ザ!鉄腕/fate! YARIOは世界を救えるか? (パトラッシュS)
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クランの大工

 

 ケルト神話。

 

 この話の一つの中に出てくる有名な英雄がいる。

 

 父は太陽神ルー、そして、母はコノア王の妹デヒテラ、幼名はセタンタという。

 

 しかし、この話に出てくる英雄であるはずの彼は少し事情が変わっていた。何故ならば、彼には生まれる前の記憶がちゃんとあるからだ。

 

 

「はぁ…腹減ったなぁ」

 

 

 彼は名高いアイルランドの大英雄。

 

『クランの猛犬』と呼ばれていた筈の彼だが、このケルト神話ではもう一つのあだ名で彼はこう呼ばれていた。

 

『農家の申し子』と。

 

 そう、前世は知る人ぞ知る農家だった、いや、今もなお、その気持ちはあの頃の仲間達と会いたいという気持ちが日に日に強くなるばかりだ。

 

 セタンタ・シゲル。

 

 それが、今の彼の名前である。シゲルという名前だけは時を越え、転生しようとも彼は辛うじて覚えていた。そして、自分が何者であるのかを。

 

 彼の頭の中にあるのはただ一つだけ、失われた仲間達を集め、YARIOを結成するという使命だ。

 

 

「おー! しげちゃん今日も門番かい!」

「せやでー、北登の代わりやからね!頑張らなあかん!」

「はっはっは! 流石はクランの猛犬だ! 頼もしいね!」

 

 

 なぜ、彼が家の番犬の代わりをしているのか?

 

 それは、クランの自慢の番犬の名前を北登と名付け、セタンタは可愛がっていたのである。

 

 だがある日、北登は謎の流行り病で亡くなってしまった。

 

 そんな自慢の番犬を謎の流行り病で失い悲しむ飼い主のクランを見かねて北登の子供が立派な番犬に育つまで代わりを務めるとセタンタはクランに誓いを立てたのである。

 

 そういう経緯で、その北登の子犬が立派に育つまで、代わりにセタンタはこうして今日も今日とてクランの家を守っている。

 

 獰猛なクランの猛犬を手懐けたセタンタは村人たちから尊敬され、さらに、そんな獰猛なクランの猛犬の代わりになりクランの家を守る姿からクー・フーリンと呼ばれた。

 

 しかし、彼は敢えて皆には『リーダー』と呼べと言う謎の異論を唱えた。

 

 だが、皆の呼び名に定着したのが幼名のセタンタ・シゲルからとった『しげちゃん』という名前である。

 

 もちろん、好んでクー・フーリンと呼ぶ者もいるが、彼を良く知る者は親しみを込めて『しげちゃん』の名で彼を呼んだ。

 

 クー・フーリンの前を通過した村人は門番である彼に手を振りながら、その場を離れていく。

 

 

「あ、せや、確かそろそろ補強せなあかんとこがあったな」

 

 

 そして、クー・フーリンはポンと手を叩いた。

 

 思い出したとばかりに彼は行動をしはじめる。まずは大工道具を取り出しはじめる、これがクランの家を守る彼の仕事の一つだ。

 

 それが、木造建築の知識を活かした家の補強である。そう、番犬代わりだけではない彼はクランの家自体を守っているのだ。

 

 過去に学んだ匠の技を存分に発揮して、クランの自宅の傷んだ箇所などを手早く直していくその姿は『クランの猛犬』というよりは『クランの大工』である。

 

 たとえ、台風、嵐、大雨が来ようともビクともしない家づくりを心がけ、腕をさらに磨く事数年。

 

 セタンタ・シゲルのその技は前世よりも増して磨きがかかっているようだった。

 

 

「ふぅ…こんな感じでええかな?」

 

 

 気づけば見事な木材の補強が完了している。

 

 クランは後々こう語る。

 

 一家に一台、彼が居ればその家は安泰であると、料理はプロ並み、土の知識には詳しく、それでいて建築は匠の業。

 

 これだけのなんでもできる優秀な番犬が他にいるだろうか、クランは改めてセタンタ・シゲルという存在に大喜びした。

 

 しかし、彼とクランにも別れの時がやってくる。

 

 それはクー・フーリンが成人を迎えたその日、彼はある決意をクランに打ち明けた。

 

 

「クランのおっちゃん。僕は仲間を探しに行こうと思う」

「仲間…?」

「せや、仲間達やこの世界の何処かにきっといるであろう仲間。僕はその仲間達を見つけに旅に出ようかと思っとるんや」

「…なんと…、旅に…。いや、しげちゃんならきっとどんな困難な事でも成し遂げられると思う、今までありがとう」

「クランのおっちゃん…! おおきにな!」

 

 

 もう、北登の子供は大きくなった。

 

 ならば、もう誓いは果たされたのである。だが、2人の間には誓いというだけには大きな絆が出来上がっていた。

 

 豪商クランと抱き合い別れを惜しむクー・フーリン。クランはまるで、自分を息子のようによく可愛いがってくれた。

 

 仲間達を見つけたらクランの元にまた訪れよう、そして、彼の為に立派な納屋を建てるのだ。

 

 成人したセタンタ・シゲル、クー・フーリンは彼との別れを惜しみながら仲間達を探すための旅に出た。

 

 旅はかなりの困難を極めた。

 

 仲間達を探すといっても手掛かりがない、彼はどうしたものかと寄る村で度々畑を耕しては広大な農園を作るのを手伝い、食事を村人たちに振る舞い毎日を送っていた。

 

 そして、彼はある時、村人の1人からある助言を受けることになる。

 

 

「良く魚が釣れる疑似餌の作り方だが…こうしてだな」

「すごく…勉強になる…」

 

 

 それは、魚が良く釣れるようになる疑似餌の作り方だった。

 

 だが、本来の目的はそこではない、そう、彼は仲間達を探すために旅に出たのである。

 

 確かにこれも貴重な話で食料を確保するにはクー・フーリンには大変良い勉強になったのだが、YARIOとして仲間達を集め再び結成する為に必要な情報ではない。

 

 何処に行けば彼らに会えるのだろうか。

 

 リーダー、リーダーと呼ばれていたあの時、無人島、村を共に開拓しそして、様々な村や集落を回った事を彼は忘れてはいない。

 

「どうにかせなあかんのはわかってんのやけどどうしたら良いんやろうか」

 

 クー・フーリンは釣竿を垂らしながらそんな風な事を1人で考えていた。

 

 仲間達を探す為の手掛かりを見つける。それは思いの外、大変な事だったと改めて痛感させられた。

 

 自分1人ではやはり出来ることが限られてくる。仲間達が居た時はあんなにたくさんのものを得られていたというのに自分1人の情報網だとこのザマだ。

 

 

「ホッホッホ、釣れとるか? 旅人よ」

「おー! こんにちはやな、爺ちゃん! 見ての通りそこそこ釣れとるで! これ、さっき釣ったんやけどいる?」

「ホッホッホ! 貰っておこうかの?」

 

 

 そう言いながら近づいてきた爺ちゃんに釣った魚を手渡すクーフーリン。

 

 すると、お爺さんはクーフーリンから手渡された魚に満足した様子で釣竿を垂らす彼の隣に座るとこんな話をしはじめた。

 

 

「ワシはこう見えてドルイドでの? 魚の礼だお前さんの道を占ってしんぜよう」

「ドルイド?」

「まぁ、占い師みたいなもんじゃよ」

「ホンマか!? いやー、占いなんてするの初めてやわ! それじゃお願いしようかな?」

 

 

 そう言って、クー・フーリンはドルイドと名乗る老人から占いを受けることになった。

 

 もしかしたら、仲間達を見つけるきっかけになるかもしれないとそう思ったからである。真剣な表情で占いをはじめる老人をクー・フーリンはジッと見つめる。

 

 占いを終えた老人は真っ直ぐにクーフーリンの手を掴むと静かに頷き、こう話をしはじめた。

 

 

「今日騎士になるものはエリンに長く伝えられる英雄となるが、その生涯は短いものとなるだろう…」

「ほうか…」

「今のが予言じゃ、それで、お主はどんな道を行く?」

 

 

 そう言いながら、老人は真っ直ぐにクー・フーリンの目を見つめた。

 

 老人には確信があった。きっとクーフーリンは騎士になり、名だたる英雄となるだろうという事を…。

 

 しかし、クー・フーリンはしばらくその予言を聞いた後、うーんと首を捻りしばらく考えた後に老人にこう語りはじめる。

 

 

「騎士になったらユンボとクレーン車の資格取れるんかな?」

「…………ゆ、ユンボ? クレーン車?」

「んー、せやけど僕は仲間を探しとるからねー」

「…き、騎士団に入ればきっと英雄にはなれるぞ?」

「英雄かぁ…せやなー、よし! 決めたわ!」

「おぉ! 騎士になるのか! 若人よ!」

 

 

 老人はバシンと胡座をかいていた足を叩き立ち上がるクー・フーリンの言葉を聞いて目を輝かせる。

 英雄と呼ばれる男の誕生をこの日、目の当たりに出来る。それだけで、予言を話した老人は嬉しく感じた。

 そして、決心を固めたクー・フーリンは老人に目を輝かせたまま嬉しそうにこう語る。

 

 

「僕はアイドルになろうと思う!」

 

 

 老人はクー・フーリンの発した拍子抜けする一言に盛大にずっこけた。

 

 ここまで、騎士になる流れの話をしていたにも関わらず、アイドルという謎の言葉には全くどう反応していいかわからない。

 英雄になれるという予言を盛大に蹴り、彼はアイドルを目指すという奇行に走ろうとしている。これは、流石の予言者である老人も度肝を抜かれてしまった。

 しかし、ここで予言者である老人も折れるわけにはいかない、最後の悪あがきと言わんばかりにこうクー・フーリンに告げた。

 

 

「そ、そうか…、なら影の国に行くと良い、そこにきっとお主の力になる者がおるはずじゃ」

「ホンマか!? 仲間達に会えてしかもアイドルになれるんか!」

「…あぁ…、多分な」

 

 

 老人は目をキラキラと輝かせて顔を近づけてくるクー・フーリンにもうヤケクソ気味に顔を逸らしながらそう告げる。

 どうしてこうなったのか、全く見当もつかないがどうやら、クー・フーリンは影の国に向かうということになった。

 彼は助言をくれた謎の老人に手を振りながら上機嫌に村人から貰った自分の愛馬である道子に跨る。

 

 愛馬の由来はかつて『道草を食いながらどこまで行けるか?』という挑戦で北海道で出会った白い道産子である馬の名前から取った名前である。

 

 この馬もまた道草を食いながらクー・フーリンの旅を支えてくれている。

 

 

「そんじゃ、爺さんありがとな! 今度、寿司作って恩返しに来るから!」

「お、おう、気をつけてな、…寿司ってなんじゃ?」

 

 

 こうして、クー・フーリンはひとまず彼がいう通りYARIOを結成してアイドルになる為に影の国を目指し、道子と共に旅を開始する。

 

 旅の最中、愛馬の道子にクー・フーリンは道中立ち寄った村の農業を手伝い村人達から譲り受けたチャリオットを引っ付けたり、食料を譲り受けたりして、非常に周りの村々から感謝されていたとか。

 

 手を振る老人に満面の笑みで手を振り返すクー・フーリン、仲間達を探し出し、YARIOを目指す彼の旅はまだ始まったばかりである。

 



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新たな師

 

 

 影の国。

 

 そこは女王スカサハが統治している冥界、魔界とも呼ばれている国だ。もちろん、そこに至るまでには多大な困難が待ち受けている。

 

 道子と共にそんな困難な道のりを越える我らがリーダーことクー・フーリンは途中で道子達を預け、1人でその国を目指した。

 

 立ち塞がる数々の難所、しかし、彼は諦めなかった。全てはYARIOになる為、仲間達と再び再会する為、影の国を目指した。

 

 鍬を担ぎ、金槌を腰に提げ、タオルを頭に巻き、青い農作業着を着た彼は汗を垂らしながらひたすらそんな困難から逃げずに戦った。

 

 

「はぁ…、はぁ…。これは石橋作った時並みにしんどいなぁ…、けど! 頑張らな!」

 

 

 リーダー、クー・フーリンは折れずに立ち向かう。

 

 そこには、再び仲間達と様々なチャレンジをしていきたいという願望があったからだ。YARIOを結成するという大きな使命が彼にはあった。

 

 そして、困難な道の果てに彼の頭には自分を奮い立たせる言葉(テロップ)が蘇ってきた。

 

 ーーーー気持ちは分かる。

 

 嵐が荒れ狂う海であっても彼は自分が作った船である『つれたか丸』で乗り越えて行く、自分の夢を叶える為に。

 

 そして、彼は遂に幾多の苦難を乗り越えて影の国へとやって来た。

 

 困難な道をひたすらに歩み、辿りついた彼を出迎えたのは長い紫髪を靡かせ、身体のラインが綺麗に映るピッチリとしたタイツのような服を着たミステリアスな赤目の美女だった。

 

 

「…ほぅ…、あの苦難の道を越えてくるとは…なかなか見どころがあるなお主」

「…め、めちゃしんどかったです…」

「して、何の為にこの影の国に足を踏み入れた? 力を欲してか?」

 

 

 そう告げる美女は幾多の苦難を乗り越え、力尽き地に倒れるクー・フーリンに問いかける。

 

 しかし、クー・フーリンは満足げな表情を浮かべていた。幾多の困難も苦難も仲間達と会えるのなら安いものだと彼は思っているからだ。

 

 それは、己の夢の為、そして、これまでの苦難も心が折れず乗り越えてこれたのは唯一の望みであるYARIOを結成するという希望をクー・フーリンが持っていたからである。

 

 疲労困憊、だけれど満足感を得た表情を浮かべたクー・フーリンは美女にこう語りはじめる。

 

 

「おっさんにはやっぱりきつい道やね、お姉さんもうちょっと道整備した方がええと思うよ」

「…いや、お前はどう見てもまだおっさんという感じではないだろう」

 

 

 そう告げる美女はため息をつき、その場で胡座をかいて座るクー・フーリンを真っ直ぐ見据える。

 

 なるほどなと、クー・フーリンを見た彼女はすぐさま悟った。その鍛え抜かれた筋肉(農業or建築で)、逞しく力強い眼、確かに彼、クー・フーリンには英雄になれる素質があった。

 

 ならば、ここに来たのも納得できる、力を求めて彼はここにやって来たのだろう、そうだとも、そうに決まっている。

 

 力を求め、私に指導して欲しくて、この影の国までこんなにボロボロになりながらやって来たのだとスカサハはそう思った。

 

 

「よし、今日から私はお主の師匠だ、良いな? お前の名は何という?」

「あ、クー・フーリンって言います! んー、けど、しげちゃんとかリーダーとか呼ばれてるんでしげちゃんでええですよ!」

 

 

 そう言いながら、顔を照れくさそうに擦るクー・フーリン。

 

 そんな彼の言葉を聞いた美女は不思議に思った。クー・フーリンなのにしげちゃん? 全くもって名前に関連性が無い、一体どういうことなのかと彼女は首を傾げたまま彼にこう問いかけはじめる。

 

 

「…しげちゃん?」

「僕の幼名がセタンタ・シゲルなんで、親しい人はしげちゃん呼んでるんです」

「そうか…ならば、私もしげちゃんと呼ばねばなるまいな。私の名はスカサハ、この影の国の女王だ」

 

 

 そう言って、スカサハは倒れていたクー・フーリンの手を握り立ち上がらせる。

 

 英雄になる人材をいつまでも地べたに座らせておくわけにはいかない、そう、これからは自分が鬼のように彼を鍛えて何度も彼は地べたに這う事になるのだから。

 

 スカサハはふと、手を握りしめたクー・フーリンの姿を見ながら期待をかけていた。この男は立派な英雄になると。

 

 だが、クー・フーリンはというと、そんな、スカサハの思惑とは全く違うことを考えていた。

 

 

「…そうか、僕もここでYARIOになれるんか…、みんな待っとれよ、絶対迎えに行くからな!」

「ん? YARIO?」

 

 

 クーフーリンの発した言葉に思わず目を丸くするスカサハ。

 

 何かがおかしい、彼は英雄になる為にこの影の国を目指していたのでは無いのかとスカサハは思わず首を傾げていた。

 

 だが、クー・フーリンはスカサハと同じく首を傾げたまま、彼女にこう問いかける。

 

 

「え? 僕、ここでYARIOを結成できるって聞いて来たんですけど…」

「YARIO? なんだそれは? お前は力を求めて来たのでは無いのか?」

「いや、失われた自分の仲間とYARIOを結成する為に来ました」

「………………」

 

 

 スカサハはキリッとした表情で真っ直ぐに目を見つめて告げてくるクー・フーリンに思わず言葉を失う。

 

 YARIO…。YARIOとはなんだ? 新しい騎士団か何かだろうか? いや、しかし、YARIOなど聞いたことも無い、YARIOとは一体なんなのだ。

 

 スカサハは人を超え、神を殺し、世界の外側に身を置くが故に得た深淵の知恵を持つ。

 

 そんな、スカサハも知り得ないワードが陳列していれば彼女とて混乱もしてしまうだろう。長年、生きて来たがこんな人間に会うのは初めての出来事だった。

 

 

「ちなみに師匠はクレーン車とかの免許とか持ってます?」

「…ク、クレーン車?」

「あ、クレーンじゃ無い方でしたか! シャベルかユンボでしたかね?」

「…………………」

 

 

 そう言いながらキラキラと目を輝かせるクー・フーリン。

 

 しかし、師匠と言い切ったからにはそれらを持っていなければいけないのだろうかとスカサハの思考が一旦停止する。

 

 もちろん、スカサハはそんなものは持っていない、この時代にそんな免許を持っていたとしてもどこで使うというのか。

 

 しかし、自分が師匠だと言い出した手前、弟子の期待を裏切るわけにはいかない。

 

 そうだ、彼を鍛えると言い出したのは自分だ。しかも、彼は満更でも無さそうにこんなに純粋な瞳で自分を見ている。すると、スカサハから弟子にすると言われたクー・フーリンは懐かしそうに昔を思い出しながら彼女にこう語りはじめた。

 

 

「師匠かぁ…、懐かしいなぁ…。村の開拓以来かもしれんなぁ」

「村の開拓以来?」

「あ、僕の前の師匠でね! 実は…」

 

 

 そこから、クー・フーリンは自分の前世での記憶や経緯、仲間達との事やらを含めて新たに師匠となったスカサハに語りはじめる。

 

 失われた自分のメンバーを集める事、そして、YARIOの仲間達を結集し、新たな挑戦に挑みたいという野望があるという事。

 

 そのクー・フーリンの話を聞いたスカサハは頭がだんだん痛くなって来た。まさか、こんなぶっ飛んだ英雄の卵がまさか自分のところを訪れようとは思いもよらなかったからだ。

 

 

「なるほど…お前はそのYARIOとやらを結成する為にこの地を訪れたと」

「そういう事になりますかね?」

「馬鹿かお前は」

 

 

 そう言って、頭痛がする頭を片手で抑えながら告げるスカサハ。

 

 それはそうだろう、どこの世界にアイドルになる為に苦難を乗り越え、さらに、YARIOとやらを結集する為にこの影の国に来る者がいるというのか?

 

 しかし、実際いるのだから怖い事実である。しかも、本人は至って真面目故、尚更たちが悪い。

 

 

「…とりあえず…貴様の仲間達とやらはこの世界ではない何処かにいる可能性が高いな…、私の予想だが」

「えぇ!? ほんまですか! …そんな、あいつらがこの世界におらんなんて…」

「しかし、可能性がないわけではない」

 

 

 そう言って、落ち込むクー・フーリンを見かねたスカサハは彼の肩をポンと叩く。

 

 長年、生きて来たがこんな人間に会うのは初めての出来事、スカサハにとってみれば興味心の方が強かった。

 

 もしかすると、クー・フーリンは自分が思っている以上に面白いものを秘めているかもしれない、そういった期待感が彼女の中にはあった。

 

 クー・フーリンはスカサハのその言葉を聞くと改めて嬉しそうに笑みをこぼした。

 

 

「…はぁ、それはよかったですホッとしました」

「あぁ、魔術を極め、世界を移動できる術を手に入れれば、お前の仲間にも会えるかもしれないな」

「…魔術…、僕がハリー・ポッ◯ーみたいになったらええんですね! なるほど! わかりました!」

「お前は何を言ってるんだ」

 

 

 クー・フーリンの言葉に思わずため息を吐くスカサハ。

 

 ハリー・◯ッターがなんなのか全く理解できないスカサハも遂に彼に突っ込まざる得なかった。

 

 ちなみにアイルランドの隣はイギリスである。イギリスが近いならもしかしたらと思ったが、どうやらクー・フーリンのあては完全に外れたようだ。

 

 時代が違うので当たり前である。

 

 

「師匠、ちなみに魔術はどのレベルからやるんです?」

「そうだなまず基礎として…」

「やっぱりドラクエみたいな感じなんかな、パルプンテ使えるようになるんやろうか」

 

 

 何やらワクワクしている様子でそうスカサハに問いかけるクー・フーリン。

 

 ドラクエ色が強いのは、思い入れが強い仲間の1人がビアンカ派だからかもしれない。

 

 クー・フーリンのその言葉に呆れたようにため息を吐くスカサハは静かに左右に首を振る。持っているものは一級品なのになぜこんな変わり者が来てしまったのかと残念で仕方なかった。

 

 しかし、彼の心は純真でその瞳は混じりっけがなく光り輝いている。これならば、鍛えようによってはとんでもない化け物に化けるかもしれない、スカサハはそう思った。

 

 

「パルプンテはわからんが、まぁ、私が指導する通りにやれば魔術はできるようになるさ」

「流石は師匠!」

 

 

 そう言って、スカサハの言葉に目を輝かせるクー・フーリン。

 

 こうして、クー・フーリンはYARIOの仲間達を集める為に厳しい修行に入る事になった。魔術を極め、世界を移動し、そして、どこかの世界線にいるであろう仲間達と再会する。

 

 師匠となったスカサハの指導の元、クー・フーリンの修行がはじまった。

 

 ちなみに今、ここで、スカサハの指導を受ける事になったクー・フーリンが現在できることをおさらいしておこう。

 

 

 ・農業一般------できる

 ・陶器・磁器・鉄器--作れる(窯含め)

 ・炭---------作れる

 ・料理--------できる(プロ並み)

 ・手芸--------できる

 ・牧羊(ヤギ含む)--できる

 ・養蜂業-------できる

 ・スズメバチ駆除---できる(フルセット着てやれば)

 ・風呂釜-------作れる(処女作は大破)

 ・井戸掘り------できる

 ・ペットの世話----できる(ダメ犬デブ犬教習含む)

 ・子ども-------作れる

 ・鬼ごっこ------できる(対100人まで)

 ・巨大雪だるま実験--できる

 ・自動車-------できる(製作・修理・運転も)

 ・自転車-------できる(坂の上から海まで足をつけずに)

 ・電車--------勝てる(リレー)

 ・飛行機-------作れる(ペットボトルエンジン・一人用背負いタイプ)

 ・家---------作れる(木造家屋)

 ・橋---------できる(クレーンによる建築作業)

 ・漁業一般------できる(素潜りからマグロ釣りまで)

 ・村---------作れる

 ・林業--------できる(伐採)

 ・造船--------できる(修復も)

 ・運送業-------できる(PRも可)

 ・音楽業-------できる(本業)

 ・芝居--------できる(本業)

 ・司会業-------できる

 ・ダンス・アクロ---できる

 ・落語--------できる

 ・接待--------できる

 ・無人島開拓-----できる

 ・レールワーク----できる

 ・魔術--------←NEW!!

 ・色んな槍の使い方--←NEW!!

 

 

 オカン力:A+

 

 男なのに優しいお袋じみた圧倒的包容力がある。仲間達の中心でもあり、さらに、訪れた村の村人達からよく好かれるので知らない間に知名度がだんだん高くなっていく。

 

 土の知識:EX

 

 わからない土の知識などない、だいたいの土なら豊かにすることができ、豊富な農作物を作ることができる。

 

 島の開拓者:EX

 

 山城やつれたか丸など、無人島に数々の物を作り上げた。無人島ならば彼と彼の仲間がいればもう持っていくものは何も必要ないだろう。

 

 井戸作り:B+

 

 いくら汚染されている井戸でも真水にできるほどのスキル。カラスの死体があった腐った井戸さえも飲める水までにした逸話を持つ。

 

 幸運:B+

 

 世にも珍しい深海魚ゴブリンシャークや絶滅寸前の動物などに巡り合うほどの幸運を持つ、本来のクー・フーリンは幸運Eだが、謎の加護を得た事により幸運値が上がった。

 

 騎乗:B+

 

 あらゆる働く乗り物を乗りこなすことができる。運搬トラックからクレーン車、ユンボ、シャベルカーまでなんでもござれ、重機歴13年のベテランは伊達ではない。

 

 

 0円食材の探索:A

 

 毎度お馴染みの『え? これ、捨てちゃうんですか!?』捨てちゃうものをタダで頂くことが出来るスキル。物を無駄に消費したり、捨てちゃったりすると、彼等が全部貰っていってしまう。



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バックトゥザだん吉

 

 

 

 クー・フーリンを弟子にしたスカサハ。

 

 彼の修行を見ることになった彼女は持ち得るルーン魔術の知識を彼に指南した。

 

 そして、クー・フーリンも熱心に彼女の教えに従って学べるものは学んだ。もともと、素材は一級品、学ぶ姿勢も良くスカサハはクー・フーリンを実に可愛がった。

 

 しげちゃんと呼ぶ彼は人間的にも人格者であり、よく人から好かれる性格である。親しみやすい彼のそんな性格が功を奏したというべきだろう。

 

 

「いいか? ルーン魔術はこうやってだな…」

「すごく…勉強になる…」

 

 

 持参した自作のメモ帳にスカサハから教えられた事を目をキラキラさせて書いていくクー・フーリン。

 

 仲間達を探すため、ルーン魔術を学ぶことは彼には重要な事であった。この魔術の知識が自分自身と仲間達の架け橋となる事を彼も理解しているからだ。

 

 学び、身体を鍛え、時には地面にへばりつこうとも彼は学ぶ姿勢を無くなさなかった。

 

 スカサハもこんな弟子の姿勢を見れば、自然とクー・フーリンには自分のとっておきをやりたいと思いはじめるのは自然な事であった。

 

 そして、スカサハはクー・フーリンにある日、一本の槍を授ける事にした。

 

 それは、ルーン魔術もある程度、板についてきた事を見計らってスカサハはクー・フーリンに槍の使い方、槍を使った体術を学ばせようという意図があったからである。

 

 スカサハは己が授ける槍の使い方を学びさえすればきっと彼は英雄として名を馳せるだろうという確信があった。

 

 

「…しげちゃん、よくここまでついてきた。褒美にこれをお主にやろう」

「これは…」

「ゲイ・ボルグ、今日からお主の槍だ」

 

 

 クー・フーリンがスカサハから手渡されたのは朱色の槍、刺し穿つ死棘の槍だった。

 

 それを静かに受け取るクー・フーリンはスカサハはまっすぐに見つめる。

 

 そう、これからはこの槍が相棒だと彼の瞳を見据えたままスカサハは静かに頷いた。

 

 その槍を持ったクー・フーリンはジッとゲイ・ボルグを見つめる。そして、槍の先端に視線を伸ばすとムゥとした表情を浮かべてスカサハにこう話をしはじめた。

 

 

「師匠! これ! 先端尖っとるやん! 危ないで! こんなん持ち歩いて人に刺さったら大事ですやん!」

「いや、槍なんだからそれは尖ってるのは当たり前だろう」

 

 

 そう言って、ゲイ・ボルグを授けたスカサハは自分が持っている二本のゲイ・ボルグをクー・フーリンに見せながら告げる。

 

 ゲイ・ボルグは槍なのだから先端が尖っているのは当たり前である。しかも、突けば心臓とかによく突き刺さったりする槍だ。

 

 先端が尖っているのは至って当たり前の事である。しかし、クー・フーリンは左右に首を振るとお説教をするようにスカサハにこう告げはじめる。

 

 

「あかん!もう、あんたはいつもそんな屁理屈ばかり! お母さんは許さへんよ! ちょっと! あんたのも先端尖っとるやん!残りのもお母さんに貸しなさい!」

「え? ちょっ!? 儂のゲイ・ボルグをどうする気だお主!」

「しばらく没収やで! こんな危ないもの持ち歩いてたらダメでしょ! お母さんに預けてちょっと待っときなさい!」

 

 

 そう言って、エプロンを淡々と装着したクー・フーリンはスカサハから強引に二本の槍を没収し、計3本になったゲイ・ボルグを担いで何処かに行ってしまう。

 

 彼の勢いに押されたスカサハは黙ってそのオカンになった弟子の後ろ姿を見つめることしかできなかった。

 

 それから、三日ほどの日が過ぎ、クー・フーリンは満足げに足取りを軽くして三本のゲイ・ボルグを担ぎ、再びスカサハの元に帰ってきた。

 

 

「ただいま帰ったでー、師匠」

「…何処に行っていたんだお前は…」

「はい!師匠、これお返しするわ」

 

 

 そう、彼がスカサハから没収し担いで帰ってきたゲイ・ボルグはもはや、ゲイ・ボルグだったものだ。

 

 彼女はクー・フーリンから手渡されたそれを見て目をまん丸くしている。一本はなんだか先端に金具のようなものが取り付けてあり鍬のようになっている。

 

 もう一本はしなっていて、先端には糸のようなものと浮きがついていた。早い話が釣竿になっている。

 

 スカサハはクー・フーリンから没収され、鍬と釣竿になったゲイ・ボルグを見て言葉を失っていた。

 

 

「お主、これ…。儂のゲイ・ボルグは…」

「しっかりできてるやろ? この竿ならマグロも釣れるし! この鍬ならスイカ畑とかも問題なくできる! しかも尖った先端がないからみんなも安心やで! ほら、僕のも鍬にしてきたんですよ!」

 

 

 そう言ってドヤ顔で晴れやかな笑顔でサムズアップして、お手製、ゲイ・ボルグだった鍬を見せるクー・フーリン。

 

 皆が変に先端に突き刺さらないようにゲイ・ボルグったものの先端は綺麗に金具になってるかもしくは丸くなっていた。

 

 これでは心臓に突き刺さらないどころか槍として使い物にならない、使い道があるとすれば農業だけである。

 

 

「……………」

「よし! 師匠! 早速、この鍬の使って畑を耕してみましょ!」

「私の…ゲイ・ボルグが…鍬に…」

 

 

 まさか、こんな事になるとは思いもよらなかったスカサハは鍬になってしまったゲイ・ボルグを静かに見つめる。

 

 しかし、クー・フーリンは水を得た魚のように生き生きとそのゲイ・ボルグ(鍬)を使って地面を耕していた。

 

 感触はいい、これならどんな畑でも耕せそうだとクー・フーリンは確信する。槍なんて危ないものより、やはり、クー・フーリンには鍬が一番しっくり手に馴染んでいた。

 

 

「やっぱり、連日、槍持つより僕は鍬持った方が落ち着きますね」

「そうか、しっくりくるか…私も思いの外、この鍬が手に馴染んでいてびっくりしてるよ」

 

 

 そう言いながら静かに涙を流すスカサハは土をゲイ・ボルグ(鍬)で耕しながらクー・フーリンの言葉にがっくりと項垂れていた。

 

 スカサハは槍の使い方を教えたいはずなのだが、 気がつけば槍が鍬になっていた。しかも思いのほか自分の手にしっかりと馴染んでいる。

 

 それから、しばらくゲイ・ボルグ(鍬)で畑を耕す2人。

 

 その後、仕方ないのでスカサハは槍の代わりに鍬で槍の使い方をクー・フーリンに指導せざる得なかった。

 

 クー・フーリンの目の前で槍を使うと怒って彼がゲイ・ボルグを没収し、また鍬や釣竿にしてしまうので致し方ない。

 

 ゲイ・ボルグをこれ以上、鍬にして欲しくないスカサハには苦渋の決断であったのである。

 

 

 それから、月日がそれなりに経ったある日、

 

 スカサハは槍という名の鍬の使い方を指導し終え、何やらカチャカチャと工具を使って何かを一生懸命に作るクー・フーリンの姿を見つけた。

 

 それは、スカサハが見た事の無い、鉄で出来た箱のようなものだ。不思議に思った彼女はそんな箱のようなものを一生懸命に作るクー・フーリンに声をかける。

 

 

「何を作っておるのだ? お主」

「おー! 師匠やん! これか? これはな、車やで!」

「車?」

「せやで、名前は『だん吉』っていうんやけど…バック・トゥ・ザ・フューチャーって師匠見た事あるかな?」

「いや、無いが…、それは車というのか…」

 

 

 そう言って、鉄で出来た箱をまじまじと見つめるスカサハは煤だらけのクー・フーリンの顔を見つめながら不思議そうにそれを見つめていた。

 

 今の時代は移動手段は馬が主流であり、車などの知識は彼女には無かった。

 

 しかし、長年、生きてきた彼女にはそれが実に興味深いものに映る。

 

 クー・フーリンは煤だらけの顔を指でこすりながらにこやかな笑顔を浮かべてスカサハにこう語りはじめた。

 

 

「このデロリアンもとい『だん吉』で仲間達のいる世界に渡ろうかと考えてまして…。ほら、ルーン魔術とかを応用で使って」

「ほほう…それは、面白い発想だな、どれ、私も協力してやろう」

「ほんまですか!?」

「あぁ、その代わりこの『だん吉』には私も乗せてくれよ?」

「もちろんですよ! それじゃまずはですね…」

 

 

 そう言って、クー・フーリンはスカサハに自家製自動車『だん吉』の設計図を見せながらその詳細について話をしはじめる。

 

 だん吉とは本来はソーラーカーである。太陽光の光をエネルギーに変えて走る地球に優しい車だ。

 

 しかし、このだん吉のエネルギーにはルーン魔術を使ったエンジンを用いる。

 

 なぜ、太陽光エネルギーではないのか? それは、時速140kmで世界を超えられるルーン魔術によるシステムをクー・フーリンが考えていたからだ。

 

 太陽光のエネルギーだけでは140kmのスピードは出ない、すなわち、クー・フーリンはこの140kmのスピードを出させる為にルーン魔術を使おうと考えたのである。

 

 そこからはスカサハとの綿密な話し合いだった。

 

 タイヤに必要なゴム、そして、機械類に使うネジや加工品をこの世界では一から調達しなければいけない。

 

 タイヤはゴム(合成ゴム、天然ゴム)と配合剤(カーボンブラック、硫黄、オイルなど)を混ぜ合わせ、板状にするところから始まる。

 

 そして、天然ゴム、オイル、カーボンブラックはこの時代には存在しない手に入らない代物だ。

 

 よって、クー・フーリンとスカサハはまず、これらを集める為、世界を旅する事になった。

 

 

 まず、2人はオイルとカーボンブラックを得る為に石油を探すところから始める事にした。

 

 

 黄色いヘルメットを被り、クー・フーリンとスカサハはツルハシにしたゲイボルクを担いで石油を掘り当てる為に中東まで遠征。

 

 

「師匠、おそらくこの辺かもしれないですね」

「そうか、ここのどこかに石油とやらがあるのか」

 

 

 そして、石油を掘り出す為に2人でゲイ・ボルグ(ツルハシ)を使い、地面を掘り進めた。

 

 石油の加工方法はクー・フーリンは知識としてある。

 

 石油は原油にし、さらに分留によって成分を分ける。精製することにより、天然ガス、ナフサ(ガソリン)、灯油、軽油、重油、潤滑油、アスファルトなどの成分に分けられる。

 

 この石油を原油にしさらに分留してカーボンブラックやオイルを手に入れる必要があった。

 

 

「む、石油とは?これか?」

「おぉ! 師匠! グッジョブです!」

 

 

 そして、石油を掘り当てたスカサハはそれを一部を入れ物に入れてクー・フーリンに見せる。

 

 確かに黒い油、石油であった。

 

 その石油を持ち帰るため、たくさんの容れ物に入れて2人はさらに旅を続ける。

 

 次の目的地はゴムノキの樹液に含まれる天然ゴムを得る為にタイへと向かった。

 

 道は険しかったが、クー・フーリン、スカサハの2人は名高いYARIOの英霊、これだけでへこたれるほどヤワではない。

 

 タイについた彼等は現地人の人に頼んでゴムノキまで案内してもらった。

 

 

「これが…ゴムノキ…」

「よし! ゴム回収しましょ! 師匠!」

 

 

 そして、天然ゴムをタイにて大量に回収。

 

 こうして、2人の旅は帰り際の道で硫黄を手に入れる事でようやく終わりを迎えた。手に入れた素材を用いて加工、配合を行なっていく。

 

 作成した3つのパーツを貼り合わせる成型から、金型に入れて加熱・加圧し、化学反応させることによって、強力な弾力のあるタイヤに仕上げ、一通りの加工を済ませればタイヤの完成品が出来上がる。

 

 それをクー・フーリンはだん吉へとはめ込んでいった。

 

 

「まさか…タイヤを作る為に石油を掘らなあかん事になるとは思わんかったけど師匠がいてくれて助かりましたわ」

「ふふん、そうだろう」

 

 

 そう言って、クー・フーリンの褒め言葉に鼻を高くするスカサハ。

 

 デロリアン、もとい『だん吉』がだんだんと形になってくる姿はスカサハもなんとも言えない感動があった。

 

 この調子なら『だん吉』の完成も近い、あとはルーン魔術などでタイヤを強化したり、エンジンや世界を渡るシステムを作り上げれば良い。

 

『だん吉』の完成に向けて、ふたりは意気揚々と車作りに没頭していくのであった。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 石油採掘ーーーーー←NEW!!

 

 タイヤ作りーーーー←NEW!!

 

 ゲイ・ボルグ加工ーー←NEW!!

 

 

 

 



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仲間探しへGO!!

 

 失われた仲間達を探すため違う世界へ飛ぶためにデロリアン『だん吉』を共に作り上げる事になったクー・フーリンとスカサハ。

 

 過酷な修行をこなしながらクー・フーリンはスカサハと共に顔を煤だらけにし、『だん吉』の組み立てに勤しんでいた。

 

 材料を原材料から集め、加工し、そして、組み立てる『だん吉』にはスカサハから教わったルーン魔術を組み込んである。

 

 そして、いよいよ、『だん吉』作りも大詰めに差し掛かり、クー・フーリンはいつも通り煤まみれになったまま車の下からひょっこり顔を出した。

 

 

「よっしゃ! こんなもんやろ!」

「できたのか? できたのか!?」

「はい! あとは試運転入れば完成です!」

 

 

 車の下から顔を出したクー・フーリンに目をキラキラと輝かせながら問いかけるスカサハに彼はサムズアップしてそう答えた。

 

 石油を取りに中東へ、ゴムを取りにタイまで。遠い道を遥々歩き集めた努力の結晶を集めたデロリアン『だん吉』。

 

 スカサハとクー・フーリンの2人での共同作業により、デロリアンもとい世界を越える『だん吉』のフロントガラスはキラリンと光を発していた。

 

 いよいよ、試運転の段階まで漕ぎ着けた。エンジンとタイヤにはルーン魔術が施してあり、これならば、理論的には世界を渡る事ができる。スカサハ、クー・フーリンの2人は完成した『だん吉』を誇らしげに見つめていた。

 

 そして、クー・フーリンは『だん吉』の試運転について、スカサハにこう問いかける。

 

 

「よし! 師匠! 試運転はどっちがやります?」

「!? これを動かすのか」

「せやで、でもまぁ、最初はやっぱり僕がしましょうか、運転の仕方とか教えるので助手席に座ってください」

「…お、応! こんなにワクワクするのは何年振りだろうか」

 

 

 スカサハは上に扉が開く『だん吉』の助手席に座りながら、車の乗り心地や感触を確かめつつキラキラと目を輝かせている。

 

 運転席に座るのはクー・フーリン、重機歴13年のベテランは久方ぶりに乗る車の感触を確かめながらしみじみとハンドルに手を伸ばした。

 

 懐かしい感触が蘇る。自家製自動車『だん吉』の運転をするのは感慨深いものがあった。

 

 

「よし、それじゃ…場所を決めてやな、とりあえずそれらしいところに座標合わせてみましょ」

「おぉ!? そんなところに小さなレバーが!」

「むふふ、これはだん吉の移動する世界線を調整するレバーで…って、まぁ説明すると長うなるでまた次の機会に、あ、師匠、ちゃんとシートベルトせなあかんよ?」

「ん? シートベルト?」

「これやでー」

「…っ!! 横からなにか帯のようなものが出たぞ!」

 

 

 そう言って、クー・フーリンからガチャリとシートベルトをしてもらうスカサハは目が目新しいものに感動し声を溢す。

 

 シートベルトだったり、だん吉の中にある機器だったりと長く生きてきた中で知らない物がたくさんありスカサハにはまるで新しい発見ばかりであった。

 

 しかも、これらを作るのに自分も作業に加わった分。その感動もさらに大きい、だん吉が音を立ててエンジンを鳴らしはじめたあたりでスカサハのテンションはだだ上がりであった。

 

 そして、広くひらけた場所で助走をつけるクーフーリン。いよいよ、『だん吉』が世界を越える時が来た。

 

 

「いくでー! 師匠! しっかり掴まっててな!」

「なんだかワクワクしてきたな!」

 

 

 ブォン! というアクセル音と共に温まった『だん吉』のエンジンを見計らい、アクセルを思いっきり踏み込むクー・フーリン。

 

 スピードメーターはグングンと上がっていき、バチバチと『だん吉』からは火花が散り始める。

 

 時速140kmに到達することにより、この『だん吉』はルーン魔術を施した世界転移装置の働きによって時間を飛び越える事ができる。

 

 スピードメーターが130を上回り、世界の境界線が見えてきた、2人は湧き上がる感情を抑えきれない。

 

 ついに自分たちが作り上げた『だん吉』が世界を越える。それだけで、2人にとってみればこの『だん吉』のために積み重ねた月日が報われたと感じる事ができたのである。

 

 

「跳べぇ!」

「よし行けー!!」

 

 

 テンションが上がったスカサハは嬉しそうに声を上げながら両手を上に突き出し、ハンドルを握るクー・フーリンは笑顔を浮かべて大声を上げる。

 

 そして、加速した『だん吉』は火花を散らしながらバチン! と音を立てると、閃光を放ち、地上に炎のタイヤ跡を残すと影の国からその姿を消した。

 

 

 

 ケルト神話。フィン物語群、フィニアンサイクル。

 

 吟遊詩人オイシンによって語られるその物語にはある有名な英雄が幾多も存在している。

 

 その物語で語られるのは神話上の英雄であるフィン・マックールと彼の率いるフィアナ騎士団の功績を主題とする物語が主なものだ。

 

 その中でも、フィアナ騎士団の一員でドゥンの息子。若さの神、妖精王オェングス、海神マナナン・マクリルを育ての親に持つ英雄が存在する。

 

 それがこの…。

 

 

「へい! イカお待ち!! イキの良いイカだよ! お客さん!」

「流石は大将! 早いね!」

「そっちのお客さんは? ご注文なんにしましょ?」

「カンパチの握り一つと、あー…」

「フィンさんが釣ってきたヒラメのえんがわが今日はオススメだよ!」

「おぉ!? じゃ、じゃあそれで!」

「よっしゃ! ご注文入りましたー! カンパチとえんがわの握りでございやすね!!」

 

 

 白い板前衣装に身を包んだフィアナ騎士団、寿司職人もといタオルを頭に巻いた男前大将ディルムッド・オディナ、その人である。

 

 ディルムッドは二本の槍と二本の剣を持つ、アイルランドの英雄。

 

 槍はゲイ・ジャルグ、ゲイ・ボウ。そして、二つの剣、モラルタとベガルタ。

 

 ディルムッドには魔法の黒子を妖精によって頬に付けられ美しい容姿である上に女性を虜にしてしまうという呪いがかけられており、それ故にフィアナ騎士団の英雄フィン・マックールの3番目の妻となるはずだった婚約者グラーニアは、ディルムッドと恋に落ち、ディルムッドは彼女を連れて逃避行をする不義を行う事になる。

 

 数年の放浪の後、ディルムッドは不義を許されはしたが、史実では異父弟の化身である耳と尾のない大きな魔猪に瀕死の重傷を負わされてしまい、その不義が原因でフィンの癒しの手で掬った水を飲む事が出来ずその命を落としてしまったという悲劇の英雄だ。

 

 

 

 しかし、このフィン物語群にいるディルムッド・オディナは一味も二味も違う。

 

 何故ならば、ディルムッド・オディナもまたYARIOだからである。

 

 彼の宝具。槍のゲイ・ジャルグ、ゲイ・ボウ、剣のモラルタとベガルタ。

 

 YARIOであるディルムッドは二つの槍はどっかの誰かさん同様に二本とも鍬に、モラルタとベガルタは切れ味が良いからとなんと魚を捌くための包丁に加工してしまった。

 

 ディルムッドには史実では己を死に追いやるであろう女性を虜にしてしまう魔法の黒子がある。しかし、これはディルムッドは逆に捉えていた。YARIOたるもの男女子供に人気があってこそなんぼのものであると。彼の前世も同じようなもので女性には人気があったし、さして、気にはならなかった。

 

 もちろん、彼に対して結婚の話はいくらでも舞い込んで来たが、彼はその話に対して毅然としてこう答え続けた。

 

 

『YARIOのメンバーとしてリーダーが結婚するまで俺は結婚するわけにはいかん!』

『え? YARIOって何? ちょ、ディルムッド?』

『ディルムッド、その気持ちはわかる』

『親父!?』

『流石はADフィン! やっぱりわかってくれるなんてあんたは最高のADだ!』

『ADって何!? 親父は騎士団長だぞ!』

 

 

 こうして、ガッチリと手を取り合い、互いに頷くフィンとディルムッドのやり取りにフィンの息子のアシーンは仰天させられた。

 

 この出来事をきっかけに騎士団の皆はそれ以上結婚について、ディルムッドに何も言えなくなってしまったのである。

 

 このフィニアンサイクルの主人公であるフィンもまたYARIOの一員と言っていい。彼の目的はただ一つ、YARIOの黒子役として彼らをサポートしたいという願望があった。

 

 彼はディルムッドとは異なり妻サーバとの息子アシーンがいるが、YARIOの情熱はディルムッド同様冷めてはおらず。いつか、リーダーが迎えに来ることを夢見て日々生活している。

 

 

 こうして、今日も今日とてディルムッドとADフィンの2人は共に女、子供、男性まで大人気のフィオナ騎士団という名の板前騎士団をやっている訳だ。

 

 そして、ディルムッドに感化されて騎士団ではない者でも寿司や調理の腕を磨くものや弟子入りしたがる者たちも後を絶たない。

 

 ディルムッドの調理の腕はまさに芸術と言って良かった。

 

 連日のようにフィオナ騎士団の本拠地であるアルムの砦には人々が寿司や板前料理を食べたいと訪れ賑わっている。

 

 噂を聞きつけたコーマック上王も来訪し、あまりにも美味しいディルムッドの料理に感動し涙したという話は有名である。

 

 

「ふぅ、今日も頑張ったな、みんな」

「いやー、流石はディルムッドの大将だ!」

 

 

 そう言いながら、閉店後に汗を拭うディルムッドに晴れやかな表情で告げるフィオナ騎士団の仲間の一人、ロナン。

 

 しかし、ディルムッドはどこか浮かない表情を浮かべていた。これだけ料理の腕があり皆から愛されていてもポッカリと空いた穴が塞がらない。

 

 それを見ていた団員の1人、フィンの息子であるアシーンはディルムッドにこう声をかける。

 

 

「どうしたんだ?ディルムッド?」

「あー…いや、もう何年もなるけどさ、これで良いのかなって思ってて」

「…何がだ? 料理を振る舞うお前さんは楽しそうだし、何より親父もお前さんとは仲が良いだろ?」

「まぁねぇ、けど、そうじゃないんだわ」

 

 

 長い年月が経ちディルムッドより歳を取ってしまったフィン。

 

 彼の奥さんであるサーバも鹿に変えられ、黒いドルイドに連れ去られてしまった。顔には出さないがフィンから話を聞いた人情に厚いディルムッドは彼が辛い思いをしている事を察している。

 

 長年、一緒にいた仲間だからわかる。ここでは無いがあの無人島や村での事は今でもディルムッドは鮮明に覚えていた。

 

 フィンは前のようにはいかない、自分よりも年老いてきて、これ以上、前みたいな無理はさせられ無い、それに、このままこの場所に自分がいれば彼に負担が掛かってしまう。

 

 ディルムッドはそんな事を考えていた。長い年月の間にようやく再会できた仲間の1人だが、リーダーが居ない今、彼の側に果たして自分が居てもいいのだろうか。

 

 フィンのここでの立場は騎士団長、自分は騎士団料理長(板前)に過ぎない。

 

 そろそろ、この場所から立ち去らねばならないのでは無いのか、そういう気持ちが彼の中には少しずつ芽生えていた。

 

 すると、砦の厨房の扉が開き、騎士団員の1人であるルガイドが慌てたような表情で2人にこう声をかけてきた。

 

 

「お、おい! 2人ともちょっと来い! 砦の前になんだか凄いもんが現れたぞ!」

「…んぁ? ちょっと待ってよー。俺、今からアシーンと一緒に明日の仕込みあんだってー」

「いいから来いって」

 

 

 そう言いながら、顔を見合わせるディルムッドとアシーンの2人の手を引いてを半ば強引に厨房から引っ張り出すルガイド。

 

 2人は仕方ないと互いに肩を竦めると、ルガイドに案内されて、砦の外まで案内される。

 

 するとそこには…、一台の大きな箱状のものが煙を吹き上げて置いてあった。それを見た3人は顔を見合わせる。

 

 そして、ディルムッドはしばらくしてから唖然とした表情でこう声を溢した。

 

 

「これって…、車じゃん! マジで!? 嘘でしょ!?」

「これがなんだかわかるのかお前?」

 

 

 この時代にまさか自動車を見ることになるとは思わなかったディルムッドは目をパチクリさせていた。

 

 驚いたように声を上げるディルムッドにアシーンは首を傾げて訪ねる。アシーン達からしてみればこのような鉄のようなもので出来た箱など見たこともないものだった。

 

 すると、ディルムッドは苦笑いを浮かべて頭を掻きながら彼にこう話をしはじめる。

 

 

「え? まぁ、ちょっとね? 弄った事あるからさ、いやー、懐かしいわ…でもなんで」

 

 

 そう言いながらまじまじと鉄の箱を一周して見つめるディルムッド。

 

 すると、その自動車の扉が上へと開き始め、中から人がゆっくりと降りてきた。そして、咳き込み、腰に手を当てながら出てきた彼の声を聞いた途端、ディルムッドの世界が変わった。

 

 

「あー、イタタ…、いやー中々の衝撃やったなー、師匠どないでした?」

「…最高だったな、これ、次は私に運転させてくれ!」

「OKです! ほんじゃまず…仲間を探して…」

 

 

 中から出てきたのは男女2人、しかし、ディルムッドが目を丸くしたのは男の方だ。

 

 聞き慣れた声、そして、いつも自分達をまとめてくれた彼の事を片時も忘れたことなど、なかった。

 

 いつか必ず会えると信じて待っていた。ディルムッドの目には薄っすらと涙が滲み出てきている。

 

 

「あれ? なんやねん、あんたら…」

「いや、それはこちらのセリフだ、お前らこそ…」

「リーダー!! リーダーだよな!」

 

 

 そう言いながら、板前の制服を着たディルムッドは青い作業着を着た男に近寄り手を握りしめた。

 

 長年、待ち望んだ再会、ようやく巡り出会えた彼にディルムッドは感動すら覚えていた。やはり、自分達を探しに来てくれたのだと。

 

 ディルムッドから手を掴まれた彼は目を丸くしたまま、ゆっくりと笑顔を浮かべていた。

 

 

「もしかして…」

「待ってたよ! リーダー!」

 

 

 そう言いながら、ディルムッドは感動のあまり涙を流しながら彼にハグをする。

 

 ずっと待ち望んでいた彼がやって来てくれたのだと再会を喜んでいた。薄っすらだが、ディルムッドからハグを受けた時に作業着を着た彼は確信する。

 

 懐かしいこの感覚、間違いない、彼はYARIOの1人であるという事を。

 

 

「まさか! 」

「そのまさか! マサだけに! なんちゃって!」

「バカ! それは僕の専売特許やん! 久方ぶりやんかー!」

 

 

 そう言いながら、ディルムッドのしょうもない洒落を聞いて作業着を着ている彼、クーフーリンもまた涙を流しながら仲間との再会を喜んだ。

 

 いまいち状況が掴めていないフィン騎士団のアシーンとルガイドの2人は顔を見合わせ、喜ぶ弟子の姿を見ていたスカサハは微笑ましくそれを見つめていた。

 

『だん吉』で越えた世界で再会したYARIOの仲間の1人、ディルムッド・オディナ。

 

 クーフーリンとディルムッド・オディナの2人のYARIOの再会が果たして、ケルト神話に何を与えるのか!?

 

 そして、それは! 次回の! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 砦で板前ができるーーーー←NEW!!

 

 世界を飛び越えれるーーー←NEW!!



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まず草から探します

 

 

 失われた仲間達を探すため違う世界へ飛ぶためにデロリアン『だん吉』を共に作り上げる事になったクー・フーリンとスカサハ。

 

 世界を『だん吉』で飛び越えた二人はYARIOの一人であるフィオナ騎士団、板前料理長ディルムッド・オディナに再会する事となる。

 

 再会を喜ぶ、YARIOのリーダー、クー・フーリンとディルムッド・オディナ。

 

 YARIOの仲間に再会したリーダーのクー・フーリンとその師匠であるスカサハは手厚くもてなされ、フィオナ騎士団の本拠地の砦であるアルムの砦へと案内された。

 

 だが、再会したクー・フーリンはディルムッドの話を聞いて深刻な出来事に直面する事になった。

 

 そのディルムッドの話というのは…。

 

 

「…そうか、まさか僕らのADが…そんな事になってたやなんて…」

「あぁ、なかなか深刻だぜ、リーダー、それに問題はADフィン足立だけじゃない」

「なんだ、それだけじゃないのか?」

「あぁ、最近、デッカい猪が出て俺たちフィオナ騎士団が耕した畑が手酷く荒らされてんだ…」

 

 

 深刻そうにディルムッドは深いため息を吐いてクー・フーリンとスカサハの二人にそう語る。

 

 まずは、フィオナ騎士団団長であるADフィンが年老いており、ADの作業が困難であるという事。

 

 そして、もう一つは凶暴な異父弟の化身である耳と尾のない大きな魔猪が自分やフィオナ騎士団の皆がせっかく耕した畑を荒らしに来るという悩みであった。

 

 どれも大変な悩みである。確かに、ADフィンの力はYARIOには必要不可欠なものだ。これから先、ADフィンの協力が無ければ今後の活動にも支障が出て来てしまう。

 

 畑に関してもそうだ、猪のせいで新鮮な食材が手に入らなくなるのはあまりにも酷い、それに、猪が出たとなれば怪我人や死者が出てしまう可能性がある。

 

 その話を聞いた我らがリーダー、クー・フーリンは拳を握りしめて熱い感情を前面に押し出しバンと机を叩いた。

 

 

「よっしゃ! 決まりやな! まずはADフィンからや!」

「決まりだと? どうする気だ?」

「つまり、ADフィンを若返らせたらええんやろ?」

「何!? フィンを若返させるだと! 馬鹿な!?」

 

 

 そう言って、机を叩いて告げるクー・フーリンに声を上げるフィオナ騎士団の団員、ロナン。

 

 若返らさせたらいいと簡単に言うが、それは、すなわち不死の類の術でも持ちいらなければ不可能な業だ。

 

 そして、スカサハもまたクー・フーリンの言葉に目を丸くしている。仲間を若返らせるなどという考えを聞かされれば、そうなるのは当たり前だ。

 

 スカサハは神霊の類を狩り続けた事により、信仰が集まりすぎた結果、神の領域に片足を突っ込んでしまいそれにより人間の枠を越え、不死になってしまった女性である。

 

 そんな、彼女にしてみても仲間の若返りを行うなど神に反逆するようなクー・フーリンの発想にあまりにも度肝を抜かされた。

 

 しかし、それだけに逆に興味をそそられるものがある。

 

 

「…あははははは!! 本当に面白いなお前は! 流石は儂の弟子だ!」

「でしょう? ナイスなアイディアでしょ!」

 

 

 そう言ってスカサハにサムズアップして満面の笑みを浮かべるクー・フーリン。何故だか、それは周りには清々しい程に爽やかなものに映る。

 

 しかし、それを静かに聞いていたディルムッド・オディナはYARIOのリーダーであるクー・フーリンの言葉に納得したようにポンと手を叩いていた。

 

 

「あ、その手があったか、流石はリーダーだわ」

「!? ちょっとまてぇ!! ディルムッド! 何でお前は平然と納得してるんだ!」

 

 

 納得したように頷くディルムッドに思わず突っ込みを入れるフィオナ騎士団の一員でありフィンの息子であるアシーン。

 

 しかし、そうと決まれば彼らの行動は早い、すぐさま、その場で今後どうするかの打ち合わせをしはじめた。

 

 

「ちなみにどのレベルからはじめる? リーダー」

「せやなー、若返りって言ったらやっぱり薬やろ?」

「やっぱり原材料から集めるのか? 今回も」

「話を聞け! お前ら!!」

 

 

 そう言って、淡々と話を進める彼らに声を上げて突っ込みを入れるアシーン。

 

 何故か、もう自分の父親であるフィンを若返えらせる方向で話がトントン拍子に進んでいればそうなるのも致し方ない。

 

 だが、彼らは顔を見合わせると首を傾げる、別になにもおかしな事は言っていない。単に仲間であるフィオナ騎士団団長のフィンを若返らせADとして復帰して貰おうとしているだけである。

 

 そこで、クー・フーリンはある事に気がついた。

 

 

「あ! 師匠! そういや、僕ら自己紹介まだでしたやん!」

「む? おぉ、そう言われてみればそうだったな」

「違う! そうじゃないんだよぉ! 確かにしてないが!」

 

 

 そう言われて、打ちひしがれるように地面に両手をついて項垂れるアシーン。

 

 それを見ていたフィオナ騎士団の騎士団員であるロナンも頭が痛くなってきたのか額に手を当てて左右に首を振り、ルガイドはそれを見てゲラゲラと笑っていた。

 

 それから、とりあえず改めてその場にいる3人に自己紹介をはじめる。

 

 

「僕はクー・フーリンって言います、そんでもってこちらが師匠の…」

「スカサハだ、よろしく頼む」

「……は?」

 

 

 その瞬間、その場の空気が止まった。

 

 彼は今何と言っただろうか? 更に言うなら隣の女性もサラッととんでもないことを言っていた様な気がする。

 

 クー・フーリン? スカサハ? いやいやいや、おかしな話である、今から昔の伝承に残されている英雄の名前では無いだろうかと彼らは顔を見合わせた。

 

 

「も、もう一回いいですか?」

「あ、クー・フーリンです、呼びにくかったらしげちゃんでもええよ?」

「私はスカサハだ、私も呼びにくかったら…」

「いやいや、師匠は愛称とか無いですやん」

「む、そうか、何か考えとかねばな…サーちゃんとかどうだろう?」

「なんか大佐っぽいですね、返事がサー、イエッサーとか言わされそうな気がするのは僕だけやろうか」

「いいな、それ」

「あかん、僕、余計な事言うてもうたかもしれん」

 

 

 そう言って、もう一度、アシーンに問われた名を告げて漫才みたいなやり取りを行うクー・フーリンとスカサハの二人。

 

 それを見ていたディルムッドはウンウンと頷いてそのやり取りを見ていた。しかし、二人の名を聞かされた3人の顔は蒼白である。

 

 クー・フーリンと言えば、今から三百年以上前の伝承に残されている大英雄であり、スカサハと言えば影の国の女王でこんなところに軽いノリで来ていい様な人間ではない、というか神様に近い類の者である。

 

 しかし、ディルムッドに関してはそんな大物達に対して実に親しく接していた。

 

 こうなってくるとフィオナ騎士団の3人にはYARIOと呼ばれるもががよくわからない得体の知れないものの様に思えて仕方なく思えてくる。

 

 

「じゃあさー、サーちゃん師匠はリーダーの師匠って事は俺の師匠にもなるって事かな?」

「まぁ、そうなるか、じゃあ、お前も私の弟子だ」

「おー! なんか知らないけど俺、弟子になっちゃったよ! しげちゃん!」

「やったやん!」

 

 

 そう言って、ディルムッドとクー・フーリンはサムズアップをし合いながら笑みを浮かべて互いに喜び合う。

 

 それを、3人のフィオナ騎士団は呆然と眺めることしかできなかった。いや、それよりも色々突っ込みたいことが多すぎて、もはや、どうでもよくなってきたのかもしれない。

 

 そして、彼らはとりあえず自己紹介が終わるとすかさず先ほどの打ち合わせに戻ることにした。

 

 

「そんで若返り薬ってどのレベルから作るの?」

「えーと、師匠なんかわかりますか?」

「んー、そうだな、私の知識が確かなら若返りの霊薬というものがあるはずだが…」

 

 

 若返りの霊薬。

 

 文字通り、飲んだ人間を若返らせる薬である。その製造法としては深淵から持ち帰った不老不死の霊草を加工したものを使用する。

 

 かつて、かの英雄王ギルガメッシュが深淵から持ち帰った不老不死の霊草を加工したものがこの霊薬と言われているが、しかし、それを入手するには過酷な道を歩んでいかなければならないだろう事は容易に想像できる。

 

 しかし、クー・フーリン達は至って簡単に考えていた。

 

 要は深淵まで行って薬草をブチっと回収して砦まで帰ってきて加工して薬を作ればいいというわけである。

 

 

「なるほど、まずは草から取りに行かなあかん訳やね」

「深淵まで野草狩りか! 胸が熱くなってきたなリーダー!」

 

 

 深淵までなんの迷いなく草取りに行こうと告げる二人の会話にポカンとするフィオナ騎士団の3人。

 

 だめだ、ついていけない。こいつらは一体何を言ってるんだとその場にいる3人は素直にそう思った。

 

 野草狩りなら0円食堂で何回かした覚えがある二人にはそれが自然な事なのだろうが、草を取りに行く場所が場所だけに普通にぶっ飛んだ発想である事は誰が聞いても明らかだ、少なくとも彼ら以外はそう思うだろう。

 

 スカサハは深淵まで野草狩りに行く勢いの二人の会話がツボに入ったのか、腹を抱えて笑いを溢していた。

 

 自分の弟子であるクー・フーリンがある意味色んな意味で発想がぶっ飛んでいる事はわかっていた事だが、この、YARIOのメンバーであるディルムッドも大概である。

 

 

 さて、こうして、話がまとまった所で今回のザ! 鉄腕/fateはADフィンを若返らせるためにカタッシュ隊員達が深淵まで伝説の野草、霊草を手に入れるという挑戦だ。

 

 

 今回、野草狩りに挑戦するYARIOのメンバーはリーダーのクー・フーリン、そして、再会したディルムッド、彼らの師匠であるスカサハの3人である。

 

 

「ところでディルムッド、その妖精につけられたであろうウザったい泣き黒子、私がひっぺがしてやろうか?」

「…え? これ、取れるんですか!?」

「まぁ、私にかかればチョチョイのチョイだ、ほれ、ちょっと顔かしてみろゲイ・ボルグで抉ってやるから」

「痛い!痛い! 師匠! それ絶対、痛いやつですやん!」

「冗談だよ、ちょっと待ってろ、ルーン魔術でなんとかしてやる」

 

 

 そう言って、何やら呪文らしきものを唱え始めるサーちゃん師匠、もとい、スカサハ師匠。

 

 すると、何という事だろうか! ディルムッドの泣き黒子がみるみるうちに消えていくではないか! それを手鏡で確認したディルムットは目をパチクリさせている。

 

 そして、クー・フーリンはマジマジと黒子が消えたディルムッドの顔を見つめていた。

 

 元々、ディルムッドは綺麗な容姿をしているが黒子が顔を傷つけずに跡形もなく無くなっていた。これはまさに神業、ディルムットの黒子に呪文を唱え終えたスカサハはフゥと一息入れる。

 

 これを目の当たりにした二人は素直に師匠であるスカサハを賞賛したくなった。

 

 

「ほぇー、凄いなー師匠、整形外科医になったら絶対金儲けできるで」

「本当に無くなってる!? 正直、最近日焼けして肌を真っ黒にして黒子目立たなくして無くそうかと思ってたけどこれは助かった!」

「いや…日焼けで消える類のものじゃないぞ、その黒子…。というか整形外科医とはなんだ」

 

 

 そのクー・フーリンとディルムッドの二人の言葉に呆れたように苦笑いを浮かべるスカサハ。

 

 

 Before:以前はディルムッドにあった泣き黒子、女の子を魅了する反面、女難的な要素を含むこの泣き黒子でしたが…。

 

 

 After:何ということをしてくれてくれたのでしょう! なんと、ディルムッドさんの美貌はそのままに、顔を傷つけずチャームポイントだった泣き黒子が綺麗に無くなっているではありませんか! ケルトの女の子達が涙を流しながら打ちひしがれる姿が容易に想像できてしまいます!

 

 

 さて、こうして優しい妖精さんがつけてくれた面倒臭い黒子はスカサハから取り除かれ、綺麗な素顔になってしまったディルムッド。

 

 これで、彼には何ら不安要素は無くなった。

 

 ケルト内での女の子の人気がそれなりに落ちた気がしないわけではないが、要はその分、農家や職人の方からの人気を取れば彼には何ら問題ない。というより、そちらがYARIOとしてはメインである。

 

 

「さて、それではひと段落ついたところで深淵まで野草狩りに行きますか!」

「馬を三頭とりあえず借りるけどええかな?」

「あー…、はい、もう好きに使っちゃってください」

 

 

 クー・フーリンの言葉にもう投げやりな返答を返すフィオナ騎士団の団員の一人、ロナン。

 

 なんだか、目の前でいろいろ言いたいことがありすぎてもう、彼らはクー・フーリン達に何も言えなくなってしまっていた。

 

 こうして3人はフィオナ騎士団から馬を借り、幻の0円野草、霊草を求めて深淵まで野草狩りに出かける事になった。

 

 果たして、野草狩りに出掛けた彼らの前に立ち塞がるものとは一体どんな困難なのか!

 

 この続きは…、次回の鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 深淵まで幻の野草狩りーーーー←NEW

 

 顔面ビフォーアフターーーーー←NEW

 

 



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伝説の食材その1。霊草

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでADフィンを若返らせる為に深淵にある霊草を探しに旅に出たクー・フーリン一行。

 

 その道は多難が当然のように待ち受けていた。まず、草を探すにしてもアテがない、果たして探している霊草がどんなものかスカサハも含めて想像がつかないからだ。

 

 深淵の知識のあるスカサハもこの霊草については断片的なものしかわかってはいない。

 

 

「霊草は…深淵の暗い海底にあると聞いた事がある」

「ほぇー、じゃあ海藻なんやな」

「どんな海藻なんだろうねー、海藻料理なら結構作ったことあるけど」

 

 

 馬に跨る一同はそんな会話をしながら霊草を探し求め、スカサハが先導する中、深淵の海へたどり着くための過酷な道のりを行く。

 

 借りた馬は当然、道中降りなくてはならなくなり、途中からは徒歩で進み、食料が底をつけば無人島や村での生活の知識を活かして生き延びながら彼らは進んだ。

 

 深淵にある海底にある海藻、かつて、ギルガメッシュ王が手に入れたとされる海の野草。

 

 手を取り合い崖を登り、過酷な道のりをスカサハが先導する中、彼らはただただついて行く、時には自分達の昔話や他愛の無い会話や豆知識を披露しながらの旅は苦難はたくさんあれど彼らには実に楽しいものだった。

 

 そして、ついに、深淵の海を目の前に彼らはその場所へと足を踏み入れる事になる。

 

 

「ついに…ここまで来たか…」

「ここに伝説の真昆布があるんだね…リーダー」

「なんかアルギン酸めっちゃ取れそうやね」

 

 

 暗く広がる深淵の海。

 

 スカサハと共にこの場に訪れた二人は待ちに待った伝説の野草、霊草の生えているであろう場所の近くまでやって来ることができた。

 

 暗く海底が見えない海、この海底にそのアルギン酸たっぷりの真昆布、ではなく、ADフィンを若返らせる為の霊草が生えている。

 

 自作で作った船、『つれたか丸』を漕いで行き、霊草を取るべく深淵の海を行く。

 

 そして、ある程度、深淵の海を進んだところで、『つれたか丸』の上で3人は会議を開いてひとまず顔を見合わせると、どうやって草を回収するのかを相談し始めた。

 

 

「やっぱり素潜りして取り行くしかないよね?」

「うむ、なら私がいこうか?」

「いやいや、あかんよ、師匠でも女の人をこんな暗い海に入ってもらうなんて危ないですから」

「ふふふ、今更、私を女扱いか?しげちゃん?」

「いや、結構、師匠は女の人の扱いしてましたよね? 僕」

 

 

 そう言って、クー・フーリンは悪戯そうに含んだ笑みを浮かべているスカサハに首を傾げながらそう告げる。

 

 確かにいくら不死とはいえど、暗い深淵の海に女性である彼女を潜らせるにはあまりにも酷としか彼には思えない。

 

 紳士的であるクー・フーリンはそう思った。危ない事こそ、男性である自分達が身体を張って進んでやらなくてはいけない。

 

 その言葉を聞いたディルムッドは待ってましたと言わんばかりに自身の背後から手作りしたあるものをクーフーリンとスカサハの二人に見せた。

 

 

「リーダー、じゃあ俺らで潜るんだ? 一応、足ヒレ自作してみたけど」

「おー、これなら下までガンガン進めるな!」

「ディル、お前なかなか器用だな」

「へへへ、こんぐらいならまだ楽勝っすよ」

「おー、サイズピッタシやな、よし潜ってとっとと草毟って来よう」

「イメージ的には?」

「禿頭にする感じで」

「了解!」

 

 

 禿頭にするイメージでもって足ヒレをつけた二人はスカサハに水中でも息ができるルーン魔術を施してもらい、海底にある霊草を取りに深淵の海に潜った。

 

 深い深い海の底、真っ暗な海の底をひたすら潜り続ける事、数時間。

 

 無心で潜り続ける二人、建築作業なんかに打ち込む際にはよく無言でひたすらに作業に打ち込む彼らには懐かしい感覚だろう。

 

 水中の中で息ができるのは非常にありがたい、これなら、きっと海底まで難なく辿り着く事ができる。

 

 それからさらに数時間、ひたすら海を潜り続けるクー・フーリンとディルムッドの二人。

 

 すると、ようやく、海底まで近づいてきたのか…彼らの前に光り輝く海藻が目に入ってきた。その海藻はユラユラと揺られながら、わかりやすく光を発光している、これは…。

 

 

「ゴポポポポ…」

「ゴポポ」

 

 

 間違いない、探し求めていた霊草だ!

 

 海の底で蓄えた豊富な栄養分、そして、神秘めいたその海藻はまさに探し求めていたそれに違いないとクー・フーリンとディルムッドの二人は水中でサムズアップして満面の笑みを溢している。

 

 そして、霊草をむしむしと無心で毟る二人はとりあえずそれをできるだけ大量に持ち帰るべく持ってきた容れ物に押し込んだ。

 

 これだけあれば、霊草を使った薬も作れるであろう。二人は互いに頷くと草を回収して深淵の海から数時間かけて浮上していく。

 

 

「プハッ…! 師匠! 取れましたよ! 大漁です大漁!」

「おぉ、霊草を手に入れてきたか!?」

「とりあえずたくさん毟って残りもある程度残してきたんで」

「これならまた一年くらいしたら大量に海底に生えて来るやろうしね」

 

 

 そう告げる二人は深淵の海に浮かぶ船、『つれたか丸』に登り、回収した深淵の霊草を師匠であるスカサハの前に置く。

 

 大量にある霊草を前に興味深そうにそれを見つめるスカサハ、知識にはあったがこうして目の前にある実物を見るのは彼女も初めてだ。

 

 霊草は海から揚げてもなお綺麗な光を帯びている。後はこれを持って、砦に持って帰り加工するだけだ。

 

 

「霊草、海藻、霊薬…ふむ、うーん、閃いた!」

「ん? なんやディル? どないしたん?」

「あぁ、しげちゃん、これさ、ラーメンの出汁に使えんじゃないかなって思ってさ」

「らーめん?」

 

 

 そう言って首を傾げるスカサハ。

 

 らーめん、聞いた事がない言葉である。『つれたか丸』を漕ぎながら、ディルムッドはスカサハ師匠の言葉に力強く頷いた。

 

 そして、そのディルムッドの話を聞いたクー・フーリンはその画期的なアイディアに賛同するようにこう応える。

 

 

「おぉ! ええやん! けど、材料がまだ足らへんね」

「だよねー、どうせならこの良い海藻を使うなら良いもの揃えたいしね」

「なぁなぁ、らーめんとは一体なんなのだ? どういった物なのだ?」

「あ、師匠は食べた事なかったんかな? ラーメン? ラーメンってのはやな…」

 

 

 そう言って、二人が話すラーメンについて訊ねるスカサハにラーメンとは一体どういったものなのかを説明しはじめるクー・フーリン。

 

 そして、その聞いたこともない食べた事も無いラーメンの話をクー・フーリンから聞かされたスカサハはそれについて興味深そうに聞いていた。

 

 

 まず、彼が話したのは以前、仲間達と作ったラーメンについてである。

 

 まずは出汁から取る事からラーメン作りは始まる。

 

 通常の鰹節よりも、力強いパンチのある出汁を生む宗田節。朝4時から船に乗り込み、高知県土佐清水沖で捕ったソウダガツオを、静岡県西伊豆で行われている伝統の「手火山式」で2週間かけて燻して作り上げたものを以前はラーメンに使った。

 

 宗田節からはイノシン酸と呼ばれる旨味成分が出る。

 

 そして、旨味成分として知られるグルタミン酸を多く含む真昆布。

 

 前回のラーメンに作りに使ったのは、「昆布の王様」と呼ばれている北海道函館南茅部町白口浜で採られる真昆布。

 

 彼らの仲間の一人が自ら海に潜り、4mの長さのある漁具を使って、長さ2m、厚さ7㎜の肉厚な極上の真昆布を手に入れたものを旨味を最大限に引き出すため、3日間天日干したものを使った。

 

 これらの出汁のベースにまた様々な高級素材をふんだんに使い作った小麦の麺が入った食べ物、それがラーメンである。

 

 クー・フーリンから話を聞いたスカサハは納得した様に頷く。なるほど、確かに聞けば聞くほど美味しそうな食べ物であると。

 

 

「して、この霊草で霊薬を作り、その残った余りを使ってそのラーメンとやらを作ろうかと考えているんだな?」

「えぇ、そうなんですよ」

「けどやね、今回はちょい趣向を変えようかと考えてまして」

「ほほう、なんだ、その趣向とやらは、聞かせてみろ」

 

 

 そう言ってにこやかな笑顔を浮かべているクー・フーリンに訊ねるスカサハ、異なる趣向、それは是非とも聞いてみたい。

 

 クー・フーリンとディルムッドの二人は互いに顔を見合わせて頷くと、今回作るラーメンについてスカサハに話をしはじめる。

 

 今回はクー・フーリンとディルムットの二人が海へと潜り、真昆布の代わりにこの取ってきたグルタミン酸がたくさん含まれてそうな霊草をラーメン作りに使用しようと思っている訳である。

 

 この深淵の海の海底にあった霊草ならば、旨味成分がたくさん詰まったグルタミン酸も数多く含まれているはずだ。

 

 そして、今回、ディルムッドとクー・フーリンが考えているのは以前作ったこれらの醤油ラーメンの為に取った出汁とは違う作り方。

 

 つまり、出汁から異なるものを作ろうと思っていた。

 

 

「以前は醤油だったんやけど今回は」

「豚骨ラーメンを作ろうかなと思ってまして」

「豚骨? …うむ、なんだか、また興味深そうだな豚骨ラーメンか」

 

 

 豚骨ラーメンとは、豚骨でとっただし汁をスープに用いたラーメンで白濁したスープが多い事で知られている。

 

 豚骨ラーメンの有名な地名なら博多が挙げられるだろう。細い麺が主流で麺の硬さをバリカタ、カタ、普通といろんな硬さの細麺を頼めるのが魅力の博多の伝統のラーメンである。

 

 さらに、この博多の豚骨ラーメンの魅力として挙げられる細麺。

 

 この細麺の理由としては麺がスープに溶けやすい様にと考えられた手法である。

 

 これにより、簡単に細麺を湯上げできる事から、替え玉などの独特な文化はこの博多ラーメンが発祥とされており、ご当地料理としてよく知られているラーメンなのだ。

 

 さて、前回は醤油ラーメンだったが、今回は豚骨ラーメンにと趣向を変えたクー・フーリンとディルムッド。

 

 当然、これには訳があった。

 

 

「して、なんで豚骨ラーメンなんだ? 今回も醤油でもよかったじゃないか」

「いやー、最初はまた醤油にしようかなと思うてたんですけどね、前回も醤油やったし…」

「それにほら、豚骨ラーメンなら、最近、いい出汁取れそうな豚骨が頻繁にウチの畑荒らしてるでしょ?」

「あ……」

 

 

 ディルムッドがそう告げた瞬間に話を聞いていたスカサハは全てを悟った。

 

 なるほど、確かに言われてみればそうだ。最近、凶暴な魔猪がフィオナ騎士団や村人が耕した畑を荒らしているという話が以前、彼の口から語られていた事を彼女は思い出す。

 

 なんと、この二人。豚骨ラーメンを作るために魔猪の豚骨を使って作ろうと考えていたのである。

 

 深淵の霊草の出汁をベースにした、魔猪の豚骨スープ。

 

 きっと美味しいに違いないと二人の中では確信があった。この豚骨スープならば、皆が喜ぶ豚骨ラーメンが作れるはずだ。

 

 

「…くっくっくっ! あははははは! お前たちは本当に天才だなぁ! あはははは!」

「いやー、やっぱり出汁は良いもん使わないとね」

「まぁ、まだ麺とかは揃えられへんやろうから食材の確保だけしときたいんですよ」

 

 

 スカサハも流石に二人の話を聞いて腹がよじれそうになるほど久々に笑ってしまう。しかし、二人はなんの問題も無さそうにスカサハ師匠に笑顔で応えていた。

 

 第1の食材、もとい、フィンを若返らせる為の霊草を採取したYARIO一行はこうして深淵の海から再びアルムの砦を目指す。

 

 次の目標は第2の食材、魔猪の豚骨、それを手に入れる事である。果たして彼らは無事に伝説の豚骨ラーメンの素材の一つを確保できるのか?

 

 まだ、失われた仲間達との再会も果たしてはいない中での挑戦! クー・フーリン、ディルムッド、スカサハの3人のカタッシュ隊員はこの第2の目標、魔猪の豚骨を手に入れる難題に果敢に挑戦していかなければならない! 果たして、それを手にする秘策は彼らにあるのか!

 

 そして、次回は初めての薬草加工に、クー・フーリンとスカサハ師匠が挑戦! 果たして、霊草を用いた霊薬は無事に作ることはできるのかだろうか。

 

 まだまだ、これからも我らがYARIO達の挑戦は続く!

 

 ザ・鉄腕/fate! 伝説の食材達で美味しい豚骨ラーメンはできるのか?

 

 この続きは…! 次回の鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 伝説の食材でラーメン作りーー←NEW!!

 

 薬作りに挑戦ーーーーーーーー←NEW!!

 

 深淵の海底まで海藻取りーーー←NEW!!



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日本食で乾杯!

 

 

 

 無事に第1の食材、もとい、ADフィンを若返らせる為の霊草を手に入れ、砦に帰還したYARIO一行。

 

 ラーメンの具材にも、薬の原材料となるこの霊草の入手は非常に大きい、これさえあれば今後のYARIOの活動にも幅が広がることは間違いない。

 

 海藻に含まれているグルタミン酸、アルギン酸は間違いなくこの深淵の霊草には多く含まれているはずだ。

 

 グルタミン酸は料理にも使えるのはもちろんだが、アルギン酸は土の水はけを良くし豊かにする成分が含まれている。

 

 伝説の霊草を持ち帰った三人に、フィオナ騎士団の面々は腰を抜かした様に驚くばかりであった。

 

 

「ほ、ほんとに持って帰ってきたのか!?」

「せやでー、まぁ、とはいえこれから加工作業に入らなあかんねんけどな」

「さぁ、お前らも今から忙しくなっからしっかり手伝ってくれよ?」

「…ははは、あは…ま、マジかよ…」

 

 

 フィオナ騎士団達もこの霊草を何事もなく持ち帰ってきた英雄達に開いた口が塞がらない。

 

 確かに、あの大英雄クー・フーリンと影の国の女王であるスカサハならば、そんな、与太話の様な事を成し遂げてしまう事はわかるが、同僚のディルムッドもまたそれが普通だとばかりに振る舞っている。

 

 これは自分達の認識がもしかしたら間違っていたのかもしれない、フィオナ騎士団のロナン達三人は彼らが持って霊草を前にしてそう思わざる得なかった。

 

 さて、ひと段落ついたところでこれから薬の加工作業に入るわけだが、我らがYARIOも古代の伝統的な薬の加工法は素人。

 

 ここは一つ、深淵の知識があり、なおかつ、ルーン魔術に精通している我らが師匠、スカサハの教えを受けながらの手探りの薬作りを行わなければいけない。

 

 

「そういうわけで! スカサハ先生! ご指導ご鞭撻! お願いします!」

「う、うむ、…むー、しかし、私も久々の薬作りだ。うろ覚えなとこもあるからな…」

「あー、それなら、ほら、昔ながらの伝統的な薬品加工の方法が書かれた本がウチの書物にあったはず!」

 

 

 そう言って、ディルムッドは砦にある書物庫から薬剤に関する書物をありったけかき集めてきた。

 

 これだけ本があれば、薬作りを行うにも失敗しなくても良さそうだ。早速、クー・フーリンとスカサハは霊草を加工して薬作りをしはじめた。

 

 まずは、霊草を乾燥させるところから始まる。乾燥させた材料を細かく砕いてこなごなにしやすくするためだ。

 

 

「ふむ、確かこんな感じだったな」

「日によく当たるところがええやろうから窓側に置いときましょ!」

 

 

 それから1日ほど待ち、窓側に置いてパサパサに乾燥させた霊草の状態を確認する我らがリーダー、クー・フーリン。

 

 さて、その一日中おいて乾燥させた霊薬の出来栄えやいかに…。

 

 

「おぉ、パッサパサしとるね!」

「あ、本当だ。これは凄い」

「しかし、発光したままか…流石は霊草だな」

 

 

 そこには、見事に乾燥しパサパサになった霊草があった。綺麗に発光はしているものの、これならば加工には申し分ない。

 

 早速、乾燥させた霊草を作業台に移すクー・フーリン達、そこからは書物とスカサハ先生の指導の元、手順から教えてもらう。

 

 まず、薬の加工には薬研という原料をくだくための道具とすり鉢を用意する。

 

 霊草を薬研で細かくしさらにすり鉢を使いその霊草をさらに細かくしていく作業。流石にクー・フーリン、初めて握る薬研の使い方がぎこちない。

 

 

「こうだぞ? そうそう、もっと真っ直ぐに」

「おぉ、こんな感じなんですね!」

「勉強になるなぁ」

 

 

 そんな薬研の使い方がぎこちないクー・フーリンを見かねたスカサハが背後から手を握り、身体を密着させて指導が入る。

 

 心なしかクー・フーリンの背にスカサハの豊満な胸部が当たるが、これをスルー、なんとも羨ましい光景である。

 

 その指導を横で見ていたディルムッドも真似をして薬研を使い霊草をすりつぶしていく。

 

 しかし、流石はディルムッド、板前で細かい作業が得意な彼は手慣れたように霊草をすりつぶしていた。

 

 それを見ていた薬作りの指導をしていたスカサハは感心したように「ほぅ…」と声を溢すとディルムッドにこう声をかけはじめる。

 

 

「ディル? お前、本当に初めてか? 筋が良すぎるぞ?」

「あーいや、よく料理とかで肉をすり潰したりしてるから案外その要領でうまく出来てるかもしんないです」

「ええなー、ディル器用やもんなー」

 

 

 そう言って、我らがリーダーも負けじと霊草をすり潰す作業に没頭していく、ある程度、すり潰したところですり鉢でさらに細かくすると綺麗に砕けた霊草が出来上がった。

 

 これらを澄んだ真水とよく練り合わせていく。この真水は不純物を完全に取り除いたものだ。

 

 そして、ある程度、その綺麗な真水と霊草を混ぜ終えたところで栄養価がある薬草を加え更にそこから煮る。

 

 さらに、不純物を取り除く細かい布を通してその煮たものの出汁を丁寧に取りはじめる。これならば、きっと、フィンも飲みやすいはずだ。

 

 出来たものを透明な瓶に溢さぬように入れていくと、あら不思議、綺麗に透き通った霊薬が完成した。

 

 

「ふむ、これが若返りの霊薬か…綺麗な色だな」

「初めてやったけど上手くいったな! よかった!よかった! やっぱり先生がええからやろうね!」

「間違いない、これは全部スカサハ先生のお陰だな! 流石師匠!ありがとうございます!」

「ふふ、あんまり褒めるなよ…照れるじゃないか」

 

 

 そう言って完成した綺麗な霊薬を前に完成に1番貢献してくれたスカサハを褒め称えるディルムッドとクー・フーリンの二人。

 

 正直、師匠であるスカサハが色々とサポートしてくれたお陰でこの薬が出来上がったと言っても全然、過言ではない。

 

 薬作りのやり方、素材の採取にも彼女の功績は二人にとって感謝してもしきれないものがあった。

 

 さぁ、ついに完成にまで辿り着いた霊薬、あとはこれをADフィンに飲ませるだけだ。

 

 それからしばらくして、ADフィンは仲間達から連れられてクー・フーリン達の元へと現れた。

 

 

「リーダー…、ディルムッド、すいません、私の為にわざわざ…」

「何言うてるん! 仲間やんか! 当たり前やろ!」

「そうだよ、俺らはみんなフィンに今までたくさん助けられて来たんだからさ、今度は俺らの番だって!」

 

 

 そう言って、二人は今にも泣きそうな表情を浮かべるフィンに笑顔を浮かべたままサムズアップをしていた。

 

 妻を失い、そして、もう歳を重ねているうちに年老いていくフィンは2度とYARIOの黒子役には戻れないんじゃないかと不安な毎日を送っていた。

 

 騎士団長という立派な肩書きはあれど、彼がやりたかった事はそれではない。彼らの隣に立って一緒に素晴らしい毎日を送りたいという気持ちがあった。

 

 それが、彼にとっての理想郷だったから。

 

 フィンはクー・フーリン、ディルムッド、そして、スカサハの三人が作り上げた伝説の霊薬を口を開き飲み干す。

 

 彼らが作ったそれを飲んだフィンの眼からは涙が溢れ落ちる。やっと、長年に渡り忘れなかった自分の居場所に戻る事ができると。

 

 霊薬を飲んだフィンの身体はみるみるうちに若返っていく、年老いて皺だらけだった顔は張りを取り戻し、白髪が目立ってきた髪は昔の様に綺麗な艶のある金色の髪へ。

 

 それを見ていた騎士団達は目を輝かせていた。自分達は今、伝説を目の当たりにしている。誰もがそう感じたからだ。

 

 そして、若返った美しき美貌を持つフィオナ騎士団団長兼YARIOのAD、フィン・マックールは静かにクー・フーリンとディルムッドに頭を下げるとこう口を開いた。

 

 

「ADフィン、お待たせしました。これからはYARIOのサポートを誠心誠意、全力を持って務めさせて頂きます」

 

 

 そう言って頭を上げて、爽やかな笑顔を浮かべたフィンは三人にそう告げる。

 

 クー・フーリンとディルムッドは嬉しさのあまり溢れ出た涙を拭いながら、ADフィンの手を力強く握りしめると何度も頷いた。

 

 

「おかえり…! ほんとに長くまたせちゃったね…っ!」

「ほんまにすまん…!そして、おかえりなさい!」

「…っ! …えぇ! ただいま戻りました!」

 

 

 三人は感極まり、思わずそこから熱い抱擁を互いに交わした。

 

 クー・フーリンやディルムッドは長い年月をかけて会った訳ではない、だが、ADフィンは長い年月、神話通りに困難に立ち向かい歳をとりながらもずっと忘れずにこうなる事を待ち望んでいた。

 

 その長い空白の時間を自分達の事を忘れずに思ってくれていた。その、ADフィンとの大きな絆がとてつもなく大切なものに思えて仕方なかったのである。

 

 感動の再会を果たした二人はこうして、新たな仲間、ADフィンをYARIOへと無事に迎い入れる事に成功した。

 

 フィオナ騎士団の皆もその光景に惜しみなく拍手を送る。

 

 見事であった。周りから見れば彼らの行動は友を救う為、深淵に霊草を取りに行くという立派な英雄譚になり得るものだ。

 

 しかも、その友と言うのが騎士団長のフィン。そんな彼を若返えらせる為にとなればその功績も大きいのは明らかである。

 

 着々とYARIOのメンバーは揃いつつある。ディルムッドは若返ったADフィンの背中をパン!と軽く叩くと声を上げて皆にこう告げ始めた。

 

 

「さぁ! 今日は大将の復活祝いだ! 盛大に料理を振る舞うよ! AD、いける?」

「もちろん、ディル、今から作るんだろ? 全員分」

「応ともさ!」

 

 

 そして、二人は板前の衣装に着替えはじめた。

 

 ここからは本領発揮、YARIOのADに復帰したフィンとディルムッドの板前料理が存分に発揮される時が来た。

 

 すぐさま、フィオナ騎士団の団員の皆が近くの村まで馬を走らせアルムの砦での宴会が開かれる事を知らせに回る。

 

 そして、その若返ったフィンの知らせを聞いた村々の人々がアルムの砦を訪れ、砦が人で賑わうにはさほど時間はいらなかった。

 

 ワイワイとあちらこちらで声が上がる中、酒やフィンとディルムッドが作った日本の伝統的な料理が運ばれてゆく。

 

 そして、村の料理人達もそれに加わり、賑やかな宴会が始まった。

 

 スカサハとクー・フーリンの二人もアルムの砦にあるカウンター席に座らされた。正面では酢飯を握るフィンと魚を捌くディルムッドがいる。

 

 

「師匠、師匠って刺身は食べた事ありましたっけ?」

「いや、無いな? 刺身とはなんだ?」

「へぇーお客さん刺身食べた事無いんですか! なら、まずはこれからだな!」

 

 

 そう告げるディルムッドは宝具包丁ベガルタを巧みに扱い、スカサハの正面でヒラメを捌きはじめた。

 

 ヒラメは捌く際、普通の魚を捌くのとは異なり四枚に卸さなければならない。綺麗に捌かれていくヒラメの公開解体を見ていたスカサハは目を輝かせてそれを眺めていた。

 

 そして、捌いたヒラメの身を更に横にして包丁を入れて丁寧に一枚一枚の身に捌いていく、透き通った身がプリプリに光り輝いていた。

 

 そして、ヒラメといったら忘れてはいけないのがえんがわ。ヒラメのヒレの部分にあるそのえんがわをフィンが握った酢飯と合わせて寿司を握る。

 

 さらに、それをヒラメの刺身と合わせて盛りつければ完成。ADフィン、ディルムッド作の『刺身と寿司のヒラメづくし』である。

 

 アルム砦が誇るお手製の醤油につけて食べれば絶品間違いなし。皿に盛ったそれをディルムッドはバン! っと、カウンターに座るスカサハに提供する。

 

 

「さぁ、ご賞味くださいな」

「…おぉ…!? 」

「醤油につけて食べるんやで? こうやって」

 

 

 そう言って、手本に食べ方を披露するクーフーリン、近くに置いてある箸を使い刺身と寿司を醤油につけて口の中へと放り込む。

 

 隣でそれを見たスカサハはゴクリと唾を飲み込む、そして、不器用ながら箸を使い、醤油をつけてそれを口の中へと放り込んだ。

 

 さて、そのお味はいかに…!

 

 

「んんー!! なんだこれは! すごく美味しいじゃないか!」

「はっはっはー! お客さん、そりゃ私とフィンのこいつがいいからですよ!」

「恐縮です」

「たまげたなぁ、またシャリ握る腕が上がったんちゃう? フィンさん」

 

 

 そう言って、腕をパンパンと自信ありげに叩くディルムッドと軽く頭を下げるフィンにヒラメの寿司を食べたクー・フーリンは驚いたように告げた。

 

 だが、まだ食べたのはヒラメの刺身と寿司だけである。

 

 続いてやって来たのはカツオを節に切り、表面のみをあぶったのち冷やして切り、薬味と手作りで作ったタレをかけて食べるディルムッド特製『カツオの叩き』である。

 

 これを見たスカサハはまたも目を輝かせていた。

 

 長年に渡り生きて来たがこのような食べ物を食べるのは初めての経験、しかも、その料理を作るのは職人的な業を持つYARIOを代表する料理担当、ディルムッドとサポートをさせたら右に出るものは居ないADフィンである。

 

『カツオの叩き』、別名『土佐造り』を箸で掴み上げて慎重に口に運んでいくスカサハ。そして、食べた途端に特製のタレと歯応えのあるカツオの刺身がスカサハの口全体に広がった。

 

 

「…はぁ〜…美味しい…」

「これに日本酒やお酒を飲むとさらに美味しいんですよ師匠、な? ディル?」

「そうですぜい、そう言うと思って、リーダー…」

「まさかあるんか!? 日本酒!」

「じゃじゃーん! 実は少量ながら前に作ってましたー! へへへへ」

「おー! やるやん!」

「ささ、お二人さん、これで一献づつどうぞ」

「おぉ、酒か! いいな! 貰おう!」

 

 

 そう言って、僅かながら作り置きして置いたディルムッドの作った日本酒が入った徳利をお猪口と共に手渡されるクー・フーリン。

 

 手渡された日本酒が入った徳利をお猪口に注ぎスカサハに渡すクー・フーリン、ヒラメの刺身や寿司、そして、カツオの叩きと一緒に飲む日本酒、その味はきっと格別に違いない。

 

 二人は互いにお猪口を掲げて乾杯すると、それをぐいっと飲み干す。

 

 

「かぁー! 美味い! やっぱりええな!」

「えー、リーダーおっさん臭い」

「ふぅ、こんなお酒があったとはな、実に美味だった…ふふ、お前達といると毎日が新しい発見ばかりで飽きないな、ほんとに」

 

 

 こうして、アルムの砦で開かれた宴は賑やかに盛り上がりながらも時間は過ぎて行く。

 

 美味しい料理に美味しいお酒、そして、だんだんと集まるYARIOの仲間達、次はどんな発見と経験がカタッシュ隊員達を待ち受けるのだろうか。

 

 作り始める予定のラーメン作りにも着手していかなくてはならない。第2の食材、魔猪の豚骨スープは手に入れる事ができるのか。

 

 ADフィンが復帰し、賑やかになるYARIO達! さぁ、次なる挑戦はなんだ!

 

 気になる続きは! 次回の! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 幻の霊薬が作れるーーーーーーNEW!!

 

 師匠が日本食に目覚めるーーーNEW!!

 

 仲間を若返らせられるーーーーーNEW!!

 



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インドの文明開化

 

 

 さて、前回、ADフィンを見事若返らせてADに復帰させたYARIO一行。

 

 盛大な宴から一夜明け、これから本格的な仲間探しと伝説のラーメン作りに着手していかねばならない。

 

 まずは、豚骨ラーメンに必要な魔猪を狩るか、それとも仲間をまずは集めるかを決めなくてはいけないだろう。

 

 そこで、皆はアルムの砦にある一室を借りて作戦会議を開いていた。

 

 

「まぁ、魔猪を狩る算段はある程度明確にはしとるんやけどやっぱり人員が足りへんよね」

「うーん、だよねー、やっぱり大掛かりなもの作るとなると兄ィが居なきゃ、やっぱし始まんないしね」

「兄ィ? …お前達の仲間か?」

「そうなんですよ、建築するならあの人がいてくれた方が頼もしいんですよね」

 

 

 そう言って、首を傾げ訪ねてくるスカサハに力強く頷くディルムッド。

 

 仲間の中でもより建築に特化し、いわば、YARIOが誇る大工の親方。魔猪を狩るにはまずは大掛かりな仕掛けを作らないといけないがそれには彼の力が必要であった。

 

 そうなると、まずは魔猪を狩るのはこの際、置いておいて、このフィニアンサイクルに彼を連れて来なければいけないだろう。

 

 最優先事項は、まずは、我らがYARIOが誇る一流の大工のスペシャリストを招集する事が1番だ。

 

 そうと決まればどうするのかは、自ずと決まっている。まずは『だん吉』に乗って世界を越えなければならない。

 

 

「とりあえず私は残っておきましょうか、また戻ってくるんでしょう? 下準備だけしときますよ」

「おー、せやね、ADはじゃあ留守番になってもらって…、兄ィを迎えに行くか」

「あの人の事だからまた納屋でも建ててそうだけどなー」

「それじゃ、決まりだな、まずは仲間を探しに行くとこからか」

 

 

 そして、話が纏まったところで一同は席から立ち上がると仲間を探しに行く為にクー・フーリンとスカサハが乗ってきた『だん吉』の元へと足を運ぶ。

 

『だん吉』の扉を開き、運転席へと座るスカサハ、そして、助手席にはクー・フーリン、後部座席にはディルムッドが座る。

 

『だん吉』のハンドルを握ったスカサハは人生初めての車の運転に挑戦する事になる。

 

 

「おぉ…これが運転席というものか…」

「右がアクセル、左がブレーキですよ、師匠。車運転したい言うてたですもんね」

 

 

『だん吉』の助手席に乗るクー・フーリンはにこやかな笑顔を浮かべてスカサハにそう告げる。

 

 以前、デロリアン『だん吉』に乗った際、スカサハは車を運転してみたいと言っていたので今回は彼女に『だん吉』の運転をクー・フーリンは任せる事にした。

 

 アクセル、ブレーキは一通り教え、後はスカサハに運転を任せる。140kmを超えれば『だん吉』は世界を越えるのだ、まっすぐ走らせるだけで初めて運転するスカサハにもこれくらいなら軽くこなせる筈。

 

 案の定、運転方法をクー・フーリンから隣で教わったスカサハはすぐに『だん吉』の運転の仕方を把握した。

 

 スカサハが操縦する『だん吉』は勢いよくバックするとある程度整備された道へと出る。

 

 

「なるほどな、ある程度はコツは掴んだ」

「さっすが師匠! 飲み込み早いですね!」

「それじゃ後は飛ばすだけだな、二人とも覚悟はいいな?」

「え? ちょっ…! そんなに勢いよくアクセル踏んだら!?」

 

 

 ノリノリになってきたスカサハを制止するように背後から身を乗り出して声をかけるディルムッドだが、既に時は遅かった。

 

 アクセルを全開に踏み込んだ『だん吉』は勢いよく、ニトログリセリンが爆発したかのように加速したかと思うと火花を散らし始める。

 

 このロケットスタートには車に乗っていたクー・フーリンとディルムッドの二人もびっくり仰天だ。

 

 急加速した『だん吉』はバチバチと火花を散らし、そして…。

 

 

「あっはっはっはっ! これは凄い! あっははははっ!速いぞー!!楽しいなぁ!」

「ひゃあああ!?」

「ぶべっ…!」

 

 

 助手席に座るクー・フーリンはすかさず、シートベルトと上にある取手を掴み、身を乗り出していたディルムッドは車の急な加速の勢いで背後に頭を打ち付けた。

 

 しかし、アクセルを全開に踏み込むスカサハはガンガンスピードが出る『だん吉』に上機嫌である。

 

 そして、『だん吉』はいつものように140kmに到達すると、火花を散らしながらバチン! と音を立て、眩い閃光と落雷のような音を放ち、地上に炎のタイヤ跡を残してフィニアンサイクルの世界から姿を消した。

 

 

 

 インドの叙事詩『マハーバーラタ』。

 

 その叙事詩に登場する不死身の英雄がいる。太陽神スーリヤが父、ヤドゥ族の王シューラの娘のクンティーを母にして産まれたインドの英雄。

 

 史実では優れた弓の使い手であり、大英雄アルジュナを宿敵とする悲運の英雄として後世にまでその名は語り継がれている。

 

 生まれたばかりのまま身体を箱に入れられ川に流してしまい、御者アディラタに拾われ、ラーダーという養母に育てられ、その身体には黄金に輝く鎧を着ており。彼は黄金の鎧と耳輪を身に着けた姿で生まれてきた。

 

 そして、そんなインドの大英雄である彼は今…。

 

 

「よっしゃ! これでまた綺麗な洋式トイレが出来上がったぜ!」

 

 

 インドのトイレ事情と一人で戦っていた。

 

 金槌を片手に汗を拭いながら、完成した洋式トイレを満足に見つめる。彼の名はその英雄であるカルナ、その人である。

 

 そう、クー・フーリン、ディルムッドと同じくしてYARIOの宿命を背負いしカタッシュ隊員である。

 

 そして、その大工の腕はまさに棟梁の域に達しており、まさに、YARIOが誇る建築の真髄こそは彼であると言っても過言ではないだろう。

 

 こうして、彼はまた綺麗に用を足せる洋式トイレを一つ作り上げ、今日も一つ目の仕事を完了させる。

 

 

「おーい! 棟梁! 現場でなんか苦戦してるみたいですぜ!」

「うぉい! またかよ! しゃあないねーどこの家?」

「こっちです!」

 

 

 そして、そんな凄い建築能力を持つカルナは周りから頼られる兄貴分のような存在で知られていた。

 

 大工の棟梁であり、さらに、いろんな農業や産業に詳しい彼の手により、彼がいる村は今、異様な発展を遂げている。

 

 特に驚くべきは、インドの村に書院造りの家や古民家の家が立ち並んでいるこの異様な光景だろう。

 

 これらはなんと、カルナが家の建て方を村人たちに教え、さらに、その中の数軒は協力は多少なりとあれどカルナがほぼ一人で建てた。

 

 その事から、カルナはこの地域で神として崇められるほどの建築業者として名を馳せている。

 

 カルナが受ける案件の中には王族の宮廷の補修にも携わっており、その腕前はインド中を駆け巡っていた。

 

 

「んー、そりゃ無理にそうすればズレちゃうよ、一回この箇所、外さねーとな」

「しかし、親方、これを外すってなると」

「大丈夫大丈夫、みんなでやれば明日にはできるから、な?」

「は、はい!」

 

 

 そう言って、にこやかな笑顔を浮かべ従業員の背中を軽く叩いてやるカルナ。

 

 ミスは誰にでもある。要はミスをした時に周りがいかに上手く助けてあげるかが大切な事だ。それが、自信にも繋がることをカルナはよく知っている。

 

 それから、カルナは従業員と共に協力して家の改修をはじめた。力作業ならば、無人島でも村でも行なってきた、これくらいの改修を済ませるのは容易い。

 

 3時間ほどで苦戦していた箇所の改修も済み、片手に握っていた金槌を降ろすカルナ、晴れやかな表情を浮かべる彼は汗を拭いながら皆と笑っていた。

 

 

「こんなところに居たのか、カルナ」

「ん? おー! アルちゃんじゃん! どったの?」

 

 

 すると、笑顔を溢すカルナの元に一人の男性が声をかけながら現れた。体格がよく、大変に美男子である彼は汗を布で拭うカルナに近寄ると彼もまた親しく笑みを浮かべていた。

 

 彼の名はアルジュナ、任意の神を父親とした子を産むマントラにより、神の王であるインドラによってカルナと同じくクンティーの腹より生まれた英雄である。

 

 本来史実ならばカルナと宿敵として立ち塞がる筈のアルジュナ、しかし、その様子を見る限りでは何故だか彼らは親しく接している。

 

 それは、カルナがYARIOとしての使命に目覚めているのが原因であるのはもはや言うまでもないだろう。

 

 アルジュナは勤勉な事で知られている。そんな彼はインド中に建築で名を轟かすカルナにある事を教わっていた。それは…。

 

 

「いや、お前に今日も建築学を教わろうと思ってな…、この後、少し時間あるか?」

「あーいいよいいよ! じゃあ、今から屋敷で緑茶でも飲みながら話そうか」

「!!…緑茶か…、味わい深いあれは、ほんとに思考が済んだように冴え渡るんだ。是非頂きたい」

「んじゃ行こう行こう!」

 

 

 そう言って、アルジュナを村にある自分が建てた屋敷に招待するカルナ。

 

 立派な書院造りの屋敷に足を踏み入れたカルナはあいも変わらず文化的なその光景を前にして思わず感心する。

 

 座敷、そして、襖、これらが全てカルナが皆に伝え形にしたものだ。長い月日で様々な職人から教わった事をカルナはこの世界に間違いなく伝えようと尽力していた。

 

 

「…うむ、このお茶はやはり…美味い」

「よかったら風呂も入って行くだろ? 檜風呂だけど」

「おぉ、ありがたい! 正直な話、宮廷よりも私はここが断然住みやすいな…何というか、その…知が感じられる」

「まぁ、宮廷があんなトイレじゃ、そりゃ嫌にもなるよ」

 

 

 カルナは座敷で向かい合うアルジュナに肩を竦めて苦笑いを浮かべながらそう告げた。

 

 まず、カルナが驚かされたのはインドのトイレ事情である。当然ながら、不潔な環境下が我慢ならないカルナが行なったのは清掃活動からだった。

 

 汚いものを取り除く、近場に水場があるにもかかわらずそれを使わないのは愚の骨頂だと、カルナはすぐさまその水場の水を引いてきて辺りを綺麗にする事から取り組んだ。

 

 インドのトイレでは便器から豚が飛び出したりするのが日常茶飯事、そんな事がカルナからしては許しがたい事であったのである。

 

 そこからは彼の目標はただ一つに絞られた。インドのトイレを全て洋式の水で流れる清潔なものにしようと、そこからはもう戦いの日々だった。

 

 

「今じゃ、建築会社みたいな感じであいつらも居てくれるからなんとかやっていけてるけど、正直な話、俺はもうこの国から出て行きたい」

「…それは困る! 私が勉強できなくなるではないか!」

「いや…、アルちゃん勤勉なのはいいんだけどさー」

 

 

 そう言って、食い下がるアルジュナに困った様に苦笑いを浮かべるカルナ。

 

 正直な話、YARIOとして彼は仲間達を探しに行き、また、再結成する事を強く望んでいる。だが、こうアルジュナから言われてしまうとどうにも断りづらい。

 

 致し方ないとため息を吐いたカルナはアルジュナにこう話をしはじめる。

 

 

「まぁ、とりあえず建築についてはちゃんと教えるからさ、そんじゃまずは…」

「すごく…勉強になる…」

 

 

 カルナによる建築講座を聞きながらアルジュナは一言一句違える事なく聞き逃すまいとカルナが提供してくれた筆と紙で彼の建築についての知識を連ねて書いていく。

 

 こうした毎日を日々、カルナは送っていた。村々の家の補修や時には王宮から補修のお願いをされたりと毎日大忙しだが、それでも充実した毎日である事には変わりなかった。

 

 時々、脱げない金色の鎧が鬱陶しくて仕方ないと思うくらいである。

 

 さて、そんなこんなで、今日も一日中現場に出て、アルジュナに建築学の指導を終えたカルナはゆっくりとできる夜に屋敷の縁側に腰をかけて月を眺めていた。

 

 失われた仲間達、YARIOとして彼らを迎えに行きたいが今の自分は毎日、インドのトイレと戦う事で手が一杯一杯だ。

 

 できる事ならば、後のことは彼らに任せて自分は早く仲間達を探しにインドから出て行きたい。

 

 武術の師匠であるドローナやパラシュラーマに色々と教えてもらったが、なんやかんやでやはり自分はこの道が好きだとカルナは改めてそう感じていた。

 

 今日はまた色々あって疲れた。カルナはそう思い縁側から立ち上がるとそろそろ寝ようその場から踵を返す。

 

 だが、次の瞬間、彼の背後に凄い轟音と稲妻が走ったかと思うと、目の前に勢いよく鉄の塊が出現した。

 

 

「どぉうわぁ!?」

 

 

 咄嗟に縁側に突っ込んでくる鉄の塊から回避行動を取り、避けるカルナ。

 

 その車は屋敷を勢いよく走ると襖やらなんやらをめちゃくちゃにしながら屋敷を突っ切り、色々と突き抜けて屋敷の中を滅茶滅茶にした。

 

 そして、突き抜けた鉄の塊はプシューッと煙をあげるとピタリとその動作を止める。

 

 

「ゲホ…! ゲホ…!」

「快感だったな! これは癖になりそうだ…!」

「…そ、それはようござんした…」

 

 

 その煙をあげる鉄の塊の中から現れたのは、まるで、死人の様に車から這い出てくる二人とキラキラした様に嬉しがる一人の女性。

 

 カルナはその三人と、屋敷を突き抜けていった鉄の塊を凝視する。あれは、まさか…。

 

 

「え? …車?」

 

 

 そう声を溢したカルナは現れたそれに思わず目を丸くした。間違いない、あの形からしてそうであると確信できる。

 

 ならば、あの車から現れたのは一体どこの誰なのか、当然、屋敷の中をめちゃめちゃにされたカルナは顔を引きつらせたままその車に近づいていく。

 

 そして、そこに居たのは…。

 

 

「!? その声は、リーダー達か!?」

 

 

 思わず驚いた様に声を上げるカルナは目をパチクリさせていた。

 

 この人間は間違いなくそうであるという事がカルナには聞き覚えのある声と雰囲気、そして直感で理解できた。

 

 屋敷を突き抜けた車に乗っていた人物、それは間違いなくYARIOのリーダー、クー・フーリン、その人の姿があった。

 

 そのカルナの声に反応し、振り返る三人。

 

 そこに居たのは、金色の鎧を着た我らYARIOの仲間であるカルナと…。

 

 

「あ! もしや! 兄ィ…って後ろ後ろ!」

「…え?」

 

 

 倒壊するカルナが建てた屋敷の光景があった。

 

 慌てた様にすぐさま倒壊する建物から脱兎のごとく逃げ出す四人、まさに、爆破されたかのごとく倒壊する屋敷は綺麗に根元から盛大な音を立てて崩れた。

 

 それを呆然と見つめる四人。

 

 まさか、異世界に来て早々、建物を倒壊させることになるとは夢にも思わなかった。

 

 

「…師匠、しばらく運転は代わろっか…」

「何故だ! あんなに華麗な運転だったではないか!」

「いや、今、家一軒潰しましたよね!? ね!?」

 

 

 そう言って、頬を膨らませるスカサハ師匠に顔を引きつらせて突っ込むディルムッド、幸いな事に怪我人が誰もいなかったのはよかった。

 

 それからしばらくして、倒壊した屋敷を見届けたカルナはため息を吐くと肩を竦めて、改めて、クー・フーリン達の方へ振り返る。

 

 

「こりゃとんでもない再会もあったもんだ」

「あはははは…あは、刺激があるやろ? しげちゃんだけに?」

 

 

 顔を引きつらせたクー・フーリンは苦笑いを浮かべたまま告げる。

 

 そんな彼の笑顔を見たカルナは仕方ないとクー・フーリンの肩を軽く叩くと嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。

 

 YARIOの大工担当、カルナ棟梁とこうして顔を合わせた三人。

 

 果たして、彼との再会がどの様な波乱を巻き起こすのか!

 

 この続きは! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 インドに洋式トイレを作るーーーーNEW!!

 

 民家や屋敷作りを伝えられるーーーーNEW!!

 

 屋敷を車で倒壊させられるーーーーーNEW!!

 

 インドに書院造りを伝えるーーーーNEW!!

 

 インドに檜風呂を作るーーーーーーNEW!!



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魔猪会議!

 

 

 YARIOの仲間の一人、カルナと合流したクー・フーリン達。

 

 一時はスカサハが運転した『だん吉』によって、カルナが建てた屋敷が倒壊するというハプニングもあったものの、無事に再会した彼らの間には穏やかな雰囲気が漂っていた。

 

 長年にわたり、望んでいたYARIOへの復帰。

 

 それが叶うとなれば、カルナとしてはこれ以上嬉しいことはない、しかも、親愛なる仲間達がわざわざこうして迎えに来てくれた事にも感謝してもしきれないくらいだ。

 

 

「へぇ、じゃあ、ぐっさんはインドでトイレを改装しながら家建ててたんや」

「まぁねぇ、他にやる事なかったし、後は武術習ったおかげで目からビーム出せるようにはなったくらいかな?」

「なにそれ怖い」

 

 

 そう言って、カルナの目からビームという言葉に引き気味に告げるディルムッド。見知った仲間がいつの間にか目からビーム出せると聞けば誰でもそうなってしまうだろう。

 

 しかし、それはそれで鋼鉄の溶接なんかには役立ちそうだ、目からビームはこの時代ならかなり重宝する能力だろう。それに、なんだかかっこいいとクー・フーリンとディルムッドは思った。

 

 カルナから案内された木造建築の家で茶を飲みつつ、彼らは今までの出来事や師匠であるスカサハをカルナに紹介した。

 

 彼らの師匠のスカサハを前に彼らの正面に座るカルナはお茶を啜りつつ、こう話をしはじめる。

 

 

「…なるほどねぇ、じゃあ二人の師匠ってことはつまり俺の師匠になるって事かな?」

「そういう事になるか? じゃあお前も私の弟子だ」

「師匠、弟子の取り方そんなんでええの?」

「だって、面白そうじゃ無いか、お前とディルも面白いって事はこいつもそうに違いないと私の直感が告げてる」

「いやー、師匠のそういうとこは尊敬しちゃうなーほんと」

 

 

 こうして、あっさりとカルナの弟子入りを決めてしまうスカサハの言葉に笑みを浮かべて告げるディルムッド。

 

 何はともあれ、カルナはスカサハの弟子になる事になった。

 

 本来、スカサハの弟子になるにはいろんな難題を乗り越えるという前提があるはずなのだが、今の彼女は面白そうだという価値観で決めている。というより、彼女の中ではYARIOは全部弟子にしようというつもりらしい。

 

 確かにこんな建築物をインドにあちらこちら建てているカルナを見れば、彼がクー・フーリンやディルムッドの様な人物である事はスカサハには容易に想像がつく。

 

 ならば、もはや弟子にするのに彼女にはなんの迷いもなかった。

 

 

「そんで、俺ら今、仲間探しながら伝説のラーメン作りやってんだけどさ、ぐっさんの力がいるわけなんだよー」

「!? 伝説のラーメン作り! 何その面白そうな企画! 話聞かせてよ!」

「あ、そっちに食いつくんやね」

 

 

 そう言って、ディルムッドの言葉に目を輝かせるカルナに苦笑いを浮かべるクー・フーリン。

 

 ひとまず、ラーメン作りや話の経緯を一通り話し始めるディルムッドはカルナにフィニアンサイクルでの霊草や魔猪の豚骨スープについて彼に詳しく話した。

 

 ADフィンを若返らせた事、そして、深淵の海で取れたグルタミン酸たっぷりの第1の食材である霊草を手に入れた事など様々な事を掻い摘んでディルムッドはカルナに語る。

 

 それを腕を組みながら話を聞くカルナはその魔猪を倒すために何をするのかについて、クー・フーリン達にこう問いかける。

 

 

「それで? 俺の力が必要なの? 何作るつもり?」

「そうやなぁ、前に作った宮崎県都城市で作った巨大な弓矢覚えとる?」

「あー、あれねー、作った作った」

「あれと、ほら無人島で投石機作ったじゃん? あれ作ろうかって思っててさ」

「あれも作んの!? どんだけデカイのその猪!?」

「なぁ、私にも教えてくれよ、何作る気なんだ?」

「あ、師匠にはまだ話してませんでしたね、実は…」

 

 

 そう言って、クー・フーリンは服の袖を引っ張り尋ねてくるスカサハに今回、YARIOの三人で作ろうと思っている二つの対猪兵器について語りはじめた。

 

 まず、最初にクー・フーリンが挙げたのは宮崎県都城市で作った伝統的な弓矢作りを習い、100メートル先のリンゴ風船を割るという挑戦を行なった際に使用した巨大弓を作るという話であった。

 

 都城市は弓の生産量も日本一。都城を治めていた藩主島津義久が、弓作りを強く支援したことにより、その技が現代に引き継がれている。

 

 スイスの英雄ウィリアム・テルが実の息子の頭の上に置いたリンゴを、見事射抜いたという伝説を真似てこの挑戦を前回行なったわけだが、なんと作り上げたのは全長6mの巨大弓矢。

 

 今回は対猪兵器にこれの矢の先端にゲイ・ボルグを引っ付けて飛ばそうと彼らは考えていたのである。これなら、外す心配もない。

 

 

「はぁ〜、なるほどな、全長6mの弓矢を…」

「都城の力でみやこんじょう見せようぜって感じで、まぁ、場所はアイルランドなんですけども」

「リーダー、そのネタ前も使わなかったっけ?」

「気のせいやろ、多分」

 

 

 寒いオヤジギャグに突っ込みを入れるディルムッドにクー・フーリンは目をそらしながら告げる。

 

 なんと! 今回の挑戦は職人達から教わった伝統的な弓矢作りを異国の地、アイルランドで行う! 今回は復帰したADフィンに師匠であるスカサハもいる。それに、建築なら力強いカルナも仲間に加えた。

 

 そして、今回はそれだけでは無い、この都城の巨大弓矢の他にも対猪兵器を作るつもりだ。

 

 それが、無人島で作ったお手製の投石機である。YARIOお手製の自慢の破壊力を誇るこれならば、巨大弓矢に合わせてあの猪もひとたまりもないはず。

 

 今回は巨大弓矢に合わせて大きめの投石機を建設する予定だ。

 

 

「ローリングストーンズって言うんですけどね」

「ローリング…ストーンズ! おぉ! なんだかかっこいいな!」

「わかりますか、このロマンが! やっぱり師匠は最高だな!」

 

 

 そう言って、話を聞いて目を輝かせるスカサハに満面の笑みを浮かべるクー・フーリンとディルムッド。

 

 果たして、彼らは猪の為に何故ここまでのものを作ろうと考えているのか?

 

 多分、そこまで深く考えてはいないのだろうがディルムッドは自分の中で想定した展開について手を用いながら熱く皆にこう語りはじめる。

 

 

「もし猪が向かってきたら、こんな感じに石を投げれば」

「あー、そんな感じ、なるほどね」

「猪もビビって、来ない」

 

 

 そう言って、仮想猪戦をイメージしながらディルムッドは全員に投石機の役割や、どんな風に対峙するのかを淡々と語る。他のメンバーはそのディルムッドの言葉に頷きながらふとした疑問を彼に投げかけた。

 

 

「猪って何も考えず突進してくんじゃないの?」

「そんなことしたらほら、石が頭の真ん中に刺さっちゃうからさ」

「おー、上手く考えたな、確かにそうだ」

 

 

 熱く説明するディルムッドの言葉に納得したように頷くカルナ。確かに『ローリングストーンズ』という名前からしてロマンがある。その戦況分析に師匠であるスカサハも感心して言葉を溢していた。

 

 それに、攻城兵器『ローリングストーンズ』やこの都城の巨大弓矢は猪を倒した後にもアルムの砦に設置すれば無駄にはならない。

 

 

「確かに俺達には敵が多い」

「そうなんですよ」

 

 

 ーーーーーーロックバンドの宿命。

 

 師匠であるスカサハにディルムッドとカルナの二人はまっすぐに目を見つめてそう告げた。

 

 そう、YARIOとして活動していれば、いずれは敵が出てくるはずだ。とはいえ、彼らの敵は農作物を台無しにする自然災害が主な敵なのだろう。

 

 しかも、ロックバンドと言っても彼らが楽器を握ったところを見た事がない、鍬しか握っていないと思う人達が大半なのが現状である。

 

 

「とりあえず、今から移動するでー、だん吉に乗るから早くみんなのりこめー」

「おう!!」

「師匠、さりげなく運転席に座ろうとしてもダメです」

「うぐっ…! …仕方ない、今回は諦めるか」

「まぁまぁ、機会があればまた運転させてあげますから、ね?」

「あ、ちょっと待って、アルちゃんに置き手紙書いてくわ!」

 

 

 カルナはさりげなく運転席に座ろうとしたスカサハを制止しているディルムッドとクー・フーリンにそう告げると一旦、木造建築の家の家に帰り置き手紙と支度をし終える。

 

 そして、カルナは身支度を終えて、クー・フーリン達が待つだん吉へと戻ってくると荷物を全部積んでしまい、だん吉の助手席に腰を下ろす。

 

 これならば、自分が居なくなってもアルジュナなら大丈夫だ。彼には自分が今までいろんな建築学を教えてあげた。インドから自分が居なくなっても彼が引き継いでくれる筈だとカルナはそう確信している。

 

 クー・フーリンはメンバー全員が『だん吉』に座った事を確認すると再びフィニアンサイクルに戻る為に設定を定める。

 

 

「よーし! みんな戻るで! しっかりつかまっててな!」

「トイレと戦う日々もこれで終わりか、なんだかしみじみするな」

「あ、そういや、壊れた包丁あったから兄ィ後で目からビーム出して溶接手伝ってくれない?」

「おぉ! いいよ! 目からビームね!任しとけ!」

「お主らの会話を聞いてるとかなりシュールに聞こえるんだが…」

 

 

 そして、エンジンが掛かった『だん吉』はインドの整備された道にまっすぐ入るとそこからぐんぐんと加速していく。

 

 

 アクセルを力強く踏み込み加速した『だん吉』140kmに到達すると、火花を散らしながらバチン! と音を立て、眩い閃光と落雷のような音を放ち、地上に炎のタイヤ跡を残してインドの叙事詩『マハーバーラタ』の世界から英雄カルナを連れてその世界から姿を消した。

 

 魔猪の豚骨を手に入れる為に仲間を探し、なおかつ、巨大な弓矢と投石機『ローリングストーンズ』を作り上げる。

 

 遂に新たな仲間を加えたYARIO達の魔猪への挑戦が今、始まろうとしていた。

 

 果たして、YARIOは魔猪を倒し第2の伝説の食材、魔猪の豚骨スープを手に入れる事はできるのだろうか?

 

 美味しいラーメン作りはまだまだ序盤! 失われた他の仲間達もクーフーリン達を待っている!

 

 そして、この続きは…次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 巨大な弓矢を作るーーーーーーーNEW!!

 

 投石機を建設するーーーーーーーNEW!!

 

 巨大な猪を狩りに出るーーーーーNEW!!

 

 なんとロックバンドだった!ーーNEW!!



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まず木から作ります

 

 

 YARIOの仲間の一人、カルナを連れて『だん吉』に乗りフィニアンサイクルに帰還したクー・フーリン達。

 

 今回は建築のスペシャリスト、インドの叙事詩『マハーバーラタ』から遥々、YARIOのカルナを引き連れての帰還、カタッシュ隊員達も久々の活動に力が入る。

 

 アルムの砦で待機していたADフィンと合流した彼らは早速、第2の幻の食材、魔猪を手に入れる為に被害のあった畑へと訪れていた。

 

 

「うわぁ…酷いねこれ」

「めっちゃ荒らされとるねー」

「この足跡からして魔猪かな、やっぱり」

 

 

 そう言って、三人は被害のあった畑を散策しながらその有様を見て回った。

 

 畑の側にある建物は倒壊し、ボロボロに崩れてしまっている。農作物を仕舞うであろう倉も破壊され中身がごっそり食い荒らされていた。

 

 これを見たクー・フーリンは悲しげな表情を浮かべて、畑の土をそっと触る。その土の感触は間違いなく農家の人やフィオナ騎士団の人達が手入れした綺麗な土だ。

 

 こんな綺麗な土を踏み荒らして、しかも、せっかく実った穀物が全部食い荒らされているこの状況はYARIOとして見過ごせない。

 

 

「それで、どうするんだ? しげちゃん」

「また魔猪がここに戻ってくる可能性が高いですからね、ここで迎え討ちましょ」

 

 

 土を触るべく屈んでいるクー・フーリンの背後から声をかけてきたスカサハに彼は確信を持ったように告げる。

 

 魔猪ならば、必ずここに帰ってくる。畑の土は良いし、ここに穀物や野菜を植えておけばそれに釣られて奴が舞い戻ってくるはずだ。

 

 

「奴は味をしめてる、間違いない」

「ディルちゃん、マタギのおっさんみたいになってるよ? 顔が」

 

 

 そう言って、表情を引き締めて告げるディルムッドの肩にポンと手を置くカルナ。

 

 マタギとは東北地方・北海道で古い方法を用いて集団で狩猟を行う者を指す。他の猟師には類を見ない独特の宗教観や生命倫理を尊んだまさに古から伝わる伝統的な狩人だ。

 

 そんな伝統的な狩人に習い、YARIOのメンバーは魔猪を狩るべく、この場に投石機と巨大弓矢を作り上げなければならない。

 

 

「さぁ! んじゃ取り掛かろっか、まずは投石機から作る?」

「そうだね、それもだけど、まずは丈夫なバリケード作ったがいいんでない? 猪に突進されてもビクともしないやつ」

「おぉ!! ついに作るんだな! よし! 私も手伝うぞ!」

「それじゃバリケードも視野に入れて、まずですね…」

 

 

 それから、役割分担をし、早速、YARIOメンバーは別れて、魔猪討伐の為の投石機の組み立てに取りかかり始める。

 

 バリケード係にはディルムッド、カルナチーム、そして、巨大弓矢の作成にはスカサハ師匠、リーダーのクー・フーリン、ADフィンが着手する事になった。

 

 そして、スカサハとADフィンと共に巨大弓矢の作成に取り掛かろうとしたクー・フーリンはここである事に気付く、それは…。

 

 

「あ! この木材…! もしかして!」

「はい、用意しときました。木材切るところから始めなきゃいけないんだろうなって思ってたんで」

「流石! ADフィン! 準備ええな!」

 

 

 なんと、ADフィンが用意した木材が積まれていた。

 

 三人がインドにカルナを連れ戻しに行っている間、ADフィンもじっと待っていた訳ではない、騎士団を連れて彼は必要になるであろう木材の確保を既に行なっていたのである。

 

 それも、見る限り、丈夫そうな木ばかりだ。これを切り倒してここまで運んでくるには大変な労力がいる筈、しかし、ADフィンは何でもないかの様に爽やかな笑顔でクー・フーリンにサムズアップ。

 

 流石は優秀な我らがカタッシュスタッフ、抜け目がない。

 

 

「この木はしかもオークの木やない? あとザンザシと…トネリコ?」

「そうですね、これ切る時にドルイドさんに見つからないように気をつけながら伐採してきました」

「…それは見つかったら大ごとやろうからなぁ…」

 

 

 そう言って、クー・フーリンは積まれ、フィン達が伐採してきた木を触りながら引きつった笑顔を浮かべていた。

 

 このクー・フーリンが挙げた3つの木にはある意味いろんな迷信がある。

 

 まず、オークの木だが、オークの木は神聖で魔力のある木といわれている。

 

 ドルイド僧の魔法の杖は、オーク製。オークの木には妖精が住んでいるといわれていて、伐られると激怒し、切り株からでている若芽は、怒りに満ち、悪意を持っているとか。

 

 そして2つ目はトネリコの木。トネリコの木はキューピットの矢がそれでできているとか、生木でも火がつき、しかも煙がでないそんな不思議な木であると言われており、トネリコの赤い実で出来た首輪を牛にかけると魔よけに狂牛病に効くという迷信がある。

 

 そして最後は、サンザシの木。本来の目的としては雷よけの木として生け垣や畑に植えられていたという話で、このサンザシが3本以上生えているところは妖精の住処だとか、このサンザシの木を切れば、牛や子供が死んでしまったり、記憶を喪失するとも言われている。

 

 とはいえ、もうさっぱり綺麗に切りとられてここに3本ともずっしりと積まれてしまっている。見つかれば大ごとのような気がするが、大事に使えばきっと妖精さん達も喜んでくれる筈だ。

 

 

「罰当たりどころではないな、これを見られたらドルイドから『お前は明日死んでしまうだろう』と言われかねないぞ」

「その時はディルムッドさんにお願いしてみます」

「あー…確かに妖精関連ならディルやもんな…、ま、なんとかなるやろ」

 

 

 そう言って、互いに笑顔を浮かべながらスカサハの言葉に頷くADフィンとクー・フーリンの二人。

 

 その顔を見たスカサハは深いため息をついて頭を抱える。どうせ、彼らの事だからそう言い切るとはわかっていたが、開き直っている彼らを見ているともうどうでも良くなっていた。

 

 そして、丁度その頃、バリケード班のカルナとディルムッドはと言うと?

 

 

「しゃあ! 倒れるぞー!」

「おーし! いい感じ! いい感じ!」

 

 

 盛大にオークの木を思いっきり切り倒していた。

 

 妖精の住処という話もあったにも関わらずこれである。しかも、斧を持っているのはディルムッドだ。

 

 妖精王オェングスの息子であるにも関わらずこの有様。しかし、なんの躊躇もなく木を切り倒しているあたり思いっきりの良さが感じられた。

 

 

「ふぅ、なんていうかやっぱり久々に斧持つと気持ちいいよな!」

「大自然に感謝だよ、ありがとう! 大自然!」

 

 

 そう言って、また木こりの様に木に斧を振り下ろし、巨大弓矢に必要な木を確保しはじめる二人。

 

 思いっきりの斧を使い木を切り倒すところを見る限り、ディルムッドも全く迷信を信じていないのかそれともわかっていないのか…。

 

 兎にも角にも、彼らはADフィンと同じ様に木をたくさん手に入れる為に木を切り倒し、畑へと馬車を使いながら持ち運んでいく作業を淡々と行なった。

 

 そんな木材を運ぶ作業を行う中、ディルムッドはふとした疑問をカルナに問いかける。

 

 

「どころでさ? バリケードってどんなの作るのよ? 兄ィ」

「あーそれね! 一応、ヒルフォート作ろうかなって考えてるけど」

「おー、ヒルフォートね! …ヒルフォートって何?」

「ってわからんのかい! ヒルフォートっていうのはねぇ…」

 

 

 そう言って、ヒルフォートとは何かという事について、理解していないディルムッドに話をしはじめるカルナ。

 

 ヒルフォートとは要塞化した避難場所。または防御された居留地として使われた土塁などの1つである。主に防御に有利になるよう周囲より高くなったところを利用して建設された事で知られている。

 

 ヨーロッパで青銅器時代から鉄器時代にかけて建設されたものを一般にこのように呼んでおり、敵を迎え撃つ為の拠点として広く役に立った。

 

 今回、カルナはこのヒルフォートを使い、巨大弓矢と投石機を守るバリケード代わりに使おうと考えていたのだ。

 

 

「へぇー、兄ィ流石だねぇ、俺全然知らなかったもん」

「アイルランドの英雄なのに?」

「いやー、俺は厨房で戦うことが多かったからさー」

「それなら仕方ないね」

「てか、それを知ってる兄ィが逆にすげーよ、どっから知ったのその知識」

 

 

 インドに居ながらヒルフォートについて知っているカルナに感心するディルムッド。建築についてはやはり本職のカルナは頭一つ飛び出ているなと改めてそう感じさせられた。

 

 さて、二人はこうして木材を持ち帰り、早速、投石機を作るADフィンとクー・フーリンの元にそれらを次々に運んでいく。

 

 

「これだけあれば足りるでしょ?」

「まぁ、ADも木は確保してくれてたみたいだからね」

「お前達、戦争でもする気か?」

 

 

 淡々と積まれた木材に目を丸くしながら告げるスカサハ、巨大弓矢と投石機を作っても余りが出そうである。

 

 すると、そんな木材を見つめたカルナは笑顔を浮かべたまま、スカサハにサムズアップし心配ないと言わんばかりにこう話をしはじめる。

 

 

「投石機と巨大弓矢もう一個作れば問題ないですよ、数は多いほど助かりますからね」

「おー、確かにそうやな、もう一個作ろう! もう一個!」

「もう一個づつ作るのか? …いよいよ本格的に戦みたいになってきたぞ」

 

 

 そう言いながら、五人は魔猪を狩る為にさらに投石機と巨大弓矢を増やす事にした。

 

 数は多いほど確かに有利な事は間違いない、手作りのノコギリや金槌を使いながら作業を分担し、彼らは作業に取りかかる。

 

 

 巨大弓矢作成の作業はクー・フーリン達三人。

 

 まずは弓の作成。前は19人の弓職人が集結し完成させた巨大弓を今回はこの三人で作り上げなければならない。

 

 生前、ご当地PR課で訪れた宮崎県都城市。生産量日本一の和弓をPRするため、通常2m程の弓矢を約3倍の6mに巨大化! 見事、100m先の的を射抜くことに成功した。

 

 そんな都城で学んだ反発力と粘りのある弓作り。その作り方は、体が覚えている。

 

 確か、都城の和弓職人は竹の間にハゼの木を入れていた。

 

 この1枚で弓の強度が増し、大きな反発力を生む。そこで、竹の幅に合わせて板を切り出し、二つの竹で挟んで、7か所をロープで縛って固定する。

 

 しかし、今回は…。

 

 

「竹なんて無いもんなーしかもハゼの木でもあらへんし」

「竹? なんだその竹というのは」

「あ、竹っていうのはですね」

 

 

 そう言ってクーフーリンはスカサハに竹について説明をしはじめた。確かにここはアイルランド、竹を手に入れようにも入手場所が無い。

 

 どうするか悩む一同、早速、壁にぶちあたってしまった。しかし、これは原材料を手に入れなくてはいけない事であり、避けては通れぬ道だ。

 

 クーフーリンは長く悩んだ末、こんな言葉をポロリと溢し始める。

 

 

「竹かぁー…だん吉使わないかんかな?」

「あー、それなら日本に取りに行けますもんね」

「せやねん、やから日本に竹を取りに行かないなんかなって考えてんねんけど」

「ほほぅ…なら、また『だん吉』に乗るんだな?」

「師匠、運転する気満々やね…」

「次は上手くやるさ、やらなければ上手くはならんぞ! さぁ!私にやらしてみろ!」

 

 

 そう言って、自信有り気にクー・フーリンに告げるスカサハ。確かに前回はあんな感じではあったが運転自体はうまく出来ていた。

 

 それにスカサハが言うように運転しなければ上達しないことも事実である。ならば、経験を積ませてあげる事も大事だ。

 

 

「もー、ほんまに仕方ないですねー、そんなに言うなら師匠に運転してもらいましょうか」

「ほんとか!」

 

 

 目を輝かせるスカサハに仕方ないとジト目を向けながら告げるクー・フーリン。

 

 本当に彼女の運転で大丈夫なのだろうか? 心配はあるが、いろいろと助けられている手前あんな顔を向けられてはクー・フーリンも無下にはできない。

 

 こうして、二人は今回は巨大な弓矢作りに使用する竹を手に入れる為、『だん吉』を使いわざわざ日本へ向かう事にした。果たして、二人は無事に竹を手に入れる事が出来るのだろうか?

 

 ようやく動き出した巨大弓矢作りに投石機作り、そして、伝説の食材の魔猪討伐!

 

 竹を手に入れる為にクー・フーリンとスカサハは日本へ! なんと、そこに待ち受けていたのは新たな出会い!

 

 そして、ディルムッドとカルナの二人は初めてのヒルフォート作りに挑戦!はたして、魔猪も壊すことが出来ないヒルフォートを作ることができるのか!

 

 この続きは…次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 ヒルフォートが作れるーーーーNEW!!

 

 マタギになるーーーーーーーーNEW!!

 

 魔猪の生態観察ーーーーーーーNEW!!

 

 竹を取りに日本へ行くーーーーNEW!!



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石橋ヒルフォート

 

 

 前回のザ!鉄腕/fateでようやく動き出した魔猪退治。

 

 さて、その作業に急遽、巨大な弓矢作りに竹が必要になり『だん吉』に乗り、日本へ向かおうとしたクーフーリンとスカサハの二人。

 

 そんな二人だったのだが、ここに来てあるトラブルに巻き込まれてしまった、それは…。

 

 

「行き先、間違えてルーマニアになってたやん…」

「うまく運転できただろ? 私は」

「今回は師匠のせいじゃないですよー。僕が設定し忘れてたのがあかんかったんで」

 

 

 なんと、日本じゃなく、どこかの別世界のルーマニア南部の地域に『だん吉』で飛んで来ていたのだ。

 

『だん吉』の設定を間違えたまま、目的地がYARIOの仲間の一人がいるであろう場所に調整されていたのである。

 

 このルーマニアの時代は1459年。オスマン帝国がワラキア公国が睨み合うそんな激動の時代だ。

 

 二人はとりあえず『だん吉』を草むらに隠すようにして置いて、間違えて来てしまったルーマニアにてYARIOの仲間を探す事に切り替える事にした。

 

 

「師匠、ごめんなー、僕のミスやね」

「いやいいんだ、気にするな、それより仲間を探すんだろ?」

「せやね、この時代にいるみたいなんやけど…、どこに居るんやろうなぁ」

 

 

 そう言って『だん吉』から降りた二人はひとまずルーマニア南部の町ワラキアに散策に出掛ける。

 

 その街に住む人達は笑顔で生き生きとしながら生活していた。なんでも話を聞くと領主であるヴラド3世と呼ばれる人物の治世が非常に良いとか。

 

 木炭の輸出やオスマン帝国との上手い交易によりこの街はかつてないほど活気がある街に変わったのだと街人は語る。

 

 

「ほぇー、そのヴラドさんってすごい人なんやね」

「そうなのよー、ウチも最近、黒字でねぇ、特にヴラドさんが直々によく作ってくれる木炭が上質なものだから美味しいパンができて大助かりなの!」

 

 

 街のパン屋で働くおばさんはにこやかな笑顔でクーフーリンにそう語る。

 

 そのヴラド三世はどうやら、その卓越した炭作りから『木炭公』と呼ばれているらしい、それからさらにスカサハとクーフーリンが街で聞き込みを行うとさらなる事が判明していった。

 

 ヴラド公は木炭だけでなく、粘土を使った土器作りにも力を注ぎ、菜園なども自ら手がけているとか。

 

 

「あいつ…身体が病気で無理できんやったのになぁ」

「…しげちゃん?」

「あぁ、ごめんな、師匠。 多分、そのヴラド公って僕らの仲間やね」

 

 

 クーフーリンはこぼれ出そうな涙を指先で拭い、笑顔を浮かべてスカサハに告げる。

 

 最近、妙に涙脆くなってしまった。力作業やキツイ仕事をできない身体であった彼が自らそういった事を進んで行なってると聞いてリーダーのクーフーリンは感慨深く感じてしまったのである。

 

 今はどうかは知らないが、炭作りも菜園も土器作りもこの時代にやるのは大変な事。それを進んでやっていると聞かされて必死に彼が生きているという事をクーフーリンは実感した。

 

 ならば、迎えに行ってあげないといけない、それが、YARIOのリーダーとしての自分の役割である。

 

 間違えてルーマニアに来てはしまったが、これはむしろ来てよかったなとクーフーリンはそう思った。

 

 それから、クーフーリンとスカサハはルーマニア南部、ワラキアの領主であるYARIOの仲間であろうヴラド三世を迎えに行くべく彼が住んでいるであろう城へと向かった。

 

 当然ながら、ワラキアの城の城門には見張りの兵士が立っている。それを見たクーフーリンは早速、その兵士に声をかけた。

 

 

「こんにちはー! すいません、僕らヴラドさんから呼ばれて来たんですけど?」

「ヴラド公が? 貴様ら何者だ?」

 

 

 一見すれば農業の服に身を包んだ怪しい男女の二人組。鍬を持っているあたり、貴族やそんな類の人間ではない事は明らかだ。

 

 よく見れば間者とも見て取れる、門番からしてもこんな怪しい連中を易々と城内へと入れるわけにはいかない。

 

 すると、クーフーリンは満面の笑みを浮かべたまま、城門に立つ門番ににこやかな笑みを浮かべたままこう告げる。

 

 

「僕はYARIOのリーダーのクーフーリンと言います、そして、こちらが…」

「こいつの師匠のスカサハだ」

「!?…あ! …や、YARIOの方々でしたか!? これはすいません! どうぞ城内へ!」

 

 

 なんと、クーフーリンとスカサハの二人はこんな怪しい農作業者の格好ながらもYARIOという名前と顔パスで行けた。

 

 YARIOがどう知られているのかは定かでは無いが、これならば、何事なくヴラド公と面会ができるだろう。

 

 二人は門番に案内されるまま、ワラキア城の城内へ、果たして、この城の中にYARIOの仲間の一人がいるのだろうか?

 

 

 

 そして、ちょうど二人がワラキアの城を訪れていたその頃、フィニアンサイクルに残りヒルフォート作りに勤しむディルムッドとカルナはというと…?

 

 

「前作った石橋ってこんな感じだったよね確か」

「そうそう、そんな感じだった」

 

 

 前に無人島で一度作った石橋作りの経験を活かし、ヒルフォート作りに着手していた。

 

 今回ヒルフォートに使うのは丈夫な石。これに粘着物を取り付けながら積み上げていきヒルフォートを作成する。

 

 その数は石橋を作った時の倍の石量を使う事になる。これにはカタッシュスタッフであるADフィンとフィオナ騎士団、そして、村の石積みを専門とする職人さん達に協力してもらった。

 

 異国でも生きた、職人から教わった石橋作りの技術。二人はコツコツと石を金槌で削りながら作業を行う。

 

 

「コツは?」

「繊細にかつダイナミックにかな」

「恋愛と一緒だな!」

「そうだねー」

 

 

 そんな雑談をしながら、石を削りながらコツコツと積み上げるフィオナ騎士団とディルムッドとカルナの二人。

 

 それを聞いていたディルムッドは思わず笑いを吹き出しながら、カルナにこう問いかける。

 

 

「そうなの? 恋愛と一緒なの?」

 

 

 そのディルムッドの言葉に次は思わずカルナも吹き出して笑いが溢れでてしまった。

 

 ディルムッドとカルナの二人の脳内には『だん吉』で師匠と旅に出たリーダーの顔が思い浮かんでいた。

 

 ーーーー石も恋愛も勉強や。

 

 そんな言葉(テロップ)が思い浮かび、遂にはADフィンからも笑いが起きてしまった。石を組み上げながら、ディルムッドは笑いを溢しながらふとした疑問を口に出す。

 

 

「あの人いつ結婚すんだろうね?」

「いっときは無理そうな気がすんだよねぇ」

「師匠美人だからくっつきゃいいのに」

「あの人の頭の中は0円食堂とかそんなんでいっぱいだからなぁ」

 

 

 そんな、我らがリーダーについての他愛の無い雑談をディルムッドとカルナが繰り返しているうちにも作業はどんどん進む。

 

 積み上げる石の微調整を行うカルナとディルムッドの二人。そんな中、ディルムッドの石を見たカルナは石を指差しながらこう話をする。

 

 

「もうちょいバッテンだね、上の方が」

「あーマジか、前のしげちゃんみたいになってるわけか」

「臆病なのはダメだよ、ガツンといかなきゃガツンと!」

 

 

 石に気遣いすぎてるディルムッドにそう告げるカルナ、周りからは思わず笑いが溢れていた。

 

 そして、作業を黙々とこなす中、何故かワラキアにいるクーフーリンの頭の中にはこんな言葉が舞い込んでくる。

 

 ーーーーーー石も恋愛も臆病。

 

 そんな言葉が聞こえて来た我らがリーダークーフーリンはハッ! っとした表情を浮かべて背後を振り返る。

 

 

「? どうしたしげちゃん」

「今、僕の頭の中で何かが聞こえて来た気がしまして」

「? そうか、とりあえず行くぞ」

 

 

 フィニアンサイクルにて行われているヒルフォート作りにまさか自分の名前が使われていることを察したのかは定かでは無いが、思わず気配を感じて立ち止まるクーフーリンにスカサハは歩くように促す。

 

 そんな中、ヒルフォート作りの作業も淡々と進んでいき、いよいよ、石の面を平べったくする作業へ。

 

 そこで、ディルムッドはあるものをカルナから手渡された、それは…。

 

 

「またお前を使うことになるか、肉用ハンマー」

「ディルちゃん、ディルちゃん、それビシャンだから」

 

 

 そう、カルナから手渡されたのは石の面を平らにするためのハンマー、ビシャンである。

 

 以前、作った石橋作りではこれを使い面を平らにして石を積みやすい形に変えていた。そして今回もこれを使い、石を平らにする。

 

 

「肉用ハンマーだと思ってたから」

「まぁ、肉用にも使えそうではあるよね」

「肉用ハンマーは家にもあるけど…」

 

 

 そう告げるディルムッドはビシャンを石に振り下ろし石の形を整えていく。金属と石がぶつかる音が響く中、ディルムッドのビシャンの使い方は卓越していた。

 

 思わずそのディルムッドのビシャンの使い方に感心するように口笛を吹くカルナ、だんだんとディルムッドも前に叩いた石橋の石での手ごたえを思い出して来た。

 

 

「あっ! 上手! うまいねディルちゃん」

 

 

 思わず声に出して、ビシャンの使い方を賞賛するカルナ。

 

 ーーーー石もドラムもリズム命。

 

 それは身体に染み付いたもの。

 

 皆さんはもう普段の活動から忘れているかもしれないが、何故なら彼は…。

 

 ーーーーYARIOのドラム。

 

 ディルムッドがビシャンで叩き終え平べったくなった石をつぎつぎと運ぶADフィンとスタッフ達。

 

 

「すごいなぁビシャン、うまいなぁ。ビシャンディルムッドじゃん」

「そっちに改名しようかなぁ、俺」

 

 

 平べったくなった石の手触りを確認しながら笑顔を浮かべるディルムッド。YARIOのドラム担当はやはり伊達ではなかった。

 

 まだ、石は幾らでもある。フィオナ騎士団や石造りの職人さん達も石を削りながらディルムッドを真似て石を平らにする作業を行う。

 

 まだまだ石はたくさんある。気が遠くなりそうだが、今回は木材も使うので全部が全部この石でのヒルフォートを作るわけでは無いのが唯一の救いだった。

 

 

「さ、リーダー達帰ってくる前に形だけでも作っとこ!」

「あの人達大丈夫かな?」

 

 

 そんな心配を浮かべるカルナだが、世界を越えて飛んだ『だん吉』の行き先が、竹がある日本でなくルーマニアにて絶賛迷子になっているのでその心配は既に的中している。

 

 ひとまず、YARIOの仲間であるヴラドの城には辿り着いたようだが、果たして彼らは無事にお使いをこなして帰ってこれるのだろうか?

 

 ヒルフォート作りもまだまだ完成は遠い、我らがリーダーとスカサハ師匠は仲間と竹を無事に持ち帰ることができるのか?

 

 

 この続きは…次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 ルーマニアに間違えて飛ぶーーーーNEW!!

 

 ルーマニアで炭作り、菜園作りーーNEW!!

 

 ケルトで石橋ヒルフォートーーーーNEW!!

 

 恋愛に臆病なリーダー (独身)ーーーNEW!!

 

 ビシャンディルムッドーーーーーーNEW!!



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ルーマニアでごちになります!

 

 さて、前回の鉄腕/fateで日本に竹を取りに『だん吉』に乗り出かけたクーフーリンとスカサハの二人。

 

 リーダークーフーリンが場所の設定を入れなかった事で二人は1459年のルーマニア南部ワラキアに来てしまった。

 

 とはいえ、ここにYARIOの仲間の一人がいる事の情報を街の聞き込みにより入手した二人は現在、その仲間の一人がいるであろうワラキアの城を訪ねていた。

 

 

「はえー、僕、こんな城見た事ないですよ、こんなんやったんやね」

「うむ、確かに立派な作りだな」

「職人さんとかに話が聞けたら良いんですけどね、参考にしたいですし」

 

 

 そう言って、辺りを見渡しながら二人は先導する門番の後ろからついて行く。

 

 城内は確かに見た事ない城、非常に興味深い洋式な作りに思わず、リーダークーフーリンは感心してしまった。

 

 日本文化な家の作り方ならば、YARIOのカルナがよく知ってはいるが、やはり、洋式なものとなると我らがYARIOはまだまだ学ぶべき場所がある。

 

 

「なんでも作れてなんぼやからね、僕ら」

 

 

 ーーーーー洋式だけに様式美や。

 

 間違えても彼の本業は建築ではないが我らがYARIOのリーダー、クーフーリン。ここで確信を持ってそう言い切ってしまう。

 

 さて、門番から連れられ、広い城内を歩くこと数分あまり、彼らが案内されたのは食事を取るための大広間だった。

 

 広い空間には洋風な雰囲気が漂っている。まるで、お伽話に聞くような長いテーブルが置かれた大広間だ。

 

 そして、そこに居たのは…。

 

 

「あ! リーダー! 待ってたよ! ささ! 座って座って!」

 

 

 なんと陽気な態度で席を引いている灰色の髪に同色の髭を生やしたおっさんの姿があった。

 

 しかし、その声はクーフーリンにも聞き覚えのある声、間違いない、これはYARIOのメンバーの一人であるヴラドだと確信した。

 

 すぐさま、クーフーリンは席を引いてくれたヴラドの側に近寄ると親しく肩を掴んでにこやかな笑顔を浮かべたままこう告げる。

 

 

「あはははは! 嘘やろー! めっちゃ髭ぼーぼーやんか!」

「久しぶりーリーダー! そうなんだよー見てよこれー。めっちゃ髭生えてさ、威厳ある?威厳あるかな?」

 

 

 そう言って肩を掴んで来たクーフーリンに自分の髭を見せながら苦笑いを浮かべて告げるヴラド公。

 

 それを見たスカサハは戯れる二人に近寄ると首を傾げたまま、クーフーリンに問いかける。

 

 

「そいつか? お前の仲間は」

「あ、はい! そうなんですよ! ほんまはこんな老けた感じや無いんですけどねー」

「あー! そりゃないよ、リーダー。俺こんなんだけど、結構苦労したんだからね」

「ふふふ、そうか、話は聞いていたぞ街人からな」

 

 

 スカサハは親しく話す二人に笑みをこぼしながらヴラドに向かってスッと細くて綺麗な手を差し伸べる。

 

 それを見たヴラドは目を丸くしながら、差し伸べられたスカサハの手を見つめた。そして、手を差し伸べた彼女はヴラドに自分が何者であるのかを語りはじめる。

 

 

「はじめましてだな、私はスカサハ、このクーフーリンの師匠をやってる者だ」

「あ! どうも! 凄い美人じゃん! リーダー。…って師匠なの!? この人!」

「せやでー、僕らの師匠やで」

「うわ! この感じ懐かしい! 前あった村の企画以来じゃない!?」

 

 

 そう言って、差し伸べられたスカサハの手を両手で握りしめながら腰を低くして握手をするヴラド。

 

 村の企画でお世話になった今は亡きYARIOの師匠。そんな彼の事を思い出しながらヴラドは懐かしそうにスカサハと握手を交わしていた。

 

 

「とりあえず、いらっしゃい! 大したもの出せないけど俺の料理でよかったら出すからさ!」

「おー! ヴラドの料理食うなんて久々やんね!」

「へっへっへ、こう見えても俺、料理やってたからね」

「でもその顔でキャスターに戻るのは流石にきついやろうなぁ」

「そこは触れないでくれたらうれしいなーリーダー」

 

 

 そう言いながら、互いに笑い声を上げつつ、部屋奥へと消えていくYARIOメンバーの一人こと、ヴラド三世。

 

 見る限り、どうやら料理を作りに彼は厨房へと向かったらしい、どうやら今回、彼が自分達に直々に料理を振舞ってくれるようだ。

 

 久々の仲間の一人との再会に嬉しくなるおもてなし、クーフーリンとスカサハ席に着席したまま、ヴラドが料理を運んでくるのをしばらく待つ。

 

 そして、待つこと数分、鉄食器で運んで来た料理をヴラドは丁寧に二人の前に置いていく。

 

 

「ゴチになります!」

「懐かしくなるわ! やめい! リーダー大丈夫だから、これ値段当てたりするようなやつじゃないからね?」

「あ、ほんまに? なんか言っとかなあかんかなって思って」

「おー、これはまた見たことない料理だな」

 

 

 二人の漫才のようなやり取りを他所に、そのヴラドから目の前に置かれた料理を見て思わず感心するスカサハ。

 

 目の前には串に刺さった鶏肉と豚の肉を炭火で焼き、特製のタレをつけた、肉汁がこぼれ出る焼き鳥。

 

 それだけでは無い、輸入し、熟成した葡萄から取った綺麗な赤ワインがお供につき、これはもう、目の前に置かれるだけで食欲がそそられる。

 

 メインディッシュには…。

 

 

「はい! どうぞ!」

「おー!! …すごいな!」

「はぇー洋食極めたなーヴラド」

 

 

 なんとジャンバラヤとジャークチキンが綺麗に盛り付けられて提供されていた。

 

 イタリアンパセリが綺麗に添えられ、ジャークチキンはパチパチと音を立てており、まだ暖かい事を二人に知らしているようである。

 

 早速、二人は食器を手にヴラドから提供された料理を口に運ぶ、まず、スカサハが手にしたのは自慢のお手製の炭で焼いた豚バラの串。

 

 

「これは…」

「そんままがぶっといってください、がぶっと」

「そうか、なら…、はむ!」

 

 

 カプリと小さな口で豚バラを齧るスカサハ。

 

 すると、口の中になんとも言えない香ばしい香りとスパイスが効いた豚バラの味が広がっていく。

 

 自慢の炭火で焼いた豚バラ肉の肉汁、これは確かに美味だ。お酒がお供に欲しくなる気持ちも分かる。

 

 

「ふぁ〜…これは美味い…! 焼き方からして普通の焼き方じゃないな! 味付けも!」

「はい、特製のタレを使ってますからね」

「普通の串焼きならば食べた事はいくらでもあるが、これは全然味が違うな…、こんなにも違うとは正直驚かされたぞ」

 

 

 スカサハはそう言って、横にある赤ワインを口に運びながら笑顔を浮かべていた。

 

 この赤ワインもまた味が深い、日本酒も確かに美味しかったが、これはこれで焼き鳥と伴い深みがある味わいがある。

 

 

「…確かに美味いなぁ、やっぱり料理の腕は確かやもんねヴラドは」

「まぁ、けどやっぱり厨房に立つならあの人が1番でしょ?」

「あの人ってディルムッド?」

「あーそうそう、ディル兄ィ、やっぱりあの人がYARIOの料理長だからさ」

 

 

 そう言って、苦笑いを浮かべるヴラド。

 

 料理の腕前ならヴラドも負けてはいない、言うなら洋食ならヴラド、和食ならディルムッドと言ったところだろうか。

 

 とはいえ、YARIOは全員料理を作るのが上手い、その中でもと言うとやはり幼い頃から包丁を握っていたディルムッドが1番だと皆はそう思っている節はある。

 

 

「ところでリーダー、ここに来たのって」

「迎えに来たって事やね」

「やっぱり! やっぱり! いや、リーダーなら絶対迎えに来てくれるって信じてたよ! 他の皆は?」

「末っ子はまだやけどぐっさんとディル兄ィはおるで、あとADもやな」

 

 

 そう言って、顎に手を添えて思い出すようにして告げるクーフーリン。カルナ、ディルムッド、フィンは仲間として取り戻した。

 

 後はヴラドとYARIOの最年少の末っ子だけだ。あの天然キャラ兼ボーカルが居ないとやはり、YARIOは寂しい。

 

 すると、ヴラドは名前を挙げた二人がいる事に驚きつつ、クーフーリンにこう訪ねる。

 

 

「マジか! じゃあ俺も自分の渾名考えないとな、んー何がいいだろ?」

「NDKヴラドでええんやない?」

「名前からして煽ってる感じだよねそれ、ダメだよねそれ」

「びびっとくるヴラドとかはどや?」

「キャスターから離れなさいってば、あんた」

 

 

 そう言って、ヴラドは顔を引きつらせながらクーフーリンにそう告げる。

 

 仕方ないので、最終的にいろいろ考えた末にヴラドたーちゃんという渾名をスカサハの口から出た渾名に決まった。

 

 ひとまず、ヴラドの渾名が決まったところで、クーフーリンは早速、本題に入る。

 

 

「実は今、僕ら伝説のラーメンを作っとるんやけどな」

「え!? 何その面白そうな企画! 俺も混ぜてよ!」

「…お前たちみんなラーメン作りと聞くといつもこんな反応だな」

 

 

 ラーメン作りと聞いてキラキラと目を輝かせるヴラドにスカサハは苦笑いを浮かべたまま告げる。

 

 それはそうだ、普通のラーメンでは無い、伝説のラーメンなのである。YARIOならば、この企画に燃えない者などいない。

 

 ーーーーラーメンの為に。

 

 YARIOの力を結集し世界一やばいラーメンを作る。

 

 

「それでどのレベルから作るの? 小麦から作るのか…」

「やりましょう」

「マジかー、あれまた小麦から作んの!?」

 

 

 そう言って、クーフーリンの言葉に仰天したように笑いながら声を上げるヴラド、しかし、その表情は心なしか嬉しそうだ。

 

 YARIOが培って来た。食べた、作った、捕まえたものの経験を生かし、幻の食材を手に入れ伝説のラーメンを作り上げる。

 

 世界各地の伝説を集結させ、とびっきり美味いラーメンを届けたい。

 

 

「しゃあ! そうと決まれば早く行こう!」

「決まりやな! あ、ヴラド、国は大丈夫なん?」

「あ、俺、領主なんて柄じゃないからね、他の人に任せるよ」

 

 

 そう言って、引き継ぎを終えたヴラドたーちゃんはクーフーリン、スカサハと共にYARIOの一員に加わり、街外れにあるだん吉の元へ。

 

 こうして、ついにYARIOの一員としてヴラドが再び加わった。

 

 クーフーリン一行は竹を求めてルーマニアでヴラドを仲間に加えて日本へと向かう。巨大弓矢を作る為、果たして丈夫な竹は手に入るのか?

 

 そこではなんと、クーフーリン達と昔の日本に住む現地人のNOUMINとの遭遇が…。

 

 そして、石橋ヒルフォートでもさらなる動きが…、遂にカルナが目からビームを披露する時が来たのか。

 

 次回も見どころ盛りだくさん。

 

 この続きは…次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 師匠がグルメリポーターになるーーーーNEW!!

 

 ルーマニアにてゴチになりますーーーーNEW!!

 

 ラーメン作りはやっぱり小麦からーーーNEW!!

 

 ヴラド、洋食が得意になるーーーーーーNEW!!

 



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日本で竹探し

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでは間違えて来てしまったルーマニア、ワラキアにて仲間の一人であるヴラドを回収したクーフーリンとスカサハの二人。

 

 が、しかし、二人の目的は本来ならこのルーマニアに来ることではなく、巨大弓矢に必要な素材、竹を手に入れる事。

 

 早速、ヴラドと合流し、三人となった我らがカタッシュ隊員達は竹を入手すべく『だん吉』に乗り日本へと渡った。

 

 

「はぁ、巨大弓矢ねー、懐かしいじゃん、また、あれ作ってんだ」

「素材が足りへんから頓挫しとる真っ最中やけどね」

「ほほう、ここが日本とやらか…豊かな自然に包まれた国だな」

 

 

 カタッシュ隊員達はそう言って、昔の日本の土路を歩きながら、昔ながらの風景を楽しみつつ足を進める。

 

 日本に来たからには、できれば丈夫な竹を持ち帰りたい。

 

 ならば、自ずとやる事は決まっている。まずは聞き込みからだ。先日、加わったカタッシュ隊員の一人、ヴラドは土路が続く先で民家を見つけるとスカサハ、クーフーリンにこう提案を投げかけた。

 

 

「ちょっとあそこでさ、聞き込みしてみない?」

「聞き込みかぁ、なんだかこの感じ久々やな」

「じゃあ、ブランクもある事だし、俺、行ってみてもいい?」

 

 

 そう言って、リーダーのクーフーリンに民家での聞き込みを自ら行って良いかの確認を取るヴラド。

 

 クーフーリンはなんの問題もないと言わんばかりにそれにサムズアップで応えた。さぁ、ここからはYARIOの腕の見せどころだ。

 

 ヴラドは早速、民家へと足を進めると戸を叩き、中の人が出て来るまで待つ、そして、戸が開き中から人が出て来るといつもの様に笑顔を浮かべたまま、現れた農家のおばさんにこう話をしはじめる。

 

 

「こんにちはー! あ、今、お時間よろしいですか? 僕たちYARIOというものなんですけどもー」

「ん? あんた達みない顔だね? YARIO?」

「はい! そうです、僕ら今、鉄槍カタッシュっていうのの企画で、竹が必要なんですけど」

「安心してや、僕らも農家の人やから」

 

 

 そう言って、農家のおばさんを安心させる様にヴラドのフォローに入るクーフーリン。

 

 ーーーーー農家のYARIO。

 

 フォローの為とはいえ、農家の人という言葉を自然と発するクーフーリン、その光景は確かに彼らが着ている作業着の格好からして妙な説得力を帯びていた。

 

 クーフーリンの言葉を聞いた農家のおばさんは少し考え込む様な素振りをし、こう話をしはじめる。

 

 

「あー…、竹の在り処ね、そうだねぇ、この路をまっすぐ行くと確か竹藪があった筈だけどねぇ」

「ほんとですか!」

「あぁ、ホントさね、あそに柳洞寺って寺があるんだけれども、最近、刀振ってる陣羽織を着た男がいるだろうから話を聞いてみたらええよ」

 

 

 おばさんはにこやかな笑顔を浮かべるとクーフーリン達にそう告げて、家の中へと入っていった。

 

 聞き込みした甲斐があった。どうやらお目当ての竹は柳洞寺という寺の周りに沢山生えているらしい。

 

 そうなれば、話は早い、早速、 一同は竹が大量に生えている柳洞寺周辺に向かった。

 

 軽い足取りで歩く事数分、辺りは田舎の田んぼの風景から進むにつれて竹藪へと変わってゆく。

 

 

「はぁー竹やね、立派な竹藪や」

「夏場とかなら蚊がいっぱい湧きそうだね」

「嫌やなー、スズメバチならなんとかできるんやけど、蚊は痒くなるから嫌いや」

 

 

 そう言って、思い出しながら顔を引きつらせるクーフーリン。夏の風物詩とはいえ、蚊に刺されて痒い思いをするのはやはりYARIOとはいえ辛いものがある。

 

 野外での活動が多い彼らだが、蚊に刺されて痒い思いをした事は数え切れないほどあった。

 

 そんな中、師匠であるスカサハは首を傾げクーフーリンに訪ねはじめる。

 

 

「ん? 蚊? 虫か?」

「せやねん、刺されると痒くなるんやで師匠」

「それは私も嫌だな」

 

 

 そんな他愛のない雑談を繰り返し、柳洞寺へ続く階段を歩いていく一同、すると、階段の途中に長い刀を振るう綺麗に結った長髪に陣羽織を着た男性の姿が見えてきた。

 

 もしかしたら、柳洞寺の住人なのだろうか? ヴラドは早速、こんな階段の途中で刀を振るう男性に接触を試みる事にした。

 

 

「すいませーん、ここの寺の方ですか?」

「ん? どなたかな?」

「あ、僕達YARIOというものなんですけどもこの周りにある竹を分けてもらえたらなと思いまして」

「ふむ、竹…、竹とはこの柳洞寺の周りに生えている竹の事か?」

 

 

 そう言って、振るっていた剣を降ろし、周りを見渡しながら訪ねる男性。どうやら、彼はみた感じこの柳洞寺に関連した男性のようである。

 

 それに、剣を振るうのをみた限りなかなかの達人と見た。鋭く長い剣はキラリと光を放っている。

 

 ひとまず、刀を鞘に納める男性は目を瞑り、冷静な面持ちでこう話をしはじめる。

 

 

「ふむ、見たところお前達は変わった服装をしているな、名はなんという?」

「あ、僕はクーフーリンって言います、そんでこっちがヴラドに僕の師匠のスカサハ師匠です」

「うむ、師匠のスカサハだ」

「よろしくねー」

 

 

 軽いノリの彼らは男性に名前を紹介するクーフーリンに続き、簡単な自己紹介を男性に行う。

 

 見たことがない格好の三人組、しかし、その格好とは裏腹に隠せない何かを男性は感じとっていた。

 

 これは武芸を極めるものだからわかる直感のようなもの、だが、間違いなく彼らは只者ではないと男性は確信する。

 

 もしかすれば、望んでいた強者と今日この場で刃を交わせるのではなかろうか? そんな期待感が彼の中で膨らんだ。

 

 刀の鞘を背に仕舞った男性はゆっくりと竹を手に入れる為に柳洞寺まで訪れた彼らに自分の名を語りはじめる。

 

 

「私の名は小次郎。農民の出だが、ここで刀の修行に明け暮れている変わり者よ。して、お主らは只者ではないな? 物腰や格好を見ればすぐにわかる」

「えぇー!! ほんとでござるかー!」

 

 

 そう言って、キリッとした表情でこちらを見ながら告げる小次郎と名乗る男に間髪入れずに応えるクーフーリン。

 

 そして、それと同時に周りに漂う微妙な空気、小次郎も含め、その場にいたカタッシュ隊員達は無言で言葉を発したクーフーリンに視線を注ぐ。

 

 ーーーーーホントでござる。

 

 しかし、それを聞いた小次郎は悲しげな表情を浮かべながらそのセリフを発したクーフーリンに対しこう告げた。

 

 

「あ、それ、拙者のセリフでござる」

「しげちゃん、他の人のセリフ取ったら駄目だよ」

「あ、ごめん、なんか身体が勝手に反応してもうた」

「それはあんまりだぞ、私のゲイボルクを鍬にした時くらい酷いと思う」

 

 

 そう言って、小次郎の言葉に同調するように頷く二人、確かにセリフを取られては彼の立つ瀬がなくなる。

 

 それは、あまりよろしくない、司会業をよくこなした経験があるヴラドが言うのだから間違いない。

 

 スカサハに関してはあのゲイボルクを当初没収されクーフーリンから鍬にされて落ち込んではいた。

 

 しかし、クーフーリンが知る限りでは、しばらくしてYARIOの活動であの鍬やツルハシにしたゲイボルクを使うようになり、それを握っていた時は生き生きしていたようにみえたが…。

 

 

「…そ、そこまで酷かったですかね! 師匠しばらくしたら、あれノリノリで使ってたやないですか!」

「だって使いやすかったんだもん、仕方ないじゃないか」

「使いやすかったんだもんって…、貴女…」

 

 

 普段聞けないような言葉を師匠から聞き苦笑いを浮かべるクーフーリン。確かにそうだ、手に馴染むものを使わないとやはり作業は捗らない。

 

 あまりに使いやすいものだから、スカサハはあれはあれで気に入っている。元は自分の槍なのだから当たり前の話であるのだが。

 

 ーーーーーー使い易さは、大事やね。

 

 仕事において、何よりも使いやすさは大事である、仕方ない。

 

 何はともあれ、ひとまず、本来の目的はこの柳洞寺の石の階段の周りにある竹が頂けるかどうかだ。

 

 すると、竹に関して、柳洞寺の小次郎さんからこんな情報が…。

 

 

「それなら、私が修行の為に切った竹がそこら中に倒れていると思うが…」

「え! その切っちゃった竹って、もしかして、この後使ったりする予定とかあったりします?」

「いや、なかろうよ、いつもそのままにしておるからな」

 

 

 そう言って、農民侍の小次郎さんは肩を竦めながら、刀の修行で切ってしまった竹についてヴラド達にそう告げた。

 

 確かに柳洞寺の周りにこれだけ竹が生えていれば、刀の修行にはもってこいだろう。ならば、切ってしまった竹はそのままにしてしまうのも頷ける。

 

 だが、これだけ良い竹が切られたまま捨てられるのは非常にもったいない、それならば、我らがYARIOが取る手段は1つだけだ。

 

 

「え! その竹って捨てちゃうって事ですよね! …って事は僕らが頂いちゃっても…」

「あぁ、構わぬだろうよ、私は柳洞寺の僧侶とは仲が良くてな、ここをよく使わせてもらっておるのだ。倒れた竹なぞ持って行っても問題なかろう」

「リーダー! これって…」

「セーフです」

「しゃあ!」

 

 

 なんとヴラド、柳洞寺にて修行を積む謎の農民侍の小次郎さんとの交渉の末、上質な柳洞寺の竹をタダで手に入れる事に成功した。

 

 これならば、何本か倒れた竹を半分に分けて切り『だん吉』に積めば持ち帰ることができるはずだ。

 

 すると、ここでこの修行で切ってしまい、捨ててしまう予定の竹について小次郎さんから提案が…。

 

 

「この竹は結構重いだろうから、私も運ぶのを手伝おう、それに、この竹が何に使われるか少し興味が出た」

「え! ホンマですか!」

「いやー、助かるねー。それじゃ折角提供してもらったし、どうせなら完成品見てもらおうよ!」

「お! 名案やな! 流石はヴラドや!」

 

 

 そう言って、小次郎さんが刀で切り倒してしまったという竹の回収をはじめる我らがカタッシュ隊員達。

 

 まずは、竹を運搬し易いように鋸などで分けていく作業を行わなければならない、さて、ここで活躍してくれたのがこの小次郎さんである。

 

 持ち前の長い刀でスパスパと竹を運搬し易い大きさまで切り分けてくれた。切り分けてもらった竹は柳洞寺のお坊さんから紐を分けて貰い、1つに括ってしまう。

 

 

「さて、それでは参ろうか」

「サーちゃん師匠大丈夫? 重くない?」

「平気だ、これくらいならば後何百くらい軽く持てるな」

「頼もしい師匠やね、ほんまに」

 

 

 クーフーリンは苦笑いを浮かべながら自信有り気に応えるスカサハにそう告げる。

 

 こうして、我らがカタッシュ隊員達は謎の剣士小次郎さんと共に放置される予定だった良質な竹をたくさん抱えて『だん吉』へ向かい歩きはじめる。

 

 これだけの竹があれば、頓挫していた巨大弓矢作りにも大きな前進が見込めるだろう。

 

 

 そして、フィニアンサイクルに残りヒルフォート作りを行うカルナ、ディルムッドにも進展が…!

 

 カタッシュ隊員達は果たして幻の食材、猪の豚骨スープを手に入れることができるのか?

 

 この続きは! 次回の鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 捨てられる上質な竹を入手ーーーーNEW!!

 

 農民侍小次郎さんが仲間にーーーーNEW!!

 

 農家のYARIOーーーーーーーーーーNEW!!

 



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石橋ヒルフォート作り その2

 

 

 無事、上質な柳洞寺の竹を手に入れたカタッシュ隊員達。

 

 新たに協力してくれた小次郎さんを引き連れ、一同は再び『だん吉』に乗り、フィニアンサイクルへと戻ってきた。

 

 その柳洞寺周辺で採れた竹だが、確認してみると新たな事がわかった。それは…。

 

 

「頑丈だね、これ」

「いやー丈夫やねー、良い竹やな」

 

 

 かなり頑丈で丈夫。これならば、巨大な弓矢の加工にも問題なく使えるはずだ。

 

 竹を持って、魔猪の為のヒルフォートを作成しているカルナ達の元へとそれらを担いで運ぶクーフーリン達。

 

 その姿はまさに竹取物語に出てくる竹取の翁のようだ。ケルト神話の中にあるには明らかにシュールすぎる絵面がそこにはあった。

 

 そして、ヒルフォートにたどり着いたクーフーリン達は作業を行うカルナ達の元へと足を進める。

 

 

「おー! すごいやん! めっちゃ良い感じになっとるやんか」

「あ、おかえりーリーダー! ん? もしかして」

 

 

 竹を背負い戻ってきたクーフーリン達に手を振り出迎えるカルナ、すると、ここでクーフーリンとスカサハの他にも二人の男性の姿がある事に気付く。

 

 それを察したディルムッドもまたカルナ同様に彼らの元へとやってきた。

 

 そして、先ほどまでヒルフォートの建築作業を行なっていた二人はヴラドから発せられた声を聞いてそれが確信へと変わる。

 

 

「やっほー! 兄ィ達!久しぶりー!」

「え! マジかよ! うわー! お前髭ぼーぼーじゃん!」

「それリーダーからも言われたからね!第一声がそれってどうなのよ!」

 

 

 そう言いながら、ヴラドは苦笑いを浮かべつつ、声をかけてきた二人に親しく話し掛ける。

 

 仲間との久しぶりの再会の第一声が髭が濃いと言われれば顔も引きつってしまうだろう。しかし、二人は嬉しそうにヴラドを迎えながら笑顔を浮かべていた。

 

 やはり、メンバーとの再会ほど嬉しいものはない。もう会えないかもしれないと思っていた仲間にこうしてまた巡り会う事が出来た事が何よりも彼らには心にくるものがあった。

 

 その証拠に笑ってはいるが、カルナもディルムッドもうっすらとながら涙を浮かべている。

 

 

「…いやー、いかんね? 笑顔で出迎えようって思ってたんだけどさ、やっぱりこう」

「やっぱりくるもんがあるよね」

「そっか、実は最近、俺も涙脆くなっちゃってさ…」

 

 

 三人はちょっとだけ溢れ出た涙を手でぬぐいながら、鼻声になりつつそう告げる。

 

 それを見ていた我らがリーダー、クーフーリンもまた、竹を背負ったまま熱くなる目頭を押さえていた。

 

 つい、溢れそうになる涙を見せまいと指で目を押さえつける。

 

 

「あー、アカン…、あかんわー」

「ちょ! リーダー何泣いてんだよ! 馬鹿!」

「あーダメだわ、しげちゃん泣いちゃったら俺もつられそうになるから」

「よし! みんな! とりあえず一旦、竹をおろして深呼吸だ深呼吸」

 

 

 カルナはパンパンと手を叩いて笑顔を浮かべたまま、そう告げる。

 

 そうだ、まだ、メンバー全員が揃った訳ではない、こんなところで涙を流すのはまだ早いのだ。

 

 まずは、目の前にある事、やるべき事をやらないといけない。

 

 

「とりあえず、そちらの方紹介してよ、しげちゃん」

「あ、せやったね、こちらは…」

「私は小次郎と申す者、何やら柳洞寺で採れた竹で面白い事をすると聞いたもので見に来たのだが…」

 

 

 小次郎は背に背負った竹を地面に下ろしつつ、先ほどまでヴラドとの再会を喜んでいたカルナとディルムッドに自己紹介をする。

 

 すると、二人は互いに頷くと力強く共に小次郎の手を握りしめて固い握手を交わした。

 

 

「それはわざわざ、ありがとうございます」

「僕らだけじゃ出来ない事とか勉強させてもらう事とかあると思うんでよろしくお願いしますね」

「! …あぁ、こちらこそよろしく頼む」

 

 

 その彼らの手は長らく金槌などを扱い、豆だらけになった手だった。握りしめた手からそれがどれだけ尊いものかをすぐに小次郎は察する。

 

 なるほど、確かに彼らは只者ではなかった。

 

 間違いなく、常に向上し学ぶことの姿勢を止めることがない者達である。

 

 固い握手を交わした小次郎はこの者達と握手を交わした瞬間に悟る。実に面白い者達と巡り会う事が出来たと、これも何かの縁なのだろう。

 

 

「…おー、これはまた立派なヒルフォートが出来上がりそうだな」

「あ、師匠、まだ途中なんですよね、これ」

 

 

 カルナは恥ずかしそうに頭を掻きながら、ADフィン達が作業をしている傍でヒルフォートに触れるスカサハにそう告げた。

 

 さて、このヒルフォート作りだが、まだまだ、手をつける箇所は数多くある。

 

 ひとまず、弓矢作りはヴラド、ADフィン、小次郎さんの三人に任せ、我らがリーダー、クーフーリンとスカサハ師匠はこの石橋作りに加わる事にした。

 

 

「どこまでやっとる感じ?」

「一応、ビシャンで石を整えたとこまでかな」

「なるほどなぁ、次取り掛かる作業はそれじゃ胴突きやね」

 

 

 クーフーリンは建設中のヒルフォートをまっすぐ見据えたまま、カルナとディルムッドに告げる。

 

 そう、それはかれこれ十年以上前に福島県のある村で母屋の基礎固めをした時の事。その時に使ったのがこの胴突き。

 

 この胴突きを使い、地盤を固める。既にこの胴突きでカルナ達は石を積み上げている最中だが、また、新たな面積に石を積み上げるのならばこの胴突きを行う必要がある。

 

 あの時学んだ建築の技術をケルト神話で活かす。

 

 

「そんじゃまた胴突きで地盤固めますかね」

 

 

 そこから、地道に地盤を固めていく作業が始まった。

 

 クーフーリンの掛け声と共に胴突きで地盤を固めて行くカタッシュ隊員達、ある程度、地盤が固まれば、あとは先ほどと同じく、ディルムッドが叩いた石を積み上げて粘着物を付けてヒルフォートを作りあげる。

 

 しかし、この石の重さは80kgほどの重さ、持ち上げるにも大変な力がいる。

 

 これを運び、ヒルフォートの地盤に積んでいくのであるが。

 

 

「普通は櫓で輪石を釣り上げて積み上げるわけやけども」

「何をやっている? こんなもの自力で持ち上げてこうすれば良いじゃないか」

「師匠、それ80kg以上軽くあるんですけど!?」

 

 

 なんと、スカサハ師匠、この櫓で輪石を釣り上げる作業を無視し、素手で掴み上げると軽々しく持ち運び積み上げていった。

 

 ーーーーまさにガテン系女子。

 

 こんなのを女性であるスカサハから目の前で見せられては我らがリーダーやカルナ達も負けてはいられない。すぐに根性の元、石を自力で運ぶ作業を試みる事にした。

 

 早速、大きな石に手をかけ、持ち上げるクーフーリン、しかし…?

 

 

「あ、アカン、これ腰やる、腰やるやつや」

「おっも! あの人こんなの米俵みたいに軽々担いで運んでんの?」

「ひぃー、ちょっと勘弁してよ」

「お前達、気合いが足らんぞ! ケルトの男なら根性見せてみろ!」

「あ、いや、俺はインドなんですが」

 

 

 力作業で女に負ける訳にはいかないと息巻くところだが、その相手が我らがスカサハ師匠なら仕方ない。

 

 それでも、カタッシュ隊員達はなんとか持ち前の根性と気合いを入れて、この重い80kgの石を運び積み上げていった。

 

 心なしか生き生きしているスカサハ師匠、久方ぶりに鍛錬に似た事をできた気がすると彼女は大喜びの様子である。

 

 ーーーー背中を見て、育つ。

 

 スカサハのそんな後ろ姿を見たカタッシュ隊員達は負けずに石を運んで積み上げていった。

 

 本来の彼らの身体なら腰が砕けて動けなくなってしまうが、そこは流石は名だたる英雄といったところだろう。

 

 

「ひぃ、ひぃ…ちょい休憩、あー疲れた」

「とりあえずなんとか積み終えた感じ?」

「み、みたいやね…僕らもう本当なら40過ぎなんやで? ほんまに」

 

 

 積み上げた石のヒルフォートを見上げながら、クーフーリンは汗を拭い呟く。確かにこんな思い石を運ぶ作業なんてこの身体でなければぶっ壊れてしまうところだ。

 

 しかし、彼らよりもより多くの石を運んだスカサハは飄々とした表情を浮かべながら息を切らしている彼らにこう告げる。

 

 

「なんだ、私なんてそれ以上の月日を…」

「師匠、やめましょ? 僕らの中では師匠は永遠の20代ですんで」

「そうそう、女性に年齢の話をさせるのはNGだからね」

 

 

 それを言われてしまっては立つ瀬がない。そう思ったクーフーリンとカルナの二人は満面の笑みを浮かべたまま平気な表情を浮かべるスカサハに告げる。

 

 ーーーー女性の扱いは丁重に

 

 アイドル故の気遣い、自分たちの師匠なら尚のこと気遣って然るべきだというのはクーフーリン達の総意だ。

 

 それにスカサハの場合は神霊の類に片足を突っ込んだ結果での事、そう考えれば、スカサハの年齢はなんの意味も持たない事を彼らはしっかりと理解している。

 

 その言葉を聞いたスカサハは上機嫌にクスクスと笑いながらちょっとだけ照れ臭そうにこう話をしはじめる。

 

 

「む、そうか? ふふふふ、本当に可愛げがある奴らだなお前達は」

「リーダーがそういう人だからね、自然とね」

「そうそう」

 

 

 そう言いながら笑顔を浮かべてスカサハに応える二人。

 

 リーダーとして纏めてくれた彼がいたからこそ今もこうして自分たちがいる。そして、スカサハや小次郎とも何かの縁で巡り会う事が出来たのだ。

 

 スカサハは二人の言葉を聞いて確かにとそう感じた。彼女は優しい眼差しをクーフーリンに向けこう告げる。

 

 

「そうか、やはりお前が弟子でよかったよ、しげちゃん」

「何言ってんですか、僕も師匠が僕らの師匠で、ほんまによかったですよ」

 

 

 晴れやかな笑顔で互いに微笑む二人。

 

 それはどこか清々しいものがあった。影の国に訪れた彼を見た時はどうなる事かと思ったが、今は彼とその仲間たちといる事が非常に楽しい。

 

 毎日毎日、死ぬ事を望んでいた筈なのに近頃は生きる事が楽しいとスカサハは日々、彼らと過ごす中でそう感じていた。

 

 そんな中でスカサハは綺麗な瞳を閉じ、ゆっくりとこう語りはじめる。

 

 

「ふふ、そうだな、今じゃ…お前が私の中で…」

「あ、ちょっとちょっと、これこれ」

 

 

 何かをスカサハが言いかけたところで、ここでクーフーリンは何かに気がついたようにヒルフォートに近寄るとジッといろんなところに視線を向けていた。

 

 そして、彼はある重要な事に気付く、そうこの石を積み上げて形にしたまでは良い、完璧だ、だが、しかし。

 

 

「ガバガバやな」

 

 

 そう、石と石の間が空いており、空洞化しているところが目立ちガバガバであった。それを見ていたカルナとディルムッドは顔を見合わせる。

 

 確かにクーフーリンが言う通りガバガバであった。これならば、もし、魔猪が突進してきたら崩れてしまうだろう。

 

 だが、今回はそれ以上にガバガバなところがある、それは。

 

 

「しげちゃん、流石にガバガバ過ぎでしょ?」

「せやろー、これガバガバやん、補強せなあかんね、なんかで」

 

 

 どうにも会話が噛み合ってるようで噛み合っていない様子。

 

 カルナは思わずそのクーフーリンの言葉に苦笑いを浮かべ顔を引きつらせる。しかし、リーダーの彼らしいといえば彼らしい。

 

 ディルムッドは笑いを溢しながら、優しく師匠の肩をポンと叩くとフォローするように彼女にこう告げた。

 

 

「まぁ、らしいっちゃらしいけどね? この人の場合雰囲気とかに流されちゃうタイプじゃないからさ、ね? 師匠」

「これは私はどうすればいいのだ」

「本人には悪気は無いんですよ」

 

 

 なんとも言えず、プルプルと顔を赤くして震えているスカサハにそう答えるしか無いディルムッド。

 

 雰囲気に流されないとこは確かに彼の魅力ではあるのだが、これには流石に二人も同情せざる得ない。

 

 それから、クーフーリン達の作るヒルフォート作りは石を積み上げ、ガバガバになった石の間の補強をする作業を行う事になった。

 

 

 今日のYARIO。

 

 ガバガバなヒルフォートーーーーーNEW!!

 

 ガバガバなリーダー。ーーーーーーNEW!!

 

 ケルト神話で胴突きーーーーーーーNEW!!

 

 重量がある石を軽々持てる師匠ーーNEW!!



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準備万端!

 

 

 石橋ヒルフォート作りが捗る一方。

 

 こちらはヴラド、ADフィン、小次郎さんによる巨大弓矢作りが始まっていた。まずは前回頓挫していた竹を用いた製法からだ。

 

 竹の間にハゼの木の代わりにオークの木を使う。ヴラドは慣れない作業ながらも、製法通りのやり方で小次郎さんとADフィンと巨大弓矢を作り始める。

 

 

「うわぁ、こんな感じだったっけ?」

「一応、ケルトでも弓作りは行われていてこのオークの木や他の木材で弓を作っていたようなので出来ないことは無いと思います」

「うむ、まさに和との調和よな、これはこれで風流がある」

 

 

 まずは、スカサハ、または、クーフーリンからオークの木とザンザシの木をルーン魔術で強化してもらっておく。

 

 そして、続けてこれらで出来た弓芯を2枚の弓竹で挟み、関板をつけて接着したものをロープで巻く。

 

 クサビで締め付けながら、半円状に反りを付けて打ち上げ、張り台にかけた後、足で踏んで弓型を丁寧に整えていく。

 

 しかし、この作業、弓矢の大きさからしても大変に手間取る作業であるが…。

 

 

「はぁ、すげーな、ルーン! 師匠流石だわー…」

「加工しやすいですね、これ」

 

 

 意外にも、3人の作業は割と順調であった。

 

 一度学んだ都城大弓の作り方、ここで忘れてしまってはYARIOの名が廃るというもの、我らが優秀なカタッシュスタッフと手先が割と器用なヴラドが行えば…この通り、見事な巨大な弓矢の形が見えてくるまでに作業が進む。

 

 

 ーーーー弓は生き物。

 

 

 愛情を持って弓を育てていく気持ちで接すれば、必ず弓も応えてくれる。この大事な事は伝統的な都城の弓職人達から学んだ大事なことだ。

 

 生き物を扱うように繊細に。

 

 続いて、弓に角度を付けるべく、さらにロープを巻き付け、竹との間にくさびを打ち込みながら巨大弓矢を途中から加わったフィオナ騎士団達と共に全員で気をつけながら曲げていく。

 

 これも都城で学んだ、江戸時代から伝わる和弓作りの技術。

 

 くさびを打ち込んで弓を曲げ、クセがつくまで、しばし待つ。

 

 そして、4時間後、ロープを外せば…。

 

 

「いい感じで曲がってる!」

 

 

 曲がった弓矢は綺麗な形でカーブを描いていた。これならば、なんら問題無い。

 

 職人達から教わった技術を存分に使った宮崎県、都城市の伝統的な巨大弓の製法、身体と頭が覚えていたこれが今、ケルト神話で蘇る。

 

 続いて、この巨大な弓の端から端へ弦を張るのだが、ここにも、江戸時代からの知恵が!

 

 

「曲がった側とは反対側に糸を張る」

 

 

 つまり、クセをつけた弓を今度は強引に逆へと反らせ、その状態で弦をかけることで、より反発力が生まれる。

 

 弓は巨大だが、弓の作り方は変わらない。ただし、全長6mにも及ぶその弓はやはり加工はそれなりに大変なものだ。

 

 そして、弦の代わりは一番丈夫なスカサハ師匠、特製のルーンの魔術が施された糸。これならば、簡単に引き千切れることもないだろう、巨大弓矢の弦にと彼女が提供してくれたものだ。

 

 

「(弓は)一点ものだから無理して曲げんほうがいいですよ」

「同感だな」

「おーけぃ!」

 

 

 ADフィンと小次郎の忠告にそう言って応えるヴラド。

 

 確かに2人の言う通りではあるのだが、しかし、限界まで反らせて糸をかけねば、強力な反発力は生まれない。

 

 多少強引に、メキメキと軋ませながら、全員で徐々に巨大弓を逆方向へ曲げていく。

 

 それから何とか、全員で気をつけながら弓が折れることなく、弦を張ることに成功!こうして、巨大弓矢は適度なしなりを備えた。

 

 あとは、巨大な弓矢を立てれば…。

 

 

「…ほぁー、デカいねーやっぱり」

「全長6mですからね、この弓」

「ふむ、まさか、提供した竹がこうなるとはな」

 

 

 そびえる巨大な弓、全長6mのその弓はしなりも良く、これならばきっと、猪を仕留められる筈だ。

 

 あとは同じ要領でもう一個、巨大弓を作る。この巨大な矢に関してもクーフーリン達と話をしなければならないだろう。

 

 江戸時代から伝わる都城市の伝統的な巨大な弓矢を使って…幻の食材を手に入れる。

 

 これならば、PRとしても申し分無い。出来上がる弓矢を前にヴラドは満足げな表情を浮かべてそれを見つめていた。

 

 

「うん、上出来だね。あとはヒルフォートと投石機だったっけ?」

「そうですね」

「なんと、お主達、まだ作る気か?」

 

 

 ADフィンとヴラドの会話を聞いていた小次郎は目を丸くする。

 

 なんと、こんな巨大な弓矢を作ったにも関わらず、彼らは対魔猪用の兵器をまだ作ろうというのである。

 

 しかし、材料は確かに余っていた。これを使わないという選択肢はYARIOには無い。

 

 結局、巨大な弓をもう一つ作り、後はヒルフォートと投石機を作るのみといった具合になった。

 

 

 

 ちなみに、そのヒルフォート作りはというと?

 

 ヒルフォート作りはいよいよ大詰めに。叩きつける雨の中。いよいよ、完成に向け準備を進めていた。

 

 

「いやー、こんだけ木があれば色んなもの作れるよね」

「ほんとだよねー」

 

 

 金槌を使い、カルナとクーフーリンはあるものを作っていた。

 

 余った木材を使い、より利便よく、数多くの石ができるだけ運べるようにと2人が作ったのは…。

 

 

「壁石運び用の荷車、人力で運ぶのは大変やからこうやって荷車に乗っけて運んだ方が効率はいいと思う」

「そうだよね」

 

 

 というのも、カタッシュ隊員達が作る石橋ヒルフォート作りもいよいよ大詰め。

 

 ヒルフォートに壁石をたくさん積む段階に。

 

 角張った石を積めば、噛み合いずれにくいだけではなく、奥行きが長いほど安定して崩れにくい。

 

 そこで、手頃な石を集めてきた。その角張った石の数はなんと数百個以上。

 

 

「あ、こんなのもいいね」

「あーいい感じやな」

「なるほど、こんな感じの石なのだな」

 

 

 3人が集めた角張った石、そこら中に転がっていた場所から、3人は手作業で持ち運んできたのだが。

 一つ一つ、手で運び、約300m以上ある距離を歩いて運ぶのは、効率が悪く限界を感じていた。

 

 

「資源を利用しないとね、やっぱり」

「昔の人はこうやって重いものを運んでたんやろうからな」

 

 

 昔も昔、遥か昔のケルト神話の世界でそんな事を語るリーダークーフーリン。

 確かに言葉は間違ってはいないものの、その発言はかなりシュールなものがある。

 

 ともあれ、古くから木材や石などの資源は運搬方法が多種多様に考えられてきた。

 特に陸路が続く場所ではできるだけ数多くのものを運ぼうと工夫が成され、今ではトラックや電車などにその形が変わっている。

 

 それは、2人とも経験から知っていた。

 

 

「木材の車輪使うとは考えたねー」

「荷車だと車輪がよく転がるからね、クルクルっていって、しかも、この後も使えるしね」

「ほほう荷車で石を運ぶのか、というよりも私が投げて運んだ方が早いんじゃないか?」

 

 

 確かにスカサハのいう言葉には説得力がある。

 

 投げた方がこの場から離れずとも石を運べてしまうだろう、しかし、場所は300m以上離れた場所、そこで我らがリーダークーフーリンはスカサハにこう話しをした。

 

 

「師匠、そんな砲丸投げ選手みたいにしたら人に当たるかもしれんし危ないからですね」

「む、そうか、ならば仕方ないな」

「投げるって発想、以前の僕らじゃなかったからね」

「確かに効率は良さそうなんですけどねー」

 

 

 英雄故に、ここ最近、そんな発想が出来てしまう。

 

 だが、それでは自分自身に進化がない、こうした局面に直面した時こそ初心を忘れずにコツコツとやる。

 それがYARIOがYARIOである為に必要な大事な事だと、クーフーリン達は思っていた。

 

 ーーーー初心は物作り。

 

 職人や色んな人達から学んだ知識を最大限に生かし、生活に反映させる。英雄の身体になった今でも忘れない大事な心構えだ。

 

 荷車に石を次々と乗せていく3人、その重量は軽く100kg以上はある。

 

 後はこの荷車を動かし、石を運ぶわけだが。

 

 

「リーダーとりあえず左右から押し出す感じで」

「オーケーオーケー」

「師匠は後ろから押し出す感じでお願いします」

「わかった」

 

 

 この重量のある荷車を押し出し、石を運ぶには安定感がいる。そこで、リーダーとカルナが左右から荷車を押し出す形で後ろからスカサハが荷車を押す。

 

 そこで、安定感を保ち荷車をどんどん前に出していくようにする為、建設中のヒルフォートで待機していたディルムッドを呼び、4人でこれを運ぶ事に…。

 

 

「せーの! そい!」

「おー、いい感じ! いい感じ!」

 

 

 力を加え、動き出す荷車、左右とのバランスも取れて、これなら順調に石をヒルフォートまで運べそうだ。

 

 下にある車輪はお手製。道が多少悪くても4人がかりならば、崩れる事なくこの石も無事に運べる筈だ。

 

 目指すはヒルフォートの建設現場。と、ここでカルナある事に気付く。

 

 

「あ! 車輪やばそう!」

「え! まじ!?」

 

 

 荷車の車輪がバギバキと音を立てて軋みをあげていた。

 

 流石に100kg以上ある石をこれだけ積んでいれば荷車とて、耐え難いものだろう、そして、運んでいる道も整備されている道なわけではない。

 

 そして、4人が運んでいた荷車は。

 

 

「退避ー!」

「ちょっとお!?」

 

 

 横に倒壊し、運んでいた石がボトボトと横に溢れるようにして溢れてしまった。

 

 これには、荷車を押していたスカサハも目を丸くする。順調に見えた荷車運びだったがまさかの荷車大破。

 

 これには3人も顔を見合わせるしかなかった。

 

 

「石なくなっちゃったじゃん」

「なくなっちゃったね」

「まさかの大破だよ車輪」

「うむ、荷車が消えてしまったな」

 

 

 まさかの展開に4人は思わず笑いが溢れてしまった。

 石自体は地面に落ちているので積み直せば問題無いのだが、それよりも、壊れた荷車の修理をどうするかだ。

 そこで、リーダークーフーリン、壊れた荷車の車輪を見つめてこう話しをしはじめた。

 

 

「これ…ちょい横幅おっきくして車輪作らへんかな? 横幅がちっさすぎたんやと思う」

 

 

 それは、横幅を大きめに作るといった提案。

 それならば、確かに安定感は増し、先ほどのように車輪が壊れてしまう心配もなくなるかもしれない。

 

 ーーーーリベンジ運搬。

 

 早速、カタッシュ隊員達は車輪の横幅を広げたものを荷車につけ、荷車に石を積み直すと再び先ほどの配置で荷車を押してみる。すると…?

 

 

「あー、確かにブレないねさっきより」

「これならいけそうだな」

 

 

 手ごたえを感じ、荷車を押すカルナとスカサハは口々にそう話した。

 

 確かに先ほどまでよりも安定して、荷車は左右にブレずまっすぐに動きはじめている。これならばきっと、ヒルフォートまで何事まで石を運搬できる筈だ。

 

 それから、ヒルフォートに石を運ぶ為に荷車を使って往復する事、数回あまり。

 

 角張った石がある程度積み上がった事を確認したカタッシュ隊員達は次の段階へと進む。

 

 大量に持ってきた角張った石達、これを…。

 

 

「これをこの周りに積んでいきます」

「よっしゃ!」

 

 

 木材で補強した箇所の周りに積んでいく。

 魔猪が突進してきてもビクともしない丈夫なヒルフォートにすべく、そのクーフーリンの言葉に対してカルナの声にも思わず気合が入る。

 重い角張った石を積み重ね、そして、目指すは…。

 

 

「お城の石垣みたいな感じね」

「なるほどな、同じ高さくらいで?」

 

 

 それは、熊本城や名古屋城のような丈夫な石垣。

 

 それならば、きっと、魔猪の突進にも耐えれる耐久性があるヒルフォートになり得る筈だ。それに…。

 

 

「ルーン魔術を織り交ぜながら、積むんだよね」

「私の出番か、ふふふ、任せておけ」

「お、師匠、生き生きしとるね!」

 

 

 クーフーリンとスカサハが使う強化型のルーン魔術を石の一つ一つに織り交ぜながら、この石垣を作り上げていけば、その、ヒルフォートはより強固なものへと変わる。

 

 そして、まずカタッシュ隊員達がこのヒルフォート作りの前にやる事は…。

 

 

「丁張りからやね」

「丁張り?」

「あ、師匠、丁張りっていうのはですね」

 

 

 聞きなれないクーフーリンの言葉に首をかしげるスカサハに説明をしはじめるカルナ。

 

 丁張り。

 

 丁張り板を立て、高さをだす建物の位置を見る為に出す立体的な目標。その出来は建物の仕上がりに直結する。

 

 鎌倉時代には行われており、区間整備の方法が語源とされている。線を貼り、丁を区分して、高さと長さを出す。

 

 それは福島の村で母屋を建てた時にも行われた。14年以上前での仕事だが…。

 

 

「おっ、こんな感じでええかな」

 

 

 身体が覚えていた。

 

 まずは、角石を積む幅の目標を立てていく、黙々と金槌を使って丁張りを立てていくカタッシュ隊員達。

 

 それをスカサハは興味深そうに見つめていた。見たことの無い技術や考え方は彼女にとっても良い勉強となっていた。

 

 金槌を使って丁張りを終えたカルナは汗を拭う。

 

 

「はい、オーケー」

「ほいで?」

 

 

 そして、その間を手作りで作った荒縄で結んでいく。

 

 全長はより大きめに取り、幅は2m以上にもなるこのヒルフォート、この大きさならば、いくらデカイ猪でも破る事は容易くはない。

 

 まずは、大きく、70kg以上ある重量ある角石から積んでいく。

 

 

「よっこいしょ! …うっほほー! やっべー!1人で持てたよこれ!」

「うそぉ! じゃあ、僕も…」

 

 

 以前は3人がかりだった石も、英雄の身体の今なら1人で担いで持てるようになっている。これならば、作業は手早く進む。

 

 石を担いでテンションが上がるカルナに続けとばかりにクーフーリンとディルムッドもまた石を持ち上げてみる。

 

 確かにさっきまで思い込みで重いと思って持っていた石だが、この身体で持ってみると案外…。

 

 

「あ、ホンマや、全然軽く感じる」

「80kg以上あるよねこれ絶対」

 

 

 新たな発見に驚くディルムッドとクーフーリンの2人。

 

 だが、驚いてばかりではいられない、そうと分かればバンバン持ち運んで石を積み上げれば早く作業も進む筈。

 

 スカサハはいつものように涼しい顔で石を大量に担いでいるが、これならば、彼女に負けてはいられないとカタッシュ隊員達にも火がついた。

 

 次から次へと石を運び、積み上げるカタッシュ隊員達。

 

 

「次は栗石やんな」

「確か隙間なくだったよね」

 

 

 そして、ここでも、職人達の知識が生きる。

 

 隙間なく敷き詰めた小さな栗石、これにより、横揺れを無くし、衝撃に強いヒルフォートが出来上がる。

 

 さらに、壁の継ぎ目を複雑にする事で絡み易くし、そして…。

 

 

「こんな風にして勾配を作るんやね」

 

 

 ここでも、以前、作り上げた石橋の知識が生きる。

 

 クーフーリンが言う、勾配とは水平の積み方とは異なり斜角になるように石を積み上げていくという事。

 

 水平に壁石を積んでしまうと、上からの衝撃に弱く、中の栗石が押し出され外側に崩れてしまう。

 

 しかし、壁石を傾け、勾配をつければ内側へと衝撃を逃がすことができる。上からの衝撃にも栗石が押し出されて崩れる事もない。

 

 それを意識しながら積み上げていくこと数時間余り、しっかりと積み上がったヒルフォートが4人の目の前にそびえ立つ。

 

 勾配もしっかり取れており、これならば、ルーン魔術を織り交ぜながら積み上げたヒルフォートが魔猪にやられる心配もないだろう。

 

 

「さ、後は…」

「投石機と弓矢を設置して、エサ撒いて待つだけだね」

「なんだかワクワクしてきたな」

「師匠楽しそうやね〜」

 

 

 完成したヒルフォートを前に目を輝かせているスカサハに思わずほっこりとするクーフーリン。

 

 皆で力を合わせ、ついにこの石橋の知識を存分に活かしたヒルフォートで魔猪を迎え撃つ準備が着々と整いつつある。

 

 さて、その出来栄えは果たして?

 

 この続きは…! 次回、鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 石を運ぶ荷車を作るーーーーーーNEW!!

 

 石橋ヒルフォート完成ーーーーーNEW!!

 

 巨大弓矢完成ーーーーーーーーーNEW!!

 

 投石機作りに着手ーーーーーーーNEW!!

 

 



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伝説食材その2。魔猪の豚骨

 

 

 

 さて、石橋ヒルフォート、巨大弓矢も無事に作り終えた我らがカタッシュ隊員達。

 

 次なる作る予定の物は投石機、別名『ローリングストーンズ』。

 

 かつて、YARIOのメンバー全員でこの投石機の建造に取り掛かりスタッフ達の手を借りて完成させた対攻城兵器だが…。

 

 

「俺たちには、敵が多い」

「ねぇ? それ、この間も言わなかったっけ?」

 

 

 そう、皆さんは忘れているとは思うが、彼らロックバンド、それ故に敵も多い筈。

 

 見えざる敵との決戦に備えたYARIOが誇る最終兵器なのである。これを作らずして、猪と戦えるはずがない。

 

 そうと決まれば話は早い、巨大弓矢の隣のスペースに投石機を作成する場所を確保し、早速、彼らは作業に取り掛かる。

 

 まずは…。

 

 

「いやーこれ握るの久々かもねー」

「あ、ディルは久々かぁ、俺はしょっちゅうインドで握ってたけど」

 

 

 鋸でオークやザンザシ、そして、余った木材を切り取っていく作業からだ。

 

 久々に鋸を握るディルムッドに笑顔で答えるカルナ。流石は棟梁、インドで磨かれた建築の腕前が光る。

 

 鋸で木材を切り終えたところで、YARIOが作る投石機、『ローリングストーンズ』だが、元々は重い石を遥か遠くへ飛ばす兵器。

 

 中世ヨーロッパでは、攻城戦の際、火の石で城壁を破壊した。それは、千四百年前の唐の国でも、動力の無い時代、縄や木材を使って作られた。

 

 テコの原理を利用したこれならば、余った材料でも…。

 

 

「ここに石運んできて、バシーンって感じで」

「うむ、いいな、見晴らしも悪くない、これなら当たるはずだ」

 

 

 スカサハ師匠、お墨付きの適正設置場所。

 

 まずは土台を作り、投石機の足場を固めていく、慣れた作業だが今回退治する相手が相手だけにカタッシュ隊員達の手にも力が入る。

 

 

「待ってろよー、伝説の食材」

「もう魔猪って事を既に忘れかけてるよね? 俺たち」

 

 

 金槌で土台を作るカルナに冷静に考えてツッコミを入れるヴラド、そう、ラーメン作りに必要な食材という認識でしかないが、相手は巨大な魔猪。

 

 このルーン魔術を施しているとはいえ、ヒルフォートが果たして無事で済むのかも危うい相手だ。

 

 しかし、カルナの隣で同じく土台作りに金槌を扱うディルムッドは…。

 

 

「猪って包丁で捌けんのかな? 肉固そうじゃない?」

「いやー、いけるっしょ、だってディルあの包丁すごそうじゃん」

「まさに、宝丁やな、なんちゃって」

 

 

 いつも通り、リーダークーフーリンのつまらない親父ギャグが炸裂する中、一同は黙々と作業に没頭する。

 

 ーーーー宝具だけに、宝丁や

 

 土台作りが進み、しっかりとした土台が出来上がったところで、ディルムッドとカルナが鋸で作った板を取り付ける。

 

 

「支点をどこにするかやね」

「このくらい?」

「コングラチュレーション!」

 

 

 支点を決めたら、固定し、重さのある枕石を三本重りに取り付ける。この重さの反動で石が飛んでいくといった仕組みだ。

 

 あとはこの枕石を板に張り付け、そして、その反対側には…。

 

 

「こうやって結びつけて」

 

 

 手作りで作った丈夫な網を結びつけ、支え棒に枕石を置けば、いよいよ形が見えてきた。

 

 支え棒を外せば、その重さの反動でしなり、石が魔猪目掛けて飛んでいく、これならば例えデカイ猪だろうとひとたまりもない。

 

 これを反対側の巨大弓の横にも取り付ける。それを遠目から眺める小次郎さんはその光景に思わず。

 

 

「うむ、小さきながら堅牢な城よな」

 

 

 出来栄えに感心していた。

 

 完成した石橋ヒルフォートと並ぶYARIO特製の兵器達、これならば、例え魔猪だろうとて倒してしまうに違いない。

 

 あとは、肝心の魔猪を迎え撃つだけだ、それには、まず、餌となる良質な穀物を大量に集め、ヒルフォートの前に畑を作りそこに撒く。

 

 あとは良質な穀物をヒルフォートのすぐそばにある簡易に作られた倉庫にしまえば、魔猪が食べたくなるような食事場になる。

 

 これならば…、魔猪も顔を出すに違いない。

 

 後はここでキャンプで過ごしながら、魔猪の到着を待つばかりだ。

 

 その間に…。

 

 

「ゲイボルクで矢を作りましょう」

「ついにきたか! よし! やるぞ!」

 

 

 嬉しそうに笑顔を見せるスカサハと共に我らがリーダークーフーリンは都城の巨大弓用の矢を作成しはじめる。

 

 長さはゲイボルクの長さを考慮しながら木を削り、矢の形が歪にならないように調整する。矢が歪になれば飛ぶ方向も異なり外れてしまう可能性があるからだ。

 

 ゲイボルクの長さと矢の長さが合うように組み合わせ、後は羽根をつければ完成。

 

 

「名付けて都城ゲイボルクや!」

「名前がなんかシュールだね」

「早く撃ってみたいな!」

 

 

 出来上がった矢を片手に笑顔を浮かべるクーフーリンに冷静に突っ込むヴラド、確かにこの都城ゲイボルクという名前にはどこかシュールな違和感がある。

 

 しかし、師匠であるスカサハはご満悦のようだった。出来上がった都城ゲイボルクを前に早く撃ちたいと心を躍らせていた。

 

 そして、カタッシュ隊員達が伝説の食材、魔猪を待つ事数日。

 

 

「グルルルル…ブモォ!」

 

 

 禍々しいオーラを醸し出しながら大きな魔猪がその姿を現した。

 

 ゆっくりと石橋ヒルフォートの周りを旋回しながら味をしめたであろう穀物を食い荒らしに地面を闊歩している。

 

 その眼は獰猛さが滲み出ており、普通の猪でないことはカタッシュ隊員達も一目見てわかった。

 

 すぐさま、息を殺し、都城ゲイボルクを持って巨大弓へと向かうカタッシュ隊員達、そして、ADフィンや小次郎もまた投石機へ向かい猪を狩る準備が整う。

 

 まずは、第1射目、都城ゲイボルクの弓を一人で引いてしまうスカサハはクーフーリンに肩車されて支えられながら的を夢中で穀物を漁る魔猪へと絞る。

 

 そして…。

 

 

都城…ゲイ…ボルク(都城職人の死翔の槍矢)!」

 

 

 都城ゲイボルクの第1射目が魔猪目掛けて飛んでいった。

 

 石橋ヒルフォートから飛んでいった都城ゲイボルクはまっすぐに魔猪の横腹に飛んでいくと見事に命中! 魔猪は痛みのあまり咆哮を上げた。

 

 それに続くように、都城ゲイボルクの第2射目を発射すべく。カルナとディルムッドの二人がもう一つの巨大弓から魔猪を狙う。

 

 

「やべー! 俺、そういや弓矢やったことないや」

「心配するな! とりあえず発射しろ! 発射すればなんかしらんが心臓目掛けて飛んでいくはずだ!」

「師匠!! それちょっとアバウト過ぎじゃないですかね!」

 

 

 都城ゲイボルクの第1射目を見事当てたスカサハはご満悦の様子で満面の笑みを浮かべながら二人にそう告げる。

 

 同じく肩車しているディルムッドは足を踏ん張らせながら、カルナが弓を引いて咆哮を上げる魔猪にしっかりと的を定めるまで待つ。

 

 そして、放たれた第2射目、都城ゲイボルクは魔猪にまっすぐ飛んでいくと?

 

 

「ピギァ!? ブルル!」

 

 

 見事に命中、これは堪らんと魔猪も怯んでしまい、足元がおぼつかなくなっている。

 

 しかし、このまま魔猪も黙ってやられるわけにはいかない、魔猪はまっすぐ力強く直進すると石橋ヒルフォートに凄い勢いで突撃を敢行する。

 

 だが、その魔猪の突撃だが…。

 

 

「やば! 突撃してきた!退避ー!」

「ピギァァァ!?」

「あ、思ったより大丈夫やったね」

 

 

 丈夫な『石橋ヒルフォート(職人達の知恵と神業の石橋)』の頑丈さに突進を敢行した筈の魔猪の方が思わず怯んでしまった。

 

 職人達の知恵と力の結晶、このヒルフォートの頑丈さはスカサハが織り込んだルーン魔術を含めて伊達ではない。

 

 そして、仕上げには…、ついに、YARIO最終兵器。『ローリングストーンズ(リーサルウェポン・オブ・ダッシュ)』が牙を剥く。

 

 ADフィンと小次郎は合図と共に、ローリングストーンズの網に積み込まれた重いルーン魔術で補正された火石を支え棒を外し飛ばす。

 

 ゴォ、という音と共にADフィンと小次郎さんが発射した投石機ローリングストーンズ(リーサルウェポン・オブ・ダッシュ)の火石は巨大な魔猪に直撃し、魔猪はそのあまりの威力に身体が吹き飛んでしまった。

 

 

「ローリングストーンズすげぇ…、俺らあんなの作ってたんだ」

「凄い音したよね、映画みたい」

 

 

 その光景に思わず感心するカルナとディルムッド。

 

 それから、都城弓矢とローリングストーンズを使って魔猪と戦うこと数十分あまり、ダメージを受けすぎた魔猪はふらふらと力なく地面に膝をつくと最後に凄まじい咆哮を上げて力尽きた。

 

 それを見ていたクーフーリン達は少し悲しげな表情を浮かべながら力尽きる魔猪を見届ける。

 

 

「なんだか、申し訳ない事しちゃったね…」

「可哀想やけれど、皆の生活の為やからね…、ちゃんとみんな手を合わせて供養してあげようや」

「…ごめんなさい! 魔猪さん! 絶対! 美味しい食材にして恩返しするからね!」

 

 

 そう言って、魔猪が力つきるのを確認した一同はわざわざ石橋ヒルフォートから出て、皆で力尽きた魔猪に向かって手を合わせて殺生した事を詫びるように黙祷を捧げる。

 

 スカサハは首を傾げながら、クーフーリン達の行動にひとまず同調するように亡くなった魔猪に手を合わせた。

 

 致し方ないとはいえ、やはり、命を頂くのだからこうして手を合わせてご冥福を祈る事くらいはしてあげなくてはいけない。

 

 YARIO達はこうして、魔猪の命を貰い受ける事にした。

 

 兎にも角にも、こうして、第2の伝説の食材、魔猪の豚骨を手に入れる事が出来たわけだが…?

 

 

「いやー、でもおっきいね、牙とかさ」

「あ、牙って確か毒あるらしいよ毒」

「え!? マジで! この猪、毒牙とか持ってんの!?」

「あ、とりあえず荷車に積んでアルムの砦の貯蔵庫に運ぼうや、腐らんようにしとかなあかんし」

 

 

 一同はこの猪をひとまず、アルムの砦に持ち帰る事にした。

 

 確かに腐ってからだと、美味しい豚骨スープは取れなくなってしまう。早めに捌いて形にして豚骨スープに使えるようにしとかなくてはいけないだろう。

 

 こうして、第1の幻の食材、霊草と第2の食材、魔猪の豚骨を無事に手に入れる事に成功したYARIO一同。

 

 さて、この魔猪が一体どのような料理や食材となってしまうのか?

 

 そして、残りの仲間の一人の行方は?

 

 まだまだ、見どころがたくさん! この続きは、次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 投石機で魔猪を撃退ーーーーーーーーーNEW!!

 

 都城ゲイボルクーーーーーーーーーーーNEW!!

 

 幻の食材ゲットーーーーーーーーーーーNEW!!

 

 魔猪に突進されても平気な石橋作りーーNEW!!

 

 スカサハ師匠ご満悦ーーーーーーーーーNEW!!

 

 投石機が知らぬ間に宝具になるーーーーNEW!!

 

 石橋作りが知らぬ間に宝具になるーーーNEW!!

 

 都城の大弓が知らぬ間に宝具になるーーNEW!!

 

 



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0円卓の食堂編 天空の花嫁

 

 

 前回の鉄腕/fateでは無事に幻の食材、魔猪を狩ることに成功したクーフーリン達。

 

 前回、巨大弓矢と石橋ヒルフォート、ローリングストーンズで見事に倒した魔猪の死体は一旦、低温で保存が効く貯蔵庫へと運び、霊草と共に無事に保管した。

 

 これで、深淵の霊草と合わせ、二つの伝説の食材を手に入れた訳だが、ここで彼らにはある事について未だスッキリしないでいた。

 

 それは…。

 

 

「やっぱり末っ子いないと俺ら締まんないよね」

「ボーカルがいないとなぁ」

 

 

 そう、我らがYARIOのボーカルが現在不在である事だ。

 

 幻の食材、魔猪を倒した今、新たな伝説の食材を手に入れ、YARIOメンバーの再結成するというミッション。

 

 これをクーフーリン達はこなさなければならない、次なる幻の食材の目処が立たない今、優先すべきは我らがYARIOのボーカルの回収となる。

 

 

「行きますか、迎えに」

「せやねー、師匠それでええかな?」

「あぁ、私は構わんよ」

「ADフィンと小次郎さんは?」

「自分もそのつもりでしたから」

「大丈夫だ、問題ない」

 

 

 メンバー全員の総意は一致した。

 

 寂しくはなるが、フィニアンサイクルから末っ子の回収にだん吉で異世界に向かう事になる。

 

 とはいえ、食材はこのフィニアンサイクルのアルム砦の近くにある冷凍保存が効く地下洞窟の貯蔵庫に保管してある為、いずれは戻ってくるのだが、しばらくの間はこの場所とはお別れだ。

 

 ひとまず、だん吉で世界を越えて残りのYARIOメンバーを探しに行く事に決まったが…ここである問題が。

 

 

「だん吉、五人乗りなんよね」

「あー、じゃあ往復して移動すればいいんじゃないか?」

「これも不便だよねー、今度、なんか考えようか」

 

 

 そう、だん吉は五人乗りなのである。

 

 これでは全員乗る事は出来ない、仕方ないのでスカサハのいう通り今回は往復して移動する事になるがこれはこれで手間がかかる。

 

 この改善点もいずれは解消していかなくてはならないだろう。少なくとも伝説の食材や大量の物を運ぶには大きさが足りなくなってくる。

 

 前に竹を運んだ際は、小次郎さんが竹をコンパクトにしてくれたおかげで荷台にも詰めたが、今度からはそうはいかなくなるに違いない。

 

 

「それじゃ運転は僕と…」

「………………」

「いや、師匠、そんな目を向けられても…」

 

 

 そこで、往復する運転手を決めるクーフーリンだが、その言葉を待ってましたと言わんばかりにスカサハはジッと彼の顔を見つめていた。

 

 だん吉を運転したくて仕方ない、そう言わんばかりの無言の訴え、そんな彼女の視線からクーフーリンは視線を逸らすが暫くして根負けしたのか、ため息を吐いてこう告げはじめる。

 

 

「もー、仕方ない子やねー! お母さん今回だけ許したげる! しっかり頑張らなあかんで!」

「あ、久々のオカンフーリンだ」

「!?…ほんとか! よし! 任せておけ!」

 

 

 ふんす! と胸にトンと自信ありげに拳を置いてオカンになったクーフーリンに告げるスカサハ。

 

 その光景にディルムッドは思わず微笑ましく笑みを浮かべていた。久しぶりのオカンクーフーリンの姿になんだか一同も懐かしさを感じる。

 

 さて、こうして、次の行き先は最後の仲間がいるであろう世界。そして、ついでにできればラーメンに必要な材料もそこで手に入れたい。

 

 

「さーみんな、だん吉に乗るでー」

 

 

 異世界に渡る為、すぐにだん吉に乗り込む彼らはいつものように火花を散らしてお世話になったフィニアンサイクルを後にする。

 

 果たして、最後の仲間がいる世界はどんな世界なのか?

 

 

 

 英国、大昔のブリテン島。

 

 今もなお知名度の高い英雄譚として語り継がれているアーサー王の聖剣の物語。

 

 その物語にはアーサー王に仕えた精鋭の騎士たち。各々魔法の円卓に席を持つ円卓の騎士達がいる。

 

 その中に登場する円卓の騎士の一人でエクスカリバーを湖の貴婦人に返還した人物として知られる者が居た。

 

 古くからアーサー王伝説に登場し、巨人王イスバザデンが使っていた巨大すぎる槍を投げ返した逸話を持つ。

 

 さて、そんな彼だが、現在。

 

 

「ニンゲン…カエレ…」

「いや何やってんの?」

 

 

 完全に野生に放たれた完全なゴリラ状態で近くに生い茂る森の中にある小屋の側で木の上に登っているところをだん吉から降りたYARIO達から発見される事になった。

 

 彼の名はベディヴィエール、YARIO最後のメンバーにして、ボーカルを務めている末っ子だ。

 

 そんな彼が居たのはなんとアーサー王がいるお城ではなく山にある質素な小屋である。円卓の騎士と名高い彼が何故こんなところに…。

 

 

「ポケ◯ンのトレーナーって多分こんな感覚なんやろうね」

「野生のベディが現れた! みたいな?」

「おーい降りておいでー」

 

 

 まるで、生い茂る木々が重なりもの◯け姫の様な場所、そんな場所で野生化した仲間がいれば見過ごすわけにはいかない。

 

 YARIOのメンバーの呼びかけに応じて、スルスルと木から降りてくる円卓の騎士が一人、べディヴィエール。

 

 そして、リーダーやカルナ達の姿を見た彼は涙を流しながらすぐさま駆け寄ってきた。

 

 

「ぐすっ…! うああああ! リーダァァ!みんなぁー」

「お、おう、…なんかわからんけどお帰りやな」

「泣きすぎだってば」

 

 

 そう言いながら、泣きつくベディヴィエールの背中をポンポンと叩いてやるクーフーリン。

 

 どうやら、彼もまたこのブリテン島で苦労を重ねていたらしい。そして、気になるのはどうしてここに彼が居たのかという事だ。

 

 皆との感動の再会を済ませた後、クーフーリンはベディヴィエールに師匠であるスカサハを紹介した。

 

 

「こいつらの師匠のスカサハだ。今日からはお前の師匠になる。よろしくな」

「うわっ! リーダー! この人めっちゃべっぴんさんじゃん! しかも、おっぱいめっちゃデカいし!」

 

 

 そう言いながら、たゆんと弾む豊満なスカサハの胸部に対して目を丸くしながら告げるとベディヴィエール。

 

 すると、スカサハは首を傾げ笑顔を浮かべたままベディヴィエールの肩をポンと叩くと、サムズアップをしてこう告げる。

 

 

「ん? 心配するな。胸なぞ鍛えていればそのうちお主も大きくなるぞ」

「師匠、それ多分おっぱいやなくて大胸筋やで」

 

 

 冷静なクーフーリンの突っ込みが冴え渡る。本来なら彼もボケる立場なのだが、自身のおっぱいに関して爽やかな笑顔を浮かべ告げるスカサハ師匠に今回は流石に彼も突っ込みを入れざる得なかった。

 

 ーーーー胸が無念。

 

 確かにスカサハが言うように大胸筋を鍛えれば胸は大きくなるだろう。多分、それは硬い筋肉ほうになるのだろうが…。

 

 

「すげー! みんなこんな美人の弟子なんだ!」

「今日からはお前も私の弟子だ」

「え! ほんとですか! めっちゃ嬉しい! アキオさん思い出すなぁ」

「やっぱりみんな思い出すよねー」

 

 

 それは、昔。まだ、皆が農業に関して知識が足りなかった頃。

 

 福島の村でお世話になった師匠、そして、その師匠の愛犬だった柴犬。

 

 彼らは間違いなく自分達の仲間であり、今でも敬うべき相手、自分達がここでこうして今でも農業が出来ているのも彼の教えがあったからこそだ。

 

 彼から学んだ農業の知恵、そして、受け継いだ業は今でも彼らの中に生き続けている。そんな受け継いだ彼らがこうして再び集まる事が出来たのも自分達の師匠であった彼が背中を押してくれたからに違いない。

 

 時には諦めそうにもなった。自分達の時代で英雄らしく一生を終えようかと挫けそうにもなった。

 

 けれど、彼らは…。

 

 

「…リーダーのお陰だよなこうして俺たちがまた会えたのも」

「生まれ変わっても、やっぱりこうして俺たちは集まるんだな…やべ…涙出てきたわ」

「…あー、せやなぁ…ホンマにお前ら大好きやわ」

 

 

 苦楽を共にする仲間に再び出会い、こうして結集する事が出来た事にメンバーの目からは涙が溢れ落ちる。

 

 見えない強い絆で結ばれた五人。そんな五人は涙を流しながら、再び会えた事に感謝しADフィンを含めて抱き合い、喜びを分かち合う。

 

 そんな彼らの姿を見ていたスカサハは笑みを浮かべ暖かい眼差しで見守り、小次郎さんもまた瞳を閉じ静かに頷きながら笑みを浮かべていた。

 

 そして、彼らは…。

 

 

「よっしゃ! せっかく五人揃ったし久々に本業やるか!」

「ん? 本業? あ、あれか!」

「いや、本業忘れちゃダメでしょ、リーダー。俺たちYARIOだよ?」

 

 

 そう言いながら、笑顔を浮かべて笑いを溢す五人。

 

 懐かしい感覚、五人がこうして揃った事で胸の中にポッカリと空いた穴が塞がった。

 

 …とここで、クーフーリン。話題を変え何故、ベディヴィエールがこんな山の中の小屋にいたのかについて訪ねることに。

 

 

「そういや、お前なんでこんな山奥におったん?」

「あー…それね! それなんだけどね…」

 

 

 そう言いながら、YARIOのリーダー、クーフーリンの問いに答えはじめるとベディヴィエール。

 

 それは、数日前の出来事に遡る。

 

 ある日、円卓の騎士達はアーサー王を含めてある話をしていた。

 

 それは、元々、とベディヴィエールが振った話題でとある勇者の結婚相手についての話であった。

 

 幼少期と青年期を共にした金髪に青い瞳の可愛い幼馴染の村娘と、富豪の娘で、おしとやかで心優しい可愛いお嬢様どちらを選ぶのかという話題であった。

 

 早い話がなんとこの円卓の騎士の会議の場で、ベディヴィエールはドラクエの話を振ったのである。

 

 そこで、円卓の騎士達とアーサー王が答えたのが…。

 

 

『私はフローラですね、品がありそうだ』

『王がそう仰るなら私も』

『あ、それでは私もフローラで』

『嘘だ! ビアンカだろ!』

 

 

 という理由で円卓の騎士の大半がフローラ派に占拠され、ベディヴィエールは円卓の騎士でありながらわざわざ森の小屋まで泣き寝入りに逃亡したという経緯だった。

 

 確かに王であるアーサー王がフローラ派と言えば従者である円卓の騎士達は従うしかない。

 

 そうなれば肩身が狭くなったビアンカ派のベディヴィエールが泣いて逃亡するのもなんとなくわかる。

 

 ーーー王にはビアンカの気持ちがわからない

 

 というわけで、ベディヴィエール、円卓の騎士から絶賛逃亡中という訳である。これにはクーフーリン達も思わず頭を抱えてしまった。

 

 

「相変わらずアホやなぁ…」

「だって! フローラ派だよ!」

「いやいやいや、なんでドラクエの話題出してんのよ」

 

 

 そう言いながら、カルナも苦笑いを浮かべて目を見開いて訴えるベディヴィエールに顔をひきつらせる。

 

 一方、スカサハ師匠とディルムッドは絶賛大爆笑中だった。どこの世界に勇者の結婚相手が村娘派か富豪の娘派で逃亡する英雄がいるのか。

 

 なんと目の前にいた。しかも、先ほどまでゴリラ状態で木に登り木の実をとっていたのでこれまたびっくりである。

 

 

「しゃあないなー、こうなったら、ちょっとその王様に会いに行かないかんね」

「世話が焼けんね〜もう」

 

 

 そう言いながら、笑みを浮かべる一同。

 

 こうして、YARIO達の行き先は円卓の騎士達がいるであろうアーサー王の居城、キャメロット城へ赴く事になった。

 

 あわよくば、彼らから新たな伝説の食材についての情報を得られるかもしれない。

 

 最後の仲間、ベディヴィエールを仲間に迎えたYARIO一行はだん吉と近くの村で馬を借りキャメロット城へ。

 

 果たして、彼らを待ち受ける新たな挑戦とは?

 

 この続きは次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 アーサー王、フローラ派ーーーーーNEW!!

 

 円卓の騎士フローラ派になるーーーNEW!!

 

 本業を思い出すYARIOーーーーーーNEW!!

 

 YARIO!ついに集結!ーーーーーーNEW!!

 

 YARIOブリテン島上陸ーーーーーーNEW!!

 

 



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アンビシャス!

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでアーサー王に会うべくキャメロット城まで移動したYARIO一同。

 

 そんな彼らは今、ベディにより円卓の騎士達とアーサー王と顔合わせをする為に謁見の間にて面会を行なっていた。

 

 玉座に座るのは幼さを感じるも、まごうことなき王の気質を兼ね備えたアーサー王の姿がある。

 

 そして、アーサー王の周りには王に付き従う円卓の騎士達が控えており、品定めするかのようにベティとYARIO達に視線を送っていた。

 

 アーサー王は帰還したベディヴィエールに連れてきた者達について、こう語り始める。

 

 

「よく戻ってくれたベディ。先日の件は…その、すまなかったな…して、そちらの者達は?」

「よくぞ聞いてくれました!アーサー王!」

 

 

 そう言って、膝をついていたベティは勢いよくその場から立ち上がると目をキラキラと輝かせてアーサー王に告げる。

 

 すると、急なベディヴィエールの反応に円卓の騎士達は身構えた。

 

 もしかして、前回の一件でベティヴィエールが叛旗を翻しこの者達を使ってアーサー王を倒しにきたのではないかという疑念があっだからだ。

 

 しかし、ベディヴィエールは謁見の間において、キレの良いポーズを決めるとキリッとした表情を浮かべてアーサー王と円卓の騎士達に向かいこう告げる。

 

 

「太陽剣士!ベディヴィエール!」

「!?」

 

 

 思わず身構えた円卓の騎士達はポカンとしていた。

 

 そして、そのベディのポーズと名乗りを聞き、膝をついていたYARIOのメンバーも自己紹介を兼ねて、その場から立ち上がるとベティのように次々とポーズを決めると名乗りを上げはじめる。

 

 

「激烈騎士!ディルムッド!」

「!!!?」

 

 

 なにか、カッコイイポーズを次々と決めるYARIO達にビクリ! と身体を硬直させて反応する円卓の騎士達。

 

 しかし、何だかわからないが妙にカッコよかった。それを見ていた円卓の騎士の一部の中からは『おぉ!』と感心するように声もあがる。

 

 まるでヒーローの名乗りのようなシュールさがあった。それを間近で目撃したスカサハも思わず目をキラキラさせている。

 

 

「冒険勇士!カルナ!」

「…そのポーズは何か果たして関係が…」

「いや、我が王、あれは名高い英雄達に違いありません!」

 

 

 そのポーズと名乗りを挙げているYARIO達の姿に思わず、全身を甲冑に身を包んだ円卓の騎士の一人が興奮気味にアーサー王に告げる。

 

 ポーズ自体は特に意味はない、ただ単にかっこよく名乗りを挙げたいだけに単純に彼らが勝手にやっているだけである。

 

 

「博愛勇者ヴラドン!」

「!!?」

 

 

 なんだか、かなりシュールな光景がそこにはあった。

 

 変な立ち絵でポーズ取りながら名乗りを挙げるYARIO達にアーサー王も円卓の騎士もなんとも言えない表情を浮かべるしかない。

 

 

「友愛戦士!クーフーリン!」

「五人揃って!」

「「英雄戦隊!YARIO!!」」

 

 

 バーン! という音と共にかっこよくアーサー王と円卓の騎士達に自己紹介を簡潔に述べる我らがYARIOメンバー達。

 

 なんだか知らないが、妙にカッコいいその名乗りにポカンとしてしまうアーサー王と円卓の騎士達。

 

 ADフィンと小次郎とスカサハは拍手を送りながら納得したように頷いているが、明らかにいろいろとおかしかった。

 

 五人は決まったとばかりにハイタッチを交わしている。何も特段決まった訳ではない、ただ単にアーサー王と円卓の騎士達に名乗っただけである。

 

 そこで、円卓の騎士の一人、ガウェインはYARIOメンバーの名乗りを聞いて思わず気がついた事を話しはじめた。

 

 

「ちょっと待ちなさい、ベディ。太陽の騎士は私の名称ではありませんか」

「だから俺は!太陽剣士!」

「いやいやいや、そうじゃなくてですね、被ってるじゃないですか!」

「ガウェイン! 突っ込むとこはそこじゃないでしょう!」

 

 

 ベディの太陽剣士という名前に思わず声を挙げるガウェインを制するようにベディの友人である赤い髪の騎士、トリスタンが思わず声を挙げた。

 

 確かに重要なのはそこではない、重要なのは彼らが名乗った名前だ。

 

 クーフーリンと聞けば、円卓の騎士の者達にも聞き覚えがある英雄だ。それも、ブリテンの隣の国アイルランドの大英雄である。

 

 何故そんな伝承に記された英雄がここにいるのかの方が重要な事柄であった。

 

 

「あ、ちなみに僕らのADのフィン・マックールとスカサハ師匠、農業スタッフの小次郎さんです」

「どもっ!」

「うむ、こいつらの師匠のスカサハだ。影の国を治めさせてもらっている」

「農業スタッフの小次郎だ。お初にお目にかかる」

 

 

 そう言って簡単な自己紹介でさらりとYARIOメンバーをアーサー王と円卓の騎士達に紹介するクーフーリン。

 

 王の御前だというのに無礼だとかそう言った類でなく、なんだかもう呆気に取られるばかりだ。

 

 クーフーリンはサラッと自己紹介をしたがスカサハは影の国の女王だ。それに、ADフィンはあの伝承逃げあるフィオナ騎士団の騎士団長だ。

 

 あまりに面子が面子だけにもうなんと言っていいかわからない、ベティヴィエールが何故彼らを連れてこれたのかも不明だ。

 

 そのことも相まって、なんだか、円卓の騎士達は頭が痛くなってきた。一部の騎士は名乗りを上げた彼らに目をキラキラさせている。

 

 

「…クーフーリンに…スカサハだと?」

「あ、これゲイボルクです」

「…鍬ではないか!」

 

 

 声をあげてクーフーリンが提示する鍬になったゲイボルクに突っ込みを入れる円卓の騎士が一人、白銀の甲冑を纏った騎士湖の騎士、ランスロット卿。

 

 確かに言われてみればそうだ。鍬を見せられてこれが名高いゲイボルクですよと言われてハイそうですかとなるわけがない。

 

 そこで…。

 

 

「あ、これ、こうしてやな…こうしたら、先端が取れるんやで」

「嘘ォ!?」

 

 

 なんと、先端の金具を外せば、鍬が槍になった。

 

 それを目の当たりにした全身に鎧を身にまとう円卓の騎士が一人、アーサー王の息子であるモードレッドはまさかの展開にびっくり仰天する。

 

 確かにみれば、言われる通り朱色の魔槍だ。

 

 しばらくして、円卓の騎士達にゲイボルクを見せたクーフーリンは金具を取り付け再びゲイボルクを鍬にした。

 

 そして、それに続くようにスカサハは…。

 

 

「ゲイボルクならたくさんあるぞ? ほら」

「いや、もう大丈夫だ。なんだか頭が痛くなってきた…」

「大丈夫か?アグラヴェイン卿」

 

 

 そう言って、頭を抑える険しい顔立ちの、真っ黒な鎧を来た偉丈夫のアグラヴェイン卿を気にかけるように声をかけるアーサー王。

 

 目の前に鍬やツルハシなんかにもなった宝具がたくさん、これをみれば頭も痛くなってくるというもの。

 

 挙げ句の果てに包丁になった宝具まで、これには、もはや言葉が出ない。

 

 

「と、とりあえず名高い英雄の方々。遠路はるばるようこそブリテンへ、大したもてなしはできないかもしれないがゆっくりしていってくれ」

「あ、お気遣いどうもです」

「アーサー王、という訳でビアンカ派の俺は円卓の騎士を抜けてYARIOになります」

「円卓の騎士を抜けるだと! 何を言ってるのかわかってるのか!?」

「うん、だって元々、俺、YARIOだし」

 

 

 ガウェインの言葉に頷き、何事もないように告げるベディヴィエール、これには周りも騒然とした。

 

 ベティヴィエール本人は円卓の騎士をもう辞める算段らしい、それを聞いていたアーサー王と円卓の騎士達は頭を抱える。

 

 ハイわかりましたと円卓の騎士を簡単に辞めさせるわけにもいかない、しかし、本人がそう言い出した以上はその意思は固いだろう。

 

 アーサー王はしばらく思案した後、ゆっくりと口を開くとベディヴィエールにこう告げた。

 

 

「わかった…。しばらく暇を与えよう」

「王!?」

「ベディヴィエールがこう言っているのだ。しばらく考える時間を与えるべきだろう、それに、見たところ腕前に自信があるであろう英雄達が側にいる、心配は不要だ」

 

 

 そう言って、アーサー王は寛大な心でベディヴィエールの出奔を認める事にした。

 

 腕前に自信があるとは言っても料理だとか農業だとかの腕になる。戦闘経験はあの魔猪狩りだけで、スカサハとフィン以外はあとはほとんど無いに等しい。

 

 それに、ベディ本人が選んだ事を捻じ曲げて忠義を尽くせと言ったところでそれは束縛でしかない、アーサー王としては彼の居場所が円卓の騎士ではなく違う場所だったという事だと納得している。

 

 こうして、正式にYARIOとして復帰する事になったベディヴィエール。彼らの側にいるならばアーサー王に弓を引くことは無い筈だ。

 

 

「それじゃ僕らもしばらくこちらでお世話になります。それでお礼と言ってはなんですけど」

「ん? なんですか…これ?」

 

 

 すると、クーフーリンは首をかしげるアーサー王を前にして笑みを浮かべるとある紙を王の側に立つそっとガウェインに手渡した。

 

 その紙には、なんと、ブリテンの城下町で歌うという宣伝用の紙であった。

 

 そう、ようやくここに来て、YARIO達は五人揃った事を祝して、ブリテンの街で本業をしようという訳である。

 

 

「…って訳で僕等、この街で演奏したいんですけど、ええですかね?」

「ほほう、これはまた興味深い催しだな、よし、いいだろう。許可しよう」

「ほんまですか!? いやぁ、助かりました!」

 

 

 そう言って、許可を出してくれたアーサー王の言葉に嬉しそうに微笑むクーフーリン。

 

 ようやく、久しぶりの本業である。久々という事もあってカタッシュ隊員達のテンションもだだ上がりだ。

 

 そうと決まれば話は早い、楽器をブリテンに持ち込み早速、歌う場所を確保しなければ。

 

 

「何故がトントン拍子に話が進んでますが、この人達は大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫さ、考えすぎだ。ベディヴィエールの友人達だ。間違っても問題は起きないだろう。奴の人柄はお前も知ってるだろ?」

 

 

 円卓の騎士の一人であるモードレッド卿は不安げな表情を浮かべているトリスタンの肩をポンと叩きそう告げる。

 

 それに型破りな彼らがなんとなく、モードレッド卿は気に入っていた。

 

 ベディヴィエールは前から面白い奴だとは思ってはいたがこうもあっさり円卓の騎士を辞めるあたり、やはり思った通り面白い人間であった。

 

 彼の仲間も仲間で武器を農具にするなど、面白すぎる。あのアグラヴェイン卿が頭を抱える姿など見たのは彼女も初めてだった。

 

 それから、しばらくして、楽器を寄せ集めてブリテンの城下町に降りたYARIO達は久々に握る楽器を手に晴れやかな笑顔を浮かべていた。

 

 旅をし、仲間達を集め、新たな出会いをしながら冒険をする彼ら。

 

 そんな彼らが歌うのは、やはり、それを思い起こさせてくれた曲だ。

 

 ルーン魔術を施した手作りギターを握るリーダークーフーリンは何がはじまるんだと集まってきたキャメロット城の城下町の人達を見渡しながら笑顔を浮かべる。

 

 ーーーー全ての職人と出会いに感謝。

 

 そして、ディルムッドが頷くと、ドラムをパン! と叩いてリズムを取り始め、カルナとクーフーリンがベースとギターで合わせて、キーボードのヴラドがそれに続き、曲が流れはじめる。

 

 スカサハがルーン魔術を施し、音響が響くマイクを握るベディヴィエールはそれに合わせて曲を歌い始めた。

 

 

「未来に向かってまっしぐら〜〜♪」

 

 

 いつも、五人揃って演奏し、歌っていた曲を噛み締めながら久々に声を出すベディヴィエール。

 

 それを聞いていたブリテンの城下町の人達からは手拍子が巻き起こる。皆さんは鍬や建築物を作る彼らを見慣れているかもしれないがらこれが、彼らの本業であり本来やるべき事なのである。

 

 そして、極め付けは裏返る我らがリーダーの声高な声。

 

 彼らの歌を遠目から聞いていたアーサー王と円卓の騎士達はそれを聞きながら思わず目を丸くする。

 

 先ほどまで、顔も知らない他所者の筈だったYARIOの者達がブリテンの人々に受け入れられているその光景に。

 

 彼らの全てのきっかけは逢いたい人に会いに行くため、その為だ。

 

 盛り上がりを見せるブリテンの城下町、そんな五人の姿を見つめるスカサハは五人の奏でる曲に耳を傾けながら瞳を瞑る。

 

 

(よかったな…、クーフーリン)

 

 

 彼らが集まる事を望んでいたリーダーであるクーフーリン。

 

 彼の願いが叶った事がこの旅をしてきて一番の収穫だった。時を越えてフィニアンサイクルへ行き、インドへ行き、ルーマニアへ行き、日本へ行き、そして、今度は隣の国であるブリテン島へ。

 

 長い旅路の中で、伝説の食材を探し、ラーメンを作る為に魔猪とも戦った。石橋作りの知識を活かしたヒルフォートも作った。

 

 しかし、彼らの旅路は今ようやくスタート地点に立ったばかりだ。

 

 これから、様々な挑戦が彼らを待ち受けるに違いない。果たして、このブリテン島で彼らは何を残して行くのか見届けよう。

 

 彼らの師匠として、名を上げたスカサハは改めてそう心に決めたのだった。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 英雄戦隊になるーーーーーーーーーNEW!!

 

 ベディ暇を貰うーーーーーーーーーNEW!!

 

 鍬が槍にできるーーーーーーーーーNEW!!

 

 ブリテンの城下町で本業ーーーーーNEW!!

 

 モーさんYARIOがお気に入りにーーNEW!!

 



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新企画スタート!

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでアーサー王に面会し、キャメロット城の城下で久々の本業をしたYARIO。

 

 懐かしい曲を楽器を握りしめて熱唱した彼らであったが、現在、ブリテンから遠く離れた土地に来ていた。

 

 この場所には人が一人もおらず、土地が荒れるだけ荒れ放題。あまり、土地的にも豊かとは言いがたく、未開拓地である事がわかる。

 

 そして、そんな荒れ果てたブリテンから遠く離れた土地に哀愁漂う背中の我らがリーダー、クーフーリンとインドの棟梁カルナの姿が…。

 

 一体何をしているのだろうか? よく見てみると。

 

 

「いやー、久々の鍬だな」

「この間は 俺達 楽器持ってたからな!」

「こっちの方が落ち着くな」

 

 

 二人とも手に鍬を持ち土を耕していた。

 

 その手並みは慣れたもの、やはり、しばらく鍬を使う事から離れていても身体が覚えていた。

 

 ーーーー楽器を持つよりやはり鍬。

 

 何故、この二人がこんなブリテンから遠く離れた荒れ果てた土地を訪れ、鍬を握りしめて土地を耕しているのか?

 

 というのも、それは数日前の出来事に遡る。

 

 

 

 

 伝説のラーメンの食材を手に入れる為に会議をしていたYARIO達。そんな彼らはキャメロット城の一室を借りて会議を開いていた。

 

 霊草に魔猪の豚骨スープは手に入れた。次なる食材の目処をつけて次なる活動をどうするかを決めるための会議だ。

 

 とそこへ…。

 

 

「えー、皆さん、ラーメン作りの会議の方は順調でしょうか?」

「おー! ADフィンじゃん! どうしたの?」

「実は、ブリテン島を訪れた皆さんに挑戦して貰いたい事がありまして」

 

 

 カタッシュ隊員達が借りている一室に突如、隣の部屋に居たADフィンと小次郎が来訪し、新たな企画について彼らに相談を持ちかけてきたのである。

 

 ADフィンが言うその相談というのが、実はカタッシュ隊員達がこのブリテン島で挑戦する企画についての概要だ。

 

 そして、ADフィンからYARIO達に告げられた挑戦というのがこちらである。

 

 

「今回、カタッシュ隊員の皆さんは…このブリテンを治めている王様をご存知ですよね?」

「そりゃ、知ってるよー。昨日会ったもん」

「あぁ、アーサー王だったな」

 

 

 そう言って、ADフィンの質問に答えるディルムッドの横からひょっこり顔を出して話すスカサハ。

 

 しかし、その場に居たカタッシュ隊員達は目を丸くしている。記憶が正しければスカサハは自分達とは違う部屋をアーサー王に手配して貰っていた筈だ。

 

 何故、そんな彼女がいつの間にこんなところに来ているのか?

 

 

「あれ? 師匠、師匠って隣部屋やなかった?」

「なんかこっちが面白そうだったからこっそり入って来た、私抜きで話を進めようたってそうはいかんぞ」

 

 

 そう言って、サムズアップをしてクーフーリンに答えるスカサハ。どうやら彼女としては自分の居ないところで話が進むのが嫌だったようだ。

 

 流石に男女と共同部屋はよろしくないと思いアーサー王に部屋を分けて貰ったのだが、どうやら彼女が居た隣部屋まで話が聞こえて来たらしい、それは、彼女の耳が地獄耳からかもしれないが…。

 

 さて、本題に戻るが、確かに現在、ブリテンを治めている王はアーサー王。

 

 ならばと、ADフィンの隣でわかりやすく画用紙を持っている小次郎さんは次のページをめくる。

 

 そこに書かれていたのは…。

 

 

「さて、そのアーサー王ですが、実はあの方を王様にした人物が居ます」

「え? ってことは、アーサー王さんは王様にさせられたんだ!」

「え! じゃあ!アーサー王って作られたの!? すげー!」

 

 

 そう言って、目の前に飛び込んで来た画用紙の内容に声を上げるヴラドとベディの二人。

 

 ヴラドが驚くのはわかるが、以前まで円卓の騎士なのに仮にも仕えていた王様の出自を知らないベディヴィエールにその場にいる全員はズルッとずっこけた。

 

 確かに彼の性格を考えればあり得ない事ではないのだが、とりあえず、気を取り直してADフィンは全員に話を続ける。

 

 

「えー、コホン。話は戻りますけど、実は話を聞くところによれば王様作りの達人と呼ばれる職人がこのブリテン島にいるとか」

「えーと、つまり…?」

「はい、つまりですね…」

 

 

 すると、ADフィンの合図と共に画用紙を持っていた小次郎さんは頷き、ページを捲る。

 

 そこに書かれていたのは、なんと、今回、YARIOが挑戦する事についての詳細と概要であった。

 

 

 ザ! 鉄腕/fate! YARIOはこのブリテン島で王様を作る事ができるのか?

 

 小次郎さんが持つ画用紙には、バン! とこういったタイトルで今回の挑戦についての内容を簡潔にまとめたものが提示されてあった。

 

 それを見たディルムッドは…。

 

 

「マジかー! 王様を作んの!? 今まで色んなもん作ったけど、こんなん初めてだよ!?」

「王様作りかぁー、一応、ヴラドとか師匠は王様やってたんやっけ?」

「んー、領主みたいな感じだねー。なんか俺とか、一時期、人質みたいにされててたからねぇ」

「私は一応、治めていたが大体、弟子に修行つけるみたいな感じだったからな」

「そっかー、そんな感じなんか」

 

 

 そう言って、国を一応治めていた経験があるスカサハとヴラドに訪ねるクーフーリンは難しそうに顎に手を当て考え込む。

 

 今まで、様々な農作物や建築物、はたまた、攻城兵器まで作り上げたYARIO達だが、王様作りは今回初めての挑戦だ。

 

 それに農作物や建築物とは違い今回は人である。

 

 以前、やっていた企画のもので世間的にも素行が悪い人達を更生し、ボクサーやレーサーにした事はあるが今回は果たして…。

 

 

「それで今回の企画なんですけどYARIOの力を結集して、凄い王様を作って頂きたいな、と」

「王様かぁ、それでどのレベルで作るの? 王様が治める予定の土地耕して豊かにするところから?」

「やりましょう、それ」

「どんな王様が好きかは人それぞれだからね。ラーメンの麺の加水率だって違うしね」

「マジかー、王様だよ? ラーメンの加水率と同じに考えて良いのかこれ! 初めてだよこんな企画!」

 

 

 そう言って頷くディルムッドに冷静に突っ込みを入れるカルナ。まさか、ブリテンに来て王様を作る事になるとは思いもしなかった。

 

 という訳で、このようなやり取りが行われ、冒頭に戻るわけであるが。

 

 現在、そのような経緯もあって、クーフーリンとカルナはブリテンの土地を豊かにすべく鍬を使い土地を耕している最中な訳である。

 

 

「いやー、今朝は凄かったねー、まさか俺達が王様作ることになるとはね」

「せやなー、というよりなんで王様作りなんやろ?」

「さぁ?」

 

 

 そう言って鍬を担ぎながら顔を見合わせるクーフーリンとカルナの二人。

 

 何故、今回の企画が王様作りになったのかは未だに疑問ではあるものの、せっかくADフィンが発案してくれた企画だ。何かしら彼に考えがあるに違いない。

 

 二人はそう信じ再び鍬で土地を耕し始める。何はともあれまずはこの場所を豊かな土地にしてしまうところからはじめなければ。

 

 豊かな土地には豊かな人間達が住まう。

 

 きっと、YARIO達が学んだ事を生かせば、この荒れた未開拓の土地でも豊かな土地になるに違いない。

 

 

 

 一方、その頃、クーフーリン達から別れたディルムッドとベディヴィエール、ヴラド、スカサハの四人はというと?

 

 

「こんにちはー!」

「ん? どなたかな?」

 

 

 ある王様作りの職人さんが住まう森深い小屋に訪れて居た。

 

 今回、訪ねた王様作りの職人さんの名前はマーリンさん(年齢不詳)である。ADフィンからの聞き込みの情報を頼りにこの地に四人で訪れた訳だが…。

 

 そして、早速、小屋から現れた王様作りの職人さんに王様作りの極意を教わるべく、ベディヴィエールは今回訪れた要件について小屋の中から現れた彼に語りはじめた。

 

 

「僕たち実はYARIOという者なんですけども、現在、鉄腕/fateって企画で王様を作る企画をやってるんですけど、ここに王様作りの達人がいらっしゃると聞いて極意を教わりに来た次第でして…」

「…んー、僕の記憶が正しければ君は円卓の騎士の一人じゃなかったかな?」

「あ、辞めてきました」

「辞めてきたのかい。随分とあっさりしてるね君は」

 

 

 そう言って何の迷いもなく言い切るベディヴィエールの言葉に苦笑いを溢す王様作りの職人マーリンさん。

 

 実はベディヴィエールが円卓の騎士を辞めている事はマーリンも知っている。知った上でこうして問いかけて反応を見ようと思ったがあまりに清々しく言うもので彼としても苦笑いを浮かべるしかなかったのである。

 

 それに、彼と彼の友人の来訪。ベディヴィエールの円卓での評判はマーリンも良く聞いている。

 

 人格者で明るい性格の優しい人物の上、円卓の騎士の中でも皆から良く好かれていたと。

 

 そんな彼らの来訪を無下にするわけにもいかない。

 

 すると、しばらく考えた後に小屋の扉を大きく開けたマーリンは彼らを招き入れるようにこう告げる。

 

 

「立ち話もなんだろうから、中で話そう。大した持て成しはできないかもしれないけどね」

「ほんとですか!?」

「いやー、やっぱり上手いなー、ウチの特攻隊長は」

「うむ、ではお邪魔する」

 

 

 そう言ってマーリンに招かれるまま小屋へと入るカタッシュ隊員達。

 

 そして、案内された小屋の中は魔法使いの部屋らしくたくさんの書物や古びた骨董品などが並べられていた。

 

 早速、カタッシュ隊員達は王様作りの匠、マーリン師匠にいかにしてアーサー王が王様になったかを聞くことにした。

 

 

「それで、王様の作り方なんですけど…」

「あーそれだね、どこから話したもんか…」

「やっぱりレベル上げとかじゃない? 俺もよくやってたよ」

「ベディ、ドラクエからとりあえず一旦離れよう」

 

 

 そう言って、目を輝かせているベディヴィエールの肩をポンと叩くヴラド。

 

 確かにドラクエとは違い、そんな上手い話がある訳がない。とりあえず、王様作りの匠であるマーリンさんの話に一同は耳を傾けた。

 

 アーサー王を作り上げたマーリンさんがカタッシュ隊員達に話す王様作りの伝統的なやり方については以下の通りである。

 

 

 王様作りの極意、その1。

 

 まずはアーサー王を約定によって父王から譲り受け、騎士エクターの下で育てます。子育ては大事です。王になるには良識ある騎士から知識を得させよく育つまで待ちましょう。

 

 

 王様作りの極意、その2。

 

 アーサー王がよく育ったら、岩に刺さった選定の剣を聖剣と称して宣伝し、それを抜く際に現われ、魔法使いらしく王の運命を告げてみましょう。みんな、あの人聖剣抜いたよ! すごい人だよ! 王様に相応しいよね! と念を推しておく事が大事です。

 

 

 王様作りの極意、その3。

 

 あとは王様には家臣と守るべき町民が必要なので彼女の治世を影ながら度々サポートしてあげましょう。そうすれば、後はその頑張りを見ていた家臣や町民達もサポートしてくれるようになります。

 

 

 という感じの大まかな説明を王様作りの匠、マーリンさんから極意を聞かされる四人のカタッシュ隊員達。

 

 なるほどと納得しつつ、聞き逃さぬように王様作りの職人、マーリンの話を真剣に聞く、確かに王様を作るには一筋縄ではいかない。

 

 まずはマーリンの話を聞いて、ある事に気がついたディルムッドが口を開き、こう話をし始めた。

 

 

「いやー早速、難題だよ? 誰を王様にすんの? てか、居ないじゃん俺らそんな養子的な子なんてさ」

「しかも聖剣なんて持ってないしね、槍ならたくさんあるんだけども」

 

 

 そう言って、マーリンから王様作りについて聞かされたカタッシュ隊員達は難しい表情を浮かべていた。

 

 まずは、アーサー王の様な王の血筋を持つ養子がいないという事。次に抜かせる聖剣的な物が槍か鍬かツルハシしかないという事実である。

 

 そんなものが岩に刺さっていて抜いたところで誰も王様とは認めてくれそうにもない、となればヴラドが話す通り聖剣を作らなければならないだろう。

 

 しかし、スカサハ師匠、ある事に気がつく、それは…。

 

 

「ところでお前達は自分が王様になるという選択肢は無いのか?」

「無いですね、それなら俺は司会業がいいな」

「いやー、それなら俺もアイドルかな?」

「それすんなら俺もリーダーとかぐっさんとの活動がいいなー」

 

 

 即答だった。王様をやるよりもYARIOの方が良いという事で満場一致。

 

 王様になるという選択肢は全くもってなかった。というより、このやる気の無さである。

 

 司会業やアイドルの様な事をあまりしていないのにも関わらず、これである。流石に話を聞いていたマーリンとスカサハも顔が思わず引き攣る。

 

 仮にも英雄としての素質があり、王様になろうと思えばそれなりに担ぎあげればなれそうな彼らだが、微塵もなる気は無いようであった。

 

 そこで、王様作りの匠、マーリンはある事を思い出す。

 

 

「あぁ、そう言えば、アーサー王の養子なら居るといれば居るよ」

「え! そうなんですか!」

「うん、アーサー王はホムンクルスであるその子を跡継ぎには選ばない予定みたいだけどね」

「へぇー、そうなんだ…その子の名前とかわかります?」

 

 

 そう言って、アーサー王の養子について語る王様作りの達人、マーリンさんにさらに話を聞こうと訪ねるヴラド。

 

 果たして、一体誰なのか? あの若そうなアーサー王に養子が居たこともびっくりなのだが、それよりもその話が本当ならばカタッシュ隊員達が挑戦する王様作りにも大きな前進が見込める。

 

 マーリンは首を傾げるとベディの方へ視線を向けて彼にこう告げた。

 

 

「君も良く知ってるんじゃないか? ベディヴィエール?」

「誰なんだ! 一体!」

「あー、この子こんな感じなんですよマーリンさん。多分、知らないと思います」

「…そうかい、いや、元とはいえ円卓の騎士ならてっきり知ってるとばかり…」

「なんだかすいません」

 

 

 そう言って、真顔で告げるベディヴィエールを前に頭を抱え、ため息を吐くマーリンに申し訳なさそうに謝るディルムッドとヴラド。

 

 まさか、彼が知らないとは流石のマーリンにも予想斜め上の出来事だった。

 

 とりあえず、気を取り直してマーリンはコホンと咳払いをするとそのアーサー王が養子にした息子について語り始める。

 

 

「モードレッド卿さ」

「あー、そうだったの!」

「うん、そうだね…、少しばかり彼女の話となるけど」

「え? モーさん女の子だったの?」

「……そこから話さないといけないみたいだね、どうやら」

 

 

 そう言って、王様作りの達人、マーリンさんはモードレッドとアーサー王。アルトリア・ペンドラゴンについての詳しい話をカタッシュ隊員達に語りはじめた。

 

 アーサー王が実は女性で普通の村娘だった事から話は始まり、モードレッドの出自が異父姉モルガンがそのアーサー王を陥れる為に彼女の血を引くクローンのホムンクルスとして産まれ出された事をマーリンは語った。

 

 それを聞いていたカタッシュ隊員達はなんだか悲しい気持ちになった。

 

 少なくともモードレッドを良く知っているベディヴィエールとしてはそんな風にモードレッドは見てなかった。

 

 

「いやー壮絶な人生だねぇ」

「なんだかやるせないよね」

「俺らでなんとかしてあげれないかな? 」

 

 

 そう言って、マーリンから話を一通り聞いたカタッシュ隊員達はモードレッドの出自と扱いについて相談をし始める。

 

 これはあまりにもかわいそうだ。クローンとして生み出されてアーサー王を陥れるためだけに使い捨てにされるなんて酷い。

 

 それに、跡継ぎにはさせてもらえないモードレッドが不憫だ。そこで、カタッシュ隊員達は考えた。それはすなわち…。

 

 

「…って事は今の所、モードレッドさんはアーサー王の跡継ぎに使わないって事ですよね!」

「そういうことになるかな」

「って事はこれは」

「セーフだな」

「よし!」

 

 

 ならば、モードレッドさんにカタッシュ隊員達が耕した土地を治めてもらえば良い。

 

 まずは第一の極意についてはなんとかなりそうだ。後はモードレッドを説得する必要があるが…。

 

 それにと、あることに気づいたスカサハはモードレッドを担ごうとするカタッシュ隊員達にこう話をし始める。

 

 

「王が二人もいれば国が混乱する。それはあまり良い傾向ではないだろう」

「あ、ならさ、領主って事にすれば良いんじゃない? 俺もオスマンさんに献上金払ったりさせられてたし、一時期」

「なるほど、後は領主として俺達が開拓した土地をモードレッドちゃんが治めてアルトリアさんの跡継ぎに相応しい感じになれば…」

「良いんじゃない? 良いんじゃない? 王様作りの道筋できてきたよ、これ」

 

 

 そう話すカタッシュ隊員達はモードレッドのプロデュースの仕方についてワイワイと盛り上がりはじめる。

 

 それを見ていたマーリンは思わず笑みを浮かべていた。当初はアルトリアとモードレッドについての話を彼らにするかしまいかと悩んではいたが、彼らの側にいる影の国の女王であり、神霊の類に近いスカサハと元円卓の騎士であるベディヴィエールの円卓での評判を聞いていた経緯から話してみても良いだろうと踏み切った。

 

 そして、いざ、話してみれば、やはりマーリンが思った通りに面白い方向に話が進んでいる。最初は王様の作り方を教わりに来たと言うものだから何事かと思ったが、彼らならば安心しても良さそうだ。

 

 

「それで、次は聖剣だな!」

「あ、マーリンさん、聖剣を作りたいんですけど、作り方知ってる人ってわかります?」

「………え? 作るって?」

「いや、聖剣を作らないといけないなって」

「ちょっと待ってくれ、君たち聖剣を本気で作る気かい?」

 

 

 そう言って、何事もなく聖剣を作りたいと述べるカタッシュ隊員達に目を丸くするマーリン。

 

 確かにアルトリアを王様にした時は選定の剣である聖剣カリバーンを抜かせて王様にはしたが、まさか、彼らはそれを作ろうと考えているのだろうか?

 

 しかしながら、このマーリンの予想は見事に的中、3人は顔を見合わせると力強く頷いた。

 

 

「はい! 作り方知ってる方教えてもらっても良いですか?」

「どこから作るのかな、やっぱり砂鉄から?」

「あ、もしかして鉄鉱石から?」

「…多分、その作り方なら湖の貴婦人なら知ってるんじゃないかな?」

「それじゃ、次の行き先は決まりだなお前達」

 

 

 その言葉を聞いた3人はスカサハに視線を向けると笑顔で頷き応える。

 

 こうして、四人のカタッシュ隊員達は聖剣の作り方を学ぶべく、王様作りの達人、マーリンがいる小屋を後にして湖の貴婦人がいる湖へと向かう事になった。

 

 こうして始まったブリテンでの王様作り、王様作りの達人マーリンさんの協力も経て、初めての挑戦を前にカタッシュ隊員達は無事に優しい王様が作れるのか?

 

 そして、モードレッドに次回、リーダーとカルナが接触! スカサハ師匠を含めたヴラド達3人は湖の貴婦人に聖剣の作り方を学びに…!

 

 そんな中、カタッシュ隊員達の活躍の裏方に回るADフィンと小次郎さんは!

 

 次回から本格的に動き出すカタッシュ隊員達。

 

 彼らの新たな挑戦は上手くいくのか! この続きは! 次回、鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 新企画、YARIO。王様作りに挑戦ーーーーNEW!!

 

 王様作りの達人マーリンさんに会うーーーNEW!!

 

 ブリテン島の未開拓地を開拓中ーーーーーNEW!!

 

 聖剣作りに挑戦ーーーーーーーーーーーーNEW!!

 



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第一回、0円卓食堂

 

 

 キャメロット城城内。

 

 鍬を担いだクーフーリン達二人は現在、王様作りのキーマンとなる人物に会うべくこうしてキャメロット城に訪れていた。

 

 というのも、始まった王様作りに必要な人物というのがアーサー王の息子であるモードレッド卿なのである。

 

 このキャメロット城に訪れる前、二人はADフィンからこのモードレッド卿がアーサー王の息子である事をベディヴィエール達とは別に聞かされた。事の経緯やモードレッド卿の出自などは把握済みである。

 

 二人は未だに彼女の性別は知らないが、その事はさておき、ひとまず、彼女が治める予定地の開拓を切り上げて、そのモードレッド卿を呼びに来たのである。

 

 カルナはキャメロット城にあるモードレッドの私室の前で足を止めると扉を3回ほどノックして声高にこう話をしはじめた。

 

 

「こんにちはー、モードレッドさん、ちょっとお時間よろしいですかー?」

「あん? 誰だ?」

「あ、僕らYARIOなんですけどもちょっとお話したい事がありまして」

「YARIO?」

 

 

 全身を甲冑に身に纏うモードレッドはキャメロット城にある自室の扉をノックする彼らの言葉に首を傾げながらそう告げる。

 

 YARIOと聞けば、あの円卓の騎士を清々しくやめていったベディヴィエールが所属するアイドルとかいう団体だ。

 

 彼らの活動は一度、城下町で演奏する事を彼らがアーサー王に許可されそこで歌っていたのを見物したのはモードレッドの記憶に新しい。

 

 

「いいぞ、とりあえず部屋に入れよ、こんなところでそんな鍬担いで部屋前に立たれたんじゃ目立って仕方ねぇし」

「あ、ホンマに?」

「そんじゃお邪魔しますー」

 

 

 そう告げる二人は晴れやかな笑顔を浮かべながら扉を開けたモードレッド卿の部屋に招き入れられる事になった。

 

 モードレッド卿の部屋に招き入れられた二人は甲冑を全身に纏う彼女が座るテーブルの前に腰を下ろすと鍬を立てかける。

 

 一応、二人の鍬は宝具だったものだ。宝具としても使えるがそれを横目に見ていたモードレッドは甲冑の中で顔をひきつらせていた。

 

 

「…なぁ、おい、それ一応宝具だったんだろ? こうして見ると鍬にしか見えないな本当に」

「あ、これ先端外せるから、こうやって…」

「あ、いや、それは先日見たんだけどあれは度肝抜かされたわ、てか普通は宝具をこんな風に扱わんだろ」

 

 

 クーフーリンとカルナがまたもや目の前で鍬の先端を外そうとしたところを見かね、モードレッドは思わず二人を静止する。

 

 先端外せば宝具に早変わり、非常に便利な鍬である。名高い宝具がその扱いでいいのだろうか…。

 

 さて、そこで、本題に入るわけだが…。

 

 

「んで? 俺に今日は何の要件だ?」

「あ、僕ら今、ある地域の土地の開拓をやってるんですけども」

「良ければモードレッドさんに手伝って貰えたらなと思ってまして、こうしてやって来た次第でして」

「開拓ぅ!? お前ら何ちゃっかりそんなことしてんだおい! アーサー王には…?」

「今日実はそれに関してアーサー王にも話そうかと思っててですねー、手土産に僕らが作ったこの街の人から要らない物を使った0円食材を使って料理を振る舞おうと思ってまして」

 

 

 そう告げるクーフーリンはニコニコと満面の笑みを浮かべてモードレッド卿にサムズアップしながら告げた。

 

 それは、二人がこのキャメロット城を訪れる数時間前に遡る。

 

 

 

 今回、土地の開拓を少しばかり早く切り上げた彼ら、実はキャメロット城に向かう前、二人はキャメロット城の近隣の農家や城下町を訪れていた。

 

 ここになら、多分、要らなくなった食材や食べ物などがあるはず。生前の知識を活かし、直感のまま様々な場所に顔を出す事にした。

 

 そう考えた二人がまず訪れたのは、とある羊飼いのおじさんの住まう小屋だった。

 

 

「こんにちはー、僕らYARIOというものなんですけどもー」

「ん? …おー、あんたらは、キャメロットの城下町で先日歌ってた…」

「あー、おじさんこの間の見ててくれたんや、せやでーそのYARIO何やけれど…」

「今、企画でこちらで要らなくなった物とかを頂けたらなーと思いまして」

「ん?…要らない物…」

「はい、捨てちゃう予定の物とかでいいんですけど…」

 

 

 そう告げる二人は考える羊飼いのおじさんににこやかな笑顔を浮かべていた。

 

 この一帯で要らなくなった物を貰い、食材を確保してそれを手料理にしてアーサー王にお願いを聞いて貰おうという彼らの得意分野。

 

 すなわち、簡易0円食堂である。

 

 ついでにモードレッドにもこの後会いに行く予定なので、できれば、良い0円食材を確保してキャメロット城に来訪したいと二人は考えていた。

 

 すると、羊飼いのおじさんは…?

 

 

「今日、ちょうど子羊が不運な事に一匹事故で亡くなってね…それくらいしか無いが」

「あ、それってもしかして捨てちゃったりします?」

「そうだねぇ…毛以外は肉に加工してしまう予定だが…多分、その後の肉が多少なり余るかもしれないね」

「じゃあ、毛を剃った後それを頂いても…」

「あぁ、持っていっても構わないよ」

「ホンマですか!?」

 

 

 となんと、ここでYARIOは新鮮な子羊の肉の一部を羊飼いのおじさんから分けてもらいラム肉を手に入れる事に成功した。

 

 その他にも手作りで作ったルアーを使い、ゲイボルクに糸を付けてそれを垂らし、魚釣りをして、シーブリームと呼ばれる鯛の仲間を確保。

 

 そして、更に幸運なことに…。

 

 

「あ、リーダー、これリンゴじゃね?」

「あ、ホンマやな!」

 

 

 なんと、そのキャメロット城に向かう道中、自然になっていたリンゴ木を発見し、リンゴも一つ確保する事に成功した。

 

 魚と羊のお肉も確保できたところで、それを調理しやすいように下ごしらえした後、こうして、キャメロット城に訪れたという訳だ。

 

 

 そんな二人の話を聞いていたモードレッドはため息をつくと頭痛がする頭を抑えていた。

 

 しかし、ここでモードレッド卿はある事に気がついた。それは、このキャメロット城に訪れたとしても彼らがアーサー王に会えるかどうかは確定的ではないという事だ。

 

 アーサー王は仮にも王様、王様であれば政務などいろんな仕事があるに違いない。

 

 

「いや…アーサー王も忙しい身だ。お前達に会う予定なんて組めるわけが…」

「あ、ADフィンが色々してくれてたみたいでこの後、食堂で会う予定になっとるよ?」

「なんでだよ!?」

 

 

 そう言って、スケジュール表を開きながら何事もなく語るクーフーリンの話を聞いて、バン! と声を挙げて机を叩くモードレッド卿。

 

 確かに王という立場にも関わらず、いとも簡単にこうして彼らが面会ができてしまうと聞かされれば突っ込みたくもなる。

 

 クーフーリンと聞けば名高い英雄なのは間違い無いのだろうし、適当に彼らをあしらうわけにもいかないというアーサー王の考えもモードレッドにもわからんこともない。

 

 それに、そんなアーサー王のスケジュールを何故か把握している我らが優秀なカタッシュスタッフのADフィンの活躍もまた素晴らしいと言わざる得ないだろう、面会に至ったのは彼の功績が非常に大きい。

 

 流石は黒子役、年季が違う。

 

 

「てな訳やから、モーさんもこの後、食堂に来るようになっとるね」

「はぁ? ちょっと待て、それは確定事項なのか!? てかモーさんってなんだよ!」

「お父ちゃんが呼んでるんだから行かなきゃね」

 

 

 そう告げる二人はこうして、モードレッド卿の身柄を無事に確保し、アーサー王が待つキャメロット城の食堂へ。

 

 キャメロット城の食堂は器材もそれなりに揃っており、料理をするには申し分ない。

 

 だが、悲しきかな、ここの食堂で作られている料理は壊滅的においしくなかった。コックが悪い訳でなくお国柄的に料理の作り方が単純に良くなかったのである。

 

 そこに目をつけたのが我らがカタッシュ隊員達。

 

 ADフィンからの事前の情報を得た二人はこうしてアーサー王に料理を振る舞う事に、そのついでにモードレッドを巻き込んだという感じである。

 

 

「さぁ、今回も始まりましたこのコーナー、ブリテンで要らなくなったものを使って料理を作るという0円食堂なんですけども、ゲストには」

「この国の王様! アーサー王と円卓の騎士、モードレッド卿ことモーさんをお迎えしております」

「…ふむ、なんだかわからないですけれど、今日は美味しい料理が食べれるのですか?」

「それはもう! 楽しみにしといてください!」

「なんで俺まで…」

 

 

 さて、始まった第一回ブリテン0円食堂。

 

 まずは要らなくなった食材を調達してきたカルナとクーフーリンが二人に今日振る舞う料理について紹介をしはじめる。

 

 画用紙を使いながら、クーフーリンはアーサー王とモードレッド卿にわかりやすいように今日の食事についてこう話をしはじめた。

 

 

「今日作るのは、まずはこれ! ラム肉の唐揚げに、鯛の煮付けやね」

「ラム肉の唐揚げに鯛の煮付け?」

「ラム肉?」

「せやね、唐揚げはお二人は食べた事あります?」

「いや、無いですね、食べるのは初めてです」

 

 

 そう言って、食堂にて話を繰り広げるクーフーリンに場を任せたカルナは厨房に入り、下ごしらえしてある食材の調理をしはじめた。

 

 まずは、取り掛かるのはラム肉の唐揚げ。

 

 ラム肉に醤油、すりおろしたリンゴ、お酢、おろし生姜、おろしニンニクを手作りの袋に入れ、揉みしだき、味をよく浸み込ませる。

 

 それを今回は30分から1時間ほど既に放置して下ごしらえしてあるものを使う。

 

 水気を取り、片栗粉にまぶして食用の油で揚げていき良い色がつけば盛り付けて完成。

 

 ラム肉の唐揚げである。あとはリンゴを少しばかり添えてやれば多少なり、見栄えが良くなる。後は好みのマヨネーズなど調味料を付けてお召し上がりを。

 

 次にカルナが調理に取り掛かるのは…。

 

 

「さ、煮付けかぁ、久々だなぁ、これ作んのも」

 

 

 鯛の煮付け。

 

 生姜、醤油、みりん、砂糖、酒、水などの調味料を全てフライパンで火にかける。

 

 ふつふつとしてきたら切り身にした鯛の身を並べていき、3分ほど寝かせる。

 

 火をとめて、そのままねかせると更に味が染み込む。これならば、良い味が出そうだ。

 

 後はこれを盛り付ければ完成、鯛の煮付けである。

 

 早速、できた料理を食堂に運んでいくカルナ。並べられた二品を前にアーサー王は目を思わず輝かせていた。

 

 

「おぉ、これはまた…良い香りです」

「確かにアーサー王が言う通り。香りは良いな、しかし味はまだどうかは怪しいとこだ。毒が入ってるやもしれんしな」

「あ、大丈夫大丈夫、火を通せば大抵なもんは食えるから」

「いや、そう言う意味じゃ無いんだが」

 

 

 そう告げるカルナの言葉ににズルッと盛大に滑るモードレッド卿。

 

 

 ーーーーとりあえず焼いとけば平気。

 

 

 多分、モードレッドが言いたかったのはそう言う事では無いのだろうが、カルナは満面の笑みでサムズアップしていたので彼女はもう何も言えなかった。

 

 ひとまず、試食、まずはラム肉の唐揚げからである。ブリテンで育った羊の死体を捌き、良質なラム肉を揚げた一品。

 

 早速、卵と酢、サラダ油、砂糖、塩、コショー、辛子を混ぜ合わせ作ったマヨネーズに付けてアーサー王はそれを口に運ぶ。

 

 

「…はぅあ!?」

「ち、父上!? やはり貴様ら毒を!!」

「美味ぃ…、なんでしょうこの美味しい食べ物は、初めて食べました」

「へ…?」

 

 

 思わず、ラム肉の唐揚げを口に入れ涙を流すアーサー王の言葉に目を丸くするモードレッド。

 

 すると、そこからはアーサー王の食欲が一気に上がる。パクパクと自分の机に並べられたラム肉を食べ終えると次は鯛の煮付けへ。

 

 鯛の煮付けの切り身を口に入れた途端、香ばしい香りと今までに無い食感が彼女の口の中に広がった。

 

 

「う、うぅ…! …こんな美味しい御飯があるなんて…! 今まで生きてきてよかった!」

「泣いてる!?」

「ささ、モーさんも食べてみ? 美味しいで?」

「うぐ!?…たくっ! じゃあねーな!」

 

 

 すると、モードレッドは甲冑の頭部を仕舞いフォークを使い始める。

 

 その頭部の甲冑を外す様はまるでロボットの変形のようにかっこいいものだった。これにはクーフーリン達も思わず目を輝かせた。

 

 今までにいろんなものを見てきたがこんな風に音を立てて変形する甲冑を見るのは二人も初めてである。

 

 YARIOであればこれに感動しないものなどいるはずもない。

 

 

「うお! すげー! トラン◯フォーマーみたいや!」

「かっけー! これどうなってんの!?」

「…!? は、はぁ? あ、そういや、お前達の前で甲冑外すの初めてだっけ?」

 

 

 そう告げるモードレッドは甲冑の変形に興奮する二人に目を丸くしていた。

 

 モードレッドが顔の部位の甲冑を外すのは確かに二人の前では初めてだ。であれば、驚くのも無理はない。

 

 それはともかく、モードレッドの素顔がこれで露わになった訳だが。

 

 

「あ、モーさんそんな顔してたんだ」

「綺麗な顔してるじゃんか、甲冑で隠すの勿体無いよ」

「っ…!? るっせーな! 別に良いだろうがっ! はむ!」

 

 

 そう告げるモードレッドは声を荒げながら褒める二人の言葉に照れ隠しの様に目の前にあるラム肉の唐揚げを口に入れる。

 

 すると、ラム肉を口に入れたモードレッドはしばらく目をパチクリさせると先ほどまで険しかった表情が柔らかくなり、ほっこりとした表情を浮かべた。

 

 口に入れただけで、その味が今までに食べた事の無いカルナが作った0円料理が美味だと彼女も理解したのだろう。

 

 

「はぅ〜…美味い…、なんだこれ、めちゃくちゃ美味しいぞ!」

「せやろ、喜んでもらえて嬉しいわ」

「お粗末さまです」

 

 

 こうして、食堂で0円食材を振る舞うクーフーリン達。

 

 ブリテンで取れた0円の食材、これだけで美味しいものは出来る。その事を彼らはモードレッドとアーサー王に伝える事が出来たに違いない。

 

 さて、続いては本題について二人に話をしなければならないだろう。果たして、二人は無事にモードレッドを引き連れてくる事ができるのだろうか?

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 ブリテンで0円食堂ーーーーーーーNEW!!

 

 アーサー王0円料料を堪能ーーーーNEW!!

 

 モーさんの素顔を披露ーーーーー NEW!!

 



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作り手の思いを伝えたい

 

 

 キャメロット城食堂。

 

 手に入れた食材を使い、YARIO達が作る美味しい日本食を堪能したアーサー王とモードレッド。

 

 さて、ここからは本題だ。二人に食事を振舞ったのは他でもない、お願い事があったからである。

 

 

「それで、アーサー王さん…。先ほど食べた食事なんですけど…」

「私の事は私用の時はアルトリアで構わないですよ。なんですか?」

 

 

 口についた食べ物の汚れを綺麗に白い布巾で拭いながら食事に関して話すカルナに首を傾げるアーサー王ことアルトリア。

 

 すると、クーフーリンは頭を掻きつつ、先ほど提供した食事について、彼女に語りはじめた。

 

 それは、この提供した食事についての話である。

 

 

「実はこの料理、未完成なんですよね」

「…!? なんですって!それは本当ですか!」

「マジかよ! こんなに美味しいのに!」

 

 

 そう、料理が未完成だという事だ。

 

 というのも確かに美味しい唐揚げや煮付けの味付けは申し分ないもので、これを食べたアルトリアとモードレッドは大層満足していた。

 

 だが、しかし、よく見てみればわかる。この料理には決定的に欠けているものがあった。

 

 その欠けているものとは。

 

 

「新鮮な野菜、彩りが全く無いし栄養偏ってまうからね、これやと」

「そういう事なんですよ」

「!?…確かにそう言われてみれば…野菜がありませんでしたね…」

 

 

 新鮮な農作物であり、身体の健康を整える野菜、これが不足していた。彩りも少なく、これだと確かに味は美味しいが、なんだか物足りなさを感じる。

 

 それに、これだけオカズがあれば、欲しくなる筈の炭水化物、これもまた、ここには不足していて当然出してない。

 

 この事を踏まえた上でクーフーリンはアルトリアにこう話をしはじめた。

 

 

「僕ら、今、ブリテン島の荒れた土地の開拓をしているんですけども、そこで、新鮮な農作物やこんな風な料理を作れる食材を作ろうかと考えてまして」

「…!…それは面白そうですね、それで?」

「ここにいるモードレッドさんにその土地を管理する領主になってもらって、その土地を発展させていきたいなって考えてるんですけど」

「…!? おい! ちょっと待て! 聞いてないぞ! そんな話!」

 

 

 それはYARIO達が掲げる盛大なプロジェクト。

 

 ブリテンにある地域を緑豊かな資源のある地域に開拓しようという、壮大な計画であった。その名も。

 

 ーーーーーカタッシュ村。

 

 以前、訪れた福島県の村でYARIO達は様々な人に支えられながら、その村を見事に発展させ、開拓していった。

 

 王様作りという土台の上で、彼らがまず思い浮かべた情景はまさにあの村。

 

 あの村こそ、彼らの原点であり様々な事を学び成長させてくれた場所なのだ。

 

 そんな、村の様な場所をこのブリテン島でも作りたい、彼らはそう思っていた。

 

 そして、村を発展させ、いずれはブリテンの島の人々に自分達が学んだ事を伝えていってあげたい。自分達の前の師匠がそうだったように…。

 

 

「僕らの作るこんな料理が、みんなに食べられるようになってくれたらホンマに嬉しいんですよね」

「…確かに、これは今迄に食べたこと無いほどに美味でした」

「…っ!…我が王!…ですが!」

「ならば、この料理がブリテンの皆が食べれる様にしてあげるのが王の勤めですね。モードレッド、貴方にこの件を任せてもよろしいですか?」

 

 

 そう言って、アーサー王は柔らかい口調で自分と同じく、彼らの出した料理を口にしたモードレッドに問いかけた。

 

 よく考えれば、こうして父子と食事を取るのは初めての事ではなかっただろうか? そんな中、アーサー王はモードレッドに使命を授けた。

 

 あの様に美味しそうに食事を取る父の姿をモードレッドは目の前で初めて見た。

 

 そして、更にそんな美味しい食事を取る幸せを民草に分けてあげたいと、アーサー王は自分を信頼してこうして改めて使命を与えてくれた。

 

 今迄、見向きもされていないと思っていた遠い存在が、まるで、身近にいる様にモードレッドは感じた。

 

 モードレッドはすぐに膝を折ると、アーサー王の前でこうべを垂れ、真剣な眼差しで王の前でこう宣言する。

 

 

「…承りました。 その任、この円卓の騎士が一人、モードレッドが受けさて頂きます」

「えぇ、貴方が作りあげたものがどんなものであるのか、しっかり見定めさせてもらいますよ」

「…はいっ!」

 

 

 アーサー王のその言葉に嬉しそうに頷くモードレッド。

 

 理想とする王からこうして信頼され、使命を言い渡されたのだ。これに燃えない騎士は居ないだろう。

 

 というのも騎士というのは今日までの話、絵になる二人のやり取りを見て居た二人は感動のワンシーンを頷きながら見届けた後、膝を折るモードレッドに近寄り、あるものを手渡しはじめる。

 

 そのあるものとは…。

 

 

「いやぁ、ホンマに絵になるなぁ、それじゃモーさん、はいこれ」

「…ん…なんだこれ?」

「鍬ですね」

「…………………」

 

 

 何を隠そう、モードレッドに手渡したのはクーフーリンお手製、スカサハから貰った鍬にしたゲイボルクである。

 

 これさえあれば、どんな開拓だってなんのその、食堂の椅子に座るアーサー王の前で膝をついていたモードレッドは目をパチクリさせてそれを見つめている。

 

 そして、それを手に取るとクーフーリンとカルナはモードレッドの肩をポンと叩き、満面の笑みでサムズアップしていた。

 

 

「これでモーさんも僕らの仲間やね!」

「似合う! 似合う! いやぁ、やっぱりモーさんが鍬持つと様になると思ってたんだよ」

「……………いや、なんだこれ」

「では、後のことは任せましたよ! 私はこの後用事がありますので」

「合点承知!」

「ちょっ…!? 父上!? まっ…!」

 

 

 そうこうしているうちに、食事を終えたアーサー王は食堂をそそくさと後にしてしまう。

 

 食堂に取り残されるモードレッド、確かに王は忙しい身だ。この後、いろいろな予定が詰まっていることはモードレッドにも理解できる。

 

 理解はできるが、このタイミングで一人にされるとこれはこれで困る。しかし、彼女の手にはしっかり鍬が握らされていた。

 

 

 ーーー鍬が似合う騎士。

 

 

 こうして、アーサー王との交渉の末、YARIOの新たな仲間にモードレッド卿が鍬を持って加わる事になった。

 

 彼女の本職が騎士というよりも農家の人になる日もそんなに遠くはないだろう。

 

 

 

 一方、その頃、聖剣の作り方について、湖の貴婦人の元を訪れているスカサハ達、四人はというと?

 

 王様作りの名職人マーリンさんから案内され、その湖の貴婦人がいるという湖の側へと訪れていた。

 

 さて、湖を訪れたのは良いが、湖の貴婦人にどう接触するのか、生憎だが、ここにはドアがない故、いつもの様にこんにちはー! というわけにもいかない。

 

 

「斧落としてみる? 金の斧か銀の斧かとか言われるかもしんないけど」

「うーん…そうだねぇ、師匠どう思う?」

「それより私が泳いで引っ張ってきた方が早くないか?」

「あの…やめて貰っていいかな…、一応、僕の弟子みたいなものだから…」

 

 

 そう言って、湖の前で腕を組みながら相談する四人に顔をひきつらせるマーリン。

 

 スカサハに関しては準備万端と言わんばかりにグルグルと肩を回しているものだから、尚更、本気で強引に湖から貴婦人を引きずり出しそうな雰囲気があった。

 

 とはいえ、このままでは湖の貴婦人に会えるかどうか定かではない。

 

 

「仕方ないねー、マーリンさん、仲介お願いできないかな?」

「お願いします!」

「うん、まぁ、そうなるだろうなとは思ってたよ」

 

 

 こうして、スカサハ達はマーリンから仲介をしてもらい、湖の貴婦人に取り次いでもらう事にした。

 

 マーリンとしても仲介しなければ、スカサハが湖に飛び込んで本気で湖の貴婦人を引っ張り出すだろうという嫌な勘が働いていたためにこれは彼としても得策だろうという判断。

 

 何をしでかすかわかったものではない彼らよりもこうして自分が取り次いだ方が実に平和的である。

 

 しばらくして、マーリンが取り次いでくれたお陰もあってか、湖の貴婦人が彼らの前に姿を現した。

 

 そして、姿を現した湖の貴婦人にベディヴィエールはいつもの様に笑顔を浮かべ挨拶をする。

 

 

「こんにちはー! 僕らYARIOという者なんですけど、実は鉄腕/fateという企画で聖剣の作り方についてお訪ねしたい事がありまして…」

「なんだか、急な来訪ですねマーリン」

「いやぁ、すまないね」

 

 

 そう言って、苦笑いを浮かべながら湖の貴婦人に謝罪するマーリン。

 

 呼び出された湖の貴婦人はと言うとなんだか不機嫌そうだ。それもそうだろう、いきなり来たと思えばやれ斧を投げ入れてみようだの、湖の中から自分を引っ張りだすだのと湖の前で話をされていたのでは機嫌も悪くなるのも必然だ。

 

 一応、師であるマーリンが呼びかけたので呼び出しには参上したが、彼女としてはすぐにでも湖の中へ帰りたいという気持ちがあった。

 

 

「私の名はヴィヴィアンと申します。さて、それで…聖剣に関しての話でしたか?」

「そうなんですよ、僕ら聖剣を作りたいので造り方を教わろうとヴィヴィアンさんに教わりに来た次第でして…」

「そうでしたか、貴方、名前は?」

「あ、俺はディルムッド・オディナと言います、こちらがヴラドに挨拶したのがベティ、こちらに居るのが俺らの師匠のスカサハ師匠ですね」

「ふぅん、そうですか…」

 

 

 そう言って、ヴィヴィアンと名乗る湖の貴婦人はジッと品定めする様に彼らを見つめる。

 

 確かに見た限り彼らは名高い英雄の様な雰囲気がある。それと、同時に周りにいる精霊達も彼らの放つ不思議な雰囲気が気に入っているようだ。

 

 農業に精通している彼らはある意味、農業の精霊みたいなようなもの。

 

 なるほどとマーリンがこの場所に彼らを導いた理由がなんとなく理解できたヴィヴィアンは笑みを浮かべたまま話をしはじめた。

 

 

「それで聖剣の造り方でしたね、聖剣の造り方ですが…私は存じ上げません」

「えー…マジかー」

「あれは星が造ったものですから」

「そっかー、星が造っちゃったならわかんないよね、それは」

 

 

 その湖の貴婦人、ヴィヴィアンの言葉に納得したように頷くYARIO達。

 

 早速、聖剣作りが頓挫してしまった。しかし、ここでディルムッドはある事を思いつく、それは…。

 

 

「じゃあさ、星が造ったもので剣打って作れば聖剣になんじゃないかな?」

「あ…! なるほど! その手があったか!」

「なるほどね! じゃあ星が造ったものをハンマーにしたりすればいいわけだ!」

「いいわけないだろう、何さりげなくとんでもない事をしようとしてるんだ君達は」

 

 

 思わずマーリンは右斜め上の発想をする3人に顔を引きつらせてそう告げる。

 

 星が造った宝具のものを改造しハンマーを作り、それを使って剣を造って聖剣にするなんてとんでもないのも良いとこである。

 

 

 ーーー僕らの本業はみんなのスター。

 

 

 あらがち間違ってはいない。確かにアイドルなのだから、その通りである。

 

 話を聞いていたスカサハ師匠もこれには大爆笑であった。

 

 星が造ったものを打ち直してハンマーにして、さらにそれを使って剣を作るなんて聞けば笑いが出て当然だ。

 

 しかし、ディルムッドはこう話を続ける。

 

 

「あ、兄ィが持ってる槍、確かあれ対神宝具とか言ってたなそういや」

「じゃあ! それハンマーにして剣作ろうよ! 素材はなんがいいかなぁ凄い鋼材がいいよね」

「あとは、ほら、鋼材いろんなとこから探して来てさ」

「あはははははは!! お前達は本当に面白いなぁ」

「…うん、…まぁ、好きにしたら良いと思うよ…」

 

 

 こうして、マーリンから湖の貴婦人まで導かれた四人は聖剣についてどうするかの話を纏め、ひとまず、聖剣作りは手探りで行う事に方針は決まった。

 

 星が造ったものを自分達の手で作る。それには材料と聖剣にするのに必要な道具が必要だ。

 

 確かに、湖の貴婦人の元へと赴いたが造り方が結局は分からないというアクシデントはあったものの、ならば、造り方自体を自分達の手で編み出すのもまたチャレンジである。

 

 四人は湖の貴婦人から貴重な話を聞いて、湖を後にする事にした。目指すは荒れた土地に待つクーフーリン達の元だ。

 

 

 いよいよはじまった聖剣作りにブリテン開拓。

 

 さて、彼らの挑戦は上手くいくのだろうか? そして、この続きは…!

 

 次回の鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 聖剣の造り方を自己流でーーーーーーーNEW!!

 

 モーさん農家の仲間入りーーーーーーーNEW!!

 

 ブリテンにカタッシュ村を設立予定ーーNEW!!



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カタッシュ村開拓記 その1



現代に限りなく近い島国――
忘れ去られた小さな島で、
海を、大地を、空を拓く戦い。


歪み無き金色の杯を、神々から祝福されし五人でひとつの英霊達が創り上げる。

fate/grand order

特異点EX
『超越開拓地区 DASH島』

好評配信中。



 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでモードレッド卿を仲間に加えたカタッシュ隊員達。

 

 アーサー王から使命を受け、カタッシュ村開拓予定地まで足を運んだモードレッドだったが、この目の前に広がる広大な荒地を見た途端に鍬を担いだ彼女は目を丸くしていた。

 

 

「なんだこれ! こんな場所開拓すんのかよ! 頭おかしいんじゃねぇのか! おい!」

「こらこら、そんな言葉の使い方しちゃあかんで、モーさん」

「そうだぞ、やってやれないことはない! 土なんて変えりゃいいんだからさ」

「はぁ!? なんだそれ!?」

 

 

 そう言いながら、広大な荒地を何事もなく平然と見つめる彼らの言葉に目を丸くするモードレッド。

 

 どんなに耕しても豊かになる情景がモードレッドには思いつかないが、二人は俄然やる気になっている様子だ。

 

 とりあえず、鍬を持ったからにはやる事は一つ、耕すだけ、二人はせっせと土地を耕す作業を開始しはじめる。

 

 

「あー! もう! しゃあねぇな! たく!」

 

 

 そして、そんな二人の姿を見せられては任を承ったモードレッドも黙って見てるわけにはいかない。

 

 そんな二人に続くように土地を耕しはじめる。今は荒地となっているこの地域だが、どんな風に生まれ変わるのだろうか?

 

 …とそこへ。

 

 

「おー、やってるやってる、ただいましげちゃん」

「帰ったかー、どうやった?」

「まぁ、手ごたえは上々って感じかな? あ、そっちが…」

「モーさんじゃん! じゃあ今日から…」

「せやで」

「よっしゃ! テンション上がって来た!」

 

 

 そう、ディルムッド達がこの場所に帰還して来たのである。

 

 メンバー全員が集結、となれば、開拓もより捗るのは明白だ。

 

 彼らの師匠であるスカサハはツカツカとモードレッドに近寄ると品定めするように彼女の顔をジッと見つめる。

 

 

「ふむ、こやつがモードレッドか? まだまだ小娘だな」

「…っあ!? 今なんつった! テメェ!」

「あ、モーさん! その人は…」

 

 

 そう言いながら、小娘呼ばわりしたスカサハにすかさず突っかかるモードレッド、その目は殺気に満ちており、スカサハを殺さんとするばかりだ。

 

 怒りのあまり、静止しようとするベディヴィエールの言葉に耳を貸そうとしないモードレッド。

 

 すぐさま、持ってきていた自前の剣を構えた彼女はスカサハに向かってそれを振り下ろさんとするが…。

 

 

「遅いな、まだまだ甘い」

「がぁ!?」

 

 

 間合いをスカサハに詰められると同時に顎を掌で打ち上げられ、大きく仰け反った。

 

 それを見ていたカタッシュ隊員一同はあちゃーとばかりに頭を抑える。

 

 スカサハ師匠はこう見えてもバリバリのガテン系女子、しかも、武闘派だ。下手すれば熊を片手で遊んで倒せるくらいの技量を持っている。

 

 

「ぐ…くっそ…! ぶっ殺して…」

「もう! あんたら何しとんの! ホンマ! アホやないんやから!」

「あいた!?」

「…っつう! 何する! しげちゃん!」

「あ、オカンフーリンだ」

 

 

 …っと二人がヒートアップしそうな瞬間、オカンと化したクーフーリンの拳骨が二人の頭に直撃する。

 

 痛みのあまり、その場で拳骨を受けた二人は険しい表情を浮かべ頭を抑えている。今から殴り合いか殺し合いになろうという時に水を差されたのだ。そうなるのも当たり前な話。

 

 しかし、頭を抑えた二人が振り返った先には、背後に仁王と化した大阪のおばちゃんの守護霊を身に纏しケルト神話の大英雄が立っていた。

 

 仲間同士で揉め事があれば、リーダーであるクーフーリンが本気を出す。それが、仲間内のリーダーというポジションだ。

 

 

「あんたらは仲ようせなアカンやろ! モーちゃん! なんであんたは手出したんか!」

「…いや、だって俺のことを小娘って…」

「女の子なんやから当たり前やろ! しかもこんな危ないものもって! 怪我したらどないすんの!」

 

 

 いつの間にか、クーフーリンから土の上で正座させられた二人はシュンと縮こまりしおらしく仔犬の様に大人しくなっていた。

 

 流石、オカン力A+は伊達ではない、仁王と化した大阪のおばちゃんの迫力は凄まじいのである。オカンフーリンは怒髪天だ。

 

 モードレッドは正座のまま、涙目になりながら両手の指をちょんちょんと合わせている。

 

 

「あ、いや、それは…その…」

「師匠も師匠や! もうちょい穏便に済ませなあかんやろ! 女の子にあんなことしたりしたらあかんよ!」

「…はい、ごめんなさい」

 

 

 そして、師匠であるスカサハも申し訳無さそうに小さくなっている。オカンとなるクーフーリンを見るのは2回目だが、その迫力は以前と同様に健在であった。

 

 クーフーリンはふぅ、と一通り説教をし終えると一息つくと正座をしている二人の肩をポンと叩きいつものように優しい笑みを浮かべる。

 

 

「うん、互いに悪いとこがあったら謝る。それがちゃんとした人間の基本やで、ほら、アメちゃんあげるから仲ようしいや」

「…うっ…うう…ごめんなさい…かあちゃん…」

「そうだな、私も配慮が足りなかった。気をつけるよ、しげちゃん」

「ええんやで、はい、アメちゃん」

 

 

 そう言いながら、アメちゃんを一個づつスカサハとモードレッドに配るクーフーリン、その眼差しは慈母の様に優しかった。

 

 大阪のおばちゃんは時に厳しく、しかし、世話焼きでとても優しいのだ。

 

 

 ーーーーシゲフーリンオカン。

 

 

 確かに謎の包容力があり、昔ながらのいいオカンな彼は皆のまとめ役として申し分ない、こんな風なトラブルは仲間内でも起きることはある。それをどう丸く収めるかがアイドルのリーダーとしての技量が問われるところだ。

 

 それを、遠目から眺めていたカタッシュ隊員達はというと?

 

 

「モーさんついにしげちゃんの事、お母さん言っちゃったよ」

「うんうん、やっぱり仲良しは良いことだよね」

 

 

 鍬を持ちながら土を耕しつつ、反省している二人を見ながらほっこりした表情を浮かべていた。

 

 やはり、自分達のリーダーなだけあって伊達ではない、実に頼り甲斐がある。

 

 すると、説教をし終えたクーフーリンは再び鍬を持ったところである事に気がついた。それは…。

 

 

「え!? モーさん女の子やったん!?」

「今更かい!」

 

 

 そう、勢いで説教をしたのはいいが、なんと我らがリーダーここに来てようやくモードレッドが女の子であるという事実を知る事になった。

 

 そのあまりの天然振りにディルムッドも突っ込みを入れざる得なかった。確かに、性別についてはクーフーリンとカルナは存じていなかったがディルムッドが言う様に説教を終えて今更である。

 

 と、何やら内輪で揉め事が発生しそうになったもののこうして和解した我らがカタッシュ隊員達は再び鍬を握り開拓を再開しはじめた。

 

 まずは鍬を使って土を耕さなくてはいけない、何事も土台が大切なのである。というわけで…。

 

 

「ここはこうして、鍬を持って入れる。こんな感じに」

「へぇ、そんな感じに鍬って使うんだ…えぇと…」

「あ、俺の事は兄ィでいいよ、あとディルはディル兄ィね! あとはヴラドと…ベティは前の同僚だからわかるでしょ?」

 

 

 そう言いながら、笑顔を浮かべて、鍬の指導をしていたカルナはモードレッドにメンバー全員を紹介する。

 

 言われてみれば、出会い頭、モードレッドは小娘と言われスカサハに斬りかかったのでちゃんとした紹介をされてなかった。

 

 カルナからメンバーの紹介をされたモードレッドは鍬を握ったまま、満面の笑みを浮かべてこう答える。

 

 そのモードレッドの表情は何やら色々と吹っ切れたようなそんな笑顔だった。

 

 

「あぁ! オーケー!兄ィ! そんじゃよろしく頼むぜ」

「応ともさ! それじゃ、さっきの続きだけど」

「すごく…勉強になる…」

 

 

 そこから、モードレッドへの農業に関するYARIO達の英才教育がはじまった。

 

 まずは土の知識から、土は水捌けの良い土が農作物を作るのに適している。これを見極める術をモードレッドはクーフーリンやカルナから学んだ。

 

 

「こうやって土を触って見るといい土かどうかわかるんやで、だいたい固形やなくて粒子が細かい丸い土が農作物がよく育つ土なんや」

「…ほぇー、でもなんでだ?」

「粒子が細かいと、根っこの下まで水が届きやすいし植物も根を伸ばしやすいんだよ」

「なるほどなぁ…」

 

 

 農作物に適した土作りから豊かな土地は出来上がる。

 

 水捌けが悪い固形の土では農作物は上手く育たない、昔に彼らが学んだ知恵、それがこのブリテンの地でも生きる。

 

 そして、ディルムッドやヴラドからは料理を学んだ。調味料や味付けの仕方、食べられる野草や包丁の使い方などいろんな技術を彼らからモードレッドは教わった。

 

 ベティヴィエールとADフィンからは作業のしやすい小道具の使い方、作り方と木材などの加工の仕方、そして、壊れた物のレストアのやり方など今まで見たことがない物を彼女は目の当たりする事になる。

 

 スカサハからは武術の基本やルーン魔術について教わった。レストアした物にルーン魔術をどのように適用するのか、はたまたルーン魔術がどんな風に使えるのものかをモードレッドは学ぶことが出来た。

 

 

 そうした経験をする事一ヶ月。

 

 すっかり、板についた鍬の作業と農作業着、そして、晴れやかな笑顔と土を耕す彼女の姿がそこにはあった。

 

 思春期だった彼女はすっかりいろんな経験を積む中で少しずつ大人になっていた。トゲトゲしかった彼女も今ではすっかり彼らに溶け込んでいる。

 

 

「昔もあんなんだったな俺たちも」

「年をとるにつれて丸くなってまうもんなぁ」

「俺たちもモーさんみたいに昔のYARIOに戻ろうぜ! 今はただただ丸くなっちゃってるけどさ」

 

 

 そう言いながら、畑仕事に勤しむモーさんを眺めながらしみじみと感じるクーフーリン、ディルムッド、カルナのおっさん3人衆。トンがっていたあの頃に戻りたい。

 

 

 ーーーー最近丸くなってきたYARIO。

 

 

 いろんな意味で丸くなってきてるのかもしれない、モーさんのキラキラしている光景を見ていた3人衆は改めてそう感じるばかりであった。

 

 そんな中、畑を耕し終えたモーさんは顔に泥をつけたまま鍬ボルクを担いでおっさん3人衆の元へ。

 

 

「なぁなぁ! かあちゃん! 兄ィ達!見てくれよ! ここ全部俺がやったんだぜ!」

「…いやぁ、上達したなぁ凄いよモーさん」

「モーさんは筋がええからなぁ、ようやったでー」

「えへへ、そんなに褒めんなよ照れるじゃんか」

 

 

 そう言いながら、クーフーリンに撫でられ頬を染めたモードレッドは照れ臭そうに3人に笑みを浮かべながら告げる。その顔は実に幸せそうであった。

 

 彼らは面倒見が良く、実にモードレッドを可愛がっていた為、彼らにモードレッドが懐くにはそれほど時間はいらなかった。

 

 今まで自分が嫌っていた女の子扱いも彼らならば特に気にすることもない。素の自分でいられる分、尚更、この場所が彼女には楽しい居場所になりつつあった。

 

 さて、それなりに下地は整った。あとは植える野菜や農作物などを決めていかなくてはいけないだろう。

 

 

「さてと、そんじゃとりあえずお茶でも飲むか、一息入れよう!」

「お、いいね!」

「そういやこの間、スズメバチの巣見つけたんだけどさ」

「お、マジで! ここにスズメバチの巣とかあったんだ」

 

 

 なんと、ここでカルナが近隣の森でスズメバチの巣を発見。

 

 これは駆除しなければ、いずれ開拓の障害にもなるかもしれない。でも、それはとりあえず後回し。

 

 まずはお茶で一息入れるのが先だ。

 

 

「あ、モーさんお茶飲んだことあったっけ?」

「ん? お茶? いや、無いな、聞いたこともねぇし」

「なんだ? また面白い話でもしてるのか? 私も混ぜろ」

「…うぉ!? 師匠! いや、今からみんなでお茶でも飲もうかと思ってまして」

「お茶?」

 

 

 そんなこんなで、お茶の話をしている間にスカサハ師匠も彼らの会話をどこからか聞いてかすっ飛んできた。

 

 さて、こうして、お茶を作る事になったカタッシュ隊員達だが、果たして今回作る事になったお茶とは?

 

 この続きは! 次回!鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 スズメバチの巣を発見ーーーーNEW!!

 

 ブリテン開拓開始ーーーーーーNEW!!

 

 モーさんファモさんになるーーNEW!!

 

 

 

 



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カタッシュ村開拓記 その2

 

 

 ひとまず、前回、作業に一息入れる為にお茶作りをする事にしたクーフーリン達。

 

 いろいろなお茶を作ってきた我らがリーダーを筆頭に今回も新たなるお茶作りに茶レンジする事に!

 

 さて、その本題となる、今回作るお茶だが…。

 

 

「あ! しもた! お茶にする予定の物がまだ無かったわ!」

「えー、マジかよ、しげちゃん…」

「リーダーそりゃないぜ、俺と師匠、お茶飲むの楽しみにしてたのに…」

「むぅー…、しかし無いものをねだっても仕方あるまいな」

 

 

 ここにきて、お茶にする原材料がないことが発覚してしまった。

 

 本来ならば、お茶にするなら枇杷の葉なんかが好ましいが、今、手元には枇杷の葉も無い。

 

 となれば、簡単に手に入るお茶の原材料となるものとして考えつくのは一つしかない。

 

 ここで、クーフーリンは閃いた。そうだ、確か、森の中には…。

 

 

「…せや! スズメバチの巣があるって言うてたな!」

「え? もしかしてあれ使うの?」

「…これしかない!」

 

 

 残念そうにしているモードレッドとスカサハ師匠の顔を見たリーダークーフーリンはそう思い立った。

 

 そう、そのスズメバチの巣を使えばきっと、美味しいお茶ができるに違いないと。

 

 スズメバチの巣を作ったお茶。それは、二年前、見つけた空になったキイロスズメバチの巣。

 

 クーフーリン達は以前、見つけたこのスズメバチの巣を使って、お茶を作る事に成功した。ならば、今回も…。

 

 

「やりますか」

「やりましょう」

 

 

 お茶にして飲むことが出来るはず。

 

 作業で乾いた喉にはやはり栄養があるお茶が必須。だが、ここで二人は肝心な事を忘れていた。

 

 それは、その時飲んだお茶の味である。しかし、お茶作りはクーフーリンの生きがい。だが、以前、作った飲んだお茶は全て…。

 

 

『うぇ…』

『くそ不味ィ…』

 

 

 そのどれもが、強烈な味わいで、口に入れたカタッシュ隊員達もこれには阿鼻叫喚。

 

 

 ーーーー飲めたもんじゃない。

 

 

 だが、それでもお茶を作った本人であるクーフーリンは何事もなくそのお茶を噛みしめるように飲んでいた。

 

 玄人ならではの味わい方、それをクーフーリンは心得ている。

 

 

『…………………』

 

 

 ーーーー若造にはまだ早いねん。

 

 つまり、このスズメバチの巣を使ったお茶作りは失いかけていたクーフーリンの生きがいを取り戻す為の挑戦。

 

 二度目の失敗はないだろう。彼らには、前に学んだ知識もある。

 

 早速、スズメバチの巣がある現場に向かうクーフーリン達。

 

 以前のカタッシュ隊員達の目撃証言を元にしばらく森林の中を歩くと、その発見した巣に近づいてきたのかスズメバチの姿も。

 

 これには、流石のカルナも。

 

 

「あースズメバチいたねー、一旦戻ろっか」

「え? なんでだよ、この先にスズメバチの巣があるんだろ?」

 

 

 スズメバチの姿を発見したところで一旦撤退を進言。

 

 それには、何故わざわざ巣を発見したのに撤退する必要があるのかとモードレッドも首を傾げた。

 

 確かにこのまま巣に向かっても相手はあのスズメバチ。何もない状態では危ない事は明白だ。

 

 刺されでもしたら大ごと、スズメバチには凶悪な毒針がある事はカタッシュ隊員達なら誰でも知っている。

 

 

「モーさん痛い思いしたくはないやろ? プスってやられるで、プスって、しかも、下手したら死んじゃうかもしれへんからな」

「そ、それはやだな…、刺されて痛い思いしたくないもんな」

 

 

 モードレッドはクーフーリンの言葉に納得したように頷く、確かに相手は自然が生み出した産物。

 

 舐めてかかれば痛い目を見るのは明白だ。ここはしっかり準備をして相対する事が一番賢いやり方である。

 

 

「私は刺される方じゃなくて刺す方が好きだ、蜂程度素手ではたき落としてやるんだが」

「さすがにそれは危ないですから一旦引きましょう? 師匠」

 

 

 そう言って、スズメバチに対しての意見を述べるスカサハに顔を引きつらせながら突っ込みを入れるクーフーリン。

 

 確かに、彼女の場合はスズメバチを全部手ではたき落としそうな気がする。

 

 しかし、スカサハ師匠もレディである、ここはアイドルとして彼女を淑女として扱わねば。

 

 さて、そういう事でスズメバチを発見した一同は一旦退却し、対策を講じることにした。

 

 長年に渡り培った経験、その経験からわかる。スズメバチに相対する方法、それは…。

 

 

「フルセット着てやれば今すぐ(スズメバチを)駆除できる」

「え? 何? もしかして、さっき話してたスズメバチの巣を駆除する気なのおたくら?」

「あ、ディル兄ィお帰りなさい」

 

 

 森の中から撤退してきたカルナ達と同じく、鍬を担いで開墾から帰ってきたディルムッドがその会話を聞いていたのか目を丸くしながら告げる。

 

 スズメバチに対して長年に渡り戦ってきた彼らにはその戦い方は身についている。

 

 

 ーーーー四年以上も蜂と戦った猛者達。

 

 

 ならばこそわかる。スズメバチを退治するある物さえあれば、奴らを駆逐できるという確信。

 

 YARIOVS外来種のスズメバチ。

 

 スズメバチと戦う術はカルナとリーダークーフーリンは既に持ち合わせている。数々の戦場を経て不敗、スズメバチには負ける気がしない。

 

 

「(スズメバチを駆除する為の)フルセットあるから」

「もっと大きいの駆除したことあるから」

「あんた達何なの? 業者の方?」

 

 

 ディルムッドの言葉も全くもってその通りである。聞く限りスズメバチ駆除に関する業者の人の会話だ。

 

 モードレッドも二人の逞しい会話に目をキラキラしていた。あの凶暴なスズメバチを難なく駆除できると言ってのけるのだから大したものである。

 

 

「夏前だから、そんな、攻撃的ではないからね」

「せやねー…早くした方が巣もでっかくならんやろうし」

 

 

 ーーースズメバチ駆除の方法を学んで数年。

 

 もはや、彼らにはスズメバチ駆除も慣れたもの。ならばあとは道具さえあれば良い、そして、そんな事前の準備が完璧な黒子役がYARIOにはいる。

 

 それが…YARIOを支える名スタッフ。

 

 

「フルセット来たよーADフィンが持って来てくれた」

「ちゃんとあるな、流石や!」

 

 

 そう、ADフィンがいるのである。

 

 道具は揃った。これで、安心してスズメバチとも戦える。

 

 白いフルセット、ヤリオーIII。

 

 これさえあればもう鬼に金棒だ。早速、スカサハ師匠もフルセットに身を包みクーフーリン達と共にスズメバチの元へ。

 

 流石にフルセットにはスズメバチ達も敵わない。モードレッドに関してはヤリオーIIIではなく宝具、不貞隠しの兜をADフィンが改造し作り上げたフルセット、ファモさんIIIを装着済みだ。

 

 変形するようにファモさんIIIを装着するモードレッドを目の当たりにしたクーフーリン達はというと?

 

 

「やっべー! 何それ! モーさんのフルセットだけカッコ良すぎだろ!」

「えへへ、そうかな?」

 

 

 そのフルセットの出来栄えにテンションが上がっていた。

 

 今まで見たことないフルセット。ファモさんIIIには宝具としての能力はもちろんスズメバチ駆除にも役立つ加工をADフィンから施されている。

 

 これで、モードレッドも晴れてスズメバチ駆除の業者に仲間入りである。これさえあればプライベートのスズメバチ駆除も容易にできること請け合いだ。

 

 さて、こうして、完全防備のクーフーリン達は奥へと進み、スズメバチの巣を探索する。森奥に進むにつれ増えてくる蜂達。

 

 

「木の上にあるかどうかやな」

「そうだねー」

 

 

 それは、数年前、対馬列島でのスズメバチ駆除の経験から知っていた…。

 

 直径70cmもなるスズメバチの巣は地上から20mにもなる木の上に、これは天敵であるクマなどから身を守る術。

 

 冬になると、女王蜂は越冬、働き蜂も死に中は空に…しかし、今回はあいにく冬ではなく、夏前の季節、今からスズメバチが活発になるかならないかの瀬戸際。

 

 

 ーーーー狩るなら今しかない。

 

 

 そして、歩く事数分、そこには…。

 

 

「あーおったおった」

「やべ! すげーいる! 怖い!」

「大丈夫大丈夫、フルセット着てるから」

「ふむ、これだけいるとやはり迫力があるな」

 

 

 大きなスズメバチが群がる巨大な巣が…。

 

 怖がるモードレッドと冷静なスカサハを置いて、まずは、カルナとクーフーリンが先導するように巣に近づき状態を確認。

 

 巣の場所は発見した。そして、スズメバチの巣を発見してまずやる事は…。

 

 

「燻ってみようか」

 

 

 煙で燻る、これも、経験済み。これにより蜂は山火事と勘違いし逃げたり気絶したりする事も。

 

 これで蜂がいなくなったことを確認すると、次に巣の回収をし。さらに、巣の中にいるスズメバチを駆除するため手順通りに蜂の巣を回収するクーフーリン達。

 

 スズメバチと格闘すること数分、その巣にいるスズメバチは全部取り除き、無事に巣を回収。

 

 

「よし、持ち帰るか」

「一応、燻ながら帰ろう、中におったら大ごとやからな」

「うぉ! でっけー! すげー!」

「うむ、これが蜂の巣とはな、驚きだ」

 

 

 それから、戦利品である巣をカタッシュ村へ持ち帰る。道中、そのあまりのサイズに驚くスカサハとモードレッド。

 

 二人ともスズメバチの巣を目の当たりにするのは初めての出来事。そこで、クーフーリンは二人にフルセットの中からサムズアップしこう告げはじめた。

 

 

「今度は二人にやって貰おうかな? 手順はさっきの通りやで」

「やるやる! やってみてぇ!」

「なるほどな、勉強になった」

 

 

 次は二人がスズメバチの巣を回収する番。これさえできれば、スズメバチ駆除ができるカタッシュ隊員が増えてクーフーリンとカルナの二人としても大助かりである。

 

 持ち帰ったスズメバチの巣を解体し、中にいるスズメバチの幼虫をクーフーリンとカルナはフルセットを着たまま取り除き、分ける。

 

 これには理由があった。

 

 

「この幼虫、ピザにして食べると美味いんだぜ」

「マジかよ! すげぇ!」

 

 

 そう、スズメバチの幼虫をピザにして食べると美味しいのである。これにはモードレッドも度肝を抜かされた。

 

 これは以前、蜂&蜂の子ピザを食べた時の経験から二人は知っていた。

 

 食料問題が深刻なブリテン、いずれはこのフルセットを普及させ、このスズメバチを使った料理もモードレッドを通して普及してもらえたらという彼らの願いがそこにはあった。

 

 ひとまず、スズメバチの巣はこれで中身も無くなり綺麗になった。後はこれでお茶を作る。

 

 

「さて、蜂の巣は確保できたな…。残り半分は食料にするとして…」

「ねぇ、しげちゃん、本当に作るの?」

「せや! この新鮮な蜂の巣なら美味しくなるかもしれへんやろ」

 

 

 ーーーーリベンジマッチや。

 

 復帰戦に燃える我らがリーダー、クーフーリン、生きがいであるお茶作りをしてこそ、この、カタッシュ村の開拓にも力が入るというもの。

 

 半分にした蜂の巣を持って、ひとまず、カタッシュ村にあるクーフーリンとカルナが応急で作った一軒の簡易民家へ。

 

 さぁ、久々のお茶作り、クーフーリンも目が輝いている。

 

 

「それ大丈夫なのか?」

「漢方であるんやで? こんな感じのやつが」

 

 

 確かに以前、作ったお茶では雨などにさらされボロボロになった蜂の巣を使う露蜂房という漢方をモデルにお茶を作った。

 

 しかし、味は濃すぎ、惨敗、なので今回は新鮮な蜂の巣なら大丈夫だろうとお茶作りに使ってみることにした。

 

 この光景を苦笑いを浮かべて見つめるカルナを見ていたモードレッドが不安げにクーフーリンに告げるが問題ないと言わんばかりに作業を黙々と続ける。

 

 露蜂房に含まれる亜鉛やミツロウには精力増強と解毒の効果など様々な健康に良い成分が含まれており、平安時代の天皇も好んで飲んでいたとか。

 

 まずは、エキスを取り出すため蜂の巣を細かく砕く。中には女王蜂がいる事もあるがそれは既に取り出し既に食料にしてあるため、砕いている最中に出てくる心配もない。

 

 

「おー、いい感じ」

「これはなかなか…」

 

 

 クーフーリンが砕く蜂の巣を興味深く見つめるスカサハ。

 

 初めて目の当たりにするクーフーリンのお茶作りにモードレッドもスカサハも興味津々だ。結果出来上がるお茶がどんな味なのか知らない二人はだからこその新鮮な反応。

 

 これには、クーフーリンも思わずにっこり。

 

 だが、心配は募る。カルナもこの光景に思わず。

 

 

「大丈夫なの? これ?」

 

 

 と思わず口に出してしまう。だが、クーフーリンの手は止まらない黙々とお茶作りに励む。

 

 

 ーーーー素人は黙っとれ。

 

 

 そして、続いては煮る作業に入る。砕いた巣からタンパク質やミネラル分を溶かし出す。

 

 

「あー、なんか木の匂いやね」

「ん…本当だ」

 

 

 クーフーリンの言葉に頷くモードレッド、確かに漂う木の香り、これには、カルナからも思わず笑いが溢れる。

 

 色が濃くなったら巣に含まれている成分が煮出せた証、殺菌も兼ねて30分。

 

 

 ーーーーーー30分後。

 

 

「煮出せたかな」

 

 

 蓋を開けてみると、そこには広がる黒いエキスが、いかにも濃ゆそうな色合い。そして、蓋を開けた途端に広がる匂いが…。

 

 これには、クーフーリンも思わず手ごたえを感じる。

 

 

「あ、すごい匂いするじゃん」

「あ、なんかする、なんかするね」

 

 

 以前とは異なる匂い、しかし、まだ油断はできない。

 

 あの強烈な味は未だに舌が覚えている。カルナはその匂いに若干、嫌な予感を感じでいた。

 

 

「これがスズメバチの巣の甘酸っぱい匂いや」

「クンクン…。確かに甘酸っぱい匂いがする」

「…うむ、確かに」

 

 

 その匂いを確かめるモードレッドとスカサハの二人、完成したスズメバチ茶の匂いに期待を膨らませつつ納得したように頷く。

 

 しかし、よく見てみると色が真っ黒、これには、クーフーリンも思わず。

 

 

「多分、カラーチャートやとこれが一番端やな」

 

 

 そう、今まで作ってきたどのお茶よりも色が極端に濃い、見た限り地雷臭しかしないそのお茶。

 

 香りこそ甘酸っぱいものの、既にカルナは確信していた。これは今回もリーダーはやらかしたのだろうと。

 

 ーーーーまずはリーダーから。

 

 

「…お〜…これは」

 

 

 思わず声に出してしまうほどの味

 

 しかし、リーダークーフーリン、身体に染み渡る栄養を感じ取ったのか飲んだ後に話を続ける。

 

 

「今までに飲んだ事ない味。でも身体に良いのはわかる、前作ったやつよりちょい飲みやすいかも」

 

 

 その食感と味に手ごたえを感じていた。

 

 確かに色の濃さは一緒だが、今回は新鮮なスズメバチの巣。味は前よりも酷くはないかもしれない。

 

 続いてこのスズメバチ茶を飲むのはカルナ、モードレッド、スカサハの三人。

 

 果たして…その味のほどはいかに?

 

 

 そして、この続きは…次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 モーさんの鎧がフルセットにーーーNEW!!

 

 魔のスズメバチ茶を製造ーーーーーNEW!!

 

 スカサハとモーさん業者になるーーNEW!!

 

 スズメバチの駆除の指導ーーーーーNEW!!



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カタッシュ村開拓記 その3

 

 

 さて、出来上がったスズメバチの巣茶。

 

 リーダークーフーリンが飲んだそれを次はモードレッドとカルナ、そして、スカサハ師匠が口に付け飲み始める。

 

 その味は…?

 

 

「…うっ…!」

「もがっ…!」

「ん……」

 

 

 口に入れた途端に顔色が豹変するモードレッドとカルナの二人。

 

 そして、二人は飲んで間も無く口に含んだお茶をペッ…! と後ろを向いて吐き出し、ゲホゲホと噎せ始める。

 

 これは…?

 

 

「ぴゃあ!? なんだこれ! なんだこれ! くっそすっぺぇ!?」

 

 

 そして…?

 

 

「にっが!? なんじゃこれ! ぺっ! ぺっ!」

 

 

 つまり…?

 

 

「「くそ不味い!?」」

 

 

 声を揃えて涙目になるモードレッドとむせ返るカルナ。

 

 その味はあまりにも酸っぱく、そして、盛大な苦味があった。飲んだ途端の鼻に突き刺さる匂いもさることながらザラザラとした気色悪い食感も…。

 

 だが、このお茶を口に入れたスカサハ師匠はというと?

 

 

「うむ、少し濃いが身体には良いだろうな」

 

 

 ポーカーフェイスで何事なく飲んでいた。

 

 心なしか、お茶の風味を楽しんでいる節も…、やはり、年季が違う。そんなお茶を平然と飲むスカサハを横目に見ていた二人は顔をひきつらせる。

 

 この師弟、揃って味覚がぶっ飛んでるんじゃないのか? と、あの強烈なお茶は申し訳ないがカルナもモードレッドも飲める気がしない。

 

 

「…うぇー…舌がおかしくなっちまう」

「…うん、モーさんには少し早かったな」

「意外といけるが? そんなに不味かったか?」

「どうなってんのよ、あんた達の味覚」

 

 

 思わず後引くスズメバチ茶の後味に、舌を口から出して涙目になるモードレッドを見ながら、一方で冷静に何事なくその不味いお茶を飲む二人に突っ込みを入れるカルナ。

 

 カルナは優しく涙目になったモードレッドの背中を摩ってやる。上級茶はやはり、年若なモードレッドには早かったようだ。

 

 口直しにモードレッドにはそのあと水を差し出してあげた。流石に後引くあの強烈な味はなかなか忘れられまい。

 

 何はともあれ、こうしてお茶作りも無事に済んだ。

 

 

「さてと、慣例の不味いお茶も飲み終えた事だし、開拓に戻りますか」

「せやねー、ほんじゃ何から植えるかな?」

「あ、土はもうできてんだ?」

「モーさんがよく耕してくれてたからやね」

 

 

 そう告げるクーフーリンはニコリとモードレッドに笑いかける。

 

 モードレッドもそうだが、他のカタッシュ隊員達も農業に関してはベテラン揃い、この面子ならば下地である土はそこまで日を跨かずとも出来上がる。

 

 となれば、後は植える野菜、穀物を何にするかが重要だ。

 

 

「ブリテンの気候を考えると、せやねー」

「小麦、大麦、オーツ麦が良いんでない? 米はちょっと厳しい気がすんだよね」

「確かに、麦ならお酒も作れるしオーツ麦はフレークなんかも作れるしな」

「なんで兄ィ達こんなに農業に詳しいの?」

「農家だからな」

 

 

 もっともらしいモードレッドの疑問をその言葉で一刀両断してしまうスカサハ。もう彼らの本業が何かは既に彼方に忘れ去られているようだ。

 

 ーーーー農業歴ベテランの風格。

 

 何はともあれ、穀物に関してはその方向で行く事に決まった。続いて野菜、野菜の生産だが。

 

 

「最初はジャガイモ、ニンジン、レタス、キャベツ、ソラマメから、きゅうりにトマトとだんだん野菜の作る幅を広げていく形にしたいんやけどね」

「ジャガイモかぁ作りやすいもんね、火星でも作れる気するし」

 

 

 そう告げるカルナはクーフーリンの話を聞きながら納得したように頷く。

 

 確かにジャガイモやニンジン、レタスやキャベツなどならイギリスでもよく生産されている野菜だ。これならば、日本と気候が異なるこの場所でも生産ができる。

 

 そして、今回はそれだけではない、新たな試みを彼らは挑戦しようと心に決めていた。

 

 その挑戦とは…?

 

 

「やっぱり酪農だよね、ここはさ」

「牛を捕まえに行くか、そんでもって馬も野生馬ひっ捕まえてこないとね」

「いや、それは流石に買おうよ…兄ィ達」

「俺達に買うっていう発想はない!」

 

 

 冷静なモードレッドの一言にそう言い切ってしまうカルナ。そう、彼らには買うという発想は皆無。

 

 ーーーー買うくらいなら作る。

 

 という信念の元で動いてる彼らは買うという行為自体が主に存在していない。実に生産的だが、シャルルマーニュ十二勇士の中性的な理性が蒸発している某英霊でも今の彼らを見たら迷わずこう言うだろう事は間違いない。

 

 

『YARIOはどんな人達だって? うん! 馬鹿だよ!』

 

 

 あらがち間違っていない、事実その通りである。

 

 さて、話は逸れてしまったが、こうしてカタッシュ村に盛大な穀物畑と野菜畑、そして、牛や山羊、馬などを飼育し、乳や乳製品を生産する酪農を目標に計画を立てる事に。

 

 

「いよいよ俺たちも酪農家か…」

「酪農は初めてやから、いろいろ人に教えてもらわなかあかんね」

「ヨーグルト作ろう! ヨーグルト!」

 

 

 思わず、新たな試みに心も踊る。

 

 新たに酪農という手段。豊かな村にする為にブリテンという国で彼らは力を合わせ、ここに福島の村よりも壮大な村を作りたいと思っている。

 

 自分達の為ではない、強いて言えばこの村で、そして、この村を通してたくさんの笑顔を皆に届けたいから。

 

 ここから、カタッシュ村の開拓が始まる。

 

 

 

 それから、約数週間後。

 

 無事にだん吉を使い掻き集めた農作物の種も植え終え、ひと段落ついた。野菜もこれならば来年にはよく実る筈だ。

 

 

「いやー、やっぱりスイカ植えるよね」

「一応、野菜だしなぁ」

「俺ら結構スイカ作ってきたからね」

 

 

 その畑には、追加できゅうりと共に見慣れたスイカも一緒に植えた。

 

 この育てたスイカがいずれ、ブリテンの市場に出回ると考えると心が踊る。スイカ作りならば彼らの専売特許だ。

 

 続いては、酪農だが、これは…?

 

 

「今、兄ィがADフィンと柵作ってんだっけ?」

「せやねんなー、牧場作りってなかなか難しいらしいから心配やね」

「モーさんは?」

「スカサハ師匠と元気に野馬狩りと羊とか山羊とか捕まえいっとるよー」

「いよいよあの人達も本業忘れてきたね」

「ホンマやな」

 

 

 クーフーリンとディルムッドの二人は畑の土を整備しつつ、鍬を担いだまま顔を見合わせそんな話をしていた。

 

 

 ーーーーまごう事なきブーメラン。

 

 

 おそらく、ブーメランが頭部に突き刺さって抜けないだろう本業を忘れている第一人者達。

 

 さて、話を戻すと野菜も穀物も酪農も始める事になったカタッシュ村だが、ここに来て欠けている大事なものがある。

 

 それは、言わずもがな…。

 

 

「あ、そろそろちゃんとした拠点もぼちぼち作らなあかんのやない?」

「確かにそうだね、モーさん領主なのに城なしじゃ、可哀想だしね」

 

 

 そう告げるクーフーリンは納得したように話すディルムッドの言葉に静かに頷く。

 

 確かに拠点という拠点は無い、今は簡単な家という名の小屋がポツンとあるだけでこれでは立派な村作りには程遠い。

 

 モードレッドはもう農業に没頭していて本人は忘れているだろうが一応、領主であるし、自分達としてもちゃんとした拠点は欲しい。

 

 

「納屋建てるか」

「建てるしかないね、山城」

 

 

 そう、そうなれば建てるしかないのだ。

 

 このブリテンで神聖なる居住地、山城を建てるしかない。匠たちから学んだ家作りの技術を生かせる今ならこの場所にも建てれる筈だ。

 

 しかし、普通に納屋を建てるなら普通にできてしまう。これでは面白くない、そこで、二人は考えたどうすべきかを。

 

 そして、出した結論は。

 

 

「なんか、どうせならかなり丈夫やつ建てたいよな」

「せやねー、このご時世物騒やし、どうせなら破壊光線受けてもビクともせんやつがええよね」

 

 

 そう、雨風だけではなく、この物騒なご時世。

 

 破壊光線みたいなビームや爆発や攻撃を受けたとしてもビクともしない納屋をこの地に作りたい。

 

 となれば、その材料はより最上級の木材とより最上級の防御魔術を施された納屋。

 

 これならば、世知辛い世の中であっても、たとえ特大な天災や洪水が来ても生きていける筈だ。

 

 

「ま、まずは兄ィと要相談だわな」

「せやね、あれ? そういやヴラドとベディは?」

「あー、マーリン師匠のとこだね、聖剣作りするって息巻いてたからさ、あの二人」

 

 

 ディルムッドは問いかけてきたクーフーリンに笑みを浮かべ肩を竦める。

 

 そうヴラドとベディは現在、聖剣作りの為に様々な書物を王様作りの第一人者であるマーリン師匠の元で勉強していた。

 

 モードレッドに抜かせるための聖剣作り、この素材に相応しいものを用意する事から始める必要がある。

 

 そちらには流石にクーフーリン達は手が回らないのでヴラドとベディに任せっきりである。

 

 いろいろ作るにもまだ、風呂敷は広い、何をするにしてもまずは一つ一つやり遂げなくてはならないだろう。

 

 

「伝説のラーメンもあるしなぁ」

「あ、それやねんけど、どうする?」

「麺がいるよね、麺が、丁度、小麦作ってるけど最上級って訳じゃないからねぇ…」

「どうせなら最上級の小麦使いたいもんなぁ…、小麦の起源っていつやっけ?」

「確かエジプトじゃない?」

「あーそっか、ならだん吉を使ってエジプトに取りいかなあかんな」

 

 

 そう言ってにこやかな笑顔を浮かべるクーフーリン。

 

 つまり、小麦の起源から取ってきた小麦なら全ての小麦の神様に成る。これをカタッシュ村に植えて育てれば最上級の小麦が出来る筈だ。

 

 そうと決まれば話は早い、とりあえず、ひと段落ついたら古代エジプトまで飛び小麦を仕入れて来なければ!

 

 二人はひとまず目の前にある畑を急ぎで整備しにかかる。伝説のラーメン作りもこの地でできるならばなんら問題も無い。

 

 まだ、メンマなどのラーメンに使う具材も集めていない状況、それに、そんな伝説のラーメンを入れる器も確保に至っていない。これはこれで進めなくてはいけないノルマだろう。

 

 次々とカタッシュ村、ラーメン作りに納屋作りとやる事は山積みだが、果たして彼らは無事に村を発展させる事ができるのか?

 

 

 そして、来週はマーリン師匠の元で書物を読んでいた二人から聖剣作りに必要な素材の情報が明らかに…!

 

 その続きは! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 ブリテンに畑を作るーーーーNEW!!

 

 山城計画浮上ーーーーーーーNEW!!

 

 スズメバチ茶レンジ失敗ーーNEW!!



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Wonderful Dash!!

 

 

 前回の鉄腕/fateでいよいよ拠点地、山城作りを視野に入れ本格的に動き出した。

 

 その一方でこちらはマーリン宅にお邪魔しているYARIOの二人、ベディとヴラド。彼らは聖剣に関しての作り方を只今、魔術をマーリン師匠から習いつつ、書物を参考に勉強中である。

 

 農業に関しては他のカタッシュ隊員に任せて、こちらは聖剣作りを進めねばならない。

 

 

「マーリン師匠! ブリテンからのホイミは期待できず!一寸先はパルプンテ!」

「…いや、だからそんな呪文はないと…」

「今こそ! カタッシュ村にルーラです!」

「どうやらこの子的には魔術の呪文らしいです」

 

 

 そう言って、真顔で演説するように謎の呪文を口走るベディに苦笑いを浮かべながらマーリンに説明するヴラド。

 

 もはや魔術の呪文というよりも、用語のように使っている為、ベディが何を言っているか二人は理解できていない。

 

 

「まずは近隣にいる強力な蛮族をマヌーサ、またはメダパニさせるのです」

「…ベディに魔術の勉強詰め込みすぎたかもしれないですねマーリン師匠」

「そうだね、マヌーサとかメダパニとか僕は聞いた事ないよ」

「さぁ! 共にドラゴラムしてヒャダインのようにギガデインし、マダンテ的にベギラゴンからのラナルータで意表をついたところでモシャスで敵を欺いたタイミングでバシルーラバシルーラ!!」

 

 

 もう何を言っているか二人は理解できていないが、少なくともベディヴィエールにまともな思考が働いていない事は確かであった。

 

 確かに呪文は呪文だが、その呪文は間違っても魔術を使う呪文という類のものではない。

 

 

 ーーー思わず思考がバシルーラ。

 

 

 元々、勉強は苦手なベディヴィエールはこうして知恵熱を出すまでになってしまった。これは人選ミスだったなとヴラドは頭を抑える。

 

 まぁ、しかしながら収穫がなかった訳ではない。

 

 ヴラドはこんな風に魔術を教えてもらう片手間に聖剣作りに必要な鉱石が果たして何なのかという部分である鉱石を見つけるに至った。

 

 それは…。

 

 

「えーと? 確か血の涙石と呪獣胆石に剣の秘石、レアルタ鉱石にエードラム合金か」

「そうだね、聖剣を作るならそれくらいはいるんじゃないかな?」

「…いよいよ俺たちの冒険が始まるんだな、待ってろよ魔王!!」

「ベディ、お前は何と戦ってるんだ」

 

 

 もう、方向性が色々とおかしいベディヴィエールに突っ込まざる得ないヴラド。

 

 何はともあれ、これ以上ベティの理性が蒸発する前にヴラドはベティとマーリンを連れて共にカタッシュ村に向かうことに。

 

 手に入れる素材はとりあえず把握した後はこれを手に入れなければならない。

 

 とりあえず、村に帰ってきたヴラドはすぐに畑を耕しているディルムッドとクーフーリンの二人の姿を見つけると声をかける。

 

 

「おーい! お二人さーん!」

「だから! 山城は天空の山城にするって言ってんじゃんか!」

「なんでや! 動く山城にする方がええに決まってるやろ!」

「おーい…」

 

 

 …と無事に帰ってきたと思いきやこちらもこちらでおかしな口論を勃発させていた。

 

 やれ天空の城だの動く城だの何やら現実から非常にかけ離れた会話を繰り広げている。

 

 それに拍車をかけるように彼らは鍬を捨てて何故か口論が白熱し何故か取っ組み合いをはじめた。

 

 

「だから! 天空の山城だっつってんだろ!」

「やから! 動く山城やって! わからへんか!」

「まぁまぁまぁ、お二人さん落ち着いて」

 

 

 そして、ヒートアップして掴み合いを始める二人の仲裁に入るヴラド。しかし、仲裁も虚しく二人からヴラドはもみくちゃにされる。

 

 天空の城だの動く城だの彼らが何を言っているかわからないが、さして、先ほど知恵熱を出していたベディヴィエールの状態と大差ない。

 

 

 ーーーファンタジーを夢見る四十過ぎ。

 

 

 確かに今まで、ルーン魔術などを目の当たりにしてきたのだから、取り組みたい作業にも夢を持って挑みたいのはわかる。

 

 だが、それをきっかけに仲間割れをしていては本末転倒だ。

 

 二人からもみくちゃにされるヴラドを遠目で見ていたマーリンとベディヴィエールは顔を見合わせると首をかしげる。

 

 

「あの人達何言ってるかわかる師匠?」

「なんで僕に聞くのかな!? わかる訳ないよ!?」

 

 

 ベディヴィエールの冷静な質問に思わず突っ込まざる得ないマーリン。

 

 長年にわたり魔術をやったり教えたりしているが、いきなり天空の城だの動く城だのと言われてもわかる訳がない。

 

 しかし、このまま彼らを放って置くわけにもいかないだろう。そこで、ベディヴィエールは取り組み合う二人ともみくちゃにされているヴラドに近づくと首を傾げたままこう話をしはじめる。

 

 

「じゃあ、動く天空の山城にしたら良いんじゃないの?」

「「それだ!!」」

「どれだ!? いやなんの話だい! 本当に!」

 

 

 そう言って、先ほどまで取り組み合う二人が声を合わせて告げた言葉に思わず声を上げるマーリン。

 

 ベティヴィエールによる鶴の一声、それには思わず二人も納得してしまった。なんの話かは予想し難いがどうやら結果的に動く天空の城に決定したようである。

 

 さて、話が纏まったところでヴラドは落ち着いた二人に戦果報告をしはじめる。

 

 

「とりあえずマーリン師匠からは魔術の使い方を教わる事ができたよ」

「うん、ヴラド君は非常に優秀だったね、こちらも教え甲斐があったよ」

「それで、聖剣に必要な鋼材も目星がついた」

「ホンマに!?」

「おぉ!? でかした! ヴラド!」

 

 

 そう言って二人はヴラドからのその報告を聞いて思わずガッツポーズをする。

 

 これで、聖剣作りの方は進みそうだ。鋼材はいくつか手に入れなければならないがツルハシにしたゲイボルクならいくらでも掘れる。

 

 後はカルナから自前の対神宝具という名のハンマーを借りてその鋼材を用いて剣を作れば良い。

 

 

 ーーーー日本刀なら多分作れる。

 

 

 その確信は確かにあった。

 

 後は西洋の剣の作り方を鍛冶屋にいる匠から教わり、学べばきっと聖剣も打てるはずだ。包丁を手作りで作るディルムッドが言うのだから間違いない。

 

 ならば…。

 

 

「それってキリマンジャロにあんの?」

「それともエベレスト?」

「いやいや待ちなさいってば、あんたら掘り行くところが極端でしょ」

 

 

 後は掘りに行くだけだ。

 

 そうとなればとツルハシを用意して行く気満々の二人を思わず静止するヴラド。キリマンジャロやエベレストに行ったところで掘れるとも限らない。

 

 やる気満々なのは良い事だが、空回っては元も子もない。

 

 

「一応、書物に鉱石取れそうな山が記入されてたから、メモって来てんのよ、えーとね、ここと、ここと…」

「あ、そんじゃ俺、ADフィンと小次郎さんとこ行ってマーリン師匠とトラック作るの手伝ってくんね」

「おう! 気をつけてな!」

「へぇー、そんなとこにあんのか」

 

 

 そう言って、手を振り告げる末っ子の言葉に笑顔を浮かべてサムズアップをするクーフーリン。その横ではディルムッドが鉱石を取れそうな場所を確認していた。

 

 マーリンはそんな彼らのやり取りを何かを悟ったような表情で見つめていた。

 

 いつの間にか自分もまた何かわけがわからない事に使われそうになっている事を目の当たりにすればそうなることも致し方ない。

 

 

 そして、マーリンはベディヴィエールに連れられて小次郎の元へ。

 

 現在、ADフィンと農業スタッフ小次郎さんはあるものの作成に取り掛かっていた。

 

 そのあるものとは…?

 

 

「よし、ここをスパナで回せば形が見えてきますね」

「うむ、この設計図通りならばタイヤとやらは特殊なようだが」

「ですね、どれだけ重量があるものをたくさん運べるようにするかにもよるんですけれど」

 

 

 そのあるものとはカタッシュ村でできた農作物を運ぶための2tトラックの製作である。

 

 このトラックさえあれば、いろんな村にたくさんの食べ物を届けられる。

 

 機械修理なら、YARIOの専売特許。ならば、だん吉のようにこのトラックも作れる筈だ。そこで、二人はカタッシュ村での開拓を進めるクーフーリン達が少しでも作りやすいようにトラック作りを進めていた。

 

 さすがはカタッシュスタッフ。黒子役に徹している。

 

 と、そこへ、マーリンを引き連れた作業着に着替えたベティヴィエールがやってきた。

 

 

「トラックどんな感じ?」

「上々ですね」

「うむ、私にもこの車はなんだか非常に思い入れが強くてな」

「そっか、大型運転できる人ってなかなか居ないから頼もしいね、俺らはみんなできるけど」

「というより作ってるよね? なんだいこれ、こんなデカイもの作る上に操れるって…君らなんなんだい」

「そうです、僕らが宅配便YARIOです」

 

 

 ーーー場所に届けるんじゃない、人に届けるんだ。

 

 

 そう、皆が待ち続ける限り宅配便YARIOは何処まででも宅配に参ります。例え、古代でも現代でも皆の夢を届ける為に。

 

 マーリンはベディのその言葉に頭を抑え左右に首を振る。今までマーリンもいろんな魔法を使ってきたが、ここまで馬鹿げた発想をするのは彼らくらいだろう。

 

 

「よく配達やってたからね」

「いやーベティさんあの時生き生きしてましたもんね」

「私もいつハンドルを握れるのかワクワクしておる。これ、1車両デコトラにして良いか?」

「お! 粋だね! 流石は小次郎さん! 武士道出てる!」

「…………………」

 

 

 彼らの会話を呆然と見守るしかないマーリン師匠。

 

 自分も一応、王様を作った職人と呼ばれてはいるものの、こんな常識が外れたものを目の当たりにさせられては言葉を失うしかない。

 

 しかし、このトラック作りの為にベディはわざわざマーリンをこの場所に呼んだのである。

 

 ブリテンの各地に物資を届ける為の発信地をこのカタッシュ村で行う為に。

 

 

 ーーーー物流が始まる。

 

 

 とりあえず、まずはトラックの完成が急がれる。これがなければ物流も始まらない。

 

 ベディヴィエールもまた、トラックの作成作業に加わりスパナを握りしめ、作成中のトラック作りに加わる。

 

 

「ほら! マーリンさん! 早くこっちきて! トラックの作り方教えるから!」

「あ、あぁ…うん、なんだかわからないけど…わかったよ…」

「よし、作業がこれで捗りますね! こちらを溶接しなきゃいけないので私はカルナさん呼んできます」

「しゃあ! 気合い入れてやるか!」

 

 

 そう言ってハチマキを頭に巻いて気合いを入れ直す農業スタッフ小次郎さん。

 

 トラックの運ちゃん魂に火が灯る。自分が運転するトラックを作っているのだ。これに燃えない男はいない。

 

 マーリン師匠を加え、トラック作りに力が入るカタッシュ隊員達。

 

 聖剣に必要な素材も目星がつき、物資が滞り気味のブリテンにいよいよ物流が始まろうとしている。

 

 futureに繋がる物流の拠点カタッシュ村。

 

 この村はこの先どんな発展を遂げようとしているのか?

 

 そして、クーフーリン達が話していた動く天空の納屋。山城とはいったい?

 

 

 この続きは! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 天空の山城(ラピュ○)建設予定ーーーーーーーーーNEW!!

 

 聖剣作りの素材を目星ーーーーーーーーNEW!!

 

 ブリテンに物流が始まるーーーーーーーNEW!!

 

 多分、日本刀なら作れるアイドルーーーNEW!!

 

 ベディがパルプンテに掛かるーーーーーNEW!!

 

 2tトラックをブリテンで作るーーーーNEW!!



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聖剣作り その1

 

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでは、新たに山城の建設と聖剣作りに進展があったカタッシュ隊員達。

 

 そして、現在、リーダーのクーフーリン、ディルムッドの二人はというと?

 

 

「いやー、まさかまたアルスターサイクルに帰ってくる事になるとは思わんかったね」

「そうだねー」

 

 

 聖剣作りに必要な鉱石を堀りにアルスターサイクルにまでだん吉を使いカムバックしていた。

 

 というのも、聖剣作りに必要な鋼材がどうやらこのアルスターサイクルにあるコノートという土地に眠っているという情報をADフィンから聞き出したからである。

 

 よって、アイルランドの土地に詳しい二人はこうしてわざわざこうしてだん吉を使い出向いた訳である。

 

 だが、ここで、二人には見落としがあった。それは…。

 

 

「ふっふっふ、二人とも、私を差し置いてアルスターに戻るなんて良い度胸じゃないか」

「あ…」

「し、師匠!? いつの間にだん吉に…!?」

 

 

 そう、それは師匠であるスカサハがだん吉にひっそりと潜り込んでいたという見落としだ。

 

 というのも、狩りに出掛けた筈の彼女なのだが、長年培った勘がよろしいのか、それとも、誰かのタレコミかこうして引っ付いてきちゃった訳である。

 

 二人の肩に手を回すスカサハは満面の笑みを浮かべていた。その表情は何処か子供っぽくしてやったりという顔である。

 

 

「ん? どういうことなんだーしげちゃん」

「僕らは作業分担のつもりやったんですけどね、師匠ついて来ちゃいましたか」

「来ちゃったな♪」

「そっか、来ちゃったなら仕方無いよね」

 

 

 そう言って、お茶目な返答をするスカサハ師匠にツルハシを担いだままの二人は仕方無いといった具合に笑みを浮かべる。

 

 確かにアルスターならば、スカサハも土地勘や知識も詳しい筈だ。ならば、鉱石を手に入れる場所も早く見つけ出すことができる。

 

 となれば、これは逆にクーフーリン達には心強い助っ人だ。あとはツルハシで掘る場所を探すだけだが、まずは、その探す場所の領主に許可を貰う必要がある。

 

 そこで…。

 

 

「コノートってどこらへんだっけ?」

「確かここらへんやったよね?」

「ふむふむ、あ、確かにヴラドの奴が言っていた場所の一箇所目はコノート領内だったな」

「いやはや、これは骨が折れそうやね」

「またまた、満更でもない癖にー」

 

 

 そう言って、ツルハシを弄りながら笑みを浮かべるディルムッド。確かにツルハシはどちらかと言えば鍬の扱い方に近い、それに、ゲイボルクを加工したものならば、きっと、作業も円滑に進めれる筈。

 

 

 ーーーーツルハシが似合うアイドル。

 

 

 彼らは農業が得意な農家だけではない、そう、鉱石掘りもできるアイドルなのだ。

 

 という事で早速、いつの間にかだん吉に紛れ込んでいたスカサハを含めた三人はコノートの領内で鋼材を掘るべく領主の元へ。

 

 このコノートという土地であるが、ここにはメイヴという女王がおり。

 

 史実では、夫のアリル・マク・マータとどちら財産が多いのかを競うクーリーの牛争いというアルスター王国とコノート王国との間に起きた七年にわたる戦争のきっかけを作った人物として有名である。

 

 そもそも、このアルスターサイクルであるが、名牛の奪い合いをめぐり、アルスターが、ライバル国コノートをふくむ他の四州を相手に戦争をくりひろげる物語である。

 

 だが、YARIOの彼らはというと? 『え?牛? 養殖して増やせば良くない? 』という考え方であるからして、全くそんな事に縁遠い話なのである。

 

 果たして、物語の主人公というか、主役がそんなことでいいのかどうかはもはや神にもわからない。

 

 ということで、女王メイヴであるが、史実のクーフーリンの死のきっかけになったキーマンであるのだが、当の本人はというと?

 

 

「それじゃメイヴさんに会いに行かなあかんね」

「いつものようにこんにちはーで」

「よし、決まりだな」

 

 

 全く気にも止めていない様子。

 

 そもそも、騎士ではなく産まれながらのアイドル兼副業農家にゲッシュなんてものは鼻から無関心な物なので死に至る事もおそらく考えにくいだろうがあまりにも無警戒過ぎる。

 

 そんなこんなでいつものように軽いフットワークでコノートの城にお邪魔する事にしたYARIO一同。

 

 そして、コノート城に訪れた彼らは早速…。

 

 

「こんにちはー! 僕らYARIOというものなんですけど、メイヴさんいらっしゃいますか?」

「ん? …誰だって?」

「あ、僕らアイドルでして」

「あ、アイドル?」

「農家の方が伝わんじゃない?リーダー」

「いや、むしろこの場合鉱夫だろう」

 

 

 そう言って、ディルムッドの言葉に更に付け加えるスカサハ。重要なのはそこではない気はする。現に門番の二人は顔を見合わせて首を傾げていた。

 

 と、そこで、ディルムッドはポンと手を叩き、何かを思いついたように門番の二人にこう話をしはじめる。

 

 

「あ、この人クーフーリンって言うんですけど」

「え!? も、もしや! 噂のクランの大工と名高いあの!?」

「そうなんですよー、建築の件でお話がありましてー」

「どうぞ! どうぞ! いやー! やっぱり風格ありますね! 名大工だけあって!」

「え? ホンマに? いやー照れるなー」

 

 

 どうやらクランの大工で名高いクーフーリンという通名で通ってしまうらしい。

 

 どういう原理かはわからないが、門番達は嬉しそうにリーダーであるクーフーリンに握手を求めてきた。

 

 

 ーーーー大工で名高いアイドル。

 

 

 門番達は彼の話を良く耳にしていた。

 

 なんでも立ち寄る村に多大な功績をもたらしながら旅するクーフーリンと呼ばれるクランの大工という素晴らしい人格者がいるという事を。

 

 その生まれも太陽神ルーとコノア王の妹のデビテラという半神半人という生まれ。

 

 英雄と成るべくして生まれたと言っても過言ではないが残念ながら本人としてはアイドルであるのが希望であり、彼は農民や農夫から好かれている。

 

 それに影の国の女王と名高いスカサハの愛弟子である。そんな彼の名前を聞けば知らない者など居ない。

 

 

「あ、サイン書こうか? はい」

「おー、久々にアイドルっぽい事やってるねリーダー」

「サインなんか書いたの何年振りやろうかね」

「ありがとうございます! いやぁ、嬉しいなぁ! うちの村にも今度立ち寄ってください! 是非おもてなししますので!」

「え? ホンマに? なら今度立ち寄ってみますね?」

 

 

 そう言って、にこやかに門番と握手を交わすクーフーリン。

 

 それからしばらくして、門番から通された三人は城内に招かれる形で足を踏み入れる事ができた。

 

 城内にいる従者から案内された三人はすぐに女王メイヴに目通りが叶う事になった。コノートを収める女王、果たしてどんな人物なのか?

 

 なんやかんやでトントン拍子に話は進んでいるが、彼らの目的はただ一つ、採掘をしていいかどうかを彼女に聞く事。

 

 断られればまた他の方法を探す他ない、話がわかる方で良ければいいが…。

 

 そうこうしている間に女王メイヴが待つ、応接の間に通された三人。そこには椅子に座るコノートを治める女王が鎮座していた。

 

 彼女は人懐こそうな笑みを浮かべ、城を訪れた三人にこう語り始める。

 

 

「いらっしゃい、クランの猛犬殿、話はかねがね聞いているわ」

「どうもこんにちはー!」

「僕ってそんなに有名人やったんやね、こちらこそ光栄ですよ」

 

 

 そう言って、メイヴに元気良く挨拶をしながら、メイヴの前で膝をつき笑顔を浮かべるクーフーリンとディルムッド。

 

 話してみれば案外、悪い人ではなさそうだ。これならば、割とあっさり鉱石掘りを許可してもらえるかもしれない。

 

 そんな中、スカサハは膝を付かずジーっとメイヴに視線を向けている。果たしてどうしたというのだろうか?

 

 するとしばらくして、スカサハはコソコソとクーフーリンの耳元に口を近づけるとこう話をし始めた。

 

 

「気をつけろ、しげちゃん、こいつから泥棒猫の匂いがする」

「え? 猫?」

「あぁ、あれは胡散臭い類の人種だ。警戒しとかないと何を言われるかわからんぞ」

 

 

 そう言って、クーフーリンに告げるスカサハ。

 

 それを目の前で見ていたメイヴは相変わらず笑顔を崩してはいないものの内心では自身に膝を付かないスカサハに眉を顰めていた。

 

 女王であり、コノートを治める自分に膝を付かない無礼者、そして、あろうことか自分の目の前で密かに耳打ちしていれば気分は良くない。

 

 

「貴女、コノートを治める女王の私に膝を付かないとは少々無礼じゃないかしら?」

「ん? あぁ、すまないな。生憎ながら同じ立場の者に付く膝は持ち合わせていないものでね」

「なんですって?」

「私はスカサハ。影の国を治める女王だ、その私が貴殿に膝をつく理由があるかな?」

 

 

 自信ありげにスカサハはしてやったりと言わんばかりに女王メイヴにそう告げる。

 

 だが、これを見ていたクーフーリンはため息をつくとスパン! と師匠であるスカサハの後頭部をはたきその場で正座をさせる。

 

 このいきなりの光景に女王メイヴは目をパチクリさせていた。それはそうだろう、彼の師匠であるスカサハがまるで猫のように大人しくなって居るのだから。

 

 スカサハと聞けばメイヴもその名は知っている。武勇に秀でており神霊の類と戦い続けているうちにその存在と同等かそれ以上になった者だ。

 

 それが、こうも簡単に…。

 

 

「あんたはもー! そうやって無駄に意地張るんやから! お願いしにきとるんやからそんな態度したらあかんやろ!」

「うっ…! い、痛いだろ! なぜ私が…!」

「礼節は大切やで、自分達の態度が相手の心を開くきっかけになるんやから」

「…む…むぅ…だが、私も女王で…」

 

 

 ーーーーー気持ちはわかる。

 

 だが、これとそれとはまた別の話だ。確かに同じ立場の人間に膝をついて話すのはスカサハとしても面白くなく、しかも、その相手が直感的に胡散臭いと判断した相手ならば尚の事だ。

 

 しかしながら、YARIOを長年にわたり率いてきたクーフーリンだからこそわかる。

 

 お願いする立場だからこそ、メイヴさんに気持ち良く自分達の願い事を聞けるようにする努力をするべきだと。

 

 それをクーフーリンから聞かされたスカサハは致し方ないと仕方なくコクリと頷くとクーフーリンとディルムッドに並んで膝を付く。

 

 そんな二人のやりとりを見ていたメイヴは首を傾げていた。そして、ひと段落ついたところを見計らったようにディルムッドは話題を変えるかのように今回訪れた要件についてメイヴにこう語り始める。

 

 

「あ、僕らが今回、メイヴさんのところに訪れたのは実は聖剣作りに必要な鉱石を掘らして貰いたいなと思いまして」

「聖剣ですって!? 何その面白そうな話!」

「はい、実は僕ら鉄腕/fateという企画で聖剣作りをやってるんですけど、その鉱石の一つがこの土地にあるみたいで」

 

 

 そう言って、話に食いついて来たメイヴに付け加えるように語るクーフーリン。

 

 メイヴは聖剣作りと聞いて嬉しそうに目を輝かせていた。つまり、この話の流れならばもしかすると?

 

 そんな期待を膨らませるカタッシュ隊員達、すると、メイヴはにこやかな笑顔を浮かべたまま三人にこう語り始める。

 

 

「あー、それでわざわざ私のところに来たわけなのね! いいわね! 気に入ったわ! 許可します!」

「え! って事はコノートで鉱石を掘っても…」

「セーフです♪」

「しゃあ!」

 

 

 なんとあっさり許可を得る事に成功した。

 

 女王メイヴちゃん、意外と話してみると良い子であった。思わず、スカサハ師匠の言葉に多少なり警戒はしていたがやはり誠意ある態度で臨めば相手も応えてくれる。

 

 という事で、鉱石掘りの許可を得たことで後は目的地に向かい鉱石掘りを行うだけだ。

 

 と、ここで、話が上手く進んでいる中、女王メイヴはパン! と手を叩くとにこやかな笑みを浮かべて彼らにこう語り始める。

 

 

「あ! なら、私も同行してよろしいかしら? 貴方達のような英雄の勇姿を間近で見たいわ♪」

「え! そこまでしてくれるんですか?」

「おい、ディル…それは」

 

 

 そう、なんとあろうことかメイヴちゃんが仲間になりたそうにこちらを見て来ながら同行を願いでてきたのである。

 

 これにはスカサハも思わず顔をしかめた。流石にこれを同行させては下手をすればYARIOを解散させる爆弾を抱える事になるのではないのかと危惧してだ。

 

 女王メイヴはひたすらに清楚に淫蕩を好み、無垢に悪辣を成す。それらはどちらも彼女の本当の姿であり、どちらも偽りではない。しかし天真爛漫の微笑みもあってか、多くの者は「清楚で無垢」という印象で見ることが多い。

 

 こういった類の女は騙される男の方が多いに違いない。いい男と強い男、財も大好きで、自分の欲望に一切逆らうことなく、数多くの男たちを恋人としたメイヴ。

 

 彼女にとって必要なのは優れた兵士と美味しそうな領土。そんな彼女の胡散臭い本質をスカサハは感じ取っていた。

 

 だからこそ、同行と聞いてスカサハは難色を示しているのである。だが、そんなスカサハの心配を他所にクーフーリンとディルムッドはというと?

 

 

「それじゃ、はい、ツルハシ」

「え?」

「そんな肌がでてる格好なんてしてたら危ないよ、はい、ついてくるならこれに着替えるんやで」

「……………」

 

 

 なんと、ツルハシと農作業の服をメイヴに手渡していた。

 

 そう、メイヴのように露出がある服では鉱石掘りをするのは危ない、肌を切るかもしれないし、綺麗な肌が泥まみれになるかもしれない。

 

 そんな事を想定していないカタッシュ隊員達ではない、すぐに同行を願い出たメイヴに服とツルハシを用意してあげた。

 

 これにはスカサハも頭を抑える。

 

 

「おい、お前達、ほんとに同行させるつもりか?」

「え? だって手伝ってくれるみたいだし」

「なんだかあれやね、僕ら的には女子アナ同行させてるみたいな感覚やから」

「…これ、着なきゃだめなの?」

「はい、着てください」

 

 

 そう、作業着は大切な必需品、鉱石を掘りに行くなら尚更着てもらわなくては困る。

 

 まぁ、着るのが嫌でついてこないという方法もあるが、その場合、聖剣作りにメイヴは携わる事なく彼らの作業を目にかかる事はなくなるだけだが。

 

 それを察する事が出来ないメイヴではない、すぐに作業着に着替えるとカタッシュ隊員達の戦列に加わりスーパーケルト農女がここに爆誕した。

 

 つまる話が、他人から奪うのではなく生み出すのがYARIOの本質。奪われるならばいらなくなるまで生み出せばいいのだ。

 

 

「…私にこんな格好させるなんて…」

「え? でもめっちゃ似合ってますよ?」

「ほんまやね! やっぱりメイヴちゃんには農作業着似合うと思ってたんよ」

「そ、そうかしら?」

 

 

 そして、忘れてはいけない、彼らはアイドルなのである。女性の扱いも手馴れたものでこうしてのせるのも朝飯前。

 

 二人に煽てられたメイヴは上機嫌にツルハシを担ぐと満面の笑みを浮かべている。そんな上機嫌な彼女はビシっとクーフーリンとディルムッドを指差すとこう告げる

 

 

「よし! ますます気に入ったわ!なら貴方達は今日から私のダーリンね!」

「あ、ごめんなさい、流石にそれは無理かなぁ、僕らアイドルなんで…」

「マネージャー通して貰わないとね、やっぱり」

「速攻で振られた!? 嘘でしょ!」

 

 

 その言葉を聞いたメイヴは驚愕するしかなかった。まさか、二人から一斉に拒否られるとは思ってもみなかったからだ。

 

 これにはスカサハも爆笑しそうになるが、堪えるようにして口を抑えたまま悶えている。

 

 こんな体験はメイヴも初めての出来事だ。大概の男は自分が恋人にしてあげると言えば付き従うのだが。こいつらはそれを一蹴。

 

 一筋縄どころの話ではなく、もう、即轟沈させられたのである。

 

 メイヴは涙目になるが、二人はサムズアップしながら彼女の肩をポンと叩きこう話をしはじめる。

 

 

「ほらメイヴちゃん美人だし! 可愛いから! 俺達にはもったいないし!」

「そうそう! とりあえず鉱石掘りにいけばなんか見えてくるかもしれへんからな」

「グス…、ほ、ほんとに?」

「あー、鉱石掘るガテン系女子見たいなー」

「きっとメイヴちゃんツルハシ使うの上手いんやろうなぁ」

 

 

 いかにもわざとらしく煽てるようにメイヴにそう告げる二人、彼女の本質はなんとなく彼らも掴んできた節がある。

 

 本業での経験がここでも生きた。

 

 機嫌を取り戻し作業着を着たメイヴはツルハシを担ぐとすぐさま三人にこう告げる。

 

 

「さぁ! それじゃ鉱石を掘りに行くわよ! 私に夢中にさせてあげるんだから!」

 

 

 そんな上機嫌な彼女の後ろ姿を見ていたディルムッドとクーフーリンの二人はと言うと腕を組んだまま、しみじみとした表情を浮かべこんな話をしていた。

 

 それは、まるで若いって良いなぁと羨むおっさん達の図である。

 

 

「というわけで労働力を約1名確保やね」

「いやー頼もしいね」

「あはははは!お前達はほんとに最高だな!!」

 

 

 そして、そんな一癖も二癖もある愛弟子たちの肩に手を回しながら、笑顔を浮かべるスカサハ。

 

 こうして、新たに女王メイヴを労働力として加えたカタッシュ隊員達。

 

 彼女の許可を無事に得る事も出来た。あとは聖剣作りに必要な鉱石を掘り出して持ち帰るだけだ。

 

 必要な鉱石はこの場所以外にもまだある。となれば、このアルスターサイクルになるべく長居は無用だ。

 

 

 さて? お目当ての鉱石を無事に掘り出して彼らは持ち帰る事ができるのか?

 

 この続きは、次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 スーパーケルト農女爆誕ーーーーーーーーNEW!!

 

 大工で名高いアイドルーーーーーーーーーNEW!!

 

 メイヴちゃん鉱石を掘りにチャレンジーーNEW!!



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聖剣作り その2

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでコノートでの採掘を許可されたクーフーリン達。

 

 新たに同行することになったスーパーケルト農女、メイヴちゃんを仲間に加えやって来たのはとある山の麓にある洞窟。

 

 コノートの城からおよそ数キロほどだん吉で移動したところにその洞窟はあった。

 

 

「いやー、立派な洞窟やね」

「うむ、こんな場所があるとはな、修行にも使えるかもしれん」

「師匠、何の修行する気ですか?」

 

 

 そう言って、綺麗に広がる洞窟の入り口に立ちスカサハに突っ込むディルムッド。

 

 確かに修行と言ってもディルムッドやクーフーリンが思いつくのは滝に打たれたりなどという修行だ。

 

 しかし、スカサハはツルハシを担ぐ二人にニヤリと笑いかけるとこう話をし始める。

 

 

「知りたいか? まず、洞窟にいるコウモリを刺激して…」

「あー、なるほどね格闘漫画でなんか読んだことあるわ、それ」

「むぅー、私に最後まで説明させんか!」

「あいたっ!」

 

 

 そう言ってスカサハは納得したように話すディルムッドの頭をかるくコツンと軽く小突く。

 

 まさか、そんな知識がディルムッドにあると思っていなかったスカサハは少しだけ不満気味になっていた。

 

 スカサハ的には最近、弟子の修行をしていないせいもあって本職の血が騒いだというのに水を差されたような気分である。

 

 まぁ、ともあれ、今回の目的は地上最強を目指す格闘士になるべく修行する事ではなく、聖剣作りに必要な鉱石を持ち帰る事だ。

 

 

「ねぇねぇ、クーちゃん、何処らへんから掘れば良いの?」

「そうやね、ひとまず…」

 

 

 とディルムッドとスカサハがやりとりを繰り広げている間にメイヴがクーフーリンにツルハシの使い方と掘る箇所についてレクチャーを受けていた。

 

 ツルハシを用いての採掘だが、これにはまず安全を確保した上で採掘を行う必要がある。

 

 まずは、お目当ての鉱石を探すところからだ。ルーン探知機を使い、洞窟の中を探索して鉱石が採れそうな箇所を探す。

 

 中にはスカサハが前に言っていたようにコウモリなどがいる可能性があるので刺激しないように松明を設置しながら奥へと進む必要があるだろう。

 

 

「中、暗いわね、足場に気をつけないと」

「なんだか冒険隊みたいやねー」

「小学生の頃だったらテンション上がってたんだろうけどね」

「歳重ねてまうとやっぱりそうなるよなぁ」

「そうか? 私は案外ワクワクしているぞ」

 

 

 そう言って、洞窟を進むスカサハは何処か満足そうにクーフーリンに告げる。

 

 

 ーーーー小学生のような冒険心。

 

 

 スカサハ師匠は未だにその心を忘れていない様である。暗闇の中でも新たな発見があるのでは無いかという期待で満ち溢れていた。

 

 非常にエネルギッシュな師匠である。カタッシュ隊員達にも見習って欲しいところだ。

 

 さて、進む事、数十分後。

 

 ある程度ツルハシを担いで洞窟を進んだところでルーン探知機に反応が…これはもしや…!

 

 

「お! ここらへんやね」

「はぁ…はぁ…。ようやく着いたのね…足が疲れちゃったわ…」

「ゆっくり休んでええよメイヴちゃん、ちょっと休憩挟んで作業再開する予定やからね」

「いやぁ、こんなわかりやすく反応出るもんなんだねルーン探知機」

 

 

 そう言って、歩き疲れたメイヴちゃんを座らせて一旦休憩を取る事にするカタッシュ隊員達。

 

 さすがに歩き疲れるのもわかる。洞窟の中はなかなか進み難い道もあり、その前には軽く山道を挟んで歩いて来た。

 

 ここらへんで休憩を挟まねば流石に肉体的にも作業に支障が出るかもしれない、休めるときに休むのは必要な事だ。

 

 さて、休憩に入ったところでカタッシュ隊員達も昼食もついでに取る事に、食事は働く前には大きなエネルギーになる。

 

 

「メイヴちゃんの分もちゃんとあるからね」

「…? 何かしらこれ?」

「え? メイヴちゃん食べた事無い?」

 

 

 それは、ブリテンで採れた鯛の煮付け。

 

 以前、0円食堂をした際に採れた鯛の仲間を調理した際、煮付けにしたものを持ってきた。

 

 さらに、ディルムッドは醤油漬けにした鯛のお刺身を取り出す。

 

 これを持って来たごはんの上に乗せ、さらに、持って来ていた熱いお湯をかけてやる。すると…?

 

 

「鯛の茶漬けと煮付け昼食セットの出来上がり」

「…何かしら…こんな食べ物初めて見るわね」

「はい、匙の方が食べやすいやろうからね」

「これ師匠の分ね」

「ん…すまないな」

 

 

 そう言ってクーフーリンは持って来ていた匙をメイヴに手渡し、ディルムッドは食事を配り終える。

 

 コノートの洞窟で食べるブリテンの魚を使った料理、そのお味は…?

 

 

「?! これ!? 美味しいわね! 食べたことない味だけど!! これディルが作ったの!?」

「リーダーと一緒に仕込んできたから、まぁ、二人で作ったって感じかな? ね? リーダー」

「前に使った魚、余ってて良かったなぁ」

「うむ、相変わらずの食事の腕だな二人とも」

 

 

 ごはんに染み渡る醤油漬けにした鯛の味。

 

 口に入れた途端にその風味が広がり、メイヴとスカサハの二人は満足気味にそう告げた。茶漬けという文化を未だに知らなかった二人には新鮮な味わい。

 

 煮付けもまた、簡単な味付けであるが良い出汁が出ており、昼食にしては十分に満足できるようなセット。

 

 

「付いて来たのが俺で良かったぁ、リーダーと兄ィなら多分、下手したら洞窟にいるコウモリ焼いて食うとか言い出しかねないかんね」

「えー? でもカエルと蛇は焼いて食えるで?」

「なんでも焼けばいいという問題じゃない」

 

 

 ーーーーたいがいのものは焼けば食える。

 

 確かに焼けば細菌などのものは焼却できはするだろうが、なんでも焼けば食っていいという発想は料理人、ディルムッドには理解しがたいものがある。

 

 リーダーもそうだが、カルナに関しても無人島に流れ着いたお弁当箱を開けて中身が意外と食べれそうだとか、とりあえず口に入れて味を確かめるだとか大概の野生児だ。

 

 そんな、二人が揃えば食えそうなものを焼いて塩などで適当に味付けした挙句食べるに違いない。

 

 

「失礼やなぁー僕は意外と料理上手いんやで?」

「前まで味音痴だったじゃん、お茶作りに関してもだけどさ」

「………。そんなことあらへんよ?」

「今の間は何?」

 

 

 そう告げて、視線を逸らすクーフーリンにディルムッドはジト目を向ける。

 

 兎にも角にも、昼食も無事に済ませ、作業に入る準備はこれで整った。後は鉱物を掘り出すだけだ。

 

 ツルハシの指導をメイヴに行いながら無理なく作業を再開し始めるカタッシュ隊員達。さぁ、お目当の鉱物を手に入れて来ることはできるのだろうか?

 

 

 さて、一方その頃、牧場作りに勤しんでいるカルナはというと?

 

 

「ぶぇっくしゅい!? ん? 誰か噂してんのかね?」

「おーい兄ィ、杭の設置場所ここでいいのん?」

「んあー? あぁ、そこに打ち込んどいて」

 

 

 ブリテンにあるカタッシュ村にて、木槌を片手に牧場作りに励んでいた。

 

 というのも、前回の鉄腕/fateで酪農を始めるにあたり、牧場の建設に取り組む必要があったからだ。

 

 動物を調達しに出かけたスカサハはいつの間にかだん吉に忍び込んでおり、モードレッドが彼女の分まで動物を集めに奔走。

 

 そして、ただいま、カタッシュ隊員の一人であるヴラドがその牧場作りを手伝っているのである。

 

 

「モフモフ♪ モフモフ♪ モッフモフ♪」

「おーいモーさんや、上機嫌なのは良いけどお兄さん達を手伝っておくれー」

「…んへへー、羊って意外と可愛いんだよなぁ」

「メェー」

 

 

 そう言いながら、モフモフする羊の毛に顔を埋めるモードレッドを微笑ましく見守りながら告げるカルナ。

 

 羊を集めにモードレッドが頑張ってくれたおかげで、ある程度の動物は確保出来てきた。他にも馬に牛、そして、ヤギの姿も…。

 

 これならば、養殖していき、いずれは安定した食料供給をブリテンにできるようになるのも近い。

 

 後は牧場作りを進めて、整地を行い、動物達が住みやすい環境を作ってあげなければ。

 

 羊のモフモフをしばらく堪能し、カルナから杭と木槌を受け取ったモードレッドも同じく牧場作りに加わる。

 

 

「いやー楽しみだなぁー兄ィ! こいつらが国を豊かにするんだもんな!」

「そうだぞー、だからこうやって牧場作ってこいつらが住みやすいようにしてやらないとな」

「…はぁ、だからその間、動物が逃げ出さないように僕が呼ばれた訳か…」

「その通り! 流石は師匠! 頼りになります!」

 

 

 そう言いながらため息を吐くマーリンにカルナはにこやかな笑顔を浮かべたまま、サムズアップをして応える。

 

 牧場作りに欠かせないのが、このマーリン師匠の魔法。トラック作りを手伝っていた彼をわざわざベディ達の元から借りて来た。

 

 現在はモードレッドが捕まえてきた野生の動物達に大人しくする魔法を掛けてもらい、足留めをしてもらっている。

 

 こうする事で、興奮して動物達が逃げ出さないようにしているのである。この状態が保てるのであれば牧場作りの作業が終わるまでなんとかなりそうだ。

 

 

「むふふ、どうなるか楽しみだなぁ…」

「そうだねー、モーさん」

「牧場おっきくなったら父上どんな顔するかなぁ」

「びっくりするんじゃない? モーさんすげぇ!? ってなると思う」

「マジか!? よーし! ならもっと頑張らなきゃな!」

 

 

 キラキラしながら作業をするモードレッドの姿に思わずほっこりするカルナ。

 

 最近になって教えた技術がものになってきたせいか、筋が非常に良くなってきてる。これならば、いずれは山城作りに聖剣作りにもモードレッドが加わる事ができる筈だ。

 

 …と、ここで、カルナは何かを思い出したようにポンと手を叩く。

 

 

「あ、そうだ。モーさんに渡すもんがあったんだわ」

「? へ? なんだ渡すものって?」

「これなんだけどさ、流石に年頃の女の子が農作業だけじゃって思って、リーダーと作ったのよ、服」

 

 

 そう言いながら、思い出したカルナはそのモードレッドの為にクーフーリンと作った服を取りに作りかけの農場の小屋の中へ…。

 

 それは、牧場を作るにあたり二人がだん吉に乗りわざわざモードレッドの為に素材を集めて作り上げた手作りの洋服。

 

 白のチューブトップに切りとられた茶ジーンズの短いパンツという、身軽さを追求した洋服であった。

 

 

「カウガールってのがあってさ。テキサス州とかで流行してたみたいなんだよねこの格好、モーさんに似合うかと思って」

「おぉ!? こいつはかなりイカすなぁ!! やっぱり兄ィとリーダーのセンスは最高だぜ!」

「茶色の長ジーンズもあるけど…」

「いや! 俺はこれが気に入った! これ着る! 絶対着る!」

 

 

 どうやらモードレッドのお気に召した様子であった。動きやすくてその上、牧場に似つかわしい格好、それに何よりもデザインが気に入った。

 

 動きやすくて、その上、着やすいとくればモードレッドも大満足だ。

 

 

「そっかそっか! 作った甲斐があった。後はこれな?」

 

 

 それは良かったとカルナは喜ぶモードレッドに頷きながら、フリスビーのように彼女に何かを投げる。

 

 モードレッドはカルナから投げ渡されたそれを難なく軽く片手でキャッチした。

 

 

「ん? なんだこれ?」

「カウボーイハット、これが無きゃやっぱりはじまんないでしょ?」

「こう被れば良いのか?」

 

 

 モードレッドはカルナから投げ渡されたカウボーイハットを首を傾げながら被る。妙に頭にしっくりくるそれは、モードレッドにぴったりであった。

 

 ファモさんもとい、可愛い牧場娘、カウモーさんの出来上がりである。

 

 カタッシュ村の牧場に可愛い看板娘がこうして無事に出来上がった。じゃじゃ馬娘がじゃじゃ馬に跨る図が見れる日もそう遠くはないだろう。

 

 

「さて、そんじゃ渡すもんも渡したし、さっさと終わらせて一休みしようか、どうせ一日じゃこれ出来上がんないしね」

「そっかー、まだ完成までは時間かかる?」

「後数週間掛からない位じゃない?」

 

 

 そう言いながら、首を傾げながら訪ねてくるヴラドに告げるカルナ。

 

 農場の敷地の整地はもちろんだが、動物達を収納する小屋もいる。まだまだ完成は先になる事が予想されるだろう。

 

 マーリン師匠にはその間、負担を強いる事にはなるが…。

 

 

「この程度の魔法くらいなら、まだ美味しい食事と睡眠さえあればなんとかなるね」

「ごめんね、マーリンさん、美味しい食事ならしっかり作るからさ…。ヴラドが」

「え!? そこは兄ィが作るんじゃないの!?」

「えー…」

「えー、って何、えーって」

「俺もヴラド兄ィの料理たべたいなぁ」

「あー…もう、仕方ないなぁ全く」

 

 

 ヴラドはカルナとモードレッドにそう言われ、致し方ないと肩を竦めてため息を吐く。

 

 協力してもらっているマーリン師匠がいる手前、美味しい食事を提供して奮起してもらわなくてはいけない。

 

 そこで、この串焼き公、ヴラドの腕の見せどころというわけだ。

 

 

「そんじゃ食料調達してきてよ、鶏肉とかその他もろもろ」

「よっしゃ任された! 行くぞ! モーさん!」

「しゃあ! 狩りの時間だー!」

 

 

 カルナからそう言われたモードレッドは手頃な剣を片手に力強く彼に応える。

 

 そう、まだ牧場も農場も穀物や動物達を入れたばかり、食料は別口から手に入れなければならない。

 

 ならば、どうするか? 答えは簡単だ。現地調達すれば良いのである。これが、彼らが無人島を開拓する上で学んだ事。

 

 食べれそうな野草、そして、お肉、魚などならこのブリテンを探せば見つかる筈。カルナとモードレッドは勇ましくカタッシュ村の周辺に食料が無いか早速散策に向かった。

 

 さて、牧場作り、聖剣作りも順調に進みつつあるカタッシュ隊員達。

 

 果たして村を開拓する彼らは無事に目標を達成できるのだろうか?

 

 この続きは…! 次回、鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 だいたい焼けば食えるーーーーNEW!!

 

 カウモーさん上機嫌ーーーーーNEW!!

 

 カタッシュ村牧場完成間近ーーNEW!!

 

 服が作れるアイドルーーーーーNEW!!



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聖剣作り その3

 

 

 前回の鉄腕/fateでは聖剣を作るべく、鉱石掘りが始まり、鉱石をひたすら掘りまくる事になったカタッシュ隊員達。

 

 必要な鉱石は合計6種。これを集めて、立派な聖剣を作るわけだが、今回、このコノートにて掘れた鉱石は…?

 

 

「ひーふーみー。3種かぁ…まぁ、でも上出来、上出来」

「メイヴちゃんツルハシの使い方上手くなってきたんちゃう?」

「えへへ♪ ほんとー? クーちゃん?」

 

 

 そう言って、ツルハシをギュッと握りしめて満面の笑みを浮かべ、クーフーリンに擦り寄るメイヴちゃん。

 

 それを見ていたスカサハ師匠はプクーと頬を膨らませると不機嫌そうにメイヴにこう告げる。

 

 

「こら、私の弟子にデレデレするな!!」

「別にデレデレなんてしてないわよー? ねークーちゃん?」

「あ、ここらへんの土ええ感じやね、ディル持って帰らへん?」

「あんたは気づいたらいっつも土触ってんね」

 

 

 女性二人のやり取りをそっちのけで洞窟の入り口付近にある土を触るリーダーに苦笑いを浮かべ告げるディルムッド。

 

 

 ーーー土は農業の必需品。

 

 

 確かに土と言われてみれば、洞窟付近にある土は粒子が細かく、水捌けが良さげな土がある箇所がいくつもあった。

 

 これは持ち帰れば農作にも役立つかもしれない、土の知識EXのベテラン、クーフーリンが言うのだから間違いない。

 

 

「この土は使える」

「そうだな、お前はそういう奴だったよ」

 

 

 そう言って、真顔でこちらを振り返ってくるクーフーリンに向かって呆れた様に告げるスカサハ。

 

 メイヴちゃんもこれには目を丸くしていた。つまり、これは要するにクーフーリンからしてみれば…。

 

 

 超可愛いメイヴちゃんの魅力<水捌けの良い土。

 

 

 という構図が脳内で出来上がっているわけである。これは、数々の英雄を虜にしてきたメイヴもキョトンとするほかなかった。

 

 

「とりあえずこの土持って帰ろ」

「だん吉から袋持ってくるか」

 

 

 そして、土を持って帰る事に話が纏まった。

 

 袋をだん吉から持ってくるディルムッドとクーフーリンの二人、メイヴはこの光景に先ほどのスカサハ同様にプクーと頬を膨らませている。

 

 それを見ていたスカサハは何やら勝ち誇った様にどうだと言わんばかりのドヤ顔を浮かべていた。

 

 どちらにしろ二人共、クーフーリンに相手にされてないのでどっちもどっちである。

 

 

「ちょっと! クーちゃん! 私と土どっちが大切なの!」

「そりゃ土やろ」

「即答!?」

「いや、だってこの土で美味しいトマトとかナスとか採れたりするんやで? なぁ?」

「しげちゃん、多分そういう事じゃないんだと思うよ」

 

 

 確かに美味しい野菜を採る為に良い土は大切ではあるがレディに対してそれはあんまりである。

 

 これには流石にディルムッドも苦笑いを浮かべるしかなかった。スカサハ師匠に関しては笑い声をあげてる始末である。

 

 

 ーーーシゲフーリンには女心がわからない。

 

 

 オカン力A+を持っているにも関わらずこれである。これは結婚できんわなとディルムッドは素直にそう感じた。

 

 さて、そして、これについては逆にメイヴの闘争心に火をつける事になる。

 

 クーフーリンもそうだが、冷静になって考えればディルムッドに関してもあまり自分の扱い方が彼と大差ないとメイヴは感じていた。

 

 YARIO…、今まで落としてきたどんな英雄よりも手強く身持ちが堅い連中である。

 

 アイドルというのは伊達では無いとメイヴは改めて思い知らされた。

 

 

「師匠、ツルハシ使わんで槍を突き刺しながら掘るのって器用すぎやろ、どうやるん? あれ?」

「気合い、根性、直感だ」

「いや、それで掘れるの?」

 

 

 そんなメイヴの思惑も知らず、採掘の際、器用にゲイボルクでサクサク鉱石を掘っていたスカサハに質問を投げかける二人。

 

 採掘にゲイボルクを突き刺しながら地面を掘る器用な芸当をするのはこの二人でもやれる自信は無い。

 

 普通にツルハシを使えば良いのではとは思うところではあるのだが、このスカサハの芸当には二人も驚かされた。

 

 

「見てなさいよ…絶対、私に夢中にさせてやるんだから…」

 

 

 そして、そのやり取りでさらに変な方向へとやる気をあげるメイヴ。

 

 果たして彼らが彼女の虜になる日は来るのだろうか? それは誰にもわからないが少なくとも心配は無さそうである。

 

 その後、鉱石と土を持ち帰る事にしたカタッシュ隊員達だが、メイヴちゃんが彼らについて来る事になったのは言うまでもない。

 

 

 

 さて、その頃、食料を得るべく、カタッシュ村の近くにあるブリテンの森に狩りに出掛けたモーさんとカルナは…?

 

 

「これは…獣道みたいだね」

「なるほど、ここによく動物が通りかかるって事だな」

 

 

 近くの森林にてよく動物達が頻繁に通るであろう、獣道を発見していた。よく目を凝らしてみれば動物のフンや足跡も多く、間違いなく数多くの動物がこの道を利用しているのがわかる。

 

 ここならば、罠を仕掛け、野生の動物を捕獲し食料にする事だって可能だ。となれば、やる事は…。

 

 

「ここに仕掛けようか、括り罠」

 

 

 猪捕縛用の括り罠をこの場所に作り、設置しておく。

 

 野生の動物がいる事は分かった。それが、猪などの動物となれば、自分達がカタッシュ村で作っている農作物に害を与える可能性もあり得る。

 

 手は早めに打っておく事が一番だ。

 

 

「猪かぁ…でも兄ィ危なくない?」

「え? そうかなぁ?」

「そうだぜ? 猪には牙もあるし突進されたりしたらあぶねーだろ?」

「大丈夫、大丈夫、俺達めちゃくちゃデカイ猪倒したことあるから」

 

 

 そう言って、モーさんを安心させるべく笑みを浮かべてサムズアップして応えるカルナ。

 

 

 ーーー猪退治の達人。

 

 

 確かに以前、幻の豚骨スープの素材である魔猪を討伐した経験がカルナにはある。その経験がここでも生きた。

 

 猪の習性ならば、なんとなくだが理解できている。普通の猪ならば、あの魔猪よりもさほど脅威にはならないだろう。

 

 というわけで、猪を狩る罠を獣道に隠すように二人は設置をしはじめた。そして、忘れてはいけないのが…。

 

 

「よし、このカメラを使ってちょっとカタッシュ村から観察してみよう」

「!? なんだそれ! すげー!」

「でしょ? これ作ったんだよADフィンとさ、なかなかの出来栄えでしょ?」

 

 

 手作りで作ってみた映像を撮るためのカメラ。

 

 これには魔術が織り込められており、ライブ中継でこのカメラを通して野生の動物、さらに海の中などの観察が出来る仕様にしてある。

 

 このカメラさえあれば、気づかれず、どんな野生の動物が近辺に生息しているのか? さらに、仕掛けた罠の付近に仕掛けておけば罠に掛かった際、すぐに駆けつける事ができる。

 

 …という訳で。

 

 

「ここにカメラ設置」

「おぉ!! なんかめちゃくちゃドキドキしてきた!」

 

 

 カタッシュ村にある仮拠点である簡易小屋においてある椅子に座り、早速、夜通しでVTRを撮り二人はそこで観察してみる事に。

 

 果たして、仕掛けた罠に猪は無事に引っかかるのだろうか?

 

 目をキラキラさせながら、カメラを見つめるモードレッド。初めての動物観察に彼女も興味津々だ。

 

 それから、翌日、設置してあるカメラを回収しに向かう二人、するとそこには…?

 

 

「ブヒ! ブモォ!」

「あ、居た!」

 

 

 罠に掛かっている猪が居た。

 

 威嚇しながら猪はカルナ達をジッと睨みつけてくる。とりあえずカメラを回収し、この猪をどうにかしなくては…。

 

 と、ここでカルナがカメラ回収について考えているとモードレッドがツカツカと罠に掛かっている猪に向かい歩いていく、そして…。

 

 

「そい!」

「ブモォ!?」

「あ…」

 

 

 サクッと剣を振り下ろして猪の首を切り落としてしまった。

 

 猪はご臨終、首が無くなった胴体はパタリと倒れてしまう。流石は円卓の騎士、剣の扱い方を心得ている。

 

 

「モーさん逞しいねぇ」

「なんか危ないかなって思ってたけど、よくよく考えたら戦とかに比べたら大した事ねぇなって思って」

「いやいや、サックリやり過ぎでしょ」

 

 

 倒れた猪の死体を見ながら満面の笑みでサムズアップするモードレッドにカルナは苦笑いを浮かべる。

 

 ひとまず、猪も倒し、さらにカメラも無事回収した。とりあえず、食料は無事確保できた。後はこれらを持ってカタッシュ村に帰らなければ。

 

 カメラを回収後、すぐにカタッシュ村に帰還する二人、今から帰れば鉱石掘りに出掛けたクーフーリン達もそろそろ帰ってきているはずだ。

 

 

「あ、この野草食べれるやーつ」

「え!? 草とか食べれるのか?」

「天ぷらにして食べたらうまいんだよこれ」

「マジかよ!」

 

 

 その帰り際にも、もちろん食料を持って帰ることを忘れてはいない。

 

 生えている野草から、食料になるものを探しながら二人は猪を持ち帰りつつ、回収していく。

 

 Wood Sorrelというこちら、カタバミの一種で葉を齧るとかなり酸っぱいが魚料理やサラダに酸味のアクセントにもよく使われている。

 

 後はワイルドガーリックやワラビなどの食料を摘み。さらに道中にあるきのこも忘れない。

 

 クローズド・カップ・マッシュルーム、ラージ・フラット・マッシュルーム、ポルタベッリーニなどの食べれるきのこを探し、回収していく。

 

 

 ーーーーきのこは偉大。

 

 

 きのこは偉大な食べ物である、味噌汁や焼いて食べるもよし。

 

 きのこはこの世界を作ったと言っても過言ではない、用途がたくさんあるきのこが偉大なのは当然である。

 

 

「久々にきのこ入りの味噌汁とかお吸い物食べたいねー」

「お吸い物?」

「うん、スープだよスープ、出汁は霊草から取ればいっか」

「うわぁ! なんか楽しみだな!」

「鍋もありだね」

 

 

 採れたての新鮮な野草ときのこ、そして、猪を使った鍋料理。

 

 間違いなく美味しいに違いない、手の込んだ料理とは言わないが大人数で食べるぶんには申し分ないだろう。

 

 そんな新鮮な食料を確保した二人はワイワイと会話を繰り広げながらカタッシュ村の帰路につくのだった。

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 きのこ狩りをするアイドルーーーーNEW!!

 

 モーさん猪を倒すーーーーーーーーNEW!!

 

 霊草で出汁を取り鍋料理を作るーーNEW!!

 

 スカサハ師匠、槍で鉱物掘りーーーNEW!!

 

 土の知識が豊富な英雄達ーーーーーNEW!!

 

 カメラをちゃっかり作っているーーNEW!!

 



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木の気持ちになってみればわかる

 

 

 そして、その夜。

 

 前回のコノートでの採掘の結果持ち帰ってきた鉱石物を並べながらカタッシュ隊員達は会議を開いていた。

 

 というのも? 三種では未だ聖剣作りに必要な種類の鉱石は集まっていない。残り三種の鉱石が必要なのである。

 

 現在、手元にあるのは血の涙石、レアルタ鉱石、そして、エードラム合金に使える鉱石物が一種のみ。

 

 呪獣胆石はおそらく、魔猪から採れるだろう事はスカサハとマーリンから彼らは教えてもらった。

 

 残りは剣の秘石、そして、エードラム合金に使う鉱石物の一種が必要な鉱石物である。

 

 いよいよ聖剣作りも大詰めに差し掛かってきた。

 

 

「農具が手に慣れてきたよね」

「近頃、手にしっくりくるんだなぁ、これが」

「兄ィ達も!? 実は俺もマイク握るより金槌が手に馴染んで来てさ!」

「もうさ、これなんの会話? アイドルのする会話じゃないよね?」

 

 

 そう言って、円になりながら話を繰り広げるクーフーリン、カルナ、ベディの三人の会話に冷静に突っ込みを入れるヴラド。

 

 

 ーーー確かにアイドルの活動はやってない。

 

 

 アイドルらしい事と言えば、ブリテンに来てから一回歌ったくらいのもので、あとはほぼ聖剣作りの採掘やら酪農やら農業やら機械いじりやらしかしてないのである。

 

 そろそろ本業しなくても大丈夫なのか? とは思いつつも、副業になりつつあるアイドル活動に一同は何故か身体がもう慣れてしまっていた。

 

 

「てかさ! てかさ! 早く鍋食べようぜ! 俺と兄ィがとってきた猪なんだ! こいつ!」

「おぉ、せやね!」

「へぇ、こんな料理もあるのね…」

 

 

 そう言って、ひょっこりとクーフーリンの背後から顔を出して囲んでいた鍋を見つめながら呟く、メイヴちゃん。

 

 そんなメイヴちゃんのいきなりの登場に一同は目を丸くしながら突如現れたメイヴちゃんに首を傾げていた。

 

 いつの間に、一同の内心での反応をそのまま言葉で表すのならそんなところだろう。

 

 

「あれ? リーダーこちらはどちらさん?」

「あ、この人はメイヴちゃんっていってコノートの国作りの職人さんやで、僕らの採掘作業手伝ってくれてなー」

「はぁい♪ コノートのアイドルメイヴちゃんでーす♪」

「あ、同業者さんだったんだ」

 

 

 そして、一同はメイヴちゃんの言葉に納得したように頷く。確かに同業者なら何ら疑う余地もない、同じアイドルならば志もきっと一緒の筈だ。

 

 ならば、仲間として迎え入れるのは当然の事、しかしながら、モーさんはカルナの背後からメイヴをジーッと見つめると、猫のような鳴き声で『シャー!』 っと声に出して威嚇していた。

 

 そして、威嚇していたモーさんは声高にこう皆に話をし始める。

 

 

「…こいつはクセェ! 俺の母様と同じ匂いがプンプンしやがる!」

「お、私も同意見だな、流石は私の弟子だ!モードレッド!」

「まだ脳筋のスカサハ師匠が可愛く見えるくらいだ! 私の勘がそう言っている!」

「よし気が変わった。明日からお前をしごき倒してやる」

 

 

 そう言って、胡散臭いメイヴに対してのモードレッドの自分との同意見に喜ぶのもつかの間、モードレッドの言葉に思わず真顔になりスカサハはパキパキと指を鳴らしている。

 

 モードレッドはそのスカサハの変貌に思わず『ひぃ!お師匠様! 勘弁!』 と声を上げると再びカルナの背後に逃げた。

 

 余計なこと言うからと顔を痙攣らせるYARIO達一同、さて、鍋の具合もだいぶ良くなってきた頃。

 

 マーリン師匠は閉じていた鍋の蓋をあける。

 

 

「おぉ…これは…」

「霊草を出汁に使ってみました」

「猪の肉も寄せて、名付けて! 山菜ときのこと猪の霊草水炊き鍋!」

 

 

 蒸気と共に広がる匂いに一同は思わずその鍋に釘付けになる。

 

 余った具材も寄せて、天然の深淵の霊草から取れた栄養価満点の出汁に猪の肉が加わり、さらに、とれたてのきのこや山菜が彩りよく鎮座している。

 

 味付けもしっかり行い、ポン酢で食べれば絶品間違いなし、YARIO特性の鍋、さてそのお味はいかに?

 

 

「…この染み渡る締まった食感、良い、実に良いな…」

「そうですね、美味です、ほんとに」

「うん! 美味い! こんな料理は食べるのは初めてだけど! 悪くないね!」

 

 

 これには小次郎とADフィン、そして、マーリン師匠はご満悦のようだ。

 

 鍋料理としても、霊草の出汁が実に効いていて身体に染み渡るようであった。モーさんやスカサハ師匠、メイヴちゃんも続いて口の中に鍋料理を放り込む。

 

 確かに染み渡るように広がるポン酢の風味によく効いた霊草の出汁が更に食欲を掻き立てる。

 

 

「はむ!…んんー! 美味い! こころなしか身体が軽くなったみたいだ!」

「あ、これ、寿命が延びるらしいからね、なんでも不老不死になるとかなんとか」

「…っ! ぶっー!?」

「ま、マーリンさぁん!? 大丈夫ですか!?」

「ゲホ! ゲホ!…え!? この出汁! 不老不死効果あるの!? 聞いてないよ!?」

「私は元から不老不死だから問題ないな」

 

 

 そう言って、思わず食べてしまった鍋の効力に思わずびっくり仰天するマーリン師匠。

 

 それはそうだろう、気づかず食べた鍋が実は不老不死効果がある伝説の食材が入ってましたと聞かされればそうなることは必然だ。

 

 しかも、彼らはこれを昆布と同じくらいにしか考えていないのである。

 

 気づかず食べてしまっていつの間にか寿命がカンストしてしまいましたという話なのだから、マーリンがこんな反応をしてしまうのも無理はない。

 

 

「あ、確かになんか身体の感覚がいつもと違う感じだ。いまなら盗んだプリドゥエンでビッグウェーブに乗れそうな気がする」

「盗んじゃダメだよー」

「そうだよ、盗むくらいなら作れば良いじゃん、兄ィなら作ってくれるよ」

「君たちさりげなく宝具作るとか軽々と言うのやめてもらえないかな」

 

 

 そう言って、プリドゥエンくらい自力で作れると豪語する彼らに真顔で告げるマーリン。

 

 実際作れそうだから怖い、というより、既に聖剣作りなんかしているので今更、宝具が作れないなんて事は無いだろう、むしろ、聖剣が作れるならなんでも作れる。

 

 彼らにはその確信があった。

 

 

「おいおい、俺でも流石にプリドゥエンとかいうのは無理だよ、多分」

「そっかー、やっぱりそうだよなぁ…」

 

 

 そう言って、カルナの言葉に思わずシュンと縮こまり落ち込むモードレッド。

 

 しかし、それからしばらくして、カルナはサムズアップすると落ち込むモードレッドの肩をポンと叩き満面の笑みでこう告げる。

 

 

「だって、俺、プリドゥエンより凄いの作っちゃうからな!」

「…っ!? マジかよっ!? やっぱり兄ィは最高だな!!」

 

 

 サムズアップするカルナの言葉に嬉しそうに目をキラキラさせるモードレッド。その言葉に一同は納得したように無言で頷く。

 

 だが、約1名、マーリンのみ、真顔でブリドゥエンより凄いものを作ると断言するカルナに明らかに目を丸くしていた。

 

 そんな中、マーリンが心の中で呟いたのはたった一つのシンプルな言葉であった。

 

 

(それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?)

 

 

 全くもって、ギャグにしか聞こえない。しかし、ところがどっこい彼の場合はギャグではなく大真面目で言っているのだろう。

 

 さて、ブリドゥエンはさておき、猪の肉を使った霊草の水炊きは皆から高評価であった。やはり、栄養価が高い霊草の出汁は良い出汁が取れている。

 

 さて、そんなこんなで皆が霊草の鍋を囲んでいると、ここである事をポンと手を叩きクーフーリンは思い出す。

 

 それは…。

 

 

「あ、風呂がまだ無いな、そう言えば」

「あ、言われてみれば…」

「確かにくたくたに帰って来て、お風呂無いのは困るよねぇ」

 

 

 そう、カタッシュ村にお風呂が無いという事実。

 

 近くには水場らしきところはあるものの、やはり、ここは疲れた身体を癒すためにお風呂に入りたいところ、そこで…?

 

 

「檜風呂作っちゃいますか?」

「そうしますか」

 

 

 そう、彼らはなんとこのカタッシュ村に檜風呂を作ることに決めた。

 

 以前、ダッシュ村に露天風呂を作った彼らならば、ここでもその経験が活かせるはず、カルナに関してはインドでも檜風呂は作っていた。ならば…。

 

 

「木から作るか」

「斧使うよね? ちょっくらもって来る」

「今から作るのかい!?」

 

 

 彼らが取る行動は早い、即決で決めてしまうとすぐさま作業に取り掛かるべく準備を始める。

 

 という事で、今回から始動する新たなる企画はこちら。

 

 YARIOはカタッシュ村に露天風呂は作れるか!?

 

 という具合である。聖剣作りのために鉱石を掘りに行って帰って来たばかりだというのに大忙しである。

 

 

「露天風呂…ふむ、和を感じるな、どれ、私も合力致そう」

「おー! 小次郎さん! 頼もしいね! その長い剣って大木切れたりできんの?」

「気合いを入れれば出来るな」

「スゲェ…俺も剣技を見習わないと…」

 

 

 ーーー気合い入れて剣を振れば木は倒せる。

 

 

 剣技歴ベテランの小次郎さんが言うのだから間違いない、振るう太刀筋が多重次元屈折現象を引き起こしてツバメを落とせるようになってからが本番だとか。

 

 何はともあれ、大木を長い刀一本で切り倒せると豪語する小次郎の言葉に目をキラキラとさせるモードレッド。

 

 しかし、その話を聞いたスカサハ師匠はと言うと?

 

 

「そんなもの本気で殴ったら倒れるだろう」

「いや無理でしょ!?」

 

 

 真顔でとんでもない事を口走っていた。

 

 大木なぞ、殴れば倒せる。と豪語してしまうスカサハ師匠の言葉にコノートのアイドル、メイヴちゃんも思わず突っ込みを入れざる得なかった。

 

 

 ーーー女子力よりも素の腕力には自信がある。

 

 

 流石はスカサハ師匠、一筋縄ではいかないのがこの人である。

 

 さて、話は纏まったところで、食事をあらかた終えて、風呂作りに取り掛かり始める。

 

 女性陣も風呂作りに協力すべく、木材を調達しにカタッシュ村の近くの森へカタッシュ隊員達と向かう事に。

 

 

「斧の使い方はモーさんとメイヴちゃん初めてじゃない?」

「…そうね、木は切り倒した事ないかしら」

「えーとね、まずは持ち方なんだけど」

 

 

 そして、もちろん初参加の女性陣にはカタッシュ隊員のヴラドとベディがわかりやすく丁寧にレクチャー。

 

 モーさんもメイヴちゃんも初めて教わる斧の使い方を真面目に聞きながら、木の切り倒し方について学ぶ。

 

 そして、そんな二人を見たカルナは一言。

 

 

「一番は木の気持ちになる事だね」

「木の気持ち?」

「俺らは木の気持ちみんな分かるから」

「マジかよ!? スゲェ!?」

 

 

 ーーーー木の気持ちになれば分かる。

 

 そう、木材を加工するにあたり、木の気持ちを理解する事が何よりも大切な事。YARIOのメンバーは全員、木の気持ちがよく分かる。

 

 リーダーやカルナに関しては木と土の気持ちも理解できるのだ。

 

 アイドルたるもの、木と土の気持ちくらい理解できなくてはいけない。(※特にアイドル活動には必要ありません)。

 

 さて、というわけでまずは木の気持ちになる事を頭に入れつつ、斧を持った二人は初めての伐採作業に移る。

 

 

「ふむ、それじゃ私も久々にゲイボルクで木を…」

「槍で木を倒すなんて聞いた事無いんだけど」

「当初、素手で倒そうとしてたからね、この人」

 

 

 ーーーー槍で木を倒す。

 

 クーフーリン、ディルムッドの二人は木の伐採に槍を使おうとするスカサハ師匠の行動に度肝を抜かされていた。

 

 まさかの槍の使い方である。その発想は流石の彼らにも思いつかなかった。

 

 

「ほんまにやり放題やな、槍だけに」

「しげちゃん、久々だね寒いやつ」

「せやね」

 

 

 さぁ、こうして寒いクーフーリンの親父ギャグと共に始まった木材調達の為の伐採作業。

 

 カタッシュ村での露天風呂作り。果たして彼らは無事にカタッシュ村に露天風呂を作り上げる事ができるのだろうか?

 

 聖剣作りの鉱石、さらに、伝説のラーメン作りにカタッシュ村の開拓とまだまだやるべき事はたくさん山積みだ!

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 霊草で水炊きを作るーーーーーーーーーーーNEW!!

 

 大木を刀で切り倒せる農業スタッフーーーーNEW!!

 

 木の気持ちまで分かるアイドルーーーーーーNEW!!

 

 槍で伐採を試みる師匠ーーーーーーーーーーNEW!!

 

 多分、宝具を作れると断言できるアイドルーNEW!!

 

 アイドル活動をやってないアイドルーーーーNEW!!



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露天風呂作り その1

 

 

 

 露天風呂作りに取り掛かったクーフーリンとスカサハ達。

 

 以前、福島県のダッシュ村で作った風呂作りの知識を活かしつつ、この風呂作りに取り掛かる訳だが。

 

 

「のう、しげちゃん。こんな感じでいいのか?」

「流石師匠、綺麗に切り倒せてるなぁ、切り口見事やね」

「ふふん! こころなしか木の気持ちもわかってきた気がするぞ! 別に撫でて褒めてもいいんだからな♪」

「あー、はいはい、よくできました」

 

 

 そう言って、丸太を担いでいる師匠の頭を撫でてあげるシゲフーリン。

 

 どこかの赤王様みたく褒めろと子供っぽいところを見せる師匠にリーダーも思わずほっこりとしてしまう。

 

 そんな二人のやり取りを見ていたメイヴちゃんは羨ましそうにその光景を眺めていた。彼女もプクーと頬を膨らませながら鋸をギコギコと動かし木を加工している真っ最中である。

 

 

「うー、私のクーちゃんに擦り寄って…むー!!」

「メイヴちゃんや、変に力入れすぎてるよ肩の力抜かなきゃ」

「まぁ、あの二人はずっと前から師弟関係だったからね」

「あれ? 師匠を褒める弟子ってなんかおかしくない?」

 

 

 ディルムッドとベディヴィエール、そして、ヴラドの三人はメイヴの言葉に突っ込みを入れる。

 

 確かに師匠が弟子に撫でられる図とはかなりシュールだ。しかしながら、スカサハに一番気に入られているのはリーダーであることは既に皆は周知の事。

 

 

 ーーーなんだか微笑ましい図。

 

 

 この露天風呂作りを通して二人の仲がさらに良くなってくれたらなと思うカタッシュメンバー達。

 

 さて、露天風呂作りといえば、我らが親方、カルナの出番、そんなカルナはというと今はモードレッドに付いて工具の使い方を伝授していた。

 

 インドにてたくさんの建設を手がけたカルナの自慢の職人技がここでも光る。

 

 

「ボロボロだな、断面図」

「そうだねぇ、兄ィ、これ使えるの?」

「こいつは俺達の人生と一緒だぜ? 使わなきゃかわいそうでしょ」

 

 

 そう言って、訊ねてくるモーさんにキリッとした表情で告げるカルナ、それにはなぜだか謎の説得力があった。

 

 

 ーーー確かにいろんな事があった。

 

 

 まぁ、それはさておき、風呂作りは経験から作り方はわかる。木の香りが立ち込める中、加工した木を使い風呂を作っていく。

 

 以前ダッシュ村で作った処女作ではリーダーとアヒル隊長が入浴していた際、水圧に耐えきれず、前面の板が外れて崩壊した。

 

 そのため、厚い板を使って作り直し、その後数年間風呂として活用したが、風雨にさらされ水漏れを抑えきれなくなったため、浴室つきの鉄砲風呂に作り変えた。

 

 そして、もちろん、風呂桶作りだけではなく水も引いてこなくてはならない。

 

 

 ならば! 山からの水を通す水路を自作しなければ!

 

 

 以前は無人島で水が山の方にしか出ていなかったため、自力で水路を作成。途中途中に様々な技術を使い長い長い水路を完成させた。

 

 今回もこれをやる必要がある。

 

 

「てな訳で川から水を引いてくるわけなんですけども」

「…水路かぁ…俺作った事ないもんな…」

「俺達がちゃんと教えるから安心しなさいな」

「…ディル兄ィ…。うん! 俺頑張る!」

「よーしよし! なんだろうね、この可愛い娘」

「むー! ガキ扱いすんなよ!」

「あははは、俺らおっさんだから仕方ないね」

 

 

 そう言って、ワシワシと優しくモーさんの頭を撫でるディルムッドに苦笑いを浮かべながら肩を竦め告げるカルナ。

 

 彼らの心境的には娘か妹が居たらこんな感じなんだろうかという具合なのだが、モーさんはどうやらそれがご不満のご様子。

 

 すると、メイヴの方を見たモーさんはビシッと指差しながら彼女にこう告げ始める。

 

 

「やい! 兄ィやリーダーに手出したら許さないからな! 絶対お前なんかに渡すもんか!」

「ふーん、なら奪われないようにせいぜい頑張らないとね♪ メイヴちゃんは欲しいものは手に入れる女だから」

「なんだとー! 見てろよ! お前なんかに負けないくらい凄い水路作ってやんだからな!」

「へー、なら私はクーちゃんと一緒に凄いお風呂作って二人で…ふふふ…」

 

 

 そう言って、何やら言い合いをしはじめるモーさんとメイヴの二人。

 

 ただでさえファザコンを拗らせているモードレッドだが、どうやら、ブラコンにマザコンも併発しかけているようだ。ちなみにマザコンはシゲフーリン(オカン)に対してだが…。

 

 これにはディルムッドとカルナの二人も顔を見合わせて肩を竦める。

 

 メイヴに限ってはあんな事を言ってるが、リーダーと風呂に入ると言い出すあたりわかって無い。

 

 リーダーと風呂に入っても大概良いことはない。

 

 現に以前作ったお風呂ではアヒル隊長と一緒に入って露天風呂作ったのはいいが浴槽の壁壊れてリーダーがお湯とともに落下してしまった。

 

 それに、下手をすれば入浴後に入浴剤にどれだけ保温効果があるのか検証すべく雪原を走り出したりする事も…。

 

 メイヴの場合はビキニでそれをやる羽目になるだろうが、付き合わされる彼女の姿を想像した二人は左右に首を振らざる得なかった。

 

 

 ーーーコノートの女王が裸一貫で雪原へ。

 

 

 どんな絵面だと言わざる得ない。

 

 リーダーならまだしもそれに彼女が付き合おうとするならば全力で阻止せねばと二人は固く誓うのだった。

 

 まぁ、でも露天風呂からリーダーと落下する彼女のリアクションはちょっと見てみたいと思ったのはここだけの話である。

 

 さて、というわけで、メイヴに威嚇する猫みたいなモーさんをヒョイと掴み上げてひとまず水路作りに取り掛かるカルナとディルムッド。

 

 そこで使うのが長い竹、日本に行った際、立派な竹が何本かあったのでこれを繋ぎ合わせて使う。

 

 

「結構幅あるな、これ」

「懐石料理の器みたいだね」

「鯛のお刺身入れて欲しいな」

 

 

 水路に使う竹を繋ぎ合わせながら、感想を述べるカタッシュ隊員達、確かに、これならば立派な水路になりそうだ。

 

 懐石料理の盛り付けにも申し分ないほどの幅、立派な竹である。

 

 ディルムッドは竹をジッと見つめながらこう語りはじめた。

 

 

「万が一、次のサミットがここになっても大丈夫」

「へ? なんでだ?」

「各国の首相をここでおもてなしできるよ」

 

 

 ディルムッドはそう言って、立派な竹を見つめながら頷く。

 

 ほんとに当たり前のように木槌使うし当たり前のように竹割るし各国の首相もおもてなしできる、これでアイドルだと言うのだから驚きだ。

 

 

 ーーーサミット会議は是非カタッシュ村へ

 

 

 実際にやってみても面白いかもしれない、モーさんはディルムッドの話を聞いてアーサー王に進言してみようかなとちょっと考えてみた。

 

 今度の円卓会議をカタッシュ村で行うのも面白いに違いない。

 

 しかしながら、この竹はあくまで水路の為の竹だと後にカルナに言われ、モーさんは少しばかりしょんぼりとしてしまった。

 

 まずはカタッシュ村に水路を引く事が最優先だ。

 

 以前は水路500mを開通させた実績を持つ彼らにかかれば、たかだかこの村の水路を作るくらいわけない。

 

 あの水路は森の古井戸から森を抜け、海を渡り、繋がった。

 

 その経験がここにも活きる。木槌を握るモーさんの手にも力がこもる、このカタッシュ村に対する思い入れは彼らと過ごすうちに日に日に強くなっていた。

 

 

「よし、以前の師匠達に習った通りにやれば必ずうまくいくよ」

「…以前習った師匠達?」

「そうだよ、木の師匠、土の師匠、石の師匠から俺達はいろんな事を教わったからね」

 

 

 作業をしながら二人は質問を投げかけるモーさんに笑顔で頷く。

 

 以前作った水路は彼らだけの力ではない、彼らを支えてくれた職人達がいたからこそなし得る事が出来た水路だ。

 

 水路作りのオールスター集結、そんなプロフェッショナルから直々に教えを受けた彼らに作れない水路など無い。

 

 

「…やっぱりすげーよ兄ィ達! !」

「へへへ、俺達が凄いって言うか、これを考えた人達が凄いんだよ」

「そうだよ、先人に感謝しないとね?」

「よーし! 俺も水路作りのプロになるぞー!」

 

 

 ディルムッドとカルナの話にますますやる気に満ち溢れるモーさん。そんな、彼女のやる気に思わず二人もほっこりしてしまう。

 

 そんな、三人は水路を露天風呂に引く為、せっせと繋ぎ合わせる。

 

 さて、そんな中、一方のお風呂作りに取り掛かるメイヴとクーフーリン、スカサハ、ヴラド、ベディの五人はというと?

 

 

「水圧で崩壊しないようにしとかないとね」

「もう、作ったのもかれこれ十年前くらいだからなぁ」

「えー、そんな経つっけ?」

 

 

 そう、かれこれ風呂作りも結構前の出来事。

 

 かれこれ十年くらい前、ダッシュ村で作った露天風呂。きっかけは露天風呂巡りだったが…。

 

 しかし、身体が作り方を覚えていた。ダッシュ村での風呂作りの経験が生きる。処女作は失敗こそしたものの、その失敗があったからこそ風呂作りもこうして無事に出来るようにまで成長した。

 

 

「…へぇ、貴方達、本当になんでもできるのね」

「あ、メイヴちゃん、ここ抑えててもらえる?」

「え? あ、うん、こうかしら?」

「そうそう! ありがとね!」

 

 

 メイヴが抑えた箇所を木槌で叩くヴラド、その表情は真剣だ。以前なら、こんな作業はできなかったが今なら問題なくやれる。

 

 他の箇所はベディが手を加えた。そして、風呂に使う木材の加工はスカサハとクーフーリンの二人が立派な丸太を形にしていく。

 

 

「鋸はこうして…腰を入れるとやり易いですよ」

「なるほど、こんな感じか?」

「そうそう、ホンマに木の気持ちわかってきた感じありますね!」

「ふふふ、お前の師匠だからな」

 

 

 二人の息はバッチリ、木の加工法を丁寧にクーフーリンから学びながらスカサハ師匠は木材の加工に励む。

 

 そして、ADフィンと小次郎さんの二人は…?

 

 

「この辺の木ですかね」

「よし、ならば切るか、あの木なんてどうだろうか?」

「いいじゃないですか!」

 

 

 木材の調達に力を注いでいた。こうする事で、カタッシュ隊員達への負担を少しでも軽減でき、作業効率も上がる。

 

 木材の加工に少しでも時間が裂けれるような配慮、これならば、露天風呂の完成もそんなに日を跨ぐ事なく出来る筈。

 

 そして、マーリン師匠は…?

 

 

「こ、こら、リンダ! 晴男! やめるんだ! 僕のマントは食べれないと言ってるだろ」

「メェー」

 

 

 酪農で飼育しているヤギ、晴男とリンダと名付けられた二頭のヤギの世話をしていた。

 

 というのも、ヤギはこの二頭だけではないが、この二頭のヤギの言うことを周りのヤギ達が良く聞くのでこうして群の中心である二匹を軸にマーリンは牧場にいる動物たちに魔法をかけている。

 

 柵もまだ不十分なところもあるし、こうして誰か酪農に必要な動物たちを見る役目をする必要がある。

 

 その役目にマーリンが抜擢された訳だが、現在、困った事にヤギ二頭からガジガジとマントを齧られているのである。

 

 

「…君からも説得しておくれよキャスパリーグ」

「フォーウ」

「いや、君も僕のマントをガジガジするのはおかしいんじゃないかな!?」

 

 

 そう言って、ヤギと共にマントをガジガジとしはじめるキャスパリーグに思わず声を上げるマーリン。

 

 このマントは使い物にならなくなるかもしれない、そうマーリンはため息をつくほかなかった。

 

 とはいえ、彼もこれはこれで楽しんでいる節はある、動物たちの面倒を見るのは骨は折れるが割とやり甲斐はあった。

 

 この土地を中心にブリテンを発展させようとする彼らの姿勢にも共感できる部分があり、不満は無い。

 

 

「はぁ、全くもう…」

「フォーウ」

「…君を見たら彼らなんて言うだろうね? そのモフモフした部分服に加工されるかもよ?」

「フォウッ!?」

「うん、割と冗談じゃないんだよこれが」

 

 

 そう言いながらヤギと共にマーリンのマントをガジガジしているキャスパリーグににこやかな笑顔を向け告げるマーリン。

 

 割と嘘でなく本当に彼らならやりかねない、確かに品質に関してはかなり良さそうだ。

 

 さぁ、風呂作りの方も順調に進んでいる中、各自カタッシュ村で奮闘する隊員達。

 

 風呂作りの筈が、水路も作る羽目になったが、果たして、無事に皆がゆっくりと疲れを癒せる露天風呂は出来上がるのか?

 

 

 この続きは!次回の鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 ブリテンに露天風呂を作るーーーーーーーーーNEW!!

 

 ブリテンに水路を作るーーーーーーーーーーーNEW!!

 

 モーさんがブラコンとマザコンを併発気味ーーNEW!!

 

 円卓サミットができる村ーーーーーーーーーーNEW!!

 

 褒めると伸びるスカサハ師匠ーーーーーーーーNEW!!

 

 メイヴちゃん風呂作りに奮闘ーーーーーーーーNEW!!

 

 国の首相をもてなせるアイドルーーーーーーーNEW!!



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露天風呂作り その2(完成)

 

 

 

 露天風呂作りもいよいよ大詰め。

 

 完成にはあれから数日ほど時間を有したが、思いのほか順調に作業の方は進んだ。

 

 これもカタッシュ隊員達の頑張りの賜物、皆の協力が実を結んだ。

 

 

「いやー、立派な水路だね」

「モーさん頑張ってくれたからだね」

「えへへ…」

 

 

 モードレッドはディルムッドに頭を撫でられながら照れ臭そうに笑う。

 

 カルナ、ディルムッド、モードレッドの三人が繋げた露天風呂用の水路。これなら、水も容易に引いてこれる。

 

 後は露天風呂の湯船の方が心配だが? こちらも…。

 

 

「…ふぅ…、師匠」

「あぁ、わかってる、ここを括ればいいんだよな」

「クーちゃん? ここも固定しとく?」

「それがええやろうねぇ」

「うん! わかったわ!」

 

 

 どうやら、順調に進んでいるようだった。

 

 これなら、立派な露天風呂の完成も目前。作業をするメイヴ、クーフーリン、スカサハ、ヴラド、ベディの五人の手にも思わず力がこもる。

 

 水路は大方完成したので、湯船の製作作業にカルナ、ディルムッド、モードレッドも加わり、さらに、スタッフ達も助力する。こうすれば時間も短縮でき効率も良い筈。

 

 それから大体、数十分が過ぎたあたり、木で出来た湯船が綺麗な形になった。

 

 

「よーし! ええ感じや!」

「うし!」

 

 

 そして、ようやく完成、YARIOお手製で作り上げた露天風呂。

 

 外の開放的な空間を一望でき、なおかつ、カタッシュ村の自然を堪能できる立派な露天風呂が完成した。

 

 気がつけば、皆、身体はクタクタ、ようやく疲れを癒せる湯船の完成に一同のテンションも上がる。

 

 

「よーし! それじゃ試運転はリーダーにお願いしようかな」

「お馴染みだよね」

「オーケー! そんじゃ湯を入れてくね」

 

 

 水路に通す水を沸かし、湯船へ。

 

 完成させた湯船にどんどん湯が溜まっていく、そして、褌になった我らがリーダーがスタンバイ。

 

 風呂桶にお馴染みの黄色いアヒル隊長を入れ、待つこと数分あまり、湯を張った湯船が出来上がる。

 

 さて、その湯加減は…。

 

 

「…おー…これは…、はぁ…」

「いいかんじ?」

「バッチリやね」

 

 

 何ら問題はない。湯船が水圧に耐えきれず倒壊するような事もどうやら無さそうだ。

 

 お湯に浸かったクーフーリンはしばらく湯船を堪能した後、すぐさま湯船から上がると服を着て完成した露天風呂を開ける。

 

 湯船には相変わらずプカプカと浮いているアヒル隊長がいるままだが、これは…?

 

 

「え? リーダーもういいの?」

「僕は試運転だけやからね、安全は確保できたし、師匠達から先に入って貰おうかなと思うてな」

「あー…確かに、女の子達泥だらけにしたまま、風呂にゆっくり浸かるわけにもいかないしね」

「なんだ…しげちゃん、そこまで気を使わずとも…」

 

 

 そう、作業を終えた女の子達から先に完成した露天風呂に入れてあげようという配慮からだった。

 

 確かに、泥だらけの女の子を他所に自分だけ風呂を堪能するわけにはいかない。

 

 だが、メイヴやスカサハ、モードレッドは皆と混浴でも構わないと言ってはいたが、そこは、しっかりとカタッシュ隊員達は左右に首を振った。

 

 

 ーーー週刊誌を賑わすわけにはいかない。

 

 

 アイドルたるもの、そこはきっぱりとしておかねばと一同はそんな変な想いから丁重な御断り、スカサハ達が一緒に入れずに残念がっていたのは余談である。

 

 おっさん達の裸よりも美人、美女の裸の方が視聴者的にも受けが良いのは確かである。

 

 というわけで…?

 

 

「はぁぁぁ…っ! 気持ちいぃ〜…」

「…うむ、素晴らしい湯加減だな…」

「…ふぁ〜…癒される〜…」

 

 

 ここからは、我らがカタッシュ隊員、女性陣の入浴をRECでお送りしよう。

 

 湯加減は問題なく、さらに、カタッシュ村の自然を一望できる最高の癒しの空間、疲れた筋肉の疲労も湯で洗い流せてしまう。

 

 スタイルが良いスカサハ師匠の豊満で自己主張が激しい二つの丘の間にはアヒル隊長が目前に迫る、素晴らしい大きさだ。

 

 普段、髪を束ねているモードレッドは髪を下ろし、綺麗なうなじを露わにしながら湯船の縁に頬をつけてくつろいでいる。

 

 メイヴも妖艶な長く綺麗な髪を湯で洗いつつ、綺麗な脚を湯船の中でケアするように揉んでいた。

 

 確かに湯船を作るのに力作業もあった為、足に負担が来ていてもなんら不思議ではない。

 

 

「…というかこのアヒル、いるか?」

「しげちゃんのお気に入りだそうだ、名前はアヒル隊長というらしい」

「ふふふ、クーちゃんも可愛いところあるわねぇ」

「いるか? メイヴ」

「いや、それもらっても使い道がわからないのだけど…」

 

 

 そう言って、スカサハから投げられたアヒル隊長は湯船を跳ね、メイヴの胸の谷間に綺麗にハマるように落ちるとメイヴの胸部に跳ね返され湯の上でピタリと静止する。

 

 確かにアヒル隊長の使い道と言ってもプカプカ浮かんでいるだけでこれといって無さそうだ。

 

 仕方ないのでスカサハから投げ渡されたアヒル隊長をメイヴは湯にプカプカと浮かべたままにする。

 

 

「てかさー、師匠スタイルいいよなぁ…なんていうか腰回りに無駄がないって感じだし、メイヴもだけど」

「いやいや、皆大差無いでしょう? モードレッドも胸とかにこんな立派なものがある訳だし…ね!」

「ぴゃあ!? な、何すんだ?!」

 

 

 そう言って、背後からくつろいでいるモードレッドの胸部を鷲掴みにするメイヴ、いきなりの出来事にくつろいでいたモードレッドもこれには可愛い悲鳴を挙げる。

 

 どうやら、露天風呂の方は安全性もあり、特に問題も無さそうだ。

 

 倒壊する恐れもなく、長らく使う事が出来そうである。疲れた体を癒すにももってこいだろう。

 

 そして、丁度その頃、女性達が湯船に浸かっている間、カタッシュ隊員達はというと?

 

 

「やっぱ、清潔感はいるよね」

「疫病とか怖いしね」

「この村を綺麗な村にするならやっぱり清潔のプロフェッショナルがいると思う」

 

 

 そう、カタッシュ村の清潔感について談義していた。

 

 確かに風呂と水路は完成したものの、酪農などを行うにあたり匂いとかも気になるところ、動物などの死体が出たり疫病が流行ったりする可能性も歪めない。

 

 やはり、ここは清潔感がある村にしておきたいところだ。となれば、清潔のプロフェッショナルにどうすればこの村を清潔にしておけるのかを伝授してもらわなければいけない。

 

 という事で…?

 

 

「今回、そんな感じで村を清潔にする為の匠をADフィンが連れて来てくれるみたい」

「だん吉使ってんの?」

「せやで…多分そろそろ帰ってくるんやないかな?」

 

 

 そして、この話は以前もやっており、今日、なんとADフィンが清潔のプロフェッショナルを呼びに農家スタッフ小次郎さんとだん吉を使い呼びに行っていた。

 

 もちろん、カタッシュ隊員達は誰が来るのかはわかっていない。

 

 それから待つ事数時間、だん吉が火花を散らしてカタッシュ村に舞い戻ってきた。

 

 火花を散らして現れただん吉の中からはADフィンが現れる。

 

 

「お、帰ってきよったな!」

「おかえりー」

 

 

 そう言って、だん吉から現れたADフィンに手を振るカタッシュ隊員達。

 

 そして、農家スタッフ小次郎も助手席から現れると手を振る彼らにサムズアップをして応える。

 

 それからしばらくして、後部座席の扉が開き、今回、カタッシュ村に協力してくれる匠が姿を現した。

 

 鋭い力強い眼差しに婦長さんの様な格好、さらに腰には物騒な拳銃の様なものをぶら下げている女性。

 

 ADフィンはニコニコと笑顔を浮かべたまま、カタッシュ隊員達に今回連れてきた清潔のプロフェッショナルについて語り始める。

 

 

「あ、皆さん、紹介しますね! 今回、カタッシュ村開拓に協力してもらう事にしましたフローレンス・ナイチンゲールさんですっ!」

「はじめまして、ナイチンゲールです。ADフィンさんからお話はお聞きしました。どうぞお見知りおきを」

 

 

 そう、今回カタッシュ村に協力してくれることになった清潔職人ことフローレンス・ナイチンゲールさん。

 

 彼女の経歴を話せば、凄まじいの一言に尽きる。

 

 裕福な紳士階級の出身。社交界の華とされながら、若き彼女は、卑賤な職業であるとされていた看護婦(看護師)となることを希望した。

 

 医師と看護の知識と技術を得た後、ロンドン・ハーリー街の医院で監督として看護体制改革に着手。

 

 私財を用いて近代的な設備を作り、看護婦たちの状況改善に努めた。

 

 その後、知己であった戦時大臣シドニー・ハーバードの頼みを受けて大英帝国陸軍病院看護婦総監督としてクリミア戦争へと従軍する。

 

 医療や看護への不理解から来る不衛生や多数の前時代的な規則が横行し、地獄の様相と化した戦時医療の改革を務めるべく、彼女は奮起する。

 

 一時は「戦時医院での死亡率が跳ね上がった」ものの活動を続け、清潔な衛生と正しい看護を徹底し、惜しみなく私財をなげうって物資を揃え、成果を導いた。

 

 40%近かった死亡率を5%までに抑えてみせたのである。

 

 まさに清潔のスペシャリスト。

 

 確かに清潔について清潔職人の彼女からカタッシュ隊員達が学ぶ事は多い。

 

 だが…。

 

 

「ナイチンゲールさん連れてきちゃったよ」

「病院作んなきゃいけなくなるパターンだねこれ…」

 

 

 そう、つまり、それは、カタッシュ村に病院を建てなくてはいけなくなるという事。

 

 まさかのブリテンに病院開設、確かに衛生面を良くするのであれば病院は必須であるし、必要不可欠だ。

 

 一通りカタッシュ村を見渡したナイチンゲール師匠はふむ、と何やら納得した様に頷いている。

 

 

「なるほど、確かに見る限りここは不衛生といえば不衛生ですね、聞けばこの国には病院すらないとか…」

「そうなんですよ、まぁ、昔だから…」

「あり得ません、今すぐ作りましょう」

「即答ですねー」

 

 

 答えはわかっていたものの、そのナイチンゲールの言葉にカタッシュ隊員達は顔を引攣らせる。

 

 今日、ようやく風呂と水路が完成したばかりだというのにまさかの病院をつくる展開に、しかしながら、清潔のプロフェッショナルが言うのだから病院を作らねばならないのだろう。

 

 そして、その病院だが、問題は?

 

 

「作るって? どのレベルから作るの?」

「そんなもの1から建てればいいでしょう」

 

 

 ナイチンゲール師匠、まさかの即答だった。

 

 容赦無く、病院を1から全て建てろと言う要望がカタッシュ隊員達に飛んで来る。

 

 確かに作れないことはない、作れないことは無いのだが、全く容赦がない、流石は清潔のプロフェッショナル妥協を許さない。

 

 さらに…。

 

 

「清潔にするのはまず清掃からですね、明日から清掃活動と消毒を行います」

「なんかわからないけど、この人にモーさん会わせたらモーさんが泣かされそうな気がしてきた。勘だけど」

「奇遇だな俺もそんな気がしてきたよ」

 

 

 カルナの言葉に肯定する様に頷くディルムッド。

 

 直感だが、そんな気がしてきた。

 

 確かに凄まじく人の話を聞きそうに無いタイプである。芯が通っているのでそこは良いところではあるのだろうが、尻に敷かれそうだなと一同はそう感じてしまった。

 

 ナイチンゲール師匠なら確かに医療に関しての知識も豊富であるし、これ以上頼もしい人材は居ない。

 

 クリミアの激戦区から連れてきたのか、はたまた、彼女がいる大学にお願いしに出向いたのか定かでは無いが、よくこの人を連れてこれたなとカタッシュ隊員達はADフィンの手腕に感心するばかりである。

 

 

 さて、水路と露天風呂が完成したカタッシュ村。

 

 清潔の匠。フローレンス・ナイチンゲール師匠を迎え、この村は新たな発展を強いられる事に。

 

 果たして、彼らは無事にカタッシュ村を清潔感ある村にする事ができるのか?

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 清潔の匠ナイチンゲール師匠襲来ーーーNEW!!

 

 カタッシュ村に水路と露天風呂建設ーーNEW!!

 

 女性陣露天風呂を堪能ーーーーーーーーNEW!!

 

 カタッシュ村に病院建設予定ーーーーーNEW!!

 

 

 



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カタッシュ村清潔計画 その1

 

 

  清潔の匠、ナイチンゲール師匠を迎え、カタッシュ村を清潔にすべく立ち上がったカタッシュ隊員達。

 

 現在、カタッシュ村の清掃活動中、楽器の代わりに箒や清掃道具を持ち、村のゴミを取り除く作業を行なっていた。

 

 

「あー、花が咲くー、理由もー無ーいけどー」

「最近やたら咲き誇ってるよね、マーリン師匠の周り」

「ベディの口から久々に聞いたかもそのフレーズ」

 

 

 そう言いながら、箒で清掃活動をするカタッシュ隊員達。

 

 と、ここで、ディルムッド、地面に落ちている糸状になった変わった紐の落し物を発見。摘み上げるようにそれを持ち上げた。

 

 

「ん? ディル兄ィ何よそれ」

「なんか拾った」

「いや、なんか拾ったって…」

 

 

 そう言って、拾いあげたそれについて告げるディルムッドに苦笑いを浮かべるヴラド。

 

 何でもかんでも彼らは拾う、そして、使えるものは使うというスタンスである。

 

 ちょうどそんな時だった。風呂から帰って来たモーさんが首を傾げながらそれを拾いあげているディルムッドを見つける。

 

 

「ふぅ…露風呂気持ちよかったぁ…、ところで兄ィ達何やってんの?」

「あ、モーさん、実はね…」

 

 

 そして、モーさんに事の経緯を話し始めるベティ。清掃活動をしている理由とナイチンゲール師匠についての話を風呂上がりの彼女にわかりやすく伝える。

 

 カタッシュ村を綺麗にするための清掃活動、清潔な村を目指すためにこうして、皆で掃除に勤しんでいるわけだが…。

 

 

「見て見て、これ! メデューサ!」

「いやいや、何やってんの!?」

「あはははは!! なんだそれ! おもしれー!」

 

 

 悪ふざけをしはじめるディルムッドの一発芸、メデューサに思わず笑い声をあげる風呂上がりのモーさん。

 

 しかし、これを目の当たりにしたヴラドとベディの二人も悪ふざけに乗っかるようにして頭に紐が纏めてあるロープを被るディルムッドから逃げはじめる。

 

 

 ーーー※アラフォーのおっさん達です。

 

 

 どうやら、このロープはカルナが作ったもので船の帆に使えるかもと彼が作り置きしていたものという事がわかった。

 

 そうとわかれば…。

 

 

「メデューサだぁー」

「助けてー」

「わー! 逃げろー!」

 

 

 そう言って、完全にディルムッドの悪ふざけに便乗する三人。はたから見れば微笑ましい光景である。

 

 

 ーーーだが、当然作業は進まない。

 

 

 そんな時だ、悪ふざけに乗じる彼らの側に近寄るメデューサよりもおっかない、拳銃を携えた婦長の影が…。

 

 婦長は四人の微笑ましい光景を目の当たりにしたまま、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。

 

 それは、一見すると天使の様な可愛らしい微笑みのように見えるが…。

 

 

「何をやってるんですか? 貴方達?」

 

 

 その目はどうやら笑っていなかったようだ。

 

 悪ふざけに乗じていた一同の動きがピタリと止まる。そして、ゆっくりとその満面の笑みを浮かべる婦長に視線を向ける。

 

 そして、暫しの間、顔を見合わせるモーさんとカタッシュ隊員達。

 

 紐を頭に乗っけて三人を追いかけていたディルムッドは声を上げて皆にこう告げる。

 

 

「妖怪殺菌婦長だァー!!」

「みんな! 死ぬ気で逃げろー!」

「待ちなさい!貴方達!?」

「やべぇ!? 銃撃ってきたよ! ガチだアレ!」

「ひぃ!? つ、捕まったら消毒されるのか!?」

「かもしんない!?」

 

 

 そう言って、ルパ◯三世さながらの逃走劇を婦長と繰り広げはじめる四人。

 

 婦長は容赦なく拳銃を発砲、目が本気であった。これは捕まったらお説教間違いなしである。

 

 一見すれば、まるで、小学生の男児を追い回す先生の図の様にも見えるが、本人たちは必死である。

 

 

「鬼ごっこを刑事さん百人とやった時より迫力ある!?」

「まぁちぃなぁさぁい〜!!」

「ぴゃー!?」

 

 

 ナイチンゲール師匠と鬼ごっこを繰り返す事数時間。

 

 あちらこちらに逃げ回っていたカタッシュ隊員達だが抵抗虚しく御用となった。

 

 しかし、ナイチンゲールも彼らを追い回し続けたせいか、肩で息をしている。やはり、100人の刑事と鬼ごっこを繰り広げた事のある彼らを捕まえるのは彼女とはいえ骨が折れたようだ。

 

 息が上がっているせいか、彼女の髪が怒髪天の様に逆立っている様にも見える。正直言って怖い。

 

 そんな彼女を見てモーさんは恐ろしさのあまり涙をグスグスと流しながら正座をしていた。

 

 かわいそうなので慰める様にディルムッドとベディの二人がヨシヨシとモーさんの頭を撫でてあげ、敢えて婦長に目を合わさせない様にさせている。

 

 

「ぜぇ…ぜぇ…、ふふふ…ふふ、さぁ、どんな風に消毒しようかしら…」

「ままま、まぁまぁ、ナイチンゲール師匠落ち着いて、この娘怖がっちゃってますから」

「はぁ…はぁ…、ほんとに…貴方達を捕まえるのには骨が折れましたよ」

「…いや、あそこまでガチで追い回されたらそりゃ逃げちゃうよ」

 

 

 もっともである。ヴラドが言い放つ言葉に追い回されたカタッシュ隊員の二人はモーさんの頭を撫でながら肯定する様に頷く。

 

 刑事さんより追い回されるのが怖かった。

 

 凄い勢いで拳銃を発砲されたり消毒液が飛んできたりされれば誰だってそうなるだろうと全員の見解である。

 

 正座をさせられたカタッシュ隊員達に婦長は顔を引きつらせながら笑顔を浮かべる。

 

 

「誰のせいですか誰の!」

「こいつのせいです! 婦長!」

「この紐の束の奴が俺にメデューサしろって言ってきたんです!」

「通りますか! そんな理屈!」

 

 

 そう言い切る三人に婦長も思わず頭を引っ叩いてツッコミを入れる。アラフォー軍団の言い逃れは流石に厳しかった。

 

 そんな婦長の勢いにモーさんも思わず恐縮してしまう、まるで、小学生に説教する学校の先生の様な図だ。

 

 

「ディル兄ィー妖怪殺菌婦長が怖いよー」

「大丈夫だぞー、こう見えてこの婦長さん優しいからなー」

「ほら、婦長さんが怖いから泣いちゃってるでしょう?」

「いや…もう息切れして私も結構キツイんですけど…」

 

 

 そう言いながら、怒り疲れた婦長はため息を吐くと呆れた様に彼らにこう話をし始める。

 

 どうやら、ひとしきり彼らを追い回したおかげで一周回って冷静になったようだ。別にそこまで怒こる事柄でもない。

 

 もっとも、掃除を放って遊んでいた彼らが悪いのだが…。

 

 しかし、ナイチンゲールはモーさんの聞き捨てならない言葉を訂正させる為、先ほどと、うって代わり彼女に柔らかい笑みを浮かべると視線を合わせこう告げる。

 

 

「これからは私の事はお母さんと呼びなさい、いいですね? 妖怪ではありません」

「え…?」

「いいですね?」

「…ひゃい!?」

 

 

 顔は笑っているが、目が笑っていない。

 

 そして、何故か呼び方がお母さん、モーさんに対して婦長の中にある慈愛に満ちた母性が目覚めたのか、それとも、彼女を教育しなければいけないという使命感が芽生えたのかは定かではない。

 

 そして、カタッシュ隊員達に対しても。

 

 

「良いですか?」

「イエスマムッ!」

「サー! イエッサー!」

 

 

 三人とも婦長の言葉に思わず敬礼。

 

 流石にこれから婦長からお説教と殺菌されるのは嫌だという全員が満場一致の意思だった。

 

 気がつけば、モーさんのオカンがもう一人増えている。女性にしても威圧が凄い、流石は元祖看護師、気の強さは段違いだ。

 

 そんな彼らの元へゲイボルクを箒にして清掃に励み仕事を終えたクーフーリンが現れる。

 

 

「何やってるん? 君ら」

「あ、リーダーじゃん、いやー、掃除をよそに遊んでたら婦長に怒られちゃって数時間、鬼ごっこやってた」

「…鬼ごっこって…、懐かしいなぁ」

「いや、そこは怒るところでないの?」

 

 

 まさかのリーダーの返答に思わず突っ込みを入れるヴラド、寛大にも程があるが、リーダーらしいといえばリーダーらしい。

 

 鬼ごっこと言えば対百人で行った懐かしい企画。思い出せば、色んな事があった。

 

 とはいえ、今はそんなことよりも清掃活動の方だが作業が進んでいない事が重要だ。

 

 

「さぁさ、みんなでやるで! ほんとにもう!あんた達は世話が焼けるんやから!」

「はい! オカン! 了解しました!」

「みんなでやれば早いしね」

 

 

 そんなわけで清掃再開、カタッシュ村を清潔な村にする為に一同は心を一つにする。

 

 消毒や殺菌により、疫病を流行らせない村作り、昔は彼らがいた時代よりも医療は発達しておらず、病で亡くなる方も多かった。

 

 だが、それを未然に防ぐ事はできる。何故ならば清潔のプロフェッショナル、ナイチンゲール師匠がいるからだ。

 

 医療にも精通している彼女なら、この村から病気の予防や治療法などを発信していけるようになる筈。

 

 妖怪殺菌婦長なんて呼んではいけない、彼女は紛れもなく皆の天使であり、白衣の母なのだ。

 

 さて、一方、ADフィンと共に病院建築の為に土地の下見を行っているカルナ親方達は…?

 

 

「うん、この辺かな?」

「ですかね、この立地なら割と場所も取りませんし人も通いやすいかと思います」

「なるほどな」

 

 

 病院を建てるのにいい具合の立地を発見していた。

 

 傍らにいるスカサハ師匠もカルナとADフィンの言葉に納得したように頷いていた。しかし、いまいち、彼女には病院がどういったものかが理解できていない部分がある。

 

 病や怪我を治療する施設とは聞くが、彼女自身、不死身の身体故、ピンとこない。

 

 

「ちなみにその病院とやらはほんとに必要なのか?」

「そうよねー、ほんとに逞しい身体とかなら別に病や怪我なんて無縁だし」

「これはこの村に住む人達の為の施設だからねー、やっぱり万が一って事もあるからさ」

 

 

 そう言ってカルナは疑問を口にするスカサハとメイヴの二人に病院の必要性について語る。

 

 この施設があるだけでも遠方から人が集まるかもしれないし、そうなれば、カタッシュ村の発展にも当然繋がる。

 

 さて、そうとわかれば話は早い、すぐさま作業に取り掛かる。まずは木材の調達だが、これは以前、風呂作りに伐採した木材が余っている。

 

 ならば、これに木材をさらに追加し、骨組みを作り上げる過程は割とスムーズに行えそうだ。

 

 さぁ、ここで建築について、皆さんにはマーリン師匠からの建築についての解説をご視聴して頂こう。

 

 

「建築の話をしよう。まずは地縄張りと縄張りから、住宅の建築の初めに行うもので、敷地内における建物の配置を示していく作業だ」

 

 

 そう、建築において、基礎となる地縄張りとは縄張り、住宅の建築の初めに行うもので、敷地内における建物の配置を示していく作業。

 

 後は、地盤の調査や建造物をどうやって建てるのかの段取り、そして、建て方。カルナは以前、納屋を建てた経験もあり、インドでは建造物をいくつも建てたベテランの大工、これくらいは朝飯前にやってのける。

 

 

 ーーーー出来るだけ丈夫な病院に。

 

 

 建て方にも工夫を加えて、皆が安心できる病院を建てる。

 

 

「さぁ、そんじゃ作りますか」

 

 

 ヘルメットを着用するカルナの安全第一の文字がキラリと光る。

 

 何事も安全が一番、無事にこの病院が完成する事を願いつつ、カルナの指導の元、スカサハ達は作業に取り掛かりはじめた。

 

 さて、果たしてどんな病院が出来上がるのだろうか?

 

 

 この続きは、次回、鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 婦長と本気の追いかけっこーーーーーNEW!!

 

 婦長、モーさんの母になるーーーーーNEW!!

 

 マーリン師匠の建築の話ーーーーーーNEW!!

 

 初めての病院作りに挑戦ーーーーーーNEW!!

 

 ディルムッド、メデューサになるーーNEW!!



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カタッシュ村清潔計画 その2

 

 

 数ヶ月の月日が過ぎた頃。

 

 ナイチンゲールの指導のもと、衛生状況の改善と清掃作業も無事に進み、清潔感のある村に変わりつつあるカタッシュ村。

 

 そんなカタッシュ村では、彼らが制作に取り掛かっていたあるものが完成を間近に迫っていた。それは…。

 

 

「オーライ、オーライ!」

「おーいいねー」

 

 

 部品を1から制作し、組み立てた2tトラックである。

 

 それだけではない、小次郎さんが希望していたデコトラの制作もまた仕上げる段階まできていた。これならば、カタッシュ村から物流を始めることができる。

 

 だが、そんな目覚ましい進展があったにも関わらず不機嫌な女性が一人、そう、スカサハ師匠、その人である。

 

 

「なぁ、カルナ、しげちゃんが好きなものってなんだ…?」

「何…って、そりゃお師匠、水捌けの良い土とか、後はお茶とかじゃない? それとダジャレ」

「いや、そうじゃなくてだな…もっとこう…」

「んー…、それとは違うベクトルかぁ…そうだねー」

 

 

 そう言いながら、スカサハの言葉を聞きつつトラックの制作の為にスパナを回し作業を続けるカルナ。

 

 そういう事に関して察しが悪いカルナではない。確かにスカサハがそんな事を言い出す理由もなんとなくだが理解はできる。

 

 メイヴやナイチンゲールなど、自分とはまた違う魅力がある女性が周りに増えてきた。

 

 もしかしたら弟子であるクーフーリンが取られるのでは? という不安があった。

 

 

「それで、あいつが好きなものはなんなんだ?」

「それ以外って言ったら皆でしょ? リーダーが好きなのって」

「…え?」

「あの人は分け隔てなく皆好きなんだよ、だから、俺達もリーダーが好きなんだわ」

 

 

 そう言って、汗を拭ったカルナは満面の笑みを浮かべてスカサハにサムズアップをして応える。

 

 分け隔てなく、どんな人間も受け入れる度量がクーフーリンにはあった。それは、YARIOのリーダーとして皆のまとめ役を引き受けている。

 

 そんな彼の魅力はやはり、その人柄であった。何度も解散しようとした自分達を繋ぎ止める橋渡しをしてくれた。

 

 積み重ねた彼らの年月が紡ぐ絆、最初は期待すらされなかった者たちが力を合わせ踏ん張り、今がある。

 

 

 ーーーーだが、残念な事にこれもベクトルが違う。

 

 

 聞いた話は確かに感動的だが、スカサハが聞きたい事はそうではない。

 

 すると、カルナはポンと手を叩くと思い出したようにスカサハ師匠にこう告げる。

 

 

「あ、そうそう、リーダーの好きなもの? カレーライスだよ」

「そういうのが聞きたかったんだよ! ちょっと良い話で泣きそうになっただろう!この馬鹿者!」

 

 

 そう言いながら、良い話の後にあっさりクーフーリンが好きな物を告げるカルナに思わず目頭を拭いながら突っ込みを入れるスカサハ。

 

 クーフーリンを慕う彼らの心に思わずウルっと来てしまったが、カルナのおかげで台無しである。

 

 とりあえず、紆余曲折ではあったが、スカサハはクーフーリンはカレーライスと辛いものが大好物という情報を仕入れる事が出来た。

 

 

「ところでカレーライスとはなんだ?」

「そこからかーい」

 

 

 というものの、スカサハ師匠、カレーライスを知らなかった。

 

 それもそのはず、カレーライスはインドの伝統的な料理、インドと言えばカレーというほど、多種類の香辛料を併用して食材を味付けするというインド料理の特徴的な調理法を用いた料理である。

 

 インドと言えばカルナだが、果たしてスカサハにどういった料理であるかを伝えるか…、その点に関してカルナは難しい表情を浮かべていた。

 

 

「まず、スパイスやらがいるんだよね」

「ふむ」

「それを混ぜ合わせて」

「ふむ」

「野菜やお肉やらの具材をそれに加えて入れて煮込んで」

「ふむふむ」

 

 

 カルナの話に耳を傾けながら頷くスカサハ師匠、果たして、カレーライスがどういったものか彼女は想像できているのだろうか。

 

 

「ご飯にかけて完成」

「なるほど、わからん」

「ダメだこりゃ」

 

 

 どうやら、駄目なようである。

 

 即答のスカサハ師匠に肩を竦めて告げるカルナ、諦めるのは早かった。

 

 料理と言えばヴラドとディルムッドであるし彼らならば、スカサハ師匠にカレーライスがどういったものか教えれるかもしれない。

 

 まぁ、それはひとまず後回しでいいだろう、まずは目の前の事からだ。

 

 2tトラックを完成させること、まずは、これを終わらせてからだ。

 

 

「おーい、兄ィ、こんな感じなんだけど…」

「いいんでない? エンジンも掛かるんでしょ?」

「バックも出来たし、まぁ、問題無いかな」

 

 

 ここでも、以前学んだレストアと機械弄りの知識が生きる。

 

 2tトラックの試運転を終えたベディに問題無いと告げるカルナはその出来に確かな手ごたえを感じていた。

 

 カタッシュ隊員達が力を合わせて作り上げた2tトラックは計3輌ほどだが、最初にしては上出来。

 

 さらに、農民スタッフ小次郎さん専用のデコトラを合わせればなんと4輌も…。

 

 これならば、ブリテンの街や村に新鮮な野菜やお肉を届けて回る事が出来るだろう。

 

 

 そして問題は、現在、建築中の病院だが、現場にて建造に取り掛かっているクーフーリンとディルムッド達はというと?

 

 

「ディル兄、この辺?」

「あーそうだね! そこでいいよ」

 

 

 必要な機材を置くモーさんの言葉に頷くディルムッド。

 

 基礎工事が完了し、次の工程である土台敷きに入っていた。

 

 土台敷きとは、基礎コンクリートの上に土台や大引を設置していく作業、さて、このコンクリートだが、ローマン・コンクリートを彼らは代用で使用した。

 

 このローマン・コンクリートとはローマ帝国の時代に使用された建築材料。セメントおよびポッツオーリの塵と呼ばれる火山灰を主成分としたコンクリート。

 

 現代のコンクリートは、カルシウム系バインダーを用いたポルトランドセメントであるが、このローマン・コンクリートはアルミニウム系バインダーを用いたジオポリマーであり、倍以上の強度があったとされる。

 

 主にコロッセオなどの建造物に使用されたコンクリートがこのローマン・コンクリートだ。

 

 そして、このローマン・コンクリートの作り方を学びにローマの地を訪れた彼らだが、そこでも新たな匠との出会いがあった…。

 

 

 今回はその話についてだが…。

 

 

 まず、クーフーリン達が訪れたのはイタリアのローマ。そこで、彼らが出会ったのは。

 

 

「こんにちはー! 僕ら鉄腕/fateのYARIOという者なんですけどもー」

(ローマ)がローマである!」

「おー、なんかそのポーズかっこいいですね! 実は今回お願いがありまして…」

 

 

 ローマを作った建造の父、ロムルス師匠であった。

 

 そして、彼らはロムルス師匠にお願いし、ローマ建築のなんたるかをカタッシュ村の病院建造と並行して学ぶ事になった。

 

 そこで、出て来たのがこのローマン・コンクリートなのだが、作り方を1から学び、実際に作り上げる過程をロムルス師匠に習った。

 

 ローマン・コンクリートの作り方を習ったわけであるが…。

 

 

「うーん…。やっぱり難しいよね」

「ってなるとやっぱり現地の人の話や知識も必要だよね当然」

 

 

 やはり、古代のコンクリート、そう易々とは出来上がるわけもなく、カタッシュ隊員達は現地の人の話を聞きながらローマン・コンクリートを製造する方針に変えた。

 

 というわけで、ロムルス師匠からローマン・コンクリートの作り方を学んだ彼らは、再びだん吉に乗り込むと、そんな、現地の人のアドバイスを得るべく移動。

 

 そして、建造物の現地監督をしてくれる匠をローマの地にて探したわけだが、結果。

 

 

「あれは誰だ? 美女だ? ローマだ!? もちろん、余だよ♪」

 

 

 というわけになったのである。

 

 晴れやかな笑顔に可愛らしい容姿に赤い衣装に身を包んだローマの王。

 

 満を期して、ローマの皇帝。ネロ・クラウディウス師匠がなんと、今回、このローマン・コンクリートを使いカタッシュ村に病院を建造する現場監督に…。

 

 さて、こうして、ローマン・コンクリートを学んだ彼らはロムルス師匠からコンクリート作りを学び、さらに、現場監督にネロ師匠を加える事になった訳だが。

 

 

「うむ! この余に掛かればこのカタッシュ村とやらもきっとローマな感じに仕上がるに違いない!」

「リーダー、こう言っちゃなんだけど、一言言っていい?」

「ん?」

「すっごく不安」

 

 

 そのカルナの言葉に肯定するように頷くヴラドとディルムッド。

 

 

 ーーーー皇帝だけに皆が全肯定。

 

 

 確かに不安はある。この娘で大丈夫なのだろうかと、しかしながら、このネロもローマ皇帝であり、しかも、ローマに建造物をそれなりに建てさせた実績もある。

 

 ローマのコロッセオみたいな病院。

 

 殺し合いの場なのか、はたまた医療を施す場なのか、ナイチンゲール師匠曰く、病気を殺す場なら問題ないとの事。

 

 というわけで。

 

 

「そこの赤いの! その場所はもっと出っ張るようにするように配置をしろと言っておるだろう!」

「にゃんだとぅ!? うるせー! テメーも赤いじゃねーか! ばーかばーか!」

「余を馬鹿と言ったか! 今! 余を馬鹿と言ったか!? この痴れ者め! ばーかばーか!」

 

 

 カタッシュ村の病院の建築に加わった訳だが、ご覧の有り様である。

 

 こんな風に喧嘩をモーさんとネロ師匠はいつものようにここ最近、繰り広げていた。

 

 まるで子供の喧嘩である。

 

 しかし、しばらくすると、病院の建築を放って言い争う二人の背後に般若が満面の笑みを浮かべて立っていた。

 

 その般若は二人の襟首を猫を摘み上げるように持ち上げるとこう告げる。

 

 

「…あら? 奇遇ね、私も服は赤いのだけど…二人とも消毒液で頭を冷やした方がよろしくて?」

「…ぴぃ!?」

「母ちゃん! 勘弁!?」

 

 

 こうして、二人は般若、もとい、ナイチンゲール師匠から説教される事になるまでがテンプレになりつつあった。

 

 それを見つめながら、笑みを溢し、病院建築を進めるカタッシュ隊員達。

 

 最初は何もなかったこの村も、今では人がどんどん増えてきて随分と賑やかになってきたものだ。

 

 いつもモードレッドと喧嘩をしているネロ師匠。果たして力になっているのだろうか?

 

 しかし、このネロ師匠を侮るなかれ、仮にも王様であり、そして、なんと自称ながらローマのアイドル!

 

 アイドルならば建築、農業、漁などなんでもござれが当たり前、当然ながら、ネロ師匠もローマの建築については意外と詳しく、そこは間違いなく彼らの力となっていた。

 

 建築物の美しさは確かにローマは完成度も高く、彼らが学ぶべき事はまだまだ数多くある。

 

 ネロ師匠はそういった意味でも非常に頼りになる建築アドバイザーであった。

 

 

「なんたってローマのアイドルだもんねぇ」

「建築に関してはほんと色々学ぶことがあって勉強になるんだけどね」

 

 

 そう言いながら、ローマン・コンクリートの上に土台や大引を設置していく作業をしつつ会話をするディルムッドとカルナの二人。

 

 丁度、そんな会話を二人でしていると2tトラックに乗ったクーフーリンとメイヴの二人が帰ってきた。

 

 2tトラックの荷台には積まれた木材が、そう、これらはこれから木工事に使う木材である。

 

 2tトラックから降りてきたクーフーリンはパンパンと乗ってきた2tトラックを上機嫌に叩く。

 

 

「うん、実用化も問題なしやね、丈夫なトラックや」

「クーちゃんこれ凄いよい乗り心地ね! 気に入ったわ!」

「せやろ?」

 

 

 そう言いながら、2tトラックから木材を降ろし始めるメイヴに笑みを浮かべながら告げるクーフーリン。

 

 しかし、それを眺めているスカサハは頬を膨らませている。そして、何かを決めたように口に出してこう宣言した。

 

 

「決めたぞ、絶対カレーライス作って見返してやる」

「その意気だよ師匠、ディルやヴラドなら多分ちゃんと教えてくれるからさ」

 

 

 それを見ていたカルナはポンと彼女の肩を叩いてあげる。

 

 前途多難であるが、ひっそりと彼女を応援してあげよう。そう思いつつ、二人はローマな病院作りの作業へ戻る。

 

 果たして、ローマの皇帝ネロが現場監督として入ったカタッシュ村に建つ病院は一体どんな病院になるのだろうか?

 

 この続きは! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 制作トラック実用化ーーーーーーーNEW!

 

 師匠。カレー作りに挑戦ーーーーーNEW!

 

 ネロちゃま建築アドバイザーにーーNEW!

 

 ロムルスさんが師匠になるーーーーNEW!

 

 古代コンクリート作りに挑戦!ーーNEW!

 

 ローマン・コンクリートを作るーーNEW!

 



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そうめん流すしかない その1

 

 カタッシュ村にて病院作りを行なっているカタッシュ隊員達。

 

 だが、この日、カタッシュ村にある来訪者が…。それは、なんと円卓の騎士の一人であり、アーサー王の参謀と言っても過言ではない人物。

 

 そう、アグラヴェイン卿である。

 

 何故、彼がこの地に訪れたのか、それには理由があった。というのも…。

 

 

「今日は我が王の遣いで来た…。実はそなた達に頼みがあってな」

 

 

 そう言って、語り始めるアグラヴェイン卿に彼らは耳を傾けた。

 

 なんでも、ブリテンにおける食料問題が深刻であり。キャメロットの城下町でもその影響が出て来ているという。

 

 日によっては食事を取れないという世帯もあるとアグラヴェイン卿は彼らに語った。

 

 

「うわー…そんな事になってるんだ」

「どうするよ? かなり深刻そうだけど」

 

 

 ブリテンに住む民衆の食べ物がないというこの事態に、心を痛めるかのように腕を組みながらそう語るディルムッドとカルナ。

 

 こうなっては病院作りをしている場合ではない、早く何かしらの手を打ってあげなくては…。

 

 だが、畑や野菜はまだ収穫できる段階ではなく、麦や穀物もまだ収穫には早い。

 

 そこで、彼らは考えた。どうすれば、キャメロット城の街に食べ物をいち早く送れるようにするのかを。

 

 そして、思いついた方法が…。

 

 

「そうめん流すしかない」

「あ! その手があったか!」

 

 

 そう、デカいそうめん流しをこのカタッシュ村からブリテンの城下町まで繋げる。

 

 これがあれば、そうめんをこの地から流し、食べ物が無いブリテン城下の街までそうめんを届けれる筈だ。

 

 しかし、そんな話をアグラヴェイン卿と話している最中であった。

 

 カタッシュ村の農園で働いていたモードレッドが慌てた様子で彼らの元に駆け寄ってくる。

 

 

「お、おーい! 兄ィ達! なんだか赤い外套着けた物騒な奴が用があるって訪ねて来たぞ!」

「はえ?」

「次から次へと…、今日はなんか来訪者が多いなぁ…」

「赤い服着た人たくさんいるからねこの村」

「赤いのが最近流行りなんやろうかね?」

 

 

 ーーーー赤い稲妻が村を攻める。

 

 

 なんだか赤い稲妻と聞けば、ネロ師匠が際どい格好をする水着を着用している姿が目に浮かんでしまうが、おそらく気のせいだろう。

 

 というわけで、リーダーとカタッシュ隊員達はモードレッドに率いられ、カタッシュ村を訪ねて来たという赤い外套を身に纏う男性の元へ。

 

 

「…うむ、抑止力として送られてきたのはいいが…この村を見る限り、なんの問題も無さそうなんだが…しかし立派な畑だ」

「おーい! 連れてきたぞー!」

「…む、来たか…」

 

 

 赤い外套を身に纏う男はモードレッドが先ほどまで耕していた畑の土を触る為に屈んでいたが、カタッシュ隊員達を連れて来たというモードレッドの言葉に反応しその場から立ち上がる。

 

 褐色の肌に赤い外套、白髪に近い髪色、そして、彼の力強い眼差しがカタッシュ隊員達に向けられる。どうやら、見る限りこちらを警戒しているようだ。

 

 しかし、しばらくして、彼らの顔を確認した赤い服を着た男性は目をまん丸くしてパチクリさせていた。

 

 

「えっ? …あー、すまないが貴方達は…」

「こんにちはー! どうなさいました?」

「いや、あの…、貴方達の事はよく存じているんだが、改めて聞いても良いだろうか?」

 

 

 そう言って、赤い外套を着た男性は何故だかクーフーリン達の姿を確認するとあたふたし始める。

 

 そして、彼らは顔を見合わせると首を傾げ、赤い外套を身に纏う男性に向かって自分達が何者であるのかを名乗り始めた。

 

 

「僕らはYARIOって言って、アイドルやってます! あ、僕の名はクーフーリンって言うんやけれど」

「は…? あ、いや、私の記憶が正しければ貴方達はその…」

「YARIOです。ほら、見てみてよ! こんな作業着の下に青タイツ着て鍬持ってる人間なんて名高い英雄くらいしかいないよ?」

「俺たちの師匠なんて普段、紫タイツみたいな格好だかんね」

「ん? なんだ? 私を呼んだか?」

 

 

 そう言って、赤い外套を着た男性の言葉を遮るカルナとディルムッド。

 

 確かにこんな作業着を着てその下に青タイツを着ている鍬持った人間など英雄しか考えられない。

 

 

 ーーータイツ着てればだいたい英雄。

 

 

 動きやすさではこれはこれで動きやすいのだ。師弟揃って変態などではなく、英雄だから仕方なく着ている。

 

 しかし、赤い外套を着た男性は少しばかり考えた後、首を傾げるとなんだか納得していない様子ではあるが、白い色紙をどこからか取り出し、ついでに黒いペンも用意する。

 

 彼らは名高いアイドル、となれば、赤い外套を着た男性がする行動は一つであった。

 

 

「すまないが、ここにサインをくれないか? あ、エミヤくんへと名前を書いてくれたらありがたい、後二つほど、藤村大河と遠坂凛へと書いてくれたら助かる」

「あ! もしかして、僕らのファンかな? 全然ええよ!」

「はい、毎週日課になっていて欠かさず見てました! 勉強になりますね、特に料理や剣作りなんかは!」

 

 

 そう言って、満面の笑みを浮かべながら色紙に赤い外套の男性へサインを書いていくクーフーリン。

 

 どうやら、彼らの事を以前から知っているような口ぶり、やはり、英雄達が集うアイドルグループなだけあって彼らはかなりの人気があるようだ。

 

 

 ーーーこれといってアイドル活動はやっていないけれど。

 

 

 サインを書くのは久しぶりだが、綺麗な文字でささっと書き上げるクーフーリン達はにこやかな笑みを浮かべて赤い外套の男性にサインを手渡し。

 

 気がつけば自然と彼と仲良くなっていた。主な話題は料理や農業についてだが…。

 

 すると、赤い外套の男性は思い出したかのように彼らにこう告げ始めた。

 

 

「名乗るのが遅れたな、私はエミヤという、実は上から君らの動向を見るように言われてな」

「あ、そうなんや、それじゃお仕事でこちらへ?」

「そうなるな」

「えー、そうなんだね、そのお仕事のお給料ってどんくらいなの?」

「むー、難しい質問だ。強いて言うなら…」

 

 

 そう言って、エミヤとワイワイと話しをし始めるカタッシュ隊員達。

 

 しかし、彼らは忘れてないだろうか?

 

 和むのは大変良いのだが、今はブリテンの食料危機、今日はアグラヴェイン卿もわざわざこのカタッシュ村まで訪ねて来ている。

 

 エミヤさんには悪いが、カタッシュ隊員達にはやらねばならない仕事が…。

 

 その事を思い出したカルナは笑顔で話していたエミヤさんにこう告げ始めた。

 

 

「あー、エミヤさんごめんねー、もっと色々お話したいんだけど僕らこの後、やらなきゃいけない事があってさー」

「…おっと、つい話し込んでしまったな、すまない」

「いやいや、大丈夫やで! まぁ、ちょっと困った事になっててなぁ」

「む? それはどういう…?」

 

 

 そう言って、頬を掻きながら苦笑いを浮かべるリーダークーフーリンに訪ねるエミヤさん。

 

 それは、その筈、このエミヤさん、実は大のお人好し、困った人を見逃せない性分を持っているため、カタッシュ隊員達の言葉に敏感に反応してしまう。

 

 すると、カルナとクーフーリンの二人は顔を見合わせるとエミヤさんにこう説明をしはじめた。

 

 

「実は今、このブリテンが食料危機に直面してるらしくて…」

「やから、このカタッシュ村から巨大そうめん流しをキャメロット城下まで作ろうと考えてたんやけれども」

「!? そうめん流しだと!? 馬鹿な! そんなので食料危機を脱すると!? 栄養が偏ってしまうではないか!」

 

 

 ーーーー突っ込むところはそこではない。

 

 

 しかしながら、エミヤさんは真剣な表情で彼らに問いかけていた。

 

 確かにこのままそうめんだけでは栄養が偏ってしまう、これではキャメロット城下の人は主食がそうめんだけに…。

 

 

 ーーーそうめん主食のブリテン市民。

 

 

 確かにシュールだ。ならば、栄養を考えて他にも食料を供給する必要があるが…。

 

 

「ディルと同じ事言ってるね」

「まぁ、その通りやからね」

「いやぁ、同じ料理人としてはエミヤさんに同意見だねほんと」

「なぁなぁ、そうめんとはなんだ? しげちゃん?」

「まぁ、それは流すまでのお楽しみやね師匠」

「ぶー! 教えてくれても良いではないか!」

 

 

 そう言って、頬を膨らませるスカサハ師匠。

 

 確かにそうめん流しはスカサハ師匠も知らない料理であり、興味を持つのはわかる。がしかし、クーフーリンに訪ねるその様はどこか子供っぽい。改めてだが、これでも一応、スカサハ師匠はクーフーリン達よりも年上である。

 

 一方、話を聞いていたエミヤさんは何やら考え込むようにブツブツと呟いていた。

 

 

「いや、待て…、そうめんではなく、蕎麦を流せば…うん、これならまだ栄養も期待が持てるか…」

「エミヤさーん? おーい?」

「決めた。その企画、私も混ぜてもらおう」

 

 

 そう言って、キリッとした表情でカタッシュ隊員達に告げるエミヤさん。その表情はどこか自信に満ち溢れている。

 

 人手が増えるなら尚更ありがたい、クーフーリンとカルナは嬉しそうに目を輝かせ、エミヤさんにこう告げる。

 

 

「え!? 手伝ってもらえるんですか!?」

「ふっ…愚問だな。私はこう見えてもかつては穂群原のブラウニーと呼ばれていてね」

「へぇ! そうなんですね!」

「あぁ、機械修理なんかも良くしていた」

「すげー! しげちゃんこれ!レストア要員一人確保出来たよ!」

 

 

 機械修理も料理もできる優秀な人材。

 

 これは心強い、確かに今回の企画、カタッシュ村からキャメロット城下までの距離はかなりあるが、これならばそうめん流しを作るにも期間の短縮が期待できる。

 

 サムズアップするエミヤさんにサムズアップで答えるカタッシュ隊員達。

 

 こうなれば、話は早い、すぐさまブリテンの危機を救うため、巨大そうめん流しをカタッシュ村からキャメロット城下まで引かねば!

 

 

「んじゃ、俺らは竹の調達行ってくるね」

「やっぱりそうめん流しっつったら竹だよな!」

「モーさんと兄ィ、気をつけてね!」

「えへへ、任せなって」

「てやんでい! このデコトラの小次郎も居るからまかせろぃ!」

 

 

 そう言って、出来上がった。だん吉式トラックに乗る3人に声をかけるメイヴ。

 

 これから3人はそうめん流しを作るための竹の調達に出かける。荷物には鋸や小次郎の刀など竹の伐採に必要な機材は全部積み込んだ。

 

 カタッシュ隊員達はブリテンを救うため各自、動き始める! というわけで今回の企画はこちら。

 

 

 ザ!鉄腕/fate! YARIOはブリテンに巨大そうめん流しを作れるのか!

 

 

 そして、カタッシュ隊員達がブリテンの食料危機に立ち向かおうとしているその頃。

 

 酪農で家畜などの動物の世話をしているマーリン師匠はというと?

 

 

「そうだ、良い子だなぁ、よしよし」

 

 

 思いのほか楽しんでいた。ヤギの頭を撫でつつ顔が綻んでいた。

 

 この牧場にいる動物達も数が増え、さらに、カタッシュ村に移住してきた人達が世話を手伝ってくれるのでマーリンも助かっている。

 

 この調子なら、来年には家畜などの出荷や、乳製品などの製造にも着手していけるはずだ。

 

 

「よし! それじゃ次は馬のブラッシングだな! がんばるぞ!」

「フォーウ(誰だこいつ)」

 

 

 顔がキラキラと輝いているマーリン師匠。

 

 知っている人間が見れば、こいつ誰だと言い出しかねない、少なくとも既に彼のことを色々と知っている傍にいる一匹は呟いていた。

 

 彼本人がそれにやり甲斐を感じているならば、それはそれで良しだろう。

 

 新たな人間を迎えて更に賑やかになりつつあるカタッシュ村、果たしてこの村は今後どんな発展を遂げていくのだろうか?

 

 この続きは…次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 カタッシュ村赤ブームーーーーーNEW!!

 

 巨大そうめん流し作り開始ーーーNEW!!

 

 エミヤさん勧誘ーーーーーーーーNEW!!

 

 そうめんでブリテンを救うーーーNEW!!

 

 タイツ着用は大体英雄ーーーーーNEW!!



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希望

 

 カタッシュ村でのブリテン食料危機を回避するための活動が始まった。

 

 前回、新たな仲間、エミヤさんを迎い入れたYARIO達はこの危機をそうめん流しで回避する事に決めた。

 

 そして現在、手作りで作り上げた2tトラックを1台使い、クーフーリンとディルムッドの二人はブリテンの村々を回っている最中である。

 

 

「よーし、こんなもんでしょ」

「こんにちはーYARIO運輸でーす」

 

 

 そして、もちろんこの食料危機を脱する術はそうめん流しだけではない。

 

 そうめん流しももちろんだが、そうめん流しだけではこの食料危機を回避するのは困難だ。

 

 というわけで、現在、余った2tトラックに乗ったリーダーとディルムッドは村々を回りながら笑顔を振り撒き、ケルトから食料を仕入れて村々に届けていた。

 

 

 ーーー場所に届けるんじゃない、人に届けるんだ。

 

 

 ブリテン発、新宅急便。YARIOの真価が今こそ問われる時である。

 

 

「いやー助かったよ!」

「ポイントカードは使われますか?」

「ポイントカード? なんだそれは?」

「えーとですね、ここに名前を書いていただくとカタッシュ会員にもれなくなれまして」

「おぉ! よくわからんがやろうやろう!」

「ありがとうございます!」

 

 

 そう言いながら眩しい笑顔を振り撒き、村々に食物を届けて回るリーダーとディルムッドの二人。

 

 特に容姿が整ったディルムッドは女性の人気も受けが良く、好印象で商品を受け取る村娘達が顔を赤くしている始末である。

 

 クーフーリンの方も流石はアイドルのリーダーなだけあり、村々の人達から絶大な人気を集めていた。

 

 

「こっちだこっちー!」

「はーい! ただいま持って参りますねー!」

「こんにちはーYARIO宅急便のクーフーリンですけどー」

「はーい! わぁ! こんなにー、重かったでしょう?」

「いえいえ、皆さんの笑顔が守れるならお安い御用ですよ」

 

 

 物流を届けながらキラキラと汗を流し、眩しい笑顔を浮かべる二人。

 

 

 ーーー本業より本業をしていた。

 

 

 というわけで、各地の村々を2tトラックで回りながら次々と商品を届けていく、そして、村々に着くたびに2tトラックを見たブリテンの人々が驚くまでがもはやテンプレであった。

 

 だが、忘れては行けない、2tトラックを操縦するにあたり安全は確保しなければ、事故などあっては遅い。

 

 そんなわけで、二人は行き着くブリテンの村々でこども安全教室を開く事も欠かさず行なった。

 

 

「はーい、みんなー、ここ読めるかなー?」

「「車のそばであそばない!」」

「はい! よく読めましたー!」

 

 

 そう言いながら、ブリテンの子供達に2tトラックや馬車などの危険性を説きつつ、彼らは楽しく、こども安全教室を開いた。

 

 ブリテンの子供達も初めて見る2tトラックに興味津々である。

 

 リーダーと一緒に2tトラックに乗る子供は周りを見渡しながら目をキラキラと輝かせていた。

 

 

「ほら、リオナちゃんお友達見える?」

「見えなーい」

「ほんとにー? お友達たくさんいるよ?」

 

 

 こうやって、トラックの死角になる場所を体験させたりし、実際に運転席での光景を間近で見てもらった。

 

 また、馬車やトラックがよく通る道などでは…。

 

 

「はーい、みんな右見て左見て、はい、手を挙げて渡りましょう!」

「はーい!」

 

 

 子供達の元気な声が響き渡る。

 

 こうして、2tトラックを運転し仕入れてきた食料をどんどん手渡していく彼らの姿に村の人々は感謝しかなかった。

 

 ただでさえ、ブリテンの街でも食料を手に入れるのが困難な状況で彼らは笑顔で物を流してくれる。

 

 まさに、彼らにとっては救世主の様なアイドルであった。

 

 

「次の現場どこよ、リーダー」

「んーと、マーリン師匠の作ってくれた伝票見る限り次は3キロ先の村やね」

「オーケイ! それ終わったら一旦、カタッシュ村に補充しに帰ろっか」

「せやね」

 

 

 そして、一通り配り終えればすぐさま次の現場へ。

 

 これぞ、物流の極意、彼らを待っている人がいる。ならば、届けに行かねばならない使命が彼らにはあった。

 

 

 

 そんな中、竹を仕入れているカルナ達はというと。

 

 前回トラックに乗り込み、良質な大量の竹を古代の日本から仕入れる為に移動。早速、竹を大量に集める作業を行う事に…!

 

 そのついでであるが、なんとここで、かぐや姫という人物が竹に詳しいという情報をADフィンが現地にて入手。

 

 すぐさま、竹の匠であるかぐや姫に接触を図った彼らなのだが、ここで新たな問題が発生。

 

 なんでも結婚をいろんな人達から迫られているらしく、竹に詳しいというかぐや姫は困っていた。

 

 そこで、彼らはわざわざ、公家や帝がいる中、彼女の無理難題を聞く事になった訳だが…。

 

 

「石作皇子には『仏の御石の鉢』、車持皇子には『蓬莱の玉の枝』、右大臣阿倍御主人には『火鼠の裘』、大納言大伴御行には『龍の首の珠』、中納言石上麻呂には『燕の産んだ子安貝』、YARIOの皆さんには……」

「あー、多分この人達なら全部作っちゃうよ」

「えっ…?…えっ!?」

「あ、今言ってたの全部作ればいいの?」

「できないことはないなぁ…」

 

 

 モーさんの一言に仰天するかぐや姫。

 

 だが、案の定、彼らはそれを肯定するものだからその場にいた者達はびっくり仰天。

 

 という事で彼らは大体、来てから4年とちょっとくらいでそのかぐや姫の難題をクリアした後。

 

 カルナ達はかぐや姫から良質な竹やタケノコが採れる場所を教えてもらいそれを荷台に積んで帰ってきた。

 

 

「という事があったんだよ」

「へぇー、そりゃ大変やったな」

「おかえりモーさん」

「あ、ディル兄ィただいま」

 

 

 そう言いながら、先ほどまで事の経緯をクーフーリンに話していたモーさんは荷物を2tトラックに積んでいたディルムッドに笑顔で応える

 

 なんやかんやあったが、無事に大量の竹を仕入れて帰ってくる事ができ、これで、巨大そうめん流しを作る下準備も整いつつあった。

 

 そして、そのついでと言ってはなんだが、なんと竹の匠、かぐや姫まで、これは一体…。

 

 これにはベディとヴラド、カルナが困った様子でこう語り始めた。

 

 

「いや、だって難題クリアしたら結婚だなんて言うんだもん」

「俺たち竹だけ仕入れに行っただけなのにね」

「いやぁ、まさかカタッシュ村に姫様まで持って帰ってくる羽目になるとはねー」

「す、すいません、まさか難題を全部作ってきちゃうとは本当に夢にも思わなくて…」

 

 

 そう言いながら、申し訳なさそうに顔面を両手で覆うかぐや姫。

 

 彼らにとってはただ単に竹を仕入れに出掛けただけなのだが、気がつけば、農民である竹取の翁夫妻に気に入られトントン拍子に話が進んでしまっていた。

 

 本来、かぐや姫は月に帰る予定がブリテンに来てしまった不測の事態だが…?

 

 

「ここが月だよ」

「そうだ、ここは月面都市なんだよ」

「二人ともそれは無理があるぞ」

 

 

 ーーーどう見ても地球です。

 

 ヴラドとベディの二人にベシッとツッコミを入れるスカサハ師匠、流石にそれは無理があった。

 

 という訳で、古代の日本昔話。彼らが竹を仕入れに出掛けに向かった結果がこちら。

 

 

 今は昔竹取の翁達ありけり。

 

 野山にまじりて竹を取りつつ萬のことに使つたり、開拓し田畑を耕し果樹園を作り、竹以外も取り東屋を建てたり、窯を作り陶器を焼いたり、山羊等の動物を飼育したり、井戸を掘つたりしにけり、名をばYARIOとなむ言ひける。

 こんな感じの昔話が完成してしまった訳である。

 

 

「あんたら、行った先で何やってたのよ」

「いやー…思いのほか作業が捗っちゃって」

 

 

 ちなみに、竹を取りに出掛けた竹取の翁との邂逅だが、それもなかなか衝撃的なものであったと小次郎さんが語ってくれた。

 

 というのも…?

 

 

「それはちょうどお爺さんが竹を切るところに出くわしたんだが…」

 

 

 そう、その邂逅はなんとかぐや姫が生まれる前だとか。

 

 なんでも、竹を物干し竿で伐採していた小次郎さんであったが、光る竹に近づく竹取の翁の姿を確認。

 

 それを皆に報告したところ、ベディが早速、竹を切り倒した竹取の翁に近寄り。

 

 おじいさんが光る竹を切ると、可愛らしい女の子が出てきたところで、なんと。

 

 

『あのーその竹ってもう捨てちゃいますかね?』

 

 

 かぐや姫が入ってきた光る竹を仕入れて来たのである。しかし、これにはちゃんとした訳があった。

 

 そう、それは、皆さんもうお忘れかもしれないが彼らが作っている物がもう一つある、それが…。

 

 

「いやー、伝説のラーメンのメンマに使えるかなって思ってさー」

 

 

 そう、伝説のラーメン作り! そのラーメンに使うメンマをこのかぐや姫印の竹で作ろうと考えていたのである。

 

 これには彼らも納得、なるほど、確かに伝説のメンマを手に入れるには必要な食材だ。

 

 幸いにもかぐや姫の入っていた竹は辛うじてメンマに使える。

 

 図らずもなんと彼らは幻の食材、かぐや姫印のメンマを入手して来たというわけである。

 

 

「あ、かぐやちゃんだっけ? 私はメイヴ! 良ければ村を案内するから付いてきて!」

「え! あ、は、はい! よろしくお願いします!」

 

 

 そう言いながら、村の案内を進んでしてくれるメイヴの言葉に頷き、トコトコと付いていくかぐや姫。

 

 さて、村にまた住人を一人迎えたところで、皆は顔を見合わせる。

 

 早速、竹も仕入れたところで巨大そうめん流しを作る作業だ。

 

 

「ふむ、この竹は良いものだな…香りからして違う」

「エミヤんわかんのか?」

「あぁ、持ってみたらその良さがよりわかるよ」

「あ、本当だ、これ良いやつだ」

「わかるの!? それでわかるのかい!?」

 

 

 そう言いながら、竹を持って感想を述べるエミヤとモーさんの二人に目を丸くしがらツッコミを入れるマーリン師匠。

 

 普通ならわからないが、カタッシュ隊員たるもの、自然とそういったものに触れていれば把握出来るようになってしまうらしい。

 

 

 そういうわけで、竹を切り分けながら、いよいよ本格的に始まる巨大そうめん流し作り。

 

 

 果たして、ブリテンに巨大なそうめん流しは無事に完成するのか!?

 

 

 この続きは…! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 竹YARIO物語ーーーーーーーーーーーNEW!

 

 幻のメンマ入手ーーーーーーーーーーNEW!

 

 新YARIO宅急便ーーーーーーーーーーNEW!

 

 モーさん竹の気持ちがわかるーーーーNEW!

 



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そうめん流すしかない その2

 

 

 

 カタッシュ村で数週間が経った頃。

 

 彼らが作る巨大そうめん流しの作業は本格的に進んでいた。

 

 竹取物語からわざわざ取り寄せた上質な竹たちを使い、手慣れた手作業で次々とつなぎ合わせていく。

 

 

「おぉ…鋸が綺麗に入るねー」

「んしょ、んしょ」

「モーさん上手いなぁ鋸使うの」

「兄ィ直伝だからな! ふふん! なんたって兄ィの一番弟子はこの俺だぜ?」

「あー…、モーさん、それだとアルちゃん拗ねちゃうからあの子の目の前で言うの禁止ね」

 

 

 鋸を担いで自信満々なモーさんにそう言って顔を引攣らせるカルナ。

 

 インドにおいてきたアルジュナの事が気がかりなのか、そう言わざる得なかった。勤勉で建築について自分から懸命に学ぼうとしている彼の姿を知っているカルナからしたら、モーさんを一番弟子と断言できない。

 

 果たして、彼は元気にしているだろうか?

 

 さて、それはともかく、巨大そうめん流しの竹は繋がっていき、形が出来てくる。作業に割く人数も多いので効率よく組み立ても出来ていた。

 

 

「後はこれが数十キロ先まで伸ばさなきゃいけないってとこだよなぁ…」

「先は長いね」

 

 

 そう言いながら竹をひたすら組み立てていく作業。

 

 絵面的にはかなり地味である。こんな単調作業を繰り返していては次第と会話の方も残念ながら。

 

 

「……………」

「……………」

 

 

 ーーー無言になってしまう。

 

 無言ながらも、黙々と作業に取り組むカタッシュ隊員達。

 

 だが、そうめん流しはそんな無言な彼らとは異なり、だんだんと長さを順調に伸ばしていた。これならば、完成にもさほど日数をかけなくてもできるかもしれない。

 

 そうして、作業をする事数時間あまり、ここである出来事が彼らの前に立ち塞がる。それは…。

 

 

「おい、カルナ、ここはどうする? 川だぞ」

「あーマジかー、川跨いじゃう?」

 

 

 そう、エミヤが発見したのはカタッシュ村から暫し離れたところに流れている川。

 

 あいにくと、この川はまだ橋が架けられておらず、そうめん流しをするにはこの川をそうめんが渡せるようにしなくてはならない。

 

 これは参ったと一同は表情を曇らせる。しかもこの川、なかなか幅もあり埋め立てるわけにもいかない、そこで?

 

 

「川の中にこう、支柱を作ってさ」

「その上から繋いでってってな感じでどうよ」

「ほほう、なるほど確かに名案だ」

 

 

 川に入り、支柱を立て、その上からそうめん流しを建てる。

 

 こうすれば、川を渡らずとも竹は向こう岸まで伸び、そうめんも開通するはず、そうと決まれば話は早い、早速、リーダークーフーリンが川の深さを調べる。

 

 すると? この川の深さはなんと…。

 

 

「あ、意外と割と深いね、こりゃ、ロープ腰に巻いてなきゃ危ないかもわからん」

「いやーほんとゲイボルク便利だよね」

「ほんとだなー」

 

 

 そう言って、川の深さをゲイボルクで調べるリーダーの姿に頷くカルナとディルムッドの二人。

 

 この3人、ゲイボルクの使い方が明らかに間違っているのだが、さして、問題ないと言わんばかりに利便さに感心している。

 

 さて、深さもある程度わかったところで、水着に着替えたモーさんと褌一丁になったクーフーリンの2人はロープを腰に巻いて早速、支柱を作るために川の中へ。

 

 

「モーさんまでせんでええのに…」

「リーダーがやるんなら俺もやるよ、2人でやった方が早いじゃんか、な?」

 

 

 そう言って、赤いビキニを着たモーさんはにこやかな笑顔を浮かべてクーフーリンにそう告げると2人はとりあえず支柱になるものを建てにゆっくりと川に足をつける。

 

 しかし、この川…。

 

 

「ひゃー!? つ、冷めてー!!」

「無病息災! 無病息災!」

 

 

 かなりの冷たさだった。

 

 あまりの冷たさに思わず可愛らしい声をあげるモーさん、そして、リーダーは何故か冷たい川に入る際、大寒の儀式まで行う始末。

 

 そう言われてみれば今年はまだやっていなかった大寒の儀式、この機会についでに済ませるあたり流石である。

 

 さて、そうして、流されないようにゲイボルクを地面に刺しながら先に進み始める2人、だが、流れは相変わらず早くなかなか前に進まない。

 

 そして、ある程度、川の中を進み支柱を立てる場所に2人はたどり着くと竹の支柱が流されないようにしっかり川の地面にめり込ませるように入れていく。

 

 仕上げは木槌で上から叩き、周りは川にある丸い石で固めれば完成、これならば、川が大洪水の様な事にならない限りは大丈夫なはずだ。

 

 

「よーし!そんじゃ上に竹を通すぞー!」

「はいはい、それじゃこっちにくれー」

 

 

 そして、支柱の上に竹を通し、紐でしっかりと固定していく。

 

 なかなかの出来栄え、川を挟むという予想外な出来事があったものの、問題なく作業は進めれそうだ。

 

 さて、川の上でのそうめん流しも無事に完成しあとは戻るだけ、だが、ここでそう簡単に終わらないのが彼ら。

 

 なんと、岸に帰る途中、モーさんとリーダーにあるハプニングが…。

 

 

「よいしょ、よいしょ、あっ…!?」

「あ! リーダー! ちょ!?」

 

 

 なんとリーダー、足を滑らせ、なんと川に流されてしまった! 幸いにもロープを巻いていたのでそれを掴んでいるのだが…。

 

 リーダーの顔面に冷たい川の激しい水流が襲いかかる! ガボガボ言ってて、陸にいる3人には何言っているのかよくわからない。

 

 

 ーーーリーダーの川流れ。

 

 

 エミヤ、カルナ、ディルムッドの3人は大爆笑。リーダーを助けるべく、ロープを引っ張るのだが笑いのあまり腰に力が入らない。

 

 そして、同じく川に入っていたモーさんにも悲劇が…。

 

 

「あー!! ちょ! ちょっと待てぇ!」

「ブボォ!」

「あははははははははは」

「ちょ! 何やってんの!? 2人とも! あははは!」

 

 

 なんと、モーさんが付けていたビキニの上の部分が川に流され、なんと、足を滑らせ流されていたリーダーの顔面に直撃。

 

 これには腹筋をやられた3人の手から思わず力が抜ける。

 

 

「上げてぇ〜! たすけて〜」

「リーダーその声やばい」

「わかったわかったから」

 

 

 モーさん赤いビキニが顔面に直撃している中、大爆笑している3人から引っ張り上げられる我らがリーダー。

 

 それからモーさんも片手で胸を隠しながら顔を真っ赤にしつつ、ゆっくりとゲイボルクを地面に刺しながら進み、岸に上がる。

 

 その上からカルナがポンポンと頭を軽く撫でてやると上着をそっとかけてあげた。川に入っていた二人とも唇が紫でフルフルと震えていた。

 

 

「しかし、すごいタイミングだったな」

「いやー、笑った笑った、リーダーの顔面に追い打ちだもんな」

「べちん! っていったぞ、べちん!って」

「う、うるさい! 俺もまさかリーダーの顔に飛んでくとは思わねーし!」

「なかなか凄い衝撃やったで」

 

 

 そのリーダーの一言に再びエミヤ、カルナ、ディルムッドの3人から笑いが溢れ出る。

 

 川に流されたリーダーの褌がズレてもうちょっとで危うい場面もあったので余計に笑いが出てしまった。

 

 名高い英雄がなんと褌一丁であわや川に流されるという珍事、しかも、二人ともポロリしそうになるというおまけ付き。

 

 さて、こうして、カタッシュ隊員は再び、そうめん流しをキャメロット城の下町まで引く作業に戻る。

 

 気がつけば、多分、半分くらいだろうか、長い長いそうめん流しがキャメロット城下町までの半分くらい出来上がっていた。

 

 

「ま、こんなとこやろうかねとりあえず」

「今日はここまでにしとこうか」

「いいねー」

 

 

 とキリが良いところでそうめん流しの作業を一旦やめるカタッシュ隊員達。

 

 もう、日も暮れはじめ、そろそろ夕飯の時刻も迫ってきている頃だ。クーフーリン達は作業を終えてひとまずカタッシュ村に帰ってくる。

 

 

「おかえりー」

「あ! クーちゃん! お疲れ様! ご飯にする? お風呂にする? それとも…」

「た・わ・し?」

「ちょ! ベディ! せっかく私の見せ場なのにー!」

 

 

 そう言いながら、ずいっと横から現れたベディの顔を押し退けるようにして不機嫌そうに告げるメイヴ。

 

 ヴラド、ベディ、スカサハ、メイヴの四人はどうやら先に帰ってきて夕飯を作ってくれていたらしい。

 

 すると、スカサハはなんだか恥ずかしそうに顔を赤くしながらクーフーリンにこう告げ始める。

 

 

「あ、しげちゃん! …きょ、今日は私がなんとカレーとやらを作ってやったぞ!」

「なんと師匠初挑戦です」

「おー! ほんまに! 楽しみやわ!」

「ほう、カレーか…」

「俺らいなかったら多分、禍々しい何かが出来上がってだだろうけどね」

 

 

 そう言いながら、ドヤ顔のスカサハ師匠を横目に苦笑いを浮かべているヴラド。確かにカレー自体をわかっていないので、監督役が居なければ凄いものが出来上がっていただろう事は容易に想像がつく。

 

 というわけで、病院作りの方に向かっていたADフィンとナイチンゲール師匠、そして、牧場で羊の毛狩りをしていた小次郎、マーリン師匠を呼び食卓を囲む事に。

 

 

「あれ? かぐや姫ちゃんは?」

「いや…あの後、戻って月の使者さん達に身柄返したよ」

「まぁ、流石にお姫様に農作業させるわけにもいかないからね」

 

 

 そう言いながら、仕方ないとヴラドは訊ねてきたリーダーに説明をする。

 

 確かにかぐや姫をこんな場所に連れてきたまま、農作業をさせるわけにもいかない、それに元々帰る場所があるなら保護者さん達も心配するはずだ。

 

 すると、話を聞いていたメイヴとスカサハの二人は顔を見合わせると納得するカタッシュ隊員達にこう告げる。

 

 

「え? 私、女王なんだけど?」

「ん? 私も女王なんだが?」

「えっ?」

「えっ?」

「ちょ、えっ?」

 

 

 思わず、この2人の返答にカタッシュ隊員も顔を見合わせる。そう、実は何を隠そう、メイヴもスカサハも女王。

 

 か弱き女の子であるのだ、そう、それはあくまで自称であり、カタッシュ隊員は彼女達の逞しさを知っているのですっかり忘れている。

 

 

「あはははーまたまたご冗談を」

「そうだよ、槍突き刺して鉱物掘ったり平気でクソ重い石ぶん投げたりする人がまさかー」

よーし、お前らのカレーだけめちゃくちゃ辛口にしてやる!

「手伝うわ、スカサハ」

「ごめんなさい! 嘘です!」

 

 

 そう言いながら、涙目のスカサハにすぐさま謝罪に入るベディとヴラドの2人。

 

 それを見ていたクーフーリン達は思わず目をそらしながら苦笑いを浮かべていた。そう、何を隠そうこの人達もそう思っていたからである。

 

 こうして、笑い声が上がる中、賑やかな夕飯が始まる。

 

 明日は遂にそうめん流しの仕上げ、そして、病院作りもいよいよ最終段階に入る。

 

 スカサハとメイヴが作ったカレーで力をつけて立ち向かわねば!

 

 こうして、夜はゆっくりと更けていった。

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 リーダーの川流れーーーーーーーーNEW!!

 

 モーさんの水着が流されるーーーーNEW!!

 

 かぐや姫送還ーーーーーーーーーーNEW!!

 

 メイヴとスカサハは女王だったーーNEW!!

 

 流れの速い川に支柱を建てれるーーNEW!!

 

 冷たい川で大寒の儀式ーーーーーーNEW!!



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カタッシュ村清潔計画 その3(完成)

 

 ここはキャメロット城。

 

 カタッシュ隊員の1人、ネロちゃまことネロ師匠はこの日、1人でこのキャメロット城にいる王、アーサー王に謁見を求めていた。

 

 というのも、病院や建造物を建てるのに必要なローマン・コンクリートの仕入れを考えていたのだが、やはりそれにはこの国の王との協力が不可欠。

 

 貿易に疎い我らがリーダー達はちょっとそういった決め事をするのは向いていないとネロ師匠に今回お願いしたわけである。

 

 まぁ、事実はアーサー王を見たいと彼女が駄々をこねて泣き始めたので致し方なくだが。

 

 そして、手土産にヴラドとディルムッドが作ったお弁当を携えてキャメロット城に赴いたというわけである。

 

 

 ーーーはじめてのおつかい。

 

 

 さぁ、ネロちゃまは果たしてちゃんとおつかいはできるかな?

 

 

「うむ! 当然、余くらいカリスマ性に溢れた皇帝ならば青いのだろうが、ピンクだろうが、紫だろうが、色が被っていようがなんら問題はない! いざゆかん! キャメロットへ!」

 

 

 不安だが、自信満々に農作業着を着たネロ師匠は満面の笑みを浮かべながら、キャメロット城の門を訪ねる。

 

 しかし、そこには、門番が、どうする? ネロ師匠?

 

 

「む? その作業着は…?」

「うむ! 何を隠そう!余はローマ皇帝…」

「あ、農家のYARIOさんですねどうぞどうぞ! 先日の配達助かりました!」

「え!? そ、そうではなくてだな…」

「あ、入ってください! 我が王がお待ちしてますので!」

「う、うむ!」

 

 

 おっと、門番さんが気を使ってくれて通してくれたぞ! やったね! ネロちゃま! 門が潜れるぞ!

 

 しかし、ネロ師匠の顔はどこか不満げ、それはそうだろう、皇帝の威厳もまったく関係なく、農家のYARIOというだけで門が開かれたのであるネロ師匠の心境としては複雑だ。

 

 だが、ローマの皇帝はこれだけで心折れたりしない。

 

 さて、門番から案内されネロ師匠はアーサー王がいる王の間へと足を運んだ。さて? 無事にローマン・コンクリートは仕入れをできるようになるのだろうか?

 

 王の間には腹心の騎士達がズラリと並び、にこやかな笑顔を浮かべ、ネロ師匠を出迎えてくれている。

 

 これならば、一悶着ある事も無いだろう。

 

 

「遥々、よく足を運んでくれた。話は彼らからだいたい聞いている、私がアーサー王だ」

「うむ! 出迎え痛み入る! 我が名はネロ・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス! ローマ…」

「ローマン・コンクリートを仕入れに来た業者の方だな? うむ、確かに彼らの仲間だけの事はある、立派な作業着だ」

「!?」

 

 

 しかし、アーサー王、アルトリアちゃん、まさかのローマ帝国の皇帝をローマン・コンクリートを仕入れる業者呼びである。

 

 これには流石のネロ師匠も動揺を隠せない。

 

 

 ーーーーだが、あながち間違っていない。

 

 

 円卓の騎士の1人、トリスタンはネロ師匠に近寄ると手を握り、嬉しそうに上下に振った。

 

 

「いやー、先日は助かりました。配達してくださった農作物や食べ物のおかげでいくつも村が救われまして…」

「いや…あの…余は…余はな…!」

「特にあの唐揚げという食べ物は実に美味でしたよ」

 

 

 涙目でプルプル震えているネロ師匠ににこやかな笑顔を浮かべ、さらっと追い打ちをかけるように告げるトリスタン。

 

 あー、ネロちゃま、ついに限界かな? プルプル震えている小柄な身体は可愛いが、流石に耐えかねてこう話をしはじめる。

 

 

「余は皇帝で…皇帝なんだぞ! ローマなんだぞ!」

「えぇ! もちろん! 皇帝でローマン・コンクリートの仕入れの業者さんなんですよね!」

 

 

 そう、間違いではないが、彼らの感覚は最早、麻痺していた。

 

 スカサハにメイヴと女王で農業やら鉱夫やらをしている人たちを見ていたので、皇帝で、さらに業者なのは別に普通であるという感覚に陥ってしまっているのである。

 

 ついに、ネロ師匠は涙を堪えきれずに泣き始めちゃいました。あらら。

 

 

「うぇぇぇぇぇぇぇぇん! 」

「えぇぇぇ!!?」

「ちょ! トリスタン!何泣かせてるんですか!」

「えっ…!? いや、えぇぇぇ!?」

 

 

 そう言いながら、唐突に泣き始めたネロに動揺を隠せずにオロオロするトリスタンにギャラハッド卿からの理不尽な声が上がる。

 

 これは、あんまりである。ペタリと座り込みわんわんと泣き始めるネロ師匠。そんな中、アーサー王はいつの間にか良い匂いに釣られ彼女の側にある風呂敷に興味を示していた。

 

 そして、中身を勝手に広げるとくんくんと匂いを嗅いでネロ師匠にこう訊ねる。

 

 

「くんくん…。あ、このお弁当は…もしや彼らからの差し入れですか?」

「王よ!? なんでこの状況でネロさんが持ってきてる風呂敷を覗き見してるんですか! あっ…!? 摘み食いしてはいけません! 何やってんですか!?」

 

 

 そう言いながら、食欲に負け歯止めが効かなくなりそうなアーサー王に突っ込みを入れるガウェイン。

 

 そんなこんなで、いろいろあったが、ネロ師匠は無事にローマからローマン・コンクリートを仕入れの許可を彼女から頂くことに成功したのだった。

 

 さて、そんな出来事を振り返りながら、翌日、スカサハが作った一日おいたカレーを頬張るネロ師匠はドヤ顔で彼らにこう告げる。

 

 

「やはり! 余は偉い! 外交の才も一級品だな!」

「いや、ネロ師匠、それ明らかに失敗してるよね」

「…そっからほんとにどう巻き返したんだろう」

 

 

 これが、泣き落とし外交だとばかりに勝ち誇るネロ師匠の言葉に愕然とするカルナとディルムッドの2人。

 

 多分、アーサー王の事だから、ローマン・コンクリートを許可したのは、また、弁当が食べたいからとか単純な理由に違いないが、兎にも角にもネロ師匠は無事にはじめてのおつかいを終えてきてくれたようである。

 

 ローマとブリテンの交易もはじまり、winwinな関係を今後、築いていけるに違いない。二国の未来は明るそうだ。

 

 カレーを食べているネロ師匠もこれには上機嫌に歌まで。

 

 

「だ〜れにも〜ないしょで〜♪」

「ネロちゃん、音程ズレてるズレてる」

「リーダーの裏声並みだね、可愛いけど」

 

 

 そう言いながら、ヨシヨシとネロ師匠の頭を撫でてあげるカルナ、何はともあれ、ネロ師匠の功績には違いない。

 

 さて、気を取り直して、不足していたローマン・コンクリートを仕入れて病院作りもこれで再開できる。

 

 カルナの腕にも気合いがみなぎってきた。

 

 いよいよ、病院作りも最終段階、不足していたローマン・コンクリートで外壁を組み立てていき、形が出来る筈。

 

 

「後は、屋根だねーやっぱり」

「棟上げですか…、ふむ、いい段階まできましたね」

「あのさ、ナイチンゲール師匠、違和感なくヘルメット被って土方の格好してるんだけどなんで誰も突っ込まないの?」

 

 

 そう言いながら、腕を組み、出来上がっていく病院の建物に満足気味のナイチンゲール師匠の格好に思わず突っ込むヴラド。

 

 しかも、カルナの隣でなんと仁王立ち、女ながらの逞しさと色気がにじみ出ているようだ。

 

 さて話は戻るが、屋根の工事は、棟上げの後に行う。まずは、屋根の下地工事を行い、下葺き材を施工し、最後に屋根の仕上げ工事へと工事が流れていく。

 

 さて、ここで、マーリン師匠から一言。

 

 

「屋根作りの話をしよう。屋根の最頂部に棟木があり、この棟木から軒桁へと垂木が架けられいる。この垂木は母屋と直交するように架けられていくんだね」

 

 

 そう、こうやって、建造物の屋根は組み立てられ作られていく。古くからある匠の技を存分に活かした建築法だ。

 

 そして、ここで、忘れてはいけない、そう、それは、今まで学んだ知識を活かすという事だ。

 

 次に作るのは、雨漏りを防ぐための瓦である。

 

 早速、学んだ知識を活かすため、カルナは以前、竹取物語で見つけた神社の屋根を思い出す。

 

 そう、それは、屋根作りのお手本、土葺き。

 

 

「やっぱ、屋根には杉の皮だよね」

 

 

 土を接着剤代わりに瓦を葺く場合、土の下に杉の皮を敷く。

 

 これによって、染み込んでくる雨水から屋根を守る事ができる。

 

 しかし、この島には皮を剥がせるような適当な木はない。

 

 そこで、カルナが持ち込んだのは、柿を発酵・熟成させた液体“柿渋"。

 

 かつて、福島県のとある村で古民家の柱にも塗って使った天然の防水・防腐材。

 

 柿渋に含まれる柿タンニンという成分が、酸化する事で防水効果を発揮する。

 

 以前、カルナとリーダーが新聞紙だけで自転車を作ったときにも、新聞紙の強度を上げるために塗ったのが、柿渋だった。

 

 これを、分厚い紙に塗れば、杉皮の代りに使えるはずとカルナは考えた。

 

 

「うん、こんなもんか」

 

 

 柿渋を仕入れた紙にしっかり染み込ませ、あとは天日干しで乾かすと強度が増し、水も弾くようになる。一時間かけ、ひたすら干した柿渋紙120枚、これが乾くと、手触りは油紙を固くしたようなパリパリした感じになる。

 

 試しに水を掛けてみると、ちゃんと弾いて水も通さない。

 

 これを晴れの日を選び、カタッシュ隊員が代わる代わるで二日間、120枚の柿渋紙を屋根に貼り、下準備は完了。

 

 後はこの上に水で練った粘土質の土を乗せ、そして、肝心の瓦は。

 

 

「こんにちはー! あのー、僕ら鉄腕/fateという企画で、実はこの辺に使われなくなった古びた民家とかありませんかね?」

 

 

 わざわざ、だん吉を使って仕入れてきた。

 

 さて、粘土を練る作業は水と土の比率を調整しながら、練っていく。これは、なぜか練る作業が得意なベテランアイドル、クーフーリンがモーさんに教えながら仕上げた。

 

 こうして出来上がった屋根には瓦が貼り付けられる。

 

 手順は、まず屋根の下地に粘土質の土を載せ、その上に瓦を置いていくが、ここで必要なのが柄の部分に目盛りが付いた金槌。

 

 

「クーちゃんどうかしら?」

「うん、ええやん、その調子」

 

 

 メイヴの作業具合を確認するクーフーリンの顔からも思わず笑みが溢れる。

 

 金槌を軒に当て、瓦を目盛りに合わせて、出っ張り具合を調整すれば、何枚葺いてもズレることはない。

 

 最後に、瓦に開けた穴と打ち付けた竹ひごに番線を通して固定する。

 

 瓦は1000枚以上、わずかなズレも最後には大きな狂いに。作業はカタッシュ隊員達が力を合わせ慎重かつ、急ピッチで進んだ。

 

 

「それでは私はそろそろ鬼瓦の制作に入りますね」

「…もう母ちゃんがそのまま屋根に仁王立ちしてた方が良いんじゃ…」

「モーちゃん? 何か言いました?」

「いえ! 何にも言ってないですっ!」

 

 

 そう言いながら、にこやかな笑みでモーさんに告げるナイチンゲール師匠。これには、モーさんも思わず背筋が凍りついた。

 

 

ーーーー鬼瓦よりおっかない婦長

 

 

 お寺など瓦屋根の上に構えられている、魔除けの鬼瓦。

 

 その起源は諸説あるが、古代ローマで建物の入り口に飾ったメドゥーサ。

 

 それが1400年前に伝わり、始めは蓮華(れんげ)模様、後に鬼の全身へと変わり、さらに現在の鬼の瓦へ。

 

 これは厄除けだけではなく、雨水の浸入も防いでいるという。

 

 この出来上がる病院にもナイチンゲール師匠は守り神を据えようということらしい。むしろ貴女が守り神なのでは? と言うと問答無用で拳銃の弾が飛んでくるのはご愛嬌だ。

 

 鬼瓦の作り方としては、板状にした粘土をそのまま使ったり、ちぎって・丸めて・盛りつけて、鬼瓦の形を作っていく。

 

 今回は型などは用いず、ナイチンゲールの盛り付けでオリジナルの形を作る。

 

 まずは、鬼瓦の基本となる図面を板状の粘土の上に敷き、上から線をなぞることで大体のパーツの位置を下書きする。

 

 そして、輪郭を切り取ったら、これを土台に顔のパーツを盛っていく。

 

 こうした過程に加え、その後、いろいろと手を加える。

 

 最終段階として、鬼瓦を乾燥させ、若干、縮んだ鬼瓦に、つや出しを吹き付けていく。あとは、窯に入れ、焼き上げれば出来上がりだ。

 

 そして、それらを屋根につけていけば…。

 

 

「立派な病院やな」

「はい、文句のつけようがない見事な出来です」

 

 

 待ち望んでいた、カタッシュ村に病院が建った。

 

 見た目は和風ながらも、そのナイチンゲール作の鬼瓦が病魔を払わんと目を光らせている。死神もこれならばなかなかこれまい。

 

 斬新な出来栄えにナイチンゲール師匠もこれにはほっこりしていた。

 

 さて、ついに完成を迎えたナイチンゲール師匠とYARIO達の手で建てられた病院。

 

 これから先、ブリテンに巣食う病魔や怪我に立ち向かわなければならない最前基地、まだスタートラインに立ったばかりである。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 カタッシュ村に病院を建てたーーーーNEW!

 

 ネロ師匠の泣き落とし外交術ーーーーNEW!

 

 屋根作りに詳しいマーリン師匠ーーーNEW!

 

 ローマン・コンクリート輸入開始ーーNEW!

 

 ブリテンで瓦屋根ができるーーーーーNEW!



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カタッシュ村散策 その1

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateで無事に病院を完成させたカタッシュ隊員達。

 

 次に取り掛かるのは、残りのそうめん流しの完成だ。あと半分、皆で取り掛かればなんとか終わるはず。

 

 

「いやー、そうめん流すの楽しみだね」

「美味しいもんね、カロリーも割とあるし」

 

 

 そう言いながら、竹を繋ぎ合わせる作業に取り掛かるヴラドとベディの2人、なんやかんやで作業も折り返し地点まで、ここまでくれば後は突っ走るだけだ。

 

 一方、その頃、クーフーリン達はというと?

 

 

「いやー、生い茂ってんね」

「割と村の周辺は緑豊かなんだよね、不思議だ」

 

 

 そう、村の周りに生い茂っている森林地の探索に出かけていた。いずれは開拓する土地を後々増やしていきたいという計画もある。こうした探索も必要な事。

 

 今回はモーさんとメイヴちゃんをお供に連れて、三馬鹿トリオは今日も行く。

 

 さて、それから歩く事数分あまり、生い茂ってる森は思いの外深い、自然が豊かなのは良いことだが…。

 

 すると、ここでカルナ、あるものを見つける。それは…。

 

 

「あ、これ見てよ、トゲ付いてるトゲ!」

「うお、これチーゼルってやつじゃない? とんがってんねー」

 

 

 そう、発見したのはチーゼルと呼ばれる植物。

 

 主な用途として布に起毛加工するときに使うことでよく知られた植物である。しかし、それにしてもすごいトゲだ。

 

 チーゼルをしばらく見つめていたディルムッドはふと、モーさんに視線を向けてみると何やらモーさんは納得した様にチーゼルを見て頷いていた。

 

 

「俺と同等か、それ以上にトゲがあるよな」

「…………」

「…………」

「ばっかおめぇ! 俺もあるぞ! トゲ!」

「…………」

 

 

 そして、そのモーさんとディルムッドの2人の一言にシーンと静まり返るカタッシュ隊員達。

 

 

 ーーー最近、丸みしかない2人。

 

 

 当の本人たちは何故だが嬉しそうにハイタッチを交わしていた。何というか側から見れば微笑ましいがクーフーリン達はなんとも言えない。

 

 

「…あー、そうですか」

「…うん、せやね」

「…トゲとかあったかしら?」

 

 

 メイヴの最後の一言に思わず笑いが吹き出すカルナとクーフーリンの2人。

 

 トゲというより愛嬌と可愛らしさが増してきたモーさんに板前に定着しているディルムッド、トゲというより現在は肉球ばりの柔らかさしかない。

 

 さて、気を取り直して探索に戻る。歩いている4人は探索の最中にはこんな会話を繰り広げていた。

 

 

「そういえばクーちゃん達っていつごろアイドルになったの?」

「せやなぁ…、えーと、最初は僕とカルナの2人やったんやけど2人とも楽器やってて」

 

 

 そう言いながら、メイヴの質問に懐かしそうにYARIOの結成当時の事を振り返るクーフーリン。

 

 今はこうして再結成できてはいるが、当初彼らがこうやってアイドルになった経緯はモーさんやメイヴ達にはわからない。

 

 YARIO誕生秘話は彼女達としても気になる事柄でもあった。

 

 

「で、バンドやって、楽器のメンバー、他にも欲しいなと」

「へぇー、で、ディル兄ィは?」

「ちょうどそん時、ドラム叩いてて、楽器やってる2人がいるからそっちいきなさいってな感じで…で、行ったら、この2人」

 

 

 そう言いながら、ディルムッドは懐かしそうに笑みを浮かべつつ楽しそうにメイヴとモーさんの2人に語る。

 

 これだけ見れば、順調にアイドルグループとして形になりつつあるように聞こえる。

 

 だが、これには大きな落とし穴があった。それは…。

 

 

「俺は当時、アイドルでデビューするもんだとばかり思ってたから、リーダーと兄ィと初めて会った時に、あれ? これもう終わったなと思った

「!?」

「あはははははははは!」

「いや、気持ちはわかるけどさ!」

 

 

 そのディルムッドの一言に思わず笑いが出てくるクーフーリンとカルナの2人。

 

 当時は彼らにはさほど期待がされておらず売れないだろうと思われていたのだろう。

 

 そして、ディルムッドは思い出しながら、メイヴとモーさんの2人に続けて語り始める。

 

 

「いやー正直、俺も売れる売れない組み合わせは直感的にわかってたところがあったからさ、この2人を見て『おーディルムッド来たの?』と聞いた時に俺もそっち仲間かと」

「あはははははは! マジかよー!」

「へぇー、なんだか意外ね」

 

 

 ディルムッドの語りに思わず笑みがこぼれるメイヴとモーさんの2人。今はこうして仲の良い3人にそんな過去があるとは意外だった。

 

 それを聞いたカルナとクーフーリンも頷いていた。

 

 

「俺たち『ようこそ』言っちゃってたもんね」

「いやー、ディルムッドが来てくれて心強かったわー」

 

 

 本当に売れない人たちと自己認定するほどのメンバー。ディルムッドも正直、諦めていた感がものすごかったという話だった。

 

 しかし、ここで彼らにとって光明と言える出来事があった。それは…。

 

 

「でも、ここでベディが入ってきて、よっしゃ! まだ頑張れる! まだいける!ってなったのよ」

「あー、ベディは人気出る面子だったわけだ」

「んー、私はクーちゃんもカルナちゃんも好きだけどなー」

 

 

 そう言いながら、メイヴはディルムッドの話を聞きながらクーフーリンとカルナの2人を非常に気に入っている事を告げる。

 

 すると、一通り話し終えたディルムッドの語りを聞いたカルナとクーフーリンの2人は顔を見合わせると改めて今の現状を語り始める。

 

 

「でも、気がついたらアイドル目指してたのが結局、バンドになって気づいたらこんな事やってるからね」

「転職しすぎやね、僕ら」

 

 

 ーーーー結局、本業はアイドルではない。

 

 そう、本業は最近やったのはこのブリテンに来た当初だけ、しかも、アイドルというよりはバンドで歌うお仕事。

 

 その後、運送業や酪農、ラーメン作り、病院作り、スズメバチの駆除、農業全般、そうめん流し、そして、村づくりなど彼らはアイドルからは想像できない縁遠い事ばかりをやっていた。

 

 他にもレストアや石油掘り、車作りなど挙げればキリがない。

 

 

「そう考えるともうアイドルは卒業したな」

「そうだね」

 

 

 そう言いながら、笑みを浮かべるカルナとディルムッドの2人。

 

 アイドルがアイドルを卒業したと言い切る。確かに彼らみたいな人間をアイドルと呼んで良いのかと言われれば首をかしげるところだが本人たちがそれで良いものか…。

 

 さて、話題は変わりここで何故かお酒の話に。

 

 

「クーちゃん達もお酒とか飲むの?」

「まぁーせやな、3人とかでよく飲んだりとかはあったね」

「ふーん」

 

 

 お酒と言えば、そういえば、カタッシュ村にはまだお酒作りはしていなかった。いずれはお酒作りにも手を伸ばしていきたいところ。

 

 さて、お酒についてだが、モーさんはこんな疑問をディルムッドに投げかける。

 

 

「ディル兄ィが2人とお酒飲んでてめんどクセェってなることある?」

「いや! そりゃもうしょっちゅうよ!」

「おいおい」

「いやいや、そんな事ないやろ」

「えー気になる! どんな感じなの? 2人とも!」

 

 

 そう言いながら、ディルムッドの話に食いつくメイヴ。確かに、お酒を飲んで酔っ払った2人は見たことがない。

 

 すると、ディルムッドはお酒を飲んだ後の2人の話を各それぞれ語り始めた。

 

 

「あーまず、兄ィからね、兄ィは典型的な暴れん坊です」

「えぇ!? 俺そんな酒癖悪い!?」

「いやいや、自覚なしかい!」

「へー! まじかー!」

 

 

 そう言いながら、思わずカルナに突っ込みを入れるクーフーリン。

 

 お酒を飲むと典型的な暴れん坊になるというカルナ、それにはディルムッドからこんな話が…。

 

 

「一緒にお酒飲むじゃない? だいたいの奴は兄ィからブレーンバスター食らってるから」

「!? ぶ、ブレーンバスター!? なんだそれ!?」

「そうそう、ブレーンバスター、あ、こんな風に人持ち上げて背中から落とすプロレス技ね」

 

 

 そう言いながら、驚いたように声を上げるモーさんに説明するディルムッド。

 

 なんと、酔っ払った勢いでカルナはブレーンバスターをするというのだ。

 

 その経緯はなんとも単純で、お酒を飲むことにより気持ちが昂ぶり、カルナはプロレスごっこに興じるという。

 

 確かに英雄ならばお酒を飲んで気持ちが昂ぶるのもわかる気はするが…。

 

 

「大英雄カルナのブレーンバスターを今まで何人食らった事か…」

「いやー、それは大昔であって今はやってないよー」

「いやいや、そんな事は無いはず、胸に手を当てて思い出してみ?」

 

 

 そう言いながら、ディルムッドはカルナに今現在までブレーンバスターをやっていないのかを問いかける。

 

 すると、カルナは何かを思い出したのかいきなり吹き出すように笑い始めると口から自白しはじめた。

 

 

「…いや、やってたわ多分、ウチの建築の社員とか、あと、アルちゃんにもかましてたと思う」

「ほらー! やっぱり! あんた絶対やってると思ったもん俺!」

 

 

 どうやら、思い当たる節が見つかったようで自白したカルナの言葉に一同はゲラゲラと笑い始める。

 

 しかも、なんと、インドにて建築を教えていた作業員だけでなく、英雄であるアルジュナにもブレーンバスターをしていたというのだから驚きだ。

 

 カルナはその時の様子をこう語る。

 

 

「いや、翌日、背中抑えてるもんだからさ、アルちゃんにどうしたのか聞いたのよ、そしたら、『あのブレーンバスターという組み技、教えてくれ』って言うもんだから、もうやっちゃったなって」

「いや、記憶なかったの!? 兄ィ!」

「全然覚えてなかった」

 

 

 カルナは楽しそうに笑いながらモーさんに告げる。

 

 お酒を飲み、酔っ払うとブレーンバスターをかますというカルナ、お酒を飲むと絡みたくなっちゃう熱い男、それが、我らがカルナ兄である。

 

 熱いというかブレーンバスターは迷惑であるのは間違いないのだが、しかし、ディルムッドが言うには楽しいお酒だそうだ。

 

 

「それってよくよく考えたら王様達とか、一緒に会席でお酒飲んだら大変じゃない?」

「全員、ブレーンバスター食らうよ」

 

 

 そう言いながら、メイヴの言葉に頷き答えるディルムッド。

 

 確かに楽しいお酒なのだろうが王様全員にブレーンバスターはまずい、しかも本人に酔っ払った自覚がないから尚更だ。

 

 仮に王様が集まり、問答するとしよう、その場にカルナを投入すればアーサー王だろうが、英雄の王様だろうが大王様だろうが彼は勢いあまってブレーンバスターをするに違いない。

 

 

 ーーー酔った勢いで王様バスター。

 

 

 想像しただけで凄い絵面である。

 

 

「ちなみにリーダーは?」

「あれは楽しくないね」

「ちょ!? なんでやねん!」

 

 

 全員その言葉を聞いた途端ゲラゲラと笑い始める。

 

 カルナはブレーンバスターとかいろいろと熱い男でお酒も楽しいと聞いたばかりにリーダーのお酒が楽しくない酒と言われればこのオチには思わず笑ってしまう。

 

 哀愁漂うリーダーだが、でも、こんなところもまた彼が皆から愛される理由の一つだろう。

 

 

 それからしばらくして、談笑を交えつつ、クーフーリン達が散策するとあるものが見つかった。それは…。

 

 

「お、これは…」

「まだ熟してないけど、さくらんぼじゃない?」

 

 

 そう、見つけたのは、まだ、熟していないさくらんぼを発見した。色はまだ赤くは無いがこれは貴重な食料になり得る。

 

 早速、一つだけさくらんぼを摘んでみるディルムッドとリーダーの2人、実は熟していないがこれをどうする気なのだろうか?

 

 

「噛んでみる?」

「せやね一つだけ」

「あ! それじゃ俺も! 俺も!」

「あ、私も一つ良いかしら?」

 

 

 そう言いながら、カルナとディルムッドからさくらんぼを手渡されるメイヴとモーさんの2人。

 

 なんでも口に入れようとするのは果たして大丈夫なのだろうか? 何はともあれ、ひとまずはさくらんぼの味見。

 

 多少、色がマシなものを選んで、さくらんぼを口に運び、4人は噛む、すると、その味は…。

 

 

「ふぉぉぉぉ……!」

「ふぁぁぁぁ……!」

「ひぁぁぁぁ……!」

「ほぉぉうぁ……!」

 

 

 言葉にならないような声をあげて顔を渋らせる4人。どうやら、熟していないさくらんぼの渋さが口に広がり、あまりの味に驚愕しているようである。

 

 酸っぱいし、苦味もある。

 

 酸味があるというのはそれだけ甘くなるという事だが、色が多少マシなやつでさえ食べれないのは誤算だった。

 

 匂いは確かによく、さくらんぼの匂いはするが…。

 

 

「俺たちもさぁ、大人なんだからさ〜、ちょっと気が早いよー、焦りすぎ焦りすぎ、成長過程をね」

 

 

 ディルムッドは熟していないさくらんぼを見つめたまま、皆にそう告げる。

 

 確かに気は早い、酸味が甘味に変わる日までしっかりと待ってあげることも必要だ。

 

 という事で、このさくらんぼの大人の楽しみ方を…。

 

 

「このさくらんぼの実の気持ちになって、この子のね」

 

 

 さくらんぼの葉にそっと触れながら皆にそう告げるディルムッド、さくらんぼの気持ちになるとは果たして…。

 

 さて、ここでディルムッド、さくらんぼの実になった気持ちで心を込めた一句を読み上げはじめた。

 

 

 ーーーー言葉が湧いてくる。

 

 

「まだダメよ 甘くなるから 待っててね」

 

 

 ここで再び、さくらんぼの映像と共にディルムッドが聞いた、熟していないさくらんぼの気持ちになった句を再び聞いてもらおう。

 

 

 まだダメよ 甘くなるから 待っててね

 

 

 ディルムッドは熟していないさくらんぼの一つを口に近づけると口付けをしこう語り始める。

 

 

「まだまだな、酸っぱい時期だよな…待ってるよ」

「……………」

「……………」

 

 

 しかし、句は凡作、特にこれといって傑作なようには感じられなかった。

 

 ディルムッドの句を聞いて首をかしげるモーさんは沈黙が流れる中、一言、こんな言葉を投げかける。

 

 

「なぁ、兄ィ、ディル兄さくらんぼに頭やられたのか?」

「モーさん、あれが素のディルムッドだよ」

 

 

 そう言いながら、質問を投げかけるモーさんの頭を悟ったように撫でるカルナ。そんな中、ディルムッドは相変わらずさくらんぼに口付けを送っていた。

 

 確かにあんな風に接していたらさくらんぼの木の気持ちはわかるようにはなりそうな気はする。

 

 さて、散策で新たにさくらんぼの木を発見した一同はひとまず散策を終えてカタッシュ村に帰るのだった。

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 さくらんぼの木を発見ーーーーーーーーNEW!

 

 ディルムッドの凡作が出来上がるーーーNEW!

 

 丸くなったモーさん&ディルムッドーーNEW!

 

 インドにブレーンバスターが伝わるーーNEW!

 

 

 

 

 



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そうめん流すしかない その3(完成)

 

 

 竹を組み合わせて作る巨大そうめん流し。

 

 ブリテンを股にかけるそれは、この島の食料問題にピリオドを打つ象徴。

 

 さて、そのそうめん流しだが、もうその長さはカタッシュ村を離れ、ブリテン城下町へと達していた。

 

 全長は最早、想像し難いほど長い竹の道、ここを通ってそうめんがキャメロット城の城下町へと送られてくることに…。

 

 

「…いやー、なかなかね、しんどかったよ、こいつをここまで伸ばすのは」

「竹とこれだけ格闘したの俺達くらいだよな」

 

 

 自信を持ってそう言える。

 

 このそうめん流し作りにはなかなか苦労をさせられた。川を越え、丘を越え、そして、辿り着いたこの街。

 

 全てはお腹を空かせた街のみなさんにそうめんを届けるために…。

 

 さぁ、後はこれを城の中に引いていけば良いが…。

 

 

「問題はキャメロット城にどうやってそうめん通そうか」

「だよなぁ、やっぱり城ってなると距離感あるし、城の中にそうめん流しを通すとなるとなぁ」

 

 

 彼らの目の前に聳え立つキャメロット城。この国の王であるアーサーペンドラゴンの居城。

 

 この場所にそうめんを届けるには、そうめん流しを繋げるしかないが流石にそれだといろんな意味で問題になりそうだと彼らとしても考えるところであった。

 

 そこで、カルナは考える、つまり、城内にそうめん流しを繋げなければ良いのだ。

 

 

「そうめん飛ばすしかない」

「なるほど」

 

 

 つまり、そうめんを飛ばし城内に入れてしまえば、キャメロット城の中にまでそうめん流しを繋げる必要は無い!

 

 そうめんを飛ばし、城内にあらかじめ作っておいたそうめん流しに落としてしまう。こうすれば何の問題も起きないはず。

 

 見事な発想、これにはベディも関心するように声をあげた。

 

 

「落っことして下で拾う」

「そうめん空飛ぶよ」

 

 

 ーーーー空飛ぶそうめん流し。

 

 

 空を飛んだそうめんは城門を越え、キャメロット城の城壁の下に設置した待機しているそうめん流しへ…。

 

 この斬新なアイデアなら、きっとアルトリアちゃんをはじめとした円卓の人達も満足にそうめんを食べてくれる筈。

 

 後は飛ばしたそうめんをしっかりとキャッチするような作りと、丘や坂などの箇所を勢いよくそうめんが駆け上がるために高圧洗浄機を設置していく。

 

 こうすれば、水の勢いが増し、そうめんもスムーズに街の中を行き渡るようになってくれる筈。

 

 以前、やった時はそうめんが水圧で吹き飛んだ事もあったが、水の量などを調整しておけば何とでもなる。

 

 

「さて、それじゃ後はデカいザル敷いて、カタッシュ村から流すだけだな!」

「伸びそうな気がすんだけどさ…これ」

「大丈夫大丈夫! 伸びてもうまいのよ! 俺たちのそうめんは!」

 

 

 そう言って、ブリテンの城まで長々と続く巨大なそうめん流しを見つめるモーさんの肩を叩いて満面の笑みを浮かべるディルムッド。

 

 

 ーーー伸びるのもまたそうめん流しの醍醐味。

 

 

 大量にあるそうめんをどっさりと用意し、割り箸をトレースオンしたスタッフエミヤからそれを受け取るカタッシュ隊員達。

 

 いよいよ、そうめん流しの試運転、果たして、そうめんは無事にブリテンの城までたどり着く事ができるのか。

 

 そうめん流しの先にはまだかまだかと、麺つゆを構えたアルトリアちゃんと円卓の騎士達が目を輝かせて待機している。

 

 そして、そうめんの他にも手作りで打ち付け作り上げた蕎麦を摘み上げたエミヤはキメ顔でカタッシュ隊員達にこう問いかける。

 

 

「別に、蕎麦も飛ばしてしまっても構わんのだろう?」

「いよ! 待ってました!」

「さぁ! そうめん流すでー!」

 

 

 さぁ、いよいよ発走です。

 

 まずはエミヤから流された蕎麦がそうめん達を先導するようにそうめん流しを流れていく。

 

 そして、それを合間合間にカルナ達やモーさん、婦長、マーリン師匠などが割り箸を突っ込み麺を次々と掬うと麺つゆにそれをつっこんで食べはじめる。

 

 

「うお! うめー! これがそうめんか!」

「…私は蕎麦が気に入りました。胃にしみます」

「そうめん流し…何という高等魔法なんだ…」

 

 

 そう言いながら、味わい深いそうめんと蕎麦を食べるカタッシュ隊員一同。

 

 しかし、蕎麦とそうめんの旅は終わらない、次は川を渡り、高圧洗浄機の力で丘を越えていく。

 

 だが、ここでそうめんが…。

 

 

「あー! やべえ! 吹っ飛ぶ吹っ飛ぶ!」

「リーダー! 早く!」

「ちょ! まっ! あだぁ!」

 

 

 高圧洗浄機が暴走し、なんと勢いよく吹き上げたそうめんがリーダーの顔面に激しく直撃、クーフーリンは思わず仰け反る。

 

 それを間近で見ていたスカサハ師匠はすかさず、暴発し自身に飛んでくるいくつものそうめんを巧みな割り箸テクニックで捌いて麺つゆの中へ。

 

 そして、それを口に運ぶ。さて、そのお味は…?

 

 

「…ふむ、まだ行けるな、伸び切ってない。全然おいしいぞ!」

「いや、スカサハ師匠、リーダーは伸びちゃってる」

「…む! そうめんにやられるとは鍛え方が足りていないな!! 情けないぞ! しげちゃん!」

「め、面目無い…」

「これでも食って気合いを入れ直せ! ほら!」

 

 

 顔面にそうめんが直撃したリーダーにスカサハ師匠からのありがたい厳しいお言葉。

 

 しかし、スカサハ師匠、ここでさりげなく麺つゆにつけたそうめんをリーダーに食べさせてあげるさりげない優しさをここで見せつける。

 

 さて、場面はさらに変わり、次はブリテン城下町へと差し掛かる。

 

 高圧洗浄機が暴走するハプニングはあったものの、根気強くそうめんが次から次へと流れてくる。

 

 カタッシュ隊員達が莫大なそうめんの量をトラックを使い何日もかけて運んできた甲斐があったというもの、そうやすやすとはそうめんは無くならない。

 

 ここからは流れてきたそうめんは多岐に渡り街の中を巡り、最終的にはキャメロット城へ行き着くようになっている。

 

 さて、この城下町にはネロちゃまとADフィン、鉢巻を巻いたトラック野郎こと小次郎が麺つゆを片手に待機していた。

 

 さぁ、ここまで流れてくれば流石にそうめんも伸びている頃、さて、その味は果たして?

 

 

「…あれ? そうめん伸びてないですね?」

「うむ! …これがSOUMEN!! ツルツルしていて喉越しも良いな! 余は大変気に入ったぞ! ローマでも造らねばな!」

「この蕎麦…なかなかわかってやがる…。いい味だ!」

 

 

 3人は変わらぬそうめんと蕎麦の味に思わず驚いたような声を上げる。

 

 カタッシュ村からブリテン城下町まで、かなりの距離がある。にもかかわらず、味はさほど落ちていない。

 

 これは一体どういう事なのか? カタッシュ村魔法使いの第一人者マーリン師匠の話によると…。

 

 

「そうめん流しの話をしよう。間違いない、これは魔術的なものがかけられたそうめんと蕎麦だ。固定化や何かで品質を保ちつつ流しているようだね」

「実は私がやった」

「僕もやで」

「あんたら揃いも揃ってそうめんに何してんのよ」

 

 

 そう、言ってスカサハとクーフーリンの2人は仲良くそうめんをズズッと啜りながら、同じくそうめんを啜り解説をするマーリン師匠に告げる。

 

 それを聞いていたカルナはすかさず突っ込みを入れた、そうめんに魔術を施すこの師弟コンビは何を考えているのか…。

 

 しかし、これのおかげでそうめんと蕎麦が伸びなくなったのもまた事実である。

 

 ルーン魔術によるそうめんと蕎麦の品質改良。

 

 これにより、ある程度水に触れてもそうめんと蕎麦が伸びない工夫を施し、皆も安心してそうめんが食べられる。

 

 確かに長い距離をそうめんと蕎麦が水を使い巡るのだから、これくらいの工夫を施さないと美味しいそうめんはブリテン中に届けることができない。

 

 

「だって、伸びた麺なんて美味しくないやん、ねぇー?」

「ねぇー、私もそう思う」

「ねぇーってなによ、ねぇーって」

 

 

 そう言いながらカルナは呆れたように左右に首を振る。

 

 と、何はともあれ、そうめんはこうしてブリテンの街を駆け巡り、街の人々は麺つゆと共に流れてきたそれを美味しく頂いていた。

 

 これが、世界最古、ブリテンそうめんブームの到来である。

 

 

「いやー、我が王よ、そうめんとは美味しいものですね」

「確かに、このわさびというものはツーンと鼻にきますが、癖になりそうです」

「ズルルルルルルル、ズルズルズルズル」

「…食べてばっかりではないか」

 

 

 アグラヴェイン卿の突っ込みが冴え渡る中、キャメロット城でも城壁を飛んでやってきたそうめんがアーサー王と円卓の騎士達の元へと流れてきていた。

 

 一心不乱にズルズルとそうめんを食すアーサー王、その顔は実に幸せそうな表情を浮かべていた。

 

 そうめんに蕎麦、今までアーサー王が食べた事がない食べ物は喉越しも良く食が進む。

 

 

「ゴクン、…これがMENTUYUのDASH!

「いいえ、王よ、これは麺つゆのダシです」

「!? なんですって!DASHではないのですか!」

 

 

 あらがち間違いではないのだが、麺つゆのダシであるので訂正を加えるランスロット卿。

 

 

 ーーーーDASHで作りました。

 

 

 アーサー王、円卓の騎士そして、ブリテンの人々も麺つゆとそうめんの素晴らしさに気づいたに違いない。

 

 その後、円卓会議にて、年間行事にブリテン伝統のそうめん流し祭りが開催される事が決定されることになるのだが、それはまた別の話である。

 

 貧困に苦しむ家庭にも流れてくるそうめんと蕎麦。

 

 このそうめん流しによって、カタッシュ村にまた人が増えてくるようになるだろう。

 

 果たして、この村は今後どのような発展を遂げていくのだろうか?

 

 

 その続きは…、次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 礼装・ルーン魔術を施したそうめんーNEW!

 

 ブリテンの城壁を飛ぶそうめんーーーNEW!

 

 ザ!麺つゆDASH!!ーーーーーーーNEW!

 

 ブリテンにそうめんブームーーーーーNEW!

 

 空飛ぶ蕎麦ーーーーーーーーーーーーNEW!



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明日を目指して!

 

 さて、ブリテンの食料問題も配達や繋げた巨大そうめん流しによってあらかた解決した我らがカタッシュ隊員達。

 

 ブリテンの街や村の人々から感謝を惜しみなくされ、さらにそうめん流しという文化をブリテンに普及させることに成功した。

 

 眼前に迫った課題をこなした彼らだが、だが、ここで、彼らが忘れていることがあった。それは…。

 

 

「聖剣どうすんのよ」

「あと、ラーメンまだ完成してないし」

「山城もまだまだ制作にすら入ってないよー」

「せやなー」

 

 

 そう、以前から考えて積もり積もったままの挑戦。

 

 これを未だそのままにしている。そうめん流しが終わったところだが、やるべき事は多い。

 

 聖剣作りは鉱物集めがもうちょっと、さらに、ラーメン作りは具材がメンマとチャーシューのみ、これではまだ寂しい。

 

 あとは山城だが、これに関してはまだ手をつけていない。山城を建てる前に病院や牧場などの建築物を優先して建てていたためだ。

 

 なので、現在も未だに突貫で作ったプレハブ小屋的な拠点地のままである。

 

 雨風は確かに防げるし、色々と便利ではあるのだが、人数も増えつつあるカタッシュ村、このままでは、会議をするにもいずれは溢れてしまいそうだ。

 

 それに、王様作りも現在進行中でもあり、このプレハブ小屋をいつまでもモーさんの城と言い張るにはちょっとキツイ。

 

 だが、ここで、ヴラドはふとした提案を持ちかけはじめる。それは…。

 

 

「そういや、伝説のラーメンに使う小麦の原点だっけ?」

「そうそう、だから場所的にはエジプトかなって」

 

 

 そう言って、ヴラドの話に頷きながら告げるカルナ。

 

 エジプトといえば、ビールやパンなど、発酵醸造食品の発祥の地でもある。小麦を使う加工に関しての知識がより確立された地。

 

 そんな土地に赴き、より、良質で伝説の素材の味を失わない麺を手に入れる、ヴラドはこの時そう考えていた。

 

 しかし、ディルムッドは…。

 

 

「いやさぁ、ちょっと待とうよ、麦の栽培はメソポタミア地方が発祥じゃん? だからさ、バビロンじゃね? 行くなら」

「え? バビるの? エジプトじゃなくて?」

「ベディ、バビるって何? バビるって

 

 

 全く新しい言語に思わず突っ込みを入れるヴラド。

 

 バビロニア王国。確かに世界最古と思いつくのはその場所であり、確かに人類史として最も古くからある王国としても思い当たる。

 

 となれば、小麦もこの時代がもしかすると発祥の可能性もあり得る。それに、空中庭園などもあり、建築物に関しても学ぶべき事は多いはずだ。

 

 実際、空中納屋山城を作るにあたって、空中庭園作りを学ぶ必要があり、必ずこのバビロニアには足を運ばなければならない事には違いない。

 

 

「で? どうすんのよ?」

「いやだから、バビロニアじゃない? 山城の製造もあるんだし」

「いや、小麦の発祥だよ? エジプト、ピラミッドすげーじゃん」

 

 

 そう言ってカルナとディルムッドは互いに意見の相違に関して、各自の意見を述べる。

 

 それを聞いていたリーダーは頷きながら静かに何かを考えているようで、その隣にいるスカサハ師匠は寝ているモーさんに膝枕をしてあげていた。

 

 どちらにしろ、動かない事には事は動かない、話をまとめる必要がある。

 

 そんな中、ベディは笑いながらこう告げる。

 

 

「解散の危機になるかも、ラーメンの麺で」

 

 

 ーーーーラーメンの麺で解散危機。

 

 

 ラーメンの麺で解散の危機に直面するアイドルなど彼らくらいしかいないだろう。

 

 しかしながら、互いとも意見に間違いはない。ラーメン作りに必要な小麦の調達は必須であり、その伝説の小麦は二人が言う通りバビロニアとエジプトのどちらかにあると思われる。

 

 であればと、リーダークーフーリンはここで彼らにこう話をし始めた。

 

 

「なら、両方から取ってきたらええやん」

「なるほど」

「あぁ、確かに! 食べ比べできるしね!」

 

 

 そう、両方の小麦を栽培し持ち帰れば何の問題も無い。

 

 もしかしたら違う味の麦の麺が出来上がるかもしれない。そうなれば、この伝説の食材達をふんだんに使った豚骨ラーメンにも深みが増してくるはず。

 

 二つの文明には二つの文明の良さもあり、学ぶべき事は多い、ここは是非とも、先輩である古き文明から学べる事は学んでおきたいところだ。

 

 まずは、小麦の発祥とされるエジプトに行く組み分けから行う。今回はヴラド、ベディ、ディルムッドのガヤトリオに加え、モーさん、ADフィン、の5人がこちらのグループに、移動手段は食材を調達できるようにと時空トラックだん吉Mk2を使う。

 

 

「mk2って響きかっこいいよね」

「だよねー、モビルスーツっぽいよね」

 

 

 ーーーーガンダムっぽいだん吉。

 

 できる事ならお台場あたりに置いてもらったら尚良いだろう。

 

 ちなみにモーさんの鎧は現在ではADフィンから改良に改良を重ねられ、対スズメバチ兵器として効果音にクポーンとプッピガンという謎の音が加えられ、なおかつモノアイになっている。

 

 これに関して、現在、スカサハの膝枕でスヤスヤと眠っているモーさんはというと?

 

 

『いやー、いつもの三倍くらい農作業も捗るんだよな! あれ着てるとさ!』

 

 

 ーーー赤い彗星のモーさん。

 

 同じ赤色とはいえ、そんなので良いのだろうかと突っ込みを入れたくなる。

 

 これは完全にカタッシュ隊員の一部の趣味とADフィンの趣味が重なり合った結果だろう。

 

 モーさん曰く、特に斧の使い方に関しては身体が軽くなるとか、さらに機動性も3倍増しに、これならスズメバチもイチコロだ。

 

 

 さて、話は戻るが、これが、エジプト組みである。

 

 続いてバビロニア組みだが、これは、建築の山城の件もあり、カルナ、リーダーの二人が…、そして、2人には当然ながらスカサハ師匠がついてくる。

 

 

「お留守番は嫌だぞ、私はついてく!」

「いや、お留守番って貴女…。言い方が…」

 

 

 まぁ、確かにスカサハ師匠はやたらとリーダーについて来たがるのでこればっかりはカルナも何とも言えない。

 

 さらに居残り組みだが、農作物にはメイヴちゃん、街へのトラック配達は小次郎さん。

 

 それから、酪農関係は当然マーリン師匠、そして、現在、村に建ててる建築物の監督役にネロちゃま、建てられた診療所件病院の管理にはナイチンゲール師匠、壊れた機械類の修理及び、農作業の補助にスタッフエミヤと配役を決める。

 

 農作業の補助には当然、小次郎さんも、こうする事で女性であるメイヴちゃんの負担を少しでも減らす配慮を行なっておいた。

 

 こうして、振り分けられる各自の役割分担、各自の長所を活かしつつ、このカタッシュ村をより発展させる為に頑張って欲しいものだ。

 

 

「ま、こんなもんやろ」

「リーダー達がバビるの担当か…、なら俺たちは頑張ってエジって来るしかないよね

「バビるって何? エジってくるって何なのよ!?」

 

 

 ーーーー湧いてくる新しい言語。

 

 もしかすると、今年の流行語大賞を狙っているのか? しかし、流行語大賞には確かな自信がある。現に彼らは新しい波を常に起こして来たのだから。

 

 さぁ、そうと決まれば話は早い、すぐさま行動に移すのが彼らだ。

 

 ディルムッドはスカサハ師匠の膝上で寝てるモーさんを優しくお姫様抱っこして回収するとエジプト組としてだん吉Mk2へ向かいはじめる。

 

 

「じゃあ俺たちエジってくるわ!」

「おけー! 僕らもすぐ出発するから頑張ってな!」

「バビるのに必要な道具入れとかなきゃな、あらかた大工道具はいるし、あと、鍬も持ってくか」

「あんたらそうやってすぐ染まるんだから、もー」

 

 

 馴染んで来た新しい言語を話すカタッシュ隊員達に呆れたように呟くヴラド。

 

 そんな中、ディルムッドからお姫様抱っこをされスヤスヤ寝てるモーさんは幸せそうな寝顔を見せていた。何とも可愛らしい寝顔である。

 

 

「あぁーだめぇ…ブリドゥエンは魚じゃないってぇ…」

「…寝言かな?」

「どんな夢見てんだろうねこの娘」

 

 

 ーーーー確かに鰤は魚だが。

 

 さて、こうして、寝言を呟くモーさんの言葉に首を傾げつつもだん吉mk2に乗り込んだエジプト組一同は車を走らせいつものように時をかける。

 

 それを見届けたカルナ達もすぐさまバビロニアに行く為にいろんなものをだん吉mk2に詰め込み準備を終える。

 

 

「じゃ、行ってくるで!」

「はい行ってらっしゃい、気をつけてね? クーちゃん」

「村は任せておけ! 余がいれば百人力だぞ!」

 

 

 そう言って笑顔でクーフーリンに告げるメイヴにネロ。

 

 彼女達の表情は明るく、晴れやかな笑顔だった。旅に出る彼らがまた元気でこの村に戻ってくると信じているからだ。

 

 そして、村の開拓者であるカタッシュ隊員達からも…。

 

 

「酪農のコツ、ようやく掴んで来たからね」

「もし、だん吉が故障したのならば呼んでくれ、すぐに飛んで行って修理する」

「怪我をしたらすぐに報告ですよ? わかりましたね?」

「配達なら私に任せておけ、相棒もいる事だしな」

 

 

 メイヴとネロと同様に優しく3人を見送る。

 

 見送ってくれるカタッシュ隊員達に笑顔で頷くカルナとクーフーリン、そして、スカサハ。

 

 最初は1人だったクーフーリン、だが、出会いを経て、仲間達と再会し、そして、いろんな物事に取り組んだ。

 

 それは、以前に学んだ先人たちの知識、そして、新たに学ぶ先人たちの知識により成せる事。

 

 そして、これからも皆が築き上げたこの村でまた新たな挑戦が始まる。

 

 果たして、伝説のラーメンを彼らは作り上げる事は出来るのだろうか?

 

 さらに、聖剣作りに山城作りなどやる事はまだまだ山積みだ。

 

 

「それじゃ出発!」

「あいよ!」

 

 

 そのリーダー掛け声とともにカルナが運転するだん吉Mk2は走り始める。

 

 これまでの物語を振り返れば様々な出来事があった。仲間との再会、新たな師達との出会い、そして、カタッシュ村の発展。

 

 様々な困難が立ちはだかる中で彼らは成長し、絆を深め、また新たな仲間達との出会いを果たして来た。

 

 

 ーーー大地を蹴り出すんだ。

 

 

 これから先の文献の記述には、彼らの様々な記録や伝説が載ることになるだろう、だが、彼らがその足を止める事は決して無い。

 

 

 ここまで話は彼らが再び出会い様々な挑戦に挑み続ける物語の一端。

 

 

 彼らが一体、これから先、どうなるのか? どんな物語を描いて行くのか?

 

 

 この続きは! 次章! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 新たな言語を生み出すーーーーーーNEW!

 

 各自エジプト、バビロニアへーーーNEW!

 

 ラーメンの麺で解散危機?ーーーーNEW!

 

 

 



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絶対開拓戦線 バビロニアwithエジプト 鉄腕/ウルク その1

 

 バビロニア。

 

 シュメール文明とアッカドを征服して、チグリス川とユーフラテス川の間を中心に栄え、後にアッシリアの支配を受け作られた王国。

 

 のちアッシリアが衰えると新バビロニア王国が興り、ネブカドネザル2世の時その勢力は各地に及んだが、アケメネス朝ペルシア帝国に征服されてその属州となったとされている。

 

 メソポタミア地方の古代都市で。市域はバグダードの南方約90kmの地点にユーフラテス川をまたいで広がっている。

 

 旧約聖書創世記ではバベルと表記され。創世記10章第2節によると、ノアの子ハムの子孫である地上で最初の勇士ニムロドの王国の主な町が、シンアルの地にあったバベル、ウルク、アッカドであったという。

 

 

 さて、そんなバビロニアだが、現在、我らがクーフーリン一同は伝説のラーメンに使う小麦、および、山城建築のための空中庭園の技術を学ぶべく、この地に訪れていた。

 

 

「なぁー、しげちゃん、私は最近、思うんだ。お前は私の事は好きなんだよな?」

「ん? それは当然やないですか、師匠、今更、何言うとるん?」

「ほんとか! 私の事が大好きなのか?!」

「そりゃ、僕らの師匠なんやから大好きに決まっとるやんかー、なー? ぐっさん?」

「いや、リーダー多分、趣旨がズレてると思うんだけど…」

 

 

 そう、リーダークーフーリンのいつも通りの反応に引きつった笑みを浮かべるカルナ。

 

 師匠が好きかと訪ねたのは異性として、そして、クーフーリンの返答としてはもうみなさんは察しがついている事だろう。

 

 しかし、スカサハ師匠、これに気を良くしたのか満面の笑みでクーフーリンの距離をグッと近づけながら傍らに寄り添うように歩き始めた。

 

 しかも、上機嫌のあまり鼻歌のおまけ付きである。

 

 

「師匠、なんで歩く距離近いん?」

「んー? 良いではないか? 私の事が好きなんだろう? な?」

「なるほど、そういう事か、せやな! つまり今からみんなで肩組んで歩いて城まで向かうチャレンジやね!ぐっさん! 肩組もう!」

「…あーもう、この2人は本当に…」

 

 

 そう言いながらカルナは頭を思わず抑えてしまう。

 

 何というかこの師弟のやりとりを見ていると微笑ましいが、明らかに2人の見事なまでのすれ違いをカルナは察しているため巻き込まれる事に関してため息を吐き左右に首を振るしかない。

 

 というわけで…。

 

 

 ーーー果たして!肩を組んで三人四脚で城にたどり着けるのか!

 

 

 まぁ、当然、そんな事は始まることもなく、クーフーリンとの距離を詰めすぎたスカサハ師匠が足をもつれさせ可愛い声を溢して、何もないところでずっこけたところでこのチャレンジは終了した。

 

 そんな漫才みたいな事をしながらしばらく歩くこと数分あまり、だん吉から離れ、彼らが訪れたのは素晴らしい造形美を誇る宮殿と城がある城下町。

 

 

 都市国家ウルク。

 

 

 その遠目から見ても分かる建造物からしても、この時代の繁栄の度合いが凄い事がうかがえる。

 

 

「はえー、すんごい街やね」

「人が溢れてんもんな」

「築地の市場思い出すわー、懐かしい」

「えー? これむしろアメ横の商店じゃない?」

「ふむ、そこはわからんが確かに凄い活気だな」

 

 

 神秘が色濃く残る紀元前2655年古代メソポタミア。

 

 このメソポタミアで繁栄の時代を迎えている城は素晴らしい様式美を誇っており、その城下町では人々が満面の笑みで活気溢れた商売を行なっている。

 

 そして、その賑やかな城下町を一望できる素晴らしい造形美を誇る城の玉座に鎮座するのはこの栄えあるメソポタミアを納める唯一無二の王である。

 

 とりあえず、この王様に会わない事には伝説の小麦を持ち帰る事は難しいだろう。

 

 というわけで、いつものように一同は城に向かって足を進めるのであった。

 

 

 ウルク都城。

 

 

 この城の主は強き英雄であると同時に暴君でもあった。

 

 その横暴ぶりを嘆いた市民たちの訴えを聞いた天神アヌは女神アルルにその暴君の競争相手を造るよう命じる。

 

 その作られた競争相手は紆余曲折あったもののその暴君と出会って早々、大格闘を繰り広げることになった。

 

 結局のところその戦いは決着がつかず、2人は互いの力を認め合い深く抱擁を交わして親友となったという。

 

 そのような過程を経て、2人はウルクの民から讃えられる立派な英雄となり、今ではこうしてウルクも繁栄している。

 

 

 さて、そんな国を収める暴君様を我々カタッシュ隊員達は訪ねた訳だが。

 

 

「遅いぞ! 全く何をやっておったのだ!待ちくたびれたぞ!」

「ようこそ! ウルクへ!」

 

 

 熱烈で盛大な大歓迎を受けた。

 

 城内には彼らを出迎えるようなようこそ! ウルクへ! と横断幕のようなものが掲げられ、そして、彼らを熱烈に出迎えるギルガメッシュ王の反応に関して、リーダー達はポカンとしていた。

 

 すぐさま彼らを出迎えた従者達が彼らに近寄るとレッドカーペットを眼前に引く始末。

 

 そんな中、口を開いたのは暴君というよりも賢王という言葉が相応しいウルクの王からだった。

 

 

「…貴様らの活躍は毎週日曜の夜7時あたりからいつも見ておったぞ」

「随分具体的な時間ですね」

「録画できないんだね! わかるとも!」

 

 

 そう言いながら、賢王ギルガメッシュの言葉に思わず突っ込みを入れるカルナ。

 

 そして、千里眼で見ていたため毎週、録画できない事をカミングアウトする賢王ギルガメッシュの友人であるエルキドゥ。

 

 

 ーーー毎週チェックを欠かさない。

 

 

 それだけ、自分達の活躍を見ていてくれる方がいるのはカタッシュ隊員達としては嬉しい限りであるのだが、ここまでの歓迎は正直予想外であった。

 

 

「実は貴様らに影響を受けて我も最近、水上建築を自らの手で始めてみてな、これがなかなか面白く気に入ってきたところだ」

「え! 水上建築なんてされるんですか!」

「いやー、凄いですねー、僕らもまだ水上建築は勉強してないから…」

 

 

 そう言いながら、ギルガメッシュ王の水上建築の話に華を咲かせるクーフーリンとカルナの2人。

 

 水上建築、これは確かに今後の建築作業にも活かせるはずだ。時間があれば是非ともギルガメッシュ王にご教授願いたいものである。

 

 従者達が豪華で彩りある食事を運んでくる中、それを口に運びつつ、クーフーリン達にギルガメッシュは軽い笑みを浮かべながらこう話をしはじめる。

 

 

「ふん、我にとってはただの余興に過ぎぬ、しかし、貴様らは本当に面白い人材だ。人の身でありながら我を全く退屈させないことばかりをする」

「いやいや、恐縮です」

 

 

 そう言いながら、ギルガメッシュ王のべた褒めに思わず顔が綻ぶ我らがリーダークーフーリン。

 

 そんな中、彼の友人であるエルキドゥはニコニコと笑みを浮かべたまま、カタッシュ隊員達に対してこんな話をし始めた。

 

 

「ギルガメッシュはね、君らが要らないものが無いかと訪ねて来るだろうと捨てるものをたくさん用意したり君たちが来るのを楽しみにしてたんだよ?」

「…え! もしかして捨てちゃうものとかあったりします?」

「ふん、腐るほど用意しておいたわ」

 

 

 そう言いながら、食事を口に運びながら実に嬉しそうな表情を浮かべているギルガメッシュ。

 

 その口調とは裏腹に彼らに会えてものすごく嬉しそうだという事は側から見たら一目でわかる。よほど、彼らの事が気に入っているようだ。

 

 だからこそ、ギルガメッシュ王が解せない事があった。それは…。

 

 

「おい、何故、貴様らは全員で来なかった」

「…えーと、実は今、伝説のラーメンを作ってまして…」

「それはわかる。何故、ここに残りが来てないのかと言っておるのだ」

「あー、もう一方がエジプト行ってるからですね、今」

 

 

 そう言いながら、あっさりとギルガメッシュ王にもう片方が古代エジプトに行っている事をカミングアウトするカルナ。

 

 

 ーーーエジプトの幻の小麦を手に入れる為。

 

 

 伝説のラーメン作りに必要な伝説の小麦を入手すべく、ディルムッド達は現在、エジプトに出張中である。

 

 実はギルガメッシュ王、彼らが歌う歌を実は密かに楽しみにせていたのである。

 

 だが、未来を見通す千里眼を持ってしても彼らが取る行動はたまに予想外の方向に働く。

 

 そんなこともあって、本来なら、ウルクに集結していた筈の彼らがいない事がギルガメッシュ王には大変ご不満であった。

 

 

「それでは歌が聞けぬでは無いか! 」

「いや、僕ら歌ったの半年くらい前で…」

「知っておるわ! このたわけ!」

「鍬しか持ってないもんなー最近、ねぇ師匠?」

「うむ、致し方ないな」

 

 

 カルナの言葉に力強く頷くスカサハ師匠、楽器は向こうに置いて来ている上に手元に鍬しかない。

 

 まさか、このご時世に彼らの歌を聞きたがる人間が居たとは…。流石はギルガメッシュ王、中々の通である。

 

 というわけで、大変、ギルガメッシュ王の熱烈な出迎えに対してお返しができてないなと感じたリーダーはこんな話を持ちかける事に。

 

 

「はい、というわけで、ギルガメッシュ様には僕らが作った伝説のラーメンを試食して貰いたいなと思ったりしてます」

「…ほほぅ、詳しく聞かせろ」

「えーと、今のところ材料なんですけど」

 

 

 そう言いながら、リーダーの言葉を紡ぐようにカルナはギルガメッシュ王に対して今回作ろうとしている伝説のラーメンについて語りはじめた。

 

 とはいえ、ギルガメッシュ王は既に彼らがその材料を手に入れている過程を知ってる為、説明はそんなに要らなくて済んだ。

 

 

「ふむ、良かろう、この度の不敬は許す」

「最初から許す気だった癖に」

「光栄に思うがいい! この我が直々に食べてやるのだからな!」

 

 

 そう言いながら、ギルガメッシュ王は上機嫌な表情を浮かべたまま、エルキドゥの言葉を軽くスルーし彼らに告げる。

 

 とりあえず、ギルガメッシュ王は機嫌をよくしてくれたようだ。これなら、話もいろいろ進めやすくなりカタッシュ隊員達としても助かる。

 

 という事で、ここでもう一つほどお願いを。

 

 

「ギルガメッシュ王、実はお願いがありまして…」

「なんだ? 我と友人になりたいと抜かすのではないだろうな? 生憎だが、我の友人はこの隣にいるエルキドゥだけだ、あとは、取るに足らない雑種のみ、…いや、貴様らは別だったか」

 

 

 そう言いながら、ほくそ笑むギルガメッシュ王。

 

 あわよくば友人となれたらなと考えていたクーフーリンだが、出鼻から挫かれる形となってしまった。

 

 しかし、ギルガメッシュ王から学ぶべき事は多い、どうにかして繋がりは持っておきたいところ。

 

 クーフーリンは少しばかりその場で考えた後、ギルガメッシュ王にこう提案を投げかけはじめる。

 

 

「そうですか、うーん…あ! それじゃ僕らの水上建築の師匠になってくれませんかね?」

「良かろう、ならば許可しよう、今日から貴様らは我が水上建築を教える我が愛弟子だ」

「まさかの即答!?」

 

 

 まさかのギルガメッシュ王からの即答に仰天するカルナ。そう、ようは友人でなければ弟子入りすれば良いのである。

 

 しかも、この溺愛よう、よほど、彼らの事がギルガメッシュ王はお気に入りの様子。

 

 それもそのはず、最近はじめたギルガメッシュ王の趣味は全て彼らからの影響からはじめたものが多い。

 

 果たして彼の千里眼は毎週日曜日、どんな光景を見ていたのだろうか気になるとこだが、ギルガメッシュ王は大変ご満悦の様子である。

 

 と、ここでギルガメッシュ王は宝物庫から持ってきた宝具を一つ手に取るとこんな話をしはじめる。

 

 

「ところで、この宝具だが最近要らなくなってな…」

「えっ! これ! もしかして捨てちゃうんですか?」

「いやー、僕これまだ使えると思うんやけど…」

「ふふふ、ならば、我に相応しく使える宝具にして来い、我が弟子なら可能だろう?」

「えぇ! いいんですか!」

「いやー、これは修理しがいがあるなー」

「嬉々としてるな、お前達」

 

 

 ギルガメッシュ王は彼らを弟子にしてすぐにこの提案をもちかけ、さらに、その無茶な提案をなんの迷いもなく数秒で飲んでしまうカタッシュ隊員達のクーフーリンとカルナ。

 

 それを見ていたスカサハは思わず肩を竦め呆れたように首を振る。

 

 ギルガメッシュ王から手渡された立派な剣だが、鍛えようによっては凄い剣に出来そうだ。

 

 

「これデュランダルやないかな?」

「名剣だよねー、とりあえずこれならディルムッドなら良い包丁にできるんじゃない?」

「包丁か悪くないな、調理器具はちょうど我も欲しいと思っていたところだ」

 

 

 さりげなくこの名剣デュランダルを包丁にする話をしはじめる。

 

 ゲイボルクを鍬にしてきた彼らだが、次はどうやらデュランダルを包丁にする気らしい、確かに魚を三枚に卸す時には役立ちそうだ。

 

 そして、それに満更でも無さそうに答えるギルガメッシュ王、果たしてそれで良いのだろうか…。

 

 ギルガメッシュ王と友人、エルキドゥに手厚く迎えられたカタッシュ隊員達。

 

 さて、一方でエジプトにいるディルムッド達は一体どうなっているのか?

 

 

 この続きは、次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 TV千里眼で絶賛放送中!ーーーーNEW!

 

 包丁にされるデュランダルーーーNEW!

 

 ギル様から水上建築を学ぶーーーNEW!

 

 



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鉄腕/エジる その1

 

 

 エジプト。

 

 皆さんはエジプトと言ったら果たして真っ先に何を思い浮かべるだろうか? ナイル川、ピラミッド、スフィンクスなどなど、エジプトには観光名所は至る所存在し、そして、広がるは広大な砂漠。

 

 

 古代エジプトの象徴ともいえるものがピラミッドであるが、初期の王墓の形式であったマスタバに代わりピラミッドが成立したのが古王国時代の第3王朝期であり、クフ王のピラミッドを含む三大ピラミッドが建設されてピラミッドが最盛期を迎えたのが第4王朝期。

 

 ピラミッドは言うなれば日本の古墳のようなものであるのだが、こうした建築技術はやはり目を見張るものがある。

 

 さて、そんな中、我らがカタッシュ隊員は伝説のラーメンを作るべくこの地にやってきた。

 

 そして、彼らが現在、相対している相手はというと?

 

 

「私ハ 名モナキ ファラオ 頭ヲタレナサイ 不敬 デアルゾ ……コラッ 中ヲ ノゾイテハ イケナイ!」

「そーい!」

「中身見せろ! 中身!」

「ヤメナサレ! ヤメナサレ!」

 

 

 モーさんとガヤ三人衆は白いてるてる坊主の様な格好をした人物に出会っていた。

 

 そして、どういった経緯からか、そのてるてる坊主の格好をした人物をスカート捲りの様にして襲撃している最中である。

 

 この白いてるてる坊主みたいなものはエジプトではメジェド様として敬われている神様的なものである。

 

 メジェド様には古代エジプト神話において2つの意味があり、どちらもオシリスに関連している。

 

 ひとつは死者の書において言及される神、もうひとつは神聖なものとして崇拝されていた魚の一種である。

 

 魚と聞けばこの人達が黙っているわけがなかった。

 

 幾たびの漁船を経て不敗。

 

 新種の魚を見つけてはニュースに取り上げられるのがもはや定番。

 

 ならば、今回もこの新種の魚の正体を暴かなくては!

 

 しかしながら、彼らから逃れようと足掻くメジェド様もなかなかの抵抗を見せる、手強い相手だ。

 

 

「フケイ! フケイデス! ヤメナサレ!」

「おー、なんか足とかすべすべしてるー!」

「ほんとだな! まるで女の脚みてー!」

「ひゃい!? 」

魚拓取れるかなーこれ

「魚拓!? ナ、ナニヲイッテイル!」

 

 

 そう言いながらメジェド様から出てきた褐色のすべすべした綺麗な足に触れて感想を述べるベディ。

 

 そして、それに同調するように頷くのは満面の笑みを浮かべて同じくすべすべの脚に触れているモーさんである。

 

 そんな中、メジェド様を見ていたディルムッドは神妙な顔をしながらジタバタと捕獲されて暴れている姿を眺めながらこんな話をし始めた。

 

 

「これどう捌くかなー? 三枚おろし?」

「いやーどうだろう、ヒラメとかと一緒っぽいから四枚じゃない?」

「四枚かぁ…久々やるか、四枚」

「!? ヤメナサレ! ワ、私ヲ食ベテモオイシクアリマセヌ!」

 

 

 そう言いながら、ジタバタするメジェド様。

 

 モーさんとベディがそのうち、そんなメジェド様を捲る様に段々と上へ上へと上げていく。

 

 果たして、メジェドというからには中にいるのも魚に違いない、人間の脚を生やした魚、もしかすると出汁にでも使えるかも。

 

 

「ソレ以上ハイケナイ! 私今シタニ何モ…」

「さぁ! 往生しやがれー!」

 

 

 そして、メジェド様をひん剥くという不敬極まりないことを実行するモーさん。

 

 さぁ、いよいよ、幻の魚と言われたメジェド様の中身とのご対面、果たして、どんな姿をした魚なのだろうか…。

 

 すると、そこに居たのはなんと…。

 

 

「ダメだと言ったのにー!」

 

 

 なんと、真っ裸の褐色の美少女だった。

 

 これには思わず、鼻から吹き出る様に笑い声を溢して視線を逸らすディルムッドとヴラドの2人。

 

 モーさんと同じくメジェド様をひん剥いていたベディは暫しの間、固まった後。

 

 

「…こら! 何まじまじ見てんだこの馬鹿!」

「あだぁ!!」

 

 

 隣にいたモーさんから目潰しをくらい、思わずその場で両目を抑えて仰け反った。

 

 まさか、一同、伝説の魚だと思っていたメジェド様の中身が真っ裸の褐色美少女だとは予想だにしていなかった。

 

 これでは、三枚おろしや四枚におろすわけにもいかない。

 

 そんな中、ディルムッドは…。

 

 

「とりあえず魚拓取っとく?」

「あんた、どう見てもあれ魚じゃないでしょ」

 

 

 と、ヴラドにツッコミを入れられていた。

 

 

 ーーーー褐色美少女の魚拓

 

 

 たしかにバストのサイズなどは測れるかもしれない、肌色も褐色だし、墨をつけても多分大丈夫なような気もする。

 

 というより、何故、メジェド様の中身にいるこの美少女は全裸なのだろうか?その経緯も知りたいところだが、ひとまずカタッシュ隊員達は彼女のお名前をお伺いする事にした。

 

 

「すいませんがお名前は…?」

「わ、私はニトクリスですっ! エジプトのファラオですよ! この無礼者!」

「だってさ」

「え? ニトログリセリン?」

「やっべー! 危険物じゃん」

「違います! ニトクリスです!」

 

 

 そう言いながら顔を見合わせるカタッシュ隊員達。そして、すかさず突っ込みを入れるニトクリス。

 

 なんと! 伝説の魚、メジェド様の中に居たのはファラオと名高いニトログリセリンではなく! ニトクリス様だった!

 

 特段、彼女をスポーツカーに積んでも爆発的にスピードが上がったりなどしないので皆様ご注意を。

 

 そして、せっかくメジェド様で正体を隠していたこのファラオ、ニトクリス様にインタビューをすべく、ヴラドはどこからかマイクを差し出すとこう彼女に問いかける。

 

 

「ねぇねぇ? 今どんな気持ち? ねぇ? どんな気持ち?」

「まず私に着る服を寄越しなさい!」

「いや、エジプトがいくら暑いからって全裸は不味いよ全裸は」

「そうだよ、気持ちはわかるけど」

「わかるんだ! 気持ち!?」

 

 

 仕方ないので、カタッシュ隊員はだん吉に積んできたモーさんの服の一着をニトクリスちゃんに貸してあげることにした。

 

 とはいえ、こちらもモーさんが動きやすさを追求したせいか露出は多い、特に、胸のあたりはサイズが少しだけ合わずぱっつんぱっつんになってしまっていた。

 

 

「俺の服が…胸の部分が…」

「気をしっかり持て! モーさん! 大丈夫! 俺たちは好きだから!」

「そうだよ! モーさん!」

「成長期なんだからさ!」

「やめろ! なんかしらんが腹立ってくる!」

 

 

 そう言いながら、励ましてくるガヤ三人衆の言葉に思わずイラっとしてしまうモーさん。

 

 フォローを入れたつもりだが、逆に精神的ダメージを加えてしまったようだ。

 

 そんな中、モーさんのチューブトップとホットパンツを履いたニトクリスはクルリと着心地を確認すると上機嫌にこう話をしはじめる。

 

 

「胸の辺りが少しきついですが、良いものを持ってますね貴方達、献上品としては申し分ないです」

「…やめてぇ! モーさん! ちょっと待って!」

「離せぇ! あんにゃろうの胸もいでやるー!」

「どうどう、また新しいの作ったげるから、ね?」

 

 

 ガルルルル! と威嚇するようにニトクリスに掴みかからんとするモーさんを宥めんとするカタッシュ隊員達。

 

 エジプトに来て早々になんだか不安な幸先だが、彼らは大丈夫なのだろうか?

 

 とそんな中、気を取り直してファラオであるニトクリスちゃんはコホンと咳払いをすると彼らに話をしはじめた。

 

 

「コホン! では改めまして! 私はニトクリス! この地を治めるファラオの1人です!」

「ほえー、そうなんだ」

「ちなみに遊戯王とかできんの?やっぱり」

「…え、えーと、まぁ、嗜む程度には…。じゃなくて! というか貴方達は王であるこの私に不敬ではありませんか! 頭を垂れませい! 無礼者!」

「いやー、ニトちゃんが思いのほか良い子だからつい…」

「そんな事を言ってもダメです!」

 

 

 そう言いながら、頭を照れ臭そうに掻きつつとりあえず、仕方なくニトクリスの目の前で正座をしはじめる一同。

 

 

 ーーー正座をする砂漠の砂が地味に熱かった。

 

 

 そんな中、ニトクリスは今回、何故、彼らの目の前にメジェド様の格好で現れたのかを語り始めた。

 

 

「…神殿にて神託を受けまして、この地に勇敢たる開拓者が現れると聞きいて」

「ふむふむ」

「この場所で待てばその者達が現れると、しかしながら私はファラオ。簡単に接触というわけにもいきません。ですのでこうして変装をしてですね」

「それであれ着て来たわけなんだねー、下全裸で」

「…うっ! …コホン、あの下に服を着るのは熱かったので…致し方なく…」

「これ、なかなか生地厚いもんね、触った感じ」

 

 

 そう言いながら、メジェド様の生地を確認するベディ。触った感触的にも確かに分厚く、この下に服を着るとなると蒸れそうだと感じた。

 

 そんな中、ひとまず、カタッシュ隊員達はニトクリスちゃんに対して本題に入る事に。

 

 そう、古代の小麦の入手こそ、今回、彼女に協力をお願いしなくてはならないのだが…。

 

 

「えーと、僕らは実はこの地で栽培してる小麦を頂きたいなと思いまして来た次第でして」

「来たというのは?」

「あれで」

 

 

 そう言いながら、ニトクリスちゃんに正座をしたままだん吉を指し示すカタッシュ隊員達。

 

 ニトクリスは目をパチクリさせたまま、その彼らが乗って来た乗り物を見つめる。どう見てもそんなものには到底見えない。

 

 ニトクリスは少し間を置いてから、考え込むと笑いを溢しながら小馬鹿にするように彼らにこう語り始めた。

 

 

「あははははは! またまた…」

「え? じゃあ乗ってみます?」

「へ…?」

「おーいいね、ちょうど建設王さんに会いに行こうって思ってたから…ニトちゃんも付いて来たらいいよ!」

「…え?」

 

 

 そう言いながら、ニトクリスはあっという間にカタッシュ隊員達から連れられてだん吉に乗り込む事に。

 

 行き先は太陽神ラーの子であり、化身でもある王が治めている古代エジプト、そう、ニトクリスが治めているエジプトより後の時代、後世のエジプトである。

 

 というわけで、一同は移動し、さらに先の時代の古代エジプトへ飛んだ。

 

 そして、彼らを待ち受けていたのは…。

 

 

「…余に用があるというのは貴様達か」

「あわ、あわわわわわわ…!!」

「ニトクリスちゃん! ファイト!」

 

 

 玉座に鎮座する神王。

 

 彼こそは人々は王の中の王と呼び、神王と名高いファラオ。広大な帝国を統治した古代エジプトのファラオのひとりであり、エジプト最高のファラオと名高い建設王オジマンディアス。

 

 彼はオシリスの如く民を愛し、そして大いに民から愛された。そんな偉大なるファラオの前にちょこんとカタッシュ隊員達から差し出された形で彼の前に立つのはだん吉で連れてこられたファラオ・ニトクリスである。

 

 

「名を名乗るがいい、余の前に来たからにはそれなりのことがあってだろうな?」

「…わ、私の名はニ、ニト…」

「あーこれ、フォロー入れてあげないとニトクリスちゃん緊張のあまり倒れそうだね」

「だねー、あー、すいません実は僕ら鉄腕/fateという企画で…」

 

 

 という感じで建築王オジマンディアスさんに説明をしはじめるカタッシュ隊員達。

 

 ニトクリスちゃんが実はファラオだとか、古代の小麦を手に入れるためにこの地を訪れた事などを込み込みで話す事になった。

 

 そんな最中、やはり、ニトクリスが緊張のあまり卒倒し、カタッシュ隊員達が彼女を看病する事になった。

 

 こうして、訪れた古代エジプトにて、ファラオ2人に出会ったカタッシュ隊員達。

 

 果たして、伝説のラーメンの麺の素材はこの地で手に入るのだろうか?

 

 この続きは! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 ニトクリスの魚拓取りーーーーーNEW!

 

 建築王に面会ーーーーーーーーーNEW!

 

 幻の魚メジェド様を捕獲ーーーーNEW!



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リリック



───それは物語の断章。

───物語の舞台は新宿。蘇る東京湾、そして、発見されるは新たなる新種の魚類達。

───大都会に人と生き物たちが一緒に暮らせる未来の街作りの為、5人の英雄が立ち上がる

Epic of Remnant 亜種特異点EX

───新宿DASH事件。好評配信中。


「うわ! 何これ! 気持ち悪い!」
「ジャンヌオルタちゃん、それラヴカだよ!」




 前回の鉄腕/fateではウルクに来たリーダー達。

 

 出迎えてくれたギルガメッシュ王に手厚くもてなされ、弟子入りする事に! 更に名剣デュランダル(包丁予定)も譲り受け、一層メンバーにやる気はみなぎる。

 

 一方でエジプトに向かったディルムッド達はオジマンディアス王と接触することに成功し、こちらも古きファラオ、ニトクリスの協力の元、順調に話が弾む。

 

 ますます見逃せない今回! さぁ、彼らは無事に伝説のラーメンを作るための伝説の小麦を手に入れる事ができるのだろうか?

 

 

 というわけで?

 

 

「やはりここは砂漠ばかりだな」

「ですねー」

「いやー、ギル師匠をまさかだん吉に乗せる事になるなんてなぁ…」

 

 

 なんと、番組開始から既にギル師匠を引き連れリーダー達を含めたバビロニア一同はエジプトへやって来ていた。

 

 というのも? 彼らの歌が聞けぬとわかったギル様、ここに来て、なんと他のメンバーがいるエジプトに行きたいと所望。

 

 協力してもらう手前、この願望を叶えないわけにはいかない。

 

 そういう訳でカタッシュ隊員達はエルキドゥさんとギル師匠をだん吉に乗せてこの地を訪れた訳である。

 

 だが、何やら、エジプトの広がる砂漠に関心するリーダー達とは別にスカサハ師匠はブスッとふくれっ面で不機嫌そうであった。

 

 そんな彼女の姿に首を傾げ、顔を見合わせるリーダーとカルナ、するとスカサハ師匠は砂の地面に指で丸を書きつつこう彼らに語りはじめる。

 

 

「…運転席取られた、助手席と運転席は私としげちゃんの指定席なのに」

「いや!子供かっ!」

「僕、甘やかし過ぎたんかねぇ」

「なんであんたはお母さんみたいな事言ってんのよ」

 

 

 そう言って、この師弟コンビにすかさず突っ込みを入れるカルナ。

 

 

 ーーーーオカンだからや。

 

 

 そう、久方ぶりで皆さまは忘れていると思われるがリーダーはオカン力:A+、たとえ神獣の類でもお説教できる大阪のおばちゃん属性を有している。

 

 

「もー、師匠は仕方ない娘なんやからー、おかあちゃん置いてくで!」

「ぶー、…むぅ、確かに私もたかだか小さな事で大人げなかったな」

 

 

 そう言いながら、ふくれっ面の師匠はリーダーから手を引かれその場から立ち上がるとギル師匠、ディルムッド、エルキドゥ達三人と共に歩きはじめる。

 

 目指すはエジプトが誇る建築王、ファラオ・オジマンディアスがいる宮殿。

 

 そこに残りのメンバー達も居るはずだ。

 

 

「そういや、俺らスフィンクスはまだ作った事なかったね」

「シーサーの作り方調べた事あるし、作ろうと思えば作れるやろ」

「確かに」

 

 

 そう言いながら、リーダーの謎の説得力がある言葉に頷くカルナ。

 

 果たして、スフィンクスと沖縄のシーサーを同意義に考えて良いものか…、守り神という意味では似てはいるが。

 

 といった具合で、賑やかに会話を繰り広げながら宮殿に向かう一同だが、一方でディルムッド達はというと?

 

 

「てな訳で、俺達、なんと東京湾でマコガレイを捕まえようとして貴重なイシガレイを捕獲できたんですよ!」

「ニンニク酒粕ってすごいなぁってあの時は思いましたね、いやー、びっくりでした」

「はははははは! そうか! そうか! そんな事もやっていたのだな其方達は! さぁ、飲め飲め!」

 

 

 なんと、オジマンディアス様と酒盛りをやっていた。しかも、まだ、真昼間である。

 

 その様子を見る限り、かなり親しくなっているようだが、どんな魔法を使ったのか…。

 

 そんな中、ニトクリスはちょこんとオジマンディアスの隣で小さくなりつつ、さらに、彼の傍らでは奥さんであるネフェルタリさんがカタッシュ隊員達やオジマンディアスにお酌をしていた。

 

 

「あ、恐縮です、後でこれの作り方を教わっても?」

「余が許す! 弟子にしたのだ、教えを請う弟子を突き放す師など王の器が知れるであろう!」

「やったー!」

 

 

 そう言いながら、嬉しそうに声を上げるベディ。

 

 エジプトで生産されるお酒、ワインやビールも作られていた。その味は独特ながらなかなかに美味、これは、教わらなくては損だ。

 

 建築だけでなくお酒や料理まで勉強になることばかり、まさに、カタッシュ隊員達には新鮮な体験であった。

 

 

「プハァー! くぅー!」

「お! モーさん良い飲みっぷりだね!」

「摘み欲しくなって来たなぁ、オジマンさんちょっと厨房借りても?」

「ん、構わんぞ、許す」

「よっしゃ!」

 

 

 そう言って、許可を得たディルムッドは厨房へと向かう。

 

 宮殿の厨房には新鮮な魚、また、果物などエジプトで取れた食料がたんまりと流石は神王様に出す料理となると食材からして違う。

 

 これならば、摘みに必要な食材をわざわざ調達せずとも良さそうだ。さて、お馴染みの板前衣装に着替えたディルムッドは腕を捲り気合いを入れる。

 

 

「さぁてと!頑張るぞ! 俺の包丁!」

 

 

 今日も今日とて、包丁ベガルタとモラルタが唸る。そして、ディルムッドは手持ちの調味料を準備して料理に取り掛かりはじめる。

 

 さて、ディルムッドは果たしてつまみには何を作る気だろうか?

 

 まず、ディルムッドが取り出したのは新鮮な魚、地中海や紅海で獲れる海水魚と、ナイル川や湖で獲れる淡水魚の両方がエジプトでは好まれてよく食べられている。

 

 今回使うのは海で獲れたタイ。

 

 これを臭みを取る為に分量外の塩少々をして10分ほどおき、水気を拭いてさっと湯通しする。

 

 

「よし、こんなもんか、それじゃ次は…」

 

 

 水気を拭いた魚を油を熱したフライパンに皮の方を下にして入れ塩胡椒を振り両面こんがり焼き2~3分蓋をして蒸し焼きに。

 

 調味料を合わせたものを全体にかけ時々スプーンでタイにかけながら中火で焼く。 ソースが煮詰まって照りが出てきたら出来上がり。

 

 この時、火加減に注意し焦げないように。

 

 

 まずは一品目、タイの照り焼きが完成である。

 

 

 そして、次は地中海で獲れたボラ。

 

 これを食べやすい大きさに切り分け、ぶつ切りにこれを味がついた片栗粉につける。

 

 ボラの旨みを逃さないため揚げ油の温度は130℃以上にしないようにし、五分程度でサッと揚げていく。

 

 そして、彩りに野菜を盛り付ければ完成。

 

 

 二品目、絶品ボラの唐揚げ。

 

 

 まさに、厨房に立つ姿はYARIOが誇る料理の鉄人。つまみの品が次々とできる中、完成した品を見たディルムッドはできた品に納得したように頷いていた。

 

 そして、これをオジマンディアス達の元へ。

 

 

「おまたせしやした! 今日の品は二品でございます! 味は保証するよ!」

「おぉ! これはまた…、変わった魚料理ではないか!」

「へぇ、照り焼きと唐揚げにしたんだ」

「すっげーうまそー!」

「私もこんな料理は初めて見ました…」

 

 

 そう言いながら、全員はディルムッドが持ってきた二つの品に思わず食欲がそそられる。

 

 さて、そのお味はいかに? いよいよ全員で試食。

 

 と、その前になんとここに来て宮殿に5人の来訪者が…。

 

 

「おー…めっちゃ良い匂いしとる!」

「え? どっかで聞いたことある声じゃない?」

「あ、リーダー達じゃん」

「ん? 誰だ? 余の許可を得ずここに入ってくる不届者は」

 

 

 そう言いながら、声のした方へと目の前に美味しそうな料理が並ぶ中、突如として現れた来訪者達に視線を向けるオジマンディアス。

 

 そこに居たのは、なんと、我らがリーダークーフーリン達とスカサハ師匠、ギルガメッシュ王とエルキドゥの姿であった。

 

 

「ふん、存外、簡単に侵入できたぞ、ここの警備はいささか手ごたえがないのではないか? 太陽の」

「…ほう、余の事を知っておるのか?」

「我は森羅万象、全ての事柄を見通しておる。天上天下にただ一人、この我となれば尚更、造作もない事よ」

「フッ、随分とこの神王である余を前にしてでかい事を言ってのける。面白いやつだ」

「ささ! 丁度つまみが出来たところですからみんなで食べよう! みんなで!」

「お! ええなぁ!」

 

 

 そう言いながら不法侵入して来た彼らを迎い入れるディルムッド。リーダー達やギルガメッシュ達は案内されるまま酒盛りの席につく。

 

 しかしながら、ギルガメッシュとオジマンディアス、2人とも互いに我が強く、なんだか一触即発のような気もするが大丈夫なのだろうか?

 

 と思いきや、それから、数時間後…。

 

 

「あははははは! そいつは面白い! 黄金の! それで?」

「それでだな」

 

 

 すっかり馴染んでしまっていた。

 

 というのもこの2人、妙に波長が合うのか意気投合してしまう始末。

 

 リーダー達もまた、酒盛りの最中、酔ったカルナがベディにブレーンバスターなどをかましながらワイワイと賑わっていた。

 

 そこで、オジマンディアスはある質問をここでギルガメッシュへ、それは…?

 

 

「そういえば、黄金の。何故、お前はこの者達を弟子に迎えた?」

「ん? あぁ、それか、それはだな、こやつら自身が不可能な事を可能にする事に愉悦を見いだしておるからだ」

「ほう…」

 

 

 そう言いながら、英雄王の興味深い言葉に笑みを浮かべる神王。

 

 それは確かに彼らの話を聞いていればわかる。明らかに常に挑戦する事を楽しんでいるような彼らの話は聞いているだけでも面白い。

 

 

「見ていて退屈せぬ、毎週、楽しみに見ておるのだ。こやつらはもともと歌を歌ったりする偶像という存在だったのだぞ?」

「歌か…、あやつらのあの姿からは余でも想像しがたいが…」

「彼ら普段は鍬しか持ってないからね、わかるとも!」

 

 

 そう言って、オジマンディアスの言葉に笑みを浮かべて杯を付け合わせるエルキドゥ。

 

 互いに乾杯したそれをオジマンディアスとエルキドゥは一気に飲み干す。それを見ていたギルガメッシュはどこか嬉しそうだ。

 

 すると、杯を空にしたオジマンディアスはギルガメッシュにこう話をし始めた。

 

 

「では、互いにこうして奴らを共通の弟子とした我らは同盟相手という事であるな」

「フッ、面白い事を抜かす。良いだろうその話乗ってやろう」

「まぁ! 仲良い事は良いことですわ♪」

 

 

 オジマンディアスの奥方、ネフェルタリはにこやかな笑みを浮かべ、微笑ましい2人の空いた杯にお酌をする。

 

 

 ーーー気づかぬ内に天地驚愕の同盟が締結。

 

 

 互いに杯を突き合わせる2人はそれをグイッと飲み干すとまるで子供の様に高笑いをあげていた。

 

 そして、景気よくなって来た場の雰囲気にギルガメッシュはカタッシュ隊員達にこんなリクエストを投げかける。

 

 

「忘れておったが、そろそろ貴様らの歌を聞かせろ! そもそもそれが今回の目的だったのだ!」

「お! そういえばそうやったな!」

「兄ィ達が歌うのか! やったー!」

「よーし、そんじゃ久方ぶりに歌いますか」

 

 

 そう言いながら、とりあえず、一同はリクエストに応えて、同盟を結んだ彼らの前にやってくる。

 

 準備よく、だん吉で駆けつけたADフィンがいつのまにか楽器が置いてあるステージを準備済みだ。

 

 ボーカルであるベディはマイクを掴むと、配置についた皆に視線を向ける。

 

 そして、準備が整ったところで…。

 

 

「それじゃ、聞いてください!」

 

 

 ギターを引きはじめるリーダーに合わせ、ディルムッドがドラムを叩き、曲が流れはじめる。

 

 半年ぶりの演奏だが、感覚は覚えていた。

 

 自然と響き渡る彼らの演奏と歌声に思わず、ニトクリスも聞き惚れてしまった。

 

 

「何気ない言葉が〜ーーーー」

 

 

 染み渡る様な歌声、聞いたことのない演奏。

 

 だけれど、確かに彼らが本来あるべき姿を歌を聞いていた英雄達は垣間見た気がした。

 

 

 ーーー彼らの思いが伝わってくる叙情詩。

 

 

 賑やかな酒盛りの場と化した神王の神殿で彼らの歌と奏でる楽器は素晴らしいほどよく響き渡った。

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 半年ぶりの本業ーーーーーーーーーーーーーーーーNEW!

 

 天地驚愕の同盟締結ーーーーーーーーーーーーーーNEW!

 

 エジプトとバビロニアを繋ぐ架け橋となるーーーーNEW!

 

 リーダー、神獣の類でもお説教できるーーーーーーNEW!



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鉄腕/ウルク&エジる その2

 

 

 

 エジプトにて合流したカタッシュ隊員達。

 

 伝説のラーメン作りのために小麦を手に入れる事、そして、ついでだが、エジプトやバビロニアで山城建造に必要な知識を得ることが彼らの本来の目的である。

 

 ついでに、聖剣作りが進めば良いかなくらいには考えているそんな彼らだが…。

 

 

「ほう、ではニトクリス、お前はまだピラミッドを持っておらぬのか?」

「えっと…、はい、私のようなものにオジマンディアス様の様な素晴らしいピラミッドを建てるだけの実績は挙げていませんし」

「馬鹿者! 実績など! 貴様はファラオなのだ! ピラミッドが無いなど言語道断! それは神王たる余が許さぬ!」

「ひゃい!? い、いや、ピラミッドは建設はしている最中なのですが…全然進んでいませんので」

 

 

 そう言いながら、指をツンツンしながら神王オジマンディアスから有り難いお説教を受けるニトクリス。

 

 明らかにニトクリスの方が古きファラオでオジマンディアスより年上であるというのにこの図はかなりシュールな光景である。

 

 まるで、見方によっては自信がない姉を後押しする弟の様なものにも見えなくはないが。

 

 

「はぁ、ファラオっていうのも大変なんやなぁ…」

「そうだねぇ、ねぇ? リーダー、俺たちで何かしてやれないかな?」

「うーん、そやね、お酒も貰ったし何か恩返しはしとかなあかんよねやっぱり」

「そういうところはお前たちはやたら律儀だな」

 

 

 そう言いながら、ニトクリスとオジマンディアスの会話を聞いて話していたリーダーとヴラドの2人の言葉を聞いたスカサハは呆れた様に肩を竦める。

 

 何もそこまでやる必要はない気はするが、彼らはこういった困った人を見過ごせない性分らしい。

 

 すると、YARIOが誇る熱い男カルナがここでまっすぐにニトクリスの手を掴み酔った勢いで視線を合わせるとこう告げ始める。

 

 

「わかった! なら! 俺がお前のピラミッドを作ってやるよ!」

「えっ…!」

 

 

 そう言いながら、自分の手を握り熱く告げてくるカルナの目を見つめたまま固まるニトクリス。

 

 

 ーーー真の英雄は目で殺す(意味深)。

 

 

 まさに、プロポーズ的な何かではないだろうか?

 

 第三者から見てみたらそう勘違いしてしまいそうな熱さだった。ニトクリスは思わず顔が紅潮してしまう。

 

 そして、しばらく手を掴んだカルナはサムズアップするとニトクリスの頭をポンポンと撫でてやる。

 

 

「任せときな、これでもインドで洋式トイレたくさん作ってきたからさ! 俺」

「いや、それが実績ってどうなのよ」

「…はいっ」

「…ニトちゃんもそれで納得して大丈夫?! ねぇ!」

 

 

 ーーーーインドのトイレ事情と戦った実績。

 

 果たして、それが役に立つのかどうかはわからないが、ニトクリスは紅潮した顔のままカルナから視線を逸らすと思わず頷いてしまう。

 

 そして、炸裂するヴラドのツッコミ、今日もよく冴え渡っている。

 

 だが、この光景を目の当たりにして呆然としている人物が計1人いた。そう、モーさんである。

 

 箸でつまんでいた鯛の照り焼きの身が箸からぽろりと落ちる。

 

 まさか、気づかないうちにこんなわけのわからない事態になっているとは思いもよらなかった。

 

 

「わははは! 良かったではないか! ニトクリス! その伴侶、大事にいたせよ」

「…ん? はんりょ?」

「伴侶だなんて! そんな! 私!まだ気持ちの準備が…」

「はんりょってあれだろ? 小判半分にしたやつ」

「兄ィ、それは半両、この人達が言ってるのは伴侶、つまり旦那さん」

 

 

 そう言いながら、肩をポンと叩くヴラド、酒が回っているせいか、カルナの話が気づかない内にどうやら訳の分からない事になっているらしい。

 

 そのどうやら何かズレている問答を側から見ていたギルガメッシュは会話のかみ合い無さに思わずゲラゲラと笑いを溢していた。

 

 

 つまり、現在の話を整理するとこうである。

 

 

 お前のピラミッドを俺が作ってやる!→ お前の墓を作ってやる! → お前と一緒に墓に入ってやる! → 結婚しよう。

 

 

 かなりめちゃくちゃなこじつけではあるが、つまる話が勘違いがとんでもない方向にぶっ飛んでいたわけだ。

 

 現代的に言えば、ピラミッドが結婚指輪と思ったらわかりやすいだろう。たしかにダイヤモンドもピラミッドも似たような形である。

 

 しかも、シチュエーションがシチュエーションだけにこれはたしかに勘違いしても仕方ないだろう。

 

 しかし、この話の流れをいち早く感じていたモーさんは慌てた様にニトクリスとカルナの仲裁に入ると顔を真っ赤にしたままこう声を荒げる。

 

 

「な、ななな何言ってんだ! だめだ! だめだ! 兄ィはやれない! 俺の師匠だし!」

「な! では別にそれは関係ないではないですか!」

「いいや! 関係あるね!」

「いいや!無いです!」

 

 

 そう言いながら、なにやらニトクリスと言い合いを始めるモーさん。

 

 なんだか、面白い事になってきたと傍観をしはじめるギルガメッシュとオジマンディアスの2人は酒の肴にそんな2人のやりとりを眺める。

 

 そんな中、当のカルナ本人と言えば?

 

 

「ピラミッドかぁ、どこらへんがいっかなぁ? スフィンクスの周辺らへんとか良いと思うんだよね、どうよ?」

「それじゃここらへんがいいんじゃないか? 私がゲイボルク刺して場所を確保しておこう」

「まぁ、そこそこな大きさが出来たらええよね」

「あんたらちょっと、なんでもうピラミッド作る気満々になってんのよ」

 

 

 モーさんとニトクリスの口論を放ってピラミッド作りに関して打ち合わせを始めていた。流石は建築歴大ベテランのカタッシュ隊員達、気持ちの入り方が違う。

 

 さりげなくだが、スカサハのゲイボルクの使い方に関してはもう言わずもがなである。

 

 というわけで、早速、ピラミッドの建設について話し合いをはじめるカタッシュ隊員達。

 

 まずは場所決めから始め、そして、建設の為の石なども諸々運ぶ必要がある。

 

 そこで、オジマンディアスとギルガメッシュは打ち合わせを急遽はじめたカタッシュ隊員達にこんな話を持ちかける。

 

 

「奴隷は何人くらいいりそうだ? 余のところのは何人使っても構わないが…」

「我のところからも必要なら必要なだけ貸してやるぞ?」

「いやー、出来れば大型とクレーン車運転できる人材が欲しいかなぁ」

「まぁ、建築関連ならインドから俺のとこの社員引っ張ってこれるし、あ、できればハンマーとか使える人とか手先が器用な人が欲しいかも」

「…そ、そうか、わからんがとりあえず手配してみよう」

「あはははははは! お前達正気か!? やはり貴様らは面白いなぁ!」

「ちょっと待って? え? あんたら大型車とクレーン車とか使う気なの!?」

 

 

 ーーーーピラミッド作りに建築車を使う。

 

 

 という事はこの時代に大型車の製造をするレベルから始めるという事。

 

 幸いなことに機械類には強いエミヤくんもカタッシュ村にいる事だし、ここはエジプト、石油なんかの資源も割と眠っている。

 

 エジプトは一応石油が出る国で、しかも、それなりの量が生産されている。サウジアラビアの6%ほどだが、それでも、日本の60倍は石油が取れるのだ。

 

 車に必要な鉄なんかの資源に関しても、ギルガメッシュ様とオジマンディアス様がいるためになんとでもなるだろう事は明白である。

 

 

「いやー、これでわざわざだん吉で中東に遠征しなくてよくなるねぇ」

「助かりますよ! お2人とも!」

「おかしいなぁ、俺たちの仕事こんなんだっけ?」

 

 

 ヴラドの虚しい呟きをよそに淡々と話が進んでいく。

 

 大型車といえば、クレーンにシャベル、ロードローラーなどなど、これから先の建築にもかなり役立つものばかりだ。

 

 カタッシュ隊員達の話を聞いていたオジマンディアスとギルガメッシュの2人はそれらが完成して配備するとなれば奴隷達に対しての給金も考えねばならないと言い出す始末。

 

 奴隷達もこれには大歓喜間違いなしだろう。

 

 

「とりあえず石油取ってガソリンつくって、セメントなんかもできるねー」

「道整備せな砂やったら陥没してまうからな」

「うむ、そうだな」

「なんだったら我の水上建築の技術もピラミッドに取り入れてはどうだ?」

「お! いいですねぇ! それに植林とかもしときましょうよ! ここらへんとか!」

「おぉ! 木材か! 良い良い! 余が許す! 木はいくらあっても困らんからな!」

 

 

 そう言いながら、楽しそうにニトクリスのピラミッド作りに関して全員が話しを繰り広げる。

 

 砂漠なんて何もない土地など彼らにとっては宝の宝庫、むしろ、なんとでも発展が見込める土地なのだ。

 

 なんといっても彼らのリーダーの土の知識はなんと驚きのEX!

 

 不毛な土地でさえ、緑豊かな土地にできるほどの手腕が彼らにはあった。

 

 

「おい、兄ィ! てか結婚とかどうとかの話はどうなったんだよ!」

「え? そんな話してたっけ?」

「してました! そうですよ!」

 

 

 そう言いながら、先程まで言い争いをしていた2人は原因であるカルナに問いただし始める。

 

 確かにそんな話もしていたような気もする。

 

 するとカルナは軽いノリで片手を上げて、謝る素振りをししながらにこやかな笑顔で2人にこう告げはじめた。

 

 

「いやー、ごめん! とりあえずその件に関してはリーダーが結婚してからまた考えるわ!」

「…あと何世紀くらい先になるかなぁ…」

「「長いっ! 長すぎるっ!」」

「いや! 世紀単位はヤバイやろ!! 僕をなんやと思ってんの!」

「リーダーだしなぁ…」

 

 

 ーーー世紀単位で結婚できないアイドル。

 

 確かにリーダーならあり得そうだと頷くディルムッドとヴラド達。そして、あまりの長さに突っ込みを入れるニトクリスとモーさん。

 

 もはや、それはカルナの永久独身宣言に近い言葉ではないだろうかと錯覚すら覚えてしまう。

 

 多分、リーダーが結婚した時期がノストラダムスの言う世界滅亡の日になるのかもしれない。

 

 という事でとりあえずエジプトで一同は建築車を作り、ファラオ・ニトクリスちゃんのピラミッドを作ることに。

 

 という事で…?

 

 

 ザ! 鉄腕/fate! YARIOはエジプトで巨大ピラミッドを作れるのか!

 

 

 という今回の企画がスタートするに至るのだった。

 

 

「とりあえず僕は腕をドリルにしてここを彼女と掘ればいいのかな?」

「すいません、お願いしてもいいですかね?」

「私もいるのだ、任せておけ、すぐに石油をこの槍で掘り当ててやる」

「師匠、今度は槍で土掘りですか」

 

 

 ひとまず、カタッシュ隊員達は、エジプトの地図を見ながら石油が掘り当てれそうな場所を選んでエルキドゥさんとスカサハ師匠に採掘を担当してもらう。

 

 この企画の元になる石油の確保は必須だ。

 

 しかし、槍で土を掘りに挑戦とはやはり、スカサハ師匠、只者ではない。

 

 さて、その間、リーダー達はというと?

 

 

「これ、霊草っていうんですけどね? かなりアルギン酸がとれるんですよ」

「…ほう…これが…。ん…? ちょっとまて、貴様、今、霊草と言わなかったか?」

「…いえ、これ、ただの真昆布です」

「いや! 確かに霊草と言ったよな! おい!」

「しげちゃん、霊草を真昆布扱いは無理があるよ」

 

 

 そう、霊草とエジプトで獲れた昆布から土を豊かにするアルギン酸を取り出す作業を行なっていた。

 

 こうする事で、エジプトの不毛な砂漠の土が丸みがある水分をよく吸収する土へと変貌させることができる。

 

 これに植林を行えば、霊草の効果と昆布のアルギン酸からとんでもない植林地が出来上がりそうだ。

 

 

 さぁ、いよいよエジプトでの新たな挑戦!

 

 

 彼らは果たしてニトクリスのピラミッドを完成させることができるのか?

 

 この続きは! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 NEW!

 

 1.エジプトで植林活動。

 

 2.エジプトで建築用大型車を作る。

 

 3.建築用大型車でピラミッド建造予定。

 

 4.エジプトで石油を掘りはじめる。

 

 5.リーダー、世紀単位で結婚できない



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ニトクリスのピラミッド作り その1

 

 

 

 エジプトでのピラミッド作りが始まってから数ヶ月。

 

 紆余曲折はあったものの、エミヤさんの手伝いもあって大型建築車を作る事に。

 

 そもそも、だん吉というモデルがあるからして製造はさほど困難ではなく、英雄達が協力し合う事で急ピッチで進めることができた。

 

 

「おー、見事なシャベルやなぁ」

「クレーンもあるし、これならやれんね」

「アルちゃん達もわざわざ手伝いに来てくれてありがとうね」

 

 

 そう言って、カルナは壮観な大型建築車がズラリと並ぶ光景を目の当たりにしながら、わざわざインドからだん吉で駆けつけて来たアルジュナ達に感謝を述べる。

 

 アルジュナはカルナの手を握りながら、左右に首を振り満面の笑みを浮かべてこう語りはじめた。

 

 

「何を言う、我が建築の師である貴方とこうして実践で建築ができるのだ。断る理由なぞない」

「いやいやーそれは大袈裟だよー!」

「…貴方が急にインドから居なくなってどれだけ毎日が寂しいものになった事か…」

「…何これ? 男同士の会話だよね? なんで単身赴任の夫を待つ嫁みたいな会話になってんのよ」

「さぁ? 兄ィだからじゃない?」

 

 

 ヴラドは苦笑いを浮かべながらベディに訊ねるが、ベディもこれには肩を竦め首を傾げるだけだ。

 

 さて、何はともあれ、インドから頼もしい助っ人達が駆けつけて来てくれたおかげでピラミッド作りも捗りそうだ。

 

 早速、建築の図面を見ながら皆でどうやってピラミッドを建てるかを相談しはじめる。

 

 

「じゃあ、アルちゃんとお前達はここを中心に石を組んでもらって」

「よし、わかった」

「それでもって、モーさんは俺とここ、リーダーは重機使えるやつと組んでもらって…」

「この辺に石を積み上げとけばええかな?」

「そだねー」

 

 

 そう言って、軽いノリで打ち合わせを進める彼ら。果たしてこんな調子で大丈夫なのだろうか?

 

 さて、心配はあるのだが、一方、その頃、エミヤとディルムッド達はというと?

 

 

「これとかどうかな? えみやん?」

「むっ…これは、…いい感じのモロヘイヤではないか! グッジョブだ!」

「でしょ! やっぱり野菜普段から扱ってるとわかんだなぁこういうの」

 

 

 エジプトの名産野菜、モロヘイヤの栽培をさせていただいていた。

 

 モロヘイヤは春から夏にかけて収穫され、刻むととろろ芋のように粘りが出るのが特徴。カイロではこの季節になると市場や八百屋で大きな束になって売られている事が多く、国民から愛されている野菜だ。

 

 日本ではあまり馴染みのない野菜だったが、ここ数年、鉄分の豊富な野菜と言うことで名前もそのまま「モロヘイヤ」として日本のスーパーでも売られるようになった。

 

 食べ方としては塩水でゆでて細かく刻み、ネギやしょうゆを加えてかき混ぜるととろろのようになる。そのままご飯にかけたりお蕎麦にものせてみても良い。

 

 これを、是非カタッシュ村でも栽培したい。

 

 

「やっぱり和食って大切だよな、えみやん」

「そうだな、日本人が長寿なのは和食が栄養価があり健康的であるという事に他ならない」

「たまに無性に焼き魚とか、味噌汁食いたくなるよね」

「わかる」

 

 

 そう言って、農作業着を身に纏うエミヤは通じあったとばかりにディルムッドと拳を突き合わせ互いに頷きあう。

 

 トロロのような食事があれば、また食の幅も広がるし、何より、ご飯が美味しく食べれるようになる。

 

 これからピラミッドを建てるのだからしっかり皆には栄養をつけてもらわねば、腹が減っては戦はできぬという奴だ。

 

 そして、一方、モーさん達だが…。

 

 

「むぅー、あー、面白くねぇー」

「何を拗ねておるのだ」

「だってよぉ、あいつがいるせいでぇ…その…」

「はぁ、カルナに構って貰えないからか?」

 

 

 そう言いながら、綺麗な髪の毛をお湯で梳かすスカサハは首を傾げながら拗ねているモーさんに問いかける

 

 ここは宮殿の近くにある川近辺。

 

 お湯が入ったドラム缶をドラム缶風呂にしながら彼女達は疲れを癒しつつ、作業によって汚れた身体を洗い流していた。

 

 

「ナイル川の水を焚いてこんな使い方をするなんて…このドラム缶というもの、凄い業ですね」

「な、ななな! んなわけねーだろ! ばーかばーか! 年増!

「…はぁ、全く…。おい、今、最後なんと言った? 小娘

「あだだだだだ! う! 嘘です! ごめんなひゃい!!」

 

 

 そう言いながらスカサハ師匠は片手で顔を真っ赤にして照れ隠しからか、言ってはいけない失言を言い放ったモーさんの頭を持ち上げると凄い勢いでアイアンクローをお見舞いする。

 

 

 ーーーー女性に年齢は厳禁。

 

 

 虎の尾を踏むとはこういう事だろう。頭を片手で持ち上げられたモーさんはしばらく抵抗はしたものの、それから時間がたたないうちに力なく手足がプラーンと垂れ下がってしまった。

 

 しかも両者とも全裸でこれをやってるのだから、その場にいたら凄い光景に違いない。

 

 現にドラム缶風呂に浸かっていたニトクリスちゃんは顔を真っ青にしながらそれを呆然と見ていた。

 

 

「ふむ、手がかかる弟子がいると師匠は大変だな全く」

「………………」

「…だ、大丈夫ですか? 死んでないですよね!? これ!?」

「手加減した心配ない」

「なんだか聞いてはいけない音が聞こえたような気がしたんですけど!?」

 

 

 チーン、という音が聞こえるかの様に意気消沈してスカサハ師匠からドラム缶風呂に投げ込まれたモーさんの様子に思わず声を上げるニトクリス。

 

 

 ーーーーこれがケルト式お仕置き術。

 

 

 おいたが過ぎるとこうなるので皆様ご注意ください。

 

 照れ隠しからか、失言は命取りになる。こうしてモーさんはまた一つ大人の階段を登った。この調子ならいつかはシンデレラになる日も近いだろう。

 

 デレも最近出てきた気がするモーさんだが、以前に比べて随分丸くなったものだ。

 

 

 さて、こちらは再びスフィンクスの近くにある建築予定地だが…。

 

 

「ここらへんかー、しげちゃんは?」

「ロードローラー取りいったよ」

「よし! それじゃ取り掛かりますか」

 

 

 打ち合わせも終わり、いよいよ、土台作りに入る段階に来ていた。

 

 古代エジプトにおけるピラミッドは、巨石を四角錐状に積み上げ、中に通路や部屋を配置した建造物である。

 

 まずは、ピラミットを作るにあたって、地盤がしっかりした場所でなければならないという条件がある。あれだけ巨大な建造物を建てるのだから、地盤がしっかりしていなければ、後に崩れたり傾いてしまうのだ。

 

 以前にカタッシュ村で病院作りを行った際に地縄張り、縄張りを行なったように今回もその経験が生きる。

 

 

「高さは147メートル、底部の一辺の長さが230メートルくらいかなぁ」

「でっかいねぇ」

「まぁ、ピラミッドだからね?」

「俺たちこれ作れたら多分、スカイツリーも作れるよ」

 

 

 そう言って、だいたいのピラミッドの大きさを述べるカルナにヴラドは真顔でそう告げる。

 

 途方も無いでかさ、しかし、ピラミッドはこれくらいデカくなければピラミッドでは無い気がするというのは彼らの持論だ。

 

 

 ーーーそれは石の数にして約300万個。

 

 

 途方も無い数の石をこれから積み上げ、建設し、ニトクリスちゃんのピラミッドを形にしなければならない。

 

 建造完成予定日としては…。

 

 

「だいたい半年くらいじゃない? みんなでクレーンとか建築車使ったら」

「長い年月だなぁ…これまた」

「石とかカットしなきゃいけないしねぇ」

 

 

 長い期間が予想される。それに、ギル様の水上建築の技術も教わりながらこのピラミッドに取り入れたい。

 

 とはいえ、このまま作業するとしても監督役が足りないような気もする。人材の補充もいるだろう。

 

 

「ネロちゃんに頼むかなぁ」

「ネロちゃまねぇ、確かにあの娘、建築に関してはほんとにいろいろ知ってるから」

「ローマなピラミッドにしよう! とか言わないように釘刺しとかないとなぁ」

 

 

 ーーー余がローマ建築である!

 

 ネロちゃまを呼ぶのは既定路線として、駄々をこねられる前に何かしら買収する必要も視野に入れとかなければならない。泣かれても困る。

 

 しかし、それはそれでギル様の水上建築と組み合わせてみても面白そうだ、ヴェネツィアのような外観のピラミッドなら美しい光景に見えるかもしれない。

 

 と、そこへ…。

 

 

「おーい! 持って来たでー、このへんでええのー!」

「オーライ! オーライ!」

「そうそう! そこら辺!」

 

 

 我らがリーダーがロードローラーを運転し、到着。久方ぶりの運転に大ベテランの腕も唸る。

 

 

 ーーー重機歴13年のベテラン

 

 

 そう、何を隠そう、我らがリーダーはなんと複数の重機の資格を持ち合わせており、こう見えて重機を操るのはもはや本業のそれだ。

 

 安全第一のヘルメットが今日もキラリと光る。

 

 

「とりあえず、道を整備しなきゃね」

「道路作りますか、セメントとローマンコンクリートで固めてピラミッドの周りに大型車停めれるようにしないとね」

「よし、それじゃみんなはじめるよー!」

 

 

 さて、いよいよ、本格的に始まるニトクリスのピラミッド作り。

 

 次回はこのピラミッド作りの為、力になってくれる建築の匠を求め、カタッシュ隊員は古代のバビロニアへ!

 

 果たして、その強力な助っ人とは?

 

 この続きは! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1、エジプトの道の整備をはじめる。

 

 2、ピラミッドつくり開始。

 

 3、快適なナイル川ドラム缶風呂。

 

 4、スカサハ師匠、年齢を気にする。

 

 5、エジプトの名産モロヘイヤ採取。



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閑話 YARIOは0円で英雄を仲間にできるのか?

 

 

 エジプトでのピラミッド作りが始まり、それなりの月日が経過したある日のこと。

 

 ここに来て人員不足が浮き彫りになってきた、というのも、カタッシュ村で農作業をするはずだったメイヴちゃんだが、騎乗スキル持ちという事もあり、大型トラック運転にカタッシュ村から応援に駆けつけてもらわなければならなくなったのだ。

 

 当然、カタッシュ村の農業もこれでは滞ってしまうことに…。

 

 これは、非常によろしくない。

 

 

「農民がいるね」

「間違いない」

 

 

 カタッシュ村に一旦帰還したヴラドとディルムッドは現状に関してそう結論付ける。

 

 

 ーーーここにはベテランの農民が必要。

 

 

 となれば、知名度的にも農業に精通してそうな人をこの村に招かないといけない。

 

 そういうわけで、今回、ベディ、ヴラド、ディルムッドの三人はピラミッド作りのために出払ったメンバー補充の為に動く事に。

 

 そして、幸いにも彼らの手元にはADフィンがまとめてくれた名簿がある。

 

 ここから、新たにカタッシュ村に来てくれる人を少しづつ招いていこうという考えだ。やはり、黒子役、年季が違う。

 

 

「じゃあ、まずどこ行く?」

「えーとね、フランスとかどうよ? フランスって言ったらやっぱフランスパン美味いじゃん」

「いいねぇ、エッフェル塔なんかあるしね」

 

 

 しかし、ガヤ三人衆は観光気分でこの資料を読み漁っている。

 

 果たしてこんな調子で大丈夫なのだろうか?

 

 というわけで、今回の企画はこちら!

 

 

 ザ! 鉄腕/fate! YARIOは0円英雄を仲間にできるのか?

 

 

「0円英雄かぁ…、というより、英雄に値段がつくの自体、俺初耳なんだけど」

「何言ってんだよー、千円札見てみなよ? これ英雄だよ?」

「確かに言われてみれば」

 

 

 そう、名高い英雄となればきっとこんな風にお札になったりしているはず。

 

 となれば、当然、英雄も現金にはうるさい人物なんかもいるかもしれない。

 

 だからこそ、世界のどこかにいるだろう0円英雄を仲間にできればこのカタッシュ村も大きくなるはずだ。

 

 ピラミッド作りが忙しい今、リーダー達の負担を出来るだけ減らす人材に協力を仰がなければ。

 

 という事で三人は早速、荷物をまとめてだん吉へと乗り込む。

 

 そうと決まれば行動は早い、目的地も決まっているし、あとは、彼らの頑張り次第だ。

 

 

 

 1431年、フランス、ルーアン。

 

 十七歳で故郷を発ち、奇跡とも呼べる快進撃を成し遂げるも捕縛され、異端審問にかけられ、魔女と貶められた果てに十九歳で火刑に処せられる聖女が今、まさに、その命の灯火を消さんとしていた。

 

 

「死ね! 魔女め!」

「悪魔の手先め!」

 

 

 いたるところから、石や木の棒などが投げつけられ、弱々しい彼女の身体にぶつけられる。

 

 イングランドとフランスの間で起きた百年戦争。

 

 その戦争で素晴らしい戦果を挙げ、人々から聖処女と崇められた彼女の今の姿は痛々しく見える。

 

 彼女を火刑に処す事を命じた異端審問官は笑みを浮かべながら、鎖に繋がれ、引き連れられている彼女を満足そうに眺めていた。

 

 人間の狂気が満ち溢れている。

 

 容赦なく、19歳に向けて放たれる罵倒の数々、しかし、彼女はそれでも下を向かず凛とした表情を浮かべていた。

 

 

(…これも神が与えし試練、受け入れる覚悟はできています)

 

 

 石がぶつけられ額から血が流れ出てくる。そして、兵士が彼女を火刑に処す為の火刑台の前まで彼女を連れてきた。

 

 民衆はその光景にさらに勢いを増して、石や罵声を彼女に投げかけた。

 

 

「早く燃やしてしまえ!」

「この魔女が!」

 

 

 だが、そんな罵声が飛び交う中、彼女は火刑台になんの迷いもなく足を踏み入れた。

 

 今から燃やされるというのに、まるで、祈るかのように手元に十字架を抱き、目を瞑る。

 

 

 これが、フランスを勝利へと導いた聖処女と崇められた英雄、ジャンヌダルクの最後。

 

 

 いよいよ、松明に火が灯され、彼女の足元に火が点火されそうになったそんな時だった。

 

 どこからかはわからないが、大きな声がその場に響き渡る。

 

 

「えっ…! その可愛い娘! 燃やしちゃうんですかっ!?」

 

 

 そして、その瞬間、ジャンヌを処刑せんとした兵士が持っていた松明の動きがピタリと止まった。

 

 しばらくして、三人の農作業服を着た三人組が躍り出るように火刑台の前に現れる。

 

 

「勿体ないですよー、おっぱい大きいし」

「…!? な、なんだ貴様らは!」

「あ、すいません、僕ら鉄腕/fateという企画で0円英雄を探しているYARIOという者なんですけどもー」

「実はここに捨てちゃう聖人がいるという話を聞いて駆けつけた次第でして…」

 

 

 躍り出た三人はにこやかな笑顔を振り撒きながら明るい表情で顔を険しくして驚いたような声を上げる兵士に告げる。

 

 そして、兵士の1人が目をパチクリさせると、恐る恐る三人に驚いたようにこう問いかけはじめた。

 

 

「えっ!? YARIOって…あの!?」

「あ、はい、そうです」

「お、俺! 大ファンなんですよ!! まさか、この街に来るなんて!」

「いやー、うちのADがここに燃やされちゃう優秀な農民の聖人が居るからという情報を頂いた次第で」

 

 

 そう言いながらにこやかな笑顔を浮かべ、彼らに話すYARIO達一同。

 

 まさかの登場に先程までジャンヌダルクを囲んでいた市民達は顔を見合わせて、騒めいている。

 

 そして、ベディは磔にされたジャンヌダルクに近寄ると縛られた手を解いてあげて、ジーっと上から下へと視線を落とした後、納得したように頷いた。

 

 

「まだこの娘全然やれますよ! この感じは間違いないDはあるな」

「いや、あの…貴方方は一体?」

「え? 俺らは、アイドルだよ?」

「アイ…ドル…?」

「その名乗りはちょっと無理があったね、ディル兄ィ」

 

 

 あまりの出来事にポカンとしているジャンヌダルク。

 

 そして、アイドルと名乗るディルムッドの肩をポンと叩くヴラド、そう、もう認知度的にはアイドルという枠では広まっていないのだ。

 

 すると、ジャンヌダルクに待ったを掛けた三人を目の当たりにした異端審問官のボーヴェ司教ピエール・コーションが彼らの元にすごい剣幕でやってきた。

 

 

「おい! 貴様ら! 魔女の処刑を止めるとはどういう了見だ!」

「え? この娘魔女なの? じゃあさ、魔法とか使えたりするんですか!?」

「え…いや、私は魔法は使えませんが…」

「え? 魔法使えないの? あー、それは残念だなぁ」

「おい! 話を聞かんか!」

 

 

 怒鳴り声を上げるピエール。

 

 それはそうだろう、今から処刑するはずのジャンヌダルクの処刑が三人に止められてしまったのだ。

 

 すると、しばらくして彼の腹心らしき人物が近寄り、恐る恐る彼の耳元でこんな話をしはじめる。

 

 

「あの…ピエール司教、…ご存知…ないのですか?」

「なんだ! 今取り込み中だ!」

「だから…彼ら、あのYARIOですよ?」

「は?」

 

 

 彼の言葉にピタリと凍りつくピエール。

 

 すると、聖書を取り出してトントンとそれを指で軽く叩いた腹心の部下は顔を引きつらせたまま、ピエールにこう話を続ける。

 

 

「はい、ですからYARIOです。後は分かりますよね?」

「え? …も、もしかして?」

「はい、察しの通りです」

 

 

 そう言った腹心は満面の笑みを浮かべ、一方でその事実を聞かされたピエールは顔がだんだんと血の気が引いたように真っ青になっていく。

 

 まぁ、腹心が遠回しにピエールに何を伝えたのかは知る由も無いのだが、まさに、その表情は蛇に睨まれたカエルのようであった。

 

 そして、周りの民衆も彼らがYARIOだと分かると罵声を彼らに浴びせたピエールに怒りのこもった様な眼差しを向けていた。

 

 

「おい! あんた! なんて言い草だ!」

「そうよ! YARIOに対して酷いんじゃないの?」

「そうだ!そうだ!」

「彼女に物投げたやつちょっと出てこい! 全員謝れよ!」

「まぁまぁ、皆さん落ち着いて落ち着いて」

 

 

 そう言って、ピエールに怒りを露わにする民衆達、そして、それをすかさず宥めるヴラド。

 

 すると民衆達はシーンと静かに静まってしまった。しかし、その表情は皆笑顔に満ち溢れている。

 

 そんな中、ベディは火刑に使われるはずだった火刑台を眺めながら一言。

 

 

「この火刑台も勿体無いよねぇ」

「じゃあ、皆でバーベキューしよっか? 良い木炭になるよこれ」

「お! いいねぇ! しようしよう!」

 

 

 そう言って、よく燃えそうな火刑台を見つめるベディに賛同する2人。

 

 

 ーーーー処刑場がバーベキュー会場に。

 

 

 すると、それを聞いた民衆達は歓声を上げて口々に嬉しそうに話をしはじめる。まるで、その表情は祭りでも今から始まるかの様に晴れやかなものだった。

 

 

「おい! 聞いたか! 今からバーベキューだとよ!」

「まぁ! それじゃ家からお肉持って来なきゃ!」

「それじゃ俺は家に野菜があったからそれ持ってくるぞ!」

「あ…いや、ちょっと…あの、ジャンヌダルクの処刑…」

「そんなの中止に決まってんだろ!馬鹿司教!」

 

 

 そう言って、皆は散り散りになって各自、家庭にある肉や野菜を集めに帰る。

 

 さて、そんな彼らの姿を見たカタッシュ隊員も黙っているわけにはいかない、これは、この火刑台を立派なバーベキューセットにしなければ。

 

 すると、ベディはしばらくして火刑台を鋸を使って切り始めた。

 

 

「おー、サクサク入るねやっぱり」

「はい、ジャンヌちゃんこれ、着替えと鋸ね」

「え? …こ、これは…」

「農民出身と聞いてたんで用意しときましたぜ」

「サイズは師匠とおんなじくらいだけど多分合うと思うよ」

 

 

 そして、当然、こうなったからにはジャンヌちゃんにも協力してもらおうとディルムッドとヴラドは用意していた鋸と着替えを彼女に手渡した。

 

 

 ーーーー用意周到なカタッシュ隊員。

 

 

 金網も手作りで用意、大人数でのバーベキューとなり、これにはルーアンの人々も手伝ってくれた。

 

 こうしてできた簡単なバーベキューセットに入れるための木炭を確保するため、ノコギリで切り取った木をヴラドが木炭にしていく。

 

 

「こうしてね、すごくいい木炭になるのよ」

「…すごく…。勉強になる…」

 

 

 これにはピエール司教も思わず感心した様に声を溢した。

 

 ヴラド特製の木炭、これは民衆も思わず心が躍る。

 

 なんせ、あのイングランドのアーサー王が絶賛した串焼き公で有名なヴラド印の木炭であるのだからそれは期待も膨らむというものだ。

 

 こうして、できたバーベキューセットに肉や野菜を乗せていく、すると辺りには香ばしい香りが広がった。

 

 

「やっぱり、人間焼くよりこっち焼いた方が絶対美味いよ」

「人間じゃ食べれないしね」

「貝とかイカとか魚とかも焼いてもいけるからこれ」

「おぉ!? ほんとですか! いやー、お酒が進みますなぁ」

 

 

 そう言いながら街の人々はバーベキューをしながらワイワイとカタッシュ隊員達に感謝の言葉を述べつつ食事を楽しむ。

 

 先程まで、物騒な雰囲気だった街が嘘の様な変わり様だった。

 

 そんな中、1人の少女が農作業服を身につけているジャンヌに近寄ると満面の笑みを浮かべて彼女にこう告げ始める。

 

 

「聖女さま! バーベキューセット作ってくれてありがとう!」

「い、いえ、私は成り行きで…、美味しいですか?」

「うん!」

「それは良かったです、久々に頑張った甲斐がありました」

 

 

 そう言って、ジャンヌは笑顔を見せる少女の頭を優しく撫でてあげた。

 

 

 ーーー久々に農家の血が騒いだ気がする。

 

 

 やはり、生粋の農家の血筋だけあってジャンヌの作業の腕は確かなものであった。これはカタッシュ村開拓にも期待が持てそうだ。

 

 こうして、我らがカタッシュ隊員達は1人目の0円英雄を仲間に入れることに成功した。

 

 これで、エジプトの開拓に人員を割いてもある程度どうにでもなりそうである。

 

 

「あ、ジル達も連れてって良いですか?」

「「どうぞどうぞ!」」

 

 

 それに、ジャンヌの協力のおかげでピラミッドの建設要員も図らずも増員。

 

 半年かかる予定だったピラミッド建造もこれで多少なりと短縮出来そうである。

 

 こうして、フランスから農業のベテラン、ジャンヌ隊員達を引き連れてルーアンでバーベキューを楽しんだ一同は帰路につくのだった。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1、0円英雄、ジャンヌちゃんを回収。

 

 2、ルーアンの火刑をバーベキューパーティーに変える

 

 3、火刑台をバーベキューセットにする。

 

 4、どこの市民にも愛されるアイドル。



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鉄腕/ウルク&エジる その3

 

 

 

 

 さて、前回、農民枠の聖人を無事確保できたカタッシュ隊員達。

 

 ニトクリスのピラミッドの製作を見据えての人員補充なのだが、大成功! まさかの農民聖女ジャンヌ・ダルクだけでなく、フランスの兵士達までオマケについてきたのだ。

 

 ちょうどカタッシュ村にも酪農の手伝いや畑を大きくする人員が欲しかったところなのでこれは有り難い話である。

 

 

 そして、そんなカタッシュ村にも活気が出てきたちょうどその頃、我らがリーダー達はなんと紀元前800年頃のアッシリアへ。

 

 というのも? 今回、ニトクリスちゃんのピラミッド作りに是非取り入れておきたい技術があった。

 

 

「山城作りのモデルをね」

「だねー、モーさんの立派な納屋作り(居城)もいずれはあるわけだからねー」

「やっぱり専門家はいるよね」

「確かにな、あ奴なら空中庭園作りにも詳しかろう」

 

 

 そう言いながら、ディルムッド、カルナ、リーダーの言葉に瞳を瞑ったまま笑みを浮かべるギルガメッシュ師匠。

 

 バビロンの空中庭園、すなわちバビロンといえばこの人! といった具合で思いつきで今回は彼にご同行をお願いした。

 

 残念ながら、今回はスカサハ師匠とモーさん達はお留守番である。

 

 今頃はエジプトで重機を操ったり、トラックを用いて物資の運搬をしているに違いない。

 

 少なくとも、メイヴちゃんと小次郎さんは最早、世界最古の至高のデコトラ乗りになりつつある。

 

 現場監督はネロちゃまが行なっているので何も心配無いはずだ。多分。

 

 

「あー、思い出した! ディル、そういや、お前の事、婦長さん呼んでたで?」

「ん? ナイチンゲール師匠が? なんで?」

「いやー、それがやなー、最近、看護婦が不足してるから看護師として手伝ってくれやって」

「あれ? ディル、ナースとかできたっけ?」

 

 

 そう言って首を傾げるカルナ。

 

 記憶が正しければディルムッドにはナースの経験はなかったような気がするが…。

 

 すると、ディルムッドは笑みを浮かべ、カルナにサムズアップするとなんの問題もないと言わんばかりにこう返した。

 

 

「やってたよ! ナースマン。バリバリで!!

「それフィクションじゃねーか!」

 

 

 そう言って、冷静にツッコミを入れるカルナ。

 

 確かにディルムッドにはナースマンの経験はあった、フィクションでの話だが。

 

 すると、ディルムッドは何やら指で数えるようにしながら更にカルナに話を続け始める。

 

 

「他にはねぇ、家政婦とかもやってたねぇ、あと、ホストとかもしてたよ」

「だからそれフィクションでの話だよね?」

「我は見てたぞ、なかなかあれは面白かったではないか」

「えー! ほんとですかー! 嬉しいなぁ、いやー、俺かなり感動しましたよ! ギル師匠!」

 

 

 そう言って、ギルガメッシュの手を握り締めて嬉しそうに笑みを浮かべるディルムッド。

 

 フィクションであるが面白いと褒めてくれるギルガメッシュ師匠は流石は心が広い。流石は千里眼を伊達に使っていないとみえる。

 

 さて、茶番はさておき、こうしてアッシリアまで建築の匠を訪ねに来た一同であるが、すぐに宮殿に赴き、協力を仰ぐ事に。

 

 さぁ、今回はどんな癖者師匠に会えるのだろうか?

 

 

「思ったけど、俺達も大概癖者ばかりだよね」

「そんなこと言わない」

 

 

 ーーーー自覚はあった。

 

 確かにスカサハ師匠にモーさんも濃いが、もともとのリーダーを含めた五人もキャラが濃いすぎる。

 

 今では更に濃いメンバーを迎えたせいか、色で言えば真っ黒か極端に凄い濃い色になっているに違いない。

 

 そんな他愛ない雑談を交えながら一同はなんやかんやでアッシリアの宮殿へ。

 

 

「こんにちはー! 僕ら鉄腕/fateのYARIOという者なんですけどー!」

 

 

 といつも通りに門番に話を通し。

 

 

「え! あのYARIOさんですか! こ、こちらです! どうぞどうぞ!」

 

 

 と案内され。

 

 

「なんだお主ら? 我に何の用だ?」

 

 

 と言った具合にトントン拍子で今回も匠に会うことができた。

 

 しかも、隣にはあのギルガメッシュ師匠がついて来ている為、心強い。

 

 さて、というわけで、今回、建築の達人はこちらの方、父さんが残した熱い思いを形にしたバビロンの空中庭園を作り上げた空中庭園作りの達人。

 

 アッシリアの伝説の女王。セミラミスその人である。

 

 彼女は美貌と英知を兼ね備えていたとも、贅沢好きで好色でかつ残虐非道だったという話しもあった。

 

 彼女の在位はなんと驚異の42年間だという。

 

 

「今回、僕ら空中庭園作りに精通してる匠さんにいろいろ教わりたいなと…」

「…ふーん、変わった奴らよの」

 

 

 そう言って、玉座に座るセミラミスは品定めするような眼差しで彼らを見つめる。

 

 農業の格好、鍬にした槍を担いだアイドル。

 

 こんな胡散臭い、もとい、アイドルがアイドルの定義を成してない人物達を見れば疑わしくも思われてしまうだろう。当然である。

 

 

「おい、我の弟子共の願いが聞けぬか? 雑種よ。貴様、誰を前にして玉座から見下ろしている」

「…1人礼節を知らぬ者がいるな?」

「ほう? よく吠えた。ならば是非もない、この我が直々に…」

「まぁまぁまぁ、お二人さん抑えて抑えて」

「そうだよー、ギル師匠、折角、ニトちゃんのピラミッドに師匠の水上建築と空中庭園の技術を取り入れようとしてるのにさ」

 

 

 そう言って、すぐさま仲介に入るカルナとディルムッドの2人。

 

 険悪な2人に対して仲良くしてほしいという彼らの言葉に不機嫌そうにしながら、仕方ないと言葉を一旦区切るギルガメッシュ師匠。

 

 確かに、ギルガメッシュが本気を出せばこのアッシリアの宮殿を丸々壊滅させるのも容易く、目の前にいるセミラミスを屠るのも簡単だろう。

 

 普段なら、煽る側の彼らとしても今回は抑えて貰わねば、最悪の場合はリーダーを生贄に捧げるしかないが…。

 

 

「まぁ良いだろう。そこまで言うなら空中庭園の作り方について教えてやらんでもない」

「ギルガメッシュ師匠…我慢ですよ我慢」

「抑えて抑えて」

「えぇい! わかっておるわ!!」

 

 

 そう言うと、ギルガメッシュはため息をつくとイライラを抑え、セミラミスの言葉を静かに受け流す。

 

 賢王というだけあって、自制心は保ててるようだが幸先が不安になってくる。こんな調子で大丈夫なのだろうか?

 

 

 

 さて、一方、ニトクリスのピラミッド作りの方だが。

 

 こちらの方も総動員に近い体制でガンガンと建築を推し進めていた。大型車がピラミッドの周りを往き交い、どんどんコンクリートや石が積まれていく。

 

 石を運搬しているトラックから顔を出したメイヴは現場の大型車を誘導するモーさんに声をかける。

 

 

「メイヴちゃん到着ー! はーいバックするよー!」

「おけー! オーライ! オーライ!」

「余が思うに、この辺りなど良いのではないか?」

「おー、流石はネロちゃまは目の付け所が違うねー」

 

 

 順調に進んでいた。トラックからの物資の運送もそうだが、大型車の活躍により作業も円滑化され効率的な建設作業が可能に!

 

 アルジュナ達もそして、ジャンヌを慕うジル・ドレェ達も安全第一のヘルメットを被り作業に加わっている。

 

 

「アルジュナ殿、クレーンのフックはこの辺りでよろしいですかな?」

「いや、もうちょっと上だな! ちょっと巻いてくれ!」

「わかりました、聞いたな! もうちょっと上だ!」

「了解!」

 

 

 キュルキュルと音を立てて、ローマンコンクリートを持ち上げるクレーン車に指示を飛ばすジル。

 

 場所を確認しながら、アルジュナはコンクリートを下ろす位置を調整する。こうする事で噛み合わせが悪いズレを無くし、ピラミッドの綺麗な並びを実現させる事ができる。

 

 ピラミッドの下部分は割と順調に組み上がっているようだ。これならば、予定よりも作業が終われるかもしれない。

 

 

「これ壮観だねー」

「だよねー、エジプト始まった感があるわ」

 

 

 そう言って見晴らしの良いピラミッドの出来上がっていく様子に感心するヴラドとベディの2人。

 

 そんな中、盛大なピラミッド作りを前にしてニトクリスは彼らの隣で目をキラキラと輝かせていた。

 

 まさか、こんなおっきなピラミッドが自分のピラミッドになるなんて、なんて恐れ多い事か…。歴代のファラオに申し訳ないと思いつつも内心では舞い上がっている。

 

 

「す、凄い! …わ、私のピラミッドもしかしたらエジプトで一番大っきくなるのではないですか!」

「そりゃ、下があんだけデカければねぇ」

「ですよね! ですよね! やったー! 大変、嬉しく思います!」

 

 

 満面の笑みを浮かべて嬉しがるニトクリス。

 

 そんな姿に思わず2人も和む、巨大なピラミッドを作るのは大変だが、こんな風に喜んでもらえるなら本望だろう。

 

 さて、そこでだが、2人は肝心な事を忘れていた。

 

 その事を思い出したベディはハッとしたように手をポンと叩くと建築現場を見ているニトクリスとヴラドの2人にこんな話を持ちかけはじめる。

 

 

「あ! そうだ! 名前! 名前考えようよ! このピラミッドのさ!」

「まだできてないのに? もうニトちゃんピラミッドで良いじゃん」

「いや、それは捻りがないな、遊び心が無い」

「!? スカサハ師匠!」

 

 

 そう言って、彼らの背後からいつのまにか現れるスカサハ師匠の姿に一同は驚きながら目を丸くする。

 

 しかし、確かに彼女の言葉は正鵠を射ていた。ニトちゃんピラミッドだと可愛くはあるものの、捻りがなく普通。

 

 もうちょっとインパクトが欲しいところだ。だが、ニトクリスは納得できないように突如現れたスカサハを指差すと異議を唱えはじめる。

 

 

「ちょっ!? それおかしくないですか! 私のピラミッドなのに!?」

「それは余もそう思う」

「お、オジマンディアス様まで!? 何故ェ!」

 

 

 だが、これまたいきなり現れた同じくエジプトのファラオであるオジマンディアスのまさかの援護射撃には勝てなかった。

 

 しかし、このピラミッドはニトクリスの物であるのだが、元々はYARIOが作ると言い出したものである。

 

 そして、現にニトクリスのピラミッド作りに積極的に尽力してくれているのだ。

 

 そういう意味で彼らの活躍した証を何かしら残しておくべきだとオジマンディアスは考えていた。

 

 

「名前はこやつらに付けさせよ、これだけ立派なピラミッドを建ててくれているのだ。それに応えるのもまたファラオの務めだぞ」

「!?…っは! …た、確かに言われてみれば…」

「え? 良いんですか?」

「これは貴様らの功績だ。良いか? ニトクリス」

「! は、はい! もちろんでございます! 彼らの付けた名前ならファラオたるもの喜んで受け入れます!」

 

 

 オジマンディアスの問いにそう応えるニトクリス。それを聞いていたスカサハ師匠も満足そうにうんうんと頷いていた。

 

 こうして、ヴラドとベディの2人はこの場にいない三人の分までニトクリスのピラミッドの名前を考えることに…果たしてどんな名前が良いだろうか?

 

 

「前は一文字づつ取って山城だったからねー」

「そっか、それじゃ、今回もおんなじ感じで一文字づつ取って付けようか」

「よし、おっけー、…んー……」

 

 

 ヴラドの提案に納得したように頷き考えはじめるベディ。折角、名前を付ける機会を得たのだ、ここはよりインパクトのある名前を。

 

 そうして、考え込む事数分あまり、ベディは何か閃いたようにカッ! と目を見開くと、紙と筆を用いて全員にニトクリスのピラミッドの名前について書きはじめる。

 

 丁寧な文字でささっと書いていくベディ。そして、完成した文字をその場にいる皆の前で公表しはじめる。

 

 

「それでは、このピラミッドの名前は長岡と命名する事にします」

 

 

 ーーーーーーピラミッド長岡。

 

 明らかに和風な名前のピラミッドであるし、いろいろ突っ込みたいところだが、なんだか、しっくりくるところもある。

 

 そのベディから公表されたピラミッドの名前を見たヴラドがここで一言。

 

 

「え? 新潟県だっけここ?」

「今更何言ってんだよー、エジプト県長岡市に決まってんじゃん」

「そっか、エジプト県だったんだここ…ってんなわけあるか!」

 

 

 ーーーーエジプト県長岡市。

 

 恐らくはベディがこの名前にしたのは、山城同様の付け方なんだろうが、ピラミッド長岡というネーミングセンスには流石にヴラドも突っ込まざる得なかった。

 

 ならわかったと、ベディは納得できない様子のヴラドを見かねて更に訂正を加えはじめる。

 

 そして完成したのがこちら。

 

 

「ピラミッド長岡国」

「市から規模でっかくしただけだよね、それ…。場所は相変わらず新潟だよね、明らかにさ」

「だからエジプト県長岡国だって」

「ふむ、ではもうそれで良いな」

「ちょっと待って! オジマンさん! せめて国だけ消させて!」

 

 

 こうして、ヴラドの要望により、国だけ消され、ただの長岡になる事に。

 

 さらに、ニトクリスの名前をここに加えていき、略称は長岡だが、結果的にこんな名前になった。それがこちら。

 

 

 ーーーーピラミッド長岡ニトクリス 。

 

 

 もう芸名か何かではないかと疑ってしまうが、これが略されとりあえずピラミッドの名前は長岡になる事になった。

 

 この名前にニトクリスもとりあえず満足した様子だが、明らかになんの建物か、意味不明な名前になってしまった感は歪めない。

 

 だが、本人が満足ならそれで良いと言うことに、こうして長岡という名前も決まり一同は満足した様子であった。

 

 

「長岡か…悪くないな」

「確かに良い響きだ」

「ちょっと俺には何言ってるかわかりませんね」

 

 

 満足げに頷くオジマンディアスとスカサハの言葉に容赦なく突っ込みを投げかけるヴラド。

 

 至って普通の反応である。エジプトに長岡とかいう変な名前のピラミッドがあるらしいと言われてもなんらおかしくはない。

 

 さらに、このピラミッドの正式名称は芸名みたいな名前である。

 

 こうして、ピラミッド、正式名称、長岡ニトクリスの命名も無事に終わり、一層やる気がみなぎってきた。

 

 完成まではまだかかりそうだが、これに水上建築や空中庭園の技術も取り入れて凄いピラミッドを完成させたい。

 

 果たして、長岡は無事に建てられるのか?

 

 この続きは…! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1.空中庭園の技術を学びにアッシリアへ

 

 2.ピラミッド名『長岡』

 

 3.ピラミッドの正式名称『長岡ニトクリス』

 

 4.建築予定地 エジプト県長岡市。

 

 5.大型車が普通に走るエジプト。



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ニトクリスのピラミッド作り(大詰め) その2

 

 

 

 

 さて、前回の鉄腕/fateでは空中庭園の達人、セミラミス師匠を建築にお呼びし、ニトクリスちゃんのピラミッドに長岡という名前を付けたカタッシュ隊員一同。

 

 そんな一同セミラミス師匠をエジプトで迎え盛大な歓迎会を開く事に。

 

 というのも?

 

 

「なんと! 今日はみなさん! メジェド様祭りですよ!」

「というわけなんですよ」

「何がどう、というわけなの?」

 

 

 そんなわけで、このメジェド様を讃える祭りをニトクリスちゃんが開きたいと希望するので致し方なく付き合ってあげることに。

 

 どうせなら盛大にやろうと、オジマンディアスも国を挙げて全力サポートしはじめるのでこれはもうせざるを得なくなってしまったわけである。

 

 さて、こうして、セミラミスを盛大にお迎えするために開かれる事になったメジェド様祭りだが、その概要はというと?

 

 

「ソウ ワタシ ガ メジェド サマニ ナリマス!」

「なるほど、それでそれで?」

「アシキ モノ ヲ タイジスベシ!」

 

 

 そう言って、ベディの質問に対して、初対面で彼女と出会った時のように珍妙なメジェド様の白布を被り、耳の様な癖毛をピコピコと動かすニトクリス。

 

 確かに愛嬌があり、可愛いのだが、これで悪しき者を倒すと意気込まれても正直な話、皆はピンとこない。

 

 

 

 そこで、カタッシュ隊員達は考えた、このメジェド様に対抗すべき好敵手を、そうして、考えついた結果がこちら。

 

 

「なんで俺がこんな格好…」

「いいじゃんいいじゃん」

「スッゲーかわいいよモーさん」

 

 

 そう、人間サイズのアヒル隊長。

 

 これをモーさんにやってもらう事にした。理由は特に無い、リーダー達の思いつきである。

 

 しかし、モーさんはカルナ達から可愛いと言われて満更でも無いのか、無表情のアヒル隊長のぬいぐるみを被ったまま照れくさそうな声を挙げていた。

 

 

「えへ、えへへ、そ、そうかぁ〜? な、なら仕方ねぇなぁ、俺がやるしか無いか! うん」

(チョロいな〜、モーさん)

(先が心配だなぁ、大丈夫かなぁ…)

 

 

 さんざん持ち上げておいて、天使の様な笑みを浮かべるモーさんに思わず心配になるカタッシュ隊員達。

 

 無表情なアヒル隊長の顔が相まってかなりシュールな光景である。

 

 さて、そんなアヒル隊長とメジェド様の姿を目撃しているセミラミスは目をまん丸くしながら指を差し、ヴラドにこう問いかける。

 

 

「なぁ、ヴラド、あれはなんなのだ?」

「アレですか? ウチのマスコットです、あと、この人達もその類ですね」

「うむ、そうだな、…うん? …ちょっと待て、何故、私もあれらと一緒の扱いなんだ!!」

「え! 僕マスコットやったん!?」

 

 

 そう言って、説明されるヴラドから指差されたリーダーとスカサハ師匠は思わず声を上げて突っ込む。

 

 ーーーーマスコット的なリーダーと師匠。

 

 確かにアヒル隊長やメジェド様みたいなシュールさは無いが、我らが愛すべきリーダーとスカサハ師匠は間違いなくマスコット的な存在である。

 

 

「愛されキャラで良いじゃんか」

「だって片方は魚類で片方はアヒルやで」

「そうだけども、似たようなもんでしょ」

「なんでやねん!」

「こら、刺すぞ、プスっていくぞプスって」

 

 

 2人の息の合った突っ込み。

 

 スカサハ師匠は頬を膨らませながらゲイボルクを構えて牽制している。

 

 しかしながら、普段から槍で鉱石を掘ったり木を槍で刺し倒したりしている師匠を見ているカタッシュ隊員達からしてみればあの珍妙なマスコットとなんら変わりがなく見えても仕方ないようにも思える。

 

 リーダーはリーダーで、もうみなさんはご存知の通りだと思われるので割愛してもらう事にしよう。

 

 というわけで、メジェド様とアヒル隊長のマスコット一騎打ち祭りが催される事に。

 

 

「さぁ、みんな! メジェド様とアヒル隊長を応援するんだぞー!」

「「はーい!」」

 

 

 そして、エジプトの子供達に応援を促すディルムッド。

 

 まるで、一種のヒーローショーのようだが、大人達も珍妙なマスコット対決を一目見ようと宮殿の近くは賑わいを見せていた。

 

 この祭りはこの催しをきっかけにエジプトでの伝統的な祭りとして後世に語り継がれる事になるのだが、その祭りの名前が別名…。

 

 

 長岡マスコット祭りである。

 

 

 早速、祭りは盛り上がりを見せる。神輿に担がれたニトクリスのメジェド様とモーさんの担がれた神輿が激突。

 

 このモデルとなっているのは日本伝統の喧嘩祭りである。

 

 日本の祭りにおいて、山車、行燈、曳山、神輿、太鼓台等でぶつかり合うように行う祭りでこうする事で神威を増すといわれている。

 

 新潟県の天津神社のけんか祭りでは、神輿のぶつかり合いは、神威をいや増すものであるが、男女神のぶつかり合いは神婚を意味し、五穀豊穣、大漁、子孫繁栄をあらわすと言われているのだ。

 

 つまり、互いの誇るマスコットをぶつけ合う事でお互いの土地が豊かになりますようにという意味で願いを込めた行事になっているのである。

 

 ここまで長々と説明があったが、ここは新潟県ではなくエジプトである。

 

 

「グッ… フフフ アヒル タイチョウ ナカナカ テゴワキ コウテキシュ デス!」

「グワー(てめーもな!)」

 

 

 ピコピコと頭の羽毛が動くメジェド様に呼応するように、アヒル隊長モーさんが羽を広げて威嚇を見せる。

 

 

 ーーーー互いに成りきっている。

 

 

 その余興を楽しむようにオジマンディアスとギルガメッシュの2人は酒盛りをしながら満喫していた。

 

 珍妙なマスコットの戦いはまだまだ始まったばかり、今年の長岡祭りを制するのは一体どちらのマスコットなのか!

 

 さて、それはさておき、時は過ぎ、祭りを眺めているセミラミス師匠は面白い光景に大変満足されている様子であった。

 

 

「こんなものを考えるとはなかなか面白い奴らよな、気に入った」

「え! それじゃあ…」

「あぁ、我が直々に空中庭園の技術を授けてやろう、どんなものが出来上がるのか見て見たくなった」

「やったー! ほんとですか!」

 

 

 こうして、なんとかセミラミス師匠から空中庭園の技術を学べる事が出来るようになった。

 

 これで、長岡も空中に浮かぶエジプトで一番大きなピラミッドにすることができる。それに空飛ぶ納屋、山城も作る事が可能に!

 

 さぁ、いよいよ、ピラミッド作りも大詰めだ。

 

 

 さて、そんなわけで、ピラミッド作りが順調に進んでいる最中。

 

 ひと段落ついた一同はこのマスコット長岡祭りを無事に終えて一度カタッシュ村に帰る事にした。

 

 というのもこれには理由があった。それは…。

 

 

「病院の人手が不足しています、これでは…助けられる命も…」

「そうですか…」

「ジャンヌさん達も作業の合間を使っていろいろと手伝ってはくれてるんですけどね」

 

 

 そう言って、深いため息を吐くのはこのカタッシュ村の病院の婦長、ナイチンゲール師匠である。

 

 病院という施設自体がこの場所にしか無いため、人が足りず、回らなくなってきているというのだ。

 

 それにこの時代の医術では病人を助けるにも限界がある。

 

 容易に霊草を使えば不老不死にはできるもののそれでは彼らに望んでいない苦しい生活をずっと強いる事につながってしまう。

 

 

「…どうにかなりませんかね?」

「うーん、そうだね、なんとかしなきゃだね、それは」

「医者も麻酔医も居ないから手術もできてないんだよね?」

「…はい、良くても切除かそのくらいの処置くらいでしょうか」

「若い命が無くなるのは僕らも見てられへんからなぁ」

 

 

 そう言って、ナイチンゲール師匠から病院の事情を聞いたカタッシュ隊員達は顔を見合わせてどうするか思案し始める。

 

 確かにこのまま、この状態にしておくのは良くない。

 

 なので、彼らはひとまずこの件に関してナイチンゲール師匠のお願いを聞き入れる事にした。

 

 

「まずはお医者さんだねー」

「あ、僕、1人心当たりあるわ!」

「え? リーダーそれほんと?」

 

 

 そう言って、リーダーの言葉に驚くヴラド。

 

 リーダーはにこやかな笑顔を浮べながら頷く。どうやら、医者に心当たりがあるようだ。

 

 ならば、それに越したことはない、あとは片っ端からだん吉で皆が散り散りにお医者さんに協力を求めに行かなければならないのは確定事項。

 

 心当たりがあるなら、それならそれでだいぶ助かる。

 

 というわけで一同はそれぞれ、お医者さんを求めてだん吉へ、リーダーはカルナと共に移動をすぐさま開始した。

 

 

「リーダー行き先は?」

「えーとな、現代のちょっとした紛争地域なんやけれども…医療支援団体の方に心当たりがあってなぁ…」

「えっ!? げ、現代!? マジで!」

「マジやでー」

 

 

 そう言って、だん吉に乗り医療支援団体が活動している地域へと赴く事になった2人。

 

 カルナもまさかの行き先が現代という事に驚きが隠せない、リーダーの心当たりがある人物とは一体誰なのだろうか?

 

 

「この人ならもしかしたらいけるんちゃうかなって…」

「いや…いくら医術が発展してるからって…個性強いあの人達に現代で馴染む方なんているのかなぁ」

「心臓手術なんかはやっぱり専門家しかわからんやろうし…外科医はやっぱり専門家がええよ」

 

 

 そう言って、カルナの言葉にもっともらしい事を述べるリーダー。

 

 果たして、カタッシュ村に呼ぼうと思うほど人材とはどんな人物なのだろうか? すると、リーダーは医療支援団体のテントを潜り抜けそこで患者と話をしている1人の人物に話掛けた。

 

 

「あのー…すいません、僕らYARIOという者なんですけども」

 

 

 それから、しばらく話すこと数分ほどで協力をしてもらえる事を承諾してもらうことができた。

 

 こんな紛争地域で患者を診る変わった外科医、果たして医術の匠とは一体どなたなのだろうか。

 

 

 それから数日。

 

 散り散りになったカタッシュ隊員達は医者の経験がある方を呼びにだん吉で走り回り、何人かの人材を確保する事に成功した。

 

 

「こちらパラケルススさん、錬金術と医療に精通してらしてる方でして」

「…助かりました。正直言ってどうしようかと思っていたので」

「いえ、私もお会い出来て嬉しいです」

 

 

 そう言って、ヴラドが紹介してくれたホーエンハイムと名乗る男性と握手を交わすナイチンゲール。

 

 医術と錬金術に精通してある方ならば患者さんもある程度は問診や診察ができ、怪我や病の様子なんかも把握できる。

 

 

 そして、続いて現れたのはベディと手を繋いで現れた可愛らしいワンピースを着た1人の幼女であった。

 

 

「私達は、ジャック・ザ・リッパーっていうの! よろしくね!」

「えーと、いろいろ聞きたいことがあるんだけども」

「この娘こう見えて外科手術ができるんだよ!」

「いや幼女じゃん! どっから連れて来たのよ! 事案だよ! これ!」

 

 

 そう言って、突っ込みを入れるヴラド。

 

 誘拐犯になってしまう! これは流石に不味い。

 

 しかし、ベディは至って冷静な口調でヴラドに事の経緯を話し始めた。そう、ベディが向かったのは産業革命期のロンドン。

 

 そこではなんと、娼婦による捨てられちゃう子供達がたくさんおり、悲惨な光景になっていたとか。

 

 せっかくの子供達の未来を大人の身勝手で奪うのは許せるわけが無い。

 

 そこで考えた。なら、貰ってしまえば良いのだと。

 

 

「ほら、カタッシュ村たくさんお母さん居るからさ、リーダー含めて」

「リーダー、一応、性別男なんだけどなぁ…」

 

 

 ーーーーオカンやから仕方ない。

 

 そう、メイヴちゃんだけでなく、大型車を運転できるのは小次郎さんもいる。

 

 それに、カタッシュ隊員なら大型車の運転もなんのその。

 

 ロンドンからわざわざ、大型バスに乗っけてカタッシュ村に連れて来たのである。

 

 

「そしたらなんかこの娘が解体も得意だって言うからさぁ、聞いたら外科手術なんかもできるみたいで」

「うん! 得意だよ! 解体!」

「そっかー、解体得意なら助かるねー、建物の立て直しとか船舶の分解の時におじさんお願いしちゃおっかなー」

「うん! 任せておいてね!」

 

 

 そう言って、にこやかに可愛らしい笑みを浮かべるジャックの頭を撫でるカルナ。しかし、幼女に家や船舶の解体なんかをさせても良いものだろうか?

 

 すると、そこでディルムッドがこんな提案を持ちかける。

 

 

「マグロでもいけるかな?」

「うん!」

「よし、この娘採用!」

「待って、その判断基準はおかしい」

 

 

 ーーー幼女によるマグロの解体ショー。

 

 確かに珍しいだろうが、それですぐさま採用する彼らも彼らである。ヴラドは呆れたようにため息を吐いた。

 

 そして、肝心のリーダー達だが…。

 

 すると、ナイチンゲール師匠は彼らの連れてきた人材についてこう質問を投げかけはじめる。

 

 

「そちらの方は?」

「あ、えーとですね、お医者さんって聞いたので…その、紛争地域から来ていただいたんですけど…」

 

 

 すると、カルナの紹介を見計らって、白衣を着た男性は鋭い眼差しを向けたままポケットに手を入れると自己紹介を自らしはじめる。

 

 そう、彼は現代医学において最高のバチスタチームを形成し、数々の困難な手術をやり遂げたプロフェッショナル。

 

 きっかけはリーダーがよくその雄姿を知っていたからという話から始まった。

 

 

「心臓外科医の朝田龍太郎だ。よろしく頼む」

「はい、というわけで来てもらいました」

 

 

 なんと、あの朝田龍太郎先生に来てもらう事に。

 

 その名前を聞いたヴラドはここで思わず、目を見開いたままこんな事を話しはじめる。

 

 

「ちょっと待って! なんか違う話が始まりそうなんだけど!」

 

 

 ーーーブリテンだけにTeamMedicalDragon(医龍)。

 

 なるほど、確かにアーサー王にちなんだ素晴らしいバチスタチームができそうな予感はする。

 

 しかしながら、手術チームが本当に凄腕ばかりである。

 

 内科医兼麻酔医にヴァン・ホーエンハイム・ パラケルスス師匠。

 

 手術の助手にはナイチンゲール師匠。

 

 そして、外科医には朝田龍太郎にジャック・ザ・リッパーちゃん。

 

 さらにこれからまだまだ朝田先生がツテを使って人材を呼んでくれるという話まで挙がり。

 

 ローマ、バビロニア、エジプトからも医術研究をさせてほしいとカタッシュ村に医者を派遣するという話にまで。

 

 さらに医療機器はメイヴちゃんと小次郎さんが部品を仕入れてくれるそうなので。

 

 

「つまり、医療機器を作れというわけですね、俺らに」

「人工心肺とか手作りできるかなぁ?」

「図面あればいけるいける! 作り方はまた教わり行ってもいいしね」

 

 

 そう言って、医療機器をまず部品から作るところから彼らはやる事になった。

 

 エミヤさんもいるので多分、大丈夫だろうがこれは神代で心臓バチスタチームができるという事になる。

 

 

「カタッシュ村に…帰るぜよ、みたいな?」

「そっちの方が良かったかな?」

「ヤメテ!?」

 

 

 こうして、ナイチンゲール師匠も安心して医療に専念できる環境は整った。

 

 後にこのカタッシュ村病院では医龍的な展開が繰り広げられるのだが、それはまた別の話である。

 

 さあ、ピラミッド完成ももう間もなくだ。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1.世界最古の心臓バチスタチーム結成。

 

 2.ロンドンの捨て子を回収。

 

 3.マグロの解体ができる幼女を発見。

 

 4.エジプトに長岡祭りが開催される。

 

 5.エジプトにアヒル隊長が祀られる。



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聖剣作り その4 (完成)

 

 さて、前回の鉄腕/fateではニトクリスとモーさんのメジェドとアヒル隊長の長岡祭り。

 

 無事にそれも終わり、いよいよ、ピラミッド作りも大詰めへ、皆の士気も上々に上がり始め本格的に動き始める事に。

 

 

「さて、それじゃ今から組み立てていくんだけれども」

「いえーい!」

 

 

 当初の打ち合わせ通り、ピラミッドの内部から、水上建築の技術と空中庭園の技術を組み合わせたものを作りたい。

 

 彼らの手にも思わず力が入る。重機を動かし石を積み上げ形にしていく。

 

 ピラミッド作りに協力してくれているアルジュナは石を削りながら汗を拭い、爽やかな表情を浮かべていた。

 

 

「こんなものだろうか?」

「やっぱ筋がいいねぇ、アルちゃんはさ」

「なぁ、なぁ、なぁ、なぁ! 俺は! 俺は!」

「モーさんももちろん上達してるよー」

「ほんとか! えへへ〜、よし! 頑張るぞ!」

 

 

 そう言って、カルナから頭を撫でて貰うモーさんは上機嫌で頬を紅潮させ、顔を綻ばせながら喜んでいた。

 

 側から見たら和む、どこからどう見てもとても可愛らしい女の子である。

 

 しかし、これがあのアーサー王と対立したであろう叛逆の騎士モードレッドだと言って誰が信じるだろうか?

 

 

 ーーー反抗期は過ぎました。

 

 

 今は天使のような娘がエジプトで石を削ってピラミッド作りをしているだけである。

 

 さて、水上建築の方も順調で設計図と睨めっこしているのはギルガメッシュ師匠である。こちらはセミラミス師匠と打ち合わせをしながらどういった具合にピラミッドに組み込んでいくのか打ち合わせをしていた。

 

 やはり、建築において打ち合わせは重要である。

 

 無計画で建ててしまうと建物が倒壊したり、場合によっては改築も必要になる可能性がある。

 

 

「うむ! 余のローマンコンクリートは大活躍だな! もっと褒めて良いぞ!」

「ネロちゃんすごいなー憧れちゃうなー」

「そうだろう! そうだろう!」

 

 

 ヴラドの棒読みのような褒め方に満面の笑みを浮かべるネロ。褒められると上機嫌になるので彼女は本当に扱いやすい。

 

 なお、放置したり扱いを疎かにすると泣き出すのでご注意を。

 

 という事で、適度にヴラドがネロを甘やかしている間にカタッシュ隊員達はある話に入る。

 

 それは?

 

 

「聖剣作りの素材、集まりそうだよね」

「エジプトとバビロニアで残りは集まるだろうし、包丁にしたデュランダルの破片もあるしねー」

「あとはこれを溶かして形にすればいっか」

 

 

 そう、皆さまは忘れている方もいるかもしれないが、モーさんの聖剣作りである。

 

 素材はバビロニアとエジプトの鉱山から掘れば出てくる。そこは、優秀な我らがADフィンとADエミヤが揃えてくれた。

 

 ピラミッド作りに忙しい皆の代わりに泥まみれになりながら持って来てくれた素材、お二人共御苦労様である。

 

 さて、それでは我らがマーリン師匠からここで皆様にお話が。

 

 

「剣作りの話をしよう。まずは山子というものを行い、鉄を溶かすための炉の火のための炭を焼くところから始めるんだね」

 

 

 詳しく話せば、炭を作るところから始めるのだが、ここには炭職人のヴラドがいる。

 

 というわけで早速、上質な炭作りに入る。手順は以前から行っている炭作りと同じように作る。

 

 以前、彼らが過ごした島の集落跡では、長年放置されてきた井戸の水があった。

 

 その井戸の水質検査の結果、細菌の巣窟だった。

 

 内側の壁は、雑草に苔、ヤモリの卵が巣食う劣悪な環境。そこで、井戸造りのスペシャリストに応援を頼み、再生に取り組むことになったのだが、その時にもこの炭が役に立った。

 

 炭にはゴミや臭いを吸着する浄化効果あることで知られている。

 

 

「炭は大切だよ炭は」

「いやー、やっぱベテランは言うことが違うわ」

 

 

 ーーー炭を作り続け数年のベテラン。

 

 炭焼き・レンガ造り・ 陶器作りなどの窯物関連は彼が担当しているだけあって、かなりの手際の良さ。

 

 さて、炭の確保が容易にできそうなところで、ここで再びマーリン師匠の話に戻ろう。

 

 

「次に行うのは積み沸かし。大きめの鋼板をあらかじめ沸かしつけてあるテコ棒の先に素材を隙間なく並べ、積み重ねぬれた和紙で包み、さらに水溶き粘土と稲藁の炭、灰で包んだものを、火炉中に入れ、加熱し大槌で打って鍛接し、鏨で切れ目を入れて折り返し、また沸かしをかけて鍛接する、このとき折り返しを縦横、交互に折り返す鍛錬法を十文字鍛えというんだね」

 

 

 このように、剣を鍛えていくわけだが、日頃から包丁作りを行っているディルムッドがこちらを担当。

 

 日頃から作っているだけあってこちらも手馴れたもの、まるで本業のようである。こうして、作業を繰り返していくうちにだんだんとそれらしい形になってくる。

 

 次に行うのは。

 

 

「作り込み、素延作りだね、こちらはそれぞれ鍛錬された集めた素材を鋼塊として組み合わせて鍛接し、沸かし延ばし刀匠の意図した原型作り出すんだ」

 

 

 こちらは匠ADエミヤが担当する。

 

 剣作りならお手の物、何もないところから剣が出てくるというより作ることのできる彼はこういった意図した形にする作業は得意なはず。

 

 剣を打ちながら、汗を拭うADエミヤ、その顔には真剣さが滲み出ている。

 

 

「なかなか良い経験だ。普段から見ていて良かった」

「あれ? エミヤん初体験だっけ?」

「いやー、初体験には見えないなー前世で刀鍛冶でもやってたんじゃない?」

「はははははは、そんなはずないだろう」

 

 

 そう言って笑顔で剣作りに没頭するエミヤ。

 

 その手際の良さにカタッシュ隊員からも思わず関心する声が溢れる。

 

 悲しい事にこの時既に、彼の本業がなんなのか覚えている人物は本人も含め一人も居なかった。

 

 多分、彼の本業はこちらなのかもしれない。

 

 するとここで?

 

 

「おーい! みんなー! 追加素材いいかなー?」

「あれ? ベディじゃん? どったの?」

「いやさー、なんか久々に円卓のみんなに顔出ししたらさー、アルトリアちゃんが剣折っちゃったみたいで」

「えぇ!? ほんと!?」

「うん、カリバーンって言うらしんだけどポキっといったみたいで」

 

 

 そう言って、剣作りをしていた皆は一旦作業を中断してベディの元へ。

 

 そして、彼が持ってきたカリバーンを見てみるとこれは見事にポッキリと折れていた。これでは使い物にならないのは明白である。

 

 

「だからさ、アルトリアちゃんに『え! そのカリバーン! 捨てちゃうんですか!?』 って聞いたら、今度からは折れそうに無い槍使うからあげるよって言われた」

「あー…これだけポッキリいってたらねー」

「折れた部分は溶かして使わせてもらおっか、根元からまだ使える部分はもったいないから包丁にしておこう」

「おーいいねー」

「…かつてカリバーンの扱いがこれほど雑だった事があるだろうか」

 

 

 そう言って、彼らの会話を聞いていたエミヤさんも流石に顔を引きつらせながら突っ込みを入れざる得なかった。

 

 今度、アルトリアちゃんには美味しいご飯を差し入れしなければならないだろう。これは有難い素材だ。

 

 という事で、デュランダルとカリバーンの他にそれぞれ高級な鉱物が入ったなんだかとんでもないものができそうになっている。

 

 それから、形成・火造り、センスキ・荒仕上げ、土置き等の作業を順に行い、いよいよ、焼き入れに入る。

 

 それが終わればいよいよ仕上げ。

 

 ヤスリなどで刃を研いで鋭い刃にしていく、さらに装飾にも一味加え、見栄えある剣へ。

 

 そうして完成したのが。

 

 

「日本刀じゃないの?」

「日本刀だよね、これ」

「思いっきり日本刀だな」

「どっからどう見ても日本刀だね」

 

 

 物凄い仕上がりの良い、日本刀が出来上がった。これでは、剣でなく刀である。

 

 

 ーーーいつのまにか聖刀作りに。

 

 

 まさか、剣を作っているつもりが刀を作る事になるとは思いもよらなかった。しかしながら出来栄えは上出来。

 

 カリバーンやらデュランダルやらを溶かして使っているのだからそれはそうなるだろう。

 

 カルナが頑張って眼からビーム出したり、雷光でできた槍であるヴァサヴィ・シャクティをわざわざハンマーにして打ち込んだのに出来たのは日本刀である。

 

 

「まぁさ、逆に考えようよ、これ石にぶっ刺しても中々抜けんでしょ?」

「だよね、そうだよね」

 

 

 という具合で仕方ないのでとりあえず前向きに捉える事に。

 

 聖剣が出来上がったと思いきや、やはりやってしまった。とはいえ、刀と剣の使い道なんて変わらないのだからと開き直るカタッシュ隊員達。

 

 それに多分、これを使う機会は彼らとモーさんが一緒にいる限り、あまり無いであろうことは周知の事実である。

 

 という事で?

 

 

「名前決めよう! 名前!」

「そっかー、名前か…、リーダーなんか良い名前ある?」

「せやなー」

 

 

 ここから、この聖刀の名前を決める事に。

 

 いろいろ良い名前が浮かぶが、ここはリーダーに皆は決めてもらう事にした。刀、刀といえば、以前、新宿の沼で発見した刀が思い浮かんでしまう。

 

 しばらく考え込む我らがリーダー、そして、思いついた名前は。

 

 

「すっぽん沼江やな」

 

 

 こうして、聖刀の名前はすっぽん沼江に決まった。

 

 由来はかつて、新宿で見つけた刀の名前から取ったもの、しかし、カリバーンやらデュランダルやらをふんだんに使った刀の名前がこれである。

 

 

 ーーー聖剣すっぽん沼江。

 

 

 かっこ悪いにもほどがあるが、皆は納得したように頷いていた。

 

 多分、モーさんが使う刀だし、これくらい可愛い名前の方が彼女にも使いやすいだろう。

 

 しかしながら、すっぽん沼江ー! と叫びながらビームを放つ光景が、かなり滑稽であることは間違いない。

 

 

 こうして、聖剣作り、もとい、刀作りも無事に終わりを迎える事に成功した。

 

 あとはこれをモーさんに石から抜かせてあげるだけである。

 

 さて、果たして、モーさんは選定のすっぽん沼江を石から引き抜くことはできるのだろうか?

 

 ちなみにすっぽん沼江を刺した石は上等な漬物石であることをここに記しておく。

 

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1.折れちゃったカリバーンを貰う。

 

 2.カリバーンとデュランダルを混ぜた刀作り

 

 3.聖剣すっぽん沼江完成。

 

 4.本業を忘れ去られるエミヤさん

 

 5.聖剣作りが聖刀作りに



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刀の指南 その1

 

 

 

 前回、完成した聖剣、もとい聖刀。

 

 別名、すっぽん沼江だが、それを漬物石に使っていたカリバーンが刺さっていた石に再びぶっ刺し、彼らはモーさんを呼んだ。

 

 

「なんだー兄ィ達、俺に用って」

「あ、モーさんやっと来たかー」

「選定の剣だよ! 選定の剣! ほらずっとモーさんやりたいって言ってたじゃん」

 

 

 そう言って、にこやかな笑顔を浮かべ、選定の漬物石の前でサムズアップするカタッシュ隊員達。

 

 しかし、石にぶっ刺さっているのは刀で、しかもその石の下にはカタッシュ村で取れた野菜を漬けてある漬物の壺があった。

 

 これにはモーさんもなんとも言えない顔を浮かべている。

 

 

「いや…これ、違うような…」

「何言ってんだよー、カリバーンとデュランダル使った超すげー刀なんだよ! これ!」

「刀って言ったよな? 今、刀って言ったよな!?」

 

 

 そう言って、漬け物石にぶっ刺さっているすっぽん沼江を指差して抗議するモーさん。

 

 

 ーーー確かに剣ではありません。

 

 

 しかしながら、このすっぽん沼江だが、あのカリバーンにデュランダルを使い、さらには神代の最高級の鉱石をふんだんに使った神造宝具なのだ。

 

 作ったのはYARIOだが、神造宝具のハンマー使って作ったのだから神造宝具に決まっているという謎の自負が彼らにはあった。

 

 しかしながら改めて聞いてもひどい名前である。

 

 

「それか僕と契約して魔法少女になる? 願い事は叶えられへんけど」

「初耳なんだけど、リーダーそれってどうやんのさ…」

「モーさんにゲイボルグを持たしたらそれらしくなるんやないかな」

「最近じゃ、アイドルも絶唄しながら戦う世の中になったからねー」

 

 

 そう言いながら、魔法少女を希望しても構わないという具合に話を進めはじめるリーダー。

 

 ーーーーおっさん達には無理や。

 

 正直、歌で世界を救うなんて事をやってのけるのはぴちぴちの10代アイドルだけである。平均年齢が四十越えのアイドルには荷が重い気がした。

 

 

「やっぱ最近の若い子は凄いパワーあるよ、俺らおじさん達だからねー」

「やっぱり鍬しかねーよな」

「わかる、…そんでなんの話してたんだっけ?」

「いや、だからこれ刀じゃねーか!」

 

 

 そう、本題はそもそも選定の剣ではなく刀だった事である。名前をすっぽん沼江という。

 

 モーさんは不満げなご様子だ。確かにこれは剣ではなく刀、しかも、デュランダルやカリバーンの材料をふんだんに使った伝説的な刀である。

 

 名前は果てしなくダサいが、そこさえ目を瞑れば最高級の刀である。

 

 

「良いじゃん、来週からるろうにモーさんが始まるよ」

「いやー、領主で農業できて、建築もできて、しかも剣豪でなんでもできるなんて凄いなー憧れちゃうなー」

「い、いや…あのだな…、こう、もっと…ビーム出せそうなだな」

「ただでさえガンダムのモビルスーツみたいな鎧着てるのに何言ってんのよ」

 

 

 もっともなカルナの突っ込みに全員が肯定するように頷く。

 

 正直、言って羨ましい。スズメバチも駆除できるしフォルムもカッコいいとくれば文句のつけようがないモーさんの鎧。

 

 それに加えて贅沢にもカリバーンとデュランダルが入った聖剣(日本刀)まで、原価を考えれば相当の価格はするはずだ。

 

 

 ーーービームサーベルはまだ早いねん。

 

 

 つまる話がそう言う事である。ビームサーベル出す前にまずは斧らしいもので我慢しなさいという事だ。

 

 まぁ、抜こうとしているのは日本刀なのだが。

 

 かつて選定の剣が突き刺さっていた石(漬け物石)とにらめっこしはじめるモーさん、抜くか抜くまいか迷っている様子。

 

 暫し考えた後、モーさんは腹を決めたのか、よし! という掛け声と共に選定の刀に手をかける。

 

 

「よーし! 抜くからな! 今から抜くからな!」

「よーし抜け抜けー!」

「しゃあ! 見てろよー! このー!」

 

 

 そう言ってモーさんは刀を両手で掴むとグッと持ち上げるように力を加える。

 

 すると、選定の漬け物石からズブズブと剣が抜けて…。

 

 

「あ…っ」

 

 

 抜く衝撃に耐えきれず選定の漬け物石が爆発した。

 

 漬け物の壺の上に置いてあった選定の漬け物石は爆発四散し、さらに、下にあった漬け物の壺も衝撃で吹っ飛んでいく。

 

 それを呆然と眺めるカタッシュ隊員達。

 

 するとそこへ、上機嫌の様子のジャンヌちゃんがやってきた。

 

 

「あ! みなさん! 何やられてるんですか? ちょうどそこの壺に漬けていた漬け物がいい感じにですね…ぶっ!」

 

 

 そして、破裂した漬け物の大根がジャンヌちゃんの顔面に直撃。

 

 これには一同、苦笑いを浮かべる。勢いよく破裂した漬け物があちらこちらに、1番最悪だったのは通りかかっていた婦長の頭にキュウリが直撃した事だろう。

 

 しかしながら、ジャンヌちゃんも破裂した漬け物に関してご立腹のご様子で、しなっている大根を片手にワナワナと震えていた。

 

 

「…これは、どういう事でしょう? 説明願えますか?」

「…今、私の頭にこんなのが飛んできたんですけど誰ですか? こんなの投げてきた人は?」

「…あわわわわっ!」

 

 

 これには刀を抜いたモーさんもワタワタと焦っていた。

 

 般若が二人目の前に、モーさんは蛇に睨まれたカエル状態である。そんな中、漬け物に刀を突き刺した彼らは…。

 

 

「先生ー! ディルムッド君が刀抜けってモーさんに言いましたー!」

「あ! ずりーぞ! お前! それはなしだろ!」

「おい、貴様ら、私の頭上から白菜が降って来たんだが」

「げっ! 師匠…!」

 

 

 そして、挙げ句の果てには髪の毛に白菜を乗っけたスカサハ師匠まで出現。

 

 

 ーーー刀を抜くだけで大惨事。

 

 

 刀を抜いたモーさんは涙目になって刀を抱えたまますぐさまカルナの背後に隠れた。だが、この惨事、流石にカルナといえど庇いきれそうに無い。

 

 そこで、皆は顔を見合わせて頷く。そうだ、こういった場合、切り抜ける方法は一つだけ。

 

 思い立ったら行動、それが彼らである。

 

 ベディは般若の表示で迫る美女三人に背後を指差してこう声を上げた。

 

 

「あ! ラ○ュタだ!」

「ん?」

「え? ラ○ュタ? なんですかそれ…」

「どこだどこに…」

 

 

 そう言って、後ろを振り返る美女三人。

 

 その隙を突いて、モーさんを抱えてカタッシュ隊員達はすぐさまその場から逃走を試みた。

 

 そして、彼女達が振り返ればその場に彼らの姿はなかった。見事な逃走劇である。

 

 

「逃げましたね!」

「あんの馬鹿弟子どもめ! この私を騙すとは!」

「あ! リーダーがこけた!」

「走れー! 振り返るなー!」

「ちょっ!? 僕リーダーなのに見捨てるのはおかしいやろ!」

「尊い犠牲だった…」

 

 

 だが、メンバーはモーさんを脇に抱えたまま振り返えらずに突っ走っていく。

 

 背後からリーダーの悲鳴が聞こえたような気はしたが、多分気のせいだろう。そう思うことにした。

 

 という事で? 無事に聖刀、すっぽん沼江を手に入れたモーさんだが、三人から逃げ切ったところでこの刀を改めて見つめ直す。

 

 

「ほえー、確かにこりゃすげーな」

「でしょー? まぁ、兄ィが仕上げしたかんね」

「よせやい! 照れるじゃん」

「本当に! ありがとう兄ィ!」

 

 

 そう言って、照れ臭そうにモーさんに告げるカルナ、そして、そんなカルナにお礼を述べながら嬉しそうに抱きつくモーさん。

 

 まるで本当の兄妹のようだ。しかしながら、ここで肝心な事を思い出す。

 

 そう、刀は確かに抜けた。刀は抜けたのだが…。

 

 

「ところでこれってどう使うんだ?」

「だよねー、一応、鞘とかも俺が作っておいたんだけど」

「やっぱ使い方わかんねーとなぁ」

 

 

 ーーーとりあえず使い方がわからない。

 

 両刃剣ならまだしも、日本の伝統の刀となればやはり、使い方も異なってくる。

 

 よくて野菜を切るとか、はたまた肉を切るとかそんな使い方しか思いつかないような気もする。

 

 という事で?

 

 

「達人を呼ぶしかないよね、刀の使い方知ってる」

 

 

 そう、今こそ日本刀ならではの良さをよくわかっている人物に教わらなければ。

 

 よくてこのままでは包丁くらいにしか役に立たない刀になってしまう、せめて、小次郎さんみたいに竹を刀で伐採できるようにしてほしいところ。

 

 しかし、小次郎さんは人に教えるというよりかは独学で燕が切り落とせるようになったとか、それはいささかモーさんにはハードルが高いように思う。

 

 まずは小次郎さんから本格的に教わる前に基礎から教えてくれる師匠を探さなければ。

 

 

「というわけで、リーダー良いかな?」

「…なんも良くあらへん、めっちゃ怒られたんやけど…」

「よく丸く収まったね」

 

 

 こってり三人からお説教を受けて帰ってきたリーダーを迎え、早速、今回の件の話を振るカルナ。

 

 よくあの怒りが有頂天な彼女達を宥められたものだと感心する。やはり、我らがリーダーは器が違った。

 

 

 ーーーリーダーやからね。

 

 

 かっこ良くサムズアップするリーダーだが、説教されてるので事実かなりかっこ悪い。前にも旅館で枕投げをしはじめ怒られた事があった経験がここでも生きた。

 

 さて、気を取り直して、こうして我らがリーダーとカルナの二人はモーさんに刀の使い方を教えてくれる師匠を求めだん吉へ。

 

 目的地は江戸時代、幕末の日本。

 

 

「さて、ついたわけなんですけど」

「ここらへんやないかな?」

 

 

 話をしながら江戸時代の街を歩く場違いな二人、民家を歩き回りながらある住宅を探していた。

 

 果たしてここに日本刀の使い手、達人はいるのだろうか?

 

 そして、数時間ほど歩き、彼らは目的の住宅を発見。

 

 

「あれやないかな?」

「あ、それっぽいね」

 

 

 そして、いつものようにノックするとにこやかな笑顔を浮かべ、突撃を試みる。

 

 一応の声かけも忘れない。

 

 

「あのー、すいませーん」

「はいー、空いてますよー」

「僕ら鉄腕/fateという者なんですけど」

 

 

 そう言いながら、民家の扉を開ける二人。

 

 そこにはにこやかな笑顔を浮かべた色気のある綺麗な髪をした女性が床から起き上がり出迎えてくれた。

 

 そう、これが今回、彼らが訪ねた刀の達人。

 

 

「あのー、新撰組一番隊隊長、沖田総司さんですかね?」

「はい! 私はおっしゃる通り沖田総…ゴバァ…!」

「あかん! 死んだー!」

「ちょっ!?」

 

 

 沖田総司さん、その人である。

 

 幕末期の人斬りであり、刀の達人、まさに侍。9歳の頃、天然理心流の道場・試衛場に入門。若くして才能を見せ、塾頭を務めたともされている。

 

 だが、まさか女性だとは思いもよらなかった。そして、会って3秒で吐血し瀕死になっている。

 

 果たしてこんな調子でモーさんに刀の使い方を教える事が出来るのだろうか?

 

 不安が募る中、瀕死の沖田さんを担いだカタッシュ隊員の二人は急いで村の病院に連れて行く事になった。

 

 

 その後、チーム医龍によって瀕死の彼女の命はかろうじて救われる事になるのだが、これはまた別の話である。

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1.聖剣を石から抜いた衝撃で漬け物が爆発四散。

 

 2.モーさん、刀の指南を受ける事に。

 

 3.沖田さん大勝利!

 

 4.僕の名前はシゲベェ(リーダー談)



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斧は悪くないよ

 

 さて、前回の鉄腕/fateでは、モーさんの刀の師匠を求めて幕末へ。

 

 師匠になるであろう死にかけの沖田総司をカタッシュ村の病院に運び込んだカタッシュ隊員達だったが今回の話は引き続きエジプトのピラミッド建築へと移る。

 

 ほぼ完成に近づいてきたピラミッドの仕上げに取り掛からなければいけないのである。

 

 

「ギル師匠、どうかなー?」

「順調だ、あと2日後にはこやつは宙に浮くぞ」

「うおー、ついにかー」

 

 

 ーーーー天空のピラミッドが完成間近。

 

 セミラミス師匠の空中庭園の技術に加えて、さらに内部にはなんと水上建築の技術を取り入れてみた。

 

 ついに長岡もエジプトに出来るのかと、一同は興奮気味だ。

 

 ギルガメッシュ師匠は建築の進行具合を彼らに説明しながら現在、必要なものについて話をしはじめる。

 

 

「あとは丈夫な丸太が不足していてな」

「丸太ですか、なるほど」

「丈夫な丸太がいるんですね、わかりました」

「用意出来そうか?」

「そりゃもう! 期待しといて下さいよ! 上質な丸太持ってきますんで!」

「ふっ…、貴様らなら心配はいらぬか、では頼んだぞ」

 

 

 そして、必要な物資を聞いた彼らはトラックに乗り、それらを補充に回ることに。

 

 果たして、上質な丸太は手に入れて来れるのだろうか? ギルガメッシュの要望を受けてベディとディルムッドの二人は丸太を探しに。

 

 その結果、彼らが見つけてきた丸太は。

 

 

「持ってきました!」

「いやーなかなか上質なマルタだと思いますよ!」

「……何これ」

 

 

 ーーーーなんと聖人だった。

 

 ベディの脇に抱えられた聖人、聖女マルタは状況がわからない今の状況に目をパチクリさせていた。

 

 確かに上質なマルタだが、丸太は丸太でもマルタ違いである。

 

 

「…聞くが、貴様らこやつを柱を立てるための支柱にできると思うか?」

「え!? 支柱に使うんですか!?」

「…って言われてますけど」

「いや無理無理!? あんた達聖女をなんだと思ってんのよ!?」

 

 

 当たり前に無理である。

 

 聖女といえど、何十キロ以上あるであろう石の柱を支えるなんて芸当ができるわけがない。

 

 しかし、何故だろうか、このマルタさんからはやれば出来そうな雰囲気があった。

 

 

「なんなのこの状況!? 私の力が必要だって言うから…」

「でも、ドラゴンを殴って大人しくさせたとか自信満々に言ってたじゃないっすかー」

「だから柱も持てる馬鹿力があるってか! そんなわけあるかーっ!」

 

 

 ベディの言葉に突っ込みを入れる聖女マルタ。

 

 まさか、彼らがこんな間違いを犯すとは珍し…くもないが、そういうわけで、仕方ないので聖女マルタさんもピラミッド作りに加わってもらうことに。

 

 

 ちなみに上質な丸太はメイヴちゃん達トラック班が持ってきてくれた。

 

 やはり、騎乗スキル持ちは仕事ができる。

 

 演歌が流れるトラックからサムズアップしてくるメイヴの笑顔は作業に加わっている皆には眩しかった。

 

 

「女トラック乗りってカッケーよなぁ」

「クーちゃんの為ならなんのそのよ!」

「だってよリーダー」

「いやぁ、流石メイヴちゃんやね」

「へっへーん、てやんでい」

 

 

 ーーーー大型トラックの運転ならお任せを。

 

 他にもユンボやクレーン車、建柱車などなんでもござれ、大型車全般ならばなんでも乗りこなしてみせます伊達女。

 

 それが、騎乗スキル持ちのコノートの農業アイドルメイヴちゃんなのである。

 

 ちなみに本業はコノートの女王なのでお忘れなく。

 

 さて、そういうわけで滞りなくピラミッド作りは再開。石を積み上げ、空中に浮かせる準備を急がせる。

 

 ローマの建築技術を取り入れた外観は今までのエジプトの建造物よりも鮮やかに、そして、文化的に仕上げられている。

 

 

「うむ! ざっとこんなものだな! 後は余のライブ会場があれば文句なしだ」

「そんなものはピラミッドに必要ありません、それにこれは私のピラミッドなのですよ?」

「良いではないかー、そんな器量だから婿から逃げられるのだ」

「な!? ななななな!? に、逃げられてなどおりません! 保留にされてるだけです! ファラオに対して不敬ですよ!」

「余も皇帝だからそんな事は知らぬ」

 

 

 そう言って、プイっとニトクリスにそっぽを向いて答えるネロ。

 

 確かにニトクリスもファラオとはいえどローマを支配した皇帝であるネロとの身分は大差ない。

 

 それどころか実績ではネロの方が上手であるので、思わず言葉に詰まってしまう。だが、ここでカルナは笑顔を浮かべたまま二人に近寄るとこう話をしはじめる。

 

 

「まぁまぁ、ライブは俺たちもするからねー、ライブ会場はあった方が助かるよ」

「えっ…!? お前達も歌うのか!?」

「ネロちゃん、俺たちの本業アイドルだよ? アイドル」

「なるほどアイドルはピラミッドも作れて当たり前なのですね!」

「…それは余も初耳なんだが」

 

 

 ーーーアイドルならピラミッドを作れて当然。

 

 アイドルという仕事は料理ができて、土地の開拓が出来て、橋も建築でき、川も復活させることができ、ピラミッドも作れ、病院も作れ、働く車も運転できるのは当然の事。

 

 それに歌って戦って世界を救ったりする事もあるとかないとか。

 

 今や世間はなんでもできるアイドルが一般的なのである。ただ歌うだけでは一流のアイドルにはなれない。

 

 アイドルの卵達が行う合宿でも、彼女達は無人島で木から自分たちが歌うステージ作りを始めるのが一般的だと誰が書いたのかわからない古事記にも書いてある。

 

 

「アイドルとはつまり農業から始めるものなんですね」

「俺たちの場合はバク転からはじめさせられたけどね」

「いやー、あん時は大変だった」

 

 

 そう言ってしみじみ昔を思い出すカタッシュ隊員達、今思えば下積み時代は大変だった。

 

 そんなこんなで、話はまとまり、とりあえず長岡ニトクリスにライブ会場を作ることになった。

 

 空中に浮かぶピラミッドで空中ライブ、これは間違いなく歌声がエジプト中に届くだろう。

 

 

「ふーん、アイドルって大変なのね」

「エリちゃんもいずれ分かるようになるよ」

「というかこの斧、全然使い物にならないんだけど!」

「斧は悪くないよ」

 

 

 ーーーー斧は悪くないよ。

 

 さて、いきなり登場し、使っている斧に対して文句を述べているこちらは領主経験者のエリザベート・バートリーちゃん。

 

 彼女もまた、駆け出しのアイドルであり、ヴラドと同じく領主として地域を治めていた経験を持つ経営経験豊富な匠である。

 

 何故、彼女がこの場にいるかというと、簡単に説明すると人手が足りないので彼らがまた連れてきたのである。

 

 というのも? 最近、病院ができ、ひとの人口もそれなりになってきたカタッシュ村だが、やはり人口が多くなればお役所仕事も増える。

 

 そんな中、人を纏める人材が必要という事で今回、エリザちゃんを連れてきた。

 

 ちなみにカタッシュ村にはフランスから処刑されそうになったアイドル、マリーアントワネットちゃんもなんと0円でベディ達が回収済みである。

 

 彼女達はまだまだアイドルの卵、これから伸びるであろう貴重な人材達である。

 

 

「まさか俺たち以外にもアイドルが居たなんてね」

「だねー」

「斧はね、こうして使うと刃が入って…」

「…すごく…勉強になるわ…」

 

 

 そう言って、カルナの斧の使い方に感心するエリザちゃん。

 

 斧は使い手次第で非常に変わってくる、その事を身に染みて感じた、まだまだトップアイドルには程遠い事を痛感させられる。

 

 というよりアイドルという職業を完全に履き違えているが、誰もその事について突っ込まないこの状況は異常だという事を誰か認識してほしいところである。

 

 

「という事は私もアイドルになれるという事だな」

「スカサハ師匠、今朝なんか悪いものでも食べましたか?」

「いやー、師匠は…というか若い娘に混じって短いスカートとか履いて歌えます?」

「おい、お前達、私に喧嘩を売っているのか」

 

 

 ーーー年齢がネック。

 

 流石に血迷った事を口走りはじめるスカサハ師匠にオブラートに包みながら話すカタッシュ隊員達だが、スカサハ師匠はどうやらそれを聞いてご立腹の様子。

 

 それはそうだろう、スカサハ師匠もまだまだスタイル抜群の美人、声も綺麗で需要はある筈。というのは本人談である。

 

 アイドルの格好をしたスカサハ師匠を見てみたい気もするが、ここは流石に止めるべきだろうか。

 

 と、ここでリーダーが。

 

 

「いや、いけるやろ、僕らもおっさんやけどアイドルやっとるし」

「うん、確かにそうだね」

「スカサハ師匠、声綺麗だしね」

「…しげちゃん…」

 

 

 そう言って、スカサハ師匠に優しいフォローを入れてあげた。

 

 それはそうだ、見た目はバリバリの現役でやれる、ならば年齢など関係ない。というより彼女もすでにカタッシュ隊員なのでアイドルのようなものである。

 

 リーダーをはじめとした皆から大丈夫だと言われて思わず嬉しそうに笑顔を溢すスカサハ師匠。

 

 だが、これを聞いていたモーさんは。

 

 

「いやキツイだろ、年齢的に」

 

 

 地雷を思いっきりぶち抜いていった。

 

 皆が敢えて、スカサハ師匠をその気にさせているにもかかわらずこれである、これにはスカサハ師匠も満面の笑みを浮かべながらモーさんの頭を片手でひっ摑んだ。

 

 

「いっぺん、死んでみる?」

「あだだだだだた!? ちょ! まっ!? ごめんなさい!! スカサハ師匠は若くて可愛いですっ!」

 

 

 スカサハ師匠のアイアンクローに悲鳴をあげるモーさん、だが、笑みを浮かべいるスカサハ師匠の眼光はギラリと光っていた。

 

 若いからといって調子に乗るなよと、そう言わんばかりの力加減だった、現にモーさんの頭からギシギシ何か軋む音が聞こえてきたのだからもはや恐怖である。

 

 しばらくして、モーさんを手放したスカサハ師匠はいじけたようにしゅんとしながら屈み地面に文字を書きながらこんな事を言っていた。

 

 

「…若いし、いけるし」

「スカサハ師匠、心配せんでもいけるで? 僕もそう思うよ?」

「そうだよ、俺たちと違って師匠バリバリ踊れるじゃん!」

「俺たちなんて楽器弾いて歌ってるだけだから! そしてたまに本番で歌詞間違えるし!」

「歌うのも最近、俺たち稀だしね」

 

 

 そう言って、いじけるスカサハ師匠をフォローするカタッシュ隊員達。

 

 

 ーーーーみんな暖かい。

 

 

 しかし、フォローの仕方が何というがアイドルがそれでいいのかと言いたくなるようなフォローの仕方である。

 

 これも彼らならではのやり方なのだろう、やはりベテランは年季が違う。

 

 という事で、落ち込んだ師匠を励ましたところで、ため息をついたエリちゃんがポツリと呟いた。

 

 

「アイドルって大変なのね」

 

 

 さて、ピラミッド作りもいよいよ完全間近。

 

 新たなカタッシュメンバーを加え、この先、どのような挑戦が彼らを待ち構えているのか!

 

 この続きは! 次回! 鉄腕/fateで!

 

 

 今日のYARIO。

 

 

 1.エジプトにライブ会場ができる。

 

 2.アイドルの定義がおかしい。

 

 3.騎乗スキル持ち大募集中。

 

 4.丸太とマルタを間違える。



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トラベリングマン

 ピラミッド長岡が完成した。

 

 期間は半年以上を有し、高さは147メートル、底部の一辺の長さが230メートルの超巨大ピラミッド。

 

 さらに、バビロンの空中庭園の技術により、地面から浮かんだそれは壮大な光景。

 

 ピラミッドの中の一部からはギルガメッシュ王が考案した水上建築の技術が用いられ、まるで、ピラミッドから滝が流れ出ているかのような錯覚さえ感じられる。

 

 さらに、外観はローマン・コンクリートをふんだんに使い、ローマの皇帝、ネロが直々に監督した文化的で美しい外観。

 

 これがエジプト県が誇る文化遺産確定建築物長岡である。

 

 

「絶景かな絶景かな」

「小次郎さんもそう思いますか」

「いやはや、トラックでエジプトを何往復した甲斐があったというものだ」

「助かりましたよ、ほんと」

 

 

 まさに、この光景を見るためだけに今まで頑張って来た甲斐があるというもの。

 

 当然、ピラミッドにはライブ会場まで取り付けてあるので、空中でのライブも可能。さらにピラミッドも移動式という優れものだ。

 

 

ーーーーもはや墓ではない。

 

 

 墓という名の何かである。独創的な建物に仕上がってしまった。だが、彼らからピラミッドを作ってもらったニトクリスはというと?

 

 

「これが私のピラミッドなのですね! わー! なんという素晴らしい外観なんでしょう!」

「…なんかもう違う建築物な気もせんでも無いが」

「何を言っているのですか! オジマンディアス様! あれこそは私の長岡ですよっ!」

「そうか、それなら良いのだ。それならな」

 

 

 そう言って、ぴょんこぴょんこと耳を跳ねらせ興奮するニトクリスの頭をポンポンと撫でてあげるオジマンディアス。

 

 何というかエジプトの領地にまたとんでもないものが出来たとオジマンディアスは思う。

 

 世界の技術を取り入れた最先端のピラミッド。というかピラミッドという名の何か。

 

 

「いやー、大変だったね、ピラミッド作り」

「みんなのおかげで完成ですよ」

「さあ、今日はパァーッと騒ぎましょう!」

 

 

 そう言って、にこやかな笑顔で皆に告げる棟梁カルナ。

 

 完成した長岡の前で歓喜に沸く建築に関わってもらった人達。彼らもよく頑張ってくれた。

 

 アルジュナも感極まり涙を流している中、カルナは嬉しそうに彼と肩を組んで笑顔を浮かべる。

 

 

「カルナ…、私は今猛烈に感動している。お前から教わった建築の知恵がこんな風に形になって…」

「わかる、わかるよー、その気持ち、俺も最初はそんな感じだったからさ」

 

 

 自身が初めて建てた建築物がこれほど素晴らしい物というだけで、胸が熱くなる。

 

 棟梁カルナはアルジュナの気持ちがよくわかった。こうして、出来上がった建築物は何世代にも渡りきっと語り継がれる事だろう。

 

 破壊されそうになっても上に逃げれる仕様であるし、綺麗な形のまま残っていくに違いない。

 

 建築の奥深さを皆、肌で感じられたような気がした。

 

 という事で?

 

 

「久々に本業やりますかステージもあるわけですし」

「半年ぶりかー、マジで歌ってなかったからね俺ら」

「いやはや、思いのほか長かったですな」

「ですなー」

 

 

 お手製のステージがピラミッドに設置してあるのでライブをさせていただく事に。

 

 長岡完成を祝う宴会の席でそれぞれ歌や芸を披露するという事になった。発案者は当然、ギルガメッシュとオジマンディアスの二人である

 

 エリちゃんやネロちゃんはやる気満々のご様子でリハーサルしてくると、意気揚々と練習をしに。

 

 そして、こちらでは?

 

 

「私も…ですか?」

「はい、ジャンヌさんとマルタさんの二人で聖女ユニットを組んでもらえたらと思いまして」

「えーと、それは…」

「メイヴさんもスカサハさんと共に出演するみたいなので是非」

 

 

 なんと、ジャンヌちゃんとマルタさんにADフィンから歌わないかというオファーが。

 

 というのも、今宵限りのお祭りで宴会芸で歌うだけ、こればかりは楽しんでおこうという事で二人は承諾してくれた。

 

 YARIO達のメドレーでもよかったのだが、やはり、華がなければという彼らなりの心遣いである。

 

 やはり、皆が楽しめてこその宴会だ。

 

 という事で賑やかな祭りの最中、派手な登場と共に歌姫達がYARIOと共にライブを彩る事に。

 

 可愛い、もしくはカッコいい衣装と共に彼女達の歌が皆に届く。

 

 一部、例外があったがこれはこれで盛り上がりを見せていた。

 

 

「〜〜〜♪」

 

 

 特に意外だったのはモーさんが歌が上手いというところだろう、本人もノリノリであった。

 

 このライブにはなんとエジプトの至る所から