オーバーロード 〜幻想郷を愛する妖怪の賢者〜 (村ショウ)
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プロローグ
第一話 ユグドラシルの終わり


この小説は作者の思いつきです。

出来るだけ多くの人が生存できる様なルートを辿りたいと思います。(目標)



 DMMORPG 『YGGDRASIL』

 

 西暦2126年、日本のあるメーカーによって開発されてサービスを開始したユグドラシルは、体感型ゲームとしての完成度も高く人々を魅了し、世界中で人気を博していた。 

 

 僕もユグドラシルに魅了された者の一人である。

 

 いや、『一人である』ではなく、あった(・・・)と言うべきだろう…。

 そう、このゲームは今日の24時をもってサービスを終了してしまうのだ。

 

 僕はゲームの最後がこれほど、虚しいものだとは思っていなかった。

 

 現実世界の人間を信じられない僕にとって、ここは『掛け替えのない場所』であったからなのかもしれない。

 

 ただ、僕は貧困層ではない。人が聞けば嫌味としか思えない話ではあるが、貧困層では無いのは確かだ。

 いや、その逆と言えるだろう。僕は巨大複合企業の幹部の御曹司であり、完全環境都市「アーコロジー」の中で温々と生きている。

 貧困層の人々から見れば金持ちのボンボンであり、何不自由なく暮らしている様に見えるだろう。

 

 いや、実際にそうである。

 

 ブラック企業で働かなくても生きていける。

 

 人工肺を使わなくても、アーコロジーの中なら呼吸が出来る。

 

 ゲームの世界でなくても楽して生きていける環境が揃っていた。望んだ物は金で買える。権力で手に入る。

 

 そう、物は手に入る。

 

 しかし、者。つまりは人、信頼できる人間は中々いないものだ。

 親友や友と言われる者を僕は持っていない。 

 

 周りの人間は権力目当ての者ばかり…。

 

 全員が権力目当てではないだろう…どこかに僕みたいに騙し合いのこの世界(・・・・)に呆れている人も居るだろう。

 

 たが僕の前にはそんな人間は現れなかった。

 

 友もいなかった。

 

 同年代の友は僕にはいない。

 幼少期は殆ど、同年代の子が周りにいなかったのも、理由の一つかも知れない。

 

 今さら、同年代の人と会ったとしても、知恵がついて選民意識を持って、権力を振るうだけの者が殆どだろう。

 

 

「紫さん、もうすぐ終わってしまいますね…」

 

 魔王の様な雰囲気を出す骸骨は、悲しい顔の感情アイコンを出す。

 

「そうですね…」

 

 そう、彼は現実世界では出会えなかった掛け替えのない友である。

 

 いや、彼だけではない…。

 

 今は僕と彼しかここにはいないが、ここには彼と彼のギルドメンバー達がいた。

 

 彼ら、41人は殆どが純粋な人達だった。

 

純粋に自然に焦がれ、ナザリック地下大墳墓の中に森と空を作った者。

 

子供の様に純粋にいたずらをする、腐れゴーレムクラフター

 

悪に憧れ、悪を探求し世界征服をしようと模索していた者

 

誰かが困っていたら当たり前のように助ける正義の味方

 

メイド服は決戦兵器と豪語するメイド服好き

 

エロイズマイライフを豪語する究極のエロを求めた(バードマン)

 

 他にも色んなメンバーがいた。

 今でも、『おい、最後の二人は可笑しいだろ』なんて思わず突っ込んでしまう。それ程、楽しかったのだ。

 

 周りは利用しようとする者ばかりだったからこそ、目に付く彼らの純粋さ。そりゃ人によっては汚い部分もあるけど、彼らは権力の事を明かさなくても友になってくれた。

 

 だからこそ、自分はギルド︰アインズ・ウール・ゴウンが好きだ。

 

 だが、自分はギルド︰アインズ・ウール・ゴウンに入っていない。それはギルドの加入条件に起因する。

 

 ギルド:アインズ・ウール・ゴウンの加入条件は、異形種かつ社会人である事。

 

 妖怪は異形種であるが、当時学生だったため入れなかったのである。

 現在は親の仕事を少しずつ継ぎ、社会人となっているのだが、訳あって入っていない。

 

 

 そんな僕は、利用しようとする者ばかりを見てばっかりだった環境のせいか、相手がどんな人間かが分かってしまう。

 だからこそ、ナザリックにいる人達が純粋だと思ってしまうのかもしれない。

 

 汚い人間の駆け引きの中にいたお陰で、利用しようとする人間の思考なら心を読めると言っても過言ではないレベルで腹の中が分かる。

 だが、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーは読めなかった。今なら、彼らが僕を利用しようとしていなかったからだと分かるが、当時は不思議な感覚だった。

 

 因みに、ナザリックとの共同作戦を行った時はこの腹の中を探る力を生かし、ぷにっと萌えさんと参謀として共に戦った。今まで、嫌気がさす様な能力が人の役に立つとは思わなかった僕はこの時、喜びを感じた。

 

 そんなこんなで、社会人となった今もゲームを続けて、アインズ・ウール・ゴウンには入っていないものの同盟ギルド員として出入りしている。

 

「モモンガさん、僕はそろそろ幻想郷に戻ります。最後は幻想郷で過ごしたいですから…。将軍(ジェネラル)をもってますし、後で伝言(メッセージ)を繋いで世界の終わりみたいなRP(ロールプレイ)しません?」

 

 将軍(ジェネラル)を持っているので、長時間の伝言(メッセージ)が使える僕は提案した。

 

「いいですね!やりましょう!」

 

 モモンガさんも乗る気のようだ。

 

「それじゃあ、行ってきます」

 

 境界転移の指輪(リング・オブ・スキマ)を使用すると、課金して導入した転移門に近い自作エフェクトの『スキマエフェクト』が発動し、幻想郷に繋がる。

 

 

 

 

 

 ー ギルド:幻想郷 ー

 

 鮮やかな緑と青の世界が目の前に広がる。

 

 幻想郷…それは100年以上前に発売されたゲームに登場する場所の名前。

 

 なぜ、そんな昔のゲームを知っているのか?

 

 それは、ただの偶然である。

 

 厳密に言うと『東方Project』と検索して、たまたまレトロゲームのサイトに繋がったからである。

 

 何故、『東方Project』と検索したかと言うと『東京方面再開発Project』と検索窓に入力したのだが、キーボードに手が当たり『東方Project』という単語になってしまったのだ。

 

 その事からレトロゲームの東方Projectを知った。

 

 だが、レトロゲームな上に某ドラゴンでクエスト的なスライムが人気のRPGゲームとは違って、今の時代、東方を知っている人も少なく、ネットのログに残される創作物のみでしか知ることはできかった。

 

 だが、そんな少ない情報でも僕は魅了されていった。それが出会いのきっかけだった。

 

 

 

 そんなある日、ネットを見ているとページ内の広告から自由度の高いDMMORPG『ユグドラシル』を知った。

 

 なんと、そのゲームは別売のツールを使えば、好きなキャラを作り、プレイできるというものであった。

 更に、NPCも自分で好きな見た目で作ることが出来ると言う事も知り、僕は歓喜した。

 

 100年前に流行ったMMDという物のモデルデータも入手している。

 

 もう、お分かりだろう。

 

 そう、幻想郷がDMMORPGで再現出来るのだ。

 

 最初は幻想郷が再現出来ると意気込んで始めたのだが…。

 問題があった。全く東方を知っている人がいないと言う問題が。

 

 ゲーム設定時のプレイヤーキャラの作成については、幻想郷を創成に関係しているであろう『八雲 紫』にした。

 

 最初はお金をため、レベリングをして、『ギルド:幻想郷』を立てた。

 

 ゲーム始めて少し経つと『異形種狩り』という物が流行った。

 その時にたっち・みーさんとモモンガさんにあったのだが、今回はその話は割愛させて頂く。

 ギルドを立てたのは良いが、ギルドメンバーは自分一人だけという寂しい状況だった。

 

 先程も言ったように、全くと言っていいほどに東方を知っているものがおらず、参加者がいないのだ。

 

 参加条件は東方Projectを知っていることだけである。

 

 なのに、一人もギルドメンバーは入らなかった。

 

 たが、諦めずに一人でイベント攻略やレベリングや課金等によって、少しずつギルドを大きくしていった。

 

 遂に、レベリングの甲斐あってかレベル 100に到達する事ができた。RP(ロールプレイング)に特化しながらも安定的な強さを残せたことは幸いである。

 

 そんなある日、あるイベントをクリアしたのだが…。

 

 ドロップしてしまったアイテムが意外だった。

 

世界級(ワールドアイテム)永劫の蛇の腕輪(ウロボロス)

 

 持っていることがバレたら、やばく無いか…。

 

 狙われまくるのではないか…。

 

 早く使ってしまうのがいいのか…使わずにワールドアイテム対策として持っているのがいいのか…。

 

 あの時は 迷いに迷った。

 

 結局、モモンガさん達に話して、2つ目のワールドアイテムを手に入れない限りは、余程のことが無いと使わないことに決した。

 

 レアアイテム収集家のモモンガさんは羨ましがっていたが…。

 

 

 しかし、この話はそれで終わらなかった。

 

 また別のイベントであるアイテムが手に入ってしまった。

 

 これ、また世界級アイテム。

 

世界級『支配者の扇子』

 

 コレの性能が運営が狂ってると言われる時の一例に挙げられる。

 

 扇子は昔、支配階級がメモ代わりに使っていたりするものでもある。

 この扇子はNPCの作成を、半無限にできるというものだ。

 扇子にまるで書き込むようにデータを入れることで、NPCが作成される。

 

 この時、僕はある事に気付く。

 

 これ、幻想郷作れんじゃね?

 

 さらに、永劫の蛇の腕輪(ウロボロス)がある。

 となれば、早速永劫の蛇の腕輪(ウロボロス)を使い、ある事を運営にお願いする。

 

 それは10個目の世界の生成

 

 ユグドラシルには世界が9つあり、一つあたりの大きさは東京2つ~3つ分程度もある。

 更に、願いには新たに生成された世界はすべてをギルド:幻想郷の拠点とすると言う条件を込めて。

 

 運営は最初は渋ったが、新サーバ代になる謎の寄付と「世界級アイテムは世界と同格の力があるんじゃないか?」というリアル交渉術を使い了承させた。

 

 東京1つ分より少し小さい程度の世界(約2000平方キロメートル)を手に入れることに成功した。

 

 それに加えて、支配者の扇子を使いNPC(東方キャラ)を生成した。

 

 支配者の扇子によるNPC作成には、幾つかの条件があるが、それをなんとかクリアし、手に入れた世界に建築物を立てたりするなど、弛まぬ努力と課金などする事により複数体のLv 100のNPCの作成に成功した。

 

 そして、その姿から『孤独の女王(ボッチクイーン)』やら『一人集団(ひとりギルド)』なんて言われていた。

 

 この時にはもう社会人になっていて、ギルド︰アインズ・ウール・ゴウンに入れるのだが、10個目の世界は幻想郷のギルド拠点であるため、ギルドの移動は難しかった…。

 

 ちなみに、この時から支配者の扇子の使用条件の一つに将軍(ジェネラル)最大(lv.15)まで取る必要があり、魔法職としては中途半端になっていた。

 しかし、独自AIのNPCとぷにっと萌えさんと共に考えたNPCを戦術的に配置するプレイヤースキルにより補っていた為、一人でも十分戦えた。

 

 更に、幻想郷に転移するには既定のルートを辿るか、ワールドアイテムを持って転移するしかないため、一人でもギルドを守ることが可能だった事もアインズ・ウール・ゴウンに入らなかった理由の一つだ。

 

 うちのギルドでは、ギルド:アインズ・ウール・ゴウンの様に1500人を撃退する事は不可能に近い。

 たが、さっきの条件によりワールドアイテムを持って侵入か、正規ルートでの侵入でしか入れない。

 正規ルートは一度に多くても数百人程度しか同時に入れず、一般的なプレイヤーの思考としてはワールドアイテムを使っての侵入は論外である。

 100人程度のギルド単位での侵入はあったが正規ルートでの侵入のため、大量の罠とNPCにより撃退した。

 

 

 それからNPC作成を幾度となく繰り返し

 

 

 

そして、幻想郷(楽園)が誕生した

 

 

 

 

 

 過去について回想をしている内に、ユグドラシルが終わる数分前になっていた。

 

 ユグドラシルがサービスを終了する前に、急いでモモンガさんに伝言(メッセージ)を繋ぐ。

 

「モモンガさん、聞こえますか?」

 

「大丈夫ですよ。聞こえます、紫さん」

 

「それじゃ、始めましょうか」

 

 モモンガさんが言うと、少し間が空いた。

 

「ついに、この世界も終わって仕舞うのね…」

 

 僕は最後ということもあり、女口調が苦手なので普段あまり行わない八雲紫RPをノリノリで言ってみた。

 

「世界の終焉か…」

 

 モモンガさんもノリノリである。

 

「モモンガさん、また逢える日を楽しみにしてますわ」

 

「ああ…」

 

 実際のユグドラシル終了する喪失感とRPの反応が混ざり、力のない声で返事を返すモモンガさん。

 

「幻想郷と」「アインズ・ウール・ゴウンに」「「永遠の栄光を!!」」

 

 

 

 

 

 そう言い終わるとコンソールの時計は00時00分00秒を指す。

 

 それによって世界は終焉(おわり)を迎える。

 

 

 いや、迎える筈だった…。時計は00時00分02秒を指す

 

 一部のコンソールが消えていた。 

 

 ゲームの終わりの表示等もない。終了に伴いラグが掛かっているのだろうか。

 

 コンソールによるログアウトをする。

 

 ログアウトが出来なかった…。

 

 GMコールも出来ない。 

 

 電脳誘拐だろうか…。確かに御曹司の自分なら人質にすればある程度の要求はできるだろう。

 

 たが、様子が違う。

 

 それはNPCである八雲 藍の式である橙が心配そうにこちらを見つめているからである。因みに、藍は橙を見ていた。あれ?なぜ、橙を?

 

 藍のその行動は不思議に思うが、そこは置いておこう。まず、考えるべきはNPCであれプレイヤーであれ、表情を作る事はできない。

 

 まぁ、スライムなどのキャラを使い疑似表情AIなどを作る奇才を持つ人はいたが…。

 

(らん)

 

 こう呼ぶとNPC()である藍に命令(コマンド)を出せる筈なのだが…。

 

「なんでしょうか?紫様」

 

 吃驚した。藍が喋るなんて…。

 

 他のNPCも話せるのだろうか。

 

 コレはユグドラシル2か何かなのだろうか…。

 

 意味がわからなかった…。

 

 ただ、NPCがユグドラシル2のヘルプとしての役割がある可能性を考えて聞いてみる。

 

「GMコールが使えない…」

 

「申し訳ございませんが紫様、じーえむこーるなる物はどのような物なのでしょうか?」

 

「いや、気にしなくていいわ。そうわね、藍。現在(いま)、幻想郷は未曾有の危機に瀕している可能性があるわ。既定ルート1の出入り口より半径1kmの探索して敵対勢力の有無、生息しているモンスターなどを調べてきて。できるだけ戦闘は控えるように」

 

 

 取り乱したロールプレイを整えて、指示を出す。

 こんな状況でも攻め込んでくるプレイヤーが居るかも知れないので、大人数が近くにいるかいないかだけでも確認したい。

 

「はい、紫様」

 

 実際に命令を理解していることには驚くが、それどころではない。

 

 藍は、直ぐに幻想郷と外が繋がる既定ルート1を目指して動き出す。

 

「それじゃあ、博麗神社に行こうかしら。橙、留守は任せたわ」

 

 取り敢えず、幻想郷で異変と言えば博麗神社である。藍が言葉を理解し、自律的に動けること考えると、博麗神社に行けば、何かしらの情報収集が出来るかもしれない。

 

「はいです。紫しゃま」

 

 幻想郷のNPCは、自分を八雲 紫と認識しているのならRPは続けるべきだろう。

 

 直ぐにスキマによって転移する。

 

 どうやら魔法は使えるようだ。

 

 

 

 

 ー幻想郷 博麗神社ー 

 

 

 

 スキマを出てみると、掃除をしている巫女がいた。

 

「霊夢ー!!」

 

 ダイレクトに飛び込み抱きつく。八雲 紫のフリだからね?(動いてるのが嬉しくて、喚起余ったわけじゃない)

 

「何するのよ!?、紫じゃない。アンタが来たてことは面倒ごとね…」

 

 胸を触ってみる。(お巡りさん、こいつです)

 

 柔らかい…。そして、いい匂いがする。

 

 たが、ハラスメント警告は出ない。

 

「何時まで触ってるのよ!!」

 

 お祓い棒で殴られた。ダメージが入り痛い。

 どうやら結構、触っていたらしい…。

 

 それより、臭いがあることとR18行為が行える点からユグドラシル2である可能性が潰えた。

 

 そしてもう一つ分かった事がある。

 

それは…フレンドリーファイヤの解禁だ。

 

 お祓い棒で微かだがダメージを受けている。

 

 これは幻想郷を脅かしかねない。

 

 拠点にはレベル 30以下のNPCが自動でPOPする。

 ウチのギルドの場合、POPするNPCの殆どは妖怪・妖精という種族を持ち、異形種であるため人を襲う。つまり、ギルド内での殺し合いが発生する危険性がある。

 

 幻想郷には世界級アイテムで作成した(NPC)を大量に配置している。自分で作ったNPCにはすべてスペルカードルールについて書いてあるが、他の自動でPOPする拠点のNPCはどうなのだろうか…。

 幻想郷自体の設定に、スペルカードルールを書いているので適応されるだろうか…

 人里や農地の村々には、東方Projectには登場していない30レベル程度の戦闘ができるNPCを村の強者や自警団として配置している。

 

 自動スポーン式の妖怪に対する対抗手段を設定上、作って置いたのだが役に立つだろうか…。  

 

 ちなみに、支配者の扇子では30レベル以下のNPC作成は使用条件クリアと金貨と一定の素材を用意すれば作れる。その為、安価で作れる弾幕ごっこが出来ないキャラを量産している。

 東方Projectに出てくるメインキャラ以外の、人里の住人はこれで作られている。

 

 まずはレベル 100のNPCや各勢力を集めて、戦力を集める必要がある。

 

「霊夢、今から異変解決の為に参加者を募るわ」

 

「どうしたのよ紫。アンタがそれ程するって」

 

 霊夢が不思議そうに聞いてくるが…。

 

 今は話せることがない。支配者の扇子で作られたNPCと言えど敵対しないとは限らないからだ。

 

 そう言えばモモンガさんとの伝言(メッセージ)は切れているがどうしているのだろうか。

 

伝言(メッセージ) モモンガ」

 

 繋がらない…何故だ…!?

 

 NPCには繋がるのだろうか。

 

伝言(メッセージ) 八雲 藍」

 

 ………

 

「なんでしょうか?紫様」

 

 繋がった。何故、モモンガさんには繋がらないのか…。魔法の効果や範囲が変わったのか?

 

「藍、状況はどうかしら?」

 

「紫様、それが少々困った状況でして」

 

「どうしたの、藍?」

 

「はい、紫様。見渡す限り草原でして、生物は小動物のみで、プレイヤー・モンスターを含め知的生命体は居ません」

 

 これは外でも重大な異変が起こっているとみていいだろう。

 

「そう、とりあえず戻ってきて。一時間後に異変解決のために集まる者達と一緒に詳細を話して頂戴」

 

「了解しました。紫様」

 

 これは大変な事だ。既定ルート1の出入り口は幻想的な雰囲気の樹海に面していた筈だ。

 それが草原では、直ぐに出入り口が発見されてしまう。

 

 飛行能力を持つ式を召喚し伝言をもたせ、各100レベルのNPCに届けさせた。

 

 

 後は何をすべきか…。

 

 




ナザリックと幻想郷が共同作戦したら勝てない(小並感)

間々にユグドラシル時のエピソードや番外編で、たっち・みーさんとアインズさんとの秘話を入れたいと思っていたりします。

ワールドアイテムとか表情を作れるAIは捏造設定です。(今後の話に使うかも)

7/20 微妙に加筆
2018/03/17 微妙に加筆・修正


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転移編
第二話 状況整理


アインズさんはまだ名前を変えていないので、モモンガさんになっています。
もちろん、紫さんもモモンガさん呼びです


 ーナザリック地下大墳墓ー

 

 

 玉座に座る魔王の様な風格を持つ、骸骨(スケルトン)は困惑していた。

 

(紫さんとRPをユグドラシルが終わるまでしていた筈だが…何故ゲームが終らない!!

 ログアウトもできない上に、ユグドラシル2である可能性はR18行為が可能である事から可能性は低い…) 

 

 モモンガは顎に手を当てて玉座に座り込む。

 

(NPCが意思を持って行動している点も考えなければなはない…設定厨のタブラさんや東方好きの紫さんやペロロンチーノさんなら発狂しながら喜びそうだが…)

 

(そうだ…タブラさんが作ったアルベドを汚してしまったんだった…)

 

 かつての仲間に対し、罪悪感を抱く。

 

(うん?そういえば紫さん…、伝言(メッセージ)があるじゃないか…!)

 

 ついさっきまで、伝言(メッセージ)を使って会話していた事を思い出す。

 

伝言(メッセージ) 八雲 紫」

 

 ………

 

 伝言(メッセージ)は繋がら無かった。

 

 だが、これには理由がある。

 モモンガが伝言(メッセージ)を使ったタイミングと、八雲 紫が伝言(メッセージ)を使ったタイミングがほぼ同時であった為だ。

 

 電話を同時に掛けると、お互いに話し中になったことは無いだろうか。

 

 それに近い状態である。

 

 さらに、モモンガはこれ以降も他のアインズ・ウール・ゴウンのメンバーに伝言(メッセージ)を試していた為、モモンガは電話で言う所の話し中状態であった。

 

(よし、まずは階層守護者を集めて、どう思われているか聞いてみるか)

 

 

 

 

 

 

 

 ー幻想郷 博麗神社ー

 

 

 ここ博麗神社には、幻想郷の各勢力が集結していた。

 

 紅魔館から吸血鬼とその従者(メイド)・白玉楼から幽霊と庭師 兼 剣術指南役・妖怪の山からは神二柱と現人神・天狗の長 天魔 と 新聞記者の烏天狗・他には竹林の奥にある永遠亭の使いの兎・豪族の仙人 御一行・仙人とキョンシー・妖怪の寺の僧侶・自警団代表として寺子屋を開く白沢の半獣人など多くの者が集まった。

 

 

 

「幻想郷は今、未曾有の危機にさらされていますわ」

 

 まずは外に敵がいる事を伝え、此方に向く可能性のある敵意を逸らす。

 

「だから、紫アンタがわざわざ協力を求めるなんて、どう言うことか聞きたいんだけど」

 

「霊夢の言う通りだぜ。ちゃんと話は聞かせて貰らわきゃ納得がいかないな」  

 

 どうやら、白黒の魔法使いは騒ぎを聞いて駆けつけて来たようだ。

 

 どう説明すべきだろうか…

 

  「まず、先に藍の報告を聞いてから話をしましょう」

 

 取り敢えずこれで時間稼ぎだ。

 

「はい、紫様。調べた限り既定ルート1から半径1kmには知的生命体は存在しません。さらに周辺地帯は平野で草原となっていました」

 

「それは本当なのか…。つまり今回の異変は外で起きているのぜ?」

 

 最初に魔理沙が反応する。

 

「一つ聞きたいのだが、人型を取っておらず弾幕ごっこをまともに出来ない妖怪が活発化しているようだが関係はあるのか?」

 

 慧音先生こと上白沢 慧音が質問を投げてきた。予測していたがやはり…

 

 自動POP型NPCが動いているのか…

 

 弾幕ごっこができない者もいるという設定は生きているようだ。

 

 人間の自警団が弾幕ごっこが出来なくても、役に立つ様に付けた設定だが…

 

「多いに関係があるわ。推測の域を出ないのだけど…

 幻想郷は元の場所から別の場所に転移したと私は考えているの。

 その転移の影響を受けている可能性が高いと見ているわ。

 さらに幻想郷は一つの世界として隔絶されている筈なのに外の世界の影響を受けている。

 幻想郷の妖怪が外の世界の影響を受けている事から、出入り口だけが転移している訳では無いないようだし、幻想郷全体まで影響を与ている事から、考えたくはないけれど外の世界にそれだけの力があり、外の世界に住む人が一人で、幻想郷を滅ぼせる力を持つ可能性も頭に入れて置かなければならないわ。

 外だけの警戒だけではなく、場合によっては活発化した妖怪により里の人間が殺されればバランスが壊れ、幻想郷が滅びる可能性もある。

 人が少なくれば神は信仰が減り、妖怪は恐怖心を抱く存在が無くなり、消滅する可能性もある。

 

 つまり、あなた達にも直接影響が出る可能性があるから、今回の集まりを開いたわ。

 幻想郷の妖怪だけでも厄介なのに、この問題は外の世界が、幻想郷の妖怪に影響を与える可能性が高いという事も由々しき事態だわ」

 

 注意を外に向けることで、状況の不自然さを出さないようにする。  

 

 何かこの説に不自然な話が出てきても、最初に推測だと言っているので修正が効く。曖昧な言葉を選んでいるので追求はできないだろう。

 

 好戦的な幻想郷の住人を多少でも警戒させて、安易な行動を取らせない為、相手が格上の可能性を示唆する。

 

「まずは今の幻想郷の状況と被害、伝達網の形成を行う必要があるとは思わないかしら?

 周辺が草原になってしまった既定ルート1の出入り口の隠蔽が一番最初にしなければいけないでしょうけど…」

 

 予め考えておいた議題を提示する。

 

「そうか…今の所大した被害はないが、妖怪が影響を受けているなら、自警団の警備を高める必要がありそうだな」

 

 慧音は話を聞いて、事態を再確認したようだ。

 

「私としては既定ルート1を幻術で隠蔽し、伝達網は天狗の新聞と伝言(メッセージ)を使うのはどうかと考えているわ」

 

 新聞と伝言(メッセージ)だけなのは、勢力別に分けている幻想郷では、協調性は期待できない為だ。

 

 妖怪の山は統率されては居るが、他の勢力との関係は良くないので利用しがたい。

 

「紫、アンタが言うとなんか胡散臭いのよね…」

 

「清廉潔白な私を疑うなんて…」

 

 ノリッツコミの勢いで、大袈裟な演技をする。

 

「はぁ…」

 

 何やら霊夢にはため息をつかれたが、やってみるとRPも違和感があまりないものである。

 

 いや、八雲 紫の体に心が引っ張られている可能性もあるが。

 

 カルマ値は善寄りの中立だから、極悪人になることはないと思いたい。 

 

 殆ど死にステータスだった、カルマ値はどうなっているのだろうか…。

 

 あれ、そう考えるとモモンガさんが凄い極悪人になってしまうのでは…。

 

 幻想郷のNPCのカルマ値は、殆ど善である。

 

 お尋ね者の鬼人 正邪もしっかりと、善寄りの値にして置いた。 

 

 当時の二次創作でよくあるパターンで、実は優しい不良の様な設定をつけていたためだが。

 

 一様、カルマ値がマイナスの者も居るが。邪仙とか、邪仙とか。(大事な事なので2回言いました)

 

「妖怪も活性化している為、今日は各自対策もしなければならないでしょうし、明日も博麗神社に集まる事としようかしら」

 

 この提案をして解散させる。今日は色々調べなければ不味いだろうし。

 

「そうね。今、話し合っても何も決まらなそうね」

 

 紅魔館の主、レミリア・スカーレットはかりすま的なポーズを取りながら話し掛けてきた。

 

「それでは明日のこの時間にもう一度集まりましょう」

 

 最後に時間を決めて解散させた。

 

 自分も戻ろうと思った矢先、白玉楼の主である西行寺 幽々子が話しかけてきた。

 

「紫、貴方にしては珍しいわね」

 

「今回は私も状況を理解できてないの。何かあったらその時はよろしく頼むわ」

 

 何故か、慣れ親しんだ親友のように女口調で違和感なく話せる。

 

 やはり、八雲 紫の体に引っ張られていると考えるべきだろう。

 

 だが、不審に思われないように、直ぐに話を切り上げスキマで転移する。

 

 

 

 

 -幻想郷 八雲家-

 

 まず状況を整理しよう。

 Lv 30以下の自動POP型NPCが活発化している事。

 

 これ自体は設定が生きているなら、設定上、人里の人間には手を出さないし、人の多い場所や昼の間は積極的に人間を襲わない。人の多い村の中まで入ることは無い。

 

 夜は農村では殆どの人が寝ているし、予め設定した村の強者と農村の男達が交代で見回りをしている筈だ。

 

 人里に関しては飲み屋などが遅くまで開いているが、人里の人間を襲わないようになっている筈なので、農村では多少の被害が出るかもしれないが、直ちに問題はないだろう。

 

 人が死ぬ可能性があるのに、問題ないと感じてしまうのは妖怪としての性質に引っ張られているからだろうか。

 

 この当たりは検証の余地がありそうだな…。

 

 

 そう言えば、ギルド運営に必要な金貨も、穀倉地帯に『支配者の扇子』で簡単に制作できるLv 30以下の農民(NPC)達を配置して耕すようにしていた筈だ。

 

 Lv 30以下とは言え、かなりの数のNPCを生成しなくてはならなかった為、意外と苦労したがその分成果もあった。

 

 農民が収穫した一部を年貢として収めてもらって、エクスチェンジ・ボックスで商人系のスキルを持つNPCにユグドラシルの金貨と交換してもらう。

 これにより、ギルドの運営費以上の金貨が毎日ユグドラシルにログインしなくても手に入るというシステムを構築できたことだ。

 

 ユグドラシルの時は朝も夜も関係なしに働かせていたが、NPCが感情を得た今、収穫量は減るだろう。

 

 だが、年貢とは別に作物の買い取りもしていて、人里などで流通している通貨と交換している。(これは設定上で実際は作物を回収するだけだったが)

 

 幻想郷では設定上、紙幣は殆どないようにしている。

 硬貨はユグドラシルで大量に取れる鉱石から作ることで、買い取った作物をエクスチェンジ・ボックスでユグドラシルの金貨に変えて、その金貨で他のプレイヤーから鉱石を入手する。

 その鉱石を使いNPCの鍛冶職人に硬貨を作らせ、渡すようにしている。

 

 使う鉱石自体は、他のプレイヤーからしたら大量に手に入るゴミアイテムで初心者でなければ不要でしかなく、エクスチェンジ・ボックスに突っ込むくらいしか用途がない。

 

 だが、その鉱石をエクスチェンジ・ボックスの査定額の二倍以上の値段で、大量に買い取ることで他プレイヤーとWin-Winな関係で取引していた。

 

 殆ど価値のない鉱石なので、もちろん二倍で買い取っても安い。

 

 作物をエクスチェンジ・ボックスに入れた代金に作物の代わりに渡している鉱石の購入費を差し引いても金貨をかなり儲けることが出来る。

 

 さらに低レベルの鉱石の為、低レベルの鍛冶スキルで精錬可能である事もポイントの一つだ。

 

 現在、幻想郷では4種類の鉱石を硬貨として使っている。

 

 もちろん、こちらが与えるだけではインフレが大変なことになるのでお金を回収する経済体制も設定上は作られている。

 

 お金の維持にも鉱石が必要である。

 耐久値が切れて鋳潰した場合、量が減少するのだが、幻想郷のすべての硬貨を1000回以上は作ることができるだけの鉱石が有るので大丈夫だろう。駄目なら他の鉱石を使うまでだ。

 

 

 あと確認すべきはNPCのステータスくらいか。

 

 農民は大体、農業系の職業(クラス)+料理人(コック) Lv 1以上+ランダムな職業(クラス)の合計がLv 20以下になる様にしていた筈だ。

 

 料理人(コック) Lv 1を与えているのは、独身の男の(NPC)が料理をつくれないのは可笑しいのではという考えから、レベル1を全員に与えている。

 

 一部、農民にも天才枠としてLv 25程度を目安に設定しているため、一切、戦闘職を持たないスーパー農民的なLv 25も存在している。

 

 村の強者は普通の農民より低い農業系又は商工業の職業(クラス)と、殆どは料理人 Lv1に戦うことの出来る職業を取らせている。

 

 レベルは村の強者or戦闘技能を持つ農民でLv 15〜28、慧音先生こと上白沢 慧音を抜いた自警団はLv 18〜42までとなっている。

 

 つまり、最高で村の強者は魔法職なら第4位階まで、自警団は第6位階まで使用可能だ。

 

 ちなみに慧音先生はLv 56だが、妖獣化していない時はステータスが半分(他にも多数の弱体化効果あり)になる為、Lv 28程度のステータスである。妖獣化時は2倍になり、人間種のLv 100を超えたステータスになるがスキルは変わらない上に、妖獣化は満月の時にしか使えないが。

 

 その他にも設定を深く考えたオリキャラがいたりするが、自動POP型のNPCがLv 30以下なのであまり強くならない様に設定している。

 

 

 幻想郷の人間には直ちに影響出ることはない筈だ。

 

 

 他にするべきこととなると、外の様子くらいは確認すべきだろう。

 

 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)から取り出す。

 

 もちろん、ぷにっと萌えさん考案の『らくらくPK術』の情報戦の対策を行っている。

 これはスクロールだけで行えるので楽なのが利点だ。

 

 コンソール画面が無くても、しっかりとスクロールも魔法も発動するようだ。

 

「さぁ、どれどれ…」

 

エフェクトと共に魔法が発動する。

 

「うん?これは…」

 

 鏡を起動する。

 すると突然、恐竜の顔のような物がうつる。

 

「ギガントバジリスク!?」

 

 

「いきなり、アップで映るなよ」

 

 そこにはトカゲの様なモンスターの顔が映っていた。

 

「視点調整して、これで良いかな…」

 

 操作方法をなんとかマスターして、縮小する事ができた。

 

「そういえば、ギガントバジリスクって、レベルはLv 30程度だったけ…まぁユグドラシルを始めたばかりに出会って殺されたのは今となっていい思い出…

 

 ではない!!

 

 初めてのガチャで手に入れたアイテムをロストしたんだぞ…軽くトラウマなんだよな」

 

 さらに独り言がエスカレートしていく。

 

「モンスターが居るという事は人も居る可能性があるな」

 

 うーん、ふと思ったけどやっぱり一人の時も、八雲 紫のRPをするべきかな…ボロでそうだし。

 

「こっから八雲 紫RPでもするか」

 

 鏡を(まえ)にずらしていく。

 

「人間がいたわね…第一村人て所かしら」

 

 違和感なく、女言葉が出せることが不思議に思えるが気にしたら負けなのだろう。

 

 そこには2-30人程度の集団がいた。

 

「よく見ると村人には見えないわね。

 全員同じ様な格好をしているから、何かの組織かしら」

 

 

 服装は夜なので分かりづらいが、青か藍色を主体とした服で装甲が薄いのでマジックキャスターだと思われる。

 

 

生命の精髄(ライフ・エッセンス)魔力の精髄(マナ・エッセンス)を使ってみた感じでは、何やら支持している隊長ぽいのが一応、属性にはよるけどギガントバジリスクに対抗出来そうね」

 

「どちらかに攻撃を仕掛けてみようかしら」

 

 そう考えたがどちらに味方するかを考えなければ一切、情報は手に入らないだろう。

 

「味方するなら人間ね。モンスターに話が通じるか分からない訳だし」

 

 そんな風に考えていると、隊長らしき人が何かを言うと隊列を変えた。

 

「どうやら、部隊を分けるようね」

 

 二つに分けられた部隊の内、一つは隊長と共にギガントバジリスクの方へ、もう一つはどこか分からないが移動を開始した。

 

「実際に見に行こうかしら。こちらでの戦闘は試していないし」

 

 

 直ぐに藍と橙を呼んで、準備をする。

 

 

 

 

 



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第三話ㅤ陽光聖典

ー国境付近の平野ー

 

そこはリ・エスティーゼ王国とバハルス帝国との国境に近くカッツェ平野より北に位置する平野

 

ニグン隊長率いる陽光聖典は、ガゼフ・ストロノーフを抹殺し、人類同士の争いを終わらせるため、帝国と王国の戦争を早期開戦・終結させる計画を進めていた。

 

そして陽光聖典は、スレイン法国より北上し、城塞都市エラテルの手前あたりから、北東に進み、一定の地点からUターンする様に、ドブの大森林沿いを進みながら村々を襲っていき、カゼフ・ストロノーフを誘い出す任務についていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

今回の任務に当たり、陽光聖典には通常部隊の1.5倍の人数が派遣されていた。

 

その内の先遣隊がギガントバジリスクらしき魔物を発見した。このギガントバジリスクによる、法国への被害はないと思われるが、ガゼフ・ストロノーフ抹殺に横槍を入れられないように、早急に対処した方がいいという判断の元、陽光聖典は討伐することに決した。

 

 

「これより、部隊を二つに分けて行動する。グループA 10名は私と共にギガントバジリスクを討伐、残りのグループBは副隊長と共に村々への奇襲で誘い出されたカゼフ・ストロノーフを抹殺せよ。グループBには法国の秘宝を貸し与える。ギガントバジリスク討伐後、グループAは速やかにグループBに合流するものとする。」

 

 

今回、通常部隊より戦闘員の人数が多い上に、ニグン隊長自身が相性の関係で単独でのギガントバジリスクの撃破が可能なため、ニグン隊長は隊を二つに分けて行動する。

別働隊の副隊長には、カゼフ・ストロノーフと遭遇したときのために法国の秘宝である『魔封じの水晶』を渡し、部隊を分けた。

 

「それでは、作戦行動につけ。」

 

その命令に従い、陽光聖典は一斉に動き出す。

 

(こんな所でギガントバジリスクが出るとはな、よもやガゼフ・ストロノーフの最後を見逃してしまうかもしれんな)

 

ニグンのこの推測はある意味では当たっているのだが、知る由もない事である。

 

ギガントバジリスクに見つからないよう風上に暫く歩くとギガントバジリスクらしき、モンスターの近くに着いた。

 

「天使を召喚する。」

 

その言葉を皮切りに監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション) 1体と炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)が大量に召喚される。 

 

「全、炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)で攻撃せよ。」

 

天使と各自の魔法により着実にダメージを与えていき半分程度削った所で、傷付いたギガントバジリスクは一矢報いるかの如く、急にニグンに向けて走り出た。

 

急な変化により対応ができず、そのまま突進され、ダメージを受けてしまうとニグンが思ったその時。 

 

急に現れた女(・・・・・・)がギガントバジリスクの突進を受け止めていた。受け止められたことによりニグンに攻撃が当たることはなかった。

 

魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック) 龍電(ドラゴンライトニング)

 

さらにギガントバジリスクに触れたまま女が放った魔法により、ギガントバジリスクの命が尽きた。

 

ニグンは最初は驚きにより動けなかったが、ガゼフ・ストロノーフ抹殺がある以上、ここで誰かに見つかることは不味いと思い、女の口を封じることにした。

 

ニグンは女とはいえ、油断はしていなかった。

 

かつて女性だけで構成されたアダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』により、顔に怪我を負わされた事があるからだ。

 

半分以上削っていたとは言え、ギガントバジリスクを一撃で仕留めるクラスの強さ。

 

そして第五位階の魔法を使用している点から只者ではないことは理解していた。

 

 

―だが、それはニグンが思っていた以上に強かった。

 

―ニグンがそれに気づくにはもう少しだけ時間が掛かってしまう。

 

 

「貴様何者だ?」

 

ニングが念のため、素性を確認する。

 

「私は通りすがりのマジックキャスター 八雲 紫よ。」

 

「貴様のような通りすがりのマジックキャスターなどいるか。まぁいい炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)でそこのマジックキャスターを攻撃せよ。」

 

第五位階を使う存在なので素性が気になったが、ここで対処せず、カゼフと組まれたら厄介なので、殺すしかないと考えてニグンは指揮を取る。

 

「天使ねぇ、その天使じゃ私にダメージを与えられないわよ。まぁそっちが天使ならこっちも使おうかしら。」

 

なぜか、彼女の言葉は、虚言や慢心・嘘などではない気がするが、引く事はできない。

 

「貴方達にはコレくらいで十分かしら。」

 

何かが来ると陽光聖典のメンバーは、長年の感か気づいた。

 

第7位階天使召喚(サモン・エンジェル・7th) 威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)

 

その言葉に陽光聖典の全員が理解が出来ず固まっていた。

 

「なっ!?最高位天使を召喚するだとっ…!?」

 

やっと、ニグンが言葉にして驚く。

 

「最高位?主天使は上から数えて4番目よ。教わった人から騙されてるんじゃない?」

 

八雲 紫と名乗るマジックキャスターは、主天使を最高位天使だと言う、陽光聖典の面々を鼻で嗤う。

 

「敵の天使を滅ぼしなさい。」

 

そのマジックキャスターは最高位天使を召喚し、次々と炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)を駆逐していく。

 

その姿を見たニグンは一つの可能性に行き着くが、それを口に出すと心が折れてしまうと思い、口に出せになかった。

 

「そうね。粗方、片付いたし勘違いしている貴方たちの為に、最高位天使を呼んであげようかしら。」

 

 

 

 

 

 

 

ー国境付近の平野 (八雲 紫 視点)ー

 

 

隙間によって転移すると丁度ギガントバジリスクが突進してきていた。

 

思ったより早く片が付きそうだったので、藍と橙を置いてスキマで転移してきたのだが。

いきなり突進とかギガントバジリスク最低だな。(過去のトラウマを引きずっています)

 

Lv 100の筋力があれば受け止めるのは容易なんだけど。

 

トラウマが蘇るからさっさと倒そう。(即決)

 

一様、魔法を相手のレベルに合わせて撃ったほうがいいかな。

 

魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック) 龍電(ドラゴンライトニング)

 

まぁ、第五位階と言ってもこのレベル差で半分削らた状態なら一撃確定だよな…。

 

 

「貴様何者だ?」

 

何者かと言われても…、相手に表情がある事と死んだモンスターが消えず、データクリスタル落とさないことから現実ぽいので、迂闊に話す訳にもいかないしな。

 

更にここ、日本語で会話できるけど口が微妙にずれてるし、翻訳か何かされているだけで異世界だよな…。答えによっては魔女狩り的なことに巻き込まれたりしそうだしな。

 

負ける気はしないけど。

 

まぁ、ここはしっかりと決めよう。 

 

 

「私は通りすがりのマジックキャスター 八雲 紫よ。」

 

 

「貴様のような通りすがりのマジックキャスターなどいるか。まぁいい炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)でそこのマジックキャスターを攻撃せよ。」

 

はぁ!?、居るだろう普通に。この世界、もしかしてだけど、低レベルな魔法の第五位階が使えるだけでも庶民なら魔女狩り的なので裁判なしで処刑されるのかよ。(ギガントバジリスクの所為でイラついてます)

 

いい度胸だ、やってやんよ。(ギガントバジリスクの所為でry)

 

こっちも天使使って神の代理人みたいな、聖人名乗ってやんぞ。(ギガントバジリスクの所為でry)

 

「貴方達にはコレくらいで十分かしら。」

 

最高で権天使までしか召喚してないようだし、これで良いだろう。

 

第7位階天使召喚(サモン・エンジェル・7th) 威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)

 

「なっ!?最高位天使を召喚するだとっ…!?」

 

何こいつ、どうしたら主天使を最高位だと勘違いできるのだろうか。

 

「最高位?主天使は上から数えて4番目よ。教わった人から騙されてるんじゃない?」

 

そういえば人間界に現れる最高位の天使が主天使なんて事を聞いたことあるような…。こいつは最高位天使て言ってるし違うだろうけど。

 

考え過ぎて命令出すの忘れていた。

 

「敵の天使を滅ぼしなさい。」

 

こいつらには聖人とか崇めてもらうか、情報を手に入れるために協力してもらう必要がある。

こいつらがどの組織に属しているか分からないけど、どうせレベルが低いし下っ端なのだろうが、武装した宗教団体ぽいので、生かしておけば利用価値はあるだろう。

 

昔は宗教と農民は切っても切り離せない関係だった。日本の戦国時代の僧兵は、農民の一揆などと同じで武将にとっては痛手だったし。というか僧兵自体が農民の一揆の集団と変わりないんだが・・・。

 

まぁ科学がない時代なら一般階級に置いては、宗教は強力な力になる。

 

多分だけど、下っ端には簡単に召喚できる主天使を最高位天使だと教えているのだろう。洗脳かな?

 

現代の様な科学が発展している世界で無ければ宗教は強い。更にここは魔法もある異世界だ。

現実ですら宗教の為に命を投げ打つ者も居る事は、宗教戦争など歴史がそれを証明している。

 

この世界でも宗教は重要だろう。

 

それならもう、最高位天使を本当に召還してやろう。

 

「そうね、天使は粗方片付いたし、勘違いしている貴方たちの為に最高位天使を呼んであげようかしら。」

 

考えている間にあらかた片付いた天使を確認して、ほほ笑みを添えて言い放つ。

 

「本当の…最高位天使だと…」

 

食いついてきたな。

流れ星の指輪(シューティングスター)を手に入れる為、何度も課金ガチャに挑んだ時に手に入れた、この熾天使召還の指輪(第七天)(リング・オブ・サモンセラフィム)を使うとするか。

 

このアイテムは日に一度(24時間に一度)、使用することが可能で召喚された天使は1時間すると消えてしまうが、土星天の熾天使を召喚することができる。

 

天使召喚(サモン・エンジェル) 土星天の熾天使』

 

Lv 80代前半だが1日待てば、また召喚できるので敵がアンデットの時は囮に使ったりなど、役に立つモンスターではあった。モモンガさんとPvPする時も使ってたから思い出深い物だ。

 

「どうしたのかしら?」

 

隊長の男が何故か膝をついていた。

 

「あなた様は『ぷれいやー』なのでしょうか?」

 

『ぷれいやー』?ユグドラシルプレイヤーの事のようだが何故仰々しく訊くのだろうか。

 

「えぇ、そうよ。」

 

さらに、隊長の男の顔が険しい顔になっていくんだが。なんか、血色も悪く額に汗もかいてるな。

 

「あ、あなた様は六大神の関係者なのですか?」

 

六大神?

神様の名前かな。最高位の天使を召喚すると神の関係者扱いて…、教祖か何かがいるカルト教団かな?

ユグドラシルプレイヤーが神と考えるのが妥当なのかな。

 

「関係あるかどうかは判らないけれど……詳しく聞けば何か分かるかもしれないわね。」

 

そんな事を言うと、ユグドラシルでは攻勢防壁が発動した時に発生するエフェクトと効果音が響く。

 

「なにが…」

 

隊長が小さな声で呟く。

 

「どうやら貴方、定期的に監視されてたようね。信頼が置けないと思われているのかしらね。直ぐに攻勢防壁を発動したから何も見えなかった筈だけど。」

 

これで、はっきりと分かった。

使われた魔法は第八位階の物だ。

つまり、こいつらは低レベルの下っ端か下部組織的な位置づけだと。

 

相手が高レベルに関わらず一切、カウンター対策をしていないのは味方を監視する目的だったからだろう。

 

対象をこの隊長にして発動されていて、読み取れた情報では使われたのは第八位階の魔法で、さらに僕の攻勢防壁が起動したのなら、僕も対象になる次元の目(プレイナー・アイ)かな。

 

まぁ、攻勢防壁と言っても広範囲化を行った同じ第八位階の爆裂(エクスプロード)だし、殆どダメージにはならないだろう。

 

プレイヤーを神と崇めるくらいだし、第八位階がギリギリ使えるLv 50でも、魔法防御力が高いマジックキャスターなら一発位ならたえるだろう。

 

まぁ、カルト教団的な構図なら、下っ端でも主天使を知っていることから、教会が存在するかどうか分からないが、主天使を召喚できる者が教会ような場所に複数いて布教をしているのではないだろうか。

 

その主天使を召喚できる者をまとめる者がいるとした場合、主天使を召喚する第七位階はLv 43以上、強さの差からしてLv 50の奴では主天使を召喚できるLv 43の奴らをまとめる教祖は難しいだろうから、Lv 53〜Lv 69位くらいがいるなら現地勢の教祖様の力て所かな。

 

推定がLv 69以下なのは、Lv 70を超えれば超位魔法が使えるからである。

プレイヤーを神と崇めるのなら、超位魔法が人知を超えたものに思わせる事が手っ取り早いのだ。

それには、現地の人間が超位魔法を使えるレベルより低い必要がある。

 

だが、その神と崇めるプレイヤーが人知を超えた存在だと思わせるために世界級アイテムを使った可能性もあるな…。

世界級アイテムを持っているかもしれないと用心はして置くべきか…

 

「法国が私を監視していただと…。大儀式を行ってまで」

 

大儀式?

これは多分だが上の位階の魔法使うための言い訳だろうな。マジックアイテムを使うことかもしれないが…。

てか、宗教国家なのか…いや、国を名乗るテロリストの可能性もあるが…。

 

「攻勢防壁を発動してから時間が立っているのに、何もして来ないということは貴方、見捨てられたんじゃないかしら?」

 

お返しに遠隔で撃てる魔法を使ってきても可笑しくないが、同じプレイヤーと戦って消耗することを恐れて、この下っ端を切った可能性が高いな。

 

「法国が我々を見捨てたのか?…」

 

「私はそう思うわね。本当に大切ならもう一度魔法を発動させるか、何かしらのアクションを起こすと思わないかしら?」

 

「我々は…どうすれば…。ぷれいやー様…」

 

おう、こっちにいきなり振るんじゃないよ。

プレイヤー様て、今時ゲームでここまで安直に言うものはねぇーぞ…。

 

まぁ、何かに役に立つだろうし、法国の組織体制やタブーや社会常識などの最低限の情報手に入れるため、飴と鞭を与えて取り入れる方が良いだろう。

異世界の常識など、知るわけ無いし。

 

「そうね、私の幻想郷に招待してもいいけど…」

 

まぁ、法国とやらの偵察部隊なんかで、目撃者を出すわけには行かないし、幻想郷で情報を引き出すか。

 

「そこは神々の住まう場所なのでしょうか?」

 

「貴方達が言う、神は分からないけど、私達が住んでいる場所ではあるわね。」

 

そう言うと喜ぶ隊長の男と部下。てか名前聞いてなかったわ。

 

「そう言えば貴方の名前は?」

 

隊長の男に名前を聞いてみる。

 

「スレイン法国、陽光聖典隊長 ニグン・グリッド・ルーインであります。」

 

緊張した赴きで、自己紹介をしてくれた。

 

「では、ニグン隊長と陽光聖典の皆さん、幻想郷に行く気はあるかしら」

 

多分、この様子では来るだろうが、誘拐にはならない様に意思を確認する。

 

「もちろんです。神々が住まう場所に行けるなど光栄極まり無い事です。」

 

どうやら、かなり喜んでいるようだ。

 

「紫様、先に行かないで下さい。紫様は偶に抜けているところがあるんですから。でそちらの方々は?」

 

お、丁度いいタイミングで装備を整えて来たようだ。

抜けているって…。確かユグドラシルの時の設定では、偶に抜けている主の八雲 紫を同盟ギルドのアインズ・ウール・ゴウンのデミウルゴスと同等以上知略と謀略、アルペドと同等の内政が出来るほど優秀な頭脳で、サポートするという設定だった筈だ。ぼっちでも寂しくないようにてんこ盛りにしたがハイスペック過ぎ。

 

「スレイン法国の陽光聖典の方々で、レベルは隊長でLv 30て所よ。幻想郷に招待しようと思ってね。」

 

値踏みするようにスレイン法国の陽光聖典を見つめる藍。

 

「そのレベルでは、我々が負けることもないでしょうから大丈夫の様ですね。」

 

一様、藍も賛成してくれたのでスキマを使い、幻想郷に移動する。

 

 

 

 

 

 

 

ー国境周辺の平野(陽光聖典隊長ニグン 視点)ー

 

「本当の…最高位天使だと…」

 

思わず口に出てしまったが本当の最高位天使の召喚とは何なのだ?

法国が我々に嘘の情報を流していたのだろうか?

 

天使召喚(サモン・エンジェル) 土星天の熾天使』

 

通りすがりのマジックキャスターと言う、八雲 紫という女がそう唱えると、主天使など霞んでしまうような神々しいオーラを放つ天使が召喚されていた。

 

これ程の天使を召喚できる者が、只の人間である筈がない。

神人かとも思ったが、そうでは無いだろう…。

 

たとえ第十位階の魔法を発動できても、無理だと思えてしまう程、ずば抜けていて相手が出来るのは漆黒聖典の隊長か番外席次くらいだろう。

 

そんな神人と同じ強さの者を召喚できる者が、同じ神人であるのか?

 

否、100年周期で訪れる『ぷれいやー』なのでは無いのだろうか?

 

もし、『ぷれいやー』ならば…

私はあろう事か殺そうと考えていた。既に攻撃も加え敵対行動まで発展している。

死は避けられないだろう…命乞いをしても死ぬ事は変わりない。

 

思わず地面に膝がついてしまった。

 

唯一、訊きたいことがあった。

 

「あ、あなた様は六大神の関係者なのですか?」

 

もし、そうならば信じている神ですら裏切ったことになる。

 

「関係あるかどうかは判らないけれど……詳しく聞けば何か分かるかもしれないわね。」

 

答えは『Yes』でも『No』でも無かった。神々がいた世界の『ゆぐどらしる』では六大神と呼ばれていなかったのだろうか…。

 

それとも我々への配慮なのだろうか。

六大神を知っていると言えば、我々の信じる神の知り合いを攻撃した事になり、我々は厳しい罰を与えられるだろう。知らないのであれば神への裏切りにはならないという事なのだろうか…。

 

どうするべきか考えていると、何かが壊れるようなそんな音が聞こえた。

 

「なにが…」

 

初めて聞く音と感覚に思わず、口を開いてしまった。

 

「どうやら貴方、定期的に監視されてたようね。信頼が置けないと思われているのかしらね。直ぐに攻勢防壁を発動したから何も見えなかった筈だけど。」

 

やってしまった。法国が『ぷれいやー』に牙を向いたことになってしまう。

しかも、『ぷれいやー』様の言うには我々が法国に信頼されてないのではと言う話だ。

 

いや、『ぷれいやー』に攻撃をした我々の独断先行だと見捨てて仕舞おうという判断なのか。

 

「法国が我々を見捨てたのか?…」

 

気が動転しているのか、ふと思った事を口に出してしまう。

 

「私はそう思うわね。本当に大切ならもう一度魔法を発動させるか、何かしらのアクションを起こすと思わないかしら?」

 

『ぷれいやー』様の言うことは最もだろう。だが法国に見捨てられた我々はどうすればいいのだろうか。

 

「我々は…どうすれば…。ぷれいやー様…」

 

これを聞けば、気分を害されて殺される可能性もある。

だが、法国に行っても陽光聖典と『ぷれいやー』を天秤に掛ければ、陽光聖典は処刑されるだろう。

どっちにしろ殺されるなら生き残れる可能性がある方にかけるしかない。

 

「そうね、私の幻想郷に招待してもいいけど…」

 

『げんそうきょう』と言う場所が六大神が残された書にあった筈だ。

そう、一人の『ぷれいやー』が作った『ゆぐどらしる』十個目の世界と。

ならこの方が数多の『ぷれいやー』を退けた神々の世界の一つの創造者なのだろうか。

 

「そこは神々の住まう場所なのでしょうか?」

 

確かめる必要があるだろう。

 

「貴方達が言う、神は分からないけど私達が住んでいる場所ではあるわね。」

 

その書では『げんそうきょう』には、一人の『ぷれいやー』と沢山の従属神しか居ないと書いてあった筈だ。

 

ならば間違いなく、世界の創造者だろう。

 

 

「そう言えば貴方の名前は?」

 

未だ誰も言ったことがない神々の世界に行けるのだ。この神様(ぷれいやー)に包み隠さずに忠誠を尽くすべきではないのだろうか。

 

「スレイン法国、陽光聖典隊長 ニグン・グリッド・ルーインであります。」

 

「では、ニグン隊長と陽光聖典の皆さん、幻想郷に行く気はあるかしら」 

 

「もちろんです。神々が住まう場所に行けるなど光栄極まり無い事です。」

 

この言葉は本心だ。処刑されない上に神の世界に行けるなど…。

 

「紫様、先に行かないで下さい。紫様はたまに抜けているところがあるんですから。でそちらの方々は?」

 

亜人種の様な尻尾を持つ女が、『ぷれいやー』様に話しかけている。

『ぷれいやー』様の従属神だろうか?

 

「スレイン法国の陽光聖典の方々でレベルは隊長でLv 30て所よ。幻想郷に招待しようと思ってね。」

 

「そのレベルでは我々が負けることもないでしょうから大丈夫の様ですね。」

 

我々は疑われていたようだ。『ぷれいやー』様によって開かれた(スキマ)によって移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まずはニグンさんが救われました。
オーバーロード死亡キャラは殆ど回収していきたいと思っています。

法国をオリ主は今で言うオ〇ム真理教やイ〇ラム国みたいな物だと思っています。

誤字報告ありがとうございます。
(1話1誤字は最低出てしまうorz)

アインズさんとの合流まで脳内プロットが完成しました。
(それまでのルートが2、3個ありますが)


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第四話 陽光聖典②

今回は陽光聖典の処遇についてです。

アインズさんは出ない。
アインズさんが出るのは紫が冒険者になってからになるかな…。



 隙間を使い、八雲家前に到着した。

 

 しかし、陽光聖典という法国という所の下っ端を手にした訳だが、どうしたものか。

 

 ①情報を吐かせて殺す

 

 ②取り敢えず放置しとく

 

 ③新たな宗教を作り、陽光聖典を信者にする

 

 ④取り敢えず幻想郷でレベリングさせてその力を飴として、逆らったら殺すという鞭で調教してみる。

 

 ①は効率的だが、他に利用方法が出来た場合、数に限りのある蘇生アイテムを使わなくてはならなくなる上に、場合によっては死亡した場合はLv 5分の経験値を失い拠点に戻るだけかもしれない。

 

 ②は悪手だろう。法国というユグドラシルプレイヤーがいる可能性が高い場所にいた者を放置するなど

 

 ③はこれは他のプランに組み込めるだろう。

 

 ④は男を調教するなんて、絶対ヤリたくないないが種族として妖怪を取っている為、魅了(チャーム)系の魔法が使えるしやりやすいのかもしれない…

 

 ②~④のプランを合わせて、幻想郷自体に調教して貰おう。(錯乱)

 

 幻想郷の殆どの者は陽光聖典より強い訳で、陽光聖典にPvPをさせて負けさせる。PvNと言った方が良いかも知れないが。

 

 勝手に神様の知り合いだって思われてるわけだし。

 それを利用して陽光聖典を負けさせて、弱さを自覚した所で神の試練だといい、レベリングで力を与えて恩を売って信仰させよう。(適当)

 

 でも実際、Lv 30程度とか情報収集くらいしか使い道がないよなー。

 情報収集が大事な事は分かるが下っ端ぽいし、大事な情報を持ってないだろうな。

 

 

「ここが神の世界ですか?」

 

 考えていると、ニグン隊長が話しかけてきた。

 幻想郷の風景に少し呆気に取られているようだ。

 

「そうよ、少し意外かしら。幻想郷は全てを受け入れるのよ。」

 

「すべてを受け入れる?」

 

 ニグン隊長が聞き返してきたので、それっぽいこと言えばいいだろう。

 

「えぇ、妖怪も人間もアンデットだって、終いには幻想郷の滅びだってね。もちろん、滅びない様に動く者も幻想郷は全てを受けいるわ。それはそれは残酷な話ですわ」

 

 名セリフをアレンジはしたが言う事が出来た。個人的には結構、名セリフを言うのは気持ちがいいと思う。

 

「幻想郷の話はこれぐらいにして貴方達の話を聞かせていただけるかしら」

 

 いきなり、話を振られて少しビクついているが、話してくれそうだ。

 

「我々陽光聖典は、法国最高の特殊部隊『六色聖典』の内の一つであります。この六色聖典にはある魔法が掛けられていまして、特定の条件下で3回以上質問されると死んでしまうというものなのです。つまり、私が貴方様に話すにはこの魔法をどうにかしなければなりません。」

 

 え? 下っ端じゃないくて最高組織…。

 いや、法国が下部組織か団体の可能性も…。(困惑)

 

 それよりも三回質問すると死んでしまうとか危な過ぎるだろう。

 やばいぞ、すでに名前と幻想郷に来るかどうか聞いている。あと1回聞いたら死ぬんじゃね?

 危ないところだった。

 陽光聖典は質問しただけで倒せるのか…(困惑)、そんな訳ないよな。

 だから特定条件下という制約があるのか。

 

 よし、こんな時は課金アイテムを使おう。(脳死)

 多少、勿体無い気もするがこの『状態異常回復の短杖』を使えば、世界級アイテム以外の呪いや毒などの状態異常を回復出来る上に、この短杖(ワンド)は10回まで使用が可能なアイテムだ。

 まぁ、結局、隊長+10人の11人なので2本必要だが…。

 

 

「これを使いなさい。このマジックアイテムを使えば世界級アイテムを除く、あらゆる呪いや状態異常を回復することが出来る筈ですわ。」

 

 そして、今、僕が持っているアイテムをニグンを対象として発動させ、新品のアイテムをニグンに渡し隊員達に向けて使うように指示する。

 

「この様な国宝級のアイテムを頂いて、宜しいのでしょうか。」

 

「構わないわ。そのアイテムならまだ数はあるから。それより法国について教えてくれるかしら。」

 

 ざっと今持っているだけでも100個以上、宝物庫に1000個は最低でもあった筈だ。

 てか、このアイテムだけで単純計算だが500円×1000個で50万円以上課金ガチャ引いていることになる。(課金パック的なやつやイベント報酬として貰えたりもしたが。)

 

「了解しました。」

 

 数時間程度掛かったが陽光聖典の話を聞いたことにより、法国の情報が手に入った。

 

 意外な事に陽光聖典は法国の中では、意外と上の立場だった。

 

 そして人間至上主義ではあるが、元々プレイヤーがいたお陰で人間の国家としては強力な国らしい。

 

 陽光聖典のニグン隊長の主観ではあるが、漆黒聖典の隊長は『土星天の熾天使』と同等程度らしい。

 つまり、レベルは80台と言う事になる。

 漆黒聖典と陽光聖典の差が激しい気がするが、漆黒聖典だけは全員がプレイヤーの血を引く神人らしい。

 その中でも血を覚醒させた者だけがLv 80の隊長の様な存在になれるらしい。

 陽光聖典にはあまり情報がないが、漆黒聖典には番外席次という、漆黒聖典の隊長より強い者がいるらしい。

 単にレベルが高いのか職業(クラス)の構成によるものなのか分からないが。

 

 その2人以外の漆黒聖典のメンバーはLv30~40程度だと思われる。

 

 その他にも、大儀式の説明など色々な情報を入手した。大儀式では、ユグドラシルに無かった魔法上昇(オーバーマジック)なる魔法とアイテムを使い巫女姫が上位の位階魔法を使っている事や陽光聖典はその大儀式により作られた第七位階の魔法が込められている魔封じの水晶を持っていた事が分かった。

 しかも、偶然にも威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)を召喚するものだったようだ。

 

 

 

「その、プレイヤー様、あなた様をなんとお呼びすればいいのでしょうか?」

 

「そうねぇ、紫でいいわ」

 

「了解しました。紫様。」

 

 

 何だろう。『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーッ』して来そうな声のオッサンの敬語て、なんか気持ち悪い。

 

 

「貴方達、ここは人間も神も妖怪も異形種もが共存する場所よ。貴方達は大丈夫かしら。」

 

「紫様、その様な心配はご無用です。我々は法国の教典よりも貴方様を信じております。」

 

 偉く信じられ過ぎじゃないか。いや信じられている事に問題は無いが。

 

「貴方達には神の試練、『パワーレベリング』をして貰います。」

 

「『ぱわーれべりんぐ』とは何でしょうか。紫様」

 

「自分より強い敵に攻撃し、倒すことで経験を積み、更なる力を手に入れる修練かしら。肉体と精神の両方を鍛えることが出来るわ」(周回作業の精神の摩耗的な意味で)

 

「なるほど。紫様は我々に力を与えてくださるわけですか。」

 

「その認識でいいわ。」

 

 レベリングをどうするか、考えないといけないな。

 

「そこのスキマ妖怪、あたいと勝負しろ。」

 

 そこには氷精 チルノがいた。意外と好きなキャラである。⑨だけど純粋だから嫌いじゃない。

 

「チルノちゃん、やめようよ。」

 

 大ちゃんこと大妖精もいるようだ。

 

 確かチルノ達を結構というか、そこそこ優遇していた筈だ。妖精自体にも、幻想郷では特殊な効果があったりするが。

 レベルは大ちゃんこと大妖精がLv43、チルノがLv 49だった筈だ。

 大ちゃんは『上位転移(グレーター・テレポーテーション )』やサポート系の信仰系魔法に特化し、回復やバフ・デバフ系の魔法が使える。

 チルノは冷気属性特化で、火属性を弱点とする代わりに冷気属性が強化されているはずだ。

 たしか、火属性の被ダメージが2倍になるが冷気属性攻撃の威力が1.5倍になるという効果だった筈だ。

 設定では大ちゃんは『上位転移(グレーター・テレポーテーション)』と『転移(テレポーテーション)』を使いチルノと協力し戦う様になっていた筈だ。

 

「いやよ。妖精と勝負する理由がないわ。」

 

 適当に返事をする。

 

「紫様に失礼だろう。」

 

 あ、これニグンさんあれだ。 リアルで培った能力で分かるが、烏合の衆と言うか取り巻きだな。同調して言っているだけだ。お灸を据えてあげよう。

 

「あら、ニグン隊長。そこの妖精は見た目も中身も子供だけど、貴方達より強いわよ。」

 

「え?本当にこの子供がですか?紫様。」

 

 顔が青ざめているけど気にしないでおこう。

 

「えぇ、本当よ。そうねぇ模擬戦でもしたらどうかしら。」

 

 ついでに模擬戦させて、幻想郷でケンカを売ったらどうなるか学ばせよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーニグン隊長 視点ー

 

 

 隙間と呼ばれる場所を抜けるとそこは森林だった。

 その森林の奥には南方の国に見られる木材を使った屋敷が立っていたが、ガラス窓などがあり、豪華に装飾がされている訳では無いが価値は高い屋敷と言う事は分かった。

 その事から住んでいるものは裕福な家である事が分かる。神の世界というには少し拍子抜けな感じであるが。

 

「プレイヤー様、ここが神の世界ですか?」

 

 確かに価値のある屋敷はあるが、とても神の住む世界には到底思えず訊いてしまった。

 

「そうよ、少し意外かしら。それに幻想郷は全てを受け入れるのよ。」

 

「すべてを受け入れる?」

 

 プレイヤー様が仰る全てとは何ななのだ。そんな考えが脳裏に焼き付く。

 

「えぇ、人間も罪人も妖怪もアンデットだって、終いには幻想郷の滅びだってね。もちろん、滅びない様に動く者も幻想郷は全てを受けいるわ。それはそれは残酷な話ですわ」

 

 今までやってきた法国の教典が間違っていたというのだろうか。プレイヤー様は滅びすらも受け入れると言うがあまりにも荒唐無稽な話に感じてしまい理解が及ばない。

 プレイヤー様が罪人すら、受け入れると言うのは我々も受け入れて下さるということではあるのだろうが。

 

 

「幻想郷の話はこれぐらいにして貴方達の話を聞かせていただけるかしら」

 

 アンデットすら受け入れることについては、疑問が残るがプレイヤー様が受け入れて下さるからには、正直に話すべきだろう。

 

「我々陽光聖典は、法国の最高の特殊部隊であり『六色聖典』の内の一つであります。この六色聖典にはある魔法が掛けられていまして、特定の条件下で3回以上質問されると死んでしまうというものなのです。つまり、私が貴方様に話すにはこの魔法をどうにかしなければなりません」

 

 プレイヤー様には悪いが、この魔法解除して頂けねば死ぬ可能性がある。しかし、この魔法の解除は可能なのだろうか。

 

「これを使いなさい。このマジックアイテムは世界級アイテムを除く、あらゆる呪いや状態異常を回復することが出来る筈ですわ。」

 

 敵対していた我々ですらプレイヤー様は、殆ど間を置かず国宝級のアイテムを与えて下さった。

 だが、本当に我々が法国の魔法ですら、解除するアイテムを貰っていいのだろうか。

 

「この様な国宝級のアイテムを頂いて、宜しいのでしょうか」

 

「構わないわ。そのアイテムならまだ数はあるから。それより法国について教えてくれるかしら。」

 

「了解しました。」

 

 法国の内情をプレイヤー様に粗方、説明する。

 ふと、プレイヤー様をプレイヤー様と読んで良いのかと思う。

 

「そのプレイヤー様、あなた様をなんとお呼びすればいいのでしょうか?」

 

「そうねぇ、紫でいいわ」

 

「了解しました。紫様。」

 

「貴方達、ここは人間も神も妖怪や異形種が共存する場所よ。貴方達は大丈夫かしら。」

 

 突然、紫様に確認される。ここまでして頂いて裏切る訳にはいかない。

 

「紫様、その様な心配はご無用です。我々は法国の教典より貴方様を信じております。」

 

 我々を監視していた法国よりも、我々に無償でアイテムを下さった紫様の方が信頼出来るだろう。

 

「貴方達には神の試練、『パワーレベリング』をして貰います。」

 

「『ぱわーれべりんぐ』とは何でしょうか。紫様」

 

 

「自分より強い敵に攻撃し、倒すことで経験を積み、更なる力を手に入れる修練かしら。肉体と精神の両方を鍛えることが出来るわ」

 

 つまり、陽光聖典という地位に甘んじ、天狗になっていた我々の精神と肉体を同時に鍛えてくださるという事。

 

 それに加え、力を手に入れる修練でもあると紫様は言っている。

 

「なるほど。紫様は我々に力を与えてくださるわけですか。」

 

 これはただ力を貰える訳では無いだろう。神の試練と紫様が言われているのだから。

 

 たが…紫様の返事次第で意味が変わってくる。

 

「その認識でいいわ。」

 

 その認識…やはり神の試練はクリアして、当たり前。

 クリア出来なければ紫様は落胆し、我々を見離す可能性が出てくる訳だ。

 

「そこのスキマ妖怪、あたいと勝負しろ。」

 

 後ろから子供の声が聞こえた。羽を生やしている為、人ではない。

 だが、紫様を『スキマ妖怪』と呼ぶこの子供は何者なのだろうか。

 

「チルノちゃん、やめようよ。」

 

「いやよ。妖精と勝負する理由がないわ。」

 

 紫様、迷惑されているなら咎めた方がいいかもしれんな。

 

「紫様に失礼だろう。」

 

「あら、ニグン隊長。そこの妖精は見た目も中身も子供だけど貴方達より強いわよ。」

 

「え?本当にこの子供がですか?紫様。」

 

 やってしまった。幻想郷は全てを受け入れると言っていたではないか。つまり、まだ人以外の者を受け入れていない、我々は紫様に失望されてしまったのでは。

 これだけの力を持つものに失望されたと、そう考えると血の気が引いていく。

 

「えぇ、本当よ。そうねぇ模擬戦でもしたらどうかしら。」

 

 模擬戦? つまり、これも試練の一つという事だろうか。

 

「あたいはこのおっさんと戦えばいいのか?」

 

「えぇ、そうね。」

 

「紫様、これも試練の一つなのでしょうか?」

 

「そうよ。これも試練の一つよ。」

 

 ならば、紫様の期待に答えるべく本気で戦うまでだ。

 

 ー模擬戦ー

 

 ニグン隊長にはチルノ&大妖精と模擬戦して貰う事にした。

 

  今回の模擬戦は成り行きな感じはあるが、全く意味がないものでは無い。

 

・意志を持ったNPCの戦闘がどのようなものか知ること。

 

・⑨であるチルノで、この世界の人間とどれ位戦えるか知ること。

 

・この世界のもう一つの効果が使用できるか確かめる事。

 

 この三つの理由がある。2番目は興味本位ではあるが…。

 

 1番目と3番目は出来るだけ確認しておきたい。

 

「今回の勝負は10対2だけど、双方問題無いかしら。」

 

「最強のあたいには関係ないね!!」

 

「あの妖精が我々より上ならば同数では勝てないでしょう。ならそのハンデを有難く頂戴するとしよう。」

 

「では、開始。」

 

「急いで天使を召喚せよ。」

 

 ニグン隊長は取り敢えず召喚魔法か。そして、チルノも動き出す。

 

「くらえ、『魔法三重最強(トリプレットマキシマイズ)位階上昇化(ブーステッドマジック) 氷柱の騎士槍 (アイシクル・ランス )』!!」

 

 

 おー、召喚されたばかりの炎の上位天使(アークエンジェルフレイム)が貫かれて一撃でやられてる。

 

 まぁ、魔法位階上昇化(ブーステッドマジック)で第七位階まで引けあげた上でだからな。MP 50ポイント位は使ってるから仕方がない。

 Lv 100でスキルを含めて平均が大体MP 1300ポイント程度、Lv 49なのでMP 500ポイント位のはずなので、チルノ場合、MPの1割程度消費する事になるが、装備とスキルにより冷気系魔法をMP消費量30%減で発動できるので、MP切れは中々起きないだろう。

 しかも、この魔法は位階に応じて複数の氷柱が出てくるから、召喚された10体の内の監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)の周りにいた護衛役2体以外の8体が被弾し、倒れるという効率の良さだ。

 

 元々は弾幕ごっこが出来るように手数の多い、この魔法を覚えさせた筈なんだけどな。

 

「どうだ、あたいの力をみたか。」

 

「これ程の力があるとは…流石は神の世界の住人だな。天使を再召喚せよ。勝てなくてもいい、一矢報いてみせるぞ。」

 

 天使を再召喚して、攻勢に出るつもりか。

 

魔法位階上昇抵抗難度強化(ブーステッドペネトレートマジック) 拘束(ホールド)

 

 本来、第一位階である魔法を第四位階にし、その上で抵抗難度強化を行っているが、いくら陽光聖典の中でレベルが一番高いニグン隊長が対策を殆どしていないチルノに向けて撃っても、レベル差で効く可能性は1割以下だろう。油断しているから攻撃自体は当たる。だが、抵抗判定で1割以下はキツいだらう。

 ここで成功とかTRPGでクリティカル出して、1発逆転狙ってるみたいな感じだからな。

 

「な、動けないぞ。こうなったら『氷柱の騎士槍(アイシクル・ランス)! 』」

 

 チルノが拘束状態になってる。

 ニグン隊長、運がいいぞ。個人的にニグン隊長の評価が少し上がった。

 よく考えるとオッサンが幼女を拘束しているという事案な気もするが。

 しかし、幼女を拘束した罰かのように氷柱の槍が陽光聖典のメンバーに刺さる。

 幸い、数人が負傷しているが死者は出ていない。

 

「全隊員に告ぐ、負傷者は応急処置をし、再召喚した天使を突撃させよ。さらに突撃に合わせて『炎の雨(ファイヤーレイン)』を撃て。」

 

 敵が冷気属性の魔法を使うから、相手の魔法相殺するために突撃と同時に火属性魔法か。

 安直だが今回は正解かな。突撃と同時に撃つことで魔法による援護射撃にもなるし、魔法自体も突撃に気がいき、チルノも魔法を全部は相殺出来ないだろうし、何よりチルノ自身が火属性が弱点なのでダメージが倍加されるしな。

 

 レベルの差があれど全天使の突撃と弱点属性の魔法 10人分ならそこそこダメージが入る筈だ。

 

炎の雨(ファイヤーレイン)

 

 一斉に攻撃が発せられチルノに向かう。拘束状態でこれなら弾幕用の多段系の魔法でも、相殺しきれないだろう。

 

 だが、ニグンは失敗する。

 

「チルノちゃん、危ない。『転移(テレポーテーション)』」

 

 

上位転移(グレーター・テレポーテーション)

 

  大ちゃんが『転移(テレポーテーション)』でチルノの所に転移し、『上位転移(グレーター・テレポーテーション)』でチルノを連れて攻撃を回避した。

 

  つまり、チルノと大妖精はノーダメージである。

 

「なっ!?、転移魔法だと…」

 

「我々では一矢報いることも出来ないのか。降参する。」

 

 そりゃあ、一撃も入れられないんじゃねぇ。まぁ結果的に自分が弱い事を知るきっかけにはなったけど、いい所までいって失敗するって同情したくなるわ。

 

 弱さを知ってもらえただろうし、レベリングで強くしたら恩は売れるよな。

 

「大丈夫ですか?」

 

 敵を心配する大ちゃん

 

 大妖精は設定では結構、カルマ値を善にしていた筈だ。やはり、カルマ値は性格に関係するのだろうか。

 モモンガさんが極悪人にならない為にプレイヤーには関係が無いことを祈るが。

 

大治癒(ヒール)

 

 むさ苦しいオッサン(陽光聖典)に『大治癒(ヒール)』を使う、大妖精は天使ではないのかと思う。

 

「大妖精とやら、部下を治癒して頂き感謝する。」

 

 少し上から目線な気がするが、一応、礼を言ってるので良しとするか。

 

 一応、神様的な感じで助言しとこう。

 

「貴方達の実力は分かったかしら? それに妖精は幻想郷では弱い方よ。そこの氷精達は妖精の中では強い方でしょうけど、幻想郷全体で見ればそこまで強くない。貴方達が強くなりたいなら、レベリングに耐え力を手に入れなさい。」

 

 こんな感じだろうか。少し大袈裟だが、カリスマ的な感じで纏めれたと思う。(小並感)

 

「はい、紫様。我々は弱さを自覚しました。神の試練に耐え、力を得て見せます。」

 

 実際は伝説級(レジェンド)装備で身を固めて貰い、一撃以上入れて離脱してもらい、僕が倒すんだけどね。

 

 他には試練としてチルノ達や自警団と模擬戦して貰えば良いかな。

 実際、隊長はLv 30位だし村の強者と同等に戦える位なんだよな。

 高レベルのモンスターを倒せば、隊員もLv 30まで直ぐに上がるだろうし。

 

「そのオッサン達に勝ったぞ。あたいと勝負しろ!」

 

 ふむ、どうするべきか。妖精で実験したい事はあるが本来はチルノ達ではなく、他のNPCの妖精で実験しようと思ったが。

 

「分かったわ。勝負してあげるわよ。」

 

 結果から言うと魔法 1発で終わった。

 つまり、倒して仕舞った訳だ。普通はNPCを復活させるには金貨が必要だが、幻想郷では妖精のNPCを蘇生する場合、ある効果のお陰で金貨が不要だった。

 世界には特有の効果があり、例えばナザリック地下大墳墓があるヘルヘイムなら異形種が有利なる効果があるのだが、幻想郷では人間種以外の種族の強化と妖精種は一定時間経過で対価不要で蘇生する事が出来るという効果がある。つまり、妖精種は時間が経てば勝手に蘇生される。

 今回、実験したかったことは異世界に転移されても効果が発動するのか、蘇生までの時間はゲームの時と同じかなどだ。

 

 

 因みにこの日は人里にある八雲 紫私有(という設定)の使っていない屋敷に11人分の食事と部屋とベットを原作には出ないオリジナルの(NPC)に用意させて、陽光聖典をそこに泊めた。

 

 因みにこの後、幻想郷の賢者が集まり会議を開いたが陽光聖典と博麗神社で話した以上の情報はないので割愛させて頂く。それと、妖精は普通に復活していた。

 

 

 

 次の日以降は全装備、伝説級(レジェンド)装備でレベリングをして貰い、普段の装備は神からの恩恵としてプレゼントした装備を使わせている。

 普段の装備内容については、隊員は聖遺物級(レリック)装備の中でも下~中程度の装備で固め、加えて一つだけ聖遺物級(レリック)の中で上位の物を装備を渡している。

 ニグンに至っては、全て上位の聖遺物級(レリック)装備で固め、一つだけ下位の伝説級(レジェンド)装備を渡している。

 しかも、ニグンに渡した聖遺物級(レリック)と隊員に一つ渡した聖遺物級(レリック)装備は同等品か伝説級(レジェンド)でなければ傷つけるのは難しいレベルの物である。

 

 因みにレベリングでは、高レベルモンスターと『土星天の熾天使』を毎日倒し、自警団や村の強者やチルノ達との模擬戦に加えて、自警団の手伝いをしてもらっている。

 

 傷は大ちゃんに癒してもらっているようだ。正直、羨ましい。

 

 

  

 

 

 

 




捏造設定等について

紫が天使召喚していましすが、天使召喚は信仰系以外でも使える設定です。(アインズさんが超位魔法ですが使ってますし)
因みに、『上位転移(グレーターテレポーテーション)』は第七位階という設定にしてます。
ナーベラル・ガンマが『転移(テレポーテーション)』より上位の『上位転移(グレーターテレポーテーション)』使えないのは、レベル的に可笑しいのではと思われるかも知れませんが、NPCの魔法数はプレイヤーより少なく限られているという捏造設定の元に、ユグドラシル時は拠点NPCはナザリックから殆ど出ないだろうという事と階層間の転移が禁止されているので、必要ないだろうという感じで習得させていないだけだと解釈してます。
因みに信仰系魔法使いの大妖精が転移系の魔法を使えるのはシャルティアが『上位転移(グレーターテレポーテーション)』を使っていた為です

チルノの魔法はイビルアイの水晶魔法から取りました。コキュートスが使っていた『穿つ氷柱』でも良かったのですが、コキュートスが使っていたという点から特殊な魔法ぽいですし、位階が分からないのでイビルアイの魔法から捏造しました。(今回使ったチルノ魔法はイビルアイの魔法と同じく第四位階です。)


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帝国編
第五話 闘技場①


遅くなってすみません。リアルで資格試験の勉強していたら書けませんでした。


 ー幻想郷ー

 

 転移して初の朝である。

 

 陽光聖典のニグン隊長の話では、この世界には冒険者という職業がある様なので、冒険者として情報を手に入れる事にした。

 

 あくまで情報収集で遊びに行く訳では無い。

 情報収集ならニグン隊長をそのまま法国に潜伏させればいいのではと藍に言われたが、冒険者と法国から手に入る情報は違うだろうと反論しておいた。

 何度も言うが暇だから遊びに行く理由を作りたい訳では無い。

 

 藍には反対されたが交渉の末、藍と橙も同行するということで許可を得た。

 

 本当は藍に事務や雑務(幻想郷の各勢力の監視と考察など)を行って欲しかったが、それに関しては原作には登場しない(NPC)を使えばいいだけだ。NPCの尻尾や耳などは収納することができるように設定していた為、藍達の同行自体は問題ないが魔法職3名だけだとパーティバランスが悪い気がする。

 

 前衛職の誰か連れていくべきだろう。誰を連れていくべきか迷うが、八雲 紫に好意的または協力的な者は限られてくる。

 以上の条件を加味した上で、強さ的に伊吹 萃香が一番に浮かんだ。だが、もう1人位は前衛職が欲しいものだ。

 

 ここで思い浮かんだのが、白玉楼の魂魄 妖夢だ。まず、自機キャラは総じて高レベルにしている。自機キャラなのでレベルも高く、妖夢は自機キャラにしては珍しく前衛職だ。

 妖夢はLv 86、一般的なユグドラシルプレイヤーであれば経験値消費などの代償なしで召喚できるNPCの最大レベルはLv 80代前半までであるが、それよりも高レベルの妖夢はユグドラシルでは、経験値消費無しで召喚できるNPCを相手する用にステータスも設定している。

 ニグンから聞いた漆黒聖典の隊長クラスが相手でも前衛職として戦えるだろう。

 

 因みに、萃香はLv 100で結構なガチビルドだったりする。戦闘AIの時ではあるがアインズ・ウール・ゴウンのNPCであるシャルティアと互角以上に戦える。(ステータス上は互角程度だが、独自戦闘AIで互角以上に戦うことができた。)

 

 外の世界に連れて行くのは、萃香は月侵略にも同行している(という設定の)為、問題ないだろう。元々、外の世界にいた筈だし。

 妖夢は幽々子に確認しなければならない。許可してくれるかどうか分からないが。駄目なら他を当たるしかない。

 

 

 まず、萃香に伝言(メッセージ)で確認をとる。

 

 

伝言(メッセージ) 伊吹 萃香』

 

 ………

 

「なんだ、ゆかり〜。」

 

 酒を飲んでいる様な陽気な声が聞こえた。多分、飲んでいるのだろうが、鬼とは元々種族的にこんな感じなのかも知れない。

 

「萃香、私と一緒に外の世界に行ってくれないかしら?」

 

 鬼は嘘を嫌うという設定からして、遠回しに言うより率直に言う方がいいだろう。

 

「紫、今度は外の世界に侵攻する気なのか?」

 

 シリアスな声に変わった。少し誤解を与えた様だが、外に出る事については問題なさそうな感じだ。

 

「違うわよ萃香。今回は冒険者としてこの異変の正体を探るのよ。」

 

 情報収集と言うと鬼は面倒くさがりそうなので、此処は敢えてぼかす。

 

「冒険者? なんだそれ。」

 

 

「外の世界の言葉でモンスターと戦う職業の事ですわ。」

 

 

「良いよ、紫。最近、暇してたし、今回の異変解決に付き合って上げるよ。」

 

  これで1人は決定した。次は妖夢だが伝言(メッセージ)では一対一でしか話せないので、白玉楼に出向いて話した方がいいだろう。

 

 隙間を使い転移する。

 

 

 

 

 ー白玉楼ー

 

 冥界についた。冥界は幻想郷と繋がってはいるが別世界である。『永劫の蛇の腕輪(ウロボロス)』で作った世界は一つだけ(・・・・)なのに冥界という別世界が存在するのはなぜか。

 それは、『永劫の蛇の腕輪(ウロボロス)』で願った内容に起因する。内容としては『新たに生成された世界はすべて(・・・)をギルド:幻想郷の拠点とする』という願いの訳だが、問題は『すべてを』である。

 

 他のプレイヤーが幻想郷を真似をして、新しい世界の想像を願ったのだ。

 だが、願ったその時は、真似したプレイヤーは所有者を明記していなかった。

 本来なら後の運営との打ち合わせで決めるのだろうが、願った願いにより世界が生成され、全プレイヤーに対し発表が行われた時、リアル交渉スキルを使い、最初に願った内容の『すべてを』の部分を伝え、所有権をギルド:幻想郷にしたのである。運営もノリノリで許可してくれた。

 因みに新しい世界を作る者は、所有権を明記すれば新しい世界を所有出来るわけだが、ネットの噂で全てが幻想郷に組み込まれると思われ、それ以降に新たな世界が作られる事は無かった。運営としてもそちらの方が助かるため、敢えて何も言わなかったのかもしれない。世界を増やせばサーバーの負荷が増えるので仕方がないが。

 

 手に入れた世界は東京都一つ分の大きさで、冥界だけの空間だと大きいので多数の異界として区切っている。

 

「紫、何しに来たのかしら。」

 

 着いた途端バレてしまった。

  今回、バレたのは冥界の効果に起因するが説明はまたの機会としよう。

 

 

 因みに白玉楼の主である西行寺 幽々子のステータスはモモンガさんに近い。モモンガさんがスケルトンからレイスに変わっただけと言ってもいい。

 アインズ・ウール・ゴウンのギルメンからは『超位魔法が使えない劣化モモンガさん』や『美少女と化したモモンガさん』なんて言われていた。

 

 

 

「あなたの所の庭師借りてもいいかしら。」

 

旧友に話しかけるように会話を切り出す。

 

「紫、貴方にしては珍しいけど、どういう事か訊いてもいいかしら?」

 

 幽々子に今までの経緯とニグンから得た情報を抜粋して話した。もちろん、ユグドラシル関係については少し内容を変えて。

 

「なるぼとねぇ、分かったわ。今回の異変を調べる為には仕方がないわね。それじゃ、その間代わりに料理と庭の管理ができる貴方の式を貸してくれるかしら。」

 

「もちろん構わないわ。」

 

  良し、交渉成立だ。後は…

 

「明日から行動するわ。今回の異変は早めに行動を移すべきだしね。私は準備を進めるけど、妖夢には貴方が話を通してくれるかしら?」

 

 ボロが出ないためにも、早く帰った方がいいだろう。式を手配して、アイテムや偽装用にLv 30程度が使う装備を準備して、帰って寝るか。何だか眠いし、そう言えば飲食睡眠不要の指輪があったけ。博麗神社での話し合いは用事があることにして藍に行かせよう。

 初日だし、精神的な疲労もあるから寝た方が良いかな。

 眠気が結構あるので隙間を使い家のベッドへ、移動する。

 

 

 

 ー翌日ー

 

 

 目が覚めると明治時代に良くある木造の家だった。ここは八雲邸と設定していた場所だ。どうやら、そのまま寝てしまったようだ。

 そんな事より家具として置いておいた柱時計を見ると10時を指していた…。

 冬眠かなにかの設定でも生きているのかと考えてしまう程の爆睡だ。

 

 不味い。時間は指定していなかったが一切、準備していない。家事が出切る(NPC)(Lv 50相当)を召喚し、連れていくNPC(藍や妖夢)が現在装備している物と同じ外装の物を鍛冶系専門の(NPC)にLv 30~40相当の装備として作らせる。

 伝言(メッセージ)で萃香に1時に迎えに行くと伝え、幽々子にも同様のメッセージを飛ばす。

 

 結果、1時ギリギリまで掛かったが何とか問題なく事が進んだ。

 

 転移させて自分を含め5人が集まった。

 

「紫様、今回の作戦内容を。」

 

 藍が聞いて来たが、作戦内容については考えてあるので安心だ。

 

「今回の目的は人に扮して冒険者として情報収集をする事と私達と同じ様に転移してきた者が居ないか調べる事ですわ。そして、今回は周辺国家で一番まともな帝国に行くわ。」

 

 作戦はこれなら問題ないだろう。ニグンから聞くに王国は腐敗仕切っていて、八本指という組織が台頭し治安も悪いらしい。

 現実世界の腐り切った世界を見ている自分としてはこちらに来てまで見たくないし、こちらの世界で力を見せたら権力者の目に止まるのは必須。王国ではトラブルの種にしかならないが、一方、帝国は有能な者は引き入れる様なシステムになっている為、逆に有利になる。

 それに、人間至上主義の法国などは論外である。

 

「この装備に着替えて頂戴。人が居ないところでは、元の装備を使ってもらっても構わないけど、向こうじゃこれでも最上級の装備として扱われてるらしいわ。」

 

 装備は着替えてもらわないと、プレイヤーだってバレる可能性が高い。

 

「了解しました。紫様。」

 

 他のメンバーも了承したらしく、着替えてくれた。特別に一番レベルの低い橙にはLv 50相当の指輪と腕輪、唯一、武器らしい武器を使う妖夢にはLv 30相当ではなく、Lv 50相当の剣を使わせる。

 どこかの奥地の秘境から発見された宝といえば問題ないだろう。

 

「それでは出発するとしましょう。」

 

 隙間を使い全員を帝国首都の城門の2km手前に転移させる。

 

「ゆかりしゃま、ここが帝国なんですか?」

 

 橙が可愛い。これは破壊力あるな。藍の設定に橙を溺愛しているという設定があるが、自分まで溺愛しそうになる。藍の設定の溺愛てどのくらいなのだろうか。二次創作のように変態系とか、娘を可愛がるお母さんとかなのだろうか・・・。個人的にはかなり気になる。

 

 今はこの話は置いておこう。橙の質問に答えなくては。

 

「ここは2km手前だけど、帝国領内ではあるわね。」

 

「では、紫様。行きましょうか。」

 

 さっきまで、藍が少し(橙の可愛さに)悶えていた気がするが、元に戻っていた。

 藍達を連れて帝国の城門まで歩いて行く。30分もあれば余裕でつくのだが、問題は関所である。

 その関所についても多少は考えてある。簡単に言えば山篭りしていた魔法詠唱者(マジックキャスター)と弟子と旅の途中で出会った者の一行で帝国の闘技場で腕試しをしたいという設定で通してもらおうと言うもの。

 

 そんなことを考えているうちに関所まで着いてしまった。

 

「へぇ、嬢ちゃん達が闘技場にねぇ。嬢ちゃん達、魔法詠唱者(マジックキャスター)なんだろう? まぁ少し待ってろ。決まりで持ち物検査が必要なんだ。魔術師組合の奴が来るから。」

 

 顔立ちがアジア系では無いので自信は持てないが、歳は50は過ぎているだろう係員が話しかけてきた。

 

 

「えぇ、構いませんわ。」

 

 適当に返事をして、15分ほど待つとユグドラシルプレイヤーから見たら低レベルとしか言えない魔法詠唱者(マジックキャスター)が出てきた。

 

ㅤ魔法で調べられても良いように、カウンターや探知阻害系の魔法を切る。

 

「山篭りしていたと言うには若く見えるが調べる魔法詠唱者(マジックキャスター)はおぬしらでいいのか?」

 

 これまた50歳は過ぎているだろう男は椅子に座り、訊いていきた。

 

「えぇ、私達に間違いありません。」

 

 藍が返答してくれた。目の前の魔法詠唱者(マジックキャスター)が気に入らないのかイラついているようにも見える。まぁ、ニュアンスが疑っている感じなので、不快に思ってもしょうが無い。

 

「おぬしらは何位階までつかえるのだ?」

 

 この質問は想定内で、最初から答えを用意していた。

 

「私は第6位階の魔法詠唱者(マジックキャスター)ですわ。私の弟子の藍は第5位階まで、藍の弟子の橙ですら第4位階まで使えますわ。」

 

 相手の魔法詠唱者(マジックキャスター)は顔色を変える。

 

「世迷い言を言うではない。かの帝国最強の魔法詠唱者(マジックキャスター)のフールーダ氏と同じ位階の魔法が使えるなどと。」

 

 どうやら疑っているようだ。まぁ無理もないだろうニグンの話では人が個人で辿り着ける最高の魔法だって言ってたし。

 結局、言い返しはするんだけどね。

 

「あら、貴方この装備を見ても信じられないなんて貴方の目は節穴かしら。」

 

 実力を見せるには煽ったほうが早い。

 

「な、何!?、道具鑑定(アプレーザル・マジックアイテム)

 

 慌てて、魔法詠唱者(マジックキャスター)は、鑑定系の魔法を使ったようだ

 

「なんという膨大な魔力を持つマジックアイテムだ…。アダマンタイト級冒険者の装備でもここまで揃えて居るものは中々いないだろう。」

 

「まだ、信じて頂けないならここで第6位階の魔法を使ってもいいのですが。」

 

 さらに追い打ちをかけて、確実に信じさせる。

 

「分かった。上に報告してこの者達を通させよう。」

 

 元々いた受付の男は少し慌てて答えてきた。なんだか、脅したようになってしまった。

 

「あぁ、それがいいだろう。ここにいるもの全員でかかっても勝てないどころか足止めにすらならんだろうしな。」

 

 魔法詠唱者(マジックキャスター)は、帝国最強の魔法詠唱者(マジックキャスター)と同等クラスと理解した様だ。信じてもらえるなら問題ないだろう。

 

 そのまま、通行税を払いすんなりと流れで帝国首都に入ることが出来た。因みに、帝国のお金はニグンから貰った。(カツアゲ)

 

「紫様。これからどう致しましょうか?」

 

「冒険者組合に行って、冒険者として登録かしらね。」

 

 会話をしながら帝国の大通りの曲がり角に差し掛かる。

 

「痛たた。」ドン

 

 その曲がり角から出てきた少女はプレートはしていないが冒険者と思われる装備をしていて、急いでいたようでそのままぶつかってしまった。

  

 

 

 ーアルシェ(第三者) 視点ー

 

 アルシェ・イーブ・リイル・フルトは、ワーカーチーム『フォーサイト』のメンバーである。

 普段通り、仕事の打ち合わせをする為に馴染みの酒場へと向かっていた。

 

「痛たた。」ドン

 

 アルシェは誰かとぶつかってしまった。ぶつかった相手が貴族だった場合のことが思い浮かぶ。その場合、大変である。

 鮮血帝によって貴族の位を取り上げられ、親は借金だらけである今、相手に怪我をさせた場合、法的に罰せられずとも貴族への賠償金や治療費などを請求されたら、払えるわけがないのだから。

 そうなれば、どうしようもない。

 

「大丈夫かしら? 怪我はない?」

 

 アルシェは、冒険者とわかる服装をしているのに、心配をしてくれることから貴族でなさそうだと感じた。もし貴族でも無理を吹っ掛けるタイプではないように思えた。

 

 アルシェは大丈夫なことを伝えて謝ろうと思い、立ち上がり顔を上げる。

 だが相手の顔を長く見れなかった。理由はタレントによって魔力をみてしまったためだ。

 

「ば、化け物」

 

 アルシェは謝ることも忘れて、つい口に出してしまった。同時にあまりにも強大な魔力によって吐き気がアルシェを襲う。

 

「大丈夫? 体調が優れないようだけど。」

 

 アルシェの師匠であったフールーダより膨大な魔力を持つ、『化け物』はアルシェに近寄る。

 

「ま、魔力が…」

 

 

 

 ー紫 視点ー

 

 

 え、何この状況。化け物と言われた上に、相手体調が悪くなってんるんですが。

 

 察するに、魔力はMPの事だとすると、常人とは離れたMPみてヤバい奴だと思われてしまったみたいな感じだろうか。魔王に対面したみたいな。

 

「そうね。そこで少し話しましょうか。」

 

 あれ、これって体育館の裏に呼び出し(怖い方)みたいなものではないのだろうか。

 

「は、はい。分かりました。命だけは・・・」

 

 うわぁ…完璧に誤解された。まぁ、気にせず路地裏に連れ込んだけど。

 これで姿が男ならアウトだな。

 

「貴方、どうやって私の魔力を知ったのかしら? 魔法は発動していないみたいだけど。」

 

生まれながらの異能(タレント)によるものです。」

 

「タレント?」

 

 タレントて何なんだ。テレビ等に出る人というイメージしかないのだが。

 

「私のタレントは相手の魔力をオーラの様に見ることが出来るんです。」

 

 タレントについては説明してくれないのか…。ニグンも教えてくれなかったぞ。いや、常識なのか。聞くと怪しまれるかな…。

 

 ニュアンスからするとスキルに近い感じかな。この世界の住人全員がこんな能力を持つ訳ではないにしろMPを知られ、化け物扱いされるのは良くないだろう。

  

「そう。これならどうかしら。」

 

 指輪をつける。この指輪はあるダンジョンの周回用の指輪である。

 そのダンジョンは、総MPの多い者を順に狙ってくるAIを持った敵NPCが大量に出てくる魔法詠唱者(マジックキャスター)殺しのダンジョンである。

 自分にとってこのトラップは致命的だった。もちろん、魔法職のNPCも連れてダンジョンに挑むが、元々耐久がない魔法職を狙われれば火力が落ち、次は中途半端に魔法職を取っている自分が狙われる訳で、火力が落ちたパーティはズルズルと負けていくという事になる。

 最初は魔法職のレベルの高さで狙われているかとも思ったが、虚偽情報魔力(フォールスデータマナ)を使用した時は襲われなかった為、総MPの量によるものだと判断し、虚偽情報魔力(フォールスデータマナ)とそのダンジョンに役に立つデータクリスタルを込めて作ったのがこの指輪だ。

 

 この指輪ならMPを欺く事ができるだろう。因みにこの総MPで判断するシステムは幻想郷の罠の一部に使われている。

 

「魔力が減った?」

 

 目の前の少女はかなり驚いている様子だ。

 

「この指輪は魔力を欺く事が出来るわ。この事は秘密にしていただけると嬉しいのだけど…。それより貴方の名前を聞いていなかったわ。 名前はなんというのかしら?」

 

 魔力の事は秘密にしてもらおう。記憶改変や殺してしまうのはどうかと思うしな。

 

「アルシェ…アルシェ・イーブ・リイル・フルトです。」

 

 何だが辿々しいが名前も聞けたし格好が冒険者ぽいし、冒険者ならツテもあるだろうし、モモンガさんやギルド︰アインズ・ウール・ゴウンやナザリック地下大墳墓の情報が無いか調べてもらうか。

 ついでに冒険者になる時になにか役に立つかもしれない。

 

 

「冒険者の様な姿をしているけどプレートをしていないわね。」

 

「はい、私は冒険者ではなくワーカーです。」

 

 確か、ニグンの話では汚れ仕事もする冒険者組合を通さない冒険者みたいなものだったよな。

 

「ではアルシェ。貴方には幾つかの選択肢があります。ここで死ぬか、今あった記憶を消して何事も無かったように元の生活に戻るか、私の依頼を聞いてくれるかよ。もちろん今回ぶつかったのは話ながら歩いていた私にも非があるし、ここで死ぬというのは今抵抗した場合と言うことになるかしら。依頼を聞いてくれるなら報酬もあるわ。」

 

 まぁ、依頼の方に誘導するための選択肢だが。選択肢から選ばせる事で相手の思考を誘導する。もし相手が裏をかく場合も視野が狭くなり予想が付けやすくなる。

 

「報酬てなんですか?」

 

 報酬の話から入るって、意外と金にがめついのか…?

 

 まぁ、金を払えば裏切らないのなら別にいいが、他の奴にもっと多い金で情報を売られたら困るしな。金ではないものを報酬にして様子見だな。

 

「困った時に私が力を貸すなんてどうかしら? 報酬を訊くということは今の記憶を消すのではなく、報酬が欲しいということになるけど理由を聞いてもいいかしら?」

 

 理由は嘘か本当か置いといても聞くべきだ。その時の仕草や様子で相手が何を考えているか、騙し合いの世界で生きてきた自分にとっては判断材料にもなる。

 雰囲気では多少の気品はあるが政戦や騙し合いは上手くないだろう。もしこれで上手かったなら相当な詐欺(ペテン)師だ。

 

 ・・・

 

 ・・・

 

 

 ふむ、話を聞くに未だに貴族の生活をする借金まみれの両親のとばっちりを受ける可哀想な子という感じかな。

 元々、帝国の学院に通っていて、第3位階まで使えるようだし…。ワーカーには収入が高くてなった感じか。

 この世界の住人ではない自分から言わせてもらえば胡散臭いが、誰しもある程度の複雑な事情はあるものだ。

 この世界ではこういう事もあると言うだけの話である。

 

 アインズ・ウール・ゴウンのメンバーだって結構、ブラックな自虐ネタを使ってたし…。

 モモンガさんは天涯孤独だって言ってたし。

 とは言え、モモンガさんとはそこに親近感を感じた。周りは権力や金目当てで友と言える者はアインズ・ウール・ゴウンにしか居ない自分と、ユグドラシルの中にしか居場所がないモモンガさん。

 今、思えば自分も居場所がユグドラシルにしか無いから、ほぼ毎日ログインしてギルドを維持出来ていたのかも知れないな。

 

 つい、感傷に浸ってしまった。ホームシックというやつだろうか。そう考えると無駄に広い現実の家よりユグドラシルの方が家に近かったのかもしれないな…。

 

「あなたの事情は分かったわ。報酬については満足かしら…別途、かかる費用や成果しだいではお金も出すけど。」

 

「それでよろしくお願いします。」

 

 どうやら納得してくれたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ーアルシェ視点ー

 

 

「それでよろしくお願いします。」

 

 私は悪魔の様な契約に同意した。

 

 

 私は膨大な魔力を持つ魔法詠唱者(マジックキャスター)に出会ってしまいました。

 その魔法詠唱者に迫られた選択肢は3つでした。死か記憶消去か依頼を受けるか。何故か報酬も出すという。しかも、あれだけの魔力を持つ者が力を貸してくれるという報酬なのだ。

 このままでは親の借金は増えていくばかりでどうせ家を出なければならない。ならば、ここで力を借りれるというパイプを作ることは悪いことではないと思う。そう思いつい返事をしてしまった。

 

「依頼の内容は私の友人を探してほしいの。アインズ・ウール・ゴウンというチームに所属しているモモンガという人物よ。見た目はアンデッドだけど悪い人ではないわよ。」

  

 アンデッドの知り合いを探すとは難し過ぎるのではないかと思うが受けた以上、やらなければならない。

 

「居場所の推測とかありますか?」

 

「そうね。ナザリック地下大墳墓という場所なのだけど聞いたことあるかしら?そこでは一番偉いはずよ。」

 

「いえ、聞いた事ありません。」

 

 全くもって聞いたことのない場所だった。

 

 

 

 

 

 ー紫 視点ー

 

 モモンガさんについて説明したが、ギルマスなんて言っても分からないだろうから、一番偉い人と言ったが実質的には事務作業みたいな事しかしてないイメージがある。

 何か分かった時に連絡が取れるように、ギルド︰幻想郷の紋章を付けた短杖(ワンド)状のアイテムを渡す。

 索敵NPC用のアイテムで、これには複数の魔法が込められている。まず、伝言(メッセージ)で位置情報が送信されるという効果。NPCの伝言(メッセージ)は、チャットのようになるのだが、プログラムが取得した座標データを送信させるようになっている。これに加えて状況に合わせてテンプレートメッセージが送れるようになっている。

 値を0にすればそのまま伝言(メッセージ)が繋がる。これで人間も使えるだろうし、ボタンの操作により値を変えて送信できるので声が出せない時テンプレートメッセージも役に立つ。使い方を教えれば誰でも出来るだろう。

 他にも効果があり、72時間に1度だけ物理攻撃・魔法効果を無効化する効果という効果付きだ。

 他にも多数のバフ効果があるが主な効果はこれだけだ。

 

「このアイテムを貸すわ。何か手掛かりを見つけたらそれで教えでちょうだい。」

 

「こんなに高価なアイテムをお借りして良いんでしょうか」

 

「問題ないわ。使い方を教えておくわね」

 

 使い方を教えて一度、解放する。手掛かりを見つけられなくても『タレント』について分かっただけでも万々歳だ。

 

 アルシェを見送った後、冒険者組合へと移動する。問題なく冒険者組合につき、登録をすませる。

 

「紫様、これからどうしますか?」

 

「そうねぇ、まずは闘技場かしら。」

 

 

 

 

 

 

 

 




虚偽情報魔力(フォールスデータマナ)…オリジナルで原作の虚偽情報生命(フォールスデータライフ)の改変です。
東方要素が少ない気がしますが、まだ転移直後のプロローグ的な感じなのでキャラを出せないんです。
アインズさんがアダマンタイト級になるまでには東方キャラが活躍できる場面がある予定です。


追記 誤字報告ありがとうございます。


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第六話 闘技場②

前回に続き今回も闘技場なのでサブタイトルもナンバリングを変えただけです。



 ーバハルス帝国領内の酒場ー

 

 

 帝国首都にある酒場は、今日も普段と変わりなく冒険者や荒くれ者達で賑わっていた。

 

「しってるか?」

 

 カウンター席に座る男は、隣に座る友人に話を振る。

 

「なんだよ。今日はやけにテンション高いな。」

 

 テンションの高い友人に驚いているが、酒の席では良くある話で、気にせずいつものように気兼ねなく返事をする。

 

「今日、闘技場に行ったんだけどよ。ずけー美人揃いの5人組の冒険者チームが出てたんだよ。しかも女だけのチームだぜ。内3人は少しガキだが見てくれは悪くなかった。その上、めっぽう強いと来たもんだ。グッとくるものがあったぜ。」

 

「そうかよ、お前はいつもそうだな。てか、お前幼女好きの変態だったのかよ。」

 

 興味無さそうに返事をする男。

 

「幼女好きじゃねぇ。女だけの冒険者チームなら数は少ないが普通にいるが、そいつらは1日でミスリルになったんだぜ。俺には魔法の事はよく分からねぇが魔法詠唱者(マジックキャスター)の方は第5位階の魔法を使い、剣士の方はオーガを一刀両断したんだぜ。実力だけならオリハルコン、いや下手したらアダマンタイト級だ。」

 

「そいつは凄いな。」

 

 話を聞く男も魔法には詳しいわけではないが剣士であり、冒険者でもある。

 男はオーガを一刀両断するという偉業を成し遂げた女冒険者チームの話を俄に信じられないが興味が湧いていた。

 

「そうだろ。明日も闘技場で試合をするらしいんが、その相手があのギガントバジリスクだってよ。服がはだけて、あられもない姿が見れるかもしんねぇぜ。」

 

「確かにいい試合が見れそうだが。なぜ、ギガントバジリスクのような強力なモンスターが闘技場にいるんだ?」

 

 男は不思議に思う。ギガントバジリスクはアダマンタイト級冒険者が数人がかりでやっと倒せるレベルだ。そんなモンスターをテイムする者がいるとは思えない。

 

 

「なんでも次の相手のギガントバジリスクは珍しいタレントを持ったテイマーがアダマンタイト級冒険者1チームとオリハルコン 2チームと協力してテイムしたらしいぜ。それにその試合で勝った方は武王と戦うって話だ。明日の試合は皇帝陛下も来るらしい。案外、鮮血帝なんて呼ばれてるが陛下も美人に目がない普通に男なのかもな。お前も明日の試合を見に行かないか。」

 

 皇帝に勝手に親近感を感じている男は、酒を飲み笑いながら話す。

 

「何で野郎と一緒に見なきゃならないんだよ。そこまで美人で強いと言うなら見に行くけどよ。」

 

「相変わらず素直じゃねぇな。」

 

 結局、見に行く友人にそう言いと男達はその後も陽気に会話をしながら酒を交わす。

 

 

 

 

 

 

 ー闘技場紫 視点ー

 

 

 今、闘技場でゴブリンやオーガと対面しています。

 え?何が起こったのか?正直、自分にも分からない。

 まず、冒険者組合に登録したあと闘技場を下見しに行った。

 そこで受付に内容の説明をしてもらっていた訳で。その途中で、別のスタッフが受付嬢に耳打ちをした。

 

 内容としてはどうやら今日、試合を行うはずだった冒険者チームが来れなくなったらしい。既に受付嬢には第6位階まで使えることを言っているわけで、何故か参加するように進められ訳が分からない内に急遽参加することになってしまった。

 とりあえず、誰でもいいんで詳しいルール説明を…。

 いや、そんな事しなくても藍に任せればいいんじゃないか。頭もいいしなんとかなるんじゃね?

 

「藍、橙、やっておしまい」

 

 某水戸の御老公スタイルで行けると思う。(BBAじゃないからな)

 

「はい、了解致しました紫様」「わかりました、ゆかりしゃま」

 

 ロリコンじゃない筈だか、橙かわいい。もちろん、藍も可愛いが、橙には小動物的な可愛さがある。

 

「あっ」パタ

 

 何も無いところで橙が転んだ。そういえば、ドジっ子キャラ付けてたな。よくも橙を、許さんぞゴブリンどもめ。設定したのは自分だろって?ㅤゴブリンがいなければ橙は転ばなかった。いいね?

 

「がきが ころんだ さきにころす。」

 

 一人(匹?)のゴブリンが橙に向かって走り出す。

 

「『魔法最強化(マキシマイズマジック) 龍雷(ドラゴン・ライトニング)』、私の橙に何してくれてんの?」

 

 キャラ崩壊してね。いや、なんか自分が想像していた藍との差が激しい。それよりも、ゴブリンの一部炭化してるんですが。

 この過剰な反応は、橙を溺愛しているという設定の性なのか。これじゃ893じゃないですか。893で思い出したがそういえば、紅魔館のメイドである咲夜にも似たような設定が…。これ以上は考えないようにしよう。

 完璧に設定ミスだろと思うかもしれないが大抵、人間(?)一つくらいは欠点があるものだからこの設定も問題ない。(言い訳)

 

「なんという ちからだ。ぜんいん で かからなくては やられる。」

 

 その位の判断はつくのか。モンスター、いや厳密に言うと亜人種だが。そう言った者達の生態や知能などは不思議である。

 

「斬れぬものなどあんまり無い!!」

 

 そのセリフが聞きたかった。萃夢想妖夢でもいいんだよ。

 

 全員で掛かってきたが、その甲斐なくオーガは妖夢によって真っ二つになり、ゴブリンの集団は萃香が蹴散らした。

 同じ鬼なのに全然違うな(棒)。西洋ダカラカナ。

 

 そしてこちらにも1体向かってきたので、本気(申告上の)を見せてあげよう。

 

転移(テレポーテーション)

 

 転移でオーガの後ろに回り込み日傘の先端で頭部を刺す。基本、魔法職をとっている上に、この傘の武器種は杖に近い扱いなので、本来なら威力は期待出来ないが、敵が低レベルなのでLv15 分の将軍(ジェネラル)による前衛職のステータスアップにより攻撃力が多少上がっている為、こちらの攻撃はLv30の前衛職と同等かそれ以上であり、オーガ程度なら一撃で仕留められるだろう。

 だが、前衛職Lv30と第6位階の魔法を使えるとなると確実に怪しまれる。

 

龍雷(ドラゴンライトニング)

 

 突き刺した日傘から電流を流しオーバーキルする。

 

 オーガを倒し終えると歓声が上がり、他のモンスターも全て萃香や妖夢、藍と橙によって倒されていていた。

 

 やはり、ユグドラシルの時と同様にレベル差でオーガだと相手にすらならないな。

 

 その日は何故か宿も用意してくれた。出来れば明日の試合にも出てほしいとの事。相手の腹の中を読むに帝国(の闘技場)にスカウトしたいようだ。

 

 明日の試合の件には了承しておいた。

 

 この時は帝国へのスカウトが闘技場ではなく宮廷だったことは知らなかった。情報が少な過ぎるんだよな。

 

 その後は冒険者組合の人がミスリル級に認定するという事を伝えに来た。プレートに関しては明日までに発行するらしい。

 明日までは絶対に帝国にいて欲しい感じが出ているな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー帝国 宮廷ー

 

 

 バハルス帝国主席宮廷魔法使いのフールーダ・パラダインは、報告に来た弟子の話を聞き、喜びを隠せないでいた。

 

「私と並ぶ第6位階の魔法詠唱者(マジックキャスター)か。それが眉唾の可能性もあるが調べないわけにも行かないな。」

 

 欲しがっていた玩具(おもちゃ)を与えられた子供のように老人は喜びながら、現皇帝 ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスの所に向かう。

 

 

 ………

 

 

 

 ージルクニフ sideー

 

「それで爺、お前はどう思うのだ?」

 

 ジルクニフは突然現れた第6位階の魔法詠唱者(マジックキャスター)と英雄級の弟子とその仲間の一団について同じ第6位階の使い手であるフールーダに問う。

 

「そうですな。現状、第6位階とはいかなくても第5位階まで使えることは間違いないですな。龍雷(ドランゴライトニング)を使っていたようですから。第6位階の転移(テレポーテーション)を使ったという報告も上がっております。これについては次元の移動(ディメンジョナル・ムーブ)の可能性もありえますが、弟子が第5位階の魔法を使っていた点から考えると第6位階も使える可能性が高いかと。」

 

「ほう。爺、えらく嬉しそうだな。」

 

「私と同格の魔法詠唱者(マジックキャスター)に久々に出会えたので少々舞い上がってしまいました。」

 

 200年前の十三英雄のリグリット・ベルスー・カウラウより高みにいると自負しているフールーダにとって、同格の存在は魔法の深淵を覗くための一歩になると思っていた。

 

「しかし、何故今になって冒険者として闘技場に参加したのか。気になるがこちらに引き込める可能性もある以上、手荒い真似は出来ないな。怪しまれない程度に出来るだけもてなせ。」

 

 ジルクニフは思わぬ者の出現にどうするべきか冷静に考えていた。

 

「心得ております。明日の試合に出てもらう事にして、宿を用意し帝国に留めています。」

 

「そうか。爺はこういう事になると仕事が早いな。」

 

 魔法関係になると我を忘れるフールーダを軽く茶化しながらも、突然現れた一団への対処を考える。

 

「俺も直々に出た方が良さそうだな。明日の予定を全て辞めて闘技場の観戦をするように変更しろ。」

 

「では、私も観戦していいでしょうか?」

 

「爺、意地悪を言うな。お前が来なきゃ第6位階の魔法詠唱者をどうしろと言うんだ?」

 

 冗談めかして言い放つ。

 

「まず、第6位階を使う者以外にも英雄級の弟子や剣士がいる時点で、帝国騎士が幾ら集まろうと勝てないでしょうな。」

 

 フールーダは笑みを浮かべながらも冷静に状況を判断する。

 

「一応、冒険者組合に奴らをミスリルかオリハルコンに推薦してはどうだろうか。」

 

 幾ら国に関わらない冒険者組合でも、実際に実力のある冒険者を推薦する事に問題は無い。

 

「それがいいでしょうな。実力が飛び抜けているとはいえ、実績がない。ならばオーガを一刀両断した剣士がいるという事でミスリルに推薦しましょう。それに明日の試合でアレ(・・)を倒せば、更なる実績を積むことが出来るでしょう。」

 

 ジルクニフはその話を聞いて、明日の試合の相手を決めて許可を出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー紫 視点ー

 

 

 

 さぁ、闘技場2日目です。本日のお相手は…

 

 

『ギガントバジリスク』です。

 

 えっ、ギガントバジリスク…いや待てよ。何でトラウマ掘り返してくるんだよ!!(イラついてます)

 

 帝国に闘技場作った皇帝陛下のせいだな。(ある意味当たっている)

 皇帝陛下、見に来てるじゃん。もしかしてトラウマ知っててやってるのか。(イラついてます)

 

 とにかく餅つけ。いや、落ち着け。落ち着くんだ僕。皇帝陛下がそんな事する訳ないだろ。(許可は出してます)

 しかし、ギガントバジリスクは死すべき慈悲はない。トラウマを想起させた罰だ。命をもって償って貰うぞ。

 

「萃香、妖夢やっておしまい。」

 

 またもや、某水戸の御老公風に言ってみた。え、何故今回は橙や藍じゃないかだって?

 

 魔法使うと1発で倒してしまう可能性があるから…。

 どう見てもアダマンタイト級がやっと倒せる相手を一撃は不味い。なので剣や素手なら手加減出来ると思い接戦を演じさせている。橙には魔法で援護させているがバフをメインで攻撃は第3位階のみにしている。

 

 妖夢はギガントバジリスクに比較的ダメージの無いように掠るように切り刻む。

 

 ギガントバジリスクが爪を振りかざし攻撃すると、接戦している様に見せる為、剣で相手の攻撃を受ける。

 

 萃香は全てギリギリで躱して、軽く殴る。いや物理攻撃強いな…。敵のギガントバジリスク、脳震盪か知らないけどフラフラしてるよ。ボクシングでいうKOも近いよ。というかレフリーが1回中断させるレベルだよ。いや、あんまりボクシング知らないけど。

 

「紫様、そろそろ我々の力を見せる時ですね?」

 

 あらかじめ決めておいたセリフを藍が言い、観客を沸かせる。

 

「そうね。」

 

魔法二重最強遅延化(ツインマキシマイズディレイマジック)電撃球(エレクトロ・スフィア)

 

魔法二重最強遅延化(ツインマキシマイズディレイマジック)電撃球(エレクトロ・スフィア)

 

魔法二重最強遅延化(ツインマキシマイズディレイマジック)電撃球(エレクトロ・スフィア)

 

 橙に二重化(ツイン)させた電撃球(エレクトロ・スフィア)をさらに3つ同時に発動するように一つ一つ遅延時間を変えて撃ってもらう。

 

 

『『魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)龍雷(ドラゴンライトニング)』』

 

 時間経過によって発動する橙の魔法に合わせ、藍と共に龍雷(ドラゴンライトニング)を発動させる。

 雷で出来た龍が電気の玉を追いかける様にギガントバジリスクに直撃する。今回の場合、6つもである。

 龍踊り(じゃおどり)という物をしっているだろうか。元々は中国から伝来したもので九州の長崎の『くんち』という祭りで行われていたものなのだが、個人的にはこれを思い浮かべてしまう。

 モモンガさん達もモテない男同盟と称して『クルシミマス(苦しみます)ツリー』なんて作ってたし、遊び心は大事だよね。

 クリスマスの日に仕事でINできなかった時は、散々リア充なんて言われたが…。

 

  そして、6つの玉を追いかける6体の雷の龍全てが命中し、ギガントバジリスクの体を中心として雷が迸る。

 勿論、即死である。

 

「「「「うおおおお!!」」」」「なんだあの魔法詠唱者(マジックキャスター)

 

 観客のほとんどがスタンディング・オベーションしていた。

 

 

 

 

 

 




戦闘描写が苦手だからギャグテイストのような説明口調にしたなんて言えない。
ちなみに、プロットでは東方キャラの活躍は闘技場(帝国編)の話の後に用意してます
因みに、主人公の一人称は感情が顕になった時は『僕』で、普段は『自分』とかです。

追記
沢山の誤字報告ありがとうございます。(沢山あったら駄目だろ)

『くんち』については、書き方が悪かったので少し訂正しました。


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第七話 闘技場③

すみません。久しぶりの投稿です。


 ー闘技場 ジルクニフ sideー

 

 そこには青空が広がり、女冒険者達がギガントバジリスクを倒したことにより、闘技場を覆うほどの歓声が響き渡り盛り上がっていた。

 

 

「爺、どう見る?勝てるか?」

 

 そんな中、闘技場の貴賓席に座る男は横に控える老人に話しかけるが、盛り上がる観客とは反対に険しい顔をしている。

 

「まず、私の見立てから言いますとタレントでは、第6位階まで使えるように見る。タレント無しで考えても、あの威力なら第6位階まで使えても可笑しくないと判断できるでしょうな。

 弟子も総じてレベルが高いですな。藍という者に関しては、第6位階まで使えても可笑しくない技量だ。出来れば、あの者達と魔法について語り合いたいですな。一対一であれば勝負は分かりませんがあの弟子と冒険者仲間も強い。私と私の弟子と帝国四騎士が掛かっても厳しいでしょうな。」

 

 皇帝の護衛としてきていた帝国四騎士本人達を目の前にして、厳しい状況を伝える。

 

 横に控える老人が帝国四騎士に対して、そんな事を言えるのはそれ以上の実力があるからに他ならない。

 だが、逆に帝国四騎士はそれだけの実力を持つ老人 フールーダ・パラダインですら、本人を含めても勝ち目が薄いと判断している事に屈辱ではなく、驚きすら感じていていた。

 

「それにしてもあの魔法・・・」

 

「そうか。ではフールーダ、直接交渉といこうか。」

 

 熱弁しそうなフールーダを若干引き気味になりつつも言葉を遮り、ジルクニフは敵の戦力を鑑みて次の手を打つ。

 

 少々、危険ではあるが直接交渉なら直接相手の人となりや人格を確認できる事に加え、何らかの要求や条件をつけられた時に、皇帝本人が行くことによりある程度の要求なら直ぐに応えることができる事から最良の手だとジルクニフは考えていた。

 

 まずもって、戦力的に互角かそれ以上の相手という厳しい現状、下手を打つと大変なことになるのはジルクニフには容易に想像がついたからだ。

 

 その準備として、ギガントバジリスクを倒した冒険者達の控え室に使者を送る。

 

 もちろん、その使者も冒険者を見下さない者を送るように配慮をして。皇帝に権力が一極集中している帝国だから出来ることであり、王国ではそうは簡単に使者を送れないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 ー八雲 紫 視点ー

 

 控え室に向かうと皇帝からの使者が来ていた

 

 皇帝陛下から呼びたしだと…。ギガントバジリスクを出したのは故意じゃないよな。タレントとがどんなものかわからない以上、皇帝がトラウマ探るタレント持ちの可能性も微レ存。人のトラウマ抉るとか皇帝、最低だな。

 

 いや、待てよ。皇帝から認められて宮廷に呼びだされている可能性がある。一応、活躍すれば取り立てられる事は最初から想定はしていたが、早すぎる。

 アダマンタイト級になれば、皇帝からの依頼も来る様にはなるだろうくらいは予想していたが。いや、ギガントバジリスクがアダマンタイト級だっけ?

 

 早すぎることに変わりはない。なにかの罠かもしれない。

 

 たが、いかないか訳にもいかない。

 

「藍、行くわよ。」

 

 控え室を出て、使者について行く。

 

 

 

 

 

 

 

 ー闘技場 貴賓席ー

 

 

 八雲 紫は皇帝の元まで歩き、跪く。

 

「冒険者チーム 『幻想郷』ここに」

 

「そう畏まった口調でなくても良い。公式な場ではないのだからな。」

 

 

「そうさせて頂くわ。では、今回お呼び頂いた理由を聞いても宜しいかしら?」

 

 ジルクニフは八雲 紫の切り替えの速さに驚くが、些細な問題ではない。

 

「帝国の魔法省に入って欲しい。」

 

 相手の出方や目的や力量を測るために、軽くジャブを入れる。

 

「魔法省に入った場合のメリットをお教え頂けます?」

 

 当然、聞くべきだが相手からメリットを聞くことは下策だろう。

 そう考え、八雲 紫に対する警戒をジルクニフは一つ下げた。

 

「相応の役職と報酬でどうだろうか?」

 

「そうですわね。魔法省に入るということはフールーダ・パラダイン氏の下につくという事でしょうか?

 フールーダ・パラダイン氏以外に優秀な(・・・)魔法詠唱者(マジックキャスター)がいらっしゃるなら入る理由はありますが、私はフールーダ・パラダイン氏と同程度の魔法詠唱者(マジックキャスター)ではあると思うのですが、同程度で上下関係はどうかと思いません?

 フールーダ・パラダイン氏とは魔法について語り合いができ、より魔導の深淵を目指せるとは思いますわ。ですが、それ以外の私の弟子以下の魔法詠唱者(マジックキャスター)と一緒ではあまり意味を感じませんわね。

 それに魔法省だと魔法が使えない仲間が入れませんわ。」

 

「では、対モンスター対策大臣なんてどうだろうか?」

 

「そうですわねぇ…。知り合いに亜人や他の種族(・・・・)がいるので、モンスター対策省のメンバーの制定権とモンスターの定義の制定権いただけるのであれば悪くないですわね。」

 

「では、その内容でポストを用意するので今日はこれくらいにして、後日、調整するとしよう。」

 

 若干、ジルクニフは押されたがフールーダと同じタイプだと思い、警戒を解いて話を後日にした。

 

「えぇ、宜しくお願いしますわ。では、少しフールーダ・パラダイン氏とお話しても構わないでしょうか?」

 

「構わない。魔法詠唱者(マジックキャスター)同士、話したいこともあるだろう。」

 

「感謝しますわ。」

 

 フールーダ・パラダインの元に向かう…。その途中で紫は騎士に目がいく。

 

 

「あら、あなたその顔…」

 

 チッ

 

 レイナースは舌打ちをして、顔を逸らす。

 レイナースは自分の顔に同情する者や忌避する者をたくさん見てきた。

 それ故に只、同情する者について怒りすら覚える。目の前の魔法詠唱者(マジックキャスター)もその手の輩で、しかも凄まじい美貌の持ち主だという事に苛立ちを覚えていた。

 帝国最強の魔法詠唱者(マジックキャスター)が言うには強いようだが、これで実力が無ければ何かしら行動を起こしていただろうとレイナースは考えていた。

 

「あ、違うわよ。只の同情じゃないわ。」

 

 レイナースは思考を読まれたような返しに息を飲んだ。そして目の前の魔法詠唱者(マジックキャスター)短杖(ワンド)を胸元から取り出しこちらに向ける。

 

「はい、これで貴方に掛けられた呪いは全て解けた筈ですわ。」

 

 

「えっ!?」

 

 レイナースは自分の顔を触って確かめる。そこには膿は少しも残らず無くなっていた。

 

「治っている…そんな…こと……」

 

 思わず膝をついてしまう。そしてレイナースの肌に涙が流れる。

 

「顔は女の命ですから、こんな呪いは許せませんわ。それに、これから一緒に仕事をする仲間ですし、これくらい当然ですわ。」

 

 膝をついて涙を流しているレイナースを見て、ジルクニフは驚いていた。レイナースの事ではなく八雲 紫が行った行動と言動にだ。

 偶然なのかも知れないが僅かな間にレイナースの呪いに気づき、事情を知らないはずなのに察する洞察力、そしてそれを利用し仲間意識を植え付けて引きずり込むような行動に。

 

 八雲 紫はさらに歩を進める。

 

「フールーダ・パラダイン殿とは常々、魔法談義をしたい思っていましたの。お近づきの印にこちらをどうぞ。」

 

「これは…。鑑定しても宜しいですかな?」

 

 見たことも無い代物に驚きつつも、抜け目なく鑑定の許可をとるフールーダ。

 

「えぇ、勿論ですわ。」

 

道具鑑定(アプレイザル・マジックアイテム)

 

 そして、手に持つアイテムにフールーダは魔法を使い調べる。

 

「若返りの薬…?」

 

 訝しそうにアイテムを見詰めながら、呟く。

 

「えぇ、そうよ。私の研究の成果の一つという所かしら」

 

(BBa…年が分からなくなったな。いや、そこではないな。)

 

 ジルクニフはある考えにいたってしまった。

 レイナースの呪い解除を含めて、フールーダへの布石だと。

 奴はフールーダが魔法の事になると我を忘れることを見抜いている。いや、奴自身もそうなのかもしれんが。(そうだと扱いやすくて良いのだがな。)

 フールーダの見た目が歳をとっていることから、若返りの薬の持っていないという事とレイナースの呪い解除をしていない事からフールーダには解除できないことを導き出し、有用性をフールーダに示しているのだろう。

 

 そして、俺に帝国全軍に匹敵するフールーダと帝国四騎士の中でも最大の攻撃力をもつレイナースを落とせる事を目の前で見せつける事で、帝国陥落すら容易な事だと言っているも同意。

 確かに、奴の仲間とレイナースで帝国四騎士と騎士達を相手にし、その間に帝都をフールーダと奴が合わせて攻めるという構図なら帝国全軍でも勝てないだろう。

 

 そして、ジルクニフは八雲 紫という女が一瞬で、レイナースの忠誠が無い事とフールーダが魔法の知識で落とせる事を見破った凄まじい洞察力を持ち主である事を理解した。

 

 

 

 そして、ジルクニフは嫌いな女ランキング2位を更新した。

 

 ー紫 視点ー

 

 いや、美少女騎士に顔にかける呪いはアウトだと思う。つい、課金アイテムを使ってしまった。感情が何となく理解出来てしまうので、打算的な考えがなかった訳じゃないが、モンスター対策大臣となれば騎士との役回りが被ることも有り得るから今のうちに恩を売って置くのも悪くは無い。

 感情を読むに、かなりの恩を着せれたはずだ。金髪美少女の顔色なんて伺った事ないから当たってるか分からないけど。

 ちなみに、帝国最強の魔法詠唱者(マジックキャスター)に渡した若返りの薬は、NPCにクエストで金貨を稼がせる時に有用でたくさん入手させていた物だ。

 そのクエストは素材を集めて若返りの薬を作り、依頼人に渡すというシンプルなクエストで、金額が良く、難易度も高くない。だが、めちゃくちゃ時間が掛かるという物である。その代わり報酬が良いのだから文句はない。そこで、シンプルなクエストなのでNPCに任せて周回させて金貨集めていたのだが、今のはその余り、つまり換金する前の若返りの薬をフールーダに渡した訳だ。薬がちゃんと効果がある事は鑑定したら感覚的に分かった。これならかなり喜ばれるだろう。

 

 帝国騎士と最強の魔法詠唱者(マジックキャスター)にはパイプを作れたが皇帝にはまだ作れていない。皇帝と言うだけあって中々腹の中を探らしてくれない。ただ、雰囲気である程度の感情程度はわかる。最初は皇帝はこちらを見くびっていた様子だったが、美少女騎士と帝国最強の魔法詠唱者(マジックキャスター)の心を掴んだ時に動揺が見られた。つまり、かなり相手にとって不味い状況になっているという事で、腹が探れなくても今の所はこちらが有利に話を進められているという事になる。その分、かなり警戒されたが。

 軽く見られるよりは良いが、警戒されていると色々やりにくいから幾つか帝国への対策が必要かもしれない。

 モモンガさんや他のプレイヤーを探すには役職自体は動きやすくはあるが。

 

 というか、皇帝陛下がこっちを見ている。何だが嫌われている感じがするが、皇帝陛下も若返りの薬欲しかったのか? まぁ、この世界には存在しなさそうだからレアな感じは出した方が言いし、作れる数に制限があるといって今度渡そうかな。

 

「皇帝陛下もいりますか? 皇帝陛下は若々しいので使うと若返り過ぎると思いまして。必要でしたら材料集めに時間が掛かりますが言っていただけたら、お作りしますが。」

 

 皇帝陛下、俺様系イケメンぽいので若いとか褒めれば案外チョロかったりしないかな。(願望)

 いや、こちらが下手に出る事で皇帝陛下に少しでも警戒を解いてもらえれば上出来だ。

 

 

 

 ついつい、僕とした事が仕事モード使ってしまった。なぜ、異世界にまできてこんな事をしているのだろう…。

 

 

 

 

 




因みに、ジルクニフの嫌いな女ランキングで2位になったかと言うと、元々に2位だった竜王国女王のドラウディロンが若作り婆という理由で嫌われてたので、加えて帝国を滅ぼしかねない可能性を秘めた八雲 紫は2位に上がるのは間違いないかなと。何考えているか分からないラナー王女程ではない筈。


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第八話 動乱の始まり

中々、投稿できなくてすみません。
書いたはいいけど話はそこまで進みませんでした。

ヒロインがいないなと思い200年ものの童貞(魔法使い )、フールーダと精神的BLルートと肉体的百合になるレイナースルートを考えたなんて言えない…。
後、個人的にエンリと皇帝陛下が好きです。この世界線においても頭皮と胃を痛める皇帝です。
エンリも登場させたいけど、まだアインズ様出せてないからなぁ…。


 あれから、三日が過ぎた。皇帝との会談を重ねて新設されるモンスター対策省の業務内容・規則・賃金などを決めたり、他の有力者に根回しをしたりしている。

 

 心理の読み合いに自信はあったが、皇帝は腹の中をなかなか探らせてくれない。だが、確実に信頼が足りないのは目に見えて分かる。早い所、有用性をアピールしておきたい。

 

 そこで、有用性アピールの一環として、モンスター対策大臣の初仕事である事をしようと考えている。

 

 ある事とはニグンから聞いた話だが、陽光聖典がビーストマンに襲われている竜王国を救援していたらしいのだ。その竜王国をモンスター対策大臣として救援したらどうかと考えている。

 陽光聖典が居なくなった性で竜王国が滅んだとなると、少し後味が悪いのもあるのだが、他国とはいえ救国の英雄というのは発足したばかりの組織の泊付にはピッタリだろう。

 名声が広まれば他のユグドラシルプレイヤーが気づいてくれるかもしれないし。

 

 …………

 

 よく考えてみると…

 何故、僕は異世界に来てまで仕事に追われているのだろうか。

 幻想郷でのんびりとスローライフを満喫したい。

 大臣の役職は、モモンガさんや他のユグドラシルプレイヤーを探す為にはいいかなと思ったが中々にハードだ。

 とは言っても、多少の気は使うものの四騎士の人達やフールーダと話すのも案外、悪くないし楽しい。特に妖夢は四騎士の人達に剣術指南しているし。

 後、それによって四騎士の皆さんは妖夢との実力差を実感したらしく、少し落ち込んでいたので四騎士の人達には賄賂と言ったら聞こえが悪いがバフ系のアイテムを送っておいた。

 

 それよりも、レイナースって言う子がマジでいい子過ぎる。一緒にお茶したり、お喋りをするのだが、孫を持ったお婆ちゃんの気分になれる。(だが、BBAとか言ってはいけない)

 多少は人間だからこちらに近づく理由に、打診的な考えもあるだろう。だが、それでも彼女はまだ人間として純粋な方だと思う。

 ここまでの仲になれた理由は呪いの解除した事もあるだろう。それに、よって忠誠や尊敬に近い感情を持たれているから素直に接してくれているのだろう。

 だが、それでもちゃんと接してくれるならこちらも向き合うのは当然だと思うので今後も交流を深めていきたい。

 

 あとフールーダも研究熱心ないい人だった。ただ、熱心すぎて魔法の事だと我を忘れてしまうのが彼の欠点とも言えるが。

 

「紫様、お伝えしたい事が…」

 

 思考に夢中になった頭を現実に戻すように、後ろに控えていた藍が耳元で囁く。

 

「何かあったのかしら?」

 

「紅魔館を見張らせていた式からの連絡ですが、紅魔館で怪しい動きがあると。」

 

 神妙な面持ちで話す藍。

 

 え、本当に? 割とガチで幻想郷崩壊の危機なのでは?

 

 僕の思考は停止した。

 

 

 

 

 

 

 

 ージルクニフ 視点ー

 

 

 八雲 紫、あの女の行動原理はある程度は理解が及ぶ分、王国の化け物王女よりはマシだが十分に化け物地味ているな……。

 

 諸貴族への根回しは有能な部類ではあるものの、至って普通であった。だが、奴が化け物地味ていたのはそこではなく人心掌握にあると言わざるを得ない。

 

 既に、帝国守護の要である帝国四騎士とは打ち解けているのも問題なのだが。それに加えるように、打ち解けた上で追い打ちをかけるように国宝級のアイテムを渡すという一見、財力任せの様なやり方を、奴は最も効果的なタイミングを見計らって行っている。

 普段なら賄賂のような手段が通じない相手でも有効な様に対策した上でだ。これを偶然と言うのは出来すぎている。

 

 そして、奴の仲間が一流の剣術使いということもあり、お茶会と称して稽古をつけたりしているらしく、四騎士自身も実力差を認めているようで受け取ったアイテムをその時に使用しているらしい。

 

 四騎士は完璧に落ちたと見て間違いないだろう。

 フールーダについても、魔法の研究について話し合っている様で仲が良いようだ。

 やつの策略は俺の周りの人間を落としていき、情報を吸収し、少しずつ帝国への影響力を強めるというものだろう。

 

 俺がこの推測に行き着く可能性が高いのに、自らの有能なことを隠さないのは、俺が血統や地位より有能さを基準に評価しているからだろう。早々に、有能さをアピールして宮廷まで入れば、後は疑われようがどうとでもなると思っているからに違いない。

 

 少なくとも、既に帝国四騎士とフールーダについては奴に対して警戒を解いている。今の奴らなら、酒の席なんかで帝国の機密を奴に漏らしかねない。

 さらに、奴はモンスター対策大臣の初仕事として、竜王国への救援に行ったらどうかと言ってきた。確かに、他国を救えば箔が付くだろう。

 

 帝国周辺は騎士が見回りをしている分、モンスターも少ない。それ故にモンスター対策省は他国に出るしか功績は挙げられないだろう。だが、奴の本心は帝国を掌握した後のことを考えての行動だ。

 

 今、竜王国は存亡の危機に陥っている。そこを救えばどうなるか。奴の名前は一気に英雄として広まるだろう。

 勿論、それだけではなく竜王国に返せないほどの恩を売れる。いや、何も問題を解決してしまわなくてもいい。1度でもビーストマンどもに勝ち、ビーストマンを一時的に退ければいいのだ。奴が居なければ竜王国が滅ぶような環境を維持し続ければ、さらに効果的だろう。

 その様な状態になれば、言うことを聞かなければ滅びる国となり、傀儡国と言っても差支えの無い状態になるだろう。

 何故、それだけで傀儡国が手に入るのに帝国が今まで竜王国を助けなかったか。

 

 それは戦力が足りないことに起因する。帝国騎士を派遣すれば、帝国は消耗するだろう。王国との戦いを行っている身としては、消耗は避けたいので正規軍は送れない。フールーダを送ることも出来るが帝国秘蔵の戦術がバレるデメリットを考えると竜王国を傀儡にするメリットがあっても釣り合わない。

 

 だが、奴らは違う。本気を出さなくとも奴の仲間と奴ならば、ビーストマン共を追い返す程度こなしてくるだろう。

 そうなれば、奴は一度に2つの国を手に入れることが出来る様になるだろう。奴が竜王国を傀儡にした後に帝国に反旗を翻した場合、帝国は奴の仲間と帝国四騎士(少なくともレイナースは確実)やフールーダと竜王国を相手にして戦わなければならなくなる。はっきり言って不可能だ。

 

 だが、ここで奴を止めても無駄の可能性が高い。奴からすれば、竜王国を助けてから帝国を取るという行為には、権力簒奪時の民衆の賛同を得やすくするためのパフォーマンスに過ぎない。なぜなら、奴らは現状でも奇襲なら帝国を落とせるのだから。その上であえてパフォーマンスをするのは英雄が国の実権を握った場合、最初から悪印象を抱く人間は少ないからだ。その手の人間は政治が出来ず、その後の政治から不満が生まれることも多いが奴ならば、政治の方も問題なくこなしてしまうだろう。

 さらに、帝国と竜王国の2つの国の国力を合わせれば、元々帝国だけでも落とせる王国など余裕で落としてしまうだろう。

 

 加えて、法国も人間の国家がまとまる事に関しては妨害はしないだろう。八雲 紫の地位はモンスター対策大臣だ。モンスターへの対抗政策を打ち出していれば、逆に喜ぶかもしれんな。

 

 

 

 皇帝は頭に十円ハゲが形成され始めていることに今はまだ気づいていない。さらに、皇帝は胃も痛めることになる事になるとはこの時は思いもしなかっただろう。

 

 

 

 

 

 ー八雲 紫 視点ー

 

 かなりの時間、困惑し、言葉が出なかった。

 

「そ、それは異変を起こすという事かしら?」

 

「いえ、それだけではなく、我々が外の世界へ出たこともあってか、外に出ることを目的としているようです。」

 

 本当に幻想郷の危機だろう。紅魔勢はかなり優遇しているから強さで言えば、幻想郷でも有数の勢力なのだ。

 

「霊夢は何をしているのかしら?」

 

「協力はしていないようですが、幻想郷に害がない内は動かないようでしょう。」

 

 異変が起きていない為、動いていないという事か。

 

「そうね、紅魔館の住人を外の世界へと出ることの出来る様に、私達から今回の転移異変に関する調査協力としたらどうかしら?」

 

「それなら落ち着くかとは思いますが、外の世界の危険性や彼女達が外の世界で問題を起こす可能性を考えると現実的ではないかと。」

 

 藍は少し考えると、こちらを向いて淡々と説明した。

 

「いいえ、逆だわ。藍、今は中で問題を起こされる方が危機的状況と言えるわ。外の世界で幾ら問題を起こそうが、私達には関係の無いこと。そこで危険な目にあって痛い目を見れば反省もするでしょうしね。だけど、中で今大事を起こされたら?」

 

 個人的には、ユグドラシルの時を考えると力を持つ紅魔勢に幻想郷で暴れられる方が不味い。外の人間が幾らか死んだ所で関係はないのだから。

 やはり、八雲 紫というキャラに心が引っ張られている気がする。幻想郷の住人以外なら多少死んだ所で問題ないと思える程度には。それに依頼という形にすれば、紅魔勢の足取りや外で行った事については把握ができる。勝手に出られるよりましだ。

 

「確かにそうですね、紫様。」

 

 藍も理解したようで、幻想郷への被害より外に被害が出ることを取ったようだ。

 

「それじゃあ。1度、幻想郷に戻ろうかしら。」

 

 指輪の効果を使い、隙間を作り出して藍を連れて転移する。妖夢や萃香は何かあった時の為に、残しておく。

 

 幻想郷にある八雲家につくと、そこで藍と対策を考える。何かよからぬ事が起きる前触れか、ふと外を見ると家の前にある木が風で揺れて、震えているような気がした。

 

「紅魔館のメンバーが内部で暴れた時の対策も一応、考えとかなくてはならないわ。」

 

 そう、紅魔勢は本当にかなり優遇している。どう優遇しているかと言うと、四人もLv 100がいるという事もあるが、パチュリーが超位魔法を使える特殊なステータスの構成をしているからでもある。幻想郷で超位魔法を使われるのは問題だ。

 因みに、レミリア・フラン・パチュリー・咲夜がLv 100で、美鈴がLv 70程度、小悪魔がLv 50程度という構成だ。あとメイド妖精多数。後は、なんかゴブリンが住み着いてる謎設定があったのでLv 42クラスの奴を置いていた気がする。

 

 そのまま、藍と話を詰めた結果ある考えに行き着いた。その考えとは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ー 紅魔館 ー

 

 吸血鬼の住む館で、偉そうに椅子に座る一見、子供に見える少女こそが主のレミリア・スカーレットである。

 

「パチェ、あのスキマ妖怪がいない間に外に出る算段をつけましょ。大体、あのスキマ妖怪だけが、外に出ているのも癪にさわるじゃない?」

 

 レミリアは悪態をつきながら、スキマ妖怪こと八雲 紫だけが外にいる現実をよく思わないでいた。簡潔にいえば、退屈なので外に出たいだけである。既に、外に出ることは紅魔館のメンバーで話し合って決まっているのだが、外に出る方法を決めかねていた。

 

「言うけど、レミィ。外の世界に出るのはかなり大変そうよ。」

 

 その言葉に反応するパチュリー・ノーレッジ。

 

「なら異変を起こして、その混乱に乗じたらどうかしら?」

 

「可能でしょうけど。そうなると博麗の巫女が動くんじゃないかしら? 外にまで着いて来られたら面倒よ。」

 

 本を読みながら、パチュリーは強行突破した場合の可能性を述べる。

 

「あらあら、幻想郷は全てを受け入れますけど、その考えが過ぎてはそれに対する力を行使することも禁じてませんわ。」

 

「盗み聞きかしら? 八雲 紫。 今出てきたという事は邪魔する気なのかしら」

 

 いきなり、スキマから現れた八雲 紫を睨みつつ、カリスマ的なポーズをとるレミリア。

 

「そんな気はないわ。外の世界に出るのを条件付きで許可しようという好意的な話だと言うのに、心外だわ。」

 

「八雲 紫。貴方がそんなことを言うなんて珍しいわね。条件付きでとかいう上から目線は癪だけど、外に出ようとしているのを知られた現状、無理に外に出ようとすればこちらも消耗するでしょうから、条件次第で乗らないこともないわ。」

 

「そう。なら、条件は私が渡す仕事をやってもらう事と幻想郷の存在の秘匿でどうかしら。対外的には仕事の依頼という形にすることで、他の幻想郷の住人への言い訳としては十分でしょうし。仕事と言っても外での出来事の報告やたまにやる事を手伝って貰うくらいよ。行ってもらう国なんかはこちらで指定させては貰うけど…。」

 

「まぁ、いいわ。それで構わないわ。外の人間についてはどうするのかしら?」

 

「外の人間に関しては、人としての禁忌を犯したもの以外はなるべく殺さない程度にしてくれればかまないわ。」

 

「逆に罪人なら問題なく、普通の人も多少なら問題ないという事かしら?」

 

「えぇ、外の世界で問題にならない程度であればかまないわ。」

 

 

「なら、交渉成立ね。咲夜、準備をしておきなさい。」

(外に出てしまえばこっちのもの、厄介な仕事を持ってこられたらバックれればいいわ。)

 

 場合によっては、裏切るという選択肢を残しながらレミリアは咲夜に準備をさせる。

 

「お嬢様、了解致しました。」

 

 

 




今回の話では徐々に精神まで八雲 紫になって言ってます。例えば、レイナースのことを考える時に人間という括りで見てます。その後の幻想郷を第一にしている所なんてそのままですね。アインズさんと合流する頃にはどうなっている事やら…。

追記
誤字報告ありがとうございます。


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