Fate/kaleid god (疾走する人)
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常勝不敗の軍神の異世界生活
イタリア:サルデーニャ島ーーー
そこで少年、草薙護堂は、まつろわぬ神である
ウルスラグナを殺し、神殺しとなったーーー
そして、ウルスラグナは現世での降臨を止め、不死の領域へと帰ってゆくはずだったーー
「さあ、神殺しよ!いずれ相まみえるその時まで、決して負けることは許さんぞ!」
そう草薙護堂に祝福を残してウルスラグナは不死の領域へと去ってゆこうとしてーー
突如として空間に現れた穴に飲み込まれて行った。
あとに残された神殺し、草薙護堂と全てを与える女、パンドラは、訳もわからずただ呆けることしか出来なかった。
穴に飲み込まれたウルスラグナは、消えかかる意識の中で、自分が不死の領域へと戻っているのでは無い事をハッキリと自覚した。
彼は、その事を知った上で、眠りについた。自分がサルデーニャ島で再び強敵と戦うことを楽しみにして。
そして、ウルスラグナが目を覚ました場所はーー
日本だった。冗談などではなく、リアルに彼は日本の中の有数の霊地と言われる富士山の中に立っていた。 彼はそこで一度驚愕した。
そして、自らの力を出してみてーー
愕然とした。
本来、神殺しよりも性能では上を行くはずの自らの
まつろわぬ神としての権能が、神殺しの権能のように
制約は無くとも、威力が神殺しの権能と同各か、それ以下にまで下がっていたのである。
彼は憤慨した。
ーー自らの力を全力で使い、神殺しとの死闘を演ずるために我が身を委ねたのに、何故全力を出せないのかーーと。
そして、今度は強い神気を発してみてーー
理解した。
呪術的な霊地で強い神気を発したにもかかわらず、神殺しやまつろわぬ神はおろか、呪術師の一人さえ駆けつける事をしないのである。それは、普通であればありえない事であった。
そして彼は、彼の生涯(?)の中で最も大きな衝撃を受けた。
彼はその明晰な頭脳でしばらく考えたあとに、一つだけ結論をうみだした。
そして彼は、自分が辿り着いた結論を心の中でつぶやいてみた。
ーーここは、自分がいた世界ではない、異世界だーー
そして、彼は頭の中に、自分が知らないこの世界の情報が入っていることを発見した。
そして、歓喜した。
この世界は、常に強敵との戦いを望んでいる彼のために働いているのかとさえ思った。
この世界にある、英霊や黒化英霊、更には黒化英霊を倒し、クラスカードと言うものを集めている者がいる事を知ったのである。
そう、彼はなぜか、Fateシリーズの作品の中の一つ、プリズマ☆イリヤの世界へと来てしまっていたのである。
そして、彼は富士山の頂きで、必ず強敵との戦いを楽しむことを決め、そして、自らの力を試すのと、この世界を満喫することも兼ねて、
ーー戦いの地、冬木へと歩き始めた。
ーー静岡から、東京まで。
ーー徒歩で。
ーー金も、住所も無いということに気づかないで。
ーー自らの幼い見た目から、自分がただの子供にしか見えないことも忘れて。
その後、警察に追いかけられる見た目が少年の軍神がいたとか、いなかったとか。
次回からは一気に冬木に移ります。
後、ウルスラグナは、富士山から冬木までは権能は一切使いませんでした。
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簡単な設定
ウルスラグナ
常勝不敗の軍神として崇められていた神。
ライトノベル「カンピオーネ!」の主人公、草薙護堂が最初に殺したまつろわぬ神で、「カンピオーネ!」のライトノベルの中のように草薙護堂に祝福を残し、神話の箱庭である「不死の領域」の中に戻ろうとしたが、突然現れた穴に飲み込まれて、Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤの世界の中に連れ去られる。
本作の主人公。
自分を負かすほどの強者と戦うことを目的としている。
神々の信仰が力となった「権能」を使用可能。Fateで言うところの宝具。
権能は、原作の「カンピオーネ!」の権能の使用条件がなくなり、威力が落ちたバージョン。神速で移動する、怪力を自由に使う、何でも破壊し尽す神獣を呼び出す、太陽の力を持った白馬を使う、などなど。
また、戦う相手の歴史を解き明かすことで、相手の神格を切り裂く黄金の剣が使えるようになる。
基本的にこの作品では主人公以外のカンピオーネ勢は出さない予定なので、かなりのチートキャラになっている。
また、イリヤの家の近くに住んでおり、イリヤとは長い付き合い。
イリヤスフィール·フォン·アインツベルン
本作のヒロイン的な立ち位置のキャラクター。
銀髪赤眼の少女で、魔術の才能は一級品。
魔術一族のアインツベルン家の最高傑作と言われていたが、両親がアインツベルン家から離反したため、アインツベルンとの縁はない。
自らの中に眠る小聖杯としての力を自覚していない。
ウルスラグナとは、幼馴染。
小さい頃に誘拐にあったところをウルスラグナに助けられ、ウルスラグナに恋をした。
ウルスラグナは自分を負かすほどの相手と死闘を演ずることが目的なため、イリヤのことは長い付き合いの小娘程度にしか見ていない。
アイリスフィール·フォン·アインツベルン
イリヤの母親。ウルスラグナが冬木に来たばかりの頃に随分と世話を焼き、親しくなった。
ウルスラグナの事を自分の子供のように思っており色々と気にかけている。
自分の一族であるアインツベルンから、イリヤの幸せを願って夫と共に離反し、現在は世界各地を飛び回って厄介事を片付けている。
衛宮切嗣
イリヤの父親。ウルスラグナが冬木に来たばかりの頃に随分と世話を焼き、親しくなった。
ウルスラグナを子供のように思っており、色々と気にかけている。
妻の一族であるアインツベルンから離反し、「正義の味方」ではなく、「家族の味方」になることを選んだ。
現在は世界各地を飛び回って厄介事を片付けている。
衛宮士郎
切嗣とアイリスフィールの義理の息子であり、イリヤの義理の兄。とてもお人好しで優しいが、平行世界の衛宮士郎のように魔術を習うことはしないで普通の生活を送っている。
とても簡単な設定です
文字数が稼げない………
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1話
原作開始は、ウルスラグナが冬木に慣れてから(三年後)です
無事に異世界への転生を果たしたウルスラグナは、今ーーーキャラ崩壊していた。
彼の記憶の中には、自分の戸籍があるにはあったのだが、自分の家が冬木にあったので、徒歩で冬木まで移動したのである。 権能の「神速での移動」を使うことも忘れて。
冬期までの道中、ウルスラグナは何度も警察に捕まって、何度も家族がいるかを聞かれ、家族がいないと言ったら、同情の視線を向けられて来たのである。
「我は神だぞ!?なのに何で何度も何度も警察に捕まらなきゃ行けないんだよ!?つーか、自分には親がいないと言ったときの同情の視線が地味にキツかったんですけど!イジメですか?イジメだよね?これ何てイジメ〜!?」
駅前で絶叫しているウルスラグナに、近づく影が二つあった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
衛宮切嗣とその妻、アイリスフィール·フォン·アインツベルンは、駅前で絶叫している少年を見て、絶叫の内容から彼に家族がいないのだろうと推測して、彼を助けてやろうとして、彼に話しかけた。
「何か困ったことがあるのかな?」
「困ったことがあったら力になるわよ?」
そういった二人に、ウルスラグナは振り返り、涙目で言った。
「家がどこだかわからないのです」
その言葉を聞いた切嗣は、彼にまず、自己紹介をした。
「僕の名前は衛宮切嗣で、隣にいるのが妻のアイリスフィール·フォン·アインツベルンだ。君の名前は何かな?」
「草薙ウルスラグナです」
彼がとっさに名乗った名字は、彼を殺した草薙護堂の名字であった。
「よかったら、僕達が君にこの街を案内してあげようか?」
その提案は、ウルスラグナにとってありがたいものだったので、彼はその提案に乗ることにした。
「よろしくお願いします」
その言葉を聞いた二人は笑顔を浮かべて、彼を案内してやる事を決めた。
二人がウルスラグナに冬木を案内していたら夜になってしまったので、二人は彼を夕食に誘ってみた。
「もしよかったら、今日の夕食は僕らの家で食べないかい?」
受肉をし、食料を調達する必要があった彼にとって、その提案はとてもありがたいものだったので、彼はまた二人の言葉に乗ることにした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
イリヤスフィール·フォン·アインツベルンは、なかなか帰ってこない両親の帰りを待っていた。二人が玄関に帰ってきた音を聞き、彼女は兄の衛宮士郎と共に、両親を出迎えに行った。彼女の両親は、道に迷っていた少年を案内していたのだという。
両親からその少年、ウルスラグナを紹介された彼女は、少しの間、彼に見惚れてしまった。
それも当然である。
まつろわぬ神として神話の中から現世に降臨したウルスラグナは、受肉しても神であることに変わりは無く、彼の人間離れした美しさは少しも変わっていないのである。
「俺の顔に何か付いているのか?」と彼に聞かれて意識を現実に戻した彼女は、食事の準備を始める両親を見て、
「何でもない」
と答え、両親のあとを追いかけてリビングへと入って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
食事の席で、切嗣は、駅前での彼の叫びを聞いてからずっと疑問に残っていたことを彼に聞いてみた。
「君は、ご両親はいるのかい?」
「いいえ、いませんけど?」
それが何か?と言うように当然のように返された答えを聞いた彼は、即座に謝った。
「そうか、それは辛いことを聞いてしまったね」
「いいえ、この世界に産まれた時から両親はいなかったので、別に気にしてないんで大丈夫です」
辛い様子など全く見せず、当然のようにサラリと彼が発した言葉に、彼は絶句した。
それは、同じ食事の席に付いていたイリヤスフィールや、士郎も同じであった。
普通、自分には親がいないという事実は、子供にとっては重くのしかかるものである。
今ではすっかり衛宮家に慣れた士郎であっても、本当の親がいない、という事実は彼にもたまにのしかかる。
だが、目の前の美しい少年は、少しも淀む事なく、簡単に親がいないと言い切ったのである。
彼らは、ウルスラグナがとても辛いことに慣れてしまったのだろうと思い、哀れみを抱いた。
「君の家はどこだい?」と聞いた切嗣に帰ってきたのは、
「この家の隣です」
という答えであった。
そこに、イリヤスフィールと士郎が口々に、
「朝飯はうちに食べにきなよ!」
「風呂とかも気軽に使いに来ていいぜ!」
と、家族のいない彼に温かい言葉をかけた。
ただの同情心で言われているのならばすぐに断っただろうが、彼らが本気でそう言っていることを感じたのか、不思議と断ることは出来なかった。
「はい、よろしくお願いします」
と頭を下げた彼に、
「ママって呼んでね♪」
と声をかけたアイリスフィールに、
「はい、よろしくお願いします、アイリスフィールさん」
と声を返した彼は、「ママって呼んでよ〜」と繰り返しているアイリスフィールの声を聞きながら、家族というものの暖かさに生まれて初めて触れたのだった。
いささか設定とは違う部分がありますが、そこはご都合主義と言う事で。
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2話
衛宮家の人々と仲良くなってからは、ウルスラグナの日々はますます人間味を増し、充実していった。
イリヤと同じ学校の同じクラスに通い、何人かの友達もでき、放課後はイリヤの家でイリヤたちと遊ぶ。
そうして時間を過ごすウルスラグナは、傍から見ても、ただの小学生のようで、まつろわぬ神としての残虐性など欠片も見られなくなっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
そうしてウルスラグナが人間らしさを持ち始めた頃に、事件は起きた。
衛宮切嗣とアイリスフィール·フォン·アインツベルンの子供であり、とてつもない程の魔術の才能と、聖杯としての器を持っていたイリヤに、とある魔術結社が利用価値を見出し、誘拐したのである。
その結社の名は、All black company。組織内のメンバー全員が黒の装束を着て闇の仕事をこなす、通称「黒の組織」であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
イリヤは、現在、とても混乱し、恐怖心が湧き上がっていた。
彼女は、公園で遊んでいるところをいきなり何人もの黒い服を着た体格のいい大人たちに囲まれ、無理やり車の中に連れ込まれたのである。
今の彼女には、ただただ自分の未来を想像し、怯えることしか出来ないのであった。
(助けてよ…誰か…助けてよ…早く助けに来てよ…
ウルスラグナーーー‼)
現状に怯え、心の中で助けを呼ぶしか出来なかった彼女の脳裏に浮かび上がったのは、大好きな父親でも母親でも兄でもメイドでもなく、額に何かの紋様が刻まれていて、人と呼ぶには神々しすぎる気を纏った幼馴染の少年であった。
彼女はただひたすら、心の中で助けが来ることを願うのであった。
そうして目をつぶって祈っていると、いきなり後ろからハンカチを口に当てられ、その匂いを嗅いだ瞬間、彼女は自分の意識が眠気に沈んでいくのを感じたのだった。
「ーーボーー。イリヤーーイールーーンツベルンを眠ーーせることにーーー功しまーーーーしたーー」
途切れ途切れに耳に入ってくる誘拐犯たちの声を聞きながら、イリヤは眠り始めるのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ウルスラグナは、怒っていた。
以前の自分では考えられないくらい、怒っていた。
理由は簡単である。
たった少し前にイリヤの友達が泣きながらイリヤの家に入ってきて発した言葉。
「イリヤが誘拐された」「黒服の男たちが誘拐した」
というものである。
イリヤや衛宮家の人々との生活は、既にウルスラグナの中で日常の一環へと変化していた。
ーー日常の中心であるイリヤを我の前から持っていくだと…?ふざけるな!他の誰が許そうとも、我が許すものか!ーー
彼には、イリヤが誘拐された理由が、イリヤの持つ魔術の才能と、聖杯としての器である、ということはわかりきっていた。
何より、自分が一番彼女の中に眠る力の危険性に気付いて、気にかけていたつもりだったのに!
彼は、イリヤの友達の証言と、周りに残る魔力の残滓をもとにイリヤの探索を開始した。
自分の日常を失いたくないが為に。
権能までも行使して、出来る限り。
果たして一時間後ーー
ようやく彼は、イリヤの現在地と、周辺の状況、敵の数などを把握した。
今も必死に探索を続けているであろう切嗣たちに位置の情報を送り、彼は一人でイリヤが軟禁されている場所、町外れの廃工場へと向かった。
「…あそこか……」
そう呟いて、ウルスラグナは廃工場の扉を「怪力」の権能で破壊し、中へと入ってゆくのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ガコン。
ドガン。
廃工場の奥で、椅子に縛り付けられていたイリヤが最初に聞いたのは、遠くで何かが破壊される音と、自分を誘拐した黒ずくめの男たちの慌てたような声だった。
ーーガコン!!ーー
ーードガン!!ーー
どんどんと何かを破壊する音はこちらへと近づいてきている気がする。
ーー私を誘拐した人達が慌てているってことは、今こっちに近づいてきているものは、あの人たちでさえも知らないような化物なのかな?ーー
ーーごめんね、パパ、ママ、お兄ちゃん、セラ、リズ、ウルスラグナ私、もうみんなと会えないかもしれないよーー
心の中で自分の大切な人たちに別れを告げたイリヤは、恐怖で震える心を無理やり奮い立たせ、音が近づいて来る方向を見つめた。
そしてついに、自分の目の前にある扉が開かれた。
せめて最後は自分を殺す相手の顔くらいは見ておかないと、という気持ちで前を向いたイリヤの眼に最初に写り込んだものを見て、イリヤは安堵の涙を流した。
その視線の先にいた者は、先程までイリヤが心の中で必死に助けを求めていた自分の幼馴染その人だった。
若干ウルスラグナが人間らし過ぎな感じがありますが、そこはご容赦を。
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3話
ウルスラグナが廃工場の中を破壊しながらイリヤを探していると、ふと重く威圧感を放っている扉が彼の視界の中に入ってきた。
ーーあれか!ーー
ほぼ直感的にその扉の中にイリヤがいると感じ取ったウルスラグナは、「怪力」の権能を行使し、あれ程に威圧感を持っていた重い扉を一気に跳ね飛ばして中へと侵入した。
中へと侵入したウルスラグナの視界に入ってきたのは、重い扉がいとも簡単にふっとばされていることに慌てふためいている黒ずくめの男たちと、椅子に縛り付けられているイリヤだった。
ウルスラグナは、自分の中に湧いて出てくる怒りの感情を沈めながら、「神速」の権能を行使してイリヤに近づき、呆然としているイリヤを眠らせ、イリヤを椅子に縛り付けている縄を解いてから、再び「神速」の権能を行使し、廃工場の外に脱出した。
そして、ウルスラグナは一瞬で廃工場の外に移動したあと、空中に浮かびながら、権能である「破壊」を司る大猪を呼び出し、冷たい声で大猪に命令を下した。
「常勝不敗の軍神、ウルスラグナが命ず。目の前にある廃工場を破壊し尽くせ」
異世界に飛ばされてから初めて呼び出された大猪は、自分の主からの破壊の命令に喜んで嘶き、廃工場へと突進していった。
四十秒後、廃工場があった場所に残っているのは、瓦礫の山だけだった。
ふと、自分が両腕で抱えているイリヤの「うぅん……」という声を聞いたウルスラグナは、ゆっくりと空中から地面へと降りて行った。
自分を攫った人間を自分の幼馴染が皆殺しにしたと知ったならば、この心優しい少女はどう思うだろうか、と考えながら。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
イリヤは、ふと自分の意識が覚醒していくのを感じた。
ーーあれ?確か、ウルスラグナが私のことを助けに来てくれて…、あれ?その後、どうなったんだっけ?ーー
目を覚ましたイリヤの視界に入ってきたのは、自分を心配した顔で覗き込んでくる幼馴染だった。
「あれ?ウルスラグナ?なんでここに?私のことを攫った人たちはどこ?パパとママは?」
ウルスラグナは、目を覚ましてからすぐにマシンガンのように質問を浴びせかけてくる幼馴染に苦笑しながら、彼女の質問に答えていった。
「まあ、まずは落ち着け。まずは、深呼吸だ。す〜、は〜。よし、落ち着いたか?じゃあ、一つづつ答えていこう。まず、我、じゃなかった俺は、いろんな人の目撃談などをもとにして、お前の場所を割り出して、助けに来たわけだ。そこまでオーケー?ドーユーアンダスタン?」
「イエス、アイアンダスタン…(なんで英語?)」
「よし、お前を攫った人たちは、俺達が廃工場から脱出してからすぐに廃工場が壊れて、多分今頃はもう……」
「そっか……」
嘘をつくことに若干の罪悪感はあるものの、イリヤが悲しむよりはマシかと割り切って話を進めるウルスラグナ。
「切嗣さんとアイリさんには、ここに来る前に連絡をつけておいたから、もうそろそろ到着するはずだ。切嗣さんとアイリさん達が来るまでしばらく待っていよう」
「うん、分かった。」
そしてイリヤとウルスラグナは切嗣たちを待ち続けるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
しばらくして、切嗣達が到着した。
彼らは揃ってイリヤが無事な様子に安堵のため息を吐き、イリヤのもとに近づくのであった。
そして彼らが一通り再開を喜びあったあと、ウルスラグナへの質問タイムが始まった。
「どうやってこの場所がわかったんだい?」
「そりゃあもちろん自分一人で追跡し…いえ、目撃者の証言から推測をしたからです。」
「なんで一人で来ていたんだい?」
「自分一人のほうがずっと効率が良いかr…イリヤの事を考えると、待つことが出来なくなったからです。」
「どうやってイリヤを救出したんだい?」
「神速を使って一瞬で…じゃなかった、隠れながらなんとか助け出しました。」
質問は何度も何度も続き、ウルスラグナが「そうか。良くやってくれたね。ありがとう。」の言葉とともに質問攻めから開放されたのは、約三十分後だった。
質問攻め地獄のせいで若干グロッキーになりかけているウルスラグナを見ながら、切嗣の心の中には数々の疑問が広がっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ウルスラグナやイリヤなど、アイリスフィール以外の皆を家に帰らせた切嗣は、アイリスフィールに自分の疑問を打ち明けていた。
「なあ、アイリ。この現場は、少しばかりおかしいと思わないかい?」
「あら、それはどういうこと?」
「まず最初に、ウルスラグナ君は工場が勝手に崩壊したと言っていたが、工場の瓦礫のあとを見れば、これは自然な崩壊ではなく、何かが突進してできたあとのようなんだ。」
「次に、ウルスラグナ君は黒ずくめの男たちから隠れながら侵入したと言っていたが、それはありえないんだ。」
「どういうこと?」
「黒ずくめの男たちが所属している組織、黒の組織は、索敵の魔術を得意とするものが多くてね。廃工場内に侵入者が来たとなれば、すぐに発見されてしまうはずなんだ。なのに、彼は見つからなかった。」
「確かに。」
「そして最後だが、この廃工場からは、魔力の残滓が存在しない。おかしいと思わないかい?自分の組織の目当てであるイリヤがいなくなっているのに、探索の魔術の一つも使わないなんて。」
「つまり切嗣。あなたが言いたいのは、ーー」
「ああ。ウルスラグナ君は、魔術関係者なのではないか、と言うことだ。」
「なっ!ーーそれじゃあーー」
「ああ。絶対にあってほしくはないが、僕たちは最悪、彼と戦わなければいけないということだ。」
「ーーーーーーーーーーーーー。」
(ウルスラグナ君…君は一体何者なんだ?…)
愛娘の危険が去って一息ついたところでまた一難。今後の対応に頭を悩ませる切嗣だった。
感想にあったリクエストにお答えして、黒の組織の方々には大猪で潰れていただきました。
あと、本作品中の「黒の組織」は、某頭脳は大人で体が子供の名探偵の中に出てくるあの組織ではないですよ?
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4話
更新遅れてすいません。
これからは一週間に一度くらいで更新していきたいと思います。
ウルスラグナは、まつろわぬ神らしくなく、困っていた。理由は目の前で不毛な争いを繰り広げた挙句、ウルスラグナを面倒ごとに巻き込んだ女子高生。別の世界線で「あかいあくま」などと呼ばれている遠坂凛である。
話はその日の夕方にまで遡る。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
夕方、ようやくロンドンの時計塔から日本の空港についた遠坂凛と、彼女と一緒に日本に来たルヴィアゼリッタ·エーデルフェルトは、捕まっていた。
理由は言わずもがな、この二人のコンビの代名詞とも言える不毛な争いである。
二人は空港に到着したあと、早速不毛な争いを始めて、野次馬なども集まって注目された挙句、空港の職員に捕まったのである。
「あんたが騒いだせいで捕まったのよ!」
「あらまあ、人のせいにしかできないなんて、やっぱり人間とお猿さんとでは格が違いますわねトオサカリン!」
「なんですってー!」
捕まっている最中にも喧嘩をしている事は変わらなかったが。
「えーと、それでは君たちはどうして喧嘩を始めたんだい?周りの人に迷惑をかけないようにして「「うるさい!口出しするんじゃないわよ(ですわ)‼」」ア、ハイワカリマシタ」
このように空港の職員が何を言っても無駄だったため、空港の職員は二人を問い詰めるのを諦めて二人を釈放したのである。
そして二人が空港を出たとき、すでに夜になっていたため、二人は「あんたのせいで遅れたんじゃないのよ!」「いいえ、あなたのせいですわ!」などと喧嘩をしながら冬木に向かい、冬木の駅前のマ◯ドナルドへと入っていったのだった。
夕食を食べ終わった二人が見たのは、駅前で頭を抱えている小学生くらいの男子、そう、ウルスラグナだった。
ウルスラグナは電車で隣町まで行ったあと冬木まで戻ってきたは良いが、駅構内でスマホを落としてしまい、探しても見つからず、途方にくれていたのだった。
凛とルヴィアは、人前で堂々と不毛な争いを繰り広げるような残念な人間ではあるが、困っている人を見捨てるような人でなしではない。
なので、彼女らはウルスラグナの方に歩いていき、ウルスラグナに声をかけた。
「どうしたの?」
「スマホを落としてしまいまして…」
それを聞いた二人は、すぐさま行動を開始した。魔術師とは、些細なことですら命取りになるため、些細なことを見逃すことすらしない。
二人は優秀な魔術師であったため、すぐにウルスラグナのスマホを見つけ出した。
「はい、これでしょ?」
「はい、これです!ありがとうございます!」
ウルスラグナの返事をきいた二人は優しく微笑んでから、ウルスラグナにきいた。
「君、小学生だよね?親御さんはどこ?」
「親はいないので、一人暮らしをしています。」
「じゃあ、私達が家まで送っていってあげようか?」
傍から見れば小学生を誘拐しようとしている高校生の図にも見えなくはなかったが、ウルスラグナはこれを了承して、付き添いを頼むことにした。
「お願いします。夜間に一人で歩いていると、何故か警察に通報されることがありますので。」
その答えをきいた二人は、少し微笑んでからウルスラグナに家までの案内を頼み、世間話をしながらウルスラグナの家まで向かったのであった。
ーーーーーーのだが、皆さんは凛とルヴィアの二人組は親切なお人好しであっても、残念な人間であることを忘れてはならない。
そう。あろうことかこの二人は、ウルスラグナの目の前で喧嘩を始め、ドンドンとヒートアップ、更には魔術の秘匿も忘れて某愉快型魔術礼装ことカレイドステッキを取り出して変身し、上空でドンパチ始めたのである。
そしてウルスラグナは異世界に来てから初めての魔術師を見つけたので興奮し、あろうことか「我も混ぜろぉぉぉぉ!」などと言って飛行していったのである。
だが、運が良いのか悪いのか、そのときはちょうどカレイドステッキのルビーとサファイヤが凛とルヴィアに愛想を尽かして二人のもとから去っていった瞬間であり、空中から投げ出された二人は見事にウルスラグナの横をすり抜け、落ちていったのである。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
そこから、今のシーンに繋がったのである。ルヴィアは凛と反対側の川岸から陸に上がってサファイヤを探しに行ったので見えなかったが、凛のいる川岸からは、上空に魔術礼装無しで浮かんでいるウルスラグナの姿が大変よく見えた。
その為、ウルスラグナは凛に質問攻めにされた挙句、無理やり凛の助手にされたのである。
ウルスラグナには、もう「強い敵と戦えるらしいから良いや」と諦めの表情を作ることしか出来なかった。
その日はもう夜も遅いと言う事でようやく家に返してもらったウルスラグナだったが、次の日からはさらに面倒に巻き込まれてゆくことになる。
ウルスラグナの人格が良くわからない(泣)
アニメ「カンピオーネ!」の一話に出てきただけだから、キャラもなにもよくわからないんですよね…
まあ、そこはイメージで許して下さい。
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