ヒトリシズカ (幽玄の寡黙)
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ヒトリシズカ

―チュンチュン

 

朝、目が覚める

窓を開ける

風が入ってきた

 

・・・・

 

 ・・・着替えよう

 

朝ご飯は焼き魚と味噌汁

一人で食べている

鳥の声と食事の音だけが聞こえる

 

・・・・・

 

フヨフヨ~

闇を纏い、森の上を飛んでいる

「おーい、ルーミア」

 ・・・氷妖精

「これから皆で探険に行くんだ、ルーミアも来いよ」

 ・・・遠慮しとく、そんな気分じゃ無い

「そうか残念だ、ならまた今度行くか」

「じゃあなルーミア」

 えぇ、また

 

・・・・・・

 

--------------------------

夕暮れ時

 

部屋は闇に染まり始めている

私は、明かりも付けずに、ベッドの上で膝を抱えている

もう、この空間にも馴染んできた

部屋を見渡す

机、本棚、ベッド、

あの時から家具も配置も変わっていない

床も綺麗で何も変わらないように見える・・・

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

辺りはどす黒い赤色で染まっていた

鉄の臭いがする

 

 ・・・ここは

 

部屋の中央に彼女は立っていた

目の前には、何かの塊があった

肉塊のように見える、まるで・・・

 

 っ!

 

その場に崩れ落ち、両手で体を抱き抱えた

俯いて震えている

 

いつの間にか目の前に誰かが立っていた

「ルーミア」

 

 っ、あ、あぁっ

 ごめん・・・なさい・・・、ごめんなさい・・・ごめんなさい、ごめんなさいっ

 

「・・・」

 

 私がっ、私が貴方をっ

 

「ルーミア」抱き

 っ!?

 

私を抱きしめてきた。

 

「ルーミア、君は悪くない」

 で、でも・・・

「私が弱かったからこうなってしまったんだ」

 そんな・・・こと・・・

「私のせいで辛い思いをさせてしまったね、ごめん」

 う・・・うぅ・・・

「私はもう死んでしまったけど、君はまだ生きている」

「明日がある」

「希望がある」

「私の代わりに生きてくれ」

「楽しんでくれ」

「君が笑っていてくれるのが、私の幸せだから」

 ・・・ぐす・・・ひっく・・・

「だから、涙を拭いて、ほら」

 ・・・うん

「最後におまじないをしてあげる」

そういって私の髪に赤いリボンを結んだ。

 ・・・これは

「うん、よく似合う」

「このリボンが、君を守ってくれる」

 ・・・ありっ・・・がとっ・・・

泣きながら、抱きつく

「ルーミア」

「愛しい・・・ルーミア」

「どうか、私の分まで」

「幸せに・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―チュンチュン

 

 ・・・っ

 

目が覚める

いつもの部屋

いつもの床

いつものベッド

 

 ・・・夢?

そう思い、ふと頭に手を伸ばすと

 あ、

リボンが結ばれていた。

赤いリボン

あの人がくれた、リボン

 ・・・ ぎゅっ

 

 

窓を開ける

風が入ってきた

気持ちのいい風が

 

 ・・・着替えなきゃ

 

いつもの黒い服に身を包み、赤いリボンを結ぶ

扉を開ける

朝日が眩しい

 

「あ、ルーミア」

誰かがこえをかけてきた

「これからあそこのお屋敷に行くんだ。ルーミアも来いよ」

「ええ、いいわよ」

「じゃあ早速出発だ。あのお屋敷は、あたしのもんだ!」

 

彼女は前よりも明るい表情で外へ出た。

 

 

「そーなのかー」

 



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