ハリーポッターと新聞記者 (十凶星)
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第一話 幻想郷との別れは唐突に

 好きなキャラは文とアリス、十凶星でございます!

 某アリスのハリポタ小説を読みまして、東方とハリポタのクロスオーバーを読み漁っていたのですが、あまりなくて、ないなら自分で書けばいいじゃないとのマリーアントワネットからのお告げで書くこととなりました。

更新は不定期となるでしょうが、頑張っていきたいと思います。

では、どうぞ!


 表には微塵も出す気はないが私、清く正しい新聞記者、射命丸文は内心で辟易していた。

扉を開いた瞬間に掛けられる声で、内心でさらに顔をしかめる。

「あら、遅かったわね。待ちくたびれたわ。」

その理由はもちろん目の前にいるこの大妖怪――八雲紫(スキマ)のせいだろう。

 胡散臭さ、嫌われている度幻想郷№1(文々。新聞調べ)の私達が住んでいるこの結界に囲まれた妖怪の楽園――幻想郷と呼ばれる――の管理者だ。

 

「あやや、これはこれは紫さんじゃないですか、どうしたんですこんな時間に?……はっ、何かスクープでも持ってきてくれたんですか?それなら大歓迎しますよ」

「いえ、そういう訳でもないのだけれどね、まあ、それと同じような情報ならあるわ。お茶なら机の上よ。とりあえずかけなさいな。話はそれからよ」

 かく言う私もこの妖怪(と暴食幽霊姫(幽々子)、八意永琳)だけは苦手だ。その他の妖怪ならば口先三寸で騙しきる自信がある者の、この妖怪たちは頭の中で何を考えているのか、全く察することができないから厄介だ。特に紫なんかはその扇子で口元を隠す動作さえやめれば、胡散臭さもある程度消えるのではないだろうかと思うのだが。

 促されるままに椅子へと腰かけ、出されたお茶を口に含む。……無駄に美味い。こういうところがある

からイラつくのだ。しかも当然のようにお茶を出しているがここは私の家なのだが。

 

「では、始めましょうかね。いい話と悪い話、両方あるのだけれど何方から聞きたいかしら?」

「悪い方の話でお願いします」

「悪い方ね、悪い方は……もしかすると幻想郷が滅びるかもしれないわ」

「え゛」

 

と奇妙な声が口から洩れる。だが、それも仕方ないだろう。なにせ私たちが住んでいる幻想郷だ。

大体予想はつくが、この八雲紫が管理しているのに滅びるとはどういう事だろうか。

(吸血鬼異変再来!!みたいな感じでしょうかねぇ。また新しい侵略者でも来るのでしょうか?)

「今度は何が来るんですかね?また外国ですか?」

「察しがいいわね。そうよ、今回はイギリス、レミリアの母国ね。そこから魔法族と呼ばれる魔力を扱う人間たちが流れ込んできそうだわ。分かってはいると思うけど、ノーレッジとか、マーガトロイドみたいな魔女、魔法使いじゃないわよ?普通に年も取るし、食事も必要な普通の魔女ね」

「まあ、そこまでは分かりましたよ。で、何をして欲しいんですか?ある程度なら出来ますけど、あまり大きすぎることだと、見返りも欲しいのですが」

 

 予想が当たって少し驚くも、捨虫、捨食の法すら会得していない人間程度に、幻想郷の妖怪が負けるわけがないと思うのだが、殺しに特化しているのだろうか?

 

「まあ、少し待ちなさい、次はいい話ね。その魔法界の偵察になんと!射命丸文さん、貴女が選ばれることとなりましたわ!出発は半年後、準備しておくことですわ。紅魔館に連絡を取ってパチュリー・ノーレッジに取り次いでもらえるように頼んでおいたからよろしくね」

「ちょっと待って下さい紫さん。なんでなんですか。」

「え?だって勢力に属していながら自由に行動出来て、幻想郷屈指の実力を持っている妖怪なんてそうそういないじゃない?それに当てはまる人物、というか妖怪をピックアップしていったら、貴女しかいなかったんですもの。それじゃ、確かに伝えましたからね!」

 

それだけ一気にまくしたてると、隙間の中へと去っていった。

驚きで声が出なかったが、再起動してスキマを問い詰めようとするも、その頃にもういるはずもなく。

大きく溜息をついた瞬間、また隙間が開いて。

 

「あ、必要なものは机の上にリストにして置いておきましたので。それでは今度こそ、よろしくお願いいたしますわ~」

 

隙間が閉じていく。残された私にできることなんて、リストを眺めることくらいなのだった。

 

 

ちなみにそのリストと言えば。

 

 

『 ホグワーツ魔法魔術学校 校長 アルバス・ダンブルドア

 マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会長

 

  親愛なる射命丸殿

 

  このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。

 教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

 新学期は9月1日に始まります。7月31日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。 

 

   敬具

 

 副校長 ミネルバ・マクゴナガル』

 

という手紙と、

 

『親愛なる射命丸文へ

 

  九月から必要になる教科書のリストを送りますわ。

 杖や箒は香霖堂の店主に作ってもらうのが望ましいでしょう。

  箒は飛べるから問題ないと思いますが、作ってもらってください

 飛んでもいいですが、それをあまり見られないようにしてください。

 

 

 必要な教科書

 

 ――――――

 

 ―――――――

 

 ――――――――――

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

  では、改めて、ホグワーツ魔法魔術学校御入学おめでとうございますわ♪

 よい学校生活が遅れることを祈っております♪

 

                             八雲紫より

p.s

  魔法はあなたが親しい紅魔館のパチュリーに習うとよいでしょう。

 先程も言った通り連絡はしてありますのでいつでも行ってきて構わないわ   

                                    』

 

「ほんと、ありえないわよ…全くネタにもならないじゃない……」

 

 何故だか無性に破りたくなったのは、決して気のせいではないのだろう。

いらいらする頭を押さえながら、私は平穏な新聞記者生活が崩れることを悲しんでいた。

 

 

 

 

 

 

―――香霖堂

 

 

「おっはようございまーす!清く正しい射命丸で~す!」

 

次の日、私は香霖堂へとやってきていた。理由はもちろん杖と箒を作ってもらうためだ。

 

「ああ、いらっしゃい。取り敢えずそこへ座りなよ。どうしたんだい今日は、新聞……ではなさそうだね。」

「ええ、そうなんですよ。今日はですね、ちょっと魔法界というところへ出張取材に行かなければならなくなったので、文々。新聞が十年くらい休刊になってしまうことのお知らせと、そこへ行くにあたって用意しなければならないものを霖之助さんなら作れるだろうと思いまして。」

「文々。新聞が休刊?それは困ったね……それで、用意しなければならないものとはどんなやつだい?物によっては作れないのもあるかもしれないが」

 

そう言われたので、スキマからの手紙を取り出してカウンターへ置く。

さらに妖怪の山に生えている霊力の宿っていそうな木の枝、白狼天狗の尻尾の毛や、烏天狗の羽の毛など、材料になりそうなものも全部机の上に置く。

 

「えっと、まずは杖ですね。作り方は確か紫さんの手紙に乗っていたはずです。あとは箒。箒も同様ですね」

「杖と箒か…作り方はこれに載っているんだね?どれどれ……うん、まあ、この程度なら僕でも作羽くれると思うよ。お代はこれくらいだね」

 

 霖之助さんがさらさらと書いてこちらに出してきた紙を見て驚愕する。

それもそうだろう。杖一つ作るのに家一戸分くらいのお金が使われているのだから。

 

「はぁ!?何でこんなに高いんですか!?もっと安くして下さいよ!私こんなお金持ってませんよ!?」

「そうかい?それなら無縁塚までひとっ走り行ってきて、うちにありそうな商品を持ってきてくれないか?そうすれば杖も箒もただにしておいてあげるから」

 

そう言われて自分の目が輝いたのが分かる。扉を蹴破って飛び出すと、霖之助さんに、

 

「ほんとですか!?なら今から行ってきますね!待っててくださいね~!」

 

とそう言い残し、無縁塚へと飛んでいくのだった。

 

その後、持って帰ってきた商品と言えないようなナニカを見て、霖之助さんが頭を抱えることとなったのは、完全な余談だろう。

 

 

 

 

 

「さあ、(わたくし)は今、紅魔館へと潜入しています!目に優しくない真っ赤な壁が私を出迎えてくれますが、特に誰かがいるという気配は致しません。ここには吸血鬼が住んでいるという噂が人里でまことしやかに囁かれていますが、こんなところに本当に吸血鬼が住んでいるのでしょうか!?期待が高まりますぬわぁっ!」

 

 急に顔面に向けてナイフが一斉に飛んでくる。それを慌てて躱すと私の目の前に咲夜さんが現れた。

 

「……人の家で何をやっているのですか?不法侵入罪で訴えますよ。」

「あやや、咲夜さんじゃないですか、何って実況中継ですよ。実況中継。知っているでしょう?」

「いえ、知らないけど。まあいいわ。魔法界について聞きに行くのでしょう?案内いたしますわ。」

 

 咲夜さんがそういうと、あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!「私は咲夜さんが案内するといった瞬間に」な… 何を言っているのかわからねーと思うが本当だ、瞬間移動だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

 私が戦慄しているのをよそに、咲夜さんは図書館の扉を開けて中へ入る。慌ててついていくと、パチュリーの使い魔、小悪魔(通称こぁ)が出迎えてくれた。

 

「射命丸さんですね?パチュリー様がもうすぐ来るわよって言っていたのでお出迎えに参りました~さ、こちらへどうぞ」

 

 そういって小悪魔は歩き出す。さっきのように置いてかれないように歩いていくと、パチュリーが見え、手招きしている。

 

「よく来たわね、さ、ここへ座んなさい、紅茶とクッキーは食べていいわよ」

 

そういわれるので私は遠慮なくクッキーをつまむ。紅茶も飲んで一段落着いたところで、パチュリーが話し始めた。

 

「今日は、魔法界についての説明だったわね。こあ、ホワイトボードを持ってきてくれるかしら?」

「かしこまりました、今持ってきますね」

 

そう言って、こぁさんが大きなホワイトボードを引っ張ってくる。パチュリーはそこに黒のペンで「魔法界」と書き込むと、それをぐるーっと丸で囲み、

 

「魔法界には、大きく分けて三つの種類の人間がいるわ。純血と言われる両親がどちらも魔法使いの魔法使い、マグル生まれ、純血主義の人は穢れた血というけれど、両親ともにマグル――これは魔法の使えない人間のことね――がいるわ。そして最後に混血というまあ、マグルと魔法使いの子供がいるわ。ここまで大丈夫?」

 

 眼鏡をかけてまるで先生気分でパチュリーが授業をしているので、私もノートをだして、生徒として授業を受ける。気分は寺子屋だ。

 

「ええ、大丈夫です。パチュリー先生」

「そう、ならいいわ。じゃあ次、霊力と妖力についてね。射命丸さん、答えられるかしら?」

「はい、先生。霊力は人間が使用するもので、同じ現象を起こすのに一番量が必要です。次に妖力についてですが、妖力は妖怪が使うもので、霊力の次に量が必要です。ちなみに一番少ない量で済むのは神力です。」

「正解よ、完璧な答えね、グリフィンドールに五点」

「ありがとうございます!」

「じゃあ、魔力の説明に移るわ。魔力は人間しか扱えないという人がいるけど、厳密にはそういう事はないわ。人間の魔法使いは杖を使って魔法を使うけど、杖というのが一種のエネルギー変換を行っていて、杖の中で霊力を魔力に変換して魔法を使っているの。だから妖怪もエネルギー変換さえできれば魔力を扱う事ができるわ。例外は『種族:魔女』の私みたいな妖怪ね。私達は大気中にある魔力を上手く吸収して、体内に魔力をためることができるわ。それ自体は他の人もできるけど、さらに捨虫、捨食の魔法を使っているものだけが種族が魔女、魔法使いとなるわ。うん、こんなところかしらね。そしたら次は実際に魔法を使ってみましょう。ん゛っん゛ん゛、こあ!こあー!妖力を魔力に変換する杖を持ってきてもらえるかしら!」

 

私がパチュリー先生の話を一生懸命ノートを取っていると、パチュリーが突然大声を出した。

(喘息持ちなのに、あんなに大きな声を出して大丈夫なんでしょうかね?)

 

「はい、これが取り敢えず霖之助さんだっけ?が杖を作ってくれるまでの貴女の杖よ。大事になさい。」

「おお、ありがとうございます!大事にしますね。」

 

 もらったのは何の変哲もない杖。特に何か装飾が付いていると言う訳でもなく、本当にこれで魔法が撃てるのかと心配になるが、まあ大丈夫だろう。

 

「それで、どうやって魔法を使うんですか?」

「こうやってよ――アクシオ 小悪魔」

 

 パチュリーが杖を軽く振りながらそう唱えると、「きゃあ!?」という声と共に、小悪魔が飛んでくる。

あの程度の言葉で魔法が使えるというのなら覚えるのは楽だろう。私は人と違って覚えるのも早いのだし。

 

「うわぁ、すごいですね。そんな簡単な言葉で魔法が使えるなんて。」

「私の専門は精霊魔法だけど、精霊はあまり頭が良くないらしくてね、むしろ簡単な言葉でないと理解して現象を起こしてくれないのよね。逆に神様は頭が良いから祝詞をしっかり唱えないとならないでしょう?池にいるチルノみたいなものよ。」

 

 最後の例が一番分かり易かった。確かにチルノにはあまり難しい言葉は理解できないだろう。

そう考えると、組み合わせるのもそこまで難しくなさそうだ。パチュリーのようにあまり複雑なのは使えないだろうが、それでも魔法という響きだけでもいいものだ。

 

「まあ、実際杖の振り方なんてそこまで規定があるわけでもないし。妖力を扱うみたいでいいのよ。呼び寄せるのだったら円状に、守るのだったら盾状にという風にね。やってみなさい。守る呪文はプロテゴよ、発音はしっかりしないと聞いてもらえないからそこは注意してね。」

 

 言われた通りに杖から盾を作り出すように魔力を放出し、「プロテゴ!」と唱える。すると結界のようなものがあらわれた。パチュリーがそれに炎弾をあてると、目の前で盾に当たり、霧散した。一発受けただけで盾の呪文は切れてしまったものの、出来たということが私に自信をつけた。

……まあ、自分で結界を張った方が便利なのだが。

 

「初めてにしては上出来ね。貴女が行くホグワーツの生徒は魔力を扱えても、それがどの様な形か認識しようとしないから、その点妖怪のあなたなら妖力とかで慣れてるでしょうし、アドバンテージになるでしょうね」

「ちなみに、魔法界にはどれくらい呪文があるんです?」

「まあ、呪文なんて作ろうと思えば無限に作れるから、言語を覚えてしまうのが早いと思うわ。だから呪文学と言っても九月までにできることなんてラテン語と英語の練習くらいね。」

「そうなんですか。なんか詰まんないですね。もっとこうシュババー!、とかビリビリー!とかそういうのを創造してたのでなんか拍子抜けです。記事にしようかと思ってたんですが難しそうですね。」

「記事になんてしたら真似して死ぬ人がたくさん出てきそうだからやめた方がいいわ。知ることができた人だけがそういう事はやればいいものなのよ。」

 

 「まあ、そんな人は本当に一握りなんだけどね。」とそう締めくくり、その日の最初の授業は終わった。

 

 

 最初の授業が簡単だったからわからなかったが、パチュリーの「魔法授業」は酷いものだった。おかげで相当なことを詰め込むことができたが。月曜日は魔法薬学と呪文学、火曜日は箒と変身術、水曜日は――という風に全く休みがないのだ。休みをもらったと思っても宿題と言って自分固有の魔法を作ってきなさいとか言われるし、正直死ぬかと思った。パチュリーは自分が魔法使いだから他の人が食事が必要だということをわかっていないんじゃないだろうかと何度本気で思ったことか。閑話休題。

 私は今、妖怪の山のあたりを自分の家に向けて飛行している。もうイギリスへと出かけるというので、荷物の支度をしに来たのだ、これが終わったら霖之助さんのところへ行って箒と杖をもらいに行こう。

 考え事をしながら飛んでいると前から「おーい!」と呼ぶ声が聞こえ顔を上げる。

 

「どうかしましたかって……ああ、はたて(引き篭もり)か、久しぶりね。どうしたの?あの生粋の引き篭もりのあなたがこんなところに来るなんて。明日は雨かしらね。念写でもしたのかしら?」

「文、あなたいぎりすに行くんだって?何で言ってくれなかったのよ!急に言われてもびっくりするじゃない!」

「あれ、言わなかったかしら?ごめんなさいね、私これからイギリスに行ってくるのよ。Do you understand?(理解したかしら?)

「え?は?今なんて言ったの?」

「理解したのって言ったのよ。まあ、一年ごとに帰ってくるわよ。たしかクリスマスと夏だったかしら?分かったのなら行くわね。早く戻って支度しようっと」

「……まあいいわ。帰ってきたときに私の記事がランキングに載ってても恨まないことね!」

「貴女のような弱小新聞には私の新聞は食えないわよ。イギリスに行ってネタを拾ってくるから、覚悟しておきなさい!」

 

 軽口をたたきあってその場を離れる。淡白な別れだと思うかもしれないが、妖怪にとって七、八年程度なんてことないので、あのくらいのほうがちょうどいいのだ。

 家について支度を始める。教科書に関してはすべてパチュリーが持っていたのでそれをもらった。

そう言えば、パチュリーとは随分打ち解けたのだ。それこそ、私が素の口調でしゃべれるくらいに。

 

「ま、それだけ濃い期間だったってことよね。さ~てと、霖之助さんの所へ行こうっと」

 

 そう言って、トランクをもって空へと飛び立つ。今度こういう重りをつけた状態でほかの人と勝負してみようかしら。そうすれば勝負になるかもしれないし。

 香霖堂へと着くとドアを乱暴に開けて中へと入る。むっとした空気と、何処となく懐かしい匂いが私を包むが、そんなことはどうでもよくて。

 

「霖之助さーん、射命丸ですよー、杖出来ましたかー?」

「ああ、射命丸か、出来たよ。これだ。」

 

そういって霖之助さんが取り出したのは、白っぽい色をした短い杖。確か杖に使われてる木はある妖精が宿っている木の枝?だったような気がするけど、これはそのどれとも似ていない。

 

「天界の桃の木の枝、烏天狗の羽、長さは二十センチ、天界の桃の枝を紫にもらってね。いいのができたと思う。振ってみてくれるかい?」

 

 杖を振ると、ピンクの花が部屋の中に咲き誇った。それを見て霖之助さんはうんうんと頷くと奥から長い袋を持ち出してきた。ということはこちらが箒の方か。

 

「よかった、合ったようだね。こっちが箒だ、ブラッククロウ、同じように桃の木で造られているよ。」

「霖之助さん、ありがとうございました。これはささやかなお礼だとでも思ってください。スコージファイ(清めよ)!」

 

 私がそう唱えると、汚かった部屋が一瞬で綺麗になった。物などは相変わらず置かれているが、随分とましになったものだろう。

 

「ああ、ありがとう。じゃあ、楽しんでくるといいよ。」

「ええ、ありがとうございました。では、また来年会いましょう!」

 

 そう言って香霖堂を出ると、目の前にスキマが開いていた。中から手が出てきて手招きをするので中へと入っていく。中へ入ると、大きな目玉がぎょろぎょろとこちらを見てきて、少し気持ちが悪くなった。正直何度も入りたくはない。

 

「あら、来ましたのね。貴女にはこれから一か月、ロンドンの一軒家で暮らしてもらいますわ。二週間前くらいにはホグワーツの先生がいらっしゃると思いますから、それまで待っていることですね。」

 

 そういってスキマの中でスキマを開く。これがその家へと繋がっているのだろうか。私は八雲紫の底知れなさを感じながら、スキマを潜り抜けるのだった。

 

 

 

 

 

 私が家で惰眠をむさぼっていると、下の方からノックとインターホンの音が聞こえた。

私も順調に現代社会に毒されていってるわと思いながらドアを開けると、緑色のローブを羽織り、黒い山高帽をかぶった、THE・魔女という人物が立っていた。

 

「アヤ・シャメイマルですね?副校長のマクゴナガルです。ダンブルドア校長が、唯一のアジア系の人でで何かと大変だろうということで、私を派遣なされました。今からダイアゴン横丁へと行きます。遅れないようについてきなさい。」

 

 と、そういうのでマクゴナガル先生についていく。何度か道を曲がり、ちっぽけな薄汚れたパブの前でマクゴナガル先生は急に止まった。私は急に止まったのでマクゴナガル先生にぶつかりそうだった。

 

「『漏れ鍋』――マグルは近づかないようになっています。、ここからダイアゴン横丁へと入りますが、混みあっているのではぐれないようにしなさい。」

 

 そういってマクゴナガル先生が中へと入り、奥へと進んでいく。何度かマクゴナガル先生が声を掛けられたが、「今は生徒の案内中なのです。」というとすぐに引いていった。

 パブを通り抜けると、壁に囲まれた小さな中庭に連れ出された。ゴミ箱と雑草しかない薄汚れた中庭だ。

 

「ここですね、少し待っていなさい……こうでしたね。アヤ、ダイアゴン横丁、魔法使いの世界へようこそ、歓迎しますよ。」

 

 マクゴナガル先生がただの壁のレンガを杖の先で三度たたくと、たたいたレンガが震え、くねくねと揺れる。そして真ん中に空いた小さな穴が広がっていき、次の瞬間には目の前にアーチ形の入り口ができた。むこうには石畳の通りが広がっていて、先が見えなくなるまで続いていた。

 

「あやややや、これはすごいですね。私初めて見ましたよこんなの、ホグワーツに入るとこんなものも作れるようになるんですかね?」

「ええ、作れるかどうかはあなた次第ですが、頑張ればできるようになりますよ。では、換金しに行きましょうか」

「分っかりました!」

「お金はグリンゴッツでおろします。すぐ近くにあるのでさっさといきましょう」

 

 そういって歩き出すが、二分もしないうちに大きなブロンズの扉の前についた。

両脇には真紅と金色の制服を着て立っている小さな生き物がいた。

 

「グリンゴッツでは小鬼が守護をしているのです。盗もうとする人なんていませんし、もしいたとしても地下にいるドラゴンやその他色々な罠によってすぐに捕まってしまうでしょう」

 

 白い階段をのぼりながら、マクゴナガル先生がそういった。小鬼は私から見ても頭一つ分くらい小さく、賢そうな顔をしている。

 入口につくと、小鬼がお辞儀をした。さらに二つ目の扉があり、そこには盗めないよ(要約)ということが書かれていた。大分お金は持ってきていたので、マクゴナガル先生曰く二年分の学費と教科書は変えるだけのお金があるだろうとのこと。

 買い物も順調に進み、残るは制服だけとなった。

 

「あとは制服だけですね。制服ならばマダムマルキンの店が良いでしょう。すぐそこにありますので自分で行けますか?」

「もちろんですよ、あの看板のお店ですよね?じゃあ行ってきます!」

 

 そういって「マダムマルキンの洋装店――普段着から式服まで」という看板の下がっているお店の中に一人で入っていった。

 マダムマルキンは藤色の服を着た、愛想のよいずんぐりとした魔女だった。

 

「お嬢ちゃん、ホグワーツなの?」

「ええ、今年から入学します、よろしくお願いしますね」

「大丈夫です、全部ここでそろいますよ……今あのハリー・ポッターさんが丈を合わせているところよ」

 

 店の奥の方で、眼鏡をかけた男の子がピンで丈を合わせている。

 

(あやや、こんなところであの有名なハリー・ポッターに出会えるなんてついてますねぇ)

 

 そんなことを考えながらハリーに近づいていく。後ろ向きだったのであまり見えなかったが、前から見るとあの有名な額の傷があることがわかった。

 

「あやややや、あなたがかの有名なハリー・ポッターさんですか?こんにちは、私も今年からホグワーツに入学するんですよ」

 

そう言ってにっこりと営業スマイルを見せると、ハリーは少し顔を赤らめながら、

 

「僕、有名だなんて言われてるけど、僕が何をしたかなんて全く覚えてないんだ。きっと僕、ホグワーツに入ってもびりだよ……」

「そんなことないでしょう、有名になるという事、しかもあの悪名高いヴォルデモートを倒した人となれば、赤ん坊のころから才覚を現していたということに他なりません!あなたにはきっと才能があるんですよ。だから大丈夫です。」

 

 そう言って励ましてやると、いくらか気分も楽になったようで、自分の住んでいた家のことをいろいろと教えてくれた。

 採寸が終わって店の外へと出ると、マクゴナガル先生と大きな男の人が一緒に話していた。ハリーの付き添いだろうか。

 

「終わりましたよ~マクゴナガル先生」

「それは良かった。隣はハリーですね?マクゴナガルと言います、グリフィンドールに入るのならばまた会うこともできるでしょう。ではハグリッド、私はシャメイマルの付き添いがありますのでこれで。」

「ええ。ありがとうごぜぇました。ほら、ハリー、あとは杖だけだ、杖はオリバンダーの店が一番だからな…さっ、いくぞ。」

「うん、じゃあね、シャメイマル?」

「また今度会いましょう、ホグワーツでね」

 

 そういってハリー達と別れる。もう買い物は終わったので、あとは帰るだけだ。

私が歩き出そうとすると、マクゴナガル先生が後ろから引き留めてきた。吃驚して後ろを向くと、先生が

 

「帰りは姿現しを使います。私の手を握っていなさい」

 

 というので手を握っていると、胃のあたりを握られるような感覚とともに景色がぐるぐる回り始め、バチンッという音とともに視界が暗転していく。吐き気が収まると私は自分の家の前へと立っていた。

 

「おお、これはすごいですね、ホグワーツにも行けるんですか?」

「いえ、ホグワーツでは姿現しは出来ませんので移動手段はホグワーツ特急で行くこととなります。では、私はこれで」

「ありがとうございました~」

 

 そういってマクゴナガル先生は姿現しで消えていった。

私はベッドに寝転がると、パチュリーにもらった通信用のオプションを手に取り、スイッチを入れる。

 

『はいはい、どうしたの文?』

「パチュリー、今日ハリーにあったのよ、まさかこんなに早く接触できると思ってなかったからびっくりだわ。でもあまりオーラというかそういうのは感じられなかったのよね。親がすごかっただけなんじゃないの?まあ、どちらにせよネタとしては最高の素材だからなるべく接触していくようにはするけど」

『そうね、ヴォルデモートから生き残った男の子とは言われているけれど、多分古代魔法の愛の魔法ね。母親がヴォルデモートに殺されて、その時にハリーをどうしても守りたいという思いが愛の魔法としてハリーを守っているのだと考えられるわ。ああ、あと私も多分ホグワーツに入学することになりそうよ。八雲から連絡が来てね、「やっぱり文屋だけだと不安になるから、あなたも行ってきてもらえるかしら?拒否権はありません、レミリアからも許可はもらっているわ」だそうよ、』

 

 そこでパチュリーは言葉を切った。そして、

 

「それに私もあなたのことが心配だしね、オプションを付けたとはいえ、死の呪文は相当強力よ、あなたでも死ぬ可能性があるくらいにはね。」

 

 急に隣から声が聞こえてきて飛び上がる。隣を見ると、魔法陣の中からパチュリーが出てくるところだった。

 

「……パチュリー、その現れ方やめた方がいいんじゃない?正直ホラーでしかないわよ。」

「はぁ、仕方ないじゃない。あまり他の人に感知されたくないのよ。急に現れると魔力の波が大きくなるからね、その分ゆっくり現れれば同じように魔力の波も穏やかなものになる。だからこんな風に現れるのよ、私も出来ることなら使いたくもないわ」

 

 そういっていつものネグリジェのような服から杖を取り出す。それを軽く振ると、明かりがともり、それが広がって固まり、ホワイトボードを作り出した。

 

「えっ、ここまで来て授業するの?あともう一週間で入学じゃない、する必要なくない?」

「貴女まだ動物もどき(アニメーガス)出来ないでしょ。そこの特訓よ、アニメーガスになると何かと便利な点が多いからね。」

 

 そういってパチュリーはにっこりとした笑みを浮かべる。

 夜のロンドンの街に私の悲鳴が響き渡るのだった




どうでしたでしょうか?

良かったら感想、評価など諸々よろしくお願いいたします!


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第二話 魔法界とホグワーツ特急

 第二話です!夏休みは一日一話か二話、投稿できるように頑張りたいと思います!
 
では、どうぞ!



1991年8月 紅魔館執務室

 レミリアはいつもそこで仕事をしている。まあ、幻想郷に来てからというもの、そこまで仕事があるわけでもないのだが。まあ、それはいいとして。

 この時間はいつもなら今日は紅茶を頼んで優雅に手紙を書く時間だ。   

だが。

 

「あ゛~!パチェがいない~!もう!あのスキマが~!」

 

 今日に限っては勝手が違うのだった。従者の咲夜は主の絶叫に涼しい顔で紅茶を出しながら、「クッキーを取ってきますねお嬢様」と言い残し消えていく。それにさらに不満が募ったのか、レミリアは顔をしかめる。

 咲夜が出したクッキーをお行儀悪く齧りながら、レミリアは咲夜へと愚痴をこぼすのだった。

 

「何であのスキマは私の大事なパチェをホグワーツなんかにいれるのよ!パートナーがあの文屋だっていうのもなんかむかつく!嫌いなわけじゃないけど!ホントなんでなのよ~」

「お嬢様、お言葉ですが魔法界について一番詳しいのはやはりパチュリー様かと。それにもともと私達はあちらからお願い事をされたら断れない立場なのですし。納得いかないのは理解できるのですが。」

「いや、ごめん咲夜、もう大丈夫よ。なんか慰められてもあれっていうか主としての威厳がないっていうか。はぁ、ごめん紅茶おかわり貰えるかしら?」

 

 そう言ってもらった紅茶を優雅に一口飲むレミリア。

大事な時や、本当に危ない時などには大妖怪としてのカリスマが溢れ出ている我が主だが、それ以外の時はあまりにも子供っぽすぎると、咲夜はレミリアに聞かれたらまた騒ぎ出すこと必至なことを考えるのだった。

 

「まあいいじゃないですか。お嬢様が上げた杖も喜んでくれてましたし、パチュリー様だって新しく出来た友達と外に行ってみたかったのでしょう。」

 

 そう言われると言い返せないのがレミリアだ。なぜか「友達はいかなる状況だろうと助け合うもの」という少し友達に対して理想を求めすぎるというか、そういう節があるのだ。だからああいう言われ方をするとどうしてもつまってしまう。

 

「もういいわ、仕方ない。まあ数年程度でしょうし、手紙くらいなら送れるらしいし、諦めましょう。」

「手紙ですか?でもどうやって送るのでしょう?」

「こうやってよ」

 

 レミリアが腕を振ると、腕が蝙蝠になって飛んでいく。蝙蝠は空間に開いた隙間へと飛び込むと、スキマは閉じていった。

 

「あのスキマはイギリスに繋がってるらしくてね、それでなら手紙を送ってもいいわよって紫が」

「そうなんですね、では、美鈴を起こしに行ってきます。失礼しました。」

 

 咲夜はそういって部屋から出ていった。レミリアだけになった部屋を見てレミリアも外へと出ていく。

その日の月は赤く紅い大きな満月だった。

 

 

 

 

「あら、紅い満月ね、珍しい。レミィが喜びそうな月よね」

「あやや、確かにレミリアは好きそうね、赤とか」

 

 そういって月を見る。幻想郷の月は日によって大分大きさが違うので、紅い綺麗な満月が見られることは珍しい。まあ、こちらに来てから1か月しか経ってないのでこちらにおいて珍しいのかどうかは分からないが。

 

「ああ、そうだ。レミリアで思い出したんだけど、そのレミリアから手紙が来てたわよ、はい」

「レミィから?」

 

 パチュリーが手紙の封蝋を取って手紙を取り出す。

 

「どれどれ『元気にしてるかしら?こちらはパチェがいないから少し寂しい日々を送っているわ。図書館は小悪魔が頑張ってくれているわよ。ホグワーツだったわよね、懐かしいわ。もしダンブルドアにあったらよろしく言っておいてね。あと、そこの文屋。パチェは私の親友だから、奪おうとしないこと。あまり手を出すようだったら、帰ってきたとき覚悟しておきなさいよ。』……はぁ、レミィらしいといえばらしいけど、なんで急に手紙なんか……どうしたの文?」

「いや、なんでもないわよ。私にあだ名があったらどんなのかな~って思ってただけよ。」

 

 そういってベッドへと潜り込む。明日はホグワーツへ行く日だ。遅れても困るし、早めに寝ておいて損はないだろう。

 

「おやすみ~」

「はい、おやすみ。私はもう少ししたら寝るから」

 

 

 

 

「ふぁあ、おはよ~パチュリー」

「あら、遅かったわね、あと十分でホグワーツ特急出ちゃうわよ」

 

 寝ぼけてた頭が冷水を掛けられたかのように冴えた。ベッドから飛び降りる。着替える必要は……なかったか。

昨日は私服のまま寝てしまったので、このまま姿現しをすれば間に合うだろう。

 

「姿現しパチュリーできるわよね?やってくれない?私出来ないから」

「もともとそのつもりだったわよ……はい、腕に掴まって、行くわよ」

 

 あの姿現し独特の胃を引っ張られるような感覚とともに視界が暗転し、気付くとキングスクロス駅についていた。ホームの上には『ホグワーツ行特急十一時発』と書いてある。

 おしゃべりの声と、トランクのがらがらという音を避けながら、空いた席を探す。

 私とパチュリーはやっと最後尾近くに空いているコンパートメントの席を見つけ、そこへと入った。少しすると、前にあったハリーポッターが見えてこちらを見ているので手招きをする。ハリーがトランクを押し上げようとするが何度も落としてしまうので、見かねたパチュリーが浮遊呪文を使って中へと入れてあげた。

 

「こんにちは、また会いましたね。私はシャメイマル、こちらはパチュリーです、よろしくお願いしますね」

『なんで貴女取材スタイルの口調でしゃべるの?』

「ああ、ありがとう。シャメイマルと、パチュリー。えっと、僕はハリー・ポッター。よろしくね」

『だって、あのハリーポッターですよ?それに初対面の人やあまり仲が良くない人とは常にこのしゃべり方です』

「私はパチュリーよ、パチュリー・ノーレッジ。」

『あなただって結構人見知りするじゃない、それと同じよ』

『私にはあなたほどのコミュニケーション能力がないから。あなた取材するときネタを仕入れられないことの方が少ないじゃない。』

 

「ねえ、ここ空いてる?他はどこもいっぱいなんだ」

 

 私とパチュリーが日本語と英語で二重会話をしていると、赤毛の男の子が入ってきた。

私とパチュリーが頷くと、男の子は席に腰かけ、ちらりとハリーを見たが、なにも見なかったかのように窓の外へと目を移した。

 

「おい、ロン」

同じような赤毛の双子がコンパートメントのドアから顔をのぞかせた。

「なあ、俺たち、真ん中の車両あたりまで行くぜ……リー・ジョーダンがでっかいタランチュラを持っているんだ」

「分かった」と男の子――ロンというらしい――はモゴモゴ言った。

 

「ハリー、とそちらのお嬢さん方も」と双子のもう一人のほうが言った。

「自己紹介したっけ?僕たち、フレッドとジョージ・ウィーズリーだ。こっちは弟のロン。じゃ、またあとでな」

「バイバイ」

「さようなら(~)」

 私とパチュリーも取り敢えず返事をすると、フレッドとジョージはコンパートメントのドアを閉めて出ていった。

(あの二人……こっちの二人もだけど、面白いことやらかしそうな感じだわ。今度にでも密着取材をお願いしようかしら)

 そんな事を考えているうちに第二次自己紹介は終わったようで、ロンがハリーに額の傷を見せてもらっていた。ハリーが髪をかき上げた瞬間に、私は懐から出したカメラのシャッターを切っていた。

 

「うわっ、なにするの!?」

「いやぁ~、ただの記念撮影ですよ~、今度新聞に載せてもいいですかね?学級新聞みたいなのですから」

「え、まあ、別にいいけど…」

 

 よっしゃ言質とった!とガッツポーズをする私にパチュリーが呆れたような口調で話しかけてくる。

 

「あなたねぇ、まあそういう人だって知ってるけど、あんまりぐいぐい行き過ぎない方がいいわよ」

「わかってますよぉ~、よし、これでネタが増えますね!」

 

 私達が話している間に、ロンの家族の話になったらしい。

 

「ホグワーツに入学するのは僕が六人目なんだ。期待に沿うのは大変だよ。ビルとチャーリーはもう卒業したんだけど……ビルは主席だったし、チャーリーはクィディッチのキャプテンだった。今度はパーシーが監督生だ。ジョージとフレッドはいたずらばかりだけど成績はいいんだ。みんなが二人のことを面白いやつだって思ってる。僕もみんなと同じように優秀だって期待されてるんだけど、もし僕が期待に応えたって、みんなと同じことをしただけだから、たいしたことじゃないってことになっちまう。それに、五人も上にいるもんだから、何にも新しいものがもらえないんだ……って、なにやってるの!?」

 

 ロンが私に向って大きい声で疑問を浴びせる。何をしているかって言われても、

 

「いえ、続けて大丈夫ですよ?私のことはいないものだとでも思ってもらって、家庭事情をどんどん暴露しちゃっていってください。えっと、ロンさんは自分が優秀でない、または優秀だったとしても上の五人に埋もれてしまう…っと、こんな感じですかね。見出しは『ウィーズリー家の五男、ロン・ウィーズリー!!彼の劣等感の正体とは!?』うん、取り敢えずこんな感じでいいでしょう。他にあります?」

 

 ロンからは返事がない、ただの屍のようだ。再起動をさせようとスイッチを探すが、何処にも見当たらない。スイッチを探していると、パチュリーに引っ張られて席へと戻された。

 

「いやぁ、別に大丈夫でしょう。もし周りの人から見放されたって、家族だけは本当のあなたを見てくれるはずですよ~。それに期待されるっていうのもされないで無視されるよりずっといいでしょう?」

 

 私がそう言うと、ハリーも「そうそう!」と肯定して、自分も一か月前までは文無しだったという話をした。それでいくらか元気になったようだった。

 

「――それに、はグリッドが教えてくれるまでは、僕、自分が魔法使いだってこと全然知らなかったし、両親のことも、ヴォルデモートのことも……」

 ロンが息をのんだ。

「どうしたの(です)?」

「君。『例のあの人』の名前を言った!」

 

 ロンは驚きと称賛の入り混じった声を上げた。パチュリーは深々と溜息をついた。

「ちょっとうるさいわよあなた達、集中して本が読めないじゃない。というか、名前を呼ぶ程度で怖がってたらその人物に畏怖の念が発せられるから、ヴォルデモートも強くなっちゃうわよ?それでいいのかしら?」

パチュリーがそう言うと、ロンは黙ってしまった。

 十二時半ごろ、ドアが開いて、ニコニコ顔のおばさんが扉を開けた。

 

「車内販売よ、何かいりませんか?」

 

 私がパチュリーに「何か要る?」と聞くと、パチュリーは首を振って私の耳に口を当てると小さい声で、「私食事要らないもの、食べる時も嗜好品としての扱いよ」とそう言うので、私はカボチャパイと、百味ビーンズ、蛙チョコレートをいくつか買った。

 それより驚いたのはハリーだ。ロンはサンドイッチを食べるからと言って買わなかったが、ハリーは全部の種類を少しずつ買っていた。正直金の無駄遣いじゃないかしらと思った。

 

「これなんだい?」

 

ハリーが、蛙チョコレートの包みを取りながら聞く。

 

「まさか、本物のカエルじゃないよね?」

「いや、そんなわけないでしょう、魔法のかかったただのチョコレートよ」とパチュリー。

「まさか、中に入ってるカードを見てごらん。僕、アグリッパがないんだ」とロン

「なんだって?」

「そうか、君、知らんかったんだよね……チョコを買うと中にカードが入ってるんだ。ほら、みいんな集めてるやつさ――有名な魔法使いや魔女の写真だよ。僕は五百枚くらい持ってるけど、アグリッパとプトレマイオスがないんだよ」

 

 ロンがそう言うので、私も蛙チョコレートの包み紙を開ける。蝙蝠のような羽。目は真っ赤で、鮮やかな紫色の髪にリボンのついたナイトキャップ。写真の下に「レミリア・スカーレット」と書かれていて―――

 

「いや、ちょっと待って下さい。落ち着きましょう。パチュリー?レミリアって魔法界にかかわっていたの?」

「いいえ、知らないわ、私が来る前だったのかも……」

「あー!それってレミリアじゃないか!千枚に一枚とかしかない超激レアなカードだよ!いいなぁ、僕まだ持ってないんだ……ハリー僕にも蛙一つくれる?アグリッパが当たるかもしれないから……ありがとう」

 

私はあわててカードの裏を読んだ。

 

 レミリア・スカーレット

元占い学の権威。吸血鬼の占い師で、占いに関して80パーセントの的中率を誇った(現在の占い師の的中率は30パーセントほど)。近代の占い師の中で最も占いについて詳しいと言われている。とくに1790年、第一次世界大戦について予言をしたことで有名。趣味は、吸血。

 

『まあ、運命を操る程度の能力とかたいそうな能力持ってるからかしらね、パチェにあげるわこれ。私が持ってても意味ないし。』

『じゃあもらっておくわ。ありがとう』

 

 渡そうとした瞬間、私に向かって写真の中のレミリアがグングニルを投げてくる。イラっとした私はさっさとパチュリーにカードを渡してしまった。

 その後も様々なカードが私とパチュリーの前に姿を現した。今度は普通のカードで、キルケやら、プトレマイオスやら――これはロンにあげた――、ニコラス・フラメルや、最後にヘカーティアなど。

 

 気付くと車窓には荒涼とした風景が広がっている。整理された畑ではなく、森や川、鬱蒼とした雑草の生い茂った丘が窓の外を通り過ぎていく。

 コンパートメントをノックして、丸顔の男の子が半泣きになりながら入ってくる。

 

「ごめんね。僕のヒキガエルを見なかった?僕から逃げてばっかりいるんだ!」

「いいえ、いなかったわよ」

 

 パチュリーがばっさり切り捨てると、男の子はぐずぐずと泣き出した。ハリー達が慰めるが、男の子はしょげかえって出ていった。

 

「どうしてそんなことを気にするのかなぁ、僕がヒキガエルなんか持ってたら、なるべく早くなくしちゃいたいけどな。まあ、僕もネズミなんかを持ってきてるから人のことを言えないんだけどね。死んでても見分けがつかないよ」

「きのう、面白くしようとして、フレッドとジョージに教わった呪文で黄色に変えてやろうとしたんだ。でも呪文が聞かなかったんだよ。やって見せようか―見てて…」

 

 ロンがトランクをごそごそやっている間、私とパチュリーは何をやるのかとじっと見ていた。

 

(変身術かしら?でも変身術って相当難しいは・ず・よね)

(いえ、あの双子、相当いたずらとか好きそうなはずよ。だから教えた呪文も十中八九偽物でしょうね。)

 

 ロンは杖を取り出して「一角獣のたてがみがはみ出てるけど、、まあ、いいか……」とそういった。すかさずパチュリーが

 

「やめておきなさい。ろくなことにならないわ――レパロ直れ!、こんな感じでいいでしょう」

 

 パチュリーがそう唱えると、くたびれてたてがみがはみ出ていた杖は新品同様のつやつやとしたきれいな杖へと早変わりした。見ていたロンやハリーは驚きが止まらないようだった。

 

「君ってすごいね、ありがとう。えっとどんなのだったかな……」

 

 ロンがそういって杖を振り上げた瞬間、またコンパートメントのドアが開いた。逃げられていた子が、今度は女の子に連れられて現れた。もうホグワーツのローブに着替えている。

 

「誰かヒキガエルを見なかった?ネビルのがいなくなったの」

 

 イラっとする話し方をする子だ、素材はいいのに、手入れをしないからか栗色の髪はぼさぼさで、前歯が少し大きい子だった。

 

「見なかったって、さっきそう言ったよ」とロンが答えるが、女の子は全く聞いていない。

「あら、魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわ」と女の子が座り込み、その場から動こうとはしなかった。

 

「あー……いいよ」とロンは咳払いをして、

「お陽さま、雛菊、とろけたバター。デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ」

 

 ロンは杖を振った。でも何も起こらない。灰色のネズミはぐっすり眠っている。

 

「その呪文、間違ってないの?」女の子が言うが、それはちょっと違う。私が答えようとすると、その前にパチュリーが答えた。

 

「呪文に間違いなどないわ。イメージさえしっかりできていればどんな呪文でも効果は表れるわ。お陽さま、雛菊、とろけたバター、デブで間抜けなネズミを黄色に変えよ……だったかしら?」

 

 パチュリーがそう唱えると、灰色だったネズミは、どぎつい黄色のネズミへと変わった。しかし、黄色になろうがさっきのネズミ……スキャバーズだったか。スキャバーズはぐっすり眠っている。

 

「すごいわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試したことがあるけど、みんなうまくいったわ。私の家族に魔法族は誰もいないの。だから、手紙をもらった時、驚いたわ。でももちろんうれしかったわ。だって、最高の魔法学校だって聞いているもの。教科書はもちろん、全部暗記したわ。それだけで足りるといいんだけど……私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

 

 マシンガントークが得意なのか、これだけのことをこの女の子は一気に言ってのけた。おかしい。あの量を息継ぎなしで言えるとはどういう事なのか?パチュリーなら途中で喘息の発作が出てしまうだろう。だが、

 

「清く正しい新聞記者、射命丸文と申します!すごいですね、教科書すべてを暗記するなんて。でも、暗記をするより、音楽などと結びつけて長期期間の記憶にした方がいいんじゃないでしょうか。暗記は短期記憶だからすぐに忘れてしまうのではないだろうかと思うのですがどうでしょうか?」

 

 私だって負けてはいない。反論するとむかついたのか、ハーマイオニーはいやそうな顔をした。

 

「あー、僕、ロン・ウィーズリー」

「ハリー・ポッター」

「パチュリー・ノーレッジよ。そこの男の子が置いてけぼりにされてるけど、いいのかしら?、ヒキガエル」

 

 パチュリーが自己紹介ついでに呼び寄せ呪文を唱えると、ヒキガエルがここへと飛んできた。ネビルの蛙かどうかは知らないが、ヒキガエルなんて買う人はほとんどいないだろう。

 

「トレバー!なんで逃げていったのさ……あ、ありがとう、パチュリー」

 

 そういってネビルは出ていった。なのにハーマイオニーは戻ろうとしない。なぜだろうか

 

「あら、それってなんの呪文?私が暗記した教科書には載ってなかったわ」

「ただの呼び寄せ呪文よ、教科書には載ってないでしょうね、確か四年の教科書だったから」

 

 パチュリーがそう答えると、びっくりしたのかハーマイオニーはあわてて聞いた。

 

「あなたすごいのね、びっくりしたわ。ありがとう、面白い呪文を見せてもらって」

 

 そういってハーマイオニーは出ていった。それと入れ替わるように男の子が三人入ってくる。ハリーポッターがいるからか、人の出入りが激しい。

 

「ほんとかい?このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃあその話題で持ちきりなんだけど。それじゃ、君なのか?」

「そうだよ」とハリー

「そうなのか、僕はマルフォイ、こいつはクラップで、こっちがゴイルさ」

 ロンが、くすくす笑いをごまかすかのように軽く咳払いをした。マルフォイはそれに食って掛かった。

 

(なんか険悪な雰囲気ですねぇ、ウィーズリーとマルフォイは仲が悪いんでしょうか?)

 

 パチュリーは全く何も気にしないという風に本を読んでいる。私が後ろからのぞき込むと、パチュリーは隠すように本を覆った。

 

「人の本をのぞき込もうとしないで頂戴」

「え~、いいじゃないですか、別に減るものでもありませんし、あちらは喧嘩上等!って感じなので暇なんですよぅ」

「私みたいに本でも読んでればいいじゃない、話に参加するのなんてたまにでいいのよ。ほら、貸してあげるからこれでも読んでなさい」

 

 投げつけられた本のタイトルを読むと、「レミリア ポエム集」と書かれていた。どうやって手に入れたのか気になるところではあるが、もう少しで着きそうなのでとりあえず着替えることにする。

 

「はいはい、マルフォイさんもハリーもロンもちょっと出て行っててくださいね~、もう少しで着きそうなので、さっさと着替えたいと思いますから」

 

 ハリー達が出ていったところでさっさと着替えを済ませる。黒い長いローブを着るだけなので、特に時間はかからなかった。

 

「はい、どうぞ。じゃあ出ていきますね」

 

 そういって外に出た瞬間、車内に「あと五分で到着します、荷物は置いていってください」というアナウンスが流れた。通路に人があふれ、汽車は停車した。パチュリーの手を引きながら外に出ると、小さなくらいプラットホームに出た。ロンドンではこういうプラットホームなどないので、こういう田舎っぽい雰囲気は幻想郷にいたころを思わせるので、とても好きだ。

 少しすると、生徒たちの頭上にゆらゆらとランプが近づいてきた

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっち!ハリー、元気か?」

 

 ダイアゴン横丁で出会ったハグリッドだった。

 

「そういえばパチュリー、あなた鍋とかは大丈夫なの?ダイアゴン横丁には行っていないんでしょう?」

「紅魔館に全部そろってるわよ、教科書類は双子の呪文で何とかなるし」

「ああ、そうだったのね。なら大丈夫だわ。さっさとホグワーツに行きましょう?」

「ああ、ちょっと待ちなさい。ルーモス デヒュージオ光よ、広がれ」

 

 パチュリーがそういうと、私達の周りだけ急に明るくなった。ルーモスだと、杖の先に明かりがともるだけなので、オリジナル魔法だろう。

 明かりの魔法をつけたまま、険しくて狭い道を、何度かつまずきながら降りていく。私達は周りが明るいので、木が鬱蒼と生い茂っているのが見えた。

 

「みんな、ホグワーツが間もなく見えるぞ、この角を曲がったらだ」

「うぉーっ!」

 

 一気に歓声が沸き起こった。

 狭かった道が急に開けて、大きな黒い湖のほとりに出た。向こう岸にはのしかかってくるような黒い大きな山がをそびえたち、その頂点に壮大な城がみえた。紅魔館に勝るとも劣らない大きさの城は、大小さまざまな党が立ち並び、きらきらと輝いている窓が浮かんでいた。

 

「四人ずつボートに乗って!」とハグリッドが岸辺に繋がれた小舟を指さした。最初に私が乗り、パチュリー、ネビル、ハーマイオニーと続いた。

 

「また会いましたね、ハーマイオニー。予習はどうですか?組み分けでは呪文が出るらしいって誰かが言っていましたよ?」

 

 私がそう冗談を言うと、ハーマイオニーは真に受けたのか覚えた呪文をずっと下を向いて口ずさんでいた。パチュリーにはたかれた。

 

「よーし、みんな乗ったか?では、進めぇ!」

 

 ボートは一斉に動き出し、湖面を滑るように進んだ。みんな黙って、そびえたつ巨大な城を見上げていたが、途中からマルフォイの自慢話が聞こえてきた。向こう岸の崖に近づくにつれ、城が頭上にのしかかってきた。

 

「頭、下げぇー!」

 

 城の真下あたりについたとき、ハグリッドがそういった。みんながツタのカーテンをくぐり、崖の入り口へと着く。私は濡れるのも嫌なので、飛んでボートから降りた。パチュリーもそれは同じなようで、浮遊呪文を使って岩の上へと降り立っていた。

 そこから岩の道をのぼり、湿った草の城影の中へとたどり着いた。石段を登り、巨大な樫の木の扉の前に集まった。

 

「みんな、いるな?」

 

 ハグリッドが大きなこぶしを振り上げ、城の扉を三回たたいた。




 いかがでしたでしょうか。正直ここら辺はそんなに変えるところもないので原作準拠となっています。

 では、次回もお楽しみに!


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第三話 組分け帽子と二人目の友達

何とか部活が始まる前に投稿できました。ああ、部活なんて消えてなくなれ

今回は実験的に文(取材モード)での一人称となっております。

では、どうぞ!


(あー、退屈だわ……マクゴナガル先生が生徒はここで待ってなさいっていうからここで待っているけれど、正直もう我慢がならないわ。マルフォイの自慢話ももう聞き飽きたのよね~)

 

 読者の皆さまこんにちは、私です、清く正しい新聞記者、射命丸文でございます。私は今ですね、ホグワーツ城の門をくぐりまして、新入生の待機室のようなところに閉じ込められています。それはマクゴナガル先生の一言から始まったのです

 

 

―――――

 

 ハグリッドが扉をたたくと、中からマクゴナガル先生が出てきました。マクゴナガル先生は私たちを一瞥すると。

 

「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」とハグリッドが報告しまして。

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」

 

 マクゴナガル先生は扉を大きく開くと、私たちを招き入れた。マクゴナガル先生に私たちはついていき、石畳のホールを横切り、ホールのわきにある小さな空き部屋へと一年生を案内したのです。

 

「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会が間もなく始まりますが、大広間の席に着く前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮の組み分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族のようなものです。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。

 寮は四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリンです。それぞれに輝かしい歴史があって、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんの善い行いは、自分の属する量の得点になりますし、反対に規律に違反したときは寮の原点になります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入るとしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなるよう望みます。

 まもなく善行列席の前で皆さんの組分けの儀式が始まります。待っている間、出来るだけ身なりを整えておきなさい」

 

 マクゴナガル先生はそう言って部屋を出ていったのです。

 

―――――――

 

マクゴナガル先生にここに入れられてからすでにに10分ほどが経過しました。途中で幽霊などが来ましたが、今は去ってしまい、静か……ではなく、お得意のマルフォイの自慢話と、ハーマイオニーのぶつぶつと呪文を唱える声だけが耳に届いています。

 

(パチュリーはなぜか爆睡してるし、入学式の直前に寝てるんじゃないわよもう、組み分けなんてどうせそんなに時間がかかる者でもないだろうし、なんでここまで時間がかかってるのかしら。もういっそ壁でもぶっ壊してやろうかしらね。どうせ魔法で何とかなるのだし、本当にやってしまおうかしら)

 

 自分の思考が歪んだ方向へと向かっていますね、どうしましょう。これ以上いると妖力でも使ってしまいそうです。

 そう心配を始めてすぐにドアが開いて「さあ行きますよ」と厳しい声がした。

 

 おお、これでやっとこの退屈から逃れることができますね。組み分けは時間がかからないとはいえ興味は結構ありますので、パチュリーを起こしましょうk……起きてましたねもう。

 そういって私とパチュリー、新入生たちは部屋を出て、もう一度玄関ホールへと戻り、さらに二重扉を通って大広間へと入りました。

 

 するとそこには、幻想的な光景が広がっていたのです。何千何百という蠟燭が空中に浮かび、きらきらと輝く金色のお皿とゴブレットがおいてありました。天井を見上げるとさらにすごい、天井に空が浮かんでいるという表現が正しいのか、天井にはビロードのような黒い空に青や赤、そして白いきらきらと輝く星々が浮かんでは消えていきます。

 

「パチュリー、これ作れる?」

「さすがにすぐには無理よ。私も万能なわけじゃないし、しっかり魔法陣を書いて、術式を組めば行けるとは思うけれど」

 

 マクゴナガル先生は私達を先生方の座っている上座の方へと私達を案内して、目の前に四本足のスツールを置く。さらにその上にボロボロのとんがり帽子をのせました。

 すると帽子がぴくぴくと動き出しまして、つばのへりにある破れ目が口のように開いて、帽子が歌い出したのです。

 

「私はきれいじゃないけど

 人は見かけによらぬもの

 私しのぐ賢い帽子

 あるなら私は身を引こう

 

 山高帽子は真っ黒だ

 シルクハットはすらりと高い

 私はホグワーツの組分け帽子

 私は彼らの上を行く

 君の頭に隠れたものを

 組分け帽子はお見通し

 かぶれば君に教えよう

 君が行くべき寮の名を

 

 グリフィンドールに行くならば

 勇気ある者が住まう寮

 勇猛果敢な騎士道で

 他とは違うグリフィンドール

 

 ハッフルパフに行くならば

 君は正しく忠実で

 忍耐強く真実で

 苦労を苦労とは思わない

 

 古き賢きレイブンクロー

 君に意欲があるならば

 機知と学びの友人を

 ここで必ず得るだろう

 

 スリザリンではもしかして

 君はまことの友を得る

 どんな手段を使っても

 目的遂げる狡猾さ 

 

 かぶってごらん! 恐れずに!

 興奮せずに、お任せを!

 君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)

 だって私は考える帽子!

 

                      」

 

 要約するとこんな感じでしょうか、寮の紹介という事ですね。

 

 グリフィンドールは勇敢で、騎士道精神を持った者が集まる寮。

 ハッフルパフは誠実で、我慢強いものたちが集まる寮。

 レイブンクローは知識を追求し、賢いものが集まる寮。

 スリザリンは狡猾だが、真の友を得たいというもの達が集まる寮。

 

 と、こんな感じでしょうか。組み分けはABC順に名前を呼ばれたものからされるらしいですね。だからSの私は結構後ろの方になるのでしょうね。

 

「アボット・ハンナ!」

 

 そう言われると金髪の女の子が前に出てきて、帽子を目深にかぶりました。一瞬の沈黙の後……

 

「ハッフルパフ!」と帽子が叫んだ。

 

 その後も組み分けは順調に進み――グレンジャーはグリフィンドールだった――パチュリーの順番になった。

 

「パチュリー・ノーレッジ!」

 

 パチュリーはすたすたと帽子の方へ歩み寄っていくと、帽子をかぶった。何かを話しているようにも見えますが、何を話しているのでしょう?

 『風を操る程度の能力』を使ってパチュリーと組分け帽子との会話の内容を聞き出してみましょうか。

 

(できればグリフィンドールではない方がいいわ、でもグリフィンドールと接点が多い量がいいわね、だからスリザリンにしておいて頂戴)

(フーム、知識欲が高い、だがその知識欲を満たすためなら勇気も高いし、それを満たすために如何なる手段も問わないと……フム、スリザリンへの素質も十分あるな。それなら……)

 

「スリザリン!」

 

 帽子がそう叫ぶと一番右のスリザリンのテーブルから歓声が沸き起こりました。パチュリーは少し恥ずかしそうに小走りでスリザリンのテーブルへと進むと、テーブルの端に座ります。

 

「パーキンソン」、「パチル」姉妹、「パークス・サリー‐アン」、そして「ハリー・ポッター」が呼ばれまして、ハリーはグリフィンドールへと決まりました。グリフィンドールの席はもう大歓声です。他の寮は「ポッターを取られた!」と言って悔しがっていますが。

 

「シャメイマル・アヤ!」

 

 お、やっと私の順番ですね、そう思いながら背中の羽を見えないようにはばたかせ、空中に浮いているかのように歩いていきます。一つの演出ですね。名前が余程おかしかったのか、それとも初めてのアジアの名前だからか、少し席はざわざわしているようです。私が帽子をかぶると、頭の中に声が聞こえてきました

 

(フーム、難しい、非常に難しい。狡猾だから知識を求める。知識があるから勇気が出てくる。勇気があるから優しさもある。優しいから裏で助けようと狡猾に事を進める。難しい。お互いがお互いを助け合っている。君はどこに行きたいのかね?それによって決まることになるが)

「ん、じゃあスリザリンでお願いします。友達もいますし、私は裏で何かをする方が似合ってると思いますしね」

(君がそれを望むならばそうしよう。それなら……)

 

「スリザリン!」

 

 と帽子は声高に叫びました。耳をふさいでなかったら鼓膜が破れてたかもしれないというほどの音量です。

スリザリンから歓声と拍手が聞こえます、それを耳にしながら、私はパチュリーの隣へと座りました。

 

『組み分けと言っても何というか、生徒の意思を尊重する感じだったわね。スリザリンに行きたいと言ったら簡単に入れてくたわ。大丈夫なのかしらこの学校』

『先生が優秀なんでしょう。ダンブルドアなどは相当強いらしいわ。まあ、幻想郷の妖怪達と比べると見劣りしてしまうけど、中級妖怪位なら余裕で対処して見せると思うわよ、具体的には美鈴にはぎりぎり負けるくらいね』

『ええ……それって十分強いじゃないの、強さの質が違うのかしらね』

『そうね、私達はどちらかというと妖力を使って大量の弾幕を生み出すけど、こっちの方は一対一、主に決闘の方が得意だと思うわ、呪文も避けずにぶつけ合う方法を取るし、私達とは相性はいいんじゃない?』

『ふーん』

 

 と、それだけ言って、私たちは校長の方を見る、急に立ち上がったからですね。ダンブルドア校長は腕を大きく広げ、にっこりと笑いました。

 

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」

 

(あ、あの人絶体紫みたいなタイプね、表には何にも出さないくせに、裏で何やってるかわからない。狸爺ってよぼうかしら、似合うと思うのよね)

 

 紫ほど頭は良くないかもしれないが、それでも相当切れるタイプの人間でしょう。絶対に裏で陥れようとしたりしてると思いますね。目の前を見ると、皿の上が料理でいっぱいになっていた。ローストビーフやら、ソーセージやら、肉料理ばっかり。日本料理が恋しいです。イギリスの料理は正直朝食くらいしか美味しくないので、家で食べていた料理が本当に懐かしく思います。

 

「パチュリー、これって日本料理とかはないのかしら?」

「ないわね、多分。度地下にある屋敷しもべのところへ行ってみたらどう?屋敷しもべ妖精は働くの大好きだからきっと聞いてもらえると思うわよ」

「そうなのね~、イギリスの料理は正直あまり美味しくないから、今度自分で作ろうっと」

 

「あなた達、楽しんでる?」

 

 二つ隣くらいに座っていた女の子が声をかけてきmした。金髪に緑色の髪留めを付けた子だ。たしか、

 

「ダフネと言いましたね、よろしくお願いします。私は清く正しい新聞記者、射命丸文と申します」

「あら、組み分けの時に知ったのかしら?よろしくね、ダフネよ、ダフネ・グリーングラス」

「よろしく。パチュリー・ノーレッジよ」

「さっきアヤ日本料理って言ってなかった?もしかして日本人なの?」

「ええ、日本から来ましたよ(人かどうかは別として)」

「そうなのね、そちらのパチュリーとはどんな関係?」

「う~ん、友達ですかね、最近は魔法について教えてもらうことも増えてますよ、パチュリーは頭がいいですからね」

「そうなの!?私はあまり頭が良くないから、教えてもらえると嬉しいわ!」

「別にいいわよ、まあ、本を読む邪魔にさえならなければいつでもいいわ」

 

 パチュリーも含め三人で談笑をしていますと、身の毛のよだつようなゴーストが目の前でふよふよと浮かんでいました。皆さん、これがあのゴーストでしょうか!幽霊や人魂などとは取材生活でお会いしたことがありますが、西洋のゴーストというのに会うのは初めての経験でございます。

 私がカメラのシャッターを切ると、少し鬱陶しそうにしながらゴーストさんが話し始めました

 

「吾輩はスリザリンに住むゴーストの血みどろ男爵だ、スリザリンの新入生諸君、今年も寮対抗優勝カップを獲得できるよう頑張りたまえ。いまスリザリンは六年連続で両杯を獲得している。歴代で最高の連続獲得数はグリフィンドールの八年連続だ。それに追いつけるよう、皆も精進したまえ」

 

 そういって演説を終えると、まばらな拍手が届きました。近くにいるマルフォイだけはいやそうな顔をしていたのですがね。全員が食事を食べ終わると、今度はデザートが現れたのです。ありとあらゆる味のアイスクリーム、アップルパイ、糖蜜パイ、エクレア、ジャムドーナツ、トライフル、イチゴ、ゼリー、ライスプティングなどだ。

 私がイチゴをつまんでいると、ダフネがまた話しかけてきました。

 

「ねえアヤ、あなたって純血なの?」

「えっと、その質問ですか……うーんと、『どう答えればいいですかねパチュリー』」

『適当でいいでしょう、純血と言えば純血なんじゃない?どちらの親も天狗でしょう?天狗は神通力を扱えたというし、神通力は魔法みたいなものでしょう、少し原理は違うけれど』

「ふむ、それもそうですね……ダフネ、結論から言うと私の親はですね、どちらも魔法使いではありません」

「あれ、そうだったの?それにしては魔法について慣れているようにも見えるのだけど」

「ええ、私の親は陰陽師と言って、まあ日本の魔法使いのようなものです、でもどちらかというと妖怪……こちらの言葉で言うとモンスターですね、を退治するのが主な仕事で、こちらの人とは少し違う術を使います。ほら、こんな感じですよ」

 

 私がそう言って、『風を操る程度の能力』を使って掌の上に小さな竜巻を起こします。するとダフネは興奮した様子で私の手を握りました

 

「すごいわね!魔法とも違うみたいだし……私にもできるかしら?」

「いや、ちょっと難しいと思いますよ。原理がまず魔法とは違うので、習得するには相当な時間がかかりますし、私もそんなにうまく教えられないでしょう。それより純血主義に関して詳しくお聞かせできませんか?新聞にまとめたいんですよ、主にマグルと魔法使いの確執についてとか、なぜ純血が素晴らしいのかについてですね」

 

 そういうとダフネは純血主義について詳しく聞かせてくれました。要約するとこうです。

  

 その昔、あるマグルの二人の親から、最初の魔法使いが生まれた。その魔法使いはさらに結婚して、次の世代が生まれた。魔法界はどんどん発展していき、その頃の魔法界には純血しかいなかった。

 しかし、十七世紀ごろ、魔女狩りが行われるようになった。それは魔法族の人数を大きく減らし、魔法族はマグルに復讐として戦争を挑んだが、どちらも大きな痛手をこうむった。それにより魔法族とマグルは不可侵条約を結び、一応の締結を見せた。

 だが、近年魔法族の数がさらに急減したことによって、マグルと和解するべきだとの声が出てきて、マグル生まれと呼ばれる、マグル、もしくはマグルと魔法族の子供である魔法使いが多く出てきた。それらはみな優秀ではなく、本当の意味で純血と言われるのは二十八の苗字の魔法使いだけになってしまった。それが聖28一族だ。これにはグリーングラス家やマルフォイ家などが含まれる。

 これらはみな優秀だ。だから純血こそが良いのである。

 

「……と、こういう事ですね?」

「ええ、だからマグルに興味を持っているウィーズリー家と純血主義のマルフォイ家は仲が悪いのよ」

「あ、ちょっといいかしらダフネ、でもそうするといつか近親婚状態になって、むしろスクイブとかの劣等児が生まれてしまうんじゃないかしら。要するに聖28一族がみな親戚になってしまうという事ね」

「うーん、そこまでは分からないわ。でもまあ確かに純血の家からしかスクイブは出ていないしね。まあ、私はそこまで過激な純血主義っていう訳でもないからね、どちらかというと今の魔法族は数が減りすぎだから、むしろマグルを積極的に取り入れていくべきだと思うわ」

 

 ダフネは「もうそろそろダンブルドア先生の話が始まるから」としめると、前を向いた。

 

「エヘン――全員よく食べ、よく飲んだことじゃろうから、また二言、三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。一年生に注意しておくが、構内にある森に入ってはいけません。これは上級生にも、何人かの生徒に特に注意しておきます」

 

――――それがむしろ入る人を増やしている原因だと思うんだけど、というかそんな事言われたら入るしかないじゃない。

 

「管理人のフィル治山から授業の合間に廊下で魔法を使わないようにという注意がありました」

 

――――使えってことよねそれ。

 

「今学期は二週目にクィディッチの予選があります。寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡してください」

「最後ですが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい四階の右側の廊下に入らないことですな」

 

――――――――やっぱり入れってことですねわかります。いつ行こうかしら、夜にしようっと

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」

(「文、ダフネ、耳をふさぐのよ、今すぐ!」)

 

 パチュリーがそう切羽詰まった声で言うので、私も耳をふさいで、二人の周りに風の膜を作る。こうすれば外の音は膜の中へと入ってこれないので安心だ。

 

(「みんな自分の好きなメロディーで、さん、し、はい!」)

 

(「ホグワーツ ホグワーツ 

  

  ホグホグ ワツワツ ホグワーツ

 

  教えて どうぞ 僕たちに 老いても ハゲても 青二才でも

 

  頭にゃなんとか詰め込める おもしろいものを詰め込める

 

  今はからっぽ 空気詰め 死んだハエやら がらくた詰め

 

  教えて 価値のあるものを 教えて 忘れてしまったものを

 

  ベストをつくせば あとはお任せ 学べよ 脳みそ 腐るまで

                              」)

                                

……うん、率直に言おう、酷い歌だこれは。最後には葬送行進曲のリズムで歌っている人もいるし、やっぱりこの学校本当に大丈夫なのかしら、入学しといてなんだけど、心配になってきたわ。パチュリーが耳をふさいでといった理由も分かるわ

 

「ああ、音楽とは何にも勝る魔法じゃ。さあ、諸君、就寝時間。駆け足!」

 

 感激の涙をぬぐいながらダンブルドアがいる。魔法学校のしかも校長先生が言う言葉じゃないと思うのだが、ここはもしかして音楽学校だったのだろうか

 

「ね、耳をふさいでおいてよかったでしょう?」

 

 私は気になってほかの先生方の思考を読む。神通力は極めればある程度の思考は読むことができるのだ。

 

マクゴナガル先生の場合

(ダンブルドア校長は素晴らしい魔法使いのはずですよね、ええ、そうです。なのにどこか抜けているのですよね。いつも後片付けは私がさせられるのです。ああ、ストレスが溜まりますね)

 

スネイプ先生の場合

(あの校長はやるときはやれるお方なのだから、いつもそうして欲しいものだ。吾輩はあの校長のようにならないようにせねばな)

 

クィレル先生の場合

(ああ、早くこんな校長は死んでしまえばいいのに、ヴォルデモート様に賢者の石を届けないと、殺されてしまう。どうすればいいだろうか、四回の右側の廊下《おい、思考が誰かに読まれている!早く閉じるのだクィレルよ!馬鹿者が!》)

 

 その声が聞こえた瞬間、私は神通力を切っていた。呪い返しのようにされると困るためだ。

(……思ったよりも早く裏切り者(ユダ)が分かったわ。でもクィレルにばれると困るから、慎重にいかなきゃならないわね、ああ面倒くさい)

 

(『パチュリー、ユダよ、クィレルだわクィレル。神通力で少し心を読んだけれど、途中でヴォルデモートにばれたかもしれない。まあ、誰かまでは分からないだろうけど』

『……本当なの?そうね、あれに寄生してるとしたらターバンの下でしょうね。イメージとしては二口女が近いかしら』

『ああ、そういう感じね。分かったわ、よーく分かった。泳がせておいた方がいいわね、具体的には賢者の石を取りに来るあたりがいいかしら。四回の廊下にあるらしいから、使い魔でも送っておこうかしらね』

『ええ、それがいいと思うわ』)

 

「何をしているのだね?」

 

 そう言われて二人とも飛び上がります。気づくと他の人達はもうみんな帰ってしまっていました。 

 

「あ、ごめんなさい。少し話し込んでいたら移動するのを忘れていたみたいです」

「吾輩はスネイプ、スリザリンの寮監だ。着いてきたまえ、スリザリンの談話室へと案内する」

 

 そういってスネイプ先生は歩き出す。大広間を抜け、無機質な壁が立ち並ぶ地下牢へと進んでいく。

いくつか地下牢を通り抜けた壁の前で急にスネイプ先生は立ち止まった

 

「ここだ。諸君はこれからここで寮生と生活を共にする。部屋は二人とも同じで、グリーングラスがほかにいる。では、入りたまえ『魔法族に栄光あれ!』」

 

 スネイプ先生がそういうと壁が横にスライドして、中から淡い緑色の光が漏れ出てきた。

 

「吾輩とは明日の魔法薬学の授業で会うだろう。では」

 

 私たちは寮の談話室へと入る。談話室は少し細長い形をした地下室で、床には濃い緑と青のスリザリンカラーの絨毯が敷かれていて、天井からは鎖でつながれた淡い光を放つ丸い青緑のランプがあり、暗い談話室の中をぼんやりと照らしています。

 窓の外には途中ボートで横切ったであろう湖の中が広がっていて、奥の方が見えないくらいまでずっと続いています。

 そして壁は荒っぽい石や石のレンガで作られ、その壁一つ一つに彫刻がされ、荘厳な雰囲気を醸し出しています。

 私が談話室を撮ろうとカメラのシャッターを切りまくっていると、ダフネが近づいてきました。何やら怒っている模様です、後ろには…阿修羅が見えるような気がするのは気のせいですよねそうですか。

 ダフネはにっこりとこちらの背すじが凍るような笑顔を浮かべ、こちらへと歩み寄ってきました。

 

「ねぇ、文、なんで貴女私が何度呼び掛けても帰ってこなかったのかしら」

「あ~、ごめんなさいダフネ、大事な話をしてたから聞こえてなかったわ。悪かったわね」

「まぁ、別に私が関与する場面でもないからもういいけれど、あまりスリザリンの品位を落とすような行為は控えた方がいいと思うわ。ダンブルドア校長とかも見ていたしね、気を付けた方がいいと思うわよ」

「あなたたち、こんなに時間に何をしているのかしら。もう寝る時間だから早く寝室に行きなさい、この子は私が運んでおくから」

 

 そういって疲れて、もしくは呆れて壁に背をつけてこっくりこっくりしていたパチュリーを掴みながら監督生さんがそういいます。私ももうこの悪魔(ダフネ)から一刻も早く逃れたかったのですぐに了承します。

 

「はい!ありがとうございました!監督生の……」

「ファーレイ・ジャマよ。よろしくね」

 

 私はさっさと上へと上がることにします。ダフネが同じ部屋なのがもう気がかりになってきていますがそんな頭の中の声なんて聞こえません聞こえません。

 寝室も談話室と同じようなつくりでしたが、違うところもいくつかありました。まず天井から下がっていたのはランプではなく高級そうなシャンデリアです。ベッドにはスリザリンを現す緑色の分厚いカーテンが下げられていて、銀の刺繡で蛇のマークが縫い取られています。

 極めつけは少し高い位置だからか湖から打ち寄せる波の音が聞こえてくること!

とても寝やすそうなふかふかのベッドや緑色の布団を見てるとこっちまで眠くなってきますがまだ眠ることはできません。

 

「えっと、ダフネ?さっきはごめんなさい。謝るわ。まあ、本当に大事な話だったということは分かって欲しいのだけれど」

「ええ、こちらこそごめんなさいね……ん?アヤ、口調変わってない?」

「いや、もうわざわざ寝室に来てまで取り繕う必要性もないかなって思ってね。こっちが私の素のしゃべり方よ。改めてよろしくね、ダフネ」

「ええ、よろしくねっ!アヤ!」

 

 そういって二人とも同時にベッドへと飛び込んでいく。位置関係としては左からダフネ、私、パチュリーといった順番だ。

 ダフネとのことで疲れていたのもあって、ふかふかすぎるベッドと布団、そして打ち寄せてくる静かな波の音は、私をすぐに眠りの世界へといざなうのだった。




えー、いかがでしたでしょうか。

本当に実験なので、ふとした拍子に修正を加えるかもしれません。

もしよかったら感想や評価など、よろしくお願いいたします!

では、今回はここで、ありがとうございました!


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第四話 初めての授業と賢者の石

 一日遅れてしまってすみませんでした!でも一万五千字超えたので許してください何でもしますから(ん?今何でもするって(ry)

 では、どうぞ!

・呪文と効果が続けて書かれていたため修正


――早朝、私は談話室の机に向かって、まとめた文花帖ネタ帳のページをぱらぱらとめくっていた。

 

「う~ん、これは嘘っぽいから没……こっちは理解しづらいから没……思ったよりも新聞の記事にできそうなネタがないものね……今日から授業が始まるからいいものの、あ~、新聞を印刷する道具もないし、退屈だわ~」

「そればっかりは仕方がないわね。あそこ幻想郷から持って来るにはさすがに遠いし、かといってここに印刷できるものがあるわけでもないしね。おはよう文。もう少しで朝食の時間らしいから、ダフネを起こしてきたわよ。さっさと行きましょう?」

「あら、パチュリー、起きてたの?……まあいいわ、じゃあ朝食食べに行こうっと」

「おはよう文、パチュリー」

 

 そういって三人で連れ立って大広間へと向かう。地下室なので大広間までは意外と遠いのだ。早めにいかないと席をとれなくなってしまう。

 私たちが大広間につくと、周りの人皆がハリーについて噂していた。「ハリーが…」「ポッターが……」などとずっとざわざわしているし、何よりグリフィンドール生の浮かれようが凄い。

 

「うるさいわね、もう少し静かに食事できないものかしらね」

「まあ、仕方ないんじゃないですか?ハリーなんていう英雄が学校にやってきたんですから、そりゃあ興奮もしますよ」

「う~ん、文のその口調が急に変わるのは何というか慣れないわよ~、なんでそんなに一々変えられるの?」

「そんな事言われましてもね~、取材時に相手方に粗相をするわけにもいかないじゃないですか。だから取材時、もしくはあまり知らない人がたくさんいるところではこの口調でしゃべってるんですよ」

「そうなのね~」

 

 ダフネがトーストを頬張りながらそう聞いてくるが、その質問に関してはあまり詳しく答えることはできない。あまり話しすぎると私の出自にもかかわってきてしまう問題だからだ。

 三人でご飯を食べていると――イギリス料理で美味しいのは朝食だけらしい――ハリー・ポッターが中へと入ってきた。噂話をされているのが耳に届いたのか少しいやそうにしながら隣にいるロンと一緒に食事を始める。その頃には私たちも食事を終わらせていたので、最初の授業の呪文学をやる教室へと向かい始めていた。

 

 歩き始めてから気付いたが、この学校には本当に階段が多い。一分ごとに動く階段や三十秒ごとに動く階段など、動くペースが違ったり、一つの階段が二つ以上の場所へ行ったり来たりするのだ。パチュリーの地図がなければ当の昔に迷うか遅刻してしまっていただろう。

 そのおかげもあって、私達が呪文学の教室へと着いたのは誰よりも早い時間だった。それもそうだろう。まだ授業開始まで十五分もあるのだ。新入生としてはとても早く着いたのだろう。呪文学のフリットウィック先生はとても驚いていた。

 

「いやー、新入生の中でこんなに早く来たのは私が教えている中で初めてだよ。まだ時間もあるし、予習でもするかい?」と先生が独特のキーキー声で言った。

「あー、いえ、結構ですフリットウィック先生。私達……といっても私とパチュリーだけですが、もうN.E.W.Tレベルの呪文はほとんど網羅してますから。むしろ今はオリジナル呪文を作るのが趣味になっているくらいですので」

「本当かね?それじゃあ、あっちの呪文の練習室へと言って、少し見せてもらおうか」

「ええ、分かりました。デウス ヴェンタス(神霊の風) フィエンド ファイア(悪霊の火)!」

 

 私がそう唱えると、自分の振った杖の先から火災旋風とでもいおうか、燃え盛る唐紅の業火と、無限に回り続ける旋風が飛び出していく。それは驚いているフリットウィック先生の前でしぼんでいき。到達する直前で消え去った。

 

「いやー、いやー、これは驚いた!まさか一年生が悪霊の火と自分で作ったオリジナル魔法を使いこなすとは思わなかったよ!スリザリンに十点!だがさっきの風はともかく、悪霊の火は闇の魔術に含まれる危険な呪文だ。使用には十分気をつけることだね」

「ありがとうございました。他にも見せましょうか?多分次はパチュリーが見せてくれるはずですよ、ね、パチュリー?」

「何で私が……、まあいいわ。では、行きますよ先生……ルーモス スピリタス(精霊の光)

 

 パチュリーの呪文は確か守護霊の呪文と同じような効果を持つものだったか。攻撃の要素がないわけではないが、自身への加護が主な効果となる魔法だったはずだ。

 これは先生も効果が分からなかったようで、少し首をかしげながらパチュリーへと聞いた。

 

「?これは何の効果のある呪文なのですか?ルーモスということは光に関係のある呪文だというのは分かるのですが……」

「これは守護霊の呪文が使える人が少なすぎるという事から、もう少し簡単に吸魂鬼ディメンターを追い払えないだろうかと思いまして、そこから造った呪文ですね。守護霊の呪文には及びませんが、ディメンターをある程度ひるませることができます」

「ほう、ほう。それはすごい!守護霊の呪文と同じ効果ですか!スリザリンにもう十点あげましょう!そして今度から私の部屋へと遊びに来なさい、特別授業を行いましょう」

「ありがとうございます」

 

 ダフネは固まってしまっている。私たちのレベルが高すぎたのだろうか。とても驚いた表情だ。

 

「えっ?パチュリーも文もそんなに魔法使えたの?知らなかったわよ!」

「いや、そりゃあ今日が初めてなんだから知らないでしょうよ、それにわざわざ知らせるようなことでもないですしね。まあ、先生とパチュリーに教えてもらっていればきっと上手くなりますよ。もうそろそろ授業も始まる時間でしょうし、戻りましょうかね」

 

 授業はつつがなく進んだ。まあ、最初の授業から実習をやるわけでもなく最初は理論のみだったが、それでも魔法の授業を受けているということがうれしいのか、生徒はずっと興奮しっぱなしだった。ダフネはパチュリーとわたしにしつもんぜめだったのだが。

 次の授業の変身術の教室へと向かっている間、ダフネはまだ私達に対して質問をしてきていた。

 

「ねえ、なんでそんなに魔法の知識があるの?私の家にだってそんなに魔法の本があるわけでもないのに」

「まあ、私はパチュリーから教えてもらってたから。パチュリーの家は図書館と言ってもいいくらいに本があるからね、勉強には事欠かなかったんでしょう、パチュリー本の虫だし」

「そんなところね。私はもともと本が好きだったし、うちは本が集まるところでもあったから、魔法の勉強には困らなかったのよ」

 

 変身術の教室につくと机の上に猫(マクゴナガル先生だろう。猫にしては保有霊力が高すぎる)が座っていた。私が小声でマクゴナガル先生にしかわからないように「マクゴナガル先生、吃驚しました。先生ってアニメーガスだったんですね」というと驚いたのかびくんと一度体を震わせると首を振って変身を解いた。

 

「はぁ、授業を始めます。取り敢えずスリザリンに五点差し上げましょう。アニメーガスが見破られるのは変身術の教師になってから初めての経験ですよ。変身術はホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なもののひとつです。いい加減な態度で私の授業を受ける生徒には出て行ってもらいますし、二度とこのクラスには入れません。始めから警告しておきます。アヤ、あなた机を豚に変えられますか?」

「は、はい。変えられますけれど?というか家具を変えるのって相当後の方の授業ですよね。流石にほかの人ができるかどうかわからないんですが。やりましょうか?」

「ええ、じゃあこの教壇を変えてもらいましょうか」

「分かりました」

 

 私は机に向かって杖を振るい、豚の姿を強く念じる。変身術は微妙に苦手な分野なので上手く出来るかわからなかったが、少しかくかくしているような気もするが、ある程度はよくできたものだろう。

 

「すごいですね。一年生では出来る人はいないでしょう。スリザリンにもう五点、差し上げましょう」

 

 クラスから歓声が上がった。先生は私が変えた豚を杖を振るって元の机へと戻すと、家具を変えるにはまだまだ時間がかかるということを言った。私たちはさんざん複雑なノートを採らされたあと、一人一人にマッチ棒が配られ――私のみ花瓶を鳥に変えるというものだった――それを針に変える練習が始まった。

 パチュリーは一瞬で針に変えてみせると、先生はさらにスリザリンに五点をくれ、パチュリーも私以上にできるとわかると、私と同じ課題を与えて見せた。

 授業が終わるまでにマッチ棒を変えられたのはダフネ・グリーングラスだけだった。

マクゴナガル先生はダフネをほめると、疲れたような笑みでその授業を終わらせた。

 

 「闇の魔術に対する防衛学」の授業は拍子抜けだった――まあ、クィレル先生が生徒に力をつけさせたくないというような思惑もあるのだろうが――教室にはニンニクの強烈なにおいが漂っていて、パチュリーは「レミィが苦手そうな臭いね」と皮肉を言った。実際、先生がルーマニアで出会った吸血鬼を寄せ付けないためらしい。まあ、

パチュリー曰く「吸血鬼は実際にはそこまで大蒜に弱いわけじゃないわ。太陽にだってすぐに灰になるわけでもないし、流水だって私たちが気持ち悪い食べ物が嫌い~とかその程度よ」と言っていたが。それにターバンは厄介なゾンビをやっつけたときにアフリカの王子様がお礼にくれたと言っていたが、変な臭いをしているし、それがヴォルデモートの臭いと顔を隠すためだと知っている私達からしてみれば、何を言っているのだという話だったのだが。

 

 私達は魔法薬学の授業がある地下牢――寮のすぐ隣だ――に向かいながら、今までの授業について雑談していた

 

「闇の魔術に対する防衛学は酷かったわね。あんなの授業ですらないわ、私が教えた方がよっぽど身のためよ」

「いや、パチュリーが教えたらそれこそ酷いことになるわよ。だって習ってないところからもバンバン出してくるじゃない」

「私はそれよりも貴女達が点を取りすぎてると思うのよ。今までの二日で何点取ってると思う?四十点よ?ハーマイオニーですら二十点も取れていないっていうのに……」

「まあまあ、着いたわy――着きましたよ。魔法薬学の授業ってどんなのなのでしょうね?スネイプ先生は生徒思いだけど表にはそれが出せないツンデレさんだっていう事は分かったんですけど」

「ツンデレってなに?文」

「ご説明いたしましょう!ツンデレというのはですね、いつもはツンツンツンツン、厳しいことしか言えないのですが、ふとした折にデレ、要するに弱い所ですね、を見せるのがツンデレです。想像してみてくださいダフネさん。いつもは「何やってるのよ」とか、「知らないわよそんなの」とか言っているパチュリーさんが、ふとした時に「いつもは……ありがとね」とか頬を赤らめながら言ったらどうします!?萌えるでしょう?それがツンデレという物なのですよ!」

「ま、まあ何となくわかったわ……、確かにパチュリーがそんな事言ってくれたらこっちが恥ずかしくなりそうね。でもスネイプ先生がツンデレっていうのはどうしても想像できないわ……」

「ちょっと待ちなさい、なんであなた達私がモデルとして扱われているのよ。ありえないでしょう、別に私はツンデレじゃないわよ」

「ふふふふふ、そう言っている人こそ、真のツンデレという物なのですよ――あ、着きましたね。では、入りましょうか」

 

 魔法薬学の教室はとても気味が悪い教室だった。城の中の教室よりも少し寒く、壁にはずらりと並んだホルマリン漬けやらアルコール漬けの動物の入ったガラス瓶が立ち並び、その上明かりは上から吊り下げられたランプのみ。私は別にそこまで怖くないが、ダフネは気味悪そうに自分の肩を抱いていた。

 スネイプ先生もフリットウィック先生と同じようにまず初めに出欠をとった。そして、ハリー・ポッターのところでちょっと止まって。

 

「あぁ、さよう」と猫なで声でだ。

「ハリー・ポッター。我らが新しい――スターだね」

 

 といった。マルフォイやらクラップ、ゴイルはクスクス冷やかし笑いを漏らしたが、ハリーやロン、グリフィンドール生はいらいらしていた。出席を取り終わると先生は生徒の方を見まわした。

 

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ――」

 

 スネイプが話し始めた――私はメモを採り始めた――。呟くような話し方なのに、生徒たちは一言も聞き漏らそうとしなかった。

 

「このクラスでは杖を振り回すようなばかげたことはやらん。そこで、これも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。ふつふつと沸く大釜、ゆらゆらと立ち上る湯気、人の血管の中を這いめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。吾輩が教えるのは、名声を瓶詰にし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である――まあ、ただし、吾輩がこれまでに教えて来たうすのろ達より諸君がまだましであればの話だが」

 

 大演説の後はクラス中が一層しーんとなる――事はなく、私が拍手をし始めた―ハーマイオニーは自分がうすのろではないと証明したいかのようにうずうずとしていた。

 スネイプが突然、「ポッター!!」と呼んだ。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

(簡単じゃないですかハリー、それだけじゃ何にもなりませんよ)

と私は思ったが、聞かれたのはハリーなので黙っていた。まあ、ハーマイオニーはすっと手を上げていたのだが

 

「分かりません」とハリーは答えた。

 

スネイプ先生は口元でせせら笑うと、

 

「チッ、チッ、チ――有名なだけではどうにもならんらしい。ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいと言われたら、何処を探すかね?」

 

 ハーマイオニーはさらに高く、椅子に座ったままあげられる限界まで手を伸ばした。いい加減学習しないのだろうか、そういうのは先生によってするかしないか決めなければならないのだ。この場合、スネイプ先生は確実にハリーを憎んでいるか、スリザリンをよっぽど贔屓してるのかのどちらか、もしくはどちらもだ。だからハーマイオニーは手を上げるべきではない Q.E.D.

 

「わかりません」

「クラスに来る前に教科書を開いてみようとは思わなかったということだな、ポッター、え?」

「最後だ。ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いは何だね?」

 

 この質問でとうとうハーマイオニーは立ち上がり、地下牢の天井に届くくらいに手を伸ばした。

あまりにもハーマイオニーが可哀想だったので、私も手を上げた。

 

「わかりません」

「ハーマイオニーが分かってると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」

「いや、座りなさい、ハーマイオニー。射命丸、君は分かるらしいな、どうだね?」

「ええ、分かりますよ。まず、最初の質問ですが、アスフォデルとニガヨモギを合わせただけでは特に何の薬になると言う訳ではありませんが、それにさらに刻んだカコウソウの根、催眠豆の汁などを合わせることによって、非常に効果の高い水のように澄んだ色をした眠り薬となります。「生ける屍の水薬」と呼ばれるこの薬は飲ませすぎると一生目を覚まさないこともあるそうです。そしてベゾアール石は石ではなくヤギの胃から取り出されます。萎びていて茶色く、石というより干涸びた内臓のような見た目で、見つかることは稀です。そして最後にモンクスフードとウルフスベーンの違いですが、まあ呼び方の差ですね。何方も同じトリカブトのことを指しています。トリカブトは日本では日本三大毒物にも数えられ、烏頭、烏レイブン頭ヘッドや附子などと呼ばれています。また、ヘカテーの象徴で、ケルベロスの涎からできたとも言われています。こんな感じでよいでしょうか。」

「ああ、満点回答だ。ただ惜しむらくはトリカブトはアコナイトとも言うな。ただ完璧な回答だ。むしろ吾輩でもここまで詳しく説明することはできなかっただろう。特にトリカブトの日本名などの説明は良かったぞ。スリザリンに十点だ、どうだ?諸君、なぜ今のを全部ノートに書きとらんのだ?そしてポッター、君の無礼な態度で、グリフィンドールは一点減点」

 

 その後の魔法薬の授業中はグリフィンドールいじめが続いた。スネイプ先生は生徒を二人ずつ組みにさせて、おできを治す簡単な薬を調合させた。私とパチュリーの組、マルフォイ、ダフネの組以外はほとんど全員が注意を受けることとなった。

 そしてマルフォイが角ナメクジを完璧にゆでたからみんな見るようにといった瞬間、地下牢いっぱいに強烈な緑色の煙が上がった。私はとっさに「カプトエア カヴァ頭を空気で包め」と叫んだのでパチュリーと共に特に問題はなかったが、ほかの人はネビルのこぼした薬とその気体を吸ってしまったようで咳をしている。

 

「馬鹿者!」

 

とスネイプが怒鳴り、杖の一振りで――おおかたスコ―ジファイ清めよの無言呪文だろう――で床にこぼれた薬を取り除いた。ネビルは薬をもろに被ってしまったのか、全身に真っ赤なおできが噴出し、痛みでうめき声をあげていた。

 

「おおかた、大なべを火から降ろさんうちに、山嵐の針を入れたんだな?医務室へ連れて行きなさい――いや、そういえばノーレッジとシャメイマルの組が完璧な調合をしていたな。ネビル、これを飲むのだ。そうすればおできも消えるだろう。まあ、出来ていなかった場合は酷くなるかもしれないがな」

「そして、ポッター、何故針を入れてはいけないと言わなかった?彼が間違えば自分の方がよく見えるとでも考えたな?グリフィンドールはもう一点減点だ」

 

 スネイプ先生は私たちの鍋から薬を瓶一杯分採ってネビルに渡すと、ハリーに理不尽極まりない減点を食らわせた。ネビルのおできは時間を逆転させたかのようにスーッと収まり、ネビルはこちらに感謝の念を述べてきた。

 スネイプ先生はこちらへと歩いてくると、私とパチュリーに一つ告げた。

 

「このあと時間は空いているだろう?奥の部屋まで来たまえ、魔法薬学については二人ともとても優秀なため、特別授業を行おうと思う。着いてきたまえ」

「あー、ごめんダフネ、あとで一緒にご飯食べましょう?」

「わかってるわよ~、私もすぐに追いつくからね、まあ、その代わり、今日の夜は覚えておきなさいよ!」

 

 そういってダフネは教室の外へと駆けていった。私とパチュリーは奥の部屋で紅茶を出してもらい、丸椅子へと座らされた。

 

「この特別授業では、そなたらのレベルを図りたいと思う。そなたらはどのくらいの魔法薬まで作れるのだ?」

「えっと、私よりパチュリーの方ができると思いますよ?まあ、フェリックス・フェリシスが一回だけ作れたことがありますね。」

「まあ、私は脱狼薬は作れるわよ、ああ完全脱狼薬ね」

「ふむ、それは私にも作れんな。どうやって作ったのだ?」

「それは企業秘密ね、強いて言うならばポリジュース薬をヒントにして作ったら上手くいったわよ」

 

 そう言うとスネイプ先生が驚いたようにパチュリーを見る。その発想はなかったとでも言いたいかのようだ。

その後、スネイプ先生は私にたくさんの書き込みがされた自身の教科書を送ってくれた。パチュリーにはいろんな分野の魔法役の論文だ。他にもいろんな議論を交わし、充実した時間を送ることができた。

 

 

 

 

――次の日

 

 私とパチュリー、ダフネはとても疲れていた。マルフォイの自慢話が止まらないのだ。ずっと「僕は小さいころから箒をやってきたから箒にはとても慣れてるんだ」とか、「僕の乗ってる箒はコメット260っていってとても早いんだ」とか本当にうるさい。正直なところ私が本気で飛べば音速は出すことができるので箒とかの話を聞かされても特に何の感慨もない。

 

「はぁ、マルフォイが言っているコメット260なんてただ派手なだけよ。ニンバス2001が最近出たらしくてね、それは最高時速が可笑しいくらいに出るらしいのよ!それにマルフォイはヘリコプターに遭遇したとかって言っているけど、貴族の屋敷にはちゃんとマグルよけの呪文がされているはずよ!」

「そうね、ヘリコプターが来るなんていう事はあり得るはずがないわね。まあ、半分くらいは本当かもしれないけど、嘘のやつも多いでしょうね。じゃあ、校庭に行きましょうか」

 

 そう言って校庭へと向かう。確かグリフィンドールと合同授業だったはずだ。20本ほどの箒が地面に整然と並べられている。学校の箒はシューティングスターと言って骨董品のような性能で全然使えないのだと双子のウィーズリーがずっといっていた。

 マダム・フーチが来た。白髪を短く切り、鷹のような黄色い目をしている。

「何をボヤボヤしているんですか」

「みんな箒のそばに立って、さあ早く。右手を箒の前に突き出して、そして、『上がれ!』という」

 

 みんなが「上がれ!」と叫んだ。

私とハリー、マルフォイ、ダフネ、そしてパチュリーの箒はすぐさま手に収まったが、上がった箒はあまりなかった。ハーマイオニーのは地面をころりとしただけで上がろうとしない。

 次にマダム・フーチは箒にまたがる方法を教えてくれた。マルフォイの握り方が間違ってると知らされて、ハリーやロンがずっと笑っていたのが印象に残った。

 

「さあ、私が笛を吹いたら、地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、2メートルくらい浮上した後、前かがみになって降りてきてください。笛を吹いたらですよ――一、二の――」

 

 ところが、ネビルが笛を吹かれる前に飛び出して行ってしまった。

 

「こら!戻ってきなさい!」という先生の大声をよそに、ネビルは空気の抜けた風船のように飛んで行ってしまう。十メートルを超えたところで私は箒をもって飛ぶ振りをしながら飛び出した。真っ逆さまに落ちていく。後八メートル――六メートル――四メートル――二メートル――ローブの首を掴んだ――そのままゆっくりと速度を落とし、地面へと降り立つ。

 

「大丈夫ですか!?怪我は!?……無いようですね。良かった……何をやっているのですか!笛が吹かれてからと言ったでしょう!あなたもです、怪我がなかったからよかったものの、怪我をしたらどうするつもりだったのですか、ネビルを安全のため医務室へと連れていきますから、その間誰も動いてはいけません。箒もそのままにしておくように。さもないと、クィディッチの『ク』の字を言う前にホグワーツから出て行ってもらいますからね!」

「えっと、文さん、ありがとう……」

「どういたしまして、目の前で死なれても目覚めが悪いですしね」

 

そう言って涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら先生にネビルは医務室へと連れられて行った。

 

「なんでネビルを助けたんだ!お前はスリザリンだろう!?」

 

 ネビルがいなくなった瞬間、私に向かって罵声が飛んできた。は?なんで助けたんだですって?

 

「何を言っているのですかあなたは、目の前で死にそうな人を見て助けるなとでも?そんな事言ってネビルが死んだらどうするつもりだったのですかねぇ、あなたウィーズリーでしたっけ?ハリーといつもつるんでる子でしたよね。本当に馬鹿なのでしょうか。これではあながち純血主義というのも間違っていないかもしれませんね、マグルに溺れてしまうと頭の回転が下がってしまう……と、こんなところですかね。それで?何か反論はありますかね?あ、これは確かネビルの思い出し玉でしたね、どうぞマルフォイ!」

 

 私が思い出し玉をマルフォイに投げるとマルフォイはにやりと笑って

 

「ごらんよ!ロングボトムのばあさんが送って来たバカ玉だ」

「マルフォイ、こっちへ渡してもらおう」

「それじゃ、ロングボトムが後で取りに来られる場所に置いておくよ。――おっと危ない!射命丸!」

「はいはーい」

 

 ロンが取り返そうとしてマルフォイが投げた思い出し玉をキャッチし、箒をもって飛び上がる。ハリーも私を追って飛び上がってくるので空中でホバリングをしながらハリーと向かい合う。

 

「ハリーさんじゃないですか、今日箒に乗るのが初めての人なんかに私が負けると思いますか?」

「こっちへ渡せよ。でないと箒から突き落としてやる」

「あやややや、こわいこわい、か弱い女の子を箒から突き落とすだなんて、ハリーさんは野蛮ですねぇ。そうです!ネビルが後でとれるところに置いておきましょうか?そうですね――木の上、なんてどうでしょう?」

 

 私がそういった瞬間、ハリーの箒が槍のように私に向かって飛び出してくる――遅い、私は箒を持ちながら体をロールさせることによってハリーの箒を躱す。

 ハリーは鋭く一回転して、箒をしっかりつかみなおすと、私の方を向いた。

 

「パチュリーもここまではこれないぞ、ピンチだな、シャメイマル」

「あやや、パチュリーがいないと何もできないと思われてるのですか、心外ですねぇ、実戦では私の方が上だというのに、年季が違うんですよ年季が。では、こうしましょう。私がこれからこの思い出し玉を放り投げます。それを私とあなたで追いかけて、あなたが捕まえられたらこの思い出し玉は返しましょう。まあ、私がとった場合もネビルには返しますから安心してくださいね!」

 

 と言って、私はガラス球を空中高くに放り投げ、カウントダウンの用意を始めた。

 

「三――二、――一、――ゴー!」

 

 私がそう叫んだ瞬間、ハリーと私は一直線に急降下して、玉と競争していた。私が一歩抜け出す――天狗のスピードをなめてもらっちゃ困る――地面から一メートルほどのところで玉を掴み、空中でくるくるとターンを繰り返した。スリザリンから歓声が上がる。

 

「ハリー・ポッター…!」

「シャメイマル!」

 

 マクゴナガル先生とスネイプ先生が歩いてきた。あ、これやばいやつかしら。

 

「よくもまあ、そんな大それたことを……首の骨を折ったかもしれないのに」

「そうだ、怪我がなかったからよかったものの、ふとすれば大怪我に繋がっていたのだぞ、着いてきたまえ」

 

 私はダフネとパチュリーにグッドサインを送ってからスネイプ先生に引きずられていった。スネイプ先生はガーゴイルの彫像の前で立ち止まると「海苔せんべい」と言った。私は何で日本のお菓子の名前を急に言ったのだろうかと思ったが、それはすぐに分かった。ガーゴイルの彫像が頷くと、横へと開いていったのだ。「入りたまえ」といって奥の方へと進んでいく先生に私もついていくと今度は気の扉があった。スネイプ先生は二度ノックすると「入ってよいぞ」とダンブルドア校長の声が聞こえて来たので私にもここがどこだか漸く分かった。校長室だ。

 

「おお、よく来たの。スネイプ先生、用件は分かっておるぞ、そこの射命丸だろう、察するにマクゴナガル先生と同じことかの。クィディッチに一年生は出れないという規則を変えて欲しいというお願いかの?」

「ええ、その通りです。スリザリンのクィディッチチームのシーカーにと思いまして、あなたに直談判しに来た次第でございます」

「ほほう、そうか、そうか、別に良いぞ、いい選手が増えるのはこちらとしても大歓迎じゃ。射命丸、お主も頑張るのじゃぞ。もう相当の点数を取っているようじゃがの」

「ありがとうございます。クィディッチのスリザリンシーカーとして精一杯やらせていただきます!」

「それでのう、お主歓迎会の時にノーレッジと残っていたじゃろう、あの時は何を話していたんじゃ?」

「いえ、面白そうな先生が多いなぁ、という事と、どんな授業があるのかなという話だけですが。それとか弱い女子生徒の心を覗こうとするとは、やめた方がいいと思いますよ」

「そうか、引き留めてすまんかったの、では行ってよいぞ」

 

 私はそう言われて校長室を出ていく。だが風を操って校長室の中の音だけはこちらへと届くようにしておく。さっきの反応からして、こちらを疑っているであろうことはほぼ確定だ。クィレルについて気付いているということまではばれていないだろうが、それでも開心術をかけてくるくらいには疑っているのだろう。

 クィディッチチームに入るということは、箒を持ってきてもいいのだろうか、ブラッククロウは今鞄の中に縮小呪文をかけて入っているが。

 まあ、怪しまれないように明日フクロウ便で持ってきてもらうのが堅実な手だろう。

 

 

 

「え?退学の知らせとかじゃなかったの?」

「ええ、そうみたいですね。クィディッチのシーカーになってくれと言われました。『パチュリー、ダンブルドア校長がある程度私達を疑ってるみたいです。少し気を付けて』」

「そうなのね、確か一年生で二人も寮代表になったのなんて史上初でしょうね『分かったわ。行動にはもう少し気を付けましょう。まあ、ここから点を取らなくなっても逆に怪しまれそうだけどね』」

「へ~、そんなすごいことだったのね」

 

 夕食時、私を含めた三人はさっきの飛行訓練の時の話をしていた。ハリーも多分そうだ、まあ、退学するっていうのにあそこまで嬉しそうな顔は普通しないだろう。マルフォイがハリーの座っている机へと向かって言っている。

(む、あれはネタの予感がしますね……)

「ちょっと待っててください、ハリーとマルフォイが話しているので、少し混ざってきますね」と告げて、私は小走りでハリー達の方へと向かう。ネタの予感というのもあながち間違いではなかったようで、夜に決闘をするなどという話をしていた。

 

「面白そうな話をしていますね、私も混ぜてはもらえませんか?」

「射命丸……!」

 

 ロンが親の仇を見るような目でこちらを見てくるが、怖くも何ともない。というかなんで同じ寮の人を助けてあげたのにそんな目でにらまれなければいけないのか、その後の思い出し玉の事件が原因なのか。

 

「あや、ロン君じゃないですか、どうしました?そんな親の仇でも見るような目をして。それで、夜中の決闘でしたっけ。私も参加しますよ、楽しそうですしね。介添人というのが必要なのですよね。じゃあ私はパチュリーにしてもらいましょう。来るかどうかは別として、そちらはロンとクラップでいいですね?」

「ああ、構わないさ。真夜中にトロフィー室でどうだい?いつも鍵が開いてるんでね」

「あ、マルフォイ、先に帰ってて下さい。私はこちらの二人と話がありますので」

 

 手を振ってマルフォイ達を見送る。ハリーとロンが凄い形相で見てくるが、そんなに私のことが嫌いなのだろうか。

 

「まあまあ、そんな目で見ないでくださいよ~」

「何しに来たんだ」

「あやや、嫌われちゃいましたねぇ、いい情報を教えてあげようかと思いましたのに」

「君に聞くことなんて何もないよ、早く帰ってくれないかな」

「はいはい、分かりましたよ、じゃあ、最後に一つだけ――マルフォイの言葉は嘘です。そしてあなた方はトロフィー室には来ない方がいい、私は取り敢えず監視の目的で行きますが。もう一度言いますよ、マルフォイの言葉は嘘だから来ない方がいいです。では、また魔法薬学の時間に会いましょう」

 

 そう言い残して私はパチュリー達の方へと向かう。パチュリーに『今日、マルフォイ達が決闘をするというわなを仕掛けたので、これに乗じて四階の廊下を偵察しちゃいましょう』とだけ言って談話室へと向かう。

 もう少しでクィディッチの試合があるので、ブラッククロウを袋に包んで紫からもらったスキマへと放り込む。確かホグワーツにフクロウ便で届けてくれるらしいので、こういう時には本当に使い勝手がいい。

 十一時ごろになり、私とパチュリーは目くらまし呪文と消音呪文を目いっぱいかけてスリザリンの談話室を出た。いくつか部屋を通り抜け、地図を見ながらトロフィー室へと着いた。

 

「あやややや、ハリー、来てはいけませんよと言ったではないですか、恐らくマルフォイはフィルチに告げ口しているでしょう――ほら、足音が近づいてきますよ、さっさと逃げなさい!」

 

 私がそう怒鳴ると、ハリーとロン、そしてハーマイオニーとなぜかネビルが反対側のドアから消えていった。私とパチュリーは隅で臭い消し呪文をさらに使って縮こまっていた。

 ハリーが逃げ出していく途中にミスをしたのかすごい音がトロフィー室に響く。フィルチは悪態をつきながらトロフィー室から出ていった。

 

「ふぅ、ひやひやしたじゃない、あのヴォルデモート狂が、さ、パチュリー、さっさと四階の廊下に行きましょう?」

「ええ、転移呪文でいいわね」

 

 そう言ってパチュリーが懐からホグワーツの地図を取り出し、四階の右廊下をぐっと一回押す。すると私たちの周りにぼんやりと光る大きな魔法陣が現れ、私たちの体を飲み込んでいく。気付くと私は、小山ほどの大きさもある犬の前に立っていた。犬と言っても頭が三つもあるような犬だが。パチュリーはこの怪物がなんだかわかっていたようで、杖を一振りした。すると杖からきれいな音楽が流れ出てきて、怪物の周りへと進んでいく。何小節か聞いたところで怪物――さっきパチュリーがケルベロスと呼んでいた――ケルベロスは大きな音を立てながら沈んでいった。

 

「びっくりしたわね、まさかケルベロスが出てくるなんて思ってもいなかったわ。ダンブルドアもある程度考えてるみたいね、文、先に進む?それとも戻る?」

「もちろん進むでしょ、さ、早く行きましょ」

 

 そういってケルベロスの巨体で隠されていた扉を開けながら私は言う。ここまで来たらもう進む以外の選択肢はないだろう。扉を開けるとどこまであるかもわからないほどの穴が地下へ地下へと伸びていた。私が「ルーモス グラティス(光よ 自由自在に)」と唱え光の玉を下へと降ろしていくが、自分の妖力、魔力の操作範囲外に出てしまったことで、光は消えてしまう。パチュリーと今度は浮遊呪文を使いながらゆっくり降りていく。五分ほど降りると、植物の蔓で編まれた地面の上に立った。たしか、『悪魔の罠』と言ったか。パチュリーは太陽を杖の先から出し、悪魔の罠を日涸びさせた。

 

「はぁ、ホグワーツも落ちたものね、この程度の罠しか張れないなんて。本当にここが世界一の魔法学校なのかしら」

「ダンブルドアもまだ若造ってことでしょ」

 

 軽口をたたきあいながら奥へと進んでいく。気付くと、通路の出口についた、目の前にはまばゆく輝く部屋が広がっている。宝石みたいにキラキラした無数の羽の着いたカギが飛び交っている。

 私とパチュリーは呼び寄せ呪文を使って鍵を引き寄せると、他の鍵が襲ってくる前に鍵を開けて中へと入った。

扉にガガガという鍵が刺さる音が何度も響く。扉がぎしぎしときしむのでパチュリーが魔法を終わらせる呪文、フィニート インターカーテム と唱えると、鍵が落ちる音が何度もなった後、何の音もしなくなった。ほっとして次の部屋へと私たちは進んだ。

 

 次の部屋には驚くべき光景が広がっていた。見たこともないほど大きいチェス盤だ。チェスはレミリアの家で何度かやった(やらされた)ことがあったが、ここまで大きいのは初めてだ。

 パチュリーが黒のナイトへと触れ「チェスをしなければならないのね?」と聞くと、黒いナイトは頷き、馬は蹄で地面を搔いた。

 

 

「はぁ、やらなきゃダメなのね、じゃあ、私はナイトをやるわ、文はルークになってもらえるかしら」

 

 そういった直後からパチュリーの猛進撃が始まった。ほとんど味方の駒を取られることなく、もう少しで詰めだとわかるくらいのところまで持っていったのだ――これは後で聞いた話なのだが、パチュリーに何であんなにチェスが強かったのか聞いたところ「あんなこれから先の手がほとんど見える相手とずっとやらされていたら、そりゃあ強くもなるわよ」とのことだ。レミリアってズルい。

 

 まあ、チェスも難なく切り抜けた私たちは、次はどんな罠が来るのだろうかと内心ワクワクしながら次の扉を開けた。だが、ただのトロールで、悪霊の火と神霊の風の呪文で簡単に対処することができた。

  次の扉にはただテーブルがあって、その上に七つの瓶が整然と並べられていた。

扉の敷居をまたいだ瞬間、入り口に真っ赤な炎が燃え上がった。同時に前にも黒い炎が上がった。

私が瓶の横に置かれた巻紙を取り上げると、こんな文が書いてあった。

 

「前には安全 後ろは危険

 君が見つけさえすれば 二つが君を救うだろう

 七つのうちの一つだけ 君を前進させるだろう

 別の一つで退却の 道が開ける その人に

 

 二つの瓶は イラクサ酒

 残る三つは殺人者 列に紛れて隠れてる

 長々居たくないならば どれかを選んでみるがいい

 君が選ぶのに役に立つ 四つのヒントを差し上げよう

 

 まず第一のヒントだが どんなにずるく隠れても 

 毒入り瓶のある場所は いつもイラクサ酒の左

 第二のヒントは両端の 二つの瓶は種類が違う 

 君が前進したいなら 二つのどちらも友ではない

 

 第三のヒントは見た通り 七つの瓶は大きさが違う

 小人も巨人もどちらにも 死の毒薬は入ってない 

 第四のヒントは双子の薬 ちょっと見た目は違っても

 左端から二番目と 右の端から二番目の 瓶の中身は同じ味

 

                        ……だそうよ、特に難しくも何ともないじゃない」

「小さい瓶が前に進めるやつね、でも一人分しかないわね」

「はぁ、そんなことしなくてもいいじゃない、……はい、これで通れるようになったわ。前に進みましょうか」

 

 黒い炎を抜けて扉を開くと、こじんまりとした石畳の空間が広がっていた。そこには四本足のテーブルが置かれ、その上にきらきらと妖しく輝く真っ赤な宝石が転がっていた。

 最後はダンブルドア校長がどんな罠を作ってくれているのか期待していただけに、なんも置いてないとわかって、分かり易く自分の肩が落ちる。

 

「あ~、ほんと拍子抜けね。ただの賢者の石じゃない」

「あはは、まあいいんじゃないかしら、ある程度は価値のある物なんでしょう?」

「いいえ、しかもこれ粗悪品よ。ただ魔力のある物を混ぜ合わせただけのね。もう賢者の石でこの空間埋め尽くしてやろうかしら、そうすればヴォルデモートも簡単に復活できるでしょうしね。この程度の賢者の石――そう呼ぶのもなんかいやね――なら何度も飲まないといけない水でしょうよ。本当の賢者の石で作ったのならば、神話に出てくるエリクサー、そしてギリシャのネクタル、アンブロシアが賢者の石のことだと思うのだけど、または幻想郷にもあるらしいわね、日本の蓬莱の不死の薬と同じようなものができるはずよ、一口飲むだけで永遠の命が得られるね」

「ほほう、そんなものがあるのじゃのう?儂も知らなかったわい、見せてはくれんかの?」

 

 バッという擬音が表示されそうなくらいの速度で私は振り返った。ヴォルデモートかとも思ったが違った。ただのダンブルドアだ。ホッとするとともに、違反がばれたことで何か弊害がないかと勘繰ってしまう。

 

「ええ、別にいいわよ。賢者の石程度ならいつでも――それこそここでだって――作れるわよ」

 

 パチュリーが手と手を合わせて、可視化できるほどの濃密な魔力を手の間に集め始めた。それは十秒ほどすると手の間からこぼれる水となり、一分もすると真っ青に輝く宝石となった。

 

「賢者の石なんて錬金術の頂点だなんだと言われているけれど、本質としては魔力を濃くして固めた魔力の結晶体なのよ。だから人間とは違う膨大な魔力を持っている私からしてみたら、賢者の石なんてただの魔力回復薬としての扱いでしかない」

 

 そう言いながら、少し魔力が足りなくなったのか、賢者の石を丸々飲み込みながらそういうパチュリー。 

 

「ふむ、お主はでは人間ではないと、そう言いたいのかね?」

「まあそんな認識でいいわ、私は魔法使いよ。こっちは妖怪、天狗と言われる種族ね」

「儂らの魔法使いとは違うのかね、違うようにもあまり見えんのじゃが」

「は?あなたと私が同じ魔法使い?あなた魔法をなめてるでしょう、不老となって全ての魔道を極めるのに何千年かかると思ってるのよ、私ですらまだ終わってないのよ?それをたったの百年とかしか生きていない人間風情が何を言っているのよ。悪だとか正義だとか、馬鹿馬鹿しい。探求心を忘れてしまった魔法使いは魔法使いとは呼べないわ。ニコラス・フラメルは確かに凄いことをしたのでしょう。だが、それを妻と一緒に過ごす時間に当てる?不老長寿となったのに魔道の研究に進まない?そんなのはもう魔法使いとは呼べないわ」

 

 パチュリーは喘息なのにも関わらず、これだけのことを一気に言って見せた。魔法使いの探求心というのは天狗である私にはわからないが、天狗にとっての組織と同じくらい大事なものなのだろう。まあ、私は別に組織とかはどうでもいいと思っているのだが。

 ダンブルドアがこっちを見てくるので、私も自己紹介と行こうか。

 

「まあ、さっきパチュリーが簡単に紹介してくれましたけど、自己紹介と行きましょうかね。幻想郷にて天狗社会の新聞記者をやらせてもらっています、烏天狗の射命丸文と申します。信じられないようでしたら背中をご覧ください」

 

 そう言って私は隠したうえ、背中でずっと折り畳んでいた羽をバサッと広げる。ずっと閉じていたので羽が痛いが、まあ仕方ないだろう。

 

「まあ、そこまでは分かった。それで、お主たちの要求は何なのじゃ?」

「いいえ、あなた達への要求は特にありません。私達の役目はこの場所を見守る事ですからね」

「ふむ、ならよいのじゃがのう、射命丸はクィディッチ、頑張るのじゃぞ。そして、クィレルがヴォルデモートだというのは知っているじゃろう?ハリーがやられないよう見守っていて欲しいのじゃ。まあ、お主らに命令などできないので、お願いという形になってしまうのじゃがの。良ければたまには校長室に遊びに来てくれてかまわん」

「ええ、授業は簡単すぎて暇をしていたので構いませんよ。では、ダンブルドア先生、また今度」

 

 ダンブルドア校長と別れた後、私達は談話室を抜けてすぐにベッドの方へと向かった。簡単だったとはいえ大分歩いたので、私は兎も角、体の弱いパチュリーは疲れてしまったのだろう。ベッドに入った後、すぐに寝息が隣から聞こえてきた。私も少し疲れているところはあったので、ベッドに入るとすぐに寝てしまった……、ダンブルドア校長は賢者の石をどうするつもりだったのだろうか?

 

 




 いかがでしたでしょうか、切る場所が見つからず少しグダグダになってるような気がするので、あとで修正するかもしれません。 
 
 本格的に夏休みに入ったので投稿ペースが宿題のせいで下がるかもしれません。

 では、また次回お会いしましょう!

・今回出てきたオリジナル呪文

デウス ヴェンタス《神霊の風》 風を自由自在に操る魔法。強者が使うと、伝説上の怪物の姿を取ることもある。ここでは元からあったわけでなく四大元素の中で火と水のみあったという設定だった。

ルーモス スピリタス《精霊の光》 強烈な守護の光を放つ魔法。ディメンターやそのほかの闇の魔法生物にある程度の被害を与えることができる。難易度としてはO.W.Lくらいの簡単なイメージ。反対呪文はノックス エクスピラビット《怨霊の闇》。

ルーモス グラティス《光よ 自由自在に》ルーモスの光源を空中で移動させる魔法。要するに狐火みたいなもん。



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第五話 ハロウィーン

今回はちょっと短めですかね

 ていうかチート主人公で一年目のハロウィンなんてトロールをいじめるだけじゃないのかなぁ?

 では、どうぞ!



 次の日、私とパチュリーは寝不足で目をこすりながら大広間へと降りてきた。

 昨日寝たのが真夜中を過ぎて空が白み始める頃だったので、夜は大丈夫でも、起きてくるととても眠いことに気が付いたのだ。ダフネにはとても心配されてしまったが、昨日寝るのが遅かったというと、納得はしていなかったようだが、聞き入れてくれた。

 賢者の石については、それを使わなければ生き延びられないほどにヴォルデモート(inクィレル)が弱っているという事が分かっただけでも万々歳だった。そうすれば賢者の石さえなければヴォルデモートは復活できないとわかったからだ。

 それよりも周りの人たちは私とハリーに箒が送られてきたことの方に興味がいったようだった。朝食の時間に六羽ほどの大コノハズクが細長い包みを二つ落とし、そのまま飛び去って行ったのだ。私は元々箒が今日明日に来るとわかっていたのでさほど驚かなかったが、ハリーの喜びようはすさまじかった。それもそうだろう、退学になると思っていたのが、退学にならないどころかクィディッチのチームに選ばれ、最高級の箒を送ってもらったのだ。誰だって喜ぶ。私だって喜ぶだろう。

 ダフネからは質問攻めだった。どの様な箒なのか、どこのメーカーが作ったものなのか、どのくらいのスピードが出るのか等々、言い出していったらきりがないほどの数だ。

 

 その日の昼、初めてのクィディッチの練習があった。キャプテンのマーカス・フリントはまだ来ていなかったが、私も箒を初めて使えるという事で少し浮かれていたので、自分の力を使わず箒だけで飛んでみることにしたのだ。

 結果は上々。私は箒で飛ぶことも人より上手く出来るという事が分かった。まあ、飛ぶという経験を人より長く、千年近くも続けてきたのだ。そりゃあ、飛ぶという事に関しては人よりも上手くなければ天狗、ひいては私の面目が立たない。

 少しすると、キャプテンがやってきて、クィディッチのルールを簡単に説明してくれた。クィディッチ七人チェイサーがいて、クアッフルを相手のゴールの輪っかの中に入れる。すると十点。そしてキーパーは味方の輪にボールを入れさせないようにする。ブラッジャーはプレイヤーを箒から叩き落そうとするが、ビーターがそれを防ぐためにバットを持って相手へと打ち返す。そしてシーカー――私のポジションだ――では、金のスニッチを捕まえる。すると百五十点入る。そうすれば試合が終わる。

 その日はスニッチではなく、小さなゴルフボールのようなもので練習をした。フリントはありとあらゆる方向へ思いっきりボールを投げたが、その程度の強さでは簡単に追いつけた。フリントはとても喜んでいた。今年もスリザリンが優勝できると。

 

 それからはとても忙しくなった。宿題はほとんど自分が知っている事柄なので一瞬で終わらせることができたが、何より週三から四回ある練習が辛いのだ。そのせいか、パチュリーとの修行は毎日欠かさずできたが、日にちが飛ぶように過ぎ、ハロウィーンの朝になった。今日は双子のウィーズリーが大活躍する日だ。かく言う私も、色々ないたずら道具をこの日のために用意してきた。例えば。従来品の五倍ほどの大きさの音を出すクラッカー。他にも空中で弾けて色々なところに転がっていく超巨大な飴等々だ。

 その日の早朝。私とフレッド、ジョージは必要の部屋と呼ばれる本当に必要なものがある者にしか開くことができない部屋に来ていた。もう開き方は覚えたのでこれからはいつでも入ることができる。練習にはぴったりな場所だ。私とフレッジョはたまに密会と称して悪戯道具開発研究会というのをやっていた。今日がその集大成を見せる時だ。

 

「さあ、ブラザー、嬢ちゃん。やっとこの日がやって来た。ハロウィーンだ!悪戯をしても怒られない日。最高じゃないか!それで、文ちゃん、君は何を持ってきたんだい?見せてもらえると嬉しい。そして今日を最高のハロウィーンへとつなげよう!!」

『イェーイ!!』

 

 私たちの気持ちが一つになった。そして今日は悪戯道具開発研究会(これよりW.W.Wとする)の研究結果発表会だ。まずはジョージ&フレッドだ。

 

『さあさあ、お立合い!わたくし達がこれから御覧に入れるのは、世にも奇妙な花火でございます!空中で自在に弾け、空へと大輪の花を咲かせて見せましょう!さあ、どうぞ!!』

 

 フレッジョがそう言って発射台の導火線へと火をつける。すると空中へと飛んで行った花火が弾け、箒に乗ったクィディッチプレイヤーのように部屋中を飛び回った。花火はその後空中へと一斉に上がると、同時にきれいな花火を咲かせて見せた。私は拍手をする。

 

「今度は私ですね!私がこれから発表するのは……ジャック・オ・ランタンでございます!さあさあ、ジャック!《かの切り裂きジャックは南瓜へとその身を宿し この地へと舞い戻る いざ 悪戯の鬨!》」

 

 私が発動呪文――と言ってもただ起動するための言葉を言っただけなのだが――を唱えると、私の持っているプレゼントボックスからジャック・オ・ランタン・をかぶった死神の鎌のようなものを持った人形が現れ、空中を飛び回った。そして空中へたどりつくと、そこで周りへと蝙蝠を放ち始め、鎌をぐるぐると高速回転させる。鎌の先から熱せられた飴が飛び出していき、空中で固まり、落ちてきた包み紙へと魔法でくるまれてコロコロ転がっていく。それを見るとフレッジョは私と同じように拍手をしてくれた。

 

「アヤ、君凄いよ!一年生でこんな魔法を作れる人初めて見た!」とジョージ。

「そうだぜ!誇っていいよ!悪戯仕掛人二代目の僕らに認められたんだ!」とフレッド。

『凄いことだよ!』

 

 これがあってから、W.W.Wの二人とは前以上に仲良くなった。まあ、今回のハロウィーンでは、これらの悪戯道具を本当に使えることはなかったのだが。なぜならその日のハロウィーンで大変なことが起こってしまったからだ。

 私がその日、ダフネとパチュリーと談話室へと歩いていると、ハーマイオニーが泣きながらこちらへと歩いてきた。その後ろにはハリーとロンが笑いながら歩いてきている。もうこの時点である程度察していたが、ハーマイオニーに「どうしたの?」と聞いてみる。まあ答えてくれる事はなく歩き去っていった。仕方がないのでパチュリーとダフネに一言言ってい追いかけることにする。いくら私がスリザリンだからと言っても、目の前で泣いている女の子を放っておくようなそんな思想は残念ながら持っていない。

 ハーマイオニーを追いかけると、二階の女子トイレの方へと入っていった。中からすすり泣く声が聞こえる。私は意を決して中へと入ることにした。

 

「ハーマイオニー、いるのよね?」

「誰よ!……文か、どうせ貴女も私の事を悪夢みたいだなんて思ってるんでしょ!?」

「ん……?悪夢ってそんな悪口誰が……あぁ、ロンとハリーの事ね、あいつらなら気にしなくていいと思うわ、ただのガキだから。でもね、まああなたにも原因がないわけではないのよ。そこは分かっておいた方がいいわ。別に私やパチュリーは気にしていないけれど、あなたの言動、特に注意するときのね。その時にあなたは少し高圧的に言い過ぎているきらいがあるわ。そこさえ直せば頭のいい優しい優等生、っていう風に見てもらえるのに、一つの欠点で台無しになってしまう。だから、なるべく注意するときには優しく言ってあげた方がいいわ。その方がこっちも相手もいい気持ちで追われるでしょう?」」

 

 そこまで言うとハーマイオニーは黙ってしまった。彼女は彼女なりに何か思うところがあるのだろう。それも良いだろう、私のような何百年も生きたやつは黙って去って、若い者たち同士で仲直りをすればいいのだろう。老女にできることなんてアドバイスだけだ。まあ、学生として今ここにいる私は友達になりたいと言っているがそれはだめだ。結局滅ぼさなくてはならないここであまり多くの数の友達などを作ってしまうと、終わった時に耐え切れなくなってしまう。ダフネくらいでいいのだろう。

 

「じゃ、私は行くわ。ハリーとロンによろしく言っといてね、そして三人ともちゃんとお互いに謝るのよ。私から言いたいことはそれだけ。じゃあね~」

「…………」

 

 返事はなし。まあそんなものだ、いきり立っている時、若しくは泣いている時に邪魔をされたのだ。激昂することこそあれど、感謝されることがあるだなんて思っていない。

 私はそれだけ言って去っていった。後はお仲間同士(グリフィンドール)でどうにかすればいい。

 私がトイレから出るとフレッドとジョージがにやにや笑いながら立っていた。なんだろう、凄いむしゃくしゃするなぁ、ぶん殴ってやろうか、天狗の力でぶん殴ったらさぞ面白いことになるんだろうなぁ?」

 

「ちょっと待って!声!出てるから!怖いよ!」

「あやや、ごめんなさいねぇ、出ちゃってましたか?」

「まあいいや、それで、随分とお優しかったじゃあないか、スリザリンのお姫様?」

「はぁ、そうね、全部、聞いていたのよね、口調のことも、優しすぎたことも――よしやっぱりぶん殴る、殴ればすべて綺麗に解決だ、気絶させた後にでも忘却術を掛ければなおよし。ちょっと待ちなさいよ!放しなさい!」

「やぁ~だね、ああそうだ、録音してあったよな、ジョージ」

「そうだね、こんな風に録音してあるんだ」

『これをばら撒いたらどうなるのかな~?』

「ちょっと、それはマジでやめてくれない!?クッ……殺せ!そんなのばら撒くくらいならいっそ殺して!」

『や~だね~』

「はぁ、取り敢えずもう絶対に殴らないから話して。流石にこれ以上吊り上げられてるのは不快だわ」

 

 そう言って双子に降ろしてもらう。いくら天狗が力を持っている種族だからって、後ろから自分よりも背の高い人に脇に手を回されて吊り上げられてしまったら出せる力だって十分に出すことはできない。……というかなんか恥ずかしい。なんでこの年齢(1000)になってまで小さい子みたいに振り回されなければならないのだ。

 あ~、そう思うとまたイライラしてきた。これ以上騒ぐと先生とかも来てしまいそうなので流石にもうしないが。

 

「はぁ、まあいいわよ。もうばれちゃったんならしょうがないわ、口調のことは黙っていてもらえるかしら」

「ああ、いいぜ。だが二つ条件がある。口調を変える理由を教えてくれることと」

「これからも悪戯道具開発研究会をサポートしてくれ!」

「その程度なら別に全然かまわないわ。まあ、口調を変える理由は取材時と普段で使い分けているっていうのが正しいのかしら。だからあまり親しくない人とは取材口調――こういう喋り方の方ですね、あと誂いたい時、つまりはハリーへの口調とかですね、の時にもこの口調を使います。そしてある程度親しい方とは――この口調で喋ってるわ。この程度の理由よ、満足したかしら?」

「え~、なんか詰まんないなジョージ」

「そうだな、もっと隠された秘密が明らかに!――とかそういうの想像してたから、なんか拍子抜けだな」

「うるさいわよ、そんな高尚な理由なんてあるわけないじゃない、世の中なんてそんなもんでしょ」

 

 そう言って私はフレッドとジョージと別れてスリザリンの談話室へと向かう。あと一時間ほどでハロウィンパーティーが始まってしまうので、悪戯道具の準備もしなくてはならない。ちなみに今年はさっきまで言っていたジャック・オ・ランタンや破裂する巨大な飴、そして最後に色んな怪物のホログラムが飛び出す吃驚箱、通称:「パンドラの壺」だ。

 それらを検知不能拡大呪文を掛けた普通のバッグの中に詰め込んでいく。重ね掛けしているから入らない事はないとはいえ、流石に多すぎたのか少し重い。

 私はパチュリーとダフネに声をかけて大広間へと向かう。パチュリーにはもうばれているみたいだが、ダフネは私の持ってるバッグについて特に聞くことはしなかった。

 

 大広間の飾りつけは素晴らしいものだった。千匹ほどのコウモリが羽を羽ばたかせ、残りの千匹はテーブルのすぐ上まで急降下してきて、くりぬいたかぼちゃの中の蝋燭をちらちらと揺らした。

 私達がカボチャパイを食べているその時、クィレル(ヴォルデモート)が部屋に駆け込んできた。ターバンの端はほどけ顔は恐怖で引きっ攣っている(ような演技をしている)。みんなが見つめる中をクィレルはダンブルドアの席まで辿り着くと、テーブルにもたれかかり、息も絶え絶えに言った。

 

「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って……」

 

 それだけ言うとクィレル先生は気を失ってしまった。とてもいい演技だ、きっと将来は劇をしたりするのだろう。

 大広間は大混乱になった。私とパチュリー、ダンブルドアは杖の先から爆竹を何度も爆発させて、すぐに静かになった。やばい、というかハーマイオニーがまだこちらに来ていない。という事はトロールに襲われている可能性もある。私はダンブルドアとパチュリーに風を使って「ハーマイオニーが来ていないので、トロールに襲われている可能性が高いです。助けに行ってくるわ」と言い残し、全速力でその場を飛び去った。

 女子用トイレへと着き、ハーマイオニーのいる個室へとたどり着く。ハーマイオニーに「トロールがこっちに向かっている可能性が高いわ。私は大丈夫だからさっさと逃げなさい」というが、どうせなら一緒に戦うと残ってしまう。

 

「はぁ、どうなっても知らないわよ、貴女は確かに呪文の知識は素晴らしいけど、実戦経験は皆無に等しいのだから。さっさと逃げて欲しいのだけど」

「嫌よ、私だって戦えるわ。トロールの事はよく知っているし、大丈夫よ」

「ハーマイオニー、一つだけ注意しておいて。実戦と知識の差は相当大きいわ。危なくなったらすぐ逃げるのよ。これだけは約束してくれないと強制的に戻らせるから」

「分かったわ」

 

 そういった瞬間、ブァーブァーという鳴き声とともに中にトロールが入って来た。私はハーマイオニーと私に臭いを感じにくくなる魔法をかけ、トロールの臭いにおいを無理矢理誤魔化した。

 トロールは四メートルほどもあり、鈍い灰色の肌、岩石のようにごつごつとした肉体をしている。手には大きな黒っぽい棍棒を持っていて、引きずりながらこっちに歩いてくる。

(私も哨戒の任務は何度も経験したことがあるから、こういう敵と戦うのも慣れているけど、ハーマイオニーは初めてだからかやっぱり緊張しているわね。)

 ハーマイオニーは実戦経験がないにしては落ち着いていると思う。知識があるのとないのとでは差があるからだろう。

 

「ハーマイオニー、私が最初に失神呪文を掛けるから、貴女はインセンディオでもなんでもいいから一瞬、あいつの気を引いてもらえるかしら」

「分かったわ」

「じゃあ、三――二――一――ステューピファイ(失神せよ)!」

インペディメンタ(妨害せよ)!アヤ、お願いできる?」

「ふぅ、まかせなさいセクタムセンプラ(断裂せよ)インカーセラス(縛れ)ストーンプーパ(石人形よ)コンフリンゴ マキシマ(最大の爆発)プロテゴ ホリビリス(恐ろしきものから守れ)……うん、大丈夫みたいね、近付いても大丈夫よ。ハーマイオニー、ありがとね」

 

 断裂呪文で足を止め、捕縛呪文で動きを止め、ストーンプーパで石人形で相手を覆い、コンフリンゴ―マキシマで石人形を爆発させる。このコンボで魔法生物程度、まあアクロマンチュラやドラゴンなんかは無理だろうが、そのほかのなら殆どを殺す、若しくは致命傷を与えることができるだろう。もう殆ど虫の息のトロールだが、取り敢えずインカーセラス(縛り呪文)で床に縛り付けておく。少しトイレの洗面台などが壊れてしまっているところもあるが、この程度なら許容範囲内だろう。

 少しすると、ハリーとロン、そしてマクゴナガル先生やスネイプ先生、そしてクィレルがやって来た。マクゴナガル先生はとても怒っている。スネイプ先生はそこまでではないし、むしろどうやって倒したのか気になっているようだ。

 

「いったいあなた方はどういうつもりなのですか」とマクゴナガル先生の言葉は冷静だが節々に怒りがにじみ出ていた。

「殺されなかったのは運が良かった、寮にいるべきあなた方がどうしてここにいるんですか?」

「あ~、先生?私はハーマイオニーを探しに行ってきますってダンブルドア校長にちゃんと言ってからここに来ましたよ?というか、ハーマイオニーがここにいる原因がそこの二人なんですけれども」

「どういう事ですか?ダンブルドア校長に言ったというのは後で確認を取らせてもらいます」

「えっとですね、僕が呪文学の時間に助言を受けたんですけど、その言い方が気に障って、ハーマイオニーに悪口を言っちゃったんです。それでハーマイオニーがトロールの事を知らないと思って僕たちはここに来ました」

「ふむ、そういうことか。それで、アヤ。そなたはどうやってトロールを倒したのだね?吾輩としてはそちらの方が気になるのだが」

「えっとですね、最初に失神呪文を私が放って、妨害呪文をハーマイオニーがしてくれました。その後は先生の教科書に書いてあったセクタムセンプラ、その後インカーセラスでトロールを縛り、ストーンプーパという石人形を出す呪文でトロールを覆い、その後、コンフリンゴ マキシマで石人形もろとも爆発させ――一応プロテゴ ホリビリスを使って守りはしましたが――そしてインカーセラスでもう一度縛るとこうなります」

「ほう、そうかそうか、スリザリンに二十点、グリフィンドールには……まあ、五点やろう。これからも精進するのだぞ」

「先ほども言いましたが、貴女達は運が良かった。大人の野生トロールと対決できる一年生はそういません。ダンブルドア先生にご報告しておきます。帰ってよろしい」

 

 私はハーマイオニーに一言言ってから談話室へと戻っていった。ダフネとパチュリーにどうやってトロールを倒したのかと言われたので、さっき言ったのとまったく同じことを言ったら、とても驚かれていた。

 明日はクィディッチなので早く寝ることにした。そしてハーマイオニーとは、次の日から友達としてパチュリーたちと一緒に過ごすことになった。

 

 

 

 




 ハリーポッターを読み返すごとにダンブルドアへのヘイトが溜まっていく……あの人校長の器としてどうなんだろう?グリフィンドール贔屓だしさ

 というかダンブルドアが魔法省に入ってればすぐに終わらせられたんじゃね?とか思ったり思わなかったり。

 まあいいや。スリザリン主人公こそ至高!

 では、また次回お会いしましょう!

今回出てきたオリスぺ

ストーンプーパ《石人形呪文》石人形を壁などの素材から作り出す呪文。ストーンの部分の材質を変えることによってさまざまな人形(ゴーレムのようなもの)を作り出すことができる。語尾にマキシマをつけるとおっきくなるよ


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第六話 初試合とみぞの鏡

 眠い。昨日は投稿できなくて済みませんでした~
起きたらなぜか十二時とかっていう。あれ?今何でこんなに明るいの?みたいな
まぁまぁ、それは置いといて第六話です

どうぞ!


 次の日の朝、私とフレッド、ジョージはもう一度W.W.Wの集会を開いていた。ハロウィンで何もすることができなかったため、次に何をするかを考えるための集会だ。

 私は結局使う事のなくなったジャック・オ・ランタンや巨大飴、他にも様々なお菓子や悪戯道具。ウィーズリーは使えなかった花火と、同じようにいろいろな悪戯用お菓子を持ってきた。

「「「はぁ」」」と三人のため息が漏れ出てくる。頑張って作って来たものだからこそ、失った時の悲しみは大きいのだ。畜生、クィレル容赦はしない。ウィーズリーと私達に勝てると思わないことだ。嬲り殺しにされる覚悟を決めておくんだな。

 

「頑張って作ったものが壊れると辛いよな、ほんとトロールは許しておかねぇ」

「まあまあ、いいじゃないの。次のハロウィンで見せるものが増えたと思えばいいんじゃないかしら?それで、フレッド、ジョージ、今日は何の予定で呼び出したの?何かすごいものがあるって言ってたけど」

「ふっふっふ、見て驚くがいい、フィルチの部屋で手に入れたんだがこれ、なんだと思う?」

「ふーん、ちょっと見せてもらうわね……これ地図じゃないの?ホグワーツの。まあ、あんた達が見つけたんだから悪戯に関係あるものでしょうけどね、えーっと、何々……?《我 ここに誓う 我 良からぬことをたくらむものなり》うん、この呪文で会ってたみたいね。まぁ、パチュリーの地図より性能は良くないみたいだけど、凄いじゃないこれ、これがあればホグワーツを自由に行き来出来るわよ」

「わお!そんなにすごいものだったのか!これで悪戯の幅が増えるな!ジョージ!」

「そうだな!秘密の抜け穴も全部書いてあるぞこれ!」

「「ありがとう!アヤ!」」

「どういたしまして。まあ、お礼をくれるのならロンのあの態度はどうにかして欲しいわね。私の事を親の仇みたいな目で見るからやめて欲しいわ。」

「あれはもうあいつの性格だからな」

「ああ、ちょっと難しいと思うな」

「「ごめん!」」

 

 そう言って同時に手を合わせて謝ってくるフレッジョ。まあ、そんなところだろうと思っていたが、あのロンの口調や目付きをずっとされていると、イライラするし、鬱陶しい。ハリーは前回のハロウィンの件で少し改善されたからよかったものの、ロンは思い込みが激しいのだろう。一度そういう嫌いだとかいいやつだとか、レッテルを張ってしまうともう変わろうとしない。ある意味一番面倒くさいと思う。

 

「まあ、いいわ。今日はクィディッチの試合でしょう?スリザリンとグリフィンドールよね。まあ、ハリーがいるからわからないけど、私だって負けるつもりはないし、寧ろ勝つつもりで行くわよ。覚悟しておきなさい。勝つのはスリザリンよ」

「いーや!勝つのはグリフィンドールだね!」

「スリザリン!」

「グリフィンドール!」

 

 三人で顔を突き合わせ、少ししてから急にみんな笑いだした。「いい試合にしような」とジョージが言うので、「あら、私はシーカーだって知っているでしょう?シーカーは試合には関与しないわ」と返す。ひとしきり笑いあってから、必要の部屋を出て、談話室へと向かった。あと一時間ほどでスタートするだろう。

 

「さっさと箒を取りに行こうっと。あ、そういえば悪戯の計画を立てるのを忘れてたわね、今度フィルチにやってやろうかしら」

 

 そう言って更衣室へと入る。スリザリンのユニフォームは緑、グリフィンドールのは真紅のローブを羽織っていた。フリントがこちらへとやってきて、「スリザリンとして恥じないような戦いをしろ」と言ってくれた。

 そうこうしている間に時間となり、更衣室を出た。マダムフーチが審判だ。競技場の真ん中へと立ち、箒を手に両チームを待っていた。フーチ先生は正々堂々と戦いましょうと言っていたが、ぎりぎりで戦うのがスリザリンとして恥じない戦い方だと私は思っているので、そんなことは気にしないことにする。

 ふと観客席を見ると「ポッターを大統領に」という文字が見えた。よく見るといつものメンバーだ。ロンにハーマイオニー、そしてネビル。最後にはハグリッドも来ていた。

 マダムフーチの銀の笛が高らかになった。十五本の箒が空へと舞いあがる。高く、そしてさらに高く。風を切って飛びあがっていく。私は自分がいつものように烏となって空を舞っているような気分だった。

 最高点まで到達し、鷹のようにくるくるとコート内を旋回しながら眼だけは油断なくスニッチを探す。見つけた。だがどちらも一点も取っていないのでまだとるわけにはいかないだろう。

 

 

 「さて、クアッフルはたちまちグリフィンドールのアンジェリーナ・ジョンソンがとりました。――なんて素晴らしいチェイサーでしょう。その上かなり魅力的であります」

「ジョーダン!」

「失礼しました、先生」

 

 リー・ジョーダンのグリフィンドール贔屓な解説が耳につく。少し苛々してきたが、どうせならばスニッチさえとれば逆転できるというところで点差をつけて終わらせてやろう。

 そうこうしている間にハリーが上まで上がって来た。投資がみなぎっているのかこちらを油断なく見つめてくる。

 

「あやや、どうしました?そんなに熱い目でこっちを見ないでくださいよぅ、照れちゃうじゃないですか~」

「君のその挑発にはもう乗らないぞ、僕だって練習を積んだんだ。勝つのはグリフィンドールだ」

「あやややや、前とは違うと、そう言いたいんですね?でも前回の時と同じになってしまうんじゃないでしょうか?最初の飛行訓練の時も結局私がガラス玉を取ってしまいましたし。頑張って追いついて来て下さいね、陰ながら応援してますよ、私と速度で張り合える人なんてほとんどいませんでしたのでね。ハリーみたいな人が出てきてくれるのは私としても嬉しいのです。頑張ってください、頑張ってください。でないと」

 

――――心が折れてしまうかもしれませんよ?

 

 そう言い残し、スニッチを取りに箒を急降下させる。狙うはスニッチ一直線だ、フレッジョがブラッジャーを打って来るがそれをくるくるとロールをしながら華麗によける。気付くと周りからざわざわと音が聞こえてくる。後ろを振り向くがハリーはいない。何故だろうと思い後ろをぐるんと振り向きながらホバリングする。追いついて来てないのにスニッチを取ったって全く意味がない。面白くもない。ハリーを見ると暴れていた。いや、呪いをかけられているのか。クィレルめ、ここでも私の楽しみの邪魔をするのか、もう容赦しない。情けなど掛けるのすら煩わしい。ハーマイオニーがスネイプに火をつけようとしていると風から聞こえてくるがそれは間違いだ。神通力の念話を用いてハーマイオニーに話しかける。

 

(ちょっと待って!ハーマイオニー!)

(うわっ、びっくりしたわ、どうしたのっていうかこれはなあに?なんで文の声が頭の中に響いてくるの?)

(私が開発した魔法です。相手と頭の中で話すことができます。それで、あなたスネイプに火をつけようとしましたね?それは間違いです。クィレルの方をよぉく見てください。あなたなら分かるはずです、呪いを掛けているのが。そしてスネイプの口をもう一度見てください。唱えてるのは反対呪文で呪いではありません)

(え?ちょっと待って確認してみる―――――――――――え?本当にクィレルなの?スネイプじゃなくて?)

(ええ。だからクィレルの視線をどうにかしてハリーからそらしてください。そうすれば戻ります)

(分かったわ)

 

 とそう聞こえたので念話を切る。観客席の方を見るとハーマイオニーがクィレルのローブの裾に火をつけているところだった。これならハリーの箒も大丈夫だろう。そう思ってハリーの方を見ると予想通り、ハリーの箒の不可解な揺れは収まっていた。ハリーの方に向かって「クィレルがハリーの箒に呪いを掛けていましたよ、スネイプではないのでご安心を」というとハリーは不思議そうな顔をしていたがありがとうと言ってにっこり笑うともう一度上へと戻っていった。私は下の方でぐるぐる回りながらスニッチを探す。

 

 現在の得点はスリザリン対グリフィンドールで50対20でスリザリンが勝っている。ここまでくればもういいだろう。ハリーの方を見るとスニッチを見つけたのか急降下を始めている。私も箒の柄を真下とでもいうほどに傾けると、一気に加速した。一瞬でハリーと並び、接戦となる。ぐるぐるとお互いに譲らず下へと急降下していくが、私が一歩抜け出した。スニッチが上に行こうとしてるように見えたので箒の柄を上へと向ける。ハリーはそのまま急降下していくと思っていたのか降りて行ってしまった。私が手でスニッチをつかみ取る。試合終了だ。結果は210対20。スリザリンの圧勝だ。私は地面に降り立った途端、チームのみんなに抱きしめられた。

 

「すごい、すごいぞアヤ!まさか実戦でウロンスキー・フェイントを繰り出すなんて思わなかった!220対60で圧勝だ。頑張った、よくやってくれた!」

 

 フリントはいつもは怖くていかつい顔をしているのに、今日に限っては違った。満面の笑みだ、私の肩を抱くと「スリザリンとして恥じないプレーだった。良かったぞ」と言ってくれた。その後パチュリーとダフネも来てくれて、私の事をべた褒めしてくれた。

 

「凄いじゃない、まさかハリーにあのウロンスキー・フェイントをかますとは私も思ってなかったわ。正直なところあまり外に出るのは髪が痛んでいやだったから、今日のクィディッチも行こうかどうか迷ってたのよね。でもダフネに無理矢理連れてこられたとはいえ、来てよかったわ。文、凄かったわよ。私も嬉しいわ」

「……ありがと、パチュリー。そしてダフネ、分かったかしら、これがツンデレよ。破壊力がやばいわ」

 

 正直なところパチュリーがほめることなどほとんどないので、にっこり笑いながらのべた褒めはまずいだろう。自分の顔が真っ赤になってるだろうことがよくわかる。ダフネも同じなようで、微妙に顔を赤らめながら同意して、私の事をほめてくれた。

 

「本当ね、これの破壊力は確かにすさまじいわ。それにしても文!貴女凄かったわね!まさかあんなに華麗にスニッチを取るとは思わなかったわ!!アヤはすごいわね!」

「えへへ、ありがと、ダフネ。パチュリーも。ふふふ、なんか最近微妙にあえてなかったような気がするからなんかいつもより嬉しいわね。さっ、談話室へ戻りましょ!多分お祝いの準備が始まってるんじゃない?」

「「ええ(そうね)!」」

 

 そう言って談話室へと向かう。スリザリンの談話室へと入るとクラッカーが私達を出迎えてくれた。いつもは言葉の端に微妙に嫌味が混じってしまうマルフォイやパーキンソンでさえ今日はとても優しかった。

 スリザリンではそれから真っ黒な箒の形をしたバッジが流行るのだった。

 

 

 

 もうすぐクリスマスになる。パチュリーは幻想郷に帰るらしいが、私は帰っても特にやる事もないので学校に残ることにした。ちなみにダフネは帰るらしい。

 ハリーは微妙にグリフィンドールで嫌な扱いを受けていたらしく、同じポジションのシーカーである私に度々相談をしに来ていた。そのたびにロンが連れ戻すのだが、最近はフレッジョに止められているらしい。

 魔法薬学のクラスが終わって地下牢を出ると、行く手を大きな樅の木がふさいでいた。運んでいるのはハグリッドらしい。木の下から大きな足が突き出している。

 マルフォイとロンが喧嘩して、スネイプに怒られたらしい。ハリーが「スネイプもマルフォイも、大っ嫌いだ」

と言っていた。だが、ハリーはスネイプが自分の事を守ってくれていたことを覚えてないのだろうか。そうだとしたら随分とスネイプも可哀想だ。まあ、あの人もハリーの事を憎んでそうなので自業自得と言えばそうなのだが。

 

 

「さぁ、兄弟、そして女王様よ。悪戯道具の準備は出来てるか!!」

「ええ!(おう!)」

「我々が悪戯をする理由はなんだ!!」

「「皆を楽しませられるから!!」」

「我々の目的はなんだ!」

「「クリスマスを盛り上げる事!!」」

「我々に出来ることはなんだ!」

「「悪戯によって皆を愉快な気持ちにさせる事!!」」

「それじゃあ……行くぞ!!」

「「おー!!」」

 

 ――――W.W.Wプロジェクト 始動だ。

 

 私達はもう一度持ち寄った道具の確認をしていた。今回はクリスマス。ハロウィーンのように悪戯ができるわけではないが、私達で出来る最大限の悪戯を仕掛けてやろうと意気込んでいた。例えば大広間の入り口にセンサーを仕掛け、扉が開くことを感知して巨大なクラッカーを鳴らすもの。はたまた七面鳥のように見えるが食べようとすると飛び出して逃げ回るもの等々、押さえてくれるパチュリーやダフネがもうそろそろいなくなるので私の悪戯もエスカレートしていった。

 マクゴナガル先生に猫用の餌を送りつけたり――これは何故かその後喜んでもらえたらしい?次の日あった時に「とても美味しそうにしていましたよ、ありがとう」と言っていた――マクゴナガル先生は猫でも飼っているのだろうか。

 スネイプ先生には自動散髪用はさみを送ってあげた。次の日の魔法薬学の特別授業の内容が滅茶苦茶難しくなった。解せぬ。ちなみに髪を切るとスネイプ先生の印象はだいぶ変わったとだけ言っておこう。凄い怒られた。

 フリットウィック先生には紫さん特製のセガノビールといううっさん臭い薬。まあ効果は抜群なようで遊びに言った時背の高さが伸びていた。その次の日には戻ってしまっていたのだが。送ってきてくれた人にお礼を言いたいとフリットウィック先生は背が伸びて少し低くなった声で言っていた。

 クィレル先生には賢者の石に似せたレプリカを送る事にした。賢者の石を命の水を作るために触ろうとすると爆発と再生のオンパレード。次の日クィレル先生はボロボロになって医務室へとおもむいているという情報があったらしい。

 そしてダンブルドア校長にはスキマ郵便で取り寄せた日本のお菓子に魔法で細工した悪戯道具などなど。ダンブルドア校長は気付いて食べなかったみたいだが、次の日私が呪文を解くと美味しそうに食べていた。

 

 そしてクリスマスの日になった、私のベッドの横にはたくさんのプレゼントが積み重なっていた。私とパチュリー、そしてダフネはその場でプレゼントを送りあった。私からはパチュリーには大量の本を隙間から取り寄せた。そしてダフネには錬金術で作った耳飾りを送った。パチュリーから私には防御魔法がこれでもかと掛けられたアミュレットで作られた首飾りを送ってくれた。試しにと自分に向かってクルーシオを放ってみるが、自分の周りに障壁のようなものがいくつも現れると、それが動き回って呪文を防いでくれた。クルーシオが防げるという事は、アバタケタブラでもなければ壊せないのではないだろうか。物理的なものは守れないとのことだったが、それでもありえないほどの贈り物だ。

 ダフネからは銀色のバレッタと何枚かの服が手渡された。ダフネ曰く「貴女もパチュリーも素材はとっても可愛いのだから、たまには着飾ってみないとだめじゃない」とのことだ。その後なぜか私だけ着せ替え人形状態になり、色んな服を着せられた。恥ずい。

 マルフォイからは銀時計が送られてきた。私の知っているのとは形が違うが、魔法界製とのことなので、色々なギミックがついているのだろう。

 幻想郷からはまた様々なものが来た。はたてからは念写したランキングの写真。『花果子念報』がランキング上位に入っている。当てつけか!と写真を地面に叩きつけた。他にも香霖堂からは天狗の団扇と同じような効果を持ったものと、私の使っていたシャーペンが入っていた。後なぜか八雲紫からスキマのようなものが送られてきた。手紙を見たところ、ホグワーツ内を自由に行き来出来るらしい。

 

 その日のクリスマス料理は素晴らしいものだった。ローストされた七面鳥百羽にポテトやら豆やら様々なものが机の上に並んでいた。そしてテーブルのあちこちにクラッカーがおいてあり、それを引くと豪快な爆発音とともに様々な景品が飛び出してくる。私は落ちてきた装飾用の小さな羽をつかみ取ると、さっきまで着せ替え人形にしてくれたダフネに乱暴につけることにした。ダフネが吃驚しているが無視して髪に羽をつける。満足したので料理を食べるのに戻る。

 上座ではダンブルドアが自身の山高帽と婦人用の帽子を交換して被り、フリットウィック先生のジョークを聞いて笑っている。

 ――瞬間、生徒達が食べていた料理がすべて空中に逃げ出した。料理はくるくると空中を回り、フレッドとジョージが仮面をかぶって大笑いしている。セーターのせいで誰だかもろばれなのだが大丈夫だろうか。その直後にダンブルドア校長が料理を机の上へと戻し、マクゴナガル先生がフレッドとジョージを連れ去っていった。憐れ。

 私達が食事を終えるのとハリー達が終えるのが同じくらいだったらしく、扉を出るとハリー達と鉢合わせた。ロンはいまだにこちらの事を睨んでくる。ある意味寮を性格や家計で決めてしまうというのは一種の洗脳行為のような気がする。親と子が一緒の学校になることが多いという事は親からあの寮はダメな寮だ。こっちの寮の方が良いと聞かされ続けるので、グリフィンドールはスリザリンが嫌い、またその逆もしかり、そしてスリザリンはどの寮からも嫌われているという状況が変わることがないという事だ。

 

「こんにちは、ハリーにロン、そしてフレッドとジョージ」

「「おお!我らの賛同者、悪戯姫じゃないか!」」

「クリスマスプレゼントは届きました?結構考えて送ったので喜んでもらえると嬉しいんですけどね」

「透明マントの模造品を送ってくれんだっけ?」

「いや、確か忍びの地図の改良品じゃなかったか?」

「「ありがとな!」」

「いえいえ、どういたしまして~」

「え?なんでフレッドもジョージもこんな奴と仲良くしてるの?」

 

 周りの人達の疑問を代表してロンが兄二人に質問をする。当然の質問――なのか?私は特に寮が違おうが特に気にしていないが、生粋のグリフィンドール生であるロンやハリーからしたら疑問が残るのだろう。

 それに私とフレッド、ジョージが息ぴったりな動作でロンたちに振り返りながら「悪戯は寮の格差などすべて乗り越えてみせるのだ(です)!」と言うと、面食らった様子で「そ、そうなんだ」と言うとロンは黙ってしまった。何でだろう?

 談話室につくと私とパチュリーはホグワーツの地図を開いた。ダフネはクリスマスパーティーで疲れたのか先に寝てきてしまった。

 

「はぁ」

「どうしたの?パチェ」

「ん、ダンブルドアにハリーを守れって言われたじゃない。ハリーを今地図で確認したんだけど寮から抜け出してるのよね」

「はぁ?あり得ないでしょあの子、自分がどれだけ狙われてるかわかってないの?ダンブルドアがいるとはいえ内部にヴォルデモートいるのよ!?……これって様子見に行かなきゃダメなやつかしら。それともここで眺めてればいいのかしらね。分からないわ」

「別にそこまで危険なことをしようとしているわけでもなさそうだし、別にいいんじゃないかしら。……ああ、閲覧禁止の棚に行こうとしているのね。その程度なら別にいいわ、あそこなら先生の監視も行き届いているでしょうに。あ、逃げ出した。バレたのね、あそこには大きな音を出す本も多かったはずよ。あら……止まったのね、ここは……ダンブルドアがみぞの鏡を取り敢えずあそこに置いておくのじゃと言っていたから、みぞの鏡でも見ているのかしら。ハリーは家族がいなかったはずだからそれでも見ているのかしらね」

 

 そこまで言ってパチュリーはパタリと地図を閉じた。「どうするの?」と聞くと、寝るらしい。まぁ、みぞの鏡を見ているのならば問題ないだろう。あれを見ているのならダンブルドアは確実に気づいている。

 次の日も、(一日目からダンブルドアはいたらしい。二日目も教室の隅にいた)そのさらに次の日もハリーはみぞの鏡のところに言っていた。三日目は流石にこれ以上いたらまずいという事で諭すために鏡のところに私達もおもむいたのだが。

 

「ハリー、また来たのかい?」

 うん、やはりダンブルドア校長は気付いていたらしい。三日間も来ているとなると相当鏡のとりこにされているようだからもう行かないとまずかったかもしれないね。と私は教室の隅で壁に寄りかかりながらそんなことを考えた。

「鏡が見せてくれるのは、心の奥にある一番強い『のぞみ』じゃ。それ以上でもそれ以下でもない。君は家族を知らんから、家族に囲まれた自分を見る。ロナルド・ウィーズリーはいつも兄弟の陰でかすんでいるから自分が一人で堂々と立っているのが見えるという具合じゃ。しかしこの鏡は知識や真実を示してくれるものではない。鏡が映すものが現実のものか、果たして可能なものかさえ判断できず、皆鏡の前でへとへとになったり、鏡に映る自分に見入られてしまったり、発狂してしまったんじゃよ。

 ハリー、この鏡は明日よそへ移す。もうこの鏡を探してはいけんよ。たとえこの鏡に再び出会う事があろうと、もう大丈夫じゃろう。夢に耽ったり、生きることを忘れてしまうのは良くない、それをよく覚えておきなさい。さぁて、その素晴らしいマントを着て、ベッドに戻ってはいかがかな」

「あの……ダンブルドア先生、質問してよろしいですか?」

「いいとも、今のもすでに質問だったしね」

「先生ならこの鏡で何が見えるんですか?」

 あ、一気にダンブルドアに動揺が。何か後ろめたいことでもやっているのか、それとも叶えられないだろうがどうしても叶えたいことがあるのか。

「儂かね?厚手のウールの靴下を一足、手に持っているのが見える」

「靴下はいくつあってもいいものじゃ。なのに今年は靴下を一足ももらえなくての。わしにプレゼントをしてくれる人は何故か本ばっかり送りたがるんじゃ。さぁ、おかえり」

 そう言ってハリーは出ていった。するとダンブルドアがこちらを振り向きながらさらりと言ってくる。

「さ、そっちの子もお帰りなさい、ハリーをいつも見守ってくれていてありがとうの」

「あら、気付いていたの?というかあなたには何が見えたのかしら。さっきのは嘘でしょう?というか私達にも事情を説明させたのだから、あなたも話すべきではないのかしら。それともそこまで後ろめたいことでもあるのかしら」

「むぅ、構わんぞ。仕方がない、長くなりそうじゃから場所を移そうか」

 そう言ってダンブルドアはパチリと指を鳴らす。すると私達は校長室の中にいた。

「あなたも十分規格外よね、ホグワーツでは『姿現し』出来ないはずじゃなかったの?まぁ、姿現しでなければ使えるのだから別に誰でも使おうと思えば使えてしまうのだけれど。……まぁいいわ、さっさと話してくれるかしら」

「うむ、儂は若いころは愚かじゃった。欲に取り憑かれ、自分は天才なのだ、上に行くべきなのだ等と思いあがっておった。わしには一人友人がいての、その友人はゲラート・グリデンバルドというのじゃが、そのグリデンバルドとともに上を目指そうとしていたわけじゃ。わしには弟と妹がいての、弟はわしよりも上手く魔法が使えず、妹は幼いころの迫害で魔法力が内側に向かってしまい、上手く魔法を使うことができなかったのじゃ。今ならすぐに聖マンゴにいれていたのじゃが、母親はそれを良しとしなくての。わし達は妹を治す計画を立てていたのじゃが、それを弟はよく思っていなかったのじゃ、儂たちが治すために家に向かうと、弟が邪魔をしてきたんじゃよ。グリデンバルドは儂の弟に磔の呪文を掛けようとしての、儂がそれを止めようとして三つ巴の戦いになったのじゃ。その途中で止めようとしたのか妹……アリアナが入ってきての、誰かが放った呪文に打たれて死んでしまったのじゃ。それから儂はホグワーツに戻って教師となったのじゃ。わしはアリアナの事を忘れないためにも魔法省に入って権力を持つことはしなくなったのじゃ」

「ふぅん、つまりあんたが悪いんじゃない。ただ自分の才能に溺れてミスを犯しただけじゃない。その程度で魔法界を救えたかもしれない一手を選択しないなんて、あなたも馬鹿ね。聞かせてくれてありがとう、帰るわね」

「さようなら~、また来ますね、ネタがあったらよろしくお願いします」

「ああ、また来るのじゃぞ、これからはハリーも忙しくなるじゃろう、暇があったら見守ってくれると助かるぞ」

「ん、暇があったらですけどね~、じゃ、また」

 

 次の日からパチュリーは幻想郷に帰っていった。パチュリーがいないことによって文の悪戯がどんどん過激なものになっていくことはまだその頃のダンブルドアは知らないことなのだった。

 

 




いかがでしたでしょうか
何故か話を書くのよりあとがきを書くのの方が辛いw

では、また次回お会いしましょう


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第七話 ドラゴンと新たな参加者

投稿遅れて本当にすみませんでした!

 いや、だってですね、あれなんですよ、学校の先生が一日六時間勉強しろとか言うから!六時間ですよ!?一日起きている時間の半分くらいを勉強に取られるんですよ!
 アハハはハはハははハハハははは(壊)

……では、どうぞ……


 はぁい。私よ、八雲紫よ。私は今、魔法の森の奥深く、暗い洋館の前に来ているわ。ホグワーツの脅威は見逃せないことだし、根回しはしておくに越したことはないでしょうしね。

 何?いつもはこの時期は冬眠しているんじゃないのか?ですって?流石に私も幻想郷の危機にもなって寝ているほど悠長な性格をしているつもりはないわ。まぁ、幻想郷に仇為す存在を幻想郷が受け入れようとも、幻想郷の住民、ひいては私が許す事はないでしょう。許されざる存在は許されざるままに受け入れられ、存在していかなければならない。幻想郷は全てを受け入れる。それはそれは残酷な話ですわ。魔法界という幻想郷を壊してしまうかもしれない世界が幻想郷に入り込もうとするのなら、幻想郷が受け入れようと、この私が許すことはない、という事ですわ。

 

 そんな些事は置いておいて、目の前のことに集中致しましょう。私が今からしなければならないことは、アリス・マーガトロイドの説得よ。マーガトロイドだけならば私も簡単に説得できるのだけど、何せあの子には『神綺』という神様(化物)がバックについているのだから少し難しくなってしまったわ。ただし、あのこが神綺をあまり好ましく思ってないことが幸いね、そうでなかったら幻想郷には来ないでしょうし

「それで、またホグワーツへのお誘いなのかしら、私は行かないといったはずなのだけどね」

「あら、貴女の住んでいる幻想郷の危機なのよ?動く理由としては十分と思うんだけど、どうなのかしら?ああ、そうでしたわね、貴女には魔界という拠り所があるのよね」

「はぁ、私は別に魔界に行くなどと入ってないわ。ホグワーツというあまり知らないところに行きたくないだけよ。イギリスは私の出身国とはいえ、そんなに思い入れがあるわけでもないし。ああ、紅茶がまだだったわね、上海、紅茶を持ってきてくれるかしら、いつものでいいわ」

 シャンハーイという可愛らしい声を上げて、アリスと同じ金髪をして、しかし大きさは私の掌ほどの大きさしかない小さな小さな人形が紅茶を持ってきてくれたわ。私は差し出された紅茶を出来るだけ優雅に見えるように受け取ると、一口だけ紅茶を飲む。

「そうね、貴女が行きたくないという気持ちがあるのは分かるわ。私も貴女の事はある程度知っているつもりですわ、あの場所での一件から本気を出すことがなくなったという事も、理解はできるし、心情だって慮れるわ。それでも幻想郷を愛する者としては、幻想郷が危機にさらされている時に動かないわけにはいかないのよ。どうかしら、ここまで言ってもダメというのならば諦めるけれど、受けてはくれないかしら?」

「……まぁ、私も幻想郷がなくなっては困るし、受けることは吝かではないのだけれど、幾つか報酬をもらえないかしら?具体的には外の世界の生地と、魂に関する本を幾つか見繕ってもらえると嬉しいわね」

「あら、その程度なら造作もありませんわ。それでは、契約成立ですわね、では、杖などはオリバンダーの店で買うとよいでしょうね、ホグワーツで杖なし魔法ばかり使う訳にもいきませんしね」

 

 私はにこりと微笑むとスキマから色々なものを取り出す。具体的には前報酬という奴だ。色とりどりの布を取り出していく私を見て、アリスの顔が綻ぶ。やはり好きなものを前にすると嬉しいのだろう、いつもの彼女からは考えられないような顔をしている。私が「そんなに嬉しかったのかしら?」というと彼女は顔を赤らめて誤魔化してきたわ。なんだろう、この可愛さ。

「いいですわ、では学校は九月から始まります、それまでは自由にしていただいて構いませんわ。人形の開発に励むもよし、ホグワーツの事を知りたいのならば本をお貸しいたしましょう。一か月前になったらイギリスへと旅立っていただきます。では、ごきげんよう」

 そう言って私は後ろに家へとつながるスキマを開き、そこへと潜り込む。家――マヨヒガの更に奥、冥界に近い所に位置している――につくとすぐに藍が出迎えてくれたわ。藍は真面目なのだけど、その分柔軟な発想がたまに出来ないことがあるのよね~。それさえできれば料理もできて優しい、完璧な従者なのd「ずっと家にいて寝ているだけの紫様にだけは言われたくありません、大事の時しか動かないし、その癖して場を引っ掻き回そうとするじゃないですか」

「あら、主の心を読もうとする従者にも言われたくないわね」

 軽口を叩きながら家の中へと入る私達。藍が食事をお持ちしますというので、私は居間へと入って座って待つ。少しすると、藍が土鍋をもって居間へと入って来た。中を見ると何も入っていなかったの。しゃぶしゃぶだというので大人しく待っていたけれど、肉の量は相当あったはずだし、人を呼んでも構わないだろう。

 

「アリス、ア~リ~ス~、貴女今暇かしら、どうせなら家でご飯食べてかないかしら?しゃぶしゃぶなんだけど、肉の量が多分余っちゃうのよね、幽々子は流石に呼べないし、いい?」

「……貴女、さっきまでと態度が変わりすぎじゃない?吃驚したわ、別にいいけれど、他に誰か呼ぶの?靈夢が来るのなら嫌よ、あの子とはあまり会いたくないわ。合わなければならないのなら別だけどね」

「私と藍とあなただけよ、安心しなさい、小規模な宴会みたいなものよ」

「ならいいわ、そのスキマで行くのでしょう?入りましょうか」

 そう言って私のスキマへと潜り込んでいくアリス。……なんか私のスキマって言うと誤解を生みそうね、スキマへと入ると、予想してたのか半分呆れ気味な藍が出迎えてくれた。私ってそこまで信頼されてないのかしら?

 

「紫様がそうなさるだろうという事は予想していましたので、ちゃんとお酒もご用意してありますよ」

「ありがとう、藍。さ、アリス、今日は酔って何をしようとも構わないわ、思いっきり楽しんでいってね!」

 

 

――――――――――――

 

「ふぁあ、あふ」

 大欠伸をしながらベッドから起き上がる私。最近はいつもこのくらいの時間に起きていて、もっぱら新聞製作にいそしんでいる。スキマから新聞製作用の道具などが届いたからだ。

「えっと、確か前回は魔法薬の作り方まとめとか、変身術の先生に取材をしたんだったわね、今日はどうしようかしら、どうせ今日はグリフィンドールとハッフルパフのクィディッチがあるし、それでいいわよね」

 今日は確かスネイプ先生が審判をするということで話題になっていたはずだ、それを記事にしようか。私が大広間へと降りていくともう何人かの人はテーブルに座って談笑していた。ダフネやパチュリーはまだ起きてきていないので、一人でテーブルに座る。今日は特に寮関係での用事は無かったはずなので、ゆっくりと食事をすることができる。クィディッチがあるとはいえ、外来である私にとって出る義理はないはずだ。

 

 もそもそとサラダを頬張りながら、日本食について考える。確かこの学校には屋敷しもべと呼ばれる妖精がいたはずだ。紅魔館にいるメイド妖精みたいなものだろう(仕事量に関してはこちらの方が断然やってくれそうだが)。ならば厨房があってもいいはずだ、厨房に行けば日本料理を作ってくれと頼むこともできるはず、そうすれば私の食べたい日本料理だって作ってもらえるだろう。久々に食べることを思うと今から楽しみだ。そうときまればすぐにでも厨房の位置を聞いてこなければいけないな。

 そう思い私はグリフィンドールのテーブルでパンを口いっぱいに詰め込んでいるウィーズリー兄弟の処へ向かう。城の色々な抜け道を知っている兄弟ならば厨房の入り方だって知っているだろう。

「フレッド、ジョージ。あなた方、厨房への入り方を知りませんか?日本料理が恋しいんですけど、食べることができなくて困っていたんですよ」

「ああ、知ってるぜ」

「地下廊下の外にある果物かごの絵の梨の部分をくすぐるんだ。すると絵が開いて厨房へと入れるようになる」

「ん、ありがとうございました。次の新聞も楽しみにしていてくださいね~」

 

 ご飯を食べ終わって、兄弟から聞いた地下廊下へと向かう。言われたとおりに梨の部分をくすぐると、絵が扉のように開いて大広間と同じ構造をした空間が姿を見せた。中では小さな小人がせっせと働いていて、時折カチャカチャというような音が聞こえてくる。何人かの屋敷しもべ妖精がこちらに気づいて近寄ってくる。近くで見るととても気持ち悪い。耳は不自然にとんがっていて、目は飛びだし、ひょろっとしたというかがりがりな腕を持っていた。話し声はキーキーと耳障りで聞いてると不快になる。

「どうしました?」

「えっとですね、私の席――スリザリンの一番端っこなのですが――にですね、日本料理を出していただくことはできないでしょうか。勿論、出来ないことをやらせているので何か欲しいものがあれば言ってください」

「いえいえ、そう言ってもらえるだけでも私共と致しましては光栄の至りでございます。日本料理でございますね、数日はかかるかもしれませんが、構いませんか?」

「大丈夫ですよ。ありがとうございます」

 そう言って私は厨房から出ていく。良し、これで明日か明後日からは日本料理が食べられるようになるはずだ。私はクリスマスに家に帰っていないので日本料理を食べられる機会があるのはとても嬉しいこと。フレッドとジョージには感謝しなきゃ。パチュリーはそういえばクリスマスは何をしていたのだろう、紅魔館に帰ったというのは知っているけれど、帰って来たのが授業が始まる一日前とかだったから何をしていたのか私も知らない。

 

 私がクィディッチの会場につくと、グリフィンドールの席は沸き立っていて、スリザリンは逆にブーイングの嵐だった。何故だろう、私がグリフィンドールが絶対に追いついけないくらいに点差をつけて勝っていたと思うのだが。先に座って待っていてくれたパチュリーによると、今のスリザリンとの点差は240点だそうだ。ここでハッフルパフに240点差以上をつけられればグリフィンドールの勝ち、そしてできなかったのならばスリザリンの勝ちとなる。

 私とパチュリー、そしてダフネが座ったのはたまたまハーマイオニー、ロンの隣だった。ロンがやはりすごい目で見てくる。

「何でスリザリンがここに座るんだよ」

「あやややや、寮で別れて座らなければならないとは言われていませんよ?それにここ以外に席が空いていなかったのですよ~。すみませんねぇ」

「文、ロンもよ。喧嘩はやめなさい、ここでしても意味ないでしょう?」

 試合が始まった。が、すぐに終わってしまった。ハリーがスニッチを取ったのだ。結果は200対30。スリザリンの優勝だ、ハリーはスニッチを反射的にとってしまったのか、びっくりした顔をしている。

 その後ハーマイオニーとロン、ハリーに「ニコラス・フラメル」について聞かれたので親切に答えてあげた。ダンブルドアと一緒に賢者の石を開発した人物で、六百年以上生きているという感じだ。それで何か思いついたのかハリーとハーマイオニーはしきりに礼をしてきた。

 

「文はすごいわよね、パチュリーも。私追いつける気がしないわ、何か呪文について教えてくれないかしら?私も強くなりたいのよ」

「あら、そんなこと考えてたの?最近物静かだと思っていたら。別にいいわよ、必要の部屋ならば誰かに見られることもないでしょうし。行きましょうか」

 パチュリーがいつもの地図を取り出し、必要の部屋の場所をぐっと押す。いつものように下に魔法陣が現れ、くるくると回りながら私達の体を飲み込むと、私達は必要の部屋の前の絵へと来ていた。パチュリーが壁の前をサンド往復する。壁が引っ込んでいき、必要の部屋が私達の前に姿を現した。

「ここよ、貴女にはこれから五段階に評価を分けて特訓を行ってもらうわ」

 そう言ってパチュリーがホワイトボードを取り出してくる。そういえば今日の部屋は紅魔館の図書館だ、懐かしい。本を手に取り、パラパラとめくってみる。本の中身のちゃんとコピーされているようで、しっかり読むことができた。

 ちなみにパチュリーの言う五段階とはこんな感じだ。

 

 第一段階 一、二年生の呪文が問題なく使える

 

 第二段階 三から五年生の呪文が問題なく使える 無言呪文でも可 O.W.Lレベル

 

 第三段階 六、七年生の呪文が問題なく使える N.E.W.Tレベル

 

 第四段階 闇払いになれるくらいのレベルの魔法がすべて使える

 

 第五段階 オリジナル魔法を作れるようになる 又は杖なし呪文が使えるようになる

 

「これに従って魔法の技術を高めていってもらうわ。文はそこに実験室を作っておいたから好きなことをしていなさい、魔法を作るのでも、触媒魔法を高めるのでもいいわ」

「あいあい、分かったわ。じゃあダフネ。逝ってらっしゃい」

「凄い邪悪なものを感じたんだけど、気のせいよね?」

 私は実験室へと入ると、これから先聞こえてくるであろう悲鳴が聞こえないように耳栓をして、自分のオリジナル呪文、そしてスペカの開発に着手し始めた。

 

 

 

 

 

 

 こんにちは、アリス・マーガトロイドよ。私は今、紫のスキマに連れられてダイアゴン横丁へと来ているわ。生まれ故郷とはいえ、私の故郷と呼べる場所なんて魔界くらいしかないのだから、特に感慨があるわけでもないのだけどね。それは置いといて、えっと、まずはお金だったかしら。錬金術もある程度は修めているから、金程度ならばいくらでも生み出せるし、宝石をマグルだったかしら、のところで売って、そのお金をこっちで換金すればいいのだけどね。

「上海、蓬莱、大丈夫?あまりはぐれないでよ、人混みがすごいからはぐれると見つけられなくなっちゃうわ」

 シャンハーイ、ホラーイといつも耳にしている返事が届く。半自立化に成功しているとはいえ、完全自立人形の政策は難航しているのよね、最近は付喪神化を早めることができないか考えているのだけど、それを果たして完全自立人形と呼べるのかしらね。妖怪になってしまったものは人形かというだけなのだけど。

 グリンゴッツでお金を預け、いくらかのお金を手元に入れて最初に向かったのはオリバンダーの店。紫が言っていたのだけど、あそこはイギリス一の杖専門店らしい。

 店内に入るとかび臭い匂いとともに木の臭いがこちらへと香ってくる。現れたのは何歳かもわからない程に年を取った老人。人間のはずなのに変な気を醸し出しているから、一瞬引いてしまったわ。なんなのでしょうね、この人。

「いらっしゃいませ」

「こんにちは、オリバンダーさん。私、アリス・マーガトロイドというわ。今日は杖を買うためにこちらに来たのだけど、大丈夫かしら」

「おお、大丈夫ですとも。マーガトロイドさんですね、では、拝見いたしましょうか。何方が杖腕ですかな?」

「杖腕?……ああ、利き手の事ね。右手よ」

 私がそう言って右腕を差し出すと、オリバンダーさんは肩から指先、手首から肘、肩から床、膝からわきの下、頭の周りと寸法を採った。……最後のは要らないと思うのだけれど、どうなのかしら?

 測りながら老人は話をつづけた。

「マーガトロイドさん。オリバンダーの杖は一本一本、強力な魔力を持ったものを神に使っております。一角獣のたてがみ、不死鳥の尾の羽、ドラゴンの心臓の琴線。一角獣も、ドラゴンも、不死鳥も皆それぞれに違うのじゃから、オリバンダーの杖には一つとして同じ杖はない。もちろん、他の魔法使いの杖を使っても、決して自分の杖ほどの力は出せないわけじゃ」

「では、これをお試しください。樫の木に不死鳥の羽根。二十センチ、良質で折れにくい。手に取って、振って御覧なさい」

 私が杖に魔力を込めながら振り上げると、杖の先からレーザーのようなものが出て、壁を壊してしまった。謝るとオリバンダーさんは「よいよい、この程度のお客さんなど普通じゃよ」と言っていた。魔法界の魔法ってそこまで物騒なものだったのかしら?死の呪文とかあるから相当なのでしょうけれど。

「次ですな、あまりない組み合わせですが、椿にグリフォンの尾の毛、二十二センチ、しなやかで折れにくい。振ってみて下され」

 先ほどと同じように杖を振り上げると、杖の先から色とりどりの花が飛び出していった。花はオリバンダーさんの店の中をくるくると駆け回ると、私の杖の中へと戻っていった。

「おお、これですな。これは物体操作などの呪文に最適なのですぞ、良かった良かった」

「代金はいくらですか?」

「七ガリオンでございます、マーガトロイドさん、ありがとうございました」

「ええ、ありがとうございました」

 

 私はオリバンダーさんに見送られて店を出た。次は鍋を売っているお店へと向かうわ。鍋自体は持っているのだけど、材質が違うから買わないといけないらしいわ。鍋なんて材質はいつでも変えられるのだからどれを持っていようと同じなのだと思うのだけど、魔法学校ともなるとそういうのはしっかりしなければならないのかしらね。

 次に向かわなければならないのは教科書の処ね、確か来年から新しく入れなければならない教科書が増えたらしいからいろいろ買わなきゃならないらしいわ。中を見たけど半分以上が小説みたいなものでがっかりしたのよね、正直こんな本を買わせる先生ってどんな人なのかしら?何だか胡散臭い内容のものが多いし、本当にやったことなのかどうかも曖昧よね。

 ギルデロイ・ロックハートと言ったかしら。この本を本当にやったことならば凄いと思うけれど、嘘の可能性が高いでしょうね。犯罪の臭いがすごいするわ。

 確かホグワーツには二人幻想郷からの人が言っているのよね。誰だかは結局教えてくれなかったけれど、幻想郷の人たちと会えるのは楽しみだし、それより魔法を教える学校なんてわくわくするわね、楽しみだわ。

 

 

 

 

 

 

「それで、マルフォイ?どうしたのかしら、そんなに焦った顔をして。急に女子寮に大声を上げないで頂戴」

「あいつだ、あの三人だ!ドラゴンだ!ドラゴンをあいつら匿っているんだ!」

「ドラゴン?そんな事あるわけないじゃない……と言いたいのだけれど、ハグリッドが関わっているのでしょう?あの森番ならやってもおかしくないわ。証拠はもちろんあるのよね?」

「ああ、あるさ!この手紙だよ!」

 そう言ってマルフォイが突き出してきた手紙にはノルウェー・リッジバックを引き取るという旨が書かれていた。時刻は土曜日の真夜中らしい。罠の可能性もあるので、姿を消すことのできないマルフォイでなく、私とパチュリーが行くことになった。地獄の特訓のおかげでダフネもだいぶ魔法の扱いが上手くなっているのだが、まだ目くらまし呪文をしっかり使えるほどではないので今回はお留守番だ。不満を垂れていたがこれに関しては仕方がない。早く出来るようになればいいのだ。死ぬほど辛かったとしても。

 

 土曜日の零時、私とパチュリーは天文台の頂上に来ていた。ダンブルドアが来てもバレないよう、魔法界の魔法ではなく、触媒呪文と精霊呪文を組み合わせた魔法を使っているので、痕跡もほとんど見ることができないはずだ。少しするとマクゴナガル先生が来た。私達はばれないように魔法陣の中でうずくまって息をひそめていた。マクゴナガル先生はきょろきょろと天文台の中を見渡すと、すぐに帰っていった。ほぅ、と私達は安堵の息を漏らした。

 ピッタリ零時。何人かの人たちが箒に乗ってやって来た。その後すぐにハリー達もやってくる。リッジバックが入っているであろう箱を引き渡そうとした瞬間、私達は動き出した。合計六人いる人たちの全員に失神呪文と睡眠呪文を重ね掛けすると、その場に手紙を置いていった。「ノルウェー・リッジバックが中に入っています。気を付けてください by密告者」というものだ。私達は安心して談話室へと転移した。階段を上る音が聞こえてきたからだ。

 談話室へと戻ると、ダフネがぴょんという擬音が似合いそうな様子で抱き着いてきた。私は後ろに倒れ込みながらダフネを受け止めると、ソファーへと座り込んだ。

「どうしたのよ、そんなに慌てて」

「いやぁ~、ちゃんと帰ってきてくれてぇ嬉しいのよ~。あなた達の事だから大丈夫だと思っていたとはいえ、良かったわぁ」

「ダフネ、貴女酔ってるんじゃないの?口調も態度もいつもと違いすぎるんだけど」

 

 ダフネがすりよってくる。テーブルの上にお酒らしき瓶がおいてあるのできっとそれを飲んだのだろう。パチュリーが呆れたような目で見てくる。まぁ、傍から見たら危ない場面であろうことは否定しないが、助けてくれてもいいんじゃないだろうか。別にいやな思いをしているわけでもないのだが。私がダフネの肩の上からパチュリーに話しかける。

「結局ハリー達は捕まったのかしら?足音が聞こえてきたから多分掴まってるでしょうけど、それでも心配ね」

 

 次の日、グリフィンドールからは百五十点が差っ引かれていた。自業自得というべきか、それともドラゴンを見せたハグリッドを責めるべきなのか。可哀想ともいえるかもしれない。

 グリフィンドールの雰囲気は最悪だった。ギスギスしていて、その上ハリー達は責めの的だ。スリザリン以外は、だが。レイブンクローやハッフルパフもスリザリンから寮杯が奪われるのを楽しみにしていたからこそ、グリフィンドールが百五十点も失ったからこそ、あんなにも怒っているのだろう。

 スリザリンは、ハリーが通るたびに口笛を吹き、「ポッター、ありがとうよ。借りができたぜ!」と囃し立てていた。あぁ、何ヵ月もかけてハリーから拭おうとしていたスリザリンのイメージが駄目になってしまった。それまでは少しは見直してくれてたというのに。これでハリーを見守ることもあまりできないだろう。ハリーの自業自得だが。

 その日の夜、処罰があるらしい。禁じられた森に行くと言っていたが、どうすればいいだろうか。ダフネも次の時は行きたいと言っていたし、今度は連れて行ってあげなければ可哀想だろう。やっとダフネも第三段階まで進めたところだ。失神呪文と、武装解除呪文も使えるようになったし、自己防衛には十分だろう。

 ダフネに目くらまし呪文を掛けてハリー達を追う。フィルチに連れられてハリー達が禁じられた森の方へと歩いていく。禁じられた森の前へと着くと、石弓を持ったハグリッドが現れた。

「夜明けに戻ってくるよ。こいつらの体の残っている部分だけ引き取りに来るさ」

「ああ、今日はマクゴナガル先生が来て下さった。ハリーとハーマイオニーはマクゴナガル先生についていってもらえ、ネビルは俺とこい。ユニコーンの血を見つけるんだぞ、見つけたら緑の、危なくなったら赤い光を上げるんだ。じゃ、気をつけろよ――出発だ」

「ハリー、ハーマイオニー、私についてきなさい」

(「ん、行くみたいね、私達もいこうか」

 「そういえば何で文はハリーを見守ろうとするの?別に寮があれとかそういう訳じゃないんでしょ?」

 「校長に頼まれたからなのよね、そこまで忙しいわけでもないし、別にいいんだけれど」)

 私達もハリーの後ろにくっついて森の中へと入っていく。途中でケンタウロスにあったが、それ以外に特に危ないところはなく、ハリー達は森の奥へ奥へと向かっていた。私から見たらこんなに臭いが充満していたらどこに死骸があるかなど分かりそうなものだが、木の根元に大量の血が飛び散っていた。その奥には開けた場所があり、そこにユニコーンの死骸があった。 

 その瞬間、ずるずると布を引きずるような音が聞こえてきた。木々の端が揺れると、頭をフードで包んだ何かが地面を張って出てきた。マントを着たその影はユニコーンの傷に顔を当てると、傷口からその地を飲み始めた。マクゴナガル先生でさえ固まってしまっている。まぁ確かに衝撃的な光景だが、すぐに対応してほしかった。私達が出なきゃならないじゃないか。フードの人間がハリーの方へと近付こうとするから、私はダフネに合図をすると、パチュリーとともに暗がりから飛び出て、失神呪文を放った。私は竜巻のおまけつきで。

「「ステューピファイ(麻痺せよ)!」」

 私達が失神呪文を放つと、フードの人間は吃驚して闇夜に逃げていった。……やってしまった。マクゴナガル先生がこっちを見ている。怒っているのが分かるような見方だ。

「何をしているのですか?禁じられた森に立ち入ってはいけないといったでしょう!」

「ダンブルドア校長からのご命令なんですよ、『ハリーの事を見守ってやってはくれんかの?』だそうです。本当に危なくならなかったら出ていかないつもりだったのですが、ヴォル――んん、すみませんでした、『例のあの人』が出て来たようなので慌てて飛び出しました。こんな説明でよろしいでしょうか?」

「……取り敢えずダンブルドア校長に確認してから、あなた達への処罰は決めようと思います。助けてくれたことには感謝しますが、これはそれとは別問題です。では、寮に戻りなさい」

「分かりました。ユニコーンについてはハグリッドに知らせておいてもらってもよろしいでしょうか?」

「ええ、分かりましたよ」

 

 

 

 

「あ~!疲れた~、本当にあそこでマクゴナガル先生が動いてくれれば私だってやる必要なかったわよ!はぁ、失神呪文をあのタイミングで撃たれて躱すなんて、クィレルもやるわね」

「ちょっと待って。クィレル先生!?あの人なの?」

「ええ、クィレルよ。私も最初見たときは驚いたわ、クィレルの後頭部にヴォルデモートが取り憑いているなんてね。あれはもうほとんど人間としての機能を持っていないけど、分霊箱と言って、自分の魂をものに分けることによって分霊箱さえ残っていれば死なないという機能があるのよ。でもヴォルデモートは分霊箱を作りすぎているだろうから、最終的に残った魂の量が足りなくなって、誰かに寄生しないと生きながらえられないんでしょうね」

 ほんと、事実は小説よりも奇なり、よね。とパチュリーはしめた。ダフネはとても驚いた顔をしている。賢者の石の事も教えると、さらに驚いていた。

「え?じゃあハリー達があんなに違反をしていたのは賢者の石について調べたりしようとしてたからなの?」

「それもあるでしょうけど、注意が足りないわね。もっと校則違反をするのなら周りに気を付けて行動すべきだわ」

 多分クィレルはテストが終わった直後に動き始めるだろう。テストに関しては私とパチュリーの特訓でダフネも含め大丈夫だろうが、クィレルに関しては結構困る。ハリー達はスネイプを疑っているらしいが、私に言わせればあれはハリーをむしろ守ろうとしているはずだ。スネイプ先生の態度が悪いのも事実だが。

 私はため息をつきながら災難を振り払うためにどうすればいいのか、考え始めるのだった。




いかがでしたでしょうか。

もう勉強なんてしたくないです。宿題の量もおかしいし、ダレカタスケテ
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では、次回もお楽しみに~


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