東方煌神紀 (ユウマ@)
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プロローグ

初めまして、ユウマと申します。
今回から、 東方煌神紀 という物を書かせていただきます。
初女作です、はい。笑

何か感想等ありましたら是非お書き下さい。
ネタ等の提供も大歓迎です!笑
では、最初短いですがどうぞ!


その日、俺、雨崎 煌(あまさき こう)は焦っていた。

 

 

何でって?今日は高校の入学式。

普通は早めに寝て備えるだろう。

だってのに前日ろくに寝なかったせいでこんな目にあっている。

ゲームやりたかったもの、仕方ないよな。

そして目覚ましをかけ忘れて今に至る。

つまるところ、時間が無い。

それに加えて俺は訳あって1人暮らし、家は高校から遠い。

ぶっちゃけもう間に合わねーんじゃねぇかと思う。

友達との約束もすっぽかすし散々だよ。泣きたいよ。

 

とにかく大急ぎで着替えて支度を整える。家を出るすんでの所でリビングの写真に声をかけた。

 

「今日から新しい生活だ。じゃ、行ってくる!」

写真に写っているのは俺と、男女2人。俺の両親らしい。最も、俺は父親の事を覚えていない。物心ついた頃には身内は母親だけだった。

 

「っと、しみじみしてる場合じゃねぇ!」

家を飛び出し走る。しかし運が悪いのか信号に捕まるわ車は止まらないわで、思いのほか時間を食われてしまう。

もういっそタクシーでもとっ捕まえていくか…?そんな発想が頭を巡るが、ここはやはり走っていくしかないだろう。これでも足の速さと体力にはそこそこ自信がある。ここは華麗に走ってさっさと着いてやるぜ!

 

 

 

「はあ…はあ…」

 

 

 

…まぁそんなさっさと着ける訳もなく。スタミナが切れてゾンビのような動きでのろのろ走っている。これならマジでタクシー捕まえた方が早いかもしれん。まだ全然高校見えてこねーぞおい。

気付けば入学式開会までもう30分も無い。入場をそれより前に行うらしいので実際はもっと短いだろう。

と、不意に俺のスマホが鳴った。友達からメールだ。こんな時に送ってくるって事はもしかして開会が延びたとか!?

そう思いながらメールを開くとー

 

 

 

「よっ、煌。今頃お前はひいひい言いながら走ってんだろーな。

こっちはもう教室で談笑中だぜ。そんな走るお前の苦労を無駄にするようで悪いがー

 

 

 

 

 

 

ーついさっき校門閉められちまったぜ☆」

 

 

 

 

 

 

よし、あの野郎後でシメる。俺がこんな目にあってると知って送ってきやがったな。

ん、まだ続きが…

 

 

 

「p.s 裏門ならずっと開いてるぜ。そこから入って事務の人にでも言えば平気だろ。そんで担任にいきなり怒られるんだな。他人の不幸で飯が美味いぜ。健闘を祈る。」

 

やっぱシメる。あいつ楽しんでやがるな。何が飯が美味いだ、こっちは朝飯食ってねーんだっての!

 

そんな悪態をつきながらも走る。そろそろ高校が見えて来るはず!これならどうにか入学式にも間に合うかも知れないーーそんな時に。

 

 

 

 

 

「うわ!?何だ?地震か!?」

 

 

 

 

 

 

 

ー突然地面が揺れ始めた。

慌てて立ち止まり、伏せようと地面に手をつけー

 

 

 

 

「…は?」

 

 

 

ー周りの地面が消えた。同時に浮遊感。

 

 

 

 

 

「え…うわああああああ!!」

 

 

 

 

 

次の瞬間、俺は奇妙な「目」の空間へと落ちていったーー

 

 

 

 

 

 

「…これで彼の方は完了ね。後は…。」

 




…短いですね、すいません。
これでも結構頭を回転させてるんです。
次回からもっと1話を長くしていきたいです。
更新は不定期になりますが、なるべく早く投稿するつもりです。

最初は東方っぽさが…
つ、次から多いカラ


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第1章 幻想入り
幻想の世界へ


ユウマです。何と早くネタが思いつきました。そして尽きました…

で、ではどうぞ!


 

「……ぐえっ!」

いきなり大量の「目」がある空間に落とされた俺。

 

「何なんだよ…てか何処だここ…?」

 

 

「此処は私が作った空間よ。」

 

 

「!?」 後ろからの声に咄嗟に振り返る。そこにはーー

 

ー女が立っていた。金髪で、紫色の上着を着ている。口元を扇子で隠しているため、どこか胡散臭い。

「…あんた、誰?」

 

 

 

「私は八雲紫。忘れられた者達の楽園、幻想郷の管理者よ。」

 

 

 

 

 

……はい?

 

俺は頭が可笑しくなったのか?そうだこれは夢だ。頬をつねれば目が覚めて高校にーー

 

 

「残念だけど現実よ。ほら。」

 

 

「痛ってぇなおい!」

 

 

つねられた力が人間が出せる力じゃねぇだろうよ。

 

 

 

「突然だけど、私は貴方に、お願いしたい事があって此処へ呼んだのよ。」

 

 

「いや俺は帰りたー」

 

 

「本当は私達が解決しなきゃいけないのだけど…私達だけでは解決するのが困難なの。」

 

 

「とりあえず俺の話をー」

 

 

 

そんな時にこの役目に1番適任そうな貴方を見つけたのよ。」

 

 

 

だめだコイツ話聞く気ねぇな。

 

 

 

「とにかく俺は元の場所に帰りたいんだよ!!」

 

 

 

 

「あ、頼みを聞いてくれなきゃ帰さないわよ?」

 

 

 

コイツ…人の弱みを握りやがって…

 

 

 

「…聞くだけだ。どんな頼みなんだよ。」

 

 

 

 

「私達と一緒に幻想郷を…私達の世界を守って欲しいの。」

 

「無理だ。」

 

 

どんな頼みかと思ったら世界を救え?そんな事やってる暇はない。第一こっちの生活が俺にはある。

 

 

 

 

 

 

 

「けど放っておいたら貴方のいる世界にもいずれ何らかの影響が出るわ。街が崩壊し、沢山の人も死ぬかもしれない。それでも貴方はこのまま元の世界へ帰ろうとするのかしら?」

 

 

 

 

………

 

 

 

「無茶な事を言っているのは分かっているわ。けど貴方にしか頼めないの。人間でありながら特異な能力を持った貴方にしか。」

 

 

 

「…特異な能力?どういう事だ?」

 

 

 

 

「そのままの意味よ。貴方は人間の筈なのに、普通は持っていない魔力を持っている。それもかなりの量の。」

 

「その力を使いこなせるようになって、幻想郷を守って欲しい。私が造った、忘れられた者達の楽園を。」

 

 

 

 

ーーそう言って、紫は頭を下げた。……俺はどうする?

 

 

 

こいつの頼みを引き受ける?いきなり現れて突拍子も無い話をされて世界を守るって?無理だろう。

 

 

 

 

 

このまま元の世界に帰してもらう?ーー今の話とこいつの姿を見てそのまま帰れるほど俺は人でなしではない。

 

 

 

 

何よりーー俺はこのまま元の世界へ帰っても、この出来事、この光景を忘れて呑気に生活できるだろうか?

 

 

 

2つの思いが胸の内で廻る。そして俺の出した結論はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ー分かった。お前の「頼み」を聞いてやる。」

 

 

 

 

 

 

「!本当に?」

 

 

 

 

 

 

ーー頼みを引き受ける、事だった。

どうせこのまま帰った所で、特に何がある訳でも無い。とりあえず高校に通い、とりあえず毎日を送る。それだけの人生だ。

 

 

 

 

ならーーこいつの言う、「頼み」を聞くのも、悪くは無い気がしてきた。

 

 

 

けど何よりも、紫の姿、口調が俺のーーに似ていたのが、1番の理由なのかも知れないが。最初見た時は本当にびびった。

 

 

 

 

「…ありがとう。」

 

 

紫は少しだけ微笑みながら礼を言ってくる。俺も笑いながら返した。

 

 

「別にいいって。それは終わってからにしてくれ。」

 

 

 

 

「…そうね、そうするわ。それで煌、早速だけど貴方を幻想郷へ送りたいと思うの。」

 

 

 

 

「おう、そうか。それで、俺は一体どうすれば良いんだ?」

 

 

 

 

「まずは幻想郷にいる巫女の所へ送るわ。そこで貴方の力の使い方やこの世界での生き方を学んでちょうだい。私も時々顔を出しに行くわ。あ、お賽銭は多めにね。」

 

 

「?分かった。そこで色々学べば良いんだな。」

「そうよ。何かある時は私から連絡するわ。」

 

「分かった。じゃそこへ送ってくれ。」

 

 

「分かったわ。それじゃ煌……

 

 

 

 

無事を祈るわね♪」

 

 

 

 

「えーーうわぁぁぁー!またかよぉぉぉぉー!」

 

 

 

 

瞬間、俺の身体は真っ逆さまに落ちて行く。これから何があるのか分からないが…やるだけやってやる!

 

「目」の空間を落ちながらーー俺はふと思った。

 

 

 

 

 

 

「あいつ……何で俺の名前を……?」

 

 

 

 




はい、第2話終了です。
……展開がベタですね。オリジナルの展開って中々思いつかなくて…
ネタも浮かばない…(;ω;)ネタフッテコナイカナァ
今回はシリアスでした。難しいです。ギャグ書きたい…
次の話の投稿は未定です。多分遅めですがなるべく早めに出します。
では、次もお楽しみに!(楽しみにしてる人がいれば)





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博麗の巫女

遅れてすいませぇぇん!

はい、ユウマです。
書こう書こうと思ってこんな時期です。次回からは早く投稿します。
多分。きっと。



…ではどうぞ!


 

 

「ーーっと!」

着地成功。いきなり落とされても良いようにしとこう。

 

 

「んでここは…石段か。」

俺の前には長そうな石段が続いていた。おそらくこの先に巫女とやらがいるんだろう。直接そこに落としても良かったと思うが。

「とりあえず登るか…」

俺は石段を登り始めた

 

 

「結構かかったな…。ここは…神社?」

石段を登りきると、目前に神社が建っていた。巫女がいるらしいし当然か。

「賽銭でもするかー。財布はっと」

財布の中を確認するとー

 

「…何で諭吉1人しか入ってないんだ?」

札はもちろん小銭まで無い。紫のやろう盗りやがったか。仕方ないので諭吉を入れる。さらば諭吉。

 

 

 

 

「お賽銭っ!!」

 

 

次の瞬間目の前に女が立っていた。目を輝かせて賽銭箱を覗いている。巫女服を着ているのでこいつが紫の言ってた巫女か。

 

 

「1万もある!これでしばらく生活できるわ……あんたがいれてくれたの?」

「え?ああそうだけど。」

何でこんな金に飢えてんのコイツ。まだ目輝いてるよ。

「あんたが紫の言ってた魔力を使える外来人かしら?私は博麗霊夢。この幻想郷で巫女をやってるわ。よろしく。」

「俺は雨崎煌だ。よろしくな。」

諭吉片手に自己紹介してくる。

 

 

「ところでさ、霊夢。」

「ん?」

 

「俺はお前に自分の力の使い方だのこの世界の事を教わりたいんだけど…」

「ああ、そうだったわね確か。」

忘れてやがった…

 

 

 

「ここは幻想郷。貴方達が言う妖怪や妖精なんてのが共存しているわ。私はそんな妖怪とかを退治したりしているわ。」

 

 

 

へー妖怪ねー…妖怪?弱肉強食?

 

「て事は俺がそんなのに会ったら…」

「今の貴方ならすぐ食べられるわね。」

マジかよ。紫のやつ楽園とか言ってたんですけど?

 

「そうならない為に貴方にはこの世界での戦い方…弾幕ごっこを学んでもらうわ。」

「弾幕ごっこ?」

「ええ。先ずは弾幕からね。自分の中の力を溜めて撃ち出す様なイメージよ。」

霊夢が手をかざすとーそこから光る球が無数に飛んでいった。

「こんなものよ。物は試しでやってみて。」

「よし…こうか?」

 

俺も真似して力を込める。と、真っ白な球がいくつか飛んでいった。おお、何かかっこいい。

「そうよ。慣れれば数とか速さは変わるから練習ね。

次はスペルカードよ。」

そういって霊夢から白いカードを3枚渡された。

「それに自分のイメージで自分のスペルカードを作るのよ。」

なるほど。イメージか…俺のスペルカード…

 

「よし…出来た。」

「ん、3枚とも出来たわね。じゃあどんなスペルか見るために私と弾幕ごっこをーー」

 

 

 

 

 

「霊夢ーっ!」

 

 

ーー空から箒に乗った女が降りてきた。どっかの映画みたいだな。

 

「魔理沙…何しに来たのよ?」

「紫が外来人を呼んだって言うから来てみたんだぜ。」

霊夢とあいつは知り合いみたいだな。みた感じ接点はそんな無さそうだけど。

「お、お前が外来人か。私は霧雨魔理沙。魔法使いだぜ!」

「雨崎煌だ。よろしくな。」

テンション高いな…しかし魔法使いか。ほんとにいろんな奴が居るんだな。

「で?霊夢。煌と何を話してたんだぜ?」

「今は弾幕ごっこを教えてたのよ。スペルカードとかね。」

「弾幕ごっこか。よし、なら…煌!」

「ん?」

 

 

 

 

 

 

「私と弾幕ごっこだ!」

 

 

 

 

 

 

…はい?

 

 

 

 




はい、第2話でした。もうネタの少なさどうにもならないですね。
次回から本格的に話が進んでいきます。おそらく。


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Spellcard practice!

どうも、ユウマです。完全に投稿が気まぐれになっております。
元々話書くのとか向いてないもんね、仕方ないね。なるべく頑張りますが。
ではどうぞ!


「魔理沙と勝負?」

「そうだぜ!私が弾幕ごっこのやり方ってのを教えてやるぜ!」

何かやる気になってらっしゃる。霊夢も止めたりはしなそうだ。

「じゃあスペルカードは煌が今作った3枚、魔理沙はハンデとして2枚ね。どっちかが戦闘不能になったら終了ってことで。」

 

 

こうして今俺は魔理沙と向かい合っている。魔理沙は八角形の何かを持って構えているが、ぶっちゃけ何も分からない俺は突っ立ってるだけだ。

 

「じゃあ始め!」

「先手必勝だぜ!」

魔理沙の手から星の形をした弾幕が大量に放たれる。結構早いが、身体をひねってどうにか躱したり、自分の弾幕で相殺したり。

「ならこっちも!」

いくらか弾幕を放つがー

「遅いんだぜ!」

魔理沙は箒に乗って軽々避けた。俺の弾幕は魔理沙のよりでかいが速度も数も大したことは無い。おまけに箒に乗ってるせいで早くて狙いが絞れないー

「なら!」

俺はスペルを取り出して宣言。効果は知らん。

 

 

 

 

 

「散符【エレメントパーティクル】!」

俺の周りから白色の弾幕が大量に展開される。大きさは相当小さいが速度や数が多い。これならいけるかー

 

 

 

「まだまだだぜ!魔符【スターダストレヴァリエ】!」

「うおぁっ!?」

魔理沙からさっきより大量の弾幕が放たれる。大きさや速度もさっきよりも速い。俺のスペルカードは魔理沙の星型の弾幕にかき消されて本人までは届いていない様だ。俺の弾幕じゃ捌き切れないー

「ぐふっ!」

ー何て考えていたら1発星に被弾した。思ってたより痛いぞこれ!

「止まってるとどんどん当てるぜ!」

上の方から大量に弾幕が降ってくる。まだ余裕はあるがこのままだと不味いか?

もう1枚スペルを取り出す。何か乱発してる気もするが、今はなりふり構ってられない!

 

 

 

 

 

「壊符【無影双球】!」

俺の両手で白い弾幕が生成されて行く。今までより大きく、光を放って膨張して行く。

 

「お…らぁ!」

思いっきりぶん投げた。2つの弾幕は違う方向から魔理沙に迫るがー

 

「よっと」

 

速度が速度なので避けられる。そのまま空に飛んでいくがー

 

「何だぜこれ!?」

空から大量の小さい弾幕が放たれる。大きいのが外れてもそれが破裂することで相手を油断させた感じだ。中々上手くいってると思う。問題があるとすればー

 

「うお危ねぇ!」

 

…俺にも被害が出そうなとこだろう。2人とも避けるのに手一杯な状態だ。改良しなきゃな。

 

 

 

「なら…これでどうだぜ!」

いつの間にか魔理沙が地面に降りてあの八角形の物体をこっちに構えている。そこに虹色の光が集まっていくー やばくね?

 

 

 

 

 

「恋符【マスタースパーク】!!」

 

極太の光線が撃ち出された。虹色の光線はこっちに凄まじいスピードで迫ってくるー

「避けれねぇ…」

最後のスペルを取り出す。どんなのかは相変わらず不明だが、この状況がひっくり返る事を祈るしか無い。

 

 

 

「反符ーー

 

 

 

 

 

 

 

【オーバーライド】!!」

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

「…何も起きねぇじゃねぇかよぉぉぉ!」

俺はそのままマスタースパークに飲み込まれたのだったー

 




後書きのネタが分からんですハイ


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程度の能力

どうも、ユウマです。
夏休みがそろそろ終わりますね。大した事はしませんでしたけど。ペース上げれたら良いな…




ではどうぞ!


「いてて…」

「いやーつい全力でやっちまったぜ。大丈夫か?」

魔理沙のマスタースパークにぶっ飛ばされた後、俺たちは博麗神社の縁側に揃って腰掛けていた。

「でも初めての弾幕ごっこであれだけやれるなんて大したものだわ。能力も特に使ってる感じはしなかったし…」

「能力?」

 

 

「ここに住んでるある程度力のある人は個人で[程度の能力というのを持っているの。人によって様々だけどね。」

「へー。霊夢と魔理沙の能力はどんなの何だ?」

「私は空を飛ぶ程度の能力ね。」「私は魔法を使う程度の能力だぜ。」

 

ほんとに色々あるんだな。

「なあ、俺にはそういう能力ってのは無いのか?」

 

「なら私が調べてあげるわ。少し目を閉じてて。」

「?おう。」

 

 

目を閉じると何やら霊夢が唱えているようだ。あれで能力がわかるのだろうか。

 

「目開けて良いわよ。」

「ん。それでどんなの何だ?」

 

 

 

「なんと言うか…属性に関係する様な能力のようね。詳しくは分からなかったけれど…」

 

 

なんか曖昧だな。

 

「属性に関係するなら実際にやってみれば良いんだぜ!煌、ちょっと掌だけに魔力を全力で出してみてくれ。」

「分かった。」

 

言われるまま、掌に魔力を集中させるイメージをする。それを全力で出すとー

 

「うわ、なんだこれ!?」

 

 

 

 

ー俺の掌に、燃え盛る炎、球体状の水、小さな竜巻の様なもの、小さい岩石が生成された。

 

「どうやらその4つを操るといった能力らしいわね。なんか火だけやたら強いけど…」

 

確かに4つの中でも炎だけが突出して燃えている様だ。

「それは多分得意分野って事だぜ。」

「なるほどな。つまりこれが俺の能力って事か…。」

 

なんか本格的に魔法使いになった気分だ。このままいけば空飛べんじゃねーか?

 

「煌の能力も分かった事だし、これからどうしましょうか。能力を上手く使える様に特訓というのもあるけど…」

 

んーどうするか。大してやる事も言われて無いしな…

 

 

「なら私が幻想郷を案内してやるんだぜ!煌もそれで良いよな?」

「え?あ、おう。」

 

成り行きで返事したけど確かにこの世界を見て回るのもありか。面白いとことかあるかもしんねーし。

 

 

「よし、それじゃ行くんだぜ!」

言うやいなや魔理沙は箒に乗って空へ飛んでいった。ってー

 

「俺飛べないんだけど…。」

 

 

「魔力をコントロールすればいけるはずよ。大して難しく無いだろうし。」

「そ、そうなのか?」

 

霊夢に言われ試しに何度かやってみるがー

 

「全然出来ねぇ…」

 

飛ぶどころか魔力のコントロールもろくに出来ない。弾幕を撃つ時も大して出来なかったがこうまで俺にとって難しいとは。

 

「おーいまだかー?」

 

飛んでいた魔理沙が戻って来る。魔理沙は普通に魔力と箒で飛べるみたいだが…

 

「なんか知らねーけど飛べねぇんだよ…」

「なんだそんな事か。なら私の箒に乗ってくんだぜ!」

 

半ば強引に箒の後ろへ乗せられてしまう。

まぁ後から飛べる様になれば良いか。

 

 

「あ、魔理沙、幻想郷を案内するなら霖之助さんの所に行ってくれるかしら。煌の服装だと目立つし煌の様子じゃ妖怪に襲われた時とかに対処するなら武器とかもいるだろうし。」

 

「分かったぜ。んじゃ煌、しっかり掴まってろよ!」

 

 

「え?……うおお!?」

 

 

こうして俺と魔理沙は幻想郷の空に消えていったー




あー本編のネタが浮かばない。能力もスペカも案がねぇぇ!


しかし展開は練ってあるのです、ちゃんと(`・ω・´)


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香霖堂

どうも、ユウマです。
もう夏休みも終盤ですね 何か以前より短くなったような…
そのくらい充実してたんですかね、多分





デモヤッパリモットダラダラシタイナァ…(°_°)


「よし、着いたぜ!」

「次から自分で来るわ…」

魔理沙の箒に揺られる事数分、俺たちは森の中にある一軒の店の前にいた。看板に香霖堂と書かれている。

「魔理沙達の言ってたのはここの事か?」

「そうだぜ。おーい、香霖ー邪魔するぜー!」

言うなり扉を開けてずかずか入ってしまう。後から俺も着いていく。

 

 

 

「…もう少し静かに入ってくれないかい?魔理沙。」

 

 

店の中は俺たちの世界のものが色々置かれていた。そんな店の奥、レジの辺りに座って本を読んでいる人がいた。眼鏡を掛けて和服を着ている、男のようだ。何気に幻想郷に来て男と会うのは初めてな気がする。

 

「よっ、香霖。来てやったぜ。」

「いらっしゃい。…おや、後ろの子は?」

 

 

「こいつが前に紫が言ってた外来人の煌だ!」

「雨崎 煌だ。よろしく。」

 

 

「僕は森近霖之助。この香霖堂の店主だよ。よろしく。」

 

「この店は…俺たちの世界の物を扱っているのか?」

「まぁそうなるね。といっても僕は物の名前は分かっても使い方なんかは分からないんだけどね。」

 

そんなんで商品を売れるのだろうか?初対面で言うのも何なので黙っているが。

 

「ところで今日は何か用かい?」

「ああ忘れてたぜ。このままの服だと目立つからな、煌に合う服を探しに来たんだぜ。」

 

 

…霊夢といい魔理沙といい忘れっぽいのだろうか。元々そのためにやった筈なのだが。

 

 

「煌君に合う服か…ちょっと待ってくれるかい。確か奥にそれらしいのがあったはずだ。」

そう言って霖之助は店の奥に行きー何やら持ってきた。

 

「これなら煌君にぴったりだと思うけどね。」

 

 

霖之助が渡して来たのは薄く青みがかったロングコートとズボンだった。試しに羽織ってみるとサイズも問題ない。ただー

 

 

 

「この変なのは何なんだ?」

 

 

 

そう、コートの肘の部分とズボンの脚の裏の辺りに何やら小さな機械の様な装置が着いていた。色も同じなので目立ってはいないが…

 

 

 

「それはそのコートのおまけみたいなものでね。霊力を込めるとそこから噴射して機動力を上げる事が出来るんだ。上手くやれば飛べたりもするね。」

 

マジか。幻想郷のコートってこんな発達したものだったのか。

これなら魔力のコントロールが下手でも飛べる筈だ。

 

「せっかくだから奥で着替えて来たらどうだい?」

「ああ、そうさせてもらうよ。」

 

ー着替え中ー

 

 

着替えて店に戻ると、魔理沙は店内の物を物色していた。

「お、あんまり違和感も無いな。前の服よりしっくり来るぜ。」

 

言いながら店の装飾品をポケットに入れている。おいそれ犯罪だからな。

 

 

「うん、サイズも合っているね。初めてだしお代はいらないよ。」

「それは助かるぜ!」

「…魔理沙はいつも払わないじゃ無いか。」

 

霖之助が苦い顔をしている。苦労してそうだ。

 

「そうだ香霖、あと煌の武器を調達に来たんだぜ!」

「武器?ここじゃ弾幕ごっこが主流じゃ無いか。」

 

「煌はまだ来たばっかだからな。弾幕ごっこに慣れて無いんだぜ。」

 

「なるほどね。武器はそこの箱の中にいくらかあるから、気に入ったのがあれば持っていくといいよ。」

「ああ、ありがとな。」

 

 

ー武器の入った箱を物色している。確かに色々な武器が入っているが、何というか何かが違う。そんな事を思いながら物色しているとー

 

「ん?」

 

 

ー他とは少し変わった、刀が底の方に置いてあった。長さも普通で作りもシンプルだが、柄の方に蛇の様な飾りが付いていて、何故か惹かれてしまう。

 

 

「なあ霖之助、これって?」

 

「ああ、それは…外の世界の刀らしいんだよね。調べたところ、昔に神様が宿っていたんだとか。」

 

「へえ…」

「それにするのかい?」

 

 

「ああ、これにするよ。」

そう言って刀を手に取る。持ってみた感じも、しっくり来るようだ。

 

試しに少し抜いてみると、薄赤い刃が日光を反射して光った。

 

 

ーーその時、刃に何か黒い霧に様な物が浮かんだ気がした。

 

 

「…?」

「どうしたんだい?」

 

「いや、何でも無い。」

多分気のせいだろう。

刀を鞘に収めながら霖之助に聞いた。

「ところでこの刀、なんて名前なんだ?」

 

 

 

 

 

 

「ーー焔刀・酸漿(かがち)。それがその刀の名前だよ。」

 

 

 

 

 

 

「ほんとにありがとな、霖之助。刀もタダでいいって言うし」

「香霖のとこは何でもタダだからいいんだぜ!」

「君は何でも持っていくだけだろう…」

俺は酸漿を腰に差して魔理沙の箒に乗った。

「また来てくれれば歓迎するよ。道具の使い方なんかも教えてほしいしね。」

 

 

霖之助に礼を言って、俺たちは飛んで行った。




今回はいつもより長めな気がします。今までが短い様な気も…
これからもこのくらいの長さでいけたらなぁ…


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人里へ

どうも、ユウマです。
先の展開が決まったのに目先の話が見えなくて焦ってます。
ネタを考えるのも苦労だなぁ…




ゲームしてたから考えついてないだけですけど
\(^o^)/


 

「んで、この後はどうするんだ?」

香霖堂を出た俺は箒で飛んでいる魔理沙に並びながら(・・・・・)聞いた。

何を隠そうあの後香霖堂の近くでコートの機械を使って飛ぶ練習をした所案外すぐコツが掴めたため現在並んで飛んでいる…という訳だ。

 

「次は人里に行くぜ。」

「村みたいなもんか。魔理沙もそこに住んでるのか?」

 

 

「いや、私は森に住んでるんだぜ。」

 

 

……

 

 

「…苦労してんだな」

 

 

 

 

 

「おい!?どこに同情される所があったんだぜ!?」

思わず同情したら魔理沙に抗議された。

 

「私は魔法使いだから森に住んでるんだぜ!住む所が無いわけじゃない!」

 

「あ、何だそーなのか。」

 

そんな話をしながらしばらく飛ぶと、集落の様なものが見えてきた。

 

「お、あそこだぜ!」

言うなりスピードを上げて行ってしまった。俺もそれを追って人里へ入っていった。

 

 

 

 

 

んで、

 

「どこ行きゃいいんだよ…」

迷った。

あの後魔理沙は「1時間くらいここを見て回るといいぜ!」とか行って何処かへ行ってしまった。案内してくれんじゃねえの?

そんな事を思いながら歩いていると、

 

 

「ん、君は…見慣れない顔だな。」

何やらへんてこな帽子を被った女性に話しかけられた。

 

「ああ、私は上白沢 慧音という。この里の寺子屋で歴史を教えている。」

 

…寺子屋。ここの雰囲気も何となく昔っぽいなと思っていたが、寺子屋レベルまで昔だったとは。

 

「俺は雨崎 煌だ。あんたらが言う外来人ってやつらしい。」

 

「ふむ、煌君か。よろしく頼む。」

「ああ、よろしく。」

 

 

 

 

 

「なるほど。それで魔理沙に案内をして貰ってたと。」

「どっか行っちまったけどな。」

慧音に今までの事を話していると、空に見覚えのある白黒の影が。

 

「よう煌。慧音も一緒か。」

そのまま降りて来た。すると慧音が魔理沙に歩み寄りーー

 

 

 

 

「ふんっ!」

 

 

 

 

ーー思いっきり頭突きをかました。何かやばい音出てたよ。

 

「全く、外来人の案内をさぼって何処かに行くとは…」

慧音はそう言うが魔理沙が聞いているかは怪しい。頭突きされた所から星が飛び散ってたし。

 

慧音は俺に向き直って言う。

 

「もし余裕があれば、今度寺子屋にでも来てくれ。ここの歴史の書いた物なんかもあるのでな。」

 

「おう、今度来てみる。」

 

そのまま慧音と別れ、里の入り口へ。

 

「さて、それじゃ霊夢のとこに戻ろうぜ。」

 

「って言ってもまだここと香霖堂しか見てないぞ?」

 

「そりゃ幻想郷にも山とかあったりするけどな。あそこは天狗がうるさくてな。面倒だし今度だぜ。」

 

なるほど、俺も面倒な事は嫌いだ。

 

「それより煌、お前刀とかも手に入ったんだし、新しいスペルカードだって作るだろ?」

「ああ、そのつもりだけど」

 

 

「だったらまた勝負しようぜ!霊夢や私で特訓してやるぜ!」

 

…さっきレーザーでぶっ飛んだ俺を見て言っているのだろうか。ただまぁ特訓してくれるのはありがたい。俺だけじゃ訓練なんてほぼ出来ないし。

 

「よし、じゃあ次にやる時はお前を負かしてやるよ。」

 

 

「おっ、じゃあその時が来るのを楽しみにしとくぜ!」

 

そんな事を話しながら俺たちは博麗神社へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…来たわね。それじゃ煌にも近いうちに動いて貰おうかしら。」




これで1章が(多分)終わりです。
次からはもっと戦闘入れていきますよー。




…入れられたらね?


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第2章 紅霧異変 〜scarlet devil〜
とある噂


どうも、ユウマです。
学校が始まり疲労が溜まります。投稿ペースは元々不安定なので変わりません。ご安心を。



パナップ食べたいなぁ…( ゚д゚)パナップ美味しいですよパナップ。ぶどう味に限る。

ではどうぞ!


 

その日、俺は霊夢と一緒に人里に来て甘味処で茶を飲んでいた。

ここでも団子や緑茶はあるようで、存分に甘味を楽しんでいた。みたらしうまい。

余談だが俺は今霊夢の博麗神社に居候している。そこで魔力をコントロールしたり新しいスペカを作ったり。今日は買い物の荷物持ちだ。居候という身分で文句は言えないのでついて来た。

するとそこへー

 

「あやや?霊夢さんがここにいる何て珍しいですね。」

女の子が話しかけて来た。正確には手に持ったメモ帳と首から提げているカメラから記者か何かだろうか?なんか羽生えてるけど。

「こいつに人里を案内してたのよ。魔理沙が前すっぽかしたせいでね。」

 

「あやや、そう言えば見慣れない方がいますね。霊夢さんにもついに恋び「断じて違うわ。」何だそうなんですか。」

 

一瞬つまらなそうな顔をしたがすぐに戻る。そして俺の方へ歩いて来た。

「初めまして!私は射命丸 文と申します。清く正しい射命丸です。新聞記者をやってるんです。お一つどうですか?」

「いや別にいらん。」

また独特なのが来たな…。どうもここに住んでるやつは個性豊かな奴が多い気がする。

「俺は雨崎 煌だ。よろしく。」

「で?あんたはこんなとこに何しに来たのよ。」

 

「それはもちろんスクープを探しに!と言いたいんですがそれだけじゃなくてですね。最近人里の方からある噂が立っているんですよ。」

「噂?」

「ええ。何でもーー

 

 

 

 

 

 

ーー霧の湖の辺りに紅い洋館の様な建物が現れたって言うんです。」

 

「洋館?見間違いとかじゃなくて?」

「ええ何人も見ています。中には館の中に入ろうとした人も居るみたいなんですが、扉も窓も開かず、運良く空いていた扉から入っても気付いたら外に戻されてるんだとか。」

 

「変な館だな…射命丸はそこにもう行ったのか?」

「もちろん行きましたよ。スクープですからね。ただ…

私が行った時は何やら門番らしい人が立っていてですね。入る事は叶わなかったんです。」

 

「ふうん…また新しく外来人でも来たのかしら。それにしても館ごとなんてね…」

「という噂があるので、私は今からまた取材に行こうと思っていたんですよ。そしたら霊夢さんを見つけたので寄り道したわけです。」

 

なるほど、確かに記者なら喜びそうなニュースだな。俺も出来れば行ってみたいが…

 

「まぁ特に何かしてる訳でも無いしほっといていいと思うわよ。どうせそのうち紫あたりが教えてくれるでしょ。」

 

「あやや、霊夢さんは相変わらずですねぇ。だからいつまでたっても春が来ないんですよ。」

 

後半部分が良く聞こえなかったがどうやら霊夢は相当マイペースらしい。人の事言えないけど。

 

「では私はこれからその館に取材して来ますね!煌さん、今度あった時には外の世界の話について取材を是非!」

 

「おー分かったよ。」

 

では!と言って射命丸は飛んでいってしまった。何か騒がしい奴だったな。それに赤い館か…ホラーにありそうな感じだな。

 

「煌、何してるの。置いてくわよ。」

「おう、今行く!」

 

 

結局その日はそれ以上その話題が出る事は無く。

俺は霊夢に膨大な量の荷物を持たされて神社へ帰ったのだった。

 

 

 

 



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紅い空

どうも、ユウマです。
最近ネタが浮かんで寝たら消えるを繰り返しています。
もっと記憶力を鍛えたいですね!




ではどうぞ。


俺と霊夢が里に行った翌日、俺は霊夢に叩き起こされた。

「煌、起きなさい!」

「いきなり何だよ…」

悪態をつきながらも霊夢に付いて神社の外へ出る。するとすぐに変化に気がついた。

 

 

「空が…紅い?」

 

 

そう、空が全体真っ赤に染まっていた。おかげで朝(多分)なのに微妙に薄暗い。

「これは異変ね…。」

「異変?」

 

「偶に妖怪たちがこういった事件を起こす事があるのよ。」

「ふーん」

今のところ空が紅いだけで何も起きていない様だが…

何て考えているといきなり俺の隣で空間が割れた。

「はぁい、霊夢」

 

「げ、紫」

出てきた紫を見て霊夢は面倒そうな顔をする。どうやら紫はあんまり良く思われていないらしい。

 

「いきなりそんな顔で見るなんてひどいわね。」

「そんな事どうでも良いから、何しに来たのよ?」

 

「貴方は異変解決に行くのでしょう?今回の異変は例の館の住人が起こしたものよ。私はそれを言いに来ただけ。」

 

「どーせあの館もあんたが連れて来たんじゃないの?」

 

「その辺りの判断は貴方に任せますわ。」

霊夢は面倒そうを通り越して呆れている様にも見える。

そのまま神社へ戻り、しばらくして札やらお祓い棒やらを持って戻って来た。

 

「とりあえず私は異変解決に行くわ。煌はここで待機!良いわね。」

言うだけ言って霊夢は飛んで行ってしまった。

 

あまりに突然の出来事に俺が呆然としていると、紫が話しかけて来る。

 

「そういえば貴方にも言う事があったわ。」

 

「何だ?」

 

 

 

 

 

「貴方も館に行って異変を解決して来て頂戴♪」

 

 

「はい?」

突然だなおい。

「霊夢に待機って言われたし…それに俺にそんな大層な事出来るわけ無いだろ?」

 

「それでも特訓はしているのでしょう?それに貴方には実戦を経験してもらわないと困るのよ。」

それに、と紫は続ける。

 

「貴方が今まで培った力を示せば霊夢だって貴方に好意を寄せたりするかもしれないわよ?」

……こいつ若干面白がってるんじゃ無いだろうな。

若干苛つき始めた俺におかまいなしに紫は割れた空間へ戻って行く。

 

「最後のは冗談だけれど、貴方には幻想郷を救って貰わなければならないわ。これはそのために必要な事よ。」

 

最後にそう言い残し、紫は何処かへ行ってしまった。

 

「はあ…とりあえず行けば良いんだろ行けば。」

言いながら準備をする為に俺も神社へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷を救うと言う約束を若干忘れていたのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー紅い館へと続く道。そこに悠々と向かう人影があった。

全身を黒いゆったりとした服に身を包み、手に持った杖をつきながら館へと歩く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな人影の前で突如空間が割れた。

中から出た彼女は人影を睨む。

 

 

 

 

「久しぶりね。もう懲りたと思っていたのだけれど。」

 

彼女ーー紫の僅かながら殺気のこもった声に全く動じる様子も無く、人影はあくまで丁寧に応じた。

 

 

 

 

「あー、えっと…確かここの賢者か何かでしたっけ。何処かでお会いしましたかね?」

本当に忘れてしまったかの様な口ぶりに、紫は眉を寄せながらも言った。

 

 

 

「あら、ずっと前に貴方が何か企んだ時に貴方を痛めつけて封じていたはずなのだけれど」

 

 

紫の物言いに人影は、彼は薄く笑った。まるで紫の反応を楽しんでいるかの様に。

 

 

 

「ああ、そんな事もありましたね。まさかまた、私のーー

私達の邪魔をするおつもりで?」

 

 

「私達?貴方は常に1人で行動していなかったかしら。」

事実、紫の中の彼はいつも1人で行動していた。

 

彼は笑った。とても愉快そうに、しかしどこか薄ら寒い気配を覗かせて。

彼は楽しそうに目を細めながら言った。

 

 

 

「まぁそうでしたけどね。まぁ私も仕える人が来たと言う事。そこで、またここをーー

 

 

 

 

 

 

 

私達のものにしようかと思いまして」

 

 

 

 

「そうはさせないわ。」

 

強く、紫は言い切った。

 

「貴方に仲間がいるのなら、その仲間ごと貴方をもう一度封じてみせるわ。その為の彼ら(・・)よ。」

 

 

 

 

 

暫く紫と彼は動かずーー

やがて彼が笑いながら歩き出す。

 

 

 

「まあ止めようとするのは貴女の勝手ですし。

頑張って止めて見てくださいよーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー貴女達、ヒトと妖怪でね。」

 

 

 

 

言って彼は歩いていった。紫はその場にしばし佇みーー

やがて割れた空間へと戻って行った。

 

 

その目に確かな決意を宿して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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真紅の館、七曜の魔女

どうも、ユウマです。
最近あまり暇が無くて更新出来ませんでした!(自分のせい)
ペース上げていきたいなぁと。



ではどうぞ!


赤くなった空を見ながら飛ぶ。

これだけ見たらただの変人だろう、しかし今の俺の状態を言おうとするとこれしか出てこないのだ。

俺は紫に言われこの異変とやらを解決するために館へと向かっていた。それなりのスピードを出しているつもりだが、幻想郷は意外に広いらしく目的地はまだ見えない。

 

「しかしホント赤いな……ん?」

前方に湖が見える。更にその先、目を凝らさなければ分からないが洋風の館の影。

どうやらやっと目的地の様だ。スピードを上げて湖を通り過ぎようとした所でーー

 

 

 

 

「そこのアンタ、待ちなさい!」

 

 

変な奴に呼び止められた。全体的に青っぽい感じの見た目に青い羽みたいなのが浮いている。そして小っさい。

 

 

「ここを通るならあたいを倒してから行きなさい!」

 

しかも好戦的な様だ。面倒なのは嫌いなんだけど…

 

「俺はあんたと戦う理由がねえよ。とりあえずそこどいて『先手必勝よ!』 人の話を聞け!」

 

どうしてここの奴らは話を聞かない奴が多いのか。心の中で愚痴りながら飛んでくる弾幕を躱す。

 

 

「むぅー当たらない…なら!」

言いながら青いの(面倒だからそう呼ぼう)は1枚のカードを取り出した。そしてー

 

 

「凍符【パーフェクトフリーズ】!」

青いのの周囲から氷の弾幕が放たれるーー氷?

 

「よっ」

試しに能力で炎を発生させてぶつけると弾幕が溶けていった。

 

「何それずるいーっ!!」

文句を言いながらまた弾幕を放とうとする。その隙に青いのの懐に潜りーー

 

「きゃあ!」

炎を弾幕の形にしていくつかぶつけた。そのまま青いのは目を回して湖にダイブ。一部溶けてた気もするがまぁ、大丈夫だろう。

 

 

「はあ…また変なのに会う前に行くか。」

俺は目前に迫った館へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

そして、

 

 

「…何処だここ。」

 

 

 

見事に迷っていた。館に入ったはいいもののこの館異常に広い。それとも中まで全部赤いせいでおかしくなってるのだろうか。

 

「とりあえずここのお偉いさんでも探すか。どっかにいるだろ。」

ぼやいて歩こうとしたところでー轟音が響いた。場所的に遠くはない。

 

「何だ?何かやってんのか?」

元々行くあても無いので音のする方に歩いて行くと、1つの部屋にたどり着いた。音はまだ響いてきている。慎重に扉を開けるとーー

 

 

「…図書館…か?」

あたり一帯に本棚が大量にある。それがいくつも積まれたりしているせいで天井も相当高い。音はすぐ近くで響いている。近くの本棚に身を隠しつつ音のした方を除いてみるとそこには。

 

 

 

「あれは魔理沙と…誰だあれ」

箒に乗った魔理沙と知らん人が弾幕ごっこをしているようだ。紫のゆったりした服に紫のナイトキャップ。髪まで紫である。赤だの紫だので目が痛い。何て事を思いながら見ていると、魔理沙の放った弾幕がこっちにまで飛んできた。

 

 

「やべっ」

反射的に飛び出す。弾幕は回避できたがこれは多分ーー

 

「煌!?何でこんなとこにいるんだぜ?」

やっぱりバレた。俺の近くまで来て聞いてくる。

 

「何かこの異変を解決して来いって言われたんだよ。そういうお前こそ何でここに」

「私も異変解決だぜ!」

お前もか。

「主犯を探してたらこんなとこに来ちまってな。折角だしここの本をいくつか借りようとしたらあの紫もやしがいきなり撃ってきたんだぜ」

 

魔理沙の言い方はともかく紫もやしとやらの方を見る。

どうやら俺と魔理沙が話していた時に弾幕を用意していたようで、見た瞬間結構な数が向かってくる。

 

「おっと!なぁ煌、お前も異変解決に来たんだろ?」

2人で躱していると魔理沙が聞いてくる。頷くとにやっとした表情になりー

 

 

「ならお前にもあいつを倒すのを手伝ってもらうぜ!」

はい?

と意義を申したいのは山々だが、俺も異変解決に来た身。異変を起こしたここにいるなら敵ということだろう。魔理沙と共に俺も臨戦態勢に入る。

 

 

「貴方もここの本を盗っていくつもりかしら?良いわ、2人纏めて

ここから叩きだしてあげるわ!」

 

 

……こいつが怒ってんの魔理沙のせいじゃん。

そう思いながらも、俺たちは弾幕を放ち始めた。

 




2週間以上間を空けてこの量……。
つ、次は戦闘長い筈。きっと。



……多分。


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ヴェーダスの火

どうも、ユウマです。

……最近ゲームにはまって執筆しませんでした。書こうとして気が乗らない、の繰り返しです。オラにネタを分けてくれ!\(^o^)/


……ではどうぞ。


図書館では静かに、というのは恐らくどこも共通のルールだろう。俺は今までそれを破った奴を見た事は無い。これからも見ない筈だった。

そう、筈だった。だが、

 

「さっさと諦めて出て行きなさい!」

「私はここの本を借りるまで諦める気は無いぜ!」

やっぱりこの世界では常識は通じないようだ。

一緒に倒そうなどと言ったは良いが結局魔理沙と紫もやしの喧嘩の様になってしまっている。一応こちらにも弾幕が来るため避けながら撃ったりはしているが全く当たらん。と、

 

 

 

「金符【メタルファティーグ】!」

いつの間にスペルカードを使ったのか、もやしから金色の弾幕が放たれる。魔理沙は飛べるため簡単に避けているが、俺は魔理沙の様に複雑には飛べないため炎の弾幕で相殺させる。だが、

 

「うわ相殺できねえ!」

炎が当たろうと関係無く突き進んで来る。とっさに刀の鞘で防いだが、衝撃が案外重い。幸い速度はそこまでなので避けながらもやしへ弾幕を放つ。

 

「貴方はただの人間の様ね。なら貴方から先に始末してあげるわ!」

 

逆効果だった。魔理沙を一旦放置して俺に向かって弾幕を放ってくる。

避けながら、あるいは刀で叩き落しながら距離を詰め、スペルを使う。

 

「壊符【無影双球】!」

2つの球を真正面へと投げる。もやしの弾幕を蹴散らしながら爆散し、小さな弾幕が襲うがー

 

 

「日符【ロイヤルフレア】!」

もやしの放ったスペルによってかき消される。太陽の様な輝きを纏った火球が俺目掛けて投下される。

慌てて避けようとするが間に合わないー

 

 

 

「恋符【マスタースパーク】!」

刹那、見覚えのある光線が火球を飲み込み、ついでに図書館の本棚にいくつか穴を開けて消えた。

「私抜きで随分盛り上がってるじゃないか。私も混ぜろ!」

 

そう言う魔理沙の背には本の入った風呂敷があった。

それを見て更に怒りが増したのかもやしは無言でスペルを唱えようとする。

それを見た俺は魔理沙にアイコンタクトで何とか意図を伝えようと試みる。すると魔理沙は頷いて本棚の影に飛んで行った。

これで多分意図は伝わったと信じたい。スペルを唱えるもやしを見て、俺もスペルを使う。幾らかある内、俺が新たに作り出したスペルを。

 

 

「木符【シルフィホルン】!」

もやしの左右や正面から木の葉の様な弾幕が大量に放たれる。

それを見て俺は、その弾幕へ向かって突っ込む。

弾幕に当たる寸前に、スペルを使う。

 

 

 

「炎符【ヴェーダスの衣】!」

俺を包む様に弾幕が現れー

それらは一斉に炎を放つ。放たれる木の葉の弾幕を燃やす。

それを見たもやしは一瞬固まったが、すぐに新たにスペルを使おうとする。

その前に俺はもやしへ近づき、身体を包む弾幕をもやしに向けて放った。だが彼女は浮き上がり弾幕を躱す。

そして俺へと向けてスペルを唱えるー

 

 

 

「これで終わりよ!月符ー『そうは行くか!』ー何!?」

もやしが慌てて声のする方を見るーー

 

 

 

 

 

 

瞬間、ものすごい勢いで突撃した魔理沙と箒がもやしに突き刺さった。

 

 

「むきゅっ!?」

 

そのまま魔理沙ごと本棚の1つに突っ込み、派手な音と共に本棚が崩れた。

そして、何事も無かったかの様に魔理沙が歩いてきた。勿論本の入った風呂敷も背負って。

 

「いやーやったな!煌があれだけ戦えるなんて思っても無かったぜ!」

「おう、取り敢えずその本置いてこいよ。」

元はと言えばそれが原因だろうが。だが魔理沙は悪びれる様子もなく「死ぬまで借りてくだけだぜ!」と言い箒に跨った。

「それはともかく、ここには異変の主犯は居なそうだな。私は別の所を当たるぜ。お前も見つけて解決するんだろ?どっちが先に解決するか勝負だぜ!」

そう言って何処かへ飛んで行ってしまった。

正直あんな奴が何人もいると考えるともう帰ってしまいたいがーー

 

「帰ったら何されるか分かんねえからなぁ…」

とにかくもう物騒な奴とは遭遇しないよう祈りながら、俺は図書館を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

館のある一室にて。そこには1人の少女が居た。

自らの持つ能力と、その精神の不安定さ故、長い間地下に独り閉じ込められて居た。

少女は己の部屋を見回す。ベッドやクッションなどの用具の他に、

千切れて中身の出た、或いはもう原型を留めていない縫いぐるみ。

誰も訪れない部屋で、少女は1人退屈そうにぼんやりと壁を眺めていた。

 

 

ふと、誰かの気配がした。突然の事に振り返るとーー

 

 

いつの間に居たのか、黒いローブの様な服に身を包んだ男が立って居た。

 

 

「こんにちは。フランドール・スカーレットさん。」

男は部屋を眺め、ため息をついた。

 

「壊れたぬいぐるみだらけじゃないですか。もっとまともな遊びをしたらどうです?」

 

それを聞いた少女は、少しだけ寂しそうな、そんな調子で俯き視線を明後日の方に向けた。

 

 

「誰も私と遊んでくれないの。お姉様だって、ずっと私をここに閉じ込めてばかり。貴女は危険だからって」

「外に出てお姉様と遊びたいのに」

 

そう独り言の様に呟いた。

男は少女に向き直り、少女に合わせる様に屈みこんで笑いかける。

 

 

 

「貴女が望むなら、私が貴女を外に出して差し上げましょうか?」

少女は顔を上げる。その目には驚きと期待があった。

 

「…本当?」

「ええ。ですがこれは貴女にも協力してもらわなければなりません。何も難しくはありませんよ、言う通りにすればすぐです。」

 

男は立ち上がり、少女に問いかけた。その目には期待と、悦びがあった。

 

 

 

 

「この部屋から出る方法……知りたいですか?」

 

 



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白銀の従者

どうも、ユウマです。
リアル事情やゲーム等で更新が遅れました!あとは私の文章を書く遅さか。最近小説そのものよりタイトルに悩み始めました。
結局投稿が遅い事に変わりはないですけどね!(震え)


紫もやしを撃退し魔理沙と別れてから、俺は1人で館を探索していた。

「しっかしほんと広いな…あと赤い」

歩けど歩けど同じ道が続くばかり。窓があまりないせいか微妙に暗いが、それでもこの館の赤さはしっかり伝わってくる。

 

「早いとこ帰りたいんだけどなっと…」

ぼやきながら何の気なしに振り返る。とーー

 

「…ん?」

何か、鈍く光るモノがこちらに飛んできている。段々と見えてきたそれは、

 

 

「うおっと!?」

鋭利なナイフ。咄嗟に身をひねった俺のすぐ横へ飛んでいった。

 

 

 

 

「あら、まさか躱されるなんて。勘が良いのかしら」

体を戻すと正面にメイドが立っていた。手にナイフを持った物騒な感じで。

 

「もやしの次はメイドかよ…色々居るんだなここ」

 

「パチュリー様に会われたのね。それでここに居るという事は…少しは警戒した方がいいかしら。」

あのもやしパチュリーとか言うのか。取り敢えず覚えておこう。

 

「それで、貴方は一体何をしに来たのかしら?」

 

「この異変を起こしたやつに会いに来たんだよ。解決してこいって言われたもんでな。あ、あんたメイドならそいつんとこに案内してー」

 

言い終わる前にナイフが飛んで来た。何とか刀で叩き落としてメイドを見ると、何か雰囲気が変わった感じでナイフを構えていた。

あ、俺何か地雷踏んだ?嫌な予感しかしないんだけど。

 

「貴方もお嬢様の邪魔をしに来たのね…ならここで貴方を止めるわ!」

言いながらナイフを投げる。ほらやっぱ予感当たったよ。

 

「あーもう、一々戦ってるほど体力無えんだよ!」

刀を抜いて弾幕を放つ。ナイフを散らしながらメイドに当たったかに見えたがー

 

 

「居ねえ…?」

前には廊下のみ。辺りを見回しても居ないー

 

 

 

瞬間、目の前にナイフが出現した。

 

「!?」

 

咄嗟に刀を振り回すが何本か掠った。

「くっそ…どうなってんだ。」

 

悪態を吐く間にもナイフは飛んでくる。

弾きながらメイドを探す。俺の後ろで佇むのを見つけたと同時にスペルを使う。

 

「壊符【無影双球】!」

 

2つの球を左右に飛ばす。メイドを挟む様な位置で破裂させ、小さな弾幕で逃げ道を塞ぐー

 

 

「何…!?」

 

だが、メイドはまたも消えた。ご丁寧に大量のナイフをばら撒いて。

 

「おいおいマジかよ…!」

慌てて転がって躱す。立ち上がった俺の前でメイドは優雅に佇んでいた。

 

 

「さっきからよく躱せるわね。パチュリー様を倒したようだからそこまで手は抜いてないつもりなのだけど…」

 

「お前こそさっきから何なんだよ。急に消えたりナイフ出したり…手品師か何かかよ?体力持たねえっての」

 

 

「私はただのメイドですわ。まぁ、そのまま避け続けて勝手に倒れてくれるとありがたいのだけれど」

そう言って笑いながらナイフを取り出す。あちらはまだまだ余裕そうだ。

 

 

 

「さあ、もう降参かしら?まだまだ手品は沢山あるわよ?」

 

 

 

「てめえ…絶対泣かせてやる!」

 

飛んでくるナイフを弾きながら、俺は奴を倒す方法を考え始めたー

 




やっぱり話が短い\(^o^)/
来週はおそらくもっと長くなる予定です。


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時間の支配者

どうも、ユウマです。
ようやく書く意欲が燃えたような…燃え尽きる前に書かねば…




ではどうぞ!(^-^)/


「あーもう埒があかねえ!追ってくんじゃねえよ!」

ナイフを弾きながらそう吐き捨てる。もう結構な間やっているが未だに奴を倒す方法が思いつかない。というか俺の体力がヤバい。

だが奴の特徴くらいは…掴めた気がする。そしてどうやら奴が投げるナイフも無限という訳ではないようだ。何故ならば、

 

 

 

床や壁に少しもナイフが刺さっていない。

 

 

さっきまで俺はかなりの数ナイフを弾いたり避けたりして来た。だと言うのに気付くとそれらのナイフはいつのまにか消えている。恐らく刺さったナイフを回収してまた投げてきているのだろう。

それに加えてさっきからのテレポートじみた移動の仕方。この2つから言えることーー

 

 

 

 

ーー恐らく奴は、時間を操っている。

 

 

 

 

勝てなくね?

 

 

 

「あら、考え事をしている余裕があるのかしら?」

「おっとあぶね!」

 

ナイフを躱す、あるいは弾きながら直接刀でメイドを狙うがー

 

 

「こっちよ」

 

やはりあっさり躱される。ほらやっぱ無理ゲーだって。

今使えるスペルカードは3つ。主に防御や威力に重点を置いているので奴を捉えるのは難しいだろう。1つよく分からんスペルもあるが…この状況で博打なんかしたら本気で命に関わる。

 

奴の行動自体はそこまで変ではない。

ナイフを投げる、それを回収(多分)する、そして俺が攻撃を仕掛ければ後ろへ回り込むー

 

 

「そっちからは終わりかしら。ならこっちから行くわよ。奇術【ミスディレクション】!」

 

メイドがスペルを宣言、前方の多方面からナイフが殺到する。

 

「くっそ集中できねえ!炎符【ヴェーダスの衣】!」

咄嗟にスペルを使い身を守る。このナイフは消えていくため問題はないが、本人が放つナイフは炎で消せる訳もなく。

 

 

「やってられるか畜生!」

先程から考えながらも逃げるばかりである。火を操るだけでは対処しきれないかーそう考えた時。

 

 

「…あ。俺の能力って確か…」

火だけではない。調べてもらった時に霊夢と魔理沙が言っていたではないか。俺は火、水、風、土を使えると。

 

「それなら…よし、出来た」

試しに魔力を集中すると4つの属性の球が出来る。刀にも魔力を流せば炎を纏わせたりも出来る。

 

「この4つなら…!」

ふと閃いた。これらを使えば恐らく奴にも勝てる。後は俺の技術次第だが、それはどうにかするしかない。

 

 

 

「逃げるのは終わり?それとも降参する気になったのかしら」

 

ちょうど奴も来た。後は実行に移すだけだ。

 

「降参なんざしねーよ。お前はここで倒す。」

刀を構える。同時にスペルを忍ばせる。

 

「あら、さっきまで逃げてた人の言う言葉とは思えないわね。」

 

「うっせ、こっちにも色々あんだよ。」

 

「ふうん。まぁ良いわ、これ以上逃げる気も無いみたいだし、この辺りで終わりにしてあげる。 幻在【クロックコープス】!」

 

メイドから米粒みたいな弾幕が放たれた直後、多方向からナイフ型の弾幕が飛んでくる。俺はそれを刀や自身の弾幕で相殺しながら耐える。そしてー

 

 

 

 

「これで終わりよ!」

来た。メイドが大量のナイフを俺に投げる。俺はそれをなるべくばらつかないよう叩き落とし、最後の1本が見えた所で魔力を刀に込める。そのままナイフに狙いを定めー

 

「せあっ!」

 

思いっきり叩き落とした。これで仕込みは完了だ。俺はメイドに向き直る。

 

「まだ粘るの?案外しぶといのね。」

 

「生憎そんな諦めが良く無いんで、なっ!」

 

言いながらメイドに向かって飛ぶ。腕のブーストを使いながら刀を振り抜き、斬撃を放つ。大振りな為奴は避けるだろう。そして俺の予想が正しければーー

 

 

思った通り俺の斬撃が届く前に奴は消えた。だが、

 

 

「これはっ!?」

俺が落としたナイフを回収に行ったのだろう。殆どのナイフは消えており、残るは俺が魔力を込めた物のみ。

 

 

 

そしてそれは、俺の魔力によって激しく燃え盛っている。

 

 

すかさず俺は魔力を集中し、メイドの周りに風を起こす。ナイフの火が燃え移り、炎の嵐となってメイドを包む。俺は刀を構えなおし、走りながら刀へ水の魔力を込める。火よりは劣るが、全力で放てばその限りではない。

 

 

 

「斬符…【エレメントブレイド】!」

 

 

横一文字に放たれた魔力が竜巻を裂き、メイドを飲み込んで炸裂した。

 

 




どうにか咲夜戦終わった…。
ワンチャン負けルートまであった…


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紅の月

あけましたおめでとうございます!
今年もよろしくお願いしますm(._.)m

目指せ今年中に完結!



……無理やわ、多分\(^o^)/


俺の斬撃をもろに食らったメイドが壁に叩きつけられる。

 

「申し訳ありません、お嬢様…」

そう言って気を失ったようだ。念のため壁にもたれさせて先へ進む事にした。

 

「お嬢様ねぇ…。そいつか?犯人は」

館を歩きながら考える。無駄に広かったりメイドがいる事から何となく予想はしてたが本当に当たるとは。因みにこんなでかい屋敷に住んでる様な奴に関して俺が思うことはこうだ。

 

「話…通じないんだろうなぁ…」

そう、こんなでかいとこに住んでおまけに時間を操るメイドなんてのが居る屋敷のお嬢様だ、まともに育ってるとは思わん。

 

「しかもここの奴ら好戦的だしなぁ…」

メイドにせよ魔法使いにせよ、大して話をする余裕も無く戦闘になっちまった。赤には好戦的になる成分でもあるのかね。

 

「まぁ話が通じるのを願うのみだな…っと」

何だかんだ考えながら歩いていたらいつのまにか階段を大分登っていたらしい。目の前に例の紅い空が見える。

「ここは屋上か…久々に外出る感覚するなー」

この屋敷は窓が無いせいで窮屈だったからな、空気吸っとこ。

何て事をしながら上を見上げ、俺は見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

この屋敷のほぼ直上に浮かぶ紅い月、そして俺に背を向けて浮かんでいる少女を。

 

 

 

 

少女は俺に気づくとゆっくりと降りて来る。

 

 

 

「おや、咲夜もやられてしまったか。博麗の巫女では無い様だが、何者だ?」

そう、今までの奴らに無いような威厳を纏って問いかけて来る。普段の俺なら即刻逃げているだろう威厳。だが降りて来るに従って心に浮かんだある一言が俺を動かさなかった。

 

 

 

 

 

「小っさくね?」

そう、振る舞いに似合わず背丈が小さい。せいぜい小学生くらいだ。

もちろん他にもおかしい点はある。浮かんでいたり背中に羽が生えていたり。だがそんな事よりも背丈の方が口に出てしまった。

 

 

 

「……いきなり随分な言いようね。」

おっと、ここで怒らせてはまずい。俺は戦わずに解決しようとしたんだった。

 

「お前がここのお嬢様とやらなのか?」

 

「ええそうよ。私は偉大なる吸血鬼の末裔レミリア・スカーレット。

そしてこの空と月も私が生み出したもの。吸血鬼は日の光に弱いのは知っているでしょう?これはその光を遮る為のもの。これでこの世界に日は射さない。夜を統べる私達がここを支配するのよ!」

 

…えーと、聞いてない事まで話してくれたがつまり、

 

「お前がこの異変を起こしたんだな?なら、さっさと止めてもらうぞ。」

「強気ね。断ると言ったら?」

 

「力ずくで止める。」

刀を構える。話していると圧は凄いが、メイドの様に武器を持っているわけでも、もやしの様に魔法を使う素振りも無い。

だが、少女ーーレミリアは、不敵な笑みを浮かべた。

 

「面白いわね、人間風情が。良いわ、相手をしてあげる。

こんなに月も紅いからーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー本気で殺すわよ」

 

「⁉︎何っ…!」

刹那、俺を赤く鋭い弾幕が襲った。慌てて刀で弾いたが、重い。こんな物をいつまでも弾いていたらこっちの腕が限界だ。そう思いブーストを使ってレミリアに迫る。

 

「さっさと終わらせる…!「斬符【エレメントブレイド】!」

全力の炎を込めた刀を振り下ろす。だがー

 

 

「…ふん」

俺の刀はレミリアにあっさりと止められていた。何も持っていない素手で。

 

「思っていたよりはやる様ね。これなら咲夜達がやられたのも頷けるわ。でも…」

そのまま腕を振り払う。それだけの動作で俺は元いた場所まで吹き飛んでしまう。

 

 

「ぐっ…」

 

 

 

「所詮は人間。吸血鬼である私には勝てないわ。

紅符【スカーレットシュート】!」

 

 

巨大な弾幕が、俺に向かって殺到する。

「マジかよ…。壊符【無影双球】!」

こちらも弾幕を放ち、俺の弾幕が弾け始めたところで俺は上昇した。奴が本当に吸血鬼なら、水の魔力で動きを止める事くらいは出来るはずだ。

弾けた細かい弾幕をかい潜って上昇するーー

 

 

 

その先にレミリアが居た。慌てて上昇を止めるが間に合わない。

 

 

 

「はあッ!」

素手のまま、地面へと叩きつけられる。

「があっ…!」

片や全力、大してレミリアはろくに武器も使っていない。

 

 

 

 

 

 

 

強い。

今までの奴らとは決定的に違う強さ。

 

 

 

 

レミリアがゆっくりと降りてくる。退屈そうな表情を浮かべて。

 

 

 

「こんなものか。まぁ、人間にしては頑張った方じゃないかしら。」

 

「何言ってんだよ…。まだ、終わってねえだろうが!」

立ち上がり、刀を構える。

それを見て少し驚いた様に目を見開くレミリア。

 

 

「まだやるのね。力の差が分かって無いのかしら?」

「生憎と、やる前から決めつけられんのは性に合わねえんだよ!」

 

スペルを取り出し、宣言。

 

「炎符【ヴェーダスの衣】!」

全身に炎を纏う。それを見てレミリアも、再び不敵な笑みを浮かべる。

 

 

 

 

「へえ、面白いわね。なら、私も本気で相手をしてあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー神槍【スピア・ザ・グングニル】」

 

 

 

 

 



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トリーズン

そこまで間隔空けずに投稿できた…。
ペースを一定にするのが専ら今の目標です。

あ、感想や意見、質問等もよろしければドウゾー。



レミリアの掌に紅い魔力が集まる。それは瞬時に槍の形を成し、俺へと向けられる。

 

 

「行くわよ。精々楽しませて頂戴!」

跳躍1つで俺の目の前に迫り、手の槍を振るう。

「くっそ…!」

先に一撃貰ったせいか、満足に身体が動かない。加えて奴は吸血鬼。基礎的な身体能力で既に不利だ。

 

 

「それなら!」

身体に纏っている炎を前面に集める。そこに刀を重ねて防御の姿勢をとる。

 

 

 

「甘いっ!」

だが、まるでそんなもの無いかのように槍は炎を打ち破る。そのままの勢いで俺と奴は鍔迫り合いになった。

「おらぁっ!」

ブーストも使用し刀を振る。だがこちらの攻撃は全て読まれ、ブーストしてようやく腕の動きについて行っている状況だ。

そうして何度も打ち合う。だがーー

 

 

 

 

 

「…つまらないわね。やっぱり威勢だけかしら。」

「ぐっ!」

レミリアに弾き飛ばされる。そこへ奴は手をかざした。

 

 

 

「これで終わりよ。 【レッドマジック】!」

その手から放たれる、紅の弾幕。目の前を覆い尽くす様なそれに、だが最早身体が動かない。

 

 

 

「……!」

もう、無理か。ここまでなのかー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーやはり1人では力不足か。少しばかり、力を貸そうかー』

 

 

 

「!」

全身に、魔力が満ちる。溢れそうなそれを、前方へ向けてがむしゃらに放つーー

 

 

 

「うおああっ‼︎」

 

 

 

 

全身から放たれた黒い炎(・・・)が、弾幕を焼き焦がしレミリアへ殺到する。

 

 

 

「…!グングニル!」

槍で防いだようだが、無傷とはいかなかった様だ。羽が傷つき服が少し焦げている。

 

 

 

 

 

 

「へえ…まだ楽しめるみたいね?」

「…」

 

 

今の声は…?レミリアには聞こえなかった様だが…。

 

「さあ、行くわよ!」

「くそっ!」

レミリアが槍を構えて突進してくる。今は考えている暇は無い。このままでは先程の繰り返しだ。

 

 

恐らく隙を突くなんて事は出来ないだろう。無傷ではないとは言え元の身体能力が違いすぎる。なら、俺が出来る事は1つ。

 

 

 

 

 

 

正面突破のみ。

レミリアから距離をとり、刀を構え、魔力を込める。向こうも気づいたのか、掌に魔力が集まって行く。

 

 

 

 

「へえ、この一撃で決めようって訳ね。良いわ、全力で来なさい」

 

 

 

 

 

 

俺は刀を一度鞘へしまい、ブーストをかけレミリアへと走る。レミリアの掌が、俺へと向けられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「喰らいなさい…グングニルッ‼︎」

 

真紅の魔力が大槍となって放たれる。俺は大きく踏み込み、刀を居合の様に抜き放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで終わりだ…!壊符ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー【リベリオン】‼︎」

 

放たれるのは真紅の斬撃。周囲を照らす光を放ちながら、俺の炎とレミリアの槍が激突する。

槍の勢いに呑まれる様に縮んで行く炎。だが、

 

 

 

 

 

 

 

「らああっ!」

俺のスペルはまだ終わっていない。すぐさま切り返して放たれたもう一つの斬撃が槍へとぶつかる。

そのまま一瞬の拮抗ーーそして、俺の斬撃がレミリアの槍を分断した。

 

 

 

 

驚きに目を見開いたレミリアを炎が飲み込み、爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

館の地下室。そこに立つ人影が3つ。

 

 

 

 

異変を解決に来た博麗の巫女である博麗霊夢。

 

 

霊夢と共に解決に向かった霧雨魔理沙。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、この地下室の住人である少女。

 

 

 

『……誰?』

 

 

「私は博麗霊夢。あんた達が出してる赤い霧、迷惑だから止めてもらいに来たのよ。因みに、逆らう様なら無理矢理止めて貰うから。」

 

若干の怒気を孕んだ声で霊夢が言う。

 

 

 

 

『……貴女達が私と遊んでくれるの?』

少女は笑いながら見当違いの事を返した。その目はどこか普通では無かった。

 

「お、おい霊夢…。コイツなんか変だぜ?」

魔理沙が後ずさる。そして少女は目を見開き、その手に炎を顕現(けんげん)した。

 

戦闘態勢をとる2人。

 

 

少女は、愉しげに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『遊びましょウ!ここで私と沢山、沢山、イツまでも!

あははハはははハハ‼︎』



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純粋な悪意

そこまで間を空けずにやれた…
今月中に紅魔郷を終わらせるのが目標です。

友人「あくしろよ」
友人2「あくしろよ」
友人3「天空璋キャラはよ」

\(^o^)/ ではどうぞ!


「……」

「……」

俺がレミリアを打ち倒した少し後。俺たち2人の間に妙な空気が流れていた。というのも、

 

「なあ、ちょっとー?」

「……」

「もしもーし?」

「……」

コレである。どうやら俺に負けたのが余程悔しかったのか、ずっと不機嫌なままなのだ。仕方ない、あんまり使いたくないが…

 

 

 

 

「おーい、ちびっ子ー」

「本気で殺すわよ‼︎」

 

よし反応した。とりあえず1番聞きたい事を聞く。

 

 

「この異変を起こしたのはアンタで、俺がアンタに勝ったからこの霧は止めて貰えると、こういう解釈で良いのか?」

 

「…ふん、そうよ。今更抵抗する程往生際は悪くないわ」

 

お、性格はちびっ子らしくはない様だ。

 

「何か言ったかしら?」

「イエナニモ」

そうこうしてる間に空が元の色に戻っていく。吸血鬼すげー。

 

「てか、吸血鬼に日光は毒じゃねーのか?」

「それを止めさせたのはアンタだけどね…」

いつの間に日傘を差したレミリアが恨みがましい目で見てくる。おっとここは別の話題を出さねば。

 

 

 

「あ、そういや霊夢も魔理沙も見てないな」

魔理沙は紫もやしと戦って以降見ていないし、霊夢に至ってはここに来て一度も見ていない。

 

 

「どうせ道にでも迷ってるか、咲夜辺りにやられたんじゃないの?」

「いや…」

もやしにもメイド(咲夜とか言うらしい)にも、俺と戦う前にあいつらと戦った様な様子は無かった。ならやっぱり迷ってるのか?この館無駄に広いし……何て思っていると、ふいに。

 

 

 

 

 

 

「な、何か揺れてるぞ?」

「あら、地震かしら」

 

俺たちの立ってる床が、と言うより館全体が揺れている。揺れはどんどん大きくなっていき、

 

 

「こっちに近づいて来てるわね」

こちらへ地響きが近づいて来る。そして床にヒビが入りーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あはハははハハ‼︎』

 

 

 

 

ぞっとする様な笑い声と共に、床をぶち破って火柱が立ち昇った。

 

 

 

 

 

 

 

「うおおっ!?」

「きゃっ!」

 

慌てて飛び退いた俺とレミリアの居た場所を破り、人影が飛び出て来た。それは俺も知る人物、

 

 

 

 

「霊夢!魔理沙も⁉︎」

俺より前に館へ入った筈の2人だった。2人ともやたら疲れている様だ。

 

 

 

 

「煌…アンタ、こんな所に居たのね…」

「えらい疲れてんな、何が有ったんだよ、迷子か?」

だが、よく見ると疲れだけでなくダメージも受けている様だ。俺よりはるかに強い筈の霊夢がここまでになるとは…

 

 

 

 

「迷子になった訳じゃないぜ」

霊夢同様疲弊している魔理沙が声を上げる。

「全部アイツが原因だぜ…」

 

 

「アイツ?」

 

魔理沙の視線の先にはグングニルを構えたレミリアとーー

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何をしているの、フラン」

手に長大な炎を携えた、金髪の少女が居た。

 

 

 

 

「フラン、部屋に戻りなさい。」

やや厳しい表情で、レミリアが詰めよる。だが、フランと呼ばれた少女はまるで気にして居ない様だ。

 

「嫌よ、またあんな窮屈な部屋に戻る何て。今度はお姉様があの部屋に入っていれば良いのよ。」

 

 

 

…お姉様?あの金髪も吸血鬼なの?

そんな俺の疑問をよそに、レミリアは今にも掴みかからんばかりだ。

 

 

 

「良い加減にしなさい。どうしても戻らないなら、力ずくでも戻すわよ。」

そう言い、グングニルを構える。そして、その言葉を待っていたかの様にーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー少女は手の炎をレミリアに向けて叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「‼︎」

咄嗟にグングニルで受けたレミリア。だが炎を勢いは止まらない。

 

 

 

 

『あはは、ソウ来なくチャ!お姉様も私と遊びマしょう‼︎』

その声に呼応する様に勢いを増していく炎。そして、

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

ー余りに呆気なく、レミリアのグングニルが砕け散った。

 

 

 

 

『サヨなら、お姉様』

 

そのままレミリアを飲み込もうとする炎ーー

 

 

 

 

 

 

「……【エレメントブレイド】‼︎」

 

その前に立ちはだかった俺は、水の斬撃を全力で繰り出した。

 

 

 

 

「ぐっ…おらぁッ!」

そのまま力任せに炎を押し返す。

 

 

「下がってろレミリア!」

「な、何言ってるのよ!これは私達の問題よ!」

「お前さっき槍すぐ折られただろうが!それに今まともに戦えんのは俺くらいだろ!」

 

霊夢と魔理沙はまだダメージが抜けてない、レミリアも俺との戦いで本調子では無い筈だ。

 

 

 

「……なら、ここは任せるわ。咲夜を呼んでくるからそれまで持ち堪えなさい!」

「おう、任せろ」

 

 

レミリアが階下へ消えたのを確認して、刀を構える。目の前の少女は最早レミリアには目もくれず、俺を見て笑っている。

 

 

 

 

 

 

 

『次は貴方が遊んデくれるノ?あはハ、貴方はスグに壊れないデね!

 

 

 

 

 

 

 

ーー禁忌【レーヴァテイン】!」

 

 

少女の手に持つ炎が剣へと姿を変える。即座に振り下ろされた剣と俺の刀が、真っ向から激突した。



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クリムゾン・インサニティ




『アハはははハ!』

「はあああッ‼︎」

少女が剣を振るタイミングに合わせて刀を振るう。レミリアがメイドを連れてくるまでは、時間を稼がなければ…!

 

 

 

「散符【エレメントパーティクル】!」

水の魔力を込めてスペルを唱える。積極的に少女は狙わない。時間稼ぎとして前方へ撒き散らすが、

 

 

 

 

 

『アハは、これじゃ全然足りナいわ!』

少女の炎の前に全て蒸発してしまう。そのまま剣を振る少女から距離を取ろうと後ろへ飛んだが、それを待っていた様に少女がスペルを唱えた。

 

 

 

『逃さナイよ? 禁忌【カゴメカゴメ】!」

俺の周囲を小さい弾幕が取り囲む。だが、取り囲んだ位置のままこちらには向かって来ない。構わず上に行こうとした所で、でかい玉が目に入った。

 

 

 

 

 

「あっぶね何だよそれ!」

でかい玉と俺を取り囲んだ玉が接触した瞬間、全ての玉が俺に向けて殺到した。上に行こうとしたお陰で大した密度にはならず、いくらか刀でさばいた程度で抜け出した。だが、

 

 

 

 

 

 

 

「またかよ畜生が!」

今度はより密度の高い弾幕が俺を囲んだ。何とか刀で弾幕を切って出ようとするがー

 

『逃サないって言っタでショ!アハはハハは!』

少女の手から先程より大きな弾幕が放たれる。先程より速いそれを、勢いを殺さずまともにくらった。

 

 

 

 

「がふっ…!」

くらったそのままの勢いで床に激突する。刀を支えに立ち上がるが、その場に膝をつく。同時に俺は悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このままでは俺は間違いなく死ぬ。

 

 

 

この館に来てから何度か戦い、それなりに危険もあった。

だがアイツらとの戦いはあくまで「弾幕ごっこ」だった。弾幕を撃ち合うものの殺す気は無い。純粋な決闘としての戦いだった。

 

 

 

 

 

だが、あの少女は違う。

 

 

 

今のスペルも今までの剣も、全て相手を殺す為のものだった。しかも本人に自覚が無い分タチが悪い。

 

 

 

少女が降りてくる。剣を携えたまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

『まだ壊れテない!アハは、もっと遊ビましょウ!』

 

「ぐっ…!」

体に鞭打って何とか躱す。そのまま距離を取り、刀を仕舞う。追撃を仕掛けてくる少女に向かい、一閃。

 

 

「壊符【リベリオン】!」

斬撃を放つのでは無く、魔力を込めた刃をそのまま少女の剣へぶつける。魔力によって強化された刀と剣が火花を散らす。

 

 

 

 

 

 

 

そして、少女の持つ剣に、一筋のビビが入った。

 

 

 

「……!」

 

いける。更に魔力を込め、剣のビビが増えていく。

「う…おおお‼︎」

 

 

 

俺の刀が少女の剣を分断する、その寸前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あアア…アアアアアアアアア!!』

「!!」

尋常では無い量の炎が少女から立ち上る。床の一部ごと吹き飛び、刀を突き刺して何とか静止する。顔を上げた時には既に少女は剣を振りかざしていた。

 

 

『ウアアアアッ‼︎」

 

刀で受けるが、直ぐに吹き飛ばされてしまう。さっきまでとは力もスピードも段違いだ。変化は少女の外見にも現れていた。

 

 

 

 

七色だった羽は全てどす黒い紅になり、両目も紅く爛々と暗く輝いている。ビビが入っていた剣は元へ戻り、鮮やかな赤から不鮮明な青色へ。

 

 

少女が飛ぶ。俺を見据えて叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『禁弾……【スターボウブレイク】‼︎』

 

 

少女の背後から大量の弾幕が降り注ぐ。どこまでも暗い光を纏ったそれは館の一角を破壊し、俺もろとも地面へと叩きつけられた。

 

 

「ぐあッ…」

弾幕の威力は凄まじく、全身がぼろぼろになっている。地面にもいくつも大穴が出来、刀は何処かへ吹き飛んでしまった。

 

「う…」

どうにか立ち上がる。だが、もう体が動かない。動いたとしても、直ぐに殺されてしまうだろう。スペルも、この状況を覆す程の力を持ってはいまい。

手に、スペルカードが当たる。一度も使わなかった、使えなかったスペル。

 

 

 

 

 

 

 

「まだ、ここで死ぬ訳には行かない…」

約束も果たせず、元の世界にも帰れずに死ぬのは嫌だった。せめて、何も出来ずに死ぬのは御免だった。

少女が俺へ突っ込んで来る。それを見据え、俺は、スペルを唱えた。

 

 

 

 

「反符ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー【オーバーライド】」

刹那、俺の全身から炎が吹き出した。魔力が溢れ、辺りを破壊して行くーー。

 

 

 

 

「⁉︎グ、がああああッ‼︎」

ーー止まらない。溢れた炎が俺自身をも燃やし、喰らって行く。

 

 

 

意識が遠のく。その中で、俺はまた、声を聞いた気がした。

 

 

 

 

 

 

『ー未だ死なれるのは困るのでな。今回のみ、私自ら出るとしようー』

 

 

 

俺の足元から、黒い焔が巻き上がる。それは俺の炎ごと俺を飲み込み、狂った様に燃え盛る。

 

 

 

 

 

焔が止む。視界が晴れると同時に、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 



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月食




視界が晴れる。目を開き、()は辺りを見渡した。

破壊された屋敷の残骸、地面に見える大穴、そして私を見据える金髪の少女。

「吸血鬼…か。自ら出るとか言ったけどあんくらいなら自分で撃退できんもんかね…。武器もどっかいってるし…」

 

『アははハははハハハ‼︎』

少女が突っ込みながら薙いだ炎をジャンプで躱す。それと同時に、近くに落ちていた屋敷の残骸を掴み、力を込める。

 

 

 

 

「上手く出来るかなっと…お、出来た出来た」

残骸が黒い炎に覆われ、たちまち身の丈程の漆黒の大剣へと姿を変えた。それを肩に担いで、少女へと走りーー

 

 

 

『アハは、スゴいすごい!もっと私とアソ「遅い」ーアアアッ!』

 

 

 

ー振り下ろす。切れない様に手加減したけど、それでも勢い余って遠く吹き飛んだ。

 

「うーん、やっぱりこの程度なら1人でやれただろうに…剣作っただけで割と力使ったみたいだけど」

 

 

 

 

 

 

 

『アハはハハハハ‼︎アナタはトッテモ強イのね‼︎私が、私ガ壊してあゲル‼︎ 禁弾【カタディオプトリック】!』

 

少女から大小さまざまな球体が不規則に曲がりながら私に飛んでくる。

 

 

 

 

 

「これが何だっけ、スペルカードってやつだっけ。確かに色が沢山で綺麗とは思うかな。」

弱いけど。一応剣を盾にはしてるけど、衝撃とか全然来ないし。

 

「えーとこの子のスペルはっと…これかな? 斬符【エレメントブレイド】」

適当なのを引っ張り出して剣をすくい上げる。たちまち黒い炎が吹き上がり、周りの地面ごと少女を飲み込んでいった。

 

 

 

 

 

「あ、やばいやっちゃったかな?殺しちゃ駄目そうだったから加減したんだけど…」

 

地面とか陥没してるしやりすぎたかな?そんなすぐ死ぬとは思わないけど。試しに残骸を投げ入れる。

 

 

 

「あ、生きてた生きてた」

 

思いっきり火柱が上がって残骸と周囲の地面が燃えた。そのまま少女が飛び上がり、こちらに向かって手を向けて来る。表情的に怒ってるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウウウ…!壊ス壊ス壊ス壊ス…‼︎QED【495年の波紋】!!』

 

 

周囲から鋭い弾が飛んでくる。弾が小さいから前より弱いんじゃないかなあれ。

 

 

 

「まぁ良いや。こっちも時間無さそうだし…そろそろ終わらせないとね。」

 

少女目掛けて飛ぶ。飛んでくる弾を無視して少女に剣を打ち付ける。

 

 

 

 

 

 

 

『ウアアアアアア‼︎』

少女も剣を振りかざして応戦してくる。何度か打ち合い、鍔迫り合いになった所で私の剣が、徐々に押し込まれ、そのまま弾かれた。

 

 

 

 

「あっちゃー、やっぱ純粋な力だと無理かな」

 

『アハはハハハハは‼︎コレで終ワリヨ‼︎』

がら空きになった胴体へ剣を突き入れて来る。私は反対の手を剣にかざして、

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい残念っと」

『!!』

 

剣の先端を素手で掴み取る。そしてーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その剣、貰うよ(・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

少女の剣を、私の黒炎が包み込む。そのまま剣は形を変えて私の手に収まった。

 

 

 

 

 

 

 

「よっと!」

 

『グウウウッ…⁉︎』

 

 

そのまま両手の剣で少女を叩き落とす。剣を炎の弾に変えて、少女に向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、これでサヨナラ。 ーーー【月蝕】」

 

炎を放つ。少女を挟む様に左右から迫り、着弾したそれは、巨大な爆発となり少女を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、終わった終わった」

 

 

地面に降り立ち、少女の飛ばされた方を見る。所々服が焦げたりしてるけど、多分生きてるだろう。

 

 

 

 

「それよりも、こっちが問題と…」

近くの残骸の上に倒れこむ。

 

「もうこの子の魔力のほうが持たないし、ここで一旦休むかな」

屋敷の方からいくつか足音が聞こえる。多分この子を探しに来たんだろう、その時に私のままだと色々とややこしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もっと力が無きゃ、約束を果たすなんて夢のまた夢だよ、少年」

 

 

こちらに向かって来る足音を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。

 

 



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邂逅

1月中に紅魔郷を終わらせると言ったな。
あれは嘘だ。



よ、妖々夢からはペースも上げますし!……きっと


「う…?」

目を開けると、そこは見知らぬ場所だった。正面に丸テーブルと椅子がある以外には何も無い。俺も椅子に座っている。

背後や周りは黒い柵が檻の様に俺のいる空間を囲んでいた。

「…どこだよここ。俺は吸血鬼と戦って…」

スペルを使って意識を失った。ならここはあの館の中なのか?あの後負けてここに連れられたのかーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ああ、起きたね。別に負けても居ないし館の中でも無いよ』

 

 

「‼︎」

慌てて正面を向くと、いつの間に居たのか向かいの椅子に座る人影。そして聞き覚えのある声、意識を失う前に聞こえた声。

 

 

『あはは、驚いてるねぇ。一応はじめましてなんだよね、会うのは』

ゆっくりと近づいて来る人影。近くにいるのに真っ黒なそれは、まるで俺の影のようだった。

 

「誰だ…お前?お前が俺を助けてくれたのか?」

 

『まぁ助けたって事になるね。誰って言われてもなぁ…んー名前ならねー

 

 

 

 

 

名無っしーとかそんな感じで呼んでくれれば良いよ?』

「はい?」

何を言ってるんだコイツは。それにその名前のニュアンスは駄目だろ。

 

 

 

『ヒャッh「止めろォ‼︎」…何さノリ悪いなぁ』

頭まで振り始めたのを見て慌てて止める。不満そうだが俺としてはまだ消されたくは無いのだ。

 

 

 

『ま、良いや。んー私の名前はねー…えーっと…この刀にちなんでー…「カガチ」とでも呼んでくれれば良いよ。』

「…カガチか.分かった。で、お前は…?何だ…?」

 

体が、重い。徐々に意識が薄れていくーー

 

 

 

 

 

『目が覚めそうなんだねー。まぁ一度会ってしまえばまた話す機会はいくらでもあるさ、今は目先の事に集中だよ。それじゃあ、またね。』

カガチの声を最後に、俺の意識は再び途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

次に目を開けた時には、真っ赤な天井が飛び込んで来た。

「う…今度こそあの館か…」

身体中が若干痛む。どうやら手当てをされてこの部屋に担ぎ込まれたらしい、少なくともとって食われる訳じゃなさそうだ。

 

「取り敢えず、レミリア達が居るか確認するか…」

近くの机にあった刀を持って部屋を出ようと扉を開けると、

 

 

 

 

 

 

 

 

『おーい、聞こえまーすかー!』

「うおおっ!?」

頭の中に直接響くような声。つい先程聞いた、カガチの声だ。

 

『うんうん、聞こえてるねー。一回話したお陰でいつでもこうやって話せる様になってるからね、覚えといてねー。』

「おいおいちょっと待てお前!」

『んー?何?』

 

 

「さっきからいきなり、お前は何なんだよ⁉︎」

人の頭の中で話されてる様で不快だ。だがカガチは俺の気持ちなど意に介さない様に飄々と答えた。

 

 

 

 

『さあ?今は言う気もないし、言っても信じなさそうだからねー。まぁいつか言う機会でもあったらちゃんと言うし、それまでは君の刀に居る変なやつ、ぐらいの認識で良いさ。』

「……」

 

上手く流されているのに苛々する。が、ろくに姿も見えない様な奴をどうこう出来る訳もなく。それよりも、

「今俺の刀に居るとか言ったか?」

『そうだよー。まぁほら、地縛霊的な?』

「曖昧だなオイ…」

この物言いを何とか出来ないかと思っていると、ふと人の足音がした。

 

 

『おっと色々厄介なのも来たみたいだ、私は一旦この辺で。暇なときにでも喋りかけるからそこんとこよろしくー。』

「はあ?おいどういう…!」

呼びかけるも、反応は無し。勝手に喋って勝手に消えてしまった。

「ったく…厄介なのって何だよ?」

取り敢えず部屋を出る。と、足音の主と鉢合わせになった。

 

「お目覚めになりましたか」

「げっ、あの時のメイド!」

部屋の前に居たのは俺と戦ったチートメイドだった。慌てて刀に手をかけるが、メイドは顔色1つ変えない。

 

 

「異変が解決された今、私たちに戦闘の意思はありません。むしろ、妹様を止めて下さり感謝しています。」

 

そう言って頭を下げて来た。戦ってた相手に敬意を使われてむず痒いのは置いておいて、気になった点を質問する事にした。

「妹様…?止めたって何の事だよ?」

 

「…覚えてらっしゃらないのですか?」

2人揃って首を傾げる。妹様なる吸血鬼とは戦った覚えはあるが、気を失ってからはまるで覚えがない。てっきりあのままやられると思っていたのだが…

 

 

「ともかく食堂に行きましょう。歩きながらお話致します。」

言うや否や背を向けて歩きだす。そこに慌てて声をかける。

 

「あ、なあメイド」

「…何でしょうか?」

「出来たらで良いけど敬語は辞めてくれ。聞いてるこっちがむず痒い。」

「……分かったわ。それと私は十六夜咲夜。役職で呼ばないでちょうだい。」

 

「わ、分かった。俺は雨崎煌だ。よろしくな、咲夜。」

「ええ、よろしく。じゃ、そろそろ行きましょう。」

咲夜と並んで歩く間、妹様とやらの事や俺が気を失って居た時の事を聞いた。

ざっくりまとめると、妹の名はフランドール・スカーレット。自分の能力のせいでやや情緒不安定で、時折自室をぶっ壊したりなんてのもあるらしい。咲夜はそのフランドールと姉のレミリアに仕えるメイドの様だ。

そして俺が気を失ってた間、レミリアに呼ばれて屋上へ向かおうとしたところ突然館の一部が崩壊し、屋上への道が塞がれた所で降りて来た霊夢達と合流、外からの爆発音を聞いて向かうとぼろぼろの俺と同じくぼろぼろになったフランドールが倒れて居たらしい。

「外からの爆発ってもなぁ…」

やはり身に覚えが無い。だが、今の俺には心当たりがある。

 

カガチだ。俺が何かをした覚えが無い以上、あの事態をどうにか出来るのはあいつくらいだろう。何をどうしたかはまるで分からないが。

分からない事を気にしてもしょうがない。ふと浮かんだ疑問を聞いてみる。

 

「フランドールの能力って一体何なんだ?情緒不安定になるくらいならよっぽどやばい能力なのか?」

 

 

 

 

 

「妹様の能力は、“ありとあらゆるものを破壊する程度の能力”よ。手を対象にかざして握りしめると破裂する、というものね。」

…マジかよ。使われてたら即死やん。自分の悪運に感謝するばかりだ。

「ただ…」

「?何だよ」

「貴方が気を失ってる間に妹様は目を覚ましたの。その時にお嬢様が何があったのかを聞いたのだけどーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー今の妹様は、能力が一切使えないようなの」

 

「能力が…使えない?そんな事があるのか?」

「私達はそんな状態になった事は無いし、博麗の巫女達も分からないらしいわ。でも妹様だけが最初から無かった様に能力を使えないの」

「そうか…」

「今日の妹様の暴れようは異常だったわ。だからそれと何か関係してると考えてお嬢様が聞きだすつもりらしいから、今は分かるのを待つしか無いわね。…さ、着いたわ」

 

気づくと俺の前に立派な扉がそびえて居た。咲夜は躊躇なく扉を開け、中へ入っていく。

「異変が終わっても、万々歳って訳じゃねぇのかよ…」

咲夜に続いて、俺も食堂へ足を踏み入れた。



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チカラの在り処

1月中に終わらせるどころかもう3月ですね、はい。

…俺は悪くねえ。この時期にテストとイベントが重なるのが悪いんや。
ま、また今月からペースは早まる…はずです。きっと。


食堂へ入ると、霊夢や魔理沙、俺と戦ったもやしが紅茶を飲んでくつろいで居た。

 

「あら煌、起きたのね」

「人がぶっ倒れたのに随分くつろいでんなオイ…」

魔理沙も霊夢ものんびりしてやがる。お前らここの連中と戦ってたじゃんかよ…んなすぐに打ち解けるもんなのか。

「いやーそりゃ私達だって心配してたぜ?でもパチュリーが問題無いって言うからよ、お前が起きるまでくつろいでたって訳だ」

随分白々しいな…絶対自分達が飲みたかっただけだ。

 

「てか…パチュリーって誰だ?」

「私よ」

声の方を向くと、

「なんだもやしか」

「パチュリーって言ってんでしょ!」

まだ何か言いたそうだったが丁度食堂の扉が開かれる。そこから入って来たのはレミリアだ。

 

「レミィ、フランの様子はどう?」

「また眠ったわ。暴れて力も無いしダメージもまだあるみたい」

ぐったり椅子に座るレミリア。すかさず咲夜が紅茶のカップを置き、レミリアが一気にそれをあおって俺を見る。

 

「とりあえずそこのは起きたようね。ならまずは私たちの紹介でもしておこうかしら」

言い、館の面々を指していく。

 

「まず、十六夜咲夜。うちのメイド長よ」

軽く頭を下げてくる。釣られて俺も会釈をする。

 

「次にパチュリー・ノーレッジ。私の親友の魔女よ」

こちらは俺をジト目で睨んでくる。やはりあいつはもやしと呼ぼう。

 

「そして最後に主人である私、レミリア・スカーレットよ」

ドヤ顔で宣言するお嬢様。主人の座を咲夜とかに譲るべきだと思う、割と本気で。

 

「後は私の妹に門番だけど、まぁそこは後で紹介するから今はいいわ。フランも寝てしまったし」

「適当だな…」

にしても門番なんていただろうか。もしかしたら俺が飛んで入った時に律儀に地上を見ていたかもしれない。どのみち霊夢達に入られてるから門番もやられたらしいが。

 

「それで…フランの事なのだけど」

ふとレミリアの顔が真剣になる。

「あの子が暴走する前に、誰かと接触したらしいわ。黒いローブを着た男と話したと」

レミリアの言葉にパチュリーが訝しげな顔になる。

 

「それは霊夢達が来るより前に侵入者が居たという事?でも私の知る限りそんな気配はしなかったわ」

 

「私たちが戦ってる間に来たんじゃないの?あんた魔理沙と煌にやられてしばらくのびてたらしいじゃない」

と霊夢。確かに俺たちが3人で戦ってる間に忍び込んで何かをした可能性は高い。

 

「かもしれないわね。まぁ今はそれは良いわ。暴れたフランを煌が止めてからそれほど時間は経っていない。まだ近くを探せば見つかる筈よ。フランの能力が使えないのも関係してるだろうし…今からそいつを捕らえに行くわよ」

そう言って俺たちに詰め寄って来る。

 

「俺は構わねえけど…みんなは?」

 

「まぁここで断って面倒になっても困るし、付き合ってあげるわよ」

「ああ、私もそいつが誰なのか、興味あるしな」

「私はお嬢様に従うだけですわ」

どうやら聞くまでも無いらしい。レミリアがニッと笑う。

 

「よし、じゃあパチェはフランをお願い。私と咲夜は館の北を、霊夢達3人は残りの方向を頼むわ。見つけたら捕獲か、どうにかして他のやつらに知らせて」

全員で頷く。

 

「それじゃ、行くわよ!」

レミリアの声とともに、全員で食堂を飛び出した、その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーパチ、パチ、パチ

 

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

突然、拍手が聞こえた。そこで気づいた。

廊下の真ん中に、人が立っている。フードを被り、黒いローブをまとった男が。

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、フランドール嬢の鎮静化、おめでとうございます!」

 

 

1番早く我に返ったのはレミリアだった。

 

「お前が、フランに何かをした男か?」

空気が重くなる。俺と戦った時とは違う圧が言葉に掛けられる。

 

だが男は微塵も気圧される事なく答えた。

「いいえ、何もしていませんよ。私はただフランドール嬢に外へ出れる様に、そうですね…ちょっとしたおまじないをしただけですよ」

 

レミリアの顔が歪む。同時に手に紅の槍が現れる。

 

「ふざけるな。フランの能力が使えなくなったのも、お前の仕業でしょう」

更に重く鋭くなる言葉にも動じず、男は薄く笑うとどこからか杖を取り出した。その頭を俺たちに向けて来る。

 

 

 

 

「コレ、何だか分かりますか?」

男が向けた所には紅い、目の様な形の石が嵌っていた。

それに反応したのは咲夜だ。

 

 

 

「それはまさか、妹様の…!」

男は頷く。

 

 

 

 

 

「その通り!コレはフランドール嬢の“ありとあらゆるものを破壊する程度の能力”、そのものです!何かと良さそうな能力でしたからね、ぜひ頂こうと思いまして」

そう言って笑みを浮かべる。だがそれは今までとは違う、邪悪に満ちた笑みだった。

「貴様ッ…!」

男の笑みに、レミリアが男目掛けて飛びかかる。同時に魔理沙も手に持った八卦炉を構える。

 

 

「【マスタースパーク】‼︎」

八卦炉から虹色の光が放たれる。迫り来るそれに、男は興味深そうに杖を向けた。

 

 

 

 

「なるほど、これが貴方がたの技…スペルカードというやつですか。確かに綺麗ではありますが-ー」

光が杖と接触した瞬間、杖に吸い込まれる様に光は消えてしまう。

 

 

「何だとっ…⁉︎」

 

「ーー話になりません。それでは私を仕留める事はおろか足止めにもなりはしませんよ」

そのまま突っ込んだレミリアの槍を受け止める。

 

 

「貴女も何をそんなに怒るのです?貴女がフランドール嬢を閉じ込めたのはこの力が原因でしょう?」

「黙れ…!」

 

「それに貴女にも、私を止める程の力は無い。攻撃とはこのくらいの威力が無ければね!」

 

男とレミリアの間に、虹色の光(・・・・)が現れる。

それは輝きと共に炸裂し、レミリアを吹き飛ばした。

 

「お嬢様!」

すぐに咲夜が助け起こすが、レミリアは満身創痍。とても戦える状態では無い。

 

その様子を見て男は背を向け、歩き出す。

 

「さて、では私はこの辺で「【夢想封印】!」…おっと、まだ貴女が居ましたか」

 

男は虹色の弾幕を杖で受け流していく。それを見た霊夢は怒りも露わに新たに弾幕を放つ。

 

 

「アンタには聞きたい事が大量にあるのよ!能力を取り出すなんて、そんな事は聞いた事が無いわ!」

男は変わらず飄々と返した。

 

 

 

「貴女が聞いた事が無くとも、事実としてここに取り出した能力があるんですよ、博麗の巫女。余分な詮索はまた今度にしてもらえますか?私も忙しいものでねぇ」

 

「また今度ですって?」

 

男が頷いた、その背後に暗い闇が現れる。

 

 

 

 

 

「ええ、そうです。ついでにそこのお嬢様にも伝えて頂けますか?

 

 

 

 

 

 

 

ーーこの出来事はただの始まりだと。これは私の…私達の計画のほんの一端でしか無いのだと。

フランドール嬢の力は、有意義に使わせて頂きますよ。では、またいずれ。」

 

そう言い残し男は闇に消えた。その様子を、俺は見ていることしか出来なかった。

 

 



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第3章 春雪異変 〜死へ誘う桜〜
疑念と招待


やっと新章…遅いですね
今年中に終わればと希望を抱きつつ書いていきたいと思います!

ではどうぞ!


レミリアの起こした異変…紅霧異変から1週間が経った。フランドールの能力を奪った男についてはまだ何も分かっていない。

今はレミリアに呼ばれて紅魔館へ向かっている途中だ。正直嫌な予感しかしない。しないのだが…

 

 

『いやー人に呼ばれるとか久しぶりだからね、ぜひ行きたいな!』

とか言うカガチの言葉で渋々行くはめになった。

 

「てかよ…」

『ん?何?』

 

「何お前いるのが当然みたいな話しかたしてんの?」

 

しばしの沈黙。

 

 

 

 

 

『…さあ、そろそろ着くんじゃないかな!』

 

「おい待て誤魔化すんじゃねえ!」

コイツに今まで色々と聞いてはいるが、全てはぐらかされて終わっている。更に俺以外は声が聞こえないのか、たまに俺が1人で話すとか言う悲しい認識になっている。

 

 

『前言ったじゃん。私は君の刀の中にいて、君が振り回したせいで目が覚めたの。おかげで君に干渉出来るようになって便利なんだけどさ』

「だからそれがそもそもおかしいだろ、何だよ刀の中にいるって」

『あーもうつまり刀が私の家なの。ほらこの話は終わりだよ。もう着くからね』

そう言われて前を向くと、紅魔館の門が目前に迫っていた。そして横の柱に寄りかかって寝てる人影が1つ。

 

 

「また寝てるし…起きろーみりんー」

挨拶代わりにチョップをかます。そうすると慌てて飛び起きた。

 

「はっ!?寝てませんよ咲夜さん!?…って煌さんでしたか」

 

そう言って安堵の息をしているこいつは本 美鈴(ほん めいりん)。紅魔館の門番らしい。霊夢達は戦ったようだが、俺は空から侵入した為会ったのは異変の後だ。空飛べる奴が多いんだから門番とか意味ないんじゃ…と言う疑問はどうにか呑み込んだ。

 

「煌さんはお嬢様に呼ばれて来たんでしたね。こちらです」

 

美鈴について館を進むと、途中でフランドールと遭遇した。

 

 

「あっ、煌だ!遊びましょ!」

 

「今日はレミリアに呼ばれてんだ、また今度な」

フランドールには能力が奪われた事を話していない。無闇に話すと危険というレミリアの判断だ。本人は気にせず過ごしているようで安心だ。

 

「えーつまんなーい」

「では妹様、今日は私と遊びましょう」

「めーりんは弱いから嫌」

「ぐはっ…!」

 

フランの容赦ない言葉に美鈴がよろける。無邪気って怖い。と、そこに咲夜が近づいて来た。

 

「妹様、美鈴達は忙しいのです。あまり引き止めてはいけませんよ。煌、この部屋でお嬢様がお待ちよ。美鈴はさっさと門番に戻りなさい」

心なしか美鈴へのあたりが強い気もするが…咲夜と美鈴に礼を言い、部屋へ入る。すると椅子に座って紅茶を飲んでるのが2人。……2人?

 

 

 

「おや、やっと来たのね」

1人は紅魔館の主であるレミリア。

 

「はあい、煌。久しぶりね」

もう1人は異変後に音沙汰の無かった紫だった。

 

 

「うげ、なんで紫まで居るんだよ」

「あらいやだ。私はそこの吸血鬼と情報交換をしていただけよ?例のフランドールの能力が奪われたという件でね」

 

「何か分かったのか?」

確かに神出鬼没の紫なら何かしら調べていたかも知れない、だが紫の返事は芳しくないものだった。

 

 

「…詳しいことは私も分からないわ。ただその男と同じ姿の人物が幻想郷のそこかしこで見られているわ。今は何も起きていないけど、この件をきっかけに更に何か仕掛けて来るかもしれない。幻想郷の賢者としてそれは避けなければならないわ」

 

「もしかしたらフランの様に強い能力を探しているのかもしれないわ。私達に始まりに過ぎないなんてムカつく事を言っていたしね」

 

レミリアはやはりまだ怒りが収まらない様だ。妹の能力が奪われたんなら当然だが。

 

 

 

 

 

 

「さて、そこで煌?」

 

紫がこちらに顔を向けて来る。何だろう、とても嫌な予感がする。

 

 

「貴方達はその男と交戦して歯が立たなかった…そうね?」

「え、あ、ああ。俺は何もしてないけどよ」

 

「霊夢達は弾幕に込める力を強めれば多少は何とかなるだろうけど、貴方はただの人間。それに刀を使うとなっては彼女達とは違う方法で強くならなくてはいけない。だから、」

 

 

にこりと、紫が微笑む。

 

 

 

 

 

 

「貴方を強くしてくれる人の所へ送るわ。話は通してあるから平気よ。

 

 

 

 

 

ーーじゃあ、いってらっしゃい♪」

 

紫の言葉と共に、床の感覚が消える。体を浮遊感が襲う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またかてめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

叫びと共に、俺は紫のスキマへと落ちていった。

 

 

 



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冥界からの歓迎

そこまで間を空けなかった(歓喜)

というか主人公とかより妖夢の戦闘シーンが1番書く気が湧くってマジか


ではどうぞ!


「紫の野郎…絶対許さねぇ…」

そう愚痴る俺の前には長い石段。あいつはいきなり落とす事を止めて貰いたい。

 

「しかもどんだけ長いんだよここ…もう随分登ったぞ?」

登っても登っても先が見えず、同じ光景が続くばかりだ。元の世界でもここまで長い石段はそうあるまい。

 

『いや、てか飛べばいいじゃん?君コートの飾りで飛べるんでしょ?』

「あ…」

 

そうだその手があった!カガチに口出しされたのが若干癪だがこのまま歩いていては日が暮れる。早速飛び上がり上を目指して飛ぶ。

 

「あーやっぱ飛ぶと楽だわー…ん?あそこは…」

 

上の方に広場の様な場所が見える。恐らく石段の中間地点といった所だろう。

 

「マジで長すぎだろ…。まぁあそこでちょっと休んでくか」

 

ぼやいて加速する。早く休もうと広場に出ようとして、

 

 

 

『あ、ちょっとストップ!』

「ん?何だよ?」

 

カガチに止められた。言われた通り滞空するとーー

 

 

 

 

 

キンッ!

 

 

 

ーー丁度広場から顔を出そうとした位置、そこを鋭い斬撃が駆け抜けていった。

 

 

 

 

 

「…なあ、今スゲー帰りたくなったんだけど…」

 

『あのババ…賢者だっけその人が君の事言ってあるなら大丈夫なんじゃない?それにどのみち行くしか無いよ』

「だよなぁ…」

 

刀を抜き、身体を庇うように構える。そのまま全力でジャンプし、広場に着地。それと同時に再び斬撃が襲い来る。

 

 

 

 

 

「ちょっと待て、話をしよう!」

慌てて斬撃の方向を向くと、こちらに向けて刀を構える少女が見えた。

 

「侵入者にする話など無い!今すぐ引き返さないなら、この場で切る!」

 

「侵入者⁉︎違えよ、紫から来るって言われてる筈だろ!」

 

「紫様から…?そんな話は聞いていない。つまり貴方は侵入者だ!」

 

少女が突っ込んで来る。…速い!

 

 

 

 

 

「仮に貴方が侵入者でないとしても、それは切れば分かること!」

 

「あーもう、何で話を聞かねえ奴が多いんだよここは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

少女の刀を受ける、躱す。こいつを倒さないと進めない、けど…!

 

 

『大丈夫かい?まるで攻めて無いじゃないか』

 

「早くて、スペルを使う暇がない!だからってそのまま振る訳にも…!」

事実、スペルを使おうとすればその瞬間切られて終わりだろう。だが相手は本気。何か策を考えなければーー!

 

 

『はぁー。分かった、私が隙を作ろう。そこを君が強めのスペルで叩けばいいさ』

 

「マジか!助かる!」

 

『はいはい、じゃ行くよ!』

 

少女の刀に合わせて俺の刀が黒い魔力を帯びる。そのまま鍔迫り合いの勢いでそれを少女へ向けて炸裂させる。

 

 

「何!?これは…!」

 

後ろへ跳び、全力のスペルで決める!

 

 

「喰らえ!壊符【リベリオン】!」

 

炎と共に撃ち出される、十字の斬撃。だが少女は慌てた様子もなく、何故か刀を鞘へと納めた。

 

 

「なに考えてんだよ…!直撃だぞ⁉︎」

 

 

『いや、まずい!早く防御!』

「防御⁉︎今からじゃ…!」

 

慌てて刀を構えるが、それよりも少女の動きが勝った。大きく一歩踏み込みーー

 

 

 

 

 

「はああッ…!人符ーー

 

 

 

 

 

 

 

ーー【現世斬】!!」

 

 

少女の姿が霞む。放った斬撃は両断され、そのまま俺の身体を捉えるーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バチィッ!

 

 

 

その寸前、俺の身体を覆った黒が、少女の刀を止めた。

 

 

 

『危ないな、もっと迅速に動いてくれないと!』

「悪い、助かった!」

 

力任せに刀を振り、少女を遠ざける。その間に体制を立て直し、少女と対峙する。

少女はまた、刀を納め足を踏み出す。まずい、今の俺には対処法が無い!

 

 

 

 

「厄介な能力…。だが、今度こそ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいはい、そこまでよ〜。2人とも剣をしまって頂戴。」

 

 

 

 

 

不意に少女の後ろから声がかかる。その一言で少女は慌てた様に声の主に向き直った。

 

 

 

「幽々子様⁉︎何を言うのです、私は侵入者をーー」

 

「妖夢には言ってなかったけど、その子はお客さんよ。紫からさっき聞いたもの」

 

 

「は…?さっき…?」

 

ぼやいたのは俺だ。俺の記憶ではアイツは“言ってある”とか言ってた筈だ。つまりーー

 

 

 

『うん、見事にあのババアの手違いだった訳だね!』

「あの野郎…!」

 

今度会ったら切る。そんな話をしていると少女達の方は話がついた様だ。

 

 

 

「私は西行寺幽々子。こっちは魂魄妖夢よ。ごめんなさいね、ウチの妖夢が勘違いして」

「いや紫の方に問題ありだろ、これは」

 

「そうねー、紫も年かしらね。ともかく上に…白玉楼に行きましょう。その前に妖夢」

 

「う…は、はい」

少女が俺に向き直りー

 

 

「ー申し訳ありませんでした!」

 

頭を地につける。俗に言うDOGEZAだ。

 

「いやいい、いいから!立てとにかく!」

「は、はい…」

 

「ほらほら、2人ともこっちよ〜」

 

幽々子について石段を登る。そしてさほど時間も掛からずに、俺たちの前に立派な屋敷が現れた。

 

「おお…でかいな…」

 

「そうでしょう?2人だけだと広すぎるけれどね〜」

「2人…」

 

このでかさで2人暮らしか羨ましい。俺もこんくらいの家に住みたい…掃除が無理か。

 

 

 

 

 

 

「さてと、ようこそ、白玉楼へ。貴方()を歓迎するわ」

 

「!あんたは…」

『……』

 

「早速だけど中に入って頂戴。今もう1人お客さんがいてね、貴方に会いたがってるのよ〜」

「俺に…?」

 

 

疑問に思いながらも、俺は白玉楼に足を踏み入れた。



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再会

タイトルが決まらないっ…!

はい、ネタよりタイトルが出ません。ネタはそこそこあるんですけどね…





白玉楼は見た目通り広い日本屋敷のような内装だった。いくつも部屋を横切り長い廊下を幽々子と妖夢について進んで行く。

 

「俺に会いたがってる奴ってどんなやつなんだ?俺が知ってるやつなのか?」

 

「貴方が知ってるかは分からないけど…不思議な人だわ〜。何だったかしら、漫画?とかいう物を沢山持ってたわね」

 

「漫画?」

 

そんなもん持ってるとは…。面白そうなら読ませて貰おうと考えた俺に妖夢がやや興奮気味に話してくる。

 

「はい、何という題なのかは教えてくれませんでしたが、青いタヌキの様な方が活躍する内容でした」

 

「…青い、タヌキ…」

 

…それは十中八九ド○えもんだろう。そしてそんな物を持っている様で俺に会いたがってる奴は…

 

「心当たりがあるみたいね〜。さ、ここよ」

1つの部屋の前で立ち止まった幽々子は俺に前に行くように促した。

 

「ほら、貴方に会いたがってるんだから貴方が1番前じゃないとね」

 

「何だよそれ…」

 

愚痴りながら襖を開けると、部屋の真ん中に人が座っていた。そいつは俺たちに気づくと振り向き、そして俺と同時に驚いた顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、煌!マジでこんなとこに居るとは思わなかったぜいやマジで!」

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなり親しげなその口調。確かに見覚えのある顔に手に持ったド○えもん。そんな知り合いを見て俺はーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何でテメェまで居るんだおらぁぁぁぁっ!」

「ぐほぁっ‼︎」

 

 

 

ーー全力で、そいつに拳を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

「…で、何でお前がこんなとこにいんだよ?」

 

「知らん。勝手に来ちまった、以上」

 

「テメェ…」

 

会ってすぐこんな状態になった俺たちへと妖夢が狼狽えながら話しかけて来た。

 

「や、やはりこの方は煌さんのお知り合いなのですか?」

 

「…ああ、知り合いっつーか友達だな」

 

「そう!オレと煌は運命的な出会いをした「黙れ変人」ぐはっ…!」

 

変なことを口走り始めたので黙らせ、一先ずこいつを幽々子たちに紹介する事にした。

 

 

 

 

 

「コイツは中晴 昏(なかはる こん)。俺の友達で、まぁ腐れ縁ってやつだ。変人だ」

 

「おっとその情報はいらなかっただろ」

 

「こ、個性的な方なんですね」

 

妖夢、頼むから少し引いてこっちを見るな。てか俺とコイツを一緒にするな。

 

「これでも俺たちは付き合い相当長いからな、なんかされたら言え」

 

昏と俺は物心ついた頃から一緒だった。故に対処法もバッチリだ。

 

 

「なんかされたらってひでえなそれ。握手するぐらいしかしねえぞ」

 

「それが既に周りからすれば変なことだろ…」

 

コイツは事あるごとに握手したがるからな。特に俺の場合は喧嘩した時とかのやりそうな場合のみならず意味を求めずやりまくった記憶がある。

 

「へ、へぇ…」

 

「妖夢〜私たちは縁側でお茶でも飲みましょう〜。せっかく会えたのだから水を差しては駄目よ〜」

 

「は、はい!あの、昏さん」

 

「あん?」

 

「さっき読んでいた本を少し貸して頂けないでしょうか、興味があって」

 

「お、マジか。いいぞ、持ってけ持ってけ」

 

そう言って昏は自分のリュックを漁り、中からド○えもんを出して妖夢に渡した。その数、5冊。

 

「あ、ありがとうございます!失礼します!」

 

重そうにそれを抱えて部屋から出ていく妖夢を見送り、部屋には俺と昏だけになった。

 

 

「いや〜こんな世界でもやっぱド○えもんは人気出るんだな!持ってきて良かったわ」

 

「持ってきたってお前…そもそもここがどんな世界か分かってんのか⁉︎それに一体どうやって…」

 

焦って問い詰める俺に対し、昏は冷静だった。

 

「あーそれがな…入学式の日、お前遅れるとか言って来なかったろ?そんだけなら帰りにお前ん家によってメシウマとか言えば良かったんだが」

 

「やっぱお前シメるか」

 

「話を聞けっての。帰りにお前ん家寄ったら玄関先に紫ババアみたいなババアがいてな、そいつに話しかけようとしたらいきなり真っ逆さまよ」

 

「つまりお前も紫に連れてこられたと…」

 

「そういうこった。何だ、お前の助けになればとか言ってな」

 

つまり紫は俺の事を思ってやったわけだ。スキマに落とす事に変わりないようだが。

 

 

「でもお前…戦えないだろ。それに飛んだり何だりもー」

 

「あー違う戦闘面じゃねーよ精神的にだよ。メンタル面での支えだそーだ。それにオレも伊達にド○えもん読んでばっかじゃないぜ?」

 

そう言って何かを取り出した。

 

「それは…プロペラ?何に使うんだ?」

 

「ふっ、こうだ」

 

取り出した大きめのプロペラを背中にくっつけて、何とそのままふわりと浮かび上がった。

 

「これがあればオレも飛べる。自作だから金もかからんしな」

 

「マジかよ…」

 

つまり戦闘は出来なくとも自由に移動したりは出来るようだ。俺の助けになるかは別にして。

 

「まぁ後はお前に役立つもんを作ったりだが…何、知り合いが1人でもいればお前も安心だろ?」

 

「…それはそうかもな」

 

実際に見知った顔が1人いるだけでも違うものだ。特に付き合いの長いやつなら尚更。

 

 

「さてと、話はこんくらいにすっか。オレたちも縁側行こうぜ。…おっと」

 

立ち上がり、部屋から出ようとして不意に立ち止まる。そして俺に向き直り手を差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな世界に来ちまったがまぁーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー改めてよろしくな、煌」

 

 

 

 

 

「…おう。よろしくな、昏」

 

 

俺たちは昔のように、握手を交わした。




握手したがりって何ぞ(・Д・)

まぁこういう個性的なのが居ると思ってもらえれば…


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刃の価値

はいネタが浮かびませんヽ(^o^)
ペース自体は遅くは無いはずなのに…




ではどうぞ〜


縁側で幽々子達とお茶を飲んだ後、昏は里まで買い物に出て行った。買い物は昏の担当らしいが背中にプロペラを付けて歩いてく後ろ姿は何とも言えないダサさがあった。

俺と妖夢、幽々子の3人になった所で幽々子が俺たちに付いてくるよう言い、屋敷の庭へ向かっていった。それに従う俺たちへ幽々子が話しかけてくる。

 

「煌は剣を習うためにうちへ来たんだったわよね。つい忘れてたわ」

 

「忘れてたって…剣を習うという事は私が教えるのですか?」

と妖夢。確かに妖夢と戦った時の刀さばきは凄まじかった。俺もあの位使えれば良いのにな…そうなる為に来ている訳だけど。

 

 

 

 

 

「いいえ?貴女も習うのよ妖夢」

「え?」

 

だが幽々子はあっさり否定した。

 

「貴女も聞いたでしょう?紅魔館での件を。博麗の巫女達が取り逃がした様な難敵がもしうちに来れば今の貴方達では対処が出来ないわ。だから鍛えてもらうのよ〜」

話しているうちに庭に面した一室に着いた。

 

「ここに貴方達に剣を教えてくれる人がいるわ。私は縁側でお茶を飲むから頑張って〜」

 

とか言って幽々子は行ってしまった。自由人め。いや死んでるらしいから自由霊か。

 

「とりあえずどんな人なのか会ってみるしかないか…」

「そうですね。私も気になります」

2人で襖を開ける。庭を眺められるその部屋に、長身の男が立っていた。青い短髪に手には白い鞘の刀。どこか近寄りがたい雰囲気の男はゆっくり振り向きーー

 

 

 

 

 

 

 

『やあ!私が君たちに剣を教えるカガチ。よろしくね!』

 

「……は」

 

何度も聞いた声。俺に助言をくれたりもした奴がそこに立っていた。

 

『どしたのさ煌?鳩が鉄砲食らった様な顔して』

 

「豆鉄砲なそれだと死んでるから。いや、お前今まで声だけだっただろ」

 

『うん、だからといって別に身体無い訳じゃ無いよ?幽霊が平然と闊歩してる世界じゃ無いか、驚く事でも無いよ』

 

「そりゃそうかも知れないけど…」

 

「2人は知り合いなのですか?」

 

『うん、知り合いと言えば知り合い。まぁ実際に会うのは今が始めてだけどね』

 

「はあ…?」

 

納得した様なしてない様な顔をしている。俺も同じ顔だろうきっと。

 

『さ、とりあえず庭に行こうか。あ、ちゃんと武器とスペルだっけ?は持ってる?あれ無いと特訓出来ないからね』

 

俺たちを鍛えると言うのは本当らしい。手持ちのスペルを確認して、俺たちは庭に出た。

 

 

 

 

俺たちに続いて庭に出たカガチは俺たちをじっと見てから、不意に刀を抜いた。

 

 

『さて、特訓と言っても何するかと言うとだね、まず君達は1人1人私と戦ってもらうよ。個人の方が教えやすいからね』

 

なるほど、一対一でやる訳か。となれば先ずは剣の腕の低い俺からーー

 

 

 

『あ、1人1人って言っても順番がある訳じゃ無いよ?あくまで2人一緒に戦わないってだけ』

 

「え?ですがそれだと…」

 

『うん、だからまず私の力から言っておこうか』

 

ふと、カガチから伸びる影が揺れた。そのまま黒い魔力が集まり、徐々にその厚みを増していく。

 

『私の力は自分の魔力の許す限りで望んだ物を創り出す、まぁ君達風に言うなら』

 

立体化し、着色まで成された影がーー

 

 

 

 

 

 

『“具現化する程度の能力”。これが私の力さ』

 

 

 

 

 

 

ーーゆらりと、立ち上がった。

 

「マジかよ…」

「すごい…」

 

立ち上がった影は形も色もカガチそのもの。どちらが本人か分からないレベルで同じだった。本物は俺に、もう1人は妖夢の前に、2人のカガチはそれぞれ俺たちの前に立つ。

 

 

 

『準備はいいかい?それじゃ、これから特訓を始めます。2人とも死なない様に頑張ってね』

 

カガチの言葉と共に、妖夢と影のカガチから黒い魔力が放たれ、妖夢達の立った空間が覆われる。それについて何か言う暇も無く、俺もカガチと共に黒い魔力に覆われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

辺りが黒く染まった直後、私は元の白玉楼の庭に立っていた。だが、立っているのは私と影から出たカガチさんだけ。本物のカガチさんや煌さんは見当たらない。

 

「ここは…?」

『私の作った空間さ。あそこでやると狭いからね、後流れ弾で死ぬかもだし』

 

笑顔でそう言ったカガチさんは私に刀を向けた。

 

 

 

 

 

『君にやってもらう事は単純。私と斬り合って技を盗む、それだけさ。けどその前に私と斬り合える位の強さがあるかを確かめる為に、お試しでやってもらうよ。スペルでも何でも使ってオッケーね』

 

「斬り合えるかの強さ…ですか?」

 

『うん、私は見込みがある弱者は嫌いじゃ無いけど、本当に見込みない様なのは嫌いなんだよね。だからこれは斬り合う為の試験と思ってくれれば良いさ』

 

カガチさんの刀に魔力が集まっていく。それを見て私も自分の刀、楼観剣を抜き、正面に構えた。

 

『準備はいいね?じゃあやるよ。あ、私が斬り合えるなって納得したら終わりね』

 

「は、はい!ですが、もし斬り合えると納得されなかった場合は…」

 

『ん?その場合はね』

 

先程までの笑みが薄くなる。一歩軽く私に向けて踏み出しながら、実に軽い調子で言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この場で私に斬られて、死ぬだけさ』

 

 

 

 

 

そう口にした瞬間、私の眼前に鈍い銀色が飛び込んできた。

 

 

 

 

「っ!」

 

辛うじて刀で受け止めるが、衝撃に私の身体は後方へ弾き飛ばされてしまう。

体勢を立て直すと同時に正面に弾幕を放つ。ただの弾幕が通じるとは思えないけどこれはあくまで牽制、隙を見て懐に入る!

 

 

『うーん、君って剣士でしょ?弾幕より剣だけに絞った方がいいと思うんだけどなー』

 

予想通り、カガチさんは片腕で刀を操り、弾幕を躱すどころかあっさり斬ってしまっている。けど、そのせいで私の動きは注視していない。

ここしかないーーそう思って、私は弾幕を出しながら、そっと刀を納め、柄に手を掛けた。

カガチさんが弾幕を斬るために刀を上に振り抜いた瞬間、私は大きく足を踏み込んだ。

 

 

「人符【現世斬】!」

 

叫びと共に、加速した私はがら空きになったカガチさんの胴へと刀を振るう。それを見てもカガチさんは表情を変えず、何故か何も持っていない手を私に向けた。そしてー

 

「えっ…」

 

カガチさんの掌に魔力が集まっていく。それは細長く凝縮し、一振りの刀となった。

そして私に向け、その刀ーー楼観剣を振り抜いた。

 

「く、ぅぅぅっ…!」

 

私の刀とぶつかった瞬間、異常とも言える魔力の波が押し寄せる。それに飲み込まれる様に、私は吹き飛ばされた。

 

 

「う…」

どうにか立ち上がった私に、カガチさんはゆっくり近づいてきた。

 

 

『うん、狙いは悪くない。剣の威力も太刀筋も、まだまだとはいえ充分教えるに足るレベルだ』

 

それを聞いて安堵した私をよそに、カガチさんは両手に持っていた刀を重ね合わせた。すると刀を魔力が覆い、私の身長程もある剣へと姿を変えた。

 

 

『だから、最後にコレ…私の技に耐えられるかだ』

 

すっと、剣を天に掲げる。それだけで、カガチさんの剣に膨大な魔力が満ちていく。

 

 

「……っ!」

 

思わず身震いする程の魔力。黒く巨大なそれは、まるで世界を塗り潰す様に広がっていく。

 

 

 

 

 

『さあ、いくよ…

 

 

 

 

 

 

ーー【落陽】』

 

 

黒い魔力が、私を押し潰す様に迫ってくる。私なんて簡単に飲み込まれてしまうそれを前に、それでも私は剣を構えた。

普段の私なら迷わず逃げていただろう。けれど、今は逃げる訳にはいかない。白玉楼を、幽々子様を守る力を得る為に。

楼観剣にありったけの妖力を込める。妖力によって可視化された光の刃を構え、私は叫んだ。

 

 

 

「行きます…!

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー断迷剣【迷津慈航斬(めいしんじこうざん)】‼︎」

 

 

刀を振り抜く。光で伸びた刀身が、降り注ぐ黒い魔力を堰き止め、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー直ぐに、黒に飲み込まれた。

 

届かなかった。そんな思いと共に、私も黒に飲み込まれる。途方もない衝撃が身体を襲い、その場に倒れ伏す。身体は動かず、意識も辛うじてある様な状態。そこへ、カガチさんが近づいてきた。そして、薄く微笑みながら口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うん、合格だ。よくあそこで受けにいったよ。君のその意思の強さに免じて、私が直にこの剣を教えよう』

 

 

 

 

私はその言葉を聞いて安堵し、同時に意識を手放した。

 



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心の在り方

シリアス展開だ!今すぐ逃げるんだ!下手な文章に飲み込まれるぞ!


黒い魔力に包まれた俺は、何も無い、ただ広いだけの場所に立っていた。目の前に立っているカガチ以外には誰もおらず、妖夢や白玉楼も見当たらない。

 

 

 

『さて…と。君の方も特訓開始だね』

 

「特訓…まずお前と戦えば良いんだろ?」

 

『そうなんだけどただ君の場合はやる事多いんだよねー…』

そう愚痴りながらカガチは俺に刀を向ける。同時に刀に黒い魔力が集まっていく。

 

『君にはまず心を固めて貰わなきゃいけないんだ。それは魂魄妖夢の方も同じなんだけどね』

全く意味が分からない。胆力付けろとかそういうあれなのか?

 

「妖夢も同じってんなら別にする必要ないだろ、剣の腕なら妖夢だって強いし…」

 

『私もそう思ったんだけどね、彼女と君では必要なモノが違うのさ』

 

「はぁ…?」

 

『良いかい?彼女に必要なのは剣士としての心構え。けど君に必要なのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言わば人殺しとしての心構えだ』

 

 

 

 

思わず呆然と立ち尽くす。

「人、殺し…?」

 

『そうさ。魂魄妖夢と戦った時のこと、覚えているかい?』

「妖夢と?」

 

少し前の戦闘を思い返す。あれは妖夢が襲ってきて…

 

 

『君はあの時自分から攻撃を仕掛ける事は無かった。何故だい?』

 

「何故って…そりゃ弾幕ごっこでも無いのに刀振る訳にいかないだろ」

 

『そう、それだ』

 

カガチの足元から黒い魔力が滲み出す。それはカガチを中心に少しずつ広がって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

『弾幕ごっこじゃないから刀を振れない。そんな考えじゃ君は敵を相手にした時すぐ死ぬだろう。だからまずはその考えを変えなきゃいけない』

 

そう言ったと同時に、カガチの足元の魔力から黒い人型の影がいくつも立ち上がってくる。周りを見回せば、いつの間にか俺たちの立っているところ以外は黒く染まっていた。

 

 

 

 

 

『だから君にはこの影達を、文字通り殺してもらう』

 

 

「殺すって…そんなの出来る訳ないだろ!」

 

『出来ないなら影に殺されるだけさ。君も紅魔館で見たように、吸血鬼の能力を奪った誰かは博麗の巫女とやらより強い。弾幕ごっこでは止められないだろう。だから』

 

この世界のルールである弾幕ごっこ。それが通じないというなら、止めるためには。

 

 

 

『出会ったら確実に殺す。それしか止める方法は無いんだ』

 

「そんな、弾幕ごっこで止められないからって、いきなり殺すなんて…!」

 

『なら他の方法があるかい?博麗の巫女やここに住む妖怪達ならともかく、ただの人間である君にはそれ以外に止める術は無い』

 

「それはっ…」

 

俺には霊夢達のように弾幕が得意な訳でも妖夢のように剣の腕がある訳でも無い。現に今俺が紅魔館で見た敵に襲われればすぐに死んでしまうだろう。

 

「だからって、俺は…俺は誰かを殺したくなんて無い!」

 

『それでも殺さなきゃいけないのさ。何も犠牲にせずめでたしめでたしで終わるほど単純じゃ無いんだよ。敵の命を犠牲にして自分の身を、この世界を守るか、その考えのまま何もせず殺されるか…。今の君では間違いなく後者だろう』

 

 

カガチが影達の後ろに下がる。それと同時に3体程の影が俺に近づいて来る。

 

『だから、戦いの時は心を捨てるんだ。刀でも能力でも何でも構わない。使えるものを全て使って、その影を殺すんだ。…さあ、行け』

 

カガチの言葉で影が襲い来る。俺も、走りながら刀を抜いた。

 

 

「…ああああっ…!」

 

叫びながら、刀の柄を影に叩きつける。少しだけ影がふらついた所で、その横を駆け抜ける。新たに影が立ち塞がるが、それも力任せに刀で殴り倒して抜けていく。向かうのは、勿論カガチの所。

 

「お前さえ、どうにかすればっ…!」

 

『成る程、まず作った私に来るか。うん、考えは良いけどね…

 

 

 

 

 

 

 

ーー私は言った筈だよ?殺さなければ、殺されるだけだと』

 

不意に、足が何かに掴まれる。そのまま、俺は引き倒されてしまう。

倒れたまま振り返ると、

 

「ッ!?これは…」

 

殴り倒した影達がまるで泥の様になって俺へと手を伸ばしていた。

体の輪郭は朧になり、他の影と混ざり合い1つになって俺へと迫っていた。

 

 

「クソっ!」

 

足を掴んでいる手に向けて、弱めの炎を放つ。燃えて力の緩んだ所を振りほどき前を向けば、いつの間にかカガチは俺の目の前に刀を突きつけていた。

 

 

『ほらね。殺さずにいたから、こうやって死にそうになってるじゃ無いか。おまけに炎さえ弱めて…実際に戦ってたら何回死んでる事やらね』

 

「それでも俺は…!」

 

『殺したくない、かい?例えそれが自分を脅かす敵だとしても』

 

「ああそうだ!俺の能力もこの刀も、誰かを殺したり、傷付ける為にある訳じゃ無い!」

 

刀を振りかぶる。だがそれが振り下ろされるより前に、カガチの手が刀を掴んでいた。

 

 

 

 

『その信念は評価しよう、実に素晴らしいとね。

でもそれは、君が言っていい様な言葉じゃないのさ…。

【月蝕】!』

 

刀を掴む手から魔力が放たれる。溢れ出る魔力が俺の体を叩き、刀にヒビを入れていく。

 

「ぐ…!」

 

『そこまで強情なら仕方がない。誰かを傷付けたくは無いと言う君に、私から贈り物をしてあげよう』

 

黒い魔力が俺を包み込んで行く。視界が閉ざされた瞬間、強烈な目眩に立っていられず倒れこむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『誰も傷付けないと言う言葉の重さ、存分に知るといい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー“リアリゼーション”』

 

目眩が強まる。耐えられなくなり、俺は意識を失った。

 

 

 




主人公意識失ってばっかやん!と思ってます…思ってますが今はしゃーない、いつか最強になるんや…多分


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決意の枷、訪れぬ春

1ヶ月ぶりの投稿だす。無い腕が更に落ちてる可能性が…


「う…」

眼が覚めると和室の天井が見える。どうやら気を失ってから白玉楼に担ぎ込まれたらしい。

『や、気がついた?』

「カガチ…妖夢達は?」

『君の友達はさっきここに担ぎ込まれたし、妖夢はほら、そこ』

カガチの指差した方を向くと、妖夢ともう1人のカガチが特訓をしているのが見えた。

 

『で、だ。君の手首を見てごらん』

 

言われるがままに手首を見る。見ると、そこには黒い腕輪の様なものがはまっていた。

 

 

 

 

『それは私の能力で作ったもの。君の炎を封じるモノさ』

 

「封…じる?」

 

慌てて掌に魔力を込める。だがすんなりと炎は燃え上がった。

「何だよ、出るじゃねぇか」

『今はね、流石にずっと封じてる訳じゃないし』

不意にカガチが立ち上がり、俺に手招きしてくる。

 

『とにかく、君も特訓しないとね。もう動けるだろう?私たちは私たちでやろうじゃないか』

「…そうだな」

こうしてる間に妖夢も特訓している。基礎能力で劣る俺は更に特訓しなければいけないだろう。俺とカガチは揃って外へ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「てか昏が担ぎ込まれたとか言ってなかったか?」

『あ、うん。魔法使いの子に助けられて今は2人でド○えもん見てるよ』

元気そうなので放置だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

『さて、これから君にやってもらう事は少し特殊だ。私の能力はさっき話したよね?』

「ああ。“具現化する程度の能力”だろ?」

 

『その通り。それで特殊ってのはだね……その能力を君も使えちゃったりする訳なのさ!』

「は、はぁ…」

外に出るなりいきなりこのテンションだ。ざっくり説明された結果、紅霧異変の際に俺の身体で能力を使った為、多少ではあるがカガチの能力が使えるらしい。それは分かったのだが…

 

 

「その能力って自分の魔力で物作んのとどう違うんだよ?」

そう、それは俺が炎で物を形作るのと同じじゃないのか…?出来ないけど。

 

 

『大違いだよ。それに同じでも君結局出来ないじゃん』

「う…」

 

 

『さ、ともかく特訓だ。君は自分の能力と私の能力フルに使って僕と本気で戦って貰うよ。もちろん殺す気でね。私の能力はイメージで作る感じだからそんな難しくないよ』

 

言いながら刀を抜いて近づいてくる。釣られて俺も刀を抜き、空いた掌に魔力を込める。

 

「イメージ…こうか?」

 

掌に黒い魔力が現れ、徐々に形を変えて行く。数秒で俺の手には黒いナイフが収まっていた。

 

 

『お、そんな感じそんな感じ。じゃ、行くよ!』

カガチが猛烈なスピードで刀を振り下ろす。俺は咄嗟にナイフを掲げて受け止め、

 

 

 

 

 

 

 

ナイフは呆気なく砕け散った。

 

 

『ふんっ!』

「ごふっ!」

 

そのままの勢いで蹴りを喰らい、数メートル飛ばされる。立ち上がった俺に向けて、カガチの手に黒い魔力が集まって行く。

 

 

 

『作って終わりじゃないさ、集中しないとすぐ壊れるよ!』

カガチの手に握られていたのは、真っ黒な銃。俺目掛けて濃い弾幕が形成される。

 

 

「テメェ…先に言え、よ!」

弾幕を弾きながら再び魔力を集中させる。俺の手に握られたのは、長めの投槍。

 

 

「おらぁっ!」

それをブーストを使ってカガチの足目掛けて投げつける。同時に俺も刀を構えて走る。

 

『狙いが甘い…っておっと!』

避けられた所で槍に魔力を込め、爆発を起こしてカガチの視界を奪う。

その隙に俺はカガチの頭上に跳び、刀を振り上げた。

 

「斬符…【エレメントブレイド】!」

 

刀に全力の炎を燃やす。肩口から紅蓮の刀を斬り下ろすーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー寸前に、刀を覆う炎が掻き消えた。

 

 

 

 

 

「何だ…⁉︎」

 

『…やっぱこうなるか』

そのままカガチの刀に弾かれ、俺はその場に尻餅をついてしまう。

 

 

『それが私のつけた腕輪の効果さ』

刀を収めたカガチが腰を下ろしてそう言ってくる。

 

「何だよ、肝心な時に能力が使えなくなるなんて…」

 

『ううん、別に肝心な時だからじゃない。その腕輪の効果が発動する条件は1つ。

 

 

 

 

 

誰かを傷つけそうになった時、さ』

 

俺が意識を失う前の事を思い出す。俺は言った、俺の力は誰かを傷つける為のものではないと。

 

『その意識がある限り、君は全力では戦えないだろう。仮に腕輪が無かったとしても』

 

『だから君は決めなきゃいけないのさ、次に君が敵と対峙する前に。その信念を捨てるか、貫くか。それまでは存分に悩むと良い。私も剣術と具現化の使い方は教えるからね』

 

そう言って、カガチは屋敷に戻って行った。

 

「俺は…」

どちらを選ぶべきなのか。定まらないまま、俺は屋敷へ戻った。

 

 

 

 

 

 

屋敷に戻ると、昏が毛布にくるまって漫画を読んでいた。

 

 

「昏…担ぎ込まれたって聞いたぞ。それにその毛布はなんだよ」

 

「毛布は俺の私物、担ぎ込まれたのはキノコだらけの森で胞子吸ったからだな。人形遣いの女の子居なかったらヤバかったぜ」

 

「人形遣い…?あれか、劇とかやる人か」

 

「知らん。んだどもここじゃ何居ても不思議じゃないしな」

「まぁ…な」

無事なのはまぁ良かったが、能力の事もありあまり楽しく会話をする気分では無かった。

 

「いやーでも人里行ったら寒くてな、まだ冬のまんまみたいだーとか言ってたぜ?最近まで冬だったとも知らなかったけどよ」

 

「…最近まで冬だったのか。大して変わんねー様に思えたけど」

「参拝が来ねえって巫女も言ったしな」

「それはいつもだろ」

 

「2人とも〜?いるかしら〜?」

 

そんなたわいも無い事を話すうちに、幽々子に呼ばれた。行ってみれば妖夢もカガチも居て、全員を呼び集めた様だ。

 

「どうした?何かあったのか?」

 

「いいえ〜、むしろこれからよ」

 

 

幽々子は何処か楽しげに、宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

「これから私達で、異変を起こしましょう」

 

 

 

…決断の時は、そう遠くは無い様だった。

 

 

 




やっと異変だよ、ヤッタネ!
感想や意見、ツマンネーんだよオラ!ってのは遠慮なくどぞ。


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白刃照らす紅蓮

更 新 が 遅 い


幽々子が異変を宣言してから数日。その間俺と妖夢はひたすら特訓を重ね、幻想郷に春は訪れなかった。その代わりか、冥界の桜は段々と咲いていっている様だ。そんな中、俺と妖夢は幽々子に呼ばれて居た。部屋にいくとカガチと共にお茶を飲んで居た幽々子から、驚きの言葉をもらった。

 

「もうすぐ霊夢達がここへ来るわ。異変を解決する為にね」

 

「…はい?いや、だってまだ異変はー」

 

『あ、ここの桜が咲き始めてるのが異変の証拠だってさ。私もさっき聞いたんだけど』

 

「…つまりどういう事ですか?」

 

「今から2人には彼女達の足止めをして貰うわ」

 

「「……え?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

『と、言うわけで!冥界の入り口まで到着だ!』

 

「到着だ!じゃねーよ!何でこんな急に事が進んでんだよ!?」

 

『んー…それは幽々子に言ってよ。私だってこんな早く巫女たちが来るとは思わなかったもの。まぁほら、アクシデントを楽しむ余裕持とうぜって事さ』

 

「アクシデント引き起こしたヤツが言うか…」

ため息をつき、辺りを見回す。霊夢達はまだ来ていないどころか、俺とカガチしか居ない。

 

「なあ、妖夢と昏は?」

 

『妖夢なら少し先の中腹にいるよ。君の友達は…何だっけ、魔法使いの子と何か作ってくるとか言ってた』

そう言いながら、カガチは階段へと向かっていく。

 

「って、お前までどっかいくのか?」

 

『私は白玉楼の門にでもいるよ。私達は異変の首謀者として巫女を止めなきゃいけないからね。あ、巫女達が来たら誰か君が戦いたい人と戦っといて。これも訓練だよ、彼女達はここでは強い方らしいからね。君がどれだけ力がついたかも分かると思うしね』

 

一方的に言い残し、カガチは行ってしまった。残された俺は霊夢達が来るであろう入り口を眺める。

 

「言うだけ言いやがって…訓練とか言って使われてる様にしか思えん…」

 

まぁ使われてるにせよ訓練出来ると言うのはありがたい。刀とスペルカードを確認した所で、入り口に迫る人影が見えた。

 

「ホントに来やがった…って、なんであのメイドまで居るんだよ…?」

 

こちらに向かって来るのは霊夢と魔理沙、そして何故か咲夜の3人。向こうも俺が見えたのか速度を増し、こちらへ向かってくるーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそれぞれの武器を構え、敵意をむき出しにしながら。

 

「え…?」

次の瞬間、虹色の弾幕と無数のナイフが俺目掛けて殺到した。

 

「おわっと危ねぇ!問答無用かよ!?」

慌てて隅へと退避するが、霊夢と魔理沙はそのまま白玉楼まで飛んでいってしまった。唯一その場に残った咲夜が俺にナイフを向けてくる。

 

「霊夢や魔理沙はともかく、お前に攻撃される様な事をした覚えは無いぞ俺は?」

 

「お嬢様に春が来ない原因を突き止めて来いって言われちゃったのよ。だから今は私も異変解決者。それに、貴方には以前負けてしまったから…その分はキッチリ返さないとね」

 

「リベンジってわけか…良いぜ、もっぺん負かす!」

 

刀を抜くと同時にナイフが放たれる。目前のナイフを弾き、

 

 

 

 

 

「ーー【エレメントパーティクル】!」

 

集中し、全方位に弾幕を放つ。周りのナイフを防ぎ、全て地面に落ちたところで、目の前に咲夜が突っ込んで来た。

 

「はぁッ‼︎」

そのままの勢いで俺めがけてナイフが振り下ろされる。

 

 

「マジかっ…!」

 

辛うじて受け止め、眼前に火花が散る。

 

「おい…弾幕ごっこでその攻撃はありなのかよ…!」

 

「貴方に言われたく無いわよ…それにさっきの、あれはスペルの筈でしょう?」

 

「そうだよ。弾幕ごっこ以外でスペルをいちいち宣言するなんざ無理だからな。なんなら省こうぜってなったんだよ。……【ヴェーダスの衣】!」

俺の身体を炎が包み、咲夜を遠ざける。

 

「くっ…相変わらず厄介な炎ね…!幻符【インディスクリミネイト】!」

 

前方に展開される大量のナイフ。炎を全て飛ばしてぶつけるが捌ききれないーーだが。

 

「厄介なのはそっちもだろ……!」

右手に黒い魔力が集まる。頭で形をイメージしてー

 

 

「…投げるっ!」

 

放たれるのは黒い鎌。回転しながらナイフを弾き、そのまま咲夜へと吸い込まれーー咲夜の姿が消え、鎌は石段に突き刺さり消滅する。

 

 

 

「また瞬間移動かよ…強すぎだろやっぱ!」

背後から飛ぶナイフを躱し、咲夜に向けて刀を振りかぶる。刀身を炎が包み、倍以上の長さに伸びていく。

 

 

「こいつならどうだ…!【エレメントブレイド】!」

 

振り下ろされる炎を前に、だが咲夜は動かない。炎が咲夜のすぐ頭上まで迫った時、咲夜は口を開いた。

 

 

 

 

「時符【プライベートスクウェア】」

咲夜の周囲の空間が揺らめき、迫った炎が白く染まる。そのまま動きを止め、やがて霧散していった。

 

「マジかよ…なんでもありってかその能力…?」

 

「ええ、こんな事も出来るわ。さあ、そろそろ終わりにしましょう」

 

咲夜がナイフを向ける。このままでは勝てない。そう判断した俺はそれに対抗する様に俺はスペルカードを手にとった。今の俺が持つ、唯一のスペルカード。

 

「スペル…?」

 

「ああそうだ、これで終わらせてやるよ。いくぜーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー反符【オーバーライド】‼︎」

 

俺の身体から炎が溢れる。俺を包み、今までより更に高温の炎へ変化していく。

 

「ぐ…おおおッ!」

身体が軋む。溢れる炎を無理やり抑え、咲夜へと走りだした。

 

「くっ…今度こそ負ける訳には!」

 

俺に向けてより大量のナイフが放たれる。俺は両手に炎を集め、咲夜へ向けて突き出した。

 

 

「いけ…!【無影双陽】!」

 

巨大な炎の塊が、ナイフを巻き込みながら押し通る。咲夜の目の前で炸裂する。無数の小さな炎が降りそそぎ、咲夜の姿を隠した。

 

「時符【パーフェクトスクウェア】‼︎」

 

再び、咲夜の周囲が歪み、俺の炎を次々と止め、消していく。だが炸裂した全ての炎が消えた時、俺は咲夜の頭上に飛び上がっていた。

 

 

 

 

「終わりだ…!【ブレイズリベリオン】‼︎」

 

俺を包む炎が刀に集まる。

歪に膨れたそれを、咲夜目掛けて全力で、振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 



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異変は静まり、されど終わらず

投稿ペースを早めたい毎日だった\(^o^)/
久々?のシリアスもどき。いつもより長いです。


炎が収まった時、その場所から咲夜は消えていた。

その場に残っていたのは1つのナイフ型の弾幕。それが段々と、俺を囲うように全面に展開されていきーー

 

 

 

「…っ!!」

 

 

 

 

 

「ーーメイド秘技【殺人ドール】‼︎」

 

 

 

 

 

俺に向けて弾幕が殺到、炸裂する。行動をする暇も無く、俺の体は吹き飛び石段に叩きつけられた。

 

 

 

 

「が、ぐはっ……!」

 

 

どうにか起き上がろうとする俺の首筋に、後ろから静かにナイフが当てられた。

 

 

 

 

「ふう…今回は私の勝ちね。それともまだ抵抗するかしら?」

 

「くっそ…分かったよ、負けだ負け」

首からナイフが離れたのを確認して立ち上がる。

 

「よろしい。それにしても最後のは危なかったわ。いつの間にあんなの覚えたのよ」

 

「俺なりの修行の成果ってやつだよ。負けちまったけどな」

 

「けれど始めて戦った時よりは断然強くなってるわよ、適応能力が高いのかしらね。さ、魔理沙達の方を見にいきましょう」

 

簡単な会話をしながら石段を登っていく。妖夢のいるはずの踊り場に出た所で俺は声を上げた。

 

 

「うわ…ボロボロじゃねーか」

 

明かりを灯していた灯篭は切り裂かれ、あちこちの地面がえぐれている。

えぐれた地面を目で追うと、隅の方で重なって倒れている魔理沙と妖夢を見つけた。

 

 

「魔理沙…派手にやったわね」

 

「こいつら物壊しすぎだろ…2人とも、大丈夫か?」

俺達に気づいたのか、魔理沙達がほぼ同時に立ち上がり、こちらに手を振って来た。無事らしい、幻想郷の奴らって頑丈だな。

 

 

「よお咲夜、霊夢だけ先に行ったぜ。私はここでコイツと相打ちだ。そっちは…煌が負けちまったみたいだな」

 

割と汚れていた俺の服を指差してやっぱりな、という風に笑ってくる。

 

「仕方ないだろ、咲夜の能力が反則なんだよ…。そっちも妖夢に負けたんじゃねーか」

 

「うう…博麗の巫女に先に行かれました…申し訳ないです…」

そう言って縮こまる妖夢の肩を魔理沙がばんばん叩いている。

 

「いやーでもお前も強かったぜ。特に最後、私の突撃に合わせてぶん殴られた時は驚いた!」

 

「…刀使ってないのか?」

 

「か、刀を弾かれたんです!それで慌てて咄嗟に…」

 

だからって殴りに行くか。妖夢は俺が思ってるより大分パワフルらしい。

 

「はぁ…ほら、そろそろ行くわよ。霊夢のことだからやられてはいないと思うけど…」

 

呆れていた咲夜に続いて再び石段を登り始めた時、

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー突如響いた轟音と共に、石段全体が激しく振動した。

 

 

 

 

「うわっと…!」

咄嗟に飛び上がって振動を避ける。咲夜達も同様に飛び、難を逃れていた。

 

「何だぜ、急に⁉︎」

 

「霊夢はまだ異変を終わらせて無いようね…急ぎましょう」

言うなり咲夜と魔理沙は上へと飛び去ってしまった。

 

「ゆ、幽々子様に何か⁉︎私達も行きましょう!」

 

「お、おう!」

 

妖夢に促され、俺達も白玉楼を目指して飛んで行く。

 

 

「幻想郷の異変ってのはいつもこんな物騒なのか⁉︎」

 

 

毎回こんな被害が出てるなら起こす側も解決する霊夢側も相当苦労していそうだ。

 

「わ、私達も異変に携わるのは初めてですし…」

 

「ただ、今白玉楼には幽々子様の他にカガチさんがいますから、もしかしたら…」

 

「あいつが暴れてる可能性もあるか…考えたく無いけどな」

 

俺や妖夢より遥かに強いカガチだが、異変解決者が3人がかりだと厳しいかもしれない。

 

「まぁすぐ分かるけどな!」

 

石段を蹴って見えてきた白玉楼に飛び込んだ。その先には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やぁ、遅かったじゃ無いか』

 

霊夢達3人を相手に単身で渡り合うカガチの姿だった。

 

いや、渡り合うというより、3人がかりでも苦戦している様子だ。3人に比べてカガチに疲弊した様子は無い。

 

「全く、何なのよ!元凶を退治したと思ったら、いきなり出てきて!」

 

「元凶って…幽々子様はどこですか⁉︎」

 

見渡すと、確かに幽々子の姿はない。既に霊夢にやられて白玉楼の中にいるのか?

 

 

「呼んだかしら?」

真後ろから声がした。

 

「うわっ!」

 

振り返れば、いつもの調子の幽々子の姿があった。

 

「幽々子様!ご無事でしたか⁉︎」

 

「ええ。少し油断しちゃったわ〜。博麗の巫女達が頑張ってるようだけど、元凶である私が退治されればこの異変はお終い。彼女達を止めなきゃね〜」

 

そう言うと幽々子は今にも大技を出そうとしている3人の方へ歩いて行った。

 

「そのくらいにしてくれるかしら〜。それ以上されると本格的にここが壊れてしまうわ〜」

 

「はぁ?こっちは売られた喧嘩を「貴方もいいかしら〜?」ちょっと!」

どうやら強引に丸め込む気らしい。天然なだけかもしれないが…。

 

 

『私は構わないよ。元々興味湧いてちょっかい出しただけだし』

 

「はぁ⁉︎あんだけ攻撃仕掛けてきて興味本位⁉︎」

 

「まあまあ霊夢、落ち着けって。誰だか知らんが、お前がそう言うって事は異変は終わったって事だろ?」

 

「ええそうよ〜。私が退治されたのだから異変は終わり。貴女達は春を取り戻しに来たのよね?奪った春も返すわ、じき春になる筈よ〜」

 

見れば、先程まで咲いていた桜が段々と散って行く。咲きかけていた巨大な桜も、ただの大木へと戻っていった。

 

「よっし、そうと決まればやる事は1つだ!な、霊夢!」

 

「はぁ…またやるの?この前レミリア達の異変を解決した時にやったじゃない」

 

「いいじゃねぇか、せっかく春になるんだ、パーっとやろうぜ!そうと決まれば、早速準備しなきゃな!」

 

言うやいなや、魔理沙は箒に飛び乗って去ってしまった。

 

「あ、おい…!ったく、咲夜、何か面白い事でもやるのか?」

 

「宴会よ。ここでは何かあったら飲むのが普通らしいわ」

 

「待て、お前ら成人には見えないぞ、精々俺と同じかちょい上だろうが」

 

「それは外の世界のルールでしょ?こっちじゃ通用しないのよ。折角だからあんた達も来なさい、前は呼べなかったしね」

 

どこかうんざりした様な顔の霊夢が言う。そんな顔するならやるなよと思うが、魔理沙の性格的に断っても無駄なのかもしれない。

ふと隣の妖夢を見ると目を輝かせていた。宴会とか好きなのかね。

 

「春が戻ったのなら、私はお嬢様にご報告しなければ。私もそろそろお暇するわね」

 

「私も行くわ。いい、あんた達、あんまり面倒事は起こさないで頂戴、紅魔館の一件でこっちも大変なんだから」

 

それは反論出来ないな。紅魔館の件は何も解決していない訳だし、俺も面倒なのは好きじゃない。

 

「それとアンタ」

飛び立つ寸前、霊夢はカガチをじっと見据えた。

 

「何を考えてるのか知らないけど、アンタも妙な真似したら退治するわよ、良いわね」

 

それだけ言って、さっさと飛び去っていった。残った咲夜も苦笑しながら一礼し、飛び去った。

 

「お前…霊夢に何したんだ?」

 

『さぁ?私も退治されたく無いし、変なことしないのにね』

どことなく楽しげに、カガチは笑っていた。

 

「さぁ〜、異変も終わってしまったし、2人とも疲れた顔をしてるわ。今日は早めに休みましょう〜」

 

多分妖夢が疲れているのはめちゃくちゃになった庭の事だと思うが…ともかく、疲労が溜まっていた俺達は今日ばかりは早々に眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

その日の夜。白玉楼の縁側で、幽々子は1人桜を眺めていた。

 

「…また、咲かせられなかったわね」

 

 

 

『残念そうだね。そんなにあの化け桜(・・・)を咲かせたかったのかい?』

 

音もなく隣に現れたカガチは、独り言の様に呟いた。

 

「ええ。あの桜…西行妖を咲かせることが、私の願いだったもの。どんな事になってもね。それに、異変を起こす様に頼まれてしまったから」

 

『…八雲紫にかい?』

 

「貴方は本当に紫を嫌っているわね。…500年(・・・・)位かしら。初めて貴方に会った時から」

 

『当たり前だろう。あの女に好意的な感情なんて抱かないさ』

 

「……やっぱり、まだ紫を恨んでいるの?」

 

『そうだ、何なら今すぐにでも探し出して殺したい位だ。そして、幻想郷に異変が起きている今はチャンスでもある』

 

『フランドールの能力を奪った奴は、もうじきここに来るだろう。西行妖の力を…異変を起こす程の強い力を欲して』

 

「…そうね。紫も気づいている筈よ」

 

『そいつを始末すれば、あの女も現れるだろう。その時、私はあの女に聞きたい事があるんだ。その答えが……あの女の考えが、昔と何も変わらないなら』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ーー今度こそ、私はあの女を殺す』



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彷徨う剣鬼


月一ペースだと…!


幽々子達の起こした異変が霊夢達に解決された翌日、俺達は壊れた白玉楼の修復に追われていた。

 

『なんで私までやんなきゃいけないのさ…』

 

「うっせー庭ぶっ壊したのほぼお前だって言うじゃねーか!なんで俺までやってるのかが疑問だわ!」

 

最も俺達は散らばった砂利なりを纏めてるだけで、実際に修復しているのは妖夢だが。

 

「よーっす!おお、何だ庭ボロボロじゃ無いか!俺が居ない間大変だったらしいな」

 

背後から陽気な声が聞こえた。恐らく今1番会いたくない奴…

 

「昏…お前どこ行ってたんだよ」

 

「ん?言ってなかったか?幽々子さんに言われてアリスのとこに厄介になってたんだ。色々趣味が合ってな、楽しかったぞ!」

 

「そーですか羨ましい限りです。じゃそのテンションで俺達の事も手伝ってくれ」

 

そう言って振り返ると昏はもう白玉楼に入ろうとする途中だった。

 

「いや俺は力仕事とか苦手だし…もう昼だからな、昼飯食わねえと」

 

「うっせぇ片付けねぇと飯無えんだよ!とっ捕まえろ!」

 

『あいさー』

 

「力ずくは卑怯だろぉ!!」

 

 

こうして昏を捕縛し庭を修復し終える頃にはもう日が傾きはじめていた。

 

『いやー終わった終わった』

 

「すげー苦労したわー」

 

「やったのほぼ妖夢だろ…」

 

「あはは…さあ、幽々子様も待っているでしょうし、夕飯の準備をーー」

 

 

その時。

夕日の出ていた空が、一瞬のうちに黒く染まった。

 

「うお……⁉︎」

 

同時に、遥か下方…冥界入り口付近に、強烈な圧力が感じられる。

 

「これは…侵入者⁉︎行かなきゃ!」

 

「あっ、おい!」

 

言うが早いか、妖夢は走って行ってしまった。

 

 

『せっかちだなぁ彼女は。昏は幽々子と一緒に屋敷に篭ってて。君は彼女を追って。あの霊力は、彼女より上だよ」

 

「わ、分かった!ってお前は来ないのかよ!」

 

『私は残るよ。万一君たちが負けた時、守りが居なかったら困るだろう?』

 

「それらしい事を…」

 

『ああそうだ、これを渡し忘れてたよ』

 

走りだそうとした俺にカガチが何かを差し出してくる。これは…

 

 

「スペルカード…?」

 

『君の力にはなるだろうさ、けどまだ使えない。ソレが役に立つ時は…君につけた腕輪と同じさ。』

 

「……そうかよ」

 

カードをしまい、妖夢の後を追って走る。

 

俺の腕につけられた腕輪。誰かを傷つけたくは無いと言う思いを貫く限り、俺の枷になる腕輪。だがこの腕輪が外れるという事は、俺が敵をーー

 

「…考えてる場合じゃないか」

 

 

見え始めた冥界入り口。そこには、妖夢の他に剣を携えた長身の男が立っていた。だが、両者に戦闘をしていた様子はない。

 

「妖夢!」

 

「煌さん!」

 

「無事みたいだな。というか、あいつは…」

 

 

 

 

 

「……来たか」

 

空気が震える。男はただそこにいるだけなのに、俺たちの周囲の空気が重くなる。それほどの圧がこの男から放たれている。

 

「貴方は…迷い込んだ訳ではないようですね」

 

「当然だ。貴様達も聞いているだろう、吸血鬼の力は奪われた。だが我等は次なる力を求める。その為に、ここへ来た」

 

「理由はどうあれ、白玉楼を襲いに来たんですね…。なら、ここで斬ります!」

 

俺と妖夢が刀を構えると同時に、男の持つ剣が巨大化していく。男の背丈と並ぶ程に巨大化し、切っ先が俺へ向けられた。

 

 

 

 

 

「良いだろう。だが2人がかりではつまらぬ。まずは貴様だ」

 

男の体から薄青い波動が放たれる。咄嗟に飛び退いた俺をすり抜け、波動は妖夢の周囲を取り囲んだ。

 

 

「…何のつもりですか?」

 

「貴様はそこで見ているがいい。強者との戦いは後にとっておくとしよう」

 

「くっ…煌さん!」

 

「テメェ…俺が弱いって言いたいのかよ?」

 

「そこの娘よりは弱かろう。貴様が強いというのであればその力、我に示してみよ」

 

「いいぜ…誰だか知らねーが、とっとと帰ってもらう!

 

ーー反符【オーバーライド】‼︎」

 

紅蓮の焔が俺を包み込む。燃え盛る刀を手に、俺は男に斬り込んだ。

 

「おらぁっ!」

 

上から刀を斬り下ろす。男が剣で受け止めた瞬間に、右手を離し黒い短剣を創り出す。

勢いに任せて男の腹目掛けて短剣を振り抜こうとするーー

 

 

 

 

 

 

 

その時、俺の腕輪が鈍く輝いた。

 

 

 

「ちっ…!」

 

黒い短剣が霧散する。同時に纏っていた焔も勢いを無くしていく。

 

 

「…どうした、巫山戯ているのか?」

 

焔が弱まった瞬間に、男の剣が俺の刀を跳ね上げる。そのまま振り下ろされる剣を転がって躱し、距離をとる。

 

 

 

「敵を前に臆したか?…本気で来ぬというのなら、貴様に待つのは死のみだ!」

 

斬撃の雨が俺を襲う。途方もなく重い連撃に、満足に刀を振るう事すら難しい。

 

 

「クソッ…好き勝手させるかよ!【紅蓮双陽】!」

 

男との間に炎が渦巻く。巨大な炎が形を変え、

 

 

 

 

 

 

 

「ーー鈍いッ!」

 

その時には既に、俺は石段に叩きつけられていた。

 

 

「あ、がはッ……」

 

衝撃よりも後に痛みが走る。

 

倒れ伏す俺の前に、静かに剣先が向けられた。

 

 

 

「……弱い 」

 

抑揚なく呟く男を見上げる。表情の無い顔は、俺を見ていないかのように虚ろだった。

 

 

「この程度で、我に戦いを挑むか…。つまらん、興が削がれる」

 

身体が満足に動かない。辛うじて動く両手で刀を握りしめる。

 

「まだ立とうとする心意気は見事、だがここまでだ。あの娘が私の求める強者である事を祈るとしよう」

 

男の奥に視線を移す。そのまま俺は刀を持つ力を緩めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ね、外界の人間よ」

 

巨大な刃が、ゆっくりと振り上げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

静まりかえった白玉楼。その庭に、1人の男が滲み出るように姿を現した。男は無言で庭に咲く一際大きな桜に歩み寄る。

 

 

 

「これが西行妖ですか…なるほど、確かに素晴らしい妖力だ」

 

男は手に持った杖を桜にかざす。その杖には、禍々しい目を象ったナニカがはめ込まれていた。

 

「これでまた1つ近づくのですね…クク」

 

杖が妖しい光を放つ。その光は桜を包み込みーー

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここで変な事されちゃ困るんだけどな』

 

 

男の背後から黒い刃が伸び、男の腕を根本から断ち切った。

 

 

「ぐ…何…!?」

 

後ずさる男の背後に大量の剣が突き刺さる。そのまま周囲に降り注ぎ、前方以外の道を封じた。

 

「テメェ…また邪魔しやがるのか」

 

睨みつける男の前に黒い魔力が集まって行く。それらは一瞬で人の形を成した。

 

 

 

 

『酷い言い方。初対面でその言い草はちょっとねぇ…。それに、桜に手を出そうとしたのは君じゃないか』

 

カガチは呆れたように肩をすくめてみせた。

 

「ハ、とぼけやがって賢者の狗(・・・・)が。テメェも賢者もろともくたばりてぇのか?」

 

切断された腕が霧状となって男に群がる。次の瞬間には男の腕は元どおりになっていた。

 

『その呼び方止めてくんない?それに…賢者を殺すのは同意するけど、君に殺されるのは嫌だな。君には賢者を呼ぶ餌になってもらうんだからさ』

 

「…あ?テメェ、何考えてやがる…?」

 

『決まってるだろう?』

 

 

カガチの足元から黒い魔力が滲み出る。魔力は長刀の形となり、カガチの手に収まった。同時に男の周囲を取り囲んでいく。

 

 

『君が死ねば、あるいは捕まれば、賢者がそれを見に来るのさ。君を地獄送りにしにね。私はそれを狙ってる。だからーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー私の為に死ね、今ここで』

 

男に向けて、全方位から鈍い光が迸った。



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仮初めの決意、刃となりて






巨大な剣が振り上げられた瞬間、俺は全力で魔力を込め叫んだ。

 

「【ヴェーダスの炎衣】!」

「断命剣【冥想斬】!」

 

男の眼前に炎を生み出し、同時に男の背後からは妖夢の振るう霊力の刃が襲いくる。

 

「チィッ…」

 

男は跳んで炎を躱し、妖夢の刃を剣で払いのける。その隙に俺は炎を消し、掌をかざし魔力を込める。そのまま男の着地点に向け、

 

 

「…凍れぇ!」

 

掌から氷が放たれる。男の足元に氷の柱が発生し、男の下半身を封じ込めた。

 

「炎のみでは無かったか。だが、これしきの氷で動きを止めたつもりではあるまい?」

 

「当たり前だろ…!」

 

氷に瞬時にヒビが入っていく。それと同時に俺は大きく踏み込みーーそのまま大きく後ろに跳んだ。

 

「む…?」

 

男の頭上に人影が映る。手に持つ長刀を振りかぶり、

 

 

「はぁぁッ‼︎」

 

妖夢が大上段からの一撃を振り下ろした。衝撃で氷が砕け散り、勢いのまま地面に男を叩きつける。だが、妖夢の刃からは火花が散っていた。

 

「我が妖力より抜け出たか。なるほど、貴様は中々の強者の様だ」

男の剣に青い光が宿る。瞬時に距離を離した妖夢もまた、刀に霊力を込めていく。

 

「その力、私を止めるに足るものか…見せてみよ!」

 

男の剣が振り抜かれる。青い光が牙の形を成し、妖夢に襲いくる。だが妖夢は表情を変える事無く、刀を構えた。

 

「この剣に、切れないものは無い……人符【現世斬】!」

 

叫び、一歩踏み込んだ妖夢の姿はかき消えーー銀の剣閃が青い牙を切り裂き、男の背後へ切り抜けた。男の腕に線が走り、血が溢れていくーー

 

 

「…速さは私より上か。だが…」

 

腕から流れた血が、逆再生の様に戻っていく。すぐに男の腕は元通りになってしまった。

 

「お前も妖怪かよ…!」

 

「否。例え妖と言えど、ここまで早く傷の治癒は行えまい。私はー」

 

「はぁっ!」

 

男の背後から妖夢が再び斬りかかる。それを男は見向きもしなかった。

 

「え…?」

 

横薙ぎに振られた刀が男の背中を捉えーーそこで止まった。男が斬られる事も無ければ、今度は血が流れることも無い。

 

「軽いな。速さのみを求めた剣で私は倒れぬ。……故に今の貴様では私を止められん!」

男が剣を振り下ろす。辛うじて受け止めた妖夢が膝をつき、剣圧が離れた俺にまで届く。

 

「ちっ…マジの化け物じゃねぇかよ…」

 

「でも、ここを通す訳にはいきません…!」

 

「…そうか。だが、貴様等の目的は最早果たせぬよ」

 

「何…?どういう事だ⁉︎」

 

俺が問うと同時だった。地面が、微かに揺れているー?

その時、振動と共に、俺達の遥か上ーー白玉楼の位置から、黒い光が立ち昇った。

 

「あれは…!」

 

「…中々、思惑通りとはいかぬか」

 

咄嗟に妖夢は白玉楼に足を向け、しかしそれは男の剣によって阻まれる。

 

「私の目的は貴様等の足止め(・・・)のみ。既に魔術師(・・・)が上へと赴いている。手こずっている様だが、これ以上の邪魔はさせん…力を手に入れるまではな」

 

「くっ…煌さん!上へ!」

 

妖夢の言葉に俺は石段の上へ飛び上がりーー俺の眼前に男が作ったであろう薄青い壁が現れる。見れば、俺達のいる場所全体が同じもので覆われていた。

 

「邪魔すんな!」

 

壁に向かって刀を突き込み、だが壁は壊れない。炎を燃やし、更に突き入れ、

 

 

 

「無駄だ」

 

壁が、弾けた。青い光が俺の体を炎ごと弾き飛ばす。

 

「ちっ…」

 

地面すれすれでどうにか体勢を立て直す。だが再び飛び上がろうとした俺に向け、青い剣が薙ぎ払われた。

 

「うぐっ…!」

さっきまでより重い斬撃。受け止め切れず、膝をついてどうにか刀を支えるが、これでは反撃もままならない。

 

「貴様にあの壁を破る事は出来ぬ。仮に出来たとて、敵に刃を振るえぬ者に止めることができる筈があるまい」

 

「俺は…!」

「煌さん!」

 

妖夢が割って入ろうとしているのが見える。だが男の放つ光を捌くのに精一杯で、割り込める余裕が無いーー

 

「つまらん。貴様は特にだ。命の危機ですら刃を振り切れぬなら…此処で死ね」

 

 

 

俺の腹部に衝撃が走る。蹴り飛ばされたことを石段に叩きつけられ遅れて理解する。

 

「グッ…。」

 

俺は誰かを殺す為に刀を持ってはいない。けれどーー

 

「くっ…!」

 

「無駄だ。貴様では私を止められぬ」

 

妖夢が男を止めようと闘っている。だが男と正面から対峙し、まともに攻撃すら出来ていない。このままでは、いずれ。

 

「……決めなきゃ、ならないか」

 

カガチの言っていた言葉を思い出す。傷つけたく無いという信念を貫くか否かと。誰かを傷つけたくは無い。でも俺は、刀を持っている。それは、傷つけたく無いのに武器をとったのはーー

 

「きゃっ…!」

 

妖夢が、地面に倒れる。それを見て、俺は深く息を吸い、立ち上がった。

 

剣を振り上げていた男が振り向く。

 

「……まだ立つか。それとも先に死にたいか?」

 

「俺は、頼まれたんだ…」

 

乱雑にスペルカードを取り出す。カガチに渡された、やや黒みがかったスペルカード。

 

「俺は、紫に頼まれた。この世界を救ってくれってだから今、わけも分からず剣を持ってる」

 

「…それがどうした。今の貴様が剣を持ったところで、何の頼みも果たせはしない」

 

「そうだ。だから俺は、覚悟を決める。紫の為に、俺の意志を突き通す為にー」

 

 

 

 

「俺は頼みを果たす!たとえアンタを…敵を、殺してでも!

 

 

 

 

 

 

 

ーー現符【リアリゼーション】」

 

俺の体から、黒い魔力が噴出する。同時に俺につけられていた腕輪が、魔力と同化する様に黒く溶けていく。それらは刀に集まり、黒い大剣の形を成した。

剣を構える。同時に炎を燃やし、全身が炎に包まれる。

 

「行くぞ…。俺はまだ、死ねないんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

「グッ…クソが、ぁ…!」

 

白玉楼。桜の見下ろすそこで、1人の男が傷だらけで膝をついていた。その向かいにもう1人、黒い魔力に全身を包んだ無傷の男が立っている。

 

『ここまでだ。大人しく捕まってくれるかい?もちろんその杖は預かるけどね』

 

「ク、ハ…おいおい、今さら何言ってやがる。テメェ、どの道ぶっ殺す気だろうが」

身に纏うローブを震わせて笑う。その声音に傷を負った様子は微塵も無かった。

 

『まあね。今死ぬか後で死ぬかだけでも随分違うと思うけど?』

 

「どっちもお断りだな。賢者だの犬だのに、みすみす捕まってたまるかよ…!」

 

男が後ずさる。同時に身体がぼやけ、そのまま消えていくーーだが、それは途中で断念された。ぼやけた身体は元に戻り、男が幾度試そうと消える事は無く。

 

「な、に…?」

 

『無駄だよ。今僕は、君の姿を“具現化”させている。つまり、君は僕をどうにかしないと逃げる事は出来ない』

 

カガチが男に歩み寄る。能面のような無表情のまま、白い刀を振り上げる。

 

「おいおい…相変わらず無茶苦茶だなぁテメェは」

 

『ただ、このまま何かされても面倒だ。下でもまだ戦ってる様だし…死体でも賢者は処理しに来るだろうさ』

 

男は俯き、先程とは打って変わって沈黙した。だがカガチに見えない所で、その口元は笑みを浮かべていた。

 

 

『死ね、古の妖』

 

 

 

 

男の首が、音も無く切り離された。

 

 




Q.ちゃんと完結するんですか?
A. 失踪はしない筈。

Q. 文章量と質どうにかならないの?
A. 許して下さい何でも(ry


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目的

オラに文章力を分けてくれー!


男の身体と首が離れ、ゆっくりと崩れ落ちる。だが倒れる事はなく、地面に触れる前に黒い霧と化し霧散する。そして男のいた場所には、男の持っていた杖のみが残された。

 

 

『…逃げた?まぁ、杖だけでも確保すれば良いか…』

 

杖には、禍々しい目を象った何かがはめられている。恐らく、これがフランドールの能力(・・・・・・・・・)だろう。

 

『能力を奪う事の出来る杖…か』

ともあれこれを確保しておけば賢者も来る。私は杖に手を伸ばし、

 

 

 

 

 

 

 

突如杖から噴出した白い魔力が私の腕を貫いた。

 

 

『う…⁉︎』

 

咄嗟に飛び退いた私の前に、黒い霧が吹き荒れる。霧は杖を覆い隠し、そのまま空へ飛び上がりその姿を変えていく。

 

 

「ックク、何不用心に手ェ出してんだよ!あっさりオレが退いたせいで油断しちまったか?」

 

霧の中から現れた男は瞬時に杖を振りかぶり、私に飛びかかってくる。

 

『チッ…私を嵌めるとはね!』

 

前面に魔力を展開し、壁を作って距離をとる。だが黒い壁の中心を、白い光を帯びた杖が突き崩した。

突いた勢いのまま、白い光が放たれる。身体を捻って避けるが、腕を掠めた。すると掠めたところが僅かに崩れた(・・・)

 

 

『この、魔力…いや能力はー!』

 

「察しがいいな。そう、テメェの具現化能力は鬱陶しいけどよ…コイツさえあれば話は別だ。なんたって…テメェの天敵(・・)だもんなぁ、この能力の持ち主はよ!」

 

連続で光が荒れ狂う。少しずつ掠めながらも、私は魔力を練り上げる。

 

『調子に乗るもんじゃないよ……【月蝕】!』

 

空が黒く染まりゆく。練り上げた高密度の魔力で、前方を一息に圧し潰す様に叩きつけた。

手応えはあった。だが魔力の収まった所から黒い霧が吹き上がり、男の身体を再構成していく。

 

『私の天敵はもういない。居るならせいぜい、最下層の地獄だろうさ』

 

新たに魔力を展開する私を前に、男は堪える様な笑いを浮かべていた。

「あぁ、そうかもな…っと、悪りぃな、時間切れだ。テメェの相手はこんなもんでいいだろ」

 

『何…?』

 

「こっちも色々都合があんだよ。テメェからその桜の能力ぶん取るには俺じゃ力不足なんでな…次の異変に向けて、ここらで退かせて貰うぜ」

 

男の身体が霧散する。私が刀を振るうよりも速く、黒い霧は空へと舞った。

 

 

「1つ教えてやるよ。テメェらが俺達を逃せば逃すほど…賢者を憎む、テメェの天敵(オトモダチ)が……地獄から這い上がってくるかもしれねェぞ?」

 

 

 

霧も、男の気配も、完全に消え去って。私はしばし、立ち尽くしていた。

 

『地獄から、這い上がる…。下らない。死者が這い上がって来た所で何を出来る訳でも無い』

 

あんな言葉を気にかけている暇は無い。私はただ、気に入らないからアイツらを止めるだけだ。

 

『さて、あっちも加勢しないとね』

 

煌達はやはり苦戦しているようだ。2人を追って、私は長い石段を跳んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

「おおおッ!」

「……」

 

闇雲に刀を振るう。黒く染まった刃は、いつもより速く、重く振るう事が出来た。

だが、俺と男では元々の技量が違いすぎる。どれ程速く振るっても、男に一撃も入れられてはいない。

 

 

 

「無駄だ。少しばかり力が増した所で、貴様は私には勝てん」

 

「そうだろうよ…でも、俺しか居ない訳じゃねぇ!」

 

飛び退いた俺を追う男の真横に斬撃が突き刺さる。足を止めた男に向けて、更に斬撃が叩き込まれた。

 

 

 

「ええ…私も、まだ戦えます!」

 

 

刀を構える俺と妖夢に対し、男はゆっくりと剣を掲げた。その刀身に、青い光が宿っていく。

 

 

「…まだ立つか。ならばその思いに敬意を表し、我が全力で貴様らを斬り伏せるとしよう」

 

男の剣が暗い光を放つ。青く輝く切っ先が、俺と妖夢に向けられる。

それを見た俺と妖夢は同時に男へと突っ込んだ。

 

 

 

「それでも私は…負けません!【未来永劫斬】‼︎」

「死ぬわけにいくか…!【ブレイズリベリオン】!」

 

研ぎ澄まされた剣閃が、赤黒い炎が、放たれる。同時に男も、剣を振り下ろす。

 

 

 

「我が一閃……喰らうが良い!」

 

振り下ろされた剣と、俺達の斬撃が衝突する。

その、寸前。

 

 

 

 

 

 

 

「ックク、そこまでにして貰うぜ?テメェらに付き合う暇無くなっちまったからよ」

 

 

 

3つの剣が、見えない透明なナニカに阻まれた。そのままナニカに押し返される。

 

「きゃっ…!?」

「うお…!」

 

上空を見やる。そこにいたのは、黒いローブをまとった魔法使いの様な男だった。

 

「お前、紅魔館の時の…!」

 

「……何故邪魔をする?」

戦いを止められた男が、魔法使いに食ってかかる。言葉は普通だが、切っ先が今度は男に向けられていた。

 

 

「テメェに言ったのは足止めだけだろうが。それに時間ねぇっつってん……!チッ、もう来やがったか!」

 

弾かれたように男2人が後ろへ跳ぶ。同時に辺りの空が一瞬のうちに黒く染まった。

 

「煌さん!」

妖夢に腕を引かれて石段の上へ避難する。黒い空が急速に、文字通り落ちてきていた。

 

 

 

『ーー【月蝕】!』

 

 

石段が、空に押し潰されていく。そんな様子を半ば呆然と眺めていると、見知った人影が俺の隣に降り立った。

 

 

『間に合わなかったか…隙デカいなぁコレ』

 

「カガチ…何でここに…」

 

『戻って来ないからやっぱり苦戦してるんだろうなーって思ってさ。後はまぁ…あの黒ローブを追ってね』

 

そう言ってカガチは空を見上げた。そこには無傷のままの男2人が悠然と立っていた。

 

 

「随分早く来たもんだ…退くぞ。剣ぶん回すのはまたの機会にしとけや」

 

「……良いだろう。奴らは未だ、私の剣を受けきれまい」

 

男達の背後に黒い影のような空間が滲み出る。影はそのまま、男達を飲み込んでゆくーー

 

 

「ま、待てよ!お前ら、何でこんな事…!」

 

いきなり現れてわけの分からない事をして去っていく。そんな男を見て咄嗟に出た言葉だった。

 

 

「何で、か?そうだな…テメェらに分かりやすく言ってやるなら…世界征服(・・・・)、だよ」

 

「世界征服…?そんな事、今の幻想郷で出来るはずありません!」

 

 

「それはテメェの思い込みだろ?俺は出来ねぇ事はやんねェよ。最も俺と、俺の目的については…そこの亡霊もどきがよぉく知ってるだろうけどな!」

 

そう言い残して、2人は影の中に飲み込まれてしまった。残された俺と妖夢は、カガチに向き直った。

 

 

「カガチさん。貴方は、彼が何者か、彼の目的が何なのか…知ってるんですか?」

 

『…ああ。知ってるよ』

 

「じゃあアイツは、アイツらは一体何なんだよ!」

 

俺達の問いに、カガチはどこか気だるげに話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『彼は…キャスト。数百年前、この幻想郷が出来た時に、

 

 

 

 

 

 

 

 

…それを滅ぼそうとした妖怪だ』

 




Q.次回でやっと妖々夢終わりってマジ?
A.マジ。いつ終わるか作者自身分かりません。

Q.原作キャラの見せ場は?
A.全員は無理だけどある程度あるから出てくるまで待って。


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幻想の宴

ま だ 妖 々 夢
あ、短いです!


「おい霊夢!もっと酒無いのか!?」

「アンタらが飲みすぎなのよ!ロクに賽銭も入れない癖にこういう時だけ入り浸って!」

「お姉様ー!私もお酒飲みたいー!」

「貴女にはまだ早いわ、私みたいなレディに相応し「お嬢様、それはジュースです」オイ咲夜ァ!!」

 

異変から数日経った博麗神社。そこで今日、解決を祝した宴会が開かれていた。霊夢や魔理沙達は勿論、妖夢達異変の当事者も参加しているが、ここではそれが普通なんだとか。

で、宴会という事は当然酒が出るわけで。ここでの飲酒ルールは知らないが、一応未成年という事で俺と昏は緑茶を貰っていた。その昏は宴会が始まってすぐ魔理沙達に混ざって行った為、酒を飲まされていないか不安ではあるのだが。

何となく混ざる気になれなかった俺は、宴会の騒ぎから少し離れた所で1人ぼんやり茶を飲んでいた。

 

『寂しいねぇ、何ぼっちで飲んでんのさ?せっかくの宴会だよ?』

俺の所にカガチが近づいてくる。酒が入っているのか瓶を丸々1本抱えている。

 

「良いだろ別に…って、その髪どうしたんだよ」

 

俺の隣に腰掛けたカガチの髪は何故か真っ赤に染まって逆立っていた。

 

『ああこれ?暇だったから染めたりしたんだけど…やっぱ普通が落ち着くねぇ』

 

カガチが軽く髪に手をかざすと、ふっと一瞬で元の黒髪に戻っていった。

 

「何でもありだなその能力…」

 

『そりゃ“具現化”だからね。ある程度は思うままさ。君の腕輪の形とかも変えれるよ?』

 

すっと指を指すと、俺の腕輪が溶けて形を変えていく。様々な形を取った後、再び元の形へと戻る。

 

「この腕輪、いい加減外してくれよ。異変の時、確かに俺は炎を使えたんだ」

 

『駄目だよ。アレはあくまで一時的だろう?人間命の危機になったら何でもいけるものさ。そうじゃなくて、もっと平常心を保って能力を使える様にならなきゃ。でなきゃ、いつかその炎に呑まれるよ?』

 

「…知ったような口ぶりだな」

 

『実際に知ってるからね。異変の後、話しただろう?例の妖怪の事』

カガチは至極つまらなそうに瓶を傾け中の液体を飲んでいく。行儀が悪いな。

 

「ああ、何だっけ、確かー」

 

『キャストーー幻想郷の成立を是とせず、叛逆をした妖怪だ。幻想郷の成り立ちは知ってるだろう?』

 

「ああ。確か、外の世界で忘れられたものの楽園として…だったっけか?」

 

『そう、ここは忘れられたものが結界で隔離された世界だ。けど中には、忘れられる事を否定する妖怪だって当然いた。彼は幻想郷が出来た直後、それを覆う結界を内側から破壊しようとした。“人間が忘れた事でこんな所に隔離されるのなら、自分達の存在を人間に知らしめる”と言う理由を付けて、幾らかの妖怪を味方につけてね』

 

「でも結局それは…」

 

『失敗に終わった。賢者を始めとする力の強い妖怪達の手によってね。その時に、彼は自分の能力を暴走させてしまった。

彼の能力は“映し出す程度の能力”。それが暴走した結果、幻想郷各地に彼の映したものが重なり、大きな“歪み”が出来る程の惨事が起きた。その結果、彼は幻想郷から追放されーー今再び舞い戻り、恐らくはまた叛逆しようとしているんだろう』

 

「でも、それなら何で最初に紅魔館に来たんだ?結界の破壊とか言うのが目当てなら直ぐにでもやればいいのに…」

 

あいつは何故か紅魔館を訪れ、その結果フランドールが暴走してしまい、その能力も奪われてしまった。

 

『彼の能力は、いわゆる催眠術なんかにも応用ができる。フランドールの様な、不安定で閉じこもっている子なんかにはそれがよく効くんだろうさ。

ところで、私も質問なんだけどさ』

 

「ん?」

 

 

『君は…何で幻想郷に来たんだい?』

 

「あ?それは…」

 

『賢者に頼まれた事は知ってる。私が聞きたいのは、何でその頼みを引き受けたかだ。君にとってはただの与太話でしか無かったろうに』

 

確かにカガチの言っていることは事実だ。普通なら、いきなり別の世界へ来てくれなんて信じる方が難しい。俺も、最初から信じていた訳ではない。ただー

 

 

「あいつに嘘をついてる様な様子も無かったし…何よりさ、何となく、俺の母親と似てる気がすんだよ」

 

『…は?』

 

「見た目じゃないぞ、ただ何というか…雰囲気?とかが似てたんだよ」

 

 

『……今の答えで君が相当お人好しなのは分かったよ。後まぁ…うん、その君の母親はね、多分人生の半分以上損してるよ』

 

「はぁ?」

 

『だってアレに雰囲気が似てるって…相当胡散臭いって事でしょ?いやうん、さっさと外の世界に帰ってその雰囲気どうにかさせた方が良さそうだ』

 

からからと笑って、カガチはすっかり空になった瓶を手に立ち上がった。それを追う様に俺も立ち上がる。

 

「だから帰る為に色々やってんだろうが!」

 

『分かってる分かってるよ、ほら妖夢が呼んでるよ?そろそろ宴会もお開きの様だしね』

 

指さした方向を見ると、幽々子と並んで妖夢と昏が手を振っていた。

 

「煌さーん、カガチさーん、置いてっちゃいますよー!」

 

「分かった今行く!」

 

『私は後から行くよ、先帰っといて』

 

「はいはい、分かったよ」

 

妖夢達を追って飛び上がる。ふと神社を振り返ると、宴の後ですっかり寂れてしまった境内で、カガチと咲夜が何か話しをしていた。内容は聞こえなかったが、気にする事でも無いと思い、俺はそのまま白玉楼へと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

▼▼▼

 

カガチは静まりかえった境内で、ぼんやりと境内を眺めていた。そこに、背後の影からそっと人影が現れた。

 

『おや、メイドさんじゃないか。何か用かい?』

 

困惑した様な顔で、咲夜はカガチの前へ歩み出る。

 

「ええ、少し…さっきの話を聞かせてもらってのですが…まだ、煌に話していない事がありますよね?」

 

『…話していない事は色々あるけどね。特に話す必要も無いしね。ああ、でも君は別なのかな?』

 

「貴方の話していた男…私は紅魔館で一度見たきりですが、あの男の妖力の感じ、アレはお嬢様達と同じ…」

 

 

『…そうだよ、彼の種族は吸血鬼(・・・)だ。フランドールを狙ったのは、多分同族を仲間に引き込みたかったから…と言うのは、私の想像だけど』

 

「そうですか…では、もう一つ。あの男とは紅魔館と白玉楼、2回交戦し逃げられたと魔理沙達から聞きました。ですが…もしや貴方は、わざと手を抜いて逃がしている(・・・・・・・・・・・・・・)のでは無いですか?」

 

『…へえ?』

 

「一度戦って分かりました。貴方からは、膨大な魔力を感じます。それこそ、妖怪の賢者に負けず劣らずの量の魔力が。それに加え、具現化するというその能力…貴方が全力を出せば、あの男を仕留めるのは容易では無いかと、そう思うのです」

 

『…過大評価だよ。あの男だって全力を出せば相当強い。それに仮に私が手を抜いているとしても、君には関係ない事だよ』

 

「いいえ、あの男は紅魔館を襲い、妹様を傷つけた。それは私の、ひいてはお嬢様の敵です。また害をなす様な事があれば…

その時は、私があの男を仕留めます。お嬢様達の為に、全てをかけて」

 

断言する咲夜の目は、真っ直ぐだった。それを見て、カガチは顔を背けてふわりと浮き上がった。

 

 

『その目、私は少し苦手だよ…。まぁ、君だって弱い訳じゃない。時間を止めるその能力も合わせればかなりのものだ。その忠誠心もね。…私には無いものだ、羨ましいよ』

 

そのままカガチは飛び去った。咲夜も、少しの間空を眺めた後、その姿を消した。

 

 

 

誰も居なくなった境内を、月明かりだけが照らしていた。




【次章予告】
2つの異変を解決するが、幻想郷を襲う妖怪達の目的は掴めないまま。
そんな煌達の前に現れたのは、各地に現れるという“もう1人の自分”、そして信仰を失った“神”だった。

『このままだと、彼女の存在は消滅してしまうよ』

「煌に出来たなら、オレにだってできるさ!」

「博麗の巫女をなめんじゃないわよ!」

「私は…いえ、私達はお嬢様を信じていますから」

「そろそろ死ねや、亡霊風情が」



『君の答え次第では、私は幻想郷を、君達を殺さなければならないんだ。




ーーなぁ、八雲紫』


【第3章 離魂異変 〜ヒトが生む怪物〜】
来年公開(大嘘)


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