桜セイバーをあの漫画に放り込んでみた(仮) (諭吉)
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幕末

細かい設定とかそんなことは知らないでござるよ
俺の知っているキャラじゃないとか、なんか変……とか本当に考えちゃダメでござる


1853年、アメリカのマシュー・ペリー率いるアメリカ艦隊が日本の浦賀沖に来航した『黒船来航』は日本を真っ二つに分けるきっかけとなった……

開国か鎖国か……

倒幕運動、尊王攘夷。

朝廷と幕府の間に高まる緊張。

人々の心に巣食う不安や不満、怒りがとうとう限界を超えるのは必然の流れだったのだろう。

 

――新たな時代を!!

――俺達の国を創るんだ!!

 

刀を持った男達が叫ぶ。

一人、また一人と口々に雄叫びをあげ日本と言う国の大地を揺るがす。

 

 

この戦いの火種は瞬く間に日本全土を覆いつくした。

人々は剣をとり自分の信じる正義のために、これから始まる新時代のためにと戦いへとその身を投げうつ……

 

 

苛烈極まる闘争の日々の始まりだ。

そして混沌とした混乱の渦は

いつの間にか日本全土を包みこむほどの大きな戦火へとあっという間に広がっていた。

 

1868年の江戸城無血開城により始まる明治という新時代まで永きに渡る戦いの時代。

 

 

 

後にこの戦乱の時代の事をこう呼ぶ。

 

――『幕末』

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

百の理想に信念、百の正義に百の野望が渦巻く地獄のような日本の中でも特に異界であった激戦の地・京都にある剣客集団がいた。

 

朱に『誠』一文字の旗。

浅黄色にだんだら模様の羽織。

卓越した超人的剣腕。

死を恐れない「壬生に現れた狼」。

 

日本史史上最大にして最強の剣客集団。

 

それが『新撰組』

 

 

1864年(文久4年、元治元年) 維新志士が集う池田屋を襲撃した通称「池田屋事件」で勇名を馳せ、幕府の宿敵である維新志士を狩り治安を守った幕府最強の人斬り集団である彼らの名は日本人なら誰でも知っているであろう。

そして

圧倒的なカリスマと強靭的な精神力を兼ね揃えた新撰組局長・近藤勇を筆頭に

鬼の副長とよばれる土方歳三、二番隊組長・永倉新八など錚々たる面々の中でも天才剣士と呼ばれる者がいる。

 

名は一番隊組長・沖田総司。

 

 

 

 

 

 

「とまぁ、世間では天才天才と言われてますけど

私はそんなつもりはないんですけどね」

 

血のように紅く染まった満月を背に立つ少女は世間話をするかのように無邪気に話しかけてきた。

物腰柔らかで人懐っこそうな雰囲気を纏うまだ十代後半であろう少女。

桜を思わせるような髪の色をし、白く美しい肌、まだ幼げが残る顔と声。

血で血を洗う激戦の地にいるとは思えない可憐な少女。

しかし内に秘めた剣気は恐ろしい程するどく研ぎ澄まされており先ほど彼女が斬り捨てた浪士の返り血が彼女の頬に紅くついている。それが幼さの残る顔を恐ろしいほど美しく染め上げていた。

愛刀・菊一文字則宗の刃が月光に妖しく映える。

 

 

「……女の身でありながら剣豪揃いを押しのけ、新撰組の組長にまで上り詰めたその剣才を天才と言わずなんというのだ? 新撰組一番隊組長・沖田総司」

 

彼女に話しかけられた男が数歩の間合いの外から答えた。

此方の男もまだ元服仕立ての、青年にもなり切れていないような感じの男だ。

だが彼を見た新撰組の若い隊士達は腰を抜かして二、三人まともに動くこともできない。

超一流の剣士の放つ恐ろしいほどの剣気の渦に呑まれ息すらできないのだ。

そんな彼らのことなどまるで最初からいないように沖田と男は会話を続ける。

 

「ひどいな。その発言、女性差別ですよ? 別にかわいくて百人中千人が思わず一目で心を奪われるような超人的美少女でも組織の頭を名乗っても良いと思うんですけど。きっとこれからの時代はそういう男も女も関係ない平等な世の中になって行く筈です……ってこれ幕府側の私が言って良いセリフなんでしょうか?」

 

う~んと顎に手を当て悩み、

「でも平等な社会に別になってほしいって考えるのは幕府側だろうが攘夷側だろうが関係ないですよね~」と呟いている少女の姿を見るとなんと言って良いのかどこか毒気が抜け落ちていく。

百人中千人とか剣の腕が天才的とは言ったが別にそこまで褒めた覚えはないとか突っ込みどころは多々あったが男は其処には触れない。

もはやこの少女の扱い方に馴れてきたのだなと心で呟いた程度だ。

しかし友人のように馴れ合うような事はしない。

剣を握り向かい合った以上決着がつくまで決して隙を見せてはいけない。

この沖田と言う剣客と数知れず剣を交えてきた男はもう十全に知り尽くしている。

この目の前の少女が無情の修羅であることなど……

 

「しかし、まぁ……アナタに剣の腕を褒められるのは正直うれしいです。

……最強と謳われる緋村抜刀斎さんに」

 

長州派維新志士・緋村抜刀斎。

またの名を人斬り抜刀斎。

 

赤い髪に左頬に付いた十字傷が特徴の短身痩躯の優男。

修羅さながらに人を斬る超一流の人斬り。

一対多でも何の意味も無いと言わんばかりの妖術染みた恐ろしい狂気の殺人剣。

彼の前では屈強な体格の幕臣たちでも赤子同然。

抜刀斎はこの幕末という時代の中でも既に最強の存在なのだ。

勿論新撰組もこの敵を黙って見過ごしていたわけではない。

京の都を守る者として最強の宿敵として幾度となく両者は剣を交えてきた。

だからこそわかる。

この男は強い。人外を超えた化け物としか言えない存在であると。

 

恐らく新撰組の中でもこの男と剣を交えるのは自分以外では近藤局長、土方さん、永倉君。そして斎藤さんくらいのものか。

 

さて戦いの前のおしゃべりも、もうここまででいいだろう。

この先は剣で語り合う死合の時間だ。

 

「行きますよ。緋村さん」

 

沖田は腰に差していた剣を抜く。

――刹那

瞬きにも満たない一瞬の間で沖田は抜刀斎の懐に踏み込む。

 

“縮地”

 

神速を超えた超神速。

初速から一気に最高速度にまで達する幻の体術。

コレが決まった時まるで仙術の類を用いて瞬間移動したかのように見えることからその名が付いた。沖田総司の得意技である。

 

狙うは首。

左下から鋭く斬り上げる。

並みの使い手なら太刀筋を視認することすら不可能の必殺の一撃。

獲物の刈り取らんと壬生狼の牙が襲い掛かる。

 

――殺った

 

常人なら何も気づかないうちになすすべなく確実にその首が飛んでいるであろう。

 

そう常人なら。

 

「甘い」

 

必殺の一撃も先読みし太刀筋を読めるのなら脅威ではない。

狼の牙を超人的な超反応で上体を捩じるように紙一重のタイミングで躱す。

刀を大きく振り抜いた形で固まっている沖田。当然この大きな隙を見逃すわけがない。

抜刀斎は躱した反動を入れ交差するように抜刀された刃が沖田の目前にまで迫った。

最強の名は伊達ではない。

沖田の剣を、沖田の考えを一瞬で先読みし必殺の剣を撃ち放つ。

緋村抜刀斎の名の由来。

超神速の抜刀術。

それは“速い”ではない。“疾い”

彼の放つ一撃は閃光の如し。

飛天御剣流は相手の行動を、体格、骨格、筋肉の動き、得物の特徴、そして相手の心や感情から意識を把握し見切る事を極意とした殺人剣。

見切りから導き出した到達点に超高速の体捌きと剣捌きで放たれる一撃とは相手からすれば何が起きたのか分からないまま倒されているに等しい。

相手の剣を読み相手が読めない剣を叩き込む。

相手に出方を伺わせるのは二流三流の剣客。

真の剣客ならば剣気を内に秘め必殺の剣で相手を斬り殺す。

 

 

 

鞘から光の如く放たれた刃。

抜刀斎の代名詞ともいえる絶対の大技。

無防備な態勢で硬直する沖田に打つ手はない。

勝負はついた……

 

そうコレが唯の一流剣士相手なら抜刀斎の勝利に決まっていただろう……

 

だが。

 

超一流の剣客はそう簡単にはいかない。

いくわけがない。

 

完璧に決まったと思われた一撃をまた沖田も読み切っていた。

小柄な体を活かし潜り込むような形で剣をよける。

化け物レベルの鬼才同士が戦うというのは相手の剣に対抗しいかに攻めるかの単純明快な話を息もつかぬ瞬きの中で行う。

これはもはや常人にはとても到達できない一つの境地であるだろう。

 

沖田の刃がさらに右上段から大きく刃を打ち込む。

これを抜刀斎の超神速の反応を持って受け止める。

両者の剣ががっちりとかみ合った。

実に恐るべきは沖田の超反応。

高度な剣の駆け引きに読み合い。

沖田と緋村の視線が交わる。

 

「……」

 

「……♪」

 

 

両者とも超一流の剣客、両者とも無類の人斬り。

こんな一合い互いにとって唯の挨拶にも満たない。

 

両者ともに跳ねるように後ろへ飛んでまた剣戟を交えようとした。

沖田の右平突きが抜刀斎の顔面目がけて撃ち込まれる。

ソレを右によけた。頬から血が飛ぶ。

沖田の懐にもぐりこみ「ォオオオ!!!!」

吼えながら放たれた左横なぎが沖田に決まる。……いや、縮地で躱された。

胸の所がきれて晒しが現れたくらいだ。

――両者を中心に突風が巻き起こりどこか冷たい、いやに重い空気がその場を支配する。

 

「この反応に恐ろしいほどの鋭き剣閃……。やはりお前は天才……いや鬼才というべきではないか? 沖田」

 

「……あなたも大概に人外染みた人だと思いますけどね。

普通いませんよ。あんな鬼の首も跳ね飛ばせそうな抜刀術の使い手なんて……

まさに最強の人斬りです、……あははは、やっぱり良いですね緋村さん。

あなたの飛天御剣流ますます凄みを増してきているようだ」

 

これまで幾度となく剣を結んできた。

相手の力量はわかっている。

お互い本当の化け物。

これからが本当の戦いだ。

火花散る斬撃の打ち合いはさらに熱を持って果てしなく続く。

 

「……ときに沖田よ」

 

「なんですか?緋村さん?」

 

「お前、もしかして“びーむ”とか隠し持っておらんだろうな?」

 

「!? なにを突然言うんですか!? “びーむ”なんて撃ちませんよ!!!!

アナタは私の事をどう思っているんですか!!?」

 

「いや、なぜか今、妙に色黒で無表情な沖田が“喰らえ!なんかすごいびーーむ”と叫んでいるような光景が見えたのだが……本当に撃てないのか?」

 

まじんさんびーーーむ!!!!

 

「ほんっとうに失礼な人ですね!!あなたは!! 私が“びーむ”を打つとか人外扱いして!! あなただってそのうち次元屈折現象で同時に九つの斬撃とか撃ちそうなくせに!!!!」

 

 

くずりゅうせん!!!!

 

「ええ。わかりました。いい機会です。あなたが本当に人をやめてしまう前にこの沖田さんがあなたを斬ってあげます」

 

「なにやら剣に先ほど以上の気迫がこめられているような……怒ると小じわが増えるしよくないぞ。剣筋も読みやすくなるし……そんな顔をしてると嫁の貰い手も無くなるぞ?」

 

「…………キェェエエエエエエエエ!!!!!!」

 

 

鬼の副長の如くすさまじい表情をした沖田の剣が抜刀斎を襲う。

 

煌めく剣閃が見る者を圧倒、いや息を呑むのも忘れさせるような言葉に表せられない程の衝撃を奏でる。

これが戦い、いや……これが幕末!!

 

沖田総司と緋村抜刀斎。

このような猛者が跋扈し支配していた地獄こそ幕末!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちっ__

何を腑抜けた事をしている……

この程度では戦いとはとてもいえん。ただのチャンバラだ」

 

二人から離れた場所にある長屋の壁に寄りかかり男はこの時代珍しい紙煙草を懐から出して一本口に運ぶ。

フ~~っと紫煙を吐き出し呟いた。

 

 

 

 

 

 

「……阿呆どもが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きな衝撃を放った刃の打ち合いと同時に土煙を上げて両者後ろへと飛ぶ。

ザァアアっと一陣の風が二人の間を駆け抜け木立が揺れた。

一体どれだけ時間が経ったのか分からない。

一刻か、一日かそれとも数秒なのか。

時間の感覚も曖昧になってしまったようだ。

沖田はふぅっと息を吐く。

今の所互いの実力は拮抗しているがまだお互い奥の手を出していない。

このまま戦いが続けばどうなるか。

今は未だ大丈夫だが沖田には一つ大きな弱点がある。

もしあれが顔を出したら……長期戦は不利だろう。

勝負を決めるなら……

 

「沖田 一つ訊きたい」

 

「なんです?緋村さん」

 

仕切り直す前に抜刀斎が何か問いかけてきた。

もう何度も殺し合ってきた仲だが彼が自分に何か訊きたいことがあると言ってくるなんてちょっと意外で目をぱちくりさせてしまう。

 

「お主は何のために戦う? 何のために剣を握る?」

 

「妙なことを訊くんですね緋村さん」

 

あの人斬り抜刀斎が何を訊くのかと思ったらそんな事かクスリと思わず笑いがこぼれてしまうではないか。

 

「私達は所詮人斬りです。

上に斬れと言われれば斬る。ただそれだけです。

斬り合いの場で主義主張なんて何の意味も無いですからね」

 

「そうか。俺は違う。

俺は人々を守って新しい時代と共にその人々と生きるために戦う!!」

 

「青いですね。緋村さん……でも残念ながら」

 

沖田は刀を構える。

地面に対し水平になるような状態。

新撰組隊士独特の構え平刺突の構え。

沖田の纏う空気が一変した。

まさに修羅へと。

 

「……アナタは此処で死ぬんですけどね」

 

緋村も刀を鞘に納め腰を深く落とす。

さきほどの斬り合いからさらに一段剣気が強くなる。

 

「おれは未だ死なない……が教えてくれた人々が営む小さな幸せ。

それが多くの人々が幸せをつかむ新時代を作るまで……俺は剣を振るい続けなければいけないんだ」

 

 

 

 

 

 

――――互いの信念と正義がぶつかって火花を散らしたこの時代

 

 

 

 

 

 

「一歩音超え、二歩無間、三歩絶刀……!『無明三段突き』! 」

 

 

 

 

 

 

 

――――人はこの時代をこう呼んだ

 

 

 

 

 

 

『飛天御剣流 双龍閃!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――幕末と

 




あなたのカルデアに英霊が召喚されました
宇水さん(ランサー)星3
(#眼Д心)< 何が可笑しい!!


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明治

題名を「人斬り沖田さん」にしようか
「るろうに沖田さん」にしようか
考え中。



 

時は十年流れ新時代――明治。

狂乱の時代からようやく訪れた平和の時代。

四民平等の誰も、もう泣く事もない幸福の時代。

開国を果たしたことにより鉄道をはじめとした華やかな西洋の文化が各地に目立つようになった。

暗い夜にはガスの街灯が燈る様になり横浜や神戸など大きな港がある街には外人の姿もちらほらと見えるようになっている。

庶民の間にも洋服を着た人々が目立つようになってきており流行に聡い人ならばコーヒーも嗜んでいるくらいだ。

そして一番の人気といえば牛鍋であろう。

牛鍋とはなにか?居留地の日本国外の人々から食肉文化が伝わってきた事により全国へと広まった関東風すき焼きみたいな料理と思ってもらえればいい。

ここ東京でもソレは人気の料理である。

巷で話題一番の牛鍋屋 赤べこにて。

 

 

 

 

 

お天道様が一番高い所に上ったころ。時は丁度昼くらい。

お腹をすかせた人々が次々と店の暖簾をくぐり店内は活気ついている。

今日も赤べこは大繁盛で大忙しのようだ。

看板娘の妙さんも燕ちゃんも店内をかけずりまわっている。

この店の日常風景である。

そしてお座敷席の一席。

剣道の出稽古の帰りにふらりと寄った常連客の3人が舌鼓を打っていた。

 

「弥彦!! そんなに慌てて食べると」

 

「うるせぇ!! せっかくの牛鍋なんだ、もっとくわねぇと……うっぐ!!」

 

「もう!だから言ったのに」

 

居候している道場の女師範代神谷薫とその弟子明神弥彦の微笑ましいやり取りを見て剣心は笑う。

なにがそんなにおかしかったのか?ただの日常の一コマであろう光景だがそれがうれしいのだ。

 

人々が幸福を得られるように、もう誰も泣かなくていいように……ただ平和な時代を迎えられるようにとあの幕末の時代を戦い、そして逆刃刀を腰に下げて“るろうに”として

流れてきた。

あの時代がおわってすぐに人々に幸福が訪れたか?

ソレは否。

形だけの維新は成立し明治となってもまだ古き時代に苦しめられる弱者はそこにいる。

明治となった今の世にもまだ悲しみを消すことはできていない。

幕末そして明治の時代はたしかに変わった。

だがまだ真の平和の時代へはまだまだ……

全ての人を救おうなんて考えるのは欺瞞なのだろう。

所詮自分は人斬り。この手は血に染まりきっている。

そんな自分が人助けとは師匠が知ったら馬鹿とでもいうだろうか。

だが馬鹿でも阿呆でも何でもいい。せめて目の前にいる誰かを救えれば……笑顔を一つでも守れればそれだけでいい。

ソレを願い日本中を回りつづけてきた。時に人を救い、時に力及ばず救えなかったこともあった。

剣を幾度となく振り続けてきたが理想を叶えることは簡単ではない。

分かっていたことだが……

 

『ソレを腰に剣客やってみな 自分が言ってることがどれだけ甘いか身に染みてわかるってもんだ』

 

この刀を打った男が最後に自分に言い捨てた言葉だ。

 

『もう決して人を斬らず人を守る道』

――なるほど

確かに自分がどれだけ甘い事を言っているのかソレはこの10年の月日で改めてよく分かった。

自分の力だけでこの日本を救うと言う事は出来ないかもしれない。

剣は凶器 剣術は殺人術 どんな綺麗事やお題目を並べようがそれが真実。

所詮は人斬りの自分にできることなどないかもしれない。

 

「すいませ~~ん、お水持ってきてください!! 大至急!!」

 

「く、くるちぃい」

 

だが確かに目の前にいる人々の顔に笑みを浮かべられるようになった。

たったそれだけの事だがそのことがなぜかとてもうれしく温かい気持ちにさせてくれた

 

緋村剣心はのほほんとした笑顔で肉を口に入れ……

 

「はい!! お客さんお水です!! 慌てて食べたらいけませんよ」

 

沖田さん霊衣解放 赤べこ従業員の和風エプロンスタイルで颯爽と登場!!

 

「こふっ!!」

 

飲み込もうとしていた咥内の肉が変なところに入った。

いきなりのクリティカルヒットが剣心に叩き込められた。下手したら即死だったかもしれない。紙一重。

これほどの衝撃は幕末の戦場ですら喰らったことはない。

こんな隠し玉を持っていたとは、油断した。

きさま自分の年齢を考えろ。お前確か斎藤よりも歳う……

 

ガッと剣心の肩を掴み「おひさしぶりですね 緋村さん~~会いたかったですよ~~。え?相変わらず若くて美人?アハハ!! やだなぁ照れるじゃないですかぁ。まったく緋村さんてばぁ!!」

目が笑っていない笑顔でブンブンと剣心を揺さぶる沖田。

十年の歳月の間に読心も会得していたのか?

 

「お、おろぉぉ……」

 

「えっ?エプロン姿の沖田さんがかわいくて思わずときめいてしまったですって? やだなぁ緋村さん!! 相変わらず上手なんだから」

 

お盆で口元を隠すようにして照れて恥じらう新撰組一番隊組長……

鮮血を浴びて冷酷に嗤うような非情の人斬りが頬を染めて照れる乙女のような反応である。

 

「ん?昔を思い出してしまって二人っきりでお話をしたいですって? 

緋村さん 私を口説くつもりですか?あははは!!!! いいですよ丁度休憩時間ですし。お妙さん!! ちょっと出かけてきますね、行きますよ緋村さんデートです。デート!!」

 

剣心を脇に抱えて縮地で店を飛び出していく沖田。

沖田総司恐るべし……剣心は薄れゆく意識の中でそう思った。

 

「「け……剣心!!?」」

 

一瞬の間の訳の分からない妙なコントで

薫と弥彦は何が何だか呆気にとられてしまい気が付いたときには剣心は連れ去られた後であった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ久々ですね。緋村さん。かれこれ十年ぶりでしょうか?」

 

河原の橋の下。

昔と全く変わらない顔で沖田はニコリと剣心に微笑みかけた。

『昔と全く変わらない』此処重要。

なんか下手に突っ込んだら首を即座に刎ねてきそうな感じがして剣心は其処に触れないようにした。

女性に歳とかいうのはやっぱり無粋であろう。

うん。

 

「まさかお主が生きているとは驚きでござるよ。沖田」

 

てっきりどこかで血を吐いてとっくにご臨終しているとばかり……

 

「むぅ!! なにやらさっきからやたら失礼な事ばかり考えてませんか?

酷いですよ緋村さん。あなた私の事をなんだと思ってるんですか?」

 

「人斬り病弱娘」

 

「斬りますよ」

 

「ごめんでござる」

 

アハハと談笑しているがお互い目が笑ってはいない。

ピリピリとした空気が辺りに充満している。

飛んでいる鳥たちも向きを変え春の陽気な温かいも肌寒く感じる。

異常な空間。

互いに腰の刀の鍔に指が掛かっておりいつでも抜刀できるという臨戦の状態だ。

 

「……そんなに気を張り詰めなくても良いですよ。此処でアナタと決着をつける気はありませんし」

 

「お主の場合その言葉を信じると背中から斬られそうな気もするが」

 

やれやれと首を振り、放っていた剣気を収める剣心。

剣を交える気は無いのなら自分に異存は無い。

十年前の決着など別に拘る気も無い。

その場に張りつめていた緊張が消え

川から清流の涼やかな音が聞こえてきた。

そして沖田も刀から手を離し、そのまま両手を上げて……

くるりとその場で回って見せた。

 

「おろ?」

 

一体何の真似だ?回天剣舞?

沖田の謎の行動に首を傾げていると

沖田はなにやら頬を染めて恥じらうように剣心に問いかけてきた。

 

「ところでどうです?この沖田さん……かわいくありませんか?ねぇねぇ?」

 

「年齢を考えなければ……」

 

「やっぱり斬りますか?」

 

「わるかったでござるよ」

 

いつのまにか抜刀し剣心の脳天から必殺の一撃を叩き込んできた。

沖田の一撃を真剣白羽どりで何とか受け止めたがやばかった。

刀から伝わってくる「次に年齢の事をネタにしたら今の倍の速さで叩き斬る」と言う強い意志。流石の剣心もヒヤリと汗を流して肝に銘じた。

『もう歳をからかうのは止めよう』と。

とりあえず納刀してくれたのでほぅっとため息を吐いた。

こんな形で十年前の決着というのは些か考えものだろうし良かったと思う。

ごほんと沖田が咳払いをして場を仕切り直す。

どうやらどうしてもこの格好の意味を話したいらしい。

 

「いやぁ、沖田さんちょっと前からあの店でちょっとした“あるばいと”を始めたんですよ」

 

「あるばいと?」

 

「ええ、ちょっと道端で血を吐いて動けなかった私をお妙さんが看病してくれたのがきっかけでしてね」

 

「また血を吐いて動けなくなって……よくこの十年生き延びてこれたでござるよ。それで?」

 

何処か呆れたような顔で先を促す。

新撰組という最強の宿敵に対しても見る目が変わってしまった気がする。

あぁ、頭が痛くなってきた。

 

「恩返しの代わりにあの店で看板娘兼用心棒兼取り立ての仕事を……」

 

「まて。色々突っ込みたいところがあるでござる。……取り立て?」

 

赤べこは牛なべの店であって阿漕な金の貸し借りなど無縁の店の筈……

剣心もさっきまであの店にいたが何か変わっていたようなところ等なかったと思うのだが。

 

「なんでもあの店でいつもツケを払わずにいる困った常連客がいるというので、正義の新撰組としては放っては置けず三日前の晩に悪・即・斬を決めてきました☆

あっ大丈夫。命はとらずにおいてあげましたから。ええ。

着ぐるみ全部剥いでツケを払わせただけです」

 

「さのーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

まさかの池田屋事件左之助長屋バージョンが起きていたとは。

無駄に頑丈な左之助と言えど大丈夫か?

あとで甘味でももって見舞いに行こう。

 

「そんなわけであの店で働き始めたんです。沖田さんがいる限りもうタダメシとかさせませんから」

 

むふーーっと胸を張って息巻く沖田。

新撰組一番隊組長がそんな“あるばいと”なんてやっているなんて……

ああ。なんか空虚な気分になってしまったでござる。

 

「るろうになんて言いながら働きもしないでゴロゴロしている誰かとは違いますからね」

 

口元を吊り上げて小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

――お前が何をしていたか全部お見通しだとでも言いたげだ。

――――

――

沖田の目から光が消えた。

 

「お見通しですよ。アナタが神谷道場で居候を始めた時から……

幕末のあの時からずっと……アナタが変わっていない事なんて」

 

――沖田は何が言いたい?

 

「人斬りは所詮死ぬまで人斬り。他の物には決してなれない。

例え時代が幕末から明治に変わろうが私達は変わらないんです」

 

人斬りは所詮死ぬまで人斬り……

あの狂人が最後に言い残した言葉だ。

その言葉は剣心の心に強く刻み込まれている。

 

 

 

「さて、私もそろそろ赤ベこに戻りますね。あまり時間をとると妙さんも燕ちゃんも大忙しだろうし緋村さんと違って私は働き者なんですよ。ああ忙しい忙しい。私もるろうにやろうかな」

 

こいつ、年歳をからかった事を根に持っているでござるな。

人の事を『明治のるろうニート ☆5』扱いしてくるでござる。

執念深い奴でござるな。

斎藤といい沖田といい新撰組とはやはり相容れぬ仲でござるよ。

 

剣心が嫌な顔をするのを楽しむように沖田は「ふふ」と童女のような笑いをひとしきりした後赤べこへと足をすすめた。

 

「では私は此処で。

緋村さんもちゃんと働いてくださいね。いつまでも根無し草のるろうにを言い訳にしているとどこかの警官に突き殺されてしまいますよ」

 

またさり気無く毒を吐いて行く沖田。

毒じゃなくて血を吐いて倒れてしまえ。

 

剣心も沖田を見送った後左之助の様子を見に行こうと長屋へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――新撰組 沖田総司

この剣客が現れたことはおそらく何かの予兆なのだろうと妙な確信があった。

そしてそれが絶対に避けて通れない。運命であろうということも。

彼女と共に来た動乱の嵐に剣心はまた飲み込まれようとしている。

なにかおそろしい巨大な闇が覆い尽くしていくような……柄も知れない不気味な感覚に剣心を感じ取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「幕末の炎はまだ消えてませんよ」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 




鵜堂刃衛 ☆3
「我! 不敗! 也!

我! 無敵! 也!

我…最強なり!」


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幕末の復讐者

1868年慶応4年。

王政復古の大号令により政権は徳川から天皇へと返上されたものの、幕府の力はまだまだ絶大なものであった。

薩摩藩の西郷隆盛は相良歳三ら薩摩藩士500人あまりを集いて江戸で強盗や放火などを行い、旧幕府側を挑発する行動を起こした。

旧幕府側が薩摩を攻撃するように仕向けるためである。

この挑発に乗ってしまった旧幕府側は西郷の思惑通り江戸の薩摩藩を襲撃。

これを機に1868年1月。鳥羽伏見の戦いが始まった。

鳥羽伏見の戦い、上野の彰義隊の戦い、会津戦争、

1869年6月の新撰組鬼の副長土方が戦死したことで知られる箱館戦争までの一連の戦いを「戊辰戦争」と呼ぶ。1868年が干支(えと)で戊辰(つちのえたつ)の年にあたるので、この呼称がつけられている。

この戦いは官軍側の勝利で情勢はほぼ内定、元号は明治へと変わり新しい時代が始まったのである。

 

その戊辰戦争の最後。とある戦場であの男は生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーその男は修羅だ。

 

 

幕末という地獄が生んだ悪しき焔の権化とは彼のことを指すだろう。

内に秘めた狂気と兇気。尋常ならざる人外の化け物。

あれはもはや人間ではない。

あんなモノは鬼をも超えた修羅としか言えない。

味方である者達も男の狂気に心底恐怖に震えた。

なんて恐ろしいほど強い男だ。

沖田・・・・・・いや抜刀斎をも超えるのではないか?

こんな怪物がいて良いのか?

 

おぞましいほどの人間を斬り、斬り、さらに斬りつづけ、斬り殺してきた亡者どもの怨念を、恐怖、絶望、負の感情すべからく染みこんだ妖刀を高笑いしながら振るう。

群がる幕府の侍どもを一人、十人、百人一方的に蹂躙し惨殺していく。

戦いとすら呼べない虐殺劇。首を跳ね飛ばし、顔を串刺しにし、胴を真っ二つにし、

兵どもを数人まとめて男の秘剣を用いて焼き殺す。

血しぶきを浴びながら嗤う。笑みが止められない。

男は疲れない。むしろ剣気がさらに増し高まっていくのを実感していた。

もっと獲物を食わせろ。

もっと敵を殺させろ。

戦いの愉悦に浸らせろ。

男が振るう刃の前にはどんな猛者であろうとただただ無力。

逃げ惑い、命乞いをするものも現れたが男は何の感慨もなく無慈悲に切り裂くのみだった。

いや。

何の感慨もないというのも違うか。

男の中は一人一人人を殺すたびに湧き上がってくる感情があった。

 

楽しい!!

楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい!!

楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい!!!!

幕末とは本当に楽しい時代だ!!!!

 

素晴らしい時代に生まれたことに男は歓喜する。

面白いとおもわないか?

この自分の力だけで全てを蹂躙する喜び。全てを支配し手に入れていく喜び。

自分が最強であると実感するこの喜び。

 

尊王、倒幕、攘夷、開国。

たいそうな理由をつけたところで詰まるところ一つの真実に突き当たる。

 

ーー力こそすべて。

この世は所詮弱肉強食。

力のある者だけが生き、何もできない弱者はただ無様に死ぬだけだ。

簡単なことだろう?

この理に従うのならば

最強であるこの俺こそが天下の覇権を握るのにふさわしい。

 

男の名は志々雄真実。

 

この世のすべての悪の頂点に立つ魔王。

すべてを支配する最強の覇者だ。

 

戦いの最中彼は心の底から思いっきり笑い声をあげ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場にいた有象無象の雑魚を何百人殺しただろう。

いつのまにか敵を一人残さず皆殺しにしていた。

屍はどれも恐ろしいものを見たような恐怖に引きつった顔をしていた。

その屍の一つに腰かけて志々雄はふうっと一つ息を吐き出す。

 

(本当いい時代だぜ。この時代はなァ)

 

心地いい戦いの余韻が彼を浸らせ酔わせていた。

だがまだまだ満足できない。

男の中にある尋常ならざる功名心と支配欲。かの抜刀斎の後継者として影の人斬りになったのはある野望のためだ。

日本を支配する。

乱世に生まれた男なら当然抱く野望だ。

自分の実力を維新志士の幹部に知らしめさせてきた。坂本龍馬暗殺を初めとした弱みも握ってきた。もはやこの男の存在は無視ができるようなものではない。

倒幕、攘夷なんてのは序の口だ。本当の戦いはまだ先にある。

国盗りこそが真の戦いであるのだ。

 

「よくやった!! これで我らの勝利がまた近づいた!! 新しい時代が近づいたのだ!!」

 

「のっぶ」

 

志々雄の戦いに腰を抜かしていた上官共が媚びた笑顔を浮かべて彼に近づいてくる。

別にこんな奴らどうでもいい。

志々雄にとってこいつらは獣同然の豚にも等しい存在であり気にもとめるまでもない雑魚だ。

豚がブーブー言っているのをいちいち気にするまでもない。

いや一つおかしい戦国大名のような変な二頭身みたいなのが何体かいるような。

志々雄は考えることをやめた。

無数の屍の山を背後に懐から煙管を出して紫煙を吐き出す。

 

(この国を盗るのは幕府でも志士でもない。この俺が頂点に立つにふさわしい)

 

今の世にいるもので最強は誰か?

沖田総司?斉藤一?緋村抜刀斎?いや違う。最強なのはこの俺!!

その辺に転がっていた死体に向かって徐ろに手に持った新井赤空の殺人奇剣『無限刃』を振るう。

なんということか。

その死体は恐ろしい妖術をかけられたかのように瞬く間に炎に包まれて一瞬で灰へと変わってしまった。

その様子を見ていた上官はひぃいっと腰を砕き失禁してしまっている。

刀を一振りし、刃についた血潮を飛ばして志々雄は楽しげに嗤う。

 

--そうだ。

この力の前にはどんな奴でも敵ではない。

 

 

刀に血を、脂を染みこませ更なる強さを身につけたという己の力の過信。

その油断が彼に隙を生んだ。

 

「ごっ!?」

 

気にも止めていなかった上官の男がいつの間にか手に刀を持ち志々雄の背後から斬りかかってきたのだ。

不意に放たれた斬撃は頭蓋骨にまで届いた。

志々雄の視界が血に染まり立っていることもできない。その場に倒れ伏してしまう。

志々雄の動きが鈍った。その瞬間周りにいた他の仲間であるはずの攘夷志士からも全身に刀を突き刺す、突き刺す、さらに突き刺す。

ずぶりずぶりとした音を立てながら志々雄を刺す男たちの顔には余裕などない。

もしかしたらこの化け物は立ち上がって自分達を殺してしまうかもしれない。

この程度でこいつが死ぬなんてあり得ない。

こいつはここで確実に殺さなくてはいけない。

新しい時代を作り上げるためにはこいつはいてはいけないのだ。

 

「まだだ。まだ生きているかもしれない。油をかけて火をつけろ」

 

「のっぶ」

 

志々雄の身体に念入りに油をかけ火をつけるとゴウっと音を立てながら炎が立ち上がった。

灼熱地獄というのがあるのならこのような光景なのだろう。

あっという間に志々雄の身体が火に包まれる

 

一体なぜ?どうしてこんな事を?

許さない。

味方であるはずの者からこんな仕打ちを受けた疑問や悲嘆。憎悪。

常人なら普通そう考えるのだろう。

そんな事わざわざ考えるまでもねぇ。

志々雄に浮かんだのはそんな程度ちっぽけなことではない。

この炎は教えてくれる。

真の強さとは何か。

力とは何か。

高みとは何か。

 

(ふ、ふはは。ふはははははは・・・・・・フハハハハハ!!!!)

 

炎の中から真っ黒の身体で出てきた志々雄は狂ったように笑い続ける。

時代が自分を選んだ。

だってそうだろう?錦の御旗を天は直に今俺の手に渡して来やがったんだから。

日本の天下を盗る?

もうそんなちっぽけなものじゃ俺は収まらない。

この俺の器はもっと大きなものを求めている。

 

「そうだ・・・・・・これが力だ」

 

右手に無限刃を、左手に黄金に染まる杯を持ち志々雄は嗤う。

幕末の復讐者はさらに燃える焔をその身に宿して嗤い続ける。

 

男は止まらない。

この世のすべてを地獄へと変える動乱を誰にも止めさせない。

時代を作り上げるのはこの志々雄真実だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




CCOに聖杯渡しちゃった。

あと一つ皆様に質問があります。
菊一文字則宗って2本以上あるの?
刀にはあまり詳しくなくて・・・・・・
知っている人がいたらちょっと教えてほしいです。

作中で坂本龍馬暗殺の件を入れましたが原作には一切そのような話はありません。
この話の中だけの設定です。あしからず。


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オキタ・J・ソウジ

シリアスではないギャグ回です。
どうしてこうなった?


新撰組の名を聞いて最初に浮かぶ事柄は何か?

その質問をするとやはり思い浮かぶのはこれだろう。

 

「池田屋事件」

 

ぐだぐだ邪馬台国に参加していたマスターなら知識があるだろうが知らない人もいるだろうので事件のあらましを少し説明しよう。

 

ーーーー文久3年8月18日 

政変により反幕府勢力の中心として京都朝廷に取り入っていた長州藩が幕府の京都守護役を任されていた会津藩などの勢力により京都中枢から追いやられ、佐幕派が主流となる。

尊王攘夷派の浪士達はその流れを変えるべくある計画を立てた。

それが京都御所に火をつけ混乱している最中に会津藩主・松平容保や中川宮を暗殺、さらに孝明天皇を長州に拉致してしまおうという過激なテロ行為を企てただったのだ。

当然この計画が実行に移された場合京都どころか日本中が大混乱に包まれてしまうのか想像に堅くないだろう。

新撰組による三条大橋付近の見回りが強化されていく緊迫した空気が京都を包んでいた。

1864年(元治元年)6月5日 早朝。

京都守護職会津藩お預かりの浪士組として治安維持にあたる新選組は、過激派浪士中心人物の一人である古高俊太郎を尋問することによりこの計画が真実である事を知る。

ちなみにだがこのとき古高俊太郎はなかなか口を割らなかったために土方歳三が

ドギツイ拷問を行い、情報を吐かせたと言われている。FGOの土方の拷問スキルはここから発生したとかなんとか。

興味があったら調べてみると良い。

一応先に言っておくがこの時代の拷問は結構エグいしグロい。調べるなら注意されたし。

 

同日 22時頃。

京都のある旅館池田屋に近藤、沖田、永倉達壬生狼が討ち入りを行った。

この事件が池田屋事件。

京都大火という計画を未然に防いだ新撰組の名は瞬く間に一躍日本中に広める事になる。

そしてこの事件により長州藩論は硬化をし、禁門の変の原因となるという歴史が続いていく。

 

長倉新八は緋村剣心も斉藤一も事件に参加したような介護録を残したいようだが二人とも事件には参加してはいないから間違えないように。ここテストに出ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時代は流れ明治の東京。

 

野良犬の遠吠えがどこか遠くに聞こえる5月の風が気持ちいい静まった夜。

時刻は22時を過ぎた頃だろう。

日中は日が多く行き交う大通りもこの時刻になると人気がまるでなくなりひっそりとした空気に包まれている。

そんな中に一人の少女が誠の文字を刻み込んだ羽織を着込み、颯爽と歩いている。

今夜はいい夜である。

こういう夜はとても“暗躍”がしやすい・・・・・・。

目的地に着くと黒いマフラーを鼻先まで持ち上げ少女は仕事の時の意識に切り替えた。

 

そして事件は突然起きた。

あの祇園祭の夜、新撰組が池田屋を襲撃した時の再来だ。

沖田は高らかに勇ましく声を上げる。

 

 

「御用改めです!! 手向かいする者はことごとく切り伏せます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある貧乏長屋の中。

そこの住人である相良左之助は今日も行きつけの店である赤べこで食い逃げをし、

満腹になった腹をさすりながら気持ち良さげに寝入っていた。

相良左之助。

この男、相良左之助は性格のいい兄気分的な男なのだが

食い逃げはするし、ツケはなかなか払わない少々困った男であると牛鍋屋の店員からため息まじりに相談されたのが今日の昼。

どうにかツケの分だけでも着ぐるみ剥いてきて欲しいとかなんとか。

行き倒れしていた私を看病してくれた上においしい御飯も出してくれたお妙さんに報いなければいけない。人として当然だ。やってあげましょう。

討ち入りを。

ところでこの相良左之助という男は中々の手練れであると聞く。

あの緋村剣心も一目置いているとか。

・・・・・・ふーん。いや別に深い意味はありませんよ。

ただあの緋村さんが高い評価をしているっていうほどの男っていうなら沖田さんも直々に検分する必要があるのではないでしょうか?

ええ。そうですとも。

ならば手加減抜き。最初から飛ばしていくしかないですね。

ーーーーー沖田さんは弾けた。

というか暴走した。

 

「我が神速の空間ジェット殺法、受けてみよ! 

ジェットパックスタンバイ! オキタ・J・ソウジ、出ます!」

 

剣客というより明治の時代では考えられないオーバーテクノロジーな装備に身を包んだ沖田さん。

沖田さん改めオキタ・J・ソウジは冷酷に且つ速やかに目標を補足。切り捨てようとする。

今日の沖田さんはセイバーではない。

アサシンさ。ならば何の問題ないな。

この姿を見たらきっと剣心は目を丸くしてひたすら「おろっ!?」とつぶやき頭の中がオーバーヒートし続けていただろう事間違いなし。

いくら飛天の先読みでもこれは想像できなかったはずだ。

沖田の十年間に一体何があったのか?

十年前と若さが変わらない謎はまさかコレの影響か?

文明開化どころか文明をワープ進化させすぎた彼女に思わずドン引きしまくるだろうから詳しい事は知らない方がいいだろう。

秘密は女をより美してくれるのである。

沖田さんは永遠の十七歳である。

 

「ふんふふふ~ん♪」

 

沖田は腰についているジェットパックの出力を全開にして豪快に長屋に突っ込む。

ズドンッと突入し事態をまるで把握できていない鶏冠頭の目標を補足。

速やかに攻撃に移る。

 

「光子ミサイル、斉射三連!」

 

光子バルカン、光子ミサイルを遠慮なくぶち込む。

撃って撃って撃ちまくる。

容赦などかけらもない。

新撰組の信念すなわち悪・即・斬。

斬どころか爆な所はご愛敬。

どどどどどどどど!!!!

ミサイルにバルカンの外道な怒濤の攻撃。

吹き飛ぶ家具に吹き飛ぶ左之助。

池田屋もこうした壬生狼の奇襲があったのだろうか?んな訳ない。

室内はすでに大惨事だ。大家さんになんて言えばいいんだろうね。

沖田さん絶好調!!!!

この沖田さんすがすがしいほど好き放題やりたい放題である。

シリアスな空気をぐだぐだに瞬く間に変えてしまった。

るろうに剣心は明治時代が舞台?

ーーはっ

知ったこっちゃない。

この小説のイメージは和月さんでなく経験値さんなので多少ぶっ飛んでもいいのです。

沖田さんは時代を先取りする女です。

 

「ぐぉおお!?」

 

もちろん寝込みを襲われた左之助は訳がわからない。

何が起きたのか!? 

本当に訳わからない。

いきなり蜂の巣にされそうになるわ、ミサイルでぶっ飛ばされるわ、これは夢なのだろうか。

とんだ悪夢である。

 

「なんだってんだ!!? ちくしょう!!!!」

 

夢の中だとしてもこのままじゃズタボロにされるのは死ぬほど悔しい。

だがこの戦力差は覆しにくい。

なんだよ、生身の人間相手にミサイルにバルカンって。

あの武田観柳以上の外道に間違いないだろう。

だがこのままでは悔しいが間違いなくヤラレル。

こんなやられかたは正直かっこ悪いしあの女に一矢報いなければこっちの気も収まらないというものだ。

家の中を飛び交う弾幕の嵐をちゃぶ台を盾にしながら虎視眈々と勝機を伺う。

それにしてもどうしてこんなことになった?

俺が何をしたってんだ?

喧嘩屋家業でいろんな奴から恨みを買われてきたのは自覚しているがこんな銃撃、爆撃されるほど恐ろしい恨みを買った覚えはないと思うのだが。

そのとおり。沖田の恨みなど買ってはいない。

おまえさんの食い逃げのツケがたまりにたまっていたのが悪い。

だからこんないかれた女がおまえを追い詰める事になったのだ。

自業自得ともいえるだろう。悔い改めてほしいと思う。

 

「隙あり! 必殺、沖田さんアタ――ック!」

 

オキタ・J・ソウジが菊一文字ブレードを煌めかせながら左之助に切り込んでいく。

ジェットの勢いをつけたこの一撃まともに食らえば有象無象の輩など瞬く間に倒せるだろう必殺の一撃。

左之助は躱せない、いや躱さなかった。

なんと顔面で受け止めるという馬鹿げた戦法を繰り出したのだ。

これにはさすがの沖田さんも思わずギョッとしてしまう。

 

「ってぇえな! なにすんだ! 

このすっとこどっこい」

 

左之助の自慢はこの人並み外れた驚異的な耐久力だ。

馬鹿みたいに頑丈な身体は並大抵の攻撃など跳ね返してしまうのである。

ーーーー肉を切らして骨を断つ。

彼女の細腕をがっつり掴み離さない。

そしてお返しとばかりにそのまま背負い投げで彼女を勢いよく投げ飛ばした。

えっ!?ちょっとまったまったまったぁあ!!とあたふたする沖田。

しかし丁度ジェットの調子も悪くなり空中で体勢が整えられない。

えっえーーーーー!!!!?と大きな叫び声を上げながらぶん投げられてしまった。

 

「いたっ、あたっ、ひぃー!あいたたた……」

 

しかも投げ飛ばされた先にあったノッブによく似たハニワの置物に思いっきり頭をぶつけて悶絶してしまった。うぉおっと頭を抱えてゴロゴロ地面を転がり回る。

これは痛い。

 

「んな玩具みたいなもんの剣ではな。剣撃は魂がこもっていないんだ。

剣心の龍槌閃に遠く及ばねえよタコ」

 

中指を立ててメンチを切る左之助。

頭からピューッと派手に血が吹き出ているのが少しダサいが一矢報いた。

 

「いたた。いやぁ正直舐めてかかりすぎましたね。

ただのチンピラレベルのバーサーカー男と思っていたらこれはなかなか。

まさかガッツ持ちの耐久タイプで体力が減ると攻撃力が上がるなんて。土方さんみたいな人でしたか。

評価を改めますね。あなたの強さは今現在でいうとそうですね・・・・・・デカノッブ3人分というところでしょうか。相良左之助とノッブ。ふむ。サノッブというのが妥当でしょうかね」

 

たんこぶのできた頭をさすりながら沖田は朗らかに笑いかける。

服装がいつの間にか水着からダンダラ模様の羽織を羽織っていた。

 

「緋村さんが評価しているのもまぁなんとか納得しました。

でもこの程度ではまだまだですね。

この先の戦いには戦力不足です。サノッブはいりません。

もっと種火を食って霊基再臨して強くなってから私の前に立ってください。

そしたらお遊びじゃなくて本当の真剣勝負してあげますから」

 

沖田がお尻の埃をポンポンと落としながらすくっと立ち上がった。

 

「緋村さん以上の技 特別に見せてあげましょう」

 

ーー縮地を発動する。神速を超えた超神速。

左之助は目を離してなどいなかったし意識をそらしてなどいなかった。

にも関わらず左之助の視界から一瞬で姿を消した!?

ジェットじゃない。本当の彼女の体術の奥義。

信じられない。マジかよ。

これは嘘だろオイ。剣心を超えるスピードなんて存在していいものじゃない!?

あいつは一体何者だ!?

 

「どこを見ているのです? ……こっちです。

我が秘剣の煌めき。受けるがいい!!」

 

 

 

 

 

 

ーーーーー無明三段突き(むみょうさんだんづき)!

 

 

 

 

 

ガッツの切れたバーサーカー左之助ではこれは耐えられない。

意識が一瞬でぶっ飛ぶ。

完全な敗北を突きつけられてしまった屈辱と敗北感だけが消えず残ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということがあって目が覚めたら家財全部なくなっていやがった。

びた一文残ってねえ」

 

左之助が起きたのは昼過ぎ。

彼の家はあちこち蜂の巣だらけになり彼の少ない有り金までなにもかももってかれていた。

唯一残っているのはノッブに似た埴輪のみだった。

呆然としていたところに剣心がやってきて現場検証をしてみる。

 

「んーー左之の傷跡から見るに間違いなく下手人は新撰組一番隊組長沖田総司だろう。

三段突きの後がくっきり残っておるし・・・・・・だが沖田がミサイルにバチカン?おぬし酒に酔ってたんじゃござらんか?」

 

「嘘じゃねえ!!あのいい歳こいた水着女がミサイルをぶっ放しまくりやがったんだ!!

30歳超えたあの女が水着なんて着て!年甲斐もないとんでもない痴女だった」

 

くやしさから拳をガンガン地面に殴りつけながら沖田の悪口を垂れ流す左之。

まぁまぁと落ち着かせながら剣心はふと空から飛来してくる物体に注意を向ける。

 

「なるほど。ミサイルとはこんな感じでござるか?」

 

「そう。コレ」

 

二人に向かいどこかから光子ミサイルが1000発ほどぶっ放される。

沖田の可憐な水着を馬鹿にするからだ。

おろっーーー巻き添えを食らった剣心はそこから全力で逃げ出す。

そして剣心に併走しながら逃げる左之助。

 

「幕末ってのは恐ろしい奴らばかりだったんだなオイ」

 

「少なくとも拙者の知っている幕末は世紀末ではなかったでござるよ!!」

 

どかーーんと大きな爆発が起き。

クレーターの中心で剣心も左之助もやけこげボロぞうきんになっていた。

 

 

 

 

 

そんな二人を見て新撰組三番隊組長はコロッケそばを食いながらおなじみの台詞を吐き出す。

「阿呆どもが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の教訓。

 

女性の水着姿は褒めましょう。

飲食店にツケはしっかり払いましょう。

沖田さんはかわいい。

 

 

 



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