白音は仙術を使わず気を扱うようです (煌めく伯爵)
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始まり

冥界のどこぞの森で肩で息をしながら木に寄りかかる少女、白音。彼女は猫又という妖怪であり姉がいるのだが、こんな事になっているのはその姉が元凶だった。彼女は今、逃走中なのだ。姉が罪を犯し、姉妹だからという理由で、自分も同じ事をしでかすかもしれないと危険視され、殺されそうになったので逃げ出したのだ。だがしかし、このままではいつか奴らに捕まって抹殺されてしまうだろう。昔、出血多量で死にかけた際に血を分けてくれたターブルと言う男性の為にもそう易々と死ぬわけにはいかない。

 

「……」

 

白音は考える。この状況をどう切り抜けるか、と。彼女は猫又であり仙術と言うものを使えるのだが、姉はその力に呑まれて罪を犯してしまったので、それ以外の方法を考えなければいけない。とここで白音はある疑問が浮かぶ。仙術と言うのは言ってしまえば気を操る様なものなのだが、果たして気は仙術を使わなければ使えないのか?と。乱れた息を整え、精神統一を始める。仙術が発動しない様に細心の注意を払いながら、精神統一を続けていると自身の体の中に何か不思議な力を感じた。それが何か確認しようとした時、奴らは現れた。

 

「見つけたぜ」

 

自分を追っている存在、悪魔。彼らは深刻な悪魔不足に悩まされていて、それぞれが主となり眷属を増やしているのである。白音の姉が犯した罪とはその主を殺そうとしたのである。姉はその主の眷属だったのだが、前述の通り仙術の力に呑まれ殺しに走ったらしい。らしいと言うのは実際に見たわけではないからだ。

 

「さあ、観念してもらおうか」

 

ジリジリと距離を詰める悪魔たち。白音に抵抗する術はない。使えるはずの仙術は姉が呑まれた事もあり恐怖を抱いて使えず、かと言いってそれ以外の何かがあるわけでもない。いや、1つだけあるのだが、それは彼女自身どう言うものか分かっていないが、ダメ元で先程感じた不思議な力を自分の周囲に放出する。放たれたそれはドーム状のバリアの様に白音の周りを覆い、迫って来ていた悪魔がそれに触れると、彼方へと吹っ飛ばされていった。

 

「え?」

 

まさか、こんな力だと思っていなかった白音は一瞬唖然とするが、すぐさま気を取り直し、その場から離れていった。

 

 

辛くも逃走に成功した白音は、人間界にいた。特に誰かがいるだとかは無いが、最低限まで力を落とせし、人混みに紛れてしまえば見つける事は困難だろうと考えたのだ。まあ、奴らが無差別殺人等をして来たら意味ないのだが。

 

「それにしても、あの力は一体…?」

 

人混みに紛れつつ、あの不思議な力の事を考える。仙術を通して操る気を知らないため、比較はできないが、姉から聞いたものとは違うので、別物であることがわかる。がしかし、名称がないと言うのも変なので、これを気と名付ける事にした。仙術を使わないので別に問題ないだろう。もし万が一恐怖を克服して仙術を使う日が来たら、その時に別の名にすればいいのだ。

 

「しかし、これからどうしましょうか?」

 

逃げ切ったとは言え住まう場所は無く、頼れる人もいない。となると残るは山籠りだ。猪やらなんやらを狩れば生き長らえる事は可能だし、気について色々と試すこともできるだろう。肌や髪が傷んだりするだろうが、死ぬよりはマシだ。そう自分に言い聞かせて、白音は山へと向うのだった。

 

 



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聖女と猫又

作者は英語が苦手なので、英語なんて、書けるわけがなかった。


山籠りを始めてはや数年、気を使いこなすことに成功した白音はその便利さに驚いていた。気を使えば、空を飛んだり、気弾を放ったり、色々な事が出来る。その上、身体中全て、頭のてっぺんから足の先までの気をコントロールし、瞬間的に増幅させる事により、全てが何倍にもなる技も習得した。界王拳と名付けたその技だが、気をコントロールを失敗したり、自身の体がついていけないほどの倍率を出せば、負担が大きくしっぺ返しを食らってしまうというハイリスクハイリターンな技だ。今の白音は2倍までなら耐えられる。人間や悪魔、堕天使等、種族によって気にちょっとした違いがある事も分かった。

 

また、年齢的にバイトが出来る年頃になった白音はバイトをしていた。心優しい今の店長が雇ってくれたのだ。ただ、接客業の為、外人が来ても良い様にとみっちり英語を教え込まれた。バイトで手に入れた金は貯金とかはせず、偶に、服を買う場合を除いて、全てお菓子、特に和菓子に変わる。白音としては、別にこのまま山籠り生活でもいいと思っているので、マンションに住もうだとかは思わない。

 

「あ、お菓子が無くなってしまいました。買いに行くとしますか。さて、今日は何処に行きましょうかね」

 

基本白音はお菓子の買い溜めはしない。理由は簡単。彼女が基本和菓子しか買わないのが原因なのだが、保存できないからだ。故に少しだけ買って、無くなったら買いに行くという感じになっている。しかし、決まった所に買いに行くわけでもないので、色んな場所をふらふらして良い感じな店を見つけたら立ち寄るという感じなのだ。

 

 

「包み屋は当たりだったようですね」

 

公園のベンチでどら焼きを齧りながらそう呟く。どら焼きが食べたくなったので寄った店だったのだが中々に当たりの店だった様だ。至福の時を堪能していると、背後から誰かが肩を叩く。くるりと顔だけをそちらに向けると、金髪の少女が立っていた。服装からしてシスターだろう。恐る恐るといった感じに彼女は口を開く。

 

「あ、あの〜」

 

英語だった。大凡、色々な人に話しかけたが、通じなかったのだろう。店長に教わっておいて良かったと思いながら白音は英語で返す。すると、彼女の顔がぱあっと明るくなった。

 

「ああ、ようやく私の言葉がわかる人と会えました。主よ感謝します」

 

やはりと言うべきかシスターの様だ。突然感謝の意を神に言い出すのはいささか不審に思われるが、まあしょうがない。シスターというのは神に全てを捧げているのだから。

 

「それで、何か用ですか?」

「そうでした。あの、この辺に教会ってありますか?私はそこに行きたいのですが」

「教会ですか?あるにはありますが、バイトの先輩曰く、もう何年も誰も使ってないらしいですよ?」

「そ、そうなんですか!?どうしましょう。でも、一応行ってみることにします。迷惑でないのなら道案内をしてくれると嬉しいのですが」

 

なんて話しているとその公園で遊んでいた少年が転び、どうやら膝を怪我した様で、泣き始めた。シスターはそれを見るとその少年に近づき手を添える。すると傷がみるみる治っていくではないか。姉が言っていた人間にだけ与えられる神器の一種だろうか?と白音は考える。傷が治った少年はお礼を言って再び元気に遊び始めた。まあ、その近くにいる少年の親と思われる女性はシスターを化け物を見る様な目で見ていたが。

 

「すみません。つい」

「大丈夫ですよ。あの子もお礼を言ってましたし」

「ああ!あれはお礼の言葉なんですね。私は日本語がわからないので」

「これからゆっくり覚えていけば良いんですよ。それじゃあ、教会に向かいましょうか」

 

教会への道のりは知っている。白音がバイトしている店にはこの街の地図があるので、それを思い出しながら、教会へと向かう。その途中、シスターの話を聞いたのだが、あの治癒の力は彼女曰く、神から貰ったものらしいが、そのせいで、最終的に『魔女』扱いされ追放されたとの事。シスターはこれは試練だと受け入れているらしい。しかし、白音は違った。足を止めて、シスターの方を向く。

 

「それは、本気で言ってるんですか?祈りが足りないから『魔女』と呼ばれて、追放されたと?」

「はい。私がこうなったのは祈りが足りないせいなんです」

「そうですか。じゃあ、これは例え話なんですが、その救った悪魔を傷つけたのが、神だったらどうします?」

「え?」

「だから、貴女が傷を治した悪魔が、神を殺そうとして、もしくは貴女のいた教会を襲おうとして失敗して返り討ちにされた悪魔だったら、と聞いているんです」

「そ、そんな事は-」

「ないと言えますか?」

「-…」

「まあ、私は当事者じゃないのでなんとも言えないのですけどね。誰かが貴女を貶めようとしたのかもしれませんからね。ですから、可能性の1つとして頭の隅にでも置いといてください」

 

再び、白音たちは教会へと向かい始めた。しかし、そこからはシスターも白音も一言も発する事はなかった。

 

 

「ここが教会です。どう見ても廃れてますね。人が住めるとは到底思えません」

 

まあ、中からは堕天使の気が感じられるが、外見は廃教会そのものだった。堕天使がシスターに何かしようとしているのかもしれないが白音にとってはどうでも良い事だ。

 

「あ、あの」

「なんですか?」

「そういえば、名前を聞いていないなと思いまして、私はアーシア・アルジェントと言います。恩人の名前も知らないと言うのは、どうかと思ったので」

「そうですか。私は白音と言います」

「白音さん、ですね」

 

シスター、アーシアは白音の名前を聞くと、目を瞑り、何かを考え始めた。そして、目を開くと、何か答えを出した様な顔つきになっていた。

 

「私、考えてたんです。白音さんが言ったことが本当だったらって。私は今まで祈りが足りないという逃げ道を使って、無意識のうちにその事を考えない様にしてたんだと思います。私は、あの行為を当然のものだと思っています。ですが、そう思ってない人がそれを見たらどう写るのか。戦争こそ終わりましたが、天使と悪魔と堕天使が未だ水面下で争っている事は習いました。冷静に考えれば、私のした事は『魔女』の烙印を押されて当然の行為です。なんせ、敵を治癒しているのですから」

 

そこまで言って突然アーシアは頭を下げてきた。これには白音も驚くばかりだ。どうやらアーシアは完全にとは言わないが、少しばかり吹っ切れた様だ。

 

「ありがとうございます。白音さんがいなかったら、私は一生逃げ続けていたと思います。今日、白音さんのおかげで私は少し、変われたような気がするんです」

「そうですか。それは良かったですね」

「はい!…それで、話は変わるんですけど、教会が廃れて住めないとなると私はこれからどうすれば良いんでしょうか?」

「そういえば、ここに住む筈だったんでしたね。山でサバイバルでも良いなら一緒に来ますか?」

 

教会の中には堕天使がいるのだが、それは無視。教会に入ったらわかる事なので、別に言わなくても良いだろう。今の吹っ切れたアーシアが堕天使と会ったらどうなるか少し不安だが、サバイバル生活では衣食住の内、衣食しかない。ならば、教会で堕天使に面倒を見てもらったほうがいいだろう。殺されるかも知れないが、彼女の神器の能力を知れば利用しようと考える筈だろうからその可能性は低い。また、普通に考えて、流石にアーシアも山でサバイバルは嫌がるだろうから可能性がほとんど無い上での駄目元の提案だったが、

 

「サバイバルですか、それも良いかもしれません。自然に触れて、自然の中で生きるというのも体験するべきではないでしょうか?主は言いました。多くを体験すればそれが知識、知恵になると。今まで、主のご意思に従って来ましたが、私は今日初めて自分の意思で行動しようと思います」

「えっと、それはつまり、私とサバイバル生活をするという事ですか?」

「はい!これからよろしくお願いします!」

 

アーシアは意外にも乗り気だった。まさか、乗り気になるとはかけらも思っていなかったため、どうしようかと考える。が、本人が乗り気ならいいのでは?という思いの元、白音はアーシアを連れて行くのだった。

 

 

 




語彙力が無さすぎて、意味不明な感じになっている様な気がする。それと分かると思いますが、包み屋はオリジナルの店です。こんな感じで、オリジナルの店を色々と出していこうと思います。白音(小猫)ちゃんのお菓子を食べている姿は癒しですからね


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気の修行と堕天使

あれから、10日たった。アーシアもこの生活に慣れてきたようだが、この10日間でいくつかの問題も発覚した。その中でも1番の問題はアーシア自身が戦う力を持ってないという事である。なんとなく初日から危惧していた事だが、数日前、彼女が1人で木の実を取りに行った際に、熊に襲われたのをきっかけに、本格的にどうしようか考え始めた。その時は、白音が助けた為事なきを得たのだが、少なくとも自分だけでも守れる力が無ければいつかは死んでしまうだろう。白音だって、毎度絶対に助けられるわけではないのだから。

 

「というわけで、アーシアさん。貴女には気を覚えてもらいます」

「私にできるでしょうか?」

「大丈夫です。覚えるのは簡単ですから。私の言う通りにすればすぐですよ」

 

考えた末、気を教えるという結論にたどり着いた。気は生物であるならば、全てのものが持っているので、覚える事さえ出来れば問題なく使う事ができる。その上 、覚えるのだって別段難しいわけでも無い。唯一難しいのはコントロールする事ぐらいだろう。気については初日に教えてあるので、問題ないだろう。

 

「まず、リラックス出来る姿勢になってください。あとはこうやって両手を向かい合わせて、自分の中に流れる気を引き出すんです。力んじゃダメですよ。落ち着いて集中するんです」

「わかりました。やってみます」

 

アーシアは呑み込みが早いようで2回で成功させた。因みに1回目は気ではなく、魔力を引き出してしまったが、むしろ魔力も使えるようになったのは好都合だろう。

 

「出来ました!これで私も白音さんみたいに空を飛べたり出来るんですか?」

「まだ、出来ませんね。コントロールしないといけません。飛ぶくらいなら体の力を抜いて、気を集中させて、って飛べてるじゃないですか」

「えっと、こんな感じかなぁって思いながらやったら出来ちゃいました」

 

どうやら、気をコントロールすることに関しては、白音よりアーシアの方が上手いようだ。この様子なら修行さえしっかりすれば界王拳もモノに出来るだろう。

 

「攻撃に感じては、どういう事をしたいかを思い浮かべながら、気を出せばいいんですよ」

「でも、私、あまり怪我はさせたくありません」

「そうは言っても生きていく為なんですから。我慢してください」

「そ、そうですよね。生きて行くためには、命を奪わなければいけないと主も言ってましたし」

 

と言っても、早々思いつくものではないので、一応、手本として気を平たく円状にして切れ味を増幅させる技、気円斬やシンプルなのも見せた方がいいだろうと、ただの気功波を放ったりもした。

 

「こんな感じですね。大事なのはイメージですよ」

「なるほど。イメージですか。こんな感じですか?」

 

そう言って、アーシアは人差し指から、気功波を放つ。放たれた気功波は付近の木一本をへし折り、消滅した。

 

「そうそう、そんな感じです。で、あとは名前ですね。これは、つけるかどうかはお好みですが」

「名前…ですか。どどん波とかどうでしょう?」

「何故そうなったのかわかりませんが、良いんじゃないですか?」

 

そんな事をしていると、何者かがこちらに近づいてくるのがわかる。気の感じからして堕天使で、数は2つだ。たった今、アーシアが放ったどどん波によって折れた木が倒れた時の音を聞かれてしまったんだろう。アーシアはまだ気の察知が出来ないため、気づいてないので、一応、伝えておく。少したち、その堕天使たちは現れた。

 

「ようやく見つけたわよ。アーシア」

「誰ですか?」

「私はレイナーレ。こっちはミッテルトよ」

「ミッテルトっす。よろしく」

 

現れた堕天使たち、レイナーレとミッテルトは案外礼儀正しいようだ。まあ、不意打ちの機会を狙っているのかもしれないが。故に白音もアーシアも警戒は緩めない。そんな彼女らを見て、レイナーレが口を開く。

 

「そっちのあんたが連れてさえ行かなければ、こうやって10日間もアーシアを探す羽目にならなかったのよ」

「ああ、教会にいた堕天使ですか。ですが何故、アーシアさんの名前を知っているんですか?」

「そりゃ知ってるわよ。その子が私達の計画の要だもの」

「計画ですか」

「そうっす。アーシアの神器を抜き取って、レイナーレ様がそれを手に入れる計画だったんすけど」

 

何故かミッテルトの言い方は歯切れが悪かった。隠しもせず言い出すあたり、失敗でもしたのだろうか?そんな事を考える白音をよそに、ミッテルトは続きを話し始める。

 

「でも、この10日間でうちらの仲間が2人、ここら一帯の領主のリアス・グレモリーに見つかっちゃったんすよ。で、殺られちゃったんっすよね。協力してくれた数多くのはぐれ悪魔祓いも逃げ出して、今やレイナーレ様とうちの2人だけ」

「それで、諦めたんですか?」

「いえ、諦めてなかったわよ。ついさっきまでね」

 

あたかも今諦めたような言い方をするレイナーレ。なんとなく理由を察した白音と理解してなさそうなアーシア。それを見たレイナーレは再び、アーシアに理解させる為に口を開く。

 

「理解できないって顔してるわね、アーシア。良いわ、教えてあげる。そいつからあんたを奪える気がしないから。力量差を見誤るほど、自惚れてないの」

「え?白音さんってそんなに強いんですか?」

「それなりに修行はしましたけど、どうでしょうね。ところで、レイナーレさんとミッテルトさんはこれからどうするんです?」

「そうっすね。今回の計画はうちらが勝手にやった事っすから本部に戻るわけにもいかないし、もといた教会に戻ったら見つかるだけだろうし、どうしたもんっすかね」

「白音さん」

 

アーシアが何かを訴える様な目を白音に向ける。何を言いたいのかは、アーシアの性格を考えれば分かる事だ。白音は別に問題ないと考えて、こくりと頷く。それを見たアーシアはすぐさまレイナーレ達の方を向き、こう切り出した。

 

「えっと。行き場がないのなら私達と一緒に生活しませんか?サバイバルですけど…」

「そっちが良いなら良いけど」

「大丈夫ですよ。貴女達が変な事しなければ、こっちは問題ないです。…となると、名乗ったほうがいいですね。私は、白音と言います」

「しないわよそんな事。したら私たちの身が危ないもの」

 

そんなこんなで、またサバイバル仲間が増えた。これはいい事だろう。しかし、なんとなくこれから面倒ごとが起きる様な気がする白音だった。

 

 

 

 

 

 



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無限の龍神と元聖女

あれから数十日がたった。結局、白音はレイナーレ達にも気を教えることになった。理由は、気を使って完全に堕天使の気配を消せば、リアス・グレモリーに見つからずにバイトが出来るからとの事。金銭面まで世話になるわけにはいかないと、白音に頼み込んだのだ。そして、無事習得してバイトをしている。

 

「やっぱり、漢字が難しいです。何故こんなにも、複雑なものが多いのでしょうか」

 

今日は、白音もレイナーレ達もバイトに出ており、アーシア1人だった。ただ、アーシアもアーシアで、何もしていないわけではなく、日本語の勉強中である。日常会話程度なら話せるようになったが、未だ漢字が書けないのである。

 

「……」

 

黙々と漢字テキストをやっていると、後ろから誰かが肩を叩いてきた。手の大きさからして子供だろう。アーシアは迷子ではないかと思い振り返るとそこには、少女が立っていた。しかし、その少女からは驚くべき事に気を感じ取る事ができない。アーシアはこの数十日で気を完全に習得した。故に気の察知も当然出来る。しかし、目の前の少女からは気を感じることはできない。初めての経験だった。

 

「だ、誰ですか?」

 

若干の恐怖を抱きながらも、アーシアは少女に質問をする。相手が何者かわかれば、何故気を感じ取れないか分かるかもしれないと思ったのだ。

 

「我、オーフィス」

「オーフィスさん…ですか。なんで、ここにいるんですか?」

 

相手が名前を教えてくれた事により、恐怖心は薄れた。言葉が通じるなら会話が出来るという事である。会話が出来るという事は、目的などを聞くことができる。オーフィスという名前を聞いた事があるような気がするが、思い出せないのでそこは無視。

 

「我、お前の力欲しい」

「私の力?この神器の事でしょうか?」

「違う。そっちじゃない」

「じゃあ、気の事ですね」

「気?」

 

アーシアは気弾を手の上に作り、これが気であることを教える。

 

「そう。それ。我欲しい」

 

オーフィスはそう答える。ここで若干のすれ違いが発生した。オーフィスとしては、気を使えるアーシアを連れて行く気であり、断られたら白音やレイナーレ、ミッテルトの元へと向かうつもりだった。しかし、アーシアは使い方を教えてもらいたいのだと言っているのだと思った。故に、アーシアは言った。

 

「オーフィスさん。私よりも教えるのが上手い人がいるんです。もうすぐ帰ってくると思うので、一緒に待っていましょう」

 

オーフィスは最初、首を傾げたが、自分自身が使えるようになるのなら、それはそれで良いのではないかと考えて、一緒に待つ事にした。

 

 

しばらくして、白音が帰ってきた。

 

「あ、お帰りなさい。白音さん」

「ただいまです。アーシアさん。それで、その子は誰ですか?」

「オーフィスさんと言って、気を教えてもらいたんですって」

 

オーフィスから気を感じない事に警戒はしたが、アーシア一緒にいるので、大丈夫だろうと考えた白音は同時に、果たしてこの少女に気はあるのかと考えた。感じ取れない以上、ない可能性が高いだろうが、何かの理由で感じ取れないという可能性も捨てきれない。

 

「一応、やってみますか。えっとオーフィスさんでしたっけ?まずこうしてですね…」

 

故に、白音は一応、教える事にした。アーシアやレイナーレ達にも教えたようにオーフィスにも教えていく。結局、オーフィスは気をだす事は出来た。しかし、やはり気を感じ取る事は出来なかった。

 

「何故でしょうか?やはり、何事にも例外はあるという事でしょうか」

「でしょうね。こうやって気を使う事は出来ているのですから。ところで、オーフィスさんはなぜ気を使いたかったんですか?」

「我、倒したい奴いる。だから、力欲しい」

「そうですか。悪用だけはしないでくださいね。あと、他の人にも教えないように」

「ん。わかった」

 

その後、攻撃の仕方なども教えた。と言ってもアーシアと同じように手本だけ見せただけで、あとはオーフィスのイメージ次第だが。

 

「はい。これで終わりです。あとは日々の特訓あるのみです」

「特訓?」

「鍛える事ですよ。毎日特訓しないと身につかないですし、強くもなれないですからね」

「?」

「あまり理解できてないようですね。まあ、毎日続ければいいんですよ」

「わかった」

 

そう言って、オーフィスは何処かに行ってしまった。このあと、帰ってきたレイナーレやミッテルトにオーフィスの正体を聞いて、驚く白音とアーシアだった。

 

 

 

 



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聖剣使いとシスター

オーフィスと出会ってから数十日たった。今、白音達は山から下りて、町にいた。時刻は夕暮れ、毎日この時間には下りてきて、銭湯にいている。今日も今日とて銭湯で風呂に入り、山へと帰る途中である。

 

「やはり、お風呂はいいですね。心が洗われるようです」

「そうね。風呂は気持ちいいものね」

 

風呂に入った所為で、何処か色っぽくなってる4人はこのあとどうしようか考える。その内容は、夕食をどうしようかである。川で魚釣って、熊もしくは猪を狩って鍋にしても良し、レストランによっても良し。ちなみに、畑もあり、野菜も植えてある。

 

「私は今日は猪鍋が食べたいですね」

「アーシアはそう思うのね。私は久しぶりにレストランで食べたいわ」

「私はどっちでもいいですけどね」

「うちもっすね。どっちも美味しいし」

 

話し合いながら、山へと向かっていく白音たち。猪鍋かレストランか、話し合いながら結局決まらなさそうだ。そうなると帰路についているので猪鍋になる。

 

「アーシア・アルジェントとお見受けするが?」

 

突然、フード2人組に声をかけられた。言い方的にアーシアの知り合いか教会関係か、どっちかであろう。ちらりとアーシアを見ると誰?と言いたそうな顔をしているので、知り合いの線は消えた。

 

「確かに、私はアーシア・アルジェントですが?」

「こんな場所で『魔女』に会えるとは思わなかったよ」

「貴女があの有名な『魔女』なんだ!」

「ええ、そうですね。それが何か?」

 

たまに、主は言いました、なんて言うものの本当に神を信じているのかすら最近は怪しいアーシア。そんなアーシアに『魔女』呼びはもうどうでもいいことだった。

 

「何って『魔女』なんだし、私たちが主のところに返してあげようか?」

「顔も見せない人達が何言ってるんですか?そもそも、貴女達は誰ですか?」

「ああ、名乗ってなかったな。私はゼノヴィア」

「私はイリナ。短い間だろうけど、よろしくね!」

 

未だフードを外さずに名乗る2人。ただ、どう見ても2人がアーシアに勝つ事は無理だろう。未だ2倍すら出来ないとはいえ、界王拳を習得したアーシアに勝てたら大したものである。

 

「ゼノヴィアさんにイリナさんですか。まあ、やれるものならやってみれば良いじゃないですか」

「へーそういうこと言うんだ。流石『魔女』だね」

「なら遠慮なくやらせてもらおう。主の名のもとにね」

 

2人が獲物を取り出し、構える。対するアーシアは自然体である。白音もレイナーレもミッテルトも心配した様子はない。当たり前である。しかし、ここで邪魔が入った。そう、腹の虫である。白音達は夕食を食べていない為に腹がなったのだ。

 

「アーシアさん。ここまでにしましょう。お腹減りました」

「そうっすよ。うちお腹減ったっす」

「そうですね。私もお腹ペコペコなんですよ。行きましょう」

 

アーシアはくるっと振り返り、白音達に近づく。突然、背を向けたアーシアに勝機を見出したのか。2人はアーシアに襲いかかった。しかし、アーシアは無造作に手だけをそちらに向けると、気合砲を放ち2人を吹っ飛ばした。レイナーレがさらっと張った人避け結界のお陰で誰もその光景は見ていない。結界を解き、話し合いの末レストランへと向かう白音達だった。

 



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猫又と堕天使幹部 その1

教会関係者と会ってから数日、白音達はここ数日でわかったことがある。簡潔に言うとこの街が消滅する可能性があると言うこと。完全に気配を消した状態で各自がいろんな場所で情報収集を行い、得た情報を集めた結果そういう結論に至った。

 

「コカビエルですか。堕天使幹部なんですよね?レイナーレさん、ミッテルトさん」

「ええ。コカビエル様は紛れもなく堕天使幹部よ。過去に起こった三勢力の戦争で生き残った…ね」

「そうですか。イリナさんを助ける事になった際に会いましたが、あの気の感じ、とても強いんでしょうね」

 

今日の昼頃、1つの気が減って行くのを察知した白音は気の感じで誰かはわかってはいたが、仕方なく助ける事にした。その際に彼女を囲っていたいくつかの気配の一番大きく一番邪悪な気配がそのコカビエルだった。コカビエルは彼女の持っていたものが必要だったらしく、それを回収したタイミングで白音が現れると彼女を無視して何処かに行ってしまった。

 

「どうしましょうか?どう見ても、これじゃあコカビエルに勝てませんよね」

「そうですね。駒王学園の方に大きな気は集結してるようですが、勝てませんね」

「この気は多分、駒王学園の悪魔達っすね。結界班と迎撃班で別れたんすかね?全員でかかっても勝てないのに」

「まあ、しょうがないんじゃない?ここの領主さまなんだから、守らなくてはいけないのよ」

 

気のお陰でここからでも駒王学園でなにが起きておるかはっきりとわかる。1つ気が消えたことから誰か死んだ事とか、悪魔達の気とコカビエルの気の差を見るに勝てないだろうとか。本当に色々とわかる。

 

「ねえ。貴女達は一体なんの話をしているの?」

 

目が覚めたイリナがそう聞く。それもそうだろう。側からみれば、彼女達の言ってることは意味不明だ。しかし、白音達が答えることはない。イリナがしつこく質問する中、駒王学園で起こっている戦闘は止まった。気が消えてないことから、悪魔達は死んでいない。しかし、だからと言ってコカビエルが死んだわけでもない。気を察知出来ると言っても話までは聞こえないので、戦況が止まった以外はわからない。

 

 

コカビエルは落胆していた。それもそうだ。魔王と言われたサーゼクス・ルシファーの妹とその眷属がここまで弱いとは思わなかったのだ。騎士の駒の男は神器を禁手させ、聖と魔が混ざり合った聖魔剣なるものを生み出した。これにはそれなりに驚いたが、そのせいで神が死んでいる事がわかり、聖剣使いは消沈、コカビエルに挑んできたリアス・グレモリーとその眷属もとても弱い。これで落胆せずどうしろというのか。

 

「貴様らは弱すぎる。特にそこの赤龍帝。貴様には心底がっかりさせられた。禁手をしてすら俺と渡り合えないとはな」

「くっ!」

「ああ、だが乳を触って禁手に至るのは面白かったぞ。あれは傑作だ」

 

フハハハと笑いながらリアス達を見下ろす。戦闘狂の彼は戦争を再び起こさせるためにここにきた。なら目的は1つ。魔王の妹を殺せば戦争は再開されるだろう。そのための餌がここには2人もいる。もういい加減飽きて来たので、そろそろ目的達成の為にコカビエルは巨大な光の矢を作り上げた。

 

「呆気なかったな!」

 

絶望の顔をしているリアスとその眷属にその矢を放つ直前、彼は動きを止めた。そして、張られている結界の一部を見る。するとそこにヒビが入り、そして砕け、穴が空き、その穴から何人かが入って来た。そのうちの2人はコカビエルもよく知っている人物だ。そう。白音達である。白音とアーシアに持ち上げられていたイリナはゼノヴィア達の方に駆け寄る。

 

「「お久しぶりです。コカビエル様」」

 

そのうちの2人、レイナーレとミッテルトは自分の上官のコカビエルにそう言う。死んだと思っていた奴らが生きている事に驚いたが、すぐさま質問を投げかける。

 

「なぜ今頃現れた?」

「それは貴方を倒す為です」

 

コカビエルの質問に答えたのは白音だった。コカビエルはこの街を完膚なきまでに破壊するだろう。悪魔達がどうなろうと知ったこっちゃないが、この街が無くなるのはいただけない。故に白音達はコカビエルを倒しに来たのだ。それを聞いたコカビエルはニヤリと笑うと光の矢を消した。

 

「では、貴様が俺の相手をしてくれるわけだ。猫又の女」

「ええ、そう言う事です」

「あいつらの様に落胆させるなよ」

「もちろんです」

 

アーシアもレイナーレやミッテルトも手を出す気は無い。ここ最近組手をしているが故、今の自分たちでは白音の足手まといになると言う事が分かっているのだ。そして、戦闘は始まった。

 

「はぁ!」

 

コカビエルは牽制とばかりに光の矢を投げるが、白音はそれを砕き、お返しとばかりに気弾を放つ。放たれた気弾をコカビエルは受け止め握りつぶす。瞬間2人は消えた。実際は超高速で動いているだけなのだが、追えているのはレイナーレ達と、リアスの騎士の男だけだ。衝撃が周囲に響き渡り、突如として2人が現れた。

 

「やるな。あいつらよりはマシらしい」

「当たり前です」

「猫又の女、ウォーミングアップはここまでにしようか」

「私もです」

「では、行くぞ!」

 

そう言った瞬間、コカビエルは既に白音の眼前に迫っていた。しかし、白音がそれを追えないわけがなく、コカビエルが放った拳は空を切る。白音は反撃せずに後ろに下がる。逃がさんとばかりにコカビエルは拳を放つが白音はそれを避けがら空きの腹に蹴りを放つ。どう見ても当たる蹴りだったが、コカビエルは体を捻る事でそれを回避し、一旦両者は離れた。

 

「ほう。ほらではなかったんだな」

「当たり前ですよ。伊達に修行はしてません」

「成る程な。だが、俺の方が上だな」

 

再び接近して来たコカビエルだが、それはさっきの比では無い。ギリギリ反応し、顔めがけて放たれた蹴りを避けるが、避けた先には既に拳が待っていた。咄嗟に顔を引き、威力を最小限にするも吹っ飛ばされ、校舎に激突する。崩壊するほどではなかったが校舎には穴が空いていた。

 

「流石、戦争を生き抜いただけはあるみたいですね」

 

白音は吹っ飛ばされた事で壁から入った教室でそう呟く。そして、外を見て咄嗟に窓から外に出た。瞬間校舎に無数の光の矢が突き刺さった。あれを喰らえば無事では済まないだろう。白音はそれをした張本人を睨みつける。

 

「貴様の全力はその程度か?早く本気を出さねば後悔する事になるぞ?」

「そうですか。では、見せてあげます。界王拳を!」

 

赤い気が白音を包み込む。界王拳はここ最近の組手で7倍までできる様になったが、果たしてそれで勝てるだろうか。

 

「ふっ!」

「ぬっ!」

 

気合砲でコカビエルを吹っ飛ばし、それを追い追撃をかけ、再び吹っ飛ばす。もう一度追撃をかけようと接近するとコカビエルは体勢を立て直し、白音に蹴りを放つ。界王拳の状態でもそれを避けられず白音は顔を蹴り上げられる。界王拳に対応した動きをするコカビエルを驚愕の表情で見る。

 

「今のが全力か?少し驚いたが、その程度なら期待はずれだな」

「舐めないでください。7倍界王拳!!」

「ふっ、そうでなくては面白くない」

 

先程とは比べ物にならない速度でコカビエルに接近し、フェイントを織り交ぜながらコカビエルに拳の嵐を叩き込む。しかし、コカビエルはその全てに対応し、受け止める。最後の一撃を受け止めたコカビエルは、そのまま白音を地面へと投げる。空中で体勢を立て直し地面に着地し、コカビエルがいた場所を見るが、そこには既にコカビエルはいなかった。背後からの殺気を感じた瞬間、白音は蹴り飛ばされていた。

 

「ま、まさか、7倍でも追いつけないなんて」

 

空中で体勢を立て直し、こちらを見上げるコカビエルを見て、再び地に降りた。

 

「どうした。降参か?」

「いいえ、降参なんてしませんよ」

「だが、今の貴様では俺に勝てんぞ」

「そうですね。だからこそ、私は限界を超えるのです。私の体が持つまでですが」

 

ふぅと息を吐き、覚悟を決め、ゆっくりと気を高めていく。コカビエルは興味深そうに白音を見るものの邪魔をしようとはしない。

 

「はぁああああ!もってくださいね!私の体!界王拳20倍!!!」

 

限界を超えに超えた力。この戦いに勝とうが負けようが白音の体はぶっ壊れるだろう。第2ラウンドの火蓋が切って落とされた

 

 

 

 




戦闘書くのむずいです


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猫又と堕天使幹部 その2

それをした瞬間、ズキリと身体が悲鳴を上げ始める。しかし、それを顔に出さずに、ゆっくりとコカビエルを睨む。

 

「先程とは比べ物にならんくらい強くなったな。では、第二ラウンドとしゃれこむか?」

「ええ」

 

白音が地を蹴った。それを認識した時、既にコカビエルは宙を浮いていた。

 

「ハハハハハ!良いぞ!これこそが俺の求めていた戦いだ!だが…」

 

上空のコカビエルはゆっくりと降りて来て、こう呟いた。

 

「やめだ」

「やめ?やめとはどう言う事ですか」

「確かに貴様との戦いは面白い、が貴様のその力は身を滅ぼすだろう?」

「!…なぜ分かったんですか?」

「そういう奴はよくいたからな。貴様との戦いは面白い。故に自滅してもらっては困る。さて…俺は帰るとするかな。フフ、良い収穫もあったしな。ああ、安心しろ。この街は壊さん。この街を壊すとなると貴様も殺さねばいけんからな」

「そう…ですか」

「ああ、そうだ。貴様、名は?」

「白音です」

「白音か。覚えたぞ。今度は本気で戦おう」

「やはり、本気じゃなかったんですね」

「俺は堕天使幹部だぞ?あの程度だったら幹部なぞ名乗れん」

 

そう言って、白音たちが開けた穴に向かう。しかし、ふと立ち止まり、レイナーレたちの方を向く。そしてニヤリと笑みを浮かべた。

 

「貴様らもあいつに近い実力を持っているな。まさか、下級堕天使だと思っていた奴らやシスターがここまで力をつけるとはわからんものだ。次は貴様らもあの戦いに入ってこれるよう精進するんだな。貴様らとの戦いも楽しみにしているんだからな」

「「勿体無きお言葉」」

「ふ、ではな」

 

今度こそ、コカビエルは去っていった。それを見届けてから白音はその場に倒れた。もう既に界王拳は解いてあるが、20倍と言う無茶をやらかしたしっぺ返しは強烈だった。

 

「「「白音(さん)!」」」

 

倒れた白音に心配そうに近付く3人。その内のアーシアが神器を使って、界王拳20倍によってズタズタになった筋繊維などを癒していく。外傷ではなく内傷である為、効果は薄いがそれでも普通に比べたら早いものだ。そして、白音を抱き上げ、早々に撤退しようとすると、

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

リアス・グレモリーが声を荒げた。それと同時に、彼女の騎士が切りかかってくる。白音とアーシアは動けないので、レイナーレが光の槍で受け止める。

 

「なかなかの挨拶ね。助けてもらって切りかかって来るなんて」

「僕としてはお礼を言いたいんだけどね。王の命令に逆らうわけにもいかないのさ。君たちが堕天使じゃなかったらこうはならなかったんだけどね」

「まあ、この展開を予期していなかったわけじゃないし、しょうがないってわかってるんだけどね!」

 

そこまで言って、騎士の少年を弾き飛ばす。弾き飛ばした騎士の少年の後ろから魔力弾が飛んで来るが、それも光の槍で弾く。聖剣使い2人が動く様子は無いが、荒事を起こしている暇もない。白音を回復させるのが一番だ。故に、レイナーレはこう叫ぶ。

 

「目を瞑って!」

 

その一言だけで、ミッテルトとアーシア、白音はレイナーレが何をするのかを察して目を閉じる。そしてレイナーレはそれを放った。

 

「太陽拳!!」

 

レイナーレがそう言うと、レイナーレを中心に眩い光が溢れ出し、リアス・グレモリーたちの目が眩む。その隙に、レイナーレたちはさっさとその場から逃げていった。



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堕天使総監と白音たち

コカビエル戦から数週間。ボロボロだった白音の身体もほぼ完全に完治していた。ただ、心配をかけてしまった事もあり、みんなに怒られてしまった。あれから白音達はもっと強くなるために、偶々街で発見した普通よりも重い服を着ていた。なんでも、動くだけで体を鍛えるがキャッチコピーだそうだ。様々な服のタイプがあったが、白音達が着ているのは普段着の上から羽織るジャケットタイプである。これには訳があり、戦闘中でもすぐに脱げるようにとミッテルトが提案したのだ。

 

そして今、白音達はレストラン『ジョセフ』にいた。新作のパフェが出たので食べに来たのだ。

 

「さつまいものパフェとは思いもしませんでしたが、これはこれで美味しいですね」

「そうね。さつまいものソフトクリームとはまた違った味ね」

「こっちの、飲む焼き芋も美味いっすよ」

「しかし、この時期にさつまいもってどうなんでしょうか?」

 

新作のさつまいもパフェと飲む焼き芋の舌鼓を打ちながら、ふと思ったことを口に出すアーシア。アーシアの言う通り、今はまだ梅雨の序盤、さつまいもの収穫は秋であるため、季節外れ感は否めない。そんな事を話しながら和気あいあいとしていると、1人の男が近づいて来た。

 

「よう。お前さんが白音か」

「…私に何か用ですか?」

 

男の方が話しかけてくると、白音は警戒しながら答える。名乗ってもいないのに名前を知っている時点で、何かしら、特に前回のコカビエルの時の関係者ではないかという疑問が上がる。と言うより、気が完全に堕天使のものなので確実だろう。

 

「俺はアザゼル。堕天使総監といえば分かりやすいか?」

「「!!は、はじめまして。アザゼル様!」」

「うお!そういえばそっちの2人は堕天使だったな。もっとフランクに接してくれていいぞ。あのコカビエルが認める実力の持ち主なんだからな」

「「い、いえ。恐れ多いです」」

「ま、お前らがそれで良いならいいがな。…さて本題に移るか。ああ、安心しろ。別にコカビエルの敵討ちに来た訳じゃない。お前らには今度天使、悪魔、堕天使で行う和平会談に参加してもらおうと思ってな」

「何故です?確かにレイナーレさんとミッテルトさんは堕天使ですけど、私とアーシアさんは堕天使じゃないですよ」

「いや、コカビエルが会いたがっていてな。あと、コカビエルの話を聞いたヴァーリも」

「…つまり、戦闘狂の相手をしろと?」

「そう言うんじゃなくてな。まあ、それもあるかもだが、俺達が和平をするにあたって、証人が必要になるだろ?だから、お前らにはその証人になって欲しくてな」

「どうします?皆さん」

 

白音がそう聞くと、3人は揃って白音に任せるといって来た。なので、少し考えて、了承する事にした。

 

 

そして、和平会談当日。始まるのは夜からのようだ。今日の昼は久し振りにオーフィスと会った。龍拳と言う技を編み出したようで、それを見せにきたのだ。気が龍の形をかたどる凄いものだった。その後、少し話してオーフィスとは別れた。

 

そして夜。指定された場所に来た白音達はそこでアザゼルとコカビエル、そしてヴァーリという少年と合流し、駒王学園へと向かった。




次回は和平会談と禍の団との戦闘とかです。

少し早いですが、メリークリスマス&ハッピーニューイヤー


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和平会談と禍の団

アザゼルに連れられて、たどり着いたのは駒王学園だった。

 

「学校でやるんですか?」

「ああ」

 

何か起きたらどうするんだと思うと同時に、裏で悪魔が手を引いてるんだろうなとも思う。と言うよりも、白音としてはコカビエルが戦いをふっかけてこないかの方が心配だった。少しは強くなったが、まだ本気のコカビエルには手も足も出ないだろうと言うことはわかっているのだ。

 

「ここですか」

 

なんて話していると目的の場所についたようだ。ドアを開けて中に入ると、リアス・グレモリーが彼女と同じ色の髪を持つ男性に文句を言っていた。

 

「納得いきません!何故、彼女達がこの和平に呼ばれるんですか!私や私の可愛い下僕に攻撃して来たんですよ!特に祐斗なんてあと一歩で失明していたかもしれないんですよ!」

「まあまあ、それはそうかもしれないけど、先に仕掛けたのはリアス達らしいじゃないか。確かに、堕天使の子もいたって聞いたけど、一応助けてもらってるんだし」

「それでもです!」

 

そんな言い合いを見て、白音達は何とも言えない気分になる。あの場から撤退するために使った太陽拳がもはやここまでとは思ってなかったのだ。

 

「あーなんだ、面倒なことになってんな」

 

アザゼルのその呟きが聞こえたのか。リアスはこちらを向いた。

 

「貴女!よくも私の下僕に傷を負わせたわね!」

「自己防衛は当然だと思うけど、それとも私に斬られろとでも言うのかしら?」

「それとイッセーの事を殺したのも貴女よね?」

「そうね。でも、貴女からしたら眷属に出来て良かったんじゃない?」

「何ですって!!?」

「レイナーレさんその辺にしてください。これじゃあ、話が進みません」

 

そう言って、仲裁に入る白音。彼女としては面倒ごとが起こると第六感が告げているので、その面倒ごとが起こる前にここから去りたいのだ。

 

「お前もだ。リアス・グレモリー」

「クッ、……わかりました」

 

そう言ってリアスは引き下がった。まあ、また後で突っかかって来そうではあるが。その後は何事もなく話は進み、無事和平会議は終わった。そして、時は止まった。

 

「え?」

 

気づくと何人かが動きを止めていた。と言うよりも止まっているの方が正しいだろうか。白音達は何が何だか分からないが、厄介ごとが起きてしまったというのはわかった。

 

「アザゼルさん?これは……」

「そう言えば、話してなかったな。禍の団ってテロ組織が暗躍してるって噂があってな。今回の和平はそれが本当か確かめる為でもあったんだ」

「で、本当だったと。まさか、私達を呼んだのってこのためですか?」

「まあ、半分はな。見届け人としてってのも嘘じゃない。しかし厄介だな。まさか、時間を止めて来るとは」

「そんな力もあるんですか。それも神器ですか?」

「ああ、リアス・グレモリーの僧侶が持ってる。どうやらあいつらはそれを無理やり禁手化させたらしい。俺らの様に所持者よりも強いと聞きにくいみたいだけどな」

 

そう言って窓から外を見る。止まっている護衛達をいとも簡単に倒す魔術師っぽい人間が大勢いた。白音達は目を合わせ頷く。そして白音はアザゼルへと声をかける。

 

「私達が戦いますから、この状況をなんとかしてください。行きますよ!アーシアさん、ミッテルトさん、レイナーレさん」

「任せなさい!」

「はい!」

「わかったっす!」

 

そう言って、窓から外に出て、戦い始めた。

 

 



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赤と白の戦い

「思ったよりも多いですね」

 

魔術師っぽい奴らを倒しながら、白音は悪態を吐く。一人一人は白音と比べると圧倒的に弱いが数が多いのが厄介だった。ちなみに、先程から時間は正常に動き始めている為、止まっていた者達も動き始め迎撃を開始している。

 

「苦戦……はしてないようだが、手こずってるようだな?白音」

「コカビエルさんですか。ええ、なにぶん数が多いですからね」

「貴様のことだ。あの時よりも強くなったのだろう?何か、新技でもないのか」

「ありますけど、ちょっと被害が大きいから使えないんですよね」

「そうか。それは残念だ」

「でも、見せてない技なら今からしますよ?」

「ほう。興味深いな、見せてもらおうか」

「では」

 

そう言って、白音は一度息を吐き、両手首を合わせてを開き、体の前方から後方へ持って行き、包み込むようにして掌に気を集中させる。やがて、青白い光が白音の手の中から発せられ、それは白音が腕を突き出すことで極光に変わる。

 

「かめはめ波!」

 

白音が放ったかめはめ波は、魔術師が十数人で張った防御壁の様なものを一瞬で貫通し、魔術師達を空の彼方へ吹っ飛ばした。それを見ていたコカビエルは感心の声を漏らす。

 

「面白い技だ。貴様が魔力とは違うナニカを使っているのは先の戦いから知っていたが、これほどまでとはな。手数が増えるのは、良いことだし、俺も教わるべきか?」

「私としては再戦する時の事を考えると、教えたくないんですね」

「ハハハ!違いない!」

「でも、そうですね。どうしてもと言うのなら、ミッテルトさんやレイナーレさん辺りに聞けば教えてもらえると思いますよ?」

「そうか……奴らも使えるんだったな」

 

そこまで言って、殺気を感じ取った2人はそこから移動する。すると、そこに魔力弾が打ち込まれた。2人が同時にその魔力弾が放たれた方を見ると、そこにはヴァーリがいた。

 

「お前が裏切るのか。ヴァーリ」

「こっちについた方が強いやつと戦えるからな」

「俺は、お前に世界を滅ぼす要因にはなるなと言ったはずだが?」

 

合流したアザゼルがヴァーリにそう言うが、ヴァーリはどこ吹く風で受け流している。

 

「俺は、今回赤龍帝と戦うためにここに来たんだ。まあ、俺が裏切ったってのをアンタらに知らせる為でもあるが。と言うより、カテレアの相手をしてるんじゃないのか?」

「いや、レイナーレが変わってくれたからな。俺はこっちに来たわけだ」

「そうか」

 

ヴァーリはそう呟いて、一誠の方へと向かい何やら話し合った後、赤と白の戦いが始まった。大体、ヴァーリが挑発して一誠がそれに乗った感じだろう。

 

「俺だけじゃなく、部長の悪口まで言いやがって!!許さねえ!!」

「許さねえ、か。だが今のお前では俺には勝てんぞ?ああ、そうだ。俺が勝ったらお前と親しいものでも殺して回ろうか?そうなると、親辺りが最初か?」

「ッ!?てめぇぇぇ!」

 

ヴァーリの挑発で、一誠は赤い鎧を纏いはじめ、それを見たヴァーリも白い鎧を纏った。あれが、禁手と呼ばれるものだろうと白音は思う。しかし、それでも差は歴然の様だ。ヴァーリは小さく

 

「これではまだダメか」

 

と呟いて、何か思いついたのか、一誠の攻撃を受け止めたままで、再び挑発をする。ヴァーリが見聞きした事を纏めた結果、これが一番だろうと思った挑発である。

 

「俺はな、物体を半減する事も出来る。この意味がわかるか?お前が好きな女性の胸もその気になれば、文字どうり胸の大きさが半分なるだろう」

 

と言う普通だったら何言ってんだこいつ、で済む様な挑発だったが一誠には効果覿面だった様で先ほどの親しいものを殺す云々よりも、キレているのが見てわかる。ヴァーリはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「許せねえ……お前は絶対許すわけにはいかねえ!」

 

そう言って、一誠はヴァーリと互角の戦いを繰り広げ始める。両者がぶつかり合うと、衝撃が辺りを襲う。どう見ても、ヴァーリは本気を出していない様に見えるが、楽しんではいるようだ。

 

「赤は親より欲の方が上、白は戦闘狂ですか」

 

呆れたように呟く白音を他所に、戦いは激化していく。が、ここで一誠が放った一撃が急所に入ったのか一瞬ヴァーリの動きが止まる。一誠はそこを突き、渾身の一発を放つ。それを受けたヴァーリは吹っ飛び、その際にヴァーリの白い鎧の腕の部分から宝玉が転げ落ちた。それを拾った一誠は、腕に話しかける。

 

「あれは何をやってるんですか?」

「ん?ああ、お前は知らないんだったな。あいつらは二天龍と言われる龍が宿った神器が宿っているんだ。兵藤一誠はドライグ、ヴァーリは、アルビオンといった具合にな。大方、一誠は今ドライグと神器を通じて話してるんだろう」

 

なるほどと白音は納得する。そんな事を話しているうちに、一誠はその宝玉を、自分の赤い鎧の腕の宝玉部に押し込見始めた。数分苦しんだが、成功したのだろう。鎧の片腕が白く染まっていた。それを見たヴァーリは口角をつりあげる。が、そこに1人の乱入者がいた。

 

「美猴か。と言う事はもうそんな時間か。赤龍帝、いや兵藤一誠。また会おう」

 

そう言って、ヴァーリはその男とともに去って行った。それを見ていたアザゼルはなにやら呟いた後、白音の方を振り返った。

 

「白音、少し話したいことがある。ちょうど良い機会だ。お前に言っておきたいことがある。あいつらは、もうすぐ帰るだろう。今回の目的である和平を結んだんだからな。だからこそ、この後で良いか?」

「……良いですよ」

 

なにやら深刻な顔でそう告げるアザゼルに不安を覚える白音だった。

 




次回、白音が自分が半サイヤ人である事を自覚します


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白音について

再び、先程会議をしていた部屋に案内された白音。ミッテルト達とは途中で合流した。その際に、レイナーレの片腕がなくなっていることに気づいたが、なんでもカテレアが自爆しようと纏わり付いてきたので、片腕を犠牲にしたらしい。部屋につき、椅子に座るとアザゼルが口を開いた。レイナーレ達は白音のことだからと聞きはするが口は出さないようだ。

 

「さて、本題にはいるが、良いか?」

「良いですよ」

「俺は言いたいのは、お前自身についてだ」

「私自身?」

「ああ、先日のコカビエルの戦いの後、コカビエルに付着していたお前の血を調べたんだが、驚くべき事にサイヤ人の血が混じっていた」

「サイヤ人?」

「ああ、サイヤ人。宇宙の地上げ屋と呼ばれているらしい」

「宇宙の地上げ屋。でも、私はちゃんと地球で生まれましたよ?」

「だろうな。だが、誰かから血を分けてもらったとかはないか?」

「血を……あ!」

 

そこで白音は恩人のことを思い出す。自身に血を分けてくれたターブルの事を。その事をアザゼルに伝えるとやはりと言いたそうな顔をした。

 

「ターブルか。昔あった事がある。あいつが地球に不時着した所にたまたまでくわしてな。色々教えてもらったからサイヤ人のことは多少わかる。まあ、ターブルの奴はもう地球にはいないがな」

「つまり、私はその輸血してもらった時に、サイヤ人になったと?」

「ああ、と言っても半サイヤ人ってとこだ。お前の元々持ってる血が全部まるごと入れ替わってるなら完全にサイヤ人になったかも知れんが、そうじゃないだろ?」

「そうですね。あの時は結構血を流しましたが全部じゃないです」

「そうだろうな。と言ってもサイヤ人は戦闘民族らしい。その血が入ってるってことはサイヤ人の特性のいくつかは受け継いでると言っても良いだろう」

「サイヤ人の特性?」

 

その疑問にアザゼルはターブルから聞いた事をそのまま伝える。彼が言っていた伝説についても。

 

「そんな種族なんですね。サイヤ人というのは」

 

自分を助けてくれたターブルの種族の真実を知って少し複雑な気持ちになる。が、ターブルはその中でも優しい方だったのだと納得する事にした。

 

「さて、言いたいことは言ったし、俺は帰るとするかな。それと言っとくがな白音、ターブルは良い奴だったぜ?それにお前にもサイヤ人が流れてると言ってもお前はお前だ。深刻に考えるなよ」

「わかってますよ。ですが、もう一度会ってお礼が言いたかったですね」

「そうか。また会えると良いな……じゃあな、お前ら。また会おう」

 

そう言って、アザゼルは去っていった。それを見送ってから、白音達も帰る事にした。



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冥界と姉

自身に流れるサイヤの血について自覚し、サイヤ人について色々聞いた日から約1ヶ月程度、リアス・グレモリー達は学校が夏休みに入り里帰りをするらしいが、リアス・グレモリー達がやっている部活、オカルト研究部の顧問となったアザゼルに誘われて白音達も冥界に行く事になった。最初こそ断ったが、冥界にいる奴らと戦って修行するのも良いんじゃないか?とアザゼルに言われ、それに納得してしまったこともあり、行くことになってしまった。リアス・グレモリー達と一緒に行くとまず間違いなく何かしら起きるだろうから、アザゼルと共にリアス・グレモリー達とは別ルートで行くことになった。流石に野宿する訳にはいかないらしく、向こうのホテルで宿泊することになっている。

 

「で、なんで私たちはここにいるんですか」

 

白音は心底不思議そうにそう呟く。そう、白音達は何故か、悪魔達のパーティに巻き込まれていた。サーゼクスによって連れてこられてしまったのだ。偶々偶然サーゼクスと出会ってしまい逃げられずこのざまである。人混み(悪魔混み?)に呑まれてレイナーレ達とはぐれてしまったが、気を探るに上手くここから出れた様だ。リアス・グレモリー達と出会う前に抜け出したいものだ。

 

「さて、私もさっさと抜け出してしましょう」

 

そう言って、抜け出そうとしたその時、白音の前に黒猫が現れ、まるでついてこいとでも言う様にゆっくりと窓から外に出て森へと向かう黒猫。白音は多少怪しみながらもある確信を持ってそれを追った。

 

 

森へと入り、黒猫を見失ってしまった白音。しかし、気を感じ取った白音は近くの木の枝を見上げる。そこには和服の女性がいた。

 

「久し振りね。白音」

「姉……さま……」

 

和服女子の正体は白音の姉である黒歌であった。死んだと思っていたが実は生きていた事は喜ばしいことだが今更現れた姉に警戒の目を向ける。その目に黒歌はおどけた反応を示す。

 

「そんな目で姉である私を見るなんて、お姉ちゃんこわーい。なんてね」

「巫山戯ないでください。何故、今頃姿を現したんですか」

「ん?それは貴女を連れて行くためよ」

「連れて行く?」

「そ。今回は私の単独行動だけど、貴女は私と同じ力と私すら知らない別の“気”を使うことが出来る。ヴァーリもその力に興味を持ってるみたいだしね。だから、連れて行く。大丈夫、仙術なら私が優しく教えてあげるし、ヴァーリだって貴女が仲間になるなら反対はしてこないはずよ」

 

ヴァーリという名には聞き覚えがある。禍の団に入った白龍皇だったはずだ。その名前を言い、尚且つ仲間になるという事はつまり彼女は禍の団にいるという事だろう。

 

「姉さま。まさか禍の団に!?」

「そうよ。私はヴァーリに拾われて禍の団に入っているにゃん」

 

信じられなかった。と言うより、信じたくなかった。普通、自分の姉が下手すれば世界を滅ぼす要因になっているなど夢にも思わないだろう。だからこそ、白音は今この現状を否定したかった。がしかし、現実は非情である。黒歌は白音にどうするか迫る。一緒に行けば、また姉と暮らせる。そう考えるとついて言ってもいい様な気がするが、白音は首を横に振った。

 

「嫌なのね」

「私は、いくらもう一度姉さまと一緒に過ごせるとしても、そっちには行きません」

「そう、なら……」

 

最後まで聞く事なく、白音は後方へと飛んだ。瞬間、先程までいた場所に小規模のクレーターができ、その中心に黒歌はいた。どうやら魔力を拳に纏わせた様だ。ついでに、自分と黒歌以外の気を感じ取れなくなってることから結界を張り外界から遮断された可能性もある。

 

「なら、無理矢理連れて行くにゃん。覚悟してね。白音」

「いつまでも弱い私だと思わないことです。界王拳10倍!」

 

黒歌は幻術も覚えたのか、一瞬のうちに何人にも増える。しかし、気を発しているのは一人だけなのですぐさま見破り殴りかかる。拳は受け止められたが、身体をねじり蹴りを放つ。しかし、それも避けられ地面に叩きつけられる。そして、そのまま足で頭を押さえつけられ、立てなくなってしまう。

 

「クッ!やはり強い」

「当たり前にゃん。いくら強くなったからって、姉である私に勝てるわけないにゃん。ほら、一緒に行こ?美味しいもの食べて、時には美味しいお酒に酔って、戦いたいときに戦ってこんなに良い生活はないと思うけど」

「そう言う訳には……いきません。私にも……仲間が……いますから……」

「そう、なら仕方ないわ。もう容赦はしないにゃん」

 

そう言って、足を離すと同時にありったけの魔力弾を白音に打ち込む。舞い上がった土に埋もれる様な形になった白音を見て、黒歌はふうと息を吐く。

 

「さ、あとは連れて行くだけね」

「私……を……あまり……甘く……見ないほう……が……いい……ですよ」

 

ボロボロになりながらゆっくりと立ち上がる白音。白音にはどうしても気になることがあった。だからこそそれを聞かなければならなかった。

 

「姉……さま。質問……いいですか」

「ん?なにかにゃん?」

「姉さま……は……私を……『妹』として見てるのか。『道具』……として見てるのか。どっち……ですか」

 

先程の黒歌の言い方では、自分が気もしくは仙術を使えるから連れて行くと言っていた。なら、もし自分がその両方とも使えなかったらどうしていたのか。そう疑問に思った。眼を真っ直ぐに黒歌に向けて答えを待つ。

 

「そう……ね。どっちかと言うなら、今は『道具』として見てるほうが強いかにゃん。いつかは絶対『妹』として迎えに行くつもりだったけど、このタイミングで迎えに来たのは貴女の力に目をつけたから。だから、『今』は貴女を『道具』として見てる」

 

その答えを聞いて、白音の中に何かが湧き上がるのを感じた。あの日から一度も会わずに、自分が心配してるのを知ってか知らずか禍の団に入り、今更会ったかと思えば『今』だけとは言え、『妹』としてよりも戦力強化のための『道具』として見ている。そんな勝手な姉に、そして姉をそんなにさせてしまったであろう自身の弱さに腹が立ってくる。もっと自分が強ければ姉は道を間違えることもなかったと怒りが沸き起こる。そして、プチンと白音の中でなにかが切れた。




次回は皆さんお待ちかね(?)の覚醒です


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覚醒

白音の異変を感じ取り、黒歌は一歩下がった。これから何かが起こる気がしたからだ。実際それは正解だった。白音の髪は逆上がり、少し筋肉がついた様に見える。しかし、そこまで力が上がった様には見えず、この程度ならとトドメの一撃を放とうとする。が、本当の変化はここからだった。

 

「うあぁああ!!」

 

その雄叫びと共に、真の変化が訪れる。逆立った髪は黄金に染まり、目つきは鋭くなり瞳の色も碧へと変化し、纏う雰囲気も荒々しいものへと変わっていた。そのあまりの変化に黒歌は動きを止めた。

 

「姉さん。覚悟はいいですか?」

 

白音が発したそれを聞いた時、既に白音は目の前から消えていた。次いで、腹部に走る衝撃。そちらを見ると、白音の拳が腹にめり込んでいた。

 

「……え?」

 

一瞬の出来事故に、黒歌の神経がついていけず、遅れて痛みがやってくる。その痛みは想像を絶するものであり、黒歌は痛みのあまり吐きそうになるが寸前で耐える。

 

「ゲホッ!ゲホッ!一体何が……?」

「これがアザゼルが言っていた超サイヤ人というものですか。まあ、もしかしたら違うかもしれないですが、あんたを倒せるんなら何でもいいですね」

 

射抜く様に見つめながら、そう言う白音。それを聞いた黒歌は魔力と仙術による気を混ぜ合わせ、それを巨大な玉へと変える。

 

「あまり私を舐めないことね白音。確かに、貴女は強くなったかもしれない。でも、私には勝てない!姉より強い妹なんていない!!」

 

そう叫び、その玉を投げつけてくる。しかし、白音は落ち着いて、迫りくるそれを見ていた。そして、

 

「かめはめ……」

 

そう呟きゆっくりと腰に両手を持って行き、

 

「波ぁあああ!」

 

その手を前に突き出し、かめはめ波を放つ。放たれたかめはめ波は黒歌が放った巨大な玉を貫き、そのまま黒歌を飲み込まんとばかりに迫る。

 

「クッ!」

 

寸での所でそれを避けるが、既に避けた先には白音が立っていた。仙術で気を乱せばと仙術を拳に纏わせ、殴る。気を乱れさえすれば一瞬の隙をついて逃げることが出来ると考えていたのだが、白音は全く効いていないとばかりに、即座に蹴りを放ってきた。黒歌はそれをまともにくらい木に叩きつけられる。

 

「なん……で……?」

「まだ分からないんですか?私が仙術を使えない理由は姉さんが呑まれたからその恐怖心で使えないだけ、その恐怖心の元がピンピンして自由に仙術を使っていれば私の恐怖心も無くなりますよ。恐怖心という枷がなくなれば、私だって仙術を使えると思いません?そもそも、私も使えないわけじゃないんですし、もし本当に姉さんがあの時仙術に呑まれていたとしても、今の姉さんが使いこなせるなら、その姉さんより上の私が使えないわけないじゃないですか」

 

当然だろうと言わんばかりに白音は黒歌に言う。認めたくないが、黄金の姿になってから白音は確かに黒歌よりも強くなった。だがら仙術を使えるのかもしれない。しかし、初めて使ったであろうから無駄がないわけではない。ただ、確実なのは黒歌だけでは白音を連れて行くのは無理であるということだけだ。

 

「しかし、前も思いましたがどっちも気だとややこしいですね。本来なら仙術の方を気と言うべきでしょうが、やはり今まで使ってきた気の方が愛着もありますし仙術の方を氣と呼びましょうか」

 

そんな事を呟いて、黒歌から色々聞き出すために気絶させようと拳を握る。それに気づいた黒歌は魔力を自分の体の前で爆発させその爆風で吹っ飛び森の中へ消えていった。気を追えば追いかけることも出来るが、深追いは危険と考えてその場に留まる白音。辺りの気を感知できるようになったことから黒歌が張った結界は解除されたようだ。それと同時に、こちらに向かってくるいくつかの見知った気に気づく。もう数秒でつくだろう。

 

「し、白音さん……その姿は?」

 

思った通り数秒後やってきたアーシア、レイナーレ、ミッテルトのうちアーシアが代表して全員が思っているであろう疑問を述べた。それを聞いた白音は多分これが超サイヤ人だと語った。

 

 




超サイヤ人特有の興奮状態により、少しだけ口調が変わっている白音さんです。がっつり変えても良かったんですが、タメ語の白音がイメージできなかったのです。基本的に姉にだけは姉様から姉さんに変わってそれ以外はさん付けが消えます。あとあんたとか多少荒い言葉を使いますね。


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重力増加装置

「それが……超サイヤ人?」

 

「多分ですがね」

 

アーシアの問いにそう答える白音。

 

「元には戻れるの?」

 

「アザゼルに聞いた話だと軽い興奮状態らしいから、落ち着けば戻ると思いますよ」

 

深く息を吐き、心を落ち着かせるといつもの白音に戻った。特に変わったところはないようだが、今もう一度なれと言われるとそれは難しいだろう。

 

「もう夜遅いっすから、真相は明日アザゼル様に聞きに行くのが良さそうっすね」

 

「はい、そうしましょう。それでですね、アーシアさん。この傷、治してくれると嬉しいんですが」

 

「あ、すいません!今治しますね」

 

手をかざし、アーシアが宝具を発動させると癒しの光が白音の傷をまるで早送りのように治していく。数分後宝具の性質上疲労は治らないが、痛みはすっかり引いていた。4人は結界が張ってあったから大丈夫だとは思うが、念のため急いでその場から離れ、アザゼルが用意してくれたホテルに向かうのだった。

 

 

次の日、真相を確かめるべく4人はアザゼルの元へ向かっていた。気で何処にいるかはわかるので、すぐ行こうかとも思ったが、その近くに例の赤龍帝と天使でも悪魔でも堕天使でもない気が感じ取れたので、アザゼルが1人になるまで待ってから、アザゼルに話しかけた。

 

「なに?昨日、超サイヤ人になったかもしれんだと?」

 

「はい、昨日、とある事で私の姿が変わったんです。黄金の髪を持つ姿に」

 

白音の説明とレイナーレ達3人の証言をターブルから聞いた伝説と照らし合わせながら、それが本当に超サイヤ人か考えるアザゼル。結果的に、聞いた伝説とは多少の誤差があるもののほぼ間違いなくそれは超サイヤ人であろうと結論づけた。

 

「それにしても、コカビエルの奴が聞いたら喜びそうな話だな」

 

「と言っても、現状は自分の意思では変身できないんですけどね」

 

「まあ、仮にも伝説の存在だ。そうホイホイとなれるもんじゃないだろうしな。……そう言えば、お前らに渡したいものがあったんだ。ホレ」

 

そう言って、投げ渡されたのは4つの腕時計の様ななにか。と言っても、形こそ腕時計だが、時間は何処にも表示されていないし、なにやら赤いボタンと青いボタンと付いている。

 

「これは……?」

 

「それはな、昔酒に酔った勢いで作った重力増加装置だ。赤いボタンを押すと電源のON OFFが出来る。魔力を流すことによって最大300倍まで重力を増加でき、作った時は最高の発明だ、なんて思ったが装着者以外を対象にできなくてな。欠陥品だったんで、いつか処分しようとしてたんだ。どうだ、使うか?使ってくれるならやるぞ。お前達の修行にも役立つだろうしな。リアスとか一誠にやっても良かったんだが、あいつらじゃ使いこなせないだろう」

 

「そういう事なら、喜んで貰いますよ。ね、皆さん」

 

「私はアザゼル様からの贈り物なら何だって貰うわよ。風邪とか病気以外ならね」

 

「ウチもっす。今まで、会ったこともなかった憧れの人からの贈り物とか一生かけて使うっすよ!」

 

「あれ?となると、この青いボタンって?」

 

「ん?ああ、それはかかる重力を固定するボタンだ。それを押さないと、装着者の魔力の変動ですぐ変わっちまうからな。くれぐれもちゃんと押せよ。今どれくらいのGがかかってるかは表示されるから安心しな」

 

とりあえず装着して、魔力を流してみる白音。すると10Gと表示され途端に身体が重くなる。どんな動作をするにも今まで以上の筋肉が使われることだろう。これは良い修行になりそうである。

 

「確かに、これは良いですね。普通に生活するだけでも修行になりそうです。でも、本当にいいんですか?貰ってしまって」

 

「ああ、全然構わんさ。さっきも言ったが処分するより有効に使ってもらった方が俺も作った甲斐があるってな。っと、そろそろ時間か。この後、サーゼクスの野郎と話し合いに行かなきゃならんのでな」

 

そう言って、アザゼルは何処かへと向かっていった。それを見送った後、白音は全員に重力増加装置を配り、とりあえず全員が重力を10倍にしてみる。10Gと表示された辺りで、青いボタンを押す。すると、とてつもない負荷かが身体にかかるのがわかる。

 

「10倍でこんなに動きづらくなるんですね。この分だと300倍だとどうなるんでしょうか」

 

「まあ、単純に体重が今の300倍になるってことよね。いきなり300倍とかしたら潰れるんじゃない?」

 

「それは怖いっすね。ゆっくり身体に慣らしていくのがちょうど良いって感じっすかね?」

 

「そうですね。とりあえずはまず10倍の重力に慣れることから始めましょう。今日はこのまま生活して、明日あたりから組手でもしますか」

 

全員がその提案に頷き、とりあえず今日は10倍の重力に身体を慣らす事にするのだった。

 




友人にキャラの台詞の所一行開けた方が読みやすくね?と言われたので試作的にやってみました。見にくいなどの感想がなければこのままいきたいと思います。

あと、アザゼルさんは原作で言うブルマ的なポジションにいます。彼女程ではないものの、並大抵のものは作ってくれます。


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使い魔

アザゼルから重力増加装置をもらってから数日、10倍の重力に完全に慣れた白音達は本来の目的である冥界に生息している強い奴と戦いに向かう事にした。ばったり出会ったアザゼルにそのことを言うと、使い魔が多く生息している森に行ったらどうだと提案を受け、その場所を聞き行ってみる事にした。

 

「じゃあ、ここからは別行動ですね」

 

森に辿り着いた白音達は各自別れて自分が行きたい所に向かう事にした。気を探ればいつでも合流出来るし、第一、4人だと相手が一体だった場合、3人が手持ち無沙汰になってしまうので効率が悪いのだ。だからこその単独での行動である。

 

「あ、それとさっきザトゥージさんから貰ったこれも渡しておきますね」

 

そう言って、白音はこの森に入る前使い魔マスターを目指しているらしい悪魔、ザトゥージからもらった簡易的な召喚の為の魔法陣が描かれた紙を配る。ザトゥージ曰く、使い魔にしたい奴が見つかったらこれで俺を呼び出してくれよな、との事。使い魔になった魔物や魔獣は記録しているんだそうだ。因みに白音達は悪魔では無いが、使い魔を持ってはいけないわけでは無いらしい。

 

「では、私はこっちに行ってみます」

 

「なら、私はこっちね」

 

「ウチはこっちにしてみるっす」

 

「で、では私はこっちに」

 

各自が行きたい方を指差して、互いに手を振りつつその方向に進んでいく。どんな使い魔がいるのか心を躍らせながら。

 

 

「気が無かったら、絶対迷ってしまいますね。私」

 

そんなことを呟きながら、森を進むアーシア。未だに魔物にも魔獣にも会えていないが、気による周囲のサーチはずっと行なっているので実際は周囲に小さい気しかなく、会えて避けて通っていたりする。弱き者を虐める趣味は無いのだ。

 

「あれ?」

 

気による周囲のサーチを広げて、アーシアは小さくなっていく2つの気に気づいた。その近くには大きな気が存在している。ともなると、その大きな気の持ち主が襲っていると考えるのが妥当だろう。弱肉強食とは言うものの気づいてしまった以上放って置けないアーシアは、その方向に高速で向かっていった

 

「あれですね」

 

高速移動により、すぐさま距離を縮めたアーシアの目に入ってきたのは、小さい羽を持った二足歩行のアーシアより少し小さめの龍とその龍よりもかなり小さな子龍、そして巨大な猪。その猪は持ち前の角で、2匹をまるでボールのように弾いて遊んでいる。それをやめさせる為、アーシアは瞬時に接近し、ゼロ距離で気合砲を放ち吹き飛ばす。吹っ飛んだ事を確認しアーシアは2匹に向き直り、神器での治癒を開始する。

 

「大丈夫ですよ。私が治してあげますから」

 

一瞬警戒の色を見せた2匹だったが、本能的にアーシアが危害を加えない人間だと悟ったのか、治癒を受け入れる。先の猪が戻って来る前に、治しきりたいアーシアにとってそれは嬉しい事だった。そして、タイミングよく2匹を治したと同時に猪はやってきた。雰囲気からして怒り狂ってるのがよく分かる。まあ、本人的には楽しみを邪魔されたのだから当然と言うべきか。そんな猪を見て、アーシアは自身の気を高め、青白いオーラを纏う。

 

「先程ので逃げてくれれば良かったんですけど、やはりそう甘くは無いですね」

 

唸り声を上げながら威嚇してくる猪を見ながら、アーシアはそう呟く。気を高めたとはいえ、特に構える事もなく自然体で立っているアーシアと怒りのままに今にも突っ込んで来そうな猪。このまま睨み合っていても拉致があかないので、一瞬目線をずらす。それを隙と取った猪が勢いよく突っ込んでくる。しかし、アーシアとしてはそれが目的だったわけで、角を掴み気を解放しそのまま上空へ投げ飛ばす。残念なことに、突っ込む位しか攻撃手段のない猪は、空中に投げられた時点で勝機は1%も残っていなかった。アーシアは何処かへと飛んでいく猪を見送り、再び2匹に向き直った。

 

「さあ、貴方達を虐めていた猪は私が退治しましたから、もう安心ですよ。これで少しは平和に過ごせるはずです」

 

通じているとは思わないが、とりあえずそう伝えてその場から去ろうとするアーシア。しかし、袖を引っ張られて去ることは出来なかった。何事かと思い、後ろを振り返ると、小さい羽の生えた方の龍が何か言いたげに袖を引っ張っていた。もう一方も、アーシアの周りをくるくると飛び回っている。なんとなく言いたいことが分かったアーシアは、確認のために聞いてみることにした。

 

「私と一緒に行きたいんですか?」

 

こちらの言ってる事を理解しているのか、首を縦に振る2匹。それらならばと例の魔法陣が描かれた紙を取り出し、魔力を流して、ザトゥージを召喚する。

 

「俺を呼んだって事は使い魔にしたい奴が見つかったんだな?良いぜ、俺にかかればどんな奴でもゲットだぜ!で、その使い魔にしたい奴はそいつらで良いのか?」

 

「はい。この子達で良いです。あ、でも1人が2匹の使い魔を持つと言うのは平気なんですか?」

 

「ん〜?別に平気だぜ〜。まあ、多すぎるのは問題だが、2匹位なら問題ないぜ。しかし、蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)にハイヤードラゴンか、なかなか珍しい奴らだぜ。特にハイヤードラゴンは珍しい二足歩行の龍だ。基本人間態以外は如何に龍といえど四足歩行だからな。ちなみに、その小さな羽で飛ぶ事もできる。まあ、龍は基本飛べるけどな。それじゃ、そろそろ始めるか」

 

そういうと、ザトゥージはアーシアに使い魔契約の方法を教えた。アーシアはそれに従い、2匹との契約をすませたのであった。

 

 

 

 

 




悟飯と仲良しだったハイヤードラゴンの登場です。タグ付けした方がいいのだろうか?


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