フェイト/たいがーころしあむ しーしーしー (阿吽)
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フェイト/たいがーころしあむ しーしーしー

 アリーナの扉から出て、縁あって助けることになった遠坂凛と出会い、そして。

 手のひらにいつの間にか握られていた、桜の花びらを懐かしく思った。理由はわからないが、もう少しすれば思い出すだろうという予感を残して。

 

 

 「それじゃあ、部屋に戻りましょうか? 白野君も、結構疲れているでしょ?」

 

 

 マスターの資格を失った彼女に、部屋はない。故に、自分とサーヴァントとの共同生活になっているのだ。

 凛の言葉に頷いて、近くにいるであろう。サーヴァントにも告げる。長い間行かなかったような気がする、マイルームへと。

 

 「じゃあ、行こうか」

 「うむ、奏者よ」

 「はい、ご主人様」

 

 

 ……………待て。今返事が2つ聞こえなかったか?

 こちらへと振り返った凛と目が合う。その目は語っていた。

 

 

 ------------あんた、いったい何仕出かしたの?

 

 あいにく、こちらに思い当たる節はない。が、自分の後ろに、感じた違和感の答えがあるようだ。

 何か、見てはいけないもの気はする。が、恐る恐る振り返ると………………

 

 

 「貴様、いったい何者だ!?」

 「何って、ご主人様の良妻であるサーヴァント、キャスターですが。つーかぁ、あなたこそ誰ですか?」

 「余が奏者のサーヴァントだ!! それに、奏者は余の嫁だ!! 異論は認めん!!」

 「何言ってくれやがるんですか、この変体赤娘が!! 尻丸出しでよくもそんなことが言えましたね!?」

 「これは余のファッションだ!! 冗談はその耳と尻尾にだけにしておけ、このIN☆RAN狐め!!」

 「言ってはならないことを言ったなこのヤロウ!!!」

 

 

 -----少々過激な赤い舞踏服(ドレス)に身を包んだ少女と、露出の多い和服を着た狐耳の女性が修羅場を展開していた。

 

 

 えっと………………………………………どういう事ですか?

 

 

 

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 話を聞けば、2人とも自分--------岸波白野のサーヴァント、それも、愛を誓い合った仲(本人談)…………らしい。

 赤い少女-----セイバーは初々しく話していたので信憑性はややあるが、狐耳の女性-----キャスターは、そのノリと今にもこちらを(アレな意味で)食べそうな気配であまり信頼していない。が、心の中でどちらも事実だと訴えかけてくるのはなぜか。

 

 

 そして自分は今現在。

 

 

 「ふんふんふん♪」

 「ちっ、何でご主人様と二人っきりになれないんでしょう………」

 「……………ふん!!」

 

 

 なぜか怒り心頭な凛を先頭に、右手にセイバー、左手にキャスターを連れてマイルームへ戻っている途中である。

 セイバーは自分を手を握れていることで上機嫌。対するキャスターは独り占めできないことに不満を抱えているようだった。

 だが凛。なぜ君が怒っているのだろう。2人もサーヴァントを従えていることに嫉妬しているのか?

 

 

 「…………前からわかっていたことだけど、あんた本当に唐変木よね」

 「えっと…………凛?」

 「ううん、なんでもないわ白野君。ゆっっっくりサーヴァントと仲良くしていてね」

 

 

 そうは言う凛だが、発しているオーラが明らかに「不機嫌です」を声を発している。

 …………今誤っても逆に怒らせそうだから、後で謝ろう。決して、凛が怖すぎて声をかけられないのではない。

 

 怒りのあまりか、凛はマイルームを通り過ぎてしまった。

 こっちだよー、と軽く声をかけつつ、マイルームのドアに手を掛け、

 

 

 「「あ……」」

 

 

 

 他の人と手が触れた。恐る恐る顔を上げると、1人の少女がいた。

 肩まで伸びた、栗色のセミロング。月見ヶ原学園の制服に身を包んだ、ややつつまし目の胸の少女。

 

 

 「えっと………マイルーム間違えていません?」

 「え? でも、私のマイルームは2年1組なんですけど………」

 「…………………………え?」

 

 

 確認してみると、確かに彼女のマイルームは2年1組に設定されていた。

 しかも、名前も自分と同じ------岸波白野。偶然、はありえないだろう。なかなかある名前と苗字でもないし、第一ムーンセルが、他人とマイルームを一緒にするなんてミスをするはずがない。

 

 

 

 「どうしたのですか、白野さん? おや、そちらの方は………」

 「あ、ラニちゃん!!」

 

 

 後ろから響く、機械じみた声(システムボイス)。そこにいたのは、褐色の肌をした、馴染みのある少女------ラニ=Ⅷだった。

 

 「どうした、マスター。うむ? この状況は……………」

 「あ、アーチャー。あのね、マイルームが………」

 

 白野さんのサーヴァントも現れ、あちらはあちらで会話が進んでいる様である。

 

 

 ひとまず、マイルームを確認しようとドアを開け------------

 

 

 「うむ。ようやく来た---------------」

 

 

 ------------すぐに閉めた。今、金髪の男が全裸待機していたような…………。疲れているのかな、きっと。

 

 

 「見間違いではありませんよ、ご主人様。ゴージャスな変態が中で待機しておりました」

 「余も見た。まぁ、この部屋はあの女のものだから、問題あるまい」

 「いえ、お部屋はあなた達のです。どうぞご自由に---------」

 「否定してよ、俺のサーヴァントなら!! 心中察してよ!! そして君も逃げないで!!!」

 

 この場から退散しようとする3名を、華麗なる技で確保する。ここまで来ての逃げは許さない…………!!!

 

 「いやだぁ!! 変態はアーチャーだけで十分よ!!!」

 「私の評価を下げることを言うのは止めてくれないか、マスター!! アレは君のためにも仕方なく…………」

 「いえ、アーチャーは間違いなく、紳士のつく変態です」

 「せめて順番を逆にしてくれないかなラニ君!!!」

 

 

 こちらもこちらでうるさいが、この際どうでもいい。夢であってくれと思いつつ、ドアを開けると-------

 

 

 「キャーーーー!!!! ゴージャスな変態がいるわーーーーーーー!!!!」

 「エリちゃんに同意です!!! せめて下は履きなさい!!!」

 「ぬかせ!! 下が丸見えの貴様らに言われたくないわ!!!!」

 「あ、あのう………先輩達、帰ってきたんですけど………」

 「……………混沌(カオス)ね」

 「あ、お帰りなさい。お茶、入れますね」

 「「「「「「「……………」」」」」」」

 

 先程以上に混沌とした空気に、何も言えなかった。とりあえずリップ、お茶ありがとう。

 

 

 

-----------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

 

 さて。混沌とした状況を30分掛けて収拾したが、改めて状況を整理しよう。

 今、このムーンセルより与えられた、2年1組のマイルームにいる人の数は13。

 

 

 まず、自分こと岸波白野(男)と、同じマイルームを与えられた岸波白野(女)。

 そして、岸波白野(男)のサーヴァントであるセイバーとキャスター。

 岸波白野(女)のサーヴァントであるアーチャーと、彼女のサーヴァントだという黄金のサーヴァント、ギルガメッシュ(彼女からは否定されたが)。

 そして岸波白野(男)の協力者、遠坂凛と、岸波白野(女)の協力者、ラニ=Ⅷ。彼女達はおろか、自分とも契約したことがあるというサーヴァント------エリザベート・バートリー。

 そしてNPCだった少女、間桐桜。さらに彼女から派生した存在---BB、パッションリップ、メルトリリス。以上がこの部屋にいる面々である。

 

 桜達と会ったことで、月の裏側であった記憶も取り戻した。さて、BB。

 

 

 「は、はい!!!」

 

 

 何があったか、教えてくれるかな?自分でも悪いと思えるような笑みを浮かべて彼女に尋ねるが。

 

 

 「わ、わからないんです。気付いたらここにいただけで………」

 「BBの言う事は本当です。私達も、気が付いたらここにいて……………。ムーンセルからの応答もないんです」

 

 

 …………BBが嘘を言っているようにも思えないし、なにより桜が言っているのだ。本当なのだろう。

 それにしても、ムーンセルからの応答がないとは、どういうことだろうか。そんなことを考えていると。

 

 

 《ムーンセルに存在する、全ての思考体に通達します。現在、ムーンセルは未知のウイルスによりハッキングをgggggdふぁ不亜h不でゅいあh不sづいあb不アブcvぶあfぶあ》

 

 

 ムーンセルからの通達。途中でノイズが入ったが、ハッキングを受けた旨は聞き取れた。

 

 

 「え、それってまずくない?」

 「まずい、どころじゃないわね。下手をすればムーンセルにいる思考体、跡形もなく消え去るわよ」

 

 

 白野さんの指摘に、メルトが答える。………って、本当にまずい!!! 何とかしないと………

 

 

 

 ピンポーンパンポーン

 

 

 とそのとき、気の抜けた音が響いた。

 

 

 「毎度おなじみ、聖杯戦争、聖杯戦争でございます。ご不要になった夢、希望、もう諦めた野望などがございましたら、お気軽にコロシアムにおいでください」

 

 

 

 ………………………何だ今のは。

 そんなことを一瞬思ったが、外からものすごい音が響いたため、その思考は断たれた。

 様子を見るため、一度マイルームから出た。が、外は先程のマイルームよりも混沌とした状況だった。

 

 

 

 酒盛りをしているサーヴァントの面々。酒に酔ったと思われるレオが、ユリウスを綱にしてガウェインと綱引きをしている。

 アサシンは言峰神父も激辛麻婆豆腐に沈み、ありす達は飲み過ぎて気絶したであろう緑茶(アーチャー)の顔に落書きをしている。いつの間にか、令呪も消失している。

 

 

 「あはははは!!!!!」

 「ししょーー!!!!!」

 

 

 

 そして響く、謎の笑い声と呼び声。

 ………………間違いない。この混沌とした状況。先程の放送の声。

 こんな事態を引き起こした人物は、間違いなくあいつだ。あいつ以外にありえない。

 

 

 

 

 「いい加減にしろよ、藤村ぁぁぁーーーーーー!!!!!!!!!」



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