地球防衛軍 〜地球の守護戦士達〜 (きぬたにすけ)
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設定集 vol.1 EDF編 部隊詳細、人物

投稿数も10超え20超え、そろそろ作ろうかと思いました設定集(というよりただのまとめ)でございます。

既に書かれている人物に今後戦歴や設定が追加される場合があります。


◎組織概要

 

組織について

○E.D.Fとは

 

E.D.Fとは、2015年に有事に備えて設立された国際平和維持組織である。

当初は各国の有力者や学者を募った研究機関であったが独自の実働部隊の編成を開始。

独自の研究やパトロンのルートを通じて軍事力を手に入れ、2025年時、軍需産業の最先端を行く軍隊となった。

攻撃的地球外文明体(フォーリナー)の攻撃により各国軍が瓦解していく中、EDFが地球を守る要として台頭し、2025年では大きな軍事力を持つ組織として一部から危険視されているが、その実績と戦力を持って地球防衛の任に就いている。

正式名称は連合地球軍"Earth Defense Forces"。

あくまで政治的権力は持っていないものの、異星文明との戦闘がやむを得ない場合は「事態の全面的解決へ向けた全ての権限が委譲される」とされている。

 

ニューヨークに総司令部(北米本部)を置き、世界各地に地下施設含め数十の支部や施設を持つ。

さらに、独自の陸海空軍を持っている。

『EDF アーミー』・・・陸における実働部隊

『EDF オーシャン』・・・EDF海上戦力の所属する部隊

『EDF スペーシー』・・・EDFの衛生機動兵器などを統括する

『EDF エアフォース』・・・EDF空戦部隊

 

2020年、国際連合決議にて各国防衛組織のEDFへの統合が討論されたが、各国防衛組織とは棲み分けされた。地球の全域における衛星軌道兵器(対攻撃的地球外文明の防衛網)の運用に加え、今後の宇宙進出における惑星開拓任務が期待される「独自の多国籍軍」と言われているが、宇宙艦隊など軍事・民間共に宇宙進出の技術レベルにはまだ遠く、現在も地球防衛におけるエキスパートとして任に就き続けている。

 

 

日本では総合作戦指令本部が置かれる関東基地の他、北海道、東北、関西、九州にも基地や駐屯地が存在する。

前大戦後、自衛隊の戦力の弱小化に伴い、EDFにいくつかの駐屯地が与えられた。

 

 

ちなみにEDF総司令部(北米)の下にEDF極東司令部、その下に日本支部が位置している。

 

 

総司令部(北米、ニューヨーク)

 

南米司令部

シベリア司令部

欧州司令部

極東司令部

中東司令部

オーストラリア(大洋州)司令部

アフリカ司令部

 

 

日本支部(関東基地『ベース1』)

他、各国支部

 

 

 

 

 

〇誕生の軌跡

 

■2013年:米国NASA、本国最大級の電波望遠鏡を建造完了。

宇宙空間へのトライアル実験を開始。地球外知的生命体探査センターが謎の宇宙生命体の信号を捉えるが公表せず、秘密裏に調査を進める。

 

■2015年:行方をくらましていた反応が再度確認される。

情報漏えい事件発生。世界各国で暴動が活発化。

国際連合は総会にて、この宇宙生命体の存在を認めるとともに、

一刻も早い紛争解決と、宇宙生命体との対話の準備を急ぐ。

 

当時の国連事務総長ジョセフ・マクレイブンは情報の統制及び有事への備えとして、

自身を総合本部長とした研究機関及び実働部隊『国際連合地球防衛局/United Nations Office Earth Defenses』を発足。アメリカに総合本部を置き、各国に支部、研究所が置かれる。

 

■2017年:各国で実働部隊の正規雇用がスタート。

多国籍軍の運用から、独自の軍を組織する方針へ転換。

それにより、自衛官の再就職先としての有用性を示す。

組織を再編成後、『連合地球軍/Earth Defense Forces』を設立。

初代総司令官を、国連事務総長の退任に合わせ、ジョセフ・マクレイブンが務める。

人員の増加を鑑みて駐屯地が津川浦山中に置かれた。

★6月中旬、地球外文明と思わしき純銀色の浮遊船が世界中に降下。

政府は彼らを『フォーリナー』と呼称。

★EDF、展開中の市街地にて蟻に酷似した全長10mの生命体の大群と遭遇。

★異星文明『フォーリナー』、世界各国へ同時多発的に侵攻を開始。

★第一次戦役開戦。

★自衛隊の「横」で、戦闘に組み込まれるEDF JAPAN。

★自衛隊の敗走続く。EDF JAPAN、戦果めざましく、地底侵攻作戦

の総指揮など台頭していく。

 

■2018年:各国防衛組織壊滅。残存兵力の殆どがEDFに組み込まれる。

★総司令部壊滅。ジョセフ・マクレイブン初代総司令官ら、安否不明。

★特殊遊撃部隊『ストーム』、敵母船に肉薄。撃墜に成功。

★第一次戦役終戦。

★ジョセフ・マクレイブン初代総司令官、地下施設に身を寄せており生存。

その任を継続する考え。

★敵主力戦力撤退開始。一部投棄された兵器を鹵獲、研究機関へ。

★EDFを主導に各地に散った敵残存兵力の掃討作戦開始。

 

■2019年:アメリカアリゾナ州にて敵残存兵力の最後の一匹を駆除。

★EDF、世界各国に向け事実上の勝利声明を発表。

★各地で文明再建が開始。

 

■2021年:EDFは戦力増強を図り各地に基地などを建設。

★2022年時点で2017年頃の兵役人数を超える。

 

■2022年:兵科『空爆誘導兵』設立。当初は空軍属の歩兵部隊だったが、続々と車両の配備が行われ、陸軍に多く所属するビークル専門兵科となる。

★続々と車両部隊が編成され始める。

 

■2023年:兵科『降下翼兵』設立。WACの殆どはウイングダイバーへ転属。

 

■2024年:兵科『二刀装甲兵』設立。

★日本関東にて地震災害発生、フェンサーの初任務として災害派遣が決定。

 

■2025年:6月28日、世界中で同時多発的に巨大生物再臨事件発生。

★時を同じくして衛星軌道上にフォーリナーの船団を捕捉。

★第二次戦役開戦。

 

北米総司令部最高司令官:ジョセフ・マクレイヴン

EDFを総括する最高司令官。妻を前大戦で失っており、フォーリナーに対して復讐できる日を望んでいた。少々感情的になりやすい。

 

 

◎部隊

 

○陸軍

 

レンジャー

・・・正式名称「特戦歩兵」。EDFの大半を占める兵力を誇る主力部隊。他の兵科が続々と設立されてなお所属する隊員が多い。レンジャーチーム内にも様々な役割を担う部隊分けがされ、主力のレンジャー、偵察任務を主にし戦闘地域に先んじて投入されるスカウトがある。

 

 

ウイングダイバー

・・・正式名称「降下翼兵」。2023年設立。数々の光学兵器を扱い、飛行ユニットを駆使し空を自由に飛び回るEDF対巨大生物の切り札。単純に空を飛ぶための軽さと、「サイオニックリンク」と呼ばれる飛行ユニットに組み込まれた装置の適合率の影響か女性隊員のみで構成される。因みに自衛隊にならい、WAC(ワック)(女性陸戦隊員)とも言われている。

8年前、レンジャーに属していた女性隊員の殆どがウイングダイバーに転属となる。が、まだレンジャーに残るWACも少なからず日本にも存在する。

 

 

エアレイダー

・・・正式名称「空爆誘導兵」。増産される航空機、及び力を増す空軍を統括する為に2022年に設立された。空軍との連帯戦術に長けている。エアレイダー内の階級や各航空機の担当が訓練課程を終えた者に当てられる。

ちなみにストームチームのエアレイダーには最高階級が与えられ、さらにストームチーム専属の航空機がある為それを要請する。

 

フェンサー

・・・正式名称「二刀装甲兵」。市街戦での超近距離戦での投入、敵を圧倒する破壊力を持つ兵器の個人運用をコンセプトに研究され、2024年に設立された兵科。

フェンサーは上記の活動を可能にするためパワーフレームが配備され、同年に起きた地震災害発生時に初めて動員された際はそのパワーで瓦礫を持ち上げ、災害派遣で訪れた自衛官達を驚かせた。

運用される武器は全てフェンサーのみがその重量に耐えることが出来る。主に近接武器を使用した戦術を得意するが、状況によっては火力に優れた重火器をもって敵を遠距離から狙い撃つ任務も想定され、その訓練も行われている。

 

 

✩陸軍の精鋭部隊

 

 

ストームチーム

・・・前大戦ではナンバリングチームであったが、全滅した部隊も多い。生き残りの殆どはレンジャーチームなどに転属となり、新たにそれぞれの兵科から数人ずつ精鋭が集められた特殊遊撃混成部隊となった。訓練内容も見直され、大軍に囲まれたとしても単独で戦況を覆すことの出来る人材の所属する部隊となった。

ちなみに隊員一人一人にナンバリングがされている。(下記)

 

 

ペイルチーム

・・・ウイングダイバー部門精鋭部隊。

 

 

◎EDF陸軍側の主な登場人物

 

 

✩総合作戦指令本部↓

 

連合地球軍陸軍日本支部総合作戦指令本部長: 田中 克人(たなか かつひと)

▼前大戦から総合作戦指令本部で指揮し続けている。▼前大戦では組織全体の士気を下げないようにと撤退を許可しなかった結果「冷たい、無情」などと言われてしまうが、大戦終了後は丸くなり撤退の受諾、隊員達の激励をしたりなど、いくらか温情になった。

 

▼関東方面隊第1師団司令部の司令官でもあり、この司令部は総合作戦指令本部としても機能している。関東外のナンバー部隊は第1師団が行う作戦、または戦力補填のために一時的に総合作戦指令本部指揮下の部隊として行動することが定められている。▼関東方面隊の指揮権を第2機甲師団司令官、関東方面隊副司令官である桐島に委託し、その後は総合作戦司令本部長としてのみ務めている。(つまりは本部が機能する作戦においてバックアップを務める関東第2司令部が第1師団から部隊を割いて事態に対処できるようになった)

 

 

総合作戦指令本部属戦術士官:沢見 裕子(さわみ ゆうこ)

前大戦はオペレーター兼分析官として現場隊員をサポートしていたが終戦後そのキャリアを活かし戦術士官として総合作戦指令本部に残っている。

 

 

総合作戦指令本部オペレーター: 鷺本 唯(さぎもと ゆい)

新人オペレーターとして2024年以降隊員のサポートをしている。前大戦で通っていたアナウンス大学が占拠された際、駆けつけた漆黒のヘルメットを被ったEDF隊員に他職員や生徒と共に巨大生物に囲まれた所を助けられた。その後その隊員への憧れなどによりEDFに就職し今に至る。

 

オハラ:小原 徹(おはら とおる)

フォーリナー研究の第一人者。少々ネガディブに物事を見てしまいがちな慎重派である。

 

 

✩連合地球軍陸軍日本支部地方基地司令官達

 

 

関東基地副司令官:桐島 雄二(きりしま ゆうじ)

8年前:本部属分析官

 

 

北海道基地司令官:穂波 麗子(ほなみ れいこ)

8年前:情報本部属攻撃的地球外文明体機械兵器分析課

 

 

東北基地司令官:宇佐見 隆(うさみ たかし)

8年前:情報本部属巨大侵略生物災害対策課

 

 

関西基地司令官:桑田 和夫(くわだ かずお)

8年前:関東本部実働部隊ストーム7隊長

 

 

九州基地司令官:山口 聖(やまぐち きよし)

8年前:本部属オペレーター

 

 

 

✩ストームチーム

 

ストーム1・レンジャー:隊長(本名不明)、またはストームリーダー

ストームチームの総隊長。隊員達の言葉に無言で頷く。

怖気付くこと無く慣れたように巨大生物を(ほふ)り、近寄せない程の技量を有している。ストームチーム隊員達にも素性が知られていない。

 

 

ストーム2・エアレイダー:八木 翔一(やぎ しょういち)

エアレイダーの精鋭としてストームチームに配属される。

初登場「凶蟲噴出」にて到着した空軍に対し火力支援を要請。

(但しこの時は無名)

 

 

ストーム3・ウイングダイバー:風舞 早紀(かざまい さき)

ウイングダイバーの精鋭としてストームチームに配属。元ウイングダイバー4だが、レタリウスによる被害で壊滅。部隊は解体され空席だったストームチームのウイングダイバー枠に本人の実力も相まって配属となる。

 

 

ストーム4・レンジャー:鷲崎 隼人(わしざき はやと)

レンジャーの精鋭としてストームチームに配属。隼(はやぶさ)のように戦場を颯爽と駆け抜け、迅速な作戦行動を得意としている。2018年の巨大生物掃討作戦より自衛隊から編入。その後EDFに残留、今に至る。

 

 

ストーム5・フェンサー:宮藤 龍馬(くどう りょうま)

フェンサーの精鋭としてストームチームに配属。武家家系の御曹司で、若者ながら古風な風貌。その性格は真面目で判断力と忍耐力、さらに実力も兼ね備えた人物だが...『天然』

 

 

 

✩レンジャーチーム↓

 

レンジャー1-2

 

結城 拓也(ゆうき たくや):年齢28歳。

前大戦初期の市街戦において巨大生物の酸攻撃をくらい療養を余儀なくされたが、何とか回復。山岳戦で復帰を果たす。だが、療養中に家族や身寄りが犠牲になったことを作戦終了後に知らされ、怒りや憎悪を糧に死に場所を求め戦いに身を投じる様になるが、当時再配属された部隊の隊長であった葉山に生きる意味を与えられる。その後は彼の隣で彼をサポートし続けている。

 

 

葉山 智(はやま さとし):年齢36歳。

レンジャー1-2分隊長。結城と前大戦を共に生き抜いた。8年経った現在も同じ分隊に所属し、父親のように面倒を見ている。また、謙虚で分隊内外で慕っている者は多い。実力も認められており、本部や武器開発部などの信頼も厚い。

 

 

里見 宏太(さとみ こうた):年齢32歳。

元陸自空挺レンジャーで、前回の戦争末期、巨大生物掃討作戦時にEDFの部隊に組み込まれ、その流れでEDFに入隊、大戦後も残留した。そして、巨大生物再出現時空席の出来たレンジャー1-2に配属になる。配属後、葉山や結城と意気投合し、長年の付き合いのような仲になる。

 

 

大黒 潮(おおぐろ うしお):年齢24歳。

2022年入隊。元々は軍オタな一市民で、2017年の戦いで国営シェルターの券を得られず、実家の家屋で隠れていたが、当時16歳で隊員の死体から拝借したAF-14で巨大生物1匹を撃破。フォーリナーへの怒りや自分の主に軍などに関する知識に可能性を見出し21歳の時入隊した。あまり深くまで他人に干渉しようとせず、戦闘以外での付き合いには少し疎い。

 

 

高城 純也(たかぎ じゅんや):年齢28歳。

車好き。大型自動車免許を取得済み。同時にヘリ、戦車などの資格も持っている。自車として緑、茶色、黒のNATO迷彩と呼ばれるカモフラージュカラーのハンヴィーを持っている。

一般入隊だが、運転技術が優秀で特にその運転技術が決め手となりストームチームへの配属も勧められたが、戦闘技術に関しての本人の希望で、レンジャーチームに配属となり、地下洞侵攻作戦以降葉山隊に加わった。口数が少ないが、自らの運転技術で語る。仕事人タイプ。

 

 

新庄 バートランド(しんじょう・バートランド):年齢39歳。

日本人の母とイギリス人の父のハーフ。PMCとしてフォーリナー戦争に加わっていたが、この時彼のいたPMCは彼を残して殆ど死亡した。最後のひとりとして戦うも、まもなく路頭に迷う。だが、当時の日本のEDFの快進撃を知り、日本で起きた決戦の際、イギリスから日本へ向かおうとしたフォーリナーの軍勢に対しイギリス兵と生き残ったEDF隊員を率いて指揮をとり奮戦する。大戦後、日本人の母の元で暮らすことを決意、そして2020年EDFに入隊した。本人立っての希望で隊長職にはつかず、最初の巨大生物との遭遇時から葉山隊に所属、補佐している。

 

 

レンジャー4-1

梶原 樹(かじはら たつき):レンジャー4-1隊長

「落日」にて現場指揮を担当し、見事レタリウスの巣の破壊の前例となる。

 

 

レンジャー8-2

滝山 宗司(たきやま そうじ):レンジャー8-2の隊長

初登場「凶蟲飛散」にてストームチームと共に奮戦する。

 

 

レンジャー3-8

柳谷 浩二(やぎたに こうじ):レンジャー3-8の隊長

「海辺の怪」にて登場。3-9隊長とは同期。

 

 

レンジャー9-1

神田 正宗(かんだ まさむね):レンジャー9-1隊長

「円盤撃墜作戦」にて登場。決断力のある人物。隼人(上記)のバックアップを務める。

 

 

第1特戦歩兵連隊第1特戦歩兵中隊隊長

神崎 敏平(かんざき としひら):第1中隊中隊長

関東第1師団隷下第1特戦歩兵連隊第1中隊中隊長を務めている。8年前の生き残りであり、8年前はレンジャー1-1の隊長であったが、EDF戦力の大規模な再編成時中隊長に任命される。

 

2021年、ステーション1に敷設されたEDF訓練学校にて、実技訓練の監督官になり、現在(2025年)まで務め続けている。

 

 

 

ウイングダイバーチーム↓

 

ウイングダイバー11

春原 佳奈子(はるばら かなこ):ウイングダイバー11の隊員

「遮風地帯」にて、レタリウスの巣に囚われていたところを葉山隊に助けられる。以降葉山と付き合うことになる。元レンジャー3(「非番」参照)。

 

→レンジャー3(地球防衛軍3参照)

2017年の戦いで佳奈子の所属していた部隊。

最深部の大広間に突入を余儀なくされ、対峙した女王により全滅させられる。

 

EDF訓練学校空爆誘導兵科実技監督官

天翔 歩(あまかけ あゆむ)

 

 

 

殉職者(チーム)↓

 

レンジャー1-1

佐川 竜兵(さがわ りゅうへい):レンジャー1-1隊長

「再召集」にて第4波となる巨大生物の波に呑まれ死亡。

神崎が昇任を受け入れ、当時補填が間に合わず隊員が一人も居なかったレンジャー1-1は佐川が分隊長とされた。その後、隊員が補填され、正式に部隊名簿に加えられることになる。

佐川の部下:

全8名。「再召集」にて1名を残し他死亡。

 

レンジャー1-5

「地下洞」最深部大広間にて全滅。

 

レンジャー6-4

「対空戦」にて、隊長以下4名全滅。

 

レンジャー3-9

隊長は結婚していたが、「海辺の怪」にてレタリウスの巣に囚われ死亡する。最後まで妻に聞こえるはずもない謝罪を繰り返していた。

 

レンジャー5-4

「異邦人の帰還」にて、マザーシップがアクションを起こす前に避難を完了させる為に展開する。が、作戦途中にマザーシップのジェノサイド砲に撃たれ全滅。確保していた避難民も同じ運命を辿った。

 

 

◎その他戦力

 

 

砲兵隊隊長:甲斐 祐一(かい ゆういち)

 

 

◎EDF JAPAN オーシャン

 

海軍司令官:須藤 愼太郎(すどう しんたろう)

 

 

要塞空母デスピナ艦長:東郷 篤郎(とうごう あつろう)

艦長と呼ぶに相応しい威厳のある初老の男性。デスピナの戦力に対して強い自信を持ち、それに見合うほどの頼もしさを感じさせる。

 

 

◎EDF JAPAN Air Force

 

空軍司令官:片岡 泰夫(かたおか やすお)

 

 

大型攻撃機ホエールパイロット:高橋 譲二(たかはし ジョージ)

重圧のある声でクールに振る舞い、仲間思いな一面を持っている。

 

 

戦術爆撃機カロンパイロット:「ボマー4」戸田 瑛(とだ あきら)

 

 

輸送ヘリ・ヒドラパイロット:「ポーターズ9」柳原 彩(やなぎはら あや)

女性パイロット。ビークルを自分の子供のように扱っており、それは投下要請時に「娘を嫁に出す気分です」と損傷について釘を刺すほど。ストームチームの支援を担っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




多分これからどんどん増える!


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設定集vol.1-2 連合地球軍日本支部[EDF JAPAN] 関東方面隊のみ

スマホの方は画面を横にしていただくと見やすくなります!


連合地球軍日本支部[EDF JAPAN]

 

 

連合地球軍陸軍

東京都、関東方面隊

 

※1関東方面本部基地→「ベース1」・・・・・・B1

※2関東方面隊駐屯地→「ポスト1」・・・・・・P1

※3関東方面隊駐屯地→「ポスト2」・・・・・・P2

※4関東方面情報本部→「ステーション1」・・・・・・S1

 

 

 

[連合地球軍日本支部総合作戦指令本部]・・・・・・B1 ※1

 

関東第1師団司令部兼日本支部総合作戦指令本部

『主な人物』

総合作戦指令本部本部長:田中 克人(たなか かつひと)

総合作戦指令本部属戦術士官:沢見 裕子(さわみ ゆうこ)

 ストームチーム担当オペレーター:鷺本 唯(さぎもと ゆい)

 

□関東第1師団↓

 

○精鋭部隊

特殊遊撃混成部隊

・ストームチーム・・・・・・B1

 『主な人物』

  ストームチーム総隊長:????(レンジャー)

  ストーム2:八木 翔一(やぎ しょういち)(エアレイダー)

  ストーム3:風舞 早紀(かざまい さき)(ウイングダイバー)

  ストーム4:鷲崎 隼人(わしざき はやと)(レンジャー)

  ストーム5:宮藤 龍馬(くどう りょうま)(フェンサー)

 

○第1特戦歩兵連隊・・・・・・B1

連隊本部

本部管理中隊

・情報小隊

「スカウト1」

「スカウト2」

「スカウト4」

「スカウト6」

・通信小隊

・施設作業小隊

・衛生小隊

・補給小隊

・連隊本部班

第1特戦歩兵中隊

・第1レンジャー小隊

 『主な人物』

  レンジャー1-2分隊長:葉山 智(はやま さとし)

  レンジャー1-2分隊員:結城 拓也(ゆうき たくや)

  レンジャー1-2分隊員:里見 宏太(さとみ こうた)

  レンジャー1-2分隊員:大黒 潮(おおぐろ うしお)

  レンジャー1-2分隊員:高城 純也(たかぎ じゅんや)

  レンジャー1-2分隊員:新庄・B・盾輝(しんじょう・バートランド・じゅんき)

・第2レンジャー小隊

・第4ウイングダイバー小隊

第2特戦歩兵中隊

・第3レンジャー小隊

・第7ウイングダイバー小隊

・第8ウイングダイバー小隊

第3特戦歩兵中隊

・第1関東基地同付隊

・第5レンジャー小隊

・第1フェンサー小隊

 『主な人物』

  フェンサー1-1分隊長:間宮 勝宏(まみや かつひろ)

第4特戦歩兵中隊

・第4レンジャー小隊

 『主な人物』

  レンジャー4-1分隊長:梶原 樹(かじはら たつき)

・第11ウイングダイバー小隊

 『主な人物』

  ウイングダイバー11-3分隊員:春原 佳奈子(はるばら かなこ)

第5特戦歩兵中隊

・第2関東基地同付隊

・第6レンジャー小隊

 

 

○第2特戦歩兵連隊・・・・・・P1 ※2

連隊本部

本部管理中隊

・情報小隊

「スカウト8」

・通信小隊

・施設作業小隊

・衛生小隊

・補給小隊

・連隊本部班

第1特戦歩兵中隊

・第7レンジャー小隊

・第8レンジャー小隊

 『主な人物』

  レンジャー8-2分隊長:滝山 宗司(たきやま そうじ)

第2特戦歩兵中隊

・第2ウイングダイバー小隊

・第3ウイングダイバー小隊

第3特戦歩兵中隊

・第3関東基地同付隊

・第2フェンサー小隊

・第3フェンサー小隊

第4特戦歩兵中隊

・第4フェンサー小隊

・第8フェンサー小隊

 

 

○第1後方支援連隊・・・・・・B1

 

 

○第1機械化大隊「デプスクロウラー」・・・・・・P1

・第1地底戦闘中隊「デプス中隊」

・第2地底戦闘中隊「フレイム中隊」

・陸戦戦闘中隊「レンジ中隊」

 

 

○第1機械化歩兵大隊・・・・・・P1

・第1機動歩兵中隊「ζ(ゼータ)」チーム

・第1機動歩兵中隊「η(エータ)」チーム

・第1機動歩兵中隊「θ(シータ)」チーム

 

 

○第1重戦車連隊・・・・・・B1

・アルキュネウス中隊

・ドーベル中隊

・シェパード中隊

・マリノア中隊

・ロッティー中隊

 

 

○第2戦車大隊・・・・・・B1

・ブル中隊

・チャリオット中隊

・デストリア中隊

 

 

○第1特科連隊・・・・・・P2※3

 

▽特殊戦車隊

・メルト隊

 

▽電磁投射砲隊

・ローレンツ中隊

・ブラスト中隊

 

▽砲兵隊高射特科隊

・第1ネグリング隊「アンブッシュ」

・第2ネグリング隊「パトリオット」

 

▽砲兵隊

・榴弾砲隊

・カノン砲隊

 

 

○第1施設大隊・・・・・・B1

 

 

○第1通信大隊・・・・・・B1

 

 

○第1偵察隊・・・・・・B1

・第1機械化偵察隊「リコン」

・第1機械化支援隊「リコンサポーター」

 

 

○第1飛行隊・・・・・・P2

・第1ネレイド隊「アウトノエー」「アガウエー」「アクタイエー」

・第1バゼラート隊「ダガー」

・第1偵察飛行隊「エアリコン」

・第1ブルート隊「オルカ」

・第1光学攻撃隊「バルチャー」

・第1空輸部隊「ストーク1」

・第2空輸部隊「ストーク2」

・第3空輸部隊「ストーク3」

・第4空輸部隊「ストーク4」

 

 

○第1音楽隊・・・・・・B1

・音楽隊

・飛行ショー

 

 

 

関東第2機甲師団司令部・・・・・・P1

 『主な人物』

  関東第2機甲師団司令官:桐島 雄二(きりしま ゆうじ)

 

□関東第2機甲師団↓

 

○第2自動車化連隊・・・・・・P1

連隊本部

本部管理中隊

・情報小隊 偵察バイク隊「ライダー」

・通信小隊

・施設作業小隊

・衛生小隊

・補給小隊

・連隊本部班

第1自動車化中隊

・第1武装装甲輸送隊「キャリー1」

・第2武装装甲輸送隊「キャリー2」

・第3武装装甲輸送隊「キャリー3」

第2自動車化中隊

・第1自動車化戦闘隊「フューリー」

・第2自動車化戦闘隊

第3自動車化中隊

・第4武装装甲輸送隊「キャリー4」

・第5武装装甲輸送隊「キャリー5」

・第6武装装甲輸送隊「キャリー6」

第4自動車化中隊

・第7武装装甲輸送隊「キャリー7」

・第1装甲救急隊「アンビュランス1」

・第2装甲救急隊「アンビュランス2」

 

○第2後方支援連隊・・・・・・S1 ※4

・第3装甲救急隊「アンビュランス3」

・第4装甲救急隊「アンビュランス4」

 

○第2機械化混成戦闘隊・・・・・・P2

・第1機械化戦闘隊「ブルー」

・第2機械化戦闘隊「コンバット」

・第3機械化戦闘隊「ウォーリア」

・第4機械化戦闘隊「ゴースト」

・第5機械化戦闘隊「ナイト」

・第6機械化戦闘隊「レッド」

・第7機械化戦闘隊「パイソン」

・第8機械化戦闘隊「マテバ」

・第9機械化戦闘隊「バスター」

 

○第2飛行隊・・・・・・P1

・第2バゼラート隊

・第2混成飛行隊「ミクス」

・第2光学攻撃隊「コンドル」

・第2ブルート隊「スカイフレイム」

・第5空輸部隊「ストーク5」

・第6空輸部隊「ストーク6」

 

 

 

関東方面情報本部/事務所/局

 

[情報本部司令所直轄精鋭部隊]

・ペイルチーム・・・・・・S1

 

[EDF JAPAN広報事務所]

 『主な人物』

  広報課取材班:本田 海人(ほんだ うみひと)

  広報課属広報報道官:姫川(ひめかわ) クリステル

 

[EDF JAPAN情報本部局]

 「情報本部戦略情報部棟」

 

 「情報本部研究棟」

  L武器開発科

   L特戦歩兵用火器研究ラボ

   L降下翼兵用火器研究ラボ

    L異星文明技術研究班

    L光学兵器技術研究班

   L空爆誘導兵用火器研究ラボ

    L要請・誘導装置研究班(レーザー誘導装置の開発・調節・各基地への配備)

     L桐川航空基地属派遣班

     L桐川ミサイル基地属派遣班

    L化学管理研究ラボ(ライフベンダーなどサポート装置)

   L二刀装甲兵用火器研究ラボ

    L個人用携帯大型近接兵器研究ラボ

     L兵器デザイン研究班(スピア、ブレード、ハンマーなどの造形の考案、開発)

     L出力機構研究班(フォースフィールド出力装置の開発など)

    L個人用携帯大型遠距離火器研究ラボ

    L盾部門研究ラボ

 

[EDF JAPAN病棟]

 

[EDF訓練学校]

 

 

 

連合地球海軍[EDFオーシャン] 太平洋方面群

 

[EDF JAPAN Naval Base]

司令官:須藤 愼太郎(すどう しんたろう)

 ※他海軍では「第7艦隊」と称される

  EDF機動艦隊・・・・・デスピナ級要塞航空母艦

 

連合地球空軍

 

[EDF JAPAN Air Base"桐川航空基地"]

 司令官:片岡 泰夫(かたおか やすお)

   EJ-24戦闘機J

   EJ-41戦闘機J(ファイター)

   戦術爆撃機カロン

   戦術爆撃機ミッドナイト

   制圧攻撃機アルテミス

   大型攻撃機ホエール

   輸送ヘリ・ヒドラ

   CH-47J チヌーク

   UH-60J ブラックホーク

   C-2

   C-130H

 

等など

 

ここまで書いて言うのもあれですが、本当は作者サイドのみの閲覧・確認用でした。当初ここでは兵科と登場人物の内訳のみ載せようとしたのですが、色々書き足していたらここまで長くなってしまいましたとさ・・・




普通科連隊の装備一覧
・ハンヴィー「分隊車両」

・自動拳銃
M92F

・自動小銃
AF-14・・・標準型
AF-14RA・・・連射速度重視型
AF-14RAR・・・RAシリーズの改良型。ハンヴィーにも備え付けられている
AF-14ST・・・単発型
AF-14-B3・・・バースト射撃型
AF-15・・・AF-14の順当な新モデル。威力上昇に伴い射程が短くなった
AF-15ST・・・単発型。威力、射程共に良好
AF-15SMG・・・AF-15のショートバレルカスタム。RA型より連射性能は劣っている

・ショットガン
バッファローショットガン・・・標準装備のショットガン

・スナイパーライフル
MMF-41・・・標準装備のスナイパーライフル
MMF-43・・・配備間もない新モデル。

・個人携帯用ロケットランチャー
スティングレイランチャー・・・標準装備のロケットランチャー


・地下戦闘用制圧兵器
火炎放射器・・・地底での殲滅能力が高く、標準装備に加えられた火器


EDF海軍の命名について
SAIFAさんの執筆されている「”要塞空母デスピナ“スターティングオペレーション!」、その作品に出てくる『太平洋方面群』という呼称を本作品で使用する許可を頂きました。
反対に、SAIFAさんの作品に登場する航空機『ファイター』に、本作品で設定した『EJ-41』の型番を使用する申請を許諾しました。


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設定集 vol.2 自衛隊編

2017年の戦いで多数の駐屯地が火の海と化し、事実上敗北。弱体化するも、大戦後よりEDFとの技術交換を経て相対的に軍事力は回復した。

 

連合地球軍(EDF)の庇護の下、国際連合を主軸とし世界中で各国政府の再建、防衛組織の再編成が行われ、日本では2020年(国連での決議にならって日本国内で自衛隊との棲み分けがなされた同年)に連合地球軍の庇護下を脱出。新たなスタートを切った。

 

 

◎主な、名前のある登場人物

 

 

真田 満(さなだ みのる):三等陸佐

自衛隊中央即応集団特殊作戦群第1中隊長。度々葉山隊と行動を共にする。

 

赤城 俊彦(あかぎ としひこ):一等陸佐

第31普通科連隊長。

「凶蟲飛散」にて、防衛戦の指揮をする。

 

富塚 慶次(とみつか けいじ):小隊長

第31普通科連隊隷下小隊長。

「凶通蟲飛散」にて、第2波の蜘蛛型巨大生物の群に立ち向かう。

 

萩原 敦(はぎむら あつし):分隊長

第31普通科連隊隷下分隊長。

「凶蟲飛散」にて、第2波の蜘蛛型巨大生物の群に立ち向かう。

 

木部 真(きべ まこと):分隊長

萩原と同じ。

「凶蟲飛散」にて、第2波の蜘蛛型巨大生物の群に立ち向かう。

 

山崎 宏昌(やまざき ひろまさ):分隊長

東部方面隊直轄第20高射特科中隊下歩兵分隊分隊長 ※2020年新設

 

斑目 智一(まだらめ ともかず):山崎の部下、ATM手

駐屯地にてある日、EDFに対しての誹謗中傷を聞いてしまう。それ以来国の防衛組織の在り方に疑問を持つようになる。

 

風間 武人(かざま たけひと):一等陸佐

第15普通科連隊長。

「魔の降る日」にて、救出のためのヘリ部隊に同乗。指揮を行った。

 

北村 健(きたむら たけし):小隊長

第15普通科連隊隷下小隊長。

「魔の降る日」にて、瀬戸大橋に避難誘導兼警護の為展開する。

 

三田 健次郎(みた けんじろう):分隊長

第15普通科連隊隷下分隊長。

「魔の降る日」にて、瀬戸大橋に避難誘導兼警護の為展開する。

 

逢坂 俊明(おおさか としあき):分隊長

第15普通科連隊隷下第1中隊分隊長。

「円盤撃墜作戦」に登場。輸送船撃墜に奮戦する。

 

 

◎登場装備

 

9mm拳銃

89式5.56mm小銃

ミニミ軽機関銃

01式軽対戦車誘導弾

110mm個人携帯対戦車弾

12.7mm重機関銃M2

81mm迫撃砲 L16

10式戦車(ひとまるしきせんしゃ)

120mm迫撃砲 RT

FH70

74式戦車

87式自走高射機関砲

軽装甲機動車

 

F-15J 戦闘機

・・・AAM-5

・・・AAM-4

 

AH-64D アパッチ・ロングボウ

・・・ハイドラ70ロケット弾

・・・M230機関砲

 

UH-1J 多用途ヘリコプター

 

AH-1コブラ

・・・ハイドラ70ロケット弾

・・・20mmM197ガトリング砲

 

 

 

 



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第1章 エリーニュエス 帰還と侵略の序章
プロローグ01 悪夢の始まり


どうも、見切り発車の愚作ですが、大目に見てやってください。さて、EDF5発売まであと少しということで、EDF4.1の世界を個人的に復習、又妄想して見たかったので作品としての練度は低めですが、情景を浮かべていただけるだけでも幸いです。


プロローグ01. 悪夢の始まり

 

硝煙の匂いが鼻先に漂ってくる。

身体が動かない。意識も朦朧としている。

ここは何処だろう。

まぶたが重く、暗闇へ誘おうとしているようだ。

そんな意識の中、爆音と悲鳴が俺を現実に呼び戻した。

 

「タンク、後退しろ!迫撃砲で狙い撃ちにされるぞ!ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ハッ!敵襲!?」

 

我に返り、迫る熱風の中で何とか身を捻って四つん這いになった俺は、周囲を見渡す。

 

「ここは...」

 

空は濃い橙色で、より赤みがかった太陽が沈もうとしていた。周囲には不毛の大地が広がり、建物が立っていたであろう部分には瓦礫が散乱していた。そして、空に同化するようにゆらゆらと、輪郭がはっきりと付いてきて、それが炎であると認識した。

 

辺りには...酷い。なんて悲惨な光景だ...。

焼死体、溶けたヘルメットと弾倉が溶かされたアサルトライフル、土に混じり散らばる無数の空の薬莢が戦いの凄まじさを物語っていた。原型を留めずミンチになった死体(?)、ズタズタに引き裂かれたEDFのロゴの入った戦闘着。首から下が存在せず、狂気の形相で舌をだらんと垂らす頭部。自分の後方では先程のギガンテスの変わり果てた残骸と部位が無くなり目を見開いた死体。目を逸らさずにはいられなかった。余りも酷かった。

 

「くそ...なんで...悲惨すぎる...」

 

見渡していると、一つの巨大な影を捉えた。

それは、夕日に影を落とし、身体が黒に染まっている。そして手足に対して大きく肥大化した身体の真ん中は紅く不気味に光っていた。まるで地上に降り立った死神のようだ。

俺は知っている。こいつはフォーリナーが地上制圧用に投下した二足歩行兵器「ヘクトル」。

そのヘクトルは、手を大きく上にあげ、この空色でもハッキリと目視できる程の光弾を打ち出した。俺は死ぬのか。そう確信した。何も出来ず抗えずに負けるのだ。

何故か?その光弾は、弧を描き、自分に向かって、いや、狙うようにゆっくりと降りてくる。

ふと手に何かが当たった。見ると吐き気が込み上げてきた。ゴリアスD1ロケットランチャーが転がっている。だがそのトリガー部分に指を掛けているものがあった。本体を失った手である。

死体には慣れているつもりだが、部位のみでもこんなに恐ろしく思うのは何故だろうか。

だがまずは目の前の敵だ。俺はゴリアスを「元の」所有者から引き取り、ヘクトルに向かって照準を合わせる。

何も考えれなかった。無性に腹がたった。それだけだ。

俺は雄叫びをあげゴリアスを撃つ。そして敵に着弾するのを見届けることなくその場にへたり込んだ。

 

ーそして、目視出来ない程の光と共に、熱風と爆音に呑まれ、身体から力が抜けていき、軽くなっていくのを感じていた。ー




こんな感じで、表現したいことをしたいだけつづっております。
改善もしていきたいですが、基本この拙い表現力と語彙力で妄想していきたいと思っております。宜しくお願いします。


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プロローグ02 不穏な朝

プロローグ02 不穏な朝

 

「ハッ!?」

相当うなされていたようだった。

俺は勢いよく腰を曲げて起きた。額や鼻頭に汗をかき、全身が悪寒を感じていた。顎から大粒の汗が滴る。

「夢...だったのか...?」

あれが現実であれば間違いなく俺はこの世にいなかったであろう。だが現に生きているのだ。

「外の空気でも吸いに行くか。」

気分転換にでもと屋上へ向かうため立ち上がると、悪寒が抜けず足がもたついたが、何とか壁を伝うようにして屋上に上がると、屋上に設置されている椅子に腰掛け景色を眺める。

 

「平和だなぁ...あの夢が何か悪いことの前触れでなければいいのだけどな..。」

と、フラグにでもなりそうなセリフを吐く頃には悪寒も抜け、落ち着きを取り戻していた。

目の前には小高い山と森が広がっており、山道をレンジャー隊員達が掛け声と共に走っていた。

俺は自然の匂いに鼻孔をくすぐられ、ぼーっと景色を眺めていたが、共にあの夢が気になっていた。

「さて、食堂にでも行くか」

 

簡単に自己紹介を済ませておこうと思う。

俺は結城 拓也(ゆうき たくや)。28歳。所属はレンジャー1。これでも俺は前大戦を生き抜いた1人だ。前大戦で家族、親族の殆どが犠牲になってしまい、身寄りがいない。

 

適当に定食を食べ、お腹を満たすと今日も訓練に身を投じる。この8年でEDFはずいぶんと力を増した。様々な兵科の隊員達がそれぞれの訓練メニューをこなしている。俺は軽く走り込んだ後館内の演習場に入り手続きを済ませると、ランプの光が激しく回転し警告音と共に窓に防火シャッターが降ろされ部屋が薄暗くなった。教官がスタートの合図を下すとクリアブルーのホログラムで巨大な蟻(?)が現れ始め、一瞬で部屋が埋め尽くされる。銃弾を浴びせると撃破判定が成される。ホログラムも負けじと攻撃を行ってくるが、ホログラムで展開された遮蔽物に身を隠し、瞬く間に最後の一匹の撃破判定が成された。

教官が言う。

教官「オールクリア。やはり彼は素晴らしいですね」

傍らにいた男がそれに答えた。

隊長「ええ、彼は8年前の地獄をみて、生き抜いた戦士ですから」

結城「勿体無いお言葉です隊長。...葉山さん」

隊長の名は葉山 智(はやま さとし)、彼も前大戦を生き抜いた方だ。前大戦で妻子を亡くされた。なのに、俺を我が子のように面倒を見てくれた。同じく家族亡くし、身寄りのいなかった俺にとって、葉山さんは父親のような存在だった。

 

そんな時館内アナウンスが流れた。

 

田中本部長《ベース1全職員に通達。緊急事態発生。繰り返す、緊急事態発生。レンジャー各隊は、出動命令を待て》

 

田中本部長の声だ。なにやら緊張した面持ちのようである。

田中本部長は前大戦より総合作戦指令本部にて本部長を務め、また有事の際は司令官として今日に至るまでもEDFの舵を執っている。

しかし、出動だと?

訓練所を出て空を仰ぎ見るが、平和そのものの晴天だった。

 

 

結城「何かが起こったのでしょうか」

葉山「さあな、食堂のテレビが近い。食堂に向かうぞ。なにか分かるかもしれん」

結城「了解」

 

そうして、食堂に戻ると、なにやら騒がしく、天井に吊るされたテレビを食堂にいた全員、厨房の方々までもが神妙な顔を見つめていた。俺も葉山さんも同じようにテレビに目を向ける。

 

すると、そこにはニュースが流れていた。

タイトルは、

『巨大生物出現か!?目撃情報相次ぐ』

 

俺の頭に、先程の夢がフラッシュバックした。頭を抑え、膝をつく俺を、葉山さんが心配する眼差しで手を貸してくれた。

 

すると、

 

戦術士官《レンジャー1、応答願います。直ちに装備を整え、現地へ向かってください。ブリーフィングは車内で行います》

 

女性の心地よい低音の声で威厳のある声が肩のトランシーバーから聴こえた。前大戦で本部付きオペレーターを務めて以降、戦術士官を務めてる沢見戦術士官の声だった。

 

葉山「了解……?」

 

葉山さんを筆頭に、レンジャー1の隊員達はAF-14を解体、点検する。葉山さんはショットガンを持っていくようだ。準備完了と共に素早くハンヴィーに乗り込む。前大戦より都市迷彩への変更や小型化をされたEDFの主力戦車、ギガンテスがハンヴィーを挟む形で展開していた。

隊員全員が各車両に乗り込んだのを確認すると、車内でのブリーフィングが始める。

 

戦術士官《緊急出動です。詳細は不明。7年前に絶滅したはずの巨大生物を目撃したものがいるとの情報があります。有り得ない話ですが、とにかく現地へ向かってください》

 

その言葉に、その場にいた誰もが言葉を失った。



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00話 再来

目的地へ向かうハンヴィーの車内。

 

俺達はブリーフィングを終え、緊張を隠せずにいた。

誰1人口を開かない厳粛な雰囲気の空間には、時々窪みに引っかかるタイヤ音だけが聞こえていた。

そんな中口を開いたのは一人の隊員だった。

レンジャー1-2隊員「なあ、もしかして()()()も戻ってくるのか?」

 

その()()()とはなにか、全員が理解していた。

 

8年前、人類に対して無差別で無慈悲な殺戮を行い、各国軍を壊滅させ、地球に多大な被害を負わせた宇宙からの侵略者。フォーリナーだ。

俺も彼と同じ考えでいる。この騒動の裏に奴らが関わっていないはずが無い...と。形のない恐ろしいさや不安に囚われていた俺達を、運転手が引き戻した。

運転手「もうすぐ目的地です。各員準備を」

と、運転手がルームミラーに目を向けて俺達に告げる。

そして隊長も俺達の精神的な追い込みを心配したのか、

葉山「俺も少なくとも同じく考えだ。だがな、今は地上の敵だぞ。奴らを迎える前に地上の掃除だ」

隊員「Yes,sir」

 

 

【運転手】

 

私は、後ろに控える隊員達にもうすぐ着くと告げた。

すぐに運転に戻るため前方に向き直す。ガランとした道路を走り、交差点を曲がろうとしたその瞬間。

そこで私は自分の目を疑った。

そして、震える手に要らぬ力を込めると、ハンドルを大きく切った。

 

 

【結城】

 

俺はビル街を固唾を呑んで見守る。

それは一瞬のことだった。一瞬気を緩めたせいで、俺は次の瞬間身を投げ出された。

結城「ぐあっ!?」

隊員「うわあぁぁぁぁ!」

運転手が運転を誤ったのだ。車体がスピンする。

車体が宙に舞った。だが一回転の後タイヤが地につく。

しばらくして車体の揺れが収まると、前席に手を置き身を乗り出す。

結城「おい!何があった!」

俺は運転手を問う。

運転手「あ、あれ...をみてください...」

と、指が刺された方を見る。

そこには、無惨にも身体を食い割かれてるグロテスクな光景が広がっており、そうした死体の数は数体に及んでいた。臓物の臭いが漂ってくる。地獄が、8年前の恐怖の再来だ。

隊員「何を見ろって...うっ」

一人の隊員が口を抑える。

俺はここにいるのはまずいと思い、運転手にすぐに退くよう促した。

 

あんな光景を目の当たりにした以上、巨大生物は出現し、今も市民を襲っているのは確定した。

俺は電子腕時計の画面を切り替えレーダーに目をやる。

もうすぐ目的地だが、8年前に見たあの忌々しい赤い点が見当たらない。地底に潜ったかあるいは別の場所で人々を襲っているのか。

 

そして、無線が入った。

レンジャー1-1隊長《巨大生物と交戦。数匹を撃破しました》

ここから近くの別の場所に展開したレンジャー1-1からの無線だった。

田中司令《なんだと!?そんな馬鹿な...》

 

決まりだな。

 

AF-14に手を伸ばす。その時、悲鳴がレンジャー1-2全員の耳に届いた。いつの間にか腕のレーダーには赤い点が数十出現していた。

田中司令《展開しているレンジャーに告ぐ。総員、巨大生物を殲滅せよ。一匹も残すな!》

 

それに、葉山さんが応える。

《レンジャー1-2、了解!》

《レンジャー1-3、了解しました》

《レンジャー1-4、戦闘開始!》

 

俺達は全員が顔を合わせる。そして無言で頷いた。

葉山「さあ、行くぞ!巨大生物との戦闘になる!皆気を引き締めろ!」

結城&隊員達「「「了解!うおおぉぉぉぉぉぉ!」」」

隊長の掛け声と共に俺達は叫びながら車から飛び出す。

目の前には全長10mにもなる巨大な蟻が群れをなし、市民に襲いかかっていた。この巨大蟻こそが『巨大生物』。

そして、射撃を開始した。

 

 



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01話 再召集

【レンジャー1-1隊長】

 

結城達レンジャー1-2が車に揺られていた頃、レンジャー1-1はさほど遠くないビル街に展開していた。

その傍らに真紅のヘルメットを被る男が1人。

ストームチームだ。名目上はチームだそうだが、何故か共に派遣されたのは彼1人のようだった。

 

私は、佐川 竜兵(さがわ りゅうへい)。今こそレンジャー1-1の隊長だが、前大戦は事務官を務めていた。前線での戦闘経験は、大戦後の巨大生物掃討作戦へ人員不足の為前線へ駆り出された時のみだ。

お世辞にも前線に慣れてるわけではない。事実大戦時この目で前線の惨状を見た回数はたかが知れてる人間だ。

そんな私でも、隣で発せられている静かな殺気は感じられる。

ストームチームの彼だ。

ふと、8年前の記憶が蘇る。

本部内ではある噂が話題になっていた。他の隊と違い常に独り身で敵に突撃していた兵士がいたと。その隊の名はストーム1。だが、彼はマザーシップを撃墜し、その巨大な爆発と共に行方不明になったと聞いた。

だが何故かストームチームの彼を見てると、彼が...。そんな風に思えてしまう。

 

ふと、隊員達の目が、こちらを向いて指示を待っていることに気づいた。腕のレーダーを見る。

レーダーには赤い点がはびこっていた。

つまり...。やがて私は決心したように言い放つ。その言葉に他の隊員も続く。

佐川「行くぞ!」

隊員達「「「イ...イエッサー!」」」

ギガンテスを先頭に、私たちは進軍を開始する。

隊員達の中には、まだ信じきれていない者もいるようで、

隊員「何かの間違いだよな?」

隊員「そうに決まってる!」

隊員「巨大生物は全滅したはずだ!7年前に!」

と言い、必死にレーダーに映る事実を否定している。

だがそれも虚しく、やがて奴らが視界に入る。

隊員「巨大生物だ!」

隊員「でけぇ......」

巨大生物は、市民を襲っていた。市民はこちらに向かって必死に逃げている。

佐川「市民が襲われている!撃て!市民を助けろ!」

足を進めながら私は隊員達を恐怖から離れさせる。

1人の市民が自由を奪われ、その身体は宙に舞う。

それを受け止めるかのごとく口を開き、市民の身体を二つに頒つ。

それを目撃した私たちは、一瞬慄いたが、すぐに照準を合わせ、私は隊員達を奮い立たせる。

隊長「くそっ!撃て!これ以上の犠牲を出すのは許さんぞ!」

隊員達「「「Yes,sir!」」」

いたるところで、悲鳴と喚声が聞こえ、気がつくと乱戦状態になっている中、私達は1匹に火力を集中し、1匹ずつ確実に葬っていく。

硝煙の匂いが弾道を描く。私はバッファローショットガンを装備し、ゼロ距離の散弾が巨大生物の甲殻を荒らしていくが、致命傷にはなっていないようだった。そして、隣で隊員達の装備している前大戦の戦績から今日まで使用され続けるアサルトライフルAF-14でも、なかなか絶命しない。気持ち巨大生物の甲殻が硬くなっているように思えた。が、確実に怯ませ、ダメージを蓄積させる。原型を留めないほどに蜂の巣になった巨大生物は、いよいよ絶命した。

だが、この時、私は、私の側面を許してしまったことに気づいていなかった。

巨大生物が顔を下につけ、とてつもない速さで突進を仕掛けてきた。

一瞬のことだったので、反応しきれなかった。その瞬間、死を覚悟した。実戦不足な自分を呪った。だが......。

突如その個体は頭に穴を開け、その場に崩れる。

後ろに目をやると、ストームチームの彼がMMF42を構えていた。銃口から煙が出ている。

彼が私を狙った個体を撃ち抜いたのだろう。

 

私は言葉は掛けず、黙礼し、戦闘に戻った。

 

そして、残りレーダーに映る個体は2匹ほど。幸い、こちらに脱落者はでなかった。そこで、本部から通信が入る。

田中司令《レンジャー1-1、状況を報告しろ!》

佐川《巨大生物と交戦、数匹を撃破しました》

田中司令《なんだと!?そんな馬鹿な...》

本部も驚いていた。まあそうだろう。7年前、地球上では絶滅させたはずの奴らに生き残りが存在したのだ。

最後の1匹の絶命を確認し、周囲を見渡す。

 

先程まで、悲鳴と叫声と銃声が飛び交った阿鼻叫喚の戦場は、まるでそんなことは最初からなかったかの如く森閑としていた。

傍らに転がる肉片、むっとするほどの血臭のなか、底が血で染まった軍用ブーツにあたるものを見る勇気は、どうしても起きなかった。

部下達も、同じ気持ちなのか、気後れする。

突如、レーダーが過敏に反応し、バイブレーションが鳴る。

 

目をやると、1ブロック先の交差点に新たな巨大生物が出現したようだった。

全身から汗が吹き出て、足が震えるのがわかる。だが、前方から聞こえる守るべきものの悲鳴や助けを求める声が、恐怖に慄く暇を与えなかった。一度深呼吸をする。

酸素を全身に行き渡らせ、脳を整理する。そして、敵に突撃すべく声を上げた。部下達もそれに続く。

佐川「行くぞ!」

隊員達「「「Yes,sir!」」」

 

 

【レンジャー1-2】

 

葉山《こちら、レンジャー1-2葉山、本部、応答願います。巨大生物を殲滅し、現在はハンヴィーにて待機中》

田中司令《了解した。その数ブロック先でレンジャー1-1及びストームチームが戦闘中だ。なお、あちらに大多数の巨大生物の群れが接近中だ。援護に向え》

葉山《了解しました。援護に向かいます》

そう言って通信を切る。

葉山「少し進んだ場所でレンジャー1-1とストームチームが戦闘中らしい。我々は援護に向かう!いいな!」

結城&隊員達「「「Yes,sir!」」」

 

待機中だったギガンテス3両と共に、レンジャー1-2は移動を開始した。

 

 

【レンジャー1-1隊長】

 

ここまでで部下が3名犠牲になった。

巨大生物はビルの側面だろうが、遊歩道橋の裏だろうが、平気で移動し、襲ってくる。

私の部隊(レンジャー1-1)は、戦後に入隊したものが大半を占めている。生と死が入り乱れる戦場、実戦を彼らは知らなかった。

それ故に巨大生物に対して反応するまでが遅かった。突進を受け、ビルの壁に強く背中を打ち付けた彼は悚然とし、巨大生物のその磨かれたような鋭い牙を腹部に受け入れる。

 

果敢にも人々の中をかき分け突撃を敢行した彼は、

遊歩道橋の裏(地面に足をついてた私たちにとっては頭上)にまで気を配ることが出来ず、何をされたか分からぬままこの世を去った。彼だった屍は、首から上を失くし足からもつれ、前のめりに倒れた。

 

人混みに押され、尻餅をついた彼の視界を覆うように目の前に立った一匹は、彼を引き裂き、複数体の巨大生物がそれに群がる。私たちにも気づいていたようだが、咀嚼するそれに夢中だったらしい。

 

彼らのドッグタグを回収し、最期を見届けてやれなかったこと、せめて安心を抱かせる為に最期に言い残すことが無いかと聞けなかったことに、自分を呪った。自分を攻めた。

巨大生物への憎悪を滾らせる私の頭に、部下の希望の声が響く。

突如、目の前の巨大生物が特に密集する位置に向かって三発の榴弾と複数の弾道を描く弾丸が着弾し、巨大生物を穿った。

隊員「タンクが来てるぞーっ!」

隊員「援軍だー!」

 

私たちは、その言葉を聞いて、弾倉を再装填する。2秒とかからなかった。そして、勢いを取り戻した!

 

 

【レンジャー1-2、レンジャー1-1合流】

 

レンジャー1-1は勢いを盛り返し巨大生物に突撃、殲滅していった。

レーダーに目をやり、巨大生物の反応がないことを確かめると声を掛け合う。

佐川「レンジャー1-2、援軍に感謝する」

葉山「間に合ってよかった。兄弟」

"間に合った"の単語に佐川は敏感に反応したのか、死体に目をやると、空の弾倉を地面に叩きつけた。

葉山「すまない。余りにも不謹慎だった。発言を許してくれ」

佐川分隊長の先程の動作と周囲の惨状を見る限り、彼の部下の姿も何名か見当たらないことが何を意味するかすぐに理解した。

佐川「いや、いいんだ。そちらのお陰で全滅せずに済んだ」

佐川分隊長の気遣いに感謝し、援軍に来た旨を伝える。

佐川「大群がこちらに向かってるだと?」

葉山「ああ、そうらしい。そいつらを殲滅しろとの命令だ」

佐川「分かった。準備しよう」

葉山「ああ、まず公園に挟まれたあの道を確保しよう」

佐川「了解した」

 

部隊はすぐに進軍を開始する。

すると、足を進める途中で本部から無線が入る。

田中司令《歩兵部隊、タンクに続け!》

隊員達の口は綻んでいた。

隊員「タンクの援護とは頼もしいぜ!」

隊員「タンクに続け!」

隣から部下達の会話が聞こえる。

隊員「なあ、最後の巣が駆除されて7年。その間、こいつらはどこに隠れてやがったんだ?」

隊員「こいつらは地底に潜んでた。俺達は、こいつらの上で暮らしてたってことなのか!?」

第三波となる巨大生物は少数で、数分で全滅させた。

すぐに簡易的な補給基地を築き、迎撃準備を整える。

 

すると、程なくして、肉眼視出来るほどに巨大生物がその姿を現した。街が、地面が、黒の津波に覆われる。

味方の士気は上々だった。誰1人逃げ出そうとする者はいない。この場にいるのは、黒の津波のように迫る巨大生物を果敢に迎撃する者達だ。

佐川分隊長の指示で、それぞれの分隊で人塊になる。

隊員「7年ぶりの巨大生物だ。今や絶滅危惧種だぞ!」

一人の隊員が、「絶滅危惧種」という単語を使った。それに訂正の意味も込めて、佐川分隊長は更に煽りをかける。

佐川「危惧は無用だ!絶滅させろ!」

味方の士気は高まるばかり。

隊員達「「「Yes,sir!」」」

田中司令《巨大生物を戦車に近づけるな!》

結城「うおおぉぉぉぉぉぉ!」

隊員「EDF!EDF!」

 

だが、いざ乱戦に持ち込まれてしまうと、たちまち巨大生物に呑まれていった。

隊員「弾が切れた!援護しああああぁぁぁ!」

隊員「報告!一人やられました!」

隊員「ぐあっ!?よせっ!」

隊員「あいつを助けろ!はっ!?しまった!避けろ!...グチャリ」

緊急回避...をするも、足を噛み切られ、スプリンクラーの如く血が辺り一帯を真っ赤に染め、隊員は絶命する。

隊員「くそっ!こんな時にジャムを起こしやがった!はあっ!?くそぉ!ぐあぁ...」

 

この場はもう地獄と化していた。隊員達は恐怖心を煽られ、地獄に蝕まれていった。

 

隊員「よくもハルを!死ね!死ね!ぎゃあああ!」

隊員「被弾した!くそ!おちつけ!はっ!?巨大生物がくる!....」

足元の屍から引き取ったAF-14を持ち、2丁持ちで乱射するが、既に周りが見えておらず、敵味方関係なしにぶっ放す。図体のデカイ巨大生物にも確かに致命傷を与えるが、味方が被弾し、その味方は間もなく巨大生物の餌となった。トリガーハッピーとなった彼も間もなく複数の巨大生物の中に呑まれていった。

爆音と熱風が身体を襲う。戦車が大破し敵味方を巻き込み大きな爆発を起こす。それに呆気を取られた隊員の頭が巨大生物の顎に砕かれ耐えられず、脳漿が周囲に飛散する。

佐川「ぐわあああ!」

隊員「隊長ー!」

 

佐川は後ろに回られていた巨大生物の突進でアスファルトに叩きつけられ、致命的な怪我を受け動けなくなった。そして腹を巨大生物に咥えられるとビルの壁に何度も叩きつけられる。佐川の体は目を背けたくなるほどになっていた。

葉山と結城、レンジャー1-2の数名は、互いの背をくっつけ合い、応戦していた。お陰で、こんな乱戦でも伝令は機能する。少しずつ、途中レンジャー1-1の生き残りを救出し。後退していく。

 

時々、結城達に到達する前に遠くで絶命する個体がいる。恐らくこの場にいない"彼"が狙撃で援護してくれているのだろう。お陰で徐々に距離を取れつつあった。遠くの敵を狙撃で仕留め、近距離の敵は小銃掃射で怯ませる。それを繰り返し、合流した交差点へたどり着いた頃、敵は目で数えられるほどになっていた。

 

そして、最後の敵をMMF42の弾丸が貫いた。

生き残りは...最初レンジャー1-1 9名、レンジャー1-2 9名、足す1名の計19名で臨んだ今回の殲滅戦。周囲を見渡すと生き残りは元の2分の1。8名程だった。レンジャー1-1は隊長以下6名が死亡、事実上壊滅状態。レンジャー1-2もお世辞にもすぐ他の目撃地点へ続投されてもいいと言えなかった。

大きな代償を払い、静けさを取り戻した空間で、皆俯き、仲間の死を嘆く者、これから地獄を度々目にしなきゃいけない事を憂いていた者、様々いた。

やがて生者と死者のみの空間に機甲部隊と救護車両が到着し、虚脱感に見舞われ、本部へ帰投した。

 

 

 

 

 

 

 

 



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02話 広がる災厄

難易度はHARDの設定です。
normalと違い、ショットガンばりの酸噴射をしてくる巨大生物と戦っている設定でお読みください。


【結城・レンジャー1-2】

 

先程の戦闘の後、帰路に着く俺達は、ハンヴィーに揺られていた。

車窓から外を見る。空は橙色に染まっていた。夕日が直接目に入り、思わず目をつぶった。

車窓から見る景色は平和でしかなかった。3人家族とすれ違う。まだ幼い子供と若い夫婦が並んで歩いていた。この光景を見ると、先程までの戦闘が嘘のように思えてくる。だが、余韻に浸る俺達は現実に引き戻された。総合作戦指令本部からの通信だ。全部隊共通の通信回線で呼びかけが行われた。

 

田中司令《エリアJ13に展開中のレンジャー1-3からの救援要請だ。付近に展開中のレンジャーは救援に向え》

 

俺は葉山さんを見る。葉山さんは無言で頷くと、

 

葉山《こちらレンジャー1-2、我々が行きます》

田中司令《了解した。レンジャー1-2、現在の戦力は》

葉山《我々レンジャー1-2が4名。レンジャー1-1が2名。ストームチーム1名の計8名で行動中です》

 

普通なら、参加は望ましくない状態なのかもしれないが、これほどの緊急事態だ。1人でも戦闘可能員が入れば戦闘に参加しなければ守るべき市民が犠牲になる。

 

司令《了解した。レンジャー1-3、レンジャー1-2を援護に向かわせる。それまで持ちこたえろ!》

レンジャー1-3隊長《了解!はっ!こっちに来るぞ!撃てぇ!撃てぇー!》

 

俺達は予定していた帰路を変更し、レンジャー1-3の元へ急行した。

 

 

【レンジャー1-3】

 

1-3隊員「クリア!」

1-3隊長「良くやった。レンジャー1-2との合流まで一旦休息をとるぞ。合流後、散った生き残りを叩く」

1-3隊員「Yes,sir!」

1-3隊員「それにしても、酷いですね...」

1-3隊長「ああ...」

 

今自分達が踏んでいる地面は、血で真っ赤に染まり、レッドカーペットが引かれているようだ。

ビルの壁には飛散した血や壁面が溶け、溶けて折れた鉄骨がむき出しになっている。

 

鼻をつんざく刺激臭が辺りに漂っていた。

 

 

【レンジャー1-2、レンジャー1-3合流】

 

ハンヴィー及びギガンテスは市街地を進み、公園に展開した。

ハンヴィーから降りると、刺激臭が漂ってきた。

結城「うっ...なんだこの匂い...」

1-3隊長「レンジャー1-2、よく来てくれた」

葉山「ああ、ところで、見たところ救援は要らなかったようだが...」

1-3隊長「ああ、その事だが、数匹街の中で見逃してしまった巨大生物がいる」

1-3隊長「我々だけでは全て殲滅しきれないと判断した」

1-3隊長「それに...」

そうしてレンジャー1-3の隊長は道路に広がる血の池に目をやる。

つられて見ると、そこには、泡をたてて溶ける肉片(?)。人の原型など微塵も留めない肉片が転がっている。

まるで強酸をかけられたかのようにぼそぼそと荒れ、ただれていた。

 

結城は記憶を辿る。やがて、自分達が戦っていた奴らがしなかった動作が脳内で再生される。

そうだ、こいつらは強酸を体内で生成し、それを尻から噴射してくる。

8年前、当時現れた巨大生物は噛み付くのみである程度距離を取れれば危険度が低いとされていた。だがその説はすぐに瓦解することとなった。酸を吐く個体が現れ、その犠牲者の数は計り知れない。当時のEDFは、最先端の強度を誇っていた次世代ボディアーマーを簡単に溶かされ、酷く苦しめられた。近年、人類は度重なる研究の結果、およそ酸に耐えることの出来る耐久性を実現したアーマーを開発。EDFに採用されている。

だが、前大戦より強固となり、戦術を知った巨大生物が現れたのだ。これからの戦いで被る被害は計り知れないだろう。

 

そんなことを考えていると、どこからか悲鳴が聞こえた。

声のする方を振り返ると多数の市民が巨大生物に襲われていた。

いきなりの出現に呆気に取られるが、すぐに戦闘態勢を整え、突撃の準備に取り掛かる。

1-2隊員「巨大生物だ!」

1-3隊員「やっぱり隠れていやがったか!」

1-3隊員「襲われてるぞ!」

1-3隊長「撃て!市民を守れ!」

隊員達「「「Yes,sir!」」」

葉山「前進ーっ!」

1-3隊員「おおおぉぉぉぉぉぉ!」

叫び、ギガンテスを先頭に突撃を開始する。馴れ合わず静寂を貫くストームチームもそれに続く。

市民を襲うのに夢中な巨大生物に、ギガンテスの榴弾と小銃掃射が襲いかかる。目の前では阿鼻叫喚の戦場となっていた。

守れなかった悲しみを巨大生物への憎悪に変える。

 

市民狩りに飽きたのか、今度はこちらに対して酸を飛ばしてくる。

数匹から集中砲火を食らったギガンテスが爆散し、搭乗員の焼け焦げた肌が巨大生物の中に消えていった。

1-3隊員「食らった!酸を食らったー!うわぁぁぁぁぁ!」

1-2隊員「熱いぃ!身体が溶ける!」

1-3隊員「やられた!酸を食らった!衛生兵!」

1-2隊員「銃身が変形した!何でも溶かしやがって!」

あちこちで悲鳴が聞こえる。

ギガンテスも大破し、残るは俺達歩兵部隊だけだ。

 

不意に、空を仰ぎみる。

すると、結城達から見て後方から、両翼型の爆撃機が姿を現し、置き土産を残していく。無誘導爆弾が巨大生物の群れに殺到し、巨大生物を一網打尽にする。あれは戦術爆撃機カロンだ。

1-3隊員「空軍だ!」

それから2機のカロンが頭上を通過し、巨大生物に空爆を浴びせる。

 

カロンパイロット《空爆完了。地上部隊、生きてるか?》

 

突然の飛来に戸惑い、周囲を見回し、飛来を招いたとされるエアレイダー隊員を探すが見つけられず、巨大生物の生き残りに思考を戻す。

少数となった巨大生物に対し、レンジャーは反撃を開始した。

 

田中司令《状況を報告しろ!》

 

本部から通信が入り立ち止まり1-3の隊長が応答する。

 

1-3隊長《新たな巨大生物です!市民が襲われています!》

田中司令《巨大生物を攻撃。市民を救え!》

1-3隊長《了解!》

 

葉山「行くぞ!生き残った敵を掃討する!」

結城「Yes,sir!」

そして、再度進軍を開始する。

目視できる生き残りは少数。先程の空爆で大半を木っ端微塵にしたようであった。

辺りは空爆によって倒壊したビルの残骸と炎の海。巨大生物だった肉塊がごろごろとそこかしこに転がっている。

 

進軍中、ある男の声が共通回線で流れる。

そのいかにも研究者の様な話し方と大げさに言うと「嗄声(させい)」を持つ男性の名はオハラ。オハラ博士はフォーリナーテクノロジーの権威であり、今のEDFの組織図と訓練内容の多様化は彼のお陰でもあった。

オハラ博士は語る。

《あーあー、私はフォーリナーの研究者オハラだ。兵士諸君にアドバイスしたい。死んだ巨大生物を調査した結果...》

その内容は、巨大生物の進化を告げるものだった。

 

そしていよいよ巨大生物の元に到達したレンジャーは、近い個体へ射撃を開始した。耳をつんざく銃声が鳴り交う中、他の場所に展開していた部隊の叫びや奮戦の様子が聞こえてくる。

 

1-6隊員《こちら、レンジャー1-6!データと違います!巨大生物は7年前より強靭で凶暴です!我々だけでは手に負えません!》

田中司令《レンジャー1-6、巨大生物と戦う訓練を積んできたはずだ。踏みとどまれ!レンジャー2-1を応援に行かせた。戦力を整え、敵を押し返せ!》

1-8隊員《こちらレンジャー1-8、救援部隊はどうなってる!?》

2-1隊員《こちらレンジャー2-1、巨大生物と遭遇!戦闘開始!》

田中司令《レンジャー1-9がそちらに向かっている!それまで持ちこたえろ!》

2-2隊員《レンジャー2-2、このままでは全滅です!はっ!?酸がくる!》

2-3隊員《こちらレンジャー2-3!巨大生物と交戦中!ウイングダイバーの援護を要請します!》

 

ウイングダイバーとは、フォーリナーテクノロジーを応用して作られた精鋭部隊。適正があるのか女性隊員のみで、飛行ユニットを駆使し戦場を飛ぶ姿は「翼の戦姫」と称され、男性隊員達の中では妙に人気のある兵科だ。

8年前、レンジャーに属していた女性隊員達の殆どがウイングダイバーへ転属となった。のだが、今もレンジャーに残留したWACも少なからず存在する。

 

2-1隊員《なんて鋭い牙だ!》

 

他の場所でも、戦況はかんばしくないらしい。

 

1-6隊員《こちらレンジャー1-6!奴らは人間を軽々と持ち上げて......うわあぁぁぁぁぁぁぁ》

1-7隊員《こちらレンジャー1-7、周囲を確保しました。おい!まだいるぞ!どこから出てきやがった!》

1-8隊員《レンジャー1-8、1-9と合流、戦闘再開!ダダダダダダダダッ!ぐあっ!酸を食らった!助けてぇ!》

6-1隊員《こちらレンジャー6-1、ウイングダイバーの援軍を!》

田中司令《ウイングダイバーの到着には時間がかかる。持ちこたえろ!市民を守らねばならない》

 

味方の悲鳴が飛び交い、音割れを起こす中、

無線では"ウイングダイバー"という単語が度々口にされていた。

 

そして、レンジャー達が敵を殲滅し、装備の点検を行っていた頃、オハラ博士から通信が入る。

 

《ウイングダイバーはまだなのか!どれほど奴らが進化していようと、飛ぶことが出来ない以上、空中からの攻撃で殲滅できる。ウイングダイバーさえ到着すれば、勝負は決する》

 

どうやらウイングダイバーの戦闘への参加が遅れているらしい。

突如日本中が戦場と化したのだ。遭遇戦になっているに違いない。

周囲の安全を確保し、開始地点に戻ったレンジャー達はハンヴィーに乗り、今度こそ基地を目指し帰路についた。



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03話 翼の戦姫

ペーペーの知識と書物を参考に、EDF以外の勢力も登場させていただきました。これから書くの大変になるかも。(EDFシリーズのようなものだったら万年戦闘ばかりですし、マンネリ化防止として自分にとっては良い薬になりました。)



巨大生物の出現から数日、レンジャー1-2は休む間もなく出動していた。

 

巨大生物の出現域は日本全域。いや、世界中に広がっていたが、EDFの連日の応戦により確実に数を減らしていた。そして今日、EDF総司令部は巨大生物殲滅作戦【Operation:Invader Annihilate】を発令。EDFは各国の防衛組織と連携し、殲滅作戦を展開していた。

葉山「逃がすな!」

隊員「1匹残らず始末するんだ!」

 

戦術士官《エリアJ-12の住宅地に巨大生物が確認されました。現地の部隊はそのまま進軍。その先に展開中の自衛隊中央即応集団特殊作戦群の部隊と合流して下さい》

田中司令《現地の部隊に告ぐ。巨大生物の生き残りが確認された。発見次第倒せ。敵は僅かな生き残りに過ぎない。怯むなよ!》

葉山《了解!》

 

葉山「前進するぞ!」

結城&隊員達「「「Yes,sir!」」」

 

数ブロック進むと、自衛隊中央即応集団特殊作戦群の小隊規模の部隊と合流し、並走して前進し始めた。

進む足を止めぬまま自己紹介を済ませる。

真田「自衛隊中央即応集団特殊作戦群第1中隊長の真田 満(さなだ みのる)であります。我々が同行します」

葉山「宜しくお願いします。連合地球軍レンジャー1傘下レンジャー1-2隊長の葉山です」

真田「宜しくお願いします。葉山隊長。...少しお待ちを。......!?(部下に向かって)おい、たった今、待機から出動命令に変わった。行くぞ!1班と2班は左右に展開。3班は付いてこい!」

真田指揮下の部下達(以降隊員(自))「「「了解!」」」

その言葉の後、30名ほどの塊が10人ずつ、3班に分かれ大通りの交差点から進軍していく。

 

隊員(自)「くそぉ!いよいよの防衛出動の相手が巨大な昆虫だと!?ふざけるな!」

真田「自衛隊法などの余計な政治的判断に迫られることは無い!各員、躊躇はいらん!私の合図で射撃開始だ!」

隊員(自)達「「「了解!」」」

少し歩くとやがて巨大生物の大群が姿を現した。

 

隊員(自)《こちら2班。配置についた、送れ》

隊員(自)《同じく3班、配置についた、送れ》

真田《了解した。全班、攻撃開始!》

 

葉山「俺達も突撃する!続けー!」

結城&隊員達「「「Yes,sir!うおおぉぉぉぉぉぉ!」」」

都市から離れ、のどかで静かな住宅地が戦場と化し、巨大生物の肉片

や体液、空薬莢が地面で跳ね飛散する。

10分程度で殲滅が完了した。

そして、また少し先に巨大生物が出現する。地面からではなく、山岳方面から移動してきたようだ。

真田「巨大生物を発見!戦闘開始!」

そうこうしている間にも、無線で仲間の戦況が伺える。

 

隊員《こちらレンジャー9-5!巨大生物と交戦中!苦戦しています!ウイングダイバーの援護を要請します!》

田中司令《こちら本部、ウイングダイバーは現地へ向かっている。それまで巨大生物を食い止めろ!》

隊員《ウイングダイバーは巨大生物の天敵!到着すれば、巨大生物もおしまいだ!》

隊員《巨大生物は飛べない!一網打尽だ!》

 

隣では真田3等陸佐が、

「EDFに続け!我々も行くぞ!」

隊員(自)「「「前進ーっ!」」」

同じく10分程で、最後の個体の生命反応が消えた。

葉山「本部、応答願います。付近の巨大生物を殲滅しました」

 

田中司令《了解した。...なんだと!?レンジャー1-2、戦闘態勢維持!巨大生物の大群がそちらに向かっているぞ!ウイングダイバー3-6をそちらに向かわせる》

葉山《......了解》

 

真田「どうされました?」

葉山「巨大生物の大群がこちらへ侵攻中のようです。我々でそれを迎え撃てとの命令です」

真田「そんな...援軍は?」

葉山「こちらの精鋭部隊が一分隊向かっているそうですが、恐らく、巨大生物が到達する頃にはこちらは混戦になっています」

すると、無線越しに、

 

ウイングダイバー3-6隊長《こちら、ウイングダイバー3-6、敵と遭遇しました!かなりの数です。部隊を下げつつ迎撃!レンジャー1-2の元に急行します》

 

葉山「こりゃこちらが全滅する頃になるかもな...」

真田「そんなことにはなりませんよ。とにかく、我々だけで迎え撃てるように準備しましょう」

 

数分後...

 

隊員(自)「巨大生物を補足!市民に襲いかかっています!」

市民の中には、記者などが多く見られた。

真田「自衛隊の防衛出動は過去1度(前大戦)と今回。しかも今回はEDFだけではなく自衛隊も市街地戦に投入されてる。しかも相手が相手だ。マスコミが騒ぐのも無理はないが、気の毒だな.....」

真田「1班、支援に回れ!傘型隊形!交互躍進!GOGO!!」

隊員(自)&レンジャーチーム「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」

彼の部隊と葉山達は一体となり、巨大生物への突撃を敢行した。

インカムからふとオハラ博士の声が聞こえる。

 

《これほどの数が生き残っているとは...巨大生物の生命力は我々の想像を超えている!地下で進化を続けているとすると、手に負えない事態になりかねない。調査が必要だ...》

 

結城は地底の奴らの穴に進軍する事になるのではと内心思っていたが、心の中に留めることにした。

 

隊員《ウイングダイバーは何故来ない!もう限界だ!はっ!弾切れだ!誰か弾を!》

隊員《こちらレンジャー8-2!ウイングダイバーの力が必要です!来るぞ!迎え撃て!援軍を要請します!》

田中司令《ウイングダイバーは、現在そちらへ向かっている》

 

隊員「殲滅!」

隊員(自)「クリア!」

真田「次のポイントに向かう!付いてこい!」

隊員(自)&レンジャー1-2「「「おおぉぉぉぉぉぉ!」」」

 

隊員《こちらレンジャー1-4、巨大生物の抵抗を受けている!もっと人手が欲しい!援軍を!》

真田《こちら真田。何ですって!?神奈川、埼玉に展開していた東部方面隊第1師団が壊滅!?蜘蛛型だと!?》

 

くそっ...どこもかしこも壊滅状態かよっ...!?

.....と結城が嘆いていると、無線でも聞こえたが直にその空間に響く声があった。

 

ウイングダイバー隊長(以降隊長)《こちら、ウイングダイバー。現地に到着しました》

田中司令《ウイングダイバー、巨大生物を殲滅しろ!》

隊長《了解!ハンティングの時間だ!獲物はどこにいる!》

 

ウイングダイバーが到着したようだ。高架線の向こうから飛行ユニットを使い建物の屋上を飛んでいる。

隊員「見ろ!ウイングダイバーだ!」

レンジャー1-2の1人が叫ぶ。

隊員「ウイングダイバーが来たぞ!」

隊員「勝利の女神の到着だ!」(回りの隊員が少し引いた)

 

「巨大生物は空を飛べない!一方的な戦いになるぞ!」

結城も叫ぶ。

 

隊長(W)「極限まで軽量化した我々は防御に劣る。アーマースーツを着用せず戦場にいるんだ。敵の攻撃には注意しろ!」

ウイングダイバーの到着で隊員達の士気も高くなる。

 

田中司令《ウイングダイバーが戦闘中だ。レンジャーチーム、今がチャンスだ。全ての巨大生物を殲滅するぞ!》

葉山「ウイングダイバーの支援に向かう!行くぞ!」

結城&隊員達「「「Yes,sir!」」」

真田&隊員(自)「「「了解!」」」

 

田中司令《ウイングダイバーが次々と巨大生物を撃破している。この戦い、勝てるぞ!》

 

優雅に舞い、光る弾道を描く武器を巨大生物に振るう。その光景を真田3等陸佐達は行進しながらも驚嘆していた。

隊員(自)「あれが、ウイングダイバー...」

真田「連合地球軍...EDFか...」

そうして間もなく、付近の巨大生物は一匹も残すことなく絶命した。

今回の戦闘では、軽傷者のみで幸い死者は出なかった。

今回の巨大生物再出現という騒動により、各国の防衛組織、そして連合地球軍は、無視出来ない被害を被った。

 

日本陸上自衛隊戦力・・・・・20%減少

連合地球軍日本支部属歩兵部隊戦力・・・・・10%減少

 

同日、首相官邸付近で起きた巨大生物襲撃により現政権は崩壊。新井(あらい)新政権が設立される。

 

 

 

 

 

 

 

 



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04話 落日

流石に葉山や結城達を働かせ過ぎになると思ったので、別の部隊を向かわせました。


スカウト2《こちらスカウト2、救援要請があった地点に到着。ビルの間にネットが張り巡らされています。糸が!市民が襲われている!なんてことだ!あっ、ウイングダイバーを発見!こんな事があっていいのか!》

 

戦術士官《レンジャー4-1、4-2は前方の機動隊と合流し、市民の避難を助けてください》

梶原《了解しました》

 

梶原(かじはら)が振り返ると部下達が覚悟を決めた眼差しで梶原を見ていた。そんな部下達に命令を下す。

梶原「進めーっ!」

隊員達「「「おおぉぉぉぉぉぉ!」」」

隊員「進路上に敵!どうされますか!?」

梶原「レンジャー4-2、頼む!」

レンジャー4-2隊長「了解した!我々は敵を叩く!」

 

ビルとビルの間には巨大な蜘蛛の巣。張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣にはウイングダイバーが捕らわれていた。横には、巨大な蜘蛛。この巣の主だろうか。蜘蛛型巨大生物とはまた別の新種だった。女郎蜘蛛に外見が似ている。そして巣は太い糸で作られており、強度もそれなりに有りそうな、言うなればネットの様だった。

 

田中司令《ウイングダイバー、何が起こった!?状況を報告しろ!》

隊員(w)《こちらウイングダイバー......敵に捕まった!》

隊員(w)《やつら、我々を捉える罠を!身動きがとれません!》

隊員(w)《救援を!急いで!》

田中司令《レンジャーチーム及びストームチームは、ウイングダイバーを救出しろ!急げ!》

 

梶原は総合作戦指令本部からの命令を脳で瞬時に変換し、部下に伝える。

梶原「撃てーっ!ネットを破壊しろ!」

隊員達「「「了解!」」」

だが、撃った弾丸が糸に絡め取られ、損傷すら与えられなかった。

 

ネットの損傷を確認出来ないことに違和感を覚える間もなく梶原は遊歩道橋のある交差点で市民の避難誘導を行っている機動隊と合流する。

梶原「連合地球軍レンジャー4傘下レンジャー4-1の梶原(かじはら)です。」

機動隊隊長「よく来てくれました。市民の避難の援護をお願いします!こっちです!(手でレンジャー4-1を誘導しながら市民に向き直る)急いで!地下鉄へお願いします!ほら、止まらずに!足を動かして!」

機動隊員「あれは...糸だ!糸を吐いてくるぞ!迎撃しろ!」

 

機動隊のS&W M39やMP5短機関銃が轟音を周囲に響かせるが、従来の性能のまま続投されている銃火器の弾丸では、大したダメージは与えられないようだった。この国の警察は、EDFが対巨大生物なのに対し、暴徒や対テロ専門の組織である。敵が敵なので、彼らは市民避難に徹する他ない。

 

機動隊員「糸に捕まった!助けて...助けてくれ!」

機動隊員「駄目だ!豆鉄砲程にしか思ってないみたいだぞ!」

機動隊員「EDFが来てる!怪物は任せて、市民の避難誘導を最優先しろ!」

機動隊員「たっ...助けてくれ!」

機動隊員「盾(ライオットシールド)が溶けた!?あの糸、酸を含んでやがるのか!」

機動隊や市民への被害も甚大だが、EDFへの被害も甚大だ。

街のあちこちに張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣はウイングダイバーたちの軽装甲を徐々に溶かす。中には飛行ユニットが溶かされた隊員もいるようで、四肢を動かし必死にもがいていた。

 

隊員(w)《足が動かない...離れろ!》

隊員(w)《出力を最大にして脱出しろ!》

 

梶原達の目にネットから必死に抜け出そうとするウイングダイバーの姿が入る。

だが、そのウイングダイバーは抜け出した瞬間を狙われ、抗うことを許されず巨大蜘蛛の口の中へダイブする。

 

隊員(w)《きゃああぁぁぁぁぁぁ!》

無線越しに彼女の悲鳴が聞こえる。が、梶原達には、肉声が聞こえていた。

隊員(w)《罠だ!退却しろ!このままでは全滅するぞ!.....はっ!しまった!》

次々と巨大蜘蛛の吐く糸の餌食になり、餌となっていく。

隊員(w)《こちらウイングダイバー!動けない!助けて!はっ.....あいつがくる!》

 

オハラ《こんな馬鹿な.....!ウイングダイバーが!こんなこと、予測できるはずがない!》

 

オハラ博士が絶望に染まる間にも無線には続けて悲鳴が交じる。

 

隊員(w)《来ないで!来ないでぇ!》

隊員(w)《脱出不能!救援を要請します!》

隊員(w)《脱出できません!助けてください!》

 

オハラ《やつらは人類の手の内を読んでいたというのか.....!?》

 

梶原「レンジャー4-2、新手の巨大生物を撃て!我々はネットの破壊を試みる!」

 

4-5隊長《レンジャー4-5、現地に到着しました。戦闘を開始します!》

 

完璧なタイミングで援軍が来てくれた。

 

梶原《レンジャー4-5、レンジャー4-1の梶原だ。ネットに囚われたウイングダイバーがいる。ネットに火力を集中しろ!》

4-5隊長《レンジャー4-5、了解!》

4-6隊長《こちらレンジャー4-6、現地に到着!》

梶原《よし、レンジャー4-6、新型の巨大生物を攻撃しろ!》

梶原《レンジャー4-1より本部。ネットの破壊を試みます!ネットの弱い箇所などについて、情報はありますか!》

田中司令《了解した。ネットについては、現在分析中だ。それまで新型の巨大生物を足止めしろ!これ以上部隊に被害を出してはならない!》

 

その通りだ。これ以上被害を増やしてはならない!と梶原は思う。トリガーに掛かる指に一層力が入る。

 

隊員(w)《巨大生物の待ち伏せです!罠で我々を!ああっ!?いやーーーっ!.....助かったの?》

 

1頭の巨大蜘蛛にレンジャー4-6が火力を集中、巨大蜘蛛から鮮やかな赤い血が吹き出す。力尽きた巨大蜘蛛は巣に張り付く力を失くしたのか地上に落下し歩道にヒビを入れる。

レンジャー4-6隊長「敵一撃破!次の獲物を仕留めに行く!」

隊員達「「「Yes,sir!」」」

 

隊員(w)《くそ!離れろ!ひっ!来ないで!来ないでーー!きゃあぁぁぁ!》

田中司令《ウイングダイバー、どうした!?》

田中司令《くそっ......!》

 

阿鼻叫喚の戦場に1人冷静を保っていた人物が絶望を語る。

 

オハラ《人類は、巨大生物を駆逐するためにウイングダイバーという力を手に入れた。.....が、巨大生物はそれ以上の進化をしていたというのか.......!》

 

田中司令《なんてことだ.....。ん!?レンジャーチーム!ネットの弱点が判明した!ネットの末端に火力を集中。削ぎ落とせ!》

 

いよいよだ.....!と梶原は思った。この時を待っていたのだ。

 

梶原《レンジャー4-1よりレンジャー4各チーム。ネットに集中攻撃だ!ネットの末端を狙え!》

4-2隊長《4-2了解!》

4-5隊長《4-5了解!》

4-6隊長《4-6、了解!》

 

頭上の巨大なネットには、突撃を敢行し、結果捕食されていった4-3と4-4の隊員達の死体や部位がネットに張り付けになっている。

 

レンジャー4-5隊長《倒れた仲間の為に!》

全部隊《おおぉぉぉぉぉぉ!EDF!EDF!》

 

流石に1点に集中した火力に耐えられなかったのか、ビルとネットを支える糸が千切れる。

その後も、確実に破壊していく。地面にネットだった一部分が落ちる。すると、乾燥し、しぼんでしまった。

なんだこれは...と驚くが、すぐに任務に戻る。

救出したウイングダイバーは少数だったが、それでも全滅をまぬがれる事が出来て良かったと思う。

 

オハラ《巨大生物の進化は、人類の英智を超えているというのか!?科学より早い進化など有り得るはずがない!しかし.....》

 

同日、世界各地で同一の新型巨大生物が確認され、世界中のEDFの歩兵部隊は甚大な被害を負った。



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05話 遮風地帯

レンジャー1-2はとある市街地のモノレールの高架の下に展開していた。周囲を見渡すと、先日確認された新型の巨大生物がネットを張り巡らせている。こちらには気づいていないようだ。

 

田中司令《ウイングダイバーチームの救援要請はその近辺だ。探せ!》

葉山《了解しました》

 

葉山「行くぞ!」

結城&隊員達「「「了解!」」」

隊員(w)「こちら、ウイングダイバー11、動けません!急いで救援を!」

 

田中司令《ウイングダイバーを救出しろ!》

 

里見「.....ウイングダイバーは巨大生物の天敵だ!だが、ウイングダイバーの天敵となる巨大生物が現れた!」

隊員(w)「来ないでぇ!きゃあぁぁぁぁぁぁ!」

AF-14に取り付けられたレーザーサイトがネットを捉える。

葉山「撃て!」

耳をつんざく銃声がネット諸共刈り取っていく。

結城「敵を撃破!」

結城は、今回はショットガンを持ってきていた。

拡散した弾丸は、1発も外れることなく巨大蜘蛛の腹部に殺到する。

腹部を内部から掻き回された巨大蜘蛛が悲鳴に似た咆哮を上げる。

 

隊員「ネットを破壊!」

葉山「よくやった!」

隊員(w)「ありがとうございます!以後、指揮下に入ります!」

 

その後も捕らわれた人々を助けて回る。

助けると、何度も感謝をしてくる者、何も言わず逃げていく者、恐怖を紛らすためか怒りに任せて「もっと早く助けて」と言い放ち去っていく者様々だった。

 

ざっとウイングダイバーを3人程助けた頃だろうか。

隊員《こちらレンジャー6-3!動けるのは私だけです!巨大生物と交戦中!やつらは巣を作って人間を.....ああ、ぐあっ!糸が.....糸が取れない!うあぁ!引きずられています!誰か手を貸してくれ!助けて!》

 

田中司令《作戦司令本部よりストームチーム。孤立しているチームがいる。救援に向かえ!》

 

結城「隊長、どうされますか。」

葉山「決まっている。ストームチームに合流し、我々も参加する!」

結城&隊員達「「「Yes,sir!」」」

 

葉山《こちらレンジャー1-2。我々もストームチームに合流します》

田中司令《了解した。幸運を祈る。仲間を救出しろ!》

葉山《了解!》

 

進軍を開始し、交差点に差し掛かるとストームチームと合流した。

葉山「これよりストームチームの指揮下に入ります」

葉山の言葉に、彼は頷く。

 

無口なのは気にせず、共に進軍を開始する。

 

オハラ《こちらオハラ、兵士諸君、新たに現れた巨大生物を、レタリウスと命名したい。レタリウスはネットで獲物を絡めとる。十分に注意してほしい》

 

田中司令《巣に捕えられた者を救出しろ!絶対に見捨てるな!》

展開中の隊員(全)《了解!》

 

レーダーを確認すると、周囲に赤い点が増えていた。

 

里見「巨大生物どもがいるぞ!」

葉山「足を止めるな!撃て!」

隊員(w)「巨大生物は我々に任せてください。ストームチームとレンジャーチームは救援に向かってください」

葉山「了解した。この場は任せる!死ぬなよ!」

 

ウイングダイバーと別れ、街で一番広い通りに出ると、案の定ネットが張り巡らされていた。

そこで強烈な恐怖感がこみ上げ、足を止める。

数十に及ぶ死体が吊るされ、ネットが血色に染まっている。末端からは血が滴っていた。臓物が飛び出ている死体まである。

 

数メートル先で多数の市民を庇うように、遮蔽物をうまく使い奮戦する隊員がいた。だが、遮蔽物に関係無く頭上から降り注ぐ太い糸に絡め取られ、遮蔽物から無理やり引きずり出されると、今度は360度からの酸攻撃を受け、泡を立て溶けてゆく。原型を留めない死体に変わった。

 

警官隊は既に巣に捕らわれた者も地上に残っていた者も絶命している。

吐き気を抑え、目の前に現れた巨大生物に咄嗟に気づく。

葉山「はっ!総員攻撃開始!捕らわれた者を救出しろ!」

隊員達「「「りょ...了解!」」」

結城「くそっ!はっ!糸が来るぞ!避けろぉーーー!」

隊員「わあぁ!捕まった!解いてくれ!」

隊員の抵抗も虚しく更に巻き付かせてしまった。

 

隊員《こちらレンジャー7-1。3名やられました!いえ.....3名はまだ、生きています!網に....捕らわれて.....わあっ!逃げろ!逃げろー!》

 

葉山「くそ!レンジャー7-1を救出しろ!」

 

隊員《8名やられました!逃げられたのは、私だけです.....》

田中司令《なんて化け物なんだ.......》

 

隊員A(7-1)「誰か助けてくれ!あぁ!救援が来たぞ!」

隊員B(7-1)「本当か!?ここだーっ!」

隊員C(7-1)「やばいぞ!やつがくる!」

 

葉山「今助ける!総員レタリウスを撃てー!」

結城「撃破!ネットの破壊を急ぎましょう!」

 

ネットを破壊すると、破壊前の粘着性はどこへやら。

隊員他市民から解けると空気が抜けたようにしぼんでいった。

レンジャー7-1の隊員達はウイングダイバーのような飛行能力を持たないため、地面に叩きつけられる。

 

隊員A(7-1)「いだっ!?くそう...尻が痛いぜ.......救援感謝します!以後レンジャー1-2の指揮に従います」

 

オハラ《新種まで生まれているとなると、やつらの進化速度は想像を絶している。このままでは、地球は巨大生物の星になる。一刻も早く巣を破壊しなければならない!》

 

戦術士官《東京地下に巣穴を確認》

 

オハラ《一刻を争う!地底の巣を破壊し、やつらの進化を止めなければならない!レタリウスが生まれたということは、いずれさらなる新種.....ウイングダイバー以上の飛行型巨大生物が誕生する危険すらある。地球を巨大生物の星にしてはいけない!絶対に.....》

 

やがて周囲の巨大生物を殲滅し、言葉の通り生きていたウイングダイバーと合流した。

葉山「生きていて良かった」

本心から微笑む葉山にウイングダイバーの隊長は顔を赤面させ、言った。

隊員(w)「あの....ウイングダイバー11の春原 佳奈子(はるばら かなこ)です。お名前を聞かせていただいてもよろしいですか?」

葉山「いや、名乗るほどでは....レンジャー1傘下レンジャー1-2隊長の葉山智です」

隊員(w)「葉山さんですか.....貴方は命の恩人です。ありがとうございます!.....その...良かったら非番の時にお食事でもいかがですか.....?」

葉山「えっ.....その....分かりました。非番日を確認しておきます...」

結城「ヒューヒュー」

里見「隊長、見せつけてくれますね」

葉山「あ...あほ。そんなわけないだろう!」

少し震えた声で反論する。

 

隊員「やっとお相手を見つけられましたか(ボソッ」

葉山はその隊員にゲンコツを食らわせた。

隊員「いでっ!隊長勘弁してくださいよー」

だがさっきのセリフが頭から離れないのか、ウイングダイバー隊員は更に顔を赤面させ俯く。葉山も俯いた。

 

田中司令《総員帰還しろ!よくやった!》

 

数分後到着した車両部隊に乗り込み一同は帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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閑話 非番

結城は寮のベッドで目を覚ました。

 

手を伸ばせる限り伸ばしバンザイする。

結城「ふあぁぁぁ.....久々の休息だったが、こんなに寝てしまうとは......」

新庄「よお、起きたか」

里見「おはようございます」

結城「おお、おはよう」

部屋にはレンジャー1-2の隊長以外の顔と、仲の良い別部隊の隊員が揃っていた。

三段ベッドが部屋の入って左右両壁に設置されている。

それぞれのベッドに、里見、別部隊の隊員、新庄、大黒がいる。大黒は、車の雑誌開きを頭に被せたまま寝ていた。

結城「隊長はどこに?」

隊員「隊長なら、佳奈子さんとデートっすよ」

結城「まじか!」

里見「ええ、お二人が隊長の自車で出発するの見かけました」

食事にでも出かけたのだろう。

結城「まあ、今日は非番だし、少しくらい兵士としての時間を忘れてもかまわない...か...」

隊員「そうっすねー。あれ?遠い目をしてどうしたんすか?誰か気になる人でも?」

結城「ばっ!」

新庄「馬鹿。結城はあの新人オペレーターに惚れてるのさ」

 

1年前、連合地球軍日本支部関東基地に新人のオペレーターが配属されてきた。

まだ幼げな印象を受ける人だったが、それが関東基地の男性隊員達の間で人気を博している一種のステータスにもなっている。

だが彼女には一つこの地球を守るという職の界隈において、心配となる事がある。

それは、彼女は前大戦時に助けられたという漆黒のヘルメットを被った隊員に憧れを抱き、ナレーション大学を卒業し、連合地球軍にオペレーターとして就職したらしい。彼女の業務に対する熱意と業績は好評だが、いざ奴らを前にする時、被害者であり、相当の恐怖を植え付けられたであろう彼女は平常心を保ち、奴らに立ち向かっていけるのか。ということだ。

彼女が機能しなければ当然指揮系統に多大な影響を与える。奴らの恐怖に彼女は打ち勝つことが出来るのだろうか.....

 

そんなことを考えていると、

田中本部長《こちら作戦司令本部。東京地下に巨大生物の巣穴が確認され、明後日、巣穴への侵攻を開始せよと総司令部から通達があった。8年前既に恐怖を味わった者、知らない者、それぞれいると思う。前大戦の戦訓から、犠牲は免れないだろう。だが、多大な犠牲を覚悟してでも成功させねば日本は壊滅だ。今奴らの巣穴を叩かねばならない。自衛隊と連携し、明日には突入部隊が編成される。幸い、今日は巨大生物の出現報告及び駆除依頼は来ていない。各員、今日一日は自由行動を許可する。せめて悔いのないように過ごしてほしい》

 

大黒が、神妙な面持ちで車雑誌を胸に持っていく。いつの間にか起きていたらしい。

隊員「どうする?」

新庄「俺は家族と過ごすよ」

結城「家族か.....お前は?」

里見「俺は妻を食事にでも誘いますかねー」

結城「新婚だったか......?死ぬわけにはいかないな。生きて若妻さんを一人にするんじゃないぞ」

里見「フラグっぽいこと言ってくれますね。のぞむところですよ。結城さんはどうするんです?」

結城「俺は......家族はもちろん、身よりは全員前大戦で亡くなったからなぁ。まあ、悔いのないように過ごすよ」

里見「そうですか.....なんかすみません。じゃあ明後日は生きて帰りましょう。絶対に」

結城「おうよ、じゃあな」

そう言って部屋には結城一人になった。

結城「さて.........訓練場行くか」

 

レンジャー1-2の面々と別れ、兵宿舎を出る。灰色の曇り空の下を歩きながら訓練場へのコンクリートの道を進むと、訓練場の入口に8年前からの顔見知りである訓練官と会った。

訓練官「おう、結城か。お前こんな時でも訓練場に来たのか」

結城「ああ、他にやることもないしな」

訓練官「訓練、付き合ってやるぞ?これでも8年前からの仲だろ?」

結城「ああ、よろしく頼む」

 

 

 

 

葉山と佳奈子はアウトレットパークのテラスで並んで星空を見上げていた。

佳奈子「今日は有難う御座いました」

葉山「こちらこそ。......そうだ、こんな時に仕事の話で申し訳ないが、佳奈子。司令からの言葉、聞いたか?」

佳奈子が頷く。

佳奈子「巣穴への突入作戦の話ですよね.....」

葉山は佳奈子がまるで故人を想うような目をしていたのを見逃さなかった。

葉山「まさか、8年前、君も.....」

佳奈子「うん。私はレンジャー3の所属だったんです」

 

 

【前大戦頃】

 

佳奈子「私達だけ....のようね....」

レンジャー3-6は、おそらく巣の最深部であろう深くの広間の前の通路まで来ていた。

隊員「そのようですね。どうします?我々だけで遂行しますか?それとも後続部隊を待ちますか?」

隊長「そうだなぁ.....後続部隊を待とう。我々だけでは危険すぎる。それまで周囲の確保に回ろう」

隊長の提案に頷くと発煙筒を通路に投げ、リュックサックを肩から下ろし地面に置くと中から予備弾薬を腰の弾薬ポーチに補充する。

そうしてる間にも、仲間の阿鼻叫喚の模様が無線機から聴こえてきた。

隊員《こちらストーム4!罠だ!敵に包囲されている!すごい数だ!》

隊員《駄目だ、敵が多すぎる!うわああぁぁぁぁぁぁ!》

田中司令《ストーム4!応答せよ!ストーム4!、応答せよ!...くそっ!》

隊員《こちらレンジャー4-3、縦穴を発見。巨大生物がいる。我々だけでは突破出来そうもない。えんぐ....ああっ!気づかれたぞ!撃てぇ!》

隊員《レンジャー4-3、こちらレンジャー6-5。助太刀するぞ!》

隊員《了解!おい酸だ!避けろ!》

隊員《こちらレンジャー2-9、巨大生物を殲滅しました!進軍を再開します!》

 

数分後、発煙筒の光が数人分の人影を捉える。

隊員《こちらレンジャー2-9。レンジャー3-6を視認。合流する》

 

レンジャー3-6が進んできた通路を見ると、発煙筒の光に照らされたレンジャー2-9が確認できた。

隊長がレンジャー2-9に応える。

隊長《こちらレンジャー3-6、こちらからも視認した》

 

2-9隊長《ここは.....最深部なのか?.......おい!側面だ!なんて数だ!呑まれる!》

レンジャー2-9が慌てて銃を構える。

レンジャー2-9がレンジャー3-6の元に向かう進行方向にある小広間にたどり着くと、発煙筒の光が巨大生物を捉えたのだ。

隊長「何!?レンジャー2-9を救出するぞ!」

佳奈子&隊員達「「「了解!」」」

 

救出も虚しく、レンジャー2-9は巨大生物の餌食となっていく。

2-9隊員「くそっ!敵が多すぎます!」

2-9隊員「助けてぇ!ぎゃあああ!酸をくらった!」

2-9隊員「うああぁぁぁぁぁぁ!」

2-9隊長「ぐあっ!?足はくれてやるッ!!...クソッ」

片足を失いその場に座り込んだ2-9隊長はM92Fを構え発砲するが、間もなく巨大生物に集られ断末魔も上げずに食い殺された。

 

3-6隊員「くそっ!レンジャー2-9が全滅した!」

それも目の前で。

発煙筒の光が弱まった空間で巨大生物がひしめき合う通路に懐中電灯の光を当てると、真っ赤な鮮血が巨大生物の真っ黒な体を赤に染めているのが分かった。そしてレンジャー3-6をその眼で捉える。

 

隊長「後退しようにも巨大生物の大群、前進しようにも敵の存在が未知数の前方の大広間。どうする......」

やがて決心し、隊長は口を無線機に近づけた。

隊長《こちらレンジャー3-6。巣の最深部へ到達。広い空洞を発見しました。これより突入します》

 

隊長「前進ーっ!」

隊員達は一瞬おののくが、覚悟を決め、突撃を開始した。

隊員「っ......やってやる!」

隊長「あれが.....巨大生物の親玉なのか.......?」

隊員「で...でけえ...」

最深部の大広間に発煙筒を投げる。すると、緑の光に広間が照らされ、巨大な敵が露わになった。巨大生物よりも規格外の大きさで羽が生えている。女王アリに酷似していた。

隊長《こちらレンジャー3-6!女王です、女王を発見!大きいぃ!こちらに向かってきます!》

 

隊員「おいおい通常の巨大生物が子供に見えるぞ!どう見ても規格外の大きさだ!」

隊員「馬鹿!そんなこと、巨大生物が出現した時から分かってる!死にたくなきゃ撃ちまくれぇぇぇ!」

佳奈子「なにか出してる!」

 

女王が小型の巨大生物の酸を吐くのと同じ動作で大量の液体を噴射した。橙色の霧が辺りを包み込む。一人の隊員が霧に呑まれると、その隊員の全身が服も肌も荒れ始め、苦痛に悶えて地面をのたうち回る。

隊員「ぐあああああ!痛いぃ!か...構わず行...け...」

隊員「ケン...すまない!」

隊員「あれは!?霧吹き状の酸だ!あれを浴びたらおしまいだ!」

隊長「通常種よりタチが悪い!サイズもデカけりゃ攻撃も範囲も強大ってか!?」

隊員「おい!あそこから上に登れるぞ!」

 

一人の隊員が足を止めずに大広間の中心にある柱を指さす。その柱には柱に沿うように螺旋の坂があった。そして、登りきった先に穴を確認した。

隊長「でかした!あの坂を目指すぞ!」

佳奈子&隊員達「「「了解!」」」

 

仲間が脱落する中、全速力で坂に向かう。

隊員「ぐあっ!足にくらった!.....先にいけ!少しでも敵をやってやる!」

隊員「置いていけるか!肩貸してや......」

 

足を怪我した隊員の肩に手を回そうとした隊員の首から上が突然無くなり、噴水のように鮮血が流れ出る。パタリとその場に倒れた。

隊員「クソ共がっ!」

隊員は、負傷した足を引きずりながら頭を失くした身体に近づき、AF-14を拾い上げ両手に構え、乱射した。

図体のでかい女王にはサイトを見ず乱射してもよく当たる。

隊員「ひっ!うわあ!....バシャ!」

その隊員は正面からまともに酸をくらってしまった。

 

その後、登りきって穴に逃げ込むことが出来たのは佳奈子と隊長のみだった。

 

隊長「はあ....はあ....無事なのは佳奈子だけか....」

佳奈子「ええ....はあ....はあ....」

隊長「取り敢えず、地上に戻るぞ。仲間の亡骸は持ち帰れないが.....」

 

隊長はそうですねと言いながら立ち上がる佳奈子を見て、佳奈子を横に突き飛ばした。正しくは佳奈子の後方にあったライトに光る()()()()を見た。

 

佳奈子は土壁に強く頭を打ち、意識が朦朧とする。視界が暗くなっていく。最後に見た光景は、先ほど私がいた場所に巨大生物が居て、何かを咀嚼している音だった。

 

【現在】

 

佳奈子「その後、私はストーム1に救助されて、私だけが生還できたんです。」

葉山「そんな事が.....」

佳奈子「隊長とは、別に恋仲だった訳じゃないけど、同じ分隊の尊敬する人だったから......」

と言うと、佳奈子は俯き涙を堪えていた。

佳奈子「だから.......死なないでね、葉山さん」

葉山「ああ、必ず生きて生還するよ」

 

 

 

 

結城「はあ...はあ...」

訓練官「お疲れさん。ほら、〇クエリアス」

結城「ああ、すまん。んっ...んっ.....ぷはぁ....」

訓練官「明後日、お前はこんな作戦で命を落とすようなタマじゃないよな?」

結城「当たり前さ」

 

久々の静かな夜。街頭は白く、暖かな光を浮かべていた。

 

そして次の日、関東基地の敷地で関東基地に駐屯する全部隊が整列する中、田中司令官が「突入部隊選考書」と書かれた紙を片手にメガホンを通して言った。

 

司令「突入部隊を発表する」

隊員(全)「「「はい!」」」

司令「レンジャー1、レンジャー2、レ......そしてストームチーム。自衛隊の投入戦力は第1普通科中隊、........」

 

総合すると、EDF関東第1師団隷下第1普通科連隊2個中隊と陸上自衛隊東部方面隊の戦力1個師団の中で3中隊のおよそ一大隊規模が突入部隊に選ばれた。



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06話 地下洞

結城「まさか、また地下に潜る日が来るとはな.....」

葉山「そうだな....だが、行かなきゃならんぞ」

結城「そうですね......行きましょう」

 

田中司令《レンジャー1、その先に地下鉄に繋がる大穴がある。そこから地下鉄に侵入しろ!》

別働隊の隊長《ヘルメットのライトを付けろ!》

2020年に一新されたヘルメットに搭載されたヘッドライトのスイッチをONにする。すると、照明が付かず薄暗かったショッピングセンターの構造が光に照らされ明瞭になった。

 

葉山「さあ、行くぞ!」

結城&隊員達「「「了解!」」」

他の部隊も、同じ建物の別の大穴に向かっているらしく、声が反響して聞こえてくる。

別働隊の隊長「このショッピングセンターの中に、地底への入口があるはずだ!」

 

田中司令《巨大生物を放置すれば、やつらは地下で際限なく増殖し進化する。そうなる前に、撃滅しなければならない!総員、作戦を開始せよ!》

 

隊員「隊長!地底への入口です!」

葉山「よし、進むぞ!」

ショッピングセンターの床に出来た巨大な穴から地下鉄のホーム、地下トンネルと入っていく。

 

田中司令《デプスクロウラーには大型のライトがある。エアレイダーはデプスクロウラーで突入部隊を支援しろ!》

 

地下トンネルを少し進むと、三つの分かれ道にさしかかった。巨大生物の巣への入口である。

 

田中司令《よし、レンジャー1アルファはその先の分かれ道を右へ、レンジャー1ブラボーは左を進め!チャーリー以降は直進せよ》

 

2部隊1チームという編成で

レンジャー1-1とレンジャー1-2のチームはレンジャー1アルファ

レンジャー1-3とレンジャー1-4はレンジャー1ブラボー

レンジャー1-5とレンジャー1-6はレンジャー1チャーリー

となっている。

 

1-3隊長「死ぬんじゃないぞ」

葉山「ああ、そっちもな」

1-1隊長「じゃあな、幸運を祈る」

1-5隊長「じゃあな!皆、前進するぞ!」

そう言って別れると各部隊が直ぐに進行方向に向き直りそれぞれの進行方向を直進し始める。

やがて、巨大生物の巣に入ると、来客を出迎えるように巨大生物が襲いかかってくる。

1-1隊長「迎え撃て!竜兵隊長の仇だ!」

その言葉を皮切りに隊員達は掃射を開始する。

葉山(心)「最初の出動の時、隣で戦っていた隊長の名だ。余程現隊長は慕っていたのだろうか」

地下だからなのか銃声が響く。

次々と巨大生物が銃声に群がってくるので、絶え間ない戦闘にAF-14が熱を帯びる。

 

巨大生物からの反撃も凄まじくこちらも被害が多くなってきていた。

1匹の巨大生物が、天井の照明をもぎ取り、こちらに投げつけてきた。反射神経が鈍い隊員が2名、照明と共に後方に飛ばされる。

1名の隊員が細い鉄骨に吸い込まれるように飛ばされた。

絶叫を上げ、その隊員の胸部から赤に染まった鉄骨が顔を出す。

少しの痙攣の後、力なく全身をだらんとさせ、絶命した。

もう1名は照明と壁に押しつぶされ、大量の血を吐き出した。そしてまもなくこの世を去った。

1-1隊長「俺の部下をよくも!死ねやあああ!」

片手でAF-14を乱射しながら片手の手榴弾を投げその反動で1-1隊長の体が前のめりになる。そんな彼の肩をぐっと後ろに引っ張って危機一髪、巨大生物の噛みつき攻撃を逃れた。

葉山「おい!怒りに身を任せるんじゃない!あんたも死にたいのか!」

葉山の言葉で1-1の隊長は我に返った。

1-1隊長「くそっ!仲間の仇だ!」

我に返った隊長は、少し下がると手榴弾を巨大生物へ投げた。

手榴弾程の小規模の爆発でも、巨大生物にとって狭く巨体が密集する地下鉄の空間には効果的だった。

手榴弾の爆発に数体の巨大生物が巻き込まれ、顔や胴体、足の甲殻が剥がれ落ちる。脆くなった部分に撃ち込み、確実に数を減らしていく、10分も経たずに殲滅し、少し休憩をとると前進を再開する。すると、大きい広間にでた。

だが、天井にライトを当てると、巨大生物がひしめきあっていた。

 

1-3隊長《こちらレンジャー1ブラボー!巨大生物に囲まれた!応援を!》

1-5隊長《こちらレンジャー1チャーリー!蜘蛛型だ!蜘蛛型がいるぞ!奴まで生き残ってやがった!》

 

他の部隊も巨大生物と遭遇したようだ。

 

1-3隊長《気づかれたぞ!撃てぇ!撃てぇ!》

隊員《助けてくれ!糸に巻かれている!》

隊員《こちらレンジャー2アルファ!蜘蛛型の巨大生物と戦闘中!.....はっ!糸だっ!しまった!うわっうわああああ!》

隊員《糸が!とれない!》

隊員《駄目だ!巨大生物は強くなってる!》

隊員《数が多い!倒しきれない!》

 

隊員「たいちょー!蜘蛛型が現れました!」

隊員「!?...糸が来るぞ!避けろ!助けてくれぇ!糸が絡まった!」

糸に巻かれている動けなくなった隊員に巨大生物が群がり、鮮血が舞う。糸が全身をくるんだ隊員は、宙に投げ飛ばされ、空中で巨大生物に口で引き裂かれる。

結城「巨大生物はより狡猾に強敵になってます!隊長!援軍を要請して下さい!」

結城に言われるままにインカムを手で押さえつける。

葉山「分かった!」

地下だからか少々電波が悪いようで、数秒のノイズの後本部との連絡が許された。が、葉山はこの時自分の側面の脅威に気づいていなかった。

 

葉山《こちらレンジャー1アルファ!応援を!.......しまった!、助けろーっ!うわあぁぁぁぁぁぁ!》

 

無線に気を取られ、足を糸にすくわれてしまった。巨大生物が目の前に現れる。口を覆う牙を開閉させて、葉山を捕食しようとしているらしい。が、突如その巨大生物に銃弾が集中し、絶命させた。

突然の事に結城も驚くが、直ぐに葉山のもとに駆けつける。

結城「大丈夫ですか!」

葉山「ああ、すまない。危ないところを助けてもらった」

葉山を救った銃弾が飛んできた方向を見ると、レンジャー1-5とレンジャー1-6のチャーリー部隊がそこにいた。

1-5隊長「我々の進んだ道も、ここに繋がっていた。危なかったな」

葉山「ああ、この借りは一生もんだな」

1-5隊長「帰ったら飲みに行こう。そっちの奢りでな」

葉山「望むところさ」

 

葉山《こちらレンジャー1アルファ、レンジャー1チャーリーと合流。共に進軍を再開します》

田中司令《了解した。その先は更に深部に繋がっていると推測される。だがこちらは予想以上に損耗が激しく、撤退状況は20%と言ったところだ。幸運を祈る》

隊員《助けてくれ!糸に巻かれるーっ!》

隊員《巨大生物の数は予想以上です!撤退の許可を!......おい!しっかりしろ!あいつを助けろ!ああああーっ!》

 

オハラ《なんという事だ.....犠牲者が増えていく!》

 

1-1隊長「撤退した部隊は2割に及ぶのか......だが、我々は巣穴の更に奥へ進む!皆、付いてきてくれ!」

1-1隊長はこのまま下がることは出来ないと命令を下す。

その場の全員「「「了解!」」」

 

隊員《助けてくれーっ!......うっ、うっ、うああぁぁぁぁぁぁ!》

隊員《みんなやられた!》

 

オハラ《また犠牲者が!?なんということだ.......なんということだ......》

 

隊員《こちらレンジャー2ブラボー!レンジャー2-4隊長以下7名が死亡!4名が重症です!自由に動けるのは3名のみです!撤退します!》

田中司令《危険だ!レンジャー3アルファを護衛に行かせる。レンジャー3アルファ、前方にレンジャー2ブラボーがいる。合流し、以後撤退を支援しろ!》

隊員《レンジャー3アルファ、了解!》

 

オハラ《我々の準備は一体なんだったのだ......私は何のために!》

 

田中司令《敗北は許されない。勝たねばならない戦いだ》

 

オハラ《しかし....》

 

田中司令《空軍に支援を要請した。120ミリ砲を搭載した大型攻撃機ホエールが、こちらに向かっている。巨大生物を吹っ飛ばしてやる!》

戦術士官《砲兵隊、要請に応じて出動。自走榴弾砲、自走ロケット砲がこちらに向かっています。到着すれば、砲撃支援が受けられます》

田中司令《よし。戦いはこれからだ!奴らに目にもの見せてやる!》

 

合流を果たしたレンジャー1各隊は進む事に暑くなる地下を縦に並んで進んでいた。

隊員「くそ......被害が大きすぎる。というか、いつからあのオハラって人ネガティブになった?」

結城「そんな事は後だ。作戦指令本部の見解ではここを抜けた先が最深部らしい。気を引き締めろ!」

1-1隊長「女王がいるのか?」

最深部に女王がいるかは通達されなかったため不安が残る。もし遭遇すれば...生きて帰れるか分からないだろう。

葉山「分からない。だが、覚悟を決めなきゃな.....」

隊員「でっかい縦穴の底らしいな」

1-5隊長「じゃあ少し待っててくれ」

一応本部に最深部へ着いたことや他に指示を仰ぐために通信する。

1-5隊長《こちらレンジャー1チャーリー。最深部の前に来てる。どうすればいい?》

田中司令《了解した。レンジャー1チャーリー、現在の戦力は》

1-5隊長《レンジャー1アルファ、レンジャー1チャーリー計23名での突撃が可能です》

田中司令《了解、そのまま進軍せよ。女王がいるかもしれん、慎重に進め》

 

1-1、1-2、1-5、1-6それぞれの隊長が顔を合わせ、決意を固めた面持ちで頷き合う。

?「お待ちを!」

葉山「あなたは、真田中隊長殿!」

真田「我々も同行させてください」

先日の市街地戦で行動を共にしていた真田中隊長とその部下達も合流する。葉山は真田中隊長の部下が少ないことに疑問を抱いた。聞いてみると、

真田「ここに到達するまでに分かれ道が続いたので」

分かれ道にあう度に部隊を分けて進んでいたらしい。

葉山《こちらレンジャー1アルファ、自衛隊特殊作戦群真田中隊長の部隊と合流しました。共に進軍します》

田中司令《了解》

 

1-1隊長「進めーっ!」

1-5隊長「倒れていった仲間のために!」

真田「彼らに続け!我々の命に変えてでも日本を守れ!」

真田傘下の隊員達「「「おおおーっ!」」」

そして最深部と思われる大広間に突撃を開始した。

だが.....

1-1隊長「女王は、いないようだな」

隊員「ただの巨大生物の前哨基地。のようなものだったのでしょうか」

葉山「そうらしい。だが見ろ!奴らすごい数だ」

発煙筒で辺りを照らすと、闇ではない黒で壁が埋め尽くされ、ひしめき合っていた。

真田「地下に、我々の住む世界の下にこんなに息を潜めていたなんて......驚きです.....」

隊員「根絶やしにしてやる!」

 

そして散開しながら広間に入っていく。AF-14による牽制で床の巨大生物は怯みこちらへの攻撃を封じることが出来たが、頭上や壁に張り付く巨大生物の酸攻撃は免れることが出来なかった。

広間の奥に到達するまでにEDF、自衛隊共に2~3人の隊員を失う。

 

突入から既に20分が経過していた。

最深部突入部隊はリュックサックから弾薬の補給を済ますグループ、そのグループを守るように展開する牽制グループをローテーションし絶え間なく迎え撃てるようにし延命していた。

相変わらず銃声が鳴り止まず、マズルフラッシュが辺りを、瞬間的に照らしている。

だが、隊員達の疲労度は限界に達していた。

必要分の補給を済ませ、全員が戦闘に加わる。

散開して歩を進めながら制圧射撃をするが、一向に巨大生物の波は止まらない。それに比例するように隊員達の疲労度も溜まっていく。

そんな鈍くなった隊員を巨大生物は狙い、黒波の中に引きずり込んでいった。

 

そしていよいよ大広間の隅に壁を背に追い詰められてしまった。

1-5隊長「撤退しろ!退路を確保するんだ!」

隊員「やってます!ですが奴ら止まりません!次々に綻びが埋まっていきます!」

巨大生物を殺して一瞬そこに道が出来るも、すぐに巨大生物がその道に立ち塞がる。その綻びを埋める。

1-5隊長「くそ!ここまでなのか!」

隊員「しゅりゅう...ぐあぁぁ!」

1-5隊長「手榴弾だ!下がれ!」

噛み切られ、持ち主の胴体を離れた手が手榴弾を握ったまま1-5の目の前に飛んできたのだ。

1-5隊長「うわあああ!足が!足がぁ!......やめろ....やめろ近づくな!ぎゃあああ!」

手榴弾の爆発に巻き込まれ、片足が吹き飛ぶ。

そこに付け込まれ、巨大生物の餌食となった。

隊員「隊長がやられた!」

結城「くそ!死ねっ!死ねっ!隊長!このままでは全滅です!」

いつの間にか40名ほどに膨れ上がっていた突入部隊は半分ほどになっていた。

突然、自分達が入ってきた入り口からライトの明かりが。縦穴の螺旋階段を登った先の入口から1発のロケット弾が飛んできた。

?「進め!突入部隊を救出しろ!真田中隊長!無事ですか!」

真田「ええ!私は無事です!乱戦で見えませんが、孤立した隊員がいます!彼らを!」

ここへ来るまでに分かれた真田中隊長の部下達の声だった。

隊員(自)「了解!3班はそこの坂を下りながら側面を攻撃!彼らを支援しろ!4班は左翼、5班は右翼に展開!6班を先頭に突撃せよ!」

 

3班が広間の中心の螺旋の坂を下り始め、

突入部隊が入ってきた穴から4、5、6班が凸の形になら巨大生物の狩場に足を踏み入れる。

突然後方に攻撃を加えられ、巨大生物はさながらモーセの奇跡の海が割れる現象のように群れの統率が崩れる。

葉山「援軍だーっ!敵を押し返せ!」

隊員(全)「「「EDF!EDF!」」」

そして、さらに後方に光が現れた。広大な範囲を照らすその光の正体を理解した葉山は、口元が綻んだ。

1-1隊長「デプスクロウラーだぞ!」

葉山「ストームチームか!」

隊員「行くぞ!俺たちのターンだ!敵に思い知らせてやる!」

デプスクロウラーのガトリング砲が、ロケット砲が火を噴く。

たちまち巨大生物は粉々になっていった。

そして......

葉山「殲滅完了だ!」

隊員(全)「「「おおーーっ!」」」

戦いを生き残った者達の喝采が巣穴に響き渡った。

数分後後続部隊が到着し、途中途中、倒れていった仲間達の死体を一体ずつ目に焼き付けながら地上にでた。

 

 

【2日後】

 

結城「なんとか、生き残れましたね」

葉山「そうだな。運が良かったんだ。俺はもうあの時死んだと思ったけどな」

苦笑いでそんなことを言っていた。

そんな中、焦った様子の司令の声が無線に響いた。

田中司令《みんな聞け!我々は巣の巨大生物を駆除した。だが、巣を脱出した個体が複数いる。エリアJ-13の市街地への侵入を許してしまった。付近に展開中の部隊は、至急殲滅に向え!》



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07話 凶蟲噴出

レンジャー7小隊長「レンジャー7-3、右に展開しろ!レンジャー7-5は直進して、巨大生物を双方向から叩け!」

各隊長&隊員達「「「了解!」」」

レンジャー7-5隊長「小隊長、本部から通信です」

小隊長「了解した、繋げてくれ」

 

田中司令《レンジャー7に告ぐ。まず空軍が空爆を行う。巨大生物から離れるんだ!》

小隊長《了解!》

 

レンジャー7小隊長「下がれ!空爆が来るぞーっ!」

隊員「空爆!?友軍だ!空軍だぞ!」

レンジャー7-3隊長「一旦部隊を下げる!交差点前の大通りまで引くぞ!」

足止め程度に引き撃ちを行っていると、頭上を爆撃機が通過。

爆撃機は無誘導爆弾を1列に空中に残し去っていく。

無誘導爆弾が着弾し、周囲が爆炎に包まれ、蜘蛛型巨大生物の体が炎に焼かれ、爆弾の破片を体内に潜らせる。

先ほどまでレーダーを赤に染めていた赤丸の集合体は二つの半円に分かたれた。

ボマー4《空爆完了。地上部隊、生きてるか?》

そんな軽い口調で確認してくるパイロットに。

レンジャー7小隊長「もう少しで巻き込まれていたぞ、気をつけろ。支援感謝する」

感謝と笑いを交えて返す。

思わず笑みがこぼれ、周囲の隊員達も口元をにやつかせる。

レンジャー7中隊長「よし!作戦再開だ!空爆を逃れた敵を撃破するぞ!」

隊員達「「「Yes,sir!」」」

 

 

【レンジャー1-2作戦エリア到着】

 

結城「さて、行きますか」

と言ってAF14にマガジンを装填し、マガジンを下から叩く。

隊員「レーダーを見ろ!友軍だ!」

レーダー上に青い△が表示される。そしてレーダーを一直線に駆けた思うと正面の蜘蛛型巨大生物が密集していた所に巨大な爆発が起こる。

 

田中司令《よし!総員、攻撃再開。巨大生物を攻撃せよ!一体も残すな!》

 

葉山「この巨大生物も糸をはく。捕まるなよ!」

新人隊員達「「「りよ......了解!」」」

前回の犠牲を受け隊に隊員が配属されてくる。葉山の部隊に配属されてきたのは新人の隊員ばかりだった。SATでの訓練で好成績を残してきた実力はある隊員から一般入隊試験ののち配属された隊員、前大戦をシェルターで過ごし、巨大生物の恐ろしさを直接味わったことのないという隊員もいた。そんな隊員達に葉山は念を押して伝えた。

 

オハラ《この巨大生物は手強い。慎重に戦ってほしい!》

 

戦術士官《大型攻撃機ホエール、作戦エリア上空に到達》

ホエール《こちらホエール。作戦エリアに到着!》

田中司令《ホエール、上空を旋回して待て。エアレイダーが攻撃目標を指示する》

ホエール《ホエール、了解!》

 

結城「!?前方巨大生物多数!戦闘準備!」

一斉に隊員達は銃口を巨大生物の群れに向ける。

ギガンテスの搭乗員「ギガンテスが先導する!歩兵部隊は群がる巨大生物を倒してくれ!」

葉山「了解した。総員突撃!」

隊員達「「「おおぉぉぉぉ!」」」

逃げ遅れた市民の群に対して無数の糸を放ち、足の自由を奪い、転ばせて捕食する。葉山達は捕食に夢中になっている蜘蛛型巨大生物に銃弾を浴びせる。

そんな中、1匹の蜘蛛型巨大生物が吐いた糸がギガンテスを捉え、車体に絡まっていく。

搭乗員「はっ!?糸が車体に絡まった!操作が効かない!助けてくれ!うわあああ!」

ギガンテスが炎を周囲に撒き散らし爆散する。

新人の隊員が「ひぃ!?」と声を上げて狼狽える。

 

ホエール《こちらホエール、要請を受諾!巻き込まれるな!》

 

結城「なんだって!?」

 

ホエール《120ミリ砲、ファイア!》

 

葉山「まずい下がれー!後退だ!巻き込まれたくなかったら全速力で後ろに下がれ!」

その瞬間、全員が背を向けて走り出した。新人隊員の鈍い1人が糸に捕まり後ろに引っ張られて行く。耳を塞ぎたくなる悲鳴が頭に響き、その隊員は頭から蜘蛛型巨大生物の口の中に入っていった。

先程まで自分達がいた場所に蜘蛛型巨大生物が密集する。すると次の瞬間、空から閃光を放ちアスファルトの地面をズタズタにする砲弾が数発飛来した。そして蜘蛛型巨大生物の体もズタズタに引き裂き、紫色の鮮血が辺りに飛散した。

結城「すげぇ......」

隊員「なんて威力だ....蜘蛛型の群れを一網打尽にしやがったぞ.....」

隊員「......はっ!?空爆を逃れた敵がいるぞ!」

葉山「総員戦闘再開!蜘蛛型巨大生物を掃討しろ!」

隊員達「「「了解!」」」

もう数える程になった蜘蛛型巨大生物に対し、射撃を開始した。

 

ホエール《こちらホエール。現在作戦エリア上空を旋回中。地上の諸君、空に味方がいることを忘れないで欲しい!》

 

圧倒的な火力で蜘蛛型巨大生物の群れを完封してみせたそれに結城達はただただ魅入っていた。上空に小さく薄く見える群青色の機体。まるで要塞の様なそれは頭上を通過し別の戦いが起きているポイントへ向かったようだ。そして数ブロック先の蜘蛛型巨大生物の群れにまた撃つ。撃つ。その場で壊滅寸前まで追い込まれていた部隊は勢いを取り戻していった。

 

ホエール《ホエールより地上部隊。砲撃準備は出来ている。ホエールは空飛ぶ要塞。バルカン砲、ロケット砲、120ミリ砲、全てが揃っている。目標の指示を願う!》

 

隊員「隊長!レーダーに敵反応!すごい数です!」

葉山「よし!エアレイダーに繋げてくれ!」

 

エアレイダー《こちらストームチーム。砲兵隊に支援を要請した。もうすぐこちらへの火力支援が行われる》

田中司令《エアレイダー、続々とこのエリアに空軍が到着している。到着すれば、支援が受けられるぞ!》

戦術士官《大型輸送ヘリ・ヒドラの編隊を確認。輸送部隊ポーターズが到着したようです》

田中司令《来たか......!》

ポーターズ《こちらポーターズ9。最新鋭のビークルを輸送中。要請があれば、作戦エリアに投下します》

田中司令《よし。ポーターズ、上空で待機し支援要請を待て》

ポーターズ《了解》

田中司令《こちら本部。輸送部隊ポーターズが現地に到着した。要請があればビークルを投下可能だ》

 

1度深呼吸をするとマイクに向かって話す。

 

ストームチーム《こちらストームチーム。BM03ベガルタ ファイアーウォーリアの投下を要請します》

ポーターズ《了解。BM03ベガルタを輸送中です。投下地点の指示を願います》

 

発煙を投げ、合図を送ると、流石の操縦テクニックなのか発煙筒に被さるように投下され、巨大なコンテナが展開した。そして緑色に塗られた二足歩行のマシンがその姿を現した。

 

戦術士官《砲兵隊が到着しました》

田中司令《よし!》

砲兵《これより支援任務につきます。自走榴弾砲、ロケット砲、発射準備完了しています!》

田中司令《エアレイダーが目標を指示する。要請があり次第、発射しろ。敵を木っ端微塵にしてやれ》

砲兵《了解!》

砲兵《ストームチームより要請を受諾。榴弾砲、発射する!》

 

 

要請が受諾されたころ、結城達は補給を済ませていた。

 

ストームチーム《砲兵隊が砲撃を開始した。巨大生物の群れから離れるんだ》

葉山《!?...了解した》

 

葉山「部隊を下げる。砲撃範囲外に出るぞ」

隊員達「「「了解!」」」

レーダーを確認し、赤い丸の中から離脱する。

まもなく、自分達の向く方向からこちらへ目掛けて無数の砲弾が飛来した。弧を描いて飛来したそれは、蜘蛛型の群れの真ん中に着弾し、容赦なく蜘蛛型を木っ端微塵にした。

そして攻撃を再開したレンジャー1-2によって生き残った個体は倒された。

だが、こちらの戦力もすでに渡り合える数でなく、劣勢に追い込まれていた。

 

葉山《こちらレンジャー1-2!このままでは全滅です!援軍を!》

田中司令《了解した!すぐ近くにいたストームチームを向かわせる》

 

援軍の許可が降りた。しかもストームチームだ。

 

結城「隊長!避けて!」

 

葉山は蜘蛛型の糸をギリギリで交わすが、地面にうつ伏せになってしまった。前回同様死を覚悟した。だが、蜘蛛型巨大生物は突如発射された火炎により皮膚を焼かれ絶命した。日差しが眩しくよく見えなかったが、緑色の物体から火炎が持続的に発射される。

 

葉山「ストームチーム!援軍感謝する!」

正体は援軍のストームチームだった。ストームチームはここ8年で性能も外見も様変わりしたベガルタに搭乗しているようだった。

機体が旋回し、広範囲の蜘蛛型巨大生物を火炎で焼く。

火炎を浴びせ、怯ませる。怯ませ、焼けて柔らかくなった皮膚にAF-14の銃弾が殺到する。まもなく全滅した。

そして、レーダーに敵が写ってないことを確認すると、ベンチに座る者やその場に大の字になる者が現れた。

だが、その瞬間、レンジャー1-2の、否、全部隊の隊員達が耳を疑った。

 

オペレーター《これ見てください。情報が漏れてます》

戦術士官《これは......!》

戦術士官《例の情報がマスコミで発表されました》

田中司令《嗅ぎつけられたか......まあいい、いつかは知られることだ》

どこかの部隊の隊長《情報の開示を求めます、どうぞ》

田中司令《あー、コホン。先日、フォーリナーの船団が太陽系内で確認された。戦力は~~》

隊長《そんな......》

隊員《まじかよ......》

隊員《そんなことって!》

隊員《なんてことなの!?》

 

隊員「ウソ.....だろ.....?」

結城「くっ......」

結城の肩に葉山は手を置き肩を撫でた。

その日、世界は再度絶望に包まれていった。



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08話 凶蟲飛散

投稿が遅れました、申し訳ありませんでした。

夏休み期間はついついだらけてしまいますね。電車、バス移動など、外出時じゃないとやる気というものが出ませんでした。


連合地球軍及び自衛隊は連日戦いに臨んでいた。

とある市街地では、自衛隊が防衛戦を張り、巨大生物に応戦していた。1列に置かれた3つの迫撃砲から周囲に「ドン!」という音が響き渡る。

隊員「半装填!」

隊員「半装填、よし!」

隊員「撃てぇ!」

隊員「だんちゃーーく!今!」

隊員「目標の撃破を確認!」

隊員「よし!」

今や日本中で黒煙があがり、航空機や戦車などの轟音が聴こえない日がない状態になっていた。

 

頭上をアパッチが通過する。

 

パイロット《こちらホーク03、巨大生物に対する機銃掃射、ホーク04がハイドラ70ロケット弾による攻撃を行う。至急退避されたし。10、9、8、7、6、5》

 

指揮官「急げ!」

巨大生物を足止めしながら部隊を下げさせ、パイロットに合図を送る。

 

パイロット《4、3、2、1、ファイア!》

 

パイロット2《ファイア!》

 

機銃掃射によるなぎ払いで巨大生物の大群は足を止め、ロケット弾は民家の塀を巻き込み巨大生物の体を削る。

 

パイロット《後は地上部隊に任せるぞ!》

 

隊員《了解した。砲撃開始!》

 

防衛線の後方に控えていた10式戦車が火を噴く。

隊員「赤城一佐、指示を願います!」

赤城一佐「撃て!奴らを防衛線に近づけるなぁぁぁ!」

その隣に控える小隊が小銃で射撃を開始する。

隊員「隊長、今日は一段と意気込んでるな!」

隊員「安全装置よし!弾込めよし!単発よし!戦線に復帰する!」

隊員「!?隊長ー!連合地球軍が到着しました!」

 

レンジャー8-2隊長「なにやら取り込み中のようだな!加勢する!」

自分達の後方から逃げ惑う市民をかき分けて赤一色や真ん中に赤のラインが入った漆黒のヘルメットが複数現れた。

赤城一佐「助かる!共に巨大生物を殲滅するぞ!」

レンジャー8-2隊員「手榴弾!」

今なお攻め立ててくる巨大生物の群に手榴弾を投げ込む。

レンジャー8-2の到着により、ある程度巨大生物を駆逐したあと、情報交換をし、その間も手を休めず巨大生物に銃弾を浴びせる。

レンジャー8-2隊長「連合地球軍レンジャー8傘下レンジャー8-2隊長の滝山(たきやま)だ」

と言って手を差し出す。

赤城一佐「第31普通科連隊連隊長の赤城(あかぎ)です」

差し出された手を握った。

自己紹介を済ませ、簡易的な補給地点をつくる。リュックサックを背負うと同時にレンジャー8-6からの援軍要請を傍受した。

 

レンジャー8-6隊長《こちら8-6、蜘蛛型巨大生物多数!ポイントαにて現在交戦中!援護を頼みたい!近い部隊は来て欲しい!はぁ!?糸だ避けろ!》

 

レンジャー8-2隊員「隊長!一番近くに展開中なのは我々です!」

滝山「了解した!これより先の区域へ向かう!赤城一佐!引き継ぎここの防衛線の死守と前方のポイントへ前進するにあたっての支援を頼みたい!」

赤城一佐「了解した。1小隊、レンジャーチームの側面を警戒!他は防衛線を維持せよ!」

赤城一佐「私は、防衛線に戻ります、ご武運を」

滝山「ああ。そっちもな。前進ーっ!」

隊員達「「「うおおぉぉぉぉ!」」」

 

大通りを横断し、住宅街に入ると、蜘蛛型巨大生物が糸を吐いてくる。民家の塀を遮蔽物に上手く使いながら家屋1軒分ずつ間隔を空けて散開し、慎重に進む。幸い蜘蛛型は密集せず1体1体が散開する形になっていたので、遭遇時には蜘蛛型1体に対し複数人での攻撃、また、1軒分の間隔を置くことで標的を分散させることが出来ていた。

大群だとかなり脅威だが、1体1体となると所詮雑魚に過ぎない。

 

歩を進めながら他に展開中の部隊へコールし、確認を行う。

滝山《こちら8-2、現在第1防衛線より前進、住宅街を進んでいる。ポイントαの公園まで後1分!他に向かっている部隊は?》

 

レンジャー8-1隊長《こちら8-1!向かうことは出来ない!我々は先の工場で交戦中だ。おされている。本部に援軍を要請したところ、ストームチームが来るらしい!》

 

レンジャー8-4隊員《こちら8-4、隊長が戦死されました!倉庫B3に面する道路で接敵!現在交戦中です!》

 

レンジャー8-5隊員《......隊長以下3名が戦死されました!現在第1防衛線です。動けるのは4名。チヌークに遺体を乗せた後ポイントαへ合流します!》

 

ウイングダイバー(WD)隊長《こちらウイングダイバー3-9、作戦エリアに向かっている!あと数分で到着する!》

 

フェンサー隊長《こちらフェンサー、我々も向かっている!》

 

レンジャー8小隊長《ストームチームとウイングダイバー、フェンサーの到着までに、ポイントα周辺の敵を一掃せよ!合流後部隊を再編成し、住宅街に散った蜘蛛型巨大生物を叩く!》

 

隊員(全)《了解!》

 

滝山《こちらレンジャー8-2、ポイントαに到着!レンジャー8-6を支援する!》

 

ポイントαの公園では、レンジャー8-6と機動隊が巨大生物に応戦し、市民の避難誘導を行っていた。

滝山「こちら8-2!8-6!助けに来たぞ!」

前方で果敢に応戦するレンジャー8-6に声をかけるが、連続したアサルトライフルやショットガンの銃声によりかき消される。

ことごとく遮られることに少し苛立ちを覚えると、部下達に伝えた。

滝山「レンジャー8-6を援護しろ!敵を側面から叩く!」

 

着いたことを知らせるため、無線で声をかけるとともに、手を挙げて大きく半円を描くように手を振る。ようやく気づくが滝山に一瞬視線を向け直ぐに巨大生物の群れに向き直った。

 

滝山《こちら8-2、ポイントαに到着、敵の側面に入った!援護する!》

 

レンジャー8-6隊長《助かった!隊員が5名戦死した。以降は機動隊と共に市民の避難誘導に手を貸す!巨大生物は任せた!》

 

滝山《了解!》

 

滝山「巨大生物ども!お前らの相手は俺たちだ!」

大声で言うと喉に重く負担がかかり、一瞬トリガーから人差し指を離す。そして、レーダーを確認すると10以上に上るの群が一斉に、大量の赤く光る目がこちらに向けられた。

 

 

【ストームチーム到着】

 

《こちらストームチーム、現地に到着した》

 

司令《作戦指令本部よりストームチーム。交戦中のチームがいる!救援に向かえ!》

 

司令《前方にレンジャー8-6と8-2がいる。徐々に押されつつあり、背後にはまだ大量の市民や機動隊員がいるようだ。すぐに向かえ!》

 

《了解》

 

こちらに向かって走ってくる市民の中を掻き分け、ポイントα手前の警察車両が並ぶ防衛線に着く。目の前では無数の糸が交差し網漁業の如くレンジャーチームを包囲していた。

 

ストームチームが担いできたのはスラッグショット。赤に塗られた銃身で徹甲弾を撃ち出す単一への威力を重視したモデルである。だがその貫通力によって複数体を穿つことが可能。連合地球軍の武器開発部が先日発表した開発レベルは10。開発レベルとは、フォーリナーテクノロジーの兵器への応用進度のことである。スラッグショットは従来のM4ショットガンにフォーリナーテクノロジーを応用して作られた。最大の長所は徹甲弾を使うことにある。その威力と貫通力を近距離で出せば、巨大生物と言えどタダでは済まない。

スラッグショットを撃ち込み、着弾地点に溜まっていた3体の蜘蛛型巨大生物の腹部にポッカリと風穴が開く。腹部や脚、赤目を潰され絶命した。

 

滝山「救援部隊が来たぞ!敵を押し返せ!」

 

司令《ポイントα、ストームチームが到着した。以後ストームチームの指揮に従え。》

 

レンジャー8-6隊長《了解!うわ!?うわああぁぁぁ!》

 

レンジャー8-6隊員「隊長が戦死されました!以後ストームチームの指揮下に入ります!」

 

レンジャー8-5隊員《こちらレンジャー8-5!前方橋の下にいる。我々も加勢する!》

 

滝山が前方にある橋の下に通るトンネルに目を向けるとレンジャー8-5の隊員が両手を広げて手を振る。

レンジャー8-5が巨大生物へ向けて突撃を開始し、巨大生物の群に対して前方、後方、右側面からの攻撃を開始した。

だが、突如レンジャー8-5の足元が崩れ、2名の隊員が姿を消した。

残された2名が陥没した場所を見ると、底が見えず暗い穴が作られていた。すると、穴の暗闇から糸が放たれ、2名の隊員を捕らえる。その2名もその穴の中に引きずられ、暗闇の中から悲鳴が聞こえた。

レンジャー8-2隊員「巨大生物が落とし穴を作ったぞ!」

レンジャー8-2隊員「なんて戦術だ!」

レンジャー8-6隊員「滝山隊長!落とし穴の中に蜘蛛型巨大生物を捉えました!攻撃します!」

 

滝山「了解!レンジャー8-5の仇だ!」

8-6の隊員がM203グレネードランチャーを付けたAF-14を構え、穴に向けて2発発射する。

やがて落とし穴の中から爆発音と蜘蛛型巨大生物の悲鳴が聞こえ、それをかき消すように熱風が吐き出された。

隊員「クリア!」

滝山「よし!ポイントαを確保!」

 

司令《総員、ラジオをonにしろ。例の報道が流れているぞ!》

 

アナウンサー《重大な情報が明らかになりました!月面に、フォーリナーのマザーシップが集結しているというのです。先ほどEDFは、この情報が真実であると認めました。EDFはすでにこのことを知っていたのです。私たちは、情報を秘匿していたEDFに、抗議を行っていきますが......。重要なのは世界が再び脅威に晒されるということです!》

 

滝山「リークされたのか」

隊員「されたようですね」

滝山「これからもっと忙しくなるのだろうな......」

 

オハラ《兵士諸君、フォーリナーの襲来と時を合わせるように巨大生物が活動を再開した...フォーリナーと巨大生物は何かしらの影響を与えあっているということだろうか......?》

 

隊員「斥候から連絡!市街地に新たな巨大生物が出現しました!蜘蛛型です!」

滝山「ストームチーム、どうする?市街地には多くのチームが出ているが、後退を続けているらしい」

ストームチームは頷く。

ストームチーム「先の市街地に展開しているチームの援護に向かう!行くぞ!」

滝山&隊員達「「「Sir, yes sir!」」」

ポイントαから住宅街に入る。

まもなく蜘蛛型巨大生物が視界に入りショットガンの銃声が響く。

ストームチームはいつの間にかスティングレイST2に持ち替え、蜘蛛型巨大生物が密集している所を狙っていた。

まもなくレーダー上の自らの周囲の赤点は全て消えた。

レンジャー8-3「あなた達のお陰で助かりました!以後ストームチームの指揮下に入ります!」

ストームチーム「よし次だ!」

滝山&隊員達「「「おおぉぉぉぉ!」」」

またレーダーを頼りに青点の元へ向かう。

そこでは、4名の隊員が大通りで蜘蛛型巨大生物に囲まれていた。

すかさずストームチームのスティングレイから弾頭が現れる。

だが、民家に遮られ、巨大生物には届かないまま爆散。民家は倒壊した。

隊員達が360度から糸を吐かれる。逃れられぬまま地面に拘束された。もう間に合わないと思ったその時、ストームチーム達の頭上を1機のアパッチとキャビン内左右に機関銃を装備したUH-60JA多用途ヘリコプター2機が通過した。

滝山(心)「軍には疎く詳しくは知らないが自衛隊の第1ヘリコプター団の連中らしい」

 

パイロット《こちらハンター02、手を貸すぞ!》

 

無線で応える。

「お願いする!彼らを救おう!」

 

パイロット《機銃掃射を行う!一旦離れていろ!》

 

カウントダウンの後、アパッチに搭載されたM230機関砲が轟音を上げ蜘蛛型巨大生物の群れを襲った。

 

パイロット《あらかた片付いたか。EDFの旦那ら、後は任せたぞー》

 

ストームチーム《了解した》

 

パイロットは歩兵部隊に向かって人差し指と中指をくっつけ、

「頑張れよ」という姿勢をとり、

ヘリコプターの向きを180度変えて去っていった。

それを見送ると、機銃掃射を生き延びた蜘蛛型に追撃した。

機銃掃射を受けて疲弊していたのか、生き残りの装甲は脆く倒しやすくなっていた。

滝山「8-7!大丈夫か!」

8-7隊長「な、なんとか!助けていただきありがとうございます!」

ストームチーム「他のチームは?」

滝山「はっ!レンジャー8-1がこの先で怪我人の手当を。8-4は倉庫付近の大通りに展開中。蜘蛛型巨大生物と交戦中のようです」

ストームチーム「.......8-2、レンジャー8-1の元に向かえ!怪我人をポイントαまで護衛しろ。無事送り届けた後、我々と合流を」

滝山「了解、我が分隊はレンジャー8-1の元に向かいます」

 

フェンサー隊長《こちらフェンサー、現地に到着!住宅街のアパートで待機中です》

 

司令《了解した。ストームチーム、フェンサーと合流しろ!》

 

ストームチーム《待ってくれ。先に交戦中のレンジャー8-4の救援に向かう!》

 

司令《了解。フェンサー、その場で待機しろ》

 

フェンサー隊長《了解!》

 

ストームチームがレンジャーを引き連れてレンジャー8-4のもとへ向かうと、レンジャー8-4の会話が銃声と混合して聴こえてきた。

 

レンジャー8-4隊員A「隊長が戦死して、俺たちも巨大生物に囲まれて全滅を待つだけってか!?」

レンジャー8-4隊員B「死んでたまるか!もうすぐ救援部隊がやってくる!それまで持ちこたえろ!」

2丁のスナイパーライフルが乾いた音を鳴らし巨大生物の頭部を撃ち抜いていく。

レンジャー8-4はスナイパーライフルの扱いに長けた隊員が集まった部隊で、狙撃外の前線でのスナイパーライフルの扱いや立ち回りはレンジャー8中隊の中では群を抜いて好成績であった。じりじりと距離を詰めてくる巨大生物に対して身に近い個体を目で測り撃破、後退を繰り返していた。

 

隊員「8-4だ!うまく後退しながら敵を撃破してる!」

ストームチーム「だが、呑まれるのも時間の問題だ。その前に助けに行くぞ.....よっと」

スティングレイで8-4に近づき側面に回る個体を粉砕していく。

8-4隊員B「来たぞ!救援部隊だ!」

8-4隊員A「た、助かった!救援感謝します!」

ストームチーム「礼は目の前の敵を駆逐してからだ!」

それから横隊になり、近づく巨大生物を返り討ちにしていく。

 

数分の後、片足を引きずるレンジャー8-1の隊員達の肩に手を回し足となっている滝山達レンジャー8-2が建物の隙間から現れる。片手にはM92Fが握られ、近づく巨大生物に発砲、細かながらダメージを与える。そんな滝山を囲うようにショットガンを手にした隊員達が向かってくる巨大生物に応戦している。

滝山「防衛線に敵がなだれ込んでいた。交戦中のようだが、そんなところに連れていけない。本部に回収班を要請したからあと少しの辛抱だ!加勢するぞ!」

レンジャー8-4隊員A「怪我人抱えてる部隊に援護されてたまるか!撃ちまくれぇ!」

レンジャー8-2の介入とストームチームとその傘下の部隊の盛り返しで巨大生物の群は総崩れとなり、脱落者も出さずレーダー上の赤点は全て消滅した。

 

オペレーター《レンジャー8が展開中のエリアの地下に巨大生物多数出現!敵第2波と呼称します》

 

司令《本部よりストームチーム!敵第2波の到着までに、周囲に展開中の全部隊と合流しろ!》

 

ストームチーム《本部、敵の出現予測地はだせるか》

 

司令《今割り出している。到達予想時刻は14時12分》

 

ストームチーム「後3分か....」

 

WD《こちらウイングダイバー、作戦エリアに到着。ポイントαからすぐの橋の手前住宅街側にて待機中》

 

滝山「ストームチーム、怪我人を連れてウイングダイバーの元に辿り着くには時間が足りないのでは?」

ストームチーム「そうだな。よし!取り敢えずフェンサー部隊と合流だ。急ぐぞ!」

兵士達がパタパタと駆け出す。

 

ストームチーム《ウイングダイバー、現在地から見て橋を正面として、川に沿って右に進んでくれ。我々はその橋から右に、商店街の通りにかかる橋に向かう》

 

WD隊長《了解した。すぐに合流地点に向かう》

 

フェンサー隊員「お!来たか」

ストームチーム「肩の赤ペイントは誰だ?」

フェンサー隊員「隊長は......戦死されました」

フェンサー隊員「実は、先ほど巨大生物が倉庫方面に大移動を開始しまして、我々は巨大生物の群の中心に呑まれ、戦闘を余儀なくされました。そして隊長は......以後ストームチームの指揮下に入りま」

ストームチームら一行は、自分達の戦いで知らずに犠牲者を出していたことに後悔した。

 

WD隊長《こちらウイングダイバー!巨大生物は我々のすぐ隣りに出現しました!大群です、どうしますか!?》

 

司令《こちら本部、下手に動くな!ストームチーム達の到着を待て!》

 

WD隊長《りょ、了解!》

 

滝山「急ぎましょう!」

ストームチーム「ああ!行くぞ、付いてこい!」

指揮下隊員達「「「了解!」」」

 

 

【中小商店街】

WD隊長「くそう.....」

咄嗟に商店街の一店舗に身を隠したが、時々巨大生物と目が合いそうになる。

WD隊員「ひぃ!?......隊長、見つかるのも時間の問題です。」

死角になる壁を渡りながら一人の隊員が口を開いた。隊員全員がお店の奥に着くと静かに指でカウントダウンをし、「...ゼロ」の言葉と共に

お店の裏口から出て道路にでるが、足を止めないまま会話を続ける。

WD隊長「そうだな........」

その時、

隊員(自)《砲撃を行います。川付近に展開中の部隊、及びEDFの部隊は離れてください》

突然の自衛隊のFO隊員から通信がはいる。

 

すぐ近くで自衛隊の120mm迫撃砲を牽引した高機動車が道路を走る音が聞こえ、ウイングダイバー達のいる路地裏からその姿を捉えることが出来た。数両の高機動車が停止し、流石な手際で隊員が小銃を手に持ち迫撃砲の発射体制を整える。

 

隊員(自)《半装填!》

 

隊員(自)《半装填良し!》

 

隊員(自)《撃て!》

 

隊員(自)《弾着、今!》

 

迫撃砲の着弾時の轟音が地響きを起こし、体がふらつく。

 

隊長(自)《特科に任せるぞ!》

 

隊員(自)《了解、FH70、射撃準備完了しています》

 

隊員(自)《撃て!》

 

隊員(自)《命中!》

 

そして、敵の攻撃に気づくものの位置を掴めず右往左往している巨大生物をよそに、74式戦車の戦車隊が進出してきた。

数分後、自衛隊の歩兵部隊が橋の隣にある階段を降り、橋の下の影に移動する。

 

萩村(自)《こちら萩村(はぎむら)、橋の下の影に待機中。合図を待つ。送れ》

 

富塚(自)《木部(きべ)班、萩村班、位置につきました。送れ.....おや?》

 

ストームチーム「待ってくれ。我々も戦闘に参加する」

 

WD隊長《本部、ストームチームと合流した》

 

司令《了解した。現地の部隊と共に巨大生物を殲滅せよ》

 

富塚《こちら富塚(とみつか)。全部隊、突撃準備!我々は逆流から。EDFが川の流れのに沿って突撃する。要は挟み撃ちだ。おわり》

 

胸に手を置き、大袈裟な深呼吸をする。

 

富塚「よし、行くぞ......突撃開始!」

 

全員「「「うおおおおおおおお!」」」

 

二方向からの攻撃で、レーダーに映る赤点の集合体はひょうたん型になる。

集った突撃部隊の数もそれなりなので、二方向からの攻撃は瞬く間に巨大生物を駆逐していく。

 

アナウンサー《さらに驚くべき情報です!月面に集結しているマザーシップは10隻とのこと。単純に考えても前回の10倍の戦力です。人類はこの時に備えて様々な準備をしてきました。しかしこれほどの大軍は想定していません。果たしてEDFには対策があるのでしょうか》

 

隊員《なんだと!?》

 

隊員《そんな大軍が今俺達の頭上に控えてるのか!?》

 

突然の報道に、他のエリアに展開している隊員達も聞いていたようで、驚きを隠せずにいるようだ。

滝山「も...もしも地球に降りてきたら、人類は勝てるのか!?」

WD隊長「そんなことより周りをよく見なさい!ここで死んだら何もかも守れなくなるわよ!」

滝山「そっそうだな!(カチッ……カチッ……)くそ!弾切れだ!」

腰のホルスターからM92Fを抜き、蜘蛛型巨大生物に応戦する。

 

隊員「隊長!」

ショットガンの弾薬が尽き、ハンドガン1丁で応戦している滝山に

部下の隊員がホルスターからM92Fを抜き、滝山へ向けて地面に滑らせる。障害もなく滝山の足元に滑っていった。

回転して足に当たったM92Fを拾い上げた。すり減りや不備をコンマ秒で確認し、すぐに巨大生物に照準を合わせた。

胴体への効果的なダメージは期待出来ないので、蜘蛛型の赤く光る目を狙い、敵を足止めするのに徹した。

「キシャアアアァアアアァァ」

隊員「隊長!ナイスです!」

WD隊長「敵がひるんだ!一気に畳み掛けるわよ!」

WD隊員達「「「はい!」」」

だが、巨大生物も頭上から戦士達を襲う。頭上から降り注ぐ糸に絡め取られ犠牲者が出始める。

ウイングダイバーの1名が糸に腕を絡め取られ橋に叩きつけられる。即死だった。

そして出来た屍に蜘蛛型巨大生物が殺到し、後には何も残ら無かった。蜘蛛型巨大生物の頭部が真っ赤な鮮血で色つけされる。

 

それを見た自衛官2名が立ちすくむ。

滝山「おい!側面だ!」

その言葉も届かず、2名とも蜘蛛型巨大生物の牙で胸部から体が二つに分かたれた。

 

搭乗員(自)《戦車隊による砲撃を行う!巻き込まれるなよ!》

 

蜘蛛型巨大生物が展開している車道の向かい側の車道に戦車隊が展開し、砲撃で三拍子を奏でる。

直撃した蜘蛛型巨大生物は1部の部位が刈り取られ、絶命。その周囲にいた蜘蛛型巨大生物も爆風で皮膚を焼かれ、行動を制限させ、下に展開する突撃部隊がとどめを刺す。

 

搭乗員《ああくそ!後ろに回られたぞ!旋回が間に合わない!ああ!糸が車体に絡まりやがる!使い物にならなくなった....こうなったら....》

 

バタンと勢いよくハッチを開けて、9mm拳銃を構えながら顔を出す。

すると目の前にはヨダレを垂らした怪物の顔が視界に広がった。

搭乗員「うわああああああ....!ぁぐ.....」

突如目の前に出現した蜘蛛型巨大生物に恐怖で体を動かすことが出来なかった。そしてそれが命運を分けた。

 

搭乗員《くそっ!退避!退避ー!》

 

退避する戦車隊を追いかけるように蜘蛛型巨大生物がはねた瞬間、その胴体にロケット弾が着弾した。

カメラに目をやると、1人のEDF隊員のもつロケットランチャーから煙が出ていた。

 

橋の下では戦士達が応戦を続けていた。

滝山「敵、残り20!」

木部「旦那!側面だ!」

滝山「なに!?うお....!」

咄嗟に横を向くと蜘蛛型巨大生物の顔がそこにあった。M92Fの15発x2(1マガジン全てx2)を浴びせ、蜘蛛型巨大生物が絶命したのを確認する。

フェンサー隊員A「狙って、突き!狙ってー、突き!」

フェンサー隊員B「馬鹿!前に出すぎだ!」

フェンサー隊員A「なに!?うわぁ!」

振り向きざまに蜘蛛型巨大生物と目があい、咄嗟に槍を作動させてしまった。槍は橋を貫通し、抜けなくなってしまった。そしてそこに付け込また。左右から糸に絡まれ、両腕を拘束された。そして左右からとてつもない力で引っ張られる。その隊員のパワーアーマーの隙間から鮮血が吹き出す。

レンジャーの1名が、ロケットランチャーを撃つ瞬間に腕を噛み砕かれ、発射されたロケット弾はやや上に、橋に直撃した。爆発の衝撃で橋が崩落した。そして、その橋の下に居合わせていた自衛官2名が下敷きとなる。

それから数匹を駆逐すると、一帯に静けさが訪れ、いきなりその場に心地よい静かな風が吹く。

周囲の巨大生物が全て絶命したのを確認した。だが、レーダーにはまだ数ブロック先に赤い点が映っていた。

滝山「敵残り10!」

ストームチーム「そいつらはどこに?」

滝山「レーダーを見る限り.....ポイントαです!」

WD隊長「なに!?我々が行きます!他は負傷者の手当てを!」

ストームチーム「了解した。ウイングダイバーに任せるぞ!レンジャー8-2は負傷者を中小商店通りに運べ。各隊の衛生兵は負傷者の手当にあたれ。フェンサー、進路の確保を。俺は......チッ」

頭上に一匹の蜘蛛型巨大生物が顔を出した。すぐにスラッグショットに持ち替え撃破した。

フェンサー隊員C「よっこらせっと!」

バシュン――!

フェンサー隊の装備する武器は近接武器なのである。その名はブラストホールスピア。カードリッチを使用し、槍を発射。その瞬発力は目で追えないほど速い。それ故威力も高い。装甲車の装甲に軽く風穴を開けられる。

そしてそれを使い橋の残骸を砕き、進路を確保しようとしている。

富塚「萩村班、負傷者を優先しろ。木部班、萩村班を護衛だ」

萩村「了解.....立てるか?」

きべ「周囲に敵なし。商店通りまでは安全だ」

 

WD隊長《こちらウイングダイバー、敵を殲滅した》

 

ストームチーム《了解。よくやった。その場に待機せよ。負傷者をポイントαまで運ぶ》

 

無線を終了すると、一気に疲労が押し寄せた。

はあ....と息を漏らし、まぶたを閉じる。そして地面に横たわった。

蜘蛛型巨大生物の紫色の体液がアーマーの下のスーツに付くだろうが気にしない。

だが、次の瞬間に聴こえた本部の会話で、意識が現実に戻される。

 

戦術士官《総司令部から緊急通信。重大な問題が発生しました。フォーリナーの船団が移動を開始》

 

司令《なんだと!?くそぅ....アジア上空の衛星網が破壊された事で発見が遅れてしまったのか......》

 

戦術士官《月面から地球に向かっています》

 

司令《くそっ、10隻を相手に対策などあるものか!いくらEDFが力を増したとはいえ、一溜りもないぞ!》

 

オペレーター《すでに各地のレーダーが最大出力で稼働中。全サイロオープン。超音速ミサイルテンペスト、発射体制です》

 

戦術士官《赤道のリニアキャノン、起動シークエンスに入っています。大気圏突入時を狙い、マザーシップの撃破を試みます》

 

オペレーター《リニアキャノン発射と同時に、テンペストによる長距離攻撃が開始されます》

 

司令《それでも全ては落としきれない。地獄になるぞ!》

 



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09話 海辺の怪

柳谷《こちらレンジャー3-8、作戦エリアに到着。前進します》

 

司令《こちら作戦指令本部。レタリウスを殲滅しろ!》

 

柳谷(やぎたに)「流石に不眠不休で戦場を転々としちゃ、具合が悪くなるな......」

私は首に掛けたロケットペンダントを力を込めて握る。死体になって愛する家族の元に帰る訳には行かない。いや、もしかしたら骨まで残らないかも知れない。だが、妻と娘の為にも、生還してみせる。と誓ったのだ。連日の戦闘に駆り出され、体は重く、足を進める度に足に軽い痛みが走る。だが、戦闘に支障はないと自分に言い聞かせると、再び歩み出した。

隊員「レタリウスを発見!」

柳谷「撃て!巣に捕えられた市民を救え!」

 

レンジャー3-9隊長《こちらレンジャー3-9!レタリウスの罠にハマった!身動きが取れない!》

 

レンジャー3-5隊長《作戦エリアに到着した!仲間の救出に向かう!》

 

ウイングダイバー7-8隊長《我々も到着した!囮は任せて!》

 

 

【レンジャー3-9、港湾エリア、レタリウスの巣】

 

レンジャー3-9隊長「くそ!離れろ!はっ......!」

周りを見る。すると、レタリウスの巣を、いや自分達を囲むように巨大生物がこちらを見ているのに気づいた。巨大生物達は、こちら1点に目を向けたまま舌なめずりをしているように思えた。

 

何か重いものが頭に伸し掛る感覚に囚われ、上を見上げると、レタリウスの唾だと分かった。

........ああ、死ぬのか。救出される希望は薄い。ましてや頭上で今か今かと待てを言われた子供の向ける好奇心の様な目が向けられている。

妻は今何をしているのだろうか。それに明日は妻の誕生日だったのに......。今日の午後からは非番だった。その間に会いに行くつもりで.....!祝いの言葉もかけられず、妻を1人にしてしまうと思うと、涙が頬を伝っていく。すまない......。

そこで彼の視界はブラックアウトし、何も考えることが出来なくなったが、身体から手足が離れていくのを感じた。不思議と痛みは無かった。

 

 

【レンジャー3-8、港湾エリア】

 

柳谷「レンジャー3-9のシグナルが消えた........」

隊員「くっ.......くそ!」

隊員の1人がフェンスに蹴りを入れる。

柳谷「本部に連絡しろ、回収班を寄越させろ」

隊員「了解しました」

柳谷「いいか!あのクソ野郎共から仲間を奪還する!仲間の体を奴らの餌にするつもりは無い!」

隊員「「「おおおおお!」」」

目の前では巨大生物が新しい餌にありつこうと市民を襲っていた。

レタリウスの巣を見ると、ぐったりと頭を垂れて力尽きている死体が残っていた。

柳谷「敵を捕捉したぞ!」

隊員「敵を捕捉!」

柳谷「撃てー!」

仲間を失うことに慣れたくはないが、報復を考えたり、怒りに任せて戦う事が無くなり、心臓の鼓動だけが身体に響いている。

そもそも「報復」が通用する相手なのか。敵はテロリストではなく、異星の侵略者なのだ。1度戦闘になると、勝ち負け=どちらかの全滅なのだ。奴らとの間には生か死しかない。怒りに任せようものなら真っ先に死ぬことになるだろう。

 

冷静を保つのは簡単ではない。手が震えて、銃を取り落としそうになる。

市民の最後の1人が自分達の横を通り過ぎた。それを合図にグリップを強く握る。震えていた足は地面に接着剤を撒いたように固定した。

柳谷「お前ら、まさか逃げないよな。市民を見捨てて仲間も見捨てて、背中を向けるなんてことはしないな!」

隊員A「覚悟は出来ているつもりです!」

隊員B「EDFは仲間を見捨てない!隊長が先日の地下探検で言われた言葉でしたね」

隊員C「良いでしょう。EDFの誇りにかけて!遂行します!」

柳谷「よし!突撃だ!」

 

 

【5分前、ストームチーム到着、港湾エリア】

 

少し時間を遡る......

 

司令《こちら作戦指令本部。レタリウスを殲滅しろ!》

 

ストームチーム《了解。ストームチーム、アタック!》

 

私の名は風舞 早紀(かざまい さき)

私は先日ウイングダイバー4からストームチームに配属になった。

先日レタリウスによって所属していた部隊が壊滅的な打撃を受けた。

事実上ウイングダイバー4所属の隊員は自分含め指の数でおさまるほどになってしまった。存続が難しくなったウイングダイバー4は他の部隊に組み込まれることになったのだった。そして、私はストームチームに。他のメンバーはウイングダイバーの中でも国際的にも有名な日本特有の精鋭部隊「ペイルチーム」に組み込まれることになったらしい。

早紀「エンゲージ!(交戦!)」

ちなみに、ウイングダイバー兵器においての武器開発レベルは12に引き上げられた。他のEDF兵器よりも遅いスピードになっている。フォーリナーの科学力の応用は、特にウイングダイバーに関して言えば開発が難しいと言われている。

 

レーザーランスB(Lv.7)と、サンダースナイパー15を担いできている。

レーザーランスは近距離戦闘用の武器で、ウイングダイバーの基本戦術の1つと言われている。近距離で発射される弾は光弾で、光の槍の異名を持つこの武器は、フェンサーの装備するブラストホールスピアとは同じ開発機関で別々のコンセプトで作成された近距離兵器なのだ。フェンサーはその名から分かる通り槍を打ち込み重い一撃を加え粉砕する。それに対しレーザーランスは高威力の槍を撃ち込み相手を焼き切る武器だ。

さらにサンダースナイパー15(Lv12)を武器開発部から受け取り、狙撃の術を学んだ。今の私は超近距離、ある程度遠距離の2つに戦術を単独で取れる。

早紀「くそっ!あ、危な!」

レーザーランスで1体ずつ確実に葬ろうとするが、処理速度が追いつかず、スレスレで酸を避ける。だが、その内の1発が右腕をかすり、少量だが皮膚にかかってしまった。

酸がかかった部分を見ると、皮膚に赤みが増し、染みるような痛みが神経に伝わってくる。

とりあえず酸が届かない上空へ飛び、作戦エリアを見渡す。

そして、エネルギーの切れない内に降下に入る。そして........ボチャン!

早紀は海面で一度ホバリングした後、海に飛び込んだ。少し泳いで石垣に上がると海水に右腕を肩まで入れ、右腕を水中で振る。そうすると、最初は海水が染みたような痛みが襲ってきたが、段々と緩和されていった。そして、海水をはらうと再び飛行した。いつの間にか巨大生物の群からターゲットが外されていたらしく、向かって来ていたのは3匹程度だった。

 

そしてその3匹をすぐに撃破すると、港湾施設の内の1つ、工場の高くそびえる煙突に飛び、そこから狙撃を開始する。EDF部隊と交戦中の個体を優先して狙う。

 

レンジャー3-8に押し寄せている巨大生物に撃ち込むと数匹の身体を雷撃が焼く。レンジャー3-8の射程距離に入るまでに巨大生物の群はまばらになっていた。

 

柳谷《どこの部隊か知らんが助かった!》

 

 

【総合作戦指令本部、関東基地】

 

連合地球軍の総合作戦指令本部では、士官や分析官達が成り行きを固唾を飲んで見守っていた。

戦術士官「来ます!マザーシップ船団、地球への降下を開始」

司令「いよいよ始まるぞ。地球の運命が決まる時だ」

田中司令の隣ではオハラ博士が衛星軌道兵器のデータのあるPDFファイルを眺めていた。

オハラ「マザーシップの防空システムに阻まれて航空機は接近出来ない。長距離攻撃が最良の方法だ」

オペレーター「レーダー最出力。目標を捕捉しました。各発射シークエンスも完了済みです」

 

彼らの目の前には黒のスクリーンに緑の網線、そして、そこには巨大な赤い点が10個、それを囲うようにして中くらいの赤点が500以上点在していた。おそらく輸送船であろう。とてつもない大軍が再び攻めてきていた。

戦術士官「総司令部から通信。ワイプに出します」

 

巨大なスクリーンの右下に高官服に身を包んだ初老の男性が映し出された。

 

ジョセフ・マクレイヴン最高司令官《This image is transmitted to bases all over the world.(この映像は、世界中の基地に発信されている。)You guys, Finally the time has come to show the power we got in eight years.(諸君、遂に我らが8年間で得た力をやつらに見せつける時がやってきた。)Start attacking from now.(これより攻撃を開始する。)You guys, pray!(諸君、祈っててくれ!)》

瞬時に日本語訳がなされる。

 

戦術士官「リニアキャノン、発射されました」

 

ジョセフ・マクレイヴン最高司令官

《 See our power, the invaders!(我々の力をとくとご覧あれ、侵略者ども!)》

 

連合地球軍関東基地の兵宿舎一階の食堂ではテレビにスクリーンが映されている。

それぞれの部屋でラジオ、テレビを付けて見守る隊員もいた。

戦術士官「着弾。マザーシップ1隻を撃沈」

その言葉と共にスクリーンから赤い点が1つ消える。

食堂では、隊員達が歓声を上げながらガッツポーズをしているのがポツポツと見られた。

ある隊員「EDFはお前達を完封する程の力を手に入れたんだ!ざまぁみやがれ!」

ある隊員「EDFの力を見たかぁ!」

 

司令「やったか!」

オペレーター「よし!」

戦術士官「リニアキャノン、再装填中。テンペスト、第1編隊発射」

戦術士官「テンペスト、目標に向かって飛行中」

戦術士官「テンペスト、着弾。1隻を撃沈、2隻が中破」

オペレーター「やったぁ!」

オハラ「よし!」

スクリーンから赤い点がまた1つ消滅すると同時に、オハラが机に手を打ち付け立ち上がる。

戦術士官「テンペスト第2編隊、発射」

戦術士官「続いてリニアキャノン、再発射されました」

戦術士官「着弾。はっ......敵損害なし」

司令「はずしたか!」

そんなはずはない。現代兵器のロックオン能力は、精度はとても高度なはず。それにマザーシップ船団の移動速度からして外れるなんてもってのほかである。

戦術士官「テンペスト第2編隊、着弾。......敵損害なし」

オハラ「はずれた.......!?」

 

ジョセフ・マクレイヴン最高司令官《What!?(なんだと!?)》

 

隊員「おいどうなってやがる!」

隊員「何故墜ちない!」

隊員「輸送船に阻まれてる可能性は!?」

隊員「分からない!くそ!あと何隻落とせる!?」

 

 

【風舞 早紀、港湾エリア】

 

早紀「そんな.......奴らが戻ってくるの.....?」

オペレーター(男)「敵輸送船、大気圏を突破しました。港湾の作戦エリア上空に降下中です!」

空を見上げると、5隻の輸送船が降下してきた。

自衛隊のアパッチ、戦車が1隻に火力を集中する。だが、焼け跡すらつかず、アパッチは間もなく補給の為に帰還していった。

オペレーター(男)「作戦エリアに展開中の部隊は輸送船の動向に目を離さないでいて下さい。必要に応じて撃墜の用意を」

 

 

【総合作戦指令本部、関東基地】

 

戦術士官「テンペスト着弾。また損害はなし」

オペレーター「そんな......!」

オハラ「まさか....そんな!」

戦術士官「リニアキャノン着弾。敵、無傷です」

司令「どうなっている!?」

オハラ「そこまで出来るとは.......」

司令「どうした。何か心当たりがあるのか」

戦術士官「テンペスト着弾。損害確認出来ず」

オハラ「防御スクリーンだ.....!マザーシップを防御スクリーンで守ってるに違いない!」

戦術士官「リニアキャノン着弾。敵、無傷です」

戦術士官「テンペスト第5編隊着弾。敵ダメージなし。!?......確認しました。壁のようなもので攻撃が遮られているようです」

司令「マザーシップを覆えるほどの防御スクリーンだと?なんというテクノロジーだ!」

戦術士官「......作戦は失敗。マザーシップ2隻撃沈、2隻中破。残りマザーシップ戦力8隻。これより地空海戦力による攻撃に移ります」

 

 

【港湾エリア】

 

早紀「なんてことなの.......?」

 

柳谷《こちらレンジャー3-8、作戦終了です》

 

司令《了解した.......。本部へ帰投しろ》

 

輸送船団は巨大生物の投下を行うことなく作戦エリアを離れていた。

ついに戻ってきたのだ。これから地球は地獄と化すのだろう。

 

アナウンサー《緊急速報です。フォーリナーが再び姿を現しました。先程EDFが撃沈作戦を行い、結果2隻のマザーシップを撃沈したとのことです。ですが、残り8隻は攻撃を逃れ上空に到達しようとしています。市民の皆さんは今後の外出は極力さけて下さい。十分な水と食糧を準備し、シェルターへの避難をして下さい。なお、国営シェルターの選抜方法が決ま〜》

 

 




少しスマホ版などでは見辛さが増してしまいましたが、英語の会話も臨場感を出すために入れることになりました。ストーリーの進行+イベント無線をよく聞いている方なら分かるかと思いますが、その場面になったら違う国の描写も入れるつもりです。英語での会話を入れるにあたって、「英文(翻訳文)」を設けます。


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10話 異邦人の帰還

シーファイターアルファ《こちらシーファイターアルファ。太平洋上を飛行中の1隻を確認。日本に向けて移動中の模様》

要撃管制官《了解した、直ちに帰還せよ》

シーファイターアルファ《了解!ん......?あれは!こちらシーファイターアルファ。マザーシップから飛行ドローンが発進している!巻き切るのは不可能だ!交戦する!》

シーファイターブラボー《マザーシップが浮遊砲台を起動しています!》

要撃管制官《逃げろ!すぐにだ!》

シーファイターデルタ《くそっ!被弾した!海にーーー》

 

後方では警告音が鳴り響いていた。無線は途中でノイズのみになった。

 

シーファイターチャーリー《飛行ドローンと交戦中!くそっ!キリがない!はっ!ぶつかる!》

 

撒こうと旋回するが、旋回した先に飛行ドローンが飛んでいた。いきなり方向を変えることが出来ず飛行ドローンと衝突した。

遠隔操作のドローンカメラに、その様子が映されていた。

 

シーファイターアルファ《くそ!くらえ!フォックスツー!》

 

パイロットのヘルメットに付いているバイザーに4つの緑色の三角形が現れる。そして4つの三角形の頂点が飛行ドローンの中点を囲うように三角形同士の間が狭まる。すると、三角形が赤色に変わる。そしてパイロットはミサイルの発射ボタンを押した。

機体からAAM-6(23式空対空誘導弾)が発射され、飛行ドローンを追尾。まもなく着弾し、火を纏った飛行ドローンは海中に消えていった。

AAM-6(23式空対空誘導弾)は、短距離ミサイル。従来のAAM-5の更に上を行く性能を誇り、現段階で装備出来るのはEDFの保有する戦闘機のみだ。

 

シーファイターブラボー《フォックススリー!》

別の空ではブラボー機が旋回を繰り返しながらバルカン砲を撒いていた。飛行能力ではファイターが勝るので、次々と正面に捉え撃墜していく。

だが、飛行ドローンも反撃をしてきた。何発も何方向にも撃たれたレーザーの1部が機体に直撃したらしい。

 

シーファイターブラボー《くそっ!被弾した、燃料タンクがやられた!》

要撃管制官《ブラボー、南西方向に要塞空母デスピナが展開しています。そこへ飛行してください》

シーファイターブラボー《了解!》

 

機体の向きを変え、南西方向に向かう。しかし、一瞬後方を確認すると、その一瞬で脳にインプットしただけでもピントのぼやけた飛行ドローンが20機程後ろについてることを確認した。機体を左下に傾けるなどでレーザーを回避する。

 

シーファイターブラボー「いたぞ!デスピナだ!《こちらシーファイターブラボー、着艦許可を願う!あと、後方についてくる金魚の糞を掃除してくれ!》」

 

すぐに正面からスタンダードミサイルが数発飛んできた。

そして、後方で数個の爆発を確認し、着艦した。

 

シーファイターアルファは飛行ドローンに気を配りながらマザーシップを追跡し続けていた。

 

シーファイターアルファ《こちらシーファイターアルファ、マザーシップが日本領空に侵入しました。飛行ドローンが一定の間隔で5、6機ずつ発進しています》

要撃管制官《了解。帰還のめどは?》

シーファイターアルファ《無理そうです。幸い弾薬、ミサイルの消耗は少量、数分なら戦えます》

要撃管制官《了解。空自、海自と協力して飛行ドローンを全て叩け》

シーファイターアルファ《了解!》

 

そして、前方にAAM-4が飛んできた。それに続くようにF-15Jの編隊が作戦エリア上空に到着。そして、次いで護衛艦が姿を現した。

護衛艦から艦対空誘導弾が発射される。

群を外れ、他の地域に散らばろうとしてた飛行ドローンを優先して攻撃していた。

 

海岸では、まさにマザーシップが日本の領土に踏み入れようとしていた。

 

アナウンサー《現地のドローンカメラの映像です!ご覧下さい、ついに彼らが帰ってきたのです!地球に降りたマザーシップ船団は1隻ずつに分かれ、世界の主要都市へと侵攻を開始しました。地球が、人類のものでは無くなろうとしています!あっ......ドローンカメラが撃墜された模様です》

 

インカムから戦術士官の声が聞こえる。

 

戦術士官《報道の通り、現在マザーシップ1隻が東北上空を飛行中です。ですが、我々地上部隊の任務は日本における巨大生物の殲滅です。後は確認されている限りこの地区が最後となります。各員の奮闘を期待します》

田中司令《こちら作戦司令本部。巨大生物掃討作戦を開始する》

田中司令《空からの客が来てる。まずは地上の掃除を済ませておくぞ》

 

運転手「各員戦闘用意!前方に巨大生物の群れを確認しました!」

その言葉を合図に、兵士達がEDF仕様の96式装輪装甲車から降り立つ。隊員の目に、暗く淀んだ空と逃げ惑う市民、それを追う巨大生物と情報が一気に入ってきた。

1名が銃座につき、96式40mm自動てき弾銃で射撃する。

警官A「EDFだ!EDFが来たぞ!」

警官B「本当か!この場は任せよう!」

警官A「市民の皆さん!押さないで!僕、一緒にお母さんを探そう!ほら手を握って走るんだ!」

女の子「ママああぁぁぁぁ!起きて!起きてよぉぉ!いやぁぁぁ!」

天堂「はっ!?まだ逃げ遅れた人がいるのか!?」

咄嗟に声の元へ、逃げる市民に何度も肩がぶつかるが、足を止めず逆の方向へ走り出した。

警官B「おい!持ち場にもどれ!何やってる天堂(てんどう)!」

声の元に着くと、瓦礫の下敷きになった母親らしき女性を必死に救い出そうとする女の子がいた。

天堂「君!早く逃げるんだ!じゃないときょだ......!」

いつの間にか女の子の母が下敷きとなった瓦礫の上に巨大生物が立っていた。

 

咄嗟に天堂は拳銃を抜きこちらの動向を伺ってるかのような巨大生物に数発食らわせる。銃声に驚いたのか、女の子は天堂の足に手を回ししっかりと掴んでいた。だが、巨大生物はひるむ動作も見せず口をモゴモゴさせている。

突如、巨大生物がお腹を上げた。

天堂「くそ!効いてないのか!でも、ここで逃げたら.....」

天堂は身体中に汗を感じながら恐怖を押し殺し、拳銃を巨大生物に投げつけた。その拳銃を払う為に巨大生物がお腹を上げるのを止めた。

 

その瞬間、全ての時が止まったように感じた。

 

いきなり巨大生物が体液を撒き散らし絶命した。

時が止まっている間に死んだかのようにそぶりもなくいきなりの絶命にびっくりし腰が抜ける。

天堂「えっ.....!」

困惑しながらも足に手を回し怖がる女の子の頭を手で撫でる。

葉山「もう大丈夫です。よく守ってくれました」

天堂に手を差し伸べる男が言った。

葉山「EDFのレンジャー1分隊長の葉山です」

葉山「結城、里見、大黒、高木(さとみ おおぐろ たかぎ)は周囲の安全確保。新庄(しんじょう)、俺とフェンサー1-3で瓦礫を退かすぞ。」

隊員達「「「了解!」」」

 

里見が民家の屋根に「住んでる方すみません」と言いながら窓枠に手を掛けて登る。登りきるとすぐにAF-15STのACOGサイトを介して辺りを見回す。

里見《敵5を確認しました。こちらに向かっています》

結城&大黒&高城《目標を視認》

結城《合図を待て。よーーい。今だ!》

 

単発式のAF-15STから短く乾いた音が鳴り、2発、頭、胴体にくらうと巨大生物4匹が絶命する。

大黒《結構な威力ですね....》

 

AF-15ST。それは、AF-14の威力向上をコンセプトに開発された新型アサルトライフル、AF-15。だが、威力を上げるにあたって射程を犠牲にした。そして、今作戦でレンジャー1-2が担いできたのはAF-15STである。STモデルは、連射力を無くし単発威力を底上げ、さらにはAF-15の欠点であった射程をも向上させたモデルである。

すぐに残りの1匹に銃口を向け発砲。

 

高城《敵殲滅!》

里見《よし!隊長、そちらは?》

葉山《今救出した。これより防衛線まで護衛する。しかし、フェンサーのパワーアーマーって凄いんだな。大きな瓦礫をヒョイとどかして見せたぞ。》

里見《流石というべきか......ん?》

 

里見は言葉を切った。それは、本部からの通信があったからだ。

 

戦術士官《マザーシップ1隻が作戦エリアに接近しています》

オペレーター《既に桐川航空基地からファイターが発進。迎撃に向かっています。.....あ!ファイターアルファから通信。『マザーシップへの攻撃は失敗。マザーシップは飛行ドローンを発進させながら前進を続けている。』とのこと》

戦術士官《サブマリン、巡航ミサイルを発射》

戦術士官《ミサイル、まもなくマザーシップに着弾。はっ......届きません》

戦術士官《攻撃失敗。ミサイルは防御スクリーンに命中。マザーシップの損害はありません》

戦術士官《ファイター第2編隊、攻撃を開始》

オペレーター《駄目!防御スクリーンに阻まれて......!》

戦術士官《ミサイル、第2編隊発射。着弾!......飛行ドローンに阻まれてマザーシップに届きませんでした》

田中司令《身を犠牲にして母艦を守るとは.....》

戦術士官《攻撃は失敗です。マザーシップは無傷》

田中司令《くそっ!これほどま大規模な防御スクリーンをはれるとは!》

 

オハラ《人類はフォーリナーの再襲来に備えて準備を続けたきた。だがやつらはそれ以上の準備をして戻ってきたんだ........!》

 

無線が終わるとすぐに会話から内容を抜き出し葉山に通信する。

 

里見《大変です。マザーシップ船団がこちらに向かっています》

葉山《本部!マザーシップ船団の到着までに避難を完了させたい。捜索隊の増援を頼めないか》

田中司令《了解した。レンジャー5とフェンサー1を向かわせる》

 

それからは合流、戦闘、生存者を連れた部隊とのすれ違いを重ねた。

 

レンジャー5-4隊長《こちらレンジャー5-4、現地に到着しました》

田中司令《マザーシップはあと数分でそっちに着く。それまでにタスクを完了させろ》

5-4隊長《了解》

 

それからまた数分.....葉山達は補給の為防衛線まで下がっていた。

 

5-4隊長《こちらレンジャー5-4、生存者4名を確保。1名軽傷3名が重症。1名は片足が吹き飛んでいる...。徒歩は難しい。救護班を頼む》

救護班《了解した。そちらにトラックを向かわせる》

 

救護班「レンジャー1-2、トラックの護衛をお願いしたい」

葉山「分かった」

高城「隊長、私が運転します」

高機動車後ろにトラックという2車構成で出発する。だが、

 

5-4隊長《ん?あれは.....マザーシップだ!マザーシップが上空にいるぞ!》

 

その言葉を聞いた瞬間車窓から外を覗いた。

鬱蒼とした曇り空に薄らと現れる球体。マザーシップだ。周りに飛行ドローンは飛んでいない様だった。

 

戦術士官《マザーシップが作戦エリアに侵入》

 

そして、マザーシップの下部が円状に開き、巨大な円柱が起動する。それは徐々に形を変え、巨大な鍵のような形状に変換。その矛先は、地上へ向いている。

オペレーターが叫ぶ。

 

オペレーター《ジェノサイド砲です!》

 

オペレーターがジェノサイド砲と呼んだそれは、大量の煙を発しながら赤く光り出す。8年前猛威を振るったフォーリナー最大の規模で最大火力の攻撃で幾つもの街を灰に変えた砲撃が放たれようとしていた。

赤く光っていたそれは何かをチャージする音を鳴らし、ぱっと白に光った。

 

その瞬間、耳を塞ぐのを免れなかった。

 

とてつもない轟音を鳴らし、直線上に光線が薙ぎ払うように発射され、着弾地点から続々と爆発が、火炎が舞う。

 

隊員《うわああああああああ!》

 

結城が腕のレーダーを確認すると、レンジャー5-4と思わしき青点が全て消失していた。この点は対象者の生命反応であり、それが消失することは死である。

 

戦術士官《マザーシップからの砲撃。レンジャー5-4が巻き込まれました》

 

田中司令《くそっ!》

 

葉山達はただ呆然とその光景を見ていた。遠くに一瞬で瓦礫とかしたマンション群や中小商店街が見える。

マザーシップは満足したのかジェノサイド砲をしまっていった。

 

葉山《レンジャー5-4!レンジャー5-4聞こえるか!返事をしろ!》

 

返答はこなかった。

葉山「くそっ!」

里見「.......」

葉山「レンジャー5-4が巻き込まれた。確保していた生存者諸共ジェノサイド砲の餌食に......」

大黒「おいたわしや......」

結城「どうしますか......」

葉山「決まってる。引き続き生存者の捜索だ」

と、決意を固めていると......

高城「しっかり捕まってください!防衛線へ帰還します!」

 

住宅地に深入りしてしまっていたので、遅い速度で走るが、高城の手は少しでも早く去りたいと物語っているように震えていた。

 

隊員《見ろ!マザーシップだ!》

隊員《やつら、とうとう戻ってきやがった!》

隊員《巨大生物が地中から出てきたと思ったら、フォーリナーまできやがった!やつら、連絡をとってたのかよ!》

隊員《フォーリナーは、巨大生物が地球を汚染するのを待っていたに違いないぜ!》

 

高城「そんな......」

高城がブレーキを掛けた。

里見「どうした!」

高城「上です!上を見てください!」

言われた通りに上を見ると、輸送船が5隻、葉山達を囲うように浮遊していた。

里見「おいおい冗談じゃねえぞ......!」

新庄「巨大生物が!」

 

オハラ《巨大生物を撒き散らし、あとは待っているだけで地球の汚染は進む。フォーリナーは急ぐ必要が無かったのかもしれない。十分に休息を取り、準備を整えてから舞い戻ってくればいい。その頃には地球は巨大生物に覆われている......》

 

輸送船5隻はそれぞれのハッチを開き巨大生物を投下しはじめる。

葉山「全員降りて迎え撃つぞ!」

 

葉山《こちらレンジャー1-2!輸送船5隻に囲まれている!輸送船は巨大生物を投下中だ。このままでは囲まれて終わりだ。救援を!》

フェンサー1-3隊長《我々が向かう!持ちこたえろ!》

レンジャー5-5隊長《こちらレンジャー5-5、我々も向かうぞ!》

レンジャー8-2隊長《こちら滝山。我々も同じ状況下にいる。合流しよう。河川に近いところにある小学校ではどうだろうか》

葉山《分かった。そこへ向かう》

ストームチーム《...こちらストームチーム。学校まで援護する》

 

気づかなかったが、ストームチームもこのエリアで戦っていたらしい。

 

戦術士官《フォーリナーの輸送船から、巨大生物が投下されています》

田中司令《総員、巨大生物を殲滅しろ》

オハラ《むしろフォーリナーは少し早く戻りすぎたのか......?》

田中司令《作戦エリアに展開中の部隊に告ぐ。まずは巨大生物を全滅させるんだ。空からの客をもてなすのは、その次だ!》

 

里見「さて、我々も行動開始しますか」

大黒「くそ!道を開けろ!」

高城「車は置いていきましょう」

新庄「くそ!既に退路が絶たれてしまったようです!」

 

戦術士官《マザーシップから飛行ドローンが発進。このままでは地上部隊が攻撃に晒されます!》

田中司令《こちら作戦司令本部、飛行ドローンがくる。撤退しろ、急げ!》

 

新庄「なにっ!?」

新庄が頭上を見上げると、マザーシップから飛行ドローンが発進していた。飛行ドローンは降下しながらこちらを見ていた。

 

レンジャー8-2隊長(以降滝山)《こちらレンジャー8-2。飛行ドローンに追いつかれた。現在交戦中、このままでは全滅します!救援を!》

 

田中司令《ストームチーム、レンジャー8-2が敵と交戦中だ。救助に向かえ!》

ストームチーム《.......了解》

田中司令《レンジャー8-2、ストームチームが救助に向かっている。持ちこたえろ!》

滝山《レンジャー8-2、了解!うぁっ、こっちに来る!》

 

結城「隊長、我々も向かいましょう」

葉山「ああ、そうしよう」

 

フェンサー1-3隊長《飛行ドローンが来るぞ!》

フェンサー1-3隊員《ぶち抜け!穴を開けてやれ!》

滝山《撃ち落とせ!》

8-2隊員A《上からも来る!》

8-2隊員B《うわああああーっ!》

 

レーダー上の青点が一つずつ消失していく。

里見「くそ!どんどんやられてます!」

葉山「急ぐぞ!」

 

 

【レンジャー8-2】

 

8-2隊員C「またひとりやられました!」

滝山「くそぅ.....」

足元に目をやる。そこには、苦悶の表情を浮かべた先程まで隣で戦っていた友の姿があった。アーマーの付かない脇腹の当たりから煙とともに焦げた臭いを発し、破れた戦闘着からは真っ黒に、その周りは真っ赤に染まった皮膚が見えていた。

ふと、目の前の数機に小型の歩兵携帯用ミサイルが飛んできた。後ろを振り返ると、ME3エメロードを構えたストームチームがそこに居た。

 

レンジャー8-2のもとに急行するレンジャー1-2は高架線の下で一度立ち止まった。

大黒「はあ...はあ...それにしても、1匹も巨大生物と遭遇しませんね。レーダーにも表示されませんし、あれだけの量がいつの間に.....」

里見「そりゃ、あの男の所為だろ.......」

里見が指さす方向には、ストームチーム。ME3エメロードのリロードをするストームチームを見て、結城は8年前を思い出していた。だがすぐに思考を現実に戻す。

結城「まさか......な。あのストームチームだ。そんぐらいの精鋭が集った部隊であることは不思議ではないと思うぞ」

結城は、懐かしいものを見る目でストームチームをしばらく見つめていた。

数分後、飛行ドローンを殲滅した1行は、迎えのトラックに乗り込んだ。乗り込む寸前、空を見上げたが、輸送船団もマザーシップも綺麗さっぱり厚い雲の中に消えていた。

 

 

 

 

 



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11話 対空戦

遂に先日EDF5の発売日が発表されましたね!
ですが、まだまだこちらは続けていきたいと思っています。

というか、PS4持ってないのですが......



田中司令《こちら作戦司令本部。敵マザーシップが市街地上空に展開している。そして、マザーシップの周囲には数機の飛行ドローンも確認されている。このまま放置するわけにはいかん。敵は半永久的に人間を襲い続ける一種の殺戮マシーン部隊だ。これより作戦を開始する》

沢見戦術士官《なお、現地には多数の逃げ遅れた市民や警官隊、自衛隊も出動要請がかかった模様です。彼らと協力して避難の時間を稼いでください》

八木《了解》

レンジャー6-2隊長《了解した》

レンジャー6-4隊長《了解!!》

ストームチーム2名とレンジャー2分隊を乗せた車両群が基地から出発した。

 

 

【市街地、自衛隊】

 

隊員A(自)「こっちです!皆さん、落ち着いて避難を!」

山崎(自)「.....今のところはアクションなしか....」

隊員B(自)「山崎(やまざき)分隊長、EDFの部隊から通信、こちらに向かってるとのことです」

山崎(自)「そうか。EDFが到着したら、我々は避難民誘導に回れと?」

隊員B(自)「いえ、協力して敵を殲滅すると」

斑目(自)「分隊長!何故EDFの到着を待たねばならないのですか」

山崎(自)「なに?」

斑目(自)「我々だけでも敵を殲滅できる力はあります。何故EDFの到着を.......屈辱です。何故日本を護る力を持つ我々が下に見られるような作戦なんですか!?」

山崎(自)「斑目(まだらめ)、口を慎め。我々は確かに日本を護る防衛組織という肩書きがある。だが、殉職者をだすなら話は別だ。8年前、自衛隊は再起不能になるまでにフォーリナーとの戦いに大敗を期した。残念ながら、我々にはフォーリナーを圧倒する火力は持っていない。だが、今の我々に必要なのは国よりこの地域の市民を護ることだ。自衛隊も護る力が与えられた立派な防衛組織。決して下に見られてはない。我々は今この場に必要な戦力だ。分かったか」

斑目(自)「......はい!」

山崎(自)「それでいい。それに、今の我々にはこいつがある。EDFより戦果を挙げるぞ!」

と言いながら87式自走高射機関砲を撫でる。

隊員(自)「「「はい!」」」

山崎(自)「ん?おお、到着したみたいだな」

山崎の言葉につられてEDF都市迷彩仕様のグレイプが自分達がいる公園の入口と反対側の入口に止まるのを見た。

中から一般に空爆誘導兵と言われている装備の人が降りてきた。その人が耳の辺りをヘルメットの上から押さえつける動作をすると、こちらの無線機から声が発された。

 

 

【EDF部隊、市街地到着】

 

八木《こちらアタッカー。作戦エリアに到着》

レンジャー6-2隊長《スナイパー、射撃準備よし》

レンジャー6-4隊長《ランチャー、射撃用意よし》

 

それぞれの部隊が武装装甲車両グレイプから降り立つ。

空は暗雲に呑まれていた。

ストームリーダー「翔一(しょういち)、指揮を頼む。俺は指揮に従う方が戦いやすい」

翔一「は....はい!」

翔一と呼ばれた男性は、対空インパルスを手に持ち、パワーポストを武装装甲車両グレイプから下ろし始めた。

腕時計型のレーダーに手を伸ばし、横に付いたボタンを押す。すると、青い背景はそのままに、レーダーが電子時計と変わる。現時刻は12:40だ。

翔一「作戦開始は13:00。それまでに自衛隊との合流を済ませる」

 

 

【EDF部隊】

 

翔一《こちらアタッカー、現地に到着した》

山崎(自)《了解した。合流地点はindex plaza向かいの公園入口とのことだ》

 

翔一「ここですね」

翔一が振り返ると、ストームリーダーが無言で頷いた。

ストームチームの隊長である彼は隊員として配属された俺達とも容易に会話をせず頷き返すだけだ。なので、指揮下の部隊への伝達は俺含めた他の隊員が担っている。隊員として、1人の人間として彼の事が気になるのだが、ストームチームの他の面々は特に気にしていないようで、自分も詮索はしないことにした。

レンジャー6-2隊員「翔一、どうした?」

そんなことを考えながらY10対空インパルス(Lv.13)をいじる俺に、入隊が一緒で同期でありレンジャー6-2の隊員である友人が声をかけてきた。

翔一「いや、なんでもない」

心配の問いに答え、指示を待つレンジャー部隊の隊長2名に向き直る。

翔一「自衛隊との合流地点が我々の現在地に決定しました」

翔一「自衛隊がこちらに到着するまで、各自準備をお願いします」

6-2隊長「了解」

6-4隊長「ああ、分かった」

後方のindex plaza(コンビニ)のトイレで用を足す者、スティングレイランチャーの点検を行う者、まだ店員が残っていたindex plazaでコンビニ弁当や〇ロリーメイトを購入しお腹に入れる者様々だ。

 

 

【10分後 合流】

 

12:54頃微小の揺れを起こしながら走行音を鳴らす自衛隊の部隊が到着した。

敬礼を交わすと、すぐに作戦の説明に入る。

作戦はまだ作戦エリア内に残された市民を救出、一度現在地に集め一塊にさせ迅速に避難させるというものだ。マザーシップへの攻撃は許可されず、周囲を飛ぶ飛行ドローンにのみ攻撃が許可された。

1人ため息をつく隊員が居たので目を向けると不格好な気を付けをした。

その後すぐに視線を山崎と名乗る隊長に戻し計画の算段を済ませる。

翔一「彼は体調が優れないのでしょうか」

山崎(自)「まあそれもあるでしょうが、日本に2つも巨大な防衛組織がいるという事実が気に入らないようです。まあ斑目はそこまで非協力的ではありません。素直になれないだけです。ですが、自衛隊にはこういった考えを持つ者が少なからずいるのですよ。手柄泥棒だとか、特に上層部では不必要思想を持つ者もいるそうです」

翔一「そうなんですか......我々もさらに尽力せねばなりませんね。」

翔一は裏のない意気込んだ声で応えた。

山崎(自)「おっと、無駄話が過ぎましたね。13:00(ひとさんまるまる)になりました」

翔一「ですね。よし、みな、作戦開始だ!」

 

そう言うと、EDFはその場で簡易的な補給地点を作り、自衛隊はビルが並ぶ地区へと移動を開始した。

山崎(自)「どうだった?」

96式装輪装甲車に揺られながら山崎は斑目に問いかけた。

斑目(自)「そう......ですね、実際にこう現場で会うと、彼らも我々と同じ目的を持っていて、同じ国を護る仲間。であることがよく分かりました」

本心から言っていることが容易に分かった。周りの隊員達も斑目をみて微笑んでいる。

 

数分後

山崎(自)《こちら山崎。民間人数名をトラックで輸送中。そして、数台を寄越すよう掛け合った。数分でそちらに着く》

翔一《了解。こちらにも既に50人あまりの民間人が集まっている》

 

少しして第一弾の自衛隊の3 1/2tトラック群が到着、続々と民間人を乗車させていく。

第一弾が去ったころ、新たに民間人が数名確保されてきた。

山崎に第二弾を寄越すよう頼むと、次の瞬間無線が入った。

 

沢見戦術士官《アタッカーに通達。重大な問題が発生しました。マザーシップがアクションをおこしました》

 

突然の事に空を見上げると、先程まで飛んでいた飛行ドローンが倍以上に増えていて、マザーシップが飛行ドローンの発進口を開いていた。飛行ドローン群はこちらめがけて降下してきていた。

 

田中司令《総員戦闘準備!フォーリナーの飛行ドローンが来るぞ!》

 

隊長はレンジャー2分隊を率い公園に逆三角形を作るように展開した。翔一はY10対空インパルスを設置し、すぐに後方の道路に止めていた武装装甲車両グレイプAP1に乗車する。

滑空砲の照準を合わせながら、常時点けているラジオから流れるニュースに耳を傾けていた。

 

アナウンサー《戦局報道です。降下したマザーシップは世界各地に分散。主要都市への同時攻撃を開始しました!また、現段階で敵輸送船は前回の確認した数を大きく上回っています。まさに厄災の再来でしょうか。さらに、今入った情報によりますとフォーリナーの飛行ドローンは現在東北地方での活動が確認された模様です。対象地域は仙台市、盛岡市、秋田市、新庄市、酒田市。対象地域及び周辺地域にお住まいの方は避難の準備を進めてください》

 

ついに戦争が始まる。地球外から来た敵との存亡をかけた駆け引きが。

飛行ドローンはEDFの展開する位置にも来たが、別の目標を見つけたかのようにビル群に入っていった。恐らく自衛隊だろうか。すると、バリバリと音が鳴り響き、ビルの隙間から自衛隊の87式自走高射機関砲から弾が上空に撃ち上げられる光景が目に映る。

スナイパーライフルの射撃音やスティングレイランチャーの重い1発1発の重低音も負けじと鳴り響く。

飛行ドローンが分散したおかげで味方に負傷者も無く駆逐しつつあると、また発進口が開き出した。

そこから、第二波となる飛行ドローン群が続々と姿を現した。

 

斑目(自)《飛行ドローンが来るぞ!》

 

1名の隊員がスティングレイランチャーを飛行ドローンの発進口に向けて撃つが、絶え間なく発進する飛行ドローンに遮られてしまった。

第二波も第一波と同じような量だったが、まだ第一波を殲滅し切れていない状況での増員は隊員達の疲労を誘うには充分であった。

1人また1人と飛行ドローンの攻撃の餌食となっていく。

隊員「くそ!トリガーに添える手が痛むぜ!」

6-2隊長「周りにも気を配れ!目の前だけに集中すれば奴らのいい的だぞ!」

隊員「ぐあっ!食らった!」

翔一「くそ!このレーザー、車体を貫通しやがる!」

グレイプの滑空砲での殲滅力が飛行ドローンの数に追いつかず車体へのダメージを許してしまう。

 

田中司令《ジェノサイド砲が来るぞ!退避しろ!》

 

翔一「なに!?」

グレイプに搭載されたカメラを見ると、今まさにジェノサイド砲台が禍々しい光を発していた。

 

 

【高架線、自衛隊】

 

山崎(自)「退避!退避ー!」

山崎達はより多くの市民をトラックに乗せるため移動を続けていた。だが、突如辺り一帯が赤く光り出した。

ビルや道路が赤に照らされる。何がくるのかは明白だ。

市民含め全員が身の危険を語った。

気が動転し、車内が騒がしくなる。

隊員(自)「この速度じゃ間に合わない!もっとスピードだせ!」

隊員(自)「これでも最良を尽くしてる!」

茶髪の男性「ちっ!こんなとこで死にたかなかったのによぉ!」

赤ん坊を抱く女性「ごめんね、ごめんね....」

隊員(自)「来るぞ!」

斑目(自)「くそ!くらえ!」

軽装甲機動車から身を乗り出した斑目は無駄な抵抗だと知りつつも01式軽対戦車誘導弾を構え発射した。

山崎達が真上を見上げると同時にとてつもない地響きと轟音と共に全身が焼けるような感覚に囚われ、山崎とその傘下の隊員達の意識はそこで途絶えた。

斑目の撃ったミサイルもジェノサイド砲台に届くことなく山崎達と同じ運命を辿った。

 

 

【EDF部隊】

 

翔一はジェノサイド砲が街を更地に変える瞬間、中型のビルを越してジェノサイド砲台へ向かわんとする1発のミサイルが途中で爆散したのを確認した。自衛隊へ何度も呼び掛けるが、案の定返事はなかった。

そして、更に最悪な事態が翔一達を襲ったのだった。

マザーシップの飛行ドローン発進口がまた開いたのだ。

第三波となる群勢が発進し始める。

隊員「敵です!」

隊員「まだ出てきやがるのか!」

6-4隊長「なんてことだ、キリがないぞ......」

 

既に隊員達の士気にも限界が生じていた。

隊員「ぐあああああ!」

 

隊員《くそ!レンジャー6-2が全滅した!》

 

翔一「エンジンがイカレやがった!」

翔一はグレイプを乗り捨て、レンジャー6-2が装備していたスナイパーライフルを拾い上げる。先程まで乗っていたグレイプは爆散し、後方からの熱風と轟音でアタッカー達は体勢を崩してしまう。耳に「キーン」という音が鳴り、膝をつく隊員が既に空が見えないほどに膨れ上がった大群の飛行ドローンの集中砲火を浴びる。

 

そんな中、小型のミサイルが3発、また時間が空いて3発と飛んでくる。隊長がME3エメロードを構えていた。

さらに近接近した個体の攻撃を前転で回避しすかさずショットガンを撃ち込むと飛行ドローンの機体がひしゃげ、飛行力を失い地面に墜ちる。そんな身のこなしに小さい感動を感じていると、予想もしない声が翔一に掛けられた。

隊長「翔一!パワーポストだ!」

翔一「!?......はい!」

言われた通りにパワーポストを道路の真ん中に置く。

すると、赤い光の帯が伸び隊員達の武器に繋がった。

帯に手を肘(ひじ)まで入れてみると手を避けるように二手に分かれ、すぐに合流する。入れた方の腕を見てみると戦闘着のひじの部分に綺麗に赤い直線が入っていて、湿っているのかその直線が横にじわじわと広がり始めた。

 

スティングレイランチャーとショットガン、スナイパーライフルの体に赤い水滴の様なものがつき始め、次第に全体をコーティングしていった。スティングレイランチャーの弾頭も赤くコーティングされていたのを確認し、試しにスナイパーライフルのボルトを操作、弾を1発排出させる。スナイパーライフルの弾も赤くコーティングされ、手に持つと弾丸から拭き取られた赤い液体が指に付着していた。

 

ほんとにコーティングしてあるだけのようだ。

 

なのだが、試しに飛行ドローンに向けて撃つ。すると、1発で飛行ドローンは光を失い地に墜ちた。

6-4隊長「これなら!よし!撃って撃って撃ちまくれ!」

隊員「「「おおぉぉぉぉ!」」」

隊員「撃破!」

隊員「いける!いけるぞ!」

隊員「敵を撃破!」

少しだが隊員達の士気も上がった。

翔一「扱ったことはないが、高倍率スコープの付いてないリムペットスナイプガンに比べれば狙撃しやすいぜ!」

たちまち空を埋め尽くしていたはずの飛行ドローンの壁に穴が空き光芒が隊員達を照らしだす。

 

だが、マザーシップが再度発進口を開いた。またそこから第4波が現れる。今度はこれまでの2倍ほどの数だ。

6-4 隊長「くそっ!まだきやがるのか!」

隊員「まだ足りないのかよ!」

隊員「レーダーを確認、敵およそ80機!」

隊員「駄目です!あんな数持ちこたえられません!」

発進した飛行ドローンは一斉に隊員達に向かってレーザーを撃ってきた

隊員「うわあああーっ!数が多過ぎる!」

 

既に集まらせていた民間人は皮膚を焼かれ、中には服が焼け落ちている死体もあった。

遂にこれまでかと隊員達は武器を持つ手を下ろす。

そんな時だった。

 

田中司令《ネグリング自走ロケット砲を投入する。ネグリング自走ロケット砲の到着まで持ちこたえろ!全滅は許さん!》

 

本部からの増援の通達だ。この言葉が流れた瞬間、静かにトリガーに掛ける指に力を込めた。

隊員「増援が来るぞ!」

隊員「くそが!生き残ってやる!」

6-4隊長「ああ!増援の到着まで耐えぬくんだ!」

翔一「ここからが我々のターンです!皆気を引き締めましょう!」

全員「「「了解!」」」

 

それからの行動は早かった。すかさず翔一が無線を通して案を出し、ビル街を目指す。既に周りに人はおらず、EDF部隊にのみターゲットが向いていた。一斉に向かってくる飛行ドローンは数が多すぎて密集し過ぎているのかぶつかり合い金属がかすれる音や機体を地面に強く叩きつける機体が交差する中、レンジャー6-4はスティングレイランチャーは自爆の危険もあるためとサブで持ってきていたAF-15SMGに持ち替え走りながら牽制する。

軽傷者が2名でたが移動するのに支障はないと言うのでそのまま牽制を挟みながらビルへビルへと移動する。

幸いレーザーは建物を貫通出来ないらしく、飛行ドローン群はビルの合間に隠れた敵に手も足も出せず撃墜されていく。

隊員「もはや一方的だぜ!」

隊員「仲間の分だ、くらえ!」

 

一方的に飛行ドローンを倒せる様になり数分後、レーダーを確認すると全てを埋めつくし蠢いていた赤い点がまばらになっていた。

そして走行音が遠くから聞こえるようになったかと思うと生きていると実感のできる声が無線から聴こえた。

 

搭乗員《こちらアンブッシュリーダー!敵を確認した!》

戦術士官《ネグリング自走ロケット砲、配置につきました》

田中司令《よし!歩兵部隊を援護しろ!》

田中司令《応答しろ。アタッカー、生きてるか!》

翔一《生きてます!現在ビルを利用し戦闘を続行しています!》

田中司令《了解した。よく耐えたな......》

 

数秒後、ミサイルの射出音が連続し、レーダーからたちまち赤い点が消失していった。そして、最後の点が消失した。

ネグリング自走ロケット砲と共に到着していた96式装輪装甲車から医療班が降り、レンジャー6-4の隊員達の元へと急ぐ。

その後また少し経って到着したCH-47 チヌークに乗り込み地獄を生き残った者達は本部へ帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




より位置が掴めやすくなるようにとマップを対戦モードで歩き回りました。ちなみに自分はsteam版EDF4.1でプレイしてます。


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12話 魔の降る日

関東ばかり描写していたので、一新して四国は香川県(エリアJ-37)と瀬戸大橋に舞台を移しました。(移したと言ってもとりあえず当話のみですが)
関東だけが戦場じゃない!
そして自衛隊視点を少し濃くしてみました。


アナウンス《フォーリナーの輸送船団が日本本土に向けて移動中です。それに伴い避難警報が発令されました。市民の皆様は速やかに避難を開始してください》

 

街には数台のパトカーなどのパトランプが光り鳴り響き、モノレール線路の柱に取り付けられた拡声器からアナウンスが繰り返し鳴っていた。道路は多数の避難民で埋め尽くされ、避難誘導の警官はパトカーのボンネットに立った状態で声掛けなどを行っている。

人混みの中で空を見上げると、UH-1J 多用途ヘリコプターが数機飛んでいた。中でも低空を飛行している機体はドアが開かれ隊員が89式5.56mm小銃を地上に向けていた。巨大生物対策なのだろう。こちらに向けて銃口を向けてるのは印象が悪く感じたが、避難に気を集中した。

 

 

【瀬戸大橋、自衛隊】

 

瀬戸中央自動車道では香川県善通寺駐屯地、第15普通科連隊の中から4分隊が事態にあたっていた。側面を向くように12.7mm重機関銃M2を備え付けた軽装甲機動車を停め、襲撃に備えていたが、空は青空にちょうど良く雲がかかる晴れで、夏の日差しがその場にある全ての人や物を照らす。

隊員(自)「良い天気ですねー。日差しが眩しい」

隊員(自)「暑い...こんな日に出動とは.....」

空を見上げながらボーッとする隊員達に叱責する。

北村(きたむら)(自)「だらけるな!三田(みた)班を手伝え!」

自分達がいるガードやパイロンが置かれている地点より前方では避難民の対応にあたる三田班の面々が苦い顔をしていた。

 

電車が止まり、瀬戸中央自動車道は一向に動かない渋滞が起きていた。耐えきれなくなったのかある者は車を降り、ある者は逃げれない恐怖を発散するように隊員に罵声を浴びせる。そんな光景が広がる場所に、影が落ちた。その正体を見た避難民は空を見上げたまま立ちすくむ者、少しでも早くこの場を離れようとする者様々だ。空には晴れ空や日の光を遮らんとするフォーリナーの輸送船団が飛んでいた。

日本近海にいると報告は聞いてたものの、突如雲の中から現れた輸送船団に時間が止まったかの如く固まっていた隊員達が我に返り89式5.56mm小銃や110mm個人携帯対戦車弾を構える。

隊員(自)「分隊長!」

横から呼ぶ声が聞こえ、頭の整理をつけると指示を出す。

北村(自)「警戒態勢!撃つな!それ以上は本部に指示をあおごう」

 

 

【善通寺駐屯地】

 

隊員(自)「瀬戸中央自動車道に展開中の分隊より通信。繋ぎます」

 

北村(自)《フォーリナーの輸送船団を確認。現在警戒中》

風間(かざま)一佐(自)《了解した。警戒態勢を維持せよ。アクションを起こし次第迎撃を許可する。以上》

 

風間一佐(自)「EDFへは?」

隊員(自)「すでに関西基地、関東基地から部隊を要請しました」

風間一佐(自)「よし」

隊員(自)「!?......報告します。敵輸送船に対しF-2戦闘機による攻撃が行われましたが、敵の装甲は厚くASM-2などでの損傷は見られなかったとのことです。輸送船はその後低空を飛行し、こちらの兵器による地上への被害が予想されるため攻撃はそこで断念されました。現在、輸送船団は市街地上空に到達、アクションはありません」

風間一佐(自)「そうか......よし、1個対戦車小隊を送る。地上からの撃破を狙う!」

 

 

【EDF部隊】

 

EDFは駅のある街に到着し、敵を迎え撃つ準備をしていた。

隼人(はやと)「ここで迎え撃とう。敵到着まで補給等済ませておくんだ。」

1-2隊長(w)「了解!」

9-1隊長(R)「分かった」

9-3隊長(R)「了解した」

ウイングダイバー1-2とレンジャー9-1はそのまま駅方面へ向かい、駅前広場で簡易補給地点を組んでいた。

レンジャー9-3は後退し小坂の道路上で軽食を食べ始め、ストーム4鷲崎 隼人は後方の階段を登り偵察を務めていた。

双眼鏡で周囲を見渡しながらサンドイッチを頬張る。

隼人「なんでまた関東基地まで応援が...」

9-3隊員「隼人、そう言えばお前所属ストームチームになったのか。すげえじゃん」

雑談が始まる。

隼人「ああ、有難う」

9-3隊員「それにしても俺、実は輸送船なんて見るの初めてなんだぜ......」

9-3隊員「まじかよ」

9-3隊員「前大戦で家が崩壊した。幸い家族に死亡者は出なかったが家を失ったんだ。......でも悲しむ暇も無いままその時の社会の波に流されて気づいた頃にはシェルターに押し込まれてた」

隼人「俺も直接見るのは初めてだな」

思い出したように隼人も口にした。

9-3隊長「お前ら、実戦は甘くない。気を引き締めろ。いつ自分が、隣のやつが死ぬか分からんのだからな。俺は前大戦で隣で仲間が死ぬのを何度も見てきた。目の前で隊長が殺されたりもした。今度は俺は仲間を、しかも部下を死なせたくはない」

9-3隊員「......なんかすいません。それなら隊長のその言葉に応えてやらねばいけませんね。この戦争が終わるまで皆生き残るぞ!」

 

数分後、

戦術士官《フォーリナーの輸送船が作戦エリアに侵入しました》

 

9-3隊員「あれがフォーリナーの輸送船か!」

9-3隊員「あいつが巨大生物を運んできやがったんだ。絶対に許さねえ!」

 

田中司令《こちら作戦司令本部、各エリアに展開中の部隊に通達だ。輸送船はその上空を通過する。輸送船の撃破は自衛隊に委ねた。我々は輸送船の投下する巨大生物の掃除だ!》

隼人《了解!》

 

各エリアという事は、他のエリアでも同様の作戦が展開されているという事だろう。向かう途中で他の部隊や自衛隊の部隊と度々すれ違ったのはそのためか。

本部からの通信をよそに、隼人は空を眺めていた。

目の前には、報告による言葉より大きな存在に感じられる程の輸送船団が展開していた。その内の1隻が低空に降下してくる。輸送船はウイングダイバー1-2とレンジャー9-1がいる駅前広場の上空で下部ハッチを開く。赤い光を纏う内部があらわとなり、内部の真ん中の真っ暗で全貌が見えない穴から巨大生物が顔を出した。

 

そして、巨大生物の投下を開始した。

9-3隊員「やつら、また巨大生物を投下してやがる......」

9-3隊員「地球を巨大生物だらけにしやがったくせに、まだ足りないのかよ!?」

 

戦術士官《各エリアの輸送船団、アクションを開始》

田中司令《敵輸送船を撃破する必要は無い!地上の敵を倒すことを優先しろ!》

 

隼人「(このままでは......)」

輸送船は投下をしながらこちら側に向かって進んでいる。このままではウイングダイバー1-2とレンジャー9-1の頭上を通ることだろう。

 

隼人《ウイングダイバー1-2、レンジャー9-1。下がれ!そこは輸送船の進路上だ!》

ウイングダイバー1-2隊長《了解! 総員後退!》

レンジャー9-1隊長《何!? 分かった! 後退しろ!》

 

案の定、後退するレンジャー隊の最後尾の隊員に巨大生物が投下され、その巨体で胸をアーマーごと押しつぶされる。そのアーマーの胸部がひしゃげた隊員は辺りに血の水溜まりを作り絶命した。

部隊の後退を助けるべく9-3隊員がバッファローショットガンで敵の足を止めさせ、隼人がスティングレイM2ランチャーで数匹を纏めて吹き飛ばす。

手を止めることなく、駅前広場の中央で合流を果たし、腕のレーダーを見ると半円を描くように投下された赤い点が弧を描くように展開し徐々にその円弧を縮めていく。隊員達もその赤い点全てに一斉射撃できるように陣取る。

だが物量の差は痛く、直ぐに乱戦になってしまった。至近距離で360°から酸が飛んでくる。

 

間もなく残り数匹にすると、地に手をつく隊員が見られた。隊長に一喝され直ぐにバッファローショットガンを構え直す。幸い死亡者は出なかったがズタズタになり破損したアーマーが数人に見られた。ウイングダイバーの中には、飛行ユニットの一部に酸を浴びて煙をあげる部品があり、一応飛べるものの何かあったら間違いなく生存率が低いということで装備は外させ遮蔽物に待機させた。

 

隼人「よし、乗り切ったな......総員次の戦闘に」

 

オペレーター《敵輸送船、作戦エリアに侵入!》

 

隼人「備え....なに!?総員戦闘準備!」

このエリアの担当であるオペレーターの口から唐突に敵の襲来が告げられる。すぐに残りの敵を殲滅し、リロードを済ませる。

第2波の輸送船もEDFに肉薄、巨大生物を投下し始める。

流石に敵との距離が近すぎるので、スパローショットガンM2に持ち替え、うち尽くしたらAF-15を構えたレンジャー9-1の後ろにさがりリロードを済ませる。

 

イズマッシュス・サイガ12 ショットガンのような印象を受けるマガジン式のスパローショットガンはすぐ撃ち尽くしてしまい、なおかつリロードも重い。なのでこのような戦術が実戦での最良の立ち回りである。隼人は立ち回りを良く心得ていると評価され、部隊行動よりも独り身で動き回るのが本人の理想でもあった為ストームチームへの配属を許された。

 

 

【瀬戸大橋、自衛隊】

 

アナウンサー《戦局報道です。大型円盤の大編隊が世界中で確認されています。大型円盤は巨大生物を投下。フォーリナーは巨大生物で地球を埋め尽くそうとしているようです!EDFは各地に部隊を派遣。巨大生物駆逐作戦を展開しています》

 

隊員(自)「輸送船が巨大生物を投下してるぞ!」

北村(自)「なに!?」

隊員の見ている方向を見ると、瀬戸大橋記念館上空の輸送船の下部ハッチが開き巨大生物が投下されていた。

 

その光景は混乱を招くには十分すぎた。

車を捨て、車の天井に乗ることも厭(いと)わず逃げ惑う避難民に巨大生物が橋の側面や裏、車をはねのけ越えて襲いかかる。

白の車体の塗装が巨大生物の体当たりで剥がれ、回転しながら飛んだ車は着弾地点で複数の車や避難民を巻き込む。白の車体が鮮血に染まった。軽油車のタンクが真っ二つになり、中身が外に流れる。辺りをガソリン臭で包み、たちまち気化した燃料が炎上し始める。

あちこちで火の手が上がり、黒煙で視界が遮られさらに犠牲者が生まれていく。一瞬で地獄に変わった。

 

三田(自)「くそ!撃て!市民を助けろ!」

89式5.56mm小銃やミニミ軽機関銃が一斉に閃光を放つ。だが、5.56mmの弾ではあまり致命傷を与えられなかった。

北村(自)「くそが!部隊を下げる!牽制しながら後退し......」

隊員(自)「うおぉぉぉ!はっ!?しまっ......」

三田(自)「囲まれた!何故だ!なっ......!」

橋の側面に沿って後退していた三田の右腕が突如巨大生物の顎に消え、橋から引きずり下ろされ、橋の裏側に消える。それを見た三田の部下が救出しようと三田がいた場所に向かうが、足元で地面を挟んで三田が叩きつけられる鈍い音と悲鳴が聞こえた。さらに身を乗り出すと、小銃に噛みつかれ、トリガーに指を掛けたままグッと引っ張られ咄嗟の事で離せなかったのでそのまま身を投げ出される。すぐに「ドボン」と音がしたので、死んだか生きているのかは分からないが、その隊員は海に振り落とされたようだ。

 

巨大生物は既に三田、北村の分隊の後ろに回っていた。後ろに集中しながら後退していた隊員の首から上が無くなった。

北村達は仲間が次々に犠牲になっていくのを目の当たりにしながら足を止めなかった。渋滞によって密接する車の間を走り抜け、飛んできた車が着弾したことで出来た、車3台で出来た大人一人分の隙間をくぐり抜けて後退する。

 

だが逃げ切れることもなく側面に待ち構えていた個体や追いつかれた個体に捕まっていった。

 

 

【瀬戸大橋、上空】

 

風間一佐(自)《全機、攻撃態勢をとれ》

各機パイロット(自)《了解》

 

上空には、AH-1ヘリ2機とUH-1Jヘリ6機が到着していた。

 

パイロットA(自)《南備讃瀬戸大橋(みなみびさんせとおおはし)が騒がしい。あちこちで黒煙が上がっているぞ》

パイロットC(自)《こちらHUNTER-2、橋の側面も裏にもびっしりと巨大生物を確認した。ん!?普通科の部隊を発見!後退を続けていますが、後方に回られています!》

 

見ると、一直線に移動する複数の物体を1個ずつ横から抜きとっていくように側面に回った巨大生物は橋に展開した部隊員達を喰らい、橋から引きずり下ろしていた。

 

風間一佐(自)《HUNTER-1、後退中の部隊を支援せよ》

パイロットA(自)《HUNTER-1、了解》

パイロットA(自)《こちらHUNTER-1、展開中の部隊に告ぐ。橋に集(たか)る巨大生物を掃討する。1箇所に集まってほしい》

北村(自)《了解した。頼む》

 

北村達が近くに停めてあった軽装甲機動車に集まり、110mm個人携帯対戦車弾を取り出す。

補給をすぐに済ませ逃げてきた道を見ると、巨大生物の黒い波が出来ていた。そこに隊員がすかさず110mm個人携帯対戦車弾を撃ち込む。カウンターマスによって後方の車の車窓に強い衝撃がかかり激しく震えていた。

まもなく頭上にAH-1ヘリが止まり、20mmM197ガトリング砲が車もろとも巨大生物を蜂の巣にしていく。さらに後方では別の機体のスタヴウイングのロケット弾ポッドからハイドラ70ロケット弾が発射、車が炎に包まれ、道路を削り取り、巨大生物を粉砕する。

橋の裏側ではひしめき合う巨大生物に対し海面すれすれに降下したUH-1Jから89式小銃を撃ち一体ずつ撃破していく。

絶命し身体を痙攣させた巨大生物は裏側に張り付く力を失い海へ落ちていった。

その頃、瀬戸大橋記念公園球技場に展開した対戦車小隊は中距離多目的誘導弾の発射体制を整えていた。

 

 

【EDF部隊】

 

一方、EDFの面々は巨大生物との戦闘を続けていた。

本部にはオハラ博士が加わり、司令や現場隊員達にフォーリナー再襲来について考察を話していた。

 

オハラ《フォーリナーが再び巨大生物の投下を始めた。どのような意図があるのか......もしかしたら、地球では巨大生物の増殖が思いのほか遅れているのかもしれない。人類が巨大生物の増殖を防いでるのが許せないということか......?》

 

隊員《こちらスカウト。フォーリナーの輸送船団を発見!》

 

隼人「第3波か......」

と言ってマガジンを装填する。

 

オハラ《人類から見れば巨大生物は害虫だ。だがフォーリナーから見れば...逆なのか?》

 

オペレーター《全部隊、第3波が恐らく最後です。頑張ってください》

 

開けた駅前広場ではなく、今度は避難が終わっていない中小ビル街に投下を開始した。

モノレールの下に巨大生物の群が迫り、避難民を襲い始めた。

隼人「撃て!ラストスパートだ!」

3部隊隊長「了解!!」

 

オハラ《フォーリナーにとって、人類こそ巨大生物の増殖を阻む害虫のような存在だとしたら......》

 

ズドンッ!

 

ドサッ

 

隼人《最後の個体の絶命を確認、作戦成功です》

 

最後の一匹の絶命が確認され、作戦は終了した。だがその帰路で隼人達は更なる試練に挑むことになる。

 

 

 



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13話 円盤撃墜作戦

お久しぶりです。(10/13金曜日現在)
ちょくちょく進めては時間になり、また進めてはすぐ別の用事に出向いたりで投稿が遅くなってしまいましたすみません。


瀬戸大橋記念館上空では、フォーリナーの輸送船が巨大生物を投下し続けていた。

隊員(自)「中距離多目的誘導弾、装填!」

隊員(自)「撃てっ!」

2両の軽装甲機動車の発射装置からミサイルが2発続けて発射され、上空の輸送船に一直線に向かっていく。

だが輸送船は投下を中断し下部ハッチを閉じた。ハッチに遮られ、爆風すら内部に届かなかった。

逢坂(おおさか)分隊長(自)「くそっ!このままイタチごっこを続けるか......隊員にも疲れが見え始めている......」

周囲の隊員達を見渡す。

3m間隔で一小隊が展開、軽装甲機動車の中距離多目的誘導弾発射装置装置を囲むように防衛線を築いていた。とにかく物量の差が激しかった。

 

隊員(自)「敵輸送船、ハッチを開きます!」

逢坂(おうさか)(自)「撃てっ!」

発射装置から煙を揚げてミサイル2発が発射。フォーリナーの輸送船の下部ハッチ内部に吸い込まれる。1発はハッチに遮られ届くことなく爆散。もう1発はハッチの間をくぐり内部に着弾した。

内部で爆発が起こり、輸送船は黒煙に包まれる。

隊員(自)「やったぞーーーーっ!」

隊員の1人が歓声を上げる。

隊員(自)「おおぉーーー!」

それに釣られてほかの隊員もグリップに添える手でガッツポーズをとる。

 

だが、外装には全く損傷がない輸送船が黒煙から姿を現し、隊員達はすぐに迎撃体制を整える。

 

隊員(自)「くそ!まだ墜ちないのか!」

隊員(自)「次開いた時が最後だ!」

逢坂(自)「総員、巨大生物が来るぞ!撃って撃って撃ちまくれ!」

 

パイロット(自)《こちらHUNTER-1、支援する》

 

逢坂(自)「お願いする!」

頭に凄い量の空薬莢が降ってくる。その間に中距離多目的誘導弾の装填を済まし、数発の110mm個人携帯対戦車弾が運び出された。

逢坂(自)「よし!次で決めるぞ!」

 

 

【EDF部隊】

 

桑田司令《こちら関西司令部。レンジャー9-3、応答せよ》

 

レンジャー9-3隊長「こちら9-3、どうぞ」

 

桑田司令《すぐに別の作戦エリアに向かってほしい。該当エリアに最も近く展開しているのは君たちだ》

 

レンジャー9-3の隊長は、無線機を口元から離しため息をすると応答する。

レンジャー9-3隊長「了解。向かいます」

そう言うと迎えの車列から1台高機動車を借りて去っていった。

すると続いてウイングダイバー1-2へと無線機から関西基地司令官の声が聴こえた。

 

桑田司令《こちら関西司令部。ウイングダイバー1-2、君たちには散らばった生き残りの捜索・殲滅作戦に参加してもらいたい》

 

ウイングダイバー1-2隊長《了解しました》

 

ウイングダイバー1-2隊長「行くぞ!」

ウイングダイバー1-2隊員達「「「了解!」」」

ウイングダイバー1-2は飛び去っていった。

破損していた飛行ユニットは、修理を終えたようだった。

 

そして残された隼人とレンジャー9-1は、関西基地への帰路についていた。迎えの車列に乗り、作戦エリアを丁度抜けた頃。

 

田中司令《こちら作戦指令本部。レンジャー9-1、応答せよ》

 

隼人を除く隊員達の無線機から田中司令の声が聴こえた。

隼人の無線機からは聴こえてこなかった。

レンジャー9-1の隊長を見る。

レンジャー9-1隊長「関西基地専用回線です」

隼人「了解した。応答してくれ」

レンジャー9-1隊長「はい」

 

レンジャー9小隊は関西基地に駐屯する第7師団普通科連隊の部隊である。

連合地球軍日本支部には、前話に記載した通り北海道、東北、関東、関西、九州にそれぞれ基地が置かれ、(以下新情報↓)

有事の際に機能する総合作戦指令本部は関東基地に置かれている。また、そこからそれぞれの基地、部隊への専用回線が置かれている。だが、使用されるのは「迅速な対応が必要な有事」。余程の事があった場合のみである。

 

神田《こちらレンジャー9-1神田(かんだ)。どうされましたか》

神田は運転手に停止を命じ、カーナビに顔を近づける。

田中司令《レンジャー9-1、現在の戦力は》

神田《我々レンジャー9-1、負傷者なし。関東基地属ストームチームの隼人。計6名です。......任務内容の開示を求めます》

田中司令《了解した。本題はこうだ。先程お前達の頭上を通過した輸送船団から3隻が船団から離れ、現在住宅街の上空にいる。関西基地からレンジャー9-6、レンジャー9-7、ウイングダイバー1-3、フェンサー5-1を出動させたが、アクションを起こす前に現場に到着させるには遅すぎた。そして、近くの部隊は輸送船団が投下していった巨大生物の捜索・殲滅作戦に赴いている。お前達の現在地が一番近いことが分かった。今作戦では作戦指令本部が指揮を執る。お前達に「円盤撃墜作戦」を任ずる。ストームチームと協力し、輸送船3隻を撃墜せよ》

 

神田と隼人は向き合い、同時に頷く。

 

神田《了解しました。該当エリアに向かいます》

 

 

【本部から通信の40分後】

 

夕暮れ時、地上は橙色に染まっていた。避難が終了した無人の市街地を影で夕日から覆い隠し、自ら放つ赤い光で大地を照らし、輸送船は悠々と漂っている。

そんな中、河川敷に垂直にかかる大橋から1両の高機動車が走り、輸送船の真下を抜けた瞬間橙色の光に包まれ、思わず手をかざす。橋を渡りきり、停車すると、そこから人の形をした影が6つ現れた。

 

神田《こちらレンジャー9-1、現場に到着》

 

田中司令《よし!上空にフォーリナーの輸送船がいる。これ以上地球を巨大生物で汚染させるわけにはいかない。なんとしても撃墜しろ!》

 

神田「視認した!輸送船が来るぞ!」

輸送船の1隻が低空飛行に切り替えた。試しにAF-14を撃って見るが、その装甲に穴を開けるにはいたらなかった。

隊員「攻撃が効かない!装甲が厚すぎる!」

 

田中司令《輸送船の弱点は、下部ハッチの内部だ。下部ハッチが開いたら狙え!》

 

隼人「レンジャー9-1!投下される巨大生物を攻撃してくれ!輸送船に鉛玉は効きずらい。俺がスティングレイランチャーで攻撃する!」

神田「......分かった!任せたぞ!これよりレンジャー9-1はストームチームの援護に回る!」

 

田中司令《ハッチが開くのを待て。開いたハッチを攻撃するんだ!》

 

低空飛行していた輸送船の下部ハッチが開き出す。

神田「開いた!巨大生物が投下されるぞ!」

輸送船が遂に巨大生物の投下を開始した。

投下された巨大生物は中小ビルの側面を進み、住宅街を練ってこちらに向かってくるため、照準が定まらない。

隊員「前方の河川敷に向かいましょう!拓けた河川敷であれば容易に向かい撃てます!」

隼人「そうしよう!よし、行くぞ!」

神田&隊員達「「「了解!」」」

 

 

【河川敷、フェンサーチーム】

 

フェンサー5-1隊長《こちらフェンサー5-1、作戦エリアに到着した。作戦エリア内河川対岸に展開しています》

田中司令《了解した。戦闘を開始せよ!》

 

フェンサー5-1隊員「隊長!巨大生物が既に放たれています!レーダーには友軍の姿も!」

フェンサー5-1隊長「よし、友軍の援護にむかう!このまま川を渡るぞ!」

 

田中司令《レンジャーチーム、フェンサーと合流しろ!》

 

 

【レンジャー9-1、ストームチーム】

 

神田《了解!》

隼人《了解!》

 

隊員「フェンサー5-1はこの先の河川敷です!急ぎましょう!」

隊員「おい!レーダーを見ろ!凄い数に囲まれているぞ!」

言われるがままにレーダーを確認すると、自分達の青点を中心としてUの字に無数の赤点がその形を維持したまま迫ってきていた。

 

この量に囲まれ、阻まれれば、ストームチームと言えど無傷では済まないだろう。無尽蔵に投下される巨大生物にいちいち対応していれば全滅もありうる。目の前敵に気を取られていればいずれこのUの字が円に変形、つまり退路をたたれるだろう。

 

神田は決断を下した。

神田「ストームチーム!先に河川敷へ向かえ!我々もすぐ追いつく!」

隼人「分かった!死ぬなよ!」

隼人は河川敷へ急ぐ。

フェンサー5-1隊長「ストームチーム!我が分隊は、これより君の指揮下に入る!」

隼人は無言で頷く。

フェンサー5-1隊長「ストームチーム、レンジャー9-1はどこだ?」

どこでどうなってるかは分かっているのだが、後ろを振り返ってみる。誰も居なかった。

 

少しの沈黙の後、意を決してフェンサー5-1に打ち明ける。

隼人「レンジャー9-1は俺をフェンサー5-1と合流させるために残って巨大生物と対峙している」

フェンサー5-1隊員「隊長!今一瞬ですが、青い点が見えました!」

フェンサー5-1隊長「何!?よし、すぐに助け出すぞ!」

 

隼人《こちらストームチーム、フェンサーと合流した。今すぐ救援に向かう!》

神田《ザーー...了か...ザーー》

 

フェンサー5-1隊長「撃てぇ!」

一斉にフェンサー5-1のガリオン軽量機関砲が火を噴く。1~2発で巨大生物を葬っていき、瞬く間に黒い波が引き始め、橙色に染まる大地が見えるようになってきた。

巨大生物の黒波の中から友軍の姿が視認できるようになると、安堵の声が聴こえた。

だが、ハッチが開く機械音が鳴り出し、夕日に手をかざしながら空を見上げる。フォーリナーの輸送船が新たに巨大生物の投下を開始した。

 

一瞬固まるも、すぐにスティングレイM2を構え下部ハッチ内部をサイトを介して捉える。

3発続けて発射した。2発着弾、1発不着。2発爆発物を食らっても輸送船は煙も上げず我がもの顔で悠々と空を漂っている。

投下された巨大生物はフェンサー隊によって小物へと成り下がっていた。こちらに行き着く前に息絶えていく。

 

数分後、

またハッチが開く。

巨大生物が投下される。

スティングレイランチャーを撃ち込む。

ハッチが閉じる。

巨大生物を殲滅し、次の投下に備える。

 

何度繰り返しただろうか。

やはり歩兵用火器では威力不足のようだった。

味方も疲れが見え始めている。

事態を終息に近づける為、撃墜目標を1隻に絞ることにした。

そして何度も繰り返し、いよいよ目標の1隻から黒煙が上がり出す。

レンジャー9-1隊員「敵輸送船から黒煙が上がっています!」

隼人「次で決めてやる!」

輸送船のハッチが開いた。

迷わず3発スティングレイランチャーを撃ち込む。

 

輸送船は、内部で爆発を起こし、続けて外装を突き破って爆発を起こす。連鎖的に爆発を起こし、輸送船は光を失い落ち始めた。爆発の衝動で傾いた機体は黒煙を身にまといながら落下、落下地点の建物を押しつぶす。最後に大きい爆発を起こしそこには輸送船の残骸と投下されなかった巨大生物の部位の様なものが散らばった。

隼人「1隻撃墜!」

 

田中司令《了解!!残る輸送船は後2隻だ!頼んだぞ!》

田中司令《到着したか!バックアップのレンジャーを投入する!》

レンジャー9-7隊長《こちらレンジャー、現地に到着した!マンションにて待機中!準備が完了次第我々も戦闘に参加します!》

隼人《了解!そちらに向かう!》

 

レンジャー9-7のもとに走る隼人たち。

通り過ぎたラジカセからは、戦局報道が流れていた。

 

アナウンサー《戦局報道です。大型円盤は世界中に巨大生物を投下し続けています。フォーリナーがどれほど多数の巨大生物を地球に運ぼうともその数は有限であるはずです。ですが、もし巣穴を築き増殖を始めれば、人類は無限の巨大生物を相手にすることになります。EDFは巨大生物を早期に駆逐するため、戦闘を続けています》

 

レンジャー9-7隊長「これよりストームチームの指揮下に入ります」

青色のヘルメットを被ったレンジャー5-7はEDFがMMF43の名前で制式採用、対フォーリナー用に改造したAWMを装備している。試しに輸送船に撃たせてみたが、金属が擦れる音が聞こえただけであった。

隼人「くッ......」

 

田中司令《バックアップのウイングダイバーを投入する!》

ウイングダイバー1-3隊長《こちらウイングダイバー、我々も到着した!現在中学校の校庭に展開。巨大生物と交戦中です》

隼人《よし!!今向かう!》

 

数分後、

ウイングダイバー1-3隊長「我々が護衛します!」

武装を見る。レーザライフルだ。.........輸送船には届かない。低空の輸送船がギリギリと言ったところか。

急いで河川敷に戻っていると、

 

田中司令《こちら本部!レンジャー9-6が敵の攻撃を受け全滅した!すぐに関西基地よりレンジャー9-5を送る!到着まで持ちこたえろ!》

隼人《本部、念の為レンジャー9-6の装備を聞かせてもらえないか》

田中司令《うむ。レンジャー9-6はスティングレイランチャーを装備していた。レンジャー9-6を主軸として3部隊を護衛に回す作戦だったが、瓦解するとは...》

隼人《そうか...了解した》

 

隼人「よし!皆聞いたな!レンジャー9-5の到着まで、持ちこたえるぞ!誰1人犠牲者はださん!」

全員「「「EDFの誇りにかけて!」」」

 

?《ここはひでえな......おい、応答しろ!》

隼人《こちらストームチーム、どうぞ》

?《ストームチーム?関東支部のか?》

隼人《そうですが、貴方は?》

天翔《私は天翔(あまかけ)、関西本部属シグマチームエアレイダーだ》

 

天翔は続ける。

 

天翔《先程まで行っていた作戦が終了したので、付近の部隊の援護に回っていた。手を貸すぞ》

隼人《助かるッ!!今何処だ?こちらはー》

天翔《分かるぞ。こちらは橋の上だ》

 

橋を見ると、イプシロン装甲レールガンD(Lv.19)の砲身がこちらに向き、河川敷を見下ろしていた。

するとすぐに砲身は輸送船に向いた。

 

天翔《こいつで落としてやる!》

 

と言うと、丁度旋回を始めた輸送船が内側に傾き、こちらに対してハッチ内部があらわになる。

そこに、天翔はレールガンを撃った。

放たれた雷槍は真っ直ぐハッチ内部に飛んでいき、内部の投下口をズタズタにし、崩れた破片が大地に落下する。

そして同じく雷槍に身体をえぐり取られた巨大生物の死骸がボタボタと落ちてきた。

1隻目と同じく光を失った輸送船は徐々に高度を落とし地響きをたてて大地に激突した。攻撃を生き残った巨大生物数匹がこちらに向かってくるが、こちらの一斉掃射になす術なく息絶えていく。

隼人「あと1隻だ!」

残り1隻になった。速度が早くなったか、レールガンの旋回が追いつかない。だが変わらず巨大生物を投下する。

 

レンジャー9-5隊長《こちらレンジャー9-5、もうすぐ到着する》

天翔《くそ!くらいやがれ!》

 

運悪くハッチが閉まろうとしていた。

だが天翔が再度放った雷槍はハッチとハッチの隙間を抜けて内部に炸裂した。隙間から黒煙が吹き出された。

撃墜にはいたらなかったが、甚大な被害を与えたようだった。

隼人(心)「あの精度...流石関西指折りの精鋭部隊エアレイダーだ...」

巨大生物を殲滅し、次の開閉に備える。

ふと、周囲の音がヘリコプターのプロペラ音に掻き消される。振り返るとUH-60JAが1機こちらに向かってくるのが見えた。

 

さらに、キャビンドアが開かれ、そこから大口径の筒が6つ顔を出している。夕日で黒く染まっているせいかよく見えないUH-60JAはそのまま頭上を通り過ぎると、空中で停止、大口径の筒の影の付き方が変わり、スティングレイランチャーであることが分かった。

そのスティングレイランチャーからそれぞれ1発ずつロケット弾が放たれ、向かってくる巨大生物に着弾し、巨大生物ごとアスファルトを抉る。民家の塀に穴を開け、飛散した石が巨大生物の腹部や顔面に損傷を与える。

 

すぐにUH-60JAから懸垂降下用のロープが垂らされ、茶色のヘルメットを被った隊員が降りてくる。

レンジャー9-5隊長「レンジャー9-5、到着しました。これより指揮下に入ります!」

レンジャー9-5の到着を、肉声ではなく、無線を通して伝える。

 

隼人《こちらストームチーム。レンジャー9-5が到着した。この戦いに決着をつける時だ》

神田《了解!》

フェンサー5-1隊長《了解!》

ウイングダイバー1-3隊長《了解!》

 

天翔「了解した」

いつの間にかイプシロン装甲レールガンから降り、隣にいた天翔がパワーポストM2を設置する。

赤色の円柱が変形し、上部が二つに割れる。真ん中にソーラーパネルの様なものが付いたレーダーが展開し、隊員達の武器を判別、赤い霧の帯が伸び始めた。

 

その時ちょうど輸送船のハッチが開き始めた。

隼人「チャンスだ!総員撃ち込めー!」

7丁のスティングレイランチャーからロケット弾の軌道を煙が作り、輸送船の内部に吸い込まれていく。

ロケット弾はレールガンで傷つけた部分を追撃し、その他脆くなり煙を吹いていた所も押さえ着弾する。

スティングレイランチャー用のロケット弾は、爆発範囲が抑えられているのだが、7発のロケット弾はそれぞれの爆発範囲を補う様に着弾し爆発を起こす。7発隙間のない爆発が投下口を塞ぎ、巨大生物の投下も妨げられた。

そして、最後の輸送船は撃墜されたのだった。

全員「「「おおおぉぉぉーーー!」」」

隊員「やったぞー!」

 

 

【瀬戸大橋、自衛隊】

 

逢坂(自)《こちら逢坂。敵輸送船の撃破に成功した!送れ》

司令部(自)《了解!直ちに帰還せよ》

逢坂(自)《了解しました。終わり!》

 

帰りの車列に駆ける自衛官達の後ろに、大きな煙をあげ、砂埃を纏った輸送船の残骸があった。

 

 

【EDF部隊】

 

田中司令《敵生体反応無し、作戦成功だ!良くやった!》

戦術士官《各地域から、作戦成功の通信を確認。全エリアでの作戦終了を確認しました。......!?》

田中司令《どうした?》

戦術士官《海上自衛隊から通信。警戒監視中の海上自衛隊P-3C哨戒機が海上を進行するフォーリナーの戦闘兵器を確認したとの事です。我々がヘクトルと呼ぶ二足歩行ロボットの様です》

田中司令《恐るべき相手だ。上陸を許す訳にはいかない。海岸に部隊を派遣して、迎え撃つ》

 

やれやれ...本格的に始まったな......まあ、今はゆっくり休もう。と隼人は思った。

帰還用の高機動車に乗り込み、ヘルメットで顔を覆い隠す。関西本部に着くまで、ぐっすりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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14話 上陸阻止作戦

やっと更新、14話でございます。



田中司令「点呼!」

関東基地の兵宿舎前のグラウンドでは、田中司令の目の前にレンジャーやウイングダイバーの隊員達が整列していた。それぞれの部隊の分隊長と、それを統括する隊長が田中司令の前に出る。

そして1人ずつ出撃可能の合図を送る。

雷堂(らいどう)「レンジャー1、準備完了しました」

村瀬(むらせ)「レンジャー2、同じく準備完了しています」

向井(むかい)「同じくレンジャー3、出撃準備完了しました」

牧田(まきた)「レンジャー4、準備完了です」

本原(もとはら)「レンジャー5、出撃できます」

伊達(だて)「レンジャー6、準備完了。いつで出撃可能です」

高野(たかの)「ウイングダイバー7、出撃準備完了しました」

田菜(たな)「ウイングダイバー8、最高のコンディションです」

ストームリーダー「……」コクリ(動作)

 

神崎(かんざき)隊長「以上9チーム、出撃準備完了しました」

見事な敬礼が9つ、田中司令に向けて送られた。

敬礼を返し、田中は口を開く。

司令「ここに集まってもらったのは、他でもない。現在、マザーシップの投下した二足歩行戦闘ロボット『ヘクトル』が、太平洋側から日本へ進軍中だ。我々はこれを撃破しなはければならない」

 

話を進めると徐々に感情的になっていくのをその場にいた全員が見逃さなかった。神崎は、そんな田中司令を見ながら自身も経験した8年前を思い出していた。

田中司令「この作戦が失敗すれば、奴らは日本の土を踏み荒らし、殺戮を許してしまうことになる。それだけは避けねばならないのだ」

 

8年前、戦争初期に太平洋沖に新型の二足歩行マシンが投下された。ヘクトルである。EDF日本支部は津川浦と千条ヶ原に部隊を派遣。津川浦にはストーム1、5が投入され被害が最小限に抑えられるが、千条ヶ原ではヘクトルの猛攻撃に部隊が壊滅、市街地への侵攻を許してしまうのだった。

田中司令「今回の作戦では、歩兵部隊の他にギガンテス(戦車)が同行。そして、既に桐川航空基地より爆撃機が発進体制を整えている。空軍と協力し、奴らに思い知らしてこい!各員の奮闘を期待する!」

田中司令「よし、出発しろ!」

その言葉を合図に隊員達は後方に控えていた第2機甲師団の第1及び第2武装装甲輸送隊、武装装甲車両グレイプM2の車列に乗り込んだ。そして最後尾のグレイプに最後の分隊が乗り込むのを運転手のエアレイダーが確認すると、1列に走り出し『連合地球軍日本支部関東方面本部基地』と書かれた表札を横切った。グレイプの後ろには第2戦車大隊(チャリオット中隊)のギガンテスJが6両付いている。

その姿を田中司令が最後尾が見えなくなるまで見送っていた。

 

 

【第1飛行隊隷下第1偵察飛行隊、太平洋海上】

 

エアリコン-1《HQ、こちらエアリコン-1、距離900mに第一波ヘクトル及びマザーシップを確認。第1波ヘクトル群はマザーシップに守られている。さらに第1波から300m先に第2波を確認》

エアリコン-2《マザーシップがいるなんて聞いてないぞ!》

エアリコン-1《落ち着け。そのまま距離を保て》

エアリコン-2《エアリコン-2、了解》

エアリコン-3《こちらエアリコン-3、マザーシップに動きだ...》

 

エアリコン-3は目の前の光景に言葉を失った。マザーシップから数え切れないほどの飛行ドローンが発進したのだ。

 

エアリコン-1《こちらエアリコン-1!全機迎撃態勢をとれ!》

 

3機のバゼラートは日本に向かって進むフォーリナーに横隊で向き合うと、後退をしながら操縦桿についている赤いボタンと側面のトリガーを指で探る。そしてトリガーに指を添えた。

 

エアリコン-1《こちらエアリコン-1、HQ、マザーシップから飛行ドローンが発進!逃げ切れそうもありません。迎撃します!》

 

そしてトリガーを強い力で引いた。

 

 

【迎撃部隊、港湾地帯】

 

神崎達はグレイプに揺られながら思い思いに過ごしていた。走行音だけが響く車内に突如通信が入る。突然のコールに神崎と向かい合っていたレンジャー1分隊長の雷堂はお互いの驚き顔を合わせた。神崎が応答する。

 

戦術士官《こちら作戦指令本部、偵察を行っていた第1偵察飛行隊(エアリコン)から伝達。ヘクトルの頭上にマザーシップが出現した模様です。ヘクトルはマザーシップに守られています》

戦術士官《更に、飛行ドローンの出現によって空軍の支援は望めなくなりました。歩兵部隊のみでの作戦に切り替えます》

神崎《それなら、飛行ドローンを殲滅すればいい。なあに、簡単さ》

そう言って本部との通信を終えると、情報を伝えるために無線を全車両につなげる。

神崎《各員に通達。敵はヘクトルのみではないようだ。マザーシップが出現。飛行ドローンにより先遣部隊が攻撃を受けている。急ぐぞ!》

神崎《更に、飛行ドローンの出現で空軍は支援を行うことが出来ないらしい。最初は我々歩兵部隊のみでの戦闘になるだろう。皆、気を引き締めて挑め!》

各車両《了解!》

 

雷堂「ん?...待て。レーダーに敵反応!まっすぐこちらに向かってくるぞ!」

同じ車両に向かい合って座っているレンジャー1 分隊長の雷堂が叫ぶと神崎は自身の腕のレーダーを見る。すると、表示範囲外を表す赤い三角形が複数と、こちらに右側面から向かってくる赤丸が映っていた。

 

伊達《いきなり地中から現れやがったんだ!くそ!戦車を守れ!出ろ!急げ!》

 

車列は急停止し、グレイプの後部ドアから各部隊が降り立つ。

雷堂「このままではレンジャー6が危ない!...くそ!撃て!」

巨大生物の軍勢はレンジャー6のもとに集中していた。レンジャー6を助けようと各隊が発砲するも、それぞれのもとに着いた巨大生物の対処に追われる。そんな中、ストームリーダーがグレイプに搭載された榴弾砲を撃ち、緩い弓なりを描きながらレンジャー6のもとにたどり着こうとする巨大生物の前衛に殺到する。が、数匹がレンジャー6と接触、戦車隊を守るために前に出ていたレンジャー6を囲んだ。酸を一人に直撃させ、もう一人の隊員に突進しその巨大な口で捕らえる。レンジャー6が一瞬で二名もの隊員を失ってしまう。

その光景に吐き気を催した隊員が膝をつき、酸を避けきれず直撃を受けた。

伊達「こちらレンジャー6。部下を三名失いました。助けて!」

無線を通さず肉声で悲痛な叫びが聞こえ、神崎は歯を食いしばった。

そして掃討が完了し、各部隊が1箇所に集まった時にはレンジャー6は三名にまで減っていた。

神崎「レンジャー6、基地に帰還し編成を急ぐんだ。辛いが、そうするしか...」

部下であった遺体に頭をうなだれたまま寄り添うレンジャー6分隊長伊達に厳しい現実を突きつけることに罪悪感を感じるも、一番の安全案を提示する。

伊達「...いや、俺たちはこのまま同行する。遺体は作戦終了後基地にしっかりと送り届ける。せめて奴らにこのこみ上げてくる気持ちをぶつけてから帰らせてもらう!」

伊達の目は決意に満ちていた。その目が合った神崎は、「だが...」と言いかけて口を閉じる。

神崎「分かった。レンジャー6の配置を変更、後方に構えておけ。我々が盾となる。お前らは三名の無念をそこで晴らせ」

伊達「了解!有難うございます!」

伊達分隊長以下三名は、一人一つずつ死んだ仲間のドッグタグを手でしっかりと握った。

そして決意を新たに固めた一行は作戦エリアに急いだ。

 

 

【第1飛行隊隷下第1偵察飛行隊「エアリコン」、太平洋海上】

 

迎撃部隊が巨大生物との遭遇戦に入っていた頃、3機のバゼラートは尚も後方へ機体を倒しながら牽制射撃を行っていた。

 

エアリコン-2《こちらエアリコン-2、飛行ドローンの数が多すぎる!既に何箇所かがやつのレーザーで焼かれている!このままでは機体が持たない!》

エアリコン-1《ミサイル発射!》

 

バゼラートから4発の空対空ミサイルが発射され、飛行ドローンを追跡。着弾すると、ズタズタになった飛行ドローンは海の藻屑となった。

 

エアリコン-2《くそ!後ろに回られている!くそ!被弾した。墜ちる!》

エアリコン-1《エアリコン-2!》

 

後方からの思わぬ攻撃によって急停止を余儀なくされ、そこに付け込まれてしまう。焦げて脆くなった機体に数機の飛行ドローンからの集中砲火を受けたエアリコン-2は、空中で爆散。機体は海面へと墜落し、メインローターが機体から離れ後方にいたエアリコン-3を横切り海に落ちていった。僅か数センチの差だった。

 

エアリコン-3《危ねぇ!くそ...こいつら!》

エアリコン-1《見えたぞ!海岸だ!

エアリコン-3《おい!歩兵部隊がまだ到着していないみたいだぞ!?》

エアリコン-1《...よし。エアリコン-3、ここが正念場だ!敵を海岸から出来るだけ遠ざける!ヘクトルどものタゲもだ!》

 

どこかゲームのような命令に、エアリコン-3は思わず笑みをこぼす。

 

エアリコン-3《了解!》

 

二機のバゼラートは左右に分かれ、横に移動、すぐに機体を前に倒し、進軍を続けるヘクトルの部隊に向かっていった!

 

 

【海岸、迎撃部隊】

 

神崎《こちら神崎。海岸に到着しました。》

 

海岸に降り立った歩兵部隊は、すぐさま迎撃準備を整える。到着の報告をいれる神崎の近くで、ギガンテスJ6両が縦3両2列になる。海岸へ続く道の先には、地平線の彼方まで続く海と、こちらに向かって進むフォーリナーの姿があった。

戦車中隊長「チャリオット隊急げ!やつらはもう目の前だぞ!」

神崎「総員配置に付け!」

一瞬で場は慌ただしくなる。

神崎「任務の最終確認だ。この先の海岸は、砂浜へ降りる坂が二箇所、この作戦エリア内の左右端にある。我々は部隊を二つに分け、この坂から交戦エリアに突入する。いいな!そこからは撃って撃って撃ちまくれ!」

全員「「「了解!」」」

各分隊はそれぞれの持ち場につき、エアレイダー達がギガンテスに乗り込み2列が分断される。

 

神崎《こちら迎撃部隊。本部、準備が整った!》

田中司令《了解。いよいよ戦闘になる。歩兵部隊、タンクの援護がある!進め!》

雷堂(らいどう)《レンジャー1、戦闘開始!》

村瀬(むらせ)《レンジャー2、戦闘開始!》

向井(むかい)《レンジャー3、戦闘開始!》

牧田(まきた)《レンジャー4、戦闘開始!》

本原(もとはら)《レンジャー5、了解!》

伊達(だて)《レンジャー6、了解!》

高野(たかの)《ウイングダイバー7、アタック!》

田菜(たな)《ウイングダイバー8、アタック!》

ストームリーダー《ストームチーム、エンゲージ(小声で》

 

坂に差し掛かると同時に、迎撃部隊の頭上をかろうじて目で追えるほどの速さでバゼラートが2機通過していった。

去っていくバゼラート(第1偵察飛行隊)に神崎は心の中で「おつかれさん。」と声をかけた。

そして、浜辺に築かれた防衛線を崩さんと40~50の数の飛行ドローンがレーザーを発射する。レーザーの着弾によって砂浜の地形が改変し、砂塵が舞う。だが迎撃部隊は臆することなく歩を進める。そして、MMF43の弾丸やレーザーランスの光弾、持続的なAF-14による牽制射撃が次々に飛行ドローンの機体に穴を空け、焼き切る。とてつもない速さで飛行ドローンの編隊は壊滅、こちらの被害が多少の被弾はあったが脱落者はでなかった。だが、突撃を敢行する部隊が殲滅したのでは無かった。ストームチームの総隊長である男が小丘からライサンダー2による狙撃で次々と撃ち落としていったからである。

 

神崎《迎撃部隊より本部。飛行ドローンを殲滅!空軍の支援を頼みたい!できるか!?》

田中司令《こちら本部。桐川航空基地に掛け合う!持ちこたえろ!》

牧田(まきた)《ヘクトルの攻撃が激しすぎる!くそ!あの赤い爆発する光弾だ!ぐわああああ!...げほっげほっ...おい!起き上がれ!って...》

 

牧田が目の前にいたヘクトルに視線を戻そうとすると、そのヘクトルは残骸となっており、体の中心にある赤い目の中心に大口径で向こう側が見える穴が空いていた。

高野(たかの)「大丈夫!?ストームチームが援護してくれたのよ!命拾いしたわね」

自分たちを助けてくれたというストームチームを礼と尊敬の眼差しで見る。

ストームチームの彼は既に別の目標に攻撃を加えていた。

共に出撃したことがなく、名前と技量だけで見ていたストームチームが、突然自身の心の中で英雄のような崇高なチームに変わるのを感じて思わず

牧田(まきた)「あれがストームチー厶……」

と声を出し、そのまますぐに意識を戦闘に戻した。

 

右側では、ヘクトル4機を相手にギガンテスJが砲弾の雨を浴びせていた。絶え間なく発射される榴弾が直撃しヘクトルの腕や足が吹き飛び、体がひしゃげ、刈り取られた。それでも生き残り破損部から煙を上げながら後退を行うヘクトルに対しては、もろくなった装甲にレンジャー5やレンジャー6のMMF43炸裂弾が殺到、ヘクトル内部で爆発を起こし、その衝撃波は周辺の砂を舞い上がらせる。内部から破壊され目の光を失ったヘクトルは力なく倒れ、さらに追撃としてギガンテスJの餌食となる。

本原(もとはら)「ざまあみやがれ!」

伊達(だて)「1機残らず倒せ!」

伊達の部下「「おおぉぉーーー!」」

 

最後のヘクトルが爆散した頃、神崎は上空を見る。マザーシップはいつの間にか作戦エリアを離脱していた。そして、本部からの通信が入る。

 

戦術士官《空軍、まもなく到着します》

 

吉報を聴き、迎撃部隊はさらに士気が高まる。

 

神崎《了解!》

 

直後、神崎の腕のレーダーに11の敵反応が現れた。

 

戦術士官《レーダーに敵反応!第2波のヘクトル接近、多数です》

田中司令《フォーリナーの戦闘兵器が接近中だ。準備はいいか!》

 

田中司令が迎撃部隊を追い打ちをかけるように叱咤激励する。

 

雷堂(らいどう)《レンジャー1、了解!》

村瀬(むらせ)《レンジャー2、了解!》

向井(むかい)《レンジャー3、了解!》

牧田(まきた)《レンジャー4、了解!》

本原(もとはら)《レンジャー5、了解!》

伊達(だて)《レンジャー6、了解!》

高野(たかの)《ウイングダイバー7、了解!》

田菜(たな)《ウイングダイバー8、システム正常。戦える!》

 

 

田中司令《まず、空軍による爆撃を行う!》

 

 

数分後、レーダーに青い三角形が出現した。ヘクトル群はまだ沖に居る。

 

戦術士官《戦術爆撃機カロン、作戦エリアに接近》

田中司令《本部から地上部隊。空爆が始まるぞ!》

 

そして、本部及び迎撃部隊宛てに無線が入る。

 

カロン・パイロット《こちらボマー4。作戦エリアに進入。空爆を開始する》

 

そして、迎撃部隊の後方上空に戦術爆撃機カロンが躍り出ると、ヘクトルの頭上に無誘導爆弾の置き土産をばら撒いていった。

神崎「空爆がくるぞぉー!」

そして、水面で大きな爆発が起こり、爆発範囲にいたヘクトルはその爆風に煽られて体を大きく仰け反らせ、装甲が焼け落ちる。

村瀬(むらせ)「おおおおおおおーっ!」

腕を高く上げてレンジャー2の面々が歓声とともにガッツポーズをする。

 

戦術士官《着弾、敵を撃破しました》

田中司令《いいぞ!》

戦術士官《再度空爆が始まります》

田中司令《もう一度空爆が始まるぞ。地上部隊、敵から離れろ!》

 

そして、浜辺から海に向かって左の上空から、1機のシルエットが現れる。戦術爆撃機カロン2番機である。

ヘクトル群に平行にかかるように飛来し、橙色の夕日に染まり光り輝く数個の弾頭が一列に落下。ヘクトル3機を木っ端微塵にする。

 

火力をもって敵を圧倒している光景に、歓声が無線越しにも聴こえてくる。

 

隊員《やったぞーーー!》

隊員《空爆万歳だ!》

 

そして、今度は右の上空からシルエットがふたつ並んで飛来する。3番機と4番機である。

 

戦術士官《空爆が開始されます》

 

カロンが爆弾の投下を開始すると同時に、戦術士官がカウントダウンを行う。

 

戦術士官《空爆まで3秒、2、1、0》

 

0と同時に水面で大規模な爆発が起こり、ヘクトルは自身の前後ろに上がった爆風に挟まれ、腕や足などのパーツが飛散、水しぶきがあちこちで上がる。ヘクトルが居た場所には、その残骸が浮かんでいた。

隊員「うおおおおおおおおーっ!」

隊員「うおおおおおおおおおおーっ!」

 

戦術士官《空爆により、敵に大きな損害を与えました。》

田中司令《空軍の支援がある。地上部隊、敵を恐るな!》

 

神崎「敵はあと1機だぞ!」

 

最後の抵抗として、ヘクトルは腕のガトリングで淡い青色の光弾を打ち出す。

迎撃部隊の末端にいたギガンテスが無数の穴を空けられてしまうが、エアレイダーが降車し、リムペット・チェーンガンで応戦する。

リムペット・チェーンガンとは、あらゆるものに吸着する小型の炸裂弾をアサルトライフルのような連射速度で射出する小火器である。

ヘクトルに吸着した炸裂弾はヘクトルの腕をもぎとり、両腕を失い抵抗出来なくなったヘクトルは後退する。が、直後にヘクトルの逆三角形の体に風穴が空く。ストームチームのライサンダー2スナイパーライフルの銃口から煙が出ていた。

 

そして、上陸阻止作戦はEDFの完勝で終わりを告げた。

 

 

【関東基地、作戦指令本部】

 

戦術士官「世界各地のマザーシップが巨大兵器の投下を開始したとのことです」

田中司令「なんだと?」

戦術士官「四本足の巨大要塞です。すでにこのエリアに向かって侵攻を開始しています」

田中司令「四足歩行要塞……フォーリナーの陸上兵器の中では最大最強の存在だ。あれが市街地に到達したら、どれほどの被害がでるかわからない。恐るべき相手だが、8年前の戦いで破壊に成功している。倒せない相手ではない!」

田中司令の脳裏に、シルエットが映る。8年前の戦いで、最もEDFの勇士達を屠った殺戮兵器が民家を踏み潰し、街を蹂躙する姿が映っていた。

 

 

【海岸、迎撃部隊】

 

神崎「よし」

雷堂「それをどうするんだ?」

雷堂の視線の先には、緑色の背景に黄色で『Weapon』と書かれたアルミのアタッシュケースが開かれており、ヘクトルの部品が詰め込まれている。

神崎「分析班と武器開発班に送る。これを使って新しい武器の開発を行ってもらうんだ」

と言いながらアタッシュケースを閉じる。そして輸送部隊のグレイプに乗り込むと、無線で迎撃部隊全員に伝達した。

 

神崎《よし!帰還するぞ!》




ドロップするアイテムを現実で考えた場合、

Weapon → アルミのアタッシュケース(背景緑に黄色い『Weapon』の文字)

Armor → 赤を基調としたコンテナ

First Aid kit → 小型コンテナの中に回復用品が積まれている

みたいな感じなのかなー・・・


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閑話 馳せる思い

本編と同時進行だったこちらがいいところで終わっていたので、すぐ仕上げてしまいました。


【関東基地司令官室】

 

田中がコーヒーサーバーに手を伸ばすと、左にある扉から4回ノックがされた。コーヒーサーバーに伸びる手を引き、体ごと左を向く。

田中本部長「どうぞ」

沢見戦術士官「失礼します、沢見です」

扉が内開きに開かれると、ドアノブに手をかけた沢見戦術士官が田中の視界に入った。見ると、手にはバインダーが握られていた。

 

田中本部長「どうした?出動要請か?」

沢見戦術士官「はい。こちらのエリアに巣穴への入口が出現しました。現在、部隊を選定中です」

沢見がバインダーに挟まれた書類の表面を田中に向けながら続ける。

沢見戦術士官「このエリアは東北及び関西基地が担当します。このエリアとー・・・」

沢見が言葉を区切った。田中が目の周りの筋肉をほぐすように鼻根を摘んだからだ。

沢見戦術士官「失礼ながら田中本部長。関東基地の作戦の指揮を桐島副司令に委託するべきではありませんか?連日の指揮でお疲れでしょう。少しお休みになられた方が...」

田中本部長「ふむ......」

田中は部屋の窓側に進み、【連合地球軍日本支部関東本部本部長/司令官】と書かれた三角形の席札の置かれた机に備えられたレザーチェアに座ると、考え込む体勢を取る。

しばしの沈黙の後、田中が口を開いた。

田中本部長「そうだな。関東基地の指揮は彼に任せよう。...だが、総合作戦指令本部は引き続き私が指揮をする」

沢見戦術士官「本部長!」

声を荒らげた沢見戦術士官を、手をかざして静止される。

田中本部長「いいんだ。それに、私にはこの戦争が終結するまで指揮を執り続ける義務がある。とりあえず、桐島副司令を連れてきてくれ」

沢見戦術士官「...了解。それでは失礼します」

そして扉と共に差し込んでいた光芒が閉じられた。

立ち上がりコーヒーサーバーの元に戻ると、冷めて湯気の立たなくなったコーヒーの入ったマグカップを掴み、口に運ぶ。

田中本部長「...冷めたか」

冷めたさと際立った苦味だけが口に残り一度コーヒーサーバーにマグカップを置き直すが、少しの沈黙の後再び手に取り机に戻る。

 

それから田中は、何度も冷めたコーヒーを口に運びながら沢見戦術士官が置いていった書類に目を通す。

だがいつの間にか書類に向ける田中の目は書類の先の不可視の領域を見ていた。

 

突如どっと疲れが目に押し寄せ、田中は目をつぶった。

 

そして目を開くと、田中は慌ただしく分析官やオペレーターが行き交う総合作戦指令本部にいた。スクリーンには「CAM-(数字)」と表示されたウィンドウが並んでいる。

その中の一つでブラックアウトした画面を見ると、鏡のように自身の顔が映っていた。

画面に映った自分の顔と目が合ったが、すぐに他のカメラの画面に視線を移す。何故画面で自分の姿を確認したのか疑問を持たないまま。

 

 

【8年前】

 

沢見オペレーター「CAM-07に人影。『』が戦闘を続行しています!まだ戦いは終わっていません!」

CAM-07には力尽きたスカウト4隊長の遺体を遮蔽物へ移動させ、ライサンダーZスナイパーライフルで飛行ドローンに応戦する『』が映し出されていた。

田中司令「戦えるものはいないのか!『』を援護せよ!」

必死に無線で呼びかけるが、返ってくるのはノイズばかりである。

田中司令「くそ...!」

『』が力尽きればそれこそ人類の終わりだと思ったその時であった。

突如CAM-07が白煙で視界が塞がれ、最終防衛形態へ移行した『』が映る他のカメラ映像数個に紫の光を纏いながら直進する個人携帯用ミサイルランチャープロミネンスMAの弾頭が映る。吸い込まれるように直進していったそれは、『』の下部にあるハッチ内部のコアに着弾。その瞬間、『』は紅く禍々しい光を失くし、黒煙を大量に吹き出しながら徐々に高度を下げる。総合作戦指令本部のレーダーにも『』を表していた巨大な赤点が消滅したのが確認された。

 

突如の事で場は静まり返り、勝利に歓声を上げる者は逆に場違いな空間であった。

 

その直後、世界各地のフォーリナーの軍勢が宇宙空間へと撤退を開始。世界中に人類の勝利が報道された。

 

 

【1年後、関東基地敷地】

 

最終決戦から1年、EDFは世界各地で残った巨大生物の掃討作戦を展開していた。戦力の足りない分は各国防衛組織の生き残り、または市民で補填された。そして、アメリカ、アリゾナ州で最後の巨大生物が倒された。

 

そしてまた数日後、日本支部関東基地では兵宿舎の玄関前のグラウンドに田中司令を始めとする大戦を生き残った面々が整列していた。その中には、葉山や結城、佐川、神崎などが見える。目の前には、ドッグタグが積まれていた。そのドッグタグに刻まれた名前は、すべて大戦で命を落としていった戦士達のものだ。

 

田中司令「この数を胸に刻んでおけ。我々はこの、勇敢に戦い命を賭していった者たちの思いとともに前に進んでいかなくてはならない。やつらの再来に備えて!」

 

そう言うと田中は、電灯の明かりが届かない暗闇に姿を消していった。

 

 

【関東基地、兵宿舎角】

 

田中が兵宿舎の角に差し掛かった直後、後ろからの声に呼ばれ、立ち止まる。

振り返ると、赤色のヘルメットを被った男が立っていた。原色の赤いヘルメットのバイザーの中の瞳はまっすぐこちらを見ていた。

赤いヘルメットの男「何処へ行く」

田中本部長「決めていない。あてもなく彷徨うだけだ」

田中の返答に男は考えこむが、再び歩き出そうとした田中を呼び止める。

赤いヘルメットの男「司令部はどうするんだ」

田中本部長「私は大戦中、多くの部隊を向こうに送ってしまった...私はその責任をとる義務があり、償わなければならないだろう。貴様は、それどうしたんだ?」

田中は話題を変えようと男の被っているヘルメットを指さした。

赤いヘルメットの男「あの()()に置いてきた。これはスカウト4の隊長のものだ」

 

田中は、その()()に破損した漆黒のヘルメットだけが残されていて、『』がどうして見つからず行方不のままであったのかを考えた。

 

赤いヘルメットの男「田中本部長、お前が指揮を執り続けろ。EDFには、まだお前が必要だろう。お前が指揮を執り続けることが、亡くなった者たちにとっての償いだ。そして、もしやつらの再来があったのなら......そのときはお前が先導し、人類を、()()()()()()を導いていかなくてはならない」

田中は男の口からそんな言葉がでてくることに、驚きを隠せずにいた。

田中本部長「......分かった。その言葉、忘れないでおこう。貴様もその時は覚悟しておけ。()()()してやるさ」

赤いヘルメットの男「フッ...これからはバイクでも走らせて静かに暮らしたかったんだがな。覚悟しておくさ」

田中本部長「そうか。それなら来るべき時までそうしてるといい。車庫にSDL-2が数台格納されているぞ?」

赤いヘルメットの男「やめてくれ。しっかり大地を踏みしめて駆けたい」

と言いい田中に背中を向ける。が、3歩ほど進んでこちらに振り返ると付け加えるように人差し指を立てて言った。

 

赤いヘルメットの男「あともう一つ。金輪際後方からの敵はゴメンだぜ...」

と言うと、背を向けて今度こそ電灯の外に消えた。

 

 

【現在、関東基地司令官室】

 

沢見戦術士官「本部長、田中本部長!いらっしゃいますか?桐島副司令をお連れしました」

田中本部長「おっ...すまない。少し昔を思い出していた。入ってくれ」

沢見戦術士官「......」

沢見戦術士官は理解したのか詮索はせず、静かに扉を開けた。

田中本部長「導いていかなくてはならない...か。よし!桐島副司令、本日より関東方面の指揮権を貴殿に委託する。だがー・・・」

 

 

田中本部長「総合作戦指令本部の指揮は、私が引き続き行おう。それが私の使命だ!」

部分的にしか思い出せなかったが、この記憶は今後度々思い出すことになるだろう。思い出すたびに、明瞭に8年前の凄惨さや重みが増していくのだろうが、それに折り合いを付けなくてはならない。そして乗り越えるのだ。いつか、絶対に...




SDL-2とは、EDFで配備されている次世代型の戦闘バイク。
車輪は付いておらず、浮遊する能力を経ているが扱いが難しく地に足がつかないことに不安を感じる隊員が後を絶たなかった為その前形である従来のサイドカー付き戦闘バイクであったSDL-1が配備し直されました。


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15話 大地崩落

さあ、連日投稿目指してがんばるぞい。(出来なかった1/22現在)


【関東、ゴルフコース】

 

大西たちR6-1の目の前には『地下トンネルの出口』と言われている盛り上がった地面が点在していた。盛り上がった地面は人工芝を含み、小さな小山を作っている。更にその小山の中心には巨大生物が一匹ずつ通ることが可能なほどの穴が空いている。銃火器で攻撃しても土を微小巻き上げるほどなので、有効的な破壊をする為には内部からの爆発が効果的だとされた。

 

破壊作戦を行っている部隊は、いずれもグレネードをリュックサックに詰めて参戦している。

大西「お前ら!一つ勝負をしないか。あの穴の中にグレネードを投げ入れたやつの勝ち、破壊したら問答無用で勝利。勝ったやつには後で一杯奢ってやる!」

隊員「おお!やる気が出てきましたよ!」

関東のあるゴルフコースに出現した巣穴から繋がっているであろう大穴の破壊作戦で投入されていたレンジャ6-1及びレンジャー6-2の面々はMG14J時限式グレネードを片手に意気込んでいた。場の雰囲気も後押ししてか、士気は上々である。

隊員「おらあああああ」

一人の隊員が全身に力を込めて踏み込み、地下トンネルの出口に向けてMG14J時限式グレネードを振りかぶって投げる。

山なりに飛んでいったMG14J時限式グレネードは穴の中心に吸い込まれていき、深く入り込んだと思うと爆発。

盛り上がった地面は空高く土を巻き上げて崩壊し、その場所にははげてむき出しになった土のみが残っていた。

隊員「やったぜ!ホールインワンだ!隊長、1番高いやつをご馳走になります!」

大西「まじかよ...分かった。どんとこいだ」

 

突如辺りに爆音が響き、強い向かい風が落胆していた大西を襲う。

向かい風の来た方向を見ると、第1飛行隊隷下第1ネレイド隊属のEF31ネレイド2が1機、滞空しながら自動追尾式のM230機関砲を遺憾無く奮っていた。

 

ネレイドパイロット《こちらアウトノエー。巨大生物は我々に任せて入口の破壊を急いでくれ。歩兵部隊の健闘を祈る!》

 

大西《了解。任せとけ》

 

 

【総合作戦指令本部】

 

田中司令「状況はどうなってる」

報告から3時間後、田中は総合作戦指令本部の席についていた。

沢見戦術士官「はい。現在、各地で地下トンネルの出口の破壊作戦が行われています」

田中は、投入戦力と書かれたバインダーに目を通す。

そこには、各基地の項目に箇条書きで投入戦力が記されていた。

 

 

     

『巣穴破壊作戦投入戦力』        

 

北海道基地 担当:穂波 麗子(ほなみ れいこ)

 ・第7戦車中隊隷下デルタ中隊

 ・レンジャー11(第11レンジャー小隊)         

 ・第5装甲救急隊「アンヴュランス5」

 

東北基地 担当:宇佐見 隆(うさみ たかし)

 ・レンジャー15(第15レンジャー小隊)

 ・第3機械化戦闘隊「アームズ」

 ・施設大隊属無人重機

 ・施設大隊属ホイールローダー(エアレイダー)

 

関東基地 担当:桐島 雄二(きりしま ゆうじ)

 ・レンジャー6-1

 ・レンジャー6-2

 ・第1飛行隊隷下第1ネレイド隊

 

関西基地 担当:桑田 和夫(くわだ かずお)

 ・レンジャー9-1

 ・レンジャー9-2

 ・ウイングダイバー10-2

 ・ウイングダイバー10-3

 

九州基地 担当:山口 聖(やまぐち きよし)

 ・レンジャー21

 ・ウイングダイバー17-1

 ・ウイングダイバー17-2

 ・特設工兵隊(エアレイダー)

 

 

沢見戦術士官「地下トンネルの入口のひとつから巣穴への侵攻が可能です。」

田中司令「よし第2地底戦闘中隊「フレイム」(デプスクロウラー隊)の部隊を向かわせろ」

鷺本オペレーター「え!?」

田中司令「どうした」

鷺本オペレーターの驚きの声に対し冷静に問いかける。

鷺本オペレーター「関東基地3キロ圏内に地下トンネルの出口出現!」

田中司令「直ぐに出動できる部隊はいないか」

沢見戦術士官「レンジャー2-4が出撃態勢を維持したままです」

田中司令「よし、繋いでくれ」

鷺本オペレーター「了解!」

 

鷺本オペレーター《こちら総合作戦指令本部。出動待機中の部隊に通達。司令に替わります》

田中司令《こちら総合作戦指令本部。関東基地3キロ圏内に地下トンネルの入り口が出現した。直ぐに向かってほしい》

小野《ですが、我々が出撃準備を整えていたのは巨大生物の駆除任務なのですが...》

田中司令《それは該当エリアで戦闘中の部隊に委託する。とにかく直ぐに出れる部隊が必要だ》

小野《了解。現地に向かいます》

 

続いて鷺本オペレーターが通信機をストームチームに繋げる。

 

田中司令《ストームチーム、出動準備!》

隼人《こちらストームチーム。関西から帰投したばかりなのだが》

田中司令《いい具合に身体は暖まっているだろう。兵を分散している今はしょうがないのだ、向かってくれ》

隼人《...了解。レンジャー2-4に合流する》

 

 

隼人が車両庫に到着すると、レンジャー2-4と車両庫から出されていた武装装甲車両グレイプM2が迎えた。

小野「おお、来たか。エアレイダーにグレイプを1両借りた。こいつで向かおう」

隼人「ああ、分かった」

そして隼人達一行は該当エリアへ急行した。

 

 

【総合作戦指令本部】

 

そして数分後、部隊が巨大生物が群生しているエリアに入ったことを確認した。本部のドローンのカメラには、ストームチームレンジャーの隼人とレンジャー2-4分隊長の小野が映されていた。隼人達の目の前では多数の逃げ遅れた市民が巨大生物に追われ、喰われている光景が広がっており、異様に盛り上がった地面から巨大生物が出現する。それが地下トンネルの出口だと直ぐ判断する。

 

割れたコンクリートを含んで蟻塚の様に盛り上がった地面には丁度巨大生物が1匹分出入り可能な穴が空いている。その穴は巨大生物たちの巣穴へ繋がっているのだ。

田中司令「くそ!新たな巣が誕生していると言うわけか...作戦開始!」

鷺本オペレーター「各エリアでも戦闘が開始されました」

鷺本オペレーターが日本各地が一斉に戦闘区域になったことを告げた。

 

 

【作戦エリア、数分後】

 

沢見戦術士官《巨大生物が次々と市街地に出現しています。巣穴から地下トンネルを掘り進み、市街地の地下まで移動してくるようです》

田中司令《安全な地下に通路をつくっているというのか》

沢見戦術士官《市街地に大きな穴がいくつか見つかっています。巣へ繋がるトンネルの出口のようです》

田中司令《その穴を潰さない限り、やつらは好き勝手にやってくる。トンネルの出口を破壊してやる!》

田中司令《巨大生物の地下トンネルがあるようだ。地上への出口が見つかった。急いで破壊しろ!このままだと次々と巨大生物が出てくるぞ!》

 

隼人「レンジャー2-4!援護を頼む!DNG2接触型グレネード(こいつ)をあの蟻塚に投げ入れてやる!」

小野「任された!」

白兵戦のさなか連携をとり、隼人はDNG2接触型グレネードを腕に力を込めて投げる。グレネードは盛り上がって出来た小山に直撃し、土とコンクリートが飛散する。飛んでくるコンクリートをものともせず巨大生物は破壊を行う者たちのもとへ反撃に向かうが正面からの複数のアサルトライフルの持続的な足止めによって抗うこともできずに絶命していく。

 

そして放たれた三つ目のグレネードが脆くなった小山にトドメをさす。

小山は綺麗に消し飛び、辺りは静けさを取り戻した。

 

沢見戦術士官《トンネルの出口を破壊》

田中司令《トンネルの出口はまだほかにもある。探せ!》

隼人《了解》

 

すぐ近くの住宅地から地響きが聞こえると、住宅が倒壊、盛り上がる。地下トンネルの出口が出現する。

隼人「よし、いくぞ!」

小野「前進する!」

部下「了解」

住宅の間に出現した巣穴の出口に対してグレネードを投擲しようとする隼人に小野は忠告する。

小野「ストームチーム!住宅に囲まれている。爆発物は危険だ!」

隼人「構うものか。排除を最優先に遂行するぞ」

 

田中司令《住宅地での爆発物の使用は許可している。ストームチームの言ったとおりだ。目標の排除を最優先にしろ》

 

田中司令が最後にトーンを落とすが、構わず隼人はグレネードを地下トンネルの出口に向けて投擲する。

二つ目の巣穴の出口が閉ざされ、部隊は休息を取るためにリュックサックを地面に下ろすが、直後に休息がないことを沢見戦術士官が告げる。

 

沢見戦術士官《巨大生物が別の場所に出口を作ったようです。地底から次々と出現しています。現地の部隊はレーダーを確認してください》

 

沢見戦術士官からの通達に従い腕時計のレーダーを確認する。

『遠い』を意味する赤い三角形が一箇所に集まっている。白い『市民』を表す三角形、そして蠢く巨大生物を表す赤い三角形が数個表示されていた。

 

田中司令《トンネルの出口を破壊しろ。巨大生物め……地底からは絶対に出さん!攻撃部隊、前進!巨大生物を殲滅せよ!!》

 

田中司令の命令を受け、隼人たちは前進を開始した。

その頃他の作戦エリアでは...

 

 

【北海道】

 

穂波司令《キャリバン救護車両、負傷者を収容せよ!》

アンヴュランス5《了解!レンジャー11二名を収容》

デルタ1《こちらデルタリーダー、目標No.3、火力を集中せよ》

 

デルタリーダーの命令に答えるように3両のギガンテスJ戦車の砲塔が一つの地下トンネルの出口に向けられる。

 

椚原《こちらレンジャー11、No.2から敵多数!迎撃する!》

デルタ1《撃て!》

 

殺到した120mm榴弾砲によってNo.3の地下トンネルの出口は沈黙。

非常に戦略的かつ豪快な作戦を展開していた。

 

 

【東北】

 

宇佐見司令《ベガルタ隊、前へ!》

アームズ1《アームズ、前進!》

 

緑色の装甲に身を包んだバトルマシン・ベガルタファイアウォーリアが機敏な挙動で地下トンネルの出口に接近。

巨大生物が地上に顔を出すその瞬間を狙い、両手に装備された火炎放射器『コンバット・バーナー』で焼き切る。

抵抗も出来ないまま死骸と化した巨大生物はその大きな体で仲間の進路を遮った。

 

宇佐見司令《ホイールローダー、突撃しろ!》

 

その命令の直後、アームズの後方からエアレイダーの操縦するホイールローダーが突撃を行う。

装着されたバケットが盛り上がった土の中に深く入り込み、そのまま小山を崩すと地下トンネルの出口は沈黙。

堅実な作戦遂行による芸当である。

 

 

【関東】

 

アウトノエー《こちらアウトノエー、弾薬を撃ち尽くした。これより帰投する》

アガウエー《こちらアガウエー、俺もだ。帰投します》

アクタイエー《アクタイエー、置き土産だ。怪物ども!》

桐山司令《了解。後は地上部隊に任せろ!》

 

滞空したEF31ネレイド2三番機アクタイエーから無誘導ミサイルが発射、ミサイルは一直線に地下トンネルの出口へ殺到し、辺りの芝などに凄まじい被害を残し第1対地制圧ヘリ隊は帰投した。

 

アウトノエー《こちらアウトノエー、残りの獲物は譲ってやる。じゃあな!》

大西《稼がせてもらうぜ。...ガシャン(バッファローショットガンのポンプ音)》

 

地と空の連帯による攻撃は巨大生物を寄せ付けはしなかった。

 

 

【関西】

 

桑田《ウイングダイバー、次に備えろ!》

WD10-2《了解!》

神田R9-1《巣穴より巨大生物多数!》

WD10-2「かかったな!」

桑田司令《よし、投げ入れろッ!》

 

巣穴の出入り口にウイングダイバー10-2、10-3が極限まで接近し、巨大生物のターゲットを自分たちに向けさせる。飛行ユニットを駆使し飛び回りながら巨大生物を地下トンネルの出口から遠ざける間にレンジャー9-1及び9-2が総出でMG14J時限式グレネードを投げ入れる。タイミングの合わさった起爆に耐える力もなく地下トンネルの出口は土埃を上げて消滅した。

大胆さは作戦において効果的な戦術である。

 

 

【九州】

 

山田司令《工兵隊、突撃しろ!》

 

戦闘バイクSDL-1数台のサイドカーに乗車した工兵隊は地下トンネルの出口に送られると、C24プラスチック爆弾を数個設置。設置完了後すぐにサイドカーに乗車、レンジャー21やウイングダイバー17の後方へと送られる。

そして起爆装置を握り締め、巨大生物の出現と同時に起爆。土やコンクリートとともに巨大生物の死骸が吹き飛ばされる。

非常に戦略的な作戦を展開していた。

 

 

総合作戦指令本部のドローンカメラには依然として巨大生物の姿がうつされている。

 

沢見戦術士官《北海道、東北、関東、関西、九州にて、作戦終了を確認。残りはこのエリアのみです。巨大生物が地底から出現しました。トンネルの出口を新たに作ったようです》

田中司令《トンネルの出口を破壊しろ!》

小野R2-4「ラストスパートだ、いくぞ!」

隼人storm「ああ!」

隼人はAF-15アサルトライフルの弾倉の底を下から叩き気合を入れ直す。

 

沢見戦術士官《おそらくこの出口が最後です》

 

最後とされる地下トンネルの出口は中ビル街を抜けた公園の中であった。盛り上がった土は埋め込まれたベンチの脚を浮き上げ、出口の一部にしてしまっていた。

 

小野《本部!最後のトンネルから出現しているのは蜘蛛型です!》

田中司令《奴らまで地下で繁殖を続けているのか...よし、第2地底戦闘中隊を派遣しよう。巣穴に潜む巨大生物どもを今度こそ掃討する》

沢見戦術士官《すぐに第2地底戦闘中隊とレンジャー6を派遣します。トンネルの出口には攻撃せず、出現した巨大生物を殲滅してください》

隼人&小野《《了解!》》

 

 

【総合作戦指令本部】

 

田中司令「四足歩行要塞の問題はどうなっている」

沢見戦術士官「先ほどスカウトから報告。日本近海に投下された四足歩行要塞は依然として上陸せず、海岸線にて活動を休止しているとのことです」

田中司令「そうか...海岸に部隊を派遣し迎え撃つぞ。8年前のようにはいかないということをやつらに教えてやる」

沢見戦術士官「次いで先ほど桐川航空基地より報告がありました。例の新型兵器の試作型の搭載が完了したとのことです」

田中司令「よし、今のところは我々は優位にコマを進められているようだ。実践での情報収集も含め四足歩行要塞(やつ)に使用する」

 

 

翌日~

 

関東基地食堂に備えられたテレビでは報道ヘリの決死の現場撮影が行われていた。橙色の空をバックに輝く銀色の装甲。そして「四足歩行要塞」の名の由来でもある脚が4本。赤い光を持たず、ひと目で休止状態だと分かるその巨体は、尚も佇んでいた。

目の前に迫りつつある迎撃部隊()を威圧するかのように。

 

アナウンサー《戦局報道です。マザーシップは四足歩行要塞を多数投下。EDFは歩行要塞の侵攻を阻止するため、各地に防衛線を築いています。なお、本土に上陸した場合、関東全域が敵の射程にあると思われます。射程圏内にお住まいの市民の皆様は万が一の備えを行ってください》

 

 

 



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16話 要塞破壊作戦

さてさてこの投稿ペースだとまずいですなぁ...


パイロット《こちらストーク1。作戦エリア上空に到達しました》

田中司令《こちら作戦指令本部。自衛隊が逃した巨大生物が作戦エリアに入った。総員早急に巨大生物を攻撃せよ》

 

四足歩行要塞に対する大規模な作戦を控え、陸上自衛隊とEDF JAPANは共同戦線を張り、陸自は作戦を行うEDF JAPANのバックアップを担うことになった。作戦エリアを輪で囲むように部隊を展開、またその戦火をくぐり抜けて作戦エリアへ入る危険性を危惧しEDF JAPANは空からの侵入を考案した。だが作戦エリア内に防衛網を抜けた巨大生物、もとい地中を移動してきた巨大生物が出現し、先遣隊として歩兵部隊のみが投入されることになったのである。

パイロット「聞こえたか?GO! GO!」

1機のチヌークが滞空を開始、後部ハッチが開く。

そのまま地上1m地点まで降下すると、2列に続々と兵士たちが降り立った。

葉山「撃てぇ!」

巨大生物群のど真ん中に降り立ったレンジャー1小隊下3分隊とストームチームは巨大生物に攻撃を開始する。

 

田中司令《すぐにタイタンを運ぶ輸送チームが到着する。それまでに殲滅せよ》

 

了解!とその場の全員が答えた。

そのあいだにストームチームは敵に向かって走っていく。その光景を見て指揮分隊であるレンジャー1-2の分隊長葉山智は声を強張らせ指示を下した。

葉山「1-1、1-2はストーク隊の周りに散開、1-3は補給物資を降ろせ!」

その言葉を合図に、着陸を完了しメインローターが停止したストーク隊CH-4Jチヌークの周囲へ展開、葉山達1-2分隊及び1-1分隊は近づく巨大生物を各個撃破する。

1-3は再びチヌークへ乗り込み、弾薬の入ったBOXを降ろし始めた。

巨大生物は少数であったためすぐに片付くが、四足歩行要塞は未だ現れる素振りを見せない。

空から確認した際も、高層ビル群によって姿が見えずにいた。

 

葉山が1-3に高層ビル街に組み込まれている空中回廊に上がっての偵察を命じ、別れて数分が経った頃。作戦指令本部より通信が入る。

 

沢見戦術士官《第1防衛ラインより通信。「戦線は崩壊、四足歩行要塞は上陸し侵攻を開始した」とのことです》

田中司令《EDFが力を増したとはいえ、その戦闘能力は健在か!》

沢見戦術士官《四足歩行要塞との戦闘中に、後方から別行動中だったヘクトルの部隊、地下から巨大生物の介入があったそうです。現在ポスト1司令部が生存部隊の確認と通信を行っています》

田中司令《第2防衛ラインに告ぐ。四足歩行要塞が侵攻を開始した。早急に準備を開始せよ》

パイロット《こちらストーク2、作戦エリア上空に到着》

田中司令《よし、いいタイミングだ!アルキュネウス隊、配置につけ!》

パイロット《ストーク2から各機、切り離せ!》

 

タイタン重戦車を運んできた4機のチヌークはホバリングを開始。ズシンと音を立ててタイタン以下戦車隊は地に降り立った。独立して飛んでいたもう1機のチヌークからもエアレイダー数名が降り立ち、タイタンやギガンテス戦車を吊っていたワイヤーを外す。

再度地上にズシンと響くが、それは戦車からではなかった。

 

結城「く...くるぞ!」

里見「いよいよご対面ですか!」

だが侵攻路にあるビルの合間には四足歩行要塞の姿はなく、

大黒「あれ?足音はどこから来てる」

葉山「ビルに隠れているのかもしれない。見に行こう」

補給中だった1-1と1-3に待機命令を出し、葉山隊は高層ビル街へと歩を進めた。が、足音が近くなるばかりで一向に四足歩行要塞の姿は見えない。

その刹那、甲高い音と共に高層ビルが倒壊した。様々な大きさの瓦礫は地へ向けて降ってくるが、葉山隊と人知れず同行していたストームチームには直撃しなかった。

高城「危なかったっすね...」

新庄「ああ...だが見ろ!お出ましのようだ!」

 

葉山隊の目の前でビルを破壊して見せたその名は、四足歩行要塞(よつあしほこうようさい)

 

四足歩行要塞 -全長200m、白銀の亀の甲羅に似合しい体、それを支える巨大な四足を持ち、

武装は腹部に5つ。埋め込まれた球体に発射口がついた砲台が4門とガトリング砲のような見た目の砲台が1門。

背中には明らかに胴体に不釣合いに思えるような程巨大で長い砲身を2門背負っている。

背中の2門はプラズマ砲と呼ばれる武装で性能もまた絶大。

関東海岸に上陸すれば、瞬く間に関東全域が射程圏内になると言われ、着弾すれば広範囲が一瞬で更地に変わるほどの威力を持っている。という、フォーリナー地上戦力において最大最強の兵器である。

 

先程の甲高い音はプラズマ砲による攻撃だったようだ。ビルがプラズマ砲を遮り威力を殺したため、地上部隊に被害はなかった。

 

四足歩行要塞を撃破するために、大規模な作戦が作案された。第2防衛ラインに下された作戦の旨とは、

海岸に展開した部隊(第1防衛ライン)を壊滅させた上、空軍を撤退させ、上陸を果たした四足歩行要塞に対し地上戦力が到達予想地点に展開、四足歩行要塞を空軍の再突入まで足止めする。空軍の攻撃が失敗に終わった際は地上戦力による破壊作戦に切り替える。

 

さらに作戦が開始される数時間前、桐川航空基地より報告がされた。

その内容とは、グラインドバスターと呼ばれる新型貫通弾の搭載が完了したとのことだった。

その報告に同付された情報に、その性能が記されている。

 

新型貫通弾グラインドバスターは、およそフォーリナーの白銀の装甲を貫くことのできる威力をもつ。今回の作戦ではその実戦投入が決定された。もちろん標的は四足歩行要塞。

 

そして今、四足歩行要塞の向かう先にはストームチームを含めた歩兵部隊、そして重戦車(タイタン)を指揮車にした第1重戦車連隊アルキュネウス中隊が第2防衛ラインを築いているのだった。

 

倒壊により巻き上がった煙を掻き分け、四足歩行要塞がその姿を現した。その威圧感は大黒と高城をたちまち狼狽えさせた。

大黒「でかすぎる...」

高城「地上部隊だけじゃ、どうにもならないぞ!」

葉山「焦るな!足止めさえ叶えば、あとは空軍がやってくれる!」

結城「そうは言っても!」

 

風舞「ストームチーム、エンゲージ!」

八木「ストームチーム、戦闘を開始する!」

後ろではストームチームのウイングダイバー、風舞早紀と同チームエアレイダー、八木翔一の乗るイプシロン装甲レールガンが迎え撃つ意思を撒き散らす。

 

その闘争心にあてられ、葉山隊の面々は覚悟を決めた。

その時、横を巨体が通り過ぎる。それは、戦闘態勢を整えたアルキュネウス隊のタイタン重戦車1両と指揮下のギガンテス戦車2両であった。

 

車長「重戦車で四足を食い止める。歩兵は下がれ!俺達がやる」

と豪語すると、車長は車内に戻っていった。

装填手《距離の関係上、撃てるのは1発。外さないように!》

射手《おうよ!重戦車の力を見せてやるぜぇぇぇぇ!》

 

タイタン重戦車の主砲である最新鋭兵器『レクイエム砲』はもともと艦砲として開発されたものであるが、砲身を短縮することで戦車への搭載を可能にした。だが砲身短縮の影響で初速がやや低下しており、動く目標に当てるには技量が必要である。さらに1発の装填に時間がかかってしまう短所ももっており、一発必中も求められる。

が、威力は凄まじくEDFの陸上戦力では最大の存在なのだ。

 

ギガンテス乗務員《四足歩行要塞のハッチが開く!投下する気だ!》

 

その言葉通り、四足歩行要塞の胸部分にある下部ハッチが両開きに開き始める。

すると内部の赤く光る転送装置から機械のような足が出現した。

やがて全貌が明らかになる。二足歩行戦闘ロボット『ヘクトル』だった。ヘクトルは真っ直ぐ戦車隊に腕の銃口を向けている。

 

ギガンテス乗務員《四足要塞からヘクトルが出てくる!》

車長《援護頼む!ギガンテスはヘクトルを牽制!》

射手《レクイエム砲、撃てー!》

 

射手の声が強張ると共に、轟音をたて巨大な光弾が四足歩行要塞に向けて進み、四足歩行要塞の腹部を爆炎で包み込んだ。その衝撃の成果か、四足歩行要塞は進行を停止する。その場で誰もが歓声を上げた。

 

だが、余韻の煙が何かの風圧で荒れ狂った。

 

その煙をかき分けて、白銀の脚が再び大地に轟音をもたらす。レクイエム砲は四足歩行要塞に傷一つ付けることができていなかったのだ。直撃した腹部は純銀のような輝きを放っていた。

 

射手《主砲が効かない...》

車長《後退しろ!》

 

アルキュネウス隊と葉山隊は後退を開始する。ストームチームもそれに従った。

 

葉山《こちら1-2、現在後退中!現在位置を教えてくれ。合流する》

1-1隊長《こちら1-1、街中央のY字路にて待機中。戦闘態勢維持!》

1-3《こちら1-3、見えてるぞ。我々は空中回廊にて待機中だ》

 

葉山達は後ろ向きで後退する。少し下がると空中回廊が左に見える開けた交差点に差し掛かった。

左の空中回廊に目をやると、1-3の隊長が手を振っていた。

葉山「皆と合流する!!」

葉山隊全員「「了解!」」

葉山隊は来た道を戻り、まずは1-1との合流地点へ急ぐ。

 

田中司令《タイタン、下がれ!》

 

ポスト1司令部桐島司令と連絡をとっていたのかこれまで静かだった作戦指令本部から遅い後退命令がなされた。

...が、やはり遅かった。ギガンテス戦車はヘクトルの餌食となり、タイタン重戦車は一挙一動が大きい四足歩行要塞によって踏み潰されてしまった。

 

乗務員の断末魔が無線越しに響き渡り、その場所には潰れて黒煙を上げている残骸が残っていた。そしてすぐに爆音を立てて爆発を起こした。

 

田中司令《アルキュネウスリーダー!応答せよ!アルキュネウス隊!》

 

新庄「タンクを失った今戦力はたった三分隊と2名だと...笑わせるぜ!」

新庄が言い放つ。

 

田中司令《空爆でやつを撃破する!》

 

葉山「もたもたしてると俺らも踏み潰されるぞ!急げ!」

結城「それはいやですね!次の交差点から1-1のもとへ直進して行けます!そのあとは公園に出ましょう!」

葉山「よし。1-1にも伝える!」

 

葉山《こちら1-2。1-1、そちらの現在地で合流しよう。そのあとは開けた場所へ移動して迎え撃つ!》

1-1隊長《了解!待機する!》

 

歩兵部隊のやり取りの合間にも、四足歩行要塞は高層ビルをものともせず破壊し進みながらさらにヘクトルを投下していく。突如そのうちの一体を葉山達の後方から放たれた紫色の光の槍が貫いた。ストームチーム・ウイングダイバーが攻撃を加えたのだ。さらに通り過ぎたビルの合間から現れたレールガンが別のヘクトルの胴体を焼き切る。ストームチーム・エアレイダーがイプシロン装甲レールガン車両で狙える位置にいつの間にか移動し、ビルの合間に姿を晒したヘクトルを完封したのだった。

ストームチームの支援を受け、指定した合流地点に一直線で繋がっている交差点にたどり着いた一行は、体を前に直し、前向きで合流地点へ走り出した。

だが皆が走り出した瞬間に大きな振動が起こり、足を止める。だが高城は空中に投げ出された。空中で一回転し背中から着地すると、肺の中の空気が一度に出される。

高城「うわああああぁぁぁぁがはッ」

里見「大丈夫か!?」

すかさず里見が手を差し出した。高城はその手をすぐに掴む。

高城「あ...あぁ、すまない...」

葉山「高城、走れるか?」

高城「はい、平気です」

 

1-1隊長「おーーい!こっちだー!」

前方を見ると、1-1分隊がいた。葉山たちは速度を落とし早足で向かう。その途中で本部からの無線が入った。

 

田中司令《こちら本部、攻撃機ミッドナイトがこちらに向かっている。新型貫通弾グラインドバスターをお見舞いしてやる。ミッドナイトの到着まで、四足を足止めしろ!》

 

結城は戦車砲でもびくともしない相手とどう小銃で戦えばいいんだ!と言いたくなったが心にしまう。

その後すぐに葉山隊は1-1分隊と合流が完了した。横にはストームチームも居る。1-3抜きのまま策を練っていると、

 

1-3隊長《四足要塞から飛行ドローンが発進してる!》

 

と、通信が入り、見るといつの間にか遠くなっていた四足歩行要塞の下部ハッチから飛行ドローンが発進し始めていた。

 

田中司令《歩兵部隊は飛行ドローンに専念せよ。四足歩行要塞は空軍に任せろ》

 

解き放たれた飛行ドローンの群は、空中回廊で空に身を晒している1-3分隊のもとへ一直線に向かっていく。

1-1隊長「1-3が敵の攻撃にさらされるぞ!」

葉山「ストームチーム!1-3の救援に向かってくれ!我々もすぐ追いつく!」

早紀「分かった!」

その光景を見て葉山はストームチームに願い出た。ストーム・ウイングダイバーはそれを呑み飛行、敵ドローンよりも先に1-3のもとへたどり着いた。そして接敵すると、彼女の担ぐレーザーライフルから赤白いレーザーが発射され、飛行ドローンの装甲に傷を付けていく。飛行ドローンの縦長の体に平行につく翼がレーザーによって切断され、機体を水平に保てなくなった飛行ドローンは地上に激突。1-3の掃射を受けて動かなくなる。

 

その後すぐに葉山達とイプシロン装甲レールガン車両が参戦し、次々と飛行ドローンを撃墜していった。

 

 

【陸上自衛隊要塞破壊作戦支援部隊第1中隊、作戦エリア最南市街地】

 

作戦エリア最南部に位置する市街地に展開していた第1中隊は巨大生物を殲滅し、つかの間の休憩を行っていた。

 

第1中隊長「よっと...」

と、第1中隊長は道路に下ろしていた背嚢(はいのう)の持ち手を掴み上げた。

その時、野外無線機のイヤホンからコールがかかる。

 

司令部《こちら司令部、第1中隊どうぞ。送れ》

第1中隊長《こちら第1中隊。敵殲滅、現在待機中。指示を乞う。送れ》

司令部《こちら司令部、2km先で敵の出現を確認。第1中隊、戦闘態勢》

 

通信が終わると、隊員全員が迅速に準備を進めていた。

第1中隊長「よし、聞いたな!向かうぞ」

全員が高機動車に乗り込んだのを確認し、中隊長も乗り込む。乗り込んだ車内では、丁度戦局報道が流れていた。

 

アナウンサー《戦局報道です。世界各地に投下された四足歩行要塞は、大都市に向け侵攻を続けています。EDFは防衛線を築きこれを迎撃。グレートブリテン島では歩行要塞1機を撃破したとのことです。フォーリナーの戦力は8年前の10倍。圧倒的な敵を相手に、EDFは善戦していると言えるでしょう!》

 

海外で早速撃破報告が上がっていることに希望を抱きながら、すぐ数キロ先で戦っているEDF JAPANへの励ましを心の中に留める。そして視線と心を前方の風景に集中すると、目標地点への移動に専念した。

 

 

【第2防衛ライン、作戦エリア】

 

四足歩行要塞から投下されたヘクトル及び飛行ドローンを処理した歩兵部隊は、ストームチームを中心に陣形を組んでいる。現在四足歩行要塞は高層ビル街を抜け、中高ビル街へと歩を進めていた。

 

対して歩兵部隊は大量に投下される敵兵器との激戦の末更地になった高層ビル街を抜けた先の公園に陣取っていた。

 

投下も戦闘も止み足音だけが響くなか、一人の隊員が一息つこうと深く呼吸をすると、四足歩行要塞が沈黙を破る。

二度目の飛行ドローンの投下を開始した。

 

沢見戦術士官《四足要塞から飛行ドローンが発進》

 

投下が止むと、下部ハッチがまた閉じる。

ハッチを閉じきった四足歩行要塞は、自身の向きを先ほどの高層ビル街へと変更し、歩兵部隊のもとへ進行を開始した。

 

田中司令《四足要塞以外の敵は全て片付けろ!このエリアから出してはならない!》

 

四足歩行要塞が迫る中、歩兵部隊は飛行ドローンを処理しながら進路からずれる。歩兵部隊を横切り更地の元高層ビル街へ足を踏み入れた。

 

沢見戦術士官《攻撃機ミッドナイト、まもなく作戦エリアに到達》

 

着々とこちらの準備も整ってきているようだ。と葉山が声を漏らす。

葉山「ラストスパートだぞ!」

おお!と、全員が答えた。

 

田中司令《四足要塞から投下されるヘクトルを破壊しろ!》

 

四足歩行要塞は高層ビルの残骸の山の上に間隔をあけてヘクトルを投下、投下、投下。さらに投下した。

投下されたヘクトルは自身の射程距離に敵を捉えるために前進する。

が、すでにストームチーム両名の射程距離内に入っていた。

そのヘクトルはイプシロン装甲レールガン車両の餌食となり爆散する。

 

沢見戦術士官《攻撃機ミッドナイト、あと数分で作戦エリアに到達します》

パイロット《こちらミッドナイト、すぐに着く!巻き込まれるなよ!》

田中司令《グラインドバスターで貫けないものはない。あと少しの我慢だ!》

 

無線が騒がしくなっていく。そんなことも知らず、四足歩行要塞は再び中高ビル街に入ると、先ほどのルートと八の字に交差するように進路を変更する。

 

田中司令《飛行ドローンを破壊しろ!》

 

中高ビル街から再び投下された飛行ドローン群が歩兵部隊へ向けて飛んでくるが、近づけばたちまち撃墜され、逃げ惑うように飛ぶ。だがそれをストームチームが追撃した。

 

沢見戦術士官《ミッドナイト、目標を捕捉しました》

 

いよいよだ!と、誰かが叫び、沢見戦術士官がチェックメイトを下した。

 

沢見戦術士官《空爆開始。グラインドバスター発射》

 

姿も見えない高高度から発射された新型貫通弾『グラインドバスター』は、四足歩行要塞の斜め上空から側面を削りとり、二発目は直撃して厚い装甲の背中を貫通して見せる。さらに数発が直撃、機体が大爆発を起こし、ついに倒れた。

倒れた衝撃で起こった風圧で大量の黒煙が巻き上げられ、その無残さが伺える。

 

沢見戦術士官《着弾。目標を撃破しました!》

 

その瞬間、場が静まり返った。もう、四足歩行要塞の足音もなにも聞こえない。真に静かな空間になった。

だが耐え切れなかったのか、拳を震わせていた隊員が腕を高く上げて叫んだ。喜びの叫びを。それを皮切りに、だんだんと声の数やボリュームが増していく。

全員「「うおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーー!」」

 

結城「やったぞーーー!」

葉山「やったな!」

 

大歓声のなか、里見と高城は腕を叩き合わせ、ストームチーム両名は緊張が去ったあとのように深呼吸をしていた。

 

 

【作戦指令本部】

 

田中司令「やったぞ!」

沢見戦術士官「ええ、また一つ、大きな戦果です」

二人にとっては8年前の地獄を見た人間だからこその喜びも大きかったが大げさに態度には出さないでいた。

 

 

だが、勝利に微笑む沢見戦術士官の顔が、一瞬で険しいものとなり画面を凝視している。そして彼女は続けた。

 

沢見戦術士官「ヘクトルの大部隊が確認されました。すごい数です」

田中司令「四足歩行要塞の他にも報告があった...が、やはりそちらが本隊か。だが、こちらにも虎の子の機甲部隊がいる!」

沢見戦術士官「空軍にも、出動要請が出ています」

田中司令「地上の決戦が始まるぞ!至急ポスト1司令部に連絡を!」



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閑話 要塞猛進の軌跡

灯りの無く、遮光カーテンに包まれた暗い部屋。関東方面基地『ベース1』内にある会議室では、田中 克人本部長が会議室正面のホワイトスクリーンに会議机を介して向いていた。

田中はプロジェクター上部に増設されたタブレットに手を伸ばす。そこには『2017 ~ 2018』というタイトルや『2024 大地震』などのタブ。EDFが残した活動の映像記録が眠っていた。

それぞれのタブを開くと、動画ファイルが表示される。後者のサムネイルには瓦礫を持ち上げるフェンサーの姿が写されていた。

田中はその中から『2017 ~ 2018』をタップした。さらに画面右上に検索欄が表示され、その為のキーボードが現れる。『四足歩行要塞』と打ち込み、『検索』をタップすると、素早く検索結果が表示され、レスポンスによる機械音と共に

“EDF JAPANレジストリ ニ ヨンケン デス”

とアナウンスされる。

 

田中は表示された4件の中から一番上、『要塞』をタップする。

10秒ほどのロードを経て、ホワイトスクリーンに若干画質の荒い映像が流れ始めた。

雑音混じりで聞き間違えてしまいそうな音質の中、画面外から人の声が入る。

 

 

【要塞】

 

映像は多少の横揺れはあるものの、垂直に動く。ドローンカメラの映像のようだった。

「信じられない大きさだ...」

誰かがそう呟く。

夕焼けの海岸に佇むは先の作戦で撃破に成功した四足歩行要塞。それがカメラには収められていた。EDFと四足歩行要塞、8年前の初遭遇時の映像である。

 

それからまもなく、四足歩行要塞は歩き始め、レーザー砲台が眼球のように動く。そこから発射されるレーザーはEDFの隊員達を次々と穿っていった。

 

次々と倒れゆく隊員達。怒号と悲鳴が飛び交う映像を前に、田中は握りこぶしを作り力を込めていた。

 

映像が終わり暗転、先程の選択画面に戻る。

次にひとつ下の『侵攻阻止作戦』をタップした。

 

 

【侵攻阻止作戦】

 

「隊長に続け!」

「うおおおおお!」

今度は住宅地の屋根に乗っているのか、隊員達を見おろす映像だった。

部隊の隊長らしき赤いヘルメットの男性がインカムを押さえつけて喋り出す。カメラには肉声で記録されていた。

「こちらストーム3、敵が大きすぎる。我々だけで食い止めるのは無理だ。」

と、目の前の『何か』を指して言う。カメラの向きが変わり横をうつすと、四足歩行要塞がストーム3の元に直進していた。

「了解!」

「何だって?」

「レンジャーチームが数チーム向かっているらしい!それまで持ちこたえるぞ!」

「歩兵部隊がいくら集まったって破壊できるものか!」

「戦略兵器でもなきゃやつは...!」

「いや、俺に考えがある!やつの腹部のハッチが開いたのを見たと聞いた。」

隊長はそう言うと、そばに控える黒いヘルメットの隊員に目を向ける。

「やつの下に潜り込むことが出来れば!」

「輸送船と同じ要領で破壊が可能だと?」

「ああ」

「隊長!あれを!」

隊員が指さす方向では、四足歩行要塞のハッチが開き、ヘクトルが投下されていた。

「くそっ!一筋縄にはいかないかっ!まずはやつの投下する敵の掃除だ!」

「撃ってきまぁす!」

ストーム3に向いていた巨大な銃口から、直に見ることが出来ないほどにけたたましく光る光弾が発射され、流れ弾が住宅に着弾。家屋の倒壊にドローンは巻き込まれていき、映像はそこで途絶えた。

 

しばらくして映像が切り替わる。画面右下には、『cam-02』と記載されていた。

切り替わった映像には、どんな風景だったのかも判別出来ない焼け野原と、砕かれたコンクリート。そして、真っ赤な血が赤を基調とした戦闘服を重ね塗りする。息絶えているEDFの隊員で埋め尽くされていた。

 

田中はさらに次の映像ファイルを再生した。

動悸が激しくなるが、表情にはまだ平静さが感じられていた。

 

 

【要塞急襲作戦】

 

次の映像は、遠巻きに隊員達の会話が聞こえる。

「まだ撃つな。指示を待て!」

「補給中ってことは、つまり格好の的ってわけだ!」

隊員達の向かう先には四足歩行要塞がいる。足を止めて動力を落としているようだった。

「空軍の力があれば...」

「飛べるのはほんの数機らしい。仕留めきれないだろうな。もし攻撃が叶っても損傷を与えられるのか...」

「空軍が出来ないのなら俺達がやるまでだ!さあ、集中するぞ!」

 

今回の映像は様々な角度に揺れていた。おそらく人の手で撮影されたものなのだろう。その裏付けに、画面右下には「scout_4 Cam」と表示されている。偵察部隊『スカウト4』が撮影したものだった。

「四足、未だ沈黙...」

遠巻きではなくはっきりと肉声が聞こえる。

「こちらスカウト4。四足歩行要塞は敵に守られています。すごい数です。」

おそらくカメラの持ち主の報告が音声にのる。

 

それからしばらくして、歩兵部隊が善戦をしていた頃。

突然四足歩行要塞に赤い光が灯り、歩き始めた。

「まずい...まずいぞ!本部!応答願います!こちらスカウト4。四足が動き始めました!」

 

映像の下に再生時間を表すバーが表示される。残り数秒のその映像には、四足歩行要塞が再び動き出し、歩兵部隊に猛威を振るう姿が映されており、映像はそこで幕を閉じた。

 

田中は持ってきていたコーヒーを一飲み干し心を落ち着かせる。1回の深呼吸のあと、最後の動画ファイルをタップした。

 

 

【要塞攻略作戦】

 

今度はドローンカメラの映像だ。EDFの隊員達を見上げるように撮影している。

「いいかぁ!この作戦で片をつける。行くぞ!」

「「Yes sir!」」

「こちらレンジャー8-1!四足に接近中!」

様々な方向から音声が聞こえる。ドローンは、現場の隊員達の心情をはっきりと記録していた。

「巨大生物だ!四足から巨大生物が!」

「こちらレンジャー4-2。デカブツの足下へ到着!」

 

今度は『レンジャー4-2』のカメラへとチェンジした。

四足歩行要塞の腹部が映し出される。ふと、ガトリング砲のような見た目の砲台が回転を始めた。それを発見し隊員達がザワつく。

「おい!あれを!砲台が動き出した!?」

「ぐああああああああ」

「ぎゃあ!」

「痛ってえぇ!」

カメラを装着していた隊員がやられたのか、画面がぐるりと回転し、鈍い音と共に地面に激突した。だがカメラは回ったままだ。

起動した砲台の攻撃になす術なく焼き殺される隊員達。死を免れた者も、灼熱の痛みに悶えている。

「上から銃撃の雨だ!」

それを見かねた遠巻きの隊員が、

「本部!応答願います!敵の下部砲台から激しい銃撃!足下に展開するのは危険です!」

声色から恐れと焦りが彼を満たしているのが分かる。

カメラの近くに居る四足歩行要塞からの砲撃を免れた突撃隊の隊員は、

「この作戦は失敗だ!」

と嘆き、絶叫を全開無線で響かせる。四足の追撃を受けたのだ。

カメラにも、その隊員の隠れ場所へ砲撃が集中する映像が記録されていた。

 

そして次にドローンカメラも標的となり、空中に飛んでいるドローンを四足歩行要塞は狙い撃ちし、カメラ中央がピカっと光ったかと思うと映像が暗転。音声も途切れた。

 

再度、ドローンカメラの映像に切り替わったとき、戦場では熾烈な戦いが続いていた。

 

遠巻きに、隊員達の声が聞こえる。

「こちらレンジャー4-1!現地に到着しました。戦闘を開始します!」

「本部!本部!現地に到着した!仲間の援護に向かう!」

「本部!応答願います。こちらレンジャー1-2。現地に到着しました。戦闘中のストームチームを援護します!」

多すぎる程の援軍に士気が微小上がるも、一時のことであった。

次々と援軍も部隊も散らされていく。

「レンジャー4-1は壊滅状態だ!」

「葉山!何人動ける!」

「3人だ!くそ!部下を先に逝かせてしまうとは...」

レンジャー1-2の隊長で葉山と呼ばれた男は膝をつきアスファルトを拳で叩く。

その模様もドローンカメラは捉えていた。

「おい!?四足歩行要塞から黒煙が上がってるぞ!」

「誰かが戦闘を継続していまぁす!」

「ストームチーム!ストームチームだ!」

「おい!ストームチームが見当たらない!」

「ストームチームは単独でデカブツに突撃を敢行している!俺達も行くぞ!少しでもいい!四足に集中できるよう、ストームチームを援護するんだ!」

「「了解!」」

「「進めーーっ!」」

それからは火事場の馬鹿力という言葉の通り、投下される飛行ドローンを殲滅し隙の出来た四足歩行要塞にストームチームが攻撃を加える。被弾時に四足歩行要塞から発せられる咆哮が、さらに隊員達を激昴させる。

そして遂に、四足歩行要塞は爆炎に包まれた。

力なく倒れる。

「いやったぁー!四足が倒れるぞ!」

生き残った若い隊員が叫ぶ。だがそれは歓喜の声だ。

「イヤッホー!」

「EDF!」

「EDFの力を見たかぁ!」

 

カメラには四足歩行要塞が黒煙を上げながら倒れている姿と、勝利の歓声を上げるEDFの勇士達の姿が映されているのだった。

 

これが、8年前EDFが体験した、戦闘の軌跡である。

 

 



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17話 谷に潜む影『上津川救出共同作戦 前編』

今回は本編よりオリジナル展開が長ーーくなってしまった...
まあ後に関わる部分なので大目に見て下さい。
m(_ _)m


暗雲に包まれ、カラスが騒ぎ立てる市街地。数時間前までのどかだったその地域の屋外には既に人の気配は無く、我が物顔で出歩くのは妖しい姿の侵略者のみである。

 

町から離れた臨時司令所では陸上自衛隊のトラックが並び、仮設施設、テントが築かれ食料班による調理が行われている。

兵士達の中には自衛隊の戦闘服以外の面子があった。

臨時司令所及び避難場所となったその場所を警護するのはEDF JAPAN。第1師団第1特戦歩兵連隊の第3特戦歩兵中隊、レンジャー5、フェンサー1の隊員達である。

彼らは2024年に起こった地震災害でEDF JAPANの部隊として被災地に初めて派遣された部隊で、それ以降この中隊の主任務は災害派遣とされている。

 

ラジオ音声(緊急報道です。本日午前11時頃、砂津谷市上津川区上空にフォーリナーの輸送船団が飛来。輸送船団は蜘蛛型巨大生物を投下し、陥落までものの数分だったとのことです。なお、町内には未だ市民が取り残されているとの情報もあり、陸上自衛隊とEDF JAPANは共同で救出作戦を計画中とのことです。繰り返しますー...)

 

車内ラジオを切り、ハンヴィーからEDFの戦闘服に身を包んだ集団が降り立つ。

本原隊長!と1人の隊員が呼んだ。

本原と呼ばれたその男は、隊員に返事を返すとハンヴィーのドアに上津谷区の地図を広げ、ブリーフィングを始める。

紙面上に点在する赤く囲まれた建物を指でなぞった。

本原「南東のトンネルからハンヴィーで市街地に進入する。そこからはポイントAへ5-2と共に前進。ポイントAに着いたら市民の護衛を5-2に任せ、我々はポイントBへ向かう」

本原「これらのポイントには市民がいる。無駄に戦闘を開始して作戦エリアを掻き乱すことは避けねばならない。巨大生物は音に敏感。近くを通る時は装備の音に気をつけろ。射撃音なんてもってのほかだ」

本原「よし、そろそろ開始時刻になる。いいな?」

 

そう言うと現場は慌ただしくなり、レンジャー隊員はハンヴィーへ急ぐ。エンジンが唸り出すハンヴィーに続くように自衛隊のトラックの車列が形成されていった。

 

 

【山岳地帯、自動車道】

 

田中司令《総員戦闘開始、フォーリナーの輸送船を撃墜せよ。なお、さらに輸送船が2隻確認されている。午前に市街地を陥落させた輸送船だ。万一に備え、撃墜の準備をしておけ》

 

隊員「フォーリナーの輸送船団だ!」

梶原「あの橋を、確保しろ!」

山岳地帯に展開した梶原隊レンジャー4-1とストーム4、精鋭レンジャーの隼人の目の前には悠々と浮かぶ輸送船があった。

兵士たちの頭上に1隻、大きな鉄橋を介して対岸の上空に1隻。

2隻同時に下部ハッチが開く。

内部の転送装置は禍々しく光っていた。

転送装置から蜘蛛型巨大生物が姿を現す。

 

隼人は頭上から降ってくる蜘蛛型巨大生物を処理し、対岸から迫る個体にはライサンダースナイパーライフルで敵の射程外から攻撃した。

 

投下された個体を殲滅した頃、無線に動きが起こる。

 

スカウト1-4《こちらスカウト1-4。フォーリナーの輸送船団を発見!》

スカウト1-4《低空を飛行している。このままでは下から攻撃できない!...輸送船の進路を確認、谷間の上空を通過するはずだ!》

 

隼人「墜ちろ!」

転送装置に向けてスティングレイランチャーを撃ち込み、1隻が空中で大爆発を起こした。

2隻目の輸送船は健在。蜘蛛型巨大生物を投下する。

だがハッチが投下を止め閉じようとする瞬間、僅かな隙間を抜けてライサンダースナイパーライフルの弾丸が転送装置に穴を空けた。

煙がもうもうとし始めた輸送船は最後の抵抗とばかりに蜘蛛型巨大生物をさらに追加する。だが地に降り立った個体はまもなく梶原隊の小銃掃射に為す術もなく息絶えていくのだった。

 

【市街地】

 

本原「こちら救出チーム、市街地に入った」

臨時司令所《ドローンカメラに捉えた。作戦を開始せよ》

本原「了解」

本原たちはAF-14を構え直し、進軍を開始する。だが通信を終了したばかりの臨時司令所から再度通信が入ってきた。

臨時司令所《両チーム、進軍を中止されたし。...進路上に蜘蛛型巨大生物多数。進路を変更せよ》

民家の影に隠れ様子を伺うと、進路上にあった交差点を蜘蛛型巨大生物数体が横断した。その内の一体が本原たちの隠れる民家を横切り、本原は平静を保とうと口を手で覆った。

それから蜘蛛型巨大生物の横断を見送り、進軍を再開する。だが当初の進路が塞がれてしまったため、家々の合間をぬってポイントAへ向かう旨を地図を小さく広げて隊員に伝えた。

 

慎重に壁を背にしながら進み、市街地の中心部にある『JATY』という中規模ショッピングセンター、本作戦でのポイントAにたどり着く。更に周囲に気を配りながら正面入口に進むと、自動ドアが作動した。

 

本原「こちら救出チーム、市民を確認した」

中へ進み、1階の食品販売のテナントに近づくと、市民が顔を出した。レジカウンターの店員のようだ。

店員「ああ、良かった!助けに来てくれたんですね!」

と言いながら近づいてくる。それを見た隊員の一人が迷惑そうな顔をしながら外に目を向けた。蜘蛛型巨大生物は反応してないようだった。

 

店員の声が聞こえたらしく、続々と様々なテナントから避難していた市民が近づいてくる。

数十名の塊ができ、それぞれから安心したような声がでてくる。

隊員「ちょ...皆さん静かに」

と言いかけた隊員を止め、本原は状況を探る。

本原「他に避難してきた者は?」

店員「これで全員です」

本原「ふぅむ...これだけの人数で移動するとなると...いや、やはり我々からも人員を割くか」

中島「本原、当初の予定どおり、ここの市民の誘導は我々5-2任せてくれ。大丈夫さ」

本原「そうだな。よし、我々は先を急ぐぞ」

隊員「了解」

隊員「了解です」

隊員「はい」

本原《こちらチームA、ポイントBに向かいます!》

臨時司令所《了解した》

 

少しの情報交換を終え、5-1の面々はポイントBへ向かうために自動ドアをくぐろうとした。

その時である。

本原「なっ!」

咄嗟に口を手で抑えた。

自動ドアが本原達を検知する距離に入る前に見ることとなった目の前の光景に足を止め、本原は途端に動悸が激しくなる。

正面入口の前に広がる大きな交差点に、蜘蛛型巨大生物が移動してきたのだ。

蜘蛛型巨大生物は本原たちに背を向けている。

本原「正面からはだめだ...裏口から出よう」

隊員「ですが、この建物の一般の出入り口はここだけです」

本原「そうか...ん?」

本原「そういえば、市民の中にここのスタッフは何人くらいだった?」

隊員「制服を見た限り6名ほどでしたね」

本原「その中に非常階段への扉の鍵を持ってる人が居るかもしれない。戻ってみよう」

蜘蛛型巨大生物の視界に入らない内にと後ずさり、5-2と市民の下へ戻る。状況を説明すると、管理者と名乗る男性が裏口の鍵を渡してくれた。

中島「裏口からか...なおさら一度にこの人数をってわけにもいかんな」

本原「先程確認したところ、よほどの事態が起こらぬ限り自衛隊の便は待ち続けるそうだ」

男性「ありましたー。どうぞ」

本原「有難うございます」

男性「非常階段への扉は2階のスイングドアの向こうにあります。とりあえずそこまでご案内します」

隊員「懐かしいなぁ...昔落し物を受け取りにいった時以来だ」

2階のスイングドアを開き、裏口の扉に差し掛かるとドアノブに鍵を差し込む。扉に窓はついておらず、目の前で出くわす可能性もあるためAF-14を二名の隊員に構えさせスタンバイさせる。

そして、静かな空間に「カチャリ」と音が響いた。同行していた管理者の男性の手のひらに鍵を乗せると礼を述べ、本原はドアノブに手をかけた。

本原「準備はいいな?いくぞ...」

下唇を弱く噛みながら、静かに開けると、曇り空が本原たちを迎えた。幸い蜘蛛型巨大生物の姿はなかった。

ほっと安堵のため息をつくと外へと歩みを進める。階段を降り部下達に振り向くと、次の目標への確認を行った。

本原「よし、レーダーには進路上に蜘蛛型巨大生物の姿はない。今の内に行くぞ」

隊員「「はい」」

隊員達からの小さい返事に頷き返すと、深呼吸を行いトリガーに指をかけ直した。

 

数分後、順調に建物の壁へ壁へと渡った本原達はポイントBである上津川マンションにたどり着いた。上津川マンションは中規模のマンションが4棟、四角形に連なるマンション。本原達は手分けしてまだ部屋に残っている市民の元へ向かうことに方針を決め、2人ずつのペアを編成した。本原は第3号棟へ向かうことになり、最上階の部屋から順にインターホンを押していく。それから3階に下るまでの住民の反応は救出部隊に感謝を述べる者、事件発生当時は横になっていて本原の説明によって状況を把握する者など様々だった。本原は時間を指定し、脱出の準備を見届けることなく次の部屋へと急ぐ。

 

3階の301号室。本原は3階で最後の部屋に着いた。インターホンを押すと、若い夫婦と幼児が出迎えてくれた。玄関へ上がり状況を説明する。その時だった。

 

 

パンッ!...キシャァァァァ!

 

突如銃声と甲高い悲鳴が響いた。

突然の出来事と曇天をつんざく音に女性が耳を塞いでしゃがみ込む。

本原「何があった!」

その後すぐに階段を駆け上がる音が聞こえ、外を確認する。

すると4階に上がる階段に足をかけていた部下が振り返り、必死の形相で聞いてきた。彼も状況が掴めてないようだった。

隊員「隊長!何が起こったんですか!?」

本原「分からん!」

本原《こちら本原。皆無事か!》

隊員《はい!》

隊員《こちらも無事です!》

隊員《無事です!》

隊員《無事です!今の銃声はどこから!》

本原《遠くからだ...中島達が接敵したのだろう》

 

中島《こちら中島!すまない、敵に見つかった!気が動転し……押さないでくれ! お前ら、ここを通すんじゃ―》

中島《こちらチームB!現在市民を守りながら回収地点まで後退中!》

 

臨時司令所《こちら臨時司令所。作戦をプランBに変更、蜘蛛型巨大生物を掃討する。現地の部隊は現状の戦力で応戦せよ。市民を守れ!》

中島《了解!》

本原《了解!》

臨時司令所《増援の到着まで、敵を足止めせよ》

隊員(自)《こちら輸送班。救出チームの到着まで待つ!》

本原《我々はそちらに迎えない位置にいる!幸い身を隠すための建物は確保した。チームBが到着したら連れてきた市民を乗せてすぐに離脱するんだ!》

隊員(自)《分かった。死ぬなよ!》

 

本原《こちら本原、各員部屋の中に匿ってもらえ。我々は増援の到着を待つ》

隊員「了解!」

隊員《了解》

隊員《了解》

隊員《了解》

隊員《了解!》

 

 

【数分後、回収地点】

 

隊員(自)「乗せろ、急げ!」

中島「やつらに攻撃の隙を与えるな!撃ち続けろ!」

隊員「おら!怪物どもこっちだ!」

とハンヴィーの銃座に乗った隊員が制圧射撃を行い自らにヘイトを向けさせようとする。

隊員「発進してくれ!引き連れられるだけ引き連れていく!」

隊員「分かったよ!」

運転席の隊員も自暴自棄になりアクセルを力強く踏み込んだ。

走り去る捕食対象を追いかけるため、蜘蛛型巨大生物は中島たちに背を向ける。

隊員(自)「収容完了!離脱する!」

中島「よし!これからは攻守交替、我々のターンだ!」

隊員《うわああああああああ》

その悲鳴は、ハンヴィーに乗った隊員のものだった。

中島《なにがあった!》

隊員《蜘蛛型巨大生物の糸がタイヤに絡んで横転!私は飛ばされる前に脱出したものの、運転席のあいつの安否は不明!ああ!ハンヴィーから煙がぁ!この野郎!》

隊員《助けてください!糸が武装を溶かして...あああああああああ!》

中島《応答しろ!おい!...クソッ》

部下の断末魔の後、爆炎と轟音が辺りに響き渡った。

勇敢にも蜘蛛型巨大生物の脅威から市民を守った隊員たちは爆発に焼かれ、奴らに捕食され、この世を去っただろう。

 

数分後、中島隊後方のトンネルから走行音が徐々に聞こえ出す。暗い空間からヘッドライトの明かりが明瞭になり、急ブレーキが踏まれた。

トラックから増援部隊が続々と降りていく。

レンジャー 5-3隊長《作戦エリアに到着。戦闘を開始します!》

フェンサー1-1隊長《こちらフェンサー。我々も到着した》

地面に降り立つと同時にレンジャーは射撃を開始し、フェンサーはパワーフレームが携帯を可能にしたブラストホールスピアと呼ばれる射出型の槍とシールドを構えて蜘蛛型巨大生物の懐に入っていく。

?《こちらストーム5。戦闘に参加する》

中島は肉声のした方向を向く。灰色の装甲は光沢を得ており周囲の景色が映り込んでいた。

 

そこには、フェンサー1の隊員ではない1人のフェンサーが構えていた。

 

中島「ストームチーム!」

臨時司令所《ストームチームが到着した。彼に続け!》

本原《よし!こちら救出チームA、脱出の準備を進める!》

ストーム5と名乗ったフェンサーは蜘蛛型巨大生物の群に突撃を敢行した。

 

【山岳地帯 隼人、梶原隊】

 

田中司令《敵輸送船は谷間の上空を通過する。谷間に潜み、輸送船を待ち構えろ。上空を通過する時がチャンスだ。下からの攻撃で、輸送船を破壊するんだ!》

 

隼人《了解!》

梶原《了解!》

 

橋の上で休息をとっていた隼人達は姿を現しゆっくりとこちらに向かって進む輸送船を見ていた。

梶原「ストームチーム、輸送船は任せた。代わりに身の安全は保証しよう」

と言って梶原は弾倉を装填する。

隼人「分かった。任せておけ!」

隼人「そこの坂から谷底に降りられそうだ」

梶原「よし、ストームチームに続け!」

 

数分後、谷底の川に足を浸らせながらも先手をとった隼人達は迅速な処理に追われていた。

下部ハッチが開ききる前に転送装置を疲弊させ、スティングレイランチャーによって完全に破壊する。

 

だが1隻を相手取る間にもう1隻が蜘蛛型巨大生物を投下。

攻撃を加える前にハッチを閉じられてしまう。

しかし隼人達はそれに臆することなく隼人を囲むように梶原達が展開、蜘蛛型巨大生物の攻撃を許さない。

隼人は蜘蛛型巨大生物には手を加えず、照準は輸送船へと向いていた。

 

再度ハッチが開くと同時に隼人は人差し指に力を込め、トリガーを引く。次の瞬間、輸送船は爆散した。

爆風が向かい風となって隼人達に襲いかかる。巻き上げられた川の水に呑み込まれ、攻撃の手が止んでしまうが腰のホルスターに手をかけていた梶原はすぐにハンドガンを抜く。1マガジン丸ごとを正面から受け最後の蜘蛛型巨大生物が絶命した。

 

田中司令《作戦成功だ。よくやった》

沢見戦術士官《司令、ポスト1司令部から報告です》

田中司令《例の件か》

沢見戦術士官《はい。ヘクトルの進路上に機甲部隊が展開。まもなく迎撃作戦が始まります》

田中司令《30機以上のベガルタM2が出ているはずだ。凄まじい戦いになるぞ!》

鷺本オペレーター《ストームチーム、任務お疲れ様でした。...!》

鷺本オペレーター《司令、空軍も既に発進態勢を整えたとのことです。空爆も始まります!》

 

 

【海岸近くの平原】

 

桐島司令《ポスト1司令部よりζリーダー。配備状況を報告せよ》

ζ1《こちらゼータリーダー。ζ(ゼータ)η(エータ)共に戦闘態勢が整いました。あとはθ(シータ)隊を待つのみです》

桐島司令《了解した。...!》

桐島司令《ポスト1よりベガルタ隊。海岸で停止していたヘクトルの編隊が侵攻を開始した。到達予想時刻はー...》



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18話 巨砲『上津川救出共同作戦 後編』

書き始めると色々凝っちゃって結局1ヶ月...


【上津川市】

 

夕方近く、EDFは蜘蛛型巨大生物の掃討に移行し、銃声も少なくなっていた。

本原がレーダーを確認していると、赤い点が次々に消失しているのが分かった。そして、最後の赤い点がレーダー上から消えた。

本原「よし、行くぞ」

本原の後方に控える平服の人々がそれに応える。

部下に順次レーダーを確認させて、部隊の元に向かっていた。

 

その時だった。

 

突如アスファルトが盛り上がり、土が露わになる。底の見えない大きな穴が空いたのだった。

さらにそこから甲高い咆哮が上がる。

本原隊が目の前の穴にAF-14を構えると、それ以降しんと静まり返っていた穴から()()()()()()()が現れ1人の隊員のAF-14に噛み付く。とてつもない力で引かれ、隊員は転倒。AF-14は穴の中に攫われて行った。

 

本原は動悸の荒い隊員に手を貸し立たせると、M92Fを装備するように言う。

それから本原達が穴に背を向けると1人の隊員が微小の振動を感じ取り、その旨を本原に伝えた。

が、他の隊員に軽くあしらわれ再び歩み出す。

 

だが次の瞬間、その隊員の危機感が優れたものだったと証明されることになる。

 

突然の地響きに市民はパニックに陥った。本原達は姿の見えないその要因に銃口を向けていた。何かが移動する感触を足に感じながら本原は部下達に合図し、再度穴に照準を定める。

本原「くそ...なんなんだ......」

隊員「早く出て来やがれ!」

隊員「馬鹿!あまり刺激するな」

隊員「隊長!」

本原「皆落ち着け!待つんだ。背中を向けた時こそ終わるぞ!」

隊員「変な汗かいてきたぜ……早く正体をあらわしやがれ……」

隊員「!?来ます!」

隊員「赤色型巨大生物だぁ!」

地響きの僅かな変化に感ずいた隊員は穴から迫る影を察知していた。

そしてすぐにそれは起こった。

穴から巨大生物が出現した。だがその個体は今まで戦ってきたものとは別の存在だった。巨大な蟻に酷似した身体、違いはそこではない。その甲殻は赤色だったのだ。原色の赤に限りなく近い色に包まれた巨大蟻は地上に全身を出すと咆哮を上げる。それを見逃さない本原達は集中砲火を浴びせた。だが、

隊員「隊長!固すぎます!」

隊員「あいつ、タフすぎるぞ!」

明らかに銃弾が甲殻を抉っているように見えるのだが、一向に赤色型巨大生物の絶命は訪れない。

隊員「笑ってやがる!」

巨大な蟻の表情なんて分かるわけが無いのだが、当の巨大蟻は今まで戦っていた個体よりも発達した赤色の牙をぱくぱくさせ反撃なく何かを探ってるようであった。隊員にはそれが嘲笑われているように感じたらしい。

隊員「くそっ!なめんな!」

痺れを切らした隊員が1歩前へでる。だが赤色型巨大生物もそれを見逃していなかった。赤色型巨大生物は構え、隊員へ突進した。本原はその隊員の恐怖に歪んだ顔と短い悲鳴を目撃し、赤色型巨大生物を睨む。

隊員「うわああああ!たっ助けて!」

赤色型巨大生物の強靭な顎と牙にアーマーはひしゃげ、隊員の脇腹に食い込もうとしていた。それを両牙を押さえてもがく。だが隊員の必死の抵抗虚しくどんどん入っていき、ついには口から血が垂れてきていた。どんどん抵抗する力が弱まっていく。

 

その隊員は天に見放されていなかったのであろう。抵抗をやめて牙を受け入れた瞬間、赤色型巨大生物は甲高い悲鳴を上げて丸まり、その衝撃で投げ出されていった。さらにその先が生け垣だったためダメージも少なく地面に足をつけた。だが先程のが余程ダメージを与えていたのか、地面でのたうち回る。

それを衛生兵である隊員がいてもたってもいられないとばかりにそばに寄っていった。

本原「市民の方々はJATYスーパーに避難していてください」

隊員「隊長...やはり変です。赤色型の存在は今まで確認されていませんでした」

赤色型巨大生物は前大戦でも確認され、酸を飛ばすなどの攻撃手段は持っていないが、通常種以上に強靭な肉体、甲殻に覆われ当時は酸攻撃以外を脅威としていなかったEDFは無視出来ない被害を被った。第二次戦役が開始されて以降その姿は確認されていなかったが、今倒したのは紛れもない赤色型巨大生物だ。それに、前大戦を生き抜いた本原には今回現れた赤色個体がより強固になっていると感じられた。

隊員「こんな大穴を掘って来たということは、まさか...」

隊員「おいおい待てよ!この先に巣があるってのか!?この前潰した巣穴以外にも!」

隊員「落ち着け!フォーリナーが投下した個体がたまたま穴を掘り進めてたってだけかもしれん」

隊員「だが、フォーリナーの行動は順次本部へ報告が入っている。赤色型が投下された記録はないはずだぞ!」

本原「ふむ...とにかく最悪の事態を考えなければならんようだ...」

本原「とにかく司令所に報告だ」

隊員「了解!」

本原(まさか、前回潰した巣穴が新たな個体の住処になってるなんてことは...いや、そうとしか思えない。実際巣穴はこのすぐ近くだ。あの穴も辿って行けば巣穴に辿り着くんじゃないのか?)

本原「まあいい...とりあえず任務をこなすぞ」

隊員達「「Yes sir!!」」

 

【港湾エリア】

 

ロッティー6《こちらロッティー6、配置についた》

ロッティー1《了解した》

 

ロッティー1《総員戦闘を開始せよ!》

ロッティー2《ロッティー2、了解!》

ロッティー3《ロッティー3、了解!》

 

沢見戦術士官《全エリア、戦闘が開始されました。》

田中司令《よし、こちら作戦指令本部。現在、日本全土でヘクトルとの戦闘が行われている。内地では大軍が侵攻中。これを迎撃するために各司令部が動いている状況だ。我々の作戦目標は新たに本土に上陸しようとするヘクトルを破壊することにある。各エリアの部隊は戦闘を開始せよ》

《アルファ、了解!》

《ブラボー、了解!》

《チャーリー、了解!》

《デルタ了解》

ロッティー1《エコー、了解!》

 

ロッティー1《聞いたな!射程に入り次第戦闘を開始せよ》

全開無線から指揮車であるロッティー1の声が響く。指揮下のロッティー中隊の面々はそれに応えるように砲塔を海原へ向ける。

そこには二足歩行戦闘ロボット『ヘクトル』が隊列を形成し、大きく波を立たせながらこちらへ向かってきていた。

 

田中司令《敵の侵攻を阻止せよ!》

ブラボー《こちらブラボー!敵はアウトレンジから攻撃してきます!》

チャーリー《敵は迫撃砲を持っているぞぉ!》

田中司令《敵は砲撃型だ。プラズマ砲に注意するんだ!》

田中司令《上陸を許すわけにはいかない。各員、持ち場を死守しろ!》

 

開始の合図も見せずロッティー各隊のギガンテス戦車が火を噴くと一体のヘクトルへ向けて砲弾が集中。

たちまち周囲が爆炎に包まれヘクトルも海の藻屑となる。

それをロッティー中隊のさらに後方で眺めている部隊があった。スティングレイランチャーを装備したレンジャー2小隊とストームチームだ。

早紀「私たちも行きましょう!」

八木「了解!」

レンジャー2-1隊長「総員、攻撃開始!」

レンジャー2-1隊員「了解!」

 

早紀「ところで、あの試作品。早速使って欲しいのだけど」

八木「ん?ああ、これですね」

八木は担いでいた武器を構え、早紀の飛行ユニットの窪みに近づける。その窪みに銃口を押し付けトリガーを引くと、銃口からカプセルが射出。カチリとはまった音が小さく聞こえた。八木はその射出機を飛行ユニットから離し射出したカプセルを銃口から切り離すとその瞬間カプセルの中身が青色に輝きだす。

八木「プラズマバッテリーガン。これがあればウイングダイバーの行動範囲が広がる……」

八木「サイオニックリンクに直結させた武器なんかはエネルギー供給がこれによって賄われて、使用者への負担を減らせ、その上火力向上が期待できるものです」

早紀「いいからいくわよ?」

早紀「発射!」

早紀は攻撃をしようと手の銃口を向けてきていたヘクトル目掛けてMONSTERレーザースナイパーライフルを撃つ。紫色の光の槍がヘクトルの胴体を貫き、ロボットの残骸は力なく水中に消えていった。

その後である。

早紀が本題であるMONSTERスナイパーライフルのチャージゲージを見ると、通常の数倍も早くゲージが溜まっていくのを確認した。

だがゲージが満タンになるよりも先にバッテリーカプセルの中身が消失。ただのカプセルとなった。

早紀「試作品は成功と伝えて。あ、でも実用化はまだ厳しいんじゃないかしらともお願い」

八木「了解です」

八木《こちらストームチーム。応答せよ》

研究員《こちら化学管理研究ラボ》

八木《試作品のトライアル使用を完了。結論から言うと成功した。だがまだ実用レベルではないとのことだ》

研究員《分かりました。ではすぐにステーション1に帰還を》

八木《!?》

研究員《どうされました!》

八木《悪い、このまま戦闘に参加する。無事の帰還を祈っててくれ》

研究員《りょ...りょうかい》

 

八木「危なかったですね……」

早紀「よそ見なんてするからよ」

八木の元いた場所はコンクリートが抉れていた。

隊員「敵は砲撃型のようです!」

ロッティー2《敵装備を視認した。巨大な包のような腕。敵は腕に迫撃砲を装備している》

第1波のヘクトル群の後方では、海面に薄らと同様の影が落ちていた。

ロッティー1《各隊、敵砲撃に注意されたし》

ロッティー3《ああ、あんな攻撃を受けたら一溜りもねえな》

ロッティー4《上層部を憎むんだな!》

ロッティー1《泣き言はあとだ!帰還したら最新式ギガンテスの配備を申請してやる!》

ロッティー中隊に配備されているギガンテス戦車は旧世代。つまり新型のギガンテス戦車は配備されること無く、彼らは旧式のギガンテス戦車を乗り回していた。そのため装甲は新型に比べて脆い。2026年に新型ギガンテス戦車が何両か配備される予定だったが、それよりも先にフォーリナーが再臨してしまったのである。

ロッティー5《被弾した! くそ、離脱する!》

ロッティー6《うわあああああああ》

ヘクトルからの砲撃が直撃した2両は爆散。ロッティー5の搭乗員は間一髪脱出したが、ロッティー6は戦車と共に心中してしまった。

ロッティー1 《ロッティー6!》

ロッティー1が拳を打ち付ける音が無線で聞こえる。

ロッティー1《ロッティー5、大丈夫か?》

ロッティー5《ああ...以降は歩兵として戦闘に参加する》

 

その後戦車隊が大破3、中破1という被害を被るも、ヘクトルは残り2機に減らされていた。

デルタ《こちらスカウトデルタ。敵の砲撃により戦車隊は全滅!さらに後方から蜘蛛型巨大生物が多数!》

田中司令《第2防衛ラインから援軍を向かわせた。すぐに到着する!》

デルタ《了解! うわあぁぁぁ! 急いで下さい!》

フェンサー隊隊長《こちらフェンサー! デルタ地点に到着。デルタチームを援護する!》

田中司令《了解した》

 

沢見戦術士官《司令...桐島司令から報告が上がっています》

田中司令《どうした...?》

沢見はどこか悲しい様子だった。その訳を聞く意味も込めて田中司令官が訊ねると、驚くべき情報が沢見の口から話された。

沢見戦術士官《ヘクトルと交戦していた機甲部隊が敗北。ベガルタM2は全滅です》

田中司令《馬鹿な......!》

沢見戦術士官《敵が投入した新型歩行マシンが原因のようです。現在、総司令部がデータを分析しています》

田中司令《新型歩行マシンだと!? ...とにかく今はこの戦いを片付ける!総員ヘクトルの侵攻に備えよ!》

沢見戦術士官《通常型のヘクトル及び砲撃戦用ヘクトルが接近しています》

 

ロッティー1《総員戦闘用意!一体ずつ火力を集中させるぞ!》

ロッティー2《了解!》

レンジャー2-1隊長「了解!」

早紀「了解」

 

その言葉どおり一体ずつに集中し、確実に戦力を削ぎつつEDF側(エコー地点)は優勢に転じていた。

早紀「発射!」

八木「パワーポスト、展開!」

 

数分後...

 

フェンサー《こちらフェンサー!蜘蛛型巨大生物を殲滅した。デルタ生存者をキャリバン装甲救護車両に収容後、撃ち漏らしたヘクトルの殲滅に移る》

エコースカウト《こちらエコースカウト。上陸したヘクトル群がエコー後方から接近中!》

フェンサー《すまん。エコーに侵入したヘクトルの処理は任せたぞ!》

八木《何!?》

 

早紀「はぁ...やるわよ」

八木「了解」

レンジャー2-1隊長「ストームチーム、レンジャー2-2を連れていけ!」

村瀬「我々レンジャー2-2が護衛します」

八木はヘルメットのバイザーに手を掛け小さく礼を返した。

早紀「敵ロボット2機!こっちに向かってくる」

八木は双眼鏡を介して敵を確認した。砲撃型ヘクトルが2機、こちらに向かってきていた。

敵も気づいたらしく、手を空高く上げる。両者が臨戦態勢に入った。

早紀「発射!」

何かが弾けたような音と共に光の槍がヘクトルの腕を貫く。ヘクトルはアウトレンジ攻撃の方法を失うも核のエネルギーは尽きておらず、敵目標に向かって尚も迫ろうとしていた。

もう片方のヘクトルは高々と上げた腕から眩い光を発する。

発射された光弾はゆっくりと山を描いて落ち、着弾地点の周囲を破壊した。破壊されたガードレールや着弾時風圧で吹き飛んだコンテナが村瀬達の頭上へと降り注ぐ。

村瀬「避けろ!」

隊員「俺たちを狙ったのではなくこれを狙ってやがったのか! 流石ロボットだな! 計算通りってわけか!?」

隊員「ひいぃぃ!」

村瀬「もし受けてたら即死だっ......」

村瀬達は寸でのところで避けるが、先程まで自分達がいた場所の惨状に絶句する。

八木「次、くるぞ!」

八木の言葉どおり、ヘクトルは次弾発射の態勢に入っていた。

村瀬「もう遅い!軌道を逸らせる!」

隊員「了解!」

隊員「了解!」

村瀬以下3名はスティングレイランチャーの照準をヘクトルの腕に合わせ、射撃した。

発射された3発のロケット弾の内2発が腕に命中。命中した腕は爆風に翻弄され、光弾は明後日の方向に飛んでいった。

早紀「チャージ完了!発射する!」

再度放たれた光の槍はヘクトルの胴体部分の真ん中を貫いた。

早紀「敵1撃破!」

村瀬「俺たちもやるぞ!胴体を狙え!」

隊員「Yes sir!」

村瀬達がスティングレイランチャーを構え直し、ロケット弾を発射する。その瞬間、ロケット弾は胴体部分を抉り内部の機械をも完膚無きまでにズタズタにした。

 

ストームチームとレンジャー2-2がヘクトルを片付けた頃、港線戦も終わりを告げた。

 

田中司令《作戦は成功した。皆よくやった!》

 

 

【作戦指令本部】

田中司令「作戦は成功した。皆よくやった!」

田中司令「さて......次の課題だ。新しい情報はないか?」

沢見戦術士官「いえ...!? 新型歩行マシンの情報が入りました。どうやら防御スクリーンを展開できるようです。武装は確認できません。防御スクリーンを運搬する輸送用マシンと思われます」

田中司令「輸送マシンにこれだけの被害を受けたのか!?」

鷺本オペレーター「ベガルタM2の攻撃、そして空爆すらも防がれました。ヘクトルは防御スクリーンで守られ、戦いは一方的なものとなりました!」

田中司令「ほかの兵器を守るために運用されるマシンか。厄介な相手だ。以後、この敵をシールドベアラーと呼称する!」

沢見戦術士官「!...偵察中のスカウト6から報告。敵の一部が現在作戦行動中の上津川町に向かっています」

田中司令「何!?」

沢見戦術士官「どうされますか?」

田中司令「情報本部に作戦立案を要請。本作戦は作戦指令本部の管轄とし、現地の司令所及び部隊に連絡を!」

オハラ「意見を...述べてもいいだろうか」

田中司令「オハラ博士! なにか打開案があるのか?」

オハラ「シールドベアラーはあらゆる攻撃を遮断した。そうだな?」

オペレーター「は、はい!先程述べた通り、あらゆる攻撃を遮断しました。」

オハラ「だがこれを見てくれ。」

そう言ってオハラが指さしたのは、現在シールドベアラーを追っているドローンカメラだった。

その映像には、市街地を縦横無尽に歩き回る四足の小型シールド展開機、『シールドベアラー』の姿が映されていた。

田中司令「この映像がどうかしたのか?」

オハラ「よく見たまえ。様々な武器を遮断した防御スクリーン。しかしながら遮断されずに通過しているものがあるだろう?」

沢見戦術士官「は! 家屋は防御スクリーンの影響を受けていません。つまり...」

オハラ「流石の観察眼だ...そう。つまりは高い運動量と質量をもった兵器は遮断され、家屋などの運動量を持たないものは無害なものとして通過させる。先程戦いの記録を見させてもらったが、待機していたベガルタM2は通過していた。さらに死体までも」

沢見戦術士官「ということは運動量を持たない物体、そして質量の小さな物体が低速で通過することは可能... もしくは脅威と感知されなければ、生身の人間なら防御スクリーンを越えられる......」

オハラ「ああ、確証は無いが、可能である可能性は高い」

田中司令「まさかそれを試してみろとでも...」

オハラ「その通りだ。それに、このための訓練を受けている者達なのだろう?」

田中司令「だが危険すぎる」

オハラ「それしか方法はない。人類が勝つ方法はな」

田中司令「......そうだな」

 

 

【上津川町】

 

アンヴュランス1《こちらアンヴュランス、現地に到着した。負傷者を収容する》

本原「よし、我々も帰還の用意だ」

隊員「了解!」

間宮「お前ら! 帰って一杯やるぞ!」

隊員(F)「おぉ!いいですね」

帰路につこうとする第3中隊の面々は談笑しながら準備を進めていた。

その時である。

沢見戦術士官《こちら作戦指令本部、第3中隊応答してください》

突然作戦指令本部からの通信が入ったのだ。

本原《こちら第3中隊、どうぞ》

沢見戦術士官《作戦指令本部より通達です》

隊員「なんだ...?」

田中司令《現在敵がそちらに向かっている。その敵を撃破するために、情報本部は作戦を立案した。その名は『防御スクリーン突破作戦』 作戦の詳細は追って通達する。以上だ》

本原《了解しました》

続けての出動に本原の周りではため息を漏らす者がいたが、本原は淡々と事を進める。

本原「各員補給を済ませ、戦闘態勢を整えておけ」

間宮「おい!あれを見ろ!」

間宮の指さす先にはドーム状の光があった。思わず綺麗だと漏らしてしまうような光のドームは先程まで自分達がいた市街地を進んでいる。

隊員(F)「見てください、空軍です!」

さらにその上空には空軍の爆撃機が颯爽と現れる。光のドームの真上に踊りでると爆弾を投下した。だが不可解なのはこのあとだった。

 

真っ直ぐ落ちていった爆弾が光のドームに衝突し周囲に甚大な被害を与える。

爆風と煙が去った頃、驚くべき光景が本原達の目の前に展開されていた。

光のドームは傷一つついていなかったのだ。

本原「防...がれ...た......?」

本原は小さな声でそう呟いた。

間宮「我々の出番だ!」

隊員達「「うおおおおおおーっ!」」

本原の隣で間宮隊が雄叫びを上げる。

本原「勝算はあるのか?」

間宮「我々はこの為の訓練を積んできた。今この時が、その真価が発揮される時だ!」

隊員(F)「奴らに目に物見せてやる!」

 



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閑話 危惧

【ステーション1 化学管理研究ラボ】

 

八木、早紀はステーション1敷地内の研究棟、化学管理研究ラボに先の戦いでトライアル使用したプラズマバッテリーガンの報告に訪れていた。

研究員「お疲れ様でした。実践データは十分です」

八木「そうですか、なら良かった」

研究員「我々は日々総力をかけて武器やこういったサポート兵器の開発に勤しんでおります。すぐに実用化されることでしょう!」

早紀「そう。楽しみにしてるわ」

そう言うと早紀はラボの出入り口に立つ。

だが自動ドアは早紀が目の前に立つより先に開いた。そこにはエアレイダーの兵装に身を包んだ男性がいた。いや、正確には()()()()()()()が。

?「お退きなさいよ。アタシ女には興味ないの」

早紀「なっ...」

唐突すぎる発言に早紀は顔を引き攣らせながらそれに従う。

男性は厚顔無恥にラボに足を踏み入れたかと思うと研究員を上からのぞき込む態勢で口を開いた。

?「...」

研究員「...」

?「ねえあなた、トライアル使用したあれ、すっっっごく良かったわよ!」

研究員「へ?」

八木「!?」

天翔「アタシの包容力の代名詞になりうる装置ね!」

研究員「な..入ってくるなりなんですか天翔さん!」

引き攣った顔の早紀と驚きを隠せない八木の目の前で一方的な会話が始まる。とんでもない威圧感に研究員もタジタジだ。

天翔「あれよあれ!」

天翔がガラスの向こうを指さす。その先では八木の使用するパワーポストのホワイトカラー、『ライフベンダー試作型』がキャリーカートでラボに運ばれていた。

パワーポストと同じ機構で使用者及び周囲へ与える恩恵は医療用ナノマシンによる治癒。戦場で簡単にポータブルメディカルルームを展開出来るサポート装置だ。

研究員「そ...それは良かったです」

天翔「でもねぇ...あの白いこけしちゃん、まだ試作段階だからか効果時間が短いわ、傷口が完治しないわでねー?これじゃあ戦場で戦う坊や達が可哀想なのよ~」

研究員「あの、天翔さんも会議に出席したでしょう?ライフベンダーですって、あれの正式名は」

天翔「あのお偉いさん方(分からず屋達)はいったいなんなの!?アタシが命名したっていいじゃないのよッ!!」

さらに天翔の攻勢は続く。

天翔「とにかく、一刻も早く戦場に常備していける型の完成を!...そうだ!アタシを開発に参加させなさい!実はアタシ医学の知識があるの。飲食店経営してた頃のイケメン医師ちゃんとのパイプがあってね、アタシも興味があったからナノ医学の講義に参加したことがあるのよ~」

研究員「分かりました、早く実用化できるよう努めますので!......その試験管戻してください」

話を流し、そろそろ終わらせようと背を向けようとした研究員の横で、天翔が試験管を目の高さまで持ち上げる。

天翔「つれないわねぇ...!?」

天翔と八木の目が合った。

八木「あっ......」

八木は退路を絶たれたことを悟り、肩をすくめる。

天翔「八木ちゃんじゃない!久しぶりね!」

八木は横目で早紀に助けを求めるも溜め息をつかれて受け入れの態勢に入った。

 

八木「お久しぶりです、天翔監督官」

再度横を盗み見る。案の定早紀は目を見開き難しい面持ちだった。

天翔「どお?実戦は」

八木「お陰様で。監督官がご教授してくださった知識と鍛錬の賜物です」

天翔「もう!八木ちゃんったら、そんなに固くなくていいのにー!」

八木「へへへ...いだっ!痛いですって天翔監督官」

天翔は照れを隠しきれない口調で八木の背中をビシバシと叩く。

強さは男性のそれだ。

天翔「あらごめんなさい、教え子の活躍を聞くと興奮しちゃって。アタシってばやーねぇ」

天翔「じゃ、アタシはこれで失礼するわねー」

八木「はい。お疲れ様です」

天翔はその場を後にした。

 

早紀「で、八木くん、彼は?」

八木「はい……私の訓練兵時代の監督官です。性格はあれですが、実力と監督官としての器は1級品なのですよ」

八木にとって天翔は自分をここまで訓練してくれた恩師であるが、

訓練兵時代これでもかと振り回され、配属が決まった後は会うのを躊躇っていた。

早紀「世も末ね...」

八木「じゃ、また」

研究員「はいー」

そして八木達もラボを去る。

 

 

葉山達レンジャー1-2はステーション1敷地内にあるドーム型の射撃訓練場に居た。防火シャッターが締まり闇に包まれた中での新型武器の試射である。里見が真剣な面持ちでスコープの覗く横では結城が訓練弾の入った弾倉を下から押し込んだ。

装填を施したその武器の名は『AF-17』である。EDF武器開発部が先日開発し、既に第一師団への配備の受理が成されている。Infra-Red/Night Vision scop通称『IRNV』が装着されたこの銃は、地底戦闘時の誤射防止、そして深闇での敵の索敵(熱源探知)に優れたものとして正式配備することとなった。

 

結城は外界への意識の一切を遮断し、スコープ越しに熱を持った的の中点を見つめる。そしてスコープの中心と中点が重なったタイミングで引き金を引いた。反動を受けながらも釘を打ち付けたように固定した身体を崩すことなく続けて射撃した。

 

3発分の乾いた銃声が聞こえた後、結城は後方の明かりに向かって合図する。後方はオペレーター室になっており、射撃訓練場とはガラス1枚で繋がっている。そこには研究員とレンジャー1-2の結城、里見以外の面々が控えていた。

研究員「精度良好。その他ステータスもAF-14を上回った数値です」

葉山「お疲れさん、戻ってきてくれ」

結城、里見「了解」

 

 

大黒「これが、今度の地底調査任務で我々に先行配備されるんですね」

新庄「そのようだ」

高城「その為にも、早く慣れとかないと!」

高城は重そうにテーブルに置かれたAF-17を持ち上げる。

里見「しかし、前回潰した穴に移り住んでやがるとは...」

里見は盛大に溜息をつき、どっと疲れた様子でパイプ椅子に座り込んだ。レンジャー5の報告から2時間後、派遣された地底戦闘用ビークルデプスクロウラーと1分隊の機甲部隊が進んだ先にあったのは巨大生物再臨騒動時に潰したと思われていた地下洞窟、そしてそこに住まう赤黒の巨大アリが入り交じった光景だった。戦闘が行われたが、部隊は全滅したらしい。だがその後巨大生物が地上に繰り出すことは無かったという。

不幸中の幸いとはこのことである。

 

葉山は胸騒ぎを感じたが意識しないように努めた。



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19話 防御スクリーン突破作戦

【上津川、市街地】

 

間宮「こちらフェンサー。防御スクリーンは目の前だ!」

間宮達フェンサー1-1は市街地を進んでいる。目的は何か。

間宮は目の前の光景に思わず「綺麗だ...」と呟く。

 

町には神々しく煌めく光のドームが点在していた。

田中司令《敵の新型歩行メカを、シールドベアラーと呼称する。防御スクリーンを突破し、シールドベアラーを破壊しろ!》

間宮《了解!》

 

間宮達フェンサー隊は、専用のパワーフレームに身を包んでいる。さらに、パワーフレームを用いないと使用出来ない程の重量を持ったブラストホール・スピアという武器を装備。見るからに近距離戦闘を意識した様相だ。

 

元々フェンサーという兵科及びパワーフレームは市街地戦における超近距離戦闘を想定して設立された兵科で、今回の作戦において防御スクリーン内部から攻撃を加えるという戦術案に最も適した兵科であると情報本部から決定が下る。

かくして間宮達フェンサー隊は防御スクリーンを越えようとしていた。

田中司令《なお、現在世界中でシールドベアラーが確認されているが、世界中誰一人防御スクリーンを越えて撃破した報告はない。我々がその先例となるのだ!》

オハラ《物体が巨大であれば、たとえゆっくり動いていても、その運動エネルギーによって防御スクリーンの影響を受ける。だが人間の大きさなら、歩いて通過することができるはずだ》

 

間宮達は鈍色の雲に覆われた市街地を進む。装備が、パワーフレームの脚がガチャガチャと音を立て、今まで誰も成し遂げえなかったものが目の前にある恐怖に打ち勝とうと決意を固く持って。

やがて手を伸ばすと届く距離まで近づいた。半透明のスクリーンの先には四足の白銀の装置。

間宮「防御スクリーンに突入する!行くぞ!」

隊員達「「うおおおおおおおお」」

隊員達の喚声が重なり、士気が高いのを感じ、胸が熱くなる。

 

そして、フェンサー1-1は防御スクリーンを越えた先例となった。

作戦終了後、間宮は防御スクリーンを超えた瞬間を話す。

まるで壁や膜を感じず、喚声に押されて進んだ時にはすでに越えていたと。

 

間宮「防御スクリーンを越えた人類は俺たちだけだ!快挙だぞ!」

隊員達「「うおおおおおーー!」」

間宮「シールドベアラーを討てー!」

フェンサー1-1は敵の侵入にも関わらず佇み続けるシールドベアラーを囲む。

隊員全員が配置についたことを確認すると、間宮はさらに指示をだす。攻撃開始の合図だ。

その合図を皮切りに、全方位から太い杭が射出。ガラスを割ったかのようにシールドベアラーの装甲が破壊される。

 

やっと危機を察知したのか怠慢さ、否、余裕を解いたシールドベアラーは彼らから逃れようと歩き出す。その動きは鈍く、尚も超近距離専用武器ブラストホールスピアの射程圏内であった。

刹那、間宮の放った一撃は散々荒らされた装甲にトドメをさし、脆くなった接合部などが崩れ、シールドベアラーの身体は部位ごとにバラバラになる。それに合わせて防御スクリーン内部から見る風景が明瞭になった。それは、

沢見戦術士官《防御スクリーン消失!成功です!》

と。人類が、歩兵部隊がいかなる兵器でも打ち破るのが不可能だったフォーリナーの守りをつき崩したことを指していた。

フェンサー1-1、そして作戦指令本部の面々の口に綻びが生まれる。

それは士気をよりあげる結果となる。

間宮「シールドベアラーの破壊に成功!」

田中司令《よし、この戦法は有効だ!人類は防御スクリーンを敗れるぞ!》

隊員「シールドベアラーがいるぞ!」

1人の隊員が次の目標とするシールドベアラーを発見する。

田中司令《フェンサー、シールドベアラーに接近し攻撃しろ!》

間宮《了解ッ!》

間宮「お前ら、行くぞぉ!」

隊員達「「了解!!」」

間宮「EDF!EDF!」

隊員達「「いーでぃーえーふ!」」

オハラ《2017年の戦いでフォーリナーに防御スクリーン技術があることはわかっていた。マザーシップが広範囲に壁を展開したことは予想外だったが、局地戦に投入されるのは想定済みだ。フェンサーの装備はこのときのためにある!》

1人の隊員がハミングする。まるでEDFの優勢を決定付けるBGMを。

間宮「突入!」

フォーリナーの堅牢な守りを続々と通過していく。

間宮「攻撃しろ!」

隊員達「「了解!」」

都合2回目となるシールドベアラーへの攻撃。

2機目のシールドベアラーは蜘蛛の移動を彷彿とさせるようにカサカサと動く。すぐに間宮達の射程外まで逃げおおせる。

さらに足を止めることはなく、間宮達は距離を離されていった。

間宮「早い!」

隊員「シールドベアラーが移動してるぞ」

隊員「逃げ出しやがった!」

隊員「逃がすかよぉ!」

間宮《こちらフェンサー、シールドベアラーが移動を開始。現在追跡中!だがシールドベアラーの移動速度が思いのほか早い!》

田中司令《必ず破壊しろ!》

隊員「しかし、シールドベアラーに武装はないようだ! 楽勝だな!」

隊員「防御スクリーンを歩いて通過するとは、予想外だったろうぜ!」

隊員「俺たちの誤算は、やつの逃げ足の速さだな!」

隊員「シールドベアラーめ、どこに隠れやがった!」

隊員「俺たちを恐れて、とんずらしやがったか?」

 

程なくしてお気にの場所を見つけたのか、

逃したシールドベアラーが立ち止まっているのを確認。直線で10メートルの距離に捉える。

再度シールドベアラーは歩き出した。間宮は「くそぅ...」と漏らす。

だが突如間宮達の目の前を何かが通り過ぎた。

間宮達と色違いのパワーフレーム、スラスターの炎が残像をつくる。ストームチーム所属のフェンサー、宮藤であった。瞬く間にシールドベアラーに肉薄した彼は重い連撃をシールドベアラーに加え、

ものの数秒でシールドベアラーを破壊してしまった。

間宮「ストームチーム!協力感謝する」

宮藤「ああ」

宮藤は次の目標へとスラスターをふかして行った。

間宮「よし!次の目標を探す!」

隊員「上津川小学校の校庭に3機!この内2機はヘクトルです!」

間宮「そうか...よし、行くぞ!」

隊員達「「おおおおぉーー!」」

やがてシールドベアラーを目の前に見据えた。その時である。

沢見戦術士官《緊急警告。空軍が爆撃を開始します。敵から離れてください》

 

数分後、

沢見戦術士官《空爆始まります》

田中司令《防御スクリーンは破れない。空軍は意地になっているようだな。空爆は要請したときだけにしてほしいものだ》

 

程なくして戦術爆撃機カロンが飛来した。

無誘導爆弾を1列に投下していく。辺りの建物を焦土に返しながらシールドベアラーを爆煙に包んだ。

 

 

【上空、戦術爆撃機カロン】

 

ボマー1《This is Bomber one.cleared attack .Cleared attack》

ボマー1パイロットは、先の戦いでシールドベアラーの妨害に遭い、殉職した友人への弔いと、怒りに燃えていたが、管制塔の方には気づかれないよう平然と振舞っていた。

ボマー1「くらいやがれ!」

やがて投下地点に差し掛かり、機体下部が開く。そして、爆弾を投下していった。

 

 

【上津川、フェンサー1-1】

 

沢見戦術士官《空爆完了。シールドベアラー、健在です》

田中司令《空爆は終わった!地上部隊、攻撃を続けろ!シールドベアラーを倒せるのは我々しかいない!》

間宮「聞いたな!我々が道を切り開く!」

隊員達「「うおおおおおおおお!」」

雄叫びを上げながら進むフェンサー1-1。やがてシールドベアラーと待機状態のヘクトルが現れる。

田中司令《フェンサー1-2、その先の河川敷にシールドベアラーがいる。破壊しろ!》

フェンサー1-2隊長《了解しました!》

他の区域でも戦闘が行われている。あちらも善戦しているようだ。

田中司令《防御スクリーンを破ることができなければ、人類に勝ち目はない。この戦いに勝たなければ、いつか人類はフォーリナーに屈することになる。絶対に勝て!》

間宮《了解!》

隊員《ヘクトルの攻撃は防御スクリーンを超えてくるぞ!》

隊員《こっちの弾だけ止めるのかよぉ!》

隊員《攻撃が防がれる! これじゃ手も足も出ないぞ!》

隊員《向こうは撃ってくる! 一方的だ!》

隊長《こちらフェンサー1-3!防御スクリーンの妨害によって部隊の半数以上がやられた!退却する!》

隊長《こちらフェンサー1-4!一方的な砲撃がッ!は!?いかん、避けろぉ!あああああああああ》

状況が芳しくない所もあるようだ。

間宮「奴らを恐れるな!気を引き締めろ」

隊員「了解!」

隊員「りょ...了解ぃ!」

隊員「了解」

隊員「了解!」

間宮「シールド、構えぇぇ!」

起動したヘクトルの砲撃をフェンサー独自の装備の一つであるシールドから発生する斥力フィールドで防ぐ。攻撃をやめたヘクトル。それを見た間宮達はヘクトルを見上げる程に接近する。そして突く。杭はヘクトルの脚部、股に大きな穴を空け、仰向けに倒れたヘクトルはそれ以降起きてこれなくなった。弱点である胴体内部に攻撃が届くようなったのを間宮達は見逃さない。

そしてどこからともなく現れたストームチーム・フェンサーがいとも簡単に2機目を破壊する。

宮藤「同行する」

間宮「心強い!」

間宮達は現在地からすぐの河川敷に目をやる。

シールドベアラーがヘクトル2機を守っていた。ヘクトルは待機状態。

刹那、宮藤が動いた。シールドベアラーに突っ込むや、ヘクトル2機を起動、防御スクリーンの外へとおびき出した。間宮達がシールドベアラーに集中出来るよう誘導したのだ。心中で感謝を述べ、シールドベアラーに突撃を行おうとした時である。

沢見戦術士官《緊急警告。空爆が始まります。シールドベアラーから離れてください》

どうしても面目躍如をはかりたいのか、それとも単に焦りを感じているのか。

田中司令《空軍め......無駄と知りながら空爆を続ける気か!》

間宮《空爆は無駄です! 我々がやります!》

沢見戦術士官《中止を要請しますか?》

田中司令《空軍にもメンツがある。やらせてやれ》

沢見戦術士官《爆撃が始まります》

宮藤の頭上を火の玉がカーテンの如く降り注ぐ。

 

 

【上空、戦術爆撃機カロン3機】

 

片桐司令官《無駄だと分かっている!だがこれでは散っていった若いパイロット達に顔向けできない!我々の面目にも関わることだ!ボマー各機、シールドベアラーを攻撃せよ!》

 

ボマー5《突入!》

ボマー6《こちらボマー6、レーダー上に敵ヘクトル2、どうする?》

ボマー5《せめてもの土産だ!一網打尽にしてやれ!》

ボマー7《GO!》

ボマー1と同じく空軍としてのプライド、そして仲間への弔いに燃えていた。

 

 

【上津川、フェンサー1-1、ストームチーム】

 

沢見戦術士官《シールドベラー、無傷です》

田中司令《総員、攻撃を続行せよ! シールドベアラーを破壊しろ!》

オハラ《驚くべきことに、フォーリナー側の攻撃は防御スクリーンを通過する。防御スクリーンは通過しようとする物体が、自分が発射したものかどうかを検知し動作を変えているのだ。なんという科学力だ......!》

宮藤が間宮の元に戻る。

間宮「大丈夫か!?」

宮藤の居た場所は焦土と化しており、動悸が激しかったが、

宮藤「味方の空爆で死ぬのかと冷や冷やした」

と軽口を叩いていた。

 

フェンサー1-2隊長《こちらフェンサー1-2!現在シールドベアラーを追跡中だ!》

田中司令《了解した。シールドベアラーの進行方向に、フェンサー1-1とストームチームがいる。合流しろ!》

フェンサー1-2隊長「了解!」

間宮「了解しました」

すでに目の前であった。

フェンサー1-2隊長「力を貸してくれ!」

間宮「ああ!」

沢見戦術士官《シールドベアラーの進行方向に、ヘクトルを確認》

間宮《こちらフェンサー!ヘクトルを視認!》

オハラ《いかん。シールドベアラーはヘクトルと合流するつもりだ!》

オハラ《防御スクリーンを超えられるのならシールドベアラー自体は恐るるに足らない。しかしひとたびほかの兵器の護衛役となれば......!》

オハラ《シールドベアラーはヘクトルの護衛役として機能するマシンに違いない》

本部《ヘクトルと合流する前に、シールドベアラーを破壊しろ!》

間宮達は400mほど先の小丘にヘクトル3機を確認する。内2機は砲撃型のようだ。腕を高々と上げ、弧を描く光弾が間宮たちのもとへ殺到。着弾時の風圧をシールドで受ける。

間宮「ストームチームはシールドベアラーを追ってくれ!ヘクトルは我々が相手する」

宮藤「分かった。じゃあな!」

宮藤はスラスターを蒸し、ヘクトルの元へと急ぐシールドベアラーを追う。

その際に発生した弱いバックブラストに足を止められるも、間宮達も行動を再開した。

 

オハラ《単機では無力だが護衛役となったシールドベアラーは恐ろしい!》

確かに、シールドベアラーの存在は他のどの兵器よりも恐ろしい。武装は持たないものの、それを些細な問題にしか感じさせない絶対防御を誇るこの兵器は、犠牲のレート。つまりフォーリナーという攻撃的地球外文明体と人類の文明の差を更に狂わし、脅かす存在である。

 

間宮達は駆け足でヘクトルのもとへ向かう。道中、何発も砲撃が撃ち込まれ、その都度シールドでカバーするも、衝撃に押され、数名が吹き飛ばされる。命に別状はないものの、部隊は散らされてしまう。中には吹き飛び先が悪く、気を失った隊員も見受けられた。

 

二回目の至近距離での着弾。今度は二名の隊員が帰らぬものとなった。吹き飛ばされた遺体は民家の石垣に強く体を打ち付けもたれ掛かり、コンクリートに強く頭を打ち付けたもう片方の遺体はそのコンクリートにベッタリと血痕を付ける。パワーフレームの強度に負け、コンクリートにひびが入る。空いたひび割れに血液が流れ込み、満たされる。

 

こうもあっさり人は死んでしまうのかと思うと人類の小ささが悪寒となって押し寄せてきた。彼らの死はこの戦いに勝利してから手厚くやろう。そう決めた。

間宮「振り返るな!進めぇ!」

隊員「EDF! EDFッ!」

その隊員の言葉は涙混じりだった。だがこの戦いに勝利しなければならないという強い決意がこもっていた。

 

沢見戦術士官《シールドベアラーを破壊!》

 

間宮「攻撃しろ!」

1機、また1機と倒れていく機械兵器。そして最後の1機がその活動を終えた。

 

かくして、『防御スクリーン突破作戦』はEDFの勝利で終わりを告げたのだった。

 

田中司令《フェンサー、よくやった!》

周辺の巨大生物の調査に回っていた本原達も間宮たちが勝利を掴む瞬間を固唾を飲んで見守っていた。口々に勝利を喜ぶ。

本原「本当にやりやがった!」

隊員「あいつらは英雄だ!」

隊員「防御スクリーンは破れる! 人類は勝てるぞ!」

隊員「フォーリナーはもう無敵じゃないんだ!」

続々と歓声が上がる。

田中司令《ついにフォーリナーの守りを突き崩した。人類の反撃を始めようか!》

 

シールドベアラーを破った。という情報はすぐに世界中を駆け巡り、世界中で撃破報告がなされるようになる。

 

 

【数分前、本原隊】

 

本原《こちらレンジャー5-2。巣穴への出入り口と思われるトンネルを発見》

司令所《よくやった。報告をまとめ、すぐに本部に報告する》

 

本原「やはり前の巣穴に新たな巨大生物が住み着いている......由々しき事態だ」

 

 



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19.5話 Lopsided Battle

前回投稿した同話の修正版です。


スカウト1-6隊長《こちらスカウト1-6。敵軍団の中に新型らしき機影を確認しました》

桐島司令《了解。引き続き、情報収集に務めよ》

隊長《了解しました》

 

スカウト1-6は海岸線に遺された第二次世界大戦の名残であるトーチカに身を潜めていた。コンクリートで作られた四角形の小部屋で、壁に掘られた窓、もとい空洞からヘクトル群と見たことのない四足のメカを視認していた。

隊員A「なんて数だ...」

隊員B「既に日本はこれだけの大群の上陸を許してしまっているのか」

隊長「静かに...あの新型兵器はなんだ...」

その時、一斉にヘクトルが起動し、行軍を開始した。無数の足が砂浜を荒らし、彼らの体を上下に揺さぶった。吐き気を覚え、思わず膝をつく。

見れば、ヘクトル群の中に新型メカも混じっている。歩行能力を持っているようだ。浮遊などは見られない。

隊員B「隊長!」

隊長「ああ!分かっている」

隊長《こちらスカウト1-6!ヘクトル群が移動を開始しました!》

桐島司令《なに!?ベガルタ隊の配備は終わっていない!》

現場、司令部ともに混乱が訪れる。

隊員A「とにかく、威力偵察を頼むべきでは」

そんな中、冷静に事を見ていた隊員が提案した。

今確認すべきは新型歩行メカの存在である。

隊員B「それなら、いっその事ヘクトル群を一網打尽にしてもらえばいい!」

隊長「そうだな。司令部に問い合せてみる」

隊長《こちらスカウト1-6、新型歩行メカを役割が見えません。作戦を繰り上げて砲兵隊に威力偵察を頼むべきです。同時に、ヘクトル群の撃破を行えます》

桐島司令《許可する。砲兵隊が展開を完了している、エアレイダーは砲兵隊に要請コードを送れ》

隊長「頼みます」

そばに控えるエアレイダーがコクリと頷いた。

エアレイダー「分かった」

エアレイダーの投げた発煙筒は着弾し赤い煙を上げる。

 

砲兵《こちら砲兵。随分と早い要請だが、準備は出来てるぞ!》

砲兵《マーカーを確認!榴弾砲、発射する!》

 

数秒後、上空から砲弾の雨が降り注いだ。

 

だが、砲弾が着弾する直前、新型歩行メカが何かを作動させる動作を見た。大爆発が辺りを包む。熱風はスカウトチームの元へと殺到し、思わず顔を背けた。

 

砲兵《着弾を確認。どれだけの敵を殺ってやりましたか?》

エアレイダー《こちら...エアレイダー、信じられない。敵の被害はゼロだ》

砲兵《なんだって!?》

隊長「決まりだな...」

隊長はどこか遠い目になる。

隊員A「おい!早く逃げろ!」

エアレイダー「崩れます!早く逃げましょう!すぐ先に装甲車を停めてあります!」

隊長「ああ!」

突如周囲が慌ただしくなる。一体のヘクトルがこちらに向かっているのを確認したのだ。隊長がトーチカを飛び出ると同時に、光弾がコンクリートを砕く。トーチカは崩壊した。間一髪である。

 

一行は装甲車へと走る。だが目にしたのは無残にも破壊された装甲車の姿だった。

逃げ場はないと悟った隊長は迫るヘクトルに向き直る。

ヘクトルはもう2機を引き連れて追ってきていた。

背負っていたM40A5スナイパーライフルを直立状態で構え、狙いを定める。そして撃った。続くように部下2名も射撃。

ヘクトルの胴体部に穴を開けたが、損害はそれだけだった。

M40A5を地面に叩きつけ、やけくそにMG-14手榴弾を取り出しピンを抜いた。

だがヘクトルの反撃はすぐに帰ってきた。

隊員A「うおおおおおーぎゃあッ」

光弾が直撃した隊員は短い悲鳴と共にこの世を去った。

エアレイダー「うわあああああ」

爆風に巻き込まれたエアレイダーは大きく宙を飛び、装甲車の残骸に全身を強く打ち付ける。恐らく息を引き取っただろう。

隊員B「くらいやがれ!」

生き残っている隊員と隊長は同時に手榴弾を投げた。たちまちヘクトルは右足と左手を失う。

だがこれまでだ。

後方に控えていた2機のヘクトルの掃射や光弾の雨が2人に殺到する。

声を上げることすら許されず、2人は屍と化した。

 

スカウト1-6は後にシールドベアラーと呼ばれる兵器を報告出来ぬままこの世を去った。

 

【約10分後の平原、第1機械化歩兵大隊】

 

桐島司令《ポスト1司令部よりζリーダー。配備状況を報告せよ》

ζリーダー《こちらゼータリーダー。ζ(ゼータ)η(エータ)共に戦闘態勢が整いました。あとはθ(シータ)隊を待つのみです》

 

海岸近くの平原では、原色の青に近い装甲に覆われ、両腕部にそれぞれロケット砲とリボルバーカノン(機銃)を装備した二足歩行のバトルマシン、ベガルタM2の部隊が3つのグループに分けられていた。

ζ隊は最前線に配置されている。その後方にη、θと続く。

桐島司令《了解した。...!》

桐島司令《ポスト1よりベガルタ隊。海岸で停止していたヘクトルの編隊が侵攻を開始した。先程砲兵隊による威力偵察を行なったが、不可解なことに損害なし。気をつけろ。すぐに接敵する...既にスカウトチームと同行したエアレイダーが犠牲となった。必ず無念を晴らすんだ!》

ζリーダー《了解……?》

θリーダー「シータ隊、配備完了しました!」

θリーダーに敬礼を返したζリーダーは、レーダーを確認する。

レーダーにはすでに敵の姿が表示されていた。曇天に覆われ肉眼では見えない。

自機に乗り込むと全開無線で命令を下す。

ζリーダー《総員、前方に集中しろ》

次々と落ち着きに溢れた応えが返ってくる。

 

突如暗闇から銀色の光沢が現れた。ヘクトルの群が到着したのである。数は20体程とベガルタ隊の半分だ。ζリーダーは勝利を確信した。ヘクトルの中には砲撃型もいるようで、大きな包のような腕を高々と上げている。たまらずζ隊の面々は戦闘ロボットの腕部に装備されたロケットランチャーを撃った。ζ、η、θの総数100発以上のロケット弾がヘクトル群に襲いかかる。その爆風でヘクトルの姿を見失ってしまう。

 

ζリーダーは気がかりだった。ロケット弾が続々と着弾し爆発の轟音が響く中、金属同士がぶつかり合うような金切り声が断続的に聴こえたのだ。やがてζリーダーはその正体が何なのかを死を持って知ることになる。

 

1人の隊員が呟く。

《おいおい、どうなってやがる...》

また1人の隊員が叫んだ。

《敵の損害、ゼロ!どうなってる!》

 

レーダーはあまりに惨たらしい現実を映していた。

敵の反応を示す赤点がひとつも減っていない。それどころか爆風を味方につけて最前線のζ隊に急接近していた。

 

爆風が透明度を増していくとヘクトルは立っていた。腕部の銃口はベガルタへと向けられている。さらに不可解なのは時々ヘクトルの姿がグニャリと曲がったり姿がぼやけたりすることだ。

 

ζリーダーは以前友人のかけている眼鏡を借りて周りの景色を見たのを思い出した。眼鏡のレンズを介して見た景色は拡大や縮小で摩訶不思議な世界へと変貌していた。

 

爆風が晴れ、ヘクトル群との距離が300mをきった時、ζリーダーは目視で確認する。爆風で気づくのが遅くなったことを後悔した。

ベガルタと同じ10mほどで、四足の兵器が追従している。

 

ζリーダー《こちらゼータリーダー。あの四足歩行兵器はなんだ》

桐島司令《やつが新型の四足歩行兵器だ。慎重にいけ!》

ζリーダー《了解!総員、一旦距離を取れ!》

ζ隊のベガルタM2が一斉にスラスタージャンプを行う。ベガルタの後方に取り付けられた飛行モジュールから炎が吹き上がる。

ζリーダーは機体を後方に倒しながらヘクトル群へ牽制射撃を行う。

だが虚しく弾丸はヘクトルに届くことなく半透明の壁に弾かれる。

ζリーダー《くそっ!なんなんだ!》

ζ-2《隊長!これは敵の防御スクリーンです!あの四足兵器は防御スクリーン発生装置です!》

ζリーダー《そんなものを地上戦に持ち込みやがったのか!ぐわっ》

 

突如滞空していたζリーダーと機体を謎の衝撃が襲った。

衝突されたかのような感覚が押し寄せ、ζリーダーの頭をかき乱す。

滞空中に壁に激突し、叩き落とされたのだ。

とてつもない吐き気と頭痛に襲われたζリーダーはそのまま気を失い、機体は地面に激しく激突。着地に失敗した衝撃で破損した脚部は数メートル先に飛ばされていた。

さらに500メートル先のヘクトルによるガトリング砲が追い打ちをかける。ベガルタの装甲を悲惨なものにした。

 

ζ-3《隊長!》

ζ-2《隊長ぉ!》

ζ-2《司令部!応答願います!敵は防御スクリーンを展開!全く歯が立ちません!》

ζ-2《隊長!隊長応答して下さい!ちくしょうッ》

ζ-2は声を荒らげる。冷静さを失っていた。

ζ-4《ゼータ2!》

ζ-2《すまない......》

ζ-2《隊長が戦死されました。規定により以降は私が指揮を行います》

ζ-3《頼んだぞゼータ2!》

ζ-4《ゼータ2、隊長の弔い合戦といこうぜ!》

その後もζ各隊員から激励がζ-2を鼓動する。

ζ-2《ゼータ各隊員に告ぐ!防御スクリーン内部に侵入し、敵ヘクトル群を殲滅せよ》

ζ-3からζ-15までのベガルタM2が防御スクリーンに向かって前進を開始。

ζ-2(おそらく、運動量を持った物体の通過は遮断される。どうする?)

 

ζ-10《ぐわっ!》

ζ各機は通過を許さない防御スクリーンと相撲のような攻防を展開していた。防御スクリーンの物質としての壁に文字通り押されているのだ。

そこにヘクトルは追撃を加える。一機、また一機と爆散する味方を横目に、ζ-2は嘆いていた。

ζ-2(ちくしょう......)

ζ-2「はっ!?」

ζ-2は数機のヘクトルに狙われていた。もう自分しか残っていないのだ。

ζ-2《こんな兵器があるなら、最初から人類に勝ち目は無かったのかもしれないな...》

 

ζ-2はモニター越しに光る銃口を見る。刹那、全ての感覚や聴覚が遮断された。

 

 

 

【数時間後、平原、θリーダー】

 

θリーダー《こちらθリーダー!ζとηは全滅した。敵の防御スクリーンになす術なく殲滅戦に入っている》

桐島司令官《作戦エリアに展開中の部隊は早急に撤退せよ!装備は放棄していい!》

隊員《うわああああああ》

今や無線も機能しておらず、阿鼻叫喚に埋め尽くされている。

指揮系統はとっくのとうに崩壊した。

 

そんな中、θリーダーは思う。

俺たちは8年前神に背いた。再び神は罪人たる人類に裁きを下しに舞い戻ったのだ。と

 

いつしか脱げていたヘルメットに手を伸ばし、今の惨状を報告せねばと手を伸ばしたが力なく倒れる。θリーダーの意識はそこで途絶えた。

 

後にオハラ博士は彼らを神と称する。だがそれは人類にとって救済の神ではない。人類を狩り尽くさんとする死神なのだ。



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20話 光の堅陣

【東部山岳、レンジャー5、本原隊】

 

本原達は山岳中腹から低地を偵察していた。

 

本原「なんて光景だ...」

手には双眼鏡。スカウト2からスカウト用ツールを借りている。

スカウト2隊長《こちらスカウト2。タワーを確認。あのタワーが防御スクリーンを発生させているようです》

隣でスカウト2-4の隊長が本部へ報告を行う。

目の前にはシールドベアラーが2機、巨大生物が数十体に巣穴への入り口らしき大穴が防御スクリーン内に2つ。

 

本原達の頭上からタイヤが土道を抉る音が聞こえた。音が止むとすぐに傾斜を降りるフェンサー隊ともう1人異なった装備のフェンサーを目視する。

さらにタイミングを見計らうように本部から通信が入った。

田中司令《こちら作戦指令本部。これより作戦を開始する。作戦目標は、地下トンネル出口とその周辺の制圧だ!フェンサーが防御スクリーン内部に突入する。ストームチーム、レンジャーチームはフェンサーを援護しろ》

本原《こちらレンジャー5、突入部隊と合流しました》

田中司令《了解した。ストームチーム、レンジャーチームは先行して傾斜を降り、敵の注意を引け》

宮藤《了解》

本原《了解しました》

 

 

本原「いくぞ!フェンサーのために道を切り開く!」

部下たちは頷く。

この作戦の目標は、巣穴への入口を確保することにある。

まず先行してストームチーム、レンジャーチームが敵の注意を引き、空いた敵陣に後続のフェンサーチームが突入。シールドベアラーの破壊、また地上に出た巨大生物の殲滅を行う。

その後制圧した巣穴への入口から偵察部隊を派遣し、巣穴内部の現状を調査するための前段となる重要な目標である。

 

オハラ《フェンサー以外でも防御スクリーンを突破することはできるはず。だが、フェンサーはそのための訓練を受けている。この任務にはフェンサーが適任だ...!》

フェンサー2-1隊長《こちらフェンサー2-1!作戦エリアに到着しました》

田中司令《了解。フェンサーが到着した。各部隊は行動を開始せよ》

隊長(F)「我々が防御スクリーンを破らねば、人類が敗北する。行くぞ!」

隊員(F)「うおおおおおおおお!」

隊員(F)「この戦法のためにフェンサーはいる。この装備があれば、防御スクリーンを抜けられる!」

後方に勇敢な声を聞きながら本原達は傾斜に沿って降りてゆく。

 

スカウト《タワーの付近には巨大生物が作った地底トンネルへの出口があります。フォーリナーは防御スクリーンで巨大生物を守っているようです》

田中司令《一体なぜそんなことを......?》

オハラ《フォーリナーは巨大生物が進化増殖することを望んでいるに違いない。それも、我々が考えるより強い願いだ。そうでなければ、こうまでして巨大生物を守るわけがない。一体、巨大生物の進化の果てに何があるというのだ......?》

田中司令《その巣穴への入口は前回潰したと思われていた巣穴に繋がっている。やはりあの巣穴にはなにか秘密があるのか?》

オハラ《さあ......皆目見当もつかない......だが、このまま放置すればいざという時に対処に追われるだけだ。今行動を起こす他ない》

田中司令《よし、まずはこの作戦を成功させるぞ》

 

田中司令《防御スクリーンに近付いたときは迂闊に攻撃するな。防御スクリーンで攻撃が防がれるだけでなく、自爆の危険があるぞ》

司令の言葉の後、本原の後ろでは隊員が一人、銃口を下げた。

 

やがて防御スクリーンを見据え、手をかざす。間宮の報告通り、物質的な壁ではなく視覚的なものだった。内部に侵入したことを確認し、巨大生物に銃口を向ける。数匹めがけてバッファローショットガンを撃つ。

数発のショットシェルが地面を転がった。

仲間の元へ飛散する剥がれた甲殻と咆哮が突入部隊の侵入を告げる。

本原「蟻ども!こっちだ!」

巨大生物達は挑発に唸り声で応え、後退する本原達を追いかける。

隊長(F)「よし、我々も続くぞ!ラッシュ!」

隊員達(F)「「Yes, sir ! 」」

 

 

隊長(F)《こちらフェンサー!防御スクリーンに入った。》

田中司令《了解》

隊員(F)「こいつ、機械の故障か!?攻撃しても動かねえぞ!」

隊員(F)「ここがこいつの持ち場なんだろ」

隊員(F)「おい!地中から物音がする!」

隊員(F)「一旦引いた方がいいいんじゃないか!?」

隊長(F)「総員、バック!注意しろ!」

 

フェンサーの近接戦闘術には二つの戦法が存在する。

一つは『ラッシュ』である。

これはパワーフレームに搭載されたスラスターユニットによる推進力を利用し、前方に移動すること。

そして二つ目は『バック』と言われ、文字通り後退、『ラッシュ』と同じくスラスターの推進力を利用する。

 

この戦法らはつい最近確立されたもので、推進力に体を支えきれずに転倒、パワーフレーム自体の損傷が課題とされてきたが2025年4月に完成された。

 

案の定巣穴の入口から巨大生物が群れを成した状態で現れ、フェンサーに襲いかかるが、横一列に隊形を整えた彼らの前になすすべなく絶命していく。

隊長(F)「総員、再度ラッシュ!トドメだ!」

巨大生物の死骸を押しのけ無数の風穴が空いたシールドベアラーの前に躍り出た。シールドベアラーの前部にある紅く光るコアに突きを食らわせると、その一撃で輝きを失くし、まもなく防御スクリーンも消失した。

 

どうやらコアは心臓部として機能の全てを司っているようで、装甲を穴だらけにするよりも早い無力化方法を見出したのだった。

 

田中司令《よくやった!続けて次のシールドベアラーを破壊しろ!》

隊長(F)《了解》

田中司令《レンジャー、先行し、巣穴の入口を潰せ》

本原《当初の予定とは違いますが、いいのでしょうか》

田中司令《ああ、今は部隊の安全が第一だ。この段階での犠牲者は許されない。突入は、前回使った入口からに変更する予定だ》

本原《了解しました!》

 

本原「行くぞ!」

本原達はショットガンを左右に大きく揺らしながら走る。

隊員「前方に大穴です!」

本原「潰せ!」

レンジャー5-1の面々はMG-14J手榴弾を投げる。直後爆発。

盛り上がった地下トンネルの出口は土や草花を巻き上げて沈黙した。

 

隊長(F)「ありがたい!シールドベアラーは任せろ!」

すぐにシールドベアラーを取り囲み、紅いコアに攻撃を集中。水晶のような装甲が砕け散る。

2機目の防御スクリーンが消失。

 

地下侵攻作戦フェーズ1は、これにて終わりを告げたのだった。

 

 

【総合作戦指令本部】

 

田中司令「それにしても、何故巨大生物が再発生したんだ?」

オハラ「前回の掃討作戦で最深部まで隅々駆除したはずの巣穴。新たに投下された個体が開拓した記録もなし」

沢見戦術士官「司令、博士。実は、先日消息を絶った調査隊の報告の中に、興味深いものがありました」

田中司令「聞こう」

沢見戦術士官「《最深部の先を行く道がある。そこから大量の巨大生物が出入りしている》と」

田中司令「まさか、最深部と思っていた場所は実はそうではなく、まだ先があると。いや、正しくは前回の後開通したのか」

沢見戦術士官「そういうことになります」

田中司令「あの巣はもともと地下鉄建設時に閉じられた自然の地下洞窟。地下水層近くに位置している。まさか...繁殖条件が整っているとすると...奴らの行動も説明がつく」

田中の脳裏には8年前の戦いがうつされていた。8年前、多大な犠牲を払って成し遂げた地底侵攻作戦。その最深部での戦い。巨大な女王の存在......。

沢見戦術士官「すでに事態は手遅れになりつつあるのかもしれません」

 

沢見の没我の声、そして田中司令は喉を唸らせるなか、通信システムにコールがかかった。沢見はハッと我に返り応答する。

沢見戦術士官「たった今ペイルチームから報告がありました。無事に北海道に到着したようです」

ああ、あの件か。と田中は相づちを打った。

田中司令「北海道で新たに巣穴が確認されたと報告を受けた時は驚いたが、ペイルチームが到着した以上、鎮圧も時間の問題だ」

沢見戦術士官「続いてストーク隊より報告。ステーション1で研究開発が続けられていたウイングダイバーの新型飛行ユニット及び武器が北海道に無事届けられました。ペイルチームは暫くの間北海道に駐屯。以降は北海道でトライアル実験を継続し、事態に対処するとの事です」

田中司令「ペイルチームは、ウイングダイバーの精鋭部隊。彼女たちなら、あの新型兵器を使いこなせるだろう」

田中司令「敵の攻撃が激化してきた今、我々は戦力を分散せざるを得ない状況だ。だが、我々は地球人としての意地を示さねばならない」

 

司令官席のスタンドマイクの位置を直し、咳払いをする。そして、決意新たに告げた。

田中司令「よし、これより我々は再度地底への侵攻を開始する!」




最近steam版のWINGDIVER THE SHOOTERを購入しました。
ノーマルの穴埋めを行っているのですが、かなり難しいですね。
サンダーボウ系でゴリ押ししてます。たまにホーミング系で避けに専念するスタイルもやって見るのですが、一瞬でもペイルイレブンを見失うと体力ごっそり削られて...

ちなみに、steam版で確認した限り、メインメニューに戻ってもミッションのプログラムが継続したままで、無線や敵のSEが流れるというバグ(?)がありまして。まあプレイ自体に影響はないので平気です。

(武器選択画面の背景で断末魔。ちょっと気になっちゃうかな...)


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21話 地の底へ

作戦がフェイズ2に移行してすでに二時間と少し。すでに多くの部隊が巣穴へ突入した。

先遣部隊《巣から巨大生物が出てくるぞ!》

先遣部隊《やつら、とんでもない物量で来やがる!撃てぇ!撃てぇぇぇ!》

今や人々の踏む土の下で激戦が繰り広げられている。しかし、地底は巨大生物の巣窟。ほとんどの先遣部隊は深入り出来ずにいた。

深くに侵入した通信も受け取るが、その多くが既に交信が途絶えている。

 

隼人《ストームチーム、突入します》

田中司令《了解した。無事の帰還を祈る》

 

ストームチームは後続部隊として投入されることが決まり、連日の出撃に疲れ、非番を待ち望んでいた彼女は大変ご立腹である。

隼人「いくぞ!」

早紀「はあ...りょーかい」

八木《この作戦が終われば、休暇を頂けることになっています。それまでは尽力しましょう》

EDFの地底戦闘用ビークル、『デプスクロウラー』に乗る八木は彼女を諭す。

早紀「休暇の為に頑張るって...ダサいわ...」

駄弁を弄する三人だが、意識は周囲に向いている。刹那、すぐ近くで無数の咆哮が聞こえたかと思うと、先の通路を曲がった先から光が断続的に辺りを照らす。さらにおそらくその地点からか、巨大生物の咆哮が木霊する。隼人は走り出した。

たどり着いた先には、通路を埋め尽くす黒い波がレンジャー隊員達を飲み込もうとしていた。

彼らは対地底戦用の火炎放射器で武装し、その灼熱を持って牽制しているが、徐々に封じ込めなくなってきている。

 

突如火炎の壁の隙間から液体が抜け、一人の隊員がそれを浴びた。

巨大生物の吐いた酸であった。現代化学の理解を超えた強酸がアーマーを蝕み、あまりの痛みからか火炎放射器を手放してしまう。生じてしまった綻びに付け入るように巨大生物は次々と抜け、隊員たちの背後へと回り込んだ。

隼人はその個体に狙いを定め、銃弾を撃ち込む。

隊長「救援、感謝する!」

隼人「お礼なら、先に殲滅してからだ!」

隼人「衛生兵!彼を見てやってくれ。穴埋めは俺らに任せろ」

隊長の隣に立ち、炎の合間から姿を見せる巨大生物を屠っていく。

ものの数分で制圧し、隊長と対面する。

隊長「君たちが来なかったら死んでいた。命の恩人だ。この借りは倍にして返す」

隊長「我々の装備してきた武器は火を嫌う奴らにとって足止めには効果があるが、先程のような大群を殲滅せし得ることは出来ない。流石の物量だよ」

隼人「我々が護衛につこう」

隊長「頼む。我々もここで脱落する訳にはいかんからな」

 

負傷した隊員の応急手当も済み、その隊員が大丈夫だと立ち上がると、休息を取っていた隊員達や隼人らも軽い体操をこなす。

そして、再び進攻を開始したのであった。

 

そして一行は森閑とした地下鉄ホームにたどり着いた。敵の本営まではあと少し。電気が生きているホームに足を踏み入れ、はち切れたのか隊員が洞穴の余りの暗さに吐露する。

隊員「巨大生物は図体の割に音を立てない。暗闇で戦うのは不利だ!」

隊員が1人頷く。

隊員「そうだ。背後にいても分かりゃしねぇぞ」

隊長「俺たちのヘルメットにはライトがある。暗闇を恐れるな」

隊員「そうは言ったって!隊長」

不安をあらわにした隊員は、火炎放射器を様々な方向に向きながら

挙動不審になっている。他の隊員が蹴った石ころの音に体をビクリと反応させ、短い悲鳴と共に銃口を向けた。

突如地下が奥まで照らされる。

案の定隊員は悲鳴を上げ、隣の隊員に叩かれる。

隊員「馬ッ!静かしにしろ!」

八木がデプスクロウラーに乗り込み、ライトをオンにしたのだ。

八木《私が、皆さんの目になります》

隊長「すまん、感謝する」

 

その後、分断された地下鉄トンネルと広間にたどり着いた。

レーダーによると広間には、巨大生物の反応があった。ちょうど崖を降りたところは広間の中心に位置し、その地点を挟むようにして群れをなしている。

地下鉄トンネルから広間へは2mほどの小さい崖になっており、巨大生物をトンネルに誘導して撃破していこうと話がまとまった。

隼人が構えるアサルトライフルのサーモスコープに目を通したその時である。

 

R7-4隊長《こちらレンジャー7-4。前方に敵! 我々だけでは突破出来そうもない。援軍を!》

田中司令《了解。すぐ近くにストームチームを確認した》

田中司令《本部よりストームチーム。その先にレンジャー7-4がいる。合流しろ!》

隼人《こちらでも確認した。戦闘に参加する》

田中司令《よし。レンジャー7-4、ストームチームがそちらに向かう》

R7-4隊長《レンジャー7-4、了解!》

R7-4隊長《この先に敵が待ち構えてる。力を合わせよう!》

R7-4隊長《用意はいいな......GO GO GO!》

 

隼人「行くぞ!」

レンジャー7-4隊長と隼人の合図を皮切りに、崖を降りてゆく。広間の中心に陣取り、巨大生物を叩いていった。隼人らが前方の群を相手取り、後方群のさらに後方からレンジャー7-4が突撃。

 

巨大生物の2つの群れの正体は、甲殻型巨大生物、蜘蛛型巨大生物それぞれの群れだった。

甲殻型巨大生物は酸を吐きかけ、蜘蛛型巨大生物は糸で拘束しようと無数の酸を含んだ糸が襲いかかる。

 

1人の隊員が蜘蛛型巨大生物に捕まり、銃を取り落とした。戦闘不能に追い込んだ蜘蛛型巨大生物は彼の腕をかぶりついた。

隊員「ぐわあああああ」

隊長「いかん。助けろ!」

隊員「ガハッ......隊...長」

隊長「おい!死ぬな!おい!」

巨大生物が腕を噛みきる前に救出したと思われたが、その隊員は指を失っていた。

あまりの衝撃に叫びも出来ず、隊長に助けを求めた。

 

早紀「伏せなさい!」

早紀の言葉に従い、頭を低くし、屈んだ瞬間。

早紀の装備する、弓を象った電撃兵器『イズナ-ボウ』から無数の雷撃が疾走る。

雷撃は巨大生物の群れの奥まで届き、広範囲にわたって数匹の蜘蛛型巨大生物の体を貫いていた。死に際の咆哮が辺りに響き渡る。

 

八木《うぉおおおお!》

デプスクロウラーのガトリング、そして徹甲弾を撃ち出すキャノン砲が全門開き、銃弾の雨を降らせる。

甲殻型巨大生物に肉薄され、終わりを悟った隊員を救い、

巨大生物に地獄への引導を渡す。

 

隼人「くそっ!こいつら!」

隊長「怯むな!撃てぇ!」

R7-4隊長「こちらは殲滅した!加勢する」

さらに火柱が立ち、巨大生物の動きを封じる。

焼け死に、銃弾に刈り取られ、最後の1匹が絶命した。

 

隊長「医療班が来てくれるそうだ。少し休憩といこう」

負傷者の応急措置とつかの間の休息の最中、1人の隊員が口を開いた。

隊員「昔、こうやって巣穴に潜ったことがある」

隊員「何度も聞いたぜ……」

隊員「あのときは英雄がいたから助かった」

隊員「英雄?」

隊員「ああ。マザーシップを撃墜した英雄だ」

隊員「何が英雄だ。そんな話、今でっちあげたに決まってる」

隊員「ホントにいたんだ」

隊員「俺は戦後に入隊した身だ。そんなありがたい話、信じられるわけないだろ」

隊員「8年経った今、彼はどこに行ってしまったんだ...生きてるはずなんだ、絶対生きてる」

隊員「おい!目の前の現実をよぉーく見るんだな!」

 

8年前の第1次戦役の際も同様に巨大生物の根絶を目指して地底侵攻作戦が行われた。彼もその突入部隊に組み込まれた1人らしい。

投入戦力は1大隊を超え、日本最大の作戦であった。

が、巨大生物のホームグラウンドでの戦いは苛烈を極め、

結果EDF JAPANは巣穴の根絶に成功したのだが、無事生還した部隊は2~3割程度だったという。

 

そんな中、当時のストームチームに所属していた1人の隊員が

生き残りを率いてクイーンと呼ばれる女王級巨大生物に肉薄、見事撃破し、任務をやり遂げた。彼も途中で救出され、共に戦った生き残りの1人で、彼の言葉には感慨深いものがあった。

 

隊長「よし、そろそろ再開だ。いいな?」

隊員達がそれぞれ答える。

R7-4隊長「休憩の間に本部に連絡した。既に先遣部隊の3分の1から通信が途絶えているらしい。この事態を鑑みて地底掃討は断念するそうだ。後続部隊には先遣部隊の捜索と救出の任務が与えられた」

 

田中司令《こちら作戦指令本部。作戦を断念せざるを得ない状況になった。先遣部隊にこの通信が届いているか定かでは無いが、聴こえた部隊は直ちに地上へ帰還せよ。救助が必要な者は座標を送れ。後続部隊が向かう》

田中司令《後続部隊、頼んだぞ》

 

隊長《こちらフェンサー。戦闘中だ。援護が欲しい》

田中司令《作戦指令本部よりストームチーム。交戦中のチームがいる。救援に向かえ》

隼人《ストームチーム、了解》

隼人「行くぞ」

早紀「後続部隊?」

隼人「らしい」

八木《既に後続部隊にも被害が多く出ているようです》

隼人「先遣部隊は大丈夫なのか...」

 

R1-5隊長《こちら先遣部隊、レンジャー1-5。現在、巣穴深部のある空洞にて負傷者を手当中。フェンサーやウイングダイバーの負傷者も抱えている。周囲の巨大生物は掃討したが、いずれ発見されるのも時間の問題だろう》

田中司令《よく生き残っていた。後続部隊は、指示する座標に向かえ》

 

隼人達は闇に呑まれた広間を抜け、明かりの残る地下鉄トンネルに出た。

すると、少し進んだ先にある別の横穴からレンジャーとフェンサーの混合部隊が走り出た。皆息切れや装備に溶けたような損傷が見られる。

レンジャー部隊は1分隊ほどの人数だったが、フェンサーは2名だけである。隊長らしき人物は見当たらないので、先程無線で救援を求めた隊長は亡くなってしまったようだ。

 

レンジャーの1人がこちらに気付く。

隊員「こっちだ!助けくれぇ!」

R7-4隊長「加勢するぞ!」

フェンサー隊員(A)「わぁぁぁぁぁぁぁ」

フェンサー隊員(B)「ひぃッ!うわああああ」

フェンサー隊の生存者であった2名は、蜘蛛型巨大生物の糸に巻かれ、闇へと引きづられていってしまった。

 

隼人「離れろ!急げ!」

目の前のレンジャー達に警告し、隼人は素早い手つきで背負っていたミリタリーバッグから炸裂弾を取り出しUM4グレネードランチャーに装填、構える。大体の照準を合わし、蜘蛛型巨大生物がひしめき合う横穴に向けて発射。

ゆらゆらと曲線を描き、蜘蛛型巨大生物の皮膚に焼け跡を付ける。その爆風が横穴いっぱいに広まり、複数の蜘蛛型巨大生物が絶命した。

残った個体も、早紀の雷撃の餌食となる。

 

レンジャー隊長「感謝します。我々もお供します」

隼人「これからさらに奥へと進む。なるべく早く先遣部隊の元に向かうぞ」

早紀「ええ」

八木《当然です》

R7-4隊長「我々が地上に帰るのは、先遣部隊が撤退を終えてからだ!」

R7-4隊員「了解!」

 

フェンサー隊長《こちらフェンサー部隊。作戦エリアに到着した》

田中司令《了解した。その場所はストームチームの進行ルートにある。周囲の敵を撃破し、合流を待て》

フェンサー隊長《了解!ストームチームを待ちます》

田中司令《ストームチーム、その先に後続のフェンサーが到着した。合流せよ。さらに奥には、広大な縦穴が確認されている。敵も大群だ。戦力を集中し、縦穴を確保するんだ。ウイングダイバーも現在向かっている》

隼人《了解》

 

フェンサー隊長「共に行動させてもらう」

そして一行は、目的地へ続く闇に消えていった。

 

 

【地上、陸上自衛隊中央即応連隊、真田中隊長】

 

真田「撃てぇ!1匹たりとも残すなッ」

地上では、ヘクトルと地下から逃れた巨大生物の掃討作戦が展開されていた。

96式装輪装甲車の重機関銃による重い銃声。

数丁の89式小銃からの掃射。様々な銃弾が飛び交っている。

隊員「ヘクトルだ!」

真田「ありったけをくれてやれ!」

真田の指示に、110mm個人携帯対戦車弾を担いだ隊員が前に出る。

発射されたロケット弾はヘクトルの左肩で爆裂した。

煙の中から、左腕が天高く吹き飛んでいく。本体も活動を終えたようで、12mの巨体が仰向けで倒れ込む。

 

司令部では隊員達が慌ただしく交差していた。

その傍らで、電源の付いたラジカセから、キー局放送が流れている。

しかし、パーソナリティーが番組の中断を告げると、

代わりに女性アナウンサーの声が発せられた。

キー局で取り扱うニュース番組である。

アナウンサー《戦局報道です。新たに南米で巨大生物の巣穴が発見されました。EDFは突入作戦を決行。巣穴の破壊に成功しました。しかし戦いは熾烈なものとなり、多数の死傷者がでた模様です》

アナウンサー《世界中で巣穴が発見されています。日本国内では北海道にて新たな巣穴が発見されました。EDF JAPAN北海道支部は、地底侵攻作戦を計画中とのことです》

 

 

【総合作戦指令本部】

 

隊長《こちらフェンサー。先遣部隊と合流した》

田中司令「了解。直ちに帰還せよ」

隊長《こちらレンジャー7-5。報告のあった地点に到着。全滅です》

田中司令「......分かった。せめて遺族の元に届けてやろう。回収班を送る」

隊長《こちらレンジャー。我々も座標に到着。先遣部隊は全滅です》

田中司令「遅かったか......回収は」

隊長《酷い...何もかも溶かされて...ウッ》

この隊長が、酷い吐き気を催したのが聴こえた。そんな光景なのだろう。

田中司令「なにか持ち帰ってやれるものはないか」

隊長《ぜ...全員のドッグタグがあります》

田中司令「よし。持ち帰るんだ」

隊長《了解》

 

本部属分析官「司令!」

田中司令「なんだ」

鬼気迫る面持ちの分析官に真剣な表情で尋ねる。

本部属分析官「太平洋上を飛行中だったマザーシップ1隻が福島県上空に到達しました!」

田中司令「EDFオーシャンの防衛戦はどうなった」

本部属分析官「易々と突破されました。敵の攻撃により、大破報告も上がっています」

本部属分析官「マザーシップは現在奥羽山脈上空にて停止中。さらに道中で投下したと思われるヘクトルの大部隊が周辺市街地を占領しました。続々と、輸送船も領空内に侵入を許しています」

田中司令「くそっ!」

取り乱す司令を見て、分析官は慄く。

だが、田中司令はすぐに平静を取り戻した。

田中司令「可能な限りの戦力を投入し、それを迎撃する」

田中司令「東北支部にも繋げ」

 

 

【地底、ストームチーム】

 

隼人「この先か...」

R7-4隊長「ああ」

フェンサー隊長「救援要請があったのはこの先らしいな」

隼人はすっかり大人数に膨れ上がった仲間達に振り向く。

レーダーには先程までの比ではない数が表示され、隼人達も決意を固めた。

隼人「GO!」

一行は先の見えない広間に出た。地面を細い橋だと認識し、下を見やる。底は見えない。ただ、飛び降りてたえうる高さではないことは明らかだ。そこに、なにか這いずる音が聞こえる。

1人の隊員が音のする方を向くと、ライトに照らされたのは赤色の胴体。赤色型巨大生物だった。赤色型巨大生物の大群が壁や天井に張り付き、獲物を待っていたのだ。

そして一斉に、獲物を捕獲せんと蠢き出した。

隊員「赤色型巨大生物多数!」

隊員「囲まれる!」

隊長「怯むな。攻撃しろ!」

フェンサー隊長「ラッシュ!うおおおおおお」

フェンサー隊員「Yes sir!」

 

瞬く間に火柱、雷撃、銃撃が交差する戦場となる。しかし、視界が不明瞭な一行にとって、不利な状況に陥った。

隊員「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ

1人の隊員が足を踏み外し、滑落した。悲鳴は遠のいてく。

 

ラッシュ中に体勢を崩した隊員は転げ落ちる。起き上がろうとした時、目の前に赤色型巨大生物が自分を狙っている事に気付いた時には遅く、断末魔が響いた。

 

ウイングダイバー隊長《こちらウイングダイバー!縦穴で戦闘中の部隊を発見!援護する》

隼人《頼んだ!我々は一旦引かせてもらう》

縦穴の天井に空いた大穴から、ウイングダイバーの隊員達が降下する。レーザーランスを装備する彼女たちは広間を自由自在に飛び回り、ライトで目視した個体を貫いていく。

時々レーザーランスの放つ光弾が辺りを照らし、それを確認しながら隼人達一行は引き撃ちを開始した。

次々に屠り、レーダー上に映る敵は既に両手の指で数えられるようになっていた。

やはり、遠距離攻撃を持たない赤色型巨大生物は近づかれなければ、火力を集中し、比較的安全にことが進む。

 

程なくして、隼人達一行は縦穴を降り、残りの赤色型巨大生物は駆除された。縦穴を確保したことを本部に告げ、医療班や回収班が到着したこと、そして補給を済ませた時を見計らい、救援要請の元へと急ぐ旨を伝えた。

隊長「ストームチーム、我々は死傷者(かれら)の護送につく。感謝する。あなたがたに救われた」

隊員「流石ストームチームだ。()()()()()戦いを見せてくれて有難う」

この隊員のセリフは聞き流されてしまい、ストームチームの面々は疑問を持たぬまま作戦を急ぐのだった。

 




なんだかんだ言って、もう1周年を迎えることになりました。正確にはまだ14日あるのですが。このまま2年目に突入しても変わらずやっていきたいと思いますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。


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22話 奈落の罠

三ヶ月ーー!
…いやあ、長らくお待たせして申し訳ございません。

これからはあまり長い期間かからないようにー…したい。

という訳で22話、「奈落の罠」でございます。



八木《救援要請があったのはこの先のようです》

早紀「周囲に敵の反応は?」

八木《今はいないようです。 お! 味方の反応、レンジャー1-5ですよ》

隼人「よし、急ぐぞ」

隼人、八木、早紀の三人は救援要請のあったエリアに近づいていた。

隼人「流石に寒いな…」

戦闘服に染み込む汗と、地底の冷気を感じながら隼人は水筒に手を伸ばす。

早紀「早く任務を終えましょう」

八木《そうですね》

 

 

通路の先にライトの光を確認した三人は警戒を解くために声をかけた。

隼人「ストームチームだ。救援に来た!」

R1-5隊長「救援部隊か! 助かった!」

隼人「今そちらに向かう」

 

隼人たちは広い空洞に出た。底らしく、天井は暗闇に包まれている。

集った先遣部隊は、

レンジャーチームが4分隊18名(内2部隊の隊長が戦死)

ウイングダイバーチーム1分隊5名

フェンサーチームは3名(隊長以下3名戦死)という状態だった。

 

隼人「重傷者の人数は?」

R1-5隊長「3名が重傷。他全員がどこかしら軽傷だ…」

隼人「八木、重傷者をデプスクロウラーに収容できるか?」

八木《分かりました》

隼人「よし、他の者は誰かに肩を貸してもらえ。今すぐ脱出するぞ」

 

八木「よいっしょ」

八木は降機し、包帯を巻かれた隊員に肩を貸す。

彼はタンクトップ姿で腹部には包帯が何層にも巻かれていた。

隊員(R)「すまない…」

八木「問題ありません。無事に地上に送り届けますよ」

1人ずつ肩を貸してデプスクロウラーのもとへ。

 

隊員(R)「はやく出ましょう」

R1-8隊長「すり鉢状の空洞だ。こんなところで襲われたら、ひとたまりもないぞ……」

R1-5隊長「ああ、今まで襲われなかったのが不思議なくらいだな」

隊員(WD)「早く地上の空気が吸いたいわ…」

隊員(WD)「とりあえず、お風呂に入りたいね」

隊員(F)「ようやくおさらばできるぜ」

 

先遣部隊の面々は口々に欲を述べていた。

 

隼人《本部応答願います。先遣部隊と合流しました。現在撤収の準備を進めています》

田中司令《こちら本部、了解した。周囲の安全確保に注力し、地上へ帰還せよ》

隼人《了か…!!》

それは突然だった。

巨大生物の野太い咆哮が木霊したのだ。

一瞬にして隊員たちに恐怖を植え付ける。

 

隊員(R)「敵だーー!」

その叫びが、巨大生物の到来を告げた。

 

更に地響きと轟音が彼らを襲う。

土煙と共に隼人の足元に岩が転がった。

ストームチームが通ってきた道が崩れ、塞がってしまったのだ。

隼人「なッ」

思いもよらない事態に呆然とする。

八木《レーダー上に敵影…! 凄い数です!》

レーダーを確認した八木も、その画面を覆い尽くさんばかりの赤い点に驚きを隠せない。

隼人「くそッ! 応戦するぞ! 動ける者は戦闘に参加しろ!」

 

それからは凄まじい足音と咆哮。

広間に甲殻型、蜘蛛型の大群が到達した。

暗闇から酸の雨が降り注ぐ。360°からの酸はEDFのみならず、仲間の個体の甲殻をも捉えズタズタにしていく。その物量に瞬く間に追い詰められ、負傷者は死者へ。

肩を貸し、咄嗟の動きが取れなかった隊員も悲鳴をあげる。

隊員(R)「脱出路を探せ!」

隊員(F)「確か、頭上に土橋と通路があったはずだが!」

隊員(R)「無理だ! 上に敵がいる! 退路を塞がれたぞッ」

隊員(R)「数が多すぎて狙いが定まらない!」

隊員(R)「隊長! 上です!」

R1-8隊長「なにっ!? うわあああああああ」

レンジャー1-8の隊長は頭から酸の雨を浴び、帰らぬ人となった。

重なる銃声にかき消されそうな怒号が飛び交う。

 

早紀「通路を確保する!」

隊長(WD)「我々も行くぞ。ストームチームに続けッ」

隊員達(WD)「「了解!」」

早紀とウイングダイバー隊の飛行ユニットに岩肌が照らされるが、瞬く間に上部の闇に消えた。

しかしすぐに雷光が空間を照らし、ひしめき合う巨大生物を穿つ。

壁や天井に張り付く力を失った死骸が落下し隊員が下敷きになった。

隼人はその下敷きになった隊員を救い出し、雷光に照らされた個体や視線があったと第六感で感じ取った個体を撃破する。下敷きになった衝撃から腰の抜けた隊員は、こちらを狙おうとする個体が確実に絶命していく光景にただただ驚嘆していた。

 

八木「くっ…側面に!」

デプスクロウラーの機動を活かした戦術を展開しようとした八木であったが、ハッとコックピットの後方に体を預ける隊員達に目をやった。

八木(あまり動けないか…ハッ!?)

前方のフロントガラスが突如融解した。酸が当たったのか。

 

八木「マズイ!! すみません、少し揺れますよッ」

八木は決断した。多少無茶してでも彼らを守らなければいけない…と。

すでに機体は煙を上げている。損傷が激しいのか、動けば軋む音がするのだ。

デプスクロウラーの脚はまさに蜘蛛のようにわしゃわしゃと動き、高いジャンプや素早い移動が可能だが、今その戦術をとったら機体が分解してしまいそうだ。

 

突如なにかが崩れる音が響き渡る。

落石によって塞がれていた穴が開通したのだ。巨大生物が出てくる。

位置確保に目を光らせていた八木は一か八かと穴に陣取る巨大生物を蹴散らしながら穴に突入した。

突入し通路の奥に巨大生物がいないことを確認すると降機し、リムペットガン(吸着爆弾射出銃)を手に応戦を開始した。

 

 

【総合作戦指令本部】

 

田中司令「よし、これで手筈は整った。敵の状況は?」

沢見戦術士官「15分ほど前、仙台市青葉区に展開中のスカウトから報告がありました。機銃型から砲撃型、大小様々なヘクトル群が侵入し、占拠されたとのことです」

そう言って沢見はスクリーンに動画を映し出す。

建物の陰に隠れたスカウト隊員のカメラ映像にはフォーリナーの地上制圧用戦闘ロボット『ヘクトル』が傍若無人に市街地を歩く姿が映されていた。

田中司令「奴らめ、簡単にマザーシップのもとには行かせない気か」

沢見戦術士官「周辺市街地はもちろん、停泊中のマザーシップを囲うかのように敵機械兵器の大軍が侵出しています」

田中司令「そうか…ブリーフィングの時間も早める。早期に叩くぞ。召集を急げ」

その時、無線機が耳をつんざく銃声を伴いながら鳴り響いた。

隼人《こちらストームチーム! 我々だけでは防ぎきれない! 援軍を寄越してほしい!》

田中司令「こちら本部! ストームチーム! 無事なのか!?」

ストームチームからの返答はない。

田中司令「直ぐに向かわせる! それまで先遣部隊を守れ!」

 

【地下洞窟】

 

通路は開通し、すぐにでも撤退したいが、周囲の巨大生物がそれを許さない。回り込まれ、通路の前では巨大生物がさながら門番のように構えている。デプスクロウラーが攻撃を受けないのは不幸中の幸いか。

その後も戦闘は続き、巨大生物は全方位を囲んでいるものの岩肌が見える程に数を減らしていた。

しかし巨大生物の侵入は続き、物量に押されて1人また1人と犠牲が生まれていた。戦闘開始に比べ、スティングレイランチャーの爆発、アサルトライフルのマズルフラッシュも薄くなっている。

巨大生物の死骸と折り重なるようにさっきまで一緒に戦っていた仲間の死体が倒れていた。軽傷ですんでいた者、レンジャー、ウイングダイバー、フェンサー隊員の見るも無惨な死体。例外はない。

八木「ぐあぁ!」

八木は腕に付着した酸の蝕む痛みにリムペットガンを取り落とす。

隼人「八木はデプスクロウラーまで下がれ!」

八木「は…はい!」

早紀「キリがない!」

荒い息をたてた早紀が隣りに降り立つ。

隼人「救援を呼んだ。もう少しの辛抱だ」

早紀「信じていいのね!?」

そう言うと早紀は上部へ飛び立った。

 

刹那、新たにレーダーに数十の赤点が浮かび上がった。

早紀「来るわよ! 左は抑えるから誰か右の通路を押しとどめて!」

隼人「分かった!」

早紀の呼びかけに隼人が応じ、上部通路につながる坂を登っていく。

先の見えない暗闇に向けて銃口を向けた。

一方赤い点はジリジリと隊員達の居る広間に迫っている。

レンジャー1-5の5名は続々と生まれる重傷者を後ろに庇いながら戦っていた。重傷者の中でも動ける隊員は仰向けになりながらもAF-14を撃っている。

隊員(R)「!? このままじゃ全滅するぞ!」

隊員(R)「隊長! 重傷者多数! とても抑えきれません!」

隊員(R)「もっと救援を寄越してくれッ」

1-5隊長「馬鹿! 救援がくる頃には俺たち全員殺られてる! 死にたくなきゃ撃て!」

田中司令《…ちら本部! 先遣部隊、応答せよ》

1-5隊長「本部かッ!? こちら先遣部隊、レンジャー1-5!」

田中司令《現ざ…《救援部隊を! 急いでッ》》

1-5隊長は枯れる勢いで叫び、田中司令を遮ってしまう。

田中司令《…現在そっちに救援部隊が向かっている! すぐに到着するぞ!》

言い終わるのとほぼ同時に、底の壁に穴が空く。穴から姿を現したのは巨大生物だった。

 

この時点で、隊員達の命は尽きたも同然だ。頭上から、そして側面から敵が押し寄せる。頭上の通路から出てくる数が減ったものの、状況は変わらない。

一瞬救援が早くも到着したものだと思ったが、ぬか喜びだったようだ。

隊員(R)「味方じゃねぇのかよ!」

隼人「下から!?」

底に現れた甲殻型巨大生物が広間になだれ込む。

その様子を上から確認していた隼人は咄嗟の反応が遅れてしまった。右の通路から出現した個体の噴出した酸をボディアーマーにモロに食らってしまう。すぐさま反撃し、その個体の絶命を見届けるとレーダーを確認した。右の通路に巨大生物の反応は無い。とにかく地形的に有利な場所に移動しなければ。

隼人「ちくしょう! おい! 皆登ってくるんだ!」

声が届いたのか、フェンサー隊員が復唱する。

隊員(F)「あの坂を登れ! 上の通路を確保して脱出するんだ!」

隊員(R)「待ってくれぇ!」

隊員(R)「次から次へと敵が来るぞ! もうおしまいだぁ!」

隊員(R)「死んでたまるか! 撃ちまくれぇー!」

 

あるレンジャー隊員はリロードしようと腰の弾薬ポーチに手をかけるが……換えの弾倉は尽きていた。

隊員(R)「!? 弾が尽きた! これ以上戦えない!」

早紀「きゃあ!」

飛行ユニットに蜘蛛型巨大生物の糸が粘着し、、体制を崩してしまう。

早紀は壁に叩きつけられ、意識が一瞬飛んでしまったものの、すぐ応戦する。

他のウイングダイバー達も飛行ユニットの破損により光学兵器が使用不能となったが装備はそのままにハンドガンで応戦していた。

隊長(WD)「捌ききれない! しまった!?」

隊員(WD)「死にたくないー!」

隊員(R)「待て!」

泣き叫び、1名のウイングダイバー隊員が背を向ける。

それを逃がすほどの慈悲は巨大生物には無く、腹の噴射口で彼女を捉えた……時だった。ロケット弾が巨大生物に撃ち込まれた。巨大生物は絶命し、爆風が他の個体を巻き込む。

風圧に巻き込まれたが、隊員達、特にウイングダイバー隊員にも被害は無かった。

 

突如、ライトの明かりが通路からデプスクロウラーの影を作り出す。救護班を連れた救援部隊が到着した合図だった。

隼人「ふぅ…」

八木「眩しいッ!」

レンジャー1-2とランチャー部隊の計2部隊が広間に姿を現した。

葉山「助けに来たぞ!」

結城「なんて数の死骸だ…」

結城は積み上げられた巨大生物の死骸を前に面食らう。それだけの凄惨さを物語っていた。

里見「こちらに!」

里見が誘導し、葉山、結城、高城、新庄は援護射撃を開始。

大黒と里見は隊員に肩を貸す。

もう一分隊はスティングレイランチャーを装備し、巨大生物の束を押し留めていた。

葉山は先遣部隊の最後の1人が足を引きずって通路に出たことを確認する。

負傷した早紀と隼人も援護を受けながら坂を下り、救援部隊の列に参戦した。

八木はデプスクロウラーに飛び乗る。

巨大生物の魔の手を逃れた重傷者の一人、レンジャー隊員が衰弱しきった様子で八木に問うた。

隊員(R)「うう…助かった…のか?」

八木「はい。犠牲は多いですが、生き残りましたよ」

 

その後、ランチャー部隊の1人が天井にロケット弾を撃ち込むと通路は塞がり、

それ以上巨大生物も追ってくることが無かった。

 

無事に広間を出た隊員達が再び合流し、各々がホッと安堵のため息を漏らす。

隼人「何人生きてる……」

隼人は満身創痍の隊員達を見る。多くが犠牲となった。

何人…居るのだろうか。見渡すと、戦闘が始まってから半分も生き残っていないようだった。装備や戦闘服の色にもバラつきがある。

皆が友を失ってしまったようだ。全員が無事な部隊は無い。

 

【総合作戦指令本部】

田中司令「そうか…全生存部隊の撤退を完了。作戦は失敗…」

沢見戦術士官「巣穴は続きがあることが証明されました。最深部に女王がいる可能性も濃厚に。第三次の立案も確定的となりました」

沢見戦術士官「…! ドーベル中隊を皮切りに、機甲部隊とヘクトル軍が会敵。戦闘が開始されました」

田中司令「いよいよか…」

次の戦場だ。

沢見戦術士官「並びに本隊も作戦エリアに入りました」

田中司令「史上類を見ない大規模な戦闘が…各部隊の奮戦を期待する!」




割とストームチームの存在が薄くなってしまった。


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22.5話 誇り

閑話です。今回は原作ゲームPVのあの人たちが登場します!


「3...2...1...どうぞ」

心臓の鼓動に合わせるようにカウントが始まる。そして手振りで彼に合図が出された。

彼は目の前のカメラにRECの文字を確認すると、咳払いをした。

間を置き、いよいよ口を開く。

「はーい、こちら現場です!」

キュー出しである。彼らクルーの着る作業服の背中には『EDF JAPAN 広報』のロゴマークがでかでかとプリントされていた。

 

彼らはEDFJAPAN広報事務局の取材クルー達。今回の地底侵攻に際し、広報活動の一環として作戦に参加することになっている。企画が出された当初は田中司令も渋っていたが、作戦エリア内に深入りしないことを条件に許諾された。

だが取材班としてはリアルを追求する思想が根ずいているのか戦闘をカメラに収めたいという旨が話題に上がり、田中司令及び同席した葉山隊の面々は顔を青ざめさせるばかりだった。

高城「どうするんですか!現場は死線です!」

里見「凄い報道魂ですね...」

高城は怒り、里見は引いてしまうほどの覚悟に折れた。

 

という経緯があり、取材班には葉山隊が護衛として就くことになった。なるべく平和に任務を終えたい葉山達は、腕のレーダーを頼りに経路を模索し逐次報告しあっている。

地下トンネルを少し進んだ先に横穴が空いているようで、そこには赤い点がひしめき合っていた。

すぐに葉山隊の面々は目で合図する。

「ここは通らない方がいい」と、目で会話していた。

 

本田「今日は、このEDFの技術が詰まった最新鋭の地底戦闘用歩行戦車『デプスクロウラー』に乗り込んで、巨大生物の巣穴に潜入して敵を一掃してみたいと思います!」

言葉を聞いた葉山達の背筋に悪寒が走る。

巨大生物の恐ろしさを知っているのかと言いたくなるが、映像がライブの手前抑えた。

 

本田広報官は画面の向こうのキャスターに応対しているようで、

本田「大丈夫大丈夫!心配ご無用です!

本田「広報官と言えど私もEDF隊員!毎日体を鍛えているのでへっちゃらです!フォーリナーなんか握り潰して見せますよぉ!」

と豪語する。

確かに本田は正規隊員だが、この楽観的すぎるオーラのどこに戦闘力を感じるのか。

本田「それでは早速、EDFの出動です!」

本田は握りこぶしを前に伸ばし頼もしさを作って見せた。

 

本田「では行きましょう!」

葉山「はい」

本田はデプスクロウラーに乗り込み、前進を開始。どうやらビークルの映像を撮るらしい。デプスクロウラーが前進するわしゃわしゃという動きは頼もしさを感じられる。映像にも映えるだろう。

葉山《では、そのまま直進でお願いします》

本田《レーダーには敵の反応があるみたいですが…》

葉山《えーっと…》

本田《軽くひねり潰してやりましょう!

葉山の回答を待たずにズカズカと進んでいく。

やがて横穴にたどり着き、広間に出た。壁や天井を警戒するが巨大生物の姿はない。反応はこの先にある別の広間ようだ。

本田《巨大生はいないようですねぇ……お! こっちですね! GO GO!》

そのまま本田は広間へ進み、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キシャァァァァァ!!

 

新庄「おい、勝手に喧嘩を売るなぁ!」

 

 

 

 

 

……見事に甲殻型巨大生物の群れの真ん中に入り込んだ本田は酸噴射の猛攻を一手に引き受けた。

 

 

 

葉山「戦闘開始ッ! 結城と大黒はクルーを守れ! 俺と里見、高城、新庄は本田さんを援護するぞ!急げぇ!」

 

 

5人「「「「「りょッ…了解!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

【EDF広報事務所、撮影ブース】

 

姫川「……そんな、EDFの最前線に立つ隊員達の活躍ぶりを、本日は、ライブ中継でレポートしてみたいと思います」

姫川「早速現場を呼んでみましょう。本田さーん?」

姫川は地方の情報番組のような砕けた雰囲気で原稿を読み進め、現場に赴いている本田を呼び出した。

本田《はーい、こちら現場です!》

本田《どうですかこの装備。かっこいいでしょう!》

顔を覆い隠す長方形のバイザー、小型のパラボラアンテナがクルクルと回転する、空爆誘導の要となる背中の装置。

スタイリッシュではない、まるで男のロマンを形にしたような見た目であった。

そんな現EDF陸軍空爆誘導兵の戦闘服に身を包みこんでいる。

 

本田《今日は、このEDFの技術が詰まった最新鋭のバトルマシン『デプスクロウラー』に乗り込んで、巨大生物の巣穴に潜入して敵を一掃してみたいと思います!》

姫川「十分に気をつけて下さいね」

 

それからカメラは前進するデプスクロウラーを追いかけ始めた。

やがて地下鉄トンネルに空いた横穴に到達し、

葉山隊と本田の現職のやり取りをしっかりとカメラに収め、

本田《巨大生物はいないようですねぇ……お! こっちですね! GO GO!》

と張り切っていた。

 

姫川「本田さん、そもそもデプスクロウラーはどんな目的で開発されたのでしょうか」

段取り通り、話題を振った。

 

本田《姫川さんよくぞ聞いてくれました! デプスクロウラーの正式名称は地底戦闘用バトルマシン。その名の通り地底での戦闘を想定して作られたバトルマシンです。地上戦闘のみで活躍するベガルタとは違い、デプスクロウラーは戦う場所を選びません!》

本田《それにご覧いただけますでしょうか! この跳躍!

ビル三階にも及ぶ跳躍をカメラが追った。ちなみに、現在居る広間はそれでも天井につかないほど広く高い。

本田《四つのしなやかな副アームを使ってー! さらにぃ!》

本田《こうしてー! 壁もぉ! 天井も! 思いのままに進むことが出来るんですよぉ! ちょっと酔いますけど…

 

姫川「大型ライトがついていて明るいですし、怖いもの無し、ですね!」

本田《おぉ! 敵が見えてきましたよ!》

 

 

本田《それでは、一斉射撃、スタートォ!》

 

 

 

 

 

本田《…えーっと、ちょっとですねぇ、敵の数が多いようですね……

姫川「ええっ…大丈夫ですか!?」

声色が徐々に頼りないものへと変わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本田《なんのなんの! ここからが本番んんんんやばいやばいやばぁい!

怒号が聴こえ、映像が途切れるバックグラウンドで、なにやら爆発する音が聞こえた。

 

 

姫川「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【地底】

 

本田「糸がぁ!糸がぁ!」

蜘蛛型巨大生物に囲まれ、絶叫し、何本か糸が付着しているが本人はピンピンしている。流石はEDF現役軍人か。

一方の葉山達は見事な連携を行い、本田に群がる巨大生物を駆逐していく。

もはや撮影クルー達は本田ではなく葉山隊を撮していた。

マズルフラッシュの合間に見える勇姿はまさに勇猛果敢なEDF軍人のそれである。

葉山「リロードする!」

里見「カバー!」

新庄「カバー!」

高城「援護します!」

 

クルー「うおっ!?」

大黒「危ない!」

結城「俺たちも少しずつ前進しよう」

 

 

【EDF広報事務所、撮影ブース】

 

姫川「あ、中継の方、つながる模様です」

姫川「!! すごい…」

再び繋がった中継映像に映っていたのは葉山隊の戦闘だった。

堅実なその戦いぶりに見入ってしまった姫川はハッと我に返ると映像の隅に巨大生物が集中してるのに気づいた。そしてその原因を見るや、顔を引きつらせた。

 

 

 

 

本田である。

本田《酸だぁ! 酸だぁ! うわああああ》

最初の勢いはどこえやら、すっかり怯え切った様子で、しかし応戦している本田。メンタルは弱いくせにタフさは凄まじい本田に呆れる。

 

そして再度、中継は途切れてしまった。

 

姫川「……はい」

姫川「本田さんは置いておいて、先ほどのレンジャー隊員の戦いはいかがでしたでしょうか。私も洗練された戦術に感動してしまいました!」

 

その後無事、番組は終了した…

 

 

本田の安否は不明だが。

 

 

【地底】

 

里見「クリア!」

葉山「よし、クルーへの被害はゼロ。本田さんは……」

 

その時、蜘蛛型巨大生物の死骸の山からボロボロの本田がひょっこりと現れた。

葉山「無事の…ようですね」

本田「はいぃ…こわいよぉこわいよぉ

 

すっかり縮こまって震えていた。

葉山「無事で良かった。…巨大生物の群れに突撃するとはとてつもない勇気をお持ちですね」

無理がある。と結城は思った。

見え見えだがフォローを入れる葉山を改めて尊敬の念をこめて眺める。

本田「い…いやぁ、それほどでも/// 皆さんこそ、本物のヒーローを見ているようでした。感服しました」

葉山「いえいえ、我々はただのEDF軍人、その一部隊ですから」

本田「ご謙遜を~」

 

葉山「では、そろそろ地上に帰還しましょう」

本田「はい! 本日はありがとうございました!」

 

そして無事に地上に送り届けたあと、葉山隊は本部からの嘱託によって先遣部隊とストームチームの救援に向かうことになる。

 

 

余談だが放送終了後、マイナスな指摘ももちろんあったが、葉山隊の活躍や何故か本田の馬鹿らしさ(なぜプラスなのか、葉山隊の全員が思った)が反響を呼んだらしく、事件はあれど結果オーライな出来事であった。

本田さんは事務所でピンピンしているらしい。相変わらず強いのか弱々しいのか分からない不思議な人だ。

地上に出た後、本田に聞いた。

なぜ、そこまでするのかを。

すると彼は…

「8年前の地獄を当時テレビ局員だったのですが生き抜き、テレビ局が襲撃にあって絶体絶命だったところを助けていただいたEDFに入隊を決意したんです。実働部隊ではなく広報官を志望し今日に至るのですが、私は戦場を可能な限りカメラに収め、自分が感動したEDFで働く人達の勇猛さを届け、少しでも世界が明るくなれば! という思いで仕事をしています。戦場が死と隣り合わせなんて知っています! しかしそんな中で地球を、人類を守るために自分の命を顧みず戦う隊員達を撮りたいのです!」

 

と言うのだ。人は見掛けに拠らないなぁ…と葉山隊の面々は思った。見た姿は……最悪だったが、そこまでの信念とタフさを持っているのだ。目の前の彼を見る…と、さらに首を傾げる葉山隊であった。




…本田さんは一言で言うならばまさしく「ヘタレ」なのですが、
中身は真剣なものにしてみました。

19/02/23 特殊タグを試験的に追加。結果、とてもうるさい仕上がりに。

あと、今回をもって第一章を終了し、第23話からを第二章としたいと思います!

理由は…とくに真面目な理由はありません。章管理機能を使いたかっただけです。ハイ。


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一周年記念小話
一周年記念小話 第1話 決意


今日18日で、このweb小説も一周年を迎えました。
今までの投稿ペースと、原作を知っている方からすると、大分遅く間隔の長い投稿を続けてきましたが、練習として、まったく国語に疎い状態から始めた身としてはとても濃い一年

さて二年目。章も新しく変更(23話から)し、続けていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。


時系列は、考えてません。


梅雨も終わり、雨粒が煌くある日の夕方。

まだ湿った土を勢いよく蹴る子供たちを眺める影があった。

一人は葉山智。

そして葉山の横には夕日に染まり純銅のように輝く茶髪、器量の良く、右目の目尻下に泣きボクロを蓄えた顔立ちがあった。交差するサッカーボールや無邪気な子供達をうっとりと眺める彼女を横目で盗み見、自身も幸せを実感した。

春原「どうしたの?葉山さん」

葉山「いや、何でもない」

ふたりがいるのはとある小学校の校庭。この小学校の周辺は先の戦いで避難所に指定され、約100世帯ほどの人数が生活を続けている。学校の隣の公園では、仮設住宅の建設が自衛隊によって進められていた。

EDF JAPANもまた、物資輸送や浴場施設、警備に駆り出されていた。

レンジャー1-2の面々と、偶然同じ避難所に居たウイングダイバー11たちは警備隊として派遣されていたが、とりわけ葉山智と春原佳奈子には特別な理由がある。

この町には、佳奈子の実家があるのだ。そこで葉山は、衝撃の事実を佳奈子から聞かされた。

 

春原「今日はありがとう。色々話せて、知れて、良かった」

葉山「佳奈子こそ、勇気を出して話してくれてありがとう」

佳奈子は俯きながらも小さく微笑んだ。

が、葉山の労りの返答に、申し訳なさそうな顔に変わった。

春原「そんな!葉山さんの方が辛い経験をされてるのに・・・」

葉山「遠慮はよすんだ。その人にとって辛いことは、他人には推し量れない事なのだから」

春原「うん・・・。ごめん」

葉山「謝る必要も、ないんだ」

オロオロする佳奈子の肩に手をかけた。

 

 

結城「葉山さ・・・」

ハンヴィーから降り、夕食のレーションを差し出そうとした結城は目の前の微笑ましい光景に足を止め、ハンヴィーに戻る。助手席のドアを開くと、後部座席でわかめご飯にスプーンを突っ込んだ里見と運転席でボーッと夕焼けを眺める高城がおかえりと声をかけた。

避難所の死角に止めたハンヴィーで夕食をとる予定になっている。

里見「おふたりは?」

結城「邪魔できる雰囲気じゃなかったよ」

高城「いい雰囲気ですねぇ」

ハンドルに両腕を乗せ、ほんわかしたオーラを発する二人に目線を移した高城の声が降って沸いた。

結城「新庄さんと大黒は?」

里見「お湯を貰いに行きました」

結城「俺も、食べ始めるか・・・」

危機感の欠片もない声で呟く。再度ドアを開き、ムクッと立ち上がると、炊き出しを行う自衛隊とEDFのテントに向かった。

 

 

葉山(まさか、両親を亡くされていたとは・・・)

葉山は心の中で考えていた。隣の微笑みの裏にある悲しい顔を。

葉山自身、2017年の戦いで両親を亡くし、実家で一人暮らしをしているが、佳奈子もまた2017年に両親を亡くし、今居るこの町の実家で一人暮らしをしている悲しい過去を持った人物だったことを。

 

 

==================================

 

少し、昔話をしようと思う。

俺はごく一般的な家に生まれた。優しい両親と妙に懐く妹。理想の家族と言われたこともある。

学生時代は成績中の上を維持し、友達付き合いも部活動、放課後ともに充実してたように思う。

順調に歩み、私立大学を普通に卒業。大手でもない企業に就職し、毎日仕事と趣味を嗜んでいた。

 

 

 

 

が、そんな面白味のない生活をしていた俺に転機が訪れた。

 

仕事場で知り合った後輩、薫森 香織 / しげもり かおりと結婚することになった。愛し、愛され、円満な生活の毎日。当時28歳で第一子、葉山 櫻 / はやま さくらを授かった。2016年の出来事だった。

 

ちょうどその頃。2015年に、国連機関によって地球外文明体の存在が秘匿されていたというリークが物議を醸した。

 

対話の準備を推し進める世論。侵略の危険性を説く有力者たち。

その有力者に反発し、各地でデモや傷害事件の発生。

 

ある日出勤すると、俺の勤めていた会社は窓ガラスが割られ、オフィスの惨状を理解するのには数分かかった。なんでも、会社の代表取締役がある有力者と懇意にしているSNS発信から集った暴徒が破壊して回ったらしい。

 

会社は倒産。

 

まもなく路頭に迷った俺は、警備会社に再就職し、そこで得た伝手に紹介されたのが国際連合地球防衛局の警備だった。

世論の的になることも多かった地球防衛局は、かなり人手の欲しい状態になっていた。仮眠室に数日お世話になると、妻かおりとは電話でのやり取りが多くなった。

それでも出来るだけ顔を出すようにし、大切にしてきた。

 

ある日、地球防衛局の方針転換で、独自の実働部隊を組織することになる。

そこの職員とも交流があったため、入隊を強く勧められた。

最初期の部隊には、自衛隊のOBも多かったため。それに、

本当は、自分の家族だけを守ってやりたい。そのためその話を蹴った数か月後。

 

大切に育んできた平和は、あまりにもあっけなく崩れ去った。

 

2017年1初旬。妻娘と両親はデパートに出かけ、妹は交際中の彼氏と共に町を離れていた。

 

そんないつもの日常に影が落ちる。

 

フォーリナーが日本上空に降下。政府が交信を試みる中、船団のすぐ下に展開していた実働部隊。そこに突如、未知の生物群が出現した。巨大な昆虫だった。その昆虫は、「巨大生物」と呼ばれるようになる。

 

その巨大生物は市民を部隊の目の前で襲い始め、噛みちぎった腕を貪る。地球の昆虫が巨大化したような生物が市民を蹂躙する光景。居合わせた隊員達は激昂し、突如として現れた巨大生物との白兵戦があちこちで起こった。殲滅に成功するも、隊員達への被害も相当なもので、凄惨な光景が広がっていた。

 

俺は、その現場の一つに派遣された。

巨大生物は、強力な酸を噴射して攻撃してくるらしい。

人間のものと思われる肉片がたちまち液状化し、つんざく臭いがたちこめる。前例のない光景に、到着した救急隊員達が混乱している。

生存者など、誰一人としていなかった。

 

その数時間後、余裕が出来た俺は家族の状況を知りたいと焦り、電話にでないことに不安を抱きながらも情報を集め、家族のもとへ向かった。妹とは連絡がつき、無事だという旨を聞かされたときは胸をなでおろした。

 

家族の所在と搬送中の救急車、病院の情報をついに手に入れ、病院に向かった。

 

ーそこで俺を出迎えたのは、父親、葉山 楠雄はやま くすおの遺品と母親、葉山 泉はやま いずみの死体だった。父親の体は巨大生物が吐き出す酸にやられてしまったのか、いつかの誕生日に妻からプレゼントされた腕時計。一部が溶けた腕時計のみが残り、母親の体は上半身だけの無残な状態になっていた。

 

更に俺の心をドン底に落としたのは妻娘の死だった。

 

巨大生物の酸を左肩から腕にかけて浴びてしまい、肩峰が露出。左腕の皮膚もただれてくっつき、もはや肉の塊……EDF隊員に救出されたときは虫の息だったが、まもなく車内で息を引き取ったそうだ。

 

その時、まだ一歳だった娘はすでに亡くなっていたらしい。

かおりはさくらを守ろうと背中を巨大生物に向けたことで、倒れた時にさくらは地面に頭を打ち付け、かおりの体重がのっかり、そのまま。

 

亡くなった娘を片手で抱き、泣く暇もなく、呼吸するのが精一杯だったそうだ。移送中、かすれた声で。俺の名前を呟いたらしい。

 

 

 

生きていると心に言い聞かせていたことが拍車をかけ、俺は絶望の淵に突き落とされた。

 

その日はそれから覚えていない。泣き続けていたのだろう。居合わせた隊員に体を預けて病院のお世話になったことは覚えている。

 

 

その後、フォーリナーが巨大生物を使役していることが判明。

フォーリナーは、人類の敵であった。

 

 

そして俺は、EDFへの入隊を決意した。やつらに復讐するために。

それからは悪魔に魂を売ったかのように敵を殺すことだけを考えてきた。

 

しかし、さらに転機が訪れる。

 

所属していた分隊の分隊長が殉職した。

息を引き取る寸前、俺の手を弱く握りながらも声をひねり出そうとし、

俺が次期分隊長になること、そして、自分を見失わないことを諭された。

 

その頃は身内を殺された隊員が自殺したり、無謀にも敵に突撃し散る事件が後を絶たず、組織全体の士気も底辺と言わざるを得なかった。自分が死にたくないという気持ちを殺意が上回って戦場に立つこともあったことを初めて認識し、俺の心の中で考え方が変わった。

 

自分の配下につく人間を死なせないこと。その家族の顔をいつも思い浮かべること。

そして、両親、妻娘のために、自分ができることには最大限努力してきた。

生きるために。死に報いるために。

 

いつしか結城という部下が付き、庇って負傷し、隊長と同じセリフを掛けることになるとは思わなかった。

まるで昔の自分を鏡で見るような感覚に囚われながら、両親、妻娘のもとに迎えると安心したそこで意識は途切れた。

だが、現実は非情。生き残ってしまった。療養を経て流れるように前線に戻った俺は、決意新たに戦いに身を投じるのだった。

 

・・・と、長々と話してしまったが、今隣には新たに大切な存在ができ、妹夫婦や頼れる部下達と守るべき存在が手に余る程に増えた。俺は、皆を命に代えてでも守っていくつもりだ。

 

 

ーそう、命に代えてでも。

 

 

================================

 

春原「どうしたの?」

葉山「なんでもないさ。ちょっと昔を思い出してただけだ」

春原「そう・・・。ねえ、葉山さん、辛い時は、私が支えになってあげるから。どんなことがあっても、あなたを守りたいの」

葉山「俺も同じ気持ちさ。辛いことがあったら、俺が受け止めてやる。そしてなにがあっても、佳奈子を守ってみせる。絶対に悲しませたりしない」

俯く彼女をまっすぐな瞳で見つめる。そして涙を浮かべてはにかんだ彼女を胸に抱き寄せた。

その時、彼女のお腹の虫が鳴く。沸騰せん勢いの赤面に優しく笑み、葉山は言葉をかけた。

葉山「さあ、俺たちも食べてこよう」

春原「うん。葉山さん」

 

 

橙色の夕日と子供たちの遊びに興じる楽しそうな声に包まれながら、二人は歩みだした。

目線の先にある炊き出し中の班が、威勢の良い掛け声を行う。

炊事隊長「お前らぁ!俺達は自衛官だが調理師の端くれ。胃袋を掴むだけじゃダメだ。徹底的にねじ伏せろ!」

炊事隊員「「サーイエッサー!」」

 

そんな異様な光景に佳奈子は思わず声を上げて笑みがこぼれた。

葉山も不思議な目で炊事を行う自衛官達を見た。

 

佳奈子が一瞬いたずらっ子のような笑みを浮かべる。

その一瞬を見逃さず、不思議に思いながらも、葉山は再び歩みだした。佳奈子もそれに続く。

佳奈子「ねじ伏せる・・・か。ふふっ」

 

 

佳奈子は思う。自身の料理の腕を過信する訳じゃない。しかし、私のことをこんなにも大事に気にかけてくれる彼になにかお礼がしたい、彼を唸らせる料理を作ってあげたいと悩んでいた彼女にとって、今の言葉は最高の調味料となったのだ。

 

そんなことは露知らず、葉山は彼女の浮かべる微笑みに笑みを返すのだった。

 

 

 




1周年記念小話は、もう1話投稿する予定です。
(の、予定でしたが時間が取れずにいました。後日投稿出来ればと思います。)


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一周年記念小話 第2話 田中本部長の憂鬱

遅くなりました。
1周年記念小話です。


その日は猛暑を迎え、外は強い日差しに晒されていた。

 

関東方面情報局本部局のクーラーの効いた一室では、田中本部長をはじめとして各方面の支部長が集まっていた。

 

今日は攻撃的地球外文明体対策会議の日だ。

クーラーが効きすぎているのか、夏服で参じた面々は落ち着かない様子だ。

桑田と山口が露出した腕を擦った。一方、穂波は平気そうに会議の始まりを待っている。

田中は席を立った。壁に敷設された装置に手を伸ばし、温度を上げる。

席に戻ると、桑田と山口が「お心遣い、痛み入ります」と礼を述べた。

田中はコの字型に並んだ各方面支部長達に目を向ける。

支部長達は目礼で応えた。

田中「それでは、攻撃的地球外文明体対策会議を始める」

会議は研究棟から提出された『8年前より強固となった巨大侵略生物データ』や、『再来した攻撃的地球外文明体機械兵器データ』の情報共有や戦術のプレゼンだった。

フォーリナーの再来はEDF内に大きな精神的ストレスを与えたばかりか、戦死者も続々と出ている。EDFが築いた8年の努力をまさに踏みにじられたように。

田中「これにて、攻撃的地球外文明体対策会議を終了する」

一通り終了し、皆が机の資料に目を落としていた時。

ふと、桐島支部長が呟く。

桐島「ストームチームの英雄がいれば...」

その言葉を少なからず内包していたのか、穂波、宇佐美、桑田、山口がハッと顔を上げる。

穂波「田中本部長、彼の消息は。死亡したのは真実なのでしょうか」

田中「そうだ」

宇佐美「そんな一言で...」

田中「彼は死んだ。失踪宣言もなされた。私は実際に立ち会っている」

桑田「...」

田中「皆、予想外の事態で平静さを失っているんだ。彼が成し遂げたことを守り抜くのが英雄への手向け。しかし、現在敵は8年前のように猛威を振るい、殺戮の限りを尽くしている。所詮、我々はちっぽけな存在であるのに代わりない。彼が残した平和も仮初だったのだ。現実を見たまえ。我々は英雄に委ねるのではなく、現実に戦う。それが今のEDFのあり方だ」

 

しばしの沈黙の後...

穂波の元に1枚の紙が届く。

穂波「EDFオーシャンによると、日本海上空にて敵の輸送船団が移動中とのことです。あと11時間後に本土に上陸する恐れがあります」

宇佐美「迎撃部隊の編成に務めますのでこれで」

桐島「空軍に要請を行います」

山口「我々も備えます」

 

4人が仕事へと向かう中、関西支部長桑田は田中へと向く。

桑田「田中本部長。あんたの指示で動いてた俺には分かる。あんたの本心をな。いつか、彼は生きているという吉報を待っている」

田中「...」

会議室に1人となった田中はポツリと呟く。

田中「貴様が私に背負わせたものは重い。必ず精算させてもらうぞ」

 

そして田中は関東基地への帰路についたのだった。

 




これにて1周年記念小話を終了し、本編にシフトしようかと思います。

短い。


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第2章 エリーニュエス 激戦
23話 巨人兵団 『マザーシップ撃墜作戦フェーズ1』


マザーシップ撃墜作戦を開始する。だが、マザーシップはとてつもない数のロボット兵器に守られているため、まずは敵の守りを崩す必要がある。
本作戦の第一フェーズとして、まずは先遣部隊を投入。各地の敵の守りを突き崩す。
続いて第二フェーズ。先遣部隊の援護、そして敵本陣を叩く役割を負った本隊を戦線に投入。敵を掃討する。この間、司令部はポスト1に引き継がれる。
同時進行で第三フェーズ。本隊によるマザーシップへの攻撃を行う。
 
激戦が予想される。各隊の奮戦を期待する。


【総合作戦指令本部】

 

田中司令「状況はどうなっている」

沢見戦術士官「現在、戦局は膠着状態です。奪還に成功した街もあれば迎撃を受けて壊滅した部隊も。被害を受けた部隊のほとんどは建物内に避難するなどで逃れています。既に全ての先遣部隊が何かしらの損害を受けている状態です」

沢見戦術士官「また、複数の作戦エリアでヘクトル群が包囲網を形成するという計画的な行動をとっているようです」

田中司令「そうか…」

ゴリアス4《こちらゴリアス4! ギガンテス2両が大破、隊長も戦死されました! 撤退の許可を!》

沢見戦術士官「!? ゴリアス4が撤退の許可を求めています!」

田中司令「ぐッ…撤退は認めない! 新たな部隊を投入した。敵を押し返せ!」

機甲部隊『ゴリアス』は関西から召集した臨時編成の機甲部隊である。

田中司令は焦燥感に駆られ非情な決断を下す。撤退許可を切り捨てた。

滝山《こちらレンジャー8! 作戦エリアに到着した》

田中司令「了解。ゴリアス4を援護しろ!以降レンジャー8はストームチームの護衛から当作戦エリア内の部隊の援護に回れ!」

田中司令「ストームチームは前進を続けろ。コンタクトした場合のみ交戦を行え。それ以外には目も暮れるな!」

宮藤《ストームチーム、了解!》

田中司令「頼んだぞ…」

 

 

【市街地】

 

田中司令《撤退は認めない! 新たな部隊を投入した。敵を押し返せ!》

隊員(R)「なんだと!?」

隊員(R)「くそ! 馬鹿げてる!」

ギガンテス《敵が来るぞ! 構えろ!》

ゴリアス4は市街地をわかつように引かれた大通りに展開していた。

ビル間の小道からフォーリナーの地上戦闘用ロボット・ヘクトルが顔を出す。

隊員(R)「何がなんでも生き残ってやるぞ! エンゲージ!」

隊員(R)「そうだなぁ!」

ギガンテス戦車1両、レンジャー9-4分隊4名という少ない戦力だが、ヘクトル1機であれば破壊は造作もない。

隊員(R)「やつら、体の中に頭を隠してるのか……」

ヘクトルの胴体部上部が開き、頭部が出現した。

頭部と言っても枠にコアがはめ込まれているような見た目で、前面は円形に開いている。まるで1つ目を思わせる。

隊員(R)「顔を隠してるとはな。図体のわりには、シャイな野郎だ」

馬鹿にするような台詞を吐き捨て、AF-14のトリガーを力強く引いた。

ギガンテス戦車の砲撃は胴体前面を吹き飛ばし、露わになったコアをAF-14の弾丸が蜂の巣に変える。

 

フォーリナーの機械兵器はいずれもヘクトルであれば頭部(頭部を格納した際は胴体中央部)、飛行ドローンなどは顔の前額部を思わせる辺りに赤く光るコアが搭載されており、それが動力源であるらしい。コア自体は歩兵の小火器で穴を開けられるほど脆い。

 

コアが文字通り蜂の巣となったヘクトルはその場に崩れ、爆発を起こした。

 

ちなみにそのコアには異物を取り込んだ、撃ち込まれた際に自爆装置なるものが作動するようで、フォーリナーの機械兵器の大半は撃破後爆発を起こすのだ。

……と言っても灰も残さず爆散する訳では無いので撃破された機械兵器はもれなくEDF情報本部研究棟に回収されている。

割と異星文明人は科学技術の流出に無関心なのかもしれない。

 

隊員「おい! レーダーを見ろ! 囲まれているぞ!」

いつの間にかレーダーには全方位に敵を示す赤い点。恐らくヘクトル。そして作戦エリア中に戦闘中の味方の反応が交差している。

 

滝山「こちらレンジャー8! 作戦エリアに到着した」

田中司令《了解。ゴリアス4を援護しろ!以降レンジャー8はストームチームの護衛から当作戦エリア内の部隊の援護に回れ!》

田中司令《ストームチームは前進を続けろ。コンタクトした場合のみ交戦を行え》

宮藤《ストームチーム、了解!》

 

 

後方から援軍の声。

レンジャー8と武装装甲車両グレイプだ。ストームチームはグレイプに搭乗しているらしい。

しかし前方に新たなヘクトルが出現した。

滝山「ランチャー、射撃用意! 撃て!」

滝山の分隊員がスティングレイロケットランチャーを構え、ヘクトルの胴体部に直撃させる。

白銀の装甲は地面に焼け落ち、機械的な内部が露出した。

そしてコア部分に滝山達のショットガンやゴリアス4のアサルトライフルの弾幕が殺到。

ヘクトルは地に崩れた。

ゴリアス4「ゴリアス4はレンジャー8の指揮下に入ります」

滝山「よし!」

 

WD7隊長《こちらウイングダイバー。目標地点に到着しました》

 

続く後続部隊の到着をこれ幸いと救援要請が重なる。

フェンサー3隊長《こちらフェンサー3! 敵が列を成している! 我々だけでは処理できそうもない、援軍を!》

レンジャー2-9隊員《こちらレンジャー2-9、隊長が戦死されました……! 我々だけでは戦えません!》

田中司令《こちら本部。レンジャー8、フェンサー3と合流せよ》

田中司令《ウイングダイバー! レンジャー2-9の救援に向かえ!》

 

沢見戦術士官《現在、当作戦エリアを包囲するようにヘクトルの大軍が進軍中です!》

田中司令《こちら作戦指令本部。再度現地の部隊に告げる。後続部隊が到着した。ヘクトル群が到着する前に合流を完了し、総力を結集してヘクトル群を攻撃せよ》

 

 

【市街地、レンジャー8】

市街地を進むと、ビル間の小道にフェンサー3は身を隠していた。

ヘクトル群は大通りを巡回している。

フェンサー3隊長「良かった。もうすぐヘクトル群がここを通過する。共に迎え撃とう」

その後フェンサー3とレンジャー8+4名はビル陰に隠れ、

ギガンテスの搭乗員(エアレイダー)は”ZEランチャー”というロケット弾発射型のセントリーガンを大通りの車線境界線に沿って設置していく。

エアレイダー「セントリーガン設置完了しました!」

 

そして先頭のヘクトルが滝山達の横を通り過ぎた、その瞬間。

滝山「始めてください」

エアレイダー「了解しました!」

エアレイダーがセントリーガンを起動し、

凄まじいバックブラストや轟音を伴ってロケット弾が先頭のヘクトルに着弾。更にリズムを奏でるように発射されるとヘクトル群を包み込む程の煙が上がる。

レーダーを確認すると、続々とヘクトルを表す赤い点が消滅。

残りは最後尾のヘクトルのみとなった。

 

突如、煙の中からヘクトルの腕に搭載されたガトリング砲が唸りだす。

無数の光弾を撃ち込まれたセントリーガンは暴発し、ヘクトルを巻き込んで爆散した。

ヘクトルは片脚を吹き飛ばされ、また胴体部を大きく損傷。

しかし撃破まではいたっておらず、ガトリング砲を乱射しながら地面に倒れ込んだ。

未だ巻上がる煙の中から激しい損傷を受けたヘクトルが姿を現す。

すかさずフェンサー3がガリオン軽量機関砲(機関砲をフェンサーの個人携帯武器に再設計した火器)を撃ち込みヘクトルの装甲に穴を開ける。その攻撃によりズタズタになった装甲が剥げ、側面からコアが露出。滝山達のショットガンによってコアは蜂の巣へ。ガラス状の破片が飛び散った。

たちまちコアはオレンジ色に光だし、黄色に近くなった瞬間に爆発する。

そこには焼け焦げたヘクトルの残骸だけが残った。

 

安堵する一同。しかしそれは突然だった。

フェンサー3隊長「はっ! シールド構え!」

隊員(F)「うわあああああ」

フェンサー3の面々は咄嗟にシールドを構えるが、爆風で吹き飛ばされてしまった。

煙の中から赤い光弾が数発コーン状に発射され、続け様に着弾地点で爆発を起こす。

隊員(F)「いててて…」

目の前に佇んでいたのはもう1機のヘクトルだった。

残り1機だと思われていたが、煙に紛れて息を潜めていたのだ。

重なる煙で姿は見えていなかったし、立て続けの爆発のせいで機械の音も聞こえずにいた。

滝山「ランチャー!」

隊員(R)「はいっ!」

滝山隊のランチャーがヘクトルに着弾。装甲が地面に剥がれ落ちた。

煙にコアの赤い光が映える。

露出したコアに攻撃を加え、そのヘクトルは崩れた。

滝山「大丈夫ですか!?」

フェンサー3隊長「ははは、油断は禁物ですね」

フェンサー3隊員「ったく酷い目にあったぜ…」

どうやら全員無事なようだ。

 

 

【市街地、ストームチーム】

 

ストームチームはレンジャー8と別れた後、市街地に深入りしていた。

ストームチームの隊長である彼、そして宮藤が向かい合っている。

宮藤もよく喋る性格では無いが、向かい合う隊長は寡黙で殆ど無口なので、居心地悪く感じていた。

「宮藤、戦闘準備だ。任務と人情、どちらを優先する?」

かと思うと唐突に答えに詰まるような質問を投げかけてくる。

宮藤「…と、言いますと?」

何かを見通したような口ぶりに戸惑うが、装備を持ち上げた隊長にならった。

 

その瞬間、隊長の予感は的中した。

キャリー1「戦闘のご準備を!」

宮藤「どうした!?」

キャリー1「前方にヘクトル5機と交戦中のレンジャーチームを発見。回避出来ません」

「本部。ここは激戦区と言ったな?」

無線の向こうの田中司令は察したのか、ため息をついた。

田中司令《分かった……作戦指令本部よりストームチーム。レンジャー2-9と合流し、戦闘を続行しろ》

やはり、隊長と田中司令のやり取りはただの司令官と一隊員の仲とは思えない。

宮藤は不思議に思いながらも意識を戦闘に向ける。

宮藤「行ってくる。そこに停めててくれ」

キャリー1「了解しました」

「行くぞ」

宮藤「Yes sir!」

宮藤と彼は互いに頷くと、グレイプの後部ハッチを勢い良く開け放った。

 

 

WD7隊長「エンゲージ! レンジャー2-9、加勢する!」

2-9隊員(R)「助かるッ!」

宮藤「ストームチーム、エンゲージ! ショルダーウェポンシステ厶、アンロック!」

宮藤の肩に装備された(これもまたフェンサーのパワーフレームが可能にした。)個人携帯用軽量迫撃砲、FGO2高高度強襲ミサイルが起動した。

宮藤の隣に立つ彼はライサンダースナイパーライフルを構える。照準は真っ直ぐ敵に向いていた。

WD7隊長&2-9隊員(R)「ストームチーム!?」

宮藤「俺達も混ぜてもらう!」

 

それからは連携がヘクトル群を圧倒した。

宮藤は両手の武器、軽量迫撃砲を駆使してヘクトルの装甲を散らす。そしてレンジャー2-9はMMF-43狙撃銃でヘクトルのコアに注力。

ウイングダイバー7は持ち前の飛行能力を駆使して敵の注意を引きながら攻撃を加える。レーザーライフルから発射されるレーザーはヘクトルの装甲を切断には至らないものの傷をつけた。

板に切れ込みを入れたように。

そこに彼はいつの間にか肩に担いでいたスラッグショットショットガンに持ち替え、AP弾を撃ち込んだ。AP弾を受けたヘクトルの装甲はいとも簡単に折れ、勢いの止まらない弾はコアに風穴を開けた。

 

その後もEDFの反撃は続く。

結局最後の機体が撃破されるまでストームチームは加勢し続け、敵の全滅を確認すると無事だったキャリー1の元へ。

次の戦地に向けて移動を開始した。




気付けば40話。
本編の更新は遅いですが話数はそれなりに大きくなりましたね。


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24話 頂の飛船『マザーシップ撃墜作戦フェーズ2』

次のミッションの前段であるため、短めです。


ストームチームは8年の傷が未だ残るネオポリスの街を抜けて山岳地帯に入っていた。

マザーシップは先の山岳地帯に停泊中である。

いよいよ敵本丸に突入しようかといったところだ。

しかし困ったことに、ストームチームの目の前には進路に沿ってシールドベアラーが配置されていた。

 

シールドベアラーを投下したのは敵輸送船1機。これもまたストームチームの目の先に浮遊している。

 

田中司令《ストームチーム、シールドベアラーを破壊しろ!》

宮藤《了解》

田中司令《なお、輸送船撃墜はブラスト中隊が担う。ストームチームは、投下される敵戦力、シールドベアラーに注力せよ》

ブラスト1《こちらブラストリーダー! イプシロン自走レールガン、配置完了。攻撃許可を待つ》

「ここから先は敵の本陣だ。宮藤、準備はいいな?」

宮藤「……分かってます!」

宮藤は深呼吸をして、彼の問に答えた。覚悟を決めた。

いよいよ敵の本陣。マザーシップはフォーリナーの兵器の中で最大最強の存在だ。

いくら精鋭部隊と言えど、無事では済まないだろう。

 

そんな事を考えている間に、先に動きを見せたのは輸送船だった。

下部ハッチが開き、シールドベアラーの防御スクリーンの中に甲殻型巨大生物が投下される。

田中司令《レールガン、射撃開始だ!》

ブラスト1《レールガン、射撃、開始ッ!》

ブラストリーダーが命令を復唱する。

1キロほど離れた場所に展開したイプシロン自走レールガン車両の戦車中隊、部隊名『ブラスト』の各車からレールガンが発射。

見事輸送船の内部に着弾し、転送装置の欠片が地面に落ちる。

しかし下部ハッチは閉じ、輸送船は移動を開始。

黒煙を上げながらも、浮遊し続けている。

「我々も行くぞ!」

宮藤「はい!」

 

彼と宮藤は前進を開始。先程のレールガン着弾で敵の存在を悟った巨大生物の群れが徐々に距離を縮めてくる。

 

彼はスラッグショットガンで1匹ずつ確実に葬っていき、宮藤はフェンサー用近接装備『ダイナモ・ブレード』(フォースフィールドの鎌を生成、投擲し敵に斬撃を加える武器)で巨大生物を複数体巻き込みながら切り裂いて行く。

 

間もなく殲滅し、シールドベアラーに攻撃を加えた。

護衛対象の居ないシールドベアラーは一方的に葬ることが出来る。

 

スカウト2(FO)《輸送船が開きます!》

ブラスト1《全車、射撃準備! 撃てぇ!》

 

そしてストームチームによるシールドベアラーの殲滅が確認され、

そのすぐ後に長い抵抗を続けた輸送船もブラスト中隊の撃墜が完了した。

 

 

【総合作戦指令本部】

 

田中司令「いよいよだ……」

沢見戦術士官「そうですね。8年前のあの日、フォーリナーは人類の生存圏を侵し、我々EDFも満身創痍でした。しかし、今は違います」

田中司令「うむ。奴らに目に物見せてやろう」

 

宮藤《こちらストームチーム、作戦エリアに入った》

田中司令「了解した。本隊が到着次第、作戦を開始する。それまでに弾薬を補給し、戦いに備えておけ」

宮藤《了解》

 

 

【山岳地帯、ストームチーム】

 

ストームチームは見晴らしの良い丘に息を潜めていた。

マザーシップは目前である。敵の兵器の中で最大最強の存在。野放しには出来ない。

宮藤「あれが、マザーシップですか…」

「そうだな……」

彼はなにか懐かしいものを見ているようで。

宮藤「隊長は、8年前戦いに参加しているのでしたか?」

「そうだ。あの頃はEDFもここまで力を持っていなかった。だが今は違う。のこのこと戻ってきた奴らに再び思い知らせてやろう」

宮藤「ええ」

 

宮藤は脱いでいたヘルメットを被り直す。

隊長の活躍ぶりについて、フォーリナー再襲来以前の記憶は全く知らない宮藤だが、紛れもなく8年前を戦い抜いた勇士なのだ。

 

伝説の英雄は8年前のマザーシップ決戦で消息不明になったと聞いた。

隊長もその作戦に参加していたのだろうか。

 

8年前の英雄。人一倍EDF軍人としての誇りが強い宮藤の憧れである。

もしかしたら隊長とも面識があったのではないか。それは分からない。聞いてみたい衝動にかられたが、敵を目前にしている手前、無駄口は慎むことにした。

 



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25話 停泊 『マザーシップ撃墜作戦フェーズ3』

第25話、「停泊」です。本作では重要なファクターとなるある事実。そして所詮人類は……

それを交えつつ展開していく激動の25話です!


宮藤「あいつがマザーシップ……」

宮藤は目の前に浮かぶ巨大な球体を見据えていた。

その正体は、フォーリナーのマザーシップ。輸送船以上の艦載数、そして先の戦いで破壊に成功した四足歩行要塞を格納する巨大な輸送船であり、単艦で凄まじい攻撃能力を有している。

8年前、この1隻を撃墜するのに多くの犠牲を払った。

そして二度目の侵略に際し確認されたのはなんと10隻。普通に考えて手に負えない数である。しかし現在EDFは開戦最初期に2隻を撃墜、そして2隻を中破させるという快挙を成し遂げた。が、以降の撃墜は難航し現在8隻のマザーシップが大西洋上、南米上空、宇宙軌道上を浮遊している。依然脅威は払拭出来ずにいるのだ。

 今宮藤の前にはその内の1隻が浮遊していた。

 しかも、周囲に輸送船はいない。護衛は飛行ドローン数機という少数だった。いくらなんでも少なすぎではないか。心配が募る。

 

田中司令《本部よりストームチーム。敵輸送船団が日本領空内に侵入した。作戦エリアにむけて進行中だ。戦闘に介入してくる恐れがある。注意せよ》

 その懸念は、すぐに現実となった。ヘクトルに踏み荒らされたであろう草原に影が落ちる。敵輸送船が5隻、上空から降りてきたのだ。

 敵がこちらに気づいたのか。否、実際の位置は補足されていないのだろう。敵がこちらに戦力を寄越す気配はない。しかし、周辺地域に展開したヘクトルの機械兵団が殲滅されたことを察知しての行動なのだ。そして、やがてここに辿り着いた人類を迎え撃つために。

 宮藤は隣の男に指示を仰ぐ。

宮藤「隊長、どうされますか?」

  「今はまだ動く時じゃない。本隊が到着するまでの辛抱だ」

宮藤「……了解」

 目の前の男はとても落ち着いた様相で敵の動向を伺っている。

 その時、無線で進展があった。味方部隊が到着したのである。

梶原《こちらレンジャー4-1。作戦エリアに入った……ブリーフィングの時は単艦との話じゃなかったのか?》

田中司令《こちら作戦指令本部。先ほど作戦エリアに侵入してきたのだ。現在、スティングレイランチャーを装備したレンジャー2もそちらに向かっている。まとめて撃墜する算段だ》

梶原《了解。では、ストームチームと合流します》

 

梶原「レンジャー4-1、到着しました」

宮藤「ああ」

  「……」

 敬礼を行い、レンジャー4-1の面々に状況を説明した。

 相変わらずこういった処理を隊長は宮藤達部下に任せる。

 

 不意に、隊長が、

  「ん? 来たか」

 そう呟いた。

 隊長の目線の先……舗装された道にグレイプが今まさに停まる。

  「宮藤、ついてこい」

宮藤「はあ……」

 宮藤はポカンとするが、梶原に断りグレイプのもとへ駆けていく隊長について行く。

キャリー1「ストームチーム総隊長殿、お待たせしました」

  「ああ、早速彼に武器を」

キャリー1「分かりました」

 自分を置いて事を進める二人。

宮藤「あの、隊長?」

  「今の装備では自由に動けないだろう。マザーシップ戦においてフェンサーは移動力の点で分が悪い。ある程度の機動力を備えた装備にすべきだ」

宮藤「なるほど……」

 確かにそのとおりだろう。流石は8年前の大戦を戦い抜いた戦士だ。フェンサーが正式にEDF陸戦部隊の一兵科として設立されてから1年弱。装備したことが無いはずのパワーフレームの特性を理解し、場面ごとに最適化している。

 感心しながら宮藤はグレイプから下ろされた武器を装備する。結果FGO2高高度強襲ミサイル、FH12個人携帯用軽量迫撃砲、ダイナモ・ブレード2本を積み込み、ブラストホール・スピアM3、FG9ハンドガトリング、FHD3個人携帯重迫撃砲、タワーシールド3Eを受け取った。

 彼は彼でライサンダースナイパーライフルを積み込んだ代わりにスティングレイロケットランチャーを担いでいる。

 

 まさにパワーフレームの恩恵を受けた機動力と強力な攻撃を兼ね備えた武装で、宮藤は少し感触を確かめる。

キャリー1「それでは」

 ヘルメットのバイザーを下ろし、軽く一礼する。

 グレイプは作戦エリアを離脱した。

 

 グレイプを見送ると同時に、無線が入る。

ウイングダイバー2-4隊長《ウイングダイバー、作戦エリアに入った!》

フェンサー4-4隊長《こちらフェンサー! 作戦エリアに入った。これから徒歩で向かう》

 続々と集まる戦士たち。しかし悪い情報が飛び込んできた。

田中司令《こちら作戦指令本部。現在本隊が巨大生物の急襲を受けている。……!?》

 さらに状況は悪くなる一方だった。

隊員A(R)「おい見ろ! マザーシップが高度を上げているぞ!」

 見ると徐々にマザーシップが上昇していた。

宮藤「退避! 退避だ!」

田中司令《フェーズ3作戦エリアに展開中の部隊に告げる。マザーシップが上昇を開始した! ジェノサイド砲を展開される危険性がある! 後退せよ!》

隊長(WD)《後退するぞ!》

隊長(F)《警戒!》

 中ビル程の高度であればそれより長い巨大砲台(ジェノサイド砲)が展開されることはない。しかしある程度高度を持った場合、難なく下方に展開し、真下にいる宮藤たちは格好の的となるだろう。

 しかしその懸念は外れることになる。

 マザーシップはむしろある程度離れたところからも下部へと射線が通る位置に停止した。

宮藤「停止した……よう、ですね」

 

 咄嗟のことで周りを確認し忘れていたため周りを見渡すと、すぐ後ろに隊長がいた。さらに宮藤と彼は丘を登っていたようだ。見下ろした先にレンジャー4-1の姿がある。

梶原《奴は何がしたいんだ…?》

宮藤《分からない。しかし…》

梶原《本部! 本隊の到着を待っていては敵に猶予を与えるだけだ》

田中司令《そうだな……いつジェノサイド砲を展開できる高度までまた上昇されるか分からない。今叩くべきか…》

 田中の声色には決意が満ちていた。二の句を待たずとも次の言葉は予想できた。本来なら自殺行為に等しいが事が事なので田中司令も焦りを抱いているのだろう。

田中司令《総員、戦闘を開始せよ! 作戦目標は、マザーシップの撃墜だ!》

宮藤《ストームチーム、了解》

梶原《レンジャー4-1、了解!》

隊長(WD)《ウイングダイバー2-4、了解。敵船団に突入する》

 複数の影が山影から飛び上がる。ウイングダイバー部隊が到着した。残るはフェンサーチームだが…

隊長(F)《こちらフェンサー! 巨大生物が穴を掘って出現しやがった! 交戦する!》

 巨大生物の待ち伏せに遭ったらしい。

 

 現在、フォーリナーの布陣は攻撃部隊の正面に1隻"No.1"、左に逸れて土道を進んだ先に1隻"No.2"、さらに先にもう1隻"No.3"。一隻目を右に逸れて当たる坂を登った先の丘上空に2隻"No.4"、"No.5"、数にしてマザーシップを輸送船5隻で囲うように展開している。元々地形が段になっており、まるで下層から順に攻略していく塔のような配置であった。

 

 最初に正面の輸送船に狙いを定める。それを察知したのか輸送船の下部ハッチが開き始めた。腕のレーダーにたちまち赤点が溢れる。正面の輸送船からは蜘蛛型巨大生物が投下されていた。

  「宮藤! お前は輸送船に注力するんだ! それ以外の部隊でお前を守る!」

宮藤「了解!」

 やはり素晴らしい方だ。レンジャー4-1はAF-17アサルトライフル、ウイングダイバーはレーザーランスという近距離用の武器を装備しているので輸送船に効果的な損傷を与えられるのは宮藤のショルダーウェポン、FHD3個人携帯重迫撃砲のみだろう。運悪く対艦攻撃部隊の護衛部隊が先んじて到着していた。フェンサーチームは現在1km先からこちらに前進中とのことだ。それを見越してのことだろうか。彼は戦闘慣れしている。それも対フォーリナーにおいてである。彼のことは8年前の最初期から終戦まで前線で戦い抜いた戦士という情報しか知り得ていない。同じ部隊に所属しても、だ。しかし彼がそうなら"英雄"はどれだけ人間離れしていたのだろうか。

 

 投下された蜘蛛型巨大生物が牙をむく。3秒間に10匹程の投下。しかし投下されてまもなく輸送船直下に(たむろ)っていた大群に向けて隊長はスティングレイランチャーを撃ち込んだ。着弾。後に2発のロケット弾が追い爆発を起こす。爆風が巨大生物を飲み込んだ。数匹を巻き込んだらしい。煙の中から生存した個体は4匹ほどでレンジャー4-1からの無数の射撃が蜘蛛型巨大生物の皮膚を削り取っていく。さらに襲撃に気付いた護衛の飛行ドローンや別の輸送船から投下された甲殻型巨大生物、赤色型巨大生物がこちらに向かってきた。ウイングダイバーが華麗に飛行ドローンから発射されるレーザーを避け肉薄。収束された高圧のレーザーが飛行ドローンを貫いた。

 赤色型巨大生物が攻撃部隊との距離を縮めるがストームチーム総隊長の彼が新開発されたスラッグショットガンBCで迎え撃った。このショットガンのコンセプトは"新たに確認された赤色型巨大生物の甲殻を貫通し封殺する威力"である。一撃で絶命まで持っていく程の威力を有していた。

 

 5分と立たず宮藤が放った4発目の砲弾が内部の転送装置を破壊。転送装置の破片が地を弾み、輸送船は内部爆発を起こし地面に衝突した。

 為すすべもなく散る敵を弾丸で捉える度に隊員たちの高揚感は増していく。

隊員A(R)「ざまぁ見やがれ!」

隊員B(R)「オラオラ! 抵抗してみろ!」

梶原「お前ら! 集中は切らすなよ!」

梶原は勢いづく部下たちを叱咤する。

しかし彼自身、無意識に持ち手や心がじんわりとなにかに満たされていくようだが油断は禁物だ。

 

沢見戦術士官《輸送船1隻の撃墜を確認》

田中司令《よし! 我々が圧倒している! 攻撃部隊、攻撃を続けろ! 奴らの目に焼き付けてやるのだ!》

 

 続いてNo.2の撃墜に向かう。No.2からは甲殻型巨大生物が投下されていた。輸送船を見上げると既に開いていた。すかさず砲弾を撃ち込み落ちた破片が甲殻型巨大生物に突き刺さる。すぐにハッチが閉じられた。

 敵を補足した飛行ドローンが射撃。発射されたレーザーがレンジャー4-1の隊員ひとりに降り注いだ。

隊員C(R)「ぐぁ!」

隊員B(R)「大丈夫か!?」

隊員C(R)「あぁ…掠っただけさ!」

 咄嗟に横に避けるも前腕に掠ってしまい戦闘服が焼け(すす)まみれになる。幸い皮膚に火傷を負うことはなかった。

 最も飛行ドローンの攻撃を気にしていては甲殻型巨大生物に狙われることになるので封殺しきれなかった少しの痛みを感じながらもトリガーにかける指を離すことは無い。

 

 地上に降り立った甲殻型巨大生物は10匹。レンジャー4-1は1匹の絶命を確認するとコンマ秒で次の標的へと照準を合わせる。瞬く間に4匹。そして後方からロケット弾が3発続けて撃ち込まれ、内二発は2~3匹を巻き込む。四肢を吹き飛ばした個体にも容赦なくAF-17の弾丸が殺到し殲滅が完了した。

 

 宮藤はショルダーボックスの自動装填機能を使用し重迫撃砲に砲弾を装填する。フェンサーのパワーフレームにはショルダー部分に専用の長方形のボックスを固定する機構があり、スラスター用の燃料、噴射機構を内蔵したボックス、または迫撃砲やガトリングガン、徹甲弾の弾倉を収納した弾薬ボックスなどを固定できる。さらにはそれらとその兵器を繋ぐ自動装填機構、携帯機関砲の弾倉など手動装填が必要な火器を装備した場合はその弾倉用のホルダーといった、着用者、特定武器使用者に沿ったつくりになっている。

 

 装填を完了した砲弾が再度開き露わになった転送装置に吸い込まれていく。

 そしてNo.2は爆発と黒煙に飲まれていった。

 

沢見戦術士官《No.2の撃墜を確認》

田中司令《いいぞ! 次はNo.4だ!》

 位置的にNo.4が狙いやすいので、No.3への攻撃は見送られた。

 

  「ここで迎え撃つ! 宮藤、レンジャー4-1は少し下がれ。射角を合わせろ。攻撃したらこちらに向かってくるだろう。向かってきた個体を各個撃破する」

  「「「了解!」」」

隊長(WD)「あの輸送船からは赤色型巨大生物が投下されているようだ。我々の敵じゃない。寧ろ後退したレンジャー隊の流れ弾に気をつけるんだな!」

 隊長が皮肉混じりに話す。

梶原「…レディ達への誤射なんぞ大それた事はしない。貴女たちこそ射線に飛び込んできては困る」

 二人は軽口のように言い合うが目の奥が笑っていない。眉毛がピクピクと動き引きつっている。反目し合っている。隊長格二人の内輪問題か。後で聞いたところ、二人は訓練学校時代の同期だとか。実際に味方撃ちの事件があったのではないようで宮藤は胸を撫で下ろした。

 その状況を作り出した元凶であるストームチームの総隊長殿は二人を気にもとめず敵を見据えていた。

宮藤(隊長……)

 

 そして下層から狙い、輸送船を撃墜。案の定こちらに向かってきた赤色型巨大生物はレンジャー4-1がある程度の距離からダメージを蓄積させ、ウイングダイバーが空から、隊長がスラッグショットガンで、殲滅した。

 続けてNo.5の輸送船を狙う。同じ位置から射角が取れたので同じ戦法で対応する。そしてNo.5の撃墜を確認した。

 

田中司令《よくやった! 残る輸送船は後1隻。これを撃墜し、いよいよマザーシップ本体への攻撃を開始する。皆、気を引き締めろ!》

 いよいよだ。皆がそう感じた。さらに、

隊長(F)《こちらフェンサー! 突入する!》

 巨大生物を返り討ちにしたフェンサーチームが宮藤たちの目線の先にある丘の上層に現れた。

田中司令《よし! 攻撃を開始せよッ!》

 

  「前進するぞ!」

宮藤「了解!」

梶原「了解」

隊長(WD)「了解!」

 この時、攻撃部隊と本部は失念していた。否、懸念はしていたが高揚感に薄められていたのか。

 マザーシップが動き出した。上昇ではない……側面の六角形のパネルらしきものが光を発し始めた。

  「止まれ!」

田中司令《まずい! 攻撃部隊、注意しろ! 浮遊砲台がくるぞ!》

梶原「急げ!恐らく()()を展開する気だ。走れ! 散るんだ!」

隊長(WD)「全員、最大出力で飛べ!」

隊員A(R)「あれが…浮遊砲台!?」

 

宮藤(死に物狂いで走るしかない! こんな遮蔽物のない場所で!)

 

マザーシップからリング状に六角形のパネルが浮き出た。マザーシップの周囲を回転し浮遊している。

そして一方的な砲撃が始まった。

 

 

【連合地球軍津川病院】

 

津川市にあるEDF日本支部関東方面基地内の連合地球軍病院の一室では隼人、早紀、八木が寝かされていた。

隼人「うっ…(ガタン」

看護師「鷲崎さん無茶しないでください!」

 隼人が立ち上がろうとし、よろめく。幸いなことに隣は壁だったので肩に衝撃が走ったものの壁にもたれかり、その一部始終を見ていた看護師に叱られていた。

隼人「しかし…早く戦場に戻らねばならないのです……」

看護師「今は安静にしていてください!いいですね!

隼人「分かりました…」

八木「隼人さん落ち着いてください…マザーシップ迎撃作戦には宮藤さん、そして総隊長も出撃しています。我々に出来ることは安静にしてることだけですよ。ただでさえ酸で足をやられているのに…」

看護師「八木さんの言うとおりです! ストームチームの皆さんの責任と実力は承知ですが前線に戻るためには少しでも早く治していただかないと!」

 

早紀「……子供?」

 

隼人「なに!? おい、今聞き捨てならん言葉が…痛っ」

看護師「とにかく、安静にしていてください。では失礼します」

 軽く会釈し看護師は退出していった。

 先の地底戦で負傷した3名は仲良く病室のベッドでお世話になっていた。

八木「大丈夫ですよ。宮藤さんも間違いなく精鋭ですし、総隊長が同行していれば大事無いでしょう」

早紀「そうね。総隊長が同行してるのなら……まあ宮藤も隣のバカと同類で一匹狼な部分があるけど」

隼人「つくづく失礼な女だな……総隊長か…そういえば、8年前の戦いを生き抜いた戦士って話は聞いたし実力もこの目で見たから誇張ではないと信頼できる。でも他の素性はおろかほとんど知らないんだよなぁ…」

早紀「そうね。名前すらも伏せられて、『隊長』としか呼べないから少し困るけど」

八木「そういえば。あ、でも総隊長の好みをこの前聞いたことがありますよ。隊舎でお会いした時、『コーヒーは良い。とても落ち着くよ。八木はどうだ? お気に入りの豆なんだ』って」

隼人&早紀「「えっ!?」」

隼人「あのミステリアスで寡黙な方が…」

早紀「確かにコーヒー豆を常備してたわね…」

 

隼人「いや、その面も興味深いが彼の戦闘技術も素晴らしいぞ。8年前の戦いを生き抜き現在も隊長格として、他にも前線や様々な部門へ散った先輩方の中でも群を抜いている。皆口々に言っているんだ」

早紀「『まるで英雄のようだ』でしょ?」

隼人「…ああ」

八木「ということは隊長が隼人さんや宮藤さんが憧れる()()()()だと?」

隼人「そうなんじゃないかと…俺は睨んでいる。淡い期待だろうがな」

早紀「そういえば、私たちに開示された情報だと行方不明で失踪宣言がなされたって事だったわよね?」

 ここで直接の反論が出ないということは、彼女も心の内ではその説を信じているのだろうか。

八木「諸説あるようです。『マザーシップを道連れに息絶えた。』や『マザーシップ撃墜後の掃討作戦で亡くなった。』など、噂程度ではありますが。そして殆どが死亡説ですね。まあ、上層部が何らかの情報統制を敷いているのは明白ですが、それがどちらなのか…知ってしまえば我々は希望を失いかねない。もしくは……」

隼人「それにしても、"英雄"か…」

 

隼人(英雄……もし生きているのなら…一度お会いしてみたいものです…一騎当千のストームチームに配属されたんだ…私は、貴方のような戦士になりたい)

 会話から外れ、遠い目で青空を見つめる彼を、引き戻す者はいなかった。

 

 

【山岳部】

 

 作戦エリアは砲撃の嵐だった。絶え間なく降り注ぎ、徐々に退路を塞いでいく雨に攻撃部隊は逃げる一方だった。だが、ストームチームの総隊長である彼、そして8年前の生き残りである一人。梶原は冷静に状況を見ていた。

ストームチームの総隊長である彼に至っては隙を縫ってスティングレイランチャーを浮遊砲台に向けて撃ち込んでいる。1機、また1機と浮遊砲台が撃墜されていく。

 しかし浮遊砲台の砲撃はとどまる事を知らない。赤く細いレーザーが降り注ぐ。そしてレンジャー4-1隊員の腹部を貫いた。レーザーは体を貫通した。皮膚は焼けただれ、あまりの激痛に腹部を手で押さえたことで彼の命運は尽きた。二射目のレーザーが太ももを、三射目が腕を貫通する。既に銃は取り落としていた。どこに落ちているかは思い出せない。複数箇所を襲う灼熱。飛行ドローンの放つレーザーとは負傷の度合いが違う。

 ついに隊員は膝を突き、地に倒れた。

 そしてウイングダイバーの隊員にも犠牲者が出た。レーザーがすねを捉え撃ち落とす。地に落とされた彼女はすぐに体勢を立て直そうと必死に再度飛び立った。しかし、レーザーではない別の砲撃。すなわちプラズマ弾が着弾し、地面を抉る。そして、彼女のかかとを抉った。遂に飛び立てなくなった彼女をトドメのプラズマ弾が覆った。最後の瞬間まで悲痛の叫びが響く。残り香が消失したその場に彼女がいたという形跡はなかった。分隊員たちに恐怖が伝染する。

 

 宮藤はスラスターを使ってプラズマ弾を振り切っていた。

 そして手を差し伸べる。レーザーの餌食となり動きが鈍足になったレンジャー4-1の隊員がようやく見つけた岩陰に縮こまっていた。しかしマザーシップは容赦なくその地点にプラズマ弾を発射する。

 隊員は自分に向けて降り注ぐプラズマ弾に気付いた。その場を後にしようと歩き出すがとても間に合わない。このままでは彼は死んでしまうだろう。守らなければ。

 隊員も心が折れてしまったのだろう。立ち止まり、膝をついた。彼は自分が助からないことを悟っていた。

 しかし何処からともなくフォースフィールドが展開。物理法則反転装置(ディフレクター)が作動、プラズマ弾が反転し、マザーシップに向かっていく。宮藤がタワーシールド3Eで防いだのだ。

 

 隊長(F)《我々はシールドで防いでいるが! このままでは! ぐわ! あああああああ!(ザザッ》

 フェンサー部隊は…他の兵科よりは防ぐ方法もあり善戦していたがここまでのようだ…

 隊長(WD)「きゃああ! くっそぉぉぉ!」

 ウイングダイバーの隊長は二箇所レーザーに被弾していたが何とか凌いでいた。

 

 このままではいずれ全滅してしまう…本来の意味ではなく、言葉のそのままの意味でだ。

 だが次の瞬間、レーザーが止んだ。そして次にプラズマ砲台が大人しくなる。すでに発射されたプラズマ弾は次々に着弾し、それ以降はパタリと……止んだ。

 そして、マザーシップは上昇を開始した。

田中司令《攻撃部隊! 応答せよ! ストームチーム応答せよ!》

宮藤《こち…ら…ストーム。マザーシップは……逃走した……》

田中司令《そんなことは良い! 攻撃部隊は無事なのか!?》

  《こちらストームチーム……味方は壊滅状態。これ以上の戦闘は無理だ。撤退許可を願う》

田中司令《分かった…撤退せよ。残った輸送船の撃墜は他の部隊が担う。速やかに帰還せよ》

梶原「満身創痍って感じだな……クソッ!」

隊長(WD)「……うぅっ……グスッ」

 数分前まで生きていた部下を抱き抱え泣く彼女。それを宥めるも無念さが押し寄せる。

 

 マスコミは今作戦のことを表面的には成功したと報じた。現に大多数の敵機械兵器や巨大生物の殲滅という大きな戦果を得られたのだ。しかし8年前と変わらぬ絶望と屈辱を味わい、EDF JAPANは再び死のスパイラルへと身を投じていくのだった。

 

ストームチームの宮藤でさえ満身創痍になる戦いだった。しかし彼を見る。彼は重傷を負いながらも果敢に応戦していた。冷静であるとさえ感じられた。

帰投の間に聞いてみよう。そう決めた。何を? 決まっているだろう……




しかし、25話だと言うのに気づけば総話数42話です(笑)
進捗
・第26話:年内投稿予定
・閑話:正月中に投稿予定


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26話 銀糸の都

新年、明けましておめでとうございます。
今年も変わらず投稿を続けていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。(投稿ペースは上げたい……)

今回は本編が短いということもありそれ以外の部分を長々と描写しております。


 日はすでに傾き、車窓から顔を出せば斜陽に視界を遮られる。

 宮藤、隊長の二名を乗せた武装装甲車両"グレイプ"は作戦の帰途についていた。

 マザーシップ撃墜作戦はマザーシップの逃走という形で失敗に終わり、宮藤はマザーシップの猛攻に心を挫きかけ、作戦に参加した他の部隊も失意のうちに敗走する結果となった。

 未だ悪寒が抜けきれていない。宮藤は己の無力さに俯きその顔面は蒼白になっている。

 しかし宮藤と向かい合わせに座る彼の部隊の隊長である彼は静かに目を閉じ、揺れる車内に体を預けている。いたく冷静な様相だった。

宮藤「隊…長…、隊長はお強いですね」

  「……」

 宮藤の掛けた言葉に反応するように彼は目を開いた。下を向いたままだった顔がゆっくりと宮藤を捉える。

 次の言葉を探すまでもなく、自然と言葉が紡がれる。

宮藤「あれだけの力の差を見せつけられて……私は逃げることしか出来ませんでしたよ……」

  「……」

宮藤「ストームチームに配属が決まってから今まで自惚れていました。"7年前の巨大生物掃討に時を合わせて解隊されてから巨大生物再出現に鑑みて再編成された()()のチーム"への配属。()と同じ部隊に立てたという錯覚に魅せられていたんです。いざ敵の母艦を目の前にしてそれを思い知りました」

 暗いトーンであったが"伝説"、"彼"という言葉を強調した時、向かい合った彼の眉がピクリと動いた。

宮藤「隊長は、"マザーシップを撃墜した英雄"をご存知ですか? いや……」

  「……」

 黙りながらも深く息をする彼。真っ直ぐな眼差しは尚も宮藤を見つめる。二の句を待っているようだ。次の言葉は想像に難くない、彼も覚悟を決めてたような顔だった。

 宮藤の口調は既に本気のものになっている。

宮藤「……隊長が、伝説の英雄であらせられますか」

 宮藤は生唾を飲み込む。

 その言葉が発せられた直後、グレイプの壁にもたれ掛かり、彼は瞑目していた。

 そして彼の返答を待つよりも先に宮藤の脳には過去の記憶が流れていた。

 

 

==================================

 

宮藤「ここがストームチームの宿舎……」

 宮藤はストームチームと書かれた板を見つめる。嗅いだら塗料の匂いが香りそうなほどつい最近に作られたであろう板に心を躍らせたその時、後方から声が降って湧いた。

八木「こんにちは、もしかして今日配属された方でしょうか」

ヘルメットを脇に抱えたエアレイダー装備の青年が立っている。

宮藤「え、ええ。本日づけでストームチームに異動しました。宮藤です」

八木「八木です。よろしくお願いします」

 

 年若い風貌だがここに配属されたということはそれなりの実力を有してのことなのだろうか。

八木「来て早々ですが、中で田中本部長、そして召集された他の皆さんがいるはずです。いきましょうか」

宮藤「そうですね」

 二人は玄関を抜け、廊下を進む。目的地は廊下の最奥にあるブリーフィングルームだ。

 しばらく床が軋む音を奏で、長めのひと呼吸のうちに"ブリーフィングルーム"というプレートの前に立つ。

 一度取っ手に手を伸ばすが憚り、再度手を伸ばしてしっかりと握り締める。そして扉を開けた。

 目に飛び込んできたのは広い会議室の中心に置かれた会議テーブルとパイプ椅子。

 まだ施設が新しいため、内装も乏しいのだ。

 既にそこにはヘルメットを脱いだレンジャー隊員、ウイングダイバー隊員が座っている。が、こちらに気づき立ち上がった。

 

隼人「入ってこられたということは……第2特戦歩兵連隊、第1中隊第7特戦歩兵小隊から異動してきました。鷲崎隼人です。よろしく」

 気さくだがどことなく一匹狼のようなオーラを纏っている。付き合いやすそうだ。

早紀「私は第1連隊隷下第1特戦歩兵中隊、第4降下翼兵小隊から異動してきた風舞早紀と言います。よろしくね」

 入室時からどこか声のトーンが暗く、それが平常で物静かな女性かと思ったが、ウイングダイバー4といえば先日新種の巨大生物の攻撃で壊滅状態に陥った部隊。その生き残りらしい。その目はどこか空虚なようで、ストレスに苛まれている感じだが、元の性格は活発そうな印象だ。

八木「改めて。僕はEDF訓練学校第7期卒業、今年度ですね。八木翔一です。ビークルや支援要請などバックアップを担当します。若輩者ですが伝説のチームの足を引っ張らないよう尽力します。皆さんよろしくお願いします」

 紛れもない最年少だが訓練学校を出たばかりらしい。首席ということだがいざ実戦となったら不安だ。

 

宮藤「本日より第1連隊隷下第3中隊第1二刀装甲兵小隊から異動してきました。宮藤龍馬です。よろしくお願いします」

 

 四人が自己紹介を終えた時、扉が再度開いた。田中本部長と、傍らには……

 考えが続かぬうちに田中本部長が四人と目を合わせ沈黙を破った。

田中本部長「これで全員だな。君達は本日よりチームとして行動してもらうことになった。新生ストームチームとして、地球を守る任に就くのだ。……と、言いたいところだが施設が乏しいうちはチームらしい行動は難しいだろう。それに実戦における個人の戦闘力をはかる良い機会だ。しばらくは遊撃要員として単独行動を行ってもらうことになるだろう」

 

田中本部長「しかし任務によってはチームとして動く場面もある。その時の指揮は彼に一任することになる」

 その言葉に隣の彼が小さく頷いた。そして一歩前に出ると彼もまた口を開く。

  「新生ストームチーム隊長の……隊長を務める。よろしく」

 一度言い直した。まあ指摘せずにいるべきだろう。

 寡黙で実力が計り知れない人物だ。

 ふと田中本部長を見ると彼を横目に肝を冷やしたような顔をしたが、すぐに表情を正すと咳払いし、仕切りなおした。

田中本部長「元より新生ストームチームは小隊規模で動くチームとして構想されていたがお前たちは一騎当千のチームであるべきだと苦言を呈したのは私だ。では、本日は非番とし、明日より任務に就いてもらう。以上だ」

 再結成が可決された直後は様々な分野のエキスパートを選出しオールマイティなチームを作る構想が有力だった。しかし、田中本部長は個人の戦闘力などを重視した少数精鋭のチームであることにこのチームの意義があると説いたのだった。

 

 そう言い残し、田中本部長は退室していく。

 部屋には新生ストームチームの面々だけが残った。

 続く沈黙。しかし最初に沈黙を破ったのは隼人だった。

隼人「隊長。隊長のお話をして頂いてもよろしいでしょうか。この時間はこのまま親睦を深める意味で談笑といきましょう」

  「わかった。何が聞きたい?」

 含み笑いを漏らし、腕を組んで構える。気難しい雰囲気が少し崩れた。

隼人「そうですねぇまずは……隊長のお名前とかですね。先ほどの紹介で一瞬口を噤んでいられたといいますか」

 少し顔をしかめたが目を閉じ何か考え込む姿勢をとる。

  「……五十嵐だ」

隼人「五十嵐隊長。改めて、こちらからも自己紹介を」

 

 他2名がどう感じたかは分からずじまいだが、少なくとも宮藤は偽名なのではないかと疑う間であった。事実、偽名であることが後に証明されることになる。

 自己紹介を終え、質問の順番が宮藤に回る。

宮藤「私からは少し踏み入れた質問を。隊長、ここに到着する前に書類を拝見しました。隊長は8()()()()()()()()()()()のお一人だとか」

 宮藤がわざと強調すると3名から驚きの声があがる。

  「…それが、どうかしたか?」

 隊長の顔は先程までの皆に見せた柔らかさは無くなり真剣な物になっていた。声色も冷淡になっている。これ以上詮索するのは不味いだろう。しかし言いたいことは全て喋ってしまいたい衝動に駆られた宮藤はそれでも躊躇いはない。

 紙面の経歴欄には、紛れもないEDF陸戦部隊に8年前以前から所属しているという証明があったのだ。

宮藤「いえ、他意はありません。私はただ、()()ストームチームの隊長を務められる方がそういった経歴の方でなければ従えないと思ったからです」

 どう捉えようとも喧嘩腰な宮藤に、隊長は顔を顰め、両者は睨み合う。八木はえも言われぬ思いで胃が苦しそうだ。常人であればすぐにこの場を離れたくなる。そんな空気が流れていた。

  「俺は前大戦を最初期から前線で戦い続けた。それだけでもちょっとした英雄扱いだが他の戦い抜いた隊員達も同様にあまり話に出されたくないんだ。こんな空気にしてしまったことは許してくれ。質問は以上か? 無いならば私は退出させていただくが」

 と言葉では言いつつも居心地悪く感じているようだった。

 8年前からEDFに存続している隊員達、宮藤の最も身近に居たのは同連隊に所属するレンジャー1-2の葉山と結城だがその二人からも断られている。8年前の戦時中はそれこそEDFの空気は最悪だっただろうし、血生臭い日々だったのだ。話すことを憚られるのは当然だろう。

 しかし個人の練度もまた、彼らが飛び抜けていることも事実。

 

 そしてストームチームの顔合わせが行われた次の日、それはストームチームの面々が認識することになる。

 それは市街地に出現した甲殻型巨大生物群を掃討する任に就いた時。8年前より強靭で凶暴となった奴らに対し、日々の演習通りにしかこなせず実際の攻撃パターンに四苦八苦する4名だったが隊長は、まるで寄せ付けず一方的な殲滅で敵を完封して見せたのだった。それは確かに8年前を生き抜いた戦士というに相応しい戦いを披露し、さらにその戦いぶりに同行した若い人材の多いレンジャー部隊の隊員たちの度肝を抜いた。その戦場は彼の独壇場となっていた。

 

 宮藤は確信した。彼が"マザーシップを撃墜した英雄その人"なのだと。気のせいではない、本物の英雄。にわかに信じがたい事ではあるが、"一騎当千の兵士"という言葉が適当な人物。それが英雄の特徴であり伝説。絶対的な確信がそこにはあった。

 

 

==================================

 

 

  「ああ、了解した。宮藤……どうした?」

宮藤「え? あ、隊長?」

 物思いに耽っていた宮藤はハトが豆鉄砲を食らったような顔を晒している事に気付き、咳払いをする。

  「すまない、今、その問いに答えることは出来ない。だが、帰還したら教えてやってもいい」

田中司令《本気で言っているのか貴様!?》

  「ふん……彼らには知る権利がある。別に秘匿する必要はないだろう」

田中司令《許可できない》

  「何故だ?」

田中司令《それは》

  「いや、答えなくていい。彼らは俺の部下たちだ。隠していても溝が生まれるだけさ」

 宮藤は再び間の抜けた顔で田中司令と交信する隊長を見た。知らぬ間に本部と繋がっていた事も驚きだが、二人の距離感にも驚いているのだ。

 そして宮藤はもう一つ、今までの会話を思い返す。隊長は……自身に関する不安や疑いを晴らすと約束を取り付けてくれたのだ。

 胸を躍らせる宮藤。しかしそうは問屋が卸さない。

 

田中司令《貴様は……もういい、貴様との口論は時間の無駄だ。任務に集中せよ》

 食らいついた田中司令であったが、そう吐き捨て、その口調は徐々に私人から一司令官のものへと変わる。

宮藤「すみません隊長。任務というのは……」

  「本部から通達だ。街の奪還、この先にある街が巨大生物群にたった今占拠されたらしい。現在警察の応援が向かっているそうだが……今から向かうぞ」

 内容を聞いた途端、宮藤が俯く。彼は失意の底にあった。

宮藤「……すみません、自分は……戦えません」

  「……なぜだ」

宮藤「私は……さっきも言ったじゃありませんか。自惚れていたんです。あの力は……到底太刀打ちできるものじゃない」

 宮藤は唇を噛んだ。

宮藤「――私は! 何も出来なかった! それが悔しいのです! 仲間も守れない……それでストームチームなんて名乗れるわけがない!」

 宮藤は語気を荒げ、勢いづく自分を押さえ込められずに吠えた。

  「宮藤!」

宮藤「私がストームチームなんて……夢物語だったんです……」

 気付くと大粒の涙が戦闘服に落ち、それ以降は止まらなくなっていた。だんだんと外界の音も薄れていく。暗い穴の底へ落ちていくような感覚。言葉による自傷。

  「宮藤!」

宮藤「……ッ!」

  「落ち着け……落ち着くんだ宮藤」

宮藤「……」

  「少し、昔話をしよう」

 突然の言葉に呆然とする。突然だった。彼からこんな言葉が出るなんて。

 向かい合った彼は、どこか遠い目をしながら秘匿された過去を話しだした。

 

 

==================================

 

 俺には昔、妻がいた。

 彼女は正義感が強く、困った人がいればすぐに飛んでいく最高のお人好しだ。しかしどこか抜けていて、とても愛らしい女性だった。

 

 このまま彼女と人生を共にする決心なんぞ、即決だったさ。

 しかしその矢先……彼女は死んだ。

 2013年のある日。南スーダンの多くの避難民を抱える宿営地でそれは起こった。

 一発の銃声はそれ以上の怒号と悲鳴を引き起こすのに十分だった。

 宿営地の近くで衝突があったのだ。

 たちまち現場は緊迫、俺たちは暴動が沈静化するまで警戒を余儀なくされ、WAC数名を含む部隊が収容した怪我人の元へと医療施設(テント)に向かうため少し前衛に出た。それが裏目に出た。

 駆け込んだテントは、運悪く骨組に当たった流れ弾に倒れ、彼女たちはその下敷きに。そこからいち早く彼女は這い出た。だが、理不尽なことに次の瞬間。

 いつしかカラシニコフ突撃銃で装備した男が小路から侵入していた。

 その男は彼女を見つけるや否や掃射。数発の銃弾が彼女を穿ち……

 男はその場で射殺され、犠牲は彼女だけ。俺には耐え難いものだった。

 

 そこから先はよく覚えていない。

 気が付いたら日本に送還され、自衛官を辞めて路頭に迷っていた。

 心の拠り所であった彼女が死んだ俺には、もはや何も残っていなかった。肉親は既に他界していたし、他に身よりもいない。しかしなぜだろう。不思議と体は動いていた。気づいたらEDFに身をやつしていたのだ。

 

 そしてもう一つ。彼女が息を引き取る直前、紡いだ言葉がある。それだけは一度も忘れたことはない。

 彼女は……こう言っていた。

 ――貴方が、どれだけ手を伸ばしても……どれだけ足掻いても……助けることの出来ない命。死からは何者も逃げることはできないものなの。それが運命なんだから。でも、人にはその運命に抗う力がある。その犠牲の分だけ助けることの出来る命は存在する。一人につき何人だって。それもまた運命。悔やんではいけないの。悔やんでいたら救える命も失ってしまう。だから貴方は、戦い続けて。救える命をがむしゃらに救うの。そうでないと私、安心して向こうに行けないわ……

 冗談でも言ったようにクスリと笑った彼女。

 泣き叫ぶ俺の目の前で、自分の正義を全うした素晴らしい女性が息を引き取った。

 

 それからは、敵を殺すのに躊躇は存在しない。彼女の言葉を、死を糧に生きてきた。伝説の英雄なんて、大層なものじゃない。彼女に心酔した、彼女の亡霊に囚われたただの殺戮マシーンなのさ。俺は。

 

 

==================================

 

 宮藤は驚愕していた。目の前にいる男は最愛の女性の最期を見届け、亡き妻に今もその人生を捧げる哀れなただの人間だったのだ。

 それに比べ自分はどうだ。生半可な正義感を抱いて満足にいかなければ、簡単に投げ捨てる。それでいいのか。

 宮藤の胸の内にふつふつとある感情が芽生える。

 その感情は宮藤の背中を押すのには十分であった。

 宮藤にとって彼の存在が、熱をもってより大きくなっていく。

  「……」

宮藤「隊長。隊長の生き様、敬服しました。自分も一役買わせてください」

  「いいのか? もう後に戻れなくなるぞ」

宮藤「それでも構いません。私は一人の武人として、いえ、ストームチームの一員としてすべきことを突き通します」

 そのセリフには、決意が満ち溢れていた。涙もすでに止まり、乾いた涙痕の感触に頬をピクリと動かす。

 

キャリー1「ストームチーム、出撃準備を! ここから先は敵の巣窟です!」

宮藤「ああ! 分かっている!」

 グレイプが急停止する。

 飛び出すとそこには、ビル間に無数に張られたレタリウスのネット、そして地上を我が物顔で歩く蜘蛛型巨大生物の大群が巣食っていた。その群の後ろには盛り上がった土――すなわち巣穴への出入り口がある。

 市民は既に避難が完了しているようだ……少なくとも人気はなくなっていた。死体を除いて。

 レタリウスの張ったネットには大人子供が関係なく貼り付けられネットを真っ赤に染めている。その液体は静かにアスファルトに滴っていた。さらには勇敢にも避難誘導を敢行した警官隊の死体もある。

 しかし宮藤は動じない。

 

 何もかもが吹っ切れていた。

 ストームチームの到着に時を合わせ、田中司令声が響く。

田中司令《こちら作戦指令本部、蜘蛛型巨大生物を殲滅しろ!》

宮藤&隊長「「ストームチーム。了解した」」

 その瞬間、二人は一心同体となった。

 宮藤は満身創痍の体にアドレナリンを漲らせ、ブラスト・ホールスピアのトリガーにかける指に力を込める。そして力を振り絞った。瞬間的に撃ち出されたプラズマが一直線に蜘蛛型巨大生物を穿つ。

 隊長たる彼はおもむろにスティングレイランチャーを構え、レタリウスに向けて射撃。そして着弾。

 レタリウスの外皮が焼け落ち、続け様に撃ち込まれたロケット弾が追い打ちをかける。

 たった二人の兵士によって、難攻不落の蜘蛛たちの巣は瓦解した。

 しかしやられるだけではない。

 一匹が放った糸が宮藤の足に粘着。バランスを崩した宮藤は地面に激突し、ヘルメット越しに憤怒の形相を向けた。

 だが蜘蛛型巨大生物は気圧されない。

 彼に止めを刺すべく糸を吐き出そうとした、その時だった。

 無数の銃弾が蜘蛛型巨大生物に殺到。蜘蛛型は悲鳴に似た奇声をあげ絶命した。

 突如宮藤の目前に一人の影が現れた。橙色に染まる大地に黒い影が落ちる。

 隊長だった。彼は宮藤へ手を差し出し立たせる。

 無言で頷くとすぐにスラッグショットガンを構え直し、さらに一匹の蜘蛛型を仕留めた。

 

 それからは消化試合だった。ストームチームが巨大生物群を圧倒したのだ。

 

 

【避難所】

 

 街から少し離れた避難所では、陸上自衛隊の護衛の元、避難民に対するケアが行われていた。

子供「おじさんありあとう!」

萩村「ほら、早くお母さんの所へ行ってきなさい」

子供「うん!」

 ちくわのパックを両手に抱え、パタパタと走り去っていく子供を見つめる。自衛官達、そして避難民達には少しずつ笑顔が戻っていた。

 

富塚「現在、該当エリアにEDFが到着。奪還作戦を敢行しているとのことだ」

木部「作戦の成功を祈るばかりですね……」

 地平線に沈む夕日の眩しさに手で目元に影を作る。

 

 彼らのそばにある支援物資の箱の上には、電源の入ったラジオが置かれている。音質も悪く、今にも消えそうな音量だった。

 

アナウンサー《戦局報道です。世界中至る所に大型円盤が飛来。巨大生物が投下された地域は、8年前と比べて広範囲に及んでいます。EDFは駆逐作戦を展開していますが、戦力を分散せざるを得ず苦しい戦いが続いています。……只今入った情報です。EDF JAPANは、日本に飛来した大型円盤群の大多数を撃墜することに成功。さらに、関東から東北地方に散開していたフォーリナーの機械戦力を撃滅したとのこと。これにより、敵の活動範囲を大きく減らすことに成功したようです》

 

 

【連合地球軍津川病院】

 

隼人「ぐッ……」

 いまだに軋む腹部の痛みに寝付けずにいた隼人。

 両隣の2名は既に寝息を立てていた。横向きに寝ているためその寝顔は見えない。

 しかし隼人が起きていた理由は他にある。

 

 刹那、手前の扉が開いた。

宮藤「はぁ……はぁ……」

隼人「おう、お疲れさん」

 入室してきたのは今にも倒れそうなフラつきの宮藤だった。

 その後ろには壁に体をあずけた隊長もいる。

 隼人は隊長をじっと見る。

 隊長は眉を上げて応えた。

隼人「で、お話してくださるんですよね?」

  「男に二言はない。お前たちには話しておくべきだろうな」

 隊長が言い終わるとその病室は、もとの森閑さを取り戻す。

  「俺は…」

 その時、扉が再び開いた。

 そこには、手を後ろに組んで立つ田中本部長が居た。

 その姿を、目を見開いた隊長も含め驚きを隠せず見つめていた。

田中本部長「情報統制は一時的に解除されている。話したいことを話せ」

  「珍しいな。お前にしては気が利いている」

田中本部長「言うな」

 田中本部長は鼻で笑った彼の言葉を軽くあしらうと、そのまま廊下側の壁に背をあずけた。

 機会は与えたが出過ぎた真似はするな。……ということだろう。

 

 いつのまにか早紀と八木が体を起こして神妙な面持ちで隊長を見つめている。

 そして、この病室にいる全て人の目線が彼に集まった。



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26.5話 英雄

当話は物語の1つの重要なファクターである、彼の人生について迫ります。


 マザーシップ撃墜作戦失敗から一日経ち、正午の外には打って変わって穏やかに雲が流れている。

 連合地球軍津川軍事病院の一室では、張り詰めた空気が満ちており、その室内に居た誰もが彼の言葉を待っていた。

 陽の光を遮らんと窓へ歩いていき、青空を眺める。自身の軌跡を懐旧(かいきゅう)する彼は、一度深呼吸をした後、語り始めた。

「八年前、マザーシップを撃墜したのは、俺だ」

 ストームチームの面々は確信していたが、実際に目の前で出たセリフに息を呑む。田中本部長は廊下側の壁に背を預け、瞑目していた。

「2018年の……1月14日だったか。降雪が予想される曇天の中、俺たち攻撃部隊はマザーシップ撃墜作戦を敢行。……俺はストーム1として作戦に参加し、マザーシップにトドメをさした。そして作戦は人類側が勝利し、この宇宙戦争は幕を閉じた」

隼人「ええ。存じております。そして貴方が、貴方こそが、かの英雄……」

 隼人が口にした"英雄"という単語に不愉快そうな雰囲気を醸し出す後ろ姿。そして彼は問う。

「英雄……か」

「鷲崎、英雄とはどんな存在なんだ?」

隼人「……英雄の定義……ということですか?」

 反問すると、後ろ姿の彼が静かに頷いた。

隼人「……人類を勝利に導いた、伝説の兵士です。人類の、希望で、俺たちの憧れで……」

 何故か言葉に自信が乗らない。目の前の男から出される気迫に気圧され、口に出すのを(はばか)られていたのだ。

 

 そんな隼人に構わず、さらに追い打ちをかける言葉を彼は言い放った。

「英雄というのはな……虚勢だ」

隼人「……」

 そのセリフを反芻(はんすう)するが、まったく真意にたどり着けない。やがてオーバーフローを引き起こし、怪訝(けげん)な表情で固まった間抜けな顔を晒す。

 その表情を一瞬後目(しりめ)に見た彼は、後ろ姿のまま俯き窓枠に手を添える。開かれた窓からは心地よい風が吹いている。若干声が風に掠れるが、彼は気にせず台詞の真意を明かした。

「驚いただろ? しかし、それが真実だ」

「崇高な存在? 憧れの存在? とんでもない。仲間の死をいくつも目の当たりにし、大事な人さえ生贄に捧げ、数多の屍を超えて、そして人々の希望や怨念まがいのものさえも背負わされた。そしてその呪縛は一生、たとえ名前を捨てたとしてもまとわりついてくる。暗に(まみ)れた存在。……それが、君らの思い描いた英雄の正体さ……」

八木「そんな…って、名前を捨てた?」

 今まで沈黙していた八木が、気になるワードを口に出し、話に割って入る。

 話の腰を折られたが、むしろ良い息継ぎになった。

 「窓を閉めていいか?」と目線で問い、窓を閉めると八木たちに向き直った。そして、話を再開する。

「ああ……本当はマザーシップを道連れに死ぬつもりでいた。だが不幸にも生き残り、終戦しても俺の心は空虚なまま。いっそどんな呆気ない最期だとしても死にたかった。しかしそれも叶わない……が、ある日から俺は死んだ。死ぬことに執心していた俺が唯一、死ぬことが出来たんだ。"英雄の噂"によって。そしてこいつを説得して偽装した死亡届に失踪宣告もな」

田中本部長「貴様……あの時引き下がらない輩を納得させるのにどれだけの労力を要したか……」

 憎悪の籠った視線を向ける田中に眉を上げて応え、悪びれもなくあしらう彼に、隼人、八木、早紀、宮藤は苦笑いを浮かべた。

「"英雄の噂"に関しては、勝手に俺を上辺だけの言葉で神棚に上げる噂の範疇を出ることなく、『英雄的な戦死』が必ず締めで付いてくる。人伝が俺を死なせてくれた……しかしな、実際はそれでも虚ろなままだったんだ。そして俺は悟った。隣に居るはずの誰か。人肌が恋しかったのか。見かけ上死んでも会いに行けない、生き返らせることもできない。何をしても満たされない原因はそれだった」

 その言葉の真意に心当たりがあった宮藤は気まずさと同情混じりに俯く。

「俺は見事にその術中にはまった、哀れな男だ。まかり間違っても、憧れなんて抱くんじゃない。君たちにこの十字架を背負うだけの覚悟があるのか? 大事な人はいないのか? いや、その人を犠牲にする覚悟は? その一人の命と大勢の未来ある者たち。どちらを優先する?」

 ストームチームの面々にそれぞれ、思い当たる人物が脳内に現れる。その人物が死に直結する所まで想像しかけ、咄嗟に早紀は拒絶した。

早紀「やめてッ!」

 

「…すまない、俺はなぁ……全てを失ったんだ。しかし、それでも生贄は足りない。戦いが続く限り、俺のもとには無念の心が集い、俺をその復讐に誘う。いくら逃れようとも、運命は俺に付きまとうんだ。俺はいわば死神に弄ばれた"道化"だな……」

 自嘲する彼はそのトーンを徐々に低くし、同情も嘲笑も受け入れるかの如く窓際に置かれたパイプ椅子に腰掛けた。

 凄惨な過去を打ち明けた自身の隊長にかける言葉は決まっている。これから自分は彼の剣や盾となり支える部下として、天涯孤独な彼に新たな影響を与える存在になる。仕える覚悟は出来た。

 

宮藤「ですが……貴方は希望をくれた! その背中を夢見て、追いかけて自分はここ居るんです! 命を賭して奴らの魔の手から人々を守る……その覚悟は、配属される前から持っている……」

隼人「我々も、ストームチームの一員です。こき使って頂いて構わない。どんなことがあっても貴方について行く所存です」

早紀「私も……奴らに復讐する機会を得たばかりか、生かされた意味はここにあると確信しました。私もひと役買わせてもらいます」

八木「自分は……皆さんよりも経験が浅い人間です……ですが力の及ぶ限り、加担させていただきます!」

 四人はそれぞれの言葉でそれを伝えた。

 

 彼は覚悟を灯した四人の目に圧倒された様子だった。一度死んだ彼が再び生を受けたかの如く、心臓が暖かな鼓動を奏でる。

「克人……彼らは勇ましいな。彼らこそ、人類の未来を担う光だ」

田中本部長「ああ……そうだな」

 居心地が悪いのか、田中本部長は壁から背を離し襟を正すと廊下への扉の取っ手に手をかけた。と、同時に台詞を思い出したように振り返ると、その内容をストームチームに告げる。

田中本部長「君達に、休暇をやろう。その間に英気を養え。再び戦場に立つ時は奴に(ほだ)された馬車馬の如く戦って貰おうじゃないか」

 高圧的な台詞に顔をしかめる一同であった。




もう少し後に持って行っても良かったのですが、明かすならここが頃合いだと思いました。(単純に『彼が誰なのか不明状態』をこれ以上引きずるのもどうかと考えると、悩みどころだったので、今回の判断に至りました……とさ。)


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27話 赤色

ひっさびさの投稿です。
地の文疲れました。これから力をつけていきたいですね。


宮藤「いよいよ、ですね」

 先の戦いから1ヶ月後、連合地球軍関東方面基地の敷地内、特殊遊撃部隊"ストームチーム"の宿舎に設置されたブリーフィングルームでは、ストームチームの面々が真新しい内装に心を躍らせていた。

隼人「結成当時の会議部屋が嘘のようだな」

早紀「見違えるように綺麗になったわね……」

 数ヶ月に渡って見送られていた内装の充実がついに完了し、学校の教室まがいは、2025年最新鋭のハイテクさを感じさせる一室へと変貌していた。

 会議室の様相を呈していた長机とパイプ椅子は除けられ、黒を基調とした大理石風の机と高級感溢れるレザーのオフィスチェアへ。

 窓は一切無い。床、壁、天井は漆黒に覆われ、一定間隔で薄青い光が淡く部屋全体を照らしていた。

 まるで深海にいるようだ。

八木「夢みたいです……」

 近未来的な内装に興奮を隠せない八木は、机の中央に設置されたディスプレイに触れた。

 すると、空中に連合地球軍の象徴である旗*1が浮かび上がり、八木の興奮は更にヒートアップする。

 まごう事なき、ホログラムディスプレイであった。

 

 続けて複数のウィンドウが立ち上がると、ストームチーム総隊長たる彼が専用の手袋で覆った手を水平に払った。

 横にスクロールされるホログラムに四人の目は釘付けだ。

 彼は目的のものを見つけたのか、一つのウィンドウに向けて手のひらを広げると、それに合わせてウィンドウも拡大される。

 拡大されたウィンドウは机に横倒しになると、地形を表すように凹凸が入りだした。どうやら山岳地帯のようだ。そこからやおら窪みだし、最終的に平坦になる。おそらく、丘に囲まれた大規模な浜なのだろう。浜の隣では、波が立つ水面が再現されていた。ひとしきり地形が明瞭になると、次は赤い点が群生を始める。

 また、空中には地上より少し大きな赤点が列を組み始めた。

 赤い点がそれ以上増えなくなると、彼は口を開く。先ほどとは打って変わって、重い沈黙が部屋を包んでいた。

  「現在、赤色甲殻型巨大生物の群は、ここを縄張りとしている。赤色甲殻型巨大生物は甲殻型巨大生物の亜種で、酸噴射能力を持たない。が、やつの繰り出す突進、そして噛みつきは、戦車を軽々と押し返し、装甲をひしゃげさせる。この群は先日制圧に失敗した地下洞窟から出現したもので、着々と数を増やしているらしい。さらに、敵輸送船団も日本領空に続々と侵入を許しているとのことだ。まったく、親玉を破壊しなければ敵はこちらへ無尽蔵に戦力を送り込める……」

早紀「総攻撃でも始めるつもりでしょうか」

  「現在マザーシップに対し厳戒態勢を敷いているらしいが、今のところ動く気配はない。機会を伺っているのか……」

 早紀の疑問に、隊長はコクりと頷いた。

 

 

 先の戦いで撃墜に失敗したマザーシップは再び太平洋上空に浮遊している。きたる撃墜を目指してEDFは日本の領土・領空・領海に蔓延る敵の迎撃に徹しているのである。

 

 「EDF JAPANは、自衛隊と共同で、先日の戦いから日が浅いにも関わらず大規模な殲滅作戦を立案中、本作戦はその前段。まず、地上に出現した巨大生物群と機械兵器、輸送船団を攻撃し、敵の本土侵攻群に可能な限り打撃を与える。マザーシップの介入が懸念されるが、対艦迎撃部隊を陸海空それぞれ編成中だ。我々陸戦部隊は地上の敵にのみ注力していればいい」

 

 隊長は表示したまま放置していた赤点の集合体を指差しながら、

 「我々は、この巨大生物群の迎撃作戦に参加することになった。意気消沈の時間はない。最善を尽くせ」

 と言い放つ。

 

 そんな時だった。

 「はぁ……はぁ……」

 勢いよくブリーフィングルームの扉が開かれたのだ。

 五人の視線が扉へ向けられると、そこには必死に息を整える若い女性がへたりこんでいた。

 「遅れ……ました。申し……訳……あり……ません」

 「来たか、ほら立て」

 「はい……」

 隊長が手を貸すと、恐縮した様子でその手をとる。

宮藤「彼女が……」

 ストームチームの面々には、彼女の顔は既に割れていた。

 

 彼女の名は、鷺本 唯(さぎもと ゆい)。本日よりストームチームのオペレーターを務めることになった新米である。

 先日まで作戦指令本部付きになっていた彼女は、本人たっての希望でストームチームに配属されたのだが、あろうことか初日から遅刻してしまったのだ。

 

鷺本オペ「うぅ……すみません。ご存知のとおり、本日からストームチームの専属オペレーターに就任しました、鷺本唯と言います! よろしくお願いします!」

 

 詫び言を述べ、羞恥心に涙を浮かべながらも、仕事モードに戻るべく気をつけの姿勢を取る。セリフからは一転、快活な印象を受ける姿を見せた。

 

 が、次の瞬間、更に彼女を不運が襲った。

 気をつけの勢いで手に持つバインダーが膝側面に直撃。鈍い音と共に「ひっ!?」と反射的に声を上げる。

早紀「ちょ……ちょっと落ち着きなさい」

 早紀は咄嗟にウォーターサーバーから水を汲むと、痛みを堪えて(うずくま)る彼女に差し出した。

鷺本「あ、ありがとうございます……ぅぅ」

八木「落ち着きましたか?」

鷺本「ふぅ……はい、大分落ち着きました」

 

 数分後、

鷺本「さて、お見苦しいところをお見せしました。改めまして、鷺本です。えーっと皆様は」

隼人「あぁ、よろしく頼む。鷲崎だ」

早紀「早紀です。よろしく」

八木「八木と言います。よろしくお願いします」

宮藤「宮藤です。よろしくお願いします」

 

  「ストームチームの総隊長を務めている。よろしく」

 

 唯一名を明かさない彼に、ストームチームの4人は苦笑いを送った。

 

 

 数分後、落ち着きを取り戻した鷺本は、ストームチームの面々を前に改まって告げる。

 

鷺本「本作戦は、今後の趨勢を大きく左右する重要な作戦です。フォーリナーは平原に戦力を集中させ、その物量をもって一気に本土を制圧するつもりでしょう。ですが我々はこれを許しません。平原を目指す敵勢力を急襲し、これ以上の戦力増強を防ぐことが、本作戦の前段階、もとい要となります」

隼人「本丸は叩かないのか?」

 敵の航空戦力が確認されていない今、最も早い決定打となろう戦法を、疑問に思った隼人が指摘する。

 しかし鷺本は首を横に振った。

鷺本「難しい状況です。平原には現時点でも多数のヘクトル群が集結しているのですが、同時にシールドベアラーも確認されています。空爆は効果が見込めず、歩兵を展開しての戦闘も、リスクが大きすぎます」

 "シールドベアラー"という、敵が新たに動員した防御スクリーン発生装置の存在。それが戦況の全てを覆したのだ。人類側の攻撃全てを防ぎきるそれは、厄介なことに味方の攻撃は防御スクリーンを通過させる。空爆はおろか、陸上戦力での突撃は、一方的に蹂躙されるのがオチだ。

早紀「そうね……」

 

 

 

鷺本「作戦指令本部は、本作戦を力押し(ブルートフォース)作戦と命名しました。その準備のために、私たちは営々とやっていかねばなりません」

宮藤「"力押し"ですか……正面からの乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負、負けることはできませんね」

鷺本「ストームチームはブルートフォース作戦への参加を命じられています。しかし、その勝敗の分かれ目となる下地を、確実なものにしましょう。ブリーフィングは以上です。各員の検討を祈ります」

 

 鷺本のエールに、闘志のこもった頷きが返される。

 

  「では解散!」

全員「「「ハッ」」」

 

 

【海岸近くの山岳地帯】

 

スカウト4《こちらスカウト! 巨大生物群が移動を開始。レンジャー3-1目指して進んでいます》

田中司令《了解した。レンジャー3-1、退却しながら、狙撃兵の射程内に敵を誘導しろ!》

隊長《レンジャー3-1、了解!》

 

隊長「出番だ、急げ!」

キャリー3「了解! しっかりつかまっていてください!」

隊長「ああ。ついてこいよ……蟻ども……」

 

ドライビンググローブに深いシワを作るように、しっかりとハンドルを握る運転手。

タイヤが土煙を舞い上がらせ、土を耕していくそのすぐ後を、赤い波が追いかける。

隊員A「グレイプの速度に追いついてきやがる!」

キャリー3「速度を上げます! 揺れますよ!」

運転手は手のひらを、ハンドルにくい込ませるかの如く、一層強く握り込んだ。徐々に痺れを感じ始めるが、それに構うこと無く握り続けた。

 

 被害を抑えるため、EDFは敵群を民家のない海岸に誘導。待ち伏せを行い、海岸に配置した狙撃兵及び戦車隊が迎え撃つことになっている。彼らレンジャー3-1の任務は、作戦エリアへ敵を誘導すること。

 武装装甲車両"グレイプ"に乗り込んだ彼らは、上下に激しく揺れる車内でこみ上げる吐き気に耐えながら逃走していた。

 

隊長「お前ら! 作戦はまだ始まったばかりだ。体調不良を訴える暇はな……グッ捕まれ!」

 何度も山道の凸凹や岩に乗り上げる荒々しさに、必死となって座席に体を固定する。

 幸いにも距離は縮まることなく徐々に離し始めていた。

 

 しばらくすると、緊張感とは無縁の煌びやかな海が広がる……はずなのだが、浜には無数の人影と爛々と照る太陽の光に主砲を輝かせる戦車部隊が車列を組んでいた。

 

田中司令《こちら作戦指令本部。レンジャー3-1による海岸への誘導が成功した。無数の巨大生物が接近している。総員、攻撃準備だ。レンジャー3-1、まもなく狙撃兵の射程内だ。急げ!》

隊長《了解!》

 

凄まじいブレーキ音と砂煙を伴い、グレイプは自陣に停車。隊員の1人が銃座へ付き、その時に備える。

隊長「降車!」

隊員達「「「了解」」」

隊長「キャリー3、世話になった!」

一言の礼も束の間、後部ドアが開くと日差しが一気に入り込んだ。眩しさに足を止める暇もなく散開し、迫る巨大生物群に向き直った。

 

隊長《レンジャー3-1、以降戦線に加わります!》

 

沢見戦術士官《巨大生物群、第一攻撃開始ラインを通過。レンジャー3-1、戦線に加わりました》

田中司令《よし。狙撃兵、戦車隊は攻撃を開始せよ》

 

 開始の合図を皮切りに、戦車隊の砲塔が一斉に動く。

 

ドーベルリーダー《ドーベルリーダーより各車。砲撃開始だ!》

 

 EDFの保有する戦車"ギガンテス"各車から、重い射撃音と空気の振動が重なると、赤色甲殻型巨大生物の前衛で続々と爆発が起こった。

 巻き上がった砂煙、そして仲間の死骸を乗り越えて、赤色甲殻型巨大生物群が押し寄せる。

 

レンジャー3-6隊長「スナイパー、射撃用意! 最前線で心置きなく撃てる機会だ。楽しめ」

隊員「「「Yes sir!」」」

 

 戦車隊の後方に控えたスナイパー部隊が、攻撃を開始。放たれた弾丸は前列の巨大生物の顔面や胴体、脚部に容赦なく損傷を与えていく。

 甲殻に弾痕を中心としてヒビが入り、足元へこぼれ落ちるが、赤色甲殻型巨大生物はその足を止めない。自分の一部だったものをクッキーのように簡単に踏み潰し、出血しながらも、目前の人間を捕食するという一つの本能をもって凶暴に足を動かしている。

 

隊員A「流石の生命力だなぁ!」

隊員B「次々と後列の敵が湧いてきます!」

3-6隊長「前衛部隊を信じろ!一体でも多く仕留めるんだ」

部下を励まし、取り巻く焦燥感を戦意に転じさせる。その甲斐あって、敵を見据えた隊員達のコッキングに要する時間はコンマ秒となり、殲滅速度が若干向上した。

 

レンジャー3-1隊長《近づけはさせん!》

フェンサー4-5隊長《任せておけ。一匹たりとも通しはせんわ!》

田中司令《こちら作戦司令本部。敵群が前衛攻撃開始ラインを通過。ストームチーム、レンジャーチーム、フェンサーチームは即時攻撃を開始せよ。狙撃兵とハンドキャノン部隊は、前衛部隊を掩護》

  《ストーム、了解》

3-1隊長《レンジャー3-1、了解》

4-5隊長《フェンサーチーム、了解ィ!》

田中司令《ドーベルリーダー、隊列を整え丘へ展開。側面からの面制圧で、一気に勝負をつける!》

ドーベル1《ドーベル、了解!》

合図を皮切りに、ドーベル戦車隊が移動を開始。浜から内陸側の丘へ一列に進むと、赤色甲殻型巨大生物群の側面に展開した。前衛部隊への被弾を防ぐ、そして群れ中腹~後列を攻撃するためだ。

田中司令《ストームチームはドーベルを掩護せよ》

 

3-6隊長「前衛部隊と敵が接触した。以後、前衛部隊の掩護に注力する。絶命するまで撃ち込め!」

隊員達「「「了解!」」」

 

 前衛部隊の掩護を開始したスナイパー隊の前方では、レンジャー3-1やフェンサーチームが赤い波をせき止めている。

 レンジャー3-1が装備しているのは先日配備が成されたAF17アサルトライフル。AF14の正統な改良型で、AF14がその甲殻に威力を相殺されてしまうのに対し、本体の改良と使用弾薬の変更によりカタログスペック上、赤色甲殻型巨大生物へダメージを与えられる貫通力と威力を得ることができた名銃である。

 発射された弾丸は確実に、甲殻に突き刺さるだけに留まらず体内へ達していた。

 

 群れから孤立した個体がレンジャー3-1へ肉薄するも、一人が赤色甲殻型巨大生物の腹部に潜り込み、下腹部へ弾丸をありったけ撃ち込んだ。絶命し地に伏せる巨体の下敷きになる前に前転回避し、立ち上がると次の目標を捉える。

 

 フェンサーチームは近距離戦闘用のブラスト・ホール・スピアや中・遠距離戦闘用火砲、"NC101ハンドキャノン"で武装している。

 酸噴射の能力を持たない赤色甲殻型巨大生物は、重い一撃と圧倒的な殲滅力を謳うフェンサーと実際の威力の前にほぼ一方的な殺戮を受けていた。運良く隊員たちの懐に入った個体であっても、まもなくブラスト・ホール・スピアで突き抜かれ、ハンドキャノン部隊による中距離からの徹甲弾の雨が完膚なきまでに顔面や胴体を三日月型に、そして粉々にしていった。

 

 さらに、雷撃や連続した射撃音。間髪入れず弾幕が前列個体の仮面を物量に物を言わせて剥がし、露わになった生身を引き裂いていく。さらに雷撃が甲殻を焦がすと、まるで枯葉を揉み潰したかのようにこぼれ落ち、そのまま皮膚を焼かれ絶命した。

 その正体はストームチーム。ウイングダイバーの扱う光学兵器と、フェンサー用にカスタマイズされた個人携帯用ガトリング砲が丘の上から巨大生物群中腹を一網打尽にし、群れから離れ、戦車隊をロックオンした個体は肉薄を許されることなくアサルトライフルに狩られていく。徐々にレンジャー3-1が前進を始め、ほかの部隊も続く。赤い波はせき止められるどころか、追い返されるのだった。

 

 

【ストームチームサイド】

 

鷺本《ストームチーム、お疲れ様でした。無事の帰還、お待ちしております》

  《ああ、ストームチーム、これより帰投する》

 

まもなく殲滅が完了し、事後処理作業に入っていた迎撃部隊は、完全に気が抜けていた。

その安堵が彼らへ近づく脅威に隠密性を与えたのか。

 

 

スカウト4《こちらスカウト! 巨大生物が海岸に向かっている。すごい数だぞ!》

 

沢見戦術士官《新たな巨大生物を確認。作戦エリア一点に向かっています》

 

レンジャー3-1隊長「ん? おい! 敵の反応だ!」

 

突然の報告からレーダーで観測できる距離に侵入される、もとい、レーダーに表示されるまでの間、部隊は焦りと喧騒によって弾倉を取り落とす事態もしばしば、なんとか戦闘態勢を整えたのであった。

田中司令《レーダー上に確認。赤色甲殻型巨大生物の大群が後方に展開している。狙撃兵と戦車隊は浜へ後退、出来るだけ距離をとり、戦闘態勢を整えろ。前衛部隊は、後衛部隊の移動を掩護。ストームチームは……

 

鷺本《承知しました。ストームチームは各個に赤色甲殻型巨大生物の殲滅に動いてください。戦車部隊の掩護はレンジャーチーム、フェンサーチームが行います》

 

この作戦が開始される前、「ストームチームは攻防において戦場を縦横無尽に動くことが性に合ってる」と、隊長が田中司令へ言い放ったこの言葉。各員共に頷かされた。

 

  「了解した。隼人、宮藤、八木は前衛部隊のバックアップ、俺、早紀はこの場で食い止めるぞ。各員の判断で、敵を攻撃せよ」

隊長はそう言い終える前に大口径狙撃銃”ストリンガーJ2”*2のトリガーを引き、発射された弾丸は丘を闊歩する赤色甲殻型巨大生物の顔面に大きな円形の風穴をあけた。

 

 

【数分前、近くの市街地】

 

武内「くそ! この数どこから湧きやがった!」

向かってくる黒、赤色の巨大蟻へ吐き捨てるように言った武内へ、その隣で比較的冷静な先輩自衛官の藤山が、銃撃に掻き消されんばかり中で声を張り上げ、笹原に答えた。

藤山「突然街の中心部の地中から発生したらしい!すでに中心部に展開していた部隊からの通信が途絶えたと。中心部から1km圏内の部隊には撤退命令が出ている」

武内「なっ……そうですか……」

疑問として言い放った訳では無かったのだが、返ってきた答えに驚愕する。

苦渋に満ちた表情をする武内達。こちらも撤退に移りたい気持ちがあるものの、命令、そして国防組織の一員たる誇りがその猶予を与えない。そんな悲観的な彼らのもとへ、またも新たな巨大生物群が到着する。

藤山「くるぞ! かまえろ!」

武内「はい!」

 

陸上自衛隊は、局地的なEDFの誘導作戦と同時に、巨大生物の群生地となった市街地の奪還作戦を展開していた。しかし状況は芳しくない。戦闘員が減っていく一方で、敵巨大生物群はなおも数を増やし続けていた。

 市民、そして恐怖を刷り込まれた隊員が必至の形相で逃げるが、中心部からあふれ出す巨大生物群に捕らえられ、捕食されていく。その様子は武内、藤山の居る都市~住宅地の移り変わる地点の防衛線まで達し、二人の目の前でも繰り広げられていた。鳴りやむことのない金切り声が隊員達の精神を蝕み、闘争心や何もかもが朦朧とした瞬間、戦闘員、逃亡者関係なく巨大生物の餌となる。

 更に巨大生物群の規模も徐々に増していき、89式小銃等、歩兵用の火器では抑えきれなくなっていた。MINIMI機関銃の弾幕は使用者の殉職とともに止み、84mm無反動砲も撃ち尽くしてしまったのだ。

 

藤山「ぐああああああ!」

武内「藤山さん!」

 

 甲殻に突き刺さるだけの5.56mm弾では太刀打ちできず、赤色甲殻型巨大生物の肉薄を許してしまった藤山が噛みつかれた。左腕から発した痛みの落雷に、意識が焼き切れそうになる。気づけば左腕は赤色甲殻型巨大生物の口の中に消え、藤山を咥えたまま赤色甲殻型巨大生物は防衛線を突き進んでいった。更にその個体の防衛線突破に注意を向けてしまった隊員もまた、その瞬間の甲殻型巨大生物(通常種)の接近に気づけず、酸の直撃で肉塊となった。

 数秒後、後方では藤山が巨大生物の銃弾の通る口内にありったけ撃ち込み、なんとか脱出したようだ。

 一命をとりとめた先輩の姿を確認するが、ホッとする間もなく、迫る巨大生物に応戦する。

 

藤山「ぐっ……」

武内「ここももう持ちません! 撤退しましょう!」

 

 必死の形相で訴える武内に気圧され、分隊長は無線機を雑に握りしめた。

 

分隊長「ああ! CP、こちら第三防衛ライン。巨大生物群の猛攻により部隊は壊滅状態! 撤退の許可を願う! 送れ」

 

CP《こちらCP。第三防衛ライン、撤退を許可する。救援部隊が既に展開中、そちらに向かわせる。送れ》

 

分隊長「こちら第三防衛ライン、了。こちらは分隊車両に負傷者を収容し、戦線離脱を試みる」

 

CP《了、終わ……撤退ルート上に巨大生物群出現、救援部隊と遭遇した。すまない……いやまて、HQより、「EDFが援軍要請を受理。作戦エリアへ既にウイングダイバー隊が向かっている」らしい》

 

怒号を準備していた分隊長が、一転して喜々として応えている姿を横目で見ると、

 

 

武内「くそ……またEDFかよ……」

 

と呟いた。

 

武内は目の前に広がる死屍累々の、恐怖に歪んだ陰惨な相貌を目にしてしまい、EDFの到着に縋るかの如く祈り続けるのだった。

 

 

 

【海岸:作戦エリア】

 

  「さて、こいつを試してみるか」

早紀「隊長、それは……なんですか?」

 

 隊長が手に持つ"それ"に、早紀は目にした途端呆れてしまった。

 それはなぜか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その手に握られていたのは、一丁の水鉄砲だったのだ。

 

 

 

  「こいつか? こいつは、武器開発ラボから依頼された試作品だ」

早紀「え? いえ、でも……それはどう見たってただの水鉄砲……」

  「いや、れっきとした武器だ。中身は強酸だと。武器の名前は……『アシッドガン』だそうだ」

早紀「何故隊長もちょっと乗り気なんですか……」

 

 

 武器開発班曰く、

研究員「巨大生物の甲殻、機械兵器の装甲を貫通する、というスペック思想を取っ払い、敵を融解させるといった戦術を体現化しました。そして、なんといってもこの見た目! 反EDF派の言う武骨で荒々しい見た目ではありません。小型化すれば、ただの水鉄砲(おもちゃ)として販売も可能です! EDFに対する市民の意識向上も図れるってもんですよ!」

 

 隊長は渡された水鉄砲の全身を見る。どこまでも水鉄砲だ。

弾倉にはラベルが付いていた。「巨大甲殻虫をノックアウト!」という謳い文句が書かれている。

 

 ――大丈夫なのだろうか。EDF武器開発ラボ(ここ)は。

 

  「まあ、強大な軍事力を持ったEDFの物々しさを緩和するような見た目ではあるが……気は確かか?」

研究員「勿論ですとも。つきましては、ストームチームに実地試験を依頼したいのです」

  「……待て。まさか実戦配備まで考えていないだろうな」

 

 いったん飲み込んだが、恐る恐る問う。

 研究員は、悪びれる様子もなく満面の笑みで答えた。

 

 

 

  「……というわけだ。一周回って試すのが待ち遠しくなってきたんだ」

 

 冗談を言う隊長。笑い話をする彼を、早紀は冷めた目で見た。

 

早紀「ふざけてますね」

  「言うな。これでも火力(?)は相当なものらしい。さあ、くるぞ。射程内だ」

早紀「ちょっと……隊長!」

 

 部下の反対を押しのけ、目前へ迫る赤色甲殻型巨大生物に狙いを定めた。

隊長が「噴射!」と吼え、トリガーが引かれる。射線に沿って地面の草花が煙を上げだした。人類に対し猛威を振るった酸噴出攻撃。その巨大生物の研究により開発された強酸が自身の身に返される恐怖を、果たして虫たちは感じるのだろうか。勢いよく噴射された深緑色の液体は容赦なく雨となって降り注ぎ、赤色甲殻型巨大生物の甲殻をコーティングしていく。

 強酸を被った箇所が液状化し、まず一体の関節部が溶けた。続けて複数体が己の溶け行く現実に悲鳴を上げる。触覚を無くした個体が訳も分からず同士討ちを始めた。肢体が溶けた個体は胴体をクネクネとのたうち回る。

 

 早紀は目の前に広がる惨状に、ふと人間を重ねてしまう。

巨大生物の襲撃によって悲痛の叫びを上げる人間達。体を芯から震え上がらせるような恐怖が脳をよぎった。

 

 同じことを思っていたのか、隊長もヘルメットの中の表情が曇っていた。目が合うと、隊長も早紀の様子を察したようで、

 

早紀「隊長……」

  「同じ意見だ。この武器は確かにとてつもない威力だが、残酷すぎる」

 

 無言が続く。無残に息絶えた複数体の赤色甲殻型巨大生物を眺め、二人は武器を持つ手に脱力感を覚えた。

 そんな二人のもとに、他の面々が駆けつける。

 

隼人「隊長! 殲滅完了しました。部隊への損害は軽微です……!」

八木「現在帰還準備、他の作戦エリアへの救援の有無等、確認していま……えぇ!?」

宮藤「これは……例の武器。なんというか、えげつないですね……」

  「ああ。人類が、俺たちEDFが持つのは憚られる。そんな力のようだな」

 

 彼らの目前には、煙を発する草木の朽ち果てた大地と死に絶えた巨大な赤蟻のみが広がっていた。

 

 

 

【海上】

 

 

副長「艦長! 来ます!」

艦長「撃て! 本土に上陸させるわけにはいかん!」

砲雷長「魚雷発射! ……駄目です。軽微なダメージすら与えられていません!」

艦長「だが、出血はしている! 傷口が徐々に塞がれてしまうのには驚かされたが、ありったけ撃ち込めばやつは! 再生速度に勝る火力を叩き込むんだ!」

副長「! こんごうから艦対艦ミサイルが発射。着弾、敵損害見られず!」

 

艦長「諦めるな! この場にいる全艦に通達。全門、火力をもって敵を攻撃せよ!」

 

すぐに艦内が慌ただしくなり、短魚雷発射管、62口径5インチ砲、54口径127mm単装速射砲など、持てる火力の全てをつぎ込んで、"それ"を相手取る。

 

 

 

……が、

重なる巨大な黒煙からは、一切傷の見られない皮膚が薄っすらと姿を現した。

 

艦長「馬鹿な……」

副長「艦長! 見てください! 黒煙からなにか、光が……」

艦長「なに!?」

 

 

 

 

 なにやら帯電するかのごとく、青い光が黒煙から漏れ出した。帯電する者、それは……

艦長他艦橋に居た人々に限らず、内部で作業していた整備士たちも不穏な空気を感じ取り、一人残らずその不安への警鐘を鳴らした。だが、それは遅すぎたようだ。

 否、遅すぎたと思い立つより先に、彼らの意識は途絶えた。

 

副長「うわあああああああああああああああああああああ」

艦長「おのれぇぇぇぇぇ!」

 

まばゆい光に包まれる。刹那、護衛艦群は爆炎に包まれ、爆発に巻かれた艦長たちは全身を焼き尽くす熱気を一瞬だけ感じ、この世を去ったのだった。

 

 何かが直線状に放たれたのか、海が穿たれていた。時折黒煙からはみ出す爬虫類の口のようなものから、若干光が残滓として残っていた。

 

 後に残ったのは、無残に破壊された護衛艦の残骸と、急な温度上昇に伴った水蒸気に覆われた海面。

そして、巨大な生物だった。悠々と日本国土へ泳いでゆく、否、海底を踏みしめて歩いていく巨大な()()

 対怪獣級の力を持っていた筈のEDFと海上自衛隊の連合艦隊防衛ラインは、易々と突破されたのだった。

 

*1
正距方位図法で描かれた世界地図を覆う、額に"E.D.F"を象った連合地球軍旧標準装備(最初期デザイン)のヘルメット両側を、平和の象徴であるオリーブの葉が囲んでいる。これは全人類のため、ひいては地球上全ての恒久的な平和の実現を目標とする組織であることを意味している。

現在までに2度のデザイン再考が行われ、2015年時は研究員の外勤時に白色のヘルメット(モデルはEDF2)、2017年より軍隊化に伴いオリーブ色、隊長格は真紅に色分け(モデルはEDF3)、2020年時、隊長色がやや明るくなり、また配下の部隊は装備によって緑、群青、茶色、等一目で見分けがつくようになっている(モデルはEDF4.1)。※一部作者の独自解釈

*2
凄まじい破壊力と貫通力を持った大口径の狙撃銃。赤色甲殻型巨大生物の装甲に最適化されており、容易く風穴を開けることが出来る反面、貫通力を高める特殊機構と弾丸の大型化の代償で装弾数が一発のみとなっている。




自衛隊の悲壮感とEDFのバカらしさが対照的すぎて違和感を覚えましたが、保有する武器弾薬がどの敵性勢力に対してなのか、棲み分けしてる感じです。ちなみに米軍は積極的にEDFとの技術提供行ってそうです。

学業・生活優先で時間割けずにいましたが、やっぱ悠々と趣味として書くのは楽しいですね。
ペコリ((・ω・)_ _))


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27.5話 2つの組織

原作のミッション数と合わせたい気持ちがあり、閑話の頻度が多い本作です。
あと一部やっつけ感が半端ない件。


【市街地】

 高機動車が駆けていく。陸上自衛隊は援軍の無き孤独な撤退戦を強いられていた。

 軽装甲機動車は使い物にならなくなり、装甲の薄い車両での逃走を余儀なくされたが、銃架が辛うじて溶けておらず、味方の死体から借り受けた5.56mm機関銃MINIMIを据え付けて、銃口が橙色に染まるのもお構いなしに射撃し続ける。しかし、弾薬は既に底をついていた。

 

武内「5.56mm機関銃MINIMI(ミニミ)の弾、もうありません! 」

分隊長「89式自動小銃(ハチキュウ)で応戦せよ! よく狙えよトップガン!」

 

 悲鳴を上げる部下を励ます。だが分隊長自身も焦りを隠すことが出来ずにいた。

 焦燥感を煽るように、(ほろ)が酸に溶けていく。

 

分隊長「皆、この大通りを進んだ先に救援部隊が展開しているらしい! それまでの辛抱だ! 残った弾全部くれてやれッ!」

部下たち「「「はい!」」」

 

 励ます分隊長に快活な返事をすると、すぐに視線は追手の巨大生物に戻った。

 残り少ない弾薬を一発ずつ撃ち込み、巨大生物の足止めを狙う。

 運よく前脚関節部にヒットし、一匹がその場に崩れ落ちた。口元がつい綻ぶが、素早く次の獲物を捉える。

 チェイスを繰り広げる最中、運転する藤山が何かを見つけた。

 

藤山「分隊長! 前方に人影あり! 飛翔しています!」

分隊長「あれは……来たか! EDFだ! 射撃中止!」

武内「射撃中止!」

 

 無数の人影が颯爽と舞い上がり、こちらに銃口を、否、こちらの後ろに槍先を向けた。そして頭上を通過すると、武内たちを追う巨大生物へ攻撃を開始する。

 赤色や青色のまばゆい刹那の光の矢が巨大生物を射抜く。

 武内は射撃中止の命令を聞き、89式自動小銃を抱きこんだ。視線はEDFに釘付けだ。

 

高野「ウイングダイバー7、撤退中の自衛隊車両と遭遇した。……了解、掩護す――

武内「光学兵器……か。まるで別世界の――」

 

 言い切る前に二者の距離が離れる。

 高野は走り去る高機動車を後目にレーザーランスのトリガーを引いた。殺到するレーザーが巨大生物を焼いていく。

 巨大生物群は標的を彼女達ウイングダイバーへと変え、武内たちを追う個体はいなくなった。

 酸噴射を華麗に避け、煌びやかな光が巨大生物を蹂躙する。

 その姿に、武内は驚き、そして希望を見たのだった。

 

 直進の先に手を振る救援部隊を見つけると、急に力が抜けたようで、崩れるようにシートに腰かけると脱力感と眠気が襲ってきた。

 

 

 

【同時刻、桐川航空基地>滑走路】

 

 同時刻、桐川航空基地の滑走路では、これから出撃するとある部隊が演説を行っていた。年の近いリーダーと部下のパイロット達がなにやら盛り上がっているようだ。

 

夜須野(やすの)「よし、みんな! 俺たちが今回の作戦の要であり、これから偉業を成し遂げる部隊である! 我々の名は!」

 

パイロット達「「「ミッドナイト!」」」

 

夜須野「そうだ! 宵闇に紛れて敵を屠る空のスナイパー。われらは!」

 

パイロット達「「「ミッドナイト!」」」

 

夜須野「新型貫通弾グラインドバスターを積んだこの機体を乗りこなすのは!」

 

全員「「「「われら、ミッドナイト隊!!!!!」」」」

 

夜須野「イィィヤッホォォォォォ!! よぉし、その意気だ! やつらに目にものみせてやるぞ!」

 

矢吹「夜須野リーダー、いつにもましてテンションたけぇじゃねえか」

 

夜須野「ああ! なんたって大役を任されたんだからな! われ等の働きで戦局は大きく変わる。それを肝に銘じておけ!」

 

 彼らは桐川航空基地所属の新設部隊。コールサインは「ミッドナイト」である。

 今回の大規模な作戦において、飛来した敵輸送船団を迎撃するために設立された部隊なのだ。

 武装は新型貫通弾「グラインドバスター」。以前四足歩行要塞(よつあしほこうようさい)の撃破に投入された試作型がいよいよ実戦配備となり、夜須野らパイロット達は出撃要請を待つ段階で落ち着いていられず、夜須野にいたっては好きなロックを鳴らし気持ちをさらに高めているのだった。

 

 

 

【同時刻、桐川航空基地>射撃場】

 

 慌ただしい桐川航空基地では、もう一つ、今後の趨勢を決める場があった。

 基地内の射撃場。日本国の防衛を司る人材が集められている。

 

 多田防衛大臣をはじめとした幕僚監部を前に、連合地球軍日本支部/戦略情報部長官、大沢 千晴(おおさわ ちはる)。そして特戦歩兵装備開発主任、沢城 亜李(さわしろ あり)が説明を行い、レンジャー8の滝山らが実演を行っている。

 テーブルの上には、AF-14アサルトライフルをはじめとしたEDFの武器が並べられていた。

 

 普段は白衣を着ていたり、タンクトップ姿になっていた沢城は、着慣れないスカートスーツに少々落ち着かない様子である。

 反対に大沢は大人の女性の威儀を感じさせる佇まいでパンツスーツに身を包んでいる。淡々と装備品の説明を行っていた。

 

沢城「コホン……いずれも我々特戦歩兵装備開発班が改修を行い、現在EDF陸戦部隊に配備されている同モデルよりも高いスペックを会得しました」

多田大臣「ふむ……」

沢城「では、実演を。レンジャー8、射撃開始してくだしゃ……さい!」

大沢「プフッ」

 

 沢城は多田防衛大臣らの後ろに隠れて親友の動揺を大いに楽しんでいる大沢に目で「後で覚えてなさいよ」と伝えた。

 幸い多田達はAF-14やAF-17アサルトライフルを構える滝山達に意識を集中していたため、気付いていなかったようである。

 

滝山「分かりました。総員射撃用意。撃て!」

隊員「「了解!」」

 

 滝山の合図の直後に断続的な発砲音。

 射線の先には的が設置されていたが、最初の一発で大部分が欠け、さらに宙に舞う破片を捉えて木っ端微塵にしていく。

 その破壊力に、次々と感嘆の声が漏れた。

 

多田大臣「なんという破壊力だ……」

 

大沢「多田防衛大臣、我々はこちらの自動小銃一つとっても従来の性能を凌駕する闘力を誇っています。今回の制式採用は、我々だけではなく、自衛隊にとっても、とても有意義な場であると確信しています」

 

多田大臣「そのようですな」

 

 興味深そうにEDFの銃火器を見定める多田防衛大臣。

 大沢は手元のバインダーに目を落とす。

 そこには今回自衛隊特殊作戦群に制式採用されることになるEDFの銃火器がまとめられていた。

 以下、銃火器の名称等が記載されている。

 

・AF-14をPA-11

・AF-17をT1ストーク

・MMF42スナイパーライフルをKFF51

・バッファローG1ショットガンをスローターE20

・スティングレイロケットランチャーST2をグラントM32として第1中隊を中心に配備予定。

 

 以上、5種の銃火器を計100丁調達する。

 

 宇宙戦争が始まった日本国において、すでに89式自動小銃の代替品を国産で調達するのは現実的ではない。20式の開発が2017年に頓挫し、終戦後も停滞している間に、連合地球軍(EDF)が国内外の軍需産業を台頭する事になった要因もある。EDFの装備は世界各国が共同開発したものであるため、国産よりは安価で調達可能なのだ。

 

多田大臣「最後に……戦闘服だが……これは素晴らしいな」

沢城「はい。EDFのパワーアシストスーツ技術をそちらの要求スペックに調節した戦闘服になります」

 

 多田防衛大臣と沢城の前には、迷彩柄にデザインが再考され、よりスタイリッシュになった戦闘服*1が飾られていた。

 

大沢「そちらの説明は私から。現在EDFで制式採用されているパワーアシストスーツは、着用者の身体能力を引き上げ、姿勢矯正機能の付与や、歩行・駆け足時の瞬発力をもたらします。また、肩・肘・膝のサポーターによって様々な行動、作業の疲労軽減を実現。また、銃火器の携帯の面でも恩恵をもたらし、射撃中の反動等に臆することなくある程度の迅速な行動を可能にします」

 

多田大臣「ほう……」

 

大沢「素早い巨大生物と対峙したとき、最も兵士の命が危険に晒される場面は白兵戦に突入することです。ましてや射撃中は行動が制限されている中で、敵の攻撃を避ける術はありません。EDFは前大戦よりこの状況の打開に尽力してきました。そしてついに開発されたのが現在のパワーアシストスーツになります」

 

多田大臣「EDFはこのアーマーをはじめとして装備の軽量化がどの国よりも進んでいるように見受けられる。そうか、このアシストスーツの恩恵が……」

 

 多田防衛大臣が肘のサポーターを撫でてみると、スプリングの感触が返ってくる。驚く程に優しい感触で。

 

 多田防衛大臣は元陸上自衛官だった。それ故に、このパワーアシストスーツを巡る問題には人一倍の思い入れがあった。

 前大戦において、巨大生物の酸噴出攻撃を防ぐ、または軽微な損傷に抑える技術は無く、自衛隊は苦戦を強いられた。当時の戦闘服が見るも無残に溶けていき、着用者の耳をつんざく悲鳴が木霊する戦場。

 当時もパワーアシストスーツやパワードスーツを投入する案が議論されたが、フォーリナーの猛攻に孤立していく国々の惨状と投入資金不足が決定的となり頓挫。しまいには民間の作業用パワードスーツを転用したが、戦闘より兵站用として見いだされてしまい、依然として最前線は殉職率の上昇に歯止めが利かない状態だった。

 しかし、そんな絶望的な状況の中、光明が差すことになる。

 「PAギア計画」と呼ばれる、民間のパワードスーツを戦闘用に改造した計画で、敵の機械兵器に貯蓄されていた「エナジージェム」*2をエネルギーとして稼働させたパワードスーツを着用した者は超人的な身体能力を得ることが出来るという代物だった。

 実戦では目覚ましい戦果をあげたが、既に数を用意する余力の無い自衛隊は第1空挺団など精鋭部隊のみに配備し各地に派遣した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――だが、

 

 大戦中期、マザーシップが日本に飛来した際に実施した撃墜作戦で部隊は文字通り全滅。マザーシップの砲撃はパワードスーツの開発に関わった人や建物全てを薙ぎ払い、「PAギア」はロストテクノロジーとなってしまった。投入された過剰な資金等、諸問題を抱えた計画であったことも災いし、計画は再度凍結。その後自衛隊は従来の戦力での続行を余儀なくされたのだ。現在の科学技術であれば再建も不可能ではないが、旧世代となった内蔵システム、装備重量等、見合う価値の無い事が、計画凍結を決定的にしていた。

 殉職した部隊の中に旧知の仲である親友の名が刻まれていたことで、多田は後方職種に志願を決意。しかし退官後、紆余曲折を経て入閣。現防衛大臣として、対攻撃的地球外文明体(フォーリナー)に関しては徹底抗戦の意思を示している。

 

 

 その後も様々な銃火器の実演を経て、多田防衛大臣一行は防衛省への帰途についた。

 射撃場には、胸をなでおろす沢城と笑い半分に謝罪する大沢だけが残っていた。

 

大沢「ねえごめんなさいって。無視しないでよ亜李」

沢城「あぁー早くラボに帰りたいわ。……さわちーが今度奢ってくれるなら許してあげる」

大沢「はいはい、分かったわよ。どうせお食事行くならさわみーも呼びましょうか」

沢城「今は作戦中で指令本部を離れられないんじゃないの? あのお店のパンケーキ持っていって労をねぎらいにいきましょ。最近よくチェックしてたみたいだし」

 

 

 

【作戦指令本部】

 

 作戦指令本部では、来る大規模作戦への布石が行われていた。

 沢見裕子(さわみゆうこ)戦術士官もまた、作戦行動の指揮を執っていたが、

 

沢見戦術士官「!?」

 

 突如寒気を感じ、気丈な振る舞いに綻びが生じる。

 

田中司令「大丈夫か?」

 

沢見戦術士官「ええ、ええ問題ありません。続けてください」

 

田中司令「うむ。では――」

 

沢見戦術士官(この悪寒は何かしら……何か、他人にプライベートを暴かれたような感覚……気のせい? そういえば千晴と亜李、今日は大丈夫だったかしら。まあ二人とも常識はあるし、凛として応対するのには慣れているでしょう……)

 

 5分ほど席を外すと断り、沢見は二人に電話をかけようとスマホの画面に目を移した。途中ネットの検索エンジンを起動したその履歴には、最上部から「アシッドベーカリー 限定パンケーキ 〇〇」が複数にわたって並んでいた。

*1
全身が深緑色に染められ、暗めの迷彩で覆われている。また、肩パッドが甲冑のごとく突き出ており、ビジュアルもよく特殊作戦群の隊員達、そして軍事オタクなどの層に好評である。モデルは「地球防衛軍5」のレンジャー、アサルトライフルNPCの服。カッコいい。(作者談)

*2
恐らく生命維持装置の燃料のようなものであると結論付けられた。EDFでは光学兵器をはじめとした様々な兵器に転用されている。




今回は地球防衛軍5とEDF:IRのネタを少し仕込んでみました。無理やりねじ込んだの間違い


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28話 急襲

半年経ちました(ゲンナリ
やっとこさ返り咲いた。
サイト自体開いていない期間もありましたが、このサイトに相対する時間はやっぱり楽しいですね。

昨今の外出自粛で、改めてモチベと机に向かう時間が増えましたし、このシリーズ以外にもアクティブに取り組みたいものです。


【砂津谷市上津川区】

 

 天堂は、砂津谷市上津川区の数kmに渡る大通りを歩く。

 道路に跨る路面電車の線路を横断し、歩道に踏み入ると目線を下に落とし立ち止まり、大きな木の板を足で退けた。

 顔を上げて目に飛び込んできたのは、無残に倒壊した一軒家。

 さらにあたりを見回すと、同じように全壊した建物が数ブロック先まで並んでいた。まるで街中の獣道だ。

 足の踏み場がなく、ガラスの破片を踏むたびに鳴るパキパキという音に不快感を覚えながら、生存者の捜索にあたっていた。

 レスキュー隊があちこちで作業を続ける中、背面の黄色い『POLICE』の文字、そして水色の活動服に身を包んだ砂津谷警察署警備課も混ざって声掛けを行っている。

 

 天堂は「廻田(かいだ)さん」と、後方で木の板を退けながら指揮をする先輩隊員を呼んだ。

天堂「被災者対応班によると、その家のご家族が行方不明だそうで。奥様は保護されたそうですが……」

廻田「望み薄だが……はぁ。天堂、除けるから手を貸してくれ。よし、行くぞ!」

 

 重なる木の板を除け、床と思われるズタズタの畳が現れる。破壊された生活の様子が見られただけであった。

 遺体すら見つけられていない現状に、天堂以外の警察官達も肩を落とす。

 それに対し廻田は、「もう少しこの辺りを捜索してみよう」と捜索続行を伝えた。

 数ブロック先では、「(LS-RR03*1に)反応あり! ここです!」「ドンピシャリだ。いたぞ!」と声が上がる。別の行方不明者であった。肩を貸し、励まされながら担架へ運ばれていく。

 

廻田「こちら警護6。西追谷二丁目大通り、レスキュー隊によってさらに一名の救出を確認。我々も大通り沿いを重点的に巡回する。どうぞ」

辰木《了解。大通りから深く入った住宅街には、警護5を向かわせる》

 

廻田「しかし……いまいち馴染まんな……」

天堂「廻田さんって、機動隊から引き抜かれたとか。EDF製の武器ですよ」

 

 天堂がグリップを握る手を何度か開閉させる廻田に笑いかける。

 気さくな後輩に頼もしさのようなものを感じ、笑みがこぼれた。

 

廻田「ああ、やっと俺たちの出番だ。後退するばかりではなくなった。ここから数キロ先では戦闘中。特殊救助隊(S R T)と違って、ある意味最前線で救出救助を遂行できる強みを持った組織が誕生したってわけだ」

天堂「これから忙しくなりますね。この力で、奴らを蹴散らしてやりましょう!」

廻田「あほ。人と正義を守るのが我々の仕事だ。若いのは良いが、本質を見失うな」

天堂「分かってますよ。士気を上げるためですって」

 

 そう言いながら、スリングをたぐり寄せて銃を背負う。

 

 警視庁での運用を経て、新たに都道府県警察での運用を開始した、

 救出救助班護衛と場合によって敵性勢力の鎮圧を担う部隊、

『特殊侵略対策隊 / Special Countermeasures Team』。

略してS.C.T。

 EDF製のアサルトライフルで、制式採用されたM1レイヴン*2を構える天堂と、同じくEDF製のショットガン、G1へリング*3を背中に括り付けて残骸を退ける廻田。

 巨大生物の気配は無く、2人は砂津谷警察署警備課との救助活動に勤しんでいた。

 

 

 警備課に勤める筒井は、中腰から立ち上がると頬を垂れた汗を腕で拭う。手を止めて目の前の惨状を眺めていると、ぼーっと眺める姿を見かねた米田が「筒井?」と声をかけた。

 

筒井「これだけの被害が、たった1機のシールドベアラー(ロボット野郎)とたった5機のガンシップによるものだとは……いまだに信じられん」

米田「シールドベアラー。攻撃能力を持たないがあらゆる攻撃を遮断するバリアを展開できる機械兵器で、傍若無人に家屋を踏み荒らしていたと。そして、被災者対応班の1課連中から証言を聞いたろう。ガンシップの方は、赤色だったとも。EDFのデータベースには飛行ドローン? の強化型って説明があったやつだ。当時は数分で、辺り一面火の海と化したらしい……そんな化け物だ」

 

 通常機の散弾のレーザーではなく、強化型である赤色機は照射型のレーザーを装備している。レーザ痕は道路を縦に切断し、歩道へ一直線に伸び、街灯を切断。さらに脇に停められた車まで到達したところで終わっている。車は無残にも爆散していた。

 人間を追っていたらしい。

 爆発の影響をもろに受けたという店に掛かったブルーシートを顔一人分開くと、まだ黒い煙が蔓延する店内で赤く染まった水に窓ガラスの破片が浮いているのが確認できた。本体は見当たらなかった。というよりも、爆発四散して跡形もなく惨い状態のようだ。また、寝かされた店員と思しき遺体とその上に敷かれたブルーシートがある。肉がべろんと剥がれた骨が覗いていた。

 吐き気がこみあげ、すぐに店を後にした。

 

米田「シールドベアラーへの情報不足と、飛行ドローンの思わぬ飛来。そして嵐のように去った数分間。好き勝手やられたもんだ……」

 

 持ち場に戻ると、廻田が新たな家屋に着手しようとしていた。2人と目が合う。

 

廻田「おい! 2人来てくれ。次はそこの瓦礫を退かすぞ」

筒井&米田「「はい!」」

 

 数km先ではEDF JAPANが戦闘を行っているためその煽りを受けるのではないかという懸念もあり、早く現場を去りたい気持ちと職務を全うする正義感が拮抗しながらも捜索を行う天堂たち。

 その時だった。警護6の1人が、青空を指差す。

 

逢坂「見てください! あれは……」

守永「ありゃ、フォーリナーの輸送船じゃないか!?」

 

 廻田と天堂は突然の襲来に手を止めて隊員たちの目線の先を見た。白銀の装甲に紅の光が通っている。

 雲をかき分けて現れたのは、まごう事なき、フォーリナーの輸送船であった。

 しかも、単艦ではなく5隻の編隊を組んでいた。

 

廻田「なんだと!?」

天堂「輸送船……くそっ最悪だ!」

 

 咄嗟に天堂はM1レイヴンを構え、銃口を輸送船に向ける。

 輸送船の飛来は、周囲の現場隊員たちも気づいていたようで、突然の飛来に悲鳴が上がる。

 しかし、「狼狽えるな!」とレスキュー隊の現場指揮官が一喝。

 続けざまに、SCTの指揮車から無線が入る。向こうも騒々しくなっており、辰木警部補が声を張り上げていた。

 

 廻田「おいおい、上空を通過するのはもう少し後のはずだぞ! どうなってる!」

 

辰木《こちら指揮車、突然速度を上げたみたいだ……総員に通達、フォーリナーの輸送船が接近中。全ユニットは警戒態勢に移れ。輸送船から目を離すな》

 

 辰木は髪をかき上げ、焦っていた。

 

辰木「くそっ!」

 

 目の前のレーダーが表示されているディスプレイを力いっぱい叩く。

 輸送船は、航行中に巨大生物を垂れ流して行く姿も確認されているため、侵攻ルートは全て戦闘になる可能性がある。しかしSCTは、フォーリナーの輸送船に対する有効打を有していない。対地上戦を専門にした装備品と自組織の活動方針、器物や公共・民間施設に対する被害を危惧してのロケットランチャーなど爆発物の運用の是非、そして予算を取り巻く確執が、飛行戦力に関する辰木の提案を棄却させたのである。下部ハッチがいつ開くかわからない不気味さに苛まれながら、現場指揮に追われる辰木の苦労は絶えない。

 

廻田「こちら警護6。了解!」

 

 指揮車に返答し、輸送船団を睨む。

 天堂は輸送船に銃を向けながら、横目で廻田に指示を仰ごうとしていた。

 

天堂「廻田さん! 奴らまさか――」

廻田「ああ! そのまさかのようだッ」

 

 廻田はイヤホンを片手で押さえながら、天堂と顔を見合わせる。

 輸送船団は急激に減速し、ついに市中上空に停止した。

 

筒井「廻田さん……想定しうる限り最悪の状況です」

 

 ――どうされますか?と目で問いかけていた。いつの間にか筒井たちが廻田の周りに集まっている。

 皆の口元が若干引きつり、緊張汗が首を伝った。不安を隠せないでいる。廻田は一瞬で理解した。

 続いて周囲を見る。

 まだ丘の如く積み上げられた瓦礫が散見している。指揮車で確認した限りでは、まだこの場所付近で救助された人数と想定要救助者数が合っていない。

 廻田は目を閉じ沈思する。

 

 指揮車方面に行けば、途中で小学校や公園に着く。同行する筒井巡査長たちの安全や、そこに避難する被災者を離れた町への輸送する時間も稼げるだろう。

 しかし、今だ救助を待ち、あまつさえこの騒ぎを聞いて不安を煽られた要救助者を見捨てることになる。

 避難所で待つ家族もだ。

 

 目を開いた廻田の両眼には、火がともっていた。

 倒壊した家屋を指さし、正義に溢れた真っすぐな声で、言い放つ。

 

廻田「我々は巨大生物に対抗できる。人数的にも守れると約束する。だから頼む! 救助を続行させてくれ!」

 

 現地警官である筒井たちに対し頭を下げる廻田。続けて天堂も「お願いします!」と頭を下げた。

 天堂がふと筒井たちのこぶしを見遣る。

 固く、決意を決めたように握りしめられていた。

 そして脱力し、ため息を吐いて笑った。

 

筒井「頼りにしてますよ。廻田巡査部長殿」

守永「さて、仕事は変わりませんな!」

 

 レスキュー隊員も同じ気持ちだったのか、上空を警戒しながらも発見した生存者の救出を行っている。現場指揮官も職務を全うする意思を尊重し、続行しようとする隊員の元へ駆け寄ると手を貸していた。

 また、救出に成功した隊員は、主に背負うなどで指揮所目指し歩き出した。

 

 廻田達も一か所を崩す傍ら、留まって作業を続ける年長のレスキュー隊員に駆け寄った。瓦礫の合間から腕が見えている。意識があるらしく問答を経て、黒く焼けた木材に手をかけたその時。

 ビーッビーッビーッ!とけたたましいブザー音がした。無線機の子機からだ。警護6の面々、レスキュー隊員が咄嗟に耳を傾ける。

 このブザー音が示す意味を、警護6の面々は知っている。

 

 ――巨大生物出現の合図だ。

 

廻田「こちら警護6。道中で要救助者、レスキュー隊員と合流。同行させます。どうぞ」

 

辰木《指揮車了解、退避中のレスキュー隊には警護1~4が付いている。警護5と君たちが最後尾だ》

 

廻田「急げ!」

筒井「はい!」

米田「退けたぞ!」

守永「足、抜けますか? よし!」

逢坂「手伝います」

 

 颯爽と逢坂が肩を貸し、回した腕がレスキュー隊員の腕と交差する。2人は互いに顔を見ると、しっかりと頷き合う。強い絆が結ばれた瞬間であった。

 

辰木《こちら指揮車、地上を目指す反応あり。 真っすぐ地上に向かっている。全ユニットは速やかに離脱せよ! 繰り返す! 全ユニットは速やかに離脱せよ! 急げ! SCTは迎撃準備! 推定7分ほどで地上に到達する!》

 

 辰木はディスプレイに手をつき、前のめりになって点滅する赤点を監視する。徐々に地表へ迫っていた。

 

 天堂たちは徐々に大きくなる地鳴りに翻弄され、銃口を向けながらしきりに見回す。

 それでもレスキュー隊員が生存者を背負ったことを確認し、歩幅を合わせて警戒する。

 

辰木《こちら指揮車。巨大生物の出現位置を特定した。警護5、6の進行方向、6体! 警護6は護衛に注力せよ。警護5は臨戦態勢》

 

寅林《警護5、了解》

廻田「警護6、了解」

 

筒井「廻田さん。そこの商店街に一度避難しましょう」

廻田「そうだな」

 

 無残に倒壊した『追谷さっちゃん通り』*4の看板を避け、商店街に入る。そして無事な建物の中に避難しようとしたその時、後ろで「先輩!」と若いレスキュー隊員二人が声をかけてきた。

道路から商店街のペデストリアンモール*5へ走ると同時に、一同をひときわ大きな揺れが襲った。

 

寅林《こちら警護5! 振動が足元を過ぎた。商店街に向かっているものと思われる!》

 先ほど通過した後方。そして、今若いレスキュー隊員が立っていたアスファルトが少し盛り上がる。若い隊員は、転倒してしまった。

 

天堂「それどころか、もうここにいる!」

廻田「急げ! 建物に入っていろ! ふたりとも、こっちだ!」

 

 さらに地面が隆起すると、粉砕されたアスファルトの破片が転がり落ち、粉塵と共に八足の巨大な生物が5匹、四方へ跳躍した。ハエトリグモに酷似した蜘蛛型巨大生物である。そのうちの2匹の進行方向はこちらだ。

 転倒した若い隊員に手を貸そうと前に出るが、両者を隔てるように蜘蛛型巨大生物は着地した。

 道をふさがれ、その巨体に二人の姿が遮られる。

 すかさず廻田が射撃。脱臼せんばかりのEDF製ライフルの反動が肩に押し寄せる。

 

 フルオートの散弾は顔面を穿ち、蜘蛛型巨大生物は、紫色の体液を辺りに飛び散らせて絶命した。しかし、もう1匹がレスキュー隊員を襲うのには十分な時間だった。

 穴から新たに出現した1匹を加えた巨大なハエトリグモ2匹が、腰が抜けたレスキュー隊員2名に飛び掛かり組み付いた。

 「う、うわあああああ」「ひぃぃ!?」

 人間を間近に捉え、牙を打ち鳴らす。早速餌を見つけたことに喜んでいるようだった。

 いくらでもレスキュー隊員を避けて命中させられる巨体ながら、暴れるレスキュー隊員に散弾が命中しかねない状況。さらに、いざ巨大生物を前にした恐怖にたじろぐ廻田。指に力が入らずトリガーを引ききれずにいると、蜘蛛型巨大生物は無理やり穴へ連れ込もうとする。

 

天堂「放せ!」

 

 狼狽える廻田の横で天堂が発砲。数発が巨大生物の皮膚や眼球をえぐるが、痛みで凶暴性を増し、強引に穴へ引きずり込んでいった。

 そしてなすすべなく連れていかれる光景に、「ま、待て! おぃ……」廻田は絶句する。

 暗闇に消えるレスキュー隊員の悲鳴がぱたりと止んだ。

 

天堂「うおおおおおおおおおおおおおッ」

 

 たまらず穴に駆け出し、地中に向けて、流し込むように乱れ撃ちする。発砲炎が明滅するが、すでに巨大生物とレスキュー隊員の姿は見えない。

 

天堂「くそ! 逃がしたかッ」

廻田「動けな……かった……はぁ……はぁ」

 

 廻田の手はいまだ震えていた。

 

寅林「射撃開始ィ!」

正田「寅さん! 横っス!」

 

 他の場所へ散った個体と接敵したのだろう。寅林の叫びにも似た合図の後、連射音とともに、紫色の体液が霧状となって高く舞い上がる。辺りの建物より高く上がった血しぶきを確認し、廻田と天堂は蜘蛛型巨大生物を追った。

 2ブロック進んだところで蜘蛛型巨大生物が2匹、獲物が見つからないのかたむろしていた。

 二人は石塀に隠れ、覚悟を決める。

 

廻田「天堂! いくぞ!」

天堂「はい!」

 

 通りへ飛び出ると、銃口を蜘蛛型巨大生物に向ける。

 が、同時に1ブロック先の小道から断続的な発砲音。

 真っすぐ進む銃弾は、蜘蛛型巨大生物の眼球を抉り、柔らかい外皮を引き裂く。

 反撃する間もなく銃弾の勢いに押されてその巨体は吹き飛ばされていった。

 さらに歩道に倒れこんでいた街灯やガードレールを巻き込んで、死骸は青空へ舞い上がる。

 

 蜘蛛型巨大生物の死骸、そして街灯とガードレールが宙を舞うその威力を目の当たりにし、思わず「おお」と声が出た。そんな二人の元に、駆けてくる6人の影。警護5の寅林と正田、その部下たちだ。

 

正田「大丈夫っスか!? 蜘蛛型巨大生物は掃討したっスよ!」

寅林「おい! 廻田さん、無事ですかい!?」

廻田「ああ、ああ俺たちはな……」

寅林「……廻田さんも、さすがにグロッキーですな」

 

 意気消沈の廻田に訳を聞く寅林。

 機動隊に異動して以降、震災や殉職者を出した凶悪事件を経験している廻田。その過去を知る寅林は、膝をつく彼を見て同情を寄せた。

 商店街へ戻る途中、蜘蛛型巨大生物が出現した穴を悔しそうに見つめる。自責の念に駆られているのだと容易に想像できた。

 「廻田さ――」天堂がフォローしようと、名前を呼びかけたとき。

 無線が入った。

 

辰木《こちら指揮車。殲滅を確認。よくやった、被害状況は? どうぞ》

 

寅林「両警護班、及び要救助者は無事です……しかし、レスキュー隊員2名が、行方不明。巨大生物が出現した穴に連れ去られました」

 

 廻田が残された穴をライトで照らす。

 先ほどまでレスキュー隊員の身体を巡っていただろう血痕が、致死量レベルだと判別できるほどべったりと血だまりを作っていた。そして、肌色の五本の棒がスポットライトに入り込む。必死にもがこうとしたのか、深い縦穴の土壁を掴んだまま硬直している。肘から先は無い。

 

廻田「……いえ、遺体を見つけました」

寅林「だそうです。どうぞ」

 

辰木《そうか……身元は確認できるか?》

 

 寅林が廻田に目で問う。廻田は首を横に振った。

 その時、後ろから「廻田さん!」とこちらへ歩く足音が聞こえた。振り向くと、商店街に避難させていた年長のレスキュー隊員と要救助者に肩を回す警護6の面々がいた。年長のレスキュー隊員が穴のすぐそばで立ち止まると、「彼らは、うちのホープだった二人だ……」と穴を見下ろした。

 その旨を辰木に伝える。

 

辰木《レスキュー隊の隊長が居る。あっちでも隊員の安否確認を行っている最中だ。ちょっと待ってろ》

 

 そういって切れる。少しして、再度無線が入った。

 

辰木《隊員の身元が割れたぞ。……どちらも若かすぎるな》

 

 谷尾たちの目の前で、二十代という耐えがたい若さで、将来を担う若い人材の命が奪われたのである。

 

 

【砂津谷市追谷区、指揮所】

 

 指揮所に戻った廻田と天堂は、椅子に腰かけ、紙コップにコーヒーを淹れていた。

 そして、廻田はひたすらに自身の判断を悔やむ。

廻田「あの時躊躇せず撃っていれば……」

天堂「廻田さん……さっきは全ての状況が悪かったんです。あの位置からではレスキュー隊員に誤射もありえました。人として、良心が働いてしまった以上仕方がなかったんです」

廻田「だが――」

辰木「天堂の言う通りさ、廻田よ」

 

 その時、突然声をかけられると共に、テーブルに3つ目の紙コップが置かれる。紙コップに2人の視線が集まると、少し歳のいったかたい手が紙コップを掴んでいた。

 仮説テントのテーブルに肘をつき俯く廻田の真向かいに、どかりと座り込んだのは辰木警部補だった。

 

廻田・天堂「「辰木さん!?」」

 

 湯気の立つコーヒーを淹れた紙コップを片手に、息休めだと言う辰木を前にハッと姿勢を正す廻田と、むせて思わず紙コップを取り落としそうになる天堂。

 

辰木「まあ楽にせい……廻田、俺もお前も、本職は人間の犯人との駆け引きだ。銃の要らない解決を模索することだってできる。躊躇なく撃つような冷酷な人間になれとは言えん」

廻田「しかし……」

 

辰木は分かっていると言うように頷き、話を続ける。

 

辰木「今我々が相対しているものは人知を超えた宇宙の存在だ。人情など存在せんし、人の命なんざ簡単に散らされる。完全に被害を抑えるなど不可能だ。これからもこの惨劇が各地で増えることになる中で、我々の存在意義とは、歯止めがかからない現場で一人でも多くの生存者を救出することさ」

 

廻田「その力を持っていたとしても、扱えなければ意味が……彼らは救えた命のはずなのに……」

 

辰木「トロッコ問題……俺はあの手の倫理観を問うものは嫌いだが、現場では常に問われるものだ。トロッコのレバーを降ろさず、俺は無関係なんだと背を向けることは、決して許されん。今回の場合は、レスキュー隊員2名の死によって守るべき市民と多数の隊員たちが生き残ることが出来た。ただ、前途ある若者の希望を奪ってしまったと捉えると慙愧(ざんき)の念に堪えん」

 

天堂「……」

 

辰木「だが、悔やんでいる暇はないんだ。今回のことも、この宇宙戦争の一片でしかないのだからな。間違いなく、お前は大多数の命を救ったさ」

 

 辰木は廻田と天堂を交互に見ると、立ち上がり、「自分を追い込みすぎるなよ」と言い残して去っていった。廻田は目から鱗が落ちたように辰木の背中を見つめていた。

 

 それと入れ替わるように、車の走行音が近づいてきた。

 音の方向を見ると、一台のハンヴィーが止まり、そこからはスタイリッシュな戦闘服に身を包んだ集団が降り立つ。アーマー前面の左胸辺りには、「E.D.F」と象った刻印が入っていた。

 

廻田「EDF……?」

天堂「EDF……ですね」

 

 降り立った集団の中で一人の隊長と思しき男と目が合うと、男は廻田たちに近づいてきた。

男は葉山と名乗り、所属を明らかにする。

 

葉山「すみません、こちらに展開中の救助隊の指揮官はどちらに?」

廻田「辰木警部補のことでしたら、あちらの指揮車に入られましたが……」

葉山「ありがとうございます。では」

廻田「あの! 我々も同行してよろしいでしょうか。ご案内します」

葉山「分かりました。よろしくお願いします」

 

 

【砂津谷市追谷区、指揮所、SCT指揮車】

 

 現場の指揮所として運用すべくカスタマイズされた特型警備車に通された葉山は、一人乗り込み、辰木と相対する。結城以下部下たちは、ドアの脇で姿勢を崩していた。

 廻田と天堂も一緒になって車内を見守っていた。

 

辰木「EDFの方ですか。まさか……」

 

 辰木はそこで言葉を切り、今なお空中に浮かぶ輸送船団に目を向けた。

 葉山はこくりと頷く。

 

葉山「ええ、あの輸送船団を撃墜します」

 

 辰木は待ってくれと手を伸ばす。

 

辰木「……待ってください。実は、まだ区内に生存者がいる可能性を捨てきれていないのです。地下からの襲撃は切り抜けたものの、あの輸送船団が上空に居座ったおかげで活動を再開できず。指揮支援チームと共にレスキュー隊と確認中ですが、今も瓦礫の下敷きになっている人が、おるやもしれん……少しの間だけ踏みとどまってはいただけませんか……撃墜できる力を持たない我々が口をはさむべきではないと思いますが」

 

辰木(2020年の設立以降、楽観的な上層部に散々な言われようだったSCTだが……フォーリナーが再来した今、警察組織の中で唯一真っ向から対抗できる組織だ……なのだが、奴ら(輸送船団)の前でこうも非力とは……くそっ! 「度を越している」だと!? 上は狷介な連中しかいないのかッ)

 

 腹立たしさを内に収め、ため息をつく。

 

葉山「ごもっともです。……我々にポイントを教えてください」

辰木「はい? 今なんと」

葉山「我々が救助に向かいます。ここからは我々の仕事だ」

 

 突然のことに思わず目をしばたたかせる辰木。しかし葉山の鋭い目つきに気圧され、信用に値する人物だと判断した。

 

辰木「……分かりました」

葉山「ありがとうございます」

 

 礼を述べると無線の相手になにやら報告をしているようだった。

 緊張を解いたようにふうっと息を吐く。

 

葉山「今、桐山司令に繋ぎます」

 

 そういうと指揮車から顔をのぞかせ、「皆、準備だ」部下たちに合図を送る。

 傍らで輸送船団を睨みつけていた、部下の一人が口を開いた。

 

結城「葉山さん。……奴ら、傷を負って間もないながらも、希望を捨てない町の上空で我が物顔とは、癪に障りますね」

 

 ここに来る途中、避難所を通過した結城たち。手を取り合って励まし合う人々の温かみを、車窓に肘を乗せながら眺めていた。

 

葉山「ああ。彼らのような希望を摘み取ろうと徹底的にねじ伏せるつもりのようだ」

 

 葉山が地面に降り立つのと同時に、寄りかかっていた結城は、F-17アサルトライフルのハンドガードを掴み「さて……」と再度話を切り出した。

 

結城「隊長。突如敵輸送船団が移動し、この区域に停止した理由ですが……やはり海岸で戦闘中の部隊を挟み撃ちにするということで間違いないようです」

葉山「うん……そのようだな」

 

 二人の会話に、「そういえば」と里見が割って入る。

 

里見「海岸に展開中と言うと、本部が指揮する部隊でしたか」

結城「ああ。確かストームチームが参加してるはずだ。だが、いくら彼らでも、あの量が押し寄せれば……」

大黒「ストームチームといえば、聞きました? 今回の作戦より本部付になったそうですよ」

結城「ん? ああ、そうらしいな」

 

 高城は手を頭の後ろで組んで指揮車に寄り掛かったまま、「ストームチーム」を反芻する。

 そしてはっと思い出し、会話に参加してきた。

 

高城「そういえば、基地ですれ違った時に水鉄砲みたいな長物担いでましたがなんだったんですかね」

葉山&結城「ん?」「は?」

新庄「水鉄砲? Nerfの弾を兵器に転用するならまだしも、水鉄砲ごとき暴徒鎮圧にも使えんぞ」

結城「いやそこ!? そこじゃないだろ……」

高城「大それたことでも形にするうちの兵器開発部ですよ。侮れませんって。おおかた、開発部のモルモットにでもされてるんでしょうね。あれも新兵器か」

新庄「確かに。んで、件のストームチームは今頃、砂浜で追いかけっこか。ガハハ」

結城「お前ら……無駄話は切り上げて行くぞ」

 

葉山「とりあえず、フェンサーに連絡する。エアレイダーにも、こちらへ向かうよう……おっと」

エアレイダー「必要ありませんよー。既にレーザー誘導装置の整備は万全です」

間宮「葉山ー。過去に消防で研修を受けた事のある部下2名、車に待機させてあるぞ」

 

 手を振りながら、親しい雰囲気の若男とフェンサーのパワーフレームを着込んだ間宮が近づいてくる。

 葉山は避難所を通った際、ポスト1司令部に向けて保険として、要救助者が今だ町に残されている可能性を伝えていた。

 

葉山「良かった。今度、結城のAF-17の整備もお願いできますか?」

結城「ちょ、隊長まで」

葉山「いい加減大雑把な性格は直せ、結城」

 

 天堂は結城の跳ねた髪がしなびたのを見逃さなかった。

 

エアレイダー「訓練生以来なうえ、AFシリーズの新型は自分らにゃ未知の領域ですよ。それで、話はまとまり――」

葉山「ええ。作戦の前段として要救助者の救出へ向かいます。作戦自体に変更はありません」

 

 一瞬でやつれ気味な顔になった結城という隊員に同情する廻田と天堂。

 

葉山「間宮も、すまんな」

間宮「いやいいさ。むしろお前の観察眼、恐れ入る。今度飲み会開けだとさ」

葉山「今度は脱がないようきつく言っといてくれよ」

間宮「善処するよ」

大黒「あ、あれは悪夢だ……」

 

 先輩隊員に揉まれるいつもの光景がフラッシュバックし、大黒は頭を抱える。

 そんな彼らを眺めていると、辰木が指揮車からヌッと顔を出す。

 

辰木「すまんが廻田、天堂。席を外してくれんか」

廻田「はい。さて、戻るか」

天堂「ええ」

 

 廻田はその足で指揮車の横に設けられたコーヒーメーカーに向かう。

 コーヒーを淹れて、先に座っていた天堂の向かいに座った。

 二人の目線の先には、フォーリナーの輸送船団があった。

 

天堂「僕が交番勤務だった時の事……話しましたよね」

 

 紙コップに口をつけながらつぶやく。

 

廻田「ああ」

 

天堂「僕も警察官として、人々の暮らしを守っていきたい……と、漠然と抱いていました。ですがあの時、あの瞬間から、僕にも明確な正義が生まれた」

 

 そして、と天堂が続ける。

 

天堂「廻田さんの下について再確認しました」

廻田「ん、つまり?」

天堂「我々は、正義の味方ってことです」

 

  天堂は頭を掻いた。

 

天堂「いつ起こるともわからない、どこでも起こりうるこの災厄から平和を守る、正義を守る。それを現実にできる仕事だって……」

 

 EDFの隊員達を目で追う天堂をぼんやりと眺めながら、天堂との初対面を思い出す。

 

 初めて向かい合った時の印象は、若すぎると思った。だがそれは見込み違いで、少し前まで交番勤務をしていた新任警官に毛が生えた程度だった彼は構わず持ち場を離れ、効果の薄い拳銃で巨大生物に立ち向かおうとした命知らずで、どんな強大な敵だろうと関係なく戦わんとする信念と誇りを持っている、理想を夢見る若手だった。

 この先、彼は凄惨な現場に身を置いて幾度も感謝を。そして挫折を経験するだろう。投げ出したくなる日も来るかもしれない。

 だが、それまで見守ってやろう。そして、支えてやろう。そう決心した廻田であったが、杞憂だったようだ。

 

廻田「俺は……動けなかったんだぞ。見殺しにしてしまったんだ……だが、おまえなら――」

 

廻田「なれるさ、お前なら。」

天堂「はい! 廻田さんも一緒ですよ!」

 

 そこに足音が近づく。

 

正田「お疲れ様っス。おふたりとも」

天堂「正田さん、お疲れ様です。寅林さんも」

廻田「ああ、お疲れ。援護感謝する」

寅林「おう。いいってことよ。んで、さっきの方々は……」

正田「EDFっスね」

廻田「そうだ。実は……」

 

 廻田の話をお茶菓子に、寅林と正田は、コーヒーを啜りながら輸送船団を眺めていた。

 

正田「そりゃ、思い切ったことで」

寅林「まあ、ここからはEDFさんの仕事だ。俺たちは市民の安全に注力できる」

 

 それぞれ感想を残す。寅林に同意すると、廻田は「さて」と話を切り上げ立ち上がった。

 そして、仕事モードに切り替えて言った。

 

廻田「さて、我々の仕事も残ってるぞ。先行した筒井たちに悪いからな、避難所へ急ごう」

 

 「はい!」「ういっス」「行くか!」三人それぞれのセリフが重なった。

 

 

 

 

【追谷小学校校庭】

 

 追谷小学校の校庭では、数キロ離れた指定避難所に送迎するバスが絶え間なく出入りし、途方に暮れた市民がつかの間の休息を噛みしめていた。筒井たちが歩み寄って笑顔が着々と増えている。

 その中で廻田たちも警護につく最後の便であるバスへ乗り込もうとしていた。

 

 廻田が段差に足をかけた瞬間。バスの中がどよめく。

 彼らの目線の先を見ると、輸送船の下部ハッチが開こうとしていたのだった。

 ハッチが開ききると、わしゃわしゃと動く塊が続々と投下されていった。

 

 同時に、銃声がこだまとなって押し寄せる。

 

 廻田はバスの段差にかけた足を地面に戻し、取ってを掴む手でハンドグリップを固く握り、高まる緊張の中輸送船を眺めていた。不安を口にする子供の手を握り締めて笑いかけていた天堂も、そんな様子の廻田が気になりバスを降りた。筒井たちも駆け寄ってくる。

 すると、ブロロロロと走行音がどこからか近くなってきた。一台のハンヴィーを校門前に乗り付けると、先ほどの大黒、新庄というEDF隊員が重傷者の足となり、結城が軽症者に問答しながら背中を押してこちらに歩む。

 逢坂と守永が重傷者を受け継ぎ、大黒と新庄は向き直って銃を構える。

 頼む、と米田に軽症者を引き渡し、結城も警護に加わった。

 追跡なし! と新庄が叫ぶ。

 

 すぐにバスに乗せ、座席に座るのを確認していると、車から葉山が下りてこちらに駆け寄ってきた。

 

葉山「これで全員だ! あとは頼みます!」

廻田「感謝します。よし、出発だ! 作戦の成功を祈ります」

 

 ええ! と短く返事し、後ろを向く。ふと立ち止まると、無線機を口に近づけた。

 要救助者を無事送り届けた! よろしく頼む!と無線機に向け声を張り上げる。

 了解、レーザー誘導装――と若い男の声が返る。

 言い終えると同時に葉山が空を見上げると、つられて廻田と天堂も目線の先、輸送船を見た。

 

 相変わらず青空にゆらゆらと浮かぶ輸送船団。その呑気も束の間、神々しく光った星屑が一つ。

 垂直に落ち、輸送船に接触した瞬間、青空は爆炎に包まれた。

 よぉし! と結城がガッツポーズする。

 こいつぁすげぇぞ! あの新型貫通弾! 新庄が興奮する。

 市中にゆったりと落下する輸送船。すでに紅い禍々しい光は無く、黒煙をあげていた。

 

 遅れてきた轟音と風圧が砂塵を巻き上げる。手も足も出なかったフォーリナーの輸送船がいとも簡単に撃墜された光景に度肝を抜いていた。

 地上部隊、前進して巨大生物を殲滅せよ! と向こうの指揮官らしき男性の声が響いた。

 

葉山「了解ポスト1。レンジャー1-2、攻撃隊に合流する」

 

葉山「先行した部隊の援護に向かうぞ!」

 

 了解! と結城。

 すぐさま車に乗り込み、輸送船の方向に車を飛ばしていった。

 

 車を目で追い、輸送船にふと目線を移した時、また一隻が流れ星に撃たれ爆発。

 その時、イヤッホオオオオオオオオ!と昂った声が響いた気がして空を仰ぎ見るが、

 廻田が早く乗れ! と一喝し、気のせいかとバスに乗り込んだ。

 

廻田「よし。出してくれ!」

 

 廻田たち警護6、市民を乗せたバスが発進。車窓から、次々と撃墜されていく輸送船団を目撃しながら、ほっと安堵の胸を撫で下ろした。

 

 

 

 

 

*1
電磁波人命探査装置。電磁波を利用して土砂、雪崩、崩落した建物内に閉じ込められた人体の動きや呼吸を検知し、対象までの距離をタブレットに表示する人命探査装置のこと。

*2
AF-14アサルトライフルの改良型で、威力を抑えた代わりに連射性能に優れている。精度も犠牲しているが、短時間で多数の弾丸を撃ち込めるため、足止めに有効。さしずめサブマシンガンのような使用感。

*3
スパローショットガンのSCT制式採用型、フルオートマチック・ショットガン。連射性能を抑えることで、アシストスーツの補助が要らないスペックに収まっているが、反動による負荷は相変わらず大きい。しかし、使用者を選ばず、近距離戦闘の優位性を得ることが出来る攻撃力を持つ。

*4
砂津谷市内屈指の観光名所で、帯状に点在する商店街『さっちゃん通り』。スタンプラリー企画を活発的に行っており、それぞれ商店街に並ぶ店にちなんだスタンプが置かれている。コンプリートすると、産地直送ギフトや旅館のチケット等の応募券を受け取ることが出来る。ちなみに現在は、まるで巨大生物の酸を浴びたかのように疲れが溶けだす至極の湯を売りとする『津川浦/しあわせ温泉旅館』のペア宿泊券が当たるキャンペーンを開催中! そこで働く女性従業員3名がアイドル活動を行っていることでも有名。また、彼女たちが出演するタレントゲームとして、アパートを舞台にしたゲームが発売されている。※SANDLOTの別ゲーム、「しあわせ荘の管理人さん」の二次創作ネタです。

*5
車両の進入を禁じた歩行者専用道路



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