存在を奪われた元赤龍帝 (kind090daichi)
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第0章 あいつは俺で、俺は誰?
絶望は突然に


 どうも、kind090daichiです。試験勉強中にふっと思いついたまま文章にしています。

 「駄文乙ww」とか言わないで、温かい目で見てくれたらうれしいです。

 よろしくお願いします。



~一誠 side in~

 

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い.....。

 

「一誠っ!!どうしたっていうんだ!!」

 

 お父さん、その人は誰?

 

「ちょっと一誠?なんでそんなにおびえた顔しているのよ?」

 

 お母さん、その人は誰?

 

「おい一誠?どうした?今日は俺の誕生日だろう」

 

 お前は、誰?俺は、誰?

 

 

 

 

「イッセーくぅーん!また明日ねぇー!」

 

 俺はいつも通りの日常を過ごしていた。朝は7時に起きて、そこからずっと友達のイリナって男の子と遊んでいた。いつもと違うところをあげるとすれば、今日は俺の誕生日だということだ。

 

 イリナと別れ、公園から家へ帰ろうと、少し赤く染まる空を見上げながら小走りで歩道を駆け抜ける。

 

 ガクッ

 

 ズザァ

 

「イッテェ(°ロ°; 三 ;`ロ´)」

 

 煙草屋の前を通り過ぎた時、不自然に足から力が抜けて転んでしまった。しかも、走って勢いがついていたので、膝をすりむいてしまった。

 

「いたたたた。あー、よいしょっと」

 

 どうして転んだんだろう?まぁ、いっか。きっと遊び疲れたんだ。それよりも今日は俺の誕生日~♪早くかーえろっと。

 

自分が5歳になることに浮かれていたのか、こんな些細なことなど気にせず、俺はまた走り出した。

 

 

 

 ガチャ

 

「ただいまー!お母さん、夕ご飯はなに?」

 

 家に帰るなり靴を玄関に脱ぎ捨て、台所へ向かう。

 

 台所へ行くとお母さんが料理の手を止めて、こちらへ振り返ってくる。

 

「そうねぇ。それは後でのお楽しみにしておいた方がいいかも」

 

 微笑みながらそう言う。

 

 ということはローストビーフかな、チキン南蛮かな、それとも.....。

 

 お楽しみと言われて自分の好きなものを妄想して止まらない一誠であった。

 

 しかし、現在は午後5時であるからまだ後1時間以上も時間が余っている。

 

 後1時間以上とか長すぎるよ。どうやって時間をつぶそうかな。

 

 もはやご飯のことしか頭にない一誠は2階にある自分の部屋で漫画でも読んでいようと思い、階段を登る。

 

 階段を登り切り、向かって左側にある自分の部屋の扉を開けようとドアノブに手を掛けたとき、ある違和感に気づく。

 

 あれ?こんな所に部屋なんかあったっけ?

 

 そう、向かって右側に、朝には無かったはずの扉があるのだ。

 

 思わず目に入ってしまったそれに一誠は酷く異物感を覚えた。なぜなら右側には庭があり、1階部分など存在しない。ゆえに、2階に部屋があるはずがないのだ。

 

「こんなところに部屋なんてあったっけ?まぁ、どうせ物置でしょ」

 

 混乱しながらもそう思い扉を開ける。

 

「誰だ?」

 

 すると中から声か聞こえてきた。

 

 は──────誰?

 

 余りにも予想外のことで一誠の思考回路は停止してしまった。

 

 改めて中を覗く。するとそこにいたのは・・・

 

「俺?!」

 

 そう、俺とそっくりの容姿の子供だった。違うところと言えば俺より少し背が高く、顔が整っている事くらいだ。

 

 どうして俺が俺の目の前にいる?いや、その前にこいつは誰だ?!

 

「お前は誰だ?」

 

 得体の知れない子供に向かって俺は問いかける。

 

「俺は 兵藤 誠二 だ。分かったら俺に話しかけるな、絞りかす野郎」

 

 兵藤誠二と名乗った子供は、その整った顔を醜く歪めて笑い、嘲るような声音でそう言い放った。

 

 その言葉を聞かされたとき、再び一誠の思考回路は停止してしまった。理解が及ばず、考えることを放棄したのだ。

 

 得体の知れない者が家の中にいる事実に面くらいながらも急いで1階に降り、お母さんに問う。

 

「お母さん!誠二って、兵藤誠二って誰?」

 

 その問いに対する答えはあっさりと帰ってきた。

 

「何寝ぼけたようなこと言っているのよ一誠。誠二はあなたの実の弟じゃないの。そんなくだらないこと言ってないで、さっさと誠二を呼んできてちょうだい。なんて言ったって今日は誠二の誕生日なんだから、ほかに何を食べたいのか聞かなくちゃ」

 

 どうしてそんなこと言ってんだ。まちがいなく今日は俺の誕生日だっていうのに。

 

「違うよお母さん。今日は俺の誕生日だよ?」

 

 若干声を震わせながら訴える。しかし現実は無情にも覆ることはなかった。

 

「一誠、貴方、何言ってんの?そんなに実の弟をいないことにしたいの?」

 

 あぁ、もうお母さんはダメだ。完全に俺に弟がいると思い込んでいる。こうなったらお父さんに聞くしかない。

 

 これ以上、母に何を言っても無駄だということを幼いながらも察した一誠は、廊下の奥にある、父の書斎へと向かう。

 

 コンコン

 

「ちょっといい?お父さん?」

 

 ドアをノックして中からの返事を待つ。

 

「一誠か?いいぞ」

 

 許可がでたので書斎の中に入る。

 

 デスクの上にあるパソコンに向かいながらお父さんが聞いてくる。

 

「どうしたっていうんだ一誠。珍しいな」

 

「お父さん、俺に弟っていないよね?」

 

 俺の問いを不思議におもったのか、お父さんはパソコンのキーボードをたたくのをやめた。スッとこちらを向くと笑いながら答える。

 

「何寝ぼけたようなことをいっているのだ。そんな当たり前のことを聞いてどうする―――」

 

 そうだよな!そうだよな!俺に弟なんか存在しないよな。

 

 お父さんの言葉を聞いて歓喜する俺だったが次の言葉で地獄に落とされた。

 

 「―――お前に弟がいる、なんて、この5年間ずっと一緒にいただろう?」 

 

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っ!!!!!!!!」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺は絶望と恐怖でとち狂ったように叫び出した。

 

 なんで、どうして皆あいつのことを家族と認めるんだ?!確かに今日の朝まであいつはいなかった!なんでだぁ?!

 

 お父さんは、突然頭を抱えて蹲り、叫び出す俺に驚いて固まっているが、すぐに俺の元へ寄ってくる。

 

 

 ここで冒頭に戻る。

 

 

 俺の叫び声を聞いたのか、お母さんと得体の知れないあいつがやってきた。

 

「一誠っ!!どうしたっていうんだっ!!」

 

 お父さん、その人は誰?

 

「ちょっと一誠?なんでそんなにおびえた顔しているのよ?」

 

 お母さん、その人は誰?

 

「おい一誠?どうした?今日は俺の誕生日だろう」

 

 お前は、誰?俺は、誰?

 

 ここで一誠は生物的本能なのか分からないが、オーバーヒートした脳が確実に活動を停止した。といっても死んだわけではなく、気絶しただけである。

 

 薄れゆく意識の中見えた誠二の顔は、おもちゃをわざと乱暴に扱い、壊すことを面白がっている子供のようだった。

 

~一誠 side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 いかがでしたでしょうか。

 感想お待ちしております。


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こんにちは、僕の主人公生活

 誠二のポジションを兄から弟に変更しました。

 よく考えたら兄なのに誠二って.....。




 ~誠二 side in~

 

 「お..........い。お.....なさい」

 

 呼びかけられて起きればそこは白い世界だった。一面が真っ白でただ広いだけの空間。

 

 ここは、どこだ?

 

「あぁ、やっと起きてくれましたか。よかった」

 

 そう声を掛けられて声のしたほうに顔を向けると、そこにいたのは「儚げで可憐」というしかないほどに美しい少女がいた。

 

 プラチナブロンドの髪、深くて高貴な紫の瞳、ルビーと見間違うほどのあかく薄い唇、透き通るような透明感のある肌、極めつきに力強く抱きしめたら折れてしまいそうなほっそりとしたしなやかな体躯。

 

「完璧だ・・・・・・君は美しい・・・・・・」

 

 思わず口に出てしまうほどに美しいのだ。いや、言葉によってその価値を束縛する事さえおこがましい。

 

「まぁ、お上手ですね。フフフッ」

 

 口に手を当てて、鈴の音のような声で、彼女は笑う。

 

「まずは自己紹介をしますね。私の名はセシール。斎藤義輝さん、あなたがどうしてここにいるのか分かりますか?」

 

 ふむ、この感じはよく小説でありがちなパターンか?状況を鑑みるに。だとすると答えはひとつか。

 

「俺は、死んだのかな」

 

 思いついたことを言ってみる。

 

「ええ、そうです。あなたは死にました。上から鉄骨が落ちてきたことが原因で」

 

 そうなのか、チッ!クソっタレが。

 

 中学時代のいじめが原因で引きこもり歴21年、35歳のおっさんがいい年こいてコンビニにエロ本買いに行った帰りにそれかよ。

 

 でもまてよ?これって神のミスで死んだやつが転生するっていうテンプレ的な展開がまっているのかも。

 

「で、俺はどうなるんだ?よくありがちなのは神のミスってことなんだが、今回はそれなのか?」

 

 一応俺の望む展開になるかどうか探りを入れる。

 

「はい、申し訳ありませんでした。私どものミスによって、本来死ぬはずではなかったあなたを死なせてしまいました。でも安心して下さい。あなたには三つの選択肢を与えます」

 

 とりあえず俺の望む展開になる可能性はあるな。

 

「で?三つの選択肢って言うのは?」

 

 そう俺が問うとセシールは答える。

 

「はい、その選択肢は

 

  1 輪廻転生の輪に戻る

  2 消滅する

  3 異世界転生をする

 

 この3つになりますね」

 

 きたあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁあ!!!!!!!!ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ俺の時代ぃぃ!!

 

「もちろん3で、3でお願いします」

 

 あこがれの異世界転生に即決する。

 

「ちなみに転生先はハイスクールD×Dの世界ですよ?」

 

 その情報に俺はますます興奮する。あの美女がいっぱいの世界か。なら俺はその世界でオリ主になってやる。オカルト研究部の面々の肢体を自分のものに出来ると考えるだけで昂ぶりを抑えきれない。

 

「ちなみに転生特典とかってあるの?」

 

 これは大事だからなぁ。

 

「勿論ありますよ」

 

 ふふふふふふ。もう負ける気がしない。俺の方が一誠よりもうまくやれるはずだ。待っていろ俺の愛しい嫁たち。

 

「いくつほどもらえるのかな」

 

「3つですね」

 

 そうか、なら決まったな。

 

「俺を兵藤一誠にすること、ニコポナデポをつけること、俺が赤龍帝になることだ」

 

 これでこの世界は俺のものだ。

 

 しかし、俺の要求を聞いたセシールは困った顔をして首を横に振った。

 

「いくら私が神とはいえ、命を与えることは出来ても魂全てを書き換えることは出来ないんです。つまり、赤竜帝はどうにかなりますが、兵藤一誠になることは出来ません」

 

 はぁ!?巫山戯るなよ?

 

「おい!!お前は全知全能の神様何だろ?それくらいやれよ!!」

 

「すいません。出来ないんです、だから

他のもので何かありませんか?お詫びにもう一ついいですから」

 

 やった!ラッキー!

 

「そうだな、じゃあ兵藤一誠の弟として生まれることと兵藤一誠は悪魔に転生できないようにしてくれ」

 

 これくらいなら出来るだろう。というかやって貰わないと困る。

 

「はい、それくらいなら大丈夫ですよ。ではこれから転生させますね」

 

 セシールがそう言うと、俺の体は光る粒子となって頭上に開いた円形のゲートに吸い込まれていく。

 

「これから行く世界で何をするのかはあなた次第です。だから、自分のしたいように前世の分まで生きてくださいね」

 

 その言葉を最後に俺の意識は途切れた。

 

~誠二 side out~

 

 

~セシール side in~

 

「・・・・・・生きてくださいね」

 

 彼が完全に消え去り、転生を完了させた。

 

 ふぅ、これで罪滅ぼしも終わって一件落着かなぁ。

 

 そう思い、自分の神殿へ転移しようとすると、後ろから声が掛けられた。

 

「お~い!!セシールちゃ~ん。大変じぁ!!」

 

 白いひげを地面につくほどまで伸ばした老人がやってくる。

 

「あら、どうしたのですかログ様?だいぶ慌てていらっしゃるようですが?」 

 

 息を弾ませながらログと呼ばれた神の1柱は青ざめながら言う。

 

「さっきの転生させた彼じゃが、あれは本来の寿命で死んだ奴じゃ。転生させる人は違う人じゃ」

 

 え・・・・・・・・・・・・。

 

 言葉が出なかった。だって本来生きるべき人を殺しておきながら、やり直すチャンスすら与えてあげられなかったのだから。しかも、転生出来るのは1つの魂につき1回まで。つまり本来の権利者からその権利を奪ってほかの人につかってしまったのだ。そう考えると、青ざめるどころか、多分、私の顔は今土気色をしているだろう。

 

「しかもさせたやつがまた問題があっての。魂の色がうちの地獄にいる第1級犯罪者と同じ様な色をしておるのじゃ。じゃから、転生させてもし、自分の魂の声に従うままに行動する奴だったなら、とんでもないことになるぞぃ」

 

 あぁ、どうしよう、とんでもないことをしてしまった。

 

 その場にへたり込み、呆然とする私にログ様は優しく、子供をあやすように語りかける。

 

「安心しなさい。奴の元々のスペックは低いし、器も小さい。強くはなるかもしれんが・・・所詮少し強い程度で止まる。じゃから大丈夫。それに、一応抑止力も用意しておるのでなぁ」

 

 背中をさすられて、ある程度余裕の出来た私は疑問に想う。

 

「抑止力とは?」

 

 その問いに、ニッコリと笑うログ様はこう答えた。

 

「本来の転生者を兵藤一誠に憑依させるのじゃよ。神器としてな」

 

 そう言ってログ様は紙の束を渡してきた。

 

「勿論、本人も了承済みじゃ」

 

 その書類に書いてあったのは本来の転生者のプロフィールだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  転生No.02 【 衛宮 士郎 】

 

   この者を神器として兵藤一誠に憑依させることを本人の同意の下許可する。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 




 師匠やヒロインは誰がいいですかねぇ..........。


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崩壊の序章

 今回は誠二の中で一誠の立ち位置が決まります。


~誠二 side in~

 

「ん~。むあぁぁ・・・・・・」

 

 俺は目を覚ましてのびをする。

 

「また知らない天井だ」

 

 くぅぅぅ!これを一度でいいから言ってみたかった。これは転生物の主人公のお約束だよな!

 

 とりあえず、俺はハイスクールD×Dの世界に無事来たんだよな?

 

 すると、下の方でチャイムが鳴って、 「兵藤さ~ん」とか聞こえたので、見事俺のハーレム計画の第一歩は踏み出せたわけだ。

 

 さて、次はスペックの確認だな。鏡はどこだ。

 

 部屋の中に鏡は無かったが窓の方に顔が映っていたのでじっくりと品定めをする。

 

「お・・・・・・おぉう。これは凄いな。俺とは思えん」

 

 窓に映ったのは一誠をベースとしていたが、彼より数倍は格好いいだろう。

 

 いや~。前世はピザニートガチ勢だったが、この分だと原作開始までにかなりいい線はいくだろうな。ほんと神様さまさまだな。

 

 一通り自分の外見を確認し終わったあと、机の上にあった手紙に気付く。

 

 広げてみるとセリーナからだった。

 

「これを読んでいるということは無事転生は出来たようですね。

 

 一応あなたの望んだとおりにしましたが、特典とは別の身体スペックについて説明しますね。

 

 1 身体能力は室伏広治の2倍程度です。

 

 2 覇龍(ジャガーノート・ドライブ)は10分間のみ安全に制御可能ですが、神器(セイクリッド・ギア)の発現や禁手(バランス・ブレイク)の発現が出来ていない、または練度が足りないなどの理由により、まだ使用出来ません。

 

 3 体の耐久力についてはいじっていないので気を付けて下さい。

 

 あと、あなたの存在は元々いたものとして記憶を改竄しています。安心して下さい。

 

 では幸多からんことを祈っています。

 

              セリーナ」

 

 読み終わった俺は興奮していた。

 

 あれ?俺これオリ主最強のタグつけれんじゃね?やっばいわぁ。

 

 そして同時に、この体を利用してハーレムをつくれることを疑わなくなった。

 

 身体スペックについては、すでに転生させたことを悔やんだセリーナによって回収されている事は、誰も知らない。

 

 そんな風に悦に浸っていると、扉の外から声が聞こえ、次の瞬間開いた。それに素早く反応し、声を発する。

 

「誰だ?」

 

 扉から顔を出している奴には見覚えがあった。紛れもない、兵藤一誠だったからだ。

 

 奴は「俺?!」と驚きながら固まっていた。が、すぐに立て直すと「お前は誰だ?」と聞いてきた。

 

 どうして俺が出て来た事によってこの世界から必要とされなくなったただのガキに、俺の存在が認識できるのだ。所詮は俺の影に追いやられた雑魚が、だ。

 

 そう考えると段々惨めな生き物に見えてきた。

 

「俺は 兵藤 誠二 だ。分かったら俺に話しかけるな。絞りかす野郎」

 

 すると一誠は一瞬ポカンとした後、急いで部屋から出て行く。

 

 どたどたどたどたっ!!

 

 1階に行ったのか。だるいので追いかけなかった。

 

 すると下の方からある程度年のくっていそうな女の声がした。一誠と言い争っているようだ。

 

 母親だろうか?

 

 その声が止むとまた移動しているような音が聞こえる。

 

 そのすぐ後、とち狂った獣のような声が家中に響いた。

 

 流石に気になったので下に降りていくと、声をかけられた。

 

「ちょっと誠二、一体何があったのよ?今日は誠二の誕生日なのに、一誠が自分の誕生日だって言い張るのよ」

 

 女神め。変なところを入れ替えやがって。

 

「何も知らないよ、母さん」

 

 とりあえず一誠を見にいくか。

 

 扉を開けると、そこには一誠が床に蹲りながら絶叫していた。

 

 俺の一応の親は一誠の所へ行き、語りかけている。

 

 ここは俺も何か言った方が自然か?

 

 何を言うべきか考えていると、一誠の惨めな姿を見て嗜虐心に火がついた。

 

 両親にとってはどうって事は無く、こいつにとって精神にくるものはなにかを考えていると、良い案を閃いた。

 

「おい、一誠?どうした?今日は俺の誕生日だろう?」

 

 その言葉を聞くと一誠は絶叫するのを止めた。そして急に脱力してこちらに顔を向けた。その目は虚ろで段々と濁っていった。

 

 かなり精神に来ているな。ということはやはり俺の異物感に気付いているな。どうしてだろうか。

 

 なので、俺はこいつを追い出すことに決めた。絶対にバレることは無いだろうが・・・こいつはイレギュラーだ。俺の存在に違和感を抱いている奴は消すべきだ。

 

 どうやってこいつを潰してやろうか。

 

 あぁ、こいつから人間関係を奪ってやろう。まずは両親と紫藤イリナからだな。まぁヨユー。

 

 なぜって?それは特典であるニコポナデポがあるからだ。これは警戒心の抱いてない生物限定だが、1度かかってしまえば俺の言葉に絶対の信頼を置くようになる。

 

 一誠よ。俺のハーレム要員である白音、黒歌や朱乃を助けるまでの、いい暇つぶしになってくれよ。

 

 一誠と目が合った。

 

 実に楽しみだ。

 

 そんな思いを込めて、俺はニヤニヤと馬鹿にしたような笑みを浮かべた。勿論親にばれないように、だ。

 

 一誠はもう限界だったのか、完全に気絶した。

 

 明日からの行動を考えるため2階にある〈元々あった〉部屋へと戻った。

 

~誠二 side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 執筆者としてどうかと思うけど、ヒロインはどうしようかな。


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蝕まれたものはもう戻らない

 そろっと一誠がいい具合にぶっ壊れてきますね。

 それにしても誠二は2日間でここまで状況をつくりあげるとは手際が非常に良いですね。


~一誠 side in~

 

 目を開けると、そこは自分の部屋の天井だった。俺、どうしたんだっけ?

 

 布団を押しのけて上半身を起こす。

 

 頭がぼぉっとするなぁ。もう朝か。

 

「うぅ・・・・・・。気持ち悪い」

 

 ガンガンする頭を振って無理矢理脳の働きを正常に戻す。そして同時に、何があったのかを思い出した。

 

「あいつは一体何なんだ?どうして俺と同じ顔をしている?」

 

 口調は冷静で落ち着いているように聞こえるが、実際は得体の知れないものがいきなり自分の家族になったという体験が思いのほか精神にダメージを与えていた。そのせいか、体の感触を確かめるために開いたり閉じたりしていた右手は震えていた。

 

 そのことには当然、一誠も自分で気付いていた。

 

震える右手をなんとかしようと、左手でぎゅっと掴む。

 

「落ち着け、落ち着け、落ち着け・・・・・・。絶対にあいつを追い出してやる」

 

 俺の家族は俺が護る。

 

 何があっても、何をされたって耐えてみせる。

 

 みんなが俺を見放さない限り、守り続ける。

 

 自分の中で決意を新たにすると、自然と震えも収まった。

 

「よし、行くか」

 

 そう意気込み、バッとベットから跳ねるようにして起き上がると扉を開ける。

 

 まずは普通に生活して、あいつの正体を確かめてやる。

 

 1階へと降りた俺は最初にリビングに向かった。扉を開けて目に入ってきたのは、テレビを見ながら談笑しているあいつと両親の姿だった。

 

 いくら覚悟を決めたとはいえ、いくらばかりかはショックを隠せなかった。

 

 扉を開けたままそこに立っていると、お母さんが気付いた。

 

「あら、一誠もう具合はいいの?この前はかなり辛そうだったけど・・・?記憶が混乱するほど具合が悪いのなら、なぜ言わなかったの?」

 

 口ぶりからはとても心配している色がうかかえるが、どうしても一誠は素直に喜べなかった。あの新しく家に来た弟がこちらをみていたからだ。

 

 何でそんなににやついているんだ。いやな予感がする。

 

 おれの予感は見事に的中することになる。

 

 一誠は胸くそが悪くなるのを我慢しながら、出来るだけ自然に誠二に問いかける。

 

「どうしたんだ、誠二。そんなにうれしそうな顔をして」

 

 すると誠二は一瞬驚いたような顔をした。多分、話しかけてきたことに多少なりとも動揺したようだ。

 

「いや、なに、兄さんは大丈夫そうだったからよかったなと、ね。あんなことがあった後だから」

 

 しかし、すぐに誰かを本気で心配するような表情をつくるとそう言ってきた。

 

 どういうことだ?いきなりその言葉が出る意味が分からない。何か意図があるのか?

 

「どういうことだ?」

 

 だから直接聞くことにした。するとお母さんが話の輪に入ってくる。

 

「あんた覚えてないの?イリナちゃんと喧嘩して酷い別れ方をしたらしいじゃないの。しかもあんたが一方的に悪いって誠二が言っていたわよ」

 

 は?何言っているんだ?別に喧嘩などしていないぞ。

 

「お母さん。俺は昨日イリナと喧嘩なんかしてないよ?」

 

 そもそもする理由も見当たらない。

 

「昨日?何言ってるのよ一誠。あなたが倒れたのってもう二日も前よ?」

 

 まじか。嘘だろう?そんなに経っていたのか。しかし、ほんとに理由に見当がつかない。今日はイリナの所に行ってみるか。

 

 そう思いながら二日ぶりのご飯を食べた。二日ぶり?

 

「ていうかお母さん。俺はどうやってこの二日間生きていたの?流石に飲まず食わずは難しいと思うんだけど」

 

 本当に不思議だ。

 

「まーた、阿保なこと言ってる。あなた、寝ているって言うか茫然自失としていた感じだったから、呼びかけたら普通に食べてたわよ。もしかして、覚えてないほど落ち込んでいたの?」

 

 はい?余りのショックで意識のないままで生活していたって事?

 

 まぁ、気にしていたら先に進まないか。イリナには、ご飯を食べ終わったら会いに行くか。

 

 

 

 ご飯を食べ終わってイリナの家へ行く。

 

 着くと玄関のチャイムを鳴らす。

 

 ピンポーン

 

「はーい」

 

 ガチャ

 

 インターホンを聞いて来たのはイリナだった。都合がよかったので、早速身に覚えのない喧嘩をしたことを聞こうとするがダメだった。

 

「なんで一誠君がここにいるの?もう顔も見たくないって言ったじゃん」

 

 目が合った瞬間露骨にいやそうな顔をするイリナ。

 

 顔を合わせた途端に来た強烈な拒絶に言葉が出なかった。その代わりに目もとがピクピクと痙攣した。

 

「どうして君が怒っているのか知らないけど、僕が何をしたんだ」

 

 思っていることを素直に吐き出すと、イリナは激昂する。それはもう烈火のごとく怒った。

 

「何をしたかですって?!何を巫山戯たことを言っているんだ?!僕は知っているんだぞ!」

 

「何を?」

 

「君が僕たちで隠して育てていた子犬をいじめ抜いた後に殺したことを!!」

 

 いや、本当に知らない。確かに橋の下で捨てられていた子犬を飼っていたが、そんなことをするはずはない。俺は相当そいつを気に入っていたからだ。

 

「本当に知らないよ」

 

 これだけは本当にいえる。

 

「嘘だ!!誠二君が言っていたもの。君が笑いながら蹴って最後には首を絞めたことをね!誠二君の言うことに間違いは無いよ。だって確認しに行ったら本当に死んでいたんだもの!!4日前に世話したときには生きていたのに!!だったらこの3日間世話する予定だった一誠君がやった以外ないじゃないか!!」

 

 イリナは腕を組みながら俺を殺せるような視線を送ってくる。

 

 あぁ、そういうことか誠二。お前は俺から護るべきものを奪う気か。俺が、護らなくちゃ。

 

 俺はイリナの肩をガシッと掴みながら、俺が2日前に体験した出来事を告げる。

 

 が、しかし何も変わらなかった。いや、むしろ悪化した。

 

「そんな子供でもつかない嘘で誠二君をおとしめようって言うの?最低だわ。そこまでして実の弟を悪者にしたいわけ?」

 

 はぁ、身内からの暴言は堪えるな。しかし俺は諦めず、時間かけてイリナを説得していく。

 

 が、

 

「もう一誠なんて知らない!!もう2度と来るな!!」

 

 そう叫んだ。そして俺にビンタをかまして家の中へ戻っていった。

 

 叩かれた頬は熱を持ってかっかと熱く、手のひらから何かがこぼれ落ちていく感覚が一誠を打ちのめしていった。

 

「なんで、信じてくれないんだよ」

 

 誰も聞いていないことを分かっていたが、呟かずにはいられなかった。

 

 誠二によって親友を、護るべきものを奪われた一誠は、虚無感と孤独感を感じながら家へ帰った。

 

 今その顔を見た人は10人中10人が「今にも自殺しそうな顔」と答えるであろうほど絶望の淵にいた。もう一押しすれば戻ってはこれない深い谷に落ちる、そんな淵に。

 

 誠二がそれを陰から見ていて笑い転げていたのは、最早言うまでも無い。

 

 家に帰った一誠は、まだ昼だというのに自室のベットに潜り込み、現実逃避するために目を閉じた。

 

~一誠 side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 一応一誠の師匠枠は決まりました。

 登場まで楽しみにしていて下さい。


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我慢の限界はとうにぶっちぎっている

 師匠が登場。

 力も一部覚醒。

 師匠はあの人ですよー。

 


~一誠side in~

 

 

 アイツが家に来てからそろそろ3年になる。その間にはいろいろな事があった。もう限界だ。

 

 

 

「行ってきます」

 

 いつも通り学校に行くために鞄を背負い、家を出る。

 

 通学途中で同じ駆王小に通う奴と会うと急いで遠ざかったり、わざとぶつかって転んだ俺を嗤ったりといろいろな反応を見せてくれる。

 

 去年まではよかったのだが、今年になって誠二が入ってくると一変した。

 

 今まで仲良くしていた奴らが、いきなり手のひらを返したように俺のことを虐めてきた。

 

 最初はどうにかしようと話しかけてみたりしていたが・・・特に改善出来なかった。そして今はもう・・・諦めた。

 

 学校に着いて下駄箱を見ると、死んだ蛙が大量に詰まっていた。面倒臭いなぁ。これでまた、殺した蛙を下駄箱に保管している異常者、みたいな噂が流れるんだろうな。

 

 俺の噂は多分、全て誠二が絡んでいるんだろう。だいたいの見当はついている。というか、アイツは初対面の奴にも俺のことを話しているらしい。悪い方に誇張して。

 

 なんで俺がこんな目に遭わなくちゃならない。俺が何をしたって言うんだ。

 

 そんなことを思いながら今日も学校を過ごす。先生でさえ、俺のことをやっかいごとを持ち込んでくる問題児だと思っている。

 

 出来るだけ問題を起こさないようにはしているんだが、何気ないことで揚げ足をとられる。

 

 今日こそ平和に過ごそう、そう思っていると、

 

「おい雑魚。お前、誰の許可を取って学校に来ているんだ?」

 

 突然後ろから声をかけられた。

 

 はぁ、またか。

 

 声だけで分かる。決意したばかりだが、早々に平和とはおさらばしなければならないようだ。

 

 後ろを見ると複数の生徒を連れた誠二がいた。体つき的に見て、1年生から6年生までいるだろう。

 

 今度は何なんだ。

 

「よぉ、誠二。なんだ?」

 

「いや、なに、また酷いことをしたらしいから家族として落とし前をつけなきゃなぁと思って」

 

 はぁ、またか。毎回こうやって難癖をつけてくるのだ。

 

 しかも理由がよく分からない。なんで落とし前の付け方が暴力でなければならないのか。

 

「全く身に覚えがないんだが?」

 

 ダメもとで聞いてみる。

 

「か・え・る・の・こ・と・だ・よ。まさか知らないとは言わせないよ?だって俺たち、みんなで見てたんだからねぇ?」

 

「それまたずいぶん毎度の事ながらタイミングが良いこって。思わず俺のことを誰かが監視しているのかと疑っちゃうよ」

 

「それまたずいぶん毎度の事ながらタイミングが良いこって。思わず俺に見せているのかと思ったよ?」

 

 うぜぇ。その言ってやったぜ感がすごい。

 

「おい誠二、さっさとやるぞ」

 

 1番がたいの良い男がそう言うと、まわりのモブどもが俺を取り囲んで1番見つかりにくい校舎の裏にある少し大きめのプレハブ小屋みたいな所へ引っ張って行く。

 

 ドカッ

 

 連れ込まれてからすぐに後ろから羽交い締めにされ、腹を殴られた。

 

「グゥ.....」

 

 おなかを殴られたことにより、呼吸が出来なくなった。

 

 ドカッ バキッ ドンッ

 

 そこからは人数に任せた暴力の嵐だった。

 

「お前なんて!いなくなれば!良いんだよ!」

 

「動物を平気で殺すなんて、どんな神経してんだ?」

 

「誠二だって!お前を止めるにはこうするしかない!って悲しんでいたんだぞ?何で分かってやらない!」

 

「いなくなって!くれさえすれば!みんな!平和に過ごせるんだっ!」

 

 そんなことをほざいている間にも手は止めない。

 

 誠二がそんなことを思っているはずがない。だって動物を殺してるのアイツだもん。

 

 それを俺に全ッ部なすりつけて、俺から周りの人間を遠ざける。

 

 しかし、俺ももう限界だ。いい加減にしてくれ。

 

「・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・から・・・・・・・・・だろ」

 

「あぁ?何言ってんのか聞こえねぇよ!クソ雑魚!」

 

「3年間も我慢したんだからもういいだろ!」

 

 そこで俺はブチ切れた。

 

 まわりに群がっていた奴らの腹と喉を1発ずつ殴りつけると、反撃されるとは思っていなかったのか簡単に沈んだ。

 

「巫山戯んなァ!!3年、3年だ!お前がおれの所に現れてから3ッ年も我慢してきたんだ!本来ならお前が消え無きゃならないはずだ!!」

 

 誠二に向かって力の限り叫ぶ。

 

 が、誠二は何も感じないようで相変わらずにやけるのをやめない。

 

「弱い奴が何を吠えたって無駄なんだよ」

 

 その言葉を聞いて俺は誠二に殴りかかった。自分の力を見せるために。

 

「おおぉぉぉぉぉぉお!!」

 

 距離を一気に詰めてお腹を狙う。

 

 バチンッ!

 

 だが、俺のパンチは余裕で受け止められる。

 

 俺は信じられないものをみた。

 

 パンチを受け止めた方の手が違う。いきなり誠二の左手が赤い籠手に変わったのだ。

 

 その籠手から、

 

 Boost

 

 と音が鳴る。そして、驚いて呆然としている間にもう2回鳴る。

 

「これが俺とお前の格の違いだ。この赤龍帝である俺に、敵うわけがない」

 

 そう言うやいなや、人とは思えないような速度で近づいて殴ってくる。

 

 当然よけられるはずもなく、まともに拳を食らってしまう。

 

「ウッ・・・・・・!」

 

 正確に鳩尾に叩き込まれた拳を捻って内臓を潰してくる。

 

「ゴフゥッ・・・・・・!」

 

 そこからは子供同士の喧嘩ではなく、一方的な蹂躙だった。相手を生かそうという意思はなく、ただ自分が満足するまで殴り続ける。

 

 痛い痛い痛い痛い・・・・・・。クソ、なんだよ、同じ位の年なのに、何でこんなに違うんだ、もっと、もっと俺に、力があれば・・・・・・・・・。

 

 骨が1本や2本くらい折れながらそんなことを思っていると、頭の中にある光景が流れ込んでくる。

 

 これは、なんだ。至る所に剣が刺さっている。その中心に男がいる。

 

「やぁ、初めましてかな?安心して、僕は君だ。正確には君と体を共有しているって所かな。まぁいいや」

 

 訳の分からないことを良いながら微笑んでくる。

 

「ずっと見ていたけど大変だね、君の人生は。だからそんな君にプレゼント。これをあげるよ」

 

 男が差し出してきたのは2本の剣だった。

 

「それじゃ、あまたいつか」

 

 その言葉とともに剣で埋め尽くされた世界は消えていく。

 

 気がつくと両手にはさっき渡された2本の剣が握られていた。

 

 すごい。

 

 痛くて指一本すら動かせなかった指が動く。体には今も激痛は走っているが。 

 

 これならいける。

 

 起き上がると立ってこちらを見ていた誠二に向かって踏み込み、上段に構えたそれを振り下ろした。

 

 スパンっと紙を切るかのごとく簡単に、誠二の服を切り裂いた。 

 

 咄嗟に後ろに引いたのか、体に刃は届いていなかった。

 

 さすがの誠二も驚きを隠せなかったのか唖然としている。

 

 しかし、すぐに立ち直り、さっきよりも強く殴ってくる。

 

 顎に1発入ったのを最後に俺は意識を失った。

 

~一誠 side out~

 

 

~誠二 side in~

 

 どうせ、雑魚のことだから倍加3回で十分だろう。そう思っていたが、そうはいかなかった。

 

 一誠が倒れ、意識がもうろうとしているであろう状態だったが、いきなり両手に剣が現れた。

 

 そして意識を回復させると、さっきとは比べものにならない速度で向かってきて剣を振り下ろした。

 

 咄嗟に下がったから服だけですんだが、危なかった。

 

 少し驚いたが、もう大丈夫。改めて念入りに一誠の意識を断った。

 

「巫山戯るなよこのクソ雑魚が。元主人公の癖してオリ主である俺を殺そうとするなんてなぁ」

 

 いっそのこと殺してしまおうかと思い、一誠の首に手をかける。しかし、こっちに来る人の声を聞いたので、急いで倒れているほかの奴らを起こして戻る。

 

 やはり人間関係の断ち方が甘かったか。

 

 まぁその辺は大丈夫だ。こいつが刃物を持って襲いかかってきたことにすればいい。

 

 今度こそ、完全にこの世界から存在を消してやる。

 

 俺はそうほくそ笑み、この話をするために、職員室に向かった。

 

~誠二 side out~

 

 

~一誠 side in~

 

 起きると保健室のベットの上だった。

 

 隣を見ると両親が顔を真っ赤にして怒っていた。

 

 内容をまとめると、こうだ。

 

 

 誠二が一誠の行動に対して数人で注意する。

 ↓

 一誠が切れて周りの人間を殴って気絶させる。

 ↓

 誠二がそれを止める。

 ↓

 またそれに一誠が切れて刃物を取り出して斬りかかる。

 ↓

 誠二がその刃物を奪って一誠を気絶させる。

 

 

 こんな感じになっている。勿論全くの嘘だ。

 

「一誠!あんたなにやってるのよ!注意した弟を刃物で殺そうとするなんてどうかしているわよ!」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「だいたいねぇ、あなた3年前の誠二の誕生日からおかしいわよ」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「本当に、誠二を見習ってほしいわ。あなたなんかもう知らない」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「母さん、落ち着いて。何か理由があるのかもしれないじゃないか」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「一誠、どんな悪いことをしたんだ?怒らないから言ってみなさい」

 

 うるさい・・・・・・。

 

「さぁ、誠二に一方的に暴力を振るったことを謝るんだ」

 

 うるさい・・・・・・うるさい・・・・・・うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい

 

 なんでアイツをわからない。

 

 なんで俺を理解しない。

 

 もういい、俺の護るべきものはもうすでに壊れていたんだ。

 

 ベットから勢いよく起き上がると、誰かの制止も振り切ってどこかへ向かう。

 

 

 

 

 30分くらいだろうか。当てもなくただ走ったり歩いたりを繰り返してとにかく遠くへ行こうとした。

 

 だが、所詮は小学生の足である。すぐに体力も無くなって名前も知らない公園のベンチに腰をかけた。

 

 もう、どうでもいいや。

 

 全てを諦めてしまおう。

 

 もう十分苦しんだ。

 

 やることもなくてぼーっとしていると後ろから声がかかる。

 

「こんな所で何をやっているの?」

 

 追ってきた誰かと思い後ろを振り返る。しかし目の前にいたのは違った。

 

 ダークグレーの髪を長さが少し足りないのか無理矢理後ろで縛っている中性的な顔をした男の子がいた。

 

 身長は俺より少し大きいから2、3位年上か?

 

「お兄さんは誰?」

 

 するとお兄さんは苦笑いをしながら言う。

 

「一応は何も怪しくはないとでも言っておこうか?」

 

「君さ、面白い目をしているよね。誰かに捨てられて絶望しているっていう顔」

 

「分かるよ、僕もそんな体験してきたから」

 

「良かったら僕と一緒に来ない?」

 

 俺はお兄さんに尋ねる。

 

「ついて行ったら俺は強くなれる?」

 

「勿論」

 

「ついて行ったら誰かに何も奪われなくなる?」

 

「勿論」

 

「ついて行ったら俺の大切なものを守れるようになる?」

 

「勿論」

 

 だったら、もう俺の答えは決まっている。

 

「連れて行って・・・・・・。俺を連れて行って下さい」

 

 そう言って俺は頭を下げる。

 

「君の名前は?」

 

「兵藤・・・・・・いや、ただの一誠です」

 

「そう、じゃあ一誠、ついてきて。僕の名前はナルヴィ。今はそう名乗っておくよ。強くなったら本当の名前を教えてあげる」

 

 そう言ってナルヴィは光り輝く翼を背中から広げると俺を抱えてとぶ。

 

 空を飛べることに驚いたが、強くなるならこれくらいの事には慣れなければならないだろう。

 

 護るべきものを守れるようになる。

 

 幼き頃に決意した事を再び決意し、雲を抜けてどこまでも飛んでいく。

 

~一誠 side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 マジでヒロイン誰にしよう.....。

 ナルヴィの正体って簡単に分かっちゃうか?

 あと、次回から多分新章に入ると思います。


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第1章 旧校舎の無能ディアボロス
とりあえず戻ってきた


 テストがあって更新が遅れました。

 今回は若干短めです。


~3人称 side in~

 

「待てぇ!この下等種族がぁ!」

 

 午前3時近い森の中を上半身は凛々しい男、下半身は馬というとてもこの世のものとは思えないような姿をした化け物が1人のマントで全身を覆った男を追いかけていた。

 

 足では追いつけないことを悟ったのか化け物は背中から蝙蝠のような翼を広げて漆黒の闇へと飛び上がる。

 

「チッ!面倒臭ぇな。このまま見逃してくれれば良いのによ」

 

 その様子を後ろをチラッとみた男が呟く。

 

 追いかけられていた男は得体の知れない者に追いかけられているにも関わらず余り焦っている様子も、おびえている様子もなかった。

 

 ただ、いい加減ウンザリしたのか足の裏で急ブレーキをかけて空から来る相手を見上げた。

 

「もう飽きたからとりあえず消えろ」

 

 そう言うと両手を前に突き出す。

 

投影開始(トレース・オン)」 

 

 すると一瞬光り、そして弾けた。

 

「干将・莫耶」

 

 その手の中にあったのは黒と白の2本の剣だった。

 

 男はそれを数回振り、感触を確かめる。

 

 確かめた後、突然走るのを辞めて見たことのない魔術を使った男を警戒している化け物の方を向く。

 

「お前は何者だ。なんだその魔術は。見たこともないぞ」

 

 化け物は今まで下等種族と侮っていたが、自分の知らないものを見たことで若干動揺する。

 

 だがすぐに飛んでいる自分に剣は届かないと考え直し、再び余裕の表情を浮かべる。

 

「ふはははは!いくら珍妙な技を持っていたとしてもそれは届かない。つまり何も変わらな..........「うざってぇ」えっ?」

 

 気付くと首には男が持っていた剣が刺さっていた。

 

「うるさいんだよ。敵が武器を持っているのだから油断しすぎ」

 

 化け物はその言葉を聞くと力尽きたのか地面に落ちて音もなく消滅した。

 

「おいおい、帰ってきて早々これかよ.....。どうなってんだか。しっかし管理の仕方が杜撰すぎるだろリアス・グレモリー」

 

 男はそう呟くとさらにマントのフードを深く被りながら薄ら寒い春の夜の中に消えていく。

 

~3人称 side out~

 

 

~誠二 side in~

 

 俺はこの春駆王学園に入学した。つまり原作の開始って事だ。

 

 登校初日で学校に向かいながらこれから始まるハーレムライフに胸を躍らせる。

 

 絶対にお前よりはうまくやってやるからな絞りかす野郎(一誠)

 

 そう小学2年生の時のあの事件から行方不明になった奴を馬鹿にしながら登校した。

 

 

 

 学校に着くと全校集会があってそこで生徒会長からの軽いオリエンテーションがあった。

 

「..........となっています。これから始まる新しい生活を一日一日大切に過ごして下さい」

 

 そう言って黒髪のめがねをかけた美少女はお辞儀をする。

 

 それは間違いなくソーナ・シトリーだった。

 

 はははっ。アイツはものに出来なかったが俺は違う。絶対にソーナも自分のものにしてみせる。

 

 オリエンテーションも終わり、今日はこれで帰る事となる。

 

 教室に戻るとさっさと荷物をまとめて校門を出る。

 

 そしていざ帰ろうとすると後ろから鈴の音のような声が掛けられる。

 

「あの!兵藤誠二さんですか?」

 

 声のした方へ振り返ると、黒髪ロングの清純な美少女がいた。

 

 これはもしかしなくても.....。

 

「あの、一目見たときからずっと好きだったんです。私とつきあって下さい!」

 

 来たあぁぁぁぁぁぁぁあ!!夕麻ちゃん(レイナーレ)だぁぁぁ!!

 

 これで、これでやっと俺の主人公人生が始まる。断言できる。貰った!

 

「えと.....いいよ?」

 

 ここは怪しまれないように無難に返しておく。

 

 さてと、全力で殺されてやるぜ。

 

 

 

 告白されてから数日が経ち、初めての休日で夕麻ちゃんと一緒に出かけている。

 

「ねぇねぇ誠二君」

 

 いよいよデートも終盤に近づき、とある公園へ来ていた。

 

 トトトッ

 

 夕麻ちゃんが少し先へ走る。そして振り返り、燃えているような夕焼けを背にして話しかけてくる。

 

 ここで俺は殺されるのか。ちゃんと悪魔召喚の紙も貰ってあるし大丈夫だ。

 

「1つお願いがあるんだけど」

 

「何でも良いよ。それで何?」

 

「死んでくれないかな?」

 

 ドスッ

 

 そう言った後バサッと夕麻ちゃんの背中から生えた2枚の黒い翼が彼女の全身を覆うと次の瞬間にはボンテージ姿になっていた。そして右手に光でつくった槍のようなものを俺に投擲してきてお腹に刺さった。

 

「ぐあぁぁぁぁああ!!」

 

 痛い、痛いよ。予想以上に痛いよ。でもこれがリアスフラグに繋がると考えると我慢できる。

 

「恨むならその身に神器(セイクリッド・ギア)を与えた神を恨みなさい」

 

 それだけ言うと夕麻ちゃん、いやレイナーレは何処かへと飛び去っていく。

 

 さてと、そろそろリアスを呼ぶか。

 

 痛みで朦朧とする意識の中、ポケットを探る

 

 目的の紙を取り出すと一心不乱にあのストロベリーブロンドを思い浮かべる。

 

 すると近くで魔方陣らしきものが展開され始める。

 

「あなたね私を呼ん..........」

 

 望んだ人が来たことを確認して俺は意識を失った。

 

~誠二 side out~

 

 

 

 

 



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帰ってきた剣製は何を想う

 いやぁ~大分更新が遅れました。

 一誠がどこの神話所属なのか今回ではっきりします。

 では、どうぞ( ・∀・)つ


~一誠 side in~

 

 

「ふぅ、久し振りだな。駒王町に来るのも」

 

 十年ぶりくらいだろうか。ここは。

 

 黒いマントのフードをとりながら呟く。

 

 俺は今、自宅の近くにいる。まぁ既に捨てたのだから自宅といえるかは置いておく。

 

 いくら縁を切ったとはいえ、親のことを心配しないことはない。あれからどうなったのかも気になるところである。よって、その偵察に来ているのだ。

 

 目の前にある交差点を左に曲がり、少し進むと右手の方に僅かばかりだが平均よりも大きめの赤い屋根の家が見えてくる。

 

 安心と恐怖が混在する懐かしの我が家である。

 

 その家の前に行くと〈兵藤〉という表札がかかっていた。

 

 目標の家を見つけた。さて、どうするか。

 

 表札の前で悶々とする。

 

 十年近くも行方を眩ませていたのだ。今更戻ったところで何があるわけでも無い。しかし、いくら全てを見限ったとはいえ両親に対する罪悪感は全くないわけではないのだ。

 

 インターホンを鳴らすべきか鳴らさない

べきか自分の中で相反する気持ちがせめぎ合って一誠にはどうしようもなかった。

 

 そして悩んだ結果は突入であった。

 

「いざ、ゆかむ」

 

 自分だけに聞こえるように自身を鼓舞する..........が、どたばたと玄関の方から音がする。

 

 誰か来る事を察知し、急いで隠れて様子を見る。

 

 曲がり角の方から覗いていると、バンッとドアを開けて黒い影が走って行く。

 

 あ、アイツだ。

 

 自分と同じような顔をした奴が急いで学校にだろうか?に向かっていった。

 

 兵藤誠二(最早どうでもいい奴)を見た瞬間両親に対する思いが冷めていった。

 

 やはり何も変わっていない。アイツがいると言うことはまだアイツが誰なのかに気付いていないということだ。もしかしたらなどと淡い幻想を少しばかり抱いていたがそれもあっけなく消えてしまった。

 

「はぁ~。昔住んでいた街に戻ってきて少し浮かれていたか」

 

 あり得ないことを妄想していた自分がとたんにいやになった。

 

 そうだ、元々家の様子を見に戻ったのではない。とある任務で来たのだ。

 

 任務といっても所謂人間界についてのこと、つまり表側のことではない。悪魔・堕天使・天使・妖怪・神などの人外(ファンタジー要素MAXな奴ら)関係である裏の事情でここに来ているのだ。

 

 聖書関連の三大勢力や北欧神話、ギリシャ神話などのように世界の中でも派閥がある。その中で俺が所属しているのは日本神話である。俺が全てに絶望した時に拾ってくれたヴァーリさん(最初はヴァルナと名乗っていたが、素戔嗚尊(スサノヲ)相手に善戦したら実力を認めてもらえたので本当の名前を教えて貰った。付け加えさせて貰うと素戔嗚尊(スサノヲ)にはもう勝てるようになった。)が、所属している派閥だ。彼女に鍛えて貰ったついでに勧誘されたのでOKした。

 

 因みに俺は当時彼女のことを自分よりも年上の兄のような存在として捉えていたが、後々一緒に過ごしていくうちに女性であるということが発覚した。

 

 いや~あの時は驚いたなぁ。頑なに一緒に入ろうとしなかったお風呂に無理矢理ぶっ込んだんだけど、その時に全裸を見たら男性器が無かったんだ。その後は恥ずかしさのあまり切れたナルヴィさんが白龍皇の光翼(ディバイディン・ディバイディング)を展開して攻撃してきたときには死を覚悟した。怖かったなぁ~。

 

 任務のことから思考が脱線してヴァーリさんとの出会いを思い出した。

 

 これは完璧な余談だが、初恋の相手でもある。

 

「ま、とりあえず遊ぶのはここまでにしてお仕事でもしますかね。お仕事」

 

 一通り思考の世界に入ったところで本来の任務に戻る。

 

 それは、悪魔に支配された駒王町の調査である。

 

 この町、駒王町は現在リアス・グレモリーとソーナ・シトリーの2人の悪魔によって治められている。

 

 日本神話は元々領土問題などには消極的でキチンと筋さえ通せばアウトソーシングという形で貸し出しはするが、問題は別にある。

 

 無断でこの町を悪魔の領土と位置づけているのだ。

 

 しかもそれだけでは飽き足らず、あろうことか支配者が両名とも現魔王の妹ということで争いごとが絶えない。まだ若手で管理が甘いため、こぞってこの町にはぐれが潜伏するのだ。しかも実力が中途半端でS級以上の奴には対抗できないときたものだ。全く腹立たしい。

 

 先日もはぐれを始末したばかりなのに、もう不審な失踪事件が起きているらしい。基本的に行動が後手に回ってばかりで何も出来ていない。

 

 大公からの依頼以外を基本的にこなさないので、無能姫と日本神話は呼んでいる。

 

 さて、どうしたものだろうか。

 

「まずはどこから調べようか。いや、その前にどうやって調べるかだな」

 

 う~ん。どうしよう。この辺のことを調べるためには無能姫の根城である駒王学園に通うのが1番なのだが、何せ誠二に面が割れているので仮にアイツと繋がっていた場合面倒なことになる。

 

 しかしそれ以外に方法は現在の所思いつかない。

 

「仕方がない、か。虎穴には入らずんばなんちゃらっていうしな」

 

 大変気が進まないが、任務のためと割り切る。大変気が進まないが。

 

 ポケットから携帯電話を取り出して本部にかける。そして駒王学園に転入するための手続きと、俺の情報に対する隠ぺい工作をお願いする。

 

 話し終わって携帯電話をポケットにしまうと結構美人な3人組が目に入った。

 

 あれって堕天使だよな。ここは悪魔の領土って事になっているらしいのに何でいるんだろう。もしかしてまた戦争でも起こすつもりか?ここには現魔王の妹がいる。ありえなくはない。日本神話の土地で勝手に戦争でも起こされては困る。行動を少し探ってみるか。まぁ、どのみち殺すがな。だって無断で日本神話の土地に入ったんだから仕方がない。こいつらが入ってきたのがいけないのだから『俺は悪くない』。

 

 そうと決まれば初登校の4日後までに片付けるか。

 

 俺はそう決めると3人組の後をつけ始めた。

 

~一誠 side out~

 

 

 

 




 なんか登場させてほしいキャラとかいます?

 いたら教えて下さい。独断と偏見を何重にも重ねて吟味した上で前向きに検討します(笑)

 次回は誠二との再会になるかなぁ~?どうだろ?

 ではまた。


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堕天使たちと気になるあの子


 すいません(土下座)

 アメリカの方へ三~四カ月ほど留学していたので更新が大幅に遅れました。

 いやぁ~ニューヨークって意外と中国系アメリカ人が多いですね。思わず中国に来たのかと思いました。

 これからは少し勉強が忙しいので更新が不定期になるかもしれませんがよろしくお願いします。



 

~レイナーレ side in~

 

 

「はぁ、なんて憂鬱なのかしら…」

 

 私は今とても機嫌がよろしくない。なぜならこれから私たち堕天使を遙かに下回る下等種族の相手をしなければならないからだ。

 

 むしゃくしゃして思わず道ばたに落ちている小石を思い切り蹴ってしまった。通常の人間の最低でも五倍はある筋力で蹴られた小石は遠くへ飛んでいって何かにぶつかり割れた音がした。まぁ気にしない気にしない。

 

「レイナーレ様ぁ、そんなに落ち込まないで下さいよぉ。これも全てはあの人のためなのですからぁ」

 

「そうです。全てはアザゼル様にご寵愛を頂くため。我慢してください」

 

 そう私の部下であるミッテルトとカラワーナは言ってはくれるがやはり気に入らない。

 

「分かってるわよっ!そんなこと言われても人間の相手をするのを考えただけでも吐き気がするのよっ!あぁ~こんなことをするのならあの私たち堕天使の下位互換であるクソ天使どもに喧嘩売る方が増しよ」

 

 さて、どうあの人間を処理しようかしら。上の命令で危険な神器(セイクリッド・ギア)を所持していると思われる少年を抹殺せよなんてつまらないことをしなければならないし。

 

「まぁいいわ。今回はこれだけが目的じゃないし、その目的さえ達成されれば私は至高の存在になれるわけだわ。そうなれば私たちもそれなりの地位は約束されるわ」

 

 だからちゃっちゃと片付けちゃいましょう。

 

 そうカラワーナたちに微笑みかける。まずは本部からの案件を片付けなければ…。

 

「あのぉ、レイナーレ様ぁ少し良いですかぁ?」

 

 ミッテルトが数枚の紙の束を渡しながら話し出した。

 

「今回の抹殺対象のぉ兵藤誠二なんですけどぉ、調べによるとかなりのイケメンらしいんですよぉ。だからぁ、恋人関係になってそれから光の槍でグサッって言うのはどうですかぁ?ほら、レイナーレ様って相当な面食いじゃないですかぁ」

 

 その言い方は大分失礼ね。でもミッテルトがそう言うならそれも良いかもしれないわね。もう一人の部下のドーナシークとはぐれのガキがあの子を連れてくるまでの良い暇つぶしになるかしら。

 

「そうね、面白そうだからそれで行きましょう。じゃあ近くの高校に通っている天野夕麻という女子高生の設定で告白しましょうか」

 

「その名前にしたのには何か意味が?」

 

「えぇ、そうよカラワーナ。デート後の綺麗な夕暮れの中でとどめを刺すからよ」

 

 ふふっ、せめて君の絶望した面白い姿を見せてね兵藤誠二君。

 

「相変わらずネーミングセンスが微妙ですね」

 

 後ろを歩いているカラワーナがそんなことを言っているが気にしないことにした。

 

 じゃあ、計画に必要なことをしに行こうかしら。これはそこまで難しいわけでもないから確認したらタイミングを見てすぐに接触でいいかしら。

 

「まずは兵藤誠二の生活を確認しに行くわよ」

 

 そう言うと私は背中から黒い翼を広げて飛び始める。後ろにいた二人も慌てて翼を広げて追いかけてくる。

 

 さぁ、私の栄光ある人生はここから始まるのよ。

 

 

~レイナーレ side out~

 

 

~一誠 side in~

 

 さて、あいつらは行ったか。驚いた、あいつらの標的が誠二だったとはな。他の人だったら考えなくもないがアイツだったらほっといてもいいや。どうせ神器(セイクリッド・ギア)も十分に使えるようになっているだろうし。それとは別に気になることがある。

 

「あの子とは一体…」

 

 もう一人の部下が連れてくると言っていたことからこの町の人間ではないことは確かだ。だったら何の目的で連れてくるのか。ここに来る際にそういった情報は入ってきてないので何が起こるのか想像がつかない。

 

「至高の存在、か。これは調べる必要があるな」

 

 ズボンのポケットからこの町に来るときに支給された札を出して自分の胸あたりに押しつける。すると顔の皮膚がボコボコと沸騰したかのように膨らみ、すぐに変化していく。若干のかゆみが有り、ムズムズしてとても不快だ。

 

「初めて使ったがこれは気持ち悪いな」

 

 つくった本人曰く変装や幻覚ではなく、本当に顔を変えるので人外相手でも術を使って顔を変えているのが看破されにくいらしい。その説明を聞いて元に戻るのか、と一抹の不安はよぎったが使用者の任意のタイミングで戻せるらしい。

 

「さてと、俺の顔はどうなったんでしょうか」

 

 近くの家のガラスに映った俺ははっきり言って美青年(笑)でした。ダークグレーの髪に涼しげな蒼い目、鼻筋はすっきりとしていて極めつけに薄くて紅い唇。

 

「うわぁ~、いくら札をつくった人の容姿に似通うっていってもこれはなぁ。流石に目立つよなぁ」

 

 人外を相手にするので隠密性を求められるのだが、はっきり言って日本人の顔立ちではないのでどこへ行っても目立つ事は間違いないだろう。でもおそろいって考えるとこれはこれで有り、か?

 

 そんなくだらないことを考えていたが気を取り直し、堕天使の後をつけるために再びフードを被り直して走り出す。こんな格好では町中は目立ちそうだが気配を極限まで殺して目にもとまらぬスピードで走るので一般人には気付かれない。

 

 とりあえずあいつらの目的を知らないとどうにもならないか。

 

「ったく面倒臭ぇ。無能姫は相変わらずか」

 

 

 

 

 しばらく後をつけるとレイナーレたちは駒王学園に着いた。

 

「なんだ、誠二はここに通ってるのか。もっと遠くの公立高校に通っていると思っていたがもしかしてそこまで頭はよくないのか。」

 

 校舎の裏門から教室の中を覗き、誠二を探したが1年生の教室にはいなかった。不思議に思いながら正門の方に回ってみると入学式の看板が立て掛けてあったので体育館の方にいるのかと考え見にいこうとしたが、周辺を観察しているレイナーレに気付かれそうになったので諦めて物陰に隠れた。

 

 しばらくするとチャイムが鳴った。これで入学式は終わったのだろうか、本校舎の方が騒がしくなっていた。

 

「もっと近づけるか?」

 

 レイナーレたちは教室の中を観察しに行ったので正門から敷地の中に入り込んだ。

 

 校地内を散策しているとクラスの説明も終わったらしく、つぎつぎと生徒たちが生徒玄関から出て来た。そこに誠二もいた。

 

 欲しいおもちゃがもうすぐ手に入りそうな子供みたいな喜びに満ちた顔をしていて、十年前のあの意地汚い雰囲気は今のところは(・・・・・・)感じられなかった。

 

 アイツが校門を出るときに見たことがあるような容貌の女子高生に声を掛けられていた。あれは多分レイナーレの変装だろう。「誠二君(ハート)」みたいな声出していて、あざとすぎて気持ち悪いわ。

 

 それにしても下手くそかよ。殺気が漏れすぎだろ。どんだけ我慢してんだよ。

 

「まぁいいや。接触は確認できたし、今度はあの子について調べるか。あの子を連れてくるドーナシークとやらがうまく見つかれば良いんだが」

 

 さてさてどんなネタが出てくるかな。

 

 俺はドーナシークを見つけるために気づかれないように正門を出て、もう一度駒王町を歩き出す。

 

~一誠 side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 レイナーレの救済は無くても良いですよね?

 次回は誠二が正式に殺されます。

 リアスの汚い部分も見れるかもしれません。(下ネタじゃないですよ?)

 では次回もよろしくお願いします。


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敵との初対戦!やっぱり僕は最強?

 
 とうとう誠二きゅんがバトリます。

 戦闘描写下手なんであんま期待しないでください。


~誠二 side in~

 

 

「死んでくれないかな?」

 

 キタァッ!!

 

 レイナーレのこの台詞が聞けたときにはこれからのハーレム悪魔ライフを妄想してテンションが爆上がりだった。もうその場でガッツポーズしそうになっちゃうくらい。

 

 そして小説通り苦笑いしながら「冗談キツいなー、夕麻ちゃん」と言おうとした瞬間にレイナーレはその背中から堕天使の証である黒いカラスのような翼を広げた。

 

「楽しかったわ。あなたと……………………」

 

 悪魔転生が楽しみ過ぎて途中からレイナーレが何を言っているのか聞いてなかったが、彼女は今までの可愛らしい目つきが冷たく怖いものになっていた。

 

 ブゥン、とゲームの起動音よりも重たい音が空気を揺らす。

 

 彼女の右手に光りが収束して、次第に槍を形作る。

 

 あぁ、これから俺は死ぬんだな。光の槍を認識したその刹那、お腹に違和感を覚えた。

 

 既にその華奢な手には何もなかった。槍は俺の腹を貫通したようだ。後ろが若干明るかったが、それもすぐに消えていく。

 

 新品のワイシャツとズボンを温かい液体がジワリと湿らせていく。

 

 展開が読めていたのである程度の覚悟はあったが、やはり痛いものは痛い。

 

 痛ぇ、やっぱり耐えらんねぇか?いや、これが明日の…それだけじゃねぇな、これからの人生に必要なことだ。だから耐えてみせる。

 

 しかし、そんな決意とは裏腹に肉体は限界を迎えたようで頭がくらくらし、視界はぼやける。とうとう足に力が入らなくなって自分の体重さえ支えられず、その場に崩れ落ちる。

 

 そこへツカツカとレイナーレが近寄ってきた。

 

「ゴメンね。あなたが私たちにとって危険因子だったから、早めに始末させて貰ったわ。恨むならその身に神器(セイクリッド・ギア)を宿させた神を恨んでちょうだいね」

 

 そう言うと、目的を達成したと認識したのか足音が遠ざかっていく。

 

 まだ動く手で腹のあたりをさすってみると、赤い……紅い血がついていた。

 

 痛みのあまりに少しばかり意識がもうろうとしてきた。

 

 俺はここであらかじめ用意しておいたポケットの中の悪魔召喚のチラシを握りしめ、鮮明にあの特徴的なストロベリーブロンドを思い浮かべる。

 

 さぁ、来い。将来の俺の嫁よ頼んだぞ。悪魔になりさえすれば全て上手くいくんだからな。

 

「あなたね、私を呼んだのは」

 

 痛みを紛らわすために思考の世界へ浸っていたところ、視界の外から女の声が聞こえた。その声は日の暮れた物寂しい公園に大きくはないが、十分に響き渡る程に威厳に満ちていた。

 

 やっと来たか。

 

 視界がもう既にぼやけてしまっているが、目に映るその紅の髪は間違えるはずもなくリアス・グレモリーだった。

 

「死にそうね。傷は……へぇ、面白いことになっているじゃないの。そう、あなたがねぇ……。本当、おもしろいわ」

 

 リアスはクスクスと興味ありげに含み笑いをすると、自分の懐を探る。

 

「どうせ死ぬなら、私が拾ってあげるわ。あなたの命。私のために生きなさい」

 

 それは君に言いたい。どうせすぐに俺に夢中になるのだから。

 

 彼女がポーンの駒を取り出したところで俺の意識はブラックアウトしていった。

 

 

 

 

 朝目が覚めると俺は自室のベッドで寝ていた。

 

 パジャマをめくってお腹を見ると、風穴などどこにも開いていなかった。

 

 やった!これは昨日のことが夢でなければ俺もとうとう悪魔になったって事か。イヤッホー!

 

 うれしくて少し飛び跳ねていると下から、

 

「起きなさい!誠二!」

 

 母親の声が聞こえた。どうやらはしゃぎすぎたらしい。

 

「わーってるよ!今起きる!」

 

 そう答えてパジャマから制服に着替えて階段を下りていく。

 

 そしていつも通りに朝食を食べて家を出た。

 

 昨日までなんともなかったはずの朝日が急にキツくなったので、改めで悪魔に転生したことが実感できた。

 

「さて、本格的に悪魔になったことだしそろそろ赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を鍛えようかね」

 

 まぁいいさ、女神からのチートで使いこなせることには変わりないんだから適当にやっていれば他の奴らに負けることはないだろう。

 

 期待を胸に今日も俺はつつがなく過ごしていく。

 

 

 

「行ってきまーす」

 

 今日もいつもと同じ時間に家を出る。

 

 あれから数日が経つが、まだ朝のだるさを克服することが出来ない。

 

 悪魔になったあの朝に戦いのために少し鍛えるとか言ったが、よくよく考えたら女神チート(?)で室伏広治の2倍の身体能力を保持しているはずなんだから一般人としては最強クラスなはずであることに気付いた。だから一誠(搾りかす)と比べるとスタートが楽なわけだからそこまで鍛える必要なくね?となり、結局何もしなかった。

 

 時間に余裕を持って正門を通り、教室に入っていく。

 

「誠二君っ!おはよう」

 

「誠二さん、あの、良かったらお昼に屋上で一緒にご飯を食べませんか?」

 

「ねぇ~誠二ぃ。いい加減に私と付き合ってよぉ」

 

 などなどあれ(一誠)と違って結構もてる。

 

 この学校は前まで女子校だったので女子の比率が高く、しかもレベルが高い。

 

 はぁ、これはこれでいいんだがなぁ。やはりオカ研のメンバーと比べると数段落ちるな。こいつらじゃあ満足できないのが本音だ。

 

「おはようみんな、今日も頑張ろうね(キラッ)」

 

 ほらね、これだけで顔を赤くするんだもん。チョロインにも程かあり過ぎて逆に萎える。

 

 俺に群がる奴らを適当にあしらったところで本命の小猫ちゃんに挨拶する。

 

「おはよう小猫ちゃん。今日も頑張ろうね」

 

「………………おはようございます」

 

 爽やかイケメン全開でいったが今日も無理だったか。

 

 でも本当に小猫ちゃんとクラスが一緒で席も近かった事には驚いた。動揺して思わず初対面なのに「小猫ちゃん」って呼んでしまって、相当警戒された。

 

 あれから毎日暇さえあれば話しかけるようにはしているが、未だ成果は上げられていない。

 

「でもあれだよね。どうせ最後は小猫ちゃんも俺のハーレムメンバーに加わるんだからゆっくりと攻略していけばいいさ(ボソッ)」

 

「……私が…どうかしましたか」

 

 小猫ちゃんが珍しく自分から話しかけてきた。

 

 それにしても危ねぇ。ついつい声に出してしまっていたか。

 

「なんでもないよ」

 

「……そうですか、ならいいです」

 

 ショートホームルームのチャイムが鳴り、クラスメイトが自分の席へ座っていくのを見て、俺はも自分の席に座る。

 

 そして今日も退屈な授業が全て終わり、俺は靴を履いて校門を出る。

 

 暇なのでゲーセンで二、三時間ほど遊んでいるともう既に辺りは暗くなっていた。店を出て、百円玉もつきたので家に向かって歩き出す。

 

 家まであと一キロ程度のところで、スーツを着た男が俺のことを睨んでいるのに気付いた。

 

 夜になると悪魔になった影響か、感覚が鋭くなる。そのおかげでスーツ男の視線が殺気に満ちていることに気付けたのだ。

 

「これは数奇なものだ………………」

 

 ん?この台詞は、ドーナシークか。

 

「もしかしてお前はドーナシークか?」

 

「……どうして俺の名を知っているのだ小僧」

 

 やっぱりそうだ。ということはアーシアはフラグの始まりか。

 

「まぁ良いだろう。どうせはぐれだろお前。だったら今ここで狩っても構わんな」

 

  そう言うと両手にレイナーレが使っていたような光の槍が現れた。

 

 おもしれぇ。俺の力がどこまで通用するのかこのかませ犬で検証するか。だがここだと人に見られる可能性があるな。あの公園で言いか。

 

 考えをまとめると俺は身体能力をフル活用して走り始めた。

 

 そしてその間に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を溜めておく。

 

 『Boost Boost Boost』

 

 三回目がなったところでちょうど公園に着いた。

 

 ドーナシークも空を飛んで追いかけてきた。

 

「はぁ、面倒だ。ようやく諦めたか」

 

 そう呟くと両手の槍を投擲してきた。

 

「そうはいくかってんだよ」

 

 『Explosion』

 

 俺の身体能力は通常の8倍になっている。そのことによって槍は楽々とよけることが出来た。

 

「なにっ!なかなかにやるようだな。だが所詮下級よ」

 

 再び両手に光の槍を出現させると襲い掛かかってきた。

 

 だがこれも強化された肉体によって見切ることが出来、かすりもしなかった。

 

 なんだ、訓練なんかしなくても十分に俺は強いじゃないか。やられるだけのあいつとは格が違うって事だな。

 

「ほら、お土産だ。死ね」

 

 何度目かの攻防の中で体内に眠る魔力を引き出せるようになった俺は魔力を拳に纏わせてカウンター気味にドーナシークの顎をなぐりとばす。

 

「グガッ!!」

 

 良い具合に決まったのか仰向けに倒れたまま動かなくってしまった。

 

 やった、やっぱりこいつ雑魚じゃん。

 

 初勝利の余韻に浸っていると、俺の背後から紅い光が辺りを照らし出す。

 

 振り返って見ると、魔方陣が展開されていた。

 

「その子に触れないでちょうだい」

 

 そう言いながら現れたのはリアスだった。

 

 しかし俺を助けに来たつもりがドーナシークが倒れているのを見て、驚いていた。

 

「これ、あなたがやったの?」

 

「えぇ、まぁ」

 

 そう答えると少し考えてから、

 

「あなたに伝えたいことがあるわ。私も聞きたいことがあるし、明日の放課後にお話ししないかしら?」

 

「良いですよ」

 

「じゃあ、明日の放課後に教室で待っていてちょうだい。迎えをよこすわ」

 

 この男は私が始末しておくからもう帰っていいわよ、と言ってドーナシークと一緒に魔方陣の向こうへ消えた。

 

 さぁ、帰るか。それにしてもあれがもうじき手に入ると思うと笑いが止まらない。今日はきっとねむれないだろうなぁ。

 

 

~誠二 side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 なんか原作の序盤ってかませ犬しかいないですよね。

 次回はリアスとのお話回になるかと思います。

 そろっと一誠も暗躍させたいですねぇ。

 それではまた次回。


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オカルト研究部への合流

 いやぁ~、一日に2話投稿するのってひさしぶりかなぁ?

 集中力欠けて駄文になっているかもしれませんのでご了承ください。



~リアス side in~

 

 

「祐斗、例の件のあの子を連れてきてちょうだい」

 

「分かりました。部長」

 

 昨日は驚いたわ。不穏な気配を感じたので彼を助けに行ったら、悪魔に転生してまだ数日なのにもう下級堕天使に勝ってしまうなんて……。

 

「あり得ないわ」

 

「あら部長、昨日から様子が変ですわよ?どうかされましたか?」

 

 オカルト研究部副部長である姫島朱乃がいつも通りに紅茶を入れながら聞いてくる。

 

「ほら、この前普通なら私の眷属が召喚されるのに私が直接召喚されたことがあったじゃない?その時に助けた人について少し整理していたのよ」

 

「あらあら、部長がそこまで頭を悩ますなんてその人は一体何をしたのでしょうか」

 

 朱乃が珍しく興味を引かれたかのか紅茶を入れる手を止めてこちらを見てくる。

 

「はぁぁぁ……。………んし…を…しのよ」

 

「聞こえませんわ部長」

 

「だから!下級堕天使を倒したのよ!しかも単体で!転生してから数日で!」

 

 流石にこの内容は予想できなかったのか目を見開いて固まっている。しかし、すぐに気を取り直すと興奮したかのように喋りだす。

 

「すごいじゃないですか部長!その人は逸材ですよ!」

 

 普段見せないような行動をとる朱乃に若干戸惑いながらもさらに、彼が悪魔になったことをまだ自覚してないだろうと言うことも話す。

 

「だから彼に聞きたいことはいっぱいあるから今日の放課後にこの部室に来るように話しておいたのよ」

 

 しかも彼は結構格好いいからデキる弟が出来たみたい、と気分を落ち着かせるために紅茶を一口飲んだ。

 

 すると、ドアの方からノックが聞こえたので裕斗が戻ってきたのだろう。

 

 返事をすると、ドアが開いて裕斗の後に誠二君が入ってくる。

 

 彼は物珍しそうに部室の中を観察する。まぁ、仕方ないわね。壁や天井にびっしりと魔方陣が書かれているのだから。

 

 誠二君にソファを進めて向かい側に私も座る。誠二君の隣にはさっきからずっとお菓子を食べている小猫がいて、私の後ろに朱乃、裕斗がいる。

 

 さて、始めましょうか。

 

「私たちオカルト研究部はあなたを歓迎するわ──────────悪魔としてね」

 

 その台詞と同時に部員全員が翼を広げる。

 

 さぁ、あなたのことを全て教えて貰うわよ。

 

 

~リアス side out~

 

 

~誠二 side in~

 

 

 昨日のドーナシークとの戦いで十分に動けた事からやはり俺の身体能力は他の人とは一線を介していているのだろう。このまま強化を進めることが出来れば、俺の人生はもうイージーモードだな。

 

 そういえば放課後に呼び出されているんだったな。迎えを出すって言ってたけど誰が来るんだっけ?

 

「兵藤誠二君はいるかな」

 

 教室のドアを開けて入ってきたのは泣きぼくろが特徴的な金髪の優男だった。

 

 そいつは俺のことを見つけるとまっすぐこちらに向かってくる。

 

「君が兵藤誠二君だね。リアス部長の使いで来たんだ。ついてきてくれるかな」

 

 あぁ、思い出した。こいつはあれだ。部内の良心&ホモ要員の木場裕斗だ。

 

 この何もかもを産まれ持ってきたかのような奴が俺は大っ嫌いだ。まぁ前世がピザニートだったこともあってただの嫉妬だが。

 

 俺がハーレムを築くための盾役になってくれればそれで十分だな。

 

「分かった」

 

 木場に着いていくと1階外に出て、それから校地内の別の場所へ移動する。旧校舎に向かっているようだ。

 

 移動が少し面倒臭いが、隔離されているので俺たちの愛の巣にはぴったりだな。ここで肉欲におぼれるのも有りかもな。ムフフッ。

 

 中に入って階段を上り、手前から二番目のドアを木場はノックする。

 

 返事があった後、ドアを開けて中に招き入れられる。

 

 進められるがままにソファに座るとリアスが立ち上がって話しかけてくる。

 

「私たちオカルト研究部はあなたを歓迎するわ──────────悪魔としてね」

 

 そう言った後にリアス、朱乃、小猫ちゃん、木場は背中から蝙蝠のような翼を広げる。

 

「まだ混乱しているかもしれないけれどもこれは全て事実よ。端的に言うと、あなたは1回死んだの。でも私がこの悪魔の駒(イーヴィルピース)を使ってあなたを悪魔に転生させたの」

 

 リアスは懐からルークの駒を取り出してそう言った。

 

「いや、別に全部知ってますけど……。」

 

「「「「えっ?」」」」 

 

 リアスたちはおれの返答に戸惑っているようだ。自分たちの想像した回答じゃなかったからだろう。

 

「あー、コホン。じぁあ単刀直入に聞くわ。あなた、何者?悪魔に転生させるときにポーンの駒を8つもつかって、なおかつこちらの世界のことを知っているなんて」

 

 警戒させちゃったかな。

 

「まず先に言っときます。俺は神器(セイクリッド・ギア)を持ってます」

 

「へぇ、そう。それでねぇ」

 

 その一言で部長は全てを察したのか、黙ってしまった。

 

 持っているのならば戦闘で何が起きてもおかしくはないという認識なんだろか。裏世界についても神器(セイクリッド・ギア)関連から知識を得ていったみたいな解釈をしているのかな。

 

 いきなり俺が話の腰を折ったせいで特に話すことがなくなってしまった。

 

「まぁなんでもいいわ。とにかくあなたは今日から私のものよ。私の下僕としてそばに使えて貰うわ。みんな、自己紹介してちょうだい」

 

 リアスたちは翼をしまってソファに座った。

 

「まずは私からね。オカルト研究部部長 リアス・グレモリーよ」

 

「オカルト研究部副部長 姫島 朱乃です。宜しくお願いいたしますわ」

 

「オカルト研究部部員 木場 裕斗です。宜しくね」

 

「…………………………搭城 小猫です」

 

「兵藤 誠二です。これからよろしくお願いします」

 

「自己紹介も終わった事だしあなたはこれからどうするの?帰るの?」

 

 これから悪魔の仕事をするのだろう。俺に残るかどうかをリアスは聞いてきた。

 

 と、そのときに突然朱乃の耳元に小型の魔方陣が展開される。通信用だろうか。

 

 なにやら深刻そうな表情をしている。通信が終わると部長に、

 

「はぐれ悪魔の討伐命令が出ました」

 

「分かったわ、すぐにいくわ」

 

 リアスはみんなの顔を見渡す。

 

「領地内ではぐれ悪魔が出たわ今からその討伐に向かいます。朱乃、移動の準備を」

 

 朱乃に指示を出すとこちらを向いて

 

「はぐれ悪魔って言うのは一言で言うと犯罪者ね。主殺しだとかの。だから見つけ次第に始末しなければならないの。良い機会だわ、あなたも見学に来なさい。各駒の特性を教えてあげるわ」

 

「部長!準備が出来ました!」

 

「じゃあいくわよ!」

 

 床に展開された半径三メートルくらいの魔方陣の上に乗ると、光が強まって弾けた後の部室には誰もいなかった。

 

 

~誠二 side out~

 

 

 

 

 

 

 

 




 さてさて誠二がオカルト研究部に合流しました。

 ここから誠二のダークファンタジー学園ラブバトルコメディが始まるんですねっ!!

 すいません、自分ででも何言ってるか分かっていません。

 そして次回はオカルト研究部の初戦闘になるのかな?

 まだ決めていません。

 一誠は出す予定です。

 それではまた。


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自分で解決できない問題を抱え込む奴は大抵性格ブス

 どうもぉ~。何故がハッスルしてしまって本日三本目です。

 相変わらず文才ないねぇ。

 ではどうぞ。



~誠二side in~

 

 

 魔方陣で転移した先は学校の近くの廃墟だった。

 

「ここね、はぐれ悪魔バイサーがいるのは。みんな慎重に探索してちょうだい」

 

 リアスの指示の元、建物の周辺からはぐれ悪魔の痕跡を探していく。

 

 しかし周辺にはバイサー自身やその食事の跡も何もなく、建物の中に潜伏しているだろうことがほぼ確定となった。

 

 そしてだめ押しとばかりに小猫ちゃんが、

 

「……………クサいです……これは…血のにおい?」

 

 血の匂いだって?バイサーは野生の動物かなんかを食べているのか。

 

 血の匂いと聞いて他のメンバーは気を引き締めているのが目に見えて分かった。

 

 俺?そんなの必要ないよ。だって強いもん。

 

 倍加さえ完了すれば神さえたおせるんだよ?

 

 それなのにこんな辺境に来る悪魔ごときに警戒?ないない。

 

「……部長。建物の奥の方からなにやら気配が感じられます」

 

 小猫ちゃんが敵の気配を感じ取った。

 

 慎重に奥に進んでいくと突然全身を寒気が駆け巡った。

 

「まずそうな臭いがするぞ?でもうまそうな臭いもするぞ?あまいのかな?にがいのかな?」

 

 地の底から聞こえるような低い声音。

 

 そんな不快な声とともに現れたのは上半身が裸で下半身が化け物という体長が五メートル近い悪魔だった。

 

「はぐれ悪魔バイサー、あなたを消滅させに来たわ」

 

 リアスが相手の姿に怯えず、堂々と言い切った。

 

「ちっ!その紅い髪はグレモリーか。全くもって不愉快だ。私にこんな小娘を寄越すなんて」

 

 バイザーはリアスに対して悪態をついた後、すぐ近くからバイザーの体長と同じくらいの長さの槍を2本取り出してきた。

 

 そしてここから戦いが始まる。

 

「誠二、各駒の特徴を教えてあげるわ。まずはナイトからね。裕斗っ!」

 

「はい部長」

 

 リアスから指名された木場は何もないところから剣を作り出すと、そのまま目にもとまらぬスピードでバイサーに向かっていった。

 

「ふん、早さしか取り柄のないゴミが」

 

 バイサーは比較的余裕で対応していった。

 

「ナイトはね、使われた者に圧倒的なスピードをあたえるの。だから裕斗の剣技と合わされば、誰にもとめられられない剣士になるの」

 

 木場も打ち合うたびに加速していったが、一度もバイザーは見失うことなく捌いていった。

 

「クソッ!このスピードについていけるなんてなかなかに速いね。……ウワァ!!」

 

 打ち合っていた二人だが、木場が槍の横薙ぎをもろに肋骨の辺りに貰ってしまった。

 

 数メートルふっ飛んで動かなくなった。

 

「裕斗ぉっ!なら小猫っ!朱乃っ!様子見はいいわっ!さっさと片付けてちょうだい」

 

 木場が倒されたことに少なからず動揺していて、二人がかりで倒すように命令する。

 

「ごめんなさい誠二。少しばかり余裕がなくなってしまったわ。ちゃっちゃと説明するわね。ルークは圧倒的な攻撃力と防御力を、ビショップは圧倒的な魔力を、クイーンは全ての駒の特性が扱えるわ」

 

「じゃあ俺のポーンは?」

 

「ポーンは敵の陣地に入ったら任意で好きな駒になれるの」

 

 なるほど。

 

「「キャッ!」」

 

 部長の説明を聞いていたらバイザーと闘っていたはずの二人がこちらに吹っ飛んできた。

 

「な、何でなのよ。相手は所詮B級よ?私の下僕が負けるはずがないじゃない」

 

「B級と言ったか小娘。私は冥界での認定こそそれだが強さ的にはS級だぞ?あっちでは魔力の低いものはしたに見られるからな。まぁ、当然つっちゃ当然か」

 

 リアスは下僕がなすすべなくやられたからか先ほどまでの威厳はなく、瞳には恐怖が浮かんでいた。

 

「S級ですって?私たちの力量的にその等級はまだ狩れないわ」

 

 要するに敵の強さを見誤って超絶ピンチってことだよな。ここで俺がこいつを倒したら好感度が爆上がりじゃないか。

 

「リ…部長。ここは俺に任せてください」

 

 流石に呼ぶときは名前はまずいよな。

 

「誠二、あなたには無理よ。それともなに?勝算があるって言うの?」

 

 己のミスで死ぬことがほぼ確定しているのでやや自暴自棄になっている。

 

 こちらを見る部長に向かって深くうなずく。

 

「分かったわ。でも、無茶はしないこと。危なくなったらすぐに逃げなさい」

 

 リアスは納得してくれた。

 

「さぁ、ここからはおれのターンだぜ!」

 

 バイサーに向かってそう宣言すると赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発現させ、倍加を開始する。

 

「なんだ小僧それは。龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)か?」

 

「いや、違うねこいつはブッ………」

 

 赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)だ、そう言おうと思ったが言えなかった。何故なら俺の腹には大きな穴が開いており、さらに槍の横薙ぎで肋骨をダメにされたからだ。

 

「まっ!なんであろうと効果が現れる前に倒してしまえばいいさ」

 

 いつの間にか俺の元々いた場所にいたバイザーは槍を肩に乗せると不敵に笑った。

 

 くそっ!ヤベえなんてもんじゃねぇ。何でだよ。俺は最強のはずだろう。なんで俺が負けてるんだ。

 

「さてさてぇ、そこの小娘は完全に腰が抜けているしどうしようかな。ころそっかなぁ~」

 

 バイサーはもう既に俺に興味は無いらしく、リアスについて考えていた。

 

「でもなぁ、お腹すいたし食事を先にしよっか」

 

「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 絶望に満ちたこの空間を切り裂くような悲鳴が聞こえた。痛むからだを無視してそちらを見やると、うちの学校の制服を着た女子がいた。塾の帰りだろうか。

 

「おぉ、ちょうどいいところに柔らかくておいしそうな肉があるじゃないか」

 

 嬉しそうに舌なめずりをした後にゆっくりと近づいていく。

 

 対する女子は足がすくんで一歩も動けずにいた。

 

「あ…あぁ……あ」

 

「それじゃあ頂きます」

 

 バイサーが女子を捕まえようとしたその時、

 

「ぶべらぁっっ!!」

 

 バイザーが吹き飛んできた。

 

 代わりにそこにいたのは黒いフードを被った体型からして男だろう。

 

「お前ら悪魔はほっとけば増える害虫みたいなものだ。」

 

 その男の開口一番はまさかの悪態だった。

 

 

~誠二 side out~

 

 

 

 

 

 

 




 
 次回は一誠が無双します。

 あぁ~~ヒロインとも出会いもそろそろかんがえなきゃいけないっすねぇ。

 出して欲しいキャラがいたらお気軽にどうぞ。

 作者の独断と偏見をしまくって選びます。(採用するかは分かりませんが)

 ではまた次回。


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発見のち瞬殺、時々ウゼェ絡み

 冬休みに入り、こたつで毎日ごろごろする日々。

 いけないとわかってはいるんですが、辞められないっすねぇ~。



~一誠 side in~

 

 

「あ~もうっ!分かんねぇ。あいつら何を企んでやがるんだ」

 

 俺は欲しい情報が得られないことにイライラしてフードをとってダークグレーの髪をかきむしる

 

 レイナーレが誠二に接触してから二日経っても未だに今回の堕天使の行動の主目的と思われる『あの子』について何一つ分からなかった。

 

 会話の中から得られた情報は、

 

・ 『あの子』はドーナシークという堕天使とはぐれエクソシストがつれてくるらしい

 

・ 『あの子』によって堕天使たちは至高の存在へとなるらしい

 

 この2つだけだったので圧倒的に情報量が足りない。

 

 そのドーナシークという奴が見つかれば楽なのだが、そう都合良く見つかるなんて事は無かった。

 

 さて、街を見回ってみたところ特に怪しい動きもないし、どうしたものか。

 

 堕天使、堕天使、堕天使、堕て…………と呟きながら街中を歩いていると、いつの間にか町外れの方まで来てしまった。

 

「あぁ、変なところまで来たな。戻るか」

 

 ここら辺には特に何も無いので引き返そうと歩く方向を変えながら首がこっていたので回してゴキゴキならす。

 

「んぁ?」

 

 ちょうどその時に一般的な住宅では見られない屋根が向こう側にあるのを視界の隅に捉えた。

 

 そちらの方に顔を向けてみると、どうやら教会のようだった。

 

「あそこは……まだ見たことがないな。行くか」

 

 そして街に戻らずに新たにそこを目的地に設定する。

 

 しかし抜かったな。ここら辺があまり人のいない土地だったせいで見回りがおろそかになっていたな。

 

 いざ教会の前に来るとそこは荒れていた。壁の塗装ははがれ落ち、腐って少し湿っぽい両開きの扉は左側が半開きになっている。覗いてみると中もぼろぼろで、かつて暖かい雰囲気に包まれていたはずのその空間は既に色あせてしまっていた。

 

「うっわ。こりゃひでぇ」

 

 中に入ろうとして扉に触れると、ガタンと外れてしまった。

 

 割れたステンドグラスから入ってくるムラのある光は幼きイエスを胸に抱くマリアをもの悲しく照らし出し、ここの廃れ具合をより一層印象づけていた。

 

 異常が無いかどうか左右に視線を走らせ、最後にかつては神父が説法を説いていたであろう台に目を向ける。

 

 その台を見た瞬間に俺はある違和感を感じていた。

 

 その正体が気になって近づいて詳しく調べてみると、絨毯の色が変わっている部分と台の位置が少しだけずれていた。

 

「最近動かした後がある。と言うことは地下が存在するのか」

 

 地下の存在を確信した俺は台を横にずらしていく。

 

 その下に敷かれていた絨毯をめくると、本来継ぎ目のないはずのコンクリートの床にちょうど人が一人か二人くらい入れる程度の大きさの溝があった。

 

 その溝に指をねじ込み、持ち上げると下に階段が現れた。

 

 下っていくとそこに見えたのは、二十メートル四方の部屋の中に十字型のはりつけ台と床に描かれた半径二メートル程の魔方陣があった。

 

 床に描かれたそれにはちらほらと堕天使の術式が含まれていたので、レイナーレたちがつくったものに間違いないだろう。

 

 奴らの本拠地を見つけたのだ。

 

 さらに魔方陣を調べていくとこれは神器(セイクリッド・ギア)に干渉するものであることが判明した。

 

 堕天使、神器(セイクリッド・ギア)の摘出、至高の存在…………。

 

 なるほど。

 

「理解できてきたぞ。これで抜いた神器(セイクリッド・ギア)を自分の体に埋め込む気だな」

 

 それが分かりさえすればっと。

 

 俺は手早く磔台を壊して、魔方陣も消した。

 

「これでよし。あとはアーシア……だっけ?の救出だけだな」

 

 しかしどうしようかな。アーシアがいつ連れてこられるのか分からないからな。とりあえずあいつらでも監視しておけばいいか。

 

 レイナーレたちを探すべく俺は教会を後にした。

 

 

 

 

 

 レイナーレを監視していい加減に飽きてくると西の方の廃墟から戦闘音がした。

 

「おーおーはぐれ狩りかな?ご苦労なこった。まぁ、ちっと見てくるか」

 

 屋根に飛び乗るとそのまま最短ルートで音がした方へ音もなく駆けだした。

 

 それほど距離も離れていなかったので、ほぼ一瞬で着いた。

 

 やはりグレモリーがはぐれ狩りをしていた。

 

 幸い林が近くにあったので木で身を隠しながら近付けた。

 

「あちゃー。あいつら戦闘力の差が分からないのか?いや、力を過信しているな。特にグレモリーはなまじ滅びの性質が強すぎるせいで酷いな。あいつらじゃ無理だっての。まぁ助ける気もないがな」

 

 そう、これは自業自得だ。弱いのが悪い。

 

 ついでに言うとここであいつらがいなくなれば俺が楽。

 

 そうこうしている間に誠二が出張ったが瞬殺。予想の範囲内だな。

 

 あぁ、グレモリーもダメか。せめて逃げるなり滅びの魔力を使うなりすればいいのに。戦意喪失が1番ダメだよ。

 

 あとはグレモリーたちを殺したあのはぐれを俺が狩るだけだと思っていたのだがここで俺も予想だにしないことが起きた。

 

「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 突然この廃墟に悲鳴が響いた。

 

 駒王学園の制服を着た女子がそこにいて、はぐれの標的にされたのだ。

 

 完全に気を抜いていた。

 

 すぐに助けに向かうが、

 

「チッ!間に合わねぇか。仕方ねぇな。『フェーズ1解放』」

 

 体内にある封印を少しだけ解除する。

 

 一誠の周りに黄金のオーラがまとわりつく。

 

 これは魔力による身体強化とは強化する倍率が桁外れに違く、あくまでも人間の一誠には若干負担がかかる。

 

 そしてその副作用みたいなもので力を解放する段階によって髪の色素が抜けて最終的には真っ白になる。

 

 今は術で変装しているため、外見的な変化はない。

 

投影開始(トレース・オン)

 

「干将・莫耶」

 

急いでフードを被るとはぐれが武器を振り上げた刹那に女子をかばうように前に立っていつもの如く白黒の双剣を使って攻撃を防いだ。

 

「一般人に手ぇ出すなっての」

 

 攻撃をいなした剣を流れるような動作で再度振り、腹でバイザーを吹っ飛ばした。

 

 そして一般人を危険にさらした無能なゴミに対して怒りがわいたのでついののしってしまう。

 

「お前ら悪魔はほっとけば増える害虫みたいなものだ」

 

 目線の先にいる無能なゴミ第一号(リアス・グレモリー)は足に力が入らないのか座り込んでいる。

 

 それはほっといて一誠はまずこれ以上負担をかけないように被害者の女子を記憶を混濁させる特殊な札を使ってから気絶させた。

 

 そして吹っ飛ばされた痛みから立ち直ったバイサーに向けて殺気を放つ。

 

「おいそこのはぐれ、名前なんつったけ?」

 

「バイサーだ」

 

「バイサーさんよぉ、俺ら超常の存在は一般人に関与しないのが暗黙のルールだよな?それを今俺ら日本神話の領地で行った。よって断罪する。反論は無しだ。死ね」

 

 言いたいことを言うと今の(・・・)俺が出せる全力でバイサーの懐に踏み込み、剣を振るった。

 

「なぁっ!………ギャッ!!」

 

 バイサーは反応しようとしたのだろうが、その圧倒的なスピードの前に動けず両手両足を一瞬で切り落とされて達磨になった。

 

「あっけねぇな。さて、最後だ。何かあるか?」

 

 何も出来ないまま四肢をもがれたことにやっと恐怖を覚えたのか数瞬沈黙したが、なんと命乞いを始めた。

 

「す、すまなかった。少しだけ調子に乗っただけなんだよ。もうおとなしくどっか行くし謝るからさ、許してくれないか!頼む!」

 

 おいおいこいつは話を聞いていないのか?

 

「さっき殺すって言ったよな?反論はなしってな。それは聞き届けられないからもう何もないって事でいいな。はい、バイバイ」

 

 無理矢理話を終わらせるとバイサーの首を切り落とした。

 

「『フェーズ1封印』」

 

 また、自分の力を封印して、干将・莫耶も消した。

 

「さて、終わったことだし帰るか。あっと、この女子を忘れてたわ。危ねぇ。こいつを送ってっておしまいだな」

 

 帰るか、そう思ったときに後ろから不快な声が聞こえた。

 

「あなた、誰よ。日本神話ってどういうことよ!ここは私の領地よ?あなた、こんなことして我がグレモリー家が黙ってないわよ。場合によっては魔王様も出てくるわ」

 

 面倒臭いのが復活したなと、ウンザリしながら振り返るとそこには案の定無能姫がいた。そして言葉を続ける。

 

「そうねぇ、それがいやだったら私の下僕になりなさい。あなた大分強そうだし、ルークなんかどうかしら?今なら好待遇で迎えるわよ?」

 

 あの、あなたさっきまで恐怖で震えていたのでは?ずいぶんとお早い復活ですね。

 

「はぁ、お前分かってないのか?力量もないのに格上に挑んで負けて、危うく一般人を殺してた所なんだぞ?そんなゴミの下になんかつくか。温室培養された見せかけだけの強者気取りが。上級悪魔が聞いて呆れるわ」

 

 その言葉が気にくわなかったのかやはり顔を真っ赤にして怒っていた。

 

「そう、あなたは今自分の命を無駄にしたわ。悪魔が管理している領地で好き勝手やった事を魔王様に報告して討伐対象に認定して貰うわよ。さぁ、それが嫌なら私の下僕になりなさい」

 

 何言っても無駄だな、こりゃ面倒だし早々に退散するか。

 

「だからお前らになんか従うかっての。さっさとここから出て行け!この無能が」

 

 言いたいことを全部言い切ったので、地面に寝かせている女子を担いで未だにキャンキャンうるさい奴に背を向けてここを後にした。

 

 ここの調査が目的だったのだが、最初から目立ちすぎたことを若干後悔しながらどうやって任務を続行するか考えながら帰路についた。

 

 

~一誠 side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 一誠の能力が一部解禁になりました。

 一誠は修行して手に入れた力が強すぎて封印していないと体に負担がかかるため、いつも封印しています。

 封印解放のフェーズが進むたびにスーパーサイヤ人、2、3…………みたいな感じで身体強化&能力が解放されていくと思ってくれればOKです。

 フェーズ1は身体強化のみです。

 一応スーパーサイヤ人ゴッドまでなのでフェーズは6段階でしょうか?

 まぁ、楽しみにしていてください。

 次はアーシア編に突入しようかなぁ。

 ではまた次回。



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