命蝕龍伝記 (柴猫)
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序章
誕生


2017年12月27日 修正


 

 

 

禁足地にて一個の黒い卵がある。この卵を産んだモンスターはわからない。なぜここにあるのかもわからない。何の生物もいない禁足地にポツンと置いてある卵だ。

 

と、黒い卵が不意に揺れた。わずかだが、確かに揺れた。また揺れる黒い卵。今度は卵の殻にひびが入った。そしてそのひびを中心にひびは卵全体に広がり、やがて

 

パキ

 

卵の殻の一部が割れ、破片が落ちた。また殻が割れ、破片が落ちる。卵が完全に割れ、中から出てきたのは

 

 

黒触龍  ゴア・マガラだった。

 

 

だが、ただのゴア・マガラではなかった。

全体的に赤い鱗でおおわれており、尻尾は生まれたばかりだというのに鋭利な棘が生えている。

そして最大の特徴は、本来のゴア・マガラにはない、目があるということだ。右目しかないのが不思議だが、通常のゴア・マガラではない事は確実だ。

 

そのゴア・マガラは、生まれたばかりで空腹なのか、目の前の植物に駆け寄っていく。ゴア・マガラは肉食なのだが、禁足地にはなく、食べれそうな植物を食べようということなのだ。

最初に食べ始めたのは、青い実。ハンターなら知っているであろうウチケシの実である。あらゆる属性やられを治す不思議な実で、狂竜症予防にも効果がある。

だが気に入らなかったらしく、食べるのをやめてしまった。

 

次に目を付けたのは、橙色の実。忍耐の種である。食べると防御力が上がる種で、防御力ダウンを治す効果がある。

食べると、鱗につやが出てきて来た。当のゴア・マガラは気づいていないようだが。

 

そして、今度は赤色の実に目を付ける。怪力の種だ。食べると攻撃力が上がる種で、忍耐の種とは反対の効果がある。

見た目は特に変わっていないが、ふと歩いてみると、フラフラだった歩き方が、今はしっかり歩けている。怪力の種の効果が反映されたようだ。

やがて、空腹が満たされたのか、その場で寝てしまった。

 

 

 

 

--翌日

 

赤いゴア・マガラは目の前にある物を見ていた。

 

生物の骸らしきもので中央の岩より大きいサイズだ。形はゴア・マガラと同じだ。

しばらく眺めまわしていると骸の胸に光るものがあった。

近づくとそれは七色に光る玉だった。太陽の光に合わせて赤、青、黄色と光っている。

 

人間ならばレアな物として持ち帰るだろうが、ゴア・マガラはモンスターだ。ゲリョスならばコレクションとして大事にしたかもしれないが、そのような考えはなかった。

 

ーなんだこれ?食べちゃえ。

 

人間の言葉に直したのならこうだろう。

ゴア・マガラは七色に光る玉を丸のみしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

直後、脳裏に閃光が走った。

 

 

人間が兵器を使って竜たちを殲滅し

 

 

龍は自然の力を使い人間の兵器を破壊し

 

 

黒き龍が舞い降りて

 

 

大地は血の海となり

 

 

暗雲が立ち込めた空から光が差し

 

 

 

光る龍が大地を照らした。

 

 

 

 

 

 

 

ゴア・マガラは驚き、骸から数歩後ずさる。

今の記憶が何なのか見当もつかなかった。生まれて初めての恐怖というものを味わった。

 

早くここから離れようと翼を広げ、飛ぶ。が、運悪く強い風が吹いた。生まれたばかりのゴア・マガラは体勢を崩してしまい、そのまま風に吹かれて

 

 

 

目の前の木の蔓に激突した。

 

 

 

 

目を覚ますと禁足地ではない場所にいた。

 

赤い箱と青い箱が並べられ、布が敷かれた場所だった。

 

ここはどこだと脳裏によぎったがそれよりもあの場所から逃げられたということが分かり安堵した。もうあの場所に行くことはないだろう。

 

状況を把握すると、どうやら何もいないらしく風が吹く音だけが聞こえる。

 

目の前には高い山がそびえたち、そこへ続く道があった。

 

どうしようかと頭を使う。ここはあの場所からあまり離れていない。あの場所は近寄りたくない。

ここも今は誰もいないがここを住処とする動物がいるはずだ。見つかればどうなるかわからない。

 

 

そう結論付けた赤いゴア・マガラはゆっくりとした足取りで、天空山へ歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

これが、大いなる物語の最初の一ページであることは誰もまだ知らない。

 

 




どうも、作者の柴月です。
どうでしたか?楽しんでいただけたら幸いです。

感想、評価等お待ちしております。


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天空山へ

最近暑いですね。クーラードリンクが欲しい…


本編どうぞ。
2017年12月28日 修正


 

不安定な足場を進んでいくと、少し開けた場所に来た。

天空山の1番エリアである。大抵全てのマップの1番エリアには特に何もないのが一般的で。

 

 

故に1番エリアにいるのはケルビの群れだけだった。

 

赤いゴア・マガラが現れるとケルビたちが一斉に警戒する。

本来ならば逃げ出すのだが、小さいからか少し余裕があるのだろう。

 

 

 

まあ、当人(竜)は気づいていないが。

 

そんな紅いゴア・マガラを見て警戒する必要がないと見たのか、食事に戻るケルビたち。

 

 

一方、赤いゴア・マガラは枝にある黄色っぽいものを見ていた。

 

駆け出しハンターが取るハチミツである。回復薬と調合すると、回復薬グレートができる調合素材で、ハンターなら誰しもとっている重要な調合素材である。

 

そんなハチミツをまじまじと見ている赤いゴア・マガラ。下に垂れている蜜を、試しにと舐めてみる。当然甘い。

そんなハチミツを気に入ったのか、今度はハチの巣にかぶりつく。そのままハチの幼虫ごと食べる。(なお、現実でもハチの幼虫は食べられるそうです。)

 

ハチの巣を食べ終えた赤いゴア・マガラはその場で丸くなって眠る。禁足地で種を食べた時と同じである。何か食べると眠くなると体質なのだろうか。

よくもまあ堂々と寝れるものだ。いびきをたてながら気持ちよさそうに寝ている。

 

 

すぐにハチたちの反撃を受け逃げて行ったが。

 

 

その様子を見たケルビが少し笑っていたのは気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

空中に浮かぶ気球がそんなほほえましくもしかし驚きの光景を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

その気球から足に手紙を付けた鳥が遥か彼方の地を目指して飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

観測隊からギルドへ

 

天空山の調査中、赤いゴア・マガラを発見しました。

今のところ目立った影響は出ていませんが、生態は依然不明。

狂竜ウイルスによる影響が出る可能性があるので至急対応をお願いします。

なお、天空山に火竜の雄と雌が巣を作った模様。そちらもあわせて対処をお願いします。

 

 

ギルドから観測隊へ

 

了解。

赤いゴア・マガラについては、シナト村の古文書から千年に一度のみ現れる命蝕む災禍と呼ばれるゴア・マガラである事を確認。

ハンターズギルドはこの個体をディア・マガラと名付けました。

危険度不明なため天空山には限られたハンターのみ入れるように制限。

ディア・マガラの調査にはギルドナイトを一名送ることを決定。そちらへ向かわせています。

火竜と雌火竜については付近の住民に天空山に近づかないようにし、今後の動きについて定期的に報告をお願いします。

 

 

観測隊からギルドへ

 

了解しました。

飛竜たちは巣に卵を産んだ模様。さらに気性が荒れると推測されます。

ディア・マガラには変化はあまり見られません。

ですが、最近天空山のモンスターの気性が荒くなっています。

ディア・マガラの調査に来るギルドナイトに報告をお願いします。

 

 




随分強引な展開ですね。私が言うのもなんですが(笑


感想、お待ちしております。


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ギルドとディア・マガラ

2017年12月29日修正


~ギルド~

 

 

 

「全員集まったようじゃの。では、会議を始める。」

 

会議室には、ギルドの幹部が険しい表情を並べていた。

今回の会議は緊急会議で、突然大きな問題が発生した時に行う会議である。

 

 

緊急会議が開かれる理由となったのは、天空山に現れたある竜についての会議である。

 

 

「今回集まってもらったのはほかでもない。件の赤いゴア・マガラ……ディア・マガラについてじゃ。」

 

ディア・マガラ

天空山に突如として現れた謎の竜。

黒触龍に似ているが、全く違う点があるというらしい。

 

会議を仕切っているのはギルドマスターのガルバという老人である。見事なあごひげに高級そうなギルドマスターの服を惜しげもなく着ている。

 

「アルア、資料を読んでくれ。」

 

紹介が遅れたけど、私の名前はアルア。

最近幹部になったばかりの新入りだ。初めての会議が緊急会議だとは思ってなかったけど。

 

「わかりました。」

 

机の上に置いてある資料を読み始める。

 

 

~説明中~

 

 

「以上です。」

 

読み終えると早速意見が出た。

 

「通常の黒触龍より体色が赤く、右眼があるとのことですが、体色は食生による変化ではないのでしょうか。」

 

「対象の個体は生まれた時から赤かったというので食性による変化は考えられないと思います。」

 

「狂竜ウイルスを扱わないのは右目があるからだろうな。逆に言うと右目しかないのが気になるが…。」

 

「最大の疑問は卵から生まれたということです。」

 

そう。

本来ゴア・マガラは、天廻龍の狂竜ウイルスが他のモンスターへと感染し、感染した生物が死にそこからゴア・マガラが生まれるのが普通なのだ。

 

が、ディア・マガラは多くのモンスターと同じ卵で生まれてきたというのだ。

このことから、ギルドはディア・マガラを黒触竜とは別種であることを認定し今回の会議が開かれたのである。

 

「ともかく、別種であることは明確だ。これからディア・マガラをどう呼ぶかだな。」

 

「体色が赤いので、紅触竜でどうでしょうか?」

 

幹部の一人がギルドマスターに提案する。

 

「うむ、そうしよう。」

 

ギルドマスターが承諾し、全員に振り返る。

 

「今回の会議の結果、ギルドは赤いゴア・マガラを紅触龍 ディア・マガラと呼ぶことに決定した。観測隊からの情報、または今向かわせているギルドナイトの情報を待つ。なお、この件については公式には公表しないものとする。

 

ギルドマスターが席から立ち上がり

 

「これにて会議を終了する。」

 

全員が立ち上がり会議室から出ていく。私も会議室から出ていく。

 

 今はまだだけど、いつか、この手で

 

全ての黒触竜…いや、狂竜ウイルスそのものをこの世から消すのが私の目的

 

ディア・マガラもあいつらと同じに決まってる。

 

狂竜ウイルスを使わないから被害が出ない?それは狂竜ウイルスの恐ろしさを知らないやつが言うことだ。

 

あの悪魔の姿をしている奴が無害なはずない。

 

 

どのみち消すことには変わりない。

 

そう心で思いつつ私は自室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ。やはりあやつは使えそうだ。」

 

その言葉を聞いた者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

壁から不気味に覗く目を除いては。




アルア  17歳
身長170センチ

過去に黒触竜に恨みがある模様


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空を飛ぶ竜

さあ、あの夫妻が登場です!






本編どうぞ。


ディア・マガラの存在がギルドに発覚して一週間後、

 

 

当の本人(竜)はというと、

 

 

 

 

 

 

エリア7で寝てた。

 

 

が、よく見てみるとケルビより一回り大きかった体格が、今はアオアシラ並みの体格になっている。

 

尻尾の棘は鋭さを増し、鱗も生まれたばかりとは一目瞭然で強度を増しているのがわかる。

 

 

あれから、初めてガブラスを飛んで狩ったり、エリアに生えているキノコを片っ端から食べつくしたり(毒キノコにあたって苦しんでいたが)

 

 

など、この一週間で様々な経験をしてきたが、中でも特に大きかったのが、

 

 

 

 

 

 

エリア7の入り口からアイルーがディア・マガラに向かって飛んできた。

 

そしてそのまま両者がじゃれあい始める。

 

 

 

そう、アイルーとの共存である。

 

 

実は、アイルー達が増えすぎたガブラスに困っていた。そこで、ノラオトモがガブラス討伐に立候補したのだがガブラス達に囲まれてしまい、あわやというところでディア・マガラが飛んできて、九死に一生を得た。

 

その当時ディア・マガラの好物の一つがガブラスだった為、アイルーたちはディア・マガラと共にガブラスの討伐をし、見事成功。

 

 

その後、なんだかんだあって今のような関係になり、共存しているのだ。

 

 

ちなみに今じゃれているアイルーが、ディア・マガラが救ったノラオトモで、ディア・マガラを慕っているそうな

 

 

その後しばらくじゃれあっているとエリア1のほうから、

 

 

 

グワァァァァァァァァァァァァァァ

 

 

 

 

咆哮が聞こえてきた。

 

両者はじゃれあうのを辞め、咆哮が聞こえたエリア1のほうへ目を向ける。

 

しばらくして顔を見つめあうと、ディア・マガラの背中にノラオトモ(名前はマニーという)が乗りエリア1へ向かう。

 

なぜ、マニーがディア・マガラの背中に乗れるのかというと、ディア・マガラが単にアイルー達に乗られているのが慣れているからである。

 

何があったのかと急いで向かう一匹と一頭

 

 

 

 

向かう先が天空の王者のもとだとは知らずに

 

 

 

 

~~エリア1~~

 

咆哮の正体がいると思われるエリア1へ着いたマニーとディア・マガラ。その視線の先にいたのは

 

 

 

 

赤い甲殻に、黒い縦じま。横と縦に生える尻尾の棘

 

模様が入ったその竜を象徴する立派な翼

 

 

火竜  リオレウス 天空の王者と呼ばれる飛竜である。

 

マニーは、仲間のアイルー達からしか聞いたことがない飛竜に出くわし怖がっていた。

 

一方のディア・マガラは、臆することなくリオレウスをにらんでいた。

 

が、リオレウスはマニーとディア・マガラを一度見た後、仕留めたケルビを足でつかみ巣へ帰って行った。

子育て中のこの時期に襲われなかったのは幸いだ。マニーはディア・マガラの背中から降り安心しきっている。

 

 

だが、ディア・マガラは飛び去るリオレウスをじっと見ていた。

 

 

ーもっと強くなろうー

 

 

何故かそう心の中で思ったディア・マガラであった。

 

 




二千字超えたい(´・ω・`)



感想お待ちしております。


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邂逅

前回前書きに夫妻出ると言っていましたが、夫のほうしか出なかった事について

大変申し訳ございませんでした。

今後はこのようなことがないように気を付けます。


本編どうぞ。


~~シナト村~~

 

 

 

「あそこが今回の目的地ね。」

 

双眼鏡をのぞきながらつぶやく。

 

 

 

私はギルドナイトのラミス。ギルドの命令を受けてここ天空山に来た。

 

 

なぜ私が天空山に来ているのかというと、あるモンスターの調査を頼まれた。

 

 

調査するモンスターは、最近発見…というより産まれたばかりの新種モンスター

 

 

紅蝕竜ディア・マガラだ。

 

 

ディア・マガラは、シナト村の古文書に記されてある‘命蝕む災禍‘と呼ばれる龍と関係がある可能性があるとギルドが考え、調査のためにギルドナイトを派遣した。

 

で、派遣されたのが私ということだ。私も天空山に来るのは初めてなので、少しワクワクしていた。

 

 

紅蝕竜は、ゴア・マガラと酷似している姿と聞いたとき少し複雑な気持ちになった。

 

 

私よりアルアの方がその気持ちは強かったと思う。何年も過ごしてきた仲だからわかる。あの子だから別種と判断しても危険と分かれば自分で狩るでしょう。

 

 

あの子の気持ちはよく分かるけど、それでもって気持ちはある。

 

 

とにかく私は調査の結果を正直に言おう。危険なモンスターなら狩らなくちゃならないし。

 

 

 

意を決し、私は天空山に足を踏み入れた。

 

 

 

 

~~天空山~~

 

 

天空山に入って15分後。一向に見つからない。

 

 

もうほとんどのエリアを探したのだが、痕跡すら見当たらない。本当に天空山にいるのだろうか。

 

私はポーチから一つのビンを取り出した。

 

千里眼の薬と呼ばれるものだ。飲むと大型モンスターの位置が短時間だがわかるという薬だ。

 

 

これでディア・マガラの位置を探ろうというわけだ。もし反応がなければ、天空山にはいないということになる。

 

いなかったらどうしようと考えたが、そんな事も言ってられない。思い切って飲む。

 

すると、エリア8から気配を感じた。今繫殖期の火竜の夫妻だろう。リア充爆h…。

 

気を取り直して別の気配を探す。すると違うエリアから気配がした。そのエリアから別の気配、しかもかなりいる。

 

 

 

 

警戒しつつそのエリアに向かうとアイルー達がいた。一瞬安心したが、すぐに気を取り直す。すると、奥から何かがやって来た。

 

 

アオアシラ並みの体躯で見た目は完全にゴア・マガラだが、赤い体色、尻尾に生える鋭い棘、そして、ゴア・マガラにはない、右眼が最大の特徴だろう。

 

「ディア・マガラ……!」

 

探していたモンスターだ。が、完全に見つかってしまった。これでは調査に支障が出る。

 

と思った瞬間、アイルー達がディア・マガラに近づいて行った。思わず呼び止めよう声を出す直前、

 

 

 

 

ディア・マガラにアイルー達が飛びつきそのまま互いにじゃれ合った。

 

 

「え?」

 

あまりの出来事に思わず声を出してしまう。その場から動けずしばらくすると、アイルーの一匹がこちらに気づいた。

 

それにつられてほかのアイルー達が気付きこちらを見た。

 

「誰ニャ?」

 

最初にこちらを見たアイルーが問いかける。と、じゃれるのに夢中になっていたディア・マガラも改めてこちらに振り返る。

 

「あ…えっと……」

 

返答に困っていると、一匹のアイルーが察したように言う。

 

「こいつかニャ?」

 

とディア・マガラを指して言う。

 

「まあ…そうだね。」

 

「触ってみるかニャ?」

 

「え…?」

 

予想外の問い返しに唖然とする。

 

「それは…つまり…」

 

「言葉通りニャ。」

 

しばらくの沈黙

 

「でも…」

 

「大丈夫ニャ。こいつ大人しいからニャ」

 

「いやそういう事じゃなくて…」

 

ディア・マガラを見てみると、不思議そうにこちらを見つめていた。

 

「いいの?」

 

「保証するニャ。」

 

恐る恐る触ってみる。ディア・マガラも鼻先を擦り付けてくる。

 

なぜか変な感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

この感じが分かる時がいつか来る事を知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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狡猾な者達

……。(特にない)





本編どうぞ。


その後、アイルー達の集落へ案内されディア・マガラの生態などを話してもらえる事になった。

 

 

まず、ディア・マガラの性格は大人しいとの事。

餌をとる時以外はあまり戦闘はしないらしい。そして好奇心が旺盛で、見たことのない物に興味を示す。話されてるときも私のアイテムポーチをいじってた。何とか取り返したけど。

 

次に食性。肉食のゴア・マガラと違って、ディア・マガラは雑食性だという。植物やキノコ、虫などを食べる。肉も食べるらしい。

そして結構な大食いだという。イビルジョー程ではないし、雑食なので付近のモンスターを食べつくしたりはしないという。

 

 

そして、アイルー達も驚いた生態があるという。それは集落の長アイルーに「見た方が早いニャ。」と言われた。

 

すると、一匹のアイルーがディア・マガラの前に薬草と、アオキノコを置いた。

 

一体何が始まるんだろうと考えていると、ディア・マガラが薬草とアオキノコを前足で混ぜ始めた。少し経つと緑色の液体ができた。それをアイルーがすくい、こちらに渡してきた。

 

それをもらい舐めてみると、飲みなれた味がした。

 

「回復薬!?」

 

ハンターであれば誰でも世話になる回復薬。私も数え切れないほど飲んだ味だが、今はそんなことはどうでもいい。

 

モンスターが回復薬を調合したことに驚きを隠せないでいると、長のアイルーが話しかけてきた。

 

「集落のアイルーが回復薬を調合していると、それを見て真似し始めたのですニャ。」

 

「これは教えたりせずに、ディア・マガラ自身が?」

 

「そうですニャ。」

 

「信じられない…。」

 

「私も初めて見たときは、目を疑いましたニャ。」

 

自身が調合した回復薬を舐めているディア・マガラを見る。

ディア・マガラの知性は、他のモンスターとは比べ物にならないというのか。頭がいいイャンガルルガでさえもはるかに凌駕するその知性。

 

もしかしたら、ある意味ではイビルジョーを超えるのではないか。

 

そう考えていると、一匹のアイルーが駆け込んできた。

 

「大変ニャ--!]

 

「どうしたのニャ?」

 

「イーオス達が仲間を襲ってるニャ!早く助けニャいと仲間が危ないのですニャ!」

 

「ニャンと!早く助けニャいといけないニャ!誰か助けに行けるかニャ!?」

 

「長さん、私が行ってきます。」

 

「ニャ!?で、でも」

 

「大丈夫です。すぐに帰ってきますから。」

 

「……分かりましたニャ。よろしくお願いしますニャ。」

 

長アイルーのその声を聞くなり駆け込んできたアイルーに連れられて走り出した。

 

 

 

こちらを見るディア・マガラに気づかずに

 

 

~~~~~~~~~~

 

しばらく走っていると、前から一匹のアイルーがこちらに向かって走ってきた。

 

 

 

そして、後ろから追ってくる赤い体色に黒いまだら模様のイーオスの群れ達。

 

 

 

その群れを率いるイーオスより大きい体躯のドスイーオスも




高い知性ってある意味最強のチートだと思うんだよね





ではまたいつか


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赤と紅の交錯

戦闘描写だ~~~~(不安しかねえ)


目の前に迫ってくるイーオスの群れ。

 

 

そしてイーオスの群れから逃げる、アイアン装備のアイルー。

 

 

迫ってくるイーオスの数をざっと数えてみる。が、数えてみて後悔する。

 

 

 

なぜなら、あまりに多いからだ。普通のイーオスの群れの二倍近い数がいる。

 

 

その群れを率いるドスイーオスには体に嚙まれたような跡がくっきり刻まれている。

 

なんとなく予想はつくが、今はそれどころではない。問題はどうやって対処するかだ。

 

 

この数ではこやし玉を投げても意味はないに等しい。武器を取って狩るという方法もあるが、狩猟依頼が出ていないため狩ってしまうと違法になってしまう。そもそもこれだけの数のイーオスの群れがいれば、狩猟依頼が出るはずだ。これだけの群れがなぜ発見されなかったのかが疑問だが、それよりも今の状況をどうやって切り抜けるかが先決だ。

 

「助けてニャーーー!」

 

追われているアイルーがこちらに逃げてくる。

意を決し、背中に背負った太刀を手に取り抜刀しようとした時、

 

 

 

 

 

空から紅い影が飛来した。

 

 

 

 

 

突如飛来した紅い影に驚くイーオスの群れ。

 

その紅い影の正体は

 

 

 

ディア・マガラだった。

 

「え!?」

 

「「ニャ!?」」

 

驚いたのはこちらもだった。

 

この場で驚かなかったのはドスイーオスのみだった。ドスイーオスはディア・マガラに向かって威嚇をした。

 

それに感化されたのか、他のイーオス達もディア・マガラを取り囲いはじめた。

 

戦況は明らかにディア・マガラが不利だった。

 

周りをイーオスの群れに囲まれ、正面にはドスイーオスがいる。

 

 

が、圧倒的に不利なこの状況でもディア・マガラは威嚇もせずドスイーオスを見つめている。

 

それを好機と見たのか、真後ろにいるイーオスが飛びかかった。

 

 

だが、翼脚に薙ぎ払われってしまい、周囲の仲間に突っ込んだ。

 

それを機に周りのイーオス達が一斉に飛びかかる。

 

即座にディア・マガラが飛び、イーオス達の飛びかかりを回避する。

 

 

そしてそのまま、ドスイーオスに飛びかかる。

 

暴れて引き離そうとするドスイーオス。が、ディア・マガラは必死にしがみつきドスイーオスの嚙まれた跡に思い切り嚙みつく。

 

苦しそうに身をよじらせるドスイーオスを助けようと、周りのイーオス達がディア・マガラに向かって毒液をかけようとする。

 

 

すると、ディア・マガラがドスイーオスを嚙んだまま飛び、イーオス達の毒液を躱した。

 

そのままドスイーオスを地面に叩き付ける。そこへディア・マガラがドスイーオスに落ちていく。

 

 

 

ピクリとも動かなくなったドスイーオスにイーオス達が駆け寄ってくる。

 

が、ディア・マガラがドスイーオスを翼脚で持ち上げ、血まみれになったドスイーオスを持ち上げる。

 

変わり果てたリーダーの姿に怯えるイーオス達。

 

ディア・マガラがドスイーオスを放り投げ、何故かこちらを見た。

 

目の前で起きた事に信じられず、見ているとディア・マガラが翼を広げ、どこかへ飛び去っていった。

 

 

情報の整理に頭がついていけずイーオスの群れが退散していくのも意識しないまま、ただ飛び去るディア・マガラを見ていた。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

竜の巣にて。

 

 

リオレウスとリオレイアが互いに生まれたばかりの我が子を舐めていた。

 

生まれた子供は三匹だったが、一匹だけほかの二匹とは違う銀色だった。

 

しかしそんな事は気にせず自分の子として見ていた。

 

その銀色のリオレウスが見たのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕陽に向かって飛ぶ紅い影だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




相変わらずの駄文……。




ではまたいつか。


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新たなる地へ

投稿ペースの維持が大変…





どうやったら一万字とか行くんだろう。


天空山を旅立って一週間後。

 

 

 

ディア・マガラは空を飛んでいた。

 

何故ディア・マガラが急に天空山を飛び立ったのか。あそこは共存出来るアイルー達がいて、一番安全な場所だというのに。例外もあるが、普通のモンスターなら暮らしやすい場所を巣にして生きるものだ。

 

だが、彼(?)の理由は単純な物だった。

 

 

 

 

 

 

~~~強くなる~~~

 

 

 

 

初めにそう思ったのはリオレウスと会った時だ。

 

ディア・マガラは、リオレウスの王者の風格に魅力のようなものを感じていた。

一目見ただけで強いと確信できる強者の存在感。

 

 

 

自分もああなりたい。そう思ったのである。

 

そして、イーオスの群れとの戦闘によりその思いは確実となった。

 

 

あの時ボスのドスイーオスは、リオレウスに比べれば歯もたたないだろうがそれでも十分に強いものだ。

 

そのドスイーオスに刻まれた嚙み跡は、リオレウスを超える強者がつけたものだろうとディア・マガラは感じた。

 

今の自分ですら敵わないリオレウスを、さらに超えるモンスターがいることにディア・マガラは、普通のモンスターであれば微塵も思わない感情を持ったのである。

 

 

 

 

 

 

それは憧れである。

 

 

見たこともない圧倒的な強さの持ち主が、この世界の何処かにいることにディア・マガラは憧れた。

 

そんなモンスターと戦ってみたい。

 

その為には、もっと強くなれなければ一瞬でやられるだろう。

 

 

 

 

だから強くなる。

 

 

強くなるには色んなモンスターと戦っていくしかない。だから、天空山を出て各地を回ることにしたのだ。

 

 

普通のモンスターならこんな感情にはならず、こんな行動をすることもないだろう。

 

ただあくまで普通であればである。ディア・マガラの、人間にも劣らない知性が引き起こした結果だ。

 

 

 

しばらくすると、地上に何か石でできたものが大量に見えてきた。

休憩出来そうな場所を見つけ、そこへ降りていくディア・マガラ。

 

そこで見たものは、

 

 

 

 

 

立ち並ぶ遺跡群

 

そのむこうに見える広大な平原

 

そこで生きる様々なモンスターたち

 

遺跡平原

そこに一頭の紅い竜が降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃ギルドではディア・マガラの調査に出ていたギルドナイトが帰還し、調査結果を伝えていた。

 

ギルドの幹部たちは信じられない表情をしていたという。

 

さらに観測隊からの報告でディア・マガラが遺跡平原に降りたという報告が入った。

 

遺跡平原はハンター初心者も来るのでより一層ディア・マガラの動向について警戒するという。

 

その報告を聞いたギルドの幹部の一人は遺跡平原へ生態系の調査に出かけるといって、遺跡平原へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その幹部の目は獣のような眼光をしていたという。

 




走り書き……。





ではまたいつか


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忍び寄る怨牙と強者

タイトルでバレバレですね…。




本編どうぞ。


ディア・マガラが遺跡平原に来て四日後。

 

 

 

 

アプトノスの肉が気に入り、絶滅しない程度に狩っていき。

 

 

 

ドスジャギィの群れを不意打ちでほぼ全滅させ。

 

 

 

 

 

 

 

のびのびと暮らしていた。

 

今はエリア7の一番上の場所を住処としている。

吞気にそこら辺を歩いていたクンチュウを食べていた。

 

ドスジャギィを狩ってから、自分を狩ろうとしているモンスターが居なくなったのが原因だろう。一応イャンクックがいるが臆病な性格なので、ディア・マガラから襲わない限り戦うことはないだろう。

 

 

クンチュウを食べ終え、もう一度寝ようとした時

 

 

 

急にディア・マガラが顔を上げた。

 

右眼ははっきりと開いていて、さっきまでのぐうたらはどこへやらという表情である。

 

 

ディア・マガラは何かをとらえていた。正確には分からないが何かまずいものが来ている事は確信できた。

 

 

そして、そのまずい気配がディア・マガラ自身に何故か向けられている。

 

 

ともかく居続けるのは危険と判断し、別エリアへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いた。」

 

 

ぼろ布のような装備を身に纏った少女が双眼鏡を手に取りながらつぶやく。

 

双眼鏡をしまい、その可憐な容姿とはかけ離れた残酷なまでの笑みを浮かべ赤い竜の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディア・マガラは困惑していた。

 

 

あれだけ自分に向けられていた異常なまでの殺気が、急に消えたのだ。

 

モンスターであれば急に殺気を消すのは他のモンスターが突然現れ、それと交戦しているか。もしくは死んだか、だ。

 

警戒をし続けて降りれる場所を探す。

 

 

 

 

考えた結果、エリア8へ降りることにした。

 

四方に伸びたツタの上に着地し、周りを見渡して周囲を警戒する。

 

 

 

 

と、その時

 

 

下から刃が迫ってきた。

 

慌てて回避するが、完全にはよけきれず少し切られてしまう。

 

 

切った張本人がツタの下から出てきた。

 

 

 

それは、人間だった。

だが、前に会った人間とは全く違う雰囲気を持っている。初めて会った人間は警戒心はあれど優しかった。

前にいる人間は、こちらを殺そうとする殺気しか感じられない。

 

個体でこんなにも違うものなのかと考えていると、人間がこちらへ回転しながら飛んできた。横へよけるが、間に合わず肩を切り裂かれてしまう。

 

人間がこちらに振り返り、笑っている。

 

が、こちらも振り向き、人間をにらみつける。

 

 

この時周りに赤い粒子が僅かに舞っていたのだが、両者とも目の前の敵に必死でこの時は気づいていない。

 

 

双方が互いに踏み込もうとした時

 

 

 

 

 

 

 

空から何かが降って来てツタに穴をあけた。

 

 

後退し、ツタに空いたでかい穴を注視する。

 

 

すると、穴の中から、何かが飛び出してきた。

 

それはしばらく空を飛び、着地した。

 

 

赤い体色に背中に生えた棘。翼脚と頭は青く染まり、その頭部は原始的な風貌を漂わせている。

 

鋭い眼光はこちらに向けられていて、口からは涎が垂れている。

 

 

生態系の頂点に座し、絶対強者と呼ばれる竜。

 

 

 

「ティガレックス!?」

 

 

 

轟竜   ティガレックスらしきものが。

 

 

 

 

 

 




はい、想像どうりですよね。






ではまたいつか。


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命のやりとり

ディア・マガラはどうなるんでしょうか?




本編どうぞ。


轟竜   ティガレックス

 

 

原始的な風貌を残す飛竜。貪欲なまでの食欲を持ち、一度狙った獲物は決して逃がさないと言われる凶暴なモンスター。

轟竜の名の通り、その咆哮は音の領域を超え岩をも砕くという。

 

 

 

 

 

が、目の前にいるティガレックスは明らかに通常個体とは違った。

 

全体的な体色はディア・マガラと同じ赤色だが、こちらは炎のような色合いだ。

 

そして、その体色と反対するかのような蒼い強靭な前脚。

 

原始的な風貌を残す頭部は、赤と蒼が混ざっている。

 

 

直接見たことはないが、大轟竜と呼ばれるティガレックス希少種とティガレックスの二つ名持ち荒鉤爪の合いの子のようなティガレックスだ。

 

でも私にとってはただの邪魔者だ。ディア・マガラを殺そうとしていたのに乱入してきた。即刻排除したいところだ。

 

 

だが、ティガレックスとなれば話は別だ。絶対強者の異名を持つこの竜は私の技量では苦戦するだろう。

 

おまけに私が戦ったことがあるのは原種だけで、亜種も戦ったことはない。

相手も亜種とは全く違う個体で不利なのはこちらの方だ。

 

 

ここは相手の隙を突き離脱するか、そう考えていたその時

 

 

 

ティガレックスがこちらに振り向き、突進してきた。

 

私は突進してくるティガレックスに向かって走り頭を踏み台にして飛び、ティガレックスを飛び越える。

 

エリアルスタイルによるエア回避というやつだ。そのままティガレックスは突進し続け、壁に激突してしまう。

牙が壁に食い込み抜こうとするティガレックス。

 

この隙に逃げよう、そう考えモドリ玉を取り出そうとする。

 

ここでディア・マガラの存在を思い出し、ディア・マガラの方向へ振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

そこには何もいなかった。

 

 

「……え」

 

口から拍子抜けた声が出る。空を見てみると赤い飛竜の影が見えた。

ティガレックスに集中している隙に逃げられたんだ。そう思っていると

 

 

ミシミシ バキッ

 

 

背後で岩が砕ける音がした。

ティガレックスが牙を強引に抜こうとしている。数秒と経たずにまた襲い掛かって来るだろう。

 

一秒にも満たない葛藤を終え、モドリ玉を使った。

 

緑色の煙に包まれながら私は空に向かって

 

 

 

ーー覚えてなさいーー

そう恨み節を心の中でつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後自由になったティガレックスが両方とも逃げてることに気づき、遺跡平原で暴れ回った事は偶然居合わせた王国の地質調査員によって記録されたという。

 

 

 

 

 

 

逃げたディア・マガラは遺跡平原を離れ、大砂漠の方角へと飛んで行ったらしい。

 

 

 

一方バルバレでは、大勢の下位ハンターが集会所にひしめき合っていた。ほとんどのハンターが、あるクエストの為に来ているのだろう。

 

そのクエストとは

 

 

 

大砂漠に出現した豪山龍ダレンモーランの討伐であった。

 

ぎちぎちの集会所の隅で、一人の気の弱そうな少女がどことなくつぶやいた。

 

 

 

 

「うう、どうしよう…ほんとにできるのかな?」

 

 

 

 

 




自分ダレンモーランとか作業系のモンスター嫌いなんですよね。兵器の扱い方が(ry







ではまたいつか


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偶然か必然か

リアルが忙しい。なんでやり直しされなあかんのや…





何はともあれ本編どうぞ。


私はバルバレギルドの集会所にいた。集会所には、様々なハンター初心者がごった返す程にいた。

 

そして、全員が私の方を希少なモンスターを見るかのように視線を向けていた。

 

私は思っていないのだが結構な美人だという。でも私はあまり好きじゃない。人々のこういう視線が嫌いなのだ。誰も話しかけてこないのはこっちもにらみ返しているからか、それとも私の評判故か。

 

別に自分の評判を気にしているわけではない。

 

そんな事よりも私は遺跡平原で取り逃がしてしまったディア・マガラについて考えていた。

 

あの時、私は本気でディア・マガラを殺そうとした。そこにあのティガレックスが乱入してきて私は撤退した。

 

ギルドマスターは私を違法狩猟としてしばらく幹部の仕事をやめさせようとしていたが、ダレンモーランが出現したというので私にダレンモーランの討伐に隊長として向かわせた。

 

ディア・マガラを見た時、あの時の記憶を思い出した。

 

 

 

悲鳴が聞こえ、人々が逃げまどい、その逃げる人々が狂気の目をした竜に殺される所を、

 

 

 

赤い返り血を浴びた狂気のもとの白い龍を

 

 

 

「おーい。」

 

集会所の奥からそんな吞気な声が聞こえてきて、私は昔の記憶から現実に戻った。

 

声のする方を見てみると、ギルドナイトの服装をした女性がこっちに向かってきた。

 

彼女の名前はラミス。私の唯一といっていい友達だ。

 

短く切りそろえた茶色の髪に、黒色の瞳、そして何より背中に背負った氷色の太刀が有無を言わせぬ存在感を示している。

 

「やっと見つけた…。今までどこにいたのよ。」

 

「どこって……ずっとここにいたけど。」

 

「え?私さっきここも探したんだけど。」

 

「何で見つけられないのよ。医者に目診てもらったら?」

 

「そこまで年は取ってないわよ!私まだ結婚できる年だし!」

 

「彼氏すらできてないやつが言う?」

 

私の的を得た言葉に、ラミスはう……と言葉を濁す。

 

彼女は、やたら彼氏を作ろうとしているのだ。容姿はかなり美人な方なのに一回も出来たことはないが。私は気にも留めていないけど、取り敢えず目標達成したら考えてみようかな……くらいである。

 

「それであんたも行くの?」

 

「もちろん。最近のハンターがどんなものなのか見てみたいし。」

 

そう言って彼女がハンター達の方を見ると、私の方を見ていたハンター初心者はすごすごと奥へ行った。

 

ギルドナイトってそんなに怖がられているのかな…そう考えていると

 

「わっ」

 

と間の抜けた少女らしき声が聞こえてきた。声の聞こえた方を振り返ってみると

 

 

一人のハンターらしき少女がこけて地面にうつ伏せになっている所だった。

 

 

「「………」」

 

二人揃って顔を合わせ、アイコンタクトでラミスが少女に話しかける。

 

「大丈夫?」

 

すると少女がとんでもない速さで起き上がり、顔を見るなり慌てた声で言った。

 

「はい!?あ、い、いえ大丈夫です!」

 

「良かった。君、名前は?」

 

「え!?ええと、その、リリルです!」

 

私は間を挟んで言った。

 

「リリルは、ダレンモーランの討伐に行くのか。」

 

「え?は、はい。そうです。」

 

「気を引き締めて。そうじゃないと死んでしまうかもしれない。肝に銘じておくように」

 

「わ、分かりました!」

 

「よし、それじゃあ行こうか。」

 

「分かった。リリルちゃんじゃあね。」

 

笑顔で手を振るラミスにリリルは

 

「は、はい!ありがとうございました!」

 

と言って深く頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

リリルの首に下がる青い綺麗な石だけが、記憶に少し残った。

 

 




焦りすぎていい文章がかけん……




ではまたいつか


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登場人物紹介

遅れてしまい申し訳ありません。

これからもこんなことがあると思います。なるべく投稿ペースは守っていくつもりです。



今回は登場人物の紹介です。


ハンターサイド

 

アルア  17歳

女性  ギルド幹部

 

 

若くしてギルドの幹部になった天才少女。

金髪に青い目をしており、その容姿は多くの人を魅了している。

ハンターとして数多くの功績をあげ、それがギルドの目に留まり幹部になった。

ハンター時代はゴア・マガラの討伐数が数え切れないほどあり、【黒滅姫】と呼ばれていた。

幹部でありながら今もハンターを続けており、【黒滅姫】の名はまだ忘れられていない。

出身不明だが、噂ではある竜に滅ぼされた村の出身ではとささやかれている。

好きなものは温泉、嫌いなものは不明

性格は人とあまり関わらず、冷たい。

装備はデスギアSシリーズ 

武器は双剣のクロウofリッパーの最終強化、クロウofハンガー

 

 

 

 

ラミス  17歳

女性  ギルドナイト

 

 

アルアの幼馴染であり、優秀なギルドナイト。

ギルドナイトとして数多くの密猟者を捕らえ、ハンターとしても活躍している。

人望は非常に厚く、ハンターやギルドの人々からも信頼されている。

茶髪に黒い目と容姿もなかなかに綺麗である。

が、ただ一つの欠点が非常に運が悪い。モンスターの逆鱗を出すだけで百回以上行ったとか。

そのせいか彼氏いない歴=年齢であり必死につくろうとしている。

出身はユクモ地方のとある村。アルアとはその村で出会った。

聞けば二人は、あるモンスターの話題でいつも盛り上がっていたらしい。

好きな物は温泉、嫌いなものはリア充

性格は明るく、少しお茶目。

いつもの装備はギルドナイト一式だが、狩りに行くときは三葵シリーズ

武器は太刀の雪一文字の最終強化、雪一文字【銀世界】

 

 

 

リルル  15歳

女性  ハンター

 

 

最近ハンターになったばかりの初心者ハンター。

駆け出しハンターとして日々奮闘している。

駆け出しハンター達からは癒し系キャラとして人気がある。

薄い水色の髪に同じく水色の目をしている。

とんでもないほどの運を持ち、一回で逆鱗が出たことが結構ある。

出身はある有名なハンターの家系で、それが原因により本人がなりたくなかったハンターに無理矢理させられたという。

家族の中で信頼できるのは祖母のみで、自分の本当の気持ちを言った、唯一本人が家族と思っている人物である。

性格は怖がりで、子供っぽい。

装備はエーデルシリーズ

武器は片手剣のハンターナイフ

 

 

 

 

 

 

 

モンスターサイド

 

紅蝕竜   ディア・マガラ

分類  廻龍亜目 古龍目 マガラ科

 

 

ゴア・マガラに酷似した姿を持つモンスター

近年発見されたばかり…というか生まれたばかりである。

成長速度が速く、生まれて約二週間だというのに青熊獣より一回り大きいサイズになっている。

鳥竜種をも上回るとても高い知能を持ち、ハンターやアイルーの行動を真似して自分で回復薬を調合できるという。

ゴア・マガラに似ているが右目を持つなどゴア・マガラとは別のモンスターと現段階では決められている。

まだまだ未調査な為不明なところも多い。

 

 

 

 

荒鉤爪ティガレックス希少種

分類 飛竜種

 

 

こちらも近年発見されたばかりのモンスター

ティガレックスの希少種と二つ名の荒鉤爪の合いの子の様な姿をしている。

神出鬼没な為調査が進んでおらず、僅かな目撃情報があるのみで戦った姿を見た者はいない。

性格は原種と同じであると推測される。

 




モンスターサイドはこれから後書きに続きを書いていくつもりです。





ではまたいつか


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錆びた岩船

本編どうぞ。


ダレンモーランが背中のとがった岩を飛ばしてくる。

 

その岩はバリスタに飛んで来る事を予想していた私はバリスタから素早く離れる。

その直後、予想どうりバリスタに落ちてきた。

 

あのバリスタはもう使えないだろう。視線を岩を飛ばしてきた張本人であるダレンモーランに向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダレンモーラン戦が始まってから10分が経過した。

 

既に脱落者は20人を超えているだろう。そう言っている間にも続々と脱落者は増えている。

ラミスはまだ元気だ。流石G級ハンターというべきか。まあこれくらいG級ハンターなら出来て当然だが。

 

彼女も不安だったが、まだ脱落はしていない。かなり息が上がっているのが遠目からでもわかる。

 

他のハンター達も相当疲労がたまっているようだ。初心者なので当然なのかもしれないが。

 

 

そんな事を考えていると、ダレンモーランが動き出した。彼女が乗っている撃竜船にタックルするつもりだろう。他のハンター達もそう考えたのか、ダレンモーランに向けてバリスタや大砲を撃つ。

 

が、ダレンモーランは知ったことかとタックルをかました。

何とか撃竜船は耐えきったが、各所にひびが入っている。

 

と、ダレンモーランが地中に潜り姿を消した。

 

「全員警戒しろ!」

 

ラミスが周囲のハンターに警戒を呼びかける。

 

直後、ダレンモーランが彼女の乗っていた撃竜船を突き破って出てきた。

 

元々ダメージを受けていた撃竜船は粉々になり、乗っていたハンター達が吹き飛ばされる。

 

そこには彼女の姿もあった。

 

「リルル!」

 

助けようとするラミスを私は引き留めた。

 

この距離からはいくら頑張っても届かない。仮に助けられたとしてもダレンモーランが攻撃してくるかもしれない。

 

ラミスもそれは分かっていたのか引き下がり、ハンター達の方へ向き直った。

 

「攻撃を続けろ!」

 

何かを押し殺した厳しい声でハンター達に叫んだ。それを聞いたハンター達は自分の持ち場に戻り、ダレンモーランへの攻撃を続行する。

 

 

 

私も持ち場へ戻り、攻撃を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

______

 

 

私はハンターに何かなりたくなかった。

 

代々家がハンターだったからハンターになれなければいけない、そんな暗黙の了解的な事で私はハンターになってしまった。

 

幼い頃から生き物が好きでその子達を殺すような事はしたくなかった。

 

そんな誰にも言えない気持ちを唯一祖母にだけ話した。祖母は綺麗な青い石のお守りを私にくれた。

 

ーおばあちゃん、ごめんなさいー

 

心の中で謝り、私は目をつむった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、来るはずの衝撃はかなり優しいものだった。目を開けてみると青い空が広がっていたが、それを意識することもなく私は起き上がり下を向いた。

 

 

赤い鱗に同じく赤い翼腕、尻尾に生えた鋭い棘、頭はよく見えないが流線形をしているのはわかる。

 

「ゴア・マガラ?」

 

聞いたことがある竜にそっくりだったが、色が違う。ゴア・マガラは全身真っ黒なのに、私が乗っているゴア・マガラは赤色をしていたのだ。

 

と、赤いゴア・マガラがこちらを振り向いた。右目があるのに驚いたが、その目は優しかった。

 

しばらく見つめ合っていると、赤いゴア・マガラは方向をかえ出発前に話したギルドの幹部の人が乗っている撃竜船に向けて飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

首に下がる青いお守りがほのかに光っていたような気がした。

 

 

 

 




ではまたいつか


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岩船を襲撃す紅き竜

やっとディア・マガラの能力がでてきます。



本編どうぞ。


何故ディア・マガラが自分よりもあらゆる面で格上の豪山龍に向かっていったのか。

 

もし彼が人間と同じ心を持っているのなら、こう答えるだろう。

 

 

 

 

ーー呼ばれたからーー

 

 

 

「お、おい!何か飛んでるぞ!」

 

撃竜船に乗ったハンターの一人が叫ぶ。それにつられて他のハンター達も上を見る。

 

「何だあのモンスター…!?」「ゴア・マガラか?」「あんなの出て来るなんて聞いてないぞ!」

 

様々な驚きの声が聞こえるが、当然ディア・マガラには分からない。というか分かる方がおかしい。

 

そこにはやさしい人間と怖い人間もいた。

 

「何でここにいるの!?」

 

「あいつ……!」

 

反応はそれぞれ違うが気づいてはいるようだ。取りあえず自分を呼んだ人間をおろそうと決め、近くの人間がいる場所に近づく。

 

「こっちに来たぞ!」

 

人間の一人が声をあげたが、そのまま人間のいるところに降りる。

 

人間達が警戒して距離をとる。自分は翼腕を使い慎重に呼んだ人間をおろす。

 

「あ……。」

 

呼んだ人間が声をあげたのでそちらに振り向く。振り向くと呼んだ人間が少し後退りするが、

 

 

 

 

 

「ありがとう。」

 

 

 

 

言葉の意味は分からなかったが何故かいい気分になった。

 

直後、赤い錆びた岩船を思わせるダレンモーランが地上に飛び出してきた。

 

人間たちが一斉にダレンモーランを見る。

 

「とにかくダレンモーランを討伐するぞ!」

 

人間の一人が叫び、それにつられて他の人間たちもダレンモーランを攻撃し始める。

 

 

 

自分は戦うことにした。おそらく人間たちはダレンモーランを狙っているのだろう。人間たちを攻撃しなければあちらからは攻撃してこないだろう。勝機は十分ある。

 

それに自分は強くなるために生まれ故郷を出たのだ。いつまでも逃げてばかりでは強くなれない。

 

その考えに従い自分は翼を広げ飛び立ち、ダレンモーランに向かっていった。

 

 

 

近づいてくる自分に気づいたのか、ダレンモーランが岩を飛ばしてくる。後ろにいるというのに的確にこちらを狙ってくる。

 

飛んでくる岩をよけ、ダレンモーランの正面に滞空する。

 

口に力をため、それをダレンモーランに撃つ。赤黒い色をしたそれは、ダレンモーランの目に着弾した。するとダレンモーランが苦しみ始めた。

 

この赤黒いものは毒だ。しかしただの毒ではない。猛毒の濃度の比ではない。ガブラスから吸収した毒に、自身が持っていたある力を毒に練りこんだものだ。自分の力が何なのかは分からないが、

これを使うことで劇毒すらも超える致死の毒を作り出したのだ。

 

効果は抜群のようでかなり苦しんでいるようだ。そこに人間たちの攻撃が襲いかかっているのでさらにダメージを受けている。

 

この調子でさらに攻撃を続けよう、そう考えもう一度口に力をためる。

 

と、遠くから砂塵が近づいて来るのが見えた。力をためるのをやめ、砂塵に目を凝らす。

 

 

 

砂塵の正体は前に自分が逃げた赤と青のティガレックスだった。

 

 

 

今の自分の技量ではあの赤と青のティガレックスには敵わない。

 

そう考え、自分はその場から飛び去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、ダレンモーランはティガレックスの変異個体と思われる種に討伐された。

 

討伐作戦に赴いた大多数のハンターが赤いゴア・マガラを見たという情報が入り、ギルドは紅蝕竜 ディア・マガラと荒鉤爪ティガレックス希少種の情報を公開した。

 

 

紅蝕竜と荒鉤爪希少種の行方については調査中である。

 

 




まだまだ発展途上のディア・マガラ。この先どうなっていくんでしょうねえ


ではまたいつか


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ディア・マガラの生態

お気に入り登録50件突破!
登録してくださった皆様本当にありがとうございます。これからも精進していくので今後ともよろしくお願いいたします。



今回はディア・マガラの一日についてです。

本編どうぞ。





私はギルドの調査員だ。今回はここ旧砂漠に来ている。

 

なぜ私が旧砂漠に来ているかというと、ごく最近発見されたディア・マガラについての調査だ。新種モンスターの調査が出来ると思うとワクワクする!私の研究者魂が騒いでいるのが分かる。

 

今回の調査はギルドマスターが依頼してきたのだが、機嫌が悪いように見えた。まああの人は結構な自己中心的な性格だからな。評判も大してよくないし。隠し通そうとしていたディア・マガラの存在がばれて、自分の目論見が失敗したからだろうな。私は新種のモンスターの調査が出来ればそれで満足なのだが。

 

ま、何はともあれディア・マガラの調査を始めるとしよう。

 

 

 

 

 

早朝、ディア・マガラの巣となっているエリア5に出向いた。ディア・マガラはまだぐっすり寝ている。近くにあった竜骨と予め持ってきたツタの葉を組み合わせて、即席の隠れられるマントの完成だ。

 

好きな事とはいえ観察対象はモンスターだ。見つかれば最悪の場合死ぬ。こういうところはしっかりしないといけない。

 

隠蔽マントを纏ってしばらく待っていると、ディア・マガラが起きた。起きたばかりで寝ぼけナマコな右目で周囲を見回している。何かある種の可愛さを感じさせる。

 

完全に目が覚めたディア・マガラが隣のエリア4へ飛んでった。追いかけるべくエリア4に私も向かった。

 

 

 

エリア4に降りたディア・マガラ。すると、池の近くにあるモンスターの死体に歩み寄って行った。

そのまま食べるかと思いきや死体の近くの地面を前足で掘り返した。

 

その掘り返した土を池に放り投げた。何をしているのだろうと考えていると、放り投げた土の周りに魚が群がってきた。その中で一番大きい魚に狙いをつけ、翼脚で掴んだ。

 

翼脚には立派な大食いマグロが握られていた。この時点でようやくディア・マガラの狙いが分かった。

 

 

土を掘り返したのは死体に群がっていた釣りミミズを取るためだったのだ。そうして取った釣りミミズを土ごと放り投げ、それを食べようとして集まってきた魚を翼脚でとる。頭のいい鳥竜種もびっくりな魚とりだ。

 

私はディア・マガラの知能につくづく感嘆させられた。

 

 

 

その後も木の実やモンスターの肉、虫などを捕まえ、食べ続けたディア・マガラ。食欲旺盛なのも事実のようだ。

 

ドスジャギィと交戦したときは、毒のようなブレスを出し、ドスジャギィを撤退させた。毒らしきブレスのサンプルを回収。

 

ついでに周辺のモンスターを調査したところ、大した影響は出ていなかった。あの恐暴竜みたいにとんでもない被害を出されても困るが。

 

 

以上がディア・マガラの生態についてだ。いやはやディア・マガラほど調査のし甲斐があるモンスターは見たことがない。今後もディア・マガラの調査を続けたいものだ。

 

 

 

 

さて、調査の結果をまとめるとするか。




投稿遅れてすみません。もうすぐテストなので…


ではまたいつか


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大地の女王

テストが終わったのに日曜に投稿できない…なぜだ

今回から少し書き方を変えます。違和感を感じると思いますがご了承ください。


本編どうぞ


モンスターは何かしら別名を持っている。

 

ラギアクルスであれば海凶、海の王者

ティガレックスなら絶対王者

ゲネル・セルタスは重量級の女帝といったところだ。

 

これは人間からみたそのモンスターに合う特徴を表したものであり、異名は的をえている。

 

ラギアクルスは古龍種を除けば海中では最強といわれており、ティガレックスは生態系の頂点に君臨しているし、ゲネル・セルタスは兵士のような雄と連携して戦う。

 

 

 

では、大地の女王の異名を持つモンスターはどうだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒く染まった夜空が辺りの砂漠を青い色に染め上げ、凍えるような風が吹いている。

 

ディア・マガラは夜の旧砂漠をうろついていた。

 

夜は昼間とは正反対にとても寒くなっている。この寒さでは活動できるモンスターもそういない。

その為ディア・マガラは多くのモンスターが眠っている夜に旧砂漠に何か変わったことがないか周回しているのである。夜ならガレオスも攻撃してこないため夜は比較的昼間より自由に行動できる。

 

だが、夜でも行動するモンスターはいるため油断は出来ない。ザザミはいるし大型モンスターも行動している。

 

 

 

しばらく周回していると辺りを震わす咆哮が聞こえてきた。前に聞いたことがある咆哮に似ていたが少し違うような気がする。

 

ディア・マガラは咆哮の聞こえたエリアへ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

咆哮の聞こえたエリア7に着き周囲を見回すと咆哮の主はすぐに見つかった。

 

 

倒したと思われるゲネポスを踏みしめるとても強靭そうな足、翠色の甲殻に同じ色の翼、棘の生えた尻尾

 

色は違えどその姿は天空山で出会った火竜に酷似している姿だった。

 

天空の王者 リオレウスとつがいの飛竜

 

 

大地の女王 リオレイア

 

リオレイアはディア・マガラの視線に気づいたのか、ディア・マガラに向かい咆哮する。

ディア・マガラは戦うことにしたらしく咆哮し返す。

 

紅い竜と翡翠の竜が激突する。

 

 

最初に動いたのはリオレイアだった。強靭な足で大地を踏みしめ突進する。

ディア・マガラはそれを横に飛んで躱し、そのまま翼脚で横から殴る。とっさにリオレイアは上に飛び、風圧で翼脚をずらす。

 

滞空したまま軸合わせをし、リオレイアの大技たるサマーソルトをかます。

すんでのところで後退しサマーソルトを躱したディア・マガラ、反撃と言わんばかりにブレスを放つが、距離を取られ躱される。

距離を取ったリオレイアは地面に着地する。自分の得意な陸上戦に持ち込むつもりだろう。ディア・マガラもリオレイアの出方を伺っている。

 

リオレイアが炎のブレスを放ち、ディア・マガラにむかっていく。それをよけたディア・マガラだが、よけられるのはリオレイアも分かっていた。そのまま更にブレスを放つ。一発がディア・マガラの甲殻をかすり、少し焦げた。

 

今度はディア・マガラがブレスを放った。リオレイアと同じく数は三つだが地面を蛇行するようにリオレイアに迫る。リオレイアは後退しながら飛び、蛇行してくるブレスを躱す。

その直後、二つの赤いブレスがリオレイアに直撃する。突然のことに地面に落ちるリオレイア。

ディア・マガラはリオレイアが攻撃を空を飛んで躱すことを予想し、わざとブレスを放ちリオレイアがとんだところをブレスで狙い撃ったのだ。

開幕の仕返しに成功したのか少し嬉し気なディア・マガラ。落とされたのが気に食わなかったのかリオレイアは怒りの咆哮を放つ。

 

 

 

 

 

一進一退の戦いを続けるディア・マガラとリオレイア、二頭の決着はまだつきそうにない。

 




やっぱり駄目ですねえ…投稿ペースを落としてクオリティをあげようかな…


ではまたいつか


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命蝕の覚醒

もっと文才あげたいなあ  


本編どうぞ。


ドンドルマギルドの会議室では盛んに話し合いがされている。

会議の内容は新種のディア・マガラについてである。どの種にするかなどで会議がもめているのだ。

 

 

 

 

 

分かりやすくまとめると

ディア・マガラをゴア・マガラの近縁種に決定し、ディア・マガラが放つ、古龍ですら苦しむブレスを命蝕毒と名付けた。

これからはディア・マガラの調査クエストを提示しさらなる情報を求める方針に決定された。種族の決定は現段階では未決定としてある。

 

そして、その二日後事態は大きく進展する。

 

 

 

 

ディア・マガラ

 

蝕龍亜目 古龍目 マガラ科

 

分類 古龍種

 

 

 

ギルドはディア・マガラを新しく触龍亜目に決定、分類を古龍種に認定した。

 

 

 

 

なぜ数日でここまで分類が進んだのか、それは二日前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翡翠の竜が放つ炎が、紅き竜の赤黒いブレスと衝突する。

 

ディア・マガラとリオレイアの戦いはリオレイアが怒り状態に突入してから戦況はリオレイアが有利になった。

事実、ディア・マガラの鱗は所々焦げ胴にはへこんだような傷がある。リオレイアのサマーソルトをくらった傷跡だ。

一方のリオレイアは毒に苦しんでいるものの、闘志はまだ燃えているようだ。

 

ここまでディア・マガラが不利になったのは至って単純な女王との差だった。

 

体格である。ディア・マガラの体格はリオレイアの半分位しかない。たったこれだけだ。

自然界において体格は戦いに大きく左右される条件だ。ディア・マガラは知能戦で応戦しようとしたが、リオレイアの戦闘本能に敵わなかった。

このリオレイアは人間でいう上位個体で今まで幾多の死線をくぐり抜けてきた猛者なのだ。ディア・マガラとは比べ物にならないほど戦いを経験している。

 

体格差と経験、この二つがリオレイアの強さの秘訣なのだ。

 

ディア・マガラが命蝕ブレスを放つ。リオレイアは飛んで躱しディア・マガラにキックする。

そのままリオレイアはディア・マガラを拘束し嚙み続ける。脱出しようとするディア・マガラだが、力が足りずリオレイアを押しのけられない。

 

リオレイアがサマーソルトの構えをとり、ディア・マガラにとどめを刺そうとする。

 

 

リオレイアの勝利を確信したサマーソルトがディア・マガラの頭部を打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リオレイアは地に倒れていた。何が起きたのか分からなかった。確かにディア・マガラにとどめを刺したはずだ。

 

ならばなぜこちらが倒れているのか。周囲を見回すと砂漠を赤黒い霧が覆いその霧の奥にいる

 

 

 

 

左目があるべき場所から禍々しい角を生やしそこから赤黒い霧を放つディア・マガラを

 

 

 

 

今度こそとどめを刺すべくリオレイアはブレスを放った。が、火球は赤黒い霧に侵食されたように消えた。

 

するとディア・マガラが右の翼腕を持ち上げる。持ち上げた翼腕に赤黒い霧が集まり、翼腕全てを埋め尽くし

 

 

 

 

 

その翼腕を地面に叩き付けた。

 

 

 

 

 

 

旧砂漠は黒い太陽に呑まれた。



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去る命蝕、醒める越せし者たち

旧砂漠の洞窟、

 

命蝕龍と新たに名付けられたディア・マガラは予め調合した回復薬を飲み干し、横になっていた。

 

 

リオレイアとの死闘により覚醒した自分の力について思考を巡らせていた。

 

 

あの力を自在に扱えれば自分はさらに強くなれる。だが、それには修行をしなければならない。

 

だから、もっと強いモンスターのいるところに赴き自分を磨かなくてはならない。

 

傷はほとんど治っている。今すぐにでもここを発てるだろう。

 

 

翼を広げ洞窟を飛び立ち、命触は求めた。

 

 

 

 

 

まだ見ぬ強さを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地底火山

 

モンスターの咆哮が轟き、小型モンスターたちが逃げ出す。

 

咆哮と爆音が鳴り響く地底火山の最奥、恐暴竜イビルジョーは目の前の敵を殺そうとブレスを放った。

既にイビルジョーの体はボロボロだったが、イビルジョーには逃げる考えはなかった。

 

イビルジョーが放った龍属性のブレスが目の前の竜の咆哮によってかき消された。

自分の必殺技が破られた事に驚くイビルジョー、そのすきに竜はイビルジョーの首にかみついた。振りほどこうと暴れる恐暴竜。

 

すると、イビルジョーの首が爆発した。近くの火山岩が爆発したとかではなく竜がかみついた首が爆発したのだ。

 

爆発に耐え切れずイビルジョーは力尽き、地に倒れた。

 

イビルジョーを倒した竜はディア・マガラを狩り損ねた荒鉤爪ティガレックス希少種だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苛立ちを含んだ咆哮が地底火山に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今この世界には未知のモンスターが数多くひしめいている。

 

ギルドが把握しているモンスターはせいぜい半分程度だろう。それほどまでにこの世界は広いのだ。

 

 

だが、決してこの世界が全てではない。彼の者たちから言う【モンスターハンター】の世界だけではない。

 

様々な世界が織りなしこの世界は出来ている。暮らす者たちもだ。

 

 

仮初めの世界の剣士

 

 

伝説と呼ばれた兵士

 

 

新たな命を経て、暮らす者

 

 

虚構の世界の異変解決者

 

 

挙げれば無限の数ほどいるだろう。しかし、それらの世界が入り混じる事はない。入り混じってはいけないのだから。

 

 

 

どの世界でも言えることが一つだけある。それは、物事に絶対はないということだ。

 

必ずイレギュラーな存在は生まれる。

 

 

辺境へと旅立つ命蝕龍の運命は今後どうなるのか。

 

彼の者たちの作った理が崩れる日は来るのか。

 

それはこの者たちですら分からない。いつか崩れる日は来るだろう。

 

 

 

やがて運命が来る。

 

 

全ての世界がどうなるか。崩壊か、それとも別の大きな物を生み出すのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来たる運命の時を感じたのか彼らは天を見上げた。




よく分からない事になっちゃいました…すいません。

これからも続けていきますので


ではまたいつか


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夜闇を照らす霊光

月の光が湖面を照らし出し、幻想的な雰囲気を醸し出す。

 

 

ディア・マガラが行方不明になって数日後、私は夜の渓流にいた。

 

単に採取ツアーで来ただけなのだがこれには訳がある。

観測隊からディア・マガラが消えたとの報告がギルドに入り、ギルドはディア・マガラの捜索チームを設置した。もちろん私も入ろうとしたのだが、ラミスがしばらく休んでほしいと強く言われたので入らなかった。

 

それとディア・マガラの捜索に必死になりすぎて片付けるべき書類が山のように溜まっていたのでそれの処理に追われ、流石に疲れ果てたので気分転換に渓流に来た、

というわけだ。

 

ここに来たのは何年振りだろうか。仇を討つ為にハンターになり、数多くの黒蝕竜を狩ってきた。そして何故かギルドの幹部になっていた。

 

 

 

全ては『あいつ』を狩るために

 

 

 

ともあれそれは一端忘れよう。採取ツアーが終わったら久しぶりにユクモ村を訪ねてみよう。皆元気かなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度採取もし異常もなかったので帰ろうとした、その時

 

隣のエリア7からガーグァが何かから逃げるように走ってきた。ジャギィにでも襲われたのかと思っていると

ガーグァの後ろから何かが飛来しガーグァの刺さった。地に倒れたガーグァ。

これはただ事ではないと思い、背中の双剣を抜いた。と同時に上から何かが着地してきた。

 

 

闇に溶けるような体毛、鋭い棘が生えた尻尾、刀のような翼。

 

尖った耳に赤い目を持つ飛竜。狂気を纏う姿

 

 

迅竜 ナルガクルガ 狂竜化個体

 

「……!?」

 

無声の驚きをし、武器を構える。

 

何故渓流に狂竜化個体がいるのか。狂竜化個体はバルバレ管轄の狩猟地域でしか確認されていない。遠く離れたユクモ地方に狂竜化個体はいないはずなのだ。

ユクモ地方にゴア・マガラが飛んできたのか、それとも狂竜化したモンスターがユクモ地方に来たのか。

 

いずれにしてもこのナルガクルガは狩らなければいけない。これ以上狂竜ウイルスを拡散させないためにも。

 

ナルガクルガがこちらにとびかかり、迎え撃とうとした直後、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

純白の光が、迅竜を吹き飛ばした。

 

 

突然の攻撃に吹き飛ばされたナルガクルガ、吹き飛ばした純白の光に向けて咆哮をする。

 

純白の光の正体は

 

 

 

 

 

ジンオウガだった。

だが、ただのジンオウガではなかった。

 

 

白銀に煌めく体毛、穢れ一つない白い甲殻、原種よりも立派な黄金の角に鋭利だが見とれてしまうような爪

 

辺りを漂う純白の光がそのジンオウガの神々しさを一層上げている。その神々しさたるや無意識に

 

「綺麗…」

 

とつぶやいてしまう程だ。

 

その眼光は狂竜化したナルガクルガに向けられていた。ナルガクルガもにらみ返し、緊迫した雰囲気を漂わせる。

 

数秒遅れて今の状況に気づき、二頭にばれないようにその場を抜け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直後、夜を照らす聖光が天に上った。

 

 

 

 




こんな感じの話を数回続きます。



ではまたいつか


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天を穿つ閃角

熱砂の砂漠地帯

 

 

灼熱地獄と表現するに相応しいここには過酷な環境でも活動できる強者たちがひしめいていた。

 

 

この時期の砂漠地帯は草食モンスターの繫殖期で、それを狙って肉食モンスターがここにやってくるのだ。

 

そしてもともとここを縄張りにしていたモンスターがやって来たモンスターと戦いを繰り広げ、周囲に被害を出す。

 

被害を食い止めようとハンターたちが派遣されてくるが、死亡してしまうハンターも多い。

 

クエスト失敗の知らせを聞いた依頼主がうなだれ、被害に遭う人々は絶望の淵に立たされる。

 

 

 

 

この混乱状態の砂漠に終止符を打ったのはハンターではなく、ある≪一角竜≫だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂漠の一角にて土砂竜と潜口竜が激突する。

 

どちらも獰猛化しておりその戦闘ぶりたるや古参ハンターでも戦いたくないと思うほどだ。

潜口竜が土砂竜の頭に嚙みつき、土砂竜が突進で振りほどく。土砂竜が潜口竜に突進しようとすると潜口竜は潜り逃げる。

 

 

地中からの攻撃に警戒する土砂竜、辺りを見回し攻撃に備える。獰猛化していても戦闘本能は薄れていないようだ。

 

 

突然、地面が大きく揺れた。潜口竜が起こしたものではない。潜口竜が起こせる規模ではない。より一層警戒を強める。

 

 

 

 

 

 

すると、土砂竜の目の前で何かが飛び出してきた。飛び出してきたのは潜口竜、の死体だった。獰猛化のオーラが消えていることからひと目でわかる。

 

 

 

 

そして潜口竜を倒したと思われるモンスターも同時に出てきた。

砂塵がおさまっていくにつれその姿が出てくる。

 

姿形はモノブロスだ。亜種の甲殻の色でもない。頭部に生える真紅の角から間違いなく一角竜といえる。

 

 

だが、少し違うところがあった。それは、退化しかけた両翼に生える角だ。熟練のハンターが見ても頭部に生える真紅の角と見間違えるほどに立派だ。

 

尻尾の形状も通常と少し違った。三又槍のような形状で、先端に鋭い棘が三つ並んだように生えている。

 

 

 

土砂竜が三又槍のモノブロスに突進する。ブロス科の突進を凌駕するほどの勢いで外敵を排除せんと突っ込む。

 

しかし三又槍のモノブロスは翼に生える角、翼角と言った方がいいだろうか。それで土砂竜の突進を受け流す。

勢い余って壁に突進し目を回す土砂竜、そこに三又槍のモノブロスが突進する。

 

甲殻に覆われていない背部に角が突き刺さる。急所を貫通したのだろうか倒れ伏す土砂竜。その土砂竜を踏みつけ勝利の咆哮を上げるモノブロス。

 

 

 

 

 

 

その後、砂漠にやって来ていたモンスターが何かに貫かれたように死んでいたという。

 

 



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蒼焔を纏う海凶

ガノトトスの刺身を食べてみたい…。

本編どうぞ。


広大な大海原が見渡す限り一面に広がる地、孤島

 

 

隣接する村の人々からはモガの森と呼ばれているここは他の地域から隔絶されたこの島には独自の生態系が作られている。

 

海を渡る海竜種の休憩場所や縄張りになっている。

 

 

そして、いまの孤島の支配者は空の王者ではない。ましてや放浪してきた剛き紺藍でもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

大海を統べるあの竜…いや、蒼焔を統べる竜といった方がいいだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海中を泳ぐ黄色いドーn………何か。

 

水獣 ロアルドロスだ。

 

ロアルドロスは雌のルドロスと群れをつくる。雄はリーダーのロアルドロスのみ。言わばハーレムである。

世の男性であれば一度は夢見たことがあるだろう。しかしそんなに甘くはない。

ハーレムを作る代わりにリーダーのロアルドロスは群れを守る使命がある。命をかけてルドロス達を守るのである。

 

縄張りの巡回中なのだろう。周囲に外敵がいないか、警戒しているのが一目見てもわかる。

 

何かの気配を感じたのか急に辺りを見回すロアルドロス。

 

気配の主はすぐに見つかった。

 

 

 

海竜 ラギアクルス

一見そう見えるが、通常とは違う特徴がいくつかある。

 

まず全体的に色が濃い。蒼色の鱗、皮も鱗よりは薄いが濃い蒼。しかしそれよりも目を引く部位があった。

 

背中の背電殻、棘が生えたような形状ではなく燃え盛る火のような形になっている。色も通常より濃い色合いをしている。

 

角もまた燃える火のような形状になっており薄い青色の光を放っている。尻尾の形状も角や背電殻のような火のような形をしている。

 

 

ロアルドロスは一目見ただけで勝てないと悟った。逃げても無駄だともということも。

ならば、突然やってきた死を受け入れたうえで戦って死のう。ロアルドロスはそう考え、勢いよく突進を繰り出した。

 

そんなロアルドロスの意気を感じて煩わしく思ったのか、見事だと感じたのかラギアクルスは咆哮を轟かせた。

 

ロアルドロスの突進を躱したラギアクルス。だがロアルドロスはすぐさま反転しもう一度突進する。

 

これは読めなかったのかラギアクルスはもろに突進を食らってしまう。

が、ロアルドロスの鬣に嚙みつき長い体を捩じらせ蛇のようにロアルドロスに巻き付く。

 

振りほどこうと暴れるロアルドロスだが、ラギアクルスは全く離そうとしない。

 

そのラギアクルスの背電殻が蒼く輝いた。そしてラギアクルスから蒼い光が放たれた。

 

 

放たれたのは雷ではなく蒼い焔だった。

 

 

蒼い焔はロアルドロスの体に燃え移った。うめき声を上げながら暴れるロアルドロス。海中だというのに蒼い焔は消えるどころか勢いを増しながらロアルドロスの体を焼き尽くそうとする。

 

 

やがてロアルドロスが力なく倒れた。蒼い焔に焼き尽くされたのだ。

 

ラギアクルスはロアルドロスの死体を見ると静かにその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後には、海の中で燃える蒼い焔が静かに燃えていた。



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予感

数え切れないほどの本で埋め尽くされたバルバレの図書館

 

ここは各地のモンスターの情報が全て記録されている。移動式集会所であるバルバレだからこそここまで大量の情報を入手出来るのだ。

 

 

 

 

その図書館に二人の女性ハンターとバルバレの調査員が会話していた。

 

ハンターの一人はアルア・カグレバナ、ギルドの幹部になったばかりで【黒滅姫】の異名を持つ少し怖い少女だ。

 

もう一人はギルドナイトのラミス・フェルネイティア、G級ハンターとしても活躍している期待の新人だ。

 

そして、バルバレの調査員のリストル・エイジア、珍しい竜人族の職員で、少し変わった癖を持っている。

 

 

そんな三人が話しているのはあるモンスターたちについてだ。

 

 

 

 

 

 

 

「というのが、僕が聞いた三又槍のモノブロスと蒼い焔を纏うラギアクルスの話かな」

 

リストルが話を終えた。最初に口を開いたのはアルアだった。

 

「モノブロスは分かるんだけど、そのラギアクルスっていうのは強いの?」

 

アルアがリストルに質問する。バルバレギルドでは海竜種は管轄外だからアルアは見たこともない。かくいう私も会った事はないんだけど。

 

「強いに決まっているよ。あのリオレウスとライバルみたいなものだし、古龍種を除けば海中では最強といわれているからね。」

 

「へえ、そうなの。」

 

自分で質問したのに随分素っ気ない返事で返すアルア。リストルは気にしていないらしいけど。

今度は私が質問する。

 

「そのラギアクルスって何で海でも燃える炎を使えるの?」

 

「流石にそれは分からないよ。そもそも管轄が違うからね。」

 

蒼い焔のラギアクルスはタンジアギルドが現在調査を行っている。三又槍のモノブロスと白いジンオウガも管轄外なのでこちらに情報が入るのは先になるだろう。

と、ここで疑問が浮かんだのでリストルに問いかける。

 

「そういえば何でそのモンスターたちの話をしたの?」

 

「あ、そういえばそうね。他のギルドが管轄しているんだから私たちにはあんまり関係ないんじゃないの?」

 

アルアがそう付け加えると、リストルがお茶を一口飲み口を開いた。

 

「単に僕が話したかったっていうのもあるんだけど、本当はあのモンスターと関係してるんじゃないかって思ったんだ。」

 

「何と?」

 

「ディア・マガラとだよ。」

 

リストルがそう言うとアルアが身を乗り出し、リストルに言う。

 

「どういう事よ?」

 

「ディア・マガラが行方不明になったのが一週間前、その三頭が発見されたのが一日後なんだ。おかしいと思わないかい?特殊な個体が同時に、ディア・マガラの失踪を感知したように出てきたことが。」

 

確かにそうだ。アルアが遭遇した白いジンオウガはアルアが遭遇する前にユクモ村の専属ハンターが見つけている。荒鉤爪と大轟竜の合いの子のティガレックス、爆轟爪はディア・マガラと一緒に出てきた特殊な個体だ。だとすると…

 

「何かが始まっているのかもしれないな。」

 

リストルがそう言い、図書館の窓を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓には雲が太陽を恐れるようにかかっていた。




2G楽しい。


ではまたいつか


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銀の道標

おひさしぶりのあの子が登場(と一匹)。


本編どうぞ。


超巨大な竜の化石が目を引く狩猟地、原生林

 

そんな原生林を歩いているハンターとアイルーがいた。

 

 

 

「綺麗な場所だねぇ。」

 

「ほんとニャ。でも、ジメジメしててあんまり長く居たくないニャ。早く済ませて帰ろうニャ、リルル。」

 

「えー、もっと色々見たいよ。ついでにマタタビ取ってあげるからもうちょっと居よ、マニー。」

 

ハンターである少女リルルとオトモアイルーのマニーがそんな事を言いながら歩いていた。

 

彼女たちは原生林の竜骨結晶を規定数納品するクエストに出ていた。モンスターを狩るのに抵抗感を示すリルルはこういう採取クエストのみ出歩いている。

マニーとは命蝕龍に乗ったつながりで仲良くなり、オトモとしてリルルについてきている。

 

「なら、もう少しいるニャ」

 

「ありがとうマニー!」

 

そう言いながらマニーに抱き着くリルル。

 

「嬉しいのは分かるけど抱きつく力が強いニャ。」

 

本来ハンターならば狩猟地でこんなことはしないのだが、彼女達は新米だ。狩猟地のマナーを完全には分かっていない。

 

 

 

 

 

 

しかし、この行動が彼女の後の運命に深くかかわる事になることはまだ、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いていくと、前方に何かが光った。レアな鉱石かと思ったが小刻みに動いているように見える。

 

「何あれ?」

 

「行ってみれば分かるニャ。」

 

マニーがそう言い、リルルが近づく。

 

「これって…」

 

大きさはマニー位あるが、それの半分以上を占める銀色の翼。全身も銀色で尻尾には鋭い棘が生えている。

フォルムは先輩ハンターから聞いた話にそっくりだが、色が全く違う。

 

「リオレウス…?」

 

姿形はそうだ。しかし、聞いた話ではリオレウスは赤色、倒れている小さいリオレウスらしきモンスターは白銀の体色をしている。

 

「こいつ何で倒れてるのニャ?」

 

「お腹が空いているのかな?」

 

そう思い、ポーチからモスジャーキーを取り出し銀のリオレウスの口元に差し出してみる。

匂いを感じたのか目を開き、モスジャーキーを見ている。口を開いて食べようとするが少し遠い。

手を口に近づけると、食べて弱々しい咀嚼を繰り返した。完全に食べ終えると目を閉じて動かなくなってしまった。

 

「死んじゃった…」

 

「いや、寝ただけニャ。」

 

ほっと息をつき胸をなでおろす。

 

「どうするニャ?」

 

「う~ん……他のモンスターに襲われちゃうかもしれないし、連れて帰ろう。」

 

「それからどうするニャ?」

 

モンスターを連れて行けばギルドから処罰を受けるかもしれない。しかしこんなに小さいと放してもすぐに殺されてしまうだろう。それは嫌だ。

 

「他の人にばれないように育てて、大きくなったら放せばいいんじゃない?」

 

「それでいいんじゃないかニャ。」

 

「じゃあ、連れて行こう!」

 

そう言い、手に抱きかかえベースキャンプへ直行していった。

 

 



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新天地の洗礼

どこまでも広がる樹海が眼下の景色を覆いつくしていた。

 

空を飛んでいる紅い龍。命蝕龍だ。彼は強くなれそうな場所を探して各地を転々と飛んできている。

たどり着いたのは未知の樹海のまだ人間が足を踏み入れていないほどの奥地だ。ここなら人間たちは入ってこないから邪魔されず強くなれるだろう。

 

 

着地できそうな場所を見つけ、そこへ着地する。

辺りには見たことのない大木がそびえたち、煌びやかな輝きを放つ鉱石がいくつもある。

 

 

適度な広さがあり、寝床にするには良さげな場所だった。だがまずは辺りを調べてどんなモンスターがいるか確認する。自分の脅威となるモンスターがいるかどうかもだ。

 

 

 

 

そんなことを考えていると、地面から何かが飛び出してきた。

 

蛇のような体に背中には無数の甲殻が並び、尻尾にも同じような甲殻が生えている。

体格のわりに足は小さく、口も牙ではなく嘴だった。

 

ガララアジャラと呼ばれているそのモンスターは目の前の敵を見るなり咆哮した。どうやらここはガララアジャラの縄張りだったらしく、縄張りに入ってきた侵入者に腹を立てているらしい。

 

 

ここから出てけー!と言わんばかりに鳴甲を飛ばし、目の前の敵に対して攻撃の意思表示をする。

しかしディア・マガラは臆することなく立ち向かおうと咆哮する。

 

ガララアジャラは回り込むようにディア・マガラに接近する。自慢の巻き付きでディア・マガラを拘束しようとするようだ。

飛んで回避し、命蝕ブレスを放つディア・マガラ。ガララアジャラは後退しブレスを躱す。

 

均衡状態に入った両者。互いに右回りに歩き、互いの出方を探っている。

 

 

 

 

 

ディア・マガラは前回戦ったリオレイアとの戦闘を脳裏に思い出していた。

 

あの時は死の瀬戸際だったため力が半ば暴走状態に入りあの技を出せた。が、リオレイアは瀕死にこそなったものの生きていた。強靭な生への執着だった。

 

傍から見ればディア・マガラの勝利だが、ディア・マガラ自身は負けたのは自分だと思っている。

あの時力を振り絞って尾による一撃を叩き込まれれば、命蝕龍は死んでいただろう。旧砂漠を覆った命蝕ウイルスは範囲こそ広けれど、濃度は薄いのだ。

 

このままではいずれ邂逅するであろうGのモンスターになすすべなく殺されるだろう。それがディア・マガラの強さを目指す本能をより活性化させたのだ。

 

このガララアジャラを倒せなければ、自分はずっと弱いままだ。放浪する理由になったあの火竜にすら追いつけないだろう。

 

だから倒す。逃げてばかりでは駄目だ。立ち向かって経験を積み重ね、いずれはあの火竜を超える存在になりたい。

 

 

より一層高い方向を轟かせる命蝕龍。対抗するように上位の絞蛇竜も咆哮し、鳴甲が破裂する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未熟な古龍と幾多の死線をくぐり抜けた竜の激闘の火蓋が落とされた。




何でガララが逃げないのかというと、まだディアが未熟だからです。まだまだ上がいるという事を確認したディア。最初から最強ではなく、経験を重ねて強くなっていきます。

乞うご期待!


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紅く蝕み命を染めん

火山活動が停止した地底洞窟。ここに四人のハンターが来ていた。

全員男性で、幾多の死線をくぐり抜けてきた凄腕であった。

 

四人はフルフル亜種の討伐に来ていた。が、一向に見つからず既に十分経っている。ケルビの肉を置いておびき寄せようとしたが、集まったのはゲネポスだけだった。

 

四人のうちの一人、カブラS装備のハンターが口を開いた。

 

「本当にいるんですかねえ。」

 

気怠そうな声にザボアS装備を着たハンターが答える。

 

「いないはずないだろう。環境不安定だったが、洞窟から出ていくことは考えにくい。」

 

「ババコンガでも乱入してきて逃げたのでは?」

 

ザボアS装備のハンターの発言にスキュラS装備のハンターが紳士的な口調で追及する。

そこへ

 

「まだ調べていないエリアがある。そこにいるかもしれん。いなければ本当にババコンガの匂いに悶絶して逃げたのかもな。」

 

リーダー格のリオハート装備のハンターがそうまとめあげ、腰を上げた。

 

「行くぞ。」

 

「へーい。」

 

「ああ。」

 

「わかりました。」

 

リーダーが言い、三人が答えまだ行っていないエリアへ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地底洞窟の最奥、エリア9

 

そこにいたのはフルフル亜種であったものが横たわっていた。

 

「なんだこれは…。」

 

ザボアS装備のハンターがつぶやく。

 

「ババコンガの糞で気絶してる訳じゃないっすよね…。」

 

「あるわけないでしょう。しかし…妙ですね。」

 

スキュラ装備のハンターが疑問に思ったことをリオハート装備のリーダーハンターが口に出す。

 

「傷一つないないな。このフルフル亜種。」

 

驚くほどきれいな状態で倒れていたのだ。動き出しても不自然ではないほどに。

 

「毒殺でしょうか?」

 

「フルフルは毒には耐性を持っているはずだがな。」

 

「毒だけで死にますかねぇ、普通。」

 

四人が謎の死に方をした赤影について話し合っていた。

 

 

 

その時だった。

 

「!?何かいるぞ!」

 

リーダーがそう叫ぶと、三人が武器を取り出し周囲を見渡す。

 

「何すか!?」

 

「わからない。飛竜種か鳥竜種だと思う。」

 

「なんなんだよ一体…。」

 

「来ます!」

 

謎のモンスターが四人の前に姿を現した。

 

「……こいつは!」

 

 

姿はゴア・マガラに非常に似ている。

鮮血のような色の鱗と甲殻、流線形の頭部から背中にかけて並ぶ小さな無数の棘。

翼脚は黒に近い赤色で爪はとても鋭い。

青い右目で四人を睨みつけ、こちらの出方を探っているように見える。

 

 

「ディア・マガラか!」

 

「こいつが命蝕龍か…。」

 

「それって一か月前に姿を消した古龍っすよね!」

 

「長らく痕跡すら見つけられなかったと言いますが、まさかここで遭うとは思いませんでしたよ…。」

 

じりじりと迫ってくるディア・マガラ。

 

「やるしかないか…。」

 

リーダーがハンマーを構え命蝕龍にむかう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咆哮が地底洞窟に響き渡った。




ガンナーっていいですよねw

ではまたいつか


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ディア・マガラの書

モンハンワールド楽しみだなあ。1月26日が待ち遠しい…

本編どうぞ。


命蝕龍 ディア・マガラ

 

古龍目 蝕龍亜目 マガラ科

 

近年発見されたばかりのゴア・マガラの近縁種。

とある村で発見された古文書に記された古龍である。しかし実際に確認されなかったことからゴア・マガラの情報が間違って伝わったと思われていた。

 

姿形はゴア・マガラに酷似しているが黒く禍々しい体色ではなく、鮮血のような赤い体色である。尾には鋭い棘が魚竜のように生えており雌火竜のようにサマーソルトを叩き込み、外敵に深い傷を負わせる。背中から頭部にかけて鱗が変化したと思われる棘が並んでいる。

そしてゴア・マガラと違う一番の点が鱗粉で外界を把握せず、右目がありそれで外界を把握している。左目は開いていない。

 

見た目は恐ろしいものだが気性は古龍種、というより大型モンスター全てで見ても大人しい性格で霞龍ほどではないが穏やからしい。

古龍種は軒並み高い知能を有しているが命蝕龍は桁違いの頭脳を持つ。回復薬を自分で作り自身の回復手段にしたり、ハンターが設置した爆弾を逆にハンターに投げつけるという行動も確認されている。

好戦的な一面もあるらしく、相反する二つの性格を持っている。好戦的な性格の命蝕龍と交戦したハンターからは「強さを求める戦士、ハンターのような目をしていた。」というらしい。

 

戦闘時には命蝕毒という軽い気体を扱い、交戦する。

この毒は狂竜ウイルスのようにあまり広範囲には広がらず、ブレスとして排出されてもすぐに消える。

命蝕毒は劇毒を遥かに上回る毒性を持っており、あろうことかあの豪山龍を苦しめるという報告も挙がっている。

人間が感染すると途轍もない苦しみに襲われ、狩猟どころではなくなる。解毒薬の解毒効果も意味をなさない。一応、スキル毒無効である程度軽減できる。

感染時間は非常に短いが脅威であることには変わりない。命蝕龍は命蝕毒に侵された生物を積極的に狙う傾向がある。また、翼脚を常時使うため黒蝕竜とは全く別の動きをする事もある。

 

敵対する生物がそれでも討伐できないと判断すると命蝕毒を活性化させ周囲に滞留するほどばらまき、左目のあるべき位置蕾のような形の禍々しい角を生やす。

この状態を≪蝕命状態≫といいこの状態になった命蝕龍は穏やかさなど微塵も感じさせないほどに凶暴化する。

黒蝕竜のように爆発するブレスは放たないが、翼脚に命蝕毒の成分が溜まっており叩き付けたりすると砕竜の粘菌爆発のように爆発し危険度が跳ね上がる。

しかしこの状態は命蝕龍にも負荷がかかるらしくある程度時間がたつと元の状態に戻る。この時でも生き残った外敵に対しては即座に撤退する。

 

 

まだ調査段階で、交戦したハンターも少ないため不明瞭な点も多い。

ギルドは命触龍に対して厳しい措置を講じており、信頼されたハンターのみ撃退を許可している。

 




龍と竜の使い分けがむずい…誤字らないかひやひやしながら書いてましたよ。

ではまたいつか


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狂い始める世界

明けましておめでとうございます!
三が日が忙しくて投稿できず申し訳ございません。
こんな主ですが今後ともよろしくお願いいたします。

本編どうぞ。


バルバレ移動式集会所の図書館

 

アルアは一つの席に座り本を見ていた。

本の名前は≪月の伝説≫という月に関する古くから伝わることわざや伝承をまとめたものだ。

 

その本の最後の項にはこう書いてある。

 

 

〈月詠族〉

 

千年以上前から語り継がれる種族。

竜人族を遥かに超える長寿であり未だ謎が多く、現在存在するのかも不明。

姿は人間と全く変わらないが、身体能力や知恵も人だけでなく竜人族も超えるらしい。

月と深く関わっている種族で、満月の日にのみ姿を現すという。

存在の可能性は低く、ほとんどの研究者は古代の人々の憧れといっている。

竜人族も月詠族については知らない者が多い。一部の竜人族は知っていると噂されているが、誰も語らないため真実は謎に包まれている。

 

 

 

 

本を閉じ、受付に返し外に出た。

 

まだ吹く風も寒い時期だというのに外は活気に満ち溢れていた。

ハンターたちが武器を加工屋に出し、加工屋はそれを修理する。

商人たちが珍しい素材を売り、ハンターはそれらを買う。

腕のいい料理人が料理を振るい、狩りへと出かけるハンターの腹を満たす。

 

バルバレの活気は変わらず高いようだ。

防具のメンテを頼みに加工屋へ足を運ぶ。

 

 

 

ゴガァァァァァァァン

 

移動式集会所の鐘が勢いよく鳴り響いた。バルバレの人々が皆集会場へ視線を向ける。

 

集会場の中からクエストの任達係と思われるギルドの職員が十人以上飛び出してきた。全員各キャラバンの看板娘に書類を渡している。

それを受け取った看板娘たちが全員驚きの表情を浮かべ、クエストボードに書類を貼る。

少し気になってクエストボードを見てみる。

 

 

そこには新しく張られたクエストが並んでいた。

 

 

 

 

 

 

全て生態未確定の文字がつけられて。

 

 

 

 

ありえない。私は心の中でそう考えた。

ここまで狂竜化したモンスターが発生するのは考えにくい。それこそ天廻龍の出現や、極限状態のモンスターが現れたともなれば分かる。だが、定例会議ではいくつか狂竜化したモンスターは確認されたもののそこまで数は居なかったはずだ。

 

こうなれば集会場にも狂竜化したモンスターの狩猟依頼が出されてるはずだ。防具のメンテは後回しにして、狂竜化したモンスターを即刻討伐しなければならない。

集会場に戻るべく加工屋を離れ、走った。

 

 

 

はるか遠くに禍々しい色をした雲がある場所へ向かっているとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――

 

紫色の嵐が吹きすさび砂漠を覆っていく。

 

風が吹くたび、黒いオーラを纏ったモンスターたちが増えてくる。

 

 

空は禍々しい色に染まり、生きる命を蝕んでいく。

 

 

その空に影が映った。リオレウスよりも巨大で、しかし神々しさを漂わせるその影はゆっくり嵐の空を舞いやがて雲の中に沈んだ。

 

 

 

 

影は真っすぐある場所へ向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

ある龍の故郷へ

 



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狂イ始メタ世界

青希ティの影が薄い…早く出さんと大咆哮かまされる((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

本編どうぞ


狂気に蝕まれた怪鳥が火炎液を吐き出す。

命蝕む災禍と呼ばれる古龍は横に飛んでかわし、そのまま翼を広げ、怪鳥に向かって突進。

 

怪鳥は吹き飛ばされるも身を顧みず突進する。だが、命蝕龍はそれを読んでいた。

 

翼脚に力を籠め、突進してきた怪鳥の頭に思いきり叩き付ける。

地面に頭がめり込みそのままピクリとも動かなくなり、怪鳥 イャンクックは力尽きた。

 

 

 

最近やたらこういう事が多い。普通なら襲ってこないイャンクックでさえこちらに攻撃を仕掛けてくる。

 

地底洞窟からさほど離れていない森。命蝕龍 ディア・マガラは狩った怪鳥を前に考えていた。

 

狂竜化、ディア・マガラはこの現象について詳しく知らないものの怪しくは思っている。

 

黒いオーラを纏ったモンスターは元の性格にかかわらず凶暴化し、ほかの生物に積極的に襲い掛かる。

そのモンスターに攻撃された他のモンスターも黒いオーラを纏い感染していく。

 

だが自身だけは黒いオーラに蝕まれない。不思議なことだが、ありがたいことでもある。

 

地底洞窟に来て、黒いオーラは纏っていなかったが襲ってきた赤い飛竜を倒し、その後向かってきた人間達と小競り合い程度の戦闘。

人間達は緑色の煙を放ち突如として消えた。あちらから撤退してくれるのなら助かる。

 

しばらく地底洞窟にいたが、黒くなったモンスターが増え始め移動し始めた矢先にこれだ。

 

ここまで多いと非常に厄介だ。イラついてもくる。あの可愛いアイルー達を見れば少しは和むと思うが、彼らも黒くなったモンスターにおびえているのか巣に閉じこもり出てこない。アイルー達は自身より弱い。黒くなったモンスターを狩ることは難しいのだろう。

 

こうなると移動先が絞られてくる。遺跡平原へ向かおうと思っていたがこの様子では同じだろう。

旧砂漠は根拠はないが、嫌な予感がするため行かない。

天空山に戻ろうかとも思ったが、それでは本来の目的からそれてしまう。

 

残る場所は未知の樹海のみだ。あそこもここと同じようになっている可能性が高い。だがあそこは途轍もなく広い。襲われる可能性も減るはずだ。

それにあそこにはアイルー達の巣がある。一度あそこへ戻り、精神と体を休ませてもう一度別の場所へ行った方がいいだろう。

 

そう考えた命蝕龍は未知の樹海へ行くことを決めた。翼を広げ未知の樹海へと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未知の樹海に近づいてきたとき命蝕龍はある物を目にした。

 

 

未知の樹海全てを覆う巨大な嵐だ。が、通常の嵐とは違い黒く禍々しい色に染まっている。

 

途轍もなく嫌な予感がした。本能がここへ入るなと警鐘を鳴らしている。

しかしもうここまで来てしまったのだ。それに多少の困難は何とかしなければ強くはなれない。時には困難に立ち向かうのも強くなる方法だ。

 

 

 

 

未知の樹海へと舞い降りる命蝕龍。

 

 

 

 

 

それを何かが見ていた。

 

 

 

嵐の中から

 

 

鋭い眼光で




そろそろ元凶が姿を現す…!?

ではまたいつか


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嵐の襲来

正月ボケがまだ響く…。

本編どうぞ


未知の樹海 深部

 

強大なモンスターがひしめき合うこの地域は上位ハンターですら足を踏み入れようとしない場所だ。おまけに今は嵐が吹き荒れていて、とても入ろうとする人はいないだろう。

 

そんな魔境とも化した森を歩いていたのは二人の少女だった。どちらも容姿端麗だが熟練のハンターとしての実力を持ち合わせていることは一般人ではわからないだろう。

 

歩いていた茶髪の少女、ラミスが言う。

 

「不気味な場所だねぇ。」

 

それに金髪の少女、アルアが返す。

 

「文句言わないの。あいつを狩れる絶好の機会なんだから。」

 

ラミスの冗談混じりの発言にまじめに返すアルア。

 

「……そう…だね。」

 

俯いたまま暗い声色で返すラミス。

 

「あんたがあいつを狩りたくないのは分かる。でも、あいつをほったらかして被害が出たらどうするのよ。狂竜化したモンスターが増え続けてるから早めに厄介な命蝕龍を狩る。ギルドはそう決めたんだから仕方ないわよ。」

 

「………」

 

アルアのもっともな言葉にラミスは黙って頷く。

 

「どうしても狩りたくないなら、援護に回って。私があいつを殺すから。」

 

狩るではなく殺すと言ったアルア。ラミスは黙って歩いていた。

 

 

 

 

 

 

その時だった。森の中から突然赤い影が飛び出してきた。反射的に後ろへ下がり、武器に手をかける二人。

 

 

飛び出してきた影は間違いなく命蝕龍 ディア・マガラだった。

 

「そっちから飛び出して来てくれるなんて好都合ね。」

 

背中の双剣を抜き、構えるアルア。ラミスも太刀を取りかけるがそこで気づく。

 

こちらめがけて突っ込んでくると思われたディア・マガラがすぐ隣を抜け、走り去っていったのだ。

 

「え?」

 

これは予想していなかったのかアルアが驚きの声を出す。が、すぐに武器をしまいディア・マガラを追う。

ラミスも急いで走り、アルアに追いつく。

 

「ねぇ、アルア」

 

「何?」

 

並走しながらディア・マガラを追いかける二人。

 

「ディア・マガラの様子、おかしくなかった?」

 

「どんな風に?」

 

「何か…こう…逃げてるみたいな感じで。」

 

「本当?でもそれだったら飛んで逃げればいいじゃない。」

 

「そうなんだけど…。」

 

原因がわからず悩むラミス。

走っているうちに開けた場所へ着き、ディア・マガラはそこで止まった。

 

武器を取り出し構えるアルアとラミス。

静かに獲物を睨む二人だがディア・マガラは空へ威嚇をしていた。

この期に及んで無視されるのが気に入らなかったのか、アルアが踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

直後、途轍もない突風が吹いた。アルアが姿勢を崩しかけ、ラミスは踏ん張るがふらつきかけている。

 

ディア・マガラが天に向かって咆哮する。気のせいかどこかおびえているようにも聞こえた。

 

そして、それに呼応するかのように嵐の空から何かが降りてきた。徐々にその姿がはっきりとしてくる。

 

紫黒色の甲殻に、二本あったであろう鮮やかな紫色の角は一本根元から折れている。

返り血に染まったような羽衣を身に纏うその姿は幼いころにあるハンターが討伐した龍にそっくりだった。

 

 

 

 

「アマツマガツチ……!??」

 

ラミスが絞り出すように出したその名。〈嵐龍〉と呼ばれる龍は高く神々しい、しかし禍々しくもある咆哮をひびかせた。

 




シャガルだと思った?
黒幕はアマツでした。予想していなかった読者もいたのではないでしょうか
次回から本格的に物語が動き始めます。乞うご期待!


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全てを奪い去る嵐

その嵐は全てを奪う。

 

大地も、太陽も、月も、命も、

 

全ては黒き風に呑まれ、天と地は死に蝕まれる。

 

人はただ、天地が死に苦しむ様を見ることしかできず、

 

全ての命は息絶える。

 

畏れ慄けその姿に

 

鮮血に染まりし羽衣を身に纏い

 

 

嵐をかけるかの龍を

 

 

 

ユクモ地方に伝わる伝承より

 

 

 

 

 

 

 

目の前に浮かぶアマツマガツチらしき龍がこちらを睨みつけている。

 

ラミスは武器を構えるがその手は震えている。ディア・マガラは翼を広げ、威嚇をするがアマツマガツチは全く気にしていない。

ただ一人、アルアは微動だにせずただ目の前の龍の眼前に立ちふさがっていた。

 

「アルア?」

 

「………。」

 

様子のおかしい相棒に呼びかける。だが、相棒はそれに答えない。代わりにアマツマガツチが高らかな咆哮を響かせる。

 

直後、相棒の姿が掻き消えた。次に相棒が姿を見せたのはアマツマガツチの胸に傷が走った後だった。

浅い傷だが、自分に攻撃してくる者が気に入らなかったのか爪でアルアに攻撃を繰り出す。

相棒はそれを人間の速さとは思えない速さで回避し、今度はアマツマガツチの尻尾を切りつける。

 

見えたアルアの顔はぞっとする笑みを浮かべていた。あの表情は見たことがある。前に一緒に黒蝕竜にとどめを刺す時に一瞬だけ見えたような気がした顔だ。あの時は見間違いと思い問わなかったが、見間違いではなかったらしい。

 

 

相棒のアマツマガツチへの攻撃はまだ止まらない。

 

 

 

 

-------

 

今度こそ逃がさない。

あの時何も出来なかった自分とは違う。現に奴は私の攻撃で傷ついている。

 

奴はあの時と同じ目でこちらを睨んでいる。

 

 

変わらない。

 

睨みつける目も、折られた角も、柴黒色の甲殻も、

皆の返り血を浴びた羽衣も何一つあの時と変わっちゃいない。

 

お前を殺す。ただそれだけだ。

 

私から奪った大切な物を、

 

 

お前の命で償ってもらう。

 

 

 

奴が身をくねった。大竜巻だ。ラミスとディア・マガラごと巻き込むつもりだろう。

これはチャンスだ。あの人から聞いた事で、アマツマガツチは大竜巻の予備動作中に怯ませれば大きな隙を作れる。

 

私は鬼人化し奴の胸部へ攻撃を繰り出す。

 

 

 

 

あっけなく攻撃がはじかれた。

 

「…え?」

 

嘘だ。胸部は奴の弱点のはず。さっき攻撃したときは問題なく通った。鬼人化した状態で通らないはずがない。

今度は腕に攻撃する。結果は同じだった。その間にも風は強くなる。

 

「なん…で……どうして…。」

 

掠れた声が喉から出た。

 

 

 

次の瞬間、私は空へ吹き飛ばされた。

 

 

身体中を激痛が走り回った。

 

踊るようにその場を旋回するアマツマガツチの姿が見えた。

 

 

ま……た…同じ……だっ………た。

 

 

 

そこで私の意識は途切れた。

 

 

 

--------

 

アルアの意識がなくなった直後、思わぬ乱入者がアマツマガツチへ突進した。

乱入者の正体は、アルアと命蝕龍を追いかけ続けていた爆轟爪だ。

 

爆轟爪の突進により、アマツマガツチの大竜巻が消えた。

 

傷だらけのアルアをラミスが抱きかかえ、退却。

ディア・マガラも脱出の好機と見たのか、飛翔。そのまま飛び去って行った。

 

残ったのは乱入され怒るアマツマガツチと、獲物を横取りされ怒る爆轟爪のみになった。

 

 

 

 

 

両者は理由は違うが、同じくらいの怒気を秘めた咆哮を轟かせた。




やっと出せたよ青希ティ…。

モンスターハンターワールド発売まで後5日!皆さんは買いますか?私は限定版取りました。準備は万端です!

ではまたいつか


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ある少女の話

モンスターハンターワールド発売!!

いや、凄いですね。グラといいシステムといい最高ですよ!
狩れ、この生ける大地と共に!

さて、本編どうぞ


未知の樹海のどこか

 

アイルー達の集落はいつもより騒がしかった。

その理由は奥に寝ている一人の少女と、それを心配そうな目で見守る少女だ。

 

そこに一匹のアイルーが薬草を持ってきた。見つめる少女に向けて話しかける。

 

「少し休んだ方がいいニャ、ラミスさん。」

 

アイルーの心配する声にラミスと呼ばれた少女が答える。

 

「私は大丈夫です。それより、アルアは大丈夫ですか?」

 

「心配ないニャ。ケガは大して大きいものじゃないニャ。まあ、古龍の攻撃でかすり傷と打撲で済むのが不思議だけどニャ。」

 

二人が話していると、寝ているアルアがゆっくり目を開いた。

 

「………。」

 

「あ、起きた!」

 

「じゃ、薬草はここに置いておくニャ。あまり動かないようにしてニャ。」

 

そう言って垂れ幕から出ていくアイルー。

しばらくしてアルアが口を開いた。

 

「…あいつは?」

 

「アルアが気を失った後、爆轟爪が乱入してきたの。爆轟爪があの嵐龍と戦ってる隙に逃げてきてアイルーさんたちに助けてもらったの。命触龍はどこかに逃げてったけど…。」

 

少し言いよどんで先を言った。

 

「今からなら追えるけど、どうする?」

 

それに対するアルアの答えは彼女からは考えられないものだった。

 

「いや、ここで休ませてもらってギルドに一旦帰るわ。」

 

しばし黙り込みもう一度口を開く。

 

「その後は誰かに任せるわ。私じゃあれは対処しきれないから……。」

 

「………。」

 

「ラミス?」

 

「ねえアルア。」

 

「ん?」

 

「一体どうしちゃったの?勿論その判断を責めるわけじゃないけど、その…いつものアルアじゃないっていうか…。」

 

しばし場に沈黙が包み、アルアが口を開いた。

 

「その前に私のことを話さないとね。」

 

「え…?」

 

ラミスが少し驚く。アルアが続ける。

 

「月詠族って知ってる?」

 

「うん…竜人族を超える寿命を持つっていう、伝説の種族でしょ。それがどうしたの?」

 

「私もその一族の一人なの。」

 

「えっ!?」

 

さらりと言ったアルアの発言に驚くラミス。

 

「…本当?」

 

「ほんとよ。17歳って言ってたけど本当は三百年生きてるわ。」

 

「さ…三百歳……。」

 

状況についていけず混乱するラミス。アルアが更に話す。

 

「月詠族は人里離れた場所で細々と暮らしていたの。歴史の表舞台にはでないようにね。」

 

「どうして?」

 

ラミスの質問にアルアが答える。

 

「嫌われてたからよ。人からも竜人族からもね。自分たちよりも遥かに能力に秀でた月詠族が許せなかったんでしょう。まあ今となっては存在自体怪しまれてるし、それを意識したことなんてなかったけど。」

 

「家族は居るの?」

 

ラミスの発言にアルアの表情が少し曇った。

 

「うん。正確には居た、って言った方が正しいわね。」

 

「…!それって……!」

 

「ここからは昔の話よ。私が50歳のころの。……そして、私の家族がいたころの話。」

 

 

 

 

 

アルアは自分の過去を話し始めた。




次回はアルアの過去回です。
何でアルアがゴア・マガラに、あの嵐龍に憎悪を持っていたのか。全てが分かる回になります。

ではまたいつか


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過ぎ去った話

200年前

 

アルアが50歳(外見年齢は7~8歳頃)の時。

 

 

 

まだ、月詠族の集落があった時だった。

 

 

「パパー!ママー!」

 

虫が飛び交う綺麗な草原で一人の少女が両親のもとへ走ってきた。

 

「アルア!どうしたんだ?そんなに急いできて。心配しなくてもパパとママはここにいるぞ?」

 

柔らかそうな顔の父が我が子を抱きかかえ、自分の子供に問いかける。

 

「あのね、綺麗な虫さん見つけたの!パパとママにも見てほしいの!」

 

「本当?すごいじゃない!流石パパとママの自慢の娘ね!」

 

優しそうな母が娘を褒める。娘は喜び、微笑む。

 

「よし、じゃあ綺麗な虫さんを見に行くか!アルア、案内してくれるか?」

 

「うん!」

 

娘は元気な返事を返し、両親を綺麗な虫のもとへ案内する。

 

 

 

 

「これは……」「綺麗……」

 

「でしょ!」

 

アルアとその両親がいる場所は草原にある小さな洞窟だった。

 

 

そこにあったのは神秘的な黄色い光を放つ蛍のような虫が飛び交う、幻想的な空間だった。

 

「この虫さん捕っていいかな?」

 

アルアが両親に問う。両親は答えた。

 

「いいかい、アルア。」

 

「ん?」

 

「この虫さんたちは生きているんだ。一生懸命にね。」

 

「だから、虫さんは取っちゃいけないの。皆生きているから。」

 

両親の言葉にアルアはしばらく考え、

 

「分かった。虫さん捕らない。」

 

「いい子だアルア。」

 

アルアと両親は洞窟から出て、元の草原に戻る。

 

「虫さんだけじゃない。竜や獣、草花だって一生懸命に生きているんだ。」

 

父の呟くような言葉にアルアは首を傾げた。

 

「アルアにも分かる時が来るわよ。あ、お友達が来たわよ。」

 

「ホントだ!遊んでくるね!」

 

そう言って友達のもとへ走るアルア。

 

 

 

その表情はとても幸せそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10年後

 

それは突然やってきた。

 

アルアが少し遠くで遊んで帰ってきたとき、

 

 

村は地獄になっていた。

 

「え?」

 

辺りでは狂ったモンスターが次々に村人を襲っていった。

村人たちも武器を取りモンスターを倒してはいるが、焼け石に水だった。逆に反撃を受けて死んでいく。

あちこちで火の手が上がり、人の悲鳴が聞こえてきた。

 

 

そして、

 

上空から龍が舞い降りた。

 

鮮血に濡れた羽衣を身に纏う龍だった。

その姿にアルアは立ち尽くし

 

 

龍はアルアに狙いをつけ、口から紫色の水弾を放った。

 

水弾がアルアを貫く、はずだった。

 

横から風のように出てきた父親がアルアを庇った。

 

「パパ!」

 

その場に倒れ伏す父親を助けるためにアルアが手を伸ばした。

 

「来るな!」

 

父が吐き出すように叫んだ言葉にアルアは止まった。

そこへ母が駆け寄ってきた。

 

「ママ!」

 

「アルア!」

 

母親は自分の娘に言った。

 

「先に村の外へ逃げなさい!ずっと遠くに逃げて!」

 

「いや!パパとママと一緒に行く!」

 

「大丈夫だ。パパと…ママは後で迎えに行く。ちゃんと…生きるんだぞ。」

 

涙を流しながらアルアは頷き、逃げた。

 

 

 

 

 

ただただ逃げ続けた。






ではまたいつか


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立ち上がる英雄達

アルアが話をいったん切り、静かに天井を見続けていた。

 

「……その後は?」

 

話を聞いていたラミスが暗い声で問いかける。

 

「偶然村にたどり着いてそこで暮らさせてもらったの。身の回りの世話とかを習ったわ。狩りの仕方も教えてもらって、ハンターになった。そこからユクモ村に住んであなたに会った。後は貴方が知ってるでしょ。」

 

何も言わずに頷く親友。

 

「これまであいつを倒すために戦ってきた。あいつの情報も聞いて対策も考えてきた。黒蝕竜を殺してきたのは、村の人たちの恨みを少しでも晴らしたかったからだと思う。

…でも、結局駄目だった。

あの時と同じだった……!」

 

目から涙が落ちる。

 

「何もできずにただはねのけられて、みんなが殺されるのを見ることしかできない!いや、見ることすらできない!強くなってあいつを殺して、皆の恨みを晴らすために戦ってきた!でも…でも!あの時と何も変わっちゃいなかった!私はあの時と同じ、弱いままだった!これっぽっちも強くなってなかった!あいつから………ただ…逃げる…ことしか……。」

 

最後は嗚咽に掻き消え、アルアは泣き崩れた。

 

その肩をそっとラミスが包んだ。

 

「………ラミス?」

 

「アルアは優しいよ。家族の事をそんなにも思っているんだから。」

 

優しい声色で親友を慰めるラミス。

 

「ううん。優しいだけじゃ皆の仇を取ることは…。」

 

「でも、ちょっと優しすぎるかな。」

 

「え…?」

 

アルアが理解できない中、ラミスが力を少し強くして続ける。

 

「あなたが家族の事を想ってるのはすごくいい事よ。私は家族を想ったことなんて一人を除いてなかったから。仇を討ちたいのは痛いほど分かる。大切な人を救えないほどつらいことは無いから。でもね、あなたの家族はそれで本当に喜ぶの?」

 

ラミスの発言に黙り込むアルア。

 

「あの嵐龍は討伐しなくちゃいけないと思う。ギルドも既に討伐指令を出してるはずよ。私たちもいかなきゃいけない。でもさ、憎しみとか、復讐とか、敵討ちの為に狩るんじゃなくてもっと大事な事があるはず。」

 

静寂が訪れる。しかしそれは、数秒後に消えた。

 

「私は…。」

 

過去を思い出し、辿り着いた答えは

 

 

 

 

 

 

「私は今生きている人たちを守る。そのためにあいつを…あのアマツマガツチを狩る。それがお父さんとお母さんを、村の皆を安心させられる方法。」

 

 

 

 

 

アルアの言葉にラミスは涙を浮かべ、深く抱き合った。

 

「でもどうするの?あいつはどこにいるかは観測隊にお願いすれば分かると思うけど、そこらは狂竜化したモンスターできっと埋め尽くされてるわ。私たち二人じゃ突破できるかどうか…。」

 

「あ………。」

 

「全く少しは考えなさいよ。よくそれでギルドナイトやってられるわね。」

 

「えへへ。」

 

「はあ…。じゃあ助けを待つ?こんな森の奥地に、狂竜化したモンスターの巣窟に来るとは思えないけど。」

 

しばらく考えていると

 

「大変ニャーー!」

 

看病していたアイルーが飛び込んできた。

 

「ニャ!アルアさん起きてたのですニャ!?もう大丈夫なのですニャ?」

 

「ええ。それより何かあったの!?」

 

「とりあえず外に出てくださいニャ!」

 

急いで集落の外に出る。

 

「来たニャ!上ニャー!」

 

暗雲が立ち込める空を見上げるとそこにいたのは

 

 

 

 

 

 

 

銀色に輝く飛竜と、それに乗る一人の少女だった。




ちゃんと書けたでしょうか?

この先どうなるのか!嵐龍がこの地に来た理由は如何に!

ではまたいつか


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道標に案内されて

彼女達は銀色の飛竜に乗っている少女がすぐに分かった。

 

ダレンモーラン討伐作戦で会った、リルルだ。よく見ると彼女の背中に一匹のアイルーがいる。恐らくリルルのオトモのマニーだろう。

 

 

そのリルルとマニーが乗っている飛竜にアルアとラミスは驚愕した。

 

尤も知られた飛竜、リオレウスの希少種。

 

 

銀火竜 リオレウス希少種だったのだ。

 

やがて、銀火竜が目の前に着地する。唖然とするあまり、武器に手を伸ばすことすら忘れてしまっていた。

集落のアイルー達がパニック状態になっていて、こう言っては悪いと思うが漫画みたいに走り回っている。

 

「ごめんなさいアイルーさん!怖くないから安心してー!」

 

「だから、集落にシルスを降ろすんじゃニャいって言ったのニャ!」

 

パニックのアイルー達をなだめようとするアルアとマニー。なんだこれ?と銀火竜が首を傾げていたように見えた。

 

 

 

 

数分後

 

落ち着いたアイルー達が興味ありげに銀火竜を見ている中、リルルはギルドの動きについてアルアとラミスに説明していた。

 

要約すると

 

・紫色の嵐龍-ギルドは『狂い舞いしアマツマガツチ』と呼んでいる-は天空山の禁足地に移動し、狂竜ウイルスをばら撒いている。

・そこでギルドマスターの汚職が露顕し、狂い舞いしアマツマガツチの対応が遅れたが狂竜化したモンスターの調査をしていたアルアとラミスに嵐龍の狩猟依頼を出すために救助を依頼。

・それをリルルが受け、銀火竜-シルスと呼んでいるらしい-と救助に来た。

 

「なるほどね。」

 

ラミスが納得した声を出す。

 

「分かったわ。取りあえず天空山に行きましょ。でも、どうやって?」

 

アルアの質問にリルルは少し驚いた。

 

「え?決まっていますよ。シルスに乗っていくんですよ。」

 

「「え?」」

 

リルルの言葉に驚く二人。

 

「……大丈夫なの?」

 

「もちろんですよ!だって。」

 

アイルー達と戯れていたシルスに駆け寄り、ほほを擦る。

 

 

「私とシルスは友達ですから!」

 

 

その綺麗な笑顔にアルアとラミスは微笑んだ。

 

「じゃあ、お願いしようかしら。」

 

「そうね。」

 

「はい!」

 

そうして彼女たちは、シルスに乗った。

 

「三人と一匹も乗せて大丈夫なの?」

 

「平気です!きっと!」

 

「不安しかないニャ。」

 

少し不安を残しながら、全員が乗った。シルスが少し重そうにしてたが、三人から恐ろしいオーラを感じたので表には出さないでおく。

集落のアイルーから見送りされ、アルアは空を見上げた。

 

はるか遠くにあの嵐龍がいる。しかし、憎しみは感じなかった。この地に生きる命を守るための責任が心に浮かんだ。

 

 

「行くよ!シルス!」

 

 

リルルのお守りが光ったような気がした。

リルルの言葉に呼応するように、シルスは飛び立った。

 

 

 

 

 

 

遥か遠くに佇む、狂気の嵐へと。




すいません時間なくて急いで書いたらこうなってしまいました(;´д`)
また修正しますんで…

ではまたいつか


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鎮め嵐を命の花よ

とうとう最終決戦が始まります…!

本編どうぞ


天空山

 

今この地は、黒き嵐が吹き荒れていた。

 

嵐の中から響く狂気の咆哮。

 

空一面を覆いつくす黒雲。

 

 

 

 

常人であれば誰もここに入ろうとはしないだろう。

 

 

だが、あえてこの地に足を踏み入れるものがいる。

 

 

 

風鳴りの村の大僧正に村の命運、否、大陸の命運を託され

 

 

かつてこの地に廻り戻った悪しき風を打ち倒した狩人とその仲間たちに見送られ

 

 

若きハンター達が己の獲物を持ち

 

 

黒き風に蝕まれた天に近き山へ

 

 

 

 

今、足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「行っちまったな。」

 

我らの団の団長が天空山へ踏み入った三人の少女たちの背を見ながら呟いた。

 

「…不安か?」

 

がっしりとした体躯の加工担当が静かに言う。

 

「いや、全く。あの子たちの目を見れば不安なんてこれっぽちも浮かばないな。」

 

「そうか……確かにな。」

 

二人が話し合っていると後ろから風車を持った青年が歩み寄ってきた。

 

「ん?おお大僧正か。どうしたんだ?」

 

大僧正と呼ばれた青年が答える。

 

「少し気になる物があったんです。これを。」

 

大僧正が差し出したのは、あちこちひび割れた石板だった。何か書かれているように見えるが、よくわからない。

 

「…これは……かなり古いものだな。」

 

「何て書いてあるんだ?」

 

「ええと…。

 

 

 

 

生と死の輪廻が崩壊せす時、

 

 

死の廻を司る禍、死の外套を脱ぎ捨て

 

 

命の花を咲かす龍が顕れん」

 

 

 

「…なるほどな。」

 

団長が納得したような声を出した。

 

「何か分かったんですか?」

 

「ああ、仮説だが最初の〝生と死の輪廻が崩壊せす時„ってのは今の事だろう。変異したアマツマガツチが狂竜ウイルスをばら撒いている今現在だな。」

 

団長が続ける。

 

「〝死の廻を司る禍„は多分ディア・マガラの事だろう。後は分からんな…。」

 

「……どういう意味なんだ?」

 

しばらく考えていたが

 

「まあ、後はあの三人に任せるしかないな。これが正しいかどうかも分からんしな。」

 

「ふふ。貴方らしいですね。」

 

「………全くだ。」

 

 

 

団長たちは天空山を見上げた。

 

 

 

 

 

 

---

天空山のベースキャンプ

 

アルア、ラミス、リルルとマニーは開かれた扉を見上げていた。

 

扉の奥からは大量の狂竜ウイルスがあふれ出てきている。

 

アルアはデスギアSの頭のみを外している。視界が広がるかららしい。

 

ラミスは桐花シリーズを着こみ背中には愛刀の雪一文字【銀世界】を差している。

 

リルルとマニーはジャギィシリーズを装備していて、リルルは採掘中に偶然手に入った封龍剣【絶一門】を、マニーはボーンピックを持っていた。

 

しばし、扉を見つめていた三人。最初にアルアが足を踏み出した。

 

「行くよ。」

 

「ええ。」「はい!」「ニャ!」

 

 

 

三人と一匹は扉の先へ

 

 

 

 

黒き嵐の中心へ踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、命の花が咲く。

 

紅き龍の背が割れ、そこから青い光が漏れ出る。

 

死の蕾から生の花へ

 

 

さあ、咲きほこれ

 

死の嵐を鎮める大いなる命よ

 

 

 

この世界に命の花園を作り出せ

 

 

 

天使のような咆哮が響いた。




タイトルはクエスト名みたいにしてみました。

ではまたいつか


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舞うは嵐、奏でるは災禍の調べ

凄いどうでもいい話。


ワールド全クリしました。

本編どうぞ


禁足地

 

天空山のどこよりも濃い狂竜ウイルスが立ち込めている場所であり、モンスターの姿は見当たらない。

 

 

 

 

 

 

 

狂竜ウイルスの根源たる龍を除いてはだが。

 

 

濃い不気味な紫色の甲殻と返り血に染まったような翼膜、そして片方が何かに折られた角。

 

アマツマガツチ特殊個体 狂い舞いしアマツマガツチ

 

 

そんな龍に挑む三人と一匹のアイルーがいた。

 

アマツマガツチは敵対者に咆哮を響かせ、突進する。狂竜ウイルスの影響か通常より凶暴になっているそうだ。

 

 

禁足地に閃光が走る。リルルが投げた閃光玉だ。効果は薄いが、多少の目くらましにはなる。

そのすきにラミスとアルアが走り、アマツマガツチに近づく。アルアが得意の乱舞で嵐龍の腹部を切り裂き、ラミスが太刀で腕を切りつける。

 

 

アマツマガツチが閃光から回復し、その場で回転。アルアとラミスが鬱陶しいと感じたのだろう。間一髪で二人は離脱する。

 

 

次にアマツマガツチが狙いをつけたのはリルルだ。水弾を発射する。

リルルは封龍剣の盾で受け、大きくのけぞる。ガード性能が低い片手剣では威力が高すぎたのだろう。

それをアマツマガツチは見逃さない。尻尾を振り上げ追撃を食らわそうとした途端、頭部に痛みが走る。バランスを崩しかけるが、落ちはしない。痛みの原因はマニーの投げたブーメランだ。

アマツマガツチはマニーを標的に変更するが、尻尾にまたしても痛みを感じ一度離脱する。アルアとラミスが尻尾を切りつけたのだ。

 

 

ここでアマツマガツチが咆哮。目が薄紫色に怪しく光る。今度は力を溜め、水のレーザーのブレスを発射。三人は辛くも避けるがもう一発のレーザーが発射される。直撃こそしなかったものの狂竜ウイルスに感染してしまった。

 

 

そして、アマツマガツチが身を捻った。ただでさえ強く吹いていた風が更に勢いを増し、アマツマガツチの元に吹く。大技の大竜巻だ。それを阻止すべくアルアとラミスがそれぞれ先程狙った部位を攻撃する。が、はじかれてしまい、攻撃できない。歯を食いしばる二人。そこへ、

 

「ありました!!」

 

リルルの叫びが耳に入った。彼女が攻撃しているのは尻尾だった。あの部位が唯一攻撃が通る箇所らしい。

風を振りぬけ二人が尻尾へアルアが乱舞を、ラミスが気刃大回転切りを繰り出した。リルルも攻撃を続ける。丁度狂竜ウイルスを克服した。

とうとうアマツマガツチがダウン。地面に落ち、もがいているところへ容赦なく攻撃を続ける。

 

アマツマガツチが復帰し、飛び上がる。その体には至る所に傷が走っていた。それに痛がる様子もなく腕を払い、三人を吹き飛ばす。

そこに笛の音色が響く。マニーの回復笛の音色だ。リルルがアマツマガツチへ突撃し、頭部を切りつける。アマツマガツチが大きく怯み、後退する。さすがは名工たちが108日間休まず作り上げた龍を封じる片手剣だ。

 

三人が並び、その後ろにマニーが来る。こちらを睨んでいるアマツマガツチに向かいあった。

 

「行くわよ!」

 

「ええ!」

 

「はい!」「ニャー!」

 

 

 

 

ハンター達と大風に舞う羽衣との闘いはまだ続く。




ちょっと戦闘描写苦手なんですよね…

というわけでアルア達とアマツマガツチの決戦です!アルア達は勝てるのか!


ではまたいつか


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舞い開く命の花

戦闘開始から一時間後。

 

アルアは頭の中でアマツマガツチの特徴を整理していた。

 

まず、肉質変化。

大竜巻の予備動作中と怒りから我に返った時に肉質が変わるらしい。弱点が硬化し、元々固い部位が柔らかくなる。

 

次に狂竜ウイルス。

嵐や攻撃に狂竜ウイルスが付着している。が、逆に克服しさえすればいい。リルルがウチケシの実を大量に持っていたため克服は楽だ。

 

後は通常個体と変わらないのでその二つに気を付けてさえいれば問題ない。が、アルアは一瞬たりとも警戒を怠らなかった。

 

既にアマツマガツチの体にはかなりの傷が刻まれている。アルアとラミスの連続攻撃とリルルの封龍剣による攻撃がかなり効いてきているのだろう。

しかし、アマツマガツチの眼光の鋭さは変わらない。というより更に鋭くなっている。

 

ラミスが横に回り、腕の翼膜を斬りつける。アマツマガツチが尻尾で大きく前方を薙ぎ払う。ラミスはそれを見切り、斬る。そこから気刃大回転切りを放つ。尻尾に当たり、傷をつける。

 

 

 

 

 

その時、

アマツマガツチがこれまでとは違う禍々しい咆哮を響かせた。それに呼応するかのように嵐がより強く吹き荒れる。三人が仰け反り、マニーが吹き飛ぶ。

 

そして、アマツマガツチが上空に飛び上がる。こちらを狙うように見て、アマツマガツチの口に水蒸気が集まる。

 

 

 

 

アマツマガツチが水のレーザーを放った。衝撃で地面が割れ、隆起する。

リルルとマニーが隆起した地面に吹き飛ばされ宙に飛んだ。

 

「リルル!」

 

助けようと走るラミスにアマツマガツチが狙いをつける。

 

「ラミス避けて!」

 

親友に叫びかける。ラミスが咄嗟に地面を蹴り、横に飛ぶ。しかし、そう来る事を予想していたかのようにレーザーの軌道がずれラミスを直撃する。

 

「ラミス!」

 

吹き飛ぶ親友に声をかけるが返事はない。代わりにレーザーを発射するアマツマガツチの姿が見えた。

 

「………っ!」

 

回避しようとするが間に合わなかった。

レーザーがかすり、隆起した地面に真正面から吹き飛ばされた。

 

 

全身が雷に打たれたかのような衝撃と激痛が走った。立とうと足に力を入れるが、足先が僅かに動いただけだった。

 

アマツマガツチが目の前に降り立ち、アルアを見据えた。

 

そうだ。ここであきらめては駄目だ。私はもう二度とあのような惨劇を繰り返さない為にこいつに戦いを挑んだのだ。せめて、私だけは戦わなければならない。

根性と決意で何とか立ち上がり、アマツマガツチと正面から睨み合う。

既に防具はボロボロになっており、武器も片方に多くのひびが入ってしまっている。それでもアルアは睨み続けた。

 

尻尾を振り上げようとするアマツマガツチ。覚悟を決め、武器を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、途轍もなく眩しい光が一人の少女と龍を照らした。

 

アルアは降りそそぐ光に目を凝らし、その姿を捉えた。

 

 

青と純白が混じった鱗、全身に生える花弁のような棘、鋭くかつ美しい爪を持つ翼脚、それに生える青みがかった羽毛。

 

角は一本になり開いた花のような形状になっていた。

 

 

 

青い華のような龍が、力強いかつ天使の歌声のような咆哮を響かせた。

 



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咲きほこる命華

天廻龍シャガルマガラという古龍を知っているだろうか。

 

黒蝕竜ゴア・マガラの成体である。その姿は黒蝕竜とは正反対であり、ゴア・マガラを闇とするならばシャガルマガラは光だろう。

 

 

 

 

ならば、今天に滞空するあの龍はなんなのだろうか。

 

姿は遷悠期のシャガルマガラの真・狂竜化時に似ているが、体色は薄い青色。胸部のみ他より濃い色合いをしている。花弁のように見える翼は鳥のような羽毛で形成されており、透けてしまいそうな薄い青色だ。角は咲いた一輪の青い華のようであり柔らかな青白い光を放っている。

 

その龍はこちらを睨むわけでもなくただ見つめているだけだ。

 

 

 

龍の目がこちらとあったような気がした。

 

 

 

直後、禍々しく鋭い咆哮が響いた。光が弱まり、黒い嵐が再び吹き荒れる。

 

アマツマガツチはこちらを見下ろす龍を睨みつけ、水弾を発射する。これまでより早いそれは、龍に向けて一直線に向かっていく。

 

 

が、龍が力を溜めるように身を丸くした。そして勢いよく翼を広げた。すると光が再び辺りを包み込み、水弾の威力が見る見るうちに弱まっていく。

やがて水弾は龍に届く前に水となって地面に落ちた。

龍がこちらへ迫り、着地し、アマツマガツチを見据える。

 

 

 

 

 

その姿を見て、ふと思い出した。

 

初めてあの龍と邂逅した時の目。

こちらを静かに見据えたあの目。

姿が変わっても、変わらないあの目。

 

 

「………ディア・マガラ………?」

 

意識せずに呟いたその時だった。

 

「……う…っ」

 

親友の指が少しだけ動いた。

 

「…ラミス!」

 

傷だらけの親友に駆け寄り、体を起こす。

 

「…ア……ルア………」

 

「……ラミス…」

 

少しだけ瞳が滲んだ。

 

「…アル……アさん……」

 

声が聞こえた。見るとリルルが立ち上がろうとしていた。

 

「リルル!」

 

水色の髪の少女にも駆け寄り、体を支える。

 

「あの……龍は…」

 

リルルの視線には青い華の如き龍が、黒き嵐を纏う龍と睨み合っていた。

 

「分からないけど、多分ディア・マガラだと思う。」

 

「あれが…………」

 

「ディア……マガラ…?」

 

二人とも目の前の龍へ疑問の視線を投げかける。

 

アマツマガツチが再び上空へ飛ぶ。再度レーザーを撃つ気だ。阻止しようと走ろうとするが体に激痛が走る。その間にもアマツマガツチは更に上空へ上がる。

 

 

 

 

突然アマツマガツチに火球が直撃した。その衝撃でアマツマガツチが墜落する。

 

火球を放った飛竜がこちらに降り立った。

 

「…シルス!」

 

リルルが掠れた声で叫んだ。その背にはリルルのオトモのマニーが乗っていた。恐らくシルスを呼んだのは彼だろう。

 

元ディア・マガラが翼を広げ、戦闘体制に入る。

 

「じゃあ、行くわよ!」

 

「「「おう!」」ニャ!」

 

シルスが咆哮し、白い龍が咆哮した。

 



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最終決戦

とうとう決着です……!


三人に強走薬を渡し、一気に飲み干す。これで体の疲労はいくらか無視できるはずだ。

 

 

 

アマツマガツチが身を捻り、三つの竜巻を繰り出す。

 

 

シルスに乗ったリルルとマニーが上空へ移動しシルスが火球を放つ。アマツマガツチの背部に火球が当たり、姿勢を崩しかける。

 

隙を突いてアルアとラミスが切りかかる。既に傷だらけの体に更に傷をつけた。

 

素早く後方へ退避する。アマツマガツチがこちらへレーザーを発射する。先程のとは劣るが強力な事に変わりない。

回避しようと身を捻りかけたその時、アマツマガツチの姿勢が崩れ、レーザーが見当違いの方向へ飛んで行った。

 

 

シルスの火球ではなく、白くなったディア・マガラがアマツマガツチの脇腹を翼脚で殴ったのだ。そのままアマツマガツチを掴み、地面にめり込む程の強さで叩き付けた。

 

白くなったディア・マガラがこちらに向かって唸った。何を伝えたいのかはわからなかったが敵意は感じられなかった。

 

(敵意はないなら攻撃しなくても良さそうね。)

 

するとアマツマガツチが復帰。こちらへ突進を繰り出す。狙いはディア・マガラだ。

ディア・マガラは何と近くの岩を持ち上げ、アマツマガツチの突進を防御したのだ。

 

岩に思いっきり激突し、ふらふらするアマツマガツチ。そこへディア・マガラが翼脚を正拳突きのように構えた。翼脚に光が集まりだす。

 

 

 

光の塊のように輝いた翼脚がアマツマガツチの頭部を殴った。

その衝撃でアマツマガツチが地に倒れ目を回す。気絶したのだ。

 

「畳みかけるわよ!」

 

強走薬を使っているが三人の体は限界に近い。常人ならば立つことはおろか、指を動かすことも出来ないだろう。

 

これが最後のチャンスだ。

シルスがリルルとマニーと共に上空へ飛び上がり、炎を纏って急下降する。

 

「「スカイハイフォール!」ニャ!」

 

地面に炎が巻き上がり、アマツマガツチを襲った。

炎が晴れると同時にアルアとラミスがアマツマガツチに迫る。

 

「行くよラミス!」

 

「ええ!」

 

ラミスが太刀を水平に構え、アマツマガツチの腹部を突く。そこから上空へ舞い上がり、着地と同時に再度腹部を切った。

 

「気刃…兜割。」

 

刹那、数え切れない斬撃が起こり、アマツマガツチを襲った。

そこへアルアが仕掛ける。

 

「ラセンザン!」

 

一番得意な狩技を放つ。アマツマガツチから大量の鮮血が飛び散った。

あと少しでとどめを刺せる。

 

 

 

 

 

しかし、アマツマガツチが突如その場で身を捻り回転した。回避が間に合わず吹き飛ばされてしまう。

そこからアマツマガツチが上昇しようとした。その時、

 

 

 

 

アマツマガツチの上昇が止まった。見るとディア・マガラが背中の翼膜をつかんでいた。もう一方の翼脚で頭を思いきり掴みそして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地面に叩きつけ、黒き嵐の根源が息絶えた。



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白い風

目の前の古龍を叩き潰し、翼脚を亡骸から離す。

 

依然黒い嵐は吹き続け、狂気の咆哮は絶え間なく耳に届いてくる。

 

前に自分を呼んだ人間と優しい人間、そして怖かった人間は地面に倒れ動かない。疲労してるのだろう。人間は竜と比べてスタミナが低いということは理解している。

 

むしろ脱皮前の自分では手も足も出なかった龍を本気にさせるまで追い詰めたのだから感嘆せざるを得ない。

 

十数秒間強い人間たちを見つめていたが、やがて目をそらし悪しき風に蝕まれた山の頂上へ目を向けた。龍の影響は時間がたてば消えるだろうがそれまでにこの山の生態系が持つことは無いだろう。ここは自分の故郷だ。乱されるのは気に食わない。

翼を広げ、山の頂上へ飛び立つ。

頂上へ向かう途中、聞いた事のある咆哮が聞こえた。眼下を見ると黒い嵐が吹き飛ばされ、原始的な風貌を残す竜がこちらを気に食わないように睨んでいた。

 

 

それを無視し、頂上に降り立つ。

力を溜め、一気に放出する。

 

 

 

 

 

空が本来の青い色を取り戻し、純白の光が広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シナト村の人々と我らの団、そして万が一に備え駐在していたハンター達は呆然とそれを見ていた。

 

 

天空山の頂上から白い風のような何かが広がり、空全体を覆いつくしているのだ。そして天空山の黒い嵐のような狂竜ウイルスが徐々に薄くなっていき、やがて黒い嵐は完全に消え去った。

 

 

一同はしばし心地よい光を浴びていた。

 

 

 

 

 

 

白い風のようなものはシナト村だけに吹いてはいなかった。

シキ国の王都やそれ以外の村でもそよ風のように吹いていた。

 

 

シキ国だけではない。

 

エルデ地方やドンドルマ、果てはシュレイド地方にまでそれは届いていた。白い風は狂竜ウイルスに感染した人やモンスターを治していった。

 

それは丸一日に渡って吹き続けたという。

 

 

その後、禁足地に倒れていた三人のハンター達(とオトモアイルー一匹)を救助。全員重傷だが、命に別状はなかったらしい。

彼女たちは狂い舞いしアマツマガツチを討伐した英雄としてドンドルマの大長老に直々に称えられたが当の本人たちは微妙な表情を浮かべていた。討伐を称える宴は三日三晩続いたという。

 

その後、各地で白い結晶の欠片のようなものが見つかり調べてみるとその欠片はあらゆるウイルスを吸収しどんな病も治す不思議なものであることが判明。抗竜石と化合させ、狂竜化モンスターに攻撃すると狂竜ウイルスを完全に抑制することが出来たという結果が報告された。ギルドは量産体制を整えすぐさま残った狂竜化したモンスターの鎮静化へ動く方針を定めた。

 

 

その後、白い風の正体はディア・マガラの成体であることが判明。ギルドは命蝕龍を命蕾龍(めいらいりゅう)と変更、脱皮した後の成体を命華龍 リフィア・フィアラと名付けた。

 

 

 

 

 

 

こうして、後に〈狂嵐龍異変〉と呼ばれた世界規模の異変は幕を閉じた。




次回、最終回です。


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この世界の事

〈狂嵐龍異変のすべて〉という題名の厚い本を閉じ、壁に立てかけてある防具と双剣を見つめた。

 

 

天空山のふもとで発見された命蕾龍の脱皮した鱗や甲殻を、黒蝕竜の素材をベースに作ったディアリフシリーズと、双剣ライフofクロウだ。あのアマツマガツチを討伐したとして渡されたもので、何やら攻撃するたびにモンスターの体力を毒や爆破とは違う方法で削るらしい。

 

 

しばらく思い出に浸ると椅子から立ち上がり、自宅のドアを開ける。

清々しいそよ風が草原の草花を揺らし、アルアの頬を撫でる。

 

この草原は元々アルアが暮らしていた村だった所で、今は村の残骸は何一つないが野原を走っていた時に感じる風は変わらない。

 

 

 

 

あの事変が起きてから20年の月日がたった。

被害を受けた街は復興し、狂竜ウイルスの研究も進んだ。

アルアはギルドの幹部を辞め、ここでハンター生活を続けている。といってもたまに集会所に足を運ぶ程度だが。

ラミスはあの事変を境にハンターを引退し、今は剣道道場を開いている。時々会いに行くがてら弟子の修行見学をするが、皆かなりの腕でハンターでも十分やっていける腕だ。

リルルもラミスと同時期にハンターを引退、とある村でライダーというものをやっているらしい。かなり離れているため文通でしか向こうの状況を知れないが、シルスとマニーも元気にやっているらしい。

 

 

あれからディア・マガラ、もといリフィア・フィアラは今どこにいるかは分からない。最後に会ったのは事変から2年がたった時だった。

未知の樹海で遭遇し、あの龍が‶あの子‶を差し出した時は心底驚いたが、‶あの子‶の目を見た時とても放ってはいけないと思い、あの龍から受け取ったのだ。

 

今は二人であの子と暮らしている。思い返すと今では立派に成長したなと感じる。同時に不安も心に浮かんでしまう。

 

私とあの子の寿命は違う。彼が亡くなる時、私は今の姿のままだろう。あの子の死をこの目で見る、いや見てしまうと思うと辛い。

だから、あの子との思い出を沢山作っていこうと思う。あの子が楽しく旅立てるように。

 

 

 

あの子が帰ってきた。こちらに手を振りながら走ってきている。

腰を上げ、手を振る。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの子が笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界は広い。

だからこそ、この世界を探求する研究者、そしてハンター達が未知の地へ踏み込み新たなモンスターを発見し続けている。

しかし、人類は未だこの世界を全て知れていない。新大陸の古龍渡りの謎は解明されたが、それは小さな発見でしかなく、いずれは人々の常識と化すだろう。

 

だが、ある人はこれを喜ばしいと言う者もいる。

 

 

なぜなら、探求の炎を永劫に消す必要がないからだ。

 

さあ、未知なる場所へ行こう。

 

そこに何があるかは誰にも分からない。

 

ならば我々が知ろう。

 

未曽有の災害か、

 

新たなる発見かを。




はい、これにて命触龍伝記終了です。
今まで読んでくださった読者様方ありがとうございます。
書きたいものただ書いてるだけなのにお気に入り者数が百超えた時はホントにびっくりしました。
今後は書き直しとかやって、落ち着いたころに続きを出そうと考えています。

それではこれまで見て下さった読者様方ありがとうございます。

ではまたいつか!


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モンスター図鑑:極希種

今回は特殊なモンスターの紹介回です。
長いんで見たくない人は見なくて結構です。


近年、既知のモンスターの特殊な亜種と思われる種が次々と発見されている。それらは希少種とも違う特徴を持っているらしい。

 

ハンターズギルドではこれらを極めて稀な種として‶極希種‶と呼ぶことにした。

俗に言う変異種だが、これらと違う点は観測されている限り一頭しか確認されていないということである。

これらが急に発見され始めたのはある古龍が原因と考えられているが、それは別の機会に記述する。

 

極希種は撃退のみ認められている。極希種の武具は通常種のものをベースに使い加工する。撃退だけでは一から作れるほど素材は手に入らないのだ。

それを加工したものは特殊なスキルを持っており、十分に強い。

しかし、極希種は非常に手ごわいモンスターであり撃退はG級ハンターですら難しい。

原種とは行動も能力も全く違うため原種を狩りなれているハンターでも極希種は無理というハンターも少なくない。

 

では、これまでに確認されている極希種を紹介しよう。

 

 

 

焔海竜 ラギアクルス極希種

 

孤島地方にて発見されたラギアクルスの極希種。

角と背電殻、尻尾が燃える炎のように変化しており、体色も濃い青色に変化している。

別名の通り炎を放つラギアクルスであり、発見当初は古龍種ではないかという声も上がったが、研究の末放熱の仕組みが解明された。

 

焔海竜は発電の際に起こる電熱を背電殻が変異した背熱殻という器官へ送り熱量を増加させ、放熱する。

その熱量は火竜のブレスに匹敵する熱量であり、報告によれば群がってきたジャギイの群れを放熱で全て焼き尽くしたという。

焔海竜は自身の鱗のかけらを火種として放熱し海中でも放熱を行う。鱗片は非常に発火性が高く海中でも発火する。発火した鱗はしばらくその場に残り対峙した相手の動きを阻害する。

だが、蓄熱した炎をブレスとして吐くことは出来ない。代わりに通常種と同じように電気ブレスを吐く。

 

このように強力な能力を持つ焔海竜だが、弱点も存在する。

焔海竜は背熱殻が非常に柔らかく、破壊すると放出できる熱量が大幅に減る。

また、放熱に非常にエネルギーを使うようになるため疲れやすくなり、陸に上がることが増える。陸では原種と同じように戦闘能力が下がるため、攻撃のチャンスができる。

ただ、焔海竜も背熱殻が自身の弱点であることは理解しているため背後に回ろうとする者には積極的に排除しようとする。

 

性格は通常種と同じように獰猛であり、自らの縄張りを犯す相手には容赦しない。

生態に関しては不明瞭な点が多く、どこを住処にしているかも分からない。

リオス科のモンスターに対して極度に敵対する行動が見られ、一部の学者からはラギアクルスの一個体が火竜などに対抗するために進化したのではという議論も出ている。

もともとラギアクルスの子育てについてが未だに解明されておらず、確証を得るには至ってない。

 

 

 

 

霜狼竜 ジンオウガ極希種

 

ユクモ地方にて発見されたジンオウガの極希種。

体色は霜が降りたような白色になっており、角と体毛の一部が月のような色に変化している。

ユクモ地方で発見される前に一度寒冷地方で目撃情報があったが、雪を被った亜種と見間違えたとギルドが応じなかった。原種より発達した筋肉を持ち、山岳を一瞬にして登りきるという報告も挙がっている。

 

この個体は雹霜虫と呼ばれる強力な冷気を放つ虫と共生しており、通常のジンオウガと同じようにエネルギーを送り霜纏い状態と呼ばれる状態に移行する。この状態になると火への耐性が非常に低くなるが、非常に苛烈な攻撃を繰り出してくるようになり、並のモンスターでは数秒と生きていられない。通常種と同じように背部の甲殻が展開するため背中の肉質が軟化し弱点になるが、普通のハンターがそれを見ることはまず無い。

 

本個体はモンスターの中でも特殊な狩りの方法を見せる。獲物を見つけるとまずゆっくりと近づき、獲物が逃げようとすると圧倒的な身体能力をもって先回りする。そして、獲物が隙を見せた瞬間一撃で仕留めるのだ。

この方法は縄張りを犯した外敵にもするが、一撃で仕留められなかった場合、エネルギーを溜め前述の霜纏い状態に移行する。

 

性格は決して攻撃的ではないが、縄張りを犯したものには容赦しない。

なぜ、このような能力を獲得したかは分からないが、アマツマガツチに縄張りを追い出された一個体が寒冷地域に迷い込み、雹霜虫との共存方法を獲得したのではという説が最も有力な仮説である。

 

 

 

閃一角竜 モノブロス極希種

 

ドンドルマギルドが発見したモノブロスの極希種。

翼部にも爪が変異した翼角と呼ばれる部位を持ち、尻尾も三又槍のような形状になっており、体色は金色に光っている。発見当初は通常種と同じ体色をしていたが、これは長距離を潜っている最中、砂金の鉱脈を移動したため砂金が付着したからという。

 

この個体は原種より戦闘に特化した進化を遂げている。戦闘中に天を仰ぐ方向を轟かせることがあるが、その咆哮は原種とは比べ物にならない大音量であり聞いただけで意識がもうろうとしてしまう。そこを逃さず突進を仕掛け、外敵に致命傷を与える。下手をすれば即死することもある。ディアブロスの二つ名持ちがする咆哮突進である。この個体は相手の弱点を把握しており、執拗にその弱点を狙う。突進で角が岩に突き刺さった時強引に突進をし岩を粉砕する。ただ、これは冷静な時にしかできないため怒り状態だと通常と同じように無理矢理引き抜こうとする。

最も脅威なのが突進である。原種以上の速さで突っ込むため当たった生物はまず生きている保証はない。この突進が閃光が走ったように見えたため閃一角竜という異名が名付けられた。

 

本個体は他の極希種と比べ、研究が進んでおらず詳しいことは分からない。

デデ砂漠とセクメーア砂漠を交互に行き来することから縄張り意識はそこまで強くないとされている。前述の通り長距離の潜行時には砂が付着するため遠目では通常種と判別がつきにくい。

以前にモノブロスの狩猟依頼を受けたハンターが狩猟地に向かった所、この個体と遭遇しハンター稼業を辞めざるを得ないケガを負ったという。この事件を受け、ハンターズギルドではその個体が通常種かどうかしっかり確認するように呼び掛けている。

 

 

 

 

 

 

震轟竜 ティガレックス極希種

 

最も初めに確認されたティガレックスの極希種。

この個体はティガレックス希少種が幾多の戦いをくぐり抜け、二つ名として荒鉤爪の特徴を経た個体である。

極希種のカテゴリーが定められる前から噂が流れていたが、近年活発に活動し始めた。

 

希少種と二つ名の行動を使い、爆破やられに陥った外敵を積極的に狙う習性がある。これはこの個体が自身の鱗片を食らった者に攻撃を与えるとさらなる深手を負う事を理解しているからでありこのことから見ても本能的な狩りの知能は極めて高い事が分かる。

 

本個体は極希種の中でも突出して生態が解明されておらず、どこを巣としているのかもわからない。ただ、ある古龍を執拗に追っていると噂されているが、真実かどうかは分からず、調査を進めている。この個体に他のハンターより遭遇したハンターが何か知っているらしいが誰かは分からないらしい。

 

防具については素材の研究が進んでおらずどのような効果を発揮するかは分からない。

 

 

 

 

 

 

まだまだ新種の極希種が発見されていると報告を受けたが情報が定かではないためここでは掲載しない。

これらの種を見つけたら我々ギルドもしくは書士隊に報告してほしい。

 

著 リストル・エイジア




ここまで読んでくださりありがとうございました!
ここから不定期になりますが待っていただくと非常に嬉しいです!

ではまたいつか!


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第一章
第0話 震轟竜の生態


昔、塔に轟竜の希少種の番がいた。

彼らは一頭の卵を産みやがてそれが孵化。その子は活発で甘えん坊であった。

 

この轟竜がのちに震轟竜と呼ばれるティガレックスだった。

 

ある日、彼らの巣に一頭の竜が現れた。火竜希少種の番を撃退する実力を持つ彼らはその竜へ立ち向かった。

 

 

 

結果は、轟竜希少種の番の負けだった。彼らは見るも無残な姿になっていた。

 

子のティガレックスはその竜を見ていた。

 

漆黒の飛竜としか言えなかった。それは彼の親の遺体を食らおうとも、更に見ようともせずただそこに立っていた。竜は子供には気づかず、その場を飛び去って行った。

 

 

子は怯えていた。"UNKNOWN"への恐怖心が彼の心を支配していた。

やがて我を取り戻した子は考えた。

 

 

二度と怖い思いはしたくない。その為には最強にならなくてはならない。

たとえどんな未知が現れようともそれに打ち勝てるくらい強くなろうと考えた。

 

 

こうして彼は塔を離れ、各地を放浪した。

狩りの仕方は教わっていたので、獲物はとれた。外敵からも逃げ延び、やがて倒し続け、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30年後

 

ある荒れ地にアプケロスを食らっているものがいた。

荒々しい赤色の体にそれと正反対の青色の前足。

頭部は下顎が蒼、上が赤色だった。

 

震轟竜と呼ばれるティガレックスは獲物を食らい終わると辺りを見回し、飛び立った。

 

 

 

彼が降りた場所はオアシスだった。彼は水を飲もうとここに降り立ったのだ。綺麗な水を求めようと木が生い茂っていた。

 

そこに先客がいたことは想定外だったが。

 

煌めく逆鱗に身を包んだ千刃竜がそこにいたのだ。闘争心の強い千刃竜はやんのかごらぁ!と言わんばかりに咆哮。

 

それに対し上等だぁ!とティガレックスが咆哮。オアシスの水面が波打ち、千刃竜が怯むが、そこで逃げようとはしない。

 

 

まずは、千刃竜が飛び空中から奇襲。震轟竜は後ろに飛んで回避するが、すぐさま千刃竜が追撃。爪で震轟竜を切ろうとするが、あろうことか震轟竜がそれに向かって嚙みついたのだ。驚いてバランスを崩し、千刃竜が落下。更に嚙みついてくる震轟竜に千刃竜がもう一方の後ろ足で蹴りを入れ、何とか脱出する。

 

続いて、接近戦は不利と見たか千刃竜が刃鱗を飛ばす。震轟竜は大咆哮を放ち刃鱗を全て落とす。今度は震轟竜が突進し千刃竜に近づく。千刃竜はそれを回避し後ろに回り込む。すると震轟竜が前脚を持ち上げ思いきり地面に叩きつける。

直後、地面が大爆発を起こした。飛んでいた千刃竜は直撃こそしなかったが震轟竜にかまれた足に当たり、更に爆発してしまう。噛みつかれたときに爆発性の鱗片が付着してしまっていたのだ。千刃竜は墜落し、地面に叩き落される。

 

そこへ震轟竜がゆっくりと近づいてくる。千刃竜は飛んで逃げようとするが、その前に首に嚙みつかれてしまう。

 

千刃竜は息絶え、震轟竜は再び咆哮を轟かせた。

飛行能力ではリオレウスに匹敵するほどのセルレギオスがここまで一方的にやられるとは誰が予想しただろう。

 

 

 

 

こうして彼は水を飲んで、飛んで行った。

 

 

 

今、彼は何を追っているのだろうか。彼自身も忘れてしまった。20年も経てば竜の頭では記憶がなくなってしまう。しかし、あの時の悔しさは覚えていた。

 

初めて獲物に逃げられたのだ。それまで自分より強いものに対して逃げたことはあるがあくまで自分より強い者であり、それらも強くなってから仕留めた。

 

獲物に逃げられるのは初めてであり、これほど長く仕留めていないことも初めてだ。もっとも当の本竜は忘れてしまったが。

 

モンスターにとって時の流れは速い。生まれたことなどあっという間に過ぎてしまう。昨日食らった獲物の味など覚えていない。

 

人と違い過去に縛られることも、未来に怯えることもない。

ただ、今を生きていく。それだけだ。

 

命は一途に歩み続ける。遅かれ早かれ。

 

 

 

震轟竜はどこかの岩場に着地した。地平線に沈みゆく太陽が彼を照らす。

眩しそうに眼を閉じて、彼は寝た。

 

 

 

 

 

 

 

どこからか音が聞こえ、震轟竜は目を覚ました。

 

遠くに砂塵が立ち、音がそこから聞こえる。目を凝らしていた震轟竜の瞳に映った。

 

 

金髪の人間だった。それだけなら彼は無視して寝付くのだが、何かが引っ掛かり彼はその人間を見続けた。

 

 

光が走るように彼は思い出した。逃がした獲物の一頭。

 

そう考えた瞬間、震轟竜は岩から飛び降り獲物へダッシュする。横に古龍の気配がするがそんなことは関係ない。

 

狩猟の本能のみが彼を動かしていた。

 

 

 

 

 

 

20年の時を経て

 

 

今再び、彼らの

 

そして新たな英雄たちの

 

運命の歯車が動き出す。




ようやく投稿できました!待って頂いた皆様ありがとうございます!

不定期ですがこれから頑張っていきます!



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第1話 彼女たちの生活

渓流のある場所にて

 

 

一頭の竜と一人の狩人が戦っていた。

 

泡狐竜 タマミツネ

彼の体には大小様々な傷がつけられていた。背びれもボロボロになり、尻尾の毛も半分近く血で塗られていた。息は荒く、既に瀕死であることが分かる。

彼は傷をつけた張本人を鋭く睨んでいた。

 

 

タマミツネに睨まれている雌火竜の防具に身を包んだ狩人はそれに臆せず、向きあう。

 

タマミツネがサマーソルトを繰り出す。すんでのところで回避し、大剣のブレイズブレイドを前脚に叩き付ける。

そこで薙ぎ払いを繰り出し、タマミツネが怯む。

反撃にタマミツネが嚙みついてきた。私はそれを再びギリギリで避け、今度は後ろ足に切り上げを食らわせる。

耐え切れずタマミツネが転倒する。私はすぐさまいつもより力を籠め、タマミツネの尻尾を斬る。

タマミツネの尻尾が半分ちぎれ飛び、タマミツネ自身も大きくのけ反った。こちらに向き直るタマミツネの目は怒りに燃えている。

タマミツネが泡を飛ばすが、大剣を横に構えガードする。だが、これで終わりではなかった。すぐさま追撃の泡が飛んでくる。私はここでタマミツネが大技を放とうとしていることに気づいた。

タマミツネが飛び上がり、こちらめがけて突っ込んでくる。それを強引に大剣でいなす。

回転しているタマミツネへ、最近習得した狩技を出す。

 

大剣を地面に叩きつけ、引きずりながらタマミツネの頭部を狙う。

私とタマミツネの視線が交錯した瞬間、大剣を一気に振り上げる。

 

狩技 地衝斬

 

 

頭部を抉られたタマミツネはよろけ、最期に苦しそうに鳴いてから地面に倒れ伏した。その後タマミツネはピクリとも動かない。

 

 

 

 

それを確認すると私はその場に座り込んだ。体はすでにあちこちが悲鳴を上げ、息も絶え絶えである。

更に休息を求める体の叫びを無視して、タマミツネに近づく。目を閉じ、泡弧竜の冥福を祈る。

 

再び目を開け、懐から剥ぎ取りナイフを取り出す。それをタマミツネの鱗の隙間に突き立て一回、二回と鱗をはぐ。三回目で何か輝くものに気づきそれを剥ぎ取る。

手に取ったものは希少な泡弧竜の水玉だった。口元に笑みを浮かべ、そっとポーチにしまう。

 

 

 

泡弧竜の亡骸を後にしクエスト達成の報告をしに、私はベースキャンプへ足を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー。」

 

「あ、お帰りロル。結構早く帰ってくるようになったじゃない。」

 

ギルドから貸し出されている自宅に帰ると、ソファにふんぞり返って本を読んでいる少女がいた。私にとっては師でもありそして、

 

「母さんにそう言われるとなんかな…嬉しいんだけど。」

 

「何よ。正直に嬉しいって言えばいいのに。」

 

私と年は離れていない、というか同年代に見える母は微笑みながらそう言った。

 

綺麗な金髪を短めに揃え、部屋服から見える手足は華奢で、瞳は湖のような藍色。まるでおとぎ話に出てくるような美しい姿をしている。尤も、おとぎ話に出てくる女性と比べると色々と少々適当ではあるが。

 

「で、何か良いものは出た?」

 

「うん。水玉を剥ぎ取れたよ。」

 

「お!やるじゃない。どれだけ狩りがうまくても運ばっかりは駄目だからねー。」

 

自分の武器を壁に立てかけ、母の隣に座る。

 

「泡弧竜をこの時間で狩れれば、大丈夫ね。」

 

「……いよいよ行くんだ。」

 

淹れてあったお茶をのぞきながら呟いた。昔の約束を思い出す。

 

「あんたが何のためにハンターになったのよ。ギルドからも依頼を先延ばしにしてあんたを鍛えたんだから。」

 

「分かってる。早く会いに行きたいから、今日まで必死に頑張ってきた。でも…ちょっと不安だなって。」

 

母は私の肩に手をかける。

 

「心配しないの。モンスターハンターのアルア様がついてるんだもの。何を不安がれというのよ。」

 

「料理は不安と不満の塊だけどね。」

 

「う…うっさいわ!」

 

ひとしきり笑い合い、二人で天井を見上げる。

 

「ありがとう、母さん。」

 

「礼なら後よ。明日、出発しましょ。」

 

「うん!」

 

母の言葉に私は励まされ、胸の中でまだまだ助けられてるなぁと思った。

 

 

 

 

 

 

その日の夜

 

私は自室で髪の毛を鏡を見ながら梳いていた。

鏡に映るのは、雌火竜の鱗と同じ緑色の髪。女子としては少々線が太く中性的な姿。目の色は母より薄い藍。

ハンターより踊り子の方が似合いそうだが、これでも上位の飛竜を狩れる実力はある。

 

髪の毛を梳かし終わりベッドに横たわり、これからの事を考えた。

 

母が受けている極希種の調査は大陸でも凄腕の狩人しか出来ない、非常に難易度の高いものだ。それに同行するだけでも上位クラスの実力が必要になる。極希種は通常の個体を超える強さを持ち、中には古龍級に強いものもいる。それらから命を守るためには最低でも上位でなければ許されない。

私は母から特訓を受け、この年で上位飛竜を狩れる実力にまで上がった。母には感謝しかない。調査の依頼は数年前に来ていたが、当時はまだ私が下位ハンターだったためここまで引き延ばしてくれたのも母だ。

母の期待にこたえるには、あの約束を果たさなければならない。極希種の調査を進めていけば必ず会えるはずだ。

 

「……待ってて。今から会いに行くから。」

 

そう呟き、私は瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

私と母は集会浴場で村長と会っていた。

いつもは妖艶な笑みを浮かばせる村長だが、今日は真剣な顔だ。

 

「アルアさん。フロルさん。あなた達が無事に帰ってくることを私たちは心から願っています。どうか、気を付けて。」

 

「大丈夫よ村長。私たちは極希種の調査を終えて、戻ってくるから。お土産楽しみに待っててよ。」

 

「そういって下さると嬉しいです。」

 

村長がにこりと笑うと、今度は私に顔を向けた。

 

「フロルさん。あなたはどんな困難にも立ち向かえるような気がします。自分の目指すべきところへ突き進んで行ってください。」

 

「は、はい!精一杯頑張ってきます。」

 

「固まりすぎよ、ロル。」

 

母のツッコミで、場に笑いが起こる。

 

「それじゃ、行ってくるわ。」

 

「ええ。それでは。」

 

集会浴場から出ると、村人たちが皆で出迎えていた。声援が飛び交う中、私たちは竜車へ乗り込んだ。

 

「皆元気でねーー!」

 

「皆さんも頑張ってくださーい!」

 

村人たちの声を背に、母が手綱を握った。

 

「行くわよ!目指すはバルバレ!」

 

 

竜車が重く、しかし確かに動いた。

 

 

 

 

 

 

 

私たちの物語が、今始まった。




遅れてすみません!今後忙しくなってくるので更新速度落ちるかもしれません。ご了承ください!

いよいよ新章突入!フロルとアルアはどのような出来事に出会うのでしょうか。お楽しみに!あ、リフィアも出ますよ!


ではまたいつか


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第2話 砂上の邂逅

遅くなってしまい申し訳ありません!
今後も遅くなりそうです。受験が終われば投稿ペースが上がると思うので、某猫型ロボットのような温かい目で見守ってください。

本編どうぞ


空に無数の光が瞬く。風が吹きつけるたびに、砂から身を守るための厚い服装に包んだ体が反射的に身震いを起こす。

 

 

私と母は深夜の大砂漠を砂上船で走っていた。最初の目的地であるバルバレを目指していた。

母は、私が生まれる前バルバレのギルドで働いていたらしい。今回は当時の職員への顔合わせと、もう一つある。

 

 

極希種調査の協力者探しだ。

本来、ならば4人以上で行うのが極希種調査の規則なのだが、母の協力してくれそうな知り合いが少なく、ギリギリ揃うのだが7人は必要だと母が言っていた。そのため、後3人は母のお眼鏡にかなうハンターを自分たちで探し、協力を求める方針を立てているのだ。

バルバレへ行くのはそれの許可をもらい、運が良ければそこで協力者を探すという事らしい。

母らしい突飛な考えだが、確かに母はG級のハンターであり経験も非常に豊富だ。母が目を付けたのならまず間違いなく腕は相当立つだろう。

 

 

そんなことを考えて、私は砂漠の夜空を見上げた。

こう見ると非常に美しい光景だ。クエストで夜の砂原に行ったことはあるが、クエスト達成に必死でこんなふうに眺めることは無かった。

ちなみに私たちが乗っている砂上船は運航する船にしては装備が整っていて、バリスタと大砲が三門ありさらには大銅鑼まで設置されている。もてなす設備も充実していて、いい船に乗れたと母が言っていた。

ちなみに母と他の乗客たちはすでに眠っている。甲板に出ているのは私と数名の乗組員のみだ。

 

そのまま数分、空を眺めていると横から声をかけられた。

 

「よお嬢さん。砂漠の空に見とれてんのか?」

 

声をかけてきたのはこの船の船長だ。立派な無精ひげを携えた厳つい、これぞ頭領というような顔をしている。

 

「はい。とてもきれいで見とれてました。」

 

「物好きだねえ。見るのは良いが風邪をひかないようにな。明日はいよいよバルバレに着くから。」

 

「ありがとうございます。もう少し見てから寝ます。」

 

「おお。じゃあな。」

 

船長が自分の持ち場へ行こうとし、私が再び夜空を見上げた時だった。

 

空の一部が黒くなり星が見えなくなっていたのだ。注意深く見てみると、何かが飛行している。

私は空に飛ぶものがガブラスの群れだと分かった時、持ち場に戻ろうとした船長に声をかけた。

 

「船長さん。」

 

「どうした?」

 

「空にガブラスの群れが…。」

 

船長が私の指さす方向を見た。

 

「ホントだな。やたら多いな。…なんか様子がおかしいな。」

 

すると、船長の顔が何かの気配を感じ取ったようにハッとした表情に変わった。

 

「……まさか…!」

 

私も船長の考えが分かった。

 

「乗組員!すぐにここに抜けるぞ!舵をとれ!」

 

船長の声に乗組員たちが素早く移動。私は船から身を乗り出して砂漠に目を見やった。

そして、遠くの砂がおかしな動きをしているのに気付いた。

それは徐々に砂上船へと近づいてくる。

 

 

大きな砂煙が上がった。

 

そして、そこから飛び出してくる巨影。

 

 

 

「…ダレン・モーラン!」

 

豪山龍はそのまま砂上船を飛びこえ、砂海へ潜った。

 

「フロウ!」

 

「母さん!」

 

声をかけてきたの母だった。ごく軽い装備を着けている。いつもの装備を着る時間がなかったのだろう。

 

「状況は!?」

 

「ダレン・モーランが砂上船を飛び越してった!もうすぐ攻撃が来る!」

 

「分かった!あたしが豪山龍を相手する。あんたは群がってくるデルクスを倒して!」

 

「うん!」

 

母は猛ダッシュで船の反対側へ駆けていった。

 

私も船の右舷に移動する。

予想通り多数のデルクスがおこぼれにあずかろうと泳いでいた。

立てかけてあった骨製の大剣を心の中でお借りします!といって構えた。

 

デルクスたちがこちらをうかがうように目を向ける。群れのうちの一頭のデルクスが砂に潜った。

そして、一気に跳ねわたしの頭に嚙みつかんと鋭い牙が並ぶ顎を開き---------

 

 

デルクスの口から裂けるように体が斬れた。

 

続いて二頭三頭と波状攻撃のようにデルクスたちが襲い掛かる。

私は大剣を横に構え、力を溜める。二頭目のデルクスがちょうどよい位置に来たところで思いきり薙ぎ払う。二頭目の体が斬れ、ついで後続のデルクスたちも真っ二つになる。

その後ろにいたデルクスたちは、血を吹き出しながら飛び散った仲間の死体に押し飛ばされ砂に落ちた。

 

まだ警戒していたデルクスたちが怯えたのを確認すると、私は箱に入っていた音爆弾を群れの中央に投げた。

驚いたデルクスたちが一斉に飛び出した。全力走行している砂上船から、もがくデルクスの群れが遠ざかっていくのを確認すると私は詰めていた息を少し吐き出した。

 

後ろを確認すると、母と乗員がダレン・モーランへバリスタと大砲での攻撃をしているところだった。まだ、ダレン・モーランとの距離は遠い。攻撃させてひるんだすきを見計らえば逃げ切れる距離だ。

 

援護に回ろうと母のところへ駆けようとしたその時。

 

「………?」

 

何かが聞こえ、私は走り出そうとした足を止めた。

竜の咆哮にも聞こえたが、ディアブロスがダレン・モーランに気づいて咆哮したのかと思ったが、ディアブロスの甲高いあの声ではない。荒々しい大声のようだった。

 

私は、空に何かの影がいることを見た。ガブラスではない。もっと巨大なものだ。

それは見る見るうちにこちらに近づいてくる。

 

咄嗟に私は横へ転がった。それと同時に私のいた甲板に何かが重い音を立てて降りた。

 

 

それを見て、私を目を疑った。

 

真っ赤な燃えるような甲殻と鱗。腕の甲殻は体の色と真反対の蒼色で、その先には太く鋭い蒼い剛爪。原始的な頭部は恐怖心を引っ張り出す、荒々しい風貌。

 

母の話で何度も聞いたあの飛竜。

 

 

震轟竜 ティガレックス極希種

 

 

 

砂漠を震わす轟音が私の鼓膜に痛いほどひびいた。



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第3話 大地震わす者

6ヶ月以上も待たせてしまい、大変申し訳ございません!!
受験が落ち着いたのでもう半年も空くことは無いかと……

久しぶりの本編どうぞ


船の上に着地した震轟竜は咆哮を轟かせる。その咆哮にダレン・モーランに応戦していた船員が一斉に振り返る。

彼らの表情は新たに表れた脅威に怯え、震えていた。

 

震轟竜はその蒼い剛腕を振り上げながら進んで突っ込んでゆく。道中にある木箱やらなんやらが紙くずのように吹き飛ばされる。その行先には――――

 

 

 

大砲に弾を詰めようと運ぶ母が。

 

声に出して知らせようとしたが直感で駄目だと悟る。

震轟竜が着地した位置とアルアの位置は20mほど離れていたが、震轟竜はそれを僅か三秒ほどで詰めたのだ。声を出しても間に合わない。

それでも母を助けたいという本能のような何かがフロウの口を動かそうとした。

 

 

 

だが、アルアは運んでいた弾を地面に置いた。この時点で一秒半。

母を殺そうと震轟竜がアギトを開いた。瞬間、

 

 

 

 

 

「し!つ!こ!い!」

 

 

苛立ち全開の声を出し、体を振りかぶった。その姿は吟遊詩人から聞いた遠い異国の球技の玉の蹴り方に似ていた。

しかし、蹴る玉はない。かわりに母の足元にあったのは

 

 

 

 

 

 

大砲の弾。

 

 

 

アルアが大砲の弾を思いきり蹴飛ばした。蹴とばされた弾は震轟竜の胸に勢いよく当たり、

 

 

ドカーン、と爆発した。

 

 

「いつまで追っかけてくるのよあんた!うっとうしいにも程があるっての!何?あいつを取り逃がしたのがそんなに悔しかったの?じゃあ、あいつを追ってけばいいじゃない!なんであたしなのよ!え?八つ当たり?お門違いにも程があるでしょ!」

 

これまでの鬱憤を晴らすように喋りきったアルアは、一度深呼吸をすると再び震轟竜を見る。

 

「昔だったら即あんたを狩ろうしたけど、今は状況が状況だしまた今度戦ってやるわよ。だから今はサヨナラね。」

 

そう言った母はすでに体当たりの態勢に入っている豪山龍の方へと向き直った。その隙を逃すまいと震轟竜が距離を詰め、剛腕を振り下ろそうとした。

 

 

 

 

「状況が状況って、あんたにとってもってことよ。」

 

 

母は何と背を向けたまま震轟竜の引っかきを躱し、後ろ足の間をすり抜け震轟竜の背後にまわった。態勢を崩した震轟竜が船から落ちかけようとした時、

 

 

 

 

衝撃が走った。

 

 

船が激しく揺れる。私は姿勢を低く取り、近くのマストにしがみついた。乗組員たちも柵につかまり振り落とされまいと踏ん張っている。

母は姿勢を低くしただけでやり過ごしている。相変わらず人間業ではない。

 

 

 

 

 

そして、思いきり吹き飛ばされる震轟竜が母と私のすぐ上を通過していった。

 

「地面からディアブロスが出てこないか注意してねー。」

 

棒読みで母がそう言った。

 

 

直後にグワーーーンと大音量が聞こえてきて私は耳をふさいだ。豪山龍が怯み、砂中に潜っていく。

 

「総員!全速力でここを抜けるぞ!」

 

揺れが収まってきた船に船長の大声が聞こえてきた。乗組員たちは即座に持ち場に駆ける。

 

 

 

巨大な砂塵が夜空に映える月にかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー、きつかった。」

 

「あんなことがったのにその一言で済んじゃうんだ……。」

 

「んー、まああいつ一頭だけならテキトーに撒けばいいんだけど、豪山龍もいたからね。あれが下位だったのが救いね。G級だったらそう上手く誘導できないから。」

 

夜の暗闇と競うように煌々と光るバルバレを通りながら、そんなことを言い合っていた。

 

「ねえ、母さん。」

 

「ん?何?」

 

「足、大丈夫なの?」

 

「ああ、平気よ。砲丸蹴り飛ばしたくらいじゃ。」

 

「つくづく人間じゃないね……。」

 

「人じゃないからね。」

 

「あっ、はい。」

 

いつも通りの他愛のない会話をしていると、巨大な船が目の前に見えてきた。どうやらもう集会所に着いたらしい。

 

「ここに来るのも20年ぶりね。」

 

懐かしそうな顔で見上げながら呟くように言った。

 

「母さんは昔ここで働いてたんだっけ。」

 

「ええ。そこそこ上の役職についてたんだけど、いいやつもいたんだけど良い職場とは言えなかったし、あんたをもらってそれを皮切りに辞めた後は一回も戻ってないわね。」

 

嫌いってわけじゃないけど、と付け足す母の言葉をよそに私の記憶は蘇える。

 

 

 

川で釣りをして父がガノトトスを釣り上げ、母に拳骨を食らわされた時。

 

三人で昼寝をして、気づけば夜になっていた時。

 

 

 

母に内緒で父の背中に乗せてもらって飛んだ時。

 

 

「………ロウ。………フロウ?」

 

母の言葉で我に返ると、母がじっと私の顔を覗いていた。

 

「どうかしたの。」

 

「う…ううん!何でもない。」

 

「また思い出してたのね、あいつの事。」

 

「う………うん。」

 

思い出していた事があっさり見破られてしまい、私は母の問いを肯定した。

 

「あんたってホントあいつのこと好きよね。確か何だっけそういうの異国の言葉でファザコンって言ったけ。」

 

「ち…違うって!そういうんじゃなくて……その………。」

 

ハァーとアルアが大きなため息をついた。

 

「まあいいじゃない。あんたがハンターになったのはそれが一番の理由でしょ?だったら、それを果たしなさい。

私は責任もって見届けるから。」

 

「母さん………。」

 

母の言葉に胸が熱くなるのを感じ、私は決意した。

 

「……私、絶対に父さんに会う。そしてまた一緒に過ごしたい。」

 

私の言葉に母はうんとだけ言った。

 

「そしたら、また遊ぶんだ!釣りしたり、木登りしたり、空を飛ばせてもらったり!」

 

「うん、うん、うん………うん?」

 

私は自分の失態に気づき、口を覆った。

しばらくして母は恐ろしいと感じるほどの笑顔で私に向き直った。

 

「ちょっとこっちきなさい。」

 

「へ?ちょっ、やだ。いたいいたい!首掴まないで!いいじゃん昔の事だから!あああ!締まる!首が締まる!お願い許してえええええあああああああ!」




その後、少女の悲鳴がドンドルマ中に響いたという………

ではまたいつか


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第4話 見合う者を求めて


………今回は誠に申し訳ございません。新小説の方に精を出しすぎた結果、一年も待たせてしまいました。
さすがに開けすぎました…申し訳ありません。
恐らくこれから投稿頻度が遅くなり続けると思いますがご了承ください。
そして、一年も待たせてしまいまして申し訳ございません。


本編どうぞ


ふと上を見上げれば満天の星空が煌々と輝く深夜。私と母さんはバルバレのメインストリートを歩いていた。

さすがに時刻も深夜近いこともあってか、ほとんどの店は戸締りされており通行人も私と母さん以外ではギルドの職員がたまに見かけるくらいだった。

 

私は未だに痛む頭を擦りながら、母は目をこすりながら歩いていた。

 

「ねえ、お母さん。」

「ん~?」

 

眠気を孕んだ声で母は答えた。

 

「…今日、どこで泊まるの?」

「しらん」

「あーそっか。…ってええ!?」

 

驚いて返すと、母は頭を掻きながら返答した。

 

「テキトーに探して見つかるでしょ、って思ってたけどまさか式があんなに長引くと思ってなかったんだもん。しょうがないじゃない」

「しょうがなくない!どうすんの今日、武器の手入れもまだだし色々準備しなきゃいけないのに極希種調査隊結成しょっぱなから野宿なんてわたし嫌だよ!?」

「まあ、なるようになるわよ」

「だーかーらー!!」

 

「おや、こんな夜遅くに随分と元気のいいことで」

 

母を叱ろうとすると、私たちの後ろから男の人の声が聞こえた。

バッと振り返ると、そこには見知った顔の人が立っていた。

 

「ああ、失礼。本当ならば式が終わってからすぐに伺うつもりでしたが、事務仕事に追われまして」

「お久しぶりです。リストルさん」

「あれ?あんた式に出席してたっけ?」

 

リストル・エイジア。極希種調査及びある古龍(・・・・)の研究の第一人者であるすごい人。

母が知り合いで、子供のころに何度か会ったことがある。竜人族でとても律儀で、新大陸古龍調査隊にもスカウトされるほどの優秀な研究者らしい。

 

「いやいや、式典の最初の言葉を述べたのは私ですよ。まさか忘れられているとは」

「私、調査書を受け取った以外は殆ど寝てたんだけど」

「寝……」

「すいませんリストルさん。母が本当に…」

「はは、気にしないでくれ。君が謝る事じゃないよ」

 

人懐っこそうな、しかしどこか心の読めない笑いを浮かべるリストルさん。初めて会った時は少し怖かった印象があったが、それももうすでに去ってしまった。

 

「それで、用件は何?」

「ああ、そうでした。いや、もうこんな時間なので宿屋探しに困っているかと思いまして、私の部屋で良ければと……」

 

その言葉を聞いた途端、母が目を輝かせ、リストルの背中を叩く。

 

「ホント!?なーんだ、あんた意外と気が利くじゃない」

「いやいや……あのちょっと叩くのやめてもらってもいいですか?」

 

ごめんごめんと言いながら母がリストルの背中から手を離す。

 

「じゃ、行きましょ」

 

リストルに連れられ、私たちは宿へと向かった。

 

 

 

 

 

翌朝

 

私たちは、出発への準備を整えていた。大きな物資や竜車の手配はリストルさんがしてくれているので私は回復薬や食料の補給をしていた。極希種調査隊の印章を見せればすぐに運んでくれたので、それは楽だった。

 

問題なのは、私たちが一番やるべきで、難しい準備。それは……

 

 

 

隊員探しだ。

 

 

「う~~~ん……」

 

頭を抱えて悩む母に問いかける。

 

「あっ、お母さん。あの人良いんじゃないかな。猟虫の操り方がうまいし」

 

「いや、駄目ね。あいつ狙った部位にロクに攻撃できてない。フロウの言う通り虫の操り方は良いけど、それだけね」

 

 

私たちは今、バルバレの闘技場にいた。闘技場は捕獲したモンスターを専用の闘技場に放し、ハンターに狩らせる施設だ。一般の人々も観戦できるので、ギルドの資金の半分を占めていると言っても過言ではない。フロウは闘技場があまり好きではなかったが、楽にハンターの腕を見るのにこれほどの場所は他にないだろう。

 

極希種調査隊は、一部隊ではなく世界に何百という隊がいる。厳密にいえば、私たちが入った極希種調査隊は263番隊である。なぜ、新大陸古龍調査団のように一つにまとめないのかというのは、それは対象が地域ではなくモンスターだから、しかも世界に一頭しか確認されていないほど貴重な。

それほどのモンスターを一つの組織がまとめて調査しようとしても、膨大な人手と設備がかかる。そこでギルドは、まず隊のリーダーを決めてそのリーダーが隊全てを仕切る仕組みにしたのだ。

そうすれば、極希種の目撃情報が入り次第即、調査が可能。ギルドとしても運営に人手を割く必要もない。とても合理的である。最も、隊のリーダーになるには様々な試験が必要な為、立てるのはそう簡単ではないが。

 

 

「あのボウガン使いの人は?」

 

「確かに狙いも性格だけど、少し押しすぎね……あっ、被弾した」

 

ボウガンハンターは体勢を立て直そうとするも、ラングロトラに轢かれた。そのままネコタクで運ばれていった。

 

 

「あのハンマー使いの人はどう?他の人との連携が上手いよ」

 

「確かにそうね……でも、どうも自分本位っぽい。他の奴に対して当たりが強すぎる。一応、後で話聞いてみるけど、期待はしない方がいいわね」

 

ハンマー使いは仲間に対して、大きく檄を飛ばした。そこから徐々に連携がずさんになり、結局狩猟は失敗に終わった。

 

 

 

隊のリーダーは自分の部隊の隊員を決める権限も持っている。そのため隊員の構成も自由であり、一番大きい隊では百人以上の隊員がいるという。

でも、母さんは少数精鋭で行くらしくそのためスカウトの目も厳しいのだ。

 

すると、厳めしい鐘の音が聞こえてきた。これはバルバレで正午を告げる鐘だ。

 

「あっ、もうこんな時間。お昼どうしようか……」

 

「母さんは待ってて。私がご飯を買ってくるから。何が良い?」

 

「じゃあ、ホワイトレバーの定食お願い」

 

「うん、分かった」

 

私は闘技場の外にある食堂へ足を運んだ。お昼時ということもあってか、短くない列ができている。最後尾へ並び待っていると

 

 

スッ

 

 

ボロボロの外套を羽織った人が私の後ろを横切った。

私は即座にその男の腕を掴み、地面に押し倒す。

 

「のわぁ?!」

 

拍子抜けする間抜けな声をだしながら、男は地面に叩き伏せられた。男の手には私の財布が握られていた。

財布を引き抜くと、男はそのまま地に頭をつけた。それと同時にフードの顔があらわになった。

 

男、というよりかは少年の顔だった。童顔で、とても頼りなさそうな目つき。よく見ると、身長も低い。顔と同じく年は決して高くはない。もしかしたら私よりも幼いかもしれない。

 

 

「ごめんなさい、ごめんなさい!どうかギルドナイトに突き出すのだけは勘弁してください!」

 

少年はまくしたてるように謝罪をし、深々と頭を下げた。

 

 

 





ではまた(半年以内に)いつか


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第5話 臨機応変・・・?

太陽が空の頂点を少し過ぎたばかりの時間。

 

私たちの拠点では、顔なじみの人と見慣れない人が一人、床に緊張した様子で正座していた。

立っている私の隣には麦わらに座りながら昼飯にがっついているアルア、そして少し離れた所には、ちゃんとした椅子に座るリストルさんの姿。

 

「べ、はんではんたはズリだんかばったやけ?(で、何でアンタはスリなんかやったわけ?)」

「……あの、なんて……?」

「ばあ?ばんはびどのばなしぎいべんの!?(はあ?アンタ人の話聞いてんの!?)」

「ヒィィ!すいません、すいません!」

 

母に理不尽な起こられ方をされた泥棒に少し同情してしまうが、私は母の言葉を代弁した。

 

「そもそも、あなたはどうしてスリをしたんですか?」

「それは……えっと……」

 

口を濁らす泥棒の口を開かせたのは、傍から見ていたリストルだ。厚い羊皮紙をめくり、あるページに指を置いた。

 

「バルバレの法律では、窃盗などの悪事を働いた者を司法関係者以外が捕らえた場合、その身柄をどうするかは本人の意思次第となっていますね。つまりあなたを牢に入れるのはフロウさんの気持ち次第となりますが……、昔は暴力犯が近くにいたハンターに捕らえられて、そのまま砂漠に放り棄てられたそうですよ。その後その暴力犯は干からびてミイラになって発見されたとか……」

「わぁぁぁぁぁ!分かりました。言います、言います!」

 

力と知識という刃を突き付けられた可哀想な泥棒は、泣く泣く事情を話した。

 

 

 

―――

 

僕はここからはずっと離れた小さな農村で育ったんです。

 

でも、本当に僕は仕事が出来なくて……羊たちの放牧も、鶏の世話も、料理も何をやっても駄目だったんです。周りの大人からは叱られ続け、年下の子にもバカにされるような生活を送ってきたんです。

 

唯一、村長さんがこんな僕を見かねてくれたんです。僕にハンターをやってみないかと提案してくれました。凶暴な飛竜を狩れるような腕前じゃなくても、小型モンスターを狩れるなら全然お金は仕送りできるくらいなら稼げると。村長さんは昔ハンターをやっていて、バルバレに信頼できるハンターもいるからその人に教わりなさいって。村にいても邪魔者扱いされた僕は村を出て、このバルバレに着いたんです。

 

―――

 

「その後、どうなったんですか?」

 

泥棒は先程よりも低いトーンで続きを語った。

 

「……ここに来たまでは良かったんです。ただ、そのハンターさんが大怪我を負っていて、とても、僕なんかに狩りを教えられる状態じゃなかったんです。だから代わりにその息子さんが教えてくれることになったんですが……その……中々そりが合わなくて。村にいたころと大して変わりませんでした。」

 

顔を伏せ、より哀しみの漂う声色で話した。

 

「そして、息子さんにとうとう見放されたんです。彼の父親がバルバレの病院に転院するのを機会に……」

 

そこで黙り込んでしまった泥棒に、アルアが言う。

 

「じゃあ、そこで帰ればよかったじゃないの」

 

「それは考えましたよ……でも、ここで帰ったら村長に申し訳が立たないですし、何より、何もできずに僕が帰ったら村長は村のみんなから非難されてしまう……そう考えるとなかなか帰れなくて……。考えてるうちに路銀も尽きてしまって、それで……」

 

移動式のテントに沈黙が漂う。カーテンの閉まった窓からは遮られた陽光が暗く室内を照らしている。

 

各々が沈黙を破ろうと思考している中で、私は俯く泥棒を見た。

今までの話が嘘である可能性はあるにはあるが、作り話にしてはあまりにも現実的だ。加えて、泥棒の頬を流れる涙はそれらが作り話である可能性を大いに削っていた。

 

 

パン!と、室内に母の両手を叩いた音が響いた。思考に耽っていたリストルと私、俯いていた泥棒も視線を母に向けた。

 

「アンタの話はよく分かったわ。でも、私たちにはアンタを連行する権利はない。持っているのは……」

 

そこで母は私に視線を向ける。それだけで、私は母の言わんとしていることが分かった。

 

ボロボロの外套の肩に手をかけ、話しかける。

 

「私はあなたをギルドナイトには通報しません。盗まれたものも全部帰ってきているわけですし、もうスリはやめてくださいね」

 

その言葉を聞いた泥棒、は音が聞こえそうなくらいの勢いで、地に頭を付けた。フードがはだけ、埃だらけの童顔があらわになる。

 

「ありがとうございます!ほんとうに、何から礼を言ったらいいのか……」

 

室内に入り込む陽光が部屋を暖かく照らし、雰囲気が一気に明るくなる。

 

 

そんな中、母だけは何かを考えこむかのようにして椅子に座り込んでいる。数秒の後、何かを閃いたかのように顔を上げた。

 

「そうだ!いい事思いついた!」

 

私はアルアの言葉に嫌な予感を覚えつつ、振り向いた。唖然とした表情の泥棒少年を指さし、

 

 

 

「アンタ、私たち極希種調査団に入りなさい!」

 

 

 

その後、またもやバルバレに少年の声が響いた。




少し焦りすぎましたかね、出来があまり良くない……

今後はのんびりとやっていこうかと思います。もう一つに関しては……現在思索中です
皆さんもお体に気を付けてください。


ではまたいつか


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第6話 新しい仲間

母が驚愕の発言を起こした後、半ば無理やりに連れられてきた泥棒―――名前はコルネーというらしい―――と私たちは、ギルドの修練場に来ていた。控室と思しき場所には大剣からボウガンまで、ありとあらゆる武器が揃っており、初めて来たのだあろうコルネーは目を瞬かせている。

 

「ここには来たことないの?」

 

「は、はい。『修練場なんていらん。実践あるのみだ!』って言われて」

 

アルアとコルネーがそんな話をしていると、母は外套の袖を離し言った。

 

「じゃあ、ここから好きな武器を選びなさい。ちなみに前の奴とは何の武器で行ったの?」

 

「えーと……ハンマーでした」

 

「なるほど……重いものは扱いにくい感じ?」

 

はい、と話しているのを見て興味本位でついてきただろうリストルが、私に話してきた。

 

「随分と熱心だね」

 

「誰がですか?」

 

「君のお母さんだよ。さっきまですごいストレスを貯めてたようだったから。素質ある子に会って、師匠の心みたいなのが動いてるのかなって」

 

「あー、多分違うと思います」

 

正解を求めるリストルさんの顔を見て、熱が入ってるように見える母を見る。

 

 

 

「多分、母はもう選抜するのが嫌なんだと思いますよ」

 

私の推測を聞いたリストルさんは、私と同じ方向を見て

 

「……ああ」

 

ため息にも似た声を吐き出した。

 

 

私は正直、あまり彼に期待していなかった。

スリの腕は確かに良かったが物腰が臆病すぎる。ハンターという仕事は恐怖と戦う仕事と言っても過言ではないのだ。すぐに怖がるような人は、ジャギィのような小型肉食竜にさえ命を奪われる。

 

確かに彼の境遇には同情せざるを得ないが、無理に鼓舞して死なせてしまったりしたらそれこそ彼の家族や村長に申し訳が立たない。アルアは本当に何を考えているのか。

 

 

 

 

陽が落ちてきた頃には、そんな考えが泡のようにはじけていった。

 

歯車仕掛けで動くモンスターの案山子の急所と思しき部位に、次々と矢が刺さっていく様を、私は唖然とした表情とでしか見れなかった。動く標的にあれほど見事に射貫けるハンターは、私の知る限りでもごく少数だ。私だけでなく周りのハンター達も驚嘆して、その様子を見ていた。

 

鉄製の弓に矢をつがえ、次々に狙撃していくコルネーとその様子をじっと見るアルア。

 

「こんな感じですかね?」

 

「うん、ばっちりよ」

 

 

 

「すみません、何から何まで指導していただいて……」

 

「いいのよ、あたしとしてもアンタがここまで才能があるとは思ってなかったわ」

 

宿までの帰り道で、母とコルネーがそんな会話をしている。彼も最初は緊張していたが、母の気楽な話し方にリラックスしたようだ。母の会話術はとても尊敬する。

 

「さて、明日は早速狩りに行きましょうか」

 

「ええ!?もう行くの?もう少し練習してから行った方がいいんじゃ……」

 

「へ―キよ、さすがに飛竜は荷が重すぎるし、まあダイミョウザザミ位ならいけるでしょ。ね、コルネ―君?」

 

「え?あ……せ、精一杯頑張ります!」

 

「よろしい。そういう心意気は大事だよー?」

 

童顔の額を人差し指でつんつんしながら、アルアがいたずらっぽくそう言うと、私の隣を歩くリストルがコルネ―に行った。

 

「あ、そういえばご家族への連絡はしたんですか?極希種調査隊に入ると、簡単には故郷に帰れませんが」

 

その言葉を聞いたコルネ―は、ハッとして俯き加減にこう答えた。

 

「え、ええと……それはまだ……、きょ、今日は遅いですし明日にしようかなと」

 

「……まあ、そうですね」

 

 

 

 

大通りより少しそれたところにある私たちの宿、もといこれからの調査の基礎となる拠点はテント式だ。

竜車の引手のアプトノスにテント、簡易調理場など、生活に必要なものは大体揃っている。私たちが出かけている間にギルドの職員たちが整備を終わらせてくれていたらしく、竜車の側面にはギルドの紋章がかけられている。

 

お金のないコルネ―はここに泊まることになり、買ってきたもので軽い夕食を作った。もちろん母でなく私が、だが。作った料理はコルネ―にも気に入られてもらった。これから共に行動していくのならばうれしい限りだ。

 

 

夕食を終え、一人で食器を洗っていると足音が聞こえたので振り返ってみると、足音の主はコルネ―だった。

 

「こんばんは。どうしたんですか?」

 

「ちょっと、寝られなくて……少しお話良いですか?」

 

「……?いいですけど……」

 

陶器製のコップにお茶を入れ、コルネ―に渡す。

 

「ありがとうございます。……実は、フロウさんにどうしても聞きたいことがあって」

 

「聞きたいこと……ですか?」

 

 

「はい。フロウさんはモノブロスを狩ったことがありますか?」

 

「?いいえ」

 

「そうですか……実は僕がハンターになった理由は、モノブロスに会いたいっていう思いもあったんです」

 

お茶を机に置き、真剣な眼差しでコルネ―は話を続ける。

 

「昔、僕が砂漠の方へ村の人たちと砂漠でしか取れない植物を採りに行ったんです。……僕は全く取れなかったんですけど」

 

「それは…‥残念でしたね。それでその話とどういう?」

 

関係が、を言わなくてもコルネ―には通じたらしい。

 

「必死になって探しているうちに皆とはぐれてしまって……そのときに、モノブロスを見たんです」

 

ハンターに関係のない一般人がモノブロスと遭遇したという事実に私は驚いた。

 

「よくそれで生きて帰ってこれましたね……音爆弾でも持っていたんですか?」

 

「ああいえ、見たのはかなり距離が離れていたので、あちらには気づかれていませんでした。

……でも、遠くから見ただけでも威圧されました。世界には、こんなに強い生き物がいるんだなって実感したんです」

 

「……それでもう一度モノブロスに会いたい、と?」

 

はい、と初対面の時には欠片もなかった断固たる意志を発しながらそう答えた。

 

「竜人さん……リストルさんから聞いたんですが、極希種調査隊はモノブロスのような希少な生物の調査も行うんですよね。一目でもモノブロスを見たいんです」

 

私は数秒だけ考えてから答えた。

 

「いつになるかは分かりませんが、多分見れると思いますよ。私からも母に言っておきます」

 

「……!ありがとうございます!」

 

 

それからコルネ―は何度も握手をした後、寝床についた。嬉しそうなコルネ―の顔は思い出しても思わず微笑んでしまった。

 

 

 

そういえば、どうしてコルネ―は母ではなく私に相談したんだろうか?




こんな感じで緩く進めていきます


ではまたいつか


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第7話 遭遇

「あ、暑い……」

 

コルネ―が額に汗を垂らしながらそう独り言を言った。

 

「この程度でへばってたら、火山とかマジで死ぬわよ」

 

「はは……そうですね」

 

「ほら、クーラードリンク」

 

アルアから渡されたクーラードリンクを危なげにキャッチしたコルネ―。その様子を見ながら、私は音爆弾をポーチに入れた。

 

 

旧砂漠

傾斜の多い砂漠。昼は灼熱の太陽が、夜は極寒の空気が襲う過酷すぎる地。

元々はここまで傾斜は多くなかったらしいが、二十年以上前に隕石の落下によりこのような急峻な砂山が聳え立っているという。

 

今回のクエストの狩猟対象はダイミョウザザミ。

盾蟹と呼ばれる甲殻種の一種で、ヤオザミの成体である。モンスターとしての危険度はそこまで高くはないが、異名の所以となる盾のような鎌に、堅牢な甲殻を持つ初心者ハンターの登竜門とも呼べるモンスターだ。

 

「大丈夫ですか、コルネーさん?無理でしたらリタイアしてしても……」

 

「フロウは心配しすぎよ。男なんだからこれくらいは平気でしょ?」

 

「ま、まあ……」

 

視線を動かしながら曖昧な返事をするコルネー。

 

「それじゃ、さっさと行くわよ」

 

 

アルアの声とともに、私たちは足を進めた。

 

 

 

 

 

極希種調査隊といっても極希種のみを調査対象にしているわけではない。

極希種の生態や、戦闘能力、そしてなぜそのような進化を遂げたのか等だ。その為に他のモンスターを狩猟したりすることもあるし、全く関係がない依頼でも受けられる。

非常に自由なシステムだが、リストルに聞いた話だと「君のお母さんの提案が元になったんだよ」という。

 

 

そういうわけで狩猟対象を探すべく、私たちは旧砂漠を歩いていたのだが……

 

 

「いませんね……」

 

「ですね……」

 

30分以上探索を続けて、見当たらないのだ。痕跡もまばらで、とても現在位置を特定するには及ばない。

 

「面倒なことになったわね…………!そうだ!」

 

アルアは空の気球に向かって手を振った。

気球からモールス信号の光が届いた。確認すれば開けた砂漠の遺跡群があるところらしい。

 

 

「よーし、二人とも行くわよ!」

 

アルアの声に私たちは、勢いよく返事をした。

 

 

 

ギルドの区分けにより、エリア8と呼ばれるその場所は今日は風の強い日らしく、肌を焼くような日差しは和らいでいるものの、砂塵がビシビシと頬に当たる。

 

私たちは言葉を出すことなく、いつでも戦闘できるよう気を張り詰めていた。意外にもコルネーも黙ってついてくる。

 

母の訓練の成果か、それとも単に怯えて声も出ないのか。

 

 

ザリッ、と明らかに砂塵の出す音ではないものを聞いた。二人とアイコンタクトを交わし、より慎重に歩みを進める。

微かだが砂塵の向こうに影が、そして人間以上のサイズを持つものが見えている。

 

 

 

目の前を覆う砂のカーテンが剥がれ、その姿をあらわにしたのは

 

 

ターゲット、盾蟹 ダイミョウザザミだ。

 

彼我の距離は約10メートルか。今はこちらに背を向けている。コルネーの憧れであるモノブロスの頭骨は、死してなおその迫力を残している。

 

 

今がチャンスと思い、背負う大剣を構えようとしたその時、

 

突然アルアが手でその動作を制した。

 

「母さん!?」

 

盾蟹に気づかれない最小限のボリュームで問いかけると、アルアは

 

「待って、あいつ何かおかしい……」

 

「え?」

 

言われてみて注意深く観察していると違和感に気づいた。ヤドである頭骨が所々、何かに貫かれたような跡が残っているのだ。それらが砂で埋まっていたためこの距離まで気づかなかったのか。

 

盾蟹がゆっくりとこちらを向く。

ヤドの破損に対して本体はそこまで傷がなかった。

 

キシャー、と鎌を上げこちらを威嚇する。私とアルアが自分の武器を構える。コルネーはガンナーの基礎として、私たちから一歩離れて弓を構え、弦を引く。

 

 

 

狩猟開始―――

 

 

 

 

その時、大地が爆ぜた。

 

「「「「!?」」」」

 

 

ダイミョウザザミの後ろの地面から土煙があがる。盾蟹自身も驚き、体を固め防御の姿勢を取る。

 

 

 

その決して小さくない体が駒のように吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

三本の金色に輝く角が、地面から突き出ていた。豪快に砂をかき分け、這い出てくる。

 

甲殻に付着した砂金が、砂漠の容赦ない太陽に照らされ、自身の存在を誇示するような圧を見せる。

三つ又に変形した尻尾を地面に叩きつけ、赤い視線が射貫くようにこちらに向けられている。

 

両翼からは爪の間から伸びたかのような、角が。頭部の角はそれ以上に黄金に輝き、見るものの視線を奪うほど美しく、そして何よりも恐ろしい。閃一角竜の名に恥じぬ輝きが、その者の名を無意識にフロウに言わしめていた。

 

 

 

「モノブロス…………極希種」

 

 

 

「うわあ!?」

 

盾蟹はコルネーの近くに落下し、彼は砂にダイブして躱す。

 

盾蟹は少しの間もんどりうっていたが、体を起こすと急いで砂をかき分け、逃げて行った。

閃一角竜の関心は、逃亡したものにはもう向けられておらず、目の前に立つ三人の人間に変わったようだ。

 

こちらを見据えながら右翼を持ち上げ、一気に叩きつける!

 

「避けて!」

 

アルアの声に我を取り戻し、彼女とは反対の方向に飛ぶ。

 

ドスッッ!!という音とともに角が地面に突き刺さった。音からして、砂の下の岩盤ごと貫いたらしい。少し遅ければ串刺しになっていただろう。

 

モノブロス極希種は私に目を向けた。角を抜き、こちらに突進する。突進をギリギリまで引きつける……

 

今!

 

そのタイミングで大剣を地面に対して横になぎ、躱す。切っ先が翼に掠り、それだけで大きく体勢が崩される。口に砂が入りながら横転していく私の視界に

 

 

 

突進中のモノブロスが、左翼の角を地面に突き刺し、それを支点に180度回り、ほぼ勢いを抑えずにこちらに再度向かってきた。

 

角竜種は地域によっては突進を往復して行うものもいるのは知っている。だが、それらは突進の勢いを足で無理やりとどまり、そこからもう一度蹴って突進するというものだ。あそこまで滑らかに往復してくるのは知らなかった。やはり極希種は凄い。

 

とはいえ、もう遅い。ここからでは回避は間に合わない、大剣の横を構えガードする。

 

 

コルネーの鉄弓から五本の矢が放たれた。四本は頑丈な甲殻に阻まれダメージを与えられなかったが、一本が翼膜に当たった。

 

わずかな怯みを見逃さずまた避ける。

 

「……っ!」

 

突進を終えたモノブロス極希種の眼前で光が迸った。

 

「逃げるわよ!」

 

アルアの叫びに、大剣を背負って全速力で走る。すぐ後ろにコルネーが必死に付いてくる。

 

 

 

 

キャンプに入るまで、私たちは一心不乱に走った。

 

 

 

 




四か月もサボった結果がこれだよ!!
もう少し早く仕上げられるようにしていきたいと思います。(probably

ではまたいつか


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第8話 旅立ち

 

「あ~~……疲れた」

 

自室で元気ドリンコをぐびぐびと飲んでいくアルア。母の言葉には同意する。ちゃんと休んだはずなのに、まだ腕がひりひりする。

 

 

時は日が暮れて数時間。窓の外には、商人や飲食をするハンターが溢れていた。雷光虫のランタンが、夜の星に競うように光り輝いている。

 

まさかの極希種の乱入に肝を冷やした私たちが帰還し、事の顛末をギルドに伝えたときは、集会所にどよめきが走った。

報告を受けたギルドマスターが観測用の気球を向かわせたときには、傷ついた盾蟹の姿があったのみで、閃一角竜の姿は消えていた。

クエストの依頼主は行商人で、盾蟹に高価な代物を台無しにされたやり返しの為だったので、クリア扱いにはなった。

 

詳しい報告はリストルに任せて、私たちは宿で疲れを養うことにしたのだ。

 

ユクモの村には温泉があったので、狩りの後には決まって温泉に入っていたのだが、バルバレには汚れを落とす用のお風呂しかなく、ユクモ村の天然温泉と比べるとやはり違う。まあ、その分各地から疲労回復の食材や料理はごまんとあるので、これも地域の特色なのだろう。

 

「そうだね、今日は何食べに行く?」

 

「んーー、前に見た東の国の料理でも食べる?」

 

「それって、生の魚を米の上に乗せた、スシっていうもの?」

 

「そ、結構前に村長から聞いたことあってさぁ。その時は仕事一辺倒だったから、無視してたんだよね。改めてどんな味なのか、気になってきてさ」

 

母の言葉に肯定する私。

正直私は想像できないのだが、私と会う前のアルアは非常に冷酷で、眼前のモンスターを全て屠るくらいだったという。何やら物騒な二つ名をつけられていたらしいが、本人は「それは言っちゃいけない」と何故か顔を赤らめて言うのだ。

 

 

「ホント……昔はどうにかしてたわよ」

 

目を遠くして悔いるような、懐かしむような、あるいは戒めるような口調でそう言い放った。

 

「そういえばコルネーはどこ行ったの?」

 

「さっき部屋に行ったっきりだけど」

 

「じゃあ呼んできてくれる?夕飯食べに行くから」

 

うん、と部屋を出て階段を上る。突き当りの右のドアの前に立ち、ノックをする。

 

「コルネーさん、ご飯食べに行きましょう」

 

「あ、はい」

 

ドアを開けてきたコルネーは、そこまで大きくない手紙を大事そうに抱えて出てきた。

 

「手紙、ですか?」

 

そのことを指摘すると、彼は背を伸ばした。

 

「ええ、村長さんに今後の事を書いていて」

 

「そうですか、決意したんですね」

 

「はい」

 

凛とした口調には、初めて会った時の臆病さは微塵も感じられなかった。

 

「僕、気づかされたんです。これまでの僕の人生は凄い狭かった。村長の提案を聞いていなかったら、その事実すら気づけずに土に還っていったと思います。

でも、フロウさんにアルアさん、リストルさんと会って……もっと知りたくなったんです。この世界の事を。」

 

その決意の言葉に、私は少し驚いた。

 

「不束者ですが、これからも色々教えてください」

 

「はい、私が教えられる範囲なら何でも」

 

「!ありがとうございます!」

 

『フロウー!コルネー!そろそろ行くよーー!」

 

私は、「今行くー」と応答し階段を下りた。

 

 

人間はこの短期間でこんなにも変わることができるのか。

 

 

 

私のお父さんは、どうなのかな。

 

覚えてるかな、私の事。忘れてるかな、私のことなんて。

 

 

 

それでも、私は止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ」

 

アプトノスの竜車に荷物を積み終わり、額を拭く。

 

コルネーの入団試験も―――ハプニングこそあれ―――終わったので、母の友人であるラミスさんに会いに出発するのだ。

 

私も幼いころに彼女と会ったっきりなので、少しウキウキしてる。

 

 

「よし、これで終了ね!」

 

アルアが食料を荷物置き場に置き、屋根へ登る。続けて三連結の竜車の屋根を走り、アプトノスの手綱を握った。

 

「アンタたち、行くわよ!」

 

私は中央の竜車に乗り込み、リストルさんもアルアの近くに乗る。コルネーは少し乗り遅れ、慌てながらも最後尾に乗る。

 

アプトノスはゆっくりと動き出し、バルバレの門へと歩き出す。道中で道行く狩人が物珍しそうに視線を送ってくる。

 

 

門に着くと、ギルドマスターと職員たちが見送りに来ているのが見えた。石柱の上に胡坐をかくギルドマスターはこちらを見て

 

 

「無事を祈るぞ」

 

と一言送った。

全員、おのおのの方法でそれに答えた。

 

 

 

職員たちの声援を背に竜車は、草原へと進んでいった。

 

 




多分これが年内最後の投稿だと思います。来年もよろしくお願いします。

ではまたいつか


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