仮面ライダーに変身して運命は変えられるだろうか? (神浄刀矢)
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いざ最初の世界へ

当面の登場キャラクター

 

八坂 和真

オタク気味な高校生。邪神の血を受け継ぎ、常人を超える身体能力を持つ。鍛えてはいるが、当然ながら親には及ばない。

アト子の開発したライダーシステムの1つ《ブレイド》の装着者。

説明とか面倒なので、本人は仮面ライダーブレイドと名乗っている。

特性は切り札。

 

八坂 真尋

和真の父親。専業主夫。

 

八坂 ニャルラトホテプ(通称ニャル子)

和真の母親。惑星保護機構に所属する邪神。

 

アト子

八坂家に様々な面で支援を行う邪神。和真達の使うライダーシステムの開発者でありバイクも作っている。

和真には対しては口調や性格が変化している(と和真は思っている)

 

鹿目まどか

見滝原在住。さやか達と同じ中学生。

 

巴マミ

見滝原中学3年の魔法少女。まどかの先輩。

まどかの兄とは幼馴染らしいが...

 

美樹さやか

まどかの友人でクラスメイト。明るい性格。

まどかの兄を先輩と呼んでいる。

 

暁美ほむら

まどか達のクラスにやってきた転校生。謎が多い感じ。

 

 

 

7月の終わり。学校の終業式などというイベントをとっくの昔にクリアして、フィーバータイム真っ最中な八坂和真は、家の中で冷房で涼みながらアニメを観ていた。

作品は『魔法少女まどか☆マギカ』である。

「なんつーかなァ...マミさんのこれとかどうにかならんかなぁ...」

見るたびにこのぼやきがつい口から出てしまう。

あそこまで行って食われるとかないだろう、普通は。いやまあ脚本家が書いてるわけだし、変えられないのは分かってはいるのだけれど。

「やっぱ変えたいよなぁ、さやかとか杏子のもそうだけど」

誰にともなく個人的な感想を述べる。

誰にともなく言ったはずなのだが....

「相変わらずね、和真は」

「ふあっ?!」

突然の声に驚き、音源の方を見てみるとなんとアト子さんがいた。

アトラク=ナクア星人のアト子が正しいのだが、細かい事は良い。

いつもの事ながらこの人、(ヒトではなく邪神だが)こっちが気付かない内にウチに上がってお茶を飲んだりくつろいだりしているのだ。

まぁこちら側の察知能力が低いだけなのかもしれないが。

案外邪神だから何でもアリなのだろう。

というのは置いといてだ。

「なんでアト子さんがここに?しかも結構タイミングよく言ったよねそれ」

「それはまあそうね....勘とか?」

なぜに疑問形で返すんだこの邪神(ヒト)。

「というのは冗談だけれど。実はこの間頼まれていたモノが完成したのよ」

「頼んだっけ?うーん頼んだような....」

「ニャル子よ?こちらに頼んだの」

「そすか...」

頼んだと言っても、またどうせロクでもないモノだろう。

「和真にも新しいベルト作ったから持ってきたのだけど」

「マジで?!」

現在、我が母ニャル子は惑星保護機構に戻ってる途中だし父親である

真尋は買い物に出掛けてしまって家に1人なのは事実。

どうせならその依頼されたモノとやらを見せてもらうのも暇潰しくらいにはなるだろう。

そう思い聞いてみると、

「ニャル子から見せてはいけないとは言われてないし、まぁ良いでしょ。ここじゃ出しにくいしベルトと一緒に外で見せるわ」

と言われた。出しにくいものとはなんだろうか。何も持ってなさそうなのに。

だが邪神のことだ、どこかに隠したりしてもっているに違いない。

ふう、と溜息をひとつして和真はテレビを止め、アト子を追うように

外に出た。

 

 

ひと足先に外に出ていたアト子を追い外にでると、眩しい夏の日差しが照りつけた。

つい先日までは梅雨で涼しいなぁ、などと思っていたのが馬鹿らしく

見えてくるレベルで暑い。そんな中でもアト子は和服を着ている。

暑くないのだろうか、と毎年思うがこれまた邪神パワーでなんとかしているのかもしれない。邪神に常識は通じないことは既に学んでいるし。まあ和真自身、邪神の血が流れているので人の事は言えないが。

そして庭先でバイクをいじっているアト子に話しかけた。

「出てきたは良いんだけど.....母さんが頼んだものってこれなのか?」

開口一番出たのは疑問だった。だって期待してみて、バイクがあったらそれは疑問が出るものじゃないのだろうか?

そうでもないか。分からないけど。

「ええ、これは弐号機なのだけど」

「いやそういう問題じゃなくてね....これナニ?世界の破壊者が乗ってそうなバイクじゃん!」

「そうね...ニャル子に依頼された通りに作ったまでなのよね」

「作ったまでなのよね....じゃねえ!並行世界にでも行くつもりなの?!」

自分自身珍しくツッコんでしまった。ウチのツッコミは基本親父だからまわってこないはずなので、今だにこういうのには慣れない。

それにしてもこんなモノを簡単に作れるアトラク=ナクア星人もすごいと思う。邪神だからいいのか。

「もとの性能は知らないけれど、並行世界へ行ける事は実証済みよ」

「嘘だろマジか凄えな!てかどうやって実証したの?」

「ここの世界ってアニメじゃない?だから他のアニメも並行世界だろうと仮定して作ってね。試しに使ったら冬木市に行けたわ」

「おうマジか....なんとなく理解出来たっちゃ出来たけどさ、その類の発言控えた方が.......これって原作GA文庫であっちは型月のゲームだよ?あれアニメだから良いのかこれ?分かんねえ!」

更にこんがらがりそうだったので、アト子に何故そのバイクを持ってきたのかを聞いてみることにした。

「なんでも9つの世界を巡ってアーティファクトを入手しないといけないらしくて」

「お、おう...どっかで聞いた感じの設定だな」

「いつか組織の首領になるかも」

「それ以上は言わんでおこうよアト子さん」

するとそうそう、と言ってアト子は話を切り替えるようにシルバーのアタッシュケースを取り出した。

大方アト子の作っているベルトの1つだろう。前回もこれと同じ形のアタッシュケースで持ってきていたし。

現状《ブレイド》は既に使用していることも考えると、製作途中だった《カブト》か《ファイズ》かもしれない。

それといつまでこっちは通常フォームのままなのだろうか。そろそろラウズアブソーバーとか来ても良いと思ったりするのだが。

そうじゃないと戦闘が(以下略)

なんて思いつつアタッシュケースを開けると、そこにあったのは銀色のベルトに赤いカブトムシ型のアイテム。

というかこれって....

「カブトゼクターじゃね?!あ、ここだと《カブト》って名前なんだっけか」

何故かアト子はブレイバックルなどの名前を使わずに、《カブト》や《ブレイド》という感じに呼んでいる。

ゼクターやラウズカードなどは元の名称を使うくせにだ。

が、ほとんど内容は変わらないので別に構わないと思うし、なにより面倒くさいので和真は作品中の名称をそのままつけて使っている。

「前までの戦闘データを見るに、いつでも変身できるタイプのツールが必要と思って。てへっ」

何がてへっ、なんだ。その姿でやっても違和感しかないのだが。

つかキャラ崩壊甚だしいというか。

まぁ良い。何はともあれだ、戦力が増すのは自身にとって悪いことではない。むしろ喜ぶべきであろう。

「使い方は?」

「もとと大して変化はないわね。言うとすれば、そのベルトを付けていればどの時代や場所に居てもそのゼクターを召喚して変身できるってことが大きいかしら」

以前不覚にも、カードやブレイバックル含め全て盗られたことがあったのを思い出してしまった。

その影響でこれを渡されたのかもしれない。アレに関してはすまないと思っているが、確かにこのどこでも変身できるっていうのは便利だ。これも邪神の科学力なんだろうか。とりあえず邪神万歳。

 

 

アト子に礼を言い、和真は家の中に戻ろうとした足を止めた。

あのバイクが気になったのである。バイク自体にではなく、並行世界への移動という機能についてだ。

「なぁアト子さん。そのバイクなんだけど」

「ん?これニャル子のモノだから使えないわよ?」

「そういうことじゃなくてな。並行世界、別のアニメの世界に行けるって言ったよな?」

「ええ、言ったけれど?でもこの弐号機はニャル子の....」

「そうじゃない。弐号機ってことは俺の予想が正しければ、零号機や初号機があるはずなんだ。実戦用じゃないプロトタイプやテストタイプのやつが。アト子さんが使ったやつもそのどっちかだろう?」

和真の言葉にアト子はふっ、と笑って言った。

「察しがいいわね、和真。ちゃんとあるわよ、零号機も初号機も。けれどね、この弐号機は違うわ!これこそ実戦用に作った本物の」

ネタに走るアト子に流石の和真も叫ぶ。

「アスカ来日のあの言葉っぽく言うんじゃねえ!いやそうじゃなくてね、そのマシンの零号機か初号機を貸して欲しいんだよ俺に」

和真の言葉に、アト子がぽかーんとしていた。何を言っているのと言わんばかりの顔である。

「何を言っているの和真?零号機も初号機もここに無いのよ?それに第一何するのよ、別の世界に行って」

「まあまあ!そんな事は後で話すからね?初号機か零号機召喚してくれよ?早く早く!」

「できなくは無いけれど...」

などと渋りつつもアト子がリモコンのようなものを操作すると、一台のバイクが姿を現した。世界の破壊者が乗っていそうな弐号機に対し、こちらはオンドゥル語喋ってるライダーが乗っていそうな感じをしている。

「一応これ初号機なのだけど....どうするの?使い方は分かるの?」

「ああ。少し違うけど、以前似たような機械を見た事があってさ。

10年くらい前のイギリスのドラマなんだけどね。あ、ここ押せばゲートでも開くのか?」

「いやまあその、それで間違いじゃないのだけど....」

間違いではないって妙に遠回しな言い方だな。にしても普段勉強なんて出来の良い方ではないのに、こういうのに限ってすぐ分かるっていうのは複雑な気分である。

使い方が分かったところで。家の中に一旦戻ってリュックに様々な必需品を入れる。ブレイバックルやゼクター用ベルトなどを含めた変身ツールを、邪神特有の不思議収納内ポケットへしまう。

「何をしてるの?そんなに準備して」

「出掛けるんだよ。夏休みだし。」

「夏休みはそうだけど....このバイクでどこ行くつもり?」

アト子の言葉には答えずに、和真は疑問を返す。

「これって音声認識?」

「まあ、ええ....一応はね」

「サンキュ」

そしてリュックを背負い、ヘルメットを被ってブルースペイダー(たった今命名)にまたがる。バイクは何度か乗ったことがあり操縦方法は分かるので、すぐにエンジンはかかった。免許?何それ。

ここまでしても音がハイブリッド車と大差ないレベルなのは驚きだ。

そんな中アト子は和真へと問うた。

「なんで出掛けるの?根本的な質問な気もするけれど」

「そうだなぁ...やっぱ夏休みってのはあるけどさ、俺にはやりたい事が前からあるんだよ。多分誰もが思うことかもしれないけど」

「?」

アクセルをさらにふかし、和真は言い放った。

「運命っていうモノがあるなら俺が変えてやりたいんだ。それが例え、世界そのものに抗うことになろうとも」

「和真、貴方まさか」

「じゃあ行ってくるぜ、『魔法少女まどか☆マギカ』の世界へ」

最後まで聞かずディスプレイを操作し、光り輝くゲートを開く。そして和真を乗せたバイクはその光の中へ消えた。

 

 

和真が光の中へ消えてから、残されたアト子は呟いた。

「あの初号機完成してはいるのだけど、まだ問題があるのよね....色々と、結構なレベルで。それにそろそろアレも完成するでしょうし、後で送っておかないと...」

だが当の和真はその問題についてまだ知る由もない。

そして後になりニャル子が帰ってきて、どこに行ったのかという問いを投げかけられてアト子はこう答えた。

「和真?旅に出るって言ってたわよ。運命に抗う為に」

ため息をついてニャル子は言う。

「はぁ...私と真尋さんの子ですし、そこまで心配はしなくても生きて帰ってくるでしょうけど」

結局割と放任的な親だった。




仮面ライダーディケイドに影響されて書きはじめました、この小説です。あまりこの手のヤツは書いたことがありませんし、自信ないですが。
他にも色々な世界を予定していますので、しばらくの間お付き合い下されば幸いです。
できれば感想とかお願いします。


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カズマと和真(名称)

前話の最後で和真はゲートの光の中に消えたわけですが。

その後彼はどうなったのでしょうか?

てなわけで

前回までのあらすじ!

「要らねえよ!てか前回までのあらすじって何だよ?!しかもその声、サイクロン掃除機さんじゃねえか!」

あ、光の中に消えたんじゃないんですか?八坂さん。

「だってまだストーリー始まってないし、無駄だと思ったんでツッコミ入れさせてもらったぜ」

でも前回までのあらすじって必要かと。

「だから要らねえって。てかまだこの作品2話目だから必要ないと思うぞ」

あ、そですか。主人公がそう言うならストーリー進めますよ?

「「「(続きから)始まるよっ!」」」

「誰?!」

 

 

光のゲートを開き、バイクを加速させて和真はその中へ突っ込んだ。

しかし尋常でない光量が、身体を包む。思わず目を瞑るが、手だけは

離さずにハンドルにつかまり続ける。しばらくしてふと感覚に変化を覚えて和真は目を開けた。

「あれ...天井だ....しかもこの感じ、ベッドか?」

ゆっくりと身体を起こしてみる。

そこは乗ってきたバイクの上でもなく、予想していた見滝原の大通りでもなく、知らないベッドの上だった。

個人的に急展開というのは慣れてないわけではないし、むしろ内容によっては喜んだりする事もある。夜鬼討伐(リアル)に誘われた時などがそうだ。なんて話は今はどうでも良いのだが。

とりあえず状況整理である。

・現在間違いがなければここは見滝原のどこか。

・ベッドがある以上誰かの家。

これもしかして父親が昔かかったっていう紅王症候群とかにかかって、ここに来るまでの記憶がないのだろうか。

それでいて仮に介抱されてここにいるのだとしたら、礼を言わねばならない。などと考えて、結局ここに居ても仕方ないので部屋からでることにした。(その際カーテンは開けたが、外は見ていない。)

ドアを開けると、香ばしい香りが鼻をくすぐった。おそらくトーストだろう。一般家庭だ。ものすごく一般家庭だ。

階段があったので降りて行き、挨拶をする。

「おはようございます。き」

昨日はと言いかけたところで、外で野菜を摘んでいる男性がこちらに

気付き話しかけてきた。

「カズマ、いつもより早いね?どうしたんだい?」

「いつもより?!え、えっ?!」

まったく理解が出来ない。というか脳内処理が追いつかない。それだとこれまでずっと暮して来たような感じではないか。まったく理解、

「おはようカズマ。早いじゃないか?まどかは着替えてるからカズマもさっさと着替えてきな」

「あ、おはようお兄ちゃん。起こそうと思ったのに」

続く言葉が理解云々の域を超えていた。お兄ちゃんてどゆことだ。

てかここ鹿目家じゃないか。タツヤ居ないのに、兄はいるのも違和感。

「あの...お兄ちゃんてなんですか?」

「え?」「え?」

「いやあの、お兄ちゃんて何なんですか?」

疑問に疑問で返すな!とか言いたいところだが、そこは我慢だ。

こちらは高校生、耐えるのも義務というもの。

「カズマお兄ちゃんはわたしのお兄ちゃんだよ?同じ見滝原中学でしょ?」

は?知らねーよ中学生とか何をほざいてんだコイツ。もともと沸点はそう高くないのだ、そろそろキレかねない。とか言いたいけどやっぱり我慢。中学生にキレるとか大人気ないし。それに選挙権得るまであと僅か、耐えねばならぬ。選挙権関係ないか。

「いや全く分からないんだけど、うん全然。」

さすがにその場の空気を変えようと思ったのか、まどかの父親が会話に割り込んできた。まぁ今回ばかりは正解かもしれない。

「そこで固まらないで。朝ごはん冷めるよ?」

「ほらお兄ちゃんも食べようよ?ね?」

流石にそう言われては仕方ない。部外者が同じテーブルを囲むのはいささか気が引けるものだが、お兄ちゃんと認識されているこの現状、避けては怪しまれるかもしれない。

そう思い、しぶしぶと席に着いた。

あ、中学生ってのはババァなんだよとか抜かしたやついたらムッコロス。17年間生きて来たが、外見がロリなキャラには勝てないというのが和真の意見であった。昨今小学生もキャラによっては巨乳だったりするので(以下略)

まぁ決してロリコンではないと断言するが。

 

 

朝食を済ませたところで。母親は既に出掛け、家に残されたのは3人となっていた。

「制服には着替えないのかい?学校遅れるし、そろそろ巴さん寄る頃だよ?」

また謎すぎることを言ってるこのメガネ。アニメでもちゃんと父親やってたし、父親であることに間違いないんだろう。

けどやはり、ウチの父親と比べると違和感ありすぎるのだ。

なんて父親の評価は今は関係ないが。むしろどうでも良い。

マミさんがこの家に来る?それに制服とか言われても場所わからないし。なんて考えているうちにピンポーンという音が。

「どうしよう、制服の場所わからないし、あーもう!」

頭をガシガシとかく。もうやけくそも何も知ったことか。

「まどか、制服の場所忘れたから教えてくれ!」

「あれ、クローゼットに入れてなかった?お兄ちゃんて」

「サンキュー!マミさんにはすぐ行くって言ってくれ!」

その場のアレで下の名前で呼んでしまったが、それで良いのだろうか。兄だから良いのか。兄なんてこの家族には居なかった気がするが。なんて考えつつ階段を下から一気に上までジャンプし、部屋へと戻る。

クローゼットを開け、見滝原中学の男子用制服を探す。

さっさと上下羽織り、カバンらしきものを抱えて再び下へ。

そこにはまどかと談笑する巴マミが居た。

「カズマっ!大丈夫?!記憶がない様な事を言われたのだけど...」

「お、おう....」

こっちに気付いて話しかけるのは分かる。だが流石にキャラが....アレだなうん。形容し難いというのか。

なんか抱きついて来てるし、既に変な風にまどかは話してるようだし

もう理解不能カーニバルファンタズムだ。

あとその豊満な胸があるので、抱きつかれると苦しいのですが。

地の文で言っても意味ないか。

「あのさ...若干苦しいんだけど」

「ごめんなさいね、心配で...」

「心配せんでも大丈夫だからな?この通り元気だし、ほら遅れちゃマズいだろ?行こうぜ」

そして2人を連れ、和真は外へとでた。表には何故かブルースペイダーが停まっており、理由を聞くとなんでも今朝見たらあったとか。

邪神の便利設定か何かなのか。もう訳分からないし、全部便利設定の

せいにするか。

にしても何故、カズマなんて紛らわしい名前をつけたんだろうか。和真とカズマ。別に鹿目家が悪いとは言わないけど。

 

通学路はよくは分かっていないが、2人に半ばついて行く感じで行ったので問題なく、途中でさやかや仁美とも合流して学校に向かうことになった。

「カズマ先輩、記憶喪失なの?」

「うん、断定はできないけどママが可能性があるって。だってお兄ちゃんて何ですか、って聞いてきたんだよ?」

「ごめん想像できない。シスコンとか言われてる先輩がそんなこと

言うなんて」

黙っていればなかなかに言われているではないか。シスコンとか、嘘だろって言いたいのだが。もとのカズマってそんなキャラだったのか。てか記憶喪失とか話していただろうか?ま、食事の時にでも聞き逃したのかもしれない。きっとそうだ。便利設定なんだ。

それに想像できないのはこっちも同じである。

さやかと自分の父親、中の人同じとか全然思えない。でもプロフィール見ると同じなのである。そんな話はどうでも良いか。

「あのマミさん、いつまで手を繋ぐんでしょうか?」

「ずっとだけど?」

「はい?」

「冗談、学校までよ。正確にはクラスまでね」

「そすか....」

カズマってマミさんから好意(多分)を寄せられていて、なおかつシスコンなのか。考えてみると結構なヤツだと思う。反面教師的な意味で。別に自身の事ではないと思ったが、現在和真自身がカズマという

存在である事を思い出し、再び意気消沈する。

どうせ学校でひゅーひゅー言われたりするパターンだろう、こういうのは。今のうちに覚悟を決めておこう。

 

そんなこんなで話しながら(和真は精神的にやられつつ)学校に到着した。仁美、さやか、まどかとは学年が違うので途中で別れ、マミさんと共にクラスへ向かう。

廊下で誰かとすれ違うたび、

「オイあいつら手ェつないでるぜ、しかも相手マミさんだし。あの顔完璧出来てるだろクソリア充が」とか

「鹿目ってシスコンでもあるらしいぞ」とか

「鹿目テメェ...オレァクサムヲムッコロス!」とか

「マミさんが鹿目なんかと...ウゾダドンドコドーン!」とか

言われる始末。予想に反して怨嗟の言葉がほとんどである。アレかマミさんて学園のアイドル的な存在なのか。ならば理解できなくもないが。というか最後の2つは日本語じゃない気もする。オンドゥル語か何かだろうか。

 

ともあれなんとか教室に辿り着く。席はどこなのかと思っていると、マミさんが自分の隣の席を示す。あと頰を染めてんじゃねえよ、やりづらいじゃないか!てか嘘だろう、そこじゃクラスの男子勢の「オレァクサムヲムッコロス!」をフルで見る羽目になるではないか。マミさんの隣だから確かに嬉しいけれど。

アニメからキャラ崩壊がここまでなったマミさんというのは、自分では予想していなかったので、対応していくので精一杯である。

結局予想通り、クラスの男子(一部女子もいたが)からのムッコロフェイスで自習時間などロクに過ごせず、授業へと突入した。

 

 

放課後になった。帰りのHRを終えて教師は去り、クラスからはどんどん生徒が出て行く。

「ってもう放課後?!授業なにかやったの?!」

「まったくカズマったら...ちゃんと現代文も古典も他にも受けたじゃない。覚えてないの?」

「うん」

「しっかり頷かなくていいから。まぁカズマの寝顔は脳内にインプットされてるのだけれど」

「なんだ、つまりは寝てたのか。てっきり紅王症候群にかかったのかと思った。」

「あかおう、何?」

「何でもないよ。帰ろうぜ、まどかも待ってるだろ」

マミさんの手を引き、教室を出る。不思議と違和感がなかった。

前にもこんな事があったのだろうか。女子と一緒に帰るとかそういうのが。思い出せないので、放っておく事にした。どうせ伏線にもならんだろう、親と違って。だと良いんだけど。

 

 

昇降口に戻ると、まどか達は居なかった。待ってろとは言っていないが、どこに行ったのかと思い、あまり期待せずにカバンの中を探してケータイを見つける。

他人のだとか云々言ってられん。メールを開くと

『さやかちゃんとお茶してから帰るね。遅くならないように気をつけるよ』

寄り道...だと?アニメだとハンバーガーショップに寄って、その後CDを見て、その後は....

(不味いな、魔女の結界に閉じ込められるぞこれじゃあ)

マミさん、と話しかけようとしたところで和真はため息を吐く。

巴マミの姿が消えていたのだ。

(あいつ、まどかを助けに行ったのか?魔法少女としても有能ではあるんだが....もうすぐあの日が来てしまうんだよな)

空を仰ぎみる。ハァ、とため息を吐いて和真は駆け出していた。

まどかの為に、巴マミの為に。



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魔女inショッピングモール(多分)

はい、というわけで始まりました『仮面ライダーに変身して(以下略)』第3話ですね!

いやあこの作品も3話ですか....長いですねえ...

「長くねえよ、むしろまだ3話なのか!のレベルじゃねえの?」

そうですかね...1巻完結モノの小説より良いと思うんですが

「リアルな小説と比較すんな。」

たまにあるでしょ、二次小説なのにリアルな小説並みにクオリティ高いやつ。

「そんな話してるんじゃねえよ、確かにあるんだろうけど」

んじゃスタートしますねー

「無理矢理話変えるなオイ!ってえ?始まるの?!」

「「「第3話キターーーーーッ!」」」

「キャラ安定しねえな」

 

 

 

学校という辛い1日が終わり、放課後になる。まっすぐ帰ろうかどうしようかと悩んでいると、さやかが話しかけてくる。

「まどか、今日どっか寄ってこうよ。仁美は...アレ?」

「仁美ちゃんなら帰っちゃったよ?外せない用事があるらしくて」

「ふうん、仁美が帰っちゃうなんて珍しい...ま、用事があるなら仕方ないか。まどかはどうする?ちょっと他にも行きたいとこがあって、一緒に来て欲しいんだよね」

「良いよ。ちょっと待って、お兄ちゃんにメールしてくから」

ケータイを取り出してメールを打つ。打ち終わり2人で昇降口へ降り、そして外へ出て、2人は最寄りのショッピングモールに足を向けた。

 

到着してまずはハンバーガーショップへ。中学女子のお茶とは言うが、優雅に紅茶を飲める金を持ってるわけでもない。バイトをしていないのが大きな要因だが。まあ節約して使わねばならないのが中学生なわけで、結局のところハンバーガーショップで落ち着いてしまうのである。

さっさと注文して受け取り、席に着いた。

ハンバーガーを齧りながらさやかが口を開く。

「そういや今日ウチのクラス転校生来たけどさぁ、あの子よく分からないよね」

「....うん、でも前にあったことあるような....そんな気がするような...」

「どゆこと?」

疑問を抱いたらしく、さやかが聞き返す。

「うーんとね、夢の中で会ったというか...見たというか」

「それ会ったって言わないでしょ。しかも夢の中でって....」

「そう...なのかな?でもかなり似てたんだよ?夢の中の女の子と」

「ふうん...あたしはそういうの無いから分からないけどね」

ハンバーガーを平らげ、今度はポテトをつまみ始めるさやか。

まどかも一応頼んだのだが、話してしまって手はつけていない。

買ったけど使ってないようなのと、似たようなものである。

その後も会話を続け、気付いて時計を見ると結局30分ほどが経過していた。

「意外と経っちゃったね....」

「そだね、そろそろ出ようか」

トレーを返して外に出ると、さやかが思い出したように言った。

「あ、そうだ!寄ろうと思ってたとこあるんだった!」

「どこなの?」

「CDショップ。新しいCD買いたいんだ」

「良いよ、まだ家には間に合うから」

そうしてCDショップに向かうことになった。

到着すると、行動は別に。さやかは自分でCDを選びに行き、まどかは備え付けのへッドホンを装着して、曲を聞き始めた。

しかし曲の途中で声が聞こえてきた。

外部からというよりは、脳内に直接響く感じだった。

『たすけて...』

(....?声...かな?)

周りを見渡すが、それらしき人はいない。気の所為だろうと思い再び

ヘッドホンを装着する、が。

『たすけ...て...』

今度は途切れる感じだ。さやかにひと言かけるべきか悩んだが、そのまままどかはCDショップを飛び出した。

声がどこから聞こえているかは分からない。けれど何故か分かるのだ。声が導いてくれている、と。そして走り続けると、いつの間にか

モールの奥の方に来ていた。器具の使用後などがあるあたり、建設現場と言うべきところだろうか。

「だれかいないの?確かわたしを呼んでた声ってここか...」

言い終わる前に天井から派手な音を立て、何かが落ちてきた。

それは白い、まるで小動物のようだった。

だがその白さの中で際立つのは、赤い血である。誰かに撃たれたか、斬られたか。どちらにしろ肩で息をしているレベルだ。重傷としか

言いようがない。

「酷い傷...大丈夫かな?あぁ、包帯もないしどうしよう?!」

慌てるまどか。だがそんな彼女を他所に、再び天井から何かが降りてくる。

見上げると、それが既に知っている顔であることが分かった。

今朝見滝原中学に転校してきた少女。

「ほむら....ちゃん?」

まどかが疑問形で言ったのには意味がある。

第1に何故ここに暁美ほむらがいるのか。第2に何故見滝原の制服ではなく、ダークグレーなセーラー服然としたスタイルなのか。加えて左腕には盾のようなものまで付いている。

まどかの言葉を防ぐように、ほむらは言葉を放った。

「今すぐそいつから離れて。」

「で、でも!怪我してるよ?助けないと...」

「離れて」

「でも!」

ジャリ...と下にあった鎖を踏むほむら。おまけに盾のところから黒光りする危なそうな物が既に見えている。白い小動物を庇うように抱き寄せるまどか。

一瞬の後、どこからか白い煙が噴射された。

その方向を見るとCDショップにいたはずのさやかの姿が。

「さやかちゃん!」

「まどか!こっちに!」

小動物を抱えて、さやかの方へ駆け寄る。そしてそのまま2人は来た方へと駆け出した。

「何なのあの転校生!?学校で口数少ない転校生だと思えば、外じゃあ怪しいコスプレで徘徊なの?!それとも通り魔?!てかその動物何?捨て猫?」

「分かんない。でもこの子、わたしを呼んでた....ような」

「またまどか変なこと言う!今日のまどかちょっと変だよ?って...」

「「あれ?」」

ふと周囲の異変に気付き、立ち止まる。

来た道を戻っていたはずなのだ。はずなのだが、今いるそこは知らない場所だった。綿のようなモノが動いているし、形容し難いと言うのだろうか、何とも言えない場所だった。

ただし、ひとつだけ言えることがある。ここを知らないまどかとさやかも分かる。

ここは自分達がいて良い場所じゃない。危険なところだと。

逃げねばならないと。

だが耐えきれなくなったのだろう、まどかが叫んだ。

この場合は耐える云々や音量云々の話ではない。

「助けてよぉ!ここどこなの?!」

しかしそこによく知っている声が聞こえた。

「よォ、生きてるかァまどか」

 

 

時は1時間くらい遡ることになる。

半ばマミさんから置いて行かれる形で、学校から駆け出した和真。

アニメは視聴したが、あの暗い場所がどこなのか詳しく分かるはずもない。

もともとこちらの住人ではないし、アニメ序盤の記憶など欠落しているところもあるので場所は不確定だ。

なんとか四苦八苦しながらも予想したモールへと辿り着いたが、マミさんの姿は当然というか見当たらない。やはり先を越されたかと思い、ハンバーガーショップをスキップしてCDショップへ。

けれど店内にはまどかやさやかの姿は見当たらず、ふうむ、と考え込んだ。

暗そうな所といえばどこだろうか。記憶を探り、場所を特定して行く。だがこちらはかなり情報が劣っているという点がある。

外界から来たとはいえ、元の住人に地理情報などで勝てるわけもないのだ。仕方ないので聞くことにした。

「あのすいません、ここのモールで」

普通にスルーされた。仕方ないか。

「すいません、知り合いを探しているんですが」

再びスルー。クソが。

「あのう、妹を探してるんですけど」

結局スルーされた。この世界は他人に冷たいのか、クソ野郎共が。

まぁそんなことはどうでも良い。他人が当てにならない以上、独力で

探し出すしか手はないのだ。

はァ、とため息をついて移動しようとした時、ふと視界の端に映り込む黄色の髪。ヘアスタイルも間違いない。アレはマミさんだ。

バレないように追いかけると、途中で通路の奥の扉を開けて中に入ってしまった。

「なんだあそこ....まさかあの奥なのか?あの暗いとこって」

考えても分からないし、それにここに居てもどうしようもない。変にストーカーの疑いをかけられる可能性も捨てきれないので、そそくさと扉の中へ体を滑り込ませた。

 

中に入ると予想はしていたが、電気はあまりついておらず薄暗い空間が続いていた。しかし音は聞こえる。

だんだんと遠ざかる足音が響いており、それを追って和真も走り出した。相手に気付かれないように走るなど容易いことだ。理由は鍛えられたからなのだが。

だが背中が見える辺りまで接近した時、マミさんの姿が忽然と消えた。綺麗にさっぱりとだ。

「あれ?消え...た?」

しかしそれは間違いだとすぐに分かる。マミさんは柱の前で消えたのだが、その柱に光に放つ亀裂が入っていたのだ。それはまるで、彼女が殺されたあの結界の入り口と同じようなカタチをしていた。

時系列的に大丈夫であろう事は分かるのだが、不吉なものを感じずにはいられない。

思い切って一か八か、その亀裂へと飛び込んだ。

かなり身構えていたので、あっさりと入れたのには少々驚かされた。

17年間生きてきたが魔女の結界など入った事もないので、これから

どう進んで行けば良いのか分からない。そんな時は道なりである。

真っ直ぐ曲がらずに怪しい道を進んでいくと、追いかけていた背中を

見つける。駆け寄ってさりげなく話しかけた。

「よっ、こんなトコで奇遇だな!」

「カズマ?!なんで貴方がここに?」

「俺知らないなー(棒読み)」

「あからさまに棒読みなのだけれど。それよりホントになんで貴方ここにいるの?」

やはり聞かれるだろうとは思っていた。一般人がこんな所にくるわけがないので当然ではあるのだが。

「あーそれはまぁアレだよ。作戦なんて動いてから立てれば良いんだよ」

「明らかに話を逸らそうとしてるわよね。貴方半熟探偵じゃないでしょうに」

「はっはー!どやぁ!」

「キャラ....」

はぁ、とため息をつくマミさん。そんなにならんでも良かろう。確かに自分が来たのは計算外ではあるだろうが。

おっと、このままではまどかとさやかが死んでしまう。行かねば。

駆け出そうとしたカズマの腕をマミさんが掴んだ。

「どこに行くの?」

「妹とそのフレンドを助けに。マミさんもそうだろう?あ、魔女討伐も含まれてるか。すまない」

「.....ッ!」

息を飲むマミさん。何故貴方が知っているの?とでも言いたげだ。

「何故貴方が...」

「どした?はよせんとあいつら死ぬぞ」

「ああもう!後で説明してもらうわよ!カズマ!」

「へいへい」

そして2人は歩みを早めて進んでいった。しばらく歩くと開けた場所に出た。綿のようなものが動き回り、その先にデカイ何かが居る。

手前あたりで和真はガクブルな2人を見つけた。

「よォ、生きてるかァまどか」

「お兄ちゃん!」

和真の声に喜ぶまどか。さやかも安堵の表情だ。というか泣くな、まどか。こっちが泣かしたように見えてしまうではないか。多分だが。

「アレか、ターゲットは」

「魔女、ね。ここまで一緒に来たのに悪いけど、あの魔女を片付けないとね」

意気込みながら言うマミさん。だが和真は彼女を制した。

「待ってくれ。マミさん、あんたは変身するな。」

「何を言っているの?変身なんて一言も言って....」

「魔法少女。ソウルジェムを使って変身する少女達の名称だな。ま、そこのキュウべえのお陰なんだが...」

「貴方、何者?何故そこまで知って...」

「何者?俺は鹿目カズマさ。鹿目まどかの兄だよ」

そう言って和真は内ポケットからブレイバックル(カードセット済み)を取り出した。当然ながら彼女らには分かるはずもないが。

腰に装着すると同時、カードのような赤いベルトが巻かれる。

そして叫んだ。

「変身!」



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結婚と仮面ライダーと魔法少女(大丈夫なのか?)

やっと3話終わりましたけど、かなり急ぎ足で進めちゃいましたねえ、前回の話は

「まぁ否定できないけどなァ、その点に関しては。でも仕方ないだろ?このままじゃ4話にならないと変身出来なさそうだったし」

そんな理由でストーリーを一気に進めたんですか。

「うん」

ヒーローものの総集編でも、もう少しマトモだと思いますよ。

ディケイドみたいに劇場版に投げるつもりとかじゃないでしょ?

「流石に劇場版に投げたりはしないさ。けどここまで来ても、主人公のバトル一切ないってのはアレだからなぁ」

そですか....んじゃあ雑談もこれくらいで始めましょうか

「ま、そだな時間も時間だし」

「「「さあ、ショータイムだ」」」

「またライダーかよ」

 

 

 

「変身!」と叫ぶと同時、『Turn Up』の音声と共に青い光のカードが目の前に出現する。そしてカードが和真の身体を通り過ぎ、和真は

仮面ライダーブレイドへと変身した。

「俺が誰かって聞いたな?少しばかり訂正させてもらうぜ。俺はまどかの兄であり、仮面ライダーブレイドだ。」

「かめん....らいだー?」

「ぶれいど?」

何故平仮名で聞き返すのかは別にどうでもいいか。それより今は彼女達を護らねばならない。

「質問は後で受けつける。それに何でも1つ言う事聞いてやるからさ。マミさん、あの2人を頼むぜ」

「なんでも?!やるわ!」

不安要素が残る事を言ってしまった気もするが引き受けてもらい、こちらは魔女と向かい合う。

ホルスターから醒剣ブレイラウザーを引き抜き、構える。

「初戦闘で魔女ってよォ....面白えよなァ。くははっ!」

そして和真は地を蹴った。剣を振るい、綿を思わせる煩いザコどもを蹴散らしていく。荊と裁ちバサミが合わさったようなモノが襲いかかってくるが、素早く剣で切り裂き、ぐしゃりと踏み潰した。

いつだったか誰かが言っていたことがある。優しさだけでは戦いは生き残れないと。全くもってその通りだと思う。慈愛などバケモノに通じるわけがなかろう。だからこそ和真の戦闘におけるモットーは、『慈悲などいらぬ』となっているのである。

と、背後から綿のザコが飛びかかってくる。だが切らずに和真は蹴り飛ばした。ここで無駄に大見得はって負けるなど、妹にもマミさんにも合わせる顔がない。最後は倒せれば良いのだ、倒せれば。

ふと不穏な気配に目をやると、デカい何かがこちらに向かって突進してきていた。アレはもしかしてというか間違いない。

「ターゲット発見...と。これで決まりだな」

ブレイラウザーのオープントレイを開き、2枚のカードを取り出す。

『キック』と『サンダー』をラウズし、『ライトニングブラスト』を

発動させる。

助走して跳躍し、ちょうどキックを叩き込める高さまで飛び上がる。

「ウェェェェェェイッ!」

そしてそのまま和真は突進魔女へと、雷を纏わせた蹴りを放った。

命中した感覚を足に感じるとすぐ着地、念の為ブレイラウザーを再び構えたが、その必要はなかったようだ。

元々混沌としていたその姿はバラバラに散っていき、空間も元の色彩を取り戻していったのである。

「万事解決って....オイなんで居るんだ」

「.....」

「ま、いいか。今回は俺が倒したからオマエの出番はないぜ、暁美ほむら」

「......誰?」

「ああァ?」

「魔法少女でも無いのに、魔女を倒した。魔女を倒せるのは魔法少女だけのはず。何故」

「知らねーな、つうかよォ...疲れたんだから今日は帰ってくれ」

結局それ以上は何も言わずに、暁美ほむらは立ち去っていった。安易過ぎた気もするが、ひとまず安堵の息を吐く。まどか達に何も無くて良かった、それだけでこっちは安心だ。

変身を解くと、マミさん含めて全員から質問が投げかけられた。

「カズマ、そのベルト何?かめんらいだーって何なの?」

「お兄ちゃん...だよね?前はそんなもの持ってなかったと思うんだけど....」

「カズマ先輩強いじゃないですか!何ですかあの技?」

「興味深いね、キミ。」

一気に言われると辛いものである。順番に答えたい所だが、今はなんだかんだで時間が遅れてしまっている。というかキュウべえはまどかに用があったのではなかろうか。だが少なくともほむらは、未だにまどか目当てなのは間違いないだろう。

しかし現状かなりストーリーへと介入してしまっているので、修正をしなければなるまい。

「あーじゃあ俺ここら辺で帰るから。それにキュウべえオマエ、まどかとさやかに用があるんだろ?」

「まぁそうだけど。なんでキミがが知って...それに僕のことはキミには見えないはず」

「マミさん後よろしくな。」

クールに去ろうとした和真の腕が、再度掴まれる。

「ちょっと待って。カズマ貴方のことも説明してほしいんだけど。それにここで帰ろうったってそうはさせないわよ。」

「えーなんで」

「なんでも1つ言う事聞くんでしょ?」

「う」

どさくさに言ってしまったのを思い出す。この類の事は言わないのが常識なのに。困ったものである。後悔先に立たずというヤツか。

それにこのマミさんの表情。断ったら不味い感じがする。

「わーったよ、1つだけ言う事聞いてやるよ。けどまぁアレだな、一回戻ろうぜ。こんなトコにずっといるつもりか?」

「そうね」

そして結局4人プラス小動物1匹はモールを後にし、マミさんの提案で彼女の家に行くことになった。

 

少しばかり後、彼らはある家の前に立っていた。

予想していたあのマンションの方角ではなく、普通に住宅街の方へと歩いていたので驚いたのだが、行き着く先がまさか普通の家とは。

これもストーリーに介入した影響なのだろうか。

設定がこれまた変化している。

「入って良いわよ。カズマとまどかは何回か来てるわね」

「はい!邪魔します」

「お邪魔しまーす」

「へぇ、何回か来たのか。」

「5回以上は来てるんじゃないかしら」

そんなに女子の家に行けるものではないと思うが。幼馴染とかならば別かもしれないけれど。一応幼馴染という事になっていた気もするので、そういう事にしておこう。

ともあれ家に上がらせて貰い、部屋へと移動する。

「紅茶淹れてくるからくつろいでいて良いわよ。」

「ありがとうございます」

「はーい」

マミさんが紅茶を淹れに出て行き、急に会話が途絶えてしまった。

「さやかちゃんが聞いてよ...」

「まどかの兄さんでしょ、まどかが聞いてよね」

「....聞きにくいよ、やっぱり」

「だよねぇ」

こそこそ会話しているつもりなのだろうが、ダダ漏れである。この少女達はもう少し考えてみるべきだと思う。

そんな訳で暇になってしまい、やることが思いつかない。まあ変身する必要もないので、テキトーにごろごろすることにした。

すこしするとトレーにティーカップとケーキなどをのせて、マミさんが戻ってきた。

 

そしてケーキと紅茶が全員の所に来たところで、マミさんが会話を再開させた。

「こうやって集まったのだし、色々と話したい事もあるでしょう。どうしましょうか?」

「そっちが聞いてくれよ。どうせ俺に聞くことが大半なんだろうしさ。答えるぜ、ある程度は」

トップバッターをきったのはマミさんだった。

「じゃあカズマ、貴方のそのさっき使ってたベルトはなんなの?」

「ああアレか、変身用のベルトってところかなァ。ブレイドになる為の」

「んじゃ先輩、かめんらいだーぶれいどって何ですか?」

平仮名で聞くな。

「良い質問だけど...こればかりは説明が面倒くさくてなァ」

「というと?」

「ひと言じゃ説明出来ないんだよねェこれ」

「うんうん」

「うんうんって説明させるつもりかよ!マジで面倒なんだって!」

「そうなの?」

「そうなの!分かってくれよなァ...っても無理か。見た事もないものは何なのか知りたくなるものだからなァ」

いちいち聞いてくるとかやめてほしいが、女性の特性とでも言うべきものはどうしようもないか。

だからというか「なんでも1つ言う事聞いてやる」とか言ったのは間違いだったと改めて思う。どうせ大した事ないことだろうからさっさと済ませよう。

「あーそうだ、1つ言う事聞くんだっけ?俺」

「....そうね」

「んだよ、はよ言わないのか」

「カズマにはね...婿に来てほしいなぁ...とか」

「はぁ?」

何を言いだしているのだ、この子は。婿の意味が分からないわけではない。婿に来てくれとか、結婚イコールだということを知っているのだろうか。デートとかそんなものスキップしてないか?ゲッシュじゃないが、かなり響く。精神的に。

確かに1つ言う事聞かないといけないのだが!

「え、だって前に大きくなったらお嫁さんにするって言ってくれたじゃない。だからここで私も言おうと思って」

「確かに前に言ったね、お兄ちゃん」

「なんでまどかは覚えてんだよ!覚えてねえぞ俺」

「うっ....ひどいわ...覚えてないなんて....」

「お兄ちゃんマミさん泣かしたー」

「先輩ひどーい」

「ちょっと待てい!もう俺が悪かったよ!婿になれば良いんだろ!

クソォォォ!てかおまえらキャラ変わりすぎじゃねえの!?」

もうやだ何なんだ、この空間。キャラ崩壊激しい上に、いきなり婿に来てくれとか。結局言う事聞いてしまったが。畜生め。

「やった!これでもう夫婦よね!」

元どおりになるのが早い。本当にベテランの魔法少女なのだろうか。

疑問に思う所である。

「そだねー(気が重い)明日から面倒くさそうだよホント」

「ひゅーひゅー」

「ひゅーひゅー」

ここに来た意味を見失っている気がするのだが。明らかにキュウべえの出番ないし、ケーキ齧ってるだけになっている。

「でも結婚できる年齢にまだなってないよな?じ、じゃあ!」

「じゃあ婚約ってことにしましょ」

「え」

最後の退路が断たれた。もうこれは結婚しか道が無いのだろうか。

だがなんとか避けねば。

「そ、そうだよ!まだ親には言ってないじゃないか!」

「もう連絡したわよ」

「返事は?NOだよな?」

「お似合いだって言ってたわ(ポッ)」

「親ァァァァ!クソォォォ!」

了承する親も親だが、自業自得ってこういうことなのかと初めて思った和真であった。

作品内で「ダーリン」と言われているキャラの気持ちが分かったような気がした。

「はぁ.....もうどうにでもなれよ。」

溜息をつき、ぱたりと倒れこんだ。後は勝手に進めてくれて構わない。この一件で体力の大半を使い果たしたので、しばし横になる事にした。

「んじゃあ話進めてくれて良いぜ、キュウべえ」

「やっと出番だね!」

「俺寝るからあとよろしくー」

話を振り、和真は目を閉じた。世の中おかしくなりすぎである。

まぁ和真の世界も充分周りが混沌だったが。



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学校行ったらバトる羽目になった(ウゾダドンドコドーン!)

やれやれ八坂さん、やってくれましたねェあんた

時の運行に支障きたしますよコレ

「すんません。けどアレ言ったのマミさんですよ?!俺知りませんって!」

何でも1つ言う事聞くって言ったの八坂さんですからね?

「はい....」

まぁこればっかりは仕方ないですし、八坂さん本人に解決してもらいますよ。

「マジかぁ」

マジです。んじゃさっさと始めますよ

「「「目覚めよその魂」」」

「そろそろ違うヤツだせよ」

 

 

 

「....きて、起きて」

「んあ?起きるから起きるから...」

体を揺すられ、ぐらぐらとしながら和真は起こされた。まったく手荒なものだ。誰だこんな事をするのは。

「まったく、こんな時間まで寝ちゃって」

「はぁ?まだ4時か5時じゃ.....」

と思って時計を見ると午後7時。ちなみにぐらぐらと揺すっていたのはマミさんだった。まどか達は既に居らず、帰ったと見える。

「やっと起きたわね。起こすのこんなに大変だったかしら?前はすぐに起きてくれたのに」

「お、おう...悪かったな。次は直ぐ起きるよ、次があればだけどな。」

急いでカバンを引っ掛け、部屋を出る。

「待ってよ!泊まってっても良いじゃない。その....」

「夫婦ってか。あ、あの後話はしたのか?」

「え、ええ。明日から放課後出掛ける事になったわ。暫く一緒に居られないわね。」

「そだなぁ。でも登校はできるだろ?」

「そうね!」

「んじゃまた明日な!」

今度こそ外に出、家に向かって駆け出した。

帰宅すると既に家は静まり返っており、全員が寝ているのであろうことが伺い知れた。母親は残業でもしているのだろう、靴がない。

さっさと風呂に入って寝る事にした。

 

「よォ、和真君」

「誰だあんた。てかここ何処だよオイ!」

「うーんそだなぁ、ここ一応神の部屋って事になってるけどねえ」

「その割にはオタクグッズ多くないか?まどマギ多めだな特に」

「そう!その事で話があるんだよ和真君」

「はぁ」

「今直ぐその世界から出てけやテメェ」

「ああァ?神だかなんだか知らねえがな、何ほざいてんだ?この世界から出てけだァ?!ふざけてんのかテメェ!」

「ふざけてねえし!オマエが介入した所為でストーリーがめちゃくちゃになってんだよ!それにこれじゃまどかまで助かっちゃうだろうが!」

「何が悪いんだよ!オメェそんなんで神やってんのか?うわー」

「いや正確には神っていうかヨグソトースだけど」

「マジか...だからって俺に出てけと?」

「全員助けたらほむほむの努力無意味になるし、まどかのプリティな魔法少女姿拝めないだろうが!」

「そんな理由かよ!クソ野郎だなオイ!」

 

次の日目覚めると、全身汗だくだった。やけに鮮明に夢が思い出される。酷い夢だ、ヨグソトースと口論している夢っていうのは。

しかも最後がしょーもない気がしてならない。

さっさと朝食を済ませて、迎えにきたマミさんと共に学校へ。

学校の廊下ですれ違う奴らの視線が更に厳しくなっているのは、気のせいだろうか。

「俺が戦う。人間として、ファイズとしてなァ!お前を潰す!」

「さあ、お前の罪を数えろ」

「お姉様の為に戦う。その為に貴方には消えて貰うわ」

と何故かそのうちの3人が変身ベルトを取り出している。

しかも半狂乱といったところか。

だが所詮おもちゃであろう。と思ったのだが.....

「「「変身」」」

『Complete』『ジョーカー!』

『タカ・トラ・バッタ!タトバ・タトバ・タトバ!』

次の瞬間、仮面ライダーファイズと仮面ライダージョーカー、そして仮面ライダーオーズがそこに居た。

そして突如メールの通知音。

『刺客送り込んだから。やっぱりここで消えてもらいたくてねぇ、キミには。まどかとほむほむの為にも死ねよオマエ by最強のヨグソトース』

「あの野郎...嘘じゃなかったのか。しかもこの世界の奴らを使って俺を消そうたァ考えるじゃねーか」

内ポケットからブレイバックルを取り出そうとすると、マミさんの手が和真の手を抑えた。

「暴力は良くないわよ。妻として説教します」

「馬鹿か?!んな事言ってられるかよ!それにこんなトコで言ったら....」

刹那、和真に向かって明らかに3人以上が殴りかかって来た。

その全員がキレている。間違いない。それにいつの間にか他の奴らの腰にもベルトが装着されている。

「「「「変身」」」」

残りの全員がライオトルーパーに変身した。ヨグソトースめ、一瞬でベルトを更に出すとは。大方皆の自分に対する怒りの感情を利用したのだろうか。これでは明らかに不利である。ラウズアブソーバーを持ってない以上、外に出られないのでここでケリをつけるしかない。

「マミさん下がってくれ。ここを切り抜けねぇといかんからな」

そして飛びかかってくる彼らに向かって立ち、ブレイバックルを腰に装着。

「変身!」と言うと、『Turn Up』の音声と共に青い光のカードが出現して奴らを弾き飛ばして和真の身体を通過、和真は仮面ライダーブレイドへと再び姿を変えた。

 

そこからは圧倒的にこちら側の不利だった。

ブレイラウザー1本がこちらの唯一の戦力である上、明らかな人数差だ。それに相手はキレている、全力全開で向かってくるわけだ。

ブレイラウザーを振るってライオトルーパーはなんとか変身解除まで追い込めたが、ファイズとジョーカーとオーズが面倒だ。

いくらこっちがパワー、スピード共に勝っているとはいえ相手が3人となると話は別である。

だがファイズはアクセルフォームにはなれないようだし、ジョーカーにフォームチェンジはない。オーズもコイツはフォームチェンジはなさそうだ。つまりは全員ノーマルスタイルという事だ。

『ウェェェイ!」

と叫び、和真は再度彼らに斬りかかった。

 

ふと気づくと周囲の壁はボロボロで、窓ガラスも割れていた。そして床にはライオトルーパーだったと思われる一般生徒が倒れており、立っているのはファイズ、ジョーカー、オーズそしてブレイドの3人のみであった。

一般教師も倒れてる気がしたが、今はどうでも良い。

「そろそろやめないか?お互い決着つかねえぞ」

「ハッ、知るかよ。お前を潰すの俺の目標だからな」

「ハードボイルドに決めてやるぜ」

「お姉様を守る為にも私は戦うの。つまり貴方を倒す」

これでは拉致があかない。お姉様お姉様とほざいてる奴もいるのだ。

厄介なことこの上ない。というかこれは周りに気付かれていないのだろうか、明らかに気付かれてもおかしくないレベルだと思うのだが。

だとすれば急いで決着をつけねばなるまい。

ただ問題は3対1だということ。加えてあまり多人数相手は得意ではないのだ。敢えてそれも考えてこういう編成にしたのなら、ヨグソトースは嫌なやつである。まあやりかねないが。

『エクシードチャージ』『ジョーカー・マキシマムドライブ』

『スキャニングチャージ!』

それぞれの音声と共に、技が放たれる。クリムゾンスマッシュにライダーキック、タトバキックが連続して炸裂する。

ブレイラウザーを盾にして防ぐが、かなりの威力だ。反対側の壁に叩きつけられてしまう。

「ってて...やれやれキツイぜこりゃ」

物陰に隠れたマミさんに目をやりつつ、呟く。実際魔法少女になって

戦ってくれた方が楽なのだが、人前では変身しないのが決まりらしく

1人の少女のままだった。よし、ならばここは速攻で決めねば。

「ここからは俺のステージだぜゴラァ!」

『サンダー』と『スラッシュ』をラウズして、『ライトニングスラッシュ』を発動させる。

ゆっくりと剣を構え、一気に廊下を蹴った。

数秒後、ベルトのみを砕かれた3人が廊下に倒れ伏していた。

やはり慣れない物を使うものではないと思う。ましてや彼らは本来これを使わない側の人間だ。ヨグソトースも酷い事をしてくれる。

まあ別にキャラ崩壊がどうだとかそういう事は言わないが。

結果的にストーリーに介入し過ぎて、色々とこっちの世界がおかしくなっているのかもしれない。紅王症候群にでもかかってワルプルギスの夜まで飛んでくれないだろうか。

とまあそんな事より教室に向かわねばならない。後片付け?そんなものは知らないのである。

 

 

6時間の授業が終わり、放課後になる。一緒に帰ろうと声をかけたのだが

「ごめんなさいね、まどか達と用があるから」

「あー放課後出掛けるって言ってたアレか」

「ええ」

ならば仕方ないだろう。マミさんには先に帰ってもらい、自分は少し後から帰る事にした。ストーカーしようと言う意味ではない。

ケータイを取り出し、ある番号へとかける。

思ったより相手はすぐ出た。

「もしもし?」

『あら和真。急にどうしたの?」

「ああ、ちょっと頼み事があってさ」

『何?大抵の物なら1時間あればそっちに届けられるわよ」

「前に話題出したことあったと思うんだけどさ、ラウズアブソーバーって作れる?今ないジャックとクイーンとキングもカードもあると良いな」

沈黙。なぜ黙るんだろうかアト子さん。ブレイドのシステムに問題はないと前に言われたのだが、不備でもあったのか?

『そういえばまだ言ってなかったわねぇ、ブレイドの秘密って』

「そんなものあったのか。知らねえぞ」

言いながら和真は教室を出た。驚いた事に朝争った場所は綺麗さっぱりに元通りになっていた。邪神の便利なんとかってヤツだろうか。

などと思いつつ学校を後にした。

『実はブレイドのシステム...後に作ったカリスとレンゲルもそうなのだけど、ラウズカードにはホンモノのアンデッド封印してるのよね』

「え?アレってサンダーとかスラッシュとかの能力のみ使えるカードじゃねえの?」

『説明するの忘れちゃった。てへっ!」

そろそろキレてもいいだろうか。説明忘れるっていうのは作った側としてはどうかと思う。アト子さんだから仕方ないのかもしれないが。

「で、ホンモノのアンデッド封印してあるからなんだって?」

『実は和真がブレイドを使えているのは、偶然とかそういうのではないの。剣崎一真同様にアンデッドの融合係数が1番高いからなのよ』

「んで?融合係数云々で結論は何が言いたいんだ?」

『ラウズアブソーバーを渡すのが心配なのよねぇ』

「何故?問題ないだろうに」

和真の言葉にアト子はため息を吐いた。これだから貴方は、みたいに。

『はぁ...ラウズアブソーバーを使うとジャックフォームとキングフォームになれるのは知ってるわね?』

「ああ、テレビで観たしな」

『ジャックフォームはまだ良いのよ。けれどキングフォームがね....』

言葉を区切るアト子。再び沈黙が続く。

「んだよキングフォームが何だ?問題あんのか?!」

『貴方の融合係数から見るに、13体全てのアンデッドと融合したキングフォームになりそうなのよね。結末は剣崎と同じに...』

それだけの事か。むしろ面白いではないか。

「なんだよそんな事か。融合係数だかなんだか知らんけど、俺が制御してやるさ」

『だと良いのだけどね....』

「まだなんかあるのか?」

『いいえ。んじゃ今日届くようにするわ。メモも入れておくから読むようにね。使い方は分かるだろうけど』

それだけ言って電話は切れた。今日...か。原作では中盤辺りだった気がするが、まあ構わない。先は思いやられるが。かなり。

 



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狂戦士 和真

どうも八坂さん、前回も凄えカオスな話になりましたねえ

まさかヨグソトースの奴が出張るとは思いませんでしたけど

「ホントな。自分でも意味わかんねーよあの話」

OVA的な感じにします?ハイパーバトルDVDとかでも良いですよ?

仮面ライダーですし。

「そだなぁ.....まぁひとまずこの6話か?をなんとかしないとな」

頼みますよ?毎度毎度ストーリー無茶苦茶にして終わらせるんですから。それで上から怒られるのこっちなんですよ?

「気を付けます....」

はい!では始めますね

「「「ひとっ走り付き合えよ!」」」

「マジでそろそろ違うやつ出そうぜ!」

 

 

話は前回の最後に戻る。まどかとさやかを連れて帰ったマミさんが心配になり、結局和真は後を追う事にしたのだ。

彼女が死ぬのが今日なのか明日なのか、時系列があやふやになってしまいとりあえず確認だけでもすることにしたのである。

「さてと、えーとどこだったかなぁ....病院だったかデカい建物の壁だったよなアレって」

一度家に帰ってバイクに乗り、現在見滝原の都市部を走り回っているのだが、一向に彼女達は見つからない。それも考えてみれば当然ではあった。彼女達がいるとすれば魔女の結界内なのだ。

再びバイクを走らせ、建物の壁を見て回る。

いくつ目かの建物のところでようやく、和真は彼女達の入ったであろう入り口を見つけた。

周りは駐輪場、壁にはひびのようなものが光を放っている。間違いない。記憶が正しければ、マミさんが殺される場所だ。

バイクを停め、和真は結界の中へと足を踏み入れた。

 

中は当然というか、前と変わらず暗めのところであまり気分は良くない。だがひとつだけ異なる所もあった。1人の少女が黄色の紐で空中に

縛られていたことである。

理由は分かるが、敢えてわざとらしく聞いてみる。

「お前そこで何してんだ、暁美ほむら」

「....っ!」

睨まなくても良かろうに。ならば質問を変えよう。

「まどか達見なかったか?」

「....奥に行ったわ」

「どうも」

助けてくれとは言われてないので、紐は切らないでおいた。決してそういう趣味ではなく、面倒なのである。解いたら、時を止めて殲滅という名目でまどかを助けに走りそうだからでもあるのだが。

そんな訳でさっさとほむらを置いて、和真は奥へと走っていった。

 

最深部と思われる所まで辿り着いた和真であったが、中々に悩んでいた。かなり悩んでいた。考える人くらいは。

現在内部状況が分からないし、ほむらを置いてきたので紐の有無でマミさんの生存を判断することも不可能なのである。

「よし、考えるのはやめだ!行こう!」

気合を入れて柔らかなそうな(実際柔らかかった)扉を蹴っ飛ばし、中へと入る。

高い視力を活かして奥を見ると、今まさにマミさんをバケモンのデカい頭が喰らおうとしていた所だった。

そのあとは無意識とか反射と言った方が正しかった。すばやく背中に手を入れ、バールを取り出す。取れるだけすべてだ。

「はあああああああああ!」

全力で投擲した。もちろん下にいるまどかとさやかは確認済みなので、当然当たらない軌道をとる。そして投擲されたすべてのバールは寸分違わず、バケモンの頭を直撃した。

「なっ?!」

「マミさん!」

まどかとさやか、2人が叫んだ。きっと驚きと心配の表情が入り混じっているんだろう。少しはこちらに気付いて欲しいが、仕方ないか。

遠目で一応確認出来たが、マミさんも相当驚愕の表情を浮かべていた。それもそうだろう、自分が喰われかけているところで敵にバールが直撃するなんていうのは。

だがそんな風に言えるのも今のうち。バールを直撃させた以上、あのバケモン(魔女だと思うので以後魔女と呼称する)がこっちを敵として認識するのに時間はかからない。

そして案の定魔女はこちらを見つけて、突進しながらそのデカい口を開いた。何故かまどかとさやかは避けて来たのが驚きである。

やはり強い魔法少女になる奴らだからだろうか。

なんて呑気な事を言っている場合ではなかった。向かってくる以上は潰さねばならない。それにコイツを倒せばマミさんの死の運命は変えられるのだ。

「変身ッ!」

青い光のカードを通り抜けてブレイドに変身、ブレイラウザーを引き抜いて和真は一気に魔女へ飛びかかった。

「カズマ!?」「お兄ちゃん?!」「先輩?!」

3人の声が聞こえたが、今は構わない。殲滅が優先だ。

まずはデカいその面を回し蹴りで吹っ飛ばす。しかし魔女とてしぶとい。めげずにその顎門を開く。

「邪魔だぁ!」

ブレイラウザーを振るい、その頭を切りつけていくが、時間を置かずに再生するのを見る限り、剣撃はあまり効果がないのであろう。

一度剣をしまい今度は、シンプルに殴りつけた。

「おっ、これ意外と効果あるのか?」

剣は効果があまり無く、殴れば効果がある。まるで夏の鉄拳聖女マルタのようだと思った。説明は省く。察して頂ければ幸いだが。

とまあそんな事なので、和真はひたすらに殴って蹴った。

「オラオラオラオラオラァッ!」

そこからはほとんどブレイドの名に相応しくない、殴り蹴りのオンパレード。

まるで星の白金が如くラッシュを繰り出していった。

魔女の体がボドボドになった所でブレイラウザーのオープントレイを開き、和真はラウズカードを取り出した。

『キック』『サンダー』『マッハ』の3枚をラウズし、『ライトニングソニック』を発動させる。

『マッハ』で加速して魔女に肉薄、何発かパンチを叩き込み、最後に空中に跳躍した。そう、あのキックの高さまでだ。

「ウェェェェェェイ!」

そして和真は雷を纏わせた蹴りを放った。

 

前回同様魔女が消滅したので変身を解く。色彩が元の世界へと戻る。まあグリーフシードは自分には必要ないので、触れないでおいた。

暁美ほむらに関しては既に自力でなんとか抜け出たらしく、何も残っていなかった。どうやったのか疑問ではあるが。

その後当然ながら3人からは色々と言われる羽目になった。

「どうしてここが分かったの?」とか「よく来られたよね?知らないはずなのに」とか「先輩凄いですね!前回もそうですけど(以下略)」とかである。これ以外にも色々言われたが、かなり多いので記載しないでおこう。

3人にケーキと紅茶を奢って宥め、その後家に帰ったのが今回の(ヒドい)オチである。

 

家に帰ると、メガネ野郎(父親)から和真宛に、小包が届いていたと知らされた。部屋に置いておいたとの事なので、開けてみることにした。

開封してみると...

「おっ、遂に来たかラウズアブソーバー」

中にあったのはJ、Q、Kの3枚のカードとラウズアブソーバーだった。アト子さんは今日届くと言っていただろうか?言っていたな。

などというのは関係ない。いつ届くなどというのはもう関係ないのだ。届いた以上、これで戦力は確保できたも同然。

早速ブレイドに変身し、左腕にラウズアブソーバーを装着してみる。

なかなかにしっくり来るものである。

ジャックフォームとキングフォームも試そうと思ったが、流石に時間も時間である。親にバレると面倒でもあるので変身解除し、さっさと寝ることにした。

 

次の日になり、朝がやってくる。カーテンを開けると射し込む、眩しい日差し。雲ひとつない快晴だ。今日は洗濯物がよく乾くだろう。まあ自分は洗濯などしないのだが。

などと思いつつ制服に着替え、下に降りる。珍しくというほどでもないが、マミさんは部屋に来ずに下で待っていたのが少し驚いたことではあった。

「おはよう。マミさんもう来てたんだな」

「ええ....そう。実は言いたい事があって今日は来たのよ」

「言いたいこと?なんか悪い事したかねぇ俺」

「そうじゃなくて...昨日はありがとうね。助けに来てくれて」

何か勘違いされている気がする。確かに助けに行ったのは間違いではないのだが。色々と理由はあるのだ。

「まぁうん...そうだな。俺はお前に死なれたくないしな」

「...それって妻として?1人の人間として?」

難しい事を言ってくれる。しかも後ろにはニヤニヤ顔の親達とまどかがいる。というか何故まだ出掛けていないのだ母親。

「それは.....どっちもかなぁ」

あやふやに答えておけば問題あるまい。

「まあ!嬉しいわぁ」

抱きつかないで頂きたい。胸が当たるのと、かなり恥ずかしいのが入り混じって、顔が相当赤くなっているであろうことが予測できる。

そろそろヤンデレキャラとかに変貌するのではないか?などと勝手に心配してしまうのは、自分だけなのだろうか。

我妻由乃や清姫、緋山茜などのようなのはやめて頂きたいが。

障害物は排除(殺害)するような奴らだし。

なんてのどうでも良いので、脱線しすぎた話を戻そう。

現在マミさんに腕に抱きつかれているわけであって、この状況をどうするかである。

「マミさん?そろそろ離れて貰えませんか?」

「私のこと嫌いなの?」

なんだコイツクソ面倒くさい。元からキャラ変化し過ぎではないか?

「嫌いじゃないから!ホラ、このままだとメシ食えないんだよ」

「なるほどね。私が食べさせて...」

「自分で食えるから!」

そしてトーストを咥えて、和真は逃げるように外に飛び出した。

ひとっ走りして気付くと、そこはいつもの通学路だった。

流石にこの速さについてこれはしないだろう。ふぅ、と息をついて歩き始めると

「どこに行っていたの?見失いかけたわよ。もう」

「うわおっ?!いつの間に?!」

知らぬ間に隣に立たれていた。完全に撒いたはずなのだが。

「どうして...ここが?...」

「それは....愛故にと言いますか...」

聞き取れないのでさっさと学校に行く事にした。既に校舎は見えており、あともう少しなのだ。

「あっ!置いて行かないでよ!」

「はいはい、置いて行かないから」

周りに誰も居なくて助かった。いたら間違いなく殺されているだろうから。まあ仮面ライダーブレイドを殺せる奴などこの世界にいないだろうが。

そんな調子で学校に着いた和真(とマミさん)であった。

 

教室に入ると、思ったより人は少なかった。むしろ寝てるやつが僅かにいる程度で、登校時間なのか?と思うレベルである。

半ば疑問に思いながらも席につく。

朝自習の時間になるが、一向に生徒が来ない。来てないわけではないが、クラスの半分もいない。何故だろうか。大方寝坊かそんなところだろうと思い、考えない事にした。

だが数分と経たない時に、突然下が騒がしくなり、教室のドアが蹴破られた。

「オラァ!てめえらおとなしくしやがれ!ぶっ殺すぞ!」

銃声と共に覆面を被った奴らが入って来た。人数は6人。ショットガンとサブマシンガン、ハンドガンが主装備だ。なんだ、ただの犯罪者ではないか。犯罪者?ただの?何でだ。何故和真が関わることは、ロクなことが起こらないのだろう。特にここに来てからは。ヨグソトースに犯罪者の学校侵入。うんざりだ。

「おい!手ェ後ろで組んで座れ!動くな!」

奴らが銃をぶっ放し、叫んでいる。女子達が悲鳴をあげ、男子も混乱している。

だが面白い。ロクなことが起こらないのなら、それを全てぶち壊す。どんな幻想だろうが、ぶち殺してやる。

それにこの程度、ナイトゴーントに比べればカス同然である。

犯罪者?ゴミクズと同じだ。和真は1人、立ち上がった。

「おい、クソ野郎。手ェ後ろで組めって言うけどよォ、それじゃあ身体動かす羽目になるぜ?ああァ?」

「なんだテメェ...動いてんじゃねえ!」

「うるさい。黙ってろ雑種」

ハンドガンを構えた奴らの1人にアッパーを見舞い、天井にめりこませる。それに驚いたのか、他の野郎もショットガンやサブマシンガンを乱射して来た。全く...それでは後ろに逃げた生徒に当たってしまうだろう。

バールを取り出して双剣のように構え、和真は一気に振るう。銃撃音が止んだとき、そこにはあったのは無傷でバールをクルクルと回す和真の姿だった。

「どうした?それで終わりか、犯罪者共。銃弾はないのか?もっとオレを楽しませろよ!それくらいしか能がねえだろう!ああァ?!」

「クソがぁ!お前ら、行くぞ!」

「「「「おう!」」」」

決死の特攻か。ナイフを取り出して、奴らが飛びかかってくる。

だが無言で繰り出した和真のラッシュが的確に奴らを捉え、殴り飛ばしていた。

「つまらない。弱すぎだぞ、ああァ?!多人数だから面白いと思えば、ゴミクズ以下の戦闘力だなァ!くはっ、これじゃあショッカーの戦闘員より弱え!弱すぎるんだよ!」

狂ったように笑い、気絶した奴らを踏みつける。まるでそれは、己の愉悦を見つけた神父のようでもあった。

教室の隅で怯える生徒を目の端で捉える。

「ひっ!」「か、鹿目だよな?」

「お前らァ...奴らは片付けたぜェ...早く次はないのか?蹂躙こそがオレの愉悦であると言うのに!くはっ、はははっ!雑種がァァァ!」

机を蹴り飛ばす。椅子を投げる。そんな狂った和真へと歩み寄る1人の少女がいた。

「ああァ?トモエ...マミか?何だァ?殺られにきたのかァ?」

だが予想に反して来たのは、頰の痛みだった。

「ああ...あ....ああああァァァァ!」

和真は絶叫する。正気に戻り目の前の惨状、自分の行った事、それらが頭の中に流れ込んで来たのである。何て事をしてしまったのだろう。これではただの蹂躙ではないか。イジメなど程遠い。

和真は崩れ落ちた。そんな彼を巴マミは、優しく包み込む。

「俺は....何て事を...」

「貴方は間違った事をしてない。少なくとも皆を助けてくれた事は事実。ただ...やり方が少し違うだけなのね。貴方に何があったのか、話して貰わないと。後片付けは先生にでも任せましょう。」

沈む和真とそれを支えるマミ。2人はゆっくりと教室を後にした。

 

そして2人は屋上へと来ていた。マミが屋上が良いと言っていたのだ。

屋上のベンチに腰掛け、マミが問いかける。

「カズマ、貴方何者なの?少し前にも同じ質問をした気がするけど」

「....何者って、鹿目まどかの兄だよ。それだけさ」

「そう言う事を聞いているのではないの」

「?」

「あの狂ったような貴方は見たことがない。これまで生きてきて、あんな貴方は見たことがないわ。」

「....ああ、アレか。偶になるんだよね、意識が飛んじゃうこと。その時の記憶が後から来るから、あまり良いもんじゃないけどねえ」

そう言って和真は乾いた笑いを浮かべた。

「よく分からないのだけど....つまり無意識下の行動ってこと?」

「....そだね。発作とでも思ってくれりゃ良いさ。いや、発作にしちゃ無理があるか」

空を仰ぎ見る。やはり世界はロクなことがない。こんな事まで起こるなんて。やはりマミさんを助けて運命を変えた事が原因なのだろうか。はぁ、とため息をつく。もう教室には戻れまい。

ならば放課後まで此処で過ごすとしよう。

そして和真は、ごろりと横になった。

「おやすみ」

寝る事にした。こんな時は寝るのが一番であろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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俺とさやかと暁美ほむら

どれくらい寝ていたのだろうか。目を覚ますと、既にあたりは暗くなっていた。発作の影響で、今だに頭が痛い。

「あら、起きたの?」

「ああ、って何これ?!」

「膝枕」

「いやそうだけどさぁ....まぁいいか。今何時?」

「7時よ?」

なるほど。それならこの暗さも理解できる。だがこれだと家に帰れないかもしれない。帰った所で怒られるのがオチだろう。

だがマミさんの家に泊まるのもいけない気がする。

「そういや俺マミさんって呼んでるけど、マミって言った方がいいかな?今関係ないけどさ」

「呼び捨てってなんか親しい感じがするわね。なんというか嬉しい...」

「あ、うん。じゃあ今度からマミって言うぜ」

とまあこんな事は今ぶっちゃけ関係無い。今後の展開に多少影響はあるかもしれないが。

体を起こし、仕方なく教室に戻ることにする。荷物が全て教室に置きっ放しなのだ。

教室で荷物を取って外に出、マミと共に家へと向かう事にした。

 

「ただいま...って居るわけねーか」

マミと別れ、家に入る。既に父親もまどかもリビングに居らず、寝ているであろうことが推測された。そこに居たのは、母親だけだった。

「カズマ、遅かったじゃないか。話があるから座りな」

「ああ」

多分朝の件だろう。1日授業サボったのもあるかもしれない。

そう思いつつ、椅子に座った。

「学校から電話が来たんだよ。武装した不審者撃退したんだってな?」

意外と褒められているのか。そもそも誰が話したのか、大方クラスの奴らであろうが。

「まぁ...そう言われてるなら良いけどさ。アレについて言われてないならまぁ、うん。」

「だけどな、その時のお前が壊れていたっていう証言があるんだよ。

狂っていたというのか、そんなところらしいが」

「そう....か。やっぱ言われたのか.....」

「カズマ、こっちは普通におまえを育ててきたつもりだ。まどかもそうだ、普通の生活を送っていたはずなんだよ。それなのに....なんでこんな事言われんだろうな?」

これには黙るしかない。「俺はカズマじゃない、和真っていう別の人間なんだ」と吐くのは簡単だ。だが、そんなことをする勇気は和真にはない。この家族を苦しませたくないのだ。

「なんかあったのか?マミと上手くいってないとか?」

「...違う、そうじゃないんだ...俺は...俺は.....」

後の言葉が言えない。「ここの子どもじゃないんだ!」と言いたくない。親の驚き、悲しみ、苦しむ顔を見たくない。家出同然の感じでこの世界にきたのに、言える立場ではないだろうが。

「まぁ今言えとは言わないさ。後で話してくれても良い、けどいつかは話してくれると嬉しいよ」

「ああ....そうだな....いつかは...ね。ここに居られるのも、そう長くないんだがな」

「それってどういう...」

「いや、なんでもないさ」

それだけ言って和真は部屋へ向かった。親の顔をできるだけ見ないように。自身の秘密を知られ、怖がられるのは嫌だった。本当の親じゃない人には特に。

そしてその日は何も考えずに寝た。

 

次の日になり、また次の日になる。毎日が何もなく繰り返される。

ある日はまどかが沈んで帰ってきたり、またある日はさやかが遊びにきたりした。

何日目だろうか、その日も普通に学校だった。

休み時間の時、教室に1人の少女が入ってきた。

「失礼します。鹿目カズマ、という人はいますか?」

「オイ鹿目、どういう事だよ!なんで下の学年の暁美ほむらがここに居るんだ?しかもお前に用とか!」

クラスメイトの1人(剣崎とかいうらしい)が言ってくる。

騒ぎすぎだ、喚き立てるな。

「は?知らねーよ。暁美ほむらァ?暁美ほむら?!」

振り向くと、やはりその少女は暁美ほむらだった。声で少女とは認識できていたが。斎藤千和さんのファンなら気付くべきであった。

確かにルッキーニは分かりにくいが。

「鹿目先輩、すいません。用があるので来てもらえませんか?」

「はぁ...」

重要な用事でもあるのだろうか。時間を操る魔法少女直々にお出ましとは。そして後をついていくと、ある渡り廊下のところで止まった。

振り向き、彼女は口を開いた。

「あなたは何をしてくれているんですか。時間の流れに狂いが生じているんですが。死ぬはずの人が死なない所為で、所々がおかしくなっているんです」

「死ぬはずの人...だと?命を軽く見過ぎだぞ!そんな軽くねえんだよ!人の命はよ!」

「ですが、狂いが生じているのは事実です」

「ほう?例えば何だよ?」

「佐倉杏子と巴マミ。この2人です。」

「さやかは問題ないのか?」

「彼女は既に手遅れです」

なるほど、もう魔法少女になってしまったのか。

「クソが!で、佐倉杏子と巴マミに何かあるのか?」

はぁ、と溜息をついて暁美ほむらは続けた。

「本来外部から来るはずの佐倉杏子。これまでの《時間》でもそうだったのに、この世界で急にこの中学校に通うようになっている。巴マミもあなたが助けた所為で、まどかの魔法少女に対する更なる憧れの的になったんですよ。」

「だからどうした?てか魔法少女って何かなー」

和真のセリフに息を飲む、暁美ほむら。言ってしまった!という顔をしている。そう、彼女は魔法少女の存在を和真の前で口にしたことは無いのだ。

「だって!だって!これじゃ.....」

「鹿目まどかは魔法少女になってしまって、助からない。とでも言いたいのか?」

「.....何故、あなたが....あなたは何者なんですか?」

「さあねぇ、通りすがりの者じゃないのかなぁ」

「嘘!まどかが魔法少女になることを知っているのは、この世界で私1人のはず!」

「おいおい、自分1人が特別だとか思うなよ?それにお前が魔法少女になったところで、アレには勝てないんだ。」

「アレっていうのは?」

「何だろーな!じゃあ俺戻るから」

立ち尽くす暁美ほむらを置いて、和真はさっさと教室に戻った。

 

そしてその日の放課後、和真は美樹さやかの家を訪れていた。

場所は当然まどかに聞いたのだが。最もマミに気付かれるのが一番心配ではあったけれど。

ピンポンを鳴らすと、時間を置かずにショートカットの頭がひょこりと現れた。

「あれ?先輩じゃないですか、どうしたんです?」

「うん、ちょっと聞きたいことがあってさぁ」

「あーそこで聞くのもなんですし、上がってください」

「悪いな」

で、上がらせてもらったわけだが。マミの時とは違う部屋の感じに、

少しばかり驚く。別にどうこうするわけではないが。

お茶を運んできてお互いの所にコップが置かれた所で、和真は肝心の話題を切り出した。

「それでだ、さやか。実は聞きたいことがあったんだ」

「うん、さっき言ってましたね。何ですか?」

「ソウルジェムって聞いた事があるか?」

沈黙。なぜ知っているのか、という表情だ。

「.....それをどこで知ったんです?」

「そうだなぁ、そう例えばだ。例えばの話」

「(コクコク)」

「俺がこの世界じゃない所から来た人間で、全てを知っている奴だって言ったらどうする?」

「.....つまり異世界の人だとしたら、という事ですか?」

「そう。どう思う?」

「驚きますけど...なんかカッコいいですよね。全てを知っているのって」

「....なるほど。カッコいい、か。仮に俺がその全てを知ってる者だとして、ソウルジェムって聞いたことあるかい?さやか」

そして、若干観念したような表情を浮かべたさやか。逃げられないと思ったのか、ぽつりぽつりと話し出した。決して脅したわけではないので、あしからず。

所々抜けているところはあるが、さやかの話を聞き終えたので。

「なるほどね。んじゃ、ソウルジェム見せてみな」

「どうぞ」

さやかの手にのるそのソウルジェムは既に黒いところが大半を占め、

光る所はあと僅かだった。

「これじゃマズイな。さやか、おまえ一回暁美ほむらからのグリーフシード、断ったろ?」

「....ふふ、よく分かるんですね。さすが自称全てを知ってる者なだけありますね。」

「ああ、そうさ。それと、悪いがこのソウルジェムは壊させて貰うぞ。」

「えっ.....」

まずは自身とさやかの指に指輪をはめる。形は当然給料3ヶ月の方に近いが、能力はウィザードリングに近いモノである。

そしてソウルジェムを右手で握り、超人の如き握力でぐしゃりと潰した。黒と水色の光が溢れ出て、部屋を満たしていく。だが同時に別の現象も起きていた。

『『コネクト』』

という音声と共に、黒と水色のそれを塗りつぶすレベルの赤い光が、指輪から放たれたのだ。

「まっ...眩しい!」

「やったぞ、発動したぞッ!」

その全ての光が消え去ったとき、そこには先程までのあまり元気のないさやかではなく、ウェイクアップフィーバーなさやかが居た。

要するに回復したのである。

「あれ?ソウルジェム消えたのに....わたし生きてる?」

「ふんふん、俺も自信なかったんだがなぁ....まさか発動するとはな」

「どゆこと?」

「うむ、では説明しよう。先程までソウルジェムの中にさやかの魂が入っていたんだが、それがそろそろ違うモノ....つまり魔女のそれに変化しかねない危ない状況だったんだ。んで、それじゃあマズイなと。

んで潰したわけだ。」

「はい、しつもーん!」

「なんだ?」

「この指輪は何ですか?あの....結婚指輪とかじゃないですよね?」

やはりそう言われるか。仕方ないのだが、これは否定しづらい。

「まぁうん、違うと言えばそうなるし、それが今重要なんだよね」

「というと?」

「さっきソウルジェム割って、さやかの魂は消えるはずだったんだ。けど今は、その指輪で俺の魂がお前のに接続されているというのか.....」

「えーとつまり、先輩の魂と私の魂を共有しているってことなんですか?」

「うーん、なんていうのかなぁ....厳密にはお前自身の魂今ないんだわな」

「へ?」

あまりそう驚かないで頂きたい。確かに魂ないとか言われれば驚くだろうが。

「俺の魂がお前の魂でもあるというべきなのかな。俺の1つの魂を、さやかと共有しているってのが正しいか」

ボンッ!とやかんの如き音がした(と思った)。見てみると、さやかが

顔を真っ赤にしている。やはり魂の接続共有なんてのは、やるべきではなかったのかもしれない。

「さやか?問題あったら違う手もあるから、そっちにする?」

「あの、いえ、問題ないです。なんか恥ずかしいですね...魂を共有してるなんて...」

「そうかなぁ....まぁ用事は済んだし俺帰るよ。あ、絶対その指輪外すなよ!絶対だからな!」

そして和真が帰った後、さやかが両親から薬指の指輪について聞かれることになるのはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ヤンデレって怖いよな

さやかのソウルジェムを壊し、魂をコネクトして和真は家に帰った。

珍しく親にバレずに部屋に入ると、ベッドの上に白い小動物がちょこんと座っていた。

「どうした、キュウべえ。何か報告でもあるのか?」

「はぁ...まったく鹿目カズマ、君はなんて事をしてくれたんだ」

「なんて事、とは?」

「美樹さやかの事だよ。彼女が魔女になる運命は避けられなかったはずなんだ。佐倉杏子も同時に消えるのが、本来のシナリオのはずだったのに....」

なるほど。つまりこの小動物はシナリオが書き換えられたことに、怒っているわけだ。実に単純な野郎である。

「あのな、インキュベーター。運命ってのはね、それに抗い、書き換えてこそ意味があるんだよ。ま、お前らみたいなヤツには分からないだろうがな」

「....前から思っていたんだけど、鹿目カズマ。君は何者なんだい?全てを既に知っているような感じの口振りだ。かと言って暁美ほむらとも違う。何者なんだ?」

ここの世界に来てからその質問は何回目だろうか。毎回はぐらかして来たが、こいつには答えても良いかもしれない。どうせこの世界からは、もうすぐおさらばなのだから。

「そうだなぁ....通りすがりの仮面ライダーとでも言うかなぁ.....」

「そういう意味じゃない、もっと違う意味でだよ。君は...鹿目カズマじゃないだろう?」

やはり見抜かれていたか。こいつなら見抜くだろうとは思っていた。

「ああ、そうさ。俺は...いや、今は言わないでおこう。」

「何故?」

「どうも聞かれてるらしい。俺たちの会話がな....」

ゆっくりとドアを開けると、「ふぎゃ!」という情けない声と共に、額をおさえたまどかが現れた。

「ってて....あ、あはは....コンバンワ」

「コンバンワ、じゃないぞまどか。寝なきゃ駄目だろ?」

「まぁうん、だけどさっきのお兄ちゃんがお兄ちゃんじゃないってどういう...」

「あーもう、それに関しては後で細かく説明するから!とりあえず寝なさい、寝ないと成長しないぞ?」

「.....分かった、今日は寝るよ」

そうしてまどかを部屋に帰し、再びインキュベーターと向き合う。

「で、どうするつもりだ?俺を別の世界に送るのか?それともヨグソトースに差し出すか?」

「別に僕に出来ることは何もないよ。ヨグソトースとは面識はあるけど、何かできるわけじゃない。当面は何もしないよ。」

「そうかよ。お前も別の世界じゃツインテのロリなのにな。ったくよォ.....」

「どういうことなんだい?」

「さぁね?お前の知る事じゃないさ、インキュベーター。せいぜい暁美ほむらに殺されないようにしろよ。」

「いや何回も殺されてるから」

それだけ言ってインキュベーターは、窓からひょいと飛び降りた。

今夜はゆっくりと熟睡出来そうだと思った。

そして夜は更けていく。

 

次の日になり、予想通り朝の迎え的な感じでマミがやってきた。

だが予想に反した奴が1人。美樹さやかである。何故いるのだろうか。

「おはよ...って何でさやかが?」

「えっ....それは....居た方が良いかなぁって...」

「あたしは付き添いな」

「あらぁカズマ....随分と好かれているのね....」

かなり目が怖いマミであった。その感じは、ヤンデレの域だと思うのは和真だけなのだろうか。

「あ、あはは....偶然だろう?後輩から好かれるのは良い事じゃあないか?作者は後輩から呼び捨てされてたらしいけどサ!」

「そんなこと聞いてないの....あの娘のあの目、明らかに貴方に向いてる目よね?何があったの?」

「いや、別に何もないよ!昨日確かに家行ったけどさ!」

「....何で、私を置いていったの?寂しかったのに....」

そろそろというか、もうヤンデレではないか?こんなになるとは思ってなかったのだが。まあ指輪がバレてないのが幸いであろう。

こちらも手袋をして誤魔化しているわけだし。

「まぁまぁ、そうならないそうならない。ご飯出来てるし、佐倉さんも美樹さんも上がって。コーヒーくらいは出せるからね」

なんて言いながらも割り込んでくる父親。今回はかなり助かった。

あのままだとバレかねなかったので、命拾いのレベルである。

そして既に上がっているマミも合わせ、和真とマミと杏子、さやかで

テーブルを囲むことになった。父親はキッチンに立っているので、ほぼその点外野に等しい。

「じ、じゃあ、いただきます。」

「いただくわ」

残りの2人はコーヒーを飲んでるだけ。なんだよこれは。

食事の間もマミからの視線がきつく、食べるのが大変だった。

なんとか食べ終えて、いざ出発となった。

 

通学路の途中、左腕にぴとりとくっつくさやか。右腕に抱きつくマミ。しかもちょくちょく睨み合っている。

「あのさ...なんでそう睨み合うかなぁ....」

「仕方ないでしょう、あの娘が離れないからよ!」

「あたしは先輩を支えてるだけだから!」

「てか先輩、あんたさやかに何したんだ!さやかは....」

流石にイラっときたので。

「はい静かに!静かにしないと俺、先に行くからな。」

「「「ごめんなさい」」」

3人が謝る。よろしい、それで良いのだ。ただでさえ周りが殺意をタイプフォーミュラにしているので、それに耐えるのもキツイのである。

そんなこんなで学校に着いたわけだが。

 

「んじゃ先輩、また後で...」

「じゃーな、先輩」

ついでにほっぺにキスしたさやか。昨日の一件で好感度上がってしまったのだろうか。処置が必要だったとは言え、流石にありえ....

と、そこに鬼が居た。

「どういうことかしら、カズマ?」

「あ....こ、これには意味がっ!ちょ、おまっ!?」

ナイフが空を切る。いつの間に隠し持っていたのか、という疑問と共に先日見た『恋愛暴君』の緋山茜を思い出してしまう。

アレはガチなヤンデレであった。確か声は沼倉愛美だっただろうか。

「待てよ、おい!おまえキャラ変わりすぎじゃないか?確かにヤンデレ感が何話か前からあったけどさ!っとぉ!」

今度は二本投擲され、イナバウワー宜しくかわしていく。

「吐いて貰うまでやめないわよ」

「マミちょっ....学校だからな!?他の人に当たるぞ!」

「大丈夫、貴方にしか当てないから」

「怖え!なんだよ....っとまたか!」

三本同時の投擲を、今度はそれぞれの指で挟むようにキャッチする。

それをズボンに差し、教室へと逃げ込む。

「よ、よう!おはよう!」

「「「「あ?」」」」

どうしたことだろう、全員ヤクザのようになっている。昨日まで普通だったではないか。

「どうしたんだよ、お前らおかしいぞ?」

「鹿目テメェ、マミさんだけならず、さやかたんにまで手を出すとはなぁ.....」

「さぁ、お前の罪を数えろ!鹿目ェ!」

「絶望がお前のゴールだ、死ぬがいい」

「は?意味わかんねーよ!」

転げるように教室から出ると同時、クラスを確かめてみると。

《8年93組》

なんだこれ。こんなクラスあっただろうか?だがよく見ると、《3年13組》を上書きしたものであることがわかった。

これならば納得である。だが現状は変わらない。

アサシンマミにバーサーカー複数に対処せねばならないのだ。ここは

いっちょ先生に協力を求めよう。と、偶然にも通りかかった先生がいた。まどか達の担任である。

「あ、すいません!助けてください!ちょっと今皆おかしくなってて...」

「はあ、別におかしくないと思いますよ?普通に歩いてるだけじゃないですか」

「へ?」

見やると、確かに歩いてるだけである。先程までのバーサーカーとアサシンはどこに行ったのか。マミだけは違ったが。

「では遅れないようにしましょうね」

立ち去ると同時、彼らが再び飛びかかってくる。

何故だろうか、この世界はロクなことが起こらない。特に急に変なことが起こる。もう嫌である。そろそろ最終回に飛んでくれないだろうか、などという望みも効果はないのだ。

「あ、そうだ!」

ふっと手を空に突き上げると、そこに飛来したのは赤いカブトムシ型のアイテム。カブトゼクターであった。

「変身」

『HENSHIN』

音声に続き、和真の体がアーマーに包まれる。マスクドフォームである。これに傷をつけられる者などいない。

ゆっくりと彼らに向かい合い、飛びかかるバーサーカーに腹パンを叩き込んで行き、気絶させていく。

だが、マミだけにはこれが効かないであろう。

ジャックザリッパーよろしいスピードを出しているのだ。あの巨乳で

よくスピードが出せるなぁ、などと思ってはいけない。

今の目標は彼女に落ち着いてもらい、和真自身の言葉を理解して頂くことなのである。

「キャストオフ」

『CASTOF』『CHANGE BEETLE』

キャストオフしてライダーフォームへと変わる。巴マミタイプスピードを抑える為に、やるしかないのだ。

「クロックアップ」

『CLOCKUP』

全てが低速化した。ほとんど動いていない。だが時間が遅くなっているのではない、和真が加速しているのだ。その中を動いてマミへと近づく。そしてマミを抱え、屋上へと来た。

『CLOCKOVER』

変身を解き、マミに向かい合う。いきなりの屋上に驚きを隠せていないマミ。

「ここならゆっくり話せるだろ、マミ」

「...どうして...いえ何が....起きたの?」

「いや確かにそりゃわかるけど...人の話聞こうや」

「そうよ!カズマ貴方、説明してもらえるんでしょうね!?」

「ああ、分かってるよ。説明するから....」

そして和真はゆっくりと昨日の事を話し出した。

 

話し終えて、マミはうーんと悩んでいる。

「理解できた?」

「一応理解はしたわ、でも許せない」

「ですよね!」

指輪の件に関しては遠回しにぼかして言ったので、なんとか殺されることはないだろうが。ただ問われるのは、時間の問題であろう。

「なんで貴方彼女の家に行こうと思ったの?」

「またそこから?!」

「そうよ、なんで?そもそも貴方言ってないはずの事を色々と知ってる。教えて、私になら言えるでしょう?妻なのだから」

「まだ婚約とか言ってた気がするけどな......まぁそうだな....理由なら簡単さ。俺は全てを知ってるからだよ。」

「はい?何を言ってるのかしら...あいつに変なこと吹き込まれたとか....」

「違う違う!だからなぁ...あーもう、良いよ言ってやるよ!」

「何を?」

「俺はな、ここの世界の人間じゃないんだよ。鹿目カズマとも関係ない、八坂和真っていう別の人間なんだ。だから....」

「カズマ、発想力豊かになったわね」

分かってもらえていない。別に理解されようとは思わない、ただ一度の敗走もないし、ただ一度の勝利もないのだが。

「ああ、そうだよ。俺は発想力豊かだろうさ。だけどな、違うんだよなぁ...まあそのうち話すよ」

「貴方の妄想を?良いわ、全部聞いてあげるわよ」

また変な風に理解されていないか。ワルプルギスの夜がくるのもそう遠くないと言うのに。

 

 

 

 

 



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切り札のK/世界にはいつだって希望がある

結局その日の放課後、帰る時になってしまうと全てが元通りになっており、何事もなかったかのように1日は終わりを告げた。

まったく何がどうなっているんだか。

家に着き、やはりというかさっさと寝た。装備の点検はする必要はないし、実際やる事はないのだった。

 

また数日が過ぎた。変えてしまった運命の歯車はそのまま回り続けていた。マミとさやか、杏子は生き残り、まどかも魔法少女に更に憧れるようになっていった。暁美ほむらから再度の忠告を受けたが、無視をした。

そしてある日、鹿目家のカズマの部屋に彼女達(暁美ほむら抜き)+和真と小動物が集まっていた。どうもワルプルギスの夜がやってくるのが、明日らしいのである。

司会を買って出たさやかが声を上げた。

「今日は集まって貰ってありがとうございます。1名金髪の変な人がいる気がしますけど、進めましょう」

「あら、青い髪の変な人がいるわね」

早速言い争うな、少女達よ。問題は他にあるだろう、ワルプルギスの夜とか戦力の低下とか。

そう...実はさやかのソウルジェムを壊した後、彼女は魔法少女ではなくなってしまったのだ。それに伴い、明らかな戦力低下が魔法少女サイドで起きていたのである。

「それよりも...あの、話し合うべきだと思うんですけど」

「確かにまどかの言う通りだね」

「そうね、今は話し合いましょう」

などと言いながらもお互い睨み合っている。そろそろやめて頂けないだろうか。

「暇だなぁ、キュウべえ」

「そうだねぇ...お菓子ある?」

「クッキーくらいならあるぜ、ほらよ」

結果的に部屋の隅でクッキーをつまんでいた和真とキュウべえは、出番がなくなってしまったのであった。

 

そんなこんなでぐだぐだに時間だけが過ぎていき、気付けば午後6時を

まわっていた。流石に長居もアレだし、遅くに帰すのもいかんだろうと思い、帰ってもらうことにした。

マミだけは家まで送っていけと聞かなかったので、仕方なく送っていく羽目になったが。

やっとマミの家から帰宅し、寝られると思えばそうでもなかった。

「やぁ、鹿目カズマ」

「....なんでまだ居るんだよ、ほむらの前につき出すぞ」

「酷いなー何回殺されたと思ってるんだい?」

「知らん。だいたいキュウべえさんよ....お前ここ家だと思ったんじゃねえだろな?」

「ここ僕のホームだお」

「よし今投げ捨ててやる待ってろ」

さっとその尻尾を掴んで、和真は思いっきり投擲した。全開の窓から投げられたインキュベーターは、綺麗な直線を描き、飛んでいった。

多分アレはビルか何かに当たるんだろう。

今夜はすっきりと眠れそうな気分である。

 

翌日になり、さっさと着替えて下に降りた。テレビでは速報が流れており、キャスターが焦るように喋っていた。やはり台風や大雨やらくるらしい。

「今日は仕事休みだってさ」

「そうかぁ...なんかさっき放送入って、町内の人たちは避難しなさいって言ってたよ」

親達が不安げな表情を浮かべて言い合っている。昨日のぐだぐだな話し合いは意味を成していないが、情報だけは確かだったようだ。

大方インキュベーターが情報でも流したのだろうか。そんなことは今はどうでも良いが。

「まどか、カズマ、避難しなきゃいけないらしいから。出よう」

「うん....わかった準備してくる。」

「やれやれ...避難かよ....(避難する必要なんかねえのに)」

仕方なく部屋に戻る。自分の荷物などリュック1つである。この世界では学校指定のヤツばかり使っていたが、自身のリュックもあるのだ。中身は出してないので、背負うだけで済む。まどかは女子なので

色々準備するかもしれないけれど。

しばらくするとまどかも準備が終わったようで、皆で避難所に行くことになった。

和真はバイクを押して、残りの3人は歩いて向かって行く。

 

一口に避難所とは言うが、この街の人口は意外と多い。避難所避難所と言ってつくったものは、結果的に体育館並みの大きさとなってしまっていた。だがこの場合はそれが幸いとなっていた。

全員が全員避難してきているわけだから、十二分にその機能を生かせていたのだ。

「避難....とか、要らねーのにな」

だが和真の呟きも、降り始めた雨に掻き消されていく。

4人で避難所の中に入りひと息ついていると、マミやさやか、杏子の姿も見えた。まだ戦闘はしていないのか。

さっそく打ち合わせといこう。

「ついに今日が来たなぁ」

「まあわたしは戦闘できないんだけどね」

「私はカズマを守るために戦うわ」

その必要はない気がする。むしろマミを守れると思う。状況によるが。

「暁美ほむら...彼女も来たのね...」

「なんで分かるんだ?」

「魔力を感じるのよ...相変わらずこの感じは嫌ね」

「はあ」

考えるな、感じろと言うヤツだろうか。無理がある。だが彼女が来た以上、ワルプルギスは近い。むしろすぐそこにいると言っても過言ではないかもしれない。

「行ってくるか」

「私も!」

「ダメだ!3人とも来ちゃいけない!....いやそれは言い過ぎか、でも見るだけに留めてくれないかな?」

「「「何故?」」」

「まぁ付いて来いよ、良いだろ?母さん」

「危ないからやめ...」

初めて赤の他人を、母さんと言ったかもしれない。よし、これであの家族にはお別れと言っても良いだろう。

そして3人を引き連れ、和真は外へ出た。さっそく雨が体に打ちつけてくる。

なんとか空を見上げると、何とも形容しがたいモノが浮かんでいた。

あれは間違いない。あれが、まどかを神にしてしまった魔女であろう。だから...

「ここで決着をつけてやる。変身!」

『Turn Up』の音声と共に、青い光のカードが現れて体を通過する。

そしてそこに居たのは青と銀の騎士。仮面ライダーブレイド。

「ここからあの魔女見えるか?」

「ええ」「まぁ見えるね」「見えるけどなぁ...」

「よし、ならオッケー。じゃあ初めてだけど、やってみるか!」

ラウズアブソーバーを開き、クイーンとジャックのカードを取り出した。

『アブソーブ・クイーン』『フュージョン・ジャック』

そしてそこに居たのは先程の姿のブレイドではなく、背中に翼が生えた騎士だった。装甲も金色が混ざっている。

「その姿は....?」

「説明する暇はないぜ。手っ取り早くやっつけねえと」

オリハルコンウィング(たった今命名)を展開し、和真ブレイドは暗い空へと飛翔した。

 

飛行に関しては割とすぐ慣れたが、問題はあの魔女であった。

何度も斬りつけてはいるが、なかなかに傷がつけられていない。多少は傷はついているのだが、大したダメージになっていないと言った方が正しいだろうか。

「いっちょ試してみますか!」

『ビート』『サンダー』『マッハ』の3枚をラウズ、剣崎一真も使ったことのないであろう技を発動する。

『ライトニングスマッシュ』のボイスと共に和真は加速。ワルプルギスの下へと潜り込み、拳を握りこむ。

そして、思いっきり殴りまくった。

「オラオラオラオラオラオラァ!」

マッハで繰り出される、雷を纏わせたラッシュがヒットするたび、ワルプルギスの体はどんどんと上空へと殴り上げられていく。

ちょくちょくほむらのランチャーやらタンクローリーやらが飛んで来たが、そんなものはワルプルギスを盾にして防ぐ。むしろダメージ受けて貰いたかった。

 

高度がどれくらいになったかわからない。周りにまだ雲があるのだから、少なくとも地球であろう。

下を見ると、見滝原の上空に未だにいることが推測できた。

だんだんと高度が下がり、はっきりとモノを見えるようになってくると正確にはそれが、避難所の上であることが理解できた。

(くそ、やべえなァ....キングフォームしか倒せる当てはないけど、変身したことないしなァ)

だが迷っていても進まない。キングフォームになることを決意する。

「キング、俺に力を貸してくれ!」

『エボリューション・キング』という音声と同時、13枚の金色のカードが出現して体の中へ取り込まれていく。

「.....っ....あ、ああああああああああ!」

叫び、なんとか痛みに耐える。輝きが収まった時、和真の体は青でも銀でもない別のアーマーに包まれていた。

金色の重厚な装甲に、各部にはアンデッドの模様の様なものが描かれている。

「なんだこれは....いやこれは剣崎の、あのブレイドのキングフォームか!やった!これなら....」

手頃なビルの屋上へ降り立ち、専用武器重醒剣キングラウザーを構えた。

そして和真の手には、5枚のカードが握られていた。

その5枚のラウズカードをキングラウザーへと読み込ませる。

『♠︎10・J・Q・K・A』

『ロイヤルストレートフラッシュ』

ワルプルギスに向かって5枚の光のカードが現れる。ゆっくりと剣を構え、和真は一気に振り抜いた。

キングラウザーから放たれた光がカードを通り、さらに巨大な光の奔流へ姿を変える。

「吹っ飛べぇぇぇぇぇぇぇ!」

光の奔流がワルプルギスへ直撃し、シールドと思わしきものを破壊し、ボディを貫通した。光線は曇天をも貫き、街に一条の光をもたらした。そして和真は光が出る限り、剣を薙いだ。

魔女を切り裂くように、この街に光をもたらすために。しかしそれも数十秒間しか続かず、変身が解除される。

けれど、それで良かったのだ。ワルプルギスは爆発四散し、空から太陽の光が降り注ぐ。

「やった....か。初めてにしちゃあ、上出来か.....」

思ったよりキングフォームの反動が大きかったようで、身体がふらつき、数歩あるいて倒れ込んでしまう。

「カズマァァァァ!」「ったくよォ...さやかの奴なんでこんな」

「いいから運んでよ!お願い!」

3つの声が聞こえる。だがそれも遠くなっていく。

(やっぱ無理あったかなぁ.....)

それを最後に、和真の意識は途切れた。

 

目を覚ますと、そこは知らない天井だった。ゆっくりと体を起こす。

隣にはマミが居る。

「ここは....?」

「目を覚ましたのね。3日も寝てるから心配したのよ」

「はあ、3日ね....」

「全て天気も元通りになったから避難は解除されて、皆家に帰ったの。で、貴方も家に運んだのよね」

「ありがとな....」

これでまどかも魔法少女になってないはずだ。少なくともあの時、ピンク色のあの光は確認していない。

一応急ぎ足ではあったが、解決したい事は解決できた。

「そろそろ行かないといけないかもしれないなァ。」

「行くって...何処へ?しかもまだ医者からOK出てないのよ?」

「バイクは?」

「庭にあるけど....」

「了解」

ベッドから出て、アクセルで私服へと着替える。ちなみにこれを使っていると、キチガイでない限り、和真を捉えることは不可能なのである。

リュックを背負い、外に出る。

「待ってよ!まだ貴方....」

「ああ、そうそう。家族全員呼んできてくれ」

「あ、はい」

マミに鹿目家を呼びに行かせ、こちらはバイクを起動させる。

「「「どうしたの?」」」

ハモっている。どうでもいいことだが。どうせこいつらとはもう関係なくなるのだ、別れの1つでもしてやろうではないか。

和真はバットを取り出した。

「悪いな、お前ら」

瞬時に全員の頭を叩いた。このバット、メモリブレイカーといって使用者の望む記憶のみを、対象者から消せるのである。叩けば1時間は起きないので、安心だ。

そしてここで望んだのは、彼女達の鹿目カズマに関する記憶の消去。

「あばよ、鹿目家」

これで鹿目カズマの記憶が消えれば、自然と周りからもその存在は消えて無くなるだろう。さやかと杏子もそうなることを願おう。

再びディスプレイを操作し、今度はこの世界へ行くことにした。

「ウィッチーズの世界へ」

バイクのエンジンをふかし、和真は光の中へと消えていく。

その頰には一筋の涙が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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Wの戦争/少女達の空

ワルプルギスの夜を倒し、まどマギの世界を後にした和真。
彼が次に向かうのは1944年、戦時中の日本である。
そこは魔法少女とは違う、ウィッチと呼ばれる少女達が戦う世界であった。


ようやくまどマギの世界編終わりましたねェ....早かったような短かったような....

「まぁそうだな....うん。次がかなり心配なんだよなぁ」

何故?ウィッチーズでしょう?作者の趣味全開じゃないですか

「そうなんだろうけどさ....キャラが個性的すぎて喋りかけにくい....」

あーなるほど。それに1期は基本宮藤のそれぞれとの絡みですからねえまぁ頑張って下さいな

「はあ?!ちょっ...おま、投げるのかよ!?俺1人とかきついわ!あそこ女しかいねーしよ!」

そですね。コミュニケーション能力が問われますね

「くそがぁぁぁぁぁ!」

「「「英霊七番勝負、楽しみですよねェ!あとは宮本武蔵と沖田さんを(以下略)」」」

「当たらないからってそうなるなよ....」

作者も武蔵ちゃんや沖田さんは欲しいですよ。クイックがジャックと武則天とクーフーリンくらいじゃねぇ....

「作者なんで出張るんだよ!引っ込めよオイ!てかそんだけいりゃ充分じゃねえの?!」

「「「START YOUR ENGINE」」」

「もうさっさとやれよ.....」

 

 

 

鹿目家からカズマに関する記憶を削除し、次の世界へと向かった和真。前回同様の光の中へ突入したのだが、今回は何かが違った。

具体的にいうならば、前回までは光だったものが、今回は霧にいるような感じであった。しかもただの霧ではなく、所々で電流が流れている。

「なんだ...これ?目的地は示したはずなのに....」

そう言ってから、和真は1つの結論に至った。もしかしてだが、いやもしかしてというより、かなり自信を持って言える。

「やっべ.....ストライクかブレイブか言ってねえんだったなァ....」

現在アニメ化されているのはストライクとブレイブ。なお両方、ウィッチーズという名前がついているので、どっちかを選択しないと行けないのだろう。

しかしまぁなんと言うのか、どっちにしろ「やっぱ魔法少女は最高だぜひゃっはー!」になってしまう気がしてならない。

作者は大丈夫だろうか?捕まらないことを願うが。

そんなこんなでも選択まで時間はない。そして、和真は選んだ。

「ストライクウィッチーズだッ!ブレイブ全部見てねーしな!くははは!」

途端に再び、あの光が体を包む。結局眩しさのあまり目を瞑ってしまう。そして...

 

「うーん....ってて、どこだよここ?結構暗いなぁ」

またこの感じであった。予想だが、どうせまた入れ替わってるのだろう。起きたら入れ替わってた、というのは前の世界で体験済みである。

だがこの感じは、前と完全に違う。おまけにこの場所はかなり暗く、周りが見えない。懐中電灯を取り出してつけてみた。

一気に視界が広くなる。パッと見たところ、倉庫のようだ。

「ん?もしかしてこれ、ストライカーユニット...かな?」

見たことのあるソレは、やはりアニメでも小説でも活躍しているストライカーユニットであった。

「....待てよ、ストライカーユニットあるってことはここ....格納庫か何かだよな?てか俺の服はどうなって...」

自分の服を照らしてみると、教科書などでしか見たことのない、戦時中の服装をしていた。ご丁寧に帽子まである。

「てか俺のバイクどこ行った?!アレないと移動もクソもねえんだがな!」

格納庫(?)の中を歩き回ると、端っこのほうに、縛られて置いてあった。なんとも酷いことをしてくれるものである。

「ったくよォ...前の世界の方がよかったじゃんか....ンだよ、起きたら格納庫でした!とかねえだろ...」

ぶつぶつ言いながら縄を解いていると、突然の衝撃。ぐらんっ、という揺れで体が壁に叩きつけられた。

だがこの揺れ、海の波で起きるものではない。素人でも分かる。

海?格納庫。揺れ。考えるんだ八坂和真、予想するのだ。

「まさか物語の最初の戦闘じゃ...」

全部言い終える前に、天井に穴が開いた。砲撃音も聞こえたので、戦闘で間違いないだろう。

そしてその天井の穴から落ちてくる人影が。助けねば。

「よっと!危ねえなァ、まったく...っとこいつ、宮藤芳佳じゃねえか」

落下してきた少女は、左右のくせっ毛というのか、はねている髪というのか、特徴的な髪をした少女であった。それに和真はこの少女を知っている。アニメで見た勢だが分かる、こいつはストライクウィッチーズの主人公の宮藤芳佳であった。

この後宮藤がストライカーユニットを履いて出撃するのが、本来のストーリーなのだが、意外にも彼女は気絶している。どうせすぐ起きるだろうが。

そして色々と考えた結果、結論に達した。ここは赤城の中であり、現在外ではネウロイと戦闘中だ。坂本少佐が戦っているはず。

「ネウロイと戦闘中なんてした事ねえけど、やってみるか!ま、時間稼ぎくらいにはなるだろ(潰したい)」

宮藤を横たえ、和真は倉庫を後にした。

艦内を走るのは得策ではないが、致し方あるまい。なんとか迷わずに外にでると、空母のデカい甲板が目に入る。砲撃音とネウロイの放つビームも認識できた。

「過去でやって良いのかなァ....ま、作戦なんか動いてから考えれば良いんだから良いよな!」

勝手に納得し、「変身!」と叫ぶ。

仮面ライダーブレイドに変身し、すぐさまノーマルからジャックフォームへと変わる。

空の戦闘は、ジャックフォームしか対応できないのだ。

「坂本少佐ァァァァ!どけぇぇぇぇぇ!」

「なにっ?」

オリハルコンウィングを展開して飛翔、ブレイラウザーを振りかぶり、ネウロイへと叩きつけた。

だがまあ坂本少佐が驚くのも無理はなかろう。いきなり誰かも分からないヤツにどけと言われ、しかもそいつが剣でネウロイに斬りかかるとか。

あ、なんだかんだで坂本少佐も剣使っていたか。

「無事か?少佐」

「あ、ああ。にしてもその姿はなんだ?見たことがないが...新しいユニットなのか?というかお前は....?」

「説明は後でしよう。それと今格納庫で宮藤芳佳が倒れている。俺が時間を稼ぐから....とその必要はなかったか」

空母赤城の方をみると、飛行甲板からプロペラの駆動音が聞こえてきた。離れていても聞こえるほど邪神は耳が良いのだ。

「坂本さぁぁぁぁん!」

「宮藤ぃぃぃ!ってどこに飛んでんだぁ?!」

感動的だとでも思っておくか。にしても宮藤は起きるのが早い。恐らく主人公補正であろう。だがネウロイは止まってはくれない。

着実に艦隊も壊滅へ向かっている。501はあと15分くらいで着くはずだが、そんなもの待ってくれはしないのだ。

とりあえずこの敵を倒さない事には、何も始まらないのである。

『サンダー』『スラッシュ』『マッハ』をラウズし、『ライトニングスラッシュ』の上位技とでも言うべき技を発動する。音声は『ライトニングスラッシュ』のままなのだが。

ウィングを全開にして加速、サンダーを纏わせたブレイラウザーを振るった。

「食らえええっ!シャイニングカリバーァァァァ!」

あまりセンスは無いので、別に気にしないで貰いたい。(アギトの武器の名前パクっただけ)

ともあれ、この斬撃は通常のライトニングスラッシュでは一撃だけのところを、マッハのカードで高速の多段斬撃と化している。

高速で振るわれる雷の剣は、確実にネウロイの体を切り裂いていく。

何度目の斬撃だか、ガキンッ!という音がした。見ると、それは多面体の物体...ネウロイのコアだった。

「これで決まりだ....オラァ!」

全力でコアを殴りつけた。銃弾如きで壊れるコアなので、邪神のパワーを持つ和真の拳ならば一撃で壊せるようだった。

 

ネウロイは大空に散った。艦隊もある程度は生き残っている。

坂本少佐、宮藤芳佳は未だに空にいるが、まあ良いだろう。宮藤にとってはこれが初飛行なのだ。しばらく飛んでいても良いと思う。

ふと複数のプロペラ音が聞こえ、その方向を見る。

すると、編隊を組んだ10人ほどの少女達が見えた。

「あれだな....正式名501統合戦闘航空団だっけか、ストライクウィッチーズって」

「そうだ。宮藤をそこに連れていくのが目標だがな...」

「坂本少佐?!」

いつの間にそこに居たのだ。気付かなかった。学校生活で少し衰えただろうか。驚く和真に、はっはっは!といつもの笑い声を上げる。

というかまだこちらはブレイドの姿のままなのだが。

「誰かも分からないのに話し掛けて良いのか?攻撃するかもしれないんだぞ?」

「まさか。あんな風に戦ってくれたのに、こちらを攻撃するはずがないだろう?」

よくお分かりだ。確かに攻撃する意思はない。その点、坂本少佐はヒトを見る目があるのかもしれない。面接官とかオススメするが。

宮藤はまだ上手くは飛べないらしく、あーれーなどと言いながら飛んでいる。ダメだこりゃ。

「で、宮藤を補充要員として連れてきたんだろ?俺も補充要員として

置いてくれないか?」

「何故だ?助けてくれた事は事実だが、まだ正体が分からんだろう」

「あーそういえばそうだな。基地に着いたら明かすよ」

「そうか...ミーナ達が近くにいるんだ、ここで明かしても良いだろうに」

「いやぁそう言われてもな...海に落ちるぞ?」

「ああ...なるほど」

流石にいきなり補充要員になるのは無理なようだが、一応分かってくれたらしい。ウィッチとてストライカーユニットを外せば人間、空中でユニットを解除すれば海に落ちるのは分かっているのだ。

その後、坂本少佐が何かミーナに言い、宮藤を抱えて他のウィッチと共に基地まで飛んでいった。空母も後を追うように基地に向かい、結局和真は1人で寂しく飛ぶ羽目になったのであった。

 

仕方なく1人でふらふらと基地まで辿り着くと、格納庫の荷物はすべて下ろされており、バイクやリュックも半ば捨て置く感じで、滑走路に置いてあった。人の荷物をなんだと思っているのだ。

けしからんが、あまり言わないでおこう。やったのが誰か分からないので。

バイクを駐車場とおぼしき砂利のスペースに停め、リュックを背負い建物の中に入った。当然怪しまれると事なので、変身は解除したが。

「あれぇ?おかしいなァ....ここら辺で合ってるような気もするがなぁ」

場所をよく調べずに突入したので、案の定迷子になった。坂本少佐に待っててくれとも言ってないので、助けを求めようにもどうしようもない。しばらく歩くと声が聞こえ、慎重に進んでいくと、ある扉の奥から数人の気配と音声が。

「......ぜ、を....」

「....それは.....からでな....」

かなり途切れ途切れではあるが、坂本少佐と多分だがミーナさんの声であろうものも聞こえた。

(....誰だろ....まさか俺の話かなぁ)

なんて思いつつもドアへ近づくと、バンッ!といきなりドアが開け放たれた。

「ぐぺっ?!ってえなぁ....畜生誰だよ」

「何だ?畜生とは」

「.....すんません、気を付けマス....」

バルクホルンだった。顔がクソ怖い。何か言いに来ていたようで、こちらをひと睨みして、さっさと立ち去っていった。

中に居たのは、予想通り坂本少佐とミーナさんだった。

「あ、ども。お邪魔します」

「入室許可取ってないんだけど....」

「はっはっは!細かい事は良いだろう、本題に入ろうじゃないか」

「....はぁ...美緒あなたって時々、ものすごいテキトーよね」

「細かい事気にしていたら、部下との信頼関係も何もないだろう」

「....だからそういうところなのよ....まあ戦績は私達と同じくらいだし良いのかしらねぇ」

再度のため息を吐くミーナさん。リポビタンDをオススメする。

そして佐官のお2人がこっちを見た。

「で、美緒。この子誰なの?」

「そういえば誰なんだ?」

「美緒...あなたねえ....」

ミーナさんの視線に、はっはっは!と笑って誤魔化す坂本少佐。

そろそろ自己紹介した方が良かろう。

「あー自己紹介良いですかね?」

「まあ名乗るだけ名乗って貰いましょうか」

「坂本少佐には既に話はしてありますが、俺は八坂和真と言います。

補充要員の志願でやってきました。先ほどのネウロイ撃墜の際、覚えてますか?少佐」

「ああ、あの時のヤツか。合わないな、外見とやった事が」

「はあ」

「でもこう言っても、証拠がないわよ。美緒には分かっても、私には分からないもの」

なるほど。確かにそうだ、坂本少佐には補充要員志願を言ったが、ミーナさんには言ってないのだ。証拠、証拠とな。

「えーとつまり、補充要員足り得る実力を証明せよ。と?」

「ええ、そうね。そしたら考えてあげても良いわ」

ミーナさんの言葉が終わると同時、警報が鳴り響く。ネウロイ出現の

アレだ。この八坂和真、急に変な事が起こるのは慣れている。

「じゃあこの戦闘、俺1人で敵を倒したら、補充要員にしてくれるか?」

しばし考え込むミーナさん。そして渋々口を開いた。

「良いわ....ただし1人でね」

「やってやるよ」

数分の後、ストライクウィッチーズのメンバーが滑走路に集まり、和真はその先、滑走路の端に立っていた。

先程借りたインカムからミーナさんの声が聞こえる。

「ここに居るウィッチ全員で見てるから、不正したら撃つからね」

怖い。やはりキャラクターの変化はここでも起きるようだ。

もっとも不正もクソもない気がするが。

ふと海の方を見ると、黒い物体が高速で接近中。ネウロイだ。

「行くか」

ブレイバックルを取り出す。ベルトが巻かれると同時、和真は叫んだ。

「変身!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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Yの憂鬱/性別とは何なのか

滑走路の端、もう下を見れば海、という場所に主人公こと八坂和真は立っている。

先程の交渉で、1人でネウロイを殲滅すれば補充要員として考える、ということであの場はお開きとなった。

(この世界の軍は緩いので許してもらえるのだ)

その後すぐ警報が鳴り、場面が巡ってきたわけだが。

いくらなんでも、後ろで見てる=銃持ってユニット装着はないだろうと思う。別に構わないけども。

とはいえ、現在向こうの空から黒い物体、ネウロイがこちらへと侵攻中。

迎撃は和真が墜ちたら...になったらしいが責任は重大だ。

この場所、欧州の迎撃地点でもあるからだ。我ながらかなり言ってしまったと思っている。だが俺は謝らない!

ブレイバックルを装着し、『Turn Up』と同時、仮面ライダーブレイドへと変身した。

後ろで驚きの声が上がるが、無視無視。気にしていたら倒せない。

「さぁて、決めますかねえ」

ラウズアブソーバーにカードを読み込ませる。

『アブソーブクイーン、フュージョンジャック』の音声と共に、ジャックフォームへと変わった。

そして大空へと飛翔する。ネウロイより少し低く、 ちょうど刃が届くくらいの高さまで上昇し、ブレイラウザーのオープントレイからカードを取り出した。

『スラッシュ』『サンダー』の2枚をラウズ、『ライトニングスラッシュ』を発動させる。

剣を構え、ネウロイに向かって和真は加速していく。

「でりゃあああああああああ!」

ネウロイの下を飛びつつ、剣はしっかりと対象を斬り裂いていく。

尾の方まで飛んだところで振り返ると、綺麗にネウロイは真っ二つに

なっており、コア共々散った所だった。

「うわ凄え弱え、なんだよこんなんで銃弾無駄にしてんのかよ」

ぶつぶつと言いながらも滑走路へと戻る。降り立つと、直ぐにも坂本少佐が歩いてきた。ミーナさんも居る。

「やはり凄いな!これは補充要員決定だろう?なあミーナ」

「.....ええ、実力はそうだけど....」

「何か問題でもあるのか?」

「男だと思うんだけど」

「なるほど、そうか。女装でもさせるか?」

「え(なんだ、その男だと思えないみたいな発言)、て女装?!」

「うーんそれならいいかしら....でも部屋ないわよ」

「良いのかよ!?」

「そうか....相部屋でも良いやついるか?」

坂本少佐の声に沈黙する501。

(ですよねえ)

流石に男性恐怖症は居ないと思うが、初対面の男子と相部屋はそりゃ嫌だろうと思う。良いと思うヤツは当然いないか。

というか女装って何だ。男なのだが。

「んじゃ今は決まらんから、客間でも使っておけ。あとで連絡する」

「はあ」

そうして結局ネウロイ退治についてはあまり言われぬまま、戻ることになった。このウィッチーズ大丈夫なのだろうか。

 

夕方になり、案内された客間でゴロゴロとしていると、不意にドアを叩く音が。

「はーい、どちら様で?」

「坂本だ。入るぞ」

「はあ、どーぞ」

ドアを開け、坂本少佐を部屋に通す。

部屋に入ると直ぐに彼女は口を開いた。

「お前の入る部屋決まったぞ。えーと名前なんだ?」

「八坂和真ですけど....(言った気がする)」

「よし。八坂、お前は宮藤と相部屋になったぞ。明日からな。ああそれと、これは服だから着ておけよ?それ着ないと、ミーナがこの基地に置かないらしくてなぁ」

そう言って坂本少佐は服一式を置いた。どう見てもこれ、扶桑の女子の水着もとい服装だと思う。パンツじゃないから恥ずかしくないもん!とかいうのがあるが、これはそんな比ではない。

「これ女物じゃないか!なんでだよ!?」

「だから、これ着ることが条件なんだ。それに男っていうが、おまえ女に見えるぞ?」

「......嘘だろ」

「ホントホント。んじゃ朝それ着て、ミーナの部屋行くんだぞ?」

「ちょっ!?一生の恥だろ!ンなもん着られるかよ!」

とは言ったが、これを着なければここに置いてもらえないらしい。

女よりのこの顔は悩みだったのに、更にこうなるとキレそうだ。

しかし既に坂本少佐は去ってしまっていた。

もう明日ミーナさんに抗議するしか無いだろう。とりあえずサイズが

合わないと言って言い訳するか。

 

朝になり和真は起床と同時、扶桑の女子服一式を掴み、ミーナさんの

部屋へと向かった。

返品する為である。こんな物を着たら、精神崩壊しかねない。

惣流なんとかラングレーになっては元も子もない。主人公なので。

隊長室に辿り着き、ドアを開け放つ。

「すいませーん!八坂ですけど!って.....」

誰も居なかった。ここは隊長室のはずだ。昨日と同じ場所に来たのだから。

しかし誰も居ないようなので、戻ろうとしたところ。

「何か用かしら?」

「.....Oh,お、お邪魔してマス....」

後ろからミーナさんの声が。かなり怖い。

「退いてくれないかしら、通れないのだけど」

脇に避け、ミーナさんを通す。そして中央の椅子に腰掛け、彼女は切り出した。

「それ美緒に渡してもらったものでしょ?なんで着てないの?」

「いや、だってこれサイズ合わないし。そもそも俺男.....」

「それ着ないとここに置かないわよ?」

「いや...すげえ恥ずかしいんだけど。この顔で悩んだ事もあるのに」

「じゃあ整備員呼んで着替えさせてもらう?」

「結構です!着替えくらい自分で出来ますよ」

と言ったとき、再びドアが開けられた。

「ミーナ!八坂がどこかに.....あ、いるじゃないか。なんだ、まだ着替えてないのか?あと10分だぞ?」

「は?」

「10分経って着替えてなかったら、海に落とそうか...」

なんて恐ろしい事を考えてるんだ。鳥肌のレベルではない。

ここの世界の坂本少佐、下手すると母親より怖い。

「あーもう!クソ、覚えてろよ!」

「「はいはい」」

 

そして5分後。整備員呼ばないはずなのに、整備員呼ばれて無理矢理着替えさせられた結果がそこにあった。

「.....もう生きていけない.....」

「これは...思ったより女の子ね。意外と可愛いわ」

「だな。宮藤と同室でも問題あるまい」

「問題あるから!女だよこれじゃ!」

「「だってこれから女として過ごしてもらうんだから」」

何言ってんだろうか。それつまり、和真は女として過ごせと言ってるのも同然ではないか。

「やだよ!着替える!」

「でも補充要員、女性2人で提出しちゃったなぁ...」

「バカか!?」

ツッコミ入れてしまった。反射だった。

「何が女性2人だよ!男1人いるって!」

「じょ、冗談だから。あ、これなら...美緒ちょっと来て」

 

一体何を言っていたのか。こそこそと話し合っている坂本少佐とミーナさん。

「なるほど....それなら良いかもしれないな」

「でしょ?」

「.....で、何?」

「男の振りしてる女って事で!」

「......は?」

改めて何を言ってるんだ、この女性は。それは男装趣味の女ということか?ネロじゃあるまいし、そんな事しなくても....いや、これなら良いのか。

男の姿のまま、ここに居られるのだ。

「要は前の服のままで良いってことだろ?」

「そそ」

「っしゃあ!」

これでオッケー。とガッツポーズ取ったものの、男の振りということは、女扱いなのだろうか。風呂とかどうなるんだ。

聞こうと思った時には、既にミーナさんと坂本少佐は居なくなっていた。逃げたか。

士官にあるまじき行動だ。和真とて軍人ではないが。

もう前回の世界より無茶苦茶ぐだぐだになってきている。さっさと着替えて元の服へと戻り、ひとまず宮藤の部屋に向かうことにした。

後で整備員殴っておかねば。

 

ぶっちゃけ場所が分からないので、予想したところから部屋をノックしていく。

何度目かのノックで福圓美里さんの声が聞こえたので、ドアを開けた。

「失礼しま.......すいませんでした!」

マッハでドアを閉める。綺麗なお肌だった。発展途上の胸も最高だった。.....ではなく!

着替えの途中だったようだ。そういえばウィッチとして現役でいられるのは20歳以下だっただろうか。つまり小・中学生は問題なく現役ウィッチというわけだ。決してロリコンなわけでは無いが、だからルッキーニとクロエが似ているのはそういう

「ぐぱっ?!」

もたれかかっていたドアが急に開けられて思考が中断、吹っ飛ばされる。

ウィッチのパワーは何気に強いようだ。流石に邪神には劣るだろうが。

とにかくまずは挨拶からだ。

「お、おゔ....はじめまして....」

「はぁ、はじめまして?」

「なんか同室になったんでよろしく、と思ってね」

「え、えっ?!同室!?ここ1人部屋だよ?!」

「そこらへんは坂本少佐に聞いてくれよ。こっちも知りたい」

「聞いてくる!」

「いってらー」

まったく元気なものだ。早速部屋に入らせて頂くことにする。

案外中はシンプルだ。まだ家具もさほどないので、後々持ってくるのだろう。

床に寝っ転がった。

「はぁ....宮藤すげえ純粋だしなァ....なんか悪い事してる気分だなあ」

「にしてもこの世界、来たはいいけど何を救えば良いのかね....」

「親父の気持ちもわかる気がするなァ」

などとぶつぶつ呟いていると、福圓美....もとい宮藤芳佳が突入してきた。

「やっぱり坂本さん、同室だって言ってた!これから宜しくね、八坂さん」

「あ、そう....(八坂さんて、女って言いやがったのか?)。ま、宜しく」

「どうしたの?元気ないよ?」

「いや問題ない。まあこれから頑張っていこうな」

「うん!」

やれやれ、こんな純真な子相手に嘘をいうのは良くないと思う。だが真実を話すのも気は引ける。和真はため息をついた。

(間違った世界にきちまったなぁ....さっさと次のとこ行きたい)

そんなこんなで夜は更けていく。



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Oの乱入/少年の決意

次の日。朝は早く起こされる羽目になった。

正確には宮藤芳佳の寝相が悪く、和真の身体を蹴っ飛ばし、そのままこっちが眠れなくなったというのが事実だが。

まあとにかくそんな訳で、眠れないので外に出ることにした。

ドアを開ける時にギィ....という音がしてしまい、

「お、おはよ....」

「どしたの?早いね...」

ミスったか。起きてしまったようである。1人で出ようと思ったのだが。

「いや少し気分転換にね...」

「私も行くよ」

駄々をこねられると面倒なので、結局2人で外に行くことに。

廊下を歩きながら話す。

「えーと名前、なんて呼んだら良いかな?」

「私は宮藤芳佳。芳佳でいいよ」

まさか最初から打ち解けられるとは。やはり邪神のコミュ力恐るべしである。(嘘だ)

「えーと、八坂さん....だよね?下の名前って何なの?」

「え、下の名前.....?」

はて、どう答えたものか。現在一応私服を着ているが、薄暗いのでまあバレやしないだろう。にしても坂本少佐から聞いていないのか。

「....和真だ。」

「和真かぁ....男っぽい名前だね!」

「.....ははは、そりゃどうも」

喜ぶべきなのだろうか。男だと明かすのは簡単だ。

しかしコイツが他のヤツにしゃべって此処から追放、なんてことになりかねない。

この世界での居場所は、今のところ此処しかないのだ。

だが.....それもどうかと思ってしまう。

今回は前回と違い、既知の間柄ではないので、やりにくいところもあったりする。

いっそ別の世界に行くか?などとも考える。

「和真ちゃん?どしたの?」

「和真ちゃんて....どうにか出来ないのか?それ。なんていうかまぁ....」

非常に返答に困るのである。和真ちゃんて誰も呼ばないだろう。

リネットがリーネちゃんなのは分かるが。

(もう去ろうかな....精神的なダメージがきつい)

「女の子同士なんだから良いんじゃない?」

「アホか!いや....なんでもない」

「へっ!?」

「いや.....別になんでもないさ」

いつの間にか既に外にいたようだ。空を仰ぎ見る。

「行くかなァ....」

外に居たのも束の間、さっさと部屋に戻る。リュックを担ぎ、再度外へ出た。もう行こうと決めたのだ。

ここに居ると、1日で発狂する。

「どこか行くの?これからメンバー紹介あるらしいけど」

「....旅に出るとでも言っとけよ。」

そのまま宮藤を連れてバイクが置いてある所まで来る。

ブルースペイダーのエンジンを掛け、またがる。

「んじゃ行くよ、まあ会う機会ないだろうがな。」

「そういやそれ、見た事ない機械だよね。何なの?」

「説明面倒なんだが」

ハァ、と溜息をつく。時間稼ぎでもしようとしてるのだろうか。

すると突然チャイムのようなものが鳴った。

「何だこれ?」

「集合なんじゃない?行こう」

結局行けずに、講堂のような部屋に和真と芳佳は呼ばれた。

和真は荷物を持ったまま、芳佳はまぁ着替えてあるようだ。

結局行けなかったのが悔しい。それに今の服装とて、この時代のものではない。黒いTシャツとカーゴパンツ。そして赤い襟付きシャツを羽織っている。何故バレていないのかも疑問ではある。

「えーとじゃあ紹介するわね。八坂和真さんと宮藤芳佳さんね。

両方とも階級は軍曹になるわ。リネットさん、2人に色々説明してあげてね?」

「は、はい」

「.....チッ、何が軍曹だよ。しかも『さん』付けとか.....」

などと和真が文句を垂れていると、芳佳がミーナに言った。

「あの、それは要りません。」

「でも万一の場合は必要になるわよ?」

「要りません」

拳銃が要らないというのは、固い決意のようだ。坂本少佐は笑っているが。おっと、ペリーヌがイライラし始めている。シノンとは大違いだ。2人とも沢城みゆきさんなのだが。などというのはどうでも良いか。

などと考えていると、いつの間にか解散になっていたようだ。

芳佳はリネットについて行ったので、こちらもついて行こうとすると、ミーナさんに呼び止められた。

「あなたに客人が来てるわ」

「は?」

疑問しか抱かなかった。この世界に知り合いなど居ない。何かの間違いだろうと思った時、1つの予想が頭の中に浮かぶ。

(もしかして俺と同じような奴が?まさかな...世界間移動のバイクはあと1台....1台あったァァァァ!それ使ったのか?!)

「どうかした?」

「いや、何でもない。前の客間?」

「そそ」

取り敢えず、その客人とやらに会ってみる事にした。

 

客間に入ると、ミーナさんや坂本少佐は素早く下がった。

僅かに違和感を抱いたが、話さないことには始まらない。

客人...2人居たので客人達で良いだろう。の向かいのソファに腰掛け、

問いかけた。

「で、あなた方ですか?客人達というのは」

答えの代わりに、剣が2本和真に向かって突きつけられる。

「オイオイ、ちょっと待てよ。こっちは聞いてるだけだぜ?なんで剣を....」

同時、和真が座っていた所が斬り裂かれた。

「チッ...」「姉さん、どうする?」

「宇宙CQC パート2よ!」「OK」

そして2人の姿は消えて刹那、無数の斬撃があらゆる方向から襲ってきた。

「ンだよ....危ねえ!てか人の話聞けよ!」

転げるように廊下に出て、走る。勿論2人も剣を構え、追ってくる。

今度は双剣らしく、陰陽紋が刻まれた白黒の2本の剣を装備していた。

「逃さない!」

「分かってる!」

声から察するに、両方とも女性のようだ。これでは攻撃できない。

それを既に見抜いている?だが聞こえるのは声だけ、全身をフード付きのコートで隠していて、姿は見えない。

「誰か知らねえけど....ここはお前らのテリトリーじゃないんじゃねえのか?!」

再び叫ぶものの、あまり応えない。

いや、そうでも無かったようだ。足が止まっている。

「どうする?姉さん。覚えてないみたいよ」

「ならダメージ与えて思い出させるまでね。私達の宇宙CQC パート2ダッシュ」

「了解」

再び姿が消える。だがそれはウィッチ達の視点、和真には全部見えていた。

「なら....こうだっ!」

バールを取り出し、窓に投げつける。当然もろい窓ガラスは壊れ、和真はそこから身を躍らせる。と、見せかけて壁を走っていく。

これは邪神の力を持つ和真でも、流石に特訓して出来るようになったもの。仮にこれが出来るのならば、和真と同等かそれ以上のヤツでしかない。

後ろを見ると、

「マジかよ!?」

2人して壁をこちらに向かって、走ってきていた。バール2本取り出し、こっちも双剣のように構える。

だが2人は双剣を捨て、バックルのようなモノを取り出した。

それぞれを装着し、彼女達は「変身」と叫んだ。

『Change』

『Open Up』

そしてそこには仮面ライダーカリスと仮面ライダーレンゲルが居た。何故知らないヤツらが使っているのだろう。もしやアト子さんのところから盗まれたのだろうか。ならば取り返さねばならない。

「変身!」

『Turn Up』

こちらもブレイドに変身し、向かい合う。建物の壁で向かい合う仮面ライダーというのは、中々に変な感じである。

カリスアローとレンゲルラウザー、ブレイラウザーがぶつかり合い、

火花を散らす。

「誰なんだお前ら?!何しに来た?」

「忘れているのね...なら思い出させてあげるわ」

「行こう!姉さん!」「ええ!」

同時に蹴りが炸裂し、和真は吹っ飛ばされる。当然ながら足場が無くなるわけで、地面に叩きつけられる。

変身が解けた。

「がはっ....」

スッと降りてくるカリスとレンゲル。フロートでも働いているのだろうか。

地面に叩きつけられても、彼女達が誰なのかさっぱり分からない。

むしろ教えて欲しいくらいだ。

「ってて....誰なんだよ!お前ら!」

「ならダメージを...」

「姉さん、待って。顔を見せれば分かるかも」

「それもそうね」

フードを取ったその顔には、見覚えがあった。だが、明らかにここに居ないはずのヤツらだった。

「お、お前ら....風香と吹雪か?」

顔でようやく判断できた。彼女達は風香と吹雪、ハス太とルーヒーの

子供で、姉妹なのだ。昔はよく遊んでいたことも思い出す。

いわゆる幼馴染というヤツだが、高校は凄いエリートの所に行ったと聞く。まあそこで離れ離れになってしまったのだが。

「なんでここに居るんだ?」

「やっと思い出したのね...」

「ほら、顔見せたら分かったじゃん」

「...いや、だから何でここにいるの?」

黙り込む2人。そのまま和真の腕を両側から掴んで、引きずっていく。

「人の話聞けよな!てか弁償どうすんだよ!」

「「はぁ....」」

同時の溜息。息が合っていると思う。オンドゥル勢よりもダブルをオススメするが。

手ごろなベンチに座ったところで、風香と吹雪は話し始めた。何故両脇に座るのか疑問ではあるけれど。

 

話し終えたところで、ふむ...と考え込む。

簡潔にまとめると、和真の世界間移動が他の世界に影響を与えてしまっているので、今すぐ元の世界に連れ戻せ、との事らしい。

カリスやレンゲルのそれはアト子さんから貰ったとの事。

「俺、そんな周りに影響与えてないよね?」

「「いやいや、かなり与えてるから」」

「そうかねェ.....んじゃ分かった。荷物まとめてくるから」

あっさりとした反応に若干驚く姉妹。荷物をまとめるというのは建前だ、本音はさっさとこの世界から逃げてやろう!だ。

建物の中に入り、部屋に入ると見せかけて反対側から出る。

リュックは既に背負っているので、荷物はもう無い。

ブルースペイダーの所まで戻り、素早くエンジンを掛ける。

「ふっ...俺が大人しく従うとでも思ったかァ!」

ブルースペイダーが発進した数十秒後、エンジン音が聞こえた。明らかにストライカーユニットとは違うので、バイクだろう。そう思い見てみると。

「なんで律儀にバイク乗ってきてんだ!?しかも2台あるし!アト子さん何やってんだァァァァ!」

カリスのシャドーチェイサーとレンゲルのグリンクローバーが、砂煙をあげながらこちらを追ってきている。

振り切る為、橋へと向かう。僅かにだが、この島からヨーロッパへの連絡橋とおぼしき橋が見えたのだ。

更に加速、橋が見えてくる。

「これで決まりだ!」

橋を途中まで来たところで、ブルースペイダーのディスプレイを操作する。前のように丁寧にやっている暇はない。テキトーに操作し、前方に光のゲートが現れる。

「あばよ!風香に吹雪。また会えると良いな!」

「あっ....」「待てぇぇぇぇぇぇぇ!」

待つわけがない。和真はフルスロットルで、バイクを光の中へと突っ込ませた。何処へ行くかも分からないのに。

そして和真はまだ知る由もない。さほど時間を置かずして、彼女達と再び会う事になるとは。



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思い出のS/ザ・ビギニング

ストライクウィッチーズの世界から追跡者をまくために別の世界へとんだ和真。だがそこは《デートアライブ》の世界であり、高校は一大イベントである修学旅行の直前だった。
修学旅行先の島を舞台に、和真の戦いが始まる。


逃げるようにゲートを開き、突っ込んだまではよかったのだが。

テキトーに操作したせいでどこに出るのか、和真自身分からないのであった。

「やっべ....どうしよ、一応逃げれたけど....」

周りを見渡しても、当然ながら白い光の中である。

だがしばらくすると、前方に分かれ目が生じた。向こう側からも光が射し込み、和真の視界を奪った。

 

しばらくして目を開けると、そこは見知らぬ場所だった。まあ当たり前ではあろう、突然別の世界に来れば誰でもそうなる。

確認の為体を起こすと、自分が居るのはベッドの上であることが認識できた。

「うっわ...またベッドの上始まりかよ」

文句を垂れながらも、ベッドから降りる。今着ているのは制服のようで、どうやら予想するに保健室のベッドに寝ていたようだ。

来禅高校の制服のようではあるが。

ひとまずは担当の先生が居るはずなので、出てみた。のだが.....

「なんで誰もいねーんだよオイ」

そう、誰も居なかったのだ。あるのはベッドの他に、机その他必要なモノだけ。肝心の先生は居ない。

「ま、教室行ってみるか。誰かいるだろ」

腕時計を確認すると午後3時を過ぎたあたりだった。つまりまだ学校には人がいるはずである。

その前にこの制服の持ち主...つまり和真が入れ替わった可能性のあるヤツが誰なのかを調べなければならない。

名簿を漁っていく。だが、

「コイツ元誰なのか分かんねえええええ!」

そう、誰もいないので聞きようがない上、確認も取れない。名前すら呼ばれないので、聞けないのである。

「どうしようかなぁ....いっそ職員室行ってみるか」

結局職員室行ってみることにした。リュックを担ぎ、いざ職員室へ。

こういうのは大体、適当に歩いていれば行けるものなのだ。

少し歩くと、職員室と書かれた部屋に辿り着く。荷物を置いていざ入室。

「失礼します、あの....(名前分かんねえし、どうすりゃ良いんだ?!)」

「あれ、殿町じゃないか?どした?」

「あの...教室行きたいんですが」

「てかお前ホントに殿町か?かなり畏まってるぞ」

「はあ」

殿町宏人は確かに、そんなに畏まってるキャラではなかった...気がする。

だが今の言葉から察するに、八坂和真はココでは殿町宏人というわけだ。

「ま、いいか。教室戻りたいんだろ?修学旅行の班決めもあるからなぁ....」

「なるほど。ありがとうございます」

リュックを背負い、教室へと向かう。確か殿町は五河士道と同じクラスで、2年生だったはずだ。小説での記憶が正しければ、4組だった。

到着してドアを開ける。

「ただいま帰りました!殿町宏人帰還であります!」

沈黙。『誰コイツ』のような目で見ないで欲しい。ただでさえ殿町のこのキャラ使った事ないのだ。苦労するのも当たり前ではないか。

まあ彼らに分かるはずも無いだろうが。

「ありゃ?先生もどうしたんです?俺ですよ?殿町宏人ですって」

「「「「「「誰?」」」」」」

「酷くね?!俺だよ、殿町だってば!」

「なんかあれ殿町じゃないね」「知らないヤツに見える」「誰だよあいつ」「五河君、なんか分かるんじゃないの?」「ホラ親友でしょ?」「そんな事言われてもなァ」

イジメじゃないのか、これは。などとなっていると、教壇に立つ29歳独身の岡峰教諭が口を開いた。

「はい皆さん、殿町君も戻って来たことですし、修学旅行の班と飛行機の席決めますよ?」

そうだ、修学旅行の色々を決めるらしいのだ。皆が席につき、残ったところに座らせてもらう。恐らく殿町の席なのだろう。

席に着いたところで、再び岡峰教諭が話し始めた。

 

数十分後、班は綺麗に分かれていた。

五河士道は犬井拓海。殿町宏人(和真)は立花咲夜というヤツと同じ部屋になった。男子女子それぞれで20名ずつだったようで、余りが出ずに偶数で分かれることが出来た。

最も決まるまでに、夜刀神十香が男子になろうとしたり、士道が女子になりかけたりしたが。

そんな事は些細なこと。決まればそれでオーケーなのである。

だが肝心の場所が分からない。

「そういや場所ってどこなん?」

さりげなく聞いてみる。

「ああ、或美島だってさ。まったく急に変わるなんてな....」

「或美島ねェ.....」

そしてある程度話も纏まったところで、岡峰教諭は改めて言う。

「では土曜日に、学校に朝6時に集合ですね」

クラス全体で了承の返事。時計には今日が木曜日と表示されている。

時間なさすぎではないのか?自業自得な気もするが。

 

そんなこんなで解散、放課後になった。

日直で教室に残っていた士道に、和真は話し掛ける。

「よ、よぉ...五河。」

「どしたんだ、殿町?変だぞ今日」

「...は、ははは...まぁその話じゃなくてな」

「何?」

「家の場所分かんねえ」

「アホか。なんで自分の家の場所も覚えてねえんだよ!」

「面目無い」

はぁ、と溜息をつき、五河は教室を出る。

「途中まで行ってやるから。遅くなると面倒だろ?お互い」

「そーだな」

 

五河士道に先導され、和真は殿町家の近くまで来た。

「ここまっすぐ行けば家だから。にしても...なんでいきなり忘れんだろうな?」

「さあな?俺も知らん」

そう答えてバイクを押していく。インビジブルを発動させているので、士道にはバレやしない。ただのバイク程度にしか認識されないだろう。それから薄暗がりの道を歩き、家に着いた。

その後、夜は特に何もなかったようなものなので、割愛しよう。

 

次の日は準備日ということで、休みになっていた。そんなものこっちは知らないが、そうなっているのだから仕方ない。

殿町宏人というヤツは妙に真面目だったようで、既に荷物は準備されていた。ので、和真のやる事はなくなっていた。

「あークソ暇だ。暇すぎてやる事ねえ」

或美島への修学旅行。島に行くとか、無駄に金をかけていると思う。別に和真が金を払っているわけではないので、問題ないのだが。

というかジャックフォームで飛んだ方が節約になる気もする。

なんて考えてもどうしようもないが、かと言ってやることもない。

昼寝で1日潰すことにした。

 

 

土曜日、朝5時に和真は起床した。目覚ましが起動したので、問題なく

起きられたのである。さっさと制服に着替え、キャリーバッグを引きながら学校に向かう。

学校に着くと、既にある程度の奴らは揃っていた。

和真とコンビになった立花も既にいた。本人曰く、「ボドボド」になるまで楽しむらしい。意味が分からない。

まあともかくバスも来ていることなので、乗り込んでいく。

部屋の順で席は座るようになっているらしく、和真は立花と隣同士で

座る羽目になった。

発車して数十分後、立花が口を開いた。

「ブレイド観るか?公式配信されたんだぜ。漢字違うけど、俺と同じ橘朔也ってヤツが出てるんだ。それに面白いしな、ブレイド」

「ブレイド?仮面ライダーか?」

「そそ」

自身が仮面ライダーとはとても言えない。遠回しに断り、外を眺める。全く...遠くの島が修学旅行とは。クレイジーにも程があろうに。

そして眠気が和真を襲ってきたので、そのまま寝た。

 

肩を叩かれる感覚と共に、和真は目を覚ました。寝すぎて、もう空港に着いてしまったようだ。自分としたことが。

眠気を覚ますように首を振り、立ち上がる。そして最後にバスから降り、クラスの列に並び搭乗ゲートに向かった。

(あ、バイク置いて来ちまったなァ....ま、いいか)

金属探知機を通りながらそう思っていると、機械がピーッピーッと

高い音を立てた。

「あのお客様、金属類をお持ちでしたらここで外して頂けると.....」

「持ってないんだけどねぇ....(ブレイバックルとか銃とか心当たりかなりあるけど)」

一回戻って再び通ると、今度は音は鳴らなかった。

偶然だかなんだか知らないが、通れたのならば良い。和真はさっさとクラスの列についていった。

 

1時間もしないうちに、飛行機の搭乗時間がやってきた。

立花達と話しながら、搭乗口へと歩く。

「そういやさぁ、さっきから金髪の女性が居るんだが」

「カメラマンらしいよ?同行するんだとさ」

「ふーん...カメラマンね...」

「彼女を知ってるのか?」

「いや、まぁ別に....」

やや含みのある言い方に、立花や士道が首をかしげた。

無理もあるまい、こちらは全て知っているなどと言えるはずもなかろう。

ちらりと金髪の女性(本名はエレン・メイザース)を見やり、和真は飛行機に乗り込んだ。当然気付かれてはいない。

さて、どうなることやら。この修学旅行。

だが和真が1つだけ言えることもある...この世界は救う価値はある、ということだ。

 

飛行機の座席は和真は、やはりというか立花と隣になった。

士道は折紙と十香に挟まれているのだ。

当然と言えば当然なのだろうが、羨ましい。まあ主人公はアイツなので、仕方ないのだろう。

せいぜいこちらとの共通点といえば、同じ窓側の席だということくらいだろうか。しかし座席の背は高く、話しかけられない。

「なんかねえの?暇つぶしにちょうどいいヤツ」

「殿町お前なァ...なんか変だぞ?一昨日から。」

「人って変わるもんだろ?」

「言い訳になってねえよ。まあ良いけどさぁ別に」

はあ、と深い溜息を立花はつく。そしてごそごそとリュックを漁り、

何かを取り出した。本のようだ。

「それは?」

「プリズマイリヤだけど」

「ロリコンかお前」

「失礼な!クロエは可愛いだろ!あの褐色肌!最ッ高だ!」

「何言ってんだ、イリヤ一筋だろうそこは!あのいかにもロリな感じが良い!SNでもZeroでもGOでも可愛いんだぞ!イリヤは!」

などと言い争ってると、声が掛けられた。やや機嫌が悪そうだ。

「「「うるさい」」」

「「スイマセンデシタ」」

声の主は女子。3人組なので、いつものアイマイミートリオだろう。

なので、そこからは静かに過ごす事にした。

 

飛行機に揺られて数時間ほどだろうか、アナウンスが流れ、目的地に

到着した事がわかった。

クラスごとに降りて行き、ゲートをくぐって空港から外に出る。

外はひと言でいうのなら、そう....

「すっげえ夏だな!」

「南の島だしなぁ、そりゃそうだろ」

「ふむ、なるほど。ってあれ?五河どこ行ったんだ?」

「そういえばそうだな....さっきまで居たはずだけど」

「まあすぐ見つかるだろ」

そうして和真達は、クラスの奴らについて行く感じで宿に向かった。

宿と一口にいうが、泊まるところはホテルに近い造りだった。

ビジネスホテルを少し大きくしたようなところ、といえば分かりやすいかもしれない。

ロビーに全員集まったところで、自動ドアが開き、五河が戻ってきた。正確には五河+十香+美少女2人というべきだろうか。

美少女2人の正体は精霊である、ということは周りの奴らは知らない。

和真以外に知ってるのは、ラタトスクサイドの村雨解析官と士道くらいだろう。

岡峰教諭に一言二言言ったところで、精霊達を連れて村雨解析官は

去っていった。

あの2人は転入生ということを伝えられ、その場は解散となった。そして各自部屋に戻るように言われた。

部屋に戻る道中、犬井と立花はかなり興奮して話していた。

「よう五河、美少女2人も連れてくるなんてやるじゃあねえか」

「紹介してくれよ!頼むぜ」

本当に欲望に素直なようだ。

「彼女達...やはり...」

「どうした殿町?また考え事か?」

「あ、いやなんでもない。お前ら先に部屋に戻っててくれ。やる事があるから」

「お、おう」

彼らを先に部屋に帰し、和真は1人になる。自身の部屋番号は既に先生から聞いてあるので、問題はない。

それに、今から向かうのは関係ないところだ。

まずは担任の岡峰教諭の所へ。

「すいません、タマちゃん先生。カメラマンの人の部屋ってどこですか?」

「エレンさん?それなら....」

その後部屋をなんとか聞き出し、向かう事に。

途中まで来たところで、追跡者達に声を掛ける。

「お前ら何してんだよ。犬井に立花も」

「「ナンデモナイヨ」」

「怪しすぎだろ」

理由を聞くと、どうにも和真の動きが怪しかったらしく、追跡してみようということになったらしい。まったく何を考えているんだか。

だが今回は連れて行くわけにもいかないので、何も言わずに目的地へと歩みを進めていった。

 



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最強のE/高校生と魔術師

始まった修学旅行。
目的地の或美島で、夏を楽しむ高校生達。
そんな中、最強の魔術師と最強の高校生が邂逅する。
2人は戦うのか、それとも.....


そして、エレンの所へと向かっていく和真。あとをつけてくる奴らは今は、気にしないでおこうと思う。

しばらく歩き、エレンの部屋に辿り着く。では入るとしようか。

後ろの奴らが囁いてくる。

「おい、そこカメラマンさんの部屋だぞ」

「いくら金髪が好きだからってな...」

なんだこいつら、妙にうざい。まったく....

「違えわ!俺はロリが好きなんだよ!」

「「うっわ...お前の方がロリコンじゃねえか」」

「幼女も好きなだけだ!20以上はババアってロリコンじゃないし」

などと言い合っていると、ドアが開けられた。チャンスだ。

「貴方達でしたか。ここで騒がれると眠れないのですが。」

「「スイマセン」」

殿町お前も謝れよ、と小声で立花が言ってきたが、無視する。

「立花達は戻れよ。俺はカメラマンさんに話があるんだ」

急な和真の威圧感に、彼らは下がっていく。

再び彼女に、向かい合う。

「貴方、何の用ですか?」

「ああ...自己紹介がまだだったか。俺は八坂和真だ。以後よろしく」

「はあ...でも殿町と言われていたような」

「気のせいでしょうね」

無言の時間。黙っていてもどうしようもないので、入らせてもらう。

「ふうん、案外普通の部屋なんだな」

「そりゃ普通の旅館ですし」

と次の瞬間、エレンに銃口が向いていた。しかもリボルバーという、今時珍しいやつだが、和真のものである。

「何のつもりです?」

「悪いなァ...何も言わんで。とりあえずテメェを殺さないと、世界は上手く進まんのだよ。それと、五河士道の為にもね」

「......何者?貴方、本当にこの生徒なの?」

「一応はそうだがな。とか時間稼ぎのつもりかよ!」

引き金を引く。弾丸は、エレンの頰の僅か数センチ横を通り過ぎた。

少しだが、エレンの顔に恐怖の表情が混じる。生身だとこの人、マジで弱いのである。CR-ユニットを着ければ別だが。

「で、でも、今の銃声で誰か来るわよ?そしたら貴方が捕まってそれで終了よ!」

「そいつァどうかね?」

と言い、シャツの襟を掴んで持ち上げる。

「悪りぃがな、お前のせいで主人公死にかけんだよ!許せるか!」

「?!」

和真の言葉の意味が分からなかったのか、目をパチクリさせるエレン。とぼけているようだが、こちらにはわかっているのだ。

本編(デートアライブ)を読んでいるからッ!

「お前の罪を数えてみやがれ!」

そのまま投げ飛ばした。殿町は出番はあるものの、マジなサブキャラクターだ。どうなろうと知ったことではない。思う存分暴れられる。

「かっ...はっ...」

壁に叩きつけられたエレンの方は、なんとか息をしているようだ。

しぶといものだ、やはりDEM社のヤツは一筋縄ではいかぬか。

再度拳銃を向ける。

だが廊下を走ってくるドタバタという音が聞こえてきた。

「チッ...投げたのは間違いだったか」

「こ、これでチェックメイトよ!」

急展開でここまで来たとは言え、今ので多少なりともエレンには危機感を抱かせることは出来たはずだ。

発煙筒を部屋の中に放り、和真は窓から身を投げた。

「あっ....」

その後エレンの部屋で何が起こったかは知らないが、和真はボドボドになりながらも枝に捕まって助かり、そのまま部屋に戻った。

一方部屋では、犬井や立花、五河が駄弁っていた。

テレビでは『蒼き鋼のアルペジオ』をやっている。別の世界ではイオナが「パンツァーフォー」と叫んでいるなど、ここの奴らは思いもしないだろう。

「よぉ...今戻ったぜ」

「おう...ってオマエそれどしたん?」

「ボドボドだな!」

「何したんだよ、殿町」

口々に叫んでいる。なるほど確かに服を見てみると、一部破けたりしており、中破一歩手前といったところだろうか。

「あーマジかぁ、んじゃちょっと着替えてくる。」

そういって時間帯的にも遅いので、風呂へと向かうことに。

バレるのも時間の問題なので、さっさと風呂を済ませて部屋に戻る。

部屋にはまだメンバーが残っていて、今度は昼間の精霊について話していた。

だがこちらにはあまり関係ないわけで、明日に備えて和真は布団に横になった。

そうして夜は更けゆく。

 

2日目になった。今日は海水浴で、朝から水着の人達が多く見受けられる日だった。だが和真は泳ぐ気はない。

砂浜で座り込んでいると、1人の女子が話しかけてきた。

「あのさ...殿町くん、だよね?泳がないの?」

「まあな....てか誰?」

「同じクラスの神城睦月だよ」

知らない奴だ。聞いたこともないので、世界に介入した際の異常で生じた人間か誰かだとでも思っておくことにする。

などと考えていると、手を握られた。

「殿町くん、泳ごうよ。せっかく修学旅行で来たんだから」

「は、はあ」

半ば引きずられる感じで和真は、海へと連れ去られていった。

 

一方その頃近くの砂浜では、士道は精霊達の攻略に付き合い、これまた別の所では犬井と立花が、水着の女子達を写真におさめていた。

とそんな時、犬井が驚愕の表情を浮かべた。

「お、おい...ダディャーナサン...」

「なんだよ日本語喋れよ。んで何かあったのか?」

「あ、あれ見ろよ....」

犬井が指差した先には、女子(しかも結構美少女)に引っ張られていく

殿町(和真)の姿があった。

「がはっ....なンだよありゃ....」

「殺るか」「殺ろうぜ」

「「うおおおおおおおおお!」」

瞬間、2人はクロールを開始していた。しかもただののクロールではない。クロックアップに匹敵するであろうレベルのクロールなのだ。怒りと憎しみはヒトを強くするという。過去にそれで戦っていた副隊長もいたらしいが。

数秒後、特殊部隊よろしく犬井と立花は岩陰に隠れて、殿町と女子の

様子を見ていた。

「まさか一生孤独同盟の言い出しっぺの彼奴が破るとはな...」

「ヒトは変わるものだよ」

「悟ってんじゃねえ」

言いつつも監視を続けていると、爆発音と共に犬井と立花は吹っ飛ばされた。まるで手榴弾か何かを使った感じだ。

「ぎゃれん?!」「ふぁいず?!」

何メートルか飛ばされて、海面に叩きつけられる。

顔を上げると、そこには殿町が立っていた。

「何してんだお前ら」

「い、いやぁ、一生孤独同盟の条約違反が見受けられたのでね」

「そーそー」

はぁ、とため息をつき、殿町は口を開いた。

手に手榴弾が握られているのは気のせいだと思いたい。

「あのな、俺だってあの女子誰だか知らねえんだよ」

「「は?」」

「は?じゃねえよ。知らねえヤツはしらん」

「殿町ならクラスの女子を全員把握してるはずなのに」

「とか言っても、俺達も知らんけどな」

3人して例の女子を振り返る。笑顔で手を振ったりしている。

「ふうむ....」

確かに悪い奴には見えないのだが。正体が不明だ。

「一応自己紹介はして貰ったんだが....」

「「してもらったんかい!」」

ならどうして言わぬ、というのはもう叫んでも遅かろう。

それにここまで来ればやることは1つだ。

「ナンパするか」

「せやな」

「納得早え!少しは考えろよ!」

殿町の言葉を無視し、犬井と立花のアホ2人は女性陣へと突撃して行ったのだった。

 

その後の事は、まあ一言で言えばお決まりだったと言えよう。

水着の女子軍に突撃してナンパを試みるなど、愚行なのだ。

細かく言うと、

「「「「嫌ァァァァァ!」」」」

などという悲鳴が聞こえ、殴られるような鈍い音と共に2つの人影が空中を舞った。

犬井と立花だ。また海面に叩きつけられた2人ではあったが、妙に満足した表情だった。

「ガーデンオブアヴァロンてあれだな」

「タマモナインだろ」

「意味わかんねえ事言ってんじゃねえよ。そもそもマーリンも玉藻も

いねえんだよ!キャスター玉藻はウチにいるっちゃいるけどさ」

とか言った後に2人は気絶した。仕方ない、旅館まで引っ張って行くとしようか。

2人を引きずって旅館に帰り、部屋に放る。

そして再度砂浜へと戻った和真ではあったが...心配事もあった。

エレンの動向だ。ヤツはこの二泊三日の修学旅行中に何をしでかすか

分かったものではない。もちろん原作は読んだものの、和真の介入に

より行動が変わっている可能性がある。

おおまかな予想で、士道のいる砂浜へと走って行った。

或美島はそんな大きな島ではないので、最悪一周すれば見つけられるのだが、今回は案外あっさりと見つける事ができた。

岩陰から士道や八舞姉妹、十香を監視するエレンを視認。

インカムをつけているところをみると、空中艦に連絡をとっていると見て間違いないだろう。

(ここで銃ぶっ放すのは得策じゃない。かといって変身するのも、後々面倒になる可能性がある。どうしたものか....)

双眼鏡を覗きつつ、考え込む。

だがすぐ作戦を思いつき、和真はニヤリとした。

とは言うものの、作戦と言えるか怪しいレベルではあるが。

 

数分後、同じ場所に和真はあるものを抱えて戻ってきていた。

持っているのはライフルタイプの水鉄砲二丁だ。

片方を背中に背負い、もう片方を肩に担ぐ。

コマンドーじゃねえか!と言いたくなる感じのスタイルである。

だがこの水鉄砲は、そこらへんのヤツとは違うのだ。アト子さん作の

特殊水鉄砲なのである。だから威力もかなり高い(はず)。

そして水鉄砲ライフルを構え、撃った。

するとどうだろう、エレンが隠れていた岩を見事なまでに粉々にした。穴が開いたとか、そういうのではない。

「すっげえ....よっしゃ!どんどん撃つぜ!」

「なっ?!え、ちょっ」

わざとエレンに当たらぬように撃っていき、砂浜は瞬く間に荒地と化した。

だが士道達は気付いていない。当然といえば当然、所持MPの大半を使って結界を張っているのだから。この為だけに使うのは気が引けたが、仕方あるまい。

「覚悟しろよ、エレン・メイザース」

「何?!どうしたというの?!」

「とぼけるんじゃねェ....DEM社第二執行部部長さんよォ...」

「.....何の事?私はただのカメラマンよ?そんなことある訳...」

だがエレンの言い訳じみた言葉に被せるように、和真は続けた。

「そうかいそうかい。んじゃあその耳のインカムを取っても、何もねえんだよな?ああァ?」

「......」

睨み合う2人。西部劇のような空気が漂った。先に口を開いたのは、エレンだった。

「.....仮に私が、そのDEM社のヒトだとしたらどうします?」

一気に口調が原作に近くなった。これまでのは演技、そういうことなのだろうか。別にどちらでも構わない。DEM社を潰すのが、和真の目的なのだから。

「そうだな....ひとまずは」

最後まで言わず、水鉄砲の引き金を引いた。水流はエレンの顔のすぐ脇を擦り、背後の岩をも砕いた。

「これが答えさ。最強の魔術師(ウィザード)」

「....ここまでバレた以上、一般人ではないのでしょう、貴方は。〈プリンセス〉の前に、この少年を排除します。〈アルバテル〉バンダースナッチを」

『何故だ?プリンセスもベルセルクも、活動をしていないではないか!バンダースナッチを出す必要がないッ!』

「いいえ、念の為です。排除対象が思ったより危険なので」

『だが....こんな事で壊されでもしたら事なんだが』

「倒せばアイクに褒められるかもしれませんよ」

『よし!バンダースナッチ降下!』

アホだ、この通信相手。社長に褒められるというだけでバンダースナッチを送るとは。

「バカなのかDEMって」

「バカもいる、というだけです。では10秒あれば充分ですね」

言って、エレンはユニットを装着した。カラーリングや装備から察するに、恐らくは〈ペンドラゴン〉....彼女の専用ユニットだろう。

白銀のユニットはまさに〈ペンドラゴン〉、聖騎士の名に相応しい姿をしている。

けれど、こちらとて負ける訳にはいかない。だがMPの残量を考えると、結界も5分が限界だ。

「ならこっちもさっさと決めてやる!バンダースナッチ諸共消え失せろ!変身!」

『Turn Up』という音声に続き、和真の身体をアーマーが覆う。

そして仮面ライダーブレイドへと姿を変えた。

「その姿、見慣れないですね。何かは知りませんが、直ぐに楽にしてあげますよ」

「ケッ、よく言うぜ。お前には聞きたいこともあるが....それはまあ倒してからでも良いか。」

両者共に、得物を構える。和真ことブレイドはブレイラウザーを、エレンはレイザーブレイドを。

刹那、2人は砂浜を蹴った。

この世界最強の魔術師と、最強の高校生の戦いが始まった。



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剣と銃と修学旅行

そうして和真とエレンのバトルが始まったわけだが....

正直なところ、和真はここでケリをつけるつもりはなかった。

ここでエレンを消すと後々の展開に影響を与えかねないし、ストーリーの進行に問題が出る。

確かに先に倒すことに越したことはないが....やはり和真は第三者視点でもあるわけだから、あまり介入するのは良くないかな〜と思ったりする次第なのである。

と考えつつも、素早く振るわれるレイザーブレイドの刃を受け流して

行く。

「っとと...危ないな〜まったく」

「そう言っていられるのも今のうちですよ」

悪役じみたセリフを吐くエレン。そして突如として空中に飛翔した。

今思い出したが、CR-ユニットは飛べるんだった。

空を切り裂くようにエレンは飛行し、レイザーブレイドを構えて和真に突っ込んできた。

原作よりも弱く見えるのは気の所為だろうか。

きっとこっちの戦闘力の方が上だからだと思う。

和真もブレイラウザーを握りしめて、衝撃に備える。

が、エレンが接触する直前になり、行動を起こした。

『アブソーブクイーン』『フュージョンジャック』

翼が生えたジャックフォームへと変わって接触までの残り1秒を耐え、

そして全力で飛び上がった。

エレンはバカみたいに砂浜に頭ごと突っ込んでおり、一言でいうなら

アホっぽかった。

ギャグ時空でもあるまいに。

とは言え、これではわざわざジャックフォームまで変身した意味がない気がする。

変身解除しようとした時、視界の端に数機のメカが見えた。

バンダースナッチだった。

「なるほどアレを壊せば....ってもう結界の効果効いてねえ!MPゼロだし!うっわどうしよ、エレンも気絶してるしこのアホめ」

とりあえず自称カメラマンの金髪女エレンは放置し、和真はバンダースナッチと空中艦〈アルバテル〉の殲滅を優先させることにした。

まずはバンダースナッチ3機を秒単位で斬って、次は〈アルバテル〉を見やる。

まあどうせエレンはユニットさえあれば帰還できるわけだし、空中艦は破壊しても問題なかろう。

むしろこれを壊すことで、ウェストコットやDEM社の行動が鈍くなる可能性もある。そんなことは殆どないと考えられるが。

さてバンダースナッチを殲滅したのは良いが、相手の空中艦をどう壊すかが悩みどころなわけだが。

下手に地上に落とせば、宿泊先が壊れかねない。いっそ高火力で叩き潰す手もあるが、目覚めたエレンに邪魔されたら元も子もない。

薄闇の空に浮かぶ空中艦を睨みながら、和真はうーんと唸る。

視力が人間よりも遥かに良い和真が悩むのは、他にも理由があった。

あのアホ空中艦〈アルバテル〉とラタトスクの空中艦〈フラクシナス〉がさして距離を置かずに居たからである。

通信が切れた今、フラクシナスの副司令のドM神無月がここでどのような指示を出したかは知らない。

もう本来の世界ではないので、和真が来たことにより僅かでも何かが変わっているかもしれないからだ。

とは言うが、戦闘シーンを見られるのも少し厄介なのだ。

そう、色々と厄介な事情があるのだ。

けれど悩んでいたところで事態は進まない。よし、気合を入れて和真は行動を開始した。

まず空中艦〈アルバテル〉の直上へと飛翔し、

『エボリューションキング』

ジャックフォームから重厚なキングフォームへとチェンジ。

『♠︎10・J・Q・K・A』の音声と共に5枚のラウズカードをキングラウザーにラウズし、『ロイヤルストレートフラッシュ』を発動させる。

〈フラクシナス〉に当たらない角度で、和真はキングラウザーを〈アルバテル〉へ向けて振り下ろした。

そして放たれた光の奔流は確実にその巨体を捉え、随意領域(テリトリー)などを完璧に無視して全てを破壊した。

爆音と閃光が辺りに広がり、立ちこめ始めていた雨雲さえも消しとばした。

その後の和真はというと.....起きたエレンを敢えて殴って気絶させ、旅館まで運んだまではよかったのだが、時間も時間だったせいで教師達のきついお叱りを受けてフラフラになって部屋に戻る羽目になった。

けれどそれで良かったと思う。エレンが気絶しているお陰で、士道の精霊攻略もスムーズに進んだはずだ。ウェストコットへの連絡手段も途絶えて、今は何も出来ないと思われる。

ユニット以外の機器はエレンから全て奪っておいたのだ。愉悦愉悦。

そんなこんなで夜は更けていった。

 

最終日になり、帰る時間が迫ってきた。

荷物を纏めて全員がロビーに集まる。しかしそこには1人居ないヤツがいた。エレンだった。

今朝から姿が見えないらしく、部屋にも居ないんだとか。

「おい殿町オマエ何かしたのかよ」

「してねーよ何でだよ」

「いや、だってカメラマンさんの部屋に入ったじゃん。なんかその時したのかなーってな」

「ばっ、声でけえよ!」

皆がこっちを見た。うっわコイツ何やってんだ、みたいな目で見てくる。それを言ったら五河もそうだと思うのだが、そこらへんは情報操作されているのか話題になっていない。

これでは変態扱いされてしまうッ!

「安心しろ、何も見てねえからよ」

「俺たち友達だろ?」

「解決になってねえよ!ったく...もう良い、俺が探してやろうじゃねえか!」

立ち上がり部屋へと向かう、と見せかけて和真は裏口から外に出た。

手元にあるヤツの機器を駆使すれば、場所は特定できるはずだ。

色々吟味しながら歩いていると、建物の陰に見覚えのある金髪が見えた。

音を立てずに近づくと、どうやらどこかに連絡を取っているようだ。

空中艦は破壊した以上、連絡相手はウェストコットぐらいだろう。

確かにエレンの言葉の中に「アイク」という単語が聞き取れる。

連絡相手はウェストコットで間違いない。

さりげなく話し掛けることにした。

「よォカメラマンさん....集合の時間だぜ」

「?...あなたは....」

「まあ待てよ身構えるなって。とりあえずアンタが来ねえと帰れねえんだよ皆」

「そうでしたか。では行きます。決着は帰路にて」

「意味わかんねえよ、さっさと行けよ」

「年上は敬いなさい」

「あ、年増なのか」

「喧嘩売ってるの?」

「さあねぇ」

ギャーギャー言い合いながらもロビーへと戻り、空港へと向かうバスに乗り込む。帰り道に決着をつけると言っていたが、まあさして気にすることでもないだろうと思い、のんびりとバスに揺られることにした。

空港に着き、チェックを済ませて搭乗口へ。

全員問題なく乗り込み、無事に飛行機は飛び立った。

その後も特に何も無く、和真達は全員揃って東京へと帰還した。

士道は色々あって疲れていたようではあったが。

エレンも特に何もアクションを起こさなかったので、決着をつけると言っていたのはただの脅しだったのだろう。

その後は学校までのバスに乗り、再び何時間かの旅。終わるまでが修学旅行なのだ。

 

学校へ向かう途中の高速で、それは起きた。

突然バスが衝撃と共に止まったのだ。頭をぶつけたりする生徒もいたようで、車内は少しの間混乱に陥った。

だが間髪入れず、どこからか声が聞こえてきた。

『おいそのバスに殿町宏人というヤツが乗っているだろう?そいつを引き渡し、変な行動を取らなければ攻撃はしない!』

ありきたりすぎる&くだらない事を言っているが、この声は...いやまさかアイツはこの世界に来ていないはずだ。加工音声か何かか。今気付いたが、エレンはこのバスに乗っていない。

決着というのはそういうことなのか?

と、クラス全体がこっちを見ていた。

((((お前が行けば俺たちは助かるんだよ))))

仲間というのを大事にしないのか。やはりマトモなのは士道だけか。

だがこの状況。敢えてこの誘いに乗ってみるのも一興だろう。

降り口へ向かうと、フロントガラスから向こう側が見えた。前方に居たのは

「吹雪と....バンダースナッチだと?」

予想に反し、前方に待機していたのは仮面ライダーレンゲルに変身する吹雪とバンダースナッチだった。

ということは風香が変身したカリスもいるのだろうか。しかしバンダースナッチがいるのならば、DEM社が絡んでいるに違いない。

つまりエレンが居る確率も高いということだ。

和真はバスを降り、吹雪へと話し掛けた。

「なあ吹雪、どうしたんだよ?お前ら何してんだ?」

「そりゃ当然あなたを連れ戻す為ですよ」

「いやだからなんで、DEM社と協力してる?」

「それは....」

吹雪レンゲルが続けようとした時、バスの上から声が聞こえた。

「それは、目的が一致したからよ!」

「そうですね」

バスの上に立っていたのは、風香ことカリスと最強の魔術師エレンだった。

よく見ると空中にも何やらメカが展開している。

「おいどういうことだよ!暴力振るうつもりなのか?!」

「いいえ、貴方を捕まえるだけです」

「それで目的が一致したから、一時的に協力してるの」

なるほど。どこで接触したとか、そういうのは今は関係ない。

「俺を捕まえる、それだけの目的で協力体制か」

「ええ」

「....くだらねえ。俺を捕まえるなんてできるわけねぇ」

「ならばやりますか?」

「いつでも良いわ」

「バンダースナッチ攻撃開始」

命令に応え、バンダースナッチが攻撃を開始する。

「させねえよ!クソ野郎!」

取り出したバールでバンダースナッチを叩きのめし、バスのフロントを背に和真は立つ。

エレンはユニットを既に装着しており、そのまま降りてくる。

風香、吹雪、エレン、バンダースナッチと睨み合う和真。

「「「変身」」」

『Turn Up』『Change』『Open Up』

同時に3人は仮面ライダーへと変身、エレンもレイザーブレイドを構える。

クラスのメンバーがバスの中から見ているのが、なんとなく分かる。

そりゃいきなりこんな状況になれば、驚きもするし興味も湧くだろう。

とりあえずそれは置いておいてだ。現在の状況は非常に不味い。

3対1な上に、相手もトップギアとみて良い。

(畜生やってくれるじゃねェか。これじゃあ俺はこのバスも守らないといけないしなァ....クソ戦い辛え)

わざとこの状況にしたのだとすると、これは考えられた作戦と言える。それゆえに通常フォームでは太刀打ちできないだろう。

人数差と戦力差的にも。

ならば現状やる事は1つだ。全力で倒すしかない。

『エボリューションキング』

ジャックフォームをすっ飛ばしてキングフォームへ変わり、キングラウザーとブレイラウザーを両手に構える。

「どりゃああああああああああ!」

そして剣を構え、地を蹴った。凄まじいスピードとパワーに、レンゲルとカリス、エレンは圧倒されていく。

だがそれも少しの間だった。予想に反し、彼女たちにも策があったのだ。

『エボリューション』

『アブソーブクイーン』『フュージョンジャック』

カリスはワイルドカリスへ、レンゲルは分厚い装甲を纏ったジャックフォームへと変身した。

「その姿は....」

「ふっふっふ、策が無いとでも思ったか!」

「これで勝ったも同然ね」

「油断はできませんが」

こうなるとは予想外だが...バスの奴らを傷付ける訳にはいかない!

「だからどうしたァ!俺は負けねえ!」

迷いなく一直線に突っ込んだ先に待っていたのは、ギャレンとカリスのダブルキック。内臓のあたりをやられたか、口から血が溢れる感触がした。

「もうあなたに勝ち目はない」

「投降した方が身の為よ」

エレンからの無慈悲な宣告。確かにここで負ければ、バスの奴らは助かるだろう。だが今の和真にその選択肢はなかった。

「...確かにな。俺が大人しく捕まれば、それでこいつらは解放されるだろうさ。けどなァ俺にはやる事があんだよ!」

先のダメージでHPの半分くらいを持っていかれた。しかし力を振り絞って、和真は立ち上がる。

「何を言ってるんだ?」

「さあ?」

『♠︎10・J・Q・K・A』

5枚のカードをラウズし、『ロイヤルストレートフラッシュ』を発動。

彼女達と和真の間の空間に、光るカードが5枚現れる。

「お前らが知る必要はねえよ」

一気に剣を振るい、そのカードごと光の奔流が3人を吹っ飛ばした。

さすがにダウンまでは出来ず、なんとか起き上がってきた。

「しぶといな、クソッ!」

「元はと言えばあなたの責任なのだけどね」

「そうなんですか」

「細けえ事は良いだろ!もう俺は行くからな」

「誰も行っていいって言ってないんだけど」

「帰る時間遅くなると怪しまれるだろ?」

「「「ふむ」」」

今がチャンスと見た。バスに向かって叫ぶ。

「バス出せ!フルスロットルだ!」

「は、はい!」

和真が乗り込んで、バスは全速力で走り出した。

後ろからバイク2台と特殊車両が追ってくるが、それはなんとかするしかない。

「あれ?何でみんな俺避けてんの?」

「「「「いや、だってうんまあ殿町っぽくないし」」」」

「そんな理由か」

「あとあの姿なんだ?ブレイドじゃねえか」

「そこらへんも纏めて後で説明するから!」

ひとまず黙らせて、窓から屋根へと登る。既に変身は解除したので、

戦力は銃器とカブトだけになる。

先程の血に薄い緑が垣間見えたのは気のせいだろう。

後方から迫る特殊車両とバイクを睨みながら、和真は屋根に立つ。

アサルトライフルを取り出して構えて刹那、引き金を引いた。

凄まじい銃撃音が響き渡り、バスから悲鳴が聞こえてくる。

それでも引き金を引き続ける。

バイクには余裕で避けられ、特殊車両にも大して効果はないようだ。

「チッ...これだから女ってのは」

「よっ、1人で行けるか?」

悪態をつく和真の前に現れたのは、友人(多分)の立花だった。

意外にも和真と同じようにバスの上に余裕で立っている。

「お前、何しに来たんだよ?バスん中いろって。死ぬかもだぞ?」

「ふっ...死ぬのは怖くねえよ。俺は1度死んでるからな」

「まさかのゾンビ発言?!」

「そうだ。俺は1度死んでる。アンデッドに殺されたんだ」

「ごめんそれだとお前、マジで橘朔也になるんだが」

「だからそうだと言ってるだろ」

「マジか!?」

「マジだよ」

ならば心強い仲間だ。和真と立花でブレイドとギャレンという事にもなる。

「ならやろうぜ!俺たちライダーなら出来る!」

「ああ、そうだな」

『Turn Up』の音声と共に、立花はギャレンに変身した。

和真は弾が尽きた物を捨て、新しいアサルトライフルを2丁取り出した。

ギャレンラウザーとアサルトライフルの銃口が、後方車両へと向く。

修学旅行最後にして、和真の命運を賭けた戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 



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仮面ライダーは何処へと向かうのか

後方を見ると、今だに彼女達は和真の乗るバスを追ってきていた。更に後方からは、やはりというかサツが迫っているようだ。

銃を構えつつ和真は、立花へと問いかける。

「どうすんだ?この件、降りるなら今のうちだぞ?」

「何を今更。前世は俺のせいで死んだ人が居たんだ。そんな事はしたくないからな。守るためにも俺は戦うぜ」

「ハッ、お前らしくねえな。いや...流石というべきか橘」

2人はニヤリと笑って刹那、アサルトライフルとギャレンラウザーの引き金を引いた。

再びバスから悲鳴が聞こえたが、無視して撃ち続ける。

予想はしていたとはいえ、バイクの2人には避けられ、特殊車両にも

何といった効果が見られない。

「クソ固すぎだろ!あとバイク誰だよ避けるのうまいなオイ!」

「仕方ないんじゃねぇの?あとバイクの2人は知り合いなんで」

「知り合い撃つなよ!」

「事情あんだよ!」

言い争っている間に特殊車両はサイドについてしまい、バイクを収納してそこから風香と吹雪が飛び移ってくる。

「なんだ可愛いじゃないか」

「まぁ見てくれはな」

こそこそと言い合っていると、2人の声に遮られた。

「もう逃がさないよ」

「覚悟しなさい」

ビッと指を突きつけられる。立花は何やったんだよオマエ、という風に見守っている。見てないで助けて欲しいものだが。

「い、いやぁ奇遇だねェ...あ、あははは」

「連れてきましょう」

「おー」

がしっと腕を掴まれ、特殊車両へと引きずられる和真。

暴力反対なのがモットーなので、かなり反対したい所だ。

「あのーすいません俺用事あるんで戻って良いですかね」

「「何?」」

「隙ありィィィィィ!」

一瞬の隙を見て両腕の拘束から抜け出し、バスへと跳躍。

ドンッという音を立てて、屋根に着地した。

立ち上がりながら、のんびりと空を眺めている立花へ話しかける。

「どうだった?久しぶりの戦闘になるんじゃないのか?」

「そうだな...高校生になってみて、色々経験したがな。以前の人生も

なかなかに悪くはなかったけども、現世も悪くはないか」

「そうか....1つ提案なんだが、俺の旅に同行する気はないか?」

「どういうことだ?旅してんのかお前?」

「まぁな。おっと、サツのお出ましだぜ」

振り向くと、赤いサイレンが見えるところまで来ていた。

何か叫んでいるが、無視して収納ポケットに手を突っ込み、武器を取り出す。

「耳塞いでろ」

そう言うと、和真はその武器を担ぐように構えて撃った。

狙いは逸れず、パトカーへと弾丸はぶち当たり、車体を爆発させた。

それを見た立花は、仰天した。

「ちょっ、おまっ、ロケランパトカーに撃つとか捕まるぞ!何やってんだよ!」

「安心したまえ、手前に撃ったから。」

「あ、ホントだ。気のせいだったんだな、ってそーじゃねーよ!」

「まあ事情は後で全部話すよ。俺がここにいる理由も含めて。」

そして車内へと戻り、和真がハンドルを握り帰ることになった。

先生もドライバーもいつの間にか気絶して、運転はレースゲーが得意なヤツがやっていたのだが、責任を取る1つのカタチで和真がハンドルを握るハメになったのであった。

絶対捕まるであろうこの状況だが、生徒も大半が気絶しているので大丈夫だろう。

その後本来のルートをかなり迂回して学校へと到着した。

皆は起きたら自然と家に帰ると思い、さっさとバスを止めて和真は

降りた。

既に日はとっぷりと暮れ、暗闇が辺りを覆い尽くしている。

「いやあ、凄え旅だったなァ....」

「そうだな。楽しかったぜ、前を思い出すくらいは」

「そうか....とりあえず帰ろうぜ」

「皆は良いのか?」

「良いんだ。起きたら帰り道の事は全て忘れるよう、記憶改竄してある」

「無茶苦茶だぜ...お前はよ」

長旅の疲れでため息をつきながら、和真と立花は道を歩いていく。

ある程度歩いたところで、和真は立ち止まった。

「どうするかなぁ....これから」

「どうするって?」

「旅の話だ。俺はこれからどうすれば良いんだろうってな」

「ならいっそ最初から話せよ。バス結局お前が運転してたから、話できなかったしな」

自販機でコーヒーを購入し、立花は片方を放ってきた。

ベンチに腰を落ち着けたところで、和真はぽつりぽつりと話し始めた。

 

話し終えたところで、立花はふう、とひとつ息を吐いた。

「随分と冒険してるんだなぁ、殿町。いや、八坂と呼ぶべきだよなこれからは」

「どっちでも良いさ。何にしろ俺はここに長居はできないからな」

「そう...か。でもあと1週間くらいで文化祭があるはずだ。それくらいは出て行かないか?」

沈黙。和真は考え込む。確かに文化祭に出るのもアリだろう。

しかしそれは裏を返せば、外部の者が多く来るわけで、彼女達に会う可能性も捨てきれない。

「文化祭か.....これは、使えるかもしれねえな」

「やる気になったか?」

「色々と思いついただけだ。んじゃ、またな!」

今日も何事も無く、と言うと嘘になるが、夜は更けていくのだった。

次の日になり、いつも通り学校へと行くと、クラスが何やら騒がしかった。

十香達精霊と士道がイチャイチャなのは変わらないが。

「お、立花。皆何か気にしてるらしいけど、何かあるのか?」

「ああ、転校生がくるらしいんだよ。このクラス」

「またか?これ以上誰が....」

「はーい、席についてくださいね〜」

続けようとしたが、のんびりとした岡峰教諭ことタマちゃん先生が

教室にきたお陰でホームルームになってしまった。

だが転校生が分かるのも基本、ホームルームだ。まぁ期待せずに待つとしよう。

ひと通りの話を終えたところで、タマちゃん先生が「転校生を紹介します」と言い、その転校生とやらが入ってきた。

「ごめん嘘だと信じたい」

「俺もだ。なんでだよ」

がくりと机に突っ伏している和真と立花をよそに、転校生は自己紹介を始める。2人居たので、転校生達になるか。

「八坂風香です。よろしくお願いします」

「八坂吹雪です。よろしく。」

(嘘だろォォォォォ!)

「2人は今日からこのクラスで勉強することになります。仲良くしてあげてくださいね」

((無理だろ))

この時ほど立花と意見があった時はないと思う。

と、ずかずかとこちらへ転校生が歩いてくるではないか。

対応せねばならぬ。

「やあどうも。転校生なんだって?」

「少し付き合いなさい」

「あーれー」

こちらの意見は無視され、和真は引きずられていった。

着いたところは屋上。ある程度の広さがあり、戦うにはうってつけだからだろうか。

「で、また俺に用か?」

「ええ、あなたを連れ戻すの」

「まぁ、姉さんは和真がす...(むぐむぐ?!)」

「吹雪の戯言は置いておいて。戻る気はないの?和真」

「.....皆、そう言うよな。けど俺は、戻らない。戻らないよ」

「何故なの?待ってる人もいるのに」

「俺は、このままでいいんだよ。世界を旅し続ける事、それが今の俺の生き方だしな。」

「そう...でも諦めないわ。必ず連れ戻す!」

「流石姉さんだな!」

ため息をお互いにつき、和真は問いかけた。

「1つ聞きたい。お前達とDEMが協力したのは、利害が一致したからだと言ったな。その利害って何だ?」

それは数秒のようにも、数分のようにも感じられた瞬間だった。

そして風香が口を開く。

「あなたよ。あなたが目的でDEMと手を組んだの」

「本当にそれだけか?お前達は俺を連れ戻す為だろ?だとしたらDEMには俺の何が目的だ?」

「....そういえばそうね...吹雪何か知らない?」

「さあ?」

こうは言っているが、まだ確証はないとはいえ、和真には予想は出来ている。自分がDEMに目をつけられている理由が。

「じゃあ俺戻るから」

「「え?!」」

面倒になったので、さっさと話を切り上げて和真は教室に戻る事にしたのだった。

 

授業も全て無事に終わり、放課後になった。

帰りのホームルームで文化祭の出し物も決め、和真はそそくさと学校から出る。

だが帰りもそう簡単には行かぬようで、校門で待ち構える女子2人組が

視界に入る。

わざと無視して立花と話しながら、校門から出る。

と、がしっと肩が掴まれる。

「何帰ろうとしてんの?諦めないって言ったわよね」

「ストーカーは男子に嫌われるぞー」

「「うっさい」」

「はい」

2人の迫力に黙り込む立花。これでは話にならない。時間もあまりないというのに。

はやくヤツに会って詳細を聞かねばならない。その為にはこいつらは邪魔だ。

「あのさ〜マジで帰りたいんですけど」

「貴方がやったことバラすわよ」

「脅すつもりか?それならそれで対策もあるぞ」

瞬間同時に動いた和真と風香。

ハンドガンを秒単位で取り出して互いに突きつける。

「まだ決着はつかないか」

「なら今日は延期ね」

そうして歩み去っていく彼女達を見送る。

夕焼け色に染まる空を見上げ、1人和真は呟いた。

「俺もいつか....人やめるのかな?」

 

 

 

 

 



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青・春・謳・歌

時間は流れ、日は過ぎていき、遂に文化祭の日になってしまった。

ここの文化祭は天央祭というもので、10校の高校が合同で行う、大規模なモノ。ステージ企画なども大掛かりだ。

和真の所属するクラスの企画も、通ったは良いのだが。

「だからってさァ、メイドカフェっておかしいだろ!」

キッチンでスポンジを握りしめ、何度目かの叫びを上げた。

「まぁまぁ、仕方ないじゃないか。メイドカフェなんだから、男子は厨房で決まりだっての。ったく五河も来れば良いのになぁ」

「五河は色々あるにしても....俺ァやる事あんだよ!ここで呑気に皿洗ってる場合じゃないんだけど!」

「....お、おう。ひとまず落ち着けよ。それにメイド見られるわけだし、特と言えば特だろう?」

メイドカフェにしたのは女子の側だし、和真としてはあまり、メイドには萌えないタイプなのだが。

ひとまず深呼吸をし、息を整える。

「ふぅ....そういや他校の生徒も来るのか?」

「ああ。竜胆寺のお嬢様も来るらしいぞ。意外だよな」

今のは犬井。いつの間に情報を仕入れていたのか知らないが、流石と

だけはいうべきだろう。

「竜胆寺のお嬢様か。誘宵....美九だったな」

「名前は流石に知ってるか。有名人だしな。なんか男は近づけないらしいって噂だけど」

その理由を話せば相当時間はかかるので、黙っておくことにした。

精霊である美九に、変に勘付かれても困る(多分だが)。

ただでさえ、DEM社のエレンに狙われているようなものなのに、余計なことを増やしたくはない。

丁度シフトチェンジの時間に入り、和真達3人は外へと出た。

「どこに行くんだ?殿町」

「デカいとこだよ。多分犬井は入れないぞ。」

「なんでだ?俺も連れてけよ」

アイコンタクトを取り、和真と立花は裏手に走り出した。

「あとで全部話すから!あとまぁクレープくらいは奢るぜ!」

そういうと犬井は追いかけず、ただ手を振るだけに留めた。

友人の隠し事には極力踏み込まないのようだ。

そういう対応は有り難い。良い友人を持ったと思う。

「このあいだ話した手筈で、下は任せるぜ」

「ああ。ここでもジャックまでなら変身できるからな、空中戦も任せてくれ。生きて帰れよ」

そう立花には事情はある程度話してあり、当面は共闘することにしてあるのだ。

そして2人は停めてあったバイクにお互い跨り、フルスロットルで発進させた。

「行くわよ」

「了解」

後ろからの追っ手に気付かぬまま。

 

クラス企画のシフトも余裕が多少あるとはいえ、ステージ企画を見る時間もあるので、行動できる時間も限られてくる。

全速力でバイクを飛ばして着いたところは、昼であっても暗い雰囲気を醸し出す高層ビル。

天宮市にあるDEM社の社屋だった。

物陰に隠れながら、こそこそと話し合う。

「あれか?こないだ言ってたヤツ。」

「そうだ。でもなぁ....やっぱお前を連れてくのは気が引けてくるな」

「何故だ?ギャレンとして戦えるんだぞ。戦力になるだろ」

「そういう意味じゃない。そういう意味じゃないんだ」

狙われているとは立花には言ってあるが、予測範囲内であるが故、理由は述べていない。

「任せろって。上手くやるからよ」

「まぁここまで来りゃ同じか。よし、行くか」

物陰から出て入口へと向かい、入って行く。

「オイこれ、正面じゃねえのか?」

「そうだよ。だから悩んだんだ。連れてくかどうか」

「ここまで来てそれ言うか」

と、突然和真と立花の周りにCR-ユニットを装着した複数の女性が現れた。女性と分かったのは当然ながら胸のサイズだが、恐らく彼女達は警備か何かだろう。にしては妙に準備がよすぎる。

まさか.....

「ここは頼むぜ」

「おう、これくらいお茶の子さいさいだぜ!行きな殿町!」

「また会おうぜ。グッドラック」

警備の隙をくぐりぬけ、階段へと転がり込む。

銃撃音が聞こえ始めたのはその直後だった。

 

社長室はだいたい目星はつけてあるので、その階層まで上がり、廊下を部屋へと向かって歩いていく。

社員に見られたが、無視しておく。対応が面倒だ。

焦げ茶色のいかにもなドアを見つけ、立ち止まる。

深呼吸をしてドアを開ける。

「来てやったぜ、エレン!ウェストコット!」

中に居たのは、やはりというか予想通りエレンとウェストコットだった。

まるでエレンが秘書のように見える。気のせいではあるまい。

「やぁ、キミがトノマチ...ヒロトか。いや、ヤサカ・カズマというべきなのかな?」

「そこまで知ってるのか....なら良い。俺を狙う目的を聞かせてもらおうか!」

「おいおい、銃突きつけての問答は気が進まないなぁ。エレンには手を出さないように言ってあるからってねぇ」

「非常時はやりますが」

随分と本編と印象が違う気がする。フランクな感じというのか、割と軽めなキャラに見えるのは気のせいだろう...と思いたい。

「答えろ、俺を狙う目的は?」

「物騒だなぁ、銃なんて。まぁいいか、目的なんて簡単だ。君の身体だよ」

「うわっ、嘘だろ腐ってんのかよ」

「そのままなんだけどね。アンデッドと融合しかけてる人間なんて、興味がわくだろう?」

既にアンデッドの事まで知っているのか。厄介だ。

風香と吹雪の口が軽すぎたということか、あるいは独自で得たものなのか。ウェストコットは色々と情報網を持っているので、平行世界のことも知っていてもおかしくはなさそうだ。

「それで?仮にアンデッドと融合した人間が居た場合、どうするんだ?解剖して血液とって、自分にその血液入れるとかじゃないだろうな?」

「違うね。だがやはり間違いはなかった。イツカシドウ同様、捕獲対象にして正解だったか。」

「ふん、五河も捕らえる気か。大方ジェシカとその部下でも向かわせたんだろ?」

「何故それを?!」

エレンが動揺してどうする。こちらは何もできないのに、色々いう必要もないだろうに。あと動揺しても萌えない。

「さぁな。ま、俺はウェストコット、あんたをどうこうする気はねぇよ。今はな」

「そりゃ有り難いね。」

そのとき、ドアが勢い良く開かれた。

「ウェストコット、フロントで怪しい男を見つけたから連れてきましたけど。どうしましょうか?」

この声は風香の奴、ウェストコットには敬語に近い感じで話すのか。

吹雪は黙っているので分からないが。

「知らない顔だな」

ふと気になって見てみると、そいつは身近にいる....

(立花オマエ何捕まってんだよ、アホか!?)

(すまん、あのお姉さん達倒したのは良いんだが、いきなりカリスとレンゲルにやられてなぁ)

ああ、と納得してしまう。確かに風香と吹雪はカリスとレンゲルだ。

変身していれば、姿はバレない。

してやられたというわけか。予想外の展開になってきた。

「ウェストコット。俺は手を出さないと言ったな」

「そうだね。」

「あれは嘘だ」

言いながらブレイバックルを取り出して仮面ライダーブレイドに変身し、ブレイラウザーを構える。

「友人がやられた以上、穏便に進める気はない。スクエアにいるジェシカも含めて全てぶっ壊してやる!」

2人もカリスとレンゲルに変身しており、エレンもユニットを既に装着していた。

戦闘が始まった。

 

風を切って振り下ろされる刃を素早く弾き、迷わず3人を蹴り飛ばす。

煙幕をはって立花に肩を貸しながら、和真は部屋を脱出した。

階段を使ってる暇はないので、窓を蹴り破って外へと出る。

もちろん自由落下の豪華特典付きだが。

立花を抱えて着地し、バイクまで戻る。

「お前は早く天宮スクエアに戻れ。五河を保護するんだ」

「お、おう....分かった...よく分からんが、死ぬなよ」

「迷惑を掛けるが....頼むぜ」

「何、友人の頼みは断らんよ。基本的にな」

「んじゃ、天宮スクエアで合流だ」

立花をバイクでスクエアに向かわせ、和真はDEM社の前に立つ。

当然ながら、割れた窓からエレン達3人が降りてくる。

ドンッとデカイ音を立ててカリスとレンゲルが着地、エレンは空中で

浮遊している。

「粘りますね。ですが天宮スクエアの方は、もう手遅れでしょう」

「何故そう思う?」

「ジェシカに手負いの人間が勝てるはずがない。いくら嫌なジェシカといっても」

「そうかね?まぁ絶対俺はスクエアに戻ってやるさ」

『エボリューションキング』

キングフォームに変身し、再度戦闘を開始する。

防御がバカみたいに高くなっている今、生半可な攻撃では傷などつかない。加えて友人が狙われている今、和真の心は決まっていた。

(五河も立花も、皆も助けて、DEMを叩く!)

レンゲルラウザーとカリスラウザーが装甲にヒットするが、傷すらつけられていない。

剣を振るいながら、2人へ問いかける。

「お前らさぁ....利用されてるだけなんじゃないのか?」

「まさか」

「んなわけないじゃん」

そう思っているのか。だが協力体制とはいっても、ウェストコットに

利用されている可能性も捨てきれない。

気づいていないだけかもしれないが。

溜息を1つつき、キングラウザーを薙いでカリスとレンゲルにダメージを与え、距離をとる。

「では私も出るとしましょう」

「遅えよ、年増」

何かが切れる音が聞こえた(気がした)。

刹那、白銀の疾風と化したエレンが、和真を襲った。

だが今の和真にレイザーブレイドごときで傷をつけられるはずもなく、ポッキーのように簡単にエレンの剣は折られた。

「アイザック・ウェストコットの剣であるエレン・メイザース...か」

「何ですか、その目は」

「いや別に。ユニット外せばあんた弱えもんな。そして今はユニット解除された状態だ。誰でも勝てるね」

そう吐き捨て、歩み去ろうとする和真の背中に声が掛けられた。

「逃げるつもり?」

「今度こそ逃さないぜ」

またか。そのセリフ何度も聞いたことか。文化祭準備期間も何回も言われた。

それに今和真は、一刻も早くスクエアに戻らねばならない。

「聞き飽きたセリフを何度も言うな。俺は行かなきゃいけないんだ。

だから...俺は戻らない」

それだけ言うと変身を解除し、バイクに跨り、発進した。

 

スクエアに帰還すると、既にギャレンとDEMの部隊が上空で戦闘を繰り広げていた。予定よりも早い気がするが、その点折紙との戦闘にならなかっただけはマシだろう。

全回復したMPを使って結界を貼り、再度和真はブレイドへと変身。

ジャックフォームになり、空へ飛翔する。

「よく耐えられたな、流石俺のダチだぜ立花」

「ま、これくらい朝飯前だって」

そうは言うが、現状立花はかなりボロボロになっていた。

やはり無理を言い過ぎたかもしれない。

「謝るこたぁねえよ。俺がやりたくてやったことでもあるからな」

敵の1人に向かって引き金を引きつつ、立花は言う。

「長い間こんな戦闘なかったからな。楽しいんだ」

「ほう、なるほど。でもまだ敵はこんなにいるけどネ」

「言うな言うな。鬱になりそうだ。」

「改めてそんじゃ、行きますか」

「おう!」

そして2人は加速、それぞれカードをラウズし、雷を纏わせた斬撃と

炎の弾を放っていく。

数分後、その空域には和真達以外には誰も居なかった。

全て墜としたのだ。

「やったな、殿町」

「そう...だな」

倒せたは良いもの、何か疑問が残る和真だった。

しかしこれ以上考えるのもどうかと思い、地上に降りてステージ企画の為、天宮スクエアに入っていった。

文化祭も後半戦、いよいよ精霊達のライブがスタートする。



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仮面ライダーブレイドは人気アイドルの夢を見るか?

結局その後天宮スクエアに向かおうとした和真&立花はクラスの女子達に捕まってしまい、クラス企画の後片付けを任されて、スクエアに

行けるようになったのはかなり後になってしまった。

そんなわけで、現在割と暗くなってきた道を歩いているのだった。

「ったく...これだからお人好しは」

「まぁそう言うな、女子からの頼みは断れないだろ?」

「剣崎みたいに優しいのかよオマエ....橘とは思えねぇなあ」

「ははは、っと何だ?なになに、突如現れた美少女?名前は五河士織?五河に似てるような...殿町何か知らん?」

何故こっちに振るかな。

「お、俺何もシラナイヨ?」

「絶対知ってる顔してんぞ、関係くらい教えろよ」

「し、知らないから!それよりもライブ終わっちまうぞ?」

無理矢理に話題を変え、スクエアへの道を急ぐ。あと少しの所で、ふと和真は足を止めた。

「.....立花、先にライブ行っててくれ」

「何故?」

「良いから、頼むよ」

「お、おう?パンフくらいなら取ってくるぜ」

立花を先に行かせ、和真は再び一人きりになる。闇が支配し始めた空を見上げながら、口を開いた。

「なぁオイ。誰だか知らねえけど隠れてないで出てこいよ、気配バレバレだぞ?」

「そうか、まぁ別に通りすがっただけだから、気にするな」

「通りすがっただけ....か。というか今思った事1つ聞いて良いか?」

「構わないが」

「テメェ、何で俺とそっくりのツラしてやがる!?」

「まあまあ落ち着けよ、八坂和真」

「落ち着けるかよ!お前ワームか何かなのか?」

「はぁ....この世界の和真は、いやここにいる和真は随分とキレやすい

みたいだな?」

「遠回しな言い方し過ぎなんだよ、端的に述べろ」

吐き捨てるように言った和真に対し、和真のそっくりさんは溜息をついてから、口を開いた。

「高校生の八坂和真....お前はこの世界に居てはならない。この世界から出て行け」

「ディケイド剣崎気取りか?俺はここでやる事があるんだ、邪魔される訳にはいかないんだよ」

「全く....これじゃあ風香と吹雪を差し向けた意味ないじゃないか。」

「おい、それって風香と吹雪に俺を追わせたのはテメェだってのか?」

「まぁ簡単に言えばそうかね」

いきなり過ぎる事に、脳が半ばついていけない。風香と吹雪に追わせたのなら、わざわざ出向く必要もない気がするが。

「確かに最初のところなら出向く必要はなかったかもしれないさ。だけどな、今となっては世界の歯車が狂い始めてるんだぞ」

「歯車だァ?知らねえよ、ンなもん」

「存在しないはずの『まどかの兄』という存在を創り出した上に、本来存在する鹿目タツヤを消したってのはどう弁解するんだ?」

「.....うっせえな!お兄ちゃんって言われたいだろ普通はよ!CV悠木碧だぞ?少しは考えろよ!」

「いやそういう話じゃなくてな....とそろそろ時間か。俺は1回ここで

消えるが、ちゃんと帰れよな、家には」

最後にそういうと、和真のそっくりさんはフッと姿を消した。

まるでホログラムか何かだった、とでも言わんばかりだ。

スクエアを振り返り、足を踏み出そうとした時、脳内に電気が走るような感覚を覚えた。

「そうか....このライブは.....時間的にもまずい!五河、立花、犬井!」

和真は叫び駆け出していた。走りながら防音結界を張り、会場に入る。だが手遅れだったようだ。

防音結界のせいで聞こえなかったが、既に美九の精霊は顕現しており、美九の口が動いているのが見える。まるで歌を歌うように。

「くそ、間に合わなかったのか。いや立花はどこかにいるはずだ!」

ゾンビの如く動く皆を跳ね除け、通路を走り回る。

ある程度走ったところで、後ろから声が掛けられた。

「何してんだ?殿町。あ、これパンフな」

呑気にイヤホンを耳にさしながらライブのパンフを渡してくる立花。だがどうして、コイツは正気を保っている?

手招きして結界の中へ入れ、イヤホンを取らせる。

「何で正気保っていられるんだ?普通なら操られるとこだぞ?」

「面白くなさそうなんで、アニソン聞いてた。」

「それいかんだろ....けど今回はそれが功を奏したとも言えるか」

立ち上がりステージの方を見やると、キャットウォークに2人の人影。

髪型的に、士道(士織フォーム)と十香だ。お互いメイド服姿なのは、まぁ文化祭のアレだろう。十香は霊装を限定顕現させているので、メイド服感は薄れているが。

原作ならばもうすぐエレンが来る頃だ。

「戦えるか?」

「ああ、問題ねえが....何故だ?敵でもいるのか?」

「まぁそんなとこだ」

エレンが来る可能性があるとか、美九が精霊なんだとか言ってもどうせ信じては貰えまい。ならば敵が居るとだけ言っておくのが、正しい選択だろう。

「俺は五河を助けに行く。立花、お前は外でエレンが来た場合迎撃を頼みたい。」

「エレンてアレか、あの金髪っぽい女か?」

「そそ」

「分かった。お互い操られることだけは避けないといかんな、これは」

「ま、そうだな。行くぞ!」

「ラジャー」

そして和真は手すりを飛び越え、立花は外へと走っていった。

 

手すりを飛び越えてステージまで走り、美九の所へ一気にジャンプ。

ドンッという音を立てて、ステージに着地する。

「あのーすいません。その歌やめて貰えませんかね?」

「.....誰ですかぁ?話しかけないでください、穢れますぅ。空気そのものが汚れるので、近付かないでください。というか消えてください」

おやおやこれはこれは。予想はしていたが、相変わらず男には毒舌なんてレベルじゃない。ロンギヌスの槍を言葉にして放っているかのようだ。ぐさぐさ刺さってくる。

「は、はは、キツイねェ....『宵待月乃』。かつてのアイドルもこうなっちゃ原型とどめちゃいねえなァ。」

和真の言葉に美九は、俯き、黙り込んだ。無視しているのかさっぱりだが、何を考えているかすらも分からないのが事実だ。

「お姉様?」

「お姉様?」

メイド服の他の精霊達が美九に近寄っていく。

今美九の天使を全力で撃たれれば、間違いなく操り人形である彼女達も傷つく。それは出来ないはずなので、こちら側が有利と見ていい。

「.....さい。うるさいうるさいうるさいうるさぁぁぁぁぁい!」

咆哮ともいえる叫びに霊力を込め、美九は声を張り上げる。

「っくそ!五河、お前からも何か言って.....あれ?」

キャットウォークを見上げると、そこにあった十香の姿はなく、五河が足を引きずりながら、舞台裏へ向かう士道の背中だけが見えていた。

「〈プリンセス〉が連れさられたということは、ギャレンが敗北した

という事か....折紙が来ていても無理だったと見ていいか。」

「....激昂。怒りました、死んでください」

「お姉様を泣かせた罪、死んで償うが良い!」

「ええええええ?!ちょっ、何も泣かせてはないよな?ベルセルクも

ハーミットも極端だなオイ!」

初撃を回避し、舞台裏へとなんとか転がり込む。

「五河、五河!いるか?」

「ああ....殿町か。十香を助けないと....」

「今は身を隠すのが先だ!今はひとまず俺の背中側につけ!」

複数の気配が迫ってくるのが分かり、ステージ側に向かって手榴弾を2つ投げ、ロケットランチャーを1発ぶち込む。

「逃げるぞ!」

「四糸乃...耶倶矢に夕弦も....」

「身の安全を確保するのが先だっての!馬鹿か?!」

足をやられているようなので、肩を貸して士道と共に外に出る。

外には既にボドボドになっていたが、立花が待っていた。

空では真那の纏う〈ヴァナルガンド〉とDEMの戦闘が展開されているのだろう、火花のようなものが様々なところで見受けられる。

「俺が行ったらソッコーで落とされたぞ?あいつら無茶苦茶強え」

「マジか、強化されてんのかなぁ」

「てか五河の目が死んでないか?何か大切なモノを失った後みたいだぞ?」

「まぁ、間違いじゃないがな」

スクエアを離れる為、3人で操られた暴徒が迫る中を走る。

正確には五河を気絶させて和真が背負い、走ったというのが正しい。

「流石に重いぞ、どうにかしないと」

「それは思った。ひとまず警察も呼んでおこうや」

 

電話を終えて立花が戻ってきたので、1度スクエアの辺りまで戻ることに。説明をしないといけないと思ったからである。

いざサイレンが聞こえて滑り込んできた車を見てみれば.....

「ナニ、アレ。赤いパトカーとか知らねーよ?しかもタイヤ6つとか」

「いや、脇にいるバイクもどうなん?てかバイクの人私服だろどう見ても。警察じゃないよな?」

囁きあっていると、車とバイクからそれぞれ降りてきて、こちらへと

歩いてくる。警察とはなかなかに怖いものだが、この人竹内○真にみえるのは気のせいか?

「通報があって来たんだが、五河士道という奴はいるか?」

「あ、五河ならコイツですよ?」

「よし、ご苦労」

「「「へ?」」」

なんとその警察と思われる人、士道に手錠をしてスクエアに入って行ってしまったのだ。間違いなく彼は....

(操られてるぅぅぅぅぅ!あれ絶対マインドコントロールされてるぅぅぅぅぅ!何、あの天使の効力は警察まで入るのか?)

「どーすんだよ、五河取られたぞ?」

「どーもこーもあるか!そこの私服を抑えろ!」

「お、おう!」

再びスクエアへと走りだす和真。

後ろで立花がバックルを取り出すのが見え、それを応じるように私服の詩○剛に似てる青年もマッハドライバーそっくりのモノを取り出す。

『Turn Up』

『シグナルバイク・ライダー・マッハ!』

ギャレンとマッハに変身し、2人はそれぞれゼンリンシューターとギャレンラウザーの引き金を引いた。

 

スクエアに入り、真っ先に和真はステージへと向かった。

恐らくステージにいる美九のところに士道を届けるのだろうと予測したからである。

その予想は当たり、ちょうど士道をステージに置き、階段を登って来た泊進之介そっくりの彼と鉢合わせした。

「よう、泊進之介....仮面ライダードライブ」

「なんで俺の名前を?」

「言う必要はねえ!そこを退け!」

「悪いが通すわけにはいかない。引いてもらいたい」

「押し通ると言ったら?」

「力づくでも止める」

僅かな沈黙。そして和真はブレイバックルを、進之介(仮)はシフトカーを取り出す。

「「変身!」」

『Turn Up』

『ドライブ・タイプスピード!』

刹那、ハンドル剣とブレイラウザーで鍔迫り合いながら、2人はステージへと転げ落ちた。

何回も斬撃を繰り出し、それをお互い弾いて、両者共に攻撃が当たらない。

「そこを....退け!」

「断る!」

精霊達も観客も目を丸くする中、2人は戦い続ける。

正直、こんな事をしている場合ではないのだが。

『スピ・スピ・スピード!』

シフトカーを操作し、ドライブは更に加速。

ブレイラウザーの斬撃が躱され、腹に蹴りがきまってしまう。

妙に上手く決まったようで、口の中に血の味が広がる。

「かはっ....畜生、これだから長期戦は嫌なんだ!」

『ヒッサーツ・フルスロットル!』

タイプスピードの必殺技、スピードロップを受け、和真ブレイドはステージの端にまで吹っ飛ばされる。だが流石はアト子さんが作ったライダーシステム、一回の必殺技程度では変身解除はされないようだ。

「ってぇなあ!ならこれだ!」

『アブソーブクイーン・フュージョンジャック』

ジャックフォームになり、未だに気絶したままの士道を抱えて飛び上がる。

流石にドライブとて空は飛べまい。

と思ったらそうでもなかったようで、八舞姉妹がサイクロンマキシマムドライブで追いかけて来ていた。

「しぶといなぁ....おい立花」

『ったく!ちょこまかと!なんだ殿町?』

「五河確保した。身を隠すから、大通りで集合」

『おう!』

立花への連絡を終えて、和真は加速。大通りへと向かった。

 

夜の大通りは暗く、人影もない。文化祭のアレもあるのだろうが、声すらなく、逆に不気味だ。

そんな中、士道をベンチに横たえた後、和真はコンビニを漁っていた。非常時だ、何かを取っても問題はないだろう。多少の金さえ置いておけば。

ひと通り揃えベンチに戻ったところで、立花も合流。

士道も目を覚ました。

「で、どーすんだ?これから」

「四糸乃達の事もどうにかしないとな」

「まぁまぁ。とりあえず身を隠すのが先決だと言ったろう」

「「移動手段は?」」

「あれだ」

和真が指差した先にあったのは。

 

「だからってさぁ、四輪駆動ってないだろ。そもそも免許ねえよ?」

「まあこんな時くらい、冒険した方が楽しいって」

「冒険って....」

「楽しむって......」

微妙な表情を浮かべる2人。何故そう暗くなるのだろう、こんな時だからこそ、明るく行くべきだろうに。

「んじゃシートベルト閉めろよ?隠れ家まで多少あるし、揺れるだろうからな」

「「ぎゃああああああああ!」」

和真はアクセルを思いっきり踏み込み、四輪駆動は勢い良く走り出した。

次回はようやくあの人とご対面、最終決戦と戦いまっすぅ(若本規夫)

 

 

 

 



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俺たちのクラスメイトが魔王になるわけがない(なっちゃったけど)

その後、隠れ家として用意した廃ビルに辿り着いたのだが、そこで免許とか道路交通法云々と言われたのはまぁ置いておいてだ。

現在ビルから外を見てみても、ゾンビのように人々が徘徊しているのがはっきりと分かり、恐怖すらいだかせる。

「おいおい、ここホントに大丈夫なんだろうな?」

「流石に操られてる人達は来ないと思うけどね、俺は」

そう言いあう立花と五河をよそに、和真は冷静だった。

「どうしてそう冷静なんだ?ゾンビみたいなのがうろついてんだぞ?」

「まあ落ち着け、応援は呼んであるから。多分五河なら知ってるはずだぜ」

その言葉から程なく、影から1人の少女が現れた。

「く、狂三っ?!」

「久しぶりだな、時崎狂三」

「まあまあ、士道さんに和真さんではありませんの。今回呼んだのは和真さんでしたわね?」

「ああ、そうだ。時崎、お前の目的地が俺たちと同じだから呼んだだけであって、余計な事をすれば容赦はないぞ」

「あら怖い」

会話についていけてないのか、立花が?マークを浮かべている。

若干士道もパンクしかけているが。

「簡単に説明するとだな、時崎狂三とはかなり前に一度会ったことがあるんだ。ま、仕事の途中でだけどな」

「ひどいですわ、共同戦線まで張りましたのに」

「あれは偶然だろ。勘違いすんな」

「あーつまり、えーと、今回の協力者って狂三なのか?」

士道の問いに和真は頷く。

立花は発狂寸前の喜び様だが、まあそれも当然だろう。

一度消えたはずの美少女が再び目の前に現れれば、誰でもそうなる。

そして和真・立花・五河の3人はカロリーメイトを齧りながら、狂三は

精霊だからか食事はしないようだが....作戦を立てることにした。

 

しばらくして、作戦を立て終わり、4人は外に出た。

既に外に出た事はバレたようで、ゾンビのように操られた人々が近づいてくる。

「良いか、絶対に人間には攻撃するなよ?よぉく聞いておけよ、攻撃した途端に居場所が特定されると思え。」

今は誰かが外に居る、程度にしか見られていないだろうが、少しでも人間に触れた瞬間が運の尽きと見るべきだ。

美九の精霊としての能力は『音』だ。触れたことすら、振動として伝わる可能性がある。

「よし、乗れ。時崎もだ」

全員乗ったところで、四輪駆動のエンジンを掛ける。

和真はアクセルを踏みこんで発進させた。

「そーいや....このエンジン音ってバレるんじゃね?」

「.....」

「.....」

「ピンチはチャンスって言うだろ?」

「「バカか?!」」

後ろを見ると、赤いスポーツカーっぽい車と白いバイクが迫っていた。

「おいどー見てもアレ、さっきのあいつらだよなぁ?!」

「喋るな、舌噛むぞ!」

無理矢理ハンドルを切り、大型の四輪駆動を路地に突っ込ませる。

そこから更に加速するが、ドライブ&マッハは追いかけてきた。

(もういっそ出るか)

最大までアクセルを踏んで、路地から天宮スクエアへの道を選んで、ひた走る。トライドロンも間近に迫っている。

「おおおおおおおッ!」

路地から天宮スクエアの前に出たところで一気にブレーキを踏むと同時ハンドルを左に切り、ドリフトさせた。

そして予想通り、操り人形と化し、機械的な事しか出来なくなっているのかドライブとマッハはハンドルを切れず、スクエアへ突っ込んでいった。

車から降り、和真達4人はスクエアに向かい合う。

明らかに多勢に無勢だが、仕方ない。

「よし、行くか」

「ああ」「了解」「分かりましたわ」

五河と時崎狂三が天宮スクエアにて美九の説得を試み、和真と立花は

先にDEMに乗り込むというのが、今回の作戦である。

五河と時崎を置いていく形になってしまったが、それは作戦上是非もないのだ。

なんとか持ち直したドライブとマッハに追われる感じで、和真と立花は再度四輪駆動に乗り込む。

「ま、しゃあねーよな」

「半分お前のせいだけどな」

バイクも何も置いてきてしまっている今、移動手段がこれだけなのも

また事実。

上手く撒きながら、和真達はDEM社へと接近していった。

 

ある程度走ったところで、和真と立花はなんとかDEM社の正面に辿り着いたわけだが。

しかし警備は前より強化されており、ユニットを装備したピーポーがあたりを哨戒していた。

車の影に隠れて様子を伺いつつ、こそこそと話し合う。

「どうすんだ?思ったより警備厳重だぞ」

「そうだなァ....あ、1つだけ手があったな」

内容を話すと、立花は明らかに嫌な顔をしたが、この際それ以外に策は思い付かない。

「「変身」」

『『Turn Up』』

そしてブレイドとギャレンに変身した和真と立花は、四輪駆動を正面玄関めがけて蹴っ飛ばした。

2人の仮面ライダーによって蹴り飛ばされた四輪駆動は、正面の自動ドアをぶち破り、フロントへと進入した。

加えてそこにロケットランチャーを撃ち込む和真。

車は爆発し、社屋の一階付近は大混乱状態に陥った。

「今だ行くぞ」

「ああ」

爆煙の中をブレイドとギャレンは走り抜け、階段を駆け上がる。

敵が現れては斬り、敵が現れては撃ち、の繰り返しだ。

ある程度上がったところで、ケータイが鳴る。

「着いたか?」

『もうすぐ正面玄関のはずなのですけれど、燃えててよく分かりませんわ。

何があったのか教えて欲しいですわよ』

「後で説明するからさぁ、五河と美九を連れてきてくれ」

それだけ言って和真は電話を切る。

「そろそろ来るらしいぞ」

「誰が?」

「時崎狂三さ」

そしてしばらくすると、時崎狂三と美九と五河士道が階段を上がってきた。美九と五河が言い争っているのは原作通りか。

「では私はここで」

「おう、すまなかったな」

時崎狂三は虚空にとけるように消え、残されたのは美九と男子3人と

なってしまった。

下手すりゃ美九に殺されかねない状況ではあるが....そこは五河の言葉に期待するしかあるまい。

 

またしばらく歩いて、先日和真と立花が来たことのあるあそこではない、別の部屋まで来た(事前にアニメで調べておいた甲斐がある)。

美九が喚いているようだが、無視してドアを蹴り開ける。

「世話ンなるぜ」

「度胸あるなぁ」

言い放った和真に対して、立花が囁く。これくらいしないと、時間がなくなってしまう気がするのだ。

早くしないと十香が《反転》してしまう。いわゆる黒化である。

早くエレンを倒さないと

「ぐうっ.....」

ギィンという鈍い音を響かせ、影から鋭く振るわれたレイザーブレイドとブレイラウザーが火花を散らす。

「て、てめえ...不意打ちたァ、騎士道もクソもねえなぁ!」

「生憎私は騎士ではありません。アイクの剣であり続けるだけです」

「〈ペンドラゴン〉とかいうユニット使ってるくせに、よく言うね」

ブレイラウザーを薙ぎ、僅かにエレンを下がらせる。

よく見れば、ウェストコットも居るではないか。

そしてガラスで仕切られた向こうには十香の姿も。

(このガラス、防刃か何かだな。そして五河を送り届ける為には、アレを壊さないといけない....か)

ゆっくりと和真はブレイラウザーを構え、立花もギャレンラウザーを

握る手に力を込める。

五河が前に出るよりも早く、和真は一歩踏み出した。

「アイザック・ウェストコット、エレン・メイザース。俺の声は聞こえているだろう!夜刀神十香を解放しろ、クソ野郎!」

「いやいや、2度目とはいえ、相変わらず物騒だなぁ....ヤサカ・カズマ」

「俺の名前は今はどうでもいいだろ!良いから夜刀神十香を解放しろって言ってんだよ!」

そこらに転がっていた機械をウェストコットに向かって投擲するが、

当然ながらエレンに切り裂かれる。

「ふむ、ならばこうしよう。エレンが君の後ろの少年、イツカ・シドウを殺すのが先か、君がエレンを倒してこのガラスを壊すのが先か。

勝負といこうじゃないか」

結局自らの手は汚さない戦法を取るようだが、それも面白い。

『アブソーブクイーン・フュージョンジャック』

ジャックフォームになり、和真とエレンは相対する。

静寂がその場を支配し、刹那、2人は加速した。

空中で繰り出されていく高速の斬撃。

2人の騎士は更に加速していき、ついには天井すらもぶち破った。

そして次の瞬間、ブレイドの刃が届くかと思われた時、エレンの姿が

消えた。

「なっ....?!」

何が起こったのか分からなかった。

あたりを見回しても姿は見えず下を見てみると、ちょうど五河の背中が斬り裂かれて、倒れ込んだところだった。

「おい、五河!生きてるか?!おい!」

立花の声が虚しく響き、エレンはウェストコット何事もなかったかのように話しかけている。

「まさかここでアクセルを使う羽目になるとはね。驚きだよ」

「申し訳ありません。思ったより手強く.....」

エレン達に構わず下に降り、変身を解いて五河と立花のところに歩み寄る。

「すまない....俺の力が及ばなかったんだ...何とでも言ってくれ」

「お前は悪くねえよ、この会社が悪いんだ....クソっ、五河の野郎...」

沈黙がその場を支配した。大切な友人を失うというのは、こんなにも

きつい事なのか。和真は今日初めてそれを理解できた。

だが、こうなってしまうと、《魔王》が生まれるのも時間の問題と言えるだろう。

そう思い、ガラスの方を見やると、プリンセス十香の体からは既に黒いオーラが溢れ始めていた。反転するまで、あと僅かだ。

(せめて後始末くらいはしないといけないな)

「ああああああああああああああああああッ!」

そして十香は絶叫し、膨大な霊力が溢れ出す。

黒いオーラが十香を中心に膨れ上がり、防刃ガラスをも砕き、部屋を

包み込む大きさで広がっていく。

慌てて結界を張り、死に体の五河と立花、美九を庇う。

(原作より凶暴になってないか?流石〈暴虐公〉を扱うだけはあるが)

予想以上に危険な存在となっている十香を前に、和真は決断をしなければならなかった。

十香を殺すか、助けるか。どっちみちエレンとウェストコットを倒すのが今の目的なのだが。

だとしたら過程でそれを達成する、それだけだ。

「変身」

『Turn Up』

再びブレイドに変身する。体に再生の炎が燻りはじめ、五河も〈鏖殺公〉を顕現させて立ち上がった。こうなると、五河を十香の元に送り届けるミッションも発生してしまうが....まぁいいだろう。

「立花は援護射撃を」

「任せてくれ」

アクセルを使わせる暇も与えず、床を蹴ってエレンに肉薄する。

随意領域を無視してブレイラウザーを突き出し、その刃はそのままユニットもろともエレンを貫いた。

「ふっ、一瞬の隙が仇になったな....」

「う、嘘....でしょう」

今の和真はキレていた。下手をすればあの発作も起こりかねないが、

必死に抑え込む。

復活したとはいえ、五河を一度死の瀬戸際にまで追いやられ、十香も

反転しかけている。

元凶にキレない方がおかしいだろう。

「残念だったな、お前は弱かったんだ」

冷たく告げ、剣をエレンの体から抜くと同時、彼女の体を無言で壁へ蹴り飛ばす。血飛沫が、照明の切れかかった半壊の部屋を舞う。

原作とかなり違う配置な気がするが、知ったことではない。

「次はお前だ、アイザック・ウェストコット」

「おいおい、ちょっと待ってくれたまえ。私は何も悪いことはしてないはずだが?」

「黙れ、ゲス野郎が。消えるがいい」

『サンダー』と『スラッシュ』のカードをラウズ、『ライトニングスラッシュ』を発動させる。

そして、無言で和真は剣を振るった。

綺麗にウェストコットの首は飛び、胴体をもその刃で切り裂く。

グロ描写になってしまったが、是非もない。

「これで奴らは消えたな。あとは....」

死体には目もくれず、和真は黒化しかけている十香を見やり、五河達に話し掛ける。

「五河、今からお前を彼処に送り届ける。あの姫さんを戻せるのは、お前だけだからな。覚悟しろよ?」

「ああ、覚悟ならできてるさ。この建物に踏み込んだ時点でな」

「強くなったよなぁ、五河も」

「なぁに、ヒトは成長するのさ」

和真たちはわずかに笑みをこぼす。そして立ち上がり、並んで十香に向かい合った。

瞬間、十香がいる場所から強力な霊力が放たれ、3人を吹き飛ばして、

『彼女』は誕生した。

例えるならば、黒き女性剣士といった感じか。否、それをも超越した

何かに十香は成っていた。

なんとか立ち上がり、3人は再び十香の方を向く。

「やっぱり男は駄目ですね〜、でもそこの馬鹿な女装趣味の変態さんの方法とやらを聞いてみたのでぇ、あくまで十香を人形にするために!やってみますぅ」

(てめぇ、やる気か?ああァ?)

(落ち着けよ、今は少しでも美九に時間稼ぎをしてもらおうや)

(女装趣味の変態さんて....)

美九の後ろで密かに行われる乱闘など気にせず、美九は己の天使〈破軍歌姫〉を顕現させる。

その一部である銀筒が壁と床から出現し、いくつかが十香の方を向いた。まるで砲門のようだ。

ゆっくりと息を吸い込み、そして歌姫は口を開いた。

「ーーーーーーーッ!」

その口から放たれた美声は天使を介して不可視の拘束具となり、十香に巻きつく。

「さっき言ってた方法とやらをやってみたらどうなんですぅ?変態さぁん」

「ぐはっ....」

「これはちょっとな...フォローできんわな」

「死にかけてるけどねえ」

なんとか五河士道を立ち上がらせ、再度3人は魔王の前に立つ。

「変身」「〈鏖殺公(サンダルフォン)〉」「変身」

和真はブレイドに、立花はギャレンに、五河士道は〈鏖殺公〉を顕現させ、魔王へと変貌したクラスメイト兼攻略相手に対峙する。

無言で十香は使える方の手を虚空に掲げると、瞬間彼女の手に大剣が握られていた。黒く、邪悪な何かを感じる剣だった。

「畜生、こいつァ楽じゃねぇな」

「弱音吐くなんざ...らしくないぞ」

「何言ってんだ、十香を助けるって言ったろ?ほら、行くぞ!」

やる気満々の五河の言葉に首をすくめ、ブレイドとギャレンも各々の

得物を手に取る。

というわけで、最終決戦は次回!

伸びてしまって申し訳ありません!(スタッフ一同)

 




デートアライブ編延長してしまって申し訳ないです。
次回でデートアライブ編は絶対完結させます。
(銀魂みたいに延ばし延ばしにはならないと思いますが)


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剣ノ王と黒十香

さて前回の続きから始まることになるのだが、各々が攻撃をしかけても軽くあしらわれ、ほぼ何も出来ていないというのが現在の状況であった。

霊力の波動だけで和真達は何度も吹っ飛ばされ、近づくことはおろか、攻撃を当てることで精一杯だった。

「っくそ...ンだよ、強すぎだろッ!」

「分かってたんじゃないのか?そんくらいはよ」

「そりゃそうだがよォ...」

膝をつき、肩で息をする和真と立花とは反対に、〈鏖殺公〉を杖のようにして立ち上がり、再生の焔を纏いながらも何度も向かっていく五河士道が居た。1人の少女の為、命を賭ける高校生。

その姿は、さながらお姫様を助ける為に戦う勇者のようであった。

「ぐあっ......」

霊力の塊をぶつけられ、ボロ雑巾のように五河の体が宙を舞い、和真達のところへ落下する。

「.....ッ、と、十香っ....」

「無理すんじゃねえよ、お前まだ半分以上人間なんだぞ?これ以上やったら死ぬぞ!」

「と、殿町....どいてくれ....俺、は、十香を...」

「だからって目ェ閉じんなァ!起きろォォォ!」

彼には悪いが、ガクガクと体を揺すって無理矢理起こさせる。

応急処置とは言えないものの、五河は一応目を開けた。

「もう後は1回チャンスがあれば良いトコだろうな。俺たちの体力とか鑑みると、そうなっちまう」

「そう...か。1回で充分だ、十香を....助けに行こう」

ボロボロの五河に肩を貸し、和真・士道・立花は立つ。

だが既に和真と立花も変身が解けてしまっていた。

(なんかこれ前回もやった気がするな)

「人間ごときが、私の前にまだ立つというのか?愚かな。身の程を知るが良いッ!」

魔王が剣を振り上げ、強力な霊力で和真達を飲み込もうとした瞬間、

何かが剣を抑えていた。それはまるで、バールだった。

否、名状しがたいバールのようなモノだと言うのが適切か。

「作戦変更で悪いな。魔王は俺が倒すぜ」

「なっ?!そしたら十香は....?!」

「そこらへんも考えてある。っと、うおおおおおおおお?!」

剣に違和感を覚えたのだろう、十香は大剣に力を込め、バールを粉砕した。

「まだ生きていたのか。今度こそ跡形も残さず消し去ってやる!」

十香は霊力を凝縮し、塊として放ってくるが、和真はありったけのバールを投擲して相殺とはいかないが、なんとか打ち消すことに成功した。

しかし、このままでは埒が明かない。

「ったくそっちがその気ならな、こっちだってガチで行くぜ!...変身!」

『Turn Up』

再度仮面ライダーブレイドに変身し、和真は魔王と独り、対峙する。

今の状況で、五河は絶対に守らねばならない。和真はそう思った。

(アイツ、この魔王に対抗できる唯一の手段だしな)

キスによって精霊を封印するのが、現時点での五河士道のメインの能力である。その力がなければ、この魔王は封印できない。

いくら火力で攻めたところで所詮はカス同然なのだ。

「おい、五河。おまえは今はそこの歌姫さん守ってやれ。好感度アップにはなるぞ?」

「マジか?そうは思えんが」

「良いから良いから。早く行ってやれ」

とりあえず美九の元に走り寄る五河を見送り、和真はカードを取り出した。ブレイドと十香の戦いが始まれば、〈氷結傀儡(ザドキエル)〉を否応でも使う羽目になるはず。それで美九を守る事で、好感度アップを狙うのが作戦だ。

「...で、俺はなにをどーすんだ?」

「あーそだな、立花お前は外で、精霊達の助けでもしてみたらどうだね?」

「雑な指令だなー、別に面白そうだし良いけどよ。ま、おめえも死ぬなよ?」

「お互い様ってか」

ジャックフォームになって飛び立つ立花を見送り、改めて十香の方を向いた。

「待っててくれるたァ、随分と良い魔王じゃねえかよ」

「待とうが待つまいが、私の勝利は揺るがないのだからな」

「へいへい、そいつは嬉しいねェ」

言い合いながらも、お互い睨み合う。

『エボリューション・キング』

キングフォームへと変わり、キングラウザーを握る。

十香も〈暴虐公〉を構え、魔王へとブレイドは床を蹴った。

 

何分かたったが、両者ともに譲らぬ戦いが続いていた。

正確には十香が【終焉の剣】を使おうとするのを和真が阻止し、それから剣戟が開始され...というのを繰り返しているだけだったのだが。

和真も十香も一歩も引かず、激しい鍔迫り合いになった。

「ぐ、お、おおおおおおおッ!」

「ふん、全力のようだが、この程度か」

口では余裕をかます十香、しかし顔には明らかに焦りが見て取れた。

しかし突然一旦引き、2人は剣を持つ手を下げた。

「俺はお前を殺すつもりはない。五河士道の為にも引いてはくれないだろうか?お前の信じた五河士道の為にな」

「イツカ....シドウ?シドウ、シドウ、シドー、シドー...?」

まさか記憶が戻りかけているのか?

駆け出そうとした五河を制し、様子を伺う。

すると突然床に剣を突き刺し、十香は左手に剣で傷をつけた。

「うぐっ....はぁ、はあ、ッ面妖な手を....!私を惑わすつもりか、人間ごときがァ!」

「畜生...傷付けて己を保ったか!夜刀神十香、いや魔王!」

和真の叫びに応えるように、黒化十香はその片刃剣に霊力をこめる。

刹那、漆黒の玉座が出現し、分解したかと思うと、その黒き片刃剣と

一体化し、1つの黒い巨大な何かへと変わった。

それはもうただの黒い剣と呼ぶには遠い存在で、その名の通り【終焉の剣】と呼ぶに相応しい姿をしていた。

「ならば我が一撃を持って、貴様らを消し去ってやる!」

十香が巨大なそれを振り上げると、刃の部分に黒い粒子が集まって行き、十香の体も空へと上がっていった。

まるでエネルギーの充填のようだ。

「こうなりゃヤケだな。五河、美九、お前ら絶対動くなよ!」

『♠︎10・J・Q・K・A』『ロイヤルストレートフラッシュ』

【終焉の剣】が黒い輝きを増すのと並行し、ブレイドと十香の間に、光り輝く5枚のカードが出現していく。

だが十香の目は和真ではなく、五河士道を捉えていた。

名前を呼んだからだろうか、あるいは混乱しているのか。

「十香?...どうしたんだよ?帰ろうぜ、俺たちの家に」

馬鹿なのか、この世界の五河士道は。

五河の声が届くと、十香は絶叫じみた声を上げ、剣を振り下ろした。

「〈暴虐公〉....【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】!」

五河士道と美九を守る為、負けじと和真もキングラウザーを振るい、

「うおおおおおおおおおおおおッ!」

全力で放たれた光と闇の奔流が空中でぶつかり合い、凄まじい明るさがあたり一帯を照らした。

視界の端で捉えただけでも、スクエアにいた精霊達やAST、数多くの人達がこれを目撃していた。ま、そんなことはどうでも良いのだが。

「ぐっ....クソッ....!」

予想を上回る強さの天使である。アニメの時よりも火力が明らかに向上している。下手をすれば負けかねない威力に思えてきた。

だがこんな所で負けるわけにはいかない。

体に違和感を感じ始め、血の味も鉄ではなく、別の何かになり始めたが、剣を離さない。寧ろ体の底から力が湧いてくるようだ。

「ここで....負けるわけには....いかねぇんだよ!」

和真の意志の強さに呼応するかのように、金色の光はさらに輝きを増した。

「なっ?!にん、げん、如きに?!」

「そんなセリフはなァ!雑魚の言うセリフなのさぁ!」

叫び、和真は渾身の力でキングラウザーを振り切った。

闇夜を包み込むが如き光の奔流は、最強の天使〈暴虐公〉を砕き、十香をビルの壁に叩きつけた。

変身を解き、和真と五河は十香に歩み寄る。

「....く、はっ...どうやら私の、負けのようだな」

「ああ、そうらしいな」

「イツカ...シドウか。良い名の少年に出逢えて良かったな...『十香』」

静かに黒い十香は目を閉じる。

原作とは違い、珍しく優しい雰囲気を出している。

再び永い眠りにつくかのように、目を閉じると、着ていた霊装も自然と消えていき、メイド服へと戻る。

和真と五河は、眠れる姫を見下ろし、呟く。

「結局何だったんだ?あの黒い十香は」

「さぁ...な。少なくとも悪の塊でない事だけは確かだよ」

全身から血を流しながらも、和真はなんとか二本の足で立つ。

「そういや、あのマインドコントロール的なのはどうなったんだ?」

「あ、そういえばそうだな」

「それならさっき、誰かさんが全力攻撃した途端に解除されてたぞ」

上空から声がし、見上げると立花の姿が。

なぜか両手で風香と吹雪を抱えていた。

「あの...そいつらは?」

「外から隠れて見てたんで、とっ捕まえといた(ドヤ顔)」

まあ2人ともギャーギャー言っているようだが、疲れすぎて何も怒る気にすらなれない。

「んじゃあな、俺は帰るよ」

「最後に1つ良いか?」

「どした五河?何か質問でも?」

「なんでさ、お前の血緑色なの?」

「「「え」」」

 

 

次の日、包帯を巻いた和真と他何人かは、駅前のファミレスに集まっていた。決して打ち上げなどではないので、あしからず。

休日だというのに人は少なく、本当にファミレスかと言いたくなる。

まあこういう所もあるんだろうが。

「んで、昨日から聞きたいんだけど、お前の血って何で緑色なの?」

「.....言っても信じられねえぞ?それでもか?」

「友達の事だ、心配するのは当たり前だろうに」

「まーまー着いて早々暗い雰囲気なのもアレだろ?なんか飲もうぜ」

「「男子だけでファミレスってなんかなー」」

「それ言うな!」

とりあえず各々は席を立ち、ドリンクバーへ。

ドリンクを確保し、再び席に座る。

和真はメロンエナジーソーダ、立花はレモンエナジーソーダ、五河は花道オレンジスカッシュである。決してフルーツ鎧武者は関係ない。

「んで本題に入りたいんだが」

「あら、貴方達もここに居たのね?ちょうど良いところに和真も居るじゃないの」

「連れてく?連れてくよね?!」

「うっせーよ吹雪」

なぜここにカリスとレンゲルが居るのか。

変身はしていないが、充分に和真には迷惑である。

もういっそのこと、この世界を去るという手もなくはない。

ここまで来たのもブルースペイダーだし、いつでも行こうと思えば行けなくはない。

だがやはり友達には話した方が良いと思う、和真の気持ちもあった。

「分かった、んじゃあ端的に言うとするか。ま、長くなるぜ」

メロンエナジーソーダを数口飲むと、和真は話し出した。

 

全てを話し終えた時、外は既に日が傾き始めていた。

立花には簡単にしか話していなかったし、風香も吹雪も『ストライクウィッチーズの世界』で久しぶりに会ったわけだから、別に構わなかったのだが。

「思ったより長くなったなぁ」

「マジかぁ、そんな冒険してたなんてなぁ」

それぞれが聞き入って、こちらもかなり饒舌になってしまった。

肝心の身体のアンデッド化の所は上手に避けてあるのは、気付かれていないようである。

皆が聞き入ってくれてこちらとしても嬉しい限りではあるので、頃合いを見計らってさりげなく金を机に置く。

「んじゃ、俺トイレ行ってくる」

と言って外に出ることに成功。

このファミレスは珍しい2階建てで、うまくいけば座席のピーポーにバレずに逃げられるのだ。

「まちなさーい!和真ァ!」

「逃げられると思うな!」

「マジかよ!?」

いち早く気付いたのだろう、風香と吹雪が2階のファミレスの窓から

飛び降りて来たのである。

追いつかれるわけにいかないので、慌ててバイクに跨る。

和真エンジンを掛けて発進するのと時を置かず、2人もバイクを発進させていた。

「早っ?!」

予想外に迅速な対応に、こちらが驚きを隠せない。

危険なレベルのスピードを出して右折しながら、ディスプレイを操作。

「なんでもいいから別の世界に飛ばせ!」

『OK!START MY ENGINE!』

「喋ったぁ?!」

これまた予想外の出来事に納得できぬまま、和真の身体は光の中に吸い込まれていった。

 



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女尊男卑の世界

中途半端に前の世界から逃げ出した和真。
次に訪れたのはIS学園。世の中は女尊男卑である。
この学園ばかりは違うようだが....
バランスの崩れたこの世界で、和真はどう生き抜くのか。



前回の最後、逃げるように光の中に飛び込んだのは良いものの、予想に反してバイクに乗った風香と吹雪が飛び込んできてしまい、現在結構めちゃくちゃな状況になっていた。

取っ組み合いに成りかけているというべきか。

「お、おまっ、どいてくれよ!動けねえ!」

「仕方ないでしょ!そっちこそ暴れないでよ!」

「はぁ....これだから(以下略)」

前の世界でかなり重要な事をやり残している気がするが、今はそんな事は気にしていられない。いち早く此処から離脱せねばならぬ。

ディスプレイを叩き、音声で指令を出す。

「早く出してくれ!どこでも良いから!」

『OK!進之介!』

「誰だよ進之介って?!俺和真なんだけど!」

『すまない。ブースタートライドロン!』

「これブルースペイダーなんだけど!名前すら間違えるAI載せんなアト子さん!」

ツッコミ虚しくブルースペイダーは、2人を振り切って加速した。

それは良かったのだが、目的地がさっぱり分からない。

加えてブルースペイダーの走り出しは良かったのに、風香と吹雪も素早く加速。追いつかれてきている。

「どこでも良いから早く!追いつかれる!」

『OK!FIRE All ENGINE!」

「意味わかんねえ事言ってんな!」

ガン!とディスプレイを叩くと、突如前方の視界がひらけてくる。

(出口かな?もう滅茶苦茶だし、こいつら道連れになりそうだ)

ちらりと後ろを見やると、あと数メートルのところまで接近していた。こりゃ道連れ確定だ。是非もない。

「いっけええええええ!」

エンジンを思いっきりふかし、三台のバイクは加速した。

同時、出口から溢れる光が3人を覆い、眩しさに目を閉じる。

だが引き返す事などできはしない。和真達はそのまま出口へと向かっていったのであった。

 

 

どれくらい経ったのか、どこに居るのか。

バイクには乗っていないようだが、場所が分からない。恐る恐る目を開けてみると、保健室のようなところだった。

いや保健室であっている。薬品などが置いてある棚、養護教諭のいそうな机。前の《デートアライブの世界》の最初で見たので、記憶に新しい。現在地を把握し、バイクを見つける為にも和真は体を起こした。

「ってて、どっか打ったかなぁ...ま、いいや。どの世界かも分からないし、気をつけて行くとしようかね」

となりの2つのベッドに気配があるが、恐らく風香と吹雪だろう。

彼女達も和真と同じルートを辿ったのならば、ここに来たか運ばれたかしているはずだ。別に居ても居なくても良いのだが。

とにかくドアを開けて廊下へ。

丁度昼なのか、日差しが廊下まで差し込む。

そこで気付いたのだが(気付くの遅すぎた)。

「なんで俺....IS学園の制服なんか着てんだ?」

とりあえず枕元にあったカバンを持ってきたのだが、中にあるのは『転入なんとか』である。

「ナニコレ?しかもご丁寧にこの転入ナントカの名前『八坂和真』になってるし!誰の仕業だゴラァ!」

その時スマホが鳴った。とってみると、

『やっほー八坂クソヤロー和真』

「テメェその声、ヨグソトースか?今頃なに出しゃばってきてんだ?

まどマギの所でお役御免になったんじゃねえのか?」

『言ってくれるなァ、邪神に対して失礼だぞ?』

「うっせーな、ただのオタクだろ畜生邪神が。で、本題は何だ?」

『あ、そーそー。今オマエIS学園の制服着て、疑問に思ってる頃だろう』

「テメェの仕業かよ、ヨーグルト」

『ヨグソトースだから!名前間違えんな!ま、単刀直入に言うとだな...愉悦に浸りたかったからだッ!転入手続き含め諸々は全部してあるから、まぁせいぜい頑張りな。2人余計なのが混ざってしまったが....』

余計なのとは風香と吹雪の事だろうか。別にこちらとしても戦闘の邪魔になりそうだし、余計ではあると思うが。

「んじゃそんだけか。あばよ」

『えっ、ちょっ』

最後まで言わせず、和真は電話を切った。

このまま続けていれば、しょーもない言い合いにしかならない。

そんなくだらないことに割いている時間などないのだ。今は状況把握をせねばならないし、何より重要なのはバイクだ。

アレがないと動けない。

「仕方ねェ....IS学園ならとりあえずあそこに行けば誰か居るだろ」

この世界で自分が何を為すべきなのか、和真は分からない。

だが分かるまで抗い続ける。それだけだ。

1つ大きなため息をついて、和真は歩き出した。

 

しばらく歩いて着いたのは、野球ドームのような建物、IS専用アリーナである。

ここなら基本的に誰かが、豊口めぐみもとい織斑千冬に怒られているだろうと思ったからだ。ひと飛びでアリーナの観客席へ。

さりげなく周りの女性陣に喋りかけてみる。

「すいません、今何の試合してるんですか?」

「えーとね....って...」

時が静止した。周りの女子達も含めてだ。「ザ・ワールド」でも使ったのかと思うくらい綺麗に固まっていた。

刹那、黄色い悲鳴が響き渡った。女子の悲鳴って黄色で良いのか?

ま、そんな小さい事はどうでも良い。

「男の子よ!IS学園の制服着てるわ!」

「なになに?転入生?!聞いてないよ?」

「織斑くんだけじゃなかったの?!」

五月蝿い。女性って本当に五月蝿い。美九は男が嫌いと言うが、女性も十二分にうるさいではないか。

「あのーそこらへんはまだ....説明がしにくいといいますか....」

言い訳しようにも迫ってくる女子達。こりゃ織斑一夏もキツイわけだ。

と思っていると、バトルが行われていたはずのアリーナの障壁を破って何かが突っ込み、ドン!という音を立てて着地した。

そもそも誰だろうか、バトルしていたのは。

「あれ戦ってたの誰?」

近くに居た物静かそうな女子に聞いてみた。

「.....織斑一夏と凰鈴音。2人ともクラス代表....かな?」

「不確定だな!ま、良いけどさ」

こうも急に状況が変化するのは慣れた。既に身体が半分以上人間で無くなっていることも自覚しているし、何が起ころうとも驚きはしない。それに教えて貰ったことで、記憶が間違っていない事も分かった。今はクラス代表戦、無人機襲来といったところか。

「さて、ひと仕事しますかね。」

階段を駆け上がり、通路を走ってアリーナへの出口へ。

いや戦いへの入口ともいうべきか。

さりげなく幾らかの文を書き、紙飛行機として『転入なんとか』と共に織斑先生のいる中継室(?)へと投げ込む事も忘れない。

そして和真はブレイバックルを取り出して装着。

「変身!」

『Turn Up』

仮面ライダーブレイドに変身し、無人機の元へ跳ぶ。

落下のエネルギーを利用し、固そうなボディにかかと落としを見舞い、着地する前に回し蹴りを更に1発叩き込む。

強力な蹴りを2発も食らい、御大層な無人機はアリーナの反対側の壁に叩きつけられる。

「お前...誰?今着てんの、それISじゃないよな?」

「というか今IS蹴っ飛ばしたわよね?!」

質問は基本的に受け付けません。ノーコメント。

だが流石に無言もまずいので、自己紹介くらいはしておこう。

「俺は八坂和真だ。一応転入生なんだけど....あ、そうそう。これISじゃないからそこら辺よろしく」

「「?!」」

突然の事に頭がついていけてないらしい。そりゃそうだ、突然転入生とか言ったりIS装着しないでデカいIS蹴っ飛ばしたりした訳だから。

おっとここで放送のようだ。

「おい、八坂!貴様何をしている?!保健室で寝ていたはずだろう!」

「あ、すんません。とりあえず全部このIS倒してからにしてくれませんか?」

織斑先生の言葉を全て聞いている暇はなかった。どうやらこのIS自体、ヒトの話を聞かないタイプのようで、突然奇襲を仕掛けてきたのだ。ダメ人間というかダメISじゃないか。しっかり作ろうよ束さん。

腰からブレイラウザーを抜いて応戦、その巨体を受け止める。

だが火花が散り、僅かに押され始める。

「ぐっ....お、おおおおおおおっ!」

しかし全力で押し返して瞬時に前蹴りを放ち、再度無人機をアリーナの壁に吹っ飛ばすが、今回はふわりと衝突を避けて青空へと舞い上がる。

「転入生だっけか?ここからは俺が、いや俺たちがやる。お前充分強いけどさ、空飛べないだろ?」

「行くわよ、一夏」

「おう」

そして2人は大空に飛翔した。まぁ、和真は地面に置いていかれた。

別に空は飛べるし、問題はないのだが。はてさてどうしたものか。

「おー高え高え、さっすが篠ノ之束が開発しただけあるなァ...まぁ両方とも専用機だからかね」

見ていると、2人とも攻撃は当たることは当たるのだが、イマイチ決定打を放つことが出来ていない。

このままでは膠着状態が続くだけだ。

『アブソーブクイーン・フュージョンジャック』

和真はジャックフォームへと変わる。

「やれやれ、仕事がまた増えそうだ」

オリハルコンウィングを展開し、和真も飛び上がる。

蒼穹を飛翔し、戦闘中の雲海の中へ突入する。

思ったより彼らは早く見つける事ができ、和真はそこへ向かって更に

加速した。

「貰ったァァァァ!」

飛行しながら剣を構え、そのまま無人機へと激突。

反撃する隙を与えず、一夏と凰を空に残して、和真は無人機諸共地面へと落下していった。

 

身体が浮遊する。無重力に近い何かを、落下しながら和真は感じていた。それでいて1Gの重力が身体を地面へと引き寄せていく。

落ちていきながら、ブレイドは剣を無人機の固いボディに叩きつけ続ける。斬れないわけではないようだが、どうにも剣では相性が良くないらしい。

だとすればやる事は1つだ。

『キック』『サンダー』『マッハ』

3枚のカードをラウザーで読み込ませ、『ライトニングソニック』を

発動する。

「斬れねえなら...ぶっ潰すだけだッ!」

軽く蹴り飛ばして間合いを取ったところで、和真の足に紫電が走る。

オリハルコンウィングを利用して無人機に向かって加速しながら、蹴りのモーションに入る。数秒後、空中で雷を纏わせた蹴りが無人機に

クリティカルヒット。

装甲が砕ける音と共に地面に墜落。刹那、無人機は爆発炎上した。

仮面ライダーのお約束だ。倒されたら爆発、当たり前である。

と思っていると、意外にもしらけていた。

降りてきた一夏も凰も、全員がだ。織斑先生だけはため息をついているようだったが。

「アレ?なんで皆黙ってんの?何か問題でもあったのか?」

ポンと肩に置かれる手。

「あのな、IS着ないでIS壊すって、普通出来ないからな?」

「そうなんか?結構楽だったぞ、これ」

「.....空気読めよ」

「おう...せやな」

割と真剣な空気の中、織斑先生に呼ばれたので、一夏達の元を去って

中継室へ。

「貴様何をやってくれている?」

「えーと、そりゃ危ないのは排除するべきでしょう?」

「そういう話ではなくてだな....」

「あーはい、なるほど。残骸はある程度残ってるんで安心して下さいよ」

「....もう良い。この紙に今日の宿泊場所を書いてある、そこでひと晩過ごしたら、明日転入生として紹介する。丁度フランスとドイツの2人も来る日だからな」

しっしっ、と手を振る最強の教師を尻目に、和真はアリーナを後にして目的地に向かう事にした。

 

時は過ぎ、バイクを確認してその場所に向かった頃には夕方になっていた。

紙に書かれていたのは来賓者用宿泊部屋。複数人で1つの部屋を使うらしい。嫌な予感がしなくも無いが、この際気にしていられない。

開けると、既に奥の2つのベッドは占領されており、手前のベッドのみが空いていた。3人部屋の時点で予想はしていたが、こうなるとは。

とにかく風香と吹雪の言葉は無視し、シャワーを済ませて持ち歩いている予備の服に着替える。

さっさと布団に潜り込み、和真は目を閉じた。

良い夢を見られますように。おやすみなさい。



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IS学園の転入生(決して劣等生ではない)

翌日になった。

起きると時計の針は7時を指しており、丁度朝食の時間帯であることを

知らせていた。

和真・風香・吹雪の3人はIS学園の白い制服に着替えて部屋を出、食堂に向かう(まあ和真は風呂場で着替える羽目になったが)。

小規模な結界を張ってあるのでご都合主義な感じで周りに姿はバレておらず、和真達は席に着く。

「「いただきます」」

風香と吹雪は和風定食を食べ始めたが、和真はコーヒーを飲むだけ。

理由は恐らくキングフォームの多用による、自身とアンデッドとの融合割合の増加だと、和真は考えている。2004年でのことを踏まえた上での考察だ。

どうにも最近事情が事情でキングフォームを使う回数は増えていき、上記の理由か腹がすかないのだ。飲み物程度で全て間に合ってしまう。

人間の食べ物が合わない身体になってきているのかは不明だが、和真としては普通に食事も取りたいところではある。腹が空かないので元も子もないのだが。

「はあ....」

溜息をついて再びコーヒーを啜る。舌に感じる苦い味が人間の作り出したものであることが、何故だろう和真の心を落ち着かせてくれる。

やはり飲み慣れたブラックは自分に最適なのかもしれない。

「食べないの?おいしいよ?」

勧めてくれるのはありがたいが、和真はやんわりと断る。

この状態に関しては和真の独断で誰にも話していない。親に連絡を取るべきかは悩んだが、それも断念した。これは和真自身の問題だと思ったからである。

「「ごちそうさまでした」」

そうこうしているうちに食べ終えたようだ。食器やコップを返却し、和真達は食堂を後にする。入れ違いに織斑一夏やセシリア・オルコット、凰鈴音などが連れ立って食堂へと入っていくのが見えた。

(やれやれ、ハーレム王のくせして朴念仁たァ...不幸な奴だな)

結界の効果は切れていないので、彼女達に発見されることはまずないだろう。織斑先生にはどうだか知らないが。

「そろそろ解除するか」

「そうね。前から燃費がアレだものね」

MPの消費がかなり悪い和真の結界《デッドヒート》を解除し、3人の姿が周りに見えるようになる。ちなみに何故結界の名称が《デッドヒート》というのかは、命名者が親故に分からない。

のんびりと教室まで歩いていると、どうしてか織斑先生に見つかってしまい、外部者待機部屋と書いてあるところにぶち込まれた。

転入生や転校生の扱いってこういう感じだっただろうか。

それともIS学園が異常なだけなのか、和真には理解不能である。

しかし喋りだそうにも、部屋にいる皆が口を開かないせいで何を言えば良いのか分かったものではない。

かと言ってやる事もないので、観察でもするとしよう。

1人目は銀髪に近い長髪、黒い眼帯、高圧的な視線の少女。かつて織斑千冬が居たというドイツのIS部隊の1人だろう。名前はラウラ・ボーデヴィッヒ、階級は忘れた。少尉かそんなところだったか。

2人目は金髪に、中性的な顔立ちの男子。フランスから来た代表候補生であるシャルロ...シャルル・デュノアで間違いない。

記憶が正しければ、だ。使用機体は第2世代の《ラファール・リヴァイヴ》のカスタム機だった気がする。

そうしながらしばらく待っていると、8時を少し過ぎたあたりで名前を呼ばれて部屋から出ることに。

面接か何かなのかという空気の中、教室まで歩く。

小説でもアニメでも教室に来るまでのシーンがカットされているので、結局誰も分からないままであったが、こんなものだったとは。

「...では、転入生を紹介します」

室内から山田先生の声が聞こえ、順々にラウラ、シャルル、風香、吹雪、和真の並びで入っていく。

教室がざわめいたのが和真以外の4人が入ってきた時であることは、言うまでもないだろう。

各自が自己紹介を終えると、女性陣が黄色い声を上げた。

「男の子よ!しかも2人も!」

「なんか守ってあげたくなる系の!と、なんか微妙なの」

「なんだろー日本人ってのが織斑くんと被るからかなー、微妙だよねー」

喧嘩を売られているのか。こちらとて望んでこの場にいるわけではないのだ、全てはヨグソトースの所為なのだから。

まあ問題は色々ありそうだ。ラウラが一夏をビンタした事とか喧嘩を売ったこととか。

「そういや部屋割りって変わるんですか?男子3人で奇数になるんですけど」

シンプルかつ的確な質問をありがとう誰か。本来ならばシャルルを女子達と組ませるのが妥当だが....いやそうするべきではないか。

「別に俺は1人でも構わないぜ。寧ろその方が良い」

「逃げようったってそうはいかないわよ?」

「そういうんじゃなくてな....」

確かに逃げたいが、ここで投げ出しては男ではなかろう。

己が務めを果たすことが、男の為すべきことなのだ。

「だってさァ、1人の方が楽だぞ?色々な意味で」

「よし、なら俺が1人部屋に行くぜ」

「織斑てめえ何目の前の事避けようとしてんだ?」

ギャーギャー言い争っていると、織斑先生が出席簿で2人の頭にキラキラキラと星が舞うレベルの強さで、出席簿シャイニングストライクを叩きつけた。勿論出席簿で叩かれただけだが、織斑先生だから相当な痛さである。

「ギャーギャーギャーギャーやかましい。空いている席につけ。それから部屋割りに関しては今日中に、山田先生から伝えてもらうから安心しろ」

「「はい...」」

若干涙目になる和真と一夏、そして残りの女子達も席についたところで、織斑先生は続けた。

「今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。第二グラウンドだ、各人遅れるな」

それだけを告げると、織斑先生は山田先生と共に教室を出て行った。

微妙な空気が漂うが、兎にも角にも第二グラウンドに行くのが先決だろう。

「んじゃあ、行くか」

シャルルを案内しろとは一言も言われていないが、無視するほど薄情ではない。

軽く2人も返事をし、教室を出た。

が...そう簡単に行くものでもなかったらしい。他学年と思われる生徒達がクラスの前に、待ち構えていたのだ。女子の情報網は甘く見ない方が良いようだ。

人が少ない場所を選んで強行突破し、和真達は更衣室に向かって走り出した。

「おいどうすんだ?彼奴ら、バケモンみてえに追っかけてきやがるぜ?更衣室着く前に振り切れるのか?」

「安心しろって。抜け道があるのさ」

「抜け道?」

シャルルの疑問に答えるように、織斑一夏はある所で急に方向転換。

階段を一気に飛び降りた。

「なんだこりゃ?知らねえぞこんなの」

「まあ当たり前だろ。ここ教師くらいしか使わない通路だけど、その点女子達をまくには丁度良いんだ。っと!」

またある程度走ると、男子更衣室と書かれた部屋にたどり着いた。

各々がIS専用のスーツへ着替え、グラウンドへと向かう。

とは言ってもシャルルは既に下に着ていたようだが。

2人と違い、和真は体操服である。まだスーツは支給されていないからか、バッグに入っていたのがこの体操服だったからか。理由などどうでも良いが、ISを操る気など毛頭ない。

「まったく....困ったもんだな」

何度目か分からない溜息をつき、一夏とシャルルの後を追って和真も

外に出るのであった。

 

グラウンドについて早々、セシリアや凰から色々と言われたが、その愚痴も織斑先生の出席簿ストライクによって黙らされたので、特にこれといった問題もなく授業はスタートした。

のは良かったのだが。

「なんで見学なんだ?」

「知らないわよ、こっちが聞きたい」

「ISないからじゃないの?」

和真、風香、吹雪の順である。そう...授業は始まったのに、こちらは見学なのである。仮面ライダーという理由だからだろうか。

それは否と断定できる。なぜなら和真達は、自分たちが仮面ライダーであると明かしていないからである。和真は微妙だが、恐らくバレてはいないはずだ。

現状原作と違うところがいくつかある気もするが、気の所為だろう。

「「「暇だぁ〜」」」

結局ぐだぐだになってしまった。ぐだぐだIS学園というイベントもアリかもしれないと思っていると、織斑先生の声が飛んだ。

「暇なら手伝いでもしてこい、女同士なら問題ないだろう」

「「んじゃそういうことだから」」

「そういうことだから、じゃねえよ!俺どーすんだよ!俺男だよ!」

「「頑張れば?」」

「頑張ってなんとかなるもんじゃねーよ!アホか!?」

ツッコミを入れていると、和真のジャージが引っ張られた。

「.....分からない。教えて」

「あの....班に分かれてないんですか?」

「(コクコク)」

どうやらこの和真に教えて欲しい(らしい)少女、班に分かれる際、入り損ねたようだ。確かにこの社会、下手すればハブられる可能性もある。

だが、だからといってIS扱えない奴に教えてもらおうとするだろうか。普通は班に入れて貰えるはずだが....そうもいかないのか。

「あーもう、わーったよ。ほら教えてやるから」

「....ありがと」

この少女の外見、どう見てもロリだ。知らない人から見れば、兄妹にも見えるのかもしれない。どうでもいいが。

(ちなみに犯罪行為はしていないのであしからず)

そういうわけで、ISを扱えもせず、乗ったこともない一転入生が、IS学園の生徒にISの操縦云々について教える羽目になったのだった。

本来ならあり得ないはずなのだが。

 

 

どうやら寝てしまっていたようで、目を覚ますと教室におり、周りに人の気配はなかった。だがどうしたことだろう、先程までグラウンドにいた気がするのだ。服も体操服から制服に変わっている。

着替えた記憶はないのに、どうなっているのだ。

おまけに外は夕焼け色に染まっている。時間的には5時辺りだろう。

「ったく...また紅王症候群にでもかかったのかなぁ、やめて欲しいもんだよもう」

仕方ないのでカバンを持って教室を後にする。

だが重大なことが不明だ。

「アレ?俺、今日どこで寝れば良いの?」

寝ていたか紅王症候群にかかったか、そんなものはどっちでも良い。

問題はどこの部屋に入るか、なのだ。

どちらにしろ知らないものは知らない。覚えていないものは覚えていない。どの部屋に行くべきなのか、和真は知らないのだ。

(職員室にでも行ってみるか)

そう思い、職員室へと向かってみることにした。

 

運良く職員室で山田先生を見つけることができ、部屋の番号くらいは

聞き出すことができた和真。

怪しまれたものの、制服を着ているので深くは聞かれなかったのが

幸いといえば幸いか。

てくてく歩いて着いたのは学生寮の1号棟、通称〈フレイム〉と呼ばれているらしい建物である(建物は全部白なのだが)。どうやらこの世界のIS学園の寮棟にはこういう名前がついているらしく、他にも〈ハリケーン〉や〈ウォーター〉〈ランド〉というのがあり、教師用のは〈ビースト〉で通っているんだとか。

近頃の女子高校生のセンスはあるのかないのか、本当に不明である。

大して関係ないが、風香と吹雪は〈ランド〉に2人組として入ったとの事。属性的にも土が被っていないので、そうした可能性もある。

とりあえず突っ立っているわけにもいかず、和真はバッグを肩に掛けて建物に入る。

階段を登って到着したのは4階。最上階のようだが、イマイチ高いのか低いのか把握できない。

まずはインターホンを押して挨拶をしなければ。

『はーい』

「すいませーん、あの、ここに行くように言われたんですけど」

『ちょっと待って。今開けるから』

「はあ」

「「どもー」」

開けて出てきたのは2つの顔。一夏とシャルルの顔だ。

二人ともテンションが高いのか知らないが、にょきりとドアの脇から二人の顔が見えており、中々に面白い。

事情を説明して、とりあえず中に入れてもらえた。

どうやら2人も待っていたらしく、タイミングは良かったようだ。

「んじゃ、飯でも食いにいくか?食堂開いてるはずだし」

「良いよ。えーっと、名前は」

「八坂和真だ。和真でいいさ」

正直これまでいくつか名前を持ったことがあるので、そのどれで呼ばれても構わないというのはある。

そして食堂に向かう2人の後を、和真もついて行ったのであった。

(どうせまた飲み物だけで終わるんだけどな)

 

 




なんか今回の話、いつもにも増してクオリティ下がっちゃってると思います。
ですが!とりあえずこれからも書いていくので、よろしくお願いしたいと思う所存であります。


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これは和真の日常ですか? いいえ、ライダーの非日常です

そうこうしている間にも時間は流れ、日は過ぎ、あっという間に1週間近くが過ぎていた。織斑一夏やシャルルなどは放課後のIS特訓などでアリーナに行ったりしていたが、IS使えるわけでもない和真にとって、毎日が暇だった。

その数日の間にもシャルルが女という事を一夏が知って、凄い気まずい状態になったりもしたが、別に和真にとっては大したことではない。既に知っている事なので、驚きはしない。

というかその時部屋に居たのは、一夏だけだったし。

他にはラウラによってセシリアと凰がボドボドにされたりしていたが、話題の中心は一夏である故、和真は関わらなかった。

時間が過ぎるのは早過ぎると思うが、そんなこんなで学年別トーナメントの初戦当日になっていた。

観客席に腰掛けてソーダを飲みながら、和真達ライダー組は話していた。

「短い回想だったな」

「短過ぎるでしょ。そもそもなんで1週間近くの出来事飛ばすの?」

「実際さぁ、俺達やる事なかったろ?全部見学じゃねえか」

「まあそうだけど」

「全部ヨグソトースの所為なんだがな!あいつムッコロス!」

「「ヨグソトース関係ないよね?」」

ツッコミをいれる風香と吹雪。

なるほど、この2人はそもそもヨグソトースによってここに送られたこと自体知らないという事か。確かに和真は話していないし、話す気もない。ここで和真の事を追うのを諦めてくれれば、こちらも助かるが...そうもいかないだろうというのは目に見えている。

「まったく....最近は滅茶苦茶だな、ホント」

はぁ、と溜息をつく。やる事はなかったので短く1週間を纏めてしまったが、大した問題ではないだろう。

しかしやはり何かがおかしい。違和感なく時間は過ぎたはずなのに、時が過ぎた感覚がない。

(滅茶苦茶なのは俺なのか?まさかな....)

ボトルの最後に残ったレモンエナジーソーダを一気に飲み干し、和真は席を立った。

「どこ行くの?もうすぐ始まるわよ」

「ちょっとトイレ(嘘だけど)」

ボトルを捨て、和真はアリーナの外に出る。

日差しは問題なく眩しい。どうやらその類の感覚は鈍っていないようだ。ならば良し。

間違いなく1週間は過ぎたはずだ。それなのに何か違和感がある。

気の所為だと思うのだが。

(やっぱ何も起きねえよな、きっと...)

カウントダウンがされ、0になると同時にバトルが始まる。

きっと一夏がブーストして、ラウラのAICにぶつかった頃だろう。

一応原作ではこのバトルの最後でBTシステムが暴走する事件が起きるはずなので、何が起きても対処できるように感じだけでもしておくことにする。

地面を蹴ってアリーナの屋根へと跳ぶ。

「よっこらせ...っと」

あぐらをかき、白式達の戦闘を見守る。

現状ではどちらが有利かは微妙だが、僅かにラウラの方が優勢と見える。そもそも装備が違い過ぎる。

全距離対応である上にAICを持っている。しかし、シャルロット(もう女だと和真と一夏にはバレている)のリヴァイヴには、それを打ち砕くだけの物がある。まあお楽しみだ。

(にしてもなァ....やる事ねーのによくもまぁ、この世界に送ったよなあ)

事実、和真がこの世界でやる事が見つからないのだ。

ヨグソトースは内心何を思ってここに送ったのか、わからない。

為すべきことなど、ここにある訳もないのだ。

「あーあ、さっさとBTシステム暴走してくれよな。暇すぎてやることねえんだよ」

誰にともなく独り言を呟く。答えはない。

眼下では丁度リヴァイヴの秘密兵器、〈盾殺し(シールドピアース)〉がラウラの機体〈シュヴァルツェア・レーゲン〉を直撃した所だった。AICなど意味が無く、その黒き装甲は砕かれる。

「お、ようやくか」

だが変化は次の瞬間に起きた。

砕かれたはずの装甲が変わり、残った装甲と融合し、分解し、姿を変えてラウラを取り込んでいく。

出来上がったのは黒一色の姿のIS。否、ISと呼ぶには無理がある。

鎧を纏った黒き騎士。和真にはそう見えた。

屋根から身を投げながら、ブレイバックルを装着。

「やっと出番が来たと思ったらこれだもんな....変身!」

青い光のカードを通過して仮面ライダーブレイドに変身。

謎のISを倒すべく加速する一夏と、そのISの間に着地した。

「なっ?!お前、トーナメントでてないはずじゃあ....」

「まあ落ち着けよ。外から見てても分かったけど、この野郎を倒すんだろ?」

「そうだがな...おまえの戦いじゃねえんだよ!俺の戦いなんだ!」

「ごちゃごちゃ言うな!今のお前じゃ勝てねえ!」

「....分かってるさ。けど、俺がやらなきゃいけないんだ!どいてくれ」

どうやら強い意志があるようだ。ここは1度だけやらせてみるのもありだろう。

和真がどくと、一夏は加速。謎のISに切りかかるが、先の戦闘の消耗があるらしく、鋭く振るわれる剣によって弾き飛ばされ、アーマーも

解除されてしまった。

「くそっ....」

「だーから言ったのにな。ここからは俺のステージだ、まあ見てな」

言って和真は地を蹴った。

和真と黒いISによって振るわれる剣と剣が火花を散らし、剣速が周りには見えないレベルにまで上がっていく。

(ここだ!)

一瞬の隙。剣を振るうことのみに集中している(と思われる)黒いISの僅かな隙をつき、和真は前蹴りを食らわせる。

突然の強力な蹴りに反応出来ず、黒いISは揺らいだ。

所詮は人が作ったシステム、完璧ではないということか。

更に揺らいだボディにラッシュを叩き込み、反撃の隙を作らせない。

しかしあともう少しでトドメというところで、和真は攻撃をやめた。

「....おい、織斑一夏。最後はお前が決めてくれ。あの野郎もそれが

1番良いだろうさ」

「え?つまり最後は俺がやるのか?」

「ああ。あいつはお前が倒す事に意味があんだよ。シャルル、エネルギーを白式に」

「分かった。やってみる」

和真の言葉にシャルロットはケーブルを出して白式に繋ぎ、残ったエネルギーを白式へと送り込む。

しかしリヴァイヴも消耗していたのだろう、あまり多くは送れなかったようだ。

「白式を一点集中で展開しろ。それがベストな方法だ」

「お、おう」

一夏の右腕部分のみ、白式の装甲と専用武器〈雪片弐型〉が現れる。

これだけでもなんとか《零落白夜》は発動可能なはずだ。

武装を展開させた一夏は深呼吸し、目を閉じた。

ゆっくりとエネルギーを剣に込めていく。

目を開け、一夏は剣を振りかぶり...そして、黒きISを斬り裂いた。

そう、まるで幻影を断ち切るがごとく。

切った中からは、銀髪の少女ラウラが倒れこむように出てくる。

「よし、終わったな」

変身を解いた和真は、くるりと背を向けて歩み去っていく。

一夏が問いかけても答えないその背中は、先程の強さと裏腹に寂しさを感じさせた。

 

そして...それからの生活も大して変化はなかった。

ただ一つだけ変わった事と言えば、いつもの女子4人のところに、ラウラの姿が加わったことだろう。

トーナメント戦の次の日あたりだったか、ホームルームの際に激おこ鈴から一夏を守って、ファーストキスしたとかしなかったとか。

まあ実際したわけだが、どうもラウラに日本の知識を与えている黒うさぎ達はズレているらしく、ラウラは一夏の事を嫁と呼んだりしている。

「まったく...女ってなァ良く分からんな」

「そんなものよ。女は」

「そーそー」

後はシャルルがシャルロットになったりという事件もあったが、結局のところ和真達ライダー組は教室でのんびりしていた。

どうせ自分達には臨海学校と言う名の校外IS学習なんていうものは

役に立たないのだ。なぜか?ISを扱えないからである。

IS学園の役に立たない授業を聞き、今日も1日が過ぎていく。

 

帰りのホームルームになり、先生がやってくる。

今日はどうやら山田先生はいないようで、鬼の織斑先生が担当していた。担任だからといえばそうだが。

教師の話など、ここでは聞いても意味はない。和真は右から左に聞き流していたが、何故かホームルーム後に風香と吹雪に捕まった。

「なんでい?俺なんか悪い事したか?」

「水着買うから。日曜日朝9時に駅」

「姉さんアンタに水着(むぐむぐ?!)」

「ちょっと吹雪、黙りなさいな。じゃあそういう事で」

「え?えっ?!」

何がなんだか良く分からない。

要は日曜日の朝9時にモノレールの駅前に行けと?

なるほどそういうことか。はたから見ればこれはデートに見えるのだろうが、メンバーがメンバー故にそうは思えないのが現実だ。

「急展開にも程があんだろ...くそっ」

外を見ながら和真は溜息をついた。何度目か数えるのが嫌になる。

日曜日までそんなに時間があるわけではない。まあテキトーに済ませて帰って来れば問題なかろうが。

よし、と気合を入れて和真は寮に向かって歩き出した。

既にシャルロットはラウラと同じ部屋になり、和真は一夏と組んでいる。部屋が前より広く感じるのは気のせいではないだろう。

 

 

日曜日の朝。

少しばかり早めにモノレールの駅に着くと、先客がいた。

しかも知り合いである。ルームメイトだ。

「おい...お前なんでここにいんだよ?」

「こっちが聞きたいんだがな...」

なんと先客は織斑一夏だった。どうやらコイツも待ち合わせをしているらしく、一足先に来ていたとのこと。

「今日は疲れそうだなァ....」

「ホントな。お前も大変そうだぜ」

お互いなんとか正気を保ちつつ、待ち合わせの時間まで耐える。

現れたのはシャルロットと風香&吹雪だった。

どうやら一夏のお相手はシャルロットだったらしい(花澤香菜さんが相手とか羨ましい一夏ムッコロス)。

女3人に男2人。なかなかにキツいものがある。

発狂しないようにしながら、モノレールに乗り込んでいざショッピングモールへ。

 

ショッピングモールへ着くと、休日だからかそれなりに人が居た。

満員電車程ではないが、人が居ない場所はない。

久しぶりの一般人の世界に、和真は癒しに近いものを得ていた。

「はぁー久しぶりだなぁ、普通の世界って」

「普通の世界?何の話だ?」

「いや別に。何でもねえよ」

話し合った結果まずはテキトーに見て回り、ある程度の時間で集合して水着を選び、その後昼食というスケジュールになった。

しかしこれといって欲しい服もないので、和真は本屋で立ち読みをして時間を潰すことにした。

(ほほう、デートアライブ最新巻出たのか。アスタリスクの最新巻も良いな...悩むぜよ)

アレコレ吟味していると、あっという間に時間は過ぎており、和真は水着売り場へと急ぐ。

「悪りぃ遅れた!」

「「遅い」」

「スイマセン...」

風香と吹雪に睨まれ、流石の和真も頭は上がらない。

だがずっと謝るのもアレなので、使わないにしろ何にしろ和真も自身の水着を選んでみることにした。

「とか言ってもなぁ、水着なんて絶対着ねえっつのにな」

ぶつぶつ言いながらも、水着を選ぶふりをしておく。

すると違う列の所から女性の声が聞こえてきた。

女性用の水着売り場の方だ。

「そこの水着片付けておいて!男のあなたに言ってるのよ!」

男で女の水着売り場に入るのなんざ、一夏くらいしか存在しない。

何をやっているのだ、あの馬鹿は。

しかしよくよく考えてみればこの世界は女尊男卑。男が使われるだけの存在になっているのは、当然の事である。

(厄介な野郎に絡まれてんなぁ...しゃあねぇ、助けてやるか)

一旦水着売り場から出て、和真は向かいのスポーツ用品店へ。

出入り口にあるサッカーボールを見繕い、1番硬いヤツを手に取る。

周りの客は変な目で見るが、そんなものは関係ない。

軽くボールを宙に放り、タイミングを見計らってボレーキックでボールを蹴り飛ばし、一夏に喚く女性の後頭部に直撃させる。

ばたりと倒れこむ女性。

(おまっ、何やってんだよ?!捕まるぞ!)

(別に捕まらんし)

時を置かずに警備員が走ってくる音が聞こえてきた。

「おめえは早く更衣室に入れ!」

「いや今シャルがな...」

「入れって言ってんだよ!」

一夏を蹴っ飛ばして更衣室に入れ、ミッションコンプリート!

だが同時に警備員がどたどたとやってきた。どうやら警察も呼んだようで、サイレンも聞こえる。

「風香、吹雪。あばよ、俺ァ行くからよ」

床を蹴って跳躍、警備員達の頭上を越えて売り場の外に出る。

だがここまで来て捕まるわけにもいかない。

ならいっそここで急展開を起こしてみるのも一興だろう。

「タイミングも良い....待ってろよ、篠ノ之束!」

そう言って、和真はショッピングモールの中を駆け出した。

壁を走り、テーブルを越え、ソファの上を転がり、出口へと走る。

それに篠ノ之束の居場所は見当がついている。

少し無茶をしたとは思うが、無理矢理クラックを開いて入ったのである。地球(ほし)の本棚の中に。

我ながら無茶を承知の上だったので、初挑戦初成功は嬉しいものだ。

その中のある本の記述を頼りに割り出した座標に、彼女はいる。

和真は確信している。

「「「待ちなさい!そこの少年!」」」

ポリスメンに追いかけられていることを忘れていた。

方向転換し、和真はモノレールの方に向かった。

さあ、IS創造者とのご対面まであと少しだ。




やばいです。
和真君に久しぶりにアクションさせようと思ったら、こうなっちゃいました。ごめんなさい!
無茶苦茶どころの話じゃありません。ホントすいません!
てなわけで、次回からISの世界は最終章突入です。
頑張って書くのでよろしくお願いします


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ISの世界 研究所決戦篇

ショッピングモールを出て、和真はモノレールの駅に着く。

見ると、丁度モノレールがIS学園方向に出発する所であった。

後ろからはサツが追いかけて来ているし、決断しなければならない。

「...やってみるしか、ねえな」

地面を蹴って飛び上がり、和真は空を舞う。駅の屋根の上に着地し、助走をつけて再びジャンプ。

激しい衝撃が体を襲うが、なんとか車体の後面につかまることに成功する。車内からは悲鳴が聞こえるが、知ったことではない。

「ってて...まぁ冒険はしてみるもんだな。もうやりたくねえけど」

ぼやく和真と共にモノレールは加速、駅を後にした。

(IS学園って警察入れんのかな?)

 

当然ながら怪しまれて落とされかけたりもしたが、なんとかIS学園に

辿り着く。先に情報が届いていたのか、和真をとらえようと駅員(?)が飛びかかって来たのでとりあえず殴って眠らせておいた。

原型はとどめているので、さして問題にはなるまい。

それはそうとここで時間を取られるわけにはいかない。バイクを確保する為、和真は駐車場に向かって走りだした。

(我ながらすげえ事考えたもんだなァ...篠ノ之束に喧嘩売るとか。ま、織斑一夏の為にもなるわけだし、やるしかねえよな)

駐車場に着き、専用バイクブルースペイダーを発見。どうやら調子は問題はなさそうだ。

「おい生きてんだろ、AI」

『AIという名前ではないのだがね。せめて別の名を』

「分かったよ、ベルトさん」

『...結局あだ名なのかね?まあ構わないが』

ベルトさん(以後これで統一)の言葉を聞きつつ、バイクに跨る。

エンジンを掛けて発進させ、出口まで来たが、割と大きな問題にぶち当たった。

「えーと...これどうやって外に出れば良いんだ?」

そう、問題は外に出る為の経路なのだ。

ここIS学園は島であり、基本的にモノレールによって外部と繋がっている。港もあるし、船の出入りもあるといえばあるが。

出航まで待つわけには行かないし、かといってレールの上を走るというスリル満点のアトラクションを体験するなど真っ平ごめんだ。

「やべーよ、時間もねえのに出る道が無いとか。笑えてくるぜ」

『お困りのようだね。助けてやろうか』

「うるせえよ。口調微妙に変わってるしなんで上から目線なんだよ、ぶっ壊すぞこのAI」

『すまない。しかし外に出るのが目的なのだろう?』

「まぁな。策でもあんのか?」

『ディスプレイにある『フルーツバスケット』と表示されているボタンを押してみると良い』

「マジか、知らねえよンなもん。つかフルーツバスケットって何?」

『まあ押してみれば分かる』

「えーっと...これだな」

押してみると、突如バイクが振動し始めた。

壊れるのかと思ったが、どうやら違ったらしい。なんとバイクの両サイドに戦闘機チックな翼が付いており、全体的にバイクの原型は保っているが、飛行に適した形へと変化している。

ただし、変な音声が入ったのだが。

『ロックオープン!極アームズ!大・大・大・大将軍!』

「ナニコレ?何この音声?大将軍?!しかもこの形ブルースペイダーっていうか、ハードタービュラーに近くね?」

『まあ、うむ、そんなものだな。飛べば向こう岸にすぐ着くぞ』

「そんな便利な物があるなら先に言えよ、ったく」

ぼやきながらもエンジンを始動させ、ブルースペイダータービュラー(以後これに統一)は上昇する。

そして対岸に向かって加速していった。

途中で警察官が乗ったモノレールが見えたが、和真にとってはもう関係のないことである。

今度は出て来たは良いが、また問題が浮上した。

「おいベルトさん。このタービュラーってどうやって戻すんだよ。さっぱり分かんねえぞ」

『ディスプレイにもう1つボタンがあるはずだ。使ってないものが』

「あーこれか。『カチドキ』ってやつ?今度はまともなんだろうな?」

『...とにかく押してみたまえ。元に戻ることだけは保障しよう』

「はあ...そうですかい。まぁいい、時間ねえから押すぞ!」

それを押すと、確かに元には戻った。戻ったのだが、今度も明らかに変な音声が入っていた。

『カチドキアームズ!いざ出陣、エイエイオー!』

「なにこれ?確かに出陣だけど...マジで要らねえよ、戻ってるだけだかんな!つくづくアト子さんの考えてる事は分からねえよ!」

大きな溜息を吐くが、ブルースペイダーが元の状態に戻るということはできたので、良しとする。

さて、残された時間もあまりない。現在日曜日で、臨海学校が始まるのが翌日の月曜日だ。

篠ノ之束のいると思われる場所は分かるが、目立つのを避けるためにも陸路を使うのでそれなりに時間もかかる。

おまけに今は警察にも追われる身だ。

リミットは明日の午前5時と見ていいだろう。

とにかく間に合わねばならないので、和真はブルースペイダーを発進させて高速道路に向かった。

 

太陽の光を受け、建ち並ぶビル群。道行く人々の声。行き交う車の騒音。走り去る電車の轟音。都市(まち)の喧騒。

様々な音を聞きながら、和真はバイクを走らせる。

警察のサイレンが聞こえなくなる事はなく、執拗に追いかけて来ているのが判った。

「しつこい野郎共だな...ったく」

インターをすり抜け、高速に入る。ETCなど知ったことか。

目指すは山梨・静岡方面、富士山の麓。そこに篠ノ之束がいると和真は予想している。地球の本棚にて検索した結果、富士山の麓の一角のみ、異常があると判明したのだ。通常の検索機能ならば分からなかっただろうが、地球そのものを使って検索すればすぐ判るのだ。

まあ和真は本来あの本棚は使えないので、短時間しか居られなかったが。

(ま、それで充分だったんだけどな)

空を仰ぎ見、巡ってきた世界に想いを馳せる。

17、8にしてこんな旅をする高校生なんざ珍しいものだろう。

最も高校なんて行っていないも同然なのだが。

などと考えていると、背後からサイレンが聞こえてくる。

これまでの鈍足のパトカーとは違う、高速に対応した車だ。高速パトカーとでもいうヤツなのだろうか。

「マジかよ...サツも本気出してきやがったな、こりゃ」

「「「そこのバイク、止まりなさい!」」」

どうやら警告をするのは忘れないらしい。だがそんなものは無意味だ、今の和真には。

ようやくこの世界で為すべきことが見つかった今、警察などに捕まるわけにはいかない。

「ハッ、知ったこっちゃねえ。それに俺ァてめえらに捕まるほどヤワじゃねえんだ」

言って和真はブルースペイダーを更に加速させる。

法定速度を明らかにオーバーしているが、この世界の住人ではない故、ここの法も当てはまらないのだ。そもそも戸籍がここにはない。

そして走り続けること1時間程だろうか、富士山が見えてきた。

東京から静岡まで1時間って速いのか遅いのか、和真自身分からない。

元々ウチの親の車がオーバースペックだったので、法定基準を知らないのだ。

「そろそろ下りるか」

富士山が見える辺りでブレーキをかけて、和真はバイクを止める。

突っ込んでくる車は蹴っ飛ばして盾にし、後方車両が来るのを防ぐ。

背中に手を突っ込んで取り出したのは、一丁のショットガン。

実はただのショットガンではなく、アト子さん特製の強化ショットガンなのである。

これを脇のコンクリで造られた壁に向けて引き金を引く。

1発で壁は壊れ、下道への脱出経路が確保できた。

「じゃあな、クソッタレ共」

手榴弾を1つ後方車両へと放り、同時にブルースペイダーを加速させて先程開けた穴から飛び出した。

しかしここは高速道路、高さもそれなりにある所だ。

素早くタービュラーにチェンジし、バイクは富士山麓へと飛んで行った。

 

法定速度を無視して15〜20分ほど飛んだだろうか、しばらくすると都市部の雰囲気は消え去り、木々が生える田舎じみた風景が広がり始めた。

そろそろタイミング的にも下りても問題はあるまいと思い、元の状態に戻してバイクは公道を走りだす。

ある程度行ったところで見えてきたのは、白い外装の建物だ。

通っていく車両は皆、あの建物は見えていないようで、あそこで道が途切れているかのように曲がっていく。

「ステルス機能でも付いてんのか?まぁ付いててもおかしくねえけどよォ....篠ノ之束だしなぁ」

言いながらこれまたアト子さん特製の双眼鏡を覗くと、やはり建物の周囲に何かバリアとでもいうのか、そのようなモノが張り巡らされている。

人間には容易に突破するのは難しいかもしれない。そう、人間には。

「さてと...あれくらいならコレでも消せるかねェ」

取り出したのは一見普通のロケット弾。だが中身は全く別の物だ。

それを黒い筒にこめて、肩に担ぐように構え、和真は撃ち放った。

射出されたロケット弾は見事不可視のバリア直撃した。

「おー、バリア消えてやがるぜ。まさかこんなとこで役に立つなんてなァ...驚きだな」

実は先程の弾はただのロケット弾ではなく、アト子さん曰くあらゆるバリアを消し去る効果があると言われてだいぶ前に渡され、使わないでお蔵入りしかけていたものだった。

実際にバリアを消し去れるとは思わなかったし、使う日が来るとも思わなかったので、微妙な気分ではある。

「ま、行くとするか。ベルトさんはここで待っててくれや」

『1人で問題ないのかね?噂に聞いただけだが、奴は人間ではないらしいぞ。それでいて様々な世界で目撃されているとも聞く』

「へえ、面白いな...こりゃあ相手にとって不足はねえ」

和真は双眼鏡と筒をしまい、取り出したのは一振りの刀である。

それをベルトに差し、篠ノ之束がいるであろう白い建物へと和真は歩き出した。

 

ドアの前まで来たが、特別なにか罠があった訳でもなかった。

しかし和真は知っている。罠よりも強力なヤツが中に居ることに。

この刀はどうせ初戦のみでしか役に立たないだろう。名のある刀らしいが、折れるのは確定だし、本戦である篠ノ之束との戦闘では、変身するしか手はないと見ていい。

しゅらん、と刀を抜く。警戒を怠らず、和真はドアを蹴り開けた。

「どうもー八坂という者なんですがー」

「...お客様でしょうか?先程屋外のバリアが消されたのですが、それと関係しているのですか」

やはり避けては通れないようだ、クロエ・クロニクル。この世界ではメイド的なポジションにいるのか。

「やっぱ避けらんねえよな...篠ノ之束に会うためには」

「どちら様です?本日はめんか」

「だからァ...八坂という者だって言ってんだろうが!」

辛抱堪らず、和真は出迎えて来た灰色がかった銀髪の少女に回し蹴りを食らわせ、奥の壁にまで吹っ飛ばした。

外見中学生レベルではあるものの、この少女はヒトではない。

創られた少女、希少なヒト型のISなのだ。まあ希少だからといって手加減はしないが。

「てめえら人間モドキはあれか、ロボットみてえな事しかできねえのか?」

「...敵性反応。排除します」

「おお、やっぱロボじゃねえか」

閉じていた眼を開くと、その奥にあったのは黒い白眼に金色の黒眼であった。ワールドパージ編の一夏と同じものだ。

刹那、世界が変化した。全てが純白になり、把握が困難な空間へと変貌していく。確かこの少女の能力だったはずだ。元からだったか、束に付けられたものだったかは忘れた。

だが、しかし。

「...んなもん俺に通じねえよ。俺ァ篠ノ之束に喧嘩売ろうってんだ。この程度効きはしないぜ」

瞬時に間合いを詰めた和真の剣が、少女の胸を貫いていた。

「...なん、です、か?人間の速さ、では、ナイ」

途切れ途切れの言葉を吐きながらも、少女の手は刃を掴む。

足掻くのかと思ったが、違うようだ。血を流しながらも両手でその刃を掴み、なんと握力のみでその刃を砕いたのだ。

「...マジかーヒト型IS怖えなぁ」

これに対して和真は首をすくめるだけで、狼狽はしない。

刀が使えなくなることは想定した上で、ここに来たのだ。それにこれまで見てきたのは人智を超えたモノばかりだ。今更何を、という風にしか感じない。

「ま、安らかに眠れよ、クロエ・クロニクル。そのうちラウラがそっちに行くまでの辛抱だぜ」

次の瞬間、少女クロエの頭部が宙を舞い、胴体もボロボロになっていた。クロエが僅かに残る意識を向けると、丁度彼の最後の一撃が頭部へと放たれた時であった。

(ああ、これが“死”なのか。私は初めて“死”というものを知るのか)

そしてついに少女の命の灯火は消滅した。残骸に等しくなったクロエを見下ろして和真は呟いた。

「...すまねえな。お前に罪はねえが...あいつを倒す為なんだ。俺が今言うのもなんだが、安らかにな」

手にかけてしまったとはいえ、葬いの言葉くらいかけてあげたい。

愚かではあると自負しながら、和真は手を合わせた。

 




まあ少し遅れてしまいましたが、ISの世界最終章突入です。
今回と次回の2話でISの世界は完結させます。
その後はお楽しみということで。


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ISの世界 研究所決戦篇 2

クロエ・クロニクルとの戦い(?)を終え、和真は更に先へと足を進める。外観からは想像できない程、内部は迷路のように入り組んでおり、何度も迷子になりかけながらも、奥へ奥へと歩いていく。

何度目の部屋か分からないが、遂にそれらしき扉を見つけた。いかにも篠ノ之束らしいドアで、ピンクやらなんやらの装飾で彩られている。しかしこの中にはヒトを辞めた人間がいるのだ、何があろうとも

決して動揺せず、十全に装備を整えて行かねばならない。

背中からショットガンを取り出して肩にかけ、ハンドガンをベルトに差し、アサルトライフルを構えて扉を蹴破る。

「オラァ!八坂和真だ、挨拶に来たぜ!」

「....誰?どーでも良い奴だね、私は愛しの妹へのプレゼントの準備で忙しいから。んじゃ」

「ほぉ〜、クロエが死んだってェのに呑気なもんだな。さっすがIS開発者は違うなぁ」

ワザとらしく言ってみるが、篠ノ之束の手が止まることはない。

和真を無視し、紅椿をいじり続ける。

これでもクロエの事は信頼しているのだろう、やられる筈がないと。

何はともかく、このままでは紅椿は完成し、臨海学校に届けられてしまう。

(クソッタレ...思ったより上手くいかねえじゃねえか)

だがここで諦めて、ルームメイトである織斑一夏を生死の境に追いやるほど、和真とて鬼ではない。

それにここで紅椿は壊せば、箒の事は知らないが...基本的に上手く物事が回り始めるはずなのだ。

腹をくくり、和真はアサルトライフルを紅椿に向け、引き金を引いた。連射で撃ちだされた弾丸が見事に紅椿に当たる直前、それら全ては弾かれた。

たった1人の女性によって。

「やっぱ...そうなるわな。紅椿は妹への愛がこもってる訳だしなァ」

マガジンを半分ほど使った所で、和真はアサルトライフルを肩に担ぎ、束を見る。

紅椿の手前で魔法のステッキじみたものをくるくると回す、篠ノ之束。恐らくそれで弾丸を全て弾いたのだろう、驚くべき身体能力である。

「私の箒ちゃんのプレゼントに傷を付けようとしたね?これはギルティ確定ダネ!」

「ハッ、ヤケにテンション高えじゃねーか。なるほど...なら、どんどんいくぜ!」

マガジンに残った弾丸をありったけ篠ノ之束に向けて放つ。が、当然ながら弾かれる。しかしそれは想定内、ライフルを捨てて今度はショットガンを握る。

床を蹴り、紅椿へと迫りながらショットガンを撃ちまくる和真。

だが当然ながら意味はなく、弾かれてしまい、ショットガンも全弾命中ならず。

(強すぎだろ、このオンナ。絶対本気すら出してねえな...クソッタレ)

散弾もなくなり、ショットガンを投げ捨てる。

銃が効かないならもうやるしかない。例えこの身がアンデッドに変わろうとも。

ブレイバックルを取り出して「変身」と叫び、和真は仮面ライダーブレイドへと姿を変える。

「こっからはテメェごと殺る気で行くからな。覚悟しろ、篠ノ之束」

ブレイラウザーを抜きはなち、束に肉薄。

高速でお互いの得物が繰り出され、1秒とて気の抜けない剣戟が始まった。

だが突如として束の姿が消え、刹那、背中を衝撃が襲った。

「がっ...はっ...」

口の中に僅かに血が流れ込む。

だがそんな事には構わず、素早く後ろを振り向き、蹴りを繰り出す。

かなりのスピードで攻撃したのにも関わらず、束は余裕を保ちながらステッキでその蹴りを受け止めていた。

(普通ならこの速度反応できないはずだ...いや、ひょっとしたらベルトさんの言ってる事が確かなら...)

『マッハ』のカードをラウズして加速、全身全霊を込めてブレイラウザーを振るっていく。

身体の内に在る邪神の力を限界まで高め、身体がアンデッドに変わっていくのを感じながら、それでも和真は剣を振るい、その刃を篠ノ之束へとぶつけていく。

しかし当の束には本気が感じられない。遊ばれているのだろうか。

事実そうなのだろう、篠ノ之束と本気でやり合えるのは織斑千冬だけであり、また束自身が好敵手と見ているのも、織斑千冬だけなのである。

(この野郎、織斑千冬と織斑一夏、あと篠ノ之箒以外は眼中にねーもんなァ)

やれやれ、とため息をつく。我ながら何故このような厄介女を敵にしたのか、改めて疑問にしか思えない。紅椿輸送阻止という目的はあるが、やはりこのオンナは面倒だ。

ふらつく身体に気合を入れて、なんとか和真は立ち続ける。

予想以上に彼女の動きが速すぎる。まさかとは思うが....

「お前、外見はヒトだが...中身人間じゃねえだろ?」

「だとしたらどーするの?」

ベルトさんの言葉と、先程の瞬間移動にも等しい動き。それで確信できた。あれは、ワームの能力。

「さっきの動き、あれクロックアップだな?他の世界で目撃されたって聞いたから不思議に思っていたが...自らの身体すら変えてしまうに至るとはなぁ」

「私の身体にはたしかにクロックアップする力はあるけどねー、ホントにそうかなー」

「黙れ、嘘をつこうが直ぐに分かる。それにまぁ、俺の身体も既にヒトである事は放棄した。あんたばかりが特別じゃあないんだぜ」

沈黙の時間。

瞬間、2人は加速した。束のステッキは剣に変わり、和真もノーマルフォームからキングフォームに変身する。

束が加速し、和真はそれを追うように。それを繰り返し、2人の速度はいつしかクロックアップと見紛うほどになっており、周りが停滞して見えるようになっていた。

クロックアップに和真が対応出来るようになってきているのだ。

邪神としての力は100%以上限界を超えて出しているし、もう身体は既に完全なアンデッド化を果たしてしていると見て良いかもしれない。

「けほっ...これでも、無傷かよ...」

「あーれー?おかしいなぁ、とっくに死んでてもおかしくないのに」

「ははっ、悪りぃな...俺はもう死ぬこたぁできねえよ」

キングラウザーを杖代わりにしつつ、和真は束を睨む。

反対に余裕10割で此方を見る篠ノ之束。

いくらクロックアップに和真が反応しきれたとしても、そもそもの実力が違いすぎるのだ。

キングフォームになっても勝てる気があまりしない。

「んじゃー雑魚はそこで這いつくばってるのをオススメするよ?私は箒ちゃんにプレゼントを届けに行くからサ」

「っくそ!行かせねえ!」

なんとか束を追うが、それでもあちらは余裕で出口へと行ってしまう。明らかに差をつけられた。

こちらが外に出た時にはもうあのウサ耳姿は見当たらず、代わりにブルースペイダーが出口に停まっていた。

「...なに、してやがる?」

『追うのだろう?分かっているさ、お前のやりたい事は。彼女は黒と緑のバイクで、臨海学校の行われる海岸へと向かっている。』

「おかしいぞ。何故篠ノ之束はバイクを使うんだ?あいつの身体能力を考えれば、生身で行っても問題はなかろうて」

『そこらへんは知らんが...あまりもたもたしている暇はないぞ。早く行かねばならんのだろう』

「ああ!」

体力も考えて変身を解除し、ブルースペイダーに跨る。

アクセル全開でバイクは走り出した。

 

そんなに時間を経ずに、高速道路でそいつは見つける事が出来た。

このAIの探知機能のおかげでもあるが、何より彼女、篠ノ之束は外見故に相当目立つ。

(見つけたぜ...篠ノ之束!海には行かせねえ!)

マキシマムにドライブさせ、ブルースペイダーは更に加速する。

篠ノ之束の跨る黒と緑のバイクに接近し、和真は声を張り上げる。

「おい!篠ノ之束!ここで引き返すなら、見逃してやるぜ!」

「わー速い。けどお断りだネ。ばいばーい」

なんともウザったらしい生き物である。高速をおりて下道に入る束を追って、和真は前方のトラックの荷台を利用してジャンプ。

再度束のバイクに近づく。

法廷基準を軽くオーバーしているバイクが二台もいるのだ、そりゃあ警察も黙ってはいない。

何時間振りだろうか、和真はまた警察に追われる羽目になった。

しかしサツは無視し、束だけを見据える。

そして現在時刻はなんと月曜日の11時。

(オーシャンズ・イレブン....海に着いたら11時というわけか)

これでは僅かに遅れて和真達が乱入することになる。当然織斑千冬からお仕置きを受けることになるだろうが、今は構っていられない。

自身のバイクを束のバイクに並走させ、旅館の手前に来たところで和真は、束のバイクを蹴り飛ばした。

「オラァ!」

ここら一帯は岩が多い。下手に激突すれば爆発も避けられないだろう。案の定黒と緑のバイクは束を乗せたまま巨岩に激突、爆発炎上した。だがこれしきではヤツは死なない。

砂浜にバイクを止め、和真は慎重に現場に近づく。旅館から声が聞こえてくるので、もうすぐ織斑千冬が来ると見てよかろう。

そして爆炎の中からゆらりと立ち上がる影。素早くブレイドに変身して身構える。

炎の中から声が響いた。

「キミ、死刑ね」

刹那、殺気を殺す程の殺気が放たれた。見れば待機状態で腕に付けていたのだろう紅椿が、ボロボロの状態になっている。

紅椿は見た目も中身も、待機状態は非常に脆いと思っていたが。

(でも、やっぱ待機状態じゃあ壊れるのかァ....ま、大変なのはここからだが)

今の篠ノ之束は、死神を超え、悪魔をも上回り、憎悪ですら生温い感情が渦巻く。

これほどまでの妹への愛に溢れた姉など、早々いるものではない。

篠ノ之箒は知るべきだ。自らを想う姉がいる事を。

妹の為にその仇を殺そうとする姉がいることを。

『エボリューションキング』

和真はキングフォームへと変わり、キングラウザーを握る。

道中で聞いたのだが、どうやら束とのクロックアップ戦闘の所為らしいが、あと1回クロックアップ戦闘を行ってしまうと、強制的に別の世界に飛ばされてしまうという。

時空ナントカと言っていたが、よく分からない。つまりあと1回クロックアップしたら、和真は無理矢理別の世界に送られるというワケだ。

「まったく...やるしかねえな、篠ノ之束。決着の時だ!」

無言でクロックアップする篠ノ之束。

和真も呼応するように『マッハ』の能力で加速する。今の和真は13体のアンデッドと融合した状態だ。カードをラウズさせずとも、その能力を使えるのだ。そして邪神の力もフルで稼働させる。

神速の戦いの最中、外からこちらを見る織斑千冬の姿が。

本来ならば抱き着きにいくはずの束だが、今回はバトルにのめり込んでいた。

(クソッタレ...アンデッドになっても勝てやしねえのか?強すぎて笑えるぜよ)

一度剣を下ろし、2人は向かい合う。

箒への愛故に殺意の塊と化した束、彼女を倒す為にアンデッド、ジョーカーと化した和真。

和真の身体は既に半分が消えかけており、どうやらあのAIの言った事は間違っていなかったようだ。バイクも消えかけているということは、バイクも別の世界に送られるということか。

それとこの姿、外からは消えかけているように見えるが、下半身の感覚は別の場所に移っている。何も感じない...が、どこか別の世界だろう。

声と言えぬ絶叫を上げ、バーサーカーと化した束が剣を振り下ろす。

しかし。その刃は彼に届く事はなく、直前に八坂和真はこの世界から消え去った。

見ていた者は全員、何も言わない。言えない。

織斑千冬、八坂風香、八坂吹雪、織斑一夏。

目撃した4人は無言で立ち尽くしていた。目の前の現実を受け入れられなかった。

物語は必ず誰かがハッピーエンドを迎え、必ず誰かがバッドエンドを迎えるという。

この状況は誰も、誰1人として、ハッピーエンドを迎えた者は居なかった。




これからは投稿がかなり不定期になる可能性があります。
ごめんなさい。
まあなんつーかこの話無茶苦茶ですね。
書いてる本人が言うのもなんですけど。
とりあえず頑張りますんで!


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雪降り積もる幻想の世界

ISの世界にて消えた和真。
次に彼が行き着くのは如何なる世界なのか。
幻想的で万華鏡のように多彩な世界は存在するのか。
次に彼が行き着く先で出会う者とは...



人は過去を忘れることで、生きていけるという言葉がある。

巡ってきた世界、関わりあう人々。時に対立し、戦う事も避けられない。

あの浜辺を最後に、彼があの世界から消え去ったことは事実である。しかし、消えた後、彼は何処に行ったのか。

雪に覆われた、知らない世界で彼は目を覚ます。

しかしそれは新たな旅の始まりでもあった。

 

閑話休題

 

場所は変わって何処かの世界の上空4000メートル。

突如として光とともにその場所に、1人の少年と1台のバイクが現れた。比喩ではなく、突然、何の前触れもなく。

「え?何、どこ此処?しかも雪?!」

慌てふためく少年の名は八坂和真。前の世界から飛ばされてきたのだが、どうやら予想とは反した状況が展開されている模様。

それも当然だ、浜辺で消えたと思えば、雪が降りしきる上空4000メートルにいきなり出てきたのである。

(まぁひとまず状況確認....って高っけええええええええ!)

下を見て絶句。落下しているのは体感出来ているが、にしても高すぎる。4000メートルの高さから落ちる事など通常ではあり得ないのだ。

「えーと、あれ?」

改めてみてみると、自身より下方を急速落下中の物体が。

自身の愛用バイク、ブルースペイダーである。色々と積んである故重いのは分かるが、このまま見過ごす訳にもいかないし、自身の事も考えて和真は変身することにした。

すぐ変身するのはあまり好まないが、この際仕方ない。方法がそれしかない故だ。

「変身!」

『Turn Up』

青い光のカードを通過し、仮面ライダーブレイドへと姿を変える。

そしてそのままジャックフォームへ。

オリハルコンウィングを展開して加速、高速落下していくバイクをなんとか捕まえて減速し、地面につくと同時に変身を解く。

(ふう...なんとかひと段落か)

バイクを停めて周りを見てみると、さほど遠くない所に、石造りの階段があるのが認識できた。上の方には鳥居らしきモノもおぼろげにだが、見えなくもない。

恐らく神社だろう。誰かはいるはずだし、ならばここが何処なのかも分かると思われる。

よっこらせ、とバイクを押しつつ石造りの階段を登っていく。先程からこのバイク、だんまりを決め込んでしまい、どうしようもない。

「おお、やっぱ鳥居じゃねえか。つかやっぱ冬なのか?雪積もってるし、てかクソ寒ぅ!」

ごそごそと有能収納スペース&バッグを漁り、なんとか服を冬仕様に変える。

やはり夏の服では限界がある。

ロングコートがあったのが幸いだろう。

再度バイクを押して階段を登りきった和真。そしては彼が目にしたのは....

 

「いや、たしかに雪降ってるけどよォ....冬なのかもしれんけどさぁ。

多分別の世界だしな。だからって、神社の境内で雪合戦するか?普通」

呆れ気味に和真は呟く。いくらなんでも神社の境内で雪合戦をする奴がいるだろうか。少なくとも和真には、問題児にしかみえない。詳細は不明だが、人数は3人は確認できる。

おまけに向こうはバイクに手をかけている和真の姿はまだ視界に入っていないらしい。

(よくもまぁこんなんで怒られてねえでやんの)

凄いのか凄くないのかさっぱりだが、今は第三者として止めに入るべきであろう。

バイクを停めて、和真は足を踏み出す。

と、突然雪合戦をしていた片方の奴、金髪の少女が声を上げた。

「お、あんた雪合戦やるのか?やるよな?よし、これで2対2だ!行くぞ、丞一!早苗!」

おおよそ反対側には丞一と早苗と呼ばれたのであろう、少年と少女が雪玉を手にこちらを見ていた。

(なんか敵の2人かなり出来る感があるな。てか強制参加なのかよ)

一方的に参加させられたことへの怒りを感じながら、ため息をつく。

何故こんなことになってしまったのだろう。というか予想ではあるが、この早苗と呼ばれた少女や声を掛けてきた金髪の少女は人間離れしている気がしなくもない。丞一と呼ばれた少年もだ。

「はぁ...神社ってなァ、あんまり俺には相性良くない気がするんだよなあ」

「ん?なんか言ったか?」

「別になんでもねェよ。気にするな」

やけくそ気味に言い、和真は雪玉を握りしめて振りかぶる。

やる時は加減は無しで行くのが和真の主義である。

「つーわけで意味分かんねえが、(割とムシャクシャしてるから)全力で行かせてもらうぜ!」

そして再び神社の境内は、雪玉飛び交う戦場と化したのであった。

 

数分後、突然の乱入者によって雪合戦は終わり、全員して雪合戦を止めさせた少女のお小言(?)を聞いていた。

この少女、見かけは15、6かそこら辺だろう。しかし何より特筆すべきなのは装いである。

黒髪を赤いリボンで留め、纏うのは赤と白の巫女服だ。そう、つまり巫女さんなのだ。

神社から出てきた以上ニセモノではないと見て良い。

(やっぱ人いるじゃねーか。ったく...まぁこれなら多少は何か聞けるかもしれねえな)

心の中で若干喜ぶ。無慈悲に外来者を雪合戦に参加させた奴らよりは、マシな人間であることを期待したい。

などと思っているとお小言が終わったようである。

「そういえばさ、コイツ誰よ?」

和真を指差す巫女服少女。その質問は有難い。

「そういや知らねえ顔だな」

「同じく」

「あ、ホントだ。誰だコイツ」

終始コイツ呼ばわりとは不敬であろう。まあ敬えなどとは微塵も考えていないが。せめて名前くらいは聞いておくべきではないのか。

「おい、お前ら来訪者勝手に雪合戦に参加させんなよ!自分で言うのもなんだけどよ、せめて自己紹介その他諸々くらいさせてくれよ!」

「まあ...そうだな...自己紹介くらいはしておくか。俺は慶条丞一だ、まぁよろしく」

「私は東風谷早苗。よろしくお願いします」

「私は霧雨魔理沙だ。雪合戦については悪いとは思っていない!」

「私は博麗霊夢よ。ここの神社で巫女をやってるわ。」

どうやら和真の自己紹介は後回しになるらしい。無茶苦茶な展開にイライラしつつも、自制して耐え抜く。落ち着け、これくらいは日常茶飯事だったではないか。

「よし、つーわけで俺なワケだな。俺の名は八坂和真って言うんだが、色々あってこの神社に来てみたんだがなァ...金髪の少女に無理やり雪合戦させられてなぁ...」

視線だけを動かして金髪少女を睨み、彼女は苦笑いで済ます。

「っとそうだそうだ、本題に入るか。お前らの名前は分かった、けどな、ここが何処だか俺にはさっぱり皆目分からねェんだよ。お前ら知らねえか?」

沈黙が5人のいる空間を包み込む。そして和真を置いて、ひそひそと話し合い始めた和真を除く4人。

(ここが何処だか聞いたらおかしいのか?普通聞くだろ、普通はよ)

瞬きのうちに彼らは素早く元の状態に戻っていた。おそらく気の所為だったのだろう!きっとそうだ。

そんな和真に巫女もとい博麗霊夢が口を開く。

「ここは博麗神社って言ってね、私が巫女をしてるところなの。それでこの神社を含めた此処の世界全てを『幻想郷』っていうのよ」

「....げん、そう、きょう?」

「そ、幻想郷」

「幻想郷...幻想郷ねェ...」

ゆっくりと考え込む和真。

(知らねえ世界だな、クソ...マジかよ...)

IS世界からの移動で脳内データベースが傷ついたのかどうか分からないが、いくら考えようとも思いつかない。

ならば導き出される答えは1つ。まったく知らない世界に飛ばされた、ということだ。

「うん、分かんねーや。」

開き直った。分からないものは分からないとはっきり言うしかあるまい。分からないところは授業中に聞いておけと先生も言っていた(気がする)。

そんな和真を微妙な顔で見る4人が居た。

 

彼らを無視し、外の雪は降ることをやめない。

その雪がこれから事件の中心になるとは、まだ誰も知りはしないが、

着実に事態は進んでいた。

 

続く!




かなり期間空いてすいません。
この話から、暁にて投稿中のかりーぱん先生とのコラボ回が始まります。
東方に関しては詳しくありませんが、かりーぱん先生のと合わせて読んでくだされば幸いです。
ではまた次回!
そんな遠くないうちに投稿できると思います(多分恐らく)。


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アンデッドの俺が、ロリコンなわけがない(多分きっと)

八坂和真は新たな世界へと足を踏み入れる。
様々な人物達が存在するこの世界を、皆は『幻想郷』と呼ぶ。
新たな世界を舞台に、和真は誰と出会い、如何なる物語を紡ぐのか?


和真がこの『幻想郷』と呼ばれる世界に来て、1週間が経過した。

相も変わらず雪は降り続いていたが、意外だったのは博麗の巫女である霊夢が社に泊めてくれていた事であった。

流石にあの寒さの中に放置するのは鬼畜な所行だが、雪合戦で面倒をかけたにも関わらず、見知らぬ外来者を寝泊まりさせてくれるのには和真とて疑問を抱く。

しかし詳しいことまでは話して貰えず、微妙な感じではぐらかされてしまった。最も彼女の事を事細かに知ろうとは思わないが。

とは言うものの、知っている情報が全くない世界で、直ぐに寝泊まりできる場所を確保できたのは幸運だったと言えるだろう。

(にしてもなァ...やっぱ世話になってる身で、1日中に引きこもるのも迷惑になるよな)

安定のこたつ篭り巫女と化した博麗霊夢を視界に捉えつつ、なんとなく考える。

「よし、俺ァ少し気分転換してくる。ま、帰りはテキトーに帰るからヨロシクな」

「そー」

返事がやる気の欠片も感じられない。

冬の寒さで鈍っているのだろうか、この神社の巫女は。

とりあえず身支度をし、和真は外へと出る。

さあ、散歩を始めようか。

勝利のナントカは決まっていないが。

 

 

というわけで、出て来たは良かったが。これと言った目的などなく、

雪景色を眺めつつ、歩き続ける。

ひとしきり歩くと、なにやら少女達が遊んでいる様に見えた。

少女達というか、金髪ロリに青髪ロリ。が特に和真には、目立って見えた。いやあの、決してロリコンというわけでは。

しかしどうやらこの世界で統一して言えるのは、黒髪の割合が極端に少ないということであろう。もちろん和真が知っている範囲内でだが。

敢えて言わせて貰えば、和真はロリは好きだが、ロリコンという訳ではない。いつだったか、ペドフェリアの疑いをかけられた事があったが、勿論言った奴は半殺しにしておいたのは言うまでもない。

そんな些細な事はさておき、純真無垢な姿を見てから、和真は方向転換し、更に散歩を続ける事にした。

最初に言っておく!幼女観察などという、怪しい趣味はないッ!

 

 

随分と歩いたように思えたが、時間にしてさっき方向転換してからまだ数分しか経っていない。

はてさてどうしたものかと考えていると、なにやら見たことのある金髪ロリと青髪ロリ(数えるのが面倒なのでその他複数人)がいた。

暇を持て余しているのだろうか。

というか、さっきの場所に戻ってきてしまっていた。

(アホか!なんで戻って来ちまうんだよ!訳わかんねえ!)

心が叫びたがっているようだが、そんな事はどうでも良い。

なんとか戻らねばならぬ。ここの地理には詳しくないのだ。

如何したものだろうと考えていると、声が掛けられた。

「雪合戦したいのかー?」

「するのかー?」

「はあ?」

見ると、金髪ロリと青髪ロリである。

あとその他複数人の視線を一度に浴びるのは、かなりきつい。

あとは名前は...なんだっただろうか。この八坂和真一生の不覚!ロリの名前を忘れるとは!最も、教えられていなければ知る事もできないが。

「えーとだな...雪合戦ねェ...」

そんな期待を込めた眼差しで見るな、少女達!

だがしかし。

男なら誰かの為に強くならなければならない。見てるだけでは始まらず、これが正しいと言える勇気があれば、それだけで英雄なのである!

我ながら何を言っているのかさっぱりだが、要はアレだ。

光は絆であり、どれだけ蔑まれようが幼女が居るかぎり、その魂は受け継がれ、再び輝くのだ!

(なんか地の文、俺の事ロリコン扱いしてねえか?)

微妙に地の文に不快感を覚えたが、まあ作者を後で殴れば万事解決になるだろう。

とりあえず少女達を泣かせるのは男として最低であるし、雪合戦くらいはしてあげるべきだろう。

「よし、俺もやってやろうじゃねえか!」

早速雪玉を作成し、投擲する。

1対複数の状況だが、面白い。

1週間ぶりに、和真は雪合戦へと身を投じた。

 

しかし雪合戦をする以上、雪合戦がまっすぐ飛んで行くわけなどあるはずがない。

ふっ、と青髪ロリ(名前はチルノというらしい)が投げた雪玉は、勢い余って別の方向へと飛んで行った。

(あ、アレ丞一か?なら良いか、アイツなら確定回避やしな)

外れた雪玉を呑気に見送る和真。

当然ながら丞一は回避し、こちらを向く。

「ジョジョ!よくアタイの雪玉をよけたな!」

「さすがなのだー」

「おう、丞一。お前もやるか?雪合戦」

「和真。お前まだ懲りてないのか?雪合戦なんかやってみろ、死人が出るぞ?」

それに関しては丞一と早苗のタッグが異常なだけであろう。

「それはお前らだけだからな!...ったく」

この異常な丞一と早苗のコンビ、先日の雪合戦にて、謎のドライバーなどを持ち出して『雪玉アームズ』なるものを創り出した挙句、ボドボドにしやがったキチガイにストロンガーな奴らなのである。

まあそれでも霊夢にムッコロされない辺り、信用があるだろう。

丞一と会った所で、雪合戦は終わりにする。

このままではロリコンのレッテルを貼られてしまうッッ!

(既に貼られてんだよバーカ)

一瞬何処からか約29人分の声が和真の心を抉ったが、なんとか意識を保つ。

丞一に誘われ、和真は一路、早苗が担当しているという守矢神社へと向かうことになった。

道中、ふと和真は思い出したようにつぶやいた。

「それにしても、この世界は平和なんだな。キチガイがこんなにいるのに」

「どういう意味だ!?ま、平和だからこそマイペースにやっていけるんだろうがな」

たしかに此処は平和だ。雪は降っているが、それも季節感だろう。

だからこそ、和真は悩む。

「まだ悩んでるのか?自分がここに来た理由とかなんとか」

「...ああ」

平穏な世界に居る自分は、何をすべきなのか。何の為にいるのか。

数日前に丞一達から色々と教えてもらったが、更に謎が深まってしまった。

簡単に言うとすればだ。

和真は自ら望んで此処に来たわけではない。恐らくバイクとてそのはずだ。

どうやら此処に来るのには四つの方法があるらしく、和真はそのどれにも当てはまらないのだという。

・1つ目は、早苗がそうだったらしいのだが、自ら此処に入るというやり方。これは違う。

・2つ目。これは丞一がそうだったらしいが、紫という女性に連れて来てもらうという方法なのだとか。これも絶対違う。

・3つ目は博麗神社に存在するという結界、これが綻び、そこから入ってくるという方法。完璧に違う。

・4つ目は、『幻想郷』側から召喚するという手。明らかに違う。

 

この全てに和真は該当しない。和真は望んで此処に来たのでもなければ、誰かに連れて来られたわけでもなく、偶然に導かれて来たのでもないし、この世界の側から召喚されたなんてあり得るわけがない。

しかしこの世界に来たのであれば、何かしら成すべきことがあるはずなのだ。

救世主ですらなく、勇者など程遠い。

そんな和真に、今度は何を求めるというのか。既に身体はジョーカーアンデッドに近しい存在になっているに違いない。

絶対にそうだ。自分で分かる。アンデッドであるということが。

そのような存在に何を求める?

何を望む?

悩む和真に丞一は明るく言う。

「気長に待てよな。こんな時にこそ異変ってのが鉄板だが、まさかねー」

「異変?」

初めて聞く単語に、首をかしげる。

それから手短に異変とやらについて説明してもらったわけだ。

「なるほど。大体わかった。」

「そんな訳だ。気長に雪明けを待とうぜ」

「雪明け?冬明けじゃあねェのか?」

「何言ってんだよ?今、五月だぜ?」

「.....は?」

理解が不能なのだが。

そもそも五月に雪など、おかしすぎるだろう。

異常気象以外の何者でもない。

異常気象?異常、異変、異常気象?

まさかとは思うが。

「丞一!よくよく思えばこれ、異変なんだぜ」

「ああ...たしかに」

突然現れたのは出会った時と同じフル装備姿の魔理沙である。

空が飛べるとはいえ、アンデッドを驚かすのは良くないと思う。

そのうちジョーカーの力が解放されて、世界が滅ぶのも遠くないかもしれないではないか。

というのを置いておいて。つまりまとめるとだ。

今のこの雪は異変ということになる...ようだ。

解決するのだろうが、和真も駆り出されることになるのだろうか。

先が少しばかり思いやられる。

 

 

 

 

 

 

 

 




てなわけでコラボ2話目ですね。
これからも頑張るぜ!ウェイ!
....あと、ロリコンとかペドフェリアってのが、メンタル的にこたえますな。
俺はロリコンじゃねぇ!...とは言い切れないのがリアルでして。
今日も世界は青いな(現実逃避)



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問題児達が異変解決に行くそうですよ?

遂に異変解決に突入した和真達。
しかし目的地で待っていたものとは....?
八坂和真久々の変身!
さあ実験を始めようか!


始まり方がそろそろ思いつかなくなってきそうで、尚且つ説明が面倒くさいというのが、今の心境である。

一言でいうなら、異変とやらを解決することになったのだ。

その準備をすると言って、丞一は守矢神社へと上がりこんで行った。どうやら色々と必要らしいが、一体何を準備してくるか分かったものではない。フォークとかは見慣れたものだが。

まぁ武装云々に関しては知ったことではないが、未だに降り続く雪をどうにかせなあかんというのが和真の思う所である。

そして当の和真であるが、守矢神社には入っておらず、博麗神社に戻るという選択肢を選んでいた。

(ううぁ...クッソ寒いな!ったく...これだからなァ)

これだから何なのだ、という話だがそんなものはどうでも良い。

一度こちらも神社に戻って、異変解決云々の話を博麗の巫女サマにせねばなるまいと思う所存だからだ。

歩きつつ、雪が降り続く空を見上げる。

世界を巡り続けてきたが、この雪が初めてであった。

吹雪く白雪、初雪は深雪の如く、叢雲より降りしきる...と。

磯波がないのは勘弁してほしい。なんせ此処は海がないのだ。

浦波・敷波・綾波は当然ながら存在しない。

(吹雪型か...)

ふと気付くと、和真は博麗神社の階段の前にたどり着いていた。

考え事をしていると、どうやら時間は早く進んでしまうらしい。

取り敢えずはこの階段を登るとするか。

 

戦いから時間が空き過ぎていたのだろうか。

階段登るので息切れとか、マジ勘弁である。

一応の所集合時間は決められているので、遅れるわけにもいかない。

神社へと戻り、博麗霊夢へと声を掛ける。

「あー霊夢?なんか異変ナントカって言われたんで、呼びに行こうと思ったけどやっぱり良いや準備してやがるぞこの巫女さん!」

和真が来た意味である。

「で、行くの?」

「あ、ああ。俺は戦わなきゃいけねえからな。むしろ戦うのが目的と言いますかね...」

若干言い淀む和真だが、もしやと思い問いかける。

「アレ、ひょっとして異変のこと知ってたりしますかね?」

「知ってるも何も、解決してるの基本私よ。というか今回のも私がやるのよねぇ...ハァ...」

仕事に疲れたOLのような溜息をつかれても困る。

まあ年増など微塵も興味はないし、むしろBBAと煽る格好の対象だと和真の中でなっているが、勿論死地に自ら足を突っ込むような馬鹿な真似はしない。

この幻想郷で合法ロリが何人いるか分かったものではない。

(ま、俺みたいな真人間がンなことするわけねえんだがな)

「じゃあ行くわよ保坂」

「誰が保坂だ?!八坂って言ったろうが!」

「あら、そうだっけ?」

「忘れるなよ霊夢。保坂と八坂って似てるからかね、どこかの性犯罪者と間違えられて逮捕されかけたことがあんだよ!ったく...」

「そう...なの?」

「そうなの!」

いい加減異変解決の前に、精神的ストレスでジョーカーになって世界壊しそうで怖いものである。

『「いい加減名前覚えてくれよな」』

「今別の声しなかった?」

「気のせいじゃね?」

恐らく作者の心からの叫びが、博麗神社まで届いたのだろう。

博麗神社の中心でココロから叫ぶバカ、というヤツか。

いやはや世界は不思議で充ち満ちているが、何は兎も角集合せねばなるまい。

霊夢と和真は、集合場所へと向かった。

 

霊夢と和真が向かうと、既に丞一と魔理沙が来ていた。

もう1人は銀髪に白と紺色のメイド服を着た少女...外見などから鑑みるに霊夢達よりも明らかに歳は上に見えるが。

名は十六夜咲夜らしい。霊夢によれば、洋館で吸血鬼の少女達のメイドをしているとか。

いつかは見に行ってみたいものである。少女達ではなく洋館の方を、ですよ?いやあのですね、決してロリコンというわけでは。

「何だ、和真も連れてくのか?」

「ほら、働かざる者食うべからずってね言うじゃない?」

先程と完璧に違う事を口走る霊夢。

だがしかし、確かに丞一の疑問も最もであろう。

ここに来て戦闘の一つもしたことがないのに、そんな奴を異変解決に

連れて行こうとしているのだから。

けれど。

「俺は運命と戦う。だから頼む、連れてってくれ。他でもない、俺の為に」

「和真、男の仕事の8割は決断だ。あとはオマケみたいなもんだ。お前が決めた事だ、何も言わねーよ」

否定されると思いきや、そうでもなく、僅かに安堵する。

「父さんの受け売りじゃない」

「何故知ってるんです(ナズィミテルンディス)!?」

「バカやってないで、早く行くわよ。こたつを取り戻しにッ!」

「ぜってー目的間違ってる!すり替わってる!」

やはり霊夢は何かズレた巫女なのだろう。

改めてそれを認識しつつ、和真を含めた異変解決メンバーは出発した。

 

 

...出発したのは良いのだが、移動方法がそもそも何故空を飛ばねばならないのだろう。

どうせ地面が凸凹すぎてロクでもない道だから、歩くよりも空を飛んだ方が早いという判断に至ったのかもしれない。

それともバスも車も無い、というのではないだろうな?

しかしふと、和真の頭の中に疑問が湧いた。

どうやら丞一と十六夜咲夜も疑問が湧いたらしい。

「一つ良いかしら、霊夢」

「奇遇だな俺もだ」

「同じく」

「何よ、下から答えて行くわ。はい和真」

「んじゃ聞かせてもらうけどよォ...今どこ飛んでんの?」

「「そこ?!」」

丞一と十六夜咲夜からツッコミが入るが、当然のことを聞いたまでである。和真はここにきてひと月とて経ってはいない。

全てを把握している訳では到底ないし、ましてや空を飛ぶとなれば気にするのは当然であろう。

なんせ幾ら飛んでも山しかないのだ。白い雪山が続いて行くばかり。

変わることの無い景色が続き過ぎて、流石に不安を抱く。

こたつの為に征く巫女をメンバーに加えた時点で、それなりに不安ではあったが....

「ゑ?違うの?!」

「じゃあ次は丞一と咲夜ね。2人いっぺんに頼むわ。どうせ同じなんだろうし」

「「犯人に目星はあるのか(んでしょうね)?」」

丞一と十六夜咲夜の質問は、確かにごもっともだ。

異変はそもそもの犯人が分からなければ解決のしようがない。

これまでどうやって解決したかは知らないが、流石に犯人特定しないで冤罪にしたわけでもあるまい。

「当たり前でしょう。私をなんだと思ってるの?」

「ケチ巫女」

「楽園の素敵な取り立て屋」

「まともなのがないな?!」

しかし己に不都合なのは自動的に聞こえないシステムになっているのか、霊夢は勝手に名探偵のように話し出した。

「いい?要は雪が降って喜ぶ奴が犯人なわけでしょ?」

「そりゃあ、そうだよね」

「じゃあ雪が降ったらどうなる?寒くなるでしょ?そこがみそよ」

「うん。で?」

「つまり、寒いのを好む奴ら。そんなの幻想郷でも限られてるわ。そんな物好き、幻想郷でも少ないもの。例えばチルノなんかはそうよね。あとは冬に湧く妖怪なんか、ね?」

貧乏巫女の戯言を何となく聞き流していると、どうやら目的地についたようである。

さあ、降りるとしようか。

 

 

「というわけで。貴女“を”犯人よ!レティ・ホワイトロック!」

「どういう意味で⁉︎それと誤字についてもツッコませて貰っていいかしら⁉︎」

霊夢に連れられて来た所にいたのは、白い少女だった。

ひと言で言うなら、雪を擬人化させたという風に感じた。

雪の中に在っても薄れることはなく、その白い少女は和真にとっては

圧倒的に存在感を感じさせた。

「レティ、何でお前が....」

「丞一まで?!私が1番怪しいというのは分かるわ、でも証拠が無いじゃない!」

「その言葉が証拠みたいなもんよ」

結局どこまでも無計画に無鉄砲な奴なのか、博麗の巫女というのは。

正直勘弁願いたい。これ以上無茶苦茶やらないでほしいものだ。

しかしドヤ顏で霊夢は続ける。

「犯人は大体そう言うのよ。『証拠を出してみろ』とか『大した推理だ。まるで推理小説だな』とか『犯人と同じ部屋なんかに居られるか!俺は自分の部屋に帰らせてもらう!』とか。ねえ、和真?』

「何が『ねえ、和真?』だ!俺に振るな。ていうか俺がいつフラグ建築士になった!?それと最後のとこツッコませて貰っていいか?このままじゃあ俺が犯罪者みたいじゃねえか!」

必死の答弁も軽くスルーされた。

自分は犯罪者ではないのだが。(前科殺人など)

「もういいわ。ヨクゾキタナユーシャヨ(棒読み)」

霊夢の言葉に疲れたのか、言葉が棒読みになっているレティ・ホワイトロック。魔理沙は腹を抱えて笑っているが、今は目の前の事をなんとかせねばならん。

「貴様が中ボスか」

「いや中ボスじゃねェよ!?」

「よく見破ったな私が中ボスダー(棒読み)」

「誰が戦う?」

「切り替え早いんだぜ」

「私ついて行く自信無くなってきたわ」

そりゃあそうだろう。霊夢の奴が暴走しすぎなのだ。加えて何気にレティもノリが良い。メイドさんにはキツイ仕事か。

「誰が戦うって...そりゃあ和真しかいないでしょ」

「ゑ?俺?」

「それもそうだな。私も和真がどんな戦い方をするのか気になるしな」

「そもそも、戦えるかどうかハッキリするし、良いんじゃないかしら?」

「えっ?ちょっ、あの!」

「ハイ満場一致、いってらー」

「ヒドっ!?」

皆で和真を前に突き出した。

自己犠牲の欠片も感じられない、酷いやり方である。

もう少しオブラート(?)という物を知るべきであろう。この世界の住人は。

「....貴方も大変ね」

「幻想郷にまともな人間がいるとはね」

意外にもレティ・ホワイトロックはまともな部類であるらしい。

感動のあまり拳を床に叩きつけて喜びたいレベルだ。

そしてこのヒトならば、話し合いで解決でk

「まあ戦うんだけどね」

一瞬で砕かれる幻想。幻想郷では人の夢とは、儚くも散ってゆくものなのか。

ならば仕方ない!

「ああもういいよ!やってやろうじゃねえか!」

取り出したのはブレイバックル。♠️のAのカードを差し込み、そのブレイバックルを装着する。

右手の掌を上にし、ゆっくりとそれを左斜め上に持って行く。

「変身!」

『Turn Up』

そして素早く裏返し、同時にブレイバックルを操作する。

カードが見える方が反転し、♠️のマークが描かれた方が表を向く。

蒼い光のカードが体を通過すると、和真の身体は蒼銀のアーマーを纏った姿へと変貌していた。

これこそが和真の本来の戦闘スタイル。仮面ライダーブレイド。

久方振りの変身に、懐かしさを覚える。

ブレイラウザーを抜き放つ和真に対し、レティ・ホワイトロックも戦闘モードに移行する。

「「遠慮なしで使わせてもらう(わ)!」」

「冬符『フラワーウィザラウェイ』!」

レティは自らが放ったスペルカード(というらしい)により、飛翔する。雪空を舞う彼女だが、彼女含めてここに居る奴らは知らない。

和真とて空を飛べるという事を。

『アブソーブクイーン・フュージョンジャック』

アーマーが変化し、オリハルコンウィングが展開されて、ジャックフォームへと変わる。

「そんなのありっ?!」

驚愕と好奇の入り混じった瞳でジャックフォームをみるレティだが、彼女は知らないのだ。

和真はヒトではないということを。

しかし手を緩めることなく、レティはレーザーと弾幕を駆使して和真を襲う。そりゃあ当然だ。戦いの場において、先制攻撃は悪とはならない。勝てば良し。結果のみが全てである。

(クソ...負けるわけにはいかねえ!)

飛来するレーザーと弾幕の嵐を、和真は危なげながらも回避して行く。

「くっ!白符『アデュレイションレイ』!」

新たに展開されるスペルカードを視界の端で捉えながら、和真はラウズカードを取り出し、ブレイラウザーで読み込ませた。

『スラッシュ』『サンダー』『ライトニングスラッシュ』

ゆっくりと刀身が雷を纏い始める。

レーザーを回避しつつ急上昇し、素早く身を翻して急降下、加速しながら、ブレイラウザーを振り下ろす。

「ハァァァァァァァ!」

「くっ!キャァァァ!」

雷を纏った刃が直撃すると同時、何故か爆発エフェクトが起こった。

これまでの世界ではなかった分、意外である。

そしてレティは器用なことに空中で倒れており、全くよく分からない。

何はともあれ、初戦闘で初勝利である。

丞一や十六夜咲夜が和真の姿を見つつ、何かを呟いていたが、敢えて何も聞かないでおくとしよう。

それが得策なのかもしれないと思った。




なんでしょうな、この感じ。
コンチクショウなんで俺が、性犯罪者扱いされなきゃいけないんだ!
と言うのは置いておいて。えーとね、話題変わりますが。
平成ジェネレーションズに期待してます。
フォーゼとオーズに出番よこせ!
っていうのもありますが、最後に一つ。
俺、ロリコンなんですかね?
ものすごい疑問なんですけど。


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迷いの家

レティ・ホワイトロックは犯人ではなかった。
ならば誰が犯人なのか。
一行は『マヨイガ』と呼ばれる館に歩みを進める。
そこで待ち受けるものはなんなのか。




あの後、仮面ライダーブレイドの『ライトニングスラッシュ』による会心の一撃!をくらったレティの手当てをしていたのだが...

「え?犯人じゃないの?!」

「じゃないに決まってんでしょうが!」

半ば無理矢理犯人に仕立て上げられた感はあったものの、どうやらレティは犯人ではなかったようだ。

まあそれもそうである。冬だからだの雪だからだの、で犯人扱いされては堪ったものではない。

和真は何気に共感できる。冤罪で留置場に叩き込まれたり、偶然小学校の前を歩いただけで手錠かけられたりしたことがあるのだ。

まあその時は警官殴りとばして事なきを得たけれど。

にしてもやっぱり博麗の巫女は当てにならないのではなかろうか。

 

 

「さて、振り出しに戻ったわけだけど」

「はてさて、どうしたもんかな」

丞一と十六夜咲夜が考え込んでいた。霊夢が大して当てにならないと分かったからだろう。いや、もう彼らにはそれは理解できている気がしなくもない。

和真とてそうだ。

と、霊夢が口を開いた。

「行き先は決まってるわ」

随分と自信ありげに言うが、皆が皆同じ事を思う。またか、と。

どうせロクでもないことをいうのだろう。

「マヨイガよ」

「「マヨイガ?」」

「あ、聞いたことあるぜ。妖怪の山のどこかにあって、そこから何でもいいから持ち帰ると幸運が上がるとか」

魔理沙の説明に、丞一と十六夜咲夜が頷く。

和真には皆目分からない。それも当然ではあるが、どうにも『マヨイガ』という単語から連想できるのがピンク色のリュックを背負った蝸牛の怪異の幼女なんだが。

「付け加えるなら、紫の仮住まいという噂もあるわ」

「え、紫さんの?」

微妙に記憶に残っている気がしなくもない。幻想郷の説明の際に出てきたような気が....全然しなかった。やっぱり気のせいだった。

聞いておくに越したことはなかろう。

「紫?誰だ、そいつ」

「八雲紫。幻想郷最古参の妖怪の1人であり、最強の妖怪の1人であり、賢者とも称えられる妖怪の1人よ。幻想郷も彼女が考案し、博麗大結界を提案したのよ」

(うっわ〜...BBAってコトかよ)

全然まよいマイマイ関係なかった。蝸牛の怪異の幼女は居ないのか。

嗚呼、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を(以下略)

「つまり霊夢はマヨイガに行って、紫を探そうってわけか」

「あわよくば前例があったかとか聞ければ幸いね。なんなら連れてってもら....おう、かし、ら」

後半になるにつれて小さくなっていく、霊夢の声。

丞一や十六夜咲夜、魔理沙は考え込むように唸る。

何かあったのだろうか。

遺書でも書き忘れたとか。いやそんなわけない、と思う。

じゃあアニメの録画か。

なぁにやっているんだ、この人達は。と思っていると刹那、叫び声が響き渡った。

『あんのスキマババアがァァァァァァァ!』

これほどまでにないくらい、全力で叫んでいた。

理由はまあ紫という人物のことだろう。

「あいつ遂にやりやがったな」

「ええ、冬になったら見かけないのはいつもの事だけど。こんな季節になっても起きてこないのが気にはなっていたのよ」

「働きたくないが為に?」

「やりかねないな」

和真を除く4人が立て続けに紫を批判していた。

まあ会ったことはないし、和真は分からないのだが。

マヨイガに行くというのなら、一応聞いておいた方が良い事がある。

「あの、さ。その紫(BBA)とやらが、マヨイガにいなかったらどうすんだ?」

あくまで噂なのだ。いない場合は空振りにしかならないと思う。

「いや、収穫くらいあるだろう」

丞一が続けた。

「さっきの話で思い出したんだが、マヨイガは猫達の集会所になっているはずだ。そして妖怪の山っつーか、幻想郷の猫の頭といえば『橙』だ」

「つまり何か知ってるかも、と」

「ザッツライト」

猫、ときたか。どこかに「なんでもは知らないわ。知ってる事だけ」って言ったり、知識を売って戦闘機チャーターしたり、南極からアロハシャツのオッサン連れ帰ってきたりするヤツはいるかもしれない。

あとは途中で虎になったり。

「ていうわけだから、ひとっ飛び付き合いなさない!」

「霊夢ちょっといいか?」

フルスロットルでロケットステイツ装着して、インフィニティードラゴンゴールド並みに飛び立ちそうな霊夢を、魔理沙が制止した。

「マヨイガって字面だとカタカナだけど、漢字で書くと確か」

「『迷い家』。迷う家と書くわ」

「ていうことは、普通に見つからないから『迷い家』っていうんじゃないのか?」

「.......」

「.......」

「....そうかそうか、ならそうなんでしょうね。あなたの中では」

「無理だわアホ」

結局また振り出しに戻ったようだ。

「なら降りて迷えば良いのよ!」

その時不思議な事が起きた。

ように感じられた。

地の文と皆の言葉が重なったのだ!

 

 

.........何を言っているんだ、こいつは。

 

 

一応まあその提案をのんで、下に降りた訳だが。

「迷ったわ!」

「迷ったな」

「迷っちまったな」

「迷ったわね」

「いや迷うなよ!」

自分はツッコミ担当ではないと思うのだが、ついツッコミを入れてしまった。不覚。

ツッコミいれようといれまいと、事態は変わらない。

みんなで楽しく遭難中である。

「どうするんだぜ?」

「魔理沙出番よ!」

「いやいや、いくら魔法使いでもこんな窮地を脱するマジックアイテムは...」

「お宝センサー全開よ!」

「ねえよ!」

「今こそ覚醒の時よ魔理沙!普段使われそうにない時こそ、ドロ設定を使いなさない!」

「ないもんはねえ!いくら霊夢でも、魔理沙ちゃん怒るぞ!丞一、咲夜お前らからもなんか言ってやってくれ!」

「でもあながち間違ってねーだろ」

「それならパチュリー様の本を返してから言いなさい。あと盗みに来るのもやめなさい」

「おい!誤解を招くような言い方はやめてほしいんだぜ!私はただ死ぬまで借りてるだけなんだぜ!」

「魔理沙、自首するなら今のうちだぞ?」

「お前にだけは言われたくないんだぜ」

全く、いつ自分が犯罪を犯したというのか。

自首しなければならないようなことはした覚えはない。

アレは寺子屋の前を偶然通り掛かっただけではないか。

蝸牛の迷子とか、金髪のロリ吸血鬼とか、四糸乃とか、ラストオーダーとか探して何が悪いのだッ!

ベクトル操作する知人とかバスケ部コーチとかに、画像くらい送ってやりたいものだ。

きっと喜ぶに違いない。

そういえば、慧心学園初等部は中々に素晴らしいものであった。

バスケはよく分からないが、素晴らしかった。

アクセラレータとか拳を叩きつけていたし、まあそれはラストオーダーが練習に参加していたのもあるだろうけれど。

 

その後、魔理沙を先頭に歩き続けて十数分。

何故かそのマヨイガとやらを見つけることが出来た。

家というか、館に近い姿をしている。

「何でだぜ?!」

「流石お宝センサーね」

「やめてくれそんな呼び名!」

「もう盗っ人から怪盗に変えるか?」

「どっちもお断りだぜ!」

「Marisa the third♪」

「霊夢戻ってこい!お前がそっち側いくと手に負えない!」

魔理沙があまりに哀れに思えたのか、皆で館に入ることにした。

入る事にした...というより、丞一と霊夢が蹴り開けた。

「紫!いるんなら出てきなさい!」

「紫さーん、藍さーん、橙ー!いるかねー?」

割と温厚に話しかけていたが、全員が中に入った瞬間に、扉が閉められた。外から鍵もかけられている。

「ちょ?!鍵閉められたァ?!」

「チッ、和真そこどけ!『ダークワン』!」

「『ルナ・ダイヤル』!」

丞一と十六夜咲夜が叫ぶと同時、和真の顔面スレスレを『何か』が通り過ぎ、扉を直撃した。

その後も『何か』は扉を乱打していくが、傷1つ付いていない。

カタチが無いようで、そこには存在している。

心象を現したモノなのかもしれない。

なんて思っていると、

「ちょっ、危なぁ?!」

「む!こいつこれだけ殴ったのに、結構堅いやつね」

「こいつァ、紫さんの四重結界か。だったら...」

「『ルナ・ダイヤル』」

「『ダークワン』」

「「『ザ・ワールド』!!」」

刹那、全ての時が静止した。

世界の時間そのものが止まったのである。

(あったな、この感じ。ルルイエに行った時かな?)

和真は静止した...フリをした。

親から受け継いだ体質が、こんな所で仇になるとは思わなかった。

「かったるいことは嫌いなんで」

「この静止した世界の中で」

『ぶち壊させてもらいますよ!』

 

「っ!!バカな?!」

「私達の超キョウリョクラッシュでも.....」

『ビクともしないなんてっ?!』

驚愕の表情を浮かべるギャラリー&丞一と十六夜咲夜。

「え?ちょっ、え?!」

止まっていなかったとは言え、何が起こったのかはよく分からない。

何かがドアを連打し続けていたというのは理解できたが、ラッシュっていうと殴っていることになる。

何も殴っていない気がするのだが。

それはともかく、収穫がないのではどうしようもない。

帰ろうかと提案しかけた時、猫の鳴き声のようなのが聞こえた。

ニャン、と。

(猫がいるのか?集会所だのなんだのって言ってたけど)

全員が音の聞こえた方を向くと、2つの猫のしっぽが見えた。

ブラック羽川でも1つだったはずだが。

「あ、藍さんだ」

「藍しゃま!......あ」

凄い速さで、そいつは出てきた。猫耳とか尻尾とかついてる、所謂猫耳娘という奴だ。

「.....」

「.....」

一拍おいて、その猫耳少女は喋り出した。

「よ、よくじょ、ここを見つけたにゃ!えっと、お前たちはマヨイガからは、あ、間違った。ここから脱出しゅることは、かか、かなわにゃいのにゃ!」

猫だからといっても、相当噛んでいた。

カンペも持っているのにもかかわらず。

将来苦労するかもしれん。

んで、皆がどうしたかというと。

「霊符『夢想ぉ」

「恋符『マスタぁ」

『Joker!』

「俺....変し」

「ストップだにゃぁぁぁぁぁ!待って欲しいのにゃ!」

「「「チッ!」」」

これだから脳筋バカどもはいかんのだ。

もうすこし和真を見習うべきだろう。

この冷静沈着かつ釈迦の如き1ミリの汚れも無い高潔な魂を。

なんて若干偉ぶっていると、尋問チックなのが始まっていた。

尋問じゃないと思うけれど。

「おい、橙。紫を出しな」

「.....えっと、どうするつもりで?」

「犯人かどうかを聞く。殴るのはそれからだ」

「ゆ、紫しゃまは犯人じゃないのにゃ!」

「.....何故そう言える?」

「紫しゃまの冬眠を長引かせるためにやったんじゃないかという疑いをかけられるのは、藍しゃまが計算していたのにゃ。でも、それはあり得ないのにゃ。何故なら、それすらもめんどくさくてはやらない人だからにゃ」

「「「「た、確かに」」」」

「どちらにしろ、酷い理由だな?!」

恐らく部下であろう猫耳少女に諦めかけられている気がするが、それで良いのか?

一応妖怪であろうに。あ、ババァなのか?

「......で、この結界はなんの真似だ?」

「.....最近紫しゃまが脱出ゲームにハマってまして」

「おい!スキマBBA出てきやがれ!!やっぱぶん殴るッ!」

「落ち着けぇ!」

暴れる丞一を羽交い締めにし、なんとか抑える。

殺気がダダ漏れになっているせいで、これでは敵に見つかることを請け合いだ。

「そ、それでにゃ。この屋敷にいる猫の尻尾に結界を破錠させるお札を巻いているにゃ。その猫を探してお札を取るにゃ」

「...確かにな。結界を破壊できない以上、なんとかするしかねーな。てか取れてるとかねえよな?」

「それは大丈夫なのにゃ。そうなんないように、きつく縛ってあるのにゃ。そりじゃあ、ゲームを始めるわけだけどにゃ、ある言葉を聞くよう伝言を預かってるにゃ」

「「俺の(私の)魂を賭けよう!」」

「「盟約に誓って(アッシェンテ)!」」

丞一と十六夜咲夜がよく分からない言葉を言うと、橙が録音を再生させた。

『グッド!Open The Game!ゲームを始めよう』

「何これ?」

周りと違い、和真は普通に疑問を返していた。

普通そうじゃないのか。

そんな彼と違い、丞一達はさっそく取り掛かっていた。

「ノーコンティニューで、クリアしてやるぜ!」

「で、具体的にどう探すの?」

「なあ、お札って尻尾にきつく結びつけてあんだろ?だったらその猫、暴れているんじゃあないか?」

結局お札を付けた猫は丞一達によって無事発見され、ゲームとやらは速攻でクリアされたらしい。

なら次のステージに進むまでである。




なんかすげえ久しぶりに書いた気がしますね。
あと和真くんロリコンぽくなってないですか?
気の所為だと思うんですけどね。
あと平成ジェネレーションズとガルパン最終章第1話みました。
平成ジェネレーションズは財団Xの出番ほとんどなくねえか、アレ。
スマートブレインとかの方がマシじゃねえか。
ガルパンは新キャラ出てきやがったな。
てか桃さん序盤からひでえ扱いやん。
てなわけでぼちぼち書けていけたらな、と思っております!


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白玉楼

あれから一行がどこへ向かったかというと。

名前は(恐らく)さっぱり聞いたことがないのだが、白玉楼というところに向かうことになった。

なんだかんだで手前とおぼしき階段まで辿り着いたのはよかったが、その後が問題であった。

階段が長いったらありゃしないわけで、登れど登れど序盤からも頂上は見えず。

文句垂れつつも登ってもひたすらに階段しかない。

『終わらない歌』という歌を1980年代くらいの歌手のグループが歌っていた気がするが、今のこれは『終わらない階段』だ。

いつか終わるのだろうが、まあこんな所二度と来たくない。

サブカルくそ女共に脅されたって、高木さんにからかわれたって、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの写真やると言われたって二度とやらないと心に決めた。

(ま、どーせそういう時ってフラグの可能性あったりなかったり)

和真の心中など正直あまり物語上関係ないので、物語を続けよう。

その後銀髪の少女剣士が出てきたので丞一達が戦闘になりかけたが、十六夜咲夜が相手をすることになり、和真を含めた4人は更に先へと進んでいく。

(銀髪繋がり...なのか?まあメイドって基本強いだろうけど、若干心配ではあるな)

あのメイドも相応の手練れのはずだが、少女剣士の方もかなり強そうだった。このご時世、メイドのドラゴンがいるという噂も巷では広まっている。なんでも小林という女性会社員の家に居候兼メイドとして居るらしい。

ぶっちゃけ和真の心境など実際どうでも良い事であり、今は頂上に到達する事を優先させる事にした。

 

 

どれくらい登ったのだろう。

かれこれ数分かもしれないし、数十分、あるいは何時間の可能性もある。とはいえなんとか4人は辿り着いた。

和真的には、およそ頂上と呼ぶには微妙な感じがしたが。

(なんかすっげー御屋敷なんだが!?そこらの武家屋敷以上じゃねえのか?)

入るのを躊躇っていると、丞一達があっさり入ろうとしていた。

「いやいやこれ、明らかにお金持ちの家だろ!喧嘩売ったら不味い感じがプンプンしてるぜ!」

「いやでも、当てがこれくらいしかないというかな...」

「可能性があるのが彼女なわけだものね」

「西行寺幽々子...ここに住んでるお嬢様だぜ」

「お嬢様ァ?!」

庶民サンプルでもないのに、お嬢様という言葉を耳にするとは思わなかった。正直余計入りづらくなる。

「「「じゃあお先に」」」

「えっ?!ちょっ...」

と言って...和真の背中を押す3人。「お先に」の意味が違う気がするし、これでは「お先にどうぞ」ではないか。

(お先に失礼します。じゃないのかよォォォォォ!)

抵抗虚しく...というかどうしようもなく、和真は白玉楼へと突っ込むことになった。

他人を犠牲にするのが得意なのかこのメンバーは。というか、もうちょっとヒトの心を持つべきではなかろうか。

いざ入ってみるとこの白玉楼とやらもそんなに悪いところではないようで、平安時代の貴族の屋敷の感じが漂う。

お嬢様というのは嘘ではないのだろう。

池があるあたり風情というのか、そんなものが感じさせる。

最もご本人は...探すまでもないようだが。

「この人か?えーと、あの、西行寺幽々子さんってのは」

「彼女が犯人でいいでしょもう」

「霊夢流石にテキトーすぎだろそれ」

「多分彼女が犯人だとは思うのよ、私は」

「だからって決めつけは良くないだろ」

若干言い争い気味になる霊夢と丞一。

「で、どうなんですかね?この雪とのご関係は?」

「好きな人と一緒にいる時の雪って、特別な気分になれて私は好きだけれど?」

「んなこと話しにきてねえんだよ!いい加減イライラがフルスロットルなんだっつーの!なんだよあの階段!クソみてえに多いじゃねえか!1000くらいなかったか?!」

「それはまあ、そういうものですし」

「アレはアレか、年齢と共に増えますとかじゃねえだろうな!?つまりはえーと、あ」

「「「....」」」

凍りつく空気。これは喧嘩を売ってはいけない相手に喧嘩を売ってしまった時の感じだ。ということは、今の発言はマズイわけだ。

雪云々関係なく、これは『虐殺...始めるよ』ということか。

ポン、と肩に置かれる手。

『終わったなオマエ』という目で見るな、このひとでなし!

助けようとは思わないのか!

「少しはサポートって言葉は?」

「「「頑張れ」」」

「コンチクショウ!俺が悪いのは認めるけど、オマエら楽しみたいだけなんじゃねえのか!?」

「まあ...」

「それはね...」

「否定しないぜ」

「オイっ?!」

つまるところ、また戦闘は和真が請け負うことになったということ。

正直戦闘はしたくないのが現状だ。戦えないのではなく、戦ってはいけない。合計変身回数は覚えていないが、キングフォームの多用は和真の身体に明らかに悪影響も及ぼしている事は間違いない。

(だけどま、やるしかないですな)

溜息と共にブレイバックルを取り出して装着。

既に幽々子さんはブチ切れて和真に弾幕を撃ち放ってきている。

ホワイトロックの時のあれを、更に過激にした感じである。

「変身!」

『Turn Up』

目の前に現れた青い光のカードを潜り抜け、同時にブレイラウザーで弾幕を斬っていく。

「はああああああッ!」

ゲートオブバビロンを思わせる弾幕。おまけに属性が不明なため、触れることはできない。

触れたら死んでしまう系統の攻撃だったら、下手に殴ろうとしなくて良かった。

僅かなタイミングを見計らって、ジャックフォームへ変わって空中を舞う。再び弾幕を斬っていく。

「ん?気の所為かな...桜の花びらが舞ったような...」

今月が何月かは忘れたが、雪が舞っていたりする中で桜が咲くはずはない。異変だとしても桜吹雪などあるはずがない。

地面に降り立ち、フォームをジャックからキングに。

『エボリューションキング』

膝をつく。かなり負担が来ているのだ。元はと言えば自ら墓穴を掘ってしまったようなものであるが、彼らとて和真1人に戦闘をやらせるか普通。別に構いやしないが。

口の中に血の味が広がるのを感じながら、和真は立ち上がった。

「こいつァ...やべーかもな。クソが」

あとかなりキレ気味の幽々子さんが怖い。弾幕よりも本人が。

女に年齢のことを言ったりしてはいけません。みんな、これテストに出るからメモしておくように。

『♠︎10,J,Q,K,A』

『ロイヤルストレートフラッシュ』

(正直これで人間の姿保てるかあやしいけど)

不安を掻き消すように、和真は現れた光り輝くカードに向かって黄金の重醒剣キングラウザーを振り下ろすと、光の奔流が彼女を呑み込んだ。

「はあ、はあ...っくそ、目の前に桜の木が見えるぜ。チクショウめ!」

キングラウザーを手放し、変身解除した和真。

しかしおかしい。人間としての理性が働かなくなって来ている。

(ジョー...カー...)

「ガァァァァァァァ!」

希望はない。

妖の如く朧げな桜が咲き、桜吹雪がゆっくりと舞い始める。

「なんだアレは...?」

「見たことないわ...あんな化け物」

そして白雪の上で、和真が変貌していく。漆黒のバケモノじみた身体へとその全体を変えていき、オリジンとは別のブレイドジョーカー、仮面ライダーブレイドを更に黒く禍々しくしたボディへとなった。

世界の崩壊はもう間もない。

ジョーカーにぶつけるのは...ジョーカーだ。

 




すいません、前の投稿から相当時間過ぎてますね。
諸事情がありましてごめんなさい。
クオリティも低下の一途を辿っている事でしょう。
まあ頑張ります。
あと...なんだっけ、まあいいか。
人生明るく行こうぜ!


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Re.ワールドウィッチーズ

アレは夢だったのか。
幻想郷など夢の中の出来事だったのか分からないままに、しかし彼は懐かしい世界に帰還する。
20世紀のネウロイ戦線を舞台に、再び仮面ライダーブレイドは空へ飛び立つ。


世界が壊れていった。

おぞましいバケモノに自身が変わり果て、ヒトとしての外観を保てなくなっていく。幻想の世界も彼の前には壊れる運命なのか。

異形と化した彼は拳を地面に振り下ろし、同時に凄まじい光が全てを包み込んだ。

 

「...は、夢...だったのか?」

八坂和真が目を覚ましたのはどこかのベッドの上だった。

雪の世界でもなければ、巫女や魔法使いなどいない。平安時代のような感じは全くなく、どうみても現代の部屋である。

でも確かに彼は彼女達の事は覚えている。

彼だけが見た夢の世界だったのか、それとも別の次元に存在する世界だったのか。本当のところは分からない。

「まあいっか...とりあえずここどこなのかすら不明だしなあ」

起き上がってみると、どうやら彼がいるのは今度はどこかの部屋らしい。少なくとも平安時代ではないことは確かだ。

幻想郷で彼が着ていたコートは影も形も無く、普通のシャツにズボンというスタイルだ。

着ていた服すら夢の中という事なのか。まあどうでも良いが。

リュックは床に置かれており、特にいじられてはいないようだ。

「さて...と」

まず衣装チェンジで上はミリタリージャケット、下は予備のジーンズをはく。これで割と変わるはず。

改めて部屋を見てみると、どこか見覚えがあるような。どこか懐かしいような。

「アレ...どこだっけ?どこかで見たことある部屋のような気が...」

朧げな既視感と共に彼は部屋の扉を開いた。

石造りの建物で、部屋がいくつもある。だいぶ前に彼は同じような建物を見た事がある気がした。

いま彼がいたのは医務室だったようだが、担当の医師はいないし、ひとまず黙って抜け出しても良いだろう。

(けどなんか見たことあるんだよなあ、この昔ながらの感じ)

思い出せない。単に記憶力が悪くなったのかもしれないが。

人は居ないし、今は使われてない建物である可能性もある。

しかしふと外を見ると、空に飛び立つ機影。

獣耳と尻尾が生えており、足にストライカーユニットを付けている。

「なんだ、ストライカーユニットあんだからウィッチーズの世界か」

先程からの建物の既視感はそういうことか。

流石に風香と吹雪も再び彼がこの世界にいるとは思いもしないだろう。

(ならミーナ中佐とか宮藤とか501メンツいるだろうし、挨拶しとかねえとなあ)

一度は顔を合わせているわけだし、こうして医務室に運んでもらったんだから礼のひとつくらい言っておかねばなるまい。

「中佐いるかなー」

歩みを進めていくと、彼は妙な感覚を覚えた。

確かに作りは非常によく似ているのだが、どうにも違う気がするのだ。ブリタニアの501基地とは何かが。

隊長室と思しき部屋まで来て、彼は重そうなドアを開けた。

「どうも、おひさ...し...ぶり?て誰?!」

「あら、目を覚ましたのね。基地の前で倒れていたから医務室に運んでもらったのだけど」

「え、いや貴女どちら様?なんか服的には階級高そうだけど...あー待って、見たことあるかも。劇場版で」

「劇場版??」

「なんでもない。あ、そうだ!ロザリー・エムリコート・ド・グリュンネさんだっけ?」

「え、まあ、そうだけれど。急に私の名前言ってどうしたの?」

「いや俺いまいち場所の把握が出来てなくてさ。ここってどこ?ガリア?カールスラント?ロマーニャ?」

「ガリアの506統合戦闘航空団のセダン基地ね。ガリア解放以降の防衛任務を主として行なっているわ」

「ガリアかぁ...」

中途半端に遠いところに飛ばされたものだ。

ブリタニアは海の向こう側ではないか。飛べばいい話ではあるが。

「今ストライクウィッチーズの基地ってどこにあります?ブリタニアから移ったりしたとか?」

「ロマーニャに移ったって話は聞いたわね」

「なるほど。ありがとうございます」

やはり2期か。

このロザリーって人は結構美人なのだが、確か506は貴族階級が集まったとかいう部隊だった気がする。今思うとよく声をかけたものだ。

あと告ってみようかなと思ってしまった。

でもどうせ無理だろう。貴族と凡人の差以前に、初対面で告るとか不審者の極みか。

ドアを開けて出ようとすると、警報が鳴り響いた。

「ネウロイ...みんなが出撃したタイミングを狙って?!」

「嘘だろォ...しゃーねえな」

焦るロザリーを尻目に彼は走り出した。

ブレイバックルを装着し、叫ぶ。

「変身!」

『Turn Up』

仮面ライダーブレイドに変身し、窓から飛び降りつつジャックフォームへ変わる。

上空のネウロイを視認。

「久しぶりだな。ネウロイとやり合うのも」

ブレイラウザーを抜き放ち、彼は翼を広げ、ネウロイへと加速していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




かなりお久しぶり。
結局書かなくて色々あったりして、今回ようやく仮面ライダーブレイドのこの話最新話投稿になります。
なんだかんだで俺のワールドウィッチーズ熱が冷めなくて、またウィッチーズで書くことになってしまいましたね。
それはともかくあけおめ!
遅いけど。
つーわけで不定期だろうけどあげていくつもりです。
今年はヘブンズフィールとガルパン最終章2話ダナ。
小さーニャと公式コミックアンソロジーも買わねえとな。
ではでは!


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インヴィンシブル・ジャスティス(1945ver)

日が沈み始め、蒼かった空は橙色になっていく。

今は水平線に太陽が落ちるわずか手前といったところ。

2つの影が夕焼けに染まる空を舞う。

仮面ライダーブレイドこと八坂和真と黒と赤のネウロイ。

「クソ、思ったよりも速え...前よりパワーアップしてやがんな」

ブレイラウザーが空を切り、ネウロイが赤色のビームを放つ。

回避して体勢を立て直す和真。

ここにきて仮面ライダーブレイドの弱点が露見したらしい。

名前の通りブレイドは剣を主装備としているが、言い換えれば近接戦闘特化型なのである。

(しっかしなんだか異様に速いよなこのネウロイ)

前は余裕で勝てたのだが、今回はどうにも調子が悪い。

体がアンデッドに変わり始めている影響ではないと思いたいものの、これに勝てなければどうしようもない。

「けど今の俺は!負けらんねえんだよ!」

世話になった人達の場所を守らなければ。

邪神の子だなんだといっても、助けて貰った恩を仇で返すような真似はしない。

『スラッシュ』『サンダー』『マッハ』

ラウズカードを読み込ませる。

ブレイラウザーが雷を纏い、ブレイドは高速ネウロイに向かって加速していく。

そして風を切り、剣が振るわれる。

「クソがァァァァァァァ!!」

叫びと共にブレイラウザーがコアを斬り裂き、ネウロイは空に散った。

***

ひとまずの戦闘を終え、和真は基地に帰還する。

しかし出迎えたのはロザリーではなく、赤い髪の別の女性だった。

「まったく、勝手に医務室から出られては困る。少佐から聞いたが、どうやらネウロイと戦闘をしたらしいじゃないか」

「あーすんません。とりあえず倒しましたし、見逃してはくれませんかね?」

「そこは少佐に聞かないと分からないけどなあ...何倒せたのか?ストライカーユニットなしで?」

「まあそうなりますね」

事実を偽って何になる。ウィッチに対して嘘をついたところで厄介なことに巻き込まれるのは御免だ。

なにせ相手は美少女たちとはいえ軍組織なわけだし、下手に諜報部とかに連れて行かれるのも嫌だから。

「黒田中尉と姫様は夜間哨戒に出たから紹介は後回しにして、私と彼女はしておこうか」

彼女とは誰だ?

ロザリーではないとすれば、もう1人ウィッチがまだいるのか。

劇場版でも出てきたハインリーケとかいうやや性格がキツそうな女性だろうか。

けれど予想に反して来たのは茶髪の少女だった。

2人が順に自己紹介をする。

「私はアドリアーナ・ヴィスコンティ。階級は大尉だ」

「イザベル・デュ・モンソオ・ド・バーガンデール。階級は少尉。名前は長いのがここの部隊の特徴だからね。アイザックでいいよ」

どれくらいの付き合いになるのか分からないのに丁寧な自己紹介で助かる。アイザックてニュートンじゃあるまいし。

「八坂和真だ。カズマでいい。階級はどうなんだろう、短期間軍にいたことがあるけど…」

「まあそこらへんは隊長に話してみてからだね。階級は僕たちじゃ決められないから」

要はまたロザリーに会えということか。

「じゃあまた後で」

「談話室で待ってるよー」

談話室なんてあるのか。ホグワーツじゃあるまいし。

とにかく軽く会釈をして隊長室へ向かうことに。

せめて階級は欲をいうなら軍曹くらいが良いのだが。

(まあ戦果はゼロみたいなもんだし下士官でもいいけどさ)

 

再び隊長室にて。

ロザリーと和真が向かい合う。

外には夜の帳が下りており、部屋の明かりだけが2人を照らす。

「あのー俺を当面ここに置いてもらえませんか?さっきから言ってますけど」

「難しいのよね...弾薬も限りがあるわけだし」

「弾薬も銃も自分で調達しますって!そこをなんとか頼む!この通り!」

日本古来の土下座をしたところで通じるか分からないが。

先程からこんな感じの会話を繰り返しており、老人かと思いたくなる。

「あなたね...まあ熱意は分かるのだけど。魔法力もないでしょ?というかさっきもどうやってネウロイ倒したのか凄い疑問なのよね」

「それはまあ...剣でズバッと。扶桑のウィッチだって剣使うじゃないか。坂本少佐とかさ」

「剣で倒したの?信じ難いけれど」

「じゃあアレだ、次の出撃の機会にでも見せるよ。ロザリーさんも上がるだろ?」

「私は飛べないのよ。色々あって」

「なんかすまない」

年齢による魔法力減衰というあたりか。

見た感じ十代後半から20代という感じがする。

実際ウィッチは10代が基本だし。

その後色々と交渉した結果、全員の見ているところでネウロイを撃墜できれば置いてくれるということになった。

1回やったことある気がするけど。

そのやり方。




はいどうも。
私再び書きまして。
珍しいねこの作品短期間で2話書けるなんてね。
前が期間空きすぎたんだよね。
そんなわけでノーブルウィッチーズ編2話目です。
時間的には黒田とプリン姫が夜間飛行出た後の話にしてるつもり。
だから2人はまだ出ないの。
あとこの話の題名インヴィンシブル・ジャスティスてヤツね。
ミリオンライブのアイドルヒーローズの曲名から引っ張りました。
これでも私プロデューサーの端くれですので。
最近シャニマスも始めてみた勢。
でも今は765の三浦あずささんと桜守歌織さんが担当かな。
あれ担当2人っておかしかった?
まあいいや。後書き長くなりそうだから、とりあえずこの辺で。
じゃあねー


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ロイヤルストレートフラッシュ

次の日。

夜間哨戒から帰還した2人を迎えて自己紹介を済ませたところで、広間には506のA部隊+1名が揃っていた。

しかしロザリー、アドリアーナ、イザベル、和真の4名である。

昨晩の夜間哨戒にてハインリーケは負傷したために医務室に行き、黒田那佳は慣れない夜間哨戒だったとのことで現在爆睡中。

結局のところは。

「なんだよ昨日と変わらないじゃないか」

「まあまあ。姫様のあの全治1週間の怪我も湖に落ちた衝撃でのものだからね、ぷっ」

吹き出すアドリアーナ。

なんとか堪えようとしていたが、どうにも我慢できずに笑ってしまったようだ。

しかもそれが黒田那佳が支えきれずに落としてしまったことが原因であるためか、余計に笑ってしまったらしい。

会ってそんなに経ってないから2人がどんなキャラなのかは今のところ掴めていない。

(ま、劇場版出て来てないんだよね。ハインリーケとロザリー以外)

ぱっと見黒田那佳は扶桑、和真でいうところの日本出身だろうということは名前と顔から判別できた。

「これじゃ自己紹介してもらった意味ないわね...」

溜息をつくロザリー。しかしそれも状況が状況なら仕方あるまい。

一応現在は戦闘待機中で、次の出撃で和真がネウロイを撃退したのを確認できればここに置いてもらえることになっている。

まあ彼女たちは実質確定で1日は休みが貰えるわけだ。

なんとも羨ましく思える。

(これまで割と忙しかったもんなぁ)

度重なる戦闘に加えて、幼馴染に追いかけられたりなんだりで、正直のんびりと休んでいた時間があまり無い気がする。

どうせもう間もなくネウロイの襲撃があるんだろう。

だんだん諦めてきた。

警報が鳴り響き、ネウロイの襲撃を知らせる。

「やれやれ」

重い腰を上げて基地から出る。

予想としてはまたあの速いタイプかもしれないが...地底潜行型のネウロイでは手に余る可能性がある。

残った506メンバーも基地から出て、和真の動向を見守る。

見守るというよりかは監視に近い気もするが。

「で、警報鳴った割にネウロイいないんだけども?」

「あれ?おかしいわね、確かに鳴ったのに」

壊れているみたいなので、1回その警報機は処分するべき。

室内に戻ろうとすると、ふと異変が。

大地が揺れていた。

ゴゴゴ、という音が響き、刹那。

大地をぶち破って巨大な黒い物体が姿を現した。

「いやおい...デカすぎだってこれ」

体長は40メートルほどあるだろうか。

やや怪獣に似た姿をしており、ゴジラ映画で映っても違和感無いくらいではあった。

でもこれがネウロイの反応を示したとするなら、倒すしかない。

ブレイバックルを装着する。

「変身」

『Turn Up』

仮面ライダーブレイドに変身。

彼女たちが驚く中、ジャックフォームへ変わって飛翔する。

怪獣ネウロイが現れたのは基地からそう遠くない。

加速してそのまま殴り付けるが、ビームを発射され、なんとか回避。

「思ったより厄介だなあ」

ビームを回避しつつ飛びながらぼやくが、それで状況が好転するわけでもない。見ればいつのまにかストライカーユニットをつけたアドリアーナとイザベルがカメラを手にこっちを向いている。

証拠として撮るのかもしれないが、半分楽しそうにしているのは気のせいだと思いたいところだ。

「ったく、どいつもこいつも...」

ラウズアブソーバーにカードをいれる。

『エボリューション・キング』の音声に続き、仮面ライダーブレイドはジャックフォームからキングフォームに。黄金の鎧を纏う。

『♠︎10・J・Q・K・A』

『ロイヤルストレートフラッシュ』

専用の武装キングラウザーにカードを読み込ませ、彼の前に金色の光カードが現れていく。

「こんちくしょうがぁぁぁぁぁ!」

光のカードを落下を利用して通りつつ、彼の剣は黄金色の光を纏っていき。

そのまま1Gの重力に引かれながら、怪獣ネウロイの身体を縦に切り裂いていった。

「...またキングの力、使っちまったな」

薄れる視界に映るのは2人の少女。どうやら既に変身は解けているらしいことを理解しながらも、ガリアの大地に八坂和真の身体は落ちていった。

 

 

 




クオリティ低いなやっぱ。
まあそりゃそうか俺だもんな。あははは!
なーんてな。この話また投稿できたけど、今後の展開お悩み中。
また期間空くかもしれんな。
そんときは気分転換兼ねて別の作品書いてるかもしれないね。
シャニマスの凛世の着物姿が好きです。
じゃあまたねー


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アナザーワールド

目覚めたのは、またしてもベッドの上だった。

太陽の光が差し込んでないことを考えると、まだ夜というとこか。

「どんくらい寝てたんだ…」

1時間か1日か、それとも1週間か、分からない。

ゆっくりと起き上がり、和真はベッドの上にあぐらをかく。

大型ネウロイをロイヤルストレートフラッシュで撃破したところまでは記憶しているが、それ以降の記憶がない。

大方気を失ったのだろう。

(気絶してこうも介抱してもらうとは)

早々に情けない限りだが、506のメンバーにこんな非正規のメンバーを助けて貰うのも申し訳ない。

彼女達の本職はネウロイを倒して世界を守る事であり、本来ここの住人ではない彼を置いておくことがおかしいのだ。

こちらの正体を彼女達は知らないわけだし。

「邪神と人間のハーフですって言ってもまぁ…信じてもらえないだろうけど」

正直自分でも忘れかけていたことであったが。

もともと本来彼は通りすがりに過ぎない。

過干渉は本来の歴史の維持に関わりかねず、この世界の未来すら変えてしまう可能性がある。

(けどそれも今更と言やぁ、今更だろうがな)

いくつもの世界を旅し、彼はいくつもの歴史の流れを変えた。

その瞬間瞬間は良かったとしても、長い目で見た時、別々だと思っていた世界が実は繋がっていて、その先に影響を与えてしまっていたとしたら。

『過去は変えられないが、未来なら変える事ができる』という言葉があるが、その逆だ。

『過去を変えてしまったら、未来そのものは変わってしまう』のだ。

「アレ?よく考えたらやばくねえか」

ペルム紀での事件が、人の存在を消してしまうことだってある。

かなり前に自身と瓜二つの姿をした人物に『世界の歯車が狂い始めている』と言われたことも思い出し、冷や汗が背中を伝う。

「ま、まさかね」

兎も角早めにこの世界を後にするに越したことはない。

手早く身支度を整え、音を立てぬように外へ出てバイクの所へ向かう。

(よし、まだ動く)

エンジンをかけ、いつもと同じ手順で時空を超える扉を開く。

冷静に落ち着いてバイクを発進させ、和真はその光の中へと飛び込んでいった。

後ろからの視線に気付くこともなく。

***

和真が初めに感じたのは違和感だった。

光の中へと飛び込んだはいいが、バイクがおかしいのである。

トランスフォームをし始めたとかではないのだが。

突如として計器が変な動きをし始め、動きも鈍くなり始めたのだ。

「何なんだ…?」

故障かと思ったが、煙は出ていない。ガソリン漏れというわけでもないらしい。

変に酷使しすぎたのだろうか。

「うーん…」

これを作ったのは彼ではなく、銀アト子という邪神なのである。

細部がどうなっているかまでは考えた事もないし、バイク自体最低限の整備しかしていない。

分解しないと分からない内部の不具合だった場合、目的地を現代に設定する必要があるが。

「っておいおい!壊れんなよ!?」

まだちゃんとした目的地すら決めていないのに、こんなところで壊れてもらってはどうしようもない。

そして溜息をついて今後の行動を考え始めた時だった。

バイクが消えたのだ。

丸ごと、綺麗さっぱり、跡形もなく、彼だけを残して。

「壊れんなって言ったろうがぁぁぁぁぁ!」

バイクという足場を無くした和真は断末魔の如き絶叫と共に、時空の狭間を落ちていく。

考えた事もなかったが、こんな所にも重力が働いているという事をこんな形で、彼は嫌にでも思い知らされる事となった。

「なんで急に?!なんで!?」

訳も分からないままに墜ちていっていると考えていた彼は、やがてその考えが間違っていた事を知った。

(なんだ…これ?)

彼がその目に視たモノは、彼の常識を遥かに超えていたのだ。

明確な暗闇。

光すら逃げ出せない暗黒。

(ブラックホール、か?)

光もそこには存在する事を許されないブラックホール。

それに似た『何か』がそこにあり、彼をそこへと引っ張っていたのであった。

どうすればいい?どうすれば逃げ出せる?

ブラックホールは物質を消滅させるという。

決まったわけではないが、離れた方がいい気がした。

逃げなければ。

そんな分かっている。

けれど、焦りのあまりに『変身してどうにかする』という選択肢が有効打に思えなくなってしまう。

最も…彼を引き寄せる力が強すぎて、変身する余裕はあまりなかったのだが。

 

「っくそ…また、寝たのか…」

ここの所寝すぎな気もする。

睡眠は大事なのだが、睡眠過多もいかがなものか。

「っつぅ…」

痛む頭を抑えつつ和真は立ち上がる。

どうやら血は出ていないようなので、包帯や絆創膏の類は必要なさそうだ。

見渡した感じ、ここは『どこか』だ。

知ってはいるのかもしれない。

でもイメージができない。

ここがどこで、自分がどこにいるのかが理解できない。

何よりおかしいのが『人間』の生活感が感じられないということであった。

「誰も、いないのか?」

和真の問いに答えたのは、意外にも聞き覚えのある声だった。

「誰もいない。人ならざる者以外はな」

「お前は…」

「久しぶりだな、八坂和真」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




日付見たら1年ぶりくらいなんですね。
1年以上か。
色々ありまして。書いてませんでした。
他の作品書いたり消したり、あとは大学のレポート書いたりとか。
コロナウイルスが騒がれてますんで、このタイミングで書き進められないかなと思ったり。
外出自粛なんて言われてますからね。
最新話まだ勘とか1年前の書いてた頃の記憶とかが戻ってなくて、クッソ下手かもしれません。
ま、いつものことでしょうけど。
勘弁してください。
ノーブルウィッチーズ最近読んでなかったから感覚戻ってないっていうのと、あとなんか目新しいのを考えたらこうなりました。
変身は…してないですね。
まあデート・ア・バレット買ったからかな。
近いうちに次も書けると思います。
たぶんね。
サブカルコーナーやりたいんだけどさぁ、デート・ア・バレット買った以外があまりなくて。
いやあるか。
デアラそういや最終巻買ったな。
うん、個人的には良かったの一言に尽きますね。
まだ買ってない人いるかもなんでネタバレはしませんけど。
狂三やっぱ好き(十香グッドエンドだけどね…)
あと新・サクラ大戦のアニメが5月からだった…かな?
ストライクウィッチーズも10月からやるって。
pv出たからなぁ!
こりゃ期待するしかねえわ。
ミーナさん18歳!ミーナ38歳じゃないからね!
エイプリフールとかあるけど嘘は書かないよ!
じゃ、またねー


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なぜ彼はこの世界にいるのか

「久しぶりだな、八坂和真」

和真と瓜二つの姿をした青年は、そう言った。

確かに彼には見覚えがある。

かつて和真を天宮市から出て行くよう促したはずだ。

「天宮スクエア以来か?だいぶ性格丸くなったな。少し痩せこけて見えなくはないが」

「まぁ…まぁ、な」

「事態が飲み込めないんだろう?こっちにも非があるからな、少々手助けしようと」

「バイク無くなるわ、よく分からないブラックホール的なのに飲み込まれるわ、挙げ句の果てに知らない場所だからな」

「割とこっちに責任もあるんでね。少々複雑なんだが話を聞いてもらえるか?」

 

そしてしばらく彼の説明を聞きながら歩き、住宅地らしきところへとやってきた。

そこで彼は説明を終え、和真は問い返した。

「つまりアレか、俺を操ったと?」

「まあそれは、否定できないな。前にも言ったようにその世界から出て行ってもらう為に思考を弄ったんだが…やはりやりすぎたかもな。強制転送装置も不完全だったみたいだし」

「…ったく勘弁してくれ。見ろよ、それでこんな変なとこに来ちまったわけだろ」

歩いても人っ子ひとり見当たらない街だ。

無理矢理連れ帰ろうとしたら、変なところで事故って寄り道をする羽目になったというのが分かりやすいのだろうけれど、だからといってこんな薄気味悪い街は嫌だ。

「変なとこって言うなよ。『隣界』って名前が一応あるんだ」

「そもそも『隣界』のこと自体よく分かってないんだぜ?説明聞いてもさ、実際にそのものを見たことはないし」

「精霊が現実世界に現れる前にいる場所、ってのが一番分かりやすいんだろうけど…どうにもそれだけじゃないっぽいんだわな」

「なんだ?バトルファイトでも起きてんのか?」

「間違ってない。今ここは10個の領域に分かれてるんだが、それぞれに支配者、ドミニオンってのが存在してる。そいつらがまあ、危険なわけさ」

「その、たぶんドミニオンってのも精霊だと?」

「いや、準精霊。精霊になる前の卵みたいなもんだ。っても人間なんかよりかはよっぽど強いから、人ならざる者しか存在していないっつーことになる」

「…で、どうしろと?見知らぬ土地で頼れるバイクもなし、事前情報もほぼゼロに等しい俺は何をすれば?」

「どうにもここじゃあ強制転送装置は使えなさそうだからなぁ」

「壊れてるの間違いだろ」

「うるさい。ともかく自力でここから出てもらわない事にはどうしようもないんだ。今ここにいるこの姿もホログラムみたいなもんなんだよ、前と同じで」

「はー…なるほど」

彼はこう言いたいのだ。

連れ戻すのに失敗したから、回収できるポイントまで自力でこの地図も何もない土地を行けと。

「要はこの『隣界』の外に出れば万事OKと?」

「その通り。言っておくけどな、この『隣界』で自分を見失ったら命はないらしいぜ。自己を強く持った方が良い」

「アイデンティティ的な?」

「まあそんなとこだ。チッ、そろそろタイムリミットか。あと最後に有益な情報を1つ。時崎狂三には気を付けろ」

「何…?!彼女がここに!?」

「ああ、じゃ、またな」

「おいコラ!」

あまりに雑な切り方にキレかけた。

というか割とキレていた。

散々振り回した挙句に、よく分からない世界に置き去りとは。

「ったくナメた真似を…」

しかし嫌でも彼を見たからか、それなりに荒れていた昔を思い出してしまった。

もうあの頃には戻ることはないし、戻りたいとも思わない。

(とにかく時崎狂三…彼女を探し出すところから始めようか)

この世界で唯一知っている名前。

だが彼は時崎狂三には気を付けろ、とも言った。

元々彼女は時を喰らう天使を操る悪夢のような精霊であり、人を何人も平気で殺してきた。

彼自身、時崎狂三はそういう人物だと認識している故、彼女のそういう行動に関しては恐怖という感情は抱かない。

であれば何をもって彼女を危険というのか。

最も全ては彼女を見つけ出さなければ分からないことである。

和真は息を吐くと、空っぽの街を歩き始めた。




うーん、やっぱ雑な気がする。
ま、クオリティ低いのはいつも通りなんだろうけどさ。
しかし昨日の今日だと喋ること思いつかないね。
あんまりサブカルコーナー期待してる人いないと思うけど喋ろう。
デート・ア・バレット3巻のロリ狂三可愛すぎないか。
めちゃくちゃ可愛すぎる。
ロゥリィ・マーキュリーを思い出すぜ…
いいぞ、もっとやるんだッ!
次の話もできるだけ早く挙げます。
つーわけで飯食ってくる。
またねー


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空っぽの少女

舞台は準精霊たちの住む世界『隣界』へ移り、そこで和真は空っぽの少女エンプティと精霊・時崎狂三と出会う。
けれど再会した時崎狂三は彼を覚えていないらしく…



静まり返った街を歩くのは、やはり気味の悪いものだった。

『生きている』というのが感じられないのが薄気味悪い。

ここには準精霊なる者達が存在しているらしいが、こうも静かだとこの世界に彼1人しかいないような感覚に陥る。

他にも誰もいないのではないか、と。

(でもどーせ誰かいるに決まってる)

今はまだ会えていないだけだ。

一応時崎狂三に加え、少なくとも10の領域の支配者(ドミニオン)がいるということなので、最低限10人の準精霊(と1人の精霊)がここにいるのは確定事項と言って良い。

どこに居るのかまでは分かっていないけれども。

「ん?アレは…?」

ふと彼が視界に認めたのは白い少女だった。

白い髪に白い装い、綺麗を通り越して不気味なほどに白い肌。

全てが純白。

まるで元々あった彼女の色彩を全て奪い去り、空っぽに、真っ白にしてしまったようだ。

そんな彼女が唯一色を持つのは赤い瞳。

それが彼女が彼女である証なのかもしれない、和真はそう感じた。

「ってそうじゃない!」

少女に思わず見入ってしまったが、そうではない。

初めて人(恐らく人間ではなく準精霊の類だろうが)を見つけたのだ。

「おーい!」

声をかけてみるものの、どうやら彼女には聞こえていなかったようで、近くの建物へと入っていってしまった。

「なんだよ…ったく追いかけろってか」

仕方なく彼女を追ってその建物へ入るが、彼女がどこへ行ったのか皆目見当が付かない。

しかしこんな何もないようなフロアで何かを漁ったりするのもおかしいだろうし、となれば彼女が向かったのは上か。

大方屋上であろう。

(あー全く…)

階段を一気に駆け上がり、屋上までやってきたところで、彼はこの街で2人目、そして彼が探すべき人物を見つけた。

「時崎…狂三…」

最悪の精霊はそこにいた。

古めかしい短銃を片手に、先ほどの白い少女と向かい合っている。

鮮やかな真紅の右眼、時計の刻まれた黄色の左眼。

妖しくも美しい黒と紅の血のようなドレス。

和真が知っている彼女の姿であった。

「時崎…」

でもここからどんな風に言葉を続ければいいのかわからない。

五河士道は元気か、天宮市は今どうなっているのか。

聞きたい事が山ほど溢れてくる。

「生きていたんだな」

最初に口をついて出たのはそれだった。

「どちら様でして?」

「えっ?」

「は?」

先に疑問系を投げたのは白い少女、続いて和真。

どうやら白い少女は和真が来たことを気付かなかったらしい。

「わたくしの名前を知っているようですけれど…わたくしは知らないですわよ」

「何を…言ってるんだ?覚えてないのか?」

「覚えてませんわね。というか名乗りもせずに誰ですの?」

「八坂。八坂和真だ」

「そうですの」

「えっ?!えっ?お2人知り合いなんですか?」

「そうだ」「違いますわ」

「なんだよ」

「そちらこそなんですの?もう彼女といい、貴方といい…」

やや蚊帳の外になり気味の白い少女は、おずおずと口を開いた。

「あの〜質問いいですか?」

どっちに問いかけるべきなのか困った顔をしつつ、彼女は続けた。

「ここが何処でわたし誰でなんでここに誰もいないのかって知りたいんですけど」

「質問多すぎないか」

「聞くのは一度に1つにしてくださいませんこと?」

というかこの質問はどちらに向けているものなのだろうか。

和真か時崎狂三か…まあ時崎狂三に向けているものだとは思うが。

とはいえ知らぬ存ぜぬと言われたところで、彼女の性格を全く知らない和真ではない。

「あー俺が…説明しようか?」

「できますの?」

「まあ一応は。そっちは何か用事があるんだろ?」

「よくお分かりですこと」

面倒なことは好まないのが時崎狂三、そう彼は認識している。

最も白い少女の方は和真に対して半信半疑そうではあるが。

丁度その時だった。

新たにもう1人少女が姿を見せた。

「うっわ…なんだあの服装」

その少女が空を飛んでいるということよりも、ツインテールがとんがっているという事よりも、着ている服装が際どいということの方が、彼にとっては重要だった。

そのせいで、まだ準精霊らしき者はいるという情報は後から彼の中に入ってきた。

「来ましたわね」

「アンタね、アタシを呼び出したのは」

「ええ。そうですわ」

まるでその少女が来ることがわかっていたようだ。

知らないところで待ち合わせでもしていたのだろうか。

「何が始まるんですか?」

「第三次大戦…じゃなくて、殺し合いだ」

彼女に代わって和真が答える。

ツインテールの少女が時崎狂三を空へと招き、戦いの火蓋が切って落とされた。

「分かるんですか?」

「俺が知る時崎狂三はそういうヤツなのさ」

例え今の彼女が和真を知らないとしても、和真は時崎狂三という少女を知っている。

怖いほどに彼女に殺戮と血がよく似合うということも。

「…っとそっちの質問に答えるんだったか。その、名前…名前ないんだっけ?」

「ないですね。全くこれっぽっちも」

「じゃあエンプティでどうよ?空っぽってことで」

「雑すぎません?」

「そのうち良い名前が付くさ。あとアレか、ここがどこかっていうのとなんで誰もいないのか、だっけか」

彼から聞いたのを丸パクリするようで気は進まないのだが…和真は隣界について掻い摘んで説明をすることにした。

 

「正直不安なところもあるけどこんなとこで良いか?」

「まあ、はい」

「時崎には当然まだ言ってないんだけど、俺もここに来てあんまり経ってない。そこまで詳しくはないんだ」

1日と経ってないとは口が裂けても言えないし、言ったら信頼されなくなってしまうだろう。

あまり経っていないといえば嘘ではない。

望んで来たわけではなく、迷い込んでしまったというのが正しい気はするが、細かい事は気にしない。

「じゃあなんでここには人がいないんですか?」

「それは…なんでだろうな。俺にも分からない」

中空を見上げると、どうやら勝負はついたらしく、ツインテールの少女が落ちていき、黒と紅の少女が降りてきたところであった。

「さっきの人は…」

「死にましたわ」

目をパチクリさせて言葉の意味を理解しようとするエンプティ。

こういうあたり時崎狂三はドライなのである。他人が死んでも一切の動揺を見せない。

それが例え自分の手を汚したものであっても。

「あら、怖いのですか?」

エンプティは彼女に恐怖したのだろう。殺す事に躊躇を覚えない者は、ただの殺し屋だ。

「でも、今あなたに立ち去られたらわたし滅茶苦茶困るので。彼だけだと頼りなさそうですし!今しばらくお付き合い願います!」

「おいコラ失礼だな」

とはいえ和真としても空っぽの少女を連れて歩くのは気が進まない。

保護者として時崎狂三がいた方が都合は良いだろう。

「…分かりましたわ。良いでしょう。使いでがありそうですしね」

「よろしくお願いします!」

やけに返事は元気なエンプティであった。

 

 




何が外出自粛だよ面倒くせえんだよ大学にも入れねえ!
つーわけで時系列的にはデート・ア・バレット1巻の最初のあたりですね。
できるだけ原作小説に沿って書くつもりです。
ウルトラマンでも何か書きたいんだけどねェ…
これ前にも言ったな。
ティガで1つ書いたことはあるんだがなぁ…アレ原作エヴァで書いたから難しいんだわな。
ま、次の話は今日か明日には挙げられると思うよ。
またねー


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キル・ステージ

先の建物を離れ、和真とエンプティ、そして時崎狂三は『どこか』を目指して歩いていた。

どこに向かっているのか分からないのは、2人が時崎狂三についていく形を取っているからであり、それ故に目的地を知らない和真とエンプティは半ば彼女のお荷物でもあった。

とはいえ、先程は時崎狂三に対して恐怖の表情を見せたエンプティだったが、今はしっかりと彼女の手を握っている。

その姿はさながら親に見捨てられたくない子供のようだ。

「あの、この街にはなんで人がいないんですか?」

和真にも投げた質問を、エンプティは時崎狂三にも投げかける。

「ここはただの舞台、ステージですから。居なくて当然です」

「舞台?こんな街1つ使って歌ったり踊ったりするのか?」

誘宵美九など比べ物にならないレベルではないか。

規模が違いすぎる。

「ええ、わたくし以外の誰かが歌いますわねぇ。喩えるなら…絶望の悲鳴と苦痛の絶叫のアンサンブルを」

「あー…」

「??」

和真は意味を理解したが、エンプティはいまいち飲み込めていないようだった。

「あの…」

「忘れなさい」

「絶望の悲鳴とは一体…なんでもありません!忘れます忘れます!」

理解されずに恥ずかしい事を言ってしまったと気付いた狂三に短銃を突き付けられ、エンプティは必死。

「まぁ落ち着け。銃を突きつけられちゃ、ビビって話にもならんだろ」

「…そうですわね」

下手すれば撃ちかねない勢いだったので、和真は彼女を宥め、3人は再び歩き出した。

 

「アレですわ」

少々歩いた所で、時崎狂三はその建物を指差した。

周囲にビルが立ち並ぶ中、一際目立つ建物がある。尖塔か、ピラミッドの類に見えなくはないが、とにかく異様な建物だった。

「わたくしの目的は、あの校舎です」

「学校…なのか?」

「学校?!マジですか」

「えらくマジですわね」

日本の学校とは明らかに異なる外見をしており、どこぞの魔法学校の1つと言っても違和感はないだろう。

「じゃあつまり学校に通うわけですね。学校生活、いいですね。何も考えないで勉強すればそれでいい感じですか!」

「まぁ、今はそう思ってくださると助かりますわ」

絶対に違うと和真は分かっていたが、敢えて彼は言うのを避けた。

エンプティが彼女のやる事を知ったら悲しむだろうから。

(何があるかはまだ分からないが…血を見るのだけは確かだな)

その姿で彼女が通った後に、血が無かった事が無い。

そしてニヤリと浮かべた笑みを、彼は見逃さなかった。

 

時崎狂三に続くようにエンプティと和真は校舎の中へ入った。

感想を抱くのが非常に難しいくらい、これといったものを見つけることができない。

何かがあれば感想があるわけだが、そもそもがない。

するとふと立ち止まり、時崎狂三は確認するようにエンプティに言った。

「気紛れで連れてきましたけれど。エンプティ、ここから先、あなたには荷が重すぎますわよ?」

「…そもそもここに何があるのか知らないんですけど」

何も知らぬエンプティはまだここに恐怖を認めていない。

けれどここの建物が何のために創られ、何のために時崎狂三がここに来ているのか、最終的な目的は知らずとも彼にはそれが理解できる。

(殺すのか…)

誰かは分からない。何人死ぬのかも。

けれど純粋無垢で空っぽな少女に再び血を見させるのは、彼としては抵抗があった。

止めた方が良い気がしたが、時崎狂三は続けた。

「痛いのはお嫌いかしら?」

「それは、まあ」

「怖いのもお嫌いかしら」

「それはもう」

「戦うことは…お好きかしら?」

「え?」

よく分からないと言うふうな反応をするエンプティ。

至極当然の反応であろう。

「エンプティ、エンプティさん。これからわたくしはね、準精霊を殺すんですの。可愛らしい女の子の形をした、準精霊たちを殺しにいくんですよ?」

「なんっ…?!」

これにはエンプティだけでなく、和真も驚きを隠せなかった。

準精霊はドミニオンだけではないということ。

更に彼女はその準精霊たちを殺戮しにいくということ。

やはり準精霊も精霊と同じ、女の子の姿をしているということ。

(つまり…この隣界には準精霊ってのはかなり居るってことか?)

複数形でいうのだからそれなりにはいるはずだ。

学校ということもあるし、授業のような事でもしているのであろうか。

まあさっき彼女が言った感じだと、まともな授業というわけではなさそうだが。

とはいえ選ぶのはエンプティだ。和真ではない。

時崎狂三に問いを投げかけられているのは、彼女だからだ。

ここで悪夢と離別するか、悪夢について進むか。

それでもエンプティは、彼女と進む事を選択した。




どうも最新話です。
なんか自己紹介みたいですけど、ま、いいでしょう。
進み具合遅いかもしれないですが…そこはマジですみません。
色々とやる事があったりしまして。
小説書くだけの生活っつーわけでもありませんからね。
まあまあそれは置いといて。
コロナウイルス、マジでなぜ流行するかな。
秋葉原行けないじゃないか!
コロナ…てめぇなんか怖くねえ!野郎オブクラッシャー!
と言いたいとこですけども、流石に感染したくはないですので。
昼食以外は外に出てないです。
大学5月かららしいしさぁ…早く収まってくれよコロナ。
ネイバスター光線でなんとかできたら苦労はしないけどさ。
あれコロナモードだしコロナウイルスなんとかならんかな。
すいませんホント急にウルトラマンコスモスの話してしまって。
何言ってんだコイツですよねそうですよね。
じゃ、次の話は明日かな?
たぶん明日にでも挙げられると思うんで、じゃあまたねー


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10人の少女達

どうやらこの隣界という場所は、薄々感じてはいたが、現実世界とは構成自体が異なっているようだった。

明るさはあっても太陽のような光源があるわけではないようで、時崎狂三が言うには太陽は『大きすぎる』のだという。

宇宙ステーションか何か、あるいは小惑星あたりの位置付けなのだろうか。

「細かい説明は後回しにしましょうか。できるならば、ですけれど」

「!」

「わぁ…」

そこは教室だった。やや薄汚れた部分は見受けられるが、和真も知っている日本の教室。

黒板にはチョークでだろう、乱雑に文字が書かれている。

そして教室の椅子にはエンプティや時崎狂三と同年代と思しき『少女』達が座っていた。

恐らく時崎狂三が言ったのはこの少女達の事なのだ。

皆それぞれに服装は異なり、制服らしき者もいれば私服の者もいる。

「良かったぁ…やっぱり生きてる人がいたんですね」

先ほど時崎狂三から準精霊を殺しに行くと言われておきながら、エンプティはだいぶ呑気なものである。

肝が座っていると捉えるべきか、半ば浮かれているのか、エンプティには分からないようだ。

この空間が敵意、悪意、殺意に満ち溢れているということが。

(下手すりゃこっちを殺しかねない勢いだぜ)

各々の武器もしっかりと手にしているあたり、本当に下手をすれば洒落にならなそうだった。

教壇には誰が置いたのか知らないが、小さな子供くらいの人形が2体腰掛けていた。

栗色の長髪に赤い着物の少女のような人形と、金色の短髪の少年のような人形。

本来なら綺麗や可愛らしいとかの言葉が当てはまるのかもしれないが、和真には何故かそれらが酷く歪で気持ち悪いものに見えた。

すると着物の人形が両手をぱたぱたと振ったかと思うと、教壇を飛び降りて近づいて来た。

自分の力で、誰かに操られるでもなく。

「人形って動きました…っけ…?」

「いや動かないだろ。普通は」

「ええ、普通は動きませんわね」

人のように動く着物の人形は、鈴を転がすような声で問いかけた。

「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

人形の口が普通に動いている。

どこかから録音した声を流しているでもなく、当たり前のように喋っているのである。

もう深く考えない方が良いのかもしれない。

「新たにエントリーした、時崎狂三ですわ」

人形の動きが止まる。

「招待状をお持ちでなければ、このゲームに参加はできません」

「あらあらあら、何という偶然でしょう。わたくし、招待状を拾ったばかりですの」

時崎狂三の放ったその言葉に、教室にいた10人の少女から剃刀のような視線が彼女へ向けられた。

(招待状を拾った…そういうことか)

先刻殺したツインテールの少女の姿が脳裏をよぎる。

彼女が本来ここに来るべきだったのを、時崎狂三は殺してその権利を奪って来たというわけである。

(結構なやり方してんだな、時崎)

人形は渋々といった風で首を縦に振った。

「…承りました。そちら2人は?」

時崎狂三は笑顔で答える。

「彼女は囮、彼は奴隷ですわ。どちらもこちらに着いたばかりのようですし、折角なら使わない手はありませんので」

「そうです、わたしは狂三さんの囮…囮?!囮ですか!?」

「デコイの方が良かったかしら?」

「意味同じでしょう!」

「じゃあ何で俺が奴隷なんだ?囮2人目にすればすっきりするのに」

「肉体労働ならできるでしょう?珍しい男性の準精霊なのですし」

「そういう?」

奴隷扱いされたのは非常に気に食わない(囮2人目というのもアレだが)事だが、和真を準精霊だと誤解してくれたのはこちらにとっても非常に好都合であった。

和真の服装は明らかに私服だが、ここを見る限り準精霊といえど霊装は常時纏わず、何もなければ普通の服で過ごしている。

彼もそういう類だと認識されたのだろう。ただ勘づかれるのも時間の問題といえるが。

「確かに、霊結晶(セフィラ)の力は彼女は砂利のようにちっぽけですし、彼に至っては無に等しいです。わかりました、囮及び奴隷としての扱いを認めましょう」

そう赤い着物の人形が応じ、

「感謝いたしますわ」

時崎狂三は慇懃に礼の言葉を述べた。

そして教壇に少年の人形が立ち、ぱん、と手を叩いた。

続けて2、3度叩く。

「皆様、これにて今回の参加者が規定に達しました。エントリーを締め切らせていただきます」

教壇に戻り、着物の人形が告げる。

「申し遅れましたが、わたしの名前は朱小町。ゲームの審判を務めさせていただきます」

「同じく、審判を務めることになるリュコスという。我ら2人の言葉は即ち、“人形遣い(ドールマスター)”のお言葉である」

“人形遣い(ドールマスター)”という言葉に全員が複雑な反応を示す。

恐怖、不安、怯え、闘志、憎悪…いくつもの感情が教室の中に入り乱れた。

「それでは順番に名前を呼ぶ。手を挙げ、自己紹介を始めよ。なお、武器と霊装の虚偽申請はこちらで指摘する」

リュコスが朱小町に促し、朱小町はリストらしきものを手に、ゆっくりと教室を巡って呼びかけ始めた。

 

 

 

 




なかなかバトル始まらなくてすいません。
できるだけ早く始めたいところなんですがね。
次の話は今日挙げられるかな…今日か明日か。
がんばります。
じゃあまたねー


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殺し合いの時間

かくして各々が自己紹介を始めたわけだが、自分の名前と武器と霊装だけ言うのかと思いきや、始まってみるとそれが間違いだったと知ることになった。

正直聞いていたところでエンプティよりかは理解できていると思うが、彼とて準精霊の全てを知っているわけではないため、理解できない部分もあるにはあった。

とはいえ聞く限りでは彼の知る精霊と違い、準精霊特有の識別方法のようなものも存在しているようだった。

纏めると…

①準精霊、精霊には1〜10までの霊属なるものがあり、彼女達は必ずそのどれかに属している(時崎狂三は第三霊属だった)。

②精霊が扱うのが天使であるのに対し、準精霊は無銘天使というものを扱う(能力は大差ないのかもしれないが)。

③精霊の霊装が神威霊装なのに対し、準精霊の霊装は神威ではなく、無銘天使=武器を反映した名前(刀なら特攻、苦無なら隠形)になる。

といった具合である。

これから更に数が増えたら、覚える方が大変になってしまいかねない情報量である。

まあ覚えたとしても、ここにいる少女達は最終的には死んでしまうのだろうが。

時崎狂三という予想していなかった悪夢がやってきたのだから。

「あ、あの。わたしの自己紹介とかは…?」

ひと通りの自己紹介が終わったところで、エンプティがおずおずと手を挙げた。

「不要である」

うんざりそうに切り捨てたのはリュコス。ちびっ子に見えて大人びた口調をしているので、やけにイメージが強い。

「な、なんか仲間はずれっていうのはダメな気がするんですよわたしは!」

「はいはい。えーと、名前は?」

「エンプティ!です!これはそう付けて貰ったので」

「霊装(ドレス)は…なさそうですね」

「霊装(ドレス)というものがよく分からないので、たぶんありませんね!」

ここまでなるといっそ清々しいくらいの性格をしている。

リュコスが『お前は良いのか?』という風にこちらを見る。

準精霊と誤解されている以上こちらも一応答えた方が良いのだろうが、天使はおろか無銘天使すらなく、霊装など欠片もない彼はどう答えるべきか悩んだ挙げ句、エンプティに似た事を言うことにした。

リュコスにはバレるかもしれないが、それも覚悟の上だ。

「第一霊属、八坂和真。無銘天使、霊装はよく分かっていません」

「…よろしい」

なんとか一応乗り切れたようだった。

彼もまだ日が浅く、ここではあまり物事を知らないエンプティと同じような扱いをされているおかげで、嘘でもなんとか誤魔化せた。

最も支配者かこの人形にバレるのは時間の問題だろうが。

そしてリュコスと朱小町は教壇にて交互に宣言を始めた。

「ここにいる10人は殺し合うために集まった」

「これは戦争だ」

「これは殺し合いです」

「最後に立つべき者を決めるために」

「皆さんで精一杯殺し合ってください」

リュコスは鞄の中から恭しく宝石のようなものを取り出し、皆に見せた。大きさは野球のボール程度だが、何か欠片をくっつけあって1つにしたように見える。

「勝ち残った者には、第十領域(マルクト)の支配者である“人形遣い(ドールマスター)”より、この霊結晶(セフィラ)が贈与される」

「この霊結晶は準精霊100人分。つまりこれを得た者は100人分の力が与えられる事になります」

「100人分か…」

誰かが呟く。

圧倒的なまでの闘志が部屋を満たしていき、審判がいなければ今にも殺し合いが始まるのではないかというくらいだ。

「この力を手に入れたいのであれば、強者であることを吼え立てよ。それがあの御方の伝言である」

「こんなものを一時の戯れのために放り出すなんて…」

誰かが呟くが、朱小町はそれを首を振って否定。

「あの御方にとっては戯れではありません。本気です。この霊結晶(セフィラ)を手にする事で、ようやくあの御方と勝利者は対等な立場で戦う事ができる。そうしなければ、あの御方は生きていけない」

「なるほど」

戦わなければ生き残れないとはよく言ったものである。つまり殺し合いをしなければ、生き残れないと。

「皆、異存はないのだな。拒むのであれば、黙って今日から出て行けばよろしい」

「ではこれより5分に1人ずつ教室から出て貰います。誰が出て行くかはくじ引きで」

「ふーん。なら、できるだけ最初に出て行った方がいいんだね。待ち伏せして片っ端から仕掛ければいいんだから」

金髪の少女(名はパニエだったろうか)の言葉に、皆の視線が時崎狂三へと向く。

刀を持った少女だけは違ったが。

「それならできるだけ前を狙いたいですわね。わたくし、後になればなるほど狙われてしまいそうですわ」

「はい!はい!はい!わたしたちは前にして欲しいです!」

「くじ引きだって言ったろ。ドジるんじゃないぞ時崎」

「わたくしを誰だと思ってまして?精霊、時崎狂三ですわよ?

かくしてくじ引きが始まったのだが。

 




ようやく最新話書けたぁ…
誤字脱字あったら後で修正するけどまぁ…
なんか狂三がキャラ崩壊しそうで怖いんだよな。
気をつけるけどさ。
今日か明日に次の話挙げられると思いますんで、じゃ、またねー


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悪運ガール

くじ引きを引いた結果、時崎狂三は綺麗に最後となっていた。

最後の方ではなく一番最後。

当然和真とエンプティも彼女と同じ扱いになるわけで、特にエンプティは気にしているらしかった。

「最後だなんて!狂三さん、くじ運どうなってるんですか!もう今日は厄日ですよ!」

「うるさいですわね。ま、わたくしにとってはいつでも良いといえば良いのですけれど」

「わたしの命、ちゃんと考慮してます?」

「まさか」

「この和真さんは?」

「死ななければ良いですわ」

「わたしよりマシじゃないですかあなた!」

「どこがだよ、奴隷扱いなんだぞ。奴隷解放宣言しようぜ、リンカーン呼べって」

奴隷扱い云々は置いておいても、エンプティが死ぬのだけはどうにかして回避する必要がある気がした。

彼女は空っぽで、何も無い、何も持たない少女だが、今の彼には彼女は守るべき存在であるように思えたのだ。

なぜかは分からないが、死なれたら困るような。

「ならあなた、わたくしの役に立ってみせる気はないかしら?」

「それやったら生き残れます?」

「前向きに善処くらいは致します」

時崎狂三の提案に縋り付くように、エンプティは何をすれば良いかと尋ねた。

「簡単です。皆さんが抜けて行く前に話を聞いてくるだけです。何を願い、何を以って戦うのか。幸いあなたが無力であることは知られていますから…心を開いてくれるかもしれません」

「やってみます」

それが命の保証というには程遠くとも、彼女はどうにか生き残らなければならない。死ぬのは容易いことだが、ここで死ぬのはエンプティとしても嫌な事なのだろう。

(ここから出りゃいつ始まるのか分からないっつーのに)

エンプティが話を聞き、1人、また1人…と教室から少女達は出て、戦場へと赴いて行く。

五臓六腑を撒き散らして死ぬか、華々しく綺麗に散るか。

少なくとも血生臭そうなここで名誉の戦死を遂げるのは難しそうではあったが、どのみち彼女達はいずれ死に、最後に1人だけが残る。

「生きて帰れるといいんだけどな」

「保証はできませんけれど」

「それで実は提案があるんだけどさ…」

「何ですの?」

やがて時崎狂三の前の順番の少女が教室を後にし、残されたのは3人だけとなった。

「時間です、それでは時崎狂三様」

立ち上がって教室から出る寸前、狂三は残された和真とエンプティに声をかけた。

「行きますわよ、目撃者さん達」

「あ、うん…分かった、行くよ」

「ああ」

和真とエンプティは時崎狂三についていくような形で、教室を後にした。

 

誰もいなくなった教室で2人の人形、リュコスと朱小町は再度宣言する。

「出席9名、欠席1名、代理1名」

「汝ら準精霊の名を冠する者達よ。無銘天使と共に敵を屠る殺戮装置よ」

「渇望と希望、絶望と願望を身に纏い、踊り狂え」

「血と魂を全て差し出せ。神座に至る道を作れ」

「さあ、私たちの戦争(デート)を始めましょう」

応える者はない。

静かな空間に、手を叩く音だけが響く。

だがそれは明確な殺し合いの始まりを意味していた。

 

教室を出た途端、エンプティは怯えたのか時崎狂三の背中にへばりついた。

「何ですの」

「いや、だって、もう始まってるんですよね?」

「ええ」

「奇襲を仕掛けられる心配とかは?」

「ストップ」

和真は2人に声をかけた。殺気が強い。

「時崎!エンプティを連れて早く!」

エンプティを掴み、廊下の窓ガラスをぶち破って時崎狂三は外へと身を躍らせる。

最も言われてなくても彼女はそうしたろう。理由は明確。3人のいた場所が、どろりと融解したからである。

「チッ…厄介だな」

遅れて飛び出しつつ、彼はサブマシンガンを取り出した。

丁度ヤンキーのような少女が槍を手に、2人を攻撃しているところだった。先に出た準精霊達は、唯一の精霊である時崎狂三の戦いを見るべく、小競り合いをせずにこちらを見ている。

「せっかちですわねぇ」

「あと1000年くらい待って欲しかったです!」

(そりゃすぐだな)

よく見るとどうにもヤンキー少女の扱う槍はただの槍ではなく、毒か何かが放出される仕組みらしく、恐らく廊下を融解させたのもそれであろう。

「舐めるな!」

彼女の槍から放出された液体は落下せず、曲がりくねって空中の2人を追尾して行く。

「最初はこっちが相手だ!名前忘れたけどヤンキーっぽいヤツ!」

「乃木だ!覚えとけ!」

叫んだ乃木は声が聞こえた方を見て、驚いた。

先ほど飛び出たのは時崎狂三とエンプティの2人のみで、もう1人はどこに行ったのかと思っていた。

殺れたかと思い込んでいたが、思い込みだったようであった。

生意気にも生きており、武器まで手にしている。

「行くぞ!ターボタァァァイム!」

叫び、和真のサブマシンガンが火を噴いた。

当然乃木は回避行動を取るが、意識は時崎狂三から和真へと移り、毒の軌道も彼の方へと向かう。

「って、おいおいこいつは洒落にならんてば!」

回避しつつも和真はサブマシンガンの引き金を引くのを止めない。

彼女に効いているかいないかで言えば、効いていない。

勿論和真もそんな事は承知している。

彼の役目はそこではない。

「時崎!」

「分かっておりましてよ」

乃木が振り返るが一足遅かった。

彼女の古式短銃の銃口が乃木に向けられており、そして引き金が引かれた。

 




最新話ですね。
クオリティはいつも通り低いですが、できるだけセリフに色々仕込んでみました。
次の話は明日か、1000年後か。
ウルトラマンで何か書いてみたいんで、少し休むかもしれません。
この流れだと書き続けたいけどな。
ではまたねー


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ファースト・ブラッド

時崎狂三の放った銃弾は見事に乃木を直撃し、彼女は墜ちていく。

血が溢れ、霊装も崩れて。

時崎狂三に抱えられたエンプティが助けようと手を伸ばすが、墜ちる彼女は驚いた表情を浮かべつつも、その手を握らなかった。

とはいえ時崎狂三とエンプティも落下し、和真も2人を追っていく。

(トドメを刺すのか?)

少女とはいえ彼女は準精霊。撃たれたとて並大抵のことでは死にはしないだろう。

地面に着くと同時、エンプティは乃木に駆け寄る。

「あ、あの大丈夫ですか?」

「…無事に見えるかよ、くそ…」

「これで、わたくしが精霊だと認めてくれまして?」

どうやら乃木は時崎狂三を精霊だとは認めていなかったらしい。そんな話は全然知らなかったが…エンプティが話を聞きにいった時にでも話したのだろうか。

「やなこった」

「そう」

時崎狂三は笑顔で短銃を構えるが、乃木は笑みを浮かべてその銃口を睨む。

「さよなら、乃木さん」

「けっ、アバズレが」

最後の最後で力を振り絞って時崎狂三を罵った乃木だったが、しかし時崎狂三が再度放った銃弾によってその霊結晶(セフィラ)を打ち砕かれることとなった。

「え…?」

驚愕するエンプティ。どうやら状況が飲み込めていないようだ。撃つとは思っていなかったのかもしれない。

これはあくまでゲーム。命までは取らないものなのだと。

「何で、撃ったんですか?」

「バカな事を問わないでください。生きていたからに決まっているじゃありませんの」

「でも…」

「一時的でも戦闘不能に陥ったら敗北だと?その再起不能の敗北を誰が認めるのです?それを認めさせるには、殺すしかありません。誰も彼もが死に絶えた先に、勝者だけが残るのです」

「それは…」

そうなのだ。他者を蹴落とし、その血と肉でもって勝者が決められる。現実ではそれが間違っていたとしても、この世界ではそれがルールなのである。

恐らくエンプティもそれを理解したのだろうが。

「それでも…それでも、間違っているんです。間違っていなきゃ、ダメなんです」

「戯れ言、ですわね。そんな甘っちょろい見方で生きていけたなんて、さぞや幸福だったのかしら」

「違います!違うと…思います」

「おいおい、もう争うなって。今ここで争っても何にもならないだろ。ここじゃいつ狙われるか分かったもんじゃないんだぞ?」

エンプティはやはり誰かが死ぬのを見るのが嫌なのだ。

相手が自分の命を狙ってきた人物であったとしても。確かにそれは甘すぎる考え方なのかもしれない。時崎狂三にしてみれば人の死は見慣れすぎて、もう生と死の感覚は麻痺しているのだろう。

(これが一般人と殺し屋の違いってヤツか)

「…とっと離れますわよ。ここは空気が悪いですわ」

時崎狂三はそう告げ、3人はその場を後にした。エンプティは乃木が倒れていた場所を振り返ったが、そこには既に何もなく、一陣の風が吹き抜けるだけだった。

生きてさえいれば良い。だが死ねば無価値、この世界そのものから排除されてしまう。極端だがそれがこのゲーム、さらに言えばこの世界で唯一のルールでもある。

(エンプティが逃げ出したりしないと良いんだけどな)

 

気付けば陽が傾き、夕方になっていた。

乃木の後は大した戦闘もなく、包帯を全身ぐるぐる巻きにした怪しげな少女(?)とも小競り合い程度で済んでいた。

小競り合いといっても向こうが襲いかかってきたのを、和真の銃弾(機銃弾200発とチェーンガンをフルパック)で追い返した程度で、撃破までは至っていない。

とはいえ先程は色々言っていたエンプティもどうやら順応したらしく、だいぶのんびりしている。

(下手すりゃエンプティの方もメンタルとかやばいんじゃ…)

「1日目だと、こんなものでしょう」

「え?明日もやるんですか?」

「明日も、明後日も。誰か1人が勝ち残るまで」

そう呟いた時崎狂三の顔に、僅かに暗い情念が感じられた。

そして街にチャイムの音が鳴り響いた。

ゲームの一時的な終了を知らせるものだと時崎狂三は言う。

「協定のようなものですわね。夜討ちだけは禁止されているのです」

「へえ。破ったらどうなるんだ?」

「当然ペナルティですわ。未遂なら警告、仕留めた場合は、主催者によって粛清されることになっています」

「でもそれって意味あるんですか?勝てばカングンとかいうじゃないですか」

(カングンて…漢字使えって)

「そうならない為に人形達が見張っています。いくら夜襲を仕掛けたところで、彼女には勝てないでしょうからね」

「彼女?」

「いずれ分かりますわ」

時崎狂三はくすくすと笑うが、エンプティは首をかしげる。

「えっと、すいません。整理させてください」

「どうぞどうぞ」

「狂三さんは精霊で、他の準精霊さんより強いんですよね?」

「それはもう」

「でもこのゲームの管理をしているのは支配者(ドミニオン)っていう準精霊なわけですよね?」

「ええ」

「準精霊さんの作ったルールに精霊が従うんですか?何か、うーん、おかしくないですか?他の準精霊さんが従うのは分かるんですけど…」

「気紛れ、ですわ。ルールはキチンと守らなくては面白くありませんもの」

そのルールの穴を突いているのが和真なわけだが…正直夜討ちのペナルティよりも、先にこちらが粛清をされかねない。

他の準精霊か、人形か、はたまたこのゲームマスターたる支配者(ドミニオン)か。誰が彼を狙うか分かったものではない。

「あなたも気紛れで生かされていることを、お忘れなきよう」

時崎狂三の言葉にエンプティは何度も首を縦に振る。

それは悪魔の囁きか。

気紛れで生かされているということは、気紛れで殺されることもあり得るということである。

(つくづくナイトメアって名前が似合うヤツだなぁ)

 




最新話ですね。
明日か、1000年後かと言ったな。あれは嘘だ。
嘘でもないけど。今日挙げたわけだし。
つーかタイトルもタイトルだな。
もう乱暴じゃなくてランボーだよ。
そろそろ『デート・ア・バレット』じゃなくて『デート・ア・コマンドー』なんて名前付けてもいいんじゃないか?
無理か。無理だな。すいません、流石に無茶でしたね。
ウルトラマンで何か書きたいっつって、まだキャラすら考えてないんですけどね。
ま、次の話もできるだけ早く挙げるつもりですので。
じゃ、またねー


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束の間の休息、そして次の日へ

少々歩き、ある一軒家の前で時崎狂三は足を止めた。

「…ここでいいかしら」

「え?ここですか?」

「どう見ても普通の家だけどな」

何か特別な物を隠しているとか、そういうアレだろうかと思っていると、時崎狂三はあっさりとドアを開けて中に入り込んだ。

「ちょ、ちょっと狂三さん?くーるーみーさーん?他人の家ですよね?」

「いや人はいないってば。どうせ家も形だけだろ」

続くように中に入った先には、何もなかった。いや、何もない空間が存在していた。

とりあえず特別な物は少なくとも無さそうであった。

「そう。家の中なんて、ここでは存在しなくても良い。外側さえあれば街として成立するんですわ。住んでる人がそもそもいないのですから」

「ははー…なるほど」

「とはいえこれだと不便ですし。少々造った方がよろしいですわね」

彼女はそう言ってしゃがむと、白い空間に手を乗せた。

特に魔法陣的なものは出ないようだが、時崎狂三に何かを創造する能力があったろうか。

違和感を感じつつも、造り出された空間はなかなかのものだった。

色彩があり、各所にインテリアが置かれ、人が暮らすに相応しい。まぁ「てーい」という気の抜けた掛け声で造り出されたにしては、充分と言える。

「もう休みますわ」

「あ、はい。狂三さんお風呂とか、入りません?できれば一緒に」

ぱたぱた可愛らしく手を振るエンプティに、時崎狂三は露骨に顔をしかめる。

「結構です。入りたいなら好きになさい」

素っ気ない言葉に少々落胆した表情を見せるエンプティ。

「あ、はい。…おやすみなさい」

残されたエンプティと和真。

「覗かないでくださいね」

「誰が覗くか!はよ入れ!」

 

そうしてエンプティが1人優雅に風呂に入る頃、和真は家の屋根に上がっていた。

夜討ちはルール上ないというが、念の為見張りは必要かと思ったのである。いくら傷をつけようとも、命さえ取らなければ未遂扱いになる可能性があり、それを狙ってやってくる連中がいないとも限らない。

未遂が警告で済むというのもアレだが。

(けどまぁ準精霊も風呂入るんだな)

エンプティの風呂シーンを覗く気がないといえば嘘になるが、多少打ち解けているとはいえ、会ってまだ1日と経っていない少女の風呂を覗くのも紳士ではない。

まあ命が惜しいのでそもそも覗きはやらないが。

(星空か…久しぶりに見たかもな)

パッと見れば本物のように見えるが、もしかしたらこの星空は作りものかもしれない。

この世界自体、全て誰かが創り上げた箱庭の可能性だってある。

「さてと…」

そんなやや浮世離れした事を考えつつも、和真はアサルトライフルを取り出してマガジンを確認。弾は充分、グレネードランチャーも問題なし。

念には念を入れ、家の周りに防御線を築き、地雷も張り巡らしてある。

(何もなければいいけどな)

静かに夜は更けていく。

 

昨晩は特にこれといった襲撃もなく、平和に過ごすことができ、時崎狂三とエンプティもしっかり睡眠を取れただろう。

和真は一睡もしていないので睡眠不足ではあったが、それを言っては彼女達に変に心配をかけかねない。

心配をされるかどうかは別としてもだ。

(ん?なんか美味そうな香りが)

香りにつられて下りていくと、ダイニングテーブルに向かい合って時崎狂三とエンプティが座っていた。

良い感じの色合いに焼けたトーストとコーヒーが置かれており、これが今朝の朝食ということらしい。

「おはよ」

「おはようございます、和真さん。和真さんは何か欲しいものとかあります?」

「え、なんで?どっか行くのか?」

トーストをかじりながら問い返す。

「ショッピングモール行くらしいですよ」

「ショッピングモール?そんなものが?」

「ええ、ちゃんと店員もいますのよ」

「へえ…なんかよく分かんないけど行ってみるか。面白そうだしな」

「そういえばお金は…」

「この世界でお金なんて、鼻をかむ紙にもなりませんわ」

「「世紀末!」」

 

というわけで食事を終え、出発しようとして外に出ると、人形が立っていた。右は赤、左は青を基調としたゴスロリ衣装を着ており、人形のくせしてバイオリンやフルートを手にしている。

「こんにちは」「こんにちは」

人を真似たそれらしい声。

「はい、こんにちは」

「何ですの」

エンプティは律儀に返すが、時崎狂三は不機嫌そうに応じる。

人形は表情を変えずに淡々と告げた。

「昨日の戦闘において乃木あいあいが時崎狂三に、指宿パニエがシェリ・ムジーカに、佐賀繰唯が蒼に殺されましたよ」

当たり前のように人形はそう言う。

準精霊達の名前はあまり覚えていないため、名前を言われたところでどんな風貌だったかすら大して覚えていない。

覚える以前に殺されないようにしなければならないのだ。

「敢闘賞のメダルです」「どうぞどうぞ」

「…結構ですわ」

時崎狂三は人形を今にも蹴り飛ばしそうなほど苛立っている。

何がそうさせているのか分からないが。

「そうですか」「残念です」

「精霊の本当の力、今日こそは見せて貰えると」「とっても嬉しいです」

「…ええ、前哨戦も終わりましたしね」

「今日、狙われるのは確実なので」「覚悟してくださいね」

「そうですわね」

気付けば彼女の手には短銃が握られていた。

「何ですか」「この銃は」

「精霊故の気紛れです。次はもう少し、こちらを苛立たせない人形にしてくださいね。支配者(ドミニオン)さん」

避けようとしたが遅かったようだ。

彼女の放った銃弾が人形は砕かれ、醜くその屍を晒した。

「うう、朝から嫌なものを…」

エンプティは血が流れなくとも、こういうのは苦手意識が消えないらしかった。和真は特にこれといって感想も抱かない分、エンプティがどこか新鮮に感じられた。

「ところでコレ、怒られませんか?」

「怒られたところで、どうなるものでもありませんわ。わたくし、精霊ですもの。さあ行きましょう」

時崎狂三と和真は歩き出し、人形に南無南無と手を合わせてからエンプティが追いかけてくる。

(何事もなけりゃ良いけど…絶対襲われるよな)

もしかしたら変身する必要も出てくるかもしれないと思いながら、彼はショッピングモールへと歩いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 




最新話ですね。
続けて書きたいけど、ウルトラマンの方も書きたいし、でも悩んで結局こっちをまだ書いてるわけですけど。
今回はネタは1つかな?
ま、次の話は今日の午後か明日には挙げられるかと。
じゃ、またねー


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八坂ターミネート

特にこれといって奇襲を受けることはなく、問題なく3人はショッピングモールへと辿り着いていた。

道中エンプティが消えたり現れたりしている左手を気にしているようだったが、和真はどうしようもないことであり、こればかりはこちらの専門外のため、彼女自身にどうにかしてもらうしかないと考えることにしていた。

「なるほど、こりゃ中々よく出来た店員だな」

ショッピングモールの中は確かによく見かける吹き抜けのあるショッピングモールそのものだが、それぞれの店にいる店員は明らかにマネキンであった。

顔はあるが目も鼻もなく、耳と口は外側の形だけ。

服屋などで見本のような感じで服を着させられているアレである。

『イラッシャイマセ、ナンニナサイマスカ?』

「喋るのかよ…ホラーじゃん」

和真の感想を特に気にすることもなく、エンプティはそのマネキンに向かって話しかけた。

「あのー服が欲しいんですけど。お勧めとかあります?わたしほら、この通り真っ白なもので。なんかこう、もうちょっとバシッとイメージチェンジできる服をですね」

『イラッシャイマセ、ナンニナサイマスカ?』

「…これだけですか、喋れるの」

「マネキンだぜ?初めからンな期待するなよ…」

「そうかもしれないですけど、普通聞きません?」

「うーん、聞かないなぁ」

そしてじっとりとした目で時崎狂三を見るエンプティ。どうやらもっと人間のように喋れると思って話しかけたらしい。

「まあまあ、もうちょっとその愉快な一人芝居をお続けになってもよろしかったですのよ?」

「やらないですよ!」

そう言ってエンプティは近くの店に入っていったが、和真は付いて行かなかった。

(女モンの下着かよ…やれやれ)

時崎狂三もなんだかんだでその店に入っていってしまったため、和真は実質暇を持て余すこととなった。とはいえ何もしないで待っているわけにもいかない。

(銃でも置いてないかなあ)

長いこと補給をせずに旅を続けたのが災いしたのだろう、銃火器が結構不足してきているのである。館内マップらしきものは無さそうなので、自分の足で歩いて探すしかなさそうだったが、ふと近くにそれっぽい店があるのが目に付いた。

(アラモ…ガンショップ?」

どこかで聞いたことのある店名のような気がするが、まあ名前に関しては深い事を考えてはいけない気もした。

「じゃあ買い物(100%off)するとしますかね」

『イラッシャイマセ、ナンニナサイマスカ?』

単調に台本通りにしか喋ることができない大根野郎…もといマネキンは放っておき、店の中を見て行くと、なるほど結構な品揃えである。

まあ店員がアレなので、とりあえず使えそうな物を片っ端から取って行くことにした。

「可変式プラズマライフルは…まぁないよな」

鉄砲店がある時点で充分おかしいのに、プラズマライフルなど置いているわけもない。

ただ唯一の救いといえたのは、店の銃火器に手がつけられていなかったことだった。恐らくこの世界の準精霊は自身の霊装と無銘天使のみで戦う故、このような銃火器を使わないのだろう。

「ま、こんなもんでいっか」

5分ほどで和真は店の銃火器をほぼ全て買い込んでいた。無論タダなので調子に乗ったところはあるが、今後準精霊との戦いが激化する可能性も考えると、これでも足りない気はする。

少なくともこのゲームが終わるまで、仮面ライダーブレイドに変身するのは極力避けなければならないのだ。

(こんなデカいショッピングモールだ、襲撃はされるだろうな)

それが誰なのかは知る事はできない。残ったメンバーが全員で狙ってくることも考えられるが、それは最悪すぎてあまり考えたくは無いが。

 

和真が買い物を終わらせて、エンプティと時崎狂三の入っていった女性用下着店のところまで戻ってくると、丁度2人が出てきたところだった。

「そっちは…いや、いいや。女性用下着のことは知らないし。それよりこの後はどこか向かうのか?」

「まだ決めてないですけど…」

まだ決めてないと言いつつ、エンプティは歩き出すとこの店に入ろう、あの店に入ろうと言い出す。

3人集まれば姦しいなどとは言ったものだが、1人で充分3人分の仕事を果たしている気がする。

「もー、何なんですか狂三さん。和真さんも」

「ここには遊びに来た訳ではありませんの」

「じゃあ何しに来たんですか?」

「待ち伏せを受けるためですわ」

彼女は古式の短銃を手に宙を見、和真は機関銃を取り出して構える。

「何物騒なもの取り出してるんですか!?しまってくださいよ!」

「もう遅いぞ。早く隠れるんだ」

吹き抜けの上の方から落ちてくる人影を認め、和真は銃口を上に向け、狙いを外さずに引き金を引いた。

 

 




タイトルがデート・ア・ライブシリーズっぽくなりました。
というかそうしないとしっくり来ないかなーって。
まあ十香デッドエンド並みに物騒なタイトルになりましたけど。
鳶一デビルもそこそこ物騒かな。そうでもねえか。
そろそろウルトラマンで何か書こうっていって全然手ェ付けられてないから、そっちやろうかな。
でも第十領域(マルクト)の話はキリがよくなるまでやりたい感もあるんだけどなぁ…正直次の話はいつ挙げられるか分かんないですね。
じゃ、とりあえずまたねー


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スカイフォール

初戦で乃木あいあいと戦う前、和真は時崎狂三にある作戦を提案していた。

「あなた正気ですの?」

「失敬な。これでもルールには一応違反してない…はずだし、時崎の方にもメリットがある。やってみる価値はあるだろ?」

「まぁ、そうですわね…死んでも責任は取れませんけれど」

「ノープロブレム。これでも頑丈に出来てるんでね」

和真が提案した作戦の主目的は、時崎狂三の天使を出来るだけ使わせないことにあった。

確かに彼女の持つ天使は非常に強力で、時間と影を操ることができるが、その分自身の時間を削っていく。下手に敵に逃げられでもすれば、時間を無駄に浪費したことになってしまいかねない。

それにここには喰える人間がいないのだ。

その為に彼が相手の準精霊を出来るだけ消耗させ、そこで確実にとどめを刺そうというわけである。

ルール違反かと言われそうだが、彼が知りうる限り準精霊及び精霊のバトルゲームということくらいしか明確にはなっておらず、“準精霊でない者が実弾銃を準精霊に向けて撃つ”ことは禁止とはされていない。

まぁそれはかなりの屁理屈なのだろうけれど。

 

落ちてくる人影に向かって、和真は機関銃の引き金を引き続ける。向こうはこちらの銃撃はある程度予想していたようで、空中で機関銃の弾丸を避けていく。

「〈原初長弓(クロトス)〉【螺旋矢(スピラ)】!」

「時崎!下がれ!」

落ちてきた準精霊は弓型の天使の狙いを和真ではなく時崎狂三へと向ける。

「来ましたわね」

しかし彼女は動かない。自分がターゲットであると分かっているからこそ、敢えて動かないのか。

準精霊は驚愕の表情を浮かべながらも、その矢を放つ。螺旋を描いた矢はライフル弾のように時崎狂三へと迫るが、彼女は僅かに体を反らして回避。

「危ないだろ!」

首をすくめる時崎狂三。準精霊の方は空中でブレーキをかけ、作戦を変えたのか、連続して矢を射出してくる。

「きゃあああああああああ!!」

悲鳴を上げるエンプティにはとにかく逃げてくれることを期待し、和真は機関銃の残弾を全て準精霊に向けて撃ち放つ。

(…これ、向こうは当てる気はあんまりないのか?)

間を置かずに連射される矢は時崎狂三を狙ってはいるが、確実に当てるつもりもないらしい。

時崎狂三はハンガーラックを掴むと準精霊に向けて放り投げる。

空中の準精霊の視界が覆われ、矢の雨が止む。

「待て!撃ったら…」

和真の言葉を待たず、彼女は銃を1発撃った。

「イサミ!今よ!」

空中の準精霊が叫ぶ。やはり2人目が居たのだ。

攻撃を当てなかったのも時崎狂三をここから動けないようにするためで、自分ではなく2人目が本命。

視界を遮ったところでターゲットが銃を撃って仕舞えば、場所が割れてしまうが。

(ああ、そういうことか)

そして轟音と共に遠く五階から床をぶち抜きながら、刀を持った準精霊が姿を現す。

「〈堕天一箇神(いっぽんだたら)〉ァァァァァァァ!」

咆哮。少女の声だが、それは獣のようである。

シンプルイズベストな刀を以って、イサミと呼ばれた準精霊は弾丸の如く迫ってくるが。

「…って、いないよ?!」

「え…?」

驚く2人の準精霊。彼女達は時崎狂三の能力を知っていないらしい。仮に知っていたとして、対応できるかは別の話だが。

「忠告するなら…もう少し、手を組むという意味を重要視すべきでしたわね」

「う、あ、ああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」

振り向きざまに刀を振るうが、遅すぎた。

無慈悲な銃声。

イサミの霊結晶(セフィラ)へ弾丸が撃ち込まれる。

最早彼女は死を免れ得ないだろう。

「イサ、ミ…」

それでも死を目前にしながら、イサミは時崎狂三にしがみつく。

「射て…射てぇぇぇぇぇ!」

感動的と言うべきか、美しい友情というべきか。

弓を構え、準精霊は時崎狂三に狙いをつける。いくら彼女でも体を掴まれた状態で天使をもろに受ければ、ダメージは確実だ。

「〈原初長弓(クロトス)〉…」

「ぶっ飛べ!」

阻止せんと、グレネードランチャーを取り出して構えた時だった。

地面が揺れた。地震のようだが何かが違う。

準精霊達と時崎狂三は顔色を変えている。

「『隣界編成(コンパイル)』…こんな時に!」

どうやらまた知らないことが増えたようだった。




クオリティいつも通り低いよね。
つーわけで最新話いつになるか分かんないとか言っといて、あっさり投稿するあたりなんていうかね。
次こそはウルトラマンで何か書こう。次のウルトラマンはゼロの弟子らしいけど…見た目的にオーブとかフーマに近いし、O-50出身説あり得ると思ってる。
まあカラータイマーがZの形だからちょっと自信ないけどさ。
オーブもカラータイマーの形Oだし無くはないか。
てか全然変身しねえな和真!
次の話も明日あたりに挙げるかもしれないけど…
どうだろ。分かんないや。
とりあえず今日はここらで、またねー


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ニューアイデンティティー

凄まじい衝撃が5人を襲う。

床を破って漆黒の柱が吹き抜けにそびえ立ち、その柱から無数の棘が生え始めた。攻撃的で禍々しいが、それでいて何かを感じさせる。

「きゃあああああああああ?!」

見れば先の戦闘と、今の柱の誕生により崩落しかけたフロアからエンプティが滑り落ちていく。

相変わらずというか、見ていられない。

時崎狂三はイサミにつかまれて身動きが取れないが、なぜか彼女は空っぽの少女に手を伸ばす。

届くはずがないと互いに分かっていたはずなのに。

「エンプティ!掴まれ!」

主人公を気取ったか、愚かな行動だったかもしれないが。

和真はエンプティへと手を伸ばしたのだ。

純白の少女は赤い瞳で彼を見、そしてその白い手は和真の手を掴む事に成功した。

だが手を伸ばした時、1つだけ彼は失敗した。

(今空飛べないじゃん)

やはり愚行。2人は重力には抗えずに、黒い柱へと落ちていった。

 

***

(ここは、どこだ?)

ショッピングモールの床に落下するか、柱に突き刺さるオチかと思っていたが、実際にはそうではなかった。

目を開けると、彼はどこかの教室にいた。何者かによって破壊されたか、半壊しているが、此処は学校だ。

ふと見ると、彼の隣にいるのはエンプティではなく、夜刀神十香、彼女であった。

「なんでここに?」

彼の問いに彼女は答えない。彼の声が聞こえていないのか、何度も呼びかけたが、反応がないために和真は問うのを諦めた。

どうやら手などを見るに体が半透明になっており、彼は死んだような扱いになっていたからである。

(ま、死んだなら死んだでもいいけどさ)

机に腰掛け、彼は息を吐く。

だが左程時が経たぬうち、事態は変化した。教室に1人の少年が現れたのである。

「お前!」

当然彼の言葉が聞こえるはずもない。だがよくよく考えれば、簡単な話である。半壊した教室、夜刀神十香、来るのは必然的に士道しかいない。

彼は十香と対話した。優しく、彼は彼女に対する救いであった。

士道は彼女を否定せず、話をした。

そして彼女の名を呼ぶ。

十香、と。

「名前、か」

破壊だけが彼女の象徴であったが、今彼女に初めて名が付けられた。

徐々に世界が色を失っていく。

否、彼女だ。エンプティだ。十香はエンプティだったのだと、なぜか今確信を持って言えた。

空っぽの彼女に名が付いた。それは彼女が彼女たる証明であり、そしてこれからの生きる為の指針となろう。

「やれやれ、こんなんで世界に色が付くなんてな。色づく世界の明日からとはよく言ったもんだ」

首をすくめながら和真はどこか嬉しいような気持ちもあった。幼子が初めて何かを成し遂げたのを見たような。

世界は色を失い、本来の色を取り戻していく。

***

 

ショッピングモール1階フロアで和真とエンプティは目を覚ました。どうやら彼女の手を握った影響で、エンプティの見た夢か幻か分からない朧げなものを、彼も見る羽目になったらしい。

最もゴースト扱いだったので少々腹立たしいところはあるが、彼女は自己を確立した。彼はそのギャラリーに過ぎない。

そんな2人を見下ろし、1人の新たな少女が告げた。

「ごめんなさい。ちょっと人質になってくれますか?いえ、貴方は結構ですけど」

「はあ」

どうやら和真は逃し、エンプティだけを人質とするらしかった。彼は解放(?)されてしまったわけで、時崎狂三の元へと戻る事にした。

(俺はなんもねえのか)

Mではないが、なぜか彼に価値を見出せないと言われたような気がして、少々腹立たしかった。

彼に価値がないというなら、それでもいいが。

「面白い奴だな、気に入った」

それ相応のものは見せてやるつもりだ。

 

 




だいぶ久しぶりです。
多分そうね、14年ぶりくらいかな。冗談だけどさ。
進みかなり遅くなってるから、駆け足で行こうかな。どう駆け足にすんだかサッパリ分からんけどね。
最近オンライン授業だなんだっつって意味がわかんねえ。
サブカルコーナー行きたいけど、何話せばいいの。
かぐや様最新巻?アニメ2期?レヴュースタァライトの愛城華恋のフィギュア買ったこと?
うーん、それより部屋掃除しようかな。
ウルトラマンで何か書くって言って、まだ書いてないのは、はい。
すんません。
資格等で忙しくてですね。じゃあ何でこれ書いてんだよって話になりますけど。
じゃあまた、近いうち。


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命の選択を

時刻は夜7時少し前。

エンプティが人質に選ばれ、和真が時崎狂三と合流してから2時間以上は余裕で経っている頃合いである。

「はぁ・・・俺も人質になってればよかった」

「今更何を言っていますの?エンプティを助けると意気込んでいたのは貴方でしょう」

「いやまぁ、一応そうだけど」

彼女が捕まっている工場を物陰から見る影が2つ。

当然和真と時崎狂三である。

積極的ではない風を装いつつも来た時崎狂三と、自身が人質に取られなかったことに不満を抱く和真。一見ミスマッチな意見を持っていた2人であったが、結局はこうして彼女を助けに来たわけだ。

「行くか。相手の方も痺れを切らしてる頃合いだろ」

「ええ。仕掛けるのはわたくしからですわよ」

「俺はダメなのかよ。あの準精霊達に目にもの見せてやろうと思ったんだけどな」

「貴方は戦闘要員ではないでしょう」

そういうと彼女は物陰からから出、工場の方へと向かっていく。

確かに彼女のいう通り、彼は戦闘要員ではない。丁寧な言い方に変えれば御付きの人に過ぎず、この戦いにおいて彼が得られるメリットも殆どない。

仮に勝ち残って霊結晶(セフィラ)の塊を手にしたとして、使えないのだから土塊同然の扱いとなるのは目に見えている。

かといってこのまま時崎狂三を1人で行かせても、相手は2人。このような工場にエンプティを捕らえている以上、かなりな数の罠も仕掛けていられるのは間違いない。

ASTのような雑魚とは違い、こちらは霊力を有する準精霊が相手。おまけにエンプティを守りつつ戦わねばならないと来た。

「無茶な事しやがる…」

仕方なく彼女の後を追う形で工場へと足を向けたが、偵察などしている間も無く、彼女の銃声が聞こえてきた。

戦闘が始まったのである。恐らく仕掛けたのは時崎狂三からであろうが、2対1では分が悪いはずだ。

「ならやるか、久しぶりに」

自身の力を知られる可能性もあり、身体に少々の負担を強いることも避けられないかもしれないが、しかし致し方ない。

ブレイバックルを腰に装着して和真は呟く。

「変身」

『Turn Up』

青と銀の騎士、仮面ライダーブレイドに変身。黄金のキングフォームへとチェンジし、重醒剣キングラウザーを握る。

『♠︎10・J・Q・K・A』

ラウズカードをキングラウザーに読み込ませると、金色の輝きを放つカードが5枚、彼の前に現れた。

「はああああああああッ!」

キングラウザーからカードを貫きながら光の奔流が放たれ、工場をぶち壊し、夜闇を照らし出す。

「相変わらず凄え威力だな」

エンプティや時崎狂三を巻き込んでいないかということもあり、慌てて半壊した工場へと踏み込むと、どうやら無事ではあるようだった。

かなり、紙一重であったようだったが。ネオが地下鉄を避けた時くらいには。

「邪魔するよ。あ、えーと、怪我は?」

「ないですわよ。死ぬかと思いましたけれど。というか貴方その姿は、何ですの?」

「まぁ、後で説明するよ。なんか1人仕留め損なったみたいだな」

あの光を上手く躱したのか、小柄な少女が入り口のあたりまで逃げており、そこからこちらを振り返った。

そこから右腕を向け、陽光を放つ。狙いは時崎狂三と、用済みとなったエンプティだろう。

「わお」

彼が反応するより速く動いていたのは、時崎狂三であった。反撃するかと思ったが、意外にも彼女はエンプティの前に立ち塞がった。

自己犠牲など欠片もないはずの彼女が、空っぽの(少なくとも今はそうではないのかもしれないが)少女を庇ったのである。

光は時崎狂三の腕を切り落とす事に成功したが、まあなんというかグロい絵面が出来上がってしまった。

「いや女の子の腕が切り落とされてるのってどうなのよ」

「美しいでしょう?私の腕」

「そうじゃねえって。いや、冷静なのもどうかと思うけどさ」

「パーツが外れてるのグロいですよ!どう考えても」

「ほらな」

和真が動かなかったせいもあり、時崎狂三の治療は急ぐ必要がある。

精霊とて血は流すし、痛みも感じる。

陽光を放った準精霊の腕に光が再度収束しているのを見るに、既に2発目を発射しようとしているようである。

(使った事ほぼないけど、試してみるしかないな)

和真が腕をその準精霊へ向けると刹那、彼女の全てが停止した。

収束していた光も、思考も、体の動きも、すべてが。

「これは・・・?」

「良いから離脱するぞ。長くは保たない」

二人を抱えて和真が工場を後にした直後、3人がいた場所を光が直撃、眩いまでの爆発を起こした。




何でしょうね。明日からまた授業が始まると思うと、また鬱になりそうで。
いやマイナス思考はやめよう。
でもなんていうか、時間に余裕あっても精神的な余裕がねえの。
これ書いてても追い詰められてる感が否めない。
現実逃避したくてもできん悲しさね。
じゃ、近いうちに書けたらいいな。
またねー


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男の戰い

工場から脱出した3人は、しばらくの後、再び例の家へと戻って来ていた。トラップ等をそのままにしておいたので、2人には危ない箇所を指示しながら家の中へと入る。

すぐさまエンプティが時崎狂三の治療に取り掛かったのを確認すると、和真はメモ書きをテーブルの上に静かに置き、物音を立てぬように外に出た。

エンプティは手当で慌てているだろうし、時崎狂三も傷の修復に専念すると見て良い。当面は和真に構っている余裕は2人ともないはずだ。

最もあの傷で戦線復帰は難しいと思われるが。

(あーメモ書き要らなかったかな)

不気味なまでに静かな街を歩き、記憶を頼りに和真はある場所を目指して進んでいく。

 

このゲームで生き残っていると思われるのは、時崎狂三とエンプティの他に2人。蒼(ツァン)という少女だが、あまり彼女とは戦いたくはない。彼女は危険なのだ。まともに戦ったことはないが、そう感じる。

もう1人はフォルス・プロキシ。ピロシキのような名前をしているというのは置いておくとしても、だ。

生きているかどうかすら憶測に過ぎないが、彼女(?)は準精霊の中でも特殊なポジションなのではなかろうか。

他の準精霊と同じ土俵で戦いを挑んではいるように見えて、何か内側に違う物を秘めているように見える。

包帯を全身で覆っているあたり、何かしら秘密はありそうだが。

「さてと…」

しばし歩いて辿り着いたのは、少女達と初めて出会ったあの学校。ここに何か、このゲームの核心に迫るものがあると彼は踏んでいる。

時崎狂三という案内人もいない今、どこでどんな目にあおうが自己責任。仮に今襲われても敵地にのこのこ入ってきた愚か者でしかない。

「これで、行こうかな」

チョイスしたのはショットガン。

重火器はいくつか手持ちはあるとはいえ、敵の数も不明な今、小回りが利く武器の方が良い。

まあショットガン好きだからというのもあるけれども。

 

敵が無数にひしめいているかと思っていた校内は意外にも静かであり、偵察程度に数体の人形らしきものが動いているのみだった。

(まだバレていないな。バレなければ、そのままで良いんだが)

ひとまず目指すはファーストコンタクトの場となった、あの教室。恐らくまだあの人形モドキはいるはずだ。

ゲームの主催者が誰なのか、この領域の支配者はどこにいるのか、知る必要がある。

抜き足差し足忍び足で進もうとした矢先、けたたましい警報音が鳴り響いた。

「バレたかぁーそりゃいつかはバレるだろうと思ってたけどさ!」

ショットガンの引き金を引いて人形を黙らせるが、どうやらまだ残っている人形がいたようだ。

立て続けに撃ち、和真は教室へと進んでいく。こうなってしまえばバレるバレないは気にしていられない。

ともかく一刻も早くあの教室へ行かねば。

「どけ!人形モドキが!」

お化け屋敷顔負けのレベルで群がる人形を相手にしつつ、和真は教室へ着実に近づいていく。

(これだから人形は気に食わねぇんだ。人の都合も考えずに、身勝手な連中だよ…)

ネオもといジョン・ウィックよろしくショットガンとハンドガン、アサルトライフルを使い分けて粗方の人形を片付け、ようやく教室へ踏み込むと、そこには異様な光景が広がっていた。

「なんだ、これは…」

人形がいる、それは確かだ。だが一度倒されたはずの準精霊が、僕として、人形として蘇るなどということがあり得るのか。

そして中でも一際異様さを放つ、フォルス・プロキシ。

ただ丁度和真が踏み込んだタイミングが悪かった。

人形として生き返ったイサミ達を目視したのも束の間、フォルス・プロキシは彼女達3人を飲み込んだのである。

「グロ…」

「あなたは」「異端者」「不届き者」「このゲームにあってはならない存在」

口々に叫ぶ人形達。

「いや酷え言いようだな」

「まずは彼からだ」「弾け飛べ、フォルス・プロキシ」

コクリと頷いた包帯女は、無言で和真へと迫ってきた。

 

 

 




クソッタレですよ大学とか。
なんとかまぁ課題終わらせてこうやって書いてるわけだけど、色々うん大変だったわ。
本来ならもっと早く終わってたはずなのにな。
最近愚痴ってばかりな気がするな。ポジティブに行こう。
なんかこう、デート・ア・バレット、劇場版になるんだっけ。
白の女王出るらしいな。まだ俺の話だと出てないけどさ。
デアラ4期も確定したとかで。
やっぱテンション上がってきた。
3期が鳶一デビルまでやったんだっけか。
でもこのままやると士道暴走から始まるんだよなぁ。
アニメ勢居たら、ほんとすいません。
原作からだったので(土下座
でも六喰と二亜までやるのかな?たぶんそれで丁度良くなるのか。
いやでもどうだろう、流れ的に士道暴走を4期最後に持ってきて5期に繋げる気もしなくはない。
というかここまで来たら全部やってくださいお願いします。
あと黒十香が好きな人!
六喰ファミリー、じゃなくてたぶん4期で観られるはずだから喜んで!たぶん5期でも(やってくれたら)
親父も十香好きだし!
またすいません親父が、十香と十香の中の人推してるもので。
じゃ、話逸れたけどまたねー


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心のかたち 人のかたち

文字通り、和真に迫ってきたフォルス・プロキシは弾けた。

正確には彼に掴みかかり、もつれ合って壁をぶち抜き、校庭と思しき場所に落下してからであったが。

それは気持ち悪いほど綺麗に弾け飛んだが、撒き散らしたのは五臓六腑ではなく、飲み込んでいたらしい人形達であった。

「すっげえ入ってたんだな…」

イサミをはじめとした彼が知る準精霊の他に、彼の知らない顔もかなり混じっている。このゲームに惜しくも破れた者達の成れの果てか。

(こりゃあなんというか、厄介そうで)

全部で何体いるのか、数えるのは面倒だからしないが、彼が異端分子でありイレギュラーと分かった以上、全力で彼を消そうとしているのは明確である。

「変身!」

素早く仮面ライダーブレイドに変身、ブレイラウザーで人形を切り裂きながら、例の教室へ急ごうとする和真。

当然人形達が黙って見ているわけもなく、数の差で徐々に動きを抑えられてしまう。

「だからァ!お前らに構ってる暇はないんだってば!」

跳ね除けようとするが、人形とはいえ彼女達(人形に性別があるのか不明だが)は準精霊。精霊の下位互換と認識しているものの、複数で掛かってくれば精霊に匹敵する力を発揮できると見て良い。

「ちっ、知らない準精霊までいるのが面倒なんだよな」

攻撃方法を把握していないため、対策を立てづらいのである。

おまけに近距離、中距離、遠距離すべて網羅されており、変に気を抜けば死角からやられかねないと来た。

なにやら銃らしき武器を持った者もいるようで、彼女が味方の人形に構わずに撃ちまくるのである。

『エボリューションキング』

もはや手段は選んではいられない。キングフォームになり、気は進まないものの、あの手段を使う事にした。

幸い人形達は彼を囲んで密集しているため、当てるのは簡単だ。

そして和真と人形達が向かい合うと、再びあの現象が起きた。

全てが静止、水滴の落下も、人形の動きも、時間そのものが凍結したように動かない。

「ずるいからなぁ、これ」

そう呟く彼の身体の2箇所が光り、それが右足に収束すると同時、ブレイドは跳躍、ドロップキックを人形達へと見舞った。

「リスタート」

刹那、彼を包むように大爆発が起こり、少し離れていた人形も爆風に巻き込まれ、吹っ飛んだ。

「再起動にゃ少しかかるかな?」

キングラウザーを手にブレイドはゆっくりと浮上し、例の教室へと戻ってきた。

「ゲームマスターは、この階層の支配者はどこだ?」

口をつぐむ人形達。教える気が無いということだろう。

「そうか」

金の剣を人形へと向けるが、怯えた表情は見せない。そりゃ人形に表情や感情などあるわけもないのだが。

ゆっくりと拳を握りしめ、和真は例のちっこい人形2人を殴り砕いた。

「なら俺が見つけてやる。このゲームも全部終わりにする」

 

静寂が訪れた教室を後にし、振り返る事なく彼は進んでいく。彼が成すべきことは、シンプルである。

このゲームを終わりにし、この世界から脱出する。

遠い昔にソ連式の方が能率的だと教わったが、今は彼自身のやり方を貫く。

「どこに隠れたんだ、ゲームマスター」

出会うたびに人形を斬り捨てていくが、一向に支配者は姿を見せない。そろそろ姿を見せても良さそうなものなのだが。

(もうあぶり出すしかないのかなぁ)

軽く息を吐くと、ゆっくりと和真は剣を構えた。




久しぶりですね。
こんちくしょうゼミの方が忙しくてまた最近書けてませんでして。
まあ次はいつか分かんないけど。
ウルトラマンの方も書きたいなあ、書けてないけど。
じゃまたね


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ナイトメア、誕生

和真がゆっくりと金色の大剣を構え、光が剣へと収束していく。

軽く深呼吸をし、勢いよくキングラウザーを振り下ろす。

金色の光が学校を包み込み、建物を崩壊へと導いていく。

(…これで良かったのか?)

崩れ落ちた校舎で立ち尽くし、自らに問いかける。

学校を1つ壊したところでゲームマスターは姿を見せず、ふと見れば校庭に散らばっていた人形の残骸もいつのまにかほぼなくなっている。

恐らく回収されたか、自力で逃げ出した者もいるのだろう。

変身を解き、和真は残された動かない人形の元へ近づく。

「何か役に立つものは…」

見た感じ無さそうである。仮に情報を持っていたとして、喋らないのだからこれでは役に立たない木偶同然である。

しかし1つだけ良さげなものに彼は目を止めた。

「ほう、これはこれは」

それを手に取ると、彼は一路例の家の方へと戻り始めた。

 

しばらくして彼はあの家の近くへと戻ってきたわけだが、そこに彼の知る風景は残っていなかった。

「何がどうなったんだ…」

形だけとはいえ存在していた住宅地は大半が姿を消し、ただの更地になってしまっていたのだ。

何か爆薬でも使って辺り一帯をまるごと爆破でもしたのだろうか。

散らばる、人形だったモノたち。

それらの骸は気味悪いほどに人間そっくりの姿形をしているが、しかし動くことのない屍でもあった。

「空っぽの人形のくせに、一丁前に動くんだからよ。全くやってられねえ」

警戒しつつ進んでいくが、どうやらここにもう時崎狂三とエンプティはいないようであった。

うまく逃げてくれていれば良いが、そうでなければ…

(いや逃げてくれてるはずだ、彼女なら)

そう信じるしかない。

あの時崎狂三がただ弱くなっているだけなのか、それとも彼女の皮を被っただけの贋物なのかは疑っているが。

とはいえここまで来ると、彼はいくらか確信を持ちはじめていた。

 

時崎狂三は確かに強いが、同時に1人の少女でもあり、脆弱なただの元・人間である。

強いけれど、内面はとても弱い精霊。

戦いと恋においては己の力を信じ、全力で潰しにかかる。

猫が相手ではその限りではないのだが。

だが彼がここで知った彼女はどこか違和感があった。

見た目も能力も全てが時崎狂三だったが、どこかが時崎狂三ではないような。

物理法則を無視したこの世界では空を飛び回ることなど容易だろうが、疑うのは最初のそこではない。

(彼女が誰かを庇うか?彼女が庇うのは五河士道ではないのか)

気紛れで面白い事を企むことはあっても、会って数日と経たないであろう空っぽの少女を助けるものか?

まあ彼を知らないと言うのは、時間軸が違っている可能性もあるので、疑うには微妙なラインだったのだが。

「いや、本人に聞くしかないな」

今彼に課されたミッションは3つ。

時崎狂三とエンプティの発見、逃亡した人形たちの殲滅、ゲームマスターの殺害。

人形たち殲滅はゲームマスターを炙り出せるだろうが、あの2人の発見は少々骨が折れるかもしれない。

手掛かりはないかと辺りを見回すと、1人の少女が目に入った。

 

腹から血を流しつつも、彼女は巨大なハンマーを手に立っていた。

「何?」

「彼女達の場所は、知らないか?」

「そこのマンホールから逃げた」

「蒼(ツァン)だったか。俺を殺しは…しないのか?」

「しない」

シンプルな返答だ。恐らく時崎狂三にやられたのか、腹に穴が空いており、勝てないと見込んだのだろう。

こちらも手負いの少女に剣を向けるほど、落ちぶれた人間ではない。

人形には剣を向けたので矛盾するようだが、人形は人形、準精霊とはいえ生きている彼女達とは違う。

「そうか…助かるよ」

そう言って和真はマンホールの中へ飛び降りた。

 

痕跡がないかと思って不安ではあったが、それは杞憂であった。

微かに残る鉄臭い匂いと、コンクリートについた血痕が、和真を彼女達の元へと導いてくれたのである。

「ここは、あそこじゃないか」

やがて辿り着いたのは彼が破壊してしまった工場でもあり、前にも増して崩壊が進み、廃屋目前となっていた。

いつのまにか降り出していた雨も相まって、良い感じの雰囲気を醸し出している。

それを取り囲むように迫る人形たちの群れは、もはや有名人に群がってサインを求めるファンのようだ。

「時崎狂三も有名人になったもんだな」

精霊なのだからそりゃ有名人にならなければおかしい。どちらが時崎狂三なのかは、分からないが。

「…ったく」

先程活動停止した人形から鹵獲した武器を、和真は取り出す。

それは精霊が振るっていたというには、あまりにも大きすぎた。

大きく分厚く重く、そして大雑把すぎた。

それは正に鉄塊だった。

「今の何?」

まあともかく。どんなゴリラじみた準精霊が振るっていたのか知らないが、やたらデカい大剣を彼は手にしたのである。

黒い鎧は着ていないのでイマイチ雰囲気に欠ける気もするが、致し方あるまい。

両手でその剣を握ると、和真は雨の中を駆け出した。

しっとりと濡れた服が身体に張り付いて気持ち悪いが、今はそんな事を気にしてはいられない。

「覚悟しろッ!人形ども!」

一太刀で人形を数体まとめてぶった斬ると、勢いに乗せて残りの人形も切り裂いていく。

この中に恐らくいるであろう時崎狂三とエンプティの元へ、この人形達を近づけさせてはいけない。

その一心で剣を振るう。

しかし剣自体が規格外すぎた。

「重ってェ…」

あっさりと限界が来てしまった。この剣、大きさだけでなく重量も規格外で、こんなのを振るっていたのはどんなゴリラなのか分かったものではない。

「ナヘマーでもこんな重さじゃねえだろが」

剣を地面にぶっ刺し、戦闘スタイルをチェンジ。仮面ライダーブレイドに変身し、ブレイラウザーを振るっていく。

剣と蹴りによる攻撃で人形の数を着実に減らしていき、やがて和真は最後の一体を斬り伏せた。

「はぁ、はぁ、っくそ、疲れるな…」

ここから人形が増えないという保証はないが、一先ず見える敵は倒し切ったと思いたいところである。

息を吐いて和真が室内へ入ると、そこには見慣れない少女と、見慣れた少女がいた。

「時崎狂三は、やはりそっちだったんだな」

少々ボサッとなった白髪に蒼色の瞳をした少女と、血のような赤と時計の針が刻まれた金色のオッドアイの少女。

彼は理解し、納得した。

力は空っぽの少女へと戻り、本物を演じていた贋物は力を失い、元の姿へと戻ったのだと。

悪夢は覚醒し、時を喰らう城と共に再び動き出す。《ナイトメア》は

あるべき場所へと還った。

より艶やかに、より鮮烈に。

殺戮と蹂躙、死の刻が刻まれ始める。

 

 

 

 

 

 

 

 




いつもより少しだけ字数多いですかね。
2600って大した数でもないのかな。卒論2万字とか教授に言われるとさ、クソ雑魚字数に見えてくるのよね。
つーかコロナが収まって早く大学行きたいです。
部屋にずっといるとイライラがやばいわ。
ずっといるわけじゃないけど、なんか店入るにもマスク着用してなきゃいけないしさ、なんなの。
暑苦しいしメガネ曇るし。
そろそろウルトラマンで何か書き始めたいけど、毎日ある課題とゼミのレジュメであんまり余裕ないんですね。
いやレジュメは書き終わったけどさ、参考資料使ってないから大した内容になってないし、書き直し食らうんだろうな。
組んでるヤツ次第だけどね。
小説に関してはそうですね、最近題名とか内容で地味に遊んでましたけど、気付いてもらえましたかね?
映画のセリフとかそういうの少し変えたりしていれてるの。
見つけてもらえたら嬉しい。
じゃあねー


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せめて、人間らしく

それは狂気に満ちていたが、とても美しかった。

狂ったように時を刻み、きひひ、と笑いながら人形達を蹂躙していく様が。

おかしいのかもしれない。

しかしこれが彼女のあるべき姿だと、彼はそう思った。

(帰って来たな)

和真が手を出すまでもなく、時崎狂三は湧き出る有象無象の人形を、殺し尽くし、その『時間』を空っぽになるまで吸い上げた。

「終わったか?」

「ええ。けれど、まだですわ。ゲームは終わっていませんもの」

「俺が誰か分かるか?」

「八坂和真さん、でしょう?そう名乗っていたのは覚えていますわ」

「そりゃ好都合で。それで、次は?」

「決まっていますわ。戦争(デート)をはじめましょう」

わずかに首をすくめて和真は続く。

あの時崎狂三を演じた白い少女はどうしたものか迷ったが、一応連れていくことにした。

彼女は見届ける義務があると思ったのだ。

仮にも時崎狂三だった身、彼女の戦いを見ておくべきだろう。

(ゲームマスターは俺が殺らせてもらう)

 

少々歩き、3人は再びあの場所へと戻って来ていた。

始まりの場所である、例の学校だ。

確信はなかったが、ここにゲームマスター兼ドミニオンはいると彼女は踏んだのだろう。

まあ実際当たっていたが。

「あの学校、壊したはずなのに」

「支配者(ドミニオン)の力を使えば修復も容易いことなのでしょう。大して興味はありませんけれど」

「そうか…にしても数が滅茶苦茶多いな」

修復の早さも眼を見張るものがあるが、この人形どもの数は気持ち悪いほどだ。空、地上、建物、全てを埋め尽くしている。

一面を覆い尽くしているという言葉がピッタリなくらいに。

「どう攻めるつもりだ?どこをどう攻めても人形地獄だけど」

彼の言葉に耳を貸すつもりはなさそうだった。

既に専用の古式銃には影が装填され、戦闘準備は万端のようだ。

唐突に学校のチャイムが鳴り響く。

それをトリガーとし、全てが動き出した。

黒い波のように人形達が押し寄せてくる。ただ殺すために。

「俺も行くか…変身」

ノーマルフォームからジャックフォームへ変わり、飛翔しながら強化されたブレイラウザーで人形達を撃退していく。

なんというか、イメージ的には某巨大特撮ヒーローの最終回に近い気もする。地球はウルトラマンの星って言えばいいのか。

「あっ、逃げるな!」

激しい空中戦を展開し、逃げられかけたものの、なんとか空を制圧。地上を見下ろせば、時崎狂三も制圧を完了していた。

残るは建物にバグの如く群がる人形だけである。

『エボリューションキング』

キングフォームにチェンジ、キングラウザーを手にし、ゆっくりと建物へと向かう。

この2人を見ても逃げ出さないあたり、よく出来た人形である事は間違いないが、彼女達は大きなミスを犯していた。

2人の実力を見誤っていたのだ。

悪夢を体現したが如き精霊と、アンデッドの力を有する仮面の騎士。

イレギュラーな切り札(ジョーカー)が2枚トランプに投入されたらどうなるか、答えは明確。ゲームバランスの崩壊である。

「さて、ゲームマスター。いよいよ逃げられないぜ?姿を見せたらどうだ?」

和真が声を上げると、なにもせずとも校舎はあっさりと崩壊。

「わお、築1000年くらいは経ってそうな壊れ方なこと」

どうやら先ほど時崎狂三が何か銃弾を撃ち込んでいるのが見えたが、何か仕込んでいたようだ。

時間を操れるというのはなにかとこう、便利なものである。

(羨ましいもんだ)

彼も時間関係は使えなくはないが、範囲が広いし、時間停止しか使えない。細かな調整が効く方が、使い勝手が良いだろうし。

「しかしアレが、ゲームマスターなのか?」

「ええ」

ゲームマスターで、ドールマスターで、ドミニオン。

肩書きが多過ぎるのも如何なものかと思うが、意外なのは、彼女がそれこそ動かない人形の様だったからだ。

(キングラウザーを使う必要なくないか?)

変身を解き、武装をショットガンに変更。

銃口を向けるが、朱小町とリュコスが立っている。

「見逃してやる。行けよ、審判」

だが朱小町とリュコスは引かないようで、和真は時崎狂三の方を見て首をかしげるが、彼女は首をすくめるだけだった。

(俺がどうにかしろと?)

時崎狂三が用があるのはこのドールマスター。雑魚と見なした審判人形の処分は、正直どうでもいいのかもしれない。

溜息をついて再び朱小町とリュコスの方を向いた時、その人形達に変化が起きていた。

ちびっこかったはずの朱小町とリュコスの身体は人間大のそれへと変貌し、およそ高校生から大学生と思しき体格の女性のものに。

「は?人形…じゃないのか?」

「人形じゃないわ。私には風香っていう名前があるもの」

「結構大変だったよね、この人形を姿を変え続けてるのは」

反射的に引き金を引くが、当たることはなく。あっという間に和真は武器を奪われ、薬らしきものを打たれた。

薄れゆく意識の中で最後に後悔する。

(キングフォームのままなら良かったのでは…)

後悔しても後の祭りなのだが。

 

 

 




久しぶりに風香と吹雪の登場ですね。
名前合ってるよね?
まあたぶんバレット編はこれで終わる気がします。
次の世界はどうしようかなぁ…
アンケートとかやっても意味なさそうだし。
そもそもアンケートとかどうやるんだよ。
ツイッターでか?この小説のコメントで書いてもらうのかな?
まあ適当に考えてそのうち書きます。
タイトルからして涙、最後のシ者、終わる世界、世界の中心でアイを叫んだけもの、あたりまではやりたかったけど。
まあ終わる世界とかはAir、まごころを君に、でも良いんだけどさ。
シン・エヴァについてはあまり触れません。
触れたいですけれども。
じゃあまたね


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プラネット・パープル

覚醒して瞬時に襲ってきたのは、ひどい頭痛だった。

頭を強く打たれたような、まるで2日酔いのような目覚めとでもいうべきか。

(ってェ…)

頭に触れようと手を動かそうとすると、両手が動かないことに気付いた。手錠が付けられている。少なくとも遊戯目当てのものではなく、しっかりとしたもののようだ。

冷たい鋼の感覚を手首に感じつつ、和真は周囲を見回す。

そういえば最後の記憶は学校だったが、ここは少なくともあのバトルフィールドではないことだけは確かである。

あの殺伐とした雰囲気がない。かといって平和な場所であるかといえば、そうでもなさそうだ。

(なんだ、どこかの船の倉庫か?)

ケースがいくつも置かれているあたり、そう見て良いだろう。

様々なものが置かれている中、彼の知るものが1つだけあった。

「俺の、バイクじゃないか」

バトルロイヤルに巻き込まれる前、あの世界に行く前にバイクは失ったはずだ。いや、誰かに回収されていたのか。

だとすれば回収してくれた相手には感謝をせねばならないだろうが、バイクがあるところに拘束されているというのは、都合が良すぎではないか。

そう思い、バイクに触れようとした手を止める。

(怪しすぎでは?)

ここに彼を拘束した人物と、バイクをこの場所に置いた人物が同じだと仮定しよう。彼がこのバイクの持ち主であることを知っているからこそ、この倉庫に和真をここにぶち込んだ。

バイクに触れた場合、何かが作動する可能性もあり得る。下手な動きはできない。

「どっちにしろこの手錠があんのか。クソだりぃ」

溜息をつき、力任せに手錠を引き千切った途端、状況は一変した。

けたたましく鳴り響く警報音、ドタバタと駆けてくる足音。

「そういうパターンだったの?!」

まさかの手錠を壊した場合に発動するものだったとは。しかし近付いてくる人数が、足音的にかなりいるようだ。

こうなれば手段を選んではいられない。バイクに跨り、一か八かエンジンをかけてみると、運良くエンジンが掛かった。

なんという幸運。

扉をバイクで突き破ると、そこには既に彼を取り囲むように警備員らしき者たちが展開していた。

「あーそういうね」

しかしよく見てみれば彼らは人間ではない。皆一様に耳に何かの機械が付いており、肌もシリコンじみたものに見える。

「ロボットか?」

「ヒューマギアよ。飛電の技術を使わせてもらったの」

「指揮官はお前らか。悪いが、ここで足止めを食らうわけにはいかないんだよ!」

「捕まえなさい!」

「ここから逃げられるのはただ1人、この俺だ!」

ヒューマギアの大群をバイクで蹴散らしながら、ディスプレイを操作する。この操作も懐かしい。

(ん?なんか微妙に変わってねえか?)

Nのマークなど入っていたろうか。デフォルメされている、丸っこい字体の。しかもどこかファンシーな動物っぽい顔をしたスライムが背景に設定されている。

「ま、良いか」

ここから出られればそれで良い。しかし彼の望みに反し、ディスプレイはノイズが入り、反応しなくなってしまった。

「え、ちょっと!」

出口らしきものを目指していたが、これではどこの世界にも行けなくなってしまう。

「こんちくしょうがァ!」

外へ繋がっていると思しき扉をバイクで突き破る。

そしてそこには、空が広がっていた。

 

ひたすらに落ちていく。スカイフォール。

007も撃たれて落ちていく時、こんな気分だったのだろうか。

後ろを振り返ると、既に彼が後にした船は遥か遠くに去っていた。

(船って海の船じゃなかったのかよ。空飛ぶ船だったのか)

そもそもあんな船をどこで手に入れたのか、作ったにしてもどこがあんな技術力を持っているのか。

大方、飛電というところの技術を用いたのだろう。ヒューマギアもそこの技術を使ったと言っていたし。

「ってバイクのまま落ちればそりゃスピード上がりますよねぇ!」

呑気に考え事をしている余裕はなかった。

重力に引かれ、墜ちていく。焦らねばならないはずなのだが、落下しても怪我をしないのでは、という思考に行き着いていた。

そして墜落した。

 

「いッてェ…あ?れ?血出てねぇや…変身してないから絶対詰むと思ったんだけどなぁ」

バイクも倒れてはいるが、破損などしているわけではないようだ。ギャグ時空か何かなのだろうか。

ともかくバイクを起こして周囲を見てみると、どうやらここは人里離れたところであることだけは確かだった。

「木しかねえ」

あとはモンスター。たぶん序盤の雑魚扱いされるモンスター達。

(モンスターね。まぁファンタジーの世界なのかな)

特に敵意を向けられているわけではなさそうなので、こちらも手を出さず、穏便にここを抜けるとしよう。

静かにバイクのエンジンをかけた、つもりだった。

「こっち見んなよ」

近くのスライム(?)が反応し、ぴょんぴょんと跳ねてやってきた。びっくりマークだか、エクスクラメーションマークだかが上に出ているが、これはこちらを認識しているということなのだろうか。

まぁだからと言ってスライム(犬っぽいしスライヌ?)に構う余裕もないので、和真はエンジンをかけ、森を後にするのだった。

 

森を出ると街道らしきものが整備されており、それに沿っていく形で行くと、しばらくして巨大な壁に囲まれた街が見えてきた。

「おぅ、なんか近未来感あるな」

バイクを加速させて街へと近づく。しかしどうやら門番というか、警備はいないようで、あっさりと中に入れてしまった。

(なんか逆に不安だなぁ)

路肩にバイクを停め、和真は見知らぬ街を歩き出した。

何はともかく、ここがどこなのか確かめねばならないからだ。少なくともここは彼が知っている世界ではなさそうだというのは、先ほどのスライムを見れば明確である。

彼の知る世界に犬っぽい顔をしたスライムなどいないのだ。

となればここは彼の知らない世界である可能性が大きい。

「今回は何もないことを願うがなぁ」

頭をかきながら和真は歩道を進んでいく。万が一のため、拳銃を忍ばせて。

 

建物の影からひょこりと顔を覗かせる、小さな人影。

否、宙にふわふわと浮かんでいる小人サイズのものを人影というのは、少々無理があるか。

「アイツか。ネプテューヌが言ってた、『ジョーカー』ってのは」

褐色肌にクリーム色の小さな幼女はそう呟き、怪しげな光と共にその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




久しぶりですね。
今度はネプテューヌの世界です。
クロワール出したからアレかな、VIIに若干足突っ込んでる感じかな。
いやでも俺も全部プレイしたわけじゃないし、なんならリバース3のVだからな、プレイしたの。
まぁリバース1、2は勿論やったけど。あとはPPとネプテューヌUやって、超次元大戦が途中だね。
ネプテューヌU思ったよりアクション派手だわ。コスチュームブレイクで興奮してたけどさ。
結局またウルトラマンで何か書こうと思って書いてないや。
このネプテューヌの話もオリジナルストーリーになりそうだな。
ネプテューヌ好きだから、キャラ崩壊とかは避けるようにするけど、不安があるなぁ…
ま、頑張るか。
俺に限界はねえ!ってことでウルトラ頑張ります。


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絶滅の始まり

しばらく歩いたところで、和真は自分の知る建物やら、そういう常識やらが通じないことを思い知る事となった。

進化しすぎているのだ、この街は。

否、この世界自体このレベルで発展しているのだとすれば、和真は相当理解の追い付かない場所に来ているのかもしれない。

まぁ別の世界だというなら納得もできるのだが。

ただそういった事を確かめられる資料などはなさそうで、図書館を訪ねるしかないわけだが、その図書館も近くには見当たらない。

「ったく、どうなってんだ?」

コインも使い物にならないし、これではコーヒーの1つも買えやしない。

役に立たなくなった英世を見て溜息をつきつつ、財布をしまう。

「よっ、オメェがヤサカ・カズマだな」

「ああそうだよ…って誰だお前!?えっ、小さ…いや、小さっ!褐色金髪幼女は惹かれるけどさ」

「うるさいな!これがデフォなんだよ!えっ、いや最後不穏なこと」

「で、なんだ?俺の名前知ってるのか?」

「まぁ知ってるっつーか、そんなとこだな。ところでカズマ、オレとおもしれーことしねーか?」

「悪いな。褐色幼女からの誘いは興味深いんだけど、俺はそんなことしてる余裕はないんだ。この世界から出る方法教えてくれるっつーなら、考えてやってもいいが」

「オレは知ってるぜ。ま、オメェが協力してくれるならだけどな」

「はァ…何なんだよ。そもそも名前すら知らねえぞ」

「オレはクロワール。クロニクルのクロだ」

「俺の名前は知ってるから自己紹介なんざ要らねえだろ。さっさと俺を帰してくれねえかな」

「オレの方に協力してくれたらな。面白い事をするだけだからよ」

「ああ、そう」

何となく言いくるめられたような気がしないでもなかったが、ともかくクロワールと名乗った浮遊金髪幼女(勝手に命名)に付いていく形で、街中を進んでいった。

「この街は、何なんだ?聞きたかったんだけど」

「ここはプラネテューヌ。ネプテューヌの守護する紫の大地だ」

「ネプテューヌ…プラネテューヌ。ふーん、なるほど」

「他にリーンボックス、ルウィー、ラステイションってのがあって、それぞれに守護女神がいるのさ」

「へえ。たぶん会うことはないと思うけどさ」

どうせ女神といっても、一癖も二癖もあるような人物ばかりなのだろう。会って色々と面倒な事になるよりも、さっさと帰ってしまった方が得策といえよう。

「しかしクロワール、どこまで行くつもりだ?まぁ俺はこのプラネテューヌに関しては知らんけど」

「ここらでいっか」

 

辿り着いたのは表通りから少々入ったところにある、薄暗い路地裏だった。

「雰囲気あるな。ここでおもしれーことって、何すれば良いんだ?」

一発芸でもやらされるのかと冗談を含めた和真の問いに、クロワールが返す。

「ほらよ」

彼女が和真に渡してきた、否、与えたのは禍々しい『力』だった。

黒く、暗く、そして全てを滅ぼせる『力』。

破壊と絶望が彼の中を埋め尽くしていく。

もはやこれは悪意そのものだ。

「がッ…なんだこれ…は」

「『悪意』っていう概念そのものだ。これは面白くなるぜ」

赤と黒の滅びが和真を包む。

クロニクルの笑いと共に、悪意が和真を覆い尽くしていく。

「こん…にゃろォ…」

クロワールを掴もうと手を伸ばすが、それも悪意に飲み込まれた。

『シンギュライズ!破壊・破滅・絶望・滅亡せよ』

そしてそこには白と黒の体に、血のような赤い瞳をした、『悪意』の塊が存在していた。

『コンクルージョン・ワン』

アークワンは覚醒した。絶滅すべしという使命を背負い、ジョーカーと共に、新たな超次元で再び目覚めたのだ。

「あ、あ…ぁ」

これがアークの意志か。負の感情の連鎖、希望など微塵もない。

抵抗など無意味。アークワンは止まらない。ノイズのようなものを纏ってアークワンは跳躍。

『悪意』『恐怖』『憤怒』『憎悪』『絶望』

『パーフェクトコンクルージョン』

壊せ、壊せ、壊して壊して、壊し尽くせ。

恐怖し、絶望させろ、殺意と悪意と憎悪と憤怒の限り。

闘争し、殲滅し、絶滅し、滅亡しろ。

それがアークだ。

血のような目が光り、アークワンが蹴りを放つと刹那、街の景色を一変させ、瓦礫の山を作り上げた。

しかし和真=アークワンは気に止める様子もなく、プラネテューヌを破壊しながら宙を進んでいく。

「こいつはスゲェな。アークワンに適応してる」

クロワールは驚嘆した声を出すが、和真には既に聞こえていないようだった。

 

「クロちゃん、またやったのね」

「げ、ネプテューヌ…」

黒いパーカーに薄紫の髪をたなびかせ、一冊の本を手にした少女が、クロワールの元に立っていた。彼女の名もまたネプテューヌ。だが彼女は、この世界の守護女神たるネプテューヌとは一切関係はない。

最も彼女はクロワールの保護者兼、監視者とでもいうべき存在か。

次元の旅人などという名称もあるらしいが。

「面倒な事になったわね、アークワンなんて」

「いやオレの仕事だし…」

「アレに関しては情報が少なすぎるのよ。キセイジョウ・レイの時とはまた違うから」

小さくため息をつくネプテューヌ。大きいので大人ネプと呼称。

「やってくれたわね、クロちゃん」

「まあな」

そう言う2人には目もくれず、アークワンの破壊は続く。

どうやら女神候補生が気付いたらしく、アークワンの迎撃に向かったようだが。

「そうなるわよね」

あっさりと『パーフェクトコンクルージョン』ラーニング5で返り討ちにされてしまう。

女神候補生達が撃破されたため、守護女神も表へ出てくる。

まあダラけていただけだろうけれども。

しかしプラネテューヌに他国の女神がそうそういるはずもなく、出て来たのはネプテューヌとサポートを務めるイストワール。

「えっ、何、何がどうなってるの?!」

「分かりません。女神候補生がやられたということしか…」

「ネプギア達が?まっさかー…ってホントにやられてる!」

「お姉ちゃん…」

宙を見上げるネプテューヌ。その先にいるのは絶望、アークワン。

真面目モードもとい、パープルハートに変身(女神化を変身というと、ここでは非常にややこしいが)しようとした時だった。

中空に亀裂が走り、そこから光が溢れた。

「ぜりゃああああッ!」

白いマントをはためかせ、亀裂から躍り出る騎士。どこか聖騎士を彷彿とさせる外見に、仮面ライダーブレイドと近しいものを感じずにはいられない。

「早く撤退を!ネプテューヌ!」

「え、あ、うん」

ともかくネプギア達を連れてプラネテューヌ教会へと撤退するネプテューヌ達だったが。

(彼、何者なんでしょう?)

しかしイストワールの中には疑問が残ったままであった。

「展開早くない?」

最後のネプテューヌの一言で結構台無しになったけれども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ごめん、色々盛り込んだら展開早くなっちまった。
かもしれない、いや多分そう。
次から頑張る。アークワンまだ本編で倒されてないはずだけど。
なんとか倒します。たぶん。
アークワン出さない方がよかったな、この小説では。
まぁ主人公闇落ちって面白そうじゃん。
今更だけど。
つーか和真が基本語りなのに、これじゃ意味ねーな。軌道修正なんとかやんなきゃな。
恒例のサブカルコーナーっていきたいんだけど、リバース3のトゥルーエンドまだ行ってないんでやります。
いや他にもやることあんだけどね。
まあまあ、まぁ、うん。
明日の俺が頑張る。
あとキャラ崩壊しないように頑張る。


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新たな騎士

水色を基調に、白いマントがたなびく聖騎士然とした姿。

ネプテューヌ達を退避させた彼は、宙に浮かぶ絶望と向き合う。

「アーク、ワン…時間と場所は合ってたけど、思ったよりこれは…」

背丈は大人に近いが、どこか成長過程にあるような、そんな感じの声。年齢は10代後半、高校生くらいといったところだろうか。

彼は剣を握り、アークワンを睨む。

「それでもやるしかない、か」

剣に炎を纏わせ、中空を蹴ってアークワンに斬りかかる。予測していたかのように斬撃は回避され、腹部に一撃を貰ってしまう。

一撃程度と慢心していたところもあったのかもしれなかったが、予想以上の攻撃で吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられる。

「ってぇ…こりゃもう一撃も食らうわけにはいかないな」

口の中に広がる血の味。

(時間が経てば回復はする。まだ行ける)

アークワンと彼は再度、その視線を交える。

剣を手に彼は一気にアークワンへと迫っていき、炎剣でアークワンを斬りつけ、反撃の隙を与えず、掴みあったまま地上へと落下。

しかし落下した程度で怯む相手ではない。今度は氷剣で斬撃を放つが、それもアークワンの腕であっさりと止められてしまう。

「まだだ!」

無数の剣をアークワンの背後に創り出し、一斉に射出。回避行動を取られるかと思いきや、アークワンはその剣を全て破壊。

(ッ…厄介だな)

そして間髪入れず腹を思い切り蹴り上げてくる。

「がはッ…」

高速で回避できるはずだったが、それを上回る速度での蹴撃。

嘔吐感に膝をつく。

慈悲のかけらもない拳が命を絶つべく放たれるが、紙一重でそれを避け、再び剣を作成、射出。

アークワンは腕を振るうだけでその剣を壊すものの、彼はそれは予測済みである。

腕を振り払ったタイミングを見計らい、ベルトからアイテムを抜いて剣にセット。火炎弾をアークワンに向けて放ち、僅かな時間稼ぎにすると、一旦その場から姿を消したのだった。

 

動きが止まる。絶滅タイムは一時、幕を下ろしたのだ。

「あ…あ、ぐッ…」

アークワンが解除され、人間の姿に戻る。

突如として訪れる苦痛。身体を蝕む悪意、絶望。

誰かと争っていた、ということは和真も認識しているが、それが誰だったのかは全くもって分からない。

しかしどこか、自身に似ているような感覚があった。

八坂和真という人間を熟知し、彼の戦い方すらも知っている。少なくとも和真は、そう思った。

「クソっ…誰なんだ、アイツは」

開いていない店舗の壁にもたれかかり、息を吐く。

アンデッドになった時よりも、アークワンは厄介かもしれない。なった時はあまり見ていなかったが、彼の手に今、1つのキーが握られている。

見て、触って、感じる。

「これがアークワン…」

腰には白をベーシックカラーに据えたドライバーが装着されている。

恐らくこれがアークワンのドライバーなのだろう。

外そうと思っても外れないため、これを外さない限り、ブレイドに変身する事も不可能というわけだ。

「はぁ…」

再び小さく溜息を吐く。

「お、いたいた」

「あなたが八坂、和真ね」

和真に声を掛けてきたのは、薄紫に黒いパーカーを着た少女であった。お供にクロワールがいるあたり、この2人はグルなのか。

「何だ、あんた?いや、どこかで聞いた事のある声だな?気のせいか」

「初めまして、だと思うけれど。私はネプテューヌ。まぁ、私は何度かあなたを見ているけどね」

「ふうん…そうか、ミーナ隊長みたいな声だと思ったけど。つーかクロワールがいるってこたァ、2人は知り合いか。殴りてェとこだけど、正直殴る気が起きん」

「ま、だろうな。アークワンに適合できたのは、飛電或人ただ1人だったしな。人間じゃあな」

「飛電?或人?」

「別の世界の人間だ。ともかく、少し厄介な事になったな」

「ええ、彼の介入は予想外だったわ」

名前は分からないが、恐らく先ほどアークワンだった和真と戦った相手の事だろう。

「彼は何者なんだ?どうせ、また戦う事になりそうだけどな」

「言えないわ」

「言えない?どこかアイツは俺に似ている気がしたんだ。確かめる必要があると思うんだがな」

「正直想定外すぎた。いくらオレでもこればっかりはなぁ」

言い淀むネプテューヌとクロワール。

「って…えっ!?ネプテューヌ?!」

「何だよ」

「ネプテューヌってここの女神じゃねえの?!何でここに?!」

「今更ね。私はここのネプテューヌとは別の次元のネプテューヌ。プルなんとか?が守護してる方の世界のネプテューヌなの」

「え、あーじゃあ女神じゃないと。人間なのね」

「そうなるわね」

「なんだよ、めちゃくちゃ焦ったじゃん。女神目の前にしてたら、俺殺されてしまうからな」

「結構あっさり受け入れてたけどな」

ともかく。元凶はクロワールであるとしても、このアークワンの力をどうにかして剥がさねばならない。

「クロワール、お前このアークワンのドライバーとキー、俺から剥がす気はねえのか?」

「おもしれーことするっつったろ。流石に相手が相手とはいえな。面白おかしくするのがオレの役目だからな」

「クロちゃん、いい加減にしないとまた本に入れるわよ」

「いやいやそれは待って!流石にそれは痛いんだから!」

「あークソ、ドライバーはこのまま、キーもこのままか」

追いかけっこをしていたクロワールとネプテューヌだったが、突如としてクロワールは姿を消してしまった。

「えっ?」

「逃げたわね。クロちゃん追うから、また後でね」

そう言って去っていくネプテューヌ。

「いや、嘘だろ。置いてくのかよ!」

近々また会うような気がしないでもなかったが、今するべきことは決まっている。

どうにかしてこのドライバーとキーを隠し通し、再びアークワンに変身しないようにしなければならない。

先の変身はクロワールによる強制変身だったが、何をきっかけに変身してしまうか分かったものではない。自身で制御することが難しい分、いつ暴走するかも把握できないのだ。

暴走に把握も何もないのだが。

「とにかく、誰かに匿って貰わないとな」

そう呟き、和真は瓦礫の山と化したプラネテューヌ市街地とは逆の方へと歩き出した。

 

どうやら肋骨を少しやられてしまったらしい。あのフォームには回復能力が備わっているが、それでもカバーしきれなかったか。

どちらでも構わない。

プラネテューヌ教会へと辿り着くと、彼は扉を開いた。

「お邪魔、します」

「あなたは…?」

「ああ、さっきの白マントのです」

正直この言い方はしたくなかった。白マントというと、村雨白秋と間違えられそうだし、第一マントがメイン装備というわけではない。

「先程の人でしたか」

「なになに、さっきの人?助けてくれた人?なんか、私のこと知ってたっぽかったけど。私有名人?もしかして有名人かな?」

「まあ、ネプテューヌさんは。守護女神ですからね」

「しかしあなたがあの破壊を行った人物と違うという証拠は…」

「これで、納得してもらえますかね」

そう言って彼が差し出したアイテムを見、イストワールはそこに書かれた文字を読み上げた。

「タドル、レガシー?」

「仮面ライダーブレイブ、八坂真二。それが俺です」

 

 

 

 

 




はいどうも。
ウチのテレビが壊れて泣きたいけど、3日続けて低クオリティでお届けしております、クソザコ作者。
もう和真主役じゃねえな。
いや、真二か。
真二の正体分かってないからね、って言いつつ、読者の人薄々気付いてるよねえ。たぶん。
皆そういう類のは読んでそうだし、アニメも見てるだろうから。
テンプレになりそうだし、今さら新キャラって言われたら泣いてしまう。
泣かんけど。大人だからね。一応主人公20歳なってないはずなのに、2日酔いとか言ってるからね。まあ作者の私が2日酔いしたんだけど。
トリスあたりのウイスキーの割ってないやつで。
トリスだったかな、覚えてない。
隼鷹飲みは良くない。てか隼鷹ウイスキー飲むのかな?
ちなみに母に怒られました。
父の買ってたのを無断で半分以上空けたからね。そりゃそうよ。
意外と良いよね2日酔いってことで。
でも登場キャラには飲ませません。
じゃ、近いうちにまた最新話書くね。
期待しないで待っといて。
じゃ、またねー(ネプリバ3の周回プレイしてると思うけど


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2人の八坂

目が霞む。頭が重い。風邪だろうかと疑うが、それが偽りであると気付くのに時間は要しない。

悪意が身体を侵していく。否、これはアークの意志そのものだ。

飛電或人という奴はこれに適合したと言っていたが、彼もこうしてアークに身体を蝕まれていったのだろうか。

「がっ…」

大きめのコートを拝借したのでアークワンドライバーは隠せているはずだし、アークワンのキーもポケットに入れて手放している。

しかし腰に常時装着されているドライバーからの侵食というのは、どうにもできないものだった。

絶えず送り込まれる、絶望や絶滅といった負の感情。否、これは感情などでは言い表せないほどのものだ。

「クソッ…コイツぁ、ちとばっかし厄介かもな」

クロワールの言う『おもしれーこと』というのは、和真が思っていたものとはレベルが違いすぎた。

中心部から遠ざかり、和真はやがてバイクを置いていたところまで戻ってきた。

(バイクはある。けど壊れてるから直して貰わなきゃいけないか)

バイク屋や自動車屋は見当たらないが、少なくとも誰かに聞けば修理工場の1つや2つくらいは紹介してくれるだろう。

「で、そういう情報が集まってんのは向こうなんだよな」

中心部。彼が破壊を行ってしまった場所である。

朧げにしか覚えていない事といえば、4人ほどの少女、らしき存在を攻撃してしまったこと。しかも彼女達が何者なのか、知らないまま、破壊衝動に突き動かされて彼女達を攻撃した。

「生きてる事を願うがなぁ」

その後1人の少年と戦ったというのははっきりと記憶している。

その少年が、自身に非常に良く似ているということも。

「幸いなのはこの顔を知られてないってことか」

たぶん知られていない。監視衛星でもなければ。

「はぁ…ちと怖いけど行くしかねえな」

怠そうにバイクに跨り、和真は元来た道を戻り始めた。

 

一旦襲撃は収まり、イストワールやネプテューヌは、八坂真二なる人物から状況説明を受けることとなったわけだが。

「アレは、何者なんです?」

「奴はアークワン、悪意の塊さ。俺はアレを倒すためにここに来たんだ」

「ここに出現するって分かっていたんですか?」

「時間と場所は。ただ誰がアークワンに変身しているのかまでは、分かっていない。それを突き止めるのも仕事の1つだ」

「なんか口調変わってない?」

「あ、すみません。ちょっと真面目なこというと、こうなってしまうもんで」

「構いませんよ。ですが…そのアークワンが誰なのか分からないことには倒しようがありませんね」

「それではまた被害が出かねない、と。プラネテューヌで聞き込みでも?」

「いいえ、まだ良いでしょう。下手に不安要素も増やしたくないですし、被害が出たのはまだ中心部だけですから。私達だけでなんとかしましょう」

「分かった、なら常に警戒しておこう。アークワンの正体は俺も掴んでいないからな、ここにいるの以外は全て警戒対象だ」

この教会にいるのは女神候補生のネプギア、ユニ、ロム、ラムと、守護女神ネプテューヌと教祖に位置するイストワール。そして仮面ライダーブレイブ、八坂真二。

あと信用に足る人物といえば、他国の守護女神くらいか。

まぁ女神候補生は運悪くやられてしまったわけだが、その内各国の守護女神が女神候補生達を回収するためにも、ここを訪れるはずだ。

「さて、街見回ってくるか。何かあったら連絡よろしく」

肋骨の痛みはなくなり、どうやら治癒が終わったらしい。

ひとまずパトロールも兼ね、連絡先をイストワールに渡すと、真二はプラネテューヌに繰り出した。

 

時空転移システムが壊れているとはいえ、こうしてバイクとしては使い物になるようで、移動手段として多少は助かっていたわけだが。

プラネテューヌを中心部へと進んでいくと、破壊の傷跡がありありと分かるようになってきた。

しかもこの破壊活動はアークワンのものだが、結局のところ彼自身が行なってしまったと言っても差し支えない。

「思ってたよりひでえな」

いつまでこの悪意が続くか分からない。早いところアークワンのドライバーを外さなければ。

「一応その前にバイクを修理して貰わんとな」

すぐにでも移動が可能なように、バイクの時空転移システムは誰かに直して貰う必要がある。和真自身の修理スキルでは、このような邪神バイクは手に負えないのだ。

(忘れかけてたけど、このバイクってアト子さんが作ったやつなんだよね、確か)

そうこうしているうちに和真は、プラネテューヌの中心地にある大きな建物のところまでやってきた。

「何だ?この建物」

アークワンが暴れまわったところから少しばかり離れているようで、破壊の跡は見受けられないようだ。

しかしこの建物だけ、周囲のものとは違う何かを感じる。

「守護女神って奴がここに祀られてたりするのかね」

バイクから降り、正面の扉を開いて和真は声をかけた。

「どうもー、ちょっとお聞きしたい事があるんですけどー」

「はい、どちら様ですか?」

「あーっと、八坂和真ってもんです。バイクが壊れたんで、修理できそうなこと探してるんですけど」

「八坂?真二さんのお知り合いですか?」

「しんじ?真二?いや誰だそりゃ」

「いえ、人違いだったようです。それで、バイクの修理ができる場所をお探し、と?」

「ああ、特殊な装置がくっついてるんで、俺には直せない。マッドサイエンティストくらいの頭のヤツなら直せると思うが」

「あーそれなら良いの知ってるよ!」

現れたのは薄紫の髪に、白と濃紫の服の少女。外見年齢は14、5といったところだが、この見た目は間違いない。

「ネプ、テューヌ?」

「あ、私の事知ってるんだね!私ってばやっぱり有名人!」

喜ぶ小さいネプテューヌ。

見た目はあの大人ネプテューヌを幼くしたような感じではある。

ふと大人ネプが『私はこの次元のネプテューヌとは別のネプテューヌ』と言っていたことを思い出す。

(このネプテューヌが、ここの守護女神ってことか?)

ここではこの幼そうなネプテューヌが、本来のネプテューヌなのだ。

しかしなぜか俯瞰するような形で、彼女を見た記憶がある。

「お姉ちゃん、お客さん?」

そう言って後から現れたのは、長髪の少女。

「あぁ…」

彼女も見たことがある。

あの謎の騎士との戦いの記憶が色濃くなっていたが、彼の記憶には刻まれている。彼女は和真が攻撃してしまった少女の1人だ。

こちらの顔が見られていないのが、せめてもの救いか。

「大丈夫ですか?なんか分厚いコート着てるみたいですけど」

「まあ、ちょっとね。それでどこなんですか?直してもらえそうなところは」

「ラステイション。そこに誰だっけ、あのーなんか詳しい子がいたはずだから、その子当たってみてよ」

「なんつーアドバイス。ま、とりあえず行ってみるよ。ありがとう」

礼を言い、和真はその建物を後にする。

女神がいるというあたり、なんともファンタジックな世界観だが、となればここは教会なのだろうか。

(プラネテューヌ、教会か)

念のため地図は渡してもらったので、これで迷うことはないはずだ。

そうしてバイクのエンジンをかけ、和真は一路ラステイションへと向かったのだった。

 

和真がプラネテューヌ教会を去ってから数刻ばかり後、プラネテューヌ教会の扉は再び開かれた。真二が戻ってきたのである。

「どうでした?」

「特に何も。怪しげな人はいないし、そういう人も見当たらない。こっちは何かあった?」

「いえ、怪しい人は。ただ…」

「ただ?」

「真二さんと同じ八坂を名乗る人が」

僅かに表情を変える真二。

「名前は、何だった?」

「八坂、和真と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうもどうも。
長期休みの時だけ頻繁に投稿するクソ作者でございます。
久しぶりに対魔導学園35試験小隊読んだの。
雑魚小隊ね。
杉波斑鳩と二階堂マリがやっぱり好き。
そういやアニメのopアフィリアサーガなのね。ねぷねぷだわ。
つーわけで早ければ明日、遅くても明日、か明後日。には次の話投稿できる、と思います。
リバース1やり直してキャラ把握し直そうかな。
てかよく考えたら4女神しかメインパーティで使ってないの。
MAGES.とか使いづらいって思って後衛にしてた。
その時の俺は。
ネプテューヌ=パープルハート拘るからな。
リバース3で無限ノ加護だっけ?もネプテューヌに付けてた。
アレってネプテューヌにしか付けられないんだっけかな。
ま、とにかく。
ネプテューヌのメインストーリーと関係なくなってきたから少々不安はあるけれども、まぁがんばりましょ。
じゃ、またね


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黒の大地ラステイション

「八坂、和真?」

真二は思わず聞き返していた。非常に良く知る名であり、彼に最も近い存在。

そして彼を生み出した人物でもあり、彼に全てを教え込んだ。

「本当なのか?本当に八坂和真って言ったのか?」

「ええ、はい」

ここにいるはずがない。ここに彼がいるという情報は聞いていない。

何かがおかしい気がするが、ともかく彼をここから逃がさなければならないだろう。ここで死なれては困るのだ。

「彼は、どこへ行くって言っていたんだ?」

「ラステイションです。バイクを修理したいと」

「バイク?」

そんなものに乗っていた記憶はないが、まぁ真二の知らないところで乗っていたのかもしれない。

出て行こうとする真二に、イストワールは声をかけた。

「どうするつもりですか?」

僅かに逡巡。しかし真二は覚悟を決めたように、扉へ向かった。

「ラステイションに行く。八坂和真に会いにな」

外に出ると真二はポケットから錠前を取り出した。それをほいっ、と投げると錠前はエアバイク型のマシンに変形。

モチーフはタンポポあたりだろうか。

真二はそれに跨ると、ラステイションの方角へと飛んでいった。

 

近くで見るとラステイションというのは、『黒』が多い国なのだということが分かる。機械があちらこちらで動いており、工場らしきものも複数存在している。

「機械の国なのか、ラステイションて。こりゃあ修理してくれる人も簡単に見つかりそうだな」

こう言っている和真だが、プラネテューヌとラステイションの間に掛かっている輸送用と思しきルートを強引にバイクで突っ切ってきた。

バレたら少々まずい状況である。

「ぐあっ…」

別の事をひたすら考えてなんとかしていたが、こちらも限界が来たらしい。

「あ、アーク…チクショウ、こんな時にッ…」

乗り捨てるような形でバイクを路肩に停め、壁に手をついて体を支えながら、裏路地へと転がり込む。近くに窓もなさそうで、これならば誰かに見られる心配もないだろう。

(ウルトラマンみてえだな)

コートを脱ぎ捨てると、既に顔を含め、全身がアークの意志に蝕まれつつあった。飛電或人がこうなったかは知らないが、和真は人間とはいくらか異なる存在であり、アークは一度の変身で和真の身体を乗っ取ることができなかったのだろう。

だから常にアークの意志を送り込み続けた。洗脳や侵食とでもいわんばかりのレベルで、和真を悪意で蝕んだ。

「勝手に動くな…ッ」

ポケットに入れていたはずのアークワンのキーが禍々しいエネルギーを発しながら、アークワンドライバーにひとりでにセットされる。

もはやこのキーとドライバーが意志を持っているかのようだ。

『アークワン』

「外せ!外せっ!外れろよっ!」

キーを外そうと試みるが、遅かった。

『シンギュライズ!破壊・破滅・絶望・滅亡せよ』

『コンクルージョン・ワン』

悪意の塊、究極の絶望を体現するアークワン。再びそれはこの世界に降り立った。

絶滅タイムが始まる。

「ああああああああッ!」

変身時に放出されたオーラが周囲の建物を吹き飛ばし、瓦礫を形成、その中に彼は1人立つ。

獲物を求める獣の雄叫びか、絶望への抗いか。彼は悪意の中でもがきながら、声を上げる。

止めようとするが、止まらない。否、止めることができない。

「ぐっ…あッ…」

跳躍し、殴打し、蹴撃し、砕き、潰し、引き裂き。

全てを絶望させろ、悪意のままに。

アークの意志に従い、何もかもを破壊しつくせ。

(違う…そうじゃない!)

ラステイションの街並みを壊しながら、アークワンは重厚な黒の大地を俯瞰する。否、睥睨かもしれない。

血のような瞳には、感情というものは見て取ることはできない。

止まる事を知らず、アークワンはラステイションを壊していく。しかしその先に、アークワンは何を求めているのか。

「がッ…アーク…」

突如苦しみ出すアークワン。暴走するようにして放出された膨大なエネルギーが、工場から山岳地帯までを一瞬にして更地に変える。

和真とアークの意志が対立していると思われるが、誰かがアークワン止めなければルウィー、リーンボックスも含めてこの次元が滅ぶことは時間の問題といえよう。

果たして誰が、彼を止められるのだろうか。

 

エアバイクでラステイションに向かった真二だったが。

まぁ当然のように正式な出国入国手続きなどしてないので正面から入れるはずもなく、上空から見つからないように入ることになった。

(プラネテューヌ教会にいたんだから手続きくらいやってもらえば良かったな)

などと思いながらラステイション入りを果たしたものの、当のラステイションは彼の知る景色から様変わりしていた。

何者かがあたり一帯を破壊し尽くした。それも工場地帯から山岳地帯まで、深くえぐれるほどのパワーを持っている者だ。

「アークワン…今度はこっちに来たのか」

プラネテューヌで撃破できなかった責任は真二にもあるため、これ以上の破壊は容認するわけにはいかない。

今度こそ仕留めなければ。

「ここで決めなきゃな」

突如として市街地の一角が吹き飛び、その方向を目をやると。

爆風の中から現れる白と黒の身体に、赤い瞳の絶望。

反射的にタドルレガシーガシャットを取り出す真二。

ゲーマドライバーを装着、ガシャットのスイッチを押す。

「百式戦術」

『辿る歴史!目覚める騎士!タドルレガシー!』

剣を手に、白いマントを翻して、聖騎士は立つ。

「これで終わりだ!アークワン!」

剣に炎を纏わせて地を蹴り、肉薄し、斬撃を放つ。

当然ながら防がれ、反撃される事も視野に入れている。だからこそ。

「これで、どうだ!」

無数の剣を真二の後ろから射出。真二本人か、飛来する無数の剣か、どちらか片方に反応がいくはずだ。

だがアークワンはそれを上回った。

僅かな間で飛来する剣を破壊し、真二の腹にエネルギーを纏わせた拳を叩き込む。

「ぐっ…」

膝をつくが、彼は負けてはいない。

「それでも負けるわけには行かないんだよ!」

高速で剣を振るい攻撃するが、アークワンはそれを凌駕する。

戦いの中で仮面ライダーブレイブという存在を学習しているのだ。

こうなれば最早勝てるか、負けるかなどは問題ではない。

ここでアークワンを倒す事、それが今の真二に与えられた使命だ。

感情なき瞳でこちらを見るアークワン、それを跳ね返すように睨みつける仮面ライダーブレイブ。

「これならどうだ…」

『タドルクリティカルストライク!』

背中から純白の翼が展開され、それをはためかせて聖騎士は飛翔。

アークワンを見下ろす位置まで来ると、一気に降下に転じる。

翼でバランスを取りながら、右足にエネルギーを収束させたキックをアークワンに向けて放つ。

「終わりにしてやる!アークワン!」

『悪意』『恐怖』『憤怒』『憎悪』『絶望』『闘争』『殺意』『破滅』『絶滅』

『パーフェクトコンクルージョン』

禍々しいエネルギーがアークワンの右足に収束。高速で降下してくるブレイブに向けてハイキック。

常人を遥かに超えるエネルギーを持って放たれた両者のキックは凄まじい衝撃波を生み出し、既に瓦礫と化した周囲のものも含め、あらゆるものをその場から吹き飛ばした。

 

残るのは2つの人影のみ。仮面ライダーブレイブとアークワン。

立ちこめる砂埃の向こうにシルエットを認められるが、既にお互い仮面ライダーのものではないようだ。

正直こちらがダメージを食らうことは想定していたが、アークワンがダメージの蓄積で変身解除に追い込まれたとは考えづらい。

意図的に変身を解除している可能性も考えつつ、慎重に近づいていく。

「げほっ…アークワン、もう逃げられないぞ」

拳銃も念のため携行はしているが、撃つことはないだろう。

「覚悟し…」

言い切ることが出来なかった。言葉が繋げられなかった。

「覚悟しろよ」と言うつもりだったが、彼を見て言う事はできなかったのである。

瓦礫の中からアークワンだった男は、ゆらりと立ち上がった。

その男はいくらか若いとはいえ、真二の良く知る顔をしていた。

「さっきの、ライダーか」

「真二、です」

敢えて苗字は伏せておいた。真二のことを知らなそうだし、ここで彼に下手に自身の存在を知られるのも得策ではないと考えた次第である。

「真二って言ったな?変な頼みだと…分かってるんだが、アークワンのドライバー、外せないか?」

「えっ」

「外せないかって…聞いてるんだ。俺はアークの意志に逆らうのが、精一杯なんだ。アークも制御できんから、この有様さ」

アークに全身を侵食されていながら、アークワンの意志に抗えている時点で中々凄いものではあるが、どうやら彼を見る限り、アークはだいぶ深く入り込んだようだ。

刺繍を更にグロテスクにしたような赤と黒の模様が、腕、足、顔に刻み込まれており、服の所々破れた部分からも胴体に刻み込まれたそれがありありと分かる。

「早く、してくれ。俺には…」

再び男はアークワンへと姿を変える。苦しみ、もがきながら、跳躍して彼はその場から姿をくらました。

「何なんだ!何なんだよ!俺は、俺はどうすればいい…どうすればいいんだよッ!」

ぽつりぽつりと雨が降り始める。

彼の悲しい叫びが、ラステイションに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最新話ですどうも久しぶりじゃないね、24時間経ってないか。
つーわけで仮面ライダーあるある。
重要なシーンで雨が降る。結構雨の中の変身、好きなのよね。
平ジェネフォーエバーでもビルドとジオウ、雨の中の変身してたからね。
てかどーすっかな、このまま4つの国破壊してぐだるのもアレだし、また新キャラ出していい加減アークワンのヤツ外してもらうか。
和真くんブレイドがアイデンティティみたいなとこあったし、これじゃあ主人公闇落ちよ。
いやまぁ今年流行りみたいだけどさ、ヒーロー闇落ち。
つーか闇落ちこれ以前に書いた事ないはずだし、慣れてないんだよね。ぐだってしまいそう。
というわけでたぶん次の話、別のライダーまた出ます。
というか出さないと和真アークワンの話終わりません。たぶん。
ベストマッチ2020にすっかな、次のタイトル。
ビルドだろうな。出すの。
出すときはオリキャラだと思うから、ごめん。
戦兎や葛城じゃなくて。
ジオウで時間干渉とかの方が強いっちゃ強いけど、うーん今回はちょっと悩みどころ。
たぶん明日か、明後日。
じゃ、またねー



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アンデッド・レガシー

アークワン=八坂和真が真二の前から姿を消し、1時間余りが経った頃。

ラステイションに半ば強引に押しかける形で、ネプテューヌとネプギア、ユニの3人はやってきていた。

ユニは帰国するのと変わらないが、ネプテューヌとネプギアは無理を言って付いてきていたので、まあいーすんもとい、イストワールの仕事が増えたのは言うまでもないことであった。

そんな3人をノワールが出迎える。

「久しぶり!ラステイション!」

「なんでそんなテンション高いのよ、この状況で」

「お姉ちゃん、少しは周りを見たほうが…」

「いや、まぁそうなんだけど。これ見るとテンション下がるじゃん」

破壊の爪痕が残る風景。かつての工業都市としての面影は無くなっており、世紀末感を醸し出している。

煙があちこちから上がり続け、サイレンは止むことはない。

「何者かが破壊活動を行ったらしい、とは聞いているのだけど。その正体までは掴めていないのよね」

ノワールは別の場所で仕事があり、ラステイションには丁度いなかったのだという。神宮寺ケイは教会にいたそうだが、連絡が行くまでなぜか時間がかかってしまったため、状況を把握できたのは、アークワンが破壊活動を始めてからある程度経ってからだった。

「でもこれ、もしかしなくても」

「アレだよね」

「何よ?」

「アークワンってやつの仕業じゃないかなーって」

「アーク…ワン?」

ノワールはどうやらケイから何も聞いていなかったらしい。ネプテューヌはまあ、まともに説明しそうにないので、ネプギアが真二から聞いたアークワンの情報をノワールに伝えた。

「悪意の塊?そんなものがここに?」

「たぶんこの状況もその、アークワンが破壊活動をした結果だと思います」

「厄介ね。この国のどこかに、アークワンが潜んでいるってことでしょ?今破壊活動は見受けられないし」

「そうだけど、今回はちょっとなー」

「何よ」

「私の手には負えないかなーって」

「何を言ってるんだ?アークワンを止めないとこの世界は滅びるぞ。まぁプラネテューヌで取り逃がした俺の責任でもあるけどな」

「真二?」

彼女たちの前に現れたのは、先ほど女神達の預かり知らぬところでアークワンと戦った、仮面ライダーブレイブこと八坂真二。

傷が癒えていない箇所もあるようだが、その瞳には強い意志が宿っているのが見て取れる。

八坂和真を救うという決意のもと、彼は女神達の前に現れた。

「救援は呼んだ。そのうち来るはずだ。アークワンは、俺が止める…いや、救う。そのために協力してもらいたい」

 

和真の意識は、既に朦朧としていた。朦朧としているのか、していないのか、そもそも意識があるのかどうかすら、今の和真には分からない。

真二と名乗る少年の前からアークワンとなって去ったが、あれから一層アークの意志を抑え込むことが難しくなってきた。全身をアークの意志に蝕まれたこともあり、意識をはっきりと保つ事すら危うい。

「早く、ドライバーを外してくれ…誰か…」

裏路地を人に見られることもなく、孤独に彼は歩く。こうなってしまうと表通りを歩く事すら満足に出来ない。もっとも表通りも彼のせいで壊れ果てているのだが。

「あーコイツはやべえな」

ふらつく彼の耳に届く、聞いたことのある声。

「クロ…ワール…」

「見つけたわよ!クロちゃん!」

弱る和真に一瞬気を取られたのが命取りとなり、クロワールは大人ネプに捕まってしまう。

意識があればその一部始終を見ることができたろうが、今の和真には

大人ネプの姿を捉えることもままならない。

支えることができず、ついに和真は地面に倒れ伏す。

「こうなったら助けるしかないわね。クロちゃん」

「いや、まあ」

「やるわよね?」

「やるやる、やるから!それ怖いんだってば!」

遠のく2人の会話。和真の意識は、深く深く沈んでいった。

 

真二と合流…正確には今回は真二が協力を求めてきたわけだが。

ともかく女神一行は場所をラステイション教会に移し、彼の話を聞くことにした。救援はもうすぐ到着するとのことらしいが、一向に現れる気配はなかった。

「アークワンと、その変身者を分離させる?」

「ああ、アークの意志ってヤツが変身者の中に入り込んでいるんだ。実物を見るのはたぶん初めてだと思う。けど、どうにもそのベルトと身体が融合しているらしい」

「それでベルトを破壊すれば身体が壊れるし、身体を破壊してもベルトが残ってしまうと」

「いや、少し問題がある。その…変身者なんだが、ほぼ死なない。アンデッドだ」

「ゾンビってこと?」

「近いけど、違う。でも今回は似たようなモンだと思っていい」

「いくらアークワンで暴れても、身体自体が生き続けるから、死ぬ事はできない。従ってアークワンも消える事はない、と」

八坂和真のアンデッドという肉体を取り込めば、アークワンは不死の存在に昇華する。しかしそれを分離させられれば、八坂和真はアンデッドとしての存在に戻ることができる。

アークは不死の存在ではなくなり、変身者もいなくなるから、アークワンという姿を維持できなくなる、という寸法である。

「けどこれ以上プラネテューヌやラステイションに迷惑は掛けられない。もう女神候補生に迷惑掛けてしまってるから、何も言えないけどさ。とにかくいくら破壊してもいい場所はないか?」

「…1つだけあるわ。私たちあまりあそこに良い思い出はないけれど」

ノワールの言葉を察したように、言葉をつなぐユニ。

「ギョウカイ墓場…」

超次元の闇。唯一不可侵、何人も寄せ付けぬ死の領域。

四方を山岳地帯に囲まれたゲイムギョウ界の墓場。

「そこなら、良いんだな?転送する事は?」

「できなくはないが、オススメはしない。あそこだけは座標が固定できないから」

「構わない。アークワンを止めるためだ」

最早後に引く気はないらしい。

そこがどのような場所か真二は知っているのか、それとも知らないのか。どちらによ彼は進むだろう。

「待たせたな、俺も行かせて貰おう」

背後から響く声。ラステイション教会の扉を開け、1人の青年がこちらへと歩み寄ってきた。

「忍野!」

「悪いな、来るまで少し時間かかって。俺は忍野巧、仮面ライダービルド。創る、形成するって意味のビルドだ。以後お見知り置きを」

「相変わらずキザったらしい自己紹介なことで。とりあえず、コイツが俺の呼んだ救援だ。忍野、事情は分かってるな?」

「問題ない。アークワンと変身者の分離だろう」

「神宮寺ケイ、俺と忍野がアークワンと接触したら、ギョウカイ墓場まで転送してくれ。座標は問わない」

「分かった」

真二と忍野は頷きあうと、ラステイション教会を後にしたのだった。

 

深い闇の底。絶望に満ちた大海原の底で、和真は目を覚ました。

「ここは…?」

起きたらヘンテコな場所にいるとか、そういうことには慣れたつもりだったが、今回は少しばかり事情が異なる。

アークワンだ。アークの意志に蝕まれ、彼は意識を失ったのだ。

ここには誰もいない。孤独で、冷たい。

その時だった。ぼんやりとした人影が和真の前に現れた。パーカーの上に黒いスーツ、蛍光色のスニーカーという出で立ちの青年は、和真と静かに向かい合う。

だが青年の輪郭はすぐにぼやけ、やがて見えなくなった。

「誰なんだあんた一体…」

彼を追おうとする和真だったが、その身体を謎の力が抑えてくる。

いや、これはアークの意志か。

「俺に…破壊を求めるのか」

恐らく死ぬことがないであろう彼をもってすれば、永遠の悪意が生まれるのも時間の問題だ。その前にアークワンドライバーを外し、キーを破棄しなければ。

早く止める必要がある。

もがき苦しみながら、彼の身体は上昇していった。

 

「目、覚まさないわね」

「そうだな」

崩壊していない近くの建物の一室、そこのベッドに和真は寝かされていた。ここまで運んだのは大人ネプであり、クロワールはその手伝いといった具合である。

どうやら大人ネプの予想以上にこのアークワンは彼との融合を果たしているらしく、簡単に取り除くことはできそうになかった。

「クロちゃん、ホント相手は選ぶべきよ」

「いや、ネプテューヌから聞いてた『ジョーカー』ってのが気になってな。どんなモンかって思ったんだよ」

「手を出すようなものじゃないと言ったわよね?。ま、今更後の祭りだけど。あ、目覚めたみたいね」

「…ネプ、テューヌ?」

身体を起こしたものの、両手に違和感を感じて見てみると。

(手錠?)

「念のため。気休めよ」

どうせこんなものがあってもキーは勝手に装着される。本当に気休め程度なのだろう。

今は起き上がれないと分かり、どすりとベッドに寝転がる。

少し出てくると言って大人ネプは部屋を後にし、部屋にはクロワールと和真だけが残された。

「こっからもっとおもしれーことになるぜ」

クロワールは小さく呟き、和真の意識は再び暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも今回バトルありません!
大学の教授にイライラしております、テレビが壊れたクソザコ作者でございます。
なんかめちゃくちゃだな。ま、とにかく今回はアークワンとの決戦前のシーンてことで。
ビルドも出しました。一応名前少しは拘ったつもりなんだけど、そんなに拘れてないかな。
つーわけで次の話はそうだな、明日無理そうだし、明後日かな。
期待しないで待ってて。
つーかギョウカイ墓場詳しく覚えてる自信ないし、リバース2やり直そうかな。
リバース2はネプギアとユニを結構育ててたね。
じゃ、またねー


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決戦、そして

ラステイション教会を出た真二と忍野は、アークワンを探すため、ラステイションの市街地へとやってきていた。

「結構手酷くやられたな」

「まあな。復興には時間がかかるぜ、これは」

市街地ならば和真がいる可能性も大きいと考えて来たわけだったが、歩けど歩けど人の影も見当たらない。

恐らく大半の人は避難したのだろうが、和真としての姿はともかく、アークワンの姿すら見つけることもできないでいた。

「おかしくないか?静かすぎる」

「確かに。破壊の音も聞こえない」

警戒しながら進む2人だったが、突如として上空から攻撃され、互いに間一髪で回避。物影に隠れて攻撃が放たれた方を見上げると、そこには彼らが見つけようとしていた悪意が滞空していた。

「ん?前よりやばくなってそうな…」

「そうなのか?分からないが」

再度放たれる攻撃を躱して真二はゲーマドライバー、忍野はビルドドライバーを取り出して装着。続いてタドルレガシーガシャット、ジーニアスフルボトルをそれぞれ取り出す。

「百式戦術」

『辿る歴史!目覚める騎士!タドルレガシー!』

「実験の時間だ」

『グレート!』「オールイエイ!」

「ジーニアス!」

「イエイ!」『イエイ!』「イエイ!」『イエイ!』

「Are you ready?」

「変身」

『完全無欠のボトルヤロー!』「ビルドジーニアス!」

『スゲーイ!』「モノスゲーイ!」

真二は白いマントをはためかせた水色の聖騎士に、忍野は60本のフルボトルを全身に刺した、白いジーニアスフォームに、変身する。

「1つ言っていいか?」

「何だ?」

「お前、変身やたら長い。相変わらずイエイどんだけ言うんだ」

「4回だ。変身時間はほぼ同じになるだろ、映像だと」

「そういう話じゃないんだよ」

言い合う真二と忍野に再びアークワンの攻撃が放たれるが、今度は2人は避けなかった。

攻撃は直撃したかに見えたが。

「早速出番か」

ビルドが等身大のダイヤモンドのシールドを創り出し、アークワンの攻撃を防いでいたのである。

「俺がアークワンの動きを止める。その間に鎖で縛ってくれ」

「お前をか?」

「アイツをだよ!」

仮面ライダーブレイブは地を蹴り、アークワンに肉薄。振るわれた剣は当たる事はなかったがしかし、ブレイブはすぐさま体勢を変えてキックを見舞う。

アークワンはラーニングレベル6でブレイブに攻撃を仕掛けようとしたものの、背後から攻撃を食らい、振り向く。

ホークガトリンガーとドリルクラッシャー・ガンモードによる射撃。

意識がブレイブに向いていたところに、不意打ちを仕掛けたのだ。

どうやら不意を打たれたことに腹が立ったのか、アークワンはブレイブを掴むと、ビルドへ投げつけた。

「ちょっと待って待って!これは危ねえ!」

「アテにならないな。どいてろ」

投げ飛ばされてくるブレイブをローズのムチで縛ると、そこらへんに適当に転がす。

「ぐえっ…」

フルボトルバスターを手にビルドは飛翔、アークワンへと向かっていく。

「殺すなよ!」

「分かってる」

高速移動だけでなく様々なフルボトルの性能を活かしつつ、ビルドは着実にアークワンを追い詰めていったかのように見えた、が。

『悪意』『恐怖』『憤怒』『憎悪』『絶望』『闘争』『殺意』『破滅』『絶滅』『滅亡』

『パーフェクトコンクルージョン』

禍々しいエネルギーがアークワンの全身から放たれ始める。

「まずい!ケイ!転送しろ!」

既にムチを解いていたブレイブはケイに通信でそう叫ぶと、地を砕く勢いでアークワンへと肉薄、ビルドを屠ろうとする手を掴む。

直後、極光が彼らを包み込んだ。

 

3人が転送されたのはギョウカイ墓場の中心部。

いわゆる空間の汚染レベルが1番高い場所であり、他の時空とも繋がり易い、不安定な場所でもあった。

「…生きてるか、忍野?」

「少なくともお前よりはピンピンしてる」

そう言ってブレイブとビルドは立ち上がるが、アークワンはダメージを受けた様子はなく、静かに2人を見据えている。

「元気そうだな、アークワン」

「そうみたいだな。どうせ傷なんて1つもないんだろう」

ブレイブは剣を、ビルドは拳でもって、アークワンと対峙する。

ここで決着をつける。付けなければならない。

和真を救い出すチャンスは、もうここしかないかもしれないのだ。

これまで使っていない最後の技を使う必要も出てくるだろう。

「行くぞ、忍野」

「ああ」

刹那、すべてが始まった。

斬撃、殴打、蹴撃。アークワン、ブレイブ、ビルド、3者は宙を舞い、地を蹴り、攻撃を繰り出していく。

埒が明かないと見たか、ブレイブはビルドに声をかけた。

「忍野!俺がアークワンを吹っ飛ばす!そのタイミングで頼む!」

「任せろ」

『タドルクリティカルスラッシュ!』

音声と共にブレイブの握る剣から膨大なエネルギーが放出され、光の刃を形成。

その剣を手に、ブレイブは高速でアークワンに接近。反撃しようとするアークワンだったが突如として鎖で拘束された。

ビルドの援護である。刹那に鎖はアークワンには引きちぎられるが、そこに僅かな隙が生まれる。

「そこだッ!」

ブレイブは全力でその光の刃を叩きつける。手応えはあった。

見れば数メートルばかり後ずさらせることに成功している。

これだけか、いや、これだけ出来れば十分だ。

「勝利の法則は決まったな」

「ワンサイド!」『逆サイド!』

「『オールサイド!』」

レバーを回して必殺技を発動させ、ビルドは跳躍。

全身のフルボトルからエネルギーを噴出させ(背中から噴出してるように見えなくもないが)、一気に加速してジーニアスフィニッシュをアークワンへと直撃させる。

「効いてるか?」

「分かんねえって。忍野のジーニアスも賭けだったんだ、どう転がるのかは俺も知らない」

そう言いつつも、アークワンの身体に亀裂が入り、禍々しいエネルギーが溢れ出していく。

「これやっぱやばいんじゃないか?」

「ジーニアスの浄化能力意味ねえのか。なら力ずくでも!」

「真二!」

叫ぶ忍野。だが彼の言葉に耳を貸さず、真二はアークワンへと近づいていく。最早ダメージの蓄積を考えれば、いつ変身が解けてもおかしくはない。

(あと、少しで…)

手を伸ばすが。

突如としてアークワンから凄まじいエネルギーが放出され、ギョウカイ墓場そのものを崩壊へと導き始める。

全てを破壊しても、全てを繋ぐことはない。

空間が歪み、暗黒空間が口を開く。

森羅万象を飲み込む、虚無の空間。

「父…さん…」

アークワンは暗黒空間に飲み込まれ、そこから姿を消してしまう。

後に残されたのは、変身を解除された真二と忍野の2人だけとなった。

 

 

 

 




どうも。
少し短いですね、今回。
読者の方が思ってるような展開になってないかもしれないので、必ずしも期待に添えたとはいえないでしょうね。
ま、正直な話、この和真くん主人公なのに真二が主人公になりかけてたから、ちょっと本筋に戻そうと試行錯誤した結果でもあります。
でもアークワン正直今後も出すことになりそうです。
どこかでまた真二くんの出番もあるでしょうけど。
つーわけで意味深な終わり方で申し訳ないですが、今度は和真くん主人公のストーリーに戻ります。
と思わせて真二も出しますよ!たぶん、そう遠くない未来。
ファンタスティックドリーマーだね。
じゃあ近いうちにまたね。
今度はクオリティ上げられるように頑張る。
全部低クオリティだけど。


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守りたいもの

目覚めた時に浮遊感を感じず、手錠もつけられておらず、なおかつ誰にも監視されていないという状況を、これほど新鮮に、そしてありがたく感じたことがあったろうか。

しかも周囲が崩れかけた壁などではなく、古風な日本のそれである。金髪幼女はいないし、ミーナ隊長のような人もいない。

残念ではないといえば嘘になるが、こうした目覚めも悪くない。

「っしょ…っと」

身体をゆっくりと起こし、和真は布団の上にあぐらをかく。

(アレ?俺、こんな着物着てたっけ?)

ゲイムギョウ界まで着ていた服装ではなく、今彼が着ているのは水色の着物。まぁ詳しくはないので、ゆかたくらいの認識だが。

しかしあの出来事が嘘でないことは、彼は分かる。

覚えているのだ、体が。

「アーク…ワン」

未だに消えない、赤と黒の禍々しい模様。あの2人の力によってか、全体的に減ってはいるが、腕などに色濃く刻み込まれたそれは、薄くなっていく気配はない。

最もアークワンはあそこで破壊されたのか、それとも彼の中にまだあるのか、全くもって分からない。

だがアークワンドライバーやキーが見当たらない以上、一時的にかもしれないが、安全といえるだろう。

ならば動いても問題なしと判断した和真は布団から降り、部屋の引き戸を開く。

古めかしい木製の床をぺたぺたと歩き、階下へ降りていくと、何やら美味しそうな匂いが漂ってくる。誰かが料理を作っているのだろうか。

「おはよう、ございます」

台所らしき方へ声をかけてみる。すると1人の女性が姿を見せた。

「ああ、おはよう。ご飯はもうすぐできるよ、そこで待っててくれ」

彼女に従い、和真は畳の上に座り込む。

目の前にはさして大きくはないが、木製の座卓が置かれている。

少しすると台所から先程の女性が料理をいくつか運び、座卓の上に置いていった。

白米と味噌汁は分かるが、正直副菜などが何を使っているのかは不明だ。けれどもどれも美味そうで、なんというかここのところロクなものを食べていない和真からすれば、全てが御馳走に見えて仕方がなかった。

「いただきます…」

自然とそう言っていた。

 

気付けばぺろりと料理を平らげていた。

食レポとか慣れているわけではないが、簡単に言うとうまかった。

久方ぶりに生きている心地がした。

「とりあえずいくつか聞きたいんですけど。俺はなんでここに?あと貴女は誰です?」

「そうだね。君は昨日この家の前に倒れていたんだ。ボロボロの状態でね。衣服は全て変えさせてもらったよ」

少々恥ずかしさがあるが、まあ相手が気にしないというのなら、そういうことにしておこう。

「あの名前は?」

「ああ、名乗り忘れたね。私はシロガネ・カオリだよ」

どこかシロガネという名に聞き覚えがないでもなかったものの、おそらく無関係だろう。生徒会長にシロガネという青年がいる時代だ。こんなところにシロガネ姓が居てもおかしくはない。

「俺は…」

「八坂和真、だろう?」

「知って…いるんですか?」

「アト子から聞いているよ。世界を旅している子がいると。あのニャル子と八坂真尋の子だともね」

無関係ではなかった。むしろアトラク=ナクア星人の一族の者らしい。

その事実に少しばかり身構える和真だったが。

「別に私は君の旅を止めはしないよ。今いるこの場所も、君が元いた世界ではないからね」

「ではどうしろと?」

「君のやりたいようにやると良い。衣服は全て直してある。行くのも良し、ここに留まるのも良し。君が選ぶんだ」

しばらく考え込み、彼は答えを出した。

「俺は…行きます。世話をかけるわけにはいきませんし、この体をどうにかしなきゃいけないですから」

そう告げ、和真は身支度を整え始めた。幸か不幸か荷物は少なく、準備はすぐに終わった。

悲しきかな、ほぼラステイションに置き去りにしたからだったが。

シロガネ・カオリと名乗った邪神であろう女性に頭を下げ、和真は玄関の引き戸を開けて外に出る。

深く息を吸い込み、吐き出す。何となく後ろを振り返ってみると、和真が出てきたところには最早何も残っていなかった。

夢を見ていたのか、それともアレは現実だったのか。

(あ、ここどこなのか聞き忘れたな)

かなり重要なことを聞き忘れてしまったものの、市街地に出れば何か分かるはずだ。

あたりを竹林で囲まれているあたり、そこそこ歴史のある場所か。

石畳の道もあるし、奈良か京都の周辺の寺かもしれない。

景観から勝手に決め付けただけに過ぎないが。

(ま、行けば分かるだろ)

気を取り直し、ひとまず近くの駅を目指して和真は歩き出した。

 

近くの駅を目指そうと歩き出したはいいが、ふと無人駅というものがある事を思い出したのである。

その名の通り駅員がいない駅だが、人がいるであろう場所を目指して歩いて、そこに人がいないとなれば悲しくなる。

まあ悲しくなるだけで済めばいいが。

ならばと和真は一路、住宅地の中を進んでみたわけだ。

(全ッ然進んでる感ねえ)

しかし地面をのそのそと歩いていても、全然進んでいる感じがない。

スカイツリーを目指して歩いて意外と遠かったということを経験しているため、これ以上地面を歩くのは得策とも思えない。

ではどうするか。

屋根伝いに行けば良いのである。より広範囲が見渡せるし、程よい運動にもなる。

跳躍して近くの一軒家の屋根に飛び上がると、一瞬彼は視界の端に黒い影を捉えた。それを追うように空を見上げていくと、そこには。

(あれって…ネウロイの巣…だよな?)

ブリタニアの時よりも、ロマーニャの時よりも、遥かに力を増しているように見える。いや、気のせいではなさそうだ。

しかし何より驚いたのは、ネウロイの巣から現れたヒト型ネウロイが変化していたことだった。かつて宮藤芳佳や竹井醇子と接触した、ウィッチを模倣したヒト型ネウロイとはまた違う、別の姿に進化している。

「IS…か?あの姿」

双眼鏡で見える限りでも近距離格闘型、遠距離狙撃型、中距離型などが確認でき、その武装や飛行スタイルからも明らかにISが模倣されたことが分かる。

「じゃあここはISの世界、なのか?」

だがネウロイがISを模倣し、別の世界を侵略しようとしているという説も捨てきることはできない。

ともかく被害を抑えなければ。

家の屋根伝いに飛び移り、ビルの壁を走り上がり、更に跳躍し、コンクリートの地面を砕きながら着地。

「さてと…」

どうやら見た感じ、どこかの駅までやってくることはできたらしい。

いやこの見たことのある景色は。

「ここは…あのモノレールだな」

IS学園へと繋がるモノレールの駅である。

しかし辺りは阿鼻叫喚の嵐。ヒト型ネウロイ、しかもISの形をしたそれが人々を襲っているのである。

ネウロイを知らない一般市民からすると、未確認のISに襲われているようにしか見えないのだろう。

悲しいかな人を守るために配備された兵器は、亡国企業(ファントムタスク)という犯罪組織だけでなく、異形のバケモノにすらも利用された。

これが公になれば、兵器としてのISの評判は下がるかもしれない。最も篠ノ之束はそういったメディアのことは、微塵も気にも止めないのであろうが。

「君!逃げなさい!死んでしまうぞ!」

「…アンタ達は逃げてくれ。俺はアイツらを倒す」

避難を促す駅員か警備員かに声を掛けられるが、和真はそう返した。

サイレンなどが聞こえない以上、消防や警察、下手をすれば自衛隊もまだ出動できていない、最悪機能していないと見るべきだろう。

しかもIS学園の近くでありながらISが駆けつけていない、というのは異常事態という他あるまい。

ブレイバックルを取り出して装着、ターンアップハンドルを引く。

『Turn Up』

和真は仮面ライダーブレイドへと変身、彼に狙いを定めて急降下してくるネウロイを殴り飛ばす。

ネウロイは駅舎に大穴を開けるが、トドメには至っていない。

コアを破壊できていないからだ。

「行くんだ!」

足を止める人々に叫ぶ。これは彼にも責任がある。この時代にネウロイを知るのは、恐らく彼だけだ。

20世紀でやつらを駆逐し尽くすべきだったのだ。そうするべきだった。でもそれをしなかったツケが、今ここになって来ている。

ケジメをつけるタイミングなのかもしれない。

ブレイドはジャックフォームへチェンジ、空へと舞い上がり、強化されたブレイラウザーで応戦する。

(まさか臨海学校のタイミングを狙ってか?)

敢えてそれを狙ったというなら、1年生組が出てこないのも辻褄が合う。

(でもIS学園側から誰も出てきていないというのもおかしい)

生徒会長はいない場合であっても、打鉄やリヴァイヴの量産型くらいはあったはずだ。

(ハッキングされたのか?)

学園保有ISの起動に織斑千冬の許可が必要だったか忘れたが、そうだった場合、ネウロイ側が通信障害を起こしていることになる。

彼女は今臨海学校に行っているのだから。

「何がどうなってんだか分かんねえ!けど、とにかく最ッ悪ってことだけは分かるぜ!」

雷を纏わせたブレイラウザーでネウロイを斬り裂きながら、和真は叫ぶ。未確認ISを破壊した張本人として、いずれ彼がメディアで晒される可能性はゼロではない。だがそれでも構わない。

ネウロイとの決着は自分が付けると決めたのだから。

 

 

 

 

 




後書きスペシャル対談!今回はちょっと変えてみます。
あと低クオリティなのはいつもそうなんですけど、昨日投稿するって言ったのに出来なかったのはアカンなと。
細々とやってる身ですが、すみません。

和真「何これ?後書きスペシャル対談て、アンタ作者だろ」
作者「まぁまぁ、細かいことは気にしたらアカンよ。なになに、『和真くん最近弱い理由』?よし、対談終わり」
和真「突っ込まれたくないんだろ。ワルプルギス以降強敵と戦ってねえもんな」
作者「だってまどマギで書き始めたからワルプルギスくらいは倒そうと思ったけどさ…それに和真くん最近闇落ちしたじゃん」
和真「いやアンタが書いたストーリーだし、強敵と戦わせないから弱く見えるんじゃね?だから俺がアークワンになったら、真二ってヤツに主人公の座奪われかけたんだぞ」
作者「そろそろテコ入れ必要かなって。ヒロインいないじゃん、この作品。だから新キャラをね」
和真「確かにヒロインいないよね。マミさんそうかなって思ったけど、そうじゃなくなったし」
作者「ヒロインいないから弱いのかな、和真って」
和真「なんだ、誰かのために強くなれってか?絆ネクサスとはならんからな、俺は」
作者「やっぱヒロインいねえから弱いんじゃんお前」
和真「アンタがヒロイン書くの苦手とかぼやいてたんだろ!複数人での会話が苦手だからハーレムもの苦手とか!サシでの会話の方がやりやすいとか!」
作者「苦手とかじゃねえって。ヒロインってなんかね、書きづらいのよね。書けないわけじゃないけど。それに複数人会話ってネプテューヌ回は一応あったろ?」
和真「アレでもいーすんメインだったろうがぁ!」

というわけでしょーもないスペシャル対談終わりです。
ここでも低クオリティ安定ですね。
25〜30あたりは投稿できないと思うので、この週末頑張ろうかと。
ちょっと色々あって忙しくなるのよ。
あと今回の話はマジでオリジナル展開になると思うので、ハイ。
毎回展開遅くてすまんね。
じゃ、またねー


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21世紀のネウロイ

IS学園の上空で、戦いは続いていた。いつ決着がつくとも知れない、終わりの見えない戦いだ。

頼れるのは自分1人、助けは来ない。ネウロイは以前よりも遥かに強力になり、比較にならないほどに数も増えている。

肩で息をしながら、和真はブレイラウザーを握る手に力を込めた。

(俺の罪だってのか…これが)

世界を旅するのが自分のやりたい事だと思って生きてきた。しかし今目の前にある現実はどうだ。彼があの世界、あの時代、あの場所でネウロイを全て殲滅していれば、こんなことにはならなかった。

統合戦闘航空団が全て壊滅したから、今でもネウロイが生き残っているという可能性もゼロではない。

「俺が、全部中途半端にしなければ…ッ」

後悔と懺悔の涙が溢れ出す。

「ああああああッ!」

ブレイラウザーで眼前のIS型ネウロイをコアごと両断すると、キングフォームに姿を変える。

キングラウザーとブレイラウザーの二刀流でネウロイを屠りながら、ブレイドはネウロイの巣へと突撃していく。

妨害しようとしてくるネウロイをキングラウザーの一振りで斬り伏せ、更に奥へ奥へと彼は向かう。

「アレか!」

赤く光る結晶体らしきものを捉えると、一直線にそこへと進んでいく。

だがしかし。

地獄の門番がごとく、彼の前に現れる別個体のネウロイ。しかも今度は姿がやや異なっており、ウィッチでもなければ、ISでもない。強いて例えるとするならばそれは、彼の記憶にある1人の少女に酷似していた。

「黒…十香?」

黒い十香。反転することによる現れる、十香《プリンセス》のもう一つの姿である。反転はどの精霊を取っても危険であるが、十香の反転体は特に危険だとされていた。

(どこか不完全な感じはなくもないが)

しかし今彼女と対峙して不利なのはブレイド=和真の方だった。五河士道という、精霊に対する切り札を彼は今持ち合わせていない。

この十香が精霊ではなく、ネウロイの作り上げた模造品である可能性は高いが、確実に和真の不利は覆らない。

前に戦った時、ロイヤルストレートフラッシュで競り勝ったような気がするが、現状ネウロイ殲滅という目的がある以上、ここでロイヤルストレートフラッシュを使ってしまうと、ネウロイのコアを破壊できなくなってしまう。

要は彼女にロイヤルストレートフラッシュを使わずに、勝たねばならないのである。

「でもやるしかない、か」

二刀流からキングラウザーの一刀流へと持ち替え、反転十香へと突撃する。ぶつかり合い、火花を散らす二本の大剣。だが鍔迫り合いは僅差でブレイドが勝利。

黒十香の隣をすり抜け、コアへと迫るブレイド。

だがそれは十香に背中を見せるということでもあった。

ロイヤルストレートフラッシュをコアへ放とうとした和真は、膨大なエネルギーを背後に感じた。

「あ、嘘でしょ」

漆黒の光の奔流がキングフォームのブレイドへと放たれ、慌ててキングラウザーで防ぐ。後で思うと、あの時はロイヤルストレートフラッシュを十香に向けて放っていた方が、正しい選択だったかもしれない。

黒十香の攻撃を防いだは良かったものの、和真はそのまま更に上へと吹っ飛ばされてしまったのである。

「嘘だあああああああああ!」

ひたすら上へ上へ。

やがて雲海で上昇が止まると、今度は彼の身体は一気に地上に向けて落下していく。

飛行制御を試みたが全く反応せず、彼の身体はネウロイの巣を通過し、IS学園の敷地目掛けて猛スピードで落ちていったのだった。

 

「ってェ…」

またこのパターンか、いい加減にしてくれとは思いながらも、和真は寝床で身体を起こす。どうやらここは保健室らしいが、誰もいないようだ。

(保健の先生も臨海学校か?)

今回ばかりは身体もそこそこのダメージを受けたらしく、節々が痛む。最も、だからと言って甘えるわけにはいかないため、和真は扉へと向かっていく。

ドアノブに手をかけて開けようとした時だった。

背中にかけられる、聞き覚えのある声。

「久しぶりだな、和真」

「アンタ、またか」

「隣界あたりで会ったのが最後だったかな。今回は結構やばいことになったのは、まあ気付いてるか」

「ネウロイの事だろ。ISの世界への侵攻は想定外だったな。統合戦闘航空団がどうなったかは分からないんだが…」

「そこが説明が面倒でな。歴史が変わった、って一言で言っても何がどう変わったのか分からないよな」

「ああ。統合戦闘航空団は壊滅したのか?」

「結果だけ言えばストライクウィッチーズを含めた各統合戦闘航空団は、壊滅はしていない」

「良かった…」

先程思い込んで突っ走ってしまったが、そうでないのならば一安心。

胸を撫で下ろす和真に彼は続けた。

「だが、ストライカーユニットは無くなった。旧式の火薬を用いた銃もな」

「じゃあ何を使ってネウロイと?」

「ISだ。アレが対ネウロイ用の新兵器として作られたんだ。宮藤博士の遺した技術を使ってな」

「ちょっ、ちょっ、待って。何を言ってる?ISは篠ノ之束が作った兵器、だろ?対ネウロイ用の新兵器だなんて聞いてねえぞ」

息を少し吐き、慌てる和真に彼は続けた。

「歴史が変わった、ってさっき言ったろう?いや世界そのものが変化した、というのが正しいか。和真、お前のせいで交わるはずのない世界が交わり、あるべき姿をなくしたんだ」

「どういうことだよ!ISはIS、ウィッチーズはウィッチーズだろ!クロスオーバーすることなんてないはずじゃ…」

「お前はいくつもの世界を旅した。そのおかげでその世界の本来あるべき『流れ』ってものが乱れて、複雑に絡み合ったわけさ。それを直そうとしないまま、ここまでやってきた。今のこれは、いわゆる今までやってきたことのツケだ」

「そん…な…」

彼から告げられた信じられない事実に、和真は膝をつく。言葉にできない。統合戦闘航空団がなくなっていなかったのは良かったが、自身の行動が、様々な世界を掻き乱してしまったということを、受け止められなかった。

にわかには信じ難いが、言い換えるならばISサイドのキャラクターが消滅したということなのか。

「篠ノ之束が作ったわけじゃないってことは、篠ノ之束は、この世界にはいない、のか?他の皆も」

「さあな、それは自分で確かめると良い」

「…分かった」

「ま、あのIS型ネウロイは、いわゆるウィッチ型ネウロイと同じ理屈に過ぎん。この世界線でのウィッチをコピーしただけだからな。そこは同じだ」

IS学園の皆がいない可能性。であれば、彼は大きな勘違いをしていたのではないか。

「じゃ、じゃあ、臨海学校だと俺が思ったのは…」

「あるわけないだろ。お前の知る専用機と同じ機体は無論存在してるがな、全て欧州で対ネウロイ戦に使用されてるからここには無い」

「あ…ぁ…」

和真が消してしまったのは天空の魔女の歴史ではなかった。ISの世界のあるべき姿だったのだ。2つが融合し、その結果としてどちらでもない新たな世界を生み出してしまったのである。

「じゃあ聞きたいことがある。さっきあのネウロイの巣に入ったんだが、そこであの反転した十香と戦った。彼女はどちらでもない、デートアライブの歴史だったろ?どう説明すれば良い?」

「いずれ気付くことだ。俺もそろそろ行かなければならない。だが『世界の歯車』が狂い始めていると天宮スクエア前で言ったのを、聞き入れなかった非はお前にもある。悪夢はまだ続くぞ」

そう言って彼はその場から姿を消した。

不穏な言葉を残して。

 

同時刻、場面はシロガネ・カオリの家があった竹林。

ほどよい気温で散歩日和だったが、人影は1つもない。だがその空間に突如として亀裂が走った。『空間に亀裂が走った』というのはおかしいのかもしれないが、事実空間がひび割れたのだ。

「このあたりだよな、アークワンの反応が途絶えたのは」

そうぼやきながら1人の少年が亀裂から現れた。

青いスペードマークが特徴的なバイクに跨って。




どうも毎度低クオリティでお届けおります。
なんかぐだぐだ続くかなーって思ったけど、結構後半に入ってきてる感じあるなあ。なんとなくね。
まあいつ終わるかは分からんけど、いつかは終わらせなきゃいけないしな。
でも変な終わり方にはしたくないなと。
じゃ、早ければ今日の夜かな。あるいは明日か。
またねー


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空へ

八坂和真と瓜二つの姿をした彼から伝えられた真実は、和真に重くのしかかることとなった。

魔女の世界は滅んではいなかったが、その代償としてというべきか、ISの世界が変わってしまった。

ISそのものもストライカーユニットの代わりに作られた、新たな対ネウロイ用兵器であると、彼は告げた。

本来ならこうなるはずではなかったのだ。

「俺は…どうすればいい?」

あのあと和真は屋上へとやってきていた。

缶コーヒーを啜りながら蒼穹を見上げて呟く。青い空には今も黒いネウロイの巣がある。最もネウロイは現状出てきていないようだが。

前の和真ならこういう場合でも変身して突っ込んでいったかもしれないが、世界の融合のトリガーを引いたことを知ってしまった今の彼には、それができないでいた。

(これ以上俺が何かをしてしまうと、何が変わるか分からない)

ただ滅びゆく世界を見ていれば良いのか。

無論そんなことはない。和真とてネウロイを倒さなければならないと決めている。

けれどあの男は悪夢は続く、とも言った。故にその真意を知る必要もある。

(でもISやストライクウィッチーズとも無関係なはずの精霊がなぜ…?)

デートアライブの世界に、ネウロイは現れていないはずだ。

少なくとも彼の知る歴史では。

ならばネウロイが精霊をコピーすることはできないと思うのだが。

「ったく…よく分かんねえ」

いつまたネウロイが活動を再開するか分からないものの、ここでこうしていても生産的なことは何もできない。

呑気だとは思われそうだが、まずこの学園でできることをしてみるとしよう。

 

和真が歩いてやってきた道をバイクで行くというのは、アクション映画ならいざ知らず、実際にやってみると中々に難しいものであった。

これもフィクションだから問題ないといえばそうなのだが。

「しっかしアークワンの反応遠いなぁ」

スペードマークが特徴的なこのバイク、そこそこ慣れたように乗ってはいるが、今乗っている少年のものではない。アークワンを追うついでに和真に返そうという腹づもりで乗ってきたに過ぎないのである。

時空転移システムをシアンという女性に直して貰ったものの、どう使うのかさっぱり分からない。

それゆえここにやってくる際に発生させた亀裂も、彼自身の能力に他ならない。これは親譲りのモノではないのだが。

それはともかく、彼はバイクを駆り、アークワン=八坂和真を探していた。

竹林から住宅地に出て、中心地と思われる方角へ向かっていくが。

「なんだ、アレ」

上り坂を登りきったところで彼は遠くにそれを見た。

巨大な竜巻か積乱雲のように見えなくはないが、異様なのはその外見。

緑色の稲妻とらしきものが周囲に飛び交っている、漆黒の雲。

そしてそれを守護するかのように飛ぶ見慣れぬ影。

双眼鏡を用いて確認してみると。

「なんだろ、ネウ…ロイか?いや、ここにいるはずないよな」

ネウロイかどうか実際に接触しない限り分からないが。

ここでの選択肢は2つ、ネウロイと思しきあれを優先するか、アークワンを探し出すか。

この二択で彼は後者を選んだ。反応は弱くなりつつあるが、未だにアークの反応がある以上、いつまたアークワンが覚醒するか分からない。アークワンが目覚めれば、終焉のカウントダウンが刻まれ始めるのは、時間の問題といえるだろう。

その前に八坂和真を見つけ出し、今度こそアークを切り離さなければならない。

探知機の反応に従い、彼は再びバイクを走らせていった。

 

外の様子を気にしながらも、和真は学園内で調査を続けた。

図書室で書物を読みあさってこの世界の歴史、そしてこの学園について調べ上げていった。

更に記憶を頼りにIS学園の格納庫にも足を運んだ。ISがあるのでは、とも思ったからである。

確かにそこにISは存在していた。打鉄とリヴァイヴが。だが動かそうとしても、彼の手では動きそうになく、断念して書物の調査を続行。

そうこうした結果分かったこととして、そもそもここはIS学園という名称ではないということ。

『扶桑統合戦闘技術学校』というのがここの名称であった。

創立者は坂本美緒、宮藤芳佳、雁淵孝美。援助者としてペリーヌ・クロステルマン、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ、グンドュラ・ラルといった名前が挙げられていた。

かつての統合戦闘航空団のメンバーが、この学校を創り上げたのだ。

どう言葉にすれば良いのか、分からない。

「すまない…」

しばらくして和真の口から出た言葉は、それだった。

謝ったところで何かが解決するわけではない。IS世界のあるべき姿を、ウィッチ達のあるべき歴史を変えてしまったのは彼自身だ。

なら元に戻せばいいと言われるかもしれないが、過去は変えられない。今の彼に時を旅するバイクはない。最早変えられるのは未来だけしかないのだ。

「過去は変えられないが、未来なら変えることができるかもしれない、か」

ネウロイを全て駆逐し、ウィッチがもうユニットを付けなくても良いようにする。変わってしまった世界を見て嘆くことも必要だが、今重要なのは平和に近付くことだ。

そう思った矢先、校舎内に突如として響く警報音。

『ネウロイ出現。第四種警戒態勢へ移行、速やかにネウロイ迎撃に当たるように。繰り返す…』

「ご丁寧に」

アナウンスが流れるのはありがたい。こうなった以上、最早後に引くという考えはない。ただ進むだけだ。

部屋を飛び出し、和真は窓から身を躍らせながら仮面ライダーブレイドに変身。落下しながらジャックフォームに変わり、着地をせずにそのまま上昇。

巨大なモニュメントの上に降り立ち、ネウロイの巣を見上げる。

(今度は…なんだ?)

IS、ネウロイ、精霊と来れば、もう何が来ても驚かない自信はあった。が、今度のはスケールが違いすぎた。

「ワルプルギスに…アレは、見滝原の魔法少女達か?」

ネウロイの巣から現れたのは彼が最初に訪れた世界で出会った魔法少女達、そしてキングフォームになって初めて倒した敵ワルプルギス。

黒い無機質な感じが特徴だったこれまでのネウロイだったが、今現れた魔法少女とワルプルギスは、原典をそっくりそのままコピーしたかのようだ。

「進化…しているのか?」

見滝原にネウロイが現れ、魔法少女達をコピーしたか。あるいは洗脳の類をかけているとも考えられるが、ワルプルギスにそれは難しいと思われるため、洗脳はないと見て良いだろう。

ではどうやったのだ。

「いやいくらなんでも、そっくり過ぎる」

洗脳がないとすれば模倣か。魔法少女の服装の細部に至るまで再現しているあたり、よく出来ていると言わざるを得ない。

マミ、さやか、杏子、ほむらの4人とワルプルギス。まどかがいないが、彼女は円環の理。再現することはできなかったのだろう。

「上等だ。俺の知ってるものばっかり敢えて出してきてんのか?いいぜ、それでもやってやる!未来のために!」

ブレイラウザーを手に飛び立つ。

マスケット銃、実弾銃、刀、槍といった魔法少女の武装が彼を狙うが、間一髪で躱す。

まず狙うのは4人の魔法少女。彼女達を撃破しない限り、ワルプルギスを撃破する事はおろか、近付くことすらできないだろう。

ブレイラウザーに雷を纏わせ、高速で彼女達に攻撃を仕掛ける。ほむらを撃破、杏子も一撃で倒すことに成功し、残るはマミとさやかのみ。リボンらしきもので彼を拘束しようとするが、そのリボンを断ち切り、マミモドキを蹴り飛ばす。

残るさやか。剣を射出してくるのは分かっている。飛来する剣を避けながら、さやかモドキに接近。ブレイラウザーを勢いよく振るった。

そうして4人の魔法少女が動きを止めると、彼女達の身体から赤いコアらしきものが出現。刹那にそのコアらしきものは弾け飛んだ。

「やはりネウロイだったか」

残ったのは和真とワルプルギス。キングフォームになり、キングラウザーを手にワルプルギスに迫る。

「これでエンドマークだァ!」

『♠︎10・J・Q・K・A』

ブレイドはロイヤルストレートフラッシュを発動、そしてキングラウザーから放たれる光の奔流がワルプルギスを包み込んだ。

 

「あれは…」

モノレールの駅までやってきた少年は、遠くにその光を見た。

天へと放たれる黄金の光の奔流。

約束された勝利の光だ。

(あそこにいるんだな)

バイクのエンジンを全開に、モノレールの改札を通り抜け、彼は黄金の光目指して進んでいく。

 

 

 

 

 




毎度毎度低クオリティなことに定評がございます。
今夜もう1話書けるかなーってとこなんだけど、ネプリバ3のトゥルーエンドもう少しで辿り着けそうだから、そっちもやりたい。
でも頑張って書こうと思う。
寝落ちしなければね。
でもウルトラマンの方も考えたいから、次の話だいぶ先になるかも。
ウルトラマンの方先投稿する可能性なくもないからな。
つーわけで今度はいつになるか分からんけど、うん、またねー


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シン・ブレイド

和真の放った光の奔流はワルプルギスを打ち破り、その上空にそびえるネウロイの巣に大きな穴を開けた。

弾けるように消滅するワルプルギス型ネウロイのコアを視界の端で捉えつつも、彼の視線はネウロイの巣を睨み付けていた。

臨戦体勢は解かない。

(まだ何か出て来そうだ)

その予想は当たっていた。ネウロイの巣から新たに姿を見せたのは、彼の知る伝説の魔女達。

かつてネウロイは魔女を模倣したが、あくまでネウロイとしての外見は保ったままだった。だが今、彼の前に現れたのは見滝原の魔法少女と同じく、気味が悪いほどにオリジナルを維持していた。

20世紀から時空を超えて現れたといっても、信じてもらえるくらいには。

「ストライク…ウィッチーズか」

ストライクウィッチーズを模倣したと思われるネウロイに加え、現代のISを模倣したネウロイも再出現。和真=ブレイドを取り囲むように陣を展開していく。

360度全てネウロイ。しかもよりにもよってストライクウィッチーズの面々は、本物そっくりに作り上げているときた。

(なんでなんだ…)

戦力はともかく、今の彼には彼女を斬ることはできない。見滝原の魔法少女は躊躇なくやったろうと言われるかもしれないが、この学校の真実を知ってしまった以上、彼にはできそうになかった。

この世界を作り出してしまったことが彼の罪なのはいうまでもない。

しかし結果としてISの技術を軍に提供したのは、ストライカーユニットの製作者と同じ宮藤博士ということになり。

そしてその学校を作ったのは、坂本美緒や宮藤芳佳といった、和真の知る501メンバーだったわけで。

そんな彼女達に対して。

「できるわけないだろ!」

和真は無慈悲になれなかった。

彼女達は20世紀の魔女であり、既に故人であることは間違いない。

だが今、彼女達を見た和真に剣を振るうことは出来なかった。

しかしネウロイに感情などないのだろう、ウィッチ型ネウロイは銃の狙いをブレイドに固定。

IS型ネウロイも刀やそれぞれの武装をこちらに向ける。

IS型ネウロイと、ウィッチ型ネウロイ。そして和真。

「でもせめて彼女達の手で葬られるなら、マシなのかな」

どこか浅はかな考えが脳裏をかすめるが、ネウロイは待ってはくれない。IS型ネウロイが退路を塞ぐように全方位から襲いかかってきた。

キングラウザーとブレイラウザーの二刀流でもって迎え撃つ和真。

しかしキレはない。

IS型ネウロイはなんとか倒せるものの、一向に伝説の魔女達には近付けないでいた。

彼女達が彼の知る伝説の魔女達でないとしても、できない。

なんとか和真はIS型ネウロイを全て撃墜、残りは彼とストライクウィッチーズの面々のみとなる。

「俺は…」

決断に踏み切れない和真。ストライクウィッチーズの1人、宮藤芳佳そっくりの姿をしたネウロイが刀を手にする。

突如して刀から放たれる膨大なエネルギー。その膨大なエネルギー自体が、1つの剣となっているようだ。

偽りの少女は剣を手に、問答無用で彼に迫る。

「…どうすればいいんだ」

反撃しようとしない和真。

このエネルギーでは反撃しなければダメージは免れ得ないだろう。

キングラウザーを握るが、何も出来ない。

その時だった。

『タドルクリティカルフィニッシュ!』

刹那に飛来する火炎弾。和真に迫る宮藤を吹っ飛ばし、その背後にいるウィッチ型ネウロイにも命中、攻撃が僅かに止む。

「今だ」

どこか聞き覚えのある声と共に、ブレイドの体は支えられ、一旦ネウロイの元を去るのだった。

 

校舎の屋上へと降り立った2人。依然ネウロイは彼らを見下ろすようにいるが、攻撃はしてこないらしい。

2人は変身を互いに解いた。

「何のつもりだ?」

「いや、危なそうだったから助けようと思って」

「まぁ、そうかもしれねえな。って、ん?お前ラステイションで会った、真二か?」

「そうだよ。用があって、追っかけてきたってわけさ」

「狙いはアークだな?アレならもうこっちに来てから動きはない。刺青みたいなのは残ってるけど、ドライバーやキーもない」

「その模様が刻まれてる以上、アークワンは解除できてないんだ」

「なぜそこまでしてアークを追う?それとも何か、他に目的があるのか?」

和真の問いに、真二はゆっくりと息を吸い込み、吐き出し、答えた。

「キセイジョウ・レイ。始まりの女神。彼女が全ての元凶だ。俺は彼女を倒すためにやってきたんだ」

「誰だそれ?つーか何、その規制条例?キセイジョウ・レイ?ってのがこのアークワンを作ったのか?」

「アークワン、正確には衛星アークか。彼女が俺たちの時代で作り上げた21番目の災厄、それがアークだ」

「俺たちの時代?真二、未来人か何かなのか?」

「まあ、一応そうなるな。そっちからすれば」

「ふうん、そうか」

「驚くと思ったのに」

「今更だよ。…んで、さっき21番目って言ったな?20番までがあるんだろう、それなら」

「まあね。それらは全部色々な時代に送り込まれたし、他のメンバーが追ってる。アークワンはクロワールってヤツに盗まれたんだ」

「で?」

「最初は飛電或人を適合者に選んだ。でも彼がアークワンを手放した後、クロワールはプラネテューヌを訪れた。そこで誰かにアークワンに仕立てて、暴れさせるんだと分かってたから、俺が送り込まれた。ま、アンタだとは思ってなかったけどな」

「はあ…だいぶこう、混み合った話になってきたな。しかもよりによってクロワールか…それでアークワンを回収してキセイジョウ・レイを倒したら終わりと?」

「簡単に言えばね。何かクロワールについて知っている事は?」

「俺にアークワンの力を渡したのも、確かにクロワールだ。あと大人のネプテューヌ」

「彼女たちの行方は?」

「分からん」

キセイジョウ・レイが作り上げたという21の災厄の詳細についても気にはなるが、ともかく彼にはネウロイを倒すという使命がある。

しばらく考え込んで和真は続けた。

「そっちには悪いが今、アークワンを渡す事はできない」

「なぜ?災厄を全て倒さない限り、始まりの女神に勝つ方法はないんだぞ」

「それはそうかも、しれない。でもこれは俺なりのケジメなんだ」

「はい?」

「真二、この世界のこの結末は俺が招いたものだ。だから俺がこの身を賭してでも終わらせなきゃいけない。アークワンを使ってでも」

「何をする気なんだよ!自爆でもするのか!?」

「さあな?変身」

和真はブレイドに変身、ジャックフォームでネウロイの巣へ迫る。

先程は学校の警報は鳴ったが、どうやらこちらが近付かない限り、基本的にさして派手な攻撃はしてこないらしかった。

最も和真が近づくと攻撃が始まるため、厄介極まりないが。

どうやら彼の心理を読んだか、ウィッチーズをやたらと差し向けて和真の足止めをしてこようとしてくるネウロイ。

「だったら攻撃しなければ良いだけだ!」

真二がアークワンを追ってこの世界に来たことを知って、どこか和真の中で覚悟が決まったのかもしれない。

攻撃を全て避け、彼はネウロイの巣へと突っ込んでいく。

コアを破壊せんと突入したわけだが。

「え?なんだ、これ?」

突如として彼は広い空間に出ていた。プラネタリウムのような空間で、中心にコアはある。しかし注目すべきは周囲の空間だ。

いくつもの映像が現れては消えている。

「これは…俺か」

どこから撮っていたのか、八坂和真の戦いが映し出されていた。彼が巡って全ての世界が、そこに記録されていたのだ。

「ネウロイ、お前。俺の記憶を利用したのか?俺の戦いを見て、進化したってのかよ!」

叫ぶ彼の前に現れる、1人の青年。

『そうだ。お前を利用し、私たちは進化した』

「俺の姿でか…クソ、やりづれえな」

『ブリタニアで初めてお前を見た時から、お前を常に監視し、記憶を全て閲覧し、研究し続けた』

「怖っ!ストーカーかよ。ってそうじゃない!ブリタニアで俺と会った?じゃあお前らはあの時のままだと?世界が融合したのに変化してないのか?」

『私たちは不滅。記憶は引き継がれ、新たな私たちが現れる』

「意味が分かんねえ。何、お前らはいくら倒しても無駄だってのか?」

『そうだ。進化し続ける私たちに、死はない。キセイジョウ・レイの名の下に』

「あ?キセイジョウ・レイ、だと?」

真二が言っていた始まりの女神の名も、キセイジョウ・レイ。

ネウロイが告げた名前も、キセイジョウ・レイ。

「何が、どうなってんだ?」

混乱する和真と対峙する、ネウロイ和真。彼もまたブレイド・ジャックフォームに姿を変える。

「自分とやるってのも複雑だな。でもこれなら思いっきりやれる!」

両者が振るうブレイラウザーがぶつかり合い、火花を散らす。

戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書いてて混乱してきた。
低クオリティなのに色々やろうもするとぐちゃぐちゃ感出るね。
盛りすぎたかなぁと思いつつ、でもキセイジョウ・レイ出そうか悩むなあと。
ここまで来たら出すしかないよね。
つーか思ったよりネウロイ強くなってねえ?
ウルトラマンで何か考えるとか言っといてまだ書いてねえわ。
今度こそウルトラマンで何か書こう。
和真くんストーリーは休みになるかも。
じゃ、そのうちまたねー


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Re.アーク

まるでドッペルゲンガーか何かを見ている気分だ。

同じ姿をした相手が、全く同じタイミングで同じ攻撃を仕掛けてくるのである。

同じ攻撃を仕掛けてくるというより、和真の動きを瞬時に学習してそれに合わせて同じ行動を取っているとでもいうべきか。

実際はどうだか知らないが、最早気味が悪い。

黒雲で囲まれたネウロイの巣の中で、和真は肩で息をしながらブレイラウザーを構える。

(疲れるか疲れないかの違いくらいか)

このままでは消耗戦になる。いずれこちらが限界を迎え、やられてしまうだろう。こちらがキングフォームになれば、ネウロイもそれに合わせて進化し、キングフォームとなるのは想像するに難くない。

このネウロイは八坂和真という人間を研究し、進化してきた。

彼が仮面ライダーブレイドであるという事は知っているし、その戦い方も知り尽くしているに違いない。

だがアークワンやジョーカーをネウロイは把握しているのか。

仮面ライダーブレイド=八坂和真という認識であれば、アークワンやジョーカーといったイレギュラーは、ネウロイの中では和真とは別の存在として考えられているのではないか。

ジョーカーはキングフォームの延長でもあるから難しいかもしれないが、アークワンは違う。

そこに僅かな望みは見出せなくもないが。

「無理があるな」

ジョーカーやアークワンは強大な力と引き換えに、彼自身に、世界そのものに破滅をもたらす。

暴走の危険がない現状、使わないに越したことはない。

けれどこのままジャックフォームで空中戦を続けるのか。

否である。

「俺は俺のやり方しかできない。キング、俺に力を貸せ!」

『エボリューションキング』

黄金の王。金色のキングフォーム。

仮面ライダーブレイド=八坂和真の至った、最強の姿。

キングラウザーを手にブレイドは、ネウロイの仮面ライダーブレイドと向かい合う。

ジャックフォームだったネウロイの仮面ライダーブレイドも和真のキングをトレースし、瓜二つの姿に変化。

キングフォームの仮面ライダーブレイドが2人対峙するという、異様な光景となったわけだが。

「こんちくしょう!」

和真の叫びと共に二本のキングラウザーがぶつかり合う。

全て、全て、全て、滅ぼしてやる。消し去ってやる。

これが自分の贖罪になるのなら、命などくれてやろう。

ここは自分が創り出した世界。

本来あるべきではない、偽りの世界。

2つの世界が融合すれば、世界の均衡は保たれなくなる。

どこかで分かっていたのに。

けれど踏み止まることをしなかった。その結果がこの有様だ。

20世紀で終わるはずのネウロイとの戦いも、彼がネウロイを進化させてしまったことで21世紀まで続くものとなってしまった。

ならばこの世界を創り出した、それが八坂和真の罪だ。

「お前を倒してやる!この世界ごと!」

全て互角のはずの2人のブレイド、しかし徐々に和真の方が押していく。

拳にエネルギーを収束させ、和真はネウロイのブレイドを殴りつけ、ネウロイの巣から外へ吹っ飛ばす。

すぐにそれを追い、和真もネウロイの巣の外へ。

落下のエネルギーをも利用し、キングラウザーをネウロイのブレイドに叩き付ける。

ネウロイの方もキングラウザーを盾にして防ぐ。掴み合い、もつれ合って2人は学校のグラウンドに落下、クレーターを作り出すが、そんなことには構わず戦闘を続行。

能力は同一のはずだが、和真がネウロイの方を僅かに上回る。

「オラァ!」

今度は脚部にエネルギーを収束させ、ネウロイのブレイドを校舎に向かって蹴り飛ばす。

吹っ飛ぶネウロイのブレイド、しかしすぐに立ち上がりキングラウザーを手に接近してくる。

自分相手だから分かるのかもしれないが、コイツらは人間らしい戦い方をしないらしい。ただひたすらに相手を殲滅する、戦闘マシーンといった感じだ。

「コアを潰せてねえからか、死なねえのは。コアはもしかすると、あそこなのか?」

見上げる空に渦巻く、暗黒の雲。ネウロイの巣。

このネウロイのブレイドにコアがそもそもあるのか不明だ。

こちらが見た限り、コアらしきものは見当たらなかった。

そもそも移動するコアもあるほどだし、あっさり見つかるとも思っていない。

が、見つからないとネウロイのブレイドはおろか、巣も叩く事はできないわけで。

「どうすりゃいいんだ…」

一瞬の隙が生まれる。そこを突かれて今度は和真が吹っ飛ばされた。

「ってぇ…じゃねえかよ…」

血の味を感じながら、しかし和真は立ち上がる。

全身のアンデッドクレストから、キングラウザーに禍々しいエネルギーが流れ込む。ロイヤルストレートフラッシュの時とはまた違う、別のエネルギーだ。

「まずい!撃つな!」

そう叫ぶのは真二。ブレイブに変身して止めようとするが、僅かに遅かった。

剣を振り下ろす和真。

漆黒のエネルギーがキングラウザーから放たれた。

ロイヤルストレートフラッシュとは比較にならないほどの奔流がネウロイのブレイドを包み込み、校舎をも破壊する。

「はあ…はあ…こんにゃろ…」

肩で息をしながら、和真は変身を解いた。

 

和真がネウロイの巣に突っ込んでしまい、今更止めるのも悩んだ挙句、真二は結局下から見上げることにした。

彼にも何か考えがあるようだった、というのもある。

けれども流石に危険かと思った時、ネウロイの黒雲を突き破って2つの人影が落ちてきた。

和真ともう1人。

それを見、慌ててグラウンドまで降りてきたところで、和真がもう1人に向けてロイヤルストレートフラッシュ・モルガンを撃ったのだった。

そして和真が変身を解くと、いち早く真二はその変化に気付いた。

「その姿…」

ゲイムギョウ界の時より一時的に薄くなったように見えたアークのそれが、再び全身に表れ始めている。しかも前よりも色濃く。

「ああ、真二か」

「アークがまた表れ始めてるな、身体に」

「そうか…そうだな。だがまぁ丁度良い。アークを破壊すれば、キセイジョウ・レイの打倒に近付くんだろ?だったら俺がやるよ」

「何を…言ってるんだ?」

ふらつく和真の腰にアークワンドライバーが、アークワンプログライズキーが彼の手に現れる。

『アークワン』

『シンギュライズ!破壊・破滅・絶望・滅亡せよ』

『コンクルージョン・ワン』

突き動かされるように和真はアークワンに変身。

彼を動かすのは絶望か、それとも悪意か。

それとも彼自身が望む、この世界の崩壊か。

「やめてくれ!そっちが死んだら、俺まで影響が出る!」

必死に叫ぶ真二。

しかしアークワンとなり、地を踏み砕いて跳躍した今の彼に、真二の言葉は届いていないようだった。

 

 

 

 

 




どうも、低クオリティの作者でごぜーます。
忙しかったのが終わってね、いや終わってないんだけど正確には。
眠い頭でなんとか書きました。
次こそマジでウルトラマンのヤツ考えよう。
和真くんストーリーも終盤だし。
長ったらしく続けてもよかったんだけど、終わり方が見えないのも良くないしさ。
そういうわけで、当面ウルトラマンで何か考えますので、投稿頻度は少なくなるかもしれません。
じゃ、またねー


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ブレイクダウン

アークワン=和真はネウロイの巣の高さまで来ると、宙を蹴った。

全身にアークの意志が刻まれていくのを感じるが、もう遅い。

禍々しいエネルギーを放出しながら、迫り来るネウロイを倒して進む。

もう元の姿には戻れないかもしれない。

最後に彼が何か叫んでいたようだったが、恐らく行くなとでも言っていたのだろう。

けれど今の彼には。

(俺にはやるべきことがある)

雑魚ネウロイを破壊すると現れるIS型、魔法少女型、魔女型、精霊型、そのネウロイを全て打ち砕く。

そしてその先に。

(見えた!)

『パーフェクトコンクルージョン』を発動、禍々しいエネルギーを右腕に収束させてアークワンは加速。

肉薄し、彼は巨大な赤いネウロイコアを殴り砕いた。

「これで終わったか…?」

黒雲は消滅していったかに見えた。

しかし上空に突如として出現する、黒い『穴』。

「アレは…」

隣界に彼を誘ったものとよく似ているが、その正体は不明。

それも束の間、黒い雷が降り注ぐ。

「何なんだ!これは!」

雷が止むとそこには、再びネウロイの巣が現れていた。

しかも彼が破壊したものより大きい。

「またか」

「真二」

置いてきたはずの真二は仮面ライダーブレイブに変身、翼をはためかせて和真の元にやってきていた。

「ネウロイは死なない。どうやっても」

「ああ、コイツらどうやらキセイジョウ・レイの手の者らしいしな」

「何でそんなことを?」

「アイツから聞いた。さっき俺のドッペルゲンガーだった奴からな」

「喋るのかネウロイって」

「俺も初めて知ったよ」

真二と和真は、眼前のネウロイの巣を見上げる。

「さっき俺が行く前何か言ってたろ?何だったんだ」

「いや、何でもない。俺がアンタを生きて帰せば済む話だ」

「生きてれば、な」

「生きさせる。生きて貰うぞ」

「ふ、そうか。まあ良い、プランはこうだ。もう一度コアを叩く。黒い『穴』がネウロイを送り込む前に、こっちから攻め込む。それだけだ」

「雑なこって」

「それしかねえ。やるぞ」

頷きあうと2人は再度出現したネウロイの巣に突入。

剣と拳がネウロイを駆逐していき、程なく巨大な赤いネウロイコアの元へと辿り着く。

今度は真二がタドルクリティカルスラッシュを放ち、ネウロイコアを破壊。

「来たな」

予想通り空間に黒い『穴』が開く。

ネウロイが送り込まれる直前に、和真と真二は『穴』に飛び込むことに成功し、さほど時を経ずに、2人は『穴』の向こう側の世界に辿り着いたが。

 

そこには和真の知らない風景が広がっていた。

近未来的ではありつつも、半ば崩壊が進んでいる。世紀末とまではいかないが、何者かによって破壊されたのは間違いない。

地上に降りて2人は変身を解く。

「ここは…」

「俺のいた時代だ。また破壊が進んだみたいだけどな」

「まさかキセイジョウ・レイがやったと?」

「ああ、あとはネウロイか。これまでは足取りを中々掴めなかったが、あの『穴』を使ってネウロイを送り込んでいる以上、ここにいるのは明確だ」

「随分な自信なのは構わんけどさ、ここのどこにいるのかも分かんねえだろ」

「それもそうなんだよな。慣れた場所に戻ってきても、結局はな」

どうやら探知機らしいものも持っていないようだし、地道に探すしかないかと思った矢先。

(アレは…)

ふと視界の端に映ったのは、角を曲がっていく小さな人影。

金髪に褐色肌、風変わりな羽が生えている、あの姿は。

「ちょっと行ってくる」

「おい!どうしたんだよ!?」

真二の声を聞きながらも、和真は駆け出していた。

 

「この角を曲がったような…」

こそこそと覗くと、向こうに見えたのは淡い長髪の髪に、黒い際どいスーツの女性。見た感じ30手前あたりだろう、行き遅れか。

「私からアークワンを盗んだのに、よくものうのうと姿を見せられたものねェ、ハエ虫のくせに」

「だからハエ虫じゃねーって。クロワールって名前があんだよ、って今のオマエに言っても意味ねーか」

「破壊できる世界が少なくなってきたのよね。そこであの世界は興味深いものだったわ」

「ああ、そーだな」

若干引き気味の金髪幼女は恐らくクロワール。行き遅れの方がもしや、キセイジョウ・レイという人物なのだろうか。

「おい、何やって…」

「シッ、静かに」

追いかけてきた真二も覗くと、なるほどと頷いた。

「簡単に見つかりすぎじゃないか?」

「けどクロワール追っかけたら見つかったんだよ。アレで合ってるのか分からんが」

「いや、キセイジョウ・レイだ。しかも女神化しているな」

ひそひそと話し合っていると刹那、隠れていた建物が一瞬にして吹き飛んだ。

見ればキセイジョウ・レイの武器がこちらに向けられている。

バレたらしい。

「おいおい、これは予想外だぜ。ジョーカーのお出ましとはな」

「クロワール、お前には落とし前付けさせるぞ。それとキセイジョウ・レイ、アンタに面識はねえが、世界のために倒させて貰う!」

「言うじゃないの、力もないくせに!」

「力ならある!アンタからクロワールを経て俺に渡った、アークワンがな!」

「おいおいマジか」

『アークワン』

『シンギュライズ!破壊・破滅・絶望・滅亡せよ』

『コンクルージョンワン』

和真は再びアークワンに姿を変えた。

アークの意志が流れ込むのを感じるが、今の彼はそれを『怖れ』とは感じない。

これはキセイジョウ・レイを倒すための力。

地を踏み砕き、刹那にして彼女に肉薄。一撃を見舞うが、キセイジョウ・レイは一筋縄では行かないらしく、防がれてしまう。

「ぐぅッ…」

「やれやれ、自分で創り出した力に滅ぼされる女神か」

ぼやくクロワール。

金髪幼女には目もくれず、和真とキセイジョウ・レイの戦いは続く。

キセイジョウ・レイの蹴りがアークワンの腹に命中、彼は一気に2ブロックほど吹っ飛ばされる。

「この…野郎!」

隙を見せずにこちらは地を蹴り、反撃に転じる。

互いに神速でぶつかり合い、己の得物、拳、脚による攻撃を繰り出していく。

一進一退の攻防が続くが、これといった決め手がないままだ。

(けどこれほどのエネルギー、うまく利用すれば…)

ISとウィッチが融合した、あの偽りの世界。あれを破壊できるかもしれない。

和真が生み出してしまったが故に、キセイジョウ・レイの攻撃の標的にもなってしまったのは言うまでもない。

ならば彼自身と、彼女の力でもって破壊すれば丸く収まるだろう。

暴論なのは自分でも分かっているし、イカれているとしか言いようがない。

それでも、そこに全てを賭ける。

和真はキセイジョウ・レイを掴んで空の黒い『穴』に向けて跳躍、殴り合いながらも2人は『穴』を通って、IS&ウィッチの世界へ。

重力に引かれて落下し、グラウンドに再度作られる大きなクレーター。

しかし瞬時に体勢を立て直し、畳み掛ける。

『悪意』『恐怖』『憤怒』『憎悪』『絶望』『闘争』『殺意』『破滅』『絶滅』

『パーフェクトコンクルージョン』

膨大なエネルギーが両者から放たれ、同時に空の黒い『穴』からもエネルギーが降り注いでくる。

少々それは想定外であるものの、これも利用する他ない。

そして両者は刹那に地を蹴った。

互いの全エネルギーをもって放たれる究極の一撃。

「「ああああああああああああッ!」」

拳がぶつかり合うと同時、眩いばかりの光が全てを包み込んで行く。

森羅万象、この世界の全てを。

「砕け散れ!この世界ごと!」

悪意を超えたその先にあるのは、たった1つの願い。

この世界を破壊すること。それだけ。

何かがひび割れ、壊れ行く音が聞こえてくる。

(こりゃあマジで死んでしまうかもな)

 

覚悟を決めた時、唐突な浮遊感が訪れた。

白んでいく世界の中、1つの人影が和真を救い上げたのである。

「世話が焼ける」

「ハハッ、言うねェ」

仮面ライダーブレイブは和真を抱えて上昇し、亀裂を発生させて真二の時代へと脱出。

通り抜けた直後、亀裂を通じて凄まじい衝撃波が彼らを襲った。

衝撃波が収まったところで真二が口を開く。

「これが…」

「ああ、世界の崩壊か」

もう一度向こう側へ行く勇気は無いが、彼は確信があった。

あの世界を破壊できた、という確信が。

恐らくキセイジョウ・レイも死んだろうし、和真はアークのドライバーとキーを無くした。

まあ最も跡形も無くなっているだろう。

身体に刻み込まれたアークの意志は消えそうに無いけれど。

「バイクも無くなっちまったよな」

「ハァ…じゃあ送るよ。住所は知ってるし」

「プライバシー保護とかガバガバすぎね?」

和真の言葉に真二は首をすくめ、再び亀裂を開いた。

しれっと亀裂を開いたが、この先はつまり和真の実家ということである。

言い換えれば、ここで彼の旅は終わってしまうのだ。

(本当にこんな終わり方でいいのか?)

なし崩しというか、アニメのシーンがきっかけで始まった彼の旅だったけれど、色々なことがあったと今になると思う。

「俺はここで終われない。終わっちゃいけない気がする」

「アンタなら言うと思ったよ。変なとこで諦めが悪ィ、ロリコン野郎だってなァ、変わらねえ」

「微妙に失礼なこと言ったな。聞こうと思ってたんだが真二、なぜそっちは俺の事を知っている風に言うんだ?」

しばらくの間を置いて真二は続けた。

「俺がアンタの息子だって言ったら信じるか?」

「何言ってやがんだ?俺は独り身貫くって決めてんだよ」

「いや、そうだな。最初はそうするつもりだったって言ってたな」

「おいおい、どう言う事だよ!?俺はそんな話これっぽっちも聞いてねえ!大体誰だよ相手はよ!」

「俺に聞かないでくれ。歴史改変は真っ平御免だ」

「世界1つ破壊するのに加担しといてそれ言うか。でも帰るかどうすっかな、これ以上の旅は危険だって言われてるしな」

「ただそっちの行動が俺に影響するってことは考えてくれ。頼むよ」

「…分かった」

渋々頷いて亀裂を通り抜け、和真は懐かしい我が家の前に立った。

真二も続いてやってくる。

「お前も結局来るのか」

「いや、まあな。どうせアンタのことだ、旅は終わらねえさ」

半ば呆れたように真二は言い、和真はそうだな、と返す。

そして久方振りにインターホンを押すのだった。

 




なんか終わりっぽくなってるけど、終わって無いです。
終わる終わる詐欺じゃないですが、まだ終わりません。
切りが良くないのはいつものことなんですけど。
いや続きますよ?
一回家帰ってもっかい出かける感じ。
ウルトラマンで何か考えるって長いこと言ってるくせに、ほぼ進んでない。
やれよ俺。
つーわけで一旦休憩も挟みつつ、進んで行きます。
じゃーまたねー


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終わらない戦い

和真の旅は一旦終わりを迎える。
しかし安息も束の間、1人の少女との邂逅が彼を戦いへと誘う。
魔女、魔法少女。
かつての世界、初めての世界。
剣なき今、果たして彼は…


インターホンの音を懐かしく感じつつ、しばし待っていると、扉が開かれて1人の女性が顔を覗かせた。

和真を送り出した人物でもある、銀アト子だ。

「あら、帰ってきたの?」

「それは反応薄過ぎない?」

(未来でもアト子さんこんな感じだぞ)

(マジか)

「和真と…そちらは?」

「ああ、中で説明するよ。とりあえずお前も上がれ」

「良いのか?」

「私は一向に構わん」

「烈海王か」

というわけで家に上がったは良かったが、アト子がいるということは、即ち両親がいるということでもあり。

リビングに入ると、そこには見慣れた人達が。

八坂真尋、八坂ニャル子、クー子、ハス太、ルーヒーといった人外ファミリー。

父親が人間なのが疑わしいと、この面々を見ていて思ってしまう。

「えーっと、ただいま、かな」

「あ、お邪魔します」

「おいコラさっさと入ってくるな」

「いやうん、まあ。あ、おばあちゃん、おじいちゃん、初めまして」

「おばあ…ちゃん?」

「おじいちゃん?」

「お前ゴルァ!ややこしくすんなっつーの!ただでさえ俺が帰ってくんのがイレギュラーなのによ」

真二の一言のせいで人外ファミリーはひそひそと相談を始めてしまう。

ひそひそというか…まぁ聞こえてはいるのだが。

「あの子、おばあちゃんて言いましたよ?」

「和真の息子なのか?いつの間に?」

「私の邪神スキャナーで見ても、確かにあの子には和真の遺伝子が受け継がれてる」

「クー子のそれは当てにしていいのか?」

「既にシンギュラリティに達してる。問題ない」

「あ、そ」

なぜか和真の身体に刻まれたアークの意志については、一切触れられない。目立っていると思うのだが。

ともかく家族会議的なものを終え、人外ファミリーは改めてこちらを向く。

それに合わせて真二は自己紹介。

「八坂真二、仮面ライダーブレイブです。えーと色々あって、父さんを送りがてら、寄りました」

「色々あってな、ホントに」

「大丈夫、大体分かってるから」

そう答える母、ニャル子。こういう時の大体分かってるは、マジな方のやつである。

「ごめん。いや、ごめんで済む話ではないと思うけど。スケールがスケールがだから」

「流石に世界壊したり融合させたりした時は、かなり焦りましたけどね。ま、私と真尋さんの息子なだけありますね」

「けれどニャル子。このまま、というわけにもいかないわよ?」

「アト子さん…やっぱそうだよな、バイクももう無いし」

「旅終わりか?」

「そうなるかもな、これは」

ニャル子とアト子は頷き合い、彼に告げた。

「ブレイバックル、ラウズカード、ラウズアブソーバー、ゼクター含め所持品は全て没収。それと学業が疎かになってるので、学校に行くように」

「え」

「留年しかけてたんですよ?珠緒さんに口利きしてもらって、なんとかしましたけど。一応今大学生になってますが」

「あ、はは…」

割とマジな問題になっていた。何年も家空けていて逆に何もない方がおかしい。タイムマシンを使って旅に出た次の日くらいに戻れればよかったのだが、生憎とあのバイクはない。

真二の亀裂発生能力では時間遡行はできないのか、まあこうして何年後かに戻って来たわけである。

そりゃあ形式だけとはいえ、大学生にもなる。

「どうやら旅は終わりらしいな。真二、また会おう」

「そうなりそうだな。一応連絡先だけ渡しておく」

そう言って連絡先を交換すると、真二は家を後にした。

残された和真は、否応無く元の生活に戻ることになったのだった。

 

***

 

元の生活に戻るのは、かなり苦労したと言っても過言ではない。

当然真二が帰った後に精密検査を受けさせられ、全身に刻み込まれたアークの意志に関するデータを取られた。

その後特殊な機械を使って全身に刻まれたアークの意志を全て除去、身体は元の状態を取り戻すことができたが、違和感はいつになっても消えなかった。

「はあ…なんか物足りないな」

食堂の端でカレーライスを口に運びながら、和真は幾度目か分からない溜息をついた。

現在彼は大学2年生らしい。らしいというのは、1年分行っていなかったからである。その期間の単位はどうしたのかと親に聞いたところ、レポートで単位が取れるやつで1年分稼いだそうだ。

しかも母親と珠緒さんで、和真に擬態して通っていたとか。

公務員2人して何やっているんだと言いたいところだが、こっちは大犯罪どころでは済まされないことをしてしまったにも関わらず、こうして学校に通えている。

それに関しては感謝をしてもしきれない。

ただどこでどうやったのか、早くも邪神の友達を作っている、という事を除けばだが。

(ったく、風香と吹雪は今も旅してんだろうな。家に居なかったし)

というかそもそも国立の大学に邪神がいることに驚くべきなのだが、こうも人外ファミリーに囲まれていると、驚けなくなる。

ただ言い換えれば母親に波長が合うヤツなど、中々にぶっ飛んだ人格の持ち主なわけで。

「おっはよー!八坂くん!」

「3バカトリオのケンスケとトウジの真似はせんでいい。ったく、何なんだよ。しかも女なのにそんな真似すんな」

ハイテンションで現れた少女はハイテンションな挨拶をしながら、和真の向かいの席に腰掛けてきた。

母親からはニャルラトホテプ星人の1人、黒鉄スミレと聞いている。

「別に良いでしょ。邪神同士、仲良くやろーよ」

「だから表でそういうのやめてくれ。邪神なんて一般人は知らんよ」

「まあね、しかし今日もしけた顔してるじゃん。去年よりテンション低くなっちゃってさ」

そりゃ去年の八坂和真は本人ではなく、彼の母、八坂ニャル子の擬態だからテンションは高いに決まっている。

「気にすることじゃないだろ。残りのカレーやるよ、食欲ないから」

「え、いいの?」

「ああ」

そう言ってリュックを肩に掛け、和真は食堂を後にし、大学の構内をぶらつくことにした。

国内有数の規模を誇るだけあり、幸い散歩にはもってこいである。

しばらく歩いて薄暗い物置場を通りかかったところで、和真はふと視界の端に異様なものを捉えた。

「人か?」

丁度歩道からは見えにくい角度で倒れており、和真は放置するのもアレかと思い、近づいていったのだが。

「もしもし大丈夫っすか?って、ん?もしかして、さやか…か?」

特徴的な青いショートヘア。

見覚えのある見滝原中学の制服。

意識を失っているようだが、彼女は見滝原の魔法少女の1人、美樹さやかで間違いない。

「コネクトリングは…ない?どういうことだ?」

彼女は彼が延命させたはずだ。和真とリングを用いてコネクトし、魔女になる運命を変えた。

だがこの美樹さやかにはリングがない。

「別人か?いや、とりあえずどこかに運ぼう」

話はそれからだ。

医務室では怪しまれると思い、空き教室に彼女を運び込み、待ち合わせの救急キットで手当てをし、回復を待つ。

何分かして美樹さやかと思しき少女は、ゆっくりと目を開けた。

「ここは…」

「目が覚めたか。ここは俺が通ってる大学だ」

「あいつを、止めなきゃ。いッ…」

「すぐには動くな。脚をやられてる、走る事なんざできんよ」

「記憶が無くなる前に…暁美ほむらを…」

「暁美ほむらを?!どういうことだ?」

こちらの問い掛けにさやかと思しき少女は答える間も無く、頭を抱えて苦しみはじめた。

(全く…)

和真はスマホを取り出し、ある番号をプッシュ。

コール数回でその人物は出た。

「真二か?」

『ああ、なんだ?』

「手を貸してくれ」




どーも、ウルトラマンで何か考えるって言ってやってないクソザコ作者でございます。
今の和真くん、もうブレイドでもカブトでもない、ただの半邪神の大学生なんだよね。
さて久しぶりのまどマギですね。
頑張って書こう!(ウルトラマンのやつやれよ)
つーわけでまたねー


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叛逆の始まり

本来の時代に戻り、何日か経った頃。

キセイジョウ・レイの破壊活動により麻痺していた都市機能も復旧し、真二達の街も元の姿を取り戻しつつあった。

そんな某月某日、真二の端末に一本の電話が入った。

『真二か?』

「ああ、なんだ?」

『手を貸してくれ』

電話の相手はそう言った。冷静なようだが、どこか焦りがある。

「何かあったのか?」

『美樹さやかについての話は、聞いてるか?』

「見滝原中学の魔法少女の1人とだけ」

『俺の世界の大学に、ここにはいないはずの美樹さやかがいる。言いたいこと、分かるよな?』

「何者かが、あるいは何らかの原因でこちら側にやってきた、と」

『ああ、彼女を本来の世界に送り返す。同時にその原因も探ろうと思う』

「それで何か必要なものは?」

『見滝原への足を。バイクじゃなくていい』

「分かった。ただこっちも監視されてる身だからな、良いものは送れない」

『俺のせいですまないな。とりあえず至急頼む』

そう言って電話は切れた。

万が一と思って連絡先を交換しておいたが、まさかこうも早く使われることになるとは。

ともかく彼を助けたいところだが、先の件のおかげで真二にも監視が付けられてしまっていた。監視カメラが最新式のものになり、秘書という建前で1人同僚が増えただけだが。

(それでも厄介なんだよな)

父は亀裂発生能力を持たないため、次元を超える際には何らかの機械に頼らざるを得ない。

ただバイクなどは目立つし、亀裂を通して送る以上、小さなものに限定される。

となれば一度だけ使った、アレにしよう。

デスクの中からこそこそとその機械を取り出し、真二は電話の発信元の座標を固定。亀裂を開き、その機械を送り込んだ。

 

左程時を経ずに、空間に亀裂が走り、小さな機械が落ちてきた。

「おっと…」

慌ててそれを受け取って見てみると、彼にとっても既視感のあるものだった。母が使っているのを見たことがあるし、使い方も恐らく覚えているはずだ。

「確かこれをこうして…と」

一旦さやかにその機械を向け、スキャンを行う。スキャンを行った対象の属する世界に移動が可能となるのだが、これにはデメリットもある。

移動ができるのは基本スキャンを行った側のみで、移動先の時間・場所は使用者の運に左右されるのだとか。

最も移動に関しては、誰を掴んでいれば、その人も移動は可能ではあるのだが。

しかしこれは1回使うと効果は無くなり、自身をスキャンしないと元の世界に戻れない。

(中々に面倒なもんだよな)

息を吐きながらも和真は、さやかの手を掴む。

そして刹那、2人の姿はそこから消え去った。

「あれ?こっからなんか聞こえたよーな…気のせいかな?」

 

僅か1秒にして、和真とさやかは大学の教室から、見滝原へと転移。

転移先が例のショッピングモールの屋上だったので、そこそこ運はよかったのかもしれない。

が、見渡してみてもワルプルギスなどいないし、暁美ほむらなど見当たらない。

ショッピングモールの屋上から見えたら、それこそ超人なのだが。

「おーい、起きてる?寝てんのかな?」

「起きてる。ここは…見滝原?」

「ああ、間違いない。ま、ショッピングモールの屋上だが」

「戻って来たんだ。頭痛がしない…ってことは、アイツの力は干渉してない…」

「ちょっと待てちょっと待て。まずそっちが俺の世界に来た理由を説明して貰わんと。リングがない理由もな」

「…送ってもらったし、分かった。簡単にね」

そうして彼女は語り始めた。見滝原の秘密を。

魔法少女、魔獣、ナイトメア、街を覆う結界…そして悪魔。

暁美ほむらという少女が行き着いた、最善にして最悪の結末。

世界の理への叛逆の物語。

彼女は円環の理の一端を奪い、世界すらも塗り替えた。

そして彼女の1番大事な人、鹿目まどかをただの人間に戻そうとした。

ただ奪ったのが力の一端であったためか、世界改変は不完全になってしまった。

暁美ほむらと鹿目まどかの世界に、かつて魔女となって死んだ魔法少女は異端とされ、記憶と力を中途半端に残す事になったのだ。

その1人が美樹さやかだった。

悪魔と化した暁美ほむらの打倒を試みるも失敗、和真のいる世界に飛ばされてしまった、という話であった。

「俺の知る歴史じゃない。何がどうなってる?まず君は、俺の知る美樹さやかではないということか」

「そうなるかな。あたしは会った記憶はないし」

「ならそれはそれでいい。魔女になってしまったものは、どうしようもないからな」

それに今の和真に、魔女の力を封印する術などない。

すべて没収され、今の彼にあるのは真二から送られたこの機械のみ。

ブレイバックルもラウズカードも、彼の元にはない。

コネクトリングも。

「ただ今はっきりしてんのは、俺たちが居る時間はまだ悪魔が生まれていないってことか」

「あたし達がいるのは、過去。まだ暁美ほむらが、自身が魔女になってる事に気付く前。アイツが自身の正体を知れば、この結界は崩壊していくはずだから」

「なら今のうちに止めるべきだろ。魔女になる前なら、叩けるはずだ」

「ダメ。魔女になってないってことは、つまり今は魔法少女として活動してる。まどかやマミさんに見られたら厄介だって」

「そっちは厄介かもしれんけど、俺は大丈夫だろ。どうやら誰も俺のこと知らない世界線みたいだし」

「やめておいた方がいいと思うよ。だって、人間じゃん」

「それは…まあな」

否定しきれない。

確かに魔法少女ではないとはいえ、彼も邪神の家系の1人ではある。

身体はそこそこ頑丈ではあるが、しかし時間操作の魔法少女を相手に生身で挑めるほどの力はもうない。

自業自得とはこの事であろうかと、改めて感じる。

バールの一本でもあればなんとかなったかもしれないが、それもないのでは遠距離武装にすら勝てないだろう。

「だからって黙って魔女化するまで待つのか?」

「そういうわけじゃないけど」

「暁美ほむらは俺が止める。俺に関する記憶があるかは分からねえけど。彼女をこうしてしまったのは、俺の責任でもあるだろうし」

そう言って和真はショッピングモールの屋上から飛び降り、一路暁美ほむらを探しに見滝原へと繰り出すのだった。

 

確かにここは彼の知る見滝原だ。それは街を見れば分かる。

けれどどこか違和感がある。やはりさやかが言っていた、結界のせいだろうか。

一旦見滝原と隣の風見野の境界まで行ってみようとしたが、不可思議な力によって見滝原へと戻された。

さやかの説明では見滝原を結界が覆っているということだったが、恐らくそうではない。

この世界には見滝原市しか存在していないのだ。

隣街の風見野はあくまで名称のみ。恐らくあの境界での不可思議な力は、見滝原の結界に人々を閉じ込めておくための、監視員のようなものなのだろう。

結界を作った主、美樹さやかは暁美ほむらだというが、彼女はこの見滝原の外に何人たりとも出さないつもりだ。

「鹿目まどかのため、か」

彼女を守るために暁美ほむらが作った、偽りの世界。

しかし和真の知る鹿目まどかは魔法少女になっていないはずだが、やはり彼の知る世界とは全くの別物なのだろうか。

「ったく…」

いつ暁美ほむらが魔女化するのか、その力がどれほどのものなのか、和真は知らない。

少なくともこの見滝原の結界が崩壊していくのだとすれば、相当な力の持ち主であることは間違いない。

(運命を変えるなんて言っといて、結局何も…)

でも今度こそ魔法少女の運命を変えてみせる。

たとえ世界線が違い、彼女達が和真のことを知らなくても。

彼にワルプルギスを倒すほどの力がなかったとしても。

それでも。

「やってやるさ」

運命と戦う。そして勝ってみせる。

 

 

 

 




ウルトラマンで何か考えるって言って、未だに文字起こしできてないクソザコ作者でごぜーます。
仮面ライダーとしての力失った今の方が、和真くん主人公ぽい?
そうでもないかな。
最後の1行は永遠の切り札から引っ張りました。
仮面ライダー剣最終回です。見てない人は1度でいいから見てほしい。
泣く。
というわけでまどマギの叛逆の物語の話です。
テレビ壊れて叛逆の物語を大画面で見られなくなりまして、記憶に頼ってなんとか書いてます。
次の話で魔女化する、のかな。
ぼちぼち書きます。
じゃ、またねー


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仮面ライダーとして

暁美ほむらを探して見滝原を歩き回り、しばらく経つが、未だに足取りは掴めないでいた。鹿目まどかや佐倉杏子、巴マミといった人物に聞き込みをすれば探り出せるのだろうが、それはできなかった。

あくまで彼はこの世界にあるべき人物ではない、異端の者。

彼女達の世界に極力干渉せずに、暁美ほむらまで辿り着かなければならないというのが彼の考えだった。

「ったく、見滝原ってなァ、こんなに入り組んでたか?」

中学生1人を探して見滝原市街地の裏路地に入ったまでは良かったが、奥に進んでいくにつれて見慣れぬ迷宮になっているのであった。

暁美ほむらが鹿目まどかをこの世界に保護し、外敵を駆除する為に創り出した迷宮、とも考えられなくはない。

ただこの世界に見滝原しかないのならば、外敵は何だ。

魔獣?ナイトメア?それとも、インキュベーターか?

「何でもいいけど」

とにかくどこか外へ出なければ。

しばらく進み、何枚目か分からない扉を開けると。

(おっ?これは)

ここまでとは明らかに違う雰囲気。薄く霧のようなものが立ち込めているが、この感じは外だ。

いつの間にかあたりは暗く、夜になっている。

「ったく、変なとこで時間食っちまったな」

頭をかきながら進んでいくと、やがてバスの停留所へと辿り着いた。

2階建てバスが停車しているが、見滝原にこんなものあったろうか。

しかも風見野行きと書いてある。

(いや、どうせこれも境界までしか行かんだろ)

既に徒歩でこの結界から外に出られないことは知っている。

ならバスがあったとして、結果は同じだろう。

当てが外れたかと停留所を後にしようとすると、そこへ一台の2階建てバスが滑り込んできた。

「なんっ?!なんで燃えてる!?」

たった今滑り込んできた2階建てバスは、燃えていた。

そのままの意味で。炎上していたのだ。

乗客はいなさそうだったが、1人の少女が降りてくるのが見えた。

「暁美…ほむら」

探し求めていた相手だ。

彼女は炎など物ともせずに燃え上がるバスから降りてくると、ソウルジェムを手にした。

黒く、穢れきったそれは、もはや魔法少女の色彩ではない。

彼女の魔女化は目前だろう。どうすべきかと悩む和真は、空から降り注ぐ火の玉を視界の端で捉えた。

空を見上げ、そして知った。

隕石かと思ったがそうではない。魚の骨格のような何かが燃えながら、見滝原に次々と落ちてくるのである。

視線を戻すと、しかしそこに暁美ほむらの姿はなかった。

「おい!どこへ行ったんだ!?暁美ほむら!」

名前を呼んでも暁美ほむらからの答えはない。

代わりに答えたのは、美樹さやかだった。

「魔女化、始まったね。もう少ししたらこの時間のあたし達が暁美ほむらを止めに向かうはずだよ」

「ならそれより早く、アイツを止めるまでだ。ってもクソ、場所分かんねえな」

「コロシアムが見えるでしょ?さっきまでなかったの。あそこ」

「サンキュ」

和真は駆け出した。暁美ほむらを救う、ただそれだけのために。

 

コロシアムの恐らく中心に暁美ほむらはいるのだろうが、見た感じ魔女化はまだ完全ではないらしい。

中途半端に力が漏れ出しているというべきなのか、使い魔やそれに準ずる存在と思われる者達は表に出て来ているが、肝心の魔女本体は姿を見せていない。

「まだ勝機はある、か」

インキュベーターの姿も認めたが、今は奴に構っている暇はない。

柱の影から躍り出て、一気に中心に向かって駆け出すが。

「ぐっ…!」

やはり使い魔はこちらを敵として認識しているらしく、迎撃してくる。彼に続いて姿を見せたインキュベーターにも彼同様、殲滅せんと使い魔は動く。

吹っ飛ばされ、口の中に血の味を感じながらも、和真は立ち上がる。

今度は別方向から接近を試みるが、使い魔により槍のようなものを突き刺され、そのまま投げ飛ばされて柱へ背中を強打。

(だいぶ脆くなったな、俺も)

それでも和真は諦めない。

身体が壊れても、精神がイカれても、絶対に止めてみせる。

「俺は仮面ライダーだ!変身できなくても、俺はお前を救ってみせる!暁美ほむら!」

ブレイバックルを持たなくなって、初めて気付いたかもしれない。

ベルトとカードがあるから仮面ライダーなのではない、ということ。

誰かを救いたい、助けたい、そういう意志があれば、何を持たなくても仮面ライダーとしていられるのだ。

跳躍し今度は空中から仕掛けるが、使い魔は槍を複数投擲。見事なまでの精度で全て彼の身体に命中。

「ッ…!」

そのまま地上へ落とされ、身体をもろに打ち付けてしまう。

受け身など取れていないから、ダメージはかなりあるだろう。

感覚が無くなりつつある腕で身体に刺さった槍を抜き、使い魔とその奥の暁美ほむらを睨む。

(いよいよか)

インキュベーターと和真の違いは、身体が無限にあるか、そうでないかである。

ヤツはいくらやられても直ぐに復活できるが、彼にはそれがない。

この身1つで行かねばならないのだ。

拳を握りしめ、使い魔の1人に狙いを付け、そして刹那に地を蹴る。

「ッらァ!」

投擲される槍には目もくれず、和真は使い魔の1人を殴り付けた。

1人、また1人と殴り、蹴り、血を流しながらも倒し、ほむらに近付いていく。

「これでラストだ!」

ラストワンを殴り飛ばし、暁美ほむらを見据えた瞬間。

背後からの攻撃を想定していなかったのが、命取りだった。

「ごふッ…」

痛みを感じて見れば、腹に黒い槍が何本も刺さっている。しかも全て背後からのものではないか。

首だけ動かして後ろを見やると、使い魔が新たに彼を取り囲んでいるのが見て取れた。

(そりゃ本体倒してねえんだから、消えるわけねえよな)

生暖かい血が流れているがなんとなく分かる。

もう痛覚も無くなりつつあるらしい。

槍に刺されたまま、彼の身体は再度投げられた。

どさりと倒れ、もはや起き上がることも叶いそうに無い。

(それでもこれじゃ終われない!)

確固たる意志だけが、彼を突き動かす。鮮血をぽたりぽたりと垂らしてゾンビのように立ち上がり、槍を抜き、使い魔を見据える。

そして。

 

「それを使うんだ!やり方は分かるはずだ」

ここで聞こえるはずのない真二の声と共に、投げて寄越されたのは。

赤と銀の変身ベルトと、『ROCKING HOPPER』と記された深藍色のキー。

それを受け取ると、和真は確信した。

「ああ、やれる。行ける気がする!」

赤銀の変身ベルトを腰に装着し、キー上部のスイッチ(後に聞いたところでは、ライズスターターというらしい)を押す。

『KAMENRIDER!』

「変…身!」

『CYCLONERISE』『ROCKING HOPPER』

『TYPE ONE』

黒いバッタを身に纏うようにして、和真が姿を変えたのは、仮面ライダーブレイドでも、仮面ライダーカブトでも、ジョーカーでも、アークワンでもない。

深藍色と銀のアーマーを纏った仮面ライダー。

彼は新たな力と共に宣言する。

「俺は仮面ライダー1型。暁美ほむら、お前は俺が助ける!」

 




あっさりまた変身したといわれたら、まあそうかも。
一応令和ファーストジェネレーションをオマージュというか、してみてるんですけど、上手くいかんね。
前は結構サブカルコーナーを頻繁にやってましたけど、最近どうにもねえ…
遊戯王とかやってはいるんですが、うーん、話せる内容かといわれるとそうでもない。
メアリスケルター買ったとか?買っておいて未だにやってない。
リプキスも欲しいし未消化ゲーが増えてしまう。
買う癖なくせばええじゃん、と言われたらそうかもしれんが。
ちなみに遊戯王の新しいデッキ、六花を考えております。
美少女デッキしか使わない男です。
弱くてもいいのさ、可愛いキャラ見て楽しむから。
そろそろ気付けばスリーブがアイマスで統一されてる。
トリックスターは竜宮小町。
マドルチェはあずささん。
まつりのスリーブは何だっけ、ああ、ウィッチクラフトだ。
基本担当アイドルのスリーブを使うマン。
そろそろ目新しさも考えつつ、でも多分またアイマス。
デレマスも導入するか検討せねばな。
じゃ、またねー


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偽りの終わり、真実の始まり

和真は正面から、使い魔と暁美ほむらに向かい合う。

敵が死んでいない事を確認し、使い魔はこちらに狙いを定める。

先程に比べて遥かに身体が軽い。攻撃を難なく全て避け、使い魔に拳を叩き込み、蹴り飛ばしていく。

暁美ほむらのいる中心部にある程度近付いたところで跳躍、彼女に近付こうとしたが、僅かに遅かった。

凄まじい衝撃波により吹き飛ばされる和真。

「魔女化、したのか!」

生まれ落ちる魔女。暁美ほむらの成れの果て、悪魔に至る前の姿。

されど膨大な魔力と共に、彼女は進撃を開始する。

軍隊のように整列した使い魔達に続くように、魔女は偽りの見滝原を進んでいく。

「クソ、こうなりゃ力づくでか」

彼に変身ベルトとキーを投げて寄越した人物の姿はもうなく、頼る事はできなさそうだ。

コロシアムは壊れ始め、ここに長居するのも危険と見られる。

ビルへと飛び移り、和真は魔女と化した暁美ほむらを追い始めた。

 

魔女に姿を変えたからだろう、魔法少女の時よりも力は圧倒的だ。

銃火器はないが、その分魔女としての力が発揮されている。

使い魔の数だけでも見滝原を埋め尽くすほどだ。

「こりゃ怪獣だな」

進撃する暁美ほむらと使い魔の前に、仮面ライダー1型が立ちはだかる。

世界を崩壊させるジョーカーには頼れない。自身の力のみで、暁美ほむらを助け出す。

剣なき今、彼の武器は肉体のみ。

『ROCKING SPARK』

深藍色の閃光となり、和真は使い魔を蹴散らしていく。

だが使い魔に構っている余裕もなく、短期決戦を試みる。

周囲のビルをも利用して魔女の頭部へと接近していき、右手にエネルギーを収束させ、和真は躊躇なく殴り付けた。

鋭い一撃に揺らぐ魔女の体。

行けるかと思われたが、魔女は直ぐに体勢を立て直し、骨だけの腕で和真の身体を振り落とす。

地上に叩き付けられ、目と鼻の先だった魔女本体は再び遠くなる。

「くそっ…」

ロイヤルストレートフラッシュを使えば、これくらいの魔女でも一瞬で葬れるのだが。

かといってブレイドに変身できるわけでもないので、この力でどうにか暁美ほむらを救い出さねばならない。

魔法少女より早く、暁美ほむらが悪魔になるよりも前に。

「待ってろ暁美ほむら!」

再度加速して攻撃をかいくぐり、魔女の両手に付いた拘束具を殴り砕き、魔女の頭部に接近。

『ROCKING THE END』

脚部にエネルギーを収束させ、強烈な蹴りを魔女の顔面に放つ。

魔女本体の内部構造がどうなっているのか知らないので、この蹴りがマジで顔面に当たっているのかもしれないと考えて、ふと不安になってしまう。

(いや大丈夫かな?)

そうして放たれたキックは見事に魔女を吹っ飛ばし、彼女の進行を食い止めることに成功。

しかしあくまで足止めにすぎない。

彼女を救うには、どう足掻いたところで彼1人では無理なのは、やはり和真自身分かっていることだった。

(魔女を救う為には、円環の理の力は必要なのか)

鹿目まどか、円環の理。

彼女がいなければ暁美ほむらは救えないが、それは魔法少女達との合流をも意味している。

「誰だろ、アレ」

「さあ?見たことない服装だけど」

「でも魔女、じゃなさそうだよね?」

未来の美樹さやかの言っていた通り、来てしまったか。

鹿目まどか、この時間の美樹さやか、佐倉杏子、巴マミ、キュウべえ。もう1人幼女が見えるが、まあ細かいことは気にしていられない。

彼女達が暁美ほむらを救う、本来の役割を担っているのだろうが、こちらも指を咥えて見ているだけにもいかない。

起き上がろうとする魔女に視線を戻し、拳を握り締める。

和真は鹿目まどかに向かって叫んだ。

「鹿目まどか!暁美ほむらを救うカギは、君だ!」

「えっ?」

「気にしないで、プラン通りに行くよ」

「う、うん!」

「おい!話聞けよ!」

この時間、世界の美樹さやかは和真とは面識はないのは確かだ。

この世界の未来の美樹さやかが和真のことを知らなかったのだから。

せめてどこか知り合いのような感じがする、くらいあっても良いと思うのだが、それは欲を言い過ぎか。

「ったく、アイツらだけで暁美ほむらを救うつもりか?」

ふっと現れるこの世界の未来の美樹さやか。

どこへ行っていたのだとは今更聞かない。

聞いている余裕もない。

「でも失敗したんだよね」

「失敗したとかハッキリ言うね。自分で立てたプランだったんだろ」

「まあそうだけど。どっちにしろ暁美ほむらを救うには、円環の理としてもう一度覚醒した鹿目まどかの力が必要だった。でも今考えれば、悪魔を生み出すきっかけにもなっちゃったんだよね」

「じゃあどうする?魔法少女を倒すのか?」

「何言ってるの?そんなことしたら、鹿目まどかを救えなくなるから、暁美ほむらはまたやり直すことになるよ」

「…どうしろってんだ?暁美ほむらを救うためには、円環の理が覚醒しなければならない。でもそれに合わせて悪魔も誕生する。…そうか!」

「何?」

「恐らく暁美ほむらを鹿目まどかの前で殺せば、鹿目まどかは暴走するだろう。暁美ほむらが目覚めて、鹿目まどかから力を奪おうとするタイミングを狙う」

「無理でしょ。あたしにも出来なかったんだよ?なんかアーマーみたいなの着てるけど、悪魔相手にそれは無謀だって」

「なら諦めるのか?俺は諦めねえ。俺が責任を持って、暁美ほむらを止める」

 

「なんでそこまで拘るの?暁美ほむらに」

「鹿目まどかは魔法少女にならないはずだったんだ。少なくとも、俺のいた世界では、彼女が魔法少女を救って円環の理になる未来は、存在しなかった。美樹さやか、君も、魔女にならなかった」

「…それで?」

「鹿目まどかが倒すはずのワルプルギスは、俺が倒して暁美ほむらのループも終わったと思ってた。でもこの世界はそうじゃなかった。運命を変えられなかった」

「ワルプルギスを1人で?」

「信じてくれようがくれまいが、構いやしない。あの時は力があったんだ。今はそれがない。でも、運命は変えられるはずだ」

「あたしは信じるよ。魔女でも魔法少女でもないけど、そこまでの意志を持ってるなら、やれるって」

「ああ」

「なら1つアドバイス。この結界の外に、インキュベーターの封印がある。それを砕くことが、今のあたし達の目的でもある」

彼女がそう言うと、結界の天蓋が砕け、白いインキュベーターの顔がいくつも覗く。その向こうに怪しげな装置も見え隠れしている。

「なら俺がそれを壊す」

『ROCKING SPARK』

深藍色の閃光と化し、和真は宙を駆け上がる。

彼女の言葉から察するに、恐らくその装置の破壊がこの結界の破壊、そして暁美ほむらの解放に繋がるということなのだろう。

天蓋から躍り出ると、和真は封印装置らしきものに狙いを定めた。

『ROCKING THE END』

エネルギーを右脚に集中させ、封印に向けてキックを見舞う。

跡形もなく砕ける封印。

そして鹿目まどかは、暁美ほむらへと辿り着く。

闇に囚われていた暁美ほむらの手を鹿目まどかが取り、そして暁美ほむらの世界に光が帰ってきた。

暁美ほむらと鹿目まどかは互いに弓を取り、そしてセフィロトの樹と思しき光の紋様を撃ち上げる。

「すげえ…」

鹿目まどかは魔法少女の姿をしているが、最早神に等しい。円環の理が魔法少女の姿を借りた、というのならウルトラマンにも似たようなことが言えるかもしれない。

インキュベーターの世界は2人の魔法少女の力によって、完璧に消し去られ、世界は元の姿を取り戻していくことになる。

偽りの街は消滅し、辺りは一面の荒涼とした大地に。

これからあるべき本当の世界が再構築されていくのだろう。

円環の理である鹿目まどかによって。

(でもそうは問屋がおろさねえってか)

眠り姫を迎えに行く王子のように、鹿目まどかはアルティメットまどかになり、暁美ほむらの元へと降りてくる。

和真は変身を解き、未来の美樹さやかと隠れてその様子を伺う。

「おい、封印解いたのにまだ目覚めねえのか」

「目覚めのキスが必要でしょ、眠り姫には」

「やはりそういうことか」

ぐずぐず悩んでいる暇はない。間も無くアルティメットまどかが暁美ほむらに接触、そうすれば悪魔化は始まるというわけだ。

「美樹さやか。君の力、俺に預けてくれ」

「悪魔化が始まれば君のその魔女の力も、薄れていくと思う。なら影響を受けない俺がやる」

「でもあたしがこれを手放したら…」

「俺は暁美ほむらを助ける。美樹さやか、君も守ってみせる。ださいセリフだと笑ってくれてもいい。でも、俺に賭けてくれ」

「…分かった。その代わり、キチンと決着をつけて」

「ああ」

リングを指から外すと、それはソウルジェムの形になり、和真の手に渡された。

魔女となった彼女の魂は変化し、恐らく一定距離離れたところでも大丈夫だと思ったから、彼に託せたのだろう。

和真は迷う事なく、水色のそのソウルジェムを身体に埋め込む。

「いや、そうする?」

「これしか思い付かねえんだよ」

青い魔力を身に纏い、魔力放出で刹那に加速して、和真は2人の元へと向かう。

本来の使用者ではないため適合しているわけではないようだが、力を発揮することはできるようだ。

鹿目まどかと暁美ほむらが、今まさに接触しようとした時。

「やめろ、暁美ほむら!」

けれど彼女は笑みを浮かべる。

ようやく時は来た。彼女が望む、最高最善して、最低最悪の結末。

されど和真はそれを止める。

暁美ほむらと鹿目まどかの元へ駆け寄るが、凄まじいエネルギーが暁美ほむらから放たれ、和真を吹き飛ばそうとする。

が、今の和真は耐えた。

「暁美ほむら!よせ!世界を壊す気か!」

彼女は答えない。闇が広がり始める。

鹿目まどかに暁美ほむらは触れ、そして。

円環の理としての鹿目まどかと、人間としての鹿目まどかを切り離した。

「何!?」

このガラスが砕けるようなこの音の正体を、和真は知っている。

世界が崩壊する音だ。

間違い無く、このままでは円環の理としての鹿目まどかは消滅する。

人間としての鹿目まどかのみを、暁美ほむらは残すつもりだ。

「そうは、させねえ!」

凄まじいエネルギーの波の中、和真は迷うことなく手を伸ばす。

遠ざかる円環の理としての鹿目まどか。

「悪魔に世界を変えさせるか!なら俺が、俺がやってやる!」

後の事は後になって考えろ。今は深く考えるな。

掴め、彼女の手を。ただその為だけに行け。

俺のため、彼女のため、世界のため。

そして彼の手は…円環の理を掴んだ。

瞬間、優しい光が八坂和真を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、最新話です。
ちょっと展開がやべーことになってきたかもしれん。
どうしよ、あ、遊戯王のカード買わなきゃ。
今夜あたり最新話また書き始めると思います。
ブレイドに戻らんとあかんとは思うんだが、ちょっと和真くん…アルティメット和真にでもなるつもりですかね。
いやどーなんだろ、まどかライドウォッチ?
さすがに無理あるよね。
つーかどうにかしてもっかい仮面ライダーブレイドに変身させたい。
頑張ります。
じゃ、またねー


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永遠の切り札

目を開くと、穏やかな光の中に彼はいた。

白い何もない空間に見えて、そこには和真ともう1人、少女の姿があった。

ピンク色の髪に白いリボン、金色の瞳。そして純白の衣装に身を包んだ少女。

円環の理として神にも等しい存在であるはずの彼女、けれど今やその体は薄れ始めていた。

「消えるのか?」

彼女は頷く。話すこともままならないのか、それともトーク機能はそもそも鹿目まどかに依存しているため、この状態では話せないのか。

「暁美ほむらを止める。力を貸してくれ。俺は魔法少女でも魔女でもないが…未来の時間の美樹さやかから魔女の力を一時的に借りてる。円環の理の力も貸してもらえれば、世界を修復可能だ」

沈黙。

円環の理の反応はない。

「俺は暁美ほむらを救いたい。鹿目まどかも、巴マミも、佐倉杏子も、美樹さやかも。かつてワルプルギスを倒して、皆救えたと思ってた。でもそれはただの自己満足、驕りに過ぎなかったのかもしれない」

「こうして悪魔を生み出してしまったのは、俺が至らなかったからだ、と思ってる。前に訪れたあの世界とこの世界は違うみたいだけど、俺にとっては同じだ。俺は魔法少女の運命を変えたかったんだ」

「救われない者を救う、それが俺のやりたかったことだって、改めて分かったんだ。色々と旅してきたけど、たぶんその中で戦う意味も分からなくなりかけてた。旅が主体になってしまってね」

「力を手にして、浮かれてた。でも一度力を失って、そして気付けたんだ。自分のやりたいことが何なのか」

決意の眼差しで和真は、円環の理を見据えた。

「魔法少女を救い、魔女を救済し、悪魔を止める。戦えない、全ての人のために…俺が戦う。そして運命に勝ってみせる」

力強く、和真は再び宣言した。

彼の言葉に納得したのか、答えが無いから分からない。

だが小さく頷いた円環の理は和真に近付くと、胸に手を当ててきた。

「ッ…これはッ?!」

膨大な情報が一挙に流れ込んでくる。

古今東西あらゆる時代、あらゆる場所で生まれ、死んでいった魔法少女の記憶とその人生。

円環の理の力とは、そういうことなのだ。

自身を捨て、他者の幸せを願う。極限の自己犠牲の元に成り立つ、神にも等しい力。

自らの死は無く、無限の戦いが彼の人生を蝕むだろう。

それでも彼は。

膨大な魔力を体内に受け入れ、身体の変質を理解しながらも。

もう一度、運命に抗う。

穏やかな光は消えていく。円環の理の姿は薄くなり、消失。

だが最後に和真は確かに聞き取れた。

彼女の最後の言葉を。

『ありがとう』

と。

 

悪魔がまさに今、生まれ落ちようとしていた。

ソウルジェムはグリーフシードへ、更に禍々しい別のものへと姿を変えようとしていた。

巴マミ、佐倉杏子、美樹さやかが止めようと試みるが、膨大な魔力が彼女達を阻む。

しかしその膨大な魔力は刹那、消え去った。

「あれは…」

美樹さやか(未来)はそこに新たな円環の理を見た。

鹿目まどかの円環の理と同質の力を内包し、それがいくらか変化を遂げている。それでいてさやか自身が手渡し、彼が体内に埋め込んだ魔女の力も残っているようだ。

ピンクとライトブルーの髪に、金色の瞳。

さやかの武装だったサーベルを右手に、左手を暁美ほむらに向けている。

恐らく左手で暁美ほむらの膨大な魔力を消し去ったか、あるいは吸収して己のものとしたのか。

「すごい…」

円環の理は八坂和真と同化し、八坂和真は円環の理となった。

美樹さやかの魔女としての力を失わせず、円環の理と両立させている、最早イレギュラーな存在。

特別としか言いようがない。

「暁美ほむら、君は悪魔にならなくて良い」

激情的でもあった先程から一変、冷静で優しさを感じさせる口調。

そして彼が剣を天に掲げると、鹿目まどかと同質のセフィロトの樹が展開された。

しかし色は水色。美樹さやかのカラーだ。

「世界をリセットする。魔法少女も魔女も悪魔も、助ける。人間として。君達は…人間たちの中で生き続けるんだ…」

 

かつて彼と同じくアンデッドとなった、1人の青年がいた。

彼は友であり、倒すべき敵となった男に同じように言った。

「人間たちの中で生き続けろ』と。

そして切り札は永遠に生き続けることになった。

 

和真もまた、少女たちが生きることを望んだ。

己は滅ぼうとも、少女たちの運命を変えられるなら、それで良い。

運命の切り札を和真はつかみ取った。

円環の理。それが今の彼の切り札(ジョーカー)だ。

青いセフィロトの樹は眩いばかりの光を放ち、古今東西あらゆる時代、あらゆる場所の魔法少女、魔女を優しく包む。

そして悪魔に変わりつつある暁美ほむらをも包み込んだ。

穏やかな青い光に包まれ、世界は再び作り直されていく。

魔法少女も、魔女も、悪魔も、全て消え去る。

少女たちは、あるべき本来の中学生活へと戻れる。

身体の変質で青春を謳歌できなくなることもない。

これで良かったのだろう。

 

「自分が、誰にも知られなくなるって怖くないの?」

この時間軸において異常な存在であった、未来の美樹さやか。彼女は世界再構築の中でも、記憶が完全に消え去ることはなかったらしい。

「良いんだ。俺たちは二度と会うこともない。触れ合うこともない。…それで、良いんだ…」

「えっ」

どこか悲しげに彼は言う。

そして手を未来の美樹さやかに向けると、彼女を未来へと送り返した。

再構築された平和なこの世界の未来へと。

彼女は彼を知っていても、他の人は知ることはない。魔女の力も彼女はもう無いから、彼を探しに来ることも出来ないはず。

以前と違い、今度こそ、これで良かったのだ。

 

人気のない高台で、1人の青年がコーヒーを啜る。

世界が再構築された日の夜、誰もこの世界の真実を知らないまま。

それで良い。

「誰も君を知らなくても良いのかい?」

「俺の望んだことだ。これで良いんだ」

彼の手元には壊れた変身ベルトとキー。見たところこれではもう使い物にならないが、恐らく試作品だったのだろう。

気付けばこうなっていた。

白い小動物との対話をあっさりと切り上げ、ピンクとライトブルーの髪を僅かに風になびかせ、金色の瞳をした青年は去っていった。

 

「良かったの?彼を助けてしまったけれど」

「息子が死ぬのは忍びないですし。それよりアレ、壊れてしまいましたよ?」

「それは構わないわ。戦闘データを取るのが目的でもあった、プロトタイプだもの」

「なら良いんですが…厄介な事になりましたね」

「確かにそうね」

「どうしたニャル子?」「どうしたの?ニャル子」

「何かあったの?」

「真尋さん、とクー子、ハス太くん。いえ、私と真尋さんの息子が」

「「「?」」」

「神になりまして」

「「「はい?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 




安定の(?)スペシャル対談第2弾。
今回も作者と主人公でお送りしますので、安定メンバーですね。

和真「神なったね。円環の理、神っていうか分からんけど」
作者「見た目もう原形ねえ」
和真「どーすんのさ。この後ヒロイン出すんだろ?俺の嫁さん、真二の母親」
作者「いや、うん。でもこれ確実に未来変わってるよね」
和真「なんとかしろよ。真二とダブル主人公なんだろ?」
作者「正直なんとかしねえと。頑張ります!」
和真「誰に言ってんの?」

というわけでぼちぼち頑張ります。
強くなりすぎたか和真。
いつブレイドに戻すかも悩みどころだけどなぁ、ここまで来ると作者が扱いきれないキャラ筆頭よ。
なんとかするけど。
近いうち最新話あげますわ。
じゃ、またねー


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新たな戦場へ

再び和真は懐かしの我が家の前に戻って来ていた。

本来ならばあの腕時計型の機械を使って転移をするのだが、円環の理の力を得てしまった今、幸か不幸かその機械は必要なくなった。

君が願う事なら、全てがすべてが現実になるだろう、というような感じか。少し違うかもしれないが。

ともかく真二から送られたものなので、彼に返す必要はあるだろう。

この状況も真二の未来には織り込み済みならば良いのだが、そうでなかった場合、アークワンの時よろしく、また力を取られるということもあり得る。

何せピンクとライトブルーの髪に、金色の瞳。更に神にも等しい円環の理と、魔女の力を内包してしまったのだ。

最早てんこ盛り、超クライマックスである。

出かけてからどうやら数日は経ったようだが、大して怪しまれることもないだろう。旅の期間に比べれば短いものだ。

「ただいま」

家に上がりリビングに入ると、いつもの人外ファミリーが彼を迎えたのだが。

「え、誰です?」

「いや、あのお母様?急な他人行儀なことを仰られても困るんですが」

「神になったって言ったけど、見た目変わり過ぎてる。キャラ崩壊とかのレベルじゃない」

「なんか女神化っぽいね」

「戻れそうにない。でも、魔法少女の為には、これで良かったんだ」

そう言いつつ椅子を引っ張り、人外ファミリーが占拠するソファの近くに座る。

「でも一から説明してもらわないと分からないだろ。惑星保護機構側も動きがあるみたいだし」

「そうですね。説明、できます?」

「分かった」

 

そう答えて和真は、大学での美樹さやかとの遭遇から今までのことを、出来るだけ短くかいつまんで説明していった。

美樹さやかのこと、暁美ほむらのこと、鹿目まどかのこと。仮面ライダー1型のこと、円環の理のこと。

そして彼が円環の理と魔女の力を内包し、こうした姿に変貌したということも。

多少彼女らに情報は漏れているであろうことは想定済みなので、敢えて仮面ライダー1型のことは話す事にした。

母・ニャル子は特にメタなことが多いため、隠しても無意味と踏んだ次第である。

ハス太がタブレットを操作しながら、口を開いた。

「惑星保護機構だけじゃなくて、他の勢力も彼の力を狙って動き始めたみたい」

「他の勢力?邪神ですか?」

「前にまひろくんを狙ってた、人身売買の組織の残党とか、色々なのが動き出してる」

「母さん、ブレイバックル返してもらえないか?アイツらに円環の理の力をできれば使いたくない。ブレイドに変身すれば時間稼ぎくらいは、出来るはずだ」

「でも惑星保護機構で凍結処理を言い渡されてますし」

「凍結、処理?」

「こっちはそんな話聞いてないよ?あくまで没収するとだけ」

「没収及び当面使用禁止って話じゃなかった?」

「情報が違ってる…どうなってるんだ?」

かつてはチームを組んでいたこの人外ファミリーも、今はそれぞれ別の部署に移っている。そのせいで情報が交錯しているのか、それとも。

「誰かが偽の情報を流した?」

「あり得なくはないですけど。今更感が」

「惑星保護機構は大きな組織だし、付け入る隙もある。誰か裏切り者がいるはずだ。して、ブレイバックルはどこに?」

「惑星保護機構に転送しちゃった…」

「はあ、分かった。座標を俺の端末に送っておいて。すぐにここから離れるから…ってもう来たのか」

窓ガラスをぶち破って現れる、黒い異形。ナイトゴーントだ。

一瞬で間合いを詰めてナイトゴーントをワンパンで消滅させ、窓から外に出ると。

「動きが早すぎる。こうなる未来を識っていた人物がいるな」

異形の群れ、黒影トルーパーなど次々に彼を狙って戦力が投入されてくる。

円環の理の力は使わないと考えていたが、この数相手に一体ずつ殴っていてはキリがない。

サーベルを空間に無数に展開、襲いくる敵に射出していく。

自身は弓を構え、剣で仕留めきれない敵を撃ち落とす。

弓兵如きが剣士の真似事、というより剣士如きが弓兵の真似事というべきか、この状況。

雑魚敵を掃討しながら、親から送られた座標を確認。

(宇宙だな)

惑星保護機構というだけあって、やはり宇宙規模の組織。地球に本部があるというわけでもないのである。

飛んでいくことは出来ないので、転移するしかなさそうだ。

不本意ながらも力を使ってその座標へとテレポート。和真は初めて単独で惑星保護機構に乗り込むこととなった。

 

惑星保護機構の中は一度親の職場見学という形で訪れた事はなくもなかったが、あの時は奥まで入り込めなかった。

サーベルを手に通路を進むが、一向にブレイバックルを見つける事は出来ないまま、記された座標付近の部屋を探しまくっても、ラウズカード1つない。

「まさか誰かに取られたか」

あり得る話だ。和真が円環の理の力を手にすると知り、彼が居ない間に敢えてブレイバックルを凍結処理。その情報を流し、こちらが手を出せないようにした。

しかもそれが大規模組織の作戦であったとすれば、信用もされる。

「貴様が円環の理の力を得ると識ったからこそ、計画を練ったのだ。そして貴様はもう仮面ライダーブレイドではない。私が仮面ライダーブレイドだ」

キングフォームの姿でキングラウザーを手に、歩み寄ってくる男。

キングラウザーを和真に向け、近づけぬように間合いを取ってくる。

「神にも等しき円環の理。力とは、他者を圧し、支配するためにある。貴様のような生温いシロウトが使うより、私のような人間が使うに相応しい。それに気付けぬお前が私に勝てるはずがないのだ」

「この力は、決して希望を捨てない人々のためにある。それに気付けぬお前が、勝てるはずがない!」

そう言って金色の瞳を光らせ、和真はサーベルと槍を手にした。

王と神が対峙する。

決戦の火蓋は切って落とされようとしていた。

 




今回短めですね。
この次の次あたりの話から、和真くんの嫁さんの話を始めようかと思ってるので、結構あっさり惑星保護機構での戦いは進めようと思ってます。
正直和真くんの嫁さん?奥さんのストーリーの方が悩み。
ラブストーリーとかなんか書くの苦手なんすよ。
でも3年くらいヒロインいないストーリーだったし、またにはというか、そろそろ青春すんのもアリかなとも。
ま、低クオリティですけど。
ぼちぼちウルトラマンの方も進めつつ書いていきます。
じゃ、またねー


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絆-ネクサス-

仮面ライダーブレイドのキングフォームと戦うというのは、正直自分の分身と戦うようなものだ。

和真がワルプルギスを止めるために初めて使った、強大な力。

魔女や反転精霊、ネウロイといった強敵を屠ってきたその力を、今彼は体感していた。

どうやらキングフォームとしての性能やキングラウザーに加え、どうやら変身者の潜在能力が高いらしい。

(もしかして邪神だったりするのか)

だがこれが自身の写し鏡だったとしても、倒さねばならない。

下手に使えば世界を滅ぼしかねない力であり、更に彼は和真の持つ円環の理をも奪おうとしている。

魔法少女、魔女、悪魔、彼女達を救っておきながら、こんなところで

その力を失うわけにはいかないのだ。

サーベル、槍、マスケット銃、短剣…ありとあらゆる魔法少女の武装を展開し、ブレイドキングフォームに攻撃を集中させる。

「円環の理は人々を圧する力でも、支配する力でもない。他者を受け入れ、その全てを背負う、救済の力だ」

攻撃を集中させながら、弓に魔力の矢をつがえ、引き絞り。

「圧したり支配するなんていうのはは、ただの力任せの邪悪な願いだ。自惚れるなよ」

そして青く光る魔力の矢を、キングフォームに向けて放つ。

止まらないスピードで矢はキングフォームの腹部に突き刺さる。

そして男の変身は解け、ブレイバックルとラウズカード、ラウズアブソーバーは男の手を離れた。

腹はブレイドの数少ない装甲が薄い部分でありそこを狙った、というのは使用者だからこそ分かることでもあった。

 

「世界は…私のものだ…その神に等しい力も…!」

腹部を押さえながらも男は立つ。

ブレイバックル、ラウズカード、ラウズアブソーバーは既に和真の手に戻っている。

最早執念深いとも言えるレベルであるが、だが丁度その時応援が到着した。母と父、ニャル子と真尋だった。

「ようやく辿り着きましたよ…ってあんた、ニャル滝!?」

「前にローコストドライバーでひと騒動起こした奴か?確か」

「事件自体がだいぶ前の事ですけど、たぶんそうでしょう。それに今原作本持ってないから確認もできませんし」

「原作本とかいうな。とにかくニャル滝をもう一度捕まえれば良いんだろ?」

八坂真尋の言葉に、和真は否と答えた。

「いや、まだだと思う。ニャル滝1人の犯行とは考えにくいし、誤情報とかを流した共犯者がいるはずだ」

「じゃあその共犯者を見つければいいわけだ。ニャル滝が簡単に口を割るかどうかは、別としても」

まあそう言ったところで、大人しくはいそうですかと仲間を売るような事もないだろう。

しかし母・ニャル子が漆黒の装甲、フルフォースフォームに姿を変えてニャル滝の首根っこを掴み、二言三言凄んだように言うと、あっさり彼は口を割ってくれた。

「何言ったんだろ」

「さあ?弱みでも握ってたんだろ」

というわけでニャル滝が言うには、今回の事件はローコストドライバーでの失敗で諦めきれず、ブレイドに手を出したとのこと。

既に地球に向かって逃亡したとのことで、間も無く月のあたりだと言う。

「確かか?」

「ああ、邪神計算機でやったんだから間違いない」

「当てにならないですね」

「お前のはいつもだよ。でも逃亡したっていうなら、追い掛けるしか手はないだろ」

「分かった、俺が先に行く」

それだけ言うと、和真は再びテレポートした。

 

おおよそ月のあたりまで戻ってきたが、やはりあたりは暗黒だった。

円環の理と魔女の力を得たことの影響か、宇宙空間でも生身で動けていることが異常であり、驚くべきことであるはずなのだが、今の和真はそれを自然と受け入れていた。

最早円環の理に対して、物理法則など意味がないのかもしれない。

ひとまずあたりを見回すと、丁度月を通り過ぎ、地球に突入しようとする物体を視界の端で捉えた。

宇宙船かなにかだろう、和真は黄色のリボンを伸ばしてその物体を拘束、引き寄せつつ砲丸投げよろしく月へと投げ飛ばす。

そして青い翼を展開し、月面へと降りて行った。

 

宇宙船らしきものは月面に投げ飛ばされたこともあり、既に飛ぶのはおろか、動かすことすらままならないような見てくれになっていた。

「ちくしょう!あと少しで辿り着けたっつーのに」

イライラしながら宇宙船を動かしていたと思われる男が、工具を取り出して修理を始めている。生身で外に出ても大丈夫なのあたり、何かしらフィールドを張っているか、それとも耐性があるのか。

どちらにせよニャル滝が言っていたのは、彼の事だろう。

「あんたか、ニャル滝の協力者は」

和真の言葉が聞こえたのか、男は手を止めてこちらを振り向く。

30代くらいで、軍服らしきものを着ている。

惑星保護機構所属の軍人だろうか。

「ニャル滝から聞いたのか?ブレイドの力を使えるって聞いたらあっさり乗りやがったが、使えねえヤツだ。しかしそっちから出向いて貰えるとはな、八坂和真。いや円環の理か」

「未来を識っていたのは、あんたか。俺が円環の理の力を手にすると知らなければ、ブレイバックルも取り上げなかったろう」

「お前がこれまで散々暴れてくれたからな。それが凍結処理を言い渡す良い理由にはなったよ。まあ、充分に情報が行き渡らなかったあたり、ニャル滝のせいでもあるがな」

「ニャル滝はブレイドの力を求めた。だがあんたは俺が円環の理の力を手にすると識って、何をしようとしたんだ」

「俺は元々未来を識る能力を持っていた。生まれたつきな。それであらゆる未来を識り、常に最高最善の手を打ち、惑星保護機構の軍人にまで上り詰めた。だがある時気付いたんだ、現実のつまらなさに。いくら未来を識ったところで、それより良い手を打てば終わりだ」

「だから、俺の未来を識ることにしたと」

「ああ、惑星保護機構の中でも話題になっているヤツがいた。八坂和真っていう青年だった。数多の世界を巡るそいつは、自分の気の向くままに世界を巡っていた。興味を引かれたんだ。そしてそいつが円環の理と魔女の力を手にすると識った」

「その割にはすぐに奪おうとはしなかったな」

「未来を識れるとはいえ、その未来を変えてきたのは俺自身だ。八坂和真が円環の理を手にしないという未来もあり得る。だからこそ、慎重に計画を練った。表向きはブレイドのライダーシステムに凍結処理を施し、それをニャル滝に渡してな」

「結局何が言いたい?円環の理を奪って、何がしたい?」

「世界を創り直す。面白いものにな。クロワールなんてやつから声をかけられたが、俺の求める面白さじゃなかった。俺が望む面白い世界を創りたいからこそ、俺は神にも等しい力を求めたのさ」

しかし和真は違う、と答えた。

「円環の理は世界を創り変える力じゃない。それに、大いなる力には大いなる責任が伴う。勿論大きな犠牲も。分かっているんじゃないのか、軍人なら」

「無論承知だ。こんなつまらない世界が作り変えられるなら、俺はどんな犠牲だろうが構いやしない」

「あんたはそう言っても、この力の意味を知らないんだ。俺は円環の理の力を手にして、改めて魔法少女というものを知った。彼女達の孤独な戦い、人知れぬ犠牲、死んでも死に切れない悲しみ。好きな人のために契約した魔法少女も、それこそ愛が故に戦い続けた魔法少女だっていた。同じ時間を繰り返して、何度も何度も何度も。身体が変わり果ててしまってもな」

「あんたはどうだ?未来を変えて、つまらなくなったから円環の理を使い、世界そのものそのものを変える?」

和真は拳を握り締める。

「俺は今、魔法少女だった時の彼女達を知っている。それが魔法少女から、鹿目まどかから託された絆なんだと思う。俺に彼女がこの力を託してくれなければ、こうなる未来はなかった」

「彼女達は最後まで諦めなかった。あんたとは違う!」

ピンクとライトブルーの髪は、ピンク一色へと変化し、瞳がライトブルーと金色のオッドアイに。

服装は私服でなくなり、銀色の鎧を纏い、白いマントをたなびかせて、始まりの男のような姿になる。

「言うじゃないか、八坂和真。所詮20も行かないガキが、絆だなんだと語りやがる。さっさと円環の理を寄越せば良いものを。世界を面白いものに書き換えてやるのに」

男は禍々しいエネルギーとともに身体を変質させ、赤と黒の戦国武将のような姿に。赤い刀身の刀と、銃と日本刀を合わせたような銃剣を手に、和真と相対する。

和真はサーベルと槍を手に、男は二本の刀剣を手に。

互いの信念のため。

青い月をバックに2人の男の戦いは、始まった。

 

 

 

 

 




次の次の話から青春編始めようなんて前に話したけど、これ次の話にずれ込むな。
和真くん、いや、人間やめたね。
ブレイバックル取り返したんだから使えばよかったかな。
アルティメット和真だよ、これじゃ。
いや良いけどさ。
パワーインフレとか色々そういう問題あるし、考えないとね。
ニャル子ワールドでパワーインフレとか今更か。
ま、とりあえず次の話で決着つけるとして。
大学戻らなあかんよね。
なんとかせねば。
まあ今回はちょいちょいアニソンだったりとか、特撮のopだったりとかのネタ入ってます。
気が向いたら探して見てくだせえ。
ぼちぼち次の話も書きます。
じゃ、またねー


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日常への帰還

戦いは和真が優勢で進んでいった。

鎧武者のような姿へと変身した男に対し、剣、槍、弓、銃などをもって攻めていく。

未来を識る能力を持つ男だが、こちらがそれを上回る戦力を投入していけば良い。我ながら半ば脳筋である。

円環の理の力を奪われるわけにはいかないということに加え、何より鹿目まどかから託された力を、私利私欲のために使われたくなかった。

和真自身、こうして使っているから何も言えないが。

正直この戦いが終わり次第、封印した方がいいかもしれないなどと思い始めていた。

「ここでお前が死んだところで、誰も知りやしねえ!大人しく力を寄越せ!クソガキ!」

「そうはいかないっ!つまらないとか面白いとか、そんなもので世界を作り変えようとするな!」

「いや、お前も最近やったろ」

「アレは俺のケジメだ。俺はもう自分の罪を数えたんだ。お前の罪を数えろ!」

「俺に罪はない。つまらない世界が悪い。もっと俺を楽しませろ、いい加減イライラしてくるんだ」

男は鎧武者のような姿から、紫の蛇をモチーフにしたような姿へ。

「急にキャラ崩壊するな!っつーか姿を変えられるって、あんたニャルラトホテプなのか?」

「ああ?そんなことも知らずに来たのか」

武器も角のようなドリルのような剣に変わり、荒々しい戦い方になってくる。

「オラァ!」

「ぐっ…」

サーベルで防ぐが、鋭く放たれた蹴りは和真の身体をふっとばし、月の岩山に叩きつける。

邪神というより蛇神のような。雰囲気がもう、蛇柄のジャケットを着ていてもおかしくない。

「ニャルラトホテプってこんな、変なのばっかりか…?」

銀の鎧は解除され、髪は元のピンクとライトブルーに。

目の黄金の輝きも僅かに薄らぐ。

「ま、ニャル滝は死のうが死ぬまいが、どうでもいいがな。アイツは所詮ただの囮にすぎん」

そう吐き捨てる男に向け、和真はマスケット銃を巨大にしたような大砲を創り出し、銃口を向ける。

「フィナーレだ」

凄まじい魔力の砲が放たれ、月面を大きくえぐって男を直撃するが。

男は無傷でそこに立っていた。

「フィナーレだぁ?その程度か?俺の方が円環の理の力、使いこなせそうだなぁ?さっさと寄越した方が、身の為だぜ」

「そういうわけには…いかないんだ」

和真は円環の理、鹿目まどかに認めて貰い、この力を託された。

彼自身が魔法少女を、魔女を、悪魔を救済するという目的のために。

悪意の名の下にこの力を使わせてはならない。

(暁美ほむらの二の舞になりかねない)

最も美樹さやかから話を聞いただけだったし、実物を見るには至っていない。なぜなら、和真がそれを止めたから。けれど変貌前でも禍々しい雰囲気は見て取れた。

円環の理の一端を盗まれるだけで、世界そのものを書き換えられてしまうのだ。

まだ和真が完全に適合していないともいえるが、円環の理の力を奪われては、元も子もない。

彼女達の救済すら意味を為さなくなる。

「でも円環の理には手を出させない」

 

「よく言いました。流石、私と真尋さんの息子なだけありますね」

どこから話しているのかと思い見上げると刹那、高速で落ちてくる人影、吹っ飛ぶ男。

「ふう、間に合ってよかったですよ」

「え、母さん?ニャル滝?のとこにいたはずじゃ…」

「あっちはクー子とハス太くんに任せてきましたから。真尋さんと私はこっちにね」

「でもその姿、フルフォースフォーム、だよね?」

「ええ、あなたも変身なさい。ベルト取り返したんですから」

「円環の理には手を出させないなんて大見得切ったけど、やっぱり俺には、ブレイドになる資格なんてないんだよ。世界を壊したり、色々やってきたし。円環の理の力を託されて彼女達は助けたつもりだったけど、そんなので罪滅ぼしにはならない」

「あなたさっき罪を数えたって言ったじゃないですか」

「そこから居たの?!まぁ、良いけど、でも…俺は変身できない」

「早くしないとアイツ起き上がりますよ?結構遠くまで蹴り飛ばしましたけど、鈍りましたかね」

「八坂、ニャル子ォォォォォ!」

「わお、めちゃ叫ぶじゃないですか。しかも私の名前叫ぶなんて。それに変身してない時に攻撃するのは反則ですよ!」

そう言ってぶつかり合う、2人のニャルラトホテプ。

黒と紫の閃光が、月の荒野を、暗黒の宇宙空間を駆け抜ける。

「俺は…」

自身の罪を数えたとカッコつけて言ったようなところはあるが、しかし彼の罪は数え切れるものではないだろう。

少なくともまだ和真自身はそう思っている。

だから仮面ライダーブレイドとしての力も、ライダーとしての資格も、全て無くなったはずだった。

(でも…)

突然の振動に驚いて見れば、母・ニャル子が男を勢いよく殴り飛ばしたところだった。

「前に進むには、今を受け入れるしかないんです。和真、あなたが何者だろうと、今を生きるんです!」

「俺が何者だろうと…今を生きる?俺の戦う意味…か?」

八坂和真の戦う意味。かつては面白半分、趣味のために世界を巡って戦いを続けていた。けれど融合により誕生した新たな世界を目にし、何かが彼の中で変わった。

そして元の世界で学生生活を送る中で、再び美樹さやかと出会い、偽りの見滝原で魔法少女や魔女、悪魔といった存在を知った。

悪魔ほむらを止めるため、円環の理から力を託され、救済には成功したものの、結果的にあの世界の皆の記憶から彼の存在は失われた。

(何のため戦う?何のため強くなる?)

戸惑いや恐れにも向き合うことで「本当の強さ」へ辿り着けるとでもいうのか。

だが彼はかつての旅の中で、様々な人の在り方を見てきた。

 

繰り返す時間の中で戦い続ける少女。

皆を守りたい、ただのそのために海を越え、魔女となった少女。

破壊を招く、災厄の少女を守るために自ら剣を取った少年。

妹のために自身の持てる技術を使い、兵器を与えた女性。

虚ろな秘境に身を置きながら、仲間と共に戦い続ける少年。

貴族で構成された部隊に、1人没落貴族として身を置く守銭奴な少女。

支配者の殺し合いに1人挑む、最悪の少女。

ミーナ隊長のような声をしている、女神のような少女。

破壊のみを求める、かつて女神だった女性。

全てを失った中、一般学生として出会った邪神少女。

偽りの街を創り出し、自身が魔女であるすら知らなかった哀しき少女。

「例え俺自身が変わり果てたとしても!俺は戦えない全ての人のために戦う!俺が望んだ希望と結末のためにも!」

そう叫んだ彼の腰に、ラウズカードが入ったブレイバックルが装着される。

そして彼は再び。

「変身!」

仮面ライダーブレイドに姿を変えた。

ブレイラウザーを手に男へと斬りかかり、隙を与えずに一撃、また一撃と斬撃を加えていく。

「あんたに無くて、俺にあるもの!それは記憶だ!円環の理を奪うことしか考えないあんたに、俺を識れるものか!未来を識ったところで、あんたに俺の記憶までは識ることなんかできやしない!」

「何!?」

「未来を変える事に固執しすぎた。経験や記憶を大切にしなかった。俺は色々な人を見たし、その生き方ってもんを学んだ。皆何か守るべきものがあって、何かのために戦ってた。誰かに都合よく変えられた未来なんかじゃない、自分達で世界を、未来を作ってた!」

「未来も世界も、俺の手の中だ!今を生きる事しかできない奴らに、世界を変えることなどできるものか!」

「違う!未来は皆が築き上げるもんだ!個人の都合で勝手に変えられてたまるか!」

「言うじゃないですか、和真も。なら最後はアレで決めますよ」

「ああ」

『キック』『サンダー』『マッハ』

『ライトニングソニック』

和真は足に雷を纏わせて跳躍、キックを放つ。

ニャル子も足にエネルギーを収束させ、体を回転させながらダンスのような蹴りを放った。

英語で言えばスピニングダンスといったあたりだろうか。

邪神親子のダブルライダーキックは見事に男にあたり、月面で見事に爆発四散したのだった。

 

後日談、といっても大して語る事はないが、あの後男は回収され、惑星保護機構の諜報機関に身柄を拘束されたらしい。

ニャルラトホテプ星人だと言うのは間違いないようで、経歴など全てニセモノだったとのこと。

惑星保護機構も組織として肥大化しすぎたせいか、警戒を怠っていたことを認め、今後に生かすと言う。

和真達八坂家のメンツはというと地球へと戻り、日常生活に戻る事になった。

しかし1番の問題としてはやはり和真だった。ルーヒーからその見た目で通学はまずいと言われ、髪を元の色に染め直し、目にもカラコンを入れ、ザ・日本人のような見た目に戻した。

正直父方を除けば見た目がだいぶパーリィな感じなので、髪を染めたりカラコンなど入れずとも、家の中ではさして違和感はないのだが。

銀色に赤に黄色に緑。黒が逆に目立つくらいだ。

そしてやはり大学の方には戻る事になったが、まあ学生生活も悪くはないし、問題なく続けていけそうだ。

ブレイバックルなどは護身のために持ち歩いてはいるが、使う機会もないと思う。そう願いたいところだ。

 

 

 

エンターキーを押し、男はふぅと息を吐いた。

薄暗い部屋の中でデスクトップPCの画面だけが、男の顔を照らす。

やや生えた無精髭を気にしていると、部屋のドアが開き、1人の女性が入ってきた。

「こんな時間に珍しいね」

「終わったの?」

「この後の展開に悩んでるとこ。そっちはどうして?」

「眠れないから。なんか前に読んだことあるけど、恋愛要素薄いよね、あなたの小説」

「書くの下手なんだ」

「前も言ってた。でもそろそろ必要かもよ」

「読者は求めてるのかな。でも恋愛経験そんなないし」

「私との書けばいいじゃない。馴れ初めとか」

「恥ずかしいよ。今更」

「手伝ってあげるから。ま、今日はもう休みましょ、遅いし」

「眠れないって言ったじゃん」

「いいのいいの」

彼女には勝てそうにない。

書いた部分までを保存、男はパソコンの電源を落とし、ひとまず眠ることにした。

 

 




はい、どうも。
今回で派手なのは終わります。派手な戦闘はね。
大学生編に戻るので、下手だけど恋愛要素増やしていくつもりです。
安定の低クオリティ。
最近運動不足で身体が痛い。アキバ行けてないからね。
恋愛についてはうまく書けないかもなんで、時間かかると思います。
ぼちぼち書いていきますので。
じゃ、またねー
後一回名前変えたんすけど、暁で投稿中のかりーぱんさんとのコラボ回もまだ続いておりまして、検索時に分からなくならないように前のに戻しました。
ちとやべー名前。ま、禁書目録読んでた頃に付けた名前だし。
改めてまたね


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和真サマーバケーション

宇宙から戻り、しばし遅れを取った大学生活も、今や巻き返しの時。

一応授業は真面目に受けてなんとか追いつけてはいると思うが、学期も終盤になり段々と不安になってきていた。

和真は大学生活というものを知らずに1年間学生として過ごしていたわけで、つまるところテストというものがどういったものなのかすら、全く見当がついていないのだ。

漫画でワンナイ(腕内)でテストを受ける人物がいたが、恐らくアレは実際にやるとバレるやつだろう。

(どーすりゃいいんだ)

カンニングもといワンナイに頼ることはできないし、1年分の遅れも取り戻すべく、地道に勉強をしているのだが。

正直なところここで単位を落としてしまったら面目無いというのと、内容がそこそこ難しいので落ちるのでは?という不安が彼の中にはあった。

「まーた勉強してんの?真面目だねー」

「黒鉄か。いや、まあそれなりにやらないと追い付けないから」

「1年間大学にいなかったって訳でもないし、大丈夫でしょ」

「そう…だな。で、何か用か?」

「前期ももうすぐ終わるしさ、どこか出掛けようかなーって。去年は誘っても毎回断られたから

「ああ、なるほど」

断ってくれていたのか。

確かにどこかでボロを出すのは怖いし、何よりまぁ母・ニャル子は父の真尋が大好きなので、一応友人ポジションとはいえ、遊びに行くことはしたくなかったのだろう。

どこかに出掛けるにも、1000%父と母はべったりだし。

どっちかというと、母がマヒロニウムとかいうのを補給しないと動けないらしいので、母が父にべったりと言う方が正確かもしれない。

どうにも父が新しいエネルギー資源か何かの扱いをされているような気がするが、真尋の母である祖母の頼子もムスコニウムとかダンナ酸とかいまだに言っているので今更感は否めない。

「でもテストあるし。勉強くらいしないと、な」

「まぁ、それならそれでもいいけど。遊びには行く?」

「あ、ああ。行くよ」

「じゃあ後で予定立てるから」

そう言って黒鉄スミレは立ち去っていった。

(遊びってどこ行くんだ?)

なんとなく断るのもアレかと思い了承してしまったが、詳細をさっぱり聞いていない。

後で教えてもらえるのだろうけれども、池袋やら原宿やらは詳しくないので勘弁してほしいところではある。

(ま、テスト終わってから考えれば良いか)

期末テストが終われば、直ぐにも長期休業、夏休みに入る。

テストが終わり次第連絡が来ると考えれば、今は勉強をしていても良いだろう。

そう自分を納得させ、和真はテキストのページをめくるのだった。

 

そこから期末テストまでの日はあっという間で、テスト週間初日を迎えたと思えば、気付けば最終日になっていた。

最終日、最後のテストを終えると、皆我先にとばかりに教室から去って行く。

スケジュール上は明日から夏休みなのだが、このテストが終わればその瞬間からが学生にとっては夏休みのようなもので、かくいう和真も内心そういう1人であった。

「はあ〜終わった終わった」

彼の隣の席で伸びをする女子学生。黒鉄スミレである。

彼女もこの授業を受けており、合流してなんだかんだで並んでテストを受ける事になったのだ。

なんだかんだ彼女とはよく会うが、サークルが一緒なわけでもなし、向こうから絡んでくることの方が多い。

最も彼女自身は何かサークルに入ってはいるらしいが。

ただサークルなどの交流をどこか面倒だと思ってしまうあたり、まだ学生生活に慣れ切っていないのかもしれない。

黒鉄スミレのことは嫌いではないけれども。

「この後どっか行こうか」

「テスト終わりによくそんな元気あるなぁ…」

「学生の内は遊ばなきゃね。ほら行こ行こ」

帰ってのんびりゲームやらアニメやら、山積みになったものを消化したいという本心を口には出さず、和真はスミレに引っ張られるようにして街へ繰り出すのだった。

 

黒鉄スミレに連れられるようにしてやってきたのは、八坂家も度々訪れる近くのショッピングモール。

映画館やらなんやら色々入っているので、何かと便利なところだ。

「どこ向かってるんだよ?」

「うーん、どこから行けばいいと思う?」

「目的地教えて貰わんことには何も言えないけど」

「今度遊びに行くって言ったじゃん?」

「ああ、まぁそうね」

「キャンプでもいこうかなーって」

「キャンプぅ?他に誰か呼ぶのか?」

どこのキャンプに行くかは分からないが、流石に知識もなさそうな2人で行くのもアレだろう。

「まーそうね、あたしのサークルの友達で詳しいのがいるから」

「ふーん。ってサークル?!サークル入ってたの?」

「そりゃサークルくらい入ってるって」

「どんなの?」

「映像研究サークル」

「へえ、意外」

映像研究サークルとはまたかなり真面目そうな感じだが、実際はどうなのか全く分からない。というか映像研究サークルなのにキャンプというのは、ミスマッチな気もするのだが。

「映像研究って言っても色々やるからね。今日はそこで使うアイテムを新調したりしようかと」

「あーそういうね」

結局2人はアウトドアショップを回るところから始めた。和真がキャンプやらアウトドアやらの知識が大してないということもあり、軽くレクチャーしてもらいつつといった感じである。

まあレクチャーといっても、やたらアーミーナイフばかり見させられたのだが。

ともかくそうして多少アイテムを買い込んだまでは良かったのだが、問題はその後だった。

「いや、ここは俺はいいわ」

女性モノの水着が前面に押し出された、期間限定の水着ショップ。

よくこう学園モノで夏直前にあったりする、水着新調のイベントかと思うが、正直こういうのは同性同士で来た方が良いのではなかろうか。

しかしこれは言い換えればキャンプは河原で行うタイプのヤツで、川遊びもすることになるということではないか。

「和真も見ておきなって。水着持ってなさそうだし、泳げなくても問題ないから」

「まあ大して泳げないけどさ。つーか八坂くんって言ったり和真って言ったり安定しないな」

「こないだのアレはエヴァのやつだし。それに和真っていうと、なんかジョーカーっぽい」

「あ、そ」

当たりでもなければ、外れでもない。どちらかというと正解である。

時折彼の過去を知っているような、かなり怖い発言をするのはやめてほしい。心臓に良くない。

アレだろうか、母が和真に擬態している時に、何か色々言ったのだろうか。まぁ口が軽いことに定評があるので、あり得ることだが。

「まあまあ、分かった。適当に見ておくよ」

そう答えたところで詳しくもないので、適当に見繕ってカーゴパンツ的な見た目のヤツを買い、近くの椅子でのんびりとくつろぐことに。

 

少々寝てしまっていたらしく、ゆっくりと目を開ける。

しかしそこにあったのはショッピングモールでもなければ、先程訪れた水着ショップでもなかった。

周囲を海に囲まれた、絶海の孤島。

「なんだ、ここは…」

4体の巨人の石像と、更にその奥には古代遺跡のようなものが広がっており、そこにも幾体もの巨人の石像が見える。

ふと奥に目をやると、そこには何かがあった。

何かは分からない。

禍々しく、この世のものとは思えないもの。

ひと言でいうなら、『闇』だろうか。

『闇』は和真を認めたのか、こちらへ迫ってきた。

身体が動かない。思わず彼は目をつぶった。

 

 

「…ま、和真、起きなって。ここで寝るつもり?」

「えっ?あ、いや、寝てた?」

「まあね。今あたしも出てきたとこだし、5分くらいなんじゃない?寝てたの」

「そ、そうか」

スミレに起こされ、周囲を見渡してみても、そこにあるのは見慣れたショッピングモール。目の前には例の水着ショップがある。

(さっきのは何だったんだ?)

夢、にしては鮮明だった。地球のどこかにあるのだろうか、あのような場所が。

「次は…どこに行く?」

「うーん、特に買うものはないかな」

「そか。その、キャンプのスケジュールとかは?」

「あ、そーそー、それだ」

「忘れてたんかい」

「人数1人増えるって伝えてはある。一応1週間後あたりなんだけど、大丈夫?そっち」

「大丈夫。前日までに時間とかは教えてくれると助かる」

「任せて」

こんなんで良かったのだろうかと思いながら、結局その後ゲーセンやら色々なところを回って解散となった。

 

帰路につきながら、和真はふと昼間のあの光景を思い出していた。

謎の遺跡、4体の巨人の石像。

絶海の孤島。

どこか記憶になくも無いが、どこだったろうか。

思い出せぬまま家へと辿り着く。

「ただいま」

 

 

 

 

 

 




おい日常編やるって言っといて、やたら不穏なの出してんじゃねえ。
しかしそれがニャル子です。
というわけで低クオリティながらも、日常編お届けしていきます。
てかバレてるよね、一部の人にはこれ。
ぼちぼち書いて行きます。
じゃ、またねー


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キャンプスタート

キャンプの当日までは1週間もないというのに、和真は帰ってから、あの夢か現実か分からない光景が脳裏から離れなかった。

数分ばかり寝ていた間に見た風景。

どこか虚ろでありながらも、地球のどこかには存在していそうな、そんな夢と現実の狭間のような。

「何なんだろう…」

食事中も箸が進まず、母に心配されてしまう始末。

「どうしたんですか?食欲ないとか?」

「あ、いや、そうじゃないけど。気になる事があって」

「言ってみなさいな」

「2人はその、夢で見たものが現実にあるんじゃないかって思ったこと、ある?」

「ええ、そりゃ幻夢境とか。あれ夢と現実の狭間だったはずですし」

「というか和真、それで悩んでたのか。出かけるまであと3日ってとこだろ?準備とかは出来てるのか?」

「まあ一応。でもあの遺跡、気になるんだ」

「遺跡?」

「なんか朧げではあるんだけど、闇そのものが封印されてて。中二的なそういうのじゃなくてさ。巨人像みたいなのがあって。それで周りを海で囲まれてるんだ」

「ニャル子。もしかしてそれ」

「こんな時期でしたっけ。前に真尋さんと行った記憶ありますけど」

「2人とも知ってるの?」

「ルルイエ遺跡ですよ。ま、近年はルルイエランドで売り出してますから、邪神は奥深くに封印されたはずですし、活動してるっていう報告も聞いてませんよ」

「でも、じゃあ俺が見た遺跡は何だったんだ?」

「内容はかつてのルルイエのものと一致するんですが、近年はそういった報告がないですから。いかんせん確かめようが」

「でもどうするんだ?ニャル子」

「1人の夢を証言とは言いづらいですし。それに先の件で今だに惑星保護機構は慎重になってるところありますから」

「最悪俺1人で行くことになりそうなんだね」

「でも気を付けろよ?もしもの時はこっちも行くからさ」

「珍しいじゃん、父さん」

「ルルイエにはあんまり良い思い出無くてな。なあ、ニャル子」

「そうですね…いざとなったら妹に頼みますよ。彼女達まだ新人ですから、研修にもなるので」

「母さん妹いたの?」

「ロムとラムって言いまして。今邪神候補生なんですよ。魔法系の遠距離攻撃型なんで、人によっては使いづらいらしいです」

「ニャル子、ちょっとそれ以上はやめとけ。なんかアカン気もする」

「全然怒らないように見えてフォーク取り出すのやめてください真尋さん!最近やってないからって投げたいんですか!?乙女の身体に傷を付けるなんて!」

「たまには投げないと鈍るんだよ」

「ダーツみたいに言わんでください!なんですかそのメガミラクルなフォースっぽい超次元アクション!」

フォークを投げたかったのか、父。やはり平和というのもあまりよろしくないのかと思いつつ、和真は言葉を返す。

「とりあえず気を付けては行くよ。何かあったらすぐ連絡する」

和真は念には念を入れて準備を進めた。

ブレイバックルなどに加え、親に内緒で色々な武器を集め、カバンに詰めた。バールも銃といった、使い慣れた代物だ。円環の理としての力は表向き封じているので、使えないと見ておこう。

そして前日ようやくスミレから連絡を貰い、集合場所や時間を聞き、次の日に備えて和真は眠りにつくのだった。

 

当日、集合場所に指定された最寄駅に和真が行くと、既にそこにはスミレ以外に男性1人、女性2人がいた。

「和真、こっちこっち!おはよー」

「朝からテンション高いなぁ黒鉄。あ、どうも、八坂和真です」

「久しぶりだな、和真。花山薫だ」

「嘘付け名前薫でも平島だろ苗字。ていうかこの世界ギャルゲーじゃないんだから、そういうの要らねえよ。トーテムポールも貰ってねえし。あと何でお前ここにいるの」

「お、言うねえ。俺ァこのサークルメンバーなのよ。なんか学内じゃあ何故か会わなかったが。お前かてアレだ、女性目当てだろ。皆可愛いからな。少なくとも俺はそれで入ったんだ」

「やっぱギャルゲーの友人枠か。欲望解放マンめ」

「え、2人知り合い?」

「知り合いじゃないです。こんな女目当ての変態とは違うので」

「中学同じだったろ。そもそm」

「あ、そちらの御二方は」

「桜木よ。歳はあなたと同じ。敬語は使わなくていいわ」

「そ、そすか」

「美山雫よ。この中では4年は私だけね。そんな遠慮しなくていいから、よろしくね」

「は、はぁ」

なんというか、黒鉄スミレがネプテューヌ、桜木(下の名前は知らない)がブラン、美山雫がベールといったイメージ。

ネプテューヌで例えると人によっては分かりづらかったりするので、スミレが母ニャル子に近く、桜木が貧乳ツンデレっぽい感じで、ベールじゃなくて美山雫が年上巨乳といった具合だろうか。

「とか考えてるだろ」

「何言ってんのお前。桜木さんに失礼だろ」

「あなた達の方が失礼よ」

「「すいません!」」

「やっぱお前歩いて来い」

「残念でしたー、運転するの俺なんだなぁ」

「お前の頭の方が残念だよ。なんなら俺も運転できるわ」

など言い合いながら、ひとまず薫の運転で出発し、一路山へと向かっていったのだった。

ちなみにピックアップトラックだったので、和真は荷台に乗った。

理由はただ楽しそうだからである。

 

途中で運転を和真と平島薫とで代わりつつ、数時間程かけてピックアップトラックは山奥へと進んでいった。正直このピックアップトラックが誰の所有物なのか気になって聞いてみたところ、レンタルしたものらしい。

ピックアップトラックをレンタルできるレンタカー屋など知らないが、まぁどこかにはあるのだろう。

トヨタの白い5人乗りのピックアップトラックとか、正直なところイギリスのドラマでしか見たことがない。

「一応もうすぐなのかな?」

「まーね。そら、そこから入るとこあるでしょ」

「ああ、え?こんなとこ?」

「こんなとこ」

今のドライバーは和真。目的地までは運転したいと言って、仕方なく薫から代わって貰った次第だ。ちなみにこれでも見えないところで運転免許を取っているので、問題はない。無免許ではないので。

スミレに促される形で河原へとピックアップトラックを乗り入れ、停車させる。

正直どこかのキャンプ場を借りるのかと思ったが、どうやらマジでイチからやるようだ。

荷台に乗った時に少し見てみたが、映像研究サークルなどと言う割に、テントやらそう言ったものをしっかりと積んでいる。

このピックアップトラックも借り物というが、そうは見えず、案外サークルの所有物なのかもしれない。

ひとまず車から荷物を降ろし、テントやらなんやらを設営していく。

テントは2つ。

大きめの方に女性陣、小さめの方に男性陣。

大きめの方は寝床などもそれなりのものを付けられるやつだが、小さい男性陣の方は寝袋で寝るやつである。

「俺でかい方行きてえし、誰か代わってくれ」

「どうせハーレムみたいにしたいだけだろ。ピックアップの荷台で寝てろ」

「か弱い女性は守らねばならんだろう!」

「今時の女性はか弱くねえよ」

なんなら邪神がいるので、問題はない。

そんなこんなで男性陣は力仕事を任されつつ、キャンプの準備は順調に進んでいき、さほど経たずに設営は完了。

「さて、遊びますか」

「テント立ててからで良かったん?飛ばされたりしない?」

「大丈夫でしょ」

というわけで、各々水着に着替え、川に向かう事になった。

まあ着替えの場所も兼ねたテントと考えれば、妥当なのか。

「ナチュラルに女性陣のテント行こうとするな」

「ナチュラルトラップでも構わん!お前と俺の激次元タッグで超次元大戦してコスチュームブレイクしてエグゼドライブしようぜ!」

「さっさと戻るぞバカ野郎」

「マイイグニッション・ハーツが…」

「誰が記憶喪失なんだよ。爆弾すらねえだろ」

要は着替えを覗きたいのだろう。20くらいになってもこいつは昔から変わっていない。

変態を引きずって和真は自分たちのテントへと戻っていった。




ニャル子さん感って言ったら色々ネタを仕込む事だと思うんですよ。
なのでニャル子ワールドな今、色々ネタを仕込もうかと。
個人的な趣味が多いですが。
恋愛ちゃんと書けるか不安だな。
またバトルシーンあるだろうし。
ぼちぼちウルトラマンの方も考えつつ、やっていきます。
じゃ、またねー


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リバーサイド・シューティングスペシャル

そそくさと着替え、和真と薫は女性陣が着替え終わるまで、あたりをぶらつくことにした。

歩きながら、薫が珍しく真面目な顔をして口を開く。

「なあ、和真。高校卒業した後、俺たちのクラス同窓会やったんだ。お前にも声かけたんだが、結局来ないままだいぶ経ったよな」

「声かけてくれたのか。丁度、俺旅に出てたから」

「自分探しの旅か?面白えことするじゃないか」

「まあそんなとこだ。事実を話したところで、信じてはもらえないだろうさ」

「なんだ、出かけ先で彼女でも出来たか?ヤることヤったのか?」

「そうじゃねえよ。彼女もできてない。ただ、色々あった。ひと言では言えねえ」

「らしくねえな」

「いずれ話せる時が来る。それまで待つんだな」

「そうか。気長に待たせてもらうよ」

そして2人がテントへ戻ってくると、丁度女性陣の着替えが終わったところだったらしい。

水着に3人とも着替えているが、だからと言って何かコメントをいうかと言われると難しい。

スミレは黒と紫の水着、桜木は水色と白、美山雫は白一色。

さっそくスミレが。

「どーよ、この水着。こないだ行った時に買ったやつ」

「ああ、まぁ良いんじゃねえの?」

「反応薄いなー」

「エロい!紫水着はめちゃエロいだろッ!」

「黒も入ってるだろ。つーか黒鉄、なんでコイツサークルに残したの?」

「まぁ、力仕事はやって貰えるから」

「なるほどね」

薫は桜木と美山雫の水着も見て、長々とその良さというかエロさを語っていた。

中学で初めてアイツと会ったが、正直当時と変わったのが外見だけなのではないかと思えてくる。

ただこれまでがこれまでなせいで、黒鉄スミレを異性として見るかと言われると難しい感じはあり、どこか女性としての魅力を感じるのはやはり桜木か美山雫。

その2人でいうなら、美山雫よりかは和真は桜木派だった。

「ま、遊ぼうか。せっかく来たわけだし」

「水鉄砲なら持ってるぜ。ほれ」

どこに隠して持っていたのか、両手に水鉄砲を構えて撃ち始める薫。というかいつのまに水を補給したのだろう。

女性陣も水鉄砲を持ち出し、薫の水鉄砲を避けながらマガジンに水を入れて装填して応戦してくる。

(映像研究サークルだよな?やたら動きがプロっぽいんだが)

もしかしたら映像研究サークルというのは建前で、サバゲーサークルか何かなのかなのかもしれない。

和真は巻き込まれないようにやや離れて戦況を見守ろうと思ったのだが、どうやらそれは許されなかったらしい。

「和真!これやるから!」

薫から水鉄砲を一丁投げ渡され、仕方なく和真は受け取り、撃ち始めるが、女性陣の水鉄砲がやたら威力が高く少々ひやりとする。

(水流で石が砕けるって、前俺が持ってたアレかよ)

しかしテントの影に身を隠すとぱたりと水流は止まり、やったかと思ったのも束の間。水風船のようなものが投げられ、立て続けに和真達の近くへ落下。

隠れても意味がないということであろう。

ザ・ウォールのような攻防をするために来たわけではないのだが、やってみると意外と悪くない。

「薫!残弾は!?」

「残り少ない!補給には20秒といったとこだろう!」

「なら補給してこい!」

「すまん!」

しかしこちらも残弾はそう多くはない。元々やると思ってなかったので持ってきていないし、この水鉄砲も薫から借りたものだ。

「補給してきたぞ」

「薫、デカい水鉄砲はないか?銃口が複数付いてるような」

「あるぜ、ホラ」

またどこから取り出したのか、大型の水鉄砲を渡してくる。水鉄砲というか、見てくれはもはや近未来的な銃だ。

「よし」

銃口を女性陣の方へ向けるが、直接当たるようには狙わない。

威力が高そうなので、敢えて少しずらして撃つことにする。

「しゃあ!今回は俺1人じゃねえぞ、女性陣!覚悟しろよォ!」

水鉄砲を肩に担いで声を上げる薫。

しかし戦いは終盤に突入していた。

 

結局。

ウォーターシューティングスペシャルは、女性陣の勝利で終わった。

和真が薫から借りた威力が高そうな水鉄砲が、意外にも威力が低く、女性陣のいる場所にまで届かなかったことが1番の理由だ。

そして女性陣がそれよりも強力なガトリングのような水鉄砲を持ち出してきたことが、男性陣の敗北を決定付けた。

どうやっているのかは知らないが、氷をガトリングで撃ち出しているらしい。まあ氷をどこでどう調達したのか、どこに隠し持っていたのか、知ったところで勝てやしないが。

どうせスミレの持つ邪神特有の超時空的なアレだろう。

氷を撃ち出すのは禁止とは言われていないが、中々に強引なやり方ではある。

そして惨敗した男性陣は夕食の支度を全て担うことになった。

食事係を決めるだけなのにこんなことをする必要は果たしてあるのか、不明な所ではあるものの、決まってしまったものは仕方ない。

和真と薫はキャンプの知識などまともなものを持ち合わせておらず、肉やら野菜やらを焚き火で焼いて食う、やたらと雑な料理を拵えてしまうこととなった。

案の定、野郎の野郎による野郎のためのような料理の評判は良いわけではなかったが、まぁ以前薫が1人で作ったものよりかはまともにできたらしい。全くどんな料理を作ったのやら、想像すらできない。

ふと見ると、1人桜木がキャンプを離れていくのが見えた。野菜と肉を少々つまんだだけで、殆ど減ってすらいない。

桜木が気になりスミレに聞いてみると。

「彼女、いつもこうなのか?」

「食事は少なめだよ、いつも。まあ遠出したわけだし、散策して来ても良いんじゃない?」

「なるほどな」

スミレはそう言うものの、和真はどこか引っかかるものがあった。

彼女が苗字のみを教えた事、そしてこんな暗くなってきたタイミングでキャンプから離れていく事。

これまでの経験も踏まえ、どこか彼女には隠し事がありそうな気がする。無論証拠があるわけではない。しかしそんな気がしたのだ。

 

月明かりが差し込む森の中を、和真は進んでいく。

薫には探検をしてくると伝えてあり、当面は怪しまれないはずだ。

服装は先ほどまでのラフなものから、迷彩の上下に黒いミリタリーブーツへ。もしものことを考え、その類の専門店でこうした服を用意しておいたのである。

肩に持ってきていたライフルをかけ、桜木が進んでいったと思われる方角へ歩みを進める。

(枝が折れてる。地面も踏みしめられた跡があるな)

夕食時には全員靴へ履き替えていたので、恐らくその時の靴と同じと見て良いだろう。和真のように着替えていなければ、だが。

「ったく、どこまで行きやがったんだ」

道は徐々に登りになり、更にしばらく進むと、木々の向こう側が拓けているのが分かった。

位置を確認するべく木々の向こう側に行こうすると、そこに和真は1人の少女を見た。

(桜木…)

万が一のことも考え、ライフルの安全装置は解除しておき、静かに一歩、また一歩と前進。

「来たのね」

しかし彼女は振り向いた。桜木だった。

「バレたか」

ライフルを下ろし、和真は彼女へと近づく。

「ここで何を?」

「警告をするため。あの中で、あなたは受け入れてくれると思ったから。元は私から接触を図るつもりだったけれど」

「だから敢えてこう、俺をおびき出す形にしたのか。そう言うってことは、俺の正体も知ってるってことか?」

「ええ」

「君はその、いや、それよりも黒鉄には言わなくてもいいのか?アイツなら俺より頼りになるはずだぞ」

「あなたでなければならない。あなたがトリガーでもあるのだから」

「トリガー?」

「クトゥルフ神話の邪神、闇。ガタノゾーアが復活する。円環の理に引き寄せられて」

「…ガタノ、ゾーア?円環の理に引き寄せられて?」

「ルルイエの最奥に、ガタノゾーアはいる。あなたは夢で見たはず」

「もしかしてあの、遺跡か?絶海の孤島の。ならなぜ俺の見た夢を知ってる?」

「私が見せたものだから。光あるところに闇は必ず生まれる。最早ルルイエの浮上は避けられない。だからこそ、あなたに止めて欲しい。トリガーでもあるあなたに」

「そういうことか。なら聞かせてくれ」

「何?」

「桜木、改めて君は何者なんだ?俺の正体も知った上で、このキャンプに来たんだろ?もしかしてもう1人の、美山雫さんもなんか特殊な存在なのか?」

「私は監視者(ウォッチャー)。文明を監視し、その危機が迫れば警告してきた。私の本来の姿は不定形なものだから、現在は桜木レナの体を借りているの」

「ほう」

「ちなみに美山雫と平島薫は一般人。特殊なのは私、あなた、黒鉄スミレだけ」

「つまり桜木レナとウォッチャーであるあんたは、その一体化してるわけだ。ならいつか分離するのか?」

「ガタノゾーア監視が今私のすべき事。ガタノゾーアがいる限り、私は彼女の姿を借り、ルルイエを見張らなければならない」

「なら彼女の体を返して貰って、元に戻ってもらわなきゃいけないわけだな」

「それは難しい。今のガタノゾーアは単体ではないの。長年貯めたエネルギーを使って、尖兵を送り込んでくる」

「尖兵?」

「ルルイエの監視者である私と、円環の理であるあなたを狙って」

彼女の言葉に続き、遠く響く咆哮。

見上げると星空の中に小さく見える、異形の影。

「クソ、1、2、3…もっとか?桜木!桜木?!」

返答がない。視線を戻すと、そこに桜木レナは倒れていた。

もしやウォッチャーとしての人格、あるいはそれが表に出ると、著しく消耗するのか。

いや今はそんなことを考えている場合ではない。

(彼女を安全なところへ…)

黒鉄スミレ、平島薫、美山雫にも万一のことがあってはいけない。

暗い夜空を滑空するように迫る異形に対し、和真はライフルの安全装置を刹那に解除、躊躇なく引き金を引く。

通常弾では効きそうもない。ならばとグレネード弾を装填、異形に向けて撃つと、ようやく一体を撃ち落とすことに成功はした。

だがまだ異形はやってくる。桜木レナを抱えると、和真は崖の上から迷わず跳躍。

落下しながら信号弾を撃ち上げた。

 

 

一方その頃、八坂宅。

「真尋さんめちゃくちゃ心配してるじゃないですか。いつにもまして不安そうな感じで」

「だってルルイエだぞ?何があるか分からんし、もしも邪神と戦うことにでもなったら…」

「あの子はそれ以上のことをやってきてるんです。きっと大丈夫だと思い…」

「どうしたニャル子」

「邪神レーダーに反応が。ヤベーイやつが和真の方に向かってます」

「行こう」

なんだかんだ放任的だが、流石にこれはやばいと思ったらしい。

八坂真尋と八坂ニャル子はすぐにも出発することにした。

 




日常編、恋愛編が書けないことに定評がある作者です。
あとウルトラマンで何か書くっていってまだ書けてない。
夏休みももう少しだからね。
和真ストーリーを進めるか、新作を書くか。
悩みどころではあんだけど、どっちにしろぶっつけ本番で書くようなとこあるんだよね。
下書きとかしないでさ。
それで結構乗り切ってきたものある。良くねえとは自覚してるよ。
サブカルコーナー久しぶりにやるか。
っても話すようなことねえ。
あるにはあるか。クリアファイル買ったとか。
そうそう、スタァライトのバレンタインクリアファイルを買いましてね。良すぎかよ、双葉。
他にはそうだなぁ、アニメは出来るだけテレビで見る派なんで、テレビ壊れてからほとんどアニメ見れてないんですけど。
話すことあったわ。
ワールドウィッチーズ、新作ゲーム出るの。アプリだったと思う。
那佳ちゃん出る時点でやるしかないと思いました。
もう言葉にできない。前はCDのドラマパートだけだったし、映像でもノーブルは劇場版でAの姫様とロザリー隊長がチラッと出た程度。
でも動いてるんだ、那佳ちゃん。
彼女のためなら喜んで全財産つぎ込む。彼女、守銭奴とか言われてるけど、関係ないもんね。
かわいいから!
あと1日3回転んだら天海春香。中の人同じだもの。
あ、真面目にいうと事前登録始まってます。
私も事前登録しました。
課金一瞬、嫁一生とも言いますからね。
「魂」を賭けよう。
というわけで、ぼちぼち書きます。
じゃ、またねー


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光と闇

桜木レナを抱えながら信号弾を撃ちあげた和真は、すぐに体勢を立て直して着地。彼女には衝撃を与えぬよう、地面に垂直に落ちることだけは避けるようにしたが、まぁこれで衝撃を殺しきれたかは甚だ疑問ではある。

どうやら薫やスミレ達も異変には気付いたようで、こちらへ駆け寄ってきた。

「レナ?レナ!」

「え、下の名前で呼んでたっけ?まあいいけど」

「あなたこそ、え、和真?」

「俺だよ。それに彼女が気絶したのを知ったのも、俺もついさっきだ。それで連れてきた」

「何がどうなってるんだ?さっき銃声っぽいのが聞こえたけど、おまえか和真?」

背中のライフルを指差して言われ、流石に否定できないので首は竦める。

「まあな。とりあえず皆分散はしないでくれ。アイツらのいい的になる」

マガジンの残りを確認し、銃を空に向けて構え、降下してくる異形へ向けて撃ち放つ。

翼に風穴を開け、グレネード弾をぶち込めば一体は確実に落とせるが、このやり方では数で圧倒されれば限界が来るだろう。

ライフルを置き、カバンから中折れ式のグレネードランチャーを手に取り、グレネード弾を装填。

しかし気付けば空を埋め尽くすほどの異形がこちらへと迫ってきており、のんびりしていてはやられるのは時間の問題といえる。

「クソ、多すぎる!」

それでも引き金を引くのはやめない。

が、グレネードランチャーの弾は数えるほどしか持ってきていないし、ライフルのマガジンもそんなに数はない。

どんなに不利でも守らねばならない。戦わなければならない。

円環の理の力を使わないと心に決めたところで、結果的に彼の手にしたその力は『闇』の復活を招いてしまった。

光となってしまった和真はそのトリガーなのかもしれない。けれどそんな彼に対し、その真実を伝えてくれた桜木レナ、ウォッチャー。

和真は一度戦いを降りたつもりだった。でも終わっていない。

それが円環の理の運命でもあることは、分かっていたはずだった。

他者を救い、全てを背負い、戦い続ける。それが円環の理。

(俺は戦う。戦えない全ての人のために)

グレネードランチャーを手放し、ブレイバックルを手に取る。

腰に装着するとベルトが巻かれる。

「変身!」

『Turn Up』

和真は迷わず、仮面ライダーブレイドに変身。ヤツらを倒すのに、迷いはいらない。

彼女を元の姿に戻すためにも、ガタノゾーアを倒す。

そうすればウォッチャーは桜木レナから離れることができるのだ。

ウォッチャーの役目も終わらせることができ、桜木レナをあるべき姿に戻せる。

この身全てを一振りの鋼と化し、異形を倒し尽くす。

ジャックフォームにチェンジ、強化されたブレイラウザーを手に、和真は宙へと飛び立った。

 

「こんなの聞いてないぞ…アイツあんな力を」

「レナは気を失っているし、和真は動くなって言うし、どうする?」

「ここにずっと居ればやられかねないわ。逃げるべきよ、奴らは彼が相手してくれてるんでしょ」

「和真を置いていくことなんてできないでしょう!それに動けば的になるって言われたじゃないですか!」

雫の言葉に薫は反論する。彼は確かに美山雫にとっては会ったばかりのヤツかもしれない。確かに彼女と薫では付き合いの長さは違うかもしれないが、今は同じキャンプで過ごす仲間のはずだ。

「何かあった時、アイツの指示は間違いませんから。俺は和真を信じる。それに気絶してる奴だっていますし」

「じゃあここで指を咥えて終わるまで待てって言うの?!私はいやよ!」

「逃げたら狙われるって…」

薫が言い終わる前に、黒い何かが河原の石を踏み砕いて着地した。

身長は3メートルくらい、和真が戦っている異形の一体か、

恐らく和真が抑えきれなかった個体がこちらに目を付けたのだろう。

「後ろに!」

薫はスミレと雫、気絶したレナの前に立つ。

ただの人間である薫にこんな化け物が倒せるはずもないが、男としての維持が彼を動かした。

「こ、来いよ、バケモンがよ!野郎の意地ってヤツ見せてやる!」

拳を構えるが、そこに異形一体を屠れるだけの力はない。

異形は腕を鞭のようにしならせて4人を攻撃した…はずだった。

思わず目を瞑ってしまった薫だったが、目を開くとそこに異形の姿はなく。

見慣れぬフルフェイスアーマーに身を包んだ女性が1人、立っていた。

女性と分かったのは胸部の膨らみ故だが、この異形を一撃で倒したというのなら、心強い。

「倒してくれた…のか?」

「間に合いましたね。もう大丈夫ですよ」

「俺たちはどうすればいいんです?」

「応援が来ます。指示に従ってください」

「応援?」

「真尋さん、クー子、ハス太くん。頼みますよ」

そう言って黒い女性ヒーローは河原の石を踏み砕きながら跳躍、上空の異形へと向かっていった。

 

強化されたブレイラウザーを振るい、和真は何体目か分からない異形を切り裂く。ナイトゴーントでもないコイツらは一体何者なのだ。

「キリがねえ…」

脇腹に痛みを感じながらも、剣を握る手には力を込める。

しかし終わりが見えないような戦い。おまけに円環の理の力を使う事は出来ない。使えないわけではないのだが、円環の理の力に引き寄せられている以上、積極的にガタノゾーアを本土に近付けるようなマネは良いとは言えないだろう。

「それにアイツらにバレる訳にもいかないしな」

仮面ライダーブレイドについては後々説明しなければならないと思われるが、今は、異形を滅することに集中せねば。

剣を神速で薙いでいくが、しかしそれは一瞬の隙を生んだ。

背後を取られたのだ。

(まずいッ!)

やられるかと思われたが、その異形は1人の女性によって殴り砕かれた。

黒いメタリックな姿。フルフォースフォーム。

「母さん…!なんでここに?」

「助けに来たんですよ。信号弾を確認したのと、私の邪神レーダーに反応があったので」

「なんだよ邪神レーダーて。アテにならないヤツでしょ」

「精度は1000%ですよ、今回に限っては」

母が来てくれたのは助かるが、この件に関しては和真の手で決着を付ける必要があるのだ。

「なら母さんは皆を連れてここから出来るだけ離れてくれ」

「助けに来た意味が…それに危険でしょうに」

「俺がこの事件のトリガーなんだ。詳しい事は桜木に聞いてくれ。とにかく俺がやらなきゃいけない。母さんは黒鉄スミレ、平島薫、美山雫、桜木レナを守ってほしい」

「和真…」

「桜木から恐らく事情を聞き出せるはずだ。ウォッチャーっていうのと一体化してる」

「生きて帰ってきてくださいね」

「大丈夫だ母さん、もう何も怖くない。俺は生きて帰るよ。推しを拝むためにも」

家族がいる、仲間がいる。恐怖心など捨て、アイツらを倒す。

「それ死亡フラグじゃ…」

「それくらいで死にゃしねえって」

『エボリューションキング』

キングフォームになりキングラウザーを手に、和真は黒い異形をいとも容易く葬りながら、異形の発生源へと近づいて行くのだった。

 

黒い異形の数は圧倒的だった。

倒しても倒しても、湧いてくる。それこそ戦争だ。

「発生しているのはこっちの方のはず…」

黒い異形は確かに数は多いが、本土にやってくるまでに隊列というか、流れのようなものができているのだ。

(ん?アレは…夢で見た島か)

絶海の孤島。闇が封印されているという、古代の遺跡。

見れば黒い異形の他に、名状しがたいような姿をした巨大な化け物が姿を現そうとしていた。

正確にはこの巨大な化け物が、黒い異形を発生させているわけだ。

恐らくコイツがガタノゾーア。

『♠︎10・J・Q・K・A』

『ロイヤルストレートフラッシュ』

膨大なエネルギーが眩いばかりの光の奔流となり、和真はそれを巨大な化け物、ガタノゾーアへと振り下ろした。

光に滅せられていく黒い異形達、ガタノゾーアにも『ロイヤルストレートフラッシュ』は命中したが。

「効いて、ねえ…のか」

異形は滅ぼせたとしてガタノゾーアには傷一つ付いていない。

彼の今使える、最高最善にして最強の力だったのに。

「ふざけるなああああああッ!」

キングラウザーとブレイラウザーを手に、和真は突貫する。

あと僅か数ミリで剣がガタノゾーアに触れると思われたところで、彼の身体を闇のエネルギーが貫いた。

「ぐッ…」

この痛みは、これまでの痛みと別格のものだ。彼自身を、否、光そのものを消し去らんとする闇の力。

あまりの痛みにキングラウザーとブレイラウザーを手放してしまうが、それでも彼はガタノゾーアを見据える。

拳を握りしめて振りかぶり、殴りつけようとしたところで、闇のエネルギーが再度和真の腹をぶち抜いた。

 

 

 




どうも、いい加減日常編を書けと言われそうなクソザコ作者です。
言い訳はせんけどこうなったら決着付けるしかなくて。
しかも和真くん死ぬんじゃね、これ。
今更感あるけど。
どーにかしてガタノゾーアとのケリ付けなきゃいけねえけど、いやどうしようね。めちゃ不安。
サブカルコーナーは話すことが特に思いつかない平凡な生活をしております故、どうしましょう。
ま、いっか。
ぼちぼち今後の展開も考えつつ書いていきます。
じゃ、またねー


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希望

これは現実か、それとも夢なのか。

所々ひび割れた白い空間で、八坂和真は覚醒した。ここがどこなのかは分からないが、何かに触れている感覚はないので、恐らく夢なのだろう。

立ち上がり、正面を見るとピンク色の髪に黄金の瞳、白い装いの少女がいた。

(鹿目、まどか)

円環の理。彼女は力を和真に託し、消滅したはずだ。何故ここにいるのか。もしや奇跡的に復活したとでもいうのか。

「なぜここに?」

やはり彼女は答えない。発音機能は鹿目まどか本体に依存していると見て良いだろうが、今はそんな場合ではない。

「俺はどうなったんだ?」

ガタノゾーアに腹を2発ほどぶち抜かれたところで記憶が途切れており、その後どうなったのか分からない。

彼女は静かにこちらへ歩み寄り、手をこちらへ差し出してくる。

そこに現れる、手のマークが描かれた謎のリングと、淡い水色のような宝石らしきものが見られるリング。その2つのリングに加え、もう一つ、バックルが手形になった何かの変身ベルトらしきもの。

これらが何なのかは分からないが、鹿目まどかの姿をした少女は和真にそれを渡して来た。

「これは…」

彼女は応えない。伝えることができないのだ。それでも和真は何となく、このリングとベルトを手に取らなければならないと感じた。

世界を救うため、光を取り戻すため。

覚悟を決め、彼は希望へと手を伸ばした。

 

「また夢…だったのか」

八坂和真はゆっくりと身体を起こした。最後の記憶はガタノゾーアの目前、キングラウザーとブレイラウザーを手放し、腹をぶち抜かれたところで途切れている。

(どこだここ?)

木製の簡素な小屋だが、ベッドやらなんやらある程度の物は小綺麗に整えられている。

キャンプ周辺にこんなところはなかったはずだが、まぁ最後彼がいた場所は海上なのでどこに流れ着いたのかすら不明である。見れば胴体にはぐるぐると包帯が巻かれ、どれだけ酷い傷だったのか想像に難くない。衣服もボロボロになったのか、今はパンツ一枚だけだ。

オンラインゲームのアバター選択のような感じはなくもない。

「目覚ましたんだな、父さん」

「真二?」

衣服といくつか食料と思われるものを手に部屋に入って来たのは、八坂真二だった。

つまり助けてくれたのは真二、ということになるのか。

「迷彩はだいぶボロくなってたから、新しいのを用意した。まぁ食い物は携帯食料くらいしか持ってこられなかったけどな」

「真二、どうして俺のとこに?ここは未来か?それとも真二が戻って来たっつーことか?」

「とりあえず服を着てくれ。順を追って話そう」

和真は真二に促されるままに服を着替え、食料として渡された乾パンを齧る。

真二はそれを確認すると、口を開いた。

「この事態は未来の俺達からしても、想定外だった」

「想定外?ガタノゾーアのことか」

「ああ。存在は認知されていたんだが、復活はないと思われてた。でも過去での出来事は未来に影響を与える。それは父さんの経験からも分かるだろ?」

「まあな。それで、何だ?未来から人員を派遣してガタノゾーアを倒すってのか?」

「間違っちゃいない。正確には、光と闇、両方を消し去るつもりだ」

「何?両方ってガタノゾーアと、俺をか?そのためにお前が派遣されたって?お前も消えるだろ、そしたら」

「話は最後まで聞いてくれ。父さんとガタノゾーアを倒すために5人くらいが派遣されるらしいんだが、実は俺はそこには入ってない。先の件と、父さんにあのメカを送ったのがバレて謹慎処分を受けてる」

「なんかすまん」

「いや、まぁちょっとやばい状況でもあってさ。謹慎中だから職場のシステムは使えないんで聞いた限りなんだが、この作戦に変更はないらしい」

「何だ、上は真二が消えても構わねえってか。いや謹慎処分中のヤツが消えたところで、大してダメージはないから、作戦は変更しないのか」

「詳しくは知らない。徐々に戦力が送り込まれてくるらしくて。父さんのために謹慎処分なんか気にしてられねえと思ってな、先に見つけて匿っておけばいいわけだし」

「なるほど、そりゃありがてえよ。でもどうやって俺の居場所を割り出したんだ?」

「あのメカ、まだ持ってるだろ」

「まあな。それにGPSでも付けてたのか?」

「そ。ここらで反応が途切れたから探してたら、父さんを浜辺で見つけたの」

「なるほど」

ひと通りの話を聞き終えたところで分かったのは、どうやらここにいるのは危険だと言うことであった。

いつ未来から和真を殺しに人員が送られてくるか分からないし、ガタノゾーアの動きも把握出来ない。

海辺の小屋ということで外に出て確認してみたところ、ガタノゾーアの姿は依然として和真とぶつかったであろう位置に、鎮座していた。

「どうせなら俺が相討ちになれば丸く収まる気もするがな」

「バカな考えはやめてくれ。それにブレイバックルは壊れてる」

「は?」

真二の言葉に慌てて探ってみると、彼のブレイバックルはヒビ割れて黒焦げ、ラウズカードすらセット出来ないほどになっていた。

「クソ!」

「一回皆と合流しよう。連絡を貰ってる」

「いつ連絡先交換したんだよ…」

「祖母の方から掛けてきた。なんか俺が来ることも分かってたみたいな感じある」

というわけで外に出、真二が盗んで、もとい拝借してきたというバイクに跨り、一路母の元へと向かうことにした。

 

山間部へ黒鉄スミレ、平島薫、美山雫、桜木レナを追い込んでいた黒い異形は謎の金色の光が走ると同時に消滅。

しかししばらく待っても和真は帰って来ず、戻ってきたのは黒いフルフェイスアーマーの女性だった。

「和真は!?」

「1人で…」

「ニャル子、和真は突っ込んでいったのか?」

「ええ、はい。恐らく生きていたとして酷い怪我でしょう。クー子とハス太くんが探してくれてはいますが…」

「生きてる。アイツはきっと生きてる」

「そうは言っても…」

「ニャル子一回その変身解けよ。話しづらいだろ」

「それもそうですね」

フルフォースフォームから、銀髪碧眼の姿へ戻る。

そしてニャル子は、スミレ、薫、雫に真実を話す事にした。

自分達の息子・八坂和真の正体と、あの黒い異形、そしてその元凶たるガタノゾーア、その全てを。

 

真二の運転でバイクは進んでいったが、一向にあのキャンプへと近付いて行く様子はなかった。

「本当にこっちであってるのか?」

「…」

「おい、真二?」

応えず後ろに手を伸ばして和真の腕を掴むと、真二は全力で投げ飛ばした。

反応できずに背中を木に強打し、そのまま重力に引かれて和真は落下。痛みを堪えながら立ち上がるが、口の中には血の味が広がる。

「ってェ…冗談にしちゃ酷えぞ!真二!」

呼びかけにも応えず、真二はバイクでこちらへ突っ込んでくる。

「危ねえッ!?」

バイクは木に激突、なんとか回避には成功したが。真二は…いつのまにか降りていたらしい。

「…お前、真二じゃないな?ここまでやりゃあバレるぞ」

「気付くのが遅すぎる。そうだ、僕は真二じゃない。炎の邪神、クトゥグア。グレンだ」

そう言って真二の体にモザイクが一瞬かかり、それが取れるとそこにいたのは真二とは似ても似付かない姿の青年だった。

燃えるような赤い髪に、赤い瞳。そして黒いスーツ。

腰部分には見慣れぬ、銃のような変身ベルトらしきものが巻かれている。

「やれやれ、近頃はクトゥグアもこんな能力を持ってるのか」

「これくらい未来の技術力なら朝飯前だ。それに多少手当てしたりするだけで、すぐに信じるあたり、人間てのは利用しやすい」

「真二はどうした?殺したのか?」

「さあな、知りたきゃ力付くでやるんだな。最もその変身できない状態でどうするか、だが」

そう嘲笑うように言うと、グレンは左手首のチェーンから赤いキーを引きちぎるようにして取り、

『INFERNO WING!』

腰に装着された赤い銃とナイフが一体化したのような変身ベルトへセット。

『BURN RISE!』

『KANENRIDER…KANENRIDER…』

「変身」

『SLASH RISE』『BURNING FALCON』

『The strongest wings bearing the fire of hell』

「やたら英語だな」

「八坂和真の抹殺命令を実行する」

和真はグレンの炎を纏った拳や蹴りを躱していくが、一向に打開策を見出せない。

円環の理は未だに彼の中にある、と言うことは感じる。しかしこれを使ってガタノゾーアの動きが更に活性化した場合、どうすればいい。

そこを決めかね、彼は未だに決定打を打てないでいた。

(でもコイツを倒さない限り、真実は分からない。真二が生きているかどうかも)

一気に上昇し、下降へと転じたグレンを見上げ、和真は拳を握り締める。あの炎は恐らくクトゥグアの炎、おまけにクトゥグアには一度死にかければその度に強くなると言うとんでも性能がある。

『INFERNO WING!』

『BURNING RAIN!』

炎の斬撃を食らうのはもはや想定の範囲内、身が焦げるのを感じながら炎へと突っ込み、和真はグレンを殴り付けた。

重い一撃を食らい、地面に転がるグレン。すぐにも立ち上がろうとするグレンの変身ベルトを和真は無理矢理に外し、銃とナイフが一体化したそれをグレンに向けた。

「答えてもらおう。俺とガタノゾーアを狙ってるのは、どんな奴らなのか、そして真二は生きているのかをな」

「脅しているのか。さっき話した謹慎処分てのは実際そうだし、大半は事実さ。あのメカを渡したことを知っていたのも、アイツの持ち物を既に検閲していたからだ。謹慎処分を言い渡した際、真二の所有物は全てデータを取った。直ぐにも追えるように」

「俺を騙して殺そうとしたやつの言葉を信じられるか!」

グレンを気絶させ、和真は彼の体を担ぎ上げ、バイクの後ろに縛り付ける。

「まだ動くといいがな」

エンジンを掛け、和真はキャンプ目指して走り出した。

 

同時刻、ガタノゾーアを遠くに望む海岸に1人の少年が降り立った。

(ちくしょう、脱出に手間取ってしまった)

彼は本当の八坂真二。先刻まで謹慎処分とは名ばかりの、ほぼ牢屋に近いところに閉じ込められていた。

そんな時、光と闇を両方とも消し去ると言う作戦の情報を、仲間から入手したのだ。

ルルイエに眠る闇、ガタノゾーア。そして救済の光、八坂和真。

どちらかが残れば、いずれどちらかがまた現れ、争いは続く。

それを止めるという大義名分のもと、両者を片付けようというのだ。

無論そんなことをすれば真二は消えるが、今の真二は謹慎処分中。消え去ったところでさして気にも止められないだろうが、こちらとしては許容し難い。

それに万が一ガタノゾーアに父が殺されれば、それこそシャレにならない。

ということで隠し持っていたゲーマドライバーとガシャットでタドルレガシーに変身し、脱出。

この前渡したメカのGPSを頼りに、未来からやってきたのだが。

「足跡はある。ん?2人分か…」

海辺の小屋を調べては見たものの、いた痕跡はあるがもうどこかへ去って行ってしまったらしい。

遠くへ続いていくバイクの跡を見、真二はそれを追うことにした。

 




どうも、書くことが思い付かない作者です。
ネプテューヌのシチュエーションCDで悩殺というか、言葉にできない良さを感じまして、死にました。
あ、今リプキスやりながらこれ書いてます。
しかしまー最近シャドバまた始めたけど、機械エルフ意外と悪くねえなぁ。
遊戯王もやってるけど、金が足りねえ。
またワールドウィッチーズの本買ってしまったし。
卒論ウィッチーズで書こうかなあ。悪くないよね。
和真ストーリーいい加減にアレ、恋愛編入らないとな。
もうちょいこれ続くと思うから勘弁して。
ウルトラマンでも何か書きたいし、うーむ、これ毎回言ってるな。
思い切って書き始める手もあるんだが、大学始まってクソ。
ぼちぼち書きます。
じゃ、またねー


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パンチング邪神

「アイツが人間じゃない?」

「ええ、邪神と人間のハーフですけれど」

薫は問い返したが、やはり雫は飲み込めていないようだった。なぜかスミレはすんなりと受け入れているようではある。

しかしこのタイミングでレナが眼を覚ました。

「うぅん…ここは?」

「船の中、かな。それより長いこと気を失ってたけど、大丈夫?」

「まあ、頭痛がするわけでもなし、問題はないと思う」

「なら良かった」

「しかしやはり和真の生死は分からないのか?」

「分かりません。反応が探知できな、いえ、こっちに向かってます」

「邪神レーダーね」

今彼らがいるのは空中艦、八坂家が乗ってきたものである。

タラップを下ろして河原に降りてくると、向こうから一台のバイクが走ってくるのが見えた。

「アレかな」

「アレですね」

「でも見た目が全然…」

近くまで来てバイクを止めると、バイクの青年は降りて薫達の方へ歩み寄ってきた。

「なんか、感動的な再会みたいにならなくてごめん。ただいま」

「いや和真か?お前」

「いや俺だよ?八坂和真だって」

「そんなピンクに金色の目してたか?」

「え、嘘、マジ?」

「マジ」

スマホを渡され、カメラ機能で見てみると確かに今の和真は、ピンクの髪に金色の瞳になっている。グレンに指摘されなかったこともあり、気にしていなかったが、薫達からすれば「何だそれ」である。

「イメチェンって言ったら…無理あるよな」

「このタイミングでイメチェンは笑える。けど、何か事情があるんだろ?」

「ああ、今は言えねえ。けど信じてくれ」

「信じるって…何を言ってるの?あなたは」

雫は辛辣だが、それでも和真は折れない。

「俺は全てを守る。家族も、このサークルも、そしてこの世界も」

「オイオイ、スケールがデカいぜ?」

「分かってる。でも…それがこの力を託された、俺の運命なんだ。カッコつけてるとか、ナルシストだとか、言いたいだけ言ってくれ。それでも俺はやるしかないんだ」

「もう一度ガタノゾーアに挑む気ですか?死にますよ?」

「そう…かもしれない。でもやばいヤツらもこっちを狙ってる。皆を巻き込むわけにはいかない。直ぐにでも退避してくれ」

「何なの?動くなって言ったり、退避しろって言ったり?コロコロと指示を変えるのやめてくれないかしら?」

「それは謝るしかないけど…でも今度こそ信じてほしい。命に代えても皆を助ける」

「…わかりました。真尋さん、クー子、ハス太くん。このサークルの皆を連れて安全なところへ」

「ついでにこのクトゥグアを連れて行ってくれ。俺を狙ってきた」

「なんですと?」

「母さんには詳しく話す」

そう言うと八坂家は頷きあう。スミレ、薫、雫、レナを乗せ、空中艦は上昇して行った。

 

河原に2人残される、ニャル子と和真。

「あのクトゥグアは何だったんです?」

「あのクトゥグアは未来から送り込まれた。体全体を擬態させられるほどの科学技術、そして真二を知っていることを踏まえると」

「それで間違いなく未来から来たと?」

「ああ。それに、知らない変身ベルトを持ってた」

「どんなのです?」

「こんなのよ」

そう言って和真は、グレンから取り上げておいた銃と剣が一体化したような変身ベルトを母・ニャル子に見せる。

「私も知りませんね。このキーと似たようなもののプロトタイプは、アト子ちゃんが作ってましたけど」

「なるほどねぇ…なら間違いなく未来か」

「あとこっちを狙っている連中がいると言ってましたが…それは?」

「ああ、その1人がコイツだ。5人は最低でもいるらしい。光と闇を消滅させるとかなんとか言ってた。俺はガタノゾーアにやられた後、真二に助けられたと思ったら、さっきのクトゥグアだったわけ。話がごちゃごちゃでごめん」

「いえ、大体分かりました。でも変身しなかったんです?」

「ブレイバックルなら壊れた。ガタノゾーアとの戦いでこの有様さ」

溜息をついて和真は、ボドボドになったブレイバックルを取り出す。

「さっき渡せば持って帰って修理くらいできたでしょうに」

「この力が無くなったと知れば、アイツらは不安になる。そうはしたくない。最後に残ったこの身を賭しても、俺は戦う。失いたくはないんだ。信じてくれる、仲間だけは…」

「死ぬつもりですか?」

「死ぬつもりは毛頭無い。未来からの刺客を倒して、ガタノゾーアも消滅させる。俺の力だけじゃあ無理かもしれないから、母さんに協力してもらいたい」

「分かりましたよ。珍しい息子の頼みですからね。でも約束してください」

「何を?」

「必ず生きて帰ること」

「分かった」

和真は先程乗ってきたバイクに、ニャル子は錠前型のアイテムを変形させたバイクに跨り、海の方へと走り出した。

 

バイクのタイヤの跡を追っていくと、やがてそれは林の中に入って行っているようだった。

「こんなところで何を?」

林の中へ入っていくと、どうやら争った痕跡らしきものが見られた。

(焼けたような感じもある。まさか既にアイツら、父さんのとこに?)

しかし炎属性のライダーといえば、インフェルノウィングか龍騎、セイバーくらい。この燃え方からするに、恐らくインフェルノウィングだろう。樹木の上の方まで燃えている。

龍騎は小回りがきくとは思えないし、セイバーはまだ未熟だ。

だがタイヤの跡はここから戻って行っているらしい。

林の中から出、あたりを見回すが当然いるわけもない。小高い場所へと登り、辺りを確認してみると、真二は遠くに2台のバイクを認めた。

「こんなタイミングでツーリングか?」

しかしそんな2台のバイクを追うように、2つの人影が現れる。

人影というにはサイズがアレだが。

(バースと…ビーストか)

バースはカッターウィングを装着、ビーストはキマイラに乗っており、空中から2人を追っている。

タドルレガシーに変身し、翼をはためかせて一気に加速。落下のエネルギーをも利用しながら炎を纏わせた剣を振るい、バースとビーストをまとめて吹っ飛ばす。

「大丈夫ですか…って父さん?おばあちゃん!?」

バイクの2人は知り合いどころか、探していた父親と祖母であった。

 

真二の姿を認め、2人はバイクを止めた。しかし和真は怪しんだ目付きで真二に声を掛けてきた。

「待て、真二。その変身を解け」

「いやバースとビーストが。ていうかそのピンクと金色の目…」

「擬態してるかもしれない。さすがにないと思うがな」

「え、あ、ああ」

仮面ライダーブレイブの変身を解かせると、そこに居たのは真二。

スーツなど着ていない。ややくたびれた感じの服装だ。

「真二か」

「何なんだよ」

「さっきお前に擬態したクトゥグアに騙されてな。少し警戒してるんだよ」

「グレンか?」

「知ってるのか」

「元詐欺師だよ」

はあ、と息を吐く真二の背後でバースとビーストは起き上がった。

『ブレストキャノン』の音声と共に、黒と銀のライダー、仮面ライダーバースの胸部に大型銃が生成され、更にバースはベルトにメダルを投入し、ブレストキャノンのチャージが始まる。

青と金のボディの仮面ライダービースト(のちに聞いたところではビーストハイパーというらしい)は銃型の武器を構え、チャージがされていく。

「クソ、俺が止めるから2人は先に行ってくれ!」

「変身してる時間も惜しいだろ!ならさっさとやるしかねえ!」

必殺技が放たれんとする直前、和真はバイクから降りてバースとビーストの方へと駆け出す。

「何してんだ!死ぬ気か!?」

「死ぬ気はねえ!」

和真は跳躍し、キマイラの上に跨るビーストの手を蹴り上げ、銃型の武器を奪う。そしてビーストの身体を蹴り飛ばし、その変身ベルトに向けて銃型の武器のトリガーを引く。

当然ながらバースの照準はこちらへと向けられる。

キマイラの身体を蹴って照準を回避し、ブレストキャノンをへし折り、変身ベルトを強引に外して。

ビーストはベルトを破壊、バースはベルトを外し、変身を解除させるのだった。

 

「これで良し」

「これで良し、じゃねえよ。父さん、アンタはゴリラか」

「ハア"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"?!」『パンチングコング!』

「誰がゴリラだよ?!あと母さん変な音声入れるのやめて」

「いや入れなきゃいけないかなーと思いまして」

「とにかく!これからどうするんだ?2人してツーリングって訳でもないだろうし」

「ガタノゾーアを倒す。恐らく奴ら、ガタノゾーアより俺の方が簡単に倒せると踏んで、俺を先に狙ってる」

「やはりか。ガタノゾーアを倒すって行っても、間違いなくそこにも俺の時代の仮面ライダーがいる。いや、飛べば行けるか」

「それは無理だ。ブレイバックルは壊れてる。だから自力でやるしかねえわけさ」

「そんなんで行くつもりだったのか!?死ぬぞ!」

「何度も言わなきゃならんのか。俺は死ぬつもりはない。生きる意志があれば、何度でも立ち上がれるさ」

「何名言っぽく言ってんだ!?バカか!アーマーがなけりゃあ死ぬだろうが、あんなの」

「そうだが…時間もないだろ。それに今なら行ける気がする」

「行ける…気がする?策があるのか?」

「策といえるかはわからない」

これに賭け、勝てるかといえば不明である。

和真は右と左の指にはめられたリングを真二と母・ニャル子に見せた。夢の中で手にした記憶はあったリング。

「これだ」

「見たことがないものだな。未来にもない」

「私も見たことがありませんね」

「夢だと思ってたけど…ホンモノだな」

「夢の中でゲットしたのか。だいぶファンタジーなこって」

「ファンタジーでもいいって。でもこれなら、行ける気がする」

 

 

 

 




毎度ウルトラマンで書けなくてこっちで書いてる感じがなくもない、クソ作者でございます。
大学の履修登録期間てなんだろうね。クッソだるい。
ノワールって女神化すると微妙に千早っぽい話し方になるよね。
ブランは女神化する前の方がまだニャル子さんぽい感じあるよーな。
地味に邪神候補生っての気に入りまして。
そのうち出すのもありかなぁ、でも面倒だなぁ、と。
昨日投稿したのか一昨日投稿したのか、感覚がイマイチ分からん。
いや確認すればすぐ分かるけど。
ウルトラマンで何か考えてぼちぼち書こうかな。
じゃ、またねー


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爛然のビヴロスト

再び和真達はバイクで移動を開始した。

今度は和真のバイクの後ろには真二が乗り、母・ニャル子のバイクと並走していく。

海にガタノゾーアを望む最悪のロケーションだが、どうにかしてあの巨体に近づかねばならない。

空中艦はサークルの皆を載せているから、使うことはできないが。

ふとある事を思い出し、和真はバイクを止めた。

「なるほど、こんな時のためにか」

「何が」

「いや、飛んで行ける。ルルイエに突っ込むぞ」

「急に何言ってるんだ?俺は飛べるし、おばあちゃんも行けると思うけど、父さんは」

「グレンから奪ったベルトがある。それで飛べるさ」

「普通のホモ・サピエンスには使えないぞ」

「安心しろ。俺は普通のホモ・サピエンスだ」

バイクから降り、ベルトを腰に装着。グレンがやっていたのを真似て変身してみることに。

『INFERNO WING!』

赤いキーを銃とナイフが一体化したような変身ベルトにセット。

『BURN RISE!』

『KAMENRIDER…KAMENRIDER…』

「変身」

『SLASH RISE』『BURNING FALCON』

『The strongest wings bearing the fire of hell』

「なんとかなったけど、違和感あるし地味に暑い」

「クトゥグア用のだしな。そりゃ適合するわけないさ」

そう言って真二も仮面ライダーブレイブ・タドルレガシーに変身、母・ニャル子も漆黒のフルフォースフォームに姿を変える。

「さぁて、乗り込みますか」

 

燃える翼を広げて和真は飛び立ち、真二は純白の翼をはためかせ、空へと舞い上がる。

未だに謎なのが母はどうやって飛んでいるのか、である。スラスターも無ければ翼もないのに、どうして上昇したり加速したりしているのか、20年近く経っても疑問だ。

「来るぞ!」

禍々しいエネルギーが、ガタノゾーアからマシンガンのように間髪入れずに打ち出されてくる。

アクロバットな動きでエネルギーを回避しながら、ガタノゾーアへと近づいて行くが、禍々しいエネルギーに加え、今度はよく分からない触手も和真達を襲ってくる。

「なんだよコイツら!」

炎を使って触手を焼いて行くが、キリがない上に遠距離からのエネルギー弾の攻撃も捌かねばならない。

間一髪回避出来たかと思った刹那、複数のエネルギー弾が和真を直撃し、吹っ飛ばす。

地面に叩きつけられ、何度も転がり、岩に身体を打ち付けて。

ふらふらになりながらも立ち上がるが、変身は解除されてしまう。

ベルトは完全に壊れ、キーも砕けてしまった。

それでも。

「まだ…行ける…」

包帯は既に取れ、体のあちこちから血が流れ出しているのを感じる。立ち上がろうとするが動くことは叶わず、和真はその場に倒れ込んだ。

「父さーーーーん!」

「和真ぁぁぁぁぁ!」

真二と母・ニャル子の声を遠くに聞きながら、和真の意識は遠のいて行くのだった。

 

ゆっくりと瞳を開く。

白い空間。ここは見覚えがある。

(あのリングと変身ベルトを見た場所か)

手形の彫り込まれたリングは右手に、淡い水色の宝石のような何かで出来たリングは左手に。

そして彼に相対するように立つ、ピンク色の髪に黄金の瞳の少女。

鹿目まどか、円環の理。

「夢じゃないのか?」

彼の言葉に彼女は頷く。

「ブレイバックルも、インフェルノウィングもなくなった。でも渡してくれたこのリングなら、ガタノゾーアにも勝てるんじゃないかって、そう思う」

和真の言葉に、彼女は小さく頷くとゆっくりとこちらへ歩み寄り、そっと手を差し出してきた。

その手を取れと言う事か。

和真が迷わずその手に触れると、彼女の姿は徐々に和真の中へと吸い込まれるようにして消えて行った。

そして腰に現れる、手形のバックルの変身ベルト。

眩いばかりの光があたりを包んでいく。

 

再び和真は覚醒した。

オーラを纏いながら、瞳を金色に輝かせて、立ち上がる。

「父さん!」

「和真!大丈夫だったんですね」

「ああ」

「そのベルトは?」

「希望だ。今度こそ、終わらせる」

そう言って、左指の淡い水色のリングを変身ベルトに翳すと。

あらゆる色彩が和真の元へと収束していく。

色彩、否、これはソウルジェムか。古今東西全ての魔法少女の力であり、彼女達の魂であり、願いであり希望そのもの。

それらは融合し、再び和真と1つになる。

その光景は、まるでルルイエに虹色の橋が架かったようだ。

「すげえ…」

「綺麗ですね…」

ガタノゾーアの触手が3人へ振るわれるが、和真から放たれるエネルギーによって全て消滅した。

今度は彼の体そのものが巨大な水晶らしきものに包まれ、そしてそれが砕け散ると。

そこには仮面ライダーブレイドでも、インフェルノウィングでもない、新たな姿となった和真がいた。

淡い水色と白銀の姿は、ひと言で言うならダイヤモンド。

その内に秘められているのは、幾星霜を経てなお遺り続ける、魔女と魔法少女の魂と希望と願い。その全てを身に宿した今の彼は、無限の可能性を秘めていると言って良いだろう。

「俺は最後の希望になる」

彼の言葉に反論するかのようにエネルギー弾と触手など、全ての攻撃がこちらへと向け、放たれる。

だが和真が天に手を掲げると、再び虹が彼の元へ。

幾星霜、古今東西、あらゆる時代、あらゆる場所から、希望と願いとが彼へと降り注ぐ。

虹が止むと彼の手には、魔法少女のものともまた違う光に包まれた武器が握られており、和真は問答無用でそれを振るった。

そしてその武器から斬撃そのものが飛び、エネルギー弾、触手などの全ての攻撃を殺す。

何語か分からない、恐らく古代の言語と思しきもので咆哮するガタノゾーア。何を言っているのか知るよしもないが、知りたくもない。

「ガタノゾーア。1つ教えてやる。本当に強いのは…強いのは!人の想いだ。俺は数え切れないほどのそれを、背負ってる。だから分かる!破壊だけしか知らない闇が、俺たちに勝てるはずもない!」

「ああ、この世界は滅んだりしない。父さんが、皆が、俺達が明日を信じる限り!」

「息子も孫も言うようになりましたね…なら私も命燃やしますよ。この力はお守りじゃないですし。使う時に使わなきゃ、意味がないんですから」

3人は跳躍、和真の足には虹色のエネルギーが、真二の足には水色のエネルギーが、ニャル子の足には黒いエネルギーが、それぞれ収束していく。

そしてエネルギー弾や触手、全ての攻撃を物ともせず、トリプルライダーキックがガタノゾーアへと命中し、そのどデカイ図体に穴を開けるのだった。

 

ルルイエは結局すぐには沈むわけではないらしく、しばらくしてまた海中に戻っていくそうだ。

ガタノゾーア撃破後、残された未来からの刺客が何名か和真を狙ったきたが、淡い水色と白銀のその姿に勝てるはずもなく、全員があっさりと変身解除に追い込まれた。

今回の件、和真が生きて終えられたこともあり、真二は父である和真と固く握手を交わし、刺客どもを引き連れて未来へと帰っていった。

首謀者を洗い出し、失敗に終わった旨を知らせてやるという。

和真を最初に狙ってきたクトゥグア、グレンに関しては死亡扱いにするとのことで、こちらで処分しても良いらしい。

そして問題なのがこの希望の力だが、鹿目まどか、円環の理は表面に出る事はなくなり、内側に居続けることになるという。

最後の希望の力を発揮したことで、テレパシーのようなものを使えるようになったらしく、それを用いて会話することで知り得た。

能力などを表面に出さなくなるが、円環の理としての機能は維持し続ける、いわば不可視の存在に変化するらしい。

魔法少女としての能力も使えなくなり、和真は一般人に戻る。

(これで良かったのかな)

何が正しくて何が間違っているのか、彼は分からない。

けれど彼のあるべき姿は神などではない。

円環の理は眠りにつき、インフェルノウィングもなく、ブレイバックルも今は持たない彼は、ようやく大学生としての生活に戻る。

 

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい、気を付けてね」

そして自転車に跨り、和真は大学へと向かうのだった。

 

 

***

 

 

ダイニングテーブルでコーヒーを啜りながら、男はパソコンの画面を睨む。

アドバイスを貰ってから恋愛要素を入れようと試みてきたが、やはり彼には難しいのだろうか。

「うまく書けんな」

「また悩んでるの?」

背中にポンと手を置きながら、1人の女性が声をかけてくる。

「あーまぁね。ちょっと難航してるかな」

「どれどれ、ええ、私との馴れ初めは?」

「キャンプのとこ」

「確かにそうかもしれないけれど。あの戦いは事実だろうけど、入れる必要ある?」

「ノンフィクションというか、エッセイというか、自叙伝みたいな。そういうとこあるから嘘は書けないぜ」

「文化祭のこと書いてもいいじゃない。あそこで私達のサークルに参加したわけだし」

「アイツの依頼でね。結果的にまぁ、こういう関係なれたけど。待ってまだ嫁とか結婚とか、言うの恥ずかしい」

「ふふ、しておいて何言ってるの?じゃあ次は文化祭のこと書きましょう。手伝うから」

「そりゃありがと。でもホント、イチャイチャしてるのは…書く側も恥ずかしいんだよ…」

「30になってもそこだけはウブなのね。そういうとこも好きだけど」

「マジでその、好きとか…いや、恥ずい」

そうこうして手伝って貰いながら、男は続きを書くことにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 




はい、日常編ていう名のガタノゾーア編終わりです。
光と闇の行方でしたね。
これで和真くん普通のホモ・サピエンスに戻ります。
普通のホモ・サピエンスっていう、邪神と人間のハーフのゴリラですが。
とりあえずこの話しまでが第1部で、次からはマジで恋愛編を書くつもりなので第2部ということにします。
ナンバリングはしませんけど。
あと恋愛がうまく書けないので、グダリグダリと引き伸ばしてるだろコイツと思ってるそこの貴方。
正しいです。恋愛初心者のクソザコなので、小説の恋愛しか知りません。
でもラノベのベタベタなハーレム恋愛は書きたくないという変な意地を持っておりまして、サシの恋愛を描きたいと。
つーことで悩みながらもまぁ、こうやっております。
最近の恋愛要素っつーとアレだよね、何話か前とこの話の最後に書いた男性と女性の。
アレで恋愛というか分からんけど。既に結婚してますし。
ぼちぼち思考錯誤しながら恋愛を描きます。
じゃ、またねー


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祭りの始まり

ガタノゾーアを倒し、その後は何事もなく毎日が過ぎていった。

夏休みが終わり、大学が始まり、平和な時間が流れていく。

キャンプでの一件を経た後、和真は映像研究サークルのメンバーと交流を深めるようになっており、度々遊ぶようにもなっていた。

個人的には少しばかりトレーニングを始めたとだけ記しておく。

そして9月も半ばに差し掛かったある日の土曜日、和真は薫と朝から出かけ、1日かけて秋葉原巡りをしようと意気込んでいたのだが。

「ん?誰からだろ」

「こんな時にLINEしてくるなんざ、中々だな」

「げ、黒鉄スミレかよ」

「サークル関連だな。お疲れさん」

「いや、和真もいるなら連れてこいだとさ」

「はあ?なんで俺まで?てか秋葉原巡りはどうするんだ」

「延期だな」

だが正直電車に乗ってまで東京都千代田区まで足を運んだのに、ここで終わるのは納得できない。

「でもどうせ連れて行かれるなら逃げるしかねえな」

「おまえアホかよ。ま、そうだがな」

そそくさと路地に逃げ込もうとしたところで、首に微かな痛み。

触れてみると針のようなものが刺さっている。

「麻酔弾か…」

見れば突如として現れた黒服の人物に薫が気絶させられたのが見え、和真の意識もゆっくりと遠のいていくのだった。

 

目を覚ますと、そこは薄暗い部屋だった。

廃屋や掘っ建て小屋のような建て付けの悪いものではなく、ある程度整理はされているらしい。

手などもこれといって縛られているわけでもなく、自由に動かせる。

「薫、起きてるか?」

「ああ。だいぶウチのサークルの女性陣は趣味が悪いらしい」

「さっき俺たちをやったの、彼女達だったのか。なぜ分かった」

「一瞬だが顔が見えた。スミレだったよ」

「俺たちが行きたがらないと踏んで、敢えて構えてたのか。アイツら何者?何かの組織だろ、絶対」

2人がぶつくさ言っていると、急に照明が付き、扉が開かれた。

「いやごめんねー、文化祭のことで協力してもらいたくて」

「麻酔弾で拉致するのは協力とは言わねぇ」

「で、何?文化祭で何かするのか?こんな部屋使って」

「そーそー。レナ、美山先輩もちょっとよろしい?」

そうこうして黒鉄スミレ、桜木レナ、美山雫、平島薫、八坂和真のメンバーが部屋に揃ったわけだが。

「文化祭で何か映画を作ろうと思って。映像研究サークルだし」

「映画ねェ…ジャンルは?予算そんなかけられないだろうな」

「ジャンルはアクションもので、恋愛要素もありの方向だよ」

「予算が大して使えないなら、エキストラを沢山使うのは無理だな。配役は?」

「レナがヒロイン。美山先輩が会社の社長。私は幼馴染。主役は和真で、薫は長年の友人役」

「あの、さぁ、配役はそれでもいいとして。いや会社の社長ってのがよく分からんけど。とにかくどこで撮るのさ?どこかの舞台でやる金もないだろ」

「中学校を舞台にする予定。美山先輩にはまぁ、同期になってもらって」

「同窓会か何かか」

「そーそー」

「ちょっと待て」

「どうした薫」

「その配役じゃカメラと監督いなくね?誰が撮ったりすんのさ」

「「あ…」」

というわけで配役を変えることに。キャストの役が大きく変化したわけではなく和真、レナ、薫は元の役のまま、スミレが監督、雫がカメラを担当することに。

「ンでいつ撮影始めるんだ?」

「明日から」

「だから呼んだのかよ」

「もうちょいこう、早めに予定は立てられないのか?呼ばれてすぐなんざ無理に決まってるだろ」

「文化祭は来月1日からだし。2週間あまりで仕上げなきゃいけないんだって」

「まぁまぁ…OK、分かったよ。金も入るだろうしな、やろう。衣装はどうする?各自準備か?」

「そだね。明日、この場所に午前6時に集合で」

そう言ってスミレからメモを渡され、その場は解散となった。

1つ不安要素があるとすれば、その集合場所が和真が通っていた高校である、ということ。

(大丈夫、だよな)

そう言い聞かせる。きっと何も起きない。何も。

 

帰り際に知ったことだが、ここはスミレの家であったらしい。外から見れば普通の一戸建て住宅だが、中が4次元空間だかなんかになっていて、やたらと広くなっていた。

恐らく邪神のそういった技術等が生かされているのだろう。

というか秋葉原から車で拉致されてここまで運ぶのが大変だったと思うのだが、まぁ楽しんでやったのだろうし良しとしよう。

薫は秋葉原を諦めきれなかったのか、解散後、再度千代田区へと向かい、スミレと雫は打ち合わせをするらしく、今は和真とレナだけ。

隣を歩くレナが口を開く。

「なんか、ごめんなさい。撃ってしまって」

「いや…うん、よく秋葉原まで来てやったな、と思うよ。麻酔弾は初めてだったけど」

「でもえと、八坂くん?で良いかしら。呼び方を考えてなかったから」

「好きな呼び方で良いだろ。あんまり落ち着いた雰囲気で女性と話した記憶がないんだ、俺は」

「じゃあ八坂くんはむしろどんな人と会ってきたの?これまで」

「ま、色々だよ。それと、キャンプのことは覚えてるか?」

「晩御飯食べたとこまで。あとはなんか目が覚めたら宇宙船?空中艦?の中にいた感じ」

ウォッチャーが表に出ていた時の記憶はないわけだ。それならば、彼の事を呼んでいた記憶もないはずである。

「なるほどね。ま、無事なら良いんだ。何もなければ」

「相変わらず謎が多いのね」

「薫にも何も話してないしな。でも…言ったとこで信じちゃ貰えないだろうしさ」

「そう言われると気になるのだけど」

「簡単にいうと、旅をしていたんだ。色々な世界を」

「旅?」

和真はかいつまみながらこれまでの旅のことを話した。最もファンタジーだったり、フィクショナルな世界ばかりなので、信じてもらえたかは分からない。

だが彼自身の力のことは、極力言わないようにした。彼女は和真が変身した姿を知らない。一体化していたウォッチャーのことも。

知らない方がいいことも山程あるのだ。

「よく生きて帰れてるものね」

「頑丈なことだけが取り柄なんでね…ちょっとストップ」

「どうしたの?」

異様な何かを感じ取り、和真はレナを立ち止まらせる。

今何かが動いたような気がした。人ではない何かが。

(ったく、プレデターとかはやめてくれよ)

「誰か、居たような」

「お化けとかじゃないでしょうね?」

「違うと思う」

ゆっくりと歩みを進めていく。それが向かったと思われる方へ進んでいくが、果たしてそこには何も居なかった。

「何もなかったか」

「なら良かったじゃない」

「まぁ、ね」

その後しばらく歩いて別れ、各々家に戻って行ったのだった。

 

 

「危ないところだったな。だがバレなければ良い」

俯瞰しながら呟く男が1人。

「祭りはもうすぐ始まるんだからな」

彼の左腕には黒い腕輪が光っていた。

 




低クオリティで毎度お届けしております。
結構急展開すぎたかなぁ、とも思いつつ。
いい加減ウルトラマンのやつ書くって言ってんだから書けよ俺。
まあかぐや様読んで恋愛の研究しながら書くかあ…
ぼちぼち挙げますわ。
じゃ、またねー


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悪夢の遊戯

翌日早朝。

特にこれといって問題も起きることはなく、皆時間通りに例の学校へと集まった。スミレが既に撮影の許可は取ってあるとのことで、こんなことができるのなら、和真や薫を気絶させて参加させることもなかったのではなかろうか。

今更それを問うたところで、何か変わるわけではないが。

「で、まずは?」

「和真、レナ、薫で母校を訪れるシーンだね。基本ノーカットで行くつもりなんで。基本アドリブで」

「無理あると思うけど」

「5年ぶりに再会したってことにするか」

「テキトーだな。ま、それで行こうか」

「じゃあ位置について」

指示に従い、校門から少し離れたところで3人はスタンバイ。

ほとんどシナリオも何もない映画の撮影が始まろうとしていた。

「3!2!1!アクション!」

 

***

 

八坂和真、桜木レナ、平島薫の3人は、かつての母校へと向かっていた。5年ほど前、彼らが過ごした学び舎である。

「久しぶり、だな」

「5年ぶりくらいか。ほとんど変わってねえ」

「でも少し古びたかも」

「そう言われるとそう見えなくもないな。で、ここにタイムカプセルがあんのか、薫」

「どこに置いたか忘れたんで、ちょっと手伝って貰おうと思って」

「お安い御用だ」

「でもあんまり覚えてないのよね。タイムカプセルとか」

「ま、今日は日曜だし、1日かけてもいいだろ」

そうして3人は門をくぐり、懐かしの学校へと入っていった。

 

学校は異様な雰囲気に包まれていた。日曜だし学校に生徒がいないの当たり前、静かなのはそうなのだが、どこか殺伐とした何かというか、殺意じみたものが漂っている。

「俺たちの学校、こんな感じだったか?」

「別に改修工事とかしてないし、何も変わってないだろ」

「何かおかしなところでもあるの?」

「いや…なんでもない、と思う」

気のせいだと薫とレナには言うが、和真はこの学校に潜む『何か』の存在を感じ取っていた。

昇降口で靴を脱ぎ、校舎内へ入る3人。

「教師の1人くらい居るかな」

「どうだろ?見てくるか?」

「そだな、一応声かけとこう」

慣れた足取りで職員室へと進む。階段を上がって2階が職員室だったと記憶しているが、階段を登りきる直前。

「2人とも待ってくれ」

「なんだよ、急に声も小さくして」

「シッ…何かいる」

「ふざけてるのか?肝試しなんかしてるわけじゃないぞ」

「知ってるわ、そんなこたぁ。なら俺が行ってくる」

和真は1人、職員室へと向かうのだった。

 

近付くにつれて徐々に強くなる、異様な雰囲気。先ほど感じた殺意に近いそれが、この職員室の中から発せられている。

ゆっくりとスライド型のドアを開けると、中には人影が。

いやアレを人影と言うのか、むしろ異形の姿といったほうが的確な気がする。奴の周囲は赤く染まっていて、奥には最早意識すらないような肉塊が転がる。

強烈な鉄の匂いは、その赤色の液体が何なのか、和真に否応にも理解させる。

「何なんだ、コイツは」

和真の存在を認めたその異形は、人のものとは言い難い叫び声をあげ、飛びかかってきた。

「クソッ!」

一撃一撃が鋭く放たれ、和真は躱しながら職員室から後退する。

打ち込む隙はあるが、和真は打てないまま。

(今ここには桜木レナがいる。彼女には…)

彼女にはこういったことを知って貰いたくない。

だがそれは彼女に異形の存在を知って欲しくないのか、彼自身が手を汚すのを知ってほしくないのか、彼には分からなかった。

しかしここから先にこの異形を通せば、確実にレナと薫の元に行く。

踏みとどまり、彼は拳を握り締める。

刹那に放たれるストレートパンチ。

異形の身体はくの字に曲がり、背後の職員室のドアごと吹っ飛び、職員室の奥の壁に叩きつけられた。起き上がろうとすることすら叶わず、異形は床に倒れ伏す。

「…人間の感触じゃない」

どろりとした、生々しい感触。

ハンカチで手に付いた血を拭き取るが、嫌な匂いは残ったまま。

「黒鉄、これも撮影の何かか?」

「こんなの準備してないって。見たことないバケモノだよ」

「私はこんな話聞いてないわ!学校来るだけでこんなのに襲われるなんて」

「なんだかんだいってカメラは回してたんスか。メンタル頑丈なんじゃないですか」

「帰りたいわよ!でもこういう時逃げたら死ぬじゃない」

「まあそすね。なら、薫と桜木は!?」

慌てて階段まで戻ると、丁度2人が何者かに連れ去られていくところが見えた。

ちらりと見えただけだが、どうやら先程のバケモノと同じような姿をしていた。

「撮影続けるの?2人の救出を優先させた方がいいと思うけれど」

「いや全て映そう。何かの証拠になるかもしれない。良いよな、監督」

「分かったよ」

タイムカプセルなどとアドリブで最初は言っていたが、どうやら割とマジでやばい状況になってしまったらしい。

あのバケモノを倒し、薫と桜木を助けなければならなくなったのだから。

 

ともかく階段を降り、2人が連れ去られていったと思われる方へ向かい、手当たり次第に部屋を調べていくが、一向に2人は見つかりそうになかった。

教室にも入ってみたものの、やはり2人の姿はない。しかし戻ろうとしたところで、教室のテレビの電源が付いた。

『よう、和真?2人は見つかったか?』

画面に映る謎の男。しかしパワードスーツらしきものに身を包んでおり、その素顔を知ることはできない。

「…誰だ?なぜ俺の名を知ってる?薫と桜木を捕らえてるのか?」

『まあそう焦るな。そうだ、ゲームをしよう。今手元にあるのか何か分かるか?見えるよな?』

「注射器か。何をするつもりだ?」

『こいつは溶原性細胞って言ってな、人をアマゾンってバケモノに変えちまうんだ。さっきお前がぶん殴ったヤツもそうなんだぜ』

「何?」

『最もアレは死体を使ってるから、大した出来じゃあねえ。やっぱ生きてるヤツじゃねえとな。つーわけでお前のお仲間の、平島薫と桜木レナには実験体になってもらう。止めたきゃこの部屋まで来るんだな』

「古典的なやり方だな」

『だが止めなきゃそっちのスタッフ2人も狙われるぞ?最も、この部屋を見つけられれば、だがな』

嘲るような声と共に、テレビの映像は切れた。

「…野郎ッ!」

怒りと焦りと、様々な感情が和真の中で入り混じる。やり場のない感情を勢いに任せ、沈黙したテレビを殴り付ける。

「…どうするの?だいぶやばい状況になってきたよね、全てホントだとしたら」

「アイツを見つけ出すしかない。どんな手を使ってでも」

映像は恐らくこの学校の中から放送されたもの。

この学校のテレビは学校内からしか映せないポンコツなのだ。

全ての部屋をしらみつぶしに探せば見つけられるだろう。しかしヤツは間違いなくあの異形、アマゾンを送り込んでくるし、時間が勿体無い。

(アイツはアマゾンはもとは人間だと言っていた。俺に倒すのを躊躇させるつもりか)

それともそれが単なるブラフか何かの可能性もある。

焦燥感に駆られながら、和真は廊下を歩き出す。

冷静にならねばならないのは重々承知しているが、いつあの溶原性細胞とかいうのが、薫と桜木に打たれるのか分からない。

急ぐ和真の前に現れる異形、アマゾン。

獣のような呻き声を上げ、アマゾンは和真を見据える。

1歩、2歩とアマゾンに近づく和真。

アマゾンは彼より遥かに恐ろしい見た目をしているにも関わらず、徐々に後退していく。本能的な恐怖か、それとも生存本能か。

しかし和真は刹那よりも早く眼前のアマゾンを掴み、投げ飛ばす。アマゾンは壁をぶち抜き、隣の部屋に転がる。

「親玉の場所はどこだ?」

ボロボロになったアマゾンを見下ろし、和真は冷たく問う。

首を勢いよく横に振るアマゾン。答えないということか。

「お前らアマゾンを殺す気はない。今の所はな。指差すなり、何か言うなり、案内するなりしろ」

とはいえ流石に理不尽といえばそうではあるが、今の和真に異形を殺さないという選択肢はないようなもの。

アマゾンは机からペンと紙を出すと、『3階』とだけ書き、急いで逃げるように去っていった。

「追わないの?ゴリラ」

「必要な情報はくれた。殺しはしない。あとゴリラじゃないから」

そしてアマゾンからのメモを手に、3階フロアへと和真達は向かう事したのだった。

 

2階フロアから3階フロアにかけ、異様な匂いと雰囲気が漂う。

更に3階には何かバリアらしきものが貼られており、容易に近づく事はできそうにもなかった。

「結局2人のとこまで行けないじゃない」

「罠だったのよ。それに後ろ…」

雫の震える声に振り向くと。

彼らが3階に近付いたことを知ったのだろう、どこにいたのか階段を埋め尽くすほどのアマゾンが迫っていた。

いや先程取り逃したアマゾンが情報を漏らしたのか。

むしろこれほどのアマゾンにこれまで遭遇しなかったのは、ここで一気に彼らを殺すためだったのかもしれない。

スミレと雫をバリア側、和真の背中側に移動させ、和真は大量のアマゾンと向かい合う。

「結局あの野郎の手駒か」

変身さえできればとは思うが、もう今の彼はそれに頼る事はしない。

否、できない。

己の肉体のみでやるしかない。

拳を強く固く、握り締め。

迫り来るアマゾン達に鋭い拳撃、蹴撃を放つ。あるものは顔面を刹那に無くされ跡形もなく溶けるか、あるものは壁に穴を空けるほどの威力で吹っ飛ばされるか。

どちらにせよ、僅かばかりの後、残っているアマゾンはゼロだった。

「あなた誰かに乱暴だって言われた事ない?」

「あるかもな。覚えてないけど。バリアは解除する方法あるか?」

「急に普通のホモ・サピエンスの思考に戻るのやめて?こっちが困るんだけど」

「バリアっつったら解除だろ。いや、行けるのかな」

これといって幻想殺しのようなものもないので、こういうサイバーっぽいものには対応できないところがある。

そもそもこのバリアがどういった形で貼られているのか分からないが、通路だけを塞いでいるものだとすれば行けなくはない。

(迷ってる暇はねえ。一気呵成に畳み掛ける)

恐らく映像から見るに、使われなくなった教室という可能性もなくはないが、映像を送れるのはそういった設備があるところのみ。

放送室、あるいはPCルームか。

素早く脳を働かせ、正解を導き出さねば。天井を見上げ、ふと和真は思い付く。

「一度フレームアウトすると思う。でも撮影は続けてくれ」

「えっ?」

和真はそういうと窓の外に出、ベランダを走りながら中の様子を確認していくことに。

 

「ここか」

当たりはパソコン室。外からも例のパワードスーツの男と複数のアマゾンが認められ、薫と桜木の2人もいるのが見てとれる。

恐らくアマゾンが守るようにしている謎の装置が、バリア発生装置なのだろう。

躊躇なく和真は窓をぶち壊し、中へ突入。

開口一番。

「よう、薫と桜木は返してもらうぜ。悪いが、躊躇うつもりはない」

 

 

 

 

 

 




タイトルは悪夢の遊戯って付けましたけど、この敵と和真ってどっちの方が悪夢なんですかね。
書いてて思うけど、和真の存在が悪夢なんじゃないかって。
ここまで来ると弱体化のさせかた分からんしな。
ま、今日テネット見てくるんで。
ぼちぼち。
じゃ、またねー


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宇宙の復讐者

「ほう、外から窓ぶち破って堂々と入ってきたか」

「バリアとかずる賢いこと考えてくれたせいで、遠回りする羽目になったよ。それに何より薫と桜木を人質に取ったのは許せん」

「言うようになったな、八坂和真」

「なぜアンタは俺のことを知ってる?俺はそんな全身パワードスーツ野郎は知らねえが」

和真の疑問に答えるかのように、男はパワードスーツを脱ぐ。いや、変身を解いたというのが正確だったのかもしれない。

「あの時惑星保護機構で敗れてから、俺はお前らへの復讐を誓った。今日までそれで生きてきたと言っても良い」

「ニャル滝…牢屋にぶち込まれたって聞いたが」

「そんなの脱走してきたに決まってるだろ。お前ら八坂の一族は揃いも揃って邪魔ばかりしやがる。手始めに最近痛い目を見せてくれた、息子のお前から始末してやろうと思った次第だ」

傷だらけになったニャル滝の顔には、かつて母とローコストドライバーを巡って戦い、ブレイドとして和真と戦った時の面影は最早ない。

彼にあるのは八坂和真と八坂ニャル子、八坂真尋への復讐。恐らく腕輪のそれが新しい変身アイテムであり、先程のパワードスーツになるのだろう。

和真の視線に気付いたか、ニャル滝は腕輪を指差して言う。

「これも俺が作ったものだ。ローコストドライバーもブレイバックルも必要ない。このミリタントアマゾンズレジスターは、俺の復讐を完全なものにする」

「お前の復讐と言っておきながら、たくさんアマゾンを投入してるじゃねえか。アレか、皆、溶原性細胞ってやつでアマゾンになった、元人間てンだろう?」

「復讐には手段は選ばん。獄中で俺は持ち得る全ての知識を生かし、溶原性細胞を作り上げ、ミリタントアマゾンズレジスターを設計した。脱獄を成功させた後、ある製薬会社で俺はようやく溶原性細胞の量産化を成功させた。ミリタントアマゾンズレジスターも完成し、そしてようやく、復讐を始められる」

「お前、ふざけるなよ」

「なんだ」

「復讐したけりゃしろ。それは人の好き勝手だ。でも見ず知らずの他人をも巻き込むな!ましてや俺の仲間をも!薫や桜木を人質に取ったのは、絶対に許さねえ!」

「お前に俺の復讐心など分かるものか!勝者は敗者のことなど知ろうともしないだろう……アマゾン」

腕輪の鼻の部分を倒し、ニャル滝はパワードスーツを身に纏う。

「俺はネオアルファ。始まりでも終わりでもない、新たな存在だ」

「ネオ、アルファ?」

問いには答えず、アマゾンが数体、彼を狙って飛びかかってきた。ネオアルファが操っているのか、特殊なマインドコントロールが施されているのか、そこまでは分からないが。

「ハッ!」

ほぼ同時に繰り出されるハイキック。従来のハイキックは片足を床や地面に付けているため、どう足掻いたところで1人の相手しかできない。

足を両方使った蹴りとて、相手は2人が限界だろう。

しかしその空間、その瞬間、飛びかかってくるアマゾン全てに対し、同時に蹴りが放たれていたのだ。

「よし…」

吹っ飛ぶアマゾン達。壁に穴を開け、天井に穴を開け、そしてバリア発生装置に体をぶつけ、アマゾン達は沈黙した。

そしてバリア発生装置が動きを止めたおかげか、バリアは消えた。

「アマゾンなどただの玩具にすぎん!復讐は俺の手で遂げてみせる!」

「やるならやってみろ!今度はブラックホールに送ってやる!」

声を上げる和真とニャル滝。もはや今の彼らに、細かいことを問うたところで無意味だろう。

一方は復讐者、もう一方は怒る普通のゴリラ・サピエンス。

復讐者は失うものは何もない。ただ殺すべき相手を殺す、それだけのためだけに動く。

しかしゴリラ・サピエンスもとい和真には守るべき者達、助けなければならない仲間達がいる。

「ミンチにしてやるぞ、八坂和真!」

腰のベルトを操作し、ネオアルファは右腕にチェーンソーとガトリングが一体化した狂気的な武器を生成。

ネオアルファはガトリングを、和真ではなく意識を失ったままの薫と桜木に向け、撃ち放つ。毎秒何百発といったレベルで撃たれているのだろうことは想像に難くない。

「させるか!」

刹那よりも速く、和真の身体は動き、2人の前に立ち塞がる。

そして薫と桜木に向けて放たれたガトリングの弾は全て和真へと命中し、鮮血を飛び散らせるのだった。

 

僅かばかり時間は遡る。

場面は変わり、バリアの外にいたスミレと雫へと視点は映る。身動きが取れずに悩んでいたが、通路を塞いでいた障壁がなくなったことがわかると、カメラを手に2人は動き出した。

どちらへ行くべきか判断しかねたが、奥の部屋から聞こえてきた銃撃音が、彼女達をそちらへと導いた。

「こっちだね」

「ええ」

ドアを開け中へ飛び込むと、そこには。

無数の薬莢と硝煙、床に広がる鮮血。

パワードスーツを身に纏った謎の男が、銃口を下ろす。

全身から血を流しながらも立ち続けているのは、和真だ。

「カメラ…頼むよ?良い映像が撮れるから…な」

「和真!そんなじゃ、死ぬって!」

「気にするな…死にはしない」

そう言う和真に対し、再度ガトリングが撃ち込まれる。

避けることなどせず、和真は正面からガトリングを食らう。

飛び散る大量の血。

「もしかして…」

「どうしたの?」

「和真が動かないのって」

彼の後ろに見えるのは、意識を失っている平島薫と桜木レナ。どうやら2人を守るために彼は仁王立ちを続けているらしい。

撮影側であるスミレと雫が入れないが故、彼は1人で戦っている。

まあスミレや雫が加わったところでガトリングに耐えきれるほどの体力もないし、躱すこともできないだろう。

2人はカメラを回し、見守り、記録することしかできなかった。

 

血が止めどなく身体から流れ、最早服の色は赤黒く変色している。

だがその瞳から光が消えることはない。

「そこまでやられておきながら、なぜ倒れない?なぜ死なない?八坂和真」

「俺は…仲間がいる。再会したのも、新しく出会ったのも、仲間だ。俺に新しい世界を教えてくれた」

「だが自身を裏切るのも仲間という存在だ。前よりも愚かになったな、八坂和真」

「好きなように言え。それでも復讐だけしか生き甲斐のないヤツに比べりゃあ…遥かにマシだと思ってるぜ」

1歩、また1歩と和真はネオアルファに近付く。向けられるガトリングの銃口は、確かに和真の額に狙いを定めている。今度こそ顔面をぶち抜き、息の根を止めるつもりか。

ガトリングのトリガーが撃ち放たれるのと、和真が床を蹴ったのはほぼ同時だった。だが僅かに和真の方が速く、銃弾は額ではなく、肩を直撃。

「しゃオラァ!!」

パワーとスピードにものを言わせた拳をネオアルファに叩きつける。小細工など用いず、シンプルに正面から殴る。

ネオアルファは吹っ飛び、壁をいくつもぶち抜いて、階段の手前の床に倒れ込む。

ネオアルファがぶち抜いた穴を通って和真は迫り、目にも留まらぬ速さで拳を振るうが、今度は避けられてしまう。

床を転がりながらガトリングを構えるネオアルファ=ニャル滝は、冷や汗をかいていた。

「お前邪神じゃなくてゴリラだろう?親戚にクリス・レッドフィールドか不破諌っているだろ」

「いるわけ、ないだろ。俺は…普通のホモ・サピエンスだ」

「邪神と人間のハーフは普通のホモ・サピエンスって言わねえ!」

ニャル滝の叫びと共に、ネオアルファのガトリングが再び火を噴く。

流血もここまでくれば痛みなどない。撃たれようが、構やしない。

まあ絵面的には、アマゾンズフィルターでもかけた方が良いようなくらいにはなっているかもしれない。

床を踏み砕く勢いで和真はネオアルファに肉薄するが、しかし。

「ぐあッ…ぁ…」

「一度も使ってなかったからなぁ、ここでは。見落とすのも分かるぜ」

「チェーンソーたァ…ずるいぜ…」

「復讐に卑劣も卑怯もあるものか。言ったろう、手段は選ばないと」

ガトリングと一体化するように付いていたチェーンソーが起動し、和真の右肩から首にかけてめり込んでいく。

「和真!」

追いかけてきていたスミレが、薫に肩を貸しながら、叫ぶ。

雫は桜木に肩を貸しており、どうやら助け出せはしたらしい。

「悪りぃな…でも、ここで…こいつに、エンドマークを…打つ!」

勢いよく稼働するチェーンソーを見据え、和真は左拳を叩きつけ、チェーンソーを殴り砕いた。

「なっ…?!」

「俺は親みたいに、フルフォースフォームなんて、ねえからな。変身ベルトなけりゃ、生身の人間だ。だから鍛えるしかねえんだ」

元から強い人外ファミリーと違い、和真は人間の血も混ざった、半邪神にすぎない。そのために途中までは仮面ライダーブレイドの力に頼っていたが、それは壊れた。奇跡のようなものだった円環の理も眠りにつき、彼に残されたのは己の肉体のみ。

それ故に様々なアクション映画を見、アーノルド・シュワルツェネッガーや、ドウェイン・ジョンソンやジェイソン・ステイサムといった鋼の肉体を目指し、トレーニングを始めた。

余計なものは取り払い、ひたすら肉のみを食い、鍛える。

まだ今はひよっこ同然だが。

「俺は例え全て無くなっても、誰かのために戦う。そう決めた。仮面ライダーでなくなっても」

「そう言ってお前はかつて、偶然と奇跡で円環の理の力を手にし、それで俺を葬った!」

「だから!今度こそ、俺の力で終わりにする!俺自身の手で、俺自身の力で!」

ニャル滝=ネオアルファは残されたガトリングを和真の顔面に向ける。

「ちくしょおぉぉぉッ!眉間なんか撃ってやるものか!てめぇも、他の奴らもまとめて、吹っ飛ばしてやるぅぅッ!」

これがお互い最後の攻撃となるのは目に見えている。

ガトリングの弾丸を食らいながらも、しかし和真は左の拳を再度握りしめ、ネオアルファを殴り飛ばす。

ネオアルファ=ニャル滝の身体は窓ガラスを突き破り、吹っ飛んでいく。

「地獄に落ちろニャル滝!」

 

 

 

 




なんすかね、最後のあたりコマンドーっぽくなったような。
まあまあ、これで星の復讐者もとい、ニャル滝の復讐編は終わりとなりまして。
中途半端なとこで切ったと言われるかもですが、この後は文化祭編にマジで入りますので。
とかいうと大抵変な話突っ込むから言うのやめよう。
ぼちぼち和真のゴリラ化が進行しておりますが、書いていきます。
じゃ、またねー


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カーニバル

本来ならば前の話に記すべきだったのかもしれない。今更ではあるだろうが、例の映画製作の顛末をここに述べておこう。

結局あの後ラストシーンを撮影し、1日かけた撮影はお開きとなった。

しかしまぁ学校はあの状態のままというわけにもいかず、そこは人外ファミリーに相談したところ、特殊な機械を使って学校を壊れる前の状態に戻す事ができるらしい。それで学校を壊れる前の状態に戻してもらい、お咎めなしということになった。

ニャル滝に関しては母・ニャル子が回収し、ブラックホール監獄というところへ文字通り放り込んだのだとか。

なんでも正規名称はダークネビュラというらしいが、ボドボドになりそうなので聞くのは控えておいた。

多少編集作業はしたものの、戦闘シーンはしっかりと残すことになり、そのため一時アマゾンプライムで配信するかという案が出された。アマゾンズフィルターを付けることで事なきを得たが。

そのせいもありタイムカプセルを探すという序盤のシーンが無意味になってしまい、桜木と薫の影が薄くなってしまった。

ともかくそうして文化祭前日までにポスターやら機器の準備やらを終え、上映準備も無事に終えることができていたのだった。

 

そして上映を控えた初日朝、5人は行動順などを決めるため、部室に集まっていた。

「で、明日の当番どうする?」

「当番?上映する時の係か」

「それと、自由に見回る組ね」

「俺は傷治ってるし、別にどっちでもいいぞ」

「いや撮影最後見た時、お前全身血だらけだったぞ。全然何があったのか知らんが、よく生きてるよな」

「ガトリングで全身撃たれて、チェーンソーで右肩から首あたりをやられて生きてるあたり、バケモノだよね和真は」

「肉たくさん食って、酒飲めば治るもんよ」

「普通は肉と酒じゃ治らんの」

「いや包帯とか使うと面倒だしさ。自力でやらなきゃ」

「ゴリラの話はとにかく、どうするの?明日の係は」

「2、3で分けるかな。私の独断と偏見で、和真とレナ、美山先輩と薫は私と。これでいい?」

「あっさり決めるなぁ」

「まぁね。先に和真とレナが店番で良い?」

「ああ」

「分かった」

ということで午前中は和真、レナが接客などの対応を行い、午後から薫、雫、スミレの3人に交代する形となった。

今更思うのも変かもしれないが、邪神というわりに、スミレが戦闘に参加したことはこれっぽっちもない。

まぁ監督役だったからといえばそうなるが。

(ま、何かワケでもあんだろ)

知るつもりもないし、知ったところでどうもしないので問いはしないが。

 

店番を始めてしばらく経つ。客はちらほら。まぁ3流の素人映画に400円支払って観てくれる人がいるだけでも、有難いものである。

3度目あたりの上映だったろうか、黒い帽子に黒いコートの怪しげな風貌をした老人が姿を見せた。

やたらと長く、もっさりとした髭を蓄えており、サンタクロースと言われればそう見えなくもない。しかしサンタクロースにしては眼光が鋭い上に、服装も赤と白のクリスマスカラーではない。

そもそもサンタなんて信じてはいないのだが。

「400円になります」

「これで、いいかな?」

「ちょうど頂きます。ごゆっくりどうぞ」

「ふむ」

怪しげな老人はそうして部屋の端の方の椅子に腰掛けた。

どうやら映画を見に来ただけの、一般男性のようではある。

最も風貌は不審者そのものなので、否応にも目立つ。

(気を付けてはおくか)

「ねえ、じろじろ見るものでもないでしょ。仕事まだあるんだから」

「ああ、うん」

視線を戻し、不慣れながらも接客を続ける。その後はこれといって怪しげな人が訪れることもなく、順調に仕事は進んでいった。

そして昼休みになり、薫たち3人と交代。無論昼休みも仕事はあるので、ここで交代して3人は食事を取りつつ仕事を進める感じだ。

午前中を担当した和真とレナの2人は自由時間となるわけで、2人して色々な出店を見回ることにした。

のはよかったのだが、この前と違い、何故か話題が浮かばない。

そりゃこんなところであの旅の話をしたところで、ラノベの語りでもやっているのかと思われるのがオチだろう。

内容は強ち間違いではないが。

歩きながらもこれといった話題が思いつかず、自分たちが撮影した例の映画の話を振ることに。

「桜木さ、こないだの映画で殆ど気絶しちゃってたし、なんかごめん。俺が1人で突っ走ってしまった感じだし」

「別に構わないわ。それに後から話聞いたのと映画観て思ったのだけれど、低予算でできたのって、和真のおかげよね」

「地味に酷い言い方するなぁ…まぁそうだろな。ネオアルファやアマゾンとガチで殺りあったから、あの映像ができたわけだし」

「なるほどね」

自販機で立ち止まり、レナは紅茶を購入し、ブラックコーヒーも追加購入。和真に「100円ね」と値段をご丁寧に教えて黒い缶を手渡してきた。

レナは自分の紅茶を飲みながら口を開く。

「それで、あなた何者なの?」

「何者って、八坂和真だよ」

「そうじゃないわ。あなた、人間なの?普通のホモ・サピエンスとかゴリラとか色々言われてるけれど。肉と酒だけであの傷が癒えるのは超人的よ」

「そうかもしれない。でも、もう俺は人間なんだ」

「もう?前は違ったと言うこと?」

「まあな。少し、こっちに行こう」

出店が並ぶ構内を歩いていたが、和真はレナを促し、少しばかり文化祭の中心部から外れる事に。

「どうして?」

「ちょっと、尾けられてる」

「尾け、えっ?」

慌てて走れば向こうの思う壺だろう。あくまで自然に、しかし早足で歩く。

見れば先程の黒服の老人ではなく、20〜30代の男性。人数は把握出来る限りでは3人、皆総じて黒いスーツを着ている。銃を忍ばせているが文化祭に乗じているということもあり、エアガンに見せかけた麻酔銃といったところだろう。

「走るぞ」

「う、うん」

桜木の手を引き、駆け出す。

黒服の男達もこちらに合わせて走り出し、銃を抜いて引き金を引いてくる。しかし撃ち出されてくるのは鋼の薬莢ではなく、先端が針のようになった麻酔弾。

運良く躱せはしたが、これも最初だけで、徐々に狙いが正確になるはずだ。

再び放たれる麻酔弾。今度も躱せたが、紙一重だった。

「クソッ…」

しかし逃げた方向がまずかった。行き止まりに来てしまったのだ。

「どうするの?」

「俺も麻酔には勝てんしな。どうにかせんと」

男達が撃ち放つ麻酔弾を掴んで投げ捨てるが、追手ばかりを気にしていたせいもあり、和真は遠距離からの攻撃を眼中に入れていなかった。

そして音もなく飛来し、ぷすりと刺さる感触。見れば右腕に麻酔弾が命中している。

「…やべ」

「どうしたの?撃たれた?」

「右をやられた。…俺は良い、逃げろ…」

「でもそんなこと言われたら、余計逃げにくいじゃない」

「いいから…クソ…」

近付いてくる複数の足音。和真の意識は朦朧としていき、そして途切れるのだった。

 

目を覚ますと、そこは和真が意識を失った大学構内ではなく、どこかの建物の入り口だった。

例えるならバイオハザードで出てきそうな洋館とでもいうべきか。

そこそこ豪華そうな造りのドアで、何か文字が書かれた紙が挟まっている。

手にとって広げてみると。

「探…せ?桜木をってことか?」

彼女の姿は見当たらないが、先程の男達に捕まった可能性は捨てきれない。となれば探し出すしかあるまい。

この建物がどこにある、何の建物なのか分からない。それでも、探せというのならやるしかない。

扉を開き、和真は体を中に滑り込ませる。

しかし外観に反し、中は異様なまでな静けさが支配していた。

「いや、文化祭の何か出しもんだろ、たぶん」

そう言い聞かせて進むが、しかしこれほどのものを文化祭の出し物と考えるには無理がある。恐らく本物の建物を使っているのだろう。

だが本物にしろ偽物にしろ。桜木を誘拐し、こちらが建物内に踏み込んでおきながら、何も敵が姿を見せないというのもおかしなものだ。ただただ静かな空間が続く。

奥へ進むと、重厚な扉が1つあり、その向こうから何やら声が聞こえてくる。

「ここか…」

ゆっくりと扉を押し開けると、そこはトーナメント会場のようでもあると同時に、何かの競売会場のようでもあった。様々な人が中心の空間を囲むような形で座り、異様なまでに盛り上がっている。

そしてその中心には。

「桜木…!」

気を失った桜木レナが倒れていた。駆け寄って確かめると、どうやら外傷はないらしい。

すぐにも肩を貸し脱出を図ろうとすると、和真が通ってきた通路に電磁柵が起動し、行く手を阻む。

「折角来てくれた客人をもてなさずに帰す真似はせんよ」

そう言って現れたのは、やや古めかしい衣装に身を包み、杖をついた老人だった。

「アンタ、昼間にウチに来た…」

「覚えていてくれて何よりだよ」

「あんな怪しい格好したのはアンタくらいだ。そのヒゲもな。それよりここはどこだ?あの怪しい黒服の奴らは?なぜ桜木を?!」

「一度に聞くな、少年。黒服の男達は私が差し向けた部下だ。雰囲気が出るだろう?」

「ここがどこなのか。なぜ桜木を誘拐したのか、答えてないぞ」

「ここがどこなのかは答えんよ。全て終われば分かる」

「桜木を誘拐した理由は?なぜ俺だけを残した?」

「彼女が適任だったのだよ、私のプロジェクトに。そして君という存在もまた、使える存在だった」

「何をするつもりだ?」

「ウォッチャーを宿していた彼女は、人間としては異質。森羅万象を見通すほどの力を持つというその力を有していた彼女は、力を失いこそすれ、その器は私達の中では重宝されるのだ」

「人身売買でも、するつもりか?」

「君のような勘の良いガキは嫌いだよ。しかし来てもらって追い返すのも無作法だ」

老人がパチンと指を鳴らすと、赤い魔法陣が突如として現れ、そこから炎を纏った女性が現れた。

「クー子…さん?」

「…久しぶり」

「久しぶりで済むの?これは」

「…手加減はしない。私も仕事だから」

クー子はそう言い、炎を自身と和真を包むように展開していく。

「クソ、桜木ッ!」

遠くなる彼女の姿はやがて、炎に包まれて見えなくなっていった。

 

 

 

 

 




どうも、日常編で日常の話が書けません。
頑張りますけど。
何しよう。
本でも読もうか。
ぼちぼち書きます。
じゃ、またねー


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敗北のシナリオ

クトゥグア・八坂クー子と、八坂和真は炎の中で対峙する。

この炎はライターやマッチなどの外的要因ではなく、クー子自身の身体から放たれている炎。

やがて炎はひときわ激しく燃え上がると、荒涼としつつも、周囲を炎に囲まれた赤土色の空間へと変化する。

「ここは?」

「…不連続時空間、邪神フィールド。フォームチェンジした邪神のみが使える、戦闘用空間」

「こんなことできたんだ…」

「…私も日々強くなってるから。ニャル子には負けない」

「それは構わないけど。1つ、聞きたい」

「…何?」

「なぜクー子さんがここに?」

「…臨時のバイト。決して新作ゲームとハードを買うためのお金が足りなくなったとかではないから、信じてほしい」

「ああ、なるほど。で、俺を倒すバイトってこと?」

「…蘇生はする。背に腹は変えられない」

「ならこっちも、さっさとこんなフィールドから出たいとこだよ」

拳を構えようとする和真に対し、今度はクー子から問うてきた。

「…和真は、あの少女、桜木レナのことをどう思ってるの?」

「どうって…仲間だよ。映像研究サークルの仲間だし」

「…それだけ?私にはそうは見えないけれど」

「何が言いたいんだ?俺が、その、桜木のことを、好きだとでも?!」

「…そこまで言ってないけど。少なからず、想ってる。違う?」

「うるさい!俺の問題だろ!いい加減にしてくれ!」

半ばヤケになりながらも、和真はフィールドを蹴ってクー子に迫る。しかしながらクー子も応戦、空中機動砲台(正式名称を忘れた)を10以上展開し、ビームをこちらへ撃ち放つ。ビームを躱しながら、タイミングを見計らい、和真は跳躍して空中機動砲台を蹴り砕く。

「まずは1…か」

クー子本人もそうだが、空中砲台もちょこまかと動き回るのである。

そのせいで近付いて蹴ることができたと思っても、破壊できたのはアレだけ。

クー子は続ける。

「…でも彼女をこのまま見殺しにはしたくないんでしょ?」

「そりゃな。でも変かもしれないけど、その、彼女と話してると、どこか落ち着くんだ」

「…それで?」

「彼女には死んでほしくない。生きていて欲しい」

「…ならどうするの?」

「答えは1つ、だと思う。クー子さん。アンタを倒して、このフィールドから脱出する。そして桜木を助ける」

「…分かった」

どうやらフルチャージで撃つらしい。クー子は残った空中機動砲台の照準を全て和真に定める。エネルギーが収束し、放たれる膨大な黄昏色の奔流。

避けることはできないだろうと判断し、和真は敢えてビームの中へと突っ込むことに。

「こんちくしょうッッ!」

身体が焼けるのを感じながらも、空中機動砲台の放つビームの中へと飛び込んでいく。

母はバールでこれを打ち返したらしいが、今の和真にそんなものはない。己が肉体を信じることだけが、勝利への道である。

そしてようやくクー子の元へと辿り着いて。

「捉えたッ…」

和真の手がクー子を掴み、問答無用で投げ飛ばす。荒涼としたフィールドに転がるも、すぐさま起き上がり空中機動砲台を呼び戻すクー子。

「…やるじゃない」

しかし僅かに目を離した隙に空中機動砲台はほとんど砕かれ、彼女の元に戻ってきたのは1基のみ。

「空中機動砲台だかなんか、使うか?遠距離から撃つなんざ卑怯だろ、クー子さん」

「…じゃあ乙女の顔を殴る?」

「邪神フィールドを解除してくれれば、穏便に済む」

「…仕事だから手は抜かない」

「知ってたよ。俺も桜木のために、全力でやる」

例え八坂クー子が身内であっても、桜木レナの救出を妨げるのなら、和真はやる。桜木レナ、彼女には死んで欲しくないし、生きてまた会いたい。

それに何より。

(人身売買は許さねえぞ、クソジジイ)

赤土色の荒野で、再度生ける炎と少年は向かい合う。

生ける炎であり邪神そのものである八坂クー子と、ニャルラトホテプと真尋のハーフである八坂和真。

不利だとか、有利だとか、レベルの差がどうとか、そんなものは一切合切関係ない。

この世界にレベリングなどありはしないが。

そして仮面ライダーの力も、今は。

残されたのは自分の道をただひたすらに歩むことだけであり、立ちはだかる敵は己が手で倒すしかない。

「アンタは母さんに説教して貰わないといけないしな」

「…それは、悪くないかも」

「なんで頰赤らめるんだよ。相変わらずマゾなこって…けど俺はアンタを超えて、桜木のところへ戻る!」

その言葉を合図に、炎で生成された槍や剣が飛来してくる。

空中機動砲台だけでなく、戦い方も前と変化しているような気がする。

ビーム兵器は正面から突っ込んでもなんとかなったが、槍や剣は刺さると火傷だけでなく、穴が空く恐れがある。それに今穴が空いてしまうと、何も知らない仲間に心配されかねないため、気を付けねば。

「これは…ッ!」

正面から放たれるだけだった炎の槍と剣は、突如として方向を変え、真上や背後からも和真を襲い始める。

転がってなんとか回避するものの。

「チッ、遠くなっちまった…」

炎の槍と剣は、確実に和真に狙いを定めている。

怪我など気にしていられない。最早穴が空こうが、五臓六腑を焼き尽くされようが、ここから出る。

和真が地を蹴ると同時、放たれる炎の槍と剣。

「ぐぅ…ッ…あ、づ…」

右腕と左足、そして左腹部を貫く炎の槍。されど膝をつく事は、彼にとって許されることではない。

身体が動くなら、やれる。そう言い聞かせる。

ビー・パワー・ハードボイルドだ。

内容は忘れたが、確か筋肉モリモリマッチョマンの変態がタンクトップで銃を持ってるポスターだった気がする。

日本でのタイトルは『ゴリラ』だったろうか。

「まだ…まだだ」

立ち上がろうとする和真の左腕、右足に立て続けに炎の剣が刺さる。

それでも動ける。

脳味噌と心臓があれば、なんとかなる。

「…もう死んでしまうわ」

「…俺は、死にはしない。死にそうって言われたことは…あるさ。でも、『生きる』って意志がありゃ…死なねえもんよ」

生ける炎が全身を焼いていくのを感じるが、それでも。

「今度こそ!」

荒野を踏み砕き、固く握りしめた拳をクー子の顔面に向けて放…たなかった。数ミリほどのところで止めていた。寸止めである。

「動かないのか…」

「…あなたに私は殴れない。私もあなたを殺すのは忍びない」

「今更…言うか?そんなこと」

「…フィールドは消す。それでいい?」

「金は、どうするんだ?」

「…奪っても大丈夫でしょ」

「そんなんだったね、ウチのアダムスファミリー」

クー子がパチンと指を鳴らすと、邪神フィールドが徐々に薄くなって消えていく。

「…後は頑張って」

「ああ」

魔法陣と共にクー子の姿も消える。恐らく報酬をぶん取りに行くのだろうが、ウチの親世代はそんなことを平気でしていたらしい。

親父はまぁ止められなかったらしい。

 

やがて和真だけが、あの空間へと帰還する。

さして状況は変わっていないようでなによりである。

「帰って…来たぞ」

「えっ、八坂くん?ちょっと、ここどこなの?知らない人沢山いるし、あの人私のこと器とか言うのだけれど。ていうかその傷何?!」

「少々説明が面倒なんだ、もう少し待ってくれ」

「ふん、クトゥグアは負けたのか。構わん、これもシナリオの内だ」

「へえ、余程余裕あるんだな」

「以前はダメだったが、今回のシナリオは完璧だ。4DXでも上映できるぞ」

「何言ってんだ?というか俺はアンタを許すつもりはないぞ、シナリオがどうであろうと」

「ほう?」

「人身売買なんて許されねえんだよ!この野郎!仮にアンタの中じゃ常識だったとしても、俺は許さねえ!」

「勇ましいじゃないか。だが生憎とこちらも商売なのでね、売る方も買う方もWINWINで行かねばならん。下手に邪魔されるわけにはいかんのだよ」

「じゃあなんだ、俺は帰れと?」

「まさか。彼女が売られるところでも見ていくと良い」

「…八坂くん、なんかもう逃げられないっぽいし…警備の人っぽいの来てるから」

彼女は救えない、それがシナリオだとでもいうのか。商売の面で見れば万々歳かもしれないが、和真からすれば最悪以外の何でもない。

警備らしき人物が和真を掴もうと手を伸ばす。

しかしその手は触れることなく、警備の身体は吹っ飛んでいた。

「最後まで諦めず、不可能を可能にする!それが人間ってモンだろ!逃げるぞ桜木!」

警備を殴り倒し、桜木を抱きかかえて和真は走り出す。

ドアを蹴り開け、壁をぶち壊し、ただ真っ直ぐに外を目指す。

そして窓を見つけて蹴り破り、2人は外へと身を躍らせた。

なぜか脱出した直後に背後で爆発が起きたのだが、まぁダイナマイトでもあったのだろう。

 

「シナリオ通り、とは微妙にいかんか」

「アンタは20年以上前に懲りたものだと思ってましたよ。まさか息子達を相手にするなんて」

「ただあの時は失敗した。せめて映像の中だけはと思ったのだが」

「それでこんな大掛かりなセットまで用意して?ホントやってやれませんよ、こっちは。クー子はそっちに寝返るし」

「金が欲しいというから組んだまで。最も、有り金を全て取られたがな。もう終わったも同然」

「でしょうね。連行しますよ。ただ今後、彼には手を出さない方が良いと忠告しておきますよ」

「ほう?」

「邪神人間問わず、人は好きな人の為なら、限界を超えますから」

 

 

 

 

 




あい、どーも。
クソだるおじさんです。おじさんでもないけど。
従姉の娘、従姉姪とでもいうのかな。とは結構離れてるからね、20歳くらい離れてるのかな。
たぶんあの子が成長する頃には、おっさんだよこっちは。
とかおじさんぽい事を言いつつ。
遅れましたが最新話。
いい加減のんびりとした話書けよ。
毎回ファイトしてんじゃん。
つーわけでぼちぼち。
じゃ、またねー


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再び戦場へ

こうも争い事がない日々は、平和というのだろう。

あの謎の館でのクトゥグア、クー子さんとの戦いを終えた和真は、珍しく何事もない穏やかな日々を送っていた。

それが正しいし珍しくもないはずなのだけれども、どこか何も無い日々というのが、非日常に思えて仕方がない。

非日常が日常で、日常が非日常だったからか。

「12月か…」

「そうだな。今日で20日。もうすぐ冬休みだ」

答えたのは薫。平島薫。

「文化祭は…もう昔だよな」

「昔ってほどでもないが、前ではある」

穏やかな日差しが、吹き抜けから差し込む。

今2人がいるのはショッピングモールの中心部。今日は休日かつ、クリスマスと年越しを目前に控えているということもあり、ショッピングモールは賑わっている。

最も野郎2人と買い物という、ギャルゲーのノーマルエンドでもなさそうな展開というわけではない。

サークルの女子の買い物に付き合っているのである。女性陣は女性陣で盛り上がってしまい、男性陣は取り残されてしまっていたわけだ。

それゆえ、こうして椅子で悲しくコーヒーを啜っている。

「そっち、クリスマスって結局どうすんだ」

「和真お前…それ聞く?」

「いや、俺別に祝わないし。メリクリしないし」

「桜木とはどうするつもりだ?なんか、展開あっても良い気はするぜ」

「冗談よせ。魅力的な女性だが、俺にはとても…」

「おいおい、感情の起伏激しいのは分からんでもないがなぁ…ワンチャンあるかもしれんのに、それをみすみす逃すのか?」

「それは…そうだろうけどサ。最近アイツなんか言いたいことあるみたいだし…避けられてる気はする」

コーヒーを啜る。

「良いからやってみろよ。応援くらいはしてやる。確かにサークルくらいでしか会ってないだろうけどよ」

「たまに映画行ったり、旅行行ったりするよ?でもやっぱり…俺じゃダメなのかも」

「いや、ガッデムデートしとるやんけ。お、喧嘩売っとるんと違うかワレ?何がダメなンだよ。アイツの本心はまァ知りようはねえけどさ…」

「恋人にはなれませんとか言われるかもしれんだろ。いや、だから何だってなりゃそうだけどさ」

「バッキャロー…クリスマスをエンジョイしろや。走れ光速のなんとかだよ」

「それは違うと思うけど…いざってなると怖いのかもしれない」

「大なり小なり人生かかってるからな」

改めて思うと今日集まったのは、クリスマスに向けて和真を激励するためだったのかもしれない。女性陣の方はどうだか分からないけれども。

***

男性陣があーだこーだ言い合っている頃。

黒鉄スミレ、桜木レナの両名は様々な店を回り、買い物をしながら、ショッピングモールを回っていた。

「少し相談があるのだけども」

「そんな畏まって…何?」

「私の友人の話なのだけれどもね」

レナはそうくどく切り出すが、スミレは理解していた。これはレナ自身の話。

「うん」

「よく遊びに行く相手がいるの。その子はその相手と居て楽しい。でも楽しいのは自分だけで、相手はそうじゃないかもって」

「なるほどね」

今日こうして4人で出かけたのは、単に遊ぶことが目的ではない。和真とレナの関係を進展させることがメイン。

スミレは2人の仲を多少把握しており、どうにかしてサポートをしたいところだった。部外者が口を挟むのも如何なものかと言われればそうだが、もどかしい関係が続いていたのだ。

「それで…その相手は何か言ってきたりとかは?」

「言いたい事があるみたいなの。でも言ってくれなくて」

「言って欲しい、と」

「そうなるわね」

「自分から何か言ってあげたりはしてない?相手もこっちからのアクションがないとアレだと思うけど」

「なんか恥ずかしいみたいで」

みたい、というか自分の事だろう。というのは口には出さない。

「クリスマスでしょ、もうすぐ。イルミネーションとかの中なら、雰囲気あるし、言いたい事言えるかも」

「そうかしら」

「カップルでイルミネーション行ったりする人見かけるし」

「でもどこか怖いのかも。告白して、拒否されることが」

「そこは自分たち次第としか。こっちができるのは、アドバイスだけだからね」

「それもそうね」

どうやら覚悟を決め、言ってみることにしたと見える。決戦はクリスマスか、あるいは今日か。

丁度ショッピングもキリが良くなったらしく、2人は男性陣の元へと戻る事にした。

***

合流したところで、この後どうするか、という話になった。昼頃だし昼食を取るのがベターなのだろう。フードコートも所々空いてはいるが、テーブル席が空いているかと言われると難しい。

「一旦解散してメシが食ってから集まるか」

「その方が良いかもね。ほら行くよ、エロ伯爵」

「偽伯爵みたいに言うな。あと引きずってくのはやめて俺のアメリカのアスがなくなってエンドゲームしてしまう!」

スミレに引きずられていく薫を見送ると、残されたのは和真とレナ。

「アイツらデキてんのかな」

「かもね」

とはいえ残されたこちらはどうするべきか。

「どうする?」

「何か食べましょうよ」

「だな。テイクアウトしてどこかで食べるか」

「ええ」

というわけでお財布にもそれなりに気を使い、野菜やハムのサンドイッチを購入。正直男友達とならジャンクフードを躊躇なく選んでいただろうが、女性と食べるのにそれはあまり良くない気もしたのである。

彼女がジャンクフードを好むかと言われると、これまでの経験上、それはあまりない気がした。ファミレスではサラダを基本的に頼んでいたはずだし。

そして和真とレナは屋上に設けられたテラスにやってきて、昼食を広げる。

「「いただきます」」

サンドイッチを口に運ぶ。

「うん、悪くない」

「結構いけるわね」

 

しかし。

 

「探すのに苦労したよ、父さん」

「…その声、真二か」

「訳は後で話す。手を貸してほし…ん?そこにいるの、母さん!?」

「えっ?えっ?!」

「ちょっと待て。事態をややこしくするな。すぐ戻ってくるから、待っててな」

「え、ええ」

ということで真二を連れてレナの元から離れ、話を聞くことに。

「実はある人物を追ってる。この時代に来たことは間違いないんだ」

「唐突なのは慣れてるが…俺に手伝えと?冗談言うな、折角手に入れた俺の今の生活はどうしてくれる」

「父さんの力が必要なんだ。正直、俺の手に負えない」

「手に負えなくなるなら、今すぐ行けよ。同僚いたはずだろ?連れて行ったらどうだ」

「頼めるやつがいないから、父さんに頼んでるんだ」

「いない?」

「変身できるやつは、皆居なくなった。力を奪われて…その後は…」

「真二、お前も奪われたのか」

「ああ。けど仲間に助けて貰って。奴を追ってこの時代に送りこまれたって感じさ」

どうやら嘘を言っているわけでもないらしい。改めて見てみると、隠しているようで、所々癒えていない傷が見えている。

「分かった。待ってろ」

レナに急用が出来たことを伝え、スミレと薫にも同様の連絡をする。

アイツらは相当怒るだろうし、レナへの告白も白紙に帰るかもしれない。いや、間違いなく白紙になる。

許されるとは思っていない。レナには頭を下げ、真二と共に出発する。真二はある程度目的地を絞り込めているらしく、着いていくことに。

「そいつのことは他に何か、分からないのか?」

「未来で俺たちの、仮面ライダーの力を奪ったと考えると、この時代での目的はかなり絞られる」

「ブレイド、カリス、レンゲルの仮面ライダーか。だが今の俺には、もう力はないようなもんだ」

「そう言ったところで、諦めはしない気がする」

「だろうな。諦めの悪い敵は慣れてるがな。そういや、名前は…?」

「名乗っていたな、確か。常磐ソウゴって」

 




久しぶり。
色々あって書けてなかったんだけど、まぁだいぶ久しぶりにうん。
書いたわ。
キャラ覚えてなくてクソガバガバな感じ。
ま、なんとかなるでしょう。
オーマジオウに勝てるのかは分からんがね。
というかそもそも…恋愛ものを書けないからバトルを書くっていう
クソザコ作者なとこある。


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魔王 Round zero

真二と共にやってきたのは、やはりというか我が家だった。

カリスとレンゲルのベルトはここにはないはずだが…もしかしてあの2人、戻ってきているのだろうか。

家に駆け込むと、外からは分からなかったが、内部は酷い有様だった。泥棒が入ったのとはまた微妙に異なり、かなり争った痕跡が見て取れる。

「でも皆いないな」

「いないなんて事ある?」

「ンなことはないはずだが…」

警戒しながら進んでいくが、すぐに2人は一足遅かったことに気付かされた。

「…冗談だろ」

壁面に空いた大きな穴。その向こうの住宅をもぶち抜いてその穴は続いており、その穴の先に人影が見える。

黒いフルフォースフォームは母・ニャル子なのは間違いない。カリスとレンゲルも見える。

もう1人の黒と金色のは。

「アレが…」

「俺たちの力を奪った、魔王・常磐ソウゴ」

彼が『何か』を取り出し、カリスとレンゲルに向けた。するとアーマーやベルト諸共その『何か』に吸い込まれていき、2人の変身は解除される。カリス、レンゲルの力そのものが奪われたのか、アレが何なのかは詳しくは分からない。

だがこのままでは下手をすると、母の方も同じように力を奪われる可能性がある。

迷わず駆け出す和真。武器など持ち合わせていないことを思い出すが、今更手遅れである。最もブレイバックルもサイクロンライザーも持ち合わせていないし、両方とも常磐ソウゴに奪われている可能性もある。

残されているのは己の肉体のみ。信じられる武器は、今はそれしかない。

「しゃオラァ!」

跳躍しながら殴りかかる和真。しかし謎の力で阻まれ、拳は届かず。

そのまま吹っ飛ばされ、受け身を取れぬまま、体を盛大に家屋に打ち付ける。

「ッ痛え…」

「仮面ライダー、ブレイド。八坂和真」

一歩、また一歩と常磐ソウゴは近付いてくる。恐らく和真を狙っているのだろう。

彼はまだ八坂和真を、仮面ライダーブレイドだと認識している。彼にその資格がなくなったということを、まだ知らないのだろうか。

「お前如き、変身しないで倒してやるさ…」

そう言うが、されどそれは虚勢に過ぎない。

拳さえ届かぬのに、勝てると言えるか。

壁に手をつきながら、和真はゆっくりと立ち上がる。

 

今の自分は仲間よりも、自分の息子の頼みを選んだ。

戦う事でしか生きている実感を得られないから?

生きている実感を得たいから戦う事を選ぶのか?

生きる。戦う。日常。非日常。

どちらが正しくて、どちらが間違っているのか。

 

様々な思いと、記憶とが駆け巡る。これが走馬灯ってヤツか。

ただの人間が魔王や神に勝てるのは、ただのフィクション。ファンタジックな夢物語だ。

でもこれは現実。

常盤ソウゴは冷たく告げる。

「ではお前の力を貰おう」

「良いぜ、やれよ」

常盤ソウゴはカリスとレンゲルの力を奪ったものと同じ、『何か』を取り出し、和真に向ける。

だが。

「何…?」

「生憎だったな、今の俺は仮面ライダーブレイドじゃねえ。未来から来たんだったら、調べておくんだったな」

「なら、お前は…何者だ?」

「弱くて、愚かな、ただの人間さ。でもそんな俺でも…何もできないわけじゃない」

「…私を止めるつもりだと?」

「『不可能』って言葉は俺の辞書にはないんでね」

対峙する和真と常磐ソウゴ。人間と魔王。弱者と強者。

階級闘争史観だかなんか、授業でやった気がする。マルクス主義あたりだったろうか。

(なんだ?)

ソウゴが先程力を奪ったものと似たような『何か』を3つ取り出して操作すると。

『ガイム』『ドライブ』『エグゼイド』

音声と共に現れる鎧武、ドライブ、エグゼイドの3人の仮面ライダー。

どうやら全員最強フォームで召喚したらしい。鎧武は極アームズ、ドライブはタイプトライドロン、エグゼイドはハイパームテキ。

記憶が正しければ、そのはずだ。

「母さん。2人を連れて退避してくれ」

「死ぬつもりですか?」

「俺、この戦いが終わったら、今度こそ告白するんだ」

「盛大なフラグ!」

「真二もだ」

「父さん!?まずいって!」

「良いから行け!」

 

とは言ったものの、いや本当にこれは、やばいかもしれない。

ソウゴを止める事が不可能ではないとしても、こちらが死ぬ可能性は十二分にあり得る。

「ま、レナへの罪滅ぼしか何かになると良いが」

しかし和真に今、仮面ライダーの力はない。だとすればもう一度円環の理の力を使うか、どうにかして相討ちに持ち込むか。

いや、まどかには頼れない。

「切り札は君の中、ね」

「仮面ライダーの力を持たず、私に挑むか。正義のヒーロー気取りか?」

「いや。そもそも俺は元からヒーローなんて器じゃない。自分の望みを叶えるためだけに、時空を超えて歴史改変を行なった。挙句の果てに沢山の人に迷惑をかけてしまったしね」

「ならばどうするつもりだ?」

「常盤ソウゴ。お前に最初で最後、現世発魔界行きのデスガイドをしてやる。邪神と相乗りする勇気はあるか?」

「魔界発現世行きじゃないのか」

ツッコミを無視し、和真は持ちうるエネルギーを右腕に込め、天に向けて突き上げる。

腕から一条の光が放たれ、彼らを覆うフィールドを形成していく。

「ほう…」

そして創り上げられたのは、霧に包まれた謎の都市。一目で分かる異空間である。

古風な歯車が目立つ建物と巨大な時計塔。上空には市街を照らす月。

和真と常磐ソウゴ達は、時計塔に程近い建物の上で対峙していた。

「ここは現実とは異なる位相に創り出した空間だ。俺が死ぬか、俺自身の意志で解除しない限り、互いに抜け出すことはできない」

「面白い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか変な方向行ってる気がするけど、ニャル子さんならいつもの事だよね。
気にしないでね。
まぁ変身できなくなったので、メタフィールド展開した感じですね。
正直これ和真死ぬんじゃないかと思います。
テンプレなフラグ立ててしまったので。
死なないように頑張りますが、たぶんここからまた色々ネタぶち込んで行きます。
現世発魔界行きデスガイドは、元ネタは魔界発現世行きデスガイド。
某カードゲームの可愛いカードです。イラスト好き。
まぁ…たぶん俺のデッキには入らないかな。
ワンチャン入ったとして呪眼だろうけど、ファントムナイツの方が相性良い気がするデスガイド。
うん、じゃあまたねー


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別離

終わりと始まりは、常に隣り合わせなんだと思う。

何かが終われば、何かが始まる。テレビ番組だって、何か1つ番組が終わったとしても、代わりに何か新しい番組が組まれるだろう。

しかし終わりがあって始まりがない場合も、ないわけではない。

死ぬというのはそういう事。死ぬ本人にとっては特に。

死んだからとて、必ず輪廻転生が約束されるわけじゃない。

 

人生は一度きり。脆く儚いからこそ、全てを賭ける価値がある。

最もそれを決めるのは自分自身だが。

言い換えれば、どんな形であろうと、死んだら全てが終わり。

 

 

足場を踏み砕く勢いで加速、跳躍、拳撃、蹴撃。

素早く攻撃を繰り出していくが、多勢に無勢、力の差も明確。

強烈なパンチを叩き込まれ、防ぐ間もなくトレーラー砲をモロに食らう。吹っ飛び、背後の建物をぶち抜いて、石畳の路上に転げる和真。

分かっている。分かっていた。相手が悪すぎるというのは。

フィールドを展開した時点で…いや、対峙した時から、理解はしていたはずだった。

極アームズとタイプトライドロン、ハイパームテキ、そして魔王だ。

「チッ、クソ反応早ェ…」

「お前を殺せば、この空間は壊れると。最も、内側から壊す事も容易そうだが」

3人のライダーと共にゆっくりと向かってくる常磐ソウゴ。

口の中に鉄の味が広がり、生温かい液体が口の端から流れてくるのを感じながらも、和真は意識を保って立ち上がる。

「させるわけ…ねえだろが、…野郎」

「まだ抗うか」

「ああ…」

そう言って和真はパチンと指を鳴らす。

どこからか聞こえ始める、錆びついた歯車を回すような重低音。

時計塔は鐘の音を響かせ。

古風な歯車が回り、鎖が鳥籠のようなものを引き上げていって。

赤いロウに灯された火が吹き消され。

赤い薔薇の花びらが霧の街を舞い。

12時を回った懐中時計が落ちてきて、和真はパシッとそれを掴んだ。

「最後まで付き合ってもらう」

 

***

 

半ば崩壊した家屋を急造で直し、八坂家のリビングに揃う面々。

八坂家はニャル子、真二、風香、吹雪。和真の父・真尋は、幸か不幸か母であり祖母でもある頼子のところへ行っているらしい。

「しかしこれからどうすれば…」

「死亡フラグ立てましたからね、和真」

「それで…あの、現在の状況は?」

吹雪が手を挙げるが、ニャル子は難しい顔をしている。

「今1番答えづらいんですよ…それ」

「じゃあ父さんは今どこにいると?」

「こことは違う位相。不連続時空間、メタフィールドと呼んでる空間なのは、間違いないでしょう」

「そんなもの使えるなんて、私や吹雪には言ってなかったはず…」

風香が驚愕した表情を浮かべる。

ニャル子は続けた。

 

「そりゃ言ってないでしょうよ。使わないように、私が言ってたんですから」

 

しばし沈黙。

「危険だと?」

「最も邪神によるんですが…メタフィールドは我々が使える異空間だ、という事は知ってます?」

「それくらいは…まぁ一応」

「和真のは、少し特殊なんですよ」

「特殊?」

「こう言えば分かり易いでしょう。アメリカの何も無いようなだだっ広い荒野と、夜の霧が濃いロンドン。どちらの方がすぐイメージできます?」

「そりゃ、だだっ広い荒野…かな」

「基本はそうかもしれませんけど、和真のは後者の方なんです。イメージするものが少なければ、消耗は少なくて済みますし、長時間フィールドを維持出来る。

でも細かければ細かいほど…つまりリアリティを求めようとすればするほど、体力とか精神力とかの消耗も激しくなるわけです。特に私たちの場合…フィールドの内部構造は使い手の経験とかに依存するところがありまして」

「記憶とか頭の中で思い描いたものとかに左右されるってことか?ド派手なものが作れるけど、消耗は激しいとか?」

「ええ。ぶっちゃけ言えばそうです。和真の場合は夜のロンドンっぽいアンティークな街を展開するので『バベルシティ・グレイス』なんて、名前だけは面白おかしく私らの間では呼ばれてますけどね」

『歯車街(ギア・タウン)』って名前も悪くはないと思うんですよ、とニャル子は付け加えるように言った。

「その名前も気にはなるけど…このままだと限界が来て、フィールドの中で父さんはやられかねないってわけか…」

「ええ、割とマジで」

「でも、ならどうするの?助ける手段はあるんじゃないの?同じメタフィールドでしょ」

不安げに聞く吹雪。

「以前展開した時は、私と真尋さんが中に居たから、連れ帰れたんですよ。でも今回はそれがない。メタフィールドは異なる位相の空間、外部から私達がどうこうすることもできません。そういうテクノロジーは手元にはありませんし」

「俺の仮面ライダーの力も奪われたままだしな」

「私達のもね…」

ニャル子は小さく息を吐く。

「…かといってこのままというのもアレですし。少し友人に聞いてみるので、待っててくださいな」

そう言ってニャル子は立ち上がると携帯を取り出し、友人へ電話をかけるのだった。

 

***

 

空は遥か遠く、浮かぶのはただ、無表情で虚ろな月。

空気はどこか淀んできているようだった。

大きな歯車が回り、蒸気を吹き上げて。

機械仕掛けの都市は動き始めていく。

そして和真の腰に巻かれている一本のベルト。右手には白と黒のプログライズキー。

和真自身はこのベルトを見たことがあるし、かつて使用したことがある。2度と使わないだろうと考えていたし、そうするつもりでいた。

「魔王が偽りの正義を振りかざすというなら、俺は作られた絶望と悪意でそれをねじ伏せてやる」

「ほう。ならばやってみるがいい」

応えるように、和真はプログライズキーを起動。

『アークワン』

「変身」

『シンギュライズ!破壊・破滅・絶望・滅亡せよ』

『コンクルージョン・ワン』

 

「常磐ソウゴ。お前を止められるのはただ1人、俺だ」

 

絶滅タイムが始まる。

 

 

 

 

 




どうも久しぶり…じゃないですね。
安定の低クオリティですが、まぁこの後の展開悩んでます。
色々詰め込んだので。
ふざけたりとか。
和真のメタフィールドの表現、アンティーカの思い出アピール繋げた感じになってるんですよ。
シンフォニックスチームのね。
気になったら調べてみてください。
あとはアンティークギアのイメージ。
遊戯王とアンティーカばっかりだね。
たまには違うネタぶち込みてえところなんだけど、思い付かん。
ウルトラマンでなんか書くって言って、まだ書けてない(書けよ)。
あとはウィッチーズ3期に伴って、キャラソン発売されましたね。
シャーリーとルッキーニと静夏。
全員分の買うつもりです。
もちろん3人のは買いました。
まだ聴けてないですが、実家帰ったらプレーヤーで流します。
いい加減年末だし部屋掃除するか…
じゃ、またねー


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オラーシャの大地

悪意と憎悪のみによって戦う戦士。

アークワン。

本来ならば、アークワンのプログライズキーとドライバーは彼の元にはない。2度と変身できないはずだし、するつもりもなかった。

だがここがメタフィールド、彼自身の異空間であり、彼の記憶を元に作り出されているからこそ。

記憶から失われたドライバーとキーを複製し、再びアークワンを使う事を可能とした。

でもそれはこの空間だけの、偽りの力。

たとえ自分がどうなったとしても。

それで正義があるべき場所に戻るなら。

 

石畳を踏み砕き、絶望と悪意を纏って和真は加速する。

対するは極アームズ、タイプトライドロン、ハイパームテキ。

そして魔王。

周囲の建物をぶち壊しながら、戦いは激しさを増していく。

アームズウェポンが射出され、トレーラー砲が放たれ、黄金の閃光が疾る。

『悪意』『恐怖』『憤怒』『憎悪』『絶望』『闘争』『殺意』『破滅』『絶滅』『滅亡』

『パーフェクトコンクルージョン』

『ラーニング・エンド』

禍々しいエネルギーと共に跳躍、ドロップキック。ソウゴも応じて蹴りを放ってくる。

和真とソウゴの蹴りがぶつかり合い、その余波で周囲は瓦礫の山と化していく。

生温かい感触をマスクの中で感じながらも、常磐ソウゴを見据えて。

「ここで終わらせる!」

両者共に更にエネルギー増大。閃光と共に3人のライダーをも巻き込んだ爆発が発生し、街を包み込んで行った。

 

***

 

「難しいでしょうね」

銀アト子は八坂家のソファに腰掛けて、そう言った。

問い返す真二。

「絶対?」

「絶対ではないけれど。異なる位相に入ろうと言うわけでしょう」

「まぁ、はい」

「良い?内側から鍵を掛けたドアがあるとして、それをどう開ける?」

「そりゃ内側からなら簡単に開くけど…外側からは、あ」

「そういうこと。内側からしか開かないものを、外側から無理矢理に開けるということは」

「やっぱり無理がありますか」

ニャル子もようやく口を開いた。

「状況が状況ではあるけれど。和真が押さえ込んでくれている以上、こちらの安全は確保されているということでもあるでしょう」

このような状況はこれまでなかった。

危機に陥り、たとえ自らの記憶を無くしたときはあっても。

いつだってそれを上回る力を発揮し、全てを乗り越えてきた。

だが少なくとも真二の話を聞く限り、敵は思っている以上に強大だ。

数多の仮面ライダーの力を奪い、それを我が物とする常磐ソウゴ。

対してこちらは残されたライダーシステムはなく、下手をすれば邪神の力も奪われかねないと言う。

そして戦っているのは和真1人。

「父さん…」

 

***

 

先程までのアンティーク調な街は一変。瓦礫の山へと変わり果てていた。理由は簡単。先の爆発の影響である。

鎧武、ドライブ、エグゼイドは姿を消していたが、常磐ソウゴ=魔王は傷1つなく、そこに立っていた。

一方の和真はというと、かなり酷いものだった。

最も『酷い』のひと言で済ませられるかは、怪しいところであるが。

既に変身は解け、瓦礫の上に横たわり、弱々しくその口を開く。

「く……そ……」

服は案の定ボロボロ。

口からだけでなく、鼻や耳、目からも血を流し、更に身体のあちこちにも切り傷や打ち傷などが見られる。

やはり無理があったのかもしれない。

「所詮は人間だったか」

ゆっくりと歩み寄ってくるソウゴ。トドメを刺すつもりなのだろうが、和真に抗う術はない。

大人しくやられるくらいしか、手立ては残されていない気がする。

しかしここで1発食らい和真が死んでしまえば、フィールドは消失。魔王を逃がしてしまう。

 

「やれやれ、世話が焼ける」

 

どこからか聞き覚えのある声が。そしてドンッ、という音を立て、スーパーヒーローよろしく着地。彼はやって来た。

「あー酷い傷だな、こりゃ」

何やら薬らしき液体が入った小瓶を取り出すと、動けそうにない和真の口へと流し込む。

「注射器タイプよか、こっちの方が確実だと思ってな。少しすりゃ動けるようになるはずだ」

「…そう…か…」

よく分からない液体だが、なんとか飲み込む。

唐突な登場に驚いているのか、常磐ソウゴは問いかける。

「八坂和真と瓜二つの姿をしているな。何者だ、お前は」

「俺は八坂和真。俺も、と言うべきかこの場合。今ここで伸びてる八坂和真とは同じっちゃ同じだが、別の人間さ」

「な、に…」

呻くように声を出すボロボロの和真をちらりと見て、彼は続ける。

「和真。これまでお前の前に姿を現してたのも、勿論俺だ。正確に言うなら…いや、これは後で話そう」

「来るか?」

「ああ、お前は野放しにはできない。それにどうせなら舞台を整えようか」

右手にエネルギーを収束させ、彼は瓦礫が散らばる地面に触れた。

光が溢れ、古風な都市とその瓦礫は別のものへと変化していく。

変化、否。上書きされているのか。

「これ…は…」

新たに形成されるメタフィールド。砂塵舞う荒野でもなく、アンティーク調な街でもなく。

雪が降りしきる大地。針葉樹らしき木々と凍り付いた湖。遠くにはやたらとデカい砲台も見える。

遠くから微かに雷の音も聞こえてくる。

(知らない、場所だ)

「オラーシャだよ」

「え」

「ここはペテルブルグに近い、ラドガ湖のあたり。第502統合戦闘航空団『ブレイブウィッチーズ』の基地の近くを再現してる」

「ブレイブか…行ったことないな」

しかし常磐ソウゴは彼に向かって言う。

「新たに空間を作り出したところで、お前は変身しないようだな。無駄に死人を増やしただけだぞ」

「口は達者だな、魔王。姿は同じでも、俺たち2人はまったく違う。このフィールドにあるもの全てが俺の武器だってこと、教えてやる。行くぞ、魔王。武器の貯蔵は充分か?」

「思い上がったな、雑種」

(意外とノリ良いの?この常磐ソウゴって)

傷が治りきっていない和真をよそに、もう1人の和真は拳を握りしめ、雪原を蹴る。

常磐ソウゴは再びライダーを召喚し、迎え撃つ。呼び出されたのはダブル、アクセル、オーズ、バース、フォーゼ、ウィザード。

どうやらアルティメイタムらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、クソクオリティなのことに定評があります。
というわけで最新話です。
そろそろね、あのちょくちょく出てくる和真のそっくりさんの話もしようかなと思って。
次の次あたりで出来るかな。
ここんとこ出て来てるオーマジオウ、アレなんだよね。まだ2068年のオーマジオウじゃなくて、まだ若いイメージで作ってるんだよね。
だから自分の力だけじゃなくて、他のライダー召喚してる感じ。
あくまでイメージだけれども。
それはともかくここからはもう1人の和真の戦いになります。
たぶん次の話はそうなると思う。つーかこれ、オーマジオウに勝てるのかな。
まぁまあ、のんびり考えますかね。
ていうかようやく、ようやくでもないね。ウィッチーズの話また引っ張って来たわ。
うーん、プリクエルの感覚でやってる。
実はストパンRtBの最終話見逃してしもて、今かなり辛い。
呪術の初リアタイ挑戦しようとして寝たし。
ま、このもう1人の和真は、能力とかそこらへんは主役の和真とは全くの別物となるはず。
雪原にしたから、アウロラ姉さんのセリフ言わせたかった。
熊と肉体言語でわかり合う2人のアレ。
丸太でネウロイ倒すシーンは『いらん子中隊』を読めば分かります。
『サイレントウィッチーズ』はどうだっけな、リブート作品ではあるけど、たぶん同じだと思う。思い出せん、すまぬ。手元に無い。
あるいはアレだね、熊とかのと合わせて知りたい人は、『オーロラの魔女』を読んでください。
エイラがかわいい漫画付いてるから(語彙力クソカスおじさん
じゃ、またねー


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オラーシャの幻影

雪原を蹴り、和真は跳躍。

対する魔王と仮面ライダー達。ダブル、アクセル、オーズ、バース。そしてフォーゼ、ウィザード。

飛び上がった和真に向けて放たれる攻撃。身体を捻りながらその攻撃を躱し、勢いを付けて、まずはバースを殴る。

当然反撃をしようとしてくるが、殴った力に任せ、雪原にバースを叩き付ける。

しかしそれを待っていたのか、常盤ソウゴが召喚した残りのライダー達が和真に狙いを定める。

『ジョーカーマキシマムドライブ』

『アクセルマキシマムドライブ』

『スキャニングチャージ』

『ロケット・ドリル・リミットブレイク』

『ハイタッチ・シャイニングストライク』

どうやら一気にケリをつける腹積もりらしい。

こちらもとばかりに和真がパチンと指を鳴らすと、爆発音のような凄まじい音と同時にデカい砲弾が飛来、ライダー達と常磐ソウゴを巻き込んで着弾した。

もう1人の和真の方がまだ完治してないことを思い出し、少々焦ったが、どうやら大丈夫らしかった。

「とはいえ…傷はつかないか。こいつらには」

メタフィールドにおいて再現した物とはいえ、カール自走臼砲を撃ち込んでも、魔王には傷1つ付かない。ライダー達も消えていない。

最も無事なアイツもアイツなのだが、そこはやはり同じ邪神の血を引く者同士か。

常磐ソウゴは和真に言う。

「それで勝てると思っていたのか」

「いや…勝てるとは思ってない。でもまだ手は残ってる…!言ったはずだ、この世界にあるもの全てが俺の武器、と」

「この雪原がお前の武器だと?」

「…ああ」

 

(俺は、俺自身を…八坂和真という人間を助けて来た。何度も。そしてアイツの代わりに今、俺が魔王と対峙している。

ここは俺自身の作り出したメタフィールド。この場所で俺が敗北する事は、許されるはずがない。俺が幾度助けて来たあの八坂和真は俺自身だが、俺自身じゃない。アイツが行き着く可能性の1つが俺自身、というだけに過ぎない。あの八坂和真がこの俺に行き着かない可能性も充分にある。数多存在する未来の1つ、幻のようなものだ)

 

それだとしても。

葬らなければならない。この魔王を。

 

「俺の…ターン、だな」

和真はゆっくりと雪原へ触れ、中にある『何か』を勢い良く引き上げた。

そして何かが雪上に現れ始める。否、刺さっていく。

剣、槍、斧、銃。数え切れないほどの武器が、雪原を埋め尽くす。

彼が積み上げて来た記憶。そこから武器が具現化される。

魔法少女、精霊、準精霊、女神…彼女達の手にしていた武器が模倣され、この空間に再びその姿を現す。

 

「仮面ライダーとかヒーローみたいに大層なもんは持ち合わせてないが…俺は俺の記憶を武器にするのさ」

そう言って和真は、大剣を右手に、紫色のメカニックな刀を左手にし、その刃を魔王に向ける。

「オベリスクじゃないのか?」

「生憎と神のカードは持ち合わせていない。それに良い加減、やられてくれ、魔王!」

宙を舞い、雪原を賭け、魔王と和真は再度ぶつかり合う。

ダブル、アクセル、オーズ、フォーゼ、ウィザードも健在、それらも相手取りながらバトルを展開していく。

得物が砕ければ、新たな得物を手にして戦う。

 

弓、刀、マスケット銃、槍。

大剣、氷の盾、炎の戦斧、古式銃、突撃槍、ペンデュラム、純白の羽、ハルバード。

刀、片手剣、槍、ハンマー。

 

魔法少女、精霊、準精霊、女神。

 

それは八坂和真の軌跡であると共に、彼が歪めてしまった物語の断片。

彼の旅路。戦いの記憶。

幕が下された舞台。最早それは終演だ。

しかしそれをもう一度、ここで再演するというのか。

 

「俺と同じ軌跡を…」

1人残されている方の和真が、ボロボロの服のまま呟く。

 

戦闘は続くかと思われたが、しかし。剣を手に取ろうとした和真の手は、空を掴んだ。剣も槍も斧も何一つなくなっている。

使い切ったのだ。

「武器が尽きたか」

「…切り札は残ってる」

正義の体現者達は間も無く必殺の一撃を叩き込むだろう。

だが和真はまだ諦めていない。

 

『プリズムマキシマムドライブ』

『アクセルマキシマムドライブ』

『スキャニングチャージ』

『リミットブレイク』

『ハイタッチ・シャイニングストライク』

 

拳を握りしめ、引きしぼるように構えると、その右腕に金色の膨大なエネルギーが収束していく。

仮面ライダーブレイド=八坂和真とは違う、別の未来へと行き着いた八坂和真が手にした切り札の形。

「これで、終わりだ!」

金色の輝きと共に、和真は彼らと激突。

刹那、眩い光があたりを包んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、安定の低クオリティでお届けしております。
もう1人の和真が今回出ずっぱりだけど、うーん。強い気がする。
強いのかな?(どっちだよ
というのはともかく。まだ2人の和真の話は続くでしょうな。
今回色々あって短めだけども。
しかし何か久しぶりにサブカルトークをしたいと思ったけど、話題が無さすぎるクソ野郎ですね俺。
何だろうね、ISのラブアンドパージを始めたとか、そんなあたり?
VITAの。
かといってISで書こうにも本編覚えてないからなぁ…ワールドパージしか書けねえよ。
とりあえずまぁ、こんなとこか。
じゃ、またねー


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進むべき未来

「ここから見ても、特に何もないのに」

「違う位相ですからね」

真二とニャル子の2人は、改めて和真が消えた場所に戻って来ていた。

何も出来はしないだろうことは薄々分かっていたのだろうが、真二が行こうと言ったのだ。

無論そこには雪原もなければ、アンティーク調の街もない。

ただ住宅地があるだけだ。

けれどどこか、可能性に賭けていたのかもしれない。

無力な自分にできる何かがあると、信じていたのだと、そう思う。

「ホントは何か策があったりする?…って聞こうと思って」

「そう思います?」

「ピンチはチャンスみたいな人達だと思ってた。八坂家って」

「これに限っては何とも言えませんよ。和真の独断だったというのも、理由の1つではありますけど」

「まぁですよねえ…」

「バイクが残っていないか聞いてみます?」

「バイク?父さんも使ってたアレと同じような?」

「ええ、まぁ。予備くらいあるでしょう」

「可能性がゼロじゃないなら、それに賭けるしかないか」

僅かな可能性に賭け、2人は銀アト子にバイクについて聞くため、家に戻るのだった。

 

***

 

先程まで白かった一面の雪原は、先程の和真と魔王の戦いの余波によって、最早その原型を失っていた。

オーマジオウの変身は解け、変身者は気絶しているらしかった。

一方でオーマジオウを打ち砕く一撃を放った和真はというと、全体的にボロボロなのは最早言うまでもなかったが、その代償は当然ながら相当大きかったと見える。

「その腕…直ぐには治らなそうだな」

「あ、ああ、だがまぁいずれは治るさ」

自分と瓜二つの青年がボロボロになっているのは少々違和感があるのは否めないが、青年は大丈夫だと言い、起き上がった。

「しかしどうやって向こうに戻る?フィールドを元々展開したのは俺なわけだけど、それを上書きというか、したろ?なんか変なことになってたりはしてないよな?」

「上書きというか、まぁそうだな。少し骨は折れるだろうな」

「オーマジオウは…この常磐ソウゴはどうするつもりだ?まァ、俺は連れ帰るべきだと思うけど。仮面ライダーの力も返す必要があるだろうしさ」

「当然連れ帰る。爆弾付きのチョーカーくっつけてでもな」

「わーお」

物騒なことを言いながら、青年は伸びている常磐ソウゴへと近づく。

完全に気を失っていると見える。どうやら寝たふりでは無さそうだ。

青年がソウゴの身体を起こすと、時計を彷彿とさせるアイテムがいくつも出てきた。

「これは…俺にも向けられたヤツだ」

「ライドウォッチってアイテムだな。簡単に言うと、これで仮面ライダーの力を奪えるわけさ」

「へえ、だからコレで吸い取られてたわけか。おっ、これタドルレガシーのやつか」

「ほれ、レンゲルとカリスのウォッチもあるぞ。彼女達に持って行ってやれ」

「あ、ああ」

和真は投げ渡されたウォッチを受け取るが、これを渡されたとこでどうしろというのだ。

「これだけ貰っても、向こう戻らなきゃ意味ねえ。なんなら使い方知らんわ」

「まあ確かにな。使い方は回してボタン押すだけさ。っと、何なら常磐ソウゴが1番お荷物だったか」

青年はそういうと自身の内ポケットから1枚のカードを取り出すと、常磐ソウゴに向けて投げ飛ばした。

カードはぽすっ、と服の上に落ちたかと思うと、刹那に常磐ソウゴの身体はそのカードへと吸い込まれて行った。

「ラウズカードかよ」

「まぁそのシステムの応用だ。これで犯罪者の拘束なんかもかなり楽になったんだ」

「へえ、すげえもんだな」

青年はソウゴが吸い込まれたカードを拾い上げると、再び内ポケットに仕舞った。

腕は大丈夫なのか正直気になるところだが、今は向こうの世界に戻る事の方が優先すべきだろう。

雪原を歩き出したところで、和真は瓜二つの姿をした青年に問いかけた。

「正直俺はアンタをどう呼ぶべきなんだ?俺と同じとか言ってた気がするが」

「そうだな、俺は正確には仮面ライダーブレイドじゃない。だが八坂和真という人間であることに間違いはないからな。ミライで良い。未来の和真というのも面倒だろう」

「分かった。だけどミライ、それならアンタは『仮面ライダー』であることを放棄したのか?」

「俺もお前と同じように旅をした。そしてその結果、仮面ライダーブレイドの力は手放しても良くなった。それだけさ」

「さっきの腕のアレと関係してるのか?」

「勘のいいガキは嫌いじゃないぜ。まあアレは撃ったら当面は使えなくなるから、あまり連発もできないがな」

そう言って青年は首をすくめる。

「じゃあ何なんだ?」

「似たようなモンをお前も使ってただろう。だがまぁ、それよりかは多少強力ではあるかもな」

「ロイヤルストレートフラッシュ…か」

「いずれ答えは分かる。だが今は向こうに帰ることの方が優先事項だ」

「おい、片道切符で帰れないとか言うんじゃないだろうな」

「…」

「嘘だろ」

「流石に冗談さ」

そう笑って彼は懐からライドウォッチと似たようなアイテムを2つ取り出し、雪の上に放り投げる。

そのアイテムはあれよあれよと言う間に姿を変えていき、数秒後、それぞれ見覚えのあるバイクへと姿を変えた。

「なんか俺が乗ってたのと似てるな」

「ベースは同じだ。次元移動機能も同じように備わってる」

「でもアレって無くなったはずじゃ…」

「お前と俺は違う。ブルースペイダーが壊れない未来もあり得る。俺の方はそうだったってだけだ。これからどのような人生を歩むのか。些細な事がきっかけで、全てが変わっていくってことは覚えておくと良い」

「バタフライエフェクトってヤツか」

「そうだ。可能性は無限大って言葉があるだろ」

「まぁ、分かった」

「そのバイクの扱い方は分かるな?」

「問題ない」

「それはお前にやる。今後上手く使っていってくれ」

「そこは善処する。しかし例の腕のことは、いつ明かしてくれるんだ?」

ディスプレイを操作し、座標を出しながら和真は問う。

「次の機会にな。今度は普通に会えると良いが」

「平和な世界で、か」

あやふやな答えではあるが、また会えることはほぼ確定した。だがそれは言い換えれば、戦いに身を投じることになる、ということでもあるのだろう。

(今度は何があるっていうんだよ)

答えはまだ分からない。

だが進むしかない。

バイクのアクセルを全開に、八坂和真は光の中へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 




はいどうも、安定した低クオリティでお届けしております。
なんというか…また旅始まりそうですな。
今度は真二もバイク乗るなぁ、こりゃ。
5Dsを見たので、少し影響されている気がします。
レッドデーモンズドラゴンのデッキ作ってる途中なのに、友人が赤き竜を出して来るんだよ。
漫画版の方のさ。
1ターンでそれはキツいってば…
トロイメア入れてないから、トークン排除できねーんだよ。
激流葬も入れてなかったから、ぶん殴られたわ。
それで堕天使デッキだったしね、しかも。
つーか閃刀機で地縛神出すのもどうかと思うよ…
ダークシグナーじゃん…
もう俺がレッドデーモンズドラゴン作るしかない。
ここで遊星のデッキを作らないあたり、少しズレてるのかもしれん。
遊戯王始めて最初のデッキがトリックスターだったしな。
ブルーエンジェルかわいいよね。ゴーストガールも良いものだよ。
太ももとかね。見下されたいね。
あとはブラロの強化来たから、作ろうか悩む。カードが高いっぽいから、あまり手が出せないけど。
ブラロって省略すると、ブラックローズかブラッドローズか分からなくなるな。
とまぁ、遊戯王トークはここらへんにして。
しかしどうするかな。
また旅に出るとしたら、どこかの世界に行くんだろうけど。
色々作品漁ってみるから、更新はだいぶ先になるかもね。
あとはウィッチーズのロードトゥベルリンの2巻を買おうとして買えてないので、少しテンションが下がっております。
CDの方は欠かさず買ってるんだけどね。
つーかほぼ遊戯王とウィッチーズの話ばっかりだなァ…
デアラは4期がまだ放送されてないはずですし。
バレットを毎巻買ってる以外は、特にこれと言った動きはないですかねぇ。
最近はあとはアレだな、メインデッキとエクストラデッキのスリーブをどうするかで悩んだりね。
カップリングでやるか、声優繋がりでやるか。
意外としょーもないようで、難しい問題。
じゃ、またねー
デュエルスタンバイ


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交わらない道

「なぜ?」

開口1番、銀アト子はそう答えてきた。

こちら側からアクセスする事が不可能に近い、和真の元にバイクで行こうと言うのだ。

しかし問題はそこではないことは、お互いに分かっている。

バイクは和真のもの、カリス、レンゲルのものをカウントすれば3台となるが、和真のバイクはロストしているし、カリスやレンゲルのは私物となっているので貸しては貰えないと見て良い。

「何でもいいんだ。別の世界に飛ぶ事ができるのなら」

「未来から来たと言う割には、何かしらそういうのは持っていないの?」

「あのタイムマシンは今は使えないんだ。中身が少しイカれてしまってさ」

「そう」

僅かに考え込むような素振りを見せたが、彼女は口を開いた。

「テストをしていないもので良ければ、渡せないこともないけれど」

「テスターならついでに俺がやるよ。無事に帰ってくる事ができれば、テストは成功って事になるだろ」

意気込む真二に対し、アト子は懐から端末と黄色い小さなボトル1本、取り出す。何をするのかと思えば、アト子はボトルをその端末に挿し込むと、軽く放った。

空中でひと回りふた回りすると、落下しながらその端末はバイクに変形した。携帯端末がバイクになったのである。

「…何これ」

「マシンビルダー。携帯にもなるバイクね。一応時空転移のシステムは組み込んであるけれど…」

「テストはまだ、と。それなら任せてくれ」

「1つよろしい?」

「うん」

「家の中でバイク展開しないでくださいね」

「あ、はい」

というわけで場所を家の外に移し、改めてマシンビルダーを展開。

初見ではあるものの、扱い方はどうやら自然と分かるらしい。これも八坂家の遺伝というヤツなのだろうか。

そこらへんを細かく気にしている余裕は、今は正直ない。何はともあれ急いで出発せねばなるまい。

「そういや座標分かんないや」

「特殊なプログラムを入れてあるから、彼を追跡してくれるはず」

「マジかよ、すげえなぁ」

驚きつつもエンジンをかける。ガラスの破片のようなものが浮遊する光の中へと、真二は突っ込んでいった。

 

残されたアト子とニャル子の2人。ニャル子は半ば分かっていたような表情を浮かべ、旧知の友に言う。

「特殊なプログラムって、和真の生体データでしょう」

「気づいていたのね」

「あのバイクは初めから、和真に渡すつもりだった。まぁ、彼の息子が使う事になるとは思いませんでしたけれど」

「悪くはないでしょう。原点回帰って」

「3年くらい前と同じくだりはやりませんけどね?…最もこのまま何事も無く終わってくれると良いんですが」

「そうもいかないと思いますけどね」

 

***

 

ニャル子やアト子がそう言い合っている頃。

太陽が差す大地に彼、八坂和真の姿はあった。

バイクを用いてメタフィールドからの脱出に成功したのは良かったものの、辿り着いた先の景色は彼が望んだそれではなかった。

見慣れた住宅地はそこにはなく、広がるのは熱砂によって形作られた広大な土地。

「あっづい…」

昼は暑く、夜は寒いということで知られる、一面の砂漠。

どこの砂漠か一瞬では流石に分かりかねたものの、遠くにピラミッドらしきものが見えることから、恐らくエジプト付近と思われる。

アフリカ方面の言語は微塵も学んだ記憶がなく、正直挨拶すらどう言うのか分からない。

座標を自身の家のところで固定したはずなのだが、こんな砂塵吹き荒れる大地に送ってくれるとは、未来の技術も中々に適当に出来ているらしい。

少し離れたところに倒れているバイクを起こし、ディスプレイを弄ってみたが、ウンともスンとも言いやしない。

ご丁寧に壊れてくれたと見える。

ライドウォッチの形には戻るようなので、仕方なく戻して懐に仕舞うと、和真は人影を求めて歩き出すのだった。

 

 

 

 




はい、どーも。
低クオリティで知られるクソ作者でございます。
進路やらなんやらで、色々とあったんですけれども、まぁ、そこはそれ、なんとかなるかなと。
ならんけどさ。
色々と疲れるんだわ、こう、都会の方で暮らしてるとさ。
でも自分の色は大事にしたいんだ。
アイデンティティというかさ、自分自身を無くさないようにね。
地元の友人とも話したんだけどね。
都会の方で暮らしてみて思ったんだ。
都会の方で知り合った知人て、自分の色が薄いような気がして。
別に悪いわけじゃないし、臨機応変に生きるのは、その人の生き方なんだと思う。
でもなんつーか、極端に言うなら、自分の好きなものを堂々と真正面から好きだと言える人間で居たい。
流石に辛気臭くなりそうなんで、話題変えましょ。
和真くんの話だけど、一旦アフリカの方に舞台は移ります。
まぁ見れば分かると思う。
つーわけでここからは、またウィッチも出て来ます。
ハンナとか加東圭子とか出てくるよ。
漢字合ってるよね?
ちなみに加東圭子は1期と2期の間を描いた、キミとつながる空にも出て来ます。
ルッキーニにパイオツ揉まれたり、揉まれたり。俺得だった。
ま、真二と合流して帰るまでが、これからの大まかな流れだろうな。
じゃあ、またねー
ま、レッドデーモンズドラゴンのデッキ完成させとこ。
我が魂。
つーわけでデュエルスタンバイ。




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砂塵の大地

この手のバイクに乗るのは、真二は正直初めてだったと言って良かった。バイク自体最近乗っていなかったようなものだし、増してや携帯端末から変形したバイクなど、どのような構造をしているのか分かったものではない。

無論、真二とて幾度も修羅場を潜り抜けてきたことは事実である。

相応の場数は踏んできた。彼自身それは自負していたけれども、このバイクに乗って怪我をしないかどうか、そこに関しては内心恐怖がなかったわけではない。

だがいざ乗ってみると、それらは払拭された。

真二の身体は思っていたよりも、このバイクに馴染むのだ。

それこそ乗るべくしてこのバイクに乗ったとでも言わんばかりに、シートやハンドルがしっくりとくるのだ。

(何なんだろう…)

このスマホバイクに関しては不可解な点は多く残る。けれど何はともあれ、父を救い出しに行かねばならない。

バイクを加速させ、真二は何者かに導かれるように、光の中を進んでいくのだった。

 

***

 

左程時を経ずして、真二は和真の居た所へ辿り着いた。

否、正確に言うのであれば、和真達がいた場所であろうか。もう1人の和真が創り出したメタフィールドの中に真二はやってきたわけだが、無論そんな事を真二が知るはずもない。

「異空間ってこんな風になってるのか?結構、うん悪くないな」

辺り一面は白銀の世界。

しかしその雪景色の中、クレーターらしきものが、一際異彩を放つ。

何か巨大な力がぶつかり合い、その余波で周囲を抉ったように見えなくはないが、果たしてその真相を知る事はまだできない。

「父さーーん!!居ないのかーー?!」

敵らしき敵もいないようなので、声を上げてみる。反応があればここにいるということだが、反応がなければ、ここにはいないということになる。

特殊なプログラムを積んであるから、追跡は可能だという感じの事を銀アト子は言っていたが、ここで消息を絶っているのなら、話は変わってくる。

(誰かに攫われた?そんな事は流石にないか)

いくらボロボロになっているとしても、あっさりと拉致されるような軟弱な人間ではないことはこちらも理解している。

となると和真が自らの力でここから脱したか、第三者の助力によってここから出たかの2択に絞られる。

だが真二自身がこの空間に留まるのも、些かリスキーではある。ここは本来の世界とは別の位相に存在する空間。

彼がいるべき世界ではないのであり、真二の肉体が消滅する可能性もゼロではない。

元いた世界に戻るのが妥当なのだろうが、それではまた彼は戻れなくなってしまう。

早急に後を追い、連れ戻す方が得策だろうと見た。

真二は再びバイクに跨り、ディスプレイを操作。

すると突然バイクが喋った。

喋ったのである。

『八坂和真の現在地を割り出しました。』

「え、急にコレ喋るの?喋るって聞いてないんだけど」

『コレではありません。私にはサキという名があります』

「名前あるんか。じゃあサキ、父さん…八坂和真は今どこにいるんだ?」

『西暦1945年、北アフリカ。トブルク付近にいます』

「いやタイムトラベルしすぎだろうよ。まぁ良いけど。さっさと行って連れ戻そう」

『了解しました。目的地をトブルクに決定します。マシンビルダー・チェイスモードオン』

少々不安ではあるものの、真二はアト子から渡されたバイクを信じる事にした。

ちょっとはそっとの事で動じていては、正直やっていられない。

ガラスが割れるようなエフェクトと共に、中空に光のゲートが生み出される。

ヒビ割れたガラスをイメージするあたり、亀裂とでも呼ぶのが手っ取り早いのかもしれないが。

ともかく真二はバイクのエンジンを全開にし、再びその中へ突入していった。

 

***

 

辺り一面、砂の大地に太陽が照り付ける。

遮るものなどなく、熱と光とが直に和真に降り注ぐ。

バイクはこの熱砂の大地では使い物にならないと悟り、和真は自らの足で進む事を選んだ。

「クソ…全然近付いてる感じがしねえ」

ひとまず遠くに見えたピラミッドを目的地にしたのだが、歩けど走れど近付いている感じがしない。

正直この砂漠がアフリカなのかどうかも、ピラミッドで判断しただけであり、不確定要素は多い。

(アフリカだとしても、どこなのか分からんしな)

エジプト付近であろう事は間違いないが、悲しい事に地図の詳細を覚えていない。

時間をかけて歩いて行けば、いずれは地中海に出るのだろうが、そこまで呑気なことをしている余裕もない。

だがそんな和真に対し、砂漠は非情な試練を突き付けてきた。

「な、なんだ…?!」

地面が揺れ始めたかと思うと、突如として黒い巨大な物体が、砂の中から姿を現した。

パッと見ただけでは、それが何なのか、和真には分からなかった。

だが刹那、その黒い物体から赤い閃光が走った。

跳躍して回避しながらも、ふとそのビームに既視感を覚える。

「ビームにその黒い装甲…ネウロイ?!ならここは魔女たちの世界ってことか?」

間髪入れずに反撃に出ようとした和真だったが、肝心な事に気付く。

ないのである。

ブレイバックルと、彼自身のラウズカードが。

銃やバールのようなものも持ち合わせていない。いつもの癖で懐を探ってみたが、思えば一度は平穏な生活に戻っていたのだ。

日常生活にあれらが必要ないのは、常識といえば常識。

レンゲルとカリスのライドウォッチくらいしか頼れる物はない。

一か八か、賭けてみるか。

カリスのライドウォッチを取り出し、上のボタンを押す。

ライドウォッチが光ると同時、和真の腰に風香が付けていたものと同じベルト・カリスラウザーが現れる。

ハートのAが記録されたラウズカードを取り出し、カードリーダーに読み込ませる。

「変身」

『Change』

短い音声と共に和真の身体は変質。

黒を基調としたボディに金のラインが走り、胸部には銀のアーマー、頭部にはハート型の複眼が見て取れる。

手には弓型の武器、醒弓カリスアローが握られた。

どうやら切り札は彼の元にやってくるらしい。

熱砂を踏みしめて跳躍、和真はカリスアローを振るい、ネウロイとぶつかり合う。

 

 

 

 

 




どーも、どーも。
毎回中途半端な感じに終わらせてあとがき書いてるなと思われそうな、糞雑魚作者でございます。
話す事ねえや、どうしよ。
ない事もないけどさ。
和真くん久しぶりの変身だろうし、前はブレイドで今度はカリス。
ブレイド本編が個人的に好きだと言うのもあるし、結構この変身は色々と思うところがある。
自分で書いておいてなんだけれど。
というか、ウィッチまだ出ないね。
たぶん次の話かな。
進行具合によるけど、まぁ近いうちに遊戯王でも何か書いてみようかな。難しいだろうけどね。
次はリリカルルスキニアデッキでも作ってみるかな。
スリーブ黒咲にしたら、流石にデュエルするこっちが笑ってしまう。
中々面白そうなテーマではあるんだけどね。
モンスターのレベルとランクが全て1だっていう。
まぁ、デュエリスト仲間はドラゴンメイドだったりギャラクシーアイズだったり高火力なデッキ使うから、いかんせんクソザコなデュエリストの俺には勝ち目はそんなにないんだけども。
懺悔はしないけどさ。
天草四郎とかシロウ・コトミネが「懺悔の用意はできているか!」って言うのを想像すると、結構面白いんだよね。
懺悔って言いつつ、これ言ったの神父の時じゃないっていう。
魂狩ってる時だから。
まぁそんなわけで、ぼちぼち書いていきます。
じゃあまたねー


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アフリカの魔女

灼熱の大地。

気温は40度を軽く越えているであろう中、砂埃を巻き上げて仮面ライダーカリス、八坂和真とネウロイは戦いを開始する。

慣れないバトルフィールドに、使い慣れていないライダーシステム。

立ち回りはなんとかなるが、致命的な点があった。

カリスのラウズカードや武器の使い方が殆ど分からないのである。

万が一に使ったところを見たことがあるとしても、使用者は和真を捕らえる気満々だったから、そこまで気にしている余裕はなかったと弁明するほかない。

最低限剣としても使える弓であることは分かったので、徒手空拳や斬撃などでネウロイに対して多少ダメージは与えられていた。

「つってもコアは砕けてないか…」

外側を削れたところで、中心に位置しているであろうコアを砕けなければ、ネウロイは活動し続ける。

和真は再びカリスアローを振るうものの、その刃はネウロイの外装甲を削りはしても、コアには届かない。

ロイヤルストレートフラッシュを使えれば楽なのだが。

(弱く…なってる?まさか…)

自身の弱体化という可能性が、脳裏を掠める。

そんなことはないと思うが。

されどネウロイは情を持たない。人に対して情け容赦をかけられるほど、できた存在ではないのである。

無情にもエネルギーは増幅していき、ビームは和真を間違いなく狙い撃つだろう。

虚しくも吹き飛ばされるかと思われたその時、その人物は現れた。

 

「間に合った」

 

「お前は…?!」

 

 

***

 

 

遠くにその光景を捉えた。

異形とぶつかり合う異形の戦士。

話に聞いた事はあったが、いざ見てみるとあのような姿をしているのか。

しかしどうやら苦戦していると見える。下手をすればやられてしまいかねないだろう。

「あれだな」

『ええ、急ぎましょう』

風を切り、疾風の如く。

砂漠に吹く魔訶不思議な嵐のように。

駆けていく。

 

 

***

 

 

赤い閃光は和真の身体を包み込むかと思われたが、果たしてそうはならなかった。

デカイ図体を持つネウロイは、何者かによって吹っ飛ばされたのだ。

吹っ飛ばされた、というより砲弾のようなもので跡形もなく吹き飛ばされたと言った方が、適切なのかもしれないが。

「お前は…!?」

「怪我は?」

「ん、あ、ああ…大丈夫だ」

「ボクは剣崎真奈。ストームウィッチーズ所属のウィッチさ」

そう名乗った人物はストライカーユニットを装着し、フリーガーハマーを手に、中空から和真を見下ろしていた。

太陽の影となって、顔ははっきりとはわからない。しかしその背中には刀らしきものも見える。

年齢は声と身長からするに、10代半ばの少女だろう。まだ上がりは迎えていない雰囲気だ。

(けど知らないウィッチだ)

和真の知る歴史には、彼女のような名のウィッチは存在しない。

アフリカのウィッチは、ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ、ライーサ・ペットゲン、稲垣真美、マティルダ。

そして隊長の加東圭子の5人のはずだ。

(剣崎真奈…か)

和真はひとまず変身を解く。

「俺は八坂和真。助けてくれてありがとう」

「君が八坂和真?」

「俺を…知ってるのか?」

「それなりに有名人だよ。まぁここで話すのもなんだし、基地に行こうよ。日差しくらいは凌げるからさ」

「お、おぅ」

確かに直射日光の下で話すのは、和真とて応えるものがある。

彼女に促され、和真はひとまずストームウィッチーズのベースへと向かう事になったのだった。

 

***

 

数十分後。

一台のバイクが、和真と真奈が先ほどまで居たところに止まった。

真二である。

「居ないじゃないか」

『座標はここで固定していました。何か問題でも?』

「いや別に文句とかねーけど…移動したんだろ。そりゃこんな砂漠のど真ん中に長時間居られねえよ」

『では次はどうします?』

「今の座標を割り出してそこに向かう。今度こそ追いつかなきゃ、元の世界に戻れなくなる。前みたいなことはゴメンだ」

『彼は近くのウィッチ部隊の基地に向かったようですね。どうやら誰かに連れられて行ったようです』

「近いのか?」

『数十分もあれば着けるでしょう』

「ならさっさと向かうぞ」

これ以上面倒ごとを増やしたくないし、彼が元の世界に戻ってくれなければ、真二の存在もなくなってしまう。

いずれにせよ時間との勝負でもある。

バイクのエンジンをかけ、真二は再び走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 




あい、どーも。
最近アズレンではデュエリストもとい、ハーミーズを育てています。
改造するとアクセラレーションしそうな見た目になるのね。
つーわけで春休みって長すぎて、ぐだぐだになりそう。
遊戯王で何か書いてみようと思ったけど、意外とクロスオーバー先が見つからないもんだね。
いや、まどマギとか色々あるんだけどさ。
それだと主人公ばっかりがデュエリストになりそうだし。
ボーボボじゃねえけど。
オシリスは出せんよ。
ちなみに神のカードは1枚も持ってないんですよ。
ゴッドボックス発売されたのに買わんかったしさ。
まぁ、なんかリアルソリッドビジョンみたいな感じで書いてみるか。
俺が持ってるデッキばっかりになりそうだけども。
しかし和真くんどうしようね。
またブレイドに戻さないとアカンし、なんかそうじゃないと落ち着かないんだよね。
書く側も。
そこは頑張って考えようかな。
最近はレッドデーモンズデッキ中心に弄ってる気がするし、ふとした時には遊戯王の話に戻るのなんとかしろ俺。
リンクテーマを始めた頃は使って、そのあと融合で、エクシーズかな。
シンクロは最近触れたんだよね。
レッドデーモンズメインに使ってるっていう割に。
5dsの曲が良かったっていうのもあるし、レッドデーモンズ作ったんだろうな。
何でスターダスト作らないのかって?
デュエリスト仲間とテーマ被ったら、ライバル対決できないじゃん。
スターダストにはレッドデーモンズだろ。
とかいうしょーもない考え方。
WW&SRのデッキも作ったな。クリアウィングとかクリスタルウィングとかそういうあたり。
スターダストはそこに入れてたね。
儀式召喚はそうだなぁ、カオスソルジャー作ったあとに影霊衣を知人から貰ったんだよね。
サイバーエンジェル作ったのもその頃かな。
転生炎獣は作ったけど、融合と儀式のモンスター入れてないんだ。
リンクとエクシーズだけ。
メインで使うのヒートライオとパイロフェニックスだから、出てすぐの頃のソウルバーナーみたいだな。
ま、ファイアウォール・X・ドラゴン入れてるから、火力不足とかはそこで補う感じだよね。
ギャラクシーアイズとか相手だとプレイスキルのなさも相まって、勝てないんだ。
ドラゴンメイドにギャラクシーアイズ入れるってマジでなんなん。
レベルは確かに合ってるし、出せるけどさ。
毎度のように懺悔させられてる。
後書きでぐだぐだと、糞雑魚デュエリストのトークすみませんね。
つーわけで、じゃ、またねー


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砂上の砦

剣崎真奈と名乗ったウィッチに連れられ、和真はストームウィッチーズの基地へとやってきた。

やってきたと言うより、抱えられるような形で運ばれてきたと言う方が、的確だったかもしれないが。

バイクを使う事もできないことはなかったのだが、真奈が運んでいくと言うので、彼女の言葉に大人しく従ったのである。

(しかし基地っていうか、これキャンプだよな)

過去に501や506の基地を訪れたことはあり、基地というものに対してそれらのイメージがあったのは否定出来ない。

砂漠の基地というのは訪れたことはなかったから、少なくとも煉瓦造りなどではないだろう、程度には考えていた。

最もテントなどを集めて基地を作っているのは、想像していなかったけれども。

 

「剣崎真奈、帰還しました」

「ご苦労様。後ろの彼は?」

 

出迎えてきたのは扶桑ウィッチの女性。

巫女服に近い装いをしており、それが彼女のウィッチとしての正装なのだろう。

彼女の実年齢は20歳を超えているのだが…外見は10代後半のようでもあり、しかし場数を踏んできた経験者の雰囲気を醸し出す。

(加東、圭子…穴拭智子や加藤武子と同期だったか)

扶桑海事変で空に上がったという話を読んだことがある気がするが、うろ覚えなので間違っているかもしれない。

だが『ストライクウィッチーズ2 オフィシャルファンブック コンプリートファイル』にマルセイユとハルトマンの共同戦線の詳細が記されており、その本の中間部分くらいにアフリカサイドについても記されていたことは覚えている。

確かその時点では扶桑陸軍少佐になっていたはずだ。

あの話は加東圭子の語りだったから。

アフリカでの戦績のおかげもあって、着任時から昇進したのだろう。

とはいえ、初対面で少佐と言ってしまうと、それもそれで怪しまれるかもしれない。

こちらは501や506のウィッチと多少交流はあったが、1945年でも2020年でもアフリカを訪れたことはないし、マルセイユと会ったこともない。

最も向こうがこちらを知っているという可能性は、ゼロではないのだが。

ひとまず天幕の中に招き入れて貰い、加東圭子と和真は向かい合って椅子にかける。

 

「どうも、初めまして。八坂和真です」

「八坂和真…君がね。私は加東圭子。ストームウィッチーズの隊長をしているわ」

やはり知られていたらしい。

ミーナ隊長か、坂本美緒少佐か。面識はあるはずだが、上層部に第三者が漏らした可能性も捨てきれない。

506は特にそういう暗部に近い場所だったということもある。

「俺を…知ってるんですね」

「ええ、欧州から情報が流れて来るのよ。501と506で活躍した男性がいるって」

「それはどうも。有名人っぽいのはあんまり…俺としては好まないんですけどね」

「でもウィッチでもないらしいのに、単身空を飛んでネウロイを撃退したって話じゃん。なんか、さっきは空飛んでなかったけど」

真奈が興味深そうに口を挟む。

あまり触れないで欲しいところなのだが。

「そこらへんの話は複雑なんだ。今は訳あって、あのアーマーは使えないんだよ」

「やはりまだ試験運用段階なのかしら?」

軍の新型ユニットか何かと勘違いしているのだろうか。

しかしライダーシステムの技術、軍の誰かに盗まれたのか?

そうでもなければ、彼女の口からあのアーマーに対して『試験運用』というワードは出てこないはずだ。

「別に試験運用ってわけじゃないんですけどね。運悪く破損してしまって」

「そう。ところで…聞きたいのはここからなんだけど。何故あそこに居たの?ネウロイの出る砂漠のど真ん中に。貴方が来るって話は501や506からも聞いてないのだけれど」

「それに関してはホントにすまないとしか言えない。元よりここのアフリカの基地を訪れる予定はなかったんだ」

少し唸ってから、和真は続けた。

完全に嘘をつくのも怪しまれるだろうし、ある程度脚色などして話すとしよう。

「家に帰るつもりだった。バイクでね。そしたら急によく分からん光に包まれて…気付いたら砂漠にいた」

全て嘘を言っているわけではない。

家に帰るつもりだったし、帰れると踏んでいた。よく分からない光という点に関しては、多少はぐらかすように言ったが。

実際あのシステムは彼自身幾度となく使っていたが、その構造などに関しては殆ど知らないままなのである。

ただ砂漠に来るとは思っていなかった、というのは紛れも無い事実。気付けば、和真はアフリカにいたのである。

 

「バイクに、光ね。信憑性には欠けるけど…欧州でもバイクに乗っていたらしいし」

加東圭子は考え込むように腕を組むが、真奈は彼女に言った。

「隊長、多少信じてみても良いんじゃないでしょうか。何か事情があるような気がしますし」

「真奈。マルセイユ達の食事とかあるのに、これ以上食費やらがかさむのはアレでしょ。それに将軍とかが食べに来たりするわけだし」

主にロンメル将軍だけど、と加東圭子は付け加える。

だがまぁ食事などに関しては食べなくともなんとかなるし、こちらも彼女の言葉の中に少々気になっていることがある。

「食事は別にトカゲとかでも大丈夫ですよ。それに、そろそろ迎えが来る感じですから」

「迎え?」

 

遠くから響いてくる微かなエンジン音を聞き取った和真は、立ち上がって天幕の外に出た。

加東圭子と真奈も続く。

ストームウィッチーズのキャンプへ向けてバイクが1台爆走してくる。

なんとなく、薄々だが、彼はやってくるだろうとは感じていた。

3人の前で後輪をドリフトさせて砂埃を巻き上げ、バイクは停止する。

「やっぱり来たな、真二」

「ここで合ってたか。迎えに来たぞ」

「丁度良い、少し寄って行ってくれ。お前にも話がある」

「時間が惜しいんだが、それでもか?」

「それでもだ。隊長さん達は少し外してほしい」

「え、ええ。分かったわ」

真剣な和真の表情に少々驚きつつも、2人は天幕から離れていく。

 

「何だ、父さん。話ってのは」

「調べたいことがある。かなり重要なことだ」

「言っておくけどさ、父さんは一度この世界の歴史を破壊しているんだぞ。それを踏まえた上でか?」

「ああ。どうやら俺のライダーシステム、この時代の軍に奪われている可能性がある」

「…確証は?」

「ねえよ。ただ隊長の加東圭子と話していて、彼女が俺のライダーシステムについて、試験運用って言ったんだ」

「なるほど。それで軍に技術を奪われているかも、ってか。確証がない調査に時間を割きたくはないんだがな。元の世界に戻るのに、一分一秒を争いかねないっつーのにさ」

「すまねえな。これが解決次第すぐにも戻るって」

仕方なしと真二も腹を括った。

父さんは一度決めたら、変なところで筋を貫き通す人だ。ここは協力することにし、一旦バイクをしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はいどーも、クソクオリティの小説を毎度のように投稿してます。
半ば強引ではあったでしょうが、和真と真二が合流しましたね。
IS2 ラブ・アンド・パージの楯無さんルートをプレイしながら書いているわけですが。
まぁプリンセスコネクトの方もプリフェスに向けて石は天井行ける分は溜まりましたし、大丈夫でしょう。
あとはラブアンドパージ、今日中にハーレムルートまで行ければ万々歳なんですけどね。
何故か私めがインフィニット・ストラトスの有識者だと、友人に言われまして。
有識者だかパイオニアだか。
そんなことねえよ。
そこまで最近は知識ないって。
ストライクウィッチーズ ロードトゥベルリンでめちゃくちゃ泣いたくらいしか、まともな事ができていない。
特に後半。
酒飲みながらアニメ見て泣いたから、クソみたいな見てくれになってた…らしいわ。
それはそれで、自分らしい生き方だとは思ってるし、恥じるつもりはないけど。
誰が何て言おうが、俺は自分らしく生きていくつもり。
つーわけで夜は焼肉とプリズマイリヤっしょ!(佐藤太郎風
焼肉は食いたいな。
じゃあ、またねー


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欧州へ飛べ

和真にその場を外してくれるように頼まれ、真奈と加東圭子は一旦天幕を離れていた。

歩きながら、加東圭子は口を開く。

「もう1人来た途端に、私達に外してくれって…怪しくない?」

「でも迎えって言ってましたし、色々とスケジュール調整でもしてるんじゃないんですかね」

「マルセイユは今は離れてるわけだし、下手に事を大きくしたら面倒でしょ。彼も酒は流石に飲まないと思うけど」

「じゃあ戻ってみます?」

「そうしましょ。迎えに来た青年にも、話聞いてないんだし」

「まぁ、そうですね」

 

ということで。先程のところまで戻ってきた2人。

天幕をくぐるとそこには、天幕内を漁る和真と真二の姿が。

 

「あ…」

 

しかし天幕内の2人は気付く様子はなく、書類の山をガサゴソと漁り続けている。

 

「これやっぱり、父さんの思い込みなんじゃないか?」

「バカヤロウ、ネウロイのテクノロジーを奪う将軍がいるんだ。俺のが奪われてもおかしくねえ」

「それはそうだろうけどさァ…あ…」

「何だよ、真二…あ」

 

先に気付いたのは真二。促されるようにして、和真も振り向く。

入り口に立つのは加東圭子と、剣崎真奈。

この状況はかなり不味い。

簡単に説明するなら、まだ十分な信頼も得られていない状態で後から来たメンバーと合流し、無断で基地に侵入したようなものだ。

儀式魔法が手札にないのに高レベル儀式モンスターばかりが手札にあるような、なんともいえないパターン。

次のドローもとい、次の行動にすべてが掛かっている。

まだ加東圭子からは2人は信頼に足る人物であるとされていない。特に真二に関しては、会話してすらいない。

最も砂漠のど真ん中に突然現れる人は一般人ではないと、当事者である和真自身思う。

どんな形であれ説明をせねばならぬのだろうが、今の和真と真二は誰がどう見ても、盗人同然の行動をしているようにしか映らないだろう。

 

「…ホント、すいません」

「父がこんなことをしてしまって、ホントすいません」

「ごめん、明らかに同年代にしか見えないのに親子っていう事も気にはなるんだけど。どうであれ、イチから説明してもらうわよ」

「了解です…」

 

というわけで、説明をすることに。

彼女が話を聞いてくれたのは、和真が仮面ライダーブレイドとして501や506で活動した経歴があったことが、大なり小なり影響したのだろうと思う。

真二については息子だとしかいえなかったが。

未来からやってきた息子だ言ったところで、信じては貰えまい。

最も和真もある意味未来から来たわけだから、『未来人』というカテゴリに当てはまらない訳ではないのだが。

説明を終えたところで、加東圭子は口を開いた。

「あのスーツの資料ねえ…あるとは思うけれど。近いうちに全ウィッチ部隊に配備する予定だって言っていた気がするし」

「冗談だろ…」

「テストパイロットならそれくらいは聞いていないの?」

違うんだ、とは言いづらい。

この世界で作られたであろうライダーシステムは、和真や吹雪、風香のモノをベースに創り出したのは間違いない。

和真の知る限り、この時代にそのような技術は存在していないのだ。

元からないのなら、奪うか盗むかして手に入れるしかない。

先ほど漁っていた資料の中に、八坂和真という名や、彼が所有するパワードスーツについて、と記された書類も見かけた。

無論真二には黙ってはいるが。

「それに関しては聞いて…ないですね」

 

「聞いてないって、そりゃそうだよ。だってアレ、元々父さん達のモノなんだからさ」

 

「はい?」

「うっわ、真二それ言うなって。面倒になるんだからさぁ」

「あ、いや、マジでごめんて」

「えっ、どういうこと?」

ややこしくなりそうなので、真二と素早くアイコンタクトを取り、なんとか誤魔化すことに。

「技術提供したのが俺だと言うのかな…」

「まぁそういうこと。元はあの技術は父さ、和真が持ち込んだものだってことさ」

「技術提供者兼テストパイロット、ね。ウィッチじゃないのにそこまで関われるなんて、少し驚きだわ」

「ああ、まぁ、はい」

「OKを出すかどうかは分からんが、例のパワードスーツというかアーマーというか、それに関する資料を見せて欲しい。口は堅いから、そこは安心してくれ。生憎と放っておくわけにはいかない案件になりそうなんでね」

「急に結構言うじゃない。そのパワードスーツ、貴方の技術がオリジナルなんでしょ?」

「そういうことにしておいてくれ」

色々と説明するとややこしくなるんだ、と言う言葉は飲み込む。それを言うと余計にややこしくなることは間違いないから。

「けれど軍の資料を、開発者を自称する青年においそれと渡すわけにもいかないのよ。こっちも遊びで仕事しているわけじゃないの。私自身からしたら要らないようなものでも、機密資料は機密資料だから」

「まぁ、そう言われる予感もしてたよ。それにそっちはウィッチだし、《アフリカの星》もいるんだ。下手に暴れたところで、勝ち目はないだろうさ」

生身であればの話だが。

レンゲルのライドウォッチを取り出してスイッチを押し、短く呟く。

「変身」

深緑のアーマーに包まれた蜘蛛のライダー、レンゲルに姿を変える。

瞬く間に真奈を気絶させると、和真はレンゲルラウザーを加東圭子に向ける。恐らくもっとスマートな使い方はあるのだろうが、悲しいかな正規の使用者ではないからか、ゴリ押しなやり方しかできない。

「渡してくれ。大人しくすれば、下手な真似はしないで済む」

「やたらと悪役みたいな台詞吐くな、父さん。それ言ってるとあっさりとやられるよ」

「大丈夫だ、俺はこんなンでやられやしねえ。正直こんな手を使うのも気が進まねえけどな」

しかし当然ながら、彼女は書類を渡してくれるはずもない。

マルセイユが来るまでの時間稼ぎでもするつもりか知らないが、ここで時間を食っている余裕はないのである。

 

「すまねえ」

「あ…」

 

躊躇いはあったものの、加東圭子も拳で眠らせた。

「あっ、何してんだ!気絶させたら…」

「いや…例の資料だが、恐らくこれだろう」

和真はそう言って、テーブルの上に伏せてあった書類の束を手に取る。

加東圭子が戻って来る直前、真二に問われぬ内に、テーブルの上に伏せて置いておいたのだ。

問われるかどうか少々不安はあったものの、運良くここまで漕ぎ着けられたと言って良い。

「ホントにそれ?」

「ホラ、俺の名前とかパワードスーツってワードが書いてあるだろ」

裏返して表紙を見せる。

さては…、といった風な表情を浮かべる真二。

「さっき気付いてたろ」

「そいつはどうだろうな。ともかく目的地は欧州だ、さっさと向かおう。アフリカの鷲はとびきり優秀らしいからな。追い付かれたら厄介だ」

「それは分かったよ。でもどうやって地中海を越えるつもりさ?行く途中でその資料を見るとしても、手持ちのバイクに地中海を越えるだけのポテンシャルはないんじゃ…?」

確かにそうかもしれない。

和真のバイクは使えないだろうし、万一使えたとして、また変なところに飛ばされるのだけは勘弁して欲しいところだ。

となれば確実に地中海を越えられねばならず、尚且つある程度のスピードも出るものが必要だ。

「ふむ…最悪ユニットを拝借するつもりだったんだが、ないよなそりゃ」

「呑気にしてて捕まっても、父さんの責任だからね。というか操縦できんの?ストライカーユニット」

「あーうん。…お?アレは」

辺りを見回す和真は、ふとあるものに目を止めた。

 

 

 

 




まぁ書いてはいたんですがね、この話。
いつ上げるかとか色々悩んだ挙句、今日上げる事にしました。
実は今日シンエヴァを見てきましてね。
チケット買う前に腹痛でダウンしましてね。
上映時間が1日7枠くらいあって、鬼滅の刃並みに上映回数があったから良かったものの。
もっと枠あったのかな。
ともかく観ることはできたんですけど、1番前の席くらいしか開いてなくて。
首辛くなるかと不安ではあったんですけれども、そんなこたァどうでも良くなりましたわ。
YouTubeやネットの界隈では、考察やらネタバレやら感想やらが飛び交ってることでしょうがね!
俺は語彙力クソカスな事もあるけど、感想は敢えて言わねえ。
『新世紀エヴァンゲリオン』ってタイトル、ようやく終わりを迎えたというか。
終わったというと、個人的になんか縁起が良くないような感じもあるからな。
終幕とか結びって言った方が、的確なのかもしれん。
1つのアニメ作品が最終回を迎えたっていうのと、違うんだよね何か。
長い旅が終わった感覚。
久しぶりに『エヴァンゲリオン』って作品を見たのもあってか、途中泣きそうになってしまったし。
ストパンRtBの最終回でも泣いてしまったので、最近涙脆くなっているのかも。
その前に映画館で観た映画は『ワンダーウーマン 1984』だったから、振れ幅かなりあるとは思う。
シンエヴァ、観る観ないは人それぞれだし、観てどんな感想を抱くかは人それぞれで良いと思う。
でも良かった。(良かったしか言わねえなコイツ)
実はアニメ映画をシアターで見るって『リリカルなのはDetonation』以来なんじゃないかなと。
ま、『Detonation』は知人に誘われて行ったんだけどね。
『シンエヴァンゲリオン』、一度で理解しきれない点も多々ある。
でも何はともあれもう一度観たいな。
拍手が起こるのも分かる。
というわけで
『閃乱カグラ』やってきますわ。
(雰囲気ぶち壊しマン)
じゃあ、またなー

あ、今回和真くんの今後の話してねーな。
ま、いいか。



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切り札を掴む者

「父さん、良いのか?今更だけど、コレ使ってしまって」

「ナニ、問題ないさ。向こうもストライカーユニットを使わなきゃこっちを追うことはできんさ」

基地からお借りしてきたもとい、無断で持ち出して来た例の資料に目を通しながら、和真は真二の問いに答える。

同時に目の前の複数のメーターにも目をやった。

(飛行速度も安定、今のとこ問題はなし、と)

現在彼ら2人がいるのは輸送機の操縦席。

操縦は真二が担当しており、和真は隣の席に座っている。

副操縦士の位置付けというわけだ。

資料を確認せねばならなかったという事も、真二に操縦を任せた要因の1つだが、真二がこのような飛行機を操縦できたことには、いくらか驚かされた。

(ダメだったら俺がやるつもりではいたんだけど)

とはいえ、今のところコレといった問題もなく飛べている。

撃墜でもされぬ限り、問題はなかろう。

ちなみにこの輸送機、501の連絡機と同型機。

サッカーコート程度の滑走路があれば離着陸が可能だとされているのだが、飛行距離が短いんだそうな。

飛行距離が短いとは言っても、どれくらい短いのか分からない。

しかし状況によっては地中海の真ん中に着水ということもあり得るので、そこだけが不安要素と言ったところか。

 

***

「ん?なんだ?」

ふと違和感を感じ、和真はシートから立ち上がった。

「どした?」

「何か近づいて来てるな…まさか」

窓から外を覗くと、後方から複数の人影が迫ってくる。

やはり来たのだ。

「アフリカのウィッチだ。案の定追いかけて来やがった」

「だから不安だったんだよ!」

叫びながらも真二には操縦を続けてもらい、和真は迎え撃つべく武器の類を探すことに。

そしてとっておきを引き当てたのか、ニヤリと口角を上げた。

「これで良いか」

 

***

 

ドアを開け、足を引っ掛けてバランスを保ちながら、和真は先ほど見つけたランチャーを構える。

狙うのはアフリカのウィッチ達。

そして発射した…のだが。

「うわ、ヤダ…」

撃ち放たれた弾はウィッチ達の方ではなく、反対方向、つまり機体の進行方向へと飛んで行った。

真二は当然ながら、コクピットからキレ気味の声を上げる。

「どこかで使い方は習わなかったのか!?」

「説明書は読んだよクソッタレ!」

ランチャーの向きを変え、再度発射。

ウィッチへと弾は迫っていき、命中したかと思われたが、そんな都合が良い事はないわけで。

当然のようにシールドによって防がれていた。

「コンチクショウ!」

届かない事は承知しているが、苦し紛れに残弾も全て発射。

やはりシールドで防がれるか、届く前に撃ち落とされるかの2パターンとなるようだ。

「新しい武器が必要だな」

最早手元にあるのはただのどデカイ金属の塊に過ぎないので、和真は空になったランチャーを投げ捨てる。

以前ならこういう時にはブレイドに変身して迎撃していたのだろうが、使い方をイマイチ理解していないカリスとレンゲルでは空中戦は心許ない。

ならば力尽くで迎え撃つまで。

ウィッチ達が使っているものと同じ機関銃を見つけ、両手に1丁ずつ手に取ると、真二に声をかける。

「真二」

「何…ってそんな物騒なもん向けないでくれ」

「悪い。操縦しながらで良いから、聞いてくれ。資料によると、現状目的地はガリア北部のパ・ド・カレーなわけだけど、恐らくフルで燃料が入っていたとしても、この機体では辿り着けない」

「じゃあどうする気なのさ?水上機でもないし、地中海と仲良しはしたくないぞ」

「このまま真っ直ぐ進むとロマーニャ公國に着く。そこにタラントって街があるんだ。正確な位置までは説明できんが、道路に降りられればなんとかなるはずだ」

このあたりだと言い、地図に矢印と丸を書き込むと、再び和真は銃を手に取る。

「このまま真っ直ぐか。というか父さん、死ぬつもりでは…ないよね?」

「戻るさ。帰るべき場所がある限りね」

 

***

 

安全装置の解除を確認し、トリガーに指をかける。

風が強く体に当たり、吹き抜けていく。

彼が今足を付けているのは翼の上でもなければ、中空でもなく、連絡機の胴体の上であった。

(つってもロマーニャ軍を呼ばれる可能性もゼロじゃないし、そこは少々不安ではあるんだよね)

先のランチャーでダメージを与えられなかったこともあり、この機関銃程度でどうにかできるかと言われると、それは否である。

それでもなんとかしなければならない。

なんとかするしかないのである。

2丁の機関銃を迫り来るウィッチへと向ける。

躊躇うことは許されない。

恐らくここで撃墜されれば、和真は真二と共に軍に連行される。

目的地に辿り着くことすらできず、寂れた牢に入るということも、十二分にあり得る。

和真がトリガーにかけた指に力を込めると、澄んだ空に銃撃音が響き始めた。

 

***

 

しかしある程度撃つと銃身が赤く熱を発し、うんともすんとも言わなくなった。

「チッ…」

要は撃てなくなった、というわけだ。

溜息をついて、銃を投げ捨てる。

残ったのは己の身体のみといったところ。

背後をちらりと見やると、ロマーニャの海岸線が見えた。

「今あの力を使えれば…」

パ・ド・カレーに着ければ少しは状況に進展があると見ているものの、ジョーカーでもない和真に、今この状況を切り抜ける手段があるのか。

「…ん?なんだ、これ」

ふと何か違和感を感じ、ポケットからライドウォッチを取り出した。

カリスのライドウォッチが謎の光を放っている。

(初めてだな…)

違和感の正体はこれだと分かったとして、ウィッチが帰ってくれるわけではない。

だが飛行距離からして、ウィッチ側もこの辺りで限界だろう。

魔法力も無限にはないのである。

宮藤レベルになれば話は別だが。

案の定ウィッチ側の機関銃が火を吹くものの、こちらを撃ち落とす事はしないらしい。

大方生け捕りにするのであろう。

迷っている暇はない。

カリスのライドウォッチのスイッチを押し、和真は仮面ライダーカリスに変身。

右手のカリスアロー、しかし左手には見慣れぬカードが。

(なんだ、このカード)

全く知らないカードだろうし、少なくとも記憶の中では風香のカードには触れたことはない。

たぶん。

しかし、このカードからはキングフォームと同じような力を感じる。

いや…ジョーカー=切り札としての力なのか。

使い方は分からないはずだが、扱い方は理解できた。

和真はそのカードを腰のベルトに読み込ませた。

『エボリューション』

13枚のカードがカリスに変身した和真と融合していく。

黒かったボディは赤く変化し、赤かったハート型の複眼はアンデッドの血を彷彿とさせる緑色に。

両腰部には2本の鎌形の武器が出現。和真はその2本を合体させ、カリスアローに接続させた。

するとさらに1枚のカードが手元に出現。

否、新しく生み出されたといった方が的確なのかもしれない。

これか、これが切り札なのか。

ロイヤルストレートフラッシュとは異なり、この1枚に全てが集約されている。

まさにワイルドカード。

カードを読み込ませると、カリスアローの狙いを迫り来るウィッチに定めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




毎度低クオリティでやらせて頂いております。
クソ雑魚作者でございます。
3年前くらいからこの作品ぐだぐだ書いてるわけだけど、序盤を見返すと今と雰囲気違う感じあるんだよね。
「八坂和真」を作者の欲望であったり、妄想を半ば投影しているようなキャラクター、という感じで途中まで書いていたんだなーって。
書き始めた時は、まだ俺が10代だったからね。
そんな俺も今では20代だからな。
なんて話題はもっとすると思ったかい?
サブカルトークだよ!
シンエヴァ2回目を見て来たというのも言いたいところではあるんだが、デアラ4期来ましたねえ!
以前どこかでデアラ4期云々の話をした気がする。3期だったかな。
すでに製作決定の時のつなこ先生のビジュアルで、二亜と六喰と十香が写っていたのを見た人は多いだろうな。
制作会社がバレットの方に移ったようでね、また違ったデザインが拝めると思うと興奮しますね。
俺の情報が食い違ってる点があるかもしれんので、そしたらそこは目を瞑って頂きたい。
とはいえ、士道がサンダルフォン持ってるからな。
狂三リフレイン、狂三ラグナロクまでやるんだろうか。
でも六喰プラネット、六喰ファミリーの話もかなり重要。
ラノベの表紙だけでも見た人は分かると思うけど、十香の反転体が重要になってくるんですよ。
折紙も無論。
しかし二亜クリエイションも好きなのよね。
二亜の設定もそうなんだけれど、それだけじゃねえんだ。
キャラクターとしての二亜が、アンコールも読むと更に好き。
…改めて語彙力ゴミカス過ぎん?俺。
まあともかく。
二亜がどんな人かって問われたら、「一緒に居たら楽しい人」って俺は答えると思う。
ネタバレになってしまうとアレなので、これ以上細かくは言わんけど。
アニメ10月だそうなので、もう一度原作を読み直して決戦に備えるつもりではいます。
後書き長ったらしくなったと思うけど、こんくらいで今回のデアラトークは切り上げますか。
つーわけで『閃乱カグラ』やってくる。
じゃ、またなー

あ、今回コマンドーのある場面を真似てみたんですよ(今更)。





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ローマを越えて

カリスの切り札『ワイルド』により、アフリカから追ってきたウィッチはあらかた片付けることができたと見て良いだろう。

吹っ飛んだように見えなくもなかったが、相手はウィッチ。それぞれシールドを展開するなり、持ち前の機動力で乗り切ったはずだ。

ただ個人的にもかなりの威力ではあったと感じたので、不安ではある。

改めて進行方向を見やると、中継地点であるタラントの街並みが近付いて来ているのが分かった。

機内に戻り、真二に声をかける。

「着陸できそうか?」

「分からないな、そこは。街の中心は建物が多いようだし」

「それもそうだな。事故で死ぬのは御免だろ?」

「そりゃあそうさ。父さんを連れ帰れなくなる」

和真は少し見回すと、左方向を指差した。

「小さいが砂浜っぽいのが見える。そこに降りよう」

真二は機体を僅かに左へ向け、和真の指し示した砂浜へと下降させていった。

滑らかな着陸とはならなかったものの、既にある程度機体は失速していたらしく、怪我などはほぼせずに済んだ。

真二が意図的に行ったものなのか、それとも燃料不足によるものなのかは分からないが。

「さて、どうする?パ・ド・カレー、向かうんだろ?」

連絡機を降り、真二は問いかけて来た。

特にこれといって手が塞がるような大きな荷物もないので、2人とも意外と身軽ではある。

「ああ。なら今渡しておこうか、コレは」

和真はカリスやレンゲルのものと同じような形状の水色のライドウォッチを取り出すと、真二に渡した。

「これは…」

「渡すのを忘れていたがな。使い方は俺の使ったものと同じだろう。元々仮面ライダーブレイブはお前だし、俺がブレイドに変身できない以上、お前の力は必要になってくるはずだ」

「なるほどねえ…ならアフリカとかで使ったカリスとレンゲルのは、まだ持ってるつもりだと?」

「ああ。俺の目的が果たせれば、両方とも渡すさ。それに今の俺にはこれ以外の戦力がないんでね」

首をすくめ、和真と真二は砂浜を離れていく。

何はともあれ、ひとまず足を探すことから始めねばなるまい。

 

***

 

 

「アフリカ?」

すっかり座り慣れた隊長としての席に座りながら、褐色がかった肌に黒髪の彼女は答える。

瞳の色は緑とはまた違う、エメラルド色といったところであろうか。

空に上がる機会は減った身とはいえ、実戦経験に加え、部隊創設、そして幅広いコネクションなどから、彼女、フェデリカ・N・ドッリオに対する信頼は厚い。

「第31統合戦闘飛行隊《ストームウィッチーズ》隊長の加東よ。お互いノイマン少佐には世話になったでしょう」

「昔の事を言うじゃない。そこの隊長が直々に連絡してくるのも、ちょっと意外だけど。ネウロイ出現の連絡は受けてないわよ?」

「例のパワードスーツ計画は知ってるわよね?」

「そりゃあね。それがどうかしたの?」

「ウチの基地から、その資料が盗られたの。盗られただけならまだ良かったんだけれど、犯人に連絡機で逃げられてしまって」

恐らく追いかけたのだろうが、その犯人に墜とされたといったところか。

被害についても聞くと、加東圭子は息を吐いて答えた。

「ウィッチが2名負傷。マルセイユは負傷してないけど、地中海を渡るのはあまり得策とは言えないから」

「犯人の顔とかは分かる?」

「例のパワードスーツ計画の資料に、ヤサカカズマっていたでしょ。彼よ」

「なるほど、オリジナルってコトね」

「扶桑人の男2人組を見かけたら、まず怪しんでくれていいわ」

電話を切ると、フェデリカはふぅ、と息を吐いた。

ネウロイ相手でないのにも関わらず、部隊を動かすとなると、少しばかり面倒な感じはある。

ひとまず基地内に放送を流して出られる者は出るようにと伝達。

「敵はネウロイだけじゃない、か。そうなのかもね」

ロマーニャの空を見上げ、彼女は1人呟いた。

 

 

***

 

「やっぱり空飛ぶべきでしょ、コレ!」

「うーん至極真っ当なコトを今言わないで欲しいな、お父さん悲しいよ」

「急な父親面何?!状況考えてくれ!」

「アルダーウィッチーズに見つかって、車で逃げてンだろ?相手は優秀なウィッチ5名、なおかつ優秀なストライカーユニット。こっちはそこらへんから黙って拝借したオンボロ車。お前の持ってるバイクの方が速いかもしれん。今から変えるか?」

「出せたら苦労しないんだよ!ちょっと正面家ぇぇぇぇぇ!!」

真二の絶叫を聞きながら和真はブレーキを踏み込み、間一髪衝突を回避。

ハンドルを回して方向転換させ、再びアクセルを踏み込んだ。

なぜこうなっているのか。

事の発端は少しばかり遡る。

 

 

和真と真二の2人は、タラントの街を歩いていた。

無論、足を探すためである。

しかし街の中で彼らの姿はそれなりに目立つらしく、周囲からの視線は少なからず向けられていた。

欧州の中でもタラントはどの統合戦闘航空団からも、それなりに距離が離れた土地。

ウィッチ自体とそれほど交流がない、という可能性も捨てきれない。

近くのウィッチはアフリカや504といったところであろうが、2人はウィッチですらないのだ。

扶桑人が突然海の方からやってきたと思われても無理はない。

どう足掻いたところで白人との違いは明白だ。

「やっぱ目立ってるかな?」

「かもな。なんせ街の人からすれば、さっき飛行機が砂浜に落ちてきたばかりだろうし、その落下地点の方角からやってきたんだから、怪しまれるのも無理はねえ。まぁ爆発とかしなかったから、下手に人は集まらなかったんだろうが」

そうして会話しながら足早に郊外へと向かっていく途中、街を出ようかというあたりで和真はふとあるものに目を止めた。

現代では中々見かけないクラシックカーの類である。

「アレは…」

「どうした?父さん」

「アレ、使えそうじゃないか?」

「あーまあ、たぶん動きはするだろうけど」

真二としてはバイクを使って向かった方が早く着ける気はするが、いかんせん2人乗りはしたことがない。

不安要素に頼るよりかは、車という4輪の方が安定ではあるか。

「よし、これでできた」

動かせるのかどうか聞こうとしたが、どうやら既にエンジンをかけてしまったらしい。

「…ドライバーは?」

「飛行機はやってくれたんだ。車は俺がやろう」

ということで和真がドライバーを担当。

久方ぶりの運転ということで感覚が鈍り気味ではあったものの、なんとかのろのろとしながらも、動き出す。

だが車がオープンカーだったということも災いしたのだろう。

空からやってきたウィッチ達に、あっさりと居場所がバレたのだ。

「ケイ・カトー、504に連絡したか…想定してなかったわけじゃあねえがな!真二、掴まれ!さっさとパ・ド・カレーに向かうぞ!」

下降してくるウィッチ達の包囲網をすり抜けるように、クラシックカーは加速していった。

 

***

 

「こんな感じ?」

「いや流れとしては合ってんだけど。合ってんだけどさ。それより、いつまで保つか分からないだろ、この車も」

「それは確かに」

やたらと荒っぽい運転を繰り返したのと、この車の燃費が良くなかったらしいこともあって、車自体が限界を迎えつつあったのだ。

今更ながら申し訳なさがあるが、かといってここで止まればすべておじゃんである。

「つってもこのまま行けば、方角的にローマに着けるはずだ。そこで急いで乗り換えるか」

「分かっt…いや待て迂回しろって!正面崖っていうかなんかジェットブレイクしそうな雰囲気だってば!」

「シャーリー!俺も飛ぶぜぇ!Fly up so highだぁぁぁぁぁ!」

アクセル全開、クラシックカーは絶壁から勢い良く宙に飛び出した。

 

***

 

「父さん…若い時は運転、こんなに荒かったのか」

「未来の俺は運転荒くないのか。流石に子供のお前が居て、ンな運転はできないんだろ」

「今は息子が乗ってても荒い運転するんだな」

「致し方ない。時間も惜しいからな、我慢してくれ」

そう言い合う和真と真二であったが、何はともあれローマまで辿り着くことはできた。

結果的に車は壊れてしまい、歩いてローマ入りを果たしたわけだが、彼らにとってはその方が都合が良かった。

車のままローマに入れば、あのオンボロ車では逆に目立つだろう。

歩きならば相手がウィッチであっても、人混みに紛れればすぐには見つかる事はないはずだ。

「次はどうする?飛行機で来たって言っても、夜はそう遠くない。ローマで一晩明かすか、このままガリアまで向かうか」

「無論、後者を選択する。ローマも504の勢力圏内だ、うまく躱せたのも運が良かっただけだろうさ。それにパ・ド・カレーはガリアの最北端だ、のんびりしている余裕はない」

「え、そんな遠いの?」

「なんだ、パ・ド・カレーの場所知らんのか。ブリタニアとガリアを繋ぐ場所。そこがパ・ド・カレーだ。カレーの港って名前くらい聞いたことないか?」

「ない事もないけどさ…えぇ、そこまで遠かったっけ?」

「何、辿り着ける場所って事さえ分かってれば、行く事は不可能ってわけじゃねえ。遠い場所ってなァ…天国とか地獄みてえなとこだろ」

「父さんを連れ戻しに来た割に、結構なスケールの冒険してる気がするよ。全く…」

「かもな。さて次の足は…っと、これで良いか」

ローマの裏路地を行き、見つけたのはスポーツカーらしき車。

らしき、というのは現代ではあまり見かけない車だということに加え、和真と真二がそこまで車に詳しくはないということに起因する。

精々映画やドラマの情報止まりなのである。

まぁ見た感じ2人乗りではあるらしいので、再びドライバーを和真が担い、サイドに真二というスタイル。

エンジンをかけ、スポーツカーはエンジン音と共にローマから出発した。

 

***

 

ここからはトスカーナ地方を抜け、海沿いにピサ、ジェノバ、カンヌ、マルセイユと進んでいく予定だ。

マルセイユまで行ければ、ローヌ川に沿って中部まで進める。

第506統合戦闘航空団《ノーブルウィッチーズ》がそのあたりを担当しているのが、少々厄介ではあるだろう。

一度会っているとはいえ、和真達は今狙われている身。

上から命令が下ればイザベルやアドリアーナ、黒田那佳といったウィッチであっても、和真を殺さざるを得まい。

最も有事の際は例の『ガリアの子ら』を投入し、確実に仕留めに来る可能性もゼロではない。

恐らくそれは有り得ないとは思うが。

とはいえセダン、ディジョンを通過し、パリを抜けることさえできれば、あとは北上あるのみか。

 

 

 

 

 

 

 

 




いや、すんません。
ぐだぐだと長ったらしく、低クオリティなモノを書いてしまって。
アフリカからローマ、パ・ド・カレーまでの流れは数行で終わらせることもできたんですけど、書き始めたら妙に長くなってしまいまして。
いやホント申し訳ない。
まぁなんていうか、半分日記感覚で書いてるようなとこもあるんで、そこまで重く捉えてはいないですけど。
2次創作ってこともあるし、楽しくやってナンボでしょうな。
流石に次はパ・ド・カレー入りして、仮面ライダーブレイドを巡って色々やるとは思いますよ。
新しく何か書こうと思って、結局書けてないっていうのもあるんだけど、うーん悩む。
ウルトラマンや仮面ライダーは好きだから、中心に置きたくはあるんだけど。
ウルトラマンって身長50メートルデフォで、活動限界時間3分じゃん。
まぁ違うのも全然いるんだけど。
一方の仮面ライダーって等身大だけど、活動時間ほぼ無限みたいなものでしょ?
まぁ負荷がかかって変身解けたりとかあるけどさ。
身長50メートルと等身大ってさぁ、2次創作ならいくらでも弄れるみたいなとこはあるんだけど。
イラストならウルトラマンと仮面ライダー同じ身長で描いてもどうこうなると思うんだけど、どう足掻いたところでこれ小説だからね。
それぞれのサイズとか、個々人が持ってるイメージでウルトラマンとか仮面ライダーを捉えると思うんだよね。
ティガだったりダイナだったり、明確なキャラクター名を出したりしたところで、対比させるキャラクターがいなければ、サイズのイメージとかもしづらいんじゃないかな。
クロスオーバーさせるにしても、クロスオーバー元の作品と照らし合わせたりしてね。
俺がクロスオーバー作品を書く上でも、最近はウルトラマンだったり仮面ライダーだったりとか、元の設定をできるだけ変えないように考えてるってのもある。
そうすると幅が狭くなると言われりゃあ、まぁそうだよなとしか言い返せないんだけどね。
昔はヒャッハーな感じでそれっぽい設定作ってぶち込んでりゃあ作品は書けると思ってたが、そうはいかねえ。
極端な事を言えば、最強キャラが主人公って事をタイトルで言ってしまうと、物語はそこで終わると俺は考えてる。
まぁ今の御時世、そういう類のラノベはごまんとあるわけだから、本を出せてすらいねえクソザコ作者の俺が言うのもなんだけどね。
兎にも角にも、遊戯王でも何かクロスオーバーはちょろっと書いてみたい感じはあるけど、ウルトラマンや仮面ライダーで何か別作品トライしてみるのもありかな、と。
まぁ今回は後書きつまらんかったかもだし、そこはすまぬ。
じゃ、ぼちぼちまたねー


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フェイク・ヒーロー

ローマを出発したスポーツカーは、目的地であるパ・ド・カレーへ全速力で駆けていく。

幸いにもうまく躱せたのか、それとも意図的にだったのかは不明だが、ウィッチや軍の連中に見つかる事はなかった。

後になって思えば、これは軍側の作戦だったのだろうと思う。

仮にも統合戦闘航空団ではないとはいえ、《アフリカの星》マルセイユが所属する部隊の隊長をぶん殴ってパワードスーツの資料を頂戴してきたわけである。

どのみち彼らは見逃されるはずがないのだが、急いでいた和真と真二にはそのような事を熟考している余裕はなかった。

パ・ド・カレーに向かう事の方が、何よりも優先されたのだ。

 

***

 

途中で油を補充しつつローヌ川に沿ってリヨンまで遡り、そこから進路を北西に逸れる。

このままローヌ川に沿って進むと、ディジョンにかなり近づくのだ。

まだ《ノーブルウィッチーズ》には会っていないとはいえ、わざわざ危険を冒す必要はない。

リヨンから北西に進んでいくと、今度はロアール川に合流する。

川に沿って再度進み、ディゴアン、ドゥシーズ、ヌヴェールを通過、ブリアル、ジアンを経て、オルレアンへ。

ジャンヌダルクでも知られているオルレアン。この辺り一帯はオルレアネーという地名で呼ばれるそうな。

 

オルレアンにて再度補充。

進路を北に取り、そこからまっすぐ進めばパ・ド・カレーだ。

ヴェルサイユを過ぎてパリを素通り。

シャンゼリゼ通りなど気にはなったが、観光は後回しにしよう。

まあ巴里は燃えていなかったけれども(そりゃそうだ)。

ポントアーズ、ボーヴェ、ブルトゥーユ、アミアン、アブヴィルと走り抜けて行き、そしてようやく。

 

「パ・ド・カレー、か」

「眠らずに運転したの?よく出来たもんだよね」

「そりゃあこれくらいならな。乗り込むぞ」

 

***

 

スポーツカーを草むらに乗り捨てると、和真と真二は資料を頼りに目的の場所へと向かう。

どうやら工場地帯の施設で、例のパワードスーツの計画は進められているらしい。

しばし歩くと、かなり大きな規模の建物が見えてきた。

煙突からは煙が上がっており、一般車両の出入りも見受けられる。

大方この辺りの施設は全てその計画に使われているのだろう。どこから乗り込んでも、結果は変わらない気がする。

「しかし普通の工場っぽいなぁ」

「どうせこんなのハリボテだぜ。どうせ、中には俺の分身がたくさんいるんだろうよ」

「でもどうするのさ。正面から行けないこともないけど…一応警備いるよ?」

確かに真二の言うことも一理ある。

だが警備云々と言ったところで、彼らは模造品とはいえ、ライダーシステムを手中に収めているも同然。

1945年の技術を遥かに凌駕していると仮定するべきだろう。

「俺が先行する。真二は状況次第で変身して援護してくれ」

「いやホント、死なないでくれよ」

「任せろって」

そう言って和真は物陰から出ると、正面の警備の兵士に近づいていく。

(変身しないでいいのかな?いくら父さんでも銃弾は…)

一言二言話したかと思うと、和真は素早くパンチとキックを繰り出し、警備兵たちをノックアウト。

「ホラ、真二。入って良いってよ」

「あーうん、こんな感じなのね」

銃を頂戴し、気絶した警備兵は物陰に寝転がせておく。

「映画とかでよく見るよね、こうやって潜入するの」

「まあな」

警戒しながらも近くのドアを開け、2人は素早く体を滑り込ませた。

 

***

 

意外にも中に警備兵は多くないようだった。

この時代に現代のような高性能な監視カメラがあるとは思えないが、用心するに越したことはない。

1人ひとり確実に仕留めながら進んでいくと、しばらくして少しばかり広い空間に出た。

だがここにブレイドのアーマーがない以上、通過点に過ぎないということだろう。

さっさと進もうとしたところで、3つの人影が音もなく現れた。

2人は男性、1人は女性。

一際背が高い男性が口を開いた。

「やっぱりやって来たか、八坂和真」

「アンタは…誰だ」

「純一。そう呼ばれているから、君もそう呼んでくれ。こっちの2人は」

「シン」

「ナツミ」

「シンにナツミか。2人合わせりゃあ“真実”ってとこか?無理あるかな?」

「けどどうするのさ、父さん。見た感じ、この3人通してくれそうにないよ?」

丁寧に和真のセリフはスルーし、真二は半分諦めたようなセリフを吐く。

それに応じるかのように、3人は腰のベルトを操作し、変身した。

仮面ライダーか、ブレイドなどに似てはいるがその姿はどこか違う。

純一と名乗った青年は黄色、シンは緑、ナツミは赤を基調としているが、3人とも共通して側頭部や胸部などに『A』の文字のようなものが見受けられる。

その意味は理解しかねるが、恐らく彼らが特別な存在であるということなのだろう。

「これは確かに、通してくれそうにないな」

真二も仮面ライダーブレイブに変身し、炎を纏わせた剣を構える。

「銃効くと思う?」

「見りゃ分かるでしょ。効きそうにないって」

「ま、そうだよな」

仮面ライダーブレイドのものと似たような剣、そして細身の槍とボウガンをそれぞれ得物としている。

近距離戦に特化しているような編成だが、警備兵の銃如きではその体に傷を付けることすらできないだろう。

首をすくめて和真は銃を手放し、ライドウォッチを取り出す。

「変身」

黒いボディに赤いハートの複眼、仮面ライダーカリスである。

手には専用の武器、醒弓カリスアローが握られる。

 

「俺は剣のと槍をやる。真二はボウガンのを頼む」

「地味に強そうだなぁ…まぁ承ったよ」

2人はそれぞれの得物を手に、戦うべき敵へと向かっていった。

 

***

 

互いの武器がぶつかり合い、火花を散らす。

剣と槍と弓。

ボウガンと剣。

床から天井、壁面、空中へと舞台を移しながら激突する。

和真=カリスは『エボリューション』を使用し、赤いワイルドカリスにフォームチェンジ。真二=ブレイブもガシャットを用い、タドルレガシーへと姿を変えたが、それでもなお彼らはしぶとく向かってきた。

最強フォームのスペックは、少なくともノーマルフォームよりは格段に上。

その攻撃を複数回受け、確実にダメージは入ってるはずだ。

それなのに。

「なんで死なねえんだ?」

和真と真二はそれぞれ武器を構え、3人の“A”を見据える。

「改造手術でもされているんじゃないか?そっちのは分からないけど、タドルレガシーの攻撃受けて動けるってのは異常だよ」

「しかし彼らの正体が何であれ、これ以上長引かせるわけにもいかん。俺の目的はコイツらを倒すことじゃねえからな」

2本の鎌型の武器を弓に接続し、『ワイルド』のカードを読み込ませると、緑色の疾風のようなエネルギーが先端に集まっていく。

タドルレガシーの剣からはエネルギーが放たれ、元の剣を遥かに上回るサイズの光の刃を形成していく。

「「っしゃあぁぁぁぁぁ!!」」

和真と真二の放った疾風と光が混ざり合い、膨大なエネルギーでもって“A”の3人を直撃した。

 

***

 

流石に『ワイルドサイクロン』とタドルレガシーのクリティカルフィニッシュを同時に食らったとあれば、それなりに耐久性があったとしても限界はあったのだろう。

“A”の3人は吹っ飛び、変身は解けていた。

「生憎だが先に行かせてもらうぜ」

「やられた、か」

「俺の目的はアンタらを倒すことじゃない。恐らく相手側もそれくらいは知ってるだろう」

「なら…行くと良いさ。君の目的を果たすんだ」

純一の言葉に頷き、和真達は再び先へ進んでいった。

 

***

 

銃を構えつつ、扉を開けるとそこには。

「出迎えとはな…有り難え」

「勘弁してほしいよ」

仮面ライダー達が居た。

ブレイド、ギャレン、カリス、レンゲル。

先程の“A”の3人と同じ姿のライダーも見受けられる。

彼らが剣、銃、弓、錫杖、槍、ボウガンといったそれぞれの武器を、和真と真二に向けている。

恐らく適合者として誰かが選び出され、変身しているのだろう。

見てくれとしては十二分すぎる出来だが、ラウズカードまでコピーできているかは不明である。

 

「でも恐らくこれだけじゃない。資料見る限り、もっと数は必要になる」

 

「そうとも。物分かりが良いじゃないか」

 

奥からコツコツと靴音を響かせながら、軍服姿の男性が歩いてくる。

「少し老けたか?」

和真の冗談を意に介さず、男性は口を開いた。

「アフリカの隊長がロマーニャの504《アルダーウィッチーズ》に連絡を取ってくれたことで、君が来る事を知ることができた。八坂和真」

「傍受したのか…まぁ先に知られているか、それともその時になって知るか、それだけだろうよ」

「ほう…意外にも冷静じゃないか」

「こんなイカれたことを考えるヤツなんて中々居ない。どうせこれも『ウォーロック』と同じ結末を迎えるぞ、トレヴァー・マロニー」

「『ウォーロック』は戦艦大和のネウロイ化という新たな可能性を遺してくれた。全てが失敗したわけではない。それに君がライダーシステムという新たな技術を、我々にもたらしてくれたのだ」

和真がこの時代で戦ったことで、ライダーシステムを彼らに与えてしまったのか。

いや、待て。戦ったのは確かだが、ブレイドやカリス、レンゲルはそうだとしても、ギャレンなどはこの時代に現れてすらいないはず。

ライダーシステムのデータもそこまで多くないだろうに、ここまで作れるとは。

となれば、ライダーシステムを知る誰かが協力した、と考えるべきなのだろうが。

 

「答えは簡単だ、八坂和真。俺が手を貸した、それだけのことだ」

そう言い、彼は現れた。

「アンタは…確か惑星保護機構の…」

「ああ、お互いだいぶ変わったようだがな」

「ンだよ、こんなトコで会うなんてな」

かつてこの男とは月で戦ったことがある。

こちらはロクに名前も覚えてはないし、恐らく名乗らないままだったのかもしれない。一方的に和真の事を知っていた気はする。

あの時は惑星保護機構の軍人として活動し、惑星保護機構の軍服を着ていたはずだが、今は違うようだ。

黒を基調としたスーツ姿である。

最も一度ムショ行きになったはずだから、脱獄して来たのだろう。

どうやってここまで来たのか分からないが、大方何かしらのマシンをライダーシステムのデータと合わせて盗んできたといったところか。

マロニーは男に向かって問いかける。

「どうするね?」

「悪いが、少し寝てもらおう」

「え?」

微かな銃撃音と共に、2人の意識は暗転した。

 

 

 

 

 




久しぶりだねと言いたいとこだけど、そうでもないか。
イカれた作品をぐだぐだと書いておりますぜ。
何話そうかな。
サブカルトークと言いつつ、テレビが壊れてるので、円盤を見直すことすらできねえよ。
プレーヤーは今手元にないしさぁ…
デアラ4期に向けて原作読み直してるんだけどさ、声優欄に時崎狂三こと真田アサミさんが出てらっしゃるので、狂三リフレイン&狂三ラグナロクまでやるのかめちゃくちゃ気になるんですよ。
ストーリー的に二亜クリエイションと六喰プラネット&六喰ファミリーをやると、『デート・ア・ライブ』の物語の核心に迫るのよね。
これまで折紙のところ明らかになった、『人間が精霊になる』っていうのがね。
それについて、また色々と明かされていくんですよ。
そこまでやるとリフレイン&ラグナロクまでやらないと、話が一応限り良くならない気がするぜ。
いやそんなことねーか。
十香グッドエンドまで通してやらんと、全然区切り良くならんね。
つーかそれだと最後までやるんじゃねえか。
いつも12話とかだけど、24話編成とかして長くやってくれないかな。
中身が中身だから、24話どころじゃなくなるけどな。
3期の最後が五河ディザスターのところだから、かなりターニングポイントである気はする。
OVAとかでアンコールの話をやってくれると嬉しい。
すごろくとか、謎の遊戯王感出てた。
無効化されたら魔女の一撃発動すれば良いのでは?とかいうしょーもない考え方。
分からない人がいたらすみません。
手札とフィールド全破壊です。ハンドレスコンボには地味に刺さりづらいかもね。
ということで、和真くん次の話ではブレイドに変身できると思うので何卒。
おなしゃす。
じゃ、またねー

ブラックローズドラゴンのムチって気持ち良さそうじゃないか?
はい今クソみてえな事考えました。
じゃ、今度こそまたねー


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再臨-ドリームス-

目覚めは最悪だった。

体全体がやたらと重く、首筋に妙に激痛が走る。

首に触れようとしたものの、両腕を椅子に手錠か何かで縛られているらしく、動かせそうにない。

見れば、正面に同じような格好で拘束されている真二の姿が。

依然としてブレイド、ギャレン、カリス、レンゲルと“A”達が周囲にいるが、どうやらまだこちらを殺す気はないようである。

彼らに守られるように例の男が立っているが、マロニーはここには居ないと見える。

腐っても管理職、地下に籠るだけが仕事ではないということか。

 

「お目覚めか?寝心地は最高だったろ。ウチの高級ベッドだ」

冗談交じりで男が言う。

「嫌味な野郎だ…オイ、拘束プレイは好みじゃねえんだ。この冷え切った手錠外してくれ」

「まぁ慌てるな。面白いから縛ってるだけだ、そう気にするんじゃあない。それに俺はお前の事を知ってるが、お前は俺のコトを知らないからな。名前くらい名乗っておかないと、フェアにならん」

「今更かよ」

会わないと思っていたヤツの名前を、今になって知ったところで何になるのだろうと思ったが、一方的に向こうから名乗ってくれた。

「ジャック・スペクター、それが俺の名前だ。つってもこれも俺のアイデンティティの1つに過ぎないがな。ま、よろしく頼むよ。さて…そんじゃ色々と話そうか」

「じゃあ単刀直入に聞くけど。お前、何でここにいるんだ?惑星保護機構の一件の後、刑務所送りになったはずだろ」

「答えはシンプルさ。俺がここにいる理由も、ムショから脱獄してきたからってだけだ。ついでに銀アト子のデータベースから、ライダーシステムに関するデータを全部奪ってな」

「やっぱお前が元凶か…つーかあの邪神達のことだ、データ奪ったらすぐにバレるだろ」

「ダミーのデータを仕込んだ。まぁ彼女達以外の奴にはバレたがな」

和真とスペクターのやたらとトゲのある会話に辟易しつつも、真二がおずおずといった風に口を開く。

「でもただ逃げただけじゃ、ここには行き着かないんじゃない?」

パチンと指を鳴らし、スペクターは答える。

「良い質問だ、八坂真二。例のライダーシステムを盗ったことに気付いたヤツに追われることになってな…この八坂和真に瓜二つのイカれた野郎だ。色々なとこで追いかけっこを繰り返して、ようやくここまで来て撒けたってわけだ」

「俺のそっくりさんて誰だよ、3人は同じ顔のやつが居るっていうぜ?いや待て、それより1つ全く分からねえ。ギャレンのデータはまだウチにないはずだ。どうやってデータを手に入れた?」

「簡単だ。本人から頂戴してきたに決まってんだろ」

「本人?」

「天宮市の来禅高校に幸いにも本人が居てな。コイツが一度訪れてくれてたおかげで、探すのは手間取らなかったぜ」

「この野郎!アイツから奪ったのか!」

「慌てるなって言ったろ。それにどうこう言ったとこで、お前ブレイドに変身できないみたいじゃねえか」

「クソ、痛いとこ突いてくるな……そうだよ変身できねえよ」

「女神サマの力も使えそうにないみてえだからな。こっちに付くってェなら、また仮面ライダーブレイドに変身できるぜ」

「そうすれば面白くなりそうだから、か」

「それにコイツらにはネウロイのコアを搭載してるからな、性能もそこいらのライダーシステムより良い」

「ネウロイって…あのバーコード野郎が前に作った『ウォーロック』の二の舞になるような気しかしねえ。暴走するんじゃねえのか?」

「今ここにいる奴らは特殊な処置を施してあるから、ンな心配はねえ。だがそれ以外の奴は暴走してくれた方が、俺としちゃあ面白え展開と言えるな」

「そんなことバラして良いの?ここ盗聴器とかは…」

「盗聴器なんざ仕掛けられてねえのは確認済みだし、何のためにあの将軍を帰らせたと思ってる?…それに、だ」

そこでスペクターは言葉を区切り、続けた。

「新しいドライバーを持ってきてくれたしな。どうやらまだまだ面白くなりそうだ」

スペクターはニヤニヤしながら、真二のゲーマドライバーとガシャットを見せてきた。

恐らく、先ほど2人を眠らせた時に取り上げたものなのだろう。

「ってことは俺の持ってるライドウォッチもか」

「理解が早くて助かる」

近くのテーブルを見やると、カリス、レンゲル、そしてバイクのライドウォッチが置かれていた。

 

(アレ、父さん俺たち割とピンチ?)

(うーん、攻撃力0にされて効果無効化された感じ?)

(急なトレーディングカードゲーム感出さないでよ)

 

まぁ強ち間違いではないのだが。

椅子に拘束され、変身アイテムを奪われ、おまけに先ほどの睡眠薬か何かの影響で身体は鉛のように重い。

2人が邪神とのハーフやクォーターということもあって、特殊な薬を用いられた可能性もある。

スペクター自身ニャルラトホテプの類だったはずなので、そういった薬にも詳しいのだろう。

 

「そういや、この拘束はいつ解いてくれるんだ?」

申し訳程度に問いかけてみる。

「捕まって変身できないヒーローを見ているのは、想像以上に面白いんでね。首を縦に振るまでは拘束プレイを楽しめ」

「そういう18歳以上向けの漫画じゃないってば…」

「スペクター。つまり俺らが協力するって言ったら…拘束は解いてくれるってわけか?」

「何、気が変わったのか」

(父さん!?親子揃ってバッドボーイズは御免だよ!?)

(任せろって)

「まぁそんなところだ。今度は俺たちが手ェ貸してやる。お前は満足するように暴れるなり、街をぶっ壊すなりしてくれ。エンターテイメントは面白可笑しくしてナンボだろ」

一拍置いて、スペクターは笑い始めた。

「はははっ!かつて俺をぶん殴ったヤツが、今度はそう言うか!これはコイツは面白え…最ッッ高に笑えてくるぜ!おい、お前ら拘束を解いてやれ」

すると彼の言葉と共にどこからともなく現れた兵士数名が、和真と真二の拘束を解く。

 

「ようやく解かれたか」

「これ自由の身になったって言う?」

「さあな」

 

とはいえ縛っていたモノが無くなったわけである。今ならスペクターに殴りかかることもできなくはないが…あの時とは全く状況が違う。

彼にはネウロイのコアを搭載した仮面ライダーが最低でも7人は付いており、一方のこちらは生身。

無論、彼自身戦闘能力はかなり高かったはずだ。

現在『円環の理』=鹿目まどかの力が皆無に等しく、仮面ライダーに変身することさえままならない今の和真では、軽くあしらわれてしまうだろう。

 

「少し意外だな、前のお前ならすぐにでもバトルファイトを喧嘩しようって感じだったろうに。そんなに落ち着きやがって」

「俺も色々と変わった。人生そんなもんだ」

「ほーぅ」

 

 

だからと言って、そこで大人しく敵に従うかと問われれば。

それは否だろう。

 

 

近くにいた兵士達にパンチとキックを問答無用で叩き込むと、銃を奪い取り、銃口をスペクターに向ける。

が。

 

「まぁ、お前ならやると思ったよ」

 

生身の人間には勝るとはいえ、仮面ライダーには勝てぬらしい。

ライダー達から剣や槍やらで囲まれ『ジョン・ウィック:チャプター2』のような感じになってしまった。

まぁオリハルコンで出来ているような武器に対して、1945年の銃で勝てるかと言ったら、それも無理な話であるのだが。

レジスタンスは秒単位で儚くも幕を閉じたのであった。

 

(父さん…)

(悪いな、うまく行くと思ったんだよ…)

 

「なら拷問でもするか?こんなむさ苦しい野郎に鞭打たれるのだけは、死んでも勘弁して欲しいがな」

「生憎と拷問は趣味じゃねえ。それに痛みを与えたところで、吐かないヤツは死ぬまで吐かねえ。快感を得たいって言うなら、そいつはSMクラブでも行く方が効率的だ」

スペクターは息を吐き、ライドウォッチを手に取って掌の上で転がす。

「和真には俺の作ったブレイバックルを、真二にはこのドライバーを改造した奴を渡してやる。剣使いライダー2人で闇堕ち、これがホントのセイバーオルタなんつってな」

 

 

ハハハッと笑いながら、スペクターは去っていく。

…正確には去って行こうとした、というべきなのかもしれない。

 

突如として雷らしきものが天井をぶち抜いて落下すると同時、凄まじい衝撃が発せられたのだ。

その衝撃により笑い声を上げていたスペクターは綺麗に後ろに吹っ飛ばされ…他のライダーも巻き添えに、彼の体は背後の床に勢い良く叩きつけられた(慌てて身を伏せた和真と真二は間一髪回避できた)。

どうやらあのライダーシステムはまだ調整は必要そうだが、それよりも気になる事がある。

身を起こし、2人は雷が落ちた場所へ近づいていく。

先ほどの雷は既に止んでいたが、雷が落ちた場所には人影が。

 

「ここまで深いとぶち壊すのが大変だ。もう少し地上に近いとこに作って欲しいもんだね」

 

聞き覚えのある声で彼はそう言い、立ち上がった。

 

 

***

 

 

驚くのも無理はなかった。

色々と驚くべき事はあるのだが、あの落雷やスペクターが吹っ飛ばされたことより、別の事の方が和真や真二を驚かせていた。

「父さん?!」

「マジか…」

八坂和真がそこに居た。

声や顔などからして、恐らく同一人物であろうことは間違いない。

このような現れ方をすることからして、もしかするとオラーシャの“彼”だろうか。

 

「真二の方は初めましてか?そっちの和真は…久しぶりでもないか」

「メタフィールドで会った…未来の俺で合ってるか?」

家ではなくアフリカに着いてしまったことや、ライドウォッチの不調云々について詳しく問い質したいところではあるが。

それよりもまず。

「どうしてここに?」

「ライドウォッチの反応が家に戻らないから追ってきた、っていうのが1つ。あのプリズンブレイク野郎をとっ捕まえるためってのが2つ目さ。あとは少しサプライズをね」

「父さんのそっくりさんっていうか…同じじゃん。未来の父さんっていうか」

「いやその説明後回しで良い?色々と面倒なんだよ」

「そうしてくれ」

「あ、うん。分かった」

 

***

 

「ってェ…こりゃあアイツか…?」

目を覚ましたのか、スペクターは首をコキコキと鳴らしながら、立ち上がる。

この部屋に居た仮面ライダー達は先ほどの雷でイカれてしまったのか動かなくなっており、保管中のライダーシステムを呼び出そうにも反応せず。

こちらからの接続が切れたと考えるのが、妥当ではあるか。

テーブルを目を向けると、彼らから取り上げた変身アイテム一式は全て無くなっており、僅かな時間で奪い返されたようだ。

「やっぱり1945年の技術じゃ限界があったか…コイツぁ俺が出張るしかねえってことかね」

「月以来だ…決着付けようぜ、スペクター」

「そっちは3人、こっちは俺1人。こうでなくっちゃなあ!」

禍々しいエネルギーがスペクターを包んだかと思うと、その体は血を彷彿とさせる赤色を基調とした、鎧武者のような姿へと変貌。

右手には赤黒い色の刀、左手には銃と刀を合わせたような剣が握られている。

 

「色合いからして…ブラッドオレンジ?」

「冷静に言ってる場合か。意外と強そうだぞ」

「まぁ邪神だからな。アレでも」

とはいえこの状況、実際まともに戦えるのは和真(未来)と真二の2人だけであろう。いくらライドウォッチを取り返したとして、アレは和真の本当の力ではない。

いつかは本来の持ち主に返さねばならない、仮初めの力なのだから。

「…俺じゃあ足手纏いにならないか?」

不安げに和真は呟く。いくらこちらが数で勝っているとはいえ、和真自身の弱体化は洒落にならないのである。

和真(未来)は息を吐いて懐から何かを取り出し、こちらに投げて寄越してきた。

慌てて受け取ると、それは。

 

 

「ブレイバックル…?!え?マジ!?」

 

「俺がここに来た3つ目の目的。それはお前にそいつを渡すことだ」

「でもそっちはブレイバックル、必要なくなったって…」

「だからって捨てたわけじゃない。いずれ必要になる時が来ると思っていたんだ。例えば、こんな状況とかな」

「…ありがとう」

 

「仮面ライダーブレイドはお前だ、八坂和真」

「父さん…」

「ああ、分かっている。スペクターを倒して、全てを元に戻そう」

 

和真はブレイバックル、真二はゲーマドライバーを装着。

和真(未来)だけが生身なのであまり締まらないが…それでも良い。

力強く2人は叫ぶ。

 

「「変身!」」

 

剣を手に、騎士たちは再び並び立った。

 

 

 




久しぶり…ってわけじゃねえか。
駄作かつ日記的な2次創作をぐだぐだと続けてる糞雑魚作者ですぜ。
え?後書きでキャラ色々変わってる感じがあるって?
んなこと言うなって、全部俺だよ。
どうしてゴーストライターやらせんだよ。
というのはともかく、今回の和真くん最新話。
相変わらずの低クオリティなのは否定しようがない事実なわけですけど、今回の話色々と展開悩みまして。
和真くんをもう一度ブレイドに戻す時、どうするかって。
そのシーンをやろうとしたら5000字近くなってしまって、その点申し訳なさはあるんですが。
ま、以前登場した時からスペクターも変わりましたし。
あの時はスペクターって名前出さなかったし、ただ暴れる感じのキャラだったな。
でも個人的には、この最新話それなりに良い感じになったかなって。
まだぐだぐだと続くと思うんですけどね。
こんな後半で、序盤の『デアラ』ワールドのギャレンの話を持ってきたりしちゃった。
たぶんまたチラリと出したりするかもね。
あとはそうだな、最近ネタが減ってる感じがあると言われたら、そうかもしれない。
書き始めた頃〜中盤にかけては、やたらとネタをぶち込んでたような気がしないでもない。

そういや、最近バカテス読み直してるんですよ。円盤もあるんだけど、テレビがクレイジーになってしまって観れない。
スマホとかで見る事も全然できるんだろうけど、やっぱりアニメは円盤の方が良いんだよね。
そうそう、んで強化合宿のところの挿絵が高橋洋子先生なんですよ。
テーゼの方ではなく。
メガネでスーツビシッと決めてる女性教師なんですけどね、召喚獣が鞭持って軍服なんですね。
《叩いてくれたら絶対気持ち良い》
結構クールな雰囲気もあったり…
《狂三に踏まれて罵られ隊》
………この作者ダメですね。

閑話休題

バカテスと遊戯王のクロスオーバーは書けそうなんだけどな。
イマイチしっくり当てはめられないから、全然書けぬ。
てか召喚獣って言いながら、アレイスターとか出てないな。
学園長・藤堂カヲルが魔妖とか不知火のカードで居そうな感じかも。

ま、それは後々で良いかな。

じゃ、ぼちぼち気分で書くので、またねー




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オラーシャの遠雷、そして

ブレイド、ブレイブ、そして未来の和真。

3人ならばスペクターを倒せると踏んでいたところはあった。

だが対峙する彼は、見事に3人の攻撃に対応してきた。

スペクター自身もまた、あの時から変わっていたのだ。

月で戦った、鎧武者や紫の蛇を彷彿とさせる姿だけではない。

頭部や胸部・肩部が牙のようになっている姿、黒と金を基調に金色の大剣を得物とする姿など、新たなフォームへと姿を変えていった。

更に分身体を複数創り出すことによって、数による戦力差をもカバーしてきたのである。

 

「相手は1人のはずなんだけどな」

「纏めて倒せりゃ苦労はしねえが、こんな場所じゃ…アレを使えば生き埋め確定だろうぜ」

 

現在和真=ブレイドはジャックフォーム、真二=ブレイブはレベル50のファンタジーゲーマー。

キングフォームのロイヤルストレートフラッシュ、レベル100のタドルレガシーのクリティカルストライク、そして和真(未来)の持つエネルギーを同時にぶつければ、恐らく今のスペクターを倒すことはできる。

だがそれだけでなく、奪われたライダーシステムのデータを取り戻す事もまた、彼らの重要な使命なのだ。

先ほどの落雷でスペクターが作った仮面ライダー達はダウンした様子だが、こちらのライダーシステム自体の回収は可能なはず。

しかし、だ。

3人の力を同時に使用して施設自体の崩壊を招いてしまえば、下手をすれば地下に生き埋め、最悪データの完全紛失にも繋がりかねない。

要は施設を壊さず、スペクターを倒さなければならないわけだ。

いざとなるとかなりの難易度ではないだろうか。

正直な話、決定打を使えないこのフィールドで彼を倒し、データを回収するのは難しい事だといえた。

 

「いいや……手は、ある」

「場所を移すと?」

「ああ。使えないなら…使えるようにフィールドを整えるまでだ」

 

ニヤリと口角を上げる和真(未来)の手に、エネルギーが収束していき、彼がその手で床に触れると。

刹那。

彼らが立っていた世界が変質した。

否、そこに新たな空間が創り出されたといった方が良いのだろうか。

そこに在った何もかもが、別の存在へと塗り替えられていく。

黒は白へ。

錆は透き通った雪の結晶へ。

陽の光を拒絶した地下から、柔らかな陽の光が射す地上へと。

舞台はガリアから遥か遠く、白銀の大地に。

 

 

***

 

 

「雪原…か」

スペクターは呟く。

ここがどこなのか、どのようなものなのか。

理解している。

彼だけではない。恐らく対峙する彼らも。

だからこそ、ここで決着を付けることを選んだ。

あの場所ではスペクターを倒せないと理解していたからこそ、異なる位相にこのような戦闘空間を創り出したのだろう。

ここでならば互いに全力で戦えると。

そう、考えて。

 

***

 

一面の雪景色。

恐らく以前のフィールドと同じ、スオムスとオラーシャを繋ぐラドガ湖のほとりといったところだろうか。

現実世界で言うと、この時代では第502統合戦闘航空団《ブレイブウィッチーズ》の基地の近くだ。

あの時和真(未来)が魔王オーマジオウと戦った所であり、同時に和真がアフリカへ発つ事になった所でもある。

あの時の一撃でフィールド自体は甚大な被害を被ったはずだが、いつの間にか修復されていたらしい。

 

「ここで決める。ミスは許されない」

「勿論さ」

「分かってるよ」

和真(未来)の言葉に2人も頷く。

 

『エボリューションキング』

「百式戦術」

『辿る歴史!目覚める騎士!タドルレガシー!』

 

和真=ブレイドはジャックフォームから重厚な鎧に身を包んだキングフォームへチェンジ、その手にキングフォーム専用の金色の大剣・重醒剣キングラウザーが現れる。

真二=ブレイブもレベル50ファンタジーゲーマーからレベル100のレガシーゲーマーへ。純白のマントに白のアーマーと、聖騎士を思わせる容姿である。

和真(未来)は仮面ライダーに変身しないが、代わりにこのメタフィールドにおいて、記憶から武器を創造する。

マスケット銃をやたらとデカくしたような砲や、剣、槍、ハンマーといった武器が空中に展開されていく。

さながらミサイルといった様相を呈したそれらの狙いはすべて、スペクターに定められている。

 

 

一方でスペクターの方も、自身が創り出した分身体全てがそれぞれ異なる姿に変化。

鎧武者の者もいれば、紫の蛇の者もいる。

全てがスペクターであり、彼自身と同様の戦闘能力を有する。

しかし動きが同じということはないため、全てを潰さねばオリジナルを見つけ出すことはできないと言って良い。

1にして全とはよく言ったものである。

 

***

 

雪は止んでいる。辺り一面には雪は降り積もり、元の地面は見えない。

遠くから雷が響き、一陣の風が彼らの間を吹き抜けていく。

純白の雪を踏みしめ、彼らは対峙する。

切り札をその手に。

剣に拳に。

男達はそれぞれの思いと共に。

戦いに終止符を打つ。

いや、打たねばならないのだ。

僅かに息を吸い、吐き出し。

そして彼らは地を蹴った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「…ようやく終わり、ってとこか」

和真は空を見上げ、呟いた。

スペクターと戦いを繰り広げたオラーシャの白い大地は今や影も形もなく、今彼が立つのは、ドーヴァー海峡に面するパ・ド・カレーの地。

薄暗い地下から出た和真達3人に、柔らかな陽が差し込む。

「まぁ、ひと段落したわけだからね。ようやく家に帰れるよ」

「長かったような、短かったような。そういや、スペクターはどうするつもりなんだ?」

メタフィールドで辛くも撃破に成功、和真(未来)のラウズカードを応用した特殊なシステムによって、スペクターはカードに封印された。

最も封印というよりかは、護送の為の一時的な処置なのだろうが。

懐からカードを取り出して和真(未来)は答える。

「コイツは本部まで連れて行く。色々あったとはいえ…正直、今回は俺の独断で動いたようなところもあるからな…」

「特殊能力封じるような首枷でもくっつけて、牢獄に放り込んでおけば良いだろ。そうすりゃ直ぐには逃げられん」

「そうできれば苦労はしないさ。ジョシュ・ブローリンそっくりの人が来た時はどうすりゃいいか知らんが」

「ンなデッドプール2みたいな事起こらんでしょ…」

そう言い合いながら、3人は歩き出す。

 

あくまで彼らの目的はスペクターを倒す事であって、工場そのものを破壊することではない。

結果としてそうなったとしても、だ。

しかし仮面ライダーのニセモノが量産され、世に放たれるとなると、話は変わってくる。

流石に看過することはできない。故に復旧が不可能なくらいに、システムを破壊してきた。

最もスペクターを捕らえたことで一件落着ともいえるわけだが、バーコードハゲもとい、トレヴァー・マロニーは生きている。

「例の将軍はどうする?」

「消しておくのがベターではあるが…記憶を弄るだけで良いだろう。彼はこの時代、この世界の人間だ。下手に外部から干渉をして、歴史を狂わせてしまうのも良くない」

「確かに、それもそうだね。誰がやる?」

「俺がやっておく。ヤツを捕まえ損ねたのは、俺だからな」

仕方ない事さ、と和真(未来)は息を吐く。

しかしすぐに表情を変え、カードをしまうと、和真と真二の2人に問いかけた。

 

「これから帰るんだろう?」

「まぁ…そりゃあね。ここでやる事は終わっただろうし」

「しっかしあんな出発の仕方したから、どう言い訳するかな」

「あんな?」

「元を辿りゃ、真二がライダーの力奪われたとかで俺んとこまで来たのが発端だったろ。確か」

「そうだったね」

「実際向こうで何年経ってるかも分からねぇ。浦島太郎になるのは御免被りたいところだが」

そう言いながら、和真と真二は互いにバイクを展開。

どうやらシステムは問題なく動くようなので、目的地の座標を固定し、エンジンをかける。

バイクに跨り、準備を整えた和真と真二に、和真(未来)が声をかけた。

 

「電車は必ず次の駅へ ー

ではヒーローは?君たちは?」

 

「え?」

 

「ある映画で出てきたセリフさ。

始めた旅も、いずれ終わりが来る。生きている限り俺たちは、同じ舞台に立ち続ける事はできない。

八坂和真、八坂真二。

仮面ライダーとして、1人の人間として。君たちはどこに新しい道を見つけるんだ?」

 

和真は僅かに逡巡したような表情を見せたが、直ぐに口を開いた。

 

「それは、俺には分からない。ただ旅を始めたあの時の俺と、今の俺はもう違う。外見も、肉体も、それに考え方さえもね。

少なくとも俺にできるのは、どのような道であれ、自分なりに進む事だけだろうな。

その先に待つのが、例えどんなものだったとしても」

 

続いて真二も答える。

 

「こっちがどうなるかは父さんに掛かってる、といえばそうだけど。恐らくもう、過去に戻る必要はないと思う。だから俺は未来に帰って、色々とやるべき事をやるよ。父さんはせめて、母さんと結ばれてくれ」

 

「息子にこう言われるとはね。ハハッ」

 

和真(未来)も僅かに笑みを浮かべる。

「そうか…そう、だな。始まりは終わり、終わりは始まり。

かつての自分は死んでも、新たな自分が生まれる。

再生産ってところか。

フッ…まぁ次に会った時は、一杯やろうか」

 

「ああ、そうだな。じゃあ、またいつか。会う機会があれば」

 

バイクにエンジンがかけられ、発進する。

和真と真二の姿は、眩い光の中へ消えていった。

彼らにもまた、還るべき場所があるのだ。

とはいえ残された彼にも、仕事は残っている。

一連の騒動の後始末を終わらせねばならないのだ。

 

「さて、将軍のところにお邪魔するとしますかね」

 

パ・ド・カレーに居てくれれば幸いだが、トレヴァー・マロニーはブリタニアの軍人である。

とんぼ返りをしている可能性もあるので、そこは少々骨が折れるかもしれない。

軽く息を吐くと、彼は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




だいぶ久しぶりと言いたいところだけど。
色々とありまして、投稿までにそれなりに期間空いたよねぇ…
今年度で私めもようやく大学を卒業するんで、卒論その他諸々に時間を割いていたので、あまり書けてないのが実際のところ。
まァ、まだ卒論書き終わってないんだけど。
今年の12月に提出らしいからさぁ…結構早めな気がする。

という辛気臭い話はともかく。

ちょっと今後の話をね。
そういや今回で何話目かな、この物語。
(確認中)
前回までで98らしくて、今回で99だね。
100で区切り良くなるけども、そこ拘って何かお祭りやるかっていうと、やらないかもしれん。
まだ大丈夫なんだけど、半年ほど先の話。
正直なところ、2022年の3月に大学卒業してから、小説の投稿自体できるかどうか、分からない。
できない事もないと思うけど、今のところ不明。
ウルトラマンや遊戯王、レヴュースタァライトなどで何か書ければ良いよねっていう考えは残ってるから、気が向けば、残り半年近くで何か書くかもしれない。
ただ3月以降、投稿できなくなる可能性は十分にあると、覚えておいて欲しい。
半年以上前に言うことか知らんが。
書く時は書くし、書けない時は書けないから、そもそもの話、不定期投稿ではあるのか。
一応2022年3月以降、生きて戻ってくることができたなら、その時はまた書こう。
ひとまず、これから半年とちょっとの間も、よろしくお願いします。

少々面白くない後書きになってしまったかもしれないけど
じゃ、またね







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煌めく聖夜

真二のひと言に端を発し、メタフィールドからアフリカ、パ・ド・カレーへと渡った旅路は、一先ずは幕を下した。

そして和真は元の時代へと、無事に戻ってきた。

真二も含めれば、帰ってきたのは和真達と言えるだろうが、彼はあの後すぐに未来へと帰還していった。

真二とて、本来やらねばならない事もあったのだろう。

幸いなことといえば、出立してから時間は経っていないことくらいだろうか。

 

最も…彼の存在と、あのセリフからするに、どのような形であれ、八坂和真と桜木レナがくっつくという事の証明でもある。

彼が養子という可能性を考慮しても、こちらが恋人なり結婚なりしていないと、彼女を「母」として扱う事はないはずだ。

 

「ハァ…」

「青春か、それとも人生を達観したか…。溜息つくと、幸せが逃げていくと言うぞ」

「ああ、まァ、そうかもね」

 

ノートパソコンを前に、息を吐く和真を見かねたのか、エプロン姿の男性が声をかけてくる。

この店の店主である。

現在和真がいるのは大学内の一角にある、安い喫茶店。

気分転換を兼ねている時に見つけ、入ってみたのがきっかけだ。

学生向けの価格としては良心的な価格だが、和真以外の客を見かけた事がなく、これで経営できているのか正直不思議である。

とはいえ毎日来るわけでもなし。

10回近くは足を運んでいる気はするが、そこは数えていないので、正確な数は分からない。

 

「オンナか?」

「そこは単刀直入に聞くんだ…。仮にも良い感じの見てくれの店主じゃないか。プライバシーってもんは」

「すまないな。だが、こんな店に何度も足を運んでもらってるんだ。

客の悩みの1つくらいは、聞こうかと。こう見えても、それなりの人生は歩んできたと思ってるぜ」

「御厚意有り難いが、生憎と俺の個人的な悩みだ。触れないでくれ」

「そうか…そう言うなら、そうしよう」

 

コーヒー豆の在庫を確認しつつ、男性は首をすくめた。

 

「俺の一方的な質問は受け付けてくれたりする?」

「構わんよ」

 

拒否されるかと思っていたところもあり、少々拍子抜けしつつも、和真は続けた。

 

「あんたの人生ってざっくりと言うと、どんな感じなんだ?」

「ざっくりか…そうだな…(長すぎるため、以下略)」

 

「やたら長かったぞ。半分くらい忘れたわ」

「フッ、そうか。そいつはすまないな。ちなみにこう見えて独身なんだ」

「女性関係については、これっぽっちもないと?」

「毎度実らぬ恋ばかりさ。

巡り巡って、俺みたいな奴には、所詮それは幻想に過ぎないってわけよ……

無論ビジネスパートナーとしての女性はいるけど。

まぁ、俺みたいなのは、淡い希望を抱いたりせずに、独り身でいる方が楽なのかもしれんね」

 

「なんというか、変な風にひん曲がってるというか、荒んでいるというか。どこでそうなったのか知りたいくらいだ。フラれたのか?」

 

「そこは知らんで良いのよ、若いもんは。自分に真っ直ぐ生きるんだ。当たって砕けろってやつさ。

ま、お前はそれなりに良い顔をしているし、性格も良い方だろう。

さして問題はないはずだぜ」

「恋愛や生き方で、あんたはアテにならないって事は分かった」

「フッ、それならそれで良いさ」

「とりあえず、今日は行くよ。じゃあ、また」

「ああ」

 

「また…か。八坂和真。いつ彼女とくっつくんだかね」

静かな店内で、男は1人、ぼそりと呟くのだった。

 

***

 

喫茶店を出て、ノートパソコンを仕舞ったリュックを肩に掛け、どこへともなく歩いていく。

家に帰るにも早く、かといってどこか遠出するにも微妙な時間帯。

しばらくぶらついていると、気付けば例のショッピングモールへとやってきていた。

あの日、旅に出る日にいたショッピングモール。

彼女達を置いていってしまった、あの場所。

旅から戻ってきてから、レナ達には連絡をしていない。

時間にしては、出立から1週間経っていないといったところなので、長期間音沙汰ないというわけではないが、状況が状況である。

もしあの時、真二を助けないという選択肢を選んでいたら、どうなっていたのだろうか、という考えがふとよぎる。

しかしそれを問うた所で、今更か。

そんな事を言って仕舞えば、4年前だか5年前の旅の始まりにも、同じ事が言えるはずだ。

(気にしても、仕方ないか)

後の祭りだ。

切り替えて、駐車場を通り抜け、モールの中へ入る。

 

「クリスマスか…」

 

表現力が乏しいうえに、こうした行事に疎いが、そこかしこに施された飾り付けはクリスマスのそれであった。

時計を見れば日付は24日、世間で言うところのクリスマスイブか。

イブにはカップルでデートをするという話を聞いた事があるが、あたりを見回してみると、何の変哲もないように見える。

1人の人も、カップルも、家族連れも、いつものように居るではないか。

(何が、男女関係を進展させるって言うんだ?)

イルミネーションの灯りと、気の利いた言葉だろうか。

それなりに洒落た服や、女性を惹きつける魅力が無いと、元も子もない気はするが。

今の和真と服装といえば、ミリタリーカラーのジャケットにカーゴパンツ、防水機能を含め頑丈さを重視した靴。

実用性や耐久性を重視した結果、辿り着いた服装である。

襟付きのジャケットやワイシャツの類も、和真から見ればオシャレに入るので、センスが問われそうではあるのだが。

とはいえ、そういった洒落た服を着る事も得意ではない。

冠婚葬祭は別として。

 

(ま、せめてスーツっぽい服装なら、今日でもレナ達にも声を掛けられたのかもしれん)

昔はどこか自惚れていた時期もあったろうが、場数を踏むと、大なり小なり現実が見えてくる。

物語の主人公のように、女性が惚れてくれるほど、和真は出来た人間とはいえない。

少なくとも…今はそう感じている。

これまでの人生、人助けだけでなく、恨まれる事も少なからずやってきたはずだ。

自らの手で、これから道を切り開かねばならない。

レナを、どうにかして振り向かせねばならないのである。

真二のためにも。

 

(五河士道あたりに聞きたいところだが…ブルースペイダーもうないんだよなぁ)

次元を越えることがそう容易くない今、彼に女性の口説き方などを聞こうにも聞けない。

となれば。

レナとも面識があり、和真の友人でもある薫あたりに聞くしかない。

電話を掛けると、彼はコール数回で直ぐに出てきた。

 

「よう、久しぶり」

『和真か?どうした、急に連絡を寄越して来て。やはり非モテ同盟として過ごすか?」

「そうじゃない。レナ、いるだろ?」

『あ、ああ。何だ…お前、デートに本格的に誘うつもりか?』

「色々あってね。今、彼女の行方知らないか?」

僅かな間を置いて。

『ヴァカ野郎!』

「ンだよ、大声出さないでくれ」

『すまないな。だが、和真。告白するしないにしろ、誘う女性の情報を俺に聞くんじゃあねえ!お前が聞くんだ!

前までは良い感じだったろう?

まぁ当日にアポなしだからイエスかノーか分からねえが…答えてはくれるはずだ。拒否られたら、俺の家来ればいい。そん時は遊びに付き合ってやる』

「分かったよ。すまねえな」

『頑張れや。やる事やるなら、ちゃんとそれなりの準備はしろよ?』

「フッ、そんな事はならんだろ。一応連絡取ってみるわ」

『ああ、またな』

 

一旦薫との電話を切り、今度はレナに電話を掛ける事に。

いざ掛けるとなると、クリスマスイブだからか、緊張する。

息を吸って、吐いて。

電話を掛ける。

 

「もしもし」

少しして、返事が返ってくる。

『…久しぶりじゃない。何か、用でも?』

「この後予定ある?」

『無いけれど、何かお誘い?』

「ああ、この前の埋め合わせも含め」

『流石に多少説明して欲しいところだったから。帰って来たなら、帰って来たで、連絡入れてくれても良かったでしょ』

「ごめん。…それで、大丈夫なのか?今日これから」

『1時間半後に、例のショッピングモールの本屋前で』

「分かった。じゃあ、1時間半後に」

 

そこで電話は切れた。

ひとまず、今日会うのは問題ないという事だろう。

1時間半とも言うと、準備にかかる時間も考えると、それなりに洒落た服装で来るのかもしれない。

レナが了承してくれるかはダメ元でもあったが、こうなるとやはりお洒落な服を準備するべきだろうか。

下手に意気込んでいるというか、わざとらしいように、個人的には見えなくもないが。

はてさて。

 

「お呼びかな?」

「呼んでない。てかなんで場所分かるのさ」

 

音もなく現れたのは凄腕の殺し屋…などではなく、先程電話でやり取りをした薫だった。

家にいると思い込んでいたので、少々驚きである。

 

「なぜって?知らない方が身の為さ」

「そうかい」

「ジェームズ・ボンドみたいな服がお望みか?手を貸すぜ」

「そこまで英国紳士な服装は求めていないけどさ…そう言うなら、せめてお前も、そういう服装して来いよ」

 

カッコ良いかは別として。

忍びや暗殺者よろしく、音もなく現れた薫の格好は、革ジャンにジーンズ、黒色のブーツ。

ここまでは納得できなくはないが、インナーのシャツが少々…彼のセリフとミスマッチだった。

 

「そういう服装って何だよ、和真」

「せめて襟付きの服なり、スーツなり着て言ってくれってコトよ。『バーニング・ソウル』って書かれた文字Tじゃないんだって」

「魂を刻んだTシャツ、ダメか。それならホラ、これならどうよ」

「『魔法使い』じゃなくてさぁ…まだ25にも30にもなってないだろう。だから『天空より永遠に』に変えたからって、根本的には変わんないのよ……

『ザフキエル』…うーん、『ザフキエル』ねぇ…むむむ…

謎の早着替え技術をここで見せられて、これといってなぁ…」

「これなら良いだろ?『ファッションリーダー』で」

「あー…良いよ、それでもう」

 

怠そうに言葉を発する和真に対し、薫は「やってやったぜ」と言わんばかりの、自慢げな顔。

「じゃあ、デートに見合った服を探すとしようや」

「お前、手は貸さないんじゃなかったのか?」

「告白まではサポートしないってだけだ。服選びくらいは、手伝うとも」

「あ、おう…どうも」

 

かくして、微妙な服装の男二人で、デートに適した洒落た服を選びにいくこととなった。

時間まで服を色々と試着し、そのうえで良い感じの服を選ぼうというスタンスで始まりはしたのだが。

 

「何がとりあえず着て見ろ、だよ。思ってたのと違え…」

「いいじゃん、似合ってるぞ」

「似合ってるかどうかじゃなくてな。見滝原中学の制服は、コスプレ以外では早々着ないだろ。男子生徒用のものでもよ」

「さっきまでの服装よりかは、まともに見えるが?」

「ああ、そうかもな。学校の制服ってことを除けばね」

「あーダメか」

「別の店だな」

 

次の店では

 

「まあ、中学の制服よりマシってところか」

「反応微妙に違くね?」

「来禅高校の制服は、訳あって一度着たことがあるからな。まあ、高校時代だが」

「でもデート向きではないと?」

「生憎だがな」

 

更に次の店へ

 

「なんか、見覚えあるような、ないような」

「IS学園の制服だ。どうよ?」

「イマイチだな。夜中着るには、派手すぎない?」

「それはあるかもしれん」

「アニメでは描かれないが、IS学園の制服は夏服があったはずだ。どうでも良いことだが」

「ライトノベルの方の挿絵ではあるってとこか。割と今はどうでも良いな」

 

またまた次の店

 

「むむむ…」

「なんだよ」

「まともな服をチョイスされると、逆に違和感ある」

「似合ってるぜ、フォーマルなスーツと私服の中間みたいで」

「なんで最初からこういうの選ばねんだ」

「いや、まあ、意外と色々似合うもんなんだとね」

「そうかよ…選ぶなら、最初からこういうの選んでくれ」

「これまでのもフォーマルだったろ」

「その世界観での中学生や高校生にとってはな」

 

紆余曲折はあったものの、和真が着ることとなったのは、ビジネススーツとお洒落な若者が着そうな服の中間のようなものとなっていた。

イケメン俳優やアイドル歌手が着そうな、洒落た装いである。

正直なところ、こういった服装はあまりしないので、似合っているかというと、個人的には分からない。

このような服装の名称すら、正直知らないのである。

とはいえ時間も良い頃合い、レナのもとへと向かっていいだろう。

最後に薫に礼をいうことにする。

 

「世話になったな」

「気にするな。だが、告白までサポートはしない。ここからはお前の戦いだからな」

「分かってる。なんとかやってみるさ」

 

手を振って見送ってくれる薫の姿はありがたくはあったものの、でかでかとプリントされた『ファッションリーダー』の文字が、雰囲気を少々台無しにしていた。

軽く溜息をつきながらも、和真は本屋へと歩き出したのだった。

 

***

 

待ち合わせ場所へ着いて合流したところで、和真を見つけたレナは溜息をついて、口を開いた。

 

「何、その服装?」

「ああ、これか?クリスマスだしさ、流石に洒落た服装じゃないと、君に釣り合わないような気がしたし」

「正直なところ、似合ってないわ。一般男性が、無理して男性アイドルと同じような服を着たような感じ。私に会う前に、急いで準備したってとこかしら」

「ソンナコトナイヨ?」

「値札が見えているんだから、誰が見ても分かるでしょ」

「…辛辣だなァ」

「普段のあなたでいいのよ。着慣れないものより、普通の服でいた方が楽でしょう」

「オーケー、着替えてくるよ」

「よろしい」

 

ということで、店を回ってわざわざ着替えた服は、レナの一言であっさりと用無しになってしまった。

トイレで元の服に着替えたが、彼自身どちらが合うかというと、洒落た服より、元の服の方だった。

(着る機会、もうなさそうだな)

洒落た服を畳み、鞄に入れると、和真はレナの元へ戻った。

 

「やっぱ、慣れない服は良くないねえ」

「いつもの格好の方が、私も接し易いもの」

「そりゃ、どうも」

「じゃあいきましょう」

「どこへ?」

「この間の説明と、埋め合わせ。それに色々とあなた自身、言いたいことはあるでしょう」

「まあね」

 

そうこうして、和真とレナはデートの如く出発したわけだが。

そんな2人をこそこそと追う、男女のペアがあった。

黒鉄スミレと平島薫である。

 

「アンタ、服選んでおきながら、ダメじゃない」

「いや、普段のアイツの方が好きってことの証明と捉えることができるだろ」

「あの服、当面お蔵入りでしょうね」

「うぐ…ま、いいさ…」

「次はアンティークショップみたいね。ホラ、遅れないで」

「まだ追っかけすんの?」

「流石にどうなるかくらいはねぇ」

「いや、やめとこうぜ。気づいてるか分からねえけど、アイツのプレッシャーになったらそれこそ、本末転倒では?」

「は?言い出したの、アンタでしょ。服もそうだけど。自分の行動に、責任持って動きなさいよね」

「…はい」

 

***

 

何ヵ所か店を回り、和真とレナはフードコートの一画に落ち着いた。

洒落た店もあるにはあるが、彼女がここが良いと言ったのだ。

正直静かなレストランでは、畏まってしまって、会話がしづらいところもあった。

フードコートでは不特定多数が同じ空間にいるが、個人の会話を聞こうとする聞き耳を立てる輩はそういない。

有り難いところではある。 

 

「で、どこから話したものかな」

「まずはこの間貴方を連れて行った、彼についてかしら」

「ああ、そっちは真二は会うの初めてだったか…確か。

ひと言で説明するとしたら、息子かな」

「息子?」

「息子」

「ふぅん…それで、彼とどこに何をしに行ったの?」

「意外とあっさり信用するのな」

「ここで嘘を言うメリットないでしょ」

「確かにね。

その真二の頼みもあって、俺たちは未来で暴れてたっていう、ある男を止めることになった。実際それ自体は成功したんだけど、帰りの便が故障して、1945年のアフリカに行ってしまってね…

そこからフランスのパ・ド・カレーに逃げてというか向かって…因縁の男に決着を付けることになった。

それで一段落したから、帰ってきたのさ。

急にいなくなってしまって、申し訳ないことをした。

すまない」

「…何よ、面白そうなことしてたんじゃない」

「えっ?」

「連れて行ってくれれば良かったのに。それにその口ぶり、冒険譚はもっと多そうね」

「ああ…そうだな。

でもあの時は何があるか分からなかったし…生きて帰れる保障はなかった」

「私だって、貴方と冒険とか、してみたいし…。

人生楽しくなりそうだもの」

「…分かった。これからは、声をかけるよ。でもその、危ない目に遭うのは…」

「そんな弱くないもの、私」

「それなら良いか。主人公みたいに、俺が守るとかキザなこと言えないのが、悲しいところだな」

「自分の命くらいは、自分で守れるようでないと。冒険についていけないでしょう」

 

コーヒーを啜り、和真はレナの言葉に首をすくめる。

彼女の申し出はありがたいことではあるものの、これといってこちらからどこかへ旅に出ようとは、あまり考えていなかったフシもある。

旅を始めた当初とは置かれている環境や、和真自身の感覚なども変化している。

最も、アドベンチャー精神を失っては、人生を楽しむこともできないともいう。

レナを連れ、どこかへ出かけてみるのも考えてはみても、数年前と異なり、気安く別世界へ行くこともできない。

過去の行いも影響し、その手段すら失っているからである。

アフリカへ渡り、フランスから帰還するのに使ったバイクも、今は親の手により、封印されている。

 

「でも、今の俺にはそういった心躍る冒険に行く手立てがない。

切符は無いも同然なんだ」

「なら私の故郷に行きましょう。あまりアドベンチャーとまではならないだろうけれどね」

「ホーム?急にハードル高くない?」

「あら、何か?」

「いいえ、全力で行かせていただきます」

 

故郷…といわれても、どこなのかとんと検討がつかぬ。

グローバル社会とされる現代、人の外観で出身地など判別できようもないのである。

とはいえ、女性からの折角のお誘い。

乗らない手はない。

 

「ちなみに、どこなのさ」

「それは後で教えるわ」

「後でって…いつ行くのさ」

「今クリスマスとかだから、30から年明けまでかな」

「年末年始…まぁ問題ないか」

「集合日時とか、明日にでも連絡するから」

「分かった」

 

つまりこれは、彼女の両親なる人物に挨拶をする事になるんだろうか。

いきなり難易度が高い気もしなくはないが、これまでの修羅場に比べれば、如何様にでもなるはずだ。

最もその様子を見守る2人組もまた、その話を聞いていたわけで。

 

「なあ、黒鉄さんよ。桜木の話、トントン拍子で進むな」

「まあねぇ…」

「なんだ、テンション高くないな」

「レナからの相談も、かなりの頻度だったから。

ようやく進歩があったんだなぁって」

「どこのかぐや様だよ…」

「でもそっちの八坂和真にも、ようやくマトモに進捗があったわけだから。お互い、荷が軽くなると考えれば」

「そうだな。それに関しては否定はせんよ」

 

さて、数日後には桜木レナへの故郷へ向かうこととなったわけだが。

どうなることやら…

 

 

 

 

 

 

 




はい、どうも…お久しぶりですね。
低クォリティでお届けしております。
毎度こんな挨拶をしているような気はするのだけど、地味に投稿期間空いているから、前回どう書いたのか思い出せない。
まぁ、前回の話の後書き確認すればいいんだけどね。
(確認したけど、大したこと書いてなかった)
というのは、ともかく。
100話目なの?
この場面によってはロクでもないような展開をしている、小説とは言い難いような部分もあるような、シロモノが?
いや、初期からこの話の少し前までは、結構バトルとかしてたけど。
よく続いているものだよね。

最近は書き手の俺自身の影響もあってかな、物事に対する考え方や捉え方が変化しているところもある。
そうした考え方とか、割と反映されたりしているかも。
まぁ、今後は気分によりバトルも挟むかもだが、和真君とレナの話には大なり小なりフォーカスしていきたい。
どこかでまた真二を再登場させるか、いや…それは追々かな。

久しぶりにサブカルコーナーをやりたいと思う。
何話か前の後書きで遊戯王で何か書きたいとか言ったんだ。
実際、少女歌劇レヴュースタァライトと遊戯王で書けないかと思って、考えているところなんだ。
デュエル場面だけは思いつくんだけどね。
というのは兎も角。
12月に、ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN(スペースこれで合ってるかな?)のタペストリーを買いましてね。
最初の方で公開された、全員映ってるキービジュアル的なの。
中心に宮藤芳佳がいるやつ。
ググったら、たぶんすぐ出てくるイラストのやつだと思う。
満足できる買い物だった。
ワールドウィッチーズでいうと、近々オルゴールが出るらしい。
まあ、書籍も全部はまだ買い揃えられてないけど、生涯賭けてやってきましょう。
あとは既に名前は挙げた、少女歌劇レヴュースタァライトの劇場版Blu-ray。
タペストリーが特典だったんだけど、結構大きくてね。
結局これも満足している俺。
どうあがいても、個々人の生き方って早々変わるもんじゃねえし、俺は今のような状態でいるくらいがちょうど良いのかもしれない。
たぶん。

次回のレナと和真の舞台は…どこになるかな。
恋愛クソ雑魚人間ですが、色恋沙汰も書いていきましょう。
じゃあ、またね






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旅は南へ

12月30日から旅行へ行くという話自体は、既に桜木レナ自身から聞かされていたものの、その詳細に関しては、前日の29日になるまで、全くもって連絡がこなかった。

とはいえ、和真とて多少なりとも場数は踏んで来ている男である。

どこへいくことになっても問題ないようにと、バックパックを引っ張り出し、周到に準備を進めていた。

そして、レナから連絡が来た。

 

『連絡遅れてごめんなさい。30日の…明日の集合時間等についてなんだけど』

「どうなるんだ?」

『それ…現地集合にしても問題ないかしら』

「えっ、ああ、問題はないはずだ」

『着いてからの案内はするから。30日の午前10時までに、メルボルンのサザンクロス駅まで来て。迎えに行くわ』

「わーお…うん、OK。明日10時、そこで会おう」

 

そこで、レナからの電話は切れた。

記憶からして、目的地はだいぶ南の方な気がする。

時差ボケなどは大丈夫なんだろうか。往路復路、どちらもだが。

(メルボルンてオーストラリアの、さらに南部だったはず)

時期的に南極に近い場所であるメルボルンは、寒さは相当なものだと考えておく必要がある。

一応、飛行機で近郊にあるメルボルン・タラマリン空港まで行けば、サザンクロス駅まで直通バスは出ているという話だ。

それゆえ、サザンクロス駅を指定したのだろう。

最も、飛行機に普通に乗っていこうものなら、10時間以上のフライトは確約されたようなものだ。

道中何があるかも分からないし。

となれば、飛行機以外に、何かしら安価かつ早急にカンガルーの国までたどり着く事ができる手段を考えねばならない。

そこで相談相手に選んだのは、八坂真尋と八坂ニャル子、和真の両親であった。

 

「なあ、父さん、母さん」

「改まってどうしたんだ?和真」

「結婚報告じゃないですかね」

「オーストラリア行くことになったんだけど…何か手っ取り早い移動手段ない?」

「我が息子ながら、唐突だなあ…ちなみにいつ?」

「明日の10時までに」

「明日ぁ?!」

「良いでしょう…手持ちでいくつかありますから、選びなさいな」

「なんでニャル子は持ち合わせあんの…?」

「そりゃあ、真尋さんといつ出かけることになっても良いようにですよ」

「あ、そう」

 

早速庭で物色を開始してみたものの、言葉の割には、母・ニャル子はロクな乗り物を持ち合わせていなかった。

まず得体の知れない宇宙船。そもそも操縦方法が分からないので却下。

次は魔法力を持つ少女が履いていそうな、ストライカーユニット。少なくともウィッチは世界が異なるので、コスプレの類いであろう。

仮に使えるものであったとしても、和真は魔法力など持ち合わせていないので使えない。

続いてはドラゴンのような得体の知れない生き物だが…どうやら、父・真尋は乗った事があるらしく、ダゴンなる生物らしい。

乗っていれば目的地まで運んでくれるらしく、優れた生物のようではあったが、実際乗るかというと微妙なところだった。

最後に出されたのは、折りたたまれた乗り物のようなものだった。

 

「それは?」

「アト子ちゃんの発明品です。こうやって放り投げると…ホラ」

「なるほど」

 

ニャル子が放り投げたそれは空中でトランスフォーマーよろしく変形すると、そこにはスパイ映画などで見かけるような、1人乗りのコンパクトな飛行機があった。

最初からこれを出してくれれば、よかったものを。

 

「じゃあ、これにするよ」

「ダゴン君ですか」

「アト子さん印の発明品の方だって。これの方が、まだオーストラリアにまで辿り着けそうだ」

「あー…良いでしょう」

「ニャル子、何かひっかかることでもあるのか?」

「いえ…この飛行機の説明を、まだアト子ちゃんからして貰ってなくて」

「安心してくれよ、2人とも。身体の頑丈さくらいが、俺の取り柄だからね」

「それなら、まぁ…」

「いやそういう問題か?」

 

真尋のツッコミも尤もではあったが、和真も邪神=ニャル子ほどではないにせよ、丈夫である。

邪神の息子であると同時に、人間=八坂真尋の息子でもあるので、血は出るし、痛みも感じはするが。

 

「でもその飛行機、和真のリュック入らなくない?」

「それは邪神のご都合空間があるので、問題ないです」

「問題大ありだと思うけど…」

 

兎にも角にも、入るのならば、問題はない。

部屋に戻り、バックパックを片手に飛行機の元へ。

入るのかどうかは謎だが、とりあえず足元にすっぽりとバックパックが納まったので、恐らくそこで合っているのだろう。

 

「明日の10時までって言うなら、もちょっと待ってもいいんじゃないですかね?」

「いや、母さん…何があるか分からんしさ。余裕を持っておきたいのよ、こちらとて」

「前日な点で余裕もへったくれもないけどな」

「ごもっとも…」

 

シートに腰掛け、操縦桿を握ってみる。

感覚は普通の小型機と変わらない感じなので、操縦の仕方も大方同じで問題はないはずである。

サングラスをかけて、カッコつけて敬礼をしてみる。

苦笑いをする父と、それっぽく敬礼らしいポーズを返す母。

 

道路を少しばかり滑走すると、和真の操縦する機体は間もなく空中へと浮き上がる。

家の周りを軽く旋回すると、一路、飛行機は南へと進路をとるのだった。

 

「なんか、前もこんな感じのシチュエーションあった気がするんですけど。真尋さん、覚えてます?」

「4年くらい前にか?和真が旅に出た時の」

「あの時も、アト子ちゃんのアイテム使いましたよね」

「あん時はバイクだったけどな」

「オマージュってヤツですかね。セルフオマージュというか」

「さあな」

「…そういや、今回行くのオーストラリアらしいですね」

「そうだな。赤道超えて、更に南。ニュージーランドとならんで、南極に近い場所だよな」

「南極…思い出しますね。真尋さんとの出会いの場所ですよ」

「出会ったのは南極じゃないからな。人身売買の事件解決のために、南極にまで行ったんだよ」

 

 

 

 

 

 




はい、お久しぶり。
なんて事は言えないね、そんな時間経ってないから。
和真くんとレナの色恋沙汰にも、大なり小なり展開があるのかないのか。
あれば良いけど…記念すべき(?)101話目では、ありそうもない。
まぁ舞台がコロコロ変わるのが、この物語の特徴でもあるんですが。
次の舞台は、オーストラリアになりますね。
オーストラリアのメルボルン。
設定しておいて、細かいところは分からないから、地図見ながら小説を書いてるわけですけど。
次回更新はいつになるか分かりませんが、ぼちぼちですね。
恐らく赤道越えて、オーストラリア入ったあたりで何かしらアクシデントはあんじゃないですかね。
所詮は主人公、和真くんですし。

じゃ、またねー


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墜落と再会、豪州にて

まだ目的地には、辿り着かない。

いや、意外に遠いのかもしれない。

実際に足を運んだ事がないので、実感が湧かないだけなのだろう。

もっとも、そもそもの場所が日本から赤道を超えた南半球である。

日本を出て、台湾を過ぎ、フィリピンを超え、パプアニューギニアを通過して、ようやくオーストラリアの北の端が近付いてくる。

ダーウィンである。

(にして、案外燃料保つんだな)

ここまで一度も燃料の補給を行なっていないが、不調をきたした様子は見受けられない。

途中、未確認機として戦闘機に追われる羽目になり、危うく撃墜されるところだったものの、無事にこうして逃げ切れた。

皮肉にも、悪運だけはあるらしかった。

 

ダーウィンを過ぎれば、最早そこはオーストラリア国内。

そこからオーストラリアを縦断すれば、メルボルンのある南部へと入る事ができるはずだ。

操縦桿を握り、機体の高度を少しばかり下げる。

地上が見下ろせる高度を維持しつつ、和真は南下していった。

 

小型機にしては、この機体はかなり性能が良かったようだった。

29日の昼間に出発し、現在時刻は同日23時を回った頃合い。

空港までの移動時間、手続き等の時間を加味した上で、通常のジェット機でのフライト時間と比較しても、かなり無駄を省けた方だろう。

空港を経由する分の時間がないのが、大きなメリットか。

 

しかしメルボルンまで間もなくといったところで、唐突に変化は訪れた。

機体の高度が下がり始め、計器からは警告音らしき音が発せられ始めたのだ。

「え、おい!もうすぐ着くんだってのに!勘弁してくれよ!」

和真の叫びも虚しく。

墜落した。

姿勢はなんとか維持し続けたが、機体は勢いよく地面に叩きつけられた。

「…全く…ハァ…」

彼自身怪我はさしてせずに済んだのは不幸中の幸いと言えたが、機体は無惨な有様に。

再度飛ばせるようにするには、それなりの時間が必要になるか。

可能な範囲で調べると、どうやら燃料切れの模様。

先ほどまで問題なく飛べていたが、それも空元気に過ぎなかったというわけである。

(これをどう運べと?)

あれこれ試行錯誤を繰り返しているうちに、なんとか元通りのようなサイズには戻ってくれたものの、その見た目は正直歪というほかなかった。

例えていうならば、消しゴムを1個丸ごと使って、出来た消しかすを纏めても、元の消しゴムにはならないのと同じようなものだろう。

軽く息を吐いて、その飛行機だったモノをバックパックに詰め込む。

 

「さて…と」

 

ここはどこなのか、ということはある程度は割り出せている。

明確な座標までは知りようがないが。

少しばかり西へ下ると、メルボルン・タラマリン空港がある。

周囲の風景と地図の道路を照らし合わせてみると、どうやら空港からは反対の東側に位置する、ウェストメドーズの近くかと考えられた。

(待ち合わせ場所のサザンクロス駅まで、どういくか)

時刻は夜中、あたりに迷惑をかける事は避けたいところ。

正直先程の墜落も、騒音にならないか心配でもあり、できれば早くここから移動したい所存。

ならばと、バックパックに手を突っ込み、移動手段になりそうなものを探ることにする。

部屋に置いてあったものや、使えそうな物を片っ端から詰め込んだので、何かしらあるはずだ。

 

ということで、5分ほど後〜

 

和真がバックパックから引っ張り出した手には、見慣れぬ端末が。

更に露骨に使えとでも言わんばかりに、黄色の小さなボトルがセットされている。

 

「何だこれ」

 

見覚えがあるような、ないような。

イマイチ使い方も思い出せないので、後ろにポイッと放り投げ、残りを取り出していこうとしたのだが。

機械が地面に叩きつけられた音がしない。

ガツンとか、ガシャンとか、あまり聞きたくないような音が出ることがあるはずだが、それがない。

芝生の上に落ちたのとも、また異なるような。

振り向くと、そこには1台のバイクがあった。

先端の歯車のようなものが特徴的で、後部にはボトルのようなものがついている。

 

(ん?これは、見た事ある…)

「コイツは…」

 

それもそのはず。

そのバイクは和真がアフリカに行ってしまった際に、真二が助けに来た時、乗っていたものと同じだったのだ。

ではなぜそれがここにあるのか。

真二が持っていたはずのものが、なぜ和真のバックパックに入っていたのだろうか。

その真相は知りようがないものの…真二が意図して置いていったか、アト子さんが試験運用と称して忍ばせていったか。

大方そのどちらかだろう。

詳細は後ほど聞くとして、この際使わせて頂くに越した事はない。

路上販売よろしく広げた各種アイテムを、再度バックパックに入れて背負う。

出立の準備は整った。

(運転に関しては、他のと変わらないか)

バイクに跨ってエンジンをかけ、アクセルを全開に、和真は一路、メルボルン市街へと走り出した。

 

***

 

目的地がどこなのか解っていれば、辿り着くことはできる。

それは至ってシンプルな事実であり、経験から導き出される不変的な答えでもある。

ただし、その過程に何があるかまでは100%予測はできない。

今バイクを走らせている和真自身とて、サザンクロス駅の場所を調べていないわけではない。

墜落地点のウェストメドーズから、所要時間がどれくらいなのかまでは、視野に入れていなかったが。

ただハイウェイに沿って下っていけば、道はそこまで難しくはないようであった。

エッセンドン空港を通り過ぎ、右方向に折れると、ウッドランズ・パークやクィーンズ・パークといった公園を横切ると、次第にあたりは都市部の様相を呈してくる。

メルボルン動物園やロイヤルパークといった場所が見えてくれば、間もなくである。

 

「案外早く着いたな…」

 

ふぅ、と息を吐く和真。しかし現在時刻は午前9時を目前にしている。

目的地であるサザンクロス駅の前まで来るのに、かれこれ8時間以上を費やしている計算になる。

決して早いとは言い難い。

とはいうものの、ウェストメドーズを発ってから30分程度で、実際に和真はサザンクロス駅まで着いていた。

では残りの時間は何をしていたのかと言うと、綺麗な景色を楽しむためにバイクを東西南北、あちこち走らせていたのである。

至ってしょうもない理由だが、未踏の地にほっぽり出されるよりかは遥かに動きやすく、突然怪物に襲われることもない。

(とはいっても、それはそれで物足りないような)

景色を楽しめたのは事実なので、良しとしようか。

 

「…んで、どこに迎えに来んだ?」

 

サザンクロス駅に迎えに行くと言ったのはレナである。

しかし彼女はどの入り口、どのバス停を目印に、などと言っていない。

流石に駅のホーム、という事はないだろうが。

試行錯誤しつつも元の端末の形に戻し、バックパックに仕舞うと、駐車場や駅前の駐車スペースを、転々としていくことにした。

そうすれば、いつかは迎えに来るレナとも会えると踏んだのだ。

時間はまだ1時間はある。

 

55分後〜

 

(思ったより広いな…この駅。もう残り5分しかねえ…)

焦りつつ駅のフロアを駆けて出てきたのは、見覚えがある場所。

最初に和真がバイクを止めた、入り口付近だった。

回りまわって、元の場所に戻ってきたわけである。

(どこにいんだよ…!ったく、場所くらい事前に言っといてくれ…)

最も、サザンクロス駅とは言っているので、場所を伝えていないわけではない。

言葉のやりとりは難しいものである。

ベンチに腰掛け、脱力して背もたれに体を預けると、女性が1人、彼を見下ろしていた。

 

「あ、久しぶり。無事に着けたぞ、サザンクロスまで」

「まぁ…みたいね。その割には、かなり息が上がっているようだけど」

 

レナの言葉もごもっともなのだが、ここまで来る過程でなにがあったのか、説明するのは非常に躊躇われた。

それとなく言葉を返すことに。

 

「身体が鈍ったみたいでね」

「しっかりしてよね。これから家に行くんだから」

「…家?キミの?」

「それ以外どこがあるの?両親にも話をしてあるから、行くわよ」

「いつの間に…」

「先日、29日までの間」

「わお」

 

首をすくめ、和真は、さっさと歩き出したレナの後を追う。 

 

「しかし、迎えに来たって…何使って来たんだ?」

「ほら、これ」

 

そう言ってレナが指したのは、1台のオフロード車だった。

所々傷みがあるようにも見えなくはないが、4、5人は少なくとも乗れるらしく、おおかた家族で使っているものなのだろう。

 

「なるほどねぇ…運転できんの?」

「そこはご心配なく。というか、運転できないと、ここまで来てないでしょうに」

「それもそうか」

 

助手席に乗り込み、レナの運転でいざ出発。

故郷と口にしていたところで、家にお邪魔することになるのは、考えていないわけではなかった。

どこか期待していたフシもあったのは、否めないところだが。

いざ親御さんに会うとなると、なかなか緊張もしてくる。

言葉にならない焦燥感。

ややワイルドな運転ではありつつも、車はサザンクロス駅から遠ざかっていくのだった。

 




はい、どーも。
低クオリティに定評のある作者でございます。
毎度の事ながら、テンポ良く進めろよと思われてそうだし、自戒もしているんですが。
そうもできないのが悲しいとこで。
まぁ次の話では、家に着いてレナの両親も登場すると思いますし、それ以外でも触れたい話もあります。
ルルイエも、もう一度出るかもしれないしね。
オーストラリア着いて、彼女と合流して〜っていう映画みたいなトントン拍子のじゃなくて、泥臭くて無駄の多いのが、この物語の特徴でもある。
次の話の冒頭でさっさとレナの家行くんで、勘弁してくださいな。
ていうか、ホントこの物語(と呼べるのか怪しいが)通して、自身の変化ってなんとなく感じるところある。
ま、それはともかく。
じゃ、ぼちぼち書いてきます。
近いうちに、別のクロスオーバー考えるかもだが。

じゃ、待たねー




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復讐への招待状

サザンクロス駅を経つと、車はヤラ川を渡り、サウスメルボルンを抜けて、中心部から離れていった。

メルボルンに囲まれるように位置する、ポート・フィリップ湾まで出ると、海岸に沿うようにして南東へと下っていく。

 

「なんで薄着なのかと思ったけど、南半球だから季節逆なんだな」

「その割に、案外あっさり適応できてるのは、驚いてるけど」

「ああ…まぁ」

 

実を言うと当初、和真はオーストラリアが季節が日本とは真逆だいうことを忘れていた。

無論、途中で暑くなったため、サザンクロス駅に着く前に、ジャケットは脱いでバックパックに仕舞っておいた。

恥を晒さぬよう、流石にそれは黙っておくことにしようか。

そして海を横目に眺めつつ、車に揺られることしばし後。

ビーチに程近い、1軒の家の前でレナは車を止めた。

 

「着いたわ」

「もう?」

「もうよ。ホラ、降りて降りて」

「あいよ」

 

バックパックを片手に車から降りると、玄関から1組の男女が現れた。

こちらが来る時間が分かっていた…とは考えづらい。おおかた車の音を聞いて、出てきたのであろう。

2人は夫婦と思しく、レナの両親とみて間違いあるまい。

男性の方は年齢は40代後半くらいのようだが、ガタイはよく、相応に鍛えているとみえる。

軍人だろうか。

女性の方はレナの年齢を加味して考えても、40代半ばあたりのはずだが、20〜30代のように若々しい。

見た目より若く見えることは、ままあることだが、少なくとも人間ではあるだろう。

もっとも、和真の場合は父親を除き、母親を含めた親類が大概邪神の類いなので、外見など好きに弄くることができるのだが。

 

「ただいま」

「レナ、おかえり!お、彼がレナの言っていた、和真くんだね?」

「アナタ、初対面なのにグイグイ行きすぎよ」

「まぁ良いじゃないか、アンナ。よろしく頼むよ、和真くん」

「ええ、こちらこそ。初めまして、八坂和真です」

「うむ。改めて…私は桜木高史、レナの父親だ。お義父さんと呼んでくれても良いぞ」

「流石に早いですよ、桜木さん」

「そうか…残念だ」

「ふざけてないでね、アナタ。料理も途中なんだから」

「あっ、そうだった!じゃあ、アンナ後頼む!」

「全くもう…」

 

慌てて家の中へUターンした、レナの父・桜木高史氏。

どう表現したものか、「桜木さん」では3人いるので分かりにくい。

レナパパか、桜木父か。

「桜木父」にしておこう。

桜木父が家の中へ引き返したところで、アンナと呼ばれた女性は息を吐いて、口を開いた。

 

「ごめんなさいね、夫が。悪気はないのよ」

「問題ありませんよ。桜木さん」

「だから桜木は3人いるんだって、和真」

「ああ、ごめん…レ、レナ」

 

実際に桜木レナに対して、下の名前で呼ぶとなると、戸惑ってしまうところはある。

前に呼んだ事はあるような、ないような、その記憶は朧げだ。

とはいえ、レナの方は名前で呼ばれる事に対し、抵抗はないようだった。

満足している様子でもあるので、今後はこれで問題はないと思われる。

つまり、こちらが慣れていかねばならないわけだ。

 

「アタシは、さっきも名前は聞いたと思うけど、桜木アンナよ。レナの母親にあたるわ。

よろしくね、八坂和真くん」

「ええ、こちらこそ。よろしくお願いします」

「ま、そこに居てもあれでしょ、上がりなさいな。レナが時間を教えてくれたから、間もなく料理も出来上がるわ」

「ありがとうございます。お邪魔します」

 

しかし、レナの母はどう呼称すべきか。

父親の方は「桜木父」なので、それにならって順当に「桜木母」というのが妥当か。

 

…などと考えつつ、レナの家に上がらせて頂けることになり。

ちょうど時間も昼食時ということもあって、レナの父母が手料理を振る舞ってくれた。

野菜やハムなどを中心にしたサンドイッチやスープなど、ランチとして、重すぎず軽すぎないメニューがチョイスされており、どれも満足できるものであった。

そして腹八分目あたりとなった食後、レナは和真に、少し出かけないかと声を掛けてきた。

無論これといった用事もないので、快諾して散歩に行くことに。

 

海をのぞむ海岸まで来ると、レナはふと口を開いた。

 

「今日は来てくれて…ありがとう」

「なんだい、急に。折角招待してくれたんだ、乗らない手はないさ」

「実は来てくれるか、不安でもあったの」

「なぜ?」

「できれば、クリスマスのすぐ後には声を掛けたかった。でもこちらも直ぐに、とはいかなくて」

「人生何があるかは分からんからね。急に忙しくなる事も、あるだろうさ。

でも、こちらとしても感謝してるよ。呼んでくれたおかげで、こうしてちょっとした旅行ができてるわけだし」

「そう、ね」

 

その時だった。

突如不穏な、身の毛がよだつような「何か」の気配を感じた。

来た道を駆け戻っていく和真。

 

「ねえ!ちょっと、どうしたの?!」

「何か、嫌な予感がしたんだ!一旦戻る!」

 

レナも疑問を投げかけておきながらも、和真の後を追って駆けてくる。

物陰に隠れて様子を伺うと、視界に捉えたのは、一際目立つ髭を蓄えた老人と、おぞましい黒いバケモノだった。

髭の老人には見覚えがある。

かつてレナを人身売買にかけようとした、あの時の老人だ。

黒いバケモノの方は、ナイトゴーントと呼ばれる生物であろう。

そこまで戦闘能力は高くはないが、命令に忠実に動くモンスターだ。

数度対峙したことがあるため、記憶している。

今回の目的は不明だが、どうやらナイトゴーントは護衛程度に過ぎないようであり、無駄に人を襲わせているわけでもない。

 

「なんで、ここに来てるんだ…あの御老人は。それに、ナイトゴーントは2体か」

「髭の老人の方は、どこかで見た事あるかな…。でもナイトゴーントって?」

「黒いの見えてない…?(まぁ、あの出来事は思い出さない方が、良いかもしれないが)」

「髭の御老人だけでしょ?いるのって」

「いや…あぁ、少し違うんだ」

「もしかして、見えない方が良いようなもの?」

「見えたらそうだな…ランチが逆流するかもしれないから、このままでいいや」

 

つまるところ、ナイトゴーントには、何かしらのカモフラージュが施され、人間には見えないようになっているのか。

連中が見えていれば、その外見から、少なくとも辺りで悲鳴が上がるのは間違いない。

(だが、どこか妙だ…)

ナイトゴーントを連れていながら、連中に殺戮や誘拐などを行わせていないのである。

そうした危険な行為に及んでいないことからも、目的は別にあるとみるべきであろう。

探し物をしている様子でもあり、老人は1軒の家の前で足を止める。

レナの家だ。

インターホンを鳴らし、レナの母親が出てきたのが見える。

何か写真らしきものを見せているあたり、人探しでもしているのか。

手を出そうものなら、その時は改めて制裁を下すつもりでいたが。

とはいえ、しばし会話を交わして何かを手渡すと、老人はレナの家を後にしていった。

 

「追いかけるの?」

「いや…目的も何も分からない。まずは、レナの母親、アンナさんがあの爺さんと何を話したのか、聞いてからだ」

「オーケー」

 

物陰から出るとまず2人は、急ぎレナの家へと向かった。

レナの母があの老人と何を話し、聞いたか、知る必要がある。

その会話の内容が和真やレナに関することではない、という可能性はゼロとはいえない。

2人は、既にあの老人とは一度関わったことがあり、少なくともその関係は友好とは言い難いものである。

同じ街にいることも偶然だろうか…

 

「ただいま、お母さん」

「あら、レナ。それに和真くんも、早かったわね」

「ええ…はい。

実は聞きたいことがあるんですが」

「聞きたいこと?なんだい、和真くん」

「いえ、父親の高史さんではなく、アンナさんの方にです」

「何かしら」

「先程、白髭を蓄えた老人の来客があったと思います。

その御老人と何を話し、何を聞いたのか、教えてもらいましょう」

「えらく細かい特徴を挙げるじゃあないか。

確かにさっき、インターホンが鳴って、アンナが出たね。対応はしてもらってたから、私は知りようがないが」

「和真くん…キミと、レナの写った写真を見せられたわ。

それで…封筒を渡されたの」

 

そう言って桜木母は、玄関から1通の封筒を持ってくると、和真に手渡してきた。

 

「手紙か何かみたい。

和真くんがここにいると知っているのも、ちょっと違和感があって。

一応受け取ってはおいたのだけどね」

「…なるほど」

 

特に爆弾か何かの類では無いらしい。

開けてみると、チケットが2枚封入されていた。

(対邪神兵器…お披露目パーティーへのご招待?)

パーティーとは言っているが、どうやらこちらとしてはあまり喜べる類の宴ではなさそうだ。

開催場所も、招待状にご丁寧に記されている。

(この場所は…)

 

「何か、あまり良くない事でも書いてあった?」

「…俺とレナ、パーティーに招かれたらしいよ。今日の夕方だって」

「知り合いで結婚とかする子居たっけ?」

「いや、違うパーティーだ。…まぁ、人によっては祝い事になるんだろうな」

「ドレスとかは着た方がいいのかな」

「まぁ、そうだろうな。とりあえず、少し洒落た服にするのは構わないけど、動きやすいのにしてほしい」

「分かったわ。お母さん、何か持ってない?」

「あるわよ。こっちいらっしゃい」

 

桜木母と共にレナが部屋から去った後、残されたのは桜木父と和真のみとなった。

 

「あまりそのパーティー、嬉しくなさそうだね」

「ええ。でも行かなければならないんです」

「どうせなら、使っていない私のスーツを貸そう。ついてきてくれ」

「あ、ありがとうございます」

 

桜木父の後をついていき、彼の部屋にお邪魔することに。

昔から冠婚葬祭には足を運ぶ機会は多かったと言い、クローゼットにはネクタイやスーツが何着もセットにしてかけてあった。

少々考え込むと、桜木父はクローゼットから1セットを取り出した。

 

「タキシード、ですか」

「あとは、ブラック・タイ。ほら、それだ。その蝶ネクタイ。

夕方から夜のパーティーのようだし、少なからず祝事もあるようだからね。タキシードならば、問題はないはずだ」

「分かりました」

「靴は…えっと、これだね」

 

桜木父は、タキシードに合わせるコーディネートになっていると思しき、エナメル靴を渡してきた。

さっそく着替えてみると、袖も裾も問題ない。

黒い蝶ネクタイも締め、エナメル靴を履いて鏡の前に立ってみると、意外にもしっくりきていた。

 

「悪くないな」

「そう、ですかね」

「悪くないとも。似合っているぞ。ジェームズ・ボンドみたいだ」

「ありがとう、ございます。

殺しのライセンスはありませんけれどね」

 

タキシードを渡してくれた桜木父だったが…なぜか、まだ部屋から出ようとはしなかった。

彼女達が居ては、話せないことでもあるのか。

桜木父は、重々しく口を開いた。

 

「和真くん。監視者(ウォッチャー)、というのは知っているな?」

「…なぜ、それを」

「それは肯定、と受け取ろう。

文明を監視する事を目的とし、危機が迫れば警告してくる役割を担う。レナがそうだった…けど、ガタノゾーアは君が倒したね」

「何者なんです?あなたは」

「ある組織の一員だった…それだけさ。

私自身の過去は、多く語ることはできない。話を戻そう。

監視者(ウォッチャー)は、個人の事を指すわけではなく、正確には『能力』の事を指す。能力が宿る『器』となるのは、10代までの少女が多い。

レナの前は、アンナに宿っていたんだ。

そして私の役割は、その時ウォッチャーとなっていた、アンナを護衛する事だった。

だが…情けない話でもあるが、私はアンナに惚れた。一目惚れだ」

「護衛は…どうしたんですか」

「だが、惚れたからといって、成すべきことを成さないのは違う。

彼女がウォッチャーでなくなるまで、アンナの護衛は続けた。

そして、アンナがウォッチャーでなくなり、しばらくして産まれたレナが、今度は監視者(ウォッチャー)の力を宿すことになった」

「なぜ、それを今俺に話すんですか?」

「高校時代までは、私がレナの護衛を担ってきた。

だが先の事件でガタノゾーアが倒された以上、レナの監視者(ウォッチャー)としての役割はないに等しい。

護衛は、ある意味要らなくなったともいえるな。

だが…彼女の護衛を担う以前に、私はレナの父親でもある。

娘が安全、安心に生きてほしいと願っている。

八坂和真という信頼に値する人物ができた以上、和真くん…今度はキミが娘を、レナを護ってくれるかい?」

 

ここにきて、レナと監視者(ウォッチャー)について語られる事になるとは思いもよらなかった。

あのキャンプ以降、ウォッチャーとしての彼女が現れなかった、というのは、ガタノゾーアがいなくなったからか。

だが彼女を護ってくれ、ということなら、こちらは全力で応えるまで。

力強く頷く。

 

「無論です。何があろうと彼女は、レナは俺が護ってみせます」

「うむ、良い返事だ。キミなら任せられそうだ。ちなみに武器は要るか?」

「えっ、パーティーに行くんですよ?要りませんよ」

「確かに…そうだな。服も決まったことだ、2人を待つとしよう」

「ええ、はい」

 

桜木父の部屋を後にしつつ、ふと疑問を抱く。

なぜ「武器が要るか?」と聞いたのだろうか、と。

和真自身のことを、レナに全て話しているわけではない。

護身用に、と気を利かせてくれたのなら、理解できないこともないが。

(武器は持ってきていないわけじゃない。ただ、必要な事態になるのは想定外だからな…)

先ほどの会話を鑑みるに、桜木父は恐らく今回のパーティーについて、少なからず知っているフシはある。

もっとも下手に疑問を投げて墓穴を掘るよりかは、互いに黙っている方が良いかもしれない。

 

***

 

桜木父と共に、リビングへ戻った和真。

しかし、例のパーティーは、名前からして穏便に済むとも思えないのが、本心ではあった。

また一波乱ある気がするが、果たしてどうしたものか。

まだレナには、パーティーの詳細は知らせていないが…いずれ知ることにはなるだろう。

今回のパーティーの目的からして。

 

あれこれと考え込んでいると、レナと桜木母が戻ってきた。

ドレスに着替え終わったらしく、どのような具合かと、レナの方に目をやったのだが。

眼が離せなかった。

吸い込まれるように、とはこうした事をいうのであろうか。

 

「き、綺麗だ…」

「あ…ありがと」

 

絶妙に照れ臭く、互いに言葉を交わす。

桜木父は自慢げにしつつも、やれやれといったふうに口を開く。

 

「2人ともイチャつくのは、程々にしておくようにな。パーティー会場まで移動せにゃならんだろう?」

「あ、はい。…でも、会場までの足がないか」

「確かにそうね。というか、パーティーはどこでやるの?

それ教えて貰ってないわよ?」

「ここよりもう少し南かな」

「あら」

「ふむ、ならば2人とも着いてきてくれ。移動手段を提供しよう」

 

どうやら、桜木父は海を越えていく手段を持っているらしい。

飛行機か潜水艦あたりか…果たして。

桜木母の「いってらっしゃい」という声を背中に聞きつつ、桜木父とともに、和真とレナは後をついて地下へと降りていった。

 

地下へ降りる通路は、そう長くはなく、意外にも早く、3人はひらけた空間に出ることとなった。

そこには外洋へ通じていると思しき水路が1本あり、小型の水上飛行機が1機浮かんでいた。

 

「これ、ですか」

「これだ。燃料は充分に入っているし、点検も定期的に行なっている。安心してくれ」

 

桜木父はそう言ってくれたものの、念のためこちらも操縦席に入って、確認をしてみることにする。

 

「お父さん、私生まれて初めて見たよ。こんな飛行機」

「そうだな。レナには初めて見せた。もっとも、あまり表に出すモノではないし」

「なるほどね」

 

「この飛行機、先ほどおっしゃって頂いたように、燃料その他、問題はないですね。

ありがとうございます」

「いや、気にしないでくれ、和真くん。この機体も使うことはほとんど無くなっていたし、良い機会だ。使って貰えた方が、飛行機もいいだろう」

「そう、ですね。よし…レナ、何か荷物あるかい?」

「このショルダーバッグだけ。さっき、お母さんのを貸して貰ったから。ホラ、これ」

 

そういって、レナは肩にかけていたバッグを見せてきた。

どうやらそれが、そのショルダーバッグだったようである。

和真の方は、地下に行くにあたって、既に上からバックパックを持ってきている。

水上飛行機に乗り込むと、バックパックを座席の後ろに置き、機体のエンジンをかける。

和真は操縦を担当、副操縦士よろしく隣に座るのがレナとなった。

桜木父が壁にあるレバーを操作すると、海へと繋がる扉が開いた。

機体はゆっくりと動き出し、加速しながらポート・フィリップ湾へと出ると、間もなく機体は水面を離れて上昇。

パーティー会場へ向け、更に南下していくのだった。

 

 

 

和真とレナを見送り、地下水路のもとに残された桜木高史。

軽く息を吐く彼の隣に、音もなく1人の男が現れた。

 

「ようやく、ハネムーンか。お前の娘も、八坂の息子も成長したな」

「ああ。まだ、ハネムーンかどうかは分からないが」

「そうかい。ところで本題だが、今回の一件、我々、惑星保護機構も武力介入を行うべきとの意見もある」

「そのエプロンでは説得力に欠けるけどね」

「仕方ないだろう。

あの大学に喫茶店を構えてる主目的は、監視と情報収集だ。

だが、同時に喫茶店の店長として、表向きの仕事もせにゃならん」

「それは分かっているとも。だが、今回の件に関しては、既に切り札は送りこんでいる。惑星保護機構による介入は、必要ない」

「切り札を送り込んだ?まさか、さっきの2人の事を言ってるのか?!」

「無論さ。それに、こちらの居場所は割れている。下手に動いて、妻まで危険に晒したくはないんだよ」

 

 

 

 

 

 




あい、どーも。
低クォリティの小説を、不定期な感じであげている作者です。
今回書き始めたら、意外にもポンポン進んでしまったので3000字くらいの予定が、7000くらいまで行きました。
内容は大した事ないと思うので、そこはあまり気にしないでください。
珍しく和真くんが、私服以外を着ているってくらいですかね。
タキシードに、黒い蝶ネクタイっていう、外国のスパイみたいな。
まぁ、次回はパーティー会場乗り込むと思うので、そこで物語に大なり小なり展開あると思います。

久しぶりな雰囲気あるから、サブカルコーナーをやっても良いのだが。
あまり思いつかんのよね。
20日にデート・ア・ライブ アナザールートってのが発売されるから、それは買おうと思う。
いわゆるアンソロジーみたいなものらしいよ。
あとデート・ア・バレット最新巻。
実は、バレットはまだ2巻くらいまでしか読んでないのに、本だけは買ってるから、ただのコレクションになりつつある。
それ以外は特に…って感じだねぇ。
あまり最近、グッズを増やさないように心掛けてるところあるし。
場所取ってくからさ、グッズは。
カードゲーム然りだけど。

生きるのって疲れるし嫌な事も多いけど、生きてないとできない事があるって、ある種ジレンマじゃないかと思う。

まぁ、次の投稿いつか知らんけど。
じゃ、またねー





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