ヒットナンバーを聞かせてあげる (新参ホイホイ)
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0曲目

転生前ってこんな感じで良いんですかね?


「すまんのぉ小僧。ワシの不注意でこんな目に逢わせてしもうて」

 

「気にすんな爺さん。これもテンプレってヤツで選ばれたのが運悪く俺だったって訳さ」

 

申し訳なさそうに謝る老人に対して20代くらいの青年がカラカラと笑いながら話しかける。

この青年は会社からの帰宅中に横断歩道から車道へと飛び出した小学生を突っ込んできたトラックから守るため歩道側へと無理矢理突き飛ばし自分自身がトラックに轢かれるテンプレ事故に遭った。

 

「それでさ爺さん。テンプレ犠牲者になった俺はどうなる?お決まりの転生か?」

 

「そこはお主に任せるわい。このまま天国へ行くのも転生するのもお主次第だ」

 

フームと青年は腕を組んで考え始めた。

 

「転生するわ。ここまでテンプレに会えたんだったらトコトンやってやるよ」

 

「そうか。ならば選べ、王の財宝やら無限の剣製などのベタな物が多く入った特典ボックスじゃ。数合わせにワシが何個か適当に入れたものも入っとるがな」

 

ゲームセンターや店でよく見かけるガチャガチャ(赤)が虚空から表れた。この中に転生特典が入っているのか。

 

「こっちのガチャガチャは転生先が入っとる。人気の作品で纏めてみたぞ」

 

そう言うと今度はガチャガチャ(青)が虚空から表れた。人気作品とは転生先としてか?それとも作品的な意味でか?

 

ガチャガチャ…ゴトン

 

「フム。転生先は『ドラゴンボール』じゃな。中々に死亡フラグの多いところを引き当てるのぉ」

 

ドラゴンボールか…。何回か読んだが内容をあんまり覚えてないんだよなぁ~。

 

「それじゃ特典のガチャ回すぞ?」

 

「うむ。お主が回すのじゃ。すまぬが特典ガチャは1回だけしか出来ぬのじゃ。当たるも外すもお主の運次第ということじゃな。その代わり特典に書かれているものに関するものは幾つか与えられるからの?」

 

ガチャガチャ…ゴトン

 

「さてと何が貰えるのかな? …は?爺さんコレどういうこと?」

 

俺が手に取ったガチャを爺さんに見せると、爺さんは何とも言えない微妙な顔をしていた。

 

書かれていたのは『アイドル』

 

「大丈夫じゃ。ワシに任せよ。あの世界に行っても生き残れるような特典を付けてやるわい」

 

「いやいや大丈夫とかじゃなくてさ、どういうことかって聞いてるんだけど━━」

 

「行って参れ、小僧。大丈夫じゃ頼りないかもしれんが神であるワシの加護がある。さらばじゃ、幸運を祈るぞ」

 

何かを悟ったような穏やかな顔をした爺さんは俺に向かって手を振った。

 

「いや、待てってオイ!」

 

足元には黒く暗い穴が開いた。ここもテンプレかよ。唯一テンプレじゃないのは転生の特典か…

 

「まぁ、良いさ。爺さんが何とかしてくれるみたいだしな。さてと楽しむとしようかドラゴンワールドを!」

 

 

 

 




次はしっかり書きます


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1曲目

のんびり、だらっと書いていきますので良ければ読んでください


「さぁ!まだまだ燃えていくわよ子ブタに子ジカ達!声を、気合を奮い立たせなさい!」

 

『うぉぉぉぉぉ!エリちゃぁぁぁぁん!』

 

今、目の前では私の歌とダンスにノリノリでノッてくれている男女が大勢いる。ゲリラ路上ライブなのに時間が経つに連れドンドン人が増えて大きな歓声を挙げてくれる。

 

オレもとい私は転生特典の効果で飯マズ怪音波発生アイドル「エリちゃん」こと「エリザベート・バートリー」になった。ただ神様が「アイドルとは歌って踊るからアイドルだろうが!能動的な姿勢は許さん。あと怪音波は歌じゃねぇ!」と大激怒をして才能を追加するなど転生の情報を書き換えてくれた。

 

書き換えた内容は神様曰く

・みんなが知っている国民的アイドルグループだから。

・才能は底が知れないんだぜ?

・あとお前は地球人じゃないから

 

上2つは期待しているけれど最後のヤツがどうも気になって仕方ない。結局はアレヨアレヨと転生したのだが、転生して1ヶ月で最後の意味を理解した。だって1ヶ月で身長もスタイルも声までランサーで喚ばれたときのエリちゃんになっていたんだ。

 

という事で自己紹介。私はドルアイ星からやってきたエリザベート・バートリー。すげぇだろ見た目10代なのに実質年齢は50近いんだぜ。戦闘民族サイヤ人より老けるのが遅いんだ。

 

ドルアイ星人は生後1ヶ月で大人になるけれど死ぬまでが物凄く長い。ただ簡単に死ぬ方法もある。

 

それはアイドルを辞めること。

 

アイドルになるために産まれ、アイドルとして生き、アイドルを引退して死ぬのがドルアイ星人の一生である。言うなればアイドルになるために生後は成長が早くてアイドルに満足したら死ねる種族ってことだ。

 

そして戦闘民族を馬鹿にしているような能力が『歌って踊りまくっていれば戦闘力は勝手に上昇していく』という種族特性。ただコレには本人の才能に大きく左右されてしまう。

 

そこで輝くのが神様が与えてくれた特典にある才能。その内容とは『歌唱能力の才能は如月千早、ダンスの才能は菊地真、伸び代は星井美希』というものだった。国民的アイドルグループ…765プロだからか?てか何でアイマスなんだ?まぁ、私も好きだけどさ。

 

よってこの体は美少女であり金ピカ英雄王が認める美声を持ち、歌もダンスも才能が十分にあって伸び代に関しては底が見えないスーパーボディなのだ。

 

しかし、私は勘違いをしていた。才能は才能であって実力では無いということを。それを知らぬままライブを開いた結果、宇宙でも類を見ないほどの大事件が発生した。

 

それのせいで意気消沈し、引きこもっていたのだがドルアイ星の王様に『今はダメでもオマエの才能は底が見えないのだから努力して見返してやれ』と発破をかけられて、ヤル気を取り戻した。

 

「盛り上がってる~?まだまだいくからね、ちゃんと付いてきなさいよ!」

 

それから苦節38年。壊滅的だった歌は並のアイドル級に、ダンスは銀河大会で優勝できるほどのキレと技を身に付けた。この成長には涙しながら同期の連中や王様と一緒に一晩中大騒ぎするほど嬉しかった。

 

そうやって喜んでて全く考えていなかったが、ドルアイ星人は『歌って踊りまくっていれば戦闘力は勝手に上昇していく』のである。それも『才能に大きく左右されてしまう』のだ。実力はダメダメでも才能は底が見えないほど凄いものを持っている。

 

よって寝る間も惜しんで歌い躍り続けていた私の戦闘力がアイドルとしての実力よりも圧倒的速度でガンガン上がっているのは必然であった。

 

ドルアイ星で改造され性能を格段に上昇させたスカウターで計測したところ17年前の時点で私の戦闘力は300万を越えていた。

 

コレには私も同期や王様も顎が外れそうなほど驚いた。さらにドルアイ星人は自らの才能全てを戦闘に傾けることで格段にパワーアップさせることができる。ようは超サイヤ人状態みたいなモノである。私の場合は見た目が完全にヴォイドエリちゃんである。

 

これなら異性人が来ても大丈夫だと思ったが私も同期もそして王様も同じ事を考えたらしい。どれだけ戦闘力があってもマトモに戦闘訓練なんてしたこと無いから気弾はおろか浮くこともできないということを。

 

基本的にドルアイ星人は無駄に高い戦闘力を活かしてキック、パンチでごり押しする脳筋種族である。私も同じでソコに尻尾とマイクスタンドでぶん殴るモノが増えただけである。

 

そして運の悪いことに転生して42年目の時、ドルアイ星へ宇宙の帝王が侵略しに来た。ドルアイ星は巨大な惑星で地下資源が豊富かつ綺麗な惑星としても有名なのだから何時か来るだろうなぁ。とは思っていたけれど本当に来るとは思わなかった。

 

抵抗をしまくった結果、侵略を諦めてもらう変わりにフリーザ軍の駐屯地を作ることと私含めて数人に臨時の戦闘員になることで手を打ってもらった。

 

そりゃ自分の兵隊は一撃で粉砕されるし、特選隊は歯牙にもかけられる事なく倒されて、私に向かってデスボール?を撃てば槍で宇宙にホームランされたんだからめげるか。

 

数年間はフリーザ様直属として自由できなかったけれど、フリーザ様が惑星べジータに移動する時に直属軍から外してもらえた。ようやくドルアイ人としての夢であるトップアイドルになるためサブカルチャー最強の地球へと行く機会が巡ってきた。

 

地球へ到着して数ヵ月間は路上アイドルとして活動していたけれど赤羽根Pに似た人と高木社長らしき人に声を掛けられてアイドル事務所へと引き入れられた。事務所は出来たばかりらしく私がアイドル第1号何だそうだ。

 

自己紹介を頼まれたから包み隠さず宇宙人だって言ったら2人ともポカーンとしていたっけ。

 

事務所に所属したとはいえ活動は基本的に変わらず路上ライブをしたり告知無しのゲリラライブをしたり、ファンが多くなってきたから会場を借りてライブをしたりしていた。その中でドラゴンボールのヒロインズが1人ブルマとその家族に出会った。しかもこのライブが切っ掛けで友達になったしスポンサーも受け持ってもらえることになった。

 

先日オフの日だったので遊びに言ったら「何とかボールを探しにちょっと前に出ていっちゃったわ」との事だった。そろそろ原作が始まるって言うのが分かったけれど原作では既に何個か集めた状態で悟空に会っていた気がする。

 

積極的に関わろうとは思ってないけれど、この世界に来たんだから1度くらいは使ってみたいと思うのが正直なところで。使うときは空が暗くなるのだから、そのあとにブルマに頼み込んでレーダーを貸してもらおうと思う。

 

━━━それに今はそんな事よりも

 

『エリちゃん!エリちゃん!エリちゃん!』

 

『こっち見てー!』

 

熱くなりすぎたファンと最早秒毎に増えていく観客の収集をつけることが優先だな。と額にも背中にも冷や汗をかきながら私は思った。



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2曲目

「私達の事務所を大きくしたい、と?」

 

朝、事務所へ行くとプロデューサーと社長に相談を持ち掛けられた。人気アイドル兼身近なアイドルとして波に乗り始めた私以外にもアイドルを増やして行きたいというのを方針にしたんだそうだ。

 

「そうなんだ。そこでエリザの意見も聞いておこうと思ったんだ」

 

「どうかね?」

 

「別に聞かなくても良いのに…。私としても新人さんが増えることは歓迎ですよ?」

 

もしかしたら増える人は双子だったりペットがイッパイの元気娘とかかもしれないけどね。ただ、1人で活動するのも寂しいというのが本音だ。

 

「それで…何だがね?」

 

社長が眉間にシワを寄せて言い出しづらそうに口を開いた。額にも汗が浮かんでいる気がする。プロデューサーに関しては緊張の面持ちで視線がアッチコッチ泳いでいる。

 

「何かあったんですか?私で力になれるんだったら幾らでも言ってください!」

 

「…本当かね?」

 

社長の目が獲物を見つけた肉食獣を彷彿させるほどの鋭さを放った。ずずぃとコチラに高速移動をするかのごとく近付いてきた。

あ、地雷踏んだかな?

 

「劇場を大きくする拡大工事なのだがね?費用が少し足りないんだ」

 

「…まさか、私の懐からってことですか?」

 

「そんな事するわけ無いだろう!?」

 

驚いて立ち上がった社長の隣でプロデューサーが苦笑いしながら1枚のチラシを取り出した。

 

『第21回天下一武道会開幕!優勝賞金は50万ジェニー!参加者募集中!』

 

と書かれたモノだった。まさかの21回大会ってことは主人公が初めて参加するヤツじゃないか?ゲストとかMCの依頼は来たのか?

 

「これが何か?」

 

「足りない費用がだね36万ジェニーなのだよ。エリザベート君」

 

実況の相方をしても36万ジェニー稼げないだろうし、振り込まれるのも時間がかかる。だけどプロデューサーと社長は工事するのを決定している。まるで稼ぐ場所があるかのように…

 

「ま、まさか」

 

1つだけ思い当たることがある。嘘だろ?冗談だよな?

 

「察してくれたようだね。そのまさかだ」

 

冷や汗が、嫌な予感が…!

社長から言われたのは予想はしていたけれど外れていてほしいことだった。きっと私の口からは魂が抜け出ているに違いない。

 

 

「ご来場の皆様!これより天下一武道会開幕です!厳しい予選を抜けてきた強者たちによる熾烈なバトルを御覧ください!」

 

『ワァァァァ!』

 

天下一武道会のお馴染みらしいサングラスをかけたアナウンサーのアナウンスと共に会場が沸き立った。孫くん達を応援するために席を取ったのだが亀仙人の爺さんが何処かへと行ってしまった。友達のエリザも誘ったけれど彼女は用事が入っていて来れないらしい。

 

「全くもう!弟子の晴れ舞台でしょうに何してるのよ、あの爺さんは!」

 

孫くんにクリリン君は無事に予選を抜けることが出来たと報告されたけれど、なんとヤムチャが予選で負けてしまったらしい。あのヤムチャが負けるほどの強さを持っている人がいることに私もプーアルも驚いた。

 

「さぁ、1回戦第1試合を始めます!第1試合は━━」

 

今のところ孫くんやクリリン君に敵いそうな選手は見受けられない。ヤムチャを倒した人ってどんな人なんだろう?

 

「続いては第1試合最後の組み合わせです!ジャッキー・チュン選出vs匿名希望の選手です!どうぞ!」

 

匿名希望?そんな人もいるのね。ジャッキー・チュンと呼ばれた人に期待していたら出てきたのは爺さんだった。なによ、イケメンかと思って期待してたのに!

 

「続いて匿名希望選手ですが、この選手は匿名だとしても一目見ただけで分かってしまうでしょう!この星で知らないのは赤ん坊か死人だけだと私は思っています!」

 

へー、そんな達人がいるのかしら?私が知ってる格闘家って言ったら亀仙人の爺さん━━武天老師くらいかしら?

 

「この1戦の結果次第ではファンが増えること間違いなし!新たなジャンルが確立し、新たな伝説の1コマとなるでしょう!では匿名希望選手どうぞ!」

 

そえ紹介されて出てきたのは私がよく知る人物だった。

 

赤い髪に角と尻尾。

白黒でヒラヒラと盛大に飾られた衣装。

勝ち気な表情に情熱を秘めた瞳。

 

全世界、特に西の都に住んでいる人なら老若男女全員が知っているだろう人物。エリザベート・バートリーだった。

 

 

有り得ないほどネタバレと期待を高める様なアナウンスに紹介された私は舞台袖から闘技場へと歩いていく。観客は私の姿を見て驚いたような表情を見せている。まぁ、トップアイドルとして活動している私が武道大会なんかに出てくるだなんて誰1人として考えていないだろう。

 

「ハァイ、子ブタ達?今日はアタシの特別なステージへようこそ!貴方達は今からアタシの新たな1面を垣間見ることが出来るわ」

 

とりあえずアナウンサーからマイクを引ったくり観客へ向けてマイクパフォーマンスを始める。ポカーンとしている人が多いけれど出てしまったのだから仕方ない。ヤケクソでこの大会を乗り切る。

 

ちなみにヤムチャは私のせいで今大会の本戦には出れませんでした。

 

『マジか…』

 

『本物…だよね?』

 

『なにかの告知…とか?』

 

告知…告知か。ここでアクションも出来るアイドルということを示しておけばアクション映画からのオファーが来るんじゃないか?

 

「告知…。良いこと言うじゃない子ブタ」

 

今、私の中で『アクション映画に出て戦える系ヒロイン』として大抜擢されアイドル兼女優になっている私のビジョンが浮かんだ。

 

ディ・モールト。実に良いぞ。

 

ならば決まった。目の前のジャッキー・チェンのパチモン仙人を片付けてしまおう。

 

「では両選手、揃いました!それでは試合開始です!」

 

許せ、パチモン仙人よ。貴様にはここで負けてもらうぞ!安心しなされ、貴様の弟子は私がコテンパンに叩きのめしてやるから!

 

「だから、私の踏み台になれ!…最大限の手加減しないとね」

 

 

私は今、信じられない光景を見ている。親友でトップアイドルで時々抜けているエリザが名人、達人が多く集まる武道大会の本戦に出場していた。デキレースかイベントの告知だと思ったのだけどジャッキー・チュンなる爺さんと本気の戦いを繰り広げている。

 

「なによ、あれ。孫くんやクリリン君より圧倒的に強いじゃない」

 

ジャッキー・チュンもだがエリザも観客の目に写らないような速度で動き、技を繰り出している。しかも凄まじいのがエリザは相手の攻撃を全て指2本で受け止めているし反撃はふざけているのかデコピンだった。

 

『マジかよ…』

 

『CGじゃねぇよな?』

 

『また消えたぞ!?』

 

驚いているのは私だけじゃないらしい。舞台裏から覗いている人達もポカーンと口を開けている。爺さんは武道着だから格闘家風だったけどエリザに関してはライブの衣装だった。明らかに釣り合わない2人が互角以上の戦いを見せている光景を現実に思えなかった。

 

「ならばコレはどうじゃ!か~め~は~め~波ー!」

 

あれは!?亀仙人の爺さんがやっていた技じゃないの!なんで使えるのかしら?

 

「ふん、避けるまでもないわね。せ~の!」

 

何かエリザはつまらなそうな顔をして思いっきり尻尾を振りかぶり、飛んでくるかめはめ波に向かって振り抜いた。

 

「飛んでいきなさーい!」

 

「なんじゃと!?」

 

ジャッキー・チュンが放ったかめはめ波はエリザに真っ直ぐ向かっていき、そのまま真上へと弾き飛ばされ見えなくなった。

 

「そーれ、よいしょ」

 

気の抜けるような掛け声とともに放たれた拳がジャッキー・チュンの腹へと吸い込まれるように叩き込まれた。

 

「ごはっ」

 

「お疲れさま。ま、中々強かったけど到底アタシには及ばないわ。ゆっくり眠りなさい」

 

『…8、9、10!10カウントでエリザベート選手…いえ、匿名希望選手の勝利です!実に素晴らしい戦いでした!』

 

間違いを言い直したアナウンサーをジトッとした目でエリザは見ていたけれど、別段言い直さなくても観客全員分かっているのにね。

 

でも大変ね。クリリン君の次の相手ってエリザでしょ?…エリザ間違えて殺したりしないわよね?



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3曲目

お、お気に入りが増えてるぅ!?

有難うございます!こんな感じの作品ですけどよろしくお願いします!


うん。ジャッキーもとい亀仙人と戦ったお陰で少し自分の体と意識が一致した。最後にまともな戦闘をしたのがフリーザ様がドルアイ星へ侵略しに来たときだから

かなり昔の話だな。

 

アナウンサーの「試合開始です!」の台詞と共に踏み込んだら想像以上のスピードが出てしまい、気がつけば亀仙人の顔が目の前にあった。大慌てで飛び越えたら亀仙人は「残像拳か!?」と何やら勘違いしてくれたようで結果オーライではあった。

 

ビックリした!ビックリした!

そりゃそうだ。地球に来てからも毎日、歌とダンスのレッスン欠かしてないんだから昔よりも戦闘力が上がってるわ!最大の敵が自分の身体能力という何とも言えない状態のまま戦闘は進んでいく。

 

「やぁ!」

 

パンチを繰り出せば『ブオン!』とスゴい轟音と共に亀仙人が驚愕の表情で避けた。出した本人は目で捉えきれず、かなりの速度が出てるんだなぁ~と何処か他人事でその姿を見ていた。

 

「は!」

 

踏み込めば高速運転をしているときの『速すぎて視界が狭くなる』現象が発生し亀仙人の顔をギリギリ認識できるレベルまで狭まった視界のせいで距離感をマトモに認識できなかった。亀仙人が高速パンチ「ぴょっ!」を繰り出してくれたお陰で、なんとか止まることは出来た。…顔面に拳が直撃したけど。

 

ようやく目が馴れてきた頃には、亀仙人は加減失敗パンチや加減失敗キックが被弾していたせいでボロボロの状態だった。しかし、目を細めて私の動きの1つも見逃さないように意識を割いていた。

 

そんな姿を見たらさ、言えるわけないよね。『リハビリしようとして失敗したのが貴方に当たってる』なんて口が割けても…。亀仙人と観客から注がれる視線に耐えられず私は一気に駆け寄って腹パンを叩き込み気絶させた。

 

『ウォォォォ!エリちゃん、スゲェェェェェ!』

 

『マジか!?勝っちまったぞ!?』

 

『CGじゃねぇぞ!コレはリアルだ!』

 

そして現在、私は観客から熱すぎるくらいの声援を受けていた。とりあえず手は振り返しているけど笑えているだろうか?なんとなく苦笑いしているような気がする。

 

「エリザやるじゃないか!」

 

「うむ。新しいアイドルのジャンルが確立したかもね」

 

プロデューサーと社長が最前列で見ていることに今気付いた。2人とも私がここまで動けることに驚いているようだった。流石なのは社長。貴方は毎度ながら時代を先取りしすぎです。まだ格闘系アイドルは受けないだろ?

 

鳴り止まない声援を受けながら舞台裏へと下がる。さて、次の相手って誰だろ?

 

 

「クリリン、見たか今の姉ちゃん」

 

「あ、当たり前だろ!」

 

次に戦う相手は、あの『エリザベート・バートリー』。アイドルとしての姿しか知らなかったけれど格闘家としても最強なんじゃないか?と思わせるほどの動きを見せられた。

 

「あのジャッキー・チュンとかいう爺ちゃんの動きも早かったけど、エルザベートとかいう姉ちゃんはもっと早かったな!オラ、全然見えなかったぞ!」

 

「オレだって見えなかったよ!あぁ、どうやって戦えば良いんだ…」

 

さっきのを見る限りだと変な話だけど自分の動きに意識が付いていけてない感じがした。それが唯一の弱点かもしれないけれど試合が終わる頃にはズレが小さくなっていた。

 

「後は弱点という弱点は無かったよなぁ…」

 

『準決勝第1試合、孫悟空選手vsナム選手。両選手どうぞ!』

 

「お、オラの番だな!よし行ってくる!」

 

悟空は意気揚々と闘技場に向かっていった。あのナムという選手もかなり強いけど、エリザベートさんとは比べるまでもない。

 

「どうしよう…」

 

武天老師様の『かめはめ波』をジャッキーさんは使っていたけれど、エルザベートさんは何事もなく弾き飛ばしてたし『残像拳』は見切っていた。

 

「あ…。でも全部『目で見てた』。…そっか気配を感じ取れていないんだ」

 

もしかしたら最大の弱点を見つけたかもしれない。

 

 

まさかの相手はクリリンだった。将来の人類最強、超サイヤ人の切っ掛けになる超重要人物。今更思い出したけど原作だと亀仙人vsクリリンだったな。亀仙人の代わりに私が相手になるわけだけど。

 

「観察眼に優れてそうだからなぁ。変な弱点とか見つかってないと良いんだけど…」

 

目下、最大の欠点は鍛練不足と久し振りの戦闘のせいか相手の気配を殆ど察知出来なくなっていた。亀仙人は正面からのぶつかり合いだったし、残像拳も本体の動きが見えていたから対処できた。かめはめ波も問題はなかった。フリーザ様の星消し光線に比べれば余裕だった。

 

ピピピピ…

 

「誰よ?アタシ、試合の順番待ちなんだけど?」

 

携帯が鳴り、急いで観客席の方へ向かう。待機室だと音も声も響くし他の選手に迷惑かかるからね。その辺は守るのが私クオリティ。

 

「プロデューサー?…ちょっと子ブタ?アタシ出番待ちなんだけど?」

 

『そこは悪いと思ってるよ!ただね、カプセルコーポレーションの娘さんが会いたいらしいんだ!』

 

「ブルマが?すぐ行くから何処ら辺にいるか教えなさい!」

 

大事なスポンサーと自分の自由時間という名の待機時間、どちらが大事かと言われたら待機時間<スポンサーに決まっている。頑張るんでもっとお金ください。

 

『えっと、リングの東側かな?』

 

クソ、出てくる方を間違えたか!えっと、アッチだな。

 

「通りたいから道開けてくれないかしら?」

 

『あ、すいません。ってエリちゃん!?』

 

『うわ、スゲエ!本物だ!本物!』

 

『あの、写真良いですか!?』

 

くっ、分かっていたけれど簡単には通してくれないか!

 

「ダメよ、今は緊急の用事があるの。勝手に通るわよ」

 

近くでカメラを取り出そうとしている男の脇をすり抜け、ローアングラーの上を飛び越え(もちろんスカートはガッチリガードして)、何としてでも止めようとして来る子ブタたちには━━

 

「退きなさい!絶頂無情の夜間飛行(エステート・レピュレース)!」

 

近くにいたローアングラーの首根っこを掴み水平に投げ飛ばす。その上に私が腰かける予定なのだが、デュフられても困るので桃白白の柱移動を真似して上に立つ。

 

「なにぃ?ぐわぁぁぁぁ!」

 

人間ボウリングの如く豪快に薙ぎ倒し、薙ぎ倒された子ブタ達は漏れなく全員が気絶した。

 

「エリザ、ここだ!」

 

視界の端で手を振っているプロデューサーを認識した私は薙ぎ倒して気絶させてしまった子ブタ達には悪いけれど、観客サービスとしてスカートではあるけれど側転からの後方倒立回転翔びそして後方宙返りに繋げる。

 

「よっと。ハァーイ、ブルマ久しぶりね。プロデューサー喉乾いたから水か何か頂戴?」

 

私の突然の行動にカメラを持っていた男達も反応しきれず、撮れなかった!もう一回!など様々な要望が後ろから聞こえてくる。

 

「ファンサービスは終わりよ?それに今日はオフだから余り言い触らしたり、撮らないようにね?」

 

血涙を流しそうなファンへ向けてウィンクと人差し指を口元に当て「シー」として見せる。予定では子悪魔的な感じに見える筈なんだが…。

 

『………ォ』

 

『ウオオオオオオ!!』

 

無反応だと完全にスベって只の痛い子にしかならなかったけれど、これだけ反応してくれれば良い感じだったことがよく分かる。

 

「…相変わらず変わらないわねエリザ」

 

「当たり前じゃない。デビュー当時からこんな感じだけど正直に言ったら、ほぼアタシの素よ?」

 

フフン、と胸を張って言うとブルマは「ハイハイ、そうね」と適当な相槌を打つだけだった。ファンだと更に1騒ぎあると思うけど友達には余り効果がないらしい。

 

「それで何で呼んだの?」

 

「久しぶりに顔を見たいなぁ~。って思ったからかな?あと、大会頑張ってね」

 

今、リング場では丁度悟空が天空×字拳を食らったところだった。拝んでないで2発目叩き込めば勝てただろうに。

 

「もちろん。頑張るに決まってるじゃない!今回は何としてでも賞金を獲得しないといけないんだから!そうよねプロデューサー、社長?」

 

「その通りだともエリザベート君。期待しているぞがんばってくれたまえ!」

 

「俺も応援するから頑張れエリザ。あとスポーツドリンクで良いよな?」

 

プロデューサーから手渡されたペットボトルをイッキ飲みするように呷る。暑い日差しで渇いていた体が潤されていくのを感じる。それに冷たい分、体の熱がドンドン下がっていく。全身がブルブルって震える。

 

「ハァー、生き返ったわ。あら?そろそろ決着のようね。私も戻ろうかしら」

 

舞台上では2発目の天空×字拳を仕掛けるべく飛び上がったナムとそれを追い掛けるように悟空が飛び上がった。

 

「悟空がナムを場外に蹴り飛ばして決着ね。それじゃ戻るわ。優勝するためにも甘さを捨てないといけないから集中するわ」

 

ブルマとプロデューサー、社長に別れを告げてファン達が群がる道を控え室へ向けて歩き出した。

 

…オフ中だから撮るなって言ってんだろうが。

 

 

 

 

 



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4曲目

『準決勝第2試合、クリリン選手vsエリザベート選手です!』

 

遂にこの時が来た。思い付いたばかりの作戦だから固められてはいないけれど1回なら通用するハズだ。その1回で倒せるかは分からないけれど何もしないよりはマシだ。

 

『クリリン選手は前にも述べました通り、孫選手と共に武天老師様の元で修行をした素晴らしい戦いを見せてくれた選手です。対するエリザベート選手は予想外すぎる実力を見せてくれました!』

 

こうして正面に立つとニコニコと笑顔なのに物凄い圧力を感じる。これが強者の雰囲気ってやつか!

 

『それでは準決勝第2試合、始め!』

 

ブオッ!

 

合図と共にエリザベートさんの姿が消えたと思ったら、いきなり目の前に現れた。しかも右腕を振りかぶっている。

 

「くっ」

 

左側へ避けながら懐へ潜り込む。自分でも驚くほどの判断の早さだった。対するエリザベートさんも空振ったことと僕が潜り込んだことに驚いたような表情を見せている。

 

「たぁ!」

 

一瞬、エリザベートさんの動きが鈍ったのでソコを狙って右正拳を繰り出す。

 

「へぇ?」

 

当たりはしたものの、硬い。今まで相手してきた人達を遥かに越える力を持っていることを嫌でも感じさせられた。

 

「見所あるわよアナタ。もう数年修行したら師匠越えできるわね」

 

ニコニコと笑いながら僕をそう評価してくれた。これはまさか…。いや、確実に…。

 

全く効いていない

 

「ま、師匠越えられたからってアタシに勝てる訳ではないんだけどね」

 

殴った当たりを擦りながら服に着いた埃を叩き落としている。蚊に刺されたようなダメージしかなかったのか?

 

「さて、もう御仕舞いかしら?ならアタシが攻めても良いのかしら?」

 

またブレるほどの速度でエリザベートさんは動いた。気配は…。後方!

 

「それそれ!」

 

右拳、左足、左拳、右裏拳。

大丈夫だ、ギリギリ見えているし気配も何となくだけど読めるから避けられなくても受け流せる。

 

「あら?避けるの上手ね。ならジャッキー爺さんの時と同じ速度にするわよ?」

 

バキッ

その言葉と共に僕の顔面に一撃が入った。

は、早い…!

 

「なるほどね。この早さだと避けられない訳だ。なら簡単ね。それそれそれ!」

 

ビシッバキッドムッ

顔、右肩、腹に拳が叩き込まれる。やっぱり早い…。だけど受けてるダメージが小さいところから手加減されてるのが分かる。

 

「何か無いのかしら?無いならこのまま外へ落とすけど?」

 

爪先でトントンッとリズムを刻むように石畳を叩き、口角を上げながら右の人差し指をクイクイッと挑発するように向けてくる。

 

「あるに…決まってるじゃないですか!」

 

悔しいが今の僕では敵わない。それでも次に戦う悟空の為にもヒントになることを残さないと…!

 

「か~め~は~め~…」

 

悟空がナムと戦ってる間に少し練習していたら出せるようになった。ただ、ぶっつけ本番だから威力は期待していない。だけど━━

 

「波ー!」

 

だけど目眩まし(・・・・)程度には使えるハズだ!

 

「な~んだ、コレはもう見たし前のに比べて大分弱いわね。ま、良いわ。頑張ったんだから受け止めて上げる」

 

エリザベートさんは余裕の笑みを浮かべて両手を真横に開いている。俗に言う『ノーガード』状態だ。だけど僕の狙いはエリザベートさん自体じゃない。その足元だ!

 

ドーン!

「え?きゃあ!」

 

今だ!

狙い通り、エルザベートさんの足元にある石畳を破壊し煙幕の代わりになっている。この隙をつくしかない!一気に距離を積めてエルザベートさんの懐に潜り込む。

 

「あれ?」

 

おかしいな?エルザベートさんの服装って、こんなに肌色多かったっけ?

 

「な、な、なぁ!?…こんの変態!」

 

腹部に衝撃を受け気付いたら宙を舞っていた。その際に見えたのだがエリザベートさんは真っ赤な顔で涙目になりながら、殆ど残っていないボロボロの衣装の胸元と足の間を手で隠していた。

 

 

完全に油断した。亀仙人のかめはめ波を何事もなく無力化出来たのだからクリリンの覚えたてなんて受け止めてやろうと思ったのが失敗だった。

 

「じょ、冗談じゃないわ…。プロデューサー助けてよぉ!」

 

いくら体が丈夫だとは言えど衣装が丈夫なわけではない。クリリンを場外に蹴り飛ばした私は胸元と秘部を懸命に隠してリング上でペタンと女の子座りをしながらプロデューサーと社長の救助を待っていた。

 

『ウオオオオオオ!シャッターが止まらないぞお!』

 

『なんて、なんて良い日なんだ!神様ありがとう!』

 

『しっかり目に焼き付けとかねば!フィルムにも納めるぞお!』

 

鼻息荒くカシャカシャカシャカシャと観客席の至るところからカメラのシャッター音が聞こえてくる。

 

…本当にマズイ。隠してはいるけれど場所によっては軽く見えていたりするのではないか?それよりも少しづつ視線とレンズが怖くなってきた。このままだと活動に影響が出そうな気がする。

 

「エリザ!すまん遅くなった。こっちだ」

 

プロデューサーが大きいタオルを持ってきてくれたので大急ぎで体に巻き、控え室へと移動する。

 

「はぁ~、あの衣装気に入ってたんだけどなぁ…。私が耐えられても衣装が耐えられないって考えれば直ぐ分かることなのに…」

 

何が「受け止めてあげる!」よ…。結局、勝ちはしたけどプロデューサーと社長に迷惑をかけてファンの視線とカメラに少なからず恐怖を抱くという最悪の結果になった。

 

「はぁ、ごめんねプロデューサー。大事な衣装が…」

 

「確かに今回はエリザが悪いけど、俺と社長にも非はあるさ。そもそも武道会に出る理由を作ってしまったのが俺達だからね」

 

苦笑いしながらもプロデューサーはそう語りかけてくれた。私が全部悪いわけではない。その想いがスゴく心に響いた。

 

「それでも衣装の件は100%私のせいよ」

 

そこだけはハッキリさせておく。同情も何もいらない。原因は私の慢心と油断だったのだから。

 

「分かったよ。そこまで言うなら衣装の件はエリザのせいだ。それとは別に俺と社長からの感謝の品だ。武道会に出場してくれたことに関してな」

 

よく土産物を積めてもらうような大きめの袋を手渡された。そんなに重くはないけど何が入っているんだろう?

 

「見て良いのかしら?」

 

「もちろん」

 

ガサガサと袋の中身を取り出すとFGOでエリちゃんの最終再臨状態が着ているピンクの衣装とピンクの帽子が入っていた。

 

「これって…」

 

「あぁ、新しい衣装だよ。次のライブから来てもらうつもりで頼んでたのが偶然、仕上がったって連絡受けたから持ってきたんだ」

 

姿見を見ながら着替える。今までのは通常エリちゃん衣装のピンクバージョンだったから小悪魔系アイドルみたいな見た目だった。今はフリルタップリのふんわりした衣装であり、見た目の印象がかなり変わった気がする。

 

「スゴいかわいい…。本当にプロデューサーも社長も良いセンスしてるわ」

 

「気に入ってくれて良かったよ。…それでなんだが大会はどうする?正直、俺は棄権しても良いと思う。ここまで来て何だけどな…」

 

言い辛そうにプロデューサーは話始めた。恐らくさっきの視線とカメラに晒された私の姿を見た結果、そう思ったんだろう。

 

「エリザが強いのは分かってる。だけど━━」

 

「ふざけないで!事務所を大きくするために出場して欲しかったんでしょ?私は理由を聞いたから渋々とはいえ出場しようと思ったの。なのに目的を果たせていないのに棄権?そんなの私が認められるわけないでしょ!」

 

確かに今以上の辱しめに会うかもしれない。そんな可能性は頭を何度も過っているし、考えただけで体の動きも固くなる。

それでも必要だと、頼むとプロデューサーと社長が頼み込んできたんだ。私をここまで大きく育ててくれた恩人である2人が。

 

恩人を助ける行動なのだ。諦められるわけないだろう。

 

「プロデューサーも社長もどう考えているか分からないけど、これは私にとっても重要な大事なことなの。ここまで来て投げ出すなんて出来ないわ!」

 

「そうか、分かったよ。なら止めはしない。気がすむまで突き進んでくれエリザ。それで賞金を俺と社長に手渡してくれ」

 

無理矢理納得したのが分かるほど無理矢理な笑顔を浮かべたプロデューサーに胸の奥がズキリと痛んだ。でも立ち止まるわけにはいかない。反省も謝罪も全部終わってからだ。

 

『決勝戦、孫悟空選手vsエリザベート・バートリー選手です!』

 

さぁ、行くわよエリザ。

 

 

 

 



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5曲目

可笑しいですね。またもや水着のアルトリア顔増えましたね。エリちゃんは何時になったら水着になるんでしょうか?


「孫くんも心配だけど、エリザ大丈夫かしら?」

 

クリリン君との勝負中に予定外のハプニングがエリザを襲い、勝敗は決まったものの一時大会が停止するほど会場は騒然としていた。

 

「アドリブは利くほうだけど、ああいうのには慣れてないだろうし」

 

座り込んでいたエリザは涙目だったし、顔が見たことないほど羞恥で真っ赤に染まっていた。ライブで見せているいつもの強気な印象が嘘と感じられるほど弱々しく感じた。

 

『決勝戦、孫悟空選手vsエリザベート・バートリー選手です!両選手どうぞ!』

 

アナウンスが響き渡る。どうやらエリザは出てくるようだが服はどうするのだろう?着ていたのはボロボロになって衣装としての機能を果たせそうもない布切れと化していたし…。

 

「さぁ、最終戦よエリザ。引き締めて行くわよ!」

 

エリザが堂々と登場してきた。それに衣装が新しい物に変わっていた。

 

『新衣装だ!』

 

『前のも良かったけど、コレはコレで良いな』

 

「子ブタ達、1つだけ伝えておくわ」

 

早速アナウンサーからマイクを奪い取ったエリザが観客へと話し始めた。隣ではアナウンサーがヒョコヒョコと出てきた孫くんの事を伝えたいのに伝えられず右往左往としている。

 

「今日、アンタ達が撮影したアタシの写真。自分だけで見なさい。ネットに流したり見せびらかしたりしたら…分かってるわよね?」

 

ギロリと睨み付けながら周囲を見渡す。何かしら?エリザと視線が会った瞬間に背筋をゾクゾクさせる何かを感じた。

 

「さぁ、最後の戦いよ!盛大に盛り上げていくから子ブタも子ジカも付いてきなさい!始めからクライマックスよ!」

 

まるで人が変わったように冷たい視線を向けていたエリザは、途端に何時もと同じハイテンションで観客を盛り上げるべく発破を掛け始めた。

 

「さてと、アナタはたしか『孫悟空』だったわね?アタシを辱しめたクリリンと共に修行したのね?アナタはどのくらい強いのかしら?」

 

孫くんへ挑発とも取れるような質問を投げ掛けながらエリザは構えをとった。

 

「おめぇはオラより強ぇのは十分分かってる。だけど今、オラはスゲェワクワクしてるぞ!」

 

「えぇ…。そんなキラキラした眼で見詰めないでよ。やりにくいわねぇ…」

 

不敵に笑いながら挑発したのに返答が、まさかの自分と戦うことに対する意気込みでありエリザは何とも言えない微妙な顔をしていた。

 

「何か無いの?そういう意気込みじゃなくてさ、仮にも一緒に修行したら仲間がボコボコにされたのよ?怒りとか」

 

そう言うと孫くんは不思議そうな顔をしていた。どうやらエリザは悪役風になりたいみたいだけど孫くんに期待するのは間違いよ。

 

「ふん。期待したアタシがバカだったわ!良いわよ、アンタもあのチビハゲみたく場外へ蹴り飛ばして上げるわ!」

 

『それでは第21回天下一武道会、決勝戦を始めます!』

 

「心配しなくて良いわ。クリリンで大体の加減は分かっているから。一瞬で終わらせてあげる!」

 

始めます!の言葉と共にエリザが孫くんに向けて今大会で最高の早さで肉薄した。

 

 

おのれ、悟空!私が何となくヴィランになろうと思ってクリリンを遠回しにバカにしたのに全く気付かないとは…。

 

「一瞬で終わらせてあげる!」

 

しかも瞬殺しようと思ったらパンチは受け止められるし、むしろ反撃のパンチが返ってきた。驚きはしたけど見えるし余裕で避ける。

 

「姉ちゃんはそんなに強ぇのに眼で見てるんか?気配とかで避けたほうが良いぞ?」

 

「そうね。格闘家であるアンタ達には必要な技術だろうけどアイドルであるアタシには必要ないのよ。まぁ、空気を読む技術は必要でしょうけどね」

 

「よく分かんねぇけど、ならなんで姉ちゃんは戦ってんだ?」

 

何故戦っているのか、ねぇ…。プロデューサーと社長の為なんだけど口に出すのは少し恥ずかしいわね。

 

「アタシはね、優勝して貰えるお金の為に戦ってるの。お金が無かったら出場なんてしてないわ」

 

「何だ?姉ちゃんは金欲しいんか?ならオラが勝っても金は姉ちゃんにあげるぞ」

 

「はぁ?アンタはいらないの?それにアタシに勝てると思ってんの?あんまり舐めてると人前に出せないような顔に変えるわよ?」

 

正直、あの言い方にはイラッときた。コイツは私に勝てると本気で思っているのか?この際だから死なない程度の力で全身変形させてやろうか?

 

「オラはな、勝てなくても良いから姉ちゃんみたいな強ぇヤツと闘いてぇんだ」

 

「勝てなくても良いから?何でよ、やるからには貪欲に勝利を求めなさいよ。それが普通でしょ?」

 

負けたら悪かったところを直してもう一度。そういう考えなのだろう。私だってドルアイ星にいたときに通った道だ。

 

「まぁ、アンタの言いたいことは何となく分かるわ。ただ、同じことが何回も続くと心は折れそうになるわよ?それこそ違う何かを見つけないと」

 

何百、何千回と負けた私は自暴自棄になって部屋に引きこもった。戦闘力ばかり上がる自分に嫌気が差したんだ。

 

その中で動画サイトに上げられていたダンス動画、通称『踊ってみた』シリーズを見ているうちに私は思った。一旦、歌は止めてダンスをやってみよう、と。

 

周りの皆に見られない様にレッスン場で何ヵ月もダンスに没頭していた。結果、宇宙1のダンスバトルに出て優勝も出来たし、スッキリできたことで自分への嫌気も無くなった。

 

「…ちっ、アンタが変な事言うから昔のこと思い出しちゃったじゃない」

 

「姉ちゃんも大変だったんか?」

 

「当たり前でしょ?何も苦労したことない人なんて存在しないわ。お話はコレでお仕舞い。さっさと続きを始めましょうか」

 

何もアクションが無いと見ている観客にも飽きが来るだろうし、私自身いつボロが出ても可笑しくないほど昔のことを思い出しているし饒舌になっている。

 

「さっきは避けられちゃったからね。もっとスピード上げていくわよ」

 

ジャッキー爺さんを倒したとき以上の早さで攻め始めると悟空は凌ぎきれず少しずつだが私の攻撃が当たり始めた。

 

「じゃん拳!グー!」

 

「そんな馬鹿正直な攻撃は意味無いわ」

 

突き出してきた拳を右手で掴んだまま、がら空きの腹に膝を叩き込む。そのまま浮いた体に左手を叩き付ける。

 

「ぐはっ」

 

「そろそろ諦めてくれかしら?ただ『参った』その一言で良いんだけど?」

 

「いやだ。オラは諦めねぇ」

 

「はぁ、強情ね。アタシが負けでも良いんだけど…。アタシ負けず嫌いなのよね」

 

仕方ない。もう少し悟空をサンドバッグにして待つとしよう。

 

「くそ!じゃん拳!」

 

「無駄だと言ってるじゃない」

 

「グー!」

 

突き出された左手(・・)を左手で掴み、右手を殴るために振りかぶった。

 

待て、左手?悟空はさっき右手(・・)で殴ってこなかったか?

 

「よし、掛かった!チョキ!」

 

そんな声と共に悟空は右手(・・)をチョキにして繰り出してきた。気がついたときには遅かったわけで

 

ドスッ

「アァー!イッタイメガァー!」

 

しっかりグッサリ私の目に悟空の指が刺さった。

 

 




ただ、あの台詞を使いたかった。ソレだけです。


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6曲目

リングの上は決勝戦とは思えないほどグダグダしていた。孫くんはエリザから受けたダメージでボロボロでフラフラしているし、エリザは目を押さえたままゴロゴロとリング上で転がったり蹲っている。

 

「何とも締まらない決勝戦ねぇ…。孫くーん、今のうちにエリザをリングの外へ押し出しちゃいなさーい!」

 

とりあえず今のところ有利そうな孫くんへ声援を送る。何となくだけど今のうちに決めないと孫くんが勝てるビジョンが思い浮かばなかった。

 

「イヤだ!オラはちゃんと決着をつけてぇ!」

 

予想はしていたけれど予想通りの言葉が返ってきた。これだから格闘家って連中は…!

 

「ぐぉぉぉぉ…。や、やっと痛みが引いたわ…」

 

フラフラヨロヨロとエリザが立ち上がった。服の内側からハンカチを取り出して目元を拭っていたけど、泣くほど痛かったのかしら?

 

「随分と危険な攻撃してくれるわね?体は丈夫でも目は丈夫じゃないのよ?」

 

ここから見ても分かるくらいエリザは怒っている。米神に青筋がビキビキと何本も浮かんでいるのだから相当怒っているんだろう。

 

「決めたわ。アンタはアタシのサンドバッグになって飽きるまでアタシに殴られ続けなさい。飽きたら外に放り投げてあげるから!」

 

そして飛び出したエリザの拳が孫くんの腹へと突き刺さる。しかし吹き飛ぶより先にエリザが孫くんの右手を掴み引き寄せながら膝を叩き込む。

 

そこからは一方的だった。吹き飛ぶことも倒れることも許されない孫くんは文字通り『エリザのサンドバッグ』と化していた。

 

「どうかしら?そろそろアタシの手も疲れてきたんだけど?」

 

「まだ、まだ」

 

「あっそ」

 

右手で首を掴んで持ち上げていたエリザは未だに『参った』と言わない孫くんに対して簡素に冷たく言うと左手でパンチを腹へと何度も叩き込み始めた。

 

『エリちゃん滅茶苦茶キレてんじゃん…』

 

『俺さ最初は怖かったけど、なんかああいうエリちゃんもアリかなぁ~って思えてきたわ』

 

『格闘系アイドルか…。新時代到来か?』

 

色々な憶測が飛び交っているが、私としては違うことが心配になってきた。

 

━━日暮れて来たんだけど何時終わるんだろう?

 

 

腹に拳がめり込む度、悟空は苦痛に顔を歪める。とりあえず悟空の防御力を少し上回る程度の威力で殴り続けているため防ぎきることは出来ない。

 

「まだダメかしら?」

 

この返答によっては責め型を変えようと思う。半ば返ってくる答えは分かっているけれど聞いてあげないとね。

 

「まだ、まだ」

 

実はその言葉以外知らないとかって言うオチにはならないわよね?

 

「そう。ならこういうのはどうかしら?」

 

左手で悟空の顔を掴み圧迫していく。俗に言う『アイアン・クロー』と呼ばれる技である。私の場合、完全には悟空の頭を掴みきれていないけれど余りあるパワーでカバーする。

 

「ほらほら、ドンドン絞まるわよ?」

 

ギチギチギチ…

「ぎ、あ、ぐぅ」

 

「早く敗けを認めてもらえないかしら?今夜は『満月』らしいからプロデューサーと社長の2人と一緒に月見酒飲む予定なのよ」

 

「満…月?」

 

呻き声しか出していなかった悟空が『満月』という言葉に反応した。何だ?満月でも見たいのか?

 

「何?見たいの?運が良いじゃない。雲も無いし暮れてきたから、よく見えるわよ?」

 

左手のアイアン・クローを解除し、右手で後頭部を締め付けながら空が見えるように掲げてやる。

 

「ほら、真ん丸で綺麗でしょ?」

 

「エリザ!孫くんに満月を見せちゃダメ!」

 

「どういうこと?ブルマ?」

 

ビリビリビリ…

あれ?悟空の頭が大きくなった?掴み難いんだけど…。服も破けてきてるから大きくなってるのは間違いないはず。

 

「グゥ、オォォォォォ!」

 

「おっと」

 

大きくなりすぎて掴む力が弱くなった隙に私の腕へ悟空は手を伸ばし、今までとは比べ物に成らないほどの力で掴んできた。

 

「痛くはないけどウザったいわ、ね!」

 

ドンドン大きくなる悟空と悟空の握力。流石に掴んでいられる大きさの限界を越えたので放り投げる。

 

「グォォォォォ!」

 

「猿?」

 

悟空は全身を真っ黒の毛で覆い、巨大なチンパンジーのような姿になっていた。かなり大きい。舞台に収まるギリギリの大きさになっている。

 

「グオアァァァァ!」

 

悟空は会場の塀や像を破壊し始めた。ボロボロガラガラと残骸が辺りに降り注ぎ見ている観客も見学している選手達も大慌てで避難を始めた。

 

「おい!悟空!危ないだろ!」

 

「無理よ!あの状態の孫くんは暴走してるから言葉なんて通じないわ!」

 

「いぃ!?」

 

技じゃなくて暴走、ね。

 

「尻尾を切れば元に戻るわ!それか月をなんとか出来れば大丈夫よ!」

 

「あら?そんな簡単なので良いの?なら…尻尾ね。月はプロデューサーと社長の2人と月見酒をするから残しておかないとね」

 

まぁ、切るのではなく引き抜くというのが正しいのかもしれない。肩を回し、指を曲げるとパキパキと関節が鳴った。その様子を見ていたブルマやクリリンは少しずつだが顔を青ざめさせていく。

 

「エリザ?殺したりしないわよね?」

 

「ブルマはアタシを何だと思ってる訳?」

 

なんて心外なことを言うんだろう。ただ私は引き抜くために指と肩の運動をしただけだと言うのに…。

 

「とにかく五月蝿いし邪魔だからアンタは寝てなさい」

 

目の前で会場の1部を振り上げて私を狙っていた大猿悟空の足を蹴り払う。大声を上げながらゴロンと転がった悟空を見て会場の全員が目を見開いている。

 

「さーてと、尻尾を握って一気に…」

 

うわ、予定よりもずっと太い。これは両手で持ちきれるかしら? 最悪、腋で挟んで持てばいいか。…よし、握れた。いくわよ!

 

瞬間━━脳裏に浮かんだのは尻尾を引っ張った結果、世紀末な世界の拳法のごとく全身の骨がズルズルと抜けてくる様なビジョンが思い浮かんだ。

 

「…引き抜くのは止めて引きちぎりましょう」

 

そうしよう。力は有るんだから引き抜かなくても切断することは可能なハズだ。それこそ握り潰すように無理矢理切ることも出来るハズ。

 

「せーの、ふっ!」

 

ブチンッ

良い音を出しながら尻尾が千切れた。苦しそうな声を上げながら大猿悟空は少しずつ小さくなっていく。

 

「…これって待ってる間に場外に落とせば私の勝ちなんじゃないかしら?」

 

私の心の中で悪の部分が囁いてきた。確かに待ってる暇あるなら外に押し出してしまえば私の勝ちになる。

 

「…ちゃんと決着つけてあげたほうが私としては良いと思うけどなぁ…」

 

善の私は少し弱気ながらしっかりと決着を付けろと言ってくる。確かに押し出して勝ちましたってなると悟空は納得できず癇癪を起こしそうだ。

 

「「さぁ、どうする?私?」」

 

…どうしよう?

ここで私が押し出して勝ったとする。そうしたら悟空は納得がいかず再戦を申し出てくるだろう。

 

 

「今日も盛り上げていくわよ!」

 

『ウオオオオ!エリちゃーん!』

 

「エリザ!オラと勝負だ!」

 

そしてライブ会場は戦場と化した…。

 

 

…あり得そう。

うん。今回は善の意見を採用しよう。悪には悪いけどホントに乱入なんてされたらたまったものじゃない。

 

「孫選手、ダウンです!」

 

自分会議をしている内に元の大きさに戻った悟空が倒れており、カウントをとられ始めていた。

 

「う、うぅん…」

 

ギリギリカウント9で立ち上がった悟空はバランスを崩して転んだ。そこで会場が壊れていることや自分の尻尾が無くなった事に気付いたが、状況を理解できておらず周囲をキョロキョロ見回していた。

 

「立ち上がったわね?なら続き…と行きたいけれど服を何とかしなさい。全裸で戦うつもりかしら?」

 

服を着ていない事に気が付いた悟空はクリリンの胴着を借りるために控え室へ向かった。

 

「そっか。しっかりと決着をつけるんだね私?ま、私が決めたことだから止めはしないけどさ、多分結果は変わらないと思うよ?」

 

悪の私がそう言うって自身の予想を話し始めた。

 

「強いヤツと闘いたいってことは自分を倒すほどの強さを持っているヤツを見逃すハズ無いよね?という事はさ、どういうことか分かるよね私?悟空に勝った時点で狙われるのが確定してるんだよ?」

 

そう言われて考えてみるが、結局は善の意見も悪の意見も最終的には悟空に付きまとわれるのが未来的に確定しているんじゃないか?違いとしては卑怯な勝ちか堂々とした勝ちかの違いだけであって。

 

そうやって第2回自分会議を開催していると悟空が戻ってきた。再開の合図と共に私も悟空も飛び出し、右手を振りかぶる。

 

「ま、頑張りなさい私。それと御愁傷様」

 

応援してくれた悪の私は一言多かったけど、とても良い笑顔で手を振っていた。



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7曲目

前話から時間が飛びました。
今話では新しく2人出てきます。


「それじゃゲリラしながら探してみるわ。基準はアタシが勝手に決めて良いのよね?」

 

「あぁ、それで良いよ。ただライブのほうに集中してくれよ?探すのはついでで構わないから」

 

無事に天下一武道会で優勝した私は50万ゼニーを手にし、プロデューサーと社長に手渡した。工事費用を支払うことができたので無事に私達の事務所は雑居ビルから引っ越すことができ大きくなった。そして現在は目的である新人探しの真っ最中。

 

とは言えどメインは社長とプロデューサーであり私はライブの暇な時間に気になる娘を探す程度で良いと言われている。

 

「PCを開いてっと。えーと『今日のゲリラはいつもの場所よ。時間は…決めてないわ。だってゲリラだもの』っと。さて何人来るかしらね」

 

何人か目ぼしい娘は見つけているのだがプロデューサー曰く他の事務所に所属していて引き込めないらしい。残念ではあったが成果もあった。先週、ゲリラライブの帰り道にラーメンを啜っている銀髪の背中を見つけた。恐らくだが『四条貴音』だと思う。

 

この世界にも765プロに所属しているアイドルがいるということが分かった。また961プロダクションがあることも判明しているので『我那覇響』、『星井美希』、『四条貴音』の3人を何としてでも先にコチラへ引き込みたい。

 

「あれ?エリザさんは行かないんですか?」

 

おっと、思い耽っていると事務員の2人が来たようだ。

 

「何よ、小鳥は私がいると不都合な訳?」

 

「ピヨッ!?いえいえいえ、そういう事ではないですよ!?私は何も言ってませんよね、ちひろさん!?」

 

「うーん、言っていたような言っていないような、あんまり覚えてないですね~」

 

「後でドリンク買うわよ?」

 

「言ってました(即答)」

 

この掌を返す早さよ…。

 

今、私が話をしている2人は『THE IDOLM@STER』お馴染みの音無小鳥とMobageのシンデレラガールズに登場する『鬼・悪魔・ちひろ』で有名な千川ちひろである。

 

事務所の拡大工事を終え、私がライブで走り回っている間に社長が雇用してきたらしい。小鳥さんもちひろさんもアニメやゲームのようなお姉さんみたいな雰囲気で話しやすい感じの人だ。

 

やはりと言うべきか、ちひろさんの販売しているドリンクは『ちヒロポン』と呼ばれ、怪しい効能があるとか強制解放剤などと言われている。実際、飲むと疲れも何もかもが吹き飛び、無性に働きたくなる衝動に刈られてしまう。

 

「エリザさんが居なくならないと取っておいた限定ケーキが食べられないとか嘆いてました」

 

「ちひろさーん!?」

 

「へぇ~、限定ケーキねぇ?人にはスタイルがとか煩いくせに自分はケーキを食べるの小鳥?」

 

ぐいっと詰め寄りながら尋ねると小鳥は冷や汗をダラダラ流し、キョロキョロと目を泳がせまくっていた。

 

「ほら、私は事務員ですし?2×歳ですからアイドル的には無理がありますし?なら食べちゃっても問題ないかなぁ~って思っちゃったわけですよ」

 

「先週も食べてましたよ?」

 

「ちひろさん!?」

 

ドリンクを買う本数さえ増やせば、ちひろさんは基本的に真実を教えてくれる。そのスタンスのせいか前いた職場では『守銭奴』『運営の犬』などと不名誉な扱いを受けていたらしい。

 

私としては払った対価に見あったような事を教えてくれるし、希にどうやって調べたのか聞きたくなるような内容の時もある。

 

例えば前々から頼んでいた『星井美希』と『菊地真』の所在を掴んだらしく教えてくれた。ドリンク10本セットで。2人が何処にいたのかというと━━━

 

「ゲリラも大事ですけど3ヶ月後のライブはもっと大事ですからね?相手は『レッドリボン軍』。色々な意味で有名なんですから」

 

「分かってるわよ」

 

そう。2人はレッドリボン軍に所属していた。しかも星井美希に関しては『ゴールド将軍』なんて呼び名で呼ばれているようで菊地真はその護衛になっているようだ。

 

「それよりも当日はちゃんと来るんでしょうね?」

 

「確認したところ面倒臭がりのゴールド将軍は珍しくノリ気だそうですし、当日が待ち遠しくてソワソワしてるという話でした。また護衛の菊地真も楽しみにしているようです」

 

よし、まずは第1関門突破だ。問題は当日の引き抜きの方法か。ライブを見て感じてもらい、気に入ってくれたら美希なら直ぐに首を縦に振ってくれるかもしれない。最悪レッドリボンを悟空が壊滅させたタイミングで美希と真を引き込む。

 

「楽しみにしてくれてるのね?なら中途半端な結果は出せないわね」

 

「勿論です。そのための前練習として今日のゲリラがあるんですからね。何か新しいパフォーマンスを思い付いたら終わり次第教えてくださいね?」

 

「任せなさい!」

 

何としてでも美希と真を引き込んで見せるんだから!

 

 

レッドリボン軍でのライブまで残り2ヶ月。会場はレッドリボン軍本部ということで、下見に来たのだがかなりの広さがある。観客席やステージは向こうで組んでくれるらしいので私たちは当日の仕掛けを事前に提出するだけの簡単な準備で済んだ。

 

今回は社長とプロデューサー、そして私の3人で下見を兼ねた打ち合わせに来た。私が着いてきたのは会場設営の担当が美希と真だからなのだが。

 

「広いわねぇ~。ドーム何個分かしらね?」

 

「何でも此処は軍事演習場って言ってたからな。車両やヘリも動くから相当広いだろ」

 

「レッド総帥の話だとゴールド将軍が執拗に頼み込んで来たという話だよ。あれだけの熱意を見せたのは初めてだって驚いていたな」

 

そんなに美希は期待してくれてるのか。やっぱり中途半端なデキでは見せられないな。しっかり下見してシュミレーションしておかないと。

 

「あー!本物のエリザなのー!」

 

「ちょっと、将軍!?」

 

パタパタとコチラへ駆け寄ってきたのは真っ黒の軍服と軍帽に金色の髪を靡かせた美少女だった。服の上からでも分かる驚異のプロポーションが羨ましい。

 

そう。私が此処に来た目的でもある『星井美希』が目の前にやって来たのだ。ちひろさんからの情報とはいえ少し疑っていたが本当にレッドリボン軍にいるとは思わなかった。

 

「ちょっと、将軍!まだ作業中なんですから持ち場を勝手に離れないでくださいよ!」

 

「むー、真クンは真面目すぎるの!それに何時もみたいに美希って読んで欲しいの!」

 

「今は仕事中なんだから無理だよ!そう言うのは休みの日とかじゃないと」

 

美希を追い掛けて走ってきたのは同じく真っ黒の軍服と軍帽を被った黒髪の女の子。ボーイッシュさから男の子と間違われてしまうだろう彼女も今日来た目的である『菊地真』だ。

 

「すいません、将軍が勝手に…」

 

「気にしなくて良いわ。私も貴女達2人に興味があったんだしね」

 

「僕たちにですか?」

 

ここいらで軽く聞いてみて感触を確かめてみようと思う。少しでも可能性があると良いんだけど。

 

「ええ。2人ともアイドルに興味ないかしら?あぁ、ライブを見に行くとかって意味じゃなくてよ?どちらかと言ったらライブをする側ね」

 

「ライブをする側って言うと…」

 

「率直に聞くわ。アイドルやってみない?」

 

「「ええ!?」」

 

2人とも驚いてはいるけど美希は目をキラキラさせて、真は想定外でしたと言わんばかりに目を見開いて驚いている。

 

「むむむ無理ですよ!そんないきなり言われても!ね、ねぇ?美希?」

 

「それってそれって、美希もエリザみたいに歌って踊れるってことなの!?」

 

「ええ!?スゴい乗り気だし!?でも軍の仕事もあるんだよ!?両方こなすのは幾らなんでも無理があるって!」

 

何とかして美希を止めようと真は必死に説得を試みているけれど美希は止まる気配が全く無い。逆に真を引きずり込もうと説得を始めた。

 

「誘った本人が言うのも何だけど、そんなに即決しなくても良いのよ?他にやりたいことが在るならソッチを優先して貰っても良いし。答えは本番後にでも聞くとして、少し考えてみてね?」

 

ソレだけを伝えて私は2人と別れ、会場の設備を見に中へ向かった。

 

 

「むぅ、美希は本気なのに…」

 

「美希、エリザさんが言ってたように即決はダメだよ。まだドラゴンボールを探す任務もあるんだし」

 

「美希達はもう2個も見つけてるの。他の連中のところは0個なんだから美希達頑張りすぎなの。訓練するにも皆弱すぎて美希は真くんとしか出来ないし。正直、レッドリボン軍に飽きてきたの」

 

「飽きたって…。でも、まさか美希だけじゃなくて僕も声を掛けられるなんて思わなかったなぁ~」

 

「いっそ、真くんも美希と一緒にエリザの誘いに乗るの!」

 

「美希は行きたければ辞めれば良いのかもしれないけどさ、僕は傭兵だからね。総帥と傭兵団の上司にも話を通さないといけないから手間と時間がスゴい掛かるんだよ」

 

「ならライブが終わった後に『ボク、アイドルになりたいんです』って上司の人に相談するの!美希も一緒に着いていってあげるから!」

 

「…僕も連れていかれるのは決まってるんだね」

 

 

 

 

 

 



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8曲目

お久しぶりでございます。
色々やってたら遅くなりました!
いつも通り誤字脱字あると思いますが見つけたら教えて下さい


「うー、緊張してきたわ…」

 

ライブの当日になり、準備万端のはずなのに不安が胸中を駆け巡る。こんなに緊張したのは始めてかもしれない。

 

「大丈夫ですよ。プロデューサーも社長も言ってたじゃないですか。『無理しないようにね』って。それに付き添いですけど私もいますから」

 

運転しながらルームミラーでコチラを見て小鳥さんは笑いかけてくれた。私の緊張を解すためにエールを贈ってくれる小鳥さんはホントに天使だ。ちひろさんとは大違い。

 

「大丈夫よ、無理はしないし小鳥に頼るような状況も起きないわ。アタシ自身の限界はアタシがよく分かってるわ」

 

それにライブもだけど、その後に控えているのは美希と真の軍脱退とアイドル加入の説得があるんだ。無理しすぎて動けませんなんて事には絶対させない。

 

「あ、見えてきましたよ。ってアレ?なんか煙上がってないですか?」

 

小鳥さんが不思議そうに言っているので窓から身を乗り出して外を見てみると確かに峠の先に見えるレッドリボン軍の本部から煙が出ている。ボヤか?

 

「小鳥!とにかく急いで向かって!原因はともかく、真と美希が心配だわ!」

 

「は、はい!それじゃ飛ばしますからしっかりと捕まっててくださいね!」

 

ガコガコッと今時珍しいマニュアル車のギアを巧みにチェンジさせながら私達の乗る車はドンドン速度を上げていく。

 

「何でこういう時に限って車が多いんですかね~」

 

苦笑いを浮かべているだろう小鳥さんはスイスイ追い抜きながら愚痴る。なおも速度を上げていく車と追い抜くため左右に振られて私は酔い始めていた。

 

「こ、小鳥…。少し揺らすの止めて。吐く…」

 

「…狙い目はこの先のカーブ」

 

ボソリと呟いた小鳥さんは別人のような顔で人差し指でハンドルをトントン叩いてリズムをとっていた。気がつけばドリンクホルダーには水の入った紙コップが置かれている。

 

「こ、小鳥…?」

 

ガコガコ

 

全くもってコチラの言葉に反応を示してくれない。吐きそうなのを堪えながら前を見ると『急カーブ注意』と書かれた看板が目に入った。

 

「ちょっ、小鳥!急カーブ注意って!」

 

「ここだ」

 

そう言うと小鳥さんは右側にある側溝へと突っ込み、そのままスピードを落とさずにカーブを曲がった。対向車が何故か一台もいなかったので事故にはならなかったけど、私の体は限界を突破した。

 

「マジで吐k」

 

 

「あー、酷い目に遭ったわ…」

 

「でも着くまでに時間かかりませんでしたよ?」

 

レッドリボン軍の本部前で死にそうになっている私に水の入ったペットボトルを渡しながら悪びれもせず小鳥さんが答える。

 

「ふー、落ち着いたし入りましょうか」

 

今もドカンバコンと破壊音が鳴り響いている本部へ向かうため入り口の門にICカードをかざした。

 

『確認』

ガチャ

 

解錠音はしたけれど門が一向に開く気配がない。もう一度かざしても確認音と解錠音がしただけで、やはり開く様子は見受けられない。

 

「…勝手に開けて良いわよね?」

 

両側にスライドする自動ドアタイプなので合わせ目の部分に両手を差し込み、無理矢理左右にこじ開ける。

 

「あ、小鳥の車も入れないといけないわね」

 

門を全開にして小鳥さんの車を招き入れる。出るときに門が閉まっていたら面倒なので門の下半分を引きちぎって脇へと避けておく。

 

「うわ、エリザさん無茶苦茶しますね…。後で怒られても知りませんよ?」

 

「それは開かない門に言って欲しいわね。アタシはカードを翳したし、ロックの解錠音も聞いたもの」

 

そう。私は悪くない。開かない門とソレを設置したレッドリボン軍が悪いんだ。

 

「何があるか分からないから小鳥はアタシの側から離れちゃダメよ?ちゃんと守ってあげるからね」

 

ファンと事務所メンバーは文字通り命に変えてでも守り通す。他の人?知りませんね、自力で何とかしてください。

 

「うわぁ…。スゴい音ですねぇ。近くまで来たら余計激しくなりましたよ?」

 

今も鳴り響いている破壊音はどうやら建物内を動き回っているようで手前だったり奥だったりで場所が特定できない。

 

たまに爆発があるので、そのときは大体何処にいるのかが分かる。

 

ボコォン!

「グヘ」

 

警戒しながら歩いていると数メートル先の壁をぶち破って誰かが吹き飛んできた。敵かもしれないので咄嗟に小鳥さんの前に出る。

 

「いちちち、なんつー強さだ」

 

砂ぼこりの中、立ち上がった声に聞き覚えがあった。確か天下一武道会で聞いた覚えが…。

 

「もしかして悟空?」

 

「ん?あー!エリザじゃねぇか!おめぇ、こんなとこで何してんだ?」

 

「何って仕事よ仕事。はぁー、ドカンバコン五月蝿い原因がアンタとはねぇ~。でこんなとこで何してんのよ?」

 

『見て見て真くん、あの子立ち上がってるの!』

 

『えぇ!?ボクと美希の攻撃受けて立ち上がれるなんて普通じゃないよ!?』

 

悟空との話をしていると壁に開いた穴から2人組の声が聞こえてきた。普通に聞こえたけどこの世界の美希と真は人外枠なのかな?

 

「あれ?エリザなのー!」

 

「エリザベートさん、危ないですから下がっててください!」

 

コチラに気付いた美希は腕が飛ぶんじゃないかと思うくらいブンブン手を振り、真は私と小鳥さんを自らの背後に立たせた。

 

王子様マジイケメン。

 

「それにしてもどうやって入ってきたんですか?門は電子ロックが外れても入れないようにしたハズなのに…」

 

(やっぱり無理矢理入ったのはダメだったみたいですよ?エリザさん?)

 

(うっさいわよ小鳥!黙ってなさい!)

 

構え直した悟空と美希と真。悟空の頭や体から血が流れ出ていることに私は今気付いた。それに対して2人はまだまだ余裕があるみたいなので、かなり強いのが分かる。現時点での人類最強はこの2人なのかもしれない。

 

ピピピピ

 

今まさに戦闘が始まる、といった所で小鳥さんの携帯が鳴り響く。ワタワタしながら携帯を取り出す小鳥さんをジト目で見ると、ウインクして舌を出して自分の頭をコツンと叩いて『テヘペロ☆』をしていた。…後で泣かす。

 

「ちょっと失礼しますね。あ、私に構わず続きをどうぞ~。アハハ」

 

場の空気に耐えられず小鳥さんはコソコソと離れていった。悟空は改めて構え直し、真はその場で2度3度飛びながら気持ちを入れ直している。美希は萎えたのか欠伸をして背伸びをしていた。

 

(エリザさーん、社長がライブ中止だから帰ってくるように。だそうです)

 

「はぁ?なんでよ!」

 

「ちょっ、五月蝿いですって!」

 

話によるとレッドリボン軍のトップである『レッド総帥』がNo.2で腹心の『ブラック将軍』によって殺されたらしい。なんでもドラゴンボールを使って叶えたいレッド総帥の願いがブラック将軍にとって実に下らなく失望したので殺し、自分がトップになったらしい。

 

「それがライブ中止とどう関係あるのよ」

 

「はい。全部ちひろさん情報らしいですけど、ブラック将軍は私達を好ましく思っていない筆頭らしく、この機に消してしまおうと画策していたらしいです」

 

へー、消してしまおう…ね。レッドリボン軍程度では私を消すことなんか叶わないけれど、私は恐怖したことがある。

 

ちひろさんの情報網おかしくね?

 

「それは後で聞いてみるとして…。らしいけど美希と真はどうするの?」

 

「そ、そんなレッド総帥が…死んだ?ブラック将軍がどうして…」

 

「えー、総帥死んじゃったのー?」

 

真は呆然と美希は友達がフラれたみたいな感じで言葉を発した。

 

「なら美希はレッドリボン軍辞めるのー。レッド総帥には色々、お世話になったけどブラック将軍には何もされてないから義理なんて無いのー」

 

「ぼ、ボクも辞めたいけど勝手に決められないからなぁ…。丁度いいから聞いてみようかな…」

 

そう言うと悟空を放置したまま真は電話を掛け始めた。ポカーンとした顔で美希と真とついでに私を悟空は見ている。目の前で起きている光景に理解が追い付いていないようだ。

 

「あ、もしもし。真です。はい、レッドリボン軍の事なんですけど。…はい。それでエリザベートさんからアイドルをやらないか?って誘われてまして。…はい。はい?え、いや、あの、えぇ~」

 

なんかよく分からないけど話が終わったようで何とも言えない微妙な顔をした真が帰って来た。

 

「真クンどうだったの?」

 

「あ、うん。エリザベートさん、これからお世話になります」

 

そう言って深々と頭を下げられた。上司に私の名前を言うと765プロ所属のアイドルで合っているか確認をされ、そうだと答えると即答でアイドルをやるように命じられたという。ブツブツと『千川ちひろめ…』と呟いていたらしいが、またちひろさんか…。

 

「それじゃ、美希も真もアイドルに転職するってことで良いのね?」

 

「はいなのー」

 

「はい。お願いします!」

 

「うん。良い返事ね!そう言うことだから悟空。アタシ達の事はスルーしてくれて良いわよ?今からアタシと小鳥は2人を事務所に連れていくから」

 

未だにポカーンとしている悟空に帰ることを伝え、車へと2人を案内する。

 

「あ、ブラック将軍は変なロボットみたいなのに乗るから気を付けた方が良いのー」

 

美希がアドバイスを伝えて「頑張ってねー」と手を振ると悟空は「お、おう」と歯切れの悪い返答を寄越した。

 

「それじゃ、帰るわよ小鳥!帰りは急がなくて良いから普通に走ってね?」

 

「はーい、分かりましたー」

 

本部の入り口を通るとき、引きちぎった門が見えた時に「あ、そういうこと」と真が小さく呟いたのが聞こえた。



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短い9話

下書き何処置いたっけなぁ…

あ、マネージャー出ます


あのあとレッドリボン軍は壊滅したらしい。そうニュースでも新聞でも取り上げられていた。何が原因なのかは不明ということになっている。

一説では武器庫の爆発とか、兵器の暴発などと言われているようだけど、十中八九悟空が原因なのだろう。

 

「どーでも良いけどね。仕事があれば仕事相手だから気にしたけど、アタシ達を消そうとした時点で興味失せちゃったわ」

 

それよりも問題は━━

 

「どうしましたエリザベート?私の顔に何か着いていますか?」

 

目の前で2台のPCを使って書類の処理と作成を同時に行っているアルキメデス(マネージャー)の存在である。

 

「何でもないわ。楽しそうに仕事するなぁ~って見てただけよ」

 

先日のレッドリボン軍に行った帰りの時に小鳥さんへ「マネージャーが欲しいわ」と冗談混じりで言うと笑いながら「それじゃ、社長に頼んでみますね」と返された。

 

ソレからは美希と真を事務所に迎え入れ、手続きやら何やらして忙しく過ごしていたある日。

 

 

「エリザベート君。君の頼みを叶えてくれる素晴らしい人物を連れてきたぞ!」

 

と社長が1人の男を連れて事務所へとやって来た。それが目の前にいるアルキメデスだった。望みとは何ぞや?と首を傾げて5秒ほど記憶を漁ってマネージャーの件を思い出した。

 

「えーと、マネージャー候補って認識であってますか?」

 

その通りだ、と物凄く有能なんだ、とアルキメデスの才能をべた褒めしまくる社長を一瞥し、私はアルキメデスの全身を見回した。

 

(コイツはどっちだ?遊星の尖兵なのか、普通のサーヴァントか?それとも一般人か?)

 

アルキメデスのスゴいところを未だに喋っている社長を他所に私はアルキメデスを個室に引きずり込んだ。

 

「やれやれ、随分乱暴ですねエリザベート」

 

「アンタはどっち?遊星の尖兵?サーヴァント?それとも一般人かしら?」

 

隠し事は許さないと思いっきりアルキメデスを睨み付けてやるがアルキメデスは苦笑いしていた。

 

「あぁ、大丈夫ですよ。遊星の尖兵だった月の記憶はありますけど今の私は侵食も何も受けていませんから」

 

そう言って腕を巻くって見せてきた。確かに遊星の侵食による異常は見受けられない。

 

「それと記憶はありますが私は一般人ですよ。超能力という分類で宝具が存在していますがね」

 

納得していただけましたか?と肩を竦めながら聞いてきたが信じきることができない。コイツは他人を平気で道具扱いするし利用価値が無くなれば簡単に捨てるようなヤツだ。

 

「信用できると思ってる?」

 

「ま、そう言うでしょうね。信用しろと言うのが無理な話でしょうから」

 

やれやれと態とらしく首を振る姿を見ていると、コイツがサーヴァントだろうが一般人だろうが関係なく叩き潰したくなってしまう。

 

「…良いわ。1ヶ月間アタシのマネージャーとして働かせてあげる。その間に変なことでもしてみなさい。問答無用で外に放り出すわ」

 

 

と言って1ヶ月間の仕事ぶりを観察していたわけだが…。

コイツ、優秀すぎないか?

 

「よしっと。エリザベート、現段階のですが2ヶ月先までの予定が立ちましたので確認しておいてください」

 

「え、えぇ分かったわ」

 

「それでは私はこの後、プロデューサーと小鳥さん、ちひろさんとの打ち合わせがありますので」

 

そう言って部屋を出ていく後ろ姿は完璧なマネージャーだった。

 

「…敵意は無いってことで良いのかしら?」

 

あんなアルキメデスを見ていると正直、警戒していた自分が馬鹿に思えてきた。仕事は早いし私や美希、真の様子を適時確認して計画を立ててくれるから身体的負担はかなり小さい。

 

「うーん、分っかんないわ!モヤモヤするし体動かして切り替えよ!」

 

 



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10曲目

「わーお!もろに入ったわね」

 

3年が経って天海晴香を含め事務所に4人増えた。(天海晴香、如月千早、双海姉妹)そして前回の天下一武道会が影響したのか私にアチコチの武道会から特別ゲストとしてのオファーが来るようになった。

 

「太陽拳!」

 

「うぇ!?まっぶし!」

 

今回の天下一武道会には悟空を含めてクリリンとか顔見知りが何人か混ざっている。その中でも3つ目の天津飯と超能力を使う餃子が興味深い。

天津飯はかなり強い。悟空がどのくらい成長したかは分からないけど勝てるか不明だ。ところで3つ目の人間って地球人なのだろうか?

 

「あ、目が治ってきたわね。全く何だってのよ」

 

実況解説として呼ばれてきたのは良いけれどピカピカ光られると状況が分からなくて実況も解説も出来ない。

 

「あー!ジャッキー選手の後頭部に強烈な膝蹴りが!」

 

ついついテンションが上がりすぎて叫んでしまった。あれは武天老師でも死ぬんじゃないか?かなりキツイのが入ったと思うぞ?

 

「いや、立ち上がった!頭もちゃんと形状を留めてます!」

 

完全にサングラスのアナウンサーからマイクを引ったくって私は試合に集中していた。ここからが本番だと思って見ていたらあろうことか武天老師はリングから飛び降りた。

 

「え?何してんの?ちょっと最後までやりあいなさいよ!」

 

「ぐおっ!?」

 

ついつい手元のペットボトルを武天老師の頭に投げつけてしまった。パコーン、と軽快な音と共に場外へ降りた武天老師を地に叩きつけた。

 

「あ、やり過ぎたかも…。担架で早く運んで!はい次々!」

 

試合は進んでいく。途中、悟空対クリリンのような見所ある試合もあったけれど「クリリン成長したなぁ~」程度の感想しか思い浮かばなかった。

 

あれよあれよと決勝戦。天津飯と悟空の戦いは白熱していた。途中、鶴が餃子を使って妨害したりしていたが今までで一番見応えのある試合になっていた。

 

「絶対に避けろ!」

 

そう言って天津飯は空高く飛び上がり、狙いを定めている。両手に大量の気が集まっていき、大技を繰り出すのが一目で分かる。

 

「気功砲ー!」

 

ゴッ!と音と共に目の前が見えないほど光で満ちたと思えば、舞台がキレイに無くなっていた。

 

「そ、孫選手は?」

 

隣でサングラスのアナウンサーが疑問の声をあげた。どうやら悟空がジャンプしたのが見えなかった(気付かなかった?)らしい。

 

「上よ、上。思いっきりジャンプしたみたいだから、かなり高いところまで跳んだんじゃないかしら?」

 

そんな話をしていると空中ではクライマックスへ入っていた。身を翻した悟空がかめはめ波を推進力にジェット機みたく天津飯へ体当たりをしていた。

 

「確認に向かいます!」

 

アナウンサーが大急ぎでフライボードに乗って飛んでいく。どうやら悟空が運悪く走っていた車にぶつかったらしい。

 

『優勝は天津飯選手です!』

 

無事閉会ね。周りの片付けも済んじゃったし、あとはプロデューサーでも待ってようかしら?

 

「━━ァァァァ!」

 

「悲鳴?」

 

何かが起きたらしい。やっぱり悟空が絡むと平穏が無くなるのね…。

 

「どうしたの?」

 

キンキンに冷えたヌカコーラクアンタムを飲みながら人が集まっているところに顔を出した。

 

「ちきしょう!」

 

「待たんか、悟空!」

 

よく分からないが悟空が激オコで筋斗雲に乗って何処かへ飛んでいった。

 

「魔?」

 

亀仙人が持っている紙には○の中に『魔』の一文字が書かれていた。ワナワナ震えているし、「そんな馬鹿な」と言ってるところから相手に心当たりがあるんだろう。

 

「おーい、エリザー!」

 

プロデューサーが迎えに来たらしく手を振りながらコチラへと歩いてくる。気にはなるけど覚えていないってことは気にするまでも無いことなんだろう。

 

「ハァイ、プロデューサー。遅いわよ待ちくたびれたわ」

 

「すまない。予想以上に道が混んでて車を停めるのにも一苦労だったんだ」

 

苦笑しながら謝るプロデューサーの背中を見ながら車へと向かっていく。

 

「あ、思い出した。ピッコロ大魔王だ」

 

 

『本日、ナムさんが何者かに殺害されているのを近隣の住人の方が発見しました。警察が周辺に聞き込みをしていますが目撃情報は未だ出ていません』

 

「また殺人事件か…。それにこの人、天下一武道会に出てた人じゃないか?」

 

「あー、そういえばアタシが参加したときにいたわね」

 

今日は次の仕事に関する打ち合わせという事で事務所にプロデューサーと待機している。他のメンバーは出来る男『アルキメデス』と社長が付いて営業に出ている。

 

「武道家ばかり狙った殺人ってのも変わってるなぁ。もしかしたらエリザも狙われてるかもな」

 

「あのね、子犬?冗談でもそーいうことは言わないの。分かる?」

 

「あ、あぁ。そうだな」

 

ボカーン!

「エリザベート・バートリーとかいうヤツがいるはずだ!出てこい!」

 

突然の破壊音と振動が事務所を襲った。ラックからは資料や本がドサドサと落ち、社長のデスクからは書類の山が崩れ落ちた。

 

「子犬が変なこと言うから現実になったじゃない!」

 

「ど、どうするんだエリザ!」

 

慌てるプロデューサーを見ながら考える。とりあえず目的は私らしいし、事務所から引き離したところで用件を聞けば良いよね?話を聞かなそうでも物理的に引き離せば事は足りるし。

 

「OK。アタシが話つけてくるからプロデューサーは本とか資料とか書類とか拾って元の場所に戻しておきなさい!」

 

そうと決まれば、レッツ話し合いよ!

 

 

「お、おのれぇ…。こんな小娘ごときに魔族である俺様がァァァァ!」

 

話し合いは即決裂したので強制的に街の郊外まで蹴り飛ばしたり引き摺ったりして移動させた。途中、騒がしかったので『誤って』腹を踏みつけたり、『間違って』地面にめり込むくらい叩き付けたりしてしまったけれど、無事に移動できた。

 

「それで?アタシへの用事って何?余り時間無いからサッサと話してちょうだい」

 

腕時計を確認すると30分も時間が経っていた。必要なもの確認することも終わってないのに時間のロスはかなり痛い。

 

「貴様ァ!聞け!俺様はピッコロ大魔王様が産み出した魔族!名をマ…」

 

「時間切れよ。サヨナラ」

 

全力の拳がマ某の上半身を打ち砕き、体を半回転させ遠心力を加えた尻尾の凪ぎ払いで下半身を消し飛ばす。地面が抉れ、木々が薙ぎ倒された跡には魔族がいた痕跡は1つも無かった。

 

「アタシは急いでるって言ったのに長々と話しようとするんじゃないわよ」

 

 



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11話

原作の時間も飛んで、プロットデータも飛びました。
大まかな内容は記憶してますので駄文を繰り広げながらストーリー進めていきます


『お久し振りですね、エリザベートさん』

 

「フリーザ様ですか?本当に久し振りですね。こうして電話越しですけど互いの声を聞くのは何年ぶりですかね?」

 

遂に全員が揃い、事務所の知名度も私のモチベーションも右肩上がりになってきた今日この頃。数十年前まで上司だった『宇宙の帝王』から電話が掛かってきた。

 

メモ帳を開いて予定と睨み合い、アイドル界に馴染みきった敏腕マネージャー「アルキメデス」から嫌がらせとも捉えられるほどの仕事を詰め込まれ、頭を悩めているところに衛生電話ならぬ銀河電話が掛かってきた。

 

『近い内にサイヤ人がそちらの地球に向かう手筈になっています。なんでも弟を連れてくるとか言っていました』

 

「サイヤ人ですか?野蛮で暴力的な種族だったと記憶してるんですけど?地球侵略でも始める気なんですか?」

 

地球にやってくるサイヤ人?…あぁ、ラディッツか。地球人に比べたら強いけれど、その昔戦ったフリーザに比べたらゴミ同然だな。仕掛けてきたらサクッと片付けてしまうか。

 

「エリザベート、仕事はまだ終わっていませんよ。次の書類が立て込んでいるんですから早く処理をしてください」

 

ガシャンガシャンと音を発てながら書類を持ってくるのは赤い体に立派な角と長く太い尻尾、巨大な翼を持った私ソックリのロボット。

 

「アタシばっかりに持ってくんじゃないわよ!アンタがやりなさいよ!」

 

「私の権限で行える分は全て処理し終えました。残りはアイドルかプロデューサーが直接関わる物なので私では処理できないのです。そのくらいも分からないのですか?」

 

ドクター・ゲロが私の細胞を欲しがっていたので髪の毛と少し血を提供してあげた。セルに組み込んだところで、どうせドルアイ人の特性で即効で死ぬか歌って踊る戦いに興味のない兵器が産まれるかの2択になる。

 

そこから細胞データを渡してもリスクが発生しないので快く提供してあげた。数年待っていると完成したらしく事務所へと連れてきた。被せてあった布から角とか尻尾とか翼が見えてた時点で嫌な予感はしていたけれど中身はやっぱりと言うか『メイガス・エイジス・エリザベート・チャンネル』通称『メカエリチャン』だった。

 

「ならプロデューサーかマネージャーに振り分けなさいよ!なんで全部アタシに持ってくるわけ!?少しはオリジナルであるアタシを労りなさいよ!」

 

「今、事務所にいるのは私とエリザベートに小鳥、ちひろだけです。その2人も今、緊急の書類と戦っています。期限にまだ余裕があってアイドルに関わってくる書類を処理するのが出来るのは貴女だけなのです」

 

『…エリザベートさん?聞いていますか?』

 

しまった。フリーザ様と電話の最中だった…。

 

「ラディッツってサイヤ人が来る話ですよね?ちゃんと聞いていますよ」

 

『なら良いのですよ。基本的には関わらないのが良いと思いますが、もしも何かあったら貴女にお任せしますよ。消すも良し、手伝うも良しです』

 

ホッホッホと楽しそうに笑うフリーザ様の会話を右から左へ受け流していると、反対側の電話にも電話が来た。私はメカエリチャンに『電話出ろ』とジェスチャーで示した。

 

『そちらへ向かったサイヤ人には貴女の事を話しはしましたが真面目には聞いていませんでしたから間違いなく遭遇するとは思いますので、先に言っておきます。では、また』

 

ブツッと電話が切れた。サイヤ人襲来か…。となれば出来る限り悟空達のところに行かないように気を付けないといけないな。

 

 

「異様に高い戦闘力の元へ来たが、まさか女だとはな」

 

おかしい。電話が来てから2週間。事務所と仕事場の間を行き来する生活だったはずなのに、ラディッツが私のところへやって来た。

 

「戦闘力2002。この星にもこれ程の強さを持った者がいるとは思わなかったぞ」

 

スカウターか…。今のってあんなに小さいんだ…。私の星にあったのは家庭用プロジェクター並の大きさだったのに片眼鏡くらいの大きさしかない。

 

ピピピ…

「あ、プロデューサー?…何よアルキメデスなの?ま、どっちでも良いわ。目の前に厄介事が来てるから恐らく今日は遅れるか休むことになるわ。連絡は分かり次第、伝えるから安心してね」

 

物凄くアルキメデスに怒られた。要件だけ伝えて切ったけど、事務所に行ったら死ぬほど説教されるだろう皆から…。

 

「で?何の用かしら?何もないなら行って良いかしら?」

 

「カカロットの居場所を教えてくれんか?」

 

「…誰よソイツ」

 

カカロット=孫悟空なのは知っているけど、知っているなんて言ったら面倒くさい事になるのは分かりきっている。なら、知らぬ存ぜぬで誤魔化してやる!

…うん?私のアイドルイアーが異音を聞き取った。ゴオォォォと飛行音と共に何かが猛スピードでコチラへと近付いてきている。

 

「む?また高い戦闘力を持ったヤツがコチラへと近付いてきているな。戦闘力1703…だと?」

 

「エリザベート見付けましたよ。早く行きますよ遊んでいる暇は無いのですから」

 

貴様かアルキメデス。てか戦闘力高いなお前。どうやって…。あ、メカエリチャンに乗って飛んで来たのか。

 

「そちらの貴方。探し人なら他を当たってください。戦闘力が高い人に聞けば分かるような話なら他にもいるでしょう?それとも…」

 

アルキメデスが手を上に挙げると空間が歪み、巨大な天秤が出現した。

 

「命を懸けてでも私達から話を聞きますか?」

 

ナイスガイなスマイルではあるけれど声音は絶対零度のアルキメデスボイスにラディッツはビクッとビビりを見せた。

 

「ふっ。冗談ですよ。こんなところで騒ぎを起こしたくありませんし、私は戦闘向きではありませんからね。挑まれたら一溜まりもありませんよ」

 

天秤を消し、肩を竦めて『お手上げ』ポーズのアルキメデス。おどけたのかは知らないが張り詰めていた空気が少し軟化した気がする。

 

「さて、メカエリもう一仕事頑張ってくださいよ!」

 

「分かっていますとも、敏腕マネージャー」

 

ガシッと万力のような力を込めてメカエリチャンが私の体を背後からホールドした。彼女はゲロ曰く『成長する人造人間』だそうだ。

確かに、ちひろ・小鳥さんの事務員アイドル計画に加えられるほどアイドル候補生として、事務員として力を付けてきているし、私の細胞も影響してかボイトレやダンスレッスンによって戦闘力もグングン伸びている。

 

「ちょっと、痛いんだけど!?もっと優しくフェザータッチにしなさいよ!」

 

メカエリチャンの戦闘力は私に痛みを感じさせるほどの高さを持っている。この時点で地球上2番目に強いヤツがきまった。

 

「いいえ、離しません。このまま事務所まで連行します」

 

騒ぐ私を完全にスルーしてメカエリチャンは再び飛び上がった。

 

 

「エリザさん!1年後にサイヤ人が来襲するみたいなんだ!力を貸してくれ!」

 

2徹してボロボロの体を事務所のソファーに沈めている私の元へ飛び込んできたクリリンとヤムチャにブルマだった。

 

「分かったから少し寝かせて…」

 

 



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12曲目

━━精神と時の部屋

それは神様の神殿にある不思議な部屋。その部屋の中は外との時間の流れが異なり、外の1日が中では1年になっている。更には環境は過酷の極みであり、酸素は薄く気温の上下はまるで砂漠の如し。そこを訪れる者は武道家が多く、修行するのに良い環境なのだとか…。

 

「あー」

 

「あー」

 

「駄目ね、半音ずれてるわ。やり直しよ。あー」

 

しかし今の部屋はポップな音楽と共に2人の女性の声が聞こえる、これまでの歴史からしたら異様な光景が広がっていた。

 

「本当にズレてたかしら?アタシ的には完璧だったんだけど?」

 

「お前の認識がズレてるのでしょう?」

 

1人は赤色に白ラインが入った芋ジャージを着ている尻尾と角の生えている女の子、もう1人はガシャンガシャン音を発てながら動くメカメカしい女の子。ポップな音楽は彼女の腹部辺りから流れている様な気さえする。

 

「一旦止めてダンスにしない?時間は有るんだし急いでボイトレしなくても良いと思うんだけど?ほらアタシ声量なら地球1だし、音程なんて後から付いてくるわよ」

 

フムとメカメカしい女の子━━メカエリチャンが腕を組んで考える。部屋に入って体内時計だと今日で10日目。マネージャー・アルキメデスの提案でエリザベートと共に入室し、ボイトレと全体曲に向けてのレッスンをしているが中々音が合わない。

 

「私としてはダンスレッスンは必要ないと認識していますが?」

 

目の前にいる芋ジャージ娘は銀河で優勝するレベルのダンスを踊れる。時に情熱的に、時にアクロバティックに様々なダンスが出来るのだからバックダンサーだったら最高の逸材ではある。

 

だがコイツはアイドルだ

 

事務所の第1アイドルであり、人数が増えてきた今でも看板アイドルである。…人気の秘密が「バ可愛い」とか「背伸びしてる感が良い」とかなのは本人には伝えられない情報ではある。

 

「ダンスの練習と言われても…。あー、エリザベートのソロ曲がありましたね。ダンスと歌の練習をするとしましょうか」

 

「あ、良いわね。少し通しで練習してはいたけど以降何もしてないもの」

 

「では音源を変えます。少し待っていなさい」

 

メカエリチャンは自信の腹部装甲を開き、ピッピッと操作を始めた。

装甲の開いた部分にはディスプレイがあり画面には『Track1』など表示が出ている。メカエリチャンは迷わず『Open』を押した。

 

ウィィィン

 

中からCDが排出されると続いて胸部装甲を開いてCDを収納し、違うCDを取り出す。

今の彼女は『メカエリチャンタイプP』Pはプロデューサー代理や音楽プレーヤーの意味らしい。アルキメデスによって戦闘能力を大幅に削る代わりにCDやMDの再生機器の内臓と絶対音感機能が搭載されており、発声能力、集音能力がノーマルタイプと比べると追加改良されている。集音能力、発音能力に関しては音程のズレが存在していないらしい。

 

「交換完了。記録媒体に保存されているデータを読み取りコピーを始める。…完了。再生」

 

流れ始めるのは私のソロ曲。音痴じゃないから本人じゃないとか言われていたキャラソン『AKOGARE∞TION』だ。

 

「…ふぅ、どうかしら?ソロ曲だから自主トレもしてたんだけど?」

 

「問題ないでしょう。9割がた音もあっていますから他の曲に比べたら充分合格点と言っても過言ではないと思いますよ」

 

「なら…」

 

「次のライブに加えておきましょう。メインは新グループの紹介とグループ曲ですがソロ曲の無いライブというのも華に欠けますからね」

そう言ってメカエリは『次回ライブ曲』と書かれた手帳を開いて書き込んでいく。既に美希、真、雪歩、貴音の『edeN』春香、千早、あずささん、りっちゃんの『Vault That Borderline!』やよい、亜美真美、伊織、響の『ビジョナリー』は披露することが決定している。

 

「後はアルキメデスを踏まえて調整するとしましょう。ライトの位置、演奏してくれる方達への楽譜配達とやることは多いですからね」

 

確認事項を次々と書き込んでいき、現時点で把握している予定と照らし合わせていく。色々文句を言ってくるけれどライブまでのスケジュール管理はアルキメデスとメカエリが中心となってプロデューサー達と決めているらしく、2人が来てからは負担が減ったとプロデューサーも喜んでいた。

 

「…2人とも何だかんだで優しいのよね」

 

「よく分かりませんがそんな事を言っている暇があるなら時計を見て用意をしなさい」

 

言われて見れば『期間限定の時間』が来た。今回、この部屋に入るに当たって決めたことがある。それは『2時間の格闘時間』を設けるというもの。サイヤ人が攻めてくるとか私たちにとってはどうでも良い話ではあるけれど、街を破壊されるとか地球を奪われ売り飛ばされるとなると話が変わってくる。

 

「今日は試したいことあるのよ」

 

そう言うとメカエリは面倒臭そうな顔でコッチを見てくる。何なんだよその顔は。

 

「昨日ネットで見たのだけど指向性スピーカーって知ってるかしら?」

 

「パラメトリック・スピーカーは、超音波を使うことで鋭い指向性を持たせることができる音響システムである」

 

「そ、その通りよ!」

 

何を言ってるのか正直理解できない。私としては狙った相手だけに聞こえるようにするスゴいスピーカーということしか分からない。

 

「そんな事して何をしようと?…あ、なるほど考えましたねエリザベート」

 

何か納得しているが私が何をしようとしているのかをコイツは理解しているんだろうか?

 

「指向性スピーカーのように声を一点に集中することで効率良く敵を始末するんですね?」

 

はい?

 

「確かにお前の声を一点で受け止めたら振動で頭蓋は砕け、血液は伝えたが沸騰。更には眼球は破裂。しかも武器が音だから防ぎようが無い。…実に恐ろしい攻撃ですね」

 

「…アンタはアタシをなんだと思ってるわけ?」

 

「毒電波系アイドルでしょう?」

 

「…」

 

「…」

 

この話は止めよう…。何か聞きたくない事をストレートに言われたショックだろうか、怒ろうという気力すら沸いてこない。

 

「…もういいわ次よ。アタシの知り合いにいるヤードラット星人ってのがいるんだけど、ソイツらに教えてもらった技があるの」

 

 

「なるほど、概要は理解しました。だとしてもクソダサいポーズをすることに意味なんてあるのでしょうか?」

 

「意味なんて良いのよ。そんなもの後から付いてくるわ!さぁ、やるわよ!」

 

フュージョン、ハッ!

 

目を開けられないほどの光に2人が包まれると、エリザベートの気すらも霞んで見えるような凄まじい気が溢れだした。

 

「何よアイドルってバカじゃないの…」

 

色白の肌に荊を模した赤と黒のドレス、鉄製の仮面が鈍く輝く。しかし、気を発する本人はドンヨリとした雰囲気を纏い、体育座りのまま虚空を眺め続けていた。

 

━━変身が解けるまで残り30分

 

 



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