フレームアークスガール (ぐっしー0094)
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はじめまして。ひさしぶり。
フレームアームズレプリカ実装記念
スティ子がPSO2でキャッキャウフフするらしいっすよ。
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6月にしては珍しく、晴天といっていい空を1機のドローンが駆けて行く。白を基調としたボディに陽光をキラリと反射させながら、モノレールの高架下をフライパスした。
眼下の広場には、機械的な手段を用いずに芝生を管理する方法として導入されたヤギたちが草をはんでいる。都会の真っ只中にヤギと言うのもミスマッチと言われるかも知れないが、これはこれでなかなか良いもの。と、訪れた人たちには好評らしいから塞翁が馬である。
東京都、立川市。『FA社』のロゴマークを背に負うそのドローンは、どこか名残惜しげにヤギたちの上を飛び去っていった。
「あああああづううううういいいいいいい……」
同時刻。同市内。某アパート。今にも頭の先から溶解してしまいそうな声で、少女、源内あおは呻いていた。
まだ夏本番というには早いが、いかんせん湿気がいけない。洗濯物は乾かないし、ちょっと油断すると水回りはカビだらけになるし、何よりジメジメしたこの陽気が、何事にたいしてのやる気をも奪っていくような気がするのだ。ほんのちょっとコンビニへ歩いていくだけで、じんわりと気持ち悪いあせをかいてしまう。
「いっそ水中で生活したいよぉー。」
エアコンをガンガンに聞かせた部屋に帰ったとしても、まだ汗で髪がべとついている。なんともなんとも不愉快な季節である。
「私達の新型は、水中用になるようですよ。あお」
お帰りなさい。の挨拶とともに、あおが突っ伏している机に飛び乗ってくる影が一つ。全長15センチの、感情をもって動く人形。フレームアームズガール。轟雷である。クリーム色の髪とスカイブルーの瞳の少女は、偶然と偶然と偶然が重なってあおと出会い、今はあおのパートナーとして一緒に生活している。
「そりゃー涼しそうで良いですねーー」
興味ない。という雰囲気を全身で表しながらあおは呟く。
「もうすぐこの季節も終わりますよ。お水持ってきますね。あお。」
「ん。ありがと。」
轟雷が机を飛び降りると同時に、ドザッ、と音がした。
「んー?轟雷大丈夫?」
「いえ、いまの音は私じゃないですよ。あお。」
とすると。と、あおは玄関へ向かってゆるりと歩む。なんとなく先程の音にはききおぼえがあった。自分と轟雷が出会ったときも、たしかこの音だった。またあの蒸し暑い空気を少しでも感じないといけないということに、内心げんなりとしつつも、あおは玄関の扉を開けた。
果たして音の正体は、あおが感じた懐かしさを一層助長することとなった。
「ひゃー、あつ~っ、ってこれ、FA社から?」
暑さから逃げるように部屋に戻ったあおは、おそらくドローンが配達したであろう段ボールを机において
しげしげと眺める。それには「FA社」の、つまり轟雷の実家のロゴがでかでかと印刷されていた。
轟雷といえば、段ボールを見上げながら小首をかしげている。
「私宛ての何かでしょうか?新規パーツ、バトルプログラムとか。」
「だったらまたお金もらえるじゃない!早速開けよー!」
あおが「お金」と言ったとき、どこからともなく「チャリーン」という効果音が聞こえたような気がした轟雷であった。
梱包材をかき分けると、純白の箱が顔をのぞかせる。箱の上面中央には、飛行機の尾翼を思わせるエンブレムが印刷されていた。あおも、轟雷も、このエンブレムには見覚えがある。いや、見覚えなどと淡白な言葉では尽くせない、多くの思い出が、思い入れがあった。
「これ、スティレットですよ。あお!」
轟雷が驚きとうれしさの入り混じった声とともに、あおを見上げた。
「ホントだ!スティ子が帰ってから数か月とはいえ、なんかなつかしいねぇ~」
FA:Gスティレット。彼女との出会いは今でも鮮烈に思い出せる。突然轟雷に切りかかってきたっけか。
「いきなりドバババーって銃撃ってきたときはびっくりしたよね。」
「でも、今回はなんだかおとなしいですね。」
「寝てるのかもね。とりあえずあけてみよ。」
玻璃を除くように、そっと箱を開けると、見慣れたブルーのツインテールが目に映った。
スティレットは四肢をぴたりと揃え、スリープモードで箱に収まっていた。
あおは、スティレットの素体を傷つけないように気を付けながら持ち上げると、胸にある起動スイッチに指をかけた。
軽快な電子音ののち、スティレットの目が開かれる。無事に機動できたらしい。四肢に力が入り、動こうとしているのがあおの手に感じられた。
「久しぶり。スティ子。今回はどうしたの?」
あおの問いかけに、スティレットはしかしすぐには答えなかった。あおの手のひらに立って、四肢の稼働を確認するように動かし、そののち、あおを見上げた。
「……?」
あおは、なにかいつものスティレットと違う。と思った。自分が一緒に過ごした彼女は、もっとなんというか、勢いがあったように思う。
「スティレット?どうかしましたか?体に異常があるのですか?」
轟雷の問いにも、いつもなら「そんなわけないでしょアホ轟雷!」と返すような彼女だが、今回はそれもなく、あおと轟雷の顔を交互に見やっている。数秒間それを繰り返したのち、彼女は初めて口を開いた。
「……起動完了、異常なし。マスター「源内あお」視認。登録完了。」
「え……?スティ子?」
あおは頭上に?を大量に浮かべている。対して轟雷は、何かに気づいた様子だ。
「あお、「この」スティレットはたぶん、今初めて起動したんですよ。」
「へ?どういうこと?」
轟雷には、あおの頭上の?が倍になったように感じられた。
「どうやら混乱してるみたいね。『あほっ子』とは聞いていたけど。その通りらしいわ。」
「なんかディスられた!?でも懐かしい!?」
水色の、足元まで届きそうなツインテールの少女は、どこか蔑むような、しかしいたずらっぽい視線であおを見やった。
「順を追って説明するわ。私はスティレットの先行量産型よ。私は、あなたたちと過ごした方のスティレット……ややこしいわね。『オリジナル』とでもしましょうか。彼女のデータを元に生まれたのよ。量産型といっても、このまま売り出されるわけじゃなくて、まだ最終調整があるのだけどね。」
「ええっと、とりあえず、あなたは私が知ってるスティ子じゃないってことなのね。」
あおは、「考える人」のポーズで言った。3行以上のメールをさえ読みたくないあおにとっては、なかなか難しい話だったのだろう。
「その認識で構わないわ。私にとっても、あなたたちはデータベースにあるだけの存在だったもの。」
「最終調整。とは何をやるのですか?スティレット。」
「基本的には今のあなたたちと変わらないわ。マスターと一緒に生活して、大丈夫かどうか確かめるのよ。要するに製品のテストってこと。」
なるほど。とあおがうなずく。思えば轟雷もテストのために自分と一緒に生活してしているのだ。最近はバトルの頻度こそ減ったが、ときどき迅雷やアーキテクトも遊びに来ている。あれもテストの一環なのかも知れない。
「あ、でも何でまたあたしのところなの?轟雷が居るから?」
「それも理由の一つかも知れないわね。」
「私ですか?」
「オリジナル……今は本社のラボにいるのだけれど、彼女が強く推薦したのよ。自分が会いに行けなくて寂し……」
スティレットがそこまで言ったところで、彼女が入っていた箱がガタガタと振動しだした。
「うわわ、何!?爆弾!?」
数秒後、振動がピタリと止み、箱から「ハコ」が起き上がってきた。
充電器とプラグをくっつけて擬人化したような見た目のそれは「充電くん」と呼ばれるFAガールたちのオプションだ。それ自体一定の自律機動ができ、コードを接続することでガールに充電(KENZEN)できる。バトルのときは装甲パーツのラックになったりと何かと便利なやつだ。
彼(?)は箱から出てくると、トテトテとあおのスマホまで歩いていき、自分のコードをAVポートに接続した。
「……よし。接続完了。あお!轟雷!聞こえてる?」
「スティレットですか!?」
スマホから聞こえてきたのは、目に前のスティレットと同じ声。しかし轟雷にはなぜかわかった。このスティレットは「あの」スティレットだと。自分たちと一緒に一つ屋根のしたで過ごした彼女だと。
「久しぶりね。二人とも相変わらずあほっ子?」
「挨拶がてらディスられた。あたしまだ何も言ってないのに!」
「まあいいわ。それよりそっちのアタシ!何か言わなくても良いこと言ってないでしょうね!?」
「大丈夫。企業機密をしゃべったりしないわ。」
「そうじゃなくて!」
こちらがわで話すスティレットはクスクス笑いながら、オリジナルの攻撃をのらりくらりかわしていく。あおはなぜか、電話の向こうのスティレットの姿が見えるようだった。きっと、少しずつイライラし始めている頃だろう。
「スティ子は今何してるの?またバトル?」
「ふん。最近はデータ解析ばっかりよ。体がなまっちゃうわ!ラボのやつらったら、たった1年分のデータにいつまでかかってんかしら。」
「まーまー。あたしだって技術科の宿題とか仕上げるにに一月かかったし」
「あんたと一緒にしないでよあほっ子!」
流石、1年間突っ込み役をやっていただけはある。どんなボケに対してもキレッキレだ。
「そういえば、今スティレットのテスト先にうちを推薦してた。って話を聞いてたんだけど「ハアアアーーーッ!?」」
あおの話を遮ってスティレットの大声が響く。
「だっ、そっ、そんなわけっ、あ、あ、あの。」
「大丈夫ですか?スティレット。」
明らかにあわてふためいているスティレットに、轟雷が気遣いの言葉をなげる。
「そっ、そうよ!アタシたちと一緒に過ごしたあおのとこなら、きっとデータの取り方なんかも分かってるし、カラーボックス(部屋)だってあるから安全だし、バトルのセッティングだってしやすいからっ。だから推薦したのよっ!そっ、それだけなんだからぁっ!‼」
あおには、心なしか自分のスマホが赤くなっているように見えた。
「ねぇスティ子。なんかこっちにいるスティ子ってちょっと大人しくない?」
「ふん。知らないわよ!アタシのデータをベースに、アタシと交流した人たちのデータを混ぜて調整したらそうなったんだって!」
「なるほどーつまりスティ子の妹ちゃんなんだー」
「いえ。どちらかと言うと、娘、かしら。ね、お母さん」
『お母さん』と呼ばれたスティレットは「にゃあっ!?」とすっとんきょうな声をあげた。
「でもそうするとお父さんは誰でしょうか。」
「んー。」
思案顔で数秒。スティレットはゆらりと轟雷に歩みより、抱きついた。
「お父さん(はぁと」
あおは、電話の向こうから「がちーん」という効果音を確かに聞いた。
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「それで、アタシは何をすれば良いの?お金どのくらい貰えるの?」
あおは淀みない目でスティレットに訊いた。オリジナルスティレットと言えば、先程から何かぶつぶつと電話の向こうで呟いている。
「さっきも言ったけど、基本的にはなにもしない。あおの普段の生活に。私がどう関わるかを確かめるのよ。でもバトルもやるわ。」
「待ってました!なんなら今やっちゃう?」
バトル→謝礼と変換されるあおは、目を輝かせている。
「いいえ。私は通常のバトルは出来ないのよ。」
「ええー!じゃあ謝礼はー!」
「あお。焦らないでください。「通常の」ということは、何か特殊なシステムを使ったりするのでしょうか。」
「ご明察よ。それに、これは轟雷。あなたにも関わってくることだわ。」
そういうとスティレットは、自分の箱から1枚のディスクを取りだし、あおに渡した。
「これをあなたのPCにインストールしてほしいの。」
「何これ?なんかのゲーム?」
「そうよ。そして、今回のバトルはここで行うわ。」
手渡されたディスクには『PSO2』とタイトルが印字されていた。
あおはこのゲームに心当たりがあった。以前武希子がやっているのを見たことがあった。
「あ。これぷそつー?」
「あら。知ってるの。ちょっと意外ね。」
「前に友達がやっててねー。でもこれってネットゲームでしょ?どうやってバトルするの?」
「私が接続するのよ。」
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「つまり。普段は人間が操作するはずのキャラクターを、スティレットが代わりに操るということなのですね。」
「そうよ。3Dフィールドが使えない環境下でもバトルを楽しんでもらいたいというのが目的ね。」
「へー。いろんなこと考えてんだねー。」
「私たちが初めてって訳じゃないわ。何年か前に、ネット上でフィギュアを闘わせるというコンセプトのゲームは有ったのよ。当時は環境が追い付かず、そのフィギュアシリーズ自体アニメ放送後は下火になっちゃったから知名度が上がらなかっただけ。」
「そのシリーズとは、もしかしてBSシリーズですか?」
「そうよ。私たちのデザイナーさんも、キャラクターに関わっているわね。何か縁があるのよ。で、そのコンセプト継承して、自律思考する私たちが、ネット上でマスターの指示のもと闘うというゲームを開発中なの。私はそのシステムのテストもやることになっているのよ。」
「でも、なぜpso2なのですか?」
「ちょうど運営会社からFA社にコラボの話が有ったのよ。だったら自社で環境作るよりも便乗した法が安いってことね。」
「なるほどねー。あ。インストールできたよスティちゃん。」
「スティちゃん?」
スティレットは不思議そうな顔であおを見上げる。オリジナルほどではないが、自分の名は「カッコいい」方だと自分でも思っていたので、少し意外だった。
「どっちもスティ子だと呼びづらいし、あなたはスティ子の娘なんでしょ。じゃあスティちゃん!」
「私は普通にスティレットと呼びます。どこかあちらのスティレットとは違う雰囲気がするので、今のところ混同しないでしょう。」
「……しょうがないわね。いいわ。よろしく。あお。轟雷。」
あきれたように言うスティレット。もといスティちゃんはしかし頬が少し赤かったと、後に轟雷は述懐している。
「うええぇ!何これ!?」
ふとPCをみたあおが、驚きとも怒りとも取れる声を張り上げた。
「どうしました。あお?」
「アップデートに6時間掛かるってどういう言うことー!?」
「ディスク版だから、初期のバージョンだったのね。これは、ログインは明日かしら。」
あおたちのプロアークスへの道は遠い。
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アークスたちの妄想は止まらない(DF【幸子】談)
妄想が止まらなかった結果生まれました。ぷそつーで動いてるスティレット見たときは感動しました。30億メセタは無駄ではなかった!
見切り発車ですが、なんとか続けばと思います。よろしく拙作をご指導ください。実際10鯖でスティレット作って活動してます。
では。ありがとうございました。
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