Fate/Grand Order 唯就職したかったんです。 (B-in)
しおりを挟む
マテリアル
マテリアル
注意。
独自設定が有ります。皆さまが分かりづらいと思われるモノを解説しているつもりですが、それでも分かり難いかもしれません。
浸食型魔術刻印(しんしょくがたまじゅつこくいん)
器港雷堂の魔術刻印。
特性として、普通の魔術刻印と違う機能を有している。
1.この刻印は受け継がれる際に前任者の魔術刻印と知識と経験、霊魂を喰らい、次代に植え付け刻み込む。
2.この刻印を持つモノは、その特性により、肉体と魔術回路、霊魂を侵食される。
3.上記は次代に受け継がれる際に効率よく経験と知識、魔術回路を喰らう為の物である。
4.侵食と言う特性は、自身以外にも有効である。
5.雷堂で完成した為か、はたまた継承が早すぎた為か雷堂の父は魔術師としては死んだものの存命で在る。
6.喰らうと言う事は身にすると言う事である。
歴代の当主達は特に最初の10人は刻印を受け継がせる際に、その当時に手に入れた古いモノを一緒に喰わせて継承を行っている。
今代で完成品と成った為、雷堂自身への侵食は無く成ったが、それと同時に刻み込まれた経験と知識は父のモノのみである。
それ以前の知識や経験は魔術回路を起動させた上で、別の回路で接続し探し出さなければならない。簡単に言えば、検索機能のない電子図書館。一つ一つ確認しながら拾捨選択しなければ成らず、経験の刻み込みは成功してもしなくても多大な痛みと死の危険性がある。
知識に関しては発狂の可能性が在る。
アインツベルン狂騒劇(外伝)
マリスビリーに弟子入り(対外的に)した雷堂。一年ほど経過したロンドンの夜。
他のロードとの食事に誘われた(付き合わされた)夜に彼は既に居なくなった筈の白い少女と再び対面する。
コレは過ぎ去った思いの物語。
コレは彼の生き方を変えた物語。
コレは彼の心に色を与える物語。
エジプト紀行幻想譚(外伝)
カルデアに所属しして暫く、マリスビリーと研究のついての意見のぶつかり合いが殴り合いに発展したのをロマニが切れて仲裁した結果。何故かロマニと雷堂は有給を消化するのを兼ねてエジプトに旅行に行く事に…しかも宿泊する宿に着けば天井からダイナミックエントリーを噛まして来る少女、襲い来る死徒。楽しい筈の10日間の旅行が…
そしてロマニがやらかした事によりとんでもない厄介事が雷堂を襲う。
コレは今も胸に残る思いの物語。
語られる事の無い居る筈の無い閉じ込められた彼との話し。
コレは友を連れ出した友情の物語。
コレは彼の心に色を与える物語。
人物紹介
器港雷堂(きこうらいどう)
Lv1
本作の主人公
その血統はおよそ1500年前か始まるとされるが定かではない。10代前のリード・リドルと名乗る英国人が、日本人女性に一目惚れして日本に帰化した結果リードが訛り雷堂と呼ばれる様に成ったらしい。
初代に肖りこの名前を付けられたらしいが、本人はメガテンじゃないんだからと思っている。将棋の世界の称号にも同じモノが在るが、本人はそれ程強くない。
Lv2
????絆を深めてください
藤丸立夏(ふじまるりっか)
Lv1
高校を卒業したばかりの元JKである。女子高出身であり、本人は体育会系。特定の部に所属していた訳ではないが、運動神経は抜群であった為助っ人として各部で活躍していた。女は度胸と言う様な性格の為か男勝り気味で、おっぱいの着いたイケメンに成りかけていたので、後輩や同級生から変に慕われていたのが当時の悩み。
カルデアにスカウトされ、飛行機の中で主人公と出会い、しょっぱなからクライマックスな展開を迎えてしまう。
Lv2
???絆を深めてください
藤丸立香(ふじまるりっか)
Lv1
高校を卒業したばかりの青年。男子校出身の為、ちょっと女性に幻想を抱き気味であるが真面目で誠実な人間。文武両道と言う訳ではないが、基本的んには平均より上の成績を収めており、それなりの大学に滑り込み合格していたが、スカウトされ舞い上がり意気揚々とカルデアに来るも、予想外に世界の裏側の事情を教えられ、自分が舞い上がっていた事に気づき反省する。若干悲観的な所が在るが、ソレを反省し改善しようとする人辺りの良い青年。
マシュ・キリエライトの純粋さと無防備さにドギマギしちゃうお年頃。
尚、男のらしく 等をした事も有り意外にゲーマーでも在る。
既に、戦闘指示を行いながら要所要所で支給されている魔術礼装を使用する事が出来る腕前を持っており、実は案外期待されている。
Lv2
???絆を深めて下さい
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
プロローグ
死んで生まれた。簡単に言えば輪廻転生した。
簡単な文章にしたらこれだけで済む様な事だが、自分自身に起こった事ながらとんでもない事だ。
生前と言ってしまえば良いのだろうが、まだ22歳だった。正確に言えばその年で23歳になる年だったのだが…。
オタク文化を少々嗜み、留学生な友人共とも馬鹿騒ぎをしていた事が昨日の事の様に思い出せる。死因は頭蓋骨骨折からの脳挫傷。ぶっちゃけてしまえば、アパートの階段から見事に滑り落ちた。
平成21年。就職氷河期の頃である。
御祈りメールはもう勘弁だ。勉強できても資格がなきゃ意味が無いんだよ!!
死の間際に思ったのは、次は資格を沢山取ろうと言う就職する為に必要な事だった。
いや、うん。切羽詰まってたんだ。卒論終わってても就職が決まって無かったんだ。院に行く様な金も、頭も持ってなかったんだ。
だから、今も夢だと思えればソレが一番良かった。
魔術師って…何時からこの世は剣と魔法のファンタジーになったの?
Side out
我が家は明治より続く魔術師の家系である。明治初期に到来した英国人がこの家の初代に当たり、その初代は英国から逃げ出して来た魔術師である。と言うのが、当主以外に伝えられる家の始まりだ。
我が家の家名は「器港」
海運業や海外貿易を生業としている。財閥まではいかないが、それなりに現代社会でも名が知られている。そんな家の当主が魔術師と言うのも、まぁ、ありきたりな話なのだろう。我が家は魔術の探究とは程遠い家なのだ。根源に至って魔法使いに成るとか、どうでも良い。
魔法が使えても、飯は食えないんだよ!!
と言うのが二代目の名言だ。うん、本当に名言だと思う。初代は最初は魔術師らしい魔術師であった。が、妻と成る人物に一目惚れして変わった。初代の日記を確認すれば、その出会いから内容が一変するのだから相当な惚れ込み様だったのだろう。
そんな家柄なのか、我が家の親と言うのは基本親馬鹿に成るモノが多い。情が深いのだろうな。私で10代目になる器港だが、11代目が生まれた。それが3年前の事だ。
メチャクチャ可愛い。可愛い子供に会社託すならそら、大きく成るわな。大きくするわな。私に似た目。鼻等の造形は妻に似たようだ。カワイイ。息子カワイイ。
「雷堂、お前も三つになった。」
「はい」
何、私の息子利発すぎ!!?
「私で10代、お前で11代となる我が家には古い仕来りがある。心して聞きなさい」
「はい」
やだ、この子ホントに頼もしい!!
「うむ。私達の一族はな、魔法使いなのだ」
「は、え?」
息子が気絶した。
「きゅうきゅうしゃぁぁぁぁ!!」
Side 雷堂
俺の名前は器港 雷堂。8歳に成りました。魔術師、輪廻転生ets…呑み込むのに1年掛かった。重たすぎんダよ。二度目の人生を過ごさせて貰って居る身ではあるが、死が近い。比喩では無く、ホントに近い。
魔術師とかホント知り合いたくない人種である。そんな家系の当主として生まれ、教育されて来た俺は、魔術師ではなく魔術使いと言った所だ。
元来、魔術師とは「」を目指し魔法使いになるのが目的らしい。父親曰くだが…。まぁ、そんなんどうでも良い。他人に迷惑掛けなきゃ、悪魔崇拝してても構わないと思うし。
魔術を道具として使う俺には余り関係ない話だ。ちゃんと秘匿はしてるし、協会にも教会にも挨拶もしてるけど、それは、変に敵対しない為でもある。
死徒に遭遇したくないし、封印指定に出会いたくない。大きな儀式にも巻き込まれたくない。その為の挨拶で在った筈なのだが・・・
右手の甲に現れた刺青。令呪と呼ばれるコレは、ある大規模儀式への参加券だ。
選ばれた七人の魔術師が、英霊をクラス分けされたサーヴァントと言う枠に押し込め使役し、殺し合う。
碌でもない戦争への招待状。この令呪を心霊医療で取り外し誰かに譲ると言う手段を取ったのだが、それがそもそもの間違いだったのだ。
端的に言えば大規模な姉妹喧嘩に巻き込まれ、通りかかった紳士に保護して貰えたものの、父は重傷を負ってしまった。
更に言えば、俺を保護した紳士が、戦争参加券保有者であった。
アニムスフィアと名乗ったナイスミドルな魔術師が取った行動は、それは魔術師らしくは無い行動だと思う。
暗示や洗脳もせずに、俺に同盟と協力を求めてきた。いや、取引だな。取引を求めてきた。
「今回の騒動に巻き込まれたのは不幸であっただろう。更にあの姉妹の喧嘩にも巻き込まれるとは…同情する。」
本当にね!! 踏んだり蹴ったりだよ!!
「故にとは言わないが、君の父上が負った負傷を限りなく魔術協会にて治療し、その後の医療費や滞在費の全ては我が家で負担しよう。その代わり」
「聖杯戦争に参加して協力、共闘し彼方の勝利に貢献しろ。でしょ?」
ニヤリとした笑いが様に成る辺り、この人物は悪い大人なんだろうと思う。
「然り、君には聖杯に願う望みは有るかね?」
「特には無いかな? あ、様々な資格を取得出来る様に成りたいとか?」
いや、もう本当に就職に苦労したくないです。ソレじゃ無くても稼業継ぐのにも、やっぱり資格とか合った方が信用とか期待が違うんですよ。
「ほう?それは「」に至る事も可能とする資格かね?」
「いえ、就職する為ですけど?」
素直に答えたら爆笑された。いや、家柄からして探究してないんですわ
「そうか、そうか、そう言えば器港とはそう言う家柄だった。」
「家って有名なんですか?」
特に魔術系での知名度は無かった様な気がするんですけど?
「何、君の家は我等のパトロンの様なものだ。各名門の貴族達の寄付や君の家の様な所からの寄付や修錬や授業を受けに来る魔術師達の授業料等から、魔術協会は成り立っている。いや、我等魔術師の集う場所と成っている。」
あぁ、投資してる側何ですね。
「更に言えば10代重ねた魔術師で在りながら、真理の探究には興味が無く、神秘の秘匿には積極的に協力してくれる。協会と教会その両方にも顔が利く家だよ。」
まぁ、両方と仲良くして政治家の方々ともそれなりにお話しする家柄ですけども…父さんてすごいんだなぁ
「うむ、これは良い。私も出来る限りのバックアップをしよう。私は既に召喚し終えて居る。解るね?」
「アッ、ハイ」
「では共に往こうではないか、小さな同盟者君。ハッハッハッ」
こうして、俺の聖杯戦争は始まった。取りあえずは生き残る事優先で往こう!!
主人公
器港 雷堂(きこう らいどう)
テンプレされた主人公。元大学生。オタク文化を嗜んでいたが、所詮はラノベやアニメ方面でありFate等のPC系には手を出していない。曰く、ハマったらヤバい。
留学生と仲良く英語は話せるが微妙なイントネーションであり、時たまネタにされていた。一番仲の良い友人がアパートの隣に住む留学生二名であり、片方はオタクかしてしまった男と頼りに成る女。よく三人でいた。
就職氷河期にあたり35回目にして某自動車会社に内定を貰うも、まさかの内定切りに…
自棄酒をし、足りなくなったつまみを買いに家をでたが、階段の一歩めか踏み外し頭部を強打し死亡。
3歳の時に魔術師の話を聞かされ、以前の自我が目覚めパニックに陥り気絶。その後一年かけてもろもろの事を飲み込み、開き直る。小学校の内に英検、漢検を取ろうと考えていた矢先に令呪が現れる。
魔術回路はメインが72 サブが78
普通の魔術師の家系だったら将来を期待される大器だが、家柄が家柄の為、魔術方面では期待されていないし、期待もしていない。寧ろ、バカバカしく成るぐらいの魔力保有量な為、心配されるぐらいである。
使用魔術は強化や固定、流動系に結界術等、仕事や私生活で使える魔術が多く、器港の家系ではそれを基礎としている為か、それに適した肉体に成っている。基本何でもできるが器用貧乏であるとも言われる。
簡単な設定はこんな感じかなぁ?構想30分ならこんなもんではないだろうか?
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
プロローグの2
厳重に施された拘束、至る所に見える魔法陣。ゆっくりと目を開けた私は自分の状況を把握し、血の気が引くを覚えた。反射的に動くからだが拘束により封じられ、物理的な痛みを脳に伝える。
「此処は」
「起きたかね、器港の当主。」
闇に佇むように、男が座って居た。年代を感じさせる小さな丸テーブル。皮が張ってあるだろう椅子。
ゆらりと、湧き上がった火が蝋燭に火を付ける。次々と闇が、灯に駆逐されていく様は何処か幻想的な光景ですらあり、その男の顔を映し出す。
「…ロードか」
「久しぶりと言うのが正しいかね?番外執行者。まさかの姉妹の喧嘩に巻き込まれるとは…不運だったな。」
本当だよ!!
「だから、アレほど言っただろう。妹の方はともかく、姉の方は時計塔で軟禁しておくべきだと」
「私もソレには賛成だがな、実際の所…他のロード達が封印指定成らば封印が妥当と言う意見を変えぬ限り、ソレは敵わんだろう」
投資を止めたい、でも止められない。だって、その分世界中にコネが通じるんだもの。
「さて、他愛の無い話は此処までで良いだろう。貴殿の子息には此方側で参加して頂く。」
「私が質に成ってしまったからか?」
「否、器港との盟約に因るモノだ。今回の聖杯戦争で私は必要な物を手に入れる、その為には使える協力者が必要であり、私の目的に賛同し、資金援助をしてくれている器港にも利益が在るからだ」
「魔術師らしいなマリスビリー、その愛情を娘さんに向けたらどうだ?」
ギチギチと鳴る拘束具を確かめながら、言葉を紡ぐ。
「そも、我が家との密約は私とのモノ。息子は関係ない!!」
「いや、君の息子も当事者だ。令呪が発現した。それだけで、器港の次期党首ともなれば、ソレは最大の障害に成りえる。それに、既に継承はしているのだろう?その
ズグリと、以前は在った
「まだだ。まだ、三分の一も継承していない。息子は雷堂はまだ器港の業を背負ってはいない。」
魔術回路が変質していくを抑え込む。変化し無くなってしまった部分はまだ少ない。継承は始まってはいない。
「確かに、記憶をキャスターに読ませてみたがその様だが…君のその抵抗は無意味だ。継承は始まって居たよ。君達の初代のな」
「馬鹿な!!アレは目覚めない、アレは初代の記録が合って初めて継承されるモノだ!!」
冷たい汗がつぅっと背筋を流れるを自覚した。
「君達の家系に掛けられた呪いは実に魔術師らしいモノだと同情しよう。ソレを阻もうとした三代目の明かされる事なき功績も称賛しよう。第一次、二次の世界大戦中に、死徒の侵略と理から外れた魔術師や、超能力者達を駆逐していった三代目、四代目、六代目。恐るべき武力だ。
そこまで…調べられて居たか。何処から漏れたのか
「さて、初代の継承がなされると言う事は、既に君の継承もされていると言う事だ。浸食型の魔術刻印とはそう言うモノだ。違うかね?」
あぁ、クソ!! つくづく正解だ。だが、ソレは私の息子が完成したと言う事だ。すると言う事だ。
「あぁ、解った。理解した。」
成らば、遠慮する事は無い。
「セルフ・ギアス・スクロールは?」
「流石は君の息子だよ。きっかりと型に嵌められた。私は彼の命を保障しなければ成らず、君にも危害を加えられない。そして、それは私のサーヴァントも同じだ。令呪を一つ質に取られたよ。」
その表情は、何処か拗ねた子供に似て居た。
「当たり前だ。知ってるか?我が家で最初に教える事は契約の大事さと、ドレだけ自分の利を追求し飲ませた上で、相手に利を上げさせるかだ。」
バツと布が裂ける様な音を立てて拘束を引きちぎる。
「やるかね?」
「いいや? サポートに回る。コレでも私は貴方の目指す所に共感はしている。密約も有る。俺は歴代の中でも最弱だが、彼方程度では相手に成らない。その事は理解しているだろう?」
関節が音を鳴らす。
「甚だ遺憾だが事実だ。単独の勢力としては君は時計塔でも上位。埋葬機関の号持ちともやりあえるのだからな。全くもって、君の家系の血の濃さには頭が下がる。」
「ふん、日本の冬木だったな。全くアインツベルンも良くやるよ、
「君も現地に行くのかね?」
「……病院だ」
Side out
荒々しくドアを閉めた彼が、最後に言った言葉に噴き出しそうに成ったのを堪える。
「アレで病院か…随分と息子を信頼している様だな」
ソレに、高が千年か…
「異常だな」
その一言に尽きる。そも、浸食型の魔術刻印など、本来ならば存在しても残って居ない筈のモノなのだ。文字通りに浸食。
残したモノそのものが次代を蝕む刻印。研究の為に死徒になる魔術師も居るがそう言った魔術師は箍が外れ、その殆どが協会に狩られる。そうならぬ為に辿り着いたモノなのだろうが…
「まるで、
まさか三代目でソレが阻まれるとは思わなかっただろうな。
「私も、往くか」
時間的に見れば、雷堂少年はもう召喚儀式を始めて居る事だろう。
Sideout
Side 雷堂
即日帰国で冬木にシューされました。雷堂です。一応、この町には親戚と言うか従兄妹が住んでるので一日厄介になって、ホテルに行きます。
叔父は魔術の事を知っていますが回路無し。従兄妹の兄ちゃんは回路在り、でも魔術は知らず封印されています。妹ちゃんの方も同じ。俺より二つ上の十歳何だけどね。
さて、今日のご飯は何かなぁ。唐揚げとか食べたいなぁ。
と、思っていたのですが…
ヤバイ。この街ヤバい。
ホテルの下見に行ったら結界張ってある場所が在った。街中のビルにも発見した。
(既に囲まれてるってか、準備万端っぽい。)
これ、早く召喚しとかないとヤバいヤツや。バーサーカーとか来たら制御できる自身無い。せめて、せめてアサシンお願いします。
情報収集した後に敗退して逃げるから!!
てか、拠点すら見つからないんですけど!!
「……電話してみよう。叔父さーん、電話借りるね!!」
「あっ、親父ならさっき仕事で新都の事務所に戻ったぞ?」
まぁ、電話借りるだけなら士郎兄に言うだけでも良いよね?
「そうなん?電話は借りるけど」
「なんで、電話掛けるのを止めないといけないんだよ? 夕飯は揚げ物で良いか?」
「唐揚げ希望!!」
「はいはい、美遊とも仲良くなー」
ひゃっほう。取り合えず良い事は在ったから、気分は持ち直したぜ!!…電話掛けたくないなぁ。掛けないといけないんだけどさぁ…はぁ
『もしもし?』
「どうも、御世話に成ってます。雷堂ですけども…」
『不測の事態でも?』
「拠点が見つかんねッす。」
取り合えずは現状報告。
『町外れに成るが、古いペンションがある。セーフティハウスの一つだが其処を使うと良い。君の父上だが、まだ寝て居るよ。そろそろ、意識は戻りそうだがね。』
「…結構悪いんですか?」
『流石は器港の当主っと言ったところだよ』
ソレは、代だけ重ねたボンクラっちゅう意味か?コラ?
「あんまり、悪くないみたいですね。鍵は何処で受け取れば?」
『使いの者に届けさせよう。言うまでも無く分かるね?』
あ、最悪サーヴァントが来るんですね。解ります。
「はーい。それじゃ、御世話になります。」
さくっと電話を切って、ご飯に行きましょう。まぁ、来るのは使い魔だと思うけどね。
唐揚げは美味しかったです。ニンニクと醤油の下味が何とも。大根下ろしと甘酢の餡を掛けても美味しかった。ご飯がモリモリすすむね!!
Side out
「どうやら、彼はアーチャーを召喚したようだ。マリスビリー」
その言葉に、少し驚いた様に目を開いたマリスビリーと呼ばれた男はワインの注がれたグラスを置いた。
「予想が外れたな、彼の性格ならばアサシン辺りを召喚し、此方に義理立てした後に降りると思ったのだが」
「彼もそのつもりだったようだよ。読み取った記憶と性格からしてもそれは間違いない。面白いだろう?」
「私としては、君があの少年に興味を示す事が意外だよ。キャスター…いや、魔術王」
その言葉にクツクツと笑う男は、珍しく表情を崩し口を開いた。
「そうだろう。彼の少年は抑止を呼びだした。凡庸で普通だが、いかなる戦況にも対応しうる。生き延びる為には在る意味では最良の英雄を呼びだした。面白いよ、血筋も含めて、まだ残っている事が奇跡だ。」
「見て居たのだろう?彼の父の事も」
置いていたグラスに口を付け、唇を濡らす。面白くない…いや、不可解といった表情を作りだしマリスビリーはキャスターに言った。
「あぁ、見て居たとも。彼で歴代最弱、成らばあの少年は育てば最強に成るだろう。其処までは理解できる。だが、理解できない。なぜ、洗脳も暗示もしなかったんだい?君はその辺りの事は躊躇しないだろう?確かに君は善良だ。他の魔術師達と比べれば道徳と、良識を重ね備えている。だが、君は魔術師らしい魔術師でも在る。どうしてかね?」
「全て、弾かれた。まるで格が足りないとでも言うかのようにな。」
パリと軽快な音を立ててグラスに罅が入る。
「それは、そうだろう。彼の父に対しても君では
「解っている!! あの家系の事を調べても辿り着くのは初代と呼ばれる男の目的だけだ…だが、ソレは私の目的の為に有用なモノだ。」
キャスターは続きを促す様にマリスビリーの正面に腰を掛ける。
「器港の初代の足跡を追った。その向かう先には英雄と呼ばれる者達がいる。つまり、君達を研究していた。だが、英霊召喚では無い。英霊そのモノに奴は興味を示している。それと精霊だ。奴は幻想種の研究も行っていた様だ。他にもホムンクルスや宝具、霊薬、礼装。メチャクチャだ。」
「随分と移り気な人間だと言いたい所だし、それがどうしたとも思うが、今それは必要な事かい?」
フゥーと荒げた息を整える様に吐き出し、マリスビリーは答える。
「いや、必要はない。だが、今後必要にはなる。」
「なら、戦争を終わらせてから考えれば良い。彼も君も今は仲間だ。そして、彼は優勝する気は無く、望みもない。あの時の戯言を叶えるのも面白いかもしれないが、今後必要となるのならば、後でしよう。私は私の目的を持って参加しているし、負ける気も無い。」
「ソレは私も同じだ。君の願いは君の出生と人生を考えれば理解できるし、私も目的の為には資産がいる。魔術師らしからぬ俗な望みだがね」
すぅっと言いたい事だけ言って霊体化するキャスターを見ながら、溜息が出そうに成るのを抑える。
改めて考えるのは、器港の事だ。正確には彼の家に眠る研究資料や成果の事で在る。密約があるが故に、求めれば彼の父は寄越してくれるだろう。だが、其処で関係は破綻する。魔術師としては人間的過ぎ、良識が強い故にだ。ならば、近く無い内死ぬ彼の父とは別にあの少年と契約しなければならない。
一番簡単な手段を取れないが痛い。まさか8年しか生きて居ない少年に、動揺していたとしても仮にもロードたる魔術師がギアスを飲まされる等、誰が想像できたであろうか。
何よりも、彼は自分を警戒し過ぎて居る。其処をどうするか…
「聖杯を得るのは簡単だ。私は最強のサーヴァントを召喚した。まさか、その後の事でこうも頭を悩ませる事に成るとは…」
夜が更ける。それぞれの思惑を覆い隠しながら。
「マスター、良い子は寝る時間だ」
「え、今から太陽の牙ダグラムを見ようと」
「…其処はライジンオーにしておけ」
約一名は暢気すぎかもしれないが
今更ですがFGOを5月の終わりから友人に勧められ隣で始めました。
友人「最初にヘラクレスが来たら6章まで何とかなるから、ソレまでリセマラした方がよかよ」
ヘラクレスが一回目で来る。
友人「ピックアップにケツ姐さん来てるからやっとき」
一回目で来た上にカレスコ
友人「お前何なん!!?」
そう言えばヘラクレスのピックアップが始まったね。やっとくか。
フレンドの型にはキングハサンと沖田さんとギルガメッシュをよくお借りしています。自分のキャスター陣も弱いんだよなぁお勧めの鯖ってなんなんすかねぇ
今はロンドン攻略中です
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
プロローグの三
聖杯戦争
実感はわかなかった。唯、危機感だけが在った。命の危機と言うのは魔術師にとっては、当たり前の様に隣にあるモノで、謂わば友人の様なものだ。悪友だけども。
突然、参加する権利をポンと渡されてしまった俺には困惑しか無かった。
当然、真っ当な魔術師ならばソレを受け止め、歓び、呼び出す英霊を考え、触媒探しに躍起に成って居ただろう。だが、俺の生まれた【器港】と言う家は真っ当とは程遠い。研鑽なんてしてないし、探究なんてしていない。俺はそう教えられたし、鍛えて居るのは自衛に使える魔術とか、掃除に便利とかそう要ったモノだ。
魔法使い? 童貞で30歳に成れば良いんだよ!!
つい、さっきまでの俺はこんな感じだ。絶対に怒られるわな。
聖杯戦争なんてのは、俺に必要ないモノだ。調べれば調べる程、過程と結果が俺に対しては合っていない。願い事何てモノは既に叶って居るも同然なのだから。
(時期取締役よ? そうじゃ無くても株主だし、今から頑張ってるから、例え就職氷河期が来ても乗り越えられる筈!!)
だが、いざ、不本意だが、戦争に参加する為に英霊召喚の魔法陣を描いていると…興奮して来ている自分が居るのを自覚する。
英霊とは人類の抑止の最高峰であり、本来召喚するのは世界以外には無理な存在なのだ。ソレの側面を切り取り、クラスに押し込めて限界させる。
本来ならば魔力の関係で余程の魔力が無ければ召喚する事は無理な存在なのだ、ソレが聖杯戦争に置いては違う。聖杯が補助する為、例え一般人でも召喚する事が可能であり、その後の現界させる魔力さえどうにかなるなら、勝ち残る事もできる。が…
「はぁ、コレ程この戦争儀式を作り上げた御三家に有利な事は無いな」
遠坂、間桐、アインツベルン。遠坂が土地を、間桐が令呪と言ったシステムを、アインツベルンが聖杯を互いに提供して出来あがったのだ。
遠坂は何処の霊地が一番なのか、間桐はシステムの裏技を、アインツベルンが聖杯その物への干渉を行える。押さえる事が出来る。
(何でこいつ等、今まで優勝した事が無いの?)
ふと、そう思う。思ったのが、今回の聖杯戦争での生き延びる為のヒントに成るだろう。漠然とだがそう思う。こういった勘は大事だ。前世でもエドの野郎が言ってた。アイツの勘も凄かったし。悪い方には…
「考えても仕方なし、とっと召喚して寝よう」
アサシン来い、アサシン来い、アサシン来い、アサシン来い!!
『素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には器、万事を収める大器を。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ
閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度
ただ、満たされる刻を破却する
―――――Anfang(セット)
――――――告げる
――――告げる
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に
我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者
汝三大の言霊を纏う七天
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』
「サーヴァント・アーチャー。聖杯の因るべに従い此処に参上した。君が私の…」
「外れ引いた―!!!!!」
「なっ?!行き成り何を!!」
「もうヤダ、もう寝る!! 三騎士と現場に直行じゃないか、御家かえりゅぅぅぅう!!アサシン来いってお願いしたでしょ!!」
アサシンってお願いしただろうが!! 三騎士の内の一騎とか馬鹿なの?! 甞めてんの?! 絶対ゆるさねぇぞ御三家ぇぇ!!
「待ちたまえ、まだ話は「お話しは明日!! 俺はもう寝る!!」…まだ午後7時前だが?」
知らん。
Side out
「ブフッ!!」
何処かで誰かが噴き出した。
Side out
―――――――また、呼ばれる。
そう感じた瞬間に、私はコテージの一室に召喚された。聖杯による知識の受け渡しにより、限界した瞬間に此処が自分の生前の故郷だと理解し、聖杯の破壊と言う目的が頭に過る。
歪な鏡を見せられたような戦いを行った。善戦空しく、時間稼ぎしか出来なかったが勝利に貢献する事しか出来なかった戦いを行った。自分とは違う道を歩き始めた自分に、力を託してやった事も有った。
鮮烈なまでに焼き付けられた、聖なる光、世界を切り裂く原初の一、憧れてしまう程の勇猛にして高潔なる雄姿、腐れ縁とも成った蒼き戦士、様々な先達と刃を交えた。
此度のマスターも彼女だろうか?そうで在って欲しいと思い、彼女意外に引き寄せられる縁が小僧以外には無い事に笑みが零れそうに成る。なぜなら、小僧はどうあってもセイバーを引き当ててしまうからだ。その身の内に鞘が在る限りは。気楽なモノだと自分で想い、気を引き締め、膝を突き礼をする。
口上を述べ目にしたのは
私の腰程までしか無い、子供だった。
「外れ引いた――――!!」
しかも、これだ。侵害にも程が在る。セイバー程では無いにしても、クラスは三騎士が一つであり、戦い方さえ嵌ってしまえば倒せない敵はいない言う自負がある。何よりも…
(何故、アサシンなのだ!!)
ソレで在る。確かにイレギュラーなアサシンとして、技術で魔法に至った規格外を知ってはいるが、アレには運の要素に縁と成るモノが必要なのだ。恐らくだが山の老翁が本命だったのだろう。ともすれば、あの子供な外見のマスターは実はそれなりに年を経て居る現実主義者か、徹底した戦闘を行えるよう教育を受けたモノなのかも知れない。
「唯の子供の癇癪にしか見えんが…まさかな。流れてくる魔力の質・量ともに一級品…まさか、凛の同位体か? いや、ソレでは年齢が合わない。」
まさか!? 女性として足りなかった分が、身長として現れたのか?!
「………何も起こらないな。彼女ならば理不尽なまでに何かを察知する筈だ」
溜息しか出ない。が、召喚された身だ。マスターの護衛はしなければならない。正真正銘の子供ならば護らなくては成るまい。
「故にだ。覗き見は好い加減にして貰おう。」
袖から取り出したかの様に見せかけながら、短剣を部屋の隅に投げる。
「ヤモリか…また、小賢しい真似をするモノだ。」
直ぐにでも、安全な隠れ家を確保しなければ今夜中に攻め込まれる可能性もある。私が最後の一騎だった場合は特にだ。
魔力の繋がりを追い、マスターであろう少年の部屋の前に移動する。霊体化し部屋に入ろうかとも思ったが、ソレは戸惑われる。
「あー、あーーー、あーーーー」
悲しげな声と共にバタバタと何かを叩きつける音がするからだ。
(ぐっ、しかし…此処にはあの少年以外は居ないようだ。つまりは、あの少年は聖杯戦争を知っている魔術師だ。)
だから、どうしろと言うのだ!! ええい、埒があかん!! パスは繋がっているんだ、大きめの念話で…
(なんだ? 魔力の流れが変わっ?! 引き寄せられているだと? 拙い意識が)
ドアを粉砕し、部屋に転がり込む其処に居たのは。
寝息を立てて眠る、少…年…の…
Side out
引き込まれる様に眠りに落ちる。ソレは耐えがたいモノでは無く、包みこまれる様な、内側から招かれている様な感じだった。上も、下も無く。明るくも、暗くも無い。
だが、其処には安心感が在る。此処に、敵意は無く、寧ろ愛情がある。
「まるで実家の様な安心感」
「宣うなマスター」
どないしっろちゅうんじゃ!!
「んー……裏切られた可能性がある。」
「ほう、既に他のマスターと同盟を結んでいたのか。成るほど、合点がいった。つまり、最後には裏切り同盟方のマスターを暗殺するつもりだったんだな?」
ちょっ?! そんな事はちょっとしか考えてねぇーよ!! 人を勝手に悪人にしないでくれませんかね!!
「ははは、それはちょっとしか考えてないよサーヴァント君。」
金髪碧眼の優男が笑いながら言った。
思わず身を引こうとすれば、アーチャーに抱えられ、男から遥か後方に移動していた。
(サーヴァントってすげぇ)
「おやおや、僕に君達に危害を加える気は無いよ。ただ、今代とお話ししに来ただけさ。」
「ソレが信じられると思って居ないだろう。この戯け」
「だろうね。僕だってそう思う。誰だってそう思う。お話しの前にコレは覚えておきなさい、僕みたいな雰囲気の奴は基本疑って掛かるんだ。時代に適応する魔術師ほど面倒臭いのは居ないからね?」
腰を曲げ、ウインク一つ。整った顔立ちと、均等のとれた体系。優しげで爽やかな声。うわ、コイツ胡散臭ぇ
「うん、だろうね。知っててやってるでしょ君? おじいちゃんコレでも心はガラスの様に繊細だから労わって。」
「マスター…コレが君の祖父か?」
「多分、ソレが家の家系の初代かな?」
「そう言う事だよ。さて、では継承を始めよう。」
その前に、幾つかの質問には答えてあげるよ? 誠実にね?
その男は、やっぱり魔術師らしい嫌な顔で笑った。
このアーチャーは、あのアーチャーです。そして、ちょっとはっちゃけてます。
さて、アーチャーなら、なんて質問するかしら? 考えなきゃ(震え声)
お休みなさい。
あ、次回とその次でプロローグが略終わります。ラストはダイジェストです。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
プロローグの4
サマーライト版が始まりましたね。
3日程前に、ヘラクレスピックアップを回して無い事に気づき、星を確認
42→10連爆死。残り12、で来る訳無いかぁと思いながら単発でバサクレスサンがやって来た。
本日、ヨーシ一万課金してモーさん(騎)が来ないかなぁと思い、残りの星も合わせて50連しました。
突然引き込まれた謎の空間。
現れた、自分の祖先を名乗る怪しいイケメン。
器港雷堂が取った行動は…
「俺は、器港雷堂。器港の11代目だ。あと8才なので、現場に行きたくないです」
「11代目?! かなり古い家系の魔術師なのだな。ふむ、故の魔力量と質か…了解した。私は優秀なマスターに呼ばれた様だ。この身は弓兵として呼ばれた。単独行動は得意だ」
「死ぬ可能性が減るんですね? やったー!!」
「はぁ、年齢を考えれば仕方が無いのかも知れないが…君はもう少し魔術師然とした態度を学習した方がいい」
ガン無視である。
「いやぁ、家の家系って魔術師じゃ無くて魔術使いな感じだから・・・そんな事を言われても・・・その・・・困る」
「だからその説明をするって言ったでしょ!! 無視しないでよ!! ご先祖様だよ!! 敬って!! 労わって!!」
「「はぁ」」
無理からぬ話だと思う。突然、思わせぶりに現れてご先祖様である!! なのだから。
まぁ、正確には
(夢に逃げたいです)
(頑張れマスター。俺はもう諦めた。)
一度にとんでも無い事が起こり過ぎて現実逃避をしていただけである。
「質問無しでいい? ねぇ、良い?」
心なしか、瞳の光が陰っている初代を名乗る男の言葉に、アーチャーは首を振りながら答える。
「君に敵意や悪意が無い事は察しているが…少しは猶予と言うモノをマスターに与えてやってくれ。魔術師としての知識が在るからこそ、ああ成っているんだ」
「いや、いいよアーチャー。うん、呑み込んだ。で、質問でしたっけ?」
「そうだよ、何かあるかい?」
嬉々として受け答えする男をみて、雷堂はその目を細めて問う。
「じゃあ…アンタは記憶…記録なのか?」
「そうだよ。僕は初代器港の記録、そして時代達に『器港』を継承する機構だよ。」
その言葉に目を瞑る少年にニコニコと笑いながら言う。
「いやぁ、正直僕の事を記録と正しく言ったの君だけだよ? ソレに継承の時期も恐ろしく早い。まぁ、この継承の儀と言う魔術儀式を組み上げたのが初代何だから君を含めて僕を記録と理解していたのは二代目と三代目だけだね。うん、良かったよ。君で器港は完成したようだ。」
アーチャーが眉を寄せながら問う
「まて、マスターで完成したとはどういう意味だ。」
「そのままの意味さ、抑止の守護者君…?…あぁそうか君は今から近い時代に成ったんだね。残念ながら君に継承権は無いよ?27本程度じゃ話に成らないし成る前の君なら…まぁ、子供しだいだね。」
序の様に言い放たれたその言葉に、アーチャーは困惑する。
「待ちたまえ、生前の私になら可能とはどういう事だ?」
「だって、君と雷堂なら
「マスター、幸いな事に私は契約破りの宝具を所持している。何時でも可能だ」
「まって、諸々まって」
頭を抱えて蹲る雷堂はもう暫く悩む事にした。
Side out
その日、土器一郎は夕食前に自分が働いている事務所に戻った。仕事の遣り残しが在る訳でも無く、忘れ物をした訳でも無い。兄からの電話を受け取る為に戻る事に成った。
家族構成は息子一人に血の繋がらない娘が一人、妻は9年前に無くなった。ソレ故に、家族への想いは人一倍強い。
元よりそういう家系なのだ、身内への情が深い。でも、この男の場合は少し特殊な経験を経て居るからと言うのも有る。
まだ、息子が7歳の時の話だ。家族で世界的に有名なミュージカル劇団が公演に来る。息子の誕生日を控えて居たし、妻が演劇をしていた事も有りミュージカル鑑賞が趣味だったのだ。
帰りは近くのホテルで、少し豪華な夕食をと考えての外出だった。余りそういったモノに興味が無い息子も、ミュージカルが始まればその世界観に引き込まれ、目を輝かせていた。
ホテルでの食事も和やかなモノで、席が近かった新婚の様な子連れ夫婦が一緒にミュージカルを見て居た事も有り、話も弾んでいた。
其処からが正に地獄だった。
急な爆発と火災。スプリンクラーが発動するも、火の勢いは収まらず混乱する人の群れの中では避難するのも困難な状況だった。そして、避難中にもかかわらず、また爆発音がしビルの倒壊が始まった。
逃げだせたのは奇跡だった。今でもそう思う。妻の安否を確認し息子の安否を確認しようとして、息が止まった。妻も顔を青くして、呼吸が儘ならない状態に成った。
息子は逸れて居た。崩れ、燃え盛り、更に其処から延焼し始めた事故現場。戻ろうとした、消防士に止められた。妻も同じだった。其処からは強制的な避難をさせられた…記憶があいまいで、今も覚えて居ない。ただ、次の日には兄が駆けつけて来てくれた事を覚えて居る。
縋った。兄に縋った。『魔術』で探せないかと、助けてくれないかと。兄は直ぐに答えてくれた。が、見つからなかった。
信じられず、現場に走ったのを今でも覚えて居る。病院からでて直ぐに思い知った。
大火災だと。遠目にはまだまだ黒煙が上がっているのが見えた。有り得ない。ホテルの倒壊と火事は確かに大事故だがそれが何故、三日立っても消火活動が続いているのか?
熱せられた空気を吸いながら走った。幸い、大通りは消火が住んでいた。辿り着いた現場は、正に焦げ跡だけが残っているような状態だった。コンクリート片は黒く、異臭が漂っている。直ぐに駆けつけた兄と、警備の人間に連れ戻された。
意識が戻らない妻の病室の前で、兄に渡された缶コーヒーの温かさを覚えて居る。
「アレは、唯の火災じゃない。」
その一言で合点がいった。何故、当主である兄がこんなにも早く駆けつけてくれたのかを理解した。
「一日遅かった…済まない。済まないっ」
苦虫を噛み潰したような表情だった。兄にそんな表情させる程に、自分は酷い状態だったのだろう。
その後は、逃げた。仕事に逃げ、空いた時間に妻に会いに行き…そのまま帰らぬ人と成った妻の葬式を行い。更に仕事に逃げた。
精力的に働いたと思う。それだけしか無かったからだ。だから、その出会いは神様が用意してくれた奇跡だったのかもしれない。中学生の職場体験学習の案内をする事に成った。
当時の上司で在った叔父の指示であった。休めと言う事なのだろうと理解していた。
そこで、出会った。自分と同じ赤毛、あのまま何事も無ければ同じ年の少年に出会ったのだ。自分と、妻の面影ある。直感だったが、自分の息子だと思った。
その少年は幼い頃の記憶を失って居た。DNA鑑定を行い判明した血縁に歓喜した。向こうは困惑していた。ソレは仕方が無い。向こうは自分達の事を
そして、現在に至る。息子の
そして、娘も増えた事が私に更なる活力をくれた。少し無愛想な娘だ。理屈っぽく、負けず嫌いなのは、亡くなった妻を想いだす。
そんな事を考えながら、自分のオフィスの電話に手を掛けた。
『一郎か?』
「あぁ、そうだよ。どうしたんだい兄さん。イギリスでゴタゴタに巻き込まれたとは雷堂君から聞いたけど?」
『1~2日中にその町から逃げろ。戦争が始まる』
その言葉に硬直した。
「魔術師同士のって事かい?」
『あぁ、そうだ。お前は大丈夫かも知れんが士郎君と美遊ちゃんは巻き込まれる可能性が高い。ソレに、エインズワースの様な例もある。』
「そんな?! だってあそこは!!」
『あぁ、私が叩き潰し、殲滅した。抑止が働きかねない案兼だったからな。』
「なら!!」
『既に息子が巻き込まれている。明日にでもお前の家からは出るだろう。』
「・・・会社はどうすれば?」
『少し早い慰安旅行とすれば良い。ヒタチのホテルなら直ぐにでも空きを確保出来る。』
「もし…子供たちが巻き込まれてたら?」
『息子に預けろ。既に雷堂が当主だ。継承も時期に始まってしまう』
「解った。直ぐに職員には通達する。ヒタチにいけない職員には…そうだな、別府の温泉の方で良いかな?」
『了承した。会計は後で良い。家から出す。』
「分かったよ。兄さんは大丈夫なのかい?」
『何、まだ三分の一残ってる。これだけあれば十分だ。切るぞ? 此方も本社の方に指示しておく。気を付けろよ?』
「はは、そっちもね」
『あぁ』
電子音が響く。思わず強く受話器を降ろしてしまった。
「糞っ」
Side out
(アーチャーと俺が親戚?んな馬鹿。俺の親戚に白髪褐色マッチョなんていません。居ない筈・・・いや、まさか・・・お父さんに限って浮気とかは無い筈・・・)
「よし、やめやめ、この話題無し。はい、終了!! 継承後の空いた時間が質問タイムでよーし!!」
これ以上は俺の家庭環境に関わる!!
「あぁ、そうしよう。すまないマスター、私も些か動揺していたようだ。俺に血の繋がった家族なんぞ居なかった筈だからな。」
「そう? 時間は短く成っちゃうけどソレで良いなら良いよ。」
さて、先ずは感謝を。器港雷堂、初代と同じ名を持つ完成体よ。
我等の悲願は叶った。
我等の夢は手の届く所まで来た。
汝を祝福し、告げよう。11代目よ。我等一族の目的を。1500年の悲願を!!
(1500年?!)
浸食型の魔術刻印とは、前代の魔術回路の一部と属性、ソレに染み込んだ経験と知識を埋め込む為のものだ。故に代を重ねれば重ねる程に自意識や自我に影響する。
ソレは、魔術師ならば問題は無い。なぜなら、刻印に秘められた神秘をそのまま時代に残し続けるからだ。その過程に置いて、10代重ねれば肉体と精神もソレに適合するように成長していく。
だが、ソレでは何れ崩壊するのは目に見えて居る。故に、私は己に双子の呪いを掛け、母体内で優秀な個体を生贄にし次代を頑強に成る様に弄った。
私は、英雄ではない。超人を生みだす事のみに括った。10代重ねる事により肉体は人の限界を超えるだけの潜在能力を得るに至る。
だが、足りない。
肉体に内包する神秘が足りず、超人には成りえないからだ。
赤き竜、多頭の蛇、空掛ける天馬、一角獣、耳と目の無い魔猪、妖精達の羽、猫の足跡。我等は始まりの頃より魔術刻印に馴染ませてきた。
神秘を内包する為に、内包出来る肉体を作る為に。
正しく言おう101代目の当主よ。我等は抑止に勝利し、理外の理不尽から人類を護る為に立ちあがった。
人は人の業で滅ぶ。進化の先に滅ぶ、空の果てから来た害悪を騎士達が薙ぎ払った様に、我等は人類史の先にて必ず来るであろう
錬金術師共が躍起に成って破滅を回避しようと足掻居て居る様に、我等はいずれ来る
コレが、我等の始まりであり、目的。心せよ11代目。
汝は傷つく、否応なしに。
汝は苦しむ、生きる為に。
汝は闘う、明日に進む為。
何を目的にしても、汝は戦う。そう調整されているからだ。
汝は戦わなければならない時代に完成するように調整されている。
人を愛せとは言わない、人を憎めとも言わない、ただただ、人類の明日を切り開く為に私達は、私達の一族を弄り、ワタシタチハソノチカラヲアズケタノダ。
「さぁ、コレがリード・リドル。君達が初代と呼ぶ器港雷堂の一族の悲願だ。つまり、君の一族の悲願だ。そして、ワタシタチノヒガンダ。目的と悲願の継承はコレで終わりだ、属性と経験、知識の継承は残念ながら行わない。君が完成品だからだ、雷堂。10を重ねて1代として来た我等の悲願だ」
Side out
Side 雷堂
「待てよ、1500年て…馬鹿か?! 超人とか阿呆だろうが!! 俺は人だぞ? その辺にいる子供と変わらないぞ? ただ魔術師の家系に生まれただけだ!!」
「落ち付けマスター!! 」
「落ち着いてられるか!! 101代目? そんなに家系が続く方が可笑しい。幾ら人一人を生贄にしても、1,000年を超す様な経験と知識が継承され続けるなんて不可能だ!!」
考えたらわかるだろうが!! 八つ当たり気味…いや、八つ当たりだ。内に巣くった激情を怒りを、困惑を大声を出す事で少しでも外に出す。
「あぁ、不可能だ。その筈だ、だから落ち付けマスター。この話には穴がある。」
アーチャーは俺の前に立つようにして、言う。
「貴様は確かに記録なのだろうな。俺は500年の妄執に囚われた、外道に落ちた化け物を知っている。どんなに崇高な目的を掲げて居たとしても、500年で腐り果てて居た。犠牲にした人間はその倍以上に上るだろう。人一人を次代事に生贄にしても到底足りん。記録よ、貴様は何の記録だ?」
そうだ、コイツは…本当に器港の祖の記録なのか?
「質問に答えようか。僕は魔術刻印の記録。図書館の司書みたいなものだよ? 言っただろう? 伝えただろう? ソレが答えだよ」
にぃと粘着質な笑みを浮かべるソレの正体に気づく。気づくが故に震えが止まらなくなる。
「神秘そのモノか。貴様がいった幻想種達の神秘そのモノと言う事か!!」
アーチャーの手には剣が握られていた。太陽の様に輝く西洋剣。其処から漏れ出る光が温かい。
「そうだよ? 竜、幻獣、妖精、精霊、概念。ソレが浸食型魔術刻印の正体。そして、ソレに混ぜ込まれた魔術回路が属性と記憶が継承される筈だったものだ。」
だったモノ?
「君の一族はね、一途で、色恋に弱い。ソレは君達の初代の親に起因する因子の所為でもあるし、刻印の中にその因子の持ち主の一部が混ざっているからって言うのもある。だからこそ、君の一族は耐えられるんだ。」
1500年、色恋に弱い、そして耐えられる?
「君の言う初代は腹の中で死んだ子供の片割れに、生きて生まれた子と同様に愛情を抱いた。彼は自分を延命したよ。息子に同じ苦しみを味あわせたくないと。だが、ソレは不可能だった。浸食型と言うのはそういう刻印だからだ。だが、計算違いが起きた。」
はっとする。常に劣っていた方が生まれてくる呪いの意味にだ。
「2代目は至ったんだな? お前達の計画の許容範囲を飛び越えたんだな?」
「そうだ。2代目こそは完全なる未完成品。もっとも成功に近い失敗作だよ。彼は誰にも知られずに5番目に至った。もし、彼が1番目に至って居れば、私達は全力で彼を不老長寿にしていたよ。だが、彼が私達の正しさを証明した。」
理不尽がやってくる未来が観測されたのか。
「抗わなければ滅ぶ。足掻いても滅ぶ。其処から先が見えない事に、2代目は発狂しそうになりながらも、3代目に全てを伝えて託した。だから、今の君がいる。君で完成させたんだ。時代を越えて調整し、自分の孫さえも殺したんだよ。」
「アーチャー…契約破りは無しだ。コイツは狂ってないし、初代の目的と一族の悲願を継承させて、絶望させるのが役目だ」
「やはりか、この手の輩は知っている。大方、絶望させた後に甘い言葉を吐きつつマスターの人格を乗っ取るまで在るな」
多分だけど、ソレが正解なんじゃないかなぁ
甞めんなよ? こちとらこれ以上の絶望を知っているんだ!!
「所詮コレは『
「了解した。君に示そう。君が最高のサーヴァントを引き当てた事を!!」
記録は嬉しそうに笑った
「お相手しよう。僕達の悲願の為に、人類の明日を切り開く、幸せな結末を迎える為に!!」
Side out
べったりと張り付いた前髪を梳かしながら置き上がる。壁に立てかけてある時計を見れば、午前2時を短針が差していた。
周りを見渡し、自分の状況を確認すれば嫌で理解が出来た。
「マジかぁ…」
色々と漏れている事にお風呂に入ろうと心に決める。部屋のドアを開こうとすると、先に外から開けられた
「マスター、風呂の準備は出来て居る。早くさっぱりして来たまえ」
心使いが身にしみる。
「なぁ、アーチャー…」
「言うな、マスター。奴は絶対に笑って居るぞ」
「でもさぁ」
「言うな」
「「はぁ…」」
溜息しか出ない。今着て居る下着はゴミ箱に袋に入れてシューする。熱いシャワーで身体を流し、洗う。温かい風呂につかれば、やはり溜息しか出なかった。
「令呪無駄打ちしちゃったなぁ」
アイツ弱すぎだろ。一撃で弾け飛んだわ。
気が重い。
アーチャーの身の上を尋ねなくては成らないのが気不味い。
半乾きの頭を掻きながら風呂場を出ると、何故か振り振りのエプロンをムカつく位に着こなしたマッチョメン皿を並べて居た。
「長い風呂だったなマスター。まぁ、丁度良いかも知れんが。食事を作った。食べると良い」
茫然として促されるままに椅子に座る。出されたのはシチューだ。ごろっとしているブロッコリー、ホクホクのジャガイモ。所々で存在を主張している一口大の鳥肉、肉から出た脂で光るニンジン。
主食として出されているパンはロールパンだった。
シチューを口にすれば、優しい甘さに、心が落ち着き、表情が解れるのが分かった。パンを持った瞬間に違和感に気づく。
(このパン、少し堅いのか?…いや、コレは焼いてあるのかしかも!!)
中に注入したであろう適切な量のバターが、パンの其処に吸収されている。ベチャベチャしないのは焼く過程で中に入れたバター意外を使って居ないからだろう。よく見れば、少量だが塩が振って在る。
(コレは良い、バターの香りが食欲を刺激する上に少量の塩が、シチューの、イヤ、野菜から出た出汁、否、スープの旨さを引き立てている!!)
大変、美味しかったです。身体も芯から温まり、何処か気分も軽く成った。
「そんじゃ、自己紹介からしよう。」
「あぁ、そうだな。実は…正直な所俺も気に成っていた。何の縁も無い君に俺が召喚された事も、ヤツが言った言葉もだ」
「ふぅ、ドーモ、ハジメマシテ。キコウ=ライドウデス。触媒は使ってません」
「ドーモ、ハジメマシテ。エミヤ=シロウデス。って何をふざけてるんだマスター!!」
マジで?
えっ? マジで?
恐らく、この時の衝撃的な事実が一番の驚きだったと思う。
10連目→アンと礼装
20連目→爆死
30連目→アンと礼装
40連目→礼装
50連目→アンとモ―さん(剣)
違うや…剣じゃ無くて騎なんや…
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
炎上都市冬木編
プロローグの終
今回、短めです。
少年よ大志を抱けとは良く言ったモノで、幼い頃に心に抱いたモノとはドレだけ経っても眩しいモノなのだ。
勿論、ソレが夢で理想で、叶えたい将来の展望で、多くの人はソレを掴む事は出来ない。挫折して他の道を選んだ人も居れば、諦めずに突き進んで成功せずに終わる人だっている。何もする気が起き無くて堕落する人だって居るだろう。
それでも、最初に抱いたモノは輝かしいモノだ。
どんな些細な事でも、当人にとっては偉大な野望と言っても良い。
俺は、ただ生き残りたかった。生きて居たかった。将来の事も有る。継ぐ家が在る、もし、継がなくても良いと成っても、普通に働いて、結婚して、子供を作ってと、何処にでも居る、何処にでも在る生活を営みたい。
その為に有用な資格を取得する事を目指しているし、良い所に就職してちょっと良い暮らしがしたい。働かねば生きていけないのだから。
紅い弓兵は
「まったく、此処まで魔術師らしからぬ魔術師は見た事が無い…が、その思いは、目指している生活は尊いモノだ。君は君の儘で良いのだろうな。」
笑っていた。眩しげに目を細めてお前はソレで良いと笑ってくれた。
あぁ、でもダメだった。今のままじゃぁ、あの漢の相棒足りえない。時には命を掛けねばならない。自分に自害を命じ逃げる事も進められた。
そんな奴に認められたいと思った。馬鹿な考えだと思う。でも、仕方が無いじゃないか。サーヴァントとの過去を夢と言う形で見てしまうのだから。その生き方が不器用で悲し過ぎて、でもかっこよかったんだ。
同時に家族を護るという大義名分も得てしまったんだ。命位掛けても良いだろう?
魔術刻印は嫌という程に使った。
偉大な狂戦士と白い魔術師
反則魔術を使う暗殺者に時計塔の講師
伝説の魔術王に時計塔のロード
騎士の王とほぼ一般人の従兄弟
トロイア戦争最強の戦士と間桐
魅了を使う槍兵にセカンドオーナー
どいつもこいつも、此方の精神をがりがり削って来る嫌な相手だった。
狂戦士に殺されかけたのは、嫌な思い出だ。
そして、俺の知る限りこの戦争に関わって死んだ人間は3人。コレから一人と一体が増えるけど、ソレは俺達が生き残って居た場合であり、俺にとって都合のよい結果だった場合だ。
マリスビリーは最悪殺さなくてはならない。あぁ、家族を護る為なら踏み込める。
だからこそ、今は全力で、反則をした外道を消滅させなければならない。
「マキリ・ゾォウルケェェェン!!」
「器港?! 君にはランサーの相手を任せた筈だぞ?!」
「カッカッカ、『器港』の子倅か!! まぁ、よい。お主は桜の子を孕ませる種にするのも一興よなぁ。」
うるせぇ、バケモノ。魂まで磨り潰してやる!!
Side out
「フン、奥歯が砕けたか…やってくれる」
口の中に溜まった血と歯の欠片を吐き出し、マリスビリーは詰らなさそうに吐いた。
「それに、助骨が四本、内臓にも酷いダメージだ。右大腿骨に亀裂、左腕も痺れて感覚がないだろう?」
「キャスター…アーチャーを見逃したのか?」
面白そうに笑いながら、キャスター…ソロモンは返す。
「いや、確かに焼き払った。単独行動のスキルだろう。契約破りも出来た様だ。全く、接近戦を挑んでくる弓兵とは、面白い。」
「お陰で契約を飲まされた上に、逃げられたわ。」
「君なら、ソレを無視出来たんじゃないかな?」
マリスビリーは眉を顰めて言う。
「……触発された」
「男心を?」
「……悪いか」
淡く光る大聖杯の光に照らされながら、ソロモンは腹を抱えて大笑いした。
Side out
誰かに背負われている。振動が余り伝わって来ない、此方を気遣った背負い方だ。あぁ、此処一週間近くで大分慣れた感触に安堵する。
「おぉ、生きてるって素晴らしい」
「馬鹿か君は、いや、馬鹿だったな。明日の筋肉痛に魘されるが良い」
この遣り取りも最後だと思うと、寂しさが沸き上がって来る。
「朝ごはんは味噌汁にイワシの塩焼きが良い。あっ、腸は取ってね?」
「それぐらいは自分で出来る様に成りたまえ、簡単な調理は教えただろう?」
ちぇ、それくらいまでは頑張れよ
「生き残ったなぁ」
「あぁ、良くやった。真実、君は己の目的を叶えた。君は勝利したぞ、マスター」
そうか、はは、そうか…
「往くんだろ?」
「あぁ、そろそろスキルの効果も消える」
視界が歪む。被害者には悪いが…楽しかった。楽しかったんだ。
「君には足りないモノが多すぎる。もう少し学びたまえ」
「おう」
「しっかりと働きたいのなら、もう少し字を綺麗に書け。洗濯物を裏返しのまま出すな、手間がかかる。グリンピースを残すな。脱いだ靴は揃えろ、恥を掻くのは君だぞ。」
「おう」
「後は、深夜までアニメを見るな、早寝早起きが基本だ。三食しっかりと食べろ、間食も控えろ、面倒臭いからと言ってシリアルばかり食べるな。付け合わせも考えろ。」
「……おう」
拠点は直ぐ目の前だった。其処で下ろされる。
「君は魔術師としての心得がまるで成っていない。だが、人間性は捨てたモノでは無い。良識も持っている。知識は…刻印から引き出しているのだろう?」
「うん、きついけどね。」
「なら良い、無茶はするなよ? 君はまだ子供だ。するにしても、絶対に生き延びる事を前提にしろ。」
「…うん。」
「…本当はまだまだ細かい事を言いたいんだがな」
「アーチャー…俺は楽しかった。辛かったし、苦しかったし、怖かったけど…お前と一緒に戦えて楽しかった。」
少しずつ希薄に成っていくに姿に言うと、キョトンとした顔をしたアーチャー嬉しそうに笑った。
「あぁ、俺もだ。久しく忘れて居た団欒を思い出せた。大丈夫だ、マスター。俺は強かっただろ?」
「おう、俺のアーチャーは最強なんだ!!」
「そうさ、だから君も頑張れ。」
最後まで笑顔だった。だから、約束した。
「こっちの士郎兄ぃは俺が何とかするから!! コッチ側には来させないから!!」
「あぁ…安心した。また、縁が在ったら会おう。」
涙は流さない、笑顔で英雄を見送った。
「…さてと。記憶を弄る事から初めて…鞘は取り除いとかないとな…はは、あー!!きっついわー!!」
Side out
アーチャーが消えたのと同時に、聖杯は起動した。
恙無く、お互いの願いを叶えた二人は、未だに消えない聖杯の魔力をどう使うかを考えて居た。
ソロモンの願いを叶える事により、聖杯の魔力は半分に減った。そして、マリスビリーの願いを叶えて尚、一割以上の魔力が残っていた。2割までいかない所が判断に困る。マリスビリーは、負傷を押して頭を巡らせた。本来ならば適当に霧散させるか、何かに移し替えて持ち帰ってしまえば言い。
だが、少々ショッキングな事を聞かされてしまったマリスビリーは、冷静に成る為にどうでも良い問題に思考をズラした。
「…どうしたモノか」
「うーん、そうだ。彼に貸してしまえば良いんじゃないかな?」
「器港にか?」
あっけらかんと言った、唯の人間に成った英霊はそう言った。
「うん、彼は必要に成る。僕からは言えないけど、彼の始祖は理解した。だから、彼は戦力に成るし、此方側に着いてくれる。」
ソレは、マリスビリーに取っては有用な事だ。どの道、あの土壇場での契約の対価として協力して貰うのだから、基本的に損は無い。寧ろ、あの性格ならば積極的に働いてくれる可能性も高い。
「…確か、どんな資格でも取得できるように成りたいだったか?」
「そうだったと思うよ?」
叶うかどうかも分からない、だが、この魔力を無駄に使っても痛くも痒くも無い。
「博打の様な物かも知れんが…それは、ソレで面白いか。あの小僧を扱使ってやるのも一興だ」
「結構根に持ってるね?」
「ふん、聖杯に願う。器港雷堂に全ての資格を取得出来る資格を与えたまえ!!」
因み、コレが原因でお互いが冬のテムズ川にダイブする事を彼等は知らない。
Side out
やあ、初めまして僕の子孫君。
コレは夢だ。
夢の様なモノだ。ハッピーエンドを迎えたかった君の想いには共感するよ。でも、まだまだ障害が残っているんだ。
君は傷つくよ。とてもとても大変な災厄を生きる事で。
でも、その中には君の支えに成る輝かしい出会いがある。忘れられない煌めきをえる。
だから、コレはサービスだ。本当は少し足りなかったけど、僕が補填してあげよう。今までの子孫が少しずつ送ってくれたモノを、君に少しだけ上げるよ。
全部は無理だよ? 僕にとっても必要だからね。
え? 僕かい? そうだなぁ、ご先祖様って言うのはチョット浪漫がたりないね。
僕は何時でも導き手さ。
それじゃあ、何時かに会おう。その時は、僕の話を聞いて欲しな。
僕の大好きな…
変な夢を見た。
唯一つだけ分かる事がある。確実に嫌がらせを受けた事と、厄介事に関わってしまった事だ。
「マァァァリス、ビリィィィー…覚えてろ」
ヤロウブッコロシテヤル!!
設定
器港雷堂
器港の11代目。その実は1500年ほど昔に遡る英国の神官の直系に当たり、その一族の始祖は人類の救済を目的としていた。正確には4世紀から5世紀の間に始祖が誕生したと思われるが、ソレを証明するモノは身体に宿した魔術刻印のみである。
浸食型と言われていた魔術刻印は器港の完成と共に浸食と言う特性を失うと同時に、経験と知識の植え付け機能も停止、破棄されている。※1
ご先祖と言い、神秘と言われた存在の言う通り知識の図書館の様な機能を有するも、ソレは題名の無い本を一つ一つ確認する様な作業であり、中には狂気じみたモノも有る為、発狂や灰人化してしまう可能性の高い物もあり、端的に言えば10連ガチャ一回で星5鯖が三体位来る可能性ので確実に死ぬ。※2
前世持ちの為、幼い頃はかなり大人びた可愛くない子供だったが、肉体年齢に適応したのか、5歳ぐらいの頃には普通の子供と殆ど同じ精神状態に落ち着いている。反面、前世の所為で就職する事に執念を燃やしている為、資格等を取得する為に形振り構わない所が在る。勿論、一般人としての良識を重ね備えて居るので暴走などは無い。※3
8歳にして第三次聖杯戦争(2004.7)のマスターに選ばれ、紆余曲折ありマリスビリー・アニムスフィアと同盟を結び、聖杯戦争に参加する事に成る。アサシンを召喚するつもりがアーチャーを召喚してしまい混乱するも、浸食型魔術刻印の所為(おかげ?)でアーチャーと確かな信頼関係を築く。
聖杯戦争中にマリスビリーと仲違いを起こすも最終戦闘で全てを呑み込ませるだけのモノを提供し、自身を含め3名の魔術師(1名は身内)を保護、生存させる事に成功する。※4
魔術刻印は膝下から首元までびっしりと刻まれており、味方を変えればそれぞれの幻想種の似姿に見える。
表向きには聖杯戦争の勝者と成っており、聖杯戦争後自身の父と交友のあったマリスビリー・アニムスフィアに弟子入りした事に成っている。
マリスビリーを除く他のロードや教授陣からのスカウトがひっきりなしに来るが、原因はマリスビリー達が最後に願ったモノが本当に叶ってしまった為※5
冬のテムズ川にマリスビリーと腐れ縁になるロマニ・アーキマンを蹴り落とし、大ゲンカをした為、時計塔の武闘派魔術師達からは目を付けられている(教会も含む)
ロマニ・アーキマンの事はマリスビリーの外部協力者と認識しており、共にイギリスの食事事情の英国面に触れてしまった戦友である。戦犯はオルガマリー。
オルガマリーの事は実の姉の様に思うもメンタルの弱さとそのコンプレックスから、異性としては見て居ない。手間のかかる姉貴分として慕っている(援護している?)
※11000年以上の経験等の植え付けは魔術刻印に植え付けて在る為、本人の肉体への植え付けは基本その代の始祖から10代目までが基本。雷堂の場合は完成してしまった初代と成る為、ぎりぎり、父親(10代目)の経験のみ植え付けられている。
※2、※5の所為で死亡率等は下がった。
※3、ある種の強迫観念。就職していない、出来ない人間はダメだと思い込んでいる。
※4、自身を含め生き残ったマスターは4人。他3人は…
※5、全ての資格に対して取得する資格を得た
器港
「きこう」と呼ばれる魔術師の家系。表向きは海運等で生計を立てて居た商家だったが、初代となるリード・リドルが婿養子に成る事で魔術師の家系と成った。代を重ねるごとに大きく成り、現在では財閥とまでは行かないまでも大企業と張り合える家と成っている。運送、貿易、IT等、の分野で活躍中。その実態は日本の裏側の繋ぎ役でも在る。協会・教会の繋ぎ役であると同時に、混血の家や退魔四家等の調整を行っている。政治家の一部は良くお世話に成っている。また、日本国内に侵入した死徒や外来の外道等の撃退・殲滅・捕縛等を行っている武闘派であり、代々の当主は、教会で言う埋葬機関の番号持ち、協会で言う執行者とほぼ互角の人間兵器。
主人公の父は歴代最弱であるも、協会・教会との繋がりが最も強く、歴代最弱である分、様々な事に精通したオールラウンダー。
この戦闘能力を把握しているのは協会・教会の上層部の一部のみであり、それ以外の魔術師には魔術品を製作し、販売している調剤系、またはクラフト系列の創る者の家系と認識している。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
プロローグ・カルデアへ行こう
100連の結果。
10連→フィン、エリザベート(槍)マリー、礼装
20連→爆死
30連→爆死
40連→エルドラ×2、ネロ(水着)
50錬→ニトクリス(水着)×2ノッブ(水着)
60連→ニトクリス(水着)、御前
70連→エルドラ、フィン
80連→エリザベート(槍)デオン
90連→爆死
100連→フランちゃんかわいいヤッター!!
フランちゃんもう一人来てよかったのよ? ニトはポンコツカワイイ。
器港 雷堂
1996年生まれ。調査当時の年齢は18歳(2014.12/11~2015.1/10)
第三次聖杯戦争の勝利者。天体科の懐刀。協会と教会の調停者。魔術師狩り。
器港の11代目当主。天体科の前ロードであるマリスビリー・アニムスフィアの弟子でもあり、人理継続保障機関フィニス・カルデアにも一時所属していた魔術師。
カルデアでは主に経理・厨房を担当し、当時の所長であるマリスビリーとは協力関係であったが、デミ・サーヴァント実験に否定的であり、マリスビリーとは衝突していた。
が、その可能性を提示し、カルデアに加入時に術式を訂正し編集、完成させたのは器港である。(別項参照:魔術)
前所長が死亡する一年前にカルデアを辞去。
その後は生家に戻り、稼業の手伝いをしている。(別項参照:戦闘記録)
蛇足に成るが、カルデアを辞去後も器港の席は残っており、本人も年に幾度か顔を出し友人であるロマニ・アーキマンと談笑している姿を目撃されている。(別項参照:人物関係)
辞去後も執行者として代行者としての仕事の報告を師である前所長にしている為、義理堅い人間性がみられる。
カルデア所属当時は、その年齢からマスコットの様な扱いを受けて居たらしいが、飛び抜けた実務能力によりその認識は払拭されている。
カルデア所属当時の人間関係は良好そのものであり、本人も潤滑油に成る様に振舞っていた節が在る。現在でも彼を知る職員は多く、お中元や暑中見舞い等の贈り物も欠かさず行っている。
魔術師としては一流の技能を有しており、戦闘者としては協会では5指に入ると言われている。実際に封印指定狩りや、違法魔術師の捕獲・討伐もかなりの数をこなしている。(別項参照:戦闘記録)
2014年に行われた死都浄化作戦では白翼公直系の子を単身にて撃破、そのまま領地に突撃し、白翼公と激突、討伐は出来なかったが今後百年は行動は出来ないだろう傷をつけ逃走。その後、半年は教会の代行者達に警護されながらバチカンのICUで過ごす。(別項参照:戦闘記録)
2015年現在は子会社の在る冬木にて生活をしている。
魔術師としての功績は秘匿情報であり、閲覧出来るのはロードのみな事から、封印指定されても可笑しくないモノを時計塔に収めた可能性が高い。
オルガマリーは溜息を吐きながら報告書をざっと纏めたモノを読み返して頭を抱えた。
(席が残ってるんだから召還しなさいよ!! お父様も何で残したままにしてるのよ?! 自分の弟子なんだからギアスで縛るとかイロイロ出来たでしょうに!!)
「あの子もあの子よ、何よ死都浄化作戦って…聞いてないわよそんなの」
事実、オルガマリーは器港雷堂の事を父の弟子で騒がしい弟分と言う認識しかなかった。聖杯戦争の勝利者と言う事は知っているが、ソレは父の助けが在ったからこそと知っていた。実際ははぐらかされそう思う様に丸めこまれた為、事実は知らないのだが。
だからこそ、まぁ、困ってたら手を差し伸べてやるかと思えるぐらいには親しい付き合いをしていた。
イギリスのあちこちを案内してあげたり、ショッピングに突き合わせたり…
現実には理不尽な姉に連れ回される弟なのだが、そんな時間を過ごしていた。
だからこそ、今亡き父の後を継いだ身である自分は本当なら知る事もなかったであろう情報を知ってしまった。
カルデアには有能な人間が足りない。今現在、働いてくれているのは皆優秀な職員だ。彼等の能力があり、カルデアは運営されている。
だが、それだけではダメなのだ。
カルデアは人理保障機関である。コレから先の人理が在ると保障する為の機関なのだ。故に、これから先の人理が観測できなくなれば、その異常を取り除き、正常な状態に戻さなくては成らない。
その為のカルデア、その為の機関なのだ。
「ホントっ…何で私がこんな目に会わなきゃならないのよ」
オルガマリー・アニムスフィアへの重圧は想像以上に重い。
自身にマスター適正が無いから軽んじられる。父が偉大すぎた為に下に見られる、比較される。オルガマリー自身は優秀な魔術師である。ソレが認められないと言う状況が創られている。
父を怨んではいない、寧ろ愛されていたと言う想いがある。ただ、もう少し、自分に流石は父の娘だと言われるだけの経験と結果を積み重ねさせて欲しかった。
最初から父の研究に関わらせて欲しかった。それさえあれば、自分はもっと頼られていた、認められていただろう。そんな想いが確かにあった。
「馬鹿ライドウ…扱使ってやるから覚悟してなさい。」
オルガマリーは小声でそう呟き、目を閉じた。
日本まで後、5時間。空の度は快適そのものだった。
Side out
器港雷堂。この名前は企業にとっては重大な名前と成っている。何故か?
某ショックを上手い事かわし、大きな黒字を取ったからと言うのも有る。今や大企業と成った会社の後取りであると言う事も有る。若干13歳で大学へ飛び級、その後も一年たたない内に卒業したと言うのも有る。
一番の理由は、彼が企業人達から恐れられる交渉人であると言う事だ。
契約以上の事飲まされた、だが、契約のみの時よりも儲けさせられた。
こんな事言う人間は先ず居ないが、ソレを実現させてしまったのが理由だ。
そんな彼は今
「オーダー!! 7番テーブル本日のお勧めフレンチフルコースでーす!!」
「オーダー!! 10番テーブル、本日お勧めルーマニアA定食二つ!!」
「士郎兄ぃ!! 7番お願い!!」
「任せろ!! 10番頼む!!」
アルバイトに精を出していた。
さて、時間は巻戻るが、衛宮士郎は聖杯戦争の参加者であり、器港雷堂の従兄弟でも在る。が、衛宮士郎はその事を覚えて居ない。
魔術回路の起動の仕方は忘れさせられ、身体に溶け込んでいた異物も綺麗に取り除かれ、回路も厳重に封印されている。
だが、何故か胆の据わった男に成っていた。と言うのだから、雷堂は冷や汗ものだったりした。事実、衛宮士郎は以前よりも物事を考える…自身の安全を考える様になった。
暗示等を駆使し、記憶も魔術的に消し去ったのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、だからこそ、以前と違う胆の据わりように自身の失敗を予感していたのだが、ソレは結局杞憂に終わった。その時は案外早く、雷堂が13歳、つまり、聖杯戦争から5年たった時に衛宮士郎が結婚したからだ。
まぁ、そう仕向けたのは雷堂自身なのだから本人はアフターケアのつもりでも在ったし、身内が血の繋がらない妹の誘惑がヤバいと、真剣に相談し来るぐらいに切羽詰まってたからというのもある。
そんな彼も今や三十路前、子宝にも恵まれ立派な親馬鹿に成っていた。だからこそ、そろそろ、距離を取っとこうと考えたのだが、欲しくないモノを与えられてしまった結果、離れられずに居るのが現状だ。
転機が来たと言えば聞こえが良いだろう。
雷堂はそう思った。だが、ソレは自身の運命を受け入れると言う事に他ならない。故に迷う。
自室のマホガニー製の机に手紙を置く。その姿、どこぞの重役の様だと思う人間が大半だろう。事実そうなるのだから仕方が無い。
半年以上動けない時期が在ったにも拘らず、企業に利益を与え続けたその成果が今だ。
魔術師として神秘の秘匿、人としてバケモノの抹殺、裏の人間としての調停。表でも裏でも重苦しい立場に成ってしまったのだから、僅かに希望を持っていた。
戦いなど無いのだと。あの日に告げられた苦難の道は無いのだと。人類の終焉はまだまだ先なのだと思っていたのだ。
マリスビリーが自殺したと知った時までは。
「…厄介事残しやがって、クソ爺が。自分で責任持てよな…ホント…」
器港雷堂は溜息を吐いた。明日は、懐かしい顔が見れる。だが、以前の様には行かないのだろう。それが、驚くほどに心苦しい。
Side out
彼はどんな人間かと、問われれば。大概の人間は良い人と答えるだろう。
もっと突っ込んで聞けばチキンと言われ、更に聞けばドルオタと言われる。そんな男、ロマニ・アーキマンは基本的にカルデアから離れる事は無い。
以前は違ったが、今は見なくてはいけない子がいるのだから仕方が無い。
少し特殊な事情を抱えたその子を放って置く事は出来ないし、その子に何かが合っても大変だから…と普段の彼ならそう言う。
だが、今回ばかりは彼は重い腰を上げた。連れていけるならば、連れて行きたいがそれが出来ない事情が在るのだから仕方が無い。
最長で2日程開ける旨を伝えるへ、同僚にケアを頼み飛ぶように出て行った。
彼にも事情があり、ソレを知る者はもう誰も居ない。
誰かに打ち明けれればソレは楽な事だろう。だが、ソレを打ち明ける事は無いだろう。
ロマニ・アーキマンは人が信じられない臆病者なのだ。八方美人と言われればそれまでだが、誰とも深い付き合いをしようとは思わないし、実行に移せない。
唯一、古なじみの腐れ縁には遠慮なく物事を言う事もあるが、ソレはその人物の事をよく知っており、既に10年以上の付き合いが在り、どんな人間かを良く知っているからだ。
実際の所、彼自身も今の自分の抱いている感情に戸惑いを覚えて居る。
強い、強い怒りだ。
所長直々にスカウトに出かけると聞けば、それは凄い事なのだろうと理解出来る。相当な人物が来る筈だと期待する。
だが、確実にスカウト出来るかと言われれば彼は首を横に振る事しかできない。
何よりも、ロマニが知る男とはオルガマリーに甘い所があるが言う事はきっぱりと言う。そして、スカウトに行ったオルガマリー自身が彼に劣等感を持っている上に嫉妬の心も持ち合わせている。
同時に親愛の情も持っているのだから、拗れると大変なのだ。
何よりも、彼の重要性と適性を最初から知っているからこそ優先させなければならない。オルガマリーも根回しは確りとしている。だが、彼の柵を正確に把握はしていない。
だから、最初から自分が行くのが正解だったのだ。何よりも定期的に顔を出している彼に一番会って、話しているのは自分である。古い付き合いでも在るし、一番話し易いのも自分なのだ。
強行軍だった。先に出たオルガマリーに追いつくのは…不眠なのは当たり前で、オルガマリーが調べさせていた事を確認すれば頭が痛く成った。
第三次聖杯戦争の勝利者? 確かにそうだろう。彼は自身の目的を完遂した。
天体科の懐刀? 確かにそうだろう。そう言う契約をしていたし、在る意味では自身の家を護る為に必要な行為だからだ。
協会と教会の調停者? そうしなければバランスが崩れるし、彼の家の商売相手なのだから間に立つ形に成っただけである。
カルデア出の事は概ね事実であるが、ハッキリ言って抜けが多い。
自身が機密を知り過ぎて居る事もあるが、これだけでは唯の凄腕武闘派魔術師としか思えない様な無い様だ。
埋葬機関との関わり、他のロードとの関わり、日本と言う国の裏側との関わり、そう言ったモノが抜けて居る。
(上位死徒と敵対とか馬鹿じゃないのか彼は!!)
唯一知らなかった事に驚き、怒りが沸き上がったのには自分でも驚いたが、彼は戦力なのだ。サーヴァントを従えた事もあり、敵対した事もあり、戦った事もある。
何よりも、マリスビリーが最後にしかけた嫌がらせの所為で誰もが手を出したいが、出せない。微妙な位置に居る。
ソレを此方から引き入れてしまえば、オルガマリーも彼も、どうなるか分からない。
済し崩しで無ければ成らないのだ。古巣の友人に会いに来たら巻き込まれてしまいましたじゃないと厳しいのだ。それだってかなり苦しい言い訳でしかない。
その為に彼は辞去したのだ、その為に度々カルデアに来ていたのだ。その為に多くの職員と繋がりを保っていたのだ。
彼はソレが無駄に成る事を望んでいた。だが、その望みは断たれてしまった。機関はあの手この手で優秀なマスター適性を持つモノを集めている。
だが、手を出してはいけない立場の人間も居るのだ。
ロマニ・アーキマンは息を切らせて、早朝のホテルに駆けこんだ。
目当ての人物が、ロビーのカフェで紅茶を啜っているのを目にし、安堵の息が漏れる。
「やぁ、マリー。間に合ってよかったよ」
「ロマニ?! 貴方、何で居るの!!」
その言い方は酷いんじゃないかなぁとロマニは頬を引き攣らせた。
Side out
閑散としたカフェテリアに、一人の男が座っていた。
冬木の新都に在る、その店は本来ならば人で溢れている筈の場所だった。春が近いが季節は未だ冬であり、日が射していても吹く風は冷たい。
待ち合わせには今だ時間があり、運ばれたばかりのコーヒーは白い湯気を、落ち着く香りと共に漂わせていた。本来ならば、読書にでも興じる所だが、ソレを行うにしてもまだ温かい店内に入る。
態々寒い外に座っているのはそうした方が都合が良いからでしかない。自制を促す為でも在る。
自分はそれなりには短気なのだ。熱く成り易いと言うのが在る。
自然な動きで胸元に手が伸びるのに気づく、煙草は持って居ない。年齢制限が在るのもそうだが、どうにも合わない。海外に居れば大麻を吸っていたが、アレも基本的には煙草に少量を混ぜて使用するモノだ。
戦いの前には良い気づけになる。気にせずに、日本国内でも吸おうと思えば吸えるが、国家権力に見つかると厄介だし、スキャンダルに成る様な事は控えなければ成らない。
苦笑し、腕時計を確認する。
「ちょっと早く来すぎ…げっ、ロマニ!!」
器港雷堂は、久しぶりに見た友人を見て余りにもな言葉を吐いた。
Side out
少し時間を巻き戻そう。
オルガマリーとロマニ・アーキマンがホテルを出てレンタカーに乗りこんだ所だ。
「冬木までは大体1時間位だから、その間にちょっと話を詰めようか?」
「詰めるも何も、カルデアに席を残して有るしアイツが来ない訳無いじゃない。」
エンジン音に紛れ込ませるようにロマニは小さく息を吐いた。
「マリー…君が調べさせた情報だけど、かなりのモノが抜けている。正確には欺瞞情報と調べてる周りの人間が見当はずれにも程が在る。」
「はぁ?! それこそどういう事よ!! こっちは専門の魔術師と探偵に依頼してるのよ?!」
頭からの否定にオルガマリーは声を上げた。それはそうだろう。専門、その道のプロに頼んだ結果を更に専門の人間に精査させて得た情報が不出来なモノだと言われているのだ。雇った人間としての、人を見る目を否定されたと思ってしまう。其処は彼女の劣等感が生み出したネガティブな思考の所為なのだが、人間、自分の劣っている場所を受け入れる事が難しいのだ。彼女の場合はその背景にも問題が在るのだから、ロマニには手の打ちようが無い。
事実、これまでスカウトした魔術師は彼女がカルデアの所長で在るから指示に従っているに過ぎない。実際に現場に出てしまえば在る程度は自分の好きに動いてしまうだろう。
ロマニは彼等がそう言う人種である事を知っている。
「何故、他のロードに意見を聞かないんだい? 彼と近しいロードなら絶対に教えてくれた筈だ。彼は魔術師だが、人間臭いし良心もある。敢えて名前は出さないよ? 君の雇ったプロは確かにプロだった。でも、彼等は自分の命と名誉を守る為に一部の調査を程々で済ましている。」
「ロードって…貴方!!お父様が創り上げたカルデアに今更他のロード干渉させる訳ないでしょ!!」
事実、他のロードの妨害や干渉を受けないようにする為に聖杯戦争に挑み、他のロード達の注目を集め、逸らす為に器港雷堂を弟子にし、自分の傍に置いたのだ。それ以外にも目的は在ったが。その事を知るのは既に故人と成っているマリスビリーと唯の人間のロマニに、協力者である雷堂だけだ。他のロードは勿論、魔術師、教会も知らない。
「そうだよ。ソレは正しい。でもね? 君の父上の妨害をせず、利を提供すれば協力してくれるロードは居たよ? でも、もう終わった話だ。マリー、良く聞いてくれ。君の中では、彼は…雷堂は家族に近い弟分なのかもしれない。」
「………まぁ、そうね。小うるさいし、文句も言うし、腹立つ事も多いけど」
オルガマリーは文句を呑み込んで、自分の中の印象を言う。その姿にロマニは安堵した。
(よし、少し落ち着いた。マリーも直ぐにヒステリック成るのを治せば本当に優秀なんだけどなぁ)
「何よ?」
「いいや、本当にマリーは雷堂の事をそう思っている事にちょっと嬉しく成っただけだよ。」
「べ、別にアイツは使い勝手が良いから、私が扱使ってるだけよ」
「うん、あの頃は楽しかったなぁ。君が雷堂を引っ張って、その後を僕が着いて行ってロンドン観光したのは良い思い出だよ。でもね、彼ももう立派な魔術師で人間なんだ。その事を踏まえて言うよ?」
「それくらい分かってるわよ。アイツももう19に成るし」
ロマニは少し、息を整えて言う。
「彼は、本当の意味でこの日本と言う国の調停者だ。」
「…?…は?」
ロマニは後に語る。人間どうしようもなく驚いた時はあんなにも間抜けな顔になるんだなぁと
車が冬木に入る少し前に、聞いた内容を頭の中で整理したオルガマリーは震える声でロマニに確認する。オルガマリーはそのこと自体が、自分がその内容を受け入れる為、または否定して欲しいと言う気持ちの発露だと自覚しながら口を開く。
「ライドウは、日本の混血系列の家と退魔士の中を取り持つ人間である。えっと、この退魔士って言うのは日本版の代行者みたいなモノよね?」
「そうだね、大体その認識で在ってるよ。更に言えば極東の魔術師、代行者の橋渡しとかもしてる。」
「そして、決められたルールを破った両者の制裁や討伐の斡旋、時には自分が直接滅ぼしたり、抹消しに行ったりする立場の人間で、そのバックにはエンペラーの権威とかがある?」
「雷堂は正確には宮様って言ってたよ」
つまりは皇族。
「そっそれって、現エンペラーの直系の方々よね?」
声が震える。ソレもそうだろう。この日本と言う国の皇帝の一族は約2000年以上、血を絶やす事なく今も尚続いているのだ。
はっきり言ってしまえば、魔術師からすればとんでもないお宝である。その血の尊さ、その家柄、その存在は今も尚、この国の人間が無意識に信仰してしまっている。
在る意味で現人神。終戦の際に人に戻ると宣言されているが、その身に宿るモノの凄まじさは想像も出来ない。
もし、エンペラーが魔術の使い手だったとしたらと考えると震えが止まらない。
「そうだね。分かるかい? カルデアがしでかしそうに成っていた最大の失態が」
「表では騒ぎには成らないけど、裏からしたらとんでもない暴挙じゃないの!! 私知ってるわよ? 退魔四家とか言う頭のオカシイ化け物集団が居る事とか、混血の財閥とかが在るって!!」
「うん、ハッキリ言ってカルデアが人理修復する前に滅ぼされるよ? 」
実際の所、滅びている家も有るがソレを補って能力がヤバい集団も居るので法螺話にも成りはしない。
「…私が日本に来たのは、スカウトじゃ無くて姉貴分として弟分の顔を見に来た。序に生前の父の研究の話を聞きに来た。そうよね、ロマニ?」
「うん、そう言う事だね。僕も友人に届けモノを渡しに来ただけで、途中で一緒に成ったから、僕が車をレンタルした。」
此処に護身は完成た。保身ともいう。
「ねぇ、他の事も本当?」
「うん、少なくとも教会も協会も彼には大きく貸し付けられているモノが在るから…本当に間に合ってよかった」
「私、今ほど貴方が頼りに成った事は無いって感じて居るわ。」
「ねぇ、何で僕の評価が其処まで低いの? ねぇ?」
だってロマニだもの。
冬木に着き、適当なパーキングに車を止め、少し重い足取りで歩を進める二人の視界に目的の人物が映った。湯気を上げるコーヒー片手に、此方を見て驚いた様子に、オルガマリーは少しだけ胸が軽く成った。
本当ならば、予定の時間より大分早い。何故なら、此処で圧力を掛けて置きたかったからだ。軽い心理戦で弟分の成長を見てやろうと言う姉心だったのだが、今現在はそんな心境に成れない。
一国の裏面に全力で喧嘩を吹っ掛ける所だったのだ。
面子、経済、力関係、そして秩序。何処ででも押さえておかねば成らぬその要に粉を掛ける。消されても何も言えない。
同時に、ロマニは安心していた。オルガマリーと雷堂の関係にである。少なくとも雷堂はオルガマリーの事を知っているし、在る程度理解出来ている。
魔術師だし、良い人でも在るが悪人。劣等感の強い小心者のダメな姉貴分。そう理解している。自分もそうだ。少なくともロマニ・アーキマンと器港雷堂はオルガマリー・アニムスフィアを色目無く、優秀であると認めている。
そして、ロマニ・アーキマンは安心する。小心者のオルガマリーに、姉貴分に少し甘い雷堂に。
「レディより早く来て、待っているのは紳士として合格ね。」
「久しぶり、ちょっとお話ししたい事が在るんだけどね?」
「お、おう。(え?スカウトの話じゃないの? 何でロマニが居るの?アレ? マシュ大丈夫?)」
これより三十分程、お説教と言う名の針の筵に成る事を雷堂は知らない。
さて、開幕お説教と言う在る意味では自業自得な状況に陥った器港雷堂は、自身の姉貴分のちょっとした成長に喜びながらもゲンナリしていた。
確かに、一時のプッツンで上位死徒と敵対とかしてしまった事は自身の不徳と致すところ…と誤魔化せれば良いが、そんな甘い話は無い。実際、もし討ち取ってしまって居ればバランスが崩れる。
そうすれば直に埋葬機関やらなんやらと会談と言う名の怪談が開かれる事に成るだろうし、その間、そちらに掛かりきりに成ってしまうのは拙い。
(ソレもコレもご先祖が悪い。何で皇室との繋がりが家に在るのさ)
長い歴史の在る家ほど柵が多いし、訳の解らない繋がりが在ったりする。自身の初代しかり、本当の意味での初代しかり、厄介な事ばかりだ。
冷めたコーヒーを啜る。他の二人、アツアツのアップルパイにバニラアイスを乗っけて、サクサクホクホク食べている。雷堂は、その姿に若干の怒りを覚えながら口を開いた。
「で? お説教大会しに来ただけじゃないんだろ? あんな人里離れた僻地から、何しに来たんだよ? 特にロマニ。」
その言葉に、ジト目を向けてロマニは言う
「お説教。あのね、この際だから言うけど自分の希少価値を理解してるかい?」
そう言われてしまえば、グゥの音も出ない。
「君が居ないと言う事が、ドレだけカルデアに取っての損失に成るか理解してる?」
心なしかロマニの声に冷たさが混じって来ている事に、雷堂は冷や汗を流した。
「君が連れて来てくれた、解析班の子とか、君がひっそりと投資してくれている額で補ってる厨房やらリラクゼーション室の一部の物品とか…ねぇ? 分かってる? 宣伝が目的名の知ってるけど、国連主要国家の裏の人間が、『器港』の名前のお陰で手出しでき無いの知ってるよね? 君が抑止力に成ってるの解ってる?」
「はい、すみません。私が悪かったです。」
白旗を上げた雷堂。何処か満足そうなロマニ、ソレを見てオルガマリーは確信する。
(…ロマニは怒らせないでおこう)
まぁ、ロマニ・アーキマンが此処まで言うのは誇張なく、器港雷堂が戦力であり、抑止力であり、今亡きマリスビリーの協力者であり、カルデアの機密の大部分を理解しているからであり、気心しれた仲であるからなので、基本的には他の人間にはヘタレチキン八方美人である。オルガマリーの心配と決意は無駄であろう。
「それにしても、アンタ、本当にヤバイわねぇ」
背景を知ってしまうと、こうも清々しい気分に成れるモノなのかと思いながらオルガマリーは口を開いた。
「好きでこんな立場に成ったんじゃないんですけどねぇ。マジで勘弁して欲しい。まぁ、こんな時間を作れる程度には、日本は平和だよ。自浄作用もしっかり働いてるから、基本的には出番はないし…外来の奴等が何もしなければだけど」
ソレをしそうに成っていた事に遠い目をしながら、話題を探す。他愛の無い事を話しながら、心が軽くなるのを自覚する。
「そろそろ時間ね。アンタも知ってると思うけど、暫くは関係者以外はカルデアには連絡も取れないから。マスターも47人揃えたし、来週には補欠枠も来るから、アンタが来ても構ってあげられないからね?」
「構ってチャンじゃないんだから、行かないよ。マリー姉ちゃん、てかそろそろ良い人見つけた? アニムスフィアの当主なんだから次代を残す事も考えてる?」
「五月蠅いわね!! 成人もしてない餓鬼に言われたくないわよ!!ったくもう…そろそろ戻るわ、アンタも元気で無茶せずやりなさいよ? アンタは名前だけ置いとけば、ソレが役に立つんだからじっとしときなさい。それに、アンタこそ次代の為に良い人見つけなさいよ。それじゃぁね。」
「あ、マリー僕は少し用事が在るから送れないけど大丈夫?」
「タクシー捕まえるから大丈夫よ。今日の夜には空港だしね。貴方も早く戻りなさいよ? まぁ、言われなくとも分かっているのでしょうけど。後、隈ぐらいもう少し上手く隠しなさい。モテないわよ?」
そう言い、何事もなく去るオルガマリーを見ながら男二人は思った。
((誰だアレ))
失礼にも程が在る。
「え~…マリー姉ちゃんどうしたのアレ?」
「いや~…多分だけど、一旦リセット出来たからじゃないかなぁ?」
「そんなに立場悪いか?」
雷堂の言葉にロマニは首を振りながら零す。
「悪い訳じゃないんだけど…彼女は他力本願な所が在るし、突発的な事にも弱いし何よりもコンプレックスの塊だ。被害妄想もそれなりに有る。君と久しぶりに会って持ち直したんじゃないかな?」
その言葉に雷堂は思った事をそのまま口にした。
「アカン」
「え?」
「え?じゃなくて、ダメ過ぎるだろ? 本格的にヤバいぞ、つまり、姉ちゃんは他のマスター共の手綱を握れてないんだろ?」
「…あ。いや、その分レフが居るから…いや、でも…今後の事を考えると…」
ロマニは自分の血の引く音が聞こえた。
「正直、姉ちゃんは頼れる人間には頼りまくるって言うか依存しがちな人間だ。序に乙女を少し拗らしてる節が在る。分かってると思うけども、マスターと言えども魔術師って言う人種は信用成らない。任務中でも自身の研究に必要なモノが有ればソレを優先しちまう奴だって居る。ロマニの考えてるモノの斜め上のレベルで信用成らない。おい、今のカルデアのマスター共はどんな感じだ?」
「………何時カルデアに来るの?」
「おい…おい…」
「姉ちゃん人望薄すぎ」と顔を両手覆ってしまった雷堂にロマニは「本当に優秀なんだよマリーは」と白く成って呟く。
「何とか身の回り整理して、行くわ」
「…ごめん。本当にごめん。」
そう言う事に成った。
器港の先代達が戦時中に頑張り過ぎた為、目を付けられまくりと言う厄。
実際の所、戦時中に捕虜として紛れ込んだヤツや、終戦後にGHQに紛れたり、扮したりしてやって来た奴等を抹殺したりしてたし、お隣から火事場泥棒しに来たやつらコロコロしてたら、ソラ目も付けられるわ。
取りあえず、ニトを宝具3にしてサポに設定しますた。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
カルデアス、爆発する
ポーンとアナウンスが響いた。
シートベルトを確認し、背凭れに身体を預ける。少し堅いのが気に成るが、就職先の指定した席がコレなので仕方が無い。
ぼんやりと、今までの事を思い出す。
私は、ついこの間までは女子高生だった。何の因果か友達達と善意で行った献血、その後に貰った安っぽい紙パックのジュースを歩きながら飲んでいた日。
思えばあの日が人生の転換期だったのだろう。
大学入試には合格、束の間の長期休暇を満喫し、晴れて女子大生に成る事が決定していた私は浮かれていたが、不安も有った。
大学卒業後の話である。
就職するか、結婚するか。前者には資格勉強等をしなければ成らないし、就職したい企業のピックアップもしなくては成らない。先輩から聞いた話では、対策は早ければ早いほど良いとの事で、後者に関しては彼氏いない歴=人生な私には難易度が高い。
同性に奔らなかった自分を褒めて欲しい。
コレでも最低限の家事は出来るんだぞぅ。
何故か後輩に慕われてたけど、お弁当とか差し入れとか貰ってたけど・・・
頭が痛くなるので一旦置いておこう。転換期である。
何時か来る当たり前の日常の中の当たり前な問題に頭を悩ませていた時、何か外人さんがスカウトに来たのだ。
意味が分からないが、話を聞けば国連主催の機関へのスカウトである。国連主催である。
ハッキリ言って、美味すぎる話しなのだが、女は度胸。あれ? 愛嬌だっけ? まぁ、そんな感じで飛びこんでみる事にしたのだが…
日程がかなりギリギリである。
私をスカウトしたハリーさんにも謝られたが、同郷の人間、しかも同い年が先に行っているとの事なので許した。
フフ、流石は私。友達からも男前と言われるだけはある。うっさいわ、こちとら乙女だ!!
身体に圧が掛かり、浮遊感と共に耳鳴りが少しした。後は目的地まで寝るだけ、其処からまた移動なんだけどね。ハハ、上手く働けるかなぁ。体育系のノリなら行けるんだけどなぁ
よし、現実逃避終わり。
さて、私が現実逃避していた理由を教えよう!!
テンション上がって来たぜ!!
ぶっちゃけ、隣の人が怖い!! 何か書類片手にブツブツ言ってるし、目の下の隈が凄いし、中々に良い筋肉をしている。いや、滅多にお目にかかれない筋肉かな?
首回りとか細い様でしっかりと鍛えこまれてる。う~む、後ろ姿にも期待しよう。スーツだから分かり難いかもしれないけど。
たぶん、この人はブラック企業に就職しちゃったんだろうなぁ。若そうなのに大変だ。
私は自分の幸運を噛みしめながら、国連主催と言う看板に安心しながら目を閉じて無理やり眠る事にした。
あ、私の名前は藤丸立夏。今年からグローバル社会人になる乙女である。
Side out
ロマニ・アーキマンは基本的にはカルデアから出ない。カルデアを留守にするのは本当にヤバイ案件が在る時のみだが、ソレを知る人間は殆ど居ない。知っているのはオルガマリー位で在り、彼女はロマニに救われた人間だ。
故に、周りからは人辺りは良いけど出不精で仕事熱心な人間と思われても居る。基本的にはドルオタで臆病な人と思われている。
そんな彼が此処五日程、不眠不休と言って良い程に働いている。
その理由は、レイシフトの期日が早まったからと言う事だ。本来ならば二日後の筈だったモノが二日早く成った。
二日程度ならば、どうとでも成ると思う者も多いが実際の所はかなり厳しい。その原因はカルデアの人事が少数精鋭だからである。
運営する者、補助をする者、ケアをする者と戦う者。大まかに分けてこの四つ在るのだが、その合計人数は200人に届かない。そして、驚く事に戦う者がコレの約四分の一であり、雑事等に狩りだされる人間を含めれば、各部署がかなりのギリギリの人数で回されてる。
それでも、しっかりと休暇を取れてしまえる辺り、カルデアの人間達の優秀さを浮き彫りにしているのだが…何処にでも派閥と言うモノがある。
何処まで行っても人間の敵は人間で、この期に及んで未だに暗闘を繰り広げている人間が居るのだから、他の職員達からしたら憤慨ものである。実際に書類の遅れや、意図された迂遠な嫌がらせなどの所為もあり、医療スタッフであるロマニでさえサボる事無く仕事に忙殺されている。
彼の場合は他にも色々と準備をしていた為、余計にそう見られているのだが、ロマニはソレが隠れ蓑に成ると考えてそのままにしている。
溜息が漏れるのを自覚しながら、本来の自分の仕事を片付ける。陰鬱な気分に成るのは、秘匿回線で会話した内容が内容である為だろう。
裏切りモノが居る。
つい四日前に、本当なら無い筈の回線での会話だった。各国の諜報員が居るのは許容出来る。此処は魔術師の城であり、人間相手の記憶操作も情報操作もお手のモノで、科学技術に関しても、召喚に応じてくれたサーヴァントのお陰も有ってかなりのレベルだからだ。
そのサーヴァント自体で対処出来ると言う事も有る。
だからこそ、この言葉は重い。そして、マリスビリーが死んだ直後に凍結し、破棄した事にしていた回線が生きた事に感謝した。
恐らくは、上級職員。カルデアの黒い部分を知る、数少ないメンバーが妖しい。
神経を擦り減らす作業と並行して、自身の仕事もこなさなくては成らなかった四日間は正に地獄だった。
(この書類を片付けたら休もう。絶対に休もう。)
レイシフト開始までまだまだ時間は在る。さっさと片付けてひと眠りしても罰は当たらないだろう。
(早く来てくれよライドウ)
尚、本日新人マスターが来る事を此処連日の激務で頭からすっぽ抜けて居た職員が居て、休憩時間を返上して準備をしたらしい。
Side out
かなり時間を巻き戻す。だいたい五日前の話だ。寒空の下、自分達の知る女性の残念具合とドン詰まり感に少々涙しながら顔を覆った後、器港雷堂とロマニ・アーキマンは締まらない顔で別れた。
お互いのする事は簡単な事で、お互いにそれなりに優秀である自覚が在った。
一度、今の家に戻り、従兄弟の衛宮士郎に暫くは冬木を離れる事を告げる。今年で六歳に成る従兄弟の娘は、自分が来る度に「遊んでー」と駆けてくる。ソレを正面から受け止めて持ち上げ、クルクルと回ると可愛らしく声を上げるのだ。
従兄弟の家庭を見ると、幸せと言うモノが何となくだが分けて貰えている気になる。
従兄弟の妻である女性は小柄で、何処か人懐っこい犬を連想させるおっとりとしている女性で、従兄弟がどうやってこの女性とお付き合いする事に成ったのかを小一時間問い詰めたくなるが、帰って来るのは惚気なので追求はしない。
「お腹、大きく成りましたねぇ」
「えへへ、もう8カ月だからね。雷堂君もまた、背が伸びた? まだまだ成長期見たいで羨ましいよ。士郎君も背が高いから、私が隣を歩くと見栄えが悪く成っちゃうから」
此処から、ヒール履いたら躓いて、ソレをそれとなく支えて、歩調を合わせて歩いてくれる士郎君大好きトークが始まるのだから、迂闊に受け答え出来ない。雷堂は背中に冷たい汗を掻きながら言葉を探した。
「男の子でしたっけ?」
「うん。そうだよ、我が衛宮家は安泰なのだ~って藤村先生も喜んでくれてね」
取りとめの無い会話をしながら、通い慣れた家に上がる。
リビングに向かえば、従兄弟が鍋の具合を確認しながら「よっ」と声を掛けてくれる。
普通の家庭の普通の団欒。
他愛の無い会話をしながら、目的を完遂する。鳥と海鮮から出た出汁に舌鼓を打ち、従兄弟の娘にダダをこねられながら、従兄弟の家を後にする。
その時までは器港雷堂は幸せに浸っていたが、後に成って後悔する。電話で済ませれば良かったと…
「若様、宮内庁から御電話が…」
(まって、まって、仕事が早すぎない? ねぇ)
「それと、ヴァンデルシュターム総帥から商談の打ち合わせがしたいとアポイントメントを求める電話が」
(上位死徒ぉぉぉぉぉ!! 白翼公と友好関係ぃぃぃ!!)
「先に宮様方との件に向かう。」
「了解しました。3時に皇居の例の場所でとの事です。それと…」
「総師からは明日の夕方には着くと」
(強制じゃねぇか!! 向こうが喰いつくネタも企画もねぇぞコラ!!)
「格財閥に通達しろ、俺の客だ。無法をしない限り、最善を尽くせ。何か有れば戦争が始まる!!黒磯、父に連絡しろ、協会と教会の調整は任せる。幹部連中は明後日の昼までに集合させておけ、海外派遣組は良い。国内に居る此方側は全部集めろ。」
「はっ!!」
命令を直ぐに行動に移せる優秀な部下の後ろ姿を見送り、雷堂は自分を誤魔化しながら呟いた。
「わーい、今ならおさんかたとえっけんできるぞ~オフロハイッテミヲキヨメナキャ」
これより地獄の4日間が始まり、今に至る。
雷堂は隣から聞こえる気持ち良さそうな寝息を聞きながら、溜息を吐いた。最後のマスター候補(補欠)の情報をロマニ・アーキマンから得られたのは行幸だった。向こうも、裏切り者が居ると言う情報を得られて、在る程度の絞り込みが出来ているだろう。まぁ、個人的には一人に絞られているのだが…
溜息しか出ない。身体は不調を訴え、頭痛が睡眠を妨げる。胃が軋むし、関節も軋む。
隣で眠っている少女は、ホントに同い年になるのかと思ってしまう位に、あどけない寝顔を曝している。
この少女を巻き込む形に成ってしまうのは不本意だが、カルデアが失敗すれば結果は同じかと思い直し。目を閉じ、身体を休ませる事を優先する。
(あぁ、うどんが喰いてぇ)
Side out
もともとが上手い話では在ったのだ。高校を卒業し、滑り止めの大学に入学予定だった春を待たずに、スカウトの話に乗った。考えなしだったとは思うが、世界を見て見たかった。
国連の機関と言うフレーズはとても魅力的で、自分には其処に所属する為の素養が在ると強く話され良い気分に成った。
成ってしまった。英語は何とか聞きとれるレベルで意味は分かるも、発音が悪い所為か話す時は片言の様に成ってしまう。その時点で自分が調子に乗ってしまって居た事に気づき、自己嫌悪に耽る。
カルデアスと言うこの機関は正式な名称は長いのでカルデアで良いよと、気さくなDrが言ってくれた為か、何となく愛着が湧いて来たのが三日ぐらい前の話だ。
Drと言うのは、このカルデアで医師として勤めているロマニ・アーキマンと言う何処となくうだつの上がらない感じの良い人だ。顔も広く、この機関ではそれなりに古い職員との事で、あの気難しそうな所長を愛称で呼び、僕の事を先輩と呼ぶマシュ・キリエライトと言う、男子校出の僕にはちょっと刺激が強い感じの純粋な美少女の主治医との事だ。
ハッキリと言ってしまえば、この二人が居なければ僕は潰れて居たかも知れない。
日本男児として、中学時代に恥ずかしい妄想と言うか、想像をした事が在る。しかし、実際にこの世界にはそう言った力が在ると知らされてしまえば、興味が湧き、好奇心が膨れ上がり、自分は選ばれた者なのだぁーとはっちゃけたくも成ったが…死が近過ぎる。
マスターの資格。それが僕には在るらしい。何のマスターなのかと問えば、英霊と答えられた。
神秘、魔術、儀式、人理、僕がカルデアに来て得た情報は膨大で、突拍子も無さ過ぎて、言葉だけが頭の中に入って来るだけだった。間抜けな質問をしたのだろう。所長は怒ってしまった。
代わりにゆっくりと教えてくれたのは、マシュとレフ教授だ。二人の説明の仕方は覚えやすく、レフ教授の説明はユーモラスが在り、とても面白かった。
「レフ教授の説明は分かりやすくて面白いですね。」
「凄いです。Drとは大違いです。」
「ははは、そうでもないさ。時計塔に行けばロード・エルメロイⅡ世が居るし、ロマニだって真面目にすればとても面白い話をしてくれるよ。まぁ、今後も立香君みたいに一般の人からマスター候補が来るかもしれないなら、講師役を買って出てみようかな?」
特徴的な揉み上げが第一印象に残る教授は笑ってそう言った。教授の説明で、僕は自分が本当の意味で補欠であり、だからこそ知識や技術を学ばなければいけないのだと理解出来た。残念ながら、僕には魔術回路と言うのがちょっとしか無いらしい。それでも、初代に成るのなら多い方だと言われた。
(コレから頑張らなきゃ)
そう思った矢先に、レイシフトの予定が二日繰り上がった。今回は時間が無いと言う事も有り、僕は留守番との事だ。先輩に当たる魔術師の人達は皆がピリリとした鋭い雰囲気を纏っており、中々に話しずらい。
しかし、忙しそうな所長や教授達に聞く訳にもいかず初日は正確な適正検査と健康診断で終わった。
二日目はマシュがカルデア内の案内をしてくれた、運動をする場所も広く、トレーニング器具も充実しており、娯楽品に関してはかなりの数の漫画やゲームが揃えて在った。
日本でも良く見た表紙や海外の物もあり、休みの日なら、此処で1日を過ごせる時間が在ると言うモノだった。
マシュに、どうしてこんなにもゲーム等が揃って居るのかと聞くと
「えーと、コレは寄付の様なモノで…その、別の予算で送られて来たんです。」
「これ、送って来たの確実に日本人だよね?」
「はい、昔、カルデアに所属してた人で…私も良くお話ししたり、ボードゲームでDrと一緒に遊んだりしてくれた人で…」
「へぇー」
「あ、先輩と同じ年か1つ上ですよ? その人」
「えっ?! 何で辞めちゃったの?」
と言うか、その年で所属して働いてたの?
「えっと、Drの話では前所長と仲違いしたって言うのと稼業(魔術サイド)の手伝いでと…」
「稼業?」
「先輩なら知ってるかもしれないですね。器港雷堂って言うんですよ。」
うん?
「…器港? 僕の高校時代にはゲーム業界にも進出して、ソレ以前も建築やら海運やらで有名な?」
「はい、確かそうだったと思います。詳しくは話してくれなくて…あっ、Drなら詳しいですよ? 唯一のお友達だと思いますから!!」
なんで、皆こう…Drをディスる時が有るんだろう? いや、何となくダメな感じの人なのは雰囲気で分かるけど
「そ、そうなんだ。」
「はい。良い人ですよ!!」
ソレは、Drと友人だからなのかと聞きたくなったが辞めた。
「会ってみたかったなぁ。」
「偶に来ますから、その内会えるかもしれないですね。え~と、次は…」
マシュにカルデアを案内されながら、取りとめの無い事を話す。驚く事にマシュはこのカルデアから出た事が無いらしく、器港さんが偶に来た時に色々な国の話をしてくれるらしい。昔はDrと良く旅行に行っていたらしいが、ソレはマシュと出会う前の話で、その時の話は中々してくれないらしい。何が在ったのだろうか?
二日目は案内が終わった後、魔術に着いての講習を受けた。
三日目には神秘や英霊の講習を受ける。英霊…過去の英雄の事。座と呼ばれる場所に登録された人類の抑止。天・地・人に属性が分かれ、英霊、反英霊の弐種に分類される神秘の塊。もっと細かく分けるとメガテンのアライメントみたいのも追加されるらしい。ソレを従える適正を持つモノがマスターに成れるらしい。
日本の冬木と言う場所で10年くらい前に聖杯戦争と言う魔術師の戦争が在ったらしい、そして、その勝者が器港雷堂さんらしい。
レフ教授曰く、鬼才との事。裏社会の二大勢力のどちらにも顔が聞く調停者との事だ。
僕には良く分からないが、魔術師として位も高位の人らしい。この日はレフ教授の補佐として、先輩であるマスターの一人が着いて来ていた。僕が頭を捻っていると、一度咳払いし、補足してくれた。
「君には分かりづらいだろうが、器港氏のお陰で幾つかの学科の研究が大幅に進んだ。コレは進歩であり、魔術の回帰と言っても良い。現代では閉ざされてしまった『異界』の発見と門の開閉の仕方構築、交流が廃れて久しかったアトラス院とのパイプの構築、繋がりが薄くなり、独自の思想で動こうとしていた下部組織の粛清と正常化に…こう言っては何だが外道狩りが主な功績だ。」
異界となんだろうか?
「そうだな、例えばだがアーサー王の伝説にある『妖精郷』も『異界』の一つだ。簡単に言えば伝承に有る今は無い現実に有る神秘の世界だ。」
へぇーとしか言えない自分が恥ずかしく成るが、補佐役の先輩も、レフ教授も、学べばドレだけ凄い事かが分かるよと教えてくれた。何だか、より一層ゲームの世界の話し見たいだ。
なので、思い切って『異界』に行けばレベルアップしそうですねと笑いながら言ったら真剣に注意された。
何でも、紀元前の神秘そのままの場所に行ったら普通に死ぬとの事だ。恐ろしい…アレ? 何で器港さん生きてるの?
その疑問には器港の秘義だろうと、予測を立てているとの事だ。会った事は無いけど、とんでもない人なんだなと思った。
4日目からはシュミレーターを使用しての戦闘訓練の講義だった。1日かけて行われた講義で、僕はやっとの事で指示を出しながら礼装を使用出来るように成った。
そして、本日。先輩方がファーストミッションを行う為の最終ミーティング中にシュミレーターを使用していた所、僕は気を失ったらしい。
マシュに起こされ、近くの空き部屋で休憩しようとふらつく頭で考えマシュに支えられながら、ドアを開けると
「ヴぁ~~…もう疲れた。もう無理ぃ…あ~」
とだらしない恰好でベットに凭れかかる様にして座り込んでるDrが居た。
「Dr? 何してるんですか?」
「えっ? アレ、マシュに立香君。あーそうか、時間が繰り上がったから立香君はお留守番だったね。どうしたんだい? マシュもそろそろ作戦開始の時間じゃ無かったかな?」
「え?あ、本当だ。先輩すみません。私そろそろ」
「うん。ごめん、マシュ。どうやらまだ、脳が慣れて無かったみたいだよ。昨日説明されたのに…。今日はもう、大人しくしておくよ」
「はい。それじゃあ、行ってきます。Dr,先輩。」
そう言って駆けて行くマシュを送り、椅子に座る。
「少しは慣れたかい?」
「本当に少しだけですけどね」
「ははは、ソレは結構な事だ。正直に言って、才能が在っても全くの素人である君の事は心配だったんだ。序にコレから来る子も君と同じ境遇の子だよ? しかも、女の子!! マシュとも上手くやってるみたいだし、両手に花が出来るかもよ?」
笑ってそう言うDr。確かに僕は男子高校出だから、年の近い女の子が増えるのは大歓迎なのだけど。ちょっと自分の態度が心配に成って来た。
「僕ってそんなにがっついて見えます?」
「まさか。君が誠実な人間なのはマシュとの会話を見てれば分かるよ。伊達にあの子の事を診て来た訳じゃないんだからっと、通信だ。」
Drはそう言って、口元に指を当てた。
(あ~…サボりがバレるからかぁ)
コレはディスられる要因の一つだね。うん、ちょっと評価が下がる。
電話越しに聞こえるレフ教授の声には少しの呆れが混じっていた。Drのサボりは日常的なのだろう。
「はぁ~、面倒臭いなぁ」
「いやいや、Drも直ぐに行かないと。五分じゃ着かないですよ今からじゃ」
「ははは、だからどうどうと遅れていくのさ!! ソレに、僕の出番はまだ先なんだよね。それに…」
不意に、Drは立ち上がった。
「待ち人が来たようだ。ギリギリ間に合ったかな? はぁ、よし。立香君、丁度良いから僕等の最高戦力を迎えに行こうか」
「え? 最高戦力ってなんです」
か…と言おうとした頃で、爆発音が響いた。非常事態を知らせるアナウンスが響く。
僕は自分で考える間もなく駆けだしていた。
「ちょっ、立香君?! あーーーもーーー!! 間に合わなかったみたいだよライドウ!!」
マーリンはこなかったよ。チキショウ
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
オルガマリーは保身に走る。
かなり削ったけど中途半端です。
堅い椅子に長時間座っていた影響か、体中から骨が鳴る音が聞こえる。
飛行機を降り、荷物を受けとり、ロビーを出ると、まだまだ冷たい風がピュウと吹いた。
「うぅ、寒い…えっと、迎えの人は…っと」
そう、声に出し辺りを見回そうとした瞬間に声を掛けられ、反射的に飛び引いてしまった。
「藤丸立夏だな」
スーツ姿の男が真後ろに立っていた。あれ?私飛び引いたよね?
「往くぞ。時間が無い。」
掴まれた腕を引っ張られ、止まっていたタクシーに放りこまれる。声を出す暇も無かった。寧ろ、声を出したら殺されると思った。一抹の希望を込めて運転手を見ると、細長いグラサンに金髪の兄ちゃんが笑って言った。
「行き先は?」
「変わらん。」
「障害は?」
「無理なら車を捨てるだけだ」
「ヒュー、昔から変わんないな。アン時を思い出すよ」
何だか、私は置いてけぼりで映画みたいな掛け合いが?!
「それじゃ、舌噛むなよ!!」
急に加速した車、乗っていた私は背凭れに身体を押し付けられる感覚に気持ちが悪く成る。
「あ、あの」
ヤバい、怖い。威圧感が凄い。イライラしてるのが手に取る様に分かる。
私の声に反応してくれたのか、私の隣に座る男は溜息を吐きながら声を出した。
「すまないな、君をあのままにして置いたらカルデアには辿り着けなくなってしまうのでね」
え?
「さぁ、混乱している君にも直ぐ分る様に今の状況を説明しよう。アイスソード」
「殺してでも奪い取る。分かりました。つまりは裏切りが在って狙われていると」
この人、愉快な人だ。
「年代からは外れていると思ったんだけど?」
「いやいや、今時の子なら分かりませんけど。私、ゲーム好きだし、テンプレも有りますから。」
「おーい、俺は分からないんですけどー」
金髪の兄ちゃんが楽しげに言い返して来るが、視線は前に固定されている。と言うか、スピードが洒落に成らないんですけど!!
「安心しろ、そいつはハリー、元CIAな上に代行者だ。身体能力もだが、運転技術等もずば抜けてる死にぞこないだ。」
「CIA?! 代行者?」
前者は分かるけど、後者は何? 何だか左の脇腹がぎゅんぎゅんするんですけど?
「時間は?」
「三十分でポイントAだ。其処からは…」
「全力だな。荷物は頼むぞ?」
「OKOK」
「さて、緊急事態だ。類稀なる素質のマスター候補君。世界の終わりが確認された。人の積み重ねてきた歴史が無に帰された。待つのは誰もが認識できない消滅だ。」
「は、え?」
いやいやいや、えっと・・・え?
「君に残されたのは抗わずに誰かが解決してくれる事を待つか…抗って、序に世界を救ってしまうかだ。どっちが良いかな?」
「で、出来れば・・・」
お、女は度胸!!
「世界を救う序にやらかした奴をはたきたいです。はい。」
こうなりゃ自棄だ!! 往く所まで往ってやる!!
私の就職先は一体どうなってるんだ!!
Side out
Side 器港雷堂
昔馴染みの腐れ縁の迎えに同僚(予定)の確保。その後に足止めの罠を食い破ってカルデアに到着してみれば爆発音。
「こりゃぁ、(他のマスター達は)ダメかも知れんね」
フフフ、地獄を潜りぬけた先は地獄でした。
カルデアに着いても個人照会に時間が掛かったのが痛い。ロマニの野郎、新人の登録と照会で何で模擬戦させるんだよ。畜生が…
「おい、ライドウ。お嬢ちゃんが放心してるけど良いのか?」
「構わん、歩いて着いて来れてる。死にはしない。寧ろ、これからの方が死ぬ確率が高くなる。」
まぁ、来る途中であんな事が有ったのだ。放心もするだろう。
「ハリー」
「ん? あぁ、アトラス院のお嬢ちゃんなら大丈夫だ。部屋も確保してるって連絡は貰ってる。アンタの息の掛かってる人間のホウレンソウは確かだよ。こっちに鞍替えして正解だったさ。」
じゃなきゃ、死んでる。
その呟きは聞かなかった事にして、管制室に向かう。慌ただしく成っている局員達の中には顔見知りが多く、人の姿を確認した瞬間にはその動きを止めていた。
その中の一人に声を掛ける。
「状況は」
「え、あ、レイシフトの直前に中央発電所・管制室で火災発生!! 中央区画は30秒前に閉鎖されました!!尚、中央管制室の火災は爆発物が使用された模様!!」
「予備電源は?」
「Drロマニが手動で切り替えに成功。カルデアスの無事は確認していますが…」
「コフィンに入ってる連中の生命維持を優先。命だけは失わせるな、身体の欠損は後からどうとでも成る。」
「しかし!! 」
「既に俺も部外者ではない!!今現在、俺とロマニ以外に指示を出せるだけカルデアスを把握している人間が居ると思うのか!!」
「い、いません!! ですが…」
「後からちゃちゃ入れてくる奴は黙らせる!!」
「分かりました。」
「俺は管制室に行く。ハリー、他の奴らと協力しろ。既に此処以外は無いだろうよ」
「はいはい、これからは雑用係として頑張りますよ」
はぁ・・・気が重いってレベルじゃないんだけど。
管制室に向かう足取りは重いが、後ろから無言で着いて来る少女は未だに放心している。恐らくだが、神秘に当てられたのだろう。
カシュっと空気が抜けるような音と共に管制室の扉が開く。
「あっ、くそ!! 電源が!! マシュ!!立香君!!」
「はい」
「え?」
「お前じゃ無い。ロマニ、急患だ、軽く見てやれ、最後のマスター候補だ。」
「ライドウ?!遅いよ!!何してたんだ!!」
五月蠅い、こちとら不眠不休だぞコラ
「状況は把握した。こっちは俺が、一時的に預かる。お前は言った通りにしてから戻って来い。」
「わ、分かった。あ、マシュは成功したようだよ。向こうに居るマスター候補も誠実で真面目な元一般人だ」
「そうか、ソレは何よりだ。」
誘導しやすい。ロマニは藤丸立夏に声を掛け、医務室に向かった。
「さて、各員状況報告!!」
声を張り上げ、顔を上げる。慌ただしく報告して来る知ったと、知らない顔を確認しながら、痛く成る頭を抱え込まない様に目の前の問題に対応する事にした。
Side out
Side 藤丸立香
燃え盛る町の中、どうしてこうなったのだろうと思ってしまう。こう、考えられるのは周りが廃墟だからなんだろう。此処には人が暮らしていたと言う気配が驚くほどに無い。
嘗ては人で賑わっていただろう町はただただ、瓦礫と焔に包まれている。
「先輩、先輩!!」
「あ、ごめんマシュ。ちょっと考え事してた。」
「いえ、大丈夫ならそれで良いのですが…どうしましょうか?」
「どうしようか?」
目下の問題は
「なんでどうして来ちゃってるのよ?大体から来るなら二日後の筈でしょ?いや、来て欲しく無かった訳じゃないけど来たら来たで国家間での問題があるし、あああああでもこんな状況じゃアイツが居た方が協会にも教会にも顔が聞く上に問題解決の糸口に成るしどうしたら良いのよもーーーーーーー!!」
荒ぶる所長をどうしたモノかと言う事だ。
そもそもの問題は、マシュのマスターに僕が成った事なんだろうけど・・・元々がプライドの高い人だし、そんな中で居るのが元一般人のペーペー魔術師兼マスターの僕一人と言うのがいけないのだと思う。
だが待って欲しい。僕は知識も技量も半人前ぐらいだが、その両方を持ってる所長が居る事は現状救いに成るのでは? と考え、レイシフトする直前にDrが言って居た最高戦力なる人物が来たと言う、僕が知る限りの吉報らしき情報を伝えただけなのだ。
「余計な事を言っちゃったかな?」
「いえ、戦力の把握は所長の義務だと思います。今この場に居る人間でも一番階級の高い人ですし」
「そうよ!! 私が一番偉いの!! カルデアの責任者なの!!でも、アイツは在る意味でそれ以上なのよ!!いやーーー!! 死にたくなぁーい!! 死にたくなぁーい!!アイツ率いるキチガイ集団何て敵にしたくないのよ――――!!!」
所長がキレッキレだ!!
「此処まで取り乱した所長を見るの…初めてです」
「あ、此処までじゃ無い事は結構在るんだ?」
「はい、普段はDrか、レフ教授が居ますので…」
あのDrって結構重要だったんだ。サボリ魔かと思ってたよ。と、言うか。マシュ、僕の心を読めるの?
「あ、いえ。不完全な念話の様です。恐らくですが、先輩の表層意識で考えている事等が流れて来ているのかと」
「パスは繋がっている様ね!! 藤丸!! シャンとしなさい!! 魔力を絞って、回路は全部起動させない!!」
「は、はい。」
意識を落ちつけ、集中する。
「あ、聞こえなくなりました。成功です、先輩。」
「ありがとうございます、所長。」
「ソレ位良いわよ。叫んだら落ち着いたし。それじゃあ、早速…いや…うーん」
落ち着いた様子の所長が急に難しい顔をして唸り始めた。
「ど、どうしたんですか?」
「いや、やっぱり…よし。藤丸、講義の時間よ。貴方は冬木は初めてでしょ?」
「はい、そうですけど…」
「此処では無く、教会に拠点を構えるわ。急ぐわよ。」
まって、そんな事言われても右も左も分からないんですけど!! 所長?!
「先輩、捕まってください。流石は時計塔のロードの一人、強化魔術も一流です。」
「え、マシュ? 掴まれって、速っ?! 所長速いですよぉぉぉ!!」
僕の声は走るマシュに担がれ間延びしていった。
どうしよう、訳が分からない事ばかりで不安どころか、ちょっと楽しく成って来た。
Side out
Side 藤丸立夏
未だにふわふわとしている頭が、現状を認識する事を阻んでいる。それが自覚できるのは落ち着いているから・・・と、言う訳ではない。寧ろ、未だに混乱の渦中に在るのだろう。
では、こうして考えているのは何かと言えば、混乱している自分なのだ。混乱し過ぎて、逆に落ち着いているのかもしれない。
今、私の目の前に居るふわっふわな髪をしている人辺りの良さそうだが、八方美人っぽいヘタレな感じの男が話しかけてくる。
「はぁ、それじゃあ確認からしよう。君の名前は?」
名前? 私の名前・・・アレ? 私は・・・
「ふ、藤丸立夏?」
「うん、そうだね。字はどう書くんだい?」
私は今、言葉を話したのだろうか? 否、私は・・・私の声はこんなにもしゃがれて居ただろうか?
「藤の花の藤に日の丸の丸、立つって言う字に夏って書きます」
「へぇ、僕は藤の花って言うのは見た事は無いんだけど、どんな色をして居るんだい?」
藤・・・藤の花? 色は、薄い紫で・・・
「紫で小さい花弁が・・・ん? あれ? 何で花の話し何か・・・うわっ?! 貴方誰?! ハリーさんは?! 師匠は?! あれ?」
私は今、何処に居るの?!
「よし、戻って来たね。僕の名前はロマニ・アーキマン。カルデアの医療班のトップさ!!どうやら神秘酔い・・・いや、魔力酔いをしてたみたいだね。」
コレは、相当な妨害が有ったみたいだね。
と小さく吐いた言葉に、記憶が鮮明に蘇る。
A地点と呼ばれた場所に到達した私達を待って居たのは、猿と犬を足した様な化け物だった。一m程の全長、四本の足に犬の顔に背中から猿の胴体の上をくっつけた様な異様な獣に襲われた。
ハリーさんが柄の短い直剣を投げ、すぐさま撃退したと思われたソレは、血風を撒き散らしながら、爆発し、仲間を呼び寄せた。
師匠は眉間に皺を寄せながら死徒化の呪法を不完全に混ぜたとか何とかと言って、私を抱き抱えて駆けだした。
人生で初めての異性からのお姫様抱っこである。トゥクンとは成らなかった。後ろを振り向けば何か、肉片がうぞうぞと蠢きながら再生、そして増える。初めて、声に成らないと言う表現が合う悲鳴を上げた。
ハリーさんが蹴散らしてたが、何と言っても数が多い。と言うか、二人の走るスピードが尋常じゃない。雪山の道無き道を、しかも登りを山の神を越える速度で、余裕を持って走るのである。揺れが全然来ないし。
「あの、師匠は?」
「寧ろ、何でライドウを師匠と呼んでいるのかを僕が聞きたいんだけど?」
「えと、魔術回路? とかを開くのを走りながら手伝ってくれて、宝石呑み込まされて、強化を走りながらして、筋が良いらしくて…」
言葉が、言葉がでない?!
「それで、何か犬と猿の化け物を、三百万のルビーが大爆発で、爆発四散したら、山の中腹を過ぎたあたりで、焔のお人形が凄くて?!」
「あぁ、うん。分かった。落ち着いて。ライドウが火精をブッ飛ばして、そのまま走って来たんだね?」
「はい!! 最後に荷物の中に入ってたボルシチの缶詰が鎮火しました!!」
「ボルシチ?! なんで!!」
あ、何か、目の前で混乱してる人が居ると落ち着いて来た。
(そう言えば、あのボルシチって先輩がくれた奴だったなぁ)
私は目の前で混乱しているロマニさんを眺めながら、そんな事を思い出した。
そっか、カルデアに着いたのか。・・・?! 速く師匠の所に行かなきゃ!!
「ロマニさん!! 速く師匠の所に行かなきゃ!!」
「うぇ?! そ、そうだね!! て言うか君結構凄い事してるね!!」
私は、何か驚いているロマニさんを急かして、師匠の元へ向かう事にした。お願いしますから、呑み込んだ宝石の値段を聞かせて下さい。金額が怖いです。
意識がはっきりとしてから、確認するカルデアと言う場所は近未来的だなと思った。ライトノベルとかで見るSFみたいな感じだ。綺麗な廊下を少ない数の人員が走り回っている。聞こえてくる声は管制室がどうたら、中央区画の防壁がどうだとかと、映画の世界に迷い込んでしまったかのような単語が飛び交っている。
別の世界に踏み込んだんだと、自覚する。多分だけど、今までの常識とかは全部一旦置いておいた方が良い。そう思う。此処に来るまでが既に、非日常だったのだ。
だけど、私は幸運なのだろう。此処まで案内してくれる人が居た。
そして、その人はこれからも色々と教えてくれるんだと思う。
ロマニさんの後ろを着いて歩き、カシュっと空気の抜けるような音と僅かな駆動音と共に、その部屋の中に入った。
ピリピリとした空気の中、その人は腕を組んで立って居た。そして溜息を一つ吐き
「おい、ロマニ。マリー姉のヤツ、自分なりに動き始めたぞ」
「嘘?! あのマリーが?!」
どうしよう。この職場は案外楽しそうだ。
Side out
Side 器港雷堂
情報を纏め、各自に指示を出し、連絡が通じるのを待つが、予測された時間を大幅に超えた。
何か不測の事態があったのかと、皆が胆を冷やしながら焦りを見せ始めた。その時に、ロマニが藤丸立夏を連れて戻ってきた。
「おい、ロマニ。マリー姉のヤツ、自分なりに動き始めたぞ」
「嘘?! あのマリーが?!」
ロマニの言葉が俺の本音でもある。
あの小心者で自尊心が強く、臆病な姉気分が自分から行動を起こす。コレは考えてもみなかった。混乱して、新人君達に八つ当たりしてる位は考えていたが、まさか自分から行動するとは…
「あ、多分だけど。この間、ライドウと在った時に冬木のリサーチはしてたみたいだから、もっと安定してる霊脈の在る所に移動したのかも?」
「ソレは俺も考えた。」
お互いに周りに聞こえる様に言う。あの三人は生きていると押し付ける様に。
「だがな、霊脈が安定している所だと…」
「うん、何かしらの罠や、敵が居ると思うんだけど…マシュがデミ・サーヴァント化しちゃったからちょっと強気に成っちゃてるのかも?」
「だろうな。はぁ、ロマニ此処の指揮権はお前に返す。藤丸立夏に戦闘用霊衣と礼装を渡せ、三時間後にレイシフトする。」
「いやいや、中央管制室はご覧のあり様だよ?! 何処からするのさ!!」
阿呆が、敵対者に一番狙われるであろう物のサブ位は用意してるに決まってんだろう。
「サブを用意している。レオナルドが此処に居ない、分かるな?」
「あ、そう言えば居ない。と言うよりサブって在ったの!!」
「用意してるさ。独断じゃないぞ? マリスビリーの同意の元に念の為に俺の私室の地下に四つ用意して在る。俺も、アイツもソレ位考えてる。」
「わ、分かった。マリー達と連絡が取れ次第連絡する。ナビゲートは任せてくれ、えっと…立夏ちゃん? これから三時間で色々詰め込まれると思うから覚悟して。そして、レイシフトしたらライドウの指示に従ってくれ。そっちの方が生存率は跳ね上がる。」
「はい!! 師匠宜しくお願いします。」
元気だなこの子。
(あぁ、ハイに成ってるな。緊張の糸が切れないようにプレッシャーを与えながらの方が良いか。)
そう考える。何よりも、恐らくだが、この藤丸立夏と既にレイシフトしている藤丸立香。この二人は人理が選んだマスターだと思われる。
(抑止が足掻いたか? いや、それなら守護者が既に働いている筈。そして、今みたいな事態には成って居ない。ならば・・・)
偶然でも奇跡でも無い何らかの必然が働いている。
レイシフトしている方の藤丸も確認しなければ分からないが、資料によれば、この二人はマスター適性は同率でトップだ。それだけのモノを秘めている。
こいつ等は、恐ろしく育つだろう。あぁ、今から後の事を考えるだけで胃が痛くなりそうだ。
取り合えず、礼装の使い方と此処に来るまでに使わせた強化の反復をさせよう。召喚はまださせない方が良さそうだ。マリー姉達に合わせた方が良さそうだな。
だからな、恥ずかしがるな。身体の線がダイレクトに出るのは製作者の趣味だ。俺の趣味じゃない。
潤んだ目でこっちを見るんじゃぁない。ドレだけ見ても戦闘用霊衣はソレだ。
庇護欲を湧かせる様な事をしても無駄だ。だってソレしかないんだもの。
次回、謎の天才現る。立香君プロットを破壊する。です。
目次 感想へのリンク しおりを挟む