魔女教大罪司教『管理職』担当・・・あ、あと傲慢だっけ? (神谷秋光)
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プロローグ

「くっそ!何なんだよお前ら!?」

 

そう言って、俺の目の前の少年は叫ぶ。

 

鋭い目つきに、少し長めの黒髪をオールバックにし上下ともにジャージを着用した少年。

 

この世界では、変わった風貌をした人だと思われるだろう。・・・いや、この世界の住人なら俺たちの方が変わった服装に、明確な敵意を剥き出しにされるだろう。

 

俺の後ろには、黒い装束を纏った集団が忠誠を示すかのように跪いている。一方の俺も全身を黒い法衣に身を包んでいた。

 

「・・・菜月スバル君だよね?」

 

「ど、どうして俺の名前を・・・」

 

その疑問に、俺は答えない。彼とは、初対面ではあるが名前も、これから体験するであろう苦痛も喜びも全て知っている。

 

なぜなら、俺の大好きな作品の一つである『Re:ゼロから始める異世界生活』の主人公だからだ。

 

・・・こうして会ったとしても、彼がいかにただの一般人であるかわかった。

 

俺たちが、こうして姿を現した時点で殺しにかからないのがそれを、裏付ける。いや、そもそも彼がそんな事を出来るはずがない。

 

今の彼は、何も知らない。この世界に来たばかりで、俺たち魔女教の事を知らないのだ。

 

だからこそ、不気味ないでたちをした俺たちをみて警戒しているのがうかがわれる。突然、目の前に黒い装束を着た集団が現れたのだ。警戒するのも無理がない。

 

「意味わからねえよ!今度は、変な集団か!?サテラ、サテラはどこだ!?」

 

その言葉に、俺の後ろに控えている部下がわかりやすく反応する。

 

その、わかりやすい殺意とも呼ぶべき感情は言った本人にぶつけられる。

 

スバルが息を飲むのがわかる。俺は、無言で部下達に何もするなと意思を飛ばす。

 

俺たちは、世界の半分を支配した最悪の魔女。サテラを崇拝する魔女教なのだ。目の前の少年が安易にその名前を呼んだから純粋に怒りが湧いたのだろう。

 

俺は、魔女教を理解し信者を導く的存在のポジションにいる。

 

だからこそ、俺がこんな地位を抜てきされたのか・・・いや、そもそもこの状況に陥っている時点でよくわからない。被害者もいいところだ。

 

気づけば、魔女教に入ってたわけだし・・・。

 

「・・・自己紹介がまだだったね」

 

ここが、見せ場だと法衣をはためかせる。少し前まで一般人だったおれも、カッコいい登場の仕方をしたかったのだ。

 

 

 

 

 

 

「俺は、魔女教、大罪司教--」

 

 

 

 

 

 

「『管理職』担当・・・」

 

 

 

 

 

「今なんて!?」

 

スバルが、全力で俺に突っ込む。

 

・・・いや、最後まで言わせてよ。格好つかないじゃないか。

 

「あ、あと傲慢だっけ?・・・を担当しています」

 

「・・・」

 

「いや、無言の圧力やめてよ。こっちだって、好きでやってるんじゃないんだから・・・とにかく」

 

俺は、顔全体を覆っていたフードを外す。

 

「同じ日本人同士、仲良くしてくれると嬉しいなあ・・・と思って来たんだけど」

 

日本人という言葉に、スバルがわかりやすく反応する。

 

「改めて・・・俺は魔女教、大罪司教『傲慢』兼、管理職担当。神谷(かみや)修斗(しゅうと)だよ。まあ、よろしくね」

 

これが、菜月スバルとの初めての邂逅だった。

 

どうして、こんなことになったのかというと、少し前まで遡る・・・。

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

「・・・怠惰ですねー」

 

あまりにも、暇すぎて自室でゴロゴロしながら俺はそんなことを言う。気づいたら、ペテルギウスになるぐらい。

 

俺は、高校二年生・・・学生だ。毎日、自宅と学校を行き来しており変わらない毎日を過ごしている。

 

特にこれといって、特筆するようなものなんて何もない。趣味がアニメ鑑賞やゲームぐらいのオタクと呼ばれる人種ぐらいなわけで、特殊能力を持っていたり、可愛い幼馴染がいるなんてこともない。

 

・・・本当だよ?フリじゃないからね?

 

いうなれば、クラスにいる目立たないモブ、インキャと呼ばれる存在。なんか、言ってて悲しくなってきた・・・。別に、友達がいないわけじゃないからね。谷口くんとかいるし。

 

ただね・・・憧れてはいるんだよ?

 

自分に好意を寄せる美少女とか、それこそ特殊能力に目覚めて非日常に飛びこむとか。

 

これぐらいの、年齢の人だったら考えるんじゃないかな?まあ、人にとっては、現実逃避と思われるかもだけど。

 

リア充とかには、オタクキッモ!とか、言われるかもだけど・・・。

 

語尾が弱くなったのはしょうがない。だって、実体験だから・・・。

 

だって、いいじゃん!夢見る年頃なんだから!

 

2次元の世界に行きたい。それは、切に願う。

 

これぐらいの時期になると、受験とか進学とか考えないといけないから、憂鬱になる。

 

代わり映えのない日常。レールの上を歩かされる社会人の未来・・・くっそ!働きたくねえ!

 

俺は、非日常を求めている!

 

こう、何かないの!?何でもいいから!

 

あ、でも仮にあったとして俺主人公気質じゃないじゃん。

 

女子ともろくに話せないし、初対面だったら基本的に誰とも喋る事ができない。

 

痛い思いとか、辛い思いとかはもちろんノーセンキュー。

 

・・・おいおい、こんな性格なら悪者に殺されるクラスメイトAぐらいしか振られないよ?

 

まだ、谷口君の方がましじゃん?

 

あー、でも彼ロリコンだった。

 

ロリコンは病気だ。最近、どっかのSSが気に入ったみたいですごく嬉しそうに話してたんだよなあ。主人公が童貞ニートでロリコンなやつ。

 

それ、主人公としてどうなの?って、思ったけど最後のファアアアアアアッ◯!で吹いたんだって。・・・いや、本当にどんな主人公だよ。

 

主人公・・・主人公ねえ。

 

最近は、ニートとか嫌われ者とかが最強になるとかあるんだけどね。最弱職が最強に!とか。な、何であいつが!?とか。

 

その点、リゼロは現実的でスバル君の必死さが痛いほどわかるよ。

 

最初の方にペテルギウスの言葉を言うぐらいだからね・・・まあ、それぐらいはまってしまったんだよね。

 

きっかけは、何だっけかな・・・そういえば谷口君だっけ。

 

ねえ、ちょっと待って。谷口君出てくるの多くない?さっきから、ちょくちょく出てきているよ?割合高くない?

 

学校に行けば、常に隣には谷口君だからね。しょうがないか。

 

しかも、あいつ結構モテる。イケメンなせいか、女子にめちゃくちゃもてる。

 

オタクなのに!!そのてん、俺は容姿が普通すぎて景色の一部と言ってもいいぐらいなのに!

 

だいたい、谷口君はさあ!!・・・やめよう、話が進まない。月一で女子から告られたり、その都度俺がドロップキックしているのもどうでもいい。加えて、彼が蹴られるたびに恍惚としえ笑みを浮かべるのなんて更にどうでもいい事なのだろう。

 

そんなわけで、彼に勧められたのが始めだ。原作は小説投稿サイトだがその後に、書籍化、漫画化、アニメ化。果てには、ゲーム化など大人気になるほど。

 

書籍を探して本屋さんを探せば、売り切れで置いてないほど。それが、何店舗もあるなんてラノベというジャンルを買ってきた俺は初めてのことだ。

 

この、『Re:ゼロから始める異世界生活』はファンタジー世界に気づいたら召喚された主人公。菜月スバルが、運命に抗いながらも頑張る物語なのだ。

 

こんな、中途半端の紹介で悪いけど、実際には主人公が強い能力があって異世界を冒険するなんて単純な話ではないからだ。主人公自身が、殺されたりヒロイン達が殺されたりと割とシビアで現実的な物語なのだ。

 

少なくとも、主人公自身は両手で数える事ができるぐらいはアニメで死んでいる。

 

じゃあ、どうして生きているのか?と、問われれば菜月スバルが異世界に召喚されて唯一と言ってもいいほどの能力があるからだ。

 

死に戻り。彼は、そう呼んでいる。

 

物語の最初に死んだ時は、スバル自身気づかなかったが何度も死ぬたびに気づいていく。

 

それは、死ぬ事であるポイントに時間が巻き戻るという事だ。

 

ゲームで例えれば、ゲームオーバーになればセーブポイントに戻るという単純な話。死んだ原因である傷も綺麗になくなるほどだ。

 

ただ、スバル自身はその事象を認識できているがスバル以外の人たちはそうではない。

 

時間が巻き戻っているということは、それまでに会ってきた人たちとの関係がリセットされたということだ。どんなに、仲良くなったとしても他人の関係から始める悲しさ。

 

だったら、そんなことがあったんだと話せばいいんじゃない?と思うが、それも叶わない。

 

なぜなら、死に戻りの事を話そうとすると、時が止まり黒い手に心臓を握り潰されるような痛みを与えられるからだ。

 

いうたびに、その不可解な出来事と同時に想像を絶する痛みが伴う。

 

そんな、状態では到底打ち明けることなんてできない。

 

死に戻りをするたびに、今までの築いた関係がなくなり、疑われ、裏切られスバルの痛みはよくわかる。

 

肉体的苦痛だけではなく、精神も侵されるのだ。それを、何度も繰り返す。

 

良かれと思ったことが、相手を傷つけることもあれば、逆に死ぬたびに打開策を見つけることもできる。

 

また、彼の立場が学生でありながらも学校に通わず、ニートであると作品の中で本人がいっていたのだ。

 

誰もが、主人公になれるわけではない。ましてや、この世界で夢を見ることなんてできなかったのに、異世界でもそれは変わらない。

 

今までにない、作品というべき物だと思う。加えて、素直に面白いと言える。

 

今では、大好きと答える。リア充の谷口君もなかなか、センスがいい。・・・この時だけは、感謝しよう。

 

ヒロインは、もちろん可愛いのだが・・・俺の場合は、世界観と設定という純粋なストーリーに心が惹かれた。

 

中でも、魔女教という存在が強いインパクトを受けた。

 

いわゆる、悪者なのだが・・・その宗教の幹部的存在であるペテルギウス・ロマネコンティしかり、魔女教はなかなか、濃いメンバーで構成されている。

 

便利すぎる能力や、面白い言動で興味を引かれてた人も少ないないと思う。現に、俺だってそうだし。

 

ピンポーン♪

 

完全悪・・・なのかな?作中では、魔女教徒の人たちはある日突然、『福音書』と呼ばれる黒い装丁の本が届く。それを、手にしたが最後立派な魔女教徒になるという話だ。

 

ピンポーン♪

 

実際のところどうか、わからないが魔女教徒は決まって全員が福音書を持っているらしい。

 

らしいというのは、俺自身原作をアニメでしか見ていない。聞くところによると、ペテルギウスみたいな大罪司教と呼ばれる幹部がまだ、何人かいるらしい。

 

ピンポーン♪

 

「・・・」

 

・・・いや、気づいているよ。さっきから、家のチャイムを鳴らしているの。

 

誰か、出てくれないかなあって思ったけど、あいにく家には俺一人しかいない。だからこそ、居留守を使おうと思ったけど相手は許してくれないみたいだ。

 

・・・部屋から出たくないんだけどな。これから、アニメ見ようと思ったのに。

 

「よっこいしょ」

 

俺は、腰を持ち上げて玄関へと向かう。

 

相手を怒らせてしまったのではないかと、思って恐る恐る扉を開く。

 

「あっ、やっぱりいましたね。神谷様のお宅であっています?」

 

「は、はい」

 

「すみません。何度も、チャイムを鳴らしてしまって」

 

帽子をかぶった爽やかな青年がそこに立っていた。小脇に段ボールに包まれた荷物を抱えているのを見て、俺は荷物の配達員だとさとる。

 

「あっ、荷物の配達ですね」

 

「そうです。お家にいるような感じだったので・・・」

 

「すみません。遅くなってしまって」

 

「いえいえ。ここに、ハンコをお願いします」

 

「サインでいいです?」

 

「もちろんです」

 

すると、青年はポケットからペンを取り出した。

 

俺が、どもって喋ったのはしょうがない。初対面の人には、こんな感じだし。

 

もっといえば、目の前にいるリア充してそうな人を相手に、よく話せているなと自分をほめたいぐらいだ。

 

「ありがとうございます。それでは、しつれいします」

 

青年は最後に俺へと、爽やかスマイルを送って車に乗って去っていった。

 

「誰宛の荷物かな?」

 

俺だった場合は、大抵ア〇ゾンだが・・・。

 

「あれ、俺宛になっている?差出人は・・・わからないか」

 

珍しいこともある。ただ、一言いえば差出人が不明なのがよくないことだが。

 

俺は、段ボールの荷物を上下に揺らす。

 

箱の大きさよりも重いものが、入っている感じはなくかといって、変な音もしない。

 

ちょうど、片手で持てそうなぐらいだ。

 

これといって特に、危険物が入っている感じはしない。

 

「・・・」

 

まあ、いくつか可能性を考えたが・・・例えば、両親がサプライズでプレゼントを贈ったとか。残念ながら、今日が誕生日でもなければ特別な記念日でもない。

 

もしくは、谷口君かな?・・・ありえそう。開けた瞬間、成人しかやっちゃダメなパソコンのゲームとか入ってそう。重さ的にそれぐらいだし。

 

頭をひねるが、特に思いつかない。とりあえず、俺は自室に戻り、床に置く。

 

「・・・本当に、危険なものじゃないよね?」

 

これが、両親のどちらかのものだったら、このまま帰ってきたときに渡して終わりだ。

 

だが、自分あてというのと、差出人不明というので興味を持ってしまう。

 

「・・・まあ、開けるだけならいいかな?」

 

俺は、段ボールに貼られているガムテープをはがし、中身を取り出す。

 

俺の手に、握られていたのはどっかみ見たことのある一つの黒い装丁の本だった。

 

「・・・」

 

握られていたのは一つの黒い装丁の本だった。

 

「・・・」

 

黒い装丁の本だった。

 

「おぃいいいいいいいいいいいい!?」

 

ちょ、ちょっと待ってガチで福音書送られてきたんだけど!?え、ええっ!?ふ、フラグだったんすか!?

 

「ま、待ってちょっとまって!た、たぶん似たようなどっかの普通の本でしょ」

 

両手に持って、調べてみる。外側から見た感じだと、まさにアニメで描かれていた福音書そっくりだった。いや、むしろ本物だと思ってしまうほどだ。

 

「そ、そんなばかな・・・」

 

あるわけないと、恐る恐る中身を開く。

 

『私を愛している者を、愛して』

 

「・・・」

 

いや・・・まあ、ね。うん。

 

「い、イタズラかあ・・・」

 

そ、そうだよね?そうであってほしいです。

 

いくら、リゼロが好きだかろといってこれは・・・谷口くんの仕業かな?

 

俺は、ゆっくりと本を閉じる。

 

そう、きっとそうだ。これは、谷口君のイタズラだ。明日、谷口君に問い詰めよう。イタズラにしては、俺の中二心を揺さぶったと称賛しよう。ついでに、ドロップキックしておこう。

 

だから、本を開けた瞬間突然睡魔が襲ってきたのも関係ない。正直、さっきから意識を保つのが億劫なくらい。

 

・・・日々の疲れがたまっていたんだろう。今の状況は、関係ないはずだ。たぶん、きっと。

 

そうして俺は、現実逃避しつつ抗うことのできない睡魔に、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目を覚ました時は、青白い顔とおかっぱ頭のデスデス言う男のドアップから始まるのだった。

 

異世界召喚なんて、ありきたりなもの考えたくはなかったが俺の非日常はこうして動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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ペテルギウスがログインしました。

「ようやく、お目覚めなのデス!」

 

「どっひゃああああああ!?」

 

目を覚ますと突然目の前には顔色の悪そうなおかっぱ頭の男のドアップ。

 

どっひゃああああ!?とか、言っちゃったんだけど。あれ漫画とかで言うセリフだと思ったけど以外に自然と言葉からでちゃったよ・・・。

 

「は、はい!?え、ここどこ!?」

 

「アァァアアなんということでしょうか。これほど、これほどまでに魔女に愛されているものと会えるなんて!今日ほど、素晴らしい日はないのデス!」

 

男は、不健康そうな青白い肌を震わせ全身で喜びを露わにする。

 

黒い法衣をはためかせ、傍から見れば頭がおかしいんじゃないの?と、心配されるぐらいのオーバーリアクションに俺はたじろぐ。

 

・・・どこかで、みたことあるような。

 

でも普通なら、突然の眠気の後、起きてみればおかっぱ頭の男のドアップって普通ないでしょ?

 

「福音書の提示をお願いするのデス!」

 

「福音書?あ、これのこと?」

 

とっさに、右手に持っていた福音書を男に見せる。

 

「確かに、確かに!確認したのデス!あぁ、なんということか彼がワタシの福音だと言うのデスか!」

 

というか、ここどこ?どっかの廃屋っぽいけど・・・。いつもの見慣れた自室じゃない。あれ、じゃあ俺誘拐されたの?

 

え、えええ・・・。ちょっと、ゲームとかアニメが好きな一般高校生じゃん。そんな、いわゆるオタクと呼ばれる人種を誘拐したところで何になるっていうのさ?需要とか、全然ないじゃん。

 

・・・そもそも、こいつ誰?

 

男の姿を改めて見る。

 

やせこけた肉と青白い肌とおかっぱ頭。全身を覆う黒い法衣を着て、狂気を孕んだ様な目をしている。今、気づいたが後ろに同じような黒い法衣を着た集団が男に跪き従っているようだった。

 

男がせわしなく、動いているのに対して微動だにしない。その行動が、男に対しての忠義の表れなのかもしれない。

 

一言もしゃべらない集団と、逆にしゃべりすぎて心配になるぐらいの男というよくわからない状況が生み出されている。

 

・・・ま、まさかあ。いや、ないってないって。いくら、リゼロが好きだからってこれは・・・。

 

きっと、コスプレが好きな集団に違いない。そうだ、そうに違いない。同じリゼロ好きとして、誤って誘拐したんだ。だから、正直に謝ろうよ?今なら、ギリ許せるから。

 

「あの・・・すみません」

 

「ハッ!ワタシとしたことが!喜びのあまりに、魔女に愛されし者を蔑ろにしたではないデスか!わ、ワタシの!怠惰を!怠惰をおおおおお!!お許しください!」

 

男はそういうと、壁に頭を打ち付ける。

 

えぇ・・・少なくとも会話がなりたちそうな男に話かけてもこれだ。

 

なぜか、俺がいることにとてつもなく喜んでいるのだが・・・。あ、男の頭から血が出た。

 

男は、何度か頭を打ち付けた後、落ち着いたのか肩で息をするとよろよろと、地面に座る。

 

 

「・・・大丈夫ですか?」

 

「・・・ええ、ええ。大丈夫デスとも。あまりにもの、幸福のあまり取り乱したのデス。ワタシの怠惰に、深く深く深くぅうううう・・・反省するのデス」

 

男はさっきとは、打って変わって落ち着いた。

 

だが、男のギラギラとした・・・狂気とも呼ぶべき目は衰えを感じない。

 

今ここで、男の感に触ったことをするだけで、その者は男の敵であり傷害だと自分の力をふるうのだろう。

 

目的のためなら、手段を問わない狂人がそこにいた。

 

 

 

・・・なんで、目を見ただけでわかるかって?ばっか、おまえ。とある、作品の登場人物にそっくりなんだもん。そっくりというか、本人ですっていたっ方がいいレベルだよ?重ねたってしょうがないじゃん。

 

もう、やだー。なんとなく、理解してきたよ?ちょっと、冷静になっていろいろと考えたりもしたよ?

 

そういえば、思い出した。眠った直前に、福音書らしき物が届いたんだっけ。

 

届いた・・・っていえば、こう不思議パワーとか想像するけどあいにくと、普通に宅配で届いたんだよね。

 

フラグ、だったのかなあ。

 

でも、この状況だけで考えるとやっぱり、俺って拉致られたのかな?

 

現実から、目をそらしたい。それは、もう全力で。

 

そうだ、これはきっとあれだ。

 

リゼロが好きな者どうしで、サークルとかオフ会とかを開いたんだろう。

 

で、同じリゼロ好きの俺を拉致ったに違いない。

 

リゼロ信者を増やすためにだろう。

 

そうだ、そうだ。それなら、納得できる。

 

正直にいってごらん?福音書送るとか、手の込んだことしてるけども正直に謝れば許してあげよう。なんだったら、サークルに入ってもいい。

 

いつになったら、言ってくれるのかなあ?さあ、カモン!

 

 

 

「ああ!ワタシとしたことがまだ、ご挨拶をしていないではないデスか」

 

すると、男は腰を折り胸に右手を添え、

 

「ワタシは魔女教、大罪司教・・・」

 

やめて。本当にやめて、嫌な予感がしてきたから・・・。

 

「『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティ・・・デス!」

 

俺は、片手で顔を覆った。じゃないと、正気を保てない。

 

まるで、今目の前で広がっている光景から目をそらすために。

 

俺は、思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぺ、ペテルギウスさんがログインしたあああああああああ!!

 

 

 

 

 

 

 

うぇえええいいい!?ちょ、ちょっと待ってよ!?

 

深呼吸だ。そう、一度気持ちを落ち着かせるんだ。

 

すぅーふぅー・・・。よ、よしどんとこい!

 

「心より、歓迎するのデス!福音書に導かれし、魔女に愛されし少年よ!」

 

・・・歓迎?誰を?

 

ごめん、キャパシティーがかなりオーバーしてるんだけども。

 

「えっと・・・ペテルギウスさん?」

 

「はい!デス!」

 

テンション高いなあ。さすが、魔女教、大罪司教『怠惰』担当のペテルギウスさんを自称するだけのことはある。

 

・・・偽物だよね?ペテルギウスが好きすぎたために、コスプレしちゃったら思いのほかクオリティの高い普通の男性だよね?

 

それなら、それでよし。もしも、本物のペテルギウスなら・・・。

 

 

 

 

 

うん、確実に積んじゃうよね。

 

 

 

 

 

・・・魔女教とか狂信者の集まりだからね?嫉妬の魔女のサテラが好きすぎて、人殺しとか非人道的なことを笑顔でする頭のおかしい人たちだからね?

 

まあ、ペテルギウスを筆頭とした指先と呼ばれる部下たちが進んで活動しているのだけども。他の大罪司教とかは、自分のために普段は行動しているからなあ・・・。

 

いや、待ってそこじゃないでしょ。冷静に考えると、この状況こそがおかしい。

 

思い出そうか。ついさきほどまで、家で暇すぎてペテルギウスの真似をしてたのだった。

 

で、しばらくボケーとしてたら宅配が来て福音書らしき物が俺の家に届いた。

 

興味を持った、俺は本を開いて書いてある内容に目を通すと瞬間眠気が襲ってきて眠りに身を任せ、目覚めると目の前にはペテルギウスと名乗る男。

 

こんなことなら、近所に住んでいる谷口君の家に遊びにいけばよかった。家も近いって、どこのラブコメだよ。ただ、相手が男なのがなんともいえない気持ちになる。

 

・・・そういえば、時々用もないのに俺の家に来ては谷口君遊ぶけど暇なのかな?まあ、俺が言えたことじゃないけど。ゲーム一緒にしているのに、画面を見ないで俺ばっかり見るのはやめてほしい。隣で座ってる時も、妙に近いしさ。肩が触れ合うだけで、谷口君は取り乱すし。じゃあ、そんなに近づかないでって話なんだけど。

 

とにかく、現状から目をそらしてはいけない。

 

俺は、思いっきり右のほほを叩く。

 

かわいた音が、廃屋に響く。

 

痛い。ジンジンとした痛みが、俺を襲った。

 

「どうしたのデスか?」

 

「・・・これが、本当に現実なのか確認したんだよ」

 

「そういうことデスか!安心して下さい、あなたも我々と同じく魔女に愛されし使徒なのデス!全てに感謝しつつ、全てを受け入れるのデス!」

 

ごめんなさい。受け入れたくないんですよ、こっちは。

 

夢とか、そんな可能性は消える。廃屋のほこっりぽい空気や、目の前で馬鹿みたいに騒いでいる男と、今だひくことのない右ほほの痛みが夢でないことを物語っている。

 

これが、夢じゃないのならリゼロが好きすぎて頭が狂ったのではないかと思うが、これでも俺は常識人だ。2次元と現実の区別はつく。

 

時々、二次元に行きたいなあとか、画面の向こう側にきっと届くはず!とか考えるけども、少なくともここまで重症じゃない。

 

「えーっと・・・ペテルギウスさん?」

 

「なんデスか?」

 

「俺、今まで自分の部屋にいたんだけどどうやってここに連れてきたの?」

 

「それは、これなのデス!」

 

すると、ペテルギウスが懐からある物を取り出す。

 

「・・・福音書」

 

それは、魔女教徒なら誰もが持っていると言われている黒い装丁の本『福音書』だった。

 

ペテルギウスが本を開くと、ものすごい勢いで本のページを一枚一枚めくり、あるところで手を止める。

 

「魔女に愛されし者を迎えろと、ワタシの福音書に書かれたのデス。魔女の香りを辿り、あなたを見つけたのデス」

 

「俺は、ここに倒れていたってこと?」

 

「ワタシ達があなたを見つけたのは、近くの森なのデス。目覚めるまでここで、休ませていたのデス」

 

・・・森か。

 

どうやら、俺は異世界・・・というかリゼロの世界に召喚されて森で放置されたらしい。

 

ペテルギウスの話が本当なら、彼の福音書に指示が出されて俺を見つけたことになる。

 

もしも、ペテルギウスが見つけてくれなかったら・・・この世界には魔獣なんて生き物もいるから眠っている間においしく頂かれたのかもしれない。

 

ペテルギウスに感謝するというのも、アニメを見た俺からしたらすごく複雑だがそこは素直に感謝しておく。

 

だが、この世界がリゼロの世界だという確証は何もない。だって、気づけば廃屋にいたわけだし。ペテルギウスを自称する男とそれらが俺を拉致ったと言われた方がまだ、説得力はあるだろう。

 

今だ、目の前の男がペテルギウスだという事とこの世界がリゼロの世界であるなんて信じられない。

 

「そういえば・・・失礼デスが、まだお名前を聞いてないのデス」

 

「・・・神谷(かみや)修斗(しゅうと)」

 

「なるほど、なるほど・・・。それでは、修斗さんと呼ばせていただくのデス」

 

「もう好きにして・・・」

 

そうだ、なら・・・。

 

普通ではありえない・・・魔法や不思議な力をこの場で見せてもらえればいい。

 

「ペテルギウスさん。あなたの力を見せてほしいんだよ、ほら大罪司教の力に興味があるしね。それに・・・魔女?に愛されている証を見てみたい」

 

つまるところ、魔法みたいな不思議な物や、本当のペテルギウスなら怠惰の権能を使えるはずだ。

 

「もちろん!もちろんデスとも!我が怠惰なる権能を!魔女に愛されし証をあなたにお見せするのデス!」

 

ペテルギウスは、両手を天井に掲げる。

 

「怠惰なる権能、見えざる手ぇえええええええ!!」

 

ドッカーン!!

 

・・・安そうな、効果音で申し訳ない。というか、実際こんな音だし。

 

ペテルギウスが両手を天井に掲げた瞬間、言った通り見えない何かが天井を突き破り破壊音が、響き渡る。

 

「・・・」

 

やりすぎだから!!思いっきり、頭から砂埃かぶったんだけど!?

 

「どうデスか!ワタシの魔女に愛されし証を!」

 

いや、それよりも服汚れたんだけども・・・。

 

まあ、部屋着で着ている上はパーカーで下はジャージだけどさ。

 

これ、一着しかいまはないのに。

 

「歓迎するのデス!魔女に愛され、『傲慢』を冠する少年よ!」

 

ペテルギウスの歓迎の言葉に俺は、乾いた笑いしか出せなかったのだった。

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

「・・・なんで、こんなことに」

 

俺は、今ペテルギウスを筆頭とした魔女教徒と森の中を移動している。

 

人目につかないためには、ここを歩かなければいけない。

 

なぜ、こんな魔獣がいそうな所を通るのかというと、この世界で忌み嫌われている彼らが人前に姿を表すのは好ましくないからだ。

 

衛兵に見つかれば、即殺される。彼らは、魔女教徒だと判断すればその者を切ることを許されているのだ。

 

たたでさえ、黒い法衣を着た集団は目立つのだ。

 

悲しいことに、俺も魔女教の法衣に身を包みペテルギウスの横をトボトボと歩いていた。

 

何故なら、愛用のパーカーとジャージは砂埃で汚れ、着るものがペテルギウス達が用意した法衣しかなかったのである。

 

以外に着心地がいい。この全身を包み込んでくれる安心感がいい。常に、着ていたい心地よさ。

 

いや、だめだろう!?・・・危ない、自然と自分から受け入れる所だった。

 

じゃあ、逃げ出せばいいんじゃないかと思うが、ここは森の中だ。

 

魔獣とか、いる場所で一人ぼっちなんて無理だ。後ろを歩いている、魔女教徒達が時々現れる魔獣の対処をしてくれなきゃ、今頃魔獣に美味しくいただかれただろう。

 

・・・そもそも、逃げ出した瞬間追いかけられて見つかるのが、想像つく。

 

ある者は、手から炎の球を出したり、ある者は風の刃をだす。

 

それがいわゆる、魔法と呼ばれる事象なのだろう。嫌でも、この世界が俺の元いた世界とは違うと物語っている。

 

「見えてきたのデス」

 

すると、隣を歩いているペテルギウスが突然立ち止まった。

 

ペテルギウスの視線の先をおうと、そこには小さな村が見える。

 

寂れたという、頭語がつくが。

 

ボロボロの家屋に、荒れた畑。

 

八百屋や何か物が売ってそうな店はあるが、これといって目立つ物はない。

 

更に、ここから見た感じだと村の人たちに元気がない。

 

疲れているような、どこか陰りのある表情をしている。

 

一体、ペテルギウスはここで何をするというのだろうか?

 

「さあ、指先の皆さん準備はいいデスか?今日は、新たな信徒を迎えいれた記念すべき日なのデス!この村を襲い、村人達を悲痛の表情に染めあげ、我々の新たな大罪司教の誕生を知らしめるのデス!」

 

それに、ペテルギウスの部下である指先達がコクリと頷く。

 

「おぉ!なんと、勤勉的な忠誠心なのデスか!あなた達の勤勉的な行いは必ず、嫉妬の魔女サテラもお喜びになるでしょう!あぁ・・・あなたに会えるその日まで、ワタシ達は福音通りに行動することを誓うのデス!ただ、あなただけの愛に!寵愛に!愛に愛に愛にぃいいいい!!」

 

・・・ふむ、なるほどこれから村を襲うのか。

 

 

 

 

 

うぇええええええい!?なんで!?

 

 

 

 

 

 

「修斗さんすみません」

 

「え、何が!?」

 

ペテルギウスが俺に耳打ちする。

 

「この様な、王都から離れた辺境の村を襲うことにデス。デスが!デスが!サテラを愛していると、サテラに思いを届けるのデス!更には、魔女教大罪司教『傲慢』を広めるためにも必要なことなのデス!」

 

じゃあ、なんすか?俺に、人殺しをやれと?

 

へー。ほー。

 

いや、そもそも嫉妬の魔女であるサテラを狂っちゃうぐらい愛してないし。リゼロが好きなだけの高校生だよ?2次元は、狂っちゃうぐらい好きだけどさあ・・・。

 

そう、あれは辛い思い出だ。

 

谷口くんと、学校でアニメ談義をしてた時である。

 

今期のアニメとかの評価してたんだっけ・・・。

 

まあ、普段話さない俺でも白熱したさ。

 

で、しばらくしたらチャイムが鳴って、そこが学校の教室だって今更ながらに気づいたんだよね。

 

普段、喋らない俺がだよ?

 

で、チャイムの音でハッとなって周囲を見ると、白い目で見るクラスメイト。

 

その時から、学校でアニメの会話をするのはやめようと思った。

 

よりによって、ハイ○クールDDの話をしたのである。

 

そりゃあ、まあ・・・ね?おっぱいアニメだから、そりゃあ白熱したら性癖が爆発するよね?結果、こんなことになったけど。

 

・・・話がそれた。現実逃避をするのは、俺の悪い癖だ。

 

で、なんだっけ?村を襲う?

 

無理無理!悪いことは、絶対ダメ!

 

俺は、平和主義だし喧嘩なんて生まれてこの方やったこともない。暴力だって、自分からすることはない。

 

・・・ごめん、嘘だった。谷口くんには、平気でドロップキックとかしてたよ。

 

そこんところ、物語とかは普通に人殺しとかあるのはよくあるが、その実行犯に自分がなるというのは理解できない。

 

そもそも、何の罪もない人達が殺されることは許せない。テレビのニュースで殺人事件なんかを見ると、顔をしかめるほどだ。

 

でも、これぐらいの思考は普通の人なら持ち合わせているだろう。

 

俺には人の命を奪いたくなる様な、狂人的な思考は持ち合わせていない。

 

そもそも、武器とかないし!俺だけリンチされる未来が見えるから!

 

「これを、どうぞ」

 

「あっ、どうも・・・」

 

そんな、時ペテルギウスが短剣を俺に差し出した。

 

その刃の長さを見ると、警察に見つかっただけで職質されること待ったなしだ。

 

軽くて、以外に使いやすそう・・・。

 

 

 

 

ちょっと待ってよ!これ流されそうになってる!

 

 

 

 

コミュ障だから、流される事にはなれてるけどさあ・・・。

 

でも、やっぱり村人がこんな変な理由で殺されるのはおかしい。

 

例え、俺が世界から嫌われる魔女教に属しているとしても。

 

・・・巻き込まれたともいう。

 

いや!そんなことはこの際どうでもいい!

 

「ペテルギウスさん、やっぱり村を襲うのはやめにしませんか?ほら、俺ここにきたばっかりで少し疲れちゃったみたいで・・・」

 

何とか、襲うのをやめてもらおうとペテルギウスにたのみこむ。

 

「デスが、今日は記念すべき日なのデス。お疲れの所デスが、これだけは外すことのできないことなのデス」

 

「だ、だけど・・・」

 

「・・・それとも、なんデスか?あなたは、大事な試練とも呼ぶべき物事から逃げるのデスか?それは、あまりにも怠惰ではないデスか?」

 

 

ペテルギウスの雰囲気が変わり、明らかに不機嫌となる。

 

すかさず俺は、

 

「や、やだなあ〜。もちろん、俺も頑張るよ。だけど、ちょっと疲れているからね。やっぱり、早く終わらせようね?」

 

「もちろんデスとも!ワタシ達の勤勉的な働きに、サテラもきっと喜ぶのデス!」

 

やばい!このままじゃ、殺人鬼エンドだよ!

 

まだ、異世界に召喚されて数時間なのに闇落ちとか笑えない。

 

どうする!どうする!?

 

ペテルギウスを筆頭とした、魔女教徒達はやるきだ。

 

止めることもできない。

 

だからといって、村人を見殺しにするなんてもちろん、できない。

 

「・・・スバルならどうする?」

 

ここで、俺はこの世界の主人公である菜月昴を思い出す。

 

なんども、死ぬたびに辛い思いをしながら運命に抗うために奮闘した。

 

自身に、全くといっていいほど力がないのにも関わらずだ。唯一、死に戻りで何度もやり直すことができるだけだ。

 

こういう時、彼はどうするのだろうか?ただ、見ているだけ?むしろ、これから行うであろう殺戮に進んで参加するだろうか?

 

「・・・違うよね。ずる賢くて自分の事を一番に考えている人だけど、本質は目の前の理不尽な事を自分が納得するまで変えようとするわがままな人だよね」

 

例え、それが間違っていたとしても。例え、それが愛している人から嫌われようとも。

 

自分が納得するまで、行動する。

 

少なくとも、それで救われている人がいるのだから。

 

「はあ・・・こういう性格じゃないんだけどな」

 

村人は、見た感じ60人ぐらい。家屋に入っている人も含めるともっとだろう。

 

対して、俺たち魔女教徒は30人ほど。2倍以上の人数の差がある。

 

ただ、その戦力差とも呼ぶべきものは魔女教徒にとって関係ない。

 

文字通り蹂躙するかのごとく、村人達の息の根を止めることができるのだろう。

 

・・・決心はついた。

 

この中で、魔女教徒を止めることができるのは俺だけしかいない。

 

愚策と言われようともだ。

 

「・・・じゃあ、やりますか」

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「ふう〜こんなところでいいか」

 

今日は、晴天に恵まれて気持ちのいい日だ。

 

くわを振るって、畑を耕すのにも気持ちが入る。

 

「そろそろ、休憩してはどうですか!」

 

すると、ちょうどお昼ぐらいなのか昼食を持った村人がにこやかに俺に話しかける。

 

「ありがとうございます!」

 

それを、ありがたく受け取って農作業を一時止めると近くの草っ原で食事にする。村人は、手を振ってその場を後にする。

 

「・・・のどかだなあ〜」

 

硬いパンを、齧りつつ冷たい水で喉を潤す。

 

その時、気持ちのいい風が通り過ぎて俺の法衣を揺らした。

 

 

 

 

 

「どうして、こうなったんだろうなあ〜。あ、あははは」

 

 

 

 

 

乾いた俺の笑いに誰も答えてはくれなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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明日を・・・生きたい

本当に、お久しぶりです。

もう、あまりにも時間が空いたので他の方はこの作品を忘れたのではないのでは・・・とおもっています。

色々な方から、この作品を面白いまた評価してくれるのはとても嬉しいです。

それでは、日常に疲れている作者から最後に一言です!




















「なんで、俺って生きているのかな?」






















「よし。俺ならできる!・・・できるはず?たぶん、きっと・・・」

 

さて、決心はついたはいいがどうしよう?

 

ペテルギウスが言った通りに、村人を殺すというのは俺の中ではもちろん存在していない。

 

・・・本当に困ったなあ。

 

つい、数時間前までは一般的な男子高校生にすぎない存在だったのに、どうしてこうなった?

 

一人でなにができるん?君たちは、権能とか魔法とか不思議な力をつかえるけど、あいにくと俺はそんなものは持っていない。なんだったら、そこの村人Aにすら負けるレベルだね。

 

とりあえず、あの場からいたたまれなくなって、ペテルギウス達の場所から離れてこうして茂みから村の様子を伺っているが何一ついい案が思い浮かばない。

 

正面から行ったら、黒い法衣で魔女教徒分かってもれなく、襲われる。だからといって、隠れながら行ったところで本来の目的から離れた行動を俺はとるわけだから、ペテルギウス達に見られれば不信がられる。

 

え?というか、俺どうすればいいの?本当に、何もおもいつかないんだけど・・・。

 

せめて、何か魔法とか使えればいいんだけど・・・。ほら、この世界に来ただけでスバルだって魔法を使えたわけだし。贅沢は言わないけど、大罪司教なら権能とかくれたっていいんじゃないの?

 

やだなあ。持っているのは、ペテルギウスから貰った短剣ぐらいだよ。

 

「だ、誰・・・」

 

すると、俺の後ろから誰かの声が聞こえる。

 

突然の、声に俺は慌てて振り返ると小枝をたくさん抱えた少女がいた。

 

「ま、魔女教徒・・・」

 

信じられない物を見てしまったと、少女は持っている小枝を力なく落とし歯をガチガチと鳴らす。

 

少女の目には、明らかに恐怖がうつっていた。

 

「・・・」

 

 

 

 

ば、ばれたあああああああああ!!

 

 

 

 

「た、たすけ!・・・むぐっ!?」

 

すかさず、俺は少女の口を押える。

 

「うっ!?・・・むー!むー!」

 

俺の手の中で、両目から涙をながして必死に逃げようと暴れる少女。

 

「ちょ、ちょっと待って。まじ、ちょっと・・・。ちょっ、おま結構いいエルボーがみぞおちに入ったんだけど!?」

 

いくらなんでも、少女の力だからといって人体の急所にあたればそれなに痛い。

 

「・・・大人しくしてくれるかな?」

 

「っ!?」

 

とっさに、俺はペテルギウスから貰った短剣をとりだし、少女の首筋に近づける。と少女は今まで暴れていたのが嘘だったかのように、大人しくなった。

 

どうして、私がこんなめにというような悲痛な表情をする。

 

 

ふぅ~大人しくなった、一件落着・・・って、なるかあああああああああ!!

 

うぇえええええええい!?どうして、こうなったの!?いや、待ってとっさのことに驚いたからこうしたんだって!別に悪気があったわけじゃないからね!?こんな、ところで叫ばれたりでもしたら村人たちに気づかれるからね!?

 

そう、俺は悪くない。悪くないったら、悪くない。だから、やめてくれる?今にも、「私、殺されちゃうんだ?あはは、お父さんお母さん。嫌だよう・・・」って、絶望した顔やめてくれるかな!?

 

ごめん!本当に、ごめん!悪気があってやったわけじゃないんだよ!見つかれば、殺されちゃうのはこっちなんだからさあ!

 

でも、この場面だけ見れば茂みで少女の口元を押さえて自由を奪い、刃物で脅している男ができあがる。

 

 

 

 

わ~い。どっからどうみたって、犯罪者だよ。元の世界なら、余裕で警察のお世話になるね。・・・この世界でも、衛兵にみつかれば拘束まったなしだね。

 

 

 

 

「エレア!どこにいるんだ!そろそろ、村に戻ろうぜ!」

 

 

 

 

すると、この最悪な場面に一人の声が混じる。

 

少女の後ろをついてきたかのように、遅れて同い年ぐらいの少年が茂みから現れた。

 

「エ、エレア・・・」

 

姿を現した少年も、少女と同じく小さい小枝をたくさん抱えていた。

 

少年の視線は、俺へと向けられ次にエレアと呼ばれた少女の首筋に近づけている短剣を見た。

 

「ひっ!」

 

少年も少女と同じく小枝を落とすとその場に尻餅をつく。

 

「だ、誰か!え、エレアが・・・魔女教が!こ、殺される!う、うわあああああああ!!」

 

少年は取り乱して、この場から腰を抜かしながらも慌てて這いずるようにその場から逃げる。

 

向かった先から、考えると村の方だが・・・。

 

「いや!ちょっと待って!?は、話を!・・・って、これ聞いてくれる状況じゃないいいいいいい!!」

 

やばい!本当にやばい!

 

少年が向かった先は、村だ。途中で転びながらも、大声で魔女教徒が来たことを村人達に知らせている。

 

魔女教徒と聞いた瞬間、村人達の表情は様々だ。

 

少女達と同じく、恐怖するもの。まるで、親の仇を見つけたかのごとく憎らしげに顔を歪めるもの。

 

ただ、そんな中でも村の殆どの者がどこか諦め哀愁を漂わせていたのが気になった。

 

そして、誰もが少年が出て来た茂み・・・つまるところ、俺が潜んでいる当たりの場所を凝視している。

 

・・・どうするのこれ?

 

村人の何人かが、農作業の鍬などを持って武装し警戒をする。

 

・・・も、もう無理か~。

 

仕方なく、茂みから出て村人たちの前に俺は現れた。

 

「・・・魔女教徒」

 

村人の誰かが小さくつぶやくように声を出す。

 

それを、かわぎりに村人たちは狂ったように取り乱す。

 

「魔女教・・・嘘だ・・・嘘だ!なんで!?俺たちは、平和に過ごしていたのに!」

 

「だから言ったのよ!?こんな、見捨てられた村に固執するなんて!」

 

「違う・・・違う!私たちが悪いんじゃない!そうよ・・・そうよ。違うの、違うっ・・・わ、私は悪くないのよ!」

 

「命乞いをすれば助かるはずだ!・・・でも、何人かを犠牲にしなければいけない。そうだ・・・それが普通なんだ」

 

「だったら、お前がやれよ!」

 

「はあ!?どうして、俺が!?あっ!あれを見ろ!セレアがいる!」

 

「ああ・・・そうか。なら、大丈夫か・・・俺たちは助かる」

 

「それだけじゃだめだわ!もっと、人を・・・生贄が必要だわ!」

 

「こ、殺されるぐらいなら俺がお前たちを殺してやる!魔女・・・サテラ!今、我を救うのならばこの身を魔女に捧げよう!」

 

「わ、私も!」

 

「な、なにを馬鹿なことを!?」

 

「うるさい・・・うるさい!俺だけが・・・俺だけが助かるんだ!」

 

「み、みんな正気を保ってくれ!お願いだ!」

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

えっ・・・ちょっと待って?なに、魔女教徒ってそんなにやばいの?

 

うわあ・・・理解していたとはいえこんなことになるなんて聞いていない。

 

状況はややこしく、最悪といっても過言ではなくなった。

 

少年よ。別に、俺は生贄とか必要ない。

 

少女よ。生贄をさらにとか・・・命を粗末にしちゃだめだよ?

 

青年たちよ。なぜ、喧嘩をする?

 

男性と女性よ。魔女教なんていいところじゃないよ?ゆっくりと、考えるんだ。人を、笑顔で平気に殺す狂信者だよ?やめなって、さんち的な物がガリガリ削れるから。

 

勇敢な青年よ。大丈夫、君はまともだ。

 

すると、村人たちは誰が悪くて誰が良いのかと訳のわからない言い合いを始めた。

 

自分が助かりたいがために、相手に暴言をはき自分が如何に善行を重ね救われる立場であるか。

 

また、さきほどまで俺に向けられていた鍬は何故か今にも村人の誰かを襲おうとせんとばかりに小刻みに震えている。

 

別の者は、完全に心を砕かれ絶望しその場に膝をついている者。

 

まさに、阿鼻叫喚という言葉がふさわしいだろう。

 

で、その状況を作ってしまったのは、気づいたら大罪司教になってしまった俺である。

 

・・・そう、俺の責任である。

 

 

 

 

ごめん。本当に、ごめん。

 

 

 

 

 

こう言ってはなんだけど悪気なんて、全然ない。だって、俺もそっち側だもん。被害者だもん。

 

シリアスとか、そういう以前の問題だよ。ねえ、聞いて?まだ、この世界に来て数時間しかたってないんだよ?

 

泣きたいとか、絶望したいとかこっちの方だよ?俺だってある意味、ペテルギウスに脅されているからね?ぬっころされそうなんだよ?

 

・・・やべ、自然と涙が。

 

「・・・泣いているの?」

 

すると、俺の腕の中で今まで黙っていた少女が怯えながらも俺にそう聞いてきた。

 

「な、泣いてなんかないよ!」

 

「・・・で、でも顔が赤くなって目が濡れているよ?」

 

そりゃあ、泣きたくなるよ!

 

高校生でコミュ障なめるな!谷口君いなかったら、俺の心なんてとっくに壊れているんだよ!それほど、もろいの分かる!?

 

「・・・私たちを殺すの?」

 

「・・・」

 

少女の素朴な疑問に俺は、どう答えるべきか黙ってしまう。

 

俺が助かるのは、簡単だ。

 

今すぐ、腕の中にいる少女を突き飛ばしペテルギウス達のところに戻って手伝ってもらう。

 

適当な理由を言えば、喜んで手伝ってくれるだろう。俺自身も、この手に握っている短剣で村人を何人か殺せばそれでいい。

 

 

 

 

そうすれば、俺は助かる。

 

 

 

 

 

今にも、お互いに殺し合いを始めそうな村人たちを横目で見ながら冷静に考える。

 

言ってしまえば、魔女教に目をつけられた時点で不運だと思ってほしい。

 

でも、それで本当にいいのだろうか?

 

自分だけが、助かって目の前の村人たちを見殺しにする。

 

別に、自分が物語の主人公を気取りたいわけじゃない。

 

俺は、一般人だ。一般のダメで、コミュ障な高校生だ。

 

谷口君ぐらいしか、友達のいないダメな男だ。

 

だが・・・。

 

 

 

 

だからこそ、この場面を打開できるのだ。

 

 

 

 

・・・こんな、臭いセリフのようなことを考えたのはある一つの勝機があるからだ。

 

俺の今の状況を、逆に考えてみよう。

 

普通、組織というのは入った瞬間から、重要な立場に立たされるわけがない。

 

それは、そうだ。会社もそうだが、入社一年目で係長や課長などの役職がいきなり与えられるはずもない。

 

実力主義な、軍隊とかもあるがそれにしたって、何年も積み上げていく実績が必要だ。

 

それだけではない。実績もそうだが、信頼も必要だ。

 

どんなに、優秀で仕事ができても周囲の人からの信頼がなければ周りの人からの評価はもちろん、よくならない。

 

・・・さて、これを魔女教に置き換えよう。

 

入った瞬間に、幹部待遇。それに加えて、組織の中でものすごく信頼されている。

 

ペテルギウスの対応を見れば、明らかだ。他の魔女教徒も特に、不満を持っているわけでもない。

 

そう、ここなのだ。

 

これを、逆手にとる。

 

村人たちが、恐怖の対象である魔女教。その中で、唯一常識を持ち合わせ魔女教を改革できる立場。

 

つまり、魔女教大罪司教という立場が魔女教徒の行動を止めることができる。

 

気づいてから、この方法しかないことに落胆する。

 

まるで、主人公のように・・・この世界の主人公である菜月スバルと同じように。

 

またしても、自分ただ一人しかこの状況を打開できない。

 

・・・本当に世知辛い。異世界召喚されたのであれば、不思議な力とかあってもいいと思うが・・・。

 

それだったら、簡単に解決できる。

 

あいにくと、今のところはそんなものはないが・・・。

 

「大丈夫」

 

「・・・え?」

 

少女は、きょとんとした様に聞き返す。

 

「村人たちは誰一人も、殺さないよ。俺が、何とかする」

 

「で、でも・・・」

 

「あいにくと、魔女教の中ではそれなりの立場にいるからね」

 

「あ、あなたは・・・」

 

何者なのですか?

 

そう、少女がいう前に俺は、村人全員に聞こえるぐらいに大声を出した。

 

「村人の皆さん聞いてください!」

 

俺の言葉を聞いた瞬間、さっきまで騒がしかった村人たちが嘘のように静まり返った。

 

恐怖と絶望。

 

村人全員が、俺の次の言葉で生死が決まると、固唾をのむ。

 

「この村は、俺たち魔女教徒が包囲しました!えっと・・・無駄な抵抗はやめてください!魔女教、大罪司教『傲慢』担当。神谷(かみや)修斗(しゅうと)の名のもとに、大人しく投降してください!」

 

俺の言葉で、理解したのか村人たちは力がなくなったようにその場にへたり込んでしまう。

 

希望という物は、完全に消えた。自分が助かりたいがめに、他人を差し出そうとした者もいた。全てを投げ出してまで、助かろうとすがる者もいた。

 

それが、全部無駄になった。

 

村人全員が等しく、魔女教の洗礼を受ける。村人達に残されことは、恐怖におびえお互いに身を寄せ合うことしかできない。

 

 

 

 

・・・罪悪感が、とてつもないけどとりあえず、これでオーケー。

 

 

 

 

 

後は、うまい具合にペテルギウス達を説得するだけだ。

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

「エレア!」

 

「お母さん!」

 

「大丈夫だったか!?」

 

「お父さんも無事なの!?」

 

「ああ・・・なんとかな」

 

短剣で脅していた少女を開放すると、少女の両親と思わしき男性と女性のもとにかけよって、お互いに安否を確認する。

 

それを、しりめに見ながら俺はペテルギウスへと視線をあわせる。

 

「・・・これは、どういうことデスか?」

 

「あ、ああ・・・ペテルギウスさん。うまくいっていますよ」

 

若干、しどろもどろになりながらも俺は何とか答える。

 

「ワタシは、あなたの勤勉さを信じ、託し・・・信頼していたというのに・・・なぜ、村人たちは健全なのデスか?おかしい・・・おかしいのではないデスか?我々は魔女に!サテラに!愛を!愛の形を伝えるのではないのデスか!?」

 

「え~っと・・・」

 

ペテルギウスは、体を執拗にくねらし俺を下から除きこむ。

 

「なのに、なのになぜ!?あなたは、自らの勤勉さを我々に示そうとしたのにも関わらず愚者である怠惰へと落ちていったのデス!あなたは、それでも・・・それでも!大罪司教の『傲慢』なのデスか!?」

 

態度が急変し、何かを訴えかけるようにペテルギウスは声を張り上げる。

 

俺は、内心この狂人をどうやって説得するか・・・また、村人たちを一人も殺さないようにするべきか秘策があった。

 

さあ、俺よ!今こそ、アニメ、ゲーム、漫画で培ってきた力を今ここで開放するのだ!

 

なんか、それっぽいことを言えば切り抜けれる・・・はずだ!

 

頑張れ!ファイトー!

 

・・・絶対に、黒歴史確実だけどね。

 

なりきるんだ・・・。そう、狂信者に。オーケー?大丈夫、俺ならできる。

 

もはや、自己暗示に近いが仕方がない。

 

 

 

 

 

「・・・ああ。そうさ、俺は怠惰だ」

 

 

 

 

「・・・は?」

 

ペテルギウスが、なんとも気の抜けた声を出す。

 

それに、俺は心底あきれたように・・・また、自分の行ったことを嘆くかのように、

 

「・・・聞こえなかった?俺は、怠惰だ。安易にも、自分の欲を満たすためだけに村人を殺そうとしたんだからな」

 

「それはどういうことデスか?」

 

まるで、村人を殺すことがそもそも間違っているという俺の話し方にペテルギウスは、聞き返す。

 

「ペテルギウスさん。こいつらの目を見て見な」

 

「・・・」

 

「恐怖?絶望?・・・こんな、やつらが俺たち魔女教徒を見ただけでこんなに震えあがっているんだぜ!」

 

俺は、近くにいた女性の髪の毛を右手でつかみ上げる。

 

「・・・っ!や、やめて・・・」

 

顔を近づけ、首筋のにおいをかぐ。

 

「・・・はあ。魔女の匂いとか別にしないなあ」

 

興味を失ったかのように、手を放す。

 

解放された女性は、さきほどよりも怯え足を引きずるように俺から距離をとる。

 

俺が、小さく鼻で笑うと女性は急いで視線をそらし体を抱きかかえるように身を縮ませた。

 

「・・・あの人はね。俺たち、魔女教徒に入信したいって言ったんだ」

 

俺は、次に別の男性を指差す。

 

「あいつもだ。他のやつらを殺してまでサテラを愛し、全てをささげると言っていた」

 

次に、老人を指差す。

 

「あの、体も満足に動かない様な老人だって、すがるようにサテラに許しを乞おうとしていた」

 

「ど、どういうことなのデスか?」

 

「まあ、魔女の決めたことだからどうこうてって話じゃないけど・・・」

 

俺は、おもむろに福音書を取り出す。

 

 

 

 

「村人たちを、導け・・・そう、福音書に書かれていたからな」

 

 

 

 

そう、俺の考えた秘策というのがこれだ。

 

福音書に書かれていた通りに行動したから、べつに村人達殺さなくていいでしょ?むしろ、殺していいの?福音書に書かれていたんだよ?いいの?そんな、反抗的な行動して?ええ、おい?・・・作戦である!

 

もちろん、そんなことが書かれていたのは嘘だ。

 

だが、さきほど村に移動している最中にペテルギウスからちょっと、聞いてみたが福音書は所有者以外には文字が読めないのである。

 

まあ、俺には日本語でしか書かれていないので本当のところはどうだかよくわからないが・・・これを逆手にとり、ないことをあることにしてみたのだ。

 

俺が、大罪司教の『傲慢』であるからこそ説得力のある発言だ。

 

「な、なんということデスか!?」

 

「本当だ」

 

「ありえない!ありえないありえないありえないのデス!修斗さんが、言っているのが本当であるのならば!ワタシは、実に怠惰で愚かしい行動をしようとしたのデスか!」

 

「・・・ペテルギウスさん。誰にだって間違いはある。次に生かせばいい」

 

「で、デスが・・・」

 

「確かに、ペテルギウスさんの行いはサテラの意志に反するものだった。でも、ペテルギウスさんは気づいたじゃないか。それに、自分の行った罪を理解して反省したじゃやないか」

 

「・・・」

 

「そんなに自分を許せないなら、俺が許す。魔女教、大罪司教『傲慢』の名のもとにその罪を許そうじゃないか」

 

「あ、あぁああああ・・・。な、なんと慈愛に満ちたお言葉なのデスか!?たった、一度の失敗・・・その一度の失敗でワタシは魔女に失望されるところだったのデス!・・・修斗さん。あなたのお言葉を信じ、あなたの福音通りに行動するのデス!」

 

「え?あ、うん・・・」

 

「修斗さんの全てを許そうとするその寛大なお心に感謝するのデス!」

 

いや、まあ・・・うん。

 

・・・よし、なんかうまくいったぞ。

 

俺のしゃべり方とか、黒歴史待ったなしじゃね?とかの、質問はこの際どうでもいい。

 

また、知らず知らずのうちにペテルギウスの好感度が上がったような気がするけど・・・気のせいだよね?

 

きっと、他の大罪司教にだってこれぐらいで接しているんだよね?

 

ペテルギウスは、俺の手を包み込むように握って涙を流しているんだけど関係ないよね?

 

時々、「あなたは、我々の希望なのデス。なんと、素晴らしいお方なのデスか・・・」とかめっちゃ褒めちぎっているんだけど・・・。

 

 

 

 

 

すると、突然体に違和感を感じた。

 

 

 

 

 

何かが・・・形の無いもの。まるで、その身をかき消そうとする霧のような、ゆっくりとした物が俺の体全体を包みこむ奇妙な感覚にとらわれる。

 

その奇妙な感覚は、俺の胸の中心で収束していっている。

 

なんともいえない安心するような・・・でも、どこかでその霧に怯えている自分がいる。

 

これ以上は、おかしくなるのではと思っていたところで、その違和感は少しずつ収まってきた。

 

俺は、不安になり胸に片手をあてるが別に変ったところはない。

 

一言で言い現わせば・・・何か得体のしれない力?というものだろうか。それが、流れてきたような気がしたが・・・気のせいだったのかな?

 

「修斗さん。ご気分がよくないのデスか?もしも、あなたに何かあれば心配で心配で・・・。」

 

「・・・いや、たぶん大丈夫」

 

「本当デスか?・・・それなら、よかったです」

 

・・・あれ?ペテルギウスって、こんなに自然に笑える人だっけ?

 

確かに、やせこけて肌は白いけどそれでも、狂気的な笑みを浮かべているんじゃなくて、普通の笑い方をしている。

 

それに、最後の「です」が「デス」に協調されていなかった。

 

・・・俺という本来いない存在がいることで、少なからず影響力がでたのではないだろうか?

 

「・・・考えても、仕方がないよね」

 

小さくつぶやいた言葉は、誰にも届かなかったのだった。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

「本当によろしいのデスか?」

 

「うん。他の魔女教徒を俺の護衛につけてくれたし・・・このミーティアだっけ?この手鏡みたいので連絡はとれるんでしょ?」

 

あのあと、すぐにペテルギウスの福音に次の指示が書かれていた。

 

ペテルギウスは、次の指示のためにすぐに行動するといった。

 

それで、嘘ではあるがペテルギウスには村人たちを導くと福音書に指示されたということになっているので、必然的に福音書通りに行動しなければいけない俺は村に残ることになる。

 

放棄したら、面倒くさいことになるだろうし・・・。

 

それに、ペテルギウスについていったところで危ない目に合うのはみてわかる。

 

それに魔女教徒30人のうち15人・・・半分は村に残ってもらうことになった。

 

・・・正直、それは嬉しい。

 

だって、他の人がいなきゃ貧弱な俺は村人達にリンチされる。

 

ペテルギウス以外の魔女教徒は、俺に従順で俺の命令には絶対に従うし。さっき、面白半分で「四つん這いになって、3回周ってワンって言って」と命令したところ、なんのためらいもなくやったんだから笑えない。

 

もう、ね。「・・・あ、どうもっす」ってしか言えなかったよ!

 

まあ、それはそれとしてこの状況下では非常にたすかった。

 

「そうなのデス。そちらに、ワタシがお伺いすることはできないのデスがこれでお話できるかと・・・」

 

「うん、わかった」

 

「あ、あとその魔女教徒は料理が得意なのデス!しっかりと、ご飯を食べるのデスよ!」

 

「うん」

 

「あまりにも、不規則な生活をしてはいけないのデスよ?」

 

「う、うん」

 

「その者は、風魔法が得意なのデス!あ、あとそちらの者は水魔法が!さらに、そちらの者は・・・」

 

「あー!もう、大丈夫だから、早く行って!」

 

「し、しかし・・・」

 

「ペテルギウスさんは、過保護なお父さんですか?福音書に指示が書かれていたんでしょう?早く行ってください!」

 

「・・・わかったのデス」

 

心なしか、気落ちした様子でペテルギウス団体一行は村を出た。

 

一度、こちらを振り返ったが笑顔で手を振ると何かを決心したかのように歩いていった。

 

・・・あれ?ペテルギウスってあんなキャラだっけ?

 

まあ、いいや。

 

それよりも、俺はやらなきゃいけないことがある。

 

俺は、後ろから俺たちの様子を伺うことしかできない村人達に向き直る。

 

 

 

 

「それでは、村人の皆さん改めて・・・俺は魔女教、大罪司教『傲慢』担当神谷修斗」

 

 

 

 

 

「・・・君たちを導き、正すものさ」

 

何をしたいのかというと。

 

村人達に受け入れられて、何とか明日を生きていきたい。

 

つまり、自らの保身のために頑張っていきたいということだ。

 

じゃないと、死んじゃうからだ。本当に、辛い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・俺って、一般的な高校生だったよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すっごい、書いたなあ。頑張ったなあ、俺。

・変更点
魔女教徒30人のうち5人→魔女教徒30人のうち15人・・・半分


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村人たちがなんかおかしい

お久しぶりです。時間がかなり、空いたのですが投稿します。

それと、日刊ランキングに載っていてとても嬉しかったです!

いつもより、かなり短いですが、楽しんでください!


「導き、正すもの・・・」

 

村人の誰かが、ポツリとこぼす。それに、反応するかのように俺たち魔女教徒に視線を合わせる村人たち。自分たちがなぜ危害を加えられないのかと、疑問に思っていた。

 

それに俺は頷く、

 

「そうだ。魔女教、大罪司教・・・えっと」

 

やべえ。格好よく説明しようとしたけど、自分の担当している大罪を忘れたよ。・・・だって、しょうがないじゃん。普段、使わない言葉なんだもん。

 

俺は、隣にいる魔女教徒に耳打ちして聞いた。・・・『傲慢』ね。それにしても、魔女教徒ってボソボソ喋るから聞き取りにくい。もっと、はっきりと喋ってくれないのかな?

 

あくまでも、魔女教大罪司教『傲慢』として威厳のある話し方をしなければならない。

 

「・・・魔女教、大罪司教『傲慢』担当のもとに君たちの安全を保障しよう。ただし、勘違いしないでほしい。我々に歯向かうようなら、こちらにも考えがある」

 

・・・本当に、やめてくださいね?何度も、言うようだけど君たちが反抗してきたら一般人の俺は余裕で死ねる。ほら、鍬とかでガーってやられちゃうとね。

 

まあ、魔女教徒が守ってくれそうだから大丈夫だと思うけど・・・。俺の存在が、村人達に知れ渡った時点でそれはできるだけ避けたい。もしも、魔女教徒が危害を加えたなんて悪印象を持たれると、そのまま外に話が漏れる可能性がある。それこそ魔女教徒に対して討伐隊とか組まれたらたまったもんじゃない。

 

恐怖政治とか言われるかもだけど、ペテルギウスさんが残してくれた魔女教徒達と俺で村人たちを監視するしかない。

 

それが、誰も苦しまないで解決する最善の手だからだ。

 

「・・・安心して、あくまでも君たちが反抗しなければそれでいい。俺はこの福音書通りに行動するだけだ」

 

すっと、法衣の内側にある福音書を取り出す。福音書を見た村人たちは、一様にざわついた。噂程度で魔女教徒個人それぞれが持っている、教典とも呼ぶべき物を見せつけられ、俺の言葉に偽りがないということが証明される。

 

まあ、偽りだらけだけども・・・。何だったら、何もできない一般人が必死にあがいているだけだけども。

 

「村人たちは俺たちの監視の下、村の外には出ないでほしい」

 

「そ、それは・・・」

 

ある老人が、異議を唱える。周囲の者は、何をやっているんだと眉を歪ませた。

 

「・・・何か、問題でも?」

 

「しょ、紹介が遅れて申し訳ありません・・・私は、この村の村長であります」

 

1人の腰の曲がった老人が、村人より一歩前に出る。白髪を腰まで伸ばし、しわくちゃの顔から恐怖の表情がうかがえる。まるで、自分の発言で生殺与奪が決まりそうな感じでだ。・・・そういえば、サテラに許しを請おうと必死になっていた老人だよね?

 

老人は震える両手を前に出して、祈りを捧げるように、

 

「村人を代表して村長である私が、司教様の寛大なお心に感謝いたします。ですが、司教様に危害を加えようとしただけでは、飽き足らず我々の仲間割れでお恥ずかしい姿を晒したことについてなのですが・・・」

 

おそる、おそる俺の表情を伺いながら、村長は聞く。

 

「もちろんだ。それを、理解して君達は己の行動を恥じている。それに、俺たち魔女教徒に敬意を払っているじゃないか?俺は、そんな君たちを蔑ろにするほど落ちぶれていないよ。・・・魔女教大罪司教の『傲慢』の名の下に許そうじゃないか」

 

「・・・っ!ありがとうございます」

 

村長をかわぎりに、村人たちは同じように俺に祈りを捧げる。変に聞き分けがいいな?俺・・・というか、魔女教は平気で人殺しする集団だよ?

 

 

 

 

・・・まただよ。胸の中心に、力が収束していくような変な感じ。2回目だから、そんなにあわてないけどさ。なんか、気持ち悪いなあ。

 

 

 

 

「ですが、その・・・。この村が、廃れているのは見ればわかると思います。畑は枯れ、水も十分に飲むこともできず村人たちに元気はありません」

 

「ああ、確かに見ればそうだな。それで、君は何がいいたい?」

 

「はい。この村の収入源は、二つあります。一つは、さきほど言ったっとおり農業。もう一つは、近くの森で木を伐採する林業を営んでいます。・・・ここは王都から離れた、辺境の地。村から、出られないとなると収入源がなくなるのですが・・・」

 

「・・・」

 

ふむ、なるほどね。まあ、俺としてもある程度村を見たところ、そんなもんだと思っていたよ。村人達を、監視するのは簡単だけど生活までは面倒みれないしなあ・・・。

 

どうしよう、これ?やべえ、もうすでに積んじゃっているような・・・。

 

はあ、しょうがないか・・・。

 

「村から出るのは、俺たち魔女教徒の誰かにやってもらうよ。それで、物資を売ったり買ったりできるはずだ」

 

「は、はい!」

 

まあ、仮にだけど食料が村人全員にいきわたらないとか考えたら不安にもなるはずだ。村人達には、仕事をしてもらうけどその仲介人として魔女教徒達に行ってもらう。不満はあるかもしれないけど、これでがまんしてもらうしかない。

 

「他に、何か質問のあるものはいないか?・・・なんでもいい。困っていることがあれば、言ってほしい」

 

俺の発言に、村人たちが困ったような反応をすると、一人の青年が手をあげる。

 

「ぜひとも、司教様に進言したいことがあります!」

 

「なんだ?」

 

「はい!村長が言った通り、この村は農業と林業を営んでおります。その一つである、農業が数か月ほど前に川が反流して岩石によって、水の流れが止められたのです。なにとぞ、知恵をお貸しください!」

 

・・・いや、なんでもいいと言ったけど、君ずいぶんとなれなれしいよね。

 

おかしいな。気のせいか、村人たちが恐怖の表情から崇拝するようなキラキラとした目を向けている。

 

俺たちは、恐怖の対象である魔女教徒なのに・・・信用しているのかな?

 

う~ん・・・理由は分からないけどうまく、進むんだったらこのままでいいかな。

 

「わかった。俺たちの中で、2人貸すから君が先導してその場所まで誘導してほしい」

 

「かしこまりました!」

 

「他に、何かあるものは?」

 

今度は、女性が手をあげた。

 

「司教様、村の畑を耕すために力が欲しいのです!何度も同じ場所で、作物を育てているせいか畑に栄養がないようなのです」

 

輪作障害かな?ちょっと、聞いたことがあるけど、簡単に説明すれば同じ場所で何度も作物を育てれば土の栄養が吸い上げられて、作物がうまく育たなくなるのだ。

 

だったら、肥料とかこの世界にないからどっかから土を掘り起こして畑に入れるか、それとも畑自体もっと深く掘ってみるか・・・。

 

まあ、これも魔女教徒の誰かに任せよう。

 

「わかった。それも、こちらで検討しよう」

 

「ありがとうございます!」

 

「じゃあ、だいたいこんな感じで・・・」

 

「司教様、私も進言がございます!」

 

「・・・」

 

うぇーい!?ちょっと、待とうか!?君たち、やっぱり図々しくない?ねえ、俺たち魔女教徒だよ?怖いんだぞ?なのに、なんでこんなにどんどんと意見が出るわけ?さっきまでの、俺たちに抱いていた感情どこにいった!?

 

 

 

 

そのあとも、こんな感じだった。

 

 

 

 

家屋がボロボロで直してほしい、立て直してほしいとか、村を囲う魔獣対策の結界の確認、林業をするために力を貸してほしいなどなど。

 

何かの、たかがはずれたように俺へとどんどん意見する村人達。

 

・・・いや、まあいいけどね。いいように、使われている気がしないでもないけど別にいいからね。

 

「わかった!全ての進言を俺は聞こう!各々に、魔女教徒達を同伴させ問題解決に当たる!」

 

その言葉で、納得したのか村人たちは行動に移した。俺は、魔女教徒達を集め誰が何をするのか適当に分担した。一応、一人一人何ができるのか聞いておいて、人員を分ける。

 

魔法が得意な者。以前に、農業や建築業、林業を営んでいた者。こうやってみれば、魔女教徒って有能だなあ。魔法って、確か使える者にも限りがあったはず。原作では、そうだった。それに加えて、専門的な知識を持ち合わせているから、便利の一言につきる。

 

とりあえず、行動に移そう。

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

俺が言った通り、魔女教徒達は村人達に貢献している間・・・これからのことを考えれば、村は豊かになるはず。それだけの力が魔女教徒達にはあったのだ。

 

だが、俺は指示するだけで何もすることができない。暇な俺は、どうしているのかというと・・・。

 

「これ、お花!」

 

「ああ、きれいだな」

 

そっと、一輪の花を俺はうけとる。それに、満足したのか満面の笑みを浮かべて他の花を探す少女。

 

少女・・・まあ、エレアなんだけど。暇していた俺をつれて、村の花畑に来ていた。こんな、何もできない俺をこうして構ってくれるだけで救われる。谷口くんみたいに、ロリコンじゃないけど小さい女の子の笑顔に救われるよ。

 

谷口君ね・・・今頃何をやっているのだろうか?ロリコンの谷口君にとって、この状況ってごちそうなのではないのかな?まあ、どうでもいいけど。

 

それにしても、エレアは俺のことが怖くないのだろうか?最初会った時、あんなに怖がっていたのに・・・。

 

まあ、いいか。こうやってエレアと過ごすことで、心にゆとりが持てるし。この世界にきてからは、落ち着いて何かできることはなかったからね。

 

ハッピーエンドだぜ!いや、絶対にこのままだったら、ないけども。

 

こうして、なんや感やで村に受け入れられたのだった。



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