まっさらな心よりは少し棘が欲しいだろ? (濃紺のタクト)
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覚醒

ごく普通の高校生だった。

 

普通のままで終わってもよかったかもしれないが、想像だにしなかった面白い方向へ転がって行った。

 

俺、川合龍は、数日前交通事故にあった。

下校中のことだった。

ボサーっとしながらだらだら歩いていたら、急に飛び出してきた乗用車に轢かれた.....

 

轢かれたところまでは記憶にあるのだが、気がつくと何事もなかったかのように翌朝を自室のベッドで迎えた。

俺は軽傷で済んで安心したのだが、明らかにおかしい。

がっつり轢かれなかったっけ???

 

考えてもわからなかったのでいつも通り朝飯を食べにリビングへ行くとテレビで不可解なニュースが報道されていた。

大量の血痕と二つの灰の山と誰も乗っていない運転席のドアが開けっ放しの一台の車。

それよりも映っていた場所は俺が事故にあった場所そのものだったのだ。

全くもってわけがわからないよ?

 

しかもそれだけではない。

それを境に付き合っていた彼女と連絡が取れなくなってしまった。

何かがおかしいぞ...

 

でもそれ以外はまだ普通だった。

 

さらに数日後。休日の朝のこと。

起きて寝癖を整えようと自室の鏡を見た時に

 

見てしまった...

 

俺の目が灰色に一瞬染まったのを...

 

え..........................?

 

夢だあああああああああ

怖すぎてベッドに再び入った。

落ち着いてきたので冷静に考えたが、やっぱり全くわからない。

 

というかそもそもあの事故がずっと引っかかっている。

誰も怪我していないのにあの量の血痕。

俺は軽傷だからあんなに出血するわけない。

それとどこからか現れた灰の山がとりあえずわけがわからない。

あとは運転者が霧のように消えてしまっていること。

確かにあの車に轢かれていてその時は運転者はいたわけで...

 

 

ーそしてこの時だったー

 

 

この時の感覚は夢のようだった。

自覚して動いている感じではない。

朦朧とした意識の中でかすかに見えている光景は、リビングにいた両親を殺している映像だった。

 

ふと我に返った。

あたりには灰の山が広がっていた。

 

俺、どうにかしちまったんじゃないか....

自室に戻り、部屋に入りかけた時に、顔に黒い模様が浮かんでいた。

どうにもできない叫びをあげた

「わああああああああああああああああああ!」

その時はっきりとわかった。

粘着質の不気味な音が聞こえる。

俺は人間ではない何かに変貌している。

鏡には灰色の怪物が映っていたのだ。

 

手元を見ると灰色の手をしていた。

やっぱり俺は人間をやめてしまっているようだった。

 

人間の姿に戻れるのか???

考えていたら、俺は普通の姿に戻っていた。

 

戻れたわ。

 

てことは、両親を殺しているのは夢じゃなくて現実だったんじゃないか...

案の定生活音が全くしてこないのだ。

 

もうわけわかんねえよ!

 

俺はテキトーに服を着て家を飛び出した。

 

どこ行くあてもなくただただ走った。

なんでこんなことになっちまったんだ

いくら考えても答えのない疑問が頭を駆け巡った。

 

そして完全に不意打ちだった

「どうしてそんなに急いでいるの?」

 

あどけない少年の声が頭に聞こえてきた、と思った。

いや完全に肉声だ。

 

あたりを見回すが、誰もいない。

なんだったんだ...

 

また歩き出そうとしたら叩かれた

「なんだよ!」

「なんで急いでるのって。」

呼び止めたのは俺より年下の少年だった。

 

「お兄ちゃん怖がらなくていいよ。僕もお兄ちゃんと同じオルフェノクだから...」

 

オルフェノクってなんだよ.....

 

戸惑ってる俺に御構い無しにそいつは話し続けた。

「死んだら一定の確率で覚醒できる人間を超越した存在さ....」

「なんだよそれ...」

マジでちんぷんかんぷんだった。

「まぁいいよ。ちょうど獲物が来たし見てなよ。」

「えぇ...?」

ちょうど向こうから人が歩いて来た。

 

そしたらそいつは俺と同じような怪物に姿を変えた。

カメレオンを模しているな。

そうしたら程なくして姿が消えた。

 

...なるほどなぁ

 

透明状態でさっき話しかけたってのか

怖いですw

 

ふと見たら人がピタッと止まった。

あいつの姿が浮かび上がる。

 

あいつの長い舌がそのひとの胸元に刺さっている

「虫けらがぁ」

 

あいつの影が青白く浮かび全裸の人間の姿で言っていた。

 

そして間も無く、驚いた表情をしたままその人は灰化して崩れた...

 

あいつは長い舌をしまって人間に戻った。

「わかった?」

「何がさ」

「あれは使徒再生って言うんだ。人間に僕らのエネルギーを入れるとたまにオルフェノクになるやつらがいる。まぁ大体は外れだよ。」

「えぇ、あぁ、そぅ...」

戸惑いすぎてそれしか言えなかった。

「お兄ちゃんも当然やって来てるよね?あれ?もしかしてなりたてかなぁ???」

「とりあえず何もわかんねえから教えてくれ!」

 

するとそいつはニカッと笑って言った

「ここもなんだし、僕の家こない?お兄ちゃん悪くなさそうだし」

言われるがままに連れて行かれた。

 

 




もしも事故って実際にオルフェノクになる世界だったらと想像しながら書きました

のんびりと不定期更新になりそうですが書いていきます


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