ラブライブ!side “M” お兄ちゃんは魔法使い (真仁)
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プロローグその1

こうゆうの書くのは初めてなんではたしてマトモにできてるかどうか・・・
ネタにも大分偏りがあるのはご勘弁を


 

 

「おーい、起きろー!」

朝の陽射しが差し込む部屋で1人の青年が寝ている少女を起こしている

「早く起きろ!遅刻しちまうぞ!」

「う〜ん・・・」

少女は布団の中でモゾモゾ動きながら一向に起きる気配は無い。しびれを切らした青年は

「はぁ・・・、仕方ない。こうなりゃ奥の手で・・・」

そう言うと青年は右手の人差し指を布団からはみ出ている少女の足の裏にそっと当てる

「痺れるヤツ、頼みます!」

そう言った瞬間人差し指が一瞬光ったかと思うとビビッという音が鳴る

「⁉︎ッギャッ⁉︎」

ドスンッ!

短い悲鳴と共に少女が飛び起きるがそのまま勢い余ってベッドから落ちてしまう。

「痛ったーい!もう!起こすんだったらもっと優しく起こしてよー!」

「何言ってんだ。優しく起こして起きなかったのは何処のどいつだよ。そんなことより時間、大丈夫なのか?」

「え?・・・アーッ!もうこんな時間⁉︎遅刻しちゃうよー!」

少女は慌てて学校の支度を始める。そんな少女をやれやれといった様子で見ながらも青年は慣れた手つきで支度を手伝う

「ノートは?」

「持った!」

「筆箱は?」

「入れた!」

「朝飯は?」

「食べてるヒマないよー!」

「はぁ・・・鞄の中にラ○チパック入れといたから時間を見つけて食べるんだな」

「ありがとう!お兄ちゃん!行ってきまーす!」

バタバタしながらも支度を整えた少女は階段をドタドタと駆け下りて学校へ行った。その様子を見届けた青年はゆっくりと階段を降りる。一階に来ると少女の母親が朝食の準備をしていた

「おはよう束くん。いつもごめんなさいね。あの子ったら毎日毎日遅刻ギリギリまで寝ていて・・・ホント誰に似たのか」

「平気ッスよ。もう日課みたいなもんだし」

そう言いつつ青年・・・束(つかさ)は席に着いて朝食を食べ始める。

「そうそう、束くん。お母さんから手紙が届いてたわよ」

「母さんから?」

朝食を手短に済ますと束は手紙を受け取り自室に行く。

「母さんから手紙なんて何年振りだろ」

束の母親は数年前から世界中を旅しており束はもう長い事会っていない。時折こうして手紙が送られては来るがそれも絶えて久しかった。自室のベッドに腰をかけると束は手紙の封を開け手紙を読み始める。

前略、息子の束へ

お母さんが仕事の都合で海外に出てもう数年が経ちますが元気にしていますか?今は高校時代の先輩である高坂先輩の家に居候させて貰ってるけど迷惑をかけてませんか?毎朝寝坊して娘さん達に起こして貰ったりしてないか心配です。

束「うん、まるっきり反対だね」

お母さんはまだ日本に帰れそうにないのでくれぐれも高坂先輩やその家族に迷惑をかけないように気をつけて下さい。

次にあなたは「このくだりもう何回も手紙に書いてあるからそこは大丈夫だよ」と言う。

束「このくだりもう何回も手紙に書いてあるからそこは大丈夫だよ・・・

ハッ⁉︎・・・ってどこの奇妙な一族だよ!」

話は変わりますが高坂先輩の家のあるその音ノ木坂は私にとってもとても思い出深い大切な場所です。高坂先輩のお店は勿論の事私が青春を過ごした音ノ木坂学院やその他地域への貢献も忘れないように。それともう一つ、あなたに伝えたい事があります。束・・・古典部に入りなさい!

束「だから番組が違うって!」

冗談はさておき、伝えたい事があるのは本当です。それはあなたの使える“魔法”についてです・・・。




とりあえず入りの部分だけ上げてみました。
プロローグその2もおそらくすぐ上げられるかと(上げたいなぁ)
こんな感じの作品が嫌いじゃない人がいてくれると嬉しいです


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プロローグその2

プロローグその2です


俺・・・皆道 束は“魔法”が使える

魔法っていってもアニメやゲームでよく見るような炎や風を自在に操って攻撃するようなヤツやデカイモンスターを召喚出来るような凄いヤツじゃなく比較的・・・いや、かなり地味な感じの魔法だ。

遠くにある物を手元に呼び寄せたり、鍵を使わずに鍵を開けられるなど日常で使えたら便利レベルの魔法である。

そうそう、さっき俺が起こしたこの家の娘・・・高坂穂乃果を起こす時に使ったのも魔法だ。強めの静電気レベルの電気しか流せない雷系魔法。本人には「波紋疾走だよ」と説明してあっさり納得したいたが(色んな意味で)大丈夫だろうか・・・?

そんな事を考えながら俺は母の手紙に目を戻した。

 

魔法を使用する上で守らなければいけない約束については覚えているとは思いますが

「人前では使用しない事」

「他人に迷惑をかけるような事には使用しない事」

「金儲けのような私利私欲には使用しない事」

を必ず守るように。

今回あなたに伝えたかったのはあなたのその魔法の力を借りなければいけない事態が起きたからです。

あなたが今住んでいる音ノ木坂は神田明神が近い事もあり一種のパワースポットになっているのです。そんなパワースポットには「魔力憑き」が引き寄せられるのです。

束「魔力憑き・・・?」

そもそもこの世の存在する物には全て多かれ少なかれ魔力が宿っているのですが魔力憑きはその魔力が強い物もしくは強い思いが宿る事で魔力が増大した物の事を指します。

この魔力憑きの厄介な所は宿った物の力を増大させる事です

魔力憑きが宿った物はその特性が極端に強化される傾向にあり物によっては大変危険な物になります。解決するには魔力憑きに宿っている魔力をガス抜きのように抜く必要があるのでそれに必要な解呪法の魔法式も添付しておきます。忘れずに覚えておくように。

パワースポットの力と周期の関係上今年一年は魔力憑きのトラブ・・・じゃなかったToLOVEるが多くなるかもしれませんが

束「言い直す必要ないだろ」

私の大好きな音ノ木坂をちゃんと守るように

 

母より

束「・・・はぁ、なんだか面倒な事になりそうだ」

自分の母親はふざけこそすれど嘘を言う人ではない事は自分が一番承知している為、そして何よりあの人に逆らうと後でマジでとんでもない事になるのが目に見えているので溜息をつきつつ、束は添付されていた見た事のない記号のような文字が大量に書かれた紙に手をのばすのであった・・・。

 




プロローグは主人公の紹介や説明ですね
バトル系にはあまり偏りたくないのでトラブル解決に奔走させていこうかなとは考えます
次回からはラブライブ要素もうちょっと入れていきたいな・・・


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第1話 魔法使い始めましたその1 “from叶え!私達の夢”

前回主人公の事を書いたので今回は音ノ木坂学院側の話です
上手くキャラを動かせる事が出来るかはまだ不安ですが・・・


束が母親からの手紙を読んでいるその頃、束に目覚ましの電撃を喰らって送り出された高坂家の長女、高坂穂乃果はなんとか遅刻を免れ無事に学校に到着、自分のクラスの教室に向かい歩いていた。

穂乃果「それでさ、お兄ちゃんたらヒドイんだよ。寝ている穂乃果の足にいきなりビリビリ!ってやるんだよ!」

穂乃果は自分の足を指差しながら一緒に登校してきた幼馴染2人に愚痴をこぼしていた。

海未「それはあなたが遅刻寸前になるまで寝ていて中々起きないからでしょう。起こす側や待っている人の身にもなってみてください」

2人の内の1人おろした黒髪が特徴的な少女、園田海未が嗜める。

ことり「でも・・・ビリビリはちょっとコワイ・・・かな?」

もう1人の幼馴染である南ことりも苦笑しながら聞いている

穂乃果「おーばーどらいぶ?っていうんだって」

海未「一体何を言ってるんですかあなたは・・・」

3人がそんな話をしながら歩いていると廊下の一角に人集りが出来ているのを発見する。

海未「何でしょうか?」

穂乃果「行ってみよう!」

人集りの中に加わった3人。注目はどうやら壁に張り出された紙に集まっているらしく3人は内容を見ようと更に歩を進める。そこに書かれていた内容は・・・

ことり「音ノ木坂学院が・・・」

海未「廃校・・・?」

穂乃果「そんな・・・」

余程ショックだったのか穂乃果はその場に倒れてしまう。

海未「穂乃果!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

 

一方その頃、穂乃果の実家である和菓子屋「穂むら」では

束「よし、陳列終了」

穂乃果母「ありがとう。それが終わったらお昼休みに入っていいからね」

束「わかりました」

束は普段は穂むらの従業員として働いている。この日も午前の仕事を終えて自室に戻っていた。

束「とは言ったものの・・・魔力憑きなんてどう見つければいいんだか・・・」

既に魔法式を解読し覚えてしまった為ただの紙切れになった解呪法の紙を眺めながら呟く。

束「まぁジッーとしててもドーにもなんねぇか・・・」

そう言って束は自室を出ると穂乃果の母に少し出かける事を伝える。

穂乃果母「ちょうど良かった。だったらついでにコレをここの住所まで届けてくれない?」

束「りょーかいッス」

紙袋を受け取った束はメモに記された住所に向かうのだった。

 

場所は変わり音ノ木坂学院

穂乃果「いやー今日もパンが美味い!」

学院内にある中庭で朝に束が入れたものと思われるパンを美味しそうに食べる穂乃果。

ことり「いきなり倒れちゃうからビックリしちゃったよ〜」

穂乃果「いやー廃校になったら別の学校に行く為にまた勉強しなきゃいけないと思っちゃって」

海未「少なくとも在校生の、今の一年生が卒業するまでは学校は無くなりませんよ」

ことり「でもそうなったら今の一年生には後輩が出来なくなっちゃうんだよね・・・」

「ちょっといいかしら?」

そんな話を3人がしていると2人の女生徒が話しかけてくる

穂乃果「えーと、誰?」

絵里「生徒会長の絢瀬絵里です。・・・悪いけど用があるのはあなたじゃなくてそちらの南さんの方なの」

ことり「私・・・ですか?」

絵里「あなた、確か理事長の娘さんだったわよね?廃校の事で何か聞いたりしてないかしら?」

ことり「すみません・・・私も今日初めて知ったので・・・」

絵里「そう・・・ならいいわ。ありがとう」

穂乃果「あの!音ノ木坂、本当に廃校になっちゃうんですか⁉︎」

絵里「・・・あなたには関係ないわ」

それだけ言って絵里は言ってしまうのだった・・・。

 

 

 

束「佐々木ポンポコデリバリーは・・・っと、此処か」

頼まれた預かり物を届けにきた束。街は変わった様子は特に無くいつも通りであった。応対に出た赤いジャケットの男性に荷物を渡すと外に出る。

束(なんかあの赤ジャケのおじさん?とは話が合いそうな気がするなぁ)

なんて考えながら届け先を後にする。ふとスマホの時計に目をやる。

束「そろそろ穂乃果達が帰ってくる時間か・・・。まぁ特に街に変わった様子はないしそんな簡単に出てくる訳ないか」

帰路に着こうとする束すると何か叫び声の様な音が聞こえてくる。

束「?なんだこの声?」

叫び声は近づいているのか段々ハッキリ聞こえてくるようになりそして・・・

穂乃果「助けてぇぇぇぇっ⁉︎」

次の瞬間自転車に乗った穂乃果が物凄い速さで束の目の前を駆け抜けていった・・・。

束「・・・アイツ何やってんの⁉︎」




特撮系の小ネタ多めですね・・・
作中に登場する名詞や人物はあくまで小ネタなので特に深く関わる事はないです


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魔法使い始めましたその2 “from叶え!私達の夢”

穂乃果を乗せた自転車はかなりの速度を出しながら街中を駆け抜けていってしまった

ことり「穂乃果ちゃ〜ん!待って〜!」

駆け抜けていった自転車を束が呆然と見ていると後ろからことりが走ってくる。

束「ことりちゃん?今穂乃果が自転車で走っていったんだが・・・何かあった?」

ことり「穂乃果ちゃんのお兄さん!えっと、実は・・・」

 

遡る事20分前、穂乃果達は下校後にこの近辺では最も人気の高い学校、UTX学園を見に行ってみようという事になった。人気のある学校なら廃校を無くす為の手がかりが何か見つかるかもしれないとの事だった。

海未は弓道部に顔を出してから行くので後から行くとの事で穂乃果とことりの2人で先に行く事になったのだが一刻も早く行きたがっていた穂乃果は・・・

穂乃果「あ、そーいえば駐輪場に1つずっと置きっ放しになってる自転車あったよね?」

ことり「えぇ?ダメだよ穂乃果ちゃん、泥棒は良くないよ?」

穂乃果「でもあの自転車、穂乃果達が入学してからずーっとあそこに置きっ放しで置いてないとこ見た事ないよ?大丈夫!大丈夫!ちょっと借りるだけだから!」

ことり「あ!穂乃果ちゃーん!」

穂乃果は駐輪場に向かい自転車を見つける。自転車は鍵がついておらず長い間放置されていた事もあり至る所に錆びがあったが作りがシッカリしていた為か動かすには問題はなさそうであった。

穂乃果「あった!よいしょっ・・・と!」

穂乃果は駐輪場から自転車を出すとその場で乗ってみる。

ことり「穂乃果ちゃ〜ん!やっぱりその自転車錆びてて危ないよ〜!歩いて行こう〜!」

穂乃果「大丈夫だよ!ほら!全然乗れるよ!」

そう言って穂乃果はその場で自転車でグルグル回ってみせる。しかしその瞬間自転車に異変が起こる。

穂乃果「あ、あれ?ハンドルから手が離れない?」

更には穂乃果がペダルを漕いでもいないのに車輪がひとりでに回り出し自転車を加速させる。

穂乃果「何⁉︎いったいどうなって・・・うわぁっ⁉︎」

そのまま自転車は校門方面に猛スピードで走り出した。

ことり「ほ、穂乃果ちゃぁぁぁん!」

ことりも慌てて後を追いかけて走りだした・・・。

 

ことり「・・・という訳で・・・」

束「何やってんだあのバカ・・・」

おそらくここまでずっと走ってきたのだろう。ことりは説明している時も息も絶え絶えといった感じで苦しそうであった。

束「海未ちゃんは?」

ことり「弓道部の用事も終わったみたいで事情を説明したらこっちに来てくれるって・・・」

束「そっか・・・。それじゃことりちゃんは海未ちゃんが来るまでここで休んでいて。後から2人で来てくれるか?

ここからは俺がアイツを追っかけるから」

ことり「は、はい、お願いします・・・」

束は穂乃果の自転車が向かった方向へと走りだす。

束「ことりちゃんの話が本当なら・・・アレが例の魔力憑きってやつなのか?」

束は自転車の走り去った方向に走りやがて猛スピードで走る自転車を発見する。自転車はまるで意思があるかの如く車や人を避けながら街中を走っていた。高速で走る自転車が急回避を繰り返すのだから乗っている方はたまったもんじゃない。

穂乃果「うえぇぇぇ・・・」

見事に目を回してしまっておりハンドルから手が離れないから辛うじて掴まっていられている状態だった。

束「まずは動きを止めないと・・・」

束は自転車の走る道を見つめる。どうやら自転車はこの音ノ木坂エリアからは抜け出す気は無いらしくエリア内をグルグルと回っている様子だった。

束「今ここを走ってるって事は・・・次はアソコを通るな」

束は自転車の動きを先読みし先回りをする。

束「・・・来た!」

自転車は予測通りの場所に来る。束は魔法でロープを出すと自転車とのすれ違いざまにロープを自転車にひっかける

それと同時にロープを近くの電柱に括りつけて止めようとするが・・・

ブチィッ!ロープはいとも簡単に千切られてしまう。

束「くそ!やっぱダメか!」

魔力憑きを止める為の解呪法は覚えているがその為には動きを止めなければならない。ただ動きを止めるのであればロープを大量に呼び出してがんじがらめにでもすればいいのだが今回は穂乃果が乗っている為、慎重にならざるを得ない。

束「穂乃果を傷付けないで動きを止める方法・・・何かないか・・・?」

自転車は尚も暴走を続けており急ターンで車や人を避けていた。

束「あの自転車は人を避けて走る・・・これしかない!」

束は自転車の進路を予測し、狭い路地を通り抜け自転車の前に出る。

束「こっちだ!暴走自転車!」

自転車は束を避けて右の道に曲がる。

束「よし!」

すかさず束はまた狭い路地をスイスイと通り抜け自転車の前に躍り出る。

束「悪いがこの音ノ木坂は俺の庭みたいなもんだ。どこを通り抜ければどこに出るかなんて手に取るようにわかるぜ!」

自転車は今度は左に避けて狭い道に入る。

束「そしてこの先は・・・」

自転車が走って行くとそこは・・・

束「行き止まりだ」

自転車は堪らず急ブレーキをかけ減速、旋回して方向転換を図る。

束「い・ま・だぁぁぁっ!」

束はあらかじめ行き止まりある電柱に隠していたロープを魔法で手繰り寄せ自転車にまたひっかける。しかし今度は電柱に括りつけるのではなく電柱を介して自分の手元に来るようにロープを操っていた。

方向転換を終えた自転車が再び走り出す。それと同時にひっかけていたロープが引っ張られその力は電柱が滑車の役目を果たし束の元へと伝わる。次の瞬間、自転車の加速と同時に束の身体が宙に舞い自転車の真上を飛び交差する。

束「やっぱぶつからなければ避ける事はないんだな。だがここからならお前に手が届くぜ!」

束は目一杯手を伸ばしハンドルを掴み穂乃果の後ろに乗り込む。自転車は振り落そうと暴れているが束も両手でガッチリとハンドルを握り離さない。

束「解呪法の発動条件・・・対象を『両手』で『5秒』以上掴む!」

束の両手が淡い光を発し始める。自転車はそれに反応するかのようにより一層抵抗を強める。

束「・・・2・・・3・・・4・・・5秒!」

一瞬激しい光が起きたと思うと自転車はそれまでの暴れっぷりが嘘のようにピタリと止まってしまった。

束「止まったか・・・」

束は激しい動きに耐えられずいつの間にか気を失っていた穂乃果を自転車から降ろす。そこに海未とことりが走ってくる。

海未「穂乃果!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「・・・ん・・・」

2人の呼び掛けに答えるように穂乃果が目を覚ます。

束「大丈夫か?」

穂乃果「・・・あれ?お兄ちゃん?何してるの?」

束「何って・・・お前・・・」

海未「自転車を止められなくなったあなたを束さんが助けてくれたんですよ。そのような言い方はないんじゃないですか?」

穂乃果「自転車?・・・そうだ!自転車が止まらなくなって、ハンドルも離せなくなって、目の前がグルグルになって、それでそれで・・・!」

穂乃果は思い出したように慌てて手足をバタつかせる

ことり「落ち着いて穂乃果ちゃん。お兄さんが助けてくれたからもう大丈夫だから」

穂乃果「え?あ・・・そうだったんだ・・・」

束「わかったならもうちっとは感謝して欲しいモンだが」

穂乃果「うん、ありがとう!お兄ちゃん!」

穂乃果は満面の笑みで感謝を述べる。

束(ッ!・・・やっぱコイツの笑顔は違った意味で驚異だな・・・)

穂乃果「?お兄ちゃん・・・顔赤い?」

束「赤くない!」

海未(ことり、今の穂乃果保存しましたか?)

ことり(バッチリだよ海未ちゃん)

後ろで約2名コソコソしている者もいたが・・・

 

その後の帰り道、そのままにもしておけないので束はとりあえず止めた自転車を引いて歩いていた。

ことり「それにしてもなんでいきなり自転車が暴走しちゃたんだろう?」

海未「暴走って・・・自転車のブレーキが壊れて止まれなくなったんじゃないんですか?」

ことり「ブレーキはかけてなかったけどそれだけじゃなくてね。車を避けて走ったり、上り坂でも速く走ったりしてたの」

穂乃果「急に曲がったり車にぶつかりそうになったりするんだもん。穂乃果も目が回っちゃって」

海未「それが本当だとしたら不思議ですね・・・。まぁ勝手に人の自転車を使おうとした穂乃果への天罰かもしれませんが」

穂乃果「海未ちゃ〜ん!」

ことり「穂乃果ちゃんのお兄さんはどう思います?」

束(魔力憑きの事は言えないし・・・ソレっぽく言ってボカしておくか)

束「多分、この自転車はもう一度走りたかったんじゃないか?ずっと同じ場所に置かれていて・・・それで自分を動かしてくれる人が現れた事がキッカケになってその思いが形になった・・・とか?」

海未「そんな事・・・」

束「わからないぜ?なんせ『強い思い』は運命も変えるらしいからな。穂乃果もひょっとしたらそれに引き寄せられたもかもな」

穂乃果「強い思いは運命も変える・・・」

穂乃果は少し考えると海未とことりの方を向く。

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん、私やっぱり音ノ木坂学院を廃校にしたくない。もし本当に強い思いが運命も変えられるなら・・・音ノ木坂学院を守りたい!お願い、2人の力を貸して!」

突然の申し出に2人は初めは驚いていたがすぐに顔を見合わせると

海未「全く、今更何を言ってるんですか?私もことりも初めから力を貸すつもりでいますよ?」

ことり「私も音ノ木坂が無くなっちゃうのは嫌だし・・・それに独りじゃ無理かもだけど2人と一緒なら何か出来るきがするの」

穂乃果「海未ちゃん・・・ことりちゃん・・・ありがとう!」

感激の余り穂乃果は2人に抱きつく。その様子を微笑みを浮かべながらみていた束だったが・・・

束「・・・あれ?ちょっと待て。穂乃果、どこが廃校になるって・・・?」

穂乃果「どこって・・・音ノ木坂学院だよ?」

束「え?・・・ええぇぇぇッ⁉︎」

音ノ木坂学院廃校の話を聞き一気に顔面蒼白になる束。

海未「束さん、どうしたんですか⁉︎」

束「いや、海外にいる俺の母親がさ音ノ木坂学院の卒業生なんだけど音ノ木坂学院にメチャクチャ思い入れがあるらしいんだよ・・・。息子の俺に地域貢献しなさい!なんて言ってくるぐらいだし・・・。もし音ノ木坂学院が廃校になるなんて知れたら・・・」

ことり「知れたら?」

束「・・・こ、殺される・・・」

海未「そ、そんな大袈裟な・・・」

束「穂乃果!こうなったら俺も全力で支援する!何がなんでも音ノ木坂の廃校を阻止するぞ!」

穂乃果「やったぁっ!お兄ちゃんも加われば百人力だよ!」

束「やるぞ穂乃果!」

穂乃果「おおー!」

海未「大丈夫でしょう・・・か?」

ことり「大丈夫なんじゃないかな?・・・多分」



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幕間 初めましてのご挨拶?その1 “fromオリジナル”

いつもよりも文章量少なめなので1.5話的な感じの話になります


「爆走バイク事件」(穂乃果命名)から一夜明けた次の日。束は珍しくいつもよりも深い眠りについていた。理由は暴走する自転車を追って走り回った事もあるがそれ以上に魔法を使用した事が大きかった。

魔法は使用する際に魔力を消費する。魔力を消費すると一時的な疲労状態に陥る。発動する魔法によって消費する魔力、即ち疲労度も異なるが本人曰く大体魔法1つの発動が50m走1回分の疲労らしく1回程度ならそれほど大きくは疲れないが間隔をおかず2回3回と連続で使用すれば疲労も溜まっていってしまう為、束は普段は魔法の連続使用には気を遣っているのである。ちなみに解呪法は発動条件も決まっている上に魔力消費量も3〜4倍になる為使用は文字通り一発勝負になる。

そんな訳で昨日は魔法を連続で使用、更に解呪法まで使った為、束は死んだように眠るのだった。

そんな束が眠るベッドに忍びよる怪しい影があった。

影は熟睡している束を覗き込むとニヤリと笑みを浮かべる。右手には朝日の光を浴びて細長い剣状の何かが鈍く光を放っている。影は両手を大きく振り上げそして束の顔面に向かってその手に持っているものを思い切り振り下ろした!

束「ッ⁉︎」

スパァァァンッ!

大きな音が室内に響き渡る。束は間一髪飛び起きて攻撃をかわしていた。

束「・・・これは一体何のつもりかな?・・・穂乃果?」

穂乃果「あ、あはは・・・たまには穂乃果がお兄ちゃんを起こしてあげようかな〜?なんて・・・」

影の正体・・・ハリセンを持った穂乃果は枕元にハリセンを叩きつけたまま苦笑する。

穂乃果「ほ、ホントだよ!ほら!今日は穂乃果お兄ちゃんよりも早く起きれたからお兄ちゃんを逆に起こしてあげようと・・・」

束「で、いつも強引に起こされてるからそのお礼を?」

穂乃果「ガツンと一発!・・・あ」

束「穂乃果ァァァッ!」

穂乃果「ごめんなさぁぁぁい!」

 

・・・その後、穂乃果は昨日行けなかったUTX学園への偵察?をしてから登校するとの事でいつもより早く家を出た。そのせいで穂乃果の母や妹の雪穂が大騒ぎしてその後も全く寝れなかったので束は気分転換にと朝の散歩に出かける事にした。

秋葉原に近く普段はそれなりに人通りもあり賑やかな音ノ木坂も流石に早朝は人もまばらで鳥のさえずりや遠くで走る通勤電車の音もハッキリ聞こえるくらい静かだった。

特に何も考えず細い路地を通り抜けて歩いているとたどり着いたのは・・・

束「神田明神か・・・」

今でも年越しの時など穂乃果達と来る事はあったが何もない時に来るのは境内を駆け回って遊んだこどもの時以来だろう。

束「せっかくだしお参りして行くか」

束はたまたまポケットに入っていた10円玉を賽銭箱に入れるとパンパン!と手を鳴らし頭を下げる。

束「音ノ木坂学院が廃校になりませんように!」

「そのお参りの仕方だとお願いは叶えて貰えへんかもしれないなぁ」

声につられて束が振り向くと巫女服に身を包んだ1人の少女が立っていた。



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幕間 初めましてのご挨拶? “fromオリジナル”

似非関西弁の喋らせ方難しいなーって思ったけど本当の関西弁もわかんないからこのままでいいやって事で自己完結しました。


いつの間にか束の後ろにいた巫女服の少女は境内の掃除をしていたらしくその手には箒が握られていた。束は暫くの間ジッとこの少女を見つめていた。この少女から不思議な雰囲気を感じた事もあるがそれ以上に・・・

束「・・・デカイ」

健全な男性としては巫女服の上からでもハッキリわかるくらいの胸元の膨らみにどうしても目がいってしまう訳で。

「・・・なーんかやらしい事考えない?」

こちらを見たまま動かない束に少女が眉を潜めながら声を掛ける。

束「いや?やらしい事なんて考えてないさ。ただ立派な物をお持ちだなぁと思っただけだよ。例えるなら・・・最大級のパワフルボディ?」

「なんやそれ。ウチは99もあらへんよ?まぁ確かに90以上はあるけど」

全く動じる事無くおどけて答える束の様子に少女も笑顔に戻り同じようなノリで答えてみせる。

束「お、言うねぇ?・・・って、そうじゃなかった。お姉さん、さっきの言葉はどういう意味だ?」

「お参りの事?そのままの意味だよ。まず、お兄さんは真ん中に立っているけどそこは神様の通り道だから参拝者は立っちゃ行けない所なんよ」

束「へぇ・・・」

「次にお参りの仕方やけど、基本は二拝二拍手一拝。お兄さんはさっき二拍手一拝しかしていなかったから最初の二拝が抜けとったね」

束「あぁ、確かに」

「まぁ2つとも若い人には多い間違いなんやけどね。ちゃーんとお参りをすればその分神様の御利益もちゃーんと貰えるんよ?」

束「なるほどね。教えてくれてありがとう、えっと・・・」

「ウチの名前は東條 希、音ノ木坂学院の3年生でここへはお掃除とかのお手伝いで来ているんよ」

束「音ノ木坂の生徒さんか。どおりで若い訳だ。おまけに美人ときた」

希「ふふ・・・お兄さん、お世辞が上手やね。ところで、さっきのお参りの事やけど・・・お兄さんはどうして音ノ木坂学院の事をお願いしてたん?家族が通ってるとか?」

束「ああ、妹・・・みたいな子が1人ね。学校の事が好きで廃校を何とかしようと今頑張ってるから神頼みでもなんでも力になってやりたいって思ってね」

希「なるほど・・・。お兄さん若いのに立派なんやね」

束「そんなんじゃないさ」

そんな話をしていると束の目に朝日の光が入ってくる。気がつけば段々と日が昇ってきて光を遮っていた周りの建物よりも高くなっていた。束はスマホの時計を見る。

束「もうこんな時間か。そろそろ帰った方がいいかな」

希「ウチも学校に行く支度せななぁ」

束「長話に付き合わせて悪かったね。掃除の邪魔をしてしまって」

希「全然気にしてへんよ。いつもはずっと1人で掃除してるから今日はお話し出来て嬉しかったから早起きした時にはまた来て欲しいな?」

束「んー・・・考えとくよ」

そうして束は希と別れて家への帰路に着いた。その後その後ろ姿を見送った希だったが

希「あ、お兄さんの名前を聞くの忘れた・・・。こっちは名前教えてあげたのにズルイねぇ」

そう言いながら希はタロットカードの束を取り出すとその中から一枚カードを引く。

希「おぉ?コレは面白いカードが出たなぁ」

希が引いたカードは【魔術師】のカードだった。

希「カードの意味は・・・可能性、チャンス、後は・・・始まり、かぁ。ふふふ、一体これから何が『始まる』んやろうね?」




こんな感じでゆるい作品ですがよろしくです


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第2話 アイドルを始めよう? “fromアイドルを始めよう”

原作に沿って進めたいけどもうすでに大分脱線しつつありますが・・・よろしくお願いします


束が神田明神に行ってきたその日の午後。

お店の手伝いを終えた束が居間でくつろいでいると

穂乃果「たっだいまー!」

聞き慣れた元気な声とドタドタと廊下を走ってくる音、誰なのかはすぐにわかる。

束「おかえり。あと廊下は走るなって言われてるだろ?」

穂乃果「えへへ、ゴメンゴメン」

穂乃果は束の隣に座り卓上に置いてあった煎餅に手を伸ばす。

束「おいそれ俺のだぞ!」

穂乃果「え〜いいじゃん1枚くらい」

束「戸棚に自分の分が入ってるだろ!」

穂乃果「ちぇ〜、お兄ちゃんのケチ」

穂乃果は渋々立ち上がり戸棚に向かう。

束「そんな事よりなんか良いアイデアは見つかったのか?UTXに行ってきたんだろ?」

穂乃果「あ!そうそう!見つかったよ!良いアイデア!」

そう言いながら穂乃果は鞄の中から雑誌の束を取り出す。

束「なんだよコレ・・・スクール・・・アイドル?」

穂乃果「今日の朝UTXに行ったらね、デッカいスクリーンにカッコいいダンスを踊るアイドルが映ってたんだ。でね、近くにいた人に聞いたらあらいず?っていってUTX学園の学生がアイドル活動をしているグループなんだって」

束「確かアソコは芸能コースとかあった筈だからな。将来有望な子を学生の内から育てようって感じなのかな」

穂乃果「私もそこの本を見たんだけど、そのあらいず?に憧れて自分達の学校で同じ様にアイドル活動を始める子達が全国にたくさんいるらしいんだ」

束「それがスクールアイドル?ってやつか・・・。簡単に言うと部活動でアイドルをやるって感じか?」

束は穂乃果の渡した雑誌をパラパラめくりながら答える。

束「穂乃果、お前まさか・・・」

穂乃果「うん!私もスクールアイドルになる!アイドル活動で人気が出れば音ノ木坂の入学希望者が増えるかもしれないし!」

束「穂乃果がアイドル・・・」

束は一瞬想像をしてみるが一番と二番の歌詞を歌い間違えたり、ダンスを踊っている途中でバランスを崩して派手に転んだりばかりをイメージしてしまう。

束「ダメだ、想像出来ない」

穂乃果「えー!なんでー⁉︎」

束「いくら学校の部活動って言ったってアイドルってそんな甘いモンじゃないだろ。海未ちゃんわことりちゃんには相談したのかよ」

穂乃果「海未ちゃんは最初はアイドルは無しです!って言ってたけど・・・2人ともやってくれるって!ただ・・・」

束「ただ?」

穂乃果「部の設立を生徒会長の承認が貰えなくって。人数が少ないのもあるんだけど仮に人数が足りても承認はしないって・・・」

束「・・・なんだよそれ。随分横暴じゃないか?」

穂乃果「会長はアイドルとかあまり好きじゃないみたい。このままじゃアイドル活動始めてもライブをする場所も無いし・・・お願い!何とかして!お兄ちゃん!」

束「そこで俺に降るのかよ⁉︎学校内部の問題は俺でも無理だろ。父兄とはいえ基本部外者な訳だし」

穂乃果「やっぱそうだよねぇ〜・・・」

束「まぁ・・・根気強く説得すれば気が変わるかもしれないしとりあえずいつでも始められる様に準備だけはしといた方がいいだろうな」

穂乃果「うん・・・そうだね!よーし!アイドル活動、頑張るぞー!」

束「やれやれ・・・なんか予想以上の展開になってきたな・・・」

 

 

 

翌日。束は今日は非番の為、街に出ていた。秋葉原にある一番大きな書店に入ると雑誌コーナーに向かいスクールアイドル関連の書籍を調べ始める。

束「スクールアイドル・・・スクールアイドル・・・ん?

穂乃果の昨日言ってたアライズってのはコレか・・・」

雑誌に特集として組まれていたA-RIZEの記事に目をやる。

内容はインタビューやライブの様子を撮影した写真などが主だった。

束「なるほど、確かにライブ中の姿は学生には見えないな・・・まるでプロのアイドルみたいだ」

果たしてコレと同じレベルのライブを穂乃果達が出来るだろうか?そんな不安が胸をよぎる。

束「とりあえず今そんな事悩んでも仕方ないか。さてと、会計を済ませて・・・」

ドンッ!

束が雑誌を手に取りレジへ向かおうと振り向いた瞬間、コーナーに来た人とぶつかってしまう。

束「うわ⁉︎」

「ピャアッ⁉︎」

お互いに思い切りぶつかってしまい2人して転倒してしまう。

束「ってて・・・、っとゴメン!ケガはないか?」

「は、はい・・・大丈夫です」

束は倒れた少女に手を差し伸べる。

「あ、えっと・・・あ、ありがとうございます・・・」

少女は小さな声で恥ずかしそうに礼を述べる。

束「ちゃんと確認しなかったコッチが悪いんだ、気にしないでくれ。それじゃ」

ケガがないのを確認した束はレジの方へ歩いていった。

残された少女は雑誌コーナーを見渡すが

「あぁ・・・今月号売切れちゃったんだ・・・。ここに無いとなると多分他のお店にもないだろうし・・・」

少女が困っていると後ろから人影が近づいてきた。

束「えーとここにあった今月号ってコレの事?」

少女の困っている様子に気づいた束が戻ってきて本を少女に渡す。

「え?・・・あ、はい!そうです!で、でもコレはお兄さんが取った物だから・・・」

束「いいよ。俺は他にも何冊か買ってるし、本当に読みたい人の所に行った方がこの本も幸せだろうし」

そう言って束は雑誌を少女に渡す。

「あ、ありがとう・・・ございます・・・。あの、お兄さんもスクールアイドル好きなんですか?」

束「ん?何で?」

「スクールアイドル関連の本をそんなに何冊も買ってますし・・・」

束「んー、好きになりたいと思ってる。でも知らない事だらけだからこの本を読んで色々勉強をしようと思ってね」

「そうだったんですね」

束「だから俺みたいな右も左もわかんないようなやつよりも好きな人に読んでもらう方が良いって思ったんだ」

そう言って束は再びレジに向かって歩き始めた。少女も後からついてきて束に話しかける。

「あの・・・どうしてスクールアイドルの事を勉強しようと思ったんですか?スクールアイドルに好きな人がいる・・・とか?」

束「逆だな。好きな人がスクールアイドルを始めるんだよ。でもわかんない事だらけだから情報収集をしてるんだ」

「スクールアイドルを始めるんですか?この辺だとどこの学校だろう・・・?」

少女は今までで一番真剣な表情で考え始める。束はそんな少女を指差しながら

束「そこだよ」

「そこって・・・どこですか?」

束「だからそこだって」

「そこ?え?どこ?」

束「そこ、その制服」

「この制服って・・・音ノ木坂学院・・・?・・・えぇぇぇぇっ⁉︎」

少女は今までで一番大きな声で悲鳴のような声をあげるのであった。

 




中々名前が出てきませんがだれかは分かって貰えるかと思います
休み中にもう一話くらいはストックが欲しい・・・


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第2話 アイドルを始めよう? その2 “fromアイドルを始めよう”

コメディパートも考えてはあるけど入れる隙間が見つからず・・・もうちっと先になりそうです・・・


秋葉原駅近くにある喫茶店。束は少女と共に一息ついていた。

束「ウゥ〜まだ耳がキーンてする・・・」

「ご、ごめんなさい・・・」

束「いや・・・俺もあんなにビックリするとは思ってなかったからさ・・・」

「まさか自分の通っている音ノ木坂学院にスクールアイドルが出来る何で夢にも思ってませんでしたから!どんな曲を披露してくれるのかなぁ・・・楽しみです♪」

束(スマン穂乃果よ、ハードルが更に上がりそうだ・・・)

「あ、そう言えばまだお名前を教えてませんでしたね。

私、小泉花陽っていいます。音ノ木坂学院の一年生です」

束「そう言えばそうだったな。俺は皆道 束だ。まぁ気軽に束って呼んでくれ」

その後しばらく2人は先程購入したスクールアイドル関連の本について話し合った。束がわからない部分を花陽が詳しく教えてくれるのだが花陽も段々熱が入ってきて・・・

花陽「・・・という訳でA-RISEのパフォーマンスは現在のスクールアイドルの中でも最も高いレベルに位置すると言っても過言ではなく・・・!」

束「お、おぉう・・・」

スクールアイドルについて今までのおとなしい様子から打って変わり熱く語る。その熱量に束も思わず圧倒されてしまう。

花陽「・・・あ!ご、ごめんなさい!私アイドルの事になるとすぐに周りが見えなくなってしまって・・・」

束「あ、あぁ。とりあえずアイドルが大好きって事は・・・伝わった」

花陽「アイドルってみんな凄く可愛くて綺麗で・・・輝いていて・・・花陽は憧れちゃうんです。私もあんな風になれたらなぁ・・・って」

束「自分でスクールアイドル始めようとは思わなかったのか?花陽ちゃん可愛いし、アイドルの知識も豊富だし・・・向いてると思うけど?」

花陽「そ、そんな!花陽なんかじゃ無理ですよ!昔から人前に立つと緊張しちゃうし・・・その・・・食べるのが大好きで・・・ふ、太ってるし・・・」

消え入りそうな声でうつむきながらそう話す。

束「そのルックスで太ってるとかいったら世の女性たちが一斉に怒りだしそうだけど・・・」

そんな事を話しながら束は雑誌を纏めて袋に詰めこむ。

束「さて、そろそろ出ますか?」

花陽「は、はい!」

2人はお店を出る。すると後ろから声が聞こえてくる。

「かよちーん!」

花陽「あ、凛ちゃん!」

凛と呼ばれたショートカットで活発そうな雰囲気の少女は2人のところに駆け寄ってくる。

凛「かよちんこんな所で何してるにゃ?今日は本屋に寄っていくんじゃなかったの?」

束「・・・にゃ?」

特徴的な語尾に束も思わず繰り返してしまう。凛も束の存在に気がつき

凛「ん?おじさん誰だにゃー?かよちんの知り合い?」

束「おじっ・・・おいおい俺はこれでもまだ20歳だぜ?おじさんは無いんじゃないか?」

花陽「この人は束さんっていって、本屋に行ったときに知り合って・・・花陽の欲しかった本を譲ってくれたの」

凛「そうなの?かよちんの知り合いなら凛も自己紹介しないとね!音ノ木坂学院一年、星空 凛!かよちんとは小さい頃からの友達なのにゃー!よろしくね、おじさん!」

束「だからおじさんはやめろって!」

凛「え〜?じゃあお兄さん?」

束「あぁ、まだそっちのがいい・・・」

凛「分かったにゃ!よろしくね!お兄さん!」

自己紹介が終わった所で花陽がふと遠くの方に目を向ける。

花陽「なんか・・・人集りが出来てますね?大きな音も聞こえるような・・・」

束「・・・ちょっと行ってくる」

束はそう言って人集りの方へ駆け出す。

花陽「あ、束さん!」

り「お兄さーん!待つにゃー!」

慌てて2人も後を追いかける。

一方先に人集りについた束。人集りの先では何やら曲が大音量で流されており、束は近くの人に話を聞く。

束「あの・・・なんかあったんすか?」

男性「なんか店先に置いてあったオーディオプレイヤーが壊れたらしくてね・・・。音が小さくならないらしいんだよ」

束は人と人の間の隙間から音のする方向を見るが確かに古いオーディオプレイヤーからは大音量で曲が流されており

止める事も出来ず店員も困惑している様子だった。

束「古いオーディオプレイヤー・・・まさか・・・」

凛「お兄さーん!」

聞き覚えのある声に束が振り向くとそこにはこちらに向かい走ってくる凛と花陽の姿が。

束「バカ!なんで来た!」

花陽「ピャアッ⁉︎ご、ごめんなさい!」

凛「ちょっと!なんでいきなりかよちんを怒るの!いくらかよちんの知り合いでもかよちんをいじめるなら凛が許さないにゃ!」

束「マズイ事になる前に早く遠くに逃げ・・・」

その瞬間オーディオが一瞬震えたかと思うと今までの比ではないくらいの大音量で音を出し始めた。

束「ぐっ⁉︎」

花陽「きゃあぁぁぁっ⁉︎」

凛「にゃぁぁぁっ⁉︎」

あまりの音の大きさにオーディオのすぐ近くにいた人集りの人々は耐えきれず倒れてしまった。後から来て後ろにいた束達も辛うじて意識はあるがまともに立っていられずその場に崩れる。

凛「あ、頭が割れそうにゃぁぁぁっ!」

花陽「ダレカタスケテェェェッ!」

束「く・・・そッ・・・」

音は頭を突き刺すようにガンガン響き思考を容赦なく遮り魔法を使う事も出来ない。それでも束は必死にアレを止める方向を考える。

束「せめて・・・近くに行ければ・・・止められるのに!」

束は悔しさに顔を歪ませる。この距離で辛うじて意識を保てるのだ。このままこれ以上近づけば前にいた人々の二の舞いになる事は確実だ。

凛「お兄さん・・・アレ、止められる・・・の?」

束「あぁ・・・近くに行って触る事が出来りゃあな・・・だが・・・この音のせいで・・・近づく事も出来ない・・・」

それを聞いた花陽が何か思いついたかのように鞄の中から何かを取り出す。

花陽「束さん・・・コレ・・・を!」

花陽が束に渡したのはイヤホンと小型のミュージックプレイヤーだった。

花陽「私がいつもアイドルの曲を聴く時に使ってるイヤホンとプレイヤー・・・耳栓の代わりくらいには・・・なりますか?」

束「花陽ちゃん・・・最高だよ・・・さすがアイドルオタクだ・・・!」

花陽からイヤホンとプレイヤーを受け取るとすぐさま耳にセットしてプレイヤーを起動する。

束(最近のイヤホンは音楽を聴く時に周りの騒音をシャットアウトするため同じ波長の正反対の音を出して騒音を打ち消すって聞いた事がある・・・。この音全ては無理だろうが少しくらいなら!)

イヤホンから花陽がいつも聴いているであろうアイドルの曲が流れてくる。イヤホンと曲の効果により束の感じる騒音が小さくなる。

束「よし・・・これくらいなら・・・行ける!」

プレイヤーの液晶画面には『Private Wars』の文字が表示されていた。

束「個人的な闘い・・・か。まぁ今の俺にはピッタリか」

束は苦笑しながらオーディオに向かい歩を進める。近づくごとに徐々に音量が大きくなり束の表情も歪んでいく。

束「ぐっ・・・うぅ・・・」

オーディオの目の前まで来た時、今までで一番大きな音がオーディオから発せられそれをまともに受けてしまった束はその場に崩れ落ちる。

花陽「束さん!」

凛「お兄さん!」

ガシィッ!崩れ落ちながらも束は両手でオーディオを掴む。

束「負けて・・・た ま る かぁぁぁっ!」

束の両手から光が、発せられやがてオーディオはバチィッ!という火花を発してその音を止めた。

束「と・・・まっ・・・たぜ・・・」

そう言い残して束はその場に倒れる。薄れゆく意識の中で聞こえたのはイヤホンから聞こえたアイドルの歌声と自分に必死で声をかける2人の少女の声だった・・・。




勢いでバーッ!と書いてたらなんか熱い展開になってしまった・・・
タグ改めた方がいいかも・・・


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第2話 アイドルを始めよう? その3 “fromアイドルを始めよう”

もうちょっと続きます。
やはりお気に入りなどの反応があるとちょっと嬉しいですね


束「・・・う・・・?」

束が目を覚ますと白い天井が目に入る。続いて自分の状況を確認すると天井と同じように白いベッドに横になっていた。

束「・・・病院・・・か」

束はゆっくりと起き上がる。騒音の影響で多少頭痛はするが後は魔法の影響と思われる疲労感のみであり特に大きな問題はなさそうである。

束「こんなとこで寝てる場合じゃないか・・・」

束はベッドから抜け出そうとする。しかしその瞬間病室のドアが開く。

花陽「あ!束さん、目が覚めたんですね!」

3人の少女が病室内に入ってきた。その内の2人、花陽と凛は束に駆け寄る。

花陽「大丈夫ですか?痛い所とかありませんか?」

束「あぁ、もう平気だ」

凛「あ、あの!」

突然凛が束の前に出る。

凛「さっきはごめんなさい!お兄さんは凛やかよちんを危険から遠ざけようとしてくれてたのに・・・勝手に後をついて行って・・・ひどい事も言っちゃって・・・」

束「?・・・あぁ、あの時の・・・。別に気にしちゃいないさ。むしろ感謝したいくらいだよ。花陽ちゃんのイヤホンとプレイヤーのおかげで動く事が出来たんだし、ここにも2人が救急車を呼んでくれたんだろ?」

「救急車を呼んだのは私よ」

2人の後ろにいた赤い髪の少女がそう答える。

束「えぇ・・・と・・・誰?」

花陽「この人は私達のクラスメイトの西木野真姫さんです」

束「西木野?どっかで聞いた事あるような・・・」

真姫「それ、多分ここの事ね。ウチはこのへんじゃ一番大きい病院だから」

束「なるほど西木野総合病院か。で、そうなると君はここの院長の娘さんってトコかな?」

真姫「ま、そういう事になるわね」

束「そっか、助かったよ。ありがとう」

真姫「べ、別にあなたの為にやった訳じゃないし・・・

目の前で倒れているのを放ってもおけないしウチの病院が一番近かったってだけなんだから・・・」

そう言いながら真姫は顔を背けて指に髪の毛の先の部分をクルクル巻きつけていた。

束(あの子なりの照れ隠し・・か?まぁ悪い子ではなさそうだが・・・)

真姫「そんな事より一体何があったの?大きな音が聞こえたから見に行ってみたら人が大勢倒れてたけど・・・」

凛「古いオーディオから大きな音が止まらなくなってしまったんだにゃ。凛達も頭が痛くなって大変だったにゃ〜」

花陽「西木野さんが救急車呼んでくれた後に警察も来たんですけどオーディオが壊れてしまっていて他に怪しい所もないから事件性は低いって事でオーディオの故障が原因じゃないかって言ってました」

束「そうか・・・(とりあえず魔力憑きや魔法の事はバレてないみたいだな)」

そんな事を話しているといきなり病室のドアが思い切り開けられる。

穂乃果「お兄ちゃーん!大丈夫⁉︎」

海未「穂乃果!病室内で騒いではいけません!」

ことり「海未ちゃんも声を小さくした方がいいんじゃないかな?」

束「穂乃果?なんでここに・・・」

海未「先程、束さんが救急車に乗せられるのを見たという人から穂乃果の家に連絡があったんです」

ことり「おばさんはお支度があるから雪穂ちゃんと後から行くから3人で先に行っておいでって言われたの」

穂乃果「大丈夫?お兄ちゃんどこケガしたの?痛くない?お願いだから死なないでー!」

束「死ぬか!勝手に殺すな!どこもケガしてないから安心しろ!」

穂乃果「そ、そうなの?良かった〜。心配しちゃったよ・・・ん?あー!あなたは!」

真姫「ヴェェッ⁉︎なんで先輩がここにいるのよ⁉︎」

束「ん?・・・知り合いか?」

穂乃果と目が合い慌てる真姫と正反対に会えた事を喜ぶ様子の穂乃果。状況が掴めない束は穂乃果に尋ねる。

穂乃果「うん!この子、ピアノがと〜っても上手いんだ!だからライブ用の曲を作って貰えないかお願いしてみたの!そしたら断られちゃって・・・」

真姫「初対面の人間にいきなりアイドルみたいな曲を作れなんて言う方がおかしいと思うんですけど?」

真姫は今度は不機嫌そうに顔を背ける。

花陽「待って下さい!ライブ用の曲ってもしかして・・・先輩達が束さんの言っていた音ノ木坂学院のスクールアイドルですか⁉︎」

穂乃果「え?あ、うん!そうだよー!穂乃果達がスクールアイドルだよー!」

束「なんだよその超テキトーな返し」

花陽「あ、あ、あの私一年の小泉花陽って言います!ア、アイドルが大好きで・・・あの、せ、先輩達の事応援してます!」

穂乃果「海未ちゃん聞いた⁉︎穂乃果達の事応援してくれるって!コレってもしかしてファンってヤツ⁉︎」

海未「まだ何も活動を始めていないのにファンができるわけないじゃありませんか!」

真姫「はぁ・・・アホくさい。私帰るわ。じゃ、お大事に」

凛「かーよちん、凛達もそろそろ帰ろ?心配したからなんかお腹へったにゃ〜」

花陽「あ、凛ちゃん待って〜!そ、それじゃ束さん、先輩、失礼します」

真姫と凛が出ていき花陽がペコリと一礼してから凛を追いかけて出て行った。

こうして病室内には束と穂乃果、海未、ことりの4人が残された。

ことり「ごめんなさい・・・騒がせるつもりじゃなかったんですけど・・・」

束「いや?容体を心配されてしんみりするよりは全然良い」

海未「体調の方はどうですか?」

束「問題なしだ。明日には出られると思う」

実際にはまだ疲労感が残っているが医療でどうにかできる物でもないことやアイドル活動の準備を手伝わなければならない為そう言っておく。

束「で?曲はどうなった・・・って断られたんだったな」

穂乃果「でも諦めないでもう一度聞いてみる!私、あの子の曲がいいんだ!あ、歌詞の方は海未ちゃんが書いてくれるって!」

束「海未ちゃんが?」

穂乃果「中学の頃自作のポエムとか書いてたから歌詞もきっと書けるよ!」

束「お前それ割とガチで触れて欲しくないタイプのヤツじゃねぇか・・・」

束はちらっと海未の方を見るが顔を真っ赤にして俯いていた・・・。

穂乃果「で、ライブ用の衣装はことりちゃんが作ってくれるって!」

ことり「うん。任せて!」

束「となると残る問題は2つか。1つは作曲、もう1つは生徒会・・・」

海未「束さん、気持ちはありがたいのですが今はお身体の方を大切にして下さい。私達の問題は私達でどうにかしますから」

束「そうもいかないさ。前にも言ったが俺も命がかかってるからな。それに・・・こうして皆で一緒に何か作るって俺自身学生の頃以来で・・・なんかワクワクしてるし」

穂乃果「お兄ちゃん・・・」

束「ライブ、絶対成功させような」

穂乃果「・・・うん!」




2年生組と1年生組集合、安定の脱線模様ですがアニメ的な要素もやっぱり抑えていきたいですね


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幕間 とある放課後の生徒会長(エリーチカ)“fromオリジナル”

文章数が少ないので第2.5話です。タイトルの通りです。
キャラもネタも。


新年度も始まって2週間ほどが過ぎた。音ノ木坂学院の正面にある桜並木の桜の花も徐々にその数を減らしそれにとって変わるように緑色の葉が顔を出し始めていた。

その様子をジッと見つめる一人の少女がいた。絢瀬絵里、

音ノ木坂学院の3年生で同学園の生徒会長を務めている。

桜は美しい花をほんの僅かな時間の中で一斉に咲かせそして散っていく。そしてまた次の年に新たな花を咲かせるのだ。・・・しかしこの桜達はその『次』をあと何回迎えられるのだろうか?・・・そんな事を考えていた。

絵里「希遅いわね・・・。あら?希からメッセージ・・・『ゴメンえりち!急な用事が入って一緒に買い物行けなくなった!』・・・もう、希ったらせっかく生徒会の仕事早く切り上げたのに・・・」

メッセージに対しての了解の返事を打ちながらそんな独り言を呟く。

絵里「でもすぐ必要な物もあるし・・・しょうがない、今日は一人で行きましょうか」

返信を終え、携帯をしまうと絵里は桜並木の中を街に向かって歩き出した。

 

 

 

同じ頃、穂むらでは異常無しと判断され無事退院した束が自室のベッドに寝転がっていた。退院して帰って来たはいいが穂乃果の母から「まだ大事をとって休んでいなさい」とほぼ強制的に休みを取らされており仕事にも出れない状態だった。魔力切れの疲労感もだいぶ楽になり体調はすこぶる良い。

束「・・・やっぱジーッとしててもドーにもなんないよな・・・」

束は自室の窓をそーっと開け、魔法でロープを出すとコッソリ窓からロープを伝って降りて穂むらを抜け出した。

束「おばさんゴメン!」

束の姿は街の中に消えていった・・・。

 

 

 

絵里(はぁ・・・今日はついてないわね・・・)

一人で買い物に来ていた絵里はため息混じりにそんな事を思っていた。理由は現在の状況にある。状況は至ってシンプルで一言で言うならば柄の悪い男に絡まれた。という所である。先程から何度も断り続けているが一人なので大した事はないと思い無視しているのかそれともこちらの言葉を理解する頭がないのかは知らないが一向に引き下がる気配を見せない。しかしそれでも誘いを断られ続けてとうとう業を煮やしたのか強引に手首を掴んで引っ張り始める。

絵里「ちょっ・・・離して!誰か・・・っ!」

周りを見渡すが皆関わり合いを避ける為に目を背けるか遠くからただ様子を眺めている。中には面白がってカメラを向けている若者もいる。

絵里(誰でもいいから!・・・助けて!)

バチィィィンッ!

何かが当たるような音と共に男の手が絵里から離れる。

絵里「・・・え?」

何が起こったかわからず呆然とする絵里。直後にチャリーン!いう音と共に硬貨が一枚彼女の足元に落ちた。

「まったく・・・女の子のエスコートの仕方も知らねえのか?どこのカントリーボーイだ?」

絵里が声のする方へ顔を向けると一人の男性が右手を突き出して立っていた。

男「なんだぁ!お前は!」

「俺か?俺は通りすがりの仮・・・じゃなかった和菓子屋の従業員だ」

変な名乗りを上げた自称和菓子屋の従業員はポケットからもう一枚硬貨を出すと指で弾くように前へ飛ばす。

バチィィィンッ!

男「ぐおっ⁉︎」

硬貨は一直線に男の足元に飛んでいき左足に着弾。たまらず男はその場にうずくまる。自称和菓子屋の従業員は男にゆっくり近づいていく。

「まあ腕っぷしの強さでも負ける気はしないが・・・今は面倒を起こすと穂乃果達に迷惑がかかっちまうからなぁ。という訳で穏便に・・・」

男の目の前に立った自称和菓子屋の従業員は右手の人差し指を男の額につける

「眠れ」

ドサッ!

その瞬間に男はその場に倒れてしまった。その様子を訳がわからず絵里はただ呆然と見ている事しか出来なかった。すると自称和菓子屋の従業員がこちらに近づいてくる。

「大丈夫か?ケガはないか?」

絵里「え、えぇ・・・大丈夫」

絵里はそう答えながら倒れた男の方を見る。

絵里「・・・眠らせたの?」

「ああ」

絵里「・・・永遠に・・・」

「いや死んでないって」



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幕間 とある放課後の生徒会長(エリーチカ)その2 “fromオリジナル”

気力のある内に連続投稿。やりたいネタはやりきったので今回は真面目パートです。
やはり真面目パートは書いてて疲れてしまう・・・
なんかおかしかったらごめんなさい


騒動の後、2人はその場を離れて少し離れた所にひっそりと佇む古い喫茶店に入っていた。

絵里「こんな所に喫茶店なんてあるなんて知らなかったわ」

「カフェ ブラックスター。隠れた名店ってヤツだ」

2人は席に着くとコーヒーを2つ注文をする。

絵里「えっと・・・和菓子屋の従業員さん?もしよろしければお名前をお伺いしても?」

「名乗るほどのモンでもないんだがな・・・まぁいいや。俺の名前は皆道 束だ」

絵里「私は絢瀬絵里っていいます。先程は危ない所を助けて頂きありがとうございました」

束「気にするな。困ってたみたいだったし・・・周りの奴が誰も助けようしなかったからな」

スキンヘッドのマスターが2人の元にコーヒーを運んでくる。コーヒーの香りに誘われ絵里はそのコーヒーを一口飲んでみる。

絵里「美味しい・・・!」

束「だろ?この味はここのマスターにしか出せないんだよなぁ」

2人は暫くはコーヒーの味を楽しんでいたがふと束が寂しげに呟く。

束「ここ、マスターがもうすぐ店閉めるんだ」

絵里「え・・・?」

束「再開発ってヤツだよ。デッカいビルが建つらしい。昔から当たり前にあったものがどんどん無くなってくのは・・・やっぱ寂しいよな・・・」

絵里にはその話がとても人事には思えなかった。自分が今通っている音ノ木坂学院もそうだからだ。

絵里「・・・よく、わかります。私の通う音ノ木坂学院も廃校になってしまうんです・・・。自分の知っているものが無くなるのは・・・辛いですよね」

束「ああ・・・でも音ノ木坂にはまだ希望がある」

絵里「え・・・?」

束「スクールアイドル、始めようとしてる子達がいるんだよ、音ノ木坂で。彼女達はまだ諦めていない」

絵里「スクール・・・アイドル・・・」

途端に絵里の表情が曇る。

束「・・・?どうかしたか?」

絵里「・・・私には理解出来ません。普通の高校生がいくら頑張ったってプロのアイドルのように歌もダンスも上手く出来る訳がありません。廃校を阻止する案としては現実味に欠けると思います」

絵里の表情を見ながら彼女の言葉を聞いていた束だったが

束「・・・君がスクールアイドルを余り快く思っていないのはわかった。でも彼女達は真剣に学校を救おうと頑張っている。それはわかってほしいな」

絵里「学校を救いたいのは私だって同じです!でも学校はそれを許してくれない・・・!あの子達は良くて・・・どうして私は・・・!」

いつの間にか絵里の目からは涙がこぼれ落ちていた。

束「・・・それは多分、今の君が君じゃないから・・・じゃないかな?」

そう言って束は席を立ち店を出て行こうとする。

絵里「待って!私が私じゃないってどういう事⁉︎私は・・・私はどうすればいいの⁉︎」

束「難しく考える必要なんかないのさ。ただ彼女達の・・・穂乃果達の事はちゃんと見ていてやってくれ。もしそれでもどうしていいかわかんなくなった時は・・・『ここ』に戻ってくればいい」

束はそう言って自分の胸をトンッと叩く。

絵里「束さん・・・あなた、高坂さんとはどういう・・・」

マスターにコーヒーの代金を支払いながら束が答える。

束「・・・妹、さ」

束が店を出て扉がバタン、と閉まり店内には絵里のみが残された。マスターが彼女の席の前に来て頼んでいない筈の2杯目のコーヒーを出す。

マスター「束さんからです・・・。代金は頂いております・・・」

絵里はこぼれた涙を拭うと黙ってコーヒーを口にするのだった・・・。




絵里ちゃんはアニメ一期前半の重要ポイントなので真面目に動かすのにメチャクチャプレッシャーを感じてます・・・。


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第3話 新入生を捕まえろ! その1 “fromアイドルを始めよう”

感想や評価が貰えるとモチベーションが上がるって事の意味がようやくわかりました
とりあえず今はもっと語彙力が欲しいです


穂乃果「お兄ちゃーん!ビッグニュース!ビッグニュース!」

穂乃果がドタドタと廊下を走り束の部屋に入ってくる。部屋では束だけでなく海未とことりも一緒に歌詞や衣装の相談をしていた。

海未「廊下走るとまた怒られますよ」

束「で?ビッグニュースってなんだよ?」

穂乃果「ライブのステージ!あのね!生徒会長が講堂を使ってもいいって!ただしやるからにはちゃんと結果は出すように!とは言われたんだけどね」

海未「本当ですか⁉︎」

穂乃果「うん!」

ことり「良かった〜!せっかく準備しても場所が無いと出来ないからね」

海未「しかしあんなにスクールアイドルを嫌っている様子だったのに一体どうゆう風の吹きまわしでしょうか?」

束「まぁ良いじゃんか。使わせてくれるんならさ。生徒会長も良いトコあるじゃん」

ちなみにこの時の束は先日自分が助けた少女がその生徒会長だとは知る由もない。

海未「講堂を使えるのはいつなのですか?」

穂乃果「えっと・・・ここだって!」

ことり「え?ここって・・・新入生歓迎会の日だよ⁉︎」

海未「ちゃんと結果を出すように。の意味は恐らくコレですね。歓迎会の後は新入生が各部活動を見学出来る時間になります。つまり・・・」

束「そこで人を集められなきゃスクールアイドルとして認められないって訳か・・・」

突きつけられた条件を理解し全員が一斉に険しい表情に変わる。

穂乃果「でも、やるしかないよ」

ことり「穂乃果ちゃん・・・」

束「・・・だな。どの道ココで怖気付いたりつまづいてるようじゃ先も見えてこないだろうし」

海未「そうですね。歓迎会まであまり時間がありませんし、曲もまだ出来てない以上、まずは体力だけでもつけておかないと」

穂乃果「へ?何で?」

束「何でってお前・・・。穂乃果、お前笑顔で腕立て伏せ何回出来る?」

穂乃果「笑顔で腕立て伏せ?」

その場でやってみるが3回程で表情が崩れてしまう。

海未「そういう事です。ライブ中は常に動いてなければいけませんしその中でも常に笑顔を保ちながら動けるようにする為には体力はつけないといけません」

束「海未ちゃんは弓道部の活動をしてたからまだしも穂乃果やことりちゃんなんかは今のままじゃ厳しいだろうな。あとことりちゃんドサクサに紛れて穂乃果の笑顔隠し撮りしない」

ことり「チュン⁉︎」

穂乃果「そっか・・・アイドルって大変なんだね。ところでお兄ちゃんは何回出来るの?」

束「なんでそこで俺に振る⁉︎俺関係無いじゃん⁉︎」

穂乃果「良いじゃん!良いじゃん!見してよー!もしかして出来ないのー?」

束「・・・」

束は渋々その場で笑顔で腕立て伏せを始める。束は笑顔を崩さずに10回20回と平然とこなす。

穂乃果「おぉー!」

海未「流石ですね」

束(魔法で重力操作してズルしてるけどね・・・)

 

 

 

次の日、束は穂むらで仕事に復帰していた。

束「ここ数日色々あったからなぁ。ちゃんと働くのも久しぶりか」

時刻は午後4時を回り徐々にお店を訪れる客も少なくなってきた。束が少しずつ残った商品の整理を始めると店の戸が開く。

束「いらっしゃいませ・・・ってあれ?君は・・・」

花陽「え⁉︎束さん⁉︎どうしてここに・・・」

束「どうしてここにって・・・自宅兼勤め先?」

花陽「そうなんですか⁉︎」

そこに穂乃果が帰宅してくる。

穂乃果「たっだいまー!あれ?あなたは病院の時の・・・」

花陽「高坂先輩!先輩もどうしてここに・・・」

穂乃果「だってここ穂乃果の家だし」

花陽「え?ええ?ちょっと待って下さい・・・ここは束さんの住んでる家で高坂先輩もここに住んでる家でもある・・・でもお二人は苗字が違うし・・・あれ?え?」

小声で何やらブツブツ呟き始める花陽。

穂乃果「あの子どうしちゃったの?お兄ちゃん?」

束「多分混乱しちゃってるんだろうな・・・俺達の関係ちょっと変わってるし」

とりあえず束は一旦花陽を家に招き入れる事にした。

 

 

 

花陽「えーとつまりここは元々は高坂先輩の家なんですね?」

束「ああ。で、俺はそこに住まわせて貰っている居候ってトコかな?穂乃果が俺の事お兄ちゃんて呼ぶのも小さい頃からずっと一緒で兄妹みたいに育ったからって訳さ」

花陽「そんな昔からここに住んでるんですか?」

束「んー、正確にはここに住んでるのは2、3年ってとこかな?親同士が知り合いで家が近かったから小さい頃はちゃんと自分の家に住んでたよ。でも8年前にここを離れて日本全国を転々とするようになってな・・・。そんな生活を5年も続けてたら今度は海外に行くってなってさ。流石にウンザリして日本に残る!って言ったら知り合いのこの家を紹介されたんだ」

穂乃果「嬉しかったなぁまたお兄ちゃんと一緒に居られるんだ!って」

束「まぁそんな事で仕事も貰ってここに居候させて貰ってるんだ」

花陽「そうだったんですね」

束「そう言えば花陽ちゃんは何でここに?俺達の事は知らなかったみたいだけど」

花陽「この近くにお饅頭の美味しい和菓子屋さんがあるって聞いて・・・」

束「なるほど、お客様か。それなら納得だ。よし、ちょっと待ってな」

束はそう言うと立ち上がり部屋を出て行く。部屋の中には穂乃果と花陽の二人が残された。

花陽「えっと・・・高坂先輩、スクールアイドルの準備、どこまで進みました?」

穂乃果「歌詞は海未ちゃんが書いてくれてるし、衣装はことりちゃんが作ってくれてる!ステージも生徒会長が講堂を使わせてくれるようになったんだ!」

花陽「高坂先輩は・・・何の準備を?」

穂乃果「・・・あ、あははは・・・」

何も答えられない穂乃果はただ笑うしかなく・・・

束「お待たせ、穂むら自慢の穂むらまんじゅう。サービスで多めに入れといたから」

大きな袋を持った束が部屋に戻ってきて、花陽に袋を渡す。

花陽「あ、ありがとうございます!」

束「途中まで送っていくよ。今からじゃ道ももうだいぶ暗いし」

束は花陽と一緒に店の玄関に出る。

束「じゃあ穂乃果、留守番頼むぞ」

穂乃果「うん、あ!忘れてた!お母さん達今日帰りが遅くなるから夕飯自分達で作って食べておいて。って!」

束「はぁっ⁉︎お前それもっと早く言えよ!はぁ・・・仕方ねぇ、途中で買い物してくるよ」

花陽「ふふっ・・・」

そのやりとりを見て花陽が笑みをこぼす。

穂乃果「花陽・・・ちゃん?どうかした?」

花陽「あ、ご、ごめんなさい!笑うつもりはなかったんです!ただ・・・二人がホントの兄妹みたいでいいな・・・って思って」

それを聞いた束と穂乃果は顔を見合わせ答える。

束「そうか?」

穂乃果「そうかな?」

花陽「ふふふ!そうです!」

それから穂乃果は束が花陽と一緒に行くのを見送った。穂むらの中からは穂乃果の妹、雪穂の声が聞こえる。

雪穂「お姉ちゃーん!ご飯どうするのー!」

穂乃果「お兄ちゃんが買い物行ってるからちょっと待っててー!」

 

 

 

花陽「ここまで来れば後は大丈夫です。ありがとうございました」

束「ああ、気をつけてな。・・・なぁ花陽ちゃん」

花陽「はい?何ですか?」

束「・・・スクールアイドル、やってみない?」

花陽「え?・・・えぇぇっ⁉︎」

束「前に言っただろ?花陽ちゃん、アイドルの事詳しいし、可愛いからなれると思うって」

花陽「ム、ムリです!花陽はドジでおっちょこちょいで

引っ込み思案で・・・花陽なんかじゃスクールアイドルなんてとても・・・」

束「誰かにそう言われたのか?」

花陽「え?・・・いえ、そうじゃないですけど・・・」

束「じゃあ自分で自分にそう言ってるだけって事だな。それなら変える事も出来ると思うぜ」

花陽「え・・・?」

束「まぁいきなりこんな事言われても困るよな。・・・今度の新入生歓迎会の後の部活見学の時間、講堂でライブするから見にきてくれるか?穂乃果の、今を変える為に頑張ってる彼女達の事を見て欲しい」

花陽「・・・今を、変える・・・」

束「変な事をお願いしてゴメンな?考えていてくれると嬉しい。それじゃ」

そう言って束は花陽と別れ、帰ろうとする。

花陽「待って下さい!」

花陽が叫んで束を止める。振り返る束。

花陽「ひとつだけ!教えて下さい!」

 

 

 

 

海未「弓道部の活動が遅くなってしまいました。ちょっと急ぎましょう」

海未は小走りをしながら近くのスーパーへと向かっていた。すると聞き慣れた声が聞こえる。

束「お、海未ちゃーん!」

海未「この声は・・・束さん?」

束「その様子だと弓道部の帰りかな?ん?その手に持ってる飲み物って・・・」

海未「はい。この前テレビで紹介されていた新発売のミネラルウォーターです」

束「やっぱそうか。何々・・・『天然由来のオリジナル成分であなたの体が生まれ変わる アロマオゾン』随分と凝った名前の水だなぁ」

海未「味は他のミネラルウォーターと変わりませんね。少し値段が高いのでもう買わないかもしれませんが・・・」

束「大和撫子の海未ちゃんが飲むってだけで普通のミネラルウォーターも高級な水に見えてくるさ。まるでテレビのCMみたいだ」

海未「か、からかわないでください!」

みるみるうちに海未の顔が赤くなっていく。

海未「そ、そんな事よりつ、束さんはこんな所で何をしてるんですか!」

束「ああ、知り合いを家まで送っていった帰りについでに買い物ってトコかな?海未ちゃんは?」

海未「そ、そうでしたか・・・。私も買い物です。今日は母がいないので自分で夕食を作ろうと思いまして・・・」

束「なんだウチと同じか。だったらちょうどいい。海未ちゃん、今日はウチで夕飯食ってきなよ。穂乃果達も喜ぶし」

海未「そんな・・・いきなり行っては迷惑では・・・」

束「一人分なら増えても大して変わらないから。せっかくだし今日は海未ちゃんのリクエストにも応えるぜ」

海未「そ、そうですか?・・・では、お言葉に甘えさせて頂きます」

束「そうと決まればスーパーに急ぐか。海未ちゃん今日は何食べたい?」

海未「そうですね・・・今日はなんだかお肉が食べたい気分です!」

束「ん、りょーかい」

そんな会話んしながら二人は並んでスーパーまで歩いていくのだった・・・。




次回、海未ちゃんに異変が・・・













起きません


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第3話 新入生を捕まえろ!その2 “fromアイドルを始めよう”

ある日、穂乃果、海未、ことりの3人は束に呼び出され彼の部屋に集まっていた。

ことり「穂乃果ちゃん、これからいったい何が始まるの?」

穂乃果「穂乃果も知らないよ?多分ライブの事だと思うんだけど」

海未「電話の時の声はかなり真剣な感じでしたね」

その時入り口の戸が開いて束が入ってくる。

束「集まってるな、3人共。今日集まって貰ったのは他でもない。スクールアイドル活動に置いて重要な事を決める為だ」

海未「スクールアイドル活動に置いて重要な事・・・ですか?」

束「そうだ。これが無ければ始まらないレベルの重要な事だ」

ことり「もしかして曲の事ですか?穂乃果ちゃんが西木野さんを説得してくれるって言ってたけど・・・」

束「それも勿論大事だがそれじゃない」

穂乃果「ハッ!もしかして!」

ことり「何かわかったの?穂乃果ちゃん?」

穂乃果「穂乃果わかっちゃったよ!それは・・・」

ことり「それは?」

穂乃果「誰がリーダーをやるか!だよね!」

束「言い出しっぺのお前に決まってるだろ。はい次」

穂乃果「えぇ〜⁉︎」

海未「束さん、いい加減教えて下さい。私達にとって大事な事とは一体なんなんですか?」

束はふぅ、一息つくと話を始める。

束「これはアイドル好きの花陽ちゃんに言われて気づいた事なんだ・・・」

 

 

 

あの日、帰ろうとした束を花陽は大きな声で呼び止めた。

花陽「待って下さい!最後にひとつだけ!教えて下さい!」

束が振り返ると花陽は真剣な顔で尋ねる。

花陽「・・・グループ名はなんていうんですかー!」

束「・・・あ」

 

 

束「・・・という訳で一刻も早くグループ名を決めないといけない訳で・・・」

3人「・・・・・」

3人は各々の冷たい視線を束に送る。

束「ちょっ、やめて!その視線やめて!海未ちゃんはゴミを見るような目でみないで!ことりちゃん目の奥が光ってないよ⁉︎笑ってるけど目が笑ってないよ⁉︎穂乃果はそんなものすごく可哀想なものを見るような目で見ないで⁉︎」

海未「まったく・・・心配して損しました」

穂乃果「ゴメンね?ウチのお兄ちゃんがバカで」

ことり「それは・・・仕方ないよ。諦めよ?穂乃果ちゃん」

海未「でも確かにグループ名は考えないといけませんね」

ことり「でもどんな名前がいいのかなぁ?穂乃果ちゃんはどんなのがいい?」

穂乃果「うーん・・・短い名前の方が覚えやすい・・・かな?」

束「穂乃果がマトモな意見を・・・!」

4人は色々話し合いを重ねるが中々いい案が出ない。

穂乃果「じゃあ3人の名前をそのまま付けて『ことりうみほのか』で!」

束「漫才師か!」

穂乃果「じゃあじゃあ、海未ちゃんが海でことりちゃんが空で穂乃果が陸で『陸・海・空』!」

束「自衛隊か!」

穂乃果「む〜!そんなに文句言うならじゃあお兄ちゃんが考えてよ!」

ことり「お兄さんはことり達よりも大人だからきっと素敵なお名前が浮かぶと思うな〜♪」

束「ヴェェッ⁉︎え・・・えーと、えーと・・・」

束は辺りをキョロキョロと見回す。すると海未の前に置いてあったミネラルウォーターのペットボトルが目に入り・・・

束「ミネラルウォーター・・・ウォーター・・・水・・・ア・・・アクアとか・・・」

海未「待って下さい。今このミネラルウォーターを見て決めましたよね?」

束「水の様に・・・純粋で透き通った少女・・・みたいな・・・」

海未「さっきから目が泳いでます!」

穂乃果「おぉー!良いねー!アクア!それにしよ!」

海未「待ちなさい穂乃果!早まってはいけません!私の中の何かがその名前は使ってはいけないと言っています!」

穂乃果「えぇ〜?でも・・・」

海未「アクアは無しです!その名前が出るにはまだ早過ぎる!気がします!」

穂乃果「は、はーい・・・」

結局、良い名前の案が浮かばなかったので、グループ名に関しては音ノ木坂学院にて生徒から名前を募る事になった。

 

 

 

翌日、音ノ木坂学院にて。

花陽「音ノ木坂学院スクールアイドル、グループ名募集・・・まだ決まってなかったんですね」

花陽は掲示板に貼られたチラシを見ていた。チラシのすぐ下にはグループ名の案を入れる為の投票箱と用紙が置いてある。花陽は用紙を一枚手に取る。

花陽「・・・書いて、みようかな?」

花陽は用紙の隣に置いてあったペンを取ろうとする。

凛「かーよちん!」

花陽「ひゃっ!」

後ろから凛に話しかけられて思わず用紙をポケットに隠してしまう。

凛「何見てたの?ああ、これって病院で会った先輩達の事だよね?かよちんはコレ見に行くの?」

花陽「え⁉︎あ・・・え、と・・・その・・・」

凛「見に行かないの?だったらその日は凛と一緒に陸上部見に行こうよ!かよちん身体動かしてみたいって言ってたし!」

花陽「えぇっ⁉︎あの、凛ちゃん・・・私・・・」

凛「?どうしたの?かよちん?」

花陽「・・・ううん、やっぱなんでもない・・・」

凛「・・・?変なかよちんだにゃ」

花陽(やっぱりこんな花陽じゃ・・・アイドルなんて無理・・・だよね・・・)

花陽は去り際にもう一度チラシに目を向ける。その時、音楽室の方向に向かう穂乃果の姿が目に入る。

花陽「高坂先輩・・・?」

 

 

 

穂乃果は音楽室に来ていた。そこにはやはり以前会った時と同じ様にピアノを弾く真姫の姿が・・・。

真姫「・・・何度来ても答えは同じです!私はアイドルの曲なんて作りません!」

穂乃果「どうしても・・・ダメ、かな?」

真姫「私、ああいう曲は好きじゃないんです。いつも聴くのはクラシックとかジャズとかだし・・・アイドルの曲ってなんか軽い感じがするし・・・」

穂乃果「やっぱりそうだよねー」

真姫「え・・・?」

穂乃果「私もね、初めて見た時はそう思ったんだ。楽しそうに歌ったり踊ってるだけだと思ってた。・・・でも本当はすっごく大変なんだ」

真姫「え・・・?」

穂乃果「西木野さんは腕立て伏せ出来る?」

真姫「はぁ?バカにしてるの?出来るわよそれくらい!」

真姫はその場で腕立て伏せを始める。

真姫「どう?これくらい簡単よ」

穂乃果「じゃあ今度はそのままの状態で笑顔を作ってみて?」

真姫「え、笑顔?」

言われた通りに笑顔を作ったまま腕立て伏せを続けるがすぐに表情が崩れてしまう。

穂乃果「ふふふ!西木野さん変な顔になってる」

真姫「何笑ってるのよ!コレがアイドルとどう関係があるって言うのよ!」

穂乃果「アイドルってね、ステージではダンスやパフォーマンスでずっと動かなくちゃいけないんだ。苦しい〜とか、ツライ〜っていうのを見せないでずっと笑顔で。それってすごく大変な事なんだよね」

真姫「・・・」

穂乃果「だからアイドルもみんな一生懸命なんだって事は知って欲しいな・・・ってまだ穂乃果達はアイドル始まってもいないんだけどね」

穂乃果は懐から一枚の紙を取り出すと真姫に渡す。

穂乃果「これ、私の友達が考えてくれた歌詞。もし良かったら読んでみて!」

真姫「こ、こんなの渡されても私は作曲なんてしません!」

穂乃果「それだったらただこれを読んでくれるだけでいいよ」

真姫「・・・」

真姫は歌詞の書かれた紙を受け取る。

穂乃果「これからは毎日朝と放課後に神社の階段のところで練習してるから、もし良かったら見に来てみて?それじゃ!」

そう言って穂乃果は音楽室を出ていった。1人残された真姫は渡された紙を開くのだった。

 




真姫ちゃんのくだりはうろ覚えなんで若干変わってますがこんな感じでしょうか?やはり早急にアニメを復習する必要がありそうです・・・


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第3話 新入生を捕まえろ! その3 “fromアイドルを始めよう”

第3話はとりあえずこれで一区切りとなります。わかりづらいネタが混じってるかもしれないです。


早朝、束は日課である店先の掃除をしていた。

束「う〜ん、いい天気だねぇ。今日も1日頑張るぞい!っと・・・ん?」

遠くからこちらの様子を伺う人影を見つける。

束「誰だ?こんな朝早くに・・・。おーい!隠れてないで出てこいよー!」

大声で呼びかけてみるが人影は一向に出てこようとしない。

束「ダンマリか。・・・仕方ない、遠隔射はあまり得意じゃないが・・・」

束は右手を前に突き出すと人影の方向へ向ける。

束「痺れるヤツ、頼みます!」

その状態で指をパチンッ!と鳴らす。その瞬間人影の隠れていた物陰でバチッ!という音がする。

「きゃあっ⁉︎」

その音に驚いて人影が姿を現した。

束「ん?君は確か・・・病院の娘さん?」

真姫「もー!何なのよ一体⁉︎」

束「あー、プラズマでも発生したのかねー?」

明後日の方向を見ながらすっとぼける束。

束「ところで病院の娘さんがどうしてこんな所に?」

真姫「その病院の娘って呼び方、やめてもらえないかしら。私には西木野真姫ってちゃんとした名前があるんだから」

束「じゃあこれからは真姫ちゃんって呼ばせて貰おうかな。で、その真姫ちゃんはなんでここに?」

真姫「そ、それは・・・えっと・・・」

此処へ来た理由を尋ねられると急に返事の歯切れが悪くなる真姫。

束「まさか告白とか?いやー参ったなぁ俺達まだ会って間もないのになぁ?さて返事はどうしようかなー?」

真姫「はあっ⁉︎そんな訳ないでしょ!あなたと私じゃ全っ然釣り合わないわ!自惚れるのも大概にしなさいよね!私が用があるのは高坂先輩の方よ!」

束「なぁんだ。そっか」

そう返しながら束はニヤリと笑う。

真姫「ッ!あなた・・・もしかしてわざと?」

束「さぁてね?案外ホントに気があるかもよ?ちょっと待ってな、今穂乃果を起こして・・・」

真姫「お、起こさなくていいから!ハイコレ!先輩に渡しといて!」

そう言って小さな包みを束に押し付けるように渡して真姫は逃げるようにその場を立ち去った・・・。

束「ちょっとやり過ぎたかな?しかしコレは一体・・・」

渡された包みを開けるとそこには一枚のCDが入っており・・・

束「コレってもしかして・・・おーい!穂乃果!寝てる場合じゃねぇぞ!」

 

 

 

起こされた穂乃果と束は部屋にあるパソコンを使いCDを再生する。そこには海未の書いた歌詞が音楽に乗せられた『歌』が入っていた。聞こえてくる歌声は聞き覚えのある声、真姫のものであった。

穂乃果「西木野さん・・・曲、作ってくれたんだ!」

束「しかしあの子を説得するとはな・・・どんな魔法を使ったんだよ?穂乃果」

穂乃果「えへへ、魔法なんて使ってないよ!・・・これが・・・私達の歌なんだね・・・!」

束「こんな良い曲作って貰ったんだ。ライブ、成功させないとな」

穂乃果「後はグループ名かぁ。良い名前が入ってるといいけど・・・」

束「学校内の事はお前に任せるよ。とりあえず今は早く海未ちゃん達にもそれ、聴かせてあげようぜ。・・・あ、ちょっと待って。データをパソコンの方にコピーさせてくれ」

穂乃果「え?なんで?」

束「時間が惜しいからな。時間見て曲聴きながら振り付けの案いくつか考えてみる」

穂乃果「え・・・お兄ちゃんがコレ踊るの・・・?」

束「別に人前で踊る訳じゃないんだしいいだろ」

・・・余談だがこの後、束を呼びに部屋に来た雪穂にバッチリ見られて軽く引かれたとか・・・。

 

音ノ木坂学院

ことり「うわ〜!すごく良い曲だね!」

海未「わ、私の書いた詞が・・・ホントに歌に・・・」

穂乃果「でしょでしょ?これで曲の問題は解決!後はグループ名のみ!」

海未「それで箱の中に投書はあったのですか?」

穂乃果「うん!一枚!」

ことり「い、一枚・・・」

穂乃果は箱の中に一枚だけ入っていた用紙を開く。そこには『μ’s』と書かれていた。

穂乃果「コレって・・・ユーズ?」

海未「多分・・・ミューズではないでしょうか?」

穂乃果「ああ!石鹸の!」

海未「違います!確か神話に出てくる女神の名前だった筈です」

ことり「女神かぁ・・・素敵だね!ことりは良いと思うな?」

穂乃果「うん!穂乃果も賛成!じゃあ私達は今から、スクールアイドル『μ’s』だよ!」

無事グループ名も決まり意気込みを新たにする3人。その様子を廊下で聞いている生徒が1人・・・。

希「ふふ、頑張りや・・・」

 

 

 

その夜、穂乃果達3人はいつもの様に束の部屋に集まってライブに向けた話し合いをしていた。

束「μ’sか・・・中々良い名前だな。でもやっぱ俺の言ったアクアも捨てがた・・・」

海未「束さん?」

束「はい、すいません。冗談です」

穂乃果「おお・・・お兄ちゃんが海未ちゃんの尻に敷かれている」

束「敷かれてねぇわ!」

海未「女子高生が軽々しく尻とか言ってはいけません!」

穂乃果「今度はこっちに来た⁉︎」

ことり「あの・・・そろそろ振り付けの事話し合いたいんだけど・・・」

3人のコントを見つめながら1人虚しく呟くことりであった・・・。

 

 

 

ようやく振り付けやフォーメーションの話し合いになり穂乃果達3人の意見と事前に予め束が考えた案を出し合いながらダンスを組み立てていく。

穂乃果「疲れた〜!ちょっと休憩しようよ〜!」

海未「そうですね。詰め込みすぎも良くないですし」

束「頭使ったから糖分補給もしておくか?下に行ってなんか菓子持ってくるよ。海未ちゃんはほむまんでいいか?」

海未「はい、ありがとうございます」

穂乃果「私焼きそばパン!」

ことり「ことりはチーズケーキが食べたいな♪」

束「お前ら何ドサクサに紛れてパシらせようとしてんだよ!外には行かねぇよ和菓子オンリーだ!」

穂乃果「えー!ヤダー!和菓子飽きたー!」

束「和菓子屋の娘の言う事か!駄々をこねるな!ったく、こんなのが大勢の前に出て踊るとか考えらんねぇよな」

海未「大勢の前で・・・踊る・・・?」

束が何気なく言った言葉を聞いて海未の顔がみるみる内に青ざめていく。

束「海未ちゃん?大丈夫か?なんか顔色悪いけど・・・」

海未「だ、大丈夫です・・・べ、別にひ、人前で踊るのを想像して、き、緊張なんてし、してません、から・・・」

束「あー、なるほどね・・・」

ことり「海未ちゃん大丈夫?無理そうならやめても・・・」

海未「だ、大丈夫です!大丈夫・・・ですから・・・」

そうは言いつつも一向に顔色が良くなる気配の無い。

束「こればっかりはどうしたもんかねぇ・・・」

そこで穂乃果が声を上げる。

穂乃果「大丈夫!穂乃果に任せて!」

ことり「穂乃果ちゃん?」

穂乃果「穂乃果にいい考えがあるんだ」

束「お前のいい考えはトラック型司令官の『私にいい考えがある!』と同じくらい不安なんだが・・・」

穂乃果「でも人事面では有能だよ?」

束「そうだけどさぁ・・・」

ことり「・・・今、なんの話をしてたんですか?」




ようやくアニメ3話の領域に入れそうです。
相変わらずネタには偏りがありますが緩い感じで見てやってください


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第4話 START DASH その1 “fromファーストライブ”

ようやくファーストライブ編へ。でもやっぱりアニメから脱線してます。


秋葉原

その中でも一番人通りの多い駅前に穂乃果達4人の姿があった。

穂乃果「ほら、こうやって人の多い所でチラシ配りをすれば宣伝にもなるし人前で緊張しちゃうのだって慣れちゃうでしょ?」

束「なるほど、確かに名案かもな。ただ・・・」

束が海未をチラッと見るが・・・

海未「あ、レアなの出たみたいです」

隅っこの方でガチャガチャをやり現実逃避していた。

穂乃果「海未ちゃん〜!」

束「こりゃ重症だな・・・」

 

結局、人の多い駅前は諦め、学校の前でチラシ配りを行う事になった。

束「今度スクールアイドルのライブやりまーす!・・・え?あ、いや俺じゃなくてそっちの子達が」

穂乃果「今度ライブやりまーす!ぜひ見に来てくださーい!」

普段から店の手伝いで慣れている束と穂乃果はドンドンとチラシを配りその数を減らしていく。しかし、ことりもそれに負けず劣らずのペースでチラシが減っていた。

束「へぇ、ことりちゃんこういう事やった事あるの?声掛けや手つきが随分慣れてるみたいだけど・・・」

ことり「え、えぇ⁉︎そ、そんな事ないですよ〜。穂乃果ちゃんやお兄さんのを見てマネしてるだけで・・・」

答える際のことりの慌てぶりが少し気になった束だったがそれ以上に気になる人物がいた為すぐに忘れてしまった。

海未「・・・ラ、ライブやりま〜す・・・」

穂乃果「ダメダメ!海未ちゃん、そんなんじゃチラシは受け取って貰えないよ!」

海未「うぅ・・・穂乃果や束さんは家の手伝いで慣れているかもしれませんが私は・・・」

束「こういうのって恥ずかしがってるとそっちのが余計目立っちゃうからなぁ。穂乃果と同じようにバカになったつもりで思いっきりやってみたら?」

穂乃果「そうそう、穂乃果と同じようにバカになって・・・って穂乃果はバカじゃないもん!」

束「じゃあアホ?」

穂乃果「アホでもない!」

ことり「落ち着いて?アホ乃果ちゃん?」

穂乃果「アホ乃果⁉︎ことりちゃんまでヒドイよ!」

束「いいじゃんかアホ乃果。バカ千歌みたいで語呂が良くて」

穂乃果「バカ千歌って何⁉︎」

海未「・・・ふふっ・・・」

3人のやり取りを見ていた海未は自然と笑みがこぼれていた。

束「お、いい顔になったじゃんか。よーしその調子でチラシ配り行ってみよー!」

海未「ちょ⁉︎束さん!引っ張らないでください!」

引っ張られた拍子にチラシが一枚落ちたが4人はそれに気づかずに行ってしまった。その直後、落ちたチラシを拾い上げる怪しい影が・・・。

「・・・スクールアイドル・・・」

音ノ木坂学院の制服こそ着ているがサングラスにマスクをしておりその顔はわからない。謎の少女はチラシを捨てると不機嫌そうに特徴的なツインテールを揺らして去って行った・・・。

 

 

 

その後も穂乃果達は毎日練習を重ねていた。早朝と夕方には神社の階段で基礎体力のトレーニング(これは学校外である為、束も参加)日中は穂乃果達3人で学校の屋上でダンスの練習、といった具合に進めていた。

そしていよいよライブ本番を明日に控えたその日、事件は起きた・・・。

海未「なんですかこれは!」

穂乃果「何って・・・明日のライブで着る衣装?」

海未「私が言ってるのはそういう事じゃありません!スカートの丈が短すぎるという事です!」

穂乃果「だって、ことりちゃんが描いてくれた衣装案の絵もこれくらいだったし・・・」

海未「しかしこれでは・・・あ、足が見えて・・・破廉恥です!」

束「この程度で破廉恥です!なんて言ってたらもし水着でライブやるような事になったらどうすんだよ・・・」

海未「水着でライブなんてやる訳ないでしょう!」

束「やりそうな気がするんだよな〜。いつとは言わないけど」

ことり「でも今からじゃもう手直し出来ないし・・・」

海未「だったら私は明日は制服で踊ります!」

束「おい海未ちゃん、いくらなんでもそれは・・・」

海未「失礼します!」

穂乃果「海未ちゃん!」

出て行った海未を追って穂乃果も部屋を飛び出す。ことりはオロオロしながら束の方をみる。

ことり「穂乃果ちゃんのお兄さん、どうしよう・・・ことりのせいで・・・」

束「ことりちゃんは何も悪くないだろ。一生懸命衣装を作ってくれたんだし。まぁ海未ちゃんの気持ちもわからんでもないし・・・ここは穂乃果に任せよう」

 

 

 

穂乃果「海未ちゃん!」

家を出た海未を追ってきた穂乃果は大声で海未を呼び止める。海未は振り向きこそしなかったが立ち止まりそして小さな声で話し始めた。

海未「・・・わかってるんです。あの衣装だって、ことりが一生懸命作ってくれた物だって・・・でも、やっぱり恥ずかしくて・・・」

俯いたまま話している海未に穂乃果がそっと近づいてその手を握る。

穂乃果「大丈夫。だって海未ちゃんは1人じゃないでしょ?

私やことりちゃんも一緒だし、同じステージには立てないけど、お兄ちゃんだってついてるし。それに何より・・・一緒にやりたいんだ!海未ちゃんと、ことりちゃんと一緒に!」

海未「穂乃果・・・」

穂乃果「同じ服を着て!同じ歌を歌って!同じダンスを踊って!一緒じゃなきゃダメなんだ!海未ちゃん達と一緒に成功させたいんだ!」

穂乃果は海未の手を強く握りしめる。穂乃果の思いが、熱となり海未の手に伝わってくる。

海未「・・・全く、あなたはずるいです。いつもいつもそうやって強引に・・・。でも、だからこそ私は・・・」

穂乃果「海未ちゃん?」

海未「わかりました。もう衣装の事は言いません。2人と一緒なら恥ずかしがる事など何もありませんから!」

穂乃果「う・・・海未ちゃぁぁぁん!」

海未「ちょ!穂乃果!泣かないでください!抱きつかないでください!苦しいです!」

穂乃果「だっでぇぇぇっ!」

穂乃果に泣かれながら抱きつかれ困惑する海未。そこに束とことりがやってくる。

束「・・・えーと、どういう状況?」

海未「束さん!なんとかしてください!」

穂乃果「ウェェェンッ!」

とりあえず束は穂乃果を引き剥がし落ち着かせる。その間に海未はことりの元へ。

ことり「海未ちゃん、ごめんなさい・・・。海未ちゃんの気持ち考えてなくて・・・」

海未「謝るのは私の方です。ことりが一生懸命作ってくれた衣装を私の我儘で台無しにする所だったのですから・・・すみませんでした。ことり」

ことり「海未ちゃん・・・」

ことりの目にもうっすらと涙が浮かぶ。

束「ほら、お前もいい加減泣きやめって」

穂乃果「だっで・・・明日ライブなのに・・・皆バラバラになっぢゃうがど思っで・・・」

束(なんだかんだ言って結構責任感あるんだよなぁ・・・コイツ)

束「結果オーライってやつだ。もう終わったんだし、いつまでも泣いてると顔パンパンに腫れてそれこそライブどころじゃなくなっちまうぞ?」

ことり「そうだよ穂乃果ちゃん!もう大丈夫だから泣かないで?」

穂乃果「ゔん・・・ゔんっ!」

束「やれやれ・・・後は明日の本番のみか・・・何事もなけりゃいいが・・・」

しかしその束の細やかな願いも叶う事は無いのであった・・・。




真面目パートの脱線・・・もといアレンジ部分は基本自分で考えているつもりですがいつも既視感が出てしまう・・・
感想等があると嬉しいです


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第4話 START DASH その2 “fromファーストライブ”

ようやく9人出せました・・・


束「よし、準備OK!」

束はライブに使用する物で比較的大きめの物やかさ張る物をキャリーバッグに詰め込んでいた。穂乃果達は普通に学校である為、既に学校に行っている。そろそろ新入生歓迎会が始まる頃であろうか。

束「ぼちぼち出ますかね」

束はキャリーバッグを持ち、先日ことりから預かった関係者用の入校許可証を首からかけると家を出た。

 

 

 

音ノ木坂学院

既に新入生歓迎会は終了し、各部活の見学、体験会などが始まっていた。やはり運動部系や吹奏楽などメジャーな部活には人が集まり始めている。

穂乃果達もライブが始まるまでまだ少し余裕があるとの事でファーストライブの宣伝のチラシを配っていた。

海未「午後4時から講堂でライブやりまーす!良かったら来て下さーい!」

以前は恥ずかしがり声の出ていなかった海未もこの日は人一倍大きな声でチラシを配る。

束「頑張ってるな、海未ちゃん」

海未「束さん!」

そこに束がやってくる。

束「荷物持ってきたぜ。ことりちゃんに渡したからもう講堂に入ってる筈だ。穂乃果にも声を掛けたし、俺たちも行こう」

海未「そうですね」

 

 

 

講堂 控え室

束「おお〜、凄いな。まるでアイドルみたいだ」

穂乃果「アイドルみたい、じゃなくてアイドルなんだよ!」

講堂の控え室にて最後の衣装合わせを行う穂乃果達。ことりと穂乃果は既に着替えを終えて束にお披露目をしていた。

穂乃果「海未ちゃん、大丈夫?」

海未「は、はい!今行きます・・・」

着替え用の仕切のカーテンを開け、青色の穂乃果達とおそろいの衣装を着た海未が恥ずかしそうに出てくる。

ことり「海未ちゃん可愛い!」

束「てっきりスカートの下にジャージでも履いて出てくるんじゃないかと心配したが・・・余計な心配だったみたいだな」

海未(履いて出なくて良かったです・・・)

穂乃果「海未ちゃん!」

海未「穂乃果・・・へ、変じゃ・・・ありませんか?」

穂乃果「全然!すっごく可愛いよ!海未ちゃん!」

海未「穂乃果・・・」

束「あー・・・いい雰囲気のトコ悪いんだがそろそろリハーサルに移ってもいいか?」

海未「ッ⁉︎そ、そうですね!行きましょうか!ことり!」

ことり「え?待って〜海未ちゃん!引っ張らないで〜!」

顔を真っ赤にした海未はことりの手を無理矢理掴んでステージへと行ってしまった。残された束と穂乃果は・・・

束「穂乃果、海未ちゃんああゆうの慣れて無いんだから気をつけろよな?」

穂乃果「?なんのこと?だって海未ちゃんホントに可愛かったんだもん」

束「・・・恐ろしい娘だよ全く・・・」

 

 

 

ステージでのリハーサルと最終チェック。穂乃果の友人であるヒデコ、フミコ、ミカの3人も手伝ってくれたので予定よりも早く準備は完了したのだが・・・

ヒデコ「あ、また消えた・・・あ、着いた」

ミカ「さっきから照明が急に着いたり消えたりするよね」

リハーサルの終盤あたりから急に照明や音声機器が一瞬止まったりするようになった。本番直前という事もありステージに上がる3人にも不安がよぎる。

ことり「だ、大丈夫かなぁ・・・?歌ってる途中で止まっちゃったりしないかな?」

海未「言わないで下さいことり。大丈夫です、きっと大丈夫・・・」

2人の顔に不安の色が濃くなってきたのを感じた束は準備中のヒデコ達に向かって叫ぶ。

束「ちょっと電気の様子を見てくる!悪いけどココ、任せて良いか!」

ヒデコ「はい!お願いします!」

持ち場を任せた束はステージ上の穂乃果達の元へ。

穂乃果「お兄ちゃん!」

束「ちょっと電気の様子を見てくる。もし間に合わなくても照明とかはヒデコちゃん達がやってくれるから」

海未「束さん・・・!」

束「負けんなよ、お前達」

そう言って束は講堂を出ていった・・・。

 

 

 

講堂の電気の異変に対し嫌な予感を感じた束。その予感は的中し・・・

束「なんだよこりゃあ・・・」

束が目にした物は講堂の配電盤にコードを突き刺す小型発電機だった。配電盤に刺さったコードからは目に見える程の電流がバチバチと出ており、配電盤のメーターがみるみる内に下がっていく。

束「コイツ!発電機の癖に電気を食ってやがるのか⁉︎マズイ!このままじゃライブそのものが・・・!」

電気が止まってしまったら照明も音源も全て動かなくなってしまう。そうなればライブどころの話ではない。事態は一刻を争っていた。

束「くっ!コイツ!そっから離れろ!」

束は発電機を配電盤から引き剥がそうとするが・・・

バチィッ!

束「ぐっ⁉︎」

発電機自体が強力な電気で全身を覆っており、近づく事が出来ない。それはつまり、このままでは魔力憑きの対処法である『対象を両手で5秒以上触る』という事が出来ない事を意味していた。

束「さて・・・どう戦う?」

 

 

 

その頃、講堂の入り口のドアの前で真姫は迷っていた。

自分の作った曲が今日ここでスクールアイドルのライブとして披露されるのだ。どんな風に仕上がっているか気にはなるがどうしてもドアを開ける事が出来ない。そんな感じでずっとドアとにらめっこをしているとどこからかサングラスとマスクをした怪しい女生徒が隣に来てやはりドアの前で立ち止まる。・・・お互いがお互いドアを開けてくれるのを期待している為、お互いの事をチラチラ見合う。

真姫「・・・なんでこっち見るのよ」

「そっちこそ見てるじゃない」

真姫「そっちが見るから見てるんじゃない」

「ほら!やっぱり見てるんじゃない!」

真姫「今はそんな事どうでもいいじゃない・・・入りたいんだったら入れば?」

「べ、別に入りたくなんかないわよ!」

真姫「じゃあなんでドアの前でずっと立ち止まってる訳?」

「それは・・・あ、あんたこそ入りたいならさっさと入りなさいよ!」

真姫「は、はあ⁉︎わ、私は別に入りたくなんか!」

「じゃあなんでここでずっと立ち止まってるのよ!」

真姫「それは・・・その・・・」

ドアの前で2人が押し問答に禅問答を繰り広げていると・・・

絵里「あなた達・・・何やってるの?」

絵里と希の2人がやって来た。

真姫「あなたは確か・・・・生徒会長?なんでここに・・・」

絵里「スクールアイドルの活動が本当に意義のあるものかどうか見定める為にね。ま、この様子だと結果は分かりきっているでしょうけど」

周りを見ながら絵里はそう答える。実際、先程から彼女達以外誰も生徒はここに来ていない。

希「にこっちも下級生イジめたらあかんよ〜?」

にこ「イジめてなんかないわよ!」

にこと呼ばれた少女はサングラスとマスクを外して反論する。

真姫「え?上級生・・・だったの?」

よく見ると確かに制服に付いてる学年を表すリボンは3年生を表す緑色だった。

にこ「そうよ、先輩に対する礼儀ってのがなってないわね!」

真姫「いや・・・小さかったからてっきり同級生かと・・・」

にこ「ぬぁんですってぇぇぇっ⁉︎」

希「まぁまぁ。にこっちもこれから大きくなるかもしれんし・・・なぁ?」

にこ「どこ見て言ってんのよ!あんたにだけは言われたくないわよ!」

絵里「廊下は騒ぐ所じゃないでしょ。さ、講堂に入るならさっさと入って・・・」

「かよちーん!ほらほら!早く早く!」

絵里がいい終わらぬ内に遠くからドタドタとこちらに向かって走ってくる人影が・・・

花陽「凛ちゃん、待って〜!」

凛「あれ?なんか人が大勢いるにゃ〜?あ、西木野さんだ〜!西木野さんも先輩のライブ見に来たの?」

真姫「べ、別にそういう訳じゃ・・・!私が作曲したんだからちゃんとしたライブにしてもらわきゃ困るってだけなんだから!」

花陽「西木野さん、高坂先輩の・・・μ’sの為に作曲してくれたんですね!」

真姫「別に先輩の為って訳じゃ・・・。普段聴かない音楽も偶にはいいかなって、思っただけよ・・・」

そう言いながら真姫は目を逸らし、自分の髪の先を指に巻いてイジり始める。

凛(かよちん、コレってお兄さんの言ってた・・・)

花陽(照れ隠し・・・なのかなぁ?)

凛と花陽がヒソヒソ話しているとアナウンスが流れ始める。

『間も無くμ’sのファーストライブ、開演致しまーす!ご覧になる方は講堂までお急ぎ下さーい!』

絵里「さ、ここで話していても仕方ないわ。見るのであれば中に入りましょ」

そう言って絵里は先にドアを開けて講堂へ入る。他の面々もそれに続いて中へ入っていった・・・。




発電機の元ネタは完全にサンシャインからです。
あちらではライブを救う物として描かれていたので今回はライブを邪魔する物として出させて頂きました。


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第4話 START DASH その3 “fromファーストライブ”

休日中に書き上げたかったので・・・
タグの たまに真面目 を かなり真面目 に変えようか悩んでます。という訳で内容の薄いバトルパートです。


束「くっ!」

穂乃果達のライブが始まろうとするその頃、束は講堂の電力を吸い取ろうとする魔力憑き発電機に苦戦していた。

発電機はついているコードをムチのように振り回し束を寄せつけない。

束「せめて配電盤に刺さってるコードだけでも何とかしないと!」

束は発電機の側面に回り込むが振り回されるコードに邪魔をされる。束は魔法でゴム手袋を出すと両手にはめてコードを掴む。

束「捕まえたぜ!ゴムは電気は通さな・・・ギャアアアッ⁉︎」

発電機はそんな束の策をあざ笑うかのようにコードから放電し束を感電させる。いくらゴムが絶縁体とはいえあまりに強力な電圧の前では完全にシャットアウトは出来ないのである。それでもゴム手袋をしていて感電した直後に反射的に手を離してなければ完全に即死だったのだが。

束「っぐぅ・・・。冗談じゃねぇ・・・俺は確かに焼き加減はミディアムよりウェルダンのが好みだが自分が黒コゲになるのはゴメンだぜ・・・」

感電の影響でよろめきながら立ち上がる束。ふと時計に目をやると時刻は3時55分を回っていた。

束「ライブ開始まであと5分・・・それまでに何が何でもアイツをどうにかしねぇと・・・!」

 

 

 

講堂 ステージ

穂乃果達3人はステージ上でスタンバイをしていた。未だに照明はついたり消えたりを繰り返している。その間隔も段々短くなってきており、先ほどは今までで一番長い時間照明が消えていたようにも感じた。海未とことりは不安を隠す事が出来ない。

穂乃果「大丈夫だよ」

そんな2人に穂乃果が語りかける。

海未「穂乃果・・・?」

穂乃果「お兄ちゃんが様子を見に行ってくれてるでしょ?だから、大丈夫」

ことり「でも・・・まだ帰ってこないし・・・灯はついたり消えたりしてるし・・・」

穂乃果「何とかしてくれるよ。お兄ちゃんだもん」

海未「何故ですか?どうしてそこまで束さんを信じられるんですか?」

穂乃果「何でって言われても・・・昔からそうだったから、かなぁ・・・」

穂乃果は困りながら答える。

穂乃果「お兄ちゃんを信じて・・・裏切られた事、無いんだよね。だから大丈夫!」

海未「穂乃果・・・」

ことり「穂乃果ちゃん・・・」

穂乃果「お兄ちゃんは私達に『負けるなよ』って言ってた。だから私達も負けないように頑張ろう!」

海未「・・・そうですね。ここで怖気づいてしまったら束さんに笑われてしまいます」

ことり「このライブは私達だけじゃなくて、穂乃果ちゃんのお兄さんにとっても大切なライブなんだよね・・・。ことりも、頑張ります!」

穂乃果「海未ちゃん、ことりちゃん、行くよ!」

3人が覚悟を決めたのを見届けるかのようにゆっくりと眼前の暗幕が上がっていく・・・.。そこにいたのは・・・

ことり「・・・6人・・・?」

海未「あれは・・・生徒会長と副会長?それにあちらは・・・」

穂乃果「西木野さん・・・花陽ちゃんも友だちと一緒に来てくれたんだ・・・」

幕が上がった直後に絵里が口を開ける。

絵里「・・・これが現実よ。あなた達が真剣に準備を進めてきた事は知ってる。でもそれだけの事をしても、これだけしか集められなかった。・・・まだ、続ける気?」

穂乃果「・・・・・」

穂乃果は何も言い返す事が出来ず俯いてしまう。

海未「穂乃果・・・」

ことり「穂乃果ちゃん・・・」

絵里「もう、おしまいに・・・」

花陽「私は聴きたいです!」

突然花陽が大声で叫ぶ。その声に絵里は驚いて言葉を止める。

穂乃果「花陽・・・ちゃん?」

花陽「私は・・・聴きたいです!先輩達の歌!μ’sの歌が聴きたいです!・・・花陽は昔からアイドルが大好きで・・・それで今、自分の通う音ノ木坂学院にスクールアイドルが出来るって知って嬉しくなって!・・・だから・・・今この瞬間、たった一度切りでもいいんです!μ’sの歌を聴かせて下さい!」

穂乃果「花陽ちゃん・・・」

真姫「・・・そうよね。そうじゃなきゃ私も作曲した意味が無いし」

穂乃果「西木野さん・・・」

凛「かよちんが聴きたいなら凛も聴きたい!応援するにゃー!」

にこ「客が目の前にいるのにライブやらないなんてアイドル舐めてんじゃないの?」

絵里「ちょっとあなた達・・・!」

希「まぁまぁ、ライブが始まったら、音楽に気づいて人が来るかもしれんし・・・な?」

絵里「希まで・・・」

その場にいる人々の声を聞いて、穂乃果は再び顔を上げる。

穂乃果「・・・海未ちゃん・・・ことりちゃん・・・」

海未「いつでもいいですよ」

ことり「ことりも大丈夫!」

穂乃果「行くよ・・・。聴いてください!『START DASH!』」

 

 

 

 

・・・ライブ開始3分前、束は発電機のコード攻撃に苦しんでいた。先ほどの感電が尾を引きうまく動く事が出来ない。繋がっているコードから電力はドンドン吸い取られていく。

束「どうすれば・・・ん?まてよ?ヤツは講堂から電気を取っている・・・ッ!そうか!」

束は配電盤とは別に存在するもう1つのモノを思い出す。

束「これで・・・どうだ!」

束はすぐ側にあったブレーカーを手動で全て落とす。その瞬間、講堂内の全ての照明が消える。電気の流れが止まった為か、配電盤に繋がっていたコードから発電機内の電力が配電盤側に流れ出す。発電機はコードを配電盤から離して電力の流出を防ごうとする。

束「今だ!」

束はすかさず発電機に詰め寄り思い切りドアに向かって蹴り飛ばす。発電機は台車付きのタイプだった為蹴り飛ばされた衝撃で吹っ飛ぶ。束は靴底がゴムであった事や一瞬しか触れなかった為、感電には至らずそのまま魔法を使いドアを遠隔操作して開ける。

ドアが開いた事で発電機は部屋の外に飛び出した。束はブレーカーをすぐに戻すと部屋を出てすぐに魔法でドアに外側から鍵をかけた。

束「これでもう電気は食えねぇぜ。あとはお前が電気を全て放出するのを待つだけ・・・」

しかしその瞬間、食事を阻止された事が余程頭にきたのか発電機が2本のコードに電流を纏わせ、台車で移動しながら束めがけて突っ込んできた。

束「何⁉︎うおっ⁉︎」

突進を間一髪躱す束だったがコードに捕まってしまい・・・

束「ッ⁉︎しまっ・・・」

バチィィィッ!

激しい電流が束を襲う。電力の供給源を失った事から発電機から流れる電力も大幅に下がっていた為、黒コゲの感電死は免れたもののそれでも人体に影響を及ぼす程の電圧である。束は悲鳴を上げる暇も無くその場に崩れ落ち、動かなくなってしまった。

 

 

 

講堂 ステージ

束が発電機を配電盤から引き剥がした為、それまで起きていた照明や音響設備の不具合も解消されライブは問題無く進行していた。穂乃果達は今出来る最高のパフォーマンスを行う。そこには『学校を救いたい』とか『結果を残す』といった考えは一切入ってこない。ただ全力で今の自分に出来る事を、この限られた時間の中で今の自分の全てをステージの向こう側に伝える事のみ考えていた。

客席から見ていた6人も各々感じる事があったのかライブを誰も一言も発する事なく、ただただ見つめていた。

 

 

 

 

電流の直撃を受けてしまった束。意識は朦朧とし、身体は指一本動かない。

束(ああ・・・死ぬな・・・これ・・・)

少しずつ身体を覆っていくような冷たい感覚。今まで体験した事はないが直感でそれが『死』だと理解できた。

身体の全てが冷たい何かに覆われそうになったその時、何かが聞こえてきた。

 

I say...Hey,hey,hey,START:DASH !!

 

聞き覚えのある詞、聞き覚えのある旋律、そして・・・聞き覚えのある声。『それ』が何なのかを思い出した時、束は身体を覆う悪寒を振り払う。

束「俺があいつらに言ったんだ・・・負けるなって・・・だから俺も・・・負けてられるかよ!」

束は立ち上がる。自分を信じてステージで歌う『女神』たちの歌で自らを奮い立たせて。




次の話でこの回を終わらせたいですね


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第4話 START DASH その4 “fromファーストライブ”

終わりの部分なので今回は短いです。


束「こいよ電気野郎。お前は俺が止める」

束の挑発を受けた発電機はコードを振り回しながら突っ込んでくる。束はコードの動きを見切りながら突進を躱す。

そしてコードの届かないギリギリの間合いを取りながら発電機を『ある場所』へと誘導する。

束「こっちだ!」

攻撃を躱しながら逃げる束。そしてたどり着いたのは・・・何もない行き止まりだった。逃げる場所を失った束とジリジリと距離を詰めてくる発電機。束は不敵に笑う

束「追い詰めたぜ。『お前』がじゃない、『俺』が『お前』を追い詰めたんだ」

発電機は束に接近しコードで再び絡みとろうとする。束は後ろにあった窓を左手で叩き割ると、魔法で板を呼び出し割れた窓に立てかける。それによりできた緩やかな傾斜の上を発電機の台車が転がっていき発電機は窓の外に飛び出してしまう。その先にあるのは・・・

「言ったろ?追い詰めたって・・・たやすいぜ、水を電気が伝わるのは」

発電機の落下したその先にあったのは音ノ木坂学院のプールだった。彼は最初からこれを狙って逃げていたのだった。

束「ま、これで戦いの年季の違いってやつがよーくわかっただろ?相手が勝ち誇った時には既に敗北している。皆道 束の戦い方、老いてなお健在・・・って俺はまだジイさんじゃねぇか」

独り言をブツブツ呟きながら発電機が落下したプールを覗き込む束。幸い季節が季節なのでプールの周りには誰もいない様だ。発電機は水の中で激しく火花を上げながら放電していたがやがて火花は小さくなり沈黙した。

束「どれ、魔力を抜きにいきますか」

完全に沈黙した事を確認し、束はプールに降りた。

 

 

 

 

一方、ライブを終えた穂乃果達。音楽が終わり静まり返っていたがやがて絵里が口を開く。

絵里「もう一度だけ聞くわ・・・。まだ、続ける気?」

先ほどと全く同じ問い、しかし穂乃果は先ほどとは前を向いてハッキリと答える。

穂乃果「はい!・・・確かに、辛い事、思い通りにいかない事もあるかもしれないです・・・。でも、やめません。

ここにいる皆と一緒に、続けていきます!」

横にいる海未とことりの方を見ながら穂乃果はそう力強く伝える。

絵里「・・・・・」

それを黙って聞いていた絵里。その時、後ろのドアがガチャ・・・と開き、その場にいた全員がそちらを見る。

束「・・・あれ、やっぱ終わっちゃった?」

穂乃果「お兄ちゃん!」

壁に寄りかかり、フラフラになりながら客席を降りてくる束。魔法の連続行使による疲労や感電のダメージ、更には後先考えず窓を叩き割った為左手は血だらけという誰がどう見ても満身創痍の酷い状態だった。

絵里「束さん?どうしてここに・・・って血だらけじゃない⁉︎早く手当を!希、先生に連絡!あなた達も手伝って!」

花陽「は、はい!」

凛「わかったにゃ!」

にこ「何で私まで・・・」

穂乃果「お兄ちゃん⁉︎しっかりして!死なないでぇぇぇっ⁉︎」

ステージから飛び降りた穂乃果が束に抱きつく。

束「ほ、穂乃果・・・首、し、しまってる、首しまってる・・・死ぬ死ぬ・・・」

穂乃果「死なないでぇぇぇっ!」

海未「離れなさい穂乃果!ホントに死んでしまいます!」

ことり「ことり達の為に・・・ありがとうございます!あなたの死・・・ことりは絶対無駄にはしません!」

海未「勝手に殺さないでくださいことり!」

真姫「とりあえず・・・救急車呼んどくわね?」

束は全身ボロボロではあったものの意識はあり、こんなやり取りもボーっとしながら聞いていた。疲れのせいで考えはあまり纏まらないが、1つだけハッキリとしていた事は

ライブが無事、成功した事に対する安堵感であった・・・。




次回 まきりんぱな の前に少しオリジナルを挟む予定です


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幕間 潜入!音ノ木坂学院! その1 “fromオリジナル”

オリジナル短編です。あまり深く考えずにどうぞ


μ’sのファーストライブが終了してから数日。

束はその裏で起こっていた魔力憑きにより暴走した発電機との戦いで負傷し、すぐに西木野総合病院の厄介になる事に。見た目よりキズ自体は深くなかった為か、軽い処置で済んだ。

もう既に巻いてあった包帯も外れ、キズも残っていない。

実際の所は魔法による治療で自力で無理矢理治したのだが・・・引き換えに体力をごっそり持っていかれてしまったので今日までは自宅で安静にしていた。

安静にしてる間は穂乃果からその後の情報を得ていた。スクールアイドルとしての活動が一応は認められた事。次のライブに備えて練習を頑張っている事などが主だったがその中で1つだけ気になる話があった・・・。

束「魔の13階段?」

穂乃果「そうなの!音ノ木坂学院の階段はどの階段でも次の階に行くまで全部で12段あるんだけど3年生のクラスのある階に行く階段だけは13段になってる時があるって話」

束「・・・まぁよくある学校の怪談ってヤツだよな」

穂乃果「海未ちゃんも最初は『そんな馬鹿な事がある訳ないじゃないですか!』って言ってたんだけどね・・・。起きちゃったの」

束「な、何が?」

穂乃果「午前中に海未ちゃんが登ったときには数えた時は12段だったのに・・・放課後に同じ所を登ったら・・・13段、あったんだ・・・」

話をしながら段々穂乃果の声のトーンが低くなっていく。

束「お、おい・・・やめろよそうゆうの・・・」

穂乃果「何度も何度も登ってみてもやっぱり13段あるの・・・海未ちゃんは段々怖くなってきて・・・最期は・・・」

束「さ、最期は・・・?」

穂乃果「悪霊ですぅぅぅっ!!って言って倒れちゃったの」

束「うわぁぁぁっ⁉︎」

穂乃果がいきなり大声を出した為、驚いた束はベッドから落ちてしまう。

穂乃果「ビックリした?」

束「ビックリしたわ!怪我人脅かすな!」

穂乃果「まぁでも実際ことりちゃんや私も見てたけど確かに朝は12段だった筈なんだよなぁ〜」

束「海未ちゃんは?」

穂乃果「微熱出して寝込んじゃった。ミステリーです・・・ミステリーです・・・ってうなされてるよ」

束「微熱からmystery・・・」

 

 

その後、話を聞いた束は一人で考えていた。今回の学校の怪談、もとい学校の階段は魔力憑きによるものかどうかを疑っていた。魔力憑きならば自分で無ければ対処はできない。しかし自分は音ノ木坂学院においては穂乃果の兄とはいえ完全な部外者であり自由に入る事は出来ない。

前回のようにμ’sのライブ活動があればまだ希望はあるのだがまだファーストライブを終えたばかりでそれは見込めない。

束「・・・はぁ、仕方ない。あまり気乗りしねえが・・・この方法しかない・・・か」

悩んだ末に、束が出した答えとは・・・。

 

 

 

 

翌日、絵里は例の階段の前に立っていた。最近生徒の間で噂になっている『魔の13階段』である。場所が3年生の教室に行く途中にある為、必ず通らなければいけないのだが

そういった類の話が苦手な絵里は怖くて登れずにいた。

絵里(お、落ち着きない絵里。12段あればいいのよ・・・数えて12段ならこの話はウソってことになるんだから・・・というかそもそも数えないように一気に駆け上がってしまえば・・・ダメよ絵里!生徒会長としてそんな事は出来ないわ!)

階段の前に立ち尽くしてあれこれ考える絵里を尻目に1人の少女が階段を登って行く。少女は段数を数えながらゆっくり登る。

「1.2.3.4.・・・」

絵里「あ、ち、ちょっと・・・」

絵里はその様子を見ている事しか出来なかったがやがて少女は上まで登りきった。

「10.11.12段。やっぱり朝は12段なんだな」

絵里「本当ね⁉︎本当に12段なのね⁉︎」

少女の声を聞いた絵里は何度も確認を取る。

「うわぁっ!ビックリしたぁ〜。だ、大丈夫ですよ。12段です」

それを聞いた絵里は怖がっていたのが嘘のようにニコニコしながら階段を登ってきた。

絵里「そうよね♪階段の数が増えるなんてある訳ないわよ♪・・・あら、あなた2年生?こんな所で何してるの?」

「えっと・・・噂の階段を・・・確かめに」

絵里「気持ちはわかるけどそんなの唯の噂よ?さ、教室に戻りなさい」

「・・・絵里先輩だって怖がって登れなかった癖に・・・」

絵里「な⁉︎こ、怖がってなんかないわ!エリチカ怖くなんてないもん!」

痛い所を突かれてついムキになって反論してしまう絵里。

少女は逃げるように階段を降りて行く。

絵里「あ、待ちなさい!あなた2年生のようだけど・・・以前何処かで会ったかしら?名前は?」

名前を聞かれた少女はしばらく困った様子だったがやがて口を開いた。

「名前⁉︎・・・えーと・・・かりの・・・仮野・・・仮野つかさです!」

少女は仮野つかさと名乗るとあっという間に行ってしまった・・・。残された絵里は・・・。

絵里「仮野つかさ・・・そんな名前の生徒、うちにいたかしら・・・?」

 

 

 

 

つかさ「危なかったぁ〜。まさか怪しまれるとは・・・」

絵里の所から逃げてきた少女・・・仮野つかさは中庭に着くと物陰に隠れる。次の瞬間光に包まれそこにいたはずの少女は消え代わりに束が現れる。

もう既にお気づきの方もいるだろうが先ほどの少女・・・仮野つかさの正体は束である。普段は音ノ木坂学院に入れない束の潜入手段、それがこの変身魔法でありコレで実在しない女生徒に変わり音ノ木坂学院に忍びこんでいた。

実はこの変身魔法、束が最も得意とする魔法であり、女生徒だろうと動物だろうと生物なら何にでも変身する事が出来る。(逆に物などの無機物には変身できない)

変身魔法は持続させる為に魔力を常に消費するのだが、束は得意とするだけあって別の魔法を使ったりしない限り、かなり長い時間変身していられる。

そんな訳で階段の謎を探る為、音ノ木坂学院に潜入した束。元々実在しない生徒なのでコソコソ隠れながら活動する事になる。のだが・・・

束「ッ⁉︎ヤバイ!人が来た!」

束は急いで変身する。(以後、変身して話している時は『つかさ』表記になります)

つかさの前に現れたのは・・・

穂乃果「あれ?あなた・・・そんな所で何してるの?」

つかさ(お前かよぉぉぉぉぉっ!)




タグを追加しなければいけませんね・・・
なんかようやく魔法っぽい事出来た感じがします。


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幕間 潜入!音ノ木坂学院! その2 “fromオリジナル”

『魔の13階段』の噂の真相を確かめる為、実在しない女生徒『仮野 つかさ』に姿を変え音ノ木坂学院に潜入した束。

しかし潜入して早々に穂乃果に見つかってしまう。

穂乃果「あれ〜?あなた2年生?見た事あるような・・・ないような?」

つかさ「き、気のせいですよ。ほら!クラスが違うから!」

穂乃果「なるほど!そういう事か!」

束(バカかコイツ・・・)

つかさ「えっと・・・私用事があるので失礼しまーす・・・」

穂乃果「あ、ちょっと待って!お名前、教えてよ!私は高坂穂乃果!あなたは?」

つかさ「あ、えっと・・・仮野、つかさです」

穂乃果「つかさちゃん?私のお兄ちゃんと同じ名前だね!なんか親近感湧いちゃうな〜!」

つかさ「ははは・・・」

まさかその本人に話をしているとは夢にも思わない穂乃果は話し出して止まらなくなる。

穂乃果「・・・でさ、穂乃果のお兄ちゃんったら色々うるさいんだ。宿題は自分でやれー!とか太るから間食はするなー!とかさ」

つかさ「・・・へー、そうなんですか・・・」

穂乃果「あれ?つかさちゃん⁉︎なんか目が怖いよ⁉︎」

つかさ「ふふふ・・・気のせいですよ・・・」

そんな話をしていると、ことりが手を振りながらこちらにくる。

ことり「穂乃果ちゃ〜ん!お待たせ〜!・・・あれ?穂乃果ちゃんのお友達?」

穂乃果「ことりちゃん!こっちは仮野つかさちゃん、さっき会ったばっかなんだ!」

ことり「つかさちゃん?穂乃果ちゃんのお兄さんと同じ名前だね!」

つかさ「よ、よろしくです・・・」

つかさ(どうしよう・・・逃げられない・・・こうなったら!)

つかさ「あー!ラン○パックとチーズケーキが空飛んでる!」

穂乃果&ことり「えっ⁉︎」

つかさ「今だ!」

つかさは慌ててその場を逃げ出す。

穂乃果「ラン○パックどこー!ってあれ?つかさちゃーん?」

ことり「いなくなっちゃった・・・」

 

 

 

なんとか2人を巻いたつかさ。

つかさ「ここまで来れば大丈夫・・・うわっ!」

後ろを気にしながら歩いていたつかさは誰かにぶつかってしまう。

「ゴメン!大丈夫かい?」

つかさ「は、はい・・・ってあれ?男の人?」

「ああ、自分は修理業者の人間だからね。ほら、講堂で窓ガラスが割れたり壁に焦げた跡があったろう?」

つかさ「あー、あの時の・・・」

暴走発電機との戦いを思い出す束。攻撃を躱す為とはいえだいぶ建物を傷つけた。

修理業者「だいぶ広い範囲だったけどもう終わるよ。やっぱ綺麗な方が気持ちいいからね」

つかさ「そうですね。ありがとうございます」

修理業者「お礼なんていいよ。仕事だからね。それじゃ」

男性は大きな板を軽々と持ち上げていってしまった。

つかさ「凄いなぁ・・・あんな大きな板を・・・ってそうじゃなかった!階段の怪談の事・・・」

つかさは改めて調査を再開しようとするが・・・

「待つにゃー!」

誰かがこちらに向かって走ってくる。

つかさ「この一度聞いたら忘れられない語尾は!」

凛が花陽と一緒に猫を追いかけている。

凛「こらー!泥棒猫ー!かよちんのおにぎりを返すにゃー!」

猫の口にはおにぎりの包みが咥えられており、2人から必死で逃げている様子だった。

花陽「あ!そこの先輩!その猫の逃げ道を塞いでください!今すぐ!早く!」

つかさ「え?あ、はい!」

普段からは想像もつかないような気迫で指示する花陽に圧倒され、つかさは猫の前に立つ。逃げ道を失った猫は引き返そうとするがそちらも凛と花陽に塞がれてしまう。

花陽「ふふふ・・・もう逃げられませんよ。さあ口に咥えているものを渡しなさい!」

つかさ「花陽ちゃん?それ悪者みたい・・・」

凛「さあ、お前の罪を数えるにゃ!」

つかさ「凛ちゃん?いつから探偵に?」

追い詰められた猫は意を決したかのように凛の方に突っ込んでいく。

つかさ「えっ⁉︎」

凛「飛んで火に入る夏の虫にゃあ!・・・へ、へっくしゅん!」

猫が突っ込んだ途端、凛のくしゃみが止まらなくなる。

つかさ「なんだ⁉︎どういうんだ⁉︎」

花陽「凛ちゃんは猫アレルギーなんです!」

つかさ「えええっ⁉︎あんだけにゃー!にゃー!言っといて⁉︎」

猫は凛の横をすり抜け近くの倉庫に入っていく。

花陽「花陽のおにぎりが!」

つかさ「もう、良くない?おにぎりなら買ってあげるから・・・」

花陽「何を言ってるんですか!目の前のご飯を諦めるなんて出来ません!手が届くかもしれないのに手を伸ばさなかったら一生後悔します!だから手を伸ばすんです!」

つかさ「もうメダルの力を借りてきなよ・・・」

つかさはゲンナリしながら答える。

凛「ハックシュン!凛も手を貸すにゃー!」

『右手』をグルグル回しながら凛も張り切る。

花陽「という訳で先輩も力を貸してください!」

つかさ「うええっ⁉︎私も⁉︎」

花陽「ライバーは助け合い、ですよ!」

つかさ「私ライバーじゃないし!」

 

 

 

倉庫内

つかさ「猫ちゃーん、出てきてよー・・・」

倉庫内を手分けして探す事になり、つかさは猫の入れそうな隙間を探す。魔法を使えば手っ取り早いのだが使ったらこの変身の維持も難しくなるので使えない。

つかさ「どこかな・・・ん?あ、いた!・・・あ」

猫の姿を見つけたつかさだったがそこには1匹だけではなく・・・

つかさ「こどもがいたんだな・・・ご飯を取りに行ったのはそういう事だったのか」

つかさはチラッと花陽達の方を見る。猫はつかさを見ながら教えないで欲しいと言ってるのかニャーニャー鳴いている。

つかさ「大丈夫、任せて」

つかさは猫にそう言ってウィンクをする。

 

 

 

凛「あ!いたにゃー!」

猫が倉庫から逃げるのを凛が見つける。おにぎりは咥えていなかったが、先ほどに比べて動きが鈍くすぐに捕まってしまった。

凛「捕まえたよ猫ちゃん!さあ、かよちんのおにぎりを返して・・・あれ?くしゃみが出ない?」

いつもなら近くに来るだけでもくしゃみが出るのに今は抱き抱えてもくしゃみが出る気配がない。

凛「どういう事?」

「俺が知るか」

凛「・・・え?」

突然聞こえた声に凛が戸惑っているとまた声が。

「そろそろ離してくれないか?苦しいんだよ」

凛「この声・・・離してってまさか・・・」

凛は恐る恐る猫の顔を覗き込む。

「何だよ、人の・・・じゃなかった猫の顔ジロジロ見んなよ」

凛「・・・し、喋ったぁぁぁっ⁉︎」

驚きのあまり猫を離してしまう凛。猫はスッと降りると凛の方を向いて一言。

「おにぎり、ご馳走さん。それじゃ」

そう言って猫は去っていった。

そこに凛の声を聞いてきた花陽が到着する。

花陽「凛ちゃん⁉︎どうしたの⁉︎何があったの⁉︎」

凛「ね、猫が・・・猫が喋ったにゃぁぁぁ・・・」

花陽「ネコガシャベッチャッタノォッ⁉︎」

そんな2人の様子を影から見つめる猫。やがて光に包まれると人間の姿に変わった。

束「やれやれ・・・」

ふと束が目をやると猫がこどもを連れて学校の外へ歩いていくのが見えた。猫達が出ていくのを見送ると束も静かにその場を後にした。

 

 

 

 

 




一応つかさちゃんの容姿イメージはサンシャインに登場した音ノ木坂生でやってます


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幕間 潜入!音ノ木坂学院! その3 “fromオリジナル”

今日は海の日か・・・
海未ちゃん短編考えておけばよかったかも


つかさ「うーん、何も感じないなぁ・・・」

気を取り直して階段の調査を行うつかさ。

放課後になったが階段の数は12段のままであり特にこれといった変化も無い。

つかさ「やっぱりただの怪談・・・だったのかな?」

そんな事を考えているといきなり何者かに後ろから胸を掴まれた!

「おお?これはえりちにも劣らない・・・」

つかさ「ッ⁉︎ひ、ひゃあああっ⁉︎」

突然の事に気が動転したつかさは反射的に後ろの人影を投げ飛ばす。投げ飛ばされる事で人影の正体が露わになる。

つかさ「ハァ・・・ハァ・・・希・・・ちゃん?」

希「あたたた・・・。ナイス一本背負い、やね?」

人影の正体は神社で会った(ライブの時はボロボロで覚えてない)東條希だった。

 

 

 

つかさ「で?希ちゃ・・・じゃなかった。希先輩はどうしてここに?」

希「ここは3年生の階やで?3年生がいるのは別におかしくはないんやない?」

つかさと希は場所を変え教室内で話をしていた。

希「つかさちゃん・・・だったっけ?あの階段が気になるん?」

つかさ「はい。知ってるでしょう?『魔の13階段』の噂」

希「まぁね。でもあの階段、怪談とはちょーっと違う気がするんよね」

つかさ「怪談とは違う?・・・一体どういう・・・」

ガタンッ!

突然大きな音が階段の方から聞こえた。

つかさ「ッ!何の音?」

希「行ってみよか?」

2人は音のした階段に行ってみる。階段は特にこれといって変わった印象はないのだがつかさは妙な違和感を覚える。

つかさ(何だろ?見た目はさっきと同じ気がするけど何かおかしいような・・・)

つかさは下の階に降りて数えながら階段を登ってみる。

つかさ「1.2.3.4.・・・」

希のいる上の階まで来るが・・・

つかさ「11.12.・・・13」

希「13段、やね」

つかさ「そんな・・・朝は確かに12段だったのに」

つかさは本格的に魔力憑きの仕業を疑い始める。もしこれが魔力憑きの仕業だとして一体何をする気だろうか?

もしかしたら永遠に階段から出られなくなるかもしれない。どのみち希がここにいたら解呪は行えない。

つかさ「・・・希先輩、ちょっと調べたい事があるので先に帰って頂いてもよろしいですか?」

希「?・・・わかった。でもあんまり遅くまで校内に残ったらあかんよ?」

希はそう言うと階段を降りて帰ろうとする。

希「ああ、そうそう。実は『魔の13階段』の話にはね、あまり知られてないけど続きがあるんよ」

つかさ「続き・・・ですか?」

希「それはね・・・」

 

 

 

 

 

音のノ木坂学院 深夜

静寂に包まれた音ノ木坂学院。そこを歩く1人の少女の姿があった。仮野つかさ、彼女は校舎にかかっている鍵を魔法で開けて中に浸入する。どうせ今回は変身を長時間維持する必要はない。

彼女は迷う事なく誰もいない暗い校舎を進んで行き、そして目的地である『魔の13階段』にたどり着く。

つかさは階段をゆっくりと登っていく。そして上の階にやはり13段でたどり着く。が、つかさはそこを通過して更に上の階まで行ってしまったかと思うとすぐに降りてくる。

つかさ「やはりそういう事か」

つかさは階段を途中まで降りて踊り場の辺りで止まる。そしてつかさは思い切り踊り場を踏みつける。

バキィッ!

踊り場の段がつかさの蹴りで粉砕され大きな穴が空く。するとそこから何やら人影らしきものが姿を表す。

つかさ「やっぱり、思った通りですね」

現れた人影を見ながらつかさは呆れたように言う。

つかさ「シンプルですが中々手の込んだ仕掛けでしたね?修理業者のお兄さん?」

修理業者「な、何の事かサッパリ・・・」

つかさ「惚けなくてもいいんですよ?毎日ここに忍びこんで女生徒のスカートの中を覗いてたんですよね?・・・魔の13階段のカラクリはこうです。あなたは修理業者の立場を利用し、持ち込んだ資材でここにダミーの踊り場を作りそこに忍びこんだんです。それによって段数が一段増え、本来12段の筈の階段が13段になった」

トリックを説明しながらつかさはゆっくりと男に近づいていく。

つかさ「朝と放課後で段数が違ったのは単にあなたがここから出入りするタイミングの問題ですね。日中仕事をした後に入って生徒のいなくなった深夜にでも撤収してたんでしょうけど」

つかさから逃げようとする男だが彼女に粉砕されたダミーの踊り場が引っかかり下半身を出す事が出来ない。

つかさ「怪談を生徒達に流したのもあなたですね?段数が変わる事をカモフラージュする為に。でも生徒自身が怪談を付け足す事は想定外でしたね」

修理業者「怪談を・・・付け足す?」

つかさ「はい、『魔の13階段』には続きがあるんですよ・・・。階段が13段に増えると、今度は屋上へ続く階段が一段減っている・・それで私はこのカラクリに気づいたんです」

つかさは男の目の前に立つ。その顔は笑っているが少女とは思えない程の圧倒的な威圧感を放っている。

つかさ「面倒な事は警察の方に任せるとして・・・。ウチの(母親の)可愛い後輩達に手を出した報いは受けて貰わないと・・・なぁ?」

修理業者「あ・・・あぁ・・・」

つかさ「さあ、お前の罪を数えろ」

その夜、音ノ木坂学院にこの世のものとは思えない悲痛な叫び声が響き渡った・・・。

 

 

 

 

翌日、男は階段の偽の踊り場で気を失っていた所を発見され警察に連行されて行った。連行される際に男は

「音ノ木坂怖い・・・音ノ木坂怖い・・・」

と、音ノ木坂生の姿を見るたびに怯えていた・・・。

 

 

生徒会室

希「しかし怪談の正体がただの覗き魔で良かったね?えりち」

絵里「良くないわよ!ずっとスカートの中見られてたのよ⁉︎」

希「まぁまぁ、カメラの類も見つからなかったみたいやし・・・記録が残らないだけいいやん?」

絵里「そういう問題じゃない!・・・ねぇ希?」

希「ん?どうしたん?」

絵里「あなた・・・仮野つかさって生徒、知ってる?」

希「ん〜?魔の13階段の所であったかな?」

絵里「・・・いないのよ」

希「え?」

絵里「さっき名簿を見たんだけど・・・仮野つかさ なんて生徒は音ノ木坂に存在しないのよ・・・」

段々絵里の顔が青ざめていく。

希「え、えりち?」

ふと希が中庭の方に目をやると、つかさがこちらを見ており、希に向かってペコリとお辞儀をして去っていった。

希(あれって・・・やっぱり・・・)

希が考えていると絵里もつかさの事が見えてしまったらしく・・・

絵里「いやぁぁぁっ⁉︎せっかく怪談が終わったと思ったのにぃっ!もうやだエリチカお家帰る!」

絵里はそう言って生徒会室を飛び出してしまった・・・。




つかさちゃんはこれからもちょくちょく登場予定です。
次回からは一年生組の話に戻ります。


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第5話 勇気の魔法 その1 “fromまきりんぱな”

まきりんぱな回ですが安定の脱線模様でございます


『魔の13階段』事件から数日、学院内もすっかり落ち着き平穏な日常に戻っていた。穂乃果達もいつも通り屋上で練習に励んでいた。そこには何故か部外者であり、女子校には入れないはずの束の姿もあった。

実は以前から穂乃果達は学院内での練習に束の力を借りる事が出来ないか相談しており、結果的にことりが学院の理事長を務める自分の母親に『お願い』した事で、放課後限定で学院内の出入りが許可されたのだ。

ただ運悪く、束が事情を聞いて許可証を受け取ったのが前述のあの事件の直後だった為、それから束はほぼ毎日女生徒達の厳しい視線に晒されながらの登校を余儀なくされるのであった・・・。

束「穂乃果、ステップする位置ズレてる」

穂乃果「え?そう?」

束「ことりちゃんはセンター入れ替わりのタイミングで少し2人から離れちゃってるな」

ことり「はい、次は意識してやってみますね」

束「海未ちゃん、ラブアローシュートはさすがに無いんじゃないかなぁ?」

海未「なんで私だけダンスのアドバイスじゃ無いんですか!というかなんでラブアローシュート知ってるんですか⁉︎」

こんな感じで屋上での練習を毎日続けているが、まだ問題は山積みな訳で・・・

穂乃果「部員を集めなきゃ!」

束「唐突だな・・・」

ことり「正確には、部員を最低でもあと2人以上集めないと部として正式に認可されないんです」

束「会長はスクールアイドルの活動を許可してくれたんだろ?」

海未「アイドルとしての活動を許可しただけであって、アイドル部としては認められてないんです。部活として認められなければ予算も貰えません」

ことり「衣装とかも材料でお金が掛かるし、お小遣いだけじゃちょっと厳しいかなぁ・・・」

束「随分と意地悪いよなぁその生徒会長。一度くらいはツラ拝んで見たいぜ」

・・・この男はまだ絵里が生徒会長だと気づいていないのである・・・。

穂乃果「とにかく今は部員集め!またライブの時みたいにチラシ配ったり声掛けて誘ってみたりしてみよ?」

束「ライブの時・・・か」

海未「束さん?どうかしましたか?」

束「ん?あ、いや何でもないよ。ちょっと心当たりがあってね」

ことり「ホントですか⁉︎」

束「あー、まぁどうなるか分かんないから・・・期待しないで待ってて」

穂乃果「えー⁉︎」

 

 

 

音ノ木坂学院 音楽室

練習後、束は穂乃果達と別れた後、音楽室に来ていた。予想通り真姫がピアノを演奏していた。束は音楽室に入る。

束「よっ、相変わらずいい演奏だね」

いきなり現れた束に対し、真姫は驚きを隠せず・・・

真姫「ヴェェッ⁉︎な、何してるのよ!ココ女子校よ⁉︎は、早く出てって!お、大きな声出すわよ⁉︎」

束「あーっ⁉︎待って!待って!ストップ!ストーップ!貰ってる!理事長から許可貰ってる!ほら!許可証!見て!見て!今叫ばれたら色々困る!」

お互いパニックになりその場で慌てふためく二人。その後何とか事情を説明し分かって貰えた・・・。

 

 

 

真姫「・・・で、私に何の用です?」

何とか落ち着きを取り戻した真姫が不機嫌そうに尋ねる。

束「えーと・・・まずはこの前のライブ、曲を提供してくれてありがとうって事。おかげで助かったよ」

真姫「べ、別に・・・あれくらいの曲、作るの訳ないし」

真姫はそっぽを向きながら答える。

束「ライブ会場にも来てくれたんだろ?どうだった?穂乃果達のライブ?」

真姫「来てくれたんだろ?ってあなたも居・・・ああ、意識無かったんだっけ・・・」

真姫はそれまで座っていたピアノの座椅子から立ち上がり窓の方へ向かう。

真姫「私が作曲したんですもの。あれくらいはやって貰わないと。・・・ただ・・・」

束「ただ?」

真姫「とても楽しそう・・・だった。私も同じ歌を歌っていた筈なのに・・・私の歌より、明るくてキラキラしてる様に・・かな感じた」

窓の方を向いている為、束からはその表情は読み取れない。

束「穂乃果から聞いたが・・・真姫ちゃんはアイドルの曲は軽い感じがして好きじゃないみたいだが・・・楽しそうって事は軽く感じたって事かな?」

真姫「・・・ううん、上手く言い表せないけど・・・軽くは感じなかったわ。ただ、笑顔で歌って踊っている姿が楽しそうだった」

束「なら、俺達のライブは大成功だな」

真姫「え?」

束「見ているお客さんに楽しそうだと思って貰えた。それはアイドルとしては大成功だろ?そしてそんな楽しそうだと思って貰える曲を作ってくれたのは・・・君だ」

真姫「わ、私はそんな・・・」

束「何一つ欠けてもあのライブは成り立たなかった。穂乃果が前に言ってた事がよく分かったよ。アイツ言ってたぜ、君の曲がいいんだって、だからもし良かったら・・・」

真姫「・・・おだてたって何も出ないわよ。曲を作るのはこれっきり。後は他の人を探してちょうだい」

そう言うと真姫は音楽室を足早に出て行ってしまった。

束「やっぱダメかぁ・・・」

 

 

 

 

その夜、束の部屋

穂乃果「あ、おかえり、お兄ちゃん。遅かったね?」

海未「お邪魔してます。束さん」

ことり「おかえりなさい♪マカロン食べますか?」

束「・・・・・」

自室に帰ってきた束は暫く黙ってしまう。

穂乃果「?どうしたの?お兄ちゃん?」

束「・・・いや、お前ら何平然と人の部屋でくつろいでんだよ⁉︎」

穂乃果「だって、私達部室無いし・・・」

ことり「教室で話せる事や出来る事も限界があるし・・・」

海未「部として認めて貰い、部室が確保出来るまでの間はここを仮部室としようと言う事に」

束「と言う事に・・・じゃねぇよ!穂乃果の部屋でやればいいだろ!」

穂乃果「いや〜、穂乃果の部屋、狭くて踊れないし・・・」

束「しかも踊る気かココで⁉︎」

穂乃果「ダメ?」

束「ダメだよ!当たり前だろ!」

海未「仕方ありません・・・ことり!」

海未の合図を受けてことりが立ち上がりゆっくり束に近づき目の前に来る。そして束の両手を握り・・・

ことり「穂乃果ちゃんのお兄さん・・・お願いっ!」

束の眼前で瞳を潤ませながらながら懇願する。その少し憂いを帯びた表情が束の良心回路に負荷を掛ける。

束「こ、ことりちゃん・・・それ、ズルイって・・・」

ことり「お願いっ!」

束「い、いや・・・」

ことり「お願いっ!」

束「だぁーっ!分かったよ!ただしダンスは無しだ!」

ついに折れる束。

穂乃果「よっしゃー!穂乃果達の完全勝利!」

束「お前何もしてないだろ!」

一刻も早く部員を集めなければ、と決意を新たにする束だった・・・。

 

 

 

 

数日後、束はある人物と待ち合わせをしていた。その相手とは・・・

花陽「すみません!遅くなりました!」

秋葉原の駅前で束が待っていると花陽が息を切らしながら走ってくる。

束「時間通り来てるんだから急がなくて良かったのに」

花陽「お、お待たせしたら・・・悪いと思って・・・」

立ち止まり、息を整える花陽。束はバックに入れていたお茶を渡す。

束「これ飲んで落ち着きな?」

花陽「あ、ありがとうございます・・・」

その後、束は花陽にファーストライブについて聞いてみる。アイドルに関しては知識の深い花陽。色々と専門的な用語を使い懇切丁寧に教えてくれた。しかし束は・・・

束「あー、そういう事ね。完全に理解した」

・・・分かってなかった。

このままでは拉致があかない為、束は思い切って本題を振ってみる。

束「花陽ちゃん、μ’sに入らないか?」

花陽「えっ⁉︎わ、私が・・・μ’sに・・・?」

束「花陽ちゃんの力が必要なんだ」

花陽「で、でも・・・私、恥ずかしがり屋でおっちょこちょいで・・・とてもアイドルなんて・・・」

束「分かっていれば対策もとれる。それに・・・それは花陽ちゃんの最大の武器になる」

束の目が怪しく光る。

花陽「ぶ、武器・・・ですか?」

束「いいか花陽ちゃん?まず君は自分の事を恥ずかしがり屋と言ってたね?しかし男の方からみれば自分を見て女の子が恥ずかしそうにしているだけで「あれ?もしかしてこの子俺に気があるんじゃね?」なんていう馬鹿げた錯覚に陥るんだ。この子は自分にとって特別な存在と思わせるそれだけでファンが重要視されるアイドル界においてはこの上ない武器になるんだ。次におっちょこちょいって言ってたね?素晴らしいじゃないか!いいか?男は“カッコイイ”と言われるが何か失敗をすれば途端にカッコ悪くなる。しかし女の子は“可愛い”だ。それは何かを成功しようが失敗しようが変わらない!何か成功しても可愛い!失敗しても可愛い!可愛いは絶対正義なんだよ!抵抗不可なんだよ!ドジっ子萌えなんて言葉も生まれる訳だよ。言いたい事はまだある!そもそも萌えと言うのは・・・」

花陽「ダ・・・ダ・・・ダレカタスケテェェェッ⁉︎」

 

 

 

 

 




ここまで脱線するといっそアニメ見ないほうがいい・・・かも?


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第5話 勇気の魔法 その2 “fromまきりんぱな”

ネタ部分はやりたかっただけです。ハイ。


束「スマン、ちょっと熱くなりすぎた・・・」

花陽「いえ・・・あそこまで熱く語れるなんて凄いです!」

束「いや、アイドルの事話してる時の君もあんな感じよ?」

花陽「えぇっ⁉︎」

なんとか落ち着きを取り戻す束。

束「真面目な話、どうかな?まぁこれ以上は無理には誘えないが・・・」

花陽「あ、え・・・と・・・その・・・」

花陽は未だに踏ん切りがつかない様子で迷っている。

束(この様子じゃこれ以上は逆効果だな・・・無理矢理引っ張っても意味ないし)

束「分かった。あまりしつこく誘うのも良くないからな。

この辺にしとくよ」

花陽「え⁉︎あ、ご、ごめんなさい!私・・・」

束「別に怒ってる訳じゃないさ。ただまぁこういうのはやっぱ自分の意思でちゃんと伝えないと意味がないかな?って思ってさ」

花陽「自分の意思で・・・」

束「放課後なら俺も学校に出入り出来るようになったし、穂乃果達も屋上で練習してるからいつでも来てくれ。それじゃ」

そう言って束は花陽と別れた。

 

 

 

束「ああ〜どうしよ・・・結局2人ともフラれちゃったよ」

落ち込んだ様子で穂むらに帰宅する束。穂乃果が店番をしており

穂乃果「あ、おかえり!どーだった?」

結果を聞かれ束は首を横に振って答える。

穂乃果「そっかぁ・・・」

束「まぁそれほど嫌がってる感じでもないからあとは彼女達次第ってトコかなぁ。何かキッカケがあればまた違うかも、だけど・・・」

穂乃果「穂乃果達も無理に誘わないで待ってみる。あ、二階に海未ちゃんがいるよ。穂乃果も店番終わったら行くから先に行ってて?」

束「分かった」

束は居間を通って二階に向かおうとするがそこで何かが目に入る。

束「ん?なんだコレ?オモチャ?」

穂乃果「ああそれ?お客さんの忘れ物、親子連れだったんだけど男の子が置いてっちゃったみたいで取りにくるかもしれないから預かってるの」

束「へえ〜、最近のオモチャは良く出来てるなぁ」

束が手に取ったオモチャは一言で言うと歩行者用信号機がついた斧であり、子ども用サイズだからか大人の束が持つとちょうど片手持ちの手斧くらいになった。

束「っとそうだ。海未ちゃんは・・・と」

オモチャの斧を持ったまま二階に来た束。廊下は灯がついておらず薄暗い。その中で一部屋だけ明かりが戸の隙間から漏れ出していたので束はそこに向かう。部屋に入ろうとする束だったが・・・

海未「イェーイ!みんなー!ありがとうー!」

誰も見ていないからか海未が部屋の鏡に向かってノリノリでポーズやライブパフォーマンスの練習をしていた。戸の隙間からこっそり見ていた束は・・・

束(マジか・・・あの海未ちゃんが・・・後でなんかのネタに使えるかもしれないから撮っておこうっと)

静かに携帯のカメラを構える束、その時一階から穂乃果の声が響いた。

穂乃果「お兄ちゃーん!お客さんのオモチャ勝手に持ってったでしょー!返してよー!」

束「あ!バカ!」

大声で呼ばれた事で存在がバレてしまい海未が勢いよく戸を開ける。カメラを構えたまま固まる束。

海未「・・・今、何を撮ってましたか?」

束「えっと・・・自撮り?」

顔を引きつらせながら答える束。海未の視線は持っているオモチャの斧に向く。

海未「あら、いいものを持ってますね?ちょっと貸して下さい」

束「え?あ!」

斧を取ると海未はボタンを押して斧を振り上げる。

『マッテローヨ!』

束「待って!海未ちゃん!落ち着け!話せばわかる!」

『イッテイーヨ!』

海未「逝っていい・・・そうですよ?」

束「あ、あああああっ⁉︎」

『フルスロットル!』

ゴスッ!という鈍い音と束の悲鳴を聞いた穂乃果が二階に様子を見に来ると頭頂部にデッカいタンコブを作って廊下に突っ伏して倒れている束と片手に斧を持ちながらそれを見下ろす海未がいた。

海未が不気味に笑いながら穂乃果の方へ振り向く。

海未「おや、穂乃果・・・お手伝い終わったんですか?・・・お疲れ様です」

恐怖に笑顔を引きつらせながら穂乃果は答える。

穂乃果「お、オツカーレ・・・」

 

 

 

 

穂むら 束の部屋

ことり「穂乃果ちゃんのお兄さん、どうしたんですか?そのデッカいタンコブ?」

束「聞かないで・・・ことりちゃん・・・」

パソコンを持って来たことりが後から合流し束の部屋に4人が集まる。ことりは束のタンコブが気になるようだったが事情が事情なので誤魔化す束。

穂乃果「そんな事よりことりちゃん、あった?」

ことり「うん、えっと・・・これ!」

ことりがパソコンを操作して画面を3人に見せる。そこには先に行ったファーストライブの模様が映し出されていた。

束「ほー、よく撮れてるな。しかしいつの間にこんなの用意してたんだよ穂乃果」

穂乃果「え?お兄ちゃんがやってくれたんでしょ?」

束「え?俺やってないよ?」

穂乃果「え?」

束「え?」

海未「じゃあ・・・一体誰が・・・?」

ことり「でも、凄い再生数だよ!」

誰がライブの模様を撮影したのか疑問は残るが、今はライブの動画が多くの人に見てもらえている事の喜びの方が大きくすぐに忘れてしまった。

穂乃果「これだけの人に見てもらえてるんだもん。まだまだこれからだよ!」

束「それよりもまずは部員確保だよ・・・」

海未「ダメだったんですか・・・?」

束「説得はしてみたけど・・・」

穂乃果「とりあえずは待ってみようって」

海未「そうですか・・・」

 

 

 

翌日 音ノ木坂学院

花陽はμ’sのメンバー募集のチラシの前で迷っていた。

束からμ’sに入らないか誘われたがハッキリと決断する事が出来ず保留という形にはなったが・・・

花陽「大事なのは自分の意思、かぁ・・・」

そんな事を呟いていると誰かがこちらに近づいてくる。花陽は慌ててその場から離れる。やって来たのは

花陽「西木野さん?」

真姫はチラシの前で立ち止まると暫く見たのち一枚チラシを持っていった。真姫が立ち去るのを確認し、チラシの所に戻る花陽。

花陽「なんで西木野さんが・・・そういえば先輩達の曲を作ったのって西木野さんだったっけ?・・・あ」

花陽はチラシが置いてある台の下に生徒手帳が落ちているのを見つける。開いてみるとそれは真姫のものだった。

花陽「これが無いと・・・西木野さん困るよね?」

花陽は真姫の自宅に手帳を届ける事にした。

 

 

 

 

束「・・・ヒマだ」

束は音ノ木坂学院の校門前でそう呟く。放課後練習の予定だったのだが穂乃果が補習で行けなくなり、ことりも急用が出来たと言って慌てて帰っていき、今日の練習は中止という事で海未と弓道部にいった為、束は何にもやる事が無いまま校門前にいた。相変わらず他の生徒達からは怪しがられているのでいつまでもここにはいられない。

束「このまま帰るか・・・ん?」

帰ろうとする束だったが校門から出ていく人影の中に顔見知りを見つける。

束「おーい!凛ちゃーん!」

凛「?今誰か凛の事呼んだ?」

束が大声で名前を呼びながら近づくと向こうも気づいたようで手を振る。

凛「あ!お兄さんだにゃー!こんな所で何してるのー?もしかして覗き?」

束「冗談でもそんな事は言うな!」

凛「だって皆言ってるよー?あのお兄さんは・・・」

束「も、もういい!聞きたくない!」

凛「そんな事よりお兄さん、かよちん見なかった?何処にもいなくて・・・」

束「そんな事って・・・。花陽ちゃんなら見てないぜ?帰る約束でもしたのか?」

凛「そうじゃないんだけど・・・最近かよちんの様子が変なんだにゃー」

束「変?」

凛「うん。授業中も上の空だし、なんか迷ってるみたいで・・・」

束「迷ってる?・・・そっか・・・」

花陽がまだ自分の誘いの事を考えていてくれているのが分かり、少し安堵する束。

凛「お兄さん、何か知ってるの⁉︎」

束「あ、いや?でも多分それは花陽ちゃん自身で解決するから大丈夫だと思うぜ?」

凛「ダメだよ!かよちんは迷うとずーっと迷っちゃうから決める時はパッと決めてあげたほうがいいの!」

束「・・・もしかして、今までもそうやって?」

凛「そうだよ!凛が決めてあげないとかよちんはずーっと迷っちゃうからね!」

恐らく花陽の消極的な性格にはこれも関係しているのだろう。

束「なるほどね・・・。でも多分、今回はそれじゃあ駄目なんだよ」

凛「・・・え?」

束「友達を引っ張ってあげる事ももちろん大事だけどさ?それだけじゃ駄目なんだよ。それは・・・引っ張られて踏み出した一歩は自分の意思で踏み出した一歩じゃないから・・・」

凛「お兄さん何言ってるの?意味がわかんないよー!」

言ってる事の意味がわからずやきもきするのか凛の顔が段々不機嫌になっていく。

束「とにかく、今回の事は花陽ちゃん自身の決断を待ってあげようぜ?友達ならな」

凛「凛はかよちんと小さい頃からずーっと一緒だったんだよ⁉︎かよちんの事ならお兄さんより友達の凛のがよくわかってるにゃ!」

束「わかってないのはそっちだろ!」

凛「わかるよ!もう!いい加減にしないと怒るにゃー!」

よほど頭にきてるのだろう。手をバタバタさせながら束に食ってかかる凛。

束「はぁ・・・仕方ない。それじゃ、こういうのはどうだ?俺と凛ちゃんで勝負をして、凛ちゃんが勝ったら花陽ちゃんの悩みが何か教えて俺はもう干渉しない」

凛「凛が負けた時は・・・?」

束「そうだな・・・その時は・・・μ’sに入ってアイドルをやって貰おうかな?」

 

 

 

 




バーッと書いてたらいつもより少し多めに書いてました
感想とかあると嬉しいです


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第5話 勇気の魔法 その3 “fromまきりんぱな”

花陽のこれからの事で対立した束と凛。言い争っても拉致があかないので、勝負で決める事になった。その勝負とは・・・

束「最初に言っておく!俺はかーなーり!強い!」

凛「凛だってスポーツなら自信あるよ!絶対負けないにゃー!」

音ノ木坂学院から少し離れた所にある公園。そこには一箇所だけバスケットのゴールが設置されている。勝負はこのバスケットゴールを使用した1on1で行う事になった。

凛が勝てば束は花陽に関する事から一切手を引く。負ければ凛がμ’sに加入する。という約束だ。

・・・最も、束はこの勝負の結果だけで凛をμ’sに誘うつもりも無いのだが。

束「じゃ、俺から行くぜ?かつて『東洋の魔法使い』と呼ばれた俺の実力を見せてやる!」

凛「それはバレーだにゃ!」

束は(魔法で)用意したバスケットボールをドリブルしながらゆっくりと走り出し、ゴール下にいる凛に向かっていった。

 

 

 

一方その頃、花陽は真姫の家の前にいた。

花陽「お、大きいなぁ・・・」

豪邸と呼ぶにふさわしいその外観に圧倒されつつも花陽はインターフォンを鳴らす。すぐに若い女性の声が聞こえる。

「はい?どちら様でしょうか?」

花陽「えっと・・・西木野さんのクラスメイトで小泉花陽といいます。西木野さんの生徒手帳を拾ったので届けに来ました。西木野さんは帰っていますか?」

「あら、そうなの?真姫はまだ帰ってきてないの。もし良かったら上がって待っていて貰えるかしら?」

花陽「は、はい!お邪魔します・・・」

真姫が帰って来るまでの間、リビングで待たせてもらう事になった花陽。初めて来る場所に緊張しているからかソファーに座りソワソワしていると真姫の母親がお茶とお菓子を用意してくれた。

真姫の母「でも嬉しいわ。真姫ちゃんのお友達がきてくれるなんて。あの子、高校での話とかしてくれないから」

テーブルにお茶を置きながらそう言う真姫の母。その時遠くでドアの開く音がした。

真姫の母「あら、帰って来たみたいね。おかえりなさい真姫ちゃん。お友達が来てるわよ」

真姫「友達?・・・!あなた・・・」

玄関で母に迎えられた後リビングに来た真姫は花陽の姿を見ると少し驚いていた。花陽も真姫に対し小さく会釈を返した。

 

 

 

 

一方その頃、束と凛のバスケット1on1対決では・・・

束「くっ!速い!」

凛の予想以上の身体能力に束は苦戦していた。正確には別の事に意識を向けていた為、動きにキレがないのが原因なのだがそんな事は御構い無しに凛は攻勢をかけてくる。

凛「取ったにゃ!」

バシィッ!

束「ッ⁉︎しまった⁉︎」

一瞬の隙を突かれ、束はボールを叩き落とされてしまう。

攻守が交代し、凛がドリブルをしながら束がゴール下に着くのを待つ。

凛「ふふーん!やっぱり凛のが強いみたいだね!」

束「・・・・・」

束は黙って凛をジッと見る。

凛「な、何?そんなジロジロ見ないで欲しいにゃ・・・」

先程の勝負中からずっと束が凛の事を見つめるのでそれが気になってしまう凛は段々恥ずかしくなってきてしまい顔がみるみるうちに赤くなっていく。

凛「も、もう!さっきからずーっとコッチ見て何なのー!」

束「・・・・・」

凛を問いかけにも答えず束は只ジッと凛の事を黙って見つめるのであった・・・。

 

 

 

 

西木野家 リビング

テーブルを挟んで向かい合って座る花陽と真姫。最初は何とも言えない微妙な沈黙があったがやがて花陽が切り出す。

花陽「あの・・・西木野さん、コレ・・・西木野さんのだよね?」

花陽は生徒手帳を真姫に渡す。

真姫「コレ・・・何処で・・・」

花陽「μ’sのチラシが置いてあった所に落ちてたの。・・・西木野さん、スクールアイドルに興味あるの?」

真姫「ヴェェ⁉︎な、なんで私が⁉︎」

花陽「μ’sのチラシ、持って行ってたの見たから・・・。それに西木野さん作曲も出来るし、歌も上手だから、アイドルになったら・・・カワイイだろうなぁ・・・って」

真姫「わ、私が・・・カワイイ?・・・あ、あなたはどうなのよ?アイドル、やりたいんじゃないの?」

花陽「そんな!花陽なんかじゃムリですよ!おっちょこちょいで恥ずかしがり屋で・・・声も小さいし・・・」

真姫「あなた、声は良いんだから発声の仕方さえちゃんとすれば、歌だって上手くなって自信がつくと思うわ」

そう言うと真姫はソファーから立ち上がる。

花陽「西木野さん?何処に・・・」

真姫「私の部屋よ。言ったでしょ?発声の仕方をちゃんとすれば良くなるって。ちょっとだけなら練習に付き合ってあげてもいいわ。ほら」

そう言って真姫は花陽の手をとる。

花陽「え?で、でも・・・」

真姫「やらないでジーッとしてても、ドーにもなんないでしょ?まずはやってみてそれから考えても遅くはないわ」

花陽「西木野さん・・・どうしてそこまで・・・」

真姫「・・・私の曲、聴きたいって言ってくれたから・・・」

真姫が花陽に聞こえないくらいの小さな声でポツリと言った。脳裏にはμ’sのファーストライブの時の光景が蘇る。

花陽「え?」

真姫「な、なんでもない!ほら、時間無いんだから急ぐわよ!」

 

 

 

 

公園 バスケットゴール前

凛「うぅ〜、何なのにゃ〜?ずーっとコッチ見て黙ってるにゃ〜?」

束の視線に完全にペースを乱され動きが悪くなる凛。一方束は凛の事を目で追いながらもプレーそのものは出来ており、徐々に点差が開き始める。

束「よっと!」

凛「ああっ⁉︎」

最後は遠方からのスリーポイントシュートが決まり決着がつく。

束「勝負あり、だな。俺に勝とうなんざ・・・二万年早いぜ」

某光の巨人よろしく右手を前に突き出しながら決めポーズを取る束。

凛「だってアレはお兄さんが凛の事をずっと見つめるからだもん!あんなにジッと見られたら・・・恥ずかしいにゃあ・・・」

顔を真っ赤にしながら俯く凛。どうやらそういう事には耐性が無いらしい。

束「?ああ、悪い悪い。つい見とれちゃってな」

・・・実は束がこのバスケット1on1対決を行なった理由は

凛の身体能力を確かめる為であった。反射神経やとっさの判断能力、瞬発力、ステップやターンなどの動き、そして長時間動けるスタミナ。ダンスに必要な技術をどれくらい持っているかを確認する為、束はずっと凛の動きを見ながらプレーをしていたのだった。途中でどういう訳か動きが極端に悪くなったがそれ以前は流石の身体能力という事でその鮮やかな動きに見とれていたのは事実だった。束は改めて、凛をμ’sに誘おうと思ったのだが・・・

凛「ッ⁉︎み、見とれ?え?見とれちゃってって・・・」

凛の赤面が最高潮に達しそして・・・

凛「にゃああああっ!」

そのまま叫びながら走り去ってしまった・・・。

束「あ!おい!待てよ!約束はどーすんだよー!」

束が大声で呼ぶが凛が帰ってくる事は無かった・・・。

 

 

 




さーてこの後どーしよ・・・(ノープラン)


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第5話 勇気の魔法 その4 “fromまきりんぱな”

一年生編クライマックスです。
拙い文章ですがよろしくお願いします


束「はぁ〜・・・」

穂乃果の母「束くん、お店番している時は溜息つかないでちょうだい?お客さんへの印象悪いから」

束「あ、すいません」

昨日のバスケット対決で凛に逃げられてしまった束。いままでμ’s勧誘にことごとく失敗している為、この先どうすればいいかで悩んでいた。

束(まさかあそこで凛ちゃんが逃げ出すとは想定外だったな・・・なんか顔赤かったし熱でもあったのか?・・・それよりメンバーどうするか・・・思い切って希ちゃんとか誘ってみるか?)

穂乃果の母「束くん!」

束「へ?あ、はい!」

穂乃果の母「大丈夫?まだ調子良くないんじゃないの?なんかうわの空だし・・・。今日はもう上がっていいからゆっくり休みなさい」

束「でも・・・」

穂乃果の母「休みなさい。今日はそんなに忙しくもないし、あなたの身体の方が大切だわ」

束「・・・わかりました」

 

 

 

音ノ木坂学院

花陽は自分の席でμ’sのメンバー募集のチラシを見ていた。昔からアイドルに憧れていていつかアイドルになりたいと思っていた。それでも自分に自信が持てず踏み出せなかった。しかしそんな自分に手を差し伸べてくれた人、応援してくれる人に出会った事で彼女の中で何かが変わり始めていた。

凛「おっはよー!かよちん!何見てるの?」

花陽「きゃあ!・・・凛ちゃん、おはよう」

後ろから凛が花陽に話しかける。花陽も驚くがすぐに相手が凛だとわかり笑顔で挨拶を返す。凛は花陽の持っていたチラシを目にするが昨日の事を思い出してしまったのか顔が赤くなりその場で俯いてしまう。

凛「そ、それは・・・。かよちん、μ’sに入ってアイドルになるの・・・?」

花陽「え⁉︎え・・・と・・・まだ決めた訳じゃないんだ・・・けど・・・」

気持ちはとうに決まっている筈なのだがいざ聞かれると伝える事が出来ず、こちらも俯いてしまう。お互いに恥ずかしさで沈黙してしまう。

真姫「何してるのよ?二人で見つめあっちゃって・・・」

後から教室に来た真姫がに声を掛ける。

花陽「あ、西木野さん、おはよう。昨日はありがとう」

真姫「別にいいわよお礼なんて・・・。それよりどうするの?今日行くの?」

花陽「えーと・・・その・・・あの・・・」

モジモジしている花陽を見て真姫が溜息をつく。

真姫「はぁ・・・まだ恥ずかしがってるの?言ったでしょ。自信を持って行けば大丈夫だって。・・・まぁ、どうしてもって言うんなら一緒に行ってあげてもいいけど・・・」

真姫が顔を背けながら花陽に言う。そこでやり取りをずっと見ていた凛が・・・

凛「西木野さん!何の話をしてるの!かよちんは今凛と話してたんだよ!」

途中で話に割って入り、尚且つ花陽と親しげに話す真姫に対し凛は不快感を露わにする。

真姫「な、何よ!私はこの子がアイドルになりたいって言うからアドバイスをしてあげてたのよ!」

凛「やっぱりかよちんはアイドルになりたかったんだね!だったら先輩達の所に行こう!凛が一緒に行ってあげる!」

そう言って凛は花陽の手を掴んで連れて行こうとする。もはや自分がさっきまで恥ずかしがっていた事も忘れている。

真姫「待ちなさい!無理矢理連れて行っても意味が無いわ!この子が自分からやりたいって言わないと!」

凛「かよちんは昔からずっと迷っちゃうから決める時はパッと決めてあげた方が・・・」

そこで凛は昨日、束に言われた事を思い出す。

束『友だちを引っ張ってあげる事も大事だけどさ?それだけじゃあ駄目なんだよ。引っ張られて踏み出した一歩は自分の意思で踏み出した一歩じゃないから・・・』

凛(もしかして・・・お兄さんの言ってた事って・・・)

束の言葉の意味を悟り、凛は引っ張っていた花陽の手を離す。

花陽「凛・・・ちゃん?」

凛「・・・ねえ、かよちん。かよちんは・・・スクールアイドルに・・・なりたいの?」

凛は花陽の事を見つめながらゆっくりと尋ねる。花陽は始めは中々言い出せない様子だったが、やがて凛の事を見て答える。

花陽「・・・私、昔からアイドルが大好きでいつか本物のアイドルになれたらいいなって思ってて・・・それは、今でも変わらない。だけどね?もし、もしもだけど・・・」

花陽はそこで一度声が小さくなり話すのが止まってしまうが再び声を出して凛に伝える。

花陽「もし、私がスクールアイドルをやりたいって言ったら・・・凛ちゃんも一緒にスクールアイドルになってくれる?」

凛「凛が・・・スクールアイドルに?」

それは昨日束からも言われた言葉でもあった。

凛「でも、凛はあまり女の子らしくないし・・・スカートとかきっと似合わないよ!」

花陽「花陽はね?凛ちゃんに感謝してるの。明るくて、優しくて元気一杯で、いつも隣にいてくれて花陽の事を助けてくれて・・・一緒にいると元気が貰えて笑顔になれるから・・・」

凛「かよちん・・・」

花陽「アイドルもね、見てると元気が貰えるんだよ。ステージの上で歌ったり、踊っている姿が可愛くてキラキラしてて・・・それを見てるだけで不思議と元気が貰えて笑顔になるの。だから凛ちゃんもきっとそんな可愛くてキラキラして、皆に元気をくれる素敵なアイドルになれると思うんだ」

凛「凛が・・・アイドルに・・・」

花陽「だから・・・凛ちゃんも一緒に!スクールアイドルになってくれますか?凛ちゃんと一緒なら・・・花陽ももっと頑張れると思うから!」

花陽はそう言って手を差し出す。凛は最初は躊躇っていたが花陽の言葉を聞いて心が決まったのかその手を取る。

その様子を黙って見ていた真姫だったが

真姫「ほら、二人共、早く屋上に行きましょ?先輩達帰っちゃうわよ?」

凛「西木野さん?」

真姫「私もついて行ってあげるわ。・・・勘違いしないでよ?私は別にアイドルになりたい訳じゃないんだから」

真姫はそう言って顔を背けると先にスタスタ歩いて行ってしまった。その様子を見た花陽と凛はお互いクスッと笑いながら後を追いかけた。

 

 

 

 

音ノ木坂学院 屋上

束「はぁ〜・・・」

放課後の練習に顔を出した束だが相変わらず溜息ばかりで

元気がない。

海未「束さん、そんなに落ち込まないでください。部員探しは元々は私達の仕事ですし・・・」

束「いや・・・心当たりがあるなんてデカイ口叩いといて・・・面目ねぇ・・・」

ことり「そんなに急ぐ事でもないですから・・・。ゆっくり探していきましょ?」

その時屋上の扉が開く音がして、4人はそちらをみる。

束「花陽ちゃん?凛ちゃんに真姫ちゃんも・・・」

花陽は一度凛達の方を見た後、意を決したのか穂乃果達の前まで来るとハッキリとした声で自分の意思を伝える。

花陽「私、一年の小泉花陽といいます!アイドルにずっと憧れていて・・・声も小さくて恥ずかしがり屋でドジな所もありますが・・・アイドルへの思いだけは誰にも負けません!だから・・・私をμ’sに入れてください!お願いします!」

花陽はそう言って深く頭を下げる。少しの沈黙の後、花陽がゆっくり顔をあげると、穂乃果が手を差し伸べていた。

穂乃果「大歓迎だよ!よろしくね、花陽ちゃん!」

穂乃果が笑顔で花陽を迎え入れる。

凛「良かったね!かよちん!」

花陽「凛ちゃん!」

凛も花陽の事を自分の事の様に喜び、そしてそのまま花陽の所に行く。

凛「かよちん、凛もやるよ!かよちんが自分で一歩踏み出したんだもん!凛も一緒に頑張るにゃー!」

凛は穂乃果の方に向き直り、加入の意思を伝える。

凛「一年の星空 凛です!これからよろしくお願いします!先輩!」

穂乃果「うん!凛ちゃんだね!こちらこそよろしくね!」

凛「お兄さんの事はまだちょっと恥ずかしいけど、負けないように頑張るにゃ!」

束「へ?俺?」

凛「だって昨日ずーっと凛の事ジロジロ見てたでしょ?」

穂乃果「え、えぇーっ⁉︎」

海未「束さん・・・あなたまさか・・・」

ことり「学生さんとそういう事をするのは・・・大人としてよくないとことりは思うな?」

束「いやいやいや!ちょっと待って⁉︎皆なんか誤解してる!俺が見てたのは凛ちゃんの身のこなしの良さであって決してやましい気持ちで見てた訳じゃ・・・」

凛「そ、そうなの⁉︎」

弁明をする束と真相を知り、自分の勘違いだとわかり一気に恥ずかしさから顔が真っ赤になる凛。少し涙ぐんでいる。

穂乃果「あー!お兄ちゃんが女の子を泣かしたー!」

海未「あなたは最低です」

ことり「これは責任を取らないといけませんね♪」

束「俺か⁉︎俺のせいなのか⁉︎」

普段イジられている事もありここぞとばかりに集中砲火を浴びせる二年生組。しばらく顔を赤くして黙っていた凛だったが・・・

凛「よくも凛の純情をぉぉぉ!もう怒ったにゃあぁぁぁっ!」

勢いよく束に飛びかかる凛。

束「ぐふっ⁉︎ちょ!凛ちゃんやめてー!引っ掻かないでー!」

凛「にゃー!」

そんなやり取りを黙ってみていた真姫。その顔は本人でも知らずのうちに微笑っていた。そこに海未か声を掛ける。

海未「それで?あなたはどうするんですか?」

真姫「えっ⁉︎」

ことり「メンバーはまだまだ募集中だよ?」

真姫「わ、私は・・・」

言葉に詰まる真姫に、凛に馬乗りされたままボロボロになった束が声をかける。

束「真姫ちゃん、何も俺は作曲が出来るってだけで誘った訳じゃないんだぜ?君が歌やピアノが好きだと、音楽が好きだと思ったから誘ったんだ」

真姫「わ、私は別に好きなんかじゃ・・・」

束「真姫ちゃんの家は病院だろ?なら大学は音大じゃなくて医大に行くつもりなんじゃないか?医大の勉強の事はよくわからないけど、大学に行ったら音楽が続けられないかもしれない。だから毎日放課後に音楽室に来ていたんじゃないか?」

真姫「そ、そんな事・・・」

束「少なくとも、音楽が好きだって事は俺にもわかるさ。でなきゃ毎日やろうだなんて思わないだろ?」

束に指摘された真姫は顔を背けてしまう。

束「好きだっていう気持ちを隠す必要なんてないんだよ。少なくともここにいる人達は、受け入れてくれる筈だ」

穂乃果「西木野さん」

穂乃果が真姫の前に来て手を差し出す。

穂乃果「一緒にスクールアイドル、やってみよう?やっぱり私、西木野さんが良いの!」

花陽「西木野さん!」

凛「西木野さん!」

花陽と凛も真姫に手を差し伸べる。少しの間、黙っていた真姫だったが・・・

真姫「はぁ・・・わかったわよ。ま、確かに私じゃないと作曲は出来なさそうだし」

そう言って真姫は穂乃果達の手を取る。

花陽「ありがとう!西木野さん!」

真姫「・・・真姫よ」

花陽「え・・・?」

真姫「名前で・・・呼んで。私も・・・そうするから・・・花陽」

花陽「・・・うん!よろしくね!真姫ちゃん!」

凛「わぁ〜い!真姫ちゃーん!真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃーん!」

真姫「ちょっ、くっつかないでよ!凛!」

一年生の様子を見ながらとりあえずホッとする束。顔中に引っ掻き傷が出来ている。

穂乃果「大丈夫?お兄ちゃん?」

束「まぁ・・・なんとかな」

穂乃果「ありがとうね。穂乃果達の為に、また頑張っちゃったんでしょ?」

束「そんなんじゃねぇって」

そう言いながらも束の顔はとても嬉しそうで、そんな束の顔を見ながら穂乃果もまた同じように嬉しそうに笑うのだった。

 

 

 

 




という訳で一年生編とりあえず終了です。
結局アニメを復習する事なく記憶を頼りに進めたので細かな部分は異なってるとは思いますが・・・
今回の一年生編では地の文での説明が下手だなぁと思い知らされました・・・


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幕間 レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!What's The game⁉︎ その1 “fromオリジナル”

真面目な話が終わったので一年生組メインの日常編です。
タイトルの通りライダーネタです。
原作関係なく自由に書けるって素晴らしい



花陽達一年生組がμ’sに加入して数日が経った。今日は仮部室(束の部屋)で話し合いを行う為、花陽、凛、真姫の3人は束に連れられて穂むらに来る事になった。

因みに穂乃果達は後から来る事になっている。なんでも穂乃果の数学の小テストの結果が(かなり)悪かったらしく、また放課後に残って補習を受けているのでそれに付き合っているそうだ。

束「ただいまー」

雪穂「あ、束兄ちゃん。おかえりー」

束が帰宅すると居間から穂乃果の妹の雪穂が声をかける。

雪穂「お母さんがおやつ戸棚にあるって」

束「あー、後でもらうよ。知り合いが一緒に来てるからそのまま二階行くわ」

そう言って束は玄関の方へ手招きをした後、二階に上がっていった。その後に続いて3人も居間の前を通り階段へ向かう。

花陽「お、お邪魔します・・・」

凛「お店の中に入るなんて初めてだにゃー!」

真姫「ふーん、意外と中は広いのね」

居間の前を通過した3人を見た雪穂は・・・

雪穂「お、お母さーん!束兄ちゃんが知らない女の子を3人も部屋に連れ込んだー!」

束「誤解を招く言い方はやめろぉぉぉっ!」

 

 

 

仮部室(束の部屋)

真姫「いつもあんな感じなの?」

束「俺だって別に好きであんな扱い受けてる訳じゃねぇよ・・・。俺ってそんなに信用無いの?」

真姫「無いわね」

凛「無いにゃ」

花陽「無いです」

束「は、花陽ちゃんまで・・・」

女性陣からの散々な評価に落ち込む束。

真姫「そんなどうでもいい事より今は次の活動についてよ」

束「どうでもいいって・・・」

花陽「スクールアイドルというからには学校内である程度は活動をしないといけないもんね」

凛「入部してからずっとランニングや筋トレばかりで飽きたにゃ〜」

束「まぁ基礎体力は大事だし、無駄になる事はないけどな。確かにそれだけやっててもモチベーションは上がらないか・・・」

その時、束の携帯が鳴る。

束「はいもしもし。ああ、海未ちゃん?・・・そっか。わかった」

そう言って束は携帯を切る。

花陽「海未先輩からですか?」

束「ああ、なんでも穂乃果の補習がまだ終わりそうにないから今日の話し合いは日を改めましょうって事らしい」

凛「えぇ〜⁉︎」

真姫「ま、確かに私達だけじゃ決められないものね。にしても・・・部長がそんなんで大丈夫なの?」

束「大丈夫!・・・だと思う・・・多分・・・」

真姫「言うんなら自信持って言いなさいよ・・・」

凛「じゃあ今日はもう解散?」

花陽「そういう事になる・・・かな?」

束は少し考えた後いきなり立ち上がる。

花陽「ど、どうしたんですか?」

束「せっかく集まったんだ。何かしないと勿体無いだろ?」

真姫「でも何が出来るって言うのよ?」

束「何も練習や話し合いばかりがやる事じゃないだろ?」

一年生組「?」

 

 

 

 

花陽「ここって・・・」

真姫「ゲームセンター?」

4人は穂むらを出て秋葉原にあるゲームセンターに来ていた。放課後の時間である事もあってか学生の姿も多い。

凛「ここで一体何をするんだにゃ?」

束「遊ぶんだよ」

花陽「遊ぶ・・・だけですか?」

束「遊ぶだけだ。ほら、花陽ちゃんと凛ちゃんは幼馴染だけど、俺や真姫ちゃんなんかは会って日も浅いだろ?お互いの事を知るのも大切だから今日はレクリエーションで親睦を深めようってわけ」

花陽「確かにグループである以上、仲間同士の連携は大事ですからね」

真姫「まぁ言ってる事はわかるけど・・・」

凛「じゃあ思いっきり遊ぶにゃー!」

凛はそう言ってゲームセンターの中に走っていく。

花陽「あ!凛ちゃん待って〜!」

花陽も慌てて後を追いかける。残された束と真姫。

束「やっぱこうゆう所はあまり来ないのか?」

真姫「まぁね。・・・でも部活だっていうんなら行かなきゃいけないでしょ」

そう言いながら店内に入る真姫は店内にあるゲーム筐体などをキョロキョロ見回しており、まるで珍しいものを見るようであった。どうやら興味はあるようだ。

束「やれやれ・・・素直じゃないねぇ・・・」

苦笑しながら束も3人の後を追いかける。

 

 

 

3人はゲームセンター内のゲームを色々見て回る。遊ぶゲームの種類は特に決まりはないがなるべく対戦や協力プレイが出来るものが望ましいという事だけ伝えておいた。

その結果・・・

凛「お兄さん!これで勝負だにゃあ!」

束「俺かよ⁉︎」

凛はサムライのような風貌のロボットがスポンジ製の剣を持って立っているゲームを指差す。

束「『ギリギリチャンバラ』か・・・」

『ギリギリチャンバラ』とはプレイヤーの反射速度を競うゲームで簡単に言えば、サムライ型ロボットの振り下ろす剣を受け止めるか食らう前に攻撃するかで対処するゲームである。

当然、食らう前に攻撃できた方が高いスコアが狙えるがレベルが上がるにつれて振り下ろす速度も上がる為、ハイスコアを狙うのはかなり困難になる。

束(無難に勝ちに行くなら高レベルでは防御に徹するのが定石だが・・・。凛ちゃんなら反応出来てもおかしくはないか・・・。上手い事自分のフィールドに持ってきたな)

凛「じゃあ凛から行くよ?」

凛はコインを入れてフェンスの中に入ると中に置いてある

ヘルメットを被り、プレイヤー用のスポンジ製の剣を持つ。準備が出来たのを確認し、ロボット、チャンバラゲーマーが動き出す。

『ギリ・ギリ・ギリ・ギリ!チャンバラ〜♪』

特徴的な音楽と共にゲームが始まる。最初・・・レベル1では子どもでも簡単に反撃が狙える程のゆっくりとしたスピードで剣が振り下ろされる。

凛「にゃー!」

バシィッ!

凛がチャンバラゲーマーの頭に剣を打ち込みレベル1はクリアとなり、画面にスコアが表示される。

剣を打ち込むチャンバラゲーマーの部位によってもスコアに差が出るようになっており一番高いのが頭、次に胴、一番低いのが腕となっている。スコアの数値に応じてレベルが上がる為、高いスコアを狙い続ければ自然と難易度が跳ね上がっていく。

バシィッ!

凛「にゃ⁉︎・・・セ、セーフ・・・」

レベルが50を超えた辺りでそれまで攻めていた凛に防御が見え始める。もうかなりの速度で剣は振り下ろされているのだがそれをとっさに受け止めるのは流石の反射神経である。しかしレベルが60を超えると完全に受けに回るようになりレベル72で思い切り頭を引っ叩かれゲームオーバーとなる。

凛「ヘ、ヘルメット越しでも痛いにゃ・・・」

束「そりゃ、あの速度じゃあな・・・」

頭を抑えながらフェンスを開けて出てきた凛。入れ替わるように束が入る。

束「さて、コイツも久しぶりだからな・・・。どこまでやれるか・・・」

ゲームが始まり、最初は凛と同じように順調にクリアしていく。やがてレベル50に達し、剣のスピードが速くなる。

すると・・・

バシィッ!

チャンバラゲーマーの剣が束のヘルメットを捉えた。

凛「あれ⁉︎もうお終い⁉︎」

凛はあまりの呆気なさに驚くがどうも様子がおかしい。

頭を叩かれたのにいつまで経ってもゲームオーバーの音が鳴らないのだ。

凛「ど、どういう事?」

束「ゲームオーバーじゃないからに決まってるだろ」

束は引っ叩かれた頭を抑えながら剣を構え直す。

凛「ゲームオーバーじゃない?だって頭叩かれてたにゃ!」

束「確かにこの『ギリギリチャンバラ』の敗北条件はヘルメットを叩かれる事だが、勝利条件を忘れてないか?」

凛「勝利条件?攻撃を受け止めるか・・・攻撃を受ける前に反撃・・・あっ!」

束「そう。チャンバラゲーマーの攻撃が終わる前に反撃を打ち込む事が出来ればたとえその後ヘルメットを叩かれても認識されないんだ。すなわち、『肉を切らせて骨を断つ』。引っ叩かれるのを覚悟した上で先に反撃する事のみに専念しているのさ」

凛「・・・でもアレ、スポンジ製とはいえ相当痛いよね?」

束「・・・・・」

束は黙って剣を構える。

凛(やっぱ痛いんだ・・・)

その後も束は剣で頭を思いっきり引っ叩かれながらも一瞬の隙を見逃さず的確にチャンバラゲーマーの頭に先に剣を打ち込んでいく。そしてついにレベル99に到達し・・・

束「はぁ・・・はぁ・・・これで・・・終わりだぁぁぁっ!」

バシィィィィンッ!

今までで一番大きな音がしたかと思うと束とチャンバラゲーマーがお互いの頭部に剣を叩きつけていた。あまりに速すぎて打ち込む瞬間は全く見えず、勝負は一瞬でついてしまった。その結果は・・・

0.03秒差でチャンバラゲーマーのが速く束はゲームオーバーになってしまった。

束「み、見事・・・」

そう言い残して散々頭を叩かれ続けた束は倒れてしまった。

凛「お、お兄さーん!しっかりするにゃー!」

凛にズルズルと引きづられながら束は『ギリギリチャンバラ』を後にした・・・。

 

 

 




登場するゲームの内容は完全な俺設定なのであまり深く考えないでください


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幕間 レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!What's The game⁉︎ その2 “fromオリジナル”

束「痛てて、まだ頭がクラクラする・・・」

『ギリギリチャンバラ』をやった後、凛と別れた束。他のメンバーを探していると、花陽を見つけるがどうも様子がおかしい。見ると他校の男子学生らに囲まれており、本人の人柄もあってか断りきれず困り果てていた。

束「ったく、なんでこの作品に出てくる男はろくな奴がいないんだよ・・・」

メタい発言をしながら束は気づかれない様に静かに近づくと、物陰に隠れて指をパチンッ!と鳴らす。

途端に男子学生達のズボンが一斉に落ちてしまう。突然の事態に困惑した男子学生達はズボンを抑えながら慌てて何処かへ行ってしまった。

束「魔法でズボンのベルト切ってやったぜ。ざまぁみろ」

そう呟いた後、束は何食わぬ顔で花陽の所に行く。

束「花陽ちゃん大丈夫か?なんか人が集まってたみたいだけど?」

花陽「束さん!はい、一緒に遊ぼうってずっと誘われてて困ってたんです。でも、突然・・・ズ、ズボンが落ちて・・・」

束「天罰だよ天罰。アイドルにちょっかい出そうとしたからバチが当たったんだ」

花陽「そ、そうなんですかね?・・・そっか、花陽はもうアイドルなんですね・・・」

束「アイドルらしい事まだ何もしてないがな」

花陽「そ、それを言わないでください〜!」

束「冗談だよ、まだ入って数日だし。それより何かゲームやらないのかい?協力でも対戦でも付き合うぜ?」

花陽「そ、そうですね!・・・え〜と・・・あ、アレがいいです!」

花陽が指差したのは5つのボタンが並んで配置されたリズムゲームだった。

束「今度は『ドレミファビート』ね・・・」

花陽「最近スクールアイドルの新曲も追加されたらしいのでやってみたかったんです!」

『ドレミファビート』はリズムゲームの1つで筐体の画面に表示された縦の五線譜に沿って上から落ちてくるアイコンに合わせて画面下に設置されている対応したラインのボタンを押すゲームである。アイコンの種類に合わせて同時押しや長押しなどを押し分けるのだが難易度が高い程コレが難しくなる。

束「花陽ちゃん、難易度はどこまでいける?Proくらいならいけるか?」

花陽「一応Specialまでいけます!フルコンボ出来るかは微妙ですが・・・」

因みにSpecialはこのゲームにおける最高難易度である。

束「俺も似たようなもんかな・・・楽曲は何に・・・ん?」

難易度選択が終わりプレイ楽曲を選んでいるとある楽曲に目が止まる。

束「花陽ちゃん、コレで勝負しようぜ?」

花陽「え?コレって・・・『START DASH』⁉︎」

束「スクールアイドルの曲でも再生数が多い楽曲は追加される事もあるって聞いてたけどまさかμ’sの曲が入るとはな。どうする?」

花陽「私は構いません。譜面が初見なのでどうなるかわかりませんが・・」

束「そんなの俺だって同じ・・・お?良いタイミングで来たな」

花陽「え?」

束が大声で遠くにいたその人物を呼ぶ。

束「おーい!作曲者ー!」

真姫「作曲者って・・・もしかして私の事?」

呼ばれた真姫が振り返り、束達のところに来る。事情を説明すると・・・

真姫「良いわよ。私が作った曲ですもの、負けるはずがないわ」

自信満々で参加する真姫。

束「じゃ、スコアマッチで始めるぞ」

コインを入れてゲームを始める。

『ド・ド・ドレミファ・ソ・ラ・シ・ド♪OK!ド・レ・ミ・ファ・ビート♪』

特徴的なタイトルコールの後に選択した楽曲『START DASH』が流れ始める。曲に合わせて画面上の五線譜にアイコンが落ちてくる。Specialではアイコンが高速で落ちてくるだけでなく複数のアイコンが不規則に落ちてくる為、それらを瞬時に見分けながらリズムに合わせてのアイコンの種類に応じたボタン操作が求められる。

やがて楽曲が終わりそれぞれのスコアとそれに応じた順位が発表される。

花陽「な、なんとかフルコンボ出来ました・・・」

束「くそ!最後の最後にミスっちまった!」

真姫「・・・・・」

結果は花陽が一位で束、真姫の順だった。

束「じゃ、他のゲームを探しに・・・」

真姫「待って!」

ゲームが終わりその場を離れようとする束と花陽を真姫が止める。

真姫「もう一回!もう一回よ!次は負けないわ!」

花陽「え・・・もう一回?」

束「俺は別に構わないけど・・・花陽ちゃんは?」

花陽「私もいいです」

真姫「見てなさいよ!次こそ勝ってやるんだから!」

再び3人はゲーム筐体の前に並ぶ。

 

 

 

 

 

真姫「はぁ・・・はぁ・・・み、見たでしょ!コレが私の実力よ!」

束「た、確かに勝ったけどさ・・・」

スコアマッチの結果発表画面では真姫がぶっちぎりのトップでクリアしていた。

真姫「私が作曲したんだもの・・・こ、こんなの・・・訳ないんだから・・・」

そう言いながら真姫の手はプルプル震えており・・・、真姫だけではない。束も花陽も同様に手が小刻みに震えていた。花陽に至っては立っていられず筐体に寄りかかっていた。

束「ま、まさか自分が勝つまでやめないとは・・・」

花陽「さ、さすがにSpecialを50回連続プレイは・・・限界です・・・」

真姫「ちょっと・・・だらしないんじゃ・・・ない?こ、これくらい・・・で・・・」

そう言いつつも真姫も足下がフラフラしている。

束「まさか真姫ちゃんがここまでやるとは思わなんだ・・・」

真姫「私の作った曲よ・・・コンティニューしてでも・・・クリアしてやるんだから!」

花陽(真姫ちゃんって・・・もっとクールな性格だと思ってました・・・)

束(ああ、結構負けず嫌いみたいだな・・・。根性もあるし、もしかしたら化けるかもしれないぞ・・・)

まともに立っていられず筐体に寄りかかりながらそんな話をヒソヒソとする束と花陽だった・・・。

 

 

 

 

予想外に長時間に及んだ『ドレミファビート』も終わり、そろそろ出ようかという話をする3人。しかし凛の姿が見つからず探す事に。ゲームセンターのスタッフに聞いたところ、『猫みたいな女の子』と言っただけで一発で見つかった。

花陽「あ!凛ちゃん!」

真姫「何してるのよ!探したんだから!」

凛はダンスゲームをプレイしていた。もう何回もプレイしているらしく汗ビッショリになりながらプレイしていた。

束「凛ちゃん?そんなに汗だくになるまでソレやってたのか?」

凛「だって、アイドルになるからには踊りが上手い方がいいかな?って思ったんだけど・・・中々抜けないにゃ〜」

凛が指さしたのはダンスゲームのスコアボード。凛自身のスコアも本人の運動神経の良さからかなりのハイスコアでありランキングの2位になっていた。しかしその上にいる1位のプレイヤーは凛はおろか他のプレイヤーとは段違いのスコアを叩き出していた。

花陽「凄い・・・凛ちゃんのスコアも十分凄いのにそれをあんなに超えるなんて・・・」

束「名前は・・・『kira』?確かに凄いスコアだな・・・」

凛「うぅ〜やっぱ届かないにゃ〜」

ゲームが終わり、出てきた凛は悔しそうにボードを見る。

真姫「もう諦めたら?2位でも十分凄いんでしょ?負けず嫌いもほどほどにしないと・・・」

束と花陽が『お前が言うな』的な視線をぶつけるが真姫は気づいていない。

凛「うぅ・・・わかったにゃ・・・」

凛はすっかり意気消沈してしまう。その姿が見るに耐えなかった束は・・・

束「ゴメン皆、ちょっとトイレ」

真姫「このタイミングで?早くしてよね」

トイレに行くと言って束は人混みの中に消えていった。程なくして1人の少女がダンスゲームに挑戦しにきた。

花陽「あ、誰かが挑戦するみたい」

凛「待ってかよちん!あの人って・・・」

2人はその少女に見覚えがあり・・・

真姫「何?知り合いなの?」

花陽「うん。花陽のご飯が猫さんに取られちゃった時に捕まえるのを手伝ってくれた先輩なの」

凛「その猫ちゃんはなんと喋る猫ちゃんだったのにゃ!」

真姫「喋る猫?イミワカンナイ・・・」

そんな会話をしていると少女のゲーム設定が完了したらしく曲が始まる。プレイヤー名には『Tukasa』と入力してあった。

真姫「『Tukasa』・・・どうやら名前は“つかさ”って言うらしいわね」

凛「お兄さんと同じ名前にゃ!」

ゲームが始まるとつかさの様子が一変し、鮮やかでキレのいいダンスを披露する。そのあまりにハイレベルな動きに花陽達を含めた観客は釘付けになる。観る者全てが言葉を失い観入ってしまい、その場にはゲームから流れる曲のみが響き渡っていた。やがて曲が終わりつかさが最後のポーズをキメると観客から一斉に拍手と歓声が湧き上がる。

凛「凄かったにゃ〜!」

花陽「まるでプロのダンサーさんみたい!」

程なくしてスコアボードにスコアが表示される。その結果は・・・

凛「一番だにゃ!」

花陽「凄い・・・あの『kira』って人に勝っちゃった!」

真姫「僅差でギリギリだけどね」

スコアボードでダントツの成績を残していた『kira』を抜いて1位になった少女を一目見ようと3人はゲームステージの方を見るがいつの間にか少女はいなくなっていた。

凛「あれ〜?何処にもいないにゃ〜」

花陽「もう帰っちゃったのかな?」

真姫「あんなダンスが上手いならμ’sに入って貰ったらどう?音ノ木坂の生徒なんでしょ?」

花陽「そうだね!今度聞いてみよう!」

そこに束が戻ってくる。

束「お待たせ!」

真姫「遅いわよ」

凛「凄いモノ見逃したにゃー!」

束「凄いモノ?」

花陽「はい!あの『kira』って人を抜いて1位になった女の子がいたんです!」

束「へ、へぇ〜。そうなんだ、凄いなー」

真姫「・・・なんか反応薄くない?」

束「そ、そんな事ないって!ほ、ほら!もうこんな時間だし帰ろうぜ?」

真姫「ちょっと!押さないでよ!」

束は3人を連れて慌ててゲームセンターを後にした。

 

 

 

束達がゲームセンターを出た後、1人の少女がダンスゲームの前に来ていた。スコアボードを見ると自分の記録が塗り替えられていた。

「プレイヤー名は・・・『Tukasa』?・・・ツカサ、ね?」

遠くから少女を呼ぶ声がする。

「ツバサ!もう行くぞ!」

「今行くわ」

ツバサと呼ばれた少女はもう一度スコアボードを見ながら呟く。

ツバサ「ツカサ・・・いつか直接会ってみたいわね?」

 

 

 

 




次回、満を辞してあの先輩が登場です。


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第6話 ヤザワ作戦 その1 “fromにこ襲来”

ここまで意外と出番の無かった(入れられなかった)先輩がようやく出せました。タイトルは言いたかっただけです。陽電子砲もシールドも出ませんがよろしくです。


一年生の加入から1週間ほど過ぎたある日。束は放課後の練習に参加しない日だったので夕飯の買い物にスーパーに来ていた。基本的には穂乃果の母がいつも作ってくれるのだが忙しい時などは束が代わって作る事も多い。

束「今日は卵と豚肉が安いのか・・・親子丼ならぬ他人丼でもいいかな」

束は手慣れた様子で買い物を済ませレジに向かう。その途中、何やら人が集まるコーナーがあるので覗いてみる。

束「苺か・・・旬の時期が終わったんで値下がりしてるのか・・・そーいや穂乃果が好きって言ってたっけ」

特売で安くなっていた為か集まった人が次々とパックを手にとっていき、パックの山はみるみる内に無くなっていく。

束「あと一個・・・まぁ最近練習頑張ってるし、買っていってやるか」

束は最後の一パックを手に取る。すると・・・

「ああっ⁉︎」

突然聞こえた声に驚き、束の手が止まる。声の方へ振り向くとツインテールの少女がこちらを見ている。急いで来たのだろうか、息を切らしている。

束「えーと・・・持ってく?」

束は持っていた苺のパックを少女に差し出す。

「う・・・い、要らないわよ!別に苺なんて好きじゃないし!そっちが先に取ったんだから持っていけばいいじゃない!」

そう言って少女はそっぽを向くが、チラチラ苺をみている。

束「持っていきなよ。走ってきたって事はどうしてもコレが欲しかったんだろ?」

「走ってないし!別に妹達に買っていってあげようなんて思ってないんだから!」

束「なるほどね・・・」

事情が大体わかった束は少女に苺を譲ろうとするが少女も一歩も引かない。

束「いや、でも・・・」

「いいから持っていって!」

束「しかしだな・・・」

「しつこい!」

束「OK。わかった、こうしよう。ここにコインが一枚あるだろ?コレを上に投げて手の甲でキャッチして、表が出たら君が、裏が出たら俺が持っていく事にしよう。それなら平等だし文句は無いよな?」

「・・・ま、まぁ・・・それなら・・・しょうがないわね・・・インチキとかは無しよ?」

束「怪しいと思うなら君が投げればいいさ」

そう言って束は少女にコインを渡す。その時、束の手が一瞬光りその光がコインに流れ込んだ。

「じゃ、いくわよ」

少女がコインを上に投げ、落ちてきたコインを少女が手の甲でキャッチする。その結果は・・・

束「あちゃー、表か。仕方ない、この苺は諦めるよ」

そう言って束は苺のパックを少女に渡すと足早にその場を去る。

「あ!ちょっと!」

少女が呼び止めようとするが束の姿は人混みの中に消えた。

 

 

 

レジで会計を済ませ、スーパーを出た束。

束「苺はまた今度だな。さて、代わりに何買ってってやろうかな・・・」

そんな事を考えながら歩いていると後ろから先程の少女が追いかけてきた。

「見つけた!待ちなさーい!」

束「ん?君は・・・また君?」

「はぁ・・・はぁ・・・やっと見つけたわ・・・ハイコレ、忘れ物よ」

少女はそう言って先程の苺のパックを束に渡す。

束「それはさっき君が手に入れたじゃんか?」

「でも先に手にしてたのはあなたでしょ?これはやっぱりあなたが貰うべきよ」

束「律儀だねぇ・・・まだ幼いのにしっかりしてるっていうか・・・」

「・・・言っとくけど、私今年で18だから」

束「18⁉︎穂乃果の一個上⁉︎ウソだろ⁉︎」

「なんか文句ある?どうせ私は小さいわよ!」

束「ま、まぁ・・・需要はあるさ・・・多分」

「それどうゆう意味よ!」

すっかり苺の事など忘れて話し込む二人。気がつけば時刻は午後7時を回っていた。

束「っともうこんな時間か。日が伸びてきたから気づかなかったぜ」

「そうね。そろそろ帰らないと・・・」

束「可愛い妹が苺楽しみにして待ってるからな」

「ど、どうして妹がいるってわかったのよ⁉︎」

束「自分でさっき言ってたじゃん・・・。とにかく苺は持っていってやんな。大丈夫、ウチの『妹』は我慢できるからさ」

「う・・・わかったわ。ありがとうね。変なお兄さん」

束「変なお兄さんはやめてくれよ。俺には束って名前があるんだぜ?小さいお姉さん?」

「私にだって にこ って名前があるんだから、小さいお姉さんはやめなさいよ」

束「あいよ。じゃあな、にこちゃん」

にこ「じゃあね、束」

そうして別れの挨拶を済ませると束は帰っていった。

にこ「なんか・・・不思議な感じの男だったわね・・・前にどっかであったかしら・・・?」

 

 

 

その夜、穂むらでは・・・

穂乃果「えぇ〜⁉︎なんで苺買うのやめちゃったの⁉︎」

束「仕方ないだろ。夕飯には関係無いんだし、また今度見てやるよ」

穂乃果「ヤダヤダ!穂乃果は苺が食べたい!」

束「子どもか!駄々をこねるな!いい歳して!・・・全く、にこちゃんの爪の垢でも煎じて飲ましてやりたいぜ・・・」

穂乃果「何か言った⁉︎」

束「何でもねーよ!」

 

 

 

翌朝

束「穂乃果ァ!ウェイクアップ!今日も1日キバっていくぜ!」

穂乃果「・・・なんで今日は朝からそんなハイテンションなの・・・?」

いつものメニューである早朝のトレーニングの為、穂乃果と二人で神社に向かう束。するとことりが既に来ていたが何やら様子がおかしい。

束「おはよう、ことりちゃん。どうかした?なんか向こうをジッと見てるけど・・・」

ことり「あ、穂乃果ちゃんのお兄さん、おはようございます。それが・・・何か誰かがずっと見てる気がして・・・」

ことりの指差す方向を見るが特に変わった所はない。

穂乃果「じゃあ穂乃果、ちょっと見てくるね!」

そう言って穂乃果はことりの指差した場所に向かって走っていく。そして曲がり角を曲がった途端、

穂乃果「うわぁっ⁉︎」

穂乃果の声がしたのでことりと束が走っていくとおでこの所がぶたれた様に赤くなって倒れていた穂乃果を発見する。

束「穂乃果!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

ことりに穂乃果を任せて束は辺りを捜索する。しかし怪しい人影は見つけられなかった。

束「一体誰が・・・」

魔力憑き騒動も最近起こっていなかったのでその可能性も視野に入れ、辺りをもう少し探してみる事にした束。

すると近くの茂みで見覚えのある人影を見つける。

束「待て!・・・あれ?にこちゃん?」

にこ「つ、束⁉︎き、奇遇ね・・・こんな所で会うなんて」

そう言うにこは手に持っていたサングラスとマスクを慌てて鞄に隠した。

束「にこちゃん、この辺で怪しい奴見なかったか?怪しい現象でもいいけど・・・」

にこ「さ、さあ?にこ、今来たばかりだからわかんな〜い」

束「そ、そうか・・・もし、何か変わった事があったら教えてくれるか?それじゃ」

何やら甘い感じの声色で話すにこに多少の違和感を覚えつつも束はにこと別れた。

にこ「な、なんで束がここに・・・?」

 

 

 

 

 

その日の放課後、仮部室(束の部屋)

海未「それで、その怪しい人物にμ’sを解散しろ。と言われたのですか?」

穂乃果「うん。サングラスとマスクをしてたから顔はわかんなかったけど、声は女の子だったよ」

穂乃果の額には絆創膏が貼られていた。

花陽「一体誰がそんな事を・・・」

真姫「もしかしたら他校のスクールアイドルとかじゃないの?私達の人気が出てきたから嫉妬してるとか」

凛「えー!人気者になるのは嬉しいけど、おでこ叩かれるのは嫌だにゃー!」

ことり「穂乃果ちゃんのお兄さんはどう思います?」

束「うん、そうだな・・・とりあえず・・・」

穂乃果「とりあえず?」

束「・・・この部屋に7人は狭すぎるだろぉぉぉっ!」

穂乃果「うわぁっ⁉︎いきなり大声出さないでよ〜。だってしょうがないでしょ?部員を5人以上集めないと部として認めて貰えなくて、部室も貰えないんだから」

束「穂乃果、今この場にμ’sのメンバーは何人いる?」

穂乃果「μ’sのメンバー?えぇと、穂乃果でしょ?海未ちゃんでしょ?ことりちゃんに、花陽ちゃんに、凛ちゃんに、真姫ちゃんで・・・6人!」

束「部として認めて貰う為の人数は?」

穂乃果「5人!・・・あ」

束「早急に部としての申請を取るように」

穂乃果「・・・はい」

 

 

 

 



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第6話 ヤザワ作戦 その2 “fromにこ襲来”

束「決められた〜♪自分のstory〜♪抗うたび〜♪築くhistory〜♪」

鼻歌を歌いながら商品の陳列をする束。外はずっと雨が降り続いておりどうやら完全に梅雨入りしたようである。

穂乃果「ただいま」

束「支え合う〜♪仲間の笑顔が力・・・あ、おかえり」

穂乃果が学校から帰宅するがその顔はムスッといており何やら不満そうである。

束「何かあったのか?」

穂乃果「だって雨で練習出来ないんだもん」

穂乃果は不機嫌そうに居間に上がるとおやつを食べ始める。

束「イライラを食欲にぶつけると後で悲惨な事になるぞ?」

穂乃果「いいの!部室だって貰えないし!」

束「え⁉︎何で⁉︎」

穂乃果「生徒会長が言うにはこの学校には既に『アイドル研究部』っていうのが存在してるから活動内容が似ている部を複数作る事は出来ないって」

束「・・・そー言うのって普通前もって言わないか?部員がいないから認められない。部員が揃っても既に似たような部があるから認められない・・・これじゃただの嫌がらせじゃねぇか!」

穂乃果「やっぱりお兄ちゃんもそう思う⁉︎」

束「思う!」

穂乃果「じゃあ生徒会室に!」

束「殴り込む!」

穂乃果の母「やめなさい!」

バシィッ!

外に飛び出そうとした二人を奥から出てきた穂乃果の母が頭を叩いて止めた。

穂乃果の母「束君まで一緒になってどうするの!あなたは生徒じゃないでしょ!」

束「・・・そーでした」

 

 

 

その夜、束は自室のベッドで解決策を考えていた。現状の問題としては『アイドル研究部』が存在する為、重複するμ’sは部として認可されない事である。

束「アイドル研究部が無くなれば・・・いや、ダメだ。そんなやり方はしちゃいけない・・・しかし・・・」

いくら考えても良い解決策が見つからない。

束「あぁーダメだ!やっぱりどっちか1つじゃなきゃダメなのか⁉︎ん・・・1つ?・・・1つに・・・そうか、その手があった!」

 

 

 

 

翌日、束は穂乃果に自身の考えを話す。

穂乃果「μ’sがアイドル研究部に合流する?」

束「ああ、元からあるアイドル研究部と活動内容が似通っているならアイドル研究部にμ’sが加わる事も出来る筈だ。問題はアイドル研究部に所属する部員たちの説得だが・・・」

穂乃果「わかった。それは穂乃果たちで何とかしてみるよ!ありがとう!お兄ちゃん!」

穂乃果は笑顔で学校に向かっていった。

 

 

 

 

放課後、穂むらでの勤務を終えた束が音ノ木坂学院に来る。この日もあいにくの空模様で練習は出来ないだろうが

放課後なら入れる許可証の効力を最大限利用させてもらう。穂乃果たちと合流する為、2年の教室に向かおうとすると後ろから声を掛けられる。

絵里「あら?束さん?珍しいですね。校内を歩き回っているなんて」

束「その声は・・・絵里ちゃん?久しぶりだな!」

絵里「私は何度か見かけてますけどね。でも確かにこうやって話すのはブラックスター以来ですし」

絵里は少し考えるそぶりを見せた後、束に尋ねる。

絵里「束さん。もしよろしければ・・・ちょっとお時間を頂けますか?」

束「・・・?」

 

 

 

その頃、穂乃果達はアイドル研究部の部室に来ていた。しかし入り口のドアには鍵がかけられており、中にも人がいる気配はない。

海未「誰もいないみたいですね・・・」

花陽「副会長から聞いた話ですと部員は今は1人だけらしいですけど・・・」

穂乃果「じゃあその人が来るまでここで待ってよっか?」

その様子を隠れて見ている者がいた。このアイドル研究部の唯一の部員兼部長の矢澤にこである。

にこ「なんであいつらがここにいるのよ・・・」

しばらく廊下の陰に隠れながら様子を見ていたにこだったが・・・

海未「ッ!誰ですか!そこにいるのは!」

にこ「やばっ!バレた!」

海未に気配で感付かれてしまい、にこはその場から逃げ出す。

穂乃果「あー!あの人だよ!穂乃果のおでこにデコピンしたの!」

凛「追っかけるにゃー!」

凛が真っ先に追跡を始める。元々メンバー随一の身体能力を持つ凛である。たちまちにこは追いつかれてしまう。

にこ「このままじゃ・・・ッ!あれは・・・」

にこの目に映ったのは学校内で飼育されているアルパカの小屋。にこは角を曲がると同時に咄嗟にそこへ飛び込む。

凛「あれ?いなくなったにゃ〜?」

追いかけてきた凛はにこが突然姿を消したので辺りを見回す。その後、にこを探しに小屋から離れていった。

にこ「な、なんとか誤魔化せたみたいね・・・」

「〜♪」

にこ「へ?」

そこに小屋にいた白いアルパカがにこの方に近づいてくる。

にこ「ち、ちょっと待って!勝手に入ったのは謝るから・・・」

そう言って後ろに後ずさるにこ。するとドン!と何かにぶつかる。恐る恐る振り返るとそこにはもう一匹の茶色のアルパカがおり・・・

にこ「ひ・・・いやぁぁぁっ!」

にこを探しに凛の後から追いかけてきた穂乃果達がアルパカ小屋に来た所で小屋の中からにこの悲鳴が聞こえるのであった・・・。

 

 

 

 

一方、束は絵里に連れられて生徒会室に来ていた。

束「生徒会室?・・・なんで?」

絵里「私の仕事場みたいなものだし、それにこの時間ならもう役員の生徒は皆帰ってるはずよ」

束「へぇ、絵里ちゃんは生徒会に入ってるのか」

絵里「一応、生徒会長をやらせて貰ってるわ」

束「そりゃすげぇや。・・・え?生徒会長?」

絵里「ええ」

束「・・・生徒会長だとぉぉぉっ⁉︎」

絵里「な、何よいきなり大きな声出して・・・そんなに私が生徒会長だといけないのかしら?」

絵里がジト目で束を見る。

束「あ、えっと・・・その・・・なんだ。う〜んと・・・」

いつか物申そうと思っていた相手が意外な人物であった為どうすればいいいいかわからず凄くもどかしい感じになってしまう束。

絵里「なんか凄い顔になってるわよ?・・・まぁとりあえず入りましょうか」

絵里が生徒会室の扉を開けようとするとそれより一瞬早く、内側から扉が開けられる。

中から出てきたのは・・・

絵里「希?」

希「あれ?えりち?帰るんじゃなかったの?」

生徒会の仕事を終えて帰ろうとする希であった。希は絵里の後ろにいた見覚えのある顔に気づく。

希「おや?誰かと思ったらいつかのお兄さんやん」

束「君は確か・・・あぁ!最大級のパワフルボディの!」

希「誰がレベル99や」

絵里「え?二人とも・・・知り合い?」

初対面にしては妙に砕けたやり取りをする為、絵里が尋ねる。希は束と以前会った事がある事を話した。

希「まぁ、ウチは神社での練習中もずっと見てたけどね」

束「だったら声くらいかけてくれたっていいのにさ」

希「んー、ウチから特に言う事も無かったし。それよりえりちはなんで生徒会室に戻ってきたん?」

絵里「え、えぇ。ちょっと、彼と話がしたくて・・・」

希「ふーん?それじゃ、邪魔者は退散するとしようかな?それじゃお二人さん、ごゆっくり〜♪」

絵里「もう!希ったら!」

茶化すような仕草をして希は帰っていった。その時、去り際に束の耳元でコッソリ囁いた。

希「えりちの事、頼むで?お兄さん」

束「?・・・ああ、わかった?」

その後、気を取り直し、二人は生徒会室の中に入るのだった。

 

 

 

 

にこがアルパカ小屋で穂乃果達に捕獲?され、一同はアイドル研究部の部室へ。そこにはスクールアイドルだけでなく様々なアイドルのグッズ、雑誌などの資料が集められていた。

ことり「す、すごい・・・」

花陽「こ、これは数量限定で発売された幻の・・・!こんな所でお目にかかれるなんて・・・!」

アイドルマニアの花陽は先程から部室内にあるグッズに興奮しっぱなしであり、それがこの部屋にある物が、いかに貴重な物かを物語っている。

にこ「・・・で?何の用?」

にこが不機嫌そうに切り出す。

穂乃果「えっと、私達μ’sっていうスクールアイドルをやってるんですけど・・・」

にこ「知ってるわよ。っていうか自分達のステージ見に来てた人間の顔も覚えてないってどういう事?それでよくアイドルなんて名乗れるわね」

穂乃果「あれ?いました?」

にこ「いたわよ!」

真姫「気付かなかったわ」

にこ「いやアンタは気付きなさいよ!扉の前でコッチ見てたでしょうが!」

真姫「そっちが見るから見るんだってば」

にこ「ほらやっぱり見てるじゃない!ってこのやり取りももう2回目よ!」

海未「・・・話、進めて良いですか?」

とりあえず全員席に座り、話し合いの形をとる。

穂乃果「・・・それで、私達μ’sをアイドル研究部に合流させてもらいたいんです」

にこ「お断りよ」

海未「籍を置かせて頂くだけでいいんです。活動の邪魔になるような事は致しません」

にこ「なんと言われようと同じ、お断りよ。アンタ達はアイドル活動を甘く見てるわ。そんなのと一緒になるなんてまっぴらごめんだわ」

真姫「そんな言い方・・・!」

穂乃果「私達、アイドル活動を甘く見てるつもりなんて・・・」

にこ「いいえ甘く見てるわ。アンタ達にはアイドルとして重要な物が足りてないわ」

ことり「重要な・・・物?」

にこ「それは・・・キャラ作りよ!」

穂乃果「キ、キャラ・・・?」

にこ「そうよ!アンタ達にはキャラ作りが全く出来てない!そんなんじゃお客さんを喜ばせることなんて出来ないわ!まずはちゃんとしたキャラ作りをしなさい!」

キャラ作りが出来ていないと指摘されるも意味がわからず一同は困惑してしまう。

海未「キャラ作りと言われましても・・・どうすればいいのでしょうか?」

凛「あれにゃ!赤はリーダーで青はサブリーダーとか・・・」

海未「戦隊じゃないんですから・・・」

穂乃果「だとしたら食いしん坊の穂乃果は・・・イエロー⁉︎」

海未「真に受けないで下さい!穂乃果!」

花陽「何か決め台詞とか考えてみたらどうでしょうか?」

真姫「決め台詞って・・・例えばどういうのよ?」

穂乃果「皆のハートを撃ち抜くぞー!ラブアローシュート!・・・とか?」

海未「何故あなたがそれを⁉︎」

穂乃果「お兄ちゃんが言ってた」

海未「あの男・・・」

海未の背後に黒いオーラが現れ、その場にいた全員がその殺気の篭った目を見て凍りつく。

にこ「と、とにかく!キャラ作りもまともに出来ないような連中をこの部室に入れる気はないわ!」

穂乃果「じゃあにこ先輩、お手本見せて下さい!」

にこ「に、にこぉ⁉︎・・・わかったわ。よーく見ておきなさいよ・・・」

そう言ってにこは後ろを向く。そして振り返ると

にこ「にっこにっこに〜♪あなたのハートににこにこにー♪笑顔届ける矢澤にこにこー♪にこにーって覚えてラブにこっ♪」

「・・・・・」

満面の笑みで自己流のアイドルアピールを披露するが穂乃果達はただ呆気に取られてみてるしかなく・・・。

にこ「どう?アイドル名乗るのならこれくらいはやって貰わないとね」

花陽「なるほど・・・勉強になります!」

凛「ちょっと寒くないかにゃー?」

にこ「なんですって⁉︎」

凛のポロっと出てしまった本音が聞こえてしまい怒るにこ。

にこ「出てってちょうだい!早く出てって!」

にこを怒らせてしまい部室から閉め出されしまう穂乃果達。これでアイドル部合流の道は困難になってしまった。

 

 

 

部室から穂乃果達を追い出し鍵をかけたにこ。

にこ「はあ、はあ、何なのよあいつら!・・・ん?CDボックスが落ちてる・・・」

さっきのドタバタの際に落ちたのだろうか、CDが十数枚ほど纏まったボックスが棚の上部から落ちていた。だいぶ古い物なのか埃まみれである。

にこ「こんなCDのセット持ってたかしら?・・・ま、いっか。とりあえずここに置いときましょうっと」

にこはCDボックスを机の上に置いたまま、部室を出た。

その際、CDボックスが一瞬怪しく光り、カタカタ震えたのには気づかなかった・・・。

 

 

 

 




気がついたらいつもの倍くらい書いてました。
やはりこの辺りは原作知識がうろ覚えじゃキツイですかね・・・


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第6話 ヤザワ作戦 その3 “fromにこ襲来”

勢いでバーッと書きましたが思いの外結構真面目になってしまいました・・・


生徒会室に通された束。中は彼女が言っていた通り誰もおらず静まり返っていた。・・・外のアルパカ小屋の方から「いやぁぁぁ・・・」という悲鳴が聞こえた気がしたが・・・。

絵里「どうぞ、座ってください」

絵里に勧められ、束は椅子に座る。そして長机を挟んで反対側に絵里が座った。

束「えっと・・・話って一体・・・?」

絵里「・・・あなたは以前、私に『私が私じゃない』と言いましたよね?あの意味を教えて頂きたいんです」

束「ああ・・・あの時の・・・」

以前喫茶店で話をした時の事を思い出した束。

束「意味って言われても・・・そのまんまなんだけどなぁ・・・」

束は困ったように返事を返す。

絵里「そのまんま?」

束「ああ。ま、こんなんでも君よりは長生きしてるからな。おまけに親の都合であちこち行く事も多かったし色んな人を見てきたつもりさ。まぁ細かくわかる訳じゃないんだけど・・・」

束は悩みながら言葉を捻り出す。

束「あまり上手くは言えないけどさ。絵里ちゃん、無理してるんじゃないか?やりたい事我慢してさ」

絵里「私は無理なんてしてません!やりたい事なんて・・・」

束「生徒会長としての責任感とか使命感ももちろん大事だけどさ?それだと支えきれなくなった時が怖いんだよ・・・。何も無くなっちゃうんだ。真っ暗になって・・・何も感じなくなっちまうんだ」

絵里「・・・まるで経験した事があるかのような言い方ですね」

束「まぁ・・・ね」

そう言う束の表情はいつもより少し暗く感じた。

束「とにかく!もし本当に廃校を阻止したいなら!」

そう言って束はいきなり絵里の頬をぎゅ、っと横に引っ張る。

絵里「ひ、ひゃんでひゅか⁉︎ひゃめひぇひゅだひゃい!」

束「まずは笑う事だな!眉間にシワ寄せて仏頂面で『学校を盛り上げていきましょう!』なんて言ったって誰もついてこねぇよ。楽しくやらないと!」

束は先程の暗い表情を払拭するかのように笑う。しかし絵里はそんな束の手を無理矢理払いのける。

絵里「わかったような事言わないで下さい!楽しくやる?

それで結果が出せますか⁉︎絶対にこの学校を救えるんですか⁉︎・・・楽しむだけじゃ・・・辿り着けない場所だってあるんです!」

絵里はそう言って束を睨みつける。しばらく黙っていた束だったが・・・

束「・・・確かにそうかもしれない。楽しんでやれば全て上手くいく。なんてのはそれこそ漫画やアニメの世界だよな。でもさ・・・」

束は絵里の肩に手をかけその眼をジッと見る。

束「『それ』を失くしても、やっぱり前には進めないんだよ」

絵里「・・・そんなのは、綺麗事です・・・」

束「百も承知さ。だけど高みを目指して怖い顔で夢を目指す奴より、バカみたいに笑いながら楽しそうに目指す奴の方が俺は好きだな」

おどけたように笑いながら束は手を離し、絵里から離れる。

束「言いたい事は大体わかった。君がスクールアイドルに対して余り良い感情を持てない理由もな。でも君はまず穂乃果達の事を知った方が良いかもな。あいつらがどんな思いでスクールアイドルをやっているのか。意味の無いアイドルの真似事かどうか判断するのはそれからでも遅くないだろう?・・・後はまぁ、やりたい事を見つけるべきだな。生徒会とかそーゆーの抜きにして、絢瀬絵里として本当にやりたい事を見つけてみたらどうだ?」

絵里「私の・・・本当にやりたい事・・・」

束「それが見つかればあいつらの事だって少しは理解出来るかも・・・だし」

そう言いながら束は席を外し部屋を出る支度をする。

束「年長者の御節介は以上だ。この後どうするかは君が決めればいい。ただし・・・もし君がこれ以上穂乃果達の活動を妨害する方向で進めるのであれば、俺も容赦しない」

初めて束が絵里を睨みつける。普段の軽い雰囲気からは想像もつかない束の怒気を帯びた声に絵里は思わず怯んでしまう。が、束はすぐにいつものおどけた顔に戻る。

束「話は終わりかな?じゃ、お疲れさん・・・ッ⁉︎」

帰ろうとした束が突然窓の方へ振り返り身構える。

絵里「あ、あの・・・どうしました・・・?」

束「あ、いや・・・なんか窓の方から殺気を感じた気がして・・・」

絵里「窓の方?あっちは確かアイドル研究部の部室がある・・・」

束「あ!そうだよ!アイドル研究部!穂乃果達の所に行かないと!じゃあな!」

束は慌てて生徒会室を飛び出していった。

絵里「私の本当にやりたい事・・・」

 

 

 

 

生徒会室を出てアイドル研究部の部室に急ぐ束。すると途中で向こうから歩いてくる穂乃果達を見つける。

束「あれ?穂乃果?皆も・・・」

穂乃果「あ!お兄ちゃん!どこ行ってたの?」

束「いや、ちょっと御節介を焼きに・・・ってそれより部室の件は?」

穂乃果「・・・ごめん、怒らせちゃった・・・」

穂乃果は束に謝罪する。その様子と言葉で大体の事を察した束は・・・

束「・・まぁしょうがないさ。日を改めてまた頼みに行ってみようぜ?今度はちゃんと間に合うようにいくから」

穂乃果「・・・うん」

俯く穂乃果の頭を束はバシバシと叩く。

穂乃果「痛い!痛いってば!」

束「下向いてたってどーしようもないだろ?今日の事はもう終わり!また明日考える!それでいいだろ?」

真姫「・・・良くそんな前向きに考えられるわね」

真姫が呆れたように呟く。

束「上手くいかない事ばっかだけど・・・楽しくやらないと、な?誰かさんに示しがつかねぇし」

真姫「?」

意味がわからず全員が首を傾げる。束は生徒会室の方向を見るのだった。

・・・その夜、束が海未からラブアローシュート(物理)を食らったのは言うまでもない・・・。

 

 

 

翌日、束は改めて穂乃果達のアイドル研究部の説得に付き合うべく学校へ。穂乃果達と直接合流する為、アイドル研究部の部室前に行くと何やら騒がしい。

部室の前に着くと、にこと、穂乃果達が既に集まっていたが様子がおかしい。近くに行くと、にこが穂乃果に掴みかかっていた。

束「お、おいおい・・・一体何の騒ぎだ?」

にこ「束⁉︎どうしてここに⁉︎」

穂乃果「お兄ちゃん!た、助けて!」

穂乃果が助けを求める。にこは穂乃果を掴んだまま離さない。その目には涙が溜まっていた。

束「・・・何があったんだ?」

一同は部室の中に入る。そこには・・・

花陽「ひどい・・・」

部室内には至る所に何かで切り裂いたような傷があった。それは壁に掛けられていたポスターや棚に置いてあった雑誌などにも及んでいた。

束「確かにこりゃひどいな・・・。一体誰が・・・」

にこ「コイツらに決まってるでしょ」

にこが震える声でそう吐き捨てる。

にこ「自分達の要求が通らないからって・・・随分と汚い真似してくれるじゃない・・・」

ことり「違います!私達じゃ・・・」

にこ「じゃあ他に誰がやるっていうのよ!恨みを持ってるアンタ達以外に考えられないじゃない!」

束「落ち着けって、にこちゃん」

にこ「こんな仕打ちを受けて落ち着いていられるわけないでしょ⁉︎」

束「まだ穂乃果達がやったと決まった訳じゃない」

にこ「じゃあ他に誰がやるっていうのよ!そう言えばさっきお兄ちゃんとか言われてたわね。身内だから庇うって訳⁉︎」

束「そうじゃない。身内だろうと何だろうとやっちゃいけない事をしたら俺はちゃんとぶっ飛ばすよ」

穂乃果「ぶっ飛ばすのは確定なんだ・・・」

束「にこちゃん、コレに気づいたのはいつだ?」

にこ「・・・今朝、部室に来た時よ」

束「昨日の事は穂乃果から聞いている。穂乃果達を追い出した後は誰も来ていないのか?」

にこ「コイツらを追い出した後はすぐに鍵をかけて帰ったわ。今朝も鍵はしまってた」

束「つまり昨日の放課後から今朝にかけての間の犯行って事だな。しかも現場は密室だった」

凛「おぉ・・・なんか推理ドラマみたいだにゃ・・・」

真姫「黙ってた方がいいわよ。凛」

束は改めて部屋の内部を見回す。

束「昨日は穂乃果達とは一緒に学校を出たからアリバイがある。もっとも、君が身内を庇ってるって思うのなら成立はしないが」

にこ「・・・・・」

束「それに鍵が掛かってた以上外からはいるのは困難だ」

凛「テレビでよく見る針金とかで開けるのは?」

束「ピッキングなんてそこらへんの女子高生が習得できるスキルじゃないだろ」

海未「では一体誰が・・・?」

束「・・・『誰が』ならまだいいんだがな」

海未「え?」

束「いや、なんでもない。とにかくこの件は学校側にも報告しないといけないだろう。その上で俺が犯人を探し出す」

花陽「束さんが・・・ですか?」

束「お前達の無実を証明しなきゃならないだろ?(それにこの件はおそらく・・・)」

にこ「そこまで言うならいいわ。もし真犯人を見つけ出せたなら昨日の合併の件、考えてやってもいいわ」

穂乃果「本当ですか!」

にこ「ええ、でも無理ね。どうせ犯人はアンタ達なんだから」

束「にこちゃん」

にこ「なによ、文句でもあるの?」

束「文句なんてないさ。大切な物を傷つけられて怒る気持ちもよくわかる。でも俺は君よりも彼女達の事をよく知っている。だから彼女達がこんな事を絶対にする筈が無いと言い切れるんだ。・・・だからもし俺が彼女達の無実を証明出来たら・・・穂乃果達を疑った事を謝ってもらうからな」

にこ「ひッ⁉︎・・・わ、わかってるわよ!ま、まぁでも?そんな事絶対あり得ないけど!」

にこは束の怒気に一瞬怯みそのまま顔を背けてしまう。それはにこ以外の初めて見た人々も例外ではなく・・・

花陽(つ、束さんの怒ったとこ、初めてみました・・・)

凛(怒らせると怖いんだにゃあ・・・)

真姫(ふ〜ん・・・結構男らしいとこあるじゃない♪)

花陽(・・・真姫ちゃん?)

 

 

 

 



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第6話 ヤザワ作戦 その4 “fromにこ襲来”

沼津の夏祭りに参加してきた為、更新止まってました。
aqoursが近くで見れたり未熟dreamerの花火もあって良かったです。
今回からはまた出来るだけ1日一本目指して頑張りたいと思います


放課後 音ノ木坂学院

真犯人を探し出す為、束は誰もいなくなった学校の中に入っていた。

束「しかし・・・よくよく考えたら俺の予想通りだと真犯人探し出してもにこちゃんに見せらんないじゃん・・・」

束はウンウン唸りながら、施錠されている窓を魔法で開けて中に入る。そしてアイドル研究部の部室を目指して歩き出す。しかしその様子を遠くから見つめる者がいる事には気づかなかった・・・。

 

 

 

 

同じ頃、静まり返った学院に入り込む影がもう一つあった。矢澤にこである。

にこ「私とした事が部室にアレを忘れるなんて!」

何やら忘れ物をしたらしく、慌てた様子で部室に戻る。鍵を開け中に入ると本棚にあった切り裂かれた本をどかし、その奥にしまってあった本を引っ張り出す。

にこ「これには傷はついてないみたいね・・・」

安心した様子で本を取ったにこはすぐに部屋を出ようとする。その時、机の上に置いてあったCDボックスが突然ガタガタ!っと動き出す。

にこ「ひっ⁉︎な、何よ⁉︎」

次の瞬間、箱の蓋がバン!と弾け飛び、中からディスクが飛び出したかと思うとにこ目掛けて勢いよく飛んできた。

にこ「きゃあ⁉︎」

にこは咄嗟に屈んでかわす。外れたディスクは壁に深々と突き刺さっていた。

にこ「CDが飛んできた⁉︎なんで・・・それにこの傷・・・まさか!」

突き刺さったディスクによって出来た傷は部室の至る所にあったものと同じものであった。ディスクがひとりでに飛び回り、周りのものを切り裂く。そんな非日常的な光景ににこは混乱しつつも、逃げなければ自分も切り裂かれてしまうという危機感は働き、その場から逃げようとする。

すると箱の中から残りのディスク全てが飛び出し、一斉ににこに襲いかかる。にこは慌てて部屋から出ようと扉に行こうとするがそれより早くディスクが迫る。

にこ(誰か・・・助けて!)

飛んでくる無数のディスクを前ににこはそう願いながら目をつぶる。

束「させるかよ!」

扉を蹴破り、束が部屋の中に突入、間一髪にこを抱えてその場に転がる事でディスクを回避する。

束「大丈夫か⁉︎にこちゃん!」

束は抱えたにこの安否を確認する。幸い、ケガや傷はなかった。

にこ「つ、束・・・?」

そう言ってにこは気を失ってしまった。

束「ケガはないようだな・・・まぁバレるよりはこっちのが都合はいいけど・・・ッ⁉︎」

そこにディスクが一枚飛んできて束の右頬を掠める。ディスクが掠めた所からはジワリと血が滲んでいる。

束「ちっ!」

束はにこを抱えたまま飛んでくる無数のディスクを間一髪でかわす。ギリギリでかわしている為、身体には掠めた際の切り傷がどんどん増えていく。

束「このままじゃ埒があかない・・・まずはここから出ないと・・・」

束は魔法で窓を開けてそこから外へ飛び出した。このままでは戦えない為、にこを近くの物陰にそっと降ろす。ちらっと後ろを見ると既に無数のディスクが飛んできていた。

束「くそ、早いな・・・」

束はディスクの注意をにこから逸らす為、ディスクの中に突っ込んでいく。当然ディスクはフリスビーのような軌道を描きながら飛び回りながら束を何度も切りつける。

束「舐めるなよ!軌道さえ読めればそんなモンかわせるんだよ!」

束は飛んでくるディスクの軌道を読み、屈んでかわす。後ろからも二枚、同様の軌道で迫ってくるがそれもその場でジャンプしてかわす。

束(さて・・・問題はどうやって止めるか、だが・・・)

今の所はなんとか回避しているものの、こちらは有効な決定打が与えられない状況である。本来ならば解呪法で止めればいいのだが今回は対象が複数存在する為、魔力消費量の関係で一回しか使えない解呪法で止める事が出来ないのである。

束「やっぱ纏めて掴むしかないのか・・・?だが下手に持ったらコッチの手が無くなっちまいそうだ」

ディスクはただ飛んでくるだけではなくそれ自体が高速で回転しており高い切断力を持っていた。

束「ッ⁉︎ヤバイ!」

対処法を考えていた束に向かい再びディスクが飛んでくる。しかし今度は今までと違い十数枚のディスク全てが一斉に攻撃を仕掛けてきた。いくら軌道で読めるとはいっても一度に回避できる量には限界がある。四方八方から時間差をかけて攻撃を仕掛けるディスクを束は完全に避ける事が出来ず、遂に一枚のディスクが束の左足に突き刺さる。

束「ぐっ⁉︎」

刺さったディスクはそのまま高速回転して束の足を切り落とそうとするがその前に手で無理矢理引き抜いて事なきを得た。その際、引き抜いた両手も切りつけられ、血で真っ赤に染まる。

束「さすがに・・・ちょっとヤバイかな?」

足と手の傷が割りと深く、出血量から見てもあまり長い時間はかけられない。ディスクの群れは束を取り囲むように周囲を飛び回っている。恐らく一斉に攻撃を仕掛け、切り刻むつもりなのだろう。

束「さて・・・どう戦う?」

束が戦い方を思案していると突然声が響く。

「あの赤い帯のディスクを狙うんや!」

束「ッ⁉︎この声は・・・まさか⁉︎」

声の聞こえた方向に束が向くと、そこには既に下校した筈の希が立っていた。

束「希ちゃん⁉︎なんでここに・・・」

希「ウチの事よりも先にあの赤い帯のCDを!あれに一番パワーを感じる!」

希はディスクの群れの奥に浮いている赤い帯がデザインとしてプリントされた古いディスクを指差した。

希「多分・・アレを止めれば、他のCDも止まる!」

束「・・わかるのか?」

希「信じて!」

束は希の眼をジッと見る。そして、

束「・・・わかった。俺は・・・君を信じる!」

赤い帯のディスクめがけて、束は走り出す。するとディスクの動きがまるで赤い帯のディスクを守るような陣形に変化する。これで確信を持った束、ちらっと横を見ると、何やら交通安全と書かれた旗のようなものが校舎の壁に立てかけたまま置き忘れてあった。

希「アレって確か・・・今日の朝、生徒会がボランティアで手伝った・・・」

実はこの日の朝は生徒会が中心となり、交通安全運動の一環としてこの旗を掲げて登校してくる生徒に交通安全を呼びかける〜などの活動をしており、その時の旗がしまい忘れてあったのだった。

束「使えるな、コレ」

束は魔法を使い、旗を二本、手繰り寄せるとそれを両手に持った。瞬間、二本の旗が淡く光る。向こうのディスク同様、魔力を流し込み旗の強度を上げたのだ。

二本の旗を両手に持って構える束。

束「ここからは・・・俺のステージだ!」

飛んでくるディスクを両手の旗を振るい、はたき落としながら前に進む束。赤い帯のディスクは後方に下がって離れようとする。

束「逃すか・・・よ!」

束は両手に持っていた旗の一本をディスクに向かって投げつける。飛んだ旗は持ち手の棒が赤いディスクの中心の穴に見事入り込み、そのまま地面に突き刺さる。

束「そこだぁぁぁっ!」

残りの一本を使い他のディスクの攻撃を捌きながら赤いディスクに接近する束。目の前まで来ると、持っていた旗を捨て、両手でディスクを掴もうとする。ディスクは抵抗して高速回転し束の両手を切りつける。束の両手から出た血が回転の勢いで飛び散る。しかし束はそれでも離さず、解呪法を発動させる。やがて淡い光に包まれた後、ディスクは回転をやめてその場に落ちる。飛び回っていた他のディスクもその場に落ちて完全に動かなくなった。

希「束君!」

希が束の所に駆け寄る。束は解呪法の反動による疲労と出血多量で、その場に座り込んでしまう。

束「さすがに・・・キツイな・・・」

希「束君!血が・・・!」

希が不安そうな顔で束を見る。状況を打開する為とはいえ無茶な事をさせてしまった事への自責の念を感じているのだろうか。

束「心配すんな・・・前なんか感電死しそうになったんだ・・・それに比べりゃ大した事ない」

束は笑ってそう答える。しかしすぐに真面目な顔に戻り希に尋ねる。

束「希ちゃん、知ってたのか?俺の秘密・・・」

希「全部知ってた訳じゃないよ?・・・でも何か秘密を抱えているのは占いでわかってたから・・・」

束「占い怖ぇなぁ・・・。なぁ、この事は穂乃果達には」

希「大丈夫、言うつもりもあらへんよ」

束「・・・助かる」

束はそう言って起き上がろうとするが出血多量のせいか力が入らずその場に崩れてしまう。

希「無理しちゃアカンよ!・・・もうちょっとだけ、こうしていてあげるから・・・」

束「こ、コレは・・・ちょっと恥ずかしいんですが・・・」

崩れ落ちた束を希が受け止めるがその時の姿勢がちょうど希に膝枕をされる形になってしまい、恥ずかしさから束は顔が赤くなってしまう。だが身体も満足に動かせないので観念してそのまましばらく、身を委ねるのであった・・・。



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第6話 ヤザワ作戦 その5 “fromにこ襲来”

希「凄いね。傷が無くなっちゃった!魔法って便利やね」

束「傷口を塞げるだけだよ。疲れるし、痛みは残るし・・・あー痛ぇ・・・あの円盤野郎・・・刃が骨まで達してやがった・・・」

左足を引きずりながら歩く束。彼は今散らばったディスクを回収していた。束が魔法使いという事を知った希も一緒に拾う。

希「このCD、皆キズだらけやん」

束「一番気を遣わなければいけない裏面はボロボロ、指紋だらけだし、縁の傷からみて多分聴けなくなった古いCDをフリスビーかなんかにしてあそんでたんじゃねぇか?」

希「それであんな風にクルクル回って飛んできたんやね」

回収したCDをケースに収める束。

束「もう聴けないし、俺が処分してくるよ。もう飛び回る心配もないしな」

希「にこっちはどうするん?」

束「そりゃ魔法の事は言えないし・・・適当に誤魔化しといて・・・」

にこ「何を誤魔化すって?」

束の後ろにはいつの間にか目が覚めていたにこがいた。

束「ッ⁉︎に、にこちゃん・・・」

にこ「何を誤魔化すのよ?言ってみなさい」

束「え、え〜と・・・」

困った束は希に目でヘルプサインを送る。それに気づいた希は

希「にこっち、一体何があったん?さっき来たばっかやから事情がよくわからないんやけど・・・」

にこ「束が持ってるCDがいきなりひとりでに動き出したのよ!部室の傷と同じ傷だったから間違いないわ。犯人はコイツよ!」

にこは束をビシッと指差す。

束「俺⁉︎」

にこ「違う!そのCDよ!きっとそのCDには何か悪霊が取り憑いてるのよ!でなきゃひとりでに動き回るなんてありえないわ!」

希がにこの話を引き出してくれたおかげで状況が整理できた束はコッソリと魔法で適当な字を書いたお札を作り出すとケースに貼り付ける。

束「それなら安心だぜにこちゃん。もう封印してもらったからな」

束はお札の貼られたケースを見せる。

にこ「お札?・・・束がやったの?」

束「いや、俺じゃなくて知り合いの・・・え〜と、寺生まれのTさんが、ね!希ちゃん?」

希「え⁉︎あ・・・そうそう!不可思議現象研究しとる寺生まれのTさんが駆けつけてくれて悪霊退治してくれたんよ!いや〜一緒にいたお坊さんが『タケル殿〜!』ってうるさかったなぁ!」

突然同意を求められ慌てながら話を合わせる希。

にこ「ふーん?ま、解決したならいいわ。ありがとうね束」

束「いやだから寺生まれのTさんが・・・」

にこ「部室で助けてくれたのは束でしょ?そこで気を失っちゃったけど・・・それはちゃんと覚えてるわ」

束「にこちゃん・・・」

にこ「あーあ、あの子達に謝んなきゃいけないわね。・・・悪霊の仕業なんて言ったら笑われるかしら?」

希「大丈夫やでにこっち。最近変な事件が多いからなぁ爆走バイク事件とかプールの中の発電機とか?」

束「あ、あはは・・・」

希がこちらをジーっと見ながら言ってくるので顔を背けながら苦笑する束。

希「ま、冗談はさておき、ただでさえ廃校云々って話が出とるからね?あまり変な噂が出回っても困るからうまく誤魔化そうかって話だったん」

にこ「あぁ、だから誤魔化すって言ってたのね」

束(よく舌が回るよな・・・)

希(ふふん?『口先の魔術師』と呼んでもらってもええんよ?)

束はふと足元に目をやると雑誌が一冊落ちていたのでそれを拾い上げる。

束「なんだコレ?スクールアイドルの雑誌?」

束は拾い上げた雑誌をパラパラめくる。

にこ「ッ⁉︎それ私の!返しなさいよ!」

それに気づいたにこは雑誌を慌てて取り返そうとする。

束「コレは・・・」

付箋の付けられたページを見るとそこにはページの隅の小さな枠ではあったがにこの姿が写っていた。

希「にこっちはな、昔この音ノ木坂でスクールアイドルをやってたんよ」

にこ「希!」

希「でも、にこっちの意識が高すぎたんやね。一緒にやってた友達が1人また1人と辞めていってん。そして・・・」

束「残ったのがにこちゃんとあの部室って訳、か・・・」

にこはしばらくの間黙っていたがやがて自嘲気味に話出した。

にこ「笑いたければ笑えば?キャラがどうこうとか偉そうな事言っといて当の本人はこのざまよ。友達からもついていけないって言われて・・・ずっと1人でやってきたのよ。それをいきなりスクールアイドルをやりたいから部室が欲しいなんて言われて、明渡せる訳ないじゃない!」

束「・・・・・」

束は黙って聞いてたがその後にこの前に来る。

束「明渡す必要なんてないだろ」

にこ「え・・・」

束は手を差し伸べる。

束「一緒にやればいいんだよ、スクールアイドル。もう一度さ」

にこ「なっ⁉︎簡単に言わないでよ!なんで私があいつらの為に動かなきゃなんないのよ!」

束「そんな事言わないよ。俺たちには君の力が必要だから言ってるんだよ」

にこ「私の・・・力?」

束「確かに君は一度、夢を追い・・・挫折した」

にこ「・・・・・」

束「それでも君はあの部室を3年間守ってきた。それはやっぱ君が夢を諦めてないからじゃあないのか?」

にこ「そ・・・それは・・・」

束「挫折しても諦めきれない。それだけアイドルの事が大好きなんだろ?」

にこ「・・・・・」

束「俺たちさ、アイドルの事とかあまり詳しくないまま始めちゃってさ?俺も雑誌いっぱい読んだけどわかんない事だらけで・・・花陽ちゃんはキャラ変わっちゃうし」

希「束君、心底嫌そうな顔するのやめよ?」

束「とにかく!アイドルに対してそこまでの情熱を持ってるにこちゃんならきっと穂乃果達の力になってくれると思うんだ!」

にこ「でも・・・」

束「昔の仲間は去っていったかもしれない。でも、あいつらは大丈夫、絶対逃げないから」

にこ「なんでそう言い切れるのよ」

束「なんでって言われても・・・今までずっとそうだったから?」

にこはため息混じりに答える。

にこ「はぁ、なーんか説得力ないわねぇ。ま、一応考えといてあげるわ」

そう言ってにこは校門の方へと消えていった。

希「あの様子じゃ、大丈夫そうやね?」

束「わかるのかよ?」

希「カードがそう言ってるんよ」

希はタロットカードを見せて答える。

束「やれやれ・・・」

 

 

 

 

 

翌日、アイドル研究部の部室では

にこ「・・・う、疑って悪かったわね・・・その・・・ゴメン」

穂乃果達に頭を下げるにこ。

海未「顔を上げてください先輩。疑いが晴れたのならいいんです」

花陽「それで結局犯人は誰だったんですか?」

希「タチの悪いイタズラってとこかな?ま、その生徒はウチが厳重に注意したし、にこっちもそれで納得したからええんやない?ね?」

にこ「そ、そうね」

事前の打ち合わせ通りに話を合わせる希とにこ。

花陽「そうですか・・・。貴重なポスターやグッズを傷つけた命知らずの馬鹿の顔が見たかったですが・・・」

穂乃果「花陽ちゃん?なんか・・・怖いよ?」

凛「いつものかよちんじゃないにゃ・・・」

希「ま、まぁこの話はこれでお終いや。後は部室の件、やけど・・・」

そこで穂乃果が前に出る。

穂乃果「にこ先輩!お願いがあります!μ’sに入って貰えませんか?」

にこ「私が入れば労せず部室も手に入るって事?」

穂乃果「そうじゃありません!昨日お兄ちゃんから聞きました。にこ先輩が、スクールアイドルをやってた事」

にこ「あのお喋り・・・」

穂乃果「私達、アイドルについて知らない事がいっぱいあるんです。だから私達、にこ先輩に色々教えて欲しいんです。ちゃんとしたアイドルになるために」

にこ「・・・・・」

にこの脳裏に昨日の束の言葉がよぎる。

『あいつらは大丈夫、絶対逃げないから』

にこ「・・・言っとくけどアイドル研究部の部長は私なんだからね」

穂乃果「え?」

にこ「だから!アイドル部の部長はにこなんだからμ’sのリーダーもにこって事!わかった?」

ことり「それってつまり・・・」

にこ「仕方ないから、にこがあんた達にアイドルのなんたるかを教えてあげるわ。厳しいからって、途中で逃げ出すんじゃないわよ?」

穂乃果「はい!望むところです!」

にこ「言ったわね!じゃあまずキャラをちゃんと作る所から始めるわよ!」

こうしてμ’sに加入したにこ。その顔は今までで一番明るく嬉しそうに見えた。その様子を見ていた希の横にいつの間にか つかさの姿が。

希「おや?今日は女の子の姿なん?」

つかさ「ああ、放課後じゃないから入れないし、でも気になっちゃって」

希「兄馬鹿やね・・・今の姿じゃ姉馬鹿かな?」

つかさ「からかうなよ」

そんな会話をしていると後ろから絵里が近づいてきた。

絵里「あ!希!探したわよ。こんな所にいた・・・の・・・」

近づいた絵里の目に隣にいた つかさの姿が見えてしまい・・・

希「あちゃー」

つかさ「?」

絵里「いやぁぁぁぁっ⁉︎お願いだから来ないでぇぇぇっ⁉︎」

つかさの事を完全に幽霊だと思っている絵里は恐怖のあまりそのまま逃げ出してしまうのであった・・・。

 

 

 

 




原作からの脱線が激しく、オリジナル展開も増えてくるのでサブタイトルの原作名を次回から省略しようと思います


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第7話 束の長い一日 その1

雨の日が少なくなり、梅雨明けを感じさせるようになったある日。

束は非番の日だったので気晴らしに街へ繰り出していた。

束「こんなゆっくりした休みは久しぶりだな〜。最近忙しかったし」

今日はμ’sの練習も休みの日の為、穂乃果達もそれぞれで休みを楽しんでいるのだろう。

束「さーて、何処行こうかな・・・ん?」

特にこれといって趣味らしい趣味も持ってないので街をブラブラしていた束の目に見覚えのある少女の姿が見えた。

束「あれは・・・海未ちゃん?」

大きな荷物を持って歩いていた海未。おそらく弓道部の活動があるのだろう。

束「そっか、アイドルは休みでも弓道部があるのか・・・掛け持ちは大変だよな・・・確か家じゃ日舞もやってるとか・・・」

学校に向かって歩いている海未だったがどうも様子がおかしい。前に歩いてはいるが足取りがフラフラしている。

束「お、おい・・・なんかヤバくねぇか?」

フラフラしながら歩く海未。やがて交差点に差し掛かるが信号が赤なのに気づいてないのかそのままフラフラと前に進む。そこに横からトラックが交差点を曲がり進入してくる。死角となってしまっているのかドライバーは海未に気づいていないようだ。

束「やっぱり!くそっ!仕方ねぇ!」

急いで海未の元へ走るが間に合わないと悟った束は魔法で海未の背負っていた弓を思い切り引き寄せる。

海未「ッ⁉︎うわぁっ⁉︎」

いきなり後ろに引っ張られる事でさすがに驚く海未。間一髪目の前をトラックが通過し、弓ごと引き寄せた束が海未を受け止める。

束「バカ!死ぬ気か!」

海未「す、すみません・・・私とした事が・・・つい、ボーッとしてしまい・・・」

普段の海未らしくない行動に疑問を持った束は海未の額に手を当てる。

束「凄い熱じゃんか!やっぱり無理をして・・・」

う「いえ・・・これくらいの熱なら・・・問題ありません・・・それに今日の大会は・・・休む訳にはいかないんです・・・」

束「でも!」

海未「もしここで弓道部としての活動に支障をきたしてしまったら・・・アイドルとしての活動も続けられなくなってしまいます・・・から・・・」

束「海未ちゃん・・・」

息も荒く、顔も赤い。誰がどう見ても大会になど出られる状態ではないのだが自分のせいで穂乃果達に迷惑をかけまいと彼女も譲らない。

束「・・・わかった。でもさっきみたいな事があっちゃ困るから俺も会場までついてくぞ。それでもいいか?」

海未「はい・・・お願いします・・・会場は音ノ木坂なので場所は問題ない筈です・・・」

束は海未を連れて学校に向かった。

 

 

 

会場となる音ノ木坂についた束と海未。控え室の場所を聞き、支えながら歩いていく。控え室に着くといきなり束が海未をベンチに座らせる。

海未「あ、あの・・・束さん?何を・・・」

束「悪ぃな海未ちゃん。やっぱ君に無理させる訳にはいかないんだ」

そう言って束は海未の額に人差し指を当てる。途端に海未は眠ってしまいその場に崩れ落ちる。

眠らせた海未を見つかる事のないようにロッカーの中に押し込む。すると誰かがこちらに近づいてきた。

「園田さん?準備出来ましたか?」

係の人と思われる女性がドアを開け中に入る。

海未「ええ、大丈夫です」

そこには束の姿は無く、海未が弓道着を着て立っていた。

係「ではそろそろ会場にお願いします」

海未「はい、わかりました」

こうして束は海未の姿に変身し、代わりに弓道大会に出場する事になった。

束(俺弓道やった事ないんだよね・・・海未ちゃんの見様見真似と魔法で何とかするしかないか・・・」

 

 

 

係の人に案内され会場に出てきた海未(束)。説明を聞き、自分の番が来るまで座って待つ事に。

海未「確か前に応援に来た時に教えて貰ったはず・・・遠的の的中制だったかな?・・・今回も同じみたいだ。良かった〜」

そこに聞き覚えのある声が響く。

「海未ちゃ〜ん!」

海未「この声、ま、まさか・・・」

恐る恐る声の聞こえた方を振り向くと・・・

穂乃果「おーい!海未ちゃ〜ん!」

穂乃果が手を振っていた。隣にはことりの姿もある。

海未「げっ⁉︎やっぱり!」

穂乃果「えへへ!応援に来たよ!」

ことり「ごめんね?海未ちゃん。穂乃果ちゃんが海未ちゃんをビックリさせるんだって言ってたから・・・」

海未「そ、そうでしたか・・・あの、束さんにはその話は?」

穂乃果「言うの忘れちゃった!」

海未「おい!」

穂乃果「ど、どうしたの海未ちゃん?」

海未「あ、いや・・・なんでもありません・・・姿が見えないので・・・気になっただけです」

海未(束)は顔を背けながらそう答える。それを見ていた穂乃果とことりは・・・

穂乃果「ねぇことりちゃん、海未ちゃん・・・なんか変じゃない?」

ことり「昨日の夜に電話でお話した時、あまり調子が良くなさそうだったから・・・もしかしたら具合が悪いのかも・・・」

穂乃果「そうなの⁉︎・・・海未ちゃん、大丈夫かな・・・」

 

 

 

 

海未「まさか穂乃果達が応援に来るとは・・・アイツ妙に勘が鋭い所あるから気をつけないと・・・」

そんな事を考えていると向こう側から誰かがこちらに来た。

「お久しぶりですね。園田さん」

海未「え?・・・えーと、どちら様でしたっけ?」

弓道着を着て海未の事を知っている様子からおそらく他校の弓道部員なのだろうが当然束は面識などない為、キョトンとしてしまう。

「忘れてしまったのですか?UTXの加賀です。去年の大会で対戦したでしょう?」

海未「あ、あー!加賀さんですね!お久しぶりです!」

加賀「・・・本当に思い出しました?」

海未「も、勿論!ほら、加賀さんって一度見たら忘れられないっていうか?なんか海の上を船のように進みながら弓を射ってそうな?そんな感じですから!」

加賀「船のように・・・?」

海未「全速前進!ヨーソロー!・・・なんちゃって」

加賀「・・・・・?」

海未「・・・すいません、忘れてください」

 

 

 

 

その後、競技が開始され各校の選手達が次々と出てくる。

しばらくの間、競技の様子を見ていた穂乃果だったが

穂乃果「ねぇことりちゃん、弓道のルールってどんなのだっけ?なんか見ててもわからないよ」

ことり「えーと、色々あったと思うけど確か今日海未ちゃんが出るのは遠的の的中制だった筈だよ」

穂乃果「えんてきのてきちゅーせー?」

ことり「簡単に言ったら的に当てた数を競うルールっていうのかな?詳しい事はことりもわからないけど確か的の真ん中を狙わなくても的に当てられれば良いんだよ。海未ちゃんのは遠的だから遠くの的を狙わなきゃいけないんだけどね」

穂乃果「海未ちゃん大丈夫かな・・・よーし!穂乃果達も応援頑張っちゃうよー!」

そんな事とはつゆ知らず、海未(束)は先程話をした加賀の弓の腕前を見ていた。やはり言うだけの事はあり、手持ちの矢を全て的に命中させていた。

海未「やっぱスゲーな・・・全弾?命中かよ」

自分の番を終えた加賀が海未(束)の所に来る。

加賀「次は園田さんの番ですね。アイドルの練習ばかりしていて腕が鈍ったとか言わないでくださいね?」

海未「・・・知ってたんですか?μ’sの事」

加賀「噂程度ですが・・・ね。正直な話、私はアイドルの真似事なんてやめて弓道に専念して貰いたいです。『二兎追う者は一兎も得ず』という言葉もありますから」

海未「言いたい事はわかりました。でも、こちらにも譲れないものがありますから」

海未の名が呼ばれ、弓を持って立ち上がる海未(束)。

加賀「譲れないもの・・・?」

海未「私の事を頼りにしてくれる人がいるんです。・・・無理をしてでも期待に応えようとする奴もいるしな」

加賀(?・・・なんか雰囲気が・・・)

海未「先程『二兎追う者は一兎も得ず』と言いましたね?・・・私は希望の対価に犠牲を求めません。そんなルールがあるのなら、壊してやるまでです」

加賀「そんな欲張りな・・・」

海未「ええ、欲張りなんですよ・・・『俺』は」

そう言って海未(束)は舞台に上がるのであった。

 

 

 




加賀さんのモデルは本文にもありましたが某戦艦ゲームののあの加賀さんです
オリキャラで出そうと思いましたがここでしか使う予定のないキャラなので別作品から弓の似合いそうな人を拝借させて頂きました。


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第7話 束の長い一日 その2

弓を構え、的を見定める海未(束)。矢を弦にかけ、ゆっくりと弓を引く。少しの間の後、矢が放たれ見事的の真ん中に命中する。

穂乃果「やった!やったー!真ん中だよことりちゃん!」

ことり「落ち着いて穂乃果ちゃん!大事なのは当たった本数だから!海未ちゃんはあと3本、矢を当てなきゃいけないんだよ」

海未「ふう、なんとかいけそうだな」

弓道初体験の束に遠く離れた的の真ん中を射抜く技術などある訳がない。当然魔法を使っており、射つ前に予め矢に魔力を込めておくことで軌道を思念コントロールしているのだ。

海未(問題は変身魔法との併用で俺の魔力が持つかどうかだが・・・)

そんな事を考えながら海未(束)は残りの矢も全て命中させる。出番を終えた海未が戻ると加賀の姿が。

加賀「それでこそ園田さん、ですね。でも決勝では負けませんよ」

海未「・・・望むところです」

やがて全選手の予選が終了し、上位2名で決勝を行う事になった。決勝に進んだのはやはりというべきか、海未と加賀である。

決勝開始まで少し時間があるので穂乃果達が海未を呼んで少し早めの昼食となった。

穂乃果「お疲れ、海未ちゃん。いっぱい持って来たからこれ食べて決勝も頑張って!」

穂乃果が用意してきたお弁当をその場に広げる。

海未「こ、こんなにたくさん食べれませんよ・・・」

ことり「でも良かった。昨日の夜にお話した時、あまり調子が良くなさそうだったから心配してたの」

海未「やっぱそうだっ・・・じゃない、心配をかけてすみません、ことり」

海未はそう言いながら近くに置いたあったコーラに手を伸ばす。コーラを飲む海未の姿を穂乃果がジッと見る。

穂乃果「海未ちゃん・・・炭酸苦手じゃなかった?」

ブフォォッ!

盛大にコーラを口から噴き出す海未。

穂乃果「うわあっ⁉︎」

ことり「だ、大丈夫⁉︎海未ちゃん⁉︎」

海未「す、すみません。私とした事がうっかりしてました・・・」

つい無意識の内に炭酸を飲んでしまっていた束。

海未(うっかり飲んじまった・・・こりゃ迂闊な事出来ないぞ・・・)

同じ家に暮らしている穂乃果ならいざ知らず、海未の事に関しては幼馴染で一緒にいる事が多かった穂乃果やことりには敵わない。バレないよう気を引き締める束、だったが・・・。

海未「ほ、他に何か飲み物はありますか?」

穂乃果「あるよ!えーとね、オレンジスカッシュとジンジャーレモンスカッシュ!」

海未「どっちも炭酸じゃないですか!」

穂乃果「あ、やっぱエナジードリンクとかのが良かった?レモンのエナジーの」

海未「だから炭酸じゃねぇか!」

穂乃果「今回は弓と掛けてみた!」

海未「掛けんでいい!」

穂乃果「な、なんか海未ちゃんがお兄ちゃんみたいだよー!」

ことり「やっぱり具合が悪いんじゃ・・・無理しないで棄権した方が・・・」

海未「そ、それは出来ません!こちらでもちゃんとした結果を出さないと掛け持っているスクールアイドルの活動にも支障が出てしまいますから!」

ことり「海未ちゃん・・・」

穂乃果「よーし!だったらお昼ごはん沢山食べて元気を出そうよ!お腹が一杯になれば気持ちが悪いのだって吹っ飛んじゃうよ!」

ことり「そ、そうかなぁ・・・?」

海未「き、気持ちはありがたいですがまだ後がありますし・・・」

穂乃果「ダメだよ海未ちゃん!腹が減っては・・・え〜と、何とかだよ!」

海未「戦は出来ぬです!一番大事な所忘れてるじゃないですか!」

ことり「穂乃果ちゃん、無理に食べさせても身体に悪いよ?出来るだけ消化のいいものや軽い食事だけにしとこ?」

海未「その通りです!やっぱりことりはわかってます!」

穂乃果「うー・・・わかった。じゃあこの箱一杯の穂むまんも持って帰るね」

海未「それは頂きます」

ことり「海未ちゃん⁉︎」

 

 

 

少しばかりの休憩時間を終えて、会場に戻る海未(束)。

既に加賀は仕度を終えて待っていた。

加賀「来ましたね」

海未「ええ、お待たせしました」

加賀「・・・口の周りに餡子が付いてますよ・・・」

海未「あ、やべ」

先程たいらげた大量の穂むまんの食べかすを慌てて拭く海未。加賀は複雑な顔でそれを見ていた。

加賀「園田さんってこんな人でしたっけ・・・?」

 

 

 

2人の準備が出来、決勝戦が始まる。決勝はルールが少し変わり、射詰競射となる。

穂乃果「射詰競射って何?」

穂乃果に尋ねられことりが持っていた冊子を読んで調べる。

ことり「えーと、今までの予選では射てる矢の本数が決まってたけど決勝ではそれだけじゃ決まらないからどちらかが外すまで続けるって事かな?場合によっては的の大きさや距離も変わるみたい」

このルール変更で一番不安を感じているのは他でもない束である。変身を維持したまま決勝を終える事が出来るのだろうか?

加賀「では、まずは私からですね」

加賀が前に出て弓を構える。放たれた矢は吸い込まれるように的に向かっていき見事命中する。

海未「やるしかない、か・・・」

右手に持った矢に魔力を込めて弓を構える海未(束)。

ギリギリまで弓を引き、手を離す。矢は真っ直ぐ飛んでいくが狙いが少しズレたのか徐々に右側に逸れ始める。

海未(左に寄せて・・・)

気づかれないように注意しながら飛んでいる矢の軌道を少し左に寄せる事で的に当てる。放たれた矢が的に当たるまでのほんの一瞬の出来事である為、会場にいる人は加賀も含め誰も気づかない。逆に言えば一瞬の判断が求められる為、魔力以上に束本人の負担も大きいのであるが・・・。

射詰競射なのでどちらかが的を外すまでこれが続く。しかも順位をつけやすくする為、的の大きさが途中から小さい物に変わり、束の負担も更に増加する。

お互い一射も外さず、遂に本数は12射目に突入する。

海未「はあ・・・はあ・・・」

穂乃果「海未ちゃん、疲れてるね・・・」

ことり「今まで全部的に当ててるからね・・・狙う時は全神経を集中させているって言うから・・・それをここまで繰り返すってとても大変なんだよ・・・」

海未は加賀の方をチラッと見る。平然としているがやはり向こうも疲労の色が見えている。お互いそう長くは持たないだろう。それでも加賀は小さな的を物ともせず命中させる。そして海未の番が回ってくるが・・・

海未「ッ⁉︎ヤバイ!」

疲労がピークに達した為か海未の放った矢は見当違いの方向へ逸れてしまった。それでもとっさに魔法で軌道修正を行い、矢は大きな弧を描いて的に当たる。

海未「セ、セーフ・・・」

加賀「今なんか変な飛び方しませんでした⁉︎」

海未「え⁉︎き、気のせいですよ!気のせい!」

加賀「矢があんなブーメランみたいに飛びますか⁉︎」

海未「風が吹いたんですよ!激しい風にさらわれて!・・・あ、いい歌詞出来ました」

加賀「歌詞の話は今はいいんです!」

その時、海未の身体が崩れ落ちる。かなり無理な軌道修正をしたせいて魔力が限界に達したのだ。

加賀「だ、大丈夫ですか?顔色が優れませんけど・・・」

海未「大丈夫です・・・始めていてください。すぐに・・・戻ります」

そう言って海未(束)は控え室の方へ行ってしまった。その様子を見ていた穂乃果達も不安な表情を浮かべる。

穂乃果「海未ちゃん・・・」

 

 

 

会場から控え室に向かう通路の途中で魔力が尽きてしまい、変身も解除され束の姿に戻ってしまう。

束「やっぱ持たなかったか・・・。さて、どう戦うか・・・」

その時、通路の奥から誰かがこちらに向かって歩いてくる。その人物は・・・

束「海未ちゃん⁉︎」

控え室の中に隠していた筈の海未が歩いてきていた。少し休んだ為か今朝よりは顔色は幾分かマシになったもののまだ足取りはおぼつかない。

海未「束さん・・・?試合は・・?」

束「あ、あぁ・・・大丈夫だ。まだ終わってないよ」

海未「そうですか・・・。では・・・行ってきます」

意識がまだハッキリとしていない状態ではあるが海未は会場に向かって歩き出す。何とかしてあげたいがもう自分には何も出来ない束はただ黙って彼女を見送るしかなかった・・・。

会場に戻ってきた海未。顔色は悪く、明らかに体調不良である。

加賀「園田さん?やはり無理をしない方が・・・」

海未「あぁ、加賀さんですか。お久しぶりです・・・今日はいい試合にしましょう・・・」

加賀「・・・?」

言ってる事が変なのだが今日の海未は朝からそんな感じだったので加賀も深くは考えなかった。

フラフラしながらも位置につき、弓を構える海未。そんな海未の様子を穂乃果達や束はハラハラしながら見ていた。

海未「・・・・・」

ゆっくり、静かに狙いを定める海未。時間が止まったのではないかと錯覚するほどの静寂の中で放たれた矢は的の中心を見事射抜く。

束「マジかよ・・・あんな状態で・・・」

自分以上に絶不調な筈なのに正確に的を射抜く海未に唖然とする束。それは近くで見ていた加賀も同じだったようだ。

加賀(どういう事・・・?先程より明らかに不調そうなのに狙いはむしろ正確になっている?)

この変化が加賀にほんの僅かな動揺をもたらした。そしてそのほんの僅かな動揺は明暗を分ける大きな結果として現れることになった。

ダンッ!

加賀「ッ⁉︎」

穂乃果「外した!」

ことり「次に海未ちゃんが当たれば海未ちゃんの勝ちだよ!」

束「海未ちゃん・・・行けーッ!」

ダァーンッ‼︎

穂乃果達の声援を受けて海未の放った矢は的を捉えていた。

穂乃果「やったよー!海未ちゃんの勝ちだー!」

ことり「おめでとう!海未ちゃん!」

穂乃果達が海未に話しかけるが気づいてないのか海未はフラフラと控え室の方へ戻っていく。

穂乃果「やっぱり海未ちゃん具合が良くないんじゃ・・・。行こう!ことりちゃん!」

 

 

控え室に戻ってきた海未を束が出迎える。

海未「束・・・さん?あの、試合は・・・?」

束「安心しな。君の優勝だ」

海未「そうなのですか・・・ここに来てからの記憶が曖昧で・・・」

束「ひどい熱なんだ。意識が朦朧としてもおかしくないって」

海未「そう・・・ですか」

そこに穂乃果とことりが入ってくる。

穂乃果「海未ちゃん!大丈夫⁉︎・・・ってあれ?何でお兄ちゃんが?」

束「た、たまたま近くを通りかかってな。海未ちゃん調子良くなさそうだったから付き添いってやつだ」

穂乃果「えー!穂乃果達に教えてくれれば良かったのにー!」

束「・・・お前が言うの忘れたんだろうが」

穂乃果「あ・・・そーでした・・・」

海未「皆さん・・・ご心配をおかけしました・・・」

束「そんなの後でいいから、今日はもう帰って休みな?μ’sの方もあるし、それこそ活動停止になっちまうぞ?」

穂乃果「穂乃果達が海未ちゃん家まで送ってくよ。ね?ことりちゃん?」

ことり「ごめんなさい穂乃果ちゃん!実は急に用事が出来ちゃって・・・今から行かないといけないの・・・」

穂乃果「えぇーっ⁉︎」

束「用事なら仕方ないだろう。俺たちで送って行こう。じゃあな、ことりちゃん」

ことり「ごめんね!穂乃果ちゃん!海未ちゃん!」

ことりはそう言って慌てた様子で行ってしまった・・・。

束「さて、俺達も行きますか。・・・よっと」

束は海未を背中に背負う。

海未「つ、束さん・・・これは・・・」

束「歩くのもしんどそうだし、これで我慢してくれ。というわけで穂乃果は荷物持ちな」

穂乃果「えぇー⁉︎」

束「じゃあお前がおんぶするか?」

穂乃果「・・・遠慮しときます」

こうして3人は学校を出て帰路に着いた。しばらく歩いていると遠くから束を呼ぶ声が聞こえてきた。声の方向を見ると花陽がこちらに向かって走ってくる。

穂乃果「花陽ちゃん?一体どうしたの?」

花陽は息を切らしながら束達の所にくると・・・

花陽「はぁ・・・はぁ・・・。束さん!お願いです!花陽を助けてください!束さんの力が必要なんです!」

 

 



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第7話 束の長い一日 その3

花陽「束さん!私と一緒に来てください!時間が無いんです!」

非常に切羽詰まった表情で花陽が束に訴えかける。その必死な様子に束と穂乃果は顔を見合わせる。

海未「・・・行ってあげて・・・ください」

その時、束に背負われていた海未が口を開く。

束「海未ちゃん?」

海未「私はもう大丈夫ですから・・・花陽の所に行ってあげてください・・・。あなたの力が必要なんですよね?」

束「海未ちゃん・・・」

穂乃果「海未ちゃんは穂乃果が送って行くよ!だからお兄ちゃんは行ってあげて!」

束「穂乃果・・・わかった。海未ちゃんを頼む」

束は海未を降ろすと穂乃果に渡す。そして花陽の方へ振り向き

束「行こう、花陽ちゃん」

花陽「束さん・・・!ありがとうございます!こっちです!」

2人はその場から駆け出すのであった・・・。

穂乃果「頑張ってね、お兄ちゃん・・・」

 

 

 

 

 

穂乃果達と別れ、花陽に連れられてきた束。2人は秋葉原にある大型家電量販店に辿り着く。

束「で、花陽ちゃん。俺の力が必要って一体・・・?」

花陽「これです!」

花陽が指差す方を見ると何やら人が大勢集まっている。そこには看板が出ており・・・

束「何?『第一回男女デュエット限定のど自慢大会』・・・?」

花陽「男女ペアでしか出られないのど自慢大会です!これに花陽と一緒に出てください!」

束「・・・はぁぁぁぁぁっ⁉︎」

あまりにも予想斜め下の依頼に思わず声をあげてしまう束。

束「そんな事⁉︎そんな事であんな必死な顔で俺の事呼んだの⁉︎」

花陽「そんな事とはなんですか!みてください!賞品が『黄金米』と黄金米の為に作られたと言っても過言ではない高品質炊飯器、『匠の極み』のセットですよ!それをそんな事とは!」

束「物の問題じゃねぇんだよ!あのシリアスな雰囲気どーしてくれんだよ!なんか俺もう穂乃果達の所帰り辛いよ!」

花陽「あ、エントリーが始まりました!行きますよ!束さん!」

束「人の話を聞けぇぇぇいっ!」

 

 

 

 

こうして無理矢理のど自慢にエントリーさせられた束。

順番を待つ間、ステージでの衣装を選べるという事で花陽と2人で選ぶ事に。

束「大体さ、なんで俺なんだよ?」

花陽「他に男性の知り合い居ませんし、ほら、この作品って男の人存在しないじゃないですか」

束「いるわ!ちょっと画面に映ってないだけで存在はしてる筈だわ!あと作品とか言うな!つーか走り回って俺探すんなら凛ちゃんに男装させた方が遥かに手っ取り早い気がするけどな。普段からボーイッシュな服装してるし」

花陽「凛ちゃんに僕っ娘になれと⁉︎」

束「いやそこまでは言ってない」

花陽「確かに凛ちゃんはスカートよりズボンを履く事が多いですけど、凛ちゃんもそれを気にしてるんです。μ’sに誘う時も女の子らしい格好は自分には似合わないって言ってましたから・・・だから・・・」

束「あー・・・そういう事か・・・。それじゃ確かに言えないな・・。悪かった、つまらない事言って」

花陽「いいんです!それよりも今はステージでの衣装を選びましょう!」

束「張り切ってるな。まだμ’sとしてのステージもやってないのに・・・ま、確かに練習と思えば大した事は・・・花陽ちゃん?」

ふと束が花陽を見ると花陽の顔がみるみる青ざめていく。

束「・・・えーと、花陽さーん?もしかして今更緊張してらっしゃる?」

花陽「き、き、き、緊張なんて!し、し、してませんよ?」

強張った笑顔でそう答えるが身体はガッチガチに固まっており顔色は悪く、目は涙目である。

束「緊張してます!って貼り紙するよりわかりやすいな・・・。あんま無理しない方が・・・」

花陽「いえ!ご飯の為です!こ、これ位・・・!」

束「ご飯への情熱半端ねぇな・・・。アイドルより凄いんじゃない?」

そうこうしている内に順番の前の番号のペアが呼ばれた。もう時間がない。

束「はあ・・・仕方ない。こうなったら奥の手だ」

花陽「奥の手・・・ですか?」

束「ああ、ちょっと耳貸して・・・」

束が花陽に耳うちをする。

花陽「・・・えぇぇぇぇッ⁉︎」

 

 

 

 

 

前のペアの歌唱が終了し、ステージ袖に退場する。

司会「それでは次の参加者です!エントリーナンバー7番、『仮面シンガー』さんです!」

司会の紹介と共に花陽と束がステージに上がる。しかし壇上に上がると同時に観客からどよめきが起こる。なぜなら

二人はマスクを付けて顔を隠してステージに上がっていたからである。

花陽「わ、私達は!」

束「二人で一人の・・・仮面シンガーだ!」

束(こーやって顔を隠しちまえば少しはマシだろ?)

花陽(そ、そうですか・・・?)

花陽のマスクは蝶の形をした目元のみを隠すタイプの物であったが束が付けてるものは頭からスッポリ入れるタイプの馬の頭である。側から見たらかなり怪しい。

司会「え、え〜と、それではお名前を教えて頂けますか?」

花陽「ピャッ⁉︎」

司会からマイクを向けられ緊張して固まってしまう花陽。

束(花陽ちゃん!打ち合わせ通りに!)

花陽(は、はい!)

花陽「え、えっと!初めまして!ご飯大好き小泉さんです!よ、よろしくお願いします!」

司会「そこはラーメンじゃないんですね・・・」

花陽「ラーメンは凛ちゃんが大好きです!」

司会「いや知りませんけど・・・。それではそちらの男性?の方、お名前を・・・」

馬のマスクを被った束にマイクを向ける司会者。

束「はい、私の名前はウマ シカオです。よろしく」

司会「はい、よろしくお願いします。馬鹿さん」

束「だれが馬鹿だ!」

花陽「ふふっ・・・」

司会と束のやり取りを見て花陽は思わず笑ってしまう。その瞬間フッと肩の力が抜けた気がした。

束「いい顔だ、このままいくぜ?」

花陽「・・・はい!」

司会「それでは曲の方に移らせて頂きます!曲は『孤独なheaven』です!」

司会の紹介と共に曲のイントロが始まる。

花陽「あなたへのHeartBeat〜♪ 熱く、熱く・・・」

 

 

 

 

 

 

花陽&束「とめられない〜♪熱いねheaven〜♪」

最後まで歌いきった二人に会場から惜しみない拍手が送られる。二人は一礼してステージを降りた。

束「いい・・・手ごたえ・・・だったんじゃない・・・?」

馬のマスクを頭からスッポリ被ってる関係で空気の入りが悪く、歌い終わった直後で軽い酸欠状態になっている束。

足取りも若干フラついている。

花陽「あれだけの人に見て貰えるなんて・・・思ってもいませんでした・・・。もしアイドルとしてステージに上がったら同じくらいの人に私の歌を見て貰えるんですかね・・・?」

束「何言ってんだ、その可愛い顔を見せるんだからもっと見て貰えるに決まってるだろ?」

花陽「か、可愛い・・・⁉︎そ、そんな事ないですよ!花陽なんて全然・・・」

束「謙遜するねぇ」

とは言いつつ可愛いと言われた花陽は嬉しそうであった。

間も無く、全ての組が終わり結果発表になる。

司会「優勝は・・・・・エントリーナンバー7番!『仮面シンガー』さんです!」

花陽「やった・・・やりました!優勝ですよ!束さん!」

束「よかったな花陽ちゃん!お米と炊飯器手に入って!」

花陽「はい!これからは毎日部室でご飯炊けます!」

束「・・・にこちゃんが部室来たらビックリするだろうな、それ・・・」

司会「それでは優勝した『仮面シンガー』のお二人には優勝賞品の奥駿河旅館優待券のペアセットを差し上げます!」

花陽&束「・・・・・・え?」

司会「いえ、ですから旅館の優待券を・・・」

花陽「あの、お米は・・・」

司会「黄金米は副賞で・・・」

よく見ると遠目からでは見えなかったが炊飯器の横にちっちゃく副賞と書かれていた。

花陽「そ、そんな⁉︎」

ショックのあまりその場に崩れ落ちる花陽。

花陽「私は・・・一体何の為に・・・アイドルに・・・」

束「いやアイドル関係ないからね⁉︎あなたが勝手に参加した只ののど自慢だからね⁉︎こんな所で勝手にアイドル人生にピリオド打たないで⁉︎」

花陽「もう何もかもどーでもいーです・・・廃校でも何でもしてください・・・」

束「花陽ちゃん⁉︎」

こうして、賞品の優待券を貰い燃え尽きて真っ白になった花陽を引きずりながら束は会場を後にするのだった・・・。

 

 

 

 

 

 




第7話、もうちょっと続きます。


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第7話 束の長い一日 その4

束「はぁ・・・なんかどっと疲れた・・・」

結局あの後失意のドン底に落ちた花陽を元気付ける為に近くのご飯屋に行き、黄金米をたらふく食べさせる事でようやく立ち直らせ(代金は全て束持ち)花陽はニコニコしながら帰っていった。

束「とりあえずもう今日は帰ろうかな・・・」

そんな事を考えながら束は秋葉原の裏路地に入り、近くにあった自販機で缶コーヒーを買う。するとそこにメイド服を着た女性が近づき、束にチラシを勧める。

「す、すぐ近くです。良かったらお帰りになりませんか?」

まだ慣れていないのか言い方もたどたどしく声もあまり出ていない。場所が場所なので珍しい事でも無く、こういった事に慣れている束は手慣れた様子で返事を返す。

束「まだ恥ずかしがってるな?それじゃご主人様は捕まえられないぜ?」

そう言いながら束は購入した缶コーヒーを飲みながら振り返るとそこにいたのは・・・

絵里「つ、束さん⁉︎」

ブーッ⁉︎

余りに予想外の相手だった為か束は再び口から盛大に吹き出してしまう。

絵里「きゃあ!あ、危ないじゃないですか!汚したらどうするつもりですか!」

束「どうするつもりですか?じゃねぇよ!何してんだよこんな所で!」

絵里「何って・・・アルバイトですけど・・・」

束「いいのか⁉︎生徒会長がバイトして⁉︎」

絵里「校則でも禁止はされていません。それに生徒会があるので私は休日だけ出させて貰ってるんです」

束「はあ・・・。しかしなんでまた?」

絵里「あなたが言ったんですよ?やりたい事を見つけろって。だからこうして先入観無しで色々な事に挑戦してみようと・・・」

束「あちゃー・・・そっち行っちゃったかぁ、確かに言ったけどさ・・・そーゆー意味じゃないんだよなぁ・・・」

絵里「・・・・・?」

絵里の予想斜め上の行動に頭を抱える束。絵里はキョトンとしていたが・・・。

束「まあいいや。色々知るのは悪い事では無いし・・・。

で?用件は何かな」

絵里「あ、えっと・・・今日はホビーdayのイベントをやってるんです。良かったら来てくれませんか」

そう言ってメイドカフェのチラシを渡す。チラシにはホビーdayの詳細が大きく書かれていた。

束「色々な種類のゲームやホビーを楽しめるってヤツか・・・。しょーがない。知人の頼みじゃ断れんよ」

絵里「ありがとうございます!コッチです!」

絵里が笑顔で感謝を述べ店へと案内を始める。

束「やれやれってヤツだぜ・・・」

 

 

 

 

絵里に案内されカフェに到着した束。絵里は店舗のスタッフに応対を引き継ぐとまた外へ出て行く。

束「あれ?行っちゃうの?」

絵里「まだ入ったばかりですから。外でチラシ配りが多いんです。それじゃご主人様、ごゆっくり♪」

笑顔でそう言って絵里は行ってしまった。

束「可愛げはあるんだから学校でももっと素直に出せばいいのに・・・」

こういった所に入るのは初めての為、知り合いが居なくなり途端に少し不安になる束。入店の手続きを済ませ、店内に入るとホビーdayの名に相応しく、あちらこちらで客とメイドが様々なホビーに興じている。

カードゲームをしている所もあればテレビゲームで対戦している客もいる。ゲームだけじゃなくプラモデルを作ったり作った作品を大勢で見せ合っているコーナーも出来ていた。

束「は〜・・・スッゴイな・・・今のメイドカフェってこーなってんだ・・・」

とりあえず手近な席に座るとメイドが水を持ってくる。

「おかえりなさいませご主人様!やりたいものがあったら是非お声を掛けてくださいね!」

束「あ、はい。どうも・・・」

なんか嫌な予感がしつつおそるおそるメイドの顔を見る束。

ことり「ふぇっ⁉︎な、なんでお兄さんがここに⁉︎」

ブーッ!

案の定というかなんというか、本日3回目となる吹き出しをかます束。

束「それはコッチのセリフだぜ・・・ことりちゃん・・・。何してんの?」

ことり「えっと・・・その・・・ごめんなさぁぁぁい!」

その場から逃げ出して奥の方に隠れてしまうことり。

束「あ!おいコラ逃げんなよ!娘!」

束の呼びかけてもことりはチラチラこちらを覗いてくるだけで出てこない。

束「なんか・・・もういいや・・・」

諦めた束は気を取り直して何かに参加しようと店内を物色する。するとテレビゲームが目に入る。

束「これなら出来そうだな・・・」

内容は横スクロール型のアクションゲームであり、家で穂乃果や雪穂と一緒にやった事があるタイプだった。

メイド「あ、やりますか?どうぞこちらへ!」

メイドに案内されて画面の前の席に座りスタートボタンを押す。

『マイティアクションX!』

タイトルコールが流れてゲームが始まる。ピンク色の火の玉に手足が生えたようなキャラクター、マイティが現れ、次々と敵を倒しながらステージをクリアしていく。

メイド「ご主人様上手ですね!」

束「これ位大した事ないさ。それに、天才ゲーマー『M』には敵わない」

メイド「天才ゲーマー『M』?」

束「昔この辺のゲーセンに出没した文字通りゲームの天才さ。余りにうますぎるんで出禁になった所もあるとか・・・ないとか」

メイド「そんな人がいるんですねぇ・・・。あ、でもこのゲーム、ウチのメイドにも一人うまい娘がいるんですよ。もし良かったら対戦してみませんか?いい勝負になりそうです」

束「へぇ・・・是非お手合わせ願いたいもんだ」

メイド「わかりました。ミナリンスキーさーん!」

ことり「えー⁉︎」

おそらくこの店での名前なのだろうミナリンスキーと呼ばれたことりが恥ずかしそうに前に出てくる。

束「やっぱりね・・・。昔から手先は器用だったからねぇ〜?」

ことり「うぅ・・・お兄さんイジワルです・・・」

しぶしぶ席に座りコントローラーを握ることり。その時、一瞬風が吹き・・・ことりが不敵に笑う。

ことり「ゲームなら・・・負けませんよ?」

束「おっと、なんか入っちゃったパターン?心が踊るねぇ?」

束は軽口を叩きながらコントローラーをガチャガチャ弄る。やがて互いの準備が整い、ゲームが始まる。画面が上下に二分割されそれぞれことりはピンクの、束は黒いマイティを操作する。

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション!X!』

ことり「行きますよ!」

束「かかってこい!」

二人は手慣れた様子でステージの敵や障害物をクリアしていく。

束「これでもくらえ!」

束のマイティがステージにあるボタンを叩くと、ことり側のステージの上から岩が降ってくる。対戦時限定の妨害トラップである。

ことり「ッ⁉︎」

ことりはとっさに近くにあったチョコレート型ブロックを破壊し中にあったメダルのようなものを取る。

『鋼鉄化!』

ことりのマイティが銀色になり降ってくる岩を弾く。

束「エナジーアイテムの場所まで完璧に把握してるって訳ね・・・」

ことりはお返しとばかりにスイッチを叩く。

束のステージの後ろから眼のついた黄色いバイクが追っかけてきて束のマイティに激突、そのまま画面の外へ吹っ飛ばしてしまう。

ことり「あっけないですね?これでゲームオーバー・・・」

しかしことりは束の様子が変な事に気付く。

束「クックックッ・・・そうだ、ゲームオーバーだ・・・だが・・」

その瞬間、紫色の土管が現れその中から吹っ飛ばされた筈の黒いマイティが現れる。

ことり「なっ・・・⁉︎」

束「私は・・・不滅だぁぁぁっ!」

ことり「そんな・・・対戦プレイでコンティニューなんて出来ない筈・・・まさか!」

束「そうだ、始まる前に少し手を加えさせて貰ったぜ?このゲームにはゲームが苦手な人間への救済措置として隠しコマンドがあるんだ」

メイド「隠しコマンド?」

束「そう。それをタイトル画面で入力するとマイティの色が変わり黒色になる。そうするとスペックは最低になるが代わりに99回のコンティニュー権が追加されるのだぁぁぁっ!」

どっかの社長のようなハイテンションになる束。

ことり「本来なら残機無しでどこまでいけるかを競う対戦プレイで残機99とは・・・そこまでして勝ちたいんですか!」

束「勝ちたいさ!それともこんな条件差じゃ流石の君でも勝てないのかなぁ?ミナリンスキー・・いや、天才ゲーマー『M』ゥゥゥッ!」

メイド「ミナリンスキーさんが・・・天才ゲーマー『M』⁉︎」

束「かつて君に舐めさせられた苦汁の数々!今ここで晴らす!」

ことり「・・・いいでしょう。受けてたちます!」

二人は席に着き直し、ゲームを再開する。

ことり「ノーコンティニューで・・・クリアします!」

束「コンティニューしてでも・・・クリアする!」

 

 

 




劇場版エグゼイド見てきたテンションのまま書いたらこーなってしまった・・・
後悔はしてません


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第7話 束の長い一日 その5

ゲームの内容は基本マリオでスマブラ要素が加わったモノと思っていただくとわかりやすいかと思います。


束「行くぞ!一回やられたから残りライフはあと98!」

画面左上にハート型のカウントが現れその中の数字が99から98に減る。

ことり「だったら使い切るまで倒すまでです!」

ことりのマイティがブロックを壊すと中から自転車の絵が描かれたアイテムが現れる。

『シャカリキ!スポーツ!』

それを取ると自転車が現れ、マイティがそれに乗りステージを走り出す。

束「くそ!滅多に出現しないレアアイテムのシャカリキスポーツをこうも簡単にだすとは!」

ことり「どこに何が、どの確率で現れるのかは把握してるんですよ!ほら、よそ見してていいんですか?」

『シャカリキ!クリティカルストライク!』

ことりのマイティがウィリーしたかと思うとそのまま自転車の前輪が勢いよく射出され、下画面の束の黒マイティにぶつかる。黒マイティはまた吹っ飛ばされゲームオーバーになるが土管が現れ復活する。

束「貴様ぁ!不意打ちとは卑怯だぞ!おかげで俺の貴重なライフが1個減ってしまったではないかぁっ!」

ことり「まだ97もあるくせに何言ってるんですか!」

そんな感じでことりは天才ゲーマー『M』の力を遺憾無く発揮し、対する束はやられては復活を繰り返しながらお互いにとうとう最終ステージに到達した。

ことり「ついに最終ステージ・・・」

束「残りライフ・・・あと48・・・」

ことりのマイティはパワーアップアイテムを順調に取得したことで現在はロボットに乗った状態のマキシマム形態になっており敵や障害物を難なく蹴散らす。対する束は裏コマンドの影響でレベル0の為、アイテムを取っても特に変化も無くやられて復活を繰り返しながら進む。いつの間にか二人の対戦に興味を持った他の客も大勢集まってきていた。

束「残りライフあと45!」

ことり「本当・・・ゾンビなみにしつこいですね?しつこい男の人は嫌われますよ?」

束「決して諦めないと言ってほしいね!あ、やられた!残りライフあと44!」

そして二人は遂に最終ボスの元に辿り着く。

ことり「このラスボスも何度も攻略済みです!これ位なら・・・わっ⁉︎」

攻撃を仕掛けようとしたことりのマイティだったが敵はことりの予測外の動きを行い反撃してくる。一瞬反応が遅れたことりは攻撃を受け、身代わりでマキシマムゲーマーが破壊される。

ことり「そんな・・・こんな攻撃は無かった筈・・・」

メイド「えーと、今スマホで調べたんですけどどうやら裏コマンドを使用した状態でスコアが一定値を超えるとラスボスが変化するようになってるみたいです。つまり今回は

・・・」

束「俺が裏コマンドを使い・・・」

ことり「私が高スコアを出したから・・・」

メイド「こーなった、と」

束&ことり「・・・えぇぇぇぇっ⁉︎」

通常のラスボスとは次元の違う強さを見せる裏ラスボスに対し、攻撃をかわすのに精一杯なことりと、何回か食らってゲームオーバーになる束。

束「残りライフ・・・あと40か・・・。ことりちゃん」

ことり「何ですか?」

束「動きを見ることが出来ればアイツの攻略法、見つけられるか?」

ことり「色々な方法で攻撃を仕掛けられれば見極める事も出来ると思いますが・・・」

束「よし・・・一時休戦だ。俺があの手この手で攻撃を仕掛ける。後ろからそれをよく見て攻略法を見つけるんだ」

ことり「わかりました。見つける前に残機無くさないでくださいね?」

束「だったら無くなる前に見つけてくれよ!」

そう言って束はラスボスに目掛けて突っ込んでいく。無数の放たれた光弾を避けながら進むが突然下から火柱が上がりマイティを焼いてしまう。

束「残りライフあと39!」

その後も束はあらゆる手段を使い攻撃を試みるが全て敵に阻まれてしまい返り討ちにあってしまう。

束「残りライフ・・・あと・・・3・・・」

メイド「開始時には40もあったのにもう残り3に・・・」

ことりはただジッと画面を見つめていたが・・・

ことり「お兄さん、攻撃を真下からお願い出来ますか?」

束「真下から?・・・よし、わかった」

束のマイティは弾幕と曲がるレーザーをかわしなが中に浮くらラスボスの真下に潜り込む。そのまま攻撃を仕掛けようとする束だったがすぐ真下の部分から剣が飛び出て刺されてしまった。

束「残りライフ、あと2」

メイド「やっぱりダメでした・・・」

ことり「いえ、見つけました。攻略法を!」

そう言ってことりはコントローラーを動かしマイティを束と同じように真下に向かわせる。

メイド「でもさっきと同じように剣が出てきて・・・」

ことり「ええ、でも・・・」

真下に到達したことり。同じように剣が飛び出て串刺しにしようとするが、ことりはそれを回避する。

ことり「この剣はいわば死角に対する迎撃行動・・・。そしてこの動作をしてる間は他の攻撃が停止するんです!」

メイド「え?・・・あ、ホントだ!」

剣が突き出ている間は画面を埋め尽くすほど広がっていた弾幕やレーザーが全て止んでおり、その隙を突いて、弱点である頭部に攻撃を仕掛ける。

束「さすがは天才ゲーマーだな」

コンティニューした束のマイティも同じように攻撃をする。敵は最後の抵抗と言わんばかりに口からビームを発射してくる。

ことり「くうっ!」

間一髪回避することり。

束「ギャアアアッ⁉︎」

思いっきり直撃を食らう束。

束「残りライフ、あと1!」

爆発の中から土管が現れ、そのまま敵の頭部目掛けてマイティが射出される。

ことり「これで!」

束「終わりだぁぁぁっ!」

二人はほぼ同時に頭部目掛けてキックを打ち込む。ラスボスはキックを受けた所から亀裂が広がりやがて大爆発を起こす。爆発が収まると画面には『game clear』の文字が表示される。

ことり「ゲームクリアです!」

束「何とかなったか・・・」

疲れた様子で椅子に寄りかかる束。いつの間にか集まっていた観客も喝采を送る。

ことり「結局残機全部使いましたね?」

束「そっちだってマキシマムなかったらアウトだっただろうが」

ことり「そうですね・・・。やっぱ一人でやってるだけじゃわからない事ってあるんですね。対戦したり、協力してみて初めてわかる事もあるんだなぁって」

コントローラーから手を離したからかことりはいつものおっとりとした感じに戻っていた。

束「かもね。そしてそれは何もゲームに限った話じゃないしな」

ことり「?」

束「仲間を大切にって事さ。さ、もうこの話は終わりにしてエンディング見ようぜ?俺対戦プレイの時の特別なエンディングみた事ないんだよね」

ことり「私もです!」

その時店内にチラシ配りを終えた絵里が帰ってきた。

絵里「今戻りました・・・ってなんの騒ぎです?これ?」

メイド「テレビゲームなんだけど盛り上がってるのよ。ほら、あなたの連れてきた男の人」

絵里「束さんが?」

絵里は人集りのできてる所へ寄っていく。

絵里「束さーん?一体何でそんなに盛り上がって・・・きゃあ!」

その時絵里が床のコードに足を引っ掛けてつまづく。

引っ張らたコードはコンセントから抜けてしまい、それと同時に画面に映っていた特別エンディングもプツン!と消えてしまった。

束&ことり「・・・・あ・・・・」

クリアの余韻に浸っていた二人は一瞬にして固まってしまうのであった・・・。

 

 

 

 




第7話、本当に長いですが次回で一応完結の予定です。


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第7話 束の長い一日 その6

メイドカフェを出てすっかり陽も落ちて暗くなった道を歩いて帰宅する束。途中で音ノ木坂学院の前を通るのだが何やら校門の前に人影が見える。

真姫「うぅ・・・怖くない・・・怖くないんだから・・・」

人影の正体は真姫であった。なにやら校門の前でブツブツ言いながら立っている。すると・・・

束「西木野さぁん・・・診察ですよ・・・」

後ろから音も無く忍びよった束が真姫の耳元に怪しげに囁きかける。

真姫「ヒッ⁉︎嫌ぁぁぁっ!」

バチコーンッ‼︎

束「ぶべらぁっ⁉︎」

驚いた真姫が思い切り平手打ちをし、束は3メートル程吹っ飛ばされる。

真姫「ハァ・・・ハァ・・・つ、束?何してんのよ!」

束「あだだ・・・。凛ちゃんの言った通りだ・・・。コレやって許されるのジャグジャグだけだわ・・・」

真姫「イミワカンナイ・・・。あとそれ言ったの凛だけど凛じゃないし・・・」

束「で、真姫ちゃんは何してる訳?誰もいない夜の学校で。肝試し?」

真姫「そんな訳ないでしょ。忘れ物を取りに来ただけよ」

束「忘れ物?」

真姫「今作ってる新曲の楽譜。音楽室に置いてきちゃったみたい」

束「そりゃ大変だ。じゃ、頑張って」

真姫「待ちなさい」

そのまま立ち去ろうとする束の肩を真姫がガシッと掴む。

真姫「しょうがないわね・・・。まぁどーしてもって言うなら一緒に来てもいいわよ」

束「え?そんな事言ってない・・・」

真姫「ほら、行くわよ」

束「イテテ!ちょっ、真姫ちゃん!耳!耳引っ張んないで!」

二人は校門を開けて夜の学校へと入っていった・・・。

 

 

 

 

 

束「光の力、お借りします!」

カチッ

真姫「懐中電灯つけるくらいで大袈裟よ・・・」

懐中電灯で前を照らしながら夜の校舎を歩く二人。懐中電灯を持った束が前を歩き、その後を真姫がついて行く。

束「にしても意外だな、真姫ちゃんこうゆう所苦手なんだ?」

真姫「べ、別に苦手なんかじゃないわよ!あなたが一緒に来たそうだったから・・・」

束「ハイハイ、そういう事にしときますよ・・・ん?」

何かを感じた束がその場に止まる。いきなり止まったので後ろを歩いていた真姫が束の背中にぶつかる。

真姫「きゃあ!ちょっと!いきなり止まんないでよ!」

束「真姫ちゃん、静かに」

束に遮られて黙る真姫。耳をすませると微かだが音のようなものが聞こえてくる。

真姫「これって・・・ピアノの音?」

束は再び耳をすますと確かにピアノの音色らしき音が聞こえた。

束「どうやら空耳じゃないみたいだな」

真姫「違うわ、今のはソラミミじゃなくてラシドレよ」

束「音階の事じゃねぇよ!」

束は耳をすませて何処から音がしているのかを探る。

束「音楽室の方からだ・・・」

真姫「そんな・・・今日は休みだし学校に入れるわけないのに・・・」

束「・・・まぁ俺たちが言えた義理じゃないけどな?」

束は音楽室に向かって歩き出す。

真姫「ちょっ、束⁉︎」

束「どのみち俺たちの用事は音楽室なんだから行かなきゃなんないだろ?ジーッとしててもドーにかなるもんじゃないし」

真姫「それはそうだけど・・・あ!待ちなさいよ!」

ズンズン先に進む束とそれを追いかける真姫、音楽室に近づく程音は大きくなっていく。そして遂に音楽室の前に到着する。中からはハッキリとピアノの音色が聞こえている。

束「ここか・・・」

真姫「怖くない・・・怖くないんだから・・・」

真姫は先程から束の後ろに隠れながら束の上着の袖の部分をギュッと握っている。束も真姫の心境を察して特に何も言わずに掴ませている。

束「じゃ、入るぞ」

束は扉を思い切り開けて中に入る。途端にピアノの音は消えそこには蓋の開いたピアノだけがあった。

真姫「だ、誰もいない・・・?」

真姫がピアノに近づくとピアノの影から何かが飛び出してきた。

「わあぁぁぁぁっ!」

真姫「きゃあぁぁぁぁぁぁっ⁉︎」

その瞬間束が素早く飛び出してきた何者かの後ろに回り込んだ。

束「奥義!堕天龍鳳凰縛!」

ガシィッ!

「ぐえっ⁉︎」

堕天龍鳳凰縛(只のコブラツイスト)を決め動きを抑える束。その時束が落とした懐中電灯が転がり抑えられた人物の顔を照らす。

真姫「え・・・?副会長・・・?」

希「痛たたた!ウチが悪かった!謝るから離してぇぇ!」

ピアノの影から飛び出した人物は希であった。束から堕天龍鳳凰縛(只のコブラツイスト)を受けてたまらず床をバシバシ叩いてギブアップの意思を伝える。

その後・・・

 

 

 

束「で?副会長がこんな時間にこんな所で何やってんの?」

希「いや〜、元々は生徒会の書類でやり残した事があったから先生に許可もらってそれをやってたんよ。で、終わった頃にすっかり外が暗くなってて、帰る途中で物音がしたから音楽室にきたら楽譜が置いてあってちょっとやってみようかな〜って・・・」

束「真姫ちゃん脅かしたのは?」

希「誰か来たから慌てて隠れて、それでちょっと出来心で・・・」

束「全く・・・」

その後、楽譜も回収し謎も解決した為、束達三人は音楽室を出る。

希「えりちが用事が無ければ手伝って貰えてもっと早く終わった筈なんやけどなぁ」

束「あれ?希ちゃん知らないの?絵里ちゃんさぁ・・・」

束は昼間の事を希に話す。

希「あちゃー・・・そっちいっちゃったんかぁ・・・そうゆう意味じゃないんやけどなぁ・・・」

束「だろ?」

束と同じように頭を抱える希。その後ろでは真姫が先程からチラチラと後ろを振り返っている。

束「どうした真姫ちゃん?」

真姫「なんか・・・変な音しない?」

束「なんだ?またピアノの音か?」

真姫「違うわよ。今度は・・・なんかこう・・・足音というか、走ってくる音というか・・・」

希「走ってくる音?」

二人も会話をやめて静かにして耳をすます。確かにタッタッタッ・・・という足音のような音が聞こえてきた。その音は段々と大きく聞こえてくる。

希「コッチに・・・近づいてる?」

真姫「な、何なのよ・・・一体・・・」

束「・・・くるぞ!」

次第に大きくなる足音とともに廊下の奥の暗闇から音の主が姿を現す。

ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!

暗闇の中から人体模型が現れ、こちらに向かって全速力で走ってきた。

三人「・・・ギャアァァァァァァッ⁉︎」

本当の怪奇現象を前に三人は思わず悲鳴をあげてしまう。

希「ホントに出たぁぁぁっ!」

真姫「もうヤダ!イミワカンナイ!」

束「落ち着け!かまいたち!いやお前達!奴の動きを良く見てみろ!」

束に言われて二人は走ってくる人体模型を見る。

束「いいか?パッと見た限り奴の特徴はあの脚力だ。あの脚力があるからこそ奴はあれ程のスピードで走れるんだ」

真姫「っていうかそもそも人体模型が走る事がおかしいんじゃ・・・」

束「だったらコッチも目には目を、だ!コッチも足を使ってやるんだ!」

真姫「足を・・・?」

希「なるほど!で、どう使うん?」

束「・・・・・逃げるんだよぉぉぉぉぉっ!」

真姫&希「・・・・・ええぇぇぇっ⁉︎」

そうこうしている内に人体模型がすぐ後ろに迫ってくる。

束と希は逃げる為走り出すが真姫が立ち上がらずその場に座り込んでしまう。

希「真姫ちゃん⁉︎どうしたん⁉︎」

真姫「こ、腰が抜けちゃって・・・」

束&希「ええぇぇぇっ⁉︎」

真姫も逃げようとするが恐怖の方が優ってしまい立ち上がれない。

希「束くん!抱っこ!」

束「ガッテンテン!」

急いで束が真姫を抱き上げて走り出す。この時、急いでた事もあって束は無意識だったのだが結果的に抱きかかえる体勢がいわゆるお姫様抱っこになってしまっていた。

真姫「ちょっ⁉︎なんでこの体勢⁉︎お、降ろしなさいよ!降ろしてー!」

束「うわ⁉︎バカ!暴れんなって!」

希「束くん!あの人体模型・・・パワーを感じる!」

束「え⁉︎パワー?・・・あー、そうゆう事ね・・・」

以前のディスク事件の時を思い出し、束は走る人体模型のカラクリを理解する。

束「とりあえず真姫ちゃんをどうにかしないと・・・」

お姫様抱っこしたままでは解呪が出来ないのでどうにかして真姫を安全な所へ退避させる術を探す束。昼間の弓道大会が尾を引き、魔力が完全に戻っていない為、魔法も使えない。回復した魔力量からも恐らく解呪法一回が限界である。束はチラッと希の方を見る。

束「希ちゃん!二手に分かれよう!」

希「わかった!その方が良さそうやな!」

束「希ちゃんは一階に!俺は二階を逃げる!もし来なかったら玄関を開けといて!」

希「玄関を?・・・うん!わかった!」

二人は階段の所まで来ると打ち合わせ通り希が階段を降りて一階に、束はそのまま階段を通過して二階を逃げる。人体模型は束達の方を追ってきた。

束「やっぱりコッチに来たか・・・頼んだぜ、希ちゃん。そして・・・」

束はチラッと抱えている真姫を見る。人体模型を見ないように瞼をギュッと閉じており、その手は微かに震えている。

束「もうちょっとの辛抱だ。頑張れ、真姫ちゃん」

真姫を抱えたまま束は校舎を走り続ける。窓から外を見ると希が玄関を指差しながら手を振っている。

束「・・・よし!」

希の姿を確認した束は素早く方向転換をして階段に向かう。途中、廊下に備え付けられていた消化器を蹴り飛ばし廊下に転がす。突然転がってきた消化器を避ける事もできず人体模型は激しく転倒し、その衝撃で首が外れて転がる。その隙に束は階段を駆け下り一階に来ると真っ直ぐ玄関に向かう。玄関の先では希が待っており手を振っている。

希「束くーん!」

束「希ちゃん!真姫ちゃんを・・・ッ⁉︎」

束が後ろを振り向くと首の無い人体模型が走ってきていた。正確には首はあるのだが頭ではなく左手に抱えれた状態で持っていた。

束「ブロッケンみてえな真似しやがって!くそ!思ったより復帰が早い!これじゃ真姫ちゃんを希ちゃんに預けられない!」

当初の予定では二手に分かれた希が退避経路を確保し、真姫を連れて逃げてもらってから解呪を行う予定だったのだがこれでは希に真姫を渡しても二人が人体模型から逃げ切る事は難しいだろう。そうこうしてる内に玄関を通過し、外に出る。

束「くそ!こうなったら・・・やるしかねぇっ!真姫ちゃん!ゴメン!」

真姫「え?」

束「ウルトラァ・・・ハリケェェェン!」

真姫「キャアァァァァァァッ⁉︎」

希「ぶん投げたーッ⁉︎」

束は真姫を思い切り上空に向かって放り投げる。すかさず人体模型の方に向き直ると両手を構える。そんな束に御構い無しに人体模型は全速力で突っ込んでくる。

束「魔力憑きってわかってても怖ぇぇぇッ!」

ボルト並みのスピードで突っ込んでくる人体模型の迫力に圧倒されながらも束は両手で人体模型を受け止める、

束「ふぐぅっ⁉︎」

あまりの勢いに束はそのまま後ろに押されるが必死に踏ん張る事でなんとか転倒はせずに持ちこたえる。やがて数秒が経つと人体模型はガクリ!と力なく崩れ落ち、その衝撃でバラバラになってしまった。

束「と、止まった・・・」

束はホッとしてその場に座り込む。が・・・

希「束くーん!真姫ちゃん!真姫ちゃん!」

束「あー⁉︎忘れてたー!」

上空高く放り出された真姫。しばらくはそのまま上に向かって飛んでいたがやがて重力に引かれて落下をはじめる。

ドゴン!

地面にぶつかる直前、間一髪で束が間に滑り込みかろうじて地面との激突は避けられた。

希「二人とも!大丈夫⁉︎」

希が二人の元に駆け寄ると、真姫は上空に放り出された際に気を失ってしまったらしい。そして束は落下してきた真姫のヒップアタックが決定打となり完全に動かなくなってしまった。

希「ま、まぁ・・・二人とも無事?で良かった・・・かな?」

 

 

 

 

 

束「・・・た、ただいま・・・」

あの後なんとか意識を取り戻した束。真姫から散々怒られたが自分を抱えて逃げてくれた事もあり、何とか許してもらえた。後始末は希にお願いし、二人と別れてようやく穂むらに帰宅した。

穂乃果「あ、おかえりお兄ちゃん・・・ってどうしたの⁉︎なんかすっごいボロボロだけど⁉︎」

束「ま、まぁ・・・ちょっとね・・・」

穂乃果「お兄ちゃんがそんなになるなんて・・・花陽ちゃんのお願い、相当大変だったんだね」

束「は、はは・・・もうダメ、かも・・・」

穂乃果「お兄ちゃん⁉︎・・・凄い熱だよ⁉︎お母さーん!雪穂ー!お兄ちゃんが大変なの!手伝ってー!」

どうやら海未の風邪がうつったらしく、そのまま倒れ込んでしまう束。意識もハッキリしないまま穂乃果達に連れられてベッドに向かうのであった・・・・・。

 

 

 

 

 




第7話ようやく終わりました。今回はウルトラネタが多くしてみました。
次回以降も原作から脱線した展開が続きますがよろしくお願いします。(もしかしたらオリジナルキャラを追加するかもしれません)


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第8話 Eの選択/やりたい事は? その1

風都探偵始まりましたね。やっぱ変身するんですかね?楽しみです。


束「う〜ん!いい天気だ、今日も一日キバっていくぜ!」

朝早く起きた束は日課の一つである店先の清掃を行っていた。いつも通りに手短に済ませるがいつもと違う所に気付く。

束「あれ?配達の牛乳が来てない?」

いつもなら束が外に出た時には既にあるのだが今日はまだ来ていなかった。

束「珍しいな・・・。まぁ無くて困る事は無いんだけど・・・」

「おはようございます!」

束が話をしていた矢先に自転車が穂むらの前に来て止まり、若い女性が降りてくる。

「ごめんなさい。遅くなってしまって・・・」

束「あー、別に構わないよ。ってか今日はいつものおじさんじゃないんだな」

束は受け取った牛乳の一本を開ける。

「体調があまり良く無くて・・・私が今日まで臨時でやらせてもらってるんです」

束「へー、おじさん大丈夫かなぁ・・・ってその声もしかして・・・」

束が帽子で隠れた顔を覗き込むと

絵里「あら?束さんだったんですか?」

束「やっぱり・・・」

大体予想していたからか今回は前のように噴き出す事なくガクリと肩を落とす。

束「はぁ・・・これが君のやりたい事な訳?」

絵里「やってみて大変さや面白さもわかりましたがちょっとコレは違うかなぁって」

束「ちょっとじゃねぇよ大分違うよ。もういい加減素直になろ?君の迷走っぷりに作者がエリチカ推しの友達からガチで怒られたらしいからさ?」

絵里「知りませんよ!そんなの!あと作者って何ですか!」

束「まぁそれはおいおい考えるとして・・・いいのか?時間」

絵里「あ!もうこんな時間⁉︎それじゃ束さんまた今度!」

絵里は慌てて自転車で去っていった・・・。

束「やれやれ・・・。どーしたもんかねぇ・・・」

 

 

 

 

 

放課後 音ノ木坂学院

束「チィース」

にこ「ちょっと!窓から入って来ないでよ!」

アイドル部と合流した事で晴れて部室を手に入れたμ’s。束も一応顔を出すよう言われたので部室に来る。

束「で?活動の手ごたえはどうなんだよ?」

穂乃果「順調・・・なのかな?この間撮ったPVは再生回数多くなってきてるんだけど・・・」

束「PV?そんなのいつの間に撮ったんだよ?」

穂乃果「お兄ちゃんが熱で寝込んでた時に」

束「知らない間に終わってた⁉︎」

海未「確かに見てくれてる人は大勢いますが学校存続に繋がるかどうかは正直微妙な所ですね・・・」

束「まぁネットは老若男女誰でも見れるしなぁ。やっぱり近い年齢層にもアピールしてかないと意味無いんじゃない?」

花陽「あ、そういえば・・・」

花陽が何かを思い出したように呟く。

凛「どうかした?かよちん?」

花陽「確か・・・去年のこのくらいの時期にオープンキャンパスに参加したと思うんです。それに合わせてライブを行えば・・・」

真姫「今年もやるって決まった訳じゃないでしょ?廃校になるかもしれないのにオープンキャンパスなんてやるとは思えないんだけど?」

花陽「あ・・・そ、そうですよね・・・」

穂乃果「とりあえず今年もオープンキャンパスをやるのかどうか先生に聞きにいってみよう?それからライブが出来るかどうか考えよう。あ、お兄ちゃんは部外者だからここでお留守番ね?」

束「ま、仕方ないか・・・。いい報告を期待してるぜ」

そうしてμ’sのメンバーが出ていった後、一人ポツンと部屋に残された束。特にやる事もないので部室にあったアイドル雑誌を物色していると誰かがドアをノックする。

束「悪いけどアイドル部なら今出払ってるよ」

「その声は束君やな?ちょうど良かった」

ドアを開けて入ってきたのは希だった。

束「なんだ希ちゃんか。?穂乃果達なら今オープンキャンパスについて先生に聞きにいったぜ?」

希「ありゃ?じゃあ入れ違いになっちゃったんやね。その事について教えてあげようと思ったんやけど」

希は近くにあった椅子に座りながらそう答える。

束「その事?」

希「まぁえりちもいるからあの子達も多分そこで聞くことにはなるとは思うんやけど・・・」

希の説明ではオープンキャンパスは今年も例年通りに行うらしいがそこでの結果によって廃校かどうかが本決まりになるらしいとの事であった。

束「マジか・・・。ライブは出来そうか?」

希「それは一応大丈夫なんじゃないかな?えりちはあまり良く思ってないみたいだけどね?」

束「正に運命の分かれ道って所だからなぁ・・・。ま、生徒会でどうにかしようと頑張ってたから無理もないか」

束は手に取ったアイドル雑誌をパラパラめくりながら答える。

希「えりちは生徒会長としてなんとかしたいみたいやけど、それじゃダメなんよ。今のえりちは無理してるだけだから・・・」

束「まぁ楽しそうではないよな?生徒会以外でやりたい事を見つけろって言ったらなんか変な方向に突っ走ってるし」

パラパラ読みで読み終わった雑誌を棚に戻してから席に戻る束。

束「・・・まぁこのままでも拉致があかないし、何か考えた方がいいかもなぁ・・・」

希「何かって?」

束「それはまだ考えてないけどさぁ・・・」

そこに穂乃果達が帰ってくる。

穂乃果「ただいま・・・ってあれ?副会長?なんでここに?」

希「うーん、二人っきりで秘密のお話ってヤツ?」

束「誤解を招く言い方するんじゃない」

真姫「そういえばこの前の夜の学校でも妙に親しげな様子だったわ」

凛「秘密のお話って何なのにゃー?」

ことり「ことりも知りたいな〜?」

海未「破廉恥な事ではないでしょうね?」

希「あれ?なんか皆おかしいよ?目が笑ってないよ?ちょっ・・・助けて!束君ー!」

ジリジリと希に詰め寄るメンバー達。その異様な雰囲気に希はたじろぎ、束に助けを求める。

束「やれやれ・・・。いやね?秘密の話って程じゃないんだ。ただ希ちゃんがμ’sに入りたいってだけの事だからさ?」

希「えええぇぇぇっ⁉︎」

海未「副会長が・・・ですか?」

束「ああ、前々から興味はあったらしいんだが立場上中々言い出せなかったらしくてな?それで俺の所に相談に来てたって訳だ」

希(束君⁉︎一体どういう・・・)

束(絵里ちゃんの事もあるからな・・・。まぁここは俺の嘘に乗れって)

花陽「ほ、本当ですか?副会長?」

希「え?えーと・・・そ、そうなんよ!講堂でのライブ見てから良いな〜って思ってて!」

穂乃果「私は全然構いませんよ。皆はどうかな?」

海未「まぁ、穂乃果が良いのならば・・・」

穂乃果「決まりだね!副会長、ううん!希先輩!ようこそμ’sへ!」

希「よ、よろしくね?(ホントに頼むで?束君・・・)」

 

 

 

 

翌日

今日は練習には顔は出さない日なので束はいつも通りに穂むらで働いていた。お菓子の売れるピークの時間帯を過ぎ、のんびり店番をしているとそこに珍しい客が訪れる。

束「いらっしゃい・・・あれ?絵里ちゃん?」

絵里「こんにちは。あの、今の時間大丈夫ですか?」

束「あー、もうちょっとで勤務時間終わるからもし良ければ部屋で待っててくれ」

その後・・・

束「お待たせっと・・・。で?何か用かい?」

勤務を終えた束が自室に戻り、下から持ってきた茶菓子を用意しながら用件を尋ねる。

絵里「・・・希が突然スクールアイドル部に入ったんです。何か知りませんか?」

束「へぇ・・・というと?」

絵里「・・・単刀直入に言わせてもらいます。あなたが希に何か吹き込んだんじゃないんですか?」

束「だとしたらどうする?」

絵里「どうして!希は何も関係ないじゃないですか!」

絵里は立ち上がり束に詰め寄る。

束「確かに入るように言ったのは俺さ。でも彼女がやりたいという意思がなければ俺だって誘わないさ」

絵里「やりたいという意思?・・・希が?」

束「ああ。それが彼女のやりたい事、なんだろうさ」

絵里「そんな・・・」

立ち上がり詰め寄っていた絵里はその場に座り込んでしまう。

束「話は大体聞いてるよ。オープンキャンパスの結果次第で廃校が決まってしまうんだろ。だから穂乃果達も今まで以上に頑張ってる。音ノ木坂を廃校にしない為に」

絵里「前にも言いました。いくら学生がアイドルの真似事をしても所詮は素人です、人の心を動かすようなパフォーマンスが出来るとは思えません」

束「随分な事言ってくれるな。まるで知ってるみたいじゃんか」

絵里「これでも子どもの頃はバレエをやってましたからね。彼女達のダンスには表現力が足りないと私は思います」

束「絵里ちゃんバレエやってたのか!・・・そいつぁ好都合だ」

束がニヤリと笑う。

絵里「な、なんですか・・・?」

束「絵里ちゃんこの前言ったよなぁ?やりたい事を見つける為先入観無しで色々な事に挑戦するって」

絵里「え、ええ・・・言いました・・・けど・・・?」

束「そうかそうか・・・クックックッ・・・」

束の怪しい笑いに段々不安になってくる絵里。

絵里「な、何をする気ですか・・・」

束「それはだな・・・」

 

 

 

 

 

更に翌日、音ノ木坂学院 屋上

μ’sはオープンキャンパスに向けて練習に励んでいた。ついこの間からメンバー入りした希も練習に必死についていく。

希「見てる時と違って結構ハードなんやね・・・アイドルって」

花陽「そうなんですよね。花陽も知識としては知ってましたが実際やってみて初めて実感しました」

そんな中海未は一人浮かない顔をしている。

ことり「どうしたの?海未ちゃん・・・」

海未「いえ・・・これで本当に大丈夫なのか、と思ってしまって・・・」

真姫「ダンスやフォーメーションはかなり出来てきてると思うけど?」

にこ「そうよ、何が不満な訳?」

海未「・・・どうしても感動する事が出来ないんです」

凛「感動出来ない・・・?」

海未「確かに歌もダンスも上達していると思います。でも何かが足りない気がするんです。観ていて引き込まれるような何かが・・・」

ことり「それが・・・感動出来ない?」

そこに束が扉を開けて屋上に入ってくる。

束「悪い、遅くなった・・・って何しんみりしてんの?」

穂乃果「別にしんみりしてる訳じゃないんだけど・・・」

ことり「歌やダンスで感動する事が出来ないって話をしてたんです」

束「そうか、ならちょうどいい。まずはコレを見てくれ」

そう言って束はパソコンを開いてある動画を見せる。

真姫「コレって・・・バレエ?」

ことり「わぁ〜この子可愛い!」

海未「ええ、それに上手ですね」

穂乃果「それだけじゃないよ。なんかこう・・・楽しいって気持ちが凄く伝わってくる!」

束「海未ちゃんが言ってるのは多分そう言う事だろ?見てる側が楽しいと思える演技、まぁ表現力っていうのかな?」

花陽「表現力・・・」

束「バレエなんかは唄ったり出来ない分、身体の動きなんかで感情を表現しなきゃいけないからな。そういった意味じゃアイドルより大変かもな」

にこ「言ってる事はわかるけど・・・じゃあ今から私達にバレエをやれって言うの?」

束「そうは言ってないさ。でもバレエの経験者からなら学べる事はあると思わないか?」

海未「つまりバレエをやっていた経験者の方からステージでの表現方法について教えてもらうってことですね」

束「理解が早くて助かる。それじゃそろそろ先生を呼びますかね。その動画の女の子をね」

希「束君、この子ってもしかして・・・」

束が合図をすると扉の向こうから絵里が恥ずかしそうに入ってくる。

穂乃果「生徒会長⁉︎」

希「やっぱり・・・」

絵里「つ、束さん・・。やっぱり私・・・」

束「君は一度スクールアイドルがどんなものかちゃんと見るべきだ。素人の半端な真似事かどうかはそれから決めればいい。穂乃果達もレベルアップに繋がるし、いわばこれはウィンウィンってヤツだ」

絵里「でも・・・」

束「という訳であとはよろしく!俺はちょっとやる事があるから」

そう言って束は出て行ってしまった。残された穂乃果達は・・・

穂乃果「生徒会長、よろしくお願いします!私達、もっと上手くなりたいんです!」

絵里「・・・わかったわ。それじゃまず二人ずつペアになって?」

 

 

 

 

束「あとはあいつら次第ってとこかな?」

学校を出た束は屋上の方を見ながらそう呟く。その様子を校庭の木の上から見つめる人影があった。

「ふーん、あいつが『魔法使い』ってヤツなのね?まあなんだろうと私がスパッ!っと倒しちゃうんだから!」

人影は穂乃果達と同じくらいの歳の少女で背中に背負った刀を抜くと切っ先を束に向けるのであった。

 

 

 

 



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第8話 Eの選択/やりたい事は? その2

今回は初のオリキャラ、そして初の対人戦?になります。
相変わらず拙い文章ですがよろしくお願いします


音ノ木坂学院を出た束は自宅に戻る事にした。穂乃果の母から連絡があり、海外にいる束の母から束宛に届け物が来たらしい。

束「また何を送って来たんだろ・・・?確かこの前は百味ビーンズと蛙チョコだったっけ・・・」

魔法使いらしいといえばらしいのであるが蛙チョコは開けた途端脱走し、捕まえようとしていたら、たまたま部屋に入ってきた穂乃果の顔に張り付きそのまま口の中に入っていくという事件があった。(以来穂乃果は蛙にトラウマを持つ事に・・・)

そんな事もあり母の贈り物に若干の不安を覚えつつも穂むらに向かう束。するといつの間にか目の前にどうみてもコスプレにしか思えない時代錯誤の和風の衣装を着た見知らぬ少女が立っていた。

「あんたが皆道 束ね?」

束「あ、違います。急いでるんで、それじゃ」

「あ、そうでしたか。間違えてすみませんでした・・・って待ちなさい!」

束は面倒くさい事に巻き込まれたくないのですっとぼけてやり過ごそうとするが止められてしまう。

「思いっきり首に名前かけてあるじゃない!顔写真付きで!騙そうったってそうはいかないんだから!」

束「あ、許可証外すの忘れてた。で?確かに俺は束だが一体何の用?」

許可証を取りながら少女に話しかける。質問に答えるかわりに少女は背中に背負った刀を抜いて構えた。

「あんたを倒させて貰うわ、魔法使い」

束「・・・・・はい?」

少女は刀を振りかざして突進してくる。

「たあぁぁぁっ!」

束「ほわぁぁぁっ⁉︎」

ガギィッ!

束はとっさに避け、刀が当たった建物の壁に切り傷が出来る。

束「ちょ・・・本当の真剣かよ⁉︎」

「当たり前でしょ!私はいつだって大真面目よ!」

束「そっちの意味の真剣じゃねぇよ!」

少女は刀を振り回しながら束を攻撃する。束はなんとかそれをかわしながら一旦距離を取る。

束「お前、一体何者だ?どうして俺が魔法を使えると知ってる?」

「この隱流忍者 白鳥 凪!敵に名乗る名前など持ってはいない!」

束「思いっきり言ってんじゃん」

凪「ハッ⁉︎しまった!」

束「君、実はバカだろ?」

凪「くっ、こちらの情報を聞き出すとは・・・中々の策士ね!」

束「いや、何もしてないし・・・」

凪「とにかく!魔法使いを倒せばお師匠様もきっと認めてくれる筈なんだから!覚悟ー!」

束「ああ・・・大体分かった」

勝手にペラペラ喋ってくれるので事情を大体理解した束はため息をつきながらしぶしぶ戦闘態勢に入る。

束「女の子相手にあまり手荒な真似はしたくねぇが・・・コッチもそんなちっさい承認欲求の為にやられる訳にはいかねぇからな」

束は周りに何か使えるものはないか見渡すが生憎学校まで続く桜の並ぶ一本道。使えそうなものは何もない。

束(学校の中ならまだマシなんだが・・・、まだ生徒も残っているから危険だな)

凪「何をボサッとしてるのよ!」

凪は刀を収め、かわりにクナイを両手に持ちそれを束めがけて投げつける。

束「ちっ!」

束はそれをギリギリでかわすと、地面に刺さったクナイの一本を拾い上げお返しとばかりに投げつける。しかしそれは凪から逸れて飛んでいく。

凪「何処を狙ってるんだか!」

束「魔法使い舐めんなよ」

束が手を横に降るとクナイの軌道が変わって凪を狙う。

凪「曲がっ・・・⁉︎くっ!」

凪は咄嗟に刀でクナイを弾き落とす。

凪「ちょっとあんた!人の物は取っちゃいけないって親から教わらなかったの!」

束「生憎、使えるもんは親でも使えって言われて育てられたんでね!ホントに使ったらぶっ飛ばされたがな!」

凪「調子に乗ってくれちゃって!ならばコレよ!隱流忍法!火炎つむじの術!」

凪が印を結ぶと手から火炎が放たれ束を襲う。

束「熱っ!熱っつ!ちょ・・・燃える!燃える!」

火炎から逃げ惑う束。なんとかしたいが火炎の勢いが強すぎて隙が見つからない。

凪「コラ!逃げるなー!コレ長時間使ったらコッチが・・・熱っつ!」

束「いやお前も熱いんかい!」

どうやら出してる方も火炎の熱は伝わるらしく、逃げ回っていたら熱さを我慢しきれず攻撃を中断してしまう。相当熱かったらしく手に息を吹きかけて冷ます凪。

凪「フー!フー!よ、よくもやったわね・・・」

束「だから何もしてないって・・・」

凪「火がダメならコレよ!隱流忍法、雷光落とし!」

印を結ぶと同時に落雷が束を襲う。

束「くっ!コイツは・・・」

束はかろうじて避けているが次第に逃げ場を失い追い詰められていく。

凪「終わりね!」

束「そうはイカの金時計ってな!」

束は魔法で避雷針を呼び出し地面に突き刺す。落雷は全て避雷針に引き寄せられ集まっていく。

束「エネルギー、フルチャージ!」

凪「な、何をする気⁉︎」

束は避雷針の側に近づき指先を凪の方へ向ける。

束「喰らえ!超必殺パワー!サンダーボルトブレーカー!」

束の指先のスパークと共に避雷針に集められた落雷のエネルギーが凪目掛けて一気に放出される。

凪「ギャアァァァッ⁉︎」

エネルギーは凪の足元に着弾し、衝撃で凪は吹っ飛ぶ。

凪「な、なんて事するのよ・・・」

束「まさにグレートだろ?」

凪(ちょっと分が悪いわね・・・場所を変えないと)

凪は束から背を向け音ノ木坂学院に向かって木と木の間を飛び移りながら移動を始める。

束「あ!バカ!そっちに行くな!」

束は慌てて凪を追いかける。

 

 

 

 

 

束「くそ!何処行った・・・」

学校内に再び戻ってきた束。忍び込んだ凪を探し歩き回る。その時、いきなり束の足元の地面が沈み束の両足をガッチリと固めてしまう。

束「ッ⁉︎な、なんだコレ⁉︎」

そこに凪が姿を現わす。その手には手裏剣が光っていた。

凪「隱流忍法、大地固めの術!さあ、動きは止めたわ!これだけの手裏剣、かわせないでしょ!」

凪は身動きの取れない束目掛けて無数の手裏剣を投げつける。

ドス!ドス!ドス!

手裏剣が全て束の手や足、額などに綺麗に命中する。

凪「やったぁっ!ラブライ部、完!」

束「で?誰がかわりに主役を務めるんだ?」

凪「へ?」

束の声が聞こえたかと思うと目の前の手裏剣の刺さった束が蜃気楼のように消える。

凪「消えた・・・?そんな、どこに・・・?」

束「コッチだ!」

上空から落下しながら束が凪に飛びかかり背中に背負っていた刀を奪い取る。

凪「そんな、どうやって・・・ってか私の隱丸返しなさいよ!」

束「何、転移魔法で脱出したのさ。半径5m圏内しか飛べないけどな。で、幻術魔法でやられたように見せたって訳」

そう説明しながら束は隱丸と言われた凪の刀を遠くへポイっと放り投げる。

束「今度はコッチから行かせてもらうぜ」

束が手を振り上げるとどこからともなくいくつものロープが現れ、四方八方から凪に迫る。

凪「な⁉︎くっ!」

刀が無い為、クナイでロープを切り裂こうとするも数が多すぎて捌ききれず、雁字搦めにされてしまう。

束「ようやく捕まえたぜ。手荒な事はしないからコレに懲りたらもうこんな事はやめろよ?」

束はゆっくりと身動きの取れない凪に近づく。しかし、

凪「隱流忍法、縄抜けの術!」

凪は身体中の関節を外してロープを脱出してしまう。

束「嘘だろ⁉︎」

凪「隱流忍法、水柱の術!」

すかさず凪は印を結ぶ。すると地面から突然水が湧き上がり巨大な水柱となり束を上空高くに押し上げる。

束「うおぉぉぉぉぉっ⁉︎」

上空高く舞い上がった束はそのまま落下、幸い落ちた場所が茂みの中だった為、大事には至らなかった。が、それでも受けたダメージは大きく、立ち上がるのにも時間がかかってしまう。

凪「形勢逆転ね。さあ、おとなしく討たれなさい!」

いつの間にか回収していた刀を構える凪。

束「・・・なんでそんなに魔法使いを討つ事にこだわる?認めてもらう方法なんて他にもいくらでもあるだろう」

凪「なんでって・・・そりゃあ魔法使いは悪い奴だからよ。私の故郷の村にも過去に一度だけ魔法使いが攻めてきたってお師匠様が言ってたわ。だから魔法使いは皆退治して、私は一人前の忍になるのよ!」

束「魔法使いは皆悪い奴・・・か。なるほど、お師匠さんから認められない訳だ」

凪「なんですって!」

束「今のままじゃお前はいつまで経っても半人前だって言ってんだ。自分の価値観だけで物事の良し悪しを決めて、本質を見ようともしない。そんな事して前に進もうとしたって、そんなんじゃ開ける道も開けねぇよ!」

凪「黙って聞いてればいい気になって!」

束「勝負だ忍者。お前の知らない可能性を・・・魔法の本当の力を見せてやる!」

 

 

 

 




というわけて魔法vs忍術の異能系バトルに挑戦してみました。一応使われた忍術は全て本家の隠流である某忍者戦隊で使われた物です。


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第8話 Eの選択/やりたい事は? その3

なんか久々の更新のような気がします。相変わらずの駄文ですがよろしくです。


束「魔法の力、見せてやるよ」

ブチッ!

束は首から紐でかけていた赤い石で出来たリングに手をかけると紐を引きちぎりリングを指にはめる。

束「さあ、ショータイムだ」

凪「何がショータイムよ!指輪ひとつで何が変わる訳でも!」

凪は再び火炎つむじの術で炎を束目掛けて放つ。しかし今度は束は避けようともしない。

束「はっ!」

指輪が光り輝くと同時に束は右手を前に出し炎を巻き込むように右手で円を描く。凪の放った炎はそれに巻き込まれ束の右腕を覆うように回転しながら留まる。

凪「な⁉︎」

束「返すぜ、コレ」

『フレイム』

束が再び右腕を前に突き出し、握った手を開くと同時に周りで渦を巻いていた炎がまるで龍の形となり一気に凪目掛けて放たれる。

凪「く!隱流忍法、水柱の術!」

咄嗟に水柱を発生させ、炎を遮る凪。高熱の炎と水がぶつかる事で大量の水蒸気が発生、辺りは一時的な霧に包まれる。

凪「この霧じゃ姿が・・・、何処にいるの?」

辺りの気配を探りながら攻撃を警戒し、身構える凪。しかし一向にその時は来ない。

凪「なんで攻撃して来ないの・・・?ッ!まさか!」

束「ちょっと遅かったな」

霧が晴れ、束の姿が露わになる。

『グラビティ』

束は両手を地面につけるとオレンジ色の光が分身した凪達の足下に浮かび、そのまま地面に押し付けられる。

凪「「ぐっ⁉︎身体が・・・重い⁉︎」

束「重力操作ってとこだ。これだけ強力なのを広範囲にやるのはちとしんどいが・・・」

更に束は右手に魔力を集めた状態で思い切り横に振り抜く。

『ブリザード』

束の右手から冷気が放たれ、霧となっていた空気中の水蒸気が反応し、辺り一面を凍らせる。その中心にいた凪も例外ではなく、足下が凍りつき、身動きが取れなくなる。魔法を使っている間、束の右手の指輪が光り輝く。

凪「やっぱりその指輪・・・何か秘密が・・・」

束「まぁな。俺の母親が海外に行く時にくれたもんでな。

魔法石で出来た指輪だ。これを指にはめていれば魔法の力を飛躍的にあげる事が出来る。ただ、魔法石の純度が低いもんでそう何回も使えないのさ」

束が光る指輪を見せて説明をするがその説明の途中で指輪にヒビが入る。

束「やっぱ限界か・・・。という訳で、これでフィナーレだ」

束の身体がゆっくり上空に浮き上がり、凪の真上に来る。

『サンダー』

束「はあっ!」

束の両手から雷が放たれ真下の凪に直撃する。

凪「きゃあぁぁぁっ⁉︎」

衝撃で氷も砕け、凪がその場に倒れこむ。

凪「う・・・くっそぉ・・・」

意識はあるもののダメージが大きく、立ち上がれそうにない。

パキィンッ!

それと同時に束の指輪も砕けてしまった。

束「・・・お疲れ」

束は砕けて指輪の痕のみ残った手を見ながら呟く。その後凪の元へ近づく。

凪「・・・トドメを刺す気?」

束「んな事しねぇよ。これに懲りたらもうこんな事はやめて故郷に帰るんだな」

凪「あの指輪がなければ私が勝ってたわ!指輪がない今のアンタになら負けない!」

束「あのなぁ・・・」

「潔く負けを認めなさい。凪」

いきなり声がしたかと思うといきなり風が吹き、一人の女性が現れる。

凪「お師匠様!」

束「何?この人が・・・?」

凪の言うお師匠様の言葉の響きと忍者への勝手なイメージからてっきり老人の姿を想像していた束は少し驚く。目の前の女性の外見はどうみても20代後半かそこらである。

「この度はうちの弟子がご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした」

女性は深々と頭を下げる。

束「あ、いや・・・大したケガもないので・・・大丈夫です」

いきなり頭を下げられて束は戸惑いながらも返答をする。

凪「お師匠様!そんな奴に頭を下げないで下さい!」

「お前は黙ってなさい。凪」

凪「はいっ!」

束(あの暴走娘を一瞬で黙らせるとは・・・どうやら師匠ってのは伊達じゃないみたいだな・・・)

「先程の戦いは拝見させて頂きました。こんなのでも一応里ではそれなりに腕だけは立つ忍なのですがそれを抑え込むとは・・・流石は魔法使い、ですね」

束「そんなんじゃないですよ。それに過去に魔法使いがそちらで迷惑をかけたみたいで・・・」

「ああ、あれは事故みたいな物なので・・・里に魔法使いに恨みを持つ者はいませんから安心して下さい」

凪「いるわよー!ここにー!家が潰されたんだからねー!」

「それはあなたが家の柱を手裏剣の練習台にしてボロボロにしてたせいでしょう」

束「やっぱお前バカだろ」

凪「なんですってー⁉︎」

「とにかく、この馬鹿弟子は私が里に連れて帰ります。それでは・・・。あ、そうだ。皆道さん、コレを」

束「え?」

女性は束に竹で出来た小さい笛を渡す。

束「コレは・・・?」

「隱流の呼子です。どうやらあなたの大切な物を壊してしまったようですのでそのお詫びといった所です。その笛を吹けばうちの馬鹿弟子が助太刀に参ります。どうしても忍の力が必要な時に使って下さい」

凪「えーっ⁉︎」

「何か?」

凪「何でもないです」

「よろしい。では皆道さん。これにて御免!」

二人は突風と共に消えてしまった。束はしばらく呆気にとられて呆然としていた。後に残ったのは束の手の中の小さな笛のみだった。

 

 

 

束「やれやれ・・・」

そこに希が駆け寄ってくる。

希「束君!何かあったん⁉︎」

束「あ、希ちゃん。どうした?」

希「どうしたもこうしたも・・・屋上で練習してたらいきなり雷雲は現れるわ水柱は上がるわここだけ霧が出るわで学校中大騒ぎや。また魔力憑きが現れたのかと思って・・・」

束「あー、魔力憑きは現れてないよ」

希「じゃあ一体・・・?」

束「・・・忍者」

希「へ?忍者?忍者ってもっとこう、隠れて行動するもんじゃ・・・」

束「いやー?どうも最近の忍者は忍なれども忍ばない、忍ぶどころか暴れるらしいぜ?」

希「忍者ならちょっとは忍ぼうよ・・・」

そんな話をしていると二人の前に絵里がやってくる。

絵里「束さん・・・」

束「ん?絵里ちゃんか。どした?」

絵里「・・・すみません。少しお時間を頂いていいですか?希も一緒に来て?多分、あなたも関係してる事だろうから・・・」

希「えりち・・・」

束「やれやれだぜ・・・」

 

 

 

 

 

時間は少し戻り、音ノ木坂学院 屋上

束が凪に絡まれていた頃、μ’sのメンバーは絵里の指導の元練習に励んでいた。柔軟を始めとしたかなりハードな内容であったが誰一人弱音を吐く事なく真剣に取り組む。やがて全てのメニューが終わった頃にはまともに立っていられるメンバーは一人もいなかった。

絵里「・・・もし出来ないようだったら早めに言って?時間が惜しいから」

冷たい口調でそう告げて屋上を去ろうとする絵里。すると穂乃果が立ち上がり絵里を呼び止める。

穂乃果「ありがとうございました!」

絵里に向かい深々と頭を下げる穂乃果、他のメンバーも後からそれに続き頭を下げる。

絵里「ッ・・・・・」

絵里は黙って屋上から出て行った・・・。

絵里(あなた達はどうしてそんなに・・・。私も・・・あんな風に・・・)

そう考えた所で首を横に振り考えるのを止める。

絵里「・・・わかった筈よ。楽しくやるだけじゃダメだって・・・」

ドォォォォン!

そんな絵里の迷いを遮るかのように轟音が響く。驚いた絵里が音のした方の窓を見ると、巨大な水柱が校庭に上がり何故か束が吹っ飛ばされていた。

束「うおぉぉぉぉぉっ⁉︎」

絵里「つ、束さん⁉︎なんで⁉︎」

ここからでは良く見えないので慌てて絵里は水柱の上がった場所に急ぐ。

到着した絵里は物陰に隠れて様子を伺う。目の前にはコスプレかと思うほど特徴的な服装の少女が立っており、対する束は傷を負っており、足元もフラフラしていた。

絵里「いけない!助けないと・・・!」

絵里は束を助けようと飛び出そうとする。しかし・・・

束「今のままじゃお前はいつまで経っても半人前だって言ってんだ。自分の価値観だけで物事の良し悪しを決めて、本質を見ようともしない。そんな事して前に進もうとしたって、そんなんじゃ開ける道も開けねぇよ!」

絵里「ッ・・・!」

束が目の前の少女に向けて放った言葉に思わず動きが止まったしまう。自分に向けられた言葉ではない事は分かっている。しかし絵里はその言葉が決して他人事には感じる事が出来なかった。

束「魔法の力、見せてやるよ」

そして絵里は右手に光る指輪をはめた束の戦いを見守る事になるのだった・・・。

 

 

 

 

 

場所を変え、三年生の教室に来た三人。既に放課後であったことから他に生徒の姿もない。束達は適当な席に腰をかける。

絵里「・・・この学校でそんな事が起きてたなんて・・・」

希「ゴメン。騙すつもりはなかったんだけど・・・」

束から事情を教えられた絵里。希も今まで隠していた事に対して申し訳なさそうに謝罪する。

絵里「いいのよ希。私だって実際目の前で見なきゃ信じられなかったし・・・。とにかく、この事は皆には秘密にしておくわ。出来る限りバレないようこちらでもサポートはしてくつもりよ」

束「そりゃ助かるな。しかしそれより・・・・」

束は座っていた席を立つと絵里の前に立つ。

束「見つかったか?『やりたい事』?」

絵里「・・・いえ、まだ・・・」

束「嘘だな」

絵里「ッ・・・」

真っ直ぐ自分を見てくる束に対し、思わず視線を逸らしてしまう絵里。

束「本当は自分でも分かってるんだろ?本当にやりたい事が何なのか」

絵里「・・・・・」

黙ってしまう絵里に対し、束はため息をつきながら話し始める。

束「もうこの際だからハッキリ言わしてもらうけどさ?君は穂乃果達に、スクールアイドルに憧れてるんだよ」

絵里「そんな事ありません!」

束「同じ目的の為に動いている筈なのに生徒会長として自分を押し殺してまで動く自分と違い、思いのままに、楽しみながら活動するあいつらの姿に少なからず憧れてたんじゃないか?」

絵里「私は・・・自分を押し殺してなんか・・・」

希「えりち・・・」

束「さっき見た動画の女の子は心から楽しそうに踊っているように見えたけど・・・俺の前にいる少女は・・・どうかな?」

絵里「楽しむだけじゃ、結果は出せません。私はそれを知ってます・・・」

束「昔はそうだったかもしれない。でも・・・」

希「でも今は、えりち一人じゃない。そうやろ?」

束(・・・一番良いとこ盗られた・・・)

希「あの子達と一緒なら、きっと何か出来る。そう思うんや」

絵里「・・・私はこの学校の生徒会長なんです・・・。私情を優先する訳には・・・いかないわ」

希「えりち・・・」

絵里「あなたと一緒に彼女達の活動に参加してみて、彼女達が真剣に活動に向き合っている事は分かったわ。・・・でもそれとこれとは別、今まで散々あの子達の活動を否定してきた私が今更アイドルをやりたいなんて・・・言える訳ないでしょ?」

自分の感情を吐露する絵里の目には涙が。

束「・・・だってよ。皆」

束がいきなり廊下の方に向かって呼びかける。

絵里・希「え・・・?」

二人が困惑していると穂乃果達μ’sのメンバーが教室に入ってくる。

絵里「全部・・・聞いてたの?」

希「いつの間に・・・」

束「絵里ちゃんの『自分を押し殺してなんか〜』の辺りからかな?」

左手にコッソリ隠し持っていた携帯を見せながらそう言う束。

穂乃果「いきなりメールが来るから慌ててきたよ〜。コッソリ廊下で待機なんて言うから」

束「悪い悪い。こうでもしなきゃ本音聞けないと思ってさ。と、言う訳で・・・どうする?」

絵里「わ、私は・・・」

穂乃果「生徒会長・・・いえ、絵里先輩!先輩の力を貸してください!私達、もっともっと上手くなりたいんです」

凛「あそこまで言っちゃったらもう入るしかないにゃ!」

にこ「全く・・・入りたいなら素直に言いなさいよね」

真姫「先輩がそれ言うの?」

希「えりち、今度はウチも、皆も一緒だから・・・」

希が手を差し伸べる。

希「だから、もう一度・・・楽しもう?」

絵里「希・・・。本当に・・・いいの?」

海未「断る理由なんてありません」

ことり「先輩が一緒なら心強いです!」

花陽「お、お願いします!」

そして絵里は希の手を取る。

穂乃果「絵里先輩、ようこそ!μ’sへ!」

その様子を後ろで見ていた束が呟く。

束「これでようやく一人か・・・」

にこ「今良い場面なんだから指輪の魔法使いネタぶっこむのやめなさい」

 

 

 

 

おまけ

あの後、メンバーが別れて帰宅し、誰もいなくなった教室に最後まで残っていた束と希。

希「ありがとね。えりちの事・・・」

束「ん?あぁ、別に大した事はしてないけどな」

希「あれだけの事をして大した事無い訳ないやん」

束「俺が居なくても、そんときゃ他の誰かがその役割は果たしてたさ」

希「そういうもん?」

束「そういうもん」

二人もぼちぼちと帰り支度を始める。

希「でも、まさかこの為にウチをμ’sに入れるなんてなぁ。よく考えつくね、そういうの」

束「いや、何にも考えてないよ?ただ人数欲しくてその場の思いつきで入ってもらっただけ」

希「え?・・・えぇぇぇぇっ⁉︎」

束「アレ?乗せられちゃった?」

そう言いながら素早く逃げ出す束。

希「コラー!待てこの嘘つき男!」

束「言葉の裏には針千本、千の偽り万の嘘、人生を楽しくするのは千の真実より一つの嘘だぜ?」

希「思いっきり千とか万とか言ってるやん!」

束「じゃーなー!」

束は転移魔法を使いその場から消える。

希「全く・・・.!でも、えりちを助けてくれたのは本当やし・・・ありがとな。束君」

そんな希の感謝の言葉を希のいる教室のすぐ隣の教室に転移した束は微笑いながら黙って聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




なんとか9人揃いましたが原作ベースで進めるかどうかはまだ未定です。とりあえず次回は気楽な日常編です。


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幕間 のぞえりと炎と新装備?

課題が立て込んでいて暫くは思ったように更新出来なさそうです
とりあえず今回は単発の幕間をあげます。


絵里達の加入から数日、束はオープンキャンパスの結果が気になりつつも日々の仕事をこなしていた。

というのも時期的な問題で東京はもうすぐ少し早めのお盆に入る為、和菓子屋である穂むらではそれに合わせ、大量の『おはぎ』が必要になるのだ。例年は穂乃果や海未達も手伝ってくれていたのだが今年はμ’sの活動がある為、束が全般的に引き受ける事にした。その為、μ’sの活動に顔を出す事が出来ず、それでもなんとか本番のライブのみは無理を言って観させて貰える事は出来た。まぁそこにいくまでにまた一悶着あったのだがそれはまた別の話である。

束「とりあえずこんだけ作れば足りるだろ」

調理台のトレーの上に並べられた大量のおはぎを見て呟く束。底に穂乃果が帰宅する。

穂乃果「ただいま〜。うわ、すっごい・・・。これ全部お兄ちゃんが作ったの?」

束「まぁな。でも雪穂も手伝ってくれたし、そんなでもなかったさ。さてと、コレを町会長さんの所へ届けないと・・・」

穂乃果「あ、じゃあそれくらいは穂乃果がやるよ」

束「いいのか?」

穂乃果「うん!オープンキャンパスも終わったし。あのね!アンケートの結果が思ったより良かったんだって!だから廃校になるかどうかはまだ検討するって事になったの!」

束「そっか・・・。なんとか首の皮一枚で繋がった訳か」

見に行けなかったのでその報告を聞いてとりあえずは安堵する束。

穂乃果「絵里先輩が入ってくれたおかげで女性のファンもついたみたいなんだよね」

束「まぁ元々モデル並みにスタイル良いからな」

そう言いながら束はおはぎを手早く箱に詰めると袋に包み穂乃果に渡す。

束「それじゃ・・・ほい。頼むぜ」

穂乃果「うん、じゃ行ってくるね。あ、そうだ。お兄ちゃん、おばさんからの荷物、開けなくていいの?」

穂乃果は居間の隅っこに乱暴に置いてある小さい包みを指差す。

束「あー、すっかり忘れてた」

 

 

 

 

自室に戻った束は包みを開ける。中には母からの手紙とこれまた小さい包みが。束は手紙を開いて読み始める。

 

 

前略、束へ

この手紙が着く頃には日本はもう梅雨明けしてるでしょうか。私は今、ヘルヘイムの森にいます!

束「世界超えちゃった⁉︎」

ここは自然が一杯でとても過ごしやすいです。こんないい所は若い頃に山で修行中に忍者の村に迷いこんだ時以来です。まあその晩、私が酒に酔って暴れたらしく家一個潰しちゃいましたが。(笑)

束「アンタが犯人か!アンタのせいで俺は面倒にまきこまれたんですけど⁉︎」

そこの神様達と意気投合して今じゃすっかり仲良しです。

今度お土産に現地の美味しそうな果物を持っていくね。

束「全力でお断りします」

話は変わりますが魔力憑きの対処の方はどうですか?あんたの事だからそろそろ苦戦してあの指輪を使うのではないでしょうか?

束「う・・・」

そんな事もあろうかと良いものを送ります。大活躍させるように!

 

束は一緒に入っていた包みを開ける。すると・・・

束「こ、これは!」

中に入っていたのはアイドルのライブとかでよく目にするコンサートライト、読者に分かりやすく言うのであればラブライブレードだった。

束「どうしろってんだよ・・・μ’sの応援でもしろってか?」

手にしたライトをクルクル回しながら再び手紙を読む。

 

 

それは『スパークルケイン』見た目はライブによく使うアレですがれっきとした魔法の杖です。ライトの発光部分にあたる所は全て高純度の魔法石で出来ているので指輪とは比べ物にならないくらいの魔法増幅効果があるでしょう。

束「マジか・・・。でもなんでこんな外観に・・・」

私の趣味だ、良いだろう?

束「知らねぇよ」

とにかくそれがあれば魔法の自由度も大きく広がります。

解呪法の発動も改善出来るはずなんであとはまぁテキトーにバーッとやってみてください。

束「後半雑だなオイ⁉︎」

それでは引き続き頑張ってください。

 

 

あなたの自慢の母より

束「自分で言うなや」

手紙を畳んだ束は手にしたラブライブレード・・・もといスパークルケインを見つめる。

束「とりあえず試してみるか?」

 

 

 

 

神社 境内

母の送ってきた所謂“魔法の杖”の効果を確かめる為、あまり人の居ない時間を狙い、神社に来た束。

束「ここなら広いし、安全だろ」

そこに希と絵里がやってくる。

希「急に呼び出してどうしたん?はっ!まさか人気のない神社でウチらにあんな事やこんな事を・・・」

束「何考えてんだよ。そーゆーのは薄い本だけにしとけ」

絵里「薄い本って何ですか?」

束「絵里ちゃんは知らない方がいいよ・・・」

束はケインを見せながら先程の手紙の件を説明する。

希「つまり、ウチらは人が来ないかどうか見張ってればいいんやね?」

束「ああ、正直どうなるかわからないからな・・・。事情を知ってるお前らにしか頼めない」

絵里「わかりました。束さんにはお世話になってますからね」

二人は少し離れた位置につき、束は開けた場所でケインを構える。

束「さて、何から試すか・・・」

希「とりあえず火とかどう?ちなみに何もないとどれくらい?」

束「んー、これくらい?」

束が人差し指を立てるとマッチかライターかというくらいの小さい火が指先につく。

希「ショボッ⁉︎」

束「ほっとけ!」

絵里「じゃあ次は杖有りですね」

束「なんかあったら困るからとりあえず上に向けて・・・」

束はケインを上に向ける。

束「出ろ、火」

その瞬間、巨大な火柱が上空高く渦を巻きながら昇り放たれる。そのあまりの威力に曇り空を成していた雲が突き破られ、そこだけポッカリと青空が覗く。当然、隠し通せる訳はなく街からは人々のざわめきが聞こえてきていた。

三人「・・・・・・・・」

そのあまりに衝撃的な威力に暫く三人は呆然と立ち尽くすのであった・・・。

 

 

 

 

その後、穂むら 束の部屋

希「パワーアップしすぎやん⁉︎」

絵里「この前の指輪の時も凄いと思ったけどこれほどとは・・・」

束「とてもじゃねぇが日常生活では使えないな・・・」

スパークルケインを囲んで座り話し合う三人。

スパークルケインには使われている魔法石のサイズや純度の関係からか、魔法の効果をあり得ないレベルにあげてしまう問題が発覚した。

絵里「どうにも出来ないんですか?」

束「多分、魔力コントロールがシッカリ出来れば調節も可能なんだろうがこのレベルになってくると今の俺にはちと無理だな。さっきだって俺は一番威力を抑えていてアレだし・・・」

希「アレで最弱レベルって・・・」

束「母さんには悪いが、とりあえずコイツは封印だな。まぁ今の所無くてもなんとかなってるし」

絵里「でもまたあの忍者みたいな人が来たら・・・」

束「そんときゃそんときでなんとかするさ」

するとそこに穂乃果が帰宅する。

穂乃果「ただいま〜。あれ?今度は絵里先輩と希先輩を部屋に連れ込んだの?」

束「だからそういう言い方やめろって!」

希「やっぱりウチらを薄い本みたいに・・・」

束「するか!」

絵里「薄い本って?」

束「知らなくていいから!」

そこで穂乃果が床に置いてあるスパークルケインを見つける。

穂乃果「あー!コレ知ってるよ!アイドルのライブとかでお客さんが振ってくれるヤツだよね⁉︎お兄ちゃんこんなのまで用意してくれてたんだー!」

穂乃果はケインを手に取りブンブン振り回す。

希「アカーン!穂乃果ちゃん!今すぐそれを置いてー⁉︎」

絵里「そうよ高坂さん!それは凄く危険なものなの!良い子だから静かにそっとソレを置いて?ね?」

慌てて穂乃果からケインを奪還しようとする二人。

束「ちょ、部屋で暴れないでー⁉︎」

結局この後、二階でバタバタ暴れた事で束が穂乃果の父からキツイお叱りを受ける事になった。



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第9話 10人のμ’s その1

課題もようやくひと段落、しかしすぐにまた新たな課題が押し寄せて来ております。ということで更新速度は上がりませんが第9話です


束「待てコラァァァッ!」

その日束は街に現れた魔力憑きを追っていた。今回の魔力憑きは粗大ゴミに出されていた掃除機なのだが、今回の束はいつも以上に血相を変えてその魔力憑きを追っていた。

というのも、実は放課後の音ノ木坂に向かう途中での交戦となったのだがその際になんでも強力に吸い込んでしまう性質により許可証を吸い込まれてしまったのだ。アレがないと学院内に入る事が出来ない為、このように必死になって追っているという訳である。

周囲の物を手当たり次第に吸い込みながら逃走を図る掃除機。追いかけている内にいつの間にか音ノ木坂学院に来ており、そのまま掃除機は校内に侵入してしまう。

束「よりによってここかよ・・・。早いとこ捕まえて許可証を取りかえさねぇと!」

束は誰にも見られてない事を確認しながら校内に入る。

 

 

 

 

暴走掃除機は簡単に見つかり、空いていた窓から校舎内に侵入していた。束もすかさず後を追い、窓から飛び込む。すると窓から入った途端、掃除機がコードを身体に巻きつけて動きを封じようとする。

束「しまっ・・・⁉︎うおぉぉっ⁉︎」

掃除機のノズルの先端がいきなり大きく広がり、コードで雁字搦めにされた状態の束をそのまま吸い込もうとする。

束「ぐ・・・この・・・!」

なんとかして脱出しようと試みる束。しかしコードの締め付けが強く抜け出せない。

束「こうなりゃ・・・一か八かだ!」

そう言うと束の身体に電流が走り、コードの拘束が僅かに緩む。その隙を突いてなんとか脱出する束。

束「痛えけど・・・助かった・・・」

相手が家電製品である事から自分自身に魔法で電撃を食らわせる事で感電させて脱出した束。当然自分も感電するので無傷ではないのだが。

掃除機はなおも束を吸い込もうとしてくる。しかしそれより速く束は前に踏み込み吸い込まれないようノズルを後ろから掴む。その状態で解呪法を発動させてなんとか掃除機を止めた。

束「ふう、なんとか止まったか。さて、許可証を返してもらうぜ」

束は掃除機の本体の蓋を開けて中から許可証を出そうとする。中にはここに来るまでの間に手当たり次第に吸い込んだ物が大量に詰まっていた。中を掻き分けながら許可証を探す束。

束「許可証・・・許可証・・・うわ、女物の下着なんかも吸い込んでやがる」

するとその時、女性の話し声が聞こえて来る。その声は段々大きく聞こえてくるようになりどうやらここに近づいているらしい。

束「ん?待てよ・・・ここって・・・」

戦ってる時は気づかなかったが束が窓から飛び込んだ場所は学院の女子トイレだった。しかも今束は許可証を探そうとして取り出した女性の下着を手にしている。もし見つかれば社会的抹殺は必至である。

束「マズイ!どうにかしないと!」

声はもうハッキリ聞こえる程近づいており、ドアノブに手をかける音が聞こえた。

ガチャ!

凛「じゃあ今日は三人で一緒にラーメン食べに行くにゃー!」

真姫「あんまり食べると先輩に怒られるわよ?・・・って何よコレ?」

トイレに入って来たのはまきりんぱなの一年組だった。三人はトイレの真ん中に掃除機とゴミが散乱している様子を見て唖然とする。そしてそこにいたのは・・・

つかさ「ど、どうも〜」

束が咄嗟に変身した女生徒、仮野つかさが苦笑いを浮かべながら立っていた。

凛「あー!ゲームセンターの時の先輩だにゃー!」

凛は姿を見るなり駆け寄り手を掴む。

凛「先輩、探したんですよ?一緒に来てください!先輩のダンスの腕なら百人力だにゃー!」

つかさ「あ、ちょっ、待っ・・・あーーーーっ⁉︎」

凛はつかさの手を掴んだまま走り出す。

花陽「凛ちゃん!廊下を走ったら危ないよー!」

真姫「・・・もっと他に気にかけるとこあるんじゃない?」

 

 

 

 

アイドル部 部室

にこ「で、この子が凛達の言ってたダンスの上手い子?」

つかさ「あ、あはは・・・」

凛に引っ張られてアイドル部の部室に連れてこられたつかさ。椅子に座らされてにこからの尋問?を受けていた。

にこ「じゃあとりあえず踊って貰おうかしら?」

つかさ「・・・・・はい?」

にこ「ゲームは所詮ゲーム。いくらダンスゲームが上手くてもアイドルで通じるとは限らないわ。だからμ’sに入る前にアイドルとしての適正を・・・」

つかさ「そもそもμ’sに入る気もないんですが・・・」

にこ「口答えしない!」

つかさ「はい!」

勢いに負けて返事をしてしまうつかさ。一同はダンスの練習場所である屋上へ移動する事に・・・。

 

 

 

 

屋上

花陽「穂乃果先輩達や絵里先輩達もいないのに勝手にμ’sに入れるとか決めちゃっていいのかな・・・」

真姫「いいんじゃない?本人もあまり乗り気じゃないみたいだし」

にこ「じゃ、始めるわよ。振り付けは大体覚えたかしら?」

つかさ「えぇ、まぁ・・・」

事前にμ’sの曲の振り付けの練習用に撮ってあったビデオ映像を渡されて一通り目を通したつかさ。と言っても束は練習を間近で見ていたのでビデオを見る必要もないのだが。

にこ「じゃあいくわよ」

にこが音楽をかけてμ’sの楽曲が流れ始める。それに合わせてつかさも踊り始める。

凛「おお〜!」

花陽「細かい所の振り付けも完璧です!」

真姫「なんか上手く出来すぎのような気もするけど・・・」

にこ「ぐぬぬ・・・」

つかさが曲を踊り終えると凛と花陽が拍手をしながら側に来る。

花陽「やっぱり凄いです!動画を見ただけでここまで出来るなんて!」

凛「やっぱ凛達の目に狂いはなかったにゃ!」

にこ「ま、まあ?多少は出来るみたいね。でもあの程度で満足してもらっちゃ困るわ!」

真姫「あの振り付けにこ先輩が一番苦戦してたじゃない・・・」

にこ「う、うるさいわね!」

つかさ「あのー、気持ちは嬉しいんですけど、俺・・・じゃなかった、私はアイドルになる気は無いんです」

凛「えぇ〜⁉︎」

花陽「しょうがないよ凛ちゃん。ここに来る時も困ってたみたいだし・・・」

真姫「無理強いするのも、良くないんじゃない?」

にこ「そ、そうね!中々いい筋してると思うけど本人の意欲がないんじゃアイドルとして成長は見込めないわ!(あんな凄いのに入られたらにこの存在が霞んじゃうわ・・・!)」

凛「そっかぁ・・・、そうだよね。μ’sって無理矢理やるものじゃないもんね。先輩、迷惑かけてごめんなさい!」

つかさ「あ、謝らなくていいよ!こちらこそごめんなさい!」

つかさは凛達に向かって頭を下げた後、その場を去ろうとする。すると・・・

絵里「遅くなってごめんなさい。あら?あなたは・・・」

生徒会の仕事を終えた絵里と希が屋上に来る。つかさの姿を見た絵里の顔が青ざめていく。

希「えりち!ストップ!ストーップ!君!ちょっとコッチ来て!」

つかさ「は、はい!」

顔面蒼白になった絵里を引っ張りながら希がつかさを呼んで手招きをする。

 

 

 

 

 

屋上 扉の裏

つかさを呼び出して扉を閉めた希。怖がる絵里に対し、つかさの事を説明する。

絵里「つまりこの子は・・・」

つかさ「仮野つかさとは世をしのぶ仮の姿!私はポッピー・・・」

希「束君」

つかさ「はい、皆道 束。今年で21になります」

希に睨まれてふざけるのをやめる束。絵里は安心したのかその場に座り込んでしまう。

絵里「全く・・・、いい歳した大人が一体何してるんですか・・・」

つかさ「実は・・・」

ここに至るまでの経緯を説明するつかさ。

絵里「なんて言うか・・・お疲れ様です」

希「確かに女子高のトイレに下着持った男がいたら一発で御用!やもんね?」

つかさ「そしたらなんかμ’sに入ってなんて言われて・・・踊らされるしさぁ・・・」

絵里「事情はわかりました。私達からも諦めるように言いますよ」

希「ウチに任しとき!」

つかさ「ありがとう。助かるよ」

話を終えた三人は扉を開け、屋上に戻る。

花陽「絵里先輩、何の話をしてたんですか?」

絵里「それは・・・」

希「この子がやっぱりμ’sに入りたいんやって」

絵里&つかさ「・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇっ⁉︎」

 

 

 

 

 

 



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第9話 10人のμ’s その2

お久しぶりの更新です。今回はせっかくR-15タグ入ってるので少しだけ踏み込んでみました。


希の突然の裏切りによりμ’sに加入する事になってしまったつかさ=束。

つかさ(話が違うぞ!どーしてくれんだよ!)

希(ふふん、この前のお返しや。まぁしばらくは一緒にアイドル頑張るしかないなぁ?)

希はそう言いながらニヤニヤしている。絵里も呆れていたがそのままという訳にもいかないのでとりあえずの妥協案を出す。

絵里「とりあえずは仮入部って形にして、続けられそうなら本入部って事でどうかしら?」

絵里(・・・と、いう事にしておきますから今日一日は我慢してください?)

つかさ(助かるよ、絵里ちゃん)

希「えりちは真面目やなぁ」

つかさ「お前のせいだろうが!」

絵里「そういえば高坂さん達はどうしたの?姿が見えないけど・・・」

花陽「えっと・・・何か急な用事が入ってしまったみたいで先に始めていてくださいって連絡がありました」

絵里「そうなの?それじゃあ・・・基礎練習から始めていきましょうか」

 

 

 

 

つかさ「ふう、見てるのと実際やってみるのじゃやっぱり違うよなぁ」

花陽「先輩、練習見た事あるんですか?」

つかさ「あ、いや・・・遠くからチラッとね?」

一通りの練習を終えて休憩を取るメンバー。当然、話題は期待のニューフェイス?つかさの話題になる。

凛「でも先輩、初めてやったのにこの練習についてこれるなんて流石だにゃ!」

真姫「まぁ、あれだけのダンスを踊るだけの事はあるかもね」

つかさ「そ、そんな事ないですよ・・・」

にこ「謙遜しなくていいのよ?このにこにーが保証するわ」

つかさ「保証されても困るんですが・・・」

そこに慌てた様子の穂乃果達二年生が到着した。

穂乃果「遅れてゴメンね!・・・ってあれ?あなたは・・・」

つかさの姿を見た穂乃果はジーっと見つめる。

絵里「今日一日仮入部する事になった仮野つかささんよ。ってどうしたの?高坂さん?」

穂乃果「なんか、初めて会った気がしないんだよね?いつも会ってるような・・・会ってないような?」

にこ「何よそれ?」

ことり「穂乃果ちゃん、前に一度会ってるよ?すぐいなくなっちゃったけど」

穂乃果「おお!そっか!」

つかさ(やっぱバカなのか・・・?)

つかさがふと後ろに目を向けると海未の様子がおかしい。顔が赤く俯いている。

つかさ「あの・・・大丈夫ですか?」

海未「ひっ⁉︎だ、大丈夫です!き、気にしないでください!」

声を掛けられると慌てた様子で答える海未。顔がより一層赤くなる。

つかさ「また調子が良くないんじゃないですか?あまり無理をしないほうが・・・」

海未「だ、大丈夫です・・・。というよりまた、とは?」

つかさ「あ、いや・・・この前ここで弓道の試合に出てましたよね?それで・・・」

穂乃果「そ、そうだよ海未ちゃん!顔も赤いし、今日は無理をしないほうがいいんじゃないかなー!ね?ことりちゃん?」

ことり「そ、そうだねー!悪くなっても困るし今日は見学だけでもいいと思うなー!」

明らかに棒読みな会話をして海未に休むよう勧める穂乃果とことり。

海未「そ、そうですか?でもそれでは全体の練習が・・・」

凛「それだったら今日はつかさ先輩に代わりに入ってもらったらどうかにゃ?」

花陽「先輩の腕なら心配なさそうですし・・・」

絵里「・・・と、言ってるけどあなたはどうかしら?」

つかさ「私は構いませんが・・・」

海未「それでは・・・お願いします」

そう言って海未は隅っこの方にちょこんと座り込む。

つかさ「・・・・・?」

そんな海未の様子をジッと見るつかさ。

真姫「どうかしました?」

つかさ「いや、なんか海未ちゃんの様子が気になって・・・」

希「体調があまり良くないんやろ?」

つかさ「それとは違う気がするんだよね・・・。海未ちゃんって真面目だからいくら具合が悪いって言ってもこんなアッサリ自分から休ませてくれーなんて言わない気がして・・・」

花陽「そういえば・・・」

凛「そんな感じがするにゃ」

そこにいきなり穂乃果が会話に割って入る。

穂乃果「海未ちゃんだって人間なんだから具合が悪くなるし、休みたい時だってあるよ!」

つかさ「うわぁ!ビックリした〜」

穂乃果「ほら!つかさちゃんも今日はμ’sの一員なんだから練習、練習!」

つかさ「ちょっ、まだ休憩時間〜!」

 

 

 

 

練習終了後・・・

絵里「それじゃあ今日はここまでにしときましょう?つかささんも一日お疲れ様」

つかさ「お疲れ様でした」

凛「で?先輩はμ’sに入りますか!入りませんか!」

つかさ「えぇっと・・・もう少し考えさせて?」

凛「え〜〜っ⁉︎」

なんとか練習を乗り切ったつかさ。すぐにその場を離れようとするが・・・

つかさ「それじゃあ私はこれで・・・」

穂乃果「ちょっと待って!」

その場を去ろうとするつかさを穂乃果が呼び止める。

つかさ「な、なんですか?穂乃果さん・・・?」

急に呼び止められてドキッとするつかさ。そのまま穂乃果はつかさの前に来る。

穂乃果「つかさちゃん・・・」

つかさ「は、はい・・・?」

穂乃果「そんな汗ビッショリのままで帰ったら風邪引いちゃうよ?ほら、みんなと一緒に着替えてから帰ろ?」

そう言って穂乃果はつかさの手を引いていく。

つかさ(ホッ・・・バレたかと思ったぁ・・・。良かった〜)

安堵の表情を浮かべたのも束の間、穂乃果の言葉を思い出す。

つかさ「ん?みんなと一緒に着替えてから帰る?・・・いやいやいやいや!良くない!全然良くない!」

つかさは慌ててバタバタ暴れ出すが穂乃果に手をガッチリ握られていて逃げることが出来ない。

穂乃果「わわっ⁉︎暴れないでよ〜!ほらほら、早く行こ!」

つかさ「ダレカタスケテェェェッ⁉︎」

花陽「ちょっと待っててー!・・・ってそれ私のセリフです⁉︎」

 

 

 

 

部室

絵里の加入と同じ頃にアイドル部の部室横のスペースを衣装部屋兼更衣室として使えるようになり、現在はそこで衣装合わせや練習時の着替えを行なっている。

つかさ「ヘぇ〜こんなスペースあったんだぁ・・・知らなかった・・・って違う違う!」

真姫「さっきから何一人で騒いでるんですか?」

なんの疑いも持たないメンバーはさっさと練習着を脱いで着替え始める。・・・約2名をのぞいて。

希「絶対振り向いちゃいかんよ?」

絵里「見たらどうなるかわかってますよね?」

今まで聞いた中で一番ドスの効いた声でそう囁く二人。

つかさ「は、はい・・・」

つかさはもう半分涙目になりながら頷き、そのまま壁の方を向いて待機する。

穂乃果「何してるの?つかさちゃんもどんどん着替えないと!」

バッ!

壁の方を向いていたつかさの上着を穂乃果が後ろから捲り上げて脱がす。

つかさ「ッ⁉︎ちょっ!いきなり何すん・・・」

その時に反射的に後ろを振り返ってしまい・・・

つかさ「○▲◎☆◇△●★□〜〜〜ッ⁉︎」

ボシュウゥゥゥッ!

声にならない叫び声を上げて、つかさは顔を真っ赤にして倒れてしまった。

穂乃果「わわっ⁉︎どうしたの⁉︎つかさちゃん⁉︎起きてよ〜!」

希「その前にまず服を着て穂乃果ちゃん!そのままじゃ起きてもまたぶっ倒れてまうやん!」

絵里「み、みんなも早く着替えを済まして!」

つかさ「大きな星が・・・ついたり消えたり・・・彗星かなぁ?いや違うな・・・彗星はもっとバァーッ!って光るもんなぁ・・・」

目の前の光景を受け止めきれず倒れてしまったつかさは目を回しながらそんなうわ言をブツブツと呟くのだった・・・・・。

 

 

 

 

 

 




つかさちゃんが何を見たのかは皆様のご想像にお任せします(笑)


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第9話 10人のμ’s その3

ようやく書けました。今回は伏線があったり・・・なかったり?


つかさ「うぅ・・・」

部室に置いてあったベンチに横になっていたつかさが目を覚ます。

ことり「あ、気がついたんですね!良かった〜」

つかさ「ここは・・・?シロッコは?やってしまったのか・・・?」

真姫「何寝ぼけてんのよ・・・」

凛「それにしても女の子の着替えみて目回しちゃうなんて先輩なんだか男の子みたいだね?あ、もしかして名前も同じだし、束お兄さんが魔法で化けてたりして!」

つかさ「な、な、な、何をば、ば、ば、バカなななな」

真姫「アホらしい・・・。魔法なんてこの世に存在する訳ないでしょ?アニメじゃないんだから」

凛「アニメじゃない・・・じゃあサイレントヴォイス?」

つかさ「そういう意味じゃねぇよ!」

花陽「つかさ先輩が最初に言い出したんですけどね・・・」

凛「真姫ちゃんは夢がないにゃ〜」

既に着替えも終え、つかさも回復した為そんな会話をしながら部室を出るメンバー達。夏に入り日も伸びて来たとはいえ相当遅い時間まで残っていたらしく夕陽も沈みかけていた。

絵里「もうこんな時間なのね・・・。早く帰りましょう」

全員で学校を出ると校門の前に一台の黒い車が止まっていた。そしてその中から黒服を来た男性が3人、降りて来た。

ことり「えっと、どちら様でしょうか?」

「我々はこういうものです」

黒服の一人が名刺を渡す。

絵里「346プロダクション、スカウトマン・・・諸星?」

諸星「はい、そっちの二人は右から、南と安室です」

名前を呼ばれて少し顔が濃い目の男性と茶色の癖っ毛の男性が頭を下げる。

希「アポロン総統は?」

つかさ「そのネタわかる奴いるかなー?ってかよく知ってるね希ちゃん」

希「ウチは一人暮らしやからね。暇過ぎてスパロボ全シリーズクリアしちゃったんよ」

諸星「あの、話を進めてもいいですか?」

絵里「はい、こっちのアホ共は気にしないでください」

希「ひどい⁉︎」

花陽「346プロといえばかなり有名なアイドル事務所ですよ!」

にこ「そのスカウトマンが来たって事は・・・まさか!」

穂乃果「μ’sが・・・芸能界デビュー⁉︎」

凛「凄いにゃー!」

後ろで勝手にワイワイ盛り上がる穂乃果達。

諸星「私達がスカウトに来たのはあなた方ではありません」

穂乃果「え・・・・?」

諸星はつかさの前に来る。

諸星「あなたですね?数ヶ月前にこの近辺のゲームセンターのダンスゲームでスコアを更新したのは?」

諸星はそう言うと車からノートパソコンを出して開く。そしてジャケットの裏側から赤いメガネを取り出すと・・・

諸星「デュワッ!」

掛け声を言いながらかける。

真姫「その掛け声何なの?」

諸星「ルーティーンのようなものです。気にしないでください」

凛「変身みたいでカッコイイにゃ!」

希「様式美やね」

真姫「イミワカンナイ・・・」

諸星はパソコンを操作するとある動画を出す。それはつかさがダンスゲームをしている所を観客の一人が撮影したものだった。

諸星「中々足取りが掴めず苦労したのですがこの近辺での目撃が多いと聞いて張り込んでいたんです」

つかさ「それは・・・つまり・・・」

諸星「はい。あなたを346プロダクションの新人アイドル候補としてスカウトしたいのです」

暫しの沈黙が流れる。

凛「こ、困るにゃ!先輩にはμ’sに入ってもらって一緒にスクールアイドルをやってもらいたいにゃ!」

諸星「それに関しては大丈夫です」

凛「え?」

諸星「つかささんがアイドルデビューをした際に346プロダクションの方でこちらの学院のPRもサポートさせて頂きます」

絵里「それはつまり・・・学院の宣伝をあなた方芸能事務所の方がするって事ですか?」

諸星「はい。アイドルとして人気が出れば普段通っている学校などにも注目をするファンも少なからずいるものです。ましてや廃校を阻止する為のアイドル活動ともなれば多くの人の関心を誘うでしょう」

ことり「でも・・・そしたらμ’sの活動は・・・」

諸星「少なくとも、ただの高校生の集まりよりもこちらの方が大きな宣伝効果は得られると思いますよ?もし、廃校阻止を真剣に考えているなら・・・どちらが懸命な判断かはわかると思いますが?」

花陽「そ、それは・・・」

諸星「勘違いのないように言っておきますが別にあなた方の活動を邪魔するつもりはありません。あなた方はあなた方で活動を継続して頂いて構いません。むしろ廃校の不安もなくなりなんの憂いもなく思い切り活動に打ち込めるのではないでしょうか?」

希「・・・理にはかなってるね」

にこ「ちょっと希!あんたそれでいいの⁉︎」

希「決めるのはウチらじゃないよ、にこっち。決めるのはつかさちゃんや」

つかさ「・・・・・」

つかさはずっと黙っていたがやがて顔をあげる。

つかさ「せっかくのお話ですけど・・・申し訳ありません」

つかさはそう言って頭を下げる。

つかさ「確かにあなた方のサポートがあれば廃校阻止も出来るかもしれません。でも・・・それじゃダメなんです」

諸星「ダメ・・・とは?」

つかさ「廃校阻止は私の願いじゃないからです。それはこの子達の願い、この子たち自身で叶える夢だからです」

穂乃果「つかさちゃん・・・」

つかさ「だから私は後押しするだけ・・・。ダンスが難しいなら教えてあげて、歌が上手く歌えないならコツを伝えて、みんなが少しでも叶えたい夢に近づけるようにしていきたいんです」

諸星「彼女達とも一緒にアイドルをする気はないと?」

つかさ「一緒に並んで歩くだけが繋がりではないと思いますよ?迷って踏み出せない時には後ろから押してあげて、悩んでどうすればいいかわからない時には前に立って手を差し伸べる。そういう繋がりもあると思います」

花陽「・・・・・」

絵里「・・・・・」

つかさ「だから私は、アイドルにはなりません!スクールアイドルにも、勿論ちゃんとしたアイドルにも!」

穂乃果「つかさぢゃぁぁぁん!」

穂乃果が号泣しながらつかさに抱きついてくる。

つかさ「うわ!バカ!離れろ!涙やら鼻水やらでグッチャグチャじゃんか!」

穂乃果「そこまで考えてくれてたなんて・・・知らなかったんだもぉぉぉん!」

凛「凛もだにゃあああ!もうμ’sに入ってなんで言わないにゃあああ!」

つかさ「こっちもかー!」

海未「ぼのが・・・ばやぐばなれでぐだざい・・・涙でびしょ濡れじゃないでずが・・・」

つかさ「いや、あんたもね⁉︎」

諸星「やれやれ・・・どうやらこれ以上言っても、決意は変わらないでしょうね・・・」

諸星は踵を返して車の方へ戻っていく。

安室「・・・もういいのか?」

諸星「ああ、何故だか彼女達を見たら誘う気が失せてしまった」

南「何?まさかゴルゴムの・・・!」

安室「はいはい。・・・確かに、あの子達からは何か不思議な感覚を感じるな。確かな繋がり・・・心の光とでも言うのかな?」

諸星「何かを見透かしたようなその言い回し、感受性の高さは相変わらずだな」

安室「人をエスパーみたいに言うなよ。俺は普通の人間さ」

南「そんな事言ってる場合か?ただでさえスクールアイドルなんてのが出てきてアイドル業界のこれからを不安視する声だってあるんだぞ?ウチの新プロジェクトの新人達だってどうなるか・・・」

諸星「無理矢理引き入れてもそれで潰れてしまっては元も子もないだろう?それに、あのプロデューサーの見込んだ新人達なら大丈夫だろうさ」

諸星は車に乗り込む前につかさを囲むμ’sの姿を見る。

諸星「みんなで叶える物語・・・か」

安室「何か言いましたか?」

諸星「いや、なんでもない」

こうして諸星達は車に乗り込み去っていった。

 

 

 

希「にしてもどうするつもりなん?」

つかさ「へ?何が?」

絵里「途中から完全に皆道 束として喋ってましたよ。今の姿は・・・」

つかさ「あ・・・あぁぁぁっ⁉︎」

希「ふふっ、これからはちょくちょく、その姿で来ないといけないね?つかさちゃん?」

つかさ「はぁ・・・やっちまった・・・。絵里ちゃん、希ちゃん、悪いけど・・・」

絵里「はいはい、なんとか口裏は合わせますよ」

希「ウチは焼肉が食べたいなぁ〜」

つかさ「奢るよ奢りますよ・・・」

 

 

 

 

こうしてつかさの引き抜き騒動もとりあえずの終わりを迎え、μ’sのメンバーも別れて帰路についた。

穂乃果も海未やことりと一緒に帰ろうとするとそこに束が。

束「よう、おかえり」

穂乃果「あ、お兄ちゃん、なんでここに?」

束「ま、まぁちょっと用事でな?そんな事より海未ちゃんどうしたんだ?顔が真っ赤だぞ?」

結局終始様子のおかしかった海未を怪しむ束。

穂乃果「お、お兄ちゃんには関係ないよ⁉︎ね!ことりちゃん!」

ことり「は、はい!何にも!一切関係ないんです!」

慌てて海未を庇うように立ちはだかる二人。

束「な、なんだよ二人して・・・さっきからみんなおかしいぞ?」

穂乃果「全然おかしくなんかないよ⁉︎海未ちゃんのパンツが風で飛ばされて無くなった訳じゃないし!」

ことり「穂乃果ちゃん!」

穂乃果「あ・・・・」

束「なるほどね・・・」

穂乃果がうっかり口を滑らせてしまった事で全てを理解した束。対する海未はその場に座り込んで泣き出してしまう

束「ちょ、海未ちゃん!落ち着けって!」

穂乃果「お兄ちゃんが海未ちゃんを泣かした!」

束「俺のせい⁉︎むしろおまえのせいだろコレ⁉︎あぁ!もう!とにかく落ち着いて海未ちゃん!別にどうって事ないから!」

海未「うぅぅ・・・殿方にこんな事を知られてしまうなんて・・・私・・・もうお嫁に行けません・・・」

束「そんときゃ俺が責任とるから!」

ことり「お兄さんと海未ちゃんが・・・フフフ・・・」

束「自分の世界に入ってないでコッチ手伝え!ピンク脳!」

穂乃果「ホントにどこいっちゃんたんだろ?海未ちゃんの青いパンツ」

海未「色まで言わないでください!」

束「ん?青いパンツ・・・?確か・・・」

束は魔力憑きの掃除機から許可証と一緒に取り出した下着をポケットから出す。

穂乃果「あー!海未ちゃんの!」

束「ヴェェッ⁉︎」

ことり「お兄さん・・・とうとう一線を超えちゃったんですね・・・」

束「ち、ちょっと待って!俺は拾っただけで盗った訳じゃ・・・!」

その時、束は後ろからの凍りつくような殺気を感じ、ゆっくりと振り返る。そこには笑顔の海未が。

海未「さっき言いましたね?責任を取るって・・・」

束「は、はい・・・」

海未「安心してください。警察にはいきません・・・この場でトドメを刺します」

この瞬間、束はもうどう足掻いても逃げられない事を悟ってしまった。そしてため息をつきながら小さな声で呟く。

束「・・・決めるぜ、覚悟・・・」

海未「よろしい、ならば・・・」

海未は持っていた鞄を大きく振り上げる。

海未「はあぁぁぁっ!」

バゴォォォォンッ‼︎

束「じぃぃぃぃどっ⁉︎」

直後に音ノ木坂に大きな衝撃音と悲鳴が木霊するのであった・・・・・。

 

 

 

 



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幕間 グッバイ ブラザー その1

とりあえず9人揃ったので一区切り、という訳で幕間です。サブキャラの性格に違和感感じるかもしれませんが(自分が感じてる)どうか暖かい目で見てください・・・


とある休日の昼下がり。その日は練習が休みだった為、にこは自宅で家事をしていた。元々あまり裕福な家庭ではない為母親も仕事で家を空ける事も多く、必然的に家事や炊事などはにこがやる事が多かった。

にこ「ふう、とりあえず掃除はこれでいいわね」

部屋の掃除を終えたにこが掃除機を片付けていると慌てた様子で二人の小さな女の子がにこの所に来る。

にこ「?どうしたの?こころ、ここあ」

二人の少女は以前束との会話にも出てきたにこの妹達である。髪が黒く大人しめな雰囲気の方の子・・・こころが困った様子で話す。

こころ「お姉様!虎太郎見ませんでしたか?」

にこ「小太郎?一緒に遊んでたでしょ?」

ここあ「気づいたら部屋にいなかったんだよ!」

茶色がかった髪の活発そうな雰囲気の方の子・・・ここあも部屋の中を見回しながら言う。ちなみに虎太郎はにこの弟であり矢澤家の末っ子の事である。矢澤家は4人姉弟なのだ。

にこ「こっちには来てないわよ・・・。台所やトイレは⁉︎」

こころ「見たけどいませんでした!」

にこ「あと考えられるのは・・・玄関⁉︎」

急いで玄関を見にいくとそこには虎太郎のいつも持っていたピコピコハンマーと虎太郎の靴が片方だけ落ちており玄関は僅かに開いていた。

にこ「そんな・・・虎太郎・・・虎太郎ーー!」

にこは慌てて家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

秋葉原、ちいさな公園にて

束「・・・・・」

虎太郎「・・・・・」

ベンチに並んで座っている束と虎太郎。

その日、頼まれた用事を終えた束は帰り際に公園に寄り、少し休んでいたのだがそこに小さな男の子がフラフラ歩いているのを見つけた。見ると靴も片方しか履いてなく、気になった束は声をかけてみたのだった。

束「で、君の名前は?」

虎太郎「こたろう・・・・」

束「虎太郎だな。虎太郎は靴を片方しか履いてないけどもう片方はどうしたんだ?」

虎太郎「おとした」

束「そっかぁ・・・。お家の場所わかるか?」

虎太郎「・・・・・?」

首をかしげる虎太郎。

束「やっぱわかんないかぁ」

束はポケットからほむまんを一つ取り出すと虎太郎に差し出す。

束「食べるか?」

虎太郎「食べる」

ほむまんを受け取った虎太郎は包みを開けて食べ始める。

束「にしてもこの顔、どっかで見た事あるような・・・ん?」

ふと前に目を向けるとにこがこちらに向かって走ってきていた。

束「あれ?にこちゃーん!そんなに急いでどうしt」

にこ「うちの虎太郎に何してんのよぉっ!」

バキィッ‼︎

束「ゴッフォッ⁉︎」

にこの飛び蹴りが炸裂し、束は座っていたベンチから後ろに吹っ飛ぶ。

にこ「虎太郎!大丈夫⁉︎怪我はない⁉︎変なことされなかった⁉︎」

虎太郎「おねーちゃん、強い」

にこ「当然よ!虎太郎に手を出す奴にはにこにーの『ニコ クリティカル ストライク』をお見舞いしてやるにこ♪」

束「ニコはニコでもニコが違う!」

ベンチから転落した束がツッコミながら起き上がる。

にこ「束!いくらアンタでもうちの弟に手を出したら許さないわよ!」

束「出すか!どう思われてんだよ俺!」

にこ「海未のパンツ盗んだんでしょ?」

束「盗んでない!」

虎太郎「このおにーちゃんがお菓子くれたー」

にこ「お菓子?はっ!まさかお菓子で釣ろうと・・・」

束「してない!大体弟ならしっかり面倒見とけよ、靴も片方しか履いてないしそっちのがあんまりだぜ!」

にこ「う、うるさいわね!だからこうして探しに来たんでしょ!・・・はぁ、もういいわ。虎太郎も見つかったし。さ、虎太郎、帰りましょ?」

しかし虎太郎は束の服をギュッと握って離さない。

にこ「虎太郎?」

虎太郎「・・・・・」

にこ「もしかして・・・遊んで欲しいの?」

無言で頷く虎太郎。しばらく考え込んでいたにこだったが・・・

にこ「はぁ・・・仕方ないか。束、この後時間ある?」

束「あ、ああ。今日の仕事はもう終わったとこだったし」

にこ「少し一緒に遊んでもらっていいかしら?なんか虎太郎が気に入っちゃったみたい」

束「ああ、わかった」

にこ「じゃ、うちに行きましょ。あ、あと・・・く・れ・ぐ・れも!うちの家の事は他のメンバーには喋らない事!いいわね?」

束「お、おう・・・」

 

 

 

 

矢澤家

ここあ「お客さんだ!お家にお客さんが来た!」

こころ「お姉様がお客様を連れてくるなんて珍しいです!」

束「お、おぉ・・・これは・・・」

出迎えた二人の妹と家の中の様子をパッと見て大体の矢澤家の事情を察した束。にこの方に振り返り、

束「お疲れさんです」

ペコリと頭を下げた。

にこ「何よいきなり・・・。悪いんだけどごはんの支度をしないといけないからその間だけでも一緒に遊んでたもらってもいい?」

束「あいよ」

にこ「変な事したら許さないからね?」

束「しないって・・・」

 

 

 

その後、支度を終えたにこは妹達を呼びに部屋に入る。

にこ「ごはん出来たわよ・・・ってなによコレ!」

にこが入ると辺り一面に画用紙の切り屑や絵が散らばっておりその中で虎太郎達が画用紙で作ったお面やらチラシを巻いて作った剣やらで遊んでいた。

束「フハハァ!タドルレガシーは絶版だぁ!」

虎太郎「おのれー」

ここあ「くっ!ハイパームテキがあれば!」

にこ「いい加減にしなさぁぁぁい!」

バタバタと暴れすぎとうとうにこのカミナリが落ち、全員で片付けを始める。

にこ「全く・・・いい歳して何こどもと同レベルで遊んでんのよ」

束「いや、クロニクルゲーマーにはレベルが設定されてないからレガシーゲーマーのレベル100と一緒にされちゃ困る」

にこ「レベルってそういう意味じゃないわよ!」

虎太郎「ハイパームテキがあれば・・・」

束「そしたらリセットしてやる」

虎太郎「くそぉ・・・」

にこ「もういいって!」

そんな事を言いながらも手も動かし、無事片付けも終わる。

にこ「ふう、こころ達もお疲れ様。さ、ご飯にしましょう。束も一緒に食べてく?」

束「いいのか?」

ここあ「お姉ちゃん、今日は何ー?」

にこ「ふっふっふ、今日は少し豪華よ?チーズ入りハンバーグとパインサラダにこ♪」

こころ「わぁー!」

妹達はメニューを聞いて喜んでいたが束は一人難しい顔をして考え込んでいた。

束「パインサラダ・・・、あれ?でも確か今回の話のサブタイトルって・・・」

にこ「どうかしたの?束?」

束「いや、なんか凄〜くヤな予感がして・・・」

にこ「はあ?」

するとにこの目がある方向を見て止まる。

にこ「束、ここに赤い包みの箱置いてなかった?」

束「赤い包みの箱?さあ・・・見てないけど」

にこはその赤い箱の置いてあったらしき場所の周りを探し始める。

にこ「こころ達は先に食べてて?」

束「俺も手伝うよ。二人の方が効率いいだろ?」

束も加わり、二人で部屋中くまなく探すが赤い箱は見つからない。その様子を虎太郎がジーッと見ている。

にこ「虎太郎?どうしたの、先にご飯食べてていいのよ?」

虎太郎「・・・・・みた」

束「え?」

虎太郎「赤い箱、みた」

にこ「ホント⁉︎」

虎太郎「片付けの時に床に落ちてたから袋に入れた」

にこ「袋って・・・」

束「片付けの時って言ってたから・・・多分、ゴミ袋・・・」

にこ「ぬわんですってぇぇぇっ⁉︎」

束「ちなみに箱の中身は・・・?」

にこ「伝説のアイドル伝説 DVD全巻BOX !略して伝伝伝!各地のスクールアイドルのお宝映像を集めたDVDで発売当時ネット・店頭共に瞬殺(完売)になり、現在入手困難な激レアアイテムなのよ!」

束「それって・・・部室に無かったっけ?」

にこ「それとは別!コッチは保存用!」

束「マニアの考える事はわからん・・・」

にこ「ゴミ袋ってことは外のゴミ置場よね⁉︎まだあるかもしれないわ!束!行って見てきて!」

束「俺⁉︎」

にこ「つべこべ言わずにさっさと行く!」

束「は、はい!」

言われるがまま束はダッシュで部屋を出ていった。少しして再び部屋に帰って来る。

束「行ってきた!」

にこ「どうだった⁉︎」

束「ダメだった!」

バシィッ!

頭を引っ叩かれる束。

束「だって行ったらもう無かったし!」

にこ「そんな早く無くなるわけ・・・ん?」

にこが窓を見ると一台のトラックがゴミ袋を乗せて走り出そうとしてるのが見えた。どうやらエンジンが上手くかからず発車に手こずっているようだ。その荷台のゴミ袋のひとつにうっすらと赤い四角が見える。

にこ「あった!あそこよ!行くわよ束!」

束「へ?行くって・・・あああぁぁぁっ⁉︎」

束の首根っこを掴んだにこはそのまま窓からトラックめがけて飛び出した。

 

 

 




次回、衝撃のラストが・・・


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幕間 グッバイ ブラザー その2

にこ「はあっ!」

束「うおぉっ⁉︎」

窓から飛び出した二人はそのまま外に止まっているトラックの荷台に着地する。

にこ「急いで袋から出すわよ!」

すかさずにこはゴミ袋を開けて中から赤い箱を取ろうとする。しかしその瞬間トラックのエンジンがかかり、動き出してしまう。

束「うおっ!」

発進時の衝撃でバランスを崩した束は荷台から落下してしまい、にこを乗せたままトラックが走り出す。

束「くそ!逃がすかよ!」

束は魔法を使い自転車を呼び出す。それは以前穂乃果を乗せ暴走したマウンテンバイクだった。

束「もう一度頼むぜ!」

束が握ったハンドルから魔力を流し込むことで自転車が淡い光に包まれたかと思うとそのまま猛スピードで走り出した。

 

 

 

にこ「中々止まんないわね・・・まさかこのまま集積場送りとか・・・」

袋から取り出したボックスを大事に抱えながらトラックが止まるのを待つにこ。そこに自転車に乗った束が後ろから追いかけてきた。

束「にこちゃん!例のブツは⁉︎」

にこ「ここにちゃんとあるわ!」

にこは持っていたボックスを束に見えるように上げて見せる。しかしその時にトラックが段差の上を通過した為、ガタン!と大きく揺れた。その衝撃は荷台にも伝わり、そのはずみでボックスがにこの手から飛び出してトラックの隣を追い越していったスポーツカーの中に入ってしまう。

にこ「嘘でしょぉぉっ⁉︎」

束「何やってんだよ!」

束は追跡目標を赤いスポーツカーに変えて追いかけるがあまりにスピードが違いすぎてどんどん離されてしまう。

それと同時にトラックが止まった為、にこも荷台から降りて同じく一度停止した束の元へいく。

にこ「どうすんのよ束!」

束「いや、大丈夫だ。このルートなら先回りできる」

束が自転車の向きを変え発進しようとすると、にこが後ろに乗ってきた。

束「お、おい・・・コレ一人乗りだぜ?」

にこ「ジッと待ってるなんて出来ないわ!」

束(参ったな・・・俺一人なら魔法使ってどうにかできるのに・・・)

にこ「それに〜、にこは軽いから大丈夫にこ♪」

束「・・・まぁ小さいしどこも出っ張ってないからな」

 

 

 

 

秋葉原

その日、花陽は凛と一緒に買い物に来ていた。一通りの買い物を終えたのでベンチに座って休んでいた。

花陽「ふう・・・ちょっと沢山買いすぎちゃったかな?」

凛「かよちんはホントにアイドルが大好きだね」

座っている花陽の両脇には何冊ものアイドル雑誌やアイドルグッズが入った袋が置いてある。

花陽「えへへ、今月は大好きなスクールアイドルが載ってる雑誌が多くて・・・。凛ちゃんも今日は一緒に来てくれてありがとう」

凛「かよちんが楽しそうで何よりだにゃ」

二人が話していると目の前に赤いスポーツカーが止まり、中から男性が出てくる。

男性「ん?なんだコレ?こんなの持って来た覚えねぇぞ?」

そう言うとスポーツカーの後部座席に入っていた赤い箱を拾い上げて投げ捨てる。捨てた後、男性はまた車に乗って走り去ってしまった。

投げ捨てられた箱は転がって花陽達のところへ。

花陽「なんだろう・・・コレ?」

凛「開けてみるにゃ!」

凛が箱を拾い赤い包みを開ける。

凛「DVDみたいだにゃ?」

花陽「こ、コレは・・・!」

包みの中身を見た花陽は驚愕する。

凛「かよちん?どうしたの?」

花陽「コレは・・・伝説のアイドル伝説 DVD全巻BOX !略して伝伝伝!各地のスクールアイドルのお宝映像を集めたDVDで発売当時ネット・店頭共に瞬殺(完売)になり、現在入手困難な激レアアイテム!なんでこんな所に⁉︎」

希少なアイドルグッズを前に興奮気味に話す花陽。そこに

息を切らしながら自転車を漕いできた束とにこが現れる。

にこ「ああもう!行っちゃったじゃない!何してんのよ束!」

束「さ・・・流石に・・・二人乗った状態で全力疾走は・・・キツイって・・・」

凛「お兄さんとにこ先輩?どうしたんだにゃ?」

花陽「束さんは頭にデッカいタンコブが出来てますが・・・」

にこ「気にする事ないわ。自業自得なんだから」

その時、にこは花陽が持っている物に気づく。

にこ「花陽、それって・・・まさか・・・」

花陽「はい!あの幻の伝説のアイドル伝説!伝・伝・伝です!」

にこ「どこで手に入れたの?」

凛「赤い車から捨てられたのを拾ったんだにゃ」

束・にこ「なんだって⁉︎」

凛の言葉を聞いて束は花陽達に詰め寄る。

束「おいそれ本当か⁉︎」

にこ「あぁ!この破れた包装紙・・・間違いないわ!」

包装も開けずに保管していたにこは破れた包装紙を見て肩を落とすがすぐに花陽の所へ。

にこ「花陽!悪いけどそれ私のなの!返して貰うわよ!」

花陽「え?え?」

束「ゴミ袋に捨てちゃって色々あってココに来たんだよ!」

凛「ちょっと待ってよ!これはかよちんが拾ったんだよ!にこ先輩のだっていう証拠はあるの!」

にこ「なんですって!」

花陽「ちょっと凛ちゃん・・・」

束「にこちゃんも落ち着けって」

にこ「これが落ち着いていられる訳ないでしょ!」

花陽「凛ちゃんも・・・にこ先輩のモノだって言ってるし・・・」

凛「大事な物ならゴミ袋に捨てたり知らない人の車に入るなんて訳ないにゃ!」

にこ「それは・・・まぁそうなんだけど!」

束「にこちゃん、押されてる」

凛とにこが言い争っている横で花陽は暫く困惑した様子で見ていたがやがて耐え切れなくなってしまい・・・

花陽「だ・・・だ・・・ダレカタスケテェェェッ‼︎」

そう叫ぶと同時に持っていたボックスを放り投げてしまう。

束・にこ「ああっ⁉︎」

大きな放物線を描きながら飛んでいくDVDボックス、そのまま道端に停車していた大型トラックのコンテナの中に落下、それに気づかない運転手が扉を閉めてしまいそのまま発進してしまう。

束「またトラックかよ⁉︎」

にこ「さっきのゴミ収集車とは訳が違うわ!あんな大型トラック、どこに行くかわからないわよ!」

そう言ってにこは止めていた自転車に乗る。

にこ「行くわよ束!早く後ろに乗りなさい!」

束「え?にこちゃんが運転すんの?」

にこ「あちこちのスーパーのタイムセールを駆け回る、にこの脚力を舐めんじゃないわよぉぉぉぉぉっ!」

束「え?・・・あああぁぁぁっ⁉︎」

束が後ろに乗ると同時に猛スピードで走り出すにこ。その場には呆然とその様子を見ていた凛と花陽が残された。

凛「な、なんだったのにゃ?」

花陽「さ、さあ・・・?」

 

 

 

 

 

にこ「おぉりゃああああっ!」

猛スピードでトラックを追跡するにこ。その後ろで束が振り落とされない様に必死にしがみつく。

束「穂乃果の時より速いぞコレ⁉︎どーいう身体してんだよスクールアイドルってのは⁉︎」

ただでさえ本来一人乗りのマウンテンバイクに二人乗りしてる上に限界以上のスピードを出し続けた為車体が先程からミシミシと音を立てている。壊れるのも時間の問題だろう。

にこ「追いついたわ!後はアンタに任せるわよ束!」

束「へ?任せるって・・・何を⁉︎」

トラックの真後ろに追いついたにこはその場で急ブレーキをかける。するとその反動で後ろに乗っていた束が前に向かって吹っ飛ぶ。

にこ「かっ飛べぇぇぇ!束ぁぁぁっ!」

束「嘘ォォォッ⁉︎」

ブレーキと同時に自転車も壊れてにこはその場に転倒する。そして前方に飛ばされた束はそのままトラックのコンテナの扉付近に捕まる。走行中のトラックのコンテナの取手にぶら下がっている状態の為、足が地面に擦れる。

束「ぐ・・・このぉ!」

束は急いで魔法でコンテナのロックを解除、扉を開けて中に入る。どうやら食料品関係を運ぶトラックらしく中は冷凍庫並みに冷えていた。そんな荷物の中に1つだけ不釣り合いな箱を発見する。

束「あったぜ!にこちゃん!」

束はDVDボックスを回収するとにこに見せる。

にこ「でかしたわ束!・・・・・あ」

回収したボックスを見て喜ぶにこだったが途端に表情が固まる。

束「どうした?・・・・・あ」

にこの様子を見てキョトンとしていた束だったが荷台の遥か後方に紫色の『ETC』の看板を見つけ全てを理解する。

束「嘘ぉぉぉっ⁉︎」

にこ「束ァァァッ!」

束「にこちゃぁぁぁん⁉︎」

束の叫びも虚しく、トラックは高速道路に消えていった・・・。

 

 

 

携帯が鳴り電話に出るにこ。

穂乃果「あ、もしもし?にこ先輩ですか?うちのお兄ちゃん、知りませんか?届け物を届けに行ったっきり帰ってこなくて・・・」

にこ「・・・束なら、多分当分帰って来ないわよ・・・」

穂乃果「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけの時が経ったか・・・冷蔵品を運んでいる為氷点下のコンテナで身動きも取れず座り込んでいた束。

やがてトラックが高速を降りたらしく停車した事を察知した束はすかさずコンテナを開けて外に逃げ出した。

束「う・・・うぅ・・・さ、寒い・・・。ここはどこなんだ・・・」

寒さにながらも束は持っていた携帯で位置情報を確認する。そこに出てきた文字は・・・

『静岡県 沼津市 内浦』

束「・・・・・嘘ぉぉぉぉぉっ⁉︎」

早朝の海辺に束の絶叫が木霊した・・・。




という訳で次回から新展開になります。


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第10話 welcome to ようこそ マリンパーク その1

久しぶりの更新です。今回から暫くの間Aqours編となります。本来は5年後の設定らしいですが今作では同じ時間軸で進めていきたいと思います。


トラックに乗せられて遥々静岡県沼津市に来てしまった束。暫く途方に暮れていたがジーッとしててもドーにもならないので歩き出す。

束「こっから東京まで帰れるかな・・・」

束は持ってた財布の中を見る。中には100円玉が一枚光っていた。

束「・・・・・へっきし!」

長い時間冷凍庫に入っていた為身体が冷え切っていた束。近くのコンビニで百円の缶コーヒーを買う事に・・・。

 

 

 

束「さて、これで完全に無一文になった訳だが・・・」

束は辺りの町を見渡す。ここ内浦は海辺の町である為か海産物を取り扱う店や水族館などが多くあった。

束「変わらないねぇ、此処は」

実は束は此処に来るのは初めてではなく、過去に母親の都合で日本中を飛び回っていた頃に一年だけ住んでいた事があった。尤もそれももう約7年前の話なのだが。

束「一応、行ってみるか・・・」

束は7年前の記憶を頼りにかつて自分が住んでいた家に向かう事にした。

 

 

 

 

束はかつて住んでいた家に到着する。しかしその家の入り口には『皆道』の表札は無く、代わりに新しく入居してきた人であろう『桜内』の表札がかかっていた。

束「ですよねー」

大体予想出来た展開にため息をつく束。

束「こうなると・・・」

束は顔をあげてかつての自宅の隣にある旅館に目を向ける。

束「おっつけ昔馴染みを頼るしか・・・」

束は意を決して旅館の戸を叩いた。

 

 

 

 

「はーい」

旅館の入り口から黒いロングヘアの女性が出てくる。

束「えーと、お久しぶりです。志満さん」

志満「あなた・・・もしかして束君?」

志満と呼ばれた黒髪の女性に頭を下げる束。

志満「ホントに久しぶりね〜!大きくなって・・・今高校生くらいかしら?」

束「恥ずかしながら今年で21になります」

志満「まあ、もう社会人なのね。月日が経つのは早いわ〜。今は何のお仕事してるの?お母さんは元気?」

束「え、えぇーと・・・」

旅館の入り口付近で志満が話し込んでいると奥から茶色のショートカットの女性が出てくる。

「志満姉?誰と話してんの?」

束「あ、美渡さん。お久しぶりです」

美渡「ん?・・・誰?」

ショートカットの女性、美渡にも頭を下げる束だが美渡の方はまだピンと来てないらしく首を傾げる。

束「束ですよ!こどもの頃よくキ○肉バスターやキ○肉ドライバーの実験台にされてた束です!」

美渡「あー!思い出した!束かー!久しぶり!」

志満「今なんかサラッととんでもない事言ってなかった?」

 

 

 

 

 

玄関でいつまでも立ち話もしていられないので中に入る三人。そのまま奥にある居間に案内される束。

志満「それで今日は内浦に遊びに来たの?」

束「いやぁ・・・車に閉じ込められてここまで来たっていうか・・・」

美渡「・・・はあ?」

ここにたどり着くまでの経緯を説明する束。

志満「そうだったの・・・大変だったわね」

美渡「っていうか冷凍庫に閉じ込められたら普通タダじゃ済まないと思うけど・・・」

束「東京に帰りたいんですけどお金が無くて・・・この辺じゃ昔の知り合いに頼る他ないんですよ」

志満「なるほどね。そういう事ならいいわよ」

束「やった!」

志満「ただし・・・」

束「へ?」

志満「今ウチの旅館の従業員の方が一人ケガをしていて休んでるの。その人がケガが治って復帰するまであと数日かかるらしいからその間だけ代わりに入ってくれたらアルバイト代って事で旅費を負担するっていうのはどうかしら?」

束「うぇえっ⁉︎」

美渡「流石は志満姉、抜け目ない」

志満「人手が足りなくて困ってたのよ。入ってくれると助かるわぁ〜」

束「・・・し、職場に相談してみます・・・」

その後、電話を借りて穂むらに連絡し事の経緯を説明、無事?許可が下りてしばらくは十千万旅館の臨時従業員として働く事になる束だった・・・。

 

 

 

 

調理場

美渡「おー流石和菓子職人、手際が良いねぇ」

束「職人じゃなくて従業員ですよ。ってかなんで俺が料理まで・・・」

美渡「まぁいいじゃん?料理長も筋がいいって言ってたし」

束(・・・そのうち旅館の業務全てやらされるんじゃねぇのか?」

束「あ、そういえば千歌は?まだ姿を見てないけど・・・」

美渡「千歌ならあんたが来る直前に出かけたよ。朝から部活だとさ」

束「千歌が部活・・・もうそんな歳なのかぁ・・・」

美渡「何爺臭い事言ってんのさ」

「ただいまー!」

そんな会話をしていると玄関の方から大きな声が聞こえた。

美渡「お、噂をすれば。千歌ー!懐かしいお客さんが来てるよ!」

「懐かしいお客さん?」

調理場に声の主が姿を現わす。穂乃果と同い年くらいのオレンジ色の髪の少女だ。

束「おー、見違えたねぇ」

千歌「え・・・?」

調理場で作業をしている束を見て千歌と呼ばれていた少女は誰かわからず固まる。

美渡「私と同じ反応だね」

束「まぁ7年も会ってなきゃわかんねぇか。ほれ」

束は右手を前に出すと千歌の前で握った拳を開く。すると中からミカンが1つ現れる。

千歌「その手品・・・もしかして、束君?」

束「もしかしなくても束だよ」

目の前の男性の正体がわかり、途端に千歌は笑顔になり抱きつく。

千歌「ホントに束君だー!でもなんで?どうして?またコッチに戻って来たの?」

束「お、落ち着けって。理由は後でゆっくり話してやるから。とりあえず先にこの料理だけやっちまわないと」

千歌「あ、じゃあ私も手伝う!」

美渡「いつもは嫌々手伝ってるのにねぇ〜」

千歌「いつもと違うからいいの!ね?いいでしょ?」

束「そんじゃ、ご指導の程よろしくお願いします。先輩」

千歌「えへへ、任せて!」

 

 

 

その後、仕事がひと段落した束は千歌に事情を話した。

千歌「じゃあまたすぐに東京に戻っちゃうんだ・・・」

束「すぐにって言っても多分一週間くらいはコッチに居ることになるけどな」

千歌「そっか!じゃあこの一週間で昔みたいに色々な事一緒にやりたいなぁ。いっぱいあるんだ、話したい事!」

束「そりゃ楽しみだ。あ、そうだ。ところで志満さん、俺の寝る部屋ってどこですか?」

束に聞かれても志満は黙ってただニコニコしている。

束「ちょ、あの?おーい志満姐さーん?」

志満「ゴメンね?束君の部屋はね・・・」

 

 

 

千歌「なんで⁉︎」

千歌の部屋に千歌のベッドとは別に布団が1つ敷いてあった・・・。

束「異議ありぃぃっ!」

千歌「そーだよ!なんで千歌の部屋に敷いてあるの⁉︎志満姉や美渡姉の部屋でもいいじゃん!」

志満「だって・・・何かされたら困るし・・・」

束「何もしないよ⁉︎それなら千歌だって困るでしょう!」

千歌「そうだよ!これじゃ布団の分、千歌の部屋が狭くなっちゃうじゃん!」

束「そっち⁉︎困る事ってそっち⁉︎」

千歌「布団敷く度にいちいちテーブルとか動かさなきゃいけないんだよ⁉︎旅館の手伝いしてるみたいでヤダよ〜!」

美渡「布団を使うのは束なんだから束にやらせればいいじゃん?」

千歌「あ、そっか」

束「いやいやいやいや!納得しないで!」

志満「とにかく、今はお部屋も空きがないし、今日はここで我慢して?」

束「むぅう・・・」

仕方なく、束は千歌の部屋で寝る事に。

 

 

 

その後、千歌の部屋で寝る仕度をする束に千歌が話しかける。

千歌「明日は果南ちゃんや曜ちゃんにも会いに行こうよ!二人ともきっと喜ぶよ!」

束「あの二人か。懐かしいなぁ。・・・そういえば今日は朝から部活だったらしいな。何の部活やってるんだ?」

仕度を終えた束がテーブルに置いてあるお茶を飲みながら尋ねる。

千歌「千歌ね、スクールアイドルやってるの!」

ブフォッ!

口にしたお茶を吹き出す束。

千歌「うわあっ⁉︎」

束「ゲホッ!ゲホッ!・・・そ、そうか。スクールアイドルやってるのか・・・」

千歌「うん!ネットでたまたま見た動画が凄く綺麗で可愛くてキラキラしてて!私もこんな風になれたらなぁって思ったの!」

束「へぇ・・・」

何とか息を整え、千歌の話を聞きながらテーブルに乗ってる饅頭にも手を伸ばす束。

千歌「知ってるかな?μ’sって言うの!」

束「ッ⁉︎」

案の定、今度は饅頭を喉に詰まらす束だった・・・。

 

 

 

 




次回から他キャラも登場です。
実は書いてる途中でALL STARSが発表されたのでどうしようか悩んで止まってましたがとりあえず自分なりの解釈で進めていこうと思います


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第10話 welcome to ようこそ マリンパーク その2

更新遅くなりました。今回から何人かAqoursのメンバーも登場してきます


空いてる部屋が無いとの事で千歌の部屋に寝る事になった束、千歌の寝ているベッドのすぐ隣のスペースに布団を借りて寝ていた。

ジリリリッ!

一夜が明け窓のカーテンの隙間から朝日が射し込む頃、千歌の枕元の目覚まし時計が鳴り響く。

千歌「うぅ・・・ん」

バン!

千歌は目覚ましを止めると再び寝てしまう。

そして・・・

 

 

千歌「ぎゃー⁉︎遅刻だぁーっ⁉︎」

再び目が覚めた時には登校時間ギリギリになっており、千歌は慌てて飛び起きる。いつもと同じように勢いをつけてベッドから飛び降りるがその先には・・・

ドズッ!

束「ッガ⁉︎」

千歌「・・・あ」

ベッドの隣に寝ていた束は千歌に思い切り腹部を踏みつけられ短い悲鳴をあげて目を覚ました。

 

 

 

 

千歌「行ってきまーす!」

千歌は慌てながら走って旅館を出ていった。それをお腹の辺りをさすりながら見送る束。

束「いてて・・・ん?」

ふと束が玄関に目をやるとノートが一冊落ちていた。束がそれを拾い、中を見る。中には短い文章がいくつも書いてあり、それらには消しゴムで消した跡や何度も書き直した形跡などが見て取れた。

束「これってもしかして・・・歌詞か?」

昨日、千歌がスクールアイドルを始めた事を聞いていた束はノートに書かれた短い文章を見てそう感じた。

束「無いと困る・・・よな?やっぱ・・・」

 

 

 

 

 

千歌の姉二人に聞いて千歌の通う学校『浦の星女学院』の前に来た束。時間はちょうど昼休みになる頃を狙って来たので会えさえすれば簡単にこの用事も終わる・・・はずだった。

束「さてと、まずは千歌を探さないとな」

校門から中に入り辺りをキョロキョロ見回す束。

束「お、第一生徒発見」

外に出ている生徒の一人を見つけた束は千歌の事を聞こうと声をかける。

束「RPGの基本は情報収集・・・ってね。おーい!そこの君ー!」

束は小柄で赤い髪をツインテールにした女生徒に声をかける。

「ピギッ⁉︎」

突然呼びかけられた事に驚いたのか少女はビクッ!としながら束の方を振り向く。

束「いきなり呼びかけて悪い。この学校の生徒で高海 千歌って子・・・」

「ピ・・・ピ・・・ピギャァァァァァァッ⁉︎」

声をかけられた少女は突然大声をあげる。

束「どわぁっ⁉︎」

あまりに突然の事で思わず後ろに後ずさる束。

束「な、なんだ⁉︎どういうんだ⁉︎」

少女は大声で叫んだ後もずっと束を見て怯えており、側から見たら完全に束が悪者だ。まぁ実際女子校に無断で入っているのだが。

束「ち、ちょっと待って!落ち着こう?怪しいモンじゃないからさ?」

束が近づくと少女は怯えた顔のまま後ろに後ずさる。

「ルビィ!どうしましたか⁉︎」

見ると黒いロングヘアの女生徒がこちらに向かって走ってくる。それを見た束は思わずその場を離れてしまう。

「ルビィ⁉︎大丈夫⁉︎ケガは無い⁉︎」

黒髪の生徒がルビィと呼ばれたツインテールの少女に駆け寄る。

ルビィ「うん、大丈夫。ダイヤお姉ちゃん・・・」

ルビィも自身の姉である黒髪の生徒、ダイヤにそう答える。

ダイヤ「一体何がありましたの?」

ルビィ「えっと・・・えっとね、あの男の人が・・・」

そう言ってルビィはその場から走って去っていく束の後ろ姿を指差す。

ダイヤ「アイツがルビィを・・・。絶っ対に逃がしませんわ!」

 

 

 

 

 

 

一方逃げてきた束は・・・

束「はあ・・・はあ・・・、思わず逃げ出しちまったけどやっぱマズイよなぁ。ちゃんと誤解を解かないと・・・」

辺りを見回してみるがどうやら校内に迷い込んでしまったらしくどっちに行けばいいのか皆目検討がつかない。

束「どうするか・・・」

するとそこに女生徒が現れる。赤い髪をバレッタでとめた大人しそうな子だ。

「えっ⁉︎なんで男の人⁉︎」

束「待った!怪しい奴じゃない、ここの生徒の知り合いなんだ」

「し、知り合い?」

束「ああ。高海 千歌って子なんだが・・・」

「千歌ちゃんの・・・?」

束「知ってるのか!だったら・・・」

その時、束の声を遮るように校内放送のアナウンスが流れる。

ダイヤ『生徒の皆さんに連絡します。先程校内に不審者が浸入しました。生徒の皆さんは教室から出ないようにしてください』

「ふ、不審者⁉︎」

束「おいおい物騒だな・・・」

ダイヤ『もし不審者を見つけても追いかけたりせずに落ち着いてその場から離れて近くにいる先生に報告してください。なお、不審者は20代くらいの男性で服装は黒のジャケットに赤いズボンで・・・』

束「ん?黒のジャケットに赤いズボンって・・」

束は自分の服装を見る。

束「俺の事かぁっ⁉︎」

「やっぱり怪しい人じゃないですかぁ⁉︎」

束「くそ!俺はただ忘れ物届けに来ただけなのに!」

そんな事を言ってる内に別の生徒達が束を見つける。

女生徒A「え・・・?あれってもしかして・・・」

女生徒B「さっき放送で言ってた不審者だよ!」

女生徒C「見て!桜内さんが人質に!」

束「えええぇぇぇッ⁉︎」

女生徒A「早く先生に知らせないと!」

女生徒C「桜内さん!待ってて!すぐに助けを呼んでくるから!」

そう言って三人の生徒は行ってしまい束達2人が残された。

「・・・・・」

しばらくの間、お互い顔を見合わせて黙っていた2人だったが沈黙に耐えられなくなった束が話し出す。

束「なんか、ゴメンな?巻き込んじまって・・・・。えーと・・・」

「さ、桜内梨子、です・・・。あの、本当に千歌ちゃんの知り合いですか?」

束「本当だよ、コレを届けに来たんだ」

束はノートを取り出して梨子に見せる。

梨子「それって・・・千歌ちゃんのノート!」

束「やっぱそうだったんだな。遅刻しそうになって慌ててたからな。玄関に落としていった」

梨子「もう・・・千歌ちゃんったら・・・」

束「君、千歌の家の旅館のすぐ隣に住んでるだろ?」

梨子「えっ⁉︎な、なんでそれを・・・」

束「桜内の表札があったからな。あそこ昔俺が住んでた家なんだ。もう7年も前の話だけど」

梨子「そうなんですか?・・・あの・・・」

束「ん?」

梨子「千歌ちゃんって昔はどんな子だったんですか?」

束「昔ったって7年前で1年位の付き合いだったからそんなに細かく覚えてる訳じゃないけど・・・、まぁ普通の子だったんじゃないか?」

梨子「普通・・・ですか」

束「どこにでもいるような普通の元気な女の子、って感じかな?あ、でも・・・」

梨子「でも?」

束「久しぶりに会った今の千歌はちょっと違うかもな。なんつーか、前にも増して活発!っていうか?活き活きとしてるっていうか・・・」

梨子「・・・そうかもしれません」

そう答える梨子の顔はは少し笑っていた。

束「あと意外と胸も大きく育って・・・」

梨子「大きな声出しますよ?」

束「ごめんなさい」

 

 

 

 

その後、束は梨子にノートを渡して帰ることに。

梨子「大丈夫ですか?」

束「ノートが渡せる目処が立った以上ここに長居する理由も無いしとっとと退散するさ。ま、なんとかなるっしょ」

束は窓から抜け出し外へ出る。

束「えーと、アッチに向かって行けば出られるんだよな?」

梨子「はい。あ、そうだ不審者さん!」

束「不審者はやめて!俺の名前は束!」

梨子「つ、束さんは昔、今の私の家に住んでたんですよね?」

束「ああ」

梨子「今はどこに住んでるんですか?」

束「本当は東京の音ノ木坂だが今は千歌の旅館に世話になってる。じゃあな!ノートよろしく!」

そう言って束は走り去っていった。

梨子「え?・・・ええぇぇぇっ⁉︎」

 

 

 

 

束「やれやれ、早いとこ抜けださないと・・・ん?」

コソコソ隠れながら校門に向かって進んでいると怪しい人影が束の目に写る。

「クックックッ・・・感じるわ・・・大いなる闇の力が集まってくるのが!」

地面に怪しい魔方陣のようなものが描かれており、その中心には黒いマントを羽織った少女がなにやらブツブツ言いながら笑っている。

束「なんだアレ?見たことない魔方陣だが・・・」

一応、魔法使いの端くれである為かまずそっちに目がいってしまう束。

「暗黒の魔力よ!堕天使ヨハネに力を!」

そう言って少女が両手を天にかざすと雲が無いにもかかわらずみるみるうちに暗い雲に覆われる。そしていきなり空から巨大な雹が降ってきて束のすぐ側に落ちる。

束「ふぉおおおっ⁉︎」

ギリギリの所で飛んでかわした束。慌てて飛び出した為、少女に見つかってしまう。

「キャアアアア⁉︎・・・お、脅かさないでよ!」

束「誰のせいだよ!」

「あ!あなたまさか放送で言ってた不審者⁉︎まさか・・・このヨハネを攫おうと・・・」

束「攫うか!」

ヨハネ「だ、堕天使ヨハネにちょっかいを出すと悪魔級の最高に最悪な事が起きるんだからね⁉︎」

束「良いんだか悪いんだかどっちなんだよ⁉︎」

そんな事を言っている内に更に巨大な雹の塊が二人のいる場所めがけて降ってくる。

束「危ねぇ!」

とっさに少女を突き飛ばす束。雹の塊は束の足元に落下し、砕けた破片が飛び散っていくつかが突き刺さる。

束「くっ!なんでいきなり雹なんかが・・・」

チラッと突き飛ばした少女の方を見ると魔方陣が淡く光っている。

束「まさかアレのせいか?すると・・・」

束は魔方陣を描いた張本人の方を見る。

ヨハネ「痛たた・・・」

束「くそ!忍者の次は堕天使かよ!どーなってんだ一体!」

ヨハネ「堕天使?ヨハネの事?」

束「こうなったら仕方ねぇ。あまり気は進まないが・・・やってやる!」

少女に向かい構えて戦闘体制に入る束。

ヨハネ「え?・・・な、何がどーなってるのよぉぉぉっ⁉︎」

 

 

 

 



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第10話 welcome to ようこそ マリンパーク その3

機種変更時のゴタゴタでログインが出来ず、長期間更新止まっておりましたがなんとか帰って来れました・・・
不定期更新ですがこれからもよろしくお願いします


束「行くぞ、堕天使!魔法の力、見せてやる」

「ま、魔法?・・・良い歳した大人がそんな事言って恥ずかしくないの?」

束「ほっとけ!堕天使に言われたかねぇわ!」

「な⁉︎よ、ヨハネはホントに堕天使なんだから!う、嘘じゃないんだからね!」

そんな事を言い合っている間にも空からは無数の雹の塊が降ってくる。

真夏にも関わらず空から降ってくる雹の塊をかわしながら目の前の少女に詰め寄る束。対する少女は訳もわからず困惑する。

ヨハネ「なんなのよ一体〜!なんで夏に雹が降ってくるのよ〜!」

束「お前がやったんだろ!」

ヨハネ「ヨハネが?まさか・・・本当にこの堕天使ヨハネに魔力がやどって!」

ゴッ!

ヨハネ「ヨハッ⁉︎」

言ってる途中で少女の頭に雹の塊が激突、そのまま目を回して倒れてしまう。

束「・・・ええぇぇぇっ⁉︎」

少女が倒れた後も雹は止む事なく降り続く。

束「意識が無くなっても止まらない・・・、まさかこの子のせいじゃないのか?」

徐々に降り注ぐ雹の数が増え、いくつかが校舎の窓に当たる。塊が小さかった為割れはしなかったもののこのままでは窓ガラスが割れて被害が出るのも時間の問題だろう。

束「くそ!まずは向こうをどうにかしないと・・・」

束は魔法でエアガンを呼び出すと降ってくる雹に銃口を向ける。

束「射撃はあまり得意じゃねえが・・・」

バン!

打ち出したBB弾は正確に雹に命中し、空中で砕け散る。

束「・・・よし、いける!」

数が多い為エアガンをもう一丁呼び出し2丁拳銃で構える。

束「これ以上被害を出すわけには!」

左右の手で構えたエアガンで正確に雹を撃ち落としていく束。しかし降り注ぐ雹は一向に止む気配を見せない。

束「くそ!もう弾が・・・!やっぱ元を止めないとダメか!」

束は仰向けで倒れている少女の向こうの魔方陣を見る。

束「アレが本当に魔方陣なら一部を消してしまえば効果は切れる筈・・・」

しかし束は今校舎に降り注ぐ雹を撃ち落とすのに精一杯でそんな余裕はとても無い。束が考え出した答えは・・・

束「おい!起きろ!堕天使!」

銃を撃ちながら少しずつ少女の方へ近づき両手が塞がってるので足で頭の辺りを突っつきながら起こす。

「・・・ん?あれ?私なんで地面で寝て・・・」

束「寝ぼけてるとこ悪いけど早く起きてくれぇっ!」

「・・・ってあなたは魔法なんとかの痛い大人!」

束「今つっこんでる暇ないから後で覚えとけ⁉︎とにかく助けてくれ!もう限界だ!」

エアガンの弾も尽きかけ、ずっと撃ちっぱなしの為、腕も動かなくなってきていた。

「手伝えって・・・何すれば良いのよ⁉︎」

束「あの魔方陣を消してくれ!多分アレのせいだ!」

「魔方陣?・・・やっぱりヨハネにホントに魔力が!」

束「いいからはよ行かんかい!」

「わ、わかったわよ!」

少女は魔方陣の所に行くと地面を足で擦って魔方陣を消そうとするが・・・

「消えない?なんで⁉︎」

いくら土の上を擦っても魔方陣を書くのに使ったラインパウダーは消えるどころか掠れる事も無かった。

束「まだか!もう持たねえぞ!」

「そんな事言ったって消えないもの〜!」

ゴッ!

束「あ」

「キュ〜・・・」

そんな事を言っている内に二発目の雹が少女の頭に直撃、再びその場に倒れてしまった。

束「二回も当たるなんてなんつー運の悪さ・・・って言ってる場合じゃない!」

銃の弾も切れてしまい、束は次の手を考える。

束(この効果が魔方陣のものだとしても線が消えないなんて事はまずあり得ない筈・・・だとすると消えない原因はまた別か?)

束は魔方陣のすぐ隣にあるライン引きを見る。

束「消えない原因は・・・粉の方か?」

しかし魔方陣のある場所は少し離れている上に雹の雨は更に激しさを増してきておりこちらも放っておけば被害は大きくなる一方である。

束「どうすればいい・・・?くそ!せめて少しの間だけでも雹を止められれば・・・あの雲をふっ飛ばしでもしない限り無理か・・・」

何気なく呟いた一言にハッとする。

束「雲をふっ飛ばす・・・危険だけど、やってみるしか!」

束は転送魔法で自分の部屋に保管していたモノを呼び寄せる。

束「頼むぜ、ラブライブレード・・・もとい!スパークルケイン!」

制御が効かない為保管しておいたスパークルケインを呼び出し構える束。ケインの先端を雹の降ってくる暗雲に向ける。

束「この前と同じように・・・行け!」

ケインの先端から再び火柱が上空高く目掛けて突き上がり暗雲を貫く。しかし、やはり制御が効かず以前よりも威力が上がりすぎた為か

発射の際の反動に耐え切れず束は後ろに吹っ飛ぶ。

束「だぁぁぁぁっ⁉︎」

まるで自動車に跳ねられたかのように勢いよく宙を舞った束はそのまま校舎の壁に思い切り叩きつけられる。

束「があっ⁉︎」

叩きつけられた後地面に落下した束はゆっくりと起き上がる。当たりどころが悪かったのか頭部から血が滴り落ちる。意識が朦朧としながらも立ち上がり魔方陣の方に歩いて行こうとする。

束「今の内に・・・は、早くしないと・・・」

暗雲を突き破る程の火柱のおかげで一時的にではあるが雲にはポッカリと穴が空き雹も止んだ。しかしすぐに雲がまた集まりだして穴を塞いでいく。束も急いで魔方陣に向かおうとするが頭を強く打ったせいで足取りもおぼつかない。

束「くそ・・・、せめて解呪法が触れずに使えれば・・・」

そう呟いた途端、手にしていたケインが光りだしたかと思うと勝手に手元を離れ魔方陣目掛けて飛んでいく。そのまま魔方陣の描かれた地面に刺さると、魔方陣と横のライン引きから光が流れ出しケインに吸い込まれていった。光が全て吸い込まれると魔方陣の輝きもなくなり再び空は雲ひとつない晴天となった。

束「・・・なんとまぁ・・・便利だ事・・・」

そう言い残して束はその場に倒れた。

 

 

 

 

 

束「・・・うぅ?」

気絶した束が目を覚ますと白い天井が目に入る。辺りを見回して状況を確認すると自分はベッドの上に横たわっており、周りの備品の雰囲気から察するにどうやらここは学校の保健室らしい。

束「そっか、俺倒れたんだっけ」

「気がつきましたか」

身体を起こした束が声が聞こえてきた方を振り向くと黒い長髪の女生徒が立っていた。

束「えぇっと・・・君は?」

ダイヤ「私はこの浦の星女学院の生徒会長をしております黒澤ダイヤと申します。あなたは校庭で頭から血を流して倒れていたのを発見されてとりあえずここまで運ばれてきたのです」

束「あー、思いっきり頭ぶつけたからねぇ・・・」

ダイヤ「幸い頭のキズは大した事はなかったので手当てをしてここに寝かせていた訳です。・・・それより」

ダイヤの目線が鋭いものに変わる。

ダイヤ「あなた、私の妹に手を出した不審者ですわね?」

束「い、妹?手を出した?」

ダイヤ「惚けても無駄ですわ!ルビィの悲鳴が聞こえてあなたと同じ服装の男が逃げ去っていくのを見ましたわ!」

束「悲鳴って・・・あー!あの時の!」

ダイヤ「さあ、お覚悟ですわ!」

束「待って!ちょっとタンマ!アレ手を出した訳じゃなくて・・・」

ダイヤ「問答無用!」

束「ひゃい!」

「ダイヤ〜?そんなに怒ったらシワが出来るよ〜?」

いつの間にやら部屋に入ってきた金髪の女子がダイヤの後ろからひょこっと顔を出して頬を指で突っつく。

ダイヤ「なっ⁉︎・・・鞠莉さぁぁぁん!」

鞠莉「だから〜怒ったらシワが出来るよ?」

ダイヤ「あなたがちょっかいを出すからでしょう!」

「ダイヤ落ち着いて、鞠莉もからかわないの」

鞠莉と呼ばれた金髪の子の隣にいた女の子が仲介に入る。2人の言い合いをポカン、と見ていた束だったがこの女の子には見覚えがあり・・・

束「もしかして・・・果南ちゃん?」

果南「お、正解〜♪久しぶりだね、束」

ダイヤ「果南さんの知り合いですの?」

果南「うん、って言っても会うのはホントに久しぶりだけど」

鞠莉「そうなの?じゃあ果南の知り合いなら私も挨拶しないとね?・・・Hallo〜?」

束「・・・Who are you?」

鞠莉「Oh!sorry! My name is Mari! nice to meet you!」

束「My name is Tukasa nice to meet you too.By the way・・・」

ダイヤ「普通に英語で会話しないでください!」

果南「そうだよ鞠莉、何言ってるか全然わかんないし」

ダイヤ「果南さん、今のは中学1年レベルの英語なのでわからなくても困るのですが・・・」

果南「そうなの?」

ダイヤ「ああもう!話が進みませんわ!あなた!一体何が狙いでこの学校に忍び込んだんですの!」

束「いや、俺は千歌の忘れ物を届けに・・・」

千歌「呼んだー?」

束「うおっ⁉︎いつの間に!」

千歌「んーと、鞠莉ちゃんと英語で難しい事話してた時から?」

束「だから中1レベルゥ!」

千歌の後に続くように何人か部屋に入ってくる。

梨子「あ、束さん・・・ケガ、大丈夫ですか?」

束「ああ、これくらいどうって事ない」

「ヨーソロー!元気そうで何よりであります!」

束「曜ちゃんも元気そうで何よりだな。変わってないとホッとするよ」

ダイヤ「曜さんとも知り合いなんですの?」

果南「私と千歌と曜は幼馴染だからね。昔はよく一緒に遊んでもらったんだ」

束「ん?・・・そっちの奥の子は・・・」

「ピギィッ⁉︎」

ダイヤ「私の妹のルビィです。あなたが襲った」

梨子「襲った⁉︎」

束「尋ねただけだから!だんだん誇張してんじゃねぇか!」

ダイヤ「どうなんですの?ルビィ?」

ルビィ「あ、えっと・・・その・・・」

束(なんか会ったばかりの頃の花陽ちゃん思い出すなぁ・・・)

ダイヤ「ルビィ!」

ルビィ「ピギィ!えっと・・・ルビィは・・・いきなり男の人に話しかけられたから・・・それで、ビックリして・・・」

鞠莉「shout!しちゃったのね」

果南「まぁいきなり目の前で悲鳴あげられたらビックリもするかな」

束「その後に、姉ちゃんが凄い形相でダッシュしてくるんだぜ?そりゃ逃げたくもなるでしょ?」

ダイヤ「う・・・、そ、それはともかく!ルビィ!いくら男性が苦手とはいえそれくらいの事で悲鳴をあげるんじゃありません!」

ルビィ「そ、そんなぁ・・・」

束「もういいって、なんかもうその子泣きそうだし」

ダイヤ「ハァ・・・、それでこの学校に来た理由は?」

梨子「あ、それって多分、コレです」

梨子は持っていたノートを見せる。

千歌「あー!私の歌詞ノート!なんでここに?家に忘れたと思ってたのに!」

束「忘れたから俺が届けに来たんだろ」

曜「コレが無いと活動出来ないもんねぇ・・・」

千歌「・・・ゴメンナサイ」

そこで束はふと一緒にいた少女の事を思い出した。

束「そういや・・・俺の近くに女の子が倒れていなかったか?」

ダイヤ「女の子?善子さんの事ですか?」

束「善子?」

「遅れてごめんずら〜」

話をしていると小柄な女の子が部屋に入ってくる。

ルビィ「花丸ちゃん!」

花丸「あ、そっちの人は気がついたんですね。善子ちゃんの方は?」

ダイヤ「まだですわね」

束「善子?」

ダイヤの目線の先に目をやると少し離れたベッドで少女が気持ちよさそうに寝ていた。

ダイヤ「全く・・・不審者が徘徊してるから教室から出ないようにと言われていたのに外に出るなんて・・・。そんな事をしているから雹が頭に激突するんですわ」

束「しかも二回」

花丸「ホントに運が悪いずら」

束「まあ大した事なさそうで何よりだ。やっぱ堕天使っては身体の作りが俺たち人間とは違うのかねぇ?」

果南「それ、本気で言ってる?」

束「へ?」

花丸「善子ちゃんの堕天使設定間に受ける人、初めて見たずら」

束「設定かよ!」

善子「設定ゆうな!」

ルビィ「あ、起きてたんだ・・・」

曜「善子ちゃんが起きたから、浦の星女学院スクールアイドル、『Aqours』全員集合であります!」

梨子「あ、ホントだ・・・」

束「スクールアイドル・・・Aqours、か」

千歌「束くん、せっかくだから私達Aqoursの活動見ていってよ!」

束「いいのか?」

果南「私は別に構わないよ?」

曜「賛成〜!」

ダイヤ「まあ・・・外部の方にもAqoursを知ってもらういい機会でしょう」

鞠莉「素直じゃないよね〜?ダイヤは」

千歌「東京のスクールアイドルに比べたらまだまだかもしれないけど・・・今私達がやってる事を束くんにも見て欲しいな?」

束「そこまで言われちゃ見ない訳にはいかないな」

曜「それじゃあ屋上に向かって〜・・・全速前進!ヨーソロー!」

梨子「曜ちゃん!待ってよ〜!」

束「・・・まぁ、退屈はしなさそうだな・・・」

束はベッドの脇に置いてあったスパークルケインを手に取るとベッドから出て屋上に向かった。

 

 

 

 

 



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第10話 welcome to ようこそ マリンパーク その4

久しぶりの投稿です。結局アニメ二期に夢中になってしまい筆が進まないという・・・
アニメも終わったのでまたマイペースに書いていきますがよろしくお願いします


季節外れの降雹事件の後、束は成り行きからAqoursの練習の様子を見させてもらう事に。その後、そのまま皆で束の歓迎会を行おうという流れになり全員が千歌の家の前にある浜辺に集合していた。

千歌「皆集まったかな?」

梨子「集まったけど・・・」

善子「なんで外なのよ」

千歌「それはね・・・」

束「よいしょ・・・っと」

千歌達が話していると浜の方から大きな荷物を運ぶ束が現れる。束の後ろには小さな小屋が見える。

曜「束さん?その荷物ってもしかして・・・」

束「ああ、そこの海の家で使う備品ってとこかな」

果南「もうそんな時期なんだね」

束「まさかこんな事までやらされるとはね・・・」

千歌「で、束君と私達で海の家の準備をしながらついでにここを借りて束君の歓迎会もやっちゃおう!って」

束「俺のはついでかよ」

善子「それって・・・人手が足りないから呼ばれたって事?」

梨子「でも確かに人数が多い方が早く終わりそうだし」

花丸「そういう事ならオラ・・・じゃなかったマル達も手伝うずら!」

束「すまない、助かる」

ダイヤ「仕方ありませんわね。歓迎会もやるなら遅くならないよう手分けして早めにやってしまいましょう」

 

 

 

10人で手分けして行った結果予定よりも早く海の家の準備を終える事が出来た為、引き続き束の歓迎会に移るための準備に各自取りかかる。

海の家の中では束、曜、果南の三人が歓迎会用の料理を作っていた。

束「なんで俺の歓迎会の料理を俺が作らなきゃならんのだ・・・」

果南「いいじゃん別にさ?料理上手いんでしょ?千歌から聞いたよ。東京にある伝統と格式あるお店の職人さんなんだよーって」

曜「え?私は一流ホテルの専属パティシエって聞いたけど・・・」

束「話が段々と大袈裟になってる⁉︎」

花丸「食材持ってきたずら〜」

買い出しに出かけていた花丸、ルビィ、善子の一年生組が段ボール箱一杯の食材を持って帰ってきた。

束「お、サンキュー」

ルビィ「ひっ!」

食材を受け取ろうとした束だったがルビィは花丸の後ろに隠れてしまう。

束「溝は深いかぁ・・・」

花丸「ルビィちゃん、元々お父さん以外の男の人苦手だから・・・」

ルビィ「ご、ごめんなさい・・・」

束(花陽ちゃんに似てると思ったけど中々に難儀しそうだなこりゃ・・・)

果南「それにしても・・・随分と大きいヤツ買ってきたねぇ・・・」

善子「フフフ・・・このヨハネの持つ魔性の魅力を持ってすれば人間の心理を操るなど造作も無い事!」

花丸「訳すとお店の人がサービスしてくれたずら」

善子「訳すな!」

調理台の上には下に敷いたまな板が見えなくなる程の巨大な魚が乗っけられていた。

果南「束、コレ切れる?無理なら変わるよ」

束「ノーサンキューだ・・・俺に切れないものは無い」

そう言って束は包丁を構える。

束「術式レベル2!・・・ハアッ!」

スパァン!

鮮やかな包丁さばきで一瞬でまな板の上の魚を三枚下ろしにする。

果南「お〜!」

花丸「ブレイブすらぁ〜」

曜「包丁の扱いもお手の物だね!」

束「違う」

曜「へ?」

束「コレは・・・メスだ」

曜「いや、包丁でしょ?」

ダイヤ「いい加減に・・・しなさぁぁぁい!」

突然ダイヤの声が調理場に聞こえてくる。

束「な、なんだ?」

ルビィ「お姉ちゃんの声だったけど・・・」

果南「確か、千歌と鞠莉と梨子ちゃんとで一緒に会場の準備をしてるはずだよね?」

束「ちょっと様子見てくるか・・・。ヨハ子とキング借りてくぞ。

ルビィちゃんは代わりにコッチ手伝ってあげてくれ」

ルビィ「は、はい!」

善子「ヨハ子じゃなくて善子!・・・でもなくてヨハネよ!」

花丸「キングって・・・オラの事?」

束「さっきブレイブって言ってたろ?なんかガブガブ食べそうだし」

花丸「オラそんな食いしん坊じゃないずら〜」

そんな事を言いながら三人は調理場を出て行った。

果南「さて、向こうはとりあえず任せて私達も料理作ろっか!」

曜「了解であります!」

その横ではルビィが包丁を逆手に持っており・・・

ルビィ「てやぁー!」

果南・曜「危なーい!」

ルビィ「ピギィッ⁉︎」

 

 

 

 

 

調理場を出て会場にきた束達。会場といっても海の家の前に長テーブルとイスを出してあるだけなのだが・・・

束「どうかしたのか?・・・ってなんじゃこりゃ」

束が目にしたのは海の家の柱や屋根などに巻きつけられたイルミネーション用のLEDライトが色とりどりの光を放っている光景だった。

鞠莉「イェーイ!シャイニー!」

ダイヤ「シャイニー!じゃありませんわ!これじゃまるでクリスマスじゃないですか!今は夏なんですよ!」

鞠莉「ダイヤってば相変わらず硬いんだから。こーゆーのは派手に綺麗にやらないと!」

ダイヤ「綺麗ならいいってもんじゃありませんわ!」

千歌「そうだよ鞠莉ちゃん!それじゃダメだよ!」

ダイヤ「ほら、千歌さんもそう言っ・・・て・・・」

ダイヤが振り返ると身の丈程の大きさの木に千歌が何かをせっせと付けている。

ダイヤ「千歌さん?これは・・・?」

千歌「クリスマスツリーだよ」

ダイヤ「言ってる事とやってる事が全然違うじゃありませんか!」

千歌「違わないよ。LEDを飾るのはクリスマスだけなんだよ」

束「年がら年中光らせてる家もたまにあるけどな」

千歌「とにかく!ツリーにLEDを飾るのはクリスマスなの!梨子ちゃん、今の季節は何?」

梨子「私⁉︎・・・夏?」

千歌「そう!夏なんだよ!で、花丸ちゃん夏といえば?」

花丸「夏といえば・・・スイカずら!」

千歌「そ、そうだけど・・・ほら、もっと他にあるでしょ!綺麗に光って・・・」

花丸「りんご飴ずら!」

千歌「じゃなくて色鮮やかで・・・」

花丸「かき氷ずら!」

千歌「屋台から一回離れよう!」

善子「・・・もしかして、花火って言いたいの?」

千歌「そうだよ善子ちゃん!それが欲しかったんだよ!」

善子「善子じゃなくてヨハネ!」

花丸「花火は食べれないずらよ?」

ダイヤ「花丸さん、食べ物の話じゃありません」

束「花火って・・・お前まさか・・・」

千歌の用意したツリーの枝をよく見てみると線香花火やロケット花火、ねずみ花火などあらゆる種類の無数の花火が括り付けられており・・・

千歌「クリスマスのツリーがLEDなら夏のツリーは花火だよ!というわけで・・・点火!」

束「・・・皆逃げろぉぉぉっ‼︎」

ドドドドドドドドドッ!

点火と同時に括り付けられた花火が一斉に火を噴く。

善子「きゃあああっ!」

鞠莉「ワァーオ!バーニングシャイニー!」

ダイヤ「言ってる場合ですか!このままだと海の家に燃え移ってしまいますわ!」

梨子「千歌ちゃんは⁉︎」

見ると木の根元には至近距離での爆発に驚いたのか倒れてる千歌の姿が。

束「くそ!近づこうにもこの火力じゃ・・・」

遠くまで飛んでくるロケット花火や近くにシャワーのように火の粉を降らす線香花火などで文字通り死角は無く、かといって燃え尽きるのを待つわけにもいかない。

ダイヤ「とにかく早く消火しなくては!」

花丸「お水持ってくるずら!」

二人は水を入れる容器を探しに行く。しかし程なくしてツリーが千歌の倒れてる方向に傾き始める。

束「マズイ!」

梨子「束さん!コレを!」

束「マント?・・・そうか!」

梨子から差し出された物を見てその言葉の意図を汲み取った束は黒いマントを受け取る。

善子「それ私の堕天グッズ⁉︎」

束「借りるぞ!」

束はマントを前面を覆うように被るとそのまま木に向かって突っ込む。

ジジジジジジ・・・

激しい火花が飛んでくるがマントでガードされている為なんとか前進が可能になりそのまま接近、花火の勢いが弱まってる箇所を見つけるとそこに向かってスライディングで根元に滑り込む。

束「この瞬間を待っていたんだー!」

某海賊な機動戦士のパイロットように叫んで木の根元を思い切り蹴り飛ばす。ツリーはゆっくりと傾いてその後大きな音をあげて倒れた。

ダイヤ「大丈夫ですか!」

花丸「水持ってきたずら!」

両手になみなみと水が入ったバケツを持ってきた二人はすぐに倒れたツリーを消火する。

梨子「千歌ちゃんは⁉︎」

束「大丈夫、ビックリして目を回してるだけだ。怪我は無い」

善子「あぁ〜私のマントが・・・」

一方の善子は大量の火花を浴びて至る所が焦げたマントを見ながら茫然としている。

束「わ、悪い・・・ちょうどよかったモンで・・・」

善子「どうしてくれんのよ!これお店に売ってないのよ!通販で高かったんだからね!」

束「今度弁償するから!」

果南「なんか凄い音したけど・・・大丈夫?」

花火やら倒木やらの音を聞きつけて調理場にいた三人が出てくる。

曜「なんで夏なのにクリスマスツリー?しかも焦げてるし・・・」

果南「もしかして・・・キャンプファイヤーでもするつもりだった?」

千歌「そうだよ」

束「いつの間に・・・ってかしれっと嘘をつくな嘘を」

 

 

 

その後、なんとか飾り付けが終わり同じタイミングで料理組も出来上がったのでそのまま歓迎会を始める。

束「もらったぁ!」

善子「あ!ちょっとそれ私のじゃないのよ!」

束「ふはは!食卓は戦場なのだ!ブファァァッ⁉︎辛ぇぇぇッ⁉︎」

花丸「自業自得ずら。神様はちゃーんと見てるずら」

曜「善子ちゃん、辛いの大好きだからね・・・」

束「あんな辛いモン平気で食うって違う意味で人間じゃねぇって・・・ん?この料理だけなんか見た目が他のやつと違うな?」

果南「それはルビィちゃんが作った料理だからね」

束「ルビィちゃんが?」

果南「包丁職人になるために頑張って修行したから」

束「イミワカンナイ・・・」

そう言いながらも他の料理よりも大きめに切られていた野菜を口に運ぶ。

ルビィ「ど、どうですか・・・?」

束「・・・うん、美味いなコレ」

ルビィ「本当⁉︎」

束「ああ、これならすぐにでもお嫁さんになれるぜ」

ルビィ「お、お嫁さん⁉︎」

ダイヤ「ルビィに手を出したら・・・タダじゃおきませんわよ?」

束「姉さん目がマジやないですか・・・」

鞠莉「ほーんと、妹離れ出来ないよねーダイヤは」

束「ああ、そゆこと?」

ダイヤ「どんな事ですか!」

梨子「・・・・・」

その様子をジッと見つめていた梨子に千歌が話しかけてる。

千歌「どうしたの?梨子ちゃん?」

梨子「千歌ちゃん、・・・ねぇ、千歌ちゃんは束さんとは知り合いなんだよね?」

千歌「そうだよ。あと曜ちゃんと果南ちゃんもかな」

梨子「束さんって昔からあんな感じなの?初めて会った人達ばっかの筈なのに・・・もうあんなに打ち解けてるし・・・」

千歌「うーん・・・知り合いって言っても一緒だったのは1年くらいだけだったし、私もまだ小さい頃だったからなぁ・・・でも、私は昔のまんまだと思うよ。明るくて頼りになってでもちょっと馬鹿で」

梨子(千歌ちゃんに馬鹿扱いされるって束さんって一体・・・)

千歌「でも一緒にいると面白いし楽しいんだよね」

束「おい誰だよ!炭火の中にミカン突っ込んだヤツ!」

千歌「あ!それ私の!私の焼きミカン〜!」

束「焼きミカンってそーゆーのじゃねぇだろ⁉︎」

梨子「・・・・・」

 

 

 

 

時間はあっという間に過ぎ、歓迎会は終了、片付けも終えて全員が各々の帰路についた。梨子も帰宅し、自分の部屋にいたのだが窓の方から何かの気配を感じ窓を開ける。

梨子「束さん・・・?」

束「おお、梨子ちゃんか」

窓を開けると束が旅館の屋根の上に座っていた。片手には飲料の缶を持っている。

梨子「お酒・・・ですか?」

束「大人だからな」

梨子「なんでそんな所で・・・」

束「まぁ懐かしくってな」

束は目の前に広がる海の方を見ながらそう答える。

束「この海と、昔話ってとこかな?」

梨子「海と昔話・・・」

束「まぁ、おかしいよな」

梨子「・・・そんな事ないです。私も海の音を聴きましたから」

束「そっか。海の音を・・・ねぇ」

梨子「束さん、音ノ木坂から来たって言ってましたよね?・・・私もここに来る前は音ノ木坂にある高校に通ってたんです」

束「音ノ木坂にある高校って言えば・・・」

梨子「はい、音ノ木坂学院です。でも、四月から親の都合で転校になって・・・この内浦に来たんです」

束「四月から・・・」

束(そういやμ'sの活動始めたばっかの頃、作曲できる人を探していてる時に海未ちゃんが「去年、隣のクラスに一人ピアノの上手な子がいたのですが進級と同時に転校してしまったらしいです・・・」なんて言ってたっけ)

梨子「東京とは全く違う環境で戸惑う事もいっぱいあったんですけど・・・千歌ちゃんや曜ちゃんと出会って、友達になって、一緒に飛び込んだ海の中で音が聞こえたんです」

束「それが海の音・・・か」

梨子「それを聞いたらなんだかホッとしたというかスーっと自分の中にあった戸惑いや不安が消えていって・・・、千歌ちゃんから誘われてたスクールアイドルにも挑戦してみようかなって思ったんです」

束「そっか・・・」

梨子「あ、ご、ごめんなさい!私、自分の事ばっかり話してしまって・・・」

束「いや、いいんだ。いい話を聞かせて貰えたし、な」

梨子「海の音の事・・・ですか?」

束「ああ。・・・多分俺には、一生聞くことの出来ない音・・・だから」

梨子「え?」

千歌「束くーん!そろそろ降りておいでよー!」

旅館の奥から千歌の声が聞こえる。

束「さて、そろそろ退散しますかな。じゃあな梨子ちゃん、おやすみ」

梨子「あ・・・はい・・・」

束はスルスルッと屋根を降りると窓から千歌の部屋に入っていった。

梨子「・・・さっきの言葉・・・一体どういう・・・」

 

 

 

 

 

 




ひとまず10話はこれで終わりです。なるべくペースを上げられるよう、そしてネタが作者趣味全開のマニアックネタになりすぎないよう気をつけていきたいです・・・


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第11話 真夏の浜辺は誰のモノ? その1

仕事の休憩時間などに少しずつ書いてやっとこさ更新できました。
今回はアニメのシャイ煮回を下地にした話となっております。第2のオリキャラも出てきます。


千歌「いぃやっほう〜!」

曜「眩しい〜!」

雲ひとつない快晴の空の下、水着を着た千歌と曜が海に向かって走っていく。

善子「元気ねぇ、あの二人」

果南「まぁこの天気じゃあね。海に飛び込みたくなる気持ちもわかるよ」

鞠莉「果南はいつでも飛び込んでるけどね〜?」

ルビィ「でも・・・せっかく水着も着てきたしルビィも海で遊びたいな」

梨子「いいの・・・かな?」

梨子の視線の先には先日皆で準備をした海の家があり、そこには開店の準備をしている束の姿が。

束「ん?コッチの事なら気にしなくていいぜ?日中は暑くて練習出来ないから涼しくなる朝夕にやるんだろ?日中は海で思い切り遊んでくればいいさ。・・・それに」

束が視線を向けた先には隣にあるもう一軒の海の家が。年季の入った束達の店とは違い新しく外観や食事も流行りのものを取り入れたオシャレなモノばかりで既に席は全て埋まっている。

束「この様子じゃあ忙しくなりそうもないしな」

果南「そうだね・・・。じゃあ、お言葉に甘えて・・・」

ダイヤ「ブッブー!ですわ!」

突然ダイヤの声が聞こえる。驚く束達だったが辺りを見回してもダイヤの姿が見えない。

果南「え?ダイヤ?何処・・・?」

花丸「見当たらないずら」

束「声はするのに姿は見えない・・・ほんにあなたは屁のような」

ダイヤ「誰が屁ですか!ここですわ!」

声の聞こえる方に目を向けると海の家の屋根の上に立つダイヤの姿が。

ダイヤ「このまま引き下がるなんて我慢なりませんわ!聞けば去年も隣に売り上げで負けたそうではありませんか。そこで!私達でこの海の家にお客を呼ぶのです!今年こそは絶対に売り上げで隣に勝ちますわよ!」

束「あれ?なんか変なスイッチ入っちゃった感じ?」

果南「ダイヤは昔っから負けず嫌いだからねぇ・・・」

 

 

 

ダイヤ「まずは海の家に出す料理です!曜さん!果南さん!束さん!」

曜「ほい!美味しいヨキソバ!ヨーソロー!」

果南「はい、松浦家の食卓・・・ってウチで普段食べてるご飯なんて出して売れるのかな?」

束「当店自慢のバイオ水です」

ダイヤ「なんですかその怪しい水は⁉︎」

束「こちらがハザード味、飲むと「かゆ、うま」しか言えなくなります」

善子「なんか感染するの⁉︎」

束「そしてこちらが超電子味、悪を遮る壁になって下さい」

梨子「壁・・・!」

千歌「梨子ちゃん反応しないで」

ダイヤ「全然ダメですわ!そんなメニューじゃお客を呼び込むにはまだ足りません!」

果南「だったらどうするの?」

鞠莉「じゃあ私がシャイ煮を・・・」

束「原価いくらくらい?」

鞠莉「えーと10万と・・・」

束「不許可であーる!」

ルビィ「じゃあどうしたら・・・」

束「ヨキソバと松浦家の食卓は出していいだろ。後はジュースやかき氷もあるしメニューには困らないだろ」

ダイヤ「しかしそれだけではお客が・・・」

束「なら呼び込みを頑張ってもらうでもいいんじゃない?幸いスクールアイドルが9人もいるしな」

千歌「よーし!じゃあ呼び込み頑張ろうー!」

梨子「おー!・・・あ、束さんバイオ水1つ、超電子味で」

千歌「梨子ちゃん?」

 

 

 

 

 

カチッ!カチッ!

束「あれ?・・・くそ、火が点かねえ・・・」

厨房のコンロの火が点かず苦戦する束。何度も点火用のダイヤルを回すがコンロはうんともすんとも言わない。

束「しょうがねぇな。えぇっと・・・ライターはっと・・・」

鞠莉「この前みたいに魔法でバァーって点ければいいデース」

束「バーカ、そう簡単に人前で使えるもんじゃないの。バレたらダメなんだから・・・・・・・・・・・・ちょっと待てお前何で知ってんだ?」

鞠莉「窓からバッチリ見えてました」

束「・・・この事皆に?」

鞠莉「言いふらす!」

束「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎」

ダッシュでその場から逃げ出す鞠莉とそれを追いかける束。

ダイヤ「真面目に仕事をしなさぁぁぁぁい!」

 

 

 

 

 

ルビィ「え・・・えっと・・・あの・・・」

花丸「オラ・・・じゃなかった、私達お仕事中で・・・」

男1「いいじゃんいいじゃん、仕事なんてやめて俺たちと一緒に遊ぼうぜ?」

男2「オラ見せもんじゃねぇぞ!散れ散れ!」

呼び込みの最中柄の悪いチャラ男達に絡まれてしまった二人。怯えるルビィを庇うように前に出て気丈に振る舞う花丸だがその手は震えている。

男1「ほらさっさと来いって!」

このままでは拉致があかないと思ったのか男達は無理矢理二人の手を掴み引っ張ろうとする。

ルビィ「ひいっ・・・」

花丸「ルビィちゃんには手を出さないで!」

男2「じゃあお前でいいや。オラ来い」

ルビィ「花丸ちゃん!」

ドスッ!

ルビィ「・・・へ?」

鈍い音がした後、男の1人の動きが止まる。その隙に花丸は手を振りほどいて逃げ出す。

ルビィ「花丸ちゃん!大丈夫⁉︎」

花丸「う、うん・・・でも何が・・・」

二人が見てみると男の頭に金属のヘラが刺さっていた。

男2「な、なんでヘラが・・・?」

束「安心しな、そこまで深く刺さっちゃいねぇ」

声が聞こえた方に全員が振り向くとそこにはさっきまで海の家で焼きそばを焼いてた筈の束の姿が。

男2「コイツ!よくも俺のダチ公を!」

束「先に手ェ出したのはそっちだろうが。悪りぃがその子達はウチの海の家の大事な店員でね」

男2「知ったことかよ!」

男は拳を振り上げ束に飛びかかる。

花丸「危ない!」

束「俺に触れるとヤケドするぜ!・・・デュアッ!」

束は慌てる事なく持っていたもう一つのヘラを男に向かって投げつける。

男2「おっと!」

しかし男は投げつけられたヘラを難なくかわす。

男2「そんなもん持ってるからそんな事だろうと思ったぜ!」

束「そうか?・・・デェアッ!」

束が右手をクルッと振ると回転したヘラがブーメランのように戻って来て男の後頭部に直撃する。

男2「ガッ⁉︎・・・んな、アホな・・・」

束「へっ、ウチの店員に手ェ出そうなんて・・・二万年早いぜ」

花丸「束さん!」

束「怪我はないみたいだな」

ルビィ「あの、どうしてここに?料理作ってる筈じゃ・・・」

束「ま、まぁちょっとな・・・。とにかく怪我が無くて良かったよ」

花丸「はい、ありがとうございます」

ゴツンッ!

束「イダッ⁉︎」

ダイヤ「束さん!こんな所で油売ってないで早く戻ってください!」

束「なんだよ、可愛い妹がへんな男に絡まれてから助けてやったってのに」

ダイヤ「そうなのですか?」

ルビィ「う、うん・・・」

ダイヤ「それは・・・ありがとうございます。うちのルビィが迷惑をかけましたわ・・・」

束「なーに、いいって事よ」

客1「おいあの店員ヘラ投げてたぜ・・・」

客2「危なっかしいわ・・・向こうの店行きましょう」

ダイヤ「・・・・・」

束「・・・・・」

ダイヤ「あなたのせいで客足が遠のいたじゃありませんかぁぁぁっ!」

ゴツンッ!

束「理不尽ッ⁉︎」

 

 

 

 

曜「おかえりー、あれ?どうしたのその頭?善子ちゃんのマネ?」

束「団子じゃねぇわ、ほっとけ」

果南「お客さんこないねー」

束「つーかさ?お前らスクールアイドルなんだからここでパァーッとミニライブでもやった方が客集まるんじゃね?」

曜「ここで?でも衣装とか持ってきてないし・・・」

束「水着で十分だろ。水着姿の女の子が可愛く歌って踊りゃ男なんて単純な生き物だからイチコロだぜ」

果南「そうかなぁ・・・?」

曜「一応千歌ちゃんやダイヤさんにも聞いてみよっか」

少女説明中・・・

束「どうでもいいけど表現古くね?作者・・・」

 

 

 

 

ダイヤ「ミニライブですか・・・」

千歌「私はやりたいな!」

善子「ステージはどうすればのよ?ただ砂浜の上で踊っても目立たないでしょ」

束「ふっふっふ、抜かりはないぜ。こんなこともあろうかとイベント用の簡易ステージを十千万旅館の物置から引っ張り出しておいた」

千歌「へー、そんなのあったんだ」

曜「千歌ちゃんが知らないのはどうなのかな・・・」

花丸「でも・・・」

会話を遮って花丸が指差す。

花丸「なんかもうステージ組み始めてるずら」

束「へ?」

見ると業者の人間がライトや音響のしっかりとしたステージを既に組み始めている。

果南「あのー、これって一体・・・?」

業者「あぁ隣の海の家の経営者がバンドを呼んでここでミニライブやるからその設営さ」

束「何〜ッ⁉︎」

千歌「こんな大きいステージ置かれたら!」

花丸「コッチのお店のスペースが殆ど無くなってしまうずら!」

ダイヤ「それだけではありませんわ、ステージというからには客席も必須・・・それを加えたらお店の前は客席で埋まってしまってこちらの店の入り口まで塞がってしまいます」

束「これは明らかな営業妨害だろ!」

「客が居ない店なんてどーでもいいでしょ?」

束「誰だ?」

「私はこちらの海の家の経営を任されたクロッシィです」

鞠莉「クロッシィ?」

果南「知ってるの?鞠莉?」

鞠莉「外食チェーン店を多く展開している会社で、最近はホテルチェーン業界にも進出を画策してるって専らの噂デース」

ルビィ「それってつまり・・・」

ダイヤ「鞠莉さんの家にとっては商売敵って事ですわね」

束「ふーん、まぁいいや。それでクロックさんよ」

クロッシィ「クロッシィです。時計ではありませんので」

束「クロッシィさんよ、こちとらこれじゃ営業出来ないんだけどな」

クロッシィ「先程も言ったでしょう。客が入っていない店に遠慮する必要はが何処にありますか?お客はみんなコチラの店を利用してますよ」

曜「それは・・・」

クロッシィ「店舗を利用してくださるお客様に精一杯のおもてなしをするのがうちの会社のポリシーでしてね。このライブステージもその一環といった所です」

梨子「言ってる事はわかるけど・・・」

善子「納得出来ないわ!」

クロッシィ「困りましたね・・・。ではどうでしょう?このステージを賭けて勝負というのは?」

束「勝負?」

クロッシィ「ええ、勝負で私達が負けたらこのステージをあなた方が使っても構いません」

千歌「えぇ⁉︎ホント⁉︎」

ダイヤ「千歌さん、喜ぶのはまだ早いですわ。・・・コチラが負けた場合は?」

クロッシィ「そうですね・・・.、まずあの邪魔なボロ小屋を片付けてもらってそして・・・」

クロッシィはゆっくりと右手を上げて一人の少女を指差す。

鞠莉「ホワッツ?」

クロッシィ「小原家のご令嬢を頂きましょうか?」

 

 

 



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第11話 真夏の浜辺は誰のモノ? その2

束「さて、久しぶりの更新となる訳だが作者がもう堅っ苦しい前書きとか疲れたから俺らでなんとかしてくれって」
海未「唐突な上に投げやりですね・・・」
穂乃果「最近出番がない私達への救済措置でもあるって」
絵里「出番が無いのは単に作者の遅筆と行き当たりばったりのシナリオのせいだと思うけど・・・」
束「とまあこんな感じのしょうもないミニコントが始まりますが許容出来るよって方はこれからもお願いします。ではまた後書きで」


砂浜に設置されたステージの使用権をかけて勝負をする事になってしまったAqoursの面々。しかしその対価は・・・

鞠莉「私・・・ですか?」

梨子「どうして・・・」

束「なるほど・・・パイプか」

曜「え?どうゆう事?」

束「さっき言ったろ?ホテル業界にも進出したがってるって。そういった意味では既に大きなシェアを持ってる小原を後々敵に回すよりココでコネを作っといて取り入った方がやりやすいって事じゃねえかな?」

クロッシィ「ちょっと違いますがまぁ大体はそんな所です。そこの島にあるホテルオハラの経営と私立高校の理事長を兼任してますから手腕に関しては文句のつけようがありませんが・・・アイドルごっこなど辞めて経営に専念して欲しいので」

千歌「スクールアイドルはアイドルごっこなんかじゃありません!」

クロッシィ「大人からみたら十分子供のごっこ遊びですよ」

千歌「スクールアイドルは・・・遊びじゃない!」

束「ストップ、それはお前の台詞じゃねぇぜ千歌。それに向こうが勝負しようって言ってんだ。その怒りはその時までとっときな」

果南「確かに、ここまで言われちゃ黙ってられないかな?」

ダイヤ「私も同感ですわ」

クロッシィ「では勝負に応じるという事で。勝負の内容は・・・」

自身の店の前を指差すクロッシィ。

クロッシィ「夏の浜辺らしくビーチバレーといきましょうか?」

 

 

 

 

 

花丸「なんか人が沢山集まって来たずら・・・」

クロッシィ「ギャラリーは多いほうがいいでしょう?客も増えるし、不正行為も出来なくなりますし」

束「ルールは?」

クロッシィ「3対3で21ポイントの1セットマッチです。手っ取り早く済ませたいのでね。ああ、但し出られるのは女性のみ、交代は自由にします」

曜「メンバーはどうする?」

ダイヤ「ウチのグループで一番運動神経が良いのは果南さんと曜さんですわね。問題はあと一人・・・」

束「ルビィちゃんは・・・」

ダイヤ「ボールが飛んできたら恐がって取れなそうですわね」

束「花丸ちゃんは・・・」

花丸「オラ運動苦手ずら」

束「鞠莉ちゃんは・・・」

クロッシィ「賞品ですからダメですよ」

束「しれっと会話に入ってくんなよ!あと人をモノ扱いすんじゃねぇ!」

曜「梨子ちゃんや善子ちゃんは?」

束「多分インドア派だから無理じゃね?」

梨子「人を勝手にインドア派扱いしないでください!」

善子「あと私はヨハネよ!」

千歌「私が出るよ」

果南「千歌?」

千歌「ほら、私卓球とかソフトボールとか得意でしょ?曜ちゃんや果南ちゃんとは昔から一緒に遊ぶ事も多かったから息も合わせやすいと思うし。それに・・・」

束「それに?」

千歌「鞠莉ちゃんはAqoursの大事な仲間だもん。自分の力で守りたい」

鞠莉「千歌っち・・・」

束「・・・そうまで言われちゃあ断れないな。異議は?」

ダイヤ「ある訳ないでしょう?」

花丸「マル達も応援頑張るずら!」

束「問題は相手の方だが・・・」

 

 

 

 

メンバーを決め、浜辺に作られたコートに戻るAqoursの面々。コートでは既に相手の女性達3人が待っていた。

果南「あれが相手みたいだね」

花丸「みんな綺麗ずら・・・」

束「ん〜〜〜〜?」

曜「どうしたの?」

束「いや・・・なんかどっかで見たような・・・見てないような」

善子「何よそれ」

Aqours側の選抜メンバーがコートに入ると相手のメンバーの一人が千歌の前に来る。

千歌「スクールアイドルAqoursの高海千歌です!よ、よろしくお願いします!」

「あら?あなたもスクールアイドルなの?」

千歌「あなた・・・も?」

束「あぁぁぁぁっ!」

ルビィ「ピギィィィィッ!」

ダイヤ「ピギャァッ!・・・な、なんですの⁉︎二人していきなり大声を出して!」

ルビィ「あ、ああああああ・・・」

善子「なんかルビィの様子がおかしいんだけど⁉︎」

束「そうだ・・・見た事ある訳だ・・・だってアイツは・・・」

ツバサ「綺羅ツバサ、スクールアイドルA-RISEのリーダーです」

千歌「A-RISE・・・」

 

 

 

 

 

果南「A-RISE・・・・・・って誰?」

シリアスムードをぶち壊す果南の質問にズッコケる一同。

ダイヤ「そんな事も知りませんの?」

果南「じゃあダイヤは知ってたの?」

ダイヤ「当然ですわ。A-RISEとは・・・・・・・・ルビィ、説明してあげなさい」

束「さてはオメーも知らねぇな?」

ルビィ「え、えっと・・・A-RISEっていうのはね、東京のUTX学院って学校のスクールアイドルなの。元々大きな学校らしくて色々な学科やコースがあるんだけどその1つの芸能コースから結成されたアイドルなんです」

善子「芸能コース・・・なんか本物のアイドルみたいね」

ルビィ「実際スクールアイドルっていうのもA-RISEに憧れた人達が自分達の学校でもやろうって広まったみたいですし・・・」

千歌「そーなんだぁ」

束「お前も知らなかったんかい」

千歌「あはは・・・私はμ’sを見てスクールアイドル始めようと思ったから・・・」

ツバサ「説明も済んだみたいですし、そろそろ始めましょうか」

千歌「あ、はい!」

 

 

 

 

 

審判「ではこれよりA-RISEとAqoursのエキシビションマッチを開始します。サーブはA-RISEの優木あんじゅ選手から」

あんじゅ「お手柔らかにお願いしますね?」

千歌「お、お願いします!」

束「千歌とあんじゅ、か・・・あの二人にはなにやら近いモノを感じるぜ」

善子「パッと見似てるところ無いと思うけど?」

梨子「でも、なんだかおっとりとした感じだしそんなに強くないかも・・・」

ドォン!

千歌「うわぁっ⁉︎」

目にも留まらぬ速さで打たれたビーチボールはAqours側のコートに打ち込まれる。砂浜にはその力強さを表すようにはっきりとボールの跡が刻まれる。

束「おっとりが・・・なんだって?」

梨子「前言撤回します」

ルビィ「そ、そういえばA-RISEはトップレベルのパフォーマンスを披露する為に日々の練習メニューもとてもハードだと聞いた事が・・・」

鞠莉「スクールアイドルのNo.1ですものね。身体能力はノープログレムって訳ね」

束「あぁ、でも・・・」

果南「はっ!」

A-RISE側のサーブを受け止める果南、ボールは果南の腕に弾かれ高く宙に浮く。

果南「曜!」

曜「任せて!」

掛け声に合わせジャンプした曜がスパイクを打ち込む。

ツバサ「ッ!速い!」

一瞬驚いたツバサだったがすぐに動き出しボールを腕に受ける。

ツバサ「くっ!」

しかしボールの勢いを受けきれずボールは明後日の方向に飛んでいく

曜「一点獲得!」

ツバサ「なるほど・・・中々やるわね」

花丸「二人共凄いずら!」

善子「これなら当たり負けはしないわね」

一点を返した事にAqoursの面々が浮き足立つ中束のみ難しい顔をしている。

束「いや・・・、このままだと・・・」

ダイヤ「どうかしましたの?」

束「まずいな・・・」

 

 

 

 

ドォン!

千歌「くうっ!」

手を伸ばすが僅かにボールに届かず相手のスパイクが決まる。点数は

18対10でA-RISEがリードしていた。

梨子「いつの間にか離されちゃってるね・・・」

ダイヤ「取って取られてで接戦だったと思ったのですが・・・」

束「やっぱこうなるか」

善子「勿体ぶらないで早く教えなさいよ!」

束「離されてる原因は千歌だ」

ルビィ「千歌さん?なんで?」

束「普通過ぎるんだよ。千歌もよく頑張ってるが元々身体能力の高いあの面子の中じゃやはり頭一個分劣るって所だ。遊び慣れた地元の浜辺って地の利がある果南ちゃんや曜ちゃんが互角でもそこで差がついちまう訳だ」

梨子「そんな言い方・・・千歌ちゃんだって必死で!」

束「・・・・・」

ドォン!

花丸「20点目ずら・・・」

ダイヤ「相手のマッチポイント・・・ですわ」

クロッシィ「これで決まりですね」

ツバサ「貴方達には悪いけれど・・・これでお終いにさせてもらうわね」

ツバサのサーブが千歌に向かって打たれる。

千歌「終わりたくない・・・終わらせたくないよ・・・終わらせない!」

千歌はボールめがけて突っ込む。

果南「千歌⁉︎」

飛んできたボールに頭から突っ込み激突、ボールは千歌の頭に弾かれ勢いを無くす。

曜「果南ちゃん!」

果南「間に合え!」

ボールが地面に落ちるギリギリの所で果南がダイブしてボールを上に上げる。

曜「これなら!」

上がったボールを曜が相手コートに打ち込む。

ツバサ「そう何度も!」

ボールの落下地点に素早く回り込み、ボールを受け止めチームメイトの英玲奈にパスをする。

英玲奈「はあっ!」

果南「まだまだぁ!」

体制を立て直した果南が英玲奈の正面に飛びスパイクをブロック、弾かれたボールは勢いを殺されてA-RISE側のネット下に落ちる。

束「なんとか首の皮一枚繋がったか・・・」

果南「千歌がサーブを取ってくれたからね」

曜「そういえば千歌ちゃんは?」

コートを見ると頭から突っ込んで転倒した千歌がずっと倒れている。

梨子「千歌ちゃん⁉︎」

束「タイムだ!」

倒れた千歌にAqoursのメンバー全員が駆け寄る。

束「・・・多分、受け身も取れないまま頭から思い切り地面に突っ込んだからそれで頭部を地面に強打したんだろうな・・・」

曜「大丈夫なの?」

果南「砂浜がクッションになったから外傷は無いよ。軽い脳しんとうだと思うけど・・・」

束「衝撃が首にきてる可能性もあるしな・・・この場で判断出来る事じゃないから病院に行った方がいい。どの道続行は不可能だろう」

ダイヤ「残りのメンバーで千歌さんと交代するしかないですわね・・・しかも依然として相手のマッチポイント」

ルビィ「そ、そんなぁ・・・」

クロッシィ「まぁ別にメンバーでなくともいいんですがね。A-RISEに勝てる選手がいれば、ですが」

鞠莉「束」

鞠莉が小さく手招きをして束をメンバーから離れた場所に呼ぶ。

鞠莉「貴方のマジックでなんとか出来ないの?」

束「出来たらとっくにやってるよ・・・。360度ギャラリーがいるから迂闊な真似が出来ない。多分、あの野郎妙な真似が出来ないように見越してギャラリー集めてたんだろう」

鞠莉「・・・そっかぁ・・・」

残念そうにそう呟くと鞠莉は千歌をコート外に運ぶAqoursの方を見る。

鞠莉「・・・せっかく面白くなってきたのに・・・残念ね・・・」

束「・・・・・」

鞠莉「千歌っちには貴方から伝えておいてね?スクールアイドル楽しかったよって」

鞠莉は明るくも、少し寂しさがこもった声でそう言う。

束「・・・まだ終わってないさ」

鞠莉「でも・・・」

束「千歌が言ったろ?終わらないって。だから俺だって、終わらせない・・・」

鞠莉「束・・・」

束「考えろ・・・何か手は無いか・・・魔法は使えない、魔法以外なら?いや、魔法以外に外から干渉出来ないし・・・メンバー以外でも出てもいいって言ってたよな?変身魔法なら・・・駄目か、あの野郎ずっとコッチの動きを監視してやがる)

鞠莉「映画とかドラマならここでヒーローが助けに来てくれたりするんだけどね」

束「ヒーロー・・・助け・・・ハァ・・・それしかねぇ、か」

鞠莉「え?」

束「鞠莉ちゃん、頼みがある」

 

 

 

 

 

ダイヤ「こうなったら私が!」

果南「ダイヤ⁉︎無理だよ!あの球取れるの?」

ダイヤ「鞠莉さんは私の友人でもありますわ!このまま黙って見てるだけなど・・・!」

束「それなら大丈夫だ」

果南「束?鞠莉はどうしたの?さっきまでなんか話してたでしょ?」

鞠莉「ここにいるデース♪」

ルビィ「鞠莉さん・・・」

鞠莉「ルビィ、そんな悲しそうな顔しないで?まだ負けた訳じゃないよ。ね?束」

束「ああ」

クロッシィ「もしかして・・・さっき話してたのはイカサマの相談ですか?」

束「冗談、イカサマなんかじゃないさ。ただの・・・」

その時、シュワっと風がきて二人の間を何かがすり抜ける。

クロッシィ「な、なんですこの風は・・・」

風と共にすり抜けた影は海の家の屋根の上でその動きを止める。

クロッシィ「あ、あれは・・・?」

束「ただの助っ人さ」

 

 

 

凪「忍びなれども忍ばない・・・忍ぶどころか・・・暴れるわよ!」




束「っていうかお前の事覚えてる奴いないだろコレ」
凪「覚えてるでしょ!あんだけ熾烈な闘い繰り広げたんだから!」
穂乃果「誰?」
絵里「さあ・・・?」
凪「いやアンタ見てたでしょ金髪!アンタは覚えてなさいよ!」
束「記憶に残る活躍を見せるしかないな」
凪「くっ・・・見てなさいよ!」
束「という訳で果たして凪は活躍出来るのか?次回もよろしく!」


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