の穴にっ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐわあああーーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 




 おっさんのSSもっと増えろ
 




 続かない


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勇者と遭遇 ぐわあああーーーーーッ!!

 続かない








 続かないってば。


 はい、みなさんこんにちわ。クロコダインです。

 今、勇者ダイくんとポップくんに睨まれてます。

 

 

 ・・・どうしてこうなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はいここから回想ね。

 

 「そろそろ一人立ちしなさい」

 

 その一言で文字どうり住処を蹴りだされたおれはホイみんと一緒にあてのない旅にでた。ひどいよママン。

 

 「ホイみっ♪」 

 

 

 あてのないと言っても、小さいころからの肉体言語からなるマモノミケーションによって魔物友達は結構いる。

 彼らは世界各地に点在しているし住居も一定でないため、普段から近くにいるわけではない。まぁ呼べば来てくれるんですけどね。彼らを訪ねて回って旅をしてもいいかもしれない。この世界の人里にも興味があるし、町にも寄ってみるのもアリかもしれない。そういうわけでおれたちのドラゴンクエストならぬ、モンスタークエストが始まったのだ。友達1000人でっきるっかなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果

 友達1000匹できました(魔物)

 

 

 友達一人もできませんでした(人間)

 

 ちくせう。

 

 

 

 

 

 そりゃそうだよ。こちとら外見がピンクワニだよ。

 しかも世界中行く先々で土着の魔物と親交を深めたり、絡まれたり

 (肉体言語→ぐわあああーーーーーッ!!→ホイみっ♪のコンボ)

 

 歓待されたり

 (しびれあげは等の群体系魔物からわやくちゃ→ぐわあああーーーーーッ!!→ホイみっ♪)

 

 

 

 陸海空問わずおれたちの周りはモンハウだったから、そら人間からしたら近寄りたくないでしょ。

 いっぺんお城が見えたんで近づいたら、ホイみんが口笛ならして周辺の友達が大集合したから、めっさ警戒されて速効で城門を閉じられたんだよなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが数十回

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ?もしかしてホイみんのせ「ホイみっ♪」そうか気のせいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで気ままに長いこと旅をしてたら魔王があらわれた。

 やりすぎなエフェクトでもって虚空から渦を巻いてあらわれた時には、あまりの非現実さに呆然としたね。周りのみんなが騒ぎ始めたから我に返って、なだめて落ち着かせたけど。ホイみんが口笛吹かして周辺からさらに、友達を呼び寄せたからパニックが広がりかけたけどなんとかなった。っつーかなんとかした。余計なことするなよホイみん。あんまりみんなが動揺したから魔王も若干顔が引きつってたし。

 

 

 正直すっかり忘れてたもんね。ここダイの大冒険の世界だったんだ。今更かと。

 なんでも彼、魔王ハドラーが言うには、大魔王バーンが魔王軍を組織しその6つの軍団の百獣魔団長にスカウトしたいとのこと。

 荒事は正直好きじゃないけど、原作の序盤でおっさんがいないと詰むところは多かったはずだ。静観しようもんなら、大魔王に地上をこっぱみじんこにされてどっちみちバッドエンドだしなー。

 

 

 

 答えは

 

 →はい

  YES

  

 

 

 

 しかないんだよなー。なんだよこの理不尽な選択肢は。

 

 しかたない、頑張ろう。どこまでおっさんの代わりが務まるかわかんないけど、みんなのいる地上をぶっ壊されちゃたまらないからね。

 「ホイみっ♪」 

 あ、ホイみんは乗り気なのね。

 

 

 

 

 

 ハドラーさんに一択しかない返答をすると

 「流石は勇猛で名高い獣王クロコダインよ。これで我が魔王軍は百軍の加勢を得たも同じよ。うわっはっはっは。」とマントを翻して上機嫌で帰っていきました。あんまり乗り気じゃないんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで原作への介入が始まり、いろいろあってロモス王国へ攻め入ることとなりました。

 

 

 

 はい、攻め込んでません。

 戦争、ダメ、ゼッタイ。

 ノーモアうぉー。

 

 生前日本人のヘタレメンタルに殺戮の教唆とか無理ですし。そんなくっだらないことに友達の命を懸けられません。友達のみんなには専守防衛を徹底させてますし、よほど人間に刺激されなきゃ大丈夫でしょ。

 

 とタカをくくって昼寝としゃれ込んでいたところを爆発音と振動が起きました。おれもたたき起こされました。すわ何事かと仮基地の洞窟から外へ飛び出ると森が黒煙を上げて燃えています。とりあえずバンパイアくんたちに消火活動と避難誘導をお願いし、現地へ向かいます。すると森の中から大声とともに人影が飛び出してきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くおら~!!。まちやがれっ。この性悪スライムーー!!」

 

 

 

 

 ホイみんがあらわれた。

 

 勇者があらわれた。

 

 魔法使いがあらわれた。

 

 

 

 

 どゆこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハイッ回想おわりっ。

 ってこらホイみん。なにダイくんを連れてきてるのさ。いや時期的にそろそろ来るころかなーとは思ってたけど。こっちはなんの準備もできてないんだよ。パジャマで着の身着のまま飛び出して備えなし、覚悟なし、余裕なし、どーすんのさ。そもそも偵察隊がダイくんご一行を見つけるまで手出し禁止って言ってたよね。

 

 あ、こらホイみん。その背中に隠した石ころを見せなさい。

 こいつ、石つぶてでダイくんたちを挑発しやがったな。あーあかわいそうにポップくん顔にあんなにタンコブ作っちゃってさ。あれ?ポップくんだけなんか多くね?ダイくんが2個。ポップくんが5、6個か。さしずめあの火災は怒り狂ったポップくんがメラかイオでもぶっ放したんだろ。あとであやまりさないよ、ホイみん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ?ホイみんどこ行った?

 

 

 

 

 

 「なんだとこの、陰険スライム!!獣王がなんだってンだ!!このポップ様が焼きワニにしてやるぜ!!」

 

 いきなりポップくんにタンカを切られた。脈絡がなくて、ポップくんの言ってることがちょっとわからない。

 

 「お前が獣王クロコダインだな!。ロモス王国のみんなを苦しめるのは止めるんだっ!!」

 

 ダイくんは正義と自信にあふれた眼で睨みつけてきます。あ、やばい、くじけそう。

 

 

 

 あれ?おれいつ名乗ったっけ?

 どうもおかしい、二人の視線もおれとずれている気がする。その先を追って後ろを振り向くと・・・。

 あ!!、ホイみんのやつ。なんか居ないと思ったら。おれの後ろで立てカンバンにセリフ書いて悪口言ってやがる。

 

 

 

 

 

 

 〈へっへっへ、大した火力のメラも出せないべぼ魔法使いめ。〉

 

 

 〈お前なんか、ぼくの主の獣王クロコダイン様の敵じゃないね  ばーかばーか 〉

 

 

 〈ねぇ、ホイミスライムごときに一方的になぶられるのってどんな気持ち?〉

 

 

 

 

 あのにんまり顔でこの口撃である。ふよふよ空中を漂いながらほかのカンバンを出してくる。

 あ、ほかにも

 

 

 〈へたれ〉

 〈馬の骨〉

 〈ノーコン〉

 〈おまえの服カメムシみたいだよなww〉

 

 とか下に落ちてた。これを使って煽ったのか。そら怒るわ。ホントに後であやまれよ、ホイみん。

 と、下からホイみんへ視線をもどすと

 

 

 〈我が至高なる百獣魔団長クロコダイン様。仰せの通りに勇者めをおびき出してまいりました〉

 

 〈さぁ、今こそ魔軍司令ハドラー様の命を果たすとき〉

 

 〈愚かな勇者どもを蹴散らしてしまいましょう〉

 

 

 と書かれたカンバンを掲げていた。くっそ、あのにやけ顔がドヤ顔に見える。っつーか内心ゲラ笑いしてるだろホイみんっ。やばい、誤解だ。なんとか話し合いにもっていかないと・・。

 

 

 

 「絶対ゆるさねぇ!!くらえ!!メラゾーマ!!!」

 

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!」

 

 

 ポップくんから不意打ちの呪文である。あつい。くるしい。息できない。たまらずにゴロゴロと地面をのた打ち回る。

 

 

 〈クロコダイーーーーーン!!〉

 こら、そのカンバンやめなさい。煽ってる?おれを煽ってるよねホイみん。あ、パジャマが燃えてすっぽんぽんになった。

 

 

 「いくぞ!!クロコダイン!!!」

 

 ダイくんがパプニカのナイフを上段に構えて跳躍する。

 いかなくていいから。こなくていいから。やめて、とめてちょいとタンマ。あ、目は守らないと。

 

 「くらえ、アバン流刀殺法!!大地斬!!!」

 

 ぐわあー!!

 

 「海波斬!!!」

 

 ぐわあああーーー!!

 

 「空裂斬!!!」

 

 ぐわああああーーーーーッ!!ってあれ?今キミそれ使えたっけー!?

 

 

 

 

 

 

 

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 あー痛かった。埃をはらって立ち上がる。

 

 

 「そんな、おれのアバン流刀殺法が通じないなんて」

 

 ダイくんがうろたえてるけどいや、効いてるからね。すっごく痛かったから。

 なんだかんだでホイみんは怪我は治してくれるのだ。ただし、状況をひっかきまわして先に怪我を負わせる原因を作ってくるのもホイみんなのだが。

 

 

 「こうなったら、おれの全てを賭けるしかない!」

 

 逆手にナイフを持って前傾姿勢をとるダイくん。あ、この構えはアカンやつだ。

 闘気がバチバチと音を立ててナイフへ伝わっていく。人間の子供だったころ、誰もが傘を壊しつつマネをしたあれだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   「アバンストラーーーーーーーーッシュ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 懐かしさと感動で少し涙が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐわああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈クロコダイーーーーーン!!〉

 「ホイみっ♪」

 だからカンバンをやめなさいってば。

 




 おっさんのSSが増えたら続き書く。






 よって続かない。


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そうだ、お城へ行こう ぐわあああーーーーーッ!!

 新しく友達ができたら続ける







 続かないな。


「ホイみっ♪」

 あー、死ぬかと思った。

 

 

 

 

 

 ダイくん達は呆然としてるけど、回復呪文ってこんなもんよ。死ななきゃ安い。

 

 さて、とりあえず撤退しよう。こっちははじめっから戦意はないし。何より今素っ裸である。

 なんかそれらしいことを言っておくか。

 

 この程度では大魔王様はおろかおれ様にも勝てないから、腕を上げておけとかなんとか言っておいたら、えらくショックを受けていたようだ。まぁ、主人公だし大丈夫でしょ。彼らにはできるだけ強くなってもらわないと、比喩抜きに世界が危ない。

 あと、近いうちにロモス城へお邪魔するよって言っておいた。待ち合わせ場所は指定しないとね。おれとしてはこれ以上事を構えるつもりはないんだけど。『百獣魔団とその軍団長が勇者に敗れて撤退する。』これをしとかないとロモス国民も不安が続くだろうし、ダイくんたちもロモスから離れられないだろうしね。

 

 そこで、戦略的撤退の為、空の足を呼ぶ。かむひあ。

 

 突然に日の光が遮られ辺りが暗くなる。瞬間、爆風が周辺を襲う。

 

 「クアアアアアアアッッッ」

 

 翼が天を覆う如くである。あ、彼はガルーダのがる太です。そう、ホイみんの昼寝場所の卵から生まれたんです。孵化した時に偶然おれと目と目が合って親だと思い込んだようで、ええ、親ガルーダさんから仇のごとく追い回されましたよ。

 そんなこんなで付き合い長いんだけど、まだ成長してるみたい。翼長4~50mありそう。流石ファンタジー世界。前世の常識が通用しねえ。

 あ、ポップくん腰抜かしてら。

 

 ガルーダのがる太に乗って撤退する。っても足の爪先にしがみついてるだけだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「俺たちの攻撃がまるで通じなかった……おっそろしいやつだったな。」

 

 「ポップ……おれくやしいよ。先生から教わった刀殺法が効かないなんて。」

 

 「強くなってやる。絶対にもっと強くなってやる!!」

 

 「絶対にあいつを……クロコダインを倒して見せる!!」

 

 

 

 

 

 あれ?なんか嫌なフラグが立った?

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後

 

 魔軍司令どのに催促されてついにロモスへ侵攻となりました。やだー、やりたくないー。

 

 とりあえず、現在小高い崖の上にいます。

山の山頂にそびえるロモス城とふもとの城下町が一望できるスポットです。なかなかに風光明媚なところですね。観光に行けたためしはないけど。ぐすん。

 

 友達のみんなは町を遠巻きに囲むように整列し待機させています。放浪時代、行く先々で門前払いを食らったおれ達にとって作戦名『お外で待て』は専売特許なのですよ。言ってて悲しくなってきた。これで「百獣魔団が動いた」という体裁は整った。あとはおれがダイくんと一騎打ちして負けたのちみんなを解散させれば作戦終了だ。

 

 陸から正面突破は愚策。無用の被害が出るよね。ならば空から行くしかない。

 というわけでガルーダのがる太にお願いして、王宮まで飛んでいくことにしました。

 体はでかいが足先は器用でおれをつかんで飛んでくれます。

 

 あ、ホイみん。がる太が飛んでる時にくすぐるんじゃありません。

 がる太が悶えてるでしょ。あぁっ、絞まる、おなか絞まっちゃう。

 

 コチョコチョ。「クワワ」ぎゅう。バキボキ。

 

 「ぐわあああーーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こらえきれなくなったがる太から放り出されて。ロモス王宮へダイナミックお邪魔しますしました。高所から落下し、壁をブチ破りつつガラスまみれになりながら突入し、体は激しくシェイクされ、柱や壁に5,6度バウンドをかましたところでようやく止まりました。途中ぐえ、とかウヴァー、とか声が聞こえた気がしますが、こっちはそれどころではありません。

 「ホイみっ♪」

 

 あ、治してくれるの。ありがとうホイみん。でも、もう少しいたずらは控えてね。

 

 「王様っ!!」

 ダイくんが勢いよく扉を開けてあらわれました。増援の兵士たちと勝ち気そうな女の子がいます。あの子がマァムちゃんかな?

 

 ここで冷静になっておれの周りを見渡してみましょう。

 

 ダイナミックお邪魔しますでメチャクチャになった王室。倒れている側近の兵士たち。おびえすくむ王様。そんで無傷で立つおれ。ニヨニヨ顔のホイみん。

 

 

 

 

 

 「よくも、お城のみんなを……クロコダイン!!絶対に許さないぞっ!!!」

 

 

 

 

 「えええぇぇぇーーーーーーーーーーー!!!おれのせい!!?」

 

 

 

 

 

 いかん、誤解が広がる。なんとか説得しないと。ええと、おれはそもそもロモス王宮に攻め入って何をするつもりだったっけ。そう、ダイくんと戦おうとしたんだよ。あ、言い訳できねえ。

 

 「キィ~~~~~~ヒッヒッヒッ。苦戦しとるようじゃのう。クロコダイン?」

 

 あ、ザボエラのヒヒ爺さんだ。唐突にあらわれやがって。

 

 「おぬしに手を貸してやろうと思っての。」

 

 いや、要らないです。結構ですクーリングオフします。

 

 「助っ人を連れてきたぞい。これで存分に手柄をたてるとよいわ」

 と、懐から魔法の筒を出してきます。

 いらないってば、人の話聞いてる?

 

 「デルパァ~~~~!ではあとはまかせるぞい」

 

 あ、こら、消えるな。やりたい放題やって逃げるんじゃない。

 

 出てきたのは鬼面同士の老魔物でした。多分あれがブラスさんだろうね。ダイくんがじいちゃんって言ってるし。

 

 あ、ブラスさんがダイくんに仕掛けた。

 

 「メラミ~~ッ!!」

 

 あぶないっ

 ダイくんがよけた先におれがいました。

 

 「ぐわあああーーーーーッ!!」

 

 「メラミ~~ッ!!メラミメラミメラミメラミメラミ~~ッ!!」

 

 「ぐわあああーーーーーッ!!」「ぐわあああーーーーーッ!!」「ぐわあああーーーーーッ!!」「ぐわあああーーーーーッ!!」「ぐわあああーーーーーッ!!」「ぐわあああーーーーーッ!!」

 「ねぇなんで?なんでおればっかり流れ弾が来るの?本当は正気でないのブラスさん!?

 

 「クロコダイン!あなたそれでも戦士なの!?」

 「そうだそうだ、人質などと卑劣な手を使いおって!!」

 「武人の風上にもおけぬやつよ!!」

 「恥を知れ恥を!!」

 「この卑怯者!!」

 「ピィ~~、ピィピィ!!」

 

 ひどい、マァムちゃん。おれ悪くないと思うんだけどな。ゴメちゃんにまで睨まれてる。人間は今更として、魔物に嫌われると結構クるものがあるな。

 

 「ぴんくワニ!!」

 「出っ歯!!」 

 「でかい顔!!」

 「ホイみっ♪」

 「ピィピィ!!」

 「うつけ者!!」

 「のうみそまぬけエキス!!」

 「能無し!!」

 「力こそパワー!!」

 

 ホイみんもゴメちゃんや兵士と一緒にノリノリだし。

 よってたかってひどいぞ。

 やる気がなくなってきたけどブラスさんをほっとくわけにもいかないし。どうしよう。

 

 「アバン先生!先生の5分の1…いや10分の1でいい……おれに勇気を与えてくださいっ……!!!」

 「…おれの仲間を傷つける奴は…絶対にゆるさねえぞおぉぉぉぉっ!!!」

 

 とここで、覚醒済みのポップくんが乱入してきました。

 

 「くらえっ!メラゾーマ!!!」

 

 おっとっとうろたえません。仮にもおれは獣王、同じ手は二度食わないのです。今回はパジャマいっちょでなくフル装備で来てますよ。

 真空の斧で風のバリアを張ればいいんです。

 …あれ?ない?おれの真空の斧がない?

 あぁっホイみんが真空の斧を使ってマァムのスカートをめくってる!!器用な真似を!!しかも気づかれてないし。こうなったら耐えるしかない。獣王の鎧もあるし…ん?ホイみん、その手に持ってる金属は何かな~~?げっ、それは獣王の鎧の留め金じゃないか。あ、鎧が分解して落ちた。

 

 「ぐわあああーーーーーッ!!あっちぃーーーーーッ!!ああっ下着が、下着が!!」

 

 大火球の直撃で下着が全焼しました。はい、またしても素っ裸です。みんなの視線が痛いです。

 

 「変態!!」

 「ピンク色(肌が)!!」

 「ピンク色(脳みそが)!!」

 「ピンク色(×××が)!!」

 「ホイみっ♪」

 「ピッピ~~~イ///」

 

 いや不可抗力でしょコレ。あ、ホイみんがニヨニヨしてる。さては狙ってやがったな。あとで覚えてろよ。

 

 「とどめだ!!くらえっ!!!」

 ポップくんが何かを投げつけてきました。腕で振り払うと、音を立てて割れました。あ、この臭い覚えがある。火薬ツボだこれ。

 

 「ぐわあああーーーーーッ!!」

 

 はげしい爆発とともにギャグ漫画のごとく吹き飛ばされます。またしても王宮内ピンボールの玉にされ、柱を2,3本壊してやっと止まりました。

 

 

 ここまでしますか?普通?

いや、知恵と勇気を振り絞って戦うのは結構なんですけど。王宮の屋根が半分吹っ飛んでるですが。ポップくん周りの被害を考えましょうよ。

 「ホイみっ♪」

 あー痛かった。

 

 近場にあった柱に手をかけて立ち上がろうとすると。その柱が根っこから折れて傾きました。

 

 そっか、さっき突入したときに柱やら壁やら壊し回ったもんな。んでさっきの爆発でタガが外れたのか。

 

 嫌な予感がする。嫌な音がする。嫌なことが起こる(確信)

 

 

 

 

 

 

 ボキリ。

 

 

 

 

 

 

 あ、柱が崩れて天井が崩落した。

 

 「危ない、みんな逃げてええええーーーー!!!」

 

 マァムちゃんの悲鳴が響きます。

 おれの頭上は吹っ飛んでいたので無事でしたが。ロモスの兵士さんが多数生き埋めになってます。ダイくんもブラスさんを庇って下敷きになったのが見えました。マァムも負傷しているようです。天井は全損し、あの美しかったロモス王宮の外観は見る影もありません。

 

 なんてこった、大惨事過ぎる。

 

 「おれの呪文がまるできかねえ……強力なアイテムもねえ。ならおれは……おれはっ、おれにできることをするしかねえっ!!!」

 ポップくんの胸元が光り輝いてます。まぶしっ目が開けてられない。あれ?アバンのしるしってこんなに光るものだっけ?すごい気迫を感じます。魔法力を感じないドンなおれのセンスでも危険信号をガンガン鳴らしてます。

 

 

 

 

 

 

 

 「わが師アバンが得意といた伝説の呪文…!!邪なる威力よ…退け…!!

 

 

      マホカトーーール!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょいまて、素でそれ使えるのかよ。しかもなんだこのバカみたいな結界の範囲は。なんか軽く城外にまで及んでるんですが。あ、ブラスさんが正気に戻ったみたい。ダイくんが喜んでら、よかったね。

 

 「破邪呪文…魔を拒む光の魔法陣をつくり出す呪文さ…。先生みたいに島ごととまではいかねえけど城下町をカバーするくらいのやつならおれにだって……」

 

 だからまてって、ちょっと強すぎないキミたち?なに?2週目なの?つよくてニューゲームなの?

 

 「ポップ!!どうしてこんな無茶をしたの!!?」

 「ダイのためさ…。あいつは強いんだ。おれなんかと違って…本当にな…。ブラス爺さんさえ無事なら、あいつは本気を出せるんだ」

 

 マァムがポップに駆け寄って介抱してます。いいなー、うらやましい。おれなんか触手からしか手当てされたことないぞ。

 

 「アバン先生……おれ、やったよ…。自分にできることを…最後に…精一杯…。生まれて初めて…だったんだ。他人のために頑張ったのは…。今なら…先生の言ってたことがわかる気がする…ちょっと…おそかった…かもな…」

 

 そういってポップくんは倒れこみました。

 

 

 

 

 

 

 

 「見事だよ。ポップくん、いやポップ。君は立派な男だ」

 

 思わず賞賛を送ってた。やっぱりポップはカッコいいわ。改めてそう思うよ。でも室内で火薬ツボはやめとこうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…クロコダイン…許さないぞ」

 

 

 「おれのじいちゃんを利用して…悪いことをして…おれの仲間を傷つけたあんたを…」

 

 

 「ゆるすことはできないっ!!!」

 

 

 

 額に紋章を輝かせた勇者が立ち上がりました。みんなが傷ついたのはポップの間抜けな自損事故だと思うんだけど、あまりの気迫に言い出せない。

 

 

 ドロドロと雷鼓がなり、雨雲が立ち込めます。

 あたりが暗くなり、にわかに雨が降り始めました。

 稲光が空を走り、光が瞬きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ポップはおれのために全力を尽くしてくれた…」

 「今度はおれが、全力を出す番だっ!!!」

 

 

 

 

 

 「ライデイーーーーーーーン!!!!」

 

 

 

 ダイの掲げた剣先に一条の稲妻が落ちます。

 

 やばい。まって、なんでこの時点で魔法剣を使えるのさ??

 竜の騎士のなせる業かな?

 

 

 「まだだ、まだこれじゃあのクロコダインに届かないっ!!!」

 

 えっ

 

 

 

 「ライデイーーーーーーーン!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ちょま、むちゃくちゃするな。魔弾銃だって二発の呪文を込めたら壊れるんだぞ。二重の魔法剣とかよく思いつくよ。びっくり通り越して感心したわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アバン先生、ポップ、マァム、じいちゃん、ゴメちゃん、王様、みんな……おれにちからを貸してくれっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ダイ…」

 「ダイ…」

 「ダイ…」

 「ダイ殿…」

 「ダイ…」

 「ピィィ~」

 「ホイみっ♪」

 「ダイ様…」

 

 

 

 ホイみん、みんなが感動してるどさくさに紛れてダイくんを回復させたな。おれの目はごまかされんぞ。

 万全のコンディションでダブルライデインストラッシュがくるのか…生きてられるかな、おれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まだ、まだまだまだあああああああっっっっっっっつ!!!」

 

 

 「ライデイーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!」

 

 

 

 3発目ぇーーーーーーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 「これがおれの全力だああああああーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 3度目の雷光を体に浴びて、魔法の威力を剣に蓄えているようです。

 スーパーサ○ヤ人並に全身が白く発光しスパークがほとばしってます。

 刀身なんかもうまぶしくて見えません。どこのライトセーバーかと。

 天は鳴き、地は轟き、これから起こるであろう人外の御業に世界がおののいているようです。

 

 

 …骨のかけらでも残ればいいなあ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「3倍!!!ライデインストラーーーーーーーーーーッシュ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐわああああああああああーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」

 

 「ホイみっ♪」

 




 おっさんのファンクラブってあるのかな








 主人公が死んだので続かない。


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あれ…おっきな光が点いたり消えたりしている…彗星かな? ぐわああああーーーーーッ

 主人公が生きてたので続いた







 死んだら続かない。


 ごん太の閃光と轟音が天へ返っていきます。

 衝撃の余波が国中を伝わり、野生の動物たちが恐慌状態に陥ってます。鼻を突くような独特の臭いがしますね。これがオゾン臭でしょうか?おれの友達連中は行儀よくおすわりできているだろうか。ふと的外れな心配事が脳裏に浮かびました。

 

 あ、どうも。クロコダインです。なんで生きてるか知りませんが、生きてました。

 「ホイみっ♪」

 あ、うそうそ。ホイみんの回復呪文のおかげだよね。多分死に切る前に間に合ったんじゃないかな?

 

 眼前のみなさんがこの世の終わり見たいな顔をしていますね。そらそうでしょ。も最終回でもいいんじゃないかな?ってくらいの盛り上がりを見せてから放ったダイくんの必殺技を受けたボスが立っているんですもの。絶望感で一杯でしょ。

 「ホイみっ♪」

 誰もが戦意を喪失している中ダイくんだけ、こちらを睨みつけています。もう体力も魔法力もカラでしょうにまるで瞳から力が失われていません。

 「ホイみっ♪」

 流石です。やっぱり彼は世界を託すに値しますね。もう勇者とか竜の騎士だとかそんなの関係なく。彼個人の資質なのでしょう。

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 「見事な技だった。おれの負けだ」

 「えっ」

 「小僧、お前にもだ。ただ強き力を振うだけが闘いではないとな」

 「クロコダイン…」

 

 作戦目的は完了しましたし、あとは彼らを称えて引き揚げるだけです。ダイくんは意外そうな顔をしましたが、こっちだっていっぱいいっぱいなんだからねっ。

 「ホイみっ♪」

 さっきからドサマギにホイみんが手当り次第に回復呪文をバラ撒いています。いたずらはすれどキッチリ怪我人は治すあたり、にくめないやつなんです。時々度が過ぎますが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「グオオオオオオーーーーーーン!!」

 

 全軍撤退の雄たけびを上げます。幸いというか、ロモスは王宮以外に被害はないし。近場の魔物たちは、王宮の復興が終わるまではこの国の人間から無体をされることはないでしょう。大魔王が倒されるまでしばらく大人しくしててもらいましょう。

 さて、逃げだ…もとい引き揚げましょう、それから彼らにさらなるハッパを掛けなければ。ここはやはりあのセリフで決めましょう。

 

 

 「……さらばだ、ダイ。…負けるなよ…勇者はつねに強くあれええええぇぇぇぇっ↑!!??」

 

 良い所でがる太に鷲掴みにされて天空へ掻っ攫われました。舌噛んだよ、痛いなあ。

 

 「クアアッ」

 

 なになに?雄たけびを聞いて急いで飛んで来たって?うん、ありがとう。でももうちょっと待っててくれても良かったのよ。

 

 「ホイみっ♪ホイみっ♪」

 

 はやく帰ろうって?こらホイみん。今がる太を急かすんじゃありません。

 

 

 「クアアアアッッッ!!」(キリッ!!)

 

 あーあやる気出しちゃったよ。あんまり力を入れないでねって、痛い。痛い!!おなか捕まれちゃってるから、傷口開いちゃうから。痛いってばーー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!」

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「王様!!物見の兵から報告が。地平線を埋め尽くすほどひしめいていた魔物の軍勢が一斉に姿を消しました」

 「何!?本当か!!むうう…やはり、あ奴が勇猛で名高い獣王クロコダインじゃったか…」

 

 「知っているのかですかブラス老?」

 

 「ウム、魔王亡き後全世界の魔物に号令をかけ得ることができる者がおると聞いた。百獣を束ねる獣の王…すなわち獣王!!」

 

 「そんなすげぇヤツだったのか…」

 「わたしも噂程度しか聞いたことは無かったわ…」

 「とんでもない相手だったわね…」

 「ピィ~」

 「おれたちよく生きてたもんだぜ」

 

 「もしあやつがなりふり構わす攻め立てておれば、今頃我らはなすすべなく蹂躙されていたやも知れぬ。兵士諸君、よくやってくれた。復興は大変であろうが力を貸してくれい」

 

 「「「「「「「ハイッ!!!!!」」」」」」」

 

 「特にダイよ。このたびの勝利はまさにお前のおかげじゃ…。晴れて今日から『勇者ダイ』を名乗るがよい」

 

 「すげえぜ、やったな、ダイ」

 「おめでとう、ダイ。みんなから認められたのよ。素晴らしいことだわ」

 「ピィ~~~~♪」

 

 「王様…みんな…おれはまだ『勇者』を名乗れません」

 

 「「「「「えええっ!!?」」」」」」

 

 「おれ…勝ったんじゃない。みんなのおかげで、みんなで頑張ったから。クロコダインを追っ払えただけなんです。クロコダインの言うように、もっと強くならないと胸を張って勇者を名乗れません!!だからっ!!!」

 

 「ダイよ…成長したのう…」

 

 「あい、わかった。おぬしのさらなる活躍と成長を祈っておる。それでもこの国の誰もがおまえをこう呼ぶであろう。『小さき勇者、ダイ』と…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後~

 

 お、悪魔の目玉発見~。無理やりハドラー様宛てに退職届けを押し付けておきました。退職理由?勇者ダイとの決闘に余計な横槍を入れられたからとか書いておきました。ザボエラの爺さんが邪魔したのは事実だしね。責任を全部押し付けてやろう。せいぜい冷や飯を喰らうがいいわ。全部ザボエラが悪い。

 先の展開はわかっていたので鬼岩城へは誰も連れて行ってません。いつでも逐電できるように用意していたのですよ。それは…ハナっから『何も持ち込まない』こと。常に身軽でいれば、身一つでいつでも抜けられますからね。鬼岩城の割り当てられた室内であんまり私物がないものだから、無趣味で面白味のない奴と思われていたようです。城内で流行ってたチェスにだって誘われたことないし、ぐすん。

 

 次の舞台はパプニカ王国です。海を越えてホルキア大陸へ向かいましょう。

 そこで、マーマンのざりおんを呼んで、お願いして連れてってもらいました。おれの巨体を乗せてもびくともしないグッドマッスルなビッグガイです。最近なんて、「お前獣王名乗ってるんだってな、じゃあ俺は海王名乗るわ」なんて事言ってました。結構ノリの良い奴です。

 

 子供の頃ホイみんのいたずらで、3日3晩ビッグホーンに引きずられた所で綱が切れ、勢いそのまま崖下に落下。海岸で甲羅干しをしていたマーマンたちの群れに放り込まれてボッコにされました。そんでいつものマモノミュケーション(物理しかない)後、和解して友達なりました。彼ら曰くタフな奴に悪い奴はいないそうです。ホイみんの治療が間にあったとはいえ、流石にあの時は死にかけたけど。今では親友やってます。

 

 道中何事もなく、無事パプニカに到着。ざりおん、ありがとね、今度たくさんの山の幸を送るよ。

 

 地理にはそこまで明るくないので、高高度から目を凝らして探索します…。現地のおおがらす達にお願いして手分けして探索してもらいました。程なく神殿らしき跡地を見つけました。あ、ダイくん居ましたね。闘魔傀儡掌で動きを封じられ、今まさにとどめを刺されそうにしています。ダイくん結構強いはずなのに一方的にやられてるなーと不思議に思いましたが。考えてる余裕はなさそうです。体を張って止めるしかありませんね。やっぱりこのパターンか、痛いんだぞちくせう。ヒュンケルの必殺の刺突へ割り込みます。

 

 

 

 

 

 

 

 「とどめだ!!ダイ!!!」

 「ブラッディスクライド!!!」

 

 なんとか、身を挺して見事ダイくんをかばうことに成功します。

 

 「ああああっ!!」

 

 「お前はっ!!」

 

 「バカな…獣王…クロコダイン!!!」

 

 

 

 ヒュンケルの剣はクロコダインを貫く…ことはなく停止しました。

 

 その秘密は…少年ジャ○プ5冊を鎧の中に仕込んでいるのです。この世界にもあったんですよねージャ○プ。転生してからHUN○ER×HUNTERの続きが見れるとは思わなかった。○樫センセ異世界で仕事してたのね。さておき展開がわかっていれば対策も練れるというもの。2000ページ以上の紙の装甲、抜けられると思うなよ。

 

 「何のつもりだクロコダイン!!」

 

 おや、退職届は入れ違いになったのでしょうか?まあ、問答している時間が惜しいのでおおがらすたちにダイくん達をさらってもらいます。

 

 「おのれ、みすみす逃すと思うか!!」

 

 「今、ダイを殺させるわけにはいかん!」

 

 ヒュンケルの腕をつかんで組み打ちを仕掛けます。っつーか武器の間合いで切りあったら、瞬く間にナマス切りにされてしまいます。

 

 「放せクロコダイン!!!」

 

 「いいや、絶対に放さん!!」

 

 程なくおおがらすたちの姿が見えなくなりました。どうやら無事に安全圏まで逃げられたようです。おれもダイくん達を助けたので逃げるとしましょう。間違っても串刺しはゴメンです。決着はダイが付けに来るだろう。とか言って煙に巻いておこうとすると…。

 

 「人間に付くというのであれば、貴様が一番の障害となろう!!このまま見過ごすわけにはいかん!!この場で倒してくれる!!」

 

 ハイ、そうなりますよね~。見逃してくれないかな?それにね、過大評価ですってば。

 

 「まともにやりあったらキミと勝負にならないでしょ」となだめようとしたら。

 

 「フッ…我が必殺剣を止めたお前にはその言を吐く資格がある」

 

 と、返されました。うえぇ~~盛大に勘違いしてらっしゃる。とんでもない誤解です。そんな戦闘力ありませんってばーー!!全部ジャ○プの歴史の厚みのおかげですってば!!何とかうまい言い訳を考えてこの場をしのがないと…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「勇猛で名高いクロコダインに生半可な攻撃を仕掛ける愚を思い知った」

 「俺の最大の技を喰らわしてやるわ!!」

 

 ヒュンケルが剣を顔面に納め、全闘気を額に集中させ始めました。大地が震え、光と轟音が立ち昇ります。

 

 あ、もう手遅れだわ。次からはうまい言い逃れを考えておこう。

 …次があればの話だけどね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「グランドクルスーーーーーーーー!!!!!」

 

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「オチがマンネリ化してきたな」

 「ホイみっ♪」




 続かない。


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オリ主らしくSEKKYOUしよう ぐああああーーーーーッ!!!もあるよ

 クロコダインをいじりたいのではありません。
 オリ主をいじるのが楽しいのです。


 先ほどグランドクロスをもろに食らったわけですが。見事対処することに成功しました。え、直撃したやろって?ふふふ凌いだ、とは言ってません。対処したのです。あの手の放出系の技には下半身を踏んばらずに、上半身のガードを固めるのです。すると自身のダメージを抑えつつ、距離を取ることができるという訳なのですよ。全身ミシミシ逝ってますが。

 

 かかったな、これぞ我が逃走経路よ。

 「ホイみっ♪」

 

 いつの間にか鎧の中に隠れてました。あれかゴメちゃんといい服の中に侵入するのはスライム族の伝統芸能だったりするのでしょうか?

 

 まあ、おもっくそふっ飛ばされているだけなのですがね。

 回るー。視認できないー。気持ち悪いー。

 気分はホムコンのサンドバッくんですね。自由落下というのは言うほど自由ではないって、それ赤い人も言ってるから。あ、ブルーインパルスごっこもついに終わりが来ました。高度が落ちてきてます。

 

 

 「親方ァ空からピンクのおっさんが!!」

 

 

 変な空耳が聞こえた気がしましたが、背中から無事、墜落に成功しました。最近こんなことがあったような…。そのあと大体ろくな目に合わないんだよね。どうやら建物の中のようですが…。おや、人間の兵士に取り囲まれましたね。

 

 「おのれ魔物め!!どうやってここを突き止めた!!」

 「一体何事ですか!!?」

 「レオナ姫!お下がりください!!」

 

 イケメンが美人二人をはべらせて立ちはだかります。これが顔面格差か…。ん?レオナ姫…?ってことはここは…まさか…。

 

 バルジの塔だここーーーー!!

 

 「空を飛ぶピンクのワニ…まさかっ、あの勇猛で名高い獣王クロコダインか!!」

 

 ちょっとまって話を聞いて…あ、だめだ飛んで回されて酔ったみたい。気持ち悪くて口が開けない。酸っぱい味がする。

 

 「パプニカ三賢者の一人アポロ!」

 「同じくマリン!」

 「同じくエイミ!」

 

 「あの獣王が相手ならば我らも死力を尽くさねばならぬ!!二人の命を預けてくれ!!!」

 

 「ええ!!」

 「わかったわ!!」

 

 

 

 二人がアポロの脇に付き身構えます。

 そ…その、三位一体の構えは!!?ま…まさかっアテナエクスクラメーショ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「 イ オ ナ ズ ン ! ! ! 」×3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「オロロロロロロロロ」

 

 口からキラキラとした吐しゃ物をまき散らしながら回転しつつ吹っ飛ぶピンクワニ…汚いなあ。あの三人イオナズン使えたのね。あぁ、今度は逆方向へ飛ばされます。そろそろ体が限界ポイよう…。

 「ホイみっ♪」

 あ、まだ行けそう。

 

 二度目ともなれば空中での体の動かし方も慣れたものですよ。AMBAC(アンバック)マジ便利。

 鳥だ!

 飛行機だ!

 いいや、おっさんだ!!

 姿勢を整えて着地に備えます。縦に2回転…3回転…着地、ドスン、10ッ点!!

 

 「どわあああっ!!」

 

 おや、誰か居たのね。驚かせたかな?あれに見えるは…。

 

 「おっさん!!」

 「クロコダイン!」

 「なんじゃあ!?このすごいヤツは??」

 「無事だったんだね、クロコダイン!!」

 「ピッピピィ~~」

 

 なんと、ダイくん達でした。おおがらすに連れ去られてから、この岩場の近くで休息を取っていたとのこと。バルジの塔から神殿近くって…ほぼパプニカを一周してきたのね。

 老騎士がアワを吹いているのが見えます。あれがバダックさんか。いきなりピンク色の巨体が降ってくればそうもなるよ。原作的にも彼には嫌われたくないなー。

 状況を整理する為、自己紹介したあとに魔物友達のために魔王軍を抜けて、今はフリーだと現状を伝えると快く受け入れられました。あれ…ひょっとして初めて衝突なしに受け入れてくれた人間ができました??やばい、涙が出るわ。バダックさんいい人やわ。懐が深い。嬉しい。転生してからこっち、初めて良好な人間関係が築けたわけです。感動もひとしおですよ。

 

 「ピ~ピピィ」

 「ホイみっ♪」

 

 あっちはあっちで親睦を深めているようですね。ホイみんがゴメちゃんに触手で張り付いて飛んでいます。いつも浮遊するだけだから飛ぶのが楽しいのね。

 

 さて勇者一行はと言うと、なんだかお悩みの様子。特にダイくんは自分とヒュンケルの境遇が似ているので本気を出せなかったとのこと。とはいえ闘争の最中に相手を気遣えるのは…精神的に余裕のある証拠ですよ。流石勇者、大人物ですね。ま、そこがダイくんのダイくんたる所以ですが。

 マァムちゃんはヒュンケルにもう一度話し合って思いとどまらせたいそうで。

 ポップくんは同情はすれど、悪いことをしてるなら戦わなければいけない。と言ってました。

 

 展開的にヒュンケルをしばき倒してしまわないと文字どうり話が進まないので、相談に乗ってあげますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「結論から言うなら、まず叩きのめすことだ。」

 「え…。」

 「動物や魔物はな、自分たちの領分を守るために牙をむく。住処を、餌場を、縄張りを、巣を、つがいを、子を、守るために一所懸命にな。自然では闘争は当たり前のことだ。」

 「デルムリン島じゃそんなことなかった…。みんな仲良しだったんだ。食べ物も分け合っていたし…。住むところで喧嘩をしたこともなかったよ…。」

 「それはブラス殿がよく統率されているからだろう。世界は広いが資源は限られている。

生活できる場所を確保する為なら他者と争いもするさ。」

 「やっぱりヒュンケルとは戦うしかないのかな…。」

 「だとしても同じアバン先生の生徒同士なのよ。そんなの悲しずぎるわ…。」

 「そうだな。だがなダイ、勝った方も必要以上に相手を傷つけはしないものだ。」

 「おっさん??」

 「もし、お前がヒュンケルに対して思うことがあるのなら。言葉と力をぶつけてやればいい。人間は矛を交えれば問答無用と思っている者も多いが、和解のための実力行使というのもあるのだ。」

 

 まずはパワーで物理から。これマモノミュケーションの初歩ね。魔物達はシンプルです。勝ったものが偉いのだから。まさに弱肉強食。弱ければそれまで。ホント野生の世界は厳しいわ。そのあと起き上がって仲間になりたそうな目をされてから交渉するのです。これが基本。もっとも、例外はあるけど。気に入らないやつは動かなくなるまでボッコボコにしないと気が済まないあばれざるとか居たもんなー。ホント凶暴なヤツだった…。

 

「強くなければ生きてゆけない。優しくなけれは生きる価値がないのだ。まず叩きのめせ。話はそれからだ。」

 

 おれの話がどこまで伝わったかは定かではありませんが、ダイくんの迷いが晴れたことはわかります。彼の瞳に精気が戻ってきたようで、爛々と輝いています。

 

「おれ、やってみるよ。まずは全力でヒュンケルにぶつかってみる。おれが教わった先生の剣はこんなにすごいんだぞってことを見せてやるんだ。そして…うまく言えないけどやっぱりヒュンケルは間違っていると思うんだ。だから止めてみせる。おれの信じる先生の…正義の力で。」

 

 これで憂いはなくなった…ような…。あれ?なにか忘れている気が?はて?

 

「先生も『力なき正義は無力だ』とおっしゃってたわ。気は進まないけれど、ぶつかり合うことでヒュンケルもお父さんの恨みを振り払ってくれればいいのだけれど…。」

 

 あ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『魂の貝殻』忘れてたーーーーーーーー!!!!!!!!

 

 マァムちゃんも助けちゃったんだっけー。やっべー、ヒュンケルの誤解が解けないじゃん!!!

 

 

 「スマン急用を思い出した。さらばだっ!!」

 

 ダイくん達の止める声を置き去りに地底魔城へ全力疾走するピンクの影がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地底魔城

 

 「侵入者だー」

 「取り押さえろー」

 「だめだ~歯が立たん」

 「お前歯がないだろ」

 「骨ならある」

 「ピンクが…ピンクのワニがぁ…」

 

 

 「何事かっ!?」

 「ヒュンケル様、侵入者です。もうすぐそこまで…」

 

 扉をブチ破って桃色の影が飛び出してきました。

 「むぅっ!?」

 「ヒュンケルッッ!!」

 

 「ク…クロコダイン!!?生きていたのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おれを捕まえてくれーーーーーー!!!!!!」

 

 「開口一番になに言っとるんだ貴様ァーーーー!!!!!!」(グランドクルスー)

 

 ヒュンケルの全闘気とツッコミがさく裂しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今日二発めぇーーーーーーーー!!!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 「ホイみっ♪」 




 テンドンは基本(キリッ







 続かない


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バドラーって溶岩風呂に入ってたよね おれも浸かってみよ ぐわああああーーーーーッ!!!

 執筆は終わることは無い
 終わらせることができるだけだ






 よって続かない。


 「ホイみっ♪」

 目が覚めたらベッドの上でした。体が重い、だるい、倦怠感が酷い。どうやらダメージが抜けきっていない様子。全身くまなく「ぐわああっ」ってますよ。心情的にはもっと寝ていたかったのですが、周囲の慌ただしさで目が冴えました。見回りの兵士が何やらカラカラ言ってますね。

 

 「勇者を囲い込めー」

 「闘技場へ追い込むんだー」

 「追いかけなきゃ…勇者を追いかけなきゃ…」

 

 なんでもかねてよりの作戦道理に勇者を闘技場へ誘い込むようです…。近場のがいこつ剣士さんに話を聞くとまる二日近く寝ていたようです。

 ってもう手遅れー!!?

 いや、まだだ。あきらめたらそこで世界終了ですよ。大魔王の脅威があるから文字道理にね。一つの選択肢のミスで世界がアボンするわけです。選択ミス=死で、ロードもコンティニューも冒険の書もなしって嫌なデスゲームだ。絶対プレイしたくねぇけど、悲しいけどこれが人生なのよね。

 寝てる場合じゃねえっ。下半身に喝を入れて無理やり跳ね起きます。

 「ホイみっ♪」

 あ、あんがとホイみん。

 

 「どこだー!!?『魂の貝殻』ッ!」

 

 手当り次第に壁をブチ壊し、穴を開け地下ダンジョンを再開発(物理)していきます。確か隠し通路だか、隠し部屋だかに隠されていたハズ。今後の展開でマグマに沈むのなら、ちっとぐらい壊れてもへーきへーき。ミイラおとこやくさったしたいを『突き飛ばし』払い除け、おい散らし壁を破壊しまくります。マッピング能力が欲しいよう。

 

 「大変だーピンクのワニが錯乱して暴れてるぞー!」

 「ええい、体を張ってでも止めてみせる!」

 「やり方さえわかっちゃえば簡単なもんだね。これなら負ける気が…ゴメンやっぱムリ」

 

 ええい、そこのけそこのけ。当たると痛いぞ!こちとら時間がないのです。立ちはだかる不死の兵たちをやむを得ず蹴散らします。うぅ…ゴメンよ。あとでいっぱいお供え物をそえるから許してね。

 

 自慢じゃないが穴掘りは得意なのです。原作でもそうでしたっけね。おれにとって穴掘りスキルは強敵から逃げ隠れする為の必須技能でした。ホイみんにお気に入りのアイシャドウをメチャクチャにされた姉ちゃんが、鬼の形相で追っかけてきたときに必死こいて掘り逃げしたんだよな。地下数十メートルに丸一日潜伏したのを思い出すわ。もっとも姉ちゃんの震脚で地盤を崩された後、近場の地面を根こそぎ闘気流でえぐり取られて捕まったんだけど…。あれ、あんまり役に立ってない?そんな昔を思い出しながら解体工事を続けていると…。

 

 「あぁっ、おゆはんのビーフシチューが!」

 「おお、紙よ!どこへ行かれたのです!!?」

 「私の救急箱を蹴とばしたのは誰だーー!」

 「おのれ他人の家を荒らすばかりか壊して行くなど、勇者でもせぬ所業ぞ!」

 「ホイみっホイみっ♪」

 

 阿鼻叫喚の避難轟々をドップラー効果で置き去りに、ダンジョンブレイクを続けます。

 お、厳重そうな扉が…ここかっ。

 

 「キャー!、ワニさんのえっちーー!!」

 

 マミー(♀)が上半身を腕で隠してうずくまります。

 

 「…は、?」

 

 「マミさんの着替え(包帯のお召し替え)を除くとか…この変態!!」

 「やっぱりピンク(変態)だったか…この変態(ピンク)」

 「ひどいよ…あんまりだよ、こんなのってないよ」

 

 いかん、誤解を解いている暇はない。あ、マミさんから着替え袋を投げつけられた。不可抗力だってば、痛い。ラッキースケベってこんなんじゃないと思うんだけどなあ。

 

 「逃がすなー!!追えー!!」

 「こんなの絶対おかしいよ!」

 「あやまれ、マミさんにあやまれよっ!」

 「あいつ、マミさんのとんでもない物(包帯)を盗んで行きおったぞ!」

 「返せよ。それは…それは…マミさんのものだ!返せって言ってるだろ!マミさんに!」

 

 ちがうの、投げつけられた袋の中から飛び出て、体に絡まってるだけだから。取ってる暇がないだけだからーー。掘削工事のために体力を使いまくってもうヘロヘロです。ふらふらになりつつ階段を駆け上がるとそこは闘技場でした。あ、もう始まってます。

 

 ダイくんとヒュンケル。互いに、必殺技をブチかまし合い、防具が半壊していているようです。あ、傀儡掌がライデインで破られましたね。ポップくんがラナリオンで雨雲を呼んでいるようです。ナイスフォロー。すごいブ厚い雲から豪雨が降り始めているけど大丈夫かな。ポップくんまたレベルアップしたんじゃね?結構いい勝負をしてます。ってこんな解説してる場合じゃ…。あれ、なんか…良い匂いが…。

 

 「おやおや、病み上がりでそのように動かれては、お体にさわりますよ」

 あ、いかん、体から力が抜ける。おや、『くさったしたい』のモルグさんいつの間に隣に…、『あまいいき』ですか?コレ??いや、いかん。ここで寝たらヒュンケルフラグが…。

 

 「これほどの名勝負は勇者アバンと剣鬼バルトス殿の一騎打ち以来ですなあ」

 え、モルグさんバルトスさんとはお知り合いで?

 「私とバルトス様は旧知の仲でしてな。ヒュンケル様の付き人を任された時には運命的なものを感じましたよ。そう、ヒュンケル様にこれを渡すべき時が来たのやもしれません。あの方とは袂を分かつことになるでしょうな…、残念です。」

 

 そう言うとモルグさんは懐から貝殻をとりだしました。ん?貝殻??

 

 「ホイみん殿に託されましてな。」

 

 …………え?いつ?おれが病室へ担ぎ込まれてから程なくホイみんが持ってきた、だって?…へぇ…、そう、なんで早く教えてくれなかったのかなーホイみん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ホイみっ♪」

 《今どんな気持ち?》

 

 クソァ!!おのれ今日という今日はかんべんならん。おかげで地底魔城の淑女諸君(発酵済み)からいらん誤解を受けたじゃないか。しかもまだ持ってたのさその煽り用のカンバンは!!今日という今日はお仕置きじゃい!!

 

 カーン!!!脳内でゴングが響いた。脳内BGMは「タイガー仮面」のテーマです。アドレナリンが分泌され、疲労と眠気で腑抜けた体を無理やり奮い立たせる!!!あ、だめだ。それでもまるで力が入らない。

 

 ホイみんのこうげき!

 「ホイみっ♪」

 触手鞭がぺちんぺちんと乾いた音を立てクロコダインのほほを叩きます。

 

 クロコダインのこうげき!

 「ちっとは反省しなさい!!」

 ふらついたワニが『ハエの止まるビンタ』をふにょふにょと繰り出し、ホイみんのほほをぐにぐにと撫でます。

 

 ダイのこうげき!

 「アバン先生から受け継いだ総てを見せてやる!!

 「3倍ライデインストラーーーーーーーッシュ!!!!!」

 

 ヒュンケルのこうげき!

 「アバンの遺志などこのオレが残さず消し去ってくれる!!

 くらえ、わが半生の憎しみを!!グランドクルスーーーーーーー!!!!」

 

 「どちらも互角ですなぁ…。レベルは天と地ほど違いますが。」

 

 ダイ、ヒュンケル共に最大の必殺技をブチかましい合いました。互いの秘技の威力が中間でくすぶっていますが、ヒュンケルの黒いグランドクルスが若干押しているようです。

 

 「ダイ、やはり俺の方が自力は上だったようだな。この恨みが、憎しみこそが力なのだ!!貴様らアバンの使途を、いや、人間すべてを消し去るまで。おれの憎しみは消えないんだ!!」

 

 「そんなことは無いっ!!おれたちは憎しみの力になんて負けないっ…。そしておれは…一人じゃないっ!!」

 ダイはマァムに目配せをします。

 

 「マァムっ!!」

 

 「ダイーーーーーっ!!」

 マァムが魔弾銃をダイへ向けて放ちました。ダイの体がさらに白熱し、魔力と輝きが増大します。

 

 「ま…まさかっ、自らにライデインをっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「4倍だあぁああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 4倍ライデインストラッシュと暗黒グランドクルスがさく裂し両者ともに吹き飛ぶのと…。

 

 

 

 今のおれの最高の拳だあっ!!『時速1㎞パンチ!!』

 

 「ホイみっ♪」

 ホイみんの『束ね触手ぱんち!!』

 

 ふらっふらの獣王(笑)とホイミスライムの触手が凄絶なクロスカウンターで両者共に地に沈むのはほぼ同時でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ホイみっ♪」

 っは、軽く意識が飛んでた。目覚ましが鳴らなかったか?ここはどうなった??

 闘技場を見ると決着はついていたようです。どうやらうまくいったようですね。見ればわかります。

 ヒュンケルは『魂の貝殻』を片手にマァムに膝枕されて滂沱の涙を流しています。傍らにいるモルグさんが手渡したのでしょう。うわーポップくん複雑な顔してら。あ、ダイくんが武器を納めて手を差し出しました。倒れた敵を許せるようになったのですね。また一つ勇者として大きくなったなあ。

 

 「ウヒャハハハハハッ!!ざまぁねえなあ、ええ!!?ヒュンケルゥ!!!」

 

 

 テンション高めの声が響きます。炎と氷のキ○イダー、もとい『氷炎将軍フレイザード』が底意地の悪そうな狂笑とともに現れました。

 

 「手前ェが勝っていたらブチ殺してやろうかと思ってたが、そろいもそろってくたばりぞこないばかりたぁな。こいつは運がいいぜ!!」

 

 

 「特にっ!!」

 フレイザードが怒気を強めてこちらを睨んできます。

 「あのムカつくクロコダインも諸共に葬れる絶好の機会だぜ。笑いがとまらねえな、ヒャハハハハハッ!!!」

 

 ええー、おれなんか恨まれるようなことしたっけ??まるで覚えがないんですが。

 

 「仲良く墓穴に落なっ!!二度とさまよい出て来んなっ!!!」

 フレイザードの魔力によって、地下のマグマが活性化し始めました。硫黄の臭いが立ち込め、大きな地震が起こります。ひとしきり笑い続けたフレイザードは満足しながら悠々と立ち去りました。

 

 やばい、テンぱっててなにも考えてなかった、そういやコイツがいたんだよな。でもヒュンケルが助けてくれるから大丈夫だよね…ヒュンケル!!??

 

 「すまない、お前たちだけでも助けてやりたかったが…そうもいかんようだ…」

 

 やばい、ダイもヒュンケルも余力なし。ポップは魔法力ゼロ。いかな力持ちのマァムちゃんでもこの人数を担いで脱出は不可能でしょう…。

 マグマが獲物を狙う蛇のように、地の深い所からせりあがってきます。

 …あれ?詰んだ??

 

 

 

 …どうしよう。

 

 

 

 …ちがう、そうじゃない…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、分かっているよ。ホイみん。

 どうしよう、じゃない。どうにかするんだ。

 この場を何とかできるのはおれだけなんだ。

 おれだけが助けられる。この地上の未来をこの子らに託せるんだ。

 

 皆のいる地面を岩盤ごと持ち上げます。上腕からプチプチ音がしますが、知ったこっちゃありません。最低限の体力はホイみんが回復してくれた。あとはやるだけだ。

 

 

 

 「まてっ!何をする気だ!!?クロコダインッ!!!」

 「ま、まさか…」

 

 「うおおおおおおおーーーーーーーーッッ!!!」

 

 

 

 満身の力を振り絞って腕を振るいました。見事、岩盤はみんなを乗せて闘技場の外へ飛んでいったようです。

 …よかった、本当に良かった。

 これで物語は続く…。

 この地上の光明は、まだ消えてはいない…。

 

 「クロコダイン!!しっかりしろっーー!!早く上がってこいーーーー!!!」

 「いやっ、いやよクロコダイン!!これでお別れなんていやよっ!!」

 「おっさあーーーん!!」

 「クロコダインーーーーーーー!!!」

 「ピィ~っピィ~っ!!」

 

 

 そんな目で泣いてくれるくれるのか…ありがとうダイくん、みんな…。でも、もう体に力が入らないんだ…。おれの…おれたちの冒険は…ここまでみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 獣王クロコダインは地底魔城へ消えた。

 絶えず荒れ狂うマグマの海。

 赤褐色の溶岩流が生き物のように脈打つ様は、

 あたかも地獄がよみがえり、彼を迎え入れようとその大口を開いているようだった。

 空振と熱波が獣の咆哮のごとく耳を打つ。

 それは、かの勇猛で名高き獣王クロコダインへの鎮魂歌のように鳴り響いていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐああああーーーーーッ、がぼがぼぼぼぼぼおぼれる”う…」

 「ホイみっ♪」




 あいるびーばっく



 続かない


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戦いは数だよ兄貴 ぐわああああーーーーーッ!!!

一話に収まらなかったので分けて投稿する






構成力がないので続かない。


 いまおれたちは妖魔師団と魔影軍団に囲まれている。

 バダックさんのおかげでバルジの塔でレオナ達と合流で来たんだけど、レオナがフレイザードに捕らわれて氷漬けにされてしまった。フレイザードの体を半分吹き飛ばしたのに、呪法で結界を張られて撤退したんだ。氷炎結界呪法…炎と氷二つの塔を建て、その間にいる敵を弱体化させてしまう恐ろしい呪法だ。

 おれたちはマトリフさんのもとで体制を立て直して、結界を壊すために二手に分かれてバルジ島へ乗り込んだんだけど、そこには残る軍団とその軍団長が罠を張って待ち構えて居たんだ。

 おれはここで負けるわけにはいかないっ…。おれ達にこの世界を託して逝ったクロコダインの為にも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その包囲網はあっさりと瓦解していた。

 

 「な…なんじゃあ!こりゃあああああ!!」

 

 驚愕するザボエラ。妖魔師団、魔影軍団はほぼ全滅しかけていた。多勢に無勢だったのでバダックさんが大量に量産した爆弾で爆☆殺し、ダイがライデインを連発して焼き払ったのである。

 

 「こ…こやつらは今までの戦いを経て急激にレベルアップしておる…。こうなれば更なる援軍を…」

 

 ザボエラの号令のもと、まほうつかい、ドルイド、カメレオンマンら妖魔師団の増援部隊があらわれた。包囲をじりじりと狭めてくる。

 

 「くっキリがない…、ゴメン。バダックさん、ゴメちゃん。おれ一人じゃ守りきれないかもしれない」

 「なぁに、死ぬときは一緒じゃよ。」

 「ピィッ、ピィッ!!」

 

 その時、陶器が割れたような高い音がしたと思うと包囲の一角が轟音と共に消えうせた。否、消えたのではなく突如大穴が魔王軍の足元に出現し、敵の大部分を飲み込んだ。

 

 「こ…これは一体…」

 「おれたちさ!!」

 「ホイみっ♪」

 「この声は…!」

 「獣王クロコダイン!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おっす実は生きてました。クロコダインです。何回目だよこのパターン。つくづく命冥加な因果ですね。ここに居るのはおれだけではないので、皆さんにも出てきてもらいましょう。

 号令のもとキラースコップのオヤカタを筆頭に、ドロヌーバ、ぐんたいアリ、せみもぐら、の大群が魔王軍を取り囲む。

 

 「こ…これは、うわさに聞く獣王の軍勢…『大獣王団』!!」

 

 「まさか…やつめついに私兵を投入してきたというのか!!?」

 

 いや、違いますよ。私兵なんて持った覚えはありません。パパンじゃあるまいし。彼らは地底魔城の整備部隊なのです。地下にある地底魔城には、水はけや壁の補強等のインフラを整備する工事専門の工兵部隊が存在します。

 

 折しもヒュンケルとの決戦時、ポップくんが大量の雨を降らせたり、おれが壁をぶっ壊し続けたせいで、彼らに緊急出動(スクランブル)がかかったそうです。

 おれは彼等の活躍で地下から助け出されたという訳です。そう…彼等と一緒に、ね。

 フレイザードが地底魔城を沈めた、と本当のことを伝えると。みな喜んで力を貸してくれました。特にオヤカタと彼等は、リベンジする気マンマンです。

 

 彼等も今頃助っ人に向かっているんじゃないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バルジ島、氷魔塔跡地

 

 「氷魔塔を砕いてポップとマァムを先行させるために殿を買って出たのだが…ここがおれの死に場所となるかも知れん。」

 ヒュンケルは一人窮地に立たされていた。バドラーの親衛隊を蹴散らして氷魔塔を破壊した瞬間にハドラーが現れ、ヒュンケルの体を貫いたのだ。

 「さらばだ、あの世でアバンに合いに行けいっ!!」

 いまとどめを刺さんとする処へ剣が投擲されハドラーを阻む。

 

 「な、何者だ!!」

 「お…お前たちは、」

 

 「我ら、命《メイ》無き死者の兵!!」

 

 「人に合っては人を切り、鬼と合っては鬼を切る」

 

 「引かず、迷わず、朽ちず、恐れず、此の身一つが一振りの刃」

 

 「我ら!!不死身の不死騎団!!」

 

 「義無く、情無く、仁も無し!!!ただ忠によりてここに有りッッ!!!!」

 

 

 「ご無事ですかな、ヒュンケル様」

 「モルグ…なぜお前たちが…」

 「クロコダイン様達とともに地下より逃げおおせましてな、マグマに埋まった者も獣王殿に掘り起こされて無事でしたわい。我らは生き埋めになった程度では死にませぬからな」

 「皆、あなた様を一騎士として、敬愛しております。」

 「バルトス殿の騎士道精神を受け継ぐ者と思えばこそ。もはや、不死騎団は魔王軍ではありません。」

 

 「おのれ、かつての亡霊どもが!」

 「敗残兵どもがいくら束になろうと…」

 

 「だまれいっ!!」

 「我らには、血よりも熱い魂があるんだああああっ!!!」

 「魔王に尻尾を振るう犬どもめが!!我らの鉄の忠義を知れいッ!!」

 「皆の者!!!骨のあるところを見せてやれえっ!!」

 「今こそ戦え!!皆の衆!!彼奴らの生命を刈ってやれいッッ!!!」

 「ティロ・フィナーレ!!!」(物理)

 

 躯の兵がアークデーモンやガーゴイルを押し返してゆく。

 死を恐れぬ魔の行軍が津波となって魔王軍を追い散らした。

 

 乱戦の中、一人のがいこつ剣士(♀)がマントを翻して魔王の前に立ちはだかる。

 「私はただ、もう一度あなたの隣へ立ちたかった。たとえこの身が呪われようとも」

 

 「お…お前は!!?」

 

 「おのれ、使い古しの出来損ないどもめが!!」

 ハドラーの地獄の爪《ヘルズクロー》が彼女を貫く。

 

 「ぐぅうっ、こ・の瞬間を待っていたんだあああああ!!!」

 彼女はハドラーを自らの足ごと地面に縫い付け固定した。

 

 「その気になれば痛みなんて…完全に消しちゃえるんだ!ヒュンケル様、本懐を果たし下さい!!」

 

 「おのれぃッ!!」

 ハドラーが振り払うかの如く、破壊呪文《イオラ》を叩きつけようとする。

 

 ヒュンケルの脳裏に幼いころの光景がよみがえる。

 考えるより早く彼は動いていた。そして破壊の爆炎が巻き起こる。

 

 「ヒュ…ヒュンケル様…、なぜ!!なぜ!私を庇ったのです!!??」

 

 「た…例え魔物でも、仲間を見殺しにして勝利したのではあの世でアバンに合わせる顔がない…それに父も喜ぶまい」

 「ヒュンケル様…私は部下ですッ!そのような恐れ多いことを…」

 「フハハハッ、笑わせてくれる、まるで茶番劇だな。アバンも、バルトスも、その低次元な『優しさ』とやらにほだされて死んだのだ。戦場でお涙頂戴など片腹痛いわ!!!」

 

 「そうか…俺はアバンと同じことをしたのか…」

 

 「親子共々俺に逆らったことを後悔してくたばれいッ!!」

 

 走馬灯のように浮かぶかつての思いで…。バルトスの名にヒュンケルの脳裏に閃光が走る。それは剣技を見せてくれとせがむ自分にバルトスがただ一度だけ見せてくれた技だった。

 (この技はワシをもってしても終ぞ完成できなんだ…。ヒュンケルや、お前の名前の由来は教えたな。その名にふさわしい剣の使い手となった時この技を伝授しよう。そして、いつの日にか魅せてくれ。かつて不死身の魔界の剣豪があみ出したという究極の技をワシの息子が振るう雄姿をな…。)

 

 あの見事な一撃を…今、この瞬間にッ!!

 ヒュンケルは彼女の剣を取り水平に構えて振りぬいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ギガ……スラアアァァッーーーーーーシュッ!!!!!!」

 

 

 

 

 その剣は見事、ハドラーの爪ごと左腕と左胸部の心臓を切り裂いた。しかし。

 

 「ま…まだオレには右腕と右の心臓が残っておるわ!!」

 

 執念かハドラーはなおも立ち上がり、その凶腕を振るわんとする。

 ヒュンケルは微動だにしない。

 「闘気を使い果たしたか…今度こそくたばれッ!!!」

 「ヒュンケルさまああッッ!!!」

 その時ヒュンケルの手が剣を逆手に持ち替えた。

 「ゲェッ!!!」

 

 ハドラーの腕がヒュンケルを捉える前に、彼の横なぎの一撃がハドラーの右胸部を切り裂き胴切りにした。

 

 「ア…アバンストラッシュ…だと!???先ほどのギガスラッシュでヤツ自身は意識を失っていたハズ…闘志のみで戦ったというのか…見事だ…ヒュンケル…まさに貴様は…真の…戦士……」

 

 ハドラーは倒れ伏し、ヒュンケルの目に光が戻った。

 「う……今の一撃は全くの無意識だった…。…師よあなたはいつも俺を見守ってくれているのですね…」

 「ヒュンケル様ご無事で」

 「ああ、ありがとうサヤカ」

 「っ……ヒュンケル様、わたしの名前を…」

 「覚えているさ。みな俺の仲間だからな」

 「もったいないお言葉です…ヒュンケル様…」

 

 (父よありがとう、貴方は死して大いなる遺産を俺に残してくれた。彼等とダイ達を守るために、この生命果てるまでこの剣を振るうと誓おう)

 

 

 

 かくして氷魔塔の激戦は決着を迎えたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パチイイィィィン……

 

 おれのフィンガースナップの音が響きます。

 それを合図に炎魔塔が崩れ落ちました。おーおーうろたえてるうろたえてる。特にザボエラの爺さんが。

 タネと仕掛けのある手品です、魔法じゃありません。決戦の場がここバルジ島であることは原作知識で知っていましたので地底魔城が崩壊してからの三日間であらかじめ罠を張っておいたのです。塔ができたら地下から地盤を崩してすぐにでも倒せるようにしておくように、と彼等にお願いしただけですがね。しかし、塔だけでなく魔王軍の増援まで罠に落とすとか良い仕事をし過ぎですね。地底魔城のインフラ部隊マジパネェ。

 あ、ダイくん達はとっくに先行させましたよ。

 

 さすがにみんなを鉄火場に放り込むわけにはいきませんので一計を案じます。ミストバーンに塔が崩れた今防衛線の戦略目的が無くなったぞ、と凄むとフッと消えて行きました。多分ハドラーの蘇生に向かったんじゃないかな?

 よっしゃあ一番厄介なのが居なくなった。あとは何とかなるか。ザボエラ相手にもこの戦力差でまだ抗うか?とか脅したらすぐに逃げていきました。うん、分かっていたけどチョロいわ。不利になったら逃げだすから扱いやすいよね。

 さて…あとは残党をどうするか…あ、みんな落とし穴に落として石投げてる。うわードロヌーバが足を引っ張って抜け出られないようにしてる、鬼畜コンボすぎるわ。ミストバーンが居なくなったのでさまよう鎧は動かなくなってるし、魔法使いたちは泥まみれコブだらけで助けを求めています。もうそのへんでいいんじゃないかな?

 

 

 かくして炎魔塔の激戦は決着を迎えたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…激戦?ヒュンケルの時と扱い違いませんか??」

 「ホイみっ♪」




ダイ大ワールドは数の暴力を質の暴力がなぎ倒す世界です
おっさんは生き残れるか?





死ぬだろうから続かない。


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いのちだいじに ぐわああああーーーーーッ!!!

難産だった…









 

 ダイくん達と共にバルジの塔で無事に合流できました。ヒュンケルが残ったそうですが、不死騎団の皆さんが向かったようですし何とかなるでしょ。

 

 「あの時のカリを返すぜクロコダイン!!」

 

 フレイザードにバルジの塔の上部から見下ろされています。憎々しい目でガン付けられていますがはて…?本当に心当たりがないのですが…何かしたかなー?

 

 「こいつを忘れたとは言わせねぇッ!!」

 フレイザードが胸のメダルを指さします。

 あ、思い出した…あの時だ。鬼岩城完成の日。六大団長へ大魔王(バーン)が褒美としてあの『暴魔のメダル』を授与した日だったね。

 

 

 大魔王が火柱を上げ、その中にメダルを置いて「褒美を取らせる」と言った時のこと。

 いやさパワハラも良い所だよ。こんな猛火の中に手を突っ込めとか正気かよ。しかも取ろうとしなきゃ忠誠を疑われるとかいうペナルティ付き、まいっちんぐ。とりあえずポーズだけでも手を伸ばしとこ。

 「あぢぃ…氷でもあればな…」

 ぼそり、とつぶやいたのをホイみんが聞いていたようです。

 「ホイみっ♪」

 ホイみんがフレイザードの体からつららを折って首筋に突っ込みました。

 「あふん、つめたっ」

 不意打ちをくらって前方につんのめってしまい…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐああああーーーーーッ!!!」

 死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!死ぬ!消火器ーーー!!消火器!!BBQにされちゃうーーーーー!!!!

 

 「バ…バカなっ!!」

 「なんとっ!」

 「なんの迷いもなく業火に身を投じるとは…」

 「流石は勇猛で名高い獣王クロコダインよ…」

 

 ちがう!!!みんななんか勘違いしてる!!!ああ、言ってる場合じゃない!速く助けて止めてーーーーーー!!!!

 

 「あのヤロウっ、寄越せコラァ!!!」

 フレイザードがメダルをむしり取ります。

 

 (……ッッッツ、メダルにキズが……)

 暴れたクロコダインの爪が当たったのでしょう、メダルの表面にざっくりとキズが付いてしまっています。

 

「見事なり、フレイザード!!そしてクロコダインよ得ることはかなわぬまでも、お前の忠誠心はしかと見届けた。流石は勇猛で名高き獣王クロコダインよ!」

 

 こうして暴魔のメダルにはキズが付き、フレイザードには苦い思い出になったようです。おれは死なない程度に上手に焼けました。

 「ホイみっ♪」

 生焼け肉になりましたね。速く生肉にして。

 

 

 

 

 

 

「思い出したようだな!!オレの生まれて初めての栄光にキズを付けやがって…絶対に許せねえぇ…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全部ホイみんのせいかああああああああっっ!!

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「形だけの栄光にすがるなど小さい男だ」

 頭を抱えているとヒュンケルが参戦しました。やったぜこれで勝つる。

 「チッ結局全員そろいやがったか…ハドラー様も存外だらしねぇな。ヒャハハァ!こうなったら見せてやるぜ、おれの奥の手をな…」

 あ、次の流れ知ってる。確か『ボンバー○ン』の無敵自爆アタックを仕掛けてくるんだっけ?でももう、ダイくんが空の技を使えるしもう怖くないんじゃ……。

 

 

 

 

 

 

 

 「氷炎・六星結界呪法ォッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 バルジの塔を中心に3つの炎魔塔と氷魔塔が新たに出現しました。

 …え?なにコレ聞いてない。

 「ハァ…ハァ…クックック六芒星で増幅した禁呪法さ。効果範囲も狭えし寿命もべらぼうに削られちまうがそんなの関係ねえ。なにせ氷炎結界呪法の10倍以上は効果があるんだからよ…。ゼィ…ゼィ…この中じゃお前らの力は虫けら同然になっちまうんだぜえっ!!!」

 上空から見ると六芒星を描くように塔が配置されています。その中のおれたちはものすごい圧力がかかっています。

 「ヒュンケルが助っ人に来るのはわかってたからな…万一のために保険をかけておいて良かったぜぇ…。クロコダイン!手前ぇが来るのは誤算だったが、残らず罠にかかってくれたんなら結果オーライだぜ」

 ええー!!?おれのせいでみんなピンチーー!!!?ヒュンケルを助けたから警戒されたってことーー!!?予測できるか、こんな事態!

 何とかしたいがみんな走るのがやっとという有様です。更にみんなを取り囲むように地面を隆起させフィールドを精製するフレイザード。四方を壁で囲まれ抜け出られそうにありません。大きな柱も数本出現しました。本格的に『ボンバー○ン』のフィールドじゃねーか!

 更に、フレイムとブリザードが現れておれ達を追いつめます。

 

 「いかん閉じ込められた上に囲まれたぞ」

 「じょじょじょ冗談じゃねーぞ。呪文も使えなくなってるぜ!」

 

 上から影が降ってきます。その影はフレイムに直撃しました。

 

 「いかん、みんな柱の陰に隠れるんだ!!」

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 

 逃げ遅れたおれは直撃を喰らいましたが、その代わりに視ることができました。間違いありません、飛び込んできたあれはばくだん岩です。

 

 「フレイザード様!なぜこのような仕打ちをっ…」

 「ハッ!!いかにヤツらが雑魚同前に弱体化しようったってお前ぇらにとどめを刺せるとは思っちゃいねえさ。だ・か・ら・ぁ、俺がだめ押しをしてやってんじゃねーか、ギャアハハハハハハッ!!」

 

 フレイザードは上からばくだん岩を投げ込み、それに当たったフレイムやブリザードが誘爆に巻き込まれています。

 「あぶねえっ!」

 「完全に見境をなくしているわ…」

 「ピィ~~~!」

 「ヒャアァーーーーーーーハッハッハァ!!!サイッコーォだぜえ!!何もできねぇゴミをいたぶるのはよォ、今度は人間どもをとっ捕まえて遊んでみるかぁ…『ボンバー○ン』とでも名付けるかねぇ…、ヒャーーーーーハハハハハ!!!。

 

 あのやろおれの頭の中を読んだんじゃあるまいな。

 

 「フレイザード様、なぜですか??なぜこのようなことを…??」

 「勝つための作戦よォ、手前らも氷炎魔団なら命令に従いなァ。オレの栄光の礎になれッ」

 「そ…そんな…」

 

 くそ、あったまキた。部下を使い潰すのがお前のやり方か!?

 

 「おぉらよっ!!」

 「ひえええっっ!」

 「むんっっ!!!」

 飛来するばくだん岩をキャッチします。近場のブリザードが腰を抜かしていますね。あー接触しないでよかった。

 

 「おっさん!!」

 「クロコダイン!!!」

 「お…お前なんで…」

 「死ぬってのは嫌なものだろう…たとえ与えられた命でも、そう思う心は同じさ」

 おれだって死にたかねーよ。こちとらその一心で今まで生きとったんじゃい!!

 「命を大事にしなよ、そして自分以外の命も大切にしてやってほしい。勝手な願いだがな」

 ホント(おれの)命を大事にしてください。人生がウルトラハードすぎて辛いんです。「いのちだいじに」!!「いのちだいじにイイィィ」!!!!!

 「ほら、もう逃げな」

 ばくだん岩を解放してあげました。そんでひっそりと暮らしてください。戦争ダメ、絶対。ラブ&ピースですよ。

 あ、氷炎魔団の面々は逃げだしましたね。ばくだん岩も「ようすをうかがって」いましたがすぐに逃げ出して行きました。

 「チッ、うすのろどもめ。どうせ死ぬなら勇者どもと相打ちになってから死ねってんだ」

 あらカッチーン!生命を粗末にするあいつには相応の報いを受けてもいましょうか。

 

 「グアオオオオオーーーーーーーーン!!!」

 「うるせえな、吠えりゃ何とかなると思ってんのかよ」

 「ああ、もうなった」

 「あン?」

 「おれが誰とここに来たと思っている」

 

 外の柱を指さします。すると六芒星を描いていた柱が次々に倒壊していきます。

 

 

 

 「まったく、ただ塔を崩すだけとは…簡単すぎてつまらんな」

 「やってることはいつもの工事だしな」

 「ぼやくな、オヤカタにどやされるぞ」

 「アイアイ」

 

 氷魔塔が工兵部隊によって根元からなぎ倒されます。

 その一方で

 「グオォーーーーーーン」

 突如ようがんまじんが現れ、その巨大な炎の腕が炎魔塔を押し倒します。

 「一体あいつらは…うちの軍団のようがんまじんじゃねぇな?」

 「彼らはおれの友達さ」

 

 その昔子供のころパパンから「よいかクロコダインよ、獅子は我が子を千尋の谷に突き落とし、そこから這い上がってくる息子をさらに蹴り落とし、息も絶え絶えで這い上がってくる息子に止めを刺すという。かくあれかし」

 と言ってパプニカの火山の火口に叩き落されたことがありました。かくあれかし、じゃないよパパン。ママンも「おゆはんまでには帰ってくるのよ~」とかズレたこと言ってたしあんまりだよ。

 

 んで火口で死にかけているおれを助けてくれたのがあの溶岩魔人の皆さんでした。話をしたらめっちゃ同情されて地上まで親切に送ってくれました。

 道中パパンと鉢合わせするのが怖くて大回りをして帰ったら「おゆはんまでには帰ってくるようにって言ったでしょ、めっ!」とママンに怒られました。あんまりだよママン。

 そんなわけで彼らは命の恩人だったのです。別れるときに違うねぐらを探す、と言っていましたがまさか地底魔城の地下で寝ていたとは…。そんでフレイザードに住処をぶっ壊されて仕返ししに来たという訳です。

 いやホント助かりましたよ。溶岩に飲まれたおれをいち早く助けてくれたのも彼等だし、彼らが溶岩流を体を張って食い止めてくれなかったら不死騎団やオヤブン達も間に合わなかったかもしれない。彼らは二度目の命の恩人ですよ。

 

 「おれ達ばかりにかまっているからだ。足元の小さい者たちを虫けらとあなどるからこうなるのだ」

 

 程なく結界はすべて崩れ去りました…。

 みんなありがとう。おれ今回ほとんど働いてないけど。いやー楽でよかったわ。

 

 「て…て…手前ぇらあああああぁぁ!!」

 「これがおれとお前の人望の差だな」

 「ホイみっ♪」

 ホントそう思います。こっちは味方いっぱい、向こうは一人。最早かわいそうになってくるレベルですがなぜかこいつには仏心が湧いてきません。

 

 「そのスカしたええかっこしいのトコロがぁ!!いいぃちばん気にいらねえんだよおおおおぉぉ!!!!」

 ぶちキレて魔法力を五本の指に収束させるフレイザード。五つの冷気が右手に凝縮されていきます。

 ……ん?冷気?

 

 

 「とっておきだ!!地形ごとまとめて氷地獄にしてやるぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「五指・氷永凍結獄!!!(エターナルフォースブリザード!!)

 

 ファッ!!!?なにそれ五指爆炎弾(フィンガーフレア・ボムズ)でなくて???マヒャド五発とかおかしいですよフレイザードさん!!!

 

 シン…と周囲は静まりかえります。

 「ふっ不発だと!!?バカなっ!!!」

 「ならこっちでどうだ! 五指爆炎弾(フィンガーフレア・ボムズ)!!!」

 またしても不思議なちからでかき消されました。

 

 「散々呪法でひでぇ目に合わせやがって。同じことを仕返しされないとでも思ったのかよっ!」

 いつの間にかポップくんが『マホカトール』を発動させていました。

 「グッ…グムム」

 

 たすかったああああああ。ありがとうポップくん。後でどんぐりあげるね。やっぱり「ぐああああーーーーーッ!!!」ってなるのかと思ったよ。

 チッ

 あれホイみん?舌打ちが聞こえませんでした?

 「ホイみっ♪」

 …そうか、気のせいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「なんじゃああああ!??こりゃああああ???」

 いきなりフレイザードの体が崩れ始めました。

 

 「か…体が維持できねえ、つなぎ合わせている部分から消滅しちまうっ…なぜだっ!!!?」

 

 「そうか…寿命か」

 むぅっ、知っているのかヒュンケル!!…茶化さずに聞いておきましょう。

 「あの手の呪法は術者の生命を削るとマトリフさんに聞いたな」

 「そうか、フレイザードは間をおかずに大規模な呪法を連発したから」

 「生命に限界が来たんだわ」

 「作られた生命ゆえに、危機感が足りなかったようだな」

 

 「ありえねぇ、ありえねぇありえねぇありえねぇありえねぇありえねぇ。こんな終わりかた…みとめねぇぞオオオォッ!!」

 やがてフレイザードはその身を塵と化しこの世から消えていった。

 

 「生命を省みなかった者の末路だ。なにより自分自身の…な」

 「自業自得だな」

 

 猛威を振るったフレイザードのあっけなさすぎる最後だった。地位と名声とは生命よりも優先するべきものだろうか。あいつとおれとでは生まれて来た背景がまるで違う。

 方や生まれながらに滅亡を予見しそれを回避するために生命をかけている者。

 方や生まれた証を立てるために生命を踏みにじり身の証を起てようとした者。

 

 おれはこいつとだけは絶対に分かり合えなかっただろう。ただ哀れだと、そう思った。

 大地には『暴魔のメダル』が妖しく光っていた。

 

 

 

 

 

 「ホイみっ♪」

 「ピ~ピピィピ~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 やーなんか拍子抜けする終わり方だったな。

 「ホイみっ♪」

 あとはお風呂に入ってぐっすり寝たい。

 「ピィ~ピ~!」

 

 

 なにやらスライムズが騒いでますね。おや、空中からミストバーンが見下ろしています。

 今更出てきて何の用だろう?フレイザードは消滅したしあの鎧は使えないはず。

 

 「よくぞ我が魔王軍の総攻撃をはねのけたものだ。もはやお前たちをこのまま見過ごすわけにはゆかぬ…我が魔影軍団最強の鎧が相手をしてやろう…」

 

 あ、結局出てくるのね。でもダイくんがもう空裂斬も魔法剣も使えるから今更感があるなあ。

 

 あれ?空から銀色のメタリックな鎧?いやロボットが出てきましたよ。なんか見たことあるような……はて?

 

 「出でよ、魔界最強にして最狂の兵器……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        キラーマジンガよ」

 

 

 

 

 

 オイィ!!コラ!!!!

 いくらなんでも今回はシャレにならんぞ!!!!

 

 「キラーマシンに似ている…」

 「ダイ、知ってんのか?」

 「うん、デルムリン島にパプニカの悪い賢者が持ち込んだんだ。魔王の作った兵器だよ。攻撃呪文がてんで効かないんだ」

 「げぇっ!!で…でもアバン先生に合う前のお前で何とかなったってことは…大したことはないんじゃないか?」

 

 キラーマシン程度と一緒にすんなよ!!おれの知っているマジンガ様なら、攻撃力は大魔王にも匹敵するハズだぞ。

 

 曰く、戦闘開始から2ターンの間に3人が死亡した。

 曰く、「そんな危険なわけがない」といって挑んだ冒険者が5分後血まみれで教会に戻ってきた。

 曰く、「ヘルクラウドに楽勝した我々が負けるわけがない」と自信満々で挑んだ男が武器と防具を奪われ全裸で戻ってきた。

 曰く、海底宝物庫におけるプレイヤーの全滅率は平均150%。全滅してまた挑んで返り討ちに遭う確率が50%の意味。

 曰く、ドラクエⅥにおける全滅第1位が真ムドー。第2位が海底宝物庫。

 など等数々の伝説と悪夢を築き上げたトラウマメーカーだぞ。

 ポップくん、その手の楽観視を専門用語で『死亡フラグ』というのですよ。今すぐやめなさい。

 くそっ、初見殺しにみんなを巻き込むわけにはいかないっ。

 

 おれはマジンガ様に「におう立ち」で立ちはだかります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「センジュツ・オーダー『二回攻撃』セレクト」

 「ウェポン・セレクト『はやぶさの剣』ミギウデ ニ セット」

 「ウェポン・セレクト『はやぶさの剣』ヒダリウデ ニ セット」

 「スキル・オーダー『はやぶさ切り』ジッコウ シマス」

 

 

 は?

 

 

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 「キラーマジンガのこうげき」

 

 「ぐああああーーーーーッ!!!」×8

 「ク・クロコダイーーーーン!!!」

 

1ターンに8回攻撃だってぇ!!?どこのヒッテンミツルギスタイルだよっ!!攻撃回数だけなら大魔王(バーン)より上じゃないか!!!

 

 「ク…クロコダインが…」

 「一瞬でズタズタに…」

 「バカな…海波斬以上の速度だとっ…」

 

 アカン、一瞬で戦闘不能にされた。もう指一本動かんわ。ギャグ補正仕事しろよ。

 みんなもマジンガ様に蹴散らされています。なにこの逆無双ゲーは。速い、強い、硬いの三拍子。呪文も効かないっと、どないせーちゅうねん。

 ダイくんとヒュンケルの挟み撃ちを片手で捌いてる。アームの動きが精密かつ早すぎるわ。スタプラが二刀流してるようなモンじゃねーか。あ、ポップくんふっ飛ばされた。ライデインが跳ね返されて、ヒュンケルがマァムちゃんを庇って負傷しましたね。

 眼が霞んできた。このままだと間違いなく全滅する…ぞ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 純粋な「力」の暴力。誰しもが傷つき打ちひしがれ、全滅を覚悟したその時。

 髑髏の旗印にした黒色の御旗と共に人影がマジンガの前に降り立った。

 「むぅっ、何奴!??」

 

 

 

 「我ら、命《メイ》無き死者の兵!!」

 

 「人に合っては人を切り、鬼と合っては鬼を切る」

 

 「引かず、迷わず、朽ちず、恐れず、此の身一つが一振りの刃」

 

 「我ら!!不死身の不死騎団!!」

 

 「義無く、情無く、仁も無し!!!ただ忠によりてここに有りッッ!!!!」

 

 

 

 「お待たせいたしました。ヒュンケル様!!」

 「敵と戦うならば弾除けは多い方が良いでしょう」

 「危なかったわね。でももう大丈夫」

 「私達の願いは、全ての敵を消し去ること!」

 「残党の掃討は終えました。いざ大将首を討ち捕りましょう!」

 

 不死をかたどった髑髏の紋章が天高く掲げられました。

 

 「お前たち、なぜここに来た!?」

 

 「「「「「「無論!!ヒュンケル様に仇なす敵を討たんが為!!」」」」」

 

 彼等は一斉にキラーマジンガへと飛び掛かりました。

 体が砕け腕がヘシ折れ、頭が吹き飛ばされても彼らはマジンガに喰らい付きます。

 

 「皆の者、骨のあるところを見せてやれ!」

 「臆するなっ!!例え死しても誇りを持って御楯となるのだあっ!!」

 「魂の一辺をもって壁と成せ!一歩たりとて下がるでない!!!!」

 「命を惜しむな!名を惜しむな!背を見せるを恥と知れ!!」

 

 「我ら無敵の不死騎団!!総ては!!ヒュンケル様のために!!!」

 

 

 『闘魔滅砕陣』

 

 情勢を窺っていたいたミストバーンが技を繰り出す。

 蜘蛛の巣を模った暗黒闘気が地を這うように不死騎団を拘束した。

 

 「ぬおおぉぉ、体が動かぬ」

 「おのれ…我らを縛るつもりか!」

 「前を見よ!!例え自由を奪われようとも魂をもってで楯となれぃ!!」

 

 マジンガが身動きの取れない兵を叩き潰して行く。

 彼等は下を向かず、眼前の機兵を呪い殺さんばかりの眼で睨めつけて散って逝った。

 

 「邪魔をするな…亡者ども」

 ミストバーンが淡々とした口調で舞い降りる。

 

 (地底魔城でお前たちを見殺しにした…ふがいない俺のためにそこまでして…)

 (許しは乞わぬ、この一刀をもってお前たちの忠義に答えるっ!!)

 ヒュンケルの気迫に呼応するように全身から闘気が吹き上がる。

 

 「うおおおおおっっ!!!!」

 「こ…これは闘気!!しかも暗黒闘気じゃない、この眩しい闘気はっ!」

 

 「おれの前で…二度と誰も失わせはしない!!!」

 ヒュンケルの剣閃が闇の糸を断ち切りました。

 

 「ヒュ…ヒュンケルが空の技をっ」

 「バ…バカなッ」

 

 「ヘっ世の中そうそう旨くいかねえってことよ…師匠から一日で教わったとっておきを見せてやる!!重圧呪文(ベタン)!!」

  ポップの放つ重力場がミストバーンを押しつぶす。

 

 「お前の技は腕が上がらなきゃ使えねえんだろ!!!ほれほれバンザーイしてみなっ!!」

 「ぬうう…」

 

 「今が好機だ!!かかれーーーぃ!!」

 「我らが隙を見出せば、あとはヒュンケル様が成してくれるっ!!」

 「されば!!いかに最凶の機兵と言えども死中に活を持ってすれば!!」

 「おうさ皆の衆!ここが死に時と心得よっ!!!」

 

 不死騎団はマジンガに取りつきその巨体を数に物を言わせて押し倒した。

 

 

 「みんなっヒャドが行くわ!!足元を空けて!!」

 マァムが魔弾銃でマジンガの脚部を狙い撃つ。見事に地面ごと凍結させ動きを封じた。

 

 「行くぞヒュンケル!!合わせてっ!!!」

 「応!!!ダイっ!!!」

 

 「3倍!!!ライデインストラーーーーーッシュ!!!」

 「ギガスラーーーーーーーッシュ!!!」

 

 「おおっモルグ殿、あの技は!!」

 「バルトス様、視ておられますか…。貴方の遺志はしかと受け継がれておりますぞ…」

 

 二つの剣撃がマジンガの両腕をもぎ取りました。

 

 

 「センジュツ…ジジ…スキル…センタク…ジジ…ジッコウ…」

 

 

 「まだ抵抗するかあっ!!」

 「ポップ!!一緒にっ!!」

 次弾を装填したマァムが銃を構えます。

 

 「「イオラーーーー!!!」」

 

 ポップとマァムの合体呪文が直撃し今度こそキラーマジンガは爆散しました。

 

 「「「「「いやったあああああーーーーーー!!」」」」」

 

 「おおっ我らの勝利だ!!」

 「勝鬨をあげぇいっ!!!」

 「「「「「「「「「ウオオオオオオオォォォーーーーーーーーーーー!!!」」」」」」」」」

 「ピィ~~~~♪」

 

 「……………………」

 すべてを見届けたミストバーンは誰にも悟られぬまま戦場を後にした。

 

 

 「お…終わった~」

 「信じられない強敵だったわね」

 「万歳というムードではないな」

 「そうだね。でもこの中の誰一人でも欠けていたら勝つことはできなかった。さあ行こう、一番大事なことが残っているんだ。みんなでレオナを迎えに行こう」

 「「「「「おお~~~~~~~っ」」」」」

 「ピィ~~」

 

 「誰か忘れているような…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ずっとここで倒れてるんですけど。おれいらない子…??」

 「ホイみっ♪」

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「バ…バカなっ」

 

 おれたちがバルジの塔の最上階で見たモノは部屋の大部分を覆い尽くす呪氷だった。

 

 「一体なぜこんなことに?」

 「フレイザードを倒したから氷は解けているはずでは…」

 「そうか…六星結界呪法か!!」

 「ポップ?」

 「アバン先生に聞いたことがある。六芒星は邪悪な呪文の威力を倍増させるって…それで!!」

 「姫の氷も威力が増したということか…」

 

 ポップが残りの全魔力を注いでも溶かしきれません。

 おれも焼け付く息(ヒートブレス)で手伝いますが焼け石に水です。

 なんてこった、フレイザードのやつ…死んだあとに一番厄介な問題を残して逝きやがって…。

 

 マァムの魔弾銃を犠牲にした『二重ベギラマ弾』でさえ、部屋の半分の氷を溶かすほどの効果しかありませんでした。

 

 不死騎団や、動けるメンバーは力づくで氷を壊していますが日没まで到底間に合いません。

 

 「万策…尽きた…か!?」

 「そんな…ウソだろ…」

 

 「いやだ、そんなのいやだよ!!せっかくここまで来たのに。何か方法があるはずだよ。そうでしょ!?ポップ、マァム…ヒュンケル、クロコダイン!…助けてよ…誰かレオナを助けてよっ……!!」

 

 ダイくんの悲痛な叫びが響きます。正義の力の無力さを味わったことはないでしょう。

 おれは…おれたちは、どうすればいいんだ…?

 間もなく日が沈みます。時間が……ないっ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「その姫さんを助ければいいんだな」

 

 

 「お…お前は……フレイムA!!!」

 声の主は炎氷魔団のフレイムでした。額にアルファベットがありますね。後ろから続々と彼等の仲間が氷に取りついて行きます。

 呪氷は見る見る溶けだし水となって流れて行きます。

 

 「勘違いするなよ。命を助けてもらったからカリを返してやるだけだ」

 「もう俺たちは魔王軍から抜ける」

 「だが、その前に受けた恩だけは返しておいてやる、これであとくされなしさ」

 

 炎氷魔団の手によって氷はみるみる融けて行きます。

 ブリザード達も砕けた氷を外に出しています。

 

 窓際から塔を這い上がってきたようがんまじん達も氷を解かす手伝いをしてくれます。

 「みんな…みんなありがとう。本当にありがとう」

 「不思議なもんだ、ちょっと前までは争い合ってたってのにさ」

 「誰かさんのおかげかもしれんのう」

 「ん?何か言ったか?バダックさん??」

 

 程なくレオナ姫は救出されました。

 

 「よかったわい…姫様…。」

 「よかった…無事でよかったよ。レオナ」

 バダックさんもダイくんも感激でむせび泣いていますね。

 レオナ姫は無事か。ふー助かった。

 

 「きゃあああああ!魔王軍!!」

 

 「え?フレイム達が居るけど彼らは命の恩人…」

 見渡すと、骸骨の兵士達に土まみれのモグラ達にフレイムとブリザードといった魔物の群れがぐるりと取り囲んでいます。…モンスターハウス??

 

 「今度は配下を率いてやって来たのね獣王クロコダイン!!下がりなさい!」

 へっ?なんでおれを見ますか?そこで。あ、呪文はやめ…

 

 

 

 

 「イ オ ナ ズ ン !!」

 

 「ぐああああーーーーーッ!!!」

 

 「「「「「「「「「「ク、クロコダイーーーーーーン!!!」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後開かれた勝利の宴では、包帯でぐるぐる巻きにされて寝かされたピンクのおっさんの姿があったとさ。

 「ホイみっ♪」




次回はいよいよ「あの男」が登場しますね

 死んだな(確信)







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次回!クロコダイン死す!! ぐわあああーーーーーッ!!!

過去最高にひどい話




投稿ボタンを押すのに初めて「勇気」を使った。


 現在神殿跡地で先勝の宴が設けられています。あ、おれですか?姫様のイオナズンでバルジ塔最上階からひも無しバンジーをさせられまして、現在手当を受けています。全身包帯ぐるぐる巻きにされて寝かされてるので眼も開けられませんが。

 「はい、これでもう大丈夫よ。モルグさん仕込みの手当だから、もう安心してね」

 マミさんマジ天使。見た目はミイラおとこだけど。あ、先ののぞきの件はきちんと謝って許してもらいました。バルトスさん縁の品を探していたと説明したら納得してくれましたよ。

 「ホイみっ♪ホイみっ♪」

 お、嫉妬かホイみん。手当はお前の専売特許だったもんな、お株を奪われたんで必死に自己アピールしてるのかな?あ、こら触手で目蓋の上から眼球をぐりぐりするんじゃない。わかったから、次からもお前に治療してもらうから落ち着いて。

 「ホイみっ♪」

 「仲がよろしいんですのね。では続きはホイみんさんに任せて私は少し離れますわ、安静にしててくださいね」

 もう少しお話したかったのに、残念です。

 レオナ姫の声と拍手が聞こえますね。そっかーヒュンケル許されたか。本人的には割り切れない所もあるだろうけどなに、人生これからさ。切り替えて行こうぜ。

 

 おや?何やら声がきこえてきますね。

 

 「あたし、最低なことを考えてた。ヒュンケル様が許されないのならこれからも私たちと共に居られるんじゃないかって」

 「サヤカさん…」

 

 マミさんとサヤカちゃんの声ですね。元気いっぱいのがいこつ剣士だったので覚えてますよ。

 「最初はカッコいい人だなって、それだけで気になってたの。でもヒュンケル様は騎士として素晴らしい人だった。ヒュンケル様の為なら命懸けで戦うハメになったって構わないってそう思えるようになったの」

 「でも、ヒュンケル様は日の当たる世界を胸を張って歩いて行ける人なんだ。だから、だからっ!」

 サヤカちゃんの言葉には嗚咽が混じり始めていた。

 「そう、あなた本当にヒュンケル様が好きになったのね」

 「あたしって、ほんとバカ」

 

 「だって私、もう死んでるもん。骨の体だもん。こんな身体で抱き締めてなんて言えない。キスしてなんて言えないよ…」

 

 

 

 サヤカちゃんはしばしの間、泣き崩れていたようだ…。

 どないせーちゅうねん。こればっかはおれに出来る事は無いな。前世含めて異性経験ゼロだし。

 「ホイみっ♪」

 こら茶化すでない。

 

 

 

 

 

 「サヤカさん、人を想う形はそれぞれあるわ。けれども私たちは」

 

 マミが不死騎団の旗を掲げ剣を地に突き立る。その気風は紛れもない騎士のそれであった。

 「此の御旗の元に集う騎士なのよ。私はかわいい後輩のあなたの想いを否定はしないわ。けれども我が不死騎団が尊ぶ精神は忠義であって情愛ではないわ!!」

 「選びなさいサヤカ。女としてヒュンケル様を慕うか、それとも騎士としてその忠を全うするか!」

 「生き様とは一事が万事なのよ!横道にかまけていては本懐など遂げられるはずはありません!!」

 「二者択一!!ここであなたの道を選びなさい!!!」

 「ッ!!」

 衝撃を受けたような息遣いが聞こえてくるようです。おれ、とんでもない場所に居合わせちゃったな。

 

 

 

 一時の逡巡の後、サヤカは力強く剣を抜き放った。

 「迷うことなんてないわ!!」

 

 

 「我ら、命《メイ》無き死者の兵!!」

 サヤカが剣を正面に掲げ礼をとる。

 

 「人に合っては人を切り、鬼と合っては鬼を切る」

 マミがその礼に倣って旗を掲げる。

 

 「「引かず、迷わず、朽ちず、恐れず、此の身一つが一振りの刃」」

 

 「「我ら!!不死身の不死騎団!!」」

 

 「「義無く、情無く、仁も無し!!!ただ忠によりてここに有りッッ!!!!」」

 

 「「そう、総てはヒュンケル様の為に!!」」

 

 その声は凛々しかった。おれは今、眼を開けられなくて良かったと思った。もし眼が見えていたら彼女たちの方を向いていたかもしれない。彼女たちの誓いは他者が軽々しく踏み込んではならぬ神聖なものであろうと感じたからだ。

 

 「ホイみっ♪」

 おいホイみん顔の包帯を取るんじゃない。今一番良い所なんだろうからさ。あれ?

 

 

 「…いつから居たんですか?クロコダインさん」

 包帯が外されましたね。あれ見上げるとマミさんとサヤカちゃんが割とすぐそばに居ます。って君らこんな近くで話してたの??

 「え?さっきから足元に転がってましたけど…」

 「あら、クロコダインさん。乙女の会話を盗み聞きなんて、はしたないですわよ」

 「いえ、ですから少し離れるって…」

 「ええ、少し離れましたよ」

 ホントに少しかい!!?

 「いつからいたんですか」

 気づいてなかったの!?サヤカちゃん??

 「あの…」

 「い・つ・か・ら・?」

 「…最初からです、ハイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「記憶を失えーーーーー!!」

 「ぐわああああーーーーーッ」

 サヤカの踏みつけによって傷口が開き、またしばらく寝込む羽目になりましたとさ。

 

 「恥ずかしいーー。ずっと秘密にしてたのにー。マミさん私もうお嫁に行けないーー」

 「あらあら」

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちゅちゅんがちゅん

 

 

 眼が覚めて現状をバダックの爺さんに聞くとことによると。ヒュンケルは一人で斥候に出たようです。魔王軍の足取りを追うと言ってました。

 不死騎団ら地底魔城の残党と氷炎魔団残党とでバルジ島を仮の拠点としてパプニカ王国から一時預かって住み着くことになったそうです。なんでもバルジ塔での活躍が評価されたからとのこと。

 そしてダイくんはベンガーナへ武器を買いに行ったとのこと。なんでも3日前に。

 そっかー丸3日も寝込んでたのかー。

 

 「遅刻だーーーーーー!!!」

 

 次は「あの男」が出張ってくるんだよ!!?下手したらダイくん達全滅しちゃうじゃないか!!確か決戦の地はテラン王国だったよな。

 

 

 いざ行かんテラン王国へ!!

 「準備なし!!!!!!」

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 テラン王国へ急行します。がる太いつも無理させてごめんね。げ、空が黒くなってる。もう始まってるのかな?ギガデインが怖いのでがる太に離れたところで降ろしてもらいました。

 

 遠巻きにバランが見えてきました。もう交戦中ですね、ギリギリセーフだよ。ダイくんがやられて湖へ水没しレオナ姫が後を追って飛び込みました。なんとか間に合ったかな。

 ここでダイくんを連れ去らせるわけにはいかない。援軍は望めず、備えは無し。この身一つで切り抜けるしかない。なんだ、いつものことか。

 「ホイみっ♪」

 そうそう、ホイみんがいたね。心強いわ。よし、いっちょやったるか。いつものアレ頼みます。

 「ホイみっ♪」

 

 「来てくれたのね、クロコダイン」

 「おっさんが来てくれれば百人力だぜ」

 「「あとは任せるぜ(わ)」」

 

 二人ともぐいぐいとバランの前面におれを押し出します。ちょ、気持ちはわかるけど人を弾除けにするのはやめてくださいませんか。

 

 「「だってアイツ呪文効かないし」」

 

 まーそうでしょうけどよ。ええい結局は原作道理か、どうせ負けイベントなんだ。死なない程度にボコってもらおう…本当にいつもの事だなオイ。

 

 「獣王クロコダインか…まさか人間に組するとはな」

 人間の味方ってわけじゃないです。強いて言うならおれとおれの友達の為ですかね。ダイくんに大魔王(バーン)を倒してもらわないと世界がヤバイですからね。未来を知ってても良いことばかりじゃないなー。

 

 「勇猛で名高い獣王クロコダインが相手ならば私も本気を出さざるを得まい」

 

 どうしてみんなおれに対して評価が高いの?全然嬉しくないよぅ。油断してくれても良いんだよ??

 とにかくまともに戦って勝てる相手じゃありません。とにかく身を固めて「ぼうぎょ」します。自慢できることと言ったら体の頑丈さしかありません。原作道理に持久戦を仕掛けるしかありませんね。

 「バランよ、お前に勝つことはできんだろう。だが、死んでも負けてやらん!!」

 生まれてこれから何度理不尽な目にあったとおもっとんじゃい。いつだってこの身を楯にしてきたんだぞチクショー。

 

 「よかろう、竜の騎士(ドラゴンのきし)の秘められた力を見せてやる」

 バランは神魔豪竜剣を地に刺し置き、素手の構えをとった。両手を正面で合わせ腰だめにひねるように構え竜闘気(ドラゴニックオーラ)を収束させてゆく。

 ま、まさか…いきなりドルオーラ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「波○拳!!!」

 

 「ぐっはぁ!!」

 

 気弾の不意打ちを喰らいのけぞったところにアッパーの追い討ちが迫る。

 

 「昇○拳!!!」

 

 「おぼふ!!」

 

 空に打ち上げられ、地面に着地前を狙って追撃が入る。

 

 「竜巻旋○脚!!!」

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!ってそれ違うリュウの人の技ーーーー!!!!」

 

 「歴代の竜の騎士(ドラゴンのきし)ははるか古より戦いに明け暮れていた。この私にしか伝わっておらぬ戦闘法があるのだ」

 

 それ先代の竜の騎士(ドラゴンのきし)に転生者が居たんじゃないですかねえ…。

 

 「はるか神話の代に失伝した呪文も体得しているのだ。魔力はまだこんなものじゃないぞ!!」

 

 「メラガイアー!!!」

 

 「ぎょええええーーーーーッ!!!」

 

 「イオグランデ!!!」

 

 「ぬわーーーーーッ!!!」

 

 「ギラグレイド!!!」

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 ちくしょうやっぱり居ただろ転生者ーーーー!!!何考えて技をラーニングさせやがった!!?いずれダイくんに受け継がれるかも知れんけど今苦労するのはおれなんだぞーー!!!

 くそう、やられてばかりと思うなよ。こっちにはメインヒーラーが居るんだぞ。

 

 「ホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイみっ♪」

 

 でたーホイみんさんの一秒間に10回ホイミだー!!

 この高速じわり回復のおかげでなんとか今まで死なずに済んでたのよ。おかげで一昼夜近くあばれざるにボコられ続けたこととかあったけど。なあに死ななきゃ安い。

 

 ばくれつけん、まじゅう斬り、ライジングタックル、せいけんづき、ジェノサイドカッター、ムーンサルト、ヨガフレイム、まわしげり、スピニングバードキック、なめまわし、しんくうは、ぱふぱふ…。

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 「ホイホイホイホイホイホイホイホイホイホイみっ♪」

 一撃一撃が致命傷に近いが即死技じゃないから即、ホイみんが回復してくれる。つまりは生殺しである。誰か止めて。

 くっそ、何が飛び出すかわからん。バランが技のデパートと化している。そもそも、特技はMPの消費が少ないから持久戦術が崩れてしまう。いかん、流れを変えねば。

 

 「ぬぐぐ、いかな竜の騎士(ドラゴンのきし)の戦闘経験が多かろうと、それはお前のあみ出した技ではなかろう、おれの命に届かんぞ!!!」

 

 「なにっ!!!」

 

 「バラン!!ギガブレイクでこいっ!!!」

 ここはあえてバランを挑発します。仕方ないっしょ、こうしないとキリが付きそうにないし。あ、プライドを傷つけられたのかバランが鬼の形相で呪文を唱えました。

 

 「ギガデイン!!!」

 

 キター、やっぱやめときゃ良かった。おれを5回殺して有り余る闘気じゃねーか??

 

 「やめろっ!!!」

 なんとダイくんが復活し、湖より飛び出しました。

 

 「うおおおおおおっ!!!」

 なんと勢いそのまま跳躍しギガデインを剣先に落とします。あれはドラゴンキラーか?ベンガーナで手に入れたのかな?

 「ああ、俺が借りて(チョバって)おいた」

 「ポップさん…」

 おい、ポップくんいつの間に盗賊のスキルを取ったんだい?メルルちゃんが見咎めてますよ。

 

 「バ…バカなっ!!」

 

 「ギガデイン!!ストラーーーーーーーッシュ!!!!」

 

 うへえやっちゃった…訳はないな。傷ついてるけどまだ余裕ありそうです。

 

 「クロコダイン!!来てくれたんだね」

 ダイくんが満面の笑顔でおれを迎えてくれます。あ、抱きつかないでキズが痛むから。うん、もう瀕死近いから。戦力としてアテにしないでね。

 

 「いいだろう…獣王クロコダイン!!!我が息子ディーノへ至る最大の障害が貴様であると悟った。我が最大の技で葬ってくれるわ!!!」

 

 おれに抱き着くダイくんを見てバランがヤル気を出してますね。違いますから、別にダイくんを取ろうとしてるわけじゃありませんからね。

 

 「お前なんか父さんじゃないやい!!クロコダインの方がずっと強くて頼りになるんだ!!べー」

 ダイくんあっかんべーなんて止めなさい、はしたない。子供じゃないんだから…子供だった。そういう人と比べるようなことを言っちゃいけません。

 

 「クロコダイン…やはり貴様を葬らねばディーノは手に入らぬようだな…」

 

 ああっ、また変に勘違いされてる。完全に殺る(ヤル)気になってるよ、このバカ親め。

 すさまじい闘気の奔流に腰を落としたバランが唸りを上げます。

 

 「ぬううううううううっ!!!!!」

 大地がひび割れ、岩が舞い上がり、竜巻が発生します。天は暗雲に包まれ稲光を発しその光の牙を主の号令のもといつでも振り下ろさんとしているかのようです。

 「冥竜王ヴェルザーをも切り裂いた我が一撃をとくと見よっ!!!」

 バランが大上段に剣を構えました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「テンショーーーーーン!!上がってきたぜーーーーーーーッ!!!」

 

 「     」

 「     」

 「     」

 「     」

 「     」

 

 「テwンwシwョwンwテwンwシwョwンw」

 「テ・テ・テ・テwンwシwョwンw上がってきたぜーーーッwwwww!」

 

 

 (゚∀三゚三∀゚) 「テンション上がってきたw!!」

 (゚∀三゚三∀゚) 「テンション上がってきたw!!」

 (゚∀三゚三∀゚) 「テンション上がってきたw!!」

 (゚∀三゚三∀゚) 「テンション上がってきたw!!」

 

 「テwンwシwョwンww上がってきたぜーーーッwwwww!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …テンションシステムかーーーーーーい!!!!

 

 

 ちらりとダイくんを見る。両手で顔を覆って膝から崩れ落ちてますね。父親を名乗るカイゼル髭のダンディなおじさんが満面の笑みでみなぎってたらこうなるわ。もうやめて、ダイくんのメンタルはもうボロボロよ。

 ああ、みなさんも顔が引きつってますね。

 「おばあさま…」

 「言うなメルル、アタシたちは何も見ちゃいない。いいね」

 あ、ナバラのばあちゃんそっぽ向いてら。気持ちはわかるよ。

 

 「テwンwシwョwンwがwみwなwぎwっwてwきwたwww 」

 

 どうフォローすればいいんだ…これ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                   た  w  ww 」

               き

            て

          っ

        が

       上

      ン     

     ョ         

    シ             

   ン                

 「テ                   

 

 

 

 セリフで遊ぶなオッサン。もうそこまでにしとこうよ。

 

 

 「このwスーパーwハwイwテwンwションw状態wはw竜闘気wをw爆w発w的wにw高めwっwるwことがwできるのwだっうぇww」

 

 これがこの世で見る最後の光景なのだろうか。

 

 「ギwwガwwwデwwイwwンwwwwwwww」

 

 天より落ちる豪雷が桁違いの魔力と闘気を孕んで剣に宿る。

 だがそこにシリアスはなかった。

 

 「イヤッwッwホォwォwォwオオォwオウwww」

 

 バランが跳躍した。これはひどい。なにがひどいって全てがひどい。地獄はここにあった。

 

 「 ギw ガw ブw レw イw ク www 」

 

 もはや避けようとする気力も湧いてこない。

 薄れゆく意識の中やるせない無気力感とむなしさだけがおれの胸を占めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」




おお、クロコダインよ死んでしまうとはなさけない。



ホントに死んだよ。
続かない。


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町営まんがまつりだよ ぐわああああーーーーーッ!!!

夏の町営まんがまつり

はーじまーるよー


 いやー死んだ死んだ。あの世っぽい雲の上を昇りながらハイキング中ですよ。そらバランのギガブレイク喰らって無事でいろってのが無茶な話ですよ。

 生き延びるために頑張ったんだけどなー。今までの人生、パパンに教育(物理)されたり、兄ちゃんにサンドバックにされたり姉ちゃんに新技の実験台にされたり、ホイみんのせいでボロボロになったり…うん、あんまり良い生き方してなかったね。ただみんなに未来があるかだけが気がかりだわ。大魔王(バーン)様マジ怖い。

 自分のことながらずいぶん楽天的になれるもんだ。おや?歩く先に何か居ますよ…。

 

 ホイミスライムはようすを見ている。

 

 ホイみん??お前まで死んじまったの?

 

 ホイミスライムはこちらへ近づいてくる…。

 

 バラン戦に居たんだからまきぞえを喰らってもおかしくないか…。

 

 ホイミスライムはこちらへ迫ってくる…。

 

 よし、こうなったら来世も一緒に居ようぜ、よろしくな…ってなんか近づきすぎてませんか…??

 

 ホイミスライムは間近に大きくなって迫ってきている…。

 

 なんか遠近法が狂ってませんかねー??

 

 ホイミスライムは大きくなりながらにじり寄って来ている…。

 

 ちがう!!こいつは元からでかいんだ!!おれが小さいのかも知れんが。とにかくこのままだとホイみんに飲まれる!!?

 

 ホイミスライムは巨大化しながら大口を開けている。

 

 でけえええええ!!!なにあれ?怪獣映画にも出てこれるサイズじゃないですかー。ドラクエに「ビッグ」の呪文ってありましたっけ?言ってる場合じゃない逃げないとホイみんに飲まれる!そんな予感がするっ!!

 

 ホイミスライムは大きく息を吸い込み始めた。

 

 あああああああああああ嫌な予感的中ぅ!!やだあああああ。ニヨニヨ顔が迫ってくるーー!!吸われるーー!!吸い込まれちゃうぅ―――!!!

 

 「ホイみっ♪」

 

 ばふっ

 

 クロコダインはホイミスライムに飲み込まれました。

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハッ 夢か…。

 目の前にホイみんのドアップが映ります。ぐーすか寝てやがりますね。こいつが顔の上で居眠りこいてたからあんな夢を視たのか。死んだと思ったけど生きてました。ホント頑丈だわこの体。

 みんなに話を聞くと、おれが死んでダイくんマジ切れ。穏やかな心を持ちながら怒りによって目覚めた紋章パワーが限界突破。あわててバランが精神波で記憶を消そうとするも気合で跳ね返されて後は肉弾戦に。最終的にギガブレイクと10倍ライデインストラッシュで双方武器破損の相打ちになったそうです。

 バランは竜魔人にならなかったようです。流石のバランも息子相手に魔獣の姿になれなかったか。

 それから息を吹き返したおれを見てバランが面食らってたらしいがはて…?SHT(スーパーハイテンション)ギガブレイク喰らって生きてるはずはないんだけどなー。ってかおれを蘇生したのバランじゃなかったの??

 

 ホイみん、おれになんかした?

 「ホイみっ♪」

 

 あ、起きた。

 

 

 

 寝ていたんですがどうも不安で起きました。は虫類だからか種族の特性なのか知らないけど回復速いのよ、この体。

 

 あれ?ホイみん寝てる?さっき起きたばかりなのに。みんな倒れるように眠ってる…。あれ?この展開って原作で言ったら…。

 

 

 

 ザボエラの魔香気かっ!

 やっべえ忘れてた。っても対策なんてしてないし取りようがないぞ。ヒュンケル不在だし…どうする??

 

 「どうやらお前には効き目が薄かったようだな、流石は勇猛で名高い獣王クロコダインよ」

 

 ハドラーとザボエラが現れましたね、いきなり奇襲か!!

 おれも眠くて動けない…しょうがない、この辺りは彼の縄張りだったハズ。イチかバチかやるしかない。

 

 「グオオオオーーーーーーン!!!」

 

 「バカめ!!いくら声を張り上げたところで誰も起きはせんわい」

 ザボエラは勝ち誇りますがこれは誰かを起こすための遠吠えではありません。もっとも厄介なヤツを呼び寄せる為のものです。

 

 遠くから地響きが近づいてきます。間もなく木々を蹴散らし巨大な影が飛びだしてきました。

 今のうちに逃げよ…。ほふく前進でコソコソと逃げ出します。あ、間に合わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ホギャアアアアアーーーーオ!!!」

 

 「いやあひさしぶ…ぐわああああーーーーーッ!!」

 問答無用で影にぶっ飛ばされました。

 

 「あ、あのクロコダインを一撃で…」

 「なんだ?このエテ公hおぶっはああーー!!?」

 返す刀でハドラーもぶん殴られましたね。

 

 彼はあばれざるのキングくんです。自尊心と占有意識が強く縄張りに入ったものを容赦なく殴ります。つまり…。

 

 「よ…よせやめろ!!やめてくれぃ…うぎゃあああああ!!!」

 

 こうなる訳で。ザボエラを振り回し、地面に叩きつけています。うわあ…ぼろ雑巾みたい。前回あった時より大きくなったねー。二回りくらい?おれが子どもに見えるんですけど。続いてハドラーをマウントに取りましたね。おお、ボッコボコにしてらあ、痛いぞあれは。眠ってるところをたたき起こされて相当に不機嫌になってる様子。近づかんでおこう。

 

 「おのれ、調子に乗りおって!!」

 

 ハドラーのイオラ!!

 

 カパッ!!

 

 キングは大口を開けて口から気弾を発射し呪文を相殺した。マウントの近距離からリアクションしたのかよ、どんな超反応だよ。

 

 「あ、あんな距離から切り返しおった…俺の呪文を…」

 

 ああそうそう、キングくんは闘気の技を使いこなせます。おかげで身体能力がハンパねえのなんのって。初めて会ったときに喧嘩を売られて一方的に殴られたことがありまして。闘気でガードを固めたら使い方を覚えちゃったみたいで…今ではご覧の有様です。

 

 「ウッホオオォーーアッ!!!ウホッウホッ!!ホギャアアアアアーーーーオ!!!」

 

 身体能力の超パワーアップに口からの気弾そんであの巨体。まるっきし大ざるの化け物ですね。

 

 「ず…図に乗りおって…このケツの赤いサルめが!!」

 

 プッチーーン!!!

 

 あ、ヤバイ。一番言ってはならんことを…。

 

 「ホオオオオォォーーー!!ギャーーーーーーオオォオ!!!」

 

 みなぎる闘気が闇夜と体を照らし、バーナーのように全身から吹き上がります。全身の体毛は光り輝いて逆立ち、あふれ出るパワーが周囲を揺るがします。

 

 「こ…これは…光の闘気!!?」

 

 そう、彼の闘気は光、しかも色は金色なんですね。ハイ、見た目は完全にスーパーサ○ヤ猿ですね。

 

 あーあ絶対に怒らせてはならんヤツを…。ああなったら戦闘力が格段にハネ上がるんです。凶暴性も倍率ドン!こうなったら相手が動かなくなるまで攻撃をやめません。

 あ、ハドラーがワンパンでふっ飛びましたね。それを追っかけるついでにザボエラが蹴り飛ばされました。

 

 遠くの方で地響きが断続的に聞こえてきます。あれ、地響きでなくて殴ってる音なんだろな…おっそろし。身の安全のために伏せておきましょう。

 

 しばらくして遠方から爆発と衝撃が連続して起こります。うわ高台に登って見境なく口から闘気弾を辺りに乱射してますね。ハドラーを見失ったか?

 当のハドラーは…ズタボロになりながら近くにぶっ飛ばされてきましたね。

 

 「バ…バカなっ。こうまで俺を圧倒するものがこの世に居たとは…」

 

 上には上がいるんですよ。あれはとびっきりの規格外だけど。

 

 キングくんが上空に跳躍しましたね。探すの面倒だから見下ろして捜索するつもりでしょうか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「出てこい!ゴミどもーー!!!出てこなければオレはこの宇宙を破壊しつくすだけだぁーーー!!!」

 

 っつーか喋れたのかよ!!?相変わらず学習能力高えなーオイ。

 

 「こうなったらこの星ごと宇宙のチリにしてやる!!!貴様らは助かっても地球はコナゴナだー!!!」

 「考えやがったな!!ちくしょう!!」

 

 口から特大の闘気弾をチャージしています。まさかあれを眼下に打つつもりか!!?

 

 「ぬうう舐めおって、たかが魔物にしてやられる俺ではないわ!!!」

 

 ハドラーが呪文のの詠唱を始めました。こうなったらハドラーが何とかしてくれることを願うしかない…何千、何万分の一の確率にすぎぬが…な。

 

 「ホオオォーーーーーギャアアアアアーーーーーーッ!!!!!」

 

 「極 大 閃 熱 呪 文(ベギラゴン)!!!!」

 

 極大閃熱呪文(ベギラゴン)とギャリック砲(仮)が激突し、拮抗し…てない。完ッ全に押されている。がんばれバドラー地球の運命はお前にかかってるんだぞー!!

 

 「何をしておるザボエラ!!早く加勢しろー!!」

 「ハッ…おのれぃエテ公め!!魔族の恐ろしさを教えてやるわ!!極大閃熱呪文(ベギラゴン)!!!」

 

 おおさすが腐っても妖魔司教。両手使えるなら使えるのか。

 

 

 そんで現状は持ち直してないです。むしろじりじり押されてるよ。

 もうだめだぁ…おしまいだあ…。悟空ーーー!!早く来てくれーーー!!!(メダパニ)

 

 

 「「「極 大 閃 熱 呪 文(ベギラゴン)!!!」」」

 

 援軍か!!?ダイくんに…ポップも!!?そしてマトリフさん!!?

 

 「なんてタイミングで来ちまったんだ…とにかくコイツを地球に落とさせるわけにはいかねえ!」

 「目が覚めたらえらいことになっちまってるなぁ」

 「クロコダインが…おれを呼ぶ声がしたんだ!」

 

 いやあ混乱してダイくんでなくてカカ何とかさんを呼んでしまいましたが、ここは黙っとこハズカシ。

 

 「ザコのパワーをいくら集めたところでオレを超えることなどできぬぅーー!!」

 

 あ、これでもだめなのね。あんにゃろさらにパワーを上げやがった!!全身から噴き出るオーラにバチバチとスパークが走っています。スーパーサ○ヤ人2!!?この短期間でさらに成長したってのか!!?

 ベギラゴン×5をさらに押し返しています。

 

 「こ…ここまでか?」

 「いやじゃああーー。死にたくないぃーー!」

 「ぐ、ぐふっ。呪文のパワーに体が追い付かねえ」

 「ちくしょう…ちくしょうっ!!」

 「がんばれっみんなー!!」

 

 くそう、こうなったらやぶれかぶれだ!やってやるぜぃ。

 

 「おりゃあああっ!!」

 

 「岩石なげ」でキングくんの頭に岩を直撃させました。ダメージはないでしょうが注意を引き付けます。

 あ、キングくんと目と目が合いましたね。うわー眼がすげぇ血走ってる。よし、逃げよう。

 護身のための最良の行動を取るために後ろを向きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『お前の母ちゃんでーべーそー!!』

 

 ホイみんがおれの後ろで高らかにカンバンを掲げてニヨニヨしてます。

 

 「ホイみんんんんんん!!!!?」

 

 だからカンバンは仕舞えって言ったでしょうがあああああ!!!

 なに??なんで余計なヘイトをこっちに向けるわけ!!?石投げるくらいで十分でしょおおお!!

 

 「ホオォギャアアアアアーーーーーーッ!!!!!」

 

 あ、こっちをロックオンしましたね。死んだわおれら。

 

 「「「「「今だあああああーーーー!!!!」」」」」

 

 「おっ…おされ……」

 

 キングくんの注意がそれた隙に全員の全パワーを注ぎ込んだ極大閃熱呪文(ベギラゴン)×5が昇竜のごとく空を駆け上がります。ダイくんの竜闘気(ドラゴニックオーラ)でキングくんの闘気をもまとめて叩き返したそれは彼を巻き込みはるか上空で爆発しました。

 

 しばし静寂があたりを包み。

 

 「「「「「いやったああああーーーーー!!!!!」」」」」

 

 誰もかれもが手を握り肩を抱き合って喜びあいました。彼等は確かに地球を救ったのです。今までのわだかまりを忘れて勇者と魔王が硬い握手を結んでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …なにこれ??シュールな光景だなあ。

 

 いや、助かったのならいいんだけどさ、何か嫌な予感が消えないんだよな…あ、やっぱり。予感的中。どうやらみんなも異変を感じ取ったようです。空を見上げて表情が強張ってますね。

 

 「ダイよ我らの決着は後にしよう」

 

 「うん、今はとにかく…」

 

 「「「「「逃げろーーーーー!!!!」」」」」

 

 はるか上空で爆発的に膨らみ続ける光の闘気から蜘蛛の子を散らすように全員が逃げ惑いました。ちゃんと姫様達も担いで行きますよ。

 

 「気が高まる…あふれる…」

 

 あ、空を照らす光の闘気が緑色になってきましたね。

 

 

 

 その晩、テラン王国のとある森では一晩中緑色の爆発と閃光が途絶えませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ホギャアアアアアーーーーオ!!!」




出てこいとびきり全開パゥワー!


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知恵(原作知識)があれば体格差なんて関係ないない…… ぐわああああーーーーーッ!!!

夏の町営まんがまつり第二弾

多分ヒーロー編

はじまるよ


 テラン王国の森が謎の空爆に曝されクレーターだらけになってから数日後。

 あれからおれ達はパプニカに移動してサミットの護衛をしてます。ダイくん達は自前の剣を求めてランカークスへ旅立ちました。

 おれはというとチゥの首根っこをつかんで捕獲し郊外の草原で指導をしてました。キミ剣の捜索ではあんまり役に立たなかったでしょ。今のうちに将来の「獣王」としていろいろ教えてあげるからさ。そうスネるな。彼、将来性ならポップに匹敵すると思うんだよね。ブラスさんの後釜にだってなれる人材だよ。

 「御免!」

 おっと来客のようだ。ちょっと待っててね。

 おれに引けを取らない巨漢が声をかけてきました。

 

 「ぼらさんお久しぶりです。これが例のブツですよ」

 「確かに。ではこれが約束のものだ」

 「ホイみっ♪」

 「こら、ホイみん。ソレで遊ぶんじゃありません。あ、あとコレ新鮮な山の幸ね。おいしい椎茸がとれたんだ、みんなで分けてね」

 「…相変わらずだなおぬし」

 「ざりおん君にもお礼を言ってたって伝えてね。それから大切なモノなのに無理言っちゃってごめんねって」

 「構わぬ。我らとしてもアレには困り果てていたのだ。海界の脅威を取り除いてくれるのならば融通するわい。では武運を祈るぞ獣王」

 

 ようし取引成立ッと。ぼらさんは両手いっぱいの山の幸を持って帰って行きました。

 

 「ねえクロコダインさん?誰と何をしてたんですか?」

 「ただの仕込みだよ。それより課したノルマは達成したのかい?」

 チゥはひたすらつま先から体を回転させています。

 ぐるぐるぐーるぐる

 「ねえ、これって何の特訓なんですかぁ??」

 「今は騙されたと思ってやってみそ、次はでんぐり返り300回な」

 「うへえ」

 

 

 今回やってくる鬼岩城はスケールが違うからなー。今回こそ備えを万全にしとくのさ。

 

 

 

 ―――――ちょっと遠くの海岸――――――

 

 「よろしかったのですか。海将殿?アレは我らの秘宝のハズ…」

 「我らは海に住まう者よ。奴等が地上で争う分にはまだ良いが海を荒らすものは捨て置けぬ。それに…」

 「それに?」

 「我らが海王シーザリオン様の友の頼みとあってはな、無下にできまい」

 「左様な経緯で御座いましたか。あい分かり申した。こちらも何時でも動けるように手配いたします。海将ボラホーン様」

 「うむ、奴から貰ったコレを使うこともあるかも知れぬからな。任せる」

 「御意に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、決戦当日

 

 霧と共に鬼岩城が浮上しました。

 遠目に見てもでかいですね。剣と魔法の世界に居て良いスケールじゃないと思うんだよなあ。怪獣映画を見慣れていたので気後れはないのですがあれを何とかしなきゃならないと思うと気が重いです。

 

 この「切り札」でケリが付けばいいんだけど。

 ミストバーンの指揮の下、上陸部隊が上がってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キラーマジンガが100体あらわれた!

 アイアンタートルが100体あらわれた!

 ガーディアンが100体あらわれた!

 

 

 

 オイまて!過剰戦力も程があるだろがい!本気だし過ぎだろミストバーン!!明らかなオーバーキルじゃねーーか!!!

 ポップくんハナ水垂らして引きつってますね。

 

 「ふっふっふ ここはボクに任せてください」

 チゥが自信満々に前に出ます。

 「クロコダインさんより授かった必殺技を見せてやる」

 や、教えはしたけどあの数は想定外だわ。ムリせず逃げなよチゥ。

 

 「行くぞーー!!あちゅーーーーー!!!」

 聞いちゃいねえ。

 

 「一人で突っ込みやがった!!なんてことをさせるんだおっさん!!」

 「自殺しに行くようなものだわ!!ひどいわクロコダイン!!」

 「ピッピ~~ィ!!ピィ!!!」

 え~~!??おれのせい!!?

 

 チゥは窮鼠包包拳で突撃し、勢いそのままにアイアンタートルを捕まえる。

 あれはおれの授けた対多数戦闘用の必殺技……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「 真 空ぅ 地 獄 車ぁ ! ! !」

 

 

 チビのチゥは懐に飛び込んで相手を捕まえて高速回転を続ければ相手を車輪の外としてダメージを与えられ、自らは車輪の軸となって相手が楯となりショックを受けてくれるのである。

 

 「あ…あんな技があったなんて」

 チゥはアイアンタートルを巻き込んで転がり他の魔物を跳ね飛ばして行く。

 この技の恐ろしさは相手の自重と防御力がそのまま攻撃力となることである。

 

 グワッシャアア!!!

 「次いっ!!!」

 アイアンタートル同士の甲羅を叩き潰してスピードと回転を殺さずに別のターゲットへ掴みかかる。こうしてスペアタイヤを取り換えが如く続けて敵を殲滅するのだ。そしてこの技の恐ろしい所は眼を回さない限り技の使用限界がないということである。

 まさしく一度エンジンが掛かれば敵を全滅させるまでひき潰し続ける地獄行きの暴走車と化す。

 

 この技まだチビだったころ姉ちゃんから教えてもらったんだよ。

 「打撃技など花拳繍腿!関節技こそ王者の技よ!! 」ってたからなー。

 本来なら対ブロック用に覚えてたんだけどね。防御力が攻撃力に代わって乱戦で効果を発揮するからここで使うのが一番と思って教えてあげたんだけれども…。いやさ、1日でマスターするとか成長速度おかしいわ。原作キャラ補正強すぎワロタ。

 

 程なくして300体の魔影軍団は鉄屑の山と化しました。

 特訓のために散々振り回して三半規管を鍛えたかいがあったね。

 

 「やりましたよ…クロコダインさん」

 グッとサムズアップを決めるチゥ。

 だれがここまでしろと言ったん?ハッキリ言って300人斬りは想定してなかったよ。

 

 「すげえぜ。流石はおっさんだぜ!」

 「こうなることを見越してたのね。すごいわクロコダイン」

 「ピュイ~イ」

 

 キミたち手のひら返しが速すぎませんかねぇ…。いやでもお疲れ様、チゥ。はっきり言って予想外だったよ。

 

 「…俺の出番は無いようだな」

 あ、ヒュンケル帰ってきたの??じゃあミストバーンの相手をお願いね。

 

 ミストバーンと入れ違いになるように鬼岩城へ向かいます。正直現時点でアイツは手におえないし、ここはヒュンケルに任せよう。

 がる太を呼び出して運んでもらいます。いつもありがとうね。

 口の部分から潜入に成功し玉座の間にお邪魔します。

 

 イスには影が鎮座していました。

 「単騎でこの鬼岩城に乗り込んで来るとは流石は勇猛で名高い獣王クロコダインよ」

 ボソボソとくぐもった声が響きます。

 「これで勝ったつもりか?」

 ええ、勝たせて頂きますとも。ここまで侵入した時点でこちらの勝ちです。

 「切り札」を切らせて頂きましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クロコダインは「かわきのつぼ」を取り出した。

 「なんだその古びたツボは?」

 問答するヒマは与えずに事を成しましょう。ひっくり返してじょばーっとな。

 「ホイみっ♪」

 「かわきのつぼ」から海水があふれ出した。

 じょばばばばば………

 「獣王ともあろうものがなんのマネだ?」

 「時期にわかるさ」

 「ホイみっ♪」

 ドバドバドバドバ………

 「ホイみっ♪」

 ホイみんは「かわきのつぼ」をクロコダインからひったくった。

 あ、こら返しなさい。大事な預かりものなんだよ。昔っから水遊びが大好きなんだからもう…。

 「かわきのつぼ」は浅瀬を島にするほど大量の海水を蓄えることができるのだ。それをひっくり返せば…。

 ドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバドバ

 こうなる訳で。みるみる海水は鬼岩城内部を水浸しにしていった。内部は海水で充満し砲台や魔影軍団を押し流していく。

 「おのれっ、これが狙いか!」

 大砲は水浸しで流され軒並み全滅。ハラいっぱいになるまで水を取り込めば動きも鈍るでしょう。上陸は阻止できそうだし、大砲も無力化した。いやー思惑道理にうまくいった。あとはダイくんが帰ってくるのを待つばかりですよ。

 「あ、ホイみんそろそろ止めて良いからね」

 「ホイみっ♪」

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 「ホイみん?もうやめていいからね?」

 「ホイみっ♪」

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 「ぐわああああーーーーーッ!!!溺れるーーー!流されるーーーー!!こらーーホイみん!!そろそろマジでやめてーーーーー!!!」

 「ホイみっ♪」

 ドガジャバドバドボドバドガジャバドバドボドバドガジャバドバドボドバドガジャバドバドボドバドガジャバドバドボドバドガジャバドバドボドバドガジャバドバドボドバドガジャバドバドボドバドガジャバドバドボドバドガドバドガジャバドバドボドバドガドバドガジャバドバドボドバドガドバドガジャバドバドボドバドガドバドガジャバドバドボドバドガドバドガジャバドバドボドバドガドバドガジャバドバドボドバドガドバドガジャバドバドボドバドガドバドガジャバドバドボドバドガドバドガジャバドバドボドバドガドバジャババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ

 しまったーーーホイみんの調子に乗りやすい性格を計算に入れてなかったーー。

 鬼岩城のいたる所に亀裂が走り、窓という窓から海水が噴き出た。

 「くううっ!緊急排水だ!!」

 シャドーの操作によって鬼岩城下腹部の正面扉が開かれた。そこから勢いよく海水が排泄される。

 

 じょばーーーーーーーーーーーーーっ

 

 

 

 「むぅっ?」

 異変を感じ取ったミストバーンが見たものは全身から水芸のように海水を吹き出しパプニカの町へ立ちションをする鬼岩城の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「殺せえええええええっ!!!!何としてもあのピンクワニをぶっ殺せええええええええええええっ!!!!!」

 ミストバーンの順当なマジギレである。

 

 「ははっ、ついにお許しが出たぞ!!お前たちっ、いよいよ我ら魔影軍団の真価を発揮する時が来たのだ!!!」

 シャドーが玉座のスイッチをONにする。ぽちっとな。

 

 「え?なにしたの?」

 

「勇猛で名高い獣王クロコダインと矛を交えるのだ。全軍を上げているに決まっておるわ!出でよ!!実体を見せて忍び寄る五つの影!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――パプニカ港船上―――――

 

 突如海面が山のようにせり上がり巨大な物体が現れた。

 

 「船長!!海底より浮上する物体多数!!4…5つ確認しました」

 「あ…あれは、あれも鬼岩城なのかっ」

 

 五つの巨大な頭部が海面から鎌首をもたげました。

 

 「鬼岩城が…」

 「五つ!!?」

 

 鬼岩城Bがあらわれた。

 鬼岩城Cがあらわれた。

 鬼岩城Dがあらわれた。

 鬼岩城Eがあらわれた。

 鬼岩城Fがあらわれた。

 

 やっぱりオーバーキルだろうがーーーッ!!なに考えとんじゃあミストバーーーン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ワニなのに溺れるところだった……」

 「ホイみっ♪」




次回は第三弾かな?

こうご期待

続いたらね…


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人類の英知ってすげーーー ぐわああああーーーーーッ!!!

町営まんがまつり第三弾

ロボット編

はじまるよ


 鬼岩城五体おかわりとか想定外にも程があるでしょ。くそっ「切り札」は使ってしまったし…どうする??

 

 「クックックこの鬼岩城が量産された今、勇者などあっという間に叩いてくれるわ!!」

 

 ば…万事休すか!!?

 

 「こちら鬼岩城CよりシャドーC、応答願う」

 「こちらシャドーAどうした?」

 「浸水で動けません」

 「ハァ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――パプニカ湾海底―――――

 

 「ボラホーン様!破壊工作はすべて完了しました」

 「ウム、ご苦労」

 「しかし大したものですな、この「おうごんのつるはし」というモノは。ヤツの装甲を簡単に貫きましたわい」

 「獣王殿からの贈り物よ。我が主があの城どもの蛮行を捨て置けぬとおっしゃってな」

 「そうですな。あの城が移動するだけで海底に住まう者やサンゴ礁が壊滅的な被害を受けておりますからな」

 「さて…手を貸すのはここまでだぞ獣王。後は自らの力で切り開いてみせい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「鬼岩城B行動不能!!」

 「鬼岩城E同じく!!」

 「ええい、たかだが浸水で行動不能になるとは。暗黒闘気が足らんわ!!」

 「仕方ねーですよ。スパロボで言ったら海適応Cですもん」

 「言ってる場合か!!暗黒闘気を高めろ!!」

 「ううっ…また嫌なことを考えて鬱になる作業がはじまるお…」

 「もっとネガティブなことを考えろよ。靴の裏にガムが付いたとか、好きだったあの子のカバンの中に男の写真が入ってたとかさぁ!」

 

 

 えっとだいぶ混乱してるみたいだけれども、これってもしかしなくてもぼらさん達の仕業かなー?

 以前ざりおんくんが工事道具を貸してくれないかって頼まれた時には何に使うのかわからなかったけど…そっか助けてくれたんだね。ありがとう、ざりおんくん。

 ちなみに工事道具はオヤカタらに土下座して貸してもらいました。

 

 「そのピンク色の顔色を見るにお前が謀ったのだな!クロコダイン!!」

 ピンク色ってなにさピンク色の何が悪いってんだよオラあ!全国のピンク色した顔の人にあやまれ!

 

 「いや、ここは流石は獣王クロコダインと誉めておこう。我らをここまで追い詰めたのだからな…」

  だいぶ計算違いはあったけど今回はおおむね上手く行きました。いつもこうだといいなあ。

 

 「奥の手を使わせてもらおう」

 「へっ!!?」

 

 

 「お前らアアッ!!!『暗黒回想録(ブラック・バイブル)』を解放しろオオォッ!!」

 「ハイフタリグミツクッテネー…ウッアタマガ……」

 「ショウシンリストデオレダケモレテタ……シニタイ…」

 「ファミレスニヒトリデハイッテナニガワルイッテンダヨォ……」

 「ヒトリデヒマシテタノニミンナデカラオケニイッテタッテサ……ノロワレロ……」

 「コンゲツノキュウリョウセイカツヒシハラッタラオシマイ……ウツダシノウ…」

 「ドウキノヤツガケッコンスルッテサ……カノジョナンテイネーヨ……」

 

 ドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロドロ 

 

 

 暗黒闘気って鬱から生まれるエネルギーだっけ?そんなんで出力が上がるのかよ?それでいいのか暗黒闘気ィ!!?

 あ、傍目に視てもヤバイのがにじみ出てる。オッコト○シ様みたい。

 

 「クックック…我ら魔影軍団の最終兵器を冥途の土産に見せてくれるわっ」

 

 最終兵器?まさかっ黒の結晶(くろのコア)でも仕込んでいるというのか!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「陸 星 合 体(ろくせいがったい)ーーーー!!!!」

 

 シャドーAの掛け声とともに6つの影が飛翔する。

 どこからともなく勇壮なBGMが流れて来た。

 鬼岩城Aを先頭に鬼岩城BCDEFの5体が空を飛び上空で六芒星のフォーメーションを形作る。魔王軍のエムブレムが浮かび上がり天に黒いリングを形成した。

 鬼岩城Aを中心に五体が廻り、それぞれが変形を始める。

 鬼岩城Bが全身を伸ばし気を付けのポーズを取る。腰部のスカート部分が膝まで下がり脚部を縦に分離させ拳を形作る。続いて胸部が縦にスライドしその全高を伸ばし上腕部を形作る。頭部を格納して肩部を形作り、巨大な右腕が完成した。そして両腕を全方に伸ばして連結部を形成する。

 鬼岩城Cも同様に変形をして左腕部を完成させる。

 鬼岩城D、Eは腰部から逆関節の方に真っ二つに折り曲り、両足を頭部の後ろに重ねた。胸部がせり下がり前足を形作る。こうして右足と左足が完成した。

 鬼岩城Aは四肢を鬼岩城BCDEと繋げて行く。

 

 「コネクティーーン!!ベーーーース!!!」

 鬼岩城Aの両足が鬼岩城D、Eを踏みつけるように結合する。鬼岩城D、Eの後頭部と両脚部の間に足を差し込んでドッキングする。この時には分解図を見せて、第二視点とドッキングの瞬間は内部構造の視点から連結の瞬間を見せている。カット割りにこだわった匠の技である。鬼岩城D、Eの頭部が上にスライドし目が光ってドッキングが完了した。

 鬼岩城Aの右腕と鬼岩城Bの両腕ががっちりと手を結び、互いを寄せ合って腕同士を絡めた。そして繋いだ腕を変形した肩部分が寄せるようにスライドしドッキングが完了する。鬼岩城Cと左腕も同じくである。

 鬼岩城Aの頭部に追加の兜とマスクが装着され合体が完了した。

 総てプッピガァン!!やグワッキィン!!とサン○イズでおなじみのSEを響かせながらの合体である。バンクが長い。

 

 「「GXフォーム アーーーーップ!!」」

 シャドーAとFの声が響く。

 完成した大鬼岩城に鬼岩城Fが分離して飛びついて行く。大両腕に鬼岩城Fの腕が変形した籠手が装着され、大両足に鬼岩城Fの下半身が二つに分離した通称『ゲタ』が装着されシークレットシューズのように身長が底上げされた。

 更に鬼岩城Fの上半身が左右両サイドにスライドし追加装甲として大鬼岩城の胸部に装着され六芒星の紋章が光り輝く。

 大鬼岩城の兜に更に飾りが追加され肥大化し禍々しい凶相に変化し眼が光った。実にバリッバリの造形である。

 

 

 

 「「「「「「完成!!陸星合体!!!(ろくせいがったい)

         グレート!! キ・ガーン GィィXゥ!!!」」」」」」

 握りしめた拳を頭上でクロスし腰だめに振り下ろしてポーズを取る。

 

 それは平和世界への叛逆

 それは日陰者たちの望み絶つ希望

 ここに誰もが待ち望んだ最強の魔王城が誕生した!!!

 

 「グレート キ・ガーンGX!!?」

 「そうだっ!全高5700メートル体重5500tだぞう!!」

 「グレートはどっから来たんだ??」

 「五体から追加合体で六体になったのならグレートが付くに決まってるだろうがっ!!!」

 「GXは??」

 「カッコイイだろう!!!」

 「お…おぅ」

 「これで出力は600倍だ!!」

 「100倍をどっから持ってきた!?」

 「勇気で補ったに決まっているだろう!!!」

 「魔王軍が勇気と抜かすか!!?」

 ダメだ、いろいろとツッコミが追い付かん…。ロマンに生きてるなあコイツら。

 「ホイみっ♪」

 ぽちっとな

 「あ、コラ!!」

 ホイみん?今何か触りました??

 

 カッ!!

 キ・ガーンの眼からビームが発射され水平線の彼方へ消えて行った。

 数秒後に巨大なキノコ雲と衝撃波が大陸を揺さぶった。

 

 ひええ、こいつらガチで国ごと灰にする気だよ。ダイくんーー!剣はまだですかーーーー!!

 

 「むっ!奴らめ!!なにか始めるつもりだな」

 「え…??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――パプニカ大礼拝堂―――――

 

 「世界各国の皆さん!!アレを使いましょう」

 「ウム、こうなっては致し方あるまい!!」

 「しかしアレの成功率はシュミレーションでは10%を切っておる…いきなり実戦では…」

 「確率などはただの目安だ!!あとは勇気で補えばいい!!!」

 

 レオナ姫、クルテマッカⅦ世、シシナ王、バウスン将軍、フォルケン王が懐から拳大のオーブを取り出しました。

 

 

 

 オーブが光始め、世界各地で異変が起こりました。

 

 リンガイア王国で防壁用の城塞が分離し飛翔しました。

 ロモス王国では闘技場(コロッセオ)が地響きを立てて空を飛び立ちます。

 テラン王国の湖から謎の発光体が飛び上がりUFOのような軌跡を描いて飛んで行きます。

 ベンガーナ王国ではデパートがお客を避難させた上で出撃します。スタッフの見事な避難誘導は熟練の技を感じさせます。

 そして現地のパプニカ王国からは地底魔城が冷え固まった溶岩をブチ破りながら浮上しました。

 

 「「「「「輝 聖 合 体(きせいがったい)ーーーー!!!」」」」」

 

 五人がオーブを振りかざして叫ぶと世界各地から飛来した建造物が変形を始めました。

 謎の発光体を中心にもうわけのわからない変形機構で城壁、闘技場(コロッセオ)、デパート、地底魔城が合体し巨大な城の巨人が誕生します。

 

 

 

 「「「「「光臨!!! 輝聖合体(きせいがったい)!!

         キング・サミット DXF(デラックスファイヤー) !!!」」」」」

 

 「これが、私たちが秘密裏に建造していた対魔王城決戦突撃兵器!キング・サミットよ!!!」

 サミットってそういうことーーー!!?会議のことじゃなかったんかい!!?

 

 「本来なら敵本拠地へ殴り込みをかける為の物だったのだけれど向こうから出向いてくれたのなら好都合よ」

 「さよう、この場で魔王軍との決着をつけてくれるわ!!!」

 「ちなみにDXF(デラックスファイヤー)はキ・ガーンGXと聞いて即興で名前を付け足したのじゃ」

 茶目っ気効きすぎてるだろおお!!世界首脳部ううゥゥゥ!!!

 

 キング・サミットの足?がキ・ガーンを蹴り飛ばします。

 「くらえ!!ロモス闘技場(コロッセオ)キィィィィッカアァァッッ!!!」

 シシナ王が血管が切れんばかりに絶叫します。

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!おれが中に居るんですけどーーーーッ!!!」

 「大した攻撃だ、しかし我らは影!物理的な衝撃ではバラバラにせぬ限り倒せんぞ!!」

 「おれは生身ですから結構効いてるんですけど…」

 「ホイみっ♪」

 

 「くっ、グレート キ・ガーンは本来6つの軍団長が乗り込んで初めて真価を発揮する魔王城!!やはり我々だけでは力不足であったか…」

 「そんな裏設定あったの!!?おれ知らんかったよ?」

 

 「ええいっ!!日々ハブにされてきた俺達のネガティブはまだこんなものじゃねーぞ!!」

 「燃やせ!!後ろ向きにぃ!!!」

 ネガティブな気合の入れ方ですね。

 

 「今度はこっちの番だ!!!」

 増幅された暗黒闘気の衝撃波がキング・サミットを襲う

 「「「「「「ダークネス・ウェーブ!!」」」」」」

 六人のシャドーがそろってポージングしながらスイッチを押す。ノリノリだねえキミら。

 

 「きゃああああーーーー」

 「うわああああーーーー」

 「くっ、キング・サミット はアバンの使途五人が乗り込んで初めて真価を発揮する王国城!!やはり我々だけでは力不足であったか…」

 だから聞いてねーってどこ情報よソレ??

 「アバンの書に書いてあったわ!!」

 へ!?

 「先生は決戦兵器として巨大城の設計図を残しておいてくれたのよ!!」

 

 なにやらかしとんじゃああああ!!アバンさーーーーん!!!

 ってか姫様ナチュラルに脳内を読まないでくれませんかーーー!!!

 

 「不足分を補うために中央部にテランから呼び寄せた竜水晶さんを召喚したけれども力不足だったようね」

 「いやあ、申し訳ない」

 あの発光体の正体はアンタか!!?

 ってか生きてたんかいワレぇ!!?

 

 「こうなったらあの技を使うぞい!!」

 「よし!!」

 「わかったわ!!」

 「みんなの生命を預けますぞ!!ベンガーナ王!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「「「王 国 の 財 宝(デ・パート・オブ・バビロン)!!!」」」」」

 ぐわあああああっしょん!!!

 キング・サミットの右腕であるデパートの渾身のパンチがさく裂した。キ・ガーン腹部を直撃し、内蔵されていた爆薬に火が付き大爆発を引き起こす。デパートはこなごなになった。

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 「ぬおおおおおーーーーーッ!!!」

 さらにデパートの商品が跳弾となってキ・ガーンに襲い掛かる。それはさながら武器の流星群!!!キ・ガーンは内部から炸裂弾を喰らったように穴だらけになった。

 パプニカの町も穴だらけになった。

 コストと効果がまるで見合わない金持ちの最終兵器である!!!

 

 「見たかあっ!!!これがデパートの力じゃあああいっ!!!」

 デパートは叩きつけるもんじゃねーよ!!!

 

 「こんな、バカなことでええええええっ!!!」

 腹部に大穴が開き全身ズタぼろにされたキ・ガーンは崩壊を始めた。

 

 「人類の英知と勇気の勝利じゃあああっ!!!」

 アバン先生…勇気ってなんでしょうか??

 

 「もう勝手にして…」

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぬうん!!!」

 その直後キング・サミットが爆発四散しました。

 

 「ああっ!」

 「あいつは…」

 「バカなッ!」

 

 キング・サミットをワンパンで沈めたその男は…

 マントと真新しい兜を装備したハドラーでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「早めに掘り起こしてくれないかなー」

 「ホイみっ♪」




グレート キ・ガーンGX

全高5700メートル
体重5500t
六人の軍団長が操縦者となることで最大のパワーを発揮する
百獣魔団長のパワー
不死騎団長の剣技
氷炎魔団長の凍結、火炎属性
妖魔師団長の魔法力
超竜軍団長の鋼鉄以上の防御力
魔影軍団長の暗黒力
これらを兼ね備えた無敵の魔王城となるハズであった
魔軍司令?基地でおるすばんですよ

更に大魔宮(バーンパレス)と合体してアルティメット グレート キ・ガーンGXS(ジーエックススペシャル)となる
背部に翼として装着され飛行能力が加わり機動力が増す
大魔王(バーン)様の魔力と直結するので無限行動が可能
宇宙空間での戦闘も可能だ

魔影軍団長担当の鬼岩城Fを除いた5体合体のキ・ガーンXという形態もある
あえて仲間外れにすることで暗黒闘気を究極まで高めさせる裏フォームである

必殺技
魔王邪眼光(目からビーム)
暗黒超衝撃(全方向衝撃波)
黒の結晶(くろのコア)ぽんぽんなげ(ヤバイ)
他多数……



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努力 友情 勝利 ぐわああああーーーーーッ!!!

特訓開始ぃ!!


 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 「うわああああーーーーーっ!!!」

 

 みなさん殴られながらこんにちは。クロコダインです。

 現在パプニカの町をバドラーという局地的台風が猛威を振るっております。

 「ホイみっ♪」

 え?現実逃避すんなって?仕方ねーでしょ、加勢に来てくれたダイくんが手も足も出ずにボッコボコにされてるんだから。ついでにおれも。

 サミットが一撃でブチ壊されてから後、ミストバーンは撤退しハドラーがおれたちに挑戦状を叩きつけて来ました。

 「俺の全身全霊をかけて貴様らアバンの使徒を打ち倒してくれる!!」

 いやー強いのなんのって。ポップくんの呪文は軒並み効果ナシ。ヒュンケル、ダイくん、マァムちゃんのトライアングルアタックも跳ね返すんですもの。コブシひとつで。

 超魔生物ってここまで強かったっけ?何があったしバドラー。

 

 「あのあばれざるに打ちのめされてから俺自身を見つめなおしたのだ」

 「は?」

 心の声が漏れてたっけ?まあいいや、自分語りし出したし聞いておこう。

 「ホイみっ♪」

 「強さとはキリがない。常に上には上が居るものだ。自らの限界ギリギリの力を振り絞った時どこまで高みへ昇れるのか、俺自身死ぬ前に知りたくなったのだ」

 あーそういえば大魔王(バーン)様に最後通告されてたんだっけ?命が掛かればケツに火も付くわな。そんで改造を受けた、と。

 

 「そこで鍛えたのだ」

 「えっ?」

 「誰よりも強く成りたい、そんな若き日の情熱がよみがえって来てな。魔軍司令としての仕事をほっぽり出し、今一度自らを極限まで鍛え上げたのだ!!」

 

 ハドラーはマントを脱ぎ払いその姿をあらわした。

 「これが今の俺の姿だ!!!」

 

 それは肉体というにはあまりに大きすぎた

 大きく ブ厚く 重く そして力強かった

 それは 正に 鍛え抜かれた筋肉だった 

 

 「マッチョーーーーーーー!!!」

 ムッキムキの逆三角形魔王ハドラーがあらわれた。

 体の大きさも2倍くらいになってないか?何を食ったし?

 超魔生物に改造されたんじゃねーの?

 「愚かな…、健全な力は健全な肉体にしか宿らぬもの!自ら鍛え上げた力以外に頼るなどと、恥を知れいっ!!!」

 至極真っ当なこと言ってるーーーー!!!あとさも当然の事のように心を読まないでっ。

 

 「スキあり!!くらえっ!!! 五 指 爆 炎 弾(フィンガーフレア・ボムズ)

      もいっちょ永 力 氷 結 獄!!!(エターナルフォースブリザード!!)

 

 ポップくんが話の途中で不意打ちを仕掛けましたね。両手でW禁術とかいつの間に覚えたん?説明の途中で全力ブッパとか効果的だけどエゲツねえ…。

 

 「かあっ!!!」

 あ、気合だけでかき消された。

 

 「もうダメかも知れんね」

 勇気の使徒ーーーー!あきらめるの早過ぎぃーーーー!!!

 またコレ系の理不尽規格外枠が増殖したのかよ。難易度設定バグってませんかねえ!

 

 「絶対にあきらめるもんか!!お前だけはおれがやっつけてやる!!!」

 一方のダイくんはまったく怯んでませんね。

 

 「ギガデイーーーーン!!!」

 

 いつの間に覚えたやら、もう驚きませんよ。オリハルコンのダイの剣とギガデインの組み合わせは大魔王(バーン)にも傷を負わせたハズ、いくら鍛えたって耐久力が超魔生物以上ってことは無いだろうし…これなら行けるかな?

 

 「アバンの技と竜の騎士(ドラゴンのきし)の力か。神に礼を言わねばなるまい。この素晴らしき強敵(トモ)と同じ時代に生を受けたことをな。さあ、来るがいいっ!!!」

 すげえ殊勝なことを言ってるーー!!ちょっと人が変わりすぎてませんか?

 

 

 

 

 

 「ギガストラーーーーーーッシュ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぬうん!!!!」

 「ピキッ」

 

 受け止めたーーーー!!!

 いやおかしいでしょ。なんで素手のガードでオリハルコンにヒビ入れられるわけーーー!!?

 「言った筈だ!!自ら鍛え上げた力以外に頼るなと!!総ては気合で何とかなる!!!」

 武器の使用を全否定で根性論ですか。

 「ダイよ、お前はその武器を十全に使いこなしていないようだな」

 「そ…そんなっ」

 あ、ちゃんと理由はあるのね。ダイくんが痛い所を突かれて動揺してますよ。

 「だが躊躇はせん!!いかなる状況であろうとも全力を持って叩き潰すのみ!!!」

 

 「そうはさせん!!!」

 「ぬうっ!貴様は…」

 「まさかあいつが…あいつがおれたちを助けてくれるなんて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「竜騎将バラン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バランがダイくんを庇ってハドラーを別の場所へ誘い出してくれました。

 「いいか!今のお前たちでは大魔王(バーン)はおろかハドラーすら倒せん!悔しければ力をつけるがいい!!ここより先は真の強者のみが踏み入れることができる領域なのだ!!!」

 

 バランはそう言い残し二人の超魔人は空へ去って行きました。

 それから半日ほど南方の空から光が走り、爆音と衝撃破が絶え間なく響いて来ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日ダイくんがおれに会いに来ました。

 「クロコダイン…おれを強くしてくれ!!!」

 なんでおれ??

 「みんなに聞いたんだ。チウがクロコダインに特訓してもらってすごく強くなったって」

 いや確かにあの成長速度は驚いたけど技を一個教えただけよ。

 「もう一度おれ自身の力を鍛え直したいんだ。お願いだよっクロコダイン!!!」

 こうまで頼られては答えるしかありません。

 「よし、特訓だ!!」

 「「「「おおーーーー!!!」」」」

 あれ?みんなも?? 

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで前世の知識をフル活用して修行をプレゼンしましたよ。

 修行内容ですがドラゴン○ールの超重力室での特訓を参考にしました。

 肉体に負荷を効率よく与える方法がありましたね。そうフレイザードの氷炎・六星結界呪法です。あれを使えれば広範囲に重力室に似た訓練場が作れるでしょう。という訳で訓練場はバルジ島に決定しました。

 現地の皆さんにも協力を仰ぎます。元氷炎魔団と地底魔城の皆さんには結界の塔を作成してもらいます。

 肝心の呪法ですが思わぬ人が名乗りを上げました。

 「私が協力しましょう」

 …竜水晶さんです。

 この人?かなりの長生きで物知りなんです。古代の呪法や秘宝に精通してるしぶっちゃけアバンの書を読み取ってサミット作ったのもこの人が居たからこそだったとか。なんだこの知識チートは。原作でバランがブッ壊さなきゃ知恵袋として役に立ってたかもしれないな。非生物なので呪法のデメリットなしに使えるとかこの人も違う方向で規格外だよ。

 うれしい誤算だったのは世界各国の支援を取り付けることに成功したことです。

 サミットが一撃で粉砕されたことでこの世界では量より質ということを再認識したそうで、世界最高戦力であるアバンの使徒のパワーアップにリソースをつぎ込むことになったのだとか。おかげで薬、包帯などの衣料品や魔法の聖水などのアイテムの補給から、果ては衣食住の支給に食事の支度からお風呂の用意まで勇者たちの修行環境の全面的なバックアップをしてくれるそうです。

 

 そして救護班は彼女らが担当してくれるそうです。

 「みんな私たちが居るから安心して怪我してね」

 「我ら不死騎団特別看護部隊(全員♀)がお世話をいたします」

 「みなさんは我々と違って生きてるんですから死んじゃダメですよー」

 「死なない程度に怪我してくださいね」

 「ホイみっ♪」

 

 マミさんマジ天使。

 

 

 さて、特訓フィールドも完成しいざブートキャンプ開始という処で…。

 「特訓をしているんだってな。だがコーチが必要だろう」

 すさまじい闘気と殺気を感じて全員が振り返ります。

 

 「特に作りたての武器で不覚をとる奴にはヤキをたっぷりと入れてやらんとなあ…」

 鬼や…鬼が居る。完ッ全にガチギレしてるロン・ベルクさんが武装していました。

 折角用意してもらった重油のプールや回転のこぎり付の高速ベルトコンベアーや全自動落石機が無駄になりそうですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「この完成版 星 皇 剣 でな」

 

 おいまて未完の超兵器じゃなかったんかい!!

 

 「出来立ての最高傑作に数分でヒビを入れられてアタマにきたんでな。三分で完成させた」

 インスタントォッ!!!

 明らかにダイくんをロックオンしてますね。

 ダイくん大丈夫…あ、ヒザが震えてる。

 

 「さて飯と寝るとき以外は総て俺との戦闘訓練だ…実戦形式ではない、殺し合い形式だ」

 

 「 」

 「 」

 「 」

 「 」

 「 」

 「ピエ~~ィ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「死にたくなければ生き延びろおおおおッッ!!!!

 

         星 皇 十 字 斬 ! ! ! ! 」

 

 

 

 ただのムリゲーじゃねーか!!!

 本気出しスギィ!!!

 

 

 

 

 

     「  乱 れ 撃 ち ィ ! ! ! ! 」

 

 

 

 あれ?連発利きましたっけ?その技!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「「「ぐわああああーーーーーッ!!!」」」」」

 「ホイみっ♪」




強敵登場からの特訓


王道ですね


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突撃!大魔宮!! ぐわああああーーーーーッ!!!

いろいろとこねくり回したら遅くなりました

どうしてこうなった??


 「30倍ギガデインストラーーーッシュ!!!」

 「ドラグスレイブ!メギドラオン!エグゾーダス!アウローラ!ばよえ~ん!」

 「新・武神流奥義!二重の極み!飛龍昇天破!獅子咆哮弾!猛虎落地勢!」

 「獅子奮迅斬(シーザー・スラッシュ)!爆烈疾風剣!達急動!一気酔剣!」

 

 修行が完成しました。

 習得した特技のカオスなこと。もう闇鍋状態ですね。

 

 「ダイヤモンドダスト!絶氷刃!れいとうビーム!セルシウスキャリバー!」

 ノヴァくんは途中から参加しました。特訓の噂を聞きつけてやって来たようです。

 ボクをさし置いて勇者なんて生意気だとか言ってましたが結界に入るなり弱体化してへろへろになりオヤカタに蹴り飛ばされてました。

 それでも生来の負けん気の強さからか熱心に特訓に打ち込む様になりました。プライドが高そうでしたしメキメキ強くなる皆に刺激されたのでしょう。

 

 そうそうキラースコップのオヤカタさんですが、特訓のコーチとして名乗り出てくれました。彼曰く「以前のご主人の下で後人の育成を手掛けたことがある」そうなのでロンさんのマネージャーか健康管理でも手伝ってくれるのかなと思ってたら甘い考えでした。呪法の中に入ってぴんぴんしてるどころかロンさんに引けを取らない実力者でポップくんのケツをスコップでぶっ叩きながら走らせてました。アンタ何者よ?

 特技に対しても造詣が深く「さみだれ斬り」や「まじん斬り」などを使いこなして教育してました。

 「ディノ様の育成はこんなものではなかったぞ」

 誰やねんディノ様って?

 

 特訓開始から2日ほどたって一人の魔族が訪ねてきました。鎧の魔槍を携えて毛ほども体幹を乱すことなく歩く様は相当な実力を感じさせます。彼は困惑するダイくんの元へ跪き口上を述べました。

 「陸戦騎ラーハルト推参致しました。バラン様の命によりディーノ様の旗下に加わる為馳せ参じました」

 

 彼が話すにあの後バランは全力でもってバドラーを撃退するも仕留めるには至らず、自らも深手を負い現在療養中であるとのこと。っつーか竜魔人化してまで倒せなかったのかよハドラー。次合う時は更にパワーアップしてるんだろうなー。その後ラーハルトに動けぬ自分に変わってダイくんを助けてやって欲しいと願い出られたそうです。

 そっかーあのバランが命令でなく頼みごとかー。やっぱりダイくんのことが気がかりだったのね。

 一同はあのバランが辛勝したことに驚き、逆にダイくんは闘志を燃やしていました。

 彼も特訓に加わり

 「無双三段!震雷!覇翔斬り(クラッシュドーン)!七星点鈷!」

 今ではこんなに元気に槍を振り回しています。

 

 後半はロン・ベルクさんが改造したジープで勇者PTを追いかけていましたね。おもっくそ笑顔だったよあの人。

 最後は結界呪法に100倍重圧呪文(ベタン)を追加して修行完成でした。

 今更ながら原作キャラの成長率を忘れててね。ダイくんは3日足らずでアバン流をほぼマスターしたんだっけね。んで1週間経ってこうなったと、もうラスボス行けるんじゃないかな?

 

 え?おれ?結界内に入っては重圧でツブされる→介護室へ運ばれる→マミさんとホイみんに治療を受ける→結界でツブされ以下ループでしたが何か?

 

 そんな平和な日々は突如破られたのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結界をブチ破って突っ込んできた大魔宮(バーンパレス)によって。

 

 「しびれを切らしてこちらからやって来たわ!!」

 

 空から降り立つ等身大の光り輝くチェスの駒

 「あ、あれはっ!!」

 

 それぞれが人型に変形しポーズを取る。

 

 

 「ハドラーポーン!!ヒム!!」

 「ハドラーナイト!!シグマ!!」

 「…ハドラー…ビショップ…フェンブレン」(小声)

 「ぶろ~~む!ぶろ~~~むっ♪」

 「ハドラールックブロックと言ってますわ」

 女性型の金属人間のフォローが入ります。

 「ハドラークィーン!!アルビナス!!」

 

 「みんなそろって「ちょおおおっとまったああ!!!」ちっうっとおしいのが…」

 もう一人の女性型の金属戦士が名乗りを上げながら現れました。

 「ハドラーソード!!ハーシャ!!」

 アルビナスより若干エッジの利いたデザインをしてます。

 6人…明らかにチェスの駒モチーフじゃない。それでも輝きはオリハルコンに違いない、どういうこと?

 「ちょっとアルビナス!!長女の私を置き去りにするってどういうこと!?」

 「あれ?姉ちゃんは先に行ってるって聞いたぜ?」

 ヒムが首をかしげます。

 「アルビナアアアス!!!私をハブにしたなあああ!!!」

 「ヒム、アレは姉呼ばわりする必要はなくてよ」

 「大体生まれた順番で言ったら私が長女でしょうが」

 「同じ駒から生まれた私たちはともかく貴女は別でしょう」

 「同じオリハルコンじゃないの!しかも伝説の『覇者の剣』よ。年期もありがたみも違うわ」

 ハドラー…『覇者の剣』でオリハルコンの戦士を製造したんかい。そういえば以前から素手だったなあ。

 「私達も遙か昔からバーン様の手慰みとして使用されていましたわ。作られた年代を問うならナンセンスとうほかありませんね」

 「なんですってキー」

 「なんですかキー」

 「みにくいみにくい」

 「「極大閃熱呪文(べギラゴン)!!」」

 ツッコミをいれたフェンブレンが閃光で上手に焼かれました。そういえばDQⅥの『破邪の剣』って閃熱呪文(ギラ)の効果があったっけ。

 「なんで得意呪文が被ってるのよキー」

 「閃熱呪文(ギラ)は元々私が得意だったのよキー」

 延々とケンカしてます。

 

 呆れていると音もなく目の前にブロックが立ちはだかりました。

 「え?」

 「う?」

 「いつの間に」

 「速い」

 それぞれがリアクションをすると同時に…。

 

 「ぶろ~~~むっ♪」

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 おもいっきりベアハッグを掛けられました。

 「ぶろ~~~む♪ぶろ~~~む♪ぶろ~~~むっ♪」

 あがががが痛い痛い。ミシミシ言ってますよ。見た目道理のパワフルちゃんめ。

 「ホイみっ♪」

 「あらあら、さっそく遊び相手を見つけたのね」

 「あの子末っ子で甘えん坊だから」

 女性戦士二人があたかかい目でこちらを見ています。

 「ぶろ~~~む♪」(アームロック)

 「がああああああああ!!!」

 「それ以上いけない!!」

 関節技がきれいにはまっています。この子プロレス技が好きなのかしら?

 

 

 「あの子巨体だから今まで遊び相手がいなかったのよね」

 「良かったわねブロック。好きなだけクロコダインさんと遊んでもらいなさい」

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 アキレス腱固めからの逆エビ固めがきれいに決まります。

 「痛い痛い痛いーーーーー!!!」

 「あれワシもやられたぞ」

 「全身の関節をもぎ取られたからな」

 フェンブレンとシグマが遠い目をしながら見ています。

 「ぶろ~~~むっ♪」

 ハルク・ホー○ンばりのアックスボンバーでカチ上げてからのタイガースープレックスをキメられました。見事なコンボです。おいドラクエしろよ。

 「ワン!ツー!スリー!!カンカンカアァーーン!!!」(セルフゴング)

 「ぶろ~~~~~~~~むっ♪」

 ヒムのジャッジが下りブロックが両腕を上げて鬨の声を叫びます。おれは足下でぼろクズの様に倒されていました。

 「ホイみっ♪」

 

 「ああブロックがあんなに楽しそうに…良かったわねブロック」

 「クロコダインさんありがとうございます。これに懲りずにまた遊んであげてください」

 お姉ちゃんズがら感謝されてます。断りたいけど本気でありがたがれてるようなので断れない。なんだこれ。

 

 「ぶろ~~~むっ♪」(ぎゅー)

 あがああああああああ!ベアハッグ禁止ィ!!ダメージまだ抜けてないのぉ!

 「ホイみっ♪」

 ありがとホイみん。でも生き地獄ぅ!!

 

 

 

 

 「そろそろスペシャルファイティングポーズを仕上げるぞー」

 シグマが手を叩きながら仲裁に入ります。

 「「はーい」」

 口をそろえる女性金属戦士二人。実は仲がいいんじゃないか?

 

 「では!改めて行くぞおォ!!!」

 

 「「「「「「みんなそろって ハドラー特選隊!!!」」」」」」

 

 各々ポジションを確保して日曜日朝7:30の決めポーズがかっこ良く決まりました。

 BGMが鳴りやみ、背後で爆発が起こります。

 あ、バックファイアで魔宮の門がふっ飛んだ。

 

 「なんだ?この茶番は…」

 ごもっともですラーハルトくん。でも向こうは本気みたいよ。

 

 「言ったであろうしびれを切らした、と」

 「お前は…」

 「ハドラー!!」

 「それに中途半端な実力でぞろぞろと乗り込まれては迷惑なのでな」

 「ハドラー様に挑むことができるのは真の強者のみよ」

 「そこで我らがふるいにかけてやろうというのだ」

 「そう、この伝統的なチーム戦…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「超 魔 界 カ バ デ ィ で な !!!」

 

 

 「ん?」

 

 

 

 「カ バ デ ィ で 勝負だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「えーというわけで始まりました第1回チキチキ超魔界カバディ大会。司会進行は私キルバーンと」

 「解説の大魔王バーンでお送りします」

 何してんの大魔王…。

 「企画と発案も余じゃからね」

 ホント何してんの大魔王!!?

 「なぜカバディをチョイスしたので?」

 「パーティー戦ならちょうどいいかなって。あとハドラーが勇者を打倒した暁には余に挑みたいって言うからね。それならば、と余への挑戦権を賭けて競ってもらうことにしたんじゃよ」

 (この年寄りは昔っから突拍子もないことを始めるからな…)

 「何か言ったか?キルバーン?」

 「いえ、何も」

 

 「それでは審判長のミストよりルールの説明があります」

 

 「ルールは魔界カバディに準ずるものとする」

  ①ターンごとに攻守を交代し攻撃側は『カバディ』と聖句を連呼し続けなければならない。

  ②『カバディ』の連呼が途切れた選手は攻撃権を失う。

  ③防御側は迎撃可能だが『カバディ』の連呼が途切れた相手に追い討ちをかけてはならない。

  ④死んだら負け

 

 「以上が基本ルールである。双方ともスポーツマンシップに乗っ取って正々堂々と戦うように」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「「カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!」」」

 「ぐわあああーーーーーッ!!!」

 オリハルコンの戦士たちがカバディを連呼しながらにじり寄って来る。視覚効果も相まって普通に怖い。さっそくタコ殴りにされて「リングに○けろ」みたいに吹っ飛ばされました。

 「「「ク、クロコダイーーーーン!!!」」」

 

 「ぐはぁっ」

 「ホイみっ♪」

 キレイに頭から垂直に落下したところでブロックを見つけました。一人でつっ立ってますね。どったの?

 「ぶろ~~~む…」

 ああ、そうかこの子コレしか話せないんだっけ。それで参加できずに見学してたのね、不憫な。

 「この子も参加させられないの?」

 「ルール上致し方なし」

 ぬぅミストバーンめ正論だけでは世の中回らんぞ。

 「持って生まれた特徴で差別しちゃいかんでしょ、特例にしたら?」

 あんまり寂しそうにしていたので助け船を出してあげました。一人ぼっちは辛いもんな。

 「おっとここで勇者サイドから物言いが入りました。いかが致しましょうバーン様?」

 「認める」

 「参加してよし」

 速えなおい。

 「大魔王様のお言葉は全てに優先される」

 「キミもブレないねミスト」

 

 「ぶろ~~~~~~~~むっ♪♪」

 「ぐああああーーーーーッ!!!だからベアハッグは止めええええ!!!」

 ブロックが抱き着いてきました。いや避けようと思ったらできるんだけどさ、あんなに「嬉しさ」いっぱいで懐かれるとね、邪険にしにくいっていうか。

 「ホイみっ♪」

 甘いって?わかってるよ。でも性分なんだこれが。

 「あらあら、良かったわねブロック。これでみんなで戦えるわ」

 「あんなに嬉しそうに…これもみんなクロコダインさんのおかげね」

 「フッ、敵に塩を送ってなおあの余裕か、流石は勇猛で名高い獣王クロコダインよ」

 

 なんか敵側が勝手に評価してくれてますがこっちはそれ所じゃ…あ、意識が薄れてきた。

 「ぶろ~~~むっ♪」(ぎゅー)

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 さて仕切り直しです。

 勇者チームにダイくん、ポップくん、マァムちゃん、ヒュンケル、ラーハルト、ノヴァくん、そんでおれの計7人がメンバーになりました。

 ハドラーチームもハドラー、ヒム、シグマ、フェンブレン、ブロック、アルビナス、ハーシャのチームで7人がそろいました。

 数の上では互角なのですが…。

 

 「試合再開!!勇者チームの攻撃!!」

 「一気に仕留めてやる!!10倍重圧呪文(ベタン)!!今のうちに追い討ちをかけるんだ!」

 ポップくんが呪文で足止めをします…が。

 「勇者チームの反則!!」

 「カイザーフェニックス」

 「「「「「「「ぐわああああーーーーーッ!!!」」」」」」」

 

 「えー先程の反則は攻撃時に『カバディ』と言わなかった為ですね。ルール違反者には容赦なく大魔王(バーン)様よりカイザーフェニックスが飛んできますのでご注意を」

 「はよ言えーーーーー!!!!」

 「これじゃハドラーチームの方が有利じゃないか?呪文が通じないんだろあいつら?」

 「ハドラーチームへはカラミティエンドが飛んでいきます」

 いつの間にか大魔王(バーン)光魔の杖(こうまのつえ)で素振りをしてました。元気いいなあの老人。

 「みんなっルールを順守してフェアプレイで戦うのよっ!!」

 「「「「「「おうっ!!!」」」」」」

 ハドラーチームの結束は固いようです。ノリいいなホントに。素振り中の大魔王(バーン)にびびったわけじゃないよな?

 

 

 

 「カバディ!カバディ!カバディ!アバンストラッシュ!カバディ!カバディ!カバディ!」

 「カバディ!カバディ!地獄の爪(ヘルズクロー)!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!」

 「カバディ!カバディ!まわしげり!カバディ!カバディ!カバディ!超熱拳(ヒートナックル)!カバディ!」

 「カバディ!火炎呪文(メラゾーマ)!!カバディ!カバディ!カバディ!閃熱呪文(ベギラマ)!!カバディ!カバディ!」

 「カバディ!カバディ!カバディ!真空斬り!カバディ!カバディ!しんくうは!カバディ!」

 「カバディ!ブラッディスクライド!カバディ!カバディ!カバディ!虚空閃!カバディ!カバディ!」

 「カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!疾風突き!カバディ!カバディ!」

 「反則!!」

 「カラミティウォール」

 「「「「「「「ぐわああああーーーーーッ!!!」」」」」」」

 「カバディ!カバディ!ノーザングランブレード!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!」

 「カバディ!極大爆裂呪文(イオナズン)!!カバディ!カバディ!カバディ!極大閃熱呪文(べギラゴン)カバディ!カバディ!」

 「カバディ!カバディ!カバディ!極大閃熱呪文(べギラゴン)カバディ!極大閃熱呪文(べギラゴン)カバディ!カバディ!」

 「カバディ!カバディ!さみだれ斬り!カバディ!カバディ!カバディ!しんくう斬り!カバディ!」

 「カバディ!かまいたち!カバディ!カバディ!ハーケンディストール!カバディ!カバディ!カバディ!」

 「カバディ!サウザンドニードル!カバディ!カバディ!サウザンドニードル!カバディ!カバディ!カバディ!」

 「カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!」

 「ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪ぶろ~~~むっ♪」

 「ぐわああああーーーーーッ!!!ぐわああああーーーーーッ!!!ぐわああああーーーーーッ!!!ぐわああああーーーーーッ!!!ぐわああああーーーーーッ!!!ぐわああああーーーーーッ!!!」

 「ホイみっ♪ホイみっ♪ホイみっ♪ホイみっ♪ホイみっ♪ホイみっ♪ホイみっ♪ホイみっ♪」

 

 うん、カオス。

 

 時折カイザーフェニックスやカラミティエンドが見境なく飛んでくるので油断できないのよね。

 

 

 「勇者チーム攻撃ターン!」

 「らちが明かねぇ、こうなったら大技でまとめてやっつけるしかねえ」

 ポップくんが何やら作戦を立てている様子。え?おれ?

 

 「ぶろ~~~むっ♪」

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 シャイニング・ウィザードからダウン取ってからのムーンサルトプレスのコンボでキレイに沈められております。おいカバディしろよ。

 

 「よし、作戦道理に行くぜ!!」

 あ、話聞いてなかった。もう一回!

 

 「「「「「「カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!カバディ!」」」」」」

 

 ヒュンケルとラーハルトがハドラーチームを左右から挟み撃ちにします。しかしイケメン二人だと「カバディ」言いながらのコンビネーションも絵になるのね。

 「っ!挟撃か」

 「迎撃を!」

 アルビナスの指示の下シグマとヒムが走ろうとしますが。

 

 「カバっ!」

 「デイっ!」

 二人は踵を返して散開します。

 

 「囮か!?」

 「遅いわ!!武神流土竜昇破拳!!!」

 マァムちゃんの拳圧が大地を隆起させハドラーチームを空へ吹き上げます。

 「好機!」

 「今だポップ!」

 「任せろ!!」

 ひとまとめにしてスキを作ったのか。でも呪文攻撃はまずいぞ、向こうには『シャハルの鏡』があるんだ。特に極大消滅呪文(メドローア)をハネ返されたらシャレにならん!!

 「ぶろ~~~むっ♪」

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 ああっ声が出ない!!嬉しそうに懐いてくるのやめてーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「火炎(メラ)氷結(ヒャド)爆裂(イオ)閃熱(ギラ)真空(バギ)

 

            極 大 五 芒 星(マダンテ)!!!」

 

 ある意味もっとヤバイのキター!!

 

 「任せろ!!」

 シグマは『シャハルの鏡』をかざした。

 マダンテはハネ返された。

 

 やっぱりいいぃぃーーーー!最悪の事態だよおおおお!!

 

 

 「しまった!止めのつもりで魔法力を全部使っちまった。相殺できねえ!!」

 「ダイ!!」

 「ディーノ様!!」

 「うわあああああっ!!」

 

 マダンテがポップくん達に着弾するのが見えた。

 タイミング的に避けることも防ぐこともできない。

 「やったか!!」

 「やめなさいハーシャ!!それはフラグと言うのですよ!!」

 

 「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 ダイは紋章のパワーを全開にしてマダンテを抑え込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「倍返しだあああああ!!」

 

      「竜 闘 気 砲 呪 文(ドルオーラ)!!!」

 

 高密度の超呪文が竜闘気(ドラゴニックオーラ)と共に迫ってくる。

 

 「それ見なさい!!」

 「私のせい!!?」

 「フ…流石は我が好敵手よ!」

 「さようですわね。ハドラー様」

 「変わり身が早い!!」

 アイツら余裕あるなー。

 「一応聞くがシグマ、あれ返せるか?」

 「無理」

 「だよな」

 「バーン様これって解説席も危ないんじゃ…」

 「ワシだけは安全じゃから」(光魔の杖バリヤー)

 「ボクをその中へ入れろおおおおおおっ!!!」

 「大魔王様のお言葉は全てに優先される」

 「最早是非も無し!この場は華を持たせてやるわ!!しかし必ずいつの日にかまた挑戦するぞ!!アバンの使徒共よ!!!」

 

 全員がもれなく光に包まれる最中。

 

 「あ」

 「あ」

 

 何かを思い出した両陣営。

 

 「クロコダインがあいつらと一緒だった」

 「魔宮の門壊れたままだった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぐわあああーーーーーッ!!!」

 「ぶろ~~~むっ♪」

 「ホイみっ♪」

 

 この日、さく裂したマダンテと竜闘気砲呪文(ドルオーラ)によってバルジ島は沈没し、大半の者が行方不明となった。

 後に『バルジの惨劇』と呼ばれる大事件である。

 

 ちなみに大魔宮(バーンパレス)も半壊し大魔王の地上侵攻作戦は大幅な後退を余儀なくされたのである。

 




夏の甲子園にちなんで野球も考えましたが人数が足りないのでカバディにしました


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突発短編 がんばれフェンブレン

UAが9500に届きそう記念

みなさんいつもご愛読ありがとうございます


VSヒム

 

 「前から思ってたんだが、お前地味じゃね?」

 「なぬ?」

 「もっと個性を出して自己主張しろよ」

 「いや十分尖ってるじゃろ!いきなりなにを言い出すか!?」

 「尖り属性はハーシャと被ってるじゃねーか。アイツよりは控え目だから目立たねえし。いっそのこと凶器攻撃を活かした残虐バトルを売りにしてみるか」

 『へっへっへ、ワシは血しぶきと弱いものイジメがどわ~~~いすきなのだあああ』

 「ハイ、言ってみ」

 「ドコの悪魔超人か!!ワシは誇り高きハドラー特選隊の一人!弱いものをいたぶる事などせぬわ!!」

 「ま、そらそうだよな」

 「ええい失礼なやつめ」

 

 「じゃ本題に入るがこのスペシャルファイティングポーズ改案をだな、俺とお前で…」(荒ぶるそげぶポーズ)

 「いや、いい結構だ」

 

 「…個性か」

 

 

 VSシグマ

 

 「はっほっ、むフェンブレンかどうした?」

 「お前こそどうした?室内を飛び跳ねおって」

 「ブロックにしろアルビナスにしろ高速移動系のメンバーが多いのでな。せめて跳躍だけは負けたくないので秘密特訓をしていたのだ」

 (バッタのマネかと思った)

 「やはり特選隊を名乗る以上は個性を活かさねばな」

 ぐっはあ!!タイムリーな事を…。

 「せめて人と話すときくらい飛び跳ねるのを止めんかい」

 スッ(人参)

 「お前俺をバカにしてるのか」

 ソソクサ パシッ

 「そういいつつ嬉しそうにひったくって後ろを向くな」

 「あ、バカ後ろに立つな!」

 パッカーン!!!

「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 掴みかかろうとすると後ろ蹴りを喰らって壁にめり込んだ。

 「悪い、ついクセで」

 「やっぱり馬じゃねーか!!」

 

 「よい子のみんな、お馬さんは後ろ足で蹴るクセを持っていることがあるので後ろに立っちゃいけないぞ。シグマとの約束だ」

 「いいから抜けーーー!!壁に刺さって動かん!!」

 

 

 VSブロック

 

 「ぶろ~~~~~む」

 「個性…お前に相談しても仕方ないか」

 「ぶろむ」(ムッキー)

 「げ」

 がっし びたーん!びたーん!びたーん!びたーん!

 「ぬわああああーーー!!足を掴んで振り回すなああああ!!!」

 「退屈してるのかしら?生まれ持った力を持て余しているのね。お姉ちゃん心配だわ」

 「ワシの心配もしろおおおおお!アルビナアアアアアス!!!」

 「ぶろ~~~~~む」(上空にブン投げ)

 「ゲェーーーこの体勢は!!?」

 「ぶろ~~~~~む!!」(キン肉ドライバー!!)

 「この前ジャンプを見せたかいがあったな」

 「お前のせいかヒムウウウウ!!ぎゃあああああああ!!!」

 

 「あれハーシャ?フェンブレン見なかったか?」

 「ブロックと一緒に『伝説の聖剣』ごっこしてたわよ」

 「ふーん、意外と面倒見がいいんだな」

 

 しばらく地面から抜けませんでした。

 

 「ぶろ~~~~~む」(ディム○ース)

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 

 

 VSハーシャ

 

 「個性ねー私が居なければ丁度よかったかもね。アルビナスと閃熱呪文(ギラ)で被ることもなければ、アンタと刃物で被ることもなかったろうし」

 「そんなつもりはなかったのだが」

 「ふふん。でも私にはハドラー様の妻としてのオンリーワンのポジションがあるんですもの。いっそ寿退職してハドラー様と『幸せ家族計画』でも…キャー!!!」

 

 「おっと手と口が滑りました」

 サウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードルサウザンドニードル

 「「ぐわああああーーーーーッ!!!」」

 「またちょっかいを出しに来たわねアルビナス!!」

 「ハドラー様に対して装備されもしないヤッパ者が寝言をほざいているようでしてね。目覚ましに日光でも浴びてきたらいかがです?」

 「十分日焼けはしたわ。あー女としての魅力が磨かれちゃったなー。ハドラー様に押し倒されちゃうわー」

 「自意識過剰もそこまで来るといっそ哀れですね。ハドラー様は貴女に興味はなくってよ。武器として使われもしなかったのが良い証拠ですわ」

 「ハッ、ハドラー様は武器としてではなく生涯のパートナーとして私を欲したのよ。死が二人を分かつまで、いえ死しても魂を共にするために。ああ、なんてロマンチックなんでしょう」

 「…道具にロマンなど要りませんよ。まあ剣としての本懐を遂げられぬ以上、薄っぺらい代償行為にすがる気持ちは理解できなくもありませんが。所詮は消耗品の道具ですか」

 「と、消耗品の駒が何か言っております」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「「何よ!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フェンブレンですが職場の空気が最悪です

 

 「「キー!!!」」

 

 

 「「極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!極大閃熱呪文(べギラゴン)!!!」」

 

 「ワシを巻き込むなあああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 ハドラー様

 

 背後から閃光やら熱風やらが間断なく吹きすさいでいるがワシ知らんもん。

 必死こいて逃げ出したわ。痴話げんかで生後間もない命を散らしてたまるか。

 「む、フェンブレンか」

 「ハ、ハドラー様」

 圧倒的な威圧感を携えて其の主は立っていた。鍛え上げた揺るぎのない肉体はいっそ美しさをも感じさせる。金属の肉体にはない強さがある意味羨ましくあるのだ。

 「鍛錬は怠っておらぬな。良きことだ」

 我らが秘かに特訓をしている事もお見通しか。ワシも心は皆と同じ、この素晴らしき強者である主と共に勇者を打倒し最強の頂へ立つこと。真に武人の本懐よな。

 「プロテインはしっかり取れよ。お前は線が細いからな。わっはっはっはっは」

 「…これさえなければいい上司なのだが…」

 オリハルコンに筋肉が付くのか?

 

 ポリポリ

 「フェンブレンー食うか?プロテインクッキー、体にいいぞ」

 「何食っとんのじゃああああ!!ヒムうゥゥゥゥ!!?」

 

 ポリポリ

 「人参味、美味」

 「シグマアアアアッァァァァ!!!お前もかあああああ!!!」

 

 ポリポリポリポリ

 「コラーゲン入り」

 「お肌に良いのよねーー」

 「ねー」

 「アルビナアアアス!!ハーシャアアァァ!!仲直り良かったねえええ!!!」

 

 ポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリ

 「ぶろ~~~~~む!」(ノーモーションベアハッグ)

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 「ブロック!食べながらじゃれ付くのは止めなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうしてこうアクの強すぎる仲間ばっかなんだ…気に入らね…」

 「ホイお前の分。ハッカ味、好物だったよな」

 

 ポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリポリ

 「…まあ悪くないか」




大魔宮(バーンパレス)の日常は大体こんな感じ


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先代獣王 起つ! ぐわああああーーーーーッ!!!


なんで大魔宮(バーンパレス)すぐ落ちてしまうん?



 「おきなさい、わたしのかわいいクロコダインや。」

 

 「うわあ」

 目の前に赤いワニがいた。あれ?既視感?

 「ホイみっ♪」

 うお、ホイみんおはよう。

 

 「あ、ホイみんと……ママン!?」

 フリル付のかわいいリボン。

 アップリケ付のエプロン。

 長いまつげ、あと手におたま。

 どう見てもウチのママンと……。

 

 「でゅわっ!」

 

 なんで居るの?アバンさん?

 

 「私は流れの武術家『ミエール仮面』です」

 …そっとしておこうか。事情があって世を忍ぶ仮の姿かも知れんし。

 

 「いやーやられたやれれた」

 「姉ちゃん?」

 ドアを蹴り破って薄紅色の蜥蜴人(リザードマン)が乱入してきました。家の姉です。

 所々生傷だらけですね。あの関節中毒者(サブミッション・パラノイア)にこうまで傷つけられる相手って誰やねん?

 「俺も居んぞ」

 「兄ちゃん?」

 姉より一回り大きい青色の蜥蜴人(リザードマン)がひょっこりと顔だけ出してきました。

 

 「よう起きたか愚弟。しっかしお前いい子を見つけてきたな」

 「ぶろ~~むぃ~~」

 地響きを立てて姉ちゃんが担いできたブロックを居間に放り投げた。完全にグロッキー状態ですね。所々凹んでるように見えるけど、何?喧嘩したの?

 「ホイみっ♪」

 あ、治った。

 「ぶろ~~~~~むっ♪」

 「ぐわああああーーーーーッ!!!お約束ぅ!!!」

 

 

 

 

 なんでも一週間ほど前に実家の近くにおれとブロックが降ってきたとのこと。

 飛んできたおれが兄ちゃんのお昼寝用のハンモックを吊るした木をなぎ倒し、倒壊した木が兄ちゃんの部屋の窓をブチ割ってメチャクチャになったのだとか。

 逆上した兄ちゃんがおれを素材にしたぼろ雑巾を作成してる処に目を覚ましたブロックが兄ちゃんを敵と勘違いして強襲し、そのまま夕日が沈むまで殴り合い(マモノミュケーション)したんだとか。その後、アバン先生から仲裁されてママンの手料理で仲直りしたらしいです。

 

 「素直でいい子だよなー。物覚えも早いし、どこぞの愚弟とは大違いだぜ」

 「ほっとけ」

 「ホイみっ♪」

 「ブロック君は実に素晴らしい素質を持っていましてね、アバン流牙殺法を1日でマスターした時は驚きましたよ」

 さらっと凄いこと言ってません?アバン先生??

 「ぶろ~~~~~むっ♪」

 あ、すごい自慢げ。

 「アタシも地獄の九ヶ所封じは仕込んだぞ」

 オィ

 「俺も陣内流柔術と破傀拳と陸奥圓明流は教えておいたぞ」

 過剰戦力ぅ!!

 「ぶろ~~~~~むっ♪」

 凄いでしょって?うんわかるわかる。達成感と誉められてるのが純粋に嬉しいんだね。分かったから鉄菱で脇腹押すのはヤメテぇ!!

 

 「さて、愚弟よ」

 「ひょ?」

 「ボロクソになって飛んできたってことは不覚を取ったって事だろ。鍛え直しちゃる」

 「ちょ、ま」

 「丁度グリズリーの巣に子供が生まれたばっかなんだ。全身にハチミツ塗ってお祝いしてきなさい」

 可愛がられる(物理)わけですね。わかります。

 「ぐわああああーーーーーっ!!!」

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 あれからもみくちゃにされましたが、夕飯時に解放されました。みんな怪我人相手に無茶するなあ。

 所でそろそろ気になってることを聞きましょう。アバンさんなぜここに?

 身の上を明かして聞き込みをしました。

 デルムリン島でフローラ様から授かった『メガンテの腕輪』×5を使い、『破邪の秘宝』による増幅メガンテをハドラーに叩き込んだものの自身も吹き飛ばされてここまで飛んできたとか。素で生き残ったんですか先生。

 ベンガーナ南部の山岳部なんですが…ここまで飛ばされたの?

 それからママンに拾われて実力不足を悟って修行を積みつつ今に至る、と。

 

 「本来なら『破邪の洞窟』で修行をしたかったのですが、洞窟が10年ほど前に崩れてしまって使えなくなったためにお姉さんとお兄さん相手に修行を積んでいたのです」

 うん、ごめん。それおれ達兄妹のせい。

 

 10年ほど前に『破邪の洞窟』に迷い込んだホイみんを探して潜ったおれ達兄妹が洞窟を潰してしまったんだよね。

 兄と姉の「めんどくさい」の一言によって階段を無視して地下をブチ破って下降した為、地盤が弱体化。

 更に最下層で遭遇した『地獄の帝王』と大乱闘スマッシュブラザーズをかました結果洞窟が崩落。

 いやあ『地獄の帝王』は強敵でしたね。

 おれ?『地獄の帝王』のおデコの上でぐーすか寝てたホイみんを回収して逃げ出しましたよ。

 昔っから死にかけてるなあ、おれ。

 

 アバン先生は現在程よく日焼けして健康的になってますね。

 「私に足りなかったのはフィジカルでした。これならハドラーにも負けませんよはっはっは」

 自信満々ですがいや、あのマチョラー相手じゃ力不足じゃないかなー?

 

 「これでパパが居れば家族勢揃いね」

 そういやパパンが居ないね。どこか行ったの?

 「それがね、三日前に急に出て行っちゃったのよ。嬉しそうな顔をして「久しぶりに暴れられそうだ」って言ってたわ。若いわねえ」

 

 がちゃん

 

 食器を乱暴に置き、踵を返して外に出ます。後ろでママンの声が「食べてから行きなさい。お行儀が悪いわよー」聞こえますがそれどころじゃありません。

 視界の端で兄と姉が真っ青になっているのが見えました。現実から目を逸らしてたな。無理もない、俺だって行きたくないけどそうも言ってられない。

 

 「がる太っ!!!」

 「クアアアッ!!」

 

 がる太に掴まって飛び立ちます。ブロックもスカート部に脚部を収納してジェット噴射で追って来ました。そんな機能あったの?

 少し遅れてアバン先生が飛翔呪文(トベルーラ)で追い付いてきました。

 「何事ですか?クロコダインさん?」

 「事情は飛びながら説明します。急がないと、もし父が本気で暴れたら世界が焼き尽くされます」

 「そんな大げさな…」

 うん、知らなければそう思うよね、でもおれは知ってるんだ。

 「アルキード王国を知っていますか?」

 「ええ、12年前に消滅した国でしたね。それがどうかしたのですか?」

 

 

 

 「大陸ごと国を消し飛ばしたのは父です」

 

 

 

 アバン先生が言葉を失いましたね。

 アルキード王国に竜の騎士(ドラゴンの騎士)が居ると噂を聞きつけたパパンが「強い奴に会いに行くぞ」とおれ達兄妹を引きずってお出かけしたのが12年前。バランに喧嘩を吹っ掛けて大陸ひとつを海に沈めるほどのボコスカウォーズをやらかすだけやらかした後、「久々にすっきりした」と言って一人で帰って行きました。あのバトルジャンキーめ。おれ達兄妹?巻き添えを食らって死にかけましたが何か?

 「ホイみっ♪」

 そうそう、あの時もホイみんのおかげで命拾いしたのよね。

 ともかくパパンが闘争の臭いを察知して動き出したのなら世界がいくらあっても足りないだろう。くそう、どうしておれの人生はいつもオールオアナッシングなんだ。

 急がないと…世界が滅びる前にっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後。

 この辺りは……テラン王国の東、ギルドメイン山脈あたりでしょうか。

 眼前から火の手が上がっていますね。辺り一面はひどい有様です。

 

 焼け落ちて墜落した大魔宮(バーンパレス)

 消火活動に勤しむ、魔物達と量産型のオリハルコンの戦士達。

 マキシマムの指揮の下迅速な消火活動と避難誘導がなされています。

 クレーターの中で倒れ伏す勇者達。

 同じく倒れたまま動かないハドラーと特選隊の面々。

 まるで地獄絵図だ。やっぱりこうなってたか。

 

 「ぶろおおお~~~~~む!!」

 ブロックが仲間の下へ駆け寄ります。危ないからみんなを抱えて避難しなさいよ。

 

 

 「グワアアアアツッッ!!!」

 がる太の3倍はあろうかという巨大な怪鳥が目の前を横切りました。

 「あれはっ!!?」

 「がる太のパパですよ」

 パパンは遠出をするときはがる太パパに乗せてもらってます。がる太は親の臭いを察知して追跡してくれたという訳です。

 

 「羽毛ではなく皮翼……あれは鳥類というより昔図鑑で見た翼竜…プテラノドンでは……」

 なにやら先生がブツブツ言ってますがよく聞こえませんね。それより先生、あんまり先行すると危ないですよ。

 「カアアアアッッッ!!!」

 がる太パパのトサカが赤くスパークし口から灼熱の炎(ウラニウム熱線)が噴出されました。

 その熱線の矛先は……。

 

 「ホギャーーーーーオォ!!」

 「アイツも居たのか…」

 

 あばれざるのキングくんでした。

 体長が100m近くに巨大化してます。頭髪が腰から下まで伸びていて、全身から噴き出るオーラが緑色になってスパークしています。これ知ってる。SS3ブ○リーや。

 

 「ガアアアアアアアオオオオオオォォォォォォツッッッ!!!」

 

 そして雄たけびと共にキングくんを体当たりで叩きのめす黒い影。

 いや、影ではない。その山のような体躯が黒い色をしているのだ。

 その黒いボディが()()発光し始めました。背びれの輪郭が浮き上がり青い稲妻がほとばしります。大きく開かれた口内に光が収束していきました。

 

 「あれは……もしや伝説のチェレンコフ光!??」

 「先生、危ないです!!下がってください!!!」

 

 その巨体が青い放射熱線を吐き出します。爆風でがる太が大きく揺れました。もはや息というよりビームと言うべきそれはキングを巻き込んで山を3つ爆発させ彼をダウンさせます。

 

 「か…怪獣??」

 もうもうと焚き上がる粉塵を総て吹き飛ばし、彼はその全貌を現しました。

 

 殺気に満ちたギラついた目。

 大人の背丈ほどもありそうな巨大な牙。

 (うね)のあるゴツゴツとした黒い皮膚。

 筋骨隆々とした両腕と鋭い爪。

 背部から尾にかけての大きな白く発光する背びれ。

 肉厚の2本の大腿とさらに大きい尻尾。

 

 

 

 

 「はい、あれが父です。先代獣王にして生態系の頂点!

 

      敬意と畏怖を込めて皆はこう呼びます。

 

 

 

 

       怪 獣 王 ク ロ コ パ パ ン と」

 

 

 

 

 

 

 「グガアアアアアアオオオオオオォォォォォォツッッッ!!!」

 

 




 
 この御方には勝てない(断言)

 ゴ○ラ×ラ○ン×キ○グコング世紀の決戦!
 決着が着く前に世界がはちゃめちゃで押しつぶされそうですね。


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突発短編2 二人はキラピカ メタルハート

 8:30





 私はハーシャ。ベンガーナデパート学園に通うごく普通の学生で元気印の恋する乙女よ。

 「ごきげんよう、ハーシャ」

 彼女は生徒会長のアルビナス。私の親友でデパートの生徒会長をしているの。

 実は二人には秘密があって、デパートの平和を守る超金属魔法少女(オリハルコン・プリチーズ)キラピカなの。

 

 

 ―――どっかの悪者の居そうな暗いお城―――

 「また失敗しおって、この愚か者めが!!」

 「お許しください。獣魔王様ぁ!!ご安心ください次の作戦はもう考えております」

 「むう、良かろう。期待してよいのだな!?」

 「ヒューンケルケルケル(笑い声)必ずやキラピカをやっつけて参りましょう、この美しい顔に懸けて」

 

 

 ―――デパート屋上―――

 「わしがデパート学園長 クルテマッカⅦ世である!!!!」

 デパートノガラスガコワレタゾー

 マタガクエンチョウカー

 「今日も学園は賑やかね」

 

 「ヒュンケル様、わたしの気持ちです。受け取ってください」

 屋上の片隅で二人の美男美女が向かい合っていて、女性がお弁当を男に渡そうとしている。

 「キャー!!なにあれなにあれ?ひょっとして決定的瞬間ってヤツ?ヤツ?」

 「ちょっとハーシャ!はしゃぎすぎよみっともない」

 「アルビナスだってそう言いつつ体を乗り出してるじゃない」

 

 「フン」

 男は女性から手渡された弁当袋を背後に放り投げた。

 「エイミ、こんな下らんモノよりも今月分のゴールドは持ってきたんだろうな」

 「ゴールドならあります。けれども……」

 「うるさい。お前は黙って俺に貢げばいいのだ。そうしたらたまにはお手て繋いでデートをしてやるぞ」

 

 「ひどい。なんてことを」

 「女心をもてあそぶなんて許せない」

 二人の間に割って入るハーシャとアルビナス。

 「イケメンたる俺がモテるのは当然!!だが女が俺を縛ることは許さん」

 「なんて自分勝手な!」

 「俺様にはこれから値段のつけられない武器防具を売りつけて市場価格を破壊するという使命があるのだ。ゴールドはいくらあっても足りんからなぁ…ヒューンケルケルケル」

 「そんなことをしたら…」

 「デパートの信用問題に関わるわ」

 

 「ハーシャ!変身よ!!」

 「うん!!」

 

 

 「「キラきら・ピカりんミューテーション!!」」

 

 

 特選隊のエンブレムが輝き周囲がファンシーな空間に侵食されていく。

 ハーシャの体中から生成された刃が制服をズタズタにして飛び散らせ、次の瞬間には変身は完了していた。

 

 「キラりんソード ハーシャ!!」

 

 超金属魔法少女(オリハルコン・プリチーズ)キラりんソードは、僅か1ミリ秒でキラりん・ミューテーションを完了する。 では、そのプロセスをもう一度見てみよう!

 「キラきら・ピカりんミューテーション!!」

 超金属(オリハルコン)の神秘のエネルギーが、特選隊のエムブレムにスパークする。 増幅された魔法的エネルギーは、彼女の全身を循環し、キラりんソード ハーシャに変身するのだ!!

 

 「ピカりんクィーン アルビナス!!」

 

 一瞬で制服が高熱で昇華し、その肢体が輪郭だけを残して光り出して行く。腕、脚、腰、胸部と光が収束しフリル付の魔法少女服が装備されて行く。

 

 「「二人はキラピカ!!イケない不良品は廃棄処分よ!」」

 

 「ヒューンケルケルケル!俺は今までお前達に粗大ゴミに出された鉄クズ共とは訳が違うぞ!みろっ」

 「ああっ!」

 「あれはっ!」

 「鎧化(アムド)!!」

 ヒュンケルに『鎧の魔剣』が装着されて行く。

 「こいつは女に貢がせた金でオークションでせり落とした世界最高の『鎧の魔剣』なのだ!!」

 「デパートで刃物を振り回すなんて」

 「なんて危ない男なのかしら」

 「イケメンなら無罪!!顔のイイ男は何をしても許されるのだあぁ」

 ヒュンケルが魔剣を振りかざす。

 

 「ぬん」ポキーン

 魔剣は割り込んできた男の腕であっさり折れた。

 「ケルッ!!?」

 「あなたは一体?」

 筋骨隆々とした体躯に真新しい兜を付けたマッチョは名乗りを上げた。

 「通りすがりのハドラーマスクだ!」

 「ハドラーマスク様…」

 「いったい何者なのでしょう…」

 「惑わされるな。お前たちは超金属魔法少女(オリハルコン・プリチーズ)なのだ。あ奴程度の剣など通用せぬ」

 「はい、ありがとうございます!!」

 「行くわよ!ハーシャ!!」

 どこからともなく勇壮なBGMが流れてくる。世に言う『処刑ソング』である。

 

 

 「「デュアル・プリティッシュバーン!!!」」

 

 

 二人の手からごん太のビームが発射される。

 「ぐわああああ―――――ッ!!!バカな?この『鎧の魔剣』に呪文が効くはずは…」

 「魔法少女が使うんだから呪文じゃなくて魔法!!ごちゃごちゃぬかすと筋肉すっぞ!!!」

 ハドラーマスクのメンチビームも追撃に加わり……。

 

 「「フィニッシュ!!!」」 

 「こ、このイケメンフェイスがあああああ!!」

 ヒュンケルが頭をちりちりパーマにして吹き飛んでいく。

 ヒュンケルはお空の星になった。

 

 「「不良在庫を焼却処分!!!」」

 

 今日もデパートの平和は守られた!!

 

 

 

 

 

 

 

 「ヒュンケルがやられたようだな…」

 「ヤツは四天王の中でも一番の小物……」

 「キラピカごときに後れを取るとは、我らアバン四天王の恥さらしよ」

 「次の作戦は決まっておるのだろうな」

 「ハッ、次はこの勇者ダイが『切り札』を用意してございます。獣魔王クロコダイン様」

 「クックック、グワアーーーーハッハッハ!!!」

 

 

 

 

 ―――次回予告―――

 

 「あなたが戦えないなら私があの子を撃つわ!」

 「やめて、アルビナス!彼女は…カーシャは私の妹なのよ!!」

 「姉さん、もう私は以前のカーシャではないわ。悪魔錬金術師ロン・ベルクに改造されて『ダイの剣』として身も心も改造されてしまったのよ」

 「カーシャアアアア!!!」

 「さようなら、姉さん。『覇者の兜』として姉さんと過ごした日々は大切な思い出だったわ…」

 引き裂かれる姉妹の絆、そして迎えるキラピカ最大の危機!その時不思議なことが起こったの。

 次回!ふたりはキラピカメタルハート 「大団円!! 獣魔王クロコダイン最後の日!!!」にキラきら・ピカりんミューテーション!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「という映画を魔王軍の広報宣伝(プロパガンダ)の為に作成しようと思う」

 

 「正気ですか?大魔王(バーン)様??」

 「ちなみにこの企画は余発案なので、異議のある者は反逆罪として処刑する」

 (こっの年寄りがああああああ!!)

 「大魔王さまのお言葉は全てに優先される」

 「ミスト!?」

 「でしたらばお色気担当のお姉さんを増やしたいですな」

 「ザボエラ!?」

 「ネタではなくガチイケメン枠ももっと増やして主婦層も取り込みましょう」

 「ザムザくんまで!?」

 「小道具、衣装、大道具のセッティングまで裏方関係は任せてもらおう」

 「マキシマム!!お前もか!?」

 

 「うむ、それでは映画超金属魔法少女(オリハルコン・プリチーズ)ふたりはキラピカの製作を開始する」

 

 「監督はキルバーンでな」

 「異議なし」

 「同じく」

 「大魔王様の(以下略)」

 「任せるぞい、キルバーン」

 

 「ちょ」

 

 

 この数時間後、大魔宮(バーンパレス)が墜とされ企画は没となった。




 思いついたから書いてしまった。


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光の巨人!現る!! ぐわああああーーーーーッ!!!

そろそろ広げた風呂敷を畳みに掛かります

おそらく今まで以上に更新が遅れますので気長にお待ちくださいませ




 「グガアアオオンン!!」

 

 満身の雄たけびと共に黒い龍は歩を進めている。 

 彼の一息によって大地は一直線に融解して溶け出し、赤い線となって地の果てまで続いています。血の色の絨毯というか、まるで地獄への道ですね。

 湖は瞬く間に干からびて蒸気と化し、上空で乱雲となっています。降り始めた雨はまるで世界が哭いているようでした。

 

 「ホイみっ♪」

 「ピェ~~ン」

 ゴメちゃんがホイみんに泣きついてきました。皆が倒されて不安だったんでしょうね。スライム同士で感動の再開をしてます。相変わらず仲が良いね、キミら。

 

 戦士はことごとく倒れ伏し魔城は墜ち世界は火の海。どこから見ても大惨事である、なにがどうしてこうなったやら?

 「僕から説明します」

 あれ?ザムザくん?妖魔学士のザムザくんじゃないか?

 「ところでそちらの方は…??」

 「私は旅の学者「ミエール」と申します!」

 瞬時に例のメガネを装着した先生。アンタまだソレ持ってたんですか。まぁ、魔王軍には正体隠さないといけないか。

 

 「実は今回の一件、父に責任があるんです。何とか大魔宮(バーンパレス)の修理が終わりかろうじて飛行可能になった頃、父は超魔生物の研究に行き詰っていました」

 え?行き詰った?頭脳だけは悪魔的な冴えを見せるあの爺さんが?

 「研究自体は進んでいたのですが。想定したスペックを上回る生物がたくさん出てきまして……」

 みんなたくましく育ったもんなあ。向こうも身近にハドラーという成功例が居たからねぇ。

 「そこで気づいたのです。「あれ?生物って改造するよりレベルアップさせた方が強くなるんじゃね!?」と」

 まさかの改造研究全否定か。

 「改造など邪道ですよ。智と力は修練によってのみ培われるのです!」

 こんがり焼けた日焼け肌と力こぶをアピールするアバン先生。先生も染まったなあ、ハドラーといいライバル関係になれそう。

 

 「そこで以前驚異的な成長速度を見せたあのあばれざるに目を付けたのです」

 「大体オチがわかった」

 コントロールしようとして失敗したな。

 「その通りです。僕の額にある記憶装置をベースに改造した洗脳装置を取り付けたのですがあっさりと気で粉砕されてしまいまして…」

 「よくアイツに取り付けられたな」

 「眠り薬入りのバナナを大量に置いておきましたから」

 「あぁ…」

 しかしながら取り押さえようとしたハドラー様と親衛隊は全滅。巨大化し暴走したあばれざるによって大魔宮(バーンパレス)も墜とされました。

 「巨大化するんですか!!?」

 「先生は知りませんでしたっけね。強大な闘気を身に纏うと巨大化したかのように見えるんですよ。パパンのデカさもそれが原因です」

 「まるで大豪院○鬼みたいですね…」

 と、ザムザくんがボヤく。そういえばこの世界ジャンプあったね。

 

 「錯覚…いや、現に山が踏みつぶされ…あれ??」

 「先生、深く考えるとハゲますよ」

 世の中深追いしない方がいいことが多すぎる。おれが人生で学んだ教訓である。

 

 「その後駆けつけた勇者パーティーも蹴散らされてしまい…打つ手が無くなった所で…」

 「うちのパパンが現れた、と」

 そんで乱入&大惨事怪獣大決戦と。

 

 「ホイみっ♪ホイみっ♪」

 ホイみんが治療に廻ってますが、ここで体制を立て直すのは難しいだろう。

 いっそ逃げようかとも思うけど、世界が滅んだらどっちみちデッドエンドなんだよな。くそう人生に逃げ場がない。

 「うぅーん」

 ホイみんとアバン先生の治療で勇者一行が目を覚ましましたね。ぶっちゃけ早く非難しないと地上に穴が開いて巻き込まれかねん。

 

 「あなたは……一体…??」

 「私は旅の学士「仮面ミエール」と申します」

 アバン先生…さすがに身内相手には無理があるでしょう…。

 

 「仮面ミエール……」

 「一体何者なんだ……?」

 「でもどこか懐かしい感じがするわ」

 「ドコの誰だかは知らないが、感謝する」

 「済まない、恩に着る」

 「ありがとうございます」

 あるぇー?使徒の皆さん気づいてない?うっそでしょう!?

 

 「では、私はこの辺で失礼します」

 「待ってください」

 小声で立ち去ろうとするアバン先生を呼び止めます。

 「なんとなくわかりました。死ぬ気ですね、アバンさん」

 「皆さん素晴らしい成長を遂げていますね。彼らにとって最早私は過去の人のようです。今更名乗り出て無用な心配をさせるわけにはいきません」

 無用な心配って、まさか!

 「ここは私の命の使い所でしょう、教え子たちにあの時と同じ苦しみを味あわせるわけにはいけませんからね」 

 ええい原作のハドラー戦といいキルバーン戦といい、この人体を張りすぎなんだよ。自己犠牲精神ってのは尊いかもしれんが、周りの人間はたまったものじゃないんだぞ!

 

 

 「鍛えて得た力というのは誰かのために使うものだと思うのです」

 

 

 止めようとしたが言葉が出なかった。メガネ越しに有無を言わせぬ決意の顔をしてるんですもの。誰が止められるかと。

 

 「あとは頼みます、クロコダインさん」

 (若き頃『破邪の洞窟』で会得したこの『秘法』!!遂に使う時が来たのだ!)

 先生の顔が若干嬉しそうだったのは気のせいかな??

 

 アバン先生はメガネをはずし…。

 

 「え…」

 「まさか!?」

 「あの人はっ」

 「そんな」

 

 

 

 「でゅわ!!!」

 

 再び装着した。

 

 ズギュウウウウウウンン!!

 

 そこには光の巨人が胸を張って立っていた。

 赤を基調としたカラーリングに、西洋甲冑を思わせる肩パーツ。音楽室で量産されているカールのヘアースタイルにキラリと光る角突きのぐるぐるメガネ。

 

 

 

 

 「今の私はミエール…

 

        ウ ル ト ラ マ ン ミ エ ー ル です!」

 

 

 今ここに新たなヒーローが誕生した!!!

 

 

 

 

 ……アバン先生…染まったなあ。

 

 

 

 次の瞬間!地響きとともに大地が割れマグマが吹き上がり、裂けた地面から巨大な腕が伸びて出て来た。

 

 「あンのは虫類どもおおおお!!」

 あれー、あの腕どっかで見たような…?

 「よくも中途半端に寝ぼけているところをたたき起こしてくれたなあああ!!!完ッ全に目覚めた所で生き埋めにしやがってえ!ようやく出てこれたわあああ!!!」

 げぇ!『地獄の帝王』!!ってか這い出てくるのに10年かかったんかい!?

 「途中で昼寝したからなあああああ!!!」

 そんまま永眠してればよかったのに……。

 

 「ホギャアアアアオオオオ!!!」

 「ガアアオオオオオンンン!!!」

 「ぶああああああっ!!」

 

 ほら言わんこっちゃない。出てきた場所が丁度パパンとキングくんの中間だったため、後ろから復活したキングくんにド突かれ、正面からパパンに殴られてます。あ、クロスボンバーがモロに入った。

 っつーかパパンの放射熱線をまともに喰らってコゲ目で済んでるのか。パネェ。

 あ、キングくんのドロップキックでつんのめった処をパパンが尻尾でカチ上げた。見事なコンビネーションですね。

 

 「ホギャアアアオオオアアオオオオンン!!!!」

 

 あれ?よく見たら胸部と掌、そして顔以外の体毛が無くなっています。体毛は赤く変色し、頭髪が黒く染まっています。全身から噴き出る緑色の闘気がケタ違いに増大し、その奔流が天変地異を引き起こして絶え間ない地震と暴風が吹きすさんでいます。

 スーパーサ○ヤ人(猿?)4じゃねーか!!?コイツこのドタん場で更にパワーアップしたのか。

 

 「カカロットオオオオオオオ!!!!」

 

 変な言葉を覚えやがって。そんな人は居ません…居ないよね??居たら何とかしてくれませんか!?

 

 瞬間移動さながらの超スピードでクロコパパンの背後を取ったキングは剛腕を振り下ろして地に沈めます。その衝撃で巨大なクレーターが彼らを中心に形成され、外周の山々は5倍ほど隆起し、中心は穴の底が見えないほど抉られてしまいました。『地獄の帝王』も巻き込まれて穴に落ちました。お早いお帰りで。

 空を奔った衝撃波ががる太を吹き飛ばします。

 

 「がる太っ」

 「グアアッル!!」

 

 がる太パパが身を挺して衝撃波を庇ってくれたようです。親子はそのまま別方向へ避難していきました。

 『地獄の帝王』はついでに蹴とばされてました。

 

 なんか互いの闘気とか熱線とかで球体状の竜巻が起こって近づけないんですけど?

 あの中に割って入れます?アバンさん??

 「いつでも動けるように準備運動をしておきましょう」

 打つ手なしですね。わかります。

 

 キングが調子に乗ってパパンを殴りつけています。でかい木を引っこ抜いてパパンの口に押し込みましたね。世界樹かな?

 

 「グアアアツッ!!」

 パパンの口からビーム一閃。大木が一瞬で蒸発しました。

 「ホギャア!!?」

 キングくんの顔に初めて恐怖が浮かびます。

 

 

 「汝を敵と認めよう」

 

 

 クロコパパンの体が赤く発光し始めました。胸部を中心に赤い光が血管を添って奔って行き、背びれの白熱色も赤みを帯びました。射殺さんばかり覇気と共に眼が赤く燃えています。今までもケタ違いのエネルギーを放出していたのですがそれ以上の力を溜めこんでいるようです。

 

 「ぬんっ!」

 

 熱線の体内放射で近づいて来たキングを怯ませると、流れるようなコンビネーションで尻尾による追撃が入りました。

 

 チャージが完了したのでしょう。背びれが若干溶け出し、背部から光線のような衝撃波が扇状に広がり熱風と赤く輝く粉塵を飛散させます。パパンの背後はブレスで薙ぎ払ったかの如く爆炎で吹き飛ばされて行きました。そして周囲の温度が急激に上昇しあらゆる可燃物が自然発火を始めました。

 

 「ミエールバリアーー!!!」

 先生がとっさに周囲をバリアーで覆います。次の瞬間!!

 

 

 

 「グワアアアアアアアオオオオオオォォォォオッ!!!!!」

 

 

 

 怪獣王の口よりインフィニット・スパイラル熱線が放射されました。

 「ホギャーーーーーー!!!!」

 赤い螺旋状の超エネルギーはキングくんを飲み込み、辺りの地形ごと朱く染め上げます。大地が真っ二つに割断され、二大怪獣とおまけの帝王を地底深く飲み込んで行きました。

 

 「うわああああーーー!!」

 「ピィッピィ」

 「ホイみっ♪」

 「ひええ」

 「   」

 「ちょ、みんなおれにしがみ付かないで、ぐわあああーーーーッ!!!」

 

 熱線の余波で総ての雲が消し飛び、熱と衝撃波が全方向に撒き散らされて行きます。 

 

 「グワアアオオーーーーーン!!!」

 「ホギャアアアーーーーーオ!!!」

 「なんか扱いひどくね~~!??」

 

 地の底に呑まれていく怪獣たち。

 その恐ろしくも神々しい有様は、まるで地上の意志が荒ぶる神々を鎮めているかのようでした。

 

 「おう、クロコダイン!夕飯には帰るってママンに伝えといてくれグアッハッハッハ!!」

 …台無しだよパパン。

 

 

 先生のバリアーがなかったら全滅していたでしょう。

 先生の背後にあった大魔宮、そしておれ達とハドラーのパーティー以外はキレイに消滅し、赤く脈打つ巨大な亀裂とクレーター、地の果てまで続く荒野しか残っていませんでした。

 

 「あれが最後の怪獣王と思えないわ……このままインフレが進めば第二第三の怪獣王が現れるかも知れない…」

 マァムちゃん、流石にアレクラスはそうぽんぽん出現しないと思うよ。しないよね?

 

 「助けてくれてありがとうございました。ウルトラマンミエールさん」

 「礼を言う、ミエール!!」

 「誰だか知らないけどありがとうミエール!!」

 「あなたのおかげよ、ウルトラマンミエール!」

 「ピッピ~~ィ」

 みんなが口々に拍手喝采を上げる中…。

 

 「そういえば仮面ミエールさんはドコに行ったんだろう?」

 「へっ??」

 「そういえば、いつの間にかいなくなってるわね」

 「おおかた怖くなったんで逃げ出したんじゃねーの?」

 「むぅ…」

 ちょっとみなさん、今目の前で変身しましたよね。ワザとやってんの!?

 

 「……でゅわっ」

 あ、飛んで逃げた。素直に正体明かせばいいものを。

 

 「いやあ、素晴らしい人でしたね。仮面ミエールとウルトラマンミエールは」

 

 「「「「先生!!?」」」」

 結局出てくるんかい!!!??

 「ホイみっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大魔宮(バーンパレス)は墜ち敵は浮足立っている。チャンスは今しかない」

 「ヒュンケル!!?」

 感動の再開が終わった後、全身傷だらけになりながらもヒュンケルが声を掛けてきました。

 「大魔宮(バーンパレス)は墜ち、敵も浮足立っている。大魔王を討つならば今を置いてほかにない!」

 こんな時に攻め手を考えるとか、HP1の状態で戦い抜いた食いしばり持ちは格が違った。

 

 「気持ちはわかるけど…」

 「そんなこと言ったってみんな傷ついているのよ…五体満足な人なんて……」

 

 ん~~なんだか視線を感じますね。あれ?みんなこっち見てない?

 

 「じ~~~~」

 「じ~~~~」

 「ぴぃ~~~」

 「じ~~~~」

 「じ~~~~」

 「じ~~~~」

 「じ~~~~」

 「ホイみ~♪」

 

 「え?おれ??」

 

 

 

 「「「「「「頼んだぞ!クロコダイン!!」」」」」」

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!無茶ブリぃ!!!」

 「ホイみっ♪」




 大魔王ソロ攻略はっじまるよ~~


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風雲 バーン城!! ぐわああああーーーーーッ!!!


ムリゲー開始





 がちょんがちょん

 おぼつかない足取りで大魔宮(バーンパレス)を進むのはバドラー親衛隊のブロック…のガワを着込んでいるクロコダインである。

 侵入するに至って真正面から突撃するのは下策。ブロックに頼んでガワを借りてスネーキング中という訳です。

 もちろん土下座して頼み倒しましたよ。バレたら確実に死ぬでしょうしね。

 

 「ぶろ~~~むぅ///」

 脱衣(脱皮?)してもらう時にブロックがもじもじしてましたがなんじゃらホイ??普段ダイナミックなのに意外なところでシャイなんですかね彼?

 「ホイみっ♪」

 え?デリカシーが足りないって??悪かったな。こちとら単身で魔王城に乗り込むのにほかの事考えてる余裕がないの!

 そうそう、お姉ちゃんズから「「しっかりと責任は取ってくださいね」」と念押しされたけど何のことやら??多分レンタル料でも取られるんですかね?

 まあ、この完璧な変装はバレることはないだろう。はっはっは。

 「ホイみっ♪」

 

 

 「マキシマム様?」

 「しっ!何も言うな、黙って見逃せとの命令だ」

 「あれで偽装のつもりですかね??真っ二つに切れ目があるし、動作がぎこちなくて不信感を隠せてませんよ」

 「しかし大魔王(バーン)様は何を考えておられるやら…」

 「きっと我々には計り兼ねぬ思慮遠望があるのでしょう」

 「ウム、相手は名にし負う獣王クロコダインであるからな」

 

 「「何より尻尾が出てるしなぁ…」」

 

 マキシマムのスキャンを使うまでもなく正体はバレバレだった。

 

 パカッ

 「ぬわーーーーーー!!」

 「ホイみっ♪」

 「「あ、落ちた」」

 

 彼らの目の前で落とし穴に落ちたクロコダイン。

 一体如何なる罠が待ち受けているのであろうか!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天を突きそびえ立つこの城を、人は『バーン城』と呼ぶ!今まさにこの城をめぐって壮絶なる戦いの火蓋が切って落とされようとしていた!!今日もまた獣王クロコダインを先頭に新たなる攻撃部隊が怒涛のように攻め込んできた!!獣王は打倒大魔王の熱き想いに燃えている!!新たなる勇士よ今日こそ「バーン城」を攻め落とせ!! (ナレーション キルバーン)

 「た○し城じゃねーか!!」

 

 落ちた先の大魔宮(バーンパレス)正門前からアナウンスが流れてきました。どうやら罠で飛ばされたようです。

 くっそ、無駄にいい声でナレしやがって。

 

 もうバレてるなら仕方ない、とブロックスーツを脱ぎ捨てた所で大きな浮き輪のようなものを被せられました。

 …ホイみんに。

 「ホイみっ♪」

 「ホイみんさん…何をしてるんですかねぇ??」

 「やあやあ、ボクは案内役のピロロだよ。ここからは両腕を縛っての参加になるから頑張ってね」

 だからなんでノリノリで進行してんのおおおお!!面白くなってきたって顔しやがってええええ!

 「それじゃーいってみよーー!」

 「ホイみっ♪」

 「おー、じゃねえええええ!!!」

 

 かくして、獣王は『バーン城』へ挑むのであった。

 

 

 こんなこともあろうかと、一度は言ってみたいセリフですね。実はキルバーンの罠を想定してアバン先生に「ミエールの眼鏡」を借りていたのですよ。どんな仕掛けをしているのか知らないが、事前に察知して踏み込まなければいいだけの事。今回は楽できそうですね。

 

 …そう思っていた頃がおれにもありました。

 

 

 

 

 

 

 ―――――一の門―――――

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!天井から生卵がああああ!!!」

 門を潜った直後に、上から奇襲を受けました。

 更に全身ぐちょ濡れになった所で階段の段差が傾いて坂道になりました。

 「滑るーーーー!!これ両腕なしで登れってかーー!!」

 「ホイみっ♪」

 「助けろーーー!!!」

 

 

 ―――――二の門―――――

 

 非常口《安全》と書かれた扉ともう一つの扉《ドクロマーク》があります。どうやら二択のようですが…。

 「その手に乗るか」

 あの根性悪どもの考える仕掛けがマトモであるはずがない。なら《ドクロマーク》の方だ!!

 腕が使えないので体ごと扉に体当たりをすると…。

 ドボン

 全身小麦粉まみれになりました。

 「両方ともハズレじゃねーか!!」

 「おっと、正解は扉の真ん中の壁をブチ破ってのショートカットでした。これには獣王も苦笑い」(byキルバーン)

 「うっせー笑ってねーよ!!わかるかこんなの!!!」

 

 

 ―――――三の門―――――

 

 天井の高い個室に閉じ込められました。

 礼のBGMが流れてきます。

 上を見上げるとそこには…。

 「そこには元気な顔でテトリスブロックを落とすホイみんが」

 「ホイみっ♪」

 「ホイみんーーーーー!!?」

 

 上からブロックが降ってくるんだが落下衝撃がおかしい。『ズドン!!』っていってからバウンドしないの。下敷きになったら死ぬわ。

 ん?テトリス??なら一列揃えば消えるのか?

 「そうだよ、列が揃ったらこうなるからね」

 壁越しに放たれた極大消滅呪文(メドローア)がブロックを跡形もなく消滅させました。

 「巻き込まれたら死ぬわーーーー!!!」

 

 なんとかブロックを踏み台にして上部の通路へ逃げ込みました。

 

 

 ―――――四の門―――――

 

 今度は浮遊する足場の群れか。冷静にタイミングを見れば…。

 「もたもたしてると、後ろの通路が崩れて埋もれるから早く飛んでね」

 「この鬼畜どもがあああああああ!!!」

 急いでジャンプして足場に乗り移ります。

 「そうそう、足場の三分の一は着地すると沈むダミーだから気を付けてね」

 「だから早く言えーーー!!」

 落下した先に敷き詰められていたパン粉で粉まみれになりました。

 

 

 み…「ミエールの眼鏡」が役に立たない。どういうこと?

 「そりゃ隠された罠は見抜けても見えてる罠は見抜きようがないじゃないか」

 「くそったれーーーーー!!!」

 「ホイみっ♪」

 「それにしてもこのワニ、ノリノリである」(ナレ)

 「うるせぇ!チクショーがあああーーー!!!」

 

 くそう。卵と小麦粉とパン粉か、猛烈に嫌な予感がするぞ。

 「ホイみっ♪」

 「わーい♪」

 こら小悪魔ども、大釜で油を煮えたぎらせるんじゃない。揚げる気か。

 

 

 ―――――五の門―――――

 

 どうやら揚げる気のようです。

 

 次の通路への道に移動床と浮遊する縦回転のローラーが見えます。マリオのステージかよ。

 その下には大釜に煮えたぎった油が見えます。殺意高くね?

 ええい向こう岸まで跳び続ければいいんだろ。

 

 「ホイみっ♪」

 ホイみんによる放水攻撃!!

 「ちょ、やめ、しゃれにならん、よせっ、やめ…ああっ~~~~~」

 クロコダインは落下した。

 「熱ィ!!熱く……ない、痛い痛い痛いーーなにコレ?しょわしょわするーーー!!」

 大釜の淵から見渡すとホイみんとピロロがタンクから炭酸水をどばどばと注いでいました。ジンジャエールって書いてありますね。

 「ほ”い”み”ん”ん”ん”ん”ーーーー!!?!!?」

 「イェーイ、大成功ーーー!」

 「ホイみっ♪」

 《大成功》のカンバンを掲げドヤ顔のホイみん。

 「ハイタッチすんな!子鬼どもがあああ!!」

 

 「そこには元気な顔で泳ぎ回るワニさんの姿が!」(ナレ)

 「やかましいっってーの!!」

 

 

 

 

 もう許さん、こちとら悲壮な覚悟で臨んでるっつーのにおちょくりやがって。

 ホイみんに掴みかかろうとしたところで…俺の体は何者かに拘束された。

 「何っ?」

 「ホイみっ?」

 俺の体をひも状のようなものが這うように締め上げてきた。

 「ぐええ、こいつは!?」

 他のひも、いや触手がおれの腕の中へその魔手を伸ばさんとしている。おれは直感的に腕で庇ってホイみんを抱きしめた。

 「ホイみっ!」

 「ヤバイ!こいつの狙いはホイみんか!」

 十重二十重に拘束され引きずられていく。

 「うおおおああおーーー!」

 「ホイみ~~っ」

 

 魔力炉だっけ?餌にされてたまるか!!

 「ああっ触手が!!触手が!!」

 鎧の隙間から触手が侵入しようとしてくる。ホイみんを抱きかかえているのでおれに狙いを定めたらしい。

 「おっさんと触手とか誰が得をするんだこんなシーン!!?」

 声を大にして叫んだら触手が口の中に入ってきた。うわ、マズイ。

 

 にゅっちょんぬっちょん

 

 「イ”ヤ”アアアアアアアーーー気持ち悪いーーーー!!!誰か助けてーーー!!」

 嫌悪感に悪寒が奔るがここでホイみんを手放すわけにはいかない。

 頑固に身を固めるおれに対して触手は…くすぐり攻撃に切り替えたらしい。

 

 こちょこちょこちょこちょこ~~ちょこちょ。

 

 「おほぼぼぼぼべべべべべがぼぼぼぼぼっぼっぼぼぼ」

 Q、鼻と口から触手をブチ込まれてる時にくすぐられるとどうなるでしょう?

 A、ご覧の有様ですよ。

 鏡を見たらアヘ顔よりも酷い醜態をさらしている事でしょう。

 もっともこちとら苦しすぎてわが身を振り返っている余裕はないんですが。

 

 「くっ、殺せーーー!!!フリじゃねーからな!!いっそ殺せーーーッ!殺してくれーーーーー!!!」

 

 

 

 

 果たして捕らわれのおっさんはこの危機を乗り越えることができるのであろうか?

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 「ホイみっ♪」




 ちなみにこの状況は逐一大魔王(バーン)様に中継されております。
 「メwシwウwマw」
 「おかわりをどうぞ」
 (五杯目…か)


 初めて書いた小説で、初ネチョシーンがおっさんと触手って書き上げてから気づいた。
 前世で何かやらかしたんだろうか…。


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神の標


何とか最終回まで書き上げたので投稿します


 

 「……ハッ!!?」

 どうやらいつの間にか気絶していたようだ。

 触手の拘束が解けている。得体の知れない肉の繭から這い出すと魔力炉は跡形もなくなっていて、わずかな肉片だけが散らばっている。見上げると空へ大穴が開いていた。おそらくダイの竜闘気砲呪文(ドルオーラ)だろう。

 「くそう、油断した」

 触手を引きちぎり抜け出す。ホイみんは無事のようだ。

 「ホイみっ♪」

 天魔の塔の方ですさまじい力のぶつかり合いを感じる。もう決戦は始まったか、急いで救援に行かなければ。

 

 天魔の塔内部へ到達し、そこには傷ついたダイくんとポップくんそしてレオナ姫が既に真・バーンと対峙していた。

 後続のみんなに追い抜かれたあたり、随分長い間眠っていたようである。周りには鈍く光る珠がいつくか転がっている。あれがバーンの珠か。

 

 「どうやら間に合ったようだな」

 「クロコダイン!!」

 「おっさん!!」

 「来てくれたの!?」

 「ピィ~~」

 

 とはいえまともに戦える相手ではない。おれが出来る事と言えば…。

 「ダイの回復の時間稼ぎくらいはしてやるさ」

 体を張る事だけだッ!

 

 「相手が獣王クロコダインならば余も奥義を尽くさねばなるまい」

 大魔王が上下に腕を構える。

 天地魔闘か?だがおれはこの攻撃を知っているぞ。距離を取って見に回れば…。

 「だめだ!!クロコダイン!!その技は!!!」

 ダイが警告を発するやいなや…。

 「天地魔王撃!!!」

 「なにっ!!!」

 肉迫したバーンの顔が迫り、おれの体は炎に包まれ宙に打ち上げられていた。

 

 「ぐはあっ……こ…これは!??」

 「なに、大したことでは無い。フェニックスウイングで防御を跳ね退け、カラミティエンドとカイザーフェニックスを無防備な所に撃ち込んだけだ。ただの三弾攻撃に過ぎぬよ」

 「何が大したことでは無いだっ。大魔王の三弾攻撃だなんて、それだけで十分脅威じゃねぇかっ!!」

 「天地魔闘が『静』ならこちらは『動』の奥義ね。まったく隙がないわ」

 驚愕するおれにポップとレオナ姫の解説が聞こえる。分かっていたが防げぬ攻撃とは…だがしかし!!

 「昔っから、タフさだけが取り柄でね」

 体に鞭打って上体を起こす。

 「おれには攻撃を受けて受けて、受けまくって!!それでも立ち上がるだけだッ!!どうした大魔王!!!おれはまだ生きているぞオッ!!!」

 

 「た…起った!!」

 「すげえ…」

 「有りえぬ、いかな獣王とて余の技をまともに喰らって立ち上がるなどと」

 わずかな逡巡の後大魔王は答えを見い出した。

 「ホイみっ」

 「そうか、そういうことか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そんなものを持っていたのかっ!!!」

 

 クロコダインを殴り飛ばし、地に叩き伏せる。

 その手にはホイミスライムが握られていた。

 「ホイみん!!」

 「ピェーーーイ!!」

 「ゴメちゃん!!」

 ゴメちゃんがホイみんを助けようと手に噛り付く。

 

 「こやつもか、おのれ神々め!!よもやここまでして余の大望を阻むとは!!よほどなりふり構わぬと見えるな」

 大魔王は血相を変えてゴメちゃんを捕えた。

 「やめろバーン!!」

 「たかだかスライム二匹にムキになるなんて大人気ねえぜ!」

 「何も知らぬのか、こやつらはスライムではない。いや生き物ですらないのだ。これは道具(アイテム)だ!!」

 (どういうことだ…??ゴメちゃんの事は知っている。だがホイみんは只のホイミスライムのハズだ)

 バーンの語った『神の涙』は原作道理の話だった。

 そして、バーンはホイみんについて驚愕の真実を語りだした。

 

 

 

 

 「かつて世を乱す巨悪があらわれし時、神の加護を授かりし者が運命に導かれこれを討つ…。おとぎ話のような話だ。人間の世界にも似た話があるだろう。神々に魅入られた者は様々な恩恵を受けたという。

 

 曰く…加速的に成長し大きくレベルアップする。

 曰く…他の民家の財産を漁っても咎めを受けない。

 曰く…小さなメダルのようなものと引き換えに伝説の武具を与えられる。そういえば『覇者の剣』にもそのような言われがあったな。

 他にも例え死しても財産の半分をを引き換えに完璧に蘇生されるなどとな。

 神々によって都合の良い加護を受け世を乱すものを討つための神の先兵、すなわち『導かれし者』となるのだ…」

 

 (なんだそれは??聞いたこともない…おれの知らないことだぞ)

 

 「そして『導かれし者』の傍らには常にそれが在ったという。

  神の加護を下す(しるべ)すなわち『神の標(かみのしるべ)』」

 

 「!!!」

 大魔王がホイみんを掲げ指す。

 

 「だが、それは欠陥を秘めたシステムだった。役目を終えた『神の標(かみのしるべ)』は神によって回収されるが、その後力を付けてしまった『導かれし者』が第二の世を乱すものと成り果ててしまうからだ…。当然の結果だな。そこで三柱の神々は作り上げたわけだ、より完璧なシステム…『竜の騎士(ドラゴンのきし)』を…。

 よもやとうの昔に処分されていたと思えば…。『竜の騎士(ドラゴンのきし)』、『神の涙』、『神の標』、余を討つために神々の遺産をつぎ込んでいたわけだ。クロコダイン…お前が…いや、お前たちが『導かれし者たち』だったとはな…。

 「なんだって!?」

 神の目標の加護は『導かれし者』に近い者達へも伝播する。お前たちがこの短期間の間に急激に力を増したのはその恩恵に依るという訳だ。心当たりがあろう?

 「う…」

 「むぅ…」

 

 「確かに何度も不思議な力に助けられたわ。でも私たちは決して奇跡を起こしてきたけれども、奇跡に頼りはしなかった」

 レオナ姫はおれの言いたかったことを代弁してくれた。そうだ、おれは打算でホイみんと共にいた訳じゃない!!

 「神の涙だろうと神の標だろうとゴメちゃんとホイみんは友達だわ!!お願い!!ゴメちゃんとホイみんを殺さないでっ!!!」

 

 しかし、クロコダインの体中に悪寒が走る。

 (おれは…この先を知っている!!)

 「確かに、その程度なら並のアイテムでも出来る事」

 (よせ、やめろ)

 「だが、それはうぬらが真の使い方を知らなかっただけの話!!!」

 (嫌な予感が止まらないッ…)

 

 「忌まわしき神の遺産など、野放しにしておけぬわっ!!」

 

 クロコダインはこの先の展開を知っていた。これから起こるであろう現実を認めたくなかった。故に彼は満身の力を込めて抗った。

 「よせっ、やめろっ!!」

 「ゴメちゃん!!ホイみんっ!!!」

 「ゴメーーーー!!ホイみんーーー!!!」」

 

 仲間が口ぐちに叫ぶ中、血を流すほどに歯を食いしばりホイみんへ駆け寄るクロコダイン、しかし…。

 

 「消えて無くなれっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大魔王の手の中でゴメちゃんとホイみんは

 

     光の粒となって崩れ去った。

 

 

 

 

 

 

 その事を理解するよりも先に、おれは拳を大魔王の顔面にブチ込んでいた。

 

 

 

 「ぐああああーーーーーッ!!!」





次話明日0:00時頃投稿予定


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ホイみん

 

 

 

 

 

 

 

 

 おれは雲の上を歩いている。軽い浮遊感が心地良い、辺り一面真っ白な空間。

 この空間には覚えがある。バランのギガブレイクを喰らって死にかけた時だ。

 いや、バーンの言葉が真実だとするならば……。

 

 「おれはあの時に死んでいたんだな、ホイみん」

 

 あの時と同じようにホイみんが居た。

 

 「あの時はホイみんが助けてくれたのか」

 「うん、そうだよ」

 ホイみんが答える。彼が話すということに不思議と違和感は無かった。

 

 「それでは、おれは死んだのか?」

 

 ホイみんは首を振って否定する。

 「ううん、これはゴメちゃんのおかげだと思う」

 

 そうか、ダイはゴメちゃんとのお別れの際に「世界中のみんなと心を一つにできたら」と願っていた。その力の余波でおれとホイみんが呼び合って心が繋がったのか。

 

 「バーンの言っていたことは本当なのか?」

 「うん、そうだよ。ボクは『神の標』なんだ」

 

 ホイみんはとうとうと語りだした。

 

 「ボクの使命はいずれ現れるであろう脅威に対抗する為に、神様が見初めた人の下へ赴くことだったんだ。

 いろんな人が居たよ。王宮の戦士や魔物と心を通わせる少年もいたよ。みんなお別れしちゃったけどね。

 役目を終えたら神様の下へ戻されちゃうんだ。そして次の『導かれし者』が見出されるまで仕舞い込められちゃうんだ。

 出会って別れて、出会って別れて。ずっとその繰り返しだった。

 クロコダインだけだったよ。ボクに名前を付けてくれたのは。

 その時なんだよ。ボクが生まれたのは」

 

 「そうか、あの時か」

 おれは幼い日にホイみんに名前を付けたことを想い出した。

 

 「ボクはずっと意志のない道具だった。神様の加護を届けるだけの端末だったボクにクロコダインは名前を付けてくれたね。お話をしてくれたね。ゴハンを食べさせてくれたね。お風呂に入れてくれたね。一緒に寝てくれたね」

 ホイみんの眼に涙が浮かぶ。

 「うれしかったんだ…同じ生き物として接してくれたクロコダインはボクの初めての友達だったんだ。

 ボクは言葉が話せなかったから気を引こうとしたんだ。

 いっぱい、いっぱい気を引こうとしたんだ」

 徐々に言葉尻が強くなるホイみん。

 「いたずら、いっぱいしたよ。いたずらしたら、クロコダインがこっち向いてくれるから」

 鼻声になるホイみん。

 「わるいことも、たくさんしたよ。クロコダインにケガをさせちゃったけど、ケガをしたら治してあげられるから、そしたらクロコダインが「ありがとう」って言ってくれるから、それが…それがうれしかったからっ…グズ」

 

 ホイみんは「ホイミ」をとなえた。

 

 「いっぱい、いっぱい、ホイみ、ヒクッ、したよっ、ヒック」

 しかし、呪文は発動しなかった。

 「どこへ行っても、必ず迎えに来てくれて、ずっと一緒にいてくれて…」

 ホイみんの姿がうっすらと消えていく。

 

 「もう、お別れなのか?」

 びくりと体を震わせたホイみんは関を切ったように泣き出した。

 

 「いやだあああああああっっつ!!!

  別れたくない!!お別れなんてしたくないっ!!

  まだおしゃべり、足りない!!おはなししたい!!

  遊びたい!!! 足りない!!

  居て!!いて!居てえぇぇ!!どこにも逝きたくないいいいっっ!!!

  クロコダイン!クロコダイン!クロコダイイィィン!!嫌だいやだ、イヤだあああ!!!

  いいたいことも、ありがとうも、伝えたいことも、ごめんなさいも!謝りたいことも、たくさん、いっぱい、たくさんあるんだあああ!!」

 

 半狂乱になって叫びだすホイみん。支離滅裂で感情のままのそれは生まれて初めて見る彼の本気と本音だった。

 

 

 「いやだよ…。

 ずっと一緒に居たいよ…。

 いいこになるから、グスン、もうわがまま言わないから。いたずらももうしないから、ヒッグ、心配なんてかけないから…守られないように強く、ヒグッ、なってみせるから…。

 自分のことできるようになるから、ッグゥゥ…お手伝い、ヒッヒクッ、しっかりするから、ウェェ、たくさんするから。おべんきょうも、がんばるからぁっ」

 

 「そうだな、もう少し頑張ってみようか。おれと一緒に修行するか」

 ホイみんを抱きしめるクロコダイン。

 「おりょうりも、習うから、おいしいごはん 作ってあげるから。いっしょにごはん食べたいから」

 「ホイみんの手料理か、楽しみだなぁ」

 「おせんたく、がんばるから、重いおふとんも、一人で、干せるように、がんばるから」

 「そうだな、そのうち力仕事を任せられるくらいになってもらおうか」

 

 「ボクが…ボクがクロコダインのおヨメさんになるから!!!

 ずっと一緒に居てっ、かわいいヨメさんになるからあっっ!!!

 そしたら、そしたら、別れなくてもいいからあああああああっっつ、グスン、うああああーーん!!!」

 

 「俺もだ、おれも一緒に居たい。お前とずっと、ず~~~っといっしょに居たい」

 「うん……う”ん”っ!!」

 

 既にホイみんの体は半分近く消えてしまっていた。

 

 「死んでしまうのか?それとも神様のところへ戻るのか!?」

 「わからない…わからないんだ。『神の標』はたとえ破壊されたとしても神様のところへ還って復元される、でもクロコダインとの思い出がどうなっちゃうかわからないんだ。

 それでも、ぜったい、絶対、ぜ~~ったいに忘れないから!!クロコダインのことはぜったいに忘れないからっ!!!」 

 「おれもだ、ホイみん死んでも忘れるものかよ」

 

 ホイみんの体が消えていく、もう輪郭しか見えない。

 

 「たとえ神様の所へだって迎えに往くさ。そうだろう…お前はおれの…大切な…」

 

 夢のような時間が急速に覚めて行くのがわかる。交わせる言葉は残り少ないだろう。彼らの想いは一つだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「また会おうな、ホイみん」

 「また会おうね、クロコダイン」

 

 再開の約束はなされた。

 もう一度、ホイみんに会うために。

 おれは大魔王をぶちのめすことにした。





次話明日の0:00時頃投稿します


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最終回

 天より数多の流星が降り注いだ。

 その青と金色の輝きは世界中の魔物(モンスター)に二匹のスライムを思い起こさせた。

 そして、その傍らに常に居た獣の王を….

 

 

 「クロコダイン!?」

 

 みな一様に天を仰いで想いを馳せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奇跡が展開されていた。

 

 「ぐわあああーーーーーッ!!!」

 「ぬぐううううっっ!!!」

 

 大魔王の脇腹に肘を落し、裏拳を叩き込む。回転の勢いのまま尾による追撃を掛け…。

 「小賢しいわッ!!」

 躱す為に身を伏せた大魔王を上から踏みつぶした。

 「貴様がなァ!!!」

 

 「すげえ…」

 「あのクロコダインがっ」

 「一方的に殴りつけている」

 あまりの光景に戦慄する勇者たち。

 「こんなバカなことがっ!」

 「うぅっ、あの構えは!?」

 

 大魔王が上下に腕を構える。

 

 「天地魔闘!!!灰になれぃっ!!!」

 

 「小賢しいったろうがァ!!!」

 

 クロコダインは大魔王の奥義を…正面から殴り飛ばした。

 

 「あ…え?」

 「信じられねえ」

 「どういうことなの…」

 「確かに「天地魔闘の構え」は完璧な奥義だ。ならばそれ以上の力で正面から打ち破ればいい」

 

 (あ…有り得ぬっ。この大魔王バーン、天地魔界に敵無しという自負は決して自惚れではないっ!!クロコダイン、こやつには何かある!余の想像を超えた何かが起こっている。それを見極めるのだっ!!!)

 

 大魔王はその全精力を額の『第三の眼』に注ぎ込んだ!

 そして観た!

 彼の、彼等の力の根源を…。

 

 クロコダインが腕を振るう!!彼の背後におおありくいが、アルミラージが、ぐんたいガニが、トロルが、数限りない魔物の生命が拳を振り上げた!!!

 

 「お前に!!この力が解るのか!?」

 バーンは拳でクロスカウンターを合わせるが、クロコダインは力押しで強引に殴って抜けた。 

 

 「お前にッ!!!この力が集うのか!!?」

 バーンの角をふん捕まえて強引に地面に振り下ろした。

 同時に膝を顔面に叩き込む。鼻の折れる音がした。

 

 「お前にいッ!!!!この力が扱えるのか!?」

 がる太が、ざりおんが、オヤカタが、マミさんが、大獣王団が、不死騎団が、氷炎魔団が、数限りない命の衝動が獣王を支えていた。

 

 「何を…ッ!!」

 「これは願いだ!!お前が弱者と断じて捨てたか弱き生命の輝きだッ!!!」

 「魂…願い…そのような得体の痴れぬモノで余を倒せると思うなァッ!!!」

 「やかましいッ!!!一人ボッチの裸の魔王!!!友達100人作ってからモノを言ええぇッ!!!!」

 

 クロコダインの体が輝きを増す。大魔王が最後に見抜いた大いなる光は…。

 光輝くこの大地の雄大なる姿だった。

 

 「お前がッ、生命達の代弁者だというのか!?お前の叫びが、怒りが!意志そのものが!!この地球(ほし)そのものだというのか!!!?

 認めぬ!認めるわけにはいかぬ!!余は大魔王バーンなり!!!」

 

 全暗黒闘気と魔法力が左腕に集中して行く。

 「あれは!?」

 「闘魔最終掌…?でもミストバーンの比じゃねえ」

 「貴様が地球意志だと言うのならば、その肉体ごと滅ぼせば地上破壊は成ったも同然!!!貴様を頼りにする儚き生命共々…いや、この地球(ほし)諸共灰になるがいいッ!!!!」

 「腕を魔法剣の替わりにして攻撃だけに集中するつもりだ!!逃げろおっさん!!!」

 

 「この獣王!!如何なる時も死より背を向けた覚えはないわァッ!!!」

 クロコダインも同じく全闘気を腕に込める。

 「貴様の背に負う神の温室ごと…灰になれえええぇぇぇッ!!」

 大魔王の振り上げた手刀から不死鳥の翼が羽ばたいた!!

 

 「大魔王界焔鳳(バーン・フェニックス)!!!!!!」

 

 「ぐがあああああああああっ!!!」

 大魔王の執念の一撃は地球(ほし)の祈りを獣王の右腕ごと溶断した。

 「たとえ灰になろうとも、キサマだけはブチのめすと誓ったァ!!!」

 だが、ゴメちゃんが繋ぎ、クロコダインに託された想いたちは…。

 

 「獣 王 会 心 撃 ッ ! ! ! ! ! 」

 

 その光を失うことなく、クロコダインの断ち割られた右腕ごと大魔王の眉間に叩き込まれた!!

 

 「大魔王ごときが 獣王に勝てるかああああああっッ!!!!!」

 「うお”おおおおおおおっ!!!」

 『第三の眼』が砕かれ悶える大魔王。

 「俺たちの勝ちだ、バーン」

 「何を……虫の息のケダモノが」 

 「大事な事を見落としているぞ…。真にこの地球(ほし)を担う者はおれではない」

 片腕を落し息も絶え絶えなはずの獣王から発せられた言葉は大魔王にかつてない危機感をもたらした。

 「ま……まさかッ!!」

 「魔王を倒すのは……勇者と相場が決まっているッ!!!」

 身を翻した大魔王の『第三の眼』は観た。デルムリン島が、ロモス王国が、パプニカ王国が、世界中の人々が祈る姿を!!!世界中が命の輝きで満ち溢れ、その儚くとも閃光のような希望達が寄る象徴を!!!

 

 「大魔王ーーーーッ!!!」

 

 大魔王は観てしまった。

 黄金の光と共に勇者に依るレオナ姫を、ポップを、マァムを、ヒュンケルを、地上全ての戦士が彼と共に有りその両脇にバランと人間の女が寄り添う様を。

 先の獣王よりも広大で暖かい陽光を!

 

 「……た い……よ…う !! ??」

 

 彼の名は勇者ダイ!!

 生きとし生ける者全てを照らす光!

 

 「ミナデイン…」

 

 地上全ての希望の勇者!!

 

 「おのれええええええーーーーーーッ!!!」

 「ストラーーーーーーーーッシュ!!!!!」

 

 獣王は勇者の極光を見据え、意識を失いながら勇者の確かな勝利を確信し眼を閉じた。




ぶっちゃけター○ゃんの動物パワー


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ぱっぴーえんど ぐわああああーーーーーッ!!!

おっさんの冒険はこれからだ!




 「ハッ!!!」

 変な夢を視た

 おれが二次小説のオリ主みたくおれTUEEEして大魔王をボコる夢だ。

 ドコの次元の獣王様ですかねえ。おれはそんなカッコよくなんてありませんよ。あれがおれの願望だってーの?ハズかしいいいいーーーー!床をゴロゴロしちゃうーー。現実はそんなご都合主義はないんですよ。

 

 いつしか気を失っていたらしい。触手はその力を失ってぐったりとしている。ホイみんも無事だ。

 「ホイみっ♪」

 能天気にいつものカオをしている。コイツがあの夢の中のホイみんとは到底思えない。

 魔力炉はでっかい目ん玉を閉じてぐーすか寝ている。その傍らで妙な太鼓の音が聞こえる。

 ぼい~~んぼい~~んぼい~~ん。

 「いんや~あ、アブない所だったねぃ」

 彼はドラムというらしい。この男の重力波に助けられたそうなのだが。

 「ちょっとトイレに行ってたら魔力炉が外に触手を伸ばしっちゃってさぁ~~、めんごめんご」

 「ちゃんと管理しろよこちとら消化されそうになったんだぞ」

 「生物の老廃物を餌に魔力を生み出してるからね~命に別状はないよ~。むしろお肌の角質とか落ちてツヤツヤになってるんじゃ~ないかな?」

 「魔王城は老廃物で浮いてるのかよ」

 彼はツッコミを無視してお腹の太鼓をボンボンと鳴らして陽気に語る。

 「大魔王様からアンタらに手出しは無用って言われてるからね~」

 どういうこった?よほど自信があるのか、そも脅威と認定されてないのか?どうも釈然としない。

 「いってらっさ~い」

 ブンブンと腕を振るドラムを尻目に宮殿へ歩を向ける。

 「ホイみっ♪」

 

 …しかし嫌な夢だった。

 ホイみんが大魔王に握りつぶされる夢だったが、あの悲壮感と喪失感は味わいたくないものだ。

 だからこそおれは頑張るしかないんだ。

 「ホイみっ♪」

 …決意を新たにしてるんだから脇の下に滑り込んで卵を仕掛けるのは止めてくれませんかね?ホイみんさん。

 

 

 

 「よくここまで来た獣王クロコダインよ」

 宮殿へ到着早々、いきなり大魔王様が直々にお出迎えしてきました。相変わらずものすごい威圧感である。漏れそう。

 

 「ミストバーンよ、長らく預けていた物を返してもらう時が来たようだ」

 「ハッ」

 え?もう正体明かすの!?気が早すぎるでしょ??

 

 「そしてお前も……よく戻った」

 「ホイみっ♪」

 え?あ、こら待ちなさい。ホイみん行くな!!危ない!!

 

 「かつて、余は自らの体を三つに分けた」

 「は?」

 「魔力と英知を兼ね備えた精神体を本体(ベース)とし、若さと力を分離させ凍れる時の秘宝で封印し……遊び心とお茶目さをホイミスライムとして分離させたのだ」

 オイマテ最後!!?

 

 「永かった…ようやく悲願が叶う」

 「おめでとうございます、大魔王様」

 

 ミストバーンから肉体が分離し(ミスト)は下がって行った。ホイみんと大魔王とその若々しい肉体は重なり合うように光に包まれ、そして…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  真・大魔王バーン(♀)が降臨した。

 

 …………女ぁ??ってそんなことはどうでもいい!!

 

 「ホイみんを返せっ!!!」

 「余がホイみんだ」

 「バカな!!おれ達は生まれた時からホイみんと一緒だったんだぞ!」

 「そうだ、余はお前と共に有ったのだ。ホイみんとしてな」

 あまりのことに頭が追い付いて行かない。リアルメダパニを喰らった様だ。

 「お前の赤子の時のぷっくりとした丸っこい体はなかなかに愛らしかったぞ、そんなお前を魚のエサにして釣竿に括り付けるあたりお前の家族も大概バイオレンスだったな」

 「なんでソレを知ってる!!?」

 「他にもあるぞ。さそりばちに刺された尻の傷はまだ残ってるだろう。それからマッドオックスに引きずらせてぐったりしてた時にきりかぶこぞうに思いっきり股間を強打されてたな、あれはなかなか愉快だったぞ。そうそうあのラドンの巣で昼寝したことががる太との縁だったな」

 「もういい、わかった。黒歴史の開帳はそこまでにしよう。100歩譲ってお前がホイみんだということは認めよう。しかし、一体全体どういうことなんだ?説明してくれ」

 「前世の話になるが世界を破壊せんとした余の野望は獣王クロコダインと竜の騎士(ドラゴンのきし)の前に潰えた。その今際の際にこう思ったのだよ」

 

 「このような結末は認めぬッ!いつか再び相まみえようぞ!獣王!!」

 「お別れなんてイヤだよ…。ぜったいまた会おうね、クロコダイン…」

 

 「余の願いとホイみんの願いが奇しくも重なったようでな。手に付着していた最後の『神の涙』のカケラがその願いを酌んでくれたようなのだ。そして気が付いたとき、余は女として転生していたのだ」

 ん?前世がダイくんと闘った大魔王??ってことはこいつは時間逆行系のバーン様か!??

 「それではお前は大魔王バーンだったのか?」

 答えを聞くのが怖いが問わずにいられない。おれの知っているホイみんは虚像だったのだろうか?

 「是であると共にホイみんでもある」

 ますますわからない。

 「転生した際に互いの意識が融合したようなのでな。まぁ気にせずに今まで道理にホイみんと読んでくれて構わぬぞ」

 なんという超展開か、しかしそれならば見過ごせない事がある。

 

 「お前がホイみんだとしたらなぜこんなことをした!!?地上の侵略、いや破壊などと」

 「ん?余は侵略も破壊もしとらんぞ」

 おおよそ大魔王の言葉とは思えぬセリフが出てくる。

 「世界各地へ侵略の魔の手を伸ばしたろう?ロモス王国もおれに命じて攻めただろう?」

 「お前が踏みとどまって王宮以外無傷よな」

 しれっと返答する大魔王。余裕綽々である。

 

 「パプニカの件は?」

 「ヒュンケルが攻め入る前に裏から手を回して人間は避難させたぞ。あのネガティブイケメンは当時復讐心だけで突っ走ってたからな。先んじて手を回すのは少々手間取ったが、パプニカの神殿に被害が出ただけだろう」

 

 「ベンガーナ、オーザム、リンガイア、カールへは?」

 「各軍団長には指示を出した後待機命令を出したぞ。交戦は一切起きておらん」

 

 「…この戦争の被害者は?」

 「ない!」

 

 

 ガックリと力が抜けるのを感じる。しかし、騙されているんじゃないかと疑い、更に追求する。

 

 「パプニカの町も鬼岩城で壊れたろ」

 「あらかじめ挑戦状を送っといたから。世界首脳部が対処したはずだぞ」

 あの手際の良さはそれが原因か。

 

 「アバン先生は?」

 「生きてたじゃん」

 

 「バランは?」

 「勝手に殺すな。本人聞いたら怒るぞ」

 

 「ええと、ええと、犠牲者犠牲者…そうだ!フレイザードは?」

 「生き返ったよ、ってか生き返らせた。ちなみにテトリスで隣の部屋からメドローア撃ってたのも彼だ」

 「あ、ども~、いろいろあって生き返りました。いやー、大魔王様の命令とはいえ悪役(ヒール)はいろいろキツかったっす」

 ひょっこりと顔を出すフレイザード。

 (一人だけ外道キャラだったフレイザードまで…ッ)

 

 今度こそおれは膝から崩れ落ちた。

 

 

 「おれは…おれはこの地上が消えて無くなるんじゃないかと、みんなが消し飛んでしまうんじゃないかと思っていた。だから、力ではかなわぬまでも未来のために頑張ろうと必死だったのに…」

 涙があふれてくる。これが安堵感から来るのか虚脱感から来るのか失意なのかはわからない。

 

 「それがお前の原点(オリジン)だったな。大切な家族と友達の命を守るという素晴らしく崇高で悲壮な決意だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ全部無駄な杞憂で取り越し苦労だった訳だけどね」

 

 「ぐわああああーーーーーッ!!!」

 人生最大の衝撃にクロコダインは真っ白になった。

 「死んだ?」

 「まだ死んどらんわ!!」

 

 ぎりぎりで踏みとどまって気を取り直す。

 「まだ肝心な事に答えてないぞ!!なぜ魔王軍を結成した!!?」

 「こうでもしないとお前は「ダイの大冒険」のシナリオ道理にここまで来ないからな」

 (ダイの大冒険…シナリオって…まさか…)

 嫌な予感がよぎる。

 

 「この世界にジャンプがあるのは…?」

 「HUN○ER×HUNTERの続きが見たくてな、起業したのだ。初代社長と編集長は余だぞ。ネタは腐るほどあったから原作者はほぼ余であったよ、絵師を育てるのに苦労したがな」

 

 「竜の騎士が妙な特技を覚えてるのも」

 「5代くらい前だったかな?竜の騎士は呑み込みが早かったなー」

 

 「マジンガ様が居たのも」

 「ドラクエⅥは名作だったな。頑張って性能を再現したよ」

 

 「鬼岩城を量産して合体させたのも」

 「合体ロボってロマンだよねっ。いや~人類側が不公平だと思って『破邪の洞窟』に色々とアイテムをバラ撒いておいたらアバンあたりが有効活用すると思ったけど、まさか巨大ロボットの設計図を製作するとはね~。うれしい誤算だったわ」

 「ってことは『ミエールの眼鏡』もお前の仕業かあああ!!!」

 

 事ここに来てようやくおれも確信が持てた。

 「お前も…おれと同じッ!!」

 「そう余が原作知識を下に仕組んだのだ」

 荘厳な態度をかなぐり棄て不敵に嗤う大魔王。只のドヤ顔である。

 

 「お前が転生者だったからかあああああああああ!!!」

 

 「正確にはバーン(♂)→現代人→バーン(♀)だね。キミと同じく」

 「へ?」

 「キミは間違いなくボクの待ち望んだ獣王クロコダインさ」

 大魔王の一人称が変わり、声のトーンも高くなる。雰囲気が若干和らいだ気がした。

 「いや、おれはしがない元一般人の転生者だぞ?お前が知っている前世とやらのクロコダインとは別人のハズだが何を根拠に??」

 

 彼女は額の『第三の眼』を指して言った。 

 

 「魂が観えている。間違いなくキミはあの獣王クロコダインなのさ。ついさっき夢で教えてあげただろう?この世界に輪廻転生するのは定められた運命だったのだよ」

 「ほげえええええええ!!?あのおれTUEEE系オリ主ダインがおれの前々世ぇ!!?」

 「ま、ボクの方がだいぶ先に生まれ落ちたのでキミが現れるまでの暇つぶしに世界中で色々と仕込んでおいたけどね」

 

 「その結果世界をメチャクチャにしやがって!!」

 「そうでもないよ、これでも随分と世界平和に貢献してるつもりさ」

 さらりと切り返す大魔王。

 

 「荒れ果てた大地は?」

 「それ大部分がパパンのせいだと思うんだけどな。でもボクの超魔力でそーれこの通り」

 大魔王はパルプンテを唱えた。

 天空から流星が降り注いだ!

 大地は穴だらけになった。

 「ああああああああああああああっ!!!」

 「おっと間違えた」

 大魔王はパルプンテを唱えた。

 時間が逆戻りした!

 荒れ果てた大地が元に戻った。

 「ついでにアルキード王国も元に戻しといたよ」

 クロコダインはずっこけた。

 

 「気になってたけど…黒の結晶は?」

 「そんな物騒なもんハナっから作る訳ないでしょ」

 

 「魔界はどうなった?」

 「今じゃ人工太陽がさんさんと降り注ぐ楽園(ユートピア)だぞ、今度観光にくるかい?」

 「原作最大の環境問題を解決したってのかよ…。」 

 「現代知識チートでNAISEIしたからね。大丈夫だ問題ない」

 (一度失敗作の人工太陽を竜の巣に放り込んだけどね)

 

 「ヴェルザーはどうなった??」

 「オメガルーラで異次元に飛ばしたよ」

 「…………」

 「質問終わり?もう何も問題ないよね」

 

 

 「これは……これだけは言っておきたい」

 「ん?何だい??」

 「お前は世界の歪みだ!混乱と混沌をを生み出す権化だ!!」

 「あっはっは♪でもおかげでキミはここに来てくれた」

 「なんだとう!?」

 「決まってるじゃないか。大魔王として世を席巻すれば必ずキミはボクの前に立つだろうさ」

 さも当然と言わんばかりに胸を張り…。

 「そして、再開したのなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   おヨメさんにしてくれるんでしょう」

 

 バーンのしなだれかるこうげき。

 クロコダインの時は止まった。

 

 「永かった…ようやく同じ時を歩めるわ。余の…いいえ、ボクの人生はここから始まるんだ。これでずうっと一緒だよ♪」

 

 事ここにきて俺は魂で理解できた。こいつは紛れもなくあの「ホイみん」なのだ。わがままで、いたずらが大好きで、気分屋で、いじわるで、そのくせ人一倍あまえんぼで、さみしがり屋の。

 そう思えばこれまでの大魔王の奇行も腑に落ちた。

 だから俺は…。

 

 「わかった。ずっと一緒に居よう」

 

 今の大魔王(ホイみん)を受け入れた。

 

 

 「ええ、死が二人を分かつまで。いいえ、死んでも(転生して)一緒よ」

 「あ、やっぱ早まったかも」

 

 「おめでとうございます大魔王様」

 「ようやく本懐が叶いましたな」

 「式の仲人はワシに任せてもらうぞい、キィ~~~ヒッヒ」

 「わーい、ケッコンだーケッコンだー。おっめでとー」

 「お喜び申し上げます大魔王様。うん、今日くらいはいくらでも囃し立てて良いからね、ピロロ」

 いつの間にか魔王軍の重鎮が祝辞を述べに出てきました。

 

 「ありがとうっみんな。ボクおヨメさんになりますっ♪」

 

 

 

 「これにてハッピーエンドだね」

 「いいのかなーこれで??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「遂にたどり着いたぞっ!!」

 勇者ダイとその一行があらわれた。

 やべ、すっかり忘れてたわ。

 みんな小麦粉や卵まみれで頭にコブを作ってるメンバーもちらほら居ます。脚にトラばさみとか服にゲジゲジとか装備品に痛々しいアクセントが増えてますね。

 アフロヘア―のラーハルトが目に付きます。彼をハメる罠ってガチすぎるでしょう…。恐るべしキルトラップ。

 

 「よくもあんなエゲつない罠を仕掛けやがって…」

 「絶対に許さねえぇ…」

 ひええ皆さん殺気立ち過ぎィ。

 「おかしいな、キル(しない)トラップは解除したハズなのに…」

 首を傾げるキルバーン。

 「あ、再起動したのはボク♪」

 「何やらかしやがるか大魔王!!!?」

 「だってその方が面白いっしょ♪」

 「この性悪魔族がぁ!!!」

 

 「大獣魔王クロコダイン様!バーン様が腰痛で倒れた今、最早これまでです。貴方様の力をお示しください」

 こらおれの後ろに隠れて大魔王オーラを出すんじゃない。ああっすさまじい暗黒闘気がおれの後ろでっ!!

 

 「お前が黒幕だったのか!!大魔獣王!!!」

 ダイくんが剣を抜き放って吠えます。

 あちゃー、やっぱり勘違いされてる。

 

 「うおおおおおお!!!喰らえっ!!!おれの培った全ての力をっ!!!!」  

 

 ああ、いつものパターンだコレ。

 「こうなるように大魔王パワァーで誘導してたんだけどね」

 「魔力を盛大に無駄遣いすんじゃねーよ根源的邪悪生命体があああ!!!おのれホイみ”ん”ーーーーー!!!!」

 

 

 

 「100倍ギガストラーーーーーーッシュ!!!」

 

 

 

 「ぐああああーーーーーッ!!!」

 「ホイみっ♪」

 




犠牲者ゼロの完全無欠のハッピーエンド!!


Q.その後のおっさんはどうなったの?
A.美人でいたずら好きの女魔王と結婚して末永く幸せに「ホイみっ♪」されましたよ。



ご愛読ありがとうございましたアアアァァァァッ!!!!
終わりィッ!!!!!


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