Fate/Apocrypha 灰の陣営 (ピークA)
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一話 始まり

めっちゃ拙い文章、設定を晒すことを許してください。

聖女がなんでもするので


31年前 オーストラリア タスマニア州

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

そこには二つの影があった。一つは地に倒れ伏した男。もう一つは満身創痍の少年。

 

少年は左腕を失いその体にはいくつもの傷を作っていた

 

少年は男に近づき剣を振り上げた

 

「これで終わりだ・・・ライダー・・・!!」

 

剣を降り下ろしライダーと呼んだ男の首を斬ろうとして。

 

自分の胸を別の剣が貫いているのを見た(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「な・・・に・・・?」

 

「悪いなぁ・・・セイバー・・・」

 

セイバーの後ろには彼がライダーと呼ぶ男が自分に剣を突き刺していた。

 

ぐりっとセイバーの傷口を開く様にして剣を引き抜く。

 

同時にセイバーの体を

突如出現した無数の兵士が引き裂いた(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

しばらくするとセイバーの体は粒子となって消え、その場に聖杯が現れた。

 

男はそれに手を伸ばしそして―――

 

 

31年後 ルーマニア首都 ブカレスト

 

そこには中世を思わせる建築物や近代的な建築物立ち並んでいた。

 

その中の一つ、十五階建てのビルの地下駐車場に一台の車が入った。車内から出てきたのは青い長髪の二十代位の男性。もう一人は三十代後半の肥満体型の男性だ。

 

暫く待っていると、三十代位の黒髪の男と二十代後半の男がやって来た

 

「始めまして、ミスターダーニック。我が社へようこそ」

 

ダーニックと呼ばれた青髪の男はにこやかに笑い

 

「始めまして、ミスターテム。お会いできて光栄です」

 

二人は握手をする。

 

「立ち話もなんですから、こちらへどうぞ」

 

とテムは地下駐車場から社内に入り三つあるエレベーターを素通りし壁に取り付けてある災害用の懐中電灯の入っているケースを開ける。

 

中にカードをスキャンする装置と電子パネルがありそれにカードを通した後7桁のパスワードを入れた。

 

すると何もなかった筈の壁が開き奥に続く通路が姿を表した。

 

「こちらにどうぞ」

 

少し歩くとエレベーターがあり中に入るとテムはパネルの下ボタンを3秒押しパネルに備え付けられていたカメラに顔を近づける。

 

するとようやくエレベーターが動きさらに下へと移動した。

 

「随分手の込んだ仕掛けですね」

 

ダーニックは若干訝しんだ。

 

するとテムは、

 

「申し訳ない。上の応接室でも良かったのですが、どうもあちらの近くの職場には協会側の魔術師がいると連絡が入ったので。別に消しても構わないのですが、流石にこのタイミングでそれをやると協会に殺されかねないので避けたい。それにこちらにある部屋の方が科学的、魔術的な盗聴や襲撃の心配はないので」

 

「そうですか・・・」

 

ダーニックそのように返した。

 

ダーニックと共に来た肥満体型の男性・・・ゴルドは、

 

(やはりこの男は《怪物》だ)

 

と、テムに対して畏怖の感情を抱いた。

 

 

テム・ウォン。

 

それが彼の本名である。彼は元経営コンサルタントで中国・台湾などを拠点にしていたが、18年前にこのルーマニアにやって来た。

 

元々貯めていた資金を元に警備会社を設立した。当初は誰にも相手にされなかったが徐々に依頼は増えていき今ではかなり大きな会社に成長した。

 

更に彼は数年前にヘッドハンティングしたとされるとある天才を、ヨーロッパ中に支店を持っているある大手電気機器メーカーと手を組ませ、防犯カメラと映像を受信するシステムなどの開発に着手した。潤沢な資金によって、従来の性能を遥かに凌駕したカメラと映像受信システムが完成。それをブカレストの街中に試験的に配備した結果、幾つかの犯罪の検挙に成功し、それによってブカレストだけでなくヨーロッパ内の防犯カメラは、全てその電気機器メーカー製のカメラと天才の作った受信システムを使った物になった。

 

更にテムは、その天才の作った幾つかのアイデアをルーマニアやヨーロッパだけでなくアメリカやアジアの大手企業に秘密裏に売り付け多額の金を得た。

 

結果としてこの世界の科学水準は数年前から飛躍的に進歩した。

 

しかし彼には黒い噂があった。

 

曰く、彼はマフィアと関わり大量の武器や兵器を所持している。

 

曰く、彼は警備システムを使って政財界、警察、大企業の幹部と関係者の犯罪を隠蔽してその見返りに大金を得ている。

 

曰く、彼は魔術師と関わりがある。

 

曰く、このルーマニアの裏社会を本当の意味で牛耳っているのは、この男である。

 

これらは、全て事実である。

 

しかしそれを裏付ける証拠が一切ない。

 

関係をもった魔術師などを使い、事件などとは関係のないチンピラや半グレの若者に暗示をかけ「自分が犯人である」と思わせ、その人物が現場にいた様に偽装する。防犯カメラに関しても同様の偽装をして警察に逮捕させる。

 

こうすることで政財界の人間の幹部や関係者を守りその口止め料として多額の金を貰い、彼は政財界の人間とのコネクションを築いてきた。表向きは警備会社の社長と依頼者だが、実際はテムに弱みを握られてしまった犯罪者である。彼らも何度かテムを消そうとしたが、どういう訳か全て失敗に終わり逆に襲われた事を口実にさらに金を搾取されることとなった。

 

そのような事が一度や二度でなく彼は、この18年間そのような事を繰り返し大きくなっていった。

 

魔術師界隈でもこの事はほとんどの人間は知らない。ルーマニアに居を置いているダーニック率いるユクドミレニアだからこそ手にいれる事ができた情報であった。ゴルドは「そのような男は殺してしまうべきだ」とダーニックに進言した。

 

たった18年でこの国の闇その物へと成長した怪物だ。さらに言うなら彼のせいで魔術師という人種はさらに追い詰められた。彼が科学技術の水準を進めたせいで幾つかの魔術師の家の神秘が零落してしまったからだ。

 

しかしダーニックは彼と交渉することに決めた。彼の持っているコネクションから生まれる多額の金の一部を自分達の物にできればより多くのゴーレムやホムンクルスを作る材料を手にいれる事ができると踏んだからだ。

 

地下3階 応接室

 

「それで、今日はどのようなご用件でしょう」

 

テムはクロと呼んだ秘書の男にお茶を入れるよう命じた後、このように切り出した。

 

ダーニックは、

 

「ご存じかと思いますが、我々は魔術協会を脱退し聖杯を旗印にユグドミレニアという新たな組織を立ち上げると宣言する予定です」

 

「成る程」

 

「しかし我々は新興の組織。魔術師としての腕は確かな者もいますが、ゴーレムにしろホムンクルスにしろ大量

に作り出すには資金が足りません」

 

「つまり私に金を寄越せと言うことですか」

 

「我々の未来に対する投資、と言う形ではダメでしょうか。我々が協会に変わる新たな組織となった暁にはあなたの邪魔となる人物や害をなす人物を抹殺することも容易ですし、それに・・・」

 

ダーニックはここで言葉を切り、

 

「聖杯を作ることもできます」

 

そこでテムはピクリと反応した

 

「聖杯を新たに作る・・・そんな事が可能なのですか?」

 

「この60年間で聖杯に関しては解析済みです。協会との戦争に勝ち、1000年に及ぶ繁栄が叶えばそれも可能と言うことです」

 

「・・・・・・」

 

テムは暫く黙りそれから、

 

「いいでしょう。新しい組織の誕生、その未来に対しての投資という形であれば幾らか出しましょう」

 

テムはニヤリと笑いながら言った。

 

それから幾つか雑談をした後、城に戻るダーニックを見送った。

 

見送った後、テムは自身の秘書のクロに国外の幾つかの金融機関を経由してユグドミレニアの口座に3億ユーロ(日本円で約390億円)振り込むよう命令した。

 

夜 ブカレスト 何処かのバー

 

ダーニックとの交渉後幾つかの案件を済ませテムとクロはブカレスト内にある隠れ家的な会員制のバーに来ていた。

 

裏路地から地下に下る階段を降りて店内に入り、ウェイターに会員証をみせVIPルームに案内させる。一番奥の部屋に案内され扉を開く。

 

そこにはすでに三人の人間がいた。

 

赤髪の少女。

 

黒髪の日本人の青年。

 

金髪に猿顔の男。

 

「随分とご無沙汰だったな。アーチャー(・・・・・)セイバー(・・・・)

ランサー(・・・・)

 

するとランサーと呼ばれた猿顔の男は、

 

キャスター(・・・・・)の旦那は?」

 

「ああ、キャスターならほらここにいるぜ」

 

テムはクロに言ってパソコンを取りださせアプリを起動させた。するとパソコンのから機械的な声が聞こえてきた。

 

『久しいな、諸君。そしてこんな形で会話に参加する無礼を許してくれ』

 

「いえ、別に気にしません」

 

アーチャーと呼ばれた少女は澄んだ声で答えた。

 

「そうそう、いつものことです。ところでアサシン(・・・・)は?」

 

セイバーと呼ばれた青年はテムに聞いた

 

「アサシンならユグドミレニアを張ってるよ」

 

と、テムは答えた。

 

「それで俺らを呼び寄せた理由はなんだ、ライダー(・・・・)の旦那?」

 

テム、いやライダーは普段人前で見せる笑顔とは別種の凶悪な笑顔を浮かべ、

 

「もうすぐ、俺たちの大願が叶う。さぁ、終わらせようじゃないか。俺達の聖杯戦争を」

 

隣にいたクロも口に笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 




いろいろ原作から外れて完全にifの世界となっております。原作キャラに新しい設定やら加えます。赤黒どちらの陣営も召喚サーヴァントを一部変更します。

終わりまで頑張りたいと思います。
ランサーの真名とか分かりやすいと思います

どうしよう。



アニメ版Apocrypha。略してアニクリファ面白過ぎる。フランちゃん可愛すぎる


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二話 二周目のサ-ヴァント

前回のあらすじ

ダーニック「三億ユーロPON☆とくれたぜ!」



テムとの交渉から一月後、ダーニックは聖杯所持とともにユグドミレニアの立ち上げを宣言。

 

それから2日と経たない間に時計塔から五十人の魔術師の精鋭がユグドミレニアを殲滅するために派遣され一人を残し皆殺しにされた。

 

生き残りの一人が言うには、

 

「自分達討伐隊が城に向かおうとすると、一番先頭にいた男に槍が刺さった。青系のタイツ姿の男(・・・・・・・・・)が刺さった槍を引き抜いたので、その男に攻撃しようと魔術を行使しようとしたら物の一分で自分以外が殺害された」

 

と、言う話を聞いたロッコ・フェルヘヴァンは少なくとも一騎サーヴァントがユグドミレニア陣営に召喚させていると認識した。

 

しかし彼が持ち帰った話しはそれだけでなかった。

 

なんと彼は聖杯の予備システムを起動させ、時計塔側にもサーヴァントを召喚することが出来るようにしたのだ。

 

通常の聖杯聖杯は七騎が最後の一騎になるまで殺し会うものだ。しかし今回はその七騎が一つの陣営に組みしてしまっている。その場合追加で七騎がもう一つの陣営に召喚されるようになっている・・・それが今回の聖杯戦争が通常と異なっているところだ

 

「と、言うわけでこの聖杯戦争・・・いや聖杯大戦に参加してサーヴァントを使役しユグドミレニアを倒し聖杯を手にして見ないか?」

 

ダーニックの離反の四日後、そんな話をロッコは自身が呼んだフリーランスの魔術師、獅子劫界離に話した。

 

「本当にその生き残り、予備システム起動させたのか?」

 

「ああ、予備システムは起動してるさ。その生き残りが起動させた訳じゃないだろう。おそらくダーニックが起動させた。あの男の事だ、我々に倒されるべき七騎を召喚させる魂胆だろう。」

 

「あんたらもまんまとユグドミレニア(やつら)に乗せらせている訳か」

 

「で参加する気はあるか?」

 

「させる気で呼んだんだろ?」

 

「触媒も用意してある、これだ」

 

ロッコは木箱からある木片を取り出す。

 

「円卓の破片だ」

 

「そりゃすごい(このジジイ完全に逃げ道塞ぎにきてやがる。参加させる気満々じゃねえか!)」

 

そんな感じで獅子劫界離は聖杯大戦参加を承諾した(押しきられたと言ってもいい)

 

「ああ、そうだ他のマスターに関する情報をくれ」

 

「そうだな。まず、フィーンド・ヴォル・センベルン。かのロード・エルメロイの旧友の男。ランサーを召喚予定だ。次にロットウェル・ベルジンスキー。彼はアーチャー。それからペンテル兄弟。兄はキャスター、弟はライダーを召喚予定だ。この四人はすでにルーマニアに入っている」

 

「俺がセイバーを召喚するとして後はアサシン、バーサーカーか」

 

「聖堂教会から監督役としてシロウという神父が派遣されている。アサシンを召喚するだろう」

 

「もう一人は?」

 

「メアリー・ベール。フリーランスの女魔術師で『生還者(サバイバー)』の異名持つ。バーサーカーを召喚して貰う。こいつに関しては数時間前に連絡がきて今飛行機でイギリスに来ている途中だ」

 

ロッコはニヤニヤ笑いながら最後の一人を言った。

 

「なんで笑ってんだ?」

 

「なにせ奴に召喚して貰うのは―――」

 

その英雄の話を聞いて獅子劫はメアリー・ベールに心底同情した。

 

獅子劫が前金としてヒュドラの幼体をもって部屋から出ようとした時、ロッコは携帯電話を渡してきた。

 

「なんだこりゃ」

 

「実はユグドミレニアにスパイを二人潜り込ませていてな。その片方との連絡用だ」

 

「そいつら信用できるのか?」

 

「一人はやつらの拠点、ミレニア城塞周辺の防衛システムを担当していた男だ。もう一人はあのロード・エルメロイ二世に秘密裏に魔術を教えさせた。それにそいつはマスターに選ばれる可能性が高い。一族の中ではあまり目立たないかもしれんが」

 

「そんな奴らがいるのに、精鋭部隊は全滅したのか」

 

「二人ともまさかサーヴァントを召喚して迎撃させるとは考えてなかったようだ。いや我々の襲撃直前に召喚したのだろう。だから連絡できなかった」

 

「この携帯はそいつらとの連絡用か?」

 

「防衛システム担当の男とはもう連絡がとれん。おそらく奴らにばれたのだろう。この携帯はもう一人との連絡用だ」

 

「そうかい。じゃあルーマニアに行くわ」

 

そうして、獅子劫界離はルーマニアに渡り、今まさにサーヴァントを召喚の儀式を準備した。

 

同時刻 ミレニア城塞 大広間

 

そこでは今まさに、サーヴァントを召喚するマスターが集められていた 。

 

ゴルド・ムジーク・ユグドミレニアと言う肥満体型の錬金術師。

 

セレニケ・アイスコル・ユグドミレニアと言う女黒魔術師。

 

フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアという極めて優秀な魔術師。

 

カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニアと言う凡庸な魔術師。

 

彼らは令呪を宿したユグドミレニアのマスターである。

 

「ランサー。彼らがお前と共に戦う者を召喚するマスターだ」

 

「ふーん。ま、いいんじゃねぇの」

 

ランサーは彼らを見ながら呟く。

 

「サーヴァントの召喚なんてそうそう見れるものじゃないし、楽しみですね先生(・・)

 

「あぁ、そうだね。ロシェ」

 

ロシェ・フレイン・ユグドミレニアの隣には画面に青いマントにボディスーツを着た男が立っていた

 

彼はロシェに召喚されたサーヴァントである。

 

彼らは自身が用意した触媒を祭壇にセットしたあとサーヴァントを召喚するための呪文を唱えた

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。手向ける色は『黒』

 

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

「―――告げる」

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

 

そこでカウレスを除く全員の詠唱がとまる。

 

「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。」

 

カウレスは自身のサーヴァントに狂化の特性を付与する詠唱を唱える。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

詠唱が終わると同時に彼らの前に濃密な神秘を纏った4騎のサーヴァントが現れた

 

アーチャー―――広大な森のような清冽な気配を持った青年。

 

バーサーカー―――白いドレスを着た虚ろな瞳の少女。

 

ライダー―――美少女と見紛う、派手に着飾った中性的な美少年。

 

そしてセイバー―――白銀の甲冑を纏った騎士。(・・・・・・・・・・・・)

 

彼らは召喚されたのち、言い放つ。

 

「召喚の招きに従い参上した、我ら黒のサーヴァント。我らの運命は千界樹(ユグドミレニア)と共にあり。我らの剣はあなた方の剣である」

 

黒の陣営に新たに四騎のサーヴァントが召喚された。

 

「見よ、ランサー。彼らこそ君と共に戦う一騎当千の戦士達だ」

 

「ハッ!良いじゃねえか!漸く聖杯戦争・・・いや聖杯大戦らしくなってきた!ああ速く戦いてぇな!!」

 

「まあ待てランサー。我らの今の敵は赤の陣営。」

 

「あぁ、そうだったな。」

 

ランサーは一息ついて宣言する。

 

「今回のこの聖杯大戦、黒の陣営のランサーとして召喚されたクー・フーリン(・・・・・・・)だ!いずれお前達と戦う事になるだろうが、今は赤の陣営を倒す事に集中して欲しい!」

 

その宣言の後、黒のライダーは、

 

「かのクー・フーリンと共に戦えるなんて、嬉しいなぁ!!僕はアストルフォ!君は?」

 

彼はアーチャーに近づきながら問う。

 

アーチャー自身のマスター―――フィオレを見る。フィオレが頷いたのを見て、

 

「私はケイローン、よろしくお願いします」

 

「よろしく!ケイローン!で、君は?」

 

アーチャーに礼を言った後、彼はバーサーカーに近づく。

 

バーサーカーはカウレスをジッと見つめていた。ライダーの事など意に介さず。

 

故にライダーはカウレスに近づきバーサーカーの真名を聞いた。

 

「・・・フランケンシュタイン」

 

「フランちゃんだね!」

 

「ウゥ・・・」

 

バーサーカーは少し不機嫌そうに唸った。

 

「じゃあ君は」

 

最後にライダーはセイバーに聞いた。

 

「私は・・・」

 

ジークフリート(・・・・・・・)だ!」

 

セイバーのマスター―――ゴルドがセイバーの言葉を遮り真名を告げた

 

ゴルドはセイバーの前に立ちセイバーを見る。

 

するとセイバーは、

 

「ええ、私はジークフリートです」

 

と告げた。

 

その後マスター達は己の召喚したサーヴァントと共に自身の部屋へと戻った

 

カウレスの部屋

 

「悪い、いつか敵になるかも知れない奴に真名を明かしてしまって」

 

部屋に着いた直後、カウレスは己がサーヴァントに謝った。

 

するとバーサーカーは、

 

「べつに・・・いいよ」

 

と、喋った。

 

「お前、喋れるのか!?」

 

「うん・・・すごく・・・つかれる・・・でも・・・すこしなら・・・しゃべ・・・れるよ」

 

「そうだったのか・・・で、お前を呼ぶときはなんて呼べばいい?」

 

「バー・・・サー・・・カー・・・が・・・いい」

 

「そうか、じゃあ宜しくな、バーサーカー」

 

「よろ・・・しく」

 

「あぁ、じゃあ俺は疲れたから寝るわ」

 

「うん」

 

そうしてカウレスは眠りに着いた

 

ブカレスト 教会墓地

 

黒の陣営がサーヴァントを召喚したと同時に獅子劫界離もサーヴァントを呼び出した

 

「サーヴァント・セイバー、モードレッドだ。つーか、やっぱり(・・・・)あんたか!しかも前と同じ墓地だし!」

 

「やっぱり?どういう・・・」

 

「あぁ、別に。なんでもないさ獅子劫界離(・・・・・)

 

「俺の名前を・・・!?」

 

「あぁ、あんたの名前だけでなくあんたの願いも知ってるよ。なんせオレはここと良く似た世界で(・・・・・・・・・・)あんたのサーヴァントとして(・・・・・・・・・・・・・)召喚されたからな(・・・・・・・・)

 

「良く似た世界・・・平行世界ってことか」

 

「そんな所だ。しかしオレもビックリだな。ここで満足して散ったと思ったら第四特異点(ロンドン)に呼び出されて、第六特異点(キャメロット)に父上に召喚させて、終局特異点(じかんしんでん)にカチコミ仕掛け終わったと思ったらまた聖杯大戦(これ)かよ!」

 

「なんか小説数冊かけそうな大冒険だな」

 

「全くだよ」

 

そこでモードレッドは言葉を切って、

 

「改めて、サーヴァント・セイバー、アーサー王の嫡子にして唯一の後継者、モードレッドだ!今度こそあんたに聖杯をもたらすために戦おう!」

 

「宜しくなモードレッド」

 

彼らは墓地から出ながら

 

「ところで、明日教会に行くのか」

 

「あぁ、そうだが」

 

「じゃあシロウ・コトミネには気を付けろ、奴はルーラーのサーヴァントだ」

 

「何!?サーヴァントだと!?」

 

「あぁ、詳しく知らねぇが第三次の時に受肉して、そんまま生きているらしい。真名は天草四郎時貞」

 

「まて、確か奴がアサシンを召喚するとか聞いたが・・・」

 

「そのアサシン・・・セミラミスっつーカメムシババァだな」

 

「クソッ!サーヴァントがサーヴァント呼び出すとか反則もいいとこだろ!?」

 

「しかもそいつ、あんた以外の赤のマスターに毒もってあやつり人形にしてるはずだ」

 

「マジかよ・・・。てか思わず聞き流したが、人類最古の毒殺女帝をカメムシ呼ばわりとかどうなんだよ」

 

「いいんだよ」

 

「そうか・・・。でも多分俺以外にも毒盛られないマスターがいるな」

 

「どういう事だよ?」

 

「メアリー・ベールっつー魔術師がいるんだが、まだルーマニアにきてないはずだ」

 

「マジか?」

 

「実はな、まだバーサーカーが召喚させてない」

 

「マジかよ?でもバーサーカー呼ぶんだろ?スパなんとかっていう反逆系ド変態マッスルだろ」

 

「それスパルタクスだろ・・・反逆の英雄を変態扱いとかどういう事だよ?」

 

「でもマジやばいよアイツ・・・」

 

「マジかよ・・・まあ今回召喚させるのはそいつじゃない」

 

「誰だよ」

 

「実はな―――」

 

その真名を聞いてモードレッドは「マジかよ・・・」と言った。

 

 

ミレニア城塞 カウレスの部屋

 

カウレスが寝た後、フランは思考する。

 

やはり自分はこの聖杯大戦を知っている。そして自身の結末を。

 

だからこそこのマスターにあのような選択をさせまいと。

 

今度こそあのガングロ神父と作劇家に遅れをとらないと。

 

しかし、と彼女はある疑問に行き当たる。

 

あのランサーとセイバーだ。

 

確か自身が参加した聖杯大戦ではランサーはヴラド三世、セイバーはジークフリートだったはずだ。

 

しかし今回はランサーがクー・フーリンとなっている。

 

いやそこはいい。しかしセイバーは、ジークフリートと名乗ったあの剣士は何者なのだろう?

 

 

ブカレスト 警備会社屋上

 

ライダーはトゥリファスの方角を見ながらクロに話しかける。

 

「いいねぇ、この濃密な神秘の気配。聖杯戦争がいよいよ始まるってわかる。あぁ・・・楽しみだ!そう思わねぇか、クロよぉ」

 

「そんなに楽しみなのか?」

 

「ああ、楽しみだね!英雄達(やつら)の誉れある戦いに横槍入れて、滅茶苦茶に引っ掻き回して台無しに出来るんだぜ!最っっっ高に楽しみだよ!!」

 

「酷いやつだな」

 

クロは苦笑しながら言った。

 

「ああ、そうだよ。俺は極悪人だしそれは否定しない。必要なら人道に反する行いだって平気でやるよ。澄まし顔で人殺しも行える。要はどれだけ犠牲を出しても最終的に勝てばいいんだ。そこに誇りや誉れや良心なんて必要ない。そんな下らないものに囚われて勝ちを逃がすなんて、ただの馬鹿だ」

 

ライダーは真顔でそんな事を嘯く。

 

クロは思う。

 

この男についてきて正解だったと。

 

財力・名声・カリスマ。常識に囚われない柔軟な思考。そして、目的達成の為ならどんな悪事も行い犠牲を出すことを躊躇わない冷徹さ。

 

この男ならどんな事でも可能だろうと。

 

そんな事を思いながらクロは笑った。

 

 




あああああああああフランちゃんかっわいいいいいいいいい!!

次回

スパイはだれだ?


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三話 聖杯大戦 2日目

のあらすじ

モーさんがアポ本編の記憶持ってるとかマジやばくね


カウレスは夢を見ていた。それはヴィクター・フランケンシュタインの作り出した怪物の物語だ。

 

鋳造され、怪物と罵られ、怒りにかられ暴走し、伴侶の鋳造を求め、拒絶され、絶望し、自らを焼き払った。

 

その全てを見て、カウレスは彼女より博士に腹をたてた。

 

確かにバーサーカーのしたことは許される事ではない。しかし、仮にも彼はバーサーカーを作り出した張本人だ。ならば、彼は作った者として責任を果たすべきだった。なのに彼は全て放棄し、自身の周りの人間が殺されてなお逃げ続けた。もしも彼がバーサーカーの要求に答えていたら、バーサーカーは怪物等と呼ばれていなかったかもしれない。

 

しかし、そんな事を思っても生前の話だ。そんな思考に意味はないのかもしれない。

 

この夢は終わりか、とカウレスは思った。

 

しかし。

 

夢は終わらなかった。

 

場面は自身がバーサーカーを召喚した場所(・・・・・・・・・・・・・・・・)に移り変わる。

 

今度こそ、カウレスは理解が出来なかった。

 

(なんだよ、これ・・・)

 

彼女の目を通して自身が見えた。それだけでなくアーチャー、ライダーがいた。しかしセイバーとランサーは自分の知っている姿をしていなかった。セイバーは白銀の西洋甲冑を纏っていたはずだ。しかし夢のセイバーは胸元が大きく開いた鎧に銀色の髪をしていた。ランサーは王を思わせる気品と威圧的を持った男だった。

 

場面は更に移り変わる。

 

バーサーカーとカウレスは城塞の花畑で語り合っていた。

 

バーサーカーとセイバーで赤のライダーと戦っていた。

 

そしてセイバーは名も無きホムンクルスを助けるために自身の心臓を捧げた事。

 

赤の総攻撃の際、シロウ・コトミネと名乗る神父がバーサーカーの真名を呼んだこと。(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

敵のキャスターが博士を呼び出しバーサーカーを錯乱させた事。

 

その後赤のセイバーに特攻を仕掛けるも返り討ちにあった事。

 

そしてカウレス(マスター)の令呪のブーストを借りて自身の宝具のリミッターを外し、自爆攻撃を仕掛けた事。

 

その際、自身の一欠片を誰かが受け取ってくれるよう、という願いも込めていたことを。

 

その全てを見たカウレスは、

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

と叫び目を覚ました。

 

午前6時

 

(なんだよ、あれは・・・)

 

カウレスは混乱した。自分は聖杯戦争に参加した覚えはない。この聖杯大戦が初めてのはずだ。なのになんだ、あの記憶は。

 

夢に出てきたのは紛れもなくカウレス自身でありユグドミレニア一族そのものでありミレニア城塞でありトゥリファスだった。

 

確かにセイバー、ランサーは違っていた。でも他のサーヴァントは一緒だった。

 

何より異常だったのは、シロウ・コトミネという神父だ。あの男は一体なんだ。バーサーカーの攻撃をいなしただけでなく、バーサーカーと拮抗する?馬鹿な、あり得ない。

バーサーカーはステータスが低いとはいえサーヴァントだ。しかもその出自からして人間を越えているのだ。なのに・・・

 

(いや、待て、それよりはまずこっちのセイバーだ)

 

カウレスは夢で出てきたセイバーを思い出す。赤のライダーと戦っていた際、宝具を使おうとして止めらていた。

 

「確か、バルムン・・・て言っていたな。じゃあアイツがジークフリート?だったら今ここにいるセイバーは一体誰だ?つーかまさかと思うけど・・・バーサーカー」

 

彼はバーサーカー呼ぶ。すると虚空からバーサーカーが現れる。

 

カウレスは率直に聞いた。

 

「お前は別の世界で聖杯大戦に参加したことがあるのか?」

 

「うん・・・」

 

「そうか・・・。」

 

カウレスは迷う。これはダーニックに報告すべきか否か。

 

普通は報告すべきだ。だが、夢の情報が全て正しいとは、限らない。現に黒のランサー、セイバーは違っているのだ。赤のライダーも違っているとも限らない。

 

いや、そもそも。ダーニックは猜疑心が強い。自身のような三流魔術師の言葉など信じないだろう。

 

カウレスは自身の部屋の机の引き出しの奥からスマートフォンを取り出した後それを操作しメールを開く。そこにかかれた内容を把握し、返信した後バーサーカーに問いかける。

 

「なあ、お前現代の服とか興味ないか?」

 

 

午前8時 ゴルドの部屋

 

「こい、セイバー」

 

ゴルドがそう言うと、セイバーが出現する。

 

「お呼びですか?マスター」

 

「お前の真名は、ランスロット(・・・・・・)で相違ないな?」

 

「はい、私はランスロットです」

 

ランスロット

 

円卓最強の技量をもつ騎士であり、アーサー王の妻ギネヴィアと恋仲となり、ブリテン崩壊の一端となった裏切りの騎士。

 

「貴様の願いはなんだ?」

 

「私の願いは王に私という罪人を裁いて欲しい。ただそれだけです」

 

「聖杯に願えばアーサー王と婚約する前のギネヴィアと恋仲になる・・・という願いも叶えられるがそれではないのか?貴様はアーサー王の判断が間違っていたと思ったからこそ反逆したのではないのか」

 

「それは・・・駄目です。どのような形であれ私はあの王を裏切った不義の騎士です。ならば王によって断罪されるのが当然の定めです」

 

「そうか」

 

ゴルドはそう言うと、別の話を切り出した。

 

「貴様をジークフリートと名乗らせた訳、理解出来るか?」

 

「何か間違った真名を語る理由として上げるとすれば、赤の陣営を倒した後の戦いを有利に進めるためでしょうか?」

 

「それもある。だが一番はそこではない」

 

「と言いますと?」

 

「こちらのマスターの中に魔術協会のスパイがいるかもしれん、ということだ。」

 

「スパイ・・・ですか」

 

「ああ、こちらの城塞防衛担当主任が敵と内通していた。今は捕らえて地下に幽閉しておる。しかし、まだあちらの犬がいると仮定すると、マスターかマスターになり得そうな魔術師がスパイとなっている可能性がある」

 

「成る程、もし私の真名がジークフリートであると、赤の陣営に伝わっていれば・・・」

 

「ああ、こちらのマスターの中に内通者がいるということになる」

 

「して、スパイ候補は?」

 

「儂、ロシェ、ダーニックは除けばセレニケかフィオレだな。セレニケは黒魔術師だ。もしかしたら寝返るかもしれん。フィオレは時計塔に在籍していた」

 

「アサシンのマスターは?」

 

「あいつはよくわからん。名前も朧気でな」

 

「カウレス殿はどうなのですか?」

 

「あの出来損ないには何も出来んさ。姉のバックアップのために呼ばれただけにすぎん。令呪を宿したのもただの偶然だ」

 

ゴルドはそう言って話を終えた

 

 

午前9時 シギショアラ 教会

 

教会に獅子劫界離とセイバーは訪れていた。

 

教会に入り扉を閉めたあとセイバーが実体化した。

 

「初めまして。私が今回聖杯大戦の監督役を努める事になりました、シロウ・コトミネです」

 

「おう。宜しくなシロウ神父」

 

暫く話したあと獅子劫とセイバーは教会を後にする。

 

その前に獅子劫は、

 

「こっちのバーサーカーのマスターはまだか?」

 

「ええ。なんでも今日の夜に召喚するとか」

 

「そうかい。まあ気を付けろよ」

 

「・・・?」

 

そうして獅子劫は出ていった。

 

同じ頃、カウレスはバーサーカーの宝具の性能を試し後、姉とダーニックの許可をとり、ホムンクルスを一体護衛につける事を条件にシギショアラにバーサーカーの服を買いに出掛けた。もちろん変装して、自身が保有するバイクに乗って行った。

 

 

正午 シギショアラ 服屋

 

そこにはとてつもなくアンバランスな客がいた。サングラスに顔に傷がある強面の大男が、女性用の服を買っているのだ。霊体化している彼のサーヴァントが爆笑しているのは言うまでもなかった。

 

同じ頃カウレスはその服屋の前の喫茶店でコーヒーを飲んでいた。アルツィアとというホムンクルスにバーサーカーの服を買って来てくれ、と頼んだ、バーサーカーは霊体化してアルツィアに付いて行った。そしてある客が店の外に出たのを確認してから彼はトイレに行き鍵を閉めた。

 

獅子劫界離が店を出たあと携帯に電話がかかって来た。それは獅子劫自身が保有する携帯でなはなくロッコから渡された携帯だった。

 

「よう、ようやく話ができるな。スパイ君」

 

『変な言い方するなよ』

 

「ああ、じゃあなんて呼べばいい?」

 

『俺の事をユグドミレニアの誰かに告げ口するかもしれない』

 

「しねえよ、俺は以外と友達が少ないし口が硬いんだ」

 

『そうか?あんたなら100人友達作る位余裕だと思うし、それに雇われてここにいるような奴の口の固さなんて信用できないよ』

 

「こんな顔のおっさんと話す物好きなんて、ロッコのジジイかお前位だよ」

 

『そうかよ、だったらあんたから名乗ってくれ』

 

「獅子劫界離、死霊魔術師(ネクロマンサー)だ」

 

カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニア(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)二流魔術師だ』

 

「おいおい、自虐的だな。あのロード・エルメロイから魔術を習ったんだろ?」

 

『事実だよ。魔術回路も魔力量も二流がいいとこなんだよ。あんたと違って』

 

「そうかい」

 

『本題に入るぞ、そっちの陣営で俺の事知っているのはあんただけか?』

 

「あぁそのはずだ」

 

『あんたは二世とロッコ爺さんが俺と結んだ条件を知っているか?』

 

「いや、聞いてないが」

 

『やっぱりあの爺さん、ユグドミレニアごと俺を消すつもりか』

 

「なんだ?あの爺さんと魔術協会(こっち)に協力すれば助命してやるとか吹き込まれたか?」

 

『ああ。姉さんと一緒に助ける約束を二世とロッコ爺さんとしたよ。ユグドミレニアに何か動きがあれば伝えろ、と言われたけど時計塔に在籍しながらは無理だし、精鋭全滅の件だってホントに襲撃直前に召喚してたからな。つーかそっちにメール送ったはずなんだが・・・』

 

「ロッコのジジイが携帯使えると思ってたのか」

 

『携帯で連絡を取り合うようにするんじゃなかったよ、チクショウ』

 

「まあ、あれだ。そう言う約束してるならできるだけ果たせるようにするよ」

 

『そうか・・・ありがとう。ならこっちの召喚サーヴァントとマスターを言うよ。ランサーはクー・フーリン。ダーニックが召喚した。

ライダーはアストルフォ。召喚したのはセレニケ・アイスコル・ユグドミレニア。黒魔術師

キャスターはアヴィケブロン。召喚したのはロシェ・フレイン・ユグドミレニア。ゴーレム使い。

姉さんはケイローン。アーチャーだ。

でバーサーカーはフランケンシュタイン。召喚したのは俺。

あと日本の新宿で相良っていう魔術師がアサシンを召喚してるはずだ。真名はジャック・ザ・リッパー。』

 

「成る程、でセイバーは?」

 

『ジークフリートと名乗ったけど違うな。少なくともバーサーカーの夢に出てきた(・・・・・・・・・・・・・)あいつじゃない(・・・・・・・)。だから真名はわからん。召喚したのはゴルド・ムジーク・ユグドミレニア。錬金術師だ』

 

「バーサーカーの夢・・・どういう事だ?」

 

『どうも別の世界の聖杯大戦に参加したらしい。でもその記憶の中のセイバーと今召喚されているセイバーは別人だ』

 

「マジか?俺のセイバーも別の世界で聖杯大戦に参加したとか言ってたな」

 

『え?そっちも?じゃあ俺の情報要らなくないか?』

 

「いや、あいつの話だとランサーはヴラド三世だったはずがクー・フーリンに変わってるし、大丈夫だろ」

 

『そういやそっちのバーサーカーってどうなってる?そろそろ襲撃してくると思うんだが?』

 

「安心しろ、まだ召喚すらされてないよ」

 

『それ大丈夫か?外様の飛び入り参加のマスターが召喚するかもしれないだろ』

 

「大丈夫だろ、そんな事になって困るのは間違いなくメアリーだしな」

 

『メアリー・・・?あ、そういえばシロウ・コトミネって神父、あいつ何者だ?』

 

「あいつは、ルーラーのサーヴァントだよ。確か天草四郎って言ったかな?」

 

『・・・・・・はぁ?』

 

「アサシンを召喚してる」

 

『はぁ!?サーヴァントがサーヴァント召喚とかふざけんな!チートもいいとこだろうが!』

 

「俺に怒鳴んなよ!」

 

『あ・・・すまない。あんまりにもあんまりな情報だったから』

 

「安心しろ、初めて聞いたとき俺もそうなった」

 

『そっか。で、あんたのサーヴァントの真名は?』

 

「モードレッドだ」

 

『そうか。ありがとう。お互い死なないよう気を付けような』

 

「そうだな」

 

そう言って彼らは互いに通話を終了した。

 

(つー訳で、向こうのバーサーカーとアーチャーのマスターは出来るだけ生かす方向で頼むわ)

 

獅子劫は自身のサーヴァントに念話で伝える。

 

(了解。てかやっぱりフランも召喚されてたか)

 

(なんだ知ってんのか?)

 

(あぁ、第四特異点(ロンドン)の時にちょっとな。それに・・・)

 

(それに?)

 

(アイツの境遇が他人事とは思えなくてな)

 

(・・・・・・)

 

理想の人間で在ること目的に造られた怪物(フランケンシュタイン)

 

モルガンの盲執を達成するためアーサー王の遺伝子を元にに造られた反逆の騎士(モードレッド)

 

共に人造生命体で在ることを除けば共通点などないかもしれない。

 

しかし彼女達には共通点があった。それは創造主の期待に答えられなかった事。そして誰からも愛さなかった事。創造主にさえ拒絶された事。そしてその創造主を殺害した事。

 

(成る程ねぇ)

 

(なんだよマスター)

 

(いや、しかしフランケンシュタインつったら筋肉もりもりのマッチョマンだろ?)

 

(いや?アイツは女だぞ。花嫁衣装を着た)

 

(・・・もう、誰が女でも驚かねぇぞ)

 

獅子劫は遠い目をした。

 

午後4時頃

 

カウレス一行はミレニア城塞に戻っていた。

 

カウレスはバーサーカーの部屋の前に立っていた。なんでもバーサーカーはマスターに現代服を来た姿を見て欲しいらしい。

 

部屋からアルツィアが出てきた。

 

「入って良いそうです」

 

「お、おう・・・」

 

カウレスはバーサーカーの部屋に入る。

 

バーサーカーは、

 

「ウゥ」

 

と呟く。

 

バーサーカーは白いキャミソールの上にベージュ色のブラウスを着ていて、下は黒のロングスカートを履いていた。

 

「う・・・わ・・・」

 

カウレスはあまりの可憐さにたじろいた。

 

「カウレス様、いかがなさいました?」

 

アルツィアが問う。

 

「いや。結構似合ってると思って・・・」

 

「あり・・・がと・・・う。カウ・・・レス」

 

「お、おう。どういたしまして」

 

「よかったですねバーサーカー様」

 

「ところで気になったんだけと、バーサーカー。もしかしてその角はずせるの?」

 

「・・・?」

 

「いや、どうやって着たのかなって?」

 

「カウレス様、デリカシーがないと思います」

 

「ホムンクルスにデリカシーを問われるとか思ってなかった」

 

バーサーカーは角を霊体にした。

 

「あぁ。そうやったんだ」

 

するとバーサーカーはおもむろに頭を両手で掴み持ち上げた。

 

すると首と胴体が離れた(・・・・・・・・)

 

その光景を見たカウレスとアルツィアは、

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?と、とれたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

と絶叫したという。カウレスは棒立ちになり、アルツィアに至っては気絶した。

 

 

午後7時 シギショアラ

 

そこは地下室だった。そこにはメアリー・ベールという魔術師がいた。

 

銀色の肩まであるショートカットにスレンダーな体型の女性。無駄な贅肉はなく、スポーツ選手かアスリートのように引き締まった、活発という印象を与える女性だ。

 

彼女の得意とする魔術は身体強化の魔術と治癒と薬草学だった。もちろん他の魔術もできるがどれも二流がいいところだ。彼女は武術の達人でその腕前を強化の魔術で更に補強して戦う事に特化していた。彼女の格闘センスは聖堂教会の代行者にも匹敵していた。

 

そんな彼女は

 

「ごめんなさいぃぃぃぃぃ!!!!」

 

と、それはもう見事な土下座を自身の召喚したサーヴァントに行い、謝罪していた。

 

「ほう、何を謝っておるのだ?」

 

言葉こそ疑問形だが、明らかに怒りがにじみ出ていた。

 

「貴方のような大英雄をそのような姿で呼んでしまってまってずみまぜェェェェん」

 

泣いて謝り初めた。

 

「そうだな。で?そうなった原因は?」

 

「わだじのぜいでずぅぅぅぅ!わだじがぁ!ランサーの枠が空いでいるとぎいでぇ!他の参加者にも確認ぜずぅ!召喚じだがらでずぅぅぅぅ!」

 

「そうだな。貴様の罪はあまりにも重い」

 

「ひぃぃぃいいいい!!命だげば!い゛の゛ぢだげばぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

「・・・はぁ、もう良い。こんな在り方で召喚されたのは怒り以外感じぬが、マスターとはいえ女性にそのような醜態(・・・・・・・)を晒されてはな」

 

バーサーカーは諦めと呆れを含めた顔をした。

 

「え゛?ゆるじでもらえ゛る゛のでずが?」

 

「いや?許さんぞ。ただ聖杯をとるまでは保留にしてもかまわん、ということだ」

 

「やった!生き残った!」

 

彼女は喜びの声を挙げた。

 

するとバーサーカーは、

 

「これから教会に行くのなら、服を変えるのだ」

 

「へ?」

 

彼女が自身の着ているものをみる。

 

上半身の服は埃だらけで、ズボンに至っては股関を中心に濡れていた。

 

「あ・・・あぁ・・・」

 

「全く呆れて物も言えん」

 

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

メアリー・ベール25歳、人生初めての失禁だった。

 

それから風呂に入り、服を変えてから教会に行った。

 

午後9時頃 教会

 

「夜分遅くに申し訳ないですね、シロウ・コトミネ神父」

 

「いえいえ、構いませんよ」

 

シロウはそう言って微笑む。

 

すると彼の傍らにサーヴァントが現れる。

 

「サーヴァント、アサシン。セミラミスだ」

 

「へぇ・・・シロウ神父はアサシンを呼んだんですか」

 

「ええ、私は一応赤の陣営に属してますが中立の立場としてこの聖杯大戦を監視します。ですので、キャスターかアサシンを引ければよかった訳です」

 

「まあ、監視にもってこいのクラスですからね」

 

「はい、でそちらのサーヴァントは・・・?」

 

「あー、実体化させなきゃダメですか?」

 

「ええ、できれば」

 

公王(・・)よ、姿をお見せください」

 

彼女はバーサーカーを実体化させた。

 

するとその男が現れた。

 

黒い貴族服に王のような威圧感を纏った長髪の男。

 

その姿を表した瞬間、シロウは黒鍵を構えた。なぜなら彼女のサーヴァントから死徒(・・)の気配を感じたからだ。

 

「この気配・・・まさか・・・!」

 

「そうだ神父よ。その警戒は正しい。しかし余とてこのような在り方で呼ばれたかった訳ではない。できれば武器を納めて欲しい」

 

バーサーカーはシロウに頼む。

 

「そしてマスターよ、余は貴様のサーヴァントだ。バーサーカーと呼ぶがよい。今の余は王としてではなく()として、余の領土に我が物顔で根を張っている黒の陣営を殺戮するのだからな」

 

「分かりました、バーサーカー」

 

「して、神父よ。もう感付いているのだろう?余の真名を」

 

「ええ、その王のような気風、ルーマニアを自身の領土という表現、凄まじいステータス、そしてその死徒の気配(・・・・・)・・・ここまでヒントを出されて、気付かないなんてあり得ません」

 

「ほう、では余の真名はなんだ」

 

バーサーカーは聞いた

 

ヴラド三世(・・・・・)。このルーマニアの領主にして、吸血鬼ドラキュラ公のモデルとなった悪名高き串刺し公」

 

「そうとも、余はヴラド・ツェペシュだ。此度の聖杯大戦においてバーサーカー・・・つまり吸血鬼ドラキュラ公として召喚された。遺憾極まりないがな」

 

「成る程。では、聖杯に掛ける願いは?」

 

シロウは殺気を放ちながら問う。

 

「ほう、願い次第では殺害すると、そう言うことか。まあ当然の警戒だな。贋作とはいえ聖杯と名の付くものを吸血鬼が、穢れた化け物が狙っているのだ。聖職者にとってはこれ以上にない侮辱だろう」

 

だが、と彼は言葉を切る。

 

「安心せよ神父よ。余の願いなど簡単な物だ。この穢れた忌み名。吸血鬼ドラキュラの汚名を雪ぐ事だ」

 

シロウはバーサーカーを見る。その目には並々ならぬ執念を感じた。

 

「分かりました。貴女方もお疲れでしょう。ではお茶でも飲んでリラックスされては?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

これまで黙っていたメアリーは断った。

 

「何故です?」

 

「セミラミス・・・人類最古の暗殺者を従えているような人の入れたお茶なんて何が入っているか判ったものじゃないですし。だからあなた達とは協力するけど、私達は自由にやらせてもらいます」

 

「そうですか、残念です」

 

そうやって彼女達は教会を後にする。

 

バーサーカーは念話で彼女に話しかける

 

(マスターよ。貴様は抜けていることが多いが、勘だけは鋭いらしいな)

 

(ありがとうございます。多分のあの場にもう少し留まってたら、もっとまずかったかもしれません)

 

(だろうな。何せ奴はセミラミス。人類最古の暗殺者だ。毒に関してはそれこそ現代の魔術師など相手にもならんだろう。そして毒とは飲食物に混ぜるだけではない。「リラックスできる香を焚く」などと嘯き毒素を孕んだ香を焚くやもしれんしな)

 

(まあ、一応は協力関係だから、連絡を取り合えるようにしますけど)

 

(そういえば他のマスターと連絡できぬのか?)

 

(一人を除いて全滅です)

 

(成る程、では他のマスターは・・・)

 

(ええ、おそらくやられてますね(・・・・・・・))

 

(そうか・・・。しかし一流の魔術師が揃いも揃って情けない、とは言い切れんなこの場合は)

 

(ええ。何せ相手は神代の暗殺者ですから、相手が悪すぎます)

 

(では、こちらの方針は?)

 

(とりあえず、獅子劫さんと合流します。それで一発殴ります)

 

(何故殴る必要がある?)

 

(多分、獅子劫さん知ってたはずなんですよね。空いてる枠がバーサーカーしかないって。だから腹いせにぶん殴ります)

 

(貴様は子供か・・・)

 

(例え子供と罵られようと!獅子劫さんが謝るまで!私は殴るのを止めません!)

 

(・・・もしそんな事になるなら余が貴様の息の根を止めるぞ、マスター)

 

(はい!殴りません!)

 

(よし・・・では先ずは獅子劫とやらの拠点にいくか)

 

彼らが方針を決めているとき、獅子劫とセイバーは既にトゥリファスに入り、ユグドミレニアの襲撃を受けていた。

 

午後11時頃 シギショアラ

 

「ふぅ・・・ようやく落ち着いて話せるな」

 

とある一軒家にテム・・・いやライダーは以前バーに集めたメンバーを召集していた。

 

「そうですね、ライダー。貴方はここ最近ずっと忙しかったですから」

 

アーチャー―――赤毛の少女は話す

 

「そうそう、ホントに大変だったよ。会社の経営権を副社長に譲るのに幹部役員共の説得とか身辺整理とか色々、二週間頑張ってたからな。ようやく昨日大手を振って社長の椅子を退く事ができた。俺の裏のコネクションも副社長に譲ることも出来たしな」

 

そう、ライダーは会社の社長を副社長に譲ると二週間ほど前に役員会で言ったのだ。当然幹部役員達は反発した。その役員達の説得を他の作業と平行しながらしていたら二週間もかかってしまったのだ。

 

クロはライダーに、

 

「彼に会社を任せてよかったのかい?」

 

「いいんだよ。あいつは頭もキレるし機転も回るし、俺の裏の事情も知ってる。だからあいつしかいない」

 

「そうか、ならいいんだ」

 

するとランサーが口を挟む

 

「で、いつ襲撃するんだ。連中を」

 

「まあ、奴等が全面戦争をし始めたらそこに乱入して派手に暴れ回ってもらうつもりだよ、多分あと2日位したら、全面戦争になると思うんだよなぁ」

 

「そうか、ならそれまで待とう」

 

するとセイバーが口を開く

 

「そういえばみんなには叶えたい願いはあるのかい?」

 

するとライダー、ランサーは同時に口を開き

 

別にないが?(・・・・・・)

 

と言った。

 

アーチャーは、

 

「私はあります、絶対に叶えたい願いが」

 

キャスターは、

 

『私も特にない。今の世界には特別不満があるわけではない』

 

と、パソコンから音声が響く。

 

すると虚空から黒服に髑髏の面を着けた男―――アサシンが現れた。

 

ライダーが口を開き、

 

「おっ、お帰りー。なんか収穫あった?」

 

「先ほど黒のセイバーがマスターと一緒に城を出た。なんでもルーラーを守りに行くらしい」

 

「ふーん、ルーラーねぇ。ま、どうせくそ真面目で面白味にかけた狂信者でも出てくんだろ。くたばったほうが面白そうだなぁ。ところで、アサシンは叶えたい願いってある?」

 

「特にない。前の聖杯戦争に参加したのも俺を召喚したマスターが俺を必要としたからだ。主の名を守り敵を屠る。それが俺の使命だ」

 

「そうか、でセイバーは?」

 

「俺も特にないよ。受肉だって気まぐれだし、強いて言うなら、外国の神代の英霊連中に日本英霊がどれ程強いか見せ付けてやりたい」

 

「そっかー。明確に願いがあるのはアーチャーだけか。じゃ方針は聖杯確保してアーチャーの願いを叶えるってところかな?」

 

「え?いいのですか?」

 

「だって、お前以外明確に大聖杯使って願い願い叶えたいやついねぇし。それに、大聖杯クラスじゃないと叶えられんだろ、お前の願いは」

 

「そう・・・ですか」

 

「礼なんて言うな。俺らは同盟者だ。同盟相手のことを尊重すんのは当たり前だ。でも少しぐらいは俺の自由にやらせて貰うぜ」

 

「分かりました」

 

そんなそんな会話のあと彼らは黒のセイバーと赤のランサーの戦いを遠見の魔術で観戦した

 

午後11半頃 ミレニア城塞

 

その頃ライダーは名もなきホムンクルスを助けていた。

 




ヴラド三世(狂)のステータス
筋力:A 耐久:A 敏捷:C 魔力:B 幸運:E 宝具:A

このステータスが知名度補正でこうじゃ
筋力:A+ 耐久:A+ 敏捷:B 魔力:B 幸運:C 宝具:A


これが霧やら蝙蝠やらに変身して襲いかかる恐怖
さらに戦闘続行までつく、なんだチートか
幸運が上がっているのはマスターの起源よるところが多いです
あと日光に関してですが霊体化していれば問題ない、という事で一つ。さすがに霊体化しても日光はダメってなると動かしづらいので。てか動けないので。

あと灰の陣営の中で明確に願いがあるのはアーチャー以外いません。他の奴は大体現代が面白そうだからとかそんな理由です。
アサシンは前のマスターがライダーのバックアップを受けて聖杯戦争に参加していて、マスターの命令で聖杯を勝ち取り受肉したという設定です


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四話 聖杯大戦 3日目 黒の忙しい1日

前回のあらすじ

【悲報】ヴラド三世ルーマニアなのにバーサーカーとして喚ばれる


午前1時頃 トゥリファス付近 国道

 

そこには二騎のサーヴァントがいた。

 

「ルーラーとお見受けする」

 

「赤のランサー・・・インド神話の大英雄カルナですか・・・」

 

「ほう・・・我が真名を看破するか。それがルーラーの特性か」

 

ルーラー

 

それは聖杯戦争を管理・監督するサーヴァントである。聖杯戦争に参加したマスター・サーヴァントの願いによって世界が滅びると理論的に成立すると判断されたとき聖杯によって喚ばれる(・・・・・・・・・・)サーヴァントである。

 

ルーラーには真名看破と言われるサーヴァントの真名を見破る能力とサーヴァント一騎に対し二画の令呪が与えられる。

 

それは十分過ぎる特権でありよってルーラーに該当するサーヴァントには基本的に中立の立場を守れる者が選ばれる。

 

しかし、今回の聖杯大戦は何かがおかしかった。ルーラーはレティシアと喚ばれる少女に憑依する形で現界していた。これは本来であればあり得ない異常(エラー)であり、その瞬間に彼女はこの聖杯大戦が何が狂っていると感じた。

 

だから聖杯大戦が行われるであろうトゥリファスに向かう道中で、中立であるはずの自分を抹殺しようとする赤のランサーと相対していた。

 

「では、覚悟してもらおう」

 

カルナはルーラーに突貫する。ルーラーはそれをなんとか回避し攻勢に転じようとして、

 

「やれ!セイバー!」

 

ランサーは、横合いから放たれた不可視の存在からの攻撃をいなした。

 

「大丈夫でしたか?ルーラーよ」

 

ゴルドはルーラーに話しかける。

 

「貴方は黒のセイバーのマスターですか?」

 

「ええ!我が名はゴルド・ムジーク・ユグドミレニアと申します。此度の聖杯大戦においてセイバーを召喚いたしました」

 

ゴルドはカルナのほうを見て、

 

「赤のランサーよ!ルーラーに対し攻撃をしかけるとは究極のルール違反だろう!大人しく我がセイバーとルーラーの沙汰を受けるがいい!」

 

と叫ぶ

 

するとルーラーは、

 

「赤のランサー、黒のセイバー。此処で戦うのならどうぞ。私は手を出す事はありませんので」

 

「な・・・!?」

 

「赤のランサーが私の命を狙うのと、貴方方が戦うのは無関係なことなので。私にはルーラーとしての義務を果たす責務があるので」

 

その意見にゴルドは狼狽する。

 

「しかしルーラーよ!赤のランサーは貴方の命を狙ったのですよ!?」

 

「それはそれ、これはこれですので」

 

「そんな・・・!?」

 

そこでランサーは口を挟む。

 

「成る程、二人がかりで俺を押さえようという魂胆か。あさま・・・」

 

そこまで言った瞬間、セイバーはランサーに切りかかった

 

ランサーは槍で受け止め

 

「・・・随分と急いでいるな」

 

「申し訳ない、私と相対しながら我がマスターとルーラーと話していましたので、倒す好機と思いまして」

 

「姿を見せないだけでなく不意討ちまでしてくるとは、随分と無礼なやつだな」

 

「ご冗談を。これは戦いです。隙を見せれば殺られる。何よりマスターを侮辱しようとした貴方の言動は看過出来ませんでした」

 

「そうか、それは済まなかったな。しかし何故姿を見せない?」

 

「ルーラー対策・・・とでも言いましょうか。先ほどのように真名を呟かれてはたまりませんので」

 

「そうか、ありがとうセイバー。疑問は晴れた。これで心おきなく戦える」

 

次の瞬間カルナは魔力を放出した。ランスロットは一端カルナから距離をとった後ランサーに突貫した。

 

二騎のサーヴァントが剣を、槍を打ち合う。

 

カルナにはランスロットの姿を見ることはできないが彼の体の身体と剣の大きさをおおよそ把握していた。対するランスロットはその尋常ならざる技巧で神速とも思える槍の連撃を回避し剣でいなしていた。

 

(まだ戦いが始まって十分と経っていないのに身体と剣の大きさをおおよそ把握するとは・・・!これが神代の英雄か・・・!その様な存在と緒戦を飾ることが出来るとは・・・なんたる行幸・・・!!)

 

ランスロットは驚愕と歓喜混ぜたような表情をする

 

対するカルナも、

 

(この尋常ならざる技巧・・・我が槍が未だとらえられないとは・・・世界とは広いものだ・・・!これ程の芸達者と武芸を競うことが出来ようとは・・・!!)

 

カルナにも珍しく歓喜の表情が出ていた

 

午前5時頃

 

もう何十分、いや何時間経過しただろう。彼らはまだ戦っていた。

 

カルナは完全にランスロットの身体の大きさを完全に把握していた。ゆえに致命となる攻撃を何十、何百と繰り返していた。しかしそれでもランスロットはその連撃を回避し、いなしていた。

 

剣と槍の打ち合い。尋常ならざる技巧の応酬。

 

彼らは未だ宝具を打ち合ってさえない。にもかかわらず道路は壊れ、抉れ、蒸発した所もあった。

 

ようやく朝日が昇るか昇らないかの時間になり彼らは打ち合うのをやめた。

 

「このまま打ち合うのもいいが、そちらのマスターはうんざりしているようだな」

 

「そのようですね。願わくばもう一度貴方と戦いたい」

 

「そうだな、名の知らぬ黒のセイバーよ、さらばだ」

 

そう言ってカルナは姿を消した。

 

「ええ。赤のランサー、カルナ」

 

「黒のセイバー、貴方方の戦い見事でした」

 

ルーラーは啓示によってセイバーがいるであろう位置の近くに行く。ランスロットは不可視化を少し緩めボヤける程度にした。ルーラーには彼のステータスの一部は読めても真名はわからない

 

「ありがとうルーラーよ。我がマスターを守ってくださり」

 

ランスロットとルーラーの話にゴルドは割って入り

 

「ルーラーよ。我がミレニア城塞に逗留されては?そこならばトゥリファス全体を監視できますが?」

 

「私の知覚力はトゥリファス全域をカバーできます。それに貴方方の拠点に身を置いては公正さを保てません」

 

「そう・・・ですか・・・」

 

ゴルドは悔しそうにいった

 

「ではお茶くらいはどうでしょう?それくらいなら構わないのでは?」

 

ランスロットが訪ねる。

 

「いいえ、ダメです」

 

ルーラーは頑なに断る

 

ゴルドとランスロットはため息をつきその場を後にする。

 

「これが緒戦ですか」

 

ルーラーは彼等の戦った爪痕を見る。まるで何かの災害に巻き込まれたかのような惨状だった。

 

ゴルドは車でミレニア城塞に帰る道すがらランスロットに訪ねる。

 

「あのランサーには勝てそうか?」

 

「正直な所、わかりません。あのランサー・・・カルナは異常なほど頑丈だった。加えてあの槍撃・・・そして奴がカルナであるなら、極めて強力かつ絶大な威力を誇る宝具を所持している筈ですから。」

 

「・・・」

 

「ですが恐らく私の宝具を至近距離から直撃させれば、勝率は上がる筈です」

 

「そうか」

 

「しかし彼女は大丈夫でしょうか・・・」

 

「ルーラーなら大丈夫だろう。流石に昼間から襲うほど赤の陣営もバカではない」

 

「だといいのですが・・・」

 

ゴルドはランスロットと車内でそんな会話をしたあと城に付くまで眠る事にした。その間ランスロットは襲撃に備えいつでも動けるようにしていた。

 

午前8時 ミレニア城塞

 

「たく、あいつどこにいった?」

 

カウレスはフランを探していた。朝食を済ませた後、フランがどこかに行ってしまった。それで城の中を探していた。

 

(もしかして、彼処か・・・?)

 

彼は彼女の夢で自身と彼女の語り合った場所にいった。

 

「やっぱりここか」

 

そこに彼女はいた。花畑で花を摘んでいる姿は。花嫁衣装とマッチしていた。

 

カウレスは思わず見とれてしまった。

 

するとフランはこちらを見る。

 

「あっ・・・よ、ようバーサーカー」

 

「ウゥ?」

 

「いやお前と話がしたくてさ。ほら、お前って伝承で伝わっているのと随分違うから」

 

カウレスはフランに自身の知っているフランケンシュタインの物語を聞かせたあと、

 

「お前の願いは、同じ存在の伴侶を得るって言うこといいのか」

 

「ぅん」

 

「城のホムンクルスじゃ駄目か?似たような物じゃ・・・」

 

そこまで言ったら、フランは摘んでいた花束をカウレスの顔面にぶつけて来た。

 

「なるほど、ダメってことか」

 

「ウゥ!」

 

「ごめん」

 

するとフランはカウレスの顔をじっと見る。

 

「えっ、俺の願いを言えって事か?」

 

「アァ!」

 

「うーん、まだ決めてないんだよ」

 

「ウゥ?」

 

「いや、願いがないわけじゃないんだ、根源の渦に到達したい気持ちはある。けどもしかしたらこの戦いで姉さんが死んでたら、生き返らせようとするかも知れないだろ。百年先の根源より俺にとっては目の前の姉さんだ」

 

そう言うとフランは、

 

「うん」

 

と頷く。

 

「そっか、お前の事が少し分かった気がするよ。じゃあ俺は部屋に戻るから」

 

「ウゥ」

 

と、フランはカウレスの服の裾を引っ張る。

 

「ん?どうした?」

 

「ウゥ!」

 

フランはカウレスに一輪の花を渡してきた。

 

「くれるの?」

 

「うん」

 

「ありがとう」

 

カウレスはフランに礼をいい部屋に戻った。

 

午前10時頃 ミレニア城塞

 

「あ、起きた!」

 

「おはようございます」

 

「・・・?」

 

昨夜アストルフォに助けてられたホムンクルスはケイローンの部屋で寝かされていた。

 

「大丈夫?」

 

「貴方達は・・・?」

 

「僕はアストルフォ!こっちの彼はケイローンだよ!」

 

「ライダー・・・真名で呼ばないでください」

 

ケイローンは呆れる。

 

「あぁ!ごめんごめん!今の無し!忘れて!」

 

「俺は・・・」

 

「ああ、君昨日城の中では倒れてたんだよ。とてもしんどそうにしてた。ケイ・・・アーチャーが言うには魔術回路の暴走と歩いたことによる過労だってさ」

 

「ついでに言っておきましょう。君の命は保って三年です。もともと魔力供給様の電池であることを目的として造られています。その為寿命を削ったのでしょう。これが赤子なら同情しますが、君はホムンクルスだ。ある意味生まれながら完璧な存在です。ならば君は考えるべきだ。どうやって生きていくのかを」

 

ケイローンの意見は厳しいと思えるが正論でもあった。

 

「僕は命があるだけ儲けものだと思うけど」

 

「それでは駄目です。ですが君にはライダーがついている、彼に歩き方等を教えてもらいなさい」

 

するとアーチャーにマスターからの念話があった。

 

(アーチャー。今から私の部屋に来れますか?)

 

(ええ大丈夫です)

 

「それからライダー、暫く部屋を開けますが、誰も中に入れないように」

 

「はーい」

 

それからアーチャーは霊体化して部屋から出た。

 

フィオレの部屋

 

そこにはフィオレだけでなくカウレスとフランもいた。

 

「それで何の用でしょうマスター?」

 

「実はバーサーカーに貴方の力を授ける事ができないかとバーサーカーが・・・」

 

「力・・・つまりバーサーカーに我がスキル、神授の知慧を使えという事でしょうか?」

 

「はい、その通りです」

 

神授の知慧

 

それはケイローンがギリシアの神々から授かった様々な知慧を一纏めにしたスキルである

 

マスターとの合意が有れば他のサーヴァントにスキルを与える事が出来るスキルである

 

「別に構いませんが・・・マスターはいいのですか?」

 

「大丈夫です」

 

フィオレは首を縦に振る。

 

「分かりました。やってみましょう」

 

「ありがとう、アーチャー、姉さん」

 

「いえいえ」

 

それから中庭に移動し、ケイローンのフランにスキルを与えるため実戦的な教育が始まった。

 

「では私はダーニック叔父様にこのことを話して来ます」

 

「いや俺も行くよ」

 

二人はダーニックにこの事を話に行った。

 

午後1時頃 シギショアラ テムside

 

とある一軒家のリビングに5人の人間が集まって集まっていた。

 

彼らはカルナと正体不明のセイバーの戦いの一部始終を録画していた物を見ていた。

 

「おいおいおいおい、マジかよ冗談じゃねぇぞ。なんだよあの化け物どもは」

 

ライダーは早速ぼやいていた。

 

「しかしセイバーは凄いですね、あのカルナの槍を捌けるなんて」

 

アーチャーはセイバーに感心していた。

 

「いやいや、どう考えてもヤバイのはカルナでしょ。何であいつ見えない剣を捌けるんだよ。意味わかんねぇよ」

 

ランサーはカルナのぶっ壊れた性能に不満たらたらだった。

 

「わくわくしますねぇ。あんな方々が14騎もいる聖杯大戦。早く暴れたいですねぇ」

 

セイバーはテンションが上がっていた。

するとライダーは、

 

「いやいや。あんな性能してんのたぶん三騎士位だからな。あの性能の奴が14騎もいるなんて考えたくねぇよ。ルーマニアが地図から消えるわ。どこの終末戦争(ラグナロク)だよ。ルーラーにイエス・キリストが喚ばれるレベルだろ、それ」

 

とセイバーに突っ込みをいれる。

 

「ん?構いませんが?」

 

「お前がよくても俺の精神が持たんわそんな状況」

 

そんな感じで話していると

 

「さっきキャスターから連絡があった。あと数時間でこっちに来るそうだ」

 

クロが携帯を片手に話す。

 

「そうか、ありがとう。あ、旗を持った女で、ルーラーとして召喚されそうな英霊ってわかるか?」

 

「多分、ジャンヌ・ダルクじゃないか?」

 

「ああ、やっぱり。あれを相手にすんのはダルそうだなぁ。そういやクロは神とか信じてた?」

 

「私は神は信じないよ。というか嫌いだ。それを妄信的に信じる者も。『信じれば救われる』などと教えている者も」

 

「やっぱりねぇ。俺もだわ。結局人を救うのは人だ。神なんているかいないかわからん物を信じて死ぬなんてごめんだ。いや神代(むかし)はいたのかもな。でも今や神なんて金儲けや人を都合のいいように操るための道具だ。そんな奴らでさえ救おうと考えるなんて、ルーラーは随分優しいねぇ。まったくヘドが出る」

 

ライダーは不愉快そうに愚痴る。がすぐに切り替え、

 

「ま、そんな事よりだ。このルーラーなんかおかしくないか?」

 

とその場にいる全員に聞いた。

 

「そうですか?」

 

セイバーとアーチャーは首を傾げ、

 

「それよりあのルーラーのおっぱいを揉みしだきたいわ」

 

ランサーは早くも脱線した

 

「おい三騎士、ふざけんなよ。おいクロ、この脳筋どもに何がおかしいか言ってやれ」

 

「確かに聖女と言うわりにはあまりにもプロポーションを強調する服装だ。正直目のやり場に困るな。これは性女と改名すべきだ」

 

「お前もかよ!おいアサシン、何がおかしいか言ってやれ。このバカどもに」

 

話をふられたアサシンは、

 

「そうだな。サーヴァントなのに霊体化してないところか?」

 

「それだ。それがおかしい。普通サーヴァントなら霊体化するはずだ。なのに戦闘が終わっても霊体化しない?いや、霊体化できないのか?だとしたら聖杯のバグか?」

 

するとクロは、

 

「聖杯に異常はないはずだ。ダーニックは骨の髄まで魔術師だ。そんな奴がバグを起こすようなヘマはしない」

 

「だとすりゃ大戦形式になったから起こったものでもない・・・」

 

「もしかしたら、ルーラーはこの外見の少女に憑依しているのかもしれない」

 

「憑依?英霊を?そんなもん肉体が持たんだろ。それ用に調整されたホムンクルスでも成功率はかなり低いはずだ」

 

「普通ならそうだ。でもこの少女が英霊ジャンヌ・ダルクとの適合率が高く受け入れる意志があったのなら・・・」

 

「いくら適合率が高いからといって普通受け入れるか?」

 

「彼女が敬虔な信徒だとしたらあり得るかもね」

 

「なるほどねぇ・・・肉体があるのか・・・」

 

するとライダーはニヤリと笑い別の部屋に移動する

 

そこには幾つかのパソコンの画面があり、一つのキーボードとマウスで使える様な形になっており、所謂個人投資家のトレーディングルームのような部屋だった。

 

それから数時間、部屋であることを調べ続けそれが一段落したら携帯である場所に連絡した。

 

午後7時頃 ミレニア城塞

 

黒のキャスター・・・アヴィケブロンの監視用ゴーレムが街の外からマスターとサーヴァントが来たのを感知した。

 

「昨日に続き今日もか」

 

アヴィケブロンは嘆息した。

 

「すまないな、キャスター。奴らも、我々を潰そうと必死なのだろう」

 

ダーニックはホムンクルスとゴーレムを差し向ける様に手配した。

 

「さて、お手並み拝見だ」

 

メアリーside

 

「うわーすっご。こんなゴーレムみたことないんですけど」

 

「おそらくゴーレム使いが敵のキャスターなのだろう」

 

ダーニックがホムンクルス6人とゴーレム5機を差し向けて数分後、メアリー達の前に彼等は出現した。

 

「しかし自身を囮に敵を誘き寄せるとは、マスターはよほど戦闘に自信があるのだな」

 

「敵の戦力の確認は当然ですし、貴方もそのつもりでこの街に入ってから実体化したんですよね?」

 

「まあその通りだな。あとは余自身の試運転を兼ねて戦うのもあり、と考えだけだ」

 

「まあ、ウォーミングアップは大切ですからねぇ」

 

「・・・しかしこのような木偶を街に配置するとはな。神秘の秘匿を忘れたのか?」

 

「多分大丈夫だと思いますよ。人払いの結界が機能してますし」

 

「左様か。ならばホムンクルスは任せてよいか?」

 

「はい。任せて下さい。ではゴーレムはお願いします」

 

「承知したマスター」

 

彼等のは双方の相手と戦う。

 

ゴーレムはまず持っている剣で彼を切り裂こうとする。

しかしゴーレムの鈍重な動きではヴラド三世をとらえられない。

一気に懐まで入り込むと彼はゴーレムを力任せにぶん殴る。

するとゴーレムは粉々に砕け散った。

続く形で彼は手に銀色の槍のような物を出現させ、別のゴーレムの腕を切り裂き足を掴み筋力に物を言わせ別のゴーレムにぶつけて破壊する。

残り2機のゴーレムはヴラド三世の前後から襲いかかるも片方には槍で核を切り裂かれ、もう片方は彼の右腕で胴を捕まれ、彼の右手から飛び出した杭で貫かれた。

 

メアリーの方は一番最初に襲いかかってきた槍を持ったホムンクルスの懐に入り左手のナイフで頸動脈を切り裂く。

別のホムンクルスが両手剣を持って襲いかかる。

しかし彼女は右手で懐から銃を取り出すとホムンクルスの足と撃つ。

ホムンクルスがバランスを崩し前のめりに倒れそうになっていると、思い切り頭部を蹴り抜いた。ホムンクルスの防御は間に合わずそのホムンクルスの頭部がまるでサッカーボールの様に飛んで行った。

3人目のホムンクルスは彼女にメイスで襲いかかる。

彼女は頭部を失った死体をそのホムンクルスに向けて投げると同時に走る。

ホムンクルスはメイスで死体を叩き落とすも後続からきた彼女に対応しきれず喉にナイフを突き刺された。

上の方向から矢が飛んで来る。

どうやら彼等と戦っている間に屋根の上に配置したらしい。

彼女は矢を避けながら一番最初に倒したホムンクルスの所まで行き、槍をつかみ狙撃主のいる建物の高さ半分位に槍を投げた。

突き刺さった槍に向かって走り魔術で補強した脚力で槍の柄に飛び、掴む。体を筋力をつかって槍の柄の上に持っていき両足で柄をふみ跳躍する。

まるでハリウッド映画のアクションシーンのような事をやってのけ彼女は狙撃主たちのいる場所たどり着く。

3人の狙撃主は弓を構えるも一人目は心臓をナイフで刺され、二人目は回し蹴りで首を折られ、三人目は足払いをされて屋根から落とされ、逃げようともがいているところを銃で頭を撃たれ絶命した。

 

戦闘終了後、メアリーは屋根から降りヴラド三世と合流した。

 

「やっぱりお強いんですね」

 

「王となる前は兵士としても戦っていたからな。マスターも随分と強いな」

 

「まぁ私の場合は遠距離からチマチマ戦ったり呪いとかつかうのが苦手で接近戦に特化したんですよ」

 

「・・・まさか遠距離から戦うような術式を習得してないわけではなかろうな・・・?」

 

「ガントなら・・・ギリギリ・・・できないこともない・・・ですかね、呪術は・・・できません・・・」

 

「おい・・・」

 

「だって拳銃やライフルがあるのにガントや呪術なんて必要ないじゃないですか!」

 

「法律で銃が規制されている国ではどうするつもりなのだ?」

 

「そういう国にも裏社会ってあるんですよ?」

 

「なるほど現地調達か。要するに違法行為だな」

 

「魔術師なんて四捨五入したらみんなサイコな犯罪者ですよ?」

 

「もうよい。この話題は触れないことにしよう」

 

彼女たちは赤のセイバー陣営との合流を目指していた。

 

ユグドミレニアside

 

「中々の強さだな」

 

クー・フーリンは感心していた。

 

「ええ、あの異常に高いステータスは脅威ですね」

 

ケイローンは分析する。

 

「ねぇ、あれってバーサーカーなのかな?」

 

アストルフォはケイローンに聞いた

 

「おそらくそうでしょう。セイバーは昨日確認しました。ランサーもこちらのセイバーが確認しています。あの戦闘スタイルからアーチャーではない。騎乗物に乗っていたわけでもないからライダーでもない。あのステータスですからアサシンやキャスターでもない。ならバーサーカーが妥当な候補でしょう」

 

「明らかに喋ってたけど?」

 

「そういう例外もあるでしょう」

 

ケイローンはフランを見る。

 

「む・・・?」

 

キャスターが別の監視用ゴーレムが別のサーヴァントの反応を感知した。

 

「ダーニック。またサーヴァントだ。数は二騎。森の付近にいる」

 

「やれやれ、今夜は来客が多いな」

 

「おい、マスター。俺に行かせてくれ」

 

クー・フーリンはダーニックに進言する。

 

「そういえば、ランサーは魔術師と戦っていてもサーヴァントとは戦ってはいなかったな」

 

「おうよ。だから俺が行く」

 

「まずいと判断したら撤退するようにな」

 

「安心しろマスター、俺が敗けるなどあり得んさ」

 

「わかった。一応セイバーも出そう」

 

「応。行ってくらぁ!!」

 

ランサーは外へ飛び出し、敵サーヴァントのいる方向に走る。

 

セイバーも後に続く。

 

 

二時間前 シギショアラ 教会

 

「やあやあお二人ともお揃いで!」

 

「相変わらず騒がしいなお主は」

 

セミラミスは赤のキャスター・・・シェイクスピアに嘆息した

 

「おやおやすみません!実はお知らせしたい事がありまして!」

 

「なんです?」

 

シロウはシェイクスピアに問う。

 

「実はライダーが黒の陣営に殴り込みに行きました」

 

「なっ・・・!?」

 

「それは本当ですか?」

 

セミラミスは動揺しシロウは訝しんだ。

 

「ええ!敵の戦力を確認するといって戦車に乗ってミレニア城塞に飛んで行きました。ついでにアーチャーも彼を追って外に出ました」

 

「あの馬鹿者どもめ!!」

 

「いえセミラミス。むしろ相手の戦力を確認出来るのは行幸です。至急鳩を飛ばして監視出来るようにして下さい」

 

「それでよいのか?シロウよ」

 

「ええ向こうのランサーの真名が分かるかもしれません」

 

「わかったやってみよう」

 

 

現在 ミレニア城塞付近の森

 

その男は槍を携えランサーの到着を待っていた。

 

「よお、待たせて悪かったな」

 

「おお。これ以上またされたら城に殴り込みにいくところだったよ」

 

「そいつは困るな。あそこには俺のマスターとその一族がいるし、そんな早く勝負を決めに来るなんて面白くねぇ」

 

「ああ、全くだ。だからこうして待った。そして待った甲斐があった。あんたとなら対等の殺し合いができそうだ(・・・・・・・・・・・・・)。」

 

「まるで俺以外だと殺し合いが出来ないとでも言ってる様に聞こえるが?」

 

「その通りだ。俺を殺したければその資格がないとな」

 

「資格・・・ねぇ・・・。まあいいや。いい加減始めよう。こっちも戦いたくてウズウズしてたんだ。昨日のセイバーとランサーの戦いを観てからな!お前もそうだろ?ライダー君よ」

 

「!俺をライダーと気付いたのか」

 

「バーサーカーとセイバーとランサーは見たしな。こんな前線に出てくるなんてアサシンでもキャスターでもねぇ。槍を使うアーチャーなんているわけない。で、残ったのはライダーだけってわけさ」

 

「そうか。わかった。なら始めよう」

 

クー・フーリンと赤のライダーが槍を構える。

 

そして両者は激突した。

 

互いに槍を打ち合う両者。

 

その顔には自身と対等に殺し合える猛者と戦える事への喜びがあった。

 

防御は必要最低限、致命となる傷のみ避けるという形をとっていた。

 

「ははっ!黒のランサーよ!この俺の体に傷を付けるとは!やはりお前は最高だ!相手にとって不足はない!」

 

「赤のライダーよ!てめぇも中々の猛者だな!だがまだこんな物ではないだろ!?」

 

「ああ!まだ上げるぞ!」

 

その瞬間、赤のライダーの攻撃のスピードが上がる。

 

しかし、クー・フーリンはそのスピードにも追いつく。

 

アタランテもランスロットも彼らを援護するためにその戦いをみていたが、

 

(下手な援護は出来ないな)

 

と考えていた。

 

「そらそらそらそら!!」

 

クー・フーリンは赤のライダーに、猛攻を行う。対するライダーもその猛攻をいなし、反撃する。

 

「どうした!?黒のランサーよ!こんなものか!?」

 

「はっ!まだだよ!」

 

彼等のスピードはさらに上がる。

 

数十、数百の攻撃の応酬のあとクー・フーリンは一度距離をとり空中に何かを描く。

 

赤のライダーはクー・フーリンに突貫する。次の瞬間、赤のライダーの視界はオレンジに染まる。

 

(魔術だと!?)

 

彼はわずかに驚く。しかし、

 

「そんなもので俺を仕留められるか!!」

 

彼は構わず突貫して、炎を突き抜ける。しかしクー・フーリンはそこにいない。

 

すると真後ろに気配を感じる。彼は身をよじり無理やり回避する。

 

「へえ。これを避けるか」

 

「当たり前だ。この程度避けられなくてなにが英雄か」

 

「だろうな。しかし一旦止めにしないか」

 

「なんだよ。せっかく楽しくなってきたのに」

 

「このまま打ち合っても埒が明かねえしな。それにお前も、もともと宝具を使うほど大規模な戦いをしに来た訳じゃないだろ」

 

「まあな」

 

「だったら次の戦いまで待とう。その時は互いに手加減抜きで戦おう」

 

「・・・そうだな。黒のランサーよ。マスターからも撤退せよと命令された」

 

「そうか、ならば次こそ必ず全力で戦おう」

 

「ああ。お前は俺の獲物だ!次は必ず仕留めよう!」

 

赤のライダーは戦車を召喚し、それに乗る。

 

「オリンポスの神々よ!この戦いに栄光と名誉を与えたまえ!」

 

そんな事を大声で叫んで帰還していった。

 

(オリンポス・・・てことはギリシア関連の英雄か・・・)

 

赤のライダーについて考えているとマスターから念話が届く

 

(ランサーよ。ケイローンがあのライダーの真名を知っていたらしい)

 

(へぇ。何て言うんだ?)

 

(奴の真名はアキレウスだ。トロイア戦争において、かのヘクトールを仕留めたギリシア最速の英雄だ)

 

(なるほど。奴がアキレウスだとすると対抗出来るのはケイローンか俺ぐらいか?)

 

(そうなるな・・・待て、ランサー。お前はセイバーと共に城に帰らずこれから言うところにいってくれ)

 

(なんかあったのか?)

 

(ライダーがホムンクルスを一体連れ出そうとしている。捕縛してくれ)

 

(はぁ?ホムンクルス位どうだっていいだろ)

 

(ああ。だがそのホムンクルスは戦力として改良する。それにライダーがどこまで行くのかわからん。まだ赤のサーヴァントが隠れているかも知れない)

 

(そうかい。ま、マスターの命令とあれば従わない訳にもいかねぇか。行くぞセイバー)

 

(ええわかりました)

 

彼らはアストルフォの捕縛に向かった。

 

 

同時刻 シギショアラ 教会

 

シロウはセミラミスの鳩を通して黒のランサーと赤のライダーの激突を見た。

 

「なるほど。あちらのランサーの真名(・・)はクー・フーリンですか」

 

「クー・フーリン・・・ケルトの大英雄か?セイバーはどうだった?」

 

「やはりわかりませんでした。真名はおろかステータスすら」

 

「セイバークラスでそこまでの隠蔽スキル・・・いや宝具か。そんなものを保持しているとはな」

 

「ええ、しかしランサーの真名がわかっただけよしとしましょう。アサシン、あなたの宝具は?」

 

「あと2日ほどと言った所か」

 

「そうですか」

 

シロウは微笑む。そして、

 

「なら2日後ミレニア城塞に攻撃を仕掛けましょう」

 

といい、教会の地下に向かった。

 

 

ミレニア城塞付近の森

 

「こっちこっち!」

 

アストルフォはホムンクルスと一緒に森を歩いていた。

 

何度か魔術罠が発動したがアストルフォの宝具魔術万能攻略書(ルナ・ブレイクマニュアル)によって完全に無効化していた。

 

「なぁ、ライダー。俺は逃げて大丈夫なのか?」

 

「当たり前じゃないか!こんな魔窟にいたらどんなひどい目に合うかわかったもんじゃないし、何より君は『助けて』って僕に願ったんだ!だったら僕は絶対に助けるよ?」

 

「そうなのか」

 

「うん!」

 

それから数分ホムンクルスを連れて歩いていると目の前にクー・フーリンが現れた。

 

アストルフォはホムンクルスを庇うように前に立つ。

 

「あれ?クー・フーリンじゃん?どうしたの?」

 

「そのホムンクルスを回収しろと命じられてな。そいつを渡しな」

 

「え?嫌だよ?」

 

「即答かよ・・・じゃあお前はそいつを逃がす事がマスターの一族に対する裏切りだと言ったら?」

 

「うーん。例え裏切り者って罵られても、僕は彼に『助けて』って願われた。なら納得いくまで助けるだけだよ」

 

「そうか・・・じゃああれだ。ホムンクルスは頼むわ、セイバー」

 

その時、アストルフォは後ろで何かが倒れる音を聞いた。

 

思わず振り向くと見えない何かにホムンクルスの少年が抱えられ城に帰っていく。

 

「待っ・・・」

 

アストルフォはセイバーに言おうとするも、肩を槍で貫かれた。

 

「ぐあっ・・・」

 

「悪いな。裏切り者には罰を与えろとも命じられていてな。まあ死なない程度に痛めつけるけど我慢しろ」

 

数十分後 ミレニア城塞 大広間

 

そこにはユグドミレニアのマスターとサーヴァントが一部を除いて全員いた。

 

「帰ったぜマスター」

 

ランサーはボロボロに傷を付けられたアストルフォを抱えて帰ってきた。

 

「そうか、ご苦労」

 

ダーニックは若干疲れていた。

 

「どうした?マスター。そういやセイバーとライダーのマスターは?」

 

そこにはセレニケとゴルドとセイバーがいなかった。

 

「ゴルドはホムンクルスの再調整。セイバーはその護衛。セレニケは・・・地下に幽閉した」

 

「あ?何でだ?」

 

「あの愚か者め。こちらにとって多少の戦力となるあのホムンクルスを呪い殺そうとした。それを諌めようとしたら私を殺そうとした。自制心のない獣を相手にしている気分だったよ。どのような環境で育てばあのような女になるのかわからん」

 

「そりゃまあ、大変だったな」

 

「当分ホムンクルスもセレニケに近づけないようにしなければな。替えがきくとはいえ何体使い物にならなくなるかわからん」

 

「そんな爆弾、爆発する前に捨てた方がいいんじゃねえか?」

 

「マスターに選ばれている以上、奴もそれなりの魔術師だったのだろう」

 

ダーニックはこめかみに指を当てる。

 

「まあこんな下らぬ些事で令呪を使わなかっただけマシだ。令呪を使おうとしたらそれこそ手首を切り落とし他の魔術師かあのホムンクルスに移した方が幾分マシだろう」

 

「そうかい、ところで昼間アーチャーとバーサーカーのマスターが来てたけどなんだったんだ?」

 

「アーチャーのスキル『神授の知慧』をバーサーカーに使っていいか、と聞いてきた」

 

「なんだそのスキル」

 

「アーチャーの神々から授かった技術を扱うスキルでフィオレの許可があれば他のサーヴァントにもその技術の一部を伝授することができる」

 

「ほう、出なんと答えたんだ?」

 

「あのバーサーカーにはもともと期待はしていない。だが戦力として使い物になるなら良いといった」

 

「そうか」

 

そうして聖杯大戦三日目は終了した

 




というわけで四話終了です

ダーニックとかクー・フーリンとかのキャラってこんなんであってますか?

描写し忘れてましたが黒のセイバーの真名についてはランサーとダーニックは知っています。

そして赤のセイバーの真名をダーニックとランサーには教えている、ということでお願いします

ボロボロのアストルフォですが大丈夫です生きてます。
怪我の具合はバンクラチオンされたモーさんより少し酷い位です。東京◯種のカ◯キくんみたいに腹貫かれたり四肢切断されたり真後ろから眼球貫かれたりしてませんよ。安心してください

あとメアリーは格闘専門の魔術師として魔術界隈で名が通っているため、基本的に「封印指定の魔術師の工房を襲撃しろ」という荒っぽい依頼しかこないので、暗殺の依頼とかは来ません。切嗣みたいな暗殺に特化した魔術師と違って「こいつに暗殺を依頼すると多分デカい騒ぎになりそう」とみんなわかっているので。信用ねぇな、メアリー。

あとアヴィ先生はホムンクルス君をそんなに重要視してません。

フランには心眼(偽):Bが追加されました。え?狂化があるのにできるわけないだろって?出来るということで一つお願いします。

戦闘描写難しいです。自分の頭の中で思い描いた戦闘イメージを文章化するのが一番辛い。でも頑張りたいです。精進せねば

水着フランちゃん可愛すぎる。なんだあの天使

次回 黒のアサシン


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五話 聖杯大戦 4日目 殺人鬼は誰の手に?

前回のあらすじ

急襲!赤のライダー!


 

午前7時 ミレニア城塞 ゴルドの工房

 

「ん・・・あぁ・・・」

 

「起きたか、ノロマめ」

 

セイバーに捕獲されたホムンクルスは手術台に乗せられていた。

 

するとある違和感に気付いた。

 

アストルフォと森を抜けようとした時より体に負担が感じられない。というより、体が動かしやすくなっていた。

 

「きけ、アースよ」

 

「アー・・・ス?」

 

「それが今からお前の名だ。単刀直入にいう。貴様にはこのミレニア城塞で赤の陣営と戦ってもらう。そのための再調整だ。全くまさか生体電池用のホムンクルスが自我を持ち、生きたい等と願うとはな」

 

「・・・」

 

「まあそんな事は終わった事だ。とにかく貴様には此処で戦え。その時まではこの城の中であればある程度散策しても良い」

 

「!本当に・・・?」

 

「我々に危害を加えなければな」

 

「そうか・・・ライダーは」

 

「質問が多いな貴様は。生きてはいる、今は地下に幽閉されている。まあ当然だな。勝手にお前を連れ出そうとしたんだ」

 

「・・・」

 

「奴に会おうとするな」

 

「なぜ?」

 

「どうせ奴はそのうち解放される。それより貴様が気を付けるべきはライダーのマスターだ。奴はお前を殺そうとするだろう」

 

「な・・・?」

 

「あの黒魔術師はライダーに異常に執着している。そのライダーが自身が歯牙にもかけなかったホムンクルスなんぞのために一族を、自身を裏切ろうとしたのだ。端的に言ってしまえばセレニケは、お前に嫉妬している。だからできるだけ奴に会わないようにしろ」

 

「そんな」

 

「そんな下らぬ理由で命を狙われるのはたまったものではないだろう。ワシもそう思う。セレニケめ、たかがホムンクルス風情に嫉妬しおって。替えがきくとはいえ、八つ当たりで数を減らされては困る」

 

「謝るべきだろうか」

 

「さっきも言っただろう。奴に会うな。それに貴様の言葉をあやつが聴くとは思えん。謝罪がそのまま遺言になるぞ」

 

「そうか」

 

「それに貴様はどちらかといえば幸運な方だぞ。流石にキャスターの宝具の生体炉心になるよりマシだろう」

 

「?」

 

「ああ、お前はその炉心の候補だったのだがな。魔術師としてはお前より優れた奴がいただけの事だ」

 

よく分からないが、アースは頷いた。

 

 

地下牢

 

「ホムンクルス!ホムンクルス!ホムンクルス!」

 

セレニケは怨嗟と憎悪と嫉妬を込めて叫ぶ。

 

「謝ったんだから、許してよ。この通り!」

 

アストルフォはセレニケに謝る。

 

それでもセレニケの憎悪は止まらなかった。

 

「アストルフォ!!貴方のせいよ!!たかがホムンクルスを!勝手に逃がそうとするせいで!!私までこんなところに閉じ込められるなんて!!」

 

「えぇ・・・」

 

「大体なによ!あんな物ただの魔力供給用の電池・・・ただの部品よ!?そんな物を助けて、何になるっていうの!?なによ!そんなにあのホムンクルスが魅力的だったとでもいうの!?許さない!赦さない!私のアストルフォを(たぶら)かしたあのホムンクルスを殺してやる!」

 

「それはやめて!」

 

アストルフォは懇願する。

 

その姿勢が、セレニケに快感すら上回る憎悪を増長させる。

 

「なんなの・・・。そんなにあのホムンクルスが大事!?私のより大事だって言うの!?」

 

(うわぁ・・・全然人の話し聞いてくれないや)

 

まさに堂々巡りだった。セレニケは頭を冷やすどころか憎悪と嫉妬によって、思考が沸騰していた。アストルフォがセレニケと会話できる範囲の牢屋に入れられたのも一端になっているかも知れない。アストルフォの受け答えが更にそれを助長していた。

 

理性が蒸発しているアストルフォでさえこのヒステリックさには流石に引いていた。

 

 

午前9時頃 カタコンペ

 

「寝覚めが悪いな、くそ」

 

獅子劫界離はカタコンペでヒュドラの幼体を使って礼装を造り終え眠ったあと、彼は夢を見ていた。

 

それはモードレッドの過去。誕生、騎士として王に支え、自身が王の嫡子であると聞かされ、それを王に言うも拒絶され、憎悪し、ブリテンを転覆させる反逆の騎士となる物語だ。それを見て獅子劫は、

 

「全く厄介なサーヴァントを引き当てたもんだ」

 

「何の話だマスター。オレの過去でも見たか?」

 

「なんだ起きてたのか?」

 

「おう。それより何かメッセージが届いてるぞ、ロード・エルメロイ二世とか言うやつから」

 

「マジか」

 

そこには『大至急シギショアラに迎え、理由は追って伝える』と書かれてあった。

 

「シギショアラ?何かあったのか?」

 

「多分、ジャック・ザ・リッパーが出たんだろ」

 

「ジャック・・・?あぁ向こうのアサシンだったか?」

 

「あぁ、あいつは魂喰いをやってる。前の大戦でもやってたからな」

 

「マジか?じゃあどんなやつだった」

 

「すまねぇ、その名前を新聞の記事と向こうの奴から聞いたんだが外見とかどんな戦いをするやつか (・・・・・・・・・・・・・・・)全く思い出せない(・・・・・・・・)

 

「それはお前がガサツだからとかじゃなくてか?」

 

「それどういう意味だマスター。ホントに名前以外思い出せないだ」

 

「つまり、対策が取れないって事か?」

 

「ああ、そうなる」

 

「そいつは厄介だな」

 

獅子劫は少し考え、

 

「じゃあ行くか」

 

といって、カタコンペを後にした。

 

11時頃 カタコンペ

 

「畜生!もうシギショアラに行ってやがりますね!」

 

カタコンペの周囲の結界を力業でブチ破りカタコンペに入った直後、メアリーは叫ぶ。

 

(だからメールを受け取ったあとシギショアラに行けと言ったのだ)

 

ヴラド三世からさえ非難を受けるメアリー。

 

「わかりました!今からシギショアラに行きます」

 

そうして、メアリー達はシギショアラに向かう。

 

因みに結界や防衛装置は念入りに破壊していった。

 

ただの嫌がらせである。

 

 

12時頃 ミレニア城塞

 

ダーニックとランサーはセレニケの牢屋を監視して、ため息をついていた。

 

「セレニケめ、まだ反省しないか・・・」

 

「もう新しいマスターに乗り換えさせた方がいいんじゃねぇか?」

 

「それは最後の手段だランサー」

 

するとフィオレとアーチャーが入ってくる。

 

「お呼びでしょうか、叔父さま」

 

「ああ、フィオレ。この新聞を見てくれ」

 

ダーニックが見せたのは地方紙だ。そこには、

 

『ジャック・ザ・リッパー、ルーマニアに現る!?』

 

という一面記事が出ていた。

 

「これは・・・!?」

 

「恐らくサーヴァント、アサシンだろう。殺されたのはマフィアやチンピラと言った連中だけではなく、魔術協会側の魔術師も含まれていたそうだ」

 

「なるほど」

 

「このアサシンは相良豹馬のサーヴァントではない。やつは既に殺害されていた。」

 

「つまり、黒のアサシン・・・ジャックは暴走しているということですか?」

 

「相良以外の人間と契約している可能性がある。そしてその人物は魔力が少ない・・・もしくはただの人間である可能性がある。でなければこんな目立つことはしない。いま空港にいる一族の者に『ここ数日以内にルーマニアにきた日本人客』を洗わせている」

 

「では、私達を呼んだのは?」

 

「赤のセイバーのマスターがシギショアラに移動した。目的は黒のアサシンの討伐だろう。此処でサーヴァントを失う訳には行かない」

 

「私達はアサシンを保護しにいくわけですね」

 

「ああ、最悪討伐しても構わん」

 

「わかりました」

 

(ダーニック)

 

(キャスターか、どうした?)

 

(赤のバーサーカーのマスターもシギショアラに向かった可能性が出た)

 

(なんだと?)

 

それはあまりにもまずい、あの凄まじいステータスのバーサーカーがセイバーと組まれては例えケイローンでも太刀打ちできない可能性が高い。

 

しかしユグドミレニアのトップである自身が動くことは出来ない。此処でランサーを失う訳にも行かない。ゴルドは昨日からほぼ休まずホムンクルス達の再調整を行っている。セイバーはゴルドを護衛している。キャスターとライダーは論外。ならば・・・

 

ダーニックはゴルドに念話を送る。

 

(ゴルドよホムンクルスの調整は一度切り上げろ。お前には数時間後、シギショアラに行ってもらう)

 

(シギショアラ?なぜ・・・)

 

(事情は後で説明する。とりあえず仕事を切り上げて休め)

 

(・・・わかった)

 

「よし、フィオレ。おまえは今すぐシギショアラに迎え、カウレス、バーサーカーと一緒に」

 

「え?カウレスもですか?」

 

「ああ、バーサーカーにはアーチャーを守ってもらう、セイバーが到着するまで」

 

数十分後 ユグドミレニア所有の車の車内

 

「要するにバーサーカーにはセイバーがくるまで肉盾になれってことかよ」

 

「カウレス、口が悪いわよ」

 

「ごめん姉さん」

 

カウレスは謝ったあと、

 

(最悪令呪を使ってもいいと言われたけど、要するにバーサーカーに赤のサーヴァントを巻き込んで自爆しろって言ってるような物だろ)

 

と考えた。

 

そしてポケットの中でスマートフォンを操作し、獅子劫にメールを送る。

 

内容は、

 

『シギショアラに俺と姉さんが向かってる。それから時間差でセイバーとそのマスターがくる。戦闘になる可能性が高い。セイバーがくる前に適当な理由を付けて戦闘を切り上げよう』

 

というものだった

 

午後2時頃 テムの拠点

 

「そういえば、ジャック・ザ・リッパーが現れたらしいよ」

 

クロがテムに新聞をみせる。

 

「悪いな、あんまり興味ないわ。それの対処っつーか後始末はやつらに任せよう、俺は俺で準備があるんだ」

 

そういって彼はブカレストの空港に向かった

 

 

午後7時頃

 

日が落ちて暗くなった頃、路地にいたモードレッドと獅子劫を霧が包んだ。

 

「ゴホッゴホッ・・・セイバー!こいつを吸うな!」

 

「んなもん効くか!走るぞマスター!」

 

モードレッドは自身の直感を信じ霧を抜ける。

 

「ふぅ・・・ふぅ・・・」

 

獅子劫は霧を抜けてようやく一息ついた。

 

獅子劫は油断はしていなかった。しかし霧を抜けた事でほんの一瞬、安堵していた。

 

殺人鬼はその弛緩を見逃さず、被害者(えもの)を殺害するために行動する。

 

そして、セイバーはマスターの足を払い無理やり転倒させ、そこに剣を振り抜いた。

 

「うぐぅ・・・!」

 

「オレのマスターをそう簡単に狙わせるか。アサシン」

 

「痛いなぁ、もう少しだったのに」

 

それは娼婦のような扇情的な格好をした、幼女だった。

 

「お前が、ジャック・ザ・リッパー?」

 

「あれ?なんでわかったの?」

 

彼女は首をかしげた。そして

 

「まあいいや」

 

と霧の中に逃げ込んだ。

 

「待て!アサシン!」

 

モードレッドはアサシンを追う。しかし霧の中に入ったとたん、彼女を見失った。そして医療用メスが飛んできた。

 

「くっ!」

 

「あははっ、なかなかやるね!」

 

小バカにしたような少女の声が響く。

 

「抜かせ、このクソガキが!」

 

「クソガキなんて、きたないことばだね。そんなあなた・・・おねえさんはなんておなまえなの?」

 

「クソがぁ!」

 

彼女はアサシンに剣を振るう。だか全く手応えがなかった。

 

するとアサシンは手を叩いて、モードレッドを煽る。

 

「お~にさ~んこ~ちら!て~のな~るほ~うへ!」

 

「クソッタレがぁぁぁぁぁぁ!調子に乗んじゃねえぇぇぇぇぇ!」

 

モードレッド兜を外し魔力放出によって周囲の霧を吹き飛ばす。

 

するとアサシンの姿が現わになる。

 

「ようやく見つけたぜ!このクソガキが!最後に言い残すことはあるか!?」

 

「しなないよ。まだお腹すいてるんだもん!」

 

アサシンは肉切り包丁を構えモードレッドにせまる。

 

モードレッドも自らの剣を振りかぶる。

 

両者が激突する直前モードレッドの直感が警鐘を鳴らす。思わず魔力放出で無理やり引いた。その瞬間、黄緑色の雷撃が彼女達に落ちてきた(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「な・・・!?」

 

落ちてきた雷撃には見覚えがあった。しかしそんな思考をしてる間にも次々と雷撃がモードレッドに降り注ぐ。それを避けながら移動していると、彼女の足元に矢が着弾した。

 

「なに・・・!?」

 

その爆風に吹き飛ばされそうになるも魔力放出で突き抜ける。移動した先にマスターがいた。

 

「マスター!オレはあのアーチャーの所に行く!そこでじっとしてろ!」

 

「いやそうは行かないらしい!敵のマスターがこっちに来てる!」

 

「ならマスターのことは任せた!」

 

「だったらサーヴァントは任せた!」

 

モードレッドはケイローンのいる建物に向けて走る。

 

ケイローンside

 

ケイローンは彼女を攻撃するも全てを剣で弾いていた

 

すると、フランから念話が聞こえた

 

(どうしました。バーサーカー)

 

(ウゥゥ・・・!!)

 

彼女の提案はあまり承諾出来るものではなかった。

 

それでも彼女の覚悟は本物だった。

 

ゆえに

 

(カウレス、バーサーカーがあの

セイバーを足止めするといってます(・・・・・・・・・・・・・・・・))

 

(・・・出来るのかバーサーカー)

 

(アァァ!!)

 

(だったらお前に任せる。セイバーを足止めしろ。でもいざ危ないってなったらアーチャーに助けを求めろ、いいな)

 

(ウィィ!!)

 

モードレッドside

 

建物との距離が20mに差し掛かった時真横の路地から何かが飛び出してきた。

 

それは純白の花嫁衣装をきた少女だった。

 

モードレッドは止まる

 

「やっぱりお前だったか」

 

「ウゥゥ・・・!!」

 

「オレと戦うのか?残念だけどお前とオレとじゃ戦いにな・・・」

 

「アァァァァァ!!!」

 

その気迫はかつての彼女とは違うと感じた。

 

「そうか・・・どうなっても知らねえぞ」

 

モードレッドはフランケンシュタインに真一文字に剣を振りかぶる。

 

フランはそれを避ける。

 

次は斜め下から上に切り裂く様に振るう。

 

これも避けられる。

 

モードレッドは休む事なく連撃を行う。

 

それをフランは受け流し、避けていく。

 

明らかに以前の彼女の動きとは違っていた。

 

直感の様な野性的、本能的な動きではない。これは紛れもなく自身の様な戦士に近付こうと磨いたものでもあるかの様に感じた。

 

しかしそれでもモードレッドの方が優勢だった。

 

現にフランはモードレッドから攻撃を受け続けているだけで、反撃することが出来ずにいた。

 

モードレッドの攻撃の速度と重さが増す毎に彼女はどんどん反撃することができなくなる。

 

いや、そうではない。

 

(攻撃の速度、結構上げてんのに攻めきれねぇ!)

 

そう、フランは今持てる全てを防御に回していた。

 

今の彼女は攻撃を捨て完全に守ることに主軸を置いていた。

 

それは彼女の狂化ランクがDという低い数値だったからこそできる芸当だった。

 

セイバーがくるまでの時間稼ぎ。

 

彼女はまさにそれを実行していた。

 

もちろんモードレッドがアーチャーを気にしていざ攻撃してきても対応できる速度の攻撃をしていたのも攻めきれない理由に入っていた。

 

そしてそんな事をしている間に、その時はやってきた。

 

モードレッドの攻撃をフランが大きく避ける。

 

するとモードレッドの真横から黒のセイバー―――ランスロットは攻撃してきた。

 

モードレッドは直感で避け、魔力放出で後退する。

 

「ちっ!てめぇなにもんだ!アサシンでもないくせに姿を隠しやがって!この卑怯者が!!」

 

(くそ!まずい!フランのやつ・・・これが目的だったのか!見えねぇサーヴァントを気にしながらフランとアーチャーを警戒する?ムリだ!)

 

マスターに撤退を呼び掛け様とした時、ランスロットがモードレッドに切りかかった。

 

(まずっ・・・)

 

完全に避けきれない、殺られる。と彼女は直感する。

 

次の瞬間不可視のサーヴァントの剣は突然現れた男の槍によって止められていた。

 

「三対一とはあまりにも卑怯ではないか?」

 

怪物の気配をまとっている男性がいた。

 

ランスロットのいる足元から杭のの様な物が飛び出す。

 

ランスロットは後退する。

 

「赤のバーサーカー・・・」

 

「その通りだ。黒のサーヴァントよ」

 

「バーサーカー・・・」

 

「初めてまして、だな。赤のセイバーよ」

 

「ああ、わかってはいたけどあんたの気配って・・・」

 

「それ以上口にすることは許さんぞ。セイバー」

 

その言葉には努気を孕んでいた。

 

しかし彼は直ぐにそれを隠し黒のサーヴァント達に注目する。

 

バーサーカーは小声でモードレッドに話しかける。

 

(セイバーよ。ここは一度撤退しないか?)

 

(どうやって?)

 

(こちらにサーヴァントが三体もいた以上、マスターも三人いるはずだ。いかに我らのマスターが優秀でも数を上回られては撤退するしかあるまい。ゆえに今からいう地点に行け。そこの路地裏のマンホールは開けてある。)

 

(マンホールから逃げんのかよ!)

 

(仕方ないだろう。余が時間を稼ぐ。行け!)

 

(・・・。ああ!死ぬなよ!)

 

モードレッドは路地裏に魔力放出で飛び込む。

 

「待っ・・・」

 

ランスロットはモードレッドを追おうとするも、バーサーカーに阻まれた。

 

(何!私の位置が分かると言うのか!?)

 

バーサーカー―――ヴラド三世は今吸血鬼として召喚されていた。ゆえに人間やサーヴァントの位置も匂いで感知できていた。もちろんこの能力を使わなければならないことには不快感を持っているが、この戦場では不要な感情だと切り捨てた。

 

「さぁ、そちらのバーサーカーのお嬢さんの様に時間を稼がせて貰おうか」

 

ヴラド三世はランスロットに槍を突き立てる。

 

ランスロットはそれを剣で受け流し、避ける。

 

フランは左側からヴラド三世に攻撃を仕掛ける。

 

するとヴラド三世の姿が消えた。

 

直後、真後ろに出現したヴラド三世はフランに槍を突き立てる。

 

しかしそれをケイローンの矢が阻む。

 

頭部に飛んできた矢を避け、続けざまに放たれた矢を槍で打ち落とす。

 

ランスロットが路地裏に行こうとすると、

 

「失礼、お嬢さん」

 

ヴラド三世は突貫してきたフランの攻撃を弾き、ランスロットがいる方向へ蹴り飛ばした。

 

ランスロットは飛んできたフランを受け止める。

 

「ぐっ・・・大丈夫ですかレディ」

 

「ヴヴゥゥゥゥ」

 

するとケイローンから念話が入る。

 

(二人とも、敵のマスターが撤退しました。こちらも撤退しましょう)

 

(しかし・・・)

 

(これはマスターからの命令です)

 

(わかりました)

 

「ヴヴゥゥゥゥゥゥゥゥ」

 

フランは不愉快そうに唸るもマスターからのいう命令ということもあり素直に従った。

 

(撤退するか)

 

ヴラド三世は内心安堵していた。事情があるとはいえ左腕を喪失した状態で(・・・・・・・・・・)あの三騎の相手をし続けるのは自殺行為であった。

 

彼もマスターのいる合流地点まで向かった。

 

 

ランスロット出現直後 マスターside

 

ランスロットが出現したと同時にフィオレと獅子劫の戦場に三体のホムンクルスが参上した。

 

(最悪だ)

 

獅子劫は焦燥する。

 

先ほどフィオレをあと少しで仕留められそうなところで、カウレスの妨害を受けた。

 

ここまではカウレスから情報を渡されたので想定内だった。

 

しかしカウレスや獅子劫が想定していたより、ランスロットとゴルドが着くのが早かったのだ。

 

物陰に隠れたカウレスも内心焦っていた。

 

(いくら何でも早すぎるだろ)

 

彼等はあと三十分位遅く来ると想定していた。しかし実際はかなり早く到着し闘いに参戦してきた。しかもホムンクルスを送り込んで。

 

(ヤバい。いくらなんでもヤバすぎる)

 

ホムンクルスとフィオレの猛攻が始まろうとしたその時、フィオレとホムンクルス達の前に何かが投げ入れられた。

 

フィオレはそれを破壊しようとするも直ぐに強力な閃光を放った。

 

(閃光手榴弾(スタングルネード)?!)

 

獅子劫もカウレスも驚愕するもこれは撤退の好機だった。

 

『ホムンクルスを盾に物陰に待避しろ姉さん!』

 

カウレスは叫ぶ。

 

「退きますよ獅子劫さん」

 

「ああ、わかった!」

 

彼等は引いて行く。

 

そこには壊れた道路と車があった。

 

ようやく視界が戻った時には彼等の姿はなくなっていた

 

「くっ・・・」

 

仕留め損なった。あと少しで仕留める事ができたのに。

 

『姉さん、こっちも退こう』

 

「カウレス、なぜ待避しろと言ったのですか」

 

『流石にあの実力の魔術師二人を相手にするのは姉さんでも分が悪いと思った。バーサーカーのマスターは現代兵器を何の抵抗もなく使うやつだ。もしも今投げられてたのが普通の手榴弾だったら姉さんはともかくホムンクルスは怪我で動けないだろ。そうなったら、姉さんは実質一人で奴らを相手にしなくちゃいけない。獅子劫界離だけならともかくあのレベルの魔術師が二人だと、姉さんは殺されてたかもしれない。それはアーチャーを喪失するに等しい。だから撤退が良策だと思った』

 

「・・・」

 

カウレスの言い分には穴がある。しかしそれでも今生きているのはカウレスのおかげだ。悔しいが弟に助けられたのは事実だった。

 

彼等はサーヴァントと合流し、城に帰還した。

 

 

獅子劫界離side

 

そこは先ほど戦闘していた場所に程近い路地裏だった。

 

そこのマンホールが勢いよく吹き飛んだかと思うと、モードレッドが這い出てきた。

 

「下水道マジくせぇんだけど!」

 

「しゃあねえだろ下水道なんだし」

 

マンホールの蓋を閉じたあと獅子劫は隣にいた女性に話しかける。

 

「しかしさっきは助かった。ありがとな、メアリー」

 

「どういたしまして、獅子劫さん」

 

モードレッドはメアリーと呼ばれた二十代半ばの女性を見る。

 

「ああ。あんたが、ヴラド三世をバーサーカーで召喚することになった不幸なマスターか」

 

「はぐぅ!!」

 

メアリーは目に見えて落ち込む。

 

「その事は忘れてくだ・・・」

 

「いや、覚えていたほうがいいぞ。マスターよ」

 

彼女の隣にヴラド三世が現れる。

 

「バーサーカー!?」

 

「このバカマスターめ、忘れようとしても余は覚えておるぞ。貴様はサーヴァントに土下座して詫びを入れた事をな」

 

「やめてぇ!!」

 

「お前・・・そこまでしたのか・・・」

 

「だって怖かったんですもん!あ、そういえばその子があなたのサーヴァントですか?」

 

「ああ、そうだ(こいつ露骨に話題を変えやがった)」

 

「へえ、そうなんですか」

 

彼女はモードレッドの髪に触ろうとして。

 

「さわんな!」

 

と、言い放たれた。

 

(こ、怖い)

 

「おいおいそんなに威嚇すんなよ」

 

獅子劫は宥める。

 

するとヴラド三世は、

 

「そういえば、時計塔のロードからの依頼はどうなったのだ?」

 

と切り出した。

 

「敵の真名はおそらく(・・・・)ジャック・ザ・リッパーだ。クラスは多分(・・)アサシンだ。」

 

「そうか。ではどんな容姿でどんな宝具を使っていた?」

 

「えーと確か・・・。? あぁ?」

 

「どうした?」

 

「おいセイバー。あいつってどんなやつだった?」

 

「おいおい、マスターそんなの・・・。? あれ?なんだこりゃ?」

 

「どうしたんですか?」

 

メアリーが獅子劫達に問う。

 

「いや、アサシンに関しての事が頭の中から抜け落ちてるんだ(・・・・・・・・・・・・・)。」

 

「オレは直接戦ったはずなのに、宝具はおろか容姿も思い出せない(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「まさか自身に関する情報を抹消する宝具かスキルを持っているのか?」

 

「厄介ですね」

 

それから、数分話し合いカタコンペで落ち合うことになった。

 

「なんだ。一緒に来ないのか?」

 

「私達はまだ仕事が残ってるので」

 

「そうか」

 

別れ際にモードレッドはヴラド三世に質問した

 

「なぁ、おっさん。あんたなんで左腕がないんだ(・・・・・・・)

 

「こちらにも色々と事情があるのだよ」

 

「そうか」

 

モードレッドは深く問わなかった。

 

獅子劫達と別れたあとメアリーはヴラド三世に聞いた。

 

「首尾は?」

 

「上々だな」

 

「そうですか。良かったです」

 

「しかし我らの予測が当たるとはな」

 

「ええ、殺した魔術師の家を拠点代わりに使っている、と予測を建てたのは正解でした」

 

「そこからロード・エルメロイに連絡しこのシギショアラに存在する魔術師で拠点を持ち、連絡の取れない魔術師の拠点を蝙蝠に変えたあなたの左腕にはらせていたら・・・」

 

「そのうちのひとつに、サーヴァントを確認した」

 

「踏み込むなら今・・・ですか?」

 

「あぁ、そうだな。そちらの準備は?」

 

「ええ、大丈夫です」

 

メアリーは羊皮紙を用意する。

 

ヴラド三世は全身を無数の蝙蝠に変化させ飛び立った。

 

そしてメアリーはアサシンの拠点の近くまで歩いた

 

アサシンside

 

おかあさん(マスター)、まじゅつしさんがきたみたい」

 

「あら、そうなの?」

 

「こんどこそ、シギショアラさいごの食事だね」

 

「でも無理してはだめよ。もしかしたらマスターかもしれないから」

 

「はぁい」

 

アサシンが窓を開けた瞬間、大量の蝙蝠が部屋に入り込んだ

 

メアリーside

 

ヴラド三世の急襲開始と同時に彼女は魔力強化全開でアサシンの拠点まで一気に近づき、扉を蹴破り、中へ侵入し階段を駆け上がりアサシンとそのマスターがいる部屋の前まで到達し堂々と室内へ入り、マスターを押さえ込んだ。

 

おかあさん(マスター)!!」

 

「ジャック!」

 

「すまぬな、少女よ」

 

アサシンは完全にヴラド三世に押さえ込まれていた。

 

「残念ですけど、あなた達の行動は私達の管理下に入ってもらいます」

 

「? あなた達は赤の陣営ですよね。私達を殺さないんですか?」

 

「それは簡単です。赤の陣営は私とセイバーのマスター以外、どこかに囚われた上、傀儡にされている可能性が高いんですよ。で、私としてはもう一人味方が欲しいんです。敏捷性と秘匿性に優れた味方が」

 

「それを信用しろと?」

 

「はい、信用して下さい。それからこっちからも質問していいですか?あなた方黒の陣営とも敵対してますよね?黒側のアサシンなのに。それってなぜですか?」

 

「それは、ジャックが私を無償で助けてくれたからです。だったら私はあの娘のために、あの娘の願いをかなえるために戦争に参加するのは当然のことでしょう?でも黒の陣営に入ったら、マスターを変更されるのは目に見えてますから」

 

「つまりあなたはアサシンとの繋がりを切りたくなかったのですか?」

 

「ええ、だって私はあの娘の母ですから」

 

「母?」

 

「ええ、あの娘は私を『おかあさん』と呼びますから、だったらあの娘を『娘』と扱うのは当然のでしょう?」

 

「―――」

 

その精神性にメアリーは押し黙ってしまった。

 

命を助けられた。だからといって、こんな戦争に一般人が参加するものか?

 

たった数日程度の付き合いでここまでの関係を築いた?

 

いやなにより。

 

彼女は、このマスターは自身の精神の中心に自らのサーヴァントを置いている。そんなのものは主従と呼べるのか。

 

「あなたは命を落としても大丈夫何ですか?」

 

「それは嫌ですけど、戦争に参加した以上致し方ないかと(・・・・・・・)・・・」

 

(致し方ない?あり得ない。何ですかこの人。本当に一般人ですか?自身の(サーヴァント)のためなら命すら投げ出す事を厭わない?明らかに常軌を逸している)

 

嫌な汗が全身から吹き出る。

 

しかしメアリーは気を取り直して、彼女に告げる。

 

「わかりました。では話を戻しますがマスター権なら変更しなくていいですよ。魔力は私がパスを繋ぎます。それなら良いでしょう?」

 

「え?」

 

「だって私達は味方が同士になるんですから。それくらい当然でしょう?で念のための保険としてこの羊皮紙に名前を書いて下さい」

彼女は羊皮紙を取り出す。

 

自己強制証明(セルフギアススクロール)っていう魔術師同士が契約を結ぶ時に使うものなんですけど、あなたの場合魂に直接刻む形になります。端的にいえばこのスクロールに書いてることをあなたかアサシンが破るとあなたは死にます」

 

「サインしなければ?」

 

「アサシンには死んでもらいます」

 

「そうですか・・・あの娘の願いを叶えるためですから。ジャック。それで良いかしら?」

 

「おかあさんが良いなら良いよ」

 

「そう・・・ならサインします」

 

「英語なんですけど読めます?」

 

「ええ大丈夫です。ええと内容は・・・」

 

その羊皮紙にかかれていることは四つ。

 

一つ、黒のアサシン及びそのマスターはメアリー・ベールとバーサーカー、獅子劫界離とセイバーが危害を加えてはならない。

 

二つ、黒のアサシン及びそのマスターは聖杯大戦終了までメアリー・ベールとバーサーカー、獅子劫界離とセイバーの監視下にいること。

 

三つ、黒のアサシン及びそのマスターはメアリー・ベールとバーサーカー、獅子劫界離とセイバーに不利になるような事をしてはならない

 

四つ、メアリー・ベールは黒のアサシンが戦闘で死亡した場合、そのマスターを聖杯大戦終了まで保護すること。

 

「基本的にこの上三つを守って下さい」

 

「あの・・・最後の項目は・・・」

 

「ああ、同盟を組むならこっちも何かしらデメリットがあった方がいいと思いまして」

 

「・・・そうですか」

 

「あ、サインしてくれたんですね。えーと・・・何て読むんですか?」

 

六導玲霞(りくどうれいか)って読みます」

 

「ありがとうございます。六導玲霞さん」

 

「ええ、メアリー・ベールさん」

 

メアリーは玲霞から離れにこやかに笑う。

 

同時にヴラド三世もジャックを離す。

 

するとジャックは、

 

おかあさん(マスター)!」

 

と叫び、玲霞に駆け寄り抱きついた。

 

その姿はまさしく母娘(おやこ)そのものだった。

 

「マスターよ、アサシンは魔力消費が少ないとはいえサーヴァント二騎分の魔力供給、大丈夫なのか?」

 

「大丈夫です。私、魔力多いですから」

 

「そうか・・・」

 

「ではカタコンペに行きますか」

 

その後彼等はカタコンペに行った。

 

午後9時 カタコンペ

 

「という訳で同盟を組みました」

 

「いくらなんでも自分勝手がすぎるだろ」

 

「でも、戦力は増えましたよ?」

 

「そう言う問題ではなかろう。マスターよ」

 

カタコンペに着くなりメアリーは獅子劫に六導玲霞とジャック・ザ・リッパーと同盟を組んだ事を伝えた。

 

するとモードレッドはぼやく。

 

「オレは嫌だぞ。こんな殺人鬼風情と組むなんて!」

 

「わたしたちだっていやだよ?でも、おかあさん(マスター)がそうしろっていうなら従う。それがサーヴァントってものじゃないの?」

 

「そうじゃねぇよ!おいマスターオレは絶対反対だぞ」

 

「そうは言っても、ギアスで俺とお前には危害は加えられなくしてるしなぁ・・・」

 

「そうですよ。何度奇襲を仕掛けても戦闘から撤退すれば相手の記憶からアサシンに関する記憶が消えるなんて、マスター殺し特化のアサシンの中でも最強と言ってもいいです。そんなサーヴァントをほぼノーリスクで扱える様にした私の手腕を誉めても良いんですよ?」

 

「こっちに相談も無しにしたのは誉められたものじゃないけどな」

 

「だって言えば反対されるのは目に見えてますし」

 

「まあ、反対するわな。よく覚えていないがそいつに殺されかけた訳だし」

 

「まあこれで黒の陣営は六騎、赤の陣営は八騎になった訳ですから数の上では有利ですよ」

 

「しかしなぁ」

 

「セミラミスってなにか暗殺者らしいことしてます?情報収集とか暗殺とか、全然してない気がするんですけど?教会で神父と何してるかわからないし、だったらアサシンしてないおばさんよりアサシンしてる幼女の方を味方につけるのは当然だと思うんですけど」

 

「いや当然じゃないだろ」

 

「とにかく!黒のアサシン、ジャック・ザ・リッパーを仲間しました!」

 

メアリーは無理矢理納得させようとしている。

 

「よろしくお願いします。獅子劫さん」

 

玲霞は獅子劫に畳み掛ける。

 

「いやまだ納得してないけどな」

 

「え?違うんですか?」

 

玲霞は少し驚いた様子だった。

 

「いやだって、俺らつい数時間前に殺し合ってたんだぞ。それがいきなり『同盟を組みました』って言われて『はい』とか言うと思ってんのか?」

 

「そーだそーだ!」

 

獅子劫の意見にモードレッドも賛同する。

 

しかし、と獅子劫は続ける

 

「そのアサシン―――ジャックがマスター殺しのアサシンとして優秀なのはわかる」

 

「おい!」

 

「アサシンお前はどうしたい?」

 

「わたしたちはおかあさん(マスター)のサーヴァントだからおかあさんの意思にしたがうよ」

 

「そうか、じゃあ六導さんよ。あんたはなんで聖杯大戦に参加したんだ?」

 

「私は元々、相良豹馬がジャックを召喚するための生け贄でした。ジャックが喚ばれる時に殺されかけて、私は生まれて初めて『死にたくない』と願いました。ジャックは私の願いを叶えてくれたんです。だったら私は彼女の願いを叶えるために死力を尽くすのは当然でしょう?」

 

そこでモードレッドが、口を挟む。

 

「おいおい、冗談だろ?いくら命を助けてもらったからってあんたは魔力のない一般人だ。そんな奴がこんなビックリ人間ショーに参加すんのかよ?」

 

「ジャックの願いを叶える為ですから」

 

「じゃあ魔力は?魂喰らいをやることをあんたは肯定したのか?」

 

「ええ、まあ。確かに普通の人を殺すのは気が引けますけど、マフィアとか魔術師とかなら別に大丈夫かな(・・・・・・・)と思ったので。あとジャックが言うには善人より悪人の方が吸収しやすいらしいので、悪人を狙いました」

 

再び獅子劫が聞く

 

別に大丈夫(・・・・・)だと?聖杯戦争では神秘の秘匿をしなければならないのは知っているよな?」

 

「はい、だからマフィアや魔術師を狙ったんですけど」

 

「だから、だと」

 

「ええ、だってマフィアがあんな沢山死んでも誰の迷惑にならないし他の組織との抗争として片付けられると思って。あと魔術師は魔術協会とか監督役とか黒の陣営とかに所属してる人たちが、勝手に処理してくれるかなと思ったんです。まさか魔術師の死が新聞で報道される何て思わなかったので」

 

「なんで報道されないと思ったんだ?」

 

「それはあなたがさっき言っていたじゃないですか」

 

「何?」

 

神秘の秘匿(・・・・・)。どういう種類の魔術師がいるかは分かりませんけど、基本的に魔術師というのは根源にたどり着く為ならどんな犠牲も厭わない仕事中毒者(ワーカーホリック)のような人たちですよね?その気になれば自分の肉体すら改造して(・・・・・・・・・・・)根源にたどり着こうとする人いるかもしれないでしょう?その人が勝手に死んでその秘術が解剖医や一般人に暴かれるのを阻止するために魔術協会は魔術師たちを監督、管理してる筈だと思っていたので、魔術師の死は報道されないと思ったんです」

 

「そう・・・か・・・。なら最後の質問だ。アンタは死ぬ覚悟してここに来たのか」

 

ええ(・・)確かに死ぬのは嫌ですけど、あの娘の願いを叶える為ですから」

 

「・・・」

 

獅子劫とモードレッドは玲霞の異常な精神性に冷や汗をかいていた。

 

(何だこの女?いくらなんでも異常極まりないだろ。本当に一般人だったのか?洞察力と観察力が高すぎる。知性も極めて高い。いやそれよりも精神力が尋常じゃねぇ。こいつはジャックというサーヴァントを娘として扱っている。そしてジャックの為なら、命を差し出すことすら厭わないだろう。それは主従関係とは言えないだろ)

 

獅子劫は驚愕する。

 

(こいつはモルガンやあのカメムシババァ見たいな毒気はない。なのになんだこの寒気は。本当に人間か?確かにアサシンに対する慈愛は本物だろう。しかしこいつには自分がない。自分の命さえアサシンの為なら当然のように投げ出すことができる。こいつはあまりにも異常だ)

 

モードレッドは玲霞の精神性に若干恐れを覚える。

 

しかしそれに目を瞑れば六導玲霞という人間は非常に優秀であると獅子劫は理解した。

 

故に、

 

「とりあえず宜しく頼むわ、六導さん」

 

「ええ宜しくお願いします、獅子劫さん」

 

「おい!マスター!本気かよ!?」

 

「おお、マスターとしてはそれなりに優秀だしな」

 

「だけどなぁ!!」

 

「よろしく、セイバー」

 

ジャックはモードレッドにトテトテかけより抱きつこうとする。

 

「くんな!」

 

「むぅ。ひどい」

 

するとメアリーは、

 

「ジャックちゃんこっちに来て~」

 

腕を広げジャックを誘い、ジャックはメアリーの胸に抱き付く。

 

するとジャックは

 

「メアリー、硬い」

 

と、言った

 

「かたっ・・・!?」

 

「ぶっ!!」

 

その光景に思わず獅子劫とモードレッドは吹き出す。

 

クスリと玲霞も微笑む。

 

ジャックはよく分からないと言った表情を浮かべる。

 

メアリーは予想外の反応に驚いて、ヴラド三世は笑みを浮かべた。

 

こうして聖杯大戦四日目は過ぎて行った。

 

 

テムside

 

午後11時頃

 

彼はジギショアラの拠点に帰ってきた。

 

「戻ったんだね、テム」

 

クロはテムを出迎える。

 

「ああ戻ったぜ。いろいろ準備が必要だったんでな。キャスターは?」

 

「ああキャスターならジギショアラ郊外の別荘に移って貰ったよ。あれの最終調整中」

 

「そうか。で、お前の方はどうなってる?」

 

「うん。どれもすこぶる良好だよ」

 

「そうか。こっちは傭兵を五十人ほど雇った。あと運搬用のトラックと装甲車も用意した」

 

「準備が順調に整っていくね」

 

「ああ。戦闘が始まるとしたら明日の夜だな」

 

「そうかい。なら派手にいかないとね」

 

「そうだなぁ」

 

テムは凶悪な笑顔を浮かべる。

 

「ああそうだ。なんか中東から砂やら土やらがルーマニア入ってきてんだが、どうもそれ聖堂教会がらみの可能性があるんだよな」

 

「中東圏の英雄だよね。土とかが必要ってことは城を作るのかな?いやもしかしたら空中庭園かも」

 

「空中庭園?ガリバー旅行記のラピュータ見たいなものか」

 

「多分だけど」

 

「そうか、じゃあそっちから落とすか」

 

「簡単にいってくれるけど、多分神代の英雄だよ。そのサーヴァント」

 

「城を作るってことはキャスターだろ?だったら俺は負けねぇよ。空から攻める為の方法も考えてある。心配すんなよ。たかが神代の魔術師ごとき(・・・・・・・・・・・・)に遅れを取らないさ」

 

「そうかい」

 

彼らはもうじき動くだろう。英雄の誇りを、矜持を失墜させる為に。

 




という訳で第5話 終了です

投稿が遅れてすいません!

色々考えて、書いては消しを繰り返してました。決してFGOの夏イベにうつつをぬかしてい水着フランちゃん可愛いよぉぉぉぉぉぉ!ひゃっほぉぉぉぉぉぉ!!!新宿アサシンかっこいいよぉぉぉ!!

原作におけるジークポジのホムンクルスには別の名前を与えて生きてもらいました。せっかく2話あたりから裏切り者について言及してたので炉心はその人にやってもらいます。やったねアースくん!出番がふえるよ!

セレニケさんマジヒステリックウーマン。ろくな死に方しないよね。

ジャックちゃんを獲得したのは赤のセイバー・バーサーカー陣営でした。玲霞さんは今後もジャックちゃんのおかあさん兼陣営のブレーンとして活躍すると思います。多分。

玲霞さんのキャラこれであってますか?

とりあえずフランのステータスでも

フランケンシュタイン
筋力:C 耐久:B 敏捷:D 魔力:D 幸運:B 宝具:C
クラス別スキル
狂化:D
保有スキル
虚ろなる生者の嘆き:D+
ガルバリズム:B
オーバーロード:C
心眼:B
と言った感じです。心眼はケイローン先生が頑張ってくれました。


ではまた



『ゆらぎ荘の幽奈さん』の世界に玲霞さんとジャックとフランをぶちこんで幸せにしたい(玲霞のおっぱいにダイブしたい、甘えたい。フランちゃんのおっぱいを育てたい)


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六話 聖杯大戦 5日目その1 開戦

前回のあらすじ

玲霞ママの精神カッ飛びすぎぃ!!

今回は回想をいれながら進めます



午前9時 カタコンペ

 

「人口密度ハンパねえな」

 

モードレッドは寝起きでぼやく。

 

「そんなに気になるのであれば君も霊体化すればよいのでは?」

 

ヴラド三世は実体化しながら進言する。

 

「いやせっかく再び肉体を持てたんだ。睡眠や食事をしたいって思うのは当然だろ。ほれ、こいつだっておんなじだろ」

 

彼女は玲霞と同じ寝袋(昨晩ジギショアラの深夜営業の雑貨店で大きめのを購入)で寝ているジャックを見る。

 

「サーヴァントとは全盛期の状態で召喚されるにしても、あまりにも幼過ぎる気がするのだが・・・」

 

「オレもそう思う」

 

そう、彼等サーヴァントは基本的に全盛期の状態で召喚されるのだ。たとえ少年少女の姿をしていても英雄である以上その精神は見た目以上に成人に近くであってしかるべきなのだ。

 

しかしジャックは違う。見た目が幼い上精神まで幼い。

 

これは極めて異例であるとモードレッドとヴラド三世は思う。

 

「まあ気にしても仕方ないか」

 

「そうだな。余としては昨日の君について気になっているのでな」

 

「あん?」

 

「なぜ、バーサーカーを殺せなかった?君の能力なら十分に殺せた筈だが?」

 

「アーチャーがいつ攻撃してくるか解らないのにあいつ相手に全力回せるかよ」

 

「そうかね?君ならあのバーサーカーを瞬殺してアーチャーを殺りに行けると思ったのだが?」

 

「そんな簡単な状況じゃなかったんだよ。どういう訳かあいつは妙に動きが良かった。アーチャーが入れ知恵したのかは知らねえけど、立ち回りが旨かったんだよ」

 

「そうか。ところで気付いているか?君、バーサーカーをあいつ呼ばわりしている事を。もしかして顔見知りなのかね?」

 

その瞬間、モードレッドは自信の失態に気付いた。

 

「い、いや、ああ多分別の亜種聖杯戦争で戦ったのかもしれないな、うん」

 

「そうか。ならあのバーサーカーの真名は知っているのかね?」

 

「い、いや、知らねえ」

 

「そうか。まあ込み入った事情が在るのなら聞かないが・・・」

 

彼は再び霊体化しようとして、

 

「嘘をつくときは顔を隠した方がいいぞ」

 

と忠告した。

 

(あのおっさん、気付いてんのか)

 

「オレ、そんな分かりやすい顔をしてたか?」

 

するとジャックと玲霞が起床したらしく、

 

「おはよう、ジャック」

 

「おはよー、おかあさん」

 

といいあい、モードレッドにも挨拶してきた。

 

「おはようございます。セイバーさん」

 

「おはよーセイバー」

 

「おう」

 

と、モードレッドは相づちをうった

 

 

午前11時頃 ミレニア城塞

 

カウレスは自信の部屋で考えていた。

 

(今日おそらく、赤の陣営があの空中要塞で攻めて来る)

 

彼はフランの夢の中で見たあの要塞を思い出す。

 

(そしてあのシロウとか言う神父――いやルーラー。あいつは危険だ)

 

「バーサーカー」

 

彼はフランを呼ぶ。

 

「ウゥ?」

 

「あのシロウとか言う神父とキャスターは深追いするなよ。あのキャスターの宝具はもう食らいたくないだろ」

 

「ウゥ!」

 

フランは首肯する。

 

(さてと、俺も準備をするか)

 

彼はこのユグドミレニアを裏切る為に幾つか準備を始める。

 

そして、

 

「フラン、お前に会わせたい奴等がいるんだ」

 

「?」

 

と言った。

 

午後3時 教会

 

ルーラー、ジャンヌ・ダルクはジギショアラの教会を訪れていた。

 

教会に入った瞬間彼女の脳裏に、色黒の青年が映る。

 

「彼は・・・!?」

 

その時足元から鎖が飛び出し彼女の身体を絡めとる。

 

彼女はそれを引き千切ると裏口から外に出て、彼がいるであろう方向に疾走した。

 

教会より数キロ先丘の地下空間には5騎のサーヴァントがいた。

 

セミラミスが口を開く。

 

「さて準備が整った。行くとしよう、諸君」

 

「おいおいアサシンさんよ。この拠点は立て籠るためのものだろ?」

 

アキレウスが訝しむ。

 

「いやいや、前提が違うぞライダーよ。我が宝具は立て籠るのではなく攻めるものだ、このようにな」

 

次の瞬間、彼等の拠点が大きく揺れた。

 

アキレウスとアタランテが外に向かうと空が見えた。

 

いや、自分たちの拠点が飛行しているのだ

 

「冗談だろ・・・?」

 

「いや。これこそ我が宝具の真の姿。虚栄の空中庭園(ハンギング・ガーデンズ・オブ・バビロン)の真骨頂よ」

 

セミラミスは嬉しそうに言う。

 

「この速度なら黒の陣営の拠点までそう時間もかからないでしょう。皆さん戦闘準備を」

 

シロウは彼らに告げた。

 

同時刻 テムside

 

「なんかすげぇ揺れと魔力を感じたけどなんかあったか」

 

ランサーがセイバー達に向けて問う。

 

「あれを見なよ」

 

セイバーが空中に浮かんだ要塞を指差す。

 

「なんだ、ありゃ」

 

「かなり古い時代の英雄の宝具だと思うよ」

 

クロはランサーに言う

 

「あれ?ライダーの旦那は?」

 

「ライダーならブカレストの空港にいるよ。それから君達に伝言がある。『戦争の準備は整ってる。後はクロの指示に従え』」

 

「へえそうか、じゃあ何をすればいい?」

 

「とりあえず町の郊外にある三番目のアジトにあるものをとりに行きたいから、ランサーとアサシン手伝ってくれ。アーチャーとセイバーはキャスターの所に行って、彼の作った物をトゥリファス付近まで運んでくれ。昨日雇った傭兵を使ってもいいよ。その後は合図まで待機」

 

「合図ってなんだ?」

 

「テム曰く『とびきり派手な音を鳴らすよ』だってさ」

 

「ふーん。そっか。じゃあ行くか」

 

彼等はクロの指示通りに動いた。

 

午後7時

 

「まさか領土ごと飛んで来るとは・・・」

 

ケイローンは驚嘆する。

 

フィオレはケイローンに聞く。

 

「ケイローン、敵の拠点は?」

 

「停止しました。おそらくあの草原を主戦場とするのでしょう」

 

要塞から骨がばら蒔かれ、地上に刺さりそれが骸骨の兵隊を形造る。

 

「ほうあんなこともできるのか」

 

クー・フーリンは感心した。

 

「いやービックリだね!」

 

数十分前に牢から解放されたアストルフォは草原の惨状を目の当たりして呑気に呟く。

 

「ヴヴぅぅぅぅぅぅ」

 

フランは敵を前に唸る。

 

「バーサーカー、宝具のリミッターは外すなよ!絶対にだぞ!」

 

カウレスの発言に対してフランは首肯する。

 

「フィオレ、ここから先は我らに任せ下がって下さい」

 

「はい」

 

フィオレはフランと共に来たカウレスと共に下がる。

 

「さて、赤のライダーは俺、赤のランサーはセイバーが相手がするとして他はどうする?」

 

「おそらく赤のアーチャーはどちらかの援護に回るかと」

 

「そうか、できりゃあ俺ん所に来てほしいなぁ。向こうのセイバーとバーサーカーは?」

 

「キャスターのゴーレムと私とバーサーカーが相手にした方がいいかと」

 

「そうか、じゃあ空のことはライダー。お前に任せた」

 

「まっかせてよ!」

 

「さて、手ぇ抜くなよてめぇら!これより先は決死の覚悟でかかれ!必ず敵を討ち果たせ!相討ちは許されない!敗北なんてもっての他だ!敵の首級をあげ勝利しろ!俺達には勝利の二文字しか要らねえんだ!」

 

クー・フーリンは高らかに宣言した。

 

そして。

 

「行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

そして開戦の時はやって来た。

 

ランサーは城から飛び出すと真っ直ぐ竜牙兵の群れに突撃する。竜牙兵の間を縦横無尽に駆け抜け軍団を一掃した。そして要塞に指を指し二、三度指を曲げた。

 

まるでアキレウスを誘うかのように。

 

それを見たアキレウスは思わず出ようとするが、

 

「待て、ライダー」

 

アタランテが静止し、矢を番える。

 

「我が弓と矢を以って太陽神(アポロン)月女神(アルテミス)の加護を願い奉る。この災厄を捧がん――『訴状の矢文(ボイポス・カタストロフェ)』!」

 

その空に向けて放たれた矢は、矢の豪雨となってランサーのいる戦場に降り注いだ。

 

後続のホムンクルスとゴーレムはまともに直撃した。

 

しかし、

 

「何・・・!?」

 

ランサーは矢の豪雨を無傷で凌いだ。いや直撃すらしていない。ルーン魔術で身体能力を底上げし彼女の宝具を完全に避け切ったのだ。

 

「成る程、矢の豪雨すら避けるか・・・」

 

「でもお陰で奴の能力の高さが見れた、ありがとよ姐さん」

 

「そんな呼び方をするな、ライダー」

 

「では、俺も行くとするか」

 

カルナは右側から攻める竜牙兵を駆逐していく黒のセイバーを見つける。

 

「じゃあ俺はあのランサーを倒すか」

 

アキレウスはクー・フーリンを見据える

 

「では援護をしよう」

 

アタランテはアキレウスに進言し、

 

「ああよろしく、頼む」

 

アキレウスは承諾する。

 

そして彼等はそれぞれの標的に向かって行った。

 

草原から程近い場所にモードレッドは着いた。

 

「マスター、今回は遅参しなかったな!」

 

『ああ、前より早い時間に出たからな』

 

モードレッドにマスターからの念話が届く

 

すると、彼女の前にホムンクルスとゴーレムが現れる。

 

『では作戦通りに』

 

「おうよ」

 

獅子劫との念話を切り彼女は目の前の敵に集中する。

 

獅子劫はモードレッドのいる草原から程近い森にいた。

 

「じゃあこっちも始めるますか、っと」

 

彼は自身の後ろの2騎のサーヴァント――ジャックとヴラド三世に告げる。

 

「ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアを暗殺する」

 

ランスロットside

 

ランスロットはホムンクルスに支給されていた槍を使い竜牙兵を仕留めていた。本来、ランスロットほどのサーヴァントの腕力で振るえば自壊は免れない速度の筈だが、ランスロットはその槍をDランク相当の宝具に変えて(・・・・・・・・・・・・・)己の武器としてふるっていた。

 

騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)

 

彼が手にした武器と認識できる物に魔力を通し、Dランク相当の宝具へと変えることのできる宝具。

 

彼はそれを使いただの槍を宝具化して竜牙兵を圧倒していた。

 

すると程近い場所に赤のランサー―――カルナが降り立った。

 

「また会えましたね、カルナ」

 

「そうだなセイバー」

 

ランスロットはゴルドに念話を繋げる

 

(マスター、カルナが来ました)

 

『そうか、ならば全力でねじ伏せろ』

 

(分かりました)

 

「マスターからの許可がでました。全力で行かせていただきます」

 

彼は自身の姿を鮮明にした。

 

「ほうそれが貴様の姿か。何故姿を表した?」

 

「分かりませんか?全力で行くと。私と貴方の戦いに変身宝具(よけいなもの)は必要ありません。あれに割く魔力を全て我が剣に回しました。というより以前の戦いの時に私の身体の大きさなどは計っているのでしょう?だから不要と判断しました」

 

「ああ、そうか。ありがたい。ならばこちらも持てる力で戦わせて貰おう」

 

カルナが槍を、ランスロットは剣を構える。数秒後、双方が激突した。その衝撃で彼等の周りの竜牙兵達が粉々に砕け散った。

 

クー・フーリンside

 

別の場所では、アキレウスとクー・フーリンが

 

「はははははははははは!!」

 

「はははははははははは!!」

 

と、二人とも命をかけた戦いだと言うのに笑いながら戦っていた。

 

しかしその戦闘はあまりにも速かった。

 

その戦闘の最中でもクー・フーリンにはアタランテの矢が飛んでくる。しかし、当たらない。直撃する軌道の筈なのにまるで当たらないのだ。

 

矢よけの加護。

 

クー・フーリンの持つそのスキルの前では飛び道具は無意味なのだ。

 

しかし、

 

「ならば、やり方を変えるか」

 

彼女は、標的をクー・フーリンからクー・フーリンの足元の地面に変え、矢を放った。

 

「む・・・!?」

 

クー・フーリンはアキレウスの槍を受け流し距離をとって再び彼と激突しようとしたら、足元の地面に矢が刺さり、爆発。土煙を上げた。

 

そして突貫しようとしたクー・フーリンの動きが一瞬止まる。その逡巡をアキレウスは見逃さない。

 

アキレウスはクー・フーリンに槍の連撃を見舞う。

 

クー・フーリンはそれを全て受け流し、反撃に出ようとする。

 

しかし今度は彼の目の前に葉のついた木の枝が降ってきた。彼の視界が一瞬塞がれ、顔面にアキレウスの槍が刺さらんとする。

 

「おおお!?」

 

彼はその槍を回避し、距離を取る。

 

(成る程、矢を俺自身に当てるのではなく、俺の周りの状況をほんの少し変え、アキレウスの勝率を上げようと言う魂胆か)

 

「まるで狩人だな。さしずめ、俺は追い立てられる獣と言ったところか」

 

「汝、なかなか鋭いな」

 

「はは、そりゃどうも。でも目的が知れりゃ対策も取れるってもんだ」

 

彼は槍を構え、アキレウスに突貫する。

 

すると彼の足元のから爆発が起き、それがさらに彼の速度を加速させる。

 

「!!」

 

アキレウスはそれを受け止めきれず、弾き飛ばされる。

 

アタランテは援護をしようと矢を二、三放つ。するとクー・フーリンの足元の地面が壁を形造り彼の姿を一瞬隠す。

 

矢が土の壁に激突し破壊されるも彼の姿はそこになく、代わりに槍が刺さっていた。

 

「なに!?」

 

(宝具をおいて行っただと!?)

 

「捉えたぞ、弓兵」

 

真後ろから声がする。アタランテはこの男愚かさと豪胆さを実感する。

 

(よもや武器を囮に私に接敵しようとは)

 

彼女は矢を持つ。矢に番え射るのではなく目の前の敵に突きす為に。

 

クー・フーリンは左手を前に構え、右手を大きく振りかぶる。

「ランサー!!」

 

アタランテそう叫び大きく飛び退いた(・・・・・・・・)。すると彼女先ほどまでいた場所に赤色の槍が飛んできた(・・・・・・・・・・)

 

彼はそれを掴み横合いからやって来たアキレウスの槍を受け止める。

 

「おらぁぁ!!」

 

両者は地に着地したかと思うと再び激突した。

 

彼女は先ほどのクー・フーリンの作戦に驚きを隠せなかった

 

(よもや、宝具が自身の手に帰ってくるという特性を利用し私を討とうとするとは)

 

あの魔術による壁も、地面に突き刺さった槍も、魔術によって偽造したDランク近い気配遮断も、そして彼自身すら、全て囮に過ぎなかった。

 

(これがあの男の実力)

 

おそらくこれが全てではない。

 

しかし彼女はクー・フーリンのレベルの高さを思い知った。

 

 

モードレッドside

 

モードレッドのいた戦場はまさに地獄と化していた。

 

「あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁ!!!!鬱陶しい!!」

 

ホムンクルスとゴーレムは確かに雑魚だ。しかし数が多い。さすがに雑魚相手に十分も時間をかけていたら苛立ちが募る。

 

しかも時々ゴーレムが自壊しては自身の身体を固めようとしてくるのだ。

 

「またかよぉぉぉ!!いい加減にしろやぁぁぁぁぁ!!」

 

もういい加減うっとおし過ぎて宝具をぶっぱなしそうになるのを抑える為に、叫ぶ。

 

ヴラド三世side

 

「これは面倒だな」

 

「うん、うっとうしいね」

 

一方こちらはモードレッドほど苛立ちは募っていなかった。

 

何せジャックの宝具『暗黒霧都(ザ・ミスト)』によってホムンクルスに関しては無力感できるからだ。

 

しかしゴーレムが厄介だった。

 

自壊して砂に近くなるため、ヴラド三世も霧に変化ができず、更に固まるという性質があるためジャックの筋力では脱出できなくなる可能性があるため、結果的にヴラド一人が全てのゴーレムを相手どることになった。

 

「アサシンよ、ここにいるホムンクルスなら食べて良い。魔力を補給せよ」

 

「え?いいの?」

 

「ああよい」

 

加えてマスターに念話を繋ぐ。

 

(マスターよ。ジャックに魂食いを許可した。アサシンに回している魔力を全て余に回せ)

 

『分かりました』

 

「これで全力で戦える」

 

彼はゴーレムに接近し胴体に手を触れ杭を射出した。ゴーレム内部の魔力や石等を杭が吸収、枝分かれし、更に別のゴーレムを巻き込み、彼の前方のゴーレム、ホムンクルスの軍団が全滅した。

 

「叔父さんすごーい!」

 

ジャックは素直に感想を述べる。

 

「さて進もうかアサシン」

 

彼はジャックに言う。

 

彼等は城に向けて前進する。

 

 

フランside

 

フランはシロウ・コトミネと相対していた

 

「ウガァァァァァァァ!!」

 

「くッ・・・!」

 

シロウは思った異常にフランに苦戦していた

 

ステータスはそれほどでもない。いかに心眼があろうともそれほど脅威ではないと、思っていた。

 

なのに彼女は自身の攻撃を読んでいるかのように的確に行動していた。

 

いや、読んでいるのではなく、見てきたかのように。

 

方向転換する黒鍵は電撃で破壊してその魔力を吸収し自身の力に変えていた。攻撃のタイミングが完全に読まれていた。

 

それでもフランは警戒する。

 

この男はまだ宝具を使っていない(・・・・・・・・・・・)。三池典太というキャスターが鍛えたという宝具ではなく。彼自身の宝具を。

 

 

6時間前 トゥリファスの貧民街

 

会わせたい奴がいる、とカウレスはフランを連れて貧民街の路地裏にある寂れたバーに来ていた。

 

カウレスはバーに入ると。カウンターに一人の日本人とおぼしき女性が座っていた。

 

「あんたがあの人のいってたメッセンジャーか?」

 

「ええ、そうよ」

 

カウレスはその女性の隣に座る。

 

その女性はとても扇情的な女性だった。すると彼女はカバンからパソコンを取り出すとあるアプリを起動する。

 

カメラをセットしパソコンに接続し使用可能にした。

 

何をしているのだろう?と思っているとパソコンの画面に一組の男女が現れる。

 

『おー映った映った。この世界オレが参加した聖杯大戦より文明の技術が上な気がするんだけど』

 

『まあそんな事どうでも良いだろ』

 

そこに映ったのは赤のセイバー陣営だった(・・・・・・・・・・・)

 

「? ??」

 

フランは、何が起きているか理解できなかった。

 

カウレスとフランは黒の陣営のはずだ。なのに彼は敵である赤の陣営と繋がっていた?

 

何故?

 

じゃあこの女は、敵?いや殺気は感じない、だけど何だ?

 

分からない。解らない。

 

このカウレス(マスター)は、本当に私の知っている、青年か?

 

「バーサーカー」

 

びくりと彼女は身体を震わせた。

 

「悪いな。今まで黙ってて。あの城の中じゃあまり動けなくてな」

 

「うぅ?」

 

一息ついて彼は混乱する彼女に言った。

 

「俺は魔術協会のスパイだ」

 

「―――」

 

今、何と言った?

 

スパイ?

 

つまりマスターは自身の陣営を裏切っていたのか?

 

「許せとは言わない。そもそもなんでこうなっているか説明させてくれ」

 

「ぅぅ」

 

とりあえず話だけでも聞いておこう。

 

そうしてカウレスは語り始めた。

 

 

話は一年程前に遡る。

 

「なんで俺が呼ばれたんですか?」

 

彼は姉のバックアップとして共に時計塔に在籍していた時、ロッコ・ベルフェバンの部屋に呼びだされた。

 

「何故か?それは君がユグドミレニアの名を持っているからだ」

 

「とは言ってもフォルヴェッジ家はユグドミレニアの中でも新参の家系ですよ?」

 

「そういう事ではない。重要なのは君がユグドミレニア一族の人間であるということだ」

 

「はぁ・・・」

 

「君に聞きたい。君はダーニックについてどれだけ知っている?」

 

「魔術でほぼ不老になっている冠位の魔術師、で60年位前の冬木の聖杯戦争唯一の生存者、ぐらいですかね」

 

「そうかならば聖杯がどこかに消えた、という話も聞いているだろう?」

 

「ええ、まあ。その影響で亜種聖杯戦争が世界中で勃発してる位ですから」

 

「なら、一族の中で、ダーニックは密かに大聖杯を所有しているかもしれない、という噂は」

 

「いえ、知りませんけど?」

 

「そうか。君には姉がいたね、フィオレと言ったか」

 

ロッコの物言いに何かを感じ、彼は怪訝そうに聞く

 

「それが何か?」

 

「もしダーニックが大聖杯を、所有しているとしたらそろそろ起動してもいい頃だ。つまり一族の中で聖杯戦争が起きるかもしれない。君のお姉さんは優秀だから間違いなくマスターに選ばれるだろうね」

 

「何が言いたいんですか?」

 

「果たして彼女はその戦い勝てるかな?」

 

「・・・」

 

カウレスは思考する。確かに姉は優秀だ。このまま時計塔で腕を磨けば典位か色位までいけるかもしれない。ダーニックに届きうる魔術師は彼女だろうと言われているほどだ。

 

しかし、カウレスは知っている。姉はあまりに優しく人間らしい。それは美点だが魔術師はとしては欠点である。

 

もしかすると一族の人間に情けをかけ、相手の命までは奪わないかもしれない。その結果裏切られ殺されるかもしれないというのに。

 

そこまで思考して彼は聞いた。

 

「要点を言って下さい」

 

「あぁ。つまりもし一族で聖杯戦争が起こったら、君達姉弟を支援しようということだ」

 

「成る程、それで60年のダーニックと同じように、魔術協会が聖杯を奪う訳ですか?」

 

「奪うのではない。あれは魔術協会が保有すべきものだ。ユグドミレニア一族ごときが持っていいものではない。だから回収して解析する。我々魔術協会の為にね」

 

「そうですか。で、要件はそれだけですか?」

 

「いや、それだけではないよ」

 

すると、ロッコの部屋のドアをノックし、誰かが入ってきた。

 

「呼びましたか?ロッコ老」

 

「あぁ」

 

その男は長髪に不機嫌そうな顔つきをしていた、この時計塔でも有名な男だった。

 

カウレスは驚きながら言った。

 

「ロード・エルメロイ二世!?」

 

「あぁ、そうだ。そういう君はユグドミレニアの人間だな?」

 

「は、はい。カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニアです」

 

軽い挨拶の後、ロッコはエルメロイ二世に進言した。

 

「二世よ。その少年を秘密裏に育ててくれないか?」

 

「何故そのような事を?」

 

「冬木の大聖杯を回収するため」

 

「ダーニックが持っているかもしれないというのはあくまで仮説に過ぎない筈では?」

 

「それでも、彼には君に教えさせる。彼は強くなって貰わないと、マスターとして選ばれないからな。それに、君も彼の中に眠る才能を埋没させるのは嫌だと、言っていたではないか」

 

「わかりました。できるだけがんばって見ます。カウレス。来なさい」

 

「え?あ、はい」

 

そんな感じで彼はエルメロイ二世に魔術を教えられた。

 

 

ダーニック離反の二週間前

 

「先生。ダーニックが一族の人間に召集をかけました」

 

「そうか」

 

カウレスは姉から、ダーニックが呼んでいると聞いたのでそれをエルメロイ二世に伝えた。

 

「これを渡します」

 

彼はエルメロイ二世に携帯電話を渡す。

 

「これは?」

 

「俺との連絡用です。魔術的な傍受をされるかもしれないので」

 

「成る程、それでこれか」

 

「ええ、一応ロッコ学部長にも渡しました」

 

「よし、いきたまえ」

 

「はい」

 

2日後彼は、ミレニア城塞についた途端ダーニックに、

 

「お前達には、サーヴァント召喚の触媒を探してもらう」

 

と言われ、姉と共に触媒を探した。

 

もちろんその事をロッコと二世には伝えた。

 

ロッコは触媒を提供すると言ったが、それでは怪しまれる可能性があったので断った。

 

そして彼は姉のツテを頼りにフランケンシュタインの怪物の設計図を手に入れた。

 

 

ダーニック離反の当日

 

「これより我々は魔術協会から脱退し大聖杯を旗印に新たな組織を立ち上げる‼その事は先ほどロッコ学部長に伝えた」

 

それを聞いた時の一族の反応は様々だった。

 

ゴルドは期待と不安が入り交じった表情をした。

 

セレニケは楽しそうな表情を浮かべた。

 

ロシェはようやく始まるのかと歓喜の表情を浮かべた。

 

フィオレは不安そうな表情を浮かべた。

 

そして、カウレスの思考は一瞬停止した。

 

(何を言っているんだこの男は?魔術協会を脱退して新たな組織を立ち上げる?それはつまり魔術協会に戦争を吹っ掛けるのと同じじゃないか)

 

「あぁ諸君らを魔術協会の精鋭が我々を殺しに来るだろう。だが安心したまえ。方法は考えてある」

 

そのあとカウレスはエルメロイ二世を通じてロッコと連絡をとった。

 

「そっちにもダーニックの離反は届いているよな」

 

『あぁ、届いているとも。あと2日もすれば五十人の精鋭が君達を殺しに行く』

 

「だったら俺が城の中からその精鋭を手引きするから、俺と姉ちゃんは助けてくれ」

 

『君や君の姉を助けるメリットがない』

 

「聖杯さえ手に入れたら俺たちを殺すメリットもないだろ!」

 

『いや。魔術協会に逆らったんだ。見せしめが必要だろう』

 

「だったらダーニックだけ殺せばいい。そうすればユグドミレニアは崩壊する」

 

『・・・』

 

「それから、ダーニックは何故か余裕だった。何かあるはずだ。例えばサーヴァントに時計塔の魔術師を迎撃させるとか」

 

『・・・成る程、面白い仮説だ。わかった。できるだけ善処しよう』

 

 

 

ダーニックが離反した2日後、彼はサーヴァントを召喚した

 

カウレスはポケットの中のスマホでメールを送信していた。

 

『今すぐ精鋭を引かせろ。サーヴァントに迎撃させるつもりだ』

 

「サーヴァント・ランサー。召喚に応じ参上した。お前が俺のマスターか?」

 

「あぁ私がお前のマスターだ。早速だがランサー。仕事を頼めるかい?」

 

「召喚早々人使い荒いねぇ。ま、いいや。なんだ、マスター。」

 

「実はこの城を魔術協会の魔術師達が囲っていてね、彼らを一人を残して全滅させて欲しいんだ」

 

「成る程、了解だマスター」

 

ランサーは城からでた

 

エルメロイ二世がロッコ学部長に伝え、迎撃中止をさせるより速く、精鋭は一人を残し全滅した。

 

 

 

「と、これが今に至る経緯だ」

 

『成る程ねぇ』

 

画面を通してモードレッドは相づちをうつ。

 

「分かってくれたか、バーサーカー」

 

「うぅ・・・」

 

理解はした。しかし・・・

 

「お前の願いは叶えられない。本当にすまない」

 

「アァ・・・」

 

カウレスは本当に申し訳なさそうに謝った

 

「・・・い、いよ。べつ・・・に」

 

「フラン・・・」

 

「カウ・・・レスは、わたしを・・・りかい・・・して・・・くれた・・・から」

 

「ごめん・・・本当に」

 

『で、何でこんな形で話さなきゃならないんだ?』

 

獅子劫は聞いた。

 

「キャスターのゴーレムがあんたらの拠点を見張ってるからな。そこから動かず連絡を取り合うには魔術的なメールを使ってもよかったが、それだと傍受される可能性がある。それに口頭で伝えた方が伝わり安い事もあるだろ?だから、ビデオ通話の形にした」

 

『機材とか諸々が高かったんだが』

 

「それはすまなかったな。でこの女の人は誰だ?あんたの愛人?」

 

『黒のアサシンのマスター、六導玲霞だ』

 

「相良豹馬は殺したのはあんただったのか?」

 

「ええ。そういう事になります。あとユグドミレニアの魔術師の暗殺集団も全員殺しました」

 

「ツークツワンクもか。そりゃありがたい」

 

『厄介なのかそいつら』

 

「戦闘特化の魔術師の集団。そっちのメアリーより少し弱い十人ぐらいの奴らが同時に襲ってくると思ってくれ。しかも死を恐れない狂信者的な奴らがな」

 

『うん。厄介だな』

 

「あいつらがいたらそれなりに厄介だから、消してくれたのはラッキーだよ」

 

すると、獅子劫は話題を変えた。

 

『まあ、互いの紹介はすんだな。それからお前がスパイだと言う件はメアリーには伝えてあるから心配すんな』

 

「そのメアリーは?」

 

『後ろで寝てる。英気を養うとかほざいてたけど』

 

「まあ大戦そのものは夜にやるし正しい判断か?」

 

『そうだな。じゃあダーニックの暗殺の話をしようか』

 

「そうだな、具体的な策は?」

 

『ジャックに暗殺してもらうのが手っ取り早い』

 

「結界に探知されたらアーチャーとキャスターのゴーレムが来るな」

 

『だったらバーサーカーもジャックに着かせるか』

 

「セイバーはダメなのか?」

 

するとモードレッドは通信に割ってはいる

 

『オレは戦場で暴れてアーチャーの目をこっちに向けさせる。その方が成功率が上がるだろ』

 

「そうか、でもアサシンって対魔力ないんだろ?だったらアーチャーの守りを抜けたとしてもダーニックの部屋に入ったらアウトだ」

 

『どういう事だ』

 

「ダーニックのやつ、ランサーのルーン魔術で部屋をガッチガチに固めてやがる」

 

『ランサー・・・クー・フーリンだったか?そんなにヤバイのか?』

 

「ああ、かなりヤバイ。あとこれはないかもしれないけど令呪でランサーを呼び戻してもアウト。できれば一撃で殺す事ができる手札が欲しい」

 

『だったら、俺の虎の子をジャックに持たせるか』

 

「? なんだそりゃ」

 

『ヒュドラの幼体を加工して作ったナイフがある。それならばどうだ?』

 

「ヒュドラの幼体!?」

 

『あぁ。ロッコのジジイに前金がわりにもらった』

 

「あの爺さんマジでヤバイな」

 

『でどうなんだ?行けそうか?』

 

「多分いけるだろうけど・・・」

 

『なら決まりだな。でそっちの城の結界はどうなってんだ』

 

「あぁ、そうだな・・・」

 

それから結界を開く事のできるパスワードや防衛魔術の位置などを伝えて計画を立てた。

 

 

現在 フランside

 

「ナァァァァァァオォウ!!」

 

「ぐっ・・・」

 

天草四郎は焦る。

 

予想以上に自身に追いすがるフランに押されかけている事実に。

 

いいや、だからこそ笑う。

 

これも、かの主が自身に与えたもうた試練なのだと。

 

 

ランスロットside

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「・・・ッ!!」

 

カルナとランスロットの戦いは拮抗していた。

 

双方の身体には傷がつくがすぐに治癒する。いや回復速度はカルナの方が早い。しかし傷の数はランスロットの方が少なかった。

 

数十、数百と打ち合い、互いの距離が離れる。

 

カルナは口を開く

 

「やはり、以前の貴様は本気ではなかったのだな」

 

「それはあなたも同じでしょう」

 

カルナの言う通りランスロットは以前以上のスピードとパワーがあった。

 

そしてそれは彼の持っている剣を解放したからであることは明白だった。

 

無毀なる湖光(アロンダイト)

 

かの騎士王の聖剣『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』の兄弟剣であり決して刃毀(はこぼ)れすることのない星が鍛えた聖剣。

 

自身のステータスをワンランク上昇させる効果を持つランスロットの愛用の剣。

 

円卓の騎士の中のおいて最高の技量を持つランスロットに極めて相性のいい剣。

 

しかし、ランスロットはある違和感を覚えていた。

 

いくらステータスをワンランク上昇させたとしてもカルナは神の子だ。英霊としての基礎スペックはカルナの方が上の筈だ。本気になれば自分はもしかすると圧倒されているかもしれないと考えていたのに、

 

(おかしい、カルナは本気なのか?)

 

「まさかオレが本気ではないと疑っているのか?」

 

(こちらの思考を読まれた!?)

 

「オレは燃費の悪いサーヴァントでな。いかに一級の魔術師とはいえ、オレが本気で魔力放出をすれば一瞬で干からびてしまう」

 

「つまり、あなたは本気で戦う事ができないとでも言うのですか?」

 

「そちらのように魔力供給を代用する手段があれば別だがな」

 

「成る程・・・」

 

ランスロットはカルナの違和感を理解すると共に彼の危険性を理解した。

 

(マスターの魔力を気にして出力を抑えてこの実力だと?)

 

「さあ、戦いを続けよう」

 

カルナは槍を構える。

 

ランスロットは剣を構える。

 

互いに踏み込み、両者は激突した。

 

(問題なのはあの超回復だ。いくら傷をつけようと一瞬で回復する。マスターからの支援だけではない。おそらくあの鎧の効果だ。あれを取り除いた上で我が全力の一撃を加えるしか勝機はない)

 

ランスロットは考える。

 

(あれ程の技量を持った騎士が以前より速く重い一撃を何度も放ち、こちらの攻撃を回避し弾き続けるとは、槍がほとんど当たらん)

 

カルナも考える。

 

状況を変える事のできる手札。

 

つまり。

 

(宝具しかない)

 

互いに距離を取る。己が宝具を打ち出す為に。

 

 

クー・フーリンside

 

クー・フーリンとアキレウス、アタランテは草原から膨大な魔力を感知した。

 

クー・フーリンとアキレウスは、

 

「へえ、向こうは宝具の打ち合いになるのか」

 

「そうらしいな」

 

「お前は使わないのか?最速の英雄?」

 

「そりゃこっちの台詞だ、大英雄。と言いたいところだが、あんたとは一対一でやりたいからな。宝具を開帳させてもらおう」

 

「ほう。そうか、ならば俺も・・・」

 

「いや、開帳すんのは俺一人さ」

 

互いの距離は20メートルも満たない。アキレウスの槍に魔力が満ち、投げる。

 

「?」

 

彼は疑問視した。何故自分を狙わず自分たちの間の中心を狙ったのか。

 

宙駆ける星の穂先(ディアトレコーン・アステール・ロンケーイ)!!」

 

次の瞬間槍を中心に結界が展開された。

 

「こいつは・・・固有結界か!?」

 

「いや、そこまですごい物じゃない。ここは闘技場。ここじゃ互いの宝具は使えない。まぐれも起きない。もちろん、マスターの令呪もな。純粋な実力勝負。どちらかが倒れるまで結界が展開され続ける」

 

「成る程。確かに宝具は使えないらしい」

 

すると彼は槍を納め近接格闘の構えを取る。

 

「いいな。あんた最高だ!」

 

アキレウスも近接格闘の構えを取る。

 

彼らは互いにぶつかり合った。

 

「まさか弾き出されるとわな」

 

アタランテは嘆息する。

 

(さてどうしたものか・・・)

 

アタランテは考え、

 

「ランサーの援護に行くか」

 

ランサーの援護にいこうとすると、セミラミスから連絡が入った

 

『アタランテよ、ルーラーが来ている。足留めせよ』

 

「何?」

 

『貴様のマスターからだ』

 

「・・・わかった」

 

ランスロットside

 

「極光よ―――」

 

ランスロットの剣に魔力が満ちる。

 

それをみてカルナは笑みを浮かべる。

 

(素晴らしい魔力。剣戟。技量。貴公が全力ならばオレも―――)

 

カルナの肉体から鎧が剥がれていく。そして槍が神々しい力を宿す。

 

(バカな・・・)

 

その戦いを見ていたゴルドもランスロットと同じ感想を持った。

 

『セイバー、勝てるか?』

 

(分かりません。ですがこれはピンチではありますがチャンスです)

 

『何?』

 

(鎧が剥がれている。つまりあの超回復がない。直接宝具を叩き込めば勝機がある)

 

『あの一撃のあとお前が生きていたならな』

 

(ですから)

 

『令呪を切れと?』

 

(ええ)

 

『わかった。ついでにホムンクルスの魔力も好きに持っていけ』

 

(有り難うございます、マスター)

 

瞬間、更にランスロットの剣から光が輝く。

 

限界以上に魔力が剣に満ちている。本来であればすでに解放しなければ剣が砕けてしまう程に。

 

それでもまだ解放しない。

 

「神々の王の慈悲を知れ」

 

「最果てに至れ」

 

彼ら同時に言葉を口にする。

 

「インドラよ刮目せよ」

 

「限界を超えよ」

 

それは覚悟の現れだ。

 

「絶滅とは是、この一刺」

 

「彼方の王よ、この光を」

 

さあ、放て。互いの名誉、誇りにかけて敵を討ち滅ぼす為に。

 

「灼き尽くせ―――日輪よ、死に随え(ヴァサヴィ・シャクティ)!!」

 

「ご照覧あれ―――無毀なる湖光(アロンダイト)!!」

 

太陽のごとき光が槍から放たれる。

 

月光に当てられた湖面のような輝きが剣から放たれる。

 

拮抗はしない。

 

槍の一刺がランスロットの剣から放たれる光を貫いてゆく。

 

そして・・・

 

ランスロットのいた場所で爆発が、起きた

 

「ふぅ・・・」

 

終わったとカルナは確信する。

 

(楽しめたぞセイバー)

 

そしてカルナは他のサーヴァントがいる方向をみて、

 

「まだだ」

 

鎧が欠け、身体の所々が灼け、煤けた臭いを発するセイバーが接敵しているのを感知した。

 

槍で弾こうとするも遅かった。

 

縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)!!」

 

「ぐっ・・・!?」

 

ランスロットの剣はカルナの右脇腹か左肩にかけて切り裂いた。

 

そして、鎧の防御が完全に消えたカルナの傷口から月光のような光が見えた。

 

「これは・・・まさっ!?」

 

「もう遅い」

 

そして先ほどの対軍宝具に匹敵する爆発がカルナを内側から襲った。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

(有り難うございますマスター)

 

『ふん。よくやったセイバー、令呪を二画消費したかいがあったというものた』

 

そう、ランスロットがあの宝具から生き延びたのはゴルドが令呪を二画きったからだ。

 

カルナの宝具が当たる直前に『転移』の命令。

 

完全に避けきれなかったが。それでも生きていた。

 

そしてカルナが完全に油断したタイミングで『宝具でカルナを倒せ』という命令。

 

それによってランスロットはカルナを討ち取ったのだ。

 

(霊核は完全に破壊したはずだ)

 

すると地に伏していたはずのカルナが口を開く

 

「セイバー・・・よ」

 

(バカな、まだ生きているだと!?)

 

ランスロットは、驚愕する。

 

「そう・・・構えるな。もう消滅を待つしかない身だ・・・だからオレの最後の願いを聞いてくれ・・・」

 

「・・・なんでしょう」

 

「オレのマスターを殺さないでやってくれ」

 

「それは・・・」

 

おそらくそれは無理だろう。だが・・・

 

『わかった約束しろ、セイバー』

 

(よいのですか?)

 

『あぁ、速く答えよ』

 

「分かりましたランサー」

 

それからランサーはマスターの名を告げた。

 

「それから・・・もう一つ・・・。貴公の・・・真名を教えてくれ・・・」

 

(マスター)

 

『答えてやれ』

 

「我が真名はサー・ランスロットと言います」

 

「ランスロットか・・・有り難う。いい戦いだった」

 

そう言い残して赤のランサー、カルナは消滅した。

 




はいという訳で今回話は終了です

思った以上に話が進みませんでした。

聖杯大戦最初の脱落者はカルナさんでした。カルナファンの皆さんごめんなさい。

ランスロットの宝具の口上ちょっと変えました。

Apocryphaアニメやべえよフランちゃん脱落してるし吸血鬼こわいし



次回 中盤戦




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七話 聖杯大戦 5日目その2 聖戦蹂躙

前回のあらすじ

大戦開始



午後11時頃

 

モードレッドはホムンクルス、ゴーレムと戦っていた。

 

すると凄まじい魔力の放出を感知しその方角をみた。

 

その光には見覚えがあった。いやあの騎士があのように剣を使うは初めて見たかもしれない。しかしあの輝きは間違いなく知っていた。

 

(マスター敵のセイバーの真名がわかったかもしれない)

 

『誰だ?』

 

(ランスロット。あのフランス野郎が黒のセイバーなら姿を隠して戦っていたのも頷ける)

 

『と言うと?』

 

(あいつは滅茶苦茶合理的なんだよ!あんだけの技量と実力があんのに慢心も妥協とか一切せず最善手ばっか打ちやがる。そのくせしっかり功績あげてくるし!マジでムカつくわアイツ!!)

 

『そんなヤバイのかよ?』

 

(あぁヤバイよ。姿を隠して敵に近づいて円卓最高峰の技量で襲ったり最悪対人対軍宝具ぶちかまして来やがる)

 

『対人対軍宝具?』

 

(簡単に言うと対軍宝具級のエネルギーを切りつけた相手の傷口から炸裂させる悪辣極まりないクソッタレチート宝具だよ)

 

『そ、そうか』

 

(あ、一旦念話切っていいか?そろそろ黒のライダー・・・あのバカが降ってくるはずだからな)

 

『ああ、わかった』

 

念話を切った数秒後、空からライダーが落ちてきた。

 

 

ケイローンside

 

ケイローンは城の高台から戦場を見渡しホムンクルスに指示を出していた。

 

(トゥーレはホムンクルス五人を連れてバーサーカーの援護に、アース等魔術に特化したホムンクルスは負傷したホムンクルスの治癒を、戦線復帰が臨まれるホムンクルスはゴーレムと共に戦場で竜牙兵の殲滅を)

 

的確に指示を飛ばしながら竜牙兵を撃ち壊していく。

 

するとサーヴァントが城の中に侵入したのを感知した。

 

(何!?)

 

赤のバーサーカーが進行していた側の森から帰って来た一体のホムンクルスの身体が変化する(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

(キャスター!!ゴーレムを!!)

 

『了解した』

 

ケイローンはアヴィケブロンに念話を飛ばし、バーサーカーがいる地点の近くに移動し矢を放った。

 

(ふむ、反応が早いな)

 

ケイローンの矢を回避する。

 

するとヴラド三世の後方からゴーレムが現れ、彼に剣を降り下ろす。

 

彼はそれを槍で受け止めた。

 

するとゴーレムの剣から爆炎が発生し(・・・・・・・・・・・・・・)彼を焼き殺そうとした。

 

「ぐあぁぁ!?」

 

いかに彼でも至近距離からの爆炎は避けられず、直撃してしまう。

 

そしてその隙をアーチャーは見逃さず矢で攻撃する。

 

彼は全身を霧状に変化させ回避した。

 

(なんだ今のは?)

 

今日の起床後の会話のあとモードレッドからスパイの存在を知らされ、黒の陣営のサーヴァントの真名やあの通信も聞いていたが、ゴーレムの剣が火を噴くなど聞いてはいなかった。

 

しかし彼は努めて冷静だった。

 

(まさかクー・フーリンのルーン魔術か?それをゴーレムの剣に仕込んだのか?)

 

更に増えたゴーレムとケイローンの攻撃避けつつ考える。

 

(いやあのゴーレム達の大半は先ほど出現した物だ。ならば・・・)

 

彼は一体のゴーレムに接近し切り裂いた。すると傷口から蔓のようなものが溢れ彼を絡め取ろうとする。

 

「くっ・・・!」

 

彼はそれを回避し更に仮説を立てる。更にゴーレムも増えていた。

 

(ゴーレムは土を使う。先ほども地面から出現していた。もし地面にクー・フーリンのルーンが張られていて、それを使用可能の状態でゴーレムを作れるのだとすれば・・・)

 

杭を射出しゴーレムを破壊する。すると破壊されたゴーレムの破片が集まり、槍となって彼に飛来する。

 

それを回避するもケイローンの矢が彼の胴と肩に刺さる。

 

「ぐうぅ・・・!」

 

ダメージを受けながらも彼の思考は極めて冷静だった。

 

(成る程。ゴーレムマスターとアルスターの大英雄の複合魔術工房と言ったところか!)

 

極めて厄介な代物だ。さらにケイローンはトラップの位置に自身を誘導することができる程の男であると理解する。

 

そして再び攻勢に入ろうとした時、空中庭園の辺りから強力な魔力を感知した。

 

 

ケイローンは気付けなかったが、ヴラド三世の出現と同時に黒のアサシンことジャックが城内に侵入していた。

 

それと同時に別の一団も侵入していた。

 

午前0時

 

それはその場にいたほぼ全てのサーヴァントと魔術師が感知した。

 

空中庭園の数千メートル上空を飛行していた戦闘機が空中庭園に向け突貫し宝具のような魔力を放ったかと思うと空中に波紋が浮かび空中庭園になにかを射出した。

 

それはミサイルといったものでなく、()戦車(・・)軍用ヘリ(・・・・)コンテナ(・・・・)ジャンボジェット機(・・・・・・・・・)海輸用タンカー(・・・・・・・)等の本来落とす用途のものでないものだらけで、ほとんど魔力も帯びてなかった。

 

そのほとんどが庭園から出た魔力砲で破壊され、防御結界に激突し爆発した。

 

そんな破壊の間を縫うようにして一機の爆撃機が庭園に接近する。それは極めて濃密な魔力を孕んでいた。

 

セミラミスは破壊しようとするも本来爆撃機がしないようなありえない機動で躱され、その機体の機関銃の弾丸によって結界を破壊され結界を通過された。

 

そして庭園の中央の柱の上部に激突、爆発し、中央の柱の三分の一を蒸発させた(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

爆発が収まった後、最初の戦闘機が柱の内部に侵入した。

 

空中庭園 王の間

 

王の間の天井が破壊され、次々と兵士たちがなだれ込む。セミラミスは怒りのあまり無表情になっていた。

 

すると一人の男が降り立った。

 

男は茶髪で大柄だった。

 

その男こそ、この薄汚い蛮族共を総べる王であると認識した。

 

「いやー悪い悪い。自慢の庭園に穴あけちまって。でもこんな壊しがいのあるもんふわふわ浮かせてるあんた等の責任なんだぜ」

 

さも当然のように責任を押し付けてくる。

 

「なんだよ怒ってんのか?じゃあこの最高級ワインやるから怒りをおさめろよ、女王さまよぉ」

 

懐からワインの瓶を取り出すも、セミラミスの魔術で破壊される。

 

「おいおい、これ結構高かったんだぜ。どうしてくれんだよ」

 

「それで我の怒りが収まるとでも?」

 

「思うわけねぇだろ。煽りたかっただけだ」

 

「なるほど・・・ではその不遜と愚行、死をもって購うがいい!!」

 

彼女は第二宝具『驕慢王の美酒(シクラ・ウシュム)』を発動する。

 

空気や魔力そのものにすら毒を添加し、毒に関する逸話を持つものであれば幻想種ですら召喚可能な宝具。

 

それで彼女はヒュドラを召喚し、彼の軍隊を屠っていく。

 

彼も宝具を発動しようとするも、毒によって口から血を吐き膝から崩れおち、ヒュドラに食い殺された。

 

「ふん・・・あまりにあっけなかったな。名も知らぬ王よ」

 

彼女は終わったと認識し宝具の発動を解いた。

 

そしてふと、天井の穴を見た。

 

穴の淵に人影を見た。

 

■■■■■■■■(■■■■■■■■■■■■)

 

それが何かを呟いた後、魔力が周囲を侵し、王の間にいる彼女をも飲み込んだ。

 

次の瞬間、彼女は草原の上に立っていた(・・・・・・・・・・)

 

「ま、さか・・・固有・・・結界、か?」

 

「その通り」

 

横から声がした。

 

見ると5メートルほど先に、先の男が霞むほどの王としての覇気を持った男がいた。

 

「こいつはちと特殊でな。こうやって敵を閉じ込める事もできるが、現世の物を収納したりする蔵としても使えるんだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・)。」

 

彼女は話をききながら宝具を使おうとするも、

 

「遅い」

 

一気に距離を詰められ、胸元を深く切り裂かれた。

 

「あ・・・」

 

男は仰向けに倒れたセミラミスから霊核たる心臓引きずりだし、食べた(・・・)

 

「なるほどなるほど、真名セミラミス(・・・・・・・)。宝具この空中庭園(ハンギング・ガーデンズ・オブ・バビロン)毒を操るやつ(シクラ・ウシュム)だけ・・・しかも庭園がないと毒の宝具は使用でいないとわねぇ。かなりピーキーなサーヴァントであることは理解した(・・・・)。しっかしマスターがルーラー・天草四郎時貞(・・・・・・・・・・・)ねえ。ま、60年の準備が水泡に帰して残念だったな。ごくろうさん」

 

固有結界を解除し崩壊していく庭園の中でセミラミスの霊核に存在している情報(・・・・・・・・・・・・・・・・・)を手に入れ、整理する

 

「しかし二重召喚(ダブルサモン)たぁね。おもしれぇスキル持ってんなぁ。貰うか、このスキル(・・・ ・・・・・)

 

その瞬間彼は、二重召喚というスキルを手に入れた(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「さて。派手に合図したんだ。動けよバカ共」

 

 

庭園が崩壊していく光景はそこにいる全てのサーヴァントが驚愕した。特にシロウはその光景が理解できなかった。

 

(まさか、セミラミスが負けたのか?あの庭園の中で?)

 

あり得ない、なぜ?

 

「おやおや。これは悲劇的ですなぁ」

 

シェイクスピアはどこか嬉しそうに言う。

 

フランはこれがチャンスとシロウを討ち取ろうとする。すると肩に矢が刺さった。

 

「何を呆けている神父」

 

そこにはアタランテがいた。

 

「アタランテ」

 

「私の元のマスターからのリンクが切れた。貴様もサーヴァントを失ったのだろう?ならお前と契約するぞ。承認しろ」

 

「そう・・・ですね。私にも悲願がある。こんなところで負けていられない」

 

「そうですな!それでこそマスター!」

 

「やかましいぞキャスター。それからシロウ、お前がサーヴァントと拮抗できる理由は後で説明しろ」

 

「分かりました」

 

「よし。さて・・・む?」

 

そこには先ほどのサーヴァントがいなかった。

 

「どうやら向こうは撤退したらしいな」

 

「そのようですね・・・。キャスター!」

 

「は・・・」

 

キャスターが返事をしようとして。キャスターの側頭部を何者が殴りつけた。

 

それは髑髏の面を被った黒衣の男だった。

 

「ふむどうやら当たりらしいな」

 

地に伏したシェイクスピアの頭部を踏み潰しながら黒衣の男は言う。

 

「ハサン・サッバーハ・・・」

 

「人目で我が真名を当てるか・・・俺以外全ての山の翁の攻略法が存在する辺り、暗殺者として優秀過ぎるのも考え物だな」

 

「俺以外・・・?」

 

「あぁ、少なくとも俺は攻略法が存在しない、唯一の山の翁だよ」

 

「バカな・・・山の翁は十九人、全て召喚され攻略法も網羅られている筈だ」

 

「全ての情報が正しいという訳ではないだろう。何せ十九人もいるんだ。一人ぐらい誤った情報から構築された役に立たない攻略法も存在す・・・」

 

そこまで言った瞬間、アタランテの矢がハサンと名乗る男の頭と胸を射った。

 

射られた衝撃で数メートル吹っ飛ぶ黒衣の男。

 

「随分口が回る暗殺者だな」

 

「アーチャー・・・」

 

「行くぞマスター」

 

シロウとアタランテがその場から離れようとした時、ハサンがいた方向から短剣が飛んできた。

 

「くっ・・・!!」

 

シロウはなんとか躱し、アタランテも躱した。

 

「まさか生きているとはな」

 

『これでも山の翁の名を継承していてな。狩人の癖に死体の確認を怠るとはな』

 

ハサンは暗闇に身を隠して嗤う。

 

すると今度は右側から短剣が飛んでくる

 

シロウはそれを弾きおとし、アタランテがその黒い方向に矢を放つ。

 

しかし直撃しない。躱わされる。

 

すると攻撃が唐突に止んだ。

 

「?」

 

『行くがいい。我々の頭領が呼んでいる』

 

「何?」

 

『我々の頭領がお前と逢いたがっていると言っているんだ。早く行け』

 

「我々?」

 

『もう気づいているのだろう?』

 

黒衣の男は一拍おき、

 

『俺と頭領以外にもあと4人いるぞ』

 

そう言って何処かに消えた。

 

「ちっ・・・」

 

アタランテは舌打ちした。

 

するとシロウが、

 

「アタランテ。赤のセイバーがいる戦場に行きましょう」

 

「何?」

 

「彼らの頭領と名乗る男はそこに出現するという啓示が来ました」

 

「わかった」

 

アタランテとシロウは赤のセイバーの所に向かった。

 

 

クー・フーリンside

 

赤のマスターが死亡しリンクが切れた瞬間、アキレウスの動きが一瞬鈍くなった。

 

クー・フーリンはその隙を見逃さず彼の心臓を手刀で穿った

 

「がっ・・・!!」

 

その一撃が決まった直後、結界が解除された。

 

「これで仕舞いだ」

 

「いいや・・・まださ」

 

霊核が砕かれているはずなのに、彼は立ち上がり言った。

 

「へぇ、まだ動くか」

 

「当然・・・と言いてぇ所だが生憎宝具一回使えるか使えないか位だな」

 

「そうか」

 

「だからあんたの最強の宝具と俺の最硬の宝具、どっちが勝つか試して見たい」

 

「ほう、おもしれぇな。その話、乗ったよ」

 

クー・フーリンは距離を取り槍を構える。

 

対するアキレウスも盾を用意する。

 

双方に緊張が走りそれが最高潮まで高まった時、

 

突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)!!」

 

蒼天囲みし小世界(アキレウス・コスモス)!!」

 

彼らは同時に宝具を解き放つ。

 

アキレウスは最硬の盾を、クー・フーリンは最強の槍を。

 

双方の宝具は直撃した。

 

「おおおおおおおおおお!!!!」

 

アキレウスは叫ぶ。

 

元々突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)は対軍宝具だ。解き放つと槍の穂先がいくつも枝分かれし大軍を殲滅する。しかし先ほどアキレウスに放った槍は枝分かれしていなかった。彼はルーン魔術で射程範囲を殺し、威力を増大した。その結果彼の宝具は本来ランクB+であるにも関わらず、ランクA+相当の宝具と化していた。

 

しかしそれでもアキレウスを殺しきれていない。盾に阻まれていた。

 

そしてその盾が槍を完全に防ぎ切った。

 

「はっ、すげえなその盾。この槍を解放したからには確実に殺し切らないといけねぇってのによ」

 

クー・フーリンは思わず笑う。

 

アキレウスも笑って。

 

「どうだよ。トロイア戦争を、神々が関わった最大の戦争を駆け抜けた英雄の力は」

 

と言う。

 

しかしそこまでだった。

 

アキレウスは膝から崩れ落ちる。

 

「ははっ。俺もここまでか」

 

「そうらしいな」

 

「お前見たいな戦士ともっと楽しく戦いたかったのによ」

 

「そうだな」

 

「ありがとう。クー・フーリン。アイルランドの光の皇子よ。お前との戦いは最高だった」

 

「去らばだ、アキレウス。誉れ高いギリシアの戦士よ」

 

そうしてアキレウスは消滅した。

 

その直後、クー・フーリンに向けて棒が襲いかかってきた。

 

彼はそれを手元に戻ってきた槍で防ぐ。

 

「人が気持ちよく戦った後なんだ。空気読めよ」

 

彼の声に怒気が籠る。

 

襲撃者は猿顔に金の鎧を着た男だった。

 

「いやぁ、あんまりにも気持ち良さそうな戦いだったしよ。横やり入れんのは早死に野郎が死んだ後でもいいかなって」

 

「早死に野郎だと?」

 

「だってそうだろ?こいつの生前にしろ今回にしろ、結局早死にしてんだろ?」

 

「てめぇ・・・!」

 

「あ?何?もしかして友情でも感じてた?」

 

「違うな。アイツは俺が認めた戦士だ、それを侮辱するな」

 

「わりーな。生前からそういうのには縁がなくてね」

 

「だろうな、お前からは獣に近い臭いがする」

 

「当然だろ?俺様はそういう存在だからな」

 

「そうか。で?てめえはどこの陣営のサーヴァントだ?」

 

「呪肉したサーヴァントなのにそんなに驚かねえんだな」

 

「いや、驚いてるさ。けどそれ以上にてめぇにむかつくだけだ」

 

「そうかよ」

 

クー・フーリンは正体不明のサーヴァントに突貫する。

 

対するサーヴァントも長棒を構え戦う。

 

 

ランスロットside

 

彼は森の中を城に向かって駆けていた。

 

マスターから敵のバーサーカーが城内に侵入したと聞き全速力で戻ろうとしていた。

 

その途中ある人物と出くわした。

 

それは日本人だった。

 

男とも女とも取れる顔立ちの170cm前後の男。

 

「やあセイバー」

 

「貴公は・・・?」

 

「あぁ僕はさっきあの庭園の主を殺したやつの仲間で・・・」

 

彼は一旦言葉を切り、

 

「君達の敵だ」

 

思い切りかかった。

 

彼の剣を受け止め弾き飛ばす。

 

「ははっ」

 

彼は弾き飛ばされるも軽やかに着地し、再び彼に切りかかる

 

「くっ・・・!!」

 

(早く戻らねばならないというのに・・・)

 

「どうしたの?戦いを楽しみなよ?」

 

「生憎と、そのような時間はない・・・!!」

 

ランスロットは彼を圧倒しマスターの所にいこうとする。

 

 

ダーニックside午前0時30分

 

「なんだこの状況は・・・!?」

 

ダーニックは今この聖杯大戦で怒っているイレギュラーに頭を抱えていた。

 

赤の陣営が領土ごと攻めてくるのはいい。その庭園が落とされるのもまだいい。だが突然サーヴァントの反応が6騎分増え、両陣営に対して敵対するなど理解できなかった。

 

すると唐突に扉が開いた。

 

「やぁ、久しぶりだね。ダーニック」

 

「貴様は・・・確かテム・ウォンの部下の・・・」

 

「覚えていてくれてありがとう。そう、僕はテム・ウォンの秘書のクロというんだ。早速で悪いんだけど死んでくれないかな?」

 

彼はダーニックの部屋に結界を張る。

 

「これは・・・ッ!」

 

「この部屋と外を遮断する結界だ。君は君のサーヴァントは魔力のパスはできても、念話や令呪の命令はカットされる。昔研究に没頭するために作ったやつなんだけど、こんなことに使う羽目になるとはね。しかも魔術礼装まで使うとは、我ながら泣けてくるよ」

 

彼は喋った後、黒色の箱を懐にしまい、掌をダーニックに向け光弾を放つ。

 

ダーニックはそれを弾いた。

 

「この程度の二流魔術で私を討ち取れるとでも」

 

ダーニックの物言いに対しクロは微笑み、

 

「ごめんね、僕は魔術回路と魔力しか取り柄のない、技術は二流の魔術師だから」

 

「宝の持ち腐れだな」

 

「否定しないよ、けど・・・」

 

クロは再び光弾を作る。

 

ただし、一度に50個も。

 

「なっ・・・!?」

 

「言っただろう。僕は魔術回路と魔力しか取り柄がないって」

 

それを一気にダーニックに向けて放つ。

 

ダーニックは防御魔術を全開し、堪え忍んだ。

 

「へぇ・・・耐えるんだ」

 

「我が六十年の執念をなめるなッ・・・!」

 

ダーニックの周囲に魔方陣が浮かび光線が放たれる。

 

(不味いな。今ので仕留めるつもりだったのに)

 

クロは自身の手を動かし目の前に壁があるかのような動作をする。

 

すると見えない壁が出現し、ダーニックの攻撃を弾いた。

 

「何?」

 

「驚くことはない。そういう魔術を使っているだけさ」

 

彼は左手で何かを握る動作をしてさらに右手で左手で持っていたものを引き抜く動作をしながらダーニックに向かって走り出した。

 

まるで見えない剣を握っているかのように。

 

ダーニックまで2メートルといった所まで近づいた瞬間、足元から炎が襲いかかってきた。

 

「くっ!」

 

真横に飛び炎を回避する。

 

「今の、ルーンが見えた気がするんだけど。ルーン魔術師でも雇ったの?」

 

「さぁどうだかなぁ」

 

ダーニックはせせら笑う。

 

「ふーん」

 

クロは時計を見る。時刻は午前1時を回っていた。

 

(終わらせるか)

 

彼は黒色の箱を取り出す。

 

黒色の箱から莫大な魔力が溢れ、全てクロに流れていく。

 

「なんだと!?」

 

クロは何か呟きながら右手を振るった。

 

すると風の斬撃がダーニックを切り裂いた。

 

 

午前0時45分

 

ダーニックが切り裂かれる十五分ほど前。

 

モードレッドはアストルフォを軽くあしらっていた。

 

あしらいながら、モードレッドは現在の戦局を考えていた。

 

(赤の損害はアサシン、ランサー、おそらくライダーも殺られてるな。対する黒の損害は今の所なし。けど黒には魔術協会寄りのサーヴァントが2騎、赤にも2騎。現状は黒5騎、赤3騎、魔術協会4騎って所か)

 

しかし、

 

(問題なのは増えたサーヴァントだ)

 

モードレッドが感知したのは3騎。

 

庭園を墜とした者、城塞付近の森と黒のランサーと赤のライダーが戦っていた場所に現れた者達。

 

(さて、どうしたもんか)

 

「そらっ!」

 

アストルフォが槍で攻撃するも、あしらわれてしまう。

 

(コイツもそろそろ脱落させる(おとす)か)

 

モードレッドがアストルフォ殺そうとした時、アストルフォの真後ろに何者かの気配を感じた。

 

アストルフォが気配に気付き振り向いた直後、何者かの左腕が彼の胸を貫き心臓を引きずり出した。

 

「ごぼっ・・・!?」

 

彼は膝から崩れ落ちた。そして自らの心臓(かく)が何者かの口に入っていくのを見た

 

「なっ・・・!?」

 

何者かは口に含んだ心臓を咀嚼し飲み込んだ。

 

そして、

 

真名はアストルフォ(・・・・・・・・・)。宝具は・・・広範囲を吹き飛ばす魔笛(ラ・ブラック・ルナ)空間跳躍が出来る幻馬(ヒポグリフ)足を潰す槍(トラップ・オブ・アルガリア)魔術を破壊する魔本(キャッサー・デ・ロジェスティラ)か。スキルは・・・なんだよあんまパッとしねえな。ステータスも微妙だし、宝具頼りの正統派ライダーってヤツか。赤のライダーとは大違いだな。コイツのマスターは勝つ気あったのか?」

 

「テメェ、何者だ!」

 

「ん?しいて言うならハグレサーヴァントって奴かな。クラスはライダー」

 

「ハグレサーヴァントだと・・・?」

 

「そうそう。つ-かお前、なんか態度でかくねぇか?一応俺も一国の基礎を作った王様なんだが・・・まぁお前みたいなチンピラ騎士には王の風格なんて分かるわけねえか」

 

「王?ハッ!オレにはお前が田舎者のヤンキーにみえるが?少なくとも父上の方がマシだ」

 

モードレッドが煽る

 

「ハハッ!俺からすりゃお前みたいなのを部下にしようとした親父さんの采配を疑うぜ。頭に蛆でも沸いてたんじゃねぇのか?」

 

「あぁ?」

 

「だってそうだろ?お前のようなチンピラを部下にするとか、確実になにかやらかすに決まってる!大方やらかし過ぎて親父さんに見限られたんだろうなぁ!可哀想に!」

 

「・・・・・・」

 

「なんだよ図星かぁ?チンピラ騎士クンよぉ!大方お前の親父さんの国も下らないカスみたいな理由で滅びたんだろう!部下の叛逆とか国民の反乱とか・・・」

 

それ以上言葉は続かなかった。

 

モードレッドが魔力放出で接近し切りかかったからだ。

 

彼はその攻撃を己が剣で受け止めた。

 

「人の話の最中に切りかかるとかやっぱチンピラだなぁ。それとも逆鱗に触れたかぁ?」

 

「黙れ・・・!!貴様ごときがあの王の、父上の治世を・・・侮辱するな!!」

 

モードレッドはライダーを切り殺さんとする。

 

しかし彼は口元を歪め彼女の剣を躱し、受け流していた。

 

「最優と名高きセイバーがこの程度か」

 

彼は挑発する。

 

モードレッドは更に頭に血を上らせる。

 

すると真上からライダーに向けて黒鍵が襲いかかってきた。

 

彼はそれを躱し距離を取る。

 

「誰だ!」

 

モードレッドが叫ぶ。

 

「すみません、セイバー。あなたの戦いの邪魔をしてしまって」

 

「シロウ・コトミネ・・・!」

 

モードレッドはシロウに切りかからんとする。

 

「お待ち下さい!」

 

更にもう一人彼らの間に聖女のような雰囲気の少女が割って入ってくる。

 

シロウは若干嫌そうに、

 

「ジャンヌ・ダルク・・・!!」

 

と言い、ジャンヌも驚きを隠せず

 

「貴方は・・・天草四郎時貞!?」

 

と言った。

 

「なぜ貴女が此処に」

 

シロウが問う。

 

「此処に行けと啓示がありました」

 

ジャンヌが答える。

 

「貴女にもですか・・・」

 

「この際なぜあなたが受肉しているのかは問いません。それより、あのサーヴァントは・・・」

 

シロウ、ジャンヌが共にライダーを見る。

 

そして驚愕の表情をする。

 

冷静さを取り戻したモードレッドが問うた。

 

「あいつの真名はなんだ」

 

するとライダーが笑いながら言った。

 

「俺の名前を教えてやれよ。もうわかってんだろ?ルーラー二人は」

 

ジャンヌそしてシロウは同時に言った

 

「「何が目的ですか?蹂躙王 チンギス・ハン(・・・ ・・・・・・・)」」

 

「そうだなぁ。強いて目的を言うとするなら、この聖杯大戦を、英雄の誉れある戦いを蹂躙しに来た」

 

蹂躙者は嗤う。

 

聖人と聖女、そして叛逆の騎士は人類史上最悪の蹂躙者と相対した。

 




という訳でここで7話終了です。

色々考えて、書いては消し書いては消しFGOプレイしたりして遅くなりました

テム・ウォンの正体はチンギス・ハンでした!

多分予測できた人は多いと思います。

テム・ウォンのテムは彼の王となる前のテムジンから取ってますし、わりと非情で冷酷なので。

爆撃機やクロの使っていた黒い箱、クロの正体については次回以降語って行けたらいいなと思います。

ではライダー チンギス・ハンのステータスを

筋力:B 耐久B+ 敏捷C 魔力C 幸運B+ 宝具A

保有スキル
軍略:B+
カリスマ:A-
侵略者:A
皇帝特権:C

クラススキル
騎乗:B

スキルの侵略者はオリジナリスキルです。

全体的にそんなに強い感じにはなりませんね。

まあ生前から彼自ら戦いに出向くことはなかったはずですから、僕が調べた感じでは

次回 混乱する戦争


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八話 聖杯大戦 5日目その3 聖戦混沌

戦況報告

赤陣営脱落者 カルナ アキレウス シェイクスピア セミラミス

黒陣営脱落者 アストルフォ




午前1時頃

 

ルーラーによって目の前のライダーの真名が明かされたあと、モードレッドはマスターと念話を繋いだ

 

(マスター。チンギス・ハンって知ってるか?)

 

『チンギス・ハンだと・・・!?本当にそう言ったのか!?』

 

(そんなに有名なのか?)

 

『12世紀から14世紀にかけて存在していたモンゴル帝国という国の創始者だ。そいつの国は全盛期にはユーラシア大陸の四分の一を支配下に置いていた』

 

(なっ!?)

 

モードレッドはチンギス・ハンを見る。

 

口元はニヤニヤと笑っているが目はこの場にいるすべての人間の挙動を見ている。

 

何か動きがあればすぐに動けるように、注意深く観察している。

 

『それから、城塞内に侵入したジャックからの通信だ』

 

(なんだ?)

 

『ダーニックが何者かに殺害された』

 

(はぁ!?)

 

「この聖杯大戦を蹂躙しに来たと言いましたね。どういう意味ですか?」

 

ジャンヌが問う。

 

「文字通りの意味だけど?英雄様の誇りとか名誉とかを滅茶苦茶にしたいだけだ」

 

「そんなこと何になると言うのです?」

 

「愉しそうだから」

 

彼はへらへら笑いながら言う

 

「俺達は敵を殺戮し、それが当時の人間達に評価されて英雄などと呼ばれるようになった。けど結局人殺し、殺人鬼だ。なのに誇りだの誉れだのそんな綺麗事を並べ立てる。俺はそんな綺麗事を言うやつの本性が見たいんだよ」

 

「本当にそのような理由で?」

 

「八割方嘘だよ。俺がお前みたいなヤツに本当の目的を話すと思ってんのか?それともなんだ?自分はルーラーだから本当の事を話さないと罰を与えるとか言い出すのか?特権を理由にそんな傲慢な態度をとろうとするとは、罪深いな」

 

「いいえ、どうせまともな答えなんて帰ってくる訳ないと踏んでましたから。何せ貴方はチンギス・ハン。虐殺と悪逆の王ですから」

 

「へえ。フランスの田舎娘にもその程度の教養があるとは、驚きだな。それから俺を悪人呼ばわりはやめてくれ。俺は国の領土を広げ国民の平和を願ってたんだ。その願いに反する奴等を皆殺しにして家を焼き土地を蹂躙しただけだ」

 

へらへらと笑いながらジャンヌの質問に答える。

 

「オレも聞きたいことがある」

 

モードレッドが言う。

 

「さっき黒のライダーを仕留めた時、お前はまるでアサシンのように現れた。あれはどうやった?それから黒のライダーの真名をどうやって知った?」

 

「あれは俺のスキル、『侵略者』を使った」

 

「『侵略者』?」

 

「ああ。このスキルは非常に強力でな。殺した相手が魔術師や人間なら心臓を喰えばそいつの記憶を読み取る事ができる。サーヴァントなら|そいつの持っている固有スキルを(・・・・・・・・・・・・・・・)ランクを落として取得できる(・・・・・・・・・・・・・)。だから赤のアサシン・セミラミスのスキル二重召喚(ダブルサモン)を手に入れてアサシンのクラスの効果を付与した。他にも『無力の殻』やら『忍び足』やら『皇帝特権』やらのスキルを平行して使ってようやく不意を討てたってところだな」

 

「お前・・・一体何人の英雄を殺してきた?」

 

「さあな。何回も亜種聖杯戦争に参加してきたからな。5人を越えた辺りから数えるのをやめた」

 

「このクソ野郎が・・・!」

 

モードレッドが毒づく。

 

次にシロウが口を開く。

 

「今度は俺の質問に答えてもらおう」

 

「なんだ?」

 

「庭園の一部を破壊したあの爆撃機はなんだ?」

 

するとチンギス・ハンはニヤリと笑い、

 

「あぁ!あれか!あれは俺の雇っている魔術師二人が改造したヤツでな、魔力を動力原するように改造したんだ」

 

「魔術師・・・つまりキャスターのサーヴァントが改造したのか?だがあの破壊力はおかしいだろう。いかにキャスターのサーヴァントが関わっていたとしてもセミラミスの庭園は極めて頑丈な宝具だ。サーヴァントの改造した現代兵器等では傷つく訳が・・・」

 

「人の話を聞いていたのか?魔力を動力原とするんだぞ?より正確には強力な魔力炉心みたいなものだけどな。ほら?あるだろう?少なくとも十九回以上その魔力炉心を巡って(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)魔術師達は殺し合ったのだから(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「「「・・・まさか!?」」」

 

シロウとジャンヌ、モードレッドが驚愕する。

 

「ああ、その通りだ。亜種聖杯戦争の聖杯(・・・・・・・・・)それを爆撃機に組み込んだ。サーヴァント4騎に匹敵する魔力量を溜め込んでたんだ。そんなものが炸裂すれば要塞型の宝具であろうとダメージを与えられる」

 

彼の説明にシロウは驚愕を隠せなかった。

 

「馬鹿な・・・冬木の聖杯に届かないとは言え聖杯だぞ

。そんなものを機械に組み込んだ?いやそもそもどうやって保存していた?聖杯は無色の魔力の塊だ。少しでも安定性を失えば炸裂しかねない筈だ!」

 

「聖杯について詳しい奴がいただけさ」

 

「だとしても・・・!」

 

「すでに起きてしまった事実だ。受け止めろ」

 

「ぐっ!」

 

「さて問答も済んだ事だし俺達は退かせてもらう」

 

「なんだと?」

 

モードレッドが口を開く。

 

「ここで俺ら全員とお前達で戦ってもいいんだが、今日この戦闘での俺達の目的はほぼ完遂してるからな。だから・・・」

 

そこまで言ったとき思わぬ乱入者が入った。

 

「ナァァァァァオゥ!!」

 

彼の背後からフランケンシュタインが現れ、攻撃を仕掛ける。

 

「アサシン!」

 

彼は叫ぶ。すると彼の背後に黒装束の男が現れる。

 

男は口を開き、

 

断想体温(ザバーニーヤ)

 

と呟いた。

 

彼女のメイスが黒装束の男に直撃する。

 

鋭い金属音の後、彼女は驚愕する。

 

彼はアサシンの筈だ。マスター殺しに特化した白兵戦には不向きなクラス。にも関わらず彼女の攻撃は金属質に変化した彼の左腕で防御されていた。

 

そして彼女の横から赤色に金の装飾がされた棒が襲いかかった。

 

彼女はすんでのところで防御した。

 

しかしそのまま吹き飛ばされた。

 

「大丈夫か?チンギス・ハンの旦那」

 

「ランサー、遅いぞ。黒のランサーは死んだか?」

 

「いや、仕留め損なった。あいつの魔力供給が途絶えたところを狙おうかと思ったんだがな」

 

「そうか。ま、そう長く生きられんだろ。マスターであるダーニックは殺したとクロから念話が届いた」

 

「なっ?!」

 

シロウは驚愕の声をあげる。

 

ランサーがシロウとジャンヌ見る。

 

「へえ。あんたも受肉したサーヴァントなのか。俺はランサーのサーヴァントだ。宜しくな!」

 

彼は陽気に挨拶した後、ジャンヌの全身を舐めるように見て、

 

「生で見るとやっぱりエロいなあんた。そんなエロい格好の女が戦場を一番に駆け抜けりゃ男どもの士気もあがるわな。あぁ~ヤりてぇなあんたと。歳も17か18位だろ?それにサーヴァントだ。多少無茶なプレイでも壊れりゃしねぇだろうし。なあこっちの陣営に来ねえか?忘れられない夜にしてやっからさ」

 

と最低なナンパをした。

 

ジャンヌは殺意を込めた眼でランサーを睨む。

 

「私は貴方達の陣営には与しませんし、貴方のような下劣な人を英雄などと呼びたくありません。ランサー。いえ、斉天大聖・孫悟空(・・・・ ・・・)

 

「なんだ、分かったのか俺の真名。しっかし断られちまうとは。どーする旦那」

 

「俺はあんな堅物仲間にすんの御免だぞ。面白味がねぇ。てめえがさっき吹っ飛ばしたサーヴァントの方がまだいい」

 

「ふーん?ま、機械仕掛けの女とはまだヤったことないしな。チャレンジしてみっか」

 

彼がフランの方を見ると彼女は既にいなかった。

 

「ありゃりゃ。嫌われちまった」

 

「あんなクソみたいなナンパしてたらそりゃ嫌われるわ」

 

「しかしあの機械仕掛けの女・・・バーサーカーか?にしては弱そうだったな」

 

「バーサーカークラスは弱い英霊から理性を飛ばして強化するクラスだからな。元の格が低いか狂化のランクが低いんだろ」

 

「成る程」

 

「そろそろセイバーも来るかな」

 

すると黒鍵と矢が彼らに飛んできた。

 

チンギス・ハンは持っていた剣で、孫悟空は棒で、ハサンは短剣と宝具で防ぐ

 

「逃がすと思いますか?」

 

シロウは彼らを睨む。それはジャンヌとモードレッドも同じだった。

 

するとチンギス・ハンにキャスターから念話が入った。

 

『クロを確保した。戦線から離脱するという事でいいんだな?』

 

(あぁ、かまわない。できるだけ早く離脱してくれ。あんたの作った兵隊で時間を稼ぎながらな。近くにいると巻き込まれかねないからな(・・・・・・・・・・・・・・・・・・))

 

『? わかった』

 

キャスターとの念話を切ると、今度はセイバーに念話を繋ぐ。

 

(セイバー。後どれくらいで着く?)

 

『後二分とかからないよ』

 

(よし分かった)

 

「よし準備が整った。離脱するぞ」

 

「逃がすか!」

 

モードレッドがチンギス・ハンに切りかかる。

 

すると彼の前から1人の人間が現れモードレッドの攻撃から彼を守った。

 

「なっ!?」

 

己の一撃を弾いた人影を見る。

 

「ありがとな、ボオルチュ(・・・・・)

 

「お前は相変わらずだな、テム」

 

「すまねえ。けどお前ぐらいじゃねえとそいつは抑えられないだろ?」

 

「いやギリギリだ。というかこいつら全員抑えるなら俺1人じゃ5分と持たないぞ」

 

「わかってる」

 

彼は一旦言葉を切り、宝具を発動する。

 

大陸殲する覇業の軍(ドルベン・クウルド・ドルベン・ノガス)

 

すると彼の背後に300人近い兵士が現れる。

 

「な・・・!?サーヴァント・・・!?」

 

モードレッドは驚く。

 

「違う」

 

チンギス・ハンは告げる。

 

「こいつらはサーヴァントにも慣れない無名の兵士。それをなんとか現界してる。耐久性に関しちゃユグドミレニアのゴーレム以下だ」

 

それでも、と彼は言葉を続ける。

 

「お前達を足止めするぐらいの力を持ってる」

 

モードレッドに矢が飛んで来る。槍を、剣をもった兵士が襲いかかる。

 

先ほどまで有ったはずの距離が引きはなされる

 

彼は己が兵士に伝える。

 

「お前ら、この俺のために死力を尽くして足止めしろ。ボオルチュ、こいつらに指示しろ、やばくなったらお前だけでも逃げろ」

 

モードレッドは叫ぶ。

 

「待ちやがれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

彼はそんな咆哮を背中に受けながら孫悟空らと共に撤退した。

 

 

午前1時 ダーニックの部屋

 

チンギス・ハンがルーラー達と問答をしていた頃。

 

ダーニック殺害から1分ほど後、クロは本棚にあった仕掛けを解き本棚の奥の羊皮紙の束を見つける事ができた。

 

しかし、

 

「ルーン式のトラップが仕掛けられてるな」

 

彼は呟き、思考する。

 

(下手に解除しようとしたら燃えるようにしてあるな。ダーニックめ厄介なことを。しかもキャスターとそれに匹敵する技量の持ち主が術式に関わってる。箱の魔力のも後僅か。無理は出来ないな)

 

それからこちらにかなりのスピードで近づいてくるサーヴァントを感知する。

 

(この速度、ランサーか。悟空め、しくじったな)

 

彼は急いで部屋の外へでて待機していた6人の傭兵と10人のモンゴル兵士と1人の少年をみる。

 

「君たちはこの部屋にくるサーヴァントと戦ってくれ」

 

「仰せのままに」

 

モンゴル兵士は部屋に入っていく。

 

そして傭兵達には、

 

「君たちはこれを飲んでこの城の魔術師と戦ってくれ」

 

「・・・ああ、分かった」

 

傭兵達には虚ろな眼で彼から渡された赤褐色の液体の入った瓶を受け取り、飲む。

 

「ぐっ・・・!ぎがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

彼らの全身を焼けるような痛みが支配する。

 

身体を内側から無理やり作り替えられるような感覚。

 

永遠とも言えるその苦痛が終わった時、彼らも人として終わっていた。

 

彼らの肌色だった皮膚は赤黒く変色し、眼球は白濁していた。

 

「ふぅぅぅ・・・ふぅぅぅ・・・」

 

呼吸はまるで獣のように変わり果てていた。

 

クロは彼らに暗示の魔術で命令を植え付け少年と共に消えた。

 

叫び声のした場所にホムンクルス達が到着し、彼らを見つける。

 

槍や剣を持ったホムンクルスが彼等と戦った。

 

しかし、彼らは人を超過したスピードとパワーでホムンクルスたちを皆殺しにした。彼らは暗示の命令を実行すべくあるものは走りあるものは窓から飛び出した。

 

「なに・・・あれ・・・」

 

その場で気配を消していたジャックは先ほどの光景を思い出していた。

 

扉の隙間からダーニックとの戦いを見ていたジャックはダーニックを殺したあの謎の男が異常だと感じた。

 

あの謎の男から渡された薬によって変わり果てた傭兵達。

 

明らかに人間の規格から外れた動きをしていた。

 

あの謎の男は危険だ。彼女の子供特有の直感が告げていた。

 

すると、こちらに向かってツインテールのホムンクルスが走ってきた。

 

ジャックは彼女を無視した。彼女はダーニックの部屋に入っていった。

 

 

午前1時3分

 

アルツィアはゴルドの命令でダーニックの部屋に向かったホムンクルスの援護を命令された。

 

その途中で何者かの気配を感じ物陰に隠れた。

 

人型の獣(?)のような存在をやり過ごし、ダーニックの部屋に向かった。

 

ダーニックの部屋に入って見たのは、遊牧民族のような格好をした兵士の10人近い死骸だった。

 

「・・・あ」

 

その惨状を作り出したであろう黒のランサーを見る。

 

「よう・・・嬢ちゃん」

 

クー・フーリンは此方を一瞥した後、ダーニックの遺体を見る。

 

「ゴルドのおっさんに伝えとけ。ダーニックは死んだと」

 

アルツィアはダーニックの遺体に近づき、遺体に触れた。

 

その瞬間。

 

奇跡が起こった。

 

ダーニックの右手から令呪が消えたかと思うと、アルツィアの右手に令呪が発現したのだ。

 

「え・・・!?」

 

「こりゃあ・・・!?」

 

アルツィアにはわからない。自身に何故令呪が移ったのか?

 

自我の薄い筈の自分が。

 

願望などない筈の自分が。

 

これも聖杯の気紛れなのか?

 

「おい、嬢ちゃん!俺と契約を結べ!」

 

「え!?は、はい!」

 

彼女はクー・フーリンに言われるがまま、彼と契約を結ぶ。

 

「告げる―――

 

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

 

私に従い、私の言葉をに従うのなら応えよ。

 

その命運、私に預けるか否か!」

 

「ランサーの名に懸けてその誓いを受けよう!

 

我が主は貴公であり、俺は貴公の―――サーヴァント

だ!」

 

その瞬間、一組の主従が生まれた。

 

「あの・・・ランサー?ひとつ聞いてもいいですか?」

 

「なんだ、嬢ちゃん?」

 

「何故私と契約をしたんですか?」

 

「俺はこの黒の陣営に勝利をもたらすと誓った。それが果たされてない以上まだ俺の聖杯大戦は終わってない・・・というのが建前だ。本音はあの猿顔のランサーと奴を雇っているであろう奴が気にくわない。必ず殺す。それだけだ」

 

「そう・・・ですか・・・」

 

(一介のホムンクルスに何故令呪が移ったのか気になる・・・ってのも理由のひとつだがな)

 

「で、現状を教えてくれ、嬢ちゃん」

 

「えっと、城の内部に侵入者がいるようです。ですがゴルド様は城に侵入している赤のバーサーカーと追加で侵入した連中は違う目的で動いている可能性があると」

 

「そうか。ならそのバーサーカーじゃないほうを片付けるか」

 

彼は石畳の一部を砕き幾つか石ころを作った。そしてそれにルーンを書き込むと、

 

「索敵しろ」

 

と命令した。

 

すると、石ころはひとりでに動き部屋の外に出た。

 

「よし行くか」

 

と言い部屋からでた。

 

午前1時6分 ゴルドside

 

ゴルドは自身の部屋で人型の獣のような存在の襲撃を受けた。

 

腹に一撃を貰ったあと、壁に叩きつけられ右腕で首を絞められていた。

 

しかしどういう事か、彼の顔に苦痛の表情はない。彼の首がまるで鋼鉄のように変質していた。

 

「変成鉄腕!」

 

ゴルドは襲撃者の右腕をへし折り、襲撃者が怯んだところで押し倒し、顔面に向けて鋼鉄に変化した腕を降り下ろし続けた。

 

相手の顔面がひしゃげ完全に生命活動が停止した段階で攻撃をやめた。

 

「ふぅ・・・」

 

彼は安堵のため息を吐いた。

 

「ゴルド様、大丈夫でしょうか?」

 

駆け付けたホムンクルスが心配をする。

 

「あぁ、大丈夫だ。それより各マスターの護衛の人員を増やせ」

 

「はっ」

 

彼はホムンクルスに指示を出す。

 

『ゴルド様』

 

アルツィアから通信が入った。

 

「アルツィアか!ダーニックはどうした!?」

 

『ダーニック様は何者かに殺害されていました』

 

「な・・・!?」

 

(あの怪物が・・・!?)

 

『それからもう一つ。ダーニック様の遺体に触れた時令呪が私に移り、ランサーと再契約しました。今ランサーと行動しています』

 

「・・・・・・はぁ!?」

 

『それからこちらで襲撃者を2名仕留めました』

 

「ちょっと待て!つまりなんだ?お前ランサーのマスターになったということか!?」

 

『はい・・・』

 

「・・・分かった、事情は後で説明しろ。それより他の襲撃者の位置は?」

 

『フィオレ様の部屋とカウレス様の部屋の付近です』

 

「分かった」

 

彼はアルツィアとの通信を切るとフィオレとカウレスに通信を繋いだ。

 

「フィオレ、カウレス!お前達の部屋の近くに襲撃者がいる。気を付けろ!」

 

 

午前1時9分 カウレスside

 

ゴルドからの通信の後、カウレスは部屋から出た。

 

すると廊下に現代的な兵装の男がいた。

 

しかしその目は白濁し、彼の身体はホムンクルス達の血でべったり汚れていた。

 

カウレスと彼の目が合う。

 

「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

獣のような雄叫びと共にカウレスに駆け出した。

 

カウレスは二体ほど豹の低級霊を出し、牽制する。

 

しかし低級霊は彼の手によって握り潰された。

 

そしてそのまま進みカウレスまで5メートルと言ったところまで近づいた。

 

しかしそれが致命的だった。

 

5メートルまで近づいた途端、彼の全身を数百ボルトの電撃が襲った。

 

絞首刑の雷(クラフテッド・ツリー)

 

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???」

 

彼の全身の筋肉は弛緩し動けなくなり、そのまま電撃に焼かれ続けた。

 

全身が黒く炭化したところでカウレスは魔術を解いた。

 

「なんだこいつら・・・」

 

(現代的な兵士・・・傭兵か?魔術協会が雇ったのか?いやこいつらは魔術師ではない気がする。だったら・・・今暴れてる第三勢力の奴が雇ったのか?)

 

「姉ちゃんは大丈夫かな・・・?」

 

カウレスはフィオレの部屋に向かう。

 

彼は気付かなかった。彼の背後に忍び寄る影に。

 

フィオレの部屋に近づくと黒い人影が飛び出し廊下の壁に叩きつけられた。

 

「カウレス、無事でしたか」

 

フィオレは弟の無事に安堵する。

 

「あぁ・・・大丈夫だよ姉さん。それよりこいつは?」

 

「わかりません。何者なのでしょう」

 

「ちゃんと殺した?」

 

「え?は、はい・・・」

 

「それならよかった」

 

彼は男の死体からハンドガンとマシンピストルと閃光手榴弾などを奪う。

 

「カウレス・・・あなたね」

 

「必要になるかも知れないし」

 

カウレスは言い、

 

「それから姉さん。姉さんの部屋の燭台使わせて」

 

「・・・分かったわ」

 

彼は姉の部屋の燭台から写される映像をみる。

 

そして自身のバーサーカーが赤のセイバーがいる平原付近にいることが分かった。

 

そして彼は驚愕する。

 

「あいつは・・・テム・ウォンか!?」

 

「カウレス・・・?」

 

「覚えてないか?二週間ぐらい前、自身の経営する警備会社から引退を表明したやり手の元社長だよ。確か一面記事になってたはずだ」

 

「ああ!思い出しました!」

 

「何でこいつがここに?」

 

『ヴゥゥ!』

 

バーサーカーから念話が届く。どうやらテム・ウォンを襲うと言っているようだった。

 

「バーサーカー、そいつはスルーしろ!何かヤバイ!」

 

『アァァ!!』

 

「待て!バーサーカー!」

 

彼女はマスターである彼の声を無視した。

 

いや分かってはいても止められなかった。

 

確かにテム・ウォンは不信だ。いやマスターが思っている以上に危険な存在だと、彼女は認識した。

 

だからこそ早めに仕留めなければならないと。

 

取り返しのつかない事になる前に。

 

しかし彼女の攻撃はアサシンによって弾かれ、敵のランサーによって吹き飛ばされてしまった。

 

彼女は追撃しようとするが、

 

「バーサーカー!城に戻れ!!」

 

マスターの怒気と焦りの混じった声を聞いて、戻ることにした。

 

カウレスは安堵した後、背後に魔力をふくらはぎに何かを突き刺された。

 

 

午前1時11分

 

アヴィケブロンは赤のバーサーカーとケイローンが戦っている場所を廊下から一望していた。

 

(しぶといな、赤のバーサーカー)

 

あれから幾つもゴーレムを作っては壊されを続けているが、赤のバーサーカーのしぶとさはやはり異常だった。

 

いや、アヴィケブロンは赤のバーサーカーの真名にたどり着いていた。

 

ダメージを受けても即時再生する再生能力、霧に変化する変身能力、そして射出される杭。

 

それだけ揃えばもう簡単だった。

 

(ヴラド三世・・・いや吸血鬼ドラキュラか・・・厄介極まりないな)

 

聖言を唱えられる人間がいればよかった、などと思っていると、ふと近くに人の気配を感じた。

 

1人は銀髪に170位ある身長の美丈夫。

 

もう1人はよく知る少年だった。

 

「ロシェ・・・!?」

 

するとクロが話しかける

 

「やあアヴィケブロン。私は君のことを知っている」

 

「君は誰だ?僕のマスターに何をした?」

 

「ちょっと暗示を掛けさせて貰ってね」

 

彼は自身の右手をアヴィケブロンに見せる。

 

それは聖杯戦争に参加したマスターに与えられる物だった。

 

「令呪・・・!?」

 

「君のマスターから頂いた」

 

(まずい・・・!)

 

何か嫌な予感がした。

 

自身のゴーレムを起動し、彼に攻撃をしようとして。

 

「第一の令呪をもって命ずる、僕に攻撃するな」

 

「ぐっ・・・!?」

 

アヴィケブロンはゴーレムを止めた。

 

「貴様・・・!」

 

「重ねて第二の令呪をもって命ずる、僕を見逃せ」

 

さらに彼は言葉を続ける

 

重ねて第三の令呪をもって命ずる(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「なっ・・・!」

 

「僕が安全圏まで逃げたら王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)を発動しここに残っている全てのサーヴァントを殲滅しろ」

 

「貴様ァァァァ!!」

 

あまりにも最悪だった。

 

一つ目の令呪でアヴィケブロンは彼への攻撃が封じられ、二つ目の令呪で彼を見逃さざるを得なくなった。

 

「じゃあね。楽園を夢見し者。喜びたまえ、君の夢はようやく叶う」

 

彼にそう言って、その場を後にした。

 

 

午前1時14分頃

 

それは城壁を破壊して現れた。

 

ケイローンとヴラド三世は突然の乱入者を警戒した。

 

土煙が徐々に収まりその姿が見えた時彼らは驚愕した。

 

「「なっ・・・!?」」

 

それは英霊というにはあまりにも理解不能な姿だった。

 

体長は二メートルを越えていて、身の丈程の武器を手にしていた、鉄塊だった(・・・・・)

 

声の代わりに駆動音を響かせるそれは遠い未来の英雄と仮定しても異常だった。

 

その鉄塊が長く駆動音を響かせるとそれの背後から数十のも小さめの銃や剣を持った機械兵のようなものが現れ、彼らを攻撃してきた。

 

ヴラド三世は槍と杭で機械兵を破壊し、ケイローンもまた弓で機械兵を破壊していった。

 

するとその鉄塊の頭部に1人の少女が降り立った。

 

その少女は赤髪で儚げな雰囲気を纏っていた。

 

しかしヴラド三世とケイローンは彼女が赤のランサーに匹敵する何かをもっているのを感じた。

 

咄嗟に彼らは攻撃の対象を彼女に変更した。

 

彼女に矢と杭が飛ぶ。

 

しかし足元の鉄塊に攻撃を阻まれた。

 

鉄塊は蒸気を勢いよく噴出し彼らの視界を奪った。

 

蒸気に視界を遮られている内にも機械兵は攻撃してきた。

 

彼らはそれを迎撃する。

 

その内に城側から来た誰かが鉄塊に乗り込んだ。

 

その後彼らは撤退した。

 

その際、

 

「ありがとう、チャールズ(・・・・・)

 

『構わない、しかし迂闊に真名を呼ぶな』

 

「すまないね。それからアーチャーも」

 

「いいえ、大丈夫です」

 

という会話をしているのをケイローンとヴラド三世は聞いた。

 

「取り逃したか」

 

ヴラド三世は毒づく。

 

彼らの周りにはまだ機械兵がおり、迎撃体制に入っている。

 

「どうする、黒のアーチャーよ」

 

「そうですね、赤のバーサーカー」

 

彼らは数秒沈黙し、

 

「これを全滅させるまで停戦としよう」

 

「そうですね」

 

(キャスター、聞こえますか?・・・?キャスター?)

 

ケイローンはアヴィケブロンと念話を繋ぐ。が彼からは返答が無かった。

 

何かが起きている。この機械兵を片付けアヴィケブロンの元に向かわねばと、ケイローンは思案し、

 

(マスター、ロシェ殿を探してください)

 

と念話がを送った。

 

 

午前1時12分

 

「ぐぁぁぁぁああああ!?」

 

カウレスはふくらはぎに何かを刺され蹲る。

 

「カウレス!?」

 

フィオレはカウレスを見たあと攻撃の飛んで来たドアの付近を見る。

 

そこは自分たちのよく知る人物がいた。

 

「セレニケおばさま!?」

 

「こんばんは、フィオレ、カウレス」

 

セレニケは怒りを滲ませた声で答える。

 

「セレニケおばさま!何故カウレスを攻撃するのですか!?」

 

「何故?そんなの決まってるじゃない。そいつとそいつのサーヴァントが私のアストルフォを見殺しにしたからよ」

 

「なっ・・・!?」

 

「それは違いますおばさま!バーサーカーはつい先ほど草原付近に来て彼を攻撃したのです!」

 

「いいえ、違わないわ。援護したければ令呪を使えば良いのに、そこの愚図が令呪を渋ったからアストルフォが・・・私の玩具が死んだのよ!!」

 

セレニケは絶叫する。

 

それに対してカウレスは、

 

「令呪だったらあんたも持ってただろうが・・・!それで撤退なり攻撃の補助なり使えば良かっただろ!?」

 

「私はアストルフォを辱しめる為にこの令呪を使うつもりだったの!なのにこんなところで使えるわけないじゃない!?大体なんで実力で劣っているあんたのサーヴァントより私のアストルフォが脱落するの!?こんなの間違ってる・・・間違ってるに決まってる!だからあんたを嬲り殺すの!邪魔しないでね、フィオレ?貴方が動いたら即座にカウレスを呪い殺すから」

 

セレニケの言い分は支離滅裂だった。

 

癇癪を起こした子供より質が悪い、とフィオレとカウレスは思った。

 

自分の下らない嗜虐心を満たす為に令呪の使用を渋っておきながら、いざ自身のサーヴァントが脱落したらその責任を他者に押し付ける。

 

あまりにも自分勝手極まりない。

 

「あぁ!そうだわ!カウレス、バーサーカーのマスター権を寄越しなさい。あの人間のなり損ないに令呪で貴方を殺せと命令したらどんな顔になるかしら!」

 

「あんた・・・!!」

 

「何かしらその目は。愚図の分際で、いいえそうじゃなかったわね。魔術協会のスパイ(・・・・・・・・)って呼んだ方が良いかしら?」

 

「・・・!?」

 

カウレスは驚愕する。

 

何故知っている?

 

いや、どこでばれた?

 

カウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニアとして振る舞っていたはずだ。

 

ちゃんとスマフォは隠しているはずだ。

 

だったら・・・

 

「あ・・・」

 

一つ思い当たった。

 

先ほどの襲撃者との戦闘(・・・・・・・・・・・)。襲撃者を確実に殺す為に電気魔術を使った事(・・・・・・・・・)

 

(あれを見られた?いや死体の残留思念を読みとったのか!?)

 

「あんな魔術一年前の貴方にはできない芸当のはず。なのにさっきの襲撃者の死体には貴方の魔力が残留していた。そして一年前のあなたでは使えない筈の魔術だった」

 

つまり、

 

「貴方は魔術協会にいた間に強くなった。一年で三流魔術師だった貴方がそこまで成長したのはロード・エルメロイ二世に教えて貰ったのでしょう。しかしそれを隠した。隠さなければならない理由があるとしたら、スパイであることを隠す位しかない。三流魔術師の方が目立たないものね」

 

(くそ・・・しくじった)

 

状況は最悪だった。

 

姉は動けないだろう。自身も動けない。

 

さらに自身の命は目の前の黒魔術師の掌の上にある。

 

(何か・・・何かないか・・・!)

 

彼は思考をフル回転させる。しかし何も思い付かない。

 

するとセレニケの周囲を霧が覆った。

 

「何・・・これ・・・!?」

 

セレニケの驚愕の声が聞こえる。それに混じって幼い少女の声が聞こえる。

 

『此よりは地獄・・・わたしたちは炎、雨、力・・・殺戮を此所に―――【解体聖母(マリア・ザ・リッパー)】』

 

それはジャック・ザ・リッパーの宝具。

 

1888年代のロンドン、ホワイトチャペルで起こった殺人事件の再現だ。

 

【霧が出ている】【夜】に【女性】が惨殺される。

 

近づく必要なんてない。ナイフで切る必要もない。

 

宝具が放たれた瞬間に相手は解体された死体になるのだから。

 

「ギ・・・ガ、ァァァァァァァ!!!???」

 

おぞましい絶叫と共にセレニケの心臓が、肺が、胃が、膵臓が、腸が修復不可能なほど損傷を与えられ、外に弾き出された。

 

「ご、びゅぅ・・・」

 

口から血を吐きながら仰向けに倒れるセレニケ。

 

魔術刻印が体を修復しようとするも意味を成さなかった。

 

(これがジャック・ザ・リッパーの宝具、か)

 

条件付きとはいえ全て揃えば確実に相手を殺害でき、尚且つ物理的な攻撃ではなく呪いによる攻撃なので相手に近づく必要もない。

 

さらに夜なら確実に先手を取れる『霧夜の殺人』、戦闘終了時に相手から自身に関する記憶が消失する『情報抹消』、【霧が出ている】という条件を満たせる宝具『暗黒霧都(ザ・ミスト)』。

 

これらのスキルによって彼女はマスター殺しのアサシンにおいて極めて有用なサーヴァントになっていた。

 

(マスター殺しのアサシンとしては反則だな)

 

セレニケが死んだの事でカウレスは動けるようになった。

 

足に刺さっていた棒を引き抜き治癒の魔術を使う。

 

「カウレス・・・?セレニケおばさまが言っていたのは本当なのですか」

 

「スパイ云々以外はね。俺がロード・エルメロイ二世から魔術を習ったのは本当だけど、それを言ったら面倒な事になりそうだったから黙ってた」

 

「そう・・・なのですか?」

 

「うん。本当だよ。姉さん」

 

彼は姉に笑いかける。

 

するとケイローンからフィオレに念話が入る。

 

「カウレス。ケイローンからです。ロシェを探しましょう」

 

「ロシェを?」

 

「ええ、キャスターと連絡が取れないみたいです」

 

「ケイローンは?」

 

「テム・ウォンの仲間が残した残存戦力と戦うらしいです」

 

「何がなんだか・・・」

 

カウレスとフィオレは部屋を出る。

 

すると先ほど彼らを襲った人型の怪物に見つかった。

 

カウレスが電気魔術で敵を捕らえようとすると怪物の後ろからフランが襲いかかった。

 

メイスが怪物の頭部を砕き活動を停止させる。

 

「バーサーカー、ありがとう」

 

「ウゥ・・・」

 

彼らはロシェを探すため動きだした。

 

午前1時25分

 

ゴルドはセイバーと合流しフィオレと連絡をとり、ロシェを探していた。

 

それから、草原の戦場に向かわせたホムンクルスから戦況を聞く。

 

それによると赤のセイバー、神父らしき男、ルーラーが軽装の兵士群と戦闘を終えたようだった。

 

「流石は最優と名高きセイバーだな。ルーラーも只の堅物ではなかったか」

 

「その神父は英霊なのでしょうか?」

 

「わからん。そもそもマスターが戦場に来ることがおかしい。サーヴァントの戦場にわざわざ来るなど、余程の馬鹿か自信のある奴だ。もしかしたら埋葬機関の人間かもしれん」

 

「埋葬機関?」

 

「聖堂教会の最強の部隊。死徒を殺すことに特化した代行者の何十、何百倍の強さを持っている。正直狂っているレベルの連中だ。戦力としても、人格もな」

 

「それは本当に人間のなのですか?」

 

「私も噂程度の情報しか知らん。それでも奴等が本気になって動けば、ユグドミレニアはひとたまりもなかっただろう」

 

「それほどですか」

 

するとホムンクルスから連絡が入った。

 

『キャスター様を見つけました』

 

「何処だ?」

 

『城の近くの湖です。それから地下に幽閉されていた魔術師も一緒に居ます』

 

「・・・何?地下に幽閉していた男だと!?まさか!?」

 

『ええ、裏切り者として幽閉されていた男です。その男が・・・ゴーレムの心臓付近に埋め込まれて』

 

「今すぐそこから引け!キャスターの宝具に巻き込まれるぞ!!」

 

ゴルドか叫ぶ。

 

「キャスターの宝具・・・!?」

 

ランスロットも驚く。

 

ゴルドはフィオレ、カウレスに連絡を取る。

 

「フィオレ、カウレス!キャスターが宝具を発動した可能性が高い!避難しろ!」

 

その時、湖の方向で膨大な魔力を感知した。

 

それは全てのサーヴァント、魔術師が感知した。

 

モンゴルの兵を全滅させたモードレッド、アタランテ、ジャンヌ・ダルク、シロウ。

 

フィオレ、カウレスと共にいたフラン。

 

機械兵を全滅させたケイローン、ヴラド三世。

 

城の中を徘徊していたジャック。

 

城のにいた襲撃者を全滅させたクー・フーリン、彼と行動していたアルツィア。

 

そして彼らは石造りの巨人を見た。

 

原初の人間を模したゴーレム。

 

アヴィケブロンの理想を叶える為の救世の巨人。

 

人々を楽園(エデン)に導く存在。

 

禍々しくも神々しいそれの誕生を。

 

王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)は起動した。

 




という訳で八話終了です。

今回は読みにくいかもしれません。

アヴィケブロン番頭の宝具発動まで書きたかったので、その発動までにそれぞれに何が起こったのか割と書きました。

はぁ・・・ジャックちゃん・・・仕方ないとはいえあの結末は・・・まあいいかなぁ?

僕がモーさんを書くとチンピラ感が半端ない事になってる。

シェイクスピアが消えた理由は滅茶苦茶個人的な理由です。正直あいつの小説の引用がめんどくさい(某神父感)

あとアストルフォを殺した理由はチンギス・ハンの能力説明の為とセミラミスが消滅して空中庭園が消えた段階であの魔本の力が不必要になったからという理由が三割。あと人数調整が七割。

フランちゃんが生きてる理由?ジークポジのキャラがいないからです。

孫悟空に関しては三蔵ちゃんに会う前の暴れ回ってた頃の悟空をベースにしてるつもりなので、相当口も態度も悪いです。滅茶苦茶強いDQNみたいなイメージです。

では今回は此所までです

次回、ゴーレム・ケテルマルクト


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九話 聖杯大戦 5日目その4 共同戦線

前回のあらすじ

それぞれの行動報告



午前1時30分

 

それは醜くも神々しささせ感じさせた。

 

王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)

 

黒のキャスター、アヴィケブロンの宝具。

 

原初の人間(アダム)を模倣した巨人。

 

彼の宝具がただ存在し歩くだけで周囲が楽園に変貌していく自立型固有結界。

 

「おいおい、マジか・・・!?」

 

クー・フーリンは高台に移動し巨人を見る。

 

まだ15メートル程度だがあれは大地からの祝福を得てどんどん大きくなるだろう。

 

「ヤバイなありゃ」

 

高台からケイローンとヴラド三世の付近に降り、話しかける。

 

「お前らちょっと力貸せ。ありゃ俺1人でも難しいかもしれん」

 

ヴラド三世はクー・フーリンに問う。

 

「あれはそれほどの難敵か?」

 

「あぁ、あれは速めに片付けないと不死身の存在になる」

 

「不死身だと?」

 

「そうだ。あれは大地からの祝福を受けている。どれだけ腕や頭を壊そうが足が大地についている限り無限に再生する。そして足元から世界を侵食する。一定の大きさを越えるとどんだけ俺らが足掻こうが再生スピードの方が上回る。そうなる前に片付けねえと」

 

「あれが宝具なら宝具を使った者を抑えればいいのではないのか?」

 

「いや、あれは発動した段階で術者がくたばろうが問題がない。なんせ足元から無限に魔力を吸い上げるからな。」

 

「なるほど早々に破壊するしかないか」

 

ヴラド三世が呟く。

 

ケイローンは口を開き、

 

「私はマスターのところに行きます」

 

「そうか。だが直ぐに来いよ」

 

「わかっています」

 

そう言って、ケイローンは霊体化する。

 

「行くか」

 

「了解した」

 

クー・フーリンとヴラド三世はゴーレムの元に向かう。

 

 

午前1時33分

 

フィオレとカウレスはケイローンと合流していた。

 

「ロシェ!?しっかりして下さい!ロシェ」

 

「ぅ・・・うぁ・・・」

 

フィオレは廊下で倒れていたロシェを見つけ、介抱していた。

 

「フィ・・・オレ・・・?」

 

「良かった・・・!」

 

ロシェの意識が戻ったのをみて、カウレスが彼に問う。

 

「ロシェ、何があった?」

 

「ああ、そうだ敵のサーヴァントが城に侵入したと聞いて部屋に戻ろうとしたら変な男に話かけられて・・・そこからはどこか記憶が曖昧になってる」

 

「暗示か・・・?」

 

「ロシェ、キャスターと念話を繋げる事が出来ますか?」

 

「先生・・・?そうだ、あの男は先生に僕から奪った令呪を使ってた!」

 

「何!?」

 

カウレスが驚く。

 

ケイローンは冷静に分析し、

 

「キャスターが宝具を発動したのはそれが原因かもしれませんね」

 

と言った。

 

「宝具?まさか王冠:叡智の光(ゴーレム・ケテルマルクト)!?」

 

「ええ先ほど膨大な魔力を感知しました」

 

「そう・・・なんだ」

 

「しかし、お前を襲った男は一体何者なんだ?令呪を奪って使うなんて。しかもサーヴァントに気付かれずに」

 

「令呪・・・?・・・!そうだ、令呪だ!」

 

ロシェが突然大声を上げる。

 

カウレスとフィオレは驚き、

 

「どうしたの?ロシェ?」

 

「先生は令呪の命令でおかしくなった。だったら令呪の命令を上書きすれば(・・・・・・・・・・・・)元に戻るんじゃないかな(・・・・・・・・・・・)?」

 

「でも令呪は全ての奪われたのでは?」

 

フィオレはそう言ったが、カウレスとケイローンは気付く。

 

「いや姉さん、大丈夫だと思う」

 

「えぇ、フィオレ。大丈夫だと思います」

 

「え?」

 

フィオレは疑問符を浮かべた。

 

「姉さん、この戦場には

ルーラーのサーヴァントがいる(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「ルーラーには二画分の令呪が聖杯より与えられている筈です。問題はこちらの都合の良いように令呪を使ってくれるかどうかですが」

 

「それなら大丈夫だろ、アーチャー。あれって放っておいたら世界がヤバい事になる代物なんだろ?だったらルーラーが放っておく筈がない」

 

「そうですね。では私はルーラーの所に行きます。バーサーカー、貴女も来て下さい」

 

「ウゥ!」

 

「バーサーカー、無茶すんなよ」

 

「う・・・ん・・・!」

 

「待って!」

 

外に出ようした瞬間ロシェが叫ぶ。

 

「何ですか?ロシェ?」

 

「先生を殺さないで・・・!」

 

泣きそうな声でケイローンに訴える。

 

「善処します」

 

彼らは外にでた。

 

午前1時36分

 

ルーラー、ジャンヌ・ダルクと天草四郎時貞。

 

セイバー、モードレッド。アーチャー、アタランテ。

 

彼らは巨人の近くまで走っていた。

 

「くそっ!次から次へとイレギュラーばっか起きやがって!」

 

モードレッドが愚痴る。

 

アタランテとシロウは、

 

「シロウ、あれはどうやって倒すのだ?」

 

「近づいて観察しない事には何とも言えません、ただ・・・」

 

ジャンヌはシロウを見て、

 

「天草四郎時貞、あれの破壊の協力感謝します」

 

「礼はいりません。あれは放置するとまずい、という啓示が降りて来たからには対処しないわけにはいきませんから」

 

そうこうしている内に巨人の至近まで近づく一向。

 

すると巨人が何者かからの攻撃を受け、反撃していた。

 

「む・・・おい!貴様ら!」

 

「あれは赤のバーサーカー・・・ヴラド三世ですって!?」

 

ジャンヌは驚きの声を上げる。

 

「この巨人の破壊に協力しろ!」

 

「わかってます」

 

ケイローンとフランも到着する。

 

「すみませんルーラー。彼と会話をしても構いませんか?」

 

「彼?」

 

「ええ」

 

ケイローンは巨人の肩に乗っている、アヴィケブロンを見る。

 

「アヴィケブロン!君が敵の魔術師から奪われた令呪を受けてこのようなことをしたのはわかっている!」

 

以外にも返答があった

 

「だから・・・なんだと言うんだい?僕の理想は、夢は叶った。令呪で君たちを裏切るような形になってしまったのは業腹だけどね」

 

「仲間意識はあった・・・ということですか?」

 

「あぁ、特にマスター・・・ロシェに『先生』と呼ばれるのは存外に心地好い体験だったと伝えてくれ」

 

「それは貴方自身の口で伝えて下さい」

 

ケイローンは会話を終えた。

 

そしてジャンヌに向き直る。

 

「ルーラー、彼の第三勢力と戦いになった場合、彼のゴーレムを造る能力はとても有用に働く筈です。ですので彼は殺さないで頂きたい」

 

「・・・・・・分かりました」

 

彼女は大きく息を吸い込み、

 

「ルーラーの名において黒のキャスター・アヴィケブロンに命ずる、我々と敵対するな!」

 

「!?」

 

アヴィケブロンは驚く。バカな、あり得ない。自身は今まさに彼らと叛逆している。なのにそれを許すというのか?

 

ジャンヌは彼をみる。

 

「これは、現在の状況を見て合理的に判断しただけです。こちらに来て下さい。あの第三勢力と戦うには貴方のゴーレムが必要です」

 

巨人の肩から降りてきた彼は、

 

「彼らがまた来ると?」

 

と聞いた。

 

「えぇ、確実に」

 

「そうか」

 

「それよりあの巨人を破壊してもよろしいですね?」

 

「正直承諾したくはないが、『敵対するな』と命じられている以上協力しなければいけないのだろう?」

 

「そうですね。協力するなら貴方用の令呪を貴方のマスターに渡してもいいです」

 

「・・・わかった。あれの核は炉心となった魔術師がいるであろう心臓付近と頭部近くにある。どちらか一方ではなくどちらも同時に破壊しなければならない。さらに大地からの祝福を得ていて、どれだけ攻撃しても即座に修復する」

 

「つまり、大地からの祝福を断った上で核を破壊しなければならないというわけですか?」

 

「そうだ。そしてそれが出来るのは一回が限度だ。それを外したら取り返しがつかなくなる可能性が高い」

 

「分かりました」

 

「話はまとまったか!?」

 

ウラド三世が巨人の剣を受け止めながら叫ぶ。

 

「あれの足を大地から引き剥がした上で二つの核を同時に破壊します!」

 

そしてシロウとアタランテに向き直り、

 

「貴方達も協力お願いします」

 

「初めからそのつもりです」

 

「あの木偶の棒を倒せばよいのだな?」

 

アタランテは巨人の眼球に向けて矢を放つ。

 

眼球に直撃するもその矢を吸収し、眼球が回復する。

 

「ちっ・・・」

 

アタランテとケイローンが巨人に向けて矢を放ち続ける。

 

ウラド三世は巨人の剣を躱わし腕を破壊する。

 

クー・フーリンとジャンヌは巨人の核を破壊すべく巨人の腕の上を駆けるも振り落とされる。

 

入れ替わるようにモードレッドとフランは巨人の体を駆け頭部を破壊しようとするも巨人の腕に阻まれる。

 

地面に着地したフランとモードレッドに巨人の剣が迫るが青白い魔力に破壊させる。

 

「やっぱ黒のセイバーはてめぇか!!ランスロット!」

 

「モードレッド・・・!よもやこのような形で再開しようとはな・・・!!」

 

両者共に怒気を孕んだ声を出す。

 

すると、巨人の剣が彼らを殺そうとする。

 

「「邪魔だ!!」」

 

ランスロットとモードレッドは巨人の剣を粉砕する。

 

「・・・状況はアーチャーから聞いた。あれは倒し切らないとまずいのだろう?」

 

「てめぇと共闘なんて最悪だ」

 

「それはこちらも同じ事だ」

 

「んだとコラァ!!」

 

そんなやり取りをしているとフランがモードレッドの鎧を叩く。

 

「なんだよ・・・」

 

「うぅ・・・」

 

「・・・ちっ、分かってるよ」

 

「ァァ?」

 

「ああ、ホントだって!!」

 

モードレッドは髪をかきながら言った。

 

「モードレッド、彼女はなんと言ったのだ?」

 

「『協力してあの巨人を倒して』だとさ」

 

「なるほど、彼女はお前よりまともな状況判断ができるらしい」

 

「ぶっ殺すぞ!?てめぇ!!」

 

「ウゥァァ!」

 

ランスロットに突っかかろうとするもフランが彼らの間に立つ。

 

「分かった!分かったから!正直いけ好かねえけど協力するから!」

 

「ウン!」

 

「はぁ・・・」

 

するとジャンヌがモードレッドの近くに立つ。

 

「では皆さん、あれを破壊しますよ!」

 

直後にモードレッドがジャンヌに問う。

 

「その前にルーラー、こいつの討伐を終えたら令呪一画を寄越せ」

 

「はい?」

 

ジャンヌは呆けた声を出す。

 

「なに呆けた声を出してやがる。あれの破壊をオレたちサーヴァントの要請するんだろ?だったら報酬を寄越すのが道理だろ?」

 

「で、ですか・・・」

 

ジャンヌは助けを求めるような目でランスロットを見る。

 

「ルーラー、私のマスターには令呪があと一画しかありません。正直な所あの第三勢力と戦うのであれば令呪があと一画は欲しいです」

 

「そ、そんな!?」

 

「そうか余も頂きたい」

 

「俺も欲しいなぁ」

 

「私も頂きたい」

 

「私にも寄越せ、ルーラー」

 

「私たちにも欲しいな」

 

ヴラド三世、クー・フーリン、ケイローン、アタランテの声が響く。

 

「あ、あなた方・・・いえ待って下さい!?最後の少女

の声は誰ですか!?」

 

ジャンヌは困惑する。

 

「ウゥ・・・」

 

フランは「諦めろ、どうせ渡す事になる」と言っているかのような哀れみの声と共に肩に手を叩いた。

 

「・・・分かりました!一画ですね!」

 

「よし!」

 

モードレッドは巨人に向き直り攻撃を開始した。

 

数分前 ジャックside

 

「わぁ、おっきい巨人さんだ!」

 

ジャックは城塞の窓から外の様子を見ていた。

 

するとヴラド三世から念話が入る。

 

『ジャック今すぐ此方に来い』

 

(でも私たち足手纏いになるよ)

 

『少しでいい、あの巨人の視界を霧で奪ってくれるだけでいい』

 

(分かった)

 

ジャックは城から飛び出し巨人の元へと向かった。

 

現在

 

巨人の顔面を霧が覆った。

 

それにより巨人の動きが鈍る。

 

それが合図だった。

 

「二代神に奉る―――訴状の矢文(ボイポス・カタストロフェ)!」

 

アタランテが宝具を発動する。

 

巨人は体を両腕でガードする。

 

両腕が完全破壊される

 

「そらぁ!」

 

「たぁぁ!」

 

クー・フーリンとジャンヌが右足を破壊する。

 

同時にシロウの右腕に魔力が籠る。

 

右腕・悪逆補食(ライトハンド・イヴィルイーター)。小規模零次収束(ショートクランチ)!」

 

右腕の魔力を暴走させ擬似的な破壊空間を作り出す魔力弾を破壊された瓦礫にぶつけ瓦礫を消し去った。

 

「血に塗れた我が人生をここに捧げようぞ―――血塗れ鬼王(カズィクル・ベイ)!」

 

ヴラド三世は肉体から無数の杭を射出し、左足を破壊する。

 

「ナァァァァァァァアアアアオォゥ!!」

 

フランは破壊された足の瓦礫を電撃で焼き付くす。

 

「今です!」

 

ジャンヌは叫ぶ。

 

「おぉぉぉぉぉ!!」

 

「どりゃぁぁぁぁ!!」

 

モードレッドとランスロットが剣に魔力を纏わせ宙に舞った。

 

そして二つの霊核に向けて宝具を放つ。

 

我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)!」

 

無剥なる湖光(アロンダイト)!」

 

赤と青の極光が巨人の霊核を焼き付くす。

 

核をなくした巨人は崩れ去った。

 

「ヘッドショットだクソッタレ。楽園ならあの世で探してろ」

 

モードレッドは親指を下に向けながら言った。

 

「相変わらず口が悪いな貴殿は」

 

ランスロットは彼女に注意する。

 

「相変わらず生真面目だな、お前」

 

彼女も彼に言い返す。

 

二人の間にジャンヌが割って入る。

 

「お二人とも喧嘩はやめて下さい。これから協力して貰いたいのですから」

 

「は?」

 

二人の声が重なる。

 

「あの第三勢力・・・一応『灰の陣営』と呼称しておきます。彼らはまた来る筈です。その際対抗できるサーヴァントは多い方がよいと思います。天草四郎も一応協力してくれるそうです」

 

「あの胡散臭いやつまで味方扱いすんのか?」

 

モードレッドは愚痴る。

 

「気持ちはわかりますが、今は彼の協力も必要です。それから作戦を練るにしても拠点が必要なので、黒の陣営の城を使ってもよろしいでしょうか」

 

ジャンヌはケイローンに話しかける

 

「分かりました。マスター宜しいですか?」

 

『構いません』

 

「マスターは良いといっています」

 

「それは良かった!では一応この場にいるサーヴァントはマスターと共に黒の陣営の城に来て下さい」

 

「ちっ。だとよマスター」

 

『わかったよ。メアリーと六導さんも連れてくるよ』

 

かくして、第一の戦いは終わった。

 

第三勢力という不確定要素を取り払う為、彼らは一時的に協力する。

 

 

午前2時30分頃 ミレニア城塞 大部屋

 

赤と黒の陣営のマスターとサーヴァントが顔を合わせ机を囲んでいた。

 

「初めまして、赤のマスターの皆さん。私はフィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアです」

 

フィオレは彼らに挨拶する。

 

「初めまして、フィオレ・フォルヴェッジ。私はシロウ・コトミネ、聖堂教会から派遣された監督役であり、第三次聖杯戦争でルーラーとして召喚された天草四郎時貞です」

 

「受肉したサーヴァントだと!?」

 

シロウの正体にゴルドが目を剥く。

 

「ええ、そうです。あなたは?」

 

「ッ!・・・ゴルド・ムジーク・ユグドミレニアだ。セイバーのサーヴァントのマスターだ」

 

「僕はロシェ・フレイン・ユグドミレニア。キャスターのサーヴァントのマスターだよ」

 

「俺はカウレス・フォルヴェッジ・ユグドミレニア。バーサーカーのマスターだ」

 

ゴルド、ロシェ、カウレスは自己紹介をする。

 

「次はお前だ。アルツィア」

 

「は、はい!ランサーのサーヴァントのマスターのアルツィアです。宜しくお願いします」

 

今度はメアリーが口を開く。

 

「赤のバーサーカーのマスター、メアリー・ベールです」

 

「赤のセイバーのマスター、獅子劫界離だ」

 

「黒のアサシンのマスターの六導玲霞です」

 

玲霞の紹介の時、ゴルドとフィオレが反応する。

 

「マスターだと?見たところ魔術師では無さそうだが?」

 

「ええ、相良豹馬に生け贄にされていた所をこの娘に助けてもらったんです」

 

彼女は膝の上に乗せたジャックの頭を撫でながら答える。ジャックはとても嬉しそうにしていた。

 

「マフィアや魔術師を殺害し、魔力を得ていたのですね?」

 

フィオレの問いに玲霞は、

 

「はい。この娘を生かす為に」

 

「なぜそこまでするのですか?魔術師でもない貴女が?」

 

「この娘に助けてもらったから。死に際の『生きたい』という願いを叶えて貰ったからです。下らない私みたいな人間を無償で死の淵から救ってくれた。なら今度は私が彼女の願いを叶える為に、この娘を助けるのは当然でしょう?」

 

「その為に、無関係の人の命を奪ってもですか?」

 

「はい。だってしょうがないでしょう?私は魔術師ではありませんし、それにマフィアや魔術師が死んで誰が悲しむのでしょうか?」

 

「・・・成る程。では貴女にはこの羊皮紙に名前を書いてもらいます」

 

フィオレは羊皮紙を取り出す。

 

自己強制証明(セルフギアススクロール)ですね」

 

「知っているのですか?」

 

「そこのメアリーさんに書かされました」

 

フィオレはメアリーを見る。

 

「ええ。彼女達を此方に引き入れる際に使いました」

 

「成る程、そうですか。ですが一応契約して貰えますか?」

 

玲霞は、

 

「わかりました」

 

と言い、羊皮紙の契約内容を見る。

 

内容は、

 

『黒の陣営に敵対するな』

 

『黒の陣営は彼女を聖杯大戦終了まで守らなければならない』

 

と言う物だった。

 

「では、これでいいですね?」

 

彼女は名前を書いてフィオレに渡した。

 

「ありがとうございます」

 

フィオレは礼をいい次の話題に移った。

 

「ではこれからが本題です。彼ら、『灰の陣営』についてです。ここからは聖杯大戦のルーラーに話をしてもらいます」

 

フィオレからジャンヌに全員の視線が移る。

 

「彼ら灰の陣営は全員が受肉したサーヴァントです。アーチャー、セイバー、キャスターの真名は不明ですが、ランサーは孫悟空、アサシンはハサン・ハッザーハ、ライダーはチンギス・ハンです」

 

「孫悟空・・・西遊記の主役じゃないか・・・」

 

ロシェは嘆息し、

 

「ハサンはともかくチンギス・ハンとは・・・」

 

ゴルドは驚愕する。

 

「そのチンギス・ハンなんだが・・・」

 

カウレスは口を挟む。

 

「あいつ、ついこの間まで警備会社を経営していたテム・ウォンだと思うんだ」

 

彼はテム・ウォンの写真を見せる。

 

写真の男とチンギス・ハンを見比べ、

 

「確かに似てるな(ますね)」

 

モードレッド、シロウ、ジャンヌはそう言った。

 

「チンギス・ハンのあの軍隊を呼ぶ宝具、あれは脅威ですね」

 

シロウは不快そうに言う。

 

「そうか?確かに数こそ多いが、そんな苦戦する程でもなかっただろ?あのボオルチュとか言う奴以外は」

 

「いえ、その数が問題なのです。全盛期の彼の軍の兵は数十万と言われていますから」

 

「な・・・」

 

「それに亜種聖杯を複数所持しているとしたらその魔力量は計り知れない。最悪灰の陣営全員が宝具を連発できる状況になるかもしれません」

 

「ちっ・・・考えただけで嫌になるな」

 

モードレッドは心底嫌そうに言う。

 

「少し良いか(でしょうか)?」

 

ヴラド三世とケイローンは口を開く。

 

ジャンヌが彼らに聞く。

 

「どうしました?」

 

ケイローンは、

 

「キャスターとアーチャーに関してなのだが、アーチャーは赤のランサーや赤のライダーに近い神気を感じました」

 

と言い、ヴラド三世は、

 

「それからキャスターなのだが・・・『チャールズ』という名前の鉄塊・・・というか巨大な機械のような英霊だった」

 

と発言した。

 

「それは・・・」

 

ジャンヌは、というよりその場にいた殆どの人物が信じられない、といった顔をした。

 

モードレッドとフラン以外は。

 

「赤のセイバー、そしてバーサーカー、何か知っているのですか?」

 

シロウはモードレッド、フランに聞く。

 

その場の全員が彼らを見る。

 

フランは迷った。真実を言うべきか。しかし信じられないのも事実だった。

 

しかし、モードレッドは口を開いた。

 

「そいつは蒸気を噴出してたか?」

 

「あぁ」

 

「だったら多分そいつはチャールズ・バベッジだ」

 

「おい、そいつは・・・」

 

カウレスが口を挟む。

 

ケイローンが問う。

 

「知っているのですか?カウレス」

 

「コンピューターの前身となる演算装置を作った数学者だ」

 

「数学者?しかしあの容姿は・・・」

 

ヴラド三世は困惑する。

 

「あの姿はチャールズ・バベッジの夢が具現化した宝具、固有結界だ」

 

「・・・」

 

聞いていたマスター達は息を飲む。

 

ヴラド三世はモードレッドに更に問う。

 

「なぜそこまで知っている?お前は奴等のスパイか?」

 

「それは、奴と戦った事があるからだ」

 

「亜種聖杯戦争か?」

 

「違う。信じられないかもしれないが、別の世界の特異点と化したロンドンで戦った」

 

「平行世界ということか?」

 

「そうだ。魔術王ソロモン・・・いや■■■■■■■■■■によって焼却させられた人理を修復する過程で戦った」

 

ゴルドが口を挟む。

 

「人理を焼却だと?そんな事は不可能だ!」

 

「普通ならな。だから奴は人理を焼却させるための起爆点に自身の配下を送り込み聖杯を使った。オレはその過程で三度と召喚された。一度目はロンドンで、二度目は人理を破綻させる側として、そして三度目は■■■■■を倒すために。その過程を経てオレは再びここに召喚された」

 

「再び?まさか・・・」

 

ケイローンは察する。

 

「そうだ。オレは一度この聖杯大戦を経験してる。ついでに言えばフランもだ」

 

「・・・本当なのですか、バーサーカー」

 

ケイローンはフランに聞く。

 

「う・・・ん」

 

「どうやら本当のようです」

 

ケイローンはそう言った後、カウレスを見る。

 

「カウレス、あなたこの事を知って居ましたか?」

 

「何で俺に聞くんだ?」

 

「あなたがバーサーカーのマスターですから」

 

「・・・そうだな。バーサーカーが一度この聖杯大戦を経験していることは夢で見たから知っていたよ」

 

「知っていたならなぜ隠していたのですか!?カウレス!」

 

フィオレが叫ぶ。

 

カウレスは落ち着きながら

 

「ダーニックがそんな話信じるか?姉さんだって信じないだろ?その聖杯大戦でバーサーカーは俺の令呪で自爆したんだ。そんな事言いたくなかった」

 

「・・・他に隠していることは?」

 

「エルメロイ教室で魔術を教わっていたこと位かな」

 

「何だと!?」

 

ゴルドが叫ぶ。

 

「ユグドミレニアが魔術教会に逆らう前に、向こうから勧誘されたんだ。隠していたのはスパイだと思われたら姉さんの立場も危うくなる。だから言わなかった」

 

「本当にスパイではないのですね?」

 

「当たり前だろ?姉さん」

 

カウレスはフィオレを見ながら答えた。

 

その時突然ジャックがジャンヌを見て一言言った。

 

「ねえねえ、聖女さま。令呪はいつくれるの?」

 

「へ?」

 

ジャンヌは今まで玲霞の膝の上でおとなしくしていたジャックを見る。

 

「そうだな。忘れてたぜ。ありがとよジャック」

 

モードレッドはとても嬉しそうに言った。

 

「て訳でよ、ルーラー。さっさと寄越すもん寄越しな」

 

「今この場でですか?!」

 

「別にいいだろ?服を脱がなきゃできない訳じゃないんだし」

 

「しかし話し合いが終わってからでも・・・」

 

「別に今でもいいだろ?」

 

「で、ですが黒のアサシン!貴女はあの戦闘に参加してませんでしたよね!?」

 

「え?いたよ。霧で巨人さんの目を見えにくくしたんだよ?」

 

「あの霧ですか。しかし・・・」

 

「ダメ・・・なの?」

 

ジャックは目に涙を溜めジャンヌを見る。

 

玲霞が口を開き。

 

「ダメよジャック、わがままを言っては。ルーラーの令呪はサーヴァントの暴走するのを抑える為の物なんだから、二画も貰うなんて。一画位にしときましょう?」

 

(何ですかこの人!さらっととんでもないこと言ってますよね!?二画貰う気だったのですか!?)

 

この場の全てのサーヴァントとマスターがジャンヌをみる。

 

「分かりました!いまから配布するので待ってください!」

 

ジャンヌはカウレス、フィオレ、ゴルド、ロシェ、アルツィア、獅子劫、メアリー、玲霞に令呪を渡す。

 

シロウはにこりと笑い令呪を受け取ろうとしたが、

 

「あなたには他のマスターから奪った令呪があるでしょう!?」

 

と拒否された。

 

令呪の受け渡しが終わった後、ランスロットがシロウに尋ねた。

 

「天草四郎、日本の英霊で剣と鏡に縁のある英霊を知っていますか?」

 

「鏡ですか?」

 

「ええ、かなり古い時代のもののはずなのですが」

 

「敵のセイバーが持っていたんですね?」

 

「ええ。私の隠蔽宝具の効力があの鏡に反射した月明かりに照らされた時、打ち消されました」

 

「打ち消された?」

 

「透明化したはずなのですが、鏡の反射光に照らされた部分が敵に見えるようになっていたのです」

 

「日本系の英霊・・・鏡・・・光の反射・・・もしかして八咫鏡(やたのかがみ)でしょうか?」

 

「ヤタノカガミ?」

 

「ええ、日本神話に出てくる鏡です。天照大神が岩戸に閉じ籠り日本から日の光が消えたために多くの災いが起こりました。天照大神を外に出すために作られたのが八咫鏡だったと言われています。鏡に写った自分自身に興味を持って天照大神が岩戸から出たという逸話があります」

 

「強引な解釈をするなら隠された物を顕にする能力と言ったところでしょうか?」

 

「ならば灰のセイバーは須佐之男命(すさのおのみこと)かもしれません」

 

「成る程、ありがとうございます」

 

時間は一時間半ほど過ぎていた。

 

マスター達の体力も限界に近かったので一度休む事になった。

 

シロウ以外の赤のマスターとサーヴァントはアジトに戻り仮眠と取ると言うことになった。

 

黒のマスターとシロウは城塞で仮眠を取ることにした。

 

 

午前4時頃

 

トゥリファス郊外 森の中

 

灰の陣営―――チンギス・ハンはキャンピングカーの中で次のプランの為の準備をしていた。

 

クロのアジトから持って来たジュラルミンケースを傭兵達がトゥリファスに運ぶよう指示され運んでいた。

 

トィリファスに向かっているのは4人。今ここいる傭兵達は4人。残り36人は二つの班に分かれ城を見張っていた。

 

この場のリーダー格と思しき男がチンギス・ハンに発言する。

 

「テム、城から出てきた一団を追跡していたAチームが全滅した」

 

「そうか。Bチームはそのまま待機と伝えとけ。それから例の物は発送したか?」

 

「ああ。4時間後に届くようにした」

 

「OK。ありがとう。下がっていいよ」

 

リーダー格は下がる。

 

彼がキャンピングカーから出るとチンギス・ハンはクロに話しかける。

 

「クロ」

 

「なんだい?」

 

「先の襲撃で大聖杯の位置は補足できたか?」

 

「うん」

 

「良し。後はダーニックの所持していた羊皮紙を手に入れれば・・・」

 

「ああ。僕たちの計画を前に進めることが出来る」

 

 

ミレニア城塞

 

「ケイローン、アヴィケブロン。話がある」

 

「?」

 

クー・フーリンから呼び出された二人はダーニックの隠していた羊皮紙を見せられる。

 

「これは・・・!」

 

ケイローンは驚く。

 

その中身はダーニックが解析した(・・・・・・・・・・)大聖杯の資料だった(・・・・・・・・・)

 

「ダーニックを殺した奴が持ち出そうした形跡があった。奴らの目的はこれかもしれない」

 

「これが奴らの手に渡るとまずいね」

 

アヴィケブロンは冷静に言う。

 

「ええ。彼らは亜種聖杯を熟知している。この資料と彼らの知識、そして彼ら自身に大聖杯を解析させられては・・・」

 

「ああ。大聖杯をもう一つ作られるかも知れない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

そうして夜があける。

 

混沌に満ちた聖杯大戦、6日目が始まる。

 

 

 




長らくお待たせしました。

ようやく中間地点まで書けました。


赤の陣営には黒と協力して貰うために出来るだけサーヴァントを減らす必要がありました。

少なくともセミラミス、カルナ、アキレウス辺りは確実に消えて貰って、シェイク、アタランテ辺りは残って貰おうと思ったのですが、結局シェイクは消えて貰いました。

黒の陣営は『赤の残存サーヴァント(剣、狂除く)では太刀打ちできない戦力差であり、なおかつ灰の陣営とは赤の陣営の協力なしでは勝率が4割ぐらいの戦力』を目指しました。結果として敗退したのが黒のライダーだけになりました。

これから灰のライダーさんが本気出します。ヤバい方向にな!

では今回はここまでです

次回 最悪の贈り物


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