変なのに愛されて悪夢しか見れない (蒼穹難民)
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一旦整理します。読み飛ばしても大丈夫です。


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鈴木真由(すずきまゆ)

 

 

見た目まんまガンダムseedのマユ・アスカの男版。

転生者ではあるが転生したことも憶えていないし前世の記憶が混同し悪夢だと思っている

複数の魂が混ざり合いその根本を思い出せず、フェストゥム汚染能力はこのせいである。

不安や恐怖をポジティブに誤魔化そうとして自ら破滅するポジティブコミュ障タイプ。

仲良くはなるが一線があり自らをさらけ出しにくい面倒な性格である。

 

 

ラハム

 

キングゲイナーのドミネーターを全身黒くして頭の様な丸みがある見た目。

ラハム自身も転生者であるがフェストゥムとして産まれた為、真由と違い魂は一つだが、

前世については全くと言っていいほどしらない。

2115年にまるで惹かれるかのように真由を襲撃。

丸呑みした真由の穴という穴から自らの細胞を入れ、

調べようとしたが真由の記憶から得た情報から、

『全てのフェストゥム、人類と同化し高位に向かう』という発想をし、

全てのフェストゥムを同化してから全ての人類と同化しようとしている。

しかし真由の感覚の共有により感情が芽生え苦悩している。

 

能力

 

直接同化:直に触らないと同化出来なくなった。

感覚共有:真由君が起きている間は感覚を共有できる。真由君はまだ知らない。

泥:高エネルギー体で色々使える、便利。けど泥だから柔らかい。

 

スペック

 

全長:10m 速度:100mを2.5秒 体重:90kg 力:60kg

 

 

 

ギネヴィア

 

見た目は全身金色のFate/zeroのバーサーカー。

贖罪の為に今自分ができる人助けをしようとしている。

最近夢で我が王がラブコメをしていて

「私にはランスロットがいますし?愛してくださいますし?」

と気丈にしているがランスロットの浮気症に不安を拭いきれないでいる。

騎士王と思われているので女性からのファンが多く、複雑な思いである。

浮気は謝れば許すが愛されないと必死になる駄目人間製造機。

 

能力

 

剣:同化能力を消して全て割り振った、力任せではあるが海を割るほど強く、疾い。

 

スペック

 

全長:40m 速度:秒速100km 体重:(浮かんでいる為測定不能) 力:3千t

 

 

 

アドルフ・ヒトラー

 

純粋な人型で全身が白いが服を着ている。顔はなく目の部分に仮面をしている。

人類軍に自分の有利な派閥を創り、人類だけではなく地球の心配もしている。

中立になろうとしていたが余りにも人類軍の危険性があった為、ヨーロッパ勢力として独立。

ヨーロッパ全体を洗脳して人類軍と交渉しているが

「洗脳されている」

として受け入れられたことはない、地味に大正解である。

それでも人類軍は物資やヨーロッパの最新兵器を集るので本当にどうしようもない。

人類軍が世界最大であると理解している為生活物資のみを送っているがバラして兵器を造られる為

ほとほと困っている。地球最大の良心。

 

能力

 

洗脳:洗脳ではあるが意識を植え付け正論を説いている為どちらかと言うと精神鎮静剤。

 

群体:小型のフェストゥムを生み出し暗殺、監視、盗聴、洗脳をするなど幅広いがフェストゥムに対しては吸収される為無力。

 

スペック

 

全長:183cm 速度:100mを10秒11 体重:78kg 力:49.3kg

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ギネヴィアさんチート。


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プロローグ
プロローグ


やあ (´・ω・`)
ようこそ、蒼穹難民へ。
このリンゴはサービスだから、まず食べて落ち着いて欲しい。

うん、「初めて」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。

でも、このタイトルを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この小説を立てたんだ。

前書きから同化の拒絶反応が出たひとはブラウザバックをお願いします。


ーー人は幸せを感じられるから絶望も感じるーー

 

何処か聞いたような台詞だがまああっているだろう

 

私達は感情がありつまりは希望もあるのだからーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

小腹が空いてなかなか寝付けない夜、私は買い置きしておいたラーメンを作ろうとしていた。

 

「ウソやん」

 

ーー断水してたのを忘れ、思い出すまではーー

 

断水の告知は来ていたが(○○時に貯めればいいや)

ネットで動画を見ていて(やっぱ××時で)

動画の関連で面白いのがないか(この時点で忘れてる)

時間ヤバいけど小腹が空いて寝付けないから台所の冷蔵庫に貼り付けた断水告知をスルーしてインスタントラーメンの袋を開けて冷蔵庫の中身を確認しようとしてやっと気が付いたのだ。

{21時〜3時断水予定、付近の皆様にはご迷惑をおかけします。}

 

「しかしヤバいと思い、寝ようと考えつつPCつけたままの自分に隙はなかった」

 

[ラーメン 水 無い]で検索してみた。すげぇ!水で作れるんだ!

 

「ちゃうねん、確かに美味そうやけどほかほか食いたくてお湯どころか水も無いねん」

そういえば最近ラーメンの話をしていた先輩がいたな…[ラーメン アレンジ]

 

「マジで?温めたの最近飲んでないけどお腹壊さない?」

 

牛乳で作るラーメンが出て来た。

 

「バターラーメンとかアイスラーメンあるし大丈夫でしょ」

 

空腹には勝てなかったよ…ほかほかラーメン食べたいどころかテンション上がって来た。

 

「トッピング〜♪……刻みネギしかぬえ…」

とりあえず作る、冷蔵庫に具材はあるが調理すんのめんどい、私明日になったら卵とメンマ買いに行くんだ……‼︎

 

「卵もないとか自分の感性を疑っちゃうね」

ぬっ、思いがけずいい味しおるわ。

 

私はそのまま部屋に戻り食べてる時間勿体ないよね!と自己弁護しつつ、

動画を見ながら食べ、食べ終わった丼を水に浸し歯を磨いて寝た、(牛乳の匂いしゅごい)

 

寝始めてから1時間ほどたったとき衝撃が迫るーー!

 

「あかん、咄嗟に時計みたけど、これは違うな・・・

……あだだだだぁぁっ…ホワチャぁあぁぁっ……?!」

 

今自分の秘めたる力が⁉︎…ふざけて誤魔化そうとしたけど

急な腹痛にお腹が痛い、自分でも変なこと考えてるが余裕がなくなって来たのだ。

真っ先にトイレに駆け込んだ、…それにしても11時過ぎてるのに外が喧しいなぁ…

工事の人達お疲れ様です、ってあっ・・・

 

「断水でトイレ使えんやん…」

 

セーフ!セーフであります!この門は死守したぞ!しかしこのままではまずい、3時間もトイレに排泄物を放置すれば間違いなく掃除が面倒になる、まずにくいアンチクショウな告知の紙を見ながら選択肢を考えてみる。

 

[コンビニ] Non,範囲内です使えません本当にいつもありがとうございました。

[駅] Non,遠すぎます、いつもは朝満員なくせに物理的な意味で使えん奴め…!

[公園] あっ使える、勝ったぞ!第3部完‼︎我々の勝利だ!

 

「そうと決まれば善は急げ、なくても急げぇぇぇ…!(小声)」

しかし何がまずかったのか、やはり牛乳か?トイレから出つつ居間から家の鍵を取りに行く

ん?このプラ容器捨て忘れてたわ、なんだったか…あっ、

 

「ネギザァン!?オンドゥルルラギッタンディスカー?!」

 

まさかの刻みネギだとぉぉ!?クソッ!やはり最初から切ってある奴は日持ちしない!

でも買っちゃう!便利なんだもん。

 

私はサンダルを履き、ギリギリ断水範囲外の公園トイレへ目指して急いで駆け込んだ。

夜中だからか公園のトイレは古くホラーチックだが便意には逆らえない。

 

「あぁぁっ生きてるって素晴らしいぃぃっ…」

自分の指を抓りつつヘドバンしながら個室に居る私が1番のホラーだろう、腹痛が半端じゃないから他の痛みで堪えるしかないのだ。

 

「もぅマヂ無理。リスカしょ・・・」 (アナタハソコニイマスカ?)

 

ん?なにか聞こえたような…工事音だな間違いな… (あなたはそこにいますか?)

 

 

…今度はやけにはっきり聞こえたな、他の個室かな?っと思ったが全部空室で誰か入って来る足音も無かった…

やめよう、幻聴に考えても仕方がない。(挙動不振

 

それよりも真っ先にトイレから出るのが先決だ。

(あなたはそこにいますか?)「居るよっ⁈居るけど来ないでくれるかなっ!?」

 

ぎゃあああっ‼︎‼︎なんか居る!てか来てる‼︎もしかしてここは810か何かだったのか⁉︎

このままでは私の身の危険が危ない!魔法使いはまだしも使用済みになるのは嫌だ!

 

私は高速(自称,でトイレから出て最速(自己ベスト,で手を洗い外の曲がり角へ出た、

このコーナーで差をつけてやる!そう意気込んでいたらトイレが消失していた。

 

「・・・はぁっ?」

 

先ほどのトイレが文字通り消失(・・)していた。

 

「あっ…えっ…?いやいやもうホラーはお腹いったい・・・」(あなたはそこにいますか?)

畜生!まだお腹痛い!けど今度は後ろから聞こえた、オカルトではないなら走ってにげられる!

走って逃げる用意をしてそう振り向いてみたら

 

(あなたはそこにいますか?) 「チェンジで」

 

ーーー全身金ピカな変なのと出会ったーーー

 

 




蒼穹のファフナーもっと流行れ

感想・批評・誤字報告の返信はなかなか返せませんがよろしくお願いしますm(_ _)m


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いちにちめっ!

前回のあらすじ


水万能説


前回のあらすじ

 

水万能説

 

「・・・」 「・・・」

 

全身金ピカな未確認生命体と遭遇した。メトメガアウー

いや根源的破滅招来体かな?

「どんな相手でも会話は重要だよ?」

という先輩の教えに従い挨拶を試みる。

なお先輩は海外の雪山ちほーへ世界を救うと就職に行った。

 

「ドーモ。ハジメマシテ、鈴木(すずき)真由(まゆ)デス。あなたh(ヴォン」

 

ん・・・目の前が・・・真っ黒・・・

 

「アーーーーーッ!!」

 

身体が宙に舞い一気に公園の木に叩きつけられる。

腕が木の枝に刺さり動けない。

元の場所を見ると黒い球状があり、地面ごと消失した。

金ピカはこちらを首?を傾げながら見ている。

おまいが犯人か。ゆ゛る゛さ゛ん゛!!

 

しかし、ここで逆上するのは得策ではない。

ごめん、普通に動けない、めっさピンチ。

変なのは一部を変形させ触手を此方に向けてきた。

気持ち悪!こっちくんな!

触手が私の動けない手に巻きついてきた。ヒエェェ

 

 

バチィッ‼︎「・・・ぴょ!?」「・・・!?」

 

 

いったい!意識朦朧として現実逃避頭が覚めるほど痛い!

ビリビリした手を反動で抜いて泣きながら頭を抱える。

 

「へるぷみーーー!」

 

瞬間頭があった場所に触手が通る。

後ろの木が木っ端微塵になった。ナニコレ…フザケテルノ…

触手?の私に触れた部分は黒くなっている。なるほど電気タイプか。

周りをよく見ると工事中だと思っていた道路は綺麗に切り抜かれている。

こんなところに居られるか!私は家に帰るぞ!

隠れながら進むと近所のコンビニやマンションが空洞になってる。

私は間借りしている、叔父の家に急いで向かった。

 

「ふゎぁ?」

 

そこには叔父の部屋だけない家があった。

つまりはそういうこと(居なくなった)なのだろう。

そんな…合法ショタで職場でモテモテで最近は、

「キミとて私より高いだろうが!最早止める術は無い!」

と私の水筒に縮長薬を入れ私の身長を3cm奪ったあの叔父さんが…

あれ?別に良くね?身長の罪は重い(断言)

翌日、成長期の私に追い抜かれてorzってたがな!

 

兎に角隠れてやり過ごす。

まず警察に電話して助けて貰おう。

 

prrr「助けて!ポリスm(あなたはそこにいますか?)…スッ」

 

なんだよこれ詰んでるじゃないか。

もう小生やだ!寝る!

自分の部屋に行き布団を被ったら壁が消えた。

 

 

や せ い の 金 ピ カ が あ ら わ れ た !

 

 

口みたいに変形して喰われた。

全身ジュッとなったところで、私の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーその日、高身長でマスクをかけて高笑いしている叔父さんの悪夢を見たーーーー

 

 

 

 

縮めコノヤロー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




真由君
150cm→147cm(縮長)→151cm(翌日と見え張ったが1年後)
叔父さん
148cm→183cm(せやけどそれはTDN夢や)


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ふつかめっ!

前回のあらすじ



「そして誰もが願うだろう!
モデル体型になりたいと!
高身長が欲しいと! 」


時折私は悪夢を見ていた。

家族と暮らしていたが

叔父さんの家で暮らしてる理由がそれだ。

 

実家はマンションで高いところが苦手な高所恐怖症の私は、

毎晩夢で高いビルから爆破する悪夢をほぼ毎日見ていた。

 

その日に天ぷらを食べるとKATANAを持った男が

私を抱きしめている女性と共に、

斬り殺される悪夢にワープ進化するから溜まったもんじゃない。

 

さらに手に負えないことに5人家族の我が家は、

父を除き全員ドSなのだ。

 

兄はよく「真由は小さいままでいい」と私を貶しつつ誕生日に、

ピンク色のガラケーをプレゼントしてくれやがった。当然今は使っていない。

小学生の間、兄の友達を連れ幼児用のキグルミパーカーを着させられ、

大量の写真がそのケータイに入れられている。

それでもプレゼントだからと持っている私をみると、

兄は邪悪な笑顔で隠れながら私を見るのだ。鳥肌が止まらない。

 

妹は「兄さんは本当にお馬鹿さんですね」と煽っていた。

妹はお菓子作りが上手で私はよく釣られてご馳走になったが、

たまに激辛なのを混ぜていたのだ。

私は水分を求め逃げようとするが妹が羽交い締めにして

いつも私に脅迫してくるのだ。しかも要求が料理の味見で

全部激辛料理なのがタチが悪い。妹は辛党で甘党だから

私が我慢しつつ意趣返しに辛い調味料を美味しいと、

やせ我慢して食べていると

「本当ですね!真由にももっとかけてあげます!」

地獄の誕生だった。妹は煽る時は兄さんと言うが本音の時は私を名前で呼ぶ。

バレたらお仕置きされるので味覚を失いながら食べた。

 

そして1番の|アルティメットサディスティッククリーチャー《USC》が母だ。

母はことある毎に私をいじめていた。

命に関わる事ではないが私を肩車して泣いてるのを楽しんだり

誕生日ケーキのロウソクを先に消して愕然してる隙に、

私の分のケーキを崩して高らかに笑うのだ!あの悪魔め!

子供の日には重い鎧で動けなくして私のお菓子を食べたり

お風呂に突撃してきて冷やした菖蒲(しょうぶ)を入れてくるのだ!

さらにこの悪魔は下着を隠してオムツに入れ替えてたのだ。

タオルで腰を隠しつつ下着を探してると

「真由ちゃん、なにしてるの〜?」

白々しく邪魔してくる上に腰のタオルを獲りにくる!

しかもタオルを取られたらオムツを履かせるから

私はタオルを死守するのだ!「ちゃんと服着ないとダメでしょ〜?」

黙れ悪魔め!おっと回想で熱くなってしまった。

 

そして父だがあまり関わり合いがないのだ。

無関心程ではないが無口で

「あぁ」や「うん」ぐらいしか話さない。

泣いてる私を助けてくれたり。

甘やかしてくれる唯一の存在だった。

家族仲が悪い訳ではなく母が何故か、

私や兄妹にはちょっかいをかけるが父には

見たことが一度もない。それどころか

私を助けるとき母に声をかけるだけで

なんと母が止まるのだ。あの悪魔が!

父に関しては完全に謎である。

 

中学生になる際私はダメ元で叔父さんに助けを乞い。

家族に直談判し許可を得て別居に成功した。

 

 

 

 

さて何故私が家族の話をしているのか?

 

 

 

ーーそれは朝の出来事だーーー

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

私は変なのに喰われたと思っていた。

 

 

 

 

しかし意識が戻ると光が見え、それを求めた。

そしたら転がる様に外へ出た。

 

「へ?(ザバァ)わぶ!?」

 

何故か全身が濡れた。

状況を確認すると眼に映る景色は海だった。

 

「なんで?まだ夢の中なのか私は…」

 

振り返るとそこには黒いなにかがいた。

 

「ウソだろ…?」

 

そこには全身漆黒の変なの(元金ピカ)がいた。

 

取り敢えず襲ってこないどころか私はあの中にいた・・・

もう一度入ると今度は外の景色が見えた。

 

「透明?マジックミラー?いやモニター・・・なのか?」

 

椅子の様に盛り上がり手を置くような場所もある。

私は座って見ると頭の中にこいつの視点が見えた。

 

「見える…360度全方位が…モニター以外の景色が…」

 

なんなんだこいつは?ロボットなのか?生き物なのか?

 

「取り敢えずここはどこだ?何故海が?」

 

疑問に思っているとモニターの一部が変わり

TVみたいにニュースが流れ始めた。

 

「いやありがたいけど、なんで英語?」

 

食い入るように見てたら断片的だが理解できた。

いや、せざるを得なかった。

 

「なんで?…………なんでなんでなんでなんでなんで!!?」

 

 

 

 

 

ーーーーー核攻撃による日本の沈没ーーーーー

 

 

 

私は我武者羅にこいつを飛ばしたーーー

 

何故か動かし方を理解できていたーーー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ーーー空から私は地球を見ていたーーー

 

故郷は・・・家族は・・・友も・・・先生や・・・知人全てが・・・

 

 

 

いなくなったと理解した(・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

ーーーーその日、家族で幸せな団欒の光景の悪夢を見たーーーー

 

 

 

涙が止まらなかった

 

 

やせ我慢も限界だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あそこまで巫山戯てたのは実は真由君のやせ我慢でした。
シリアスはこれで最後にしたい。


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みっかめっ!

前回のあらすじ


「人類軍絶対許さねぇ!」


あれから私は情報を集めた。

 

幸いこいつは記録機能も有るようで

様々な事が分かった。

 

まずあの日から30年近くたっている。

どうやら私はコールドスリープよろしく、

保存されていたらしい。

それから此奴になんとコミュニケーションが取れた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「誰か・・・誰かいませんか・・・?」(ココニイルゾー!)

 

「ファッ!?」

 

1人寂しく海で独り言を呟いたら

最初に聞いた、可愛い詐欺ボイスが脳に響いた。

 

(こいつ直接脳内に!?)(ふぁみちきクダサイ)

 

(今北産業)

 

(ヘンナノイタカラ

同化シヨウトシテ

汚染サレタ←今ココ)

 

「把握」

 

それだと私が変なので汚いやつみたいじゃないか、

全く失敬な、後同化とはなんぞや?

 

(ボクトケイヤクシテヒトツニナッテヨ!)

 

「なにそのエロいようで確実にヤバイの」

 

ボクっ娘 なんてレベル高すぎませんかね?

 

(ボクトシテハ同化ドコロカ、

わーむすふぃあヲハジイタへんたいニイワレタクナイ。

後ねっとニソマリスギジャナイカナ?)

 

「ところどころなに言ってるかわからないナマモノに言われたくはないな」

 

(ヒドイ!ボクヲキミイロニソメタノハキミナノニ!)

 

「その誹謗中傷はやめてもらおうか」

 

なに?同化出来ないから直接脳に繋いだ?

それで人間について調べようと?

その発想はなかった。

人格は私に影響されて?夢が広がリング。

 

「ワームスフィアってなんぞや?」

 

(理解不能ナアイテヲ抹消スル素敵あいてむ。)

 

「なにそれこわい」

 

いきなり相手を抹消とか物騒すぎんよー。

 

(大丈夫!チャント返事シタ相手ハ同化スルカラ。)

 

「安心できるようそがにぃ、

それに私返事したよね?

なして開幕ブッパしたし」

 

読心しようとして出来なかったから?

君たち絶対AV界の生き物だよね?

同化といい読心といい。

 

(ナンデAVニツイテソコマデ詳シイカ

オ姉サンニイッテミ?)

 

「アニマルビデオだよ、

言わせんな、恥ずかしい」

 

(サッキえろイトカ言ッテタヨネ?)

 

私の回避術を突破しよった…!

やりおるわ。

 

「てかお姉さんって君女の子なの?」

 

(性別ナイヨ?)

 

何故お姉さんだし。

 

(きみ本当ニ中学生?

色々混ジッテル気ガスルンダケド…)

 

この程度で根をあげるとは未熟者め。

 

(あーと、普通ニ話シテルケドきみ大丈夫?

アル意味きみの家族ノ仇ナンダケド…)

 

「叔父さんはともかく、仇は人類軍?だから

モーマンタイ、もちろん君にも復讐するよ?」

 

(実ハボクノ中ニハきみノ叔父サンガイルンダ!

復讐ナンテ不毛ナコトハヤメヨウ!)

 

「ならん、泣かす」

 

余裕が出来ちゃったじゃないか。

 

(きみノ叔父サンヲ取リ戻スニハ多クノふぇすとぅむ・・・

ツマリボクノ同種ト同化シテイケバきみノ叔父サンハ戻ルカモシレナイ!)

 

「断言しないとこは間違いなく私の汚染だな。

じゃあどうすればいいの?」

 

(トリアエズふぇすとぅむヲ探ソウ・・・

ココカラ南西ニ反応ガアルヨ)

 

「戦うの確定について」

 

私のネゴシエートが火を噴くぜ!

 

(後きみニ汚染サレテすぺっくガオチテル)

 

「私の土下座が火を噴くぜ!」

 

(ボクミタイノ珍シイカラキカナイカモヨ?)

 

ちくしょう。

 

「因みに30年も寝かされてた理由は?」

 

(きみノ知識ガ楽シクテツイ長引イチャッタ!)

 

染まりにいってんじゃねーか。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーその日、叔父さんがクローンだと言う悪夢を見たーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 




怪我と食事については次回。


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どうせみんないなくなる。家に帰るもの。
よっかめっ!


前回のあらすじ

仲間が増えたよ!


ーーーーーL計画ーーーーー

 

 

それは人類がフェストゥムに対抗する為、

人工要塞生活移住区、竜宮島のL区画を囮にし

その間に戦闘準備を整える危機回避プログラム。

ーーデコイとして時間稼ぎをする計画だった。

 

参加要員は選抜されたパイロット8人、各スタッフ32人の計40人

更に新型の対フェストゥム人型起動兵器ファフナー[ティターン・モデル]が4機実装された。

日数は60日間と言う2ヵ月の短いようで、余りに絶望的な期間だった。

 

しかし誰一人として参加取り消しを行わず、受け入れていた。

ーーー彼等は皆、志願兵で守るべきものがあった。ーーー

補給物資すら届けられず、それどころか物資にロックをかけ、

時限式に物資を使用可能にする、極めて切り詰めたものだった。

 

それでも必ず故郷に帰ってくる。ーー

 

将陵僚(まさおかりょう)はそう信じていた。初日にフェストゥムを倒した、

その日までは。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「第1戦闘準備急げ!」

 

「パイロットは乗ったか!?」

 

「連日にフェストゥムだと!?」

 

 

警報が鳴り響き慌しく戦闘準備をする。

今まで連日に襲ってくることはなかった為、

軽いパニックになっている。

 

「なんでこんな急に!?」

 

「知らないよ!」

 

レーダーと映像によれば未確認の人型フェストゥムが接近。

まるで亡霊のような外見の漆黒の敵が現れた。

 

「とにかく出ます!」

 

「すまない!」

 

将陵僚は不安を拭いきれなかった……

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「フェストゥムいるんじゃなかったの?」(オカシイナァ…)

 

 

あれから私達はフェストゥムを探していたが出会うのは人類軍だった。

 

人類軍を確認してコミュニケーションが取れるか確認しようとしたら、

一斉砲火された。まあするよね。

 

「しかし当たらなければどうと言うことはない!」

(・・・・・・)

 

かっこつけていたが普通に無理ゲーである。

うちの子は打たれ弱くCIWSですら沈める事が容易だろう。

我々が本気出す時はうちの子は黙り、行動操作は私が担当している。

 

今も戦々恐々しておりフェストゥムを探している。

 

「しかしこうも見つからないとは・・・ぬ?」

 

なにか島の様なものが見える。

 

「ラッキー!まだ島があったんだ。」

 

やっと一息つけると降りようとしたら。

 

『うおおぉぉっ!!』「!?」

 

弾丸が飛んできた、ブルズアイ!

 

「ってマズイ!マズイ!」

 

急いで回避した。

 

『なんだこいつは!?』「人の声!?もしかしてロボット!?」

 

ふぉぉぉ!こんな状況じゃなければ嬉しいのに!

 

「待ってくれ、私は人間だ(キリ」『人類軍にも竜宮島にも属さない、見た目がフェストゥムの相手が信じられるか!』

 

ぬぐぅ…正論で胸がいたい…

しからば逃げる!!

 

クルッ『!待て逃げる気か!』

 

そりゃ逃げますとも。

速度ならこちらが速い為すぐ逃げきれた。

いや逃げきれたのに気づかなかった。

 

「うわー、かなり遠くにいるな」

 

こちらは視認できるがあちらは見失ったようだ。

 

しかしこんな速度でよく揺れないものだ。

(揺れてるよ?同調が進んで人外化してるんだろうね。)

なるほど。

 

「えっ?」(どう?かなり流暢になったでしょう?)

 

違う、そうじゃない。

 

 

 

 

ーーーーーーその日、私はボドボドなる悪夢をみたーーーーーーー

 

 

それでもご飯が食べたい。

 




今回は短めです。


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いつかめっ!

前回のあらすじ

「黒いフェストゥム…一体何者なんだ…?」


ーー『新国連人類軍』(NUNHF)ーー

 

 

彼等は人類最後の砦ーー

 

ーー人類を護り、繁栄を齎すが使命ーー

 

そう、誰もが願い信じていたーー

 

ーーーあの日の[楽園]を取り戻すのだとーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『新国連人類軍本部(南米チリ)』

 

『 第2軍事会議室』

 

「これより、第36回対Si(シリコン)型生命体による、

軍事会議を行います。配布資料を各自確認の上、進行します」

 

1人の青年がプロジェクターを立ち上げる。

今では珍しいアジア系の顔であった。

 

「私、第3アジア支部海軍所属リオウ・チョウ少尉が

司会とアジア支部の軍事報告を勤めさせて頂きます。」

 

「待ってくれないか。」

 

黒人の軍人が顰めた顔で手を挙げる。

アフリカ第2支部の少佐であった。

 

「なぜ君の様な階級の低い佐官が司会、それに報告までするんだ?

担当の少佐と調査班の中尉はどうした?」

 

そう、会議室にいた誰もが思っていたがアジア支部の人間が異常に少ない。

そして1人の佐官に報告だけではなく司会もするなどありえない。

 

「それを含めて始めさせて頂きます。」

 

「・・・・・」

 

彼は批難するつもりではなく、

本当に疑問・不安があり質問をした。

それを含めてと言う事はそう言う事(戦死)なのだろう。

ここではよくありそして堪え難いものであった。

 

「先日元日本海付近にて、近年より確認されている

特異型Si生命体と思われる存在と遭遇。

これと戦闘を開始しました。」

 

「新しい特異型か・・・」

 

モニターでは漆黒のフェストゥムが映る。

 

「こちらにコンタクトをとりにきましたが

作戦担当の大尉が攻撃を指示、

少佐は誤射で亡くなり巻き添えで中尉も亡くなりました。」

 

「・・・・・」

 

しんみりした空気を返せコノヤロウ。

 

「大尉は明らかな殺害目的で行い、

特異型は攻撃をしなかった為

上司の死亡による昇進を狙った物と思われ

翌日、直ぐに軍事裁判で死刑が確定しました。」

 

「・・・・・」

 

これも人類軍でよくある事だから困る。

誤射と言うのは表向きで軍への批難を避ける為だろう。

それをここで言うのだからこの少尉はいい性格をしている。

 

「それではこちらの映像をご覧ください」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『あっ!船がいる!しかもあんなにたくさん!』

 

オオーイ!「少佐、こちらに手を振っていますね。」

「うむ、近年確認されている特異型は友好的で

危険は少ないと思われる、大尉に連絡して

コンタクトをとると伝えてくれ。」

「了解致しました、大尉、こちら指揮艦

これより特異型とコンタクトを…『少佐になりたい!』

は?」ドォーーーン!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「申し訳ありません、間違えました。」

 

「・・・・・・・・」

 

なるほどこれはキレる。

思われるじゃねーよ、確信犯じゃねーか。

 

軍の黒すぎる部分を見て少佐は溜息をついた。

 

「尚、特異型による被害は認められません、

大尉の暴走により巡洋戦艦が轟沈、

護衛イージス艦が二機大破しました。」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

もう人類が生き延びる為には大粛清をした方がいいのではないか?

 

「こちらの映像が特異型の映像となります。」

 

「・・・ふむ」

 

特異型が対防空システムCIWS[ファランクス]による

対空ミサイル、バルカンを全て避けている映像が映る。

 

「 珍しいな、避ける(・・・)とは」

 

「ええ、耐久性は低く機動性があると思われます。」

 

「防壁がない…もしくは使えないのかもしれません。」

 

「最初のコンタクトを取ろうとしたのは読心能力もないからでは?」

 

真面目な話なると他の佐官達も語り始めた。

面倒を上司に丸投げんなよコンチクショウ。

しかも仕事できるから困る。

 

各地では近年特異型のフェストゥムが発見された。

 

エジプト付近では花の様な粒子を撒き水を促し、

砂漠に潤いを与え、花を慈しみそこの人々と

ピラミッドを護る褐色のフェストゥム。

 

ブリテン海域では通常のフェストゥムとは違う、

近づくフェストゥムを切り捨てる王のような

黄金の輝きを放つ騎士の様なフェストゥム。

 

中国海域では癒しの力をもつ光を放つ、

慈愛に満ち溢れ、しかし同化を促し

人々と一つになろうとする橙色のフェストゥム。

 

ヨーロッパでは人々を管理し、

適材適所の労働をさせ、福利厚生を徹底させた

まるでユートピアとディストピアを混ぜたような

政治を行う白いフェストゥム。

 

 

これらは人型をし人類とコミュニケーションがとれ

友好的であるフェストゥムで特異型と呼ばれる。

 

「これよりこれらのフェストゥムを

オルフェン・エノク、死より蘇る人を意味する

通称オルフェノク型と呼称する。

アジア支部は引き続き漆黒のフェストゥムを追ってくれ」

 

「了解致しました。」

 

「他に何か意見があるものはいないか?」

 

その中に初めて参加する准尉が手を挙げた。

 

「あの…この事を上層部に報告しなくてもよろしいのでしょうか?」

 

「あの BBAにフェストゥムより先に人類が核で滅ぼされるからだ。」

 

 

なお近年の調査によると死因第1位の蚊の病気感染を上回り、

人類の敵は人類になったとか、因みにフェストゥムは3位です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「そういえば君の名前も考えなきゃね」(そうだね。)

 

うーむ、私の頭の中の先輩が論議している…

海…汚染…そうだ!

 

「君の名前はラハム、ラハムなんてどうかな?」

(ああ、メソポタミアの最初の人類の1人…

うんいいんじゃないかな?海で産まれたようなもんだし。)

 

私の中の先輩が「その名前はまずい!」とか言ってるけど

大丈夫だろう、もう一人の先輩は「塵…塵をよこせ…」

とか言って気に入ってるようだし。

 

「君はそういえば何ができるの?」

(スペックが下がって急激な変形はできなくなったね、

後は防壁、読心ができなくなってワームスフィアも作れない。

まあ、泥の様なものが代わりに作れるし読心もされないから。

それでも破損すればワームスフィアは発生すると思う。)

 

「なにその生きた棺桶」

 

汚染して自爆するのって敵味方問わず怖いと思う。

 

(君は気づいていなかったけど

昨日のロボットは飛べなさそうだから

空を飛んで防壁を突破することもできるから

人類からしたら大分凄い方じゃないかな?)

 

「そっか、デメリットばかり考えてたけど

君大分すごかったんだね。」

 

棺桶ではなく人間ミサイルだったか。

 

「それより他の島は見当たらない?」

(昨日島以外見当たらないね…)

 

私のパンツが体感時間的に

もう5日目に突入するのだが。

 

 

ーーーーーーその日、私は叔父さんがBBAに誘惑される悪夢を見たーーーーーーー

 

いいぞもっとやれーー

ダメだ吐き気がやばい。

 

 

 

 

 

 




ここの人類軍は頑張っています。


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ばんがいっ!

息抜きにやった、読み飛ばしても多分大丈夫です。


ブリテン海域にて

 

そこにはスフィンクス型フェストゥムと

身体の一部をまるで剣のように両手で構える

オルフェノク型フェストゥムがいた

一触即発の中スフィンクス型から声が響いた。

 

(あなたはそこにいますか?)

 

 

ーーいいえ、()はここにはいません、ここにいるのは騎士の()のみーー

 

オルフェノク型から声が響いた瞬間スフィンクス型が変化し数十にも及ぶ触手を生成し鞭のようにならした。

まるで高速で動くタービンのようにオルフェノク型に襲いかかった。

 

正面から来る猛攻はまさに壁、

一本は弱くとも数十もの触手がマッハを越えた音を鳴らし、オルフェノク型に少しずつ接近していた。

 

オルフェノク型は剣を構えたまま動かず、触手が迫るのを見えていないかのように微動だにしなかった。

 

剣が触手に触れるかという、直前の緊迫したなかそれを観ていた現地の人や人類軍が固唾を呑み込んだ時、オルフェノク型の腕が消えた。

 

誰もがオルフェノク型の腕が切られたと考え、

海面に墜ちたのはスフィンクス型の触手であった。

 

オルフェノク型が一本一本づつ、スフィンクス型よりも疾く、的確に斬り落としたのだ。

 

海が両者の攻撃によるソニックブームで割れつつ

スフィンクス型が危険と判断し後退する前にオルフェノク型が胴体を袈裟斬りにしそのまま通り過ぎた。

 

 

スフィンクス型が敗れ、人々がオルフェノク型を喝采、称賛し[現代に復活した騎士王][ブリテンの守護神]崇め讃える中オルフェノク型の心境は複雑であった。

 

 

(私は騎士とは最も遠く、あの人(・・・)とは天地が変わろうと私が及ぶべくもないのに)

 

 

かのオルフェノク型は既に死んだ人間の意識を持っていた、しかし人々が称賛している人物名とは全く異なるものであった。

 

(主よ、王よ、騎士達よ、民達よ、そして我が愛する湖の騎士よ、

どうか御許し下さい…そしてどうか人々を護るためこの試練に打ち勝つ強さをお与え下さい…)

 

かの元王妃[ギネヴィア]は神とかつての己の過ちに巻き込んでしまった全てに懺悔した。

 

 

ーーーーーーその日、彼女は王が女の子になり赤毛の少年とラブコメをする悪夢を見たーーーーー

 

 

「」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ヨーロッパ中央にて

 

 

(こんなにも簡単な事だとは、やはり最初からこうすれば良かったか。)

 

白いオルフェノク型フェストゥム、彼もまた過去に生きた人物の意識を持っていた。

 

(しかし人間がこうも愚かだとは、人種などなんてちっぽけなものか。)

 

彼は先ずこの地に来る前に世界に墜ちる核を初めて目撃し、人の狂気に恐怖を抱いた。

 

(同盟国であった日本は核に対し2度も耐えた、しかし人類軍は地図から消えるまで核を落としたが本当にその場にいたフェストゥムは隠滅出来たのか?あそこまでやると確認すらできまいに、隠滅の目的はフェストゥムではなく国そのものではないのか?)

 

彼は人類に対し嘲笑するとともに自らも自嘲した。

 

(所詮、力での支配が1番楽なのかもしれんな、私の行動がなんと浅ましい事か。)

 

彼は保身の為と未練からヨーロッパにいた人間を洗脳し始めた。

読心能力がある為比較的スムーズに進み、1ヵ月もしない内にヨーロッパを管理出来た。

 

(しかしもう限界かもしれんな、ブリテンのオルフェノク型が目立ち過ぎた。人間を守って人間が人間を殺すのだ、皮肉なものだな。他の奴らも哀れなものだ。)

 

彼は情報網として人類軍に何人か洗脳済みの工作員がいる。そうして得た情報の中にブリテン、ヨーロッパのフェストゥム隠滅を掲げた、核による爆撃が予定されていた。

 

(もう少し時間を稼げると思ったが日本の黒め、八つ当たりだが恨むぞ…)

 

先日の日本海域にて表ではフェストゥムとの戦闘があったとされるが、黒いフェストゥムとの接触は報道されなかった。

彼は工作員によって見抜いていたが、これに触発された上層部が各地にいる特異型がいつこちらに牙を剥くかわからない、強硬派による特異型に対する核攻撃を提案、これが受理された。

 

(まったく私の部下があの阿呆によって何人海に沈んだことか!すぐに死刑にしたが公表したら奴ら何をするかわからん。せっかく今の地位を築き上げたというのに、ままなならぬわ・・・)

 

彼はヨーロッパの技術を上昇させるとともに、自らの細胞を提供、これを対フェストゥム兵器に内蔵させ、襲撃して来たフェストゥムを討伐、人類がフェストゥムに対抗できる証明とヨーロッパの優秀さを見せつけ、各地より優位に立つ事により保身を確立させようとしたのだ。

 

(不審に思われない程度に移民させ、残りは海中にて誤魔化すか…日本の技術に頼るのは懐かしいな。それにしても奴らやはり目障りな奴らを消したいだけではないのか?)

 

彼、[アドルフ・ヒトラー]は思考にふけつつこれからの指針に執務するのであった………

 

 

ーーーーーーその日、彼は優秀な空軍の部下が女の子になる悪夢を見たーーーーーーー

 

 

(クソッ!日本の技術を使おうとするとすぐこうなる!あの変態どもめ!)

 

彼は日本限定で預言の才能があるかもしれない。

 

 

 

 

 

 




日本への熱い風評被害


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むいかめっ!

前回のあらすじ

私のパンツは最強なんだ!!


「なにあのキメラ、超怖いんですけど」

(あれはスフィンクス型と呼ばれている子だね、

ちょうどロボットと戦闘しているみたいだし後ろから同化しようか。)

 

うちの子もえげつなかった。

 

「けどロボットは3機もいるし…ん?」

(あれっ?止まっちゃったね。)

 

3機のうち1機が止まった、これはチャーンス!

 

 

「よっしゃ!これで勝つる!」(フラグ…なのかなこれは?)

 

 

フラグを試してみて夏休みの宿題間に合った事があるからダイジョーブ!

ただの迷信なんだからこのまま突っ込む。イヤッッホォォォオオォオウ!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー『L区画内部・パイロット控え歓談モニター前』ーー

 

 

「やっぱりだ…!動かない!」「反応してない!」

 

「パイロットの意識がないんだ…!」

 

あの黒いフェストゥムとの接触から翌日、別のフェストゥムが襲撃して来た。

今回の作戦は安全を考慮してファフナーを3機出撃したが予測不能のワームスフィアの前では奇襲も団体戦も余り効果はなかった。

 

「3番機のパイロット!こっちに来い!交代だ!」

 

「・・・ハイッ!」

 

戦闘中のパイロット交代はかなりのリスクを伴う。しかしこのままではファフナーが…仲間が皆死んでしまう…!

それだけは回避しなければならない、皆で生きて竜宮島に帰るんだ!必ず!

 

整備員の人達と走りながら戦場を駆け抜けた、我武者羅になって前しか向いていなかった。

 

ーーイヤッッホォォォオオォオウ! ブワァァッ

 

「なっぁ!あれは…( ドンッ)うっ!?」「すまん!無事か!?」

 

急な大声と強風に俺たちは吹き飛ばされた、しかし元の場所はワームスフィアによって消滅していた。

 

「なんだ…あの黒いのは…」「俺たちを助けたのか…?」

 

「いやっ!あれは違う!」

 

黒いフェストゥムがスフィンクス型のフェストゥムに抱き着き、抱き着いたところが黒くなっていく!?

その時目にした光景を俺は忘れることなんてできないだろう…まるでこの世全ての悪が全てを汚染する光景に、俺は思えた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ただのコアラさんな件について」(あと5分ほど待っててね〜)

 

いざ攻撃しようとしたが攻撃手段が近接しかなく、ラハムさんの(これが1番早いと思います。)とのことで私は金ピカに抱き着いている。

 

「うへぇ・・・感触が伝わってブヨブヨしてるよぉ…」(直で触ってるボクの身にもなって…)

 

仕方ない我慢するか、気分を紛らわそうと目の前の金ピカを観察することにする。めっちゃ目が痛い。

金ピカは動けないと悟ると手と触手をこちらに向けて変形し始めた。ちょっ…!?おまっ

 

「ぎゃあああああ!!!」(うわー・・・痛そうー…)

 

なんでコックピット貫通してくるの!?そしてなんでラハムさんは平気なの!?

 

(抱き着いた瞬間、痛覚だけ遮断してコアは避けているからね。5分も時間がかかるのは遮断したからだよ。)

「このひとでなしーーーー!!!」

 

今の状態を説明すると下半身がミンチよりひでぇや。

 

「うぼぼぼぼぉおお・・うぼぼぼぼぼぼ・・・助けてぇ・・・死にたくない・・・」

(まだ平気そうだね。まあ、もうちょっと待っててよ。)

 

嫌、痛みは脳内アドレナリンがドバドバ出てるんだけど、その前に喀血で窒息して死にそうなんだが。

てかこれこのままじゃ死ぬよね?普通に死んじゃうよ?・・・ぁっ、そういえば。

 

「泥生成、ディフェンスに定評のある泥田さんだ!」

 

どうだ!突破できまい!(スカッ

普通に貫通した、うごごご。

 

「まずいまずいこのままじゃ本気で死んでしまう。」

(えぇっ!もう少し頑張ってよー、後3分ほど。)

 

この鬼畜生ほんとにどうしてくれようか?(憤怒

コックピット内部は粗挽きよりソフトになった肉片スムージーが出来上がって泥と混ざり、まるでチョコレートみたい。

 

「あぁ^~心臓がぴょんぴょんするんじゃぁ^~………」(ちょっとマジで!?痛いの我慢するからあと1分待って!)

 

ここまで痛覚遮断していたラハムさんは生粋の畜生(断定

 

「………あっ……あ"ッ…………」(あと10秒!!踏ん張って!!)

 

踏ん張ろうにも下半身も前面も腹が捲れてハラワタがコンニチワ!しているのだが。

あっ・・・いしきが・・・あaa・・・

 

薄れ逝く景色のなか紅いロボットが金ピカを両断しこちらを抱き締めて来た所で、まるで英雄みたいだと思った瞬間、私の意識は泥のように失った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーーーーその日、私は紅いロボットが仲間の為に自爆する悪夢を見たーーーーー

 

私は夢の中で、何も出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




初の戦闘、主人公はクソザコナメクジレベル。


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なのかめっ!

前回のあらすじ

「ボク、コアラ!」


「知っているかどうか…悩む天井だ…」

 

目を覚ましたら白い天井が目にはいったが、昔悪夢を見て高熱で寝込んだ病院に瓜二つな為判断に迷う…

 

「いや、ここは君は知らないとおもうよ?」

 

「あっ!?…うぅぅ……ぁの…そのぉ…(小声」ガクガクビクビク

 

なんだ、誰かいたのか。しかし知らない大人に声をかけられた中学生をなめるなよ、こちとら武者震いがさっきから止まらないのだからな!

 

「そんなに怯えなくても…ここは医務室で私は担当医の森田だ。

君は大怪我をしていてここに運ばれたんだ。どこか痛むところはないかい?

何か、おかしなところや、むず痒いとか、何時もと違うことはないかい?」

 

「えと…身体が少しだるい…です。…痛い場所はない…

ですけどお腹と下半身がなんか…鈍くて麻痺してるみたいな…それと喉が痛いです…」

 

なんだ、お医者さんだったのか。優しい口調でゆっくりこちらに気を使ってくれているので多分悪い人ではないだろう。

 

「ふむ…喉に血の塊が残っているのだろう。

お腹と下半身は酷い状態だから麻酔を使ったんだ、時期に治るだろう。

身体が鈍いのは血が足りないからだろう。

気づいてないようだが多分君はぼうっとして集中できていないと思う。

さあ、水を飲んで、気持ち悪かったら吐いてもいいから少しづつゆっくりと飲むといい。」

 

「ありがとうございます…」

「無理に喋らなくてもいい、紙とペンを用意しよう。話したいことは書いてくれるといい。」

 

あなたが神か。

ここまで優しくして貰ったのは父に運動会の100m走で3位をとって褒めて貰った時以来だ。

 

「んっ…ぶうぅぅ…」「大丈夫かい?この洗面器に出すといい、水は飲み干さなくてもいいからね。」

 

優しい…!なんだ彼は天使か、なんだろう目がキュウっとする。

 

「気分が悪いのかい?落ち着いて、大丈夫、大丈夫だからね。」「ひぐぅ…ゥゥ…グスン…」

 

私が口から血を出して目が霞んでいて手を握ったのに対し彼は白衣が汚れるのを厭わずに抱き締めてくれた。

 

 

 

ーーもう誤魔化せない、寂しかったのだ私は。もう誰も私を受け入れてくれないと。そう思っていたから。

 

 

 

「大丈夫…私はここにいる、どこにもいなくなったりしないから。」「ううううぅぅぅ……」

 

私はその暖かさと微睡みに落ちてそのまま寝てしまった。

 

 

ーーーーーーその日、私は犬が1人ぼっちでいる悪夢を見たーーーーー

 

 

とても、悲しいと、そう思った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「彼の容態はどうかね?」

「ご覧の通りです。酷く肉体的にも精神的にも疲弊して衰弱しています。」

 

担当医の森田は真由を抱き締めて運んで来た。真由が白衣を掴んで離さないのだ。

 

「こんな子供が…」「まだ小学生だよね…多分。」「あたしの弟と同じくらいかも。」

 

歓談室で全員がもの珍しいものを見る目で、真由を見ていた。

 

「彼はどんな人物だと森田君は考える?」

「普通の子供ですね、とてもあの禍々しいフェストゥムにいたとは思えません。」

 

昨日の戦闘の後、黒いフェストゥムは助けたパイロット[柴田 小百合(しばた さゆり)]は黒いフェストゥムから(ボクの中にいる人を助けて!)という懇願を聞き、中にいた真由を即座に血濡れになっても簡易担架で肉片を残さず医務室へと将陵僚と共に運んだ。

 

「それにしても信じられんな…」「ええ…まさかあの状態で助かるとは…」

 

実は真由は肉片の殆どが液状化していたが助けられる前に少しづつ回復し縫合を受けても問題ないくらい回復していた。

それでもとても助かるような状態ではなかったが。

 

「生きているのが奇跡なのに…1日で目を覚ますなんて…素晴らしい生命力です。」

「恐ろしいではなくかね?」

 

「自分は医者です。生命を尊重しても忌避することはあり得ません。」

「…いやすまない、私が悪かった。」

 

黒いフェストゥムに聴いたところによると、彼は黒いフェストゥムと同化ではなく同調。

細胞がそのままお互いに入り混じり、あの泥が彼を活性化させたと言う。

 

「この子の言うことは信じられるが…」

「自分はあの黒いフェストゥムは信用出来ません。」

 

早乙女 柄鎖の言葉を遮り、将陵 僚は確固たる意志でそう言った。

 

「あれは間違いなく何かを隠し、自分の不利益を喋る事はないでしょう。」

 

「うむ、私もそう思う。こんな幼い少年をここまで傷ついているのに彼は何もしなかった。」

 

彼等はラハムを信用してはいなかった。それどころか敵視している。

当然だろう、会話が可能で、パイロットが危険な状態の時に同化を優先し生命の危機に晒したのだから。

 

「感覚ではありますがファフナーのパイロットとしてあれは危険だと感じます。」

「やはりか…他のパイロットは?」

 

「俺もそう思います。」「とても気持ち悪いと感じました…」

「助ける時は一刻も早く彼を離さなくてはと思いました…」

 

全てのパイロットが僚の言葉に同意した。パイロットだけがわかる、ファフナーによる同化の効果であろう。

L計画の最高責任者、[早乙女 柄鎖(さおとめ つかさ)]は真由の頭を撫で、こう言った。

 

「これより黒いフェストゥムを監視、この少年を保護すると共に彼等をまた接触させてはならん。これは命令だ。」

 

ーーーこの少年の未来を守ってみせる。ーーー

 

L計画参加者は全員が胸に刻んだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

(…………)

 

ラハムは不快であった。

 

あのロボットは自分たちに似ていてパイロット達はまるで見透かしているかのように自分を見るのだ。

 

(なんなんだろう、これは一体…)

 

ラハム自身、自分のことがわからなかった。

彼(彼女?)は感情というものを理解してはいなかった。ただ真由の脳内から計算し、彼を最も動きやすく、嘘を言わずに誘導していただけでラハムは彼に対し何も思っていなかったし、ラハムの言動はただ最適解を出しただけで助かる事も想定済みであった。

 

(それというのも……)

 

ラハムと真由は感覚は意識がある状態は共有でき、

ラハムは真由が森田に抱き着いた時に異常な不快感を感じた。

 

(………………)

 

ラハムには感情を理解できないが、真由との同調、汚染により、感情を入手する事は出来た。

 

 

(………………………………)

 

 

ーーーーーラハムが感じたのは初めての「嫉妬(・・)」であったーーーーー

 

 

 

 




ラハムさん、覚醒。
実は今まで演技だったという。


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ようかめっ!

前回のあらすじ

「パルパルパル…妬ましい…羨ましい…」

「おめーの席ねーから!!」L計画参加者一同


ーーその日村上 剛史は好調だったーー

 

仲間達の様に戦う仲間ではなく護るべきものが近くにいること、

それだけでも自分を奮い立たせる事が出来た。他の皆も志気が高い。

 

翌日にフェストゥムの襲撃があったがなぜかは解らないがファフナーの調子がすこぶる良いのだ。

反応も良いし、ジークフリード・システムも効率良く運用出来た。フェストゥムのワームスフィアの攻撃も同化攻撃も手に取る様に解った。

仲間達の行動も一瞬で理解し合えたし、連携も抜群で近接のガンドレイクによるヒット&アウェイ、離れる時にウェポンベイによる正面からのミサイル、仲間からの機関砲による援護射撃により反撃を許さぬ攻防を繰り広げ戦いは終わりを迎え様としていた。

 

「早苗!合わせろ!」『了解!突撃するわ!』

 

もう一機のパイロット鏑木 早苗の返事と共に、ガンドレイクによる左右からの突撃、ファフナーはお互い傷つく事なくフェストゥムは何も出来ずに沈黙した。ーーー

 

 

 

ーーーこの間の戦闘、僅か30秒の出来事である。ーーー

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(終わったか…)

 

剛史は収容されるファフナーの中で自分の想いを改めて胸に仕舞いこんだ。

 

(そうさ…俺達には仲間も…守ってやんなきゃいけないやつもいるんだ。)

 

剛史は頼もしい仲間と昨日保護された少年を思い浮かべた。

 

(必ず皆で竜宮島に帰る!俺が皆を守ってみせる!)

 

正史では1番恐怖していた少年が、今は1番勇気と希望に満ち溢れていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「凄い…」「無傷であんなに早く倒せるなんて…」「すげーよ!剛史!」

 

「早苗さんも凄いよ!」「あんなに的確に援護できるなんてね。」

 

 

歓談室モニター前では浮かれた歓声が響いた。

 

初めての戦闘では52秒という速さで将陵僚と生駒祐未が倒したがそれを上回る30秒という速さで圧勝したのだ。

浮かれるのも無理はない、しかも無傷という資源が困窮しているなかそれは大きなアドバンテージであった。

 

いくらフェストゥムに資源の位置を探らせない為とはいえ、いつ受けられるか、そしてもうなくなってしまうのではないか?

そう考えてしまう時限式補給は不安がありこの勝利は異例で嬉しいものであった。

 

誰もが勝利に喜んでいた頃、自動ドアが開き医務担当の森田が車椅子に乗る少年を連れて部屋に入って来た。

 

「凄いな…もう戦闘が終わったのか…」

 

森田の感嘆する声に気づき皆が車椅子の少年に意識を向けた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(気まずい…)

 

先程大きな警報が聞こえ目を覚まし、森田さんが側にいてくれてとても安堵した。

昨日の事は珍しい夢などではなく、嬉しい現実であったこと、受け入れてくれる人がいた事に安心したが同時に恥ずかしくなってきた。

 

(ううぅ…昨日初めてあった人に泣きついて抱きつくなんてありえないだろ…)

 

「おや?起きたのかい?」

 

森田さんの声がする方に目を向けたが自分の手が未だに白衣を握り締めていた事に気づき、慌てて白衣を離した。

 

「あっ…!昨日はすみ…づっぅ…!?」「慌てないで、麻酔が切れて神経が戻ったばかりなんだから。」

 

森田さんの笑顔と暖かい手が私の手を優しく握り落ち着く事が出来た。

 

「先程警報があったんだが、もう5分前に鳴り止んでいる。

君の事を皆に紹介したいから歓談室に向かおうと思うのだが、大丈夫かい?」

 

「アッハイ、大丈夫です、喋れます。」

 

これ程大きな施設なのだ、沢山人がいるだろうとウキウキしながら森田さんに車椅子に乗せてもらい、

この施設の事や私の今までの事を談笑をしながら一昨日助けてもらったパイロットの人のところにまで運んでもらった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「初めまして、鈴木真由と言います。助けて頂いて本当にありがとうございます。」

 

森田さんの話しによると島だと思っていたこの場所は、実は人工的に造られたものでしかもそれの一部だと言う。

この施設は竜宮島と言う、人類軍に属さない勢力で対フェストゥムに置ける時間稼ぎの任務中だと言う。

ロボットの名前はファフナーと言い、対フェストゥム戦に造られたしかも新型らしい。なにそれしゅごい。

 

部屋にはかっこいいパイロットスーツを着た、私より歳が上だろう人達がいた。

私は30年寝ていてもはや43歳だがな!合法ショタとか誰得だ!いい加減にしろ!

 

「初めまして、私が貴方を運んだファフナーのパイロットよ。柴田 小百合っていうのよろしくね?」

 

「貴女が助けてくれたんですね!本当にありがとうございます!」

 

まさか助けてくれたのが、こんな可愛い人だとは。自分はいつのまにかシャングリラに行き着いていたらしい。

 

 

「私だけじゃないの、もう一人運んだのがそこにいるやつ。」「将陵僚だ、よろしく。」

 

「貴方が・・本当にありがとうございまっ…!?」

 

 

 

 

その時私の思考は停止した。

 

 

 

 

「・・・お兄ちゃん?」「えっ?」

 

 

 

 

「…っ!?すいません!間違えました!兄さんに似ていたのでついっ!」

 

「あっ・・ああ、そこまで慌てなくていい、お前の事を教えてくないか?」

 

なにこれすごい恥ずかしい…!私はどれだけ自分の恥を上乗せすればいいのだ。

自業自得?ですよねー。

 

それにしても兄の真兄さんにすごい似ている、ドッペルゲンガーが幽霊を本気で考えてしまった。

それほどまでにそっくりなのだ。私はこれまでの事を説明している時チラチラ見てしまうのは許してほしい。

 

「そうか・・・たいへんだったな、何か俺達にしてほしい事や欲しいものとかないか?

今なら物も食べれそうだし一週間なにも食べてないんだろ?」

 

「本当ですか!?」

 

久しぶりに文明的な生活ができる!そう喜んでいた時に重大な事をを思い出した。

 

「あの…厚かましいのですがお風呂に入りたいです。」「そうか、食事の後じゃダメか?」

 

 

 

「あの、一週間も入っていないので。」

 

 

私は無言で手錠をかけられた。

 

 

先程とはうって変わって皆がハイライトの消えた赤い目で私を見ていた。

 

 

涙目で森田さんを見た、目をそらされた。

 

 

あまりの手の平返しに私は涙を流した。

 

 

風呂に入り、離乳食の様なものを出されたが涙で塩味しかわからなかった。

 

 

 

ーーーーーその日、私はデコの広いヅラの様な人と風呂に入る悪夢を見た。ーーーーー

 

 

寝てても涙は止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




無知は罪なり。


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ばんがいっ!そのにっ!

スランプです…投稿が遅くなるかも。


とある中国の山にて

 

「アディラタ、どうか父を治せないだろうか?」

「悪いがファン、私は老衰は治せないのだ。お前も知っているだろう。」

 

そこには普通の人間が見たら異様な光景であった。

 

身体が岩のような橙色の巨人が友人の様に人間と話していたのだ。

 

「お前の父はもう80後半になる、いつ死んでもおかしくはない。

この時代にそこまで長生きできたのが不思議な方だ。」

「確かにそうだが・・・やはり俺は父に死んでほしくはない。父はとても高潔で素晴らしい人だ。

俺の妻や息子もそうだし誰もが悔やむであろう人だ。」

 

 

 

 

「お前の父が延命を望んでいなくてもか?」「・・・っ!!アディラタっ!!」

 

 

 

 

「お前の父は高潔で誠実な男だ、それは私がよく知っている。

私は友には心を開かせれるのは知っているだろう?

彼の意思を無視し、気づかれないように延命させるのは彼に対する冒涜だ。」

 

「気づいていたのか…父には黙って来たことを…」

 

「お前の父が言ったのだ、死ぬ前に私と同化して欲しいと、妻と同じ場所に逝きたいと。」

「母と同じことを?」

 

 

「かつてお前が子供の時にも話したが…同化とはフェストゥムと一つになり

決してただの死ではない。

私にもかつて息子がいた。息子は死んだ後、太陽と一つとなり永遠となった。

今も世界を見守っているのだ。」

「息子の名前は確かカルナだったか?余り俺はマハーバーラタには詳しくないのだが…」

 

 

「なに、私もここについては何も知らなかったのだ。お前の父からは色々と教えて貰ったよ。

特に封神演義を熱弁していたな。あいつは。」

「ハハハ、父さんらしいな…私も子供の頃によく話していたよ、

太公望のような徳の高い人になれと。」

 

巨人と男は語り合い、夕方になるまでそこにいた。一つの神話のような幻想的な姿だった。

 

「明日、お前の父と叔母がお前の家族に教えるであろう。

彼はその日に同化したいと言っていた。」

「ふふっ、あれ程死ぬ前にやりたい事があると好き勝手していたのはそれが理由か。」

 

「ああ、振り回されても悪くなかっただろう?」

「そうだなぁ・・・得難い経験ばかりだった。まさか旅行に行くだなんて。」

 

 

男の父は死ぬ前に旅行にいきたいといい、息子家族を引き連れて色んな場所に連れて行った。

 

「あの旅行のおかげで私の仕事は軌道に乗ったし、

学ぶものが沢山あった…旅行などと言っていたがあれも私の為だったのだろう…」

「彼はそういう人だ、さあ、そろそろ帰るといい。お前の家族が待っている。」

「ああ、そうだな、ありがとう。アディラタ。」

 

男が山を降り、帰るまでを眺めていた巨人は独り言を呟いた。

 

「息子よ・・・私はお前のようになれているだろうか?私は間違ってはいないだろうか?

どうか見守っていてくれ・・・カルナ、ラーダー。」

 

 

彼は争いを嫌い、フェストゥムや人類軍が来れば人々と共にレーダーなどでは映らない姿を眩ます透明な光を放ち、隠れた。

普段は人々と働いたり、癒しの光で傷や病、果ては無くなった手足や障害までも治して見せた。

 

 

かつてインドの大英雄カルナの養父[アディラタ]は夕焼けを見つつ息子と妻を夢想した。

 

 

 

 

ーーーーーその日、彼は息子とその弟が死して尚、争う悪夢を見たーーーーー

 

 

 

(そうか・・・死んでも尚、お前達は闘うのであろうな・・・)

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

砂漠のピラミッド付近にて

 

(ファラオよ…今日もエジプトは栄え、民草は神々とファラオに感謝を捧げております。)

 

美しい肢体の褐色の女型の巨人がピラミッドに平伏し、今日の事を話していた。

 

(民草には私の事を未だに女神といい、訂正してもそう呼ぶ方もいるのですよ?)

 

とても嬉しそうに恋人の側にいるように、巨人はピラミッドに語りかけていた。

 

(ですので・・・どうかラーメス・・・貴方も俗世に来ては頂けませんか?)

 

女型のフェストゥムは涙を流しながら、それに応えるように雨が降った。

 

彼女は水を操る他に、天候を操る力と対話をする事が出来る粒子を使えた。

 

襲い来るフェストゥムに対し海から海水を巻き上げそれをぶつけて撃退し、

人類軍へは、人が死なない程度に嵐を巻き起こし撃退していた。

 

(私は・・・とても寂しいです・・・姿形は変わってしまいましたが、

それでも貴方のお側に居たいのです…どうかラーメスよ、迎えに来て下さい…)

 

オジマンディアスの伴侶[ネフェルタリ]は孤独の中、夫を待ち続けた。

 

 

ーーーーーその日、彼女は夫が最古の王に嫁自慢する悪夢を見た。ーーーーー

 

(あーっ!///あーっ!///おやめ下さいラーメス!///あーっ!///困ります!///あーっ!///)

 




リア充は尊いと思うんじゃが。


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ここのかめっ!

前回のあらすじ

「ラテェ!粉☆バ☆ナ☆ナ!ラハムさんが仕掛けた罠だ!」
「さあ、汚い子は洗っちゃおうね〜。」


その日は先輩の皆から勉強を教えてもらうことになった。

 

私は30年のブランクがある為パイロット総出で勉強を見て貰う事になった。

 

「ほら、これが因数分解。乗法を使って計算するの。」

「すごく…勉強になる…」「お前解ってないだろう…白紙だぞ。」

 

小百合先輩から教授して貰っている中、僚先輩のツッコミが冴え渡る。

いや、乗法忘れてて…

 

「言い訳するな、口に出てるぞ。」(ぺしっ「モガッ!」

 

「それくらい許してやれよお兄ちゃん。」

「そうそう、僚お兄ちゃん♪」

 

「幸弘・・・早苗・・・お前達なぁ…」

 

あれから僚先輩は他のパイロットから私のうっかり発言で揶揄われている。

だが私は謝らない(キリッ 叩かれた場所が地味に痛いから。

 

ーーあれっ?もしかして揶揄われて機嫌悪いからじゃね?

 

・・・今の思考はなかった事にしよう。

 

「いやいや、怠け者だった僚がここまで積極的になるなんてそうないよな?」

「そうそう、真っ先に昨日は手錠を警務室から持って来て、

そのままお風呂に連れて行くんだもの。」

 

ーーそう、僚先輩は昨日、部屋から出て脱走者防止用の警務室から

流れる様な動作で私に手錠を掛けた後、

そのままお風呂に直行して足が動かない私に代わり、

着替えの手伝いと体を洗ってくれたのだ。

 

ーーやめて!私に乱暴する気でしょう?エロ同人みたいに!(ガンッッ!!

 

ーーアホやってないでとっとと風呂入るぞ。ーーあいっ…(グスン

 

手錠があった為碌に逃げ回ることも出来なかったよ…

 

「けど字面にすると凄い背徳的かも…」

「うん・・・足が動けない後輩に手錠を掛けて脱衣所で乱暴なんて・・・」

 

「やめろっ!小百合!早苗!同化して戻れなくなるぞ!」

 

「シャレにならない冗談言うなよ、徹・・・」

 

いや今のかなり危なかったよ?

確か同化現象の初期症状の目が赤くなってたし、顔と鼻も赤くなってたし…って血が出てる!?

 

「祐未先輩?!凄い血がでてますよ!?」「お構いなく。」

 

えっ・・・

 

「でもこれはやばいですよ・・・?」「どうぞお構いなく。」

 

なんてこった、女子勢が全員『向こう側』に行ってしまった・・・(ガンッッ!

 

「〜〜〜っっ?!!!」「バカなこと考えるな全く…」

 

痛い!素手じゃなくてバインダーで殴った!しかも角で!

 

「父さんにもぶたれたことないのに!」「母親は?」

 

「えっと・・・その…」「母親は?」

 

「・・・・・・」「は・は・お・や・は?」

 

「23回です…」「ふうん、やっぱりな。」

 

なにこれこわい。

僚先輩は私にだけ心を見る事が出来るサトリだろうか。

 

「お前がわかりやすいだけだ。」「心読むのやめてくれません?」

 

今のは絶対顔とかじゃわからないよね?

 

「兎に角勉強に戻るぞ、後15問 、解いてみろ。」「え〜…」

 

「返事は?」「はーい…」

 

(お兄ちゃんだ…)(お兄ちゃんよね…)(兄だな…)(いいわ、もっとやりなさい。)

 

ーー一1人を除いて僚以外の心は1つになった。ーーー

 

 

ーーーーーその日、私は夢の中でも勉強する悪夢を見た。ーーーーー

 

ううぅ〜真面目にやるから殴らないで〜…

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お疲れ様。」「?祐未か。」

 

俺はバカに勉強を教えた後、風呂と食事が終わってその場で寝たバカを

部屋まで運んでやった。

 

「今日は痛まないの?」「ああ、そういえば…」

 

俺は遺伝性の肝臓病を患っており、偶に痛くなるのだが今日は痛みなんて一度もなかった。

 

「本当に珍しく今日の僚は動いてて心配してたんだよ?」

 

「すまないな…心配かけて…」「もう!そんなこと言わないでよ。」

 

確かに今日は楽しかった、まるで竜宮島の時のような日常だった。

学校に行って勉強して…俺は生徒会会長だったから熱心に勉強してたっけ…

 

「竜宮島のあいつらを思い出してたよ…」「そっか…」

 

あのバカと不器用なあいつは全然違うが学校での生活、

友達との競争、ここがL区画だという事さえ今日は忘れてしまっていた。

 

「つまり総士君にもあんなプレイを…」「お前はなにを言っているんだ。」

 

今日のお前が大丈夫か。

 

「違うの!愛してるのは僚だけなんだから!」「はいはい…」

 

今日はもう疲れた・・・

 

 

 

その後、俺はあいつのあの言葉が本音だった事を、だいぶ、後で知った。

 

 

 




自分を抑えきれなかった。
キャラ崩壊タグをつければいいと思った。
今は反省している。

ーーごめんなさいでした。ーー

ー追記ー
祐未のこと祐美って書いてた、
なにやってんだろ僕…


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とうかめっ!

前回のあらすじ

暴力反対!!


俺達はまだ心の何処かでこの戦いを甘く見ていたのかもしれない。

 

この戦いは守る為の戦いであり、喪ったものは決して、元に戻ることなんてないというのに。

 

 

 

 

 

ーーー6度目の戦闘に、それはおこったーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ファフナー収容区画にて。ーー

 

「徹!!」「徹くん!!」「徹!!」「・・・みんな・・・」

 

「バカッ!お前なんであんなことを…!」

「そうよ!そのまま戦えば勝てたかもしれないのに…!」

 

「ごめんね・・・焦っちゃったんだ・・・」「焦った?」

 

「あんなにもみんながファフナーを上手く使えるから俺だってやれるんだって思っちゃってさ…」

 

「・・・・ッ!?もういい喋るな!?」「そうだ!このまま連れてくから…!」

 

「ごめん・・・俺だって男の子だからさ・・・」

 

「だからって・・・!!だからって・・・!!」

「なに言ってんのよ!こんな時に!」

 

 

「だからって・・・!!だからって・・・!!」

 

 

「あはは・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガンドレイク投げるやつがあるか!!!この大馬鹿野郎ッッ!!!」

「そうよ!!!補給すら受けられないのに!!!」

「もういい!!さっさと反省室に連れて行くぞみんな!!」

 

 

 

「ごめんよ…みんな…」「「「「「「「うるさいッッッ!!」」」」」」」

 

 

 

 

先の戦闘でフェストゥムが現れて徹先輩が出撃してフェストゥムを確認した途端、

徹先輩がガンドレイクを投げてなんと3秒という速さでフェストゥムを倒した。

皆が驚き徹先輩を感心して見ていた。

 

 

 

ーーーフェストゥムのワームスフィア現象でガンドレイクごと喪うまではーーー

 

 

 

 

徹先輩は回収のことは考えておらず間の抜けた顔していた。

その時を表現するならこうだろう。

 

( ゚д゚)ポカーン ( ゚д゚)ポカーン

 

(#^ω^)ビキビキッ ( ゚д゚)ハッ

 

ヤベ!!Σ(゚Д゚;≡≡≡≡≡ヾ(;゚д゚)/ニゲロ~!!

 

((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・

 

ガシッ!ズルズル……

 

逃げようとした徹先輩のファフナーが幸弘先輩のファフナーに殴られて運ばれていく様は衝撃的だった。

 

「お許しください!お許しください!」「「「「「「「「さあ…逝こうか…」」」」」」」」

 

 

「助けて!!助けて真由ーーーー!!」

 

 

 

無理です、先輩諦めて下さい。

 

 

 

「僚!祐未‼出してくれ…出してくれェッ!

 

 

出してくれ…出してくれェッ‼!小百合!!!出してくれェッ‼

 

 

惇!剛史‼早苗‼真由!出してくれっ!出してくれよぉっ‼

 

 

俺は帰らなくちゃいけないんだ、俺の世界に‼

 

 

‼……いやだ……いやだァッ‼出してくれ……出してェェェェェ‼

 

 

 

……なんでこうなるんだよ……

 

 

俺は……

 

 

 

おれは……

 

 

 

 

かっこつけたかっただけなのに……………… 」

 

 

 

それが原因ではなかろうか。

 

 

 

〜〜尚のちに時限式の補給が受けられるのだがまだそれは誰も知らない。〜〜

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「パイロット達の要素はどうだね?」

 

「みんな生き生きしていますよ、ついこの前の鬱屈した空気が嘘みたいだ。」

 

「その為にファフナーの主武装を喪ってはたまらんのだがね…」

「あはははっ、違いありません。」

 

早乙女 柄鎖は主治医とセラピストを兼任している森田 和樹と女性オペレーターの

佐藤 亜由美と食堂で談笑していた。

 

彼等は最もファフナーパイロットの近くでサポートをし、

パイロットの状態を司令官である柄鎖に週に一度くらいにこうして報告をしていた。

 

「ところで亜由美くん、ラハムの要素はどうなっている?」

 

「それが・・・こちらをどうぞ・・・」

 

真剣な顔をした柄鎖に亜由美は記録されているタブレットを渡した。

ラハムは交代制で監視されており、この様にリアルタイムで観る事が出来る。

 

「ふむ…どれどれ…」

 

音声が小さかった為、徐々に音声をあげていく。

 

「ん?なにか喋っているな。」

 

「そうなんです、テレパシーではなく、実声で。」

 

ラハムは少量ではあるが先の戦闘により、フェストゥムから入手したコアから

少しではあるが進化していた。

 

「一体なにを言っているのだか…」『・・・・・・』

 

音声をあげて聴いているうちに聴き取れるまで音量をあげた。

 

『パルパルパルパルパルパル・・・・・・パルパルパルパルパルパル』

 

「はっ?」

 

なんだこれは、フェストゥムの言語か?それともなにかの呪文であろうか。

 

 

『パルパルパル…なにさなにさ、ボクの前ではあんな顔一度もした事なかったくせに…

 

なんでボクにはそのその顔を見せてくれなかったんだい?

 

見せてくれるならいくらでも甘やかしたのに…

 

それともあんなに殴られて悦んでいるドMさんなのかな?

 

パルパルパルパルパルパル・・・・パルパル・・・

 

ああぁ、会いたい、君に会いたいよ…

 

もう3日も君に会っていないんだよ?

 

どうして君はボクに会いに来てくれないの?

 

今までの事は謝るから…ボクにできる事ならなんでもするからぁ…』

 

「・・・・・」

 

柄鎖はこのフェストゥムを哀れに思った。

 

彼(彼女?)にとってはあの少年はかけがえのないものであろうと、

理解するのにそう時間はかからなかった。

 

(偶にぐらい合わせてやるか…)

 

柄鎖はそう、思った。

 

『パルパル・・ふふっそうだ!次に会ったらボクの中から

 

一生出れなくすればいいんだ!中に入ったらボクで埋め尽くして

 

毎日、毎日・・・毎日毎日毎日毎日ボクの声を、声を声を

 

聞かせれば、ボクの想いを知ればいなくならないんだからさ!

 

アハハハハハハ・・・・ハハハハハァァァ!!』

 

「・・・・・・・・・・」『はぁぁぁ・・・パルパル・・』

 

 

 

 

前言撤回、絶対に会わしてはならない。

 

 

 

「似た様なことをもう100回は超えて言っていました…」

 

「絶対にこのフェストゥムを少年に会わしてはならん。引き続き監視を頼む。」

「はぁ…」

 

気は萎えるだろうがこのフェストゥムがなにをするかわからない以上、

我慢してほしい。

 

 

早乙女 柄鎖は即効性の胃痛薬を森田 和樹から貰って飲んだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ーーその日、真由は不思議な悪夢をみたーー

 

よく一緒にKATANAで斬り殺される女性が自分を檻に入れていた。

 

ーーーーーその日、私は笑顔の女性に監禁される悪夢を見た。ーーーーー

 

翌日お漏らしして徹先輩の元に連れて行かれた…

 

 

 

ーーごめんなさい!ごめんなさい!

 

ーーお前もその仲間に入れてやるってんだよ!

 

ーーすごーい!きみは先輩を見捨てないフレンズなんだね!

 

ーーうるせぇぇぇ!

 

 

 




ラハムさんヤンデレ化。


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じゅういちにちめっ!

前回のあらすじ

「これが1番早いと思います。」
「レギュレーション違反です。」


『L区画・反省室』

 

「はあぁぁぁ…」「先輩萎えるから余り溜息しないで下さいよ…」

 

私と徹先輩はデスクに座りながら反省文を書かされていた。

 

「だってさ…もうこれ何回書いたか覚えてないぜ?」

「そうですよね…私も10枚数えたところから数えるのやめました。」「なにやってんだよ…」

 

「だってですよ?反省文なんて途中で自分ですらなにを書いてるか、

わからなくなるじゃないですか?数えた方が覚えれていい思って。」

「それ結局混乱して忘れるからやめとけ…」

 

やっぱりか、さっき提出を却下された反省文を見比べたら2枚前と全く同じ文章だったからな…

 

「なんで逆に全く同じの書けるんだよ…新しいの考えた方がまだ楽だぞ。」

「それより手を動かした方がいいですよ…先輩は後何枚ですか?」

 

「後3枚、お前は?」「私はあと2枚です…」

 

「「はあああぁぁぁぁぁ………」」

 

気が滅入るが溜息を吐いてしまった。

先輩がなにも言わないのは先輩も同じ気持ちだからだろう。

 

実はこの反省室にて私達は4日もここにいる。

最近寝ている時も女性がなにか同じ様な事を語りかけ檻に入れられる夢を見る。

暗示だろうか、さっきから似た様な反省文ばかり書いている、

同じはダメだが似ているならギリギリ許されるのだ。

寝ても覚めても地獄で私達の心臓がマッハでやばい。

息苦しくて仕方がないのだ。

 

「なんで俺たちこうなっちゃったんだろー…」

「私はともかく先輩のは自業自得じゃないですかー。」

 

「なんだとー、途中からは共犯者だろ?うりうり。」

「わっ!やめて下さいよ、ペンだから書き直さなきゃならないじゃないですか。」

 

「あっはっは、すまんすまん。」「ぷぷっ、もうしないで下さいよ。」

 

ついついくだらないが笑ってしまった。

 

 

「ほう…余裕そうだなお前たち、特別にもう一枚追加してやろう。」

 

 

 

「「すいませんでした。勘弁して下さい。」」

 

 

 

監督役のスタッフに睨まれて私達はシンクロして、

椅子から離れ監督役のスタッフに土下座を披露した。

 

 

 

なぜ4日も長期滞在しているのか?

 

 

 

それは私達が4日の間の出来事が問題だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

本来なら私達は先輩が3枚、私が1枚とすぐに終わる筈だった。

 

 

先輩はガンドレイクを紛失した事による説教で疲れて寝てしまい、

私が来た翌日に、私はお漏らしをした事で一緒に反省文を書く事になったのだ。

 

食事とお風呂の時だけ監督役が着くが部屋から出ることができ、

寝泊まりとトイレは反省室にある為楽チンですぐ終わると思っていた。

 

それは監督役がトイレに入っていた時、私達はふざけて遊んでいた。

文房具を使って私はトリケラトプス、先輩はティラノサウルスを作り、

見つかる前に崩してすぐ片付けようとしていた時だった。

 

「お前バランス感覚いいなぁ、よく崩れないよ。」

「先輩こそなんでその骨組み崩れないんですか?計算高すぎでしょ。」パシャッ!パシャッ!

 

「「うん?」」

 

 

フラッシュ音と共に其処にいたのは携帯を持った僚先輩だった。

 

 

「僚!?なんでここに!?」

 

「そうですよ!今はファフナーの整備の時間では!?」

 

「監督役のスタッフに胃腸薬を届けて欲しいと言われてな。」

「お前そんな優等生じゃなかっただろ!?」

 

「うん?どうしたお前たち。」「ヤバすっ!」

 

「すいません、こいつらがふざけてたので、これ証拠写真です。」「ほうぅ。」

「アーッ!やめてください僚先輩!」「そうだ僚!お前は変わっちまった!」

 

 

「いい度胸だなぁ、お前たち?余程余裕があると見える。」

 

 

「「ヒイィィッッ!!」」

 

 

「特別にこれだけ追加してやろう。どうだ?嬉しいだろう。

 

今はファフナーのパイロットも余裕があるから暫く此処に居ていいぞ。」

 

 

目の前にはゆうに50は超える反省文の用紙があった。

 

 

「「ウソダドンドコドーン‼︎」」

 

 

「はっはっはっはっ!!泣くほど嬉しいかっ!」

 

 

 

 

文才の無い、私達の地獄の日々が始まった。

 

 

 

 

ーー今日からここが、自室だ。ーー

 

 

ーー悲鳴で現実をかき消そうとしていた。もう、後戻りはできなかった。ーー

 

 

 

ーー怖かった、敵ではなく味方であるはずの僚先輩と、監督が。ーー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「それにしてもなんでお前私っていうの?ちょっときもいんだが。」

「どストレートに言いますね…僕や俺っていうとバッシングされてたんですよ。」

 

「ごめん、鳥肌たった。気持ち悪い。」

「酷く無いですか!?しまいにゃ泣きますよ!?」

 

私の涙腺の脆さを甘く見るなよ。

泣くぞ ?すぐ泣くぞ ?絶対泣くぞ ?ほら泣くぞ。

 

「なんだよこのナマモノ…俺っていうと違和感凄いし、僕っていうとあざとすぎんだろ…」

 

「先輩は私をいぢめて楽しいですか?」

 

私は涙目で抗議する。母と同じこと言いやがって。

 

「いや、お前性別を間違え過ぎだろ?顔が中性…いや両性だなこりゃ。」

「お前らさっきから煩いぞ、終わっているのか?」

 

「はいっ!監督!私は終わっております!」「汚ねぇ!いつの間に!」

 

さっきからずっとだよ、喋りながら手を動かしてた。

一方的に怒られる!居心地の悪さと怖さを知るがいい!」

 

「させるかっ!今終わりました!」「ダニィ!」「お前たち…」

 

なんて早さだ、本気でなかったというのか!?

 

「はあぁ・・・うん、内容はまともだからもう来るんじゃないぞ。

 

私だって兼任だから暇じゃ無いんだ。」

 

「あははははは!!いっ・・・・・・やったああああぁぁぁぁ!!! 」

「徹先輩、気持ち悪いです。」

 

なにその悪役みたいな喜びかた。

まるで核が撃てる人類軍みたいな顔してるよ?

 

やっと外の空気が吸えると徹先輩と監督と部屋を出た時。

 

ウゥ~!ウゥ~!「警報?!」「フェストゥムの襲撃だ!外に行くのは諦めろ!」

 

「野郎ッ!ぶっ○してやる!!!」「先輩!!?」

 

まるで別人の様に徹先輩が格納庫に走って行った。

確かに此処からなら格納庫は近い。

 

『パイロット!第1戦闘j「発進できます!ハッチ開けて!早く!」えっ!?』

 

 

もう着いたの?先輩はどこまで人間やめるの?

 

 

『徹、反省文は「終わった!早くしろ!死にたいのか!」りょ…了解!』

 

今の言い方フェストゥムか徹先輩からかわからない言い方だったな…

 

『出撃どうぞ!!』「でりゃあああぁ!!」

 

急いでモニター室で観戦しに来たが映像はファフナーがコアを突き刺してすぐに離れた。

ってちょ

 

「」「5秒も…たって無いな…」「4秒よ…」「下手したら反省室に出戻りじゃないか?」

 

「ガンドレイクを投げた意味がない証明みたいな感じだもんな…」

 

 

 

 

 

「徹・・・お前はどこを目指してるんだ・・・」

 

 

 

 

僚先輩の発言に皆が同意した。

取り敢えず僚先輩と共に徹先輩を迎えに行くことになった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ファフナーが収容されてコックピットが開けられるのを僚先輩と待つ。

 

「徹…まさかお前そこまで追い込まれていたとはな…」

「お前のせいだろ…自業自得だけどさ。」

 

 

コックピットが開く前に先輩達は会話をしていた。

ぼっちじゃないか私もいれろ。

 

「それにしてもほんとすごかったです、ね?僚先輩。」

「そうだな、まるでバケモノだ。」「おいおい、言い過ぎだろ?全く…」

 

コックピットが開かれ徹先輩の顔を見た時、私と僚先輩は驚愕し声が出なかった。

そんな・・・なんで・・・

 

 

「ありっ?どしたの、お前ら?」「徹・・・その目…!」

 

「目?」「………!来い!医務室に向かうぞ!」

 

 

徹先輩は僚先輩に半ば無理やり連れて行かれた。

当然だろう、徹先輩の目は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤色ではなく金色に輝いていたのだから。(・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーその日、私は燃え盛るなか目の前で赤髪の少年だけ助けられる悪夢を見た。ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

私を含め、そこにいた人達は見殺しにされた。

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公は汚染系サポート型。


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ばんがいっ!そのさんっ!

ワタシハ・・・ナニカ・・・サレタヨウダ・・・


ーー『とある海域』ーー

 

 

ーーそこはかつて島であった。ーー

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーー。」

 

 

 

 

 

 

 

空中に浮かぶオルフェノク型フェストゥムはかつての色を失っていた。

 

 

 

 

ーーー全身は闇になり瘴気を放ちーーー

 

 

 

ーーー眼は朱く、脈動するかのように妖しく輝きーーー

 

 

 

ーーー黄金の剣すら朱い亀裂が深淵の如く蠢いていたーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは中世に世界一栄え、王や貴族が治め、世界一気品ある国と謳われていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーaaaa…」

 

 

 

 

 

 

 

 

最早面影など何処にも無く、唯々海があるのみであった。

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーーAaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 

 

 

 

 

空に吼え、まるで血の涙を流すようにギネヴィアは慟哭した。ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ギネヴィアであれば核が来る前に叩き落すなど容易であったしどのフェストゥムからでも

一度として島に揚がるのを許した事などなかった。

 

 

 

 

 

 

ーー内部からの爆破が起こるまではーー

 

 

 

 

 

まるでテロのように連鎖的に各地で爆破が起こり

民達を救助している隙に多くの民達が人類軍に拉致された。

 

 

 

 

 

ーーーその民をゴムボートに乗せられ人質にされた。ーーー

 

 

 

 

 

人類軍からギネヴィアに動かぬよう命令された。

そこにギネヴィアに対し人質の核汚染すら気にせず撃ち続けた。

 

 

 

 

わざと外したかのように島は核で崩された。

 

 

 

 

 

そしてギネヴィアが堪える度に人質を殺し速く死ねと嗤いながら弄んだ。

 

 

 

目の前でまだ汚染されてない女が犯され、子供は解体して鮫のエサにし、

 

男達は老人を殺すよう命令され、殺し終わった男達、犯された女達は殺された。

 

 

 

 

 

「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」

 

 

 

 

 

真にギネヴィアを殺したいのであればもっと早く確実な手段があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーその剣で己の命を断てとーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし人類軍はそう命令しなかった。なぜか?

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ愉しみたかっただけなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オルフェノク型は人類の道具でありまた別の人間を人質にすればいいと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の国の人間を人質にすればいいと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も根拠のない理論に別の国の人間をゴムボートに乗せ人質にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー[ギネヴィア]は()()()()()()()()()()()ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺されたブリテンそのものの化身の如く。

 

血の涙と慟哭を響かせながら

 

 

 

 

 

 

 

ーーー()()()()()()()()()()。ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギネヴィアは思考する ギネヴィアは考える ギネヴィアは思う

 

 

 

 

ギネヴィアは到達した、最悪の結論と共に。

 

 

 

 

 

(モードレッド、貴女が正しかった。国など所詮、直ぐに割れる)

 

 

 

 

 

(王よ、貴方が間違っていた、我等ブリテン以外は全て蛮族、滅ぼすべきだ)

 

 

 

 

 

 

(ランスロット、貴方を愛してよかった、国を裏切ってよかった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こんな虫ケラ…いや塵芥など見たくもない)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『目標を確認、オルフェノク型フェストゥム[wrath](憤怒)を発見、戦闘に移る。』

 

 

 

『くそッ!なにが憤怒だ!散々俺達の仲間を殺しやがって!』

 

 

『人間様の怒りを思い知れ!この悪魔め!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うるさい だまれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに魔竜を超えた、この世界には存在するはずがない復讐神が産まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーその日、彼女は嘗ての円卓が堕ちた王と供にある悪夢を見た。ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー『元ヨーロッパ・深海』ーー

 

 

 

(・・・痛まし過ぎるにも程がある。)

 

 

ヒトラーは人類軍の動きを察知し、なるべく多くのブリテン人を潜水居住区に避難させ、

それをオルフェノク型に伝えようとし、自分の分身を送らせた。

 

 

しかし間に合わずオルフェノク型は狂い、分身は巻き込まれ、

最後に見たのは光を呑み込む魔竜の息吹であった。

 

 

(もはや愚かなどと呼べるものではない、アレは人類ですらない。)

 

ヒトラーは人類軍の愚行を目の当たりにし、人類軍は名ばかりの怪物と悟った。

 

(なれば計画を急がねばなるまい。)

 

ヒトラーは各地の人類軍に反発がある人間を探した。

そしてその人物達をステルス・潜水・地底・あらゆる居住区に送るよう、

部下と自分の分身である小型の群体に命令した。

そしてヒトラーの眼にはあるものが映っていた。

 

 

 

ーーー[生命進化計画]ーーー

 

 

 

ーーーーーその日、彼は人理が焼却される悪夢を見た。ーーーーー

 

 

 

 

(私は諦めん、例え神が居なくとも世界を救う。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




全てはあの日から始まった 。


将陵僚達、パイロットの戦いは熾烈を極めた 。


疑惑、怒り、迷い、悲しみ、別れ、裏切り


数々の運命のカードが彼らに配られた 。

幾つかの出会いがあった 。

それを上回る数え切れない争いがあった 。

そういった試練を全て乗り越え、
しかし今、彼らは信じていた 。




ーー戦いの終わりは近い ーー




残る1体のフェストゥムを撃破すれば全ては終わる 。


だが、彼らの知らないところで最大の試練が目覚めつつあった 、

切り札はどこだ?

切り札は誰だ?

この世界はやはり滅びに向かうのか?


戦いは終わらない


運命のうねりは今、クライマックスへと加速していく!

















   *   *
 *   + うそです
  n ∧_∧ n
+ (ヨ(*´∀`)E)
  Y   Y  *


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前回不快にしてしまった読者の方々本当にすいません…
でもこれから更にエグい描写が出る予定です。
耐えられない方はどうかブラウザバックを
そして閲覧している読者の方々に感謝しています。


ーー『南米チリ・人類軍統括本部』ーー

 

(面倒な事になってしまった…)

 

新国連事務総長にして世界政府準備議会代表を務め、

人類軍統括本部の1()/()2()を掌握している。へスター・ギャロップは苛立っていた。

 

(おのれ…ケイトめ…本当にロクでもない…)

 

人類軍の宰相、[ケイト •ピクトジン]に対する怨みでいっぱいだった。

 

(ピクトジンの血統はやはり私の邪魔をするか…)

 

人類軍は今や3派閥に別れている、といっても1つは違うのだが。

 

1つはへスター・ギャロップ率いるフェストゥム隠滅派。

 

対するケイト・ピクトジン率いるフェストゥム支配派に大きく別れている。

 

最後のは派閥とは言えない人類防衛派であり、どちらともいえる、

いわゆる中立派、穏便派といわれるものたちであった。

 

へスター・ギャロップはそのカリスマと手腕から多くの支持を得て、

正しく人類軍のTOPと言えるだろう、人物であった。

 

ケイト・ピクトジンは人類軍創立の際にへスターの父親を暗殺した一族、

その娘であり、過激な者ばかりを集め、あらゆる手を使って宰相になった。

いわゆる裏のTOPと言える人物だ。

 

(せっかくヨーロッパから気にくわないが対フェストゥム最新兵器が手に入るものを…

いったい彼女は何を考えているのですか…)

 

実はブリテン、ヨーロッパに核攻撃を指示したのは彼女ではない。

それどころか反対し、庇護さえしていた。理由としては物資と新兵器目当てだが。

 

しかしヨーロッパのフェストゥム洗脳説を提示したためにそこを突かれ。

ブリテン、ヨーロッパへの核攻撃も許してしまった。

 

(あの女狐の事です、オルフェノク型を殺す気などさらさらないのでしょう。

そして死ななかったフェストゥムがいれば核はもうやすやすとは使えない、捨て駒の扱いが本当に上手い。)

 

そして「フェストゥムとコンタクトをとり支配すべきだ」とでも言うのだろう。

 

(しかし私がいる限りフェストゥムの存在は許さない、新兵器は得られなかったが設計図は入手した。)

 

核攻撃前にへスターは行方不明となった、狸な白いフェストゥムから設計図を入手出来ていた。

 

 

[アキレス・システム]

 

 

白いフェストゥムが人類でなない事を残念に思いつつへスターは作成の指示に取り掛かる。

 

 

 

ーーーーーその日、彼女はあの女蛮族に襲われる悪夢を見た。ーーーーー

 

(オエッー!!おのれあのバイセクシャルアマゾネスがあぁぁぁ!!)

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーー『とある宇宙ステーションより』ーー

 

 

 

「うんうん♪だいぶ上手くいったねー♪」「・・・・・」

 

「おやっ?顔色が悪いけどどうしたんだい?」

「あたり前だ!大勢の人が死んだんだぞ!!いったい何人死んだと思っている!!」

 

 

 

「軽く3千2百93人かな?」「なっ!?あり得ない!!そんな少ないものかっ!!」

 

 

 

「うん、だってイギリスがタダでやられると思うかい?」「なに?」

 

 

 

「いくら爆破テロが起こっていたかも知れないけど軍がある国がそう滅ぶとおもう?」

「・・・なぜだ、説明しろケイト。」

 

 

「うんうん♪イギリスは海軍もあるし空軍もある!何よりアスター30があるんだよ?」

「アスター・・・なんだそれは?」

 

 

 

「かんたんに言うと防空ミサイルかな?」「では何故国は焼かれた?」

 

 

 

「たかが数百人の人質で国が傾くかい?6564万人の人口なんだよ?」

「御託はいい、さっさとしろ。」

 

 

 

「シェルターに隠れてたんだよ。」「バカな!『傲慢』ですら知らないのだぞ!」

 

 

 

「ヒトラーくんに教えるわけないじゃーん♪洗脳してるって人類軍が言ってるんだからさ!」

 

 

「わからんな、なにがしたいんだ?部下を殺させてまで。」

 

 

「うーん?リストラかな?邪魔な子の部下を使ったし他も押しつけたしね〜♪

 

それにしてもやっぱり『憤怒』だったね彼女。」「彼女?騎士王ではないのか?」

 

 

「まっさか〜!女の子だよ!それもカワイイ、ギネヴィアだってさ♪じゅるり…」

 

 

「なるほど…ブリテンの元王妃か、それなら辻褄があう。」

 

 

「そうそう!核の無用性は証明されてもう人類軍は核を撃てない、

少ない犠牲で済んだしムカつく奴らもやっつけれた。

 

キミは邪魔者が消えたしお互い核の犠牲者はもうでないってわけさ♪」

「巫山戯るな!!!死んだ民間人に何の関係がある!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「巫山戯る?巫山戯てるのはキミの方だ。死んだ人類軍は考えもしないくせに。」

 

 

 

 

 

 

「なっ?!」

 

 

 

 

 

 

「もしへスターが本気でフェストゥムを攻撃してみろ、確実に、そして効率よく

フェストゥムを隠滅できる。多大な犠牲を払っても、何億何万人だろうと。

 

 

それを数千人まで減らしたんだ、人類軍もなぜああしていたかも知らないで。

 

 

今まで人類史で戦争中、命の不安があるものが正気を保てるものか。

 

 

彼等は人類の為過酷な訓練に耐え血反吐を吐き、何も知らされず、

ただ命令をこなし続けただけだ。

 

 

上司が教えたから?敵対国だから?いいや人間だからさ。」

 

 

 

 

 

「・・・・・」「目を逸らすな、背負えよ。キミが望んだ結末だ。」

 

 

 

 

「俺はそんなこと・・・」「キミは間違いなく人類を多く生かすと契約した。」

 

 

 

 

「百人と一人なら百を千と十なら千を億と千なら億を選んだ。

 

表だけを見るな、裏側も見ろ、それが世界を救うと言うことだ。」

 

 

 

 

「もうすぐヒトラーくんが潜水艦をL区画まで通る。全部順調さ♪」

 

 

 

 

「・・・・・」「大丈夫!私を信じたまえ!」

 

 

そこには金髪の少年と半裸の全身入れ墨の妙齢の女性がいた。

 

「かつて地球と人類を護る為戦った、人間になったフェストゥム!

この私『怠惰』のフェストゥム!ピクト人にお任せあれっ!」

 

 

地球の抑止力、人類の抑止力から世界を護る為、

ブリテンの滅びに加担したピクト人がそう告げた。

 

 

ーーーーーその日、少年は死者に責められる悪夢を見た。ーーーーー

 

 

 

ーーーーーごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……

 

 

少年は死なせてしまった人々とこれから見殺しにするであろう人々に許しを乞うー

 

 

 

ーーーーーピクト人は日本人に薬を飲ませてから襲う淫夢を見た。ーーーーー

 

 

 

ーーーーーうへへへ、イケメンやカワイイ子に綺麗な子までいるーーーーー

 

 

 

 

 

 




この作品はアンチ・ヘイトを含み、
原作の犠牲者より少ないですが犠牲はでます。
残酷な描写もある為覚悟して読んで下さい。


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じゅうににちめっ!

前回のあらすじ
「くっ!静まれ!俺の中の堕天使よ!」
ーーアイタタタタ、誰か黄色い救急車よんで。


昨日医務室に連れてかれた徹先輩の精密検査の結果がでた。

 

 

身体の異常な発達、あり得ないほどの不明因子、異常なまでのファフナーのシンクロ率。

 

 

森田さんが下した診断は()()()()()()()()()()()()というものだった。

 

 

「そんな・・・嘘だろ・・・」「なんで急にそんな…」

 

「今までファフナーに乗っていなかったのよ?」「原因はわからないのですか?」

 

 

「すまない…同化現象ですら未知の部分がある、それを超えた症状は、私にはどうする事もできない…」

 

 

私たちは個室にて目撃した僚先輩と私、なぜか小百合先輩が呼び出されていた。

 

 

「そして他のパイロットにもその現象が診られる、その中で一番変化があったのは小百合君、君なんだ。」

 

「うそ…そんなことって…」

 

「そして僚君、君も呼んだのは君が他のパイロットとは違う結果が出たからだ。」

「俺が…?」

 

「君の場合、適合率が高かったか、他の原因かわからないが進行性が遅い、何かわかるかも知れない。」

「本当ですか!?」

 

僚先輩の声が響く、仲間が助かるかも知れないのだから無理はない。

 

「そこで真由君、君にも話しがある。」「私にも?」

 

 

 

「この不明因子が君から発生してパイロットに感染している…心あたりはないかい?」

 

 

「いえ、そんなことは・・・・"あ"ッ…」

 

 

久しぶりにラハムさんの事を思い出した。

 

 

(揺れてるよ?同調が進んで人外化してるんだろうね。)

 

(同調が進んで人外化してるんだろうね。)

 

 

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

冷や汗がとまらなかった。

 

 

 

ハッ!殺気ッ!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『格納庫にて』ーー

 

 

 

「それではラハムとの対話を行うが…いけるかね…?」

「目からの汗で前が見えません。」

 

たんこぶからたんこぶなんて私初めてだよ。

 

「一応ファフナーの監視をつける。ラハムの変化がある為気をつけてくれ。」

「わかりました、けど多分大丈夫でしょー。」

 

私は最高責任者の早乙女さんと格納庫に来ていた。

ラハムさんから症状の対処を教えてもらうために同伴付きで許可をもらった。

 

変化があったのは少しフェストゥムからmgmgしたからやろ。

 

「ラハムさーん!久しぶr『真由真由真由真由真由ゅぅぅぅーーーー!!アヒャヒャ!!』」

 

そっとじ。

 

なにあれ?あんなの私が知ってるラハムさんなんかじゃない。

 

「言ったろう?変化があると。」

「フェストゥムと不審者がいますよ?隠滅して下さい。」

 

主に私の心の平穏のために

 

「そうしたいのは山々なんだが何をするかわからないからね…」

 

『オラッ!そこに真由が居たのは見えてんだよッ!見せつけてないで真由を出せ!!』

 

いつからこんな凶暴になったのだろう、今にもちびりそう。

 

遠目から見たラハムさんは全身鎖で覆われ大きな収容機材に収まっている。

それでも頭だけなんとか見ようとしてめっちゃブラブラしてる。

正直キモい、あとなんかハァハァしてる。

 

『ウヒョー!生真由たんprpr』「ヒィィィ!?」

 

ごめん言動もキモい、近寄りたくない。

あんな可愛い声でキモい見た目と言動で違和感が有頂天

 

「すまんがパイロットの命がかかっている…」

 

早乙女さんは涙目で私を見ている、私も同じ顔だろう。

 

胃薬を貰い、私はそこに向かった。

 

 

ーーラハムさーん、おひさー?ちょち聞きたいことが…

 

ーーちょ、なにこの触手なんか生温かいんだけど…

 

ーーうわ!なんかぬるぬるする!イカか栗の花のような臭いがする!

 

ーーやっ…やめ…ヤメロォ!(本音)

 

ーーアーーーーーッ!!

 

 

私は死んだ。スイーツ(笑)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「それで聞きたい事があるんだっけ?」

「ああ…」

 

 

あの後真由君はラハムに取り込まれ、気絶し、

そのままの状態で私とラハムで会話している。

 

真由君には申し訳ないが実は既に私がラハムと対話する予定であった。

ラハムとしては会話をする間だけ真由君を要求した為、

最初から真由君とはラハムと会話させるつもりはなかった。

 

だが、私は謝らない。全パイロットの危機なのだ。

 

「ボクが前にした、能力の話は憶えてる?」

「もちろんだ、直接同化と液状型エネルギー体の生成だろう。」

 

もっとも、それだけとは思えんが。

 

「それの影響だろうね、真由が出してるエネルギーで同化現象を抑制してるんだろうね。」

「なに……?!」

 

それはつまり…

 

「同化現象による消滅を防ぐために、肉体が自らフェストゥム化しているのか!」

 

「うん、真由に感謝しなよ。今頃既に誰かいなくなってもおかしくなかったんだから。」

 

彼は一度瀕死の重症であったが高エネルギー体の生成能力、

それによって生き延びあの窮地を脱した。

それの余波が身近にいたパイロットに影響したのだろう。

 

「こんな事…皆にどう伝えればいい…」「知らないよ、それが君の責任さ、最高指揮官。」

 

ラハムは私を冷たく突き放した物言いをした。

ラハムにとっては真由以外興味がないのであろう。

 

「ボクが要求に従ったのは、真由が皆に嫌われて傷つかないようにするだけ、

後のことなんて知ったことじゃないさ。」

 

ラハムのその言葉は本音なのであろう、妙な真実味があった。

 

 

「ところで真由君に何をしている?」

 

 

 

 

 

 

「ボクの記憶を植え付けてるのさ!これでもう真由は寂しくないよ!」

 

 

 

 

 

真由君、強く生きてくれ。

 

 

 

 

 

その後、時限式の補給と同化現象の消滅の危険性がない事を

私は脱却して吉報として皆に伝えた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーーーーその日、私は女性から触手が生え襲われる悪夢を見た。ーーーーー

 

 

 

 

後日お漏らしをまたした。

 

特例としてなぜか反省室は免除された。

 

昨日の功績と言われたが謎の触手に襲われた記憶しかない。

 

その日は何故かみんな優しかった。

 

 

 




ラハムさんの泥万能説。


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じゅうさんにちめっ!

前回のあらすじ

「あうあうあー。」
「真由君…酸素欠乏症にかかって…」


今回はほのぼの回


ーー『L区画某所』ーー

 

 

 

 

「これより、第1回TSX団(ティターンズ)による異端捜査会議を始める…」

 

 

 

暗闇の中で蝋燭の灯りが不気味に耀き、そこには7名の人間がいた。

 

 

全員が紅い三角頭巾の紅装束で顔は見えず、額の部分には大きく『T』の字がある。

 

 

広い場所で小型のガンドレイクのレプリカを持っている男が声をあげる。

 

 

 

ーーしかし男は台に乗って身長を合わせていたが。

 

 

 

 

「先日未明、容疑者Rと容疑者Yが密会、その際容疑者Rが容疑者Yの手を繋いでいたそうだ。」

 

 

ざわ・・・・ざわ・・・ざわざわ・・・・ざわ・・・・

 

 

「静粛に狼狽えるな諸君、TSX団は狼狽えない。

さて…諸君らに問う、我等は何だ?」「「「「「「TSX団!TSX団の信徒なり!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「そうだ、ならば我々がすべきことはなんだ?」「「「「「「異端者供に天罰を!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「そう!これは天に代わり悪を討つ正義の御業!決して醜い私怨からではない!」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「異端者供に死の鉄槌を!!」」」」」」

 

 

 

 

 

「同志諸君!奴らが犯行を犯し次第すぐに捕らえるのだ!そして天の裁きを!

 

異端者供に死を与えるのだ!」

 

 

 

 

 

「「「「「「「うおぉぉぉぉーーーー!!!」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

「君たち他所でやってくれないかな?」

 

 

 

 

朝のモニタールームでの出来事だった。

 

 

 

 

「何を仰います!貴女も独り身なのでしょう!」「ゔっ…」

 

 

 

「なればこそ異端者供に死を!貴女よりも年下が付き合っているかもしれないのですよ!」

 

 

 

「ええっ!それは許せませんね!絶対に!未成年同士なのに不純です!」

 

 

 

信徒が増えた、やったぜ。

 

 

 

 

「リア充供に死を!我等ティターンズの底力を見せるのだ!」

 

 

 

「「「「「「「オーーーーーー!!」」」」」」」

 

 

モニタールーム前には落書きが書いてあり、

「彼氏が欲しい。」「リア充死すべし」「結婚したい」「誰か付き合わない?」

「おうどん食べたい」「夜はカレーです」「ちくわ大明神」「誰だ今の」

など明らかに私情であることは明白であった。欺瞞!

 

 

 

「ところでそのレプリカどうしたの?」「基地の残骸から作りました。」

 

 

 

 

没収された (´・ω・`)

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

記憶喪失から数日後、未だ触手の悪夢を見ますが私は元気です。

 

おねしょはどうしたって?今はオムツだ、察しろ。

 

早乙女さんがラハムさんから聞いた情報によると私からエネルギーが出ており

パイロットの同化抑制とフェストゥム化、身体の健康を保つらしい、なんじゃそりゃ。

 

スタッフの人たちには健康増進、アンチエイジング、アロマの作用があるらしい。

私が欲しかったよ、そんな万能薬。

 

パイロット達はどうやらファフナーをあまり乗らなければいいのと、

クロッシングを使わない、同調率が高ければフェストゥム化はなりを潜むとのこと。

短い戦闘と読心されてもいい攻撃、避けられない戦闘をすればいいとのこと、

L区画のパイロット達はバケモノか。

 

 

順調にL計画が遂行される中、私は惇先輩に呼ばれ部屋に来ていた。

 

 

ーーやり残した事はないか?心残りはないか?

 

 

そう言われて何の意味か懐疑しつつ部屋に入ると惇先輩の他に剛史先輩がいた。

 

 

「遅かったじゃないか…」「ああ、先に行くところだったぜ。」

 

 

「先輩達2人だけですか?他の先輩方は?」

 

 

「今回の計画、幸弘はダメだ、あいつは真面目だからな。」

「徹は俺が置いて来た、ダイエットさせたがハッキリ言ってこの計画にはついて行けない…」

 

「一体何が始まるんです?」

 

 

「「覗きだ。」」

 

 

ふーん………ファッ!?

 

 

 

「先輩達!何考えてんすか!!やめてくださいよ本当に!」

「もし参加しないのであればお前は格納庫に置いていく。」

 

ヒエッ!なぜかあそこの近くに寄ると黒い触手の幻覚を見るというのに!

 

 

「参加しないのなら仕方ない。やれ。」「暴れんなよ…暴れんなよ…」

 

 

「許して下さい!何でもしますから!」

「ん?今何でもするって言ったよね?」

 

 

「よし、ならこれを着ろ。」

 

 

そうして渡されたのはカッパだった、なんやのコレ?

 

「カッパじゃなくてRaincoatと言え。」「先輩発音うまいっすね。」

 

レイン↑コート↓………真似したけどムリダナ(・×・)

 

「作戦を説明する、まずボイラー室に向かいダクトに潜入、

道案内は俺がするから2人は前後左右の確認を頼む。」

 

「惇がプランを考えている間、俺は監視カメラの位置を確認した。

通路に3つ、ボイラー室に1つ、俺でなきゃ見逃しちゃうね。」

 

 

「アンタらほんとに何やってんだ?」

 

 

戦闘時以外の時間が暇すぎるでしょ…

ん?私は戦闘さえしないから特大ブーメラン?照れるね。

まあこれでも私はスタッフさん達のお手伝いや森田さんのお手伝いとかをしている。

本当に疲れているスタッフはマッサージも要求するから困ったもんだ。

 

 

 

 

ーー真由のマッサージについてそこんところkwsk

 

 

 

 

…なんか電波来たけど無視しよう。

 

 

「ところで何で僚先輩はいないんですか?」

 

 

「彼奴には異端者疑惑があるからな。」

 

 

それについては総帥の私が一番赦さん。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー『ダクト内・女湯エリア』ーー

 

「それにしてもよくダクトの通路がわかりましたね。」

「ああ、俺もビックリだ。」

 

「匿名で女子の内通者がいてな、これで覗かなきゃ漢が廃る。」

 

( ゚д゚)ポカーン( ゚д゚)ポカーン(`・ω・´)キリッ

 

・・・まずい!これは罠だ!

 

「先輩まずいですよ!」

「そうだ惇!今からでも遅くない!すぐに引き返すぞ!」

 

「どうしたお前ら?もう目の前だぞ?」

 

もうそこまで来てしまったのか!急いでうしrガコンッ!

 

 

 

 

「「「なにィーーーッ!!?」」」

 

 

 

ダクトが落ちた!いやまだ事故の可能性も「お前達なにしてる?」

 

 

 

ジャーン !!ジャーン!!「「「げぇっ!?幸弘(先輩)!?」」」

 

 

「ラハムに言われてな、発信機と盗聴機を真由に付けておいた。」

「いつの間に!?」

 

 

「裏切ったな真由!俺たちの心を裏切ったな!」

「そうだ!僚と同じに裏切ったんだ!」

 

 

「仲間の様に言っているが脅迫していたのは聞いている。覚悟しろよ?」

「まっ…待て!落ち着け幸弘!」「そうだ!暴力はいけない!」

 

「年下の後輩誑かして何言ってやがるっ!」

 

 

 

 

((((`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・ヘブゥ!

 

 

,;'.・(゚ε゚(O三(>_<`)oウワァァァ‼︎

 

 

((((;`Д´)≡⊃)`Д)、;'.・ソゲブッ‼︎

 

 

 

 

惇先輩がヤケクソになって殴り返したが2人とも一撃で気絶した…それにしても…

 

 

「ラハムって誰ですか?」「・・・・・・」

 

 

先輩は無言で私の頭を撫でた。

 

 

 

ーー晩御飯はドライカレーでちょっと残念だった。

 

 

 

あっあと匿名は早苗先輩のイタズラだった。

先輩2人は「ゆるさなえー!」と襲ったが返り討ちにされてた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーその日、私は触手が生えた女性がションボリしつつチラチラ顔を伺ってくる悪夢を見た。ーーーーー

 

 

 

怖いものは怖いからしゃあないねん。

触手なんとかしてぇな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




L区画内での日常。スタッフもまだ誰も死んでません。
早苗さんは早乙女司令官に許可を貰い、
モニタールームで幸弘君以外みんなで鑑賞して愉悦していました。


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ばんがいっ!そのよんっ!

BGM『暁の車』


インド国・ヴィシャーカパトナム市・ヤーアーダービーチ

 

 

 

 

そこには多くの戦艦・巡洋艦が橙色の岩巨人を囲み、いつでも主砲が撃てるようにしていた。

 

 

離れた海域には空母があり、岩巨人の上に幾つかのヘリや戦闘機が攻撃待機している。

 

地上には自走砲・自走式対空砲が待ち構え、戦車や装甲車、歩兵の姿があった。

 

 

巨人の両手足は海水に浸かり、今にも崩れそうな状態で前を向いていた。

 

 

一隻の巡洋艦が巨人に近づいており、艦橋から1人の人物が巨人と会話をしていた。ーー

 

 

 

 

「もう一度確認させて貰う、私の心の臓、お前達の言うコアを差し出せば大地に毒を蒔かぬのだな?」

 

 

 

「…ああそうだ。アジアの守護神よ。この様な卑怯な手を使い、私は恥ずかしく想う…」

 

 

 

 

アディラタは人類軍による大陸への生物兵器の撒布警告を出され、

住民達を守るために住民達の反対を押し切り、要請に応え此処に居る。

 

 

 

「アディラタァァ!!駄目だそんなこと!俺たちの代わりに貴方が死ぬなんて!」

 

 

「アディラタ様!お考え直して下さい!貴方様が死ねば我等はどうすれば…!」

 

「おじいちゃーん!しなないでー!いっしょにあそぶやくそくやぶっちゃだめなんだよー!」

 

「アディラタぁ…」「こんなこと許されるはずが…」「おぉぉ…神よ……」

 

「この畜生供がぁ!こんなことを続けてなんともないのかぁぁぁ!?」

 

 

地上からは今までアディラタが尽くしてきた住民達が人類軍に非難をぶつけていた。

 

 

乱闘までには至っていないが今にも人類軍に飛びかかり、すぐにでも始まりそうな状態だ。

 

 

それでも最後の理性を保ち、抑えて居るのはアディラタが赴く前の遺言があったからだ。

 

 

 

 

 

 

ーー未来ある子供達の為に私の命で済むのなら喜んで差し出そうーー

 

 

 

 

 

ーー私の様な異物ではなく、未来に生きるのは可能性の子供達だーー

 

 

 

 

 

 

人類軍に対しあわや戦争を起こそうとしていた大人達は自らを恥じた。

 

 

 

アディラタは戦争に巻き込まれる子供達をみたくはなく、そして自身の息子の様に死んで欲しくはなかった。

 

 

 

アディラタにとっては其処に住む全てが自分の子供達であった。

 

 

 

 

「聴こえているのだろう!この悪魔が!呪われるがいい!!

貴様等人類軍はブリテンの悲劇を省みず!まだ愚行を侵していると気づかぬか!!」

 

 

「呪われろ!!人の道を墜ちた外道供が!!その身はいつか地獄の業火で焼かれるであろう!!」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

地上部隊からの攻撃が届くよう、そして命令を出す為に全ての無線は繋いでおり、

彼等人類軍は守るべき人類からその憎悪をただひたすらにその身に受けていた。

 

 

 

 

「私の命で済むのなら安いものだ。ただし、死にゆくものとして最期の条件がある。」

 

 

 

 

 

「…受けられるかどうかは解らない、守れるかどうかさえ定かではない…

 

それでもいいのなら話してくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

「どうかもう2度とこのようなことはしないでくれ…

 

 

 

そして2度と、自らの心を自身で傷つけないでくれ…」

 

 

 

 

 

 

 

騒音が止み、時が止まったかの様な静寂が響いたーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・!!!!ぐぅぅぅ………ぁぁぁああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉は正に引き金であった。

 

 

 

 

 

 

 

男性は己の心を鉄にしようとしたが、硝子の様に砕け散った。

 

 

 

守るべき人類からの憎悪、醜い己が行動、優しき巨人の言葉。

 

 

 

彼にはとても背負いきれず、親を見失った子供のように泣いた。

 

 

 

「私は此処で死ぬ…故郷インドであり母の海で、我が身を明かそう…

 

 

しかしもう、子供が泣いている姿は見たくない…どうか自愛してくれ。」

 

 

 

 

「あああああああああああああああああぁぁぁぁぁ…………!!」

 

 

 

アディラタの親愛をその身に受け、叱られる子供の様に泣き叫び、

 

その姿は誰が見ても無様と言える見苦しいものであった。

 

 

 

 

 

ーーしかしそれは人間である証明の尊い心の表明でもあった。

 

 

 

 

「ふぐぅぅ…うぐっ…了"承"じだ…ズズッ…我等が父よ…

 

太陽…神…全ての人類…そして貴方(父さん)に必ず誓う……!!」

 

 

 

 

 

 

子は親に叱られ、子は反省し前に進む。

 

 

 

 

 

 

「不甲斐ない親ですまん…人類の未来を我が子供達に託そうーー!!」

 

 

 

 

 

 

それは正に神話の光景そのものであった。

 

 

 

巨人()は心の臓を自身で顕にして子供に晒した。

 

 

 

まるでもうひとつの太陽が耀き、生命全ての『祝祭(フェストゥム)』の様に。

 

 

 

太陽は浮き続け、身体は崩れ落ち、

 

 

薄れ逝く意識の中、最初の息子を思い描いた。

 

 

 

 

(…ああそうだ…私はお前の様に無欲にはなれなかった…

 

 

 

私は全てを棄てられない『強欲』であったのだから…)

 

 

 

 

 

 

 

ーーーその日、彼は息子達が手を取り合い、困難に立ち向かう夢を見た。ーーー

 

 

 

 

 

ーーああ…ーーこれはーー良い夢だ。ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『人類軍・指揮艦 艦橋』

 

 

 

 

「よろしいのですか。あの様な約束を。」

 

 

 

 

 

「ああ…リオウ、私はもう2度と間違わない。」

 

 

 

艦橋には日本海での事件、ブリテン崩壊により上官が殉職した事により、

 

出世した黒人の()()()()()()()の青年が迷いを捨てた顔をしていた。

 

 

「今の人類軍は間違っている、このままでは人は人で無くなってしまう。」

 

 

それはへスター・ギャロップ、ケイト・ピクトジンへの戦う意志であった。

 

 

 

「人間の素晴らしさは勇気だ。

 

人間が高潔である人間賛歌、私がそれを証明してみせようーー…!!」

 

 

彼ですら知らなかったがパーンダヴァの末裔、

 

リチャード・マサラはそう決心した。

 

 

「私がまだ人間であるなら、それができるはずだ…!」

 

 

 

 

人類の夜明けは近い。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

砂漠のピラミッド付近にて

 

 

(今日も貴方は起きてはくださらないのですね……。)

 

 

ネフェルタリは今日もピラミッドに祈りを捧げつつ、

 

花を添え、未だ俗世に戻らぬ夫を待ち続けた。

 

 

ーーやはりこの身が人ではないからでしょうね…。

 

 

 

ネフェルタリは夫は迎えには来ないと思った時にそれは起こった。

 

 

(ーーー!あれは!!)

 

 

なんとピラミッドから人影が見え、其処に立っている姿が見えた。

 

 

(まさか本当に迎えに来てくれたのですかラーメス…!!)

 

 

妻は涙を流し愛する夫と思われる影に近づいた。

 

 

 

その時不思議な事が起こった!!

 

 

(はっ……?)

 

 

其処に居たのは生前罪を犯した胸に穴が空いた、

罪人の布を巻いている罪人のミイラであった。

 

 

 

(いやーーーーー!?助けてラーメスーーーー!!)

 

 

 

女の巨人が泣きながらミイラと鬼ごっこをし、ミイラ動かなくなったのを見て、

疲れて寝てしまったコントの様な光景であった。

 

 

 

ーーーその日、彼女はホルスの化身が冥界の亡霊を逃してしまう悪夢を見た。ーーー

 

 

(貴女の仕業ですかニトクリスーー!?)

 

 




太陽王の嫁の涙目が見たい。
ハッ!殺気ッ!


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じゅうよんにちめっ!

前回のあらすじ

ナン極まったカレーパラパラパラになる♪
辛えぇ…


 

ーー格納庫ーー

 

 

 

「それにしても俺たちの完璧な計画が水泡に帰すとは…」

 

「なにさらっと混ぜてんですか、計画したのは惇先輩だけでしょう。」

「そうだよ(便乗)おかげでひどい目にあったぞ…」

 

昨日の騒動の主犯格として先輩2人はファフナーの整備をやらされていた。

付き添いの私と剛史先輩で真剣に悔しそうな惇先輩をジト目で見る。

剛史先輩はノリノリでやってたよね?なんで被害者面してるの?

 

「報復として早苗のカレーをカレー粉5割増しにしたがまさかやり返してくるとは…

お前ら無事か?」

 

「えっ?私はなにもされてませんよ?」

「やったのお前だけだから俺らがやられるわけないだろ。」

 

「」

 

絶句して裏切られた顔をして涙目の惇先輩。

あたりまえやがな(呆れ)

 

早苗先輩は襲いかかる2人にたいして「もとより(狭くて)入れませんので」と

八極拳で2人の腹部に掌打をあて、惇先輩は驚愕、剛史先輩は半身不随の様に顔が半分だけ泣いてた。

 

最初から幸弘先輩が出てこなくても私達は女湯には辿り着けなかったのだ。

 

「まあ辿り着いても吸引力の変わらないあのダクトじゃ煙で見えないですし

真上じゃなにもわからないですよ。」

「バカヤロウ!そこに求心力の変わらないただ一つのロマンが見えるじゃねぇか!」

「真由!失敗したが俺たちのこの想いは間違いなんかじゃない。

ーー決して間違いなんかじゃないんだ!」

 

仕方ないなぁ、マダオ(まるで駄目なお兄さん)くん達は。(ダミ声

 

私は隠しながら持って来ていた封筒を掲げて2人に見せた。テレレッテレー♪

 

 

「真由?それは?」「茶封筒?なにが入ってるんだ…まさか反省文じゃないだろうな?」

 

「違いますよ。素敵本です。」

「「なにっ!?本当か!?」」

 

覗きの様な卑劣な事は嫌いだが私にもロマンがある(迫真

 

「はい!スタッフのお手伝いのお礼に整備班の久保さんから頂いたんです!」

「でかしたぞ真由!早速見てみようぜ!」「持つべきものは良く出来た後輩だな!」

 

 

我慢などできぬぅ!とばかりに私達は封筒の封を開けた。

こっ・・・!これは・・・・!?

 

 

「・・・・・・・・おえっ。」「・・・・・・男だな。」「………男ですね。」

 

 

薔薇が舞っている本だった……

 

 

「久保さんって男だよな…」「はい…間違いなく…」「オロロロロ……」

 

「うぷっ…ファフナーにエチケット袋あって助かった…」

「これ真由に似てないか?」「似てますね…」

 

 

「「「・・・・・・・」」」

 

 

「「ふざけんじゃねー!ぬか喜びさせやがってーー‼︎」」

「うわーーん!久保さんのばかーーー!!」

 

マッサージの時、よく踏むのを頼んでハァハァしてたのはこれかー!

 

 

「剛史手伝え!こいつ縛って久保さんとこに置くぞ!」「おうっ!」

「他の人も当たって見るからそれだけはー!」

 

明日までっ!明日までお待ちください!

 

「「うるせー!知ったことかよー!」」

 

 

「あーーーーーん!!誰かボスケテーーー!!」

 

 

 

私の悲鳴はエコーしつつ、簀巻きにされてしまった。2人に勝てるわけないだろ!

 

 

 

 

 

 

その後整備室についた私達は閉じ込められ窮地を脱し3人の結束はより固くなった。

まさにバイオ○ザードの光景だった…ひ…ひでぇッ…化け物は化け物を生み出すのかあッ…

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

将陵僚は激怒した。必ず、かの天真爛漫な弟分(能天気なバカ)を叩かなければならぬと決意した。

 

 

将陵僚には恋愛がわからぬ、将陵僚は、生徒会長である。

 

行事を取り仕切り、勉学を努め、学友と遊んで暮らしてきた。

 

けれどもイタズラには人一倍に敏感であった。

 

 

「あっ、僚ー!栽培班の人から苺貰ったんだけど…ん?何その目怖っ!」

 

「アァッ…祐未か、お前モニター前のあれ見たか?バカは知らないか?」

 

「目が血走って赤くなってるよ…真由くんならモニター室に集まるってちょっと!」

 

なるほど犯人は現場に戻るというがこういうことか。

祐未も俺がバカと呼ぶのは1人しかいないのは知っている。

今度という今度は絶対に許さん。

 

俺はモニター室の扉を開けた。

 

「今度は廃材でまな板作って見ました!」「怒られるわよ司令に…」

「今私の事まな板って言った?」

 

「ちゃんと許可貰ったので大丈夫です!」「なんでそんな物を…」

「今まな板って言った?」

 

「亜由美さんはまな板の凄さを全然わかってない。」

「わかるわけないでしょ、まだまな板充備されてるんだから。」

 

「 ねぇ……誰か私を笑った?」

 

 

バカは女子達と集まって何か話してるがこの将陵 僚ッ!容赦せんッ!

 

 

「あっ!僚センパーイ!見てくださいこの滑らかなフォr「馬鹿野郎‼︎」ドカッ!

ルウムッ!?」ガンッ!「目がああああ!?」

 

「なんであんなこと書いた! 言え!なんでだ!」

「なんのことですか先輩!」「とぼけるな!モニター前の落書きの事だ!」

 

「前が見えねぇ。」「落ち着いて僚君!」

 

 

一緒に居た小百合と亜由美さんが何か言ってるがこいつだけは!

 

そこのモニター前には他の落書きの上に大きな文字で上書きされていた。

 

俺はこいつの襟首を掴みデスクで拘束して逃さない。

 

モニター前の落書きにはこう書いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『将陵 僚/生駒 祐未』(ハートの相合傘)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が朝モニター前に居るのは知っている!犯人はお前だろ!」

「ぎくぅ!?でっ…でも私じゃないですよ!こんなのTSX団じゃない!」

 

「まな板が…まな板…」「うぐぅ!?僚君やめて!?やめてください!」

 

「あくまでシラを切るつもりか!反省室に送ってやる!」

「私じゃない!私じゃない!私じゃない!」

 

「まな板は私で…私がまな板だった…?」「やめて…もうやめてよ…」

 

 

「なにこのカオス。」

 

 

祐未が入って来たが止まる気はない!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「昨日のカレーがドライカレーになったのも!久保さんに目を付けられるのもお前のせいだ!」

「言い訳なんかじゃないです!本当に私はやってません!途中から私情じゃないですか⁉︎」

 

「ドライがノーマルに劣ると申すか。」「私だって…竜宮島に帰れば彼氏ぐらい…」

 

 

祐未は僚と真由に近づき2人の間に入り僚を宥めた。

 

 

「ハイハイ、落ち着きなさいよ僚。真由君はやってないって言ってるよ?」

 

「でもこいつがやったとしか…」

「真由君は隠し事はするけど、嘘はつかないのは僚が1番よく知っているでしょ?」

 

「うぅぅ…」「むう…」「ほら真由君に謝って?泣きそうになってるじゃない。」

 

「ごめん…真由…俺…「劣るともうすかー‼︎」」

 

小百合が顔にまな板をぶつけられ昨日から「普通のカレーがよかった」という皆の反応から情緒不安定になっていた。

 

 

僚は半身の重心をずらし小百合の片腕を掴み即座に固める。

見事なアームロックだ。ワザマエ!

 

「ふんっ!」「アッー!↑アッー!↓激しすぎます!」

「小百合!空気読んで!」「それ以上いけない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁん!!!お兄ちゃんのばぁかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!!??」」」」

 

 

 

真由は僚に大声で責められ、あそこまで怒った顔を見るのは初めてで、

謂れのない罵倒を受け、急に無視された安緒感と湧き出た感情が、

蒸気機関のように感情がバックドラフトのごとく爆発した。

 

 

真由はこのL区画に来てから泣く事はあれど、ここまで大声で泣き出した事はなかった。

 

 

(なんだよ!私はなにもしてないのに!悪いことなんかしてないのに!)

 

 

真由は冷静さを失い、頭の中がグチャグチャで何も考えられなかった。

 

「ああああぁぁぁぁん!!あっぁぁぁぁぁ…………‼︎」

 

「待て!真由!」「ダメっ!僚!」

「真由君!」「マイエンジェル!」

 

 

真由は走りさり、僚がいない、来れない場所を本能的に向かい。

泣いている、感情が爆発したばかりの子供に命令する言葉は禁句だった。

 

 

「……………………‼︎」「真由ー!」「真由くーん!」

 

 

 

今は誰の声も届かなかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…………………………」

 

 

「…………………………」

 

 

落書きは早乙女 柄鎖の出来心で誰も傷つかないと思って書いた。

 

 

 

 

ーー担当医は見ていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーーその日、私は夢の女性さえも寄せ付けない悪夢を見た。ーーー

 

 

 

 

 

(……)

 

 

 

 

 




誰も思春期を殺せないと思う。


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じゅうごにちめっ!まえっ!

前回のあらすじ

訴訟も辞さない。


ーー格納庫ーー

 

 

「本当に引きこもってるな…」「重症だぜ、こりゃ。」

 

「ごめん、昨日は気が動転してて…」

 

「小百合じゃない…俺が悪かったんだ…あんなに怒鳴って…」

 

 

「ううん、今回は誰も悪くないよ、じゃないと皆が責任を感じちゃう。」

 

 

俺は濡れ衣を着せてしまった真由を探し、幸弘から発信機で真由を見つけて貰い。

真由は格納庫のラハムの中に引きこもっていた。

 

「余り気に病むな僚。あんな事書かれれば誰だって怒る。」「幸弘…」

 

「私が一応落書きは消して来たけどごめん、全部は消せなかった。」

「ありがとう、祐未。昨日はごめんな。」

 

「謝るなら真由君に謝らないと…」

「そうだな…一騎に仲良くなりたいなら向かって行けなんて偉そうなこと言っておいて、島に帰ったら後輩達に笑われるな…」

「僚…」

 

僚は竜宮島の、喧嘩ばかりしていた後輩の一騎と剣司の事を思い出し力なく笑った。

俺は1人でいることが多かったけど、誰かに向かうのがこんなに恐い事だとは思わなかった。

 

「辛気臭い顔をすんなよ僚、皆がいるから安心して謝ってこい。」

「そうそう、じゃないと着いて来た意味ないからな。」

「バーカ、俺達が勝手に着いて来たんだろ?」「ほんとほんと。」

「徹…惇…剛史、早苗…」

 

ここにはファフナーのパイロット全員がいた。

確かに1人じゃ恐かった、でも皆がいるなら少しだけ、恐さが和らいだ。

 

「俺達にとってもあいつは弟分で、後輩なんだ。見過ごせるかよ。」

「彼がいたからこんなにも楽しかった。今度は私達がお返ししないとね?」

 

 

「ああ…うん、そうだな…皆の真ん中に、あいつはいた…」

 

 

真由はいつも誰かと一緒にいて、バカやったりくだらない事したり、勉強して後輩らしく誰かに甘えて、俺達の近くに弱くて大事な存在がいるのは、いつも勇気を与えてくれていた。

 

俺達はラハムに近づき、前に立った。

 

「真由?聞こえるか?昨日は悪かった、本当にごめん。」

 

(…………………)

 

 

 

返事はないがラハムは触手で丸を出している。

ラハムは黙ってくれていて、真由に聞こえてはいるようだ。

 

 

「何時もお前にキツい事言って、殴ってばかりだったけど…俺1人っ子だったからさ、

弟みたいなのが出来て本当に嬉しかった…嘘じゃないぜ?どの口が言うようだけど、お前といた日々は楽しかったし、何よりお前があんな事書くような奴にはなって欲しくなかった…勘違いでお前に怒鳴って、本当にごめん。独りよがりだけど、お前の事を弟の様に思ってる…」

 

 

 

 

 

「真由君、昨日はごめんね?天使って昨日は言ったけど、本当なんだよ?

初めて出会って、君を助けた時から、そう考えてた。皆がフェストゥム化してるって聞いて、

真由君のおかげで同化しないって知ってから、私は真由君を天使だって確信したんだ。

恥ずかしいけどこれからもそう思っていいかな?私の天使様。」

 

 

 

 

 

 

「真由、お前がそいつに名前を付けたように俺もファフナーに名前を付けたんだ。1番をアイン、2番がツヴァイで3番と4番をドライとフィアーって皆がいない時にそう呼んでるんだ。笑うなよ?

こいつらも竜宮島に帰る仲間だって考えたら、つい思いついちまった。」

 

 

 

 

 

「昨日の昼は凄かったよな?真由。」

「俺と惇がお前を運んで整備室に着いたら部屋の鍵をかけられたもんな。」

「そうそう、久保さんだけかと思ったら何人かいてさ、縄を解いて走り回って剛史を囮にして背が低いお前に鍵を取って貰ったもんな。」

「馬鹿にしてないぜ?あそこで助かったのはお前のおかげだからな。」

 

 

 

 

 

「真由君、実は私には弟がいてね。彗っていうんだけどお姉ちゃん子で。

君みたいに明るくて元気な子なんだ。私が作ったカレーが好きでつい昨日はムキになっちゃった。

弟は7つ年下で、君を見た時は弟とと同じぐらいだと思ったけど、

私達の2つ下だから驚いちゃった。

竜宮島に着いたら私の家族と一緒に私のカレーを食べてよ?

両親もいい人だし、腕によりをかけて作るからさ!」

 

 

 

 

「真由、お前の予測出来ない行動は、何時も俺を困らせてくれたな。お前以外の誰かが何時も必ずいたから、その人の本性が見れて困惑したものだ。お前は何時も前向きだったけど、自分をさらけ出すのは下手くそだったな。恐がっててその癖、1番の寂しがり屋だった。誤魔化してもダメだぞ?お前は寂しい時に服の裾を掴む癖があったからな。今も寂しいんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

「皆真由の事を心配してる。だから、怒っててもいいから出て来てくれないかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………………………………)

 

 

 

 

 

 

 

真由からの返事はない…ラハムから触手でバツを出され、

真由は俺を許してくれないとわかった。

 

 

「真由…」(…………)

 

 

真由といた事で今まで痛くなかった肝臓と、なにより胸が1番痛かった。

 

 

 

 

「真由…ごめん…怖かったよな?悲しかったよな…」(…………………)

 

 

 

何時もの、俺達の馬鹿騒ぎがないのが、静寂が。

真由がいない時の様な時間が、ここまで苦しいとは思わなかった。

 

 

 

 

 

キィン…『皆、聞こえるか?今からブリーフィングルームに来てくれ。』

 

 

 

 

「艦内放送…」「早乙女司令官?」「なんでこんな時に…」

 

 

 

 

「真由…すまない。後でまた来るから…」(…………………)

 

 

 

 

俺達は真由に一言謝り、艦内放送に従い、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ラハムは今が1番不快であった。

 

 

 

ラハムの元に昨夜、真由が来て狂喜乱舞したがすぐに落ち着いた。

 

 

 

(真由…大丈夫だよ、皆嘘は言ってない。)(………)

 

 

ラハムは不快だった。

 

 

ラハムの感覚共有で真由が冷静なのはわかったし、

心の整理が未だ着いていないのはわかっていた。

 

 

 

ーーーーー真由…なんで?どうして…

 

 

 

ラハムは不快だった。

真由をここまで悲しませ、苦しませた事に。

 

 

 

 

 

ーーーーー……真由。

 

 

 

 

 

ラハムは『嫉妬』していた。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

ーーーー……………。

 

 

 

 

 

ラハムは不快であった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー『ブリーフィングルーム』ーー

 

「すまないな、皆、集まって貰って。」

 

 

そこにはパイロット8名、スタッフ31名、司令官1名と、

全員がブリーフィングルームにいた。

 

 

「今も艦内放送は開いている、私は君達に謝らなければならない。」

 

 

 

「司令官?どうしたんですか、全員呼び出すなんて…」

「艦内放送を開いたままって、何かあったんですか?」

 

 

 

「ああ、他でも無い。真由君の事に関してだ。」

 

 

 

「「「「「「「「真由(君)の?」」」」」」」」

 

 

 

集まったスタッフ、パイロット達は困惑した。

今も引きこもっている真由に何かあったのだろうかと…

 

 

 

「真由君、聞こえるかね?私だ、早乙女柄鎖だ。」

 

 

(…………………)

 

 

 

 

「今回の事件、あの落書きを書いたのは私だ。」

 

 

 

「「…はあっ!?」」「嘘っ!?」「本当に?」「そんな司令官だなんて…」

 

 

 

「早乙女司令官……」

 

 

 

 

「今回の事件、スタッフ・パイロット達を巻き込み、不穏な空気を作り、皆、本当にすまなかった…」

 

 

 

 

早乙女 柄鎖がブリーフィングルーム、そして格納庫にいる真由とラハム。

 

L区画にいる全員に頭を下げ、謝罪した。

 

 

 

「将陵君、生駒君。今回は司令官、大人として、いや人として余りにも浅はかな行動だった。

許して欲しいなどと都合のいい事は私に言う資格はない、どうか君達で私を罰してくれ。」

 

 

 

「早乙女さん…」「早乙女司令官…」

 

 

 

早乙女は将陵僚と生駒祐未の元に近づき2人の前で土下座した。

 

 

 

「君達が命を賭けて此処を守り、尽くしてくれているのに私は度が過ぎた行動をした。

司令官を辞任し副司令、オペレーターの亜由美君に変わって貰い、私は1通信士として

身を置くつもりだ。本当に、申し訳ない…」

 

 

 

「早乙女司令…」「最早私は司令とは呼べない…亜由美君。」

 

 

 

佐藤亜由美が口を愕然として抑え、早乙女柄鎖は目を瞑った。

 

 

 

 

「「………………………」」

 

 

 

 

 

祐未は腰をおろし柄鎖の顔を見遣った。

 

 

 

 

 

 

「生駒君…」「……」

 

 

 

 

 

 

パアァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐未の張り手の音が響き、倒れた柄鎖を僚が胸倉を掴み持ち上げた。

 

 

 

 

「いい加減にして下さい……‼︎」

 

 

 

僚は真由の時以上の怒りを顕にする。

 

 

 

 

「貴方が辞任してフェストゥムが倒せるんですか…⁉︎」「……‼︎」

 

 

「貴方が辞任して、真由の心が癒されるのですか‼︎」

「あの優しい真由が、貴方が辞任して喜ぶと本気で思ってるんですか‼︎」

 

「僚…祐未…」「駄目だ徹。」「幸弘…」

 

 

彼等は自分達よりも今尚苦しんでいる真由に、

さらなる苦しみを与えようとしている柄鎖に苛立っていた。

 

 

「早乙女司令官、私も辞退させて頂きます。」「亜由美君…」

 

 

「貴方が今すべきなのは、真由君の元に向かうことだ。」

「ん〜あの少年を放って解決だなんて甘いんじゃないか?」

 

 

「森田君…久保君…」

 

 

 

スタッフ・パイロット達は柄鎖を笑って見つめていた。

 

 

 

「貴方は真由に謝るべきだ。」「私達だけでなく、真由自身に。」

 

 

 

 

 

僚は掴んでいた胸倉を降ろし、柄鎖を立たせ、祐未は柄鎖の手を握った。

 

 

 

 

 

 

「将陵君…生駒君…」

 

 

 

 

 

早乙女柄鎖は涙を流した。

 

 

 

 

 

「私は…逃げていた。恥の上塗りだがそれでも顔を出させて貰おう…」

 

 

 

 

柄鎖は真由に謝りに行こうとした。

 

しかし…

 

 

 

piーーーーーー!!

 

 

 

 

 

ブリーフィングルームにアラームが鳴り響いた。

 

 

 

「これは…!」「L作戦の時間が!?」

 

 

 

 

 

 

 

今この時間にL計画は遂行された。

 

 

 

 

 

「脱出艇⁉︎」「こんな所に通路が…」「そうか…!海中なら!」

 

 

 

 

「これが脱出方法か…」

 

 

 

時限式の扉が開き脱出艇への通路が現れた時、

別の警報が鳴り響いた。

 

 

「敵っ!?」「ッ!私が出ます!」「俺達も!剛史!」「ああ!絶対に帰るんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

「待って下さい、真由も行きます。」

 

 

 

 

 

「えっ…?」「真由…?」

 

 

 

 

 

 

真由の声は小さかったが、2つの警報より、ブリーフィングルームに響いた。

 

 




今回は三段分け、今日中には全部上げられないかも。


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じゅうごにちめっ!なかっ!

前回のあらすじ

休日出勤「わたしです」
早乙女「うわぁぁぁ‼︎」



モニターにはフェストゥムはゆうに50体は超えていた。

 

「無茶だ!君のラハムは戦闘力が低い!行っても死ぬだけだ!」

 

「予備のガンドレイクがあります。この区画を放棄するのなら武器は残さず、

戦力は全て出すのが得策です。命令を早乙女司令官。」

 

「しかしッ…‼︎民間人を出す訳には…!」

 

「真由っ!どうしたって言うんだ!」

「真由君…。」

 

「例え民間人であろうとL計画参加者、戦闘データは貴重な物であり、

最優先対象と判断し、出撃させ撤退をするのが最良と判断します。」

 

「それを言うのなら君の…

「ラハムはフェストゥムです。生成エネルギーは未知すぎる。

確実性がない物は切り捨てるべきです。貴方が背負うべき命令を。」…!」

 

「真由!勝手な事を言うな!」

「大丈夫です、()()さん。」

 

 

「まっ、真由……?」

「マユは、死ぬつもりはないよ?」

 

 

僚は一瞬、真由の姿が女性のものに見えた。

驚き、瞬きをしたら真由はいつもの姿だった。

 

 

 

 

(今のは…?一体…。)

 

「……出撃してくれ、1番機2番機は護衛、3番機4番機、

そして真由君は遊撃に移ってくれ…これは命令だ…。」「司令!?」

 

 

「必ず、全員で生きて竜宮島に帰るのだ。これを絶対とする。」

「!」

 

 

僚は真由が背負うべき命令、死ぬ気はないと言う台詞と、

早乙女司令の命令に気がついた。

 

 

(そうだ…!此処で死んだら元も子もない!みんなで竜宮島に帰るんだ!)

 

 

 

僚、祐未、惇と剛史は格納庫へと急いだ。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(真由君…どうしちゃたんだろう…。)

 

興奮冷め切らぬ空気の中、祐未は不安を感じていた。

 

(見たかあの潜水艇!40人も乗れるんだ。

全員が生き残るのを考えていたんだよ!お前の父さん。)

 

 

「僚…。」

 

 

 

ファフナーに搭載されている

ジークフリード・システムによるクロッシング・システムでフェストゥムの電波妨害を気にせず通信出来た。

 

 

 

(ここまで生きたんだ、

絶対に生き残らなきゃダメだ。真由を連れて帰る為にも。)

 

「……!うん!絶対に帰ろう!」

 

 

それでも希望を前に進んでいた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

(惇、何で出撃しようとしたんだ?)

 

 

「かわいい弟分を守ってやろうと思ってな…ここで何もしないと俺は絶対に後悔する、心残りは残したくなかった。まさか出るなんて言うとは思わなかったけどな。」(そうだな…驚いたよ。)

 

 

惇と剛史はお互い何故出撃するのかを話していた。

 

「剛史、お前は?」(俺も…そうだけど、お前のと俺の、アインとツヴァイって徹が名前付けてたろ?こいつらも竜宮島に帰さなきゃと思った。)

「そうだな…こいつらも俺達の仲間だ。」

 

惇は自分が搭乗しているファフナーに思いを馳せる。

 

「楽しかったな…この2ヶ月。」(ああ…楽しかった、心からそう思う。)

 

「誰も欠けずに帰るんだ、置いてってやるなよ?」(俺のセリフだそれは。)

 

2人はもう4機の頼もしい仲間に信頼を応えようとする。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ぐうっ!」(真由!左と斜め下から来てる!)

 

 

真由はガンドレイクを盾にしながら注意を惹き、潜水艇にフェストゥムが取り付かない様にし、

僚と祐未はその取り残しを倒していた。

 

『真由!もういい!フェンリルによる自爆が始まる!今すぐ離れるぞ‼』「‼」

 

拡張音声からそれを聞いた真由はL区画の上空に飛び立った。

 

『何してる速く離れろ!』『真由君急いで!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あなたはそこにいますか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

「いるよ‼真由はここにいる‼」

 

 

 

 

 

 

全てのフェストゥムが真由の乗るラハムに襲いかかり、ラハムの全身が結晶に覆われた。

 

 

 

 

 

 

ワームスフィアが発生するようにそこに黒い太陽が浮かび上がった。

 

 

 

 

 

フェンリルの光と共にそれは黒い太陽の日の出のようであった。

 

 

 

 

 

 

黒い太陽は日が落ちるように海に沈んでいった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「真由!真由はどうした!?何をしたんだ真由!」

 

(僚!あれを見て!!)

 

 

 

僚は真由が同化し、フェストゥムがラハムと共に、ラハムが創り出した泥の太陽に呑み込まれていたのを見て、真由が死んでしまったのかと思ったところに祐未が悲鳴に似た大声をあげる。

 

 

ーーそんな…まさか…

 

 

そこには新陳代謝を習得し、海中でも活動が可能になったフェストゥムがいた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「くそっ!せっかくここまで来て!」

 

(ぐわぁ!脚がぁぁ!!)

 

 

 

潜水艇は無数のフェストゥムに取り囲まれ、剛史のファフナーは駆動系が壊れ、惇のファフナーは下半身を喪失していた。

 

 

ーーかっこつけておいてこの様か…

 

 

剛史はフェンリルを起動し剛史が死を覚悟した時にそれは起こった。

 

 

ーー海の中に黒い太陽……?

 

 

その黒い太陽からは泥が溢れ出し地底に少しだが積もり始めていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ファフナーは元々フェストゥムのコアを搭載した人造フェストゥムのようなものであり、ファフナーのコアは真由のエネルギーを受けていた。

 

 

 

ファフナーはフェストゥム達からは器と呼ばれ、心がないと思われていた。

 

 

 

初めて心を持ったファフナーはこう思った。

 

 

 

ーーーこの善き人々に幸せをーーー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「っ!?ツヴァイ!何をするんだ‼」

 

 

ツヴァイと呼ばれたファフナーは黒い太陽の泥を拾いあげ、同化し、小型の潜水艦のようなものを作り、剛史の意に反してもう1つの手で泥を掬い、そこから空気の膜を張り、コックピットの剛史を無理矢理取り出して艦に乗せた。

隣の惇のファフナーも同じ動きをしている。

 

 

「やめろっ!お前達だけを逝かせる気か!」

 

 

ファフナーは潜水艦を皆が乗っている潜水艇に送り、兄弟と目を合わせ、頷き合い。無数のフェストゥムの元へと向かった。

 

 

「やめろ…やめてくれ…」

 

 

剛史は涙を流した。

 

 

今までの思い出、悲しみ、そして

 

 

()()()()()()()()()()()()に。

 

 

 

「ありがとう…ツヴァイ……

本当にありがとう………。」

 

 

ツヴァイとアインは光と共に消え、

剛史と惇は潜水艇に収容された。

 

 

「剛史ッ!無事かっ!?」

「何でファフナーが単独で…」

「剛史!惇!大丈夫!?」

 

 

 

「ツヴァイが…ツヴァイが俺を…」

「アインが…俺を助けてくれた…」

 

 

 

皆が呆然とする中、水中から友軍からの通信が届いた。

 

 

 

 

 

 

 

『ザ-ザ…ザザ聞こえますか?此方竜宮島所属ファフナー・マークツヴァイのパイロット、蔵前果林です。先輩達はそこにいますか?将陵先輩は、生駒先輩達はそこにいますか?』

 

 

 

 

 

 

それは運命の巡り合わせであった。

 

 

 

『応答して下さい!此方竜宮島所属!蔵前果林です!どうか応答して下さい!』

 

 

 

「此方L計画最高責任者の早乙女だ…L計画参加者全員はまだ存命している。」

 

 

 

 

 

『!?じゃあ先輩達もいるのですか!?』

 

 

 

 

「将陵僚並び生駒祐未は未だ戦闘中だ!今すぐ助けに向かってくれ!」

 

 

 

戦いは、まだ続いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




休日だって知っちゃったじゃない!
僕…休みたいよ…


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じゅうごにちめっ!あとっ!

前回のあらすじ

ステラー(タゲ集中)!!」
F2機(もたもた・・・・)

BGM『EGO ~eyes glazing over』


私は一週間と数日という短い間だが私にとってラハムさんは家族の様な大事な人(?)だった。

 

ラハムさんは家族の仇と言っていたがもし叔父さんが同化されていなければ、

核の降り注ぐ中私を匿わなければあの様な()()()()()()にはならなかっただろう。

そして家族達の様に私と叔父さんも核で死んでしまっていただろう。

 

ラハムさんは嘘が下手だ。隠している様だが30年も生きてない私にそれほど情報がないのに、

(きみノ知識ガ楽シクテツイ長引イチャッタ!)と言っていたのは核の汚染から守る為だろう。

半分本音だったであろうが。

 

つい最近まで忘れていたくせにと言う人もいるかもしれないが許して欲しい。

触手に穴と言う穴が開発されたのだ。(同調中に既に開発されてるのは知らない)

トラウマになるのは仕方がないと思う。

 

初めてフェストゥムと戦った時も異様に数えてる時間が早かった。

あれは私がやる気を出す為に長い時間を提示し、早く終わらせると言う言葉に希望を持たせ、

踏ん張る様に嘘をついたのであろう。

 

私にとって家族の様なラハムさんの同族であるフェストゥムがやられるのも見たくはなかった。

 

彼等は感情を持たず、ファフナーと戦いそしてL区画のパイロットは高速で倒すのと、

2日に1度という。余り見なくてすむのと1日の間があればこそ私は自分の心を誤魔化せた。

 

フェストゥムに人間の情報を知らせない以上、自爆は必然なのは明らかだ。

 

だから私は出撃した。もうフェストゥム達を見殺しにはしない為に、

優しいみんなが殺してしまわない様に。

 

 

私は汚染する力があるとラハムさんは言った。そして泥は色々と使えるとも。

 

 

私はL区画からの自爆から守る為と

フェストゥムとの意思疎通に泥でフェストゥム達を包んだ。

 

 

ーーもうーー誰も死なせはしないと(フェストゥムでさえ)ーー

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「……!!くっ!?数が多すぎる!!」

(僚!潜水艇に近づき過ぎてる!このままじゃっ…!)

 

俺と祐未はフェストゥムを撃破しつつ、潜水艇に帰還しようとしていたが、2機のフェンリルの光と惇と剛史の反応が無い為、今近づいては潜水艇がやられると考えたのと、近くに竜宮島と思われる反応があり、できるだけ遠く深海の方に避けて行った。

 

 

(僚!このままじゃ帰れなくなるよ!せめてレーダーが映るとこまでっ…!)

「ダメだ祐未!俺達に惹きつけられたフェストゥムが、潜水艇や竜宮島に見つかったら、惇と剛史の犠牲が無駄になる!今までの俺達の行為はどうなるんだ!他のみんなだけでも竜宮島に辿り着けば、応援が来るかもしれない、だから堪えるんだ!」

(ー……ッ!惇君……剛史君………‼︎)

 

 

未だに潜水艇の反応があり、2ヵ月の猶予が有った竜宮島なら何か戦力があるかもしれない。

俺達はその希望を胸に自分を奮い立たせていた。

 

 

水中での戦闘ではガンドレイクの近接戦は水の抵抗で遅くなり、内部に内蔵されたプラズマライフルは電気が拡散してしまうのと暴発の危険がある為放棄し、ファフナーに元々内蔵されているウェポンベイは機関砲はただでさえ威力がないので意味をなさず、ミサイルは言うまでもないだろうが水中では推進剤に火がつかず、ガスだけでは非常に遅く、避けられてしまう。

 

 

ガシッ!「!?」(僚!!)

 

 

追いつかれたか!腕を取られそのまま引き寄せられる。クソッ!

 

「うおぉぉぉ!!」ガンッ!ドンドンッ!(!!)

 

俺は掴まれている別の手で殴り、ゼロ距離からミサイルを撃ち込んだ。

もはや俺達にはこの手段しか方法は無く、今はただ堪えるしかなかった。

 

 

(僚!ミサイルの残弾は?)「後3発しかない…祐未は?」(ごめん…もうない。)

 

 

俺達は海底に辿り着きその身を隠した。

 

 

「ここなら時間稼ぎができるし敵の攻撃も予想できる。

例えやられてもデータは海流で竜宮島に着くだろう…。」

(僚!あれを見て!あの黒いの!間違いない!!)

 

 

黒いの?もう応援が来たのか?

 

 

振り向いた俺が見たのは海流に流され、海底に辿り着いた黒い太陽であった。

 

 

「っ!?真由!!」(真由君!!(ガスッキャアァァ!!)

 

 

別のフェストゥムが!?

 

 

「祐未!!返事をしろっ!!祐未!!」(・・・うぅぅ。)

 

 

気絶している……!俺は祐未を助ける為に祐未の元へ向かった。

 

 

 

「でぇぇぇぇ!!」ズバッ !バシンッ!「なんだとっ!?」

 

 

腕を切られ押し出された!?俺達の攻撃を学習しているのか!?

 

 

制御系がさっきの反動でうごかない!ここでミサイルを撃てば祐未に当たってしまう…!

 

 

「動けファフナー!ここには祐未と真由がいるんだ!

頼む!動け、動いてくれ!ファフナアアァァァァァ!!」

 

 

吹き飛ばされた場所は黒い太陽のすぐ側でモニターは泥で暗くなり何も見えない。

こんなところでッ…!こんなところで死んでたまるか!!

 

 

「うおおぉぉぉぉ!!」

 

 

俺が叫ぶのに応える様に全身に結晶が生え身体が覆われた。

しかしそれを気にする余裕は俺にはなかった。

 

 

「!!モニターが見える!」

 

 

何故か俺から生えた結晶だけ砕け感覚で何かが()()()()と理解した。

決定的な()()が…。

そしてその使い方も理解する事が出来た。

 

 

「はあああぁぁぁぁ!!」シュウゥゥゥ…パリン!

 

 

俺の体の様にファフナーが全身に結晶が覆われ、

すぐに結晶だけが砕け、腕にだけ結晶を覆わせた。

 

 

「もうこれ以上!好き勝手させるかぁぁぁ!!」

 

 

再びファフナーが動き出し、フェストゥムを殴ろうとした時

 

 

 

ビシャァァァァァァ!!「なっ!?」

 

 

黒い太陽から潰れる様に赤黒い何かが(血の様な)噴き出し、黒い太陽は弾けた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あれは…光…?将陵先輩達…!無事でいて!」

 

(急げ!まだ間に合う!)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「うぅ…僚…?」(祐未!気がついたのか!)

 

 

 

どうやら気絶していた私は何かが弾ける様な音に目覚めた。

 

 

「僚!このフェストゥム達は…。」(ああ…真由が泥で呑み込んだ奴らだ。)

 

 

こんな時に…!竜宮島に帰れるかもしれないのに…!!

 

 

しかし絶望している私の意に反してフェストゥム達は襲っては来ず、

竜宮島とは全く別の方向へ泳いで行った。

 

 

(これは?一体何が…)「僚!あれって今まで襲撃して来た!」

 

 

フェストゥムの中に今まで私達が倒したフェストゥム達の半透明な姿が見えた。

 

 

 

(祐未!見てごらんよ。)「海の中に…雪?」

 

 

 

(マリンスノーだ…俺達の頑張りを祝福してくれているんだ。)

 

 

 

そこには満天の星空に輝く様な、マリンスノーだった。

 

 

 

降り注ぐ雪のように、空に輝く天の川のように、

フェストゥム達と共に、溶ける様に姿を消して行った。

 

 

 

 

その中心から真由君を乗せたラハムが落ちてきた。

 

 

 

 

 

「真由君!!」(祐未!動かせるか!?)

 

 

 

さっきの攻撃でファフナーは全く動けない…!

 

「ダメっ!動けない!」

 

(そうか、なら任せろ!!)

 

「僚?」

 

 

僚のが私のを抱き上げ、真由君のラハムを抱き、

竜宮島の方へ進んだ。嘘…ファフナーがこんなに速いなんて…!

 

 

(ずっとさ…好きだったと思う…)「僚…」

 

 

(俺…よくわかんなくってさ、恋愛のこと。)

 

「私は…好きだったかな?」(祐未…)

 

「間違いなく好きだった…今じゃそれを超えて、どう言えばいいかわかんないや。」

(そっか…俺もそうだ。いつのまにか、それを超えてた。)

 

 

話していたら僚の呼吸が乱れていた。僚…?

 

 

「僚、大丈夫?」(気にするな、このまま陸にでるぞ。)

 

 

 

そして私達は2ヵ月ぶりに竜宮島に帰って来たのであった。ーーー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「僚!どうしたの僚!!」「あ…ぐぅ……。」

 

 

 

陸に出てもファフナーから出て来ない僚を不審に感じ、祐未は僚のコックピットを開けた。

 

 

「そんな!?これって…」「触るな…!祐未!」

 

「僚…でも!」「触れば多分お前も同化する…!」

 

僚の今の姿は結晶が幾つか身体から生え、所々に皮膚がフェストゥムの様に灰色だが輝いていた。

 

 

「やっと帰って来たのに…!誰か!誰かいませんか!?」

 

 

「うぅぅ………」

 

 

僚は気絶してしまい、祐未は住民には知らせないようにしていたのに大声で近隣に助けを乞う。

 

しかし付近には住宅はなく悲鳴は静寂で返されるだけであった。

 

 

「誰か…誰か助けて……。」

 

 

祐未が涙ぐみ、絶望しているなかその鳴き声は響いた。

 

 

 

「ワンッ!!」

 

 

 

「っ!プク……?」

 

 

 

それは僚が飼っていて蔵前果林に預けていた老犬のプクであった。

 

プクは僚に近づき、身体を押し付けた。

 

 

 

「くぅぅん…」「ダメよプク!」

 

 

祐未の制止が間に合わず、僚の身体に溶ける様に結晶で覆われ、呑み込まれた。

 

 

 

「プク…きゃっ!!」

 

 

僚の身体が光り輝きそこには犬耳と尻尾の生えた僚の姿があった。

 

結晶は無くなり僚の呼吸も安定し、祐未は声をかける。

 

「りょ…僚?大丈夫なの…?」

 

 

「……すぅすぅ」

 

 

 

僚が寝ているだけと安心した祐未は真由の乗るラハムへと急ぐ。

 

「真由君!大丈夫!?」「祐未か…今開けるよ…」

 

ラハムが祐未に返答をし、ラハムの腹部が開く。

 

 

「っっっ!!?真由君!?」

 

 

そこには全身が同化現象により結晶で覆われた真由()とピンク色のガラケーがあった。

 

結晶が砕け、中からさらに幼く、髪が伸びた真由が出て来た。

 

 

「真由君!しっかりして!真由君!」

 

「…う……んぅ………」

 

 

真由の目が開き安堵した祐未に真由の絶望への言葉が聞こえる。

 

「真由君!目が覚めたの?大丈夫?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おねえちゃん……だれ?」

 

 

 

 

 

 

 

「………………………ぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真由…?真由ってだれ?わたしはだれ?真由っていうの?」

 

 

 

 

 

 

「あああああああああぁぁぁぁぁぁ……!!」

 

 

 

 

 

それは新たな悪夢の始まりでもあった。

 

 

 

 

 

「大丈夫…!あなたは真由…私達の弟…大丈夫だから…!」

 

 

「わぷっ?おねえちゃん?くるしいよ、どうしたの?ないてるの?」

 

 

「大丈夫…大丈夫だから…!」「どこかいたいの?くるしいの?」

 

 

「大丈夫…!」

 

 

それは自分にも言いかけている様に真由を抱き締め、

祐未は涙を流し、救援隊が着き、真由と僚と供に連れ出された。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーそのひ、わたしはおねえちゃんとしらないひとたちが

みんないなくなるいやなゆめをみました。ー

 

 

ーーあさ、おねえちゃんにきいたら(あくむ)っていうんだって。

 

 

 

 

 




真由君、記憶喪失とバーロー化。
ひとまずrol編は終了です。
続きは原作前1年間の空白期です。


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ばんがいっ!そのごっ!

空白期を続きに書くと言ったな?
そっ…そうだ…難民、早く書け…
あれは嘘だ カチッ(投稿
·······('ω')·······うわあああああああああ


……ごめんなさいm(_ _)m


 

 

ーーブラジルーー

 

 

 

ギネヴィアは北大西洋を渡り、人類軍本部チリへかつて敵だった多くのフェストゥム達を引き連れ侵攻を開始していた。

 

ギネヴィアには将の器がない、それ故ただ数で押し切る愚策だが、核を使えない人類軍には十分に絶望的であった。

 

他のフェストゥム達は倒せるであろう、しかしギネヴィアには核は通じない。

それどころか魔竜の息吹によりフェストゥムごと陸海空全てを50マイルづつ蒸発させていった。

 

核を撃つ前に蒸発され、地雷と仕掛け様にもギネヴィアは目に映る全てを許さず、

50マイル以内は地面がガラスの様に結晶化し、高熱で仕掛けられなかった。

 

 

もはや人類軍になす術はないと思われ、

ゆっくりと近づき、全てを破壊するギネヴィアの目に巨大な影が見えた。

 

 

(あれは…)

 

 

陸と空からおびただしいほどの戦闘機、輸送機、戦闘車両、輸送車が見えた。

 

(莫迦が、捨て身のつもりか。)

 

ギネヴィアは先ず上空に飛ぶ飛行機(虫ケラ)を搔き消した。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)

 

その前に幾つかの輸送機から積荷が降下され大型の初めて見るモノがあった。

 

 

(…人類はやはり愚かだ。我等(ブリテン)でさえ魔竜の呪い(卑王ヴォーディガーン)には逆らえなかったというのに)

 

 

それは人類軍の最新兵器、アディラタ(父の遺産)による解析で擬似シナジェティック・コードを作成し、

成人でも搭乗が可能かつ量産され、誰でも乗る事が出来る人類軍のファフナーである。

 

グノーシス・モデルと呼ばれるその機体は、

量産型で少数ではあるがその数は撃ち落としたのを除き200と10数機はいた。

 

本来ファフナーにはシナジェティック・コードと呼ばれる、搭乗時に神経接続を用いるファフナーとパイロットの脳を連結するのに必要な「ある種の脳の状態」であり、これを擬似ではあるが量産、ファフナーを作成に成功した。

 

しかし研究中のアディラタのコアは搭載できず、ニーベルング・システムという機体と神経を接続させ、ファフナーの動きを精密にさせるシステムの本領を発揮できず、フェストゥムの読心能力を回避するジークフリード・システムさえ搭載されていない為フェストゥムの読心能力は回避出来なかった。

 

(ほうっ?私以外にも似た者がいたのか、それに別の切り札だと?)

 

ギネヴィアは読心能力で自分の様なフェストゥムをオルフェノク型、自身の様に民を守ったフェストゥムがいた事と、人類軍は量産型ファフナーの他に切り札がある事を人類軍から情報を入手した。

 

(くだらん、この様な玩具が切り札などと、もう一つの切り札なぞたかが知れる。)

 

 

ギネヴィアはグノーシスによる攻撃を全て剣で切り払った。

機関砲は防壁で事足り、ミサイルも着弾される前に切り払われ、爆風も同様に防がれた。

プラズマライフルやランチャー、グレネードなど追加装備されていても同様で、

ライフルは剣で弾き、ランチャー・グレネードは言わずもがな、ミサイルと同じであった。

 

遠距離では倒せないと判断した人類軍は10数機でギネヴィアを囲み、

白兵戦による近・中距離戦、近接戦による混雑戦闘で犠牲を払ってでも倒そうとした。

 

しかしニーベルング・システムが完全ではない機体では意味がなかった。

 

(ふん。)スカァ…

 

目に映る機体はワームスフィアが消滅させ、近くの機体はワームスフィアを纏わせ、

触れたものを消滅させる剣でコックピットを切り払り即座に近くいた機体は全滅した。

 

『はあぁぁぁ!!』((んっ?ましなのがいたか。))

 

ギネヴィアは目に映ったがワームスフィアを避け、吶喊してくる女性に敬意を払い、

声を相手の脳内に震わせるように話しかけた。それに応対する女性は[憤怒(ギネヴィア)]に語りかける。

 

『確かに私達人類軍は許されない事をした…でもそれは生き残る為だった!』

((それがどうした?))

 

『貴方が復讐の為に罪のない人を巻き込むなんて間違っている!』

((可笑しな事を、私は復讐でしているのではない。こんな物は只の途中結果だ。))

 

 

『っ!?何をっ…!?』

((そもそも前提から間違っている。生きるのに手段を問わないのは当たり前だ。

そこに最初から善悪など存在しない。殺されると解ったら相手を殺すだろう?

食糧として獣を殺すだろう?そら、お前達は何も間違ってはいない。))

 

『じゃあなんでこんな事をする!こんな事に意味なんてない!!』

((意味ならあるさ、いや、逆だな、全てに意味などない。

産まれるのは親の望みで子の望みではない。産まれた意味は最初から無く、

その者の後の功績で与えられる。お前が生きるのに何の意味がある?

お前達人類が自分達だけで価値を決め、何の意味がある?

ただの社会的動物の理念に過ぎん。元から価値なぞ全てにない。))

 

 

『屁理屈を…!そんなもの何の関係も無い!!』

((関係ならあるさ。私は結論を出した。フェストゥムと人類は極めて似ている。

人類がフェストゥムの力を、フェストゥムが人類の感情を得たら目も当てられん。

故に感情全てを消し去り世界でただ一つの集合体として(ブリテン)を君臨させる。))

 

『他国が無い国だなんて何の意味も価値すら無い!!』

((世界で初めて出来た国もそうだ。お前が決める事でも、ましてや誰も決められない。))

 

ガンッ!『ぐうぅ!?』

((お前は役に立つ。光栄に思え。))

 

『あっ…あぁぁぁ…!!いやあああぁぁぁぁ!!何!?なんなの!?何が私の中に入って、痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!止めて!!ごめんなさい、助けて!!私の中に!私を消さないで、死にたくない…消えたくない…あああああぁぁぁなんで私の中に入って!!……………………。』

((ふむ、終わったか。気分はどうだ?いや感情など無かったな。))

 

 

 

 

 

 

オルフェノク型の真骨頂、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

まさにそれこそが人類への使()()()()

 

 

 

 

 

ーーーその日、彼女は王が赤髪の少年に心臓を刺されている悪夢を見た。ーーー

 

 

ーーほら?誰も信じられないではないですか………。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『L区画跡地』ーー

 

 

(間違い無く此処に何かが()()()。)

 

 

ヒトラーは潜水艦にて人の生命反応とフェストゥムの反応、そしてその形跡として海底にあった

ガンドレイクのレプリカとまな板を入手していた。

 

 

(此処には大量のフェストゥムが居たはず…長くは持たなかっただろう。)

 

 

ヒトラーが思案にふけていると部下から情報連絡が来た。

まだ年端もいかぬ少女…いや、幼女であった。

 

「閣下、ご覧に入れたい物が御座います。」

「何だ?ターニャ少尉。」

 

何とこの幼女少尉という佐官であった!ぅゎょぅι゛ょっょぃ

[ターニャ・デグレチャフ]と言う名の幼女はデータをヒトラーに見せる。

 

「こちら海底で発見された、高濃度の未知のエネルギー体を発見しました。」

「っ!?でかしたぞ!ターニャ少尉!これは勲章ものだ!」

 

人類と地球の未来に喜ぶヒトラーに対して幼女は俗物的な考えをしていた。

 

 

(これで私はあのバケモノ達と戦わず後衛でのんびり出来る!ザマァ見ろ存在X!!)

 

 

「ターニャ少尉!君には是非、我が最新鋭のファフナーに乗ってもらいたい!」

 

「はいっ!喜んで!…はい?」

 

幼女は解析の為、後方にてエリートコースだと思っていたので即答してしまった!

ショッギョ!ムジョウ!

 

 

「おおっ!やってくれるかね!君には解析で後方にて居て貰う予定だったが流石だ!」

 

「あ…あはっ…あはは…あはははは………。」

 

 

(おぉぉのぉぉぉれぇぇぇぇ!!存在Xぅぅぅぅぅ!!)

 

 

 

 

ただの八つ当たりである。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーその日、彼は部下が元サラリーマンの男性の悪夢を見た。ーーー

 

 

 

ーーターニャ少尉は女性だろう…私は疲れているのか?

 




お前はこれからほのぼのを書くOK?
OK!( ズドンッ!

すいません…伏線回収したかったんです…



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夏だ!山だ!海だ!全部だ!!
じゅうろくにちめっ!


前回のあらすじ

プク「僚はプクでプクは僚なんだよ」
僚「(∪^ω^)わんわんお!」


 

竜宮島に帰還後L計画参加者+αは身体検査を受けた。

 

持ち込んだ病気はないか、精神状況は安定か、将陵僚と鈴木真由の検査は長引いた。

まさか犬耳と尻尾が生え、記録にあった民間人が幼児になるとは誰が思おうか。

 

別に玉ねぎが駄目になったわけでもなく、チョコレートも食べれて、

5感は聴覚と嗅覚が少し上がっただけであった。

 

1番の問題はこれをどう誤魔化すか?鈴木真由の身元はどうするかだが、

ラハムの中から出て来たガラケーから僚の家の親戚として置かれる事になった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なぁ?これ真由のケータイじゃないのか?」

「今時ガラケーで、それにピンクって…ククッ…」

 

「笑っちゃかわいそうでしょ…古い感じはするけど。」

「まだ動くみたい、中に画像とかあるから見てみようよ。」

 

 

「っ!?僚!これを見て!」「嘘だろおいっ!?」

「これってあの時に言ってた…」「うん、間違いないよ。」

 

 

「どうした?みんな。」「りょ、ブッフォォ!」「惇!」

 

「犬耳ってお前…尻尾ってお前…。」「惇は無視してこれを見て!」

 

 

僚が画像データで見たものは僚そっくりの少年と真由が膨れ顔で写真を撮っていた。

 

 

「これって…真由が言ってた…」

 

「うん、人類軍の核で死んじゃったお兄さん。僚と似てるって言ってたけど。」

 

「ああ、目が赤い以外瓜二つだ。」

 

 

こうして真由の身元引受人として僚と暮らす事になった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

犬耳と尻尾は真由の兄の様に普段は帽子で隠し、真由については

地元の住民達には大人は被災者と伝え、子供には島の外の親戚と伝えられた。

 

大人達には核の被災で家族を無くした真由の兄がわりと説明し、

それ故に大人達は帽子をする僚を幼い真由の為に健気だと感動され、

子供達には島の外で貰ったお土産で取ったら真由が泣くからと説明された。

 

 

(島のみんなの為とは言え利用してすまん真由…)「おにいちゃん、おさらならべたよ!」

 

 

「そうか、偉いぞ真由。」「えへへ。」

 

「僚?これを持って行ってくれる?真由はご飯を運んでね。」

 

「ああ、悪いな。祐未。」「はーい!おねえちゃん!」

 

 

朝の検査、昼の報告と時間が過ぎとっぷりと夕方になり、

夕飯の用意を行い、手伝いをした真由の頭を撫で、褒めていた。

 

あれから僚と祐未は未成年である為婚約し、

僚の家に同棲する事となり、見たものはそのまま家族に見える事だろう。

 

祐未の茶髪と僚の黒髪が混じった様な髪色、

真由の為に置かれた本来の兄の写真(目の色は加工されている)

3人で仲良く夕飯の用意をしているのは新婚とその子供にしか見えなかった。

 

 

「「「いただきます。」」」

 

 

「こら真由、ご飯や甘い野菜ばかり食べないで肉と他の野菜も食べろ。」

 

「でも、おにいちゃんもたまねぎのこしてるよ?」

 

「2人とも残さず食べなさい、僚はお兄ちゃんでしょ?」

 

「うっ…悪い。」「は〜い…」

 

僚は同化したプクの記憶から、問題は無いがネギ類を避ける様になり、

真由は幼児化した為か、甘い物が好きで苦い物を残そうとしていた。

 

「よろしい、2学期になったら学校に入るんだから我儘言っちゃダメよ?」

 

「うん!真由わがままいわないもん!」「いい子だ、真由。」

 

真由が幼児化した為に、真由は小学生として夏休み中の今、

編入する事が出来ないので、2学期からの入学が決まっていた。

 

その後3人は川の字で眠り明日は学校の用意をする事になった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーーそのひ、わたしはおにいちゃんそっくりのひとが

じぶんがおにいちゃんだっていっているあくむをみました。ーーー

 

 

 

ーーわたしのおにいちゃんはめはあかくないよ?

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『Alvis(アルヴィス)・司令官室』ーー

 

 

「……以上がL計画の作戦報告となります……。」

 

 

 

「信じられんな、少年に付き従うフェストゥムとは…」

 

「しかし父さん、彼さえいればファフナーはより効率良く運用出来る!

もう誰もいなくならないで済むかもしれない!」「総士…。」

 

 

現在司令官室では早乙女柄鎖がL計画の報告をしていて、

そこには竜宮島の日本自衛軍研究機関所属アルヴィスの総司令官

[皆城 公蔵(みなしろ こうぞう)]と息子と養子である[皆城 (みなしろ )総士(そうし)][蔵前 (くらまえ )果林(かりん)]がいた。

 

「でも皆城くん、あの子は今は乙姫ちゃんより幼いんだよ?とても戦えるとは思えないし、早乙女さんも彼は1度もフェストゥムを倒していないし、倒したがらなかったって言ってたじゃない。」

 

「だが、それなら乙姫は11年も眠らされている!戦えるなら戦わせるべきだ!」

 

 

総士の母親はフェストゥムと半同化して[いなくなり]、その影響で当時母体にいた妹

[皆城 (みなしろ)乙姫(つばき)]はフェストゥムと人類の融合独立個体で、竜宮島のコア、ワルキューレの岩戸にある人工子宮[コアギュラ]と呼ばれる自己保護本能を利用した、島の管理制御システム[ブリュンヒルデ・システム]を母親の[皆城 (みなしろ )(さや)]の遺言により、乙姫は11年たった今も眠りにつき、担わされている。

 

 

「落ち着け総士。」

「しかし父さん!」

 

「何も彼に戦わせる必要はない、それを言うならファフナーの適合率の高い人物に、

無理矢理戦わせるのと何も変わらん。

[真壁(まかべ)一騎(かずき)]にも戦わせる事になる。」

 

「そっ…それは…」

 

「彼ではなく、フェストゥムのラハムと言ったか?彼に協力を仰げばいい。」「!!」

 

総士は幼少の頃に一騎によるコンプレックスがあり、戦わせたくなかった。

父の言葉により盲点だった事を気付かされ、冷静になる事が出来た。

 

「私もそれは可能だと思います。しかし条件を付けるのは間違い無いでしょう。」

 

「ふむ、早乙女君はどのような条件を出すと思う?」

 

「十中八九真由君のことでしょうね…。」

 

早乙女柄鎖は以前ラハムと交渉して、真由を地獄(触手プレイ)に落としたのを思い出し、

辟易とした。

 

 

 

ーーハッ!?今真由を好き勝手出来るフラグが立った気がする!

 

 

 

やかましいわ。

 

 

 

最近、柄鎖にも電波が聞こえる様になりL計画(真由のいた日常)を思い出し自分も真由に癒されたいと思った。

 

 

 

「それではラハムとの交渉として、鈴木真由の市民権、生活の保護、教育の確立をすればいいだろう。

此方からは研究と戦闘の協力を要請する、これは最高機密だ。他言無用とする。」

 

「了解致しました。」「了解です。」「わかりました。絶対に他言しません。」

 

 

アルヴィスはフェストゥムに対しまた一歩近づいたかもしれない。

 




真兄涙目。
皆城家ってどうして皆読みにくい名前なんだろう…


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じゅうななにちめっ!

前回のあらすじ

黒い容疑者「やばいと思ったが自分を抑え切れなかった。」


ーー『アルヴィス・とある会議室』ーー

 

 

「ラハムの様子はどうかね?」

 

「交渉は成立しました。ただ戦闘力がファフナーに劣る為、

本格的に戦闘には参加せず、サポートする立場なら引き受けるとの事です。」

 

 

会議室には研究者達とアルヴィスの幹部格が報告を含む会議をしていた。

フェストゥム研究員の[近藤(こんどう) 彩乃(あやの)]とその助手である[遠見(とおみ) 弓子(ゆみこ)]が報告している。

会議の参加者には小型端末が渡され、スクリーンのデータが共有して映されている。

 

 

「それくらいならしょうがないだろう。サポートだけでも御の字だ。

それでラハムの研究についてはどうなっている?」

 

 

「早速、研究に取り掛かり、ラハムについてのデータを纏め上げました。」

 

 

スクリーンにはラハムの解析した情報である映像が映し出されており、

全長、体重、成分、内部構造など細かく描写され、渡された小型端末にも映し出される。

 

 

「ラハムは通常のフェストゥムと少し違い、珪素(シリコン)の他に多量の炭素が含まれていました。」

 

「これまでのフェストゥムとは違うとは思っていたが炭素だと?」

「やはり新陳代謝を習得したのと関係があるのでしょうか?」

 

 

「ラハムの証言によると、人類軍の核による燃焼が原因との事です。」

「なにっ!?」「なんですって!?」

 

 

参加者の大半に動揺が走った。当然であろう、いくら協力的とはいえ、

放射能汚染されているのであれば、更に慎重に解析をしなければならないのに交渉も含め、

僅か1日でこれほどのデータが入手出来たのだから参加者達は驚きを隠せないでいた。

 

 

「ですが検査してみた所、放射能は検出されず、問い質した情報によると、

鈴木真由との接触したおりにワームスフィア生成能力が変質し、

未知のエネルギーを秘めている泥が生成可能となり、30年かけ除染したそうです。」

「被爆した内部を除染出来たのか・・・」

 

 

通常、核の自然除去には30年かかるが被爆した生物はそうはならない。

何故なら生物には放射能が残留し自然の様に除去する事は出来ず、

ましてや飲食をして排出する事が出来ないフェストゥムでは奇跡に等しい。

いつかの未来ではフェストゥムに放射能除去する力があるがこれは余談だろう。

 

 

「ラハムの能力自体には通常のフェストゥムより劣っており、

L計画では話してはいませんでしたが、読心能力が劣化し、

直接による情報供給、同調した相手との感覚共有が可能との事です。」

 

 

ーーやはり隠していたか…。

 

早乙女柄鎖はラハムは何か隠していると考え、情報を規制し、

ラハムの前では余り情報を吐露しなかったが、真由の前ではしていた為、

まさか筒抜けだった事に、一介の歯痒さを感じていた。

 

 

「放射能の変質で得た能力かね?」

「いえ、放射能は細胞を変質させるとされ、フェストゥムは該当されない為、

鈴木真由との接触で得た、劣化されたと考えられます。

ラハム本人も証言した為、確証は高いでしょう。」

 

 

「問題はこの泥によるエネルギーです。放射能を除去し、人体に好影響を施し、

フェストゥムを沈静化させ、ファフナーに単独行動を可能にさせたのですから。」

 

 

これが今回の会議の内容と言っても過言ではないだろう。

よくよく考えれば余りにもズルすぎる。今までの人類の研究とはなんだったのか。

 

 

「泥の生成について、同調者がいない場合に生成出来る量は少なく、

昨日では1時間で10ml(ミリリットル)が限度でした。」

「ファフナーとやはり似ているな…同調者で差がでるのは。

まるでシナジェティック・コードだな。」

 

 

ファフナーの同調にはシナジェティック・コードと呼ばれる、

[ある種の脳の状態]と言われるがこれはパイロットの積極的な、

強い自己否定から生まれるものであり、パイロットが未成年なのも起因している。

 

 

「ファフナーのパイロットに同調させ、量を増やす事は出来ないのですか?」

 

「いえ…それが…その…」

 

 

質問された彩乃が言い澱み、代わりに弓子が答える。

 

 

「ラハムとの同調はシナジェティック・コードでは無い為、

パイロットの同調は不可能で、鈴木真由本人以外は出来ないと思われます…。」

「何故でしょうか?」

 

 

「先程申しました様に直接同調した相手との感覚共有…

そして同調する相手との同調が直接なので…。」

「?そう言えば情報供給も直接と仰られましたが直接とは?会話では無いのですか?」

 

 

参加者の1人が疑問に思い、他の参加者達もその意見に賛同する。

 

 

「ラハムとの同調…それは相手の生きた経歴全てを脳で直接共有…

いえ、ラハムにのみ導入する事です。鈴木真由には13年かかったそうです…。」

 

 

「「「「!!!???」」」」「「「……………」」」

 

 

参加者の何人かは驚愕で衝撃が走り、皆城公蔵はその年数に、

司令代理の[真壁(まかべ) 史彦(ふみひこ)]はその方法に、早乙女柄鎖は納得で沈黙した。

 

 

真由はファフナーの様にラハムを操作していると思えたが実際は真由の考え、癖、

操作時のみの感覚共有(真由もこの時はわかるがラハム主体、

しかも常時ラハムがしてるのは知らない)と、()()()1()()()()()()()()()()

 

 

「そしてラハムの同調、操作する際に、脳の直結は必要不可欠だそうです…。」

 

「彩乃さん…」「ごめんなさい、もう大丈夫だから。」

 

 

そう、真由はラハムを操作している時は触手を脳に繋いでいたのだ。

 

 

 

ーー……………。

 

 

 

早乙女柄鎖は「あっ、これ実はしなくてもいいな」と思った。

 

柄鎖はラハムの性格を考えて、感情が豊かになる前は安全策として、

今は純粋(?)な依存として繋げていると理解した。

 

ラハムは繋げなくても操作出来るが繋げた時の性能は比べようも無い。

ただのプラシーボ効果(やる気の問題)だとはわかったが、

ラハムが何するか堪ったもんじゃない為黙っておいた。癒し(真由と皆で遊ぶ)が欲しい。

 

 

今頃学校の入学準備をしている頃だろうか?子供達は休暇を楽しんでいるだろうか?

何人かは特別手当として有給を貰えてたなぁ…と中間管理職の自分立場を、

今はただ呪う事しか出来ないのであった。休み欲しい…。

 

 

「泥の調査は現段階では何も解りませんが、有用価値があるのは間違いないでしょう。」

 

 

「では研究を続けてくれ、会議は以上とする。」

 

 

早乙女柄鎖は会議が終わってすぐに、今では常服している胃薬を飲んだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー『鏑木家』ーー

 

 

 

「悪いなお邪魔しちゃって。」「いいよ、弟にも会わせたかったし、約束もあるしね。」

 

 

「ありがとう、早苗。真由?大人しくしてなきゃダメよ?」「うん!真由おとなしくする!」

 

 

僚達は入学準備での備品を揃えに買い物に出掛け、夕飯の買い物をしてる早苗と出会い、

せっかくだからと夕飯に誘われたのだ。

 

「約束ってことは今夜はカレーか?」「そうっ!余りの美味しさにビックリしないでよ!」

 

「早苗張りきってるね。」「そりゃもちろん、(すい)ー?ただいまー。」

 

 

早苗の家は美容師で、父は駐在の為共働きな両親に代わり、

早苗が家事をしていて弟の面倒も見ていた。

 

 

「おかえりー…その人たちは?」

「学校の友達とその弟くん、ほら2学期から編入する子。」

 

 

「お姉ちゃん、からかってるの?その子女の子でしょ?弟じゃないよ?」

「お姉ちゃん、自分の弟の信頼のなさに泣きそうなんだけど。」

 

「ははは…仕方ないよ。」「真由おとこのこだよ?」

 

「真由、今度髪型変えてみるか?」「やー!」

 

 

確かに今の真由は髪が長く、性別の判断が難しかった。

今の髪型を気に入ってるらしく、しばらくは変えないだろう。

 

「うぅ…ごはんの用意してくるから仲良くしてあげてね、先輩くん。」

「うん、ちゃんと先輩として面倒見るから。」

 

「弟が頼もしくてお姉ちゃん、鼻が高いよ。」

「真面目な子だな、姉とは大違いだ。」

「おい、私に何かあるなら聞こうじゃないか。」

 

僚と祐未は夕飯の支度を手伝いに台所に向かい、

真由は早苗の弟の鏑木(かぶらぎ) (すい)と2人きりとなった。

 

「僕、鏑木彗5年生。君は何年生になるの?」「真由はね、1ねんせい。」

 

「竜宮島の外から来たんだよね?町の事とか知りたい事は何でも聞いて。」

「ありがとう!おにいちゃん!」

 

「お兄ちゃん…」

 

 

彗は自分より下の子にお兄ちゃんと呼ばれる事に理由はわからないが嬉しかった。

姉がいる弟だったので新鮮で感動したのだ。

 

ちびっ子2人が竜宮島の事を話していると、

僚と祐未が食器と付け合わせであろうサラダを持って来た。

 

 

「わかるなぁ…俺も真由が来た時はあんな感じだった。」

「僚が先輩らしい先輩してたもんね。」「言うなよ、仕方ないだろ?」

 

 

僚は肝臓病だった為人付き合いが苦手で、真由により治った為、

先輩として真由を教育していた頃を思い出した。

 

 

「まさかこんな小さくなるなんてな…。」

「うん…でも、真由には違いないよ。」

 

 

イタズラ好きでトラブルメーカーの時の真由を2人は思い出していた。

 

 

 

「お待たせー!鉄板カレーナポリタン!」

 

 

 

「「ドライカレーじゃなくて!?」」「「?」」

 

 

 

流石に早苗は影響を受け過ぎではなかろうか。

 

 

僚は早苗のL計画とその前のギャップに戸惑いを隠せなかった。

 

 

ーーーそのひ、わたしはすいおにいちゃんが

こわいかおをしているあくむをみました。ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




彗君登場。
それよりちびっ子なオリ主。


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じゅうはちにちめっ!

前回のあらすじ

小百合「裏切ったな早苗!裏切ったな!」
早苗「1番はドライではないッこの鉄板ナポリタンだ!」


柴田小百合 は激怒した。

必ずかの裏切り者をうちのめさねばと決意した。2番煎じ?

こまけぇこたぁいいんだよ。

 

昨晩、真由達から元ドライカレー同盟の早苗が鉄板カレーナポリタンをだし、

それが絶賛され、早苗がドライカレーを作らなかった事を聞き、激怒していた。

 

「だからお姉ちゃんは勝たねばならんのですよ。」

「お姉ちゃん何言ってるの?」

 

あれから小百合は早苗に宣戦布告、カレー対決が決まり、

駄菓子屋「西尾商店」にて行われる事となった。

何故駄菓子屋でやるのかだって?汗かいた後のかき氷は半端じゃないよ?

 

小百合は弟の柴田(しばた) (たける)を引き連れ西尾商店に来ていた。

 

「あっ!彗だ!」「健くんおはよう!」

 

「早苗!あんたって人はー!!」「それが定めよ!ドライはマイナーでもと進んだ道でしょう!」

 

「これもうどっちが上か下かわかんねぇな。」

「普通のカレーも出るし、かき氷も食えるから俺達はどっちでもよくね?」

 

「「なんだとコノヤロー!!」」「「のわー!?」」

 

「会長お久しぶりです。」「総士、俺はもう会長じゃないって。」

 

「おばあちゃん、今日はよろしくお願いします。」「おばあちゃんおはよー!」

「いいのよ、儲かるしこんなに沢山子ども達が来てくれるしね。」

 

 

西尾商店の店長の西尾(にしお) 行美 (いくみ)は子ども達が楽しいイベントをすると聞いて、

ぜひ西尾商店でと島中の子ども達が集まったのだ。

 

「マイエンジェル確認!とうっ!」「しまった!?」「?」

 

「フッフッフッ、これでこちらは天使が2人!これで勝ったも同然ね!」

「くっ!それでもこっちには彗が「彗もこっちに来なよ!」「彗おにいちゃん!」「うん!」ファっ!?」

 

小百合は真由を確保し、それに付いて行く様に彗も小百合の側に行ってしまった。

 

 

「彗ー!?裏切らないで!こっちに戻って!」「だって鉄板カレーナポリタンは昨日食べたし…」

「うん、それにあついもんね。」「「「ねー。」」」「ごふぁっ。」

 

 

この炎天下の中、何故鉄板カレーナポリタンで彼女は勝てると思ったのだろうか。

純粋な子供達は鉄板から我先にと皆逃げてしまった。しょうがないね。

 

 

しかしそれでも鉄板が目新しいのか何人かの年少組と、汗をかきたがる年長組は残ったが、

弟達を取られた(逃げられた)早苗のモチベーションは最悪であった。

 

 

「まあまあ、暑い中汗かくのは気持ちがいいぜ?」

「小太りは黙っとれーー」

 

せっかく擁護した徹は早苗により撃沈した。

 

「あれ?」「どうしたの真由?」「真由くん?」

 

 

真由は皆で集まってカレーを食べる中、1人だけ普通のカレーを食べている少年を見つけた。

真由は一言残してその少年の元へと行ってしまった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

真壁一騎は食事には関心があった。

 

このカレー大会が開かれると聞いて、真っ先に1番乗りしたのも実は彼であった。

しかし、とある少年を見てから隠れる様にカレーを食べていた。

 

 

ーーまさか総士がいるなんて…。

 

 

あの不器用な彼がこのようなイベントに出ているとは思わず、

過去の事件から人付き合いを恐れ、その被害者である総士を見つけてから、

彼は居心地の悪さを感じ、1番離れていた普通のカレーを食べていた。

 

 

ーー…これを食べたらここから離れよう。

 

 

一騎の先輩である僚にも挨拶したかったが、学校の皆も集まっており、

更に近寄り難くなっていた。

 

カレーを食べ終わり、立ち上がろうと前を向いたら最近越して来た。

僚先輩の親戚の子供が目に写った。

 

 

「おにいちゃんなんでひとりでたべてるの?」

「…えーと、ちょっとな…」

 

「あっちにべつのカレーがあるよ、いっしょにたべよう!」

「あっ!ちょっと待って…!」

 

一騎は手を引かれ、片手は食器がある為力が出せず、振り払う事が出来なかった。

 

 

「おっ、一騎も来てたのか。」「お久しぶりです…先輩。」

 

 

「一騎…。」「よう…総士…。」

 

総士と顔を会わせた事により、一騎は一層気不味さがました。

 

「おにいちゃん!ドライカレーもってきたよ!」

「ああ…ありがとう…。」

 

一騎は新しいカレーを渡され、食べなければ離れられない雰囲気になった。

 

 

「なんだ、なんだ?そんな湿っぽいとカレーが不味くなるぞ?」

「先輩…やっぱり向かってくって難しくて。」

 

 

僚は一騎に肩をかけ、周りに声が聞こえないよう配慮して相談をしていた。

 

 

「何も無理に仲良くなればいいってわけじゃない、

ただいつまでもわだかまりがあると、言い出せなくて一生後悔をするぞ。」

「先輩?」

 

 

僚は濡れ衣で真由を怒鳴りつけた事を思い出し、力なく笑い、

何時もと違う僚に、一騎はそれを不思議に思った。

 

 

「大丈夫だ、俺もいるし偶には話し合ってこい。」

「…わかりました。やってみます。」

 

 

一騎は総士の元に向かい、総士も一騎の目を捉えて話し合った。

 

 

「一騎、お前がいるとは思わなかった。」

「俺も、お前がいるとは思わなかった、僚先輩がいたから納得したけど…」

 

「何?」

 

 

総士は暗に一騎が総士は僚に会いに来ただけだと思っている事に気がつき、

なんだか場違いだと思われていた事に腹が立った。

 

 

「いいか一騎、よく聞け。」

「おっ、おう…」

 

 

総士は一騎に顔を近づけ、自分はこのイベントをいかに楽しみにしていた事を語り始めた。

 

 

「僕はこのカレー大会を楽しみにしていた。見ろ、カレー大会と聞いて準備した。

マイスプーンがある。カレーにスプーンを分けて使う為に用意してきた。極めて便利だ。

熱中症対策の塩飴と水筒の麦茶がある。いくら飲料物があってもやはり危険だからな。」

 

 

「お前…わざわざスプーンまで持って来てたのか…。」「話しは最後まで聞け一騎。」

 

 

「汗をかいた時のタオルもある。商店で水道を借りれるからすぐ洗って絞れる。

学校でアルバムにする為にカメラもある。テクニカルでとても使いやすい。

どうだ?一騎。僕は純粋にこの大会を楽しみに来ている。」

 

 

 

 

「お前って…案外不器用なんだな…。」

 

 

 

 

一騎は幼馴染の不器用さに親しみが湧き、以前よりも近寄り易くなっていた。

 

 

なお、カレー大会は店長の行美の普通のカレーが優勝した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス・食堂にて』ーー

 

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

早乙女柄鎖はカレー大会が西尾商店で開かれていると聞き、

気分を紛らわそうと今日はカレーを食べようとしていた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

 

しかし竜宮島は狭く、他の職員達も聞きつけ、皆がカレーを選んだ為、

カレーは柄鎖が来た時には売り切れになっていた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

柄鎖は定食を選び、その後の仕事を残業も合わせて励み、

やっと仕事が終わり、自宅で夜食にカレーカップ麺を食べた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーーそのひ、わたしはみずをつかおうとすると

みずがみんなカレーになるあくむをみました。ーーー

 

 

そういえばなんでゆめのなかではわたしって真由はいうんだろ?

 

 

 

 




おばあちゃん最強説。
皆さんは夏の予定は決まりましたか?
僕はおばあちゃん家とお墓参りに行きます。


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じゅうくにちめっ!

前回のあらすじ

おばあちゃんのカレーは世界1ィィ!!


ーー『アルヴィス・研究室』ーー

 

 

「ラハムが生成する泥はどうなっている。」

「皆城司令。」

 

 

ラハムから提供された泥を解析している最中、

フェストゥム研究の第一人者である皆城公蔵も研究室に顔をだし、

近藤彩乃から研究状態を聞き、空いた時間を使って研究に参加していた。

 

 

 

「フェストゥムから生成されたのは複雑な心境ですが…。

これは素晴らしい物であるとしか言いようがありません。」

「今は生体実験をしているのだったな、実験対象はどうなった。」

 

 

ラハムの泥から今は280mlほど抽出でき、

虫やモルモットなどに投与して生体調査を行なっていた。

 

 

 

「こちらのガラスケースをご覧になって下さい。」「うむ、ん?」フンッフンッ‼︎

 

 

 

 

「・・・モルモットがスクワットしてるな…。」

「・・・ええ、しています。…。」フンッフンッ!ケンコウダイイイチッ!

 

 

 

 

「・・・・今喋らなかったか?」

「・・・・ええ、喋っております…。」ムッハカセオハヨウゴザイマス

 

 

 

 

「・・・・・人を識別できるのか…」

「・・・・・ええ、出来ます…」フンッフンッ‼︎

 

 

 

 

「・・・・・・他のはどうなっている、見せなくていい。」

「・・・・・・数式を描いたり、絵を描いたり、歌ったりしています…。」アッセイ!アッセイ!

 

 

 

 

 

 

「「・・・・・・・・・・・」」

 

 

 

 

 

ドラマティッーク !ファンタスティッーク !ラーンディーング‼︎

 

 

 

 

「あびゃー」「皆城司令⁉︎わかりますがお気を確かに!」

 

 

 

 

公蔵は余りのファンタジーに脳が処理できず混乱した。

 

 

 

 

「…すまんな、どうかしていたようだ。」

「いえ、まだ倒れて貰っては困ります。」

 

 

 

 

「………はっ?」

「まだまだ研究結果がありますのでご覧になって頂かねば。」

 

 

 

 

 

ーーその日…公蔵は思い出した…残業続きの人間のテンションを…

仕事を押し付けた上司に対する部下の恨みを…………

 

 

彩乃は決して…心配から公蔵の意識を戻したのではないのだと。

 

 

 

「こちらアルベリヒド機関と共同で遠見医院の人体実験でのデータとなります。」

 

 

 

「なにしてくれちゃってんの!?いやほんとになにしてくれちゃってんの!?」

 

 

「弓子さんに頼んだらお母さんに聞いてみると翌日でやってくれました。」

「千鶴君!?弓子君!?親子でなにしてくれてんの!?」

 

 

 

竜宮島には唯一の診療所である遠見医院はフェストゥム研究助手の遠見弓子の実家であり、

その母親である遠見千鶴(とおみちづる)はフェストゥム研究機関のアルベリヒド機関研究主任で、

遠見医院の院長と兼任して働く二児の母である。

現在バツイチ、司令代理の真壁史彦を狙ってる模様。

 

 

 

「L計画の将陵僚君のデータから肝臓病の特効薬になると思い、

ファフナー開発担当の羽佐間容子(はざまようこ)さんに協力を仰ぎ、

「翔子の肝臓病が治るなら…」と許可を頂いてから、

患者である羽佐間翔子(はざましょうこ)さんに投与させて貰いました。」

「もう…!もう皆がわからない!娘にそんな怪しい物使っていいの!?」

 

 

 

「結果は成功…いえ大成功に終わり、肝臓病は無事完治。

身体も健康的で、今では初めての跳び箱を8段も跳べます。」

「すごいけど!?私は初めては5段からだったけれども!?

そうじゃないんだよ!もう少し慎重に調べようよ!!」

 

 

 

「頑張りました!」エッヘン!

「お願いだ竜司君!君の奥さんを何とかしてくれ!!」

 

 

 

公蔵はフェストゥムとの戦闘で亡くなった彩乃の夫である近藤竜司(こんどうりゅうじ)に救いを求めた。

 

 

 

ーー皆城さん…皆城さん…

「ハッ!?竜司君!?」

 

 

 

とうとう堪え切れなかったのか公蔵は竜司の幻覚を見始める。

 

 

 

ーーどうだい…?俺の嫁さんはかわいいだろ…?

「チクショウ!幻覚のくせに惚気やがって!!」

 

 

「司令?どうかしたんですか?大丈夫ですか?頭。」

「君にだけは言われたくなかったよ!!」

 

 

 

公蔵は肩で息をしながらツッコミを入れた。

 

 

「あっ、後は失われたはずの受胎能力が再生したと思われます。

それで私達も投与してみました。体重も減って美肌効果もバッチリです。」

 

 

「…ああ…そう…うん…うん?今なんて言った?」

 

 

「投与してから幾ら食べても太らないし、スキンケアいらずになりました。」

「そこじゃないよ!今サラッと凄い重大な事言っただろう!?」

 

 

日本人はフェストゥムが高次元でまとまり、フェストゥムの思考中枢である、

高密度の情報を集積した[ミール]と呼ばれる結晶生命体が誤解して行った、

「人類を死なせない為に人類を産まれさせない」という誤った善意の解釈で、

国外を除くほぼ全ての日本人は受胎能力を失った。人類軍の核攻撃もこれが理由である。

 

 

今島にいる大半の子供達はアルベリヒド機関による人工培養された、

人工子宮「コアギュラ」によって産み出された里子なのである。

 

 

「ええ、ですのでアルベリヒド機関にもデータと泥を送りました。」

 

 

「もうっ…!もうどうしたらいいか、わかんないっ…!!」

 

 

 

公蔵はとうとう泣き出した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「………………」

 

 

 

早乙女柄鎖は近藤彩乃の事後処理を全て任されていた。

 

 

 

「……………………………フッ。」

 

 

 

 

 

 

ーーー早乙女柄鎖の涙は枯れ果てていたーーー

 

 

 

 

 

今日も残業である。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『海辺のビーチにて』ーー

 

 

 

「いいか?一騎。僕は日焼け止めを用意して来た。来る前にも塗ってある。

これで日焼けに悩む事はないし、焼かれて肌の痛みに苦しむ事はない。

海に入る前の準備も万端だ。ビート板を用意した。溺れる事はない。

準備運動の他に事前にシャワーを浴びたから筋肉が攣ることもないだろう。」

 

 

 

「えっと…シャワー浴びたら日焼け止め落ちるし、

ビート板は手を離したら溺れると思うんだが……。」

 

 

 

「!?」「気づいてなかったのか…」

 

 

 

「一騎くんー!早く早くー!」

「一騎くーん!こっちこっちー!」

 

 

「「…………羽佐間(遠見)さん?ちょっとO★HA★NA★SIしようか……」」

 

 

「一騎ー?ビーチバレーするよー?」

「いくぞ一騎!今日こそ勝ってやるからな!」

 

 

「バレーって4人でやるから決闘にはならないんじゃ…」

「衛、黙っていようぜ。」

 

 

 

「真由ー?しっかり準備運動するんだぞー?」「はーい!」

 

 

 

「りょーう!ボール膨らましてくれる?」

「任せろ、真由を見ていてくれ。」「うん。」

 

 

「……絶景だな、惇…」「ああ……絶景だな、剛史…」

 

 

「ふふ、男子共、どう?この水着は?」ペタン ,スラー…

 

 

 

「……絶壁だな、剛史…」「ああ……絶壁だな、惇…」

 

 

「死ねよやーーー!!」ドガッ バキッ!「「いでッ!?タコスッ!?」」ザバーン!

 

 

「お姉ちゃん浮き輪まだー?」「まって…これ凄い疲れる…」シュコシュコ

 

「健君、ほら。」「徹さんすげー!もう膨らませたんだ!」

 

 

 

子供達は夏休みを満喫し、気苦労とは今は無縁だった。

 

 

 

 

ーーチクショウ!ここからじゃ真由の水着が見えない!

真由ーー!クンカクンカprprしたいよー!

 

 

 

 

変なのは居ないため平穏は守られた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーそのひ、わたしはだれかがおりにはいっていて、

がんばってこっちをみようとするこわいなにかのあくむをみました。ーー

 

 

 

かわいそうだけどとてもこわかったです。

 

 

 

 

 




ところで譲治ボイスではっちゃけたり、困惑する声聞くとテンション上がりませんか?


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にじゅうにちめっ!

前回のあらすじ

「もうどうしたらいいかわかんない…」
「中年オヤジの仕事の泣き言ですか…」


蔵前果林は泣きそうだった。

 

 

 

尊敬していて、慕っている先輩を迎えに行ったら、既にその場にいなかったり、

 

先輩の家に向かい、帰省祝いをしようとしたが、もう1人の尊敬する先輩と婚約していて、

先輩に弟が増えて場違い感を感じて慕っていた先輩が婚約した事とまるで家族の様な光景に、

その場を後にして泣きながら家に帰った。先輩の弟と自分の義弟の仲を比べ、また泣いた。

 

先輩達が開催したカレー大会では久しぶりに先輩と会話しようとしたが、

その先輩と何やら義弟の総士が友達と話していて、入り込む余地が無かったり、

もう1人の先輩は弟の世話をしていて、弟さんと先輩に会話するチャンスだと思ったが、

他の先輩達から、ドライカレーと鉄板カレーナポリタン責めにされ、話せなかった。

 

学校の皆が海に行っている間、果林はシミュレーターでL計画の戦闘記録から算出した、

ファフナーの戦闘訓練で参加出来なかった。救いは無いんですかっ⁉︎(スクイハナイネ

 

 

最初は総士と訓練していたのだが、ジークフリード・システムがない状態の訓練があり、

総士は持ち前の天才性で直ぐに終わらせ、何故か日焼け止めを塗ってから海に行ってしまった。

 

訓練自体は難しいものではないのだが、最近フェストゥムが新陳代謝を得たために訓練幅が増え、

地上戦、空中戦に加え、水中戦もやらなければならず、新しいシミュレーターから、

リアルな環境をシミュレートし、水圧、浮力、視界の悪さや海流などの様々な状態を体験でき、

不自由な水中では勝手がわからず、終わった頃には夕方になっていて、海水浴は終わっていた。

 

 

総士は何やら落ち込んで帰ってきたが、海水浴には行ったのだ。

それどころか疎遠状態だった幼馴染と復縁までしたそうだ。絶対に許さん。いや良かったけど。

 

 

 

「うぅ〜〜将陵せんぱ〜い………」

 

 

 

L計画前は一時期、僚と祐未の仲が悪かったから自分にもワンチャンあるのでは?

という空想は砕けて散った。むしろ以前の仲は良かったため、入り込む余地などなかった。

 

 

 

ーー幸せそうだったなぁ…あれじゃ勝てるわけないもん…。

 

 

 

果林は養子ではあるが皆城家に馴染まず、1人生活をしている。

今家に帰ったら余計に惨めに思えてなかなか帰れず、気分転換をしようと、

こうして夜になっても町の中をぶらつき、また思い出して負のスパイラルに陥っていた。

 

 

 

「はぁ〜〜……先輩達も凄かったし、私って本当にいるのかな…」

 

 

 

L計画の戦闘データを見て、先輩達が想像を遥かに超えた戦いを繰り広げていて、

同化耐性が余り高くない自分はもはや必要ないのでは?と考えてしまっていた。

 

 

それでも僚達のティターン・モデルのファフナーと違いノートゥング・モデルには適正が必要で、

ノートゥング・モデルのファフナーに乗るには強固なシナジェティック・コードを形成が絶対で、

人工子宮で産まれたとはいえ、10万人に1人のコードを作れる果林の才能は間違いないもので、

第3世代の最新型ノートゥング・モデルで精密な動きが出来て豊富な武装が有るにもかかわらず、

旧式のティターン・モデルに勝てないのは僚達パイロットの身体が真由により強化している事、

新陳代謝を得たフェストゥムのシミュレーターの為強く設定されてる事、

僚達()()()()()()1()0()()という頭がおかしい速度が普通だと思っている事、

それらの要因が重なり、彼女は3()0()()という速さの撃滅を自信が持つ事が出来なかった。

 

 

(プクもいなくなっちゃったし…私独りぼっちのままなのかな…?)

 

 

今まで彼女が僚のペットの老犬プクを世話していたのだが、

いなくなった事で一層孤独感が増していた。

 

彼女はアルヴィスの所属である為、プクの所在は僚と同化している事を聞いていた。

 

僚いわく、プクの意識はあり、自分の中で生きているらしいが、プクの意識が僚に出来てしまい。

偶に犬っぽい仕草をする、食べ物に好き嫌いができる、犬耳尻尾があるなど、

なにそれあざとい私得である果林には僚に会えない寂しさは人一倍であった。

 

 

 

(モフりたいよ…先輩…プク…)

 

 

 

祐未と真由の存在が僚の平穏を保っていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ゾクゥ「っ!?」

 

「どうしたの?僚。」「おにいちゃん?」

 

「…いや、なんでもない。ちょっと寒気がしただけだ。」

 

「風邪でもひいた?昨日海に行ったんだから暖かくしなきゃダメよ?」

「おにいちゃん!真由ぎゅーっとする!」

 

「ありがとう、祐未、真由。」

 

 

動物的危機感知本能も備わっていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

春日井甲洋(かすがいこうよう)は複雑な気持ちだった。

 

 

(羽佐間…元気になったのは良かったんだけど…)

 

 

甲洋は羽佐間翔子に片思いをしていて、その翔子は一騎に片思いをしていた。

昨日の海水浴で肝臓病で運動が出来なかった翔子が元気な姿を見るのは、

嬉しくはあったが仲が良かった翔子の親友の遠見真矢(とおみまや)の仲が険悪になるか不安だった。

翔子のかかりつけの遠見医院で真矢と翔子は仲良くなり、親友になった。

 

最近都内の方で輸入した新薬で肝臓病が治り、元気になった翔子は、

同じ一騎に片思いしていて幼馴染の真矢と昨日はよく衝突していて、

名字呼びをしていたときは心配でしょうがなかった。

 

 

(アグレッシブになりすぎだろ…初めての水泳でバタフライするって…)

 

 

運動が苦になるどころか、新薬の副作用で身体の能力が向上して、

運動が楽しくなった翔子は活発になり、彼女は弾けた。

 

 

その影響からか一騎に対するアプローチが強くなったし、

対抗するように真矢の一騎に対するアプローチも積極的になっていた。

 

 

(……まあ、昨日はドンマイとしか言えないけど…)

 

 

しかし昨日の一騎は総士に構ってばかりで2人のアプローチに気づかず、

総士も一騎と話せるのが嬉しいのか、2人の空間が出来ていた。

 

 

(いや、そこは2人を見てあげろよ。海だよ?水着だよ?

かわいい女の子達がアプローチしてるんだよ?ホモなの?)

 

 

甲洋は翔子に片思いをしているのだが今の関係が崩れるのを恐れ、

幸せになって欲しいという願いから、自分の想いを表にだせず、

一騎と一緒になってくれればと2人の橋渡しをしていた。

 

 

「俺って…どこまでも女々しいよな…。」

 

 

 

甲洋の家は喫茶店「楽園(らくえん)」を経営しているが甲洋にとっては地獄だった。

 

養親の春日井正浩(かすがいまさひろ)春日井諒子(かすがいりょうこ)は甲洋に無関心で甲洋はずっと独りぼっちであった。

 

 

 

「「はぁ〜どうすればいいんだ(いいの)…ん?」」

 

 

 

「蔵前…だよね?」「…そういう君は春日井くん。」

 

 

 

 

 

さようなら、独りぼっち。

 

 

 

 

 

そしてようこそ、2人ぼっちの世界へ。

 

 

 

 

かくしてぼっちとぼっちは引かれあう。

 

 

幸か不幸か、それはまだ誰にもわからない。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス・庶務課』ーー

 

 

「早乙女さん、この書類をお願いします。」

 

 

「早乙女さーん!このデータはいつのですか?日付け記録が壊れてて。」

 

 

「早乙女ー!皆城から近藤さんの対処はお前に一任するそうだ。」

 

 

「早乙女さん?」「早乙女さーん?」「早乙女ー?」

 

 

 

 

 

 

「………任務了解。」

 

 

 

 

しかしぼっちじゃないのが幸せとは言ってない。

 

 

 

早乙女は心を殺して仕事をしていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『将陵家・お風呂』ーー

 

カポーン…

 

「ほら真由、クラゲさんだぞ〜。」ブクブク

「すごーい!ぶくぶくしてる!」

 

 

「2人ともー?のぼせないようにねー?」

 

 

「「はーい。(!)」」

 

 

しかし間違いなく今の3人は幸せだった。(これが主人公とメインヒロインの力…!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーそのひ、わたしはみんながばらばらで

ひとりぼっちのあくむをみました。ーー

 

 

 

みんないるならいっしょがいいのにとおもいました。

 

 

 

 

 

 




やっぱハーレム系主人公はホモっぽいと思うの。

生きてまーす!終わるまで僕は死にませーん!


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ばんがいっ!そのろくっ!

生体パーツはロマンだと思う。


 

ーーブラジル・マットグロッソ州ーー

 

 

 

広大な畑だったその土地は今や影も形もなかった。

 

 

 

あれから人類軍は抵抗し、ギネヴィアの護衛フェストゥムを減らしたが、

その分より強力なフェストゥムを人類軍から使徒転生で生み出し、

混沌とした戦場となった。

 

 

 

通常フェストゥムと同化した人類は同化したフェストゥムと同じになるが、

ギネヴィアが同化させ使徒転生させたフェストゥムは、ただの傀儡だった。

 

 

 

撃破されない限りワームスフィアは発生できず、同化も出来ない、

人類軍の武器をそのまま使う殺戮兵器へと成り果てた。

 

 

作業の様に高効率で迅速な殺戮を、思考を奪い取った人類軍の兵士から

情報を抜き取り、個別に機械的に行動させ、人類が人類を殺す、

かつて人類が繰り広げた戦争と、地獄となんら変わりはなかった。

 

 

使徒転生された人間は感情を廃し、個人の意識がなくなり、

ギネヴィアの「敵を殺せ」という簡潔かつ、無慈悲な命令に従っていた。

 

 

さらに同化した人間は見た目の変化が目が金色になるだけで、

それ以外の身体的特徴はない為見分けるのが困難な上に、

読心能力で相手の行動を読み、知り合いだった兵士には揺動を仕掛け、

罠に誘い、着々と人類軍の数を減らして行った。

 

 

 

 

((頃合いか、進軍するぞ。))

 

 

 

 

ギネヴィアは進行上の人間は1人残さず殺させ、

逃げる兵士、命乞いをする人間も等しく皆殺しにしていった。

 

 

いくら通信妨害が出来るとはいえ、これからの一切の情報を人類軍に対し、

何一つとして渡さないためと後の禍根により、人類軍に力をつけさせない為である。

 

 

復讐、叛逆、叛乱、裏切りの脅威をギネヴィアは身を以て起こした側として知るが故に。

 

 

そこにいた民間人、女子供、老人は同化せず、人類軍の武器で殺させた。

 

 

ワームスフィアや同化では配下のフェストゥムに感情を持つ可能性があったから。

 

 

 

 

もう2度とブリテンを喪わせない。

もう2度とカムランの悲劇を繰り返さない。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

ギネヴィアは恐怖を怒りで誤魔化し続けた。

 

 

 

ブロロロォォォ ……キュルキュル……

ボコボコボコォォ……ドッドッドッ……

キイィィィン……

 

 

 

(…………今更増援か……)

 

 

 

 

最初の襲撃より多く、今度は地下からも人類軍は進撃してきた。

 

 

 

ーー何度来ても同じだというのに…

 

 

 

しかしその中から人類軍のファフナー『グノーシス・モデル』とは

全く異なる出で立ちのファフナーがそこにはあった。

 

 

 

ーー……!?此奴は危険過ぎる!!

 

 

 

 

その異様なプレッシャーと自身の直感が危険と判断し、

ギネヴィアは先の戦闘とは違い、使徒転生したフェストゥムを

優先して下がらせて己の剣を振るった。

 

 

 

 

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)!!」

 

 

 

 

ファフナーは竜の息吹に呑み込まれた。

 

 

 

 

((……ちっ…()()か……))

 

 

 

 

息吹(そよ風)程度なら耐えればいいだけのこと。

 

 

 

そう言わんばかりに緩々と歩いている。

 

 

 

((行け、私の騎士達よ。討ち滅ぼせ。))

 

 

 

煙が晴れ、その全貌を顕にした。

 

 

50Mはあろうその機体は、

上半身の背中には巨大なスラスターがついて、翼の様にも見える。

各所肩や足にも小型のスラスターがついおり、手には大型の槍を持っている。

下半身はまるでドレス(鉄壁)の様なホバーフライトが腰から脚についていて、

歩かずとも空に飛べる様であり、脚は逆関節で一見無理の歩行を難なく歩いている。

 

 

襲いかかるフェストゥムに翼が割れ、花弁型のバリアーを形成して防いだ。

 

 

(やはり防ぐか、いい加減対策ぐらいたてるだろう。もう一つの切り札は此奴か。)

 

 

ファフナーはスラスターの高速機動を見せ、それは三次元機動を可能にしていた。

 

図体とは裏腹に繊細かつ精密で機敏な動きで使徒転生したグノーシスを、

パイロットのフェストゥムだけを狙い、いとも簡単に倒していく。

 

 

((……クッ!なんなのだ此奴は。心が読めん。))

 

 

読心能力により動きを予測しようとしたが、心が読めず、

いつの間にかギネヴィアと謎のファフナーが一騎打ちをしていた。

 

 

((!?正気か!?この戦闘の中で!!舐められたものだ!!))

 

 

 

ファフナーからハッチ型のコックピットが開かれ、パイロットが出て来た。

 

 

パイロットはタイツに防御加工の装飾が施され、

頭には全面がスモーク加工で顔が見えないフルフェイスメットを被っていた。

 

 

パイロットはおもむろにメットを脱ぐとギネヴィアの思考は停止した。

 

 

 

((えっ……なぜ……我が君?))

 

 

 

その顔は彼女(ギネヴィア)が仕えた、ブリテンの王に瓜二つの人物だった。

 

 

 

ザスッ!((がはっぁ!?))

 

 

 

パイロットがいないにもかかわらずファフナーはギネヴィアを突き刺した。

 

 

 

 

それは騎士王(アーサー・ペンドラゴン)叛逆者(モードレッド)に槍を突き刺した。

あの()()()()()()の焼き増しの光景であった。

 

 

 

ギネヴィアは崩れ落ちる前にその手品のタネを見た。

 

 

 

((…そうか、此奴に既に心なぞない。術か薬で喪くしたか。首の紐で動かしたか。))

 

 

 

パイロットの首の後ろには端子の様な穴にコードが接続されていた。

 

 

 

((だが蛮族ども、心するがいい。外道を続けた貴様らに、2度と安寧は訪れぬ。))

 

 

 

 

ーーーその日、彼女は王が地獄(アヴァロン)創り(壊し)、蛮族の人理を焼く夢を見た。ーーー

 

 

 

ーーあははははははははははははっ!!

 

 

まるで(こども)の様に嗤い(ワライ)続けた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『作戦通り終了しました。良くやったわね。レティシア。』

「はい、お母様。」

 

 

『それにしても本来のアキレス・システムの半分の力で良くぞここまで戦えるものですね。』

「はい、お母様。」

 

 

『ああ、貴女はもう黙ってなさい。帰投するまでの命令です。』

「……………………」

 

 

(これでケイトの裏をかき、牽制する事が出来ました。感謝しますよヒトラー。)

 

 

(本来2人乗りのこのシステムなら全てのフェストゥムを消すのも夢ではない。)

 

 

(しかしAPI-1の技術も欲しいものですね。コストがかかり過ぎる。)

 

 

 

へスター・ギャロップは新国連とフェストゥム両方の勝利を確信した。

 

 

 

 

ーーーーーその日、彼女は女蛮族に縛られる悪夢を見た。ーーーーー

 

 

 

(いやあぁぁぁぁ!?この様なめでたい日にぃぃぃ!?)

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『エジプト・オアシスにて』ーー

 

 

(…もうあの罪人は襲っては来ませんね。)

 

 

「おい、女神様がいるぞ。」「ほんとだ、なんでだろ?」

 

「いつもはオアシスを創って下さるのに元々のオアシスに来るだなんて。」

「とても疲れていそうですよ、何かあったのかしら?」

 

「お母さん、女神様が座ってるよ?」

「大丈夫よ、女神様はきっと疲れてるだけだから。」

 

 

 

ネフェルタリは昨晩も罪人のミイラと鬼ごっこをし、

ミイラが現れないオアシスで休憩を取っていた。

 

 

 

((すいません!罪人のミイラが襲って来て少し隠れて休憩しているだけです。))

 

 

 

「「「「「「「ミイラがっ!?」」」」」」

 

 

 

エジプトでは王がミイラとして復活するか、魔女が奴隷としてミイラを使うと言われ、

明らかに後者の出来事に愕然とした。

 

 

 

「おい!魔女退治をした方がいいんじゃないか?」

「ああ、街で軍を呼んで来る。村の男達も集めてくれ。」

 

 

「私達も家を補強しましょう。」

「ええ、食料も貯めた方がいいわよね。」

 

 

「女神様大丈夫?怖くなかった?」

「大人の人が守るから大丈夫よ、今日はもう帰りましょう。」

 

 

((あのっ…皆さん…その…))

 

 

自分の発言でミイラ退治の話が進んでしまい、

ネフェルタリは自分が原因で民草が傷つかないか不安だった。

 

 

どうみんなを落ち着かせて解決しよう思ったその時‼︎

 

 

オアシスの泉が太陽を写している中心から気泡が発生した‼︎

 

 

 

そのとき不思議なことが起こった!!

 

 

ザブーン!((きゃあぁぁ!?))

 

 

「「「「「「女神様!?」」」」」」

 

 

オアシスの泉からオ○Qの様な布を被った男が出て来た。

 

 

((えっ!?メジェド様!?))

「「「「「「いや、そのりくつはおかしい。」」」」」」

 

 

男の頭部は長い一本の毛にリボンがついていて、

額に『サービスマン』と日本語で書かれている。

裸脚にジャングルを蓄えていた。アマゾォン!

 

 

男は己の布に手をかけ陰部を晒した。ハラショー‼︎

 

 

バッ!「サービス!!」((きゃああああああああああああ!?))

「「「「うわああああああああああああ!?」」」」

「?お母さんなにが起こってるの?」「シッ!見ちゃいけません!」

 

 

「サービスだ、見とけ」(ばたんきゅ〜)

「むっ?この程度のサービスで倒れるとは軟弱な。」

「「「「女神様に何してくれとんじゃああああああ!!」」」」ババババッッ

「ぎゃああああああああ!!?」

 

「お母さんすごい音したよ!?」「危ないから帰りましょう。」

 

 

フェストゥム出現により銃規制が緩くなり、

許可さえとれば銃の所持が許されていた。

 

 

男は住民に蜂の巣にされサボテンに括り付けられた。

 

 

ネフェルタリは住民が交代制で保護をされた。

 

 

 

ーーその日、彼女はメジェド神が動けぬ代わりに男を遣わした悪夢を見た。ーー

 

 

 

(メジェド様!?何をしているんですか!?)

 

 

 

今日も砂漠の夜は寒い。

 

 

 

 

 




夏も夜はもっと涼しければいいのに。


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にじゅういちにちめっ!

前回のあらすじ


「ぼっちとぼっちをレッツラまぜまぜ!」
「俺がお前で!お前が俺で!」


ーー『要道場』ーー

 

 

 

「一騎!負けたら承知しないよ!」

 

 

「一騎ー!お前を倒すのは俺なんだからな!」

「一騎ー、先輩が病みあがりでも気をつけろよ。」

 

 

 

「2人もさぼらずにやる!!」

 

 

「「はい!!姉御!!」」

 

 

 

「えっと、なんで羽佐間と?」

「よろしくね、春日井くん。」

 

 

「…先輩、あの…病みあがりですけど大丈夫ですか?」

「あっはっはっは…島の外だと走り回ってたから大丈夫さ。」

 

 

 

「僚?無茶しないでねー!」

「おにいちゃんがんばれー!」

 

 

 

 

ーーなんでこうなったんだろ…

 

 

 

(最初は俺と先輩でスポーツ対決だったはずなのに…)

 

 

 

 

俺と僚先輩は今道着を借りて、要の家の道場にきている。

俺達がここにいる理由の話は今から少し前後する。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『竜宮島中学校』

 

 

 

一騎達は同級生の近藤剣司(こんどう けんじ)が生徒会会長に立候補し、

補佐に総士が在籍しているが多忙なために活動にあまり参加できず、

生徒会の業務が滞っているので剣司が早めに卒業した元会長の僚達に助けを求め、

一騎と同級生の要咲良(かなめ さくら)小楯衛(こだて まもる)は付き添いに来た。

夏休み中だが学校は遊び場になっていたり、部活をしている生徒達も沢山いる。

部外者ではあるが50人も在校生がいない学校では僚達に違和感はなかった。

 

 

 

「そういえば先輩は今、何をしてるんですか?」

「教職免許取るために島の大人達から勉強を受けてる。

来年からは実習でくるからよろしくな、一騎。」

「私も来るからよろしくね?一騎くん。」

 

 

「へー、先輩達先生になるんだ。」

「なんか違和感ないよね。会長だったし。」

「もったいなくないか?せっかく島の外を見て来たのに。」

 

 

「なんで先生になろうと思ったんですか?」

「ああ…一騎、前にお前達ぐらいの奴に勉強教えたんだがな…

それがやる気のない奴で因数分解すら出来なかったんだぜ?」

 

 

「それぐらい普通だよなぁ?」

「うん、僕もよく間違えるし。」

 

 

「補習組は黙ってなさい。」

「「はい、姉御。」」

 

 

「前って、島の外の時ですか?」

「そうだ、もう少し上手く教えられたらよかったんだがな…

こいつは何にでも興味を持って落ち着きがなくて、物覚えが悪くて、

イタズラっ子で、誰かがしたイタズラをこいつだと勘違いしちゃってな。

…喧嘩して、謝ったんだが許して貰えたか、もうわからないんだ…。」

 

 

「…仲が、よかったんですね。その人と。」

「仲が悪くなった…わけじゃないんだぜ?

ただ島の外の遠く…外国にいてな?話ができないだけなんだ。」

 

 

 

僚は島の外の現状とL計画の事を話すわけにはいかないので、

ぼかしながら真由との思い出を感慨深そうに語った。

 

 

 

「みんなを引き連れてバカやったり、騒ぎ起こしてバカしてたりな。」

「弟みたいな人だったんですね。」

 

 

 

 

 

「そうだな…真由の様な天真爛漫な(バカ)だ。」

「僚……。」

 

 

 

 

 

僚は悲しそうな顔をして、心配した祐未が手を重ねる。

 

 

 

「いいな〜俺も彼女欲しいなー…」

「いっつもナンパしてるじゃんか…成功した事ないけど。」

 

 

「まずはあんたのヒョロいとこなんとかしなさい。」

「酷いぜ姉御ー…」

 

 

剣司は衛を連れてナンパをよくするが、虚勢の見栄を張る。

その性格からか彼女ができた試しはなく、いつも失敗していた。

 

 

 

「とりあえず2学期の始業式準備だ、

夏休みも半分切ったぞ?お前ら夏休みの宿題とか大丈夫か?」

「自由研究と読書感想文、書道以外ならなんとか。」

 

 

 

「一騎?この後ちょっとお前ん家、よってもいいか?」

「僕もさー、自由研究と書道終わってないんだよねー。(棒」

 

 

「あんたら一騎の宿題丸写ししようとすんじゃない!」

バシンッ「「いでっ!?」」

 

 

「一騎くん、自由研究とかなにするつもり?」

「家で飯作ってるから料理にしようかなって、

書道も決まったんですけど読書感想文が決まらなくて…」

 

 

「だったらさ!機動侍ゴウバイン!これしかないよ!」

「それ漫画でしょ…」

 

 

「そんな時は卒業生のを参考にするといいぜ、

確かここの棚に…あった、あった。…ん?」

 

 

 

僚は卒業生の読書感想文を出す際、見慣れぬノートを見つけた。

 

 

「なんだろう?このノート?」

「最近のだな…まだ新しい。」

 

 

ノートを開いてみると誰かが書いたポエム集だった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

テロレロリン♪「ハッ!?今何か重大な事が…」

 

 

「どうした総士?」

「いえっ…なんでもありません。」

「それでな、近藤君は自重してくれないし小楯君は仕事中に漫画を書いてて…」

「……はぁ…………」

 

 

総士は公蔵の愚痴に付き合わされていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「この棚の管理って確か総士くんが…」ヒソヒソ

「祐未?俺達は何も見てない、それでいいじゃないか。」

 

 

「…なんかちょっとクサいね…。」

「俺には難しくてわかんねぇや。」

「そう?僕はかっこいいと思うけど。」

 

 

 

 

「………良い…………。」

 

 

 

一騎はポエムを気に入っていた。

 

ガララッ

「僚先輩?終わりましたか?」

「真由くん、ここが生徒会だよ。」

「ほえぇー…」

 

 

「大体はな、悪いな面倒見てもらって。」

「真由?ちゃんとお礼言いなさい。」

「おにいちゃん、おねえちゃんありがとう!」

 

 

 

真由は僚達の作業の間、甲洋が翔子の復学の為に学校案内と、

真由の面倒を預かり、しばらく学校内を散策していた。

 

 

 

「おにいちゃん!()()()()()()ってすごいんだよっ!」

「へぇ?何が凄いんだ、真由?」

 

 

「えっとね、かごがあってね、ぼーるがあってなんでもあるの!」

「そっか…俺も行った事はあんまりないんだ。」

「そうなの?」

 

 

僚は肝臓病によるハンデがあった為、行事以外に余り体育館に思い入れはなかった。

 

 

「先輩…私も最近しか行ってないけど一緒に行きませんか?」

「翔子……。」

 

 

翔子は身体検査の測定で体育館だけを先に利用していて、

同じ肝臓病を患っていた僚に体を動かす楽しさを知って欲しかった。

 

 

「そうだな、久しぶりに行ってみるか。」

「僚、無茶しないでよ。」

 

 

「よっしゃ!バスケやろうぜ!」

「僕ディフェンスやりたい!」

「さーて、一丁やりますか!」

 

 

 

こうして全員でスポーツを楽しみ、

最終的に身体能力の高い一騎と実戦で技量を培った僚の対決となった。

 

 

しかし、柔道の際に畳が少ないからと要道場へ赴く事になったのだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

(先輩は運動余りしてないって言ってたけど…)

 

 

 

俺は先輩の動きと要からの指導を受けている姿は、

妙なちぐはぐさを感じて不思議に思った。

 

 

(やっぱり外で何か得られたのかな…)

 

 

 

俺は外の世界を知った先輩に少し、嫉妬した。

 

 

それでも俺が全戦全勝した。

 

 

甲洋は…名誉の為に先生はしていたと思う。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス・即席格納庫』ーー

 

 

 

(はぁ…退屈だなぁ……)

 

 

「それで?これは食べても大丈夫なのかい?」

「大丈夫じゃない?けどよく食べようと思うね…」

 

 

 

ボクは連日質問してくるコイツらに飽き飽きしている。

 

 

 

ペロッ「ふむ…こ、これは…⁉︎海鮮風味!!」

「うわ、本当に食べたよこのおばあちゃん。」

 

 

実験だったら無駄に喋らなくていいし、待ってるだけですむけど、

利益(真由)のない話は嫌いだ。面倒でしょうがない。

 

 

柄鎖の話は微妙だったけど、今と比べたら断然よかった。

一々確認しなくてもどうせ実験するんだし面倒極まりない。

なんで信用しないのに確認するの?実験した後でも聞いてくるの?

柄鎖みたいに警戒して信用しないなら確認しなくていいのに。

 

 

(あああああぁぁ…真由ぅ………)

「そんじゃ、私はこれを調べてみるよ。」

「はいはい…」

(もう何回も他の奴らに聞いたよそのセリフ…)

 

 

おばあちゃんはどっか行ったか…それにして本当に退屈だ。

あの頃が懐かしい…真由を観てれば(感覚共有の盗撮)毎日飽きなかった、

他の皆も楽しかったのに、ここは鳥籠みたいでつまらない。

やっ、一喜一憂する真由も可愛いんだけどね?

 

 

ここは地獄だ、嫌な事に目と耳を塞いで、

美しいモノ、楽しいモノしか住民は見れない、聞こえない。(見ないし聞かない)

 

 

目を背けるのと背負うので、負担が少ない方ばかり選べば、

いつか背負う事すら出来なくなるというのに。

 

 

あいつらは交渉と言って真由の安全を保証したが、

そんなもの自分達の気休めの脅迫だろうに、忌々しい。

いざとなったら真由さえ綺麗事並べて利用するのだろう。

 

 

(自己弁護して傷の舐め合いかい、

もっと傷ついているのには見もしないくせに。)

 

 

 

せっかく真由を自分色に染め上げてボクだけのにする計画がオジャンだ。

 

 

(ふうぅー…早く真由に会いたいなー。)(クスクスクス。)

 

 

…え"っなに今の…

 

 

いや気のせいだろう、どうせ廊下にいた奴が笑ったんだ紛らわしい。

(クスクスクス…。)

 

 

……もちつけ、いや落ち着け、

どうせ壁が薄いんだ後ろから聞こえてもおかしくない。

真由の記憶からオカルトは非科学的でありえないってあっただr(スウゥ…)

 

 

 

 

……ボクの体を通り抜けた赤い半透明な女の子がいる…。

まあただの立体モニターかもしれんし?

ここの技術は最新だから3Dが一般かもしれんし?

今更こんなのを見たって驚きも…

 

 

 

「あなたはそこにいますか?」

 

 

「」

 

 

 

 

 

……ああ……うん……ふーん………?

 

 

 

「あなたはそこにいますか?」

 

 

 

 

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ‼︎!」

 

 

 

 

 

おばけーーーーーーーー!!?

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーそのひ、わたしは()()()()()()()()()()()()()()()

によけられておんなのこがないてるあくむをみました。ーー

 

 

 

おとなのおんなのひとはなんであんなにいやがってたんだろう?

 

 

 

 

 




ラハムさん乙姫ちゃんと出会う。
ラハムさんはL計画しか知らないから、
人間の平和というものを理解してません。


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にじゅうににちめっ!

前回のあらすじ


「ここは竜宮島だよ!私は乙姫、この辺は私の縄張りなの!」
「これが絶望か…」


「皆集まったか、それでは会議に入る。」

 

 

アルヴィスのミーティングルームには近況報告会で集められた幹部がいた。

 

 

「今回の近況報告会はデータが多すぎるラハムについてだ。

あのフェストゥムのデータは非常に有益だ、早い事に越したことはない。

出来るだけ纏め上げ[Arcadian Project(アーカディアン・プロジェクト)]の島防衛を確立させるのだ。」

 

 

 

アーカディアン・プロジェクト、それは日本にいた生き残った人々が、

平和と文化を次世代に残す事を目的とした日本独自の楽園計画。

 

 

竜宮島は擬装鏡面とヴェル・シールドに守られ、

擬装鏡面は霧状の反射物質を島に球状に包み込み、

電磁波妨害を可能にし、人類軍とフェストゥムから隠れる事が出来る。

ヴェル・シールドは外部からの侵入、攻撃を防護する2重のエネルギーシールドを展開する。

 

 

この2つが竜宮島を守り、アルヴィス存続を可能にしてはいるが、

擬装鏡面は攻撃に弱く、ヴェル・シールドと併用出来ないのでヴァッフェ・ラーデンという

防御壁が各所に設置されている。その間にフェストゥムに対しファフナーで迎撃するのだ。

 

 

しかしフェストゥムの対抗手段であるファフナーはパイロットのリスクが多く、

長時間の使用は最悪パイロットの死に繋がるので使用は避けたかったが、

ラハムの泥の同化抑制能力と身体活性化能力には目を見張るものがある。

 

「泥の効能には現在同化抑制、アンチエイジング、微力ですが精神安定と鎮痛作用、

その他に身体活性化、病と怪我等に対する治癒効果も確認されています。」

「千鶴くん、理不尽って言葉知ってる?」

 

医療担当の報告から公蔵の心は折れかけた。

 

「ふむ…食べてからどうも調子がいいのはそのせいかい。」

「西尾先生何やってるんですか⁉︎」

「慣れろ、真壁。」

 

史彦も折れそうだった。

 

西尾 行美は過去にファフナーの事故で娘夫婦が死に一線を退いていたが、

フェストゥムの協力という前代未聞の出来事にアドバイザーとして召還した。

よく見るとシワが減り肌にツヤがもどり、猫背気味だった背も直立している。

 

 

「あー…驚いてるとこ悪いんだが、対象から新たに要求が来ている。」

「何っ?それは本当か?」

 

 

監視担当の小楯 保(こだて たもつ)が手を挙げて報告をする。

 

 

「なんでも幽霊を見たから収容場所を変えて欲しいんだと。」

「はっ?幽霊だと?」

 

 

まさか突拍子もなく幽霊という言葉に公蔵は疑問の声を出した。

 

 

「あいつが言うには長い黒髪の12.3歳位の赤い半透明の女の子が話しかけてくるらしい。」

「……………………。」

「皆城、気持ちは解るが間違いないだろう。」

 

 

全員に心当たりがあった、それはアルヴィスのコアとして眠っているはずの、

ワルキューレの岩戸にいるはずの皆城乙姫の特徴とぴったり一致しているからだ。

 

 

「CDCからソロモンの応答は無いのか?」

「…ありました、剛瑠島 (たけるじま)の格納庫ではなく、本島にラハムを移せと…。」

「マジかよ。」

「気をしっかり保て公蔵!」

 

 

高蔵がキャラ崩壊し、史彦が公蔵を名前呼びする程の衝撃だった。

 

 

総合管制室・CDC『パーシバル・ルーム』にはブリュンヒルデ・システムにより、

自立AI『ソロモン』の予測、観測データを得る事が出来る、つまりは島の意思そのもので、

皆城乙姫とシステムを介して意思疏通も図ることが出来る。乙姫から一方的にだが。

 

 

「…仕方があるまい、島の意思だ。本島地下に移すぞ。」

「ラハムの承諾はどうする?協力を取りやめるかもしれん。」

「そこは交渉しかあるまい、仕事詰めになっているが早乙女君、

今の事務を真壁に委託してラハムと交渉してくれ。真壁、頼むぞ。」

 

「本当ですか⁉︎是非やらせて下さい!真壁代理、後はお願いします!」

「皆城貴様ぁっ!?」「(…済まん、こうするしかないのだ。)

 

 

ラハムは柄鎖の事が気に入ってるので交渉は容易と判断し、

柄鎖の事務代わりの仕事が出来るのは司令代理の史彦だけだった。

そして元から多忙だった史彦は息子にする帰りが遅い言い訳と仕事地獄による苦悩が待っている。

 

 

「話しを移すが何故ラハムにはソロモンは反応しないのだ?それに乙姫の正体も解らないとは。」

「以前報告しましたが、ラハムの読心能力と同化能力は退化しており、

直接でなければ意思疏通が出来ないのでしょう、この島の空気にも反応しませんでしたし。」

 

 

「島の空気…我々の島のミール……。」

「皆城…。」

 

 

公蔵の妻、皆城鞘がいなくなった原因でもあり、乙姫がコア型のフェストゥムになった原因の、

フェストゥムの知識集合体ミールは島の大気と同化し、島とその住民を守っている。

 

島のミールは元々、瀬戸内海のミールであり、日本人の受胎能力を奪ったものだが、

そのミールと汚染された日本人を脅威と判断して新国連の人類軍は日本に核を撃ち、

日本の北海道の半分と沖縄含む小島以外は消滅し、ミールはバラバラになった。

 

そのミールの欠片を研究中の暴走事故で鞘はミールと同化し、お腹の中にいた乙姫から、

有機生命体の「誕生」について理解しようと、大気に溶けて同化せずに人間を観察している。

 

 

「本当に不思議なものだ、ミールに属さず、ミールさえ感知出来ないフェストゥムとは。」

 

「…そうだな、不思議なものだ。

島のミールに生かされている人間がいて、ミールを知らないフェストゥムがいるとは。」

 

 

フェストゥムの知識集合体が人間と共存し、フェストゥムが出来ない皮肉に皆沈黙した。

 

 

「…兵器・ファフナー開発と資源・生産プラントにも泥が使えるか試してくれ、

たとえフェストゥムと言えども、使えるものは使っておいて損はないのだから。」

「…違いない…。」

 

 

人類軍の核の被曝を島のミールに助けられている史彦は何も言えなかった。

 

 

「あっ、真壁代理、後でメディカルルームへ、放射能のワクチンを投与しましょう。」

「遠見君空気を読んでくれっ!?皆城が凄い目で睨んでくるから!」<●><●>…

 

 

ラハムの泥で様々な病の万能薬が作られた。

島の観察が目的とはいえラハム万能に島のミールも涙目であろう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス・即席格納庫』ーー

 

 

ガタガタッ!「ヒイィィッッ!?なんか荷物が揺れてるっ!」

((島のミールが怒ってるみたい、活躍返せって。))

「そんなこと言われても〜〜っ!」

 

((不思議だね、フェストゥムなのに、ミールとお話し出来ないなんて。))

「騙されないぞっ!そうやってあの世に引きずり込む気だろう!」

((ラハムさんって怖がりなんだね、もっと私とお話ししよう?))

「いやあぁぁぁぁぁぁっっ!?」

 

何気に珍しく乙姫が他人を敬称で呼び、

ラハムはミールと乙姫に弄られるのであった。

 

「助けて真由ーーー!!」

((あなたの真由っていうお友達ともお話ししたいな…。))

「来ないで真由ーーー!?」

 

 

ラハム に 自己犠牲 の 精神 が生まれた!!

 

 

「もういやあぁぁぁぁ…!!」

((ふふっ、そんなに怖がらないで?仲良くしよう?))

 

 

ラハムさんの運命はいかに!?キィィ…バタンッ! フッ…

 

「ああっ!?扉がひとりでに閉まって照明が消えたっ!?」

((扉は全部自動ドアだよ?照明はなんでだろうね?))

 

 

ネクストラハムズヒント!「節電」!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『将陵家』ーー

 

 

prrr…ガチャッ

「はい、将陵です。…あっ、佐喜さん?…うん…わかった。

じゃあ明日、そっちに祐未と真由を連れてくよ。…うん、ありがとう。」

ガチャッ

 

「僚?今の電話佐喜さんから?」

「ああ、なんでも上層部が忙しくて情報を纏める人がいないから、

情報官の仕事が休みのうちに会いたいって、祐未と真由の挨拶もしないとな。」

 

僚の叔母にあたる将陵 佐喜 (まさおか さき)は戦闘情報官の仕事で普段は休めないが、

ラハムの情報統制で戦闘情報を今、収集すると混乱するので休暇が出た。

僚は電話では伝えたが、佐喜が職業柄ゆえにL計画が終わっても会いに行けず、

婚約した祐未と養子にした真由を紹介するのにちょうどよかった。

 

 

「おにいちゃん、さきさんってだれ?」

「俺たちの叔母さんだよ、目の前で言っちゃダメだけどな。」

 

「おばさん?」

「叔母さんっていうのは俺…俺たちの父さん母さんの姉か妹の人の事だよ。」

 

「僚、どうせなら明日は堂馬食堂でご飯にしよっか?」

「そうだな、佐喜さんも喜ぶだろ、久しぶりの休みなんだし。」

「あしたおそとでごはん⁉︎」

 

「真由、佐喜さんはお姉さんって言うんだぞ?」

「はーい!」

 

「お外のご飯楽しみね、真由?」

「うんっ!」

 

 

 

大概将陵家は誰かが不幸になると幸せになる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーーそのひ、わたしはおんなのひとが

おんなのこと、そのおかあさんにいじめられてるあくむをみました。ーーー

 

 

 

よわいものいじめはだめなんだよ?

 

 

 




初めて出会う親戚たち、ぶっちゃけ他人にしか思えない。
アニメでの佐喜さんの出番の少なさは不憫だと思うの。


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にじゅうさんにちめっ!

前回のあらすじ


どうあがいても絶望


突然だが竜宮島には実は何人か人類軍側の工作員がいる。

 

 

皆城公蔵達アルヴィスの幹部はその存在に気づいてはいるが、

人類軍の動向を探るため、めぼしい人物はマークされている。

 

彼等工作員の処遇は溝口 恭介(みぞぐち きょうすけ)率いる特殊工作員が監視しつつ判断する。

 

しかし人類軍、アルヴィスの工作員両陣営は焦っていた。

 

ラハムを最重要機密として今までのセキュリティを強化し、

人類軍は情報を集められず、アルヴィスは人類軍の工作員が何をするかわからない現状に。

 

アルヴィス職員の中には情報を入手して人類軍にリークしている工作員もいるが、

人類軍の工作員はお粗末なもので一般人の工作員にもアルヴィスの情報を探らせようとしている。

 

ただの一般人がアルヴィス内に侵入出来るわけがないし、

複数人工作員がいるのに何故役割分担をして効率よく情報を入手しないのか?

 

それは現状の人類軍がなりふり構わずの状態で、

工作員の情報収集は工作員側からの発信機付きのボトムメールで送られ、

それが正しい情報か判断するのも会話をするのも出来ないので、

竜宮島付近に偵察機が飛ばされるだけである。

 

もちろん情報に竜宮島は擬装鏡面のカモフラージュされているとあるが、

島が確認されない限り、どれほど情報を送ったとしても信用できず、

人類軍の上層部達は工作員が竜宮島に毒されているか疑心暗鬼になるのも仕方ないだろう。

ほとんどの情報は信憑性が薄く、工作員の情報は工作員共々信じられていなかった。

 

そして追い討ちのようにアルヴィスのセキュリティ増強、

人類軍工作員はいつ爆発するか、アルヴィス工作員は戦々恐々とするしかなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『大衆食堂堂馬』ーー

 

 

「信じて送り出した甥っ子が嫁と弟の家庭築いて薬で病気完治して

運動にドハマリして幸せダブルピース家族引き連れて帰ってくるなんて…」

「だいたいあってるけど言葉を選んでくれません?」

 

「真由もピースすきだよっ、ほらっ!」ピース !

「ぐふぅ!?」

「撃沈してる…」「僚、真由は純粋過ぎたのよ」

 

「あざとい、なにこの子あざとい、どこで拾ってきたの?」ヒソヒソ

「…空から降ってきたんだ、フェストゥムに乗って」ヒソヒソ

 

「へっ?」「まあ…そうなるよな…」

 

佐喜は情報規制の為に、真由は日本から来たとしか知らされていなかったので

真由がどこから来たのかは知らなかった、

まさか休暇の原因のフェストゥムとは夢にも思うまい。

 

「僚くん、甥に先を越されて彼氏もいないあたしの身にもなってよ…」

「まあまあ佐喜ちゃん、ドンマイっ!」

 

「舞ちゃんは陣内さんがいるからそんなこといえるのよ、

あーあー…私もいい人いないかなぁ〜…」

 

佐喜は親友の堂馬 舞(どうま まい)に励まされたが舞には陣内 貢(じんない みつぐ)という彼氏がいるため、焼け石に水だった。

 

今日僚たちが昼食を堂馬食堂にしたのも、

2人が親友なのでせっかくの休日だから合わせたかったのだ。

もっとも、いつも夜になると晩酌に来るので変わらなかっただろうが。

 

「とりあえずは美味しいご飯食べて元気出しましょう。

佐喜さんならきっといい人見つけられますよ」

「うん、そうだね。舞ちゃん?レバニラ定食お願い」

 

「さっき彼氏欲しいって言ったばかりなのに…」

「気にしないであげて、佐喜ちゃんああいう子なの…」

「いいじゃん、元気つけるんだし、たまの休暇だから食べたって!」

 

その女子力顔負けの漢気が原因だな、と僚は思った。

 

「真由、ここのおすすめは生姜焼き…ハッ⁉︎」

「僚どうしたの?」「おにいちゃん?」

 

 

(生姜焼きの中に…玉ねぎが、あるっ⁉︎)

 

 

僚はここの生姜焼きは好きだったが、プクと同化してからネギや香菜などの

匂いがきついものが苦手になり、堂馬食堂のだいたいのメニューには

その全部が入っていた。

 

(落ち着け、別に味が嫌いなわけじゃないんだ、

俺の中のプクが苦手意識があるだけなんだ!)「クゥーン…」「!?」

 

「?今犬の声がしなかった?」

「き、気のせいですよ、あははは…」

 

(僚くん!気をつけてよ!)

(すいません!つい出ちゃって。)

「?」

 

僚がプクと同化した事はアルヴィス以外では機密であり、

一般人である舞や公の場で正体を晒すのはご法度である。

真由にも秘密にするよう言ってあるが真由には秘密の理由がわからなかった。

 

「えーと…トンカツ定食で。」

「真由ねっ、たまごどんっ!」

 

「私は生姜焼き定食で、僚、後でわけっこしよう?」

「祐未…」「真由もっ、真由もわけっこする!」

 

「じゃあ皆でわけっこしようか。」「うん!」

 

「舞ちゃんごめん、追加でブラックコーヒーもお願い…苦いやつ」

「ど、ドンマイ?」

 

 

佐喜はほのぼのとした光景に、口から砂糖が出そうになっていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「聞いてますか溝口さん?私もうほんと辛いんですよ〜…」

「いいじゃねぇか、俺はずっと仕事中だったんだぜ?

平和なんだ、若いのぐらい笑って見てやれ」

 

 

あの後僚たちと夕方まで町を周り、堂馬食堂に飲みに戻ってから

上司の溝口らアルヴィスの職員たちに愚痴を言っていた。

 

「仕事ってずっと楽園にいたんですか?」

「いや、途中で外から監視してさ、ありゃ客に対する態度じゃないよ」

 

喫茶『楽園』の春日井夫妻は島での不審な行動が多く、

島を守るアルヴィスにも不遜な態度を隠さず、島を他人事のような物言いをするので

アルヴィスの工作員にマークされていた。

 

「何かあったんですか?」

「それが店ん中でずっと怒鳴りっぱなしでな?

アルヴィスの文句ばっか垂れてるし、帰ってきた息子を家から追い出してたんだぜ?

流石に気になって見てたら喧嘩までふっかけてきやがった」「うわぁ…」

 

「隠す気あるんですかね?」

「だな、多分スパイの囮だろ、じゃなきゃもっと演技が上手い奴送るさ」

 

溝口は他にいるであろう人類軍の工作員にため息を吐いた。

 

「お前んとこはどうだ?陣内」

「おやっさんとこほどじゃないですけど皆ピリピリしてます。

フェストゥムの実験を参加してるのとしてないのではっきりわかりますよ」

 

「何がわかるって?」

「喜びすぎなのと不機嫌になるの、両方共スパイですね」

「あちゃー」

 

溝口はこれから忙しくなるであろう未来に辟易とした。

 

「どうかしたんですか?舞々おつまみセットお待ちどうさま」

「いや将陵参謀長殿の愚痴が長かっただけだよ」

「ぶり返さないでください!」

 

今日は飲んで気分転換しよう、食堂の客たちはそう思った。

 

「それにしてもニラ臭いな、誰かレバニラ食ったのか?」

「……………」

 

 

女子力を鍛えようと佐喜は心の中で誓った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス本部・地下即席格納庫』ーー

 

 

 

 

「ふーん…フェストゥムにも変なのがいるんだ」

((それラハムさんが言っていいの?))

 

「えっと…ボクのはほらっ!真由に変えてもらったというか…」

((へぇ…私も会えば変わるのかな?))

 

「だっ、ダメだよ!真由は今は小さいから」

((なら大人になったら来てもらおうかな?))

 

「そ、それは…」

((どうかしたの?ラハムさんも真由に会えるよ?))

「そうだけど…」

 

ラハムは今までにあった事のない無邪気な相手に、

計算して有利な会話に出来ない事に困惑しながら会話していた。

 

(柄鎖に交換条件として、非常事態になったら真由をボクに合わせる約束は早まったかな?)

 

ラハムは本島にくる代わりに非常事に真由と合わせる約束をこぎつけた。

 

(非常事なんていつ来るかわかんないし、もっと有益なのを掲示すればよかった…」

((ラハムさん声に出てるよ))

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「アッハッハ!仕事終わりっ!」

 

柄鎖は定時ではないがいつもより早く帰れる事に歓喜していた。

 

アルヴィスの幹部達が思っているより柄鎖はラハムに気に入られており、

3日の猶予をもらい予定よりも早く帰れるし他の仕事も、もう少ししたら落ち着くだろう。

 

(辛い時に仕事を代わってもらい、ありがとうございます真壁代理!)

 

スキップしそうな雰囲気のままこのまま家に帰ろうとしていた。

 

(夕飯はどうしようか?他の皆も堂馬食堂にいるからそこで食べようかな)ウィーン

 

「随分と楽しそうじゃないか早乙女君。司令代理の私を差し置いて…!」

「ゲェーッ!?真壁代理!?」

 

そこにはいるはずのない真壁史彦の姿があった。

 

「な、何故…?」

「指紋認証などが必要なデータがあってね、まだ家に帰ってなくてよかった」

 

「い、いやだ!私は今日はもう家に帰るんだ…!」

「ほう?なら明日は大丈夫だな」

「あ"っ…」

 

柄鎖は自分の失言で3日あった猶予が消え去ったのを理解した。

 

「一体いつから────今日するのだと錯覚していた?」

「ウゥゥゥ!?」(柄鎖の怯える声)

 

「では明日、迎えに来よう」

「嘘だァ─────ッ!?」

 

 

…柄鎖の慟哭が響いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーそのひ、わたしはおうちにかえれない

かわいそうなおにいさんのあくむをみました。ーー

 

 

おうちにかえれないのはみんないやだもん。

 

 

 

 




ラハムさんの好感度
真由>超えられない壁>森田=TSXパイロット>L計画参加者>>
>>竜宮島の住民>次元すら超えられない壁>島のミール=乙姫


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にじゅうよんにちめっ!

前回のあらすじ


焦る人類軍、恐れるアルヴィス。

事態は急激に変化する。



「僚ー、これ見て」

「ん?」

 

それは夏の盆祭りの告知のチラシだった。

 

「おお、もうそんな時期か」

「早いね、もう1ヶ月たっちゃった」

 

2人は生徒会室にあった謎のポエムの印象で忘れていたが

前の手伝いの際に行事予定のプリントを貰ってきていた。

 

「じゃあ、皆の灯籠を作らないとな…」

「うん…」

 

「よかったらさ…3人で作らない?」

「そうだな、母さん達にも新しい家族を紹介しないと」

 

2人は真由を起こしに部屋に向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『早乙女家』ーー

 

そろ〜「…データだけ置いて姿をくらませば残業はないはず…(ポンッ)ん?」

「お迎えだよ」「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『剛瑠島 ・ファフナー格納庫』ーー

 

 

早めの夕方、職員達は何故かまばらで、

まだ定時ではない時間に保が容子に話しかけていた。

 

 

「羽佐間さん、今日はもうあがりだそうですよ」

「あら?どうして?」

 

 

現在ファフナーの作製とティターンモデルのノートゥングモデル改修に忙しいはずだった。

 

 

「今夜はU計画でしょ?上層部と幹部を除いて定時より早く帰れるそうです」

「U計画…?ああっ!お盆祭り!すっかり忘れてたわ」

 

 

アルヴィスでは文化を保存する他に文化を再現する計画が色々ある、

U計画というのも盂蘭盆の頭文字を取ったもので、アルヴィスではそう呼ばれる。

 

「翔子ちゃん、元気になったんでしょ?なら一緒に行ってあげないと」

「そうね、余り外に出れなかったからあの子、ずっと楽しみにしていたの」

 

娘の様子に気づきながら祭りを忘れていた事に容子は恥ずかしく照れた。

 

「学校の子達と遊ぶそうですから、どのみち後で会いますね」

「そうですね、大人達も楽しみにしてますから」

 

仕事を早く切り上げ、格納庫には誰もいなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『………ヴォン………ヴォン………』』

 

 

 

 

残された暗い格納庫に、2機のティターンモデルの眼が蒼く輝いた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「人が悪いですよ真壁代理、定時で帰れるならそう言って下さい」

「すまんな、まさかあそこまで拒絶するとは思わなかった」

 

史彦と柄鎖も祭りに参加する為、今日は定時で帰れる予定であった。

 

「疲れが溜まってましてね…帰って寝ようかと考えてました」

「私が連れ出さないと祭りを忘れてしまうかと思ってね」

「違いません…忘れていました」

 

柄鎖はこれまで寝れなかった分寝溜めするつもりだった。

ちなみに普通に寝てても疲れは取れないので気をつけて欲しい。

 

「本当は皆城も連れて行きたかったんだがな…」

「どうやら、まだ負い目があるそうですね、誰も気にしないのに」

「ああ、町長の役割で忙しいと先に行ってしまったよ」

 

公蔵はL計画の後ろめたさから、余り柄鎖と顔を合わせなかった。

 

「だからと言って仕事を増やすのはたまりませんけどね…」

「仕方あるまい、君には実績から信頼が厚くなったからな」

「欲しくありませんでした…」

 

仕事が多いのはそのせいか…喜べばいいのか喚けばいいのか。

彼は嬉しいのか悲しいのかわからなくなっていた。

 

「では、この辺で」

「ああ、準備が終わったら寄ってくれ」

「えっ、ええ…」

 

史彦は露店をするので別れたが

柄鎖は史彦の器屋の奇妙な形の器は断固として断るつもりだ。

社交辞令として見に行くが。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『お盆祭り会場・屋台通り』ーー

 

 

 

「夏も、もう終わりね…」

「ああ、しかし屋台にカレー屋があるなんて…」

 

「私たちの敗因は1つ!」

「そう!あまりにも思慮が浅かった事!」

「インパクトが足りなかった事!」

「変り種が2つもあったこと!」

 

 

「「そして生まれたのがこの鉄板ドライカレーナポリタン!!」」

 

 

鉄板に薄くしいた卵焼きの上に粉末カレーで作ったカレーナポリタンを

挽肉のキーマカレーを載せ、その上に自由にのり、チーズ、目玉焼き等を載せて召し上がれ。

 

カレーナポリタンを作る時は薄くしたり細くしたり細かく切ったカレーの材料を

好みに味付けして炒めて混ぜるといい。色んな野菜やソーセージ等の肉製品や魚介類、

バナナやインスタントコーヒー、ポテチやマッシュルームなんかもうまいぞ!(しゃくれ顔)

 

 

「敗因1つじゃないじゃん…」

「あれ?幸弘はどうした?」

「本部の手伝いに行くんだって、後で来るよ」

 

 

「いくぞみんな!ゴウー!バイン!」

「「「ゴウー!バイン!」」」

「衛、子供たちにあまり変に布教しないでよ」

「姉御、俺ナンパに行きたいんだけど…」

 

 

「一騎くん!この焼き鳥美味しいよ?一緒に食べよう」

「以外だな、羽佐間が焼き鳥好きだなんて」

「翔子はお肉好きだもんね」

「うんっ!」

 

「なら焼き鳥を食べてから口直しにかき氷だな、その後で他の甘い物も違和感はないはずだ」

「総士…全力で楽しんでるな…」

「テクニカルな助言をしたまでだ」ピョロロ〜

「あたし、その面と水笛のセンスはどうかと思う…」

「私もちょっと…というよりよくあったねそれ」

「!?」

 

 

今の総士はホワイトマスクを頭につけ、ペリカンの水笛を持っていた。

 

 

「蔵前、これどうかな?」

「かわいいね、春日井くん犬好きなんだ」

「うん…羽佐間も好きらしいんだ」

「ふーん…なるほどねぇ…」

 

 

甲洋と果林もお面選びをしていた。

果林は甲洋の犬好きを色恋沙汰と見抜き、楽しみのベクトルが違ったが。

 

 

 

各々が楽しみ、夜は更けていった…

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

夜になり、灯籠を流し終えた僚達は花火を観に浜辺にきていた。

 

 

「お父さん…見守ってくれてるかな…」

「きっと見てくれてるさ…俺たちの事をずっと」

 

「……」

「…?真由、どうかしたのか?」

「具合でも悪いの?」

 

 

祭りがたけなわになり、暗くなってから真由は静かだった。

 

 

「よんでる…」

「えっ…?」「真由?」

 

 

真由は急に走り出し、どこかへ向かった。

 

 

「真由!どうしたんだ!?」

「真由!どこへいくの!?」

 

 

真由は着物であるにもかかわらず、2人が見失う程速かった。

 

 

「僚!あそこは!」

「ああ!ひとり山だ!!」

 

そこは島の南方にある岩山。

「危ないから一人で行かない方が良い」「一人になりたい奴が行く山」

という「()()()」には正反対な二つの意味を持つ場所。

 

 

(同じだ…!あの時と!)

 

 

真由の顔は、いつかの()()の顔になっていた。

 

 

僚達は、不安で胸が押しつぶされそうだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『ひとり山・沿岸部』ーー

 

 

 

「真由!いるのか!?」

「真由!そこで何してる…の…?」

 

 

真由の目の前には金髪の少年が真由に手を差し出し、連れて行こうとしている。

 

 

「真由ダメ!そっちにいっちゃ!!」

「そこに行ってはダメだ!真由!!」

 

 

「………」「あなたは、そこに、いますか?」

 

 

その少年は()()()で少し浮いていて、今にも真由の腕を掴もうとしていた。

 

僚達の距離は離れており、止める事は出来なかった。

 

 

(……っ!間に合わないっ!)「真由!!」「真由ー!!」

 

 

 

ガシッ!「!?」「……」

 

 

 

「なっ……!」「…うそ…」

 

 

 

真由の手を掴もうとする手が阻まれ、第三者の手が少年を掴んだ。

 

 

 

 

それは僚に似ている半透明の少年(真由の兄)の姿だった。

 

 

 

 

「……」フルフル…「…っ!」

 

 

腕を掴んだ少年は首をふり、

金髪の少年は顔を顰めながらその場から溶けるように消えた。

 

 

ドサッ!

 

「真由ーーーッ!!」「真由ーー!!」

 

「すぅ…すぅ…」

 

「真由…よかった…」

「僚?真由は大丈夫?」「心配ない、気絶してるだけだ」

 

2人は真由の元に向かい、倒れた真由の安否を確認して無事な事に安堵した。

 

スッ「……」

「お前は…」「僚…」

 

少年は僚に手を差し出し、握手するのを待っている。

 

「祐未、多分大丈夫だ」

「気をつけてね…僚…」

 

 

少年の手を握った瞬間、手の部分に同化結晶が現れた。

 

「グゥッ!」「………」ピキッ

 

 

(なんだ?この情報は!?真由が…いない?)

 

 

少年の手からいくつもの映像が頭に流れ込み、L計画の情景が映っている。

 

 

(そんな…!まさか…!)

 

 

映像からは次々と参加者が死に、同化現象でパイロットがいなくなり、

L計画は完遂したが生存者0という結果で終わっていた。

 

 

(11月…そうだ!なんで俺たちは───!!)パリンッ !

 

 

「うっ!」「……」

「僚!」

 

映像は終わり、手の同化結晶が砕けて少年の手は離れた。

 

「今のは、一体…どうして俺たちは…」「……」ピキッ

 

 

「真由…を……たの……ん…………だ……」ピキピキッ

 

「待ってくれ!どういう意味なんだ!俺たちは──!」

 

 

カシャーン!!

 

 

僚の質問に答える前に、少年は全身から同化結晶が生え、

結晶とともに少年は砕けて消えた。

 

「何を見たの?僚」

「祐未、いいか?多分出来ると思うが…」

 

「……っ!僚!これって…」

 

僚はなんと単独で祐未とクロッシングし、先の映像を見せた。

 

「祐未、何か気がつかないか?」

「…わからない、違和感はあるんだけど」

 

「計画が終わったのは2145年11月、だけど今は…?」

「……!!2145年8月!!」

 

「そして今の感覚、わかるな」

「忘れもしない…メモリージング…!」

 

 

 

メモリージングはアルヴィスの記憶処置であり、

島の子供達は記憶操作がされている。

 

 

「間違いない、俺たち島の全員がメモリージングされてる!」

「そんなっ!?アルヴィス以外にメモリージングだなんて…」

 

 

「………んぅ」「!目が覚めたのか真由」

 

 

「おにいちゃん、あのね」「真由…」

 

 

「みんな、みんないっちゃうの、いかないでっていってもいっちゃうから

おとうさんおかあさん、しらないやさしそうなおじさんおばさん、

おねえさんやおにいちゃんそっくりのおにいちゃんもいたんだよ?」ポタッ…ポタッ…

「そっか…」

 

「それでね、おいかけようとしたの、でもだめだって、

きちゃ、いけないって、みんな…いるがら"、だめ"だっ"で…」ポタッポタッ

「うん…うん…」ぎゅう

 

「う"あ"あ"ああぁぁぁんっ!!ああああぁぁぁぁぁ…」

「いるぞ、ここに…俺たちがいる」

 

「ごっぢじゃ、だめっで!ぞっぢじゃなきゃ、だめだっで!」

「行かなくていい、真由は今、ここにいる」

 

 

 

「帰ろう?真由、俺たちの居場所へ」

「ゔん"っ"!!」

 

 

 

真由は滂沱の涙を流し、僚は真由を抱きしめて祐未と手を繋ぎ、

自分と家族がここにいる事を噛み締めた。

 

 

(何かが起きている、俺たちが気がつかない内に、大きな何かが!)

 

 

僚は家族を必ず守ると、覚悟した。

 

 

 

(絶対に守ってみせる!絶対に!)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーそのひ、わたしは──あくむをみませんでした。ーー

 

 

 

──…今日は…今日だけは見なくてもいいんだよ?マユ──

 

 

 

 

とても、やさしくて、なつかしいこえがきこえました。

 

 

 

 

 

 

 

 




最期の別れの言葉は親しい人ほど言えない、
それはきっと、別れたくないから言いたくないのだろう。


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8月32日!お前はいないはずじゃ…残念だったな、トリックだよ。
にじゅうごにちめっ!


前回のあらすじ


君は知るだろう、偽りの中の偽り、
それは真実ではないことを、続き過ぎた嘘は、最早止められない事を。

その時間は決して戻らない事を、君は思い知るだろう。


ーー『アルヴィス・ミーティングルーム』ーー

 

 

 

「まさか大人の我々が子供のようにラハムの泥ではしゃいでる間に、

このような事態を許してしまうとは、しかも気づいたのが子供とは皮肉だな…」

 

「メモリージングの装置を調べたが、やはり使用された痕跡があった。

おそらく、いや間違いなくアルヴィスにいる人類軍の工作員の仕業だろう」

 

 

アルヴィス幹部達は僚によって知らされたメモリージングについて、

僚と祐未を交えたメモリージング不正使用の緊急会議を開いていた。

 

 

今回メモリージング装置が不正使用されたのは、セキュリティが強化されている

データ管理区とラハムの実験している大部分の区画のみであった為、

それ以外の重要度が低い施設のセキュリティは低下してしまい、メモリージングは

本来学校内に設置してある睡眠システムで長期にわたる処置が必要な装置である。

それ故に装置のセキュリティが甘く、幹部以下のある程度権限があるものが、

メモリージング装置の監視の抜け目をかいくぐり、現在に至ってしまったのである。

 

 

「人類軍の工作員って、スパイがいるのはご存知だったのですか!?」

「なんで早期に対策を取らなかったんですか!?こんな事態になる前に!」

 

「無論、注意人物には監視をしていた…が、こんな事態では言い訳にしかならんな…」

「重要だと思っていた場所のみに目がいってしまい迂闊だった…

子供達にしか使わないとはいえ、アルヴィスの重要機材を軽視してしまった」

 

 

幹部以下のアルヴィス職員には工作員に気取られない様に教えられておらず、

知っているのは幹部とアルヴィス工作員のみである。僚と祐未が糾弾するのも無理はない。

 

 

「メモリージング装置周辺にラハムの泥があった、工作員はおそらく、

それなりに権限を持ち、アルヴィスの職員でも上位の者であるのは間違いない」

 

「記憶操作により誰もがわからぬ内にアルヴィスの重要データも根こそぎ奪われた…

これでは何の為にセキュリティを強化したのかわからんな、御膳だてにしかならなかった」

 

「しかしどうやってメモリージングを島全域に施せたのでしょう?」

「ラハムの泥だ、それによってメモリージング装置を強化したのだ。

薬はやはり強すぎると毒になる事が思い知らされた、今更すぎるがな…」

 

「ラハムの泥によってメモリージングの長期睡眠を省略…そんな事も出来るだなんて…」

「万能過ぎるのも考えものですね、より慎重かつ精密に検査しないと」

 

「彼らの目的はデータだけだったんでしょうか…それにしては大掛かりな気が…」

 

「確かにそれだけではないだろう」

 

僚の疑問の声に公蔵が考察を語った。

 

「工作員の目的はデータ収集、痕跡以外の証拠隠滅、そして竜宮島全体の不安を煽る為だ」

「何故竜宮島全体に?アルヴィス内部だけではないのですか?」

 

「メモリージングは私の権限により解除される、非常事と成人にのみ、

メモリージングは解放され記憶は元に戻るがこの3ヶ月間の偽りの時間、

アルヴィスに対して住民が懐疑を抱き今後の住民との協力は難しくなる、

つまりアルヴィスの信用を落とすと共に非常事には混乱を生み出す事になる」

 

「それじゃあアルヴィスの信頼はないも同然になる!

人類軍に賛同する住民が出てきてもおかしくはなくなる!?」

「そういう事だ…想像以上に厄介になるだろう…」

 

人類軍工作員の手腕と策略にアルヴィス幹部と僚達は冷や汗を流した。

 

(この犯行は間違いなく数名、それだけでアルヴィス壊滅に近ずくなんて…!)

 

祐未は人類軍の存在に改めて警戒心を高めた。

 

(人類軍…祐未の父さんと真由の家族の仇…!もうこれ以上、許す訳にはいかない!!)

 

祐未の父親は人類軍の攻撃によって病に冒され亡くなり、

真由の家族は人類軍の核によって全員が殺された。

 

湧き上がる憎悪を胸に、僚は人類軍を新たな敵と認識した。

 

(みんなを守る!その為なら俺は、()()()()()()()()()()()()…!!)

 

「混乱を招かない為にアルヴィスでは公開するが住民には機を見て公開する」

「それまでは口外無用とする、これは最高機密だ、島が割れるのは避けねばならん」

 

全員が懸念の中、僚は憎悪を止めることは出来なかった。

 

「僚…」

「大丈夫だ祐未、みんなは俺が守ってみせる」

 

祐未は僚の横顔を見て、心配をしたが僚は人類軍の不安だと思った。

 

 

(僚…まるで僚の優しさがどこかに行ってしまう、そんな顔だったよ…?)

 

 

(僚…貴方の心は、ここにいるの…?)

 

 

 

自分のせいで憤る僚を、祐未は悲しく見つめ続けた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「これで軍の上層部は私を認めざるをえないでしょうね…」

 

「ミツヒロさんもきっと褒めてくれる…でもまだ一手足りないわ」

 

「私達の頃には居なかったくせに、あのフェストゥム…!!」

 

「みんないなくなって私達だけが残って不幸になった…忘れるものですか!」

 

「島の奴等が幸せになるだなんて絶対に許さない…!!」

 

「待っててミツヒロさん…必ず貴方の役にたってみせます…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーー『アルヴィス・司令官室』ーー

 

 

 

「私を愚かだと嗤うかね?真壁」

「工作員の監視は私の担当だ、嗤われるべきは私だろう」

 

 

公蔵と史彦は2人きりで会話をしていた。

 

 

「工作員を泳がせたのは私だ、真壁、今回の犯人。

心当たりがあるはずが記憶が封印され、思いだす事ができん…」

「時間が経てば我等はより不利になる、だがラハムなら巻き返す事も可能だ」

 

「ノートゥングモデルの建造と改修はどうなっている?」

「スパイはあちらには手をつけていない、完成はまもなくだ」

 

公蔵はラハム研究に尽力を注ぎ、史彦はラハム研究以外のその他をサポートしていた。

 

「いざという時はすまんが使わせてもらう…このような結果を招き申し訳ない」

「…仕方あるまい、私も覚悟は出来ている…」

 

アルヴィスはまだ切り札を持っていた、()()()()という切り札を。

カードには島のミールも、ファフナーのコアの秘密もある。

 

 

「我々は人間だ、戦う相手を見誤る事だけはしてはならん」

 

「人間と人間が戦うのであれば、今までの徒労が水の泡になる」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『将陸家』ーー

 

 

ガララッ…

「電気がついてる…?真由?起きてるのか?」

「ただいま、真由?そこにいるの?」

 

家の電気はついていて、アルヴィスに行く前に寝かしつけたはずの真由が、

椅子の上で胸に何かを抱いて眠っていた。

 

「…起きたら誰もいなくて、不安で待ってて眠ったんだね…」

「ごめんな…怖い想いをさせて、寒かっただろうに…」

 

僚は真由を抱き上げ、真由が抱いていた物の正体を知った。

 

「これは……!」

「っ!真由…ごめんね…真由…!」

 

抱いていたのは真由の家族の写真、そして()()()()()()()であった。

 

真由は気づいたのだ、自分が本当の弟ではないこと、僚達が自分の為に嘘をついていること。

 

真由の顔をよく見ると泣き腫らした瞼が目立ち、涙の跡があった。

 

誰もいない孤独に耐えきれず、また独りぼっちになってしまったという恐怖から

寂しくて眠らずに僚達を待ち続けていたのだ。

 

「…おにいちゃん……おねえちゃん……」

「いるよ…ここにいる…」

「もう…いなくなったりしない、ずっとそばにいるから…」

 

真由は寝言と共に泣き始め、僚と祐未は真由を挟んで抱き締めあった。

 

 

「ずっと…悪夢を見ているんだな…真由」

「せめて…起きてる間だけは、幸せな夢を見せてあげよう?僚…」

 

 

この日は布団を寄せ合い、1つにするように抱き締めあって眠った。

 

 

(いつか…優しくてあったかい世界になるまで、俺が守るからな祐未、真由)

 

 

僚の目は紅く輝き、目を閉じた。

 

 

翌日、3人用の大型布団と枕を発注した。

 

 

親バカ、ここに極まれりである。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーそのひ、わたしはだいすきなひとがめのまえでいなくなるあくむをみました。ーー

 

 

とても、かなしくて、くるしくて、いやでした。

 

 

 




人類軍のスパイ…一体何っぺなんだ…
僚くん、お兄様に少し汚染されますた。


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にじゅうろくにちめっ!

前回のあらすじ

「みんなで泥遊びしようよ!」
「わーい!」「たーのしー!」

「「駄目だこの大人達…早くなんとかしないと…」」


 

 

「皆城司令、やはり泥には副作用が有る事が判明しました」

 

「攻を急ぎ過ぎたか…なまじ、私の研究気質が仇になった、

少しでも早くフェストゥムに対して有利になろうとしたツケだな」

 

 

公蔵はアルヴィスの医療責任者の千鶴と2人きりで会話していた。

 

前回の事件から、幹部達は研究データの流出をこれ以上させないよう全ての研究過程、

報告書を紙媒体にして各自で管理する事により情報の所在を司令を含めてわからないようにした。

 

研究報告でさえ司令と責任者のみが行い、第三者は絶対に入れないどころか、

報告がある部屋は複数用意して無人の部屋にも警備を置き、警備に不審人物が居た場合、

すぐさま工作員がマーク、その人物の潜入家宅捜査を実行、人類軍の証拠品が有れば差し押さえ、

逮捕の流れになった。無論関係者も洗いだして芋づる式で逮捕される事も多々あった。

 

意外にもこれに困ったのはアルヴィスで、人類軍の工作員の人数が多く、

調べた所、何と島の住民の十分の一近くが工作員であり、隠れている工作員も未知数である。

 

もし逮捕した大勢の人間を島外追放にする場合、アーカディアンプロジェクトの一環として

平和を維持する為に島外追放を情報操作して住民に説明をする理由を考えねばならず、

途方もない事後処理と、約2000人の島の労働者が約200人も減る事になる。

 

この措置として島の規制を緩和し、工作員とはいえ住民の喪失を防ぎ、

さらには人類軍工作員を島の味方に引き込み、労働力にする政策が導入される事になった。

 

軽度のモノなら保護処分し、厚生プログラムによる竜宮島生活矯正が施され社会復帰を許される。

不適格者、重度の罪を犯した者は島外追放になるが人類軍の穏和派に使いを通して保護させる。

 

以前と比べればあり得ない程の温情措置なのは幹部会に僚達も加わり、

僚の冷静な判断と祐未の聡明さから、島の刑罰を緩和する提案をして

島とアルヴィスの負担減らし、労働力の保持と人類軍の情報入手を目的に提案が受理された。

僚は何故か始終笑顔だったが…(アルカイックスマイル

 

 

(俺達家族の幸せを奪った人類軍め…!さんざん使い倒して、ボロ雑巾の様に見捨ててやるッ!)

(僚っ…!僚が優しく笑ってる、やっぱり僚は優しいままだったんだね!)

 

 

…そんな思惑はなかっただろう…多分、きっと、メイビー。

 

 

閑話休題(それはさておき)

 

 

「副作用があるのは覚悟の上だ、当然メリットのみで対価が無いのはあり得ない。

責任は取る、研究指示を出してデメリットを、私は度外視していたのだからな。これは必然だ」

「皆城司令…」

 

千鶴は最初から急ピッチでやらせなければいいのでは?と言いたかったがグッと飲み込んだ。

 

「副作用の方なのですがそこまで危険性がある物ではありません…生理現象程度のものです」

「………………」

 

公蔵は自分の早計に羞恥で顔を逸らした。

 

「被験者の羽佐間翔子さんは過度の運動で新陳代謝が急激に発生、

極度の成長痛を訴え、新陳代謝に消費した栄養分の食事が必要になったそうです」

「健康デヨカッタヨー、オジサン心配シタヨー」

 

「司令、真面目に聞いてください」

「すまん、最近心労が絶えんでな…」

「後で森田先生も含めてカウセリングをしましょう。

早乙女さんも真壁代理を通して森田先生のカウセリングを受けています」

「そうだろうねぇ」

 

日に日に2人の公蔵に向ける目が、もし視線で人を殺せるなら殺せれるレベルまで達していた。

公蔵は2人に対する申し訳なささと、いつ刺されるか解らない恐怖でストレスが溜まっていた。

 

「いつかお二人も解ってくれます、話しを戻しますが他の被験者も同じ症状で、

身体中に痛みを訴える被験者が後を絶ちません。無茶をしなければいいのですが…

泥のドーピングのような効果で、身体の限界が解っていても無茶する方が多いようです。

西尾先生も山登りをして先日、急激なリバウンドの様に白髪が全て黒髪になったそうです」

「なにそれこわい」

 

西尾行美は猫背は完全に治り、今の見た目は40代ほどである。

 

「虫歯が抜けて新しい歯が生えたり、抜いたはずの親知らずが直立して生えたり…

歯並びが治ったりするのですが急激な痛みを伴うので覚悟が必要です。

麻酔として使う事も出来ますが、それでは依存する恐れがあるので効果的ではありません。

健康には問題がないのですが使用制限をした方がいいのは間違いないです。医学的には」

 

「…私も飲めばストレスが減るかなぁ……」

「やめた方がいいですよ、麻酔は一時的にしか持ちませんし、

麻酔が切れたらその後のストレス性の症状は無くとも、痛みは残るのですから」

 

「不適格者の約30人以上が島外追放なんて事態、どうやったって誤魔化しきれん」ダバーッ

「そんなに居たんですね…統括班と人事班が根を上げるわけです」

 

厚生プログラムに問題はなかったが、そもそもそれを受ける様な人物は工作員でも

元からまともではない工作員や、工作員の囮として癖が多い者ばかりである。

 

200人中170人近く残せたのは厚生プログラムを考案した僚達と千鶴と森田、

優秀なアルヴィス職員のお陰だ。しかし30人以上の脱落は仕方がないだろう。

人事と統括には頑張って欲しいものである。胃潰瘍待ったなしだが。

 

「私は医院とアルベリヒド機関で関わっていないので森田先生には頭が上がりません、

本来ならカウセリングも全て私がやるべきなんですが…」

「流石に君一人に押し付けるわけにはいかん、ところで森田君はどうしている?」

 

アルベリヒド機関はまだ残っている日本列島にあり、

島の住民達の報告をしなければいけないので、千鶴は厚生プログラムとカウセリングには

参加して手伝う事が出来なかった事を千鶴は悔やんでいた。

 

「それが…真壁代理にもカウセリングが必要になって、その対応をしています」

「・・・・・・・・・」

 

 

公蔵は統括の報告には急いで行くと決めた。

 

しかし統括班には早すぎる時間にきたので、

担当責任者である史彦と柄鎖の公蔵へのヘイトは高まるばかりだった。

 

「お早いお着きですね、司令……!!」(#^ω^)ピキピキ

「本当だな、工作班の報告がまだ来てないので此方の報告が出来んというのに…!!」

 

 

(あるぇ〜〜〜〜!?)(´・ェ・`)アボーン

 

 

工作班が一日中見張っているので、人事判断と処理は必然的に深夜になり、

統括班は工作班の報告が来るまで家に帰れるのはアルヴィス最終になっている。

 

 

 

──────────────────

ーー『西尾商店』ーー

 

 

「僕はあまり来ていないな、カレー大会以来だ」

「そう?皆城くんも偶には来てみるといいよ、会話のタネになるし」

 

 

蔵前果林と皆城総士は西尾商店で買い物に来ていた。

 

「幼い頃はよく来ていたんだ、機会がなかっただけだ」

「真壁くんと仲を戻したんでしょ?一緒に来たらどう?」

「何故そこで一騎が出てくる、一騎は関係ない」

「またまたー」

 

総士がしばらくの間、遊学を建前にアルヴィスのCDCに研修に行く事となったので

必要な物を買い出しに来たのだ。

 

 

(CDCの研修…本当の目的は工作員が流出したデータの回収とファフナーの運用…

以前の作戦と比べれば堅実だ、後は父さんが落ち着いて考え直してくれれば…)

 

 

今回、偽装鏡面内ではあるが、ファフナーの模擬戦と運が良ければ、

人類軍工作員が流出したデータを回収するのが目的だ。

 

 

総士が遊学を建前にフェストゥムを呼び込み、果林に実戦させる予定もあったが、

L計画を生き残ったパイロット達がいるのでその計画は流す事にして、

果林育成の先輩パイロットと果林の模擬演習が計画されたのだ。

 

しかし皆城公蔵はフェストゥムとの徹底抗戦を視野に入れており、

総士は父がL計画の様な無謀な作戦を繰り返すのではないか不安であった。

 

(フェストゥムとの徹底抗戦…それでは人類軍と変わらない、このままでは…)

 

「?皆城くん、どうかしたの?」

「っ…何だ?」「いや、ぼーっとしてたから」

 

総士は自分が思っていたより熟孝していた事に気づいた。

 

「何でもない…何を買うか悩んでただけだ」

「ふーん…「ガララッ」んっ?」

 

「おっ、お前達も買い物か」

「奇遇だね、私達も買い物に来たんだ」

「こんにちはー!」

 

「こんにちは、先輩達もですか…運命を感じちゃいますね…」

「こんにちは僚先輩、…蔵前、何を考えている…」

 

(なに果林?祐未先輩が僚先輩と婚約して離さない?

果林 それは無理矢理引き離そうとするからなのよ

逆に考えるんだ「愛人でもいいさ」と考えるのよ)

 

あれから果林は甲洋の翔子に向けるアプローチにじれったさを感じ、

自分は妥協しないと僚の犬耳尻尾に誓い、僚の愛人を目指し、

あわよくば祐未も合わせたハーレムを築こうと考えていた。

 

別段彼女は同性愛者という訳では無いが、

別に嫌いでもないしむしろ尊敬している。可愛い弟分も出来るし、

あれっ?これって一粒で三度美味しいんじゃない?という結論に至った。

何でこんなになるまで放っておいたんだ!!

 

 

「あっ…ああ、別に普通じゃないか?みんな一緒に行くわけだし…」

「ええ!そうですね!()()()()()()()!行くんですから!」

 

「蔵前さん、なんだか凄い元気ね…」

「きょうの果林おねえちゃん、ちょっとこわい…」

「蔵前…」

 

果林は鼻息荒く、遊学と言う名のパイロット育成合宿を心待ちにしていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーそのひ、わたしはよくばりなおねえさんが

いろんなひとをつかまえてかぞくにしようとするあくむをみました。ーー

 

 

ーー…さびしいからおねえさんのきもちがちょっとわかりました。

 

 

 

 

 




お前も、家族だ。

リアルが忙しくて投稿遅れて申し訳ありません…
これから更新が遅くなります。
本当にごめんなさいm(_ _)m


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にじゅうななにちめっ!

前回のあらすじ


僚の人類軍ロロ雑巾計画
野獣少女!蔵前果林! ☆爆☆誕☆‼︎




ーー『アルヴィス・格納庫』ーー

 

 

 

僚達L計画参加パイロットはファフナー開発担当の羽佐間容子らに収集され、

容子はノートゥングモデルに改修されたティターンモデルの説明をしていた。

 

 

 

「これが貴方達の生まれ変わったファフナー、

ノートゥングモデル化した[マークヌル]と[マークエアスト]よ」

 

 

その機体は通常のノートゥングモデルと同じサイズだが、

四肢と細部以外はティターンモデルの面影が残っている。

 

 

 

「これが…俺達のドライ…いや、今はヌルか…」

「かなり小さいな、形はあまり変わってないけど」

 

「データだと出力が落ちてる、けど以前より長時間戦える…!」

「武装も汎用性が高くて水中戦も出来るみたい」

 

「ティターンモデルをベースに、コックピット自体は変わってないそうだ」

「脱出装置は追加されてるんだろ?

ペインブロックも追加されてるし別にいいんじゃないか?」

 

「…プクの匂いがする…プクも匂いで俺を見つけてくれたんだな…」

「そうだったね…けど、まだプクはここにいるんでしょう?」

「ああ、ずっと、ここにいる」(ワンッ!)

 

「このファフナーの特徴は水陸両用型で、水中はもちろん掘削も出来るの、

ヌルはゼロ、エアストは最初の意味で、この二機は以前ティターンモデルのように

乗り回しはできないわ。だから平等に適性のあるあなた達に誰が乗るか、決めて欲しいの」

 

この質問にパイロット達は間髪入れずに答えた。

 

「俺はパスだ、アイツら置いてっちまったのにコイツら乗るなんてできねぇ。

こいつは僚と祐未達が乗るべきなんじゃない?一緒にマリンスノー見た仲じゃないか、なあ惇」

「俺だってそうさ、だから俺もパスだ。正直アイツらに嫉妬されそうでおっかねぇや。

異論はないな、乗ってやれ。俺達みたいに残しちまって後悔しないようにな」

 

「俺もいい、適性はあっても水中はあまり慣れない…L計画を思い出すからな、ちょっとしたトラウマもあるし」

「自分はファフナー自体の適性が低い、出来れば通常の陸戦型に乗りたいのが本音です。慣れない操縦をしてファフナーを失ったらそれこそ意味が無い」

 

「私も適性低いし…僚達にやって欲しいかなー…って」

「あたしだってそうよ、てゆーか僚と祐未は浮気は許されないと思います。二人の性格的に」

 

「浮気って…別にファフナーだしそんな…まあ乗りたいのは事実だけど」

「そうだよな、浮気はダメだよな。なら、祐未、俺達が乗るしかないな」

「そうだね、私達はずっと一緒だもん。乗ってあげなきゃかわいそうだよね…」

 

 

 

「祐未…」「僚…」

 

 

 

「うっわー…どう思います?早苗さん、見せつけてますよあのバカップル」

「これは10点満点ユルサナエですわー、小百合さん。天使はいずこ?この怒りを癒して欲しい」

 

「いいなぁー…同期はこんなんだし羨ましい」「「んだとゴルラァ」」

「少しは慎ましくなれんのかお前ら…」

 

「「……………」」ガッ!ガッ!ガッ!

「ああっ!?幸弘と徹が壁を殴る機械に!?」

 

パイロット全員は僚達に乗って欲しかっただけなのに、なぜこんな事になってしまったんだ…

ちなみに真由は待機室にてお留守番である。しっかり監視カメラに映ってその映像はラハムに送られる。

まっ?多少はね?

 

「決まりね、壁に痕ができてきたから辞めて欲しいのだけど…早速水中での模擬戦をしてもらうわ」

「いいんですか?果林のファフナーは水中戦もできるとはいえ通常の陸戦型ですよ?」

 

マークツヴァイは水中機動もできるが、本格の水陸両用の機体では差があるのは当然だ。

余談だが格納庫の壁は事故予防のため、ミサイルが1発くらい撃っても頑丈な設計である。

 

「その心配はしなくていいわ。試験稼働を合わせた訓練だし、あなた達のファフナーにはハンデとしてリミッターをつけてるから。けれど違和感はないはずよ。心置き無くやって頂戴?」

 

「ずいぶん急ですね、試験稼働を合わせた訓練だなんて」

「え、ええ、やっぱり新型のデータを上が取りたがっているからかも…」

 

実際の理由としてはスパイに対する牽制、皆城公蔵が予期しているフェストゥムとの来るべき全面戦争に備えてである。

 

「………チッ」「僚?何か言った?」

「いや?何も言ってないけど」「そう?」

 

(何が人類の為だ…戦争だ…フェストゥムと戦うだけで人が守れるもんか!)

 

僚はフェストゥムの全面戦争は公蔵の私情だと理解しており、

人類軍スパイとその存在を許した大人達、ひいては仇である人類軍を救う気であるのに

フェストゥムと解り合う事をせず、人間至上主義の公蔵の姿勢が気にいらなかった。

 

(何が人類の為だ、何が平和の保存だ!いつ崩れるかわからない足下なのに、

悠長に人類軍とは敵対せず独力で力を身につけてそれで人類を救うだって?

傲慢にもほどがある、そんなのだから日野さんやミツヒロさんは出て行ったんだ!)

 

ファフナーの開発担当であり、ティターンモデル製作者の

日野洋治、並びにミツヒロ・バートランドはアルヴィスに賛同できず、

竜宮島から出て行ってしまった。

 

僚は真由の兄からさらなる力を引き継いで、客観的に物事を見る様になり、

真由が見せたフェストゥムと人間の共存、野生のフェストゥムの沈静化させた奇跡を見たのと、プクとの同化で動物の視点も手に入れた。

 

結果、冷静な判断力、客観的思考、多方向の視点、それらが合わさり、

攻撃的だが様々な思考判断ができ、遠からずその考えは当たっていた。

 

(人類軍がここ(アルヴィス)を見つけられないはずはない、

それでもスパイを泳がせて何の意味がある?人類軍の情報に何の価値がある?

敵対をしない、隠れて逃げるだけなら元からL計画なんて時間稼ぎ、何の意味もないだろ!

人類軍が来たら偽装鏡面を解除させられる!そうじゃなくてもスパイがいつ偽装鏡面を解いて

人類軍に場所を教えて、それにフェストゥムがついて来たら本末転倒じゃないか!)

 

僚はスパイが島の存在を人類軍に教える様な事をすれば、必ずファフナーを接収に来るのと

それについて来ると思われるフェストゥムにまで島が見つかる。

 

 

人類軍に島が荒らされるかフェストゥムに島が荒らされるか。

 

自分達が今まで戦った意味はなんだったのか。

 

もしそうなったら、

命懸けで遂行した、思い出と決意と覚悟のL計画(家族と仲間の青春)を、汚される思いだった。

 

 

(許さない…!俺達の努力を、無駄になんかにさせる様な事は!絶対に!!)

 

(やっぱり変だよ、今日の僚…ううん、最近どうしちゃったんだろう…)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ねぇ?勝ち目があると思う?」『ムリダナ(・×・)』

 

 

場所は変わって、今は海中での動作確認をしている僚のヌルと祐未のエアスト。

動作確認が済み次第、待機している蔵前果林が駆るマークツヴァイと模擬戦を行う。

 

今回の模擬戦では僚達に総士のアドバイス無し、出力のリミッター、

ウェポンベイから新しく基本装備として腕に内蔵された魚雷と、

セミオートにしてあるレーザー銃のゲーグナーのみのハンデがある。

 

 

「だよねー…初めて使うファフナーであれだもの…」

『心配するな、照準レーザーかロックオンの撃墜判定だから怪我などは絶対にない』

「そういう意味じゃないんだけど…」

 

 

今二機のファフナーはリミッターが付いてるとはいえ、

全速で海嶺の峡谷を、スピードを一切落とさず岩や魚すら避けて周回している。

なお、現在は30ノットだがリミッターを外せば80ノットを超える計算である。

マークツヴァイも全速50ノットほど出せるが、今の果林には扱えるものではなかった。

 

この時点で果林は勝ち目がない事を悟り、せめて一矢報いる方法を模索していた。

 

 

(落ち着いて果林…今の私なら30ノットくらいなら動かせる、レージングカッターのワイヤーとかも使えるしスペックならこっちが上回ってる。先輩達は半年のブランクがあるし訓練をしていた私の方に軍配があるはず…うん!)

 

 

「無理ね」『そうだな』

 

 

半年のブランクがあるのに逸脱した動きをする時点でブランクなぞ無いも同然なのは明らか。

 

実戦で戦略眼を培った相手に今まで訓練しかしていない果林の幼稚なワイヤートラップなど、

すぐに見抜く事など造作もないだろう。武器が多くてもプロの相手に勝てる道理なんてない。

 

釣りの初心者が最新の道具を揃えてもベテラン漁師に勝てないのと同じである。

それほどまでに経験の差は大きなものなのだ、聡明な果林と総士だからわかりきった事だが、

普通の人間なら「貴様らには水底が似合いだ」「今日で後進に道を譲ってもらうぜ!」

「実戦経験者とかって話だが、現役が負けるわけねえだろ!行くぞぉぉ!!」

とか言いそうである。主に人類軍とか傭兵とかが。

 

『そろそろ始めるがそっちの準備はいいか?』

「問題ありません、結果は変わりませんので」(私がボコボコにされる結果だけど)

 

『いいじゃないか、やる気十分で』

『果林さん、お手柔らかにね?』

「恐縮ですがお二人の胸を借ります」

(終わったら本当に抱きつこうっと、真由くんも合わせて)

 

ビクゥッ!『!?そ、それじゃあいくぞっ!』

『(今果林さん何考えたんだろう…)次の模擬戦まで待機してるね』

 

ジークフリードシステムから果林の感情を直に受けた総士が一番の被害者、

感覚を共有した僚達は、溢れ出る果林の熱意に冷や汗を流すのであった…

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「罠を仕掛けておいてあっさり撃墜とはな…」

「…言わないで……シミュレーションしかしてなかったんだもん…」

 

模擬戦で果林は海底洞窟に逃げ込み、ワイヤーを仕掛けて有利にしようとしたが、

僚は別の入り口を開けて果林を見つけ、そのままレーザーポインターを当てて撃墜した。

 

祐未との模擬戦では正面から向かい、祐未の巧みな回避に後ろを取られ、

なすすべなく逃げ切れずロックオンの撃墜判定を受けた。

 

「まさか洞窟に別の穴を開けるだなんて…」

「実戦での賜物だな、お前も得るものは多かっただろう。さっきも含めて…」

 

シナジェティックスーツを着るために犬耳と尻尾のある僚のスーツは特注で、

当然帽子は被っておらず、犬耳尻尾の僚の身体を一時間堪能し(意味深)

祐未の胸と真由のタマゴ肌も存分に味わったところである。なんでお巡りさんこないの?

 

「最新のスーツで良かった…前のスーツじゃ祐未先輩のおっぱいが揉めないもの」

「お願いだ、身内に犯罪者を出さないでくれ…!」

 

「大丈夫、アルヴィスのデータは門外不出だし同性だもん。泣き寝入りしかできないわ」

「そういう、問題では、ない…!」

 

誰かこの性欲モンスターを止めてくれ…!総士は切に願った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「僚…そっちはどう…?」ハァハァ…

「…ヒュー…ヒュー…だ、ダメだ…こっ、腰が…」ガクガク

「う〜…ほっへはいひゃい…(ほっぺたいたい…)」ヒリヒリ

 

俺達は模擬戦に勝ち、勝負に負けた…

まさかドリフトしながら追いかけて来るだなんて…早苗以外にもできる人間がいたのか…

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーそのひ、わたしはおにいちゃんたちといっしょに

こわいおねえさんにたべられちゃうあくむをみました。ーー

 

 

ま、まゆはたべていいからおにいちゃんたちはたべないで…!

 

 




お巡りさん!お触りさん、こ↑こ↓です!

遅れてすいません、週一以内は投稿したいなぁ(願望)


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にじゅうはちにちめっ!

前回のあらすじ


ヌル・エアスト「「私達はあなた達の剣!」」
僚・祐未・真由「「「野獣には勝てなかったよ…」」」


 

──やっぱり僚先輩と祐未先輩鍛えてたんだなぁ…

 

 

蔵前果林は昨日の模擬戦データを取り入れたシミュレーションをしていた。

 

そしてシミュレーションをしながら昨日の1日を思い出していた。

昨日セクハラという名の身体検査を、バレない範囲で僚達にチェックをしたのだ。

そのセクハラの理由は確認の為、いや、果林が自身の敗北の納得の為だろう。

 

ファフナーの起動システムは接続機器と〈ニーベルングの指環〉でパイロットのファフナー起動イメージをファフナーに反映する事ができる。身体検査をしたところ、下心がない訳ではなかったが僚と祐未の身体は間違いなく鍛えられ、日常だけの日々を送らず、訓練してファフナーをより高度に、より精密なイメージ再現が可能な身体だ。

 

昨日の模擬戦のファフナーの動きは想定だが二人の鍛えられた身体なら早さはともかく動きは再現できるであろう、極めつけは最近新薬でこっそりドーピングして、身体の限界を引き出し追いかけっこをしたのに、僚達はアルヴィスの報告では同じ新薬を受動接種している。

しかし完全に取り入れた果林の方にアドバンテージがあるにも関わらず、二人はある程度逃げおおせたのだ。

流石に今まで何もしてないで逃げれたは通用しない、体だけでなく逃避の訓練、計算、予測、策定を勉強していたのは確定だ。それを走りながら綿密に逃走経路を模索、実行をして。

 

ファフナーの動きはより明確なイメージに反映される。

僚と祐未は島の子供達とリハビリを名目にスポーツに勤しんでいたのだ。

アルヴィスの訓練だけでなく、日々の日常の中でも鍛錬を。

今の二人なら自分が動ける事は全てファフナーでも動けるだろう。

つまり二人のファフナーのイメージは想像だけでなく想起でもある。

ただ考えただけの動きのイメージとと動いた事のあるイメージでは全く違う。

二人のファフナーは完全に二人自身の体の一部の延長線にしか過ぎなかった。

 

 

大概の事はそうだろう、料理でレシピを見て作るのとレシピを見て作った事がある。

その選択肢で言えばレシピを見て作った事がある方が料理の失敗はないはずだ。

 

その途轍もない鍛錬を想像して果林は思った。

 

(巫山戯すぎたけどこれではっきりした)

 

 

今の私じゃ足手まといにしかならない──…

 

 

(皆城くんは私の真意に気づいてたのに止めなかったのはわかってたからだよね…)

 

(私が、僚先輩達には、敵わない理由を再確認させるために)

 

(…自信なんて、微塵も残らないなぁ…)

 

 

二人がパイロットでなくても果林は勝てなかったと認識している。

果林は前のL計画パイロットと今のパイロットの身体つきが明らかに違う事、

全員が目立たないが高度な修学に励んでいる事、並ならぬ決意がある事を知った。

 

(まだ命をかけて島を守ってくれているんですね…先輩達は)

 

彼等の戦いは終わってはいなかったのだ。

世界が平和になる、その日まで。

 

(だからこそ遅れちゃいけない!先輩達に並ばなきゃ!)

 

(私だって、譲れないから命をかけるんだから!)

 

(この想いだけは譲りたくない!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

( ハ ー レ ムを作る!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

(その為なら命だって惜しくはない!!)

 

 

(フェストゥムから島を守り抜いてみせる!頼もしい先輩達と一緒に!一緒に!)

【大事な事なので二回言いました】

 

 

(絶対に作る!絶対によ!!)

 

 

これはだめかもわからんね。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『R区画・ブリーフィングルーム』ーー

 

 

 

「ありがとうございます早乙女さん、みんなを集めていただいて」

 

 

「我々L計画参加者と真由君に関する事だと聞いた。彼に関係するなら無下にはできんよ、君達全員にも返しきれない恩があるからね」

 

 

俺は早乙女さんに頼んでL計画に参加したメンバーを秘密裏に集めてもらった。

 

祭りのあの日、真由の兄からこの世界の真実(未来)異常(イレギュラー)の存在を知った。

この事をL計画参加者に知らせ、アルヴィス内の独立した、信頼できる仲間を集めるのが目的だ。

 

 

──…そう…()()じゃなきゃダメなんだ…

 

 

その為に俺は祐未と相談し、全てを打ち明けることにした。

俺の、絶対に信用できる、竜宮島(L区画)の仲間なのだから。

 

 

「皆聞いてくれ、俺達二人は先日、島に侵入したフェストゥムと接触した!」

 

 

「「「「「「!?」」」」」

 

「なんだと!!」

 

「そんなバカな!?」「ソロモンの予言は作動しなかったのか!?」

 

「どういう事なんだ!僚!祐未!!」

 

 

皆が愕然とし、早乙女さんの絶叫から伝播する不安の声が上がった。

幸弘の質問をおもむろに祐未が答えた。

 

 

「本当の事よ、私もその場に居合わせて、フェストゥムの姿を見たもの」

 

 

「本当なのか…」「それはいつの出来事なんだ?」

 

 

 

「U計画の終盤…花火が上がる前に、真由がフェストゥムにひとり山まで呼び出されて()()()に連れて行かれそうになった。」

 

 

 

話しを区切り、俺はもう一度全員に確認を取る。

 

 

 

「話しはここからだ。皆には知る権利があるが、同時に何よりも残酷な真実が待っている、それを踏まえて覚悟のある人だけ聴いて欲しい。今なら今日の事を忘れて普段の生活に戻れる。皆よく考えてくれ

 

 

 

──だが俺は誰にも残って欲しくはない…」

 

 

 

自分勝手が過ぎるだろう、それでも俺は仲間が絶望するのを見たくはなかった。

 

けれど誰かに残って欲しいと矛盾した願いもあった…

 

 

 

「何を言ってるんだ僚君」

 

 

 

「早乙女さん…」

「我々の覚悟はL計画当初に済ませている、恐れる事は何もない」

 

 

 

 

 

 

誰一人として…部屋を出る者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

(…っ!だからこそ…俺はあなた達だけは信用できるっ…!)

 

 

胸に嬉しさ、安心が、勇気が込み上がる。

共に闘ってくれる仲間がいる事に、不安なんてどこにもなかった。

 

 

 

俺は皆の覚悟を再確認し、一言入れた。

 

 

 

「これからクロッシングを行う。気分が悪くなるだろうが耐えてくれ」

 

 

「クロッシングだって?」「機材も無いのにどうやって…」

 

 

俺はクロッシングで皆に地獄の光景を見せた。

 

 

 

ヴォン…

「ウソ…なんで…」「あり得るのかこんな事が!?」

 

 

 

「嫌っ…!いやああああぁぁぁぁ!?」

 

 

「ヅゥアアアァァァ!?腕がぁっ!?俺の!俺の腕があああぁぁあ!?」

 

 

「暗いよ…怖いよ…お母さんっ…!」

 

 

 

──こうなるとわかっていた…

 

 

 

あの光景を見た俺だからわかる。

 

 

自分が経験した()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

無論、自分が死んだ光景を…()()()0()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

しばらくして、俺は本題を口にした。

 

 

 

「みんな……俺達は一度死んでいる…!!」

 

 

誰も口を挟まずに、静観して俺を見ている。

 

 

 

「俺が見たフェストゥムは別のアルヴィスの末路…グレゴリ型と未来で呼ばれるものだ」

 

 

アルヴィスの同型艦は三隻…竜宮島を除く2隻は、クロッシングでは壊滅していた。

 

 

一隻はフェストゥムに、もう一隻は、同じ人類であるはずの人類軍に…

 

生存者は誰一人としていなかった。

 

 

皆が体験した事を敢えて口で話し、再認識させる。

 

 

「だがイレギュラーが起こっている、オルフェノク型の存在、そして真由の事だ」

 

 

「何故真由の兄が未来を知っていたのか?何故真由は未来に存在しなかったのか?」

 

 

「未来に起こる、この悲劇を回避するには真由を守るしかない」

 

 

「人間と殺し合う…人類軍とも戦うだろう」

 

 

「みんな…!命を真由にやってくれ!竜宮島だけじゃない、世界の為に!!」

 

 

「例え、国が滅び、多くの人が死に、自分が化け物になっても…」

 

 

「希望の光を消さない為に………!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「キナ臭くなってきたじゃないの」

 

 

僚達とは離れて会談を聴いていた久保は独りごちた。

 

「まさか、お前さんの息子がこうも中心になるとはねぇ」

 

久保の手には学生服で久保と写っている4人の写真があった。

 

「ん〜、お前はいい男だったが、息子を一人きりなんてナンセンスだぜ?(さとる)…」

 

写真には真由の両親である父『鈴木 悟(すずき さとる)』と母『鈴木 幽香(すずき ゆうか)』がいた。

 

「少年とあったのは赤ん坊の頃だからなぁ、俺の事覚えてなくて久保さんショック」

 

やれやれ、と大げさに首を振りお手上げのジェスチャーをした。

 

「まっ、子供達とお前の尻拭いぐらいはしてやるよ。できればモノホンがいいんだけどね」

 

僚の演説に賛同する人数が増えていく中、久保はその場からCoolに去った。

 

「ファラオや神様達にも頼まれちまったからな、燃えるじゃないの」

 

久保の懐には、◯バQのような全身衣装が顔を覗かせていた…

 

「スクール時代のよしみだ、少年がいい男になるか、見守らせてもらうよ」

 

人類軍、アルヴィス、反乱軍に所属している久保、本名『阿部 高和(あべ たかかず)

 

トリプルクロスの彼は未来を知りながらも、自由に生きていく。

 

 

(結局は自分の思うとうりにするのが一番なんだぜ?将陵少年)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーそのひ、わたしはぬのをかぶった

こわいおじさんがみつめてくるあくむをみました。ーー

 

こわいけど、どこかであったのかな…?




良い男、参戦

僚君、独立派閥を創る、そしてグレゴリさん正体明かされる

果林ちゃんも頑張ってるんやで…


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裏の裏

原作知識を持ってるのは主人公(前)だけじゃない!


ーー『人類軍・ファフナーブルグ』ーー

 

 

技術士官達は新型ファフナーの調整とブラジルでの大戦

《カムランの再戦》のデータを収集していた。

 

その中には竜宮島を脱島した元アルヴィス所属、ファフナー開発担当者

現人類軍技術開発者『日野洋治』の姿があった。

 

 

「信じられません、現段階で最新型のメガセリオン・モデルとベイバロン・モデルを

遥かに上回る数値です。これまでのファフナーの平均値を段違いに超えています。

これなら騎士王を降せたのも納得ができます」

 

「そうか、データを収集後はミツヒロに伝えてくれ。私は開発に戻る」

 

興奮冷め切らぬ技術士に反して、洋治の反応は冷たかった。

 

「このファフナー、確かネクスト・モデルでしたよね?これが量産できればフェストゥムなど、

恐れるにたりません。流石、新国連上席技官、ミツヒロ・バートランド氏だ」

 

「本当にそう思うかね?」

 

技術士が褒める発言に反応した洋治は険しい顔でネクスト・モデルを見上げる。

 

「残念ながらこの機体は大量生産が出来ない。汎用性が低く、出来ても数機が限界だろう」

 

「何故です?今の状況なら人類救済を理由に資源は集められる筈です。

パイロットは耐えられない者が多いでしょうが、それは尊い犠牲です。

量産する価値は十分にあります」

 

「したくても出来ないのだよ、この機体は」

 

洋治は技術士に顔を向けた、その顔はとても辛そうで何かを抑えている表情だった。

 

「この機体は致命的な欠陥品だ。確かにフェストゥムは倒せるが、問題が多過ぎる」

 

「問題…でありますか?」

 

技術士の疑問の声を洋治は答えた。

 

「まずこの機体は、フェンリルの気化燃料では無く、核を搭載している」

 

 

「なっ……!?」

 

 

技術士は驚愕に目を見開いた、それが確かなら自分達は既に被曝しているからだ。

 

「そして次にこの機体の操作は従来実現出来なかった脳神経の接続を可能にしている。

何故だかわかるかね?」

 

「…バートランド氏の過去に開発したティターン・モデルのニーベルング・システムの応用では…?」

 

洋治は刹那げに笑いながらその返答を否定した。

 

「全く違う、Allegory Manipulate System(アレゴリーマニュピレイトシステム)、通称AMSと呼ばれる生体機体制御機構。

脳に直接プラグを接続し脳から脊椎、延髄にかけての電気信号をファフナーに送り、

実機挙動のタイムラグをほぼゼロにするシステムだ」

 

「そんな馬鹿な!?人間がそんなモノを扱える筈が無いッ!第1パイロットは新国連事務総長、

へスター・ギャロップの御息女、レティシア・ギャロップ嬢なんですよ!?」

 

「その御息女がシナジェティックコード形成率が高いのは、

実は遺伝子操作によって人工授精で産み出された子供だとしたら?

AMSの適合者強化手術を施された生体CPUの養子だったとすれば?」

 

技術士はその恐ろしい真実に息を呑んだ。

 

「その結果として人工授精によるテロメアの低下、強化手術による肉体改造、

AMSの脳細胞の酷使、脳へ直接の放射能汚染、この様な機体のパイロットを、

どう用意すると言うのだ。命を愚弄するにも程がある。私はこの機体の()()だけは決して認めん」

 

日野洋治はネクスト・モデルを睨みながら見上げた。

 

(そしてこのAMS…開発したのは()()()()()()()())

 

ネクスト・モデルは本来複座式で、同調率の高い血縁者を乗せて動かす、

アキレス・システムだけを投入する筈だった。

 

アキレス・システムは竜宮島製プロトタイプファフナー機体開発コード「AGX」

エーギル・モデル『ゼロファフナー』に近い存在だが、ゼロファフナーはその大き過ぎる体型とジークフリードシステム一体型の極めて同化進行率と暴走の危険を持つファフナーである。

 

それに対してアキレス・システムは移動拠点にジークフリードシステムを配置、

更に複座式にしてパイロットを同調率の高い血縁者を乗せる事でパイロットの負担を減らし、

ノートゥング・モデルより長時間戦えるシステムだった。

 

しかし騎士王(ギネヴィア)侵攻により急遽量産体勢から戦略型短期決戦兵器に変更され、

同化進行より先に、システムそのものに殺されかねないファフナーになってしまった。

 

ミツヒロの兵器技術、ヒトラーのアキレス・システム、へスターの生体CPU

 

そして()()()()A()M()S()()()()()()()()

 

(まさに悪魔そのものだ。人は悪魔と契約せねば生き残れないと言いたいのか、ミツヒロ)

 

パイロットのレティシアの寿命は長くはないだろう。

テロメア低下の短命に加え、放射能汚染、脳の酷使で脳細胞は焼き切り、

強化手術での身体の限界、クロッシングでの同化進行、細かい問題を含めたetc…

 

(これでは道連れの為の機体、ミツヒロのフェストゥム滅亡理念とも違う。

一体誰がこの悪魔を産み出した)

 

彼はこの人類軍の裏にフェストゥムとは異なる、新たな敵を見捉えた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーその日、彼は自身の開発中の機体が悪魔に破れる悪夢を見た。ーー

 

 

ーー…私一人では無理か…せめてミツヒロ、お前が力を貸してくれたら或いは…

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「これがケイトの言っていたイレギュラーの対策か…」

 

 

金髪の少年はモニターでネクスト・モデルと騎士王の戦闘を視聴していた。

 

ーーケイトの計画では既にヒトラーはLボートに到着、竜宮島「API-1」に接触する筈だった…

 

(しかしヒトラーは痕跡は見つけたがLボートを発見出来なかった)

 

当初の計画が狂い、金髪の少年は懸念していた。

 

ーー…このままでは死んで逝った人達の犠牲が無駄になる…!

 

 

少年は普通の人間ではなかった。

 

 

少年は人類軍が竜宮島以外のアルヴィス、

第三アルヴィスの海神島アトランティスの住民を皆殺しにし、

島のコアの少年「アトランティスミール」を偽の記憶で傀儡化する人造人間

「パペット」を製造する『プロメテウスの岩戸』から

ミツヒロ・バートランドの子という設定で製造される()()()()

 

まだ名称はされていないが、ケイトがとあるフェストゥムに

自身のコアの欠片を与えフェストゥムを成長させ、

本来完成していないプロメテウスの岩戸の完成を早めたのだ。

 

そして造られた少年をフェストゥムから独立させ、ケイトの知識を少年に与えた。

 

人類軍に駒として戦場に送られ、フェストゥムからはグレゴリ型に操られる体験を

 

少年はその知識に錯乱し、自分を見失った。

 

 

ーー俺は……俺は誰なんだあぁぁ!!?

 

 

 

ーーアハハ☆キミ、自分が誰なのか()()()の?

 

 

ーーならさー、名前をあげるから私とトモダチになってよ♪

 

 

ーーそうだねー…キミの名前は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイ・ザ・バレルなんてどうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョナサン・ミツヒロ・バートランドとして造られる予定だった少年は、

自分の名前と、自分自身を手に入れた。

 

 

 

世界の犠牲を減らす、トモダチのお願いを約束して。

 

 

 

(俺は憎しみに囚われたりなんかしない…!あれは唯の予測だ!)

 

 

レイは、自身が憎しみに囚われ、人類軍とフェストゥム両方の傀儡にされ、

罪の無い人々と戦って死んだ体験を、幻の予測であると否定した。

 

 

名前の元になった、『レイ・ザ・バレル』も人間のエゴによって産み出され、

傀儡としての生涯を送った事に気づかぬまま、ケイトに従うトモダチになった。

 

 

 

(俺はレイ・ザ・バレルだ…!ジョナサン・ミツヒロ・バートランドじゃない!

俺は…俺は人形でも、道具なんかでもない!!)

 

 

人々を救う、それが自分の意思だとすり替えて。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーその日、彼は死ぬ前に家族と共に過ごす、自分に似た少年の夢を見た。ーー

 

 

ーーそうさ、俺にだって家族が作れる…トモダチだっている

 

 

 

 

だからニセモノなんかじゃない

 

 

 

「虚飾」で塗り潰さなければ、自分が潰れてしまう…

 

 

 

レイは自分自身の心を騙し続けた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「気に入らないなぁ…抑止力の権化である私を出し抜くなんて」

 

 

 

「何処の誰かな?世界に刃向かうなんて莫迦な事をするのは」

 

 

 

「おかげでへスターちゃんにも出し抜かれちゃったじゃないか…」

 

 

 

「ムカツクなぁ…会ってみたいなぁ…どんな絶望顔を見せてくれるんだろ☆」

 

 

 

「この私をコケにしたオシオキ…たっっっぷりしてあげるカラネッ!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーその日、彼女はSMプレイに勤しむ淫夢を見た。ーーーーー

 

 

 

ーーーーーヒャッハー!でもリョナは勘弁ネッ!ーーーーー

 

 

 

 

 

 




世紀末世界の汚染(敵味方問わず)するやべーやつ

ジョナサン・ミツヒロ・バートランド?
そんな子…ウチには(もう)いないよ…
前は居たが、今はもういないっ!



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にじゅうくにちめっ!

前回のあらすじ


「ハーレム女王に!!!私はなるっ!!!」ドン!!
「(被害が)大きすぎる…修正が必要だ…」


『差が開き過ぎている!ペースを変えるな!』

 

「そんな事言ったって!」

 

 

私は今、僚先輩と模擬戦をしている。

 

 

前回のように奇をてらったり、勝ちに急ぐ戦い方じゃなくて姿を隠してワザと姿を現して攻撃し、また隠れて逃げるヒットアンドアウェイのゲリラ戦をしている。

 

皆城くんに先輩の居場所と現在位置のナビゲートをして貰いながら作戦を立て、

時折ワイヤーで足止めしたりマインブレードの機雷を仕掛けて後ろから攻撃したりするが、

うまくいく様子はない。

 

ワイヤーには絡まらないが動きを止めれたし、

機雷は放置すれば私が機雷までぶつけて使えるし壊したら目眩しになり隙ができる。

ここまでの作戦で僚先輩を倒す目論みだった。

 

けれどワイヤーで足を止めたら先に銃口を向けられ、隠れざるを得ず、

僚先輩は機雷を破壊して目眩しになったが周りの岩を削って砂嵐をおこし、逃げられてしまった。

(皆城くんは場所を特定できるから問題ないけど)

 

『今度は近すぎだ!作戦が悟られる前に堕とされるぞ!』

 

「僚先輩の動きが上手すぎるのよ!そっちじゃわからないと思うけど、

近ずいてるんじゃなくて追われてるの!今は罠を仕掛けてなんとか逃げれてる。

少し離れておかないと直ぐ追いつかれる!最悪誘導してるのはあっちかもしれないの!」

 

『…なるほど、参考になる』

 

「感心してないで座標を教えて!急いで死角に隠れないと!」

 

ゴポォ…

 

『見つけたぞ果林!』「やばっ!見つかっちゃった!」

 

岩陰から先を越された…!

回り道をしながら追いついたというの!?

 

「先輩、ノーカウントです!ノーカウント!!」

『ふふふ、そんなものはない。大人気ないが一昨日の憂さを晴らさせてもらう!』

 

やっぱり一昨日の事を怒ってらっしゃる!?

そんな事言われても…

「あんなモフモフで誘惑する先輩が悪いんですよ!」

 

『責任転嫁するな!あれから足腰が立たなくて大変だったんだぞ!』

 

「足腰が立たなくなった…?じゅるり」フンスッ!

ゾゾゾッ!『ひっ…!?と、とにかくこれで終わりだ!!』

 

!ロックオン中のアラートが鳴ってる!

このままじゃ完全に撃墜判定を受けちゃう!

 

『蔵前!予定位置に着いてる!』「!!」

 

これなら勝てるかも!勝利の美酒に先輩をモフり倒すんだ、私!!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

(果林…一昨日よりさらに強くなったな)

 

俺はマークツヴァイの位置を特定し、岩陰を回りこみ、先回りしていた。

 

一昨日の模擬戦では果林の作戦はそう悪いものではなかった。

 

一方通行の見通しの悪い洞窟で潜伏し、ワイヤーを仕掛けられれば、

初見で大抵の相手なら討ち取る事ができただろう、模擬戦とはいえ初戦にしては上出来だ。

 

あくまで()()()()()かつ()()にしては、が頭につくが。

 

実際の戦闘ではどこから敵が出てくるかわからない。

位置がわかるのなら場所が重複したら上からか下からか来るかわからない。

 

逆にナビの良さが命取りとなる。

果林は気付いてきてはいるが総士は気付いてないだろう。

 

前回と違って果林は予測した隠れ場ではなくランダムで隠れている。

 

でも俺は細かな所にも目をつけてワイヤーがある、岩場の小さな削れた跡すら見逃さない。

 

ゲリラの白兵戦では目のつけどころで勝敗が決まる。

 

動き自体も良い、武器の扱いも心得ている。

だが動きが綺麗過ぎて予測しやすい。

武器もマニュアル通りの角張った使い方をしている。

 

俺は後輩の成長に嬉しい反面、どうしてあの様な淫獣になったか、

残念でならなかった。

 

(マインブレードの機雷、悪くはないが熱源が大き過ぎて見え見えだ)

 

マインブレードは相手に突き刺して柄に折って起爆する炸薬式の短刀だ。

しかし急造の仕掛けで機雷として機能するが、熱源を放出してる残念仕様になっている。

 

(もう少し捻れば熱も放出しないだろう、ここまで成長するなんてな)

 

それでも一昨日のセクハラは別だ、絶対に許さん。

 

あの動きだとそろそろ次の角で果林と合流するだろう。

 

ゴポォ…!

 

「見つけたぞ果林!」『やばっ!見つかっちゃった!』

 

予想通りの動きで果林を先回りして銃口を向ける、

少し距離があるからレーザーサイトは役に立たない、ロックオンを使うべきだな。

 

『先輩、ノーカウントです!ノーカウント!!』

「ふふふ、そんなものはない。大人気ないが一昨日の憂さを晴らさせてもらう!」

 

これで少しは反省するんだな!

 

『あんなモフモフで誘惑する先輩が悪いんですよ!』

 

「責任転嫁するな!あれから足腰が立たなくて大変だったんだぞ!」

 

この後に及んでまだそんな事を…!

 

「足腰が立たなくなった…?じゅるり」フンスッ!

ゾゾゾッ!『ひっ…!?と、とにかくこれで終わりだ!!』

 

全身の毛が逆立って鳥肌と冷や汗が止まらない…!

やっぱり最近のこいつ怖い!一体全体どうしたというんだ!?

 

(すぐに終わらせて果林から離れよう…)

 

もう少しでロックオンの撃墜判定が出そうな時、それは起こった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「でりゃああぁぁーー!!」

 

『またレージングカッターか!?往生際が悪いぞ!』

 

 

私はまたワイヤーで先輩の機体を囲った、だけど目的はそれだけじゃない!

 

『なっ!?ワイヤーにマインブレードを!?熱源があったのはこの為か!』

 

「手抜き作業だと思いました?残念!罠でした!」

 

ロックオンは目先のワイヤーに絡めたマインブレードに集中している。

熱源が大きい方にロックオンが向かうからヌルの方に隙ができる!

 

『だが甘い!回りこんでレーザーサイトを当てれば!』

 

「なんで全方向からのワイヤーのオールレンジ攻撃を避けられるんですか!?

やだーー!!」

 

まるですり抜ける様にこっちに向かって来る!?ええい、まだまだぁ!

 

『蔵前!今だ!!』

 

「っ!了解!!」

 

(ここまで先輩を誘惑したのは機雷のブラフだけじゃない!)

 

皆城くんの合図を聞いて、私はワイヤーを思いっきり引っ張った。

 

 

『これくらい…っ!?ワイヤーに括り付いた岩が!?』

 

「まだ距離がありますよね!行っけぇぇ!!」

 

ワイヤーに岩を括り付け先輩にぶつける!

岩に当たったらよろめいて隙が出来る!避けたらワイヤーが絡まる!

これこそが前門の虎、後門の狼よ!

 

『甘いと言っている!』ガシィッ!

 

「ああーーっ!?掴まないで下さいよー!?」

 

ワイヤーを掴まれた!?まずっ…!!

 

『危ないだろ!少しは反省しろぉーー!!』

ドカァッ!「ふぎゃあぁぁぁぁああ!?」バババッッ!!

 

 

ワイヤーに引っ張られ、猛スピードで向かって来る岩の盾にされ、

それに連鎖して絡まったマインブレードが爆破、凄い衝撃を受けた。

 

色気のない悲鳴とともに、私の意識は沈んでいった……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス・水中展望室』ーー

 

「お疲れ様、僚」

 

「ほんとに疲れた…真由は眠ったのか?」

「さっきまで興奮してお魚見てたんだけどね、はしゃぎ疲れて眠っちゃったみたい」

 

 

展望室の長椅子に座っていた私は、真由の頭を膝に乗せて僚の帰りを待っていた。

 

 

「果林が気絶したから模擬戦は中止になった、起きたら総士も含めて説教だな」

「さっき私のところにも連絡があったわ、今日はもう帰っていいって」

 

僚が私の隣に座って真由の頭を撫でる、心なしか真由が嬉しそうに笑っている。

 

「あのやり方は度肝を抜いたよ、戦い方は徹にそっくりだ」

「うん、模擬戦なのにあれじゃあ怪我するよ、果林さんは大丈夫だったの?」

 

あの光景だと不安しかないんだけど…

 

「心配しなくていい、マインブレードの火薬は少なめにしてあるし、

果林は目を回していただけだったよ。全く世話の焼ける…」

「ふふふ」

 

以前の僚とは思えない面倒見の良さに私は笑い(嬉しさ)を隠せなかった。

 

「わざわざ見に行ってあげたんだ?」

「ほっとけなかったし、半分俺のせいだからな」

 

「ねえ僚、気付いてる?今の顔、真由に勉強教えてた時と同じ顔してるんだよ?」

「?そうか?」

 

「それに私達、いつの間にか蔵前さんじゃなくて果林さんって呼んでるし」

「!?気づかなかった…いつの間に呼び方を変えたんだろう…」

 

本気で気づかなかった僚に、私はおかしくて笑いが止まらなかった。

 

「うふふふ…」

「笑わないでくれ、自分で言うのもなんだけど、これでいいと思ってる」

 

「それでいいんだよ、仲良くなるのに気づくのは、後でもいいんだもの」

「…本当だ、親しいみんなはいつの間にか仲良くなってたな」

 

そのいつの間にかの中に、真由がいたのを私達は知っている。

 

「果林は死なせない…絶対に俺達が守る」

「水陸両用で良かった…必ず果林さんを守ろう」

 

(あの光景の様に果林さんは殺させはしない…)

 

私達がそう決意していると、膝のくすぐったさから真由が起きたのに気が付いた。

 

「んむぅ…おにいちゃん…」

「起きたのか真由。さあ、うちに帰ろう真由、祐未」

「ほら抱っこするからこっちにおいで?真由」

「あい…」ギュゥ…

 

 

20kgもない真由が、今はとても重いと感じた。

 

 

この命の重さと温もりが、とても心地よく感じられた。

 

 

僚と手を繋ぎ、私達は帰路についた。

 

 

「うぅ〜まだ目がまわるよ…あっ!せんぱーい!」ブンブン!

 

 

「祐未!真由!逃げるぞ!相手は手負いだ!!」シッポピーンッ!

「真由!?しっかり掴まって!!」「あわわわ…」ガシィッ…!

 

私達はエレベーターに駆け込んだ。果林さん?見てないけど…

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーそのひ、わたしはでんしゃにのっていて、とちゅうでこわれちゃうあくむをみました。ーー

 

 

 

どこにもにげれなくて、とってもこわいの…




真由の体重
(前)40.1kg〜(現)18.6kg

久しぶりの戦闘描写、滅茶苦茶むずい…

総士もこの頃はまだ未熟です。


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さんじゅうにちめっ!

前回のあらすじ


野獣「狩りごっこだね!負けないんだから!」

「「「たべないでくださーい!?」」」

「たべるよ!!」


 

 

「いいか総士、出来ればでいいから無理はするな」

『探知機で探すのは先輩達です、僕は統計して予測位置を計測するだけなので問題ありません」

 

「そういう問題じゃない、少しは自分を労われ」

『……はぁ、支障の無い範囲でやっているつもりですが…』

 

(ダメだ、この天然鈍感ガンコモノめ…)

 

『みんなー、こっちには二つあったわ』

『こっちにも一つありました』

 

『よし、引き続き探索を行ってくれ』

 

『『「了解」』』

 

俺達は海上に流出してるであろう、人類軍スパイが流した情報入りのカプセルを回収していた。

 

 

本来なら工作員だけの作業なのだが、

漁船を模した探索船と空中に飛ばしてある偵察機と共同で効率よく探している。

 

地形から流れる海流を解析して、予測位置を総士が割り出して見つけたカプセルを

ファフナーが回収、探索船に渡し、工作班が中身を調べる段取りになっている。

 

 

かれこれ2時間ほど行って10個ほどカプセルを回収した。

 

回収は順調に進んでいるが、俺達の成果は著しいものではなかった…

 

『あー…こちら工作班!回収したカプセルの解析結果が出た』

 

「溝口さん、どうでしたか?」

 

工作班の溝口さんから通信が来た、通常回線だとフェストゥムを呼び込む危険があるから、

ジークフリードシステムを介しての連絡通信だが。

 

溝口さんは歯切れの悪そうに溜めてから連絡が来た、俺の予想だとおそらく…

 

『残念だがハズレ(ダミー)だ、休憩挟んだらもう少し頑張ってくれよ!』

 

ああ…やっぱり…

 

『えぇー?またハズレですかー…』

 

『もう13個も見つけたのに全部ハズレだなんて…』

 

『気を抜くな、カプセルが見つかるだけでも僥倖だ』

『そうそう、俺達じゃ2、3個見つけるのが限度だもんねー』

 

「それでも全部ハズレだなんて気分が萎えますよ…」

 

溝口さんの機嫌の良さそうな声とは裏腹に俺達の気分はだだ下がりだった…

 

『しょうがねぇだろ、まっ、こっちもたまにトラップがあったり、

そんなに気分はいいもんじゃないけどなっ』

『全然そうに聞こえませんよー…僚先輩?昨日首輪を渡しそびれたので後で着けてくれません?』

 

「断固として断るっ!」

 

昨日の帰りの際、説教してやろうとしたら首輪を振りながら来たので全力で逃げた。

総士に伝えるよう言っておいたから総士には貧乏クジを引かせちまったな…

 

『えー、せっかく持ってきたのに…あっ!じゃあ祐未先輩が着けて下さい!』

『自分で着ければいいんじゃない?』

 

祐未は冷たく返し、果林の対応に慣れてきている。

 

『 いいですねそれ!ご主人様としてリードを持って下さい!将陵家のペットとして!』

『もういやぁっ!?』

 

『俺は何も聞いちゃいない…俺は何も聞いちゃいない…』

「溝口さん、後で調査データとして動画送りますね」

『ああ無情…、お前さん逞しくなったなぁ…』

 

『不甲斐ない姉ですがどうかよろしくお願いします』

『総士くん!?気持ちはわかるけどお義姉さんを押し付けないで!』

『祐未センパーイ♪私お利口ですよー?頭撫でてくださーい!』

 

「総士、後で胃薬を選ぶのを手伝ってくれ…」

『愛用しているおすすめがあります、父も使っているので効能は保証しますよ』

 

親子で胃薬を愛用してるだなんて…もう少しこいつに優しくしてやろう。

 

『あれ?祐未先輩、合流付近に大きなカプセルがありました』

『えっ?あっ!ほんとだ!スゴイよ果林さん!』

『えへへ…!』

 

果林と祐未の方に大きなカプセルが見つかった、それにしても大きいな…

 

「総士、そちらからでも見えるな?」

『はい、ですがあの大きさは怪しすぎます』

『おい、こっちにも映像を移してくれねぇか?嫌な予感がする…』

 

『きっと本命のデータですよー!さっそく回収しますね!』

『手伝うよ、ちょっと大きいもん』

 

マークツヴァイとマークエアストが近づこうとして、

溝口さんから焦りを含んだ悲鳴のような叫びが響いた。

 

 

『二人とも離れろ!!そいつはデータカプセルじゃない!!』

「溝口さん!?っ!?離れろ祐未!果林!!」

『二人とも急げ!!すぐにその場を離れるんだ!!』

 

 

溝口さんの大声で俺達は罠だと察した、ひょっとしてあの大きさはもしかして…!

 

 

『ほえっ?みんなどうしたの…?』

『はっ…!?蔵前さん逃げて!!』

 

『そいつは多分フェンリルだ!!早く離れろ!!』

 

 

溝口さんがカプセルから離れるように言ったそばからカプセルが発光し始めた!

エアストは逃げられるがこのままじゃ果林が…っ!!

 

『マークエアストのリミッターを解除!祐未先輩!』

『間に合って!?』ヒュンッ!!

 

祐未がレージングカッターのワイヤーをマークツヴァイに巻きつけ急速離脱する。

頼む…!間に合ってくれ!!

 

『そっ!?そんなっ!?』キイイイィィィン!!

 

 

 

 

『きゃああああああああアァァァァァッッッ!!』

 

 

 

 

 

ドッ──オオオオオオォォォォォォォォ!!

 

 

 

 

 

果林が爆発に巻き込まれ、爆音が遅れて海中に響いた。

 

 

『果林さん!?果林さん!!ねぇ果林!!応答して!!返事してよ!!ねえ果林!!』

「総士!!マークツヴァイの状況を確認しろっ!!」

『3秒待って下さい!!………無事です!!ですがマークツヴァイは大破!!

聞こえるか蔵前!!』

『救護班を用意する!!持ち堪えてくれ!!』

 

『ダメです!!意識不明の重体!!浸水も始まっています!急いで!!』

「祐未!余波を受けたその機体じゃ間に合わない!!俺と変われ!!」

『お願い僚!果林を助けて……!!』

 

 

エアストからワイヤーを手繰り寄せ、マークツヴァイを抱き上げる。

 

俺は推進部を同化させ、ヌルの最高速度を上昇させて果林を運んだ。

 

 

(ここまでするのか人類軍!!貴様らだけは絶対に赦さん!!)

 

 

人類軍に対し憤り、

犯人の予想を立てていたがふと俺は違和感を感じた。

 

 

…合流位置…フェンリル…ッ!まさか…!?

 

 

 

「総士!!聞こえるか!!不味い事になった!!」

『僚先輩!どうしたんですか!?』

 

ここまで狡猾な相手だったなんて…!?

 

「これはファフナーとパイロットだけの罠じゃない!事故としてアルヴィスを陥れるつもりだ!!」

『…!?だからフェンリルか!!』

「それだけじゃない!偽装鏡面も剥がれてる!数日もしないうちにフェストゥムが来る!人類軍もだ!!」

『なんだと!?』

 

ファフナーの燃料は液体燃料、フェンリルが爆破すれば事故に見られる筈だ!

更にフェンリルの衝撃波で偽装鏡面が剥がれた…!あの爆発でフェストゥムが気づかないはずがない!

それにもしデータカプセルが流出しているのなら人類軍までやって来る!!

ここまでしてやられるなんて…!!

 

「急いで幹部を集会させろ!!アルヴィスが内部から崩されるぞ!クロッシングを解け!!」

『わかりました!先輩もお早く!!』

 

くっ…!クロッシングを解いたから同化が…!…それでも!!

 

「死ぬな果林!一度ぐらいなら首輪ぐらい着けてやる!!だから死ぬな!!」

『…うっ…(─ザッ ザ)りょー…(ザッ )せん、ぱい…(ジジッ)…』

 

死なせない…!!必ず助ける!!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『竜宮島・海岸某所』ーー

 

 

「あーはっははは!あーはっはっはっ!!ザマァないわねー!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス・第1CDC.パーシバルルーム』ーー

 

 

 

「ハーブローク電子偵察機を出せ!偽装鏡面の修復はまだか!!」

「ですが司令!偵察機は発見される恐れが…」

 

「あの爆発で既に気づかれている!急ぎこの海域を離れる!アルヴィス航行準備急げ!」

「了解!全スタッフに通達、アルヴィス航行準備!」

「航行警報発令!市民への通達を開始!」

 

「父さん!」「総士!?なぜここにいる!」

 

「人類軍の罠だ!恐らくデータカプセルは流出された、もう一つの狙いはアルヴィスの内部崩壊だ!」

「…!?クソっ、ファフナー回収急げ!幹部を収集させろ!緊急事態だ!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『竜宮島・海域付近』ーー

 

 

 

「閣下!レーダーに反応!目視可能範囲にアンノウン発見!」

「モニターに回せ!我等の希望の光かも知れん!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『日本海域上空』ーー

 

 

『おい…あの爆発は…』

『API-1…!実在したのか…!』

 

 

『17区域探索機、ヤングスター2より新国連本部!

ヤングスター2はAPI-1のものと思われる爆発を確認!

ヤングスター2はAPI-1のものと思われる爆発を確認!』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

僕たちは気づかなかった…

 

 

 

この平穏はいつまで続くだろうと…

 

 

 

人の悪意は、この美しいものを壊すはずがないと

 

 

 

人の心の脆さに、僕たちは気づくことなど、できなかった。

 

 

 

知りたくない事を、僕たちは知った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

巡る運命、逃げられない運命。

俺たちは運命を変える事ができないのか?

 

迫りくる者たち、誰が敵で、誰が味方なのか。

 

 

ただ俺たちは今を抗うしかない。

 

 

あなたはそこにいますか?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「真由は、もう平和の中ですごせないな」

((あなたはどうしたいの?))

 

「守るよ、ボクの全てで真由を、真由の叔父さんを奪った罪滅ぼしに」

((それは本当に真由のため?それとも自分のため?))

 

「キミは本当に癪に触るね…どっちもだよ、ボクは真由が欲しい」

((素直になればいいのに))

 

 

「ボクみたいなバケモノが、真由を好きになっちゃいけないんだよ」

((…ううん、そんな事言わないで))

 

 

 

──そんな、悲しい顔をしているのに、好きになっちゃいけないなんて──

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーそのひ、わたしはだれかがてまねきしているゆめをみました。ーー

 

 

 

だれかが…わたしをよんでる…

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたはそこにいますか?」

 

 

 

 

 

 






次回、原作開始




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Q.俺たちは… どこへ行くんだ? A.全然わからん。
さんじゅういちにちめっ!まえっ!


前回のあらすじ


悪女「かかったなアホォッが!」
やべー奴ら「「「ミツケタ…」」」


今回も短めです


 

 

 

ーー『竜宮島中学校・校長室』ーー

 

 

 

校長室には皆城総士と第二種任務:中学校長兼任,町長

第一種任務:アルヴィス司令、皆城公蔵が向かい合っていた。

 

「今朝の便で戻れたか、総士」

 

「はい、ジークフリードシステムの映像データを、

CDCで報告書に同封して入力していて遅れました」

 

昨日公蔵は、幹部集会と住民への緊急記者会見で先に本島に戻っていた。

 

「総士、私は此度の不祥事、責任としてアルヴィス司令を辞任、

後任として真壁史彦を司令、早乙女柄鎖を副司令として配属する」

 

「妥当な判断だと思いますが早すぎるのでは?

それでは今回の事件はアルヴィスの事故と断定される恐れがあります」

 

あの爆発事件の後、市民から大勢の非難がアルヴィスに殺到、

責任の所在に皆城公蔵のアルヴィス司令の辞任が多く要求された。

 

「おかしいとは思わないか?いくらフェンリルを所有しているとはいえ、

爆発事件を住民はフェンリルと決めつけた。間違いなく既にスパイに情報操作されている」

 

「早期に後任を公表、責任を取るとして新国連には属さないとアルヴィス反対派と、

新国連の傘下に入れようとするスパイへの牽制、アルヴィスは新国連に屈しないという、

住民だけではなく人類軍工作員に対するアルヴィスの意思表明ですか」

 

総士は辞任する理由が責任を享受するだけでなく、即座に後釜を用意する事で、

アルヴィスの意思は確固であると新国連に知らしめる目論見だと理解した。

 

「私の処遇については緊急時の為まだ決まっていない、今夜中に決まり、

恐らく期限付きの島追放、最悪永久追放だろう。アルヴィスは任せたぞ、総士」

 

 

「…この様な結果になり、とても残念に思っています…父さん」

 

 

公蔵は窓から偽装鏡面の空を見上げ、決意の眼で呟いた。

 

 

 

「今日の夕陽は…()()()()であることを祈ろう」

 

 

 

竜宮島を見つけた新国連とフェストゥムの攻撃で、空が汚されない事を公蔵は祈った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

朝の通学路、俺は父さんと歩いていた。

 

「じゃあ俺はここで別れる」

 

「ああ、行ってくる、父さん」

 

昨日の昼、戦争時の不発弾が見つかって大事故が起こった。

 

怪我人は居なかったけど島の海底探索機が故障したそうだ。

それで新学期が始まる前に学校集会が行われ、父さんは町の集会に向かった。

 

(それにしても今年の気温は変だな、夏なのに一度もセミが鳴かなかった)

 

 

それなのにもう直ぐ秋にセミが鳴き始めた。

 

(異常気象らしいけど異常過ぎる、まるで夏だ)

 

「タイミングばっちりぃ」

「!」

 

声がする方を見たら真矢と翔子、甲洋が待っていた。

 

「一騎くんおはよう!」

「おはよう、一騎」

「おはよ、一騎くん」

 

「えっ…えと、なんで…」

 

真矢と甲洋と一緒に登校する事は合ったけど、

今日は翔子の姿があったから、俺は戸惑って挨拶もロクに返すことさえできなかった。

 

 

「ごめん 驚かせちゃって」

「今日から羽佐間も登校するから、一騎を待ってたんだ」

 

「よろしくね?一騎くん」

「そ、そうなのか…」

 

そのまま4人で学校に話しながら登校した。

 

「聞いた?昨日の爆発は不発弾じゃなくて探索機の不調だったそうだよ」

「そうなのか?」

 

「それ デマらしいよ、爆発した不発弾の破片も残ってるらしいし」

「うん、お母さんも念のため現場に行ったけど誰も怪我人はいなくて良かったて」

 

「本当?家だと町長の責任だって…」

「甲洋の家が騙されてるんじゃないのか?」

 

俺たちは学校に着いて、昨日の事件について話し合った。

 

「そういえば蔵前さん、爆発事故のせいでしばらく島に帰れないって」

「旅行中だったのに、残念だね…羽佐間がやっと学校に来れるのに」

 

「船がでる目処がつかないから、何時に帰れるかわからないそうだ」

「そうなんだ…」キーン…コーン…カーン…コーン…

 

予鈴がなり、先生が教室に入って来て、俺たちは静かにした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『慶樹島・アルヴィスファフナーブルク』ーー

 

 

「祐未、準備はいいな?」

「うん、何時でもいいよ」

 

俺達はファフナーに何時でも出撃できるように待機していた。

 

「久しぶりだね2人とも、真由は元気かい?」

「おかげさまでな、お前が協力してくれてるおかげだ」

「ごめんね、ラハムに会いに行けなくて…」

 

竜宮島、本島に居るラハムだが、本日中に戦闘が行われる可能性がある為、

慶樹島の格納庫に配置される事になった。

 

本来なら真由も実験される所をラハムが念押しして自分だけ協力、

真由は俺達の家に置く事ができた。

 

「2人に言われると違うね…本当に感謝されてるってわかるよ」

「島のみんなは焦ってるからな、おざなりになるのも仕方ない」

「それでも私達は忘れてないよ。ラハムが私達に祝福してくれた事」

 

昔のラハムは明らかに俺達を利用するだけの存在と認識していた。

 

だが少しづつ感情が生まれ、俺達と心を通わせている。

 

「俺達が頑張れば何時かフェストゥムとも分かり合える」

「戦争をするから戦うんじゃない、対話をする為に…」

 

「ボクは援護と最後に同化するよ、真由を悲しませたくないからね」

 

真由を悲しませない為に、俺達はフェストゥムを倒さず、

ラハムと同化させる事で相手のミールに人類を伝えようとしていた。

 

ミールに情報を伝えるマスター型フェストゥム、『イドゥン』

 

彼にこれ以上、人間の負の感情を学習させてはならない。

 

(それがどれだけ確率が低くても、戦わない道があるならその方がいい)

 

 

フェストゥムと人類、同じ道を歩む為に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───♪──────♫───♫───…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(!?)

 

 

 

 

(来たかっ!?)

 

 

 

 

 

 

(─何…この感じ)

 

 

 

 

 

 

 

ブワッ

 

 

 

──何だ……今の感じ……

 

 

 

 

 

──バササッ

 

カァー…アー…カァー…アァー…

 

 

 

パリンッ!

「!?(バッ!)」「真壁さん!?」

 

 

 

「ーーッ やはり見つかったかっ…」

 

 

───♫────♩─────

 

 

 

ザッザザ ザー「何…?」

「歌…?」

 

 

 

 

竜宮島全体に歌が響き、全ての放送機器に一文が放送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Alvis

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ああ…そんなっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたは───…

 

 

 

 

 

 

 

ジィリリリリリリリ"リ"リ"リ"リ"リ"リ"リ"リ"ッッッ!!!

 

 

 

 

 

ウゥウウゥウウゥゥウウゥゥゥウウウウゥゥゥゥウゥゥゥゥ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ 何だよ…これ…!」

 

 

「サイレン…?」

「また不発弾でも見つかったのか…?」

 

 

 

 

 

十五歳 戦争の始まり

 

 

 

 

 

 

────僕達は ただ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((あなたは そこにいますか──?))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいた───…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いかなくちゃ…………!!……みんないなくなるまえに……………!!

 




内容は漫画版の方がわかりやすいよね


けれど漫画持ってないので殆どアニメ参考で続けます。
ドラマCDも半分覚えて無いから聴かなくちゃ…


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さんじゅういちにちめっ!なかっ!


BGM『艦隊戦』zガンダム,ver
からの『マークザイン』


 

『警報発令。島民、シェルターへ退避。全島に、警報発令。島民、シェルターへ退避』

 

 

『全島に、シグナルレッド』

 

 

(どうやら、避難してはいないようね)

 

 

アルヴィスの全島民避難施設、地下シェルター通路で女は思案していた。

 

 

(死ぬなら死ぬで都合がいいわ。島の奴等に幸福など無用だもの)

 

 

女は避難誘導の担当であったが、外に出るのは自殺行為。

助けるつもりなど欠片も頭にはなかった。

 

 

(この未避難者のリストに私に有益な人物はいない。

いっそのこと、全部死んでしまいなさいな)

 

 

女はほくそ笑みながら、司令補佐に戻りにCDCに向かう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『第1CDC:パーシバル・ルーム 』ーー

 

 

 

「全システム接続確認、防衛機構連動、動作確認」

「南西海上より生体振動波確認。送ります」

「目標、質量増大中」

 

 

竜宮島では初となる戦闘ではあるが、日々の訓練の練度と、

過去、L計画のテンプレートを元に、職員は迅速に対処できた。

 

 

「スフィンクス型か……」

「ソロモンは!?」

 

 

「システムは起動しています。ですがソロモンの予言、依然としてありません」

「実体がなければやはり反応しないか…」

 

 

ソロモンにはフェストゥム感知機能『ソロモンの予言』があるが、

実体がない今の状態のフェストゥムに、ソロモンは反応しなかった。

 

 

「質量を測定により索敵。レッドアラート発令。第3種戦闘配置!」

「総員、第3種戦闘配置!」

「ヴェルシールド展開準備。擬装鏡面、解除します!」

 

 

島の防衛に、偽装鏡面は見つかった今では、もはやフェストゥムには通用しない。

偽装鏡面を解き、物理防御に適したヴェルシールドを展開させて、襲撃に備え始める。

 

 

『司令!ファフナーの発進準備出来ています。

ブルギルム隊の先制からファフナーの波状攻撃を仕掛けます』

『起動力が高いエアストは待機、島の防衛につきます』

 

 

 

「了解した、ブルギルム隊、並びにファフナー発進!向島、自立迎撃システム用意!」

 

 

 

「擬装鏡面解除終了。第1ヴェルシールド展開!

第2ヴェルシールド展開まで170秒!」

「島民の避難は、完了したのか!?」

 

 

「現在、99.8%が所在確認済み…そんな!?」

「何があった!」

 

 

「避難者の中に、将陵 真由の所在が確認出来ません!」

「なんだとっ!?」

 

 

避難者リストには避難できていない人間が表示され、

殆どの住民は各集会で付近のアルヴィス出入り口から避難しており、

避難者リストに表示されている人物はごく少数に留められていた。

 

その中で、避難に遅れた一人暮らしの老人や、怪我人や病人など、

まだ地下シェルターに避難しきれていない者もいるが、時間の問題だろう。

彼らの自宅に職員が向かい、遅れてすぐに保護され、避難できるだろう。

 

 

行方の予想ができない、非常時のため職員が誘導に向かえない(行かない)

 

()()()()()()()()()()()

 

 

この知らせに出撃待機していたラハムは怒りをあらわにし、

未だ辞任前であるアルヴィス司令、皆城公蔵に非難の怒号をあげた。

 

『話が違うじゃないかっ!?真由はっ、真由はどこっ!?

アルヴィスが、責任を持って保護すると言ったじゃないかっ!?』

 

 

ラハムがここまで狼狽えるのも当然だろう。

ラハムは今までの実験、アルヴィスのコアとの不本意ながらの対話、

竜宮島に多く貢献してきた仕打ちが、これなのだから(真由の行方不明)

 

 

「悪いが、今は問答している余裕はない。迎撃体勢に入れラハム」

 

 

『っ!!この役立たずの無能が!!

約束を反した今!ボクが貴様に従う、義理も道理もないんだぞっ!?」

 

 

「だがここで島がやられたら、どの道、将陵 真由に居場所はない」

『クソがぁっ!!貴様ッ!ただで済むと思うなよォッ!!塵芥風情がァァ!!!』

 

 

(アルヴィスの総司令が、なんというザマだ。やはり私ではこの程度か…)

 

公蔵は未然に対処できなかった事態の多さに、自身の能力の限界に悔恨の念を抱いた。

 

 

 

((ラハム!!聞こえるか!?))

((僚!?))

 

 

僚は読心できないラハムに外部通信ケーブルをつないで同化させ、

クロッシングでの会話を試みた。

 

 

((出撃と同時に真由を捜しに行け!!予知通りならフェストゥムは一体だ。

俺一人で十分対処が出来る!倒してしまうかも知れんが真由がいなくなるより断然マシだ!!))

((私も沿岸付近を捜すわ!警戒を理由にエアストに付いて来て!!))

((…ぅっ!!やっぱりキミたちはあんな奴らとは違うよぉ!!))

 

 

『司令、ラハムも出撃させてください。何が起こるかわかりません』

 

「……ラハムは島上空にて待機、警戒にあたらせろ」

『司令……!!』

 

(これで最後なら、これぐらいの戯れはいいだろう)

 

 

公蔵はラハムへの感謝をしていない訳ではなかった。

真由を捜し出せるように、ラハムに島上空から警戒させる事にしたのだ。

 

 

「目標、第1ヴェルシールドに接触!」

「出力低下!突破されます!」

「ヴァッフェ・ラーデン、起動!総士はジークフリード・システム搭乗に入れ!」

 

「わかりました!ジークフリード・システム、入ります!」

「ヴァッフェ・ラーデンに移行完了!」

「目標は依然進攻中」

「目標、視認可能領域に入りました。モニターに映します!」

 

 

モニターの映像には晴天にもかかわらず、雷雲を含んだ嵐が巻き起こっている。

 

 

「こっ…これがフェストゥム……?」

「ラハムとは全然違う…」

 

 

「いいやっ!!こんなモノではないっ!」

 

 

 

「単体密度 2.33、原子量 28.0855、陰性度 1.8質量……えぇっ!?

数値が大幅に上昇!質量、多数計測!フェストゥム、実体化します!!」

 

 

『バカな…!?』

『うそ…こんなに……!?』

『っ!?なんて数…!数えるのがバカバカしいくらいだ…!!』

 

 

 

 

嵐から次々と黄金の球体が発生、そこから小型のフェストゥムが現れ、

ワームスフィアが嵐の中心で全てを呑み込み

上半身が人型の光輪を背負い、二対四枚の翼と尾羽、

尻尾のような触手を持つフェストゥムが三体と、

L計画のデータにもあった翼が同じく二対四枚、しかし腕の指が三本で、

胴体がない触手を複数持つフェストゥムが一体がいた。

 

 

それらを合わせ嵐の中から小型を含む、1000以上のフェストゥムが姿を現した─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─その黄金の輝きが、空に広がる姿は、まるで世界の祝福するかの如く─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「いそがなきゃ…!!みんないなくなっちゃう……!!」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「群体だと!?」

 

 

「綺麗……」

「なんて美しさ…!まるで天使みたい……」

 

 

史彦が驚き、公蔵が冷や汗を流す中、

CDC職員全員が、その美しさに目を囚われていた。

 

それほどまでに彼等(フェストゥム)の姿は目が離せぬ程、美しかった。

 

 

「美しいものが、人類の味方とは限らないものだ。

…まるでこの世全ての悪を体現したかのような、醜いラハムが我々の味方のように……」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

(見誤っていた…!この世界に異常があるなら、こんな事は予想出来ただろうに!)

 

 

──いや…予想出来ても対処なんぞ仲間(L計画参加者)以外、聞いちゃくれないか…

 

 

ましてやこの数と最近の事件、俺が考えている方法は出来ないだろう。

くだらない、もしもの妄想(IF)を頭から振り払い、俺は作戦を提示した。

 

 

「総士!祐未!俺に考えがある」

『…っ何ですか』

『私も、少しだけど』

 

 

さすがの総士もこの数には呆然としていたが、すぐに切り替えて俺に返事を返した。

 

 

「最近の事件で思いついた。ブルギルム隊を撤退させフェンリルを搭載、

第1、第2ヴェルシールドの間にこれを投下、向島から制圧攻撃を仕掛ける。

第2ヴェルシールドにブルギルム隊が撤退したら俺達も撤退する。

ブルギルム隊がフェンリルを投下するまで、大型のフェストゥムは俺が足止めする。

あのタイプなら海中に引きずり込めば、ある程度弱体化する。問題ない。

牽制に祐未が上空にいる奴らに攻撃、ラハムはブルギルム隊の援護にあたってくれ』

『私からは海中に魚雷を爆破、フェストゥムに海水を浴びせて弱体化、

小型フェストゥムなら足止めは出来る筈、それに高速で動いてる相手ならダメージも狙える』

 

『(なっ!?これがL計画を生き残ったエース達…!)了解、すぐに伝えます!!』

「頼む!」

 

 

『僚!すぐにそっちに向かう!』

「俺でも4体を同時に相手をするのは無理だ、

祐未が来るまでゲーグナーで牽制しながら対処する。

なるべく早く来てくれないと全部倒しちまうぞ?祐未」

『そっちこそ、やられて情けないカッコ、見せないでよね?プク僚』

「プク僚って何だ、別々で呼べ、別々で」(ワンワンッ!)

 

俺の中のプクも別々にしろと抗議してるぞ。

 

 

軽口を交わして、俺はフェストゥムに攻撃を始めた。

 

 

 

『しかし僚先輩、いくら貴方といえど、

この数のフェストゥムを相手出来るのですか?』

 

 

「なぁに、俺にはこいつらを引きつける策がある」

『引きつける…?それって!?』

 

 

総士は気付いて青ざめたが、死ぬつもりは毛頭ない。

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは、そこにいますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺ならここにいるぞ!!来いっ!!」

 

 

 

 

 

『なんてことを…!?』

 

 

「心配するな、機動力ならこっちが上だ」

『誰か、この規格外に常識を教えてやってくれ…!?』

 

 

 

 

──…流石に今のは言い過ぎだぞ、総士…

 

 

 

俺は無性に泣きたくなった…キュゥーン…

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「閣下!アルヴィスを補足!形状から日本第1アルヴィス、『竜宮島』と思われます!

現在多数のフェストゥムと交戦中!至急、援護に向かうべきと進言します!」

 

 

「やむを得ん!搭載してある貨物コンテナを降ろせ!!少しでも軽くするのだ!

機関全速!目標、日本第1アルヴィス『竜宮島』!!これ以上、人類軍に遅れをとるな!」

 

 

「コンテナ射出!機関全速!目標、日本第1アルヴィス『竜宮島』!!」

「全エンジン出力最大!全ブースター、開放!!セーフティ解除!!」

「乗組員は対ショック姿勢を取れ!各員、衝撃に備えよ!!」

 

 

(頼む…!間に合ってくれ!!)

 

 

他のアルヴィスは殆どが人類軍、フェストゥムに壊滅されていた…

だが、あれは間違いなく日本製のノートゥング・モデルのファフナー…!!

 

 

「ホーク・トルーペン、発進準備!隊長機はVOBを換装させろ!先に救援に向かえ!

絶対にアルヴィスを守りきれ!自分の命も落とすな!落とすのは(フェストゥム)だけだ!!」

 

 

「「「Jawohl Herr Führer!!(了解、我等の指導者よ)!!」」」

 

 

私は諦めんぞ、人類の栄華を、ユートピア(楽園)をこの手で実現させるまで…!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「あぁぁっ!?もうキリが無い!!フェンリルはもう載せたの!?」

『今ので最後だ、これより投下に移行する。援護してくれ!』

「最初からやってるでしょ!?」

 

 

ボクはスコーピオンとガルム44を使って戦闘機達を援護していた。

 

本音を言えばレールガンのような威力の高い武器が使いたかったが、

あれはファフナー専用でファフナーから電力を供給するそうで、

仕方なく連射性が高い牽制に適している、この武器を使わざるを得なかった。

 

 

「祐未がフェストゥムを倒して作った道があるけど、もう閉じかけてる!

帰り道が無くなる前にチャチャッと落として来てよ!」

『無茶を言うな!?下手に全速を出したらフェストゥムにぶつかる!!』

「出来なかったらどっち道死んじゃうでしょ!武装積んでるんだから君達も撃つ!!

泣き言を喚いてる暇があるなら、少しでも敵を落として道を作るんだ!!」

『わっ、わかった!!』

 

 

僚と祐未が半分以上引きつけて、ボク達の方には五分の一くらいだけど、

それでも200近くも来てる…!ボクは僚達のような化け物じゃないんだぞ!!

ああもう、僚達の才能と力が羨ましい…妬ましい…!!

 

 

ガシィッ!『ぐわぁ!?助けてくれ!取り付かれた!』

「ぬがぁっ!?世話の焼ける!!」

 

 

少しでも目を離したらこれだよ!!

 

 

 

ポイッ!「ふんっ!」『ありがとう!助かった!!』

 

 

こんな時じゃないと本音でお礼が言えないのかい!

 

 

『ラハム避けろ!!敵が掴んだミサイルがお前に投げてるぞ!!』

「畜生!撃っても撃たなくても面倒が増えるのか!!」

 

 

敵はまだ信管に火が着いたミサイルをこっちに投げてくる。

だからボクは自分より早いモノを簡単に避ける化け物じゃないと(略

 

 

『全部落として来たぞ!後はこの空域を離脱するだけだ!』

「待ってたよよよーー!!」

 

 

護衛している内にフェンリル投下の報せがきた。

多分ボクは何時間も戦闘した気分だけど、一時間も経っていないだろう。

 

 

一機の戦闘機(『ケストレル』だったっけ?)が合図の信号弾をあげて、

後はボク達は一瞬だけ穴を開けた、安全なヴェルシールド内に入って撤退するだけだ。

 

 

「これだけ離れてればフェストゥムも下手に寄って来ないね、

今のうちに入って入って!!」

『お前も早く来いよ!終わったら、食えるか知らんが晩飯食わせてやる!』

「そりゃどーも!ボクもモノが食べれるか試した事ないんだ!」

 

 

 

ん…?確か今の流れって………あ"っ"

 

 

 

「避けろよーーーー!!」ボグォォッ!!

『ラハム!?』

 

 

 

 

フラグを盛大におっ立てた戦闘機の後ろから、

敵が掴んで投げたミサイルを、ボクは庇った。

 

 

「(防壁が張れないから痛い…)だめっ…おちる………」

 

『ラハムーーーーーーーー!!』

 

 

 

戦闘機のパイロットの声も聞こえない……

 

 

 

 

 

ボクの意識が…だんだん遠のいていく…

 

ははは…眠いと自分の事が他人事みたいに思えるってほんとだったんだ…

 

 

 

 

 

ちょっと………だけ………………い…い…よ……ね………………

 

 

 

 

 

 

 

 




フェストゥム「ここにいるっていうから…」

1話終わってないのに凄いつらい…


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さんじゅういちにちめっ!あとっ!

前回のあらすじ


初戦、EXモード
フェストゥム×1000+a「来ちゃった//」





「ブルギルム隊、ラハム、撤退完了。ですが…ラハム撃墜!?」

「マークヌル、マークエアスト、フェンリル起動範囲から離脱!」

「向島、いつでも制圧砲撃可能です!」

 

 

「砲撃開始!」

 

 

向島からの砲撃を見たフェストゥムは、海上にあるフェンリルに群がり、

小型フェストゥムはフェンリルを遥か上空へと運んでいった。

 

 

「小型フェストゥム、急速にフェンリルに集束!」

 

「フェンリルを……!?投げました!!上空に!!」

 

「なにっ!?学習したとでもいうのか!?」

 

 

空中に放り投げられたフェンリルに砲撃が着弾したが、

群がった数百のフェストゥムが爆破を抑え、大きな打撃を与えるには至らなかった。

 

 

「目標、上空から第2ヴェルシールドに接近!」

「フェストゥム、予定の五分の二、撃墜を確認!半数以上残っています!!」

「残り約620!ブルギルム隊は補給が済み次第、直ちに再発進して下さい!」

 

 

「向島自立迎撃システム、全壊!壊滅状態です」

「目標、ファフナーブルクへと向かっています」

 

 

「残った巨人が出る前に潰す気だな……!」

「我々にはもう、最後の巨人を覚醒させるしか、生きる術は無いのか……!?

マークエルフ!起動フェイズ、スタンバイ!真壁、この状況だ。使わせてもらう…」

「……仕方あるまい、俺が呼びに行こう」

「頼む…」

 

 

史彦は、自分の息子を戦争に駆り立てる為にCDCを退出し、

高速移動用リニア『バーンツヴェック』へ向かった。

 

 

 

「剛瑠島のEPMを作動させろ!少しでも良い!奴らを足止めするんだ!」

「スタンバイ完了。EPM、発射!」

『ブルギルム隊、再発進よろし!』

 

「ブルギルム隊はパイロットを運ぶバーンツヴェック通路を確保しろ!

レートフェティも発進させろ、一分一秒でも時間を稼げればかまわん!

EPMが突破され次第、迎撃用の対戦車ミサイルを大至急上へ上げろ!」

 

 

「剛瑠島EPM、50秒で限界値に達します!」

「ワルキューレの岩戸は!?」

 

 

「反応はあります。ですが、動作できません!」

 

 

「やはりまだ無理か…!?いや、目覚めたのが早すぎたからか…!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「父さん……俺たちは…どこへ行くんだ?」

 

「さあな…父さんにも全然わからん」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「EPM、出力低下!突破されます!」

「レートフェティで防衛しろ!EPM解除!エネルギー装填後、再展開しろ!」

 

 

「駄目です!数が多すぎます!」

「目標、EPM突破!」

 

 

 

「くっ…!ここまでか…!?」

 

 

 

 

「高速で接近する機影を確認!モニターに回します」

 

 

「この状況で新手か!?」

 

 

──人類軍までやって来るのなら、竜宮島は終わりだ…

 

 

諦めが公蔵の心を占める中、逆十字と鷹のエンブレムをつけたファフナー、

グノーシス・モデルが背後に大型のブースターを外してフェストゥムに襲いかかった。

 

 

 

「ファフナーだと!?どこの機体だ!?」

 

 

「データ照合、大きさに誤差はありますが、グノーシス・モデルと一致!」

 

 

その戦闘は命知らずで、わざわざ遠距離兵器を急降下して近距離で撃ちまくり、

急速離脱をする第二次世界対戦の爆撃の如く、恐れ知らずの戦い方だった。

 

 

確かにこの戦い方なら読心能力は余り意味をなさないだろう。

上空から急速で近づき、近距離で撃つなど、わかっていても避けられないからだ。

 

 

 

本来グノーシスモデルに飛行能力は無く、飛ぶ事は出来ない。

 

 

だが、このパイロットは飛べない代わりに、()()ながら上空から急降下している。

 

 

 

群がるフェストゥムに、何の迷いもなく。

 

 

 

落下する際に、倒したフェストゥムのワームスフィアを、

ブースターでギリギリ落下位置をスレスレで変える。

一歩間違えれば死ぬ戦い方に、それを見ていたCDCにいる全員が戦慄した。

 

 

 

 

『あー…あー、聞こえるか?日本自衛軍研究機関諸君?

こちら新国連反乱ドイツ軍、ネオ・ナショナリズム派所属ホークトルーペン、隊長。

ターニャ・デグレチャフ少尉、これより我が隊は第1アルヴィス『竜宮島』を援護する』

 

 

 

広域スピーカーから聞こえた声は、まだ幼い少女の声で、ホークトルーペン、

鷹の部隊は、遠くではあるが飛行ユニットを装備した、後続部隊が目視できた。

 

 

「子供の声…?」

 

 

「ドイツ…ナショナリズム…ナチスか…」

 

 

 

『直ぐに後続の部隊が来る、それまで沈まんでくれよ?

私の首と、輝かしい安全な後方のエリートコースへの出世がかかっているのだからな!!』

 

 

 

「「「……………」」」

 

 

 

そんな一騎当千(ワンマン・アーミー)を見せられて、後方に配属する軍はいないだろう…

 

 

 

どうやらパイロットは、かなり残念な子であることはわかった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『慶樹島・ファフナーブルグ』ーー

 

 

 

「父さん…これは…?」

 

 

俺は父さんに連れられて、巨大ロボットの前にいる。

 

 

「人型決戦兵器、ファフナーだ。竜になった伝説の巨人の名を冠し、

遥か遠くから来たフェストゥムと戦う為開発された機体だ。

…フェストゥムは心を読む、ファフナーは心を守り、戦う事が出来る。

これで、フェストゥムと戦ってくれ…一騎」

 

 

俺はここまで来て今更だとも思った…

だけど、それでも動揺を抑える事は出来なかった。

 

 

「何を言ってるんだ父さん!?

初めて見たのに、そんな事出来るわけ無いだろ!?」

「いいやっ!出来る!!その記憶と知識が、お前の中にはある筈だ!一騎!!」

「っ!?」

 

 

確かに心当たりはある。

警報が出る前に俺は異変を感じ、警報が出てから頭痛をと共に、

覚えのない知識が、頭の中に流れ込んだ…いや、思い出したんだ。

 

 

 

「この島は、未曾有の危機に瀕している。

今でも、将陵君、生駒君、皆城総士君も戦っている…!」

「総士がっ!?」

 

 

これ以上、驚く事はないと思っていたけど、

まさか先輩達と総士が戦っていただなんて……!!

 

 

「心配するな、お前なら出来る…

側に、総士君がついていてくれる」

「ーーっ!ーー本当なのか…?本当に俺なら出来るのか?」

 

 

……俺は総士に償わなきゃいけない…

 

七年前のあの日、総士の左目を奪った。償いをーー…

 

 

 

 

「本当だ、お前にしかできん。私と、総士君を信じろ…!一騎…!」

 

 

 

 

不安はあった。それでも、総士が側にいるなら、どこへでも行けると思った。

 

 

 

 

「……父さん。俺、行くよ…ーーー!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…うっ………ううぅ……」

 

 

 

「はぁ、はぁ、ま、まにあった……」

 

 

 

そこは奇しくも僚達と真由が最初に竜宮島に訪れた場所だった。

 

 

そして僚がプクと同化し、真由が生まれ変わった場所でもある。

 

 

 

あの日の逆回りのように、真由は撃墜され、意識を失っているラハムに近づく。

 

 

 

「おくれてごめんなさい…あえなくてごめんなさい…

 

 

そして─いままでまもってくれてありがとう…ラハム」

 

 

 

 

真由はラハムに触れ、そこから全身に結晶が生えて、意識を落とした───

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

色の無い世界

 

 

体育館のような中で、顔は見えるのにモザイクがかかったように見えない大衆

 

 

その中心に真由は向かい合って自分(真由)をみていた。

 

 

 

「ヌッ、そこにいるのは私か」

「そうだよ、大きな真由()

 

 

「ここどうなってんの?

なんか学校の体育館みたい何だけど」

「んー?真由にも詳しい事はわからないの、けどみんないるでしょう?」

 

 

「うむ、体育館なハズなのに数えきれない大衆、観ろ!人に潰されて私がゴミのようだ!」

「ソレ大声で言うこと…?」

 

 

「これは何時も見る悪夢でFA?」

「違うよ、これは真由の中。真由が忘れている記憶」

「ここではリントの言葉で喋れ」

 

 

小さな真由は身体を透かして後ろを歩きだす。

 

 

「私はお父さんとお母さんと一緒にいるから、後は真由()が頑張らなきゃダメだよ?」

「マッテ!こんなところに一人にしないデ!」

 

 

振り向きざまに小さな真由は大きな真由を応援した。

 

 

「一人じゃない、目が覚めれば、みんないるから」

「そっちいくな、ほんと待って下さい。後ろの男女誰だ、何で透けてんの」

 

 

 

小さな真由の隣には、真由の両親ではない、

マユの両親が、小さな真由(マユ・アスカ)の手を握っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつか思い出せる日が来るから、それまで我慢してね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

(うぅん…ここは…)

 

 

 

 

 

 

──やっと父上、■■■■を倒したぞ!!──

 

 

 

 

 

ーーーかないでーーー

 

 

 

 

 

──我等、兄弟の時代が来たのだ!!──

 

 

 

 

 

ーーーいかないでーーー

 

 

 

 

 

 

(なに…これ…きもちわるい…)

 

 

 

 

 

 

 

──我等にはもう、母上はー■■■■■は要らぬ──

 

 

 

 

 

 

ーーーれないでーーー

 

 

 

 

 

 

──我等兄弟が世界を治めるのに、古い神々は不要だ──

 

 

 

 

 

 

 

ーーーはなれないでーーー

 

 

 

 

 

 

 

──流石、■■■■■だ。その斧で■■■■■を倒すとは──

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーわたしから、またーーー

 

 

 

 

 

 

 

──母上の骸を大地とする。これで生命が溢れる世界になるだろう──

 

 

 

 

 

 

 

ーーーまた、わたしをおいていかないでーーー

 

 

 

 

 

 

(やめろっ!?もう見たくないっ!!聞きたくないっ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

──神々と人の間には楔と鎖が必要だ──

 

 

 

 

 

 

 

かえってきて―――かえって―――

もういちど、わたしのもとに―――

 

 

 

 

 

 

 

──■■■■■よ、お前が王と天の鎖となるのだ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もういちど―――もういちど―――

 

 

 

 

 

 

 

──お父さまっ!私、あの男に侮辱されましたわ!!──

 

 

 

 

 

 

 

いえ―――いいえ―――

 

 

 

 

 

 

 

──神々に逆らうとは血迷ったか■■■■■■■!?──

 

 

 

 

 

 

 

 

もうにどと―――もうにどと―――

 

 

 

 

 

 

 

(そう………もうにどと…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──神々の時代は終わった。これからは人の時代よ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたし を あいさない で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「おはよう、ラハムさん」

 

 

「…おはよう、真由」

 

 

 

「実はさ、さっきまで悪夢を見てたんだ」

 

「奇遇だね、ボクもだよ」

 

 

 

「知らないみんなが回りにいてさ」

「知ってるみんながいなくなってね」

 

 

 

「待ってって、言っても私を置いてっちゃうんだ」

「待ってって、言ってもボクを置いてっちゃうの」

 

 

 

 

 

「…ただいま、ラハムさん」「おかえり、真由」

 

 

 

 

 

「行こう、終わらせに」「うん、みんな待ってる」

 

 

 

 

 

 

「「私(ボク)達は、まだ、()()に居たいから」」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ファフナー・マークエルフ!ローンドッグ(単機編成)で出撃準備!

出撃後はエアストを戻し、ツインドッグ(二機編成)で戦わせろ!」

 

 

「第11ナイトヘーレ、開門スタンバイ!」

 

 

「総士…頼んだぞ」

『!はいっ、父さん!』

 

 

総士はマークエルフに回線を繋ぎ、一騎にアドバイスを送る。

 

 

『一騎…聞こえるか?』

「総士!そこにいるのか?」

 

『スタンバイは出来たか?ニーベルングを作動してクロッシングをする』

「ニーベルング…?」カション

 

 

コックピットの手前にある肘掛けのような機械が開き、

そこから紅い粘状の何かの中に、十本の指全部を通す指輪。

神経密度が高い両手から、人間の神経をファフナーの起動システムを接続させる。

ニーベルング・システムが開口した。

 

 

(知っている、知っているぞ!)グニュゥ…

 

「うぐぅ…」ヴオォォン…

 

 

竜宮島の子供達の教育には睡眠学習が組み込まれており、

平時に平和が乱されぬよう、フェストゥムの読心で悟られないように、

一部を除く子供達全員にメモリージングの記憶処理が施されている。

 

 

ガチンッ!バシンッ!

「ずっ!?グッァァアアアッッ!?」

 

 

ニーベルングが起動し、ファフナーの神経を向上させる、

接続機器が一騎の身体の各所に突き刺さって装着した。

 

 

シナジェティックスーツを着れば痛みは軽減されるのだが、

緊急時のため、私服で乗り込んだ一騎は、想像を絶する痛みを受けた。

 

 

『対数スパイラル形成入力、シナジェティック・コード認証、ニーベルング動作確認、

ジークフリード・システム接続。ファフナー・マークエルフ、発進スタンバイ!』

 

 

公蔵と史彦は頷き合い、マークエルフ出撃を前に、CDCに通信が入った。

 

 

「っ、どうした?」

 

 

「此方、第3ブルクです。慶樹島ファフナーブルグまでの

輸送用の地下通路が破壊され、地上からでないと、武器が送れません!」

「それじゃあファフナーは丸腰じゃないか!?」

 

 

『私が行きます!!』

「要!?」「誠一郎さん!?」

 

 

CDCオペレーターを兼任している要咲良の母親、

要澄美の夫である、ブルギルム隊の隊長、要誠一郎が声をあげる。

 

 

『子供達に助けられ、フェストゥムに命をかけて守られたままでは、

私達ブルギルム隊の、ひいては大人の面目が立ちません!私が運びます!!』

 

 

『剛瑠島からなら送れます!』

「よしっ!要…頼んだぞ」

 

 

「あなた…」

『大丈夫さ、ラハムに助けてもらった命だ。必ず、生き残る』

 

 

 

 

 

大人は、大人の意地を魅せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一騎…、起きろ一騎』

「うあ…あ……っ?総士?何で此処に…?」

『脳の視聴覚野に、直接クロッシングした』

 

『ファフナーの中のお前とジークフリード内の俺は、

直接、脳の被膜神経細胞が繋がっている状態だ。』

 

『シナジェティックスーツが無い分、完全では無いが、仕方無い。』

 

『今からは、ファフナーと一体化する事を最優先に考えるんだ。まずは目を開けろ』

「目を?」

 

『そうだ。ファフナーの目は、お前の目だ』

 

 

一騎はファフナーを自分の目と認識して集中した。

 

 

その瞬間にモニターから外のブルグ、格納庫内の光景が広がる。

 

 

「んっ…!見えた!」

『行こう、奴が近づいている』

「うん!」

 

『第11ナイトヘーレ、開門!』

 

 

 

『ファフナー・マークエルフ、発進!』

 

 

 

 

 

 

──これが僕たちの旅の始まりだった…

 

 

 

 

もしも僕たちが生き残れるなら、今日までの今を、忘れないでいよう。

 

 

 

 

またいつか、この島が楽園に戻る、その日まで──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

『隊長!此方が到着するまで、後17分はかかります!』

「遅すぎる!さっさと援護に来い!!」

『無茶言わないでください!?』

 

「貴様の事など知るか!気合いで何とかしろ!!」

『そんな〜〜!?』

 

 

 

「ファフナー・マークエルフ、着地確認!」

 

 

『オートパイロット解除!

これよりマークエルフは、パイロットのニーベルングにより移行させる』

 

 

(一騎……!)

 

 

 

『あれを見て僚!』

 

「マークエルフ…やはり一騎が出てしまったか…!」

 

 

 

マークヌルはゲーグナーでフェストゥムの防壁を中和させつつ、

ゼロ距離射撃でフェストゥムのコアにウェポンベイ・改の魚雷を撃ち込む。

 

 

従来のウェポンベイでは水中では使用出来ない為、

ノートゥングモデルの小型化に伴い、ウェポンベイを改良。

機関砲は実弾が不要のレーザー銃に、ミサイルの他に魚雷が両腕に2基づつ搭載された。

 

 

 

「祐未!こっちはなんとか一体やった!」

 

 

『僚!後ろ!!』

「なっ…!しまった!!総士!スフィンクス型が一体そっちに行った!」

 

 

僚がスフィンクス型を一体倒した隙に、

別のスフィンクス型が僚の後ろを突破した。

 

 

「此処は?」

『慶樹島だ。実際はファフナー関連の格納庫になっている。来るぞ!気を付けろ!』

 

 

「スフィンクス型だと!?我が隊でも3機でないと倒せんぞ!!」

『隊長!何とか持ちこたえてください!!』

「無茶言うな!?」『!?気合いで何とかするって…』

「知らん!お前達だけ何とかしろ!!」

『えぇーー!?』

 

 

『一騎君!レールガンだ!!』

 

 

ケストレルはスフィンクス型にレールガン入りのロケットをぶつけた。

 

 

「えっ!要の親父さん!?」

 

『武器を届けに来た!今はレールガンだけだが、他のも持ってくる!』

 

 

誠一郎は去り間際にフェストゥムにミサイルを撃ち込んだ。

 

 

『今のうちだ、一騎!!』

「親父さん!危ない!!」

 

 

スフィンクス型は指を鞭のように伸ばし、誠一郎が乗るケストレルに巻き付いた。

 

 

ガシィッ!『うっ…うわぁぁぁ!?』

 

 

 

 

 

 

「あなたはそこにいますか?」

 

 

 

 

(くっ!ここまでか…すまない。澄美、咲良…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「いるさっ!!ここに2人なっ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

ラハムはスフィンクス型の指を掴んで同化させてスフィンクス型からケストレルを離し、

地面にケストレルを置いて腕を組み、

仁王立ちして中から同じく腕を組んで仁王立ちした真由が出て来た。

 

 

 

 

「ま、真由なのか!?」

 

『なぜ彼がここに!?』

 

 

 

「真由…!記憶が戻ったのか…?」

 

『よかった…!!無事だったのね!真由!!』

 

 

 

「ツッコミどころ多過ぎるだろ!?何してるんだアイツは!?」

 

『隊長?何をおっしゃっているのですか?』

 

 

 

 

「FF外から失礼します!スフィンクス型とかいうヤツ!

この私達がケッチョンケチョンのメメタァに…(ブスッ)あいたーー!?」

 

 

スフィンクス型は真由に同化せんと、指を尖らせて真由の脇腹に突き刺した。

 

 

「まったく、なにやってるの」スッ、ポイッ!

「いだだぁっ!?」

 

 

ラハムは指を引き抜き、真由の脇腹を泥で治した。

 

 

「やっぱり治りが私だけ遅いよね?」

「真由がボクを汚染したんだもの、責任とってよね?」

「おう、その言い方やめーや」

 

 

小型のフェストゥムも真由の存在に気づき一斉に遅いかかる。

 

 

 

「真由!!」『真由ぅ!!』

 

 

マークヌルとマークエアストは真由の上空にいるフェストゥムに、

全てのミサイルを撃ち尽くして真由の身を守る、がしかし!

ミサイルがフェストゥムに当たり、爆発した火の粉が真由の頭に降りかかる!!

 

 

「おわちゃーー!?アチチッ!あつっ!?とうっ!!」

 

 

真由はラハムに乗り込み、音量を拡大させてマークエルフに話しかける。

 

 

 

「えーと、そこの青くてカッコいいの!

そのレールガンを上空に撃って道を作って!」

 

 

 

「真由…ティターンモデル、カッコいいって言ってくれたのに…」

『だいじょうぶよりょう、こどもはろぼっとがすきだもの…』

 

 

 

何故か水陸コンビはダメージを受けて落ち込んでいた。

一人にいたっては精神崩壊ギリギリのレベルで。

 

 

「真由!俺だ!一騎だ!!」

 

「ぬわぁにぃ!?なんで一騎くんが!?」

 

「(一騎くん?)上に撃てばいいんだな!?」

『一騎!レールガンは1発しか撃てないぞ!?』

 

 

 

「俺はっ…信じたあああぁぁぁーーー!!!」

 

 

 

 

マークエルフが上空に撃ったレールガンは、一筋の道を作り、

ラハムは泥を生成しながら、そこにいる全てのフェストゥムより高く飛んだ。

 

 

「イヤッッホォォォオオォオウ!!」

「……!!」

「真由!スフィンクス型がしつこく追いかけてくる!」

 

 

「問題ナッシング!ラハムさん!!」

「うん!!」

 

 

ラハムは黒い太陽を生み出し、雲がある上空に投げ込んだ。

 

 

「いくぞ黒太陽!弾けて混ざれっ!!」

「変な名前つけないでよ!」

 

 

 

黒い太陽は雲と混ざり、そこから島全体に黒い雨が降った。

 

 

 

かつて日本に核が落ち、大気を汚したフォールアウト

 

 

 

それとは真逆の生命の恵みの雨を降らせた。

 

 

 

次第にフェストゥムは侵攻を止め、ほとんどが島から離れて行った。

 

 

 

 

 

ーーーこの善き人々に幸せをーーー

 

 

 

 

 

「今の声は…?」

『僚!倒した筈のフェストゥムが!?』

 

 

 

先程倒したフェストゥムが再生して起き上がり、

徐々に姿を変えてゆく──

 

 

 

「なんだ!?一体何が起こってるのだ!?」

『隊長!到着しました!』

「遅いわバカもの!!」

 

 

 

 

 

「ソロモンに反応あり!あれは…損失したティターンモデルです!!」

「なんだと!?」

「帰って来たというのか…この島に」

 

 

 

「…お前が、連れて来てくれたのか…?」

 

──オォォオゥゥ…

 

 

三本指の旧型スフィンクスは、応えるように鳴き声をあげ、島から去って行った。

 

 

もう一体のスフィンクス型も姿を変え、ティターンモデルの姿になった。

 

 

 

ラハムは真下にいたスフィンクス型と向き合い、

ラハムから真由が出て来た。

 

 

「ぬっふっふ、ブイッ!」ドヤァァァ!

 

「………。」イラッ

 

 

 

スフィンクス型は指の先を人間の拳ほどの大きさに変えた。

 

 

 

そしてっ!目の前の相手(真由)にっ!見事なまでのポンパンチ!!

 

 

捻りこむようにッ!真由の水月をッ!蝶のように舞いッ!蜂のように刺すッ!!

 

 

ボコォッ!「いったい!?なんで殴んの!?」パーフェクトノックアーウト!

 

 

(あっ、真由のドヤ顔もいいけど泣き顔もいいかも…)

 

 

 

真由はそのまま倒れて目を回しながら気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「全目標、沈静化しました…」

 

 

「我々は、夢でも見ているのか…」

「各施設の被害は?」

 

 

「慶樹島の上空施設は、73%が破損。剛瑠島は滑走路の一部を損傷」

「竜宮は?」

 

「ヴァッフェ・ラーデン含む防衛機器以外損傷、認められません

向島迎撃システムは、完全に消滅してしまいましたが…」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「おおぉおぉ…おおお…神よ、これがあなたの祝福なのですね…」

 

 

「総統閣下…?泣いておられるのですか?」

 

 

「見たまえ、あれが奇跡だ。私が起こそうとしても起こせなかった。

本物の、本当の、混じりっけのない。真実の奇跡だ。

これに感動せず、何に感動すればいい…私達はノートゥングモデルだけではない。

真の希望の光を見つけたのだ………!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーその日、私は自分そっくりの女の子になって爆発して吹っ飛んだ悪夢を見た。ーー

 

 

 

 

あっ、あの吹っ飛んだ腕。

初めてラハムさんと出会った時、ラハムさんが私に突き刺した場所と同じだ。

 

 

 

 




スフィンクスさん無言の腹パン


やっと一話終わった…


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さんじゅうににちめっ!

前回のあらすじ


ショタ「私、復活!!」
赤いの「「アルヴィスよ、私達は帰ってきたああぁぁ!!」」



ーー『将陵家』ーー

 

 

「先輩!これはどういう事ですか!?」

 

 

「落ち着け真由!!」

「そうよ、話すから先ずは落ち着いて」

 

 

少しずつ暑くなってくる朝の昼前。

私は朝起きてから、アルヴィスのメディカルルームに呼ばれ身体検査を受けて、

専門医の千鶴さんのある一言から、先輩達に問い質さなければならない事があった。

 

 

「なんでですか!?なんでこんな…」

 

 

 

私と先輩達は間にテーブルを挟み、テーブルの上には一枚の書類があった。

 

 

 

私は今朝の森田先生と千鶴先生の会話を思い出す。

 

 

 

ーー真由くん、身体のどこかに不調はないかい?

 

ーー大丈夫です森田さん、ご心配おかけしました。

 

 

 

ーーそうかい、それならいいんだが…

 

ーー森田先生、将陵真由くんの身体結果について…あっ!?

 

 

 

 

 

私はこの二人の会話から、ある重大な事に気がついてしまったのだ。

 

その事実に気がついた私は、

島中を走り回ったり、先輩達に内緒でこっそり家の中を探索した。

 

そして圧倒的な証拠を握り、私のただならぬ剣幕に気がついたのか。

それに気づいた僚先輩と祐未先輩は、明らかに動揺して慌てふためいていた。

 

誤魔化すように二人からは今の私を、

落ち着かせてからうやむやにしようという魂胆が見え見えだった。

 

 

先輩達、隠そうとしても無駄ですよ………!!

 

 

「コレですよ、コレ!!一体全体どういう事ですか!?」

 

 

「おっ、落ち着け!?これには深い訳がっ…て、えっ?」

「へっ?これって…」

 

 

 

その書類にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

住民票:氏名・将陵真由

 

 

 

 

 

将陵真由……………()()真由

 

 

 

 

 

()()()()』!!

 

 

 

 

「なにさらっと人の名字変えてるんですかあぁぁーー!?」

 

 

私は住民票の写しを先輩達に突きつけた!!

 

 

「なんだそのことか…」

「もうっ、驚かせないでよ」

 

 

「なんだってなんですか!?こんなの驚くに決まってるじゃないですか!!」

 

 

あれっ!?なんで二人とも落ち着いてるの!?

 

 

 

「真由、声のボリュームを落とせ、話してやるから」

「ご近所に迷惑でしょ?まったく、そそっかしいんだから」

「ご、ごめんなさい?」

「「よろしい」」

 

あれ?なんで私が悪いみたいになってるの?

 

 

「先ず第一にだ、竜宮島は外部から子供を引き取る里子システムがある」

「ミールからの受胎能力を奪われた私達は、

人工子宮で子供を産むしかなかったから、この制度ができたの」

 

「だけど里子システムというように一定期間なんだ。

非常時、この場合はアルヴィスの存在に気づくかフェストゥムの襲撃が起こった場合、

戦力を整えるためアルヴィスで赤紙、適正通知が来た子供はアルヴィスで働く義務がある」

 

「以前はメモリージングという記憶処理が島の子供達に施されていて、

アルヴィスの存在に気づいた一定以上の年齢を超えた子供達もアルヴィスで働いていたのよ」

 

 

「そ、そうなんだ…」

 

 

就職場所が決まってるってなんかいいかも…

でも、仕事が選べないっていうのもなんか嫌だなぁ…

 

 

「ん?ああ、別にアルヴィスだけで働く訳じゃない。

第二種任務といって、自分の好きな職業に就くこともできる。

こういっちゃなんだが今の司令の器屋とか、食っていけるとは思えないからな」

 

「言うなれば世間体への合わせね。アルヴィスを知らない子供から見れば、

その人は無職にしか見えないもの。工作員の溝口さんとかそう見えちゃうでしょ?」

 

 

「た、たしかに…そう言われてみると、

昼間から何もないのに町を練り歩いている人が結構いました…」

 

 

「ああ…そりゃ新国連のスパイと、

それを見張ってたアルヴィスの工作員だ…」

「子供達から見ればそうなのよね…

連鎖的にそうなっちゃうから、アルヴィスの工作員の人達は不憫ね」

「もう少し、溝口さんに優しくします…」

「そうだな…」「そうね…」

 

 

どこかの喫茶店で、溝口さんのくしゃみが聞こえた気がした。

 

 

「話しを戻すぞ、人工子宮を担っている、

アルベリヒド機関がその子供達を管理している訳だが、

そうじゃない自然受胎したミールに汚染されなかった人もいる」

「ほら、遺伝子操作は受けているけど一騎くんとか、

生徒会長をしている近藤剣司くんとか、彼らは自然受胎で産まれたの」

 

 

「へぇー…」

「例外として親を亡くした入院中の蔵前とか、

司令補佐の狩谷さんとかはアルヴィスやアルベリヒド機関で育ったらしいけどな」

 

 

「真由の場合は前代未聞だったし、幼い真由を預ける訳にもいかないし、

ちょうど真由の携帯から真由のお兄さんの写真があったから、

違和感のない私達の養子にしたの。本当は未成年の私達でも厳しかったけど、

婚約して受胎能力のある私達は、前の作戦の恩赦から真由を引き取る権利を得たの」

 

「色々とご迷惑をおかけしてすいません…」

「気にするな、家族なんだから」

「そうだよ、私達の弟なんだもん」

 

なんだこれ…すごい恥ずかしい…

あれ?ちょっと待って!!

 

 

「祐未先輩!今写真って言いませんでしたか!?」

「えっ?言ったけど…」

 

 

「いやぁぁーーっ!!?殺してぇーー!!

誰かっ!?誰か私を殺してええぇぇぇ!!?」

 

 

あの黒歴史の塊がががが!?

 

 

 

「ああ、写真なら既にバックアップ済みだ」

「真由はパンダが好きだったのね、知らなかったわ」

「いっそのこと一思いに殺してーー!?」

 

 

 

 

 

 

「ところで真由、その住民票の写し、どこから持ってきた?」

「ギクッ!!?」

 

 

「いけない子だなぁ…真由は…」ジリッ

「オシオキが必要みたいね…」ジリッ…ジリッ…

ドサッ!「ああああ…あわ…あわわわわわ…(ガクガクブルブル」

 

 

そ、そんな事だとは知らなかったんです…お願い許して…!!

 

 

「許してって顔をしてるな、じゃあオシオキだ」ヒョイ

「悪い事ってわかってるんだし、ちゃんとオシオキを受けて許してもらわないとね?」

 

 

椅子から転げ落ち、部屋の隅で怯えていた私を、

僚先輩は小脇に抱えて祐未先輩はどこかへ電話している。

 

 

「もしもし、立上さん?以前お願いしていた()()なんですけど…

えっ!?もうできてる?いえ、送っていただかなくても結構です。

ちょうど服を買いに行こうとしていたので、そちらに向かわせていただきますね」

 

「りょ、僚先輩…祐未先輩はなにを…」

「ふむ、パーカーでも買おうと思ったが…以前頼んでいた()()

もうできてるみたいだな。なに、写真と同じ服を買ってやろうってだけだ」

 

私は全身の血の気を引いたのを実感した…

 

 

あの写真の中にはパーカーを着ている他に、オムツ姿や、

妹に無理矢理女子のブレザーを着せられた女装写真もあったからだ…

 

 

「さすがにそこまではしないさ。だが、パーカーは受けてもらう」

「僚ー、半ズボンもあるって、早速行きましょう」

 

「誰かーー!?助けてーーーー!!?」

「抵抗するなら、お前の夕飯は全部肉になるぞ?」

「栄養が偏るけど…オシオキを受けないなら仕方ないね」

 

 

私は抵抗を止め、なされるがまま運ばれて行った……

ドーナー…ドーナー…

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あぶなかった…危うくボロを出すところだった」

 

 

今真由はオシオキとして、服屋で着せ替え人形になっている。

 

最初は俺も着せていたんだが、いかんせん女性の方がやはり上らしく、

俺のコーディネートはことごとく却下され、立上さんと祐未に追い出されてしまった。

 

 

(真由の行動には驚いたが、見られなくてよかった…)

 

 

 

それは昨日の夜、真由が本当に受けた身体検査の結果についてだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「真由くんの検査結果についてなんだけど…

二人とも落ち着いて聞いて欲しいの」

 

 

「真由、どこか悪いとこができたんですか…?」

「教えてください先生、真由はどうしたんですか?」

 

 

俺は遠見先生から落ち着くように言われたが、

内心は不安でどうしようもなく、真由の事が気掛かりだった。

 

 

「彼…記憶を失ってたって、言ってたわよね?

どうやら…そうじゃないみたいなの」

 

「どういう…ことですか…?」

 

 

「彼は記憶が戻ったのではなく、記憶を取り込んだみたいなの」

「ハッキリして下さい、どういう事なんですか?」

 

 

…俺は、手が震えて先生の言葉を待った。

 

 

「彼は幼くなったとも言ってたわね、そうじゃないの。

…本当に産まれ変わって、一度に14年分の情報を、脳に読み込ませたみたいなの」

 

 

「それって…」

「脳の神経細胞が一部焼かれていたわ。

今はわからないけど…いつ障害が出るか、わからない状態ね。

本来、脳は何百年、何千年の情報を取り込めるけど…

一度にたくさんの情報、未発達の脳に14年分の情報は多すぎるわ…」

 

 

「それだけではないんだ」

「森田先生!?」

 

 

「彼の細胞に異変が生じている。彼のテロメアは異常に残り、

細胞は細胞分裂が停止し、本来細胞が死滅して新しい細胞が生まれるはずが、

彼は細胞が死滅せず仮死状態で細胞が保存され、緩やかに身体の機能が停止、

異常な若返りの原因と、ラハムの泥を受けつけない理由がこれだろう…」

「そんな!?なんとかならないのですか!?」

「せっかく…!せっかく記憶が戻ったのに……!!」

 

 

「未知の同化現象には、まだどうしようもない…

同化現象の細胞異変で若返った彼は、Lボートの設備では細胞まで検査できず、

現在と比較できなかった。今までの彼を調べられなかった私のミスだ…」

「先生のせいじゃありません!設備が無かったのなら、仕方ありません…」

 

 

「細胞分裂できないなら、真由の寿命は……」

「…おそらく、長くはないでしょう。予測だけど、後40年ほどかしら…」

「なんで…?」

 

 

「彼の体は、少しずつ五感を失い、筋肉が動かせなくなり、死んでいくだろう…」

 

 

 

「「なんでっ!!!?」」

 

 

 

 

俺達は行き場のない、この感情を、どうすればいいのだろう?

 

 

 

 

俺と祐未は、その場を泣き崩れて、泣き続けて、

 

 

涙が止まるまで、そこで泣き続けた。

 

 

涙が、この感情が、止まるまで

 

 

こんなに悲しいのに、涙が止まってしまう…

 

 

その時まで

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

後で確認したが、住民票が入っていたすぐ側の検査結果が入った、

鍵付きの引き出しは触ってはいないようだった。

 

精巧なガンドレイクのレプリカを作る真由を警戒しての事だが、

新国連のスパイの警戒のためにも、引き出しには鍵の他に指紋認証、パスコード、

不正に入手されない為の消滅工作があり、正確な手順での開け方が必要だ。

 

指紋が俺か祐未でなかったらブザーがなり、無理に開けようとすると電流が流れる。

パスコードが間違っていた場合、5秒以内に訂正がなければ警察が来る。

ロックを解除しても、正確な手順で引き出しを開けなければ中の書類は発火し、

家の警報装置が鳴り響き、アルヴィス工作員が来るようになっている。

中には真由以外の重要書類もあるから当然だ。家中にも監視カメラと集音マイクがある。

非常自体でなければアルヴィスにしかデータ提出はしないが。

 

 

(もう真由にあの黒い太陽を出させちゃいけない、いや戦わせはしない)

 

 

「もう許してぇ…」

「真由、今度はこっちのTシャツを着てみよっか?」

「それが終わったらこっちのパジャマもね?きっと似合うわ」

「もうやらぁ…許してよぉ…」

 

 

やっぱり俺も参加しよう(無慈悲)。写真は撮るけど俺だけのけものなんて不公平だ。

 

 

三人に近づこうとした時、店に誰かが入ってきた。

 

 

「だからなんの相談も無く撃ったのは悪かったって、そう怒るなよ…」

「別にお前の無頓着かつ無謀な行動に怒っている訳じゃない、

ただ、もう少し冷静でまともな判断をしろと言っているだけだ」

「やっぱり怒ってるじゃないか…」

 

「なんだ…?」「なんだよ…?」

 

どうやら一騎と総士か。

 

二人は昨日の事で揉めていて、一騎は謝っていて、

総士は自分が怒っていないと思って、実は怒っていて、

不思議に感じて一騎に問い質して一騎はそれに困惑しているみたいだ。(名推理)

 

 

せっかくだから二人にも真由のコーディネートを手伝ってもらおう。(悪い顔)

 

「よう、二人とも買い物か?」

「あっ、こんにちは僚先輩」

「こんにちは。いえ、シナジェティックスーツの予備を依頼しに来ました」

 

「予備を依頼?二人はアルヴィスのテスト帰りか」

「ええ、マークエルフの戦闘システムテストを」

 

「昨日、一騎はスーツを着ずにマークエルフに乗ったんだったな」

「痛くないって言ってたのに、スーツ着てても痛かったです…」

「ははっ!俺もあれには騙されたよ。まあ、あった方がマシだけどな。

突然で悪いんだが二人とも、せっかくだし真由の服を選んでやってくれないか?

真由がちょっとやらかした、オシオキの一環でな」

 

「別にいいですけど…」

「後は帰るだけですので、構いません」

「よし、帰りに昼飯くらい奢らせてくれ、まだだろ?」

「ご馳走になります」

「どうも」

 

「あっ、二人ともこんにちは。

ねえ僚、このTシャツかわいいでしょ?」

「あら、こんにちは。今日はお客さんが多いわね」

 

「シナジェティックスーツの依頼に来ました。6着分お願いします」

「えっ?この前8着分作ったばかりなのに?」

「はい」「そう…納期までには間に合わせるわ」

「お願いします」

 

 

「なあ、祐未。この二人にも選んでもらおうぜ」

「良いわねそれ!でも、僚はダメだからね?」

「確かに真由にサスペンダーは似合わなかった、でも見るくらいならいいだろ?」

 

「一騎くん…たしゅけ…」

「えと…じゃあこれなんてどうですか」

 

そうして一騎が手に取ったのは予約していた()()だった。

 

「一騎くん…やるわね」

「まさかそれを手に取るとはな」

「一騎…それはないだろう」

「あらあら」

 

「えっ、えっ!?」

「一騎くん…私にとどめをさしに来たのか…」

 

 

選ばれたのは、予約していたパンダのキグルミパーカーだった。

 

 

昼飯に堂馬食堂へ行くまで、真由の目はずっと濁っていた。

 

 

 

 




細胞の後退現象、成長しないし、怪我や病気の治りも遅い
同化現象に代償無しで利益は無いってハッキリわかんだね

ネタバレ
「君は死ぬだろう」


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さんじゅうさんにちめっ!

前回のあらすじ


全てのものは生まれ、やがて死んでゆく。ただそれだけのことだ。


ーー『アルヴィス・ミーティングルーム』ーー

 

 

 

「やはり島を出るんですね…父さん」

 

「前から決まっていた事だ、自主的というものを除けばな」

 

 

ミーティングルームにはアルヴィス幹部、反乱軍幹部が揃い合同会議が開かれ、

公蔵は竜宮島を出る趣旨を述べていた。

 

 

「先の戦いの功績で、私は特例として罰則が軽減されて島追放はなくなった。

…だが研究職の私では指揮にやはり疑問が残る。そこで、専門である真壁に代理を任せ、

私は反乱軍とともに島を出てフェストゥム研究にあたる。帰還は2年後を予定としている。

なあに、心配するな。必ず島に帰ってくるとも」

「その点に関しては安心して頂きたい。我等が責任を持って彼の身柄を約束しよう。

…ついでに件の少年の身柄も預かりたいものだが…」

 

 

「それについては散々議論しただろう…諦め切れない気持ちは理解出来るが」

 

 

公蔵は先の戦闘で1000体以上のフェストゥムを相手取った功績から罰則が軽減されたが、

反乱軍と共同で状況を打破する条約と同盟を結んで使節団がアルヴィスで編成される事となった。

 

 

フェストゥムを研究するのなら島外の情報を入手出来る機会として、

公蔵は前のL計画参加者が多く参加する使節団に自らも志願して参加した。

 

 

「仕方ないだろう、何故かは判らぬが私自身があの少年を求めているのだ。

憶測だがオルフェノク型は真由少年に惹かれる性質だと、私は推測している」

 

「オルフェノク型…コア型とも、マスター型とも違う。

意思を持ったフェストゥムが存在しているとは思わなかったがな」

 

「仮定として彼が我等オルフェノク型のミールなのか?

それともただフェストゥムを惹きつける性質なのか?

彼ではなく、ラハムに何か関係があるのか?こう言ってはなんだが全部だと私は思う」

「元から選択肢が無いな…」

 

 

彼等は久方ぶりの友人のように会話しながら話を進める。

公蔵は規格外達(ラハムの泥とその影響)の心労から、ヒトラーは周りの環境(人類軍の問題)で心労が溜まっており、

話がまともかつ常識的な相手にシンパシーを感じとり、気が緩んでいるのだ。

 

「まさか島に何体かフェストゥムが駐留するとはな。我が軍も駐留させたいのだが、

これでは迷惑にしかならんだろう」

「そちらこそ、如何してファルケンではなく英名のホークなのかと思ったら、

まさかファフナーを人類軍から奪取したものと脱走兵のものだとは夢にも思わなかったよ」

「ははっ、そう言ってくれるな。我等の移動要塞『ファフニール』、これを完成させるのに、

ファフナーの工場まで建造すれば人類軍に露見されてしまう可能性があるからな」

 

 

2日経った今でもフェストゥムはスフィンクス型を筆頭に島に滞在している。

反乱軍は小型の島ほどの大きさの潜水艦で訪れ、潜水艦にはジークフリードシステムが搭載し、

中には陸海空と全ての地形に合わせたグノーシスモデルが各10機、合計30機配備されており、

ジークフリードシステムと連携させ、有効範囲内ならば擬似クロッシングが可能となり、

フェストゥムの読心能力を防ぐ事が出来るのである。無論、潜水艦自体にも有効である。

 

 

「竜に英雄を乗せ、英雄は竜の血肉を喰らい成長する。正に的を得ているな」

「そうだろう?互換性があり、汎用性が高いやり方だ。厳しい所はあるがね。

それに引き替え人類軍は経済的余裕がある筈なのに経済面と言い訳をし、

未だフェストゥムに有効な手立てを考えてなどいない。技術はある。資材もある。

しかし彼処にいる技術者は不遇極まりない。政治屋気取り共の為に折角の技術を、

金で助けられる人々を見殺しにしているようなものだからね。心を痛める者が多いだろう」

「ふむ、違いないな。今回の使節団は渡りに船だった。本当に感謝している」

 

 

人類軍は実は既に、フェストゥムに有効な手立ては用意出来るのだ。

 

竜宮島から出た日野洋治とミツヒロ・バートランド。

彼等ならティターンモデルなら生産出来るであろうし、

人類軍は別のアルヴィスの住民を皆殺しにし、コア型のフェストゥムも入手している。

交戦規定a(アルファ)などなり振り構わず味方殺しや統一の為戦争をする人類軍なら、

コア型の細胞を使った遺伝子操作でファフナーのパイロットも生み出せるのだ。

 

だが人類の危機であるにも拘らず金持ちや政治家は自分の富を分け与える事など出来ず。

結果、グノーシスモデルという安価かつ、フェストゥムの読心能力回避としてファフナーが造られたのに何の解決にも至らない機体が、ハイエンド機として新国連は人類軍の主力としてグノーシスモデルを配備した裏がある。へスター・ギャロップの人類至上主義のフェストゥム嫌いから、遺伝子操作した兵士の忌避感、反乱と国民の批難を恐れてでもあるが。

 

 

「最近は人類軍の探索機も巡回している。これを反乱軍が敢えて姿を現して移動すれば、

人類軍はアルヴィスから目を背けて躍起となって反乱軍を追うだろう」

「最も、我等はアルヴィスほど優しくは無い。邪魔をする者は全て蹂躙してくれよう。

無駄な殺生はする気は無いが、使節団と大破しているとはいえノートゥングモデルまで我等に預けてもらっているのだからな。手を抜く気は一切無い」

 

 

反乱軍はアキレス・システムとファフニールのデータ提供と使節団の護衛を条件に、

大破したマークツヴァイを受け取る契約になっている。win-winと言っても過言では無い。

 

「真壁…後を頼む」

「その事で一つ聞きたいのだがいいか?」

 

史彦は挙手までして自分の意見を述べる。

 

 

「早乙女君まで連れて行って貴様、面倒事を全て私に押し付ける気だな?」

「「はて?なんの事やら(でしょう)?」」

 

 

ヒトラーは日本人の腹黒さを改めて認識した。

 

(味方をこうも簡単に切り捨てるとは…非戦闘主義とはいえ侮れんな…)

 

 

違う、そうじゃない

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『竜宮島中学校』ーー

 

 

「一昨日はほんと凄かったよなー、島に色んな秘密があってさ。

俺の母さん、あのアルヴィスの研究員だったんだ」

 

「僕ん家の父さんも、あのロボットのメカニックのチーフなんだって。

ほんともうビックリだよ」

 

「あんた達なんてまだいいわよ…ウチなんてお父さんが飛行機のパイロットで、

あの黒いフェストゥムを夕飯に呼んだのよ?もうほんと信じらんない!」

 

 

ーーただいま、今日は友人が来てるんだ。さっ、庭だけど入ってくれ。

 

ーーご相伴預かりました、ラハムと言います。旦那さんにはお仕事でお世話になっています。

 

 

「「うわぁ…さすが姐御ん家…」」

「今回ばかりは否定出来ないわね…」

 

 

「蔵前、やっぱりロボットのパイロットだったみたいなんだ。

爆発事件の時大怪我したみたいで…俺、蔵前の家の鍵預かってるから、

アルヴィスの人がやって来て教えてもらったんだ」

「ウソっ!?甲洋と蔵前さんってそういう関係だったの!?」

「なんだと!?チクショウ!女子に告白されても断っていたのはそれかー!」

「なんだよ、甲洋も隅に置けないね〜」

「違うよ、そんなんじゃないって」

 

実際は家に帰りづらい時に泊めてもらったり、

家に置けない飼い犬のショコラを預かって貰ったり、

一人暮らしで留守が多い蔵前の為に食事を作って用意したり、掃除や洗濯したり、

日用品を買い足してゴミ出ししたりする程度である。

 

完全に通い妻です。本当にありがとうございました。

 

 

会話に花が咲く中、教室に担任の理科教師である羽佐間容子が入室してきた。

 

「はいみんな席に着いて、HRを始めるわよ」

 

容子のかけ声に気づき、生徒達は着席する。

 

 

「今日はみんなにお知らせがあります。

実習生の先生方と、飛び級ですが編入生もやってきました」

 

 

「編入生?飛び級で?」

「そんな頭いいヤツ竜宮島に居たんだ…」

 

「あの潜水艦で来た人かも知れないわよ」

「鏑木先輩の弟くんかもよ」

 

「(実習生…飛び級…それってもしかして)」

 

「真矢、確か僚先輩達が…」

「うん、もしかして…」

 

 

「二人共、入って来て」

 

 

容子の呼び声に入って来たには、

黒いスーツを着た僚と、パーカー姿の真由だった。当然キグルミではない。

 

 

「みんな覚えてると思うけど、OBの元生徒会長の将陵僚先生です。

彼は数学の担当だから、わからない事があったら進んで相談してね」

 

「ご紹介に与りました、将陵僚です。みんなとは卒業式以来だけど、

先生としては初めてだから、至らない所があったらドンドン言ってくれ。

でも、プライベートは別だぞ?こっそり話してくれよな」

 

普段のラフな格好の時とは違い、スーツを着てしっかりした僚は、

女子の傍目から見るとぁゃιぃ色気があり、注目の的になっていた。

 

「僚先輩ここのクラスだったんだ…」

「なに言ってんのよ、夏休み中そう言ってたじゃない」

「いやクラスまで被るとは思わないだろ」

 

「やっぱり僚先輩だったね、一騎くん」

「ああ…でも真由と一緒なんて偶然。本当にあるのか?」

「そういえばそうね…」

 

 

「こちらは小学1年生から飛び級して来た、将陵先生の弟の将陵真由くん。

彼は将陵先生からの強い要望でクラスが一緒だけど、みんな仲良くしてあげてね」

 

 

「こんにちは、私は将陵真由です。得意な科目は数学、苦手な科目は体育です。

歳は離れていますが、精一杯頑張ります。みなさん、仲良くしてくださいね?」

 

 

お淑やかな真由の自己紹介は、女子と見紛うばかりの可憐さがあり、

クラスの男子達は固唾を呑んでしまっている。

 

「なあ…あれって真由だよな…」

「あんなに可愛かったっけ…?」

「女子のあたしから見ても相当可愛いよ…」

 

「真由くん、なんだかいつもと雰囲気が違うね」

「………………」

「どうしたの?一騎くん」

 

 

真由を知っている人間で、その異変に何人が気づけた事だろう?

 

 

(真由…!完全に目が死んでる!!まるでそこにいないみたいだ…!!)

 

 

今の真由は目が完全に死んでいて、自己紹介もよく聞くと機械的で、

居た堪れなくなった一騎は最後列の席にも拘らず、真由の肩を掴んで正気に戻そうとした。

 

「真壁くん!?」「一騎!?何をする!」

 

「目を覚ませ真由!今のお前は、普段のお前じゃない!!お前はそこにいるのか!?」

「ハッ!?私は一体何を……?」

 

真由のアメジストの瞳にいつもの光が戻り、真由は正気に戻った。

真由は足元が覚束ず、肩を掴んでいた一騎の腕を支えにしてやっと立てている。

 

「一騎くん…悪夢を……悪夢を見ていたんだ…」

「どうした?何を見たんだ?」

 

「僚先輩と祐未先輩が私を着せ替え人形にして…

どこからともなく一騎くんと総士くんがやって来て、助かったと思ったら、

一騎くんが私にとどめをさして…堂馬食堂で好物の玉子丼を食べて帰ったら、

先輩達に行儀を学ぶという名目の淑女教育される悪夢をずっと見るんだ……」

「ごめん、最後のはともかく後は全部現実で、とどめをさしたのは俺だ…」

「オマエノ…シワザ…ダタノカ……」

 

「真由くん、大丈夫?」「チッ……(一騎め、余計な事を…)」

 

 

僚を除くクラスの全員が思考を一つにした。

 

 

この先輩(将陵家)ブラコンのやべーやつだと。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーその日、私は家族に着せ替え人形にされ、果林さんも混ざっている悪夢を見ました。ーー

 

 

私の家族はともかくあーたは生きてるでしょーが。

そんな所に行かんで戻ってきんしゃい。

 




真由は悪夢をぶっ続けで、ずっと見ていました(笑)

公蔵さん、ヒトラー閣下もご満悦
特に面倒な案件が史彦さんの胃に襲うーーー‼︎


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さんじゅうよんにちめっ!

前回のあらすじ


編入前
「「真由はお淑やか…真由は謙虚…真由は素直…」」ヒソヒソ
「………………」チーン…


 

その日はアルヴィスのパイロット育成を目的に、適正がある子供達の家に

ファフナーの搭乗適正通知書『フログパッド』、その赤い形状と招集令状、

二つの共通点から島民からは通称『赤紙』と呼称される出頭通知が届き、

CDC、オペレーターの遠見弓子とファフナーパイロット教官として船橋幸弘が、

適正者である『遠見真矢』『羽佐間翔子』『春日井甲洋 』『要咲良 』『近藤剣司』『小楯衛』

以上、全6名をアルヴィスへ引率している。

 

彼等はアルヴィスの入り口で、興奮しながら地下のエレベーターが来るのを待っていた。

 

「僕達も入れるの?」

「あなたたちの体には、既に身分証明のチップが入ってるから大丈夫」

 

「中に入ったら私語は慎めよ。アルヴィスには下手をしたらボタン一つで島が大損害を受ける物もある。仕事中に家族とは言え話しかけたり、自分に関係の無い所に近づいたりしたら最悪、裁判でお前達の家族にも迷惑をかけるからな。ちゃんと言う事聞くんだぞ」

 

「「「「「「はーい!」」」」」」

 

自分の行動で家族に迷惑をかけるかも知れないと聞き、彼等は気を引き締める。

 

エレベーターが到着し地下へ行くエレベーターに乗り込み、

アルヴィスに着く前に彼等は引率の二人に疑問を投げかける。

 

「どうして私たちに隠していたんですか?こんな凄いものを……」

「そうねぇ……」

 

「大人達の自己満足さ…」

「えっ?」

「幸弘くん!」

 

翔子が投げかけた問いに弓子が答える前に、幸弘が質問に答える。

 

「自己満足でも悪いものじゃない。現に島は平和だったし、

普通に生活していてなんの問題も無かっただろ?それで良いし、十分なのさ」

 

「「おおー…」」

 

「確かに、あたし達が知っていてもなんの役にも立たないし、

出しゃばって父さん達に迷惑かけるだけだったかも……」

 

エレベーターを降りて移動用の動く歩道に乗り、各施設の案内をされる。

 

その際に剣司の母親の近藤彩乃が通りかかる。

 

「母ちゃん……?」

「………………」

 

彩乃は剣司の声を無視してそのまま通り過ぎて行った。

 

 

「どうしちゃったんだ?」

「私語は慎めと言ったろう?此処では直ぐに島中の大人達に情報が伝達されるんだ。

家族に恥をかかせる様な事をすれば直ぐに伝わる。仕事中に話しかけるなよ」

「うっ、ごめんなさい…」

 

「そう言えば最近うちのお母さんもそっけないのよねぇ」

「訓練候補生とは言えファフナーに乗るんだ。心配で思い詰めるぐらいするさ。

さあっ、話しは終わりだ!お前ら静かにしろよ」

 

 

第1CDC、パーシバル・ルームに入り、中には史彦が総士と一騎に話しをしている。

 

「一騎くん…!」

「総士もいるね?」

 

「ここが総合管制室、第1CDCパーシバル・ルームだ。主な指令はここで出され、

防御機構やレーダー、遠隔モニター、超高速演算機など様々な機能を担っている。

ちょうど話している真壁史彦さんがアルヴィスの現総司令だ。失礼のない様にな」

 

 

一騎と総士も彼等と行動し、CDCを出た後も子供達は色々な部屋を案内され、

水中展望室で各々は休憩を取る事になった。

 

「皆集まってー!」

 

「記念写真を撮るんだってさ」

「記念写真…?(しまった、こんな事ならカメラを持ってくるべきだった)」

 

「此処が珍しいのも分かるんだけどねぇ…」

 

記念写真を撮ろうとする真矢のカメラを幸弘は取り上げた。

 

「こらこら、ダメだろ遠見」

「えっと…やっぱりダメですか…?」

 

恐縮する真矢に幸弘は微笑みながら話しかける。

 

「せっかくお前達の記念撮影なんだ。遠見も居なきゃ意味ないだろう?

ほらっ、撮ってやるから並んだ並んだ!」

「ありがとうございます!じゃあ問題はこれで…」

 

幸弘はカメラマンとして真矢からカメラを預かり、並んだ子供達に引き算をだす。

 

 

「15436引く15434はー?」

 

 

「「「「「「「「にーーっ!!」」」」」」」」パシャッ!

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『アルヴィス・シミュレーションルーム』ーー

 

 

「これから貴方たちに、ファフナーの訓練に入ってもらいます」

 

 

パイロット候補生達はシナジェティックスーツに着替えてシミュレーションルームに向かい。

シミュレーションルームに着いてからは専門医の遠見千鶴と主任訓練官の日野 恵(ひの めぐみ)も交えた、

シミュレーションでのファフナー教習訓練が始まった。

 

「今日から貴方たちの訓練を担当する日野恵です。大まかな説明は私から教導しますが、

先輩パイロットもいるのでわからない事があればどちらでもいいのでキチンと相談してください」

 

『先ずはメディテーション訓練を行う。ファフナーの適正テストだ。

ファフナーと一体化する為に、イメージをより明確にする訓練だ。

仮想空間の中は海で表現される。その表現された海が、お前達の心象風景だ』

 

総士はジークフリード・システムから指示を出し、説明をする。

 

「シナジェティックスーツを着てるとはいえ痛みは感じる。

お前達、心してかかれよ。自分の心象風景に呑まれるな。

仮想現実から戻れなくなるなんて冗談にもならないからな」

 

全員が配置に着いてシミュレーターに乗ろうとした時。

真由と僚と祐未がシミュレーションルームに入って来た。

 

「千鶴先生、ここに居たんだ」

「真由くん?どうかしたの?」

 

「森田先生が使節団の配属で島を出るけど、千鶴先生に委託し忘れた書類があるから

持って行って欲しいって頼まれたんですよ」

「俺と祐未は反乱軍の人達が持って来たデータを調整する為に、

近藤さんと総士に会いに行ったんですが…肝心の総士が訓練中で、

ジークフリード・システムの方にデータが送れないからデータだけ近藤さんに渡して、

迎えに来てくれた真由と帰ろうとしていた道中、頼まれたんですよ。真由は付き添いです」

 

「そこまで強調しなくても……」

「お前は身内とはいえ、完全に外部の人間だからな。こればっかりは譲れん」

 

 

「そう…三人ともありがとうね(本当に真由くんが大事なのね、僚くん)」

 

 

僚が真由をここまでアルヴィスから引き離そうとするのは、

真由にもうこれ以上危険な目にあって欲しくないからだろう。

 

森田は同化現象の治療法を島を出て探すと決め、アーカイブデータを虱潰しに探したのだろう。

千鶴の渡された書類には過去、類似した症状の記録が大量に記載されていた。

 

(同化現象が発症するのは彼だけじゃない。何時この子達も発症するかわからない…)

 

「わぁー!コレってファフナーのシミュレーターですよね!」

 

真由の声に思案に暮れる千鶴は今は訓練中だった事を思い出し、真由の質問に答える事にした。

 

「ええそうよ、これで仮想空間の戦闘訓練が出来るの」

 

「いいなぁー…私はファフナー乗れないしなぁ」

「それが普通なのよ、真由くんは何の手術も受けていないもの」

 

ファフナーに乗るにはシナジェティックコードを形成する必要があり、適正率も必要である。

ただの人間(?)である真由はファフナーの適正が皆無と言っていい程低く、

ファフナーに合わせる脳波は黄金比が望ましいのだがそれも合う事は無かった。

 

彼はまさにフェストゥム(祝福)に愛され、ファフナー(巨人)に嫌われた子供だった。

 

「一回くらい乗ってみたいなぁー…ねぇいいでしょ?千鶴先生」

「駄目だ、適正の無いお前が乗ってもシミュレーターは動かないんだ」

「真由、みんなの迷惑になるわがまま言っちゃいけません!」

 

シミュレーターに乗りたがる真由を二人は咎め、

理屈では無理とわかっている真由は大人しくみんなに謝った。

 

「千鶴先生、皆さん。ごめんなさい…」

「いいのよ、気にしないで」

 

しかし、意外なところから真由に助けの声が入る。

 

『構いませんよ、メディテーションぐらいなら、適正が無くても大丈夫です』

 

「総士くん?」

「本当!?総士くんっ!!」

 

許可が出るとは思わなかった真由は大層喜び、僚は真由に聞かれないよう。

備え付けの端末で総士に通信を繋げた。

 

『(どういうつもりだ?真由はファフナーには乗れないんだぞ)』

『(彼を調べるには、メディテーションでの心象風景を見る事も重要だと判断しての事です)』

 

総士は真由の秘密を探るには、心象風景を見て判断する必要があると感じていた。

 

『(…心象風景のデータは幹部以外には見せるな。それが絶対条件だ)』

『(わかっています。誰だって心を見せびらかされたら気分のいいものではありません)』

 

 

『では、これより。メディテーション訓練を行う』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「これは…海、なのか……?」

 

 

将陵真由の心象風景は全体にノイズがかかり、正確には電子の海のような風景だった。

 

 

海の中には四角いキューブ状の物がいくつかあり、螺旋しながら廻っている。

 

海底には何故か桜が咲いていて、空には人の背骨が浮んでいた。

 

 

 

待て、何故ここに将陵真由がいない…?

 

 

 

 

 

──いけませんね。へっぽことはいえ人の(モノ)に手を出すなんて…

 

 

 

 

 

僕は急に意識を落とした。

 

 

全員の心象風景の海を見ていて、将陵真由の心象風景を見た。瞬間にだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

……何だ?ここは…僕は何故ここにいる……?

 

 

 

ジークフリード・システムの中にいた筈の僕は、将陵真由の仮想空間の中にいた。

 

 

海中なのに息が出来るそこは、四角い通路が一方向で続いている。

 

 

通路の下は奈落の底のような深淵があるだけだった。

 

 

「進むしかないか…」

 

 

奥へ進めば進むほど道は暗くなり、一番奥には出口と思われる光が見えた。

 

 

僕がそこに入ったら今まで来た道がなくなり、広い青い空間に辿り着いた。

 

 

中心には四角い何かが浮いていて、僕はそれに近づいてみる事にした。

 

 

ガシッ「なんだっ!?」

 

 

僕の足に黒い()()()が纏わりつき、気がつけば足元に骸骨と黒い泥が覆っていた。

 

 

四角い何かは泥を出す黒い太陽に代わり、そこから女性のシルエットが見えた。

 

 

 

 

 

見るな

 

 

 

 

見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るな見るなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなみるなミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナミルナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見 る な

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──Porca miseria,一度は見逃してあげましょう。もう一度来たその時にはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

──…………き………お…………ろ…………きろ………

 

 

 

 

……僕は……()を見たんだ………?

 

 

 

──…おき…………し………そう…………し……

 

 

 

誰かが僕を呼ぶ声に、僕は目を覚ました。

 

 

「起きろっ!!総士!何があったんだ!!」

「…一騎か……」

 

 

 

目の前には僕の肩を掴んで起こそうとしてくれた、一騎の泣きそうな顔が目に入った。

 

 

どうやらメディカルルームに移送されたらしく、部屋には一騎と先輩達、遠見先生が居た。

 

 

僕の隣のベッドでは将陵真由がうなされながら眠っていて、あの時僕と一緒に気絶したようだ。

 

 

「一騎…お前が僕を呼んでくれたのか……?」

「何言ってるんだ…そんなの当たり前じゃないか!!」

 

 

胸に、熱いものが込み上げてくる…自分に居場所があると、実感出来る。

 

 

僕は、一騎がこんなにも思っていてくれてるだなんて、知らなかった。

 

 

「総士…」

「何だ……」

 

 

あの暗闇の世界から戻って来れた嬉しさからか、涙が止まらなかった。

 

 

そんな僕に、一騎は手を握ってくれた。

 

 

「無理するな…俺はここにいるし、お前はそこにいるだろ…」

 

 

「……ありがとう…一騎」

 

 

一騎がいてくれる安心感で、僕の涙は止まった。

 

 

タイミングを見計らっていたのか、そこで僚先輩が話しかけてきた。

 

 

「総士…ジークフリード・システムには、真由の心象風景の記録はなかった。

お前が夢で見たもの、それが全てだ。今日はもう休め。明日、報告してくれ」

 

 

「はい…わかりました」

 

 

今までの疲れが溜まっていたのか、僕はあっさりと眠ってしまった。

 

 

 

 

ーーその日、僕は幼い頃、一騎達と遊んだ夢を見た。ーー

 

 

 

とても懐かしくて、癒される想いだった……

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ーーその日、私は妹にめちゃくちゃイジられる悪夢を見た。ーー

 

 

 

 

──今日は真由を守ってあげたんですよ?報酬ぐらい、渡しなさいな

 

 

 

 

ええい!!やめぬか!()()!!




妹、登場!

真由君の心象風景はSE.RA.PHにアンリマユがある感じ

主人公なのにファフナーに乗れないオリ主ェ…


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ばんがいっ!そのななっ!

久しぶりの番外
気楽に書けるから楽しい


「人類軍探索機発見!まもなく上空を通過します」

 

「予定通りだな。ファフナー発進!絶対にコックピットは当てるな。これは陽動だ」

 

「3番機、発進してください」

 

『Jawohl!ホークトルーペン、出撃します』

 

 

竜宮島近海にて、反乱軍は陽動に人類軍の探索機に威嚇攻撃を行っていた。

 

 

竜宮島の為とはいえ、人類に対して攻撃するのを見ているのは気が引けるが、

今の新国連に、ノートゥング・モデルの情報が渡っても無駄遣いにしかならないだろう。

 

ノートゥングモデルといえどもそこまで特殊な機体な訳ではない。

 

あれは私と羽佐間君と近藤君が設計した機体だ。

 

対フェストゥム兵器開発の第一人者である私と、

柔軟かつ綿密な計算、設計ができる開発担当の近藤君、

ファフナー開発スペシャリストで物理学天才の羽佐間君。

 

如何に私達の能力が優れていても、元々は海外から取り入れた技術だ。

 

新国連は烏合の衆などではない。だが余りにも上層部の謀略が張り巡らされている。

過度な戦力となる人型決戦兵器ファフナーは、彼等にとっては核よりも厄介なのだろう。

フェストゥムのコアをメインシステムに使うという事は。

 

反乱軍の諜報員によれば、コア型フェストゥムの入手に成功し、

オルフェノク型を2体、既に倒したらしい。

 

両方とも人類に友好的だったらしいが人類軍の一部の軍が暴走。

オルフェノク型の逆鱗に触れ、新国連は10分の1程の国土と軍を失った。

 

新国連は他のオルフェノク型を危惧した結果、最初のオルフェノク型暴走と同じ、

国民を人質にしてまでオルフェノク型の自害を強要、コアを入手した。

 

 

私は、最初の軍の暴走事件は何者かの陰謀だと睨んでいる。

へスター・ギャロップは人類至上主義といえど、この様な愚行を許す女ではない。

 

この事をヒトラーに話すと、彼は目から鱗だったらしく、すぐさま諜報員を動かした。

 

「フラウ・コウゾウ、君の言っていた通りだった」

「何かわかったのかヒトラー?それと、フラウはやめてくれ」

 

軽口を言い、彼の顔は無いからわからないが、上機嫌な雰囲気から笑っているのは理解出来る。

 

「人類軍の暴走、これは捏造された情報だ。正式に上層部からの指令があり行動している。

この部隊はへスター・ギャロップ傘下の軍ではなかった。別派閥の、フェストゥム支配派だ」

 

フェストゥムとの徹底抗戦を予期していた私だが、フェストゥムの娘がいる私は眉を顰めた。

 

「フェストゥム支配派だと?」

「そうだ、今人類軍、引いては新国連は三分化している。

フェストゥム隠滅派、新国連事務総長・世界政府準備議会代表『へスター・ギャロップ』

フェストゥム支配派、新国連人類軍参謀総長・企業連合代表『ケイト・ピクトジン』

そして最近中立派から結成された、フェストゥム共存派、一年も経たずに()()まで登り詰めた。

【若きエース】【人類の希望】【現代に蘇った英雄】『リチャード・マサラ』

この3人が人類軍のTOPであり、小競り合いもしている不仲の3人だ」

 

「ケイト・ピクトジン?偽名ではなく、か?」

「本名だ、狙ったかの様な名前だがな」

 

「リチャード・マサラ…大層な肩書きだな」

「オルフェノク型の自害を強要させられた彼だが、功績で准将になってから、

彼は侵攻されていたブラジル領土を半分近く取り戻した、どうやらデマやプロパガンダではない。

本物の力を持った英雄サマという訳だ」

 

「まるで生前の君のようだな」

「世辞は止してくれ、私は悪名の方が多いさ」

 

くっくっくっと、含み笑いをする彼は、生前の事になんの未練も無い様だった。

 

「私にとってはあれは最善だった。虐殺や迫害をしたのも多くの者が望み、国を繁栄させる為だ」

 

「時代が時代だ。批判する者はいても、実情を知る者などその場にいない限り、わからぬものさ」

 

ひとしきり笑い合うと、彼の雰囲気は鋭利さを帯び、私も真剣に向きあった。

 

「リチャード・マサラ…彼はわからんでも無い。間違い無く人間だ。

だが……ケイト・ピクトジン、彼女は危険だ。とても人間とは思えない」

「それはどの様な点で、だ?」

 

「全てだ、全てであり得ない。彼女の経歴は確かな物だが、

ここまで完璧な人間などいる筈がない。超人にもほどがある。

その能力、精神性、全てにおいてバケモノだ。人間とは思えない」

 

彼女の経歴の書類を受け取り、目を通して見たがなるほど…これは…

 

「ありえん…な」

 

彼女の経歴は超人を絵に描いたように完璧だった。

ノーベル化学賞受賞、ウルフ賞化学部門受賞…他にも様々な賞を受賞している。

 

 

「細部まで調査した。けれど彼女の経歴には疑問が残る。

更に幼少期の知人が誰もいないのだ。誰もな。戦争とは時に便利なものだな」

「幼少期の経歴は偽りか、受賞も偽りだといいんだがな…」

 

幼少期ならフェストゥムと戦争している状態の今なら、

戦争被害で知人が死んだと幾らでも偽装出来る。戸籍も同様だ。

だがそれ以降は別だ。社会に出た状態なら能力は誤魔化せん。全て真実なのか?

 

 

こんな人間があり得るのか?

 

 

思考に耽ていると潜水艦の警報が鳴り響いた。

 

 

「何事だっ!」

 

「スフィンクス型です!このままでは人類軍の探索機が堕とされます!」

 

「ええいっ他の機体も出せっ!トリプルドッグだ!探索機を堕とさせるな!

…全く、これではなんの為に攻撃を仕掛けたかわからんな……」

 

 

陽動に人類軍に報告する探索機が堕とされたら元も子もない無いので、

攻撃していた探索機をフェストゥムから守る珍事が起こってしまった。

 

 

「すまん、どうやら竜宮島を追って来たフェストゥムのようだ」

「こんな事ならもう一泊すればよかった…」

 

 

それは勘弁してくれ、島を出る前に真壁に殺される。

 

 

 

 

 

ーーその日、私は牧師服を着た真壁に殺されかける悪夢を見た。ーー

 

 

吸血鬼?食屍鬼(グール)?何を言っているんだ真壁!?

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーー『ブラジル・とある街』ーー

 

 

──アイツといるとロクな事がない……

 

 

 

俺は一人で荒廃した街を歩いていた。

 

事の発端はケイトが「ちょっとボアッチに行こう!」

などと訳の分からぬ事をのたまい、SPを振り切り別れてしまった。

 

てっきり都会に向かうかと思えば、ケイトは「ご当地モノじゃなきゃヤダ」と言い、

バラックの多い生活能力が有る為、人類軍の援助を受けられない街に連れて来られた。

 

 

(…酷いものだな、活気は有るが良いものじゃない)

 

 

街はブラックマーケットでせめぎ合い、中には賭博、麻薬販売に人身売買も行われている。

 

新国連人類軍にも余裕がない状況では、援助をしていないこの街を取り仕切るのは無理だ。

 

 

それでもケイトの様に金持ちや上層部は国民の血税で裕福に暮らしている。

 

 

ハッキリ言って俺はケイトが苦手だ、何を考えているか解らないし欲望に忠実すぎる。

下品だし部下の見ていない部屋では何時も全裸で服を着ろと言っても下着しか着ない。

俺を男だと意識しないのかと聞けば「よっしゃ!バッチ来い!」なんて言い出す始末。

 

休みの日は呑んだくれているか、翌日仕事があるのに夜更かししてゲーム三昧。

目が充血してクマが出来ようが、御構い無しに反省しようともしない。

この前など限界で休日を丸一日寝て過ごしていた。典型的なダメ人間だ。

 

企業代表でもあるから人付き合いは悪くないし猫を被っているのだが、

内情を知っている自分からすれば詐欺もいいとこである。引く手数多なのもタチが悪い。

企業の重役や政治家、新国連の上層部男性達が不憫でならない。

パーティーで面倒な時に俺を男避けに使うな、俺はお前の様な鉄面皮じゃないんだぞ。

 

 

グウゥ…(腹が減ったな…都会まで遠いし何か買っていくか)

 

 

ホテルで食事を摂ろうとしていたので、昼は何も食べていなかったな…

 

屋台を見て回ったがとてもじゃないが食べれる店は少なかった。

 

諦めてホテルまで帰ろうとした時、足を引っ張られる感触がした。

 

 

「にいちゃん、腹減ってるのか?」

「?あっ…ああ…」

 

 

足元には小さくて気がつかなかったが子供がズボンを掴んでいた。

 

 

「だったらさ!俺の店のトウモロコシ買ってってくれよ!

俺のにいちゃんが作ったうまいトウモロコシなんだぜ!!」

「本当か?それは助かる」

 

 

腹は減っていたが、ホテルまでの繋ぎにトウモロコシもいいだろう。

俺は子供に店を案内してもらい、店に着いてから楽観視していた自分に後悔をした。

 

 

「ほらっ!ここが俺んとこの店だぜ!!」

「いらっしゃい!ルーカス、おかえり。お使いは出来たか?」

「ちゃんと買ってきたぜ!それよりにいちゃん、お客さんだ!!」

「おお、お前が連れて来たのか、偉いぞ」「へへっ」

 

 

その店に並べてあったトウモロコシは実があるか解らないほど細く、

虫が集っていて、実が見えたトウモロコシはかなりヘコんでいた。

 

 

「さあ、どれにしますか?」

「そうだな…その真ん中にあるやつを頼む」

「まいどっ!」

 

 

買わないのも悪いし、虫が集っていない真ん中のを一本買っていくことにした。

トウモロコシはホテルに帰ってから、外でアウトドア用の鍋に煮込んで食べるとしよう。

 

 

俺が金を払い、トウモロコシを受け取った瞬間、手元のトウモロコシが無くなった。

 

 

「ああっ!?それはこのにいちゃんが買ったトウモロコシだぞ!」

「ドロボー!!返しやがれ!!」

 

 

どうやらスリにあったらしく、トウモロコシは別の子供に盗まれてしまった。

 

店主の兄は店を離れる訳には行かず、弟の少年ではとてもじゃないが追えないだろう。

 

犯人の子供を見ると、嬉しそうな顏をした少女が、美味しそうに頬張って食べている。

 

胸が高鳴ると同時に空腹を思い出し、俺はトウモロコシをもう一度買うことにした。

 

 

「なあ、トウモロコシを後5本…いや6本くれないか?」

「へっ?にいちゃんそんなに食べるの?」

 

「ああ、あのドロボーを見たら、何だか腹が凄い減ってな」

「ははっ!お客さんには災難でしたが、儲かっちまいました」

 

 

俺は買ったトウモロコシをひとつ食べてみた。

 

 

とてもうまいものじゃないが、命の強さを感じた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

俺はあの少女を追い、人気のない路地裏まで来ていた。

 

何故かは解らないが、あの少女に惹かれ、いつの間にか追いかけてしまっていた。

 

(いたっ、あの子だ)

 

見つけた少女の側に何人かの子供がいた。

 

どうやらグループで窃盗をして、各自で盗んだ物を分けて食べているようだった。

しかし成果は著しいものではなく、あの子が盗んだトウモロコシを主に食べていた。

 

「なぁお前ら、ちょっといいか?」

「「「!!?」」」「「?」」

 

背後だったから気づかなかったやつと、一番小さいやつは皆が驚いているのに首を傾げている。

 

声をかけられて食べ物を後ろに隠すが、口元に食べカスがついていてちょっとマヌケだった。

 

「ククッ、お前ら、どうして盗んだ物を分けて食べているんだ?少ないのに」

 

都会のように遮蔽物の無い、路地裏では逃げ切れないと観念したのか、素直に質問に答えた。

 

「……私達は親がいない…仲間だから……」

「仲間…そうか、仲間なのか…」

 

てっきり家族や友達だと思っていたが、強い決意で集まった、()()だった。

こいつらは友達、なんて甘いものじゃなく、生き残る為に集まっていることがわかる。

 

 

「なら、俺の仲間になってくれないか?」ドサッ

「「「「「?」」」」」」

 

 

俺はトウモロコシを取り出し、座り込んで目線を合わせた。

 

 

「俺の友達が俺を見捨てて何処かに行っちゃってな。

街にいるのは解るんだが、独りぼっちは寂しくてな」

「!!うん、私も、独りでいるのは、もう嫌だもの」

 

「僕も、友達がいたんだけど…みんないなくなっちゃった…」

「オレも、母ちゃん仕事に行くってどこかに行っちゃって、

一か月も、もう戻ってこないんだ…」

 

 

トウモロコシを分けて食べ合い、俺にも他の食べ物を分けてくれ、

そのまま談話しながら子供達と食事をした。

 

 

「俺の名前はレイ、レイ・ザ・バレルだ」

「あのねっ?私はーーー……」

 

 

俺はその後子供達を引き連れ、盗んだ店や人に金を払い謝り、

ホテルまで連れ帰り、これからの面倒を見ることにした。

 

 

「うわぁ…レイ、そんな子供達をお持ち帰りだなんて引くわぁ…」

「何だ、帰ってたのかケイト」

「女の子達、ノンケしかいなかったよ…」

 

 

当たり前だろう。

 

 

俺は子供達と一緒に、ベッドで眠れないから床にシーツを敷いて眠った。

 

 

 

ーーその日、俺は夢で誰か解らないが、仲間が裏切る悪夢を見た。ーー

 

 

 

──お前らは…裏切らないでくれるよな…?

 

 

 

翌日、俺は腹を壊した。

やっぱり、慣れない物を生で食べるもんじゃないな…

 

 




公蔵さんが吸血鬼になると思ったか!
史彦さんもじゃ!!

レイくん孤独恐怖症or裏切られ恐怖症
笑顔に惹かれたのであってロリコンではない…はず…

たぶん、きっと、メイビー


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さんじゅうごにちめっ!

前回のあらすじ


私は貴方が(の真由)を見たのを見ました!


「フンフフン、フフンフーン♪」

 

今日は学校は休みで、私はお使いで喫茶『楽園』に向かっている。

 

お使いの理由は今日の夜から竜宮島が出航するので、先輩達は仕事でしばらく帰れない。

 

必然的にお留守番の私は、料理は出来るのだが火の元は先輩達に許されていないので、

こうして私の昼食と、家の夕飯にサンドイッチのお弁当を買いに行くのだ。

 

堂馬食堂でもいいのだが、お弁当や出前のご飯は冷めると微妙になる。

そこで洋食のサンドイッチなら、冷めてても問題ないので楽園に来たのだ。

 

私が上機嫌な理由も初めて楽園に行くのと、先輩達が家にいないので自由だからである。

記憶が戻ってからは、あのスキンシップは辛いんだよなぁ…

 

 

お風呂の時も……

 

 

ーー真由ー?お風呂入るわねー。ガラガラー

 

ーー祐未先輩!?何してるんですか!?

 

ーー何って、立って入ってたら疲れちゃうでしょ?真由一人じゃ溺れちゃうじゃない。

 

 

 

 

入っている時に突撃して来たり…遠回しに小さい言うし…

 

 

 

勉強している時も…

 

 

ーー僚先輩ー、問題とけました!

 

ーーどれどれ…よし!全問正解だ! ヒョイッ!

 

ーー先輩?ちょっとオーバーじゃないかと…

 

ーーそうか?いつもこうだったからな、まあ気をつける。 ナデリナデリ

 

ーー(やめるつもりは無いのか…)

 

 

 

褒める時は抱っこして頭撫でたり…事ある毎に頭なでるし…(大事な事なので2回言った)

 

 

 

夜寝る前にも…

 

 

ーー真由、ほら早くこっちに来い。ヒョイ!

 

ーー独りじゃ寂しいよ?寒いよ?トイレ行く時一緒に行けないわよ?ズルズル

 

ーーそう言いつつ、せっかく敷いた一人布団をはぎ取って片付けないで下さい!!

 

 

 

 

恥ずかしいから一人布団で寝ようとしたら、実力行使で片付けられるし…

 

 

 

いざ、本当に寝ようとしても…

 

 

ーー祐未…真由…ダキッ!

 

ーー僚…真由…サンドイッチ!

 

ーーギュウギュウ(苦しい…!息できないっ!)プハープハー

 

 

寝相で両方から抱きしめられて位置が悪いと息できないし…

 

 

 

 

(記憶喪失の時と違って中身は14歳だ!って言ってるのに…)

 

そう言うと決まって先輩達は悲しそうな顏をして、

ハイライトの消えた目で無言で私を抱きしめ続けるんだ。全くもう、

文句を言っても、抵抗しても、大人しく一時間以上そのままでいないと離してくれない。

無論、その後の私の扱いは何も変わらない。泣きたい。

 

誰かに相談したいなぁ…学校の先生は足がついちゃうし、クラスのみんなに相談してもなぁ…

 

祐未先輩は諜報で耳が良いし、僚先輩にいたっては物理的に耳が良すぎな地獄耳だ。

二人とも実習生で学校にいるし、先生方の大体がアルヴィス職員だ。バレてしまう。

 

(アルヴィスで一人暮らしも許してくれないだろうし、戸籍が入れられているのはマズい…)

 

未成年の私の権限は、ほとんどが保護者の二人に握られているのだ。あれ?これ詰んでない?

 

ま…まあ成長すれば二人も私を自由にしてくれるだろう。

体が13歳になればアルヴィスで一人暮らし出来るだろうし、今は6歳程だから7年の我慢だ。

かなり長いけど、これくらい期間が有れば先輩達も根負けして一人暮らしを許してくれるかも。

 

そんな妄想をしながら店に着いたのでさっそく入ることにする。

だいたいの民家が和風だから洋風なこの店は、ちょっとテンションあがるかも。

 

カランッ…

「いらっしゃい!悪いけど今満席なのよ」ガヤガヤ

「ヘアッ!?」

 

 

見渡す限り人、人、人!!

 

 

予想外の大混雑に私は驚いて呆然としてしまった。

 

 

「あら?将陵さんちの。ボク、一人?」

「はい、昼食にランチと夕飯のお弁当を買いに来ました。」

 

 

甲洋くんのお母さんが話しかけてくれたので要件を伝える。

 

それにしても何でこんなに人がいるんだ…

何時もは漁で釣った魚をその場で食べてる漁師の人までいる。

 

 

「何か肥料の新薬が出来たらしくて素材が良くてね、こんな状態なのよ。

繁盛するのはいいんだけど、お客さんにまともに接客出来なくて困るわ。

相席でよかったら好きなとこに座って。ハイッ!ケーキセットお待ちどう!」

 

あちゃぁ…どうやらこの前降らした、黒い雨で影響が出た農作物だろう。

魚にも影響が出たけれど、フェストゥムの戦闘で驚いた魚達は釣れなくなって、

こうして料理の美味しいお店で、新鮮な野菜のご飯を食べにくる人が多いようだ。

 

甲洋くんのお母さんはひっきりなしにウェイトレスとして注文を受け、

忙しくて新しく入ってくるお客の案内も出来ないようだった。

 

席が空いてるんだったら相席でもイイやと思ったのだがこの身長で見る限り、

どこもかしこも人だらけで空いている席はありそうにない。

 

仕方ない、お弁当だけ買って帰ろう。

 

 

「お〜い!ボウズ!こっちこっち!」

「あっ、溝口さん」

 

 

誰かが手招きして呼んでいたので顔を合わせると、カウンターの方から

僚先輩の叔母さんの上司であるアルヴィスの工作員の溝口さんがいた。

 

 

「ここ空いてるから座れよ。将陵参謀長から又甥の話しは聞いていたけど、

たまに挨拶する程度で直接本人とこうやって話したことはなかったからな」

「ありがとうございます。そうですね…それじゃあ遠慮なく」

 

 

席に座らせてもらい、さっそくメニューをみる。待てよ…先輩達がいないんなら…

 

 

「すいません!注文お願いします!」

「ハーイ!ちょっと待っててね」

 

普段頼めないようなものを頼んでしまおう。

なぁーに!誰が見てるわけでもない…ブッダも寝てるさ。ナムサン!(ゲス顔)

 

「すいません、サラダサンドとフルーツサンドお願いします!あとオレンジジュースも!」

「サラダサンドとフルーツサンド、オレンジジュースね」

 

 

やってしまった…もう引き返せない。

私は超えてはならない一線を超えてしまった…ウェヒヒ♪

 

 

「(後で生駒の嬢ちゃんにチクってやろ)昼メシか?

ここのメシは美味いんだが、今日はもっと格別に美味いぞ」

「はい!溝口さんは珍しいですね、ケーキセットだなんて」

 

「仕事だったんだけどな、人探ししてたんだが休憩だよ。

コーヒーを飲みながら、ケーキでゆっくりとな…」

「はぇー…」

 

カッコいいなぁ…前まではミルク入りの無糖くらい飲めたんだけど、

今じゃ砂糖も入れなきゃ飲めないんだよなぁ…

 

「前もよく来てたんだけど、雰囲気がよくなってからほぼ毎日来てんだ」

「雰囲気がいい?」

 

確かに賑わっていていいと思うけど、そんなにかな?

 

「それはだな…」(カランッ!「ただいまっ!」

「おっ?ウワサをすれば帰ってきたみたいだな」

 

店に入って来たのは、出前から帰ってきたオカモチを持った甲洋くんだった。

 

「次の出前は西尾さんちだ。わかるな」

「うんっ!お釣り補充してから行くよ」

 

甲洋くんのお父さんはそっけない返事だけど、甲洋くんは笑顔で応えている。

 

「最近ケンカってほどじゃないけど、ちと揉めてな。お互い腹割ったのか、

アレでも仲良くなったほうなんだ。見ろ、オヤジさんこっそり笑ってやがる」

「ほんとだ」

 

甲洋くんが後ろを向いた時だけ、嬉しそうに笑ってる。

 

「照れ隠しなのさ。揉めるそん時、息子がコーヒーの煎れ方と料理教えてくれって言ったら、

オヤジさん、機嫌悪かったから怒鳴りこんでな。そんときゃ店にいた俺も追い出されたよ」

「今じゃ嬉しいけど、それを見られたら恥ずかしいんでしょうね」「だな!」

 

 

「じゃあ、行ってきます。父さん」

「ああ……気をつけてな」

「うんっ!」

 

 

小声だけど甲洋くんのお父さんが注意すると、甲洋くんは顏いっぱいの笑顔で出前に行った。

 

 

「はい、サラダサンドとフルーツサンドにオレンジジュースお待ちどう」コトッ

「うわっ!おいしそう!!あの、お持ち帰りでクラブサンド三人前もお願いします!」

「ええ、クラブサンド三人前、お持ち帰りね」

 

「うまそうじゃねえか、俺にも一つくれないか?」

「いいですよ!一緒に食べましょう!」

 

 

溝口さんが言った通り今日の昼食は格別で、まさに()()だった。

 

 

 

(読みが外れたかね、まあ、問題が無くなったなら楽でいいんだがな)

「溝口さん、何か言いました?」「うんにゃ?なんにも?」

 

 

 

 

 

 

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ーー『アルヴィス・メディカルルーム』ーー

 

 

 

メディカルルームには僚と祐未、専門医の千鶴がただならぬ空気で真剣に向かい合い。

僚と祐未は野獣のような目つきで、千鶴は困った顏で悩んでいるようだった。

 

 

「先生お願いします。真由をどうにか出来ないでしょうか」

「俺達にとって真由は大事な弟なんです!何か解決策を!」

「そう言われても……」

 

祐未は質問こそしているが疑問符がなく何かある筈とプレッシャーを放ち、

僚は感情がモロに表に出しており、二人に挟まれて千鶴は困惑するしかなかった。

 

「ごめんなさい。私ではどうにも出来ないわ」

「っ!?ウソ!先生なら必ず解決策がある筈です!」

「先生ならわかる筈です!俺達のこの気持ちがっ!!」

 

祐未は平静を保っていたが千鶴の答えに取り乱して平静を振り払い、

真由の事になると、普段は冷静で頼りがいがある僚も冷静ではいられなかった。

 

 

 

「そのぉ………ねっ?

 

 

 

 

 

 

……さすがに14歳の記憶があるのにその扱いじゃ誰でも反発するかと………」

 

 

 

「真由はただ反抗期なだけなんです!!

あの甘えん坊な子が一人で居たいなんて言う筈がないんです!!」

 

「風呂に一緒に入るのも…抱き上げて頭撫でるのも…一緒の布団で寝るのも…

前はあんなに喜んでいたのにどうしてしまったんだ!?子育ての経験がある先生なら何か…」

 

「ありません!記憶が戻ったのにその扱いなら誰だってそうなります!」

 

 

二人は本当にわからないらしくキョトンとした顏で、千鶴はため息をはいた。

 

 

「ハァ…。家族で、朝、起きたら?」

 

 

「「?おはようのキス」」

 

 

「送り物のプレゼントを貰ったら?」

 

 

「「抱きしめてキス」」

 

 

「夜、寝る前には?」

 

 

「「おやすみのキス」」

 

 

 

「ギルティ」「「そんなっ!?」」

 

 

 

有罪判決を受けた二人は目を見開いて驚いている。

 

 

「怖いわよ!?どれだけキスをすれば気がすむの!?

いい?あなた達、自分が真由くんの立場になって考えてみなさい!」

 

 

「「…えっと、何か問題ありますか?」」

 

 

「なんてこと…既に手遅れだったわ、この夫婦…」

 

「「いやぁ…まだ結婚してないですよ」」テレッ

 

 

そこじゃないわよ、と千鶴は本気でこの二人に何があったのか検討をする。

 

僚と患者と担当医の関係で付き合いの長い千鶴は、いくらなんでもおかしいと思い。

もしかしたら真由の方に問題があるのではないかと思案する。

 

 

ウィーン!「そのキスの部分、もう少し詳しく!!」

「貴女は安静にしてなさい!なんてタイミングで意識を戻すの!?」

 

 

やべーやつが二人から三人に増え、意識不明の重症だった果林が目を覚ました。

全身包帯を巻いた状態のまま、興奮で傷が開き、血まみれの状態で。

 

彼女は爆破事故で致命傷を負っていたがラハムの泥でそんな事はなかった。

 

 

猛る野獣に二人は気圧され、先ほどの興奮が嘘のように怯えている。

 

 

「どこまで行ったんですか!?Bですか!?Cですか!?3Pですか!!?」

 

 

「どこまでって…それだけだけど?」ブルブル…

「果林さん?BとかCとかって何?」ビクビク…

 

 

「んもおおおぉぉぉ!?純粋ですか!?尊すぎでしょぉぉぉぉ!!?」

 

 

果林は鼻から身体中の血液が出てるのではないかと思うほど尊敬(鼻血)を出す。

そしてそのまま目の前の獲物(先輩達)を美味しく頂かんと迫るが、果林の背後には、

注射器を構えた千鶴が足音をたてずに回りこんでいる。ワザマエ!

 

 

「医務室ではお静かに」プスッ

「ひぐぅ!?」バタンッ!

 

 

「「ホッ…」」

 

 

変質者(果林)は千鶴に鎮静剤を打ち込まれて倒れた。

 

千鶴は果林の止血と包帯を変えて、二人に手伝ってもらいながらベッドに戻し、

野獣の覚醒で落ち着いた二人に真由の扱いを一言言っておく。

 

 

「また今度検査をしてみるわ。それまで真由くんの希望もなるべく聞いてあげてちょうだい…」

 

 

「「……()()()()ですね、なるべく。わかりました」」

(あっ、これダメなパターンだわ)

 

 

念押ししてなるべくを強調する二人に、千鶴は真由の冥福を祈った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーその日、私は眠れる野獣が目を起こした悪夢を見た。ーー

 

 

もし正夢なら果林さんのために、頑張って料理の勉強してた甲洋くんが不憫すぎる……




天然ボケショタ(普通の家はこうなのかなぁ…?)

童顔美魔女「惑わされないでと言っていますーー!!」


真由の家は一部を除いてドS(とブラコン)しかいなかったので世間知らずです。


学校の友達や先輩、後輩?ご近所?類は友を呼んでしまった…


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裏の裏の裏

本編進まにゃい…



 

 

『3番機、2番機、収容します。1番機は損害が大きいため、オーバーホールに入ります』

 

 

「う……んぅ…!」

 

 

「お帰りなさいませ、少尉。まさか2機でスフィンクス型を倒すなんてさすがです」

 

 

「おべっかはよせ、途中までは3機だった。まあドジを踏んだ無能は後で懲罰だ」

 

 

人類軍とやらの探索機を救出する際に1機がアキレスシステムの有効範囲外まで出てしまい、

探索機に我が軍の戦力を把握させぬよう、そのまま2機で戦闘を続行。防壁がなかなか削られず、

お陰で一晩かかって倒してもう夜明けだぞ?くそっ、これだから無能は嫌なんだ。

 

 

「お疲れでしょう、閣下からは戦闘報告は2番機のパイロットにさせるので、

最初から長時間戦闘をしていた少尉は今日はもう休んでいいそうです」

 

 

「そうか、報告ご苦労」

 

 

前にいた帝国とは比べものにならんほどの高待遇だな。前線には出されるが…

 

 

前置きに、誰も信じないだろうが私は異世界からこの世界に来た。

 

 

始まりは普通の人事課のサラリーマンだった私は、会社の盲腸である無能を整理し、

順風満帆だった帰宅途中の私に逆上した、救いようのない無能に殺され、神を名乗る謎の存在…

私は仮に存在Xと呼称する。この私をこんな目に遭わせた全ての元凶だ。

 

 

この悪魔が信仰心などという何の利益にもならんくだらないモノを私に持たせる為、

何億人もいる人類から私を選び、女として生まれ変わらせ、魔法と戦争のある世界へ送り込んだ。

 

 

苦境に追い詰め、私に魔法の才能と信仰心を植え付ける呪いの奇跡の力を与え、

あらゆる状況を整えて、何が何でも私に信仰心などというものを持たせようとしてきた。

 

 

だがある日、奴は全世界の危機が迫り、このままでは全ての世界が滅びると、

新たな別の世界、今度はSFのようなほぼ世紀末なこの世界へと私を送り込んだ。

 

 

しかし今度は転生ではなくそのまま送られたので身寄りも身元も無く、

どう生活すればいいか右も左もわからない時、私は閣下に出会った。

 

 

彼は人間では無く、宇宙人…いやエイリアンか?

フェストゥムと呼ばれる存在に転生したそうだ。

 

 

彼は私に自分の素性を明かし、読心能力で私の心を読んだと言った。

 

 

 

──君は信じられぬだろうが私はドイツ第15代首相、アドルフ・ヒトラーだ。

 

 

 

──君は普通の人間にはない…特殊な能力を持っているようだな。

 

 

 

──良ければ私と、少し話さないか?ーー

 

 

 

 

彼は言葉巧みに私を丸め込み、反乱軍代表直属の親衛隊に私を入れた。

 

 

高待遇かつ、高給。食事はそこまでうまくないが以前の帝国とは雲泥の差だ。

彼自身も聡明で有能な人格だ。好感を持てる。

 

けれど彼は私が後方に配属する願望を察知し、ことごとく先回りして前線に配備させる。

 

読心能力で私の心を読み、有能な兵士を遊ばせるほど余裕はないとの事だ。

 

腹立たしいが筋は通っている。存在Xと比べればぐうの音も出ない正論だ。

同じ心を読めながら、何故存在Xは私を納得出来る理論武装を用意出来ないのだ?

おそらく奴の正体はフェストゥムなのではないか?

 

 

部屋に戻る道すがら考え事をしていたが前の通路の陰に誰かが隠れていた。

 

 

「おい、そこにいるのは誰だ」

 

 

もしかして竜宮島の使節団か?

珍しいのは解るが勝手な真似をしないように釘を刺さねばな。

 

 

「使節団の者か、いくら同盟関係とはいえ勝手な行動は慎んでもらおう」

 

「アンタに会いに来たからな、女の部屋に勝手に入る趣味は無い」ぬっ

 

 

陰から出て来たのは竜宮島のメカニックである久保という男だった。

 

 

使節団は30人程いたがコイツの顔を見た第一印象から、絶対に忘れなかった。

何故なら私が元いた最初の世界、此処ではない日本ではコイツは創作の人物だったからだ。

 

 

「久保正樹、その名前は本名か?」

 

「おや?どうやら俺の事を知っているようだな、手間が少し省ける」

 

 

私は奴に気づかれぬよう拳銃の安全装置を外した。

拳銃ではあるが威力は20世紀のライフルと大差無い威力の上、

子供でも反動が少なく幾らでも撃てる。未来とは素晴らしいなクソッタレ。

 

 

「マテマテ、アンタは別の世界から来たんだろ?そういう意味では俺達はご同輩さ」

「何?同輩だと」

 

 

まさか気づかれるだと?それに同輩…なんの事だ…

もしや私まで別世界では創作だとでも言うつもりか?

別世界から来たとなれば創作の人物が居ても不思議ではない。

──証明終了。

 

 

「お前さん。神様かそれに似たなんかに会っただろ。

それを含めて俺達は世界を救うためこの世界に送られてきた。

頼まれた時にそう言われただろ、違うか?」

 

「ッ!?キサマ存在Xの手先かッ!!」

「存在Xゥ?なんだいそりゃ?」

 

 

あの悪魔をこの男は本当に神だと思っているのか?

だとしたら哀れだな。

 

 

私はこの世界に来た経緯を話してやった。

 

 

「ふん!あのような自己顕示が強いおかしな力を持つだけの男が神だとでも?」

「自己顕示?男?」

「惚けるな、キリスト被れの老人だっただろ」

 

 

男は考え込むそぶりをしたが直ぐに気づいたのか顔をあげる。

 

 

「ああ、違う違う。俺とアンタの神様は別人…別神様だ」

「別神様ぁ?」

 

 

嘘だろ…他にも同じようなのが何人もいるのか!?

 

 

「俺が出会ったのはメジェド様、それと声だけだがイイ男のファラオだったさ」

「メジェド…ファラオ…」

 

 

声だけで解るものなのか?情報を纏めてみるがこの男はエジプト神を語る奴に送られたらしい。

 

 

「そんな事なんて今はいいさ。それより自己紹介は必要かい?

俺はアンタの事は此処に来てからしか知らんのだが一方的なのはフェアじゃあ無い、だろ?」

「…いいだろう阿部高和。私は魔法のある世界で帝国軍人をしていた。

元は日本人だったが私は偽名ではない、女として生まれ変わる前の名は忘れた」

 

 

「お前さん男だったのかい?そっちの神様は随分偏屈なジイさんなんだなァ」

「もっと言ってやれ、あんなのだから信仰なぞ得られんのだ」

 

 

意外にも同じ境遇の者とこうして話すのも良いものだな。

 

男…阿部は驚いた顔だったが、周りに人の気配がないか確認し、

それが終わると真剣な表情で私に顔を近づけた。なんだ!?

まっ、まさか中身が男なら誰でもいいとでも言うつもりか!?

 

 

この男が出る創作ではコイツはゲイの同性愛者だ。

私は身の危険を感じ拳銃に手をかける。ヤられる前に()ってやる!!

 

 

「人に聴かれるとマズイ、何処か二人きりで話せる場所はないか」

「…それなら付いて来い。私の部屋なら誰も聴こえん、閣下でさえな」

「ヒュゥ♪そいつは良いじゃないの」

 

 

警戒はしたまま部屋まで案内をする。

この男が出る創作では普通の人間だったが、所謂二次創作と呼ばれる。

本作者以外が書いた物では大体コイツは化け物並の戦闘力があった。

存在Xと同等の存在に送られたのならそれほどの力があるのは間違いないだろう。

だからと言って話さないのは愚策だ。リスクを負ってでも情報を手に入れねば。

 

 

「此処だ、入れ」ガシャンッ

「ほォー…随分良い部屋じゃないか」

 

「閣下が私に対する特別措置だ。軍の唯一の少女兵として表向きはな」

「ふむ、こりゃあ対フェストゥム装甲だな。外で見た潜水艦の素材と同じだ」

「ほぉ?見ただけで解るか。閣下は人に紛れたフェストゥムへの対策もしておられる。

読心能力も防ぐ、ここは言うならば私と閣下との密談室だ。ダミーとして別の密談室もあるがな」

 

 

「こりゃ良い、ヒトラーに聴かれずにすむな」

「閣下に聴かれないのが何が良いのだ」

「やっぱり来てよかったよ。お前さん、何にも聞かされなかったんだな」

「聞かされなかった?」

 

 

此奴はそう言うと勝手に椅子に腰掛けて話し出した。

 

 

「オルフェノク型は本来この世界に存在しない。別世界…未来…

詳しい事は俺にもわからん。だがそこから来たナニカが原因で生まれたものだ」

「なんだとっ!?それは本当かっ!?」

 

 

つまり閣下も私と同じ存在だと言う事か!?

 

 

「話しは最後まで聞いてくれ。そうだな…そこが世界危機のミソなんだ。

一つの世界から幾つもの世界が混ざり始めている。俺とお前がいい例だ」

「……続けろ」

 

 

「問題は30年以上前、フェストゥムの襲来が全ての始まりだった。

とあるスフィンクス型が一人の人間を取り込み、同化に失敗した。

そこからそのフェストゥムがミールに知らせ、オルフェノク型が生まれる要因になった。

オルフェノク型は人間が転生したんじゃない。死んだ人間を取り込み、

その意識が死んだ人間の意識と混ざって生まれ変わったと誤認しているのが彼らだ」

 

 

 

 

 

私は今日、()()を知ってしまうのだろう。

 

 

 

 

 

「オルフェノク型は別世界にも影響を及ぼす。

生み出した原因の人間と起こるであろう未来(IF)の現象。

それを突き止め、問題があるなら解決するのが俺達の使命だ」

 

 

 

 

 

やめろ

 

 

 

 

 

「オルフェノク型は七つの大罪を元に7体のフェストゥムが存在する。

『暴食』『色欲』『強欲』『憤怒』『怠惰』『傲慢』『嫉妬』、

オルフェノク型に、別世界の神々は使徒を送った。愛を持つ人間、俺達を」

 

 

 

 

 

知りたくない

 

 

 

 

 

「俺は今エジプトに居るオルフェノク型のネフェルタリ、司るは『色欲』、

俺は彼女の使徒だ。愛は『性愛』。同が付くがな」

 

 

 

 

聞きたくない

 

 

 

 

「俺が知る限り、イギリスのが『憤怒』、アジアのが『強欲』だな。

『憤怒』は人類軍に洗脳された使徒に倒されてしまった。お陰で使徒の愛もわからん。

『強欲』に至っては自殺だ。使徒の愛どころか使徒が何処に居るのかも皆目見当がつかない」

 

 

 

 

それを知った私は───

 

 

 

 

「ここにいるヒトラー、彼はおそらく『傲慢』だ。

……男だったならシャキッとしろ。お前の愛は───

 

 

 

 

 

『敬愛』だろう?

 

 

 

 

 

 

 

一体、どうすればいい?

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーーその日、貴い人が、儚く散って逝く、戦場の悪夢を見た。ーーー

 

 

 

私はこの日、初めて自分以外の死に、恐怖を覚えた。




筆が遅くてすまない…
どうやらこれが僕の限界のようだ…



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