EX-AID・A・LIVE ~SPIRITS LOVERS~ (エルミン)
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第0章 設定とSP話コンテンツ
登場人物、設定紹介(2020/7/30 追記・修正)


追記・修正がされたら、タイトルの横に日付を書いておきます。


ライダー side

 

 

○五河 士道 / 仮面ライダーエグゼイド

 

主人公。基本は原作と同様。

容姿は、原作より少し背が高く、凛々しい感じになっている。

 

別名、天才ゲーマー『S』。中学二年生になってからは、プライベート以外ではゲームをしなくなった。

 

普段の性格は原作と変わらず、少し口は悪いが優しい心の持ち主。幼い頃に母親に捨てられ、五河家に引き取られた。

 

その為、他人の絶望や悲しみに敏感で、その人を救いたいという気持ちが強い。

 

ゲームをするときやバグスターとの戦いの時は、Sの人格になる。

 

S人格の時は普段以上に大胆不敵で好戦的な感じになるが、優しさは変わらない。

 

 

決め台詞は、「ノーコンティニューでクリアする!」

レベルアップ台詞は、「第○変身!」

 

 

 

○風鳴 栞 / 仮面ライダーレーザー

イメージCV 小倉 唯

 

ヒロインの一人。

 

士道が仮面ライダーになる切っ掛けとなった少女。日本人とドイツ人のハーフ。性格は明るく、甘い声が特徴。

 

シンフォギアシリーズに登場する、風鳴一族の一人。後述の母親に良く似ている。父親はS.O.N.G.司令官の、風鳴 弦十郎。

 

語尾に「~です」「~なのです」と付けて話すが、たまに普通に話すこともあるらしい。

 

何故か既に士道の事を知っており、士道とはすぐに仲良くなった。

 

 

士道を知っているのは、幼い時に車に轢かれそうになった所を助けてもらったから。ただし、代わりに士道が轢かれてしまい、ショックで一時的に記憶を失っていたが後に思い出した。

 

実は、上記の性格は姉の「風鳴 薫」の真似をしていただけであり、本来の性格ではない。

 

プロトガシャットを使い、仮面ライダーとして戦っていた薫は四年前にゲームオーバーで消滅。

 

その姉の証を残すために姉のように振る舞い、戦っていた。しかし、士道の励ましを受けて立ち直り、本当の自分に戻る。

 

ギリギリチャンバラガシャットを獲得。同時に、士道への好意が更に強くなった。

 

 

決め台詞は、「アクセル全開!」

レベルアップ台詞は、「○○・ギア!」

 

 

○鳶一 折紙 / 仮面ライダーブレイブ

 

ヒロインの一人。

 

デアラ原作の歴史改変後の時と同じく、普通の少女の性格になっており、髪を伸ばしている。

 

既に士道に恋心を抱いていて、士道の事で一喜一憂する普通の女の子な感じだが、何故か士道に対してのみ無意識に(体が勝手に)変態行為をしてしまう事がある。

 

ASTにいたが今は辞めている。物語開始の一ヶ月前に仮面ライダーになった。

 

 

決め台詞は、「切除開始!」

レベルアップ台詞は、「ステージ○!」

 

 

○時崎 狂三 / 仮面ライダースナイプ / 仮面ライダープロトスナイプ

 

ヒロインの一人。四年前の過去を描く「第SP話」の主人公の一人。

 

精霊《ナイトメア》であり、仮面ライダーでもある。狂三も士道を既に知っている。謎多き美少女。

 

決め台詞は、「ミッションスタート!」

レベルアップ台詞は、「第○弾!」

 

 

○風鳴 薫 / 仮面ライダープロトレーザー

イメージCV 佐倉 綾音

 

四年前の過去を描く「第SP話」のもう一人の主人公。

 

母親のような医者になるために、医療の大学に通う大学一年生。以前から医学の勉強をかなりしており、知識は多い。

バグスターウィルスの存在を知り、仮面ライダーとなった。

 

 

明るく元気一杯な性格。狂三に「くーちゃん」というニックネームを付けた。

 

狂三に良い影響を与えた人物で、狂三が原作以上に善き人物になったのも薫のお陰。

 

狂三とコンビを組んで戦っていたが、グラファイトとの戦いでゲームオーバーとなって消滅してしまった。

 

 

○夜十神 十香

 

原作メインヒロイン。この小説でもメインヒロイン。

 

精霊《プリンセス》。

 

原作と同じく、士道に自分を受け入れてもらえて、救われた。

 

無自覚だが、士道に恋心を抱いている。

どんな事があっても、必ず士道の味方になると誓っている。

 

 

○五河 琴里

 

ヒロイン。士道の義妹。最初は原作と変化は無かった。

士道が仮面ライダーとして戦っている事を知ってから、黒リボンの時でも、士道にものすごく優しくなった。

 

士道を異性として愛していて、彼を大切に思っている。

 

 

○四糸乃

 

ヒロイン。基本は原作通り。

 

精霊《ハーミット》。

 

自分を助ける為に一生懸命頑張ってくれた士道を、よしのんと同じく自分のヒーローと思うようになり、士道に全幅の信頼と恋心を抱く。

 

 

○八舞 耶倶矢・八舞 夕弦

 

ヒロイン。基本は原作通り。

 

精霊《ベルセルク》。

 

耶倶矢は、中二病成分が原作より少し弱めになっていて、「元気な普通の女の子」といった感じが強くなっている。

 

夕弦も基本は変わらないが、感情の表現が原作より豊かになっている。

 

 

○誘宵 美九

 

ヒロインの一人。原作と異なり、士道とは中学生の時に既に会っており、その時に士道に救われてから「だーりん」と呼んでいる。

 

士道への好意は、隠さずにストレートに伝える。

原作よりはマシだが、士道以外の男性に苦手意識がある。

 

ドレミファビートのバグスターウィルスに感染しているが、症状は全く出ておらず健康体そのもの。理由は不明。

 

 

 

その他 side

 

 

○村雨 令音

 

基本は原作通り。ラタトスクの解析官。

精霊とのデートやバグスターとの戦いで士道をサポートする決意をしている。

 

琴里とは親友で、フラクシナスクルーの皆から信頼されている。時折、士道を慈しむ目で見ている事があるらしい。

 

 

○神無月 恭平

 

基本は原作通り。フラクシナスの副司令官。

 

ドMな変態だが、指揮は優秀。変態ではない時の彼は「優しい大人」であり、士道達にも慕われている。

 

 

○風鳴 弦十郎

 

紅牙絶唱からのゲスト出演。

シンフォギアシリーズの登場人物であり、薫と栞の父親。S.O.N.G.司令官であり屈強な漢でありOTONA。

 

士道を信頼し、栞との交際を認めている。早速義息子と呼ぶくらい気に入ったらしい。

 

 

○風鳴 エレナ

 

イメージCV 大原 さやか

 

薫と栞の母親。旧名はエレナ=アルフォード。

 

ドイツ人であり、医者になるのを夢見て医療技術がかなり発達している日本に来日。医療を学び医者となった。

 

母親は科学者であるため、科学知識も豊富。日本で風鳴 弦十郎と運命の出会いを果たして、結婚。

 

エレナもCRの一員であり、士道達をサポートする。

 

 

江原(えはら) 剛太(ごうた)

 

CRの責任者であり、天宮総合病院の院長。筋肉逞しいオカマ。

 

明るく、ムードメーカーのような感じで堅苦しさを感じさせない好人物。

 

医師としての腕はかなり優秀で、困難な手術や治療を数多くこなしてきた凄腕。

 

医学の知識も豊富で、時に若い医師達に教鞭を振るう事がある・・・だがオカマだ。

 

なぜオカマなのかは、本人が語らないので不明。

 

 

◯日向 恭太郎

 

基本は、エグゼイド本編と同一。

 

元医者で衛生省の創設者にして大臣官房審議官。昔、栞を庇って轢かれた士道の命を救った命の恩人。

 

 

○殿町 広人

 

士道の中学生からの親友であり、ゲーム仲間。お調子者で女の子が大好きだが、相手を思いやれる心の持ち主。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

敵 side

 

 

○檀 黎斗/仮面ライダーゲンム

 

幻夢コーポレーション社長。ゲーマドライバー、ライダーガシャットを開発した。

 

しかし、実際はバグスター側の存在であり、パラドやグラファイト達と暗躍を続けている。

 

二章七話で、士道達に正体と目的を明かして姿を消した。

 

レベルアップ台詞は、「グレード○!」

 

 

○パラド

 

バグスター参謀役。

 

 

○グラファイト

 

バグスターの隊長クラスの戦士。

 

スナイプである狂三とは、因縁がある。基本は原作と変わらないが、ファンガイアから短剣を受けとり、武器として使用している。

 

第二章六話で、レベル5になった四人のライダーと戦い倒された。

 

 

⚪短剣

 

ファンガイアが魔術や錬金術で作った短剣。共存反対派のファンガイアから、バグスターウィルスを提供してくれた礼として受け取った。

 

強大な力を秘めていて、天使の攻撃に匹敵する威力を出せる他、斬撃武器としても使用可能。

 

威力を上げれば上げるほど体への負担が大きくなる。グラファイトが倒された後、パラドが回収した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

○用語紹介

 

 

⚪バグスターウィルス

 

人間に感染することで成長するミクロ型のコンピュータウイルス。

 

感染した人間のストレスを元に増殖。バグスターウィルス感染症・・・通称、ゲーム病を発症してしまう。

 

 

⚪ゼロデイ

 

本編開始の五年前に発生した、バグスターウィルスによる人間の大量消失事件。

 

幻夢コーポレーションが開発したゲームから発生したバグがバグスターウィルスに変化。テストプレイヤー達を消してしまう。

 

 

⚪幻夢コーポレーション

 

天宮市に存在する、ゲーム開発会社。今では日本を代表する大手ゲームメーカーとなっている。

 

ゼロデイでのバグスターウィルス発生に伴い、衛生省の協力の元で、ゲーマドライバーとライダーガシャットを開発する。

 

 

⚪衛生省

 

日本政府が立ち上げた省庁。

 

前述のゼロデイが起こり、バグスターウィルスの存在が日本政府に発覚してから、CRの設立や幻夢コーポレーションへの協力等、色々な対策をとっていく。

 

ちなみに、この衛生省設立には国防を担う"風鳴一族"が関わっている。

 

 

⚪電脳救命センター

 

英語名でCyberbrain Room・・・通称、CR。

天宮総合病院の地下に存在し、バグスター対策組織の本部でもある。

 

バグスターウィルスの感染者を保護したり、バグスターと戦う仮面ライダーをサポートしてくれる所。

 

ラタトスクと同盟を結び、共に様々な事に対処していく事になる。

 

 

⚪ラタトスク

 

精霊との対話による空間震の平和的な解決を目指して結成された組織。

 

原作と同じく、最新鋭空中艦のフラクシナスを主な拠点として使用。士道のサポートを行う。

 

バグスターウィルスの存在を知ってからはCR及び衛生省と同盟を結んで、バグスターとの戦いにも協力するようになる。

 

 

⚪風鳴一族

 

シンフォギアシリーズに登場する、昔から国防を担う一族。シンフォギアが原作の「紅牙絶唱」と世界観共通であるため、こちらにも登場する。

 

風鳴一族は、バグスターウィルスを国を脅かす脅威と認定し、政府と協力して衛生省を設立。

 

日向 恭太郎と協力してCRを設立。風鳴 エレナ、薫、栞の三人を天宮市に向かわせてバグスターウィルスの対策に当たらせている。



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第SP話 狂三のエピソードZERO・1

このSP話は狂三が主役であり、狂三が初めて仮面ライダーになった時の出来事となります。



ある日。時崎 狂三は、天宮市の崖の上にある高台まで来ていた。

 

高台にて、狂三は敵と対峙していた。その敵は、人の形をしているが不安定なようでユラユラと揺らいでいる。

 

 

「・・・・・・バグスターウィルス、それが全ての始まり。そして檀 黎斗が悲劇を加速させた」

 

一人呟く狂三。ゲーマドライバーを装着し、ガシャットを構える。

 

そのガシャットは二本。一本はバンバンシューティング。

 

もう一本は、カラーリングは青緑色で、ラベルにはスナイプの使用する「バンバン」シリーズに共通して登場している軍人キャラクターが戦車に乗っている絵が書かれている。

 

「バグスターウィルスがこの世にあるから・・・精霊の力がこの世にあるから、わたくしは()()()()を失った」

 

その時の悲しみは、今も忘れられない・・・忘れてはならない。

 

《バンバンシューティング!》

《バンバンタンク!》

 

二本のガシャット・・・バンバンシューティングとバンバンタンクを起動してゲーマドライバーに刺して・・・。

 

「変身」

《レベルアップ!》

 

狂三はスナイプの、新たな姿に変身する。

 

 

その最中、思い出すのは四年前。ゼロデイが起こった一年後である。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

西暦2040年。

 

 

檀 黎斗は仕事を終えて、幻夢コーポレーション社長室へと戻った。

 

すると、社長が座る筈の椅子に一人の少女が座っていた。

 

黒とオレンジの服装に身を包み、長い黒髪を降ろし、左目を長い髪で隠している。

 

 

「君は・・・何者だい?」

「わたくし、精霊ですのよ」

 

黎斗の問いに、少女は薄く笑いながら答えた。

 

 

「精霊・・・」

 

「空間震を引き起こす元凶であり、世界を滅ぼす特殊災害指定生命体・・・というレッテルを貼られてしまっているかわいそうな女の子ですわ」

 

ヨヨヨ、と泣く少女。黎斗はそれが演技だということは見抜いていた。

 

 

「それで、その精霊さんが何のようかな?」

 

「あらあら、つれないですわ・・・・・・用というのは、簡単に言うならば"滅菌"のお手伝いがしたいという感じですわ」

 

「滅菌・・・?」

 

 

「バグスターウィルス」

「・・・・・・!」

 

「わたくし、知っていますわよ。バグスターウィルスの事も、そこから生まれる怪人であるバグスターの事も。私は情報収集が得意なんですの」

 

「それで?」

 

「あなたがバグスターと戦うための力も開発したという情報も掴んでいます。ライダーシステム、でしたっけ。それをわたくしに下さいな。

 

もちろん、タダでよこせとは言いませんわ。戦闘データ収集の為に私が被験者となりましょう。ギブアンドテイク、というやつですわ」

 

黎斗は少し考えて答えを出した。

 

 

「良いでしょう。私も精霊という存在が仮面ライダーになったらどうなるか、ということに興味がある。その申し出を受けよう」

 

「ありがとうございます。契約成立ですわね・・・では、なりましょう。仮面ライダーとやらに」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後、狂三は戦えるかのテストを受けて合格。"適合手術"を受けて仮面ライダーとなる資格を得た。

 

黎斗から二つの物を受け取った。

 

 

一つはゲーマドライバー。もう一つは、下部が黒くてモノクロの絵が書かれているガシャット・・・プロトガシャットだ。

 

プロトガシャットの一つ、"プロトバンバンシューティング"とゲーマドライバーを手に、狂三は微笑んだ。

 

「今後のあなたの活躍に期待しますね、時崎さん」

「えぇ、お任せくださいな」

 

一礼して部屋を出る狂三。黎斗一人となった部屋の中に、もう一人の男・・・パラドが現れる。

 

 

「良いのか?あの女、お前の黒さに気付くかも知れないぞ」

「バレないようにするつもりだ。念のため君にはしばらくの間、私への接触は控えてもらう」

 

「はいはい。やっと決まった俺達の敵、どんな奴かを見ているだけで面白そうだ」

 

笑いながらパラドは姿を消した。

 

 

「相手が誰でも、私の計画は止められない」

 

黎斗は机の引き出しから一冊のファイルを取り出す。そこには、もう一人の適合者候補のデータが書かれた紙が入っていた。

 

 

「君達は、私の計画の為の"駒"なのだから」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

幻夢コーポレーションを出た狂三は影の中に潜り、一瞬でお気に入りのビルの屋上へとワープした。

 

受け取ったプロトバンバンシューティングガシャットを見ながら考える。

 

 

狂三はゼロデイが起こったこと、バグスターウィルスの存在を知ったことで、自分の目的の邪魔になると判断。

 

バグスターウィルスと戦うために更に情報収集を行い、幻夢コーポレーション、そして仮面ライダーの存在にたどり着いた。

 

狂三の精霊としての力は強力だが、使うには"時間"を消費しなければならない。

 

狂三にとって"時間"を消費すること無く戦える力である仮面ライダーは、喉から手が出るほどに欲しかった力。故にこうして入手した。

 

 

(ですが、あの社長・・・・・・)

 

黎斗の笑顔の裏に黒い何かを感じ取った狂三は、自分の影から"もう一人の狂三"を呼び出した。

 

 

「わたくし。念のため、壇社長についてもう少し調べていただけます?」

「かしこまりましたわ、わたくし」

 

もう一人の狂三・・・分身体は言われた命令をこなす為に外に出た。もう一人の狂三が去り、再び狂三一人になる。

 

ビルの屋上から見える天宮市の風景は変わらない。だが、バグスターウィルスという驚異が蔓延しているのは事実。

 

 

「わたくしの目的・・・必ず成し遂げて見せますわ」

 

自身の目的の為に、狂三は新たな力を得た。それは狂三に何をもたらすか・・・?

 

 

 




次回予告


プロトスナイプとしてバグスターと戦っていく狂三。そんな中で、もう一人の適合者となった少女に出会う。


第SP話② 狂三のエピソードZERO・2


「これからが不安ですわ・・・」


ーーーーーーーーーー

次回はもう一人の適合者と、狂三の交流となります。


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第SP話 狂三のエピソードZERO・2

久し振りに、SP話の更新です。


時崎 狂三が、ゲーマドライバーとプロトバンバンシューティングガシャットを手に入れて数日。

 

狂三はその間に一人のゲーム病患者の治療の為に、感染者から出現したバグスターユニオンと戦おうとしていた。

 

狂三はゲーマドライバーを装着し、プロトバンバンシューティングを銃のように持って、人差し指でスイッチを押す。

 

 

《バンバンシューティング!》

 

モノクロのタイトルが表示され、ゲームエリアが展開。エナジーアイテムを収納したドラム缶も複数個現れた。

 

狂三はガシャットを銃を回すように器用にクルクルと回し、回転を止めて構える。

 

そして、ゲーマドライバーにガシャットを入れた。

 

 

「変身」

 

《ガシャット!レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?》

 

《アイム ア カメンライダー!!》

 

全身がモノクロの、仮面ライダースナイプ・レベル1に変身した。

 

《ガシャコンマグナム!》

ガシャコンマグナムを持ち、銃口をバグスターユニオンに向ける。

 

「ミッションスタート!」

 

 

狂三がエネルギー弾を放つ。それは全弾命中してバグスターユニオンにダメージを与えたが、バグスターユニオンは狂三に突進攻撃を繰り出す。

 

突進を横に飛んでかわし、レベル1特有の身軽さを駆使して翻弄。

 

狙いの定まらないバグスターユニオンに隙を見てエネルギー弾を撃ち、ダメージが蓄積したのを見計らい、一旦止まって体を高速回転させる。

 

すると、弾丸型のエネルギーを纏った状態になり敵に突撃。その強力な攻撃によってバグスターユニオンは爆発、倒された。

 

同時に、患者の体からもバグスターウィルスの消滅がCRでも確認された。

 

バグスターユニオンが倒された事を確認して、狂三はガシャットを抜いて変身を解いた。直後・・・。

 

「くっ・・・!?」

狂三は突然苦しむように呻き、膝を付いてしまう。

 

これは、プロトガシャットを使用した"副作用"だ。プロトガシャットの力は強いが、体に負担が掛かる。

 

「体に負担が掛かるとは聞いていましたし、覚悟もしていましたが・・・・・・これほどとは」

 

体に掛かる負担が予想よりも大きく、狂三は少しの間動けなかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

その後、ようやく動けるようになった狂三はCRによって報告と患者の見送りを済ませ、外に出てから誰もいない所で立ち止まる。

 

すると、精霊の能力で生み出した分身態と合流。以前依頼した黎斗についての報告を受けた。

 

「わたくし、どうでしたの?」

「見張りを始めて数日。檀社長には怪しい所は全くありませんでしたわ。普通に仕事をしていましたわよ」

 

「・・・・・・そうですか。では、引き続き監視の続行を」

「かしこまりましたわ」

 

狂三の分身態は一礼し、去っていく。その後で、狂三は幻夢コーポレーションに立ち寄り、黎斗と直接話していた。

 

 

「時崎さん。仮面ライダーに変身しての戦闘はいかがだったかな?」

「やっぱり、体に掛かる負担が問題ですわね。何とかなりませんの?」

 

「申し訳ない。今の技術ではそれが精一杯なのだが、もっと研究して技術も向上すれば、体に負担なく使えるガシャット・・・正規版を開発したいと考えているんだ」

 

「なら、その為にもっと変身してデータを寄越せ・・・と。まぁ、以前言った通りギブアンドテイクですわね」

 

「副作用については、今後調整をして少しでも減らしたいと考えている。

少しでも長く使ってもらいたいし、そうすればもっと多くのデータを得られる。確かに、ギブアンドテイクだね」

 

「そうですね。まぁ、負担が減るならありがたいですわ、是非お願いしますわね」

「承知した」

 

 

一礼して部屋を出る狂三。黎斗はパソコンに送られている戦闘データに目をやる。そして、プロトガシャットを調整する準備を始めた。

 

狂三を利用しているとはいえ、長く使ってもらいデータを多く得たいというのは、嘘偽り無い本音であるからだ。

 

すると、社員の者がやって来て、例の人物が来たと告げる。黎斗はすぐに通すように伝えると、その人物が入ってきた。

 

黎斗は笑顔で迎え入れた。

 

「ようこそ、新しい適合者。君を歓迎するよ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

狂三は幻夢コーポレーションの屋上で風に当たっていた。

 

「やはり、簡単には尻尾を掴ませてくれませんか・・・いえ、それともわたくしの考えすぎですの?」

 

黎斗の黒い部分は掴めず。まぁ、時間がかかるだろうと思い待つことにした。その時・・・。

 

 

「こんにちは~なのです♪」

「きゃっ!?」

 

突然、誰かが自分の腕に抱きついてきた。思わず可愛い悲鳴を上げてしまう狂三。

 

その人物はすぐに離れて、狂三の正面に立った。

 

 

肩までまで伸びているセミロングで赤銅色の髪は、空から降り注ぐ太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。着ている服は、白いTシャツに赤いフレアスカート。

 

「初めまして!あなたが檀社長が言っていた適合者の人?とっても可愛いのです!」

 

「・・・まさか、あなたも?」

 

「はいなのです!新しく適合者になった風鳴(かざなり) (かおる)といいます、よろしくお願いするのです!」

 

ビシッと敬礼していながら、満面の笑顔で挨拶をするこの少女・・・風鳴 薫。薫こそ、狂三に続く二人目の適合者だ。

 

薫はゲーマドライバーとプロトガシャットを取り出して見せた。

バイクレースゲームの、プロト爆走バイクガシャットだ。

 

 

「そうでしたの・・・わたくしは時崎 狂三と申しますわ。スナイプという銃撃の仮面ライダーですわ」

「はいなのです!」

 

薫が握手を求めて手を差し出す。狂三もそれに応じた。それから。

 

 

「それでですね、私には妹の栞っていう子がいるんですけど、これが本当に可愛いのです!あの子の笑顔だけでご飯が進むのです!」

 

「はぁ・・・」

 

薫と狂三の会話となったのだが、薫が一方的に話しており、狂三は相槌を打つだけであった。

 

薫の勢いに飲まれ、全く対応出来ないからなのだが、薫についてはある程度把握できた。

 

薫は日本の国防を担う「風鳴一族」の一人である。

 

自分の信念から、医者になるために医療の大学に通う大学一年生である事。妹が大好きである事。好きなものはバイクとスイーツ・・・等々の話を。

 

(こういう人は、少し苦手ですわ・・・)

 

薫のような人物と接するのは少し苦手なのだが、話が終わるまで離れられなさそうなので、相槌を打っていた。

 

 

「それで、時崎さん・・・いいえ、これからは"くーちゃん"と呼んで良いですか?」

 

「はぁ・・・・・・はぁ!?くーちゃん!?」

 

「だって、名字だとちょっと呼びづらいですし。これからは一緒に戦うパートナー同士なのですから、もっと親しくしたいのです!」

 

「だからって、くーちゃんは・・・!しかもパートナーって決定事項ですの!?」

 

「えへへ~。一緒に戦うパートナーが、くーちゃんみたいな可愛くて綺麗な子で嬉しいのです♪」

「・・・・・・」

 

薫は満面の笑顔で、本当に嬉しそうに語る。

 

 

「これからが不安ですわ・・・・・・」

狂三はこれからの事に不安しか感じなかった。

 

しかし、この時の狂三は知らなかった。

 

風鳴 薫とは、狂三にとって新たな親友と呼べる程に強い絆で結ばれる事を。

 




次回予告

バグスターに対して、コンビで戦う事になった狂三と薫。薫は狂三と仲良くなりたいと思い、自ら歩み寄っていく。


第SP話 狂三のエピソードZERO・3


「ノリノリで行っちゃうのです!」

ーーーーーーーーーー

薫を本格的に登場させました。シンフォギアシリーズに出てくる風鳴一族の一人でもあります。

そして、薫は医療の大学に通う大学一年生としました。

一章八話の薫についての説明も、大学生であるという説明を追記しました。


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第SP話 狂三のエピソードZERO・3

お待たせいたしました!短いですが、投稿いたします。

ある程度、話の書き溜めしていたりで遅くなりました。



「くーちゃん!一緒にお出かけするのです!」

「お出かけ・・・ですの?」

 

時崎 狂三と風鳴 薫が出会ってから二日後。天宮総合病院の敷地内にあるベンチに二人は並んで座っていた。

 

ちょっとした世間話をしていたら、薫から遊びに行く話を切り出されたのだ。

 

「次のお休みの日に、一緒にお出かけなのです!お洋服見たりスイーツ食べたりしたいのです!」

 

「・・・すみませんが、わたくしは・・・」

断ろうとした途端、薫はショックを受けて顔面蒼白になり・・・。

 

 

「ヴェアァァァァァァァァァァァ!!くーちゃんに断られたあぁぁぁぁ!!」

 

奇声を上げて倒れた。

 

「イメージCVネタは、お止めなさい!」

「メタアァァァァァァァァァァァァ!」

 

またもや奇声。薫の喉は大丈夫なのか?と思いながらも、このままだと奇声続きになるのでは?という不安から渋々ながらも了承することにした。

 

「・・・・・・はぁ、わかりました。ご一緒いたしますわ」

「よっしゃあ!約束なのですよ!」

 

瞬間、元気に跳ね起きる薫。狂三はもう一度、小さなため息を吐いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

休みの日当日。狂三は黒い私服を着て待ち合わせ場所に来た。すると、既に薫が来て待っていた。

 

白いワンピースに薄い上着を着ている姿で、幼い印象の多い薫によく似合っている。

 

「風鳴さん」

「あ、くーちゃん!」

 

薫が狂三に駆け寄る。

 

「お待たせいたしましたわ」

「大丈夫なのです!それにしても・・・くーちゃんの今日の服装はとっても似合ってるのです」

 

「ありがとうございますわ。風鳴さんも中々お似合いですわ・・・・・・どうしましたの?」

 

薫の服装を誉めたが、薫は不機嫌そうにぷくーとほっぺを膨らませている。

 

「くーちゃん、私達は一緒にバグスターと戦う仲間でお友達なのですよ?だから、私の事は薫って呼んでほしいのです」

 

「それは・・・」

「呼んでくれないなら・・・・・・チューしちゃうのですよ?」

 

「はぁ!?風鳴さん何を言って」

「ん!」

 

また名字で呼んだ狂三に、薫は勢いよく顔を近づけて唇の前で寸止めをした。

 

狂三は少し気圧されながらも、観念して呼び方を変えた。

 

「・・・わかりましたわ、薫さん」

「・・・!やったーーー!」

 

ようやく名前で呼んでもらえて、喜びはしゃぐ薫。狂三は呆れながらも、悪い気はしていなかった。

 

薫は喜びのまま、狂三と手を握って走り出す。

 

「薫さん!?」

「ノリノリで行っちゃうのです!」

 

こうして、二人のデートは始まった。

 

 

デートといっても、女の子同士のお出かけな感じだった。

 

新作スイーツを堪能したり。

 

「さぁさぁ、くーちゃん。あーんなのですよ♪」

「・・・あーん」

 

洋服を見て回ったり。

 

「薫さんなら、こちらの方がよろしいのでは?」

「はぅ!可愛いのですけど・・・」

 

「ですけど?」

「予算オーバー・・・」

「あー・・・」

 

その後に、薫のペースに巻き込まれっぱなしなのは癪だから、という理由で薫を下着コーナーに連れていき、逆に翻弄していく。

 

「薫さん。淑女たるもの、こういう下着も着こなさないといけませんわ」

「わ、わぁぁ・・・すごいのです・・・」

 

「ふふ、他にはこういうのも・・・」

「わ、わぁぁ・・・もっとすごいのです・・・」

 

顔を赤くして、普段と違い大人しくなった薫を見て、してやったりな笑みを浮かべた狂三だった。

 

そんな感じで二人のデートは順調に進んでいった。

 

 

 

夕方、デートを終えた二人は並んで帰路を歩いていた。

 

「くーちゃん、今日はありがとうなのです!とっても楽しかったのですよ」

 

「そうですか・・・それは良かったですわ」

 

「くーちゃんも、今日は楽しんでくれたのですか?」

「・・・・・・そうですわね」

 

狂三は今日の事を思い返す。一緒に色んな店を見て回って、薫に振り回されて時にこっちが振り回して。

 

そんな普通の女の子のように日常を楽しむ事は、自分が精霊になってしまった時からどれくらいぶりだろうか?

 

「・・・・・・えぇ、わたくしも楽しめましたわ」

「良かったのです!」

 

本当に嬉しそうに笑う薫。

 

 

 

その瞬間、狂三には一瞬だけだが過去に失ってしまった大切な親友の姿が、薫に重なったように見えた。

 

 

 

「・・・・・・」

 

それは本当に一瞬だったが、狂三は忘れかけていた暖かいものが心に満ちていく事をハッキリと感じた。

 

「薫さん」

「はい?」

 

「もし・・・・・・時間が出来たら、また一緒にお出かけするのも悪くないかもしれませんわね」

 

「・・・・・・!はい、もちろんなのです!また一緒にお出かけしたいのです!」

 

本当に嬉しそうな、心からの笑顔になる薫。そんな薫を見て、狂三も自然と笑顔になっていた。

 

そんな二人を、夕日が優しく照らしていた・・・。

 




次回予告

バグスターとの戦いで、狂三と薫は初めてコンビで戦うことになった。


第SP話 狂三のエピソードZERO・4


「派手に撃ちますわよ!」



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第SP話 狂三のエピソードZERO・4

久し振りのエピソードZEROです。


狂三と薫のデートから数日。二人はCRの中におり、一緒にジュースを飲んでいた。

 

「くーちゃん、リンゴジュースをどうぞなのです」

「えぇ、ありがとうござい・・・・・・薫さん、これは何ですの?」

 

「え?美味しいのですよ」

 

「・・・"ニューステージな白銀リンゴ味"って何ですの?白銀リンゴなんて知りませんわ」

 

「飲まず嫌いはもったいないのですよ~」

「・・・薫さんのは、"禁断の果実な赤リンゴ味"って、神話に出てくるやつですか?」

 

「気にせず飲んでみるのです・・・ごくごく・・・美味しい!」

 

「不味かったら薫さんにも飲ませますからね・・・ごくごく・・・・・・美味しいですわ」

 

「ちなみに、滅多に店に並ばないレアの"金メッキな黄金リンゴ味"、"ダークネスな黒リンゴ味"もあるのですよ」

 

「金メッキな時点でパチモンですわ・・・・・・後、黒リンゴってどう考えても、熟しきって腐ったリンゴですわよね」

 

「ふふ、くーちゃんは律儀にツッコミを入れてくれるから、ボケがいがあるのです」

 

「ぶっ倒しますわよ?」

 

やーん、と笑いながらジュースを飲む薫と呆れながらも笑顔でジュースを飲む狂三。

 

二人は精霊や仮面ライダーなど関係なく、良き友人同士の姿であった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

翌日。

 

ゲーム病を発症した患者が見つかり、急遽CRに運ばれた。しかし、診察中にバグスターユニオンが出現。

 

「全く、このバグスターも大きいですこと」

「ちゃっちゃとやっつけるのですよ。でも・・・」

 

「何ですの?」

「くーちゃんと一緒に戦うのは初めてだなぁって。何か嬉しいのです!」

 

「・・・・・・もぉ、さっさと始めますわよ」

 

ほんのりと頬を染める狂三は、照れ隠しにゲーマドライバーを装着。薫も微笑みながらゲーマドライバーを装着。

 

《バンバンシューティング!》

《爆走バイク!》

 

「「変身!」」

 

プロトガシャットを起動してゲーマドライバーに入れて変身。レベル1となり、ゲームエリアにバグスターごと送る。

 

 

バグスターユニオンは体を回転させて二人に突進してくるが、跳んでかわす。

 

「派手に撃ちますわよ!」

 

狂三はガシャコンマグナムから、薫はタイヤからエネルギー弾を放って攻撃する。

 

しかし、ユニオンはダメージを物ともせず迫ってくる。

 

「薫さん!」

「はいなのです!」

 

お互いに声を掛け合うだけで、何をするかが伝わる。

 

もう一度突っ込んでくる所をかわし、今度は二人一緒に同時に攻撃を叩き込む。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

マグナムの銃身とタイヤの全力同時打撃によって、ユニオンが仰向けに倒れる。

 

トドメに、狂三はエネルギーを纏って銃弾のようになってユニオンに向けて体当たりをくり出した。

 

薫も足に力を入れ、高くジャンプ。上空から力を込めて両手のタイヤを投げて更に落下の勢いも加えたキックを当てる。

 

ついにユニオンを撃破、患者の治療に成功した。

 

二人は着地して、プロトガシャットを抜いて変身を解く。プロトガシャットの負担でよろけるが、二人で肩を組んで、お互いを支え合う。

 

「やったのですよ!私達は無敵のコンビなのです!」

「まぁ・・・悪くなかったですわね」

 

「え~、本当は最高って思ってるですよね?」

「そんな事・・・・・・無くは無いですわ」

 

ほんのり頬を赤く染めながら、少しだけ本音を出す狂三。嬉しさから、もっと狂三に密着する薫。二人の今日のオペはこれで終わった。

 

 

 

 

 

 

 

筈だった。

 

 

二人の背後から、突如()()()のバグスターユニオンが出現し襲いかかって来たのだ。

 

「「二体目!?」」

驚きながらも、二人はもう一度変身しようとする。しかし、先程の戦いの負担で思うように動けない。

 

ユニオンの攻撃が二人に当たると思われたその時、一本の剣が飛んできて、ユニオンの攻撃しようと伸ばしていた腕に命中。

 

そのまま腕を切り裂き、床に刺さる。ユニオンが一旦後退する。

 

剣を投げたのは、医師の白衣を着た女性。二十代後半くらいだろう。黒い髪をポニーテールに纏めていて背も高く、目付きも鋭い。

 

「あの患者には、二体分のバグスターウィルスが感染してたのよ。ご丁寧に診察機でも感知できないくらい奥深くに潜伏してね」

 

女性は狂三と薫に言いながら、ユニオンと対峙する。

 

「イチャイチャすんのは良いけど、患者をちゃんと治療したのを確認してからにしなさい。誤診やオペミスがあったら、どうすんのってハナシ」

 

女性の正論に、二人は何も言わず素直に認め頷いた。女性は、「次からは気を付けな」と優しく言い、ユニオンと対峙する。

 

 

「ここからは、私のターンよ。後輩達は下がってな」

「あの・・・あなたは?」

 

牧村(まきの) 恵子(けいこ)

 

「え・・・もしかして、私が通ってる医大で優秀な成績を出したっていう外科医さん!?」

 

「まぁ・・・そうかもね。今は普通の医者で・・・プロトブレイブよ」

 

女性・・・恵子はゲーマドライバーを装着して、プロトガシャットの一つ、プロトタドルクエストガシャットを取り出して起動する。

 

《タドルクエスト!》

 

モノクロのタイトルが表示され、ゲームエリアが展開。エナジーアイテムを収納した宝箱も複数出現。

 

ゲーマドライバーにガシャットを入れ、変身する。

 

 

「変身」

 

《ガシャット!レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?》

 

《アイム ア カメンライダー!!》

 

全身がモノクロの、仮面ライダープロトブレイブ・レベル1に変身した。

 

軽やかに動き、ユニオンの攻撃をかわし、投げた剣を回収。

 

剣を右手に持ち、ユニオンの腕の上に飛び乗り肩元から切り裂く!

 

奇声を上げて痛がっている様子のユニオンだが、恵子は・・・。

 

「喚くなよ、ウィルス野郎」

 

と、乱暴な言い方をしながら高くジャンプし、頭から足まで一刀両断。

 

ユニオンは爆発し、二体目も無事に討伐された。

 

 

「「おぉ~!」」

「はい、おしまい」

 

恵子はガシャットを抜いて変身を解く。ポニーテールが風でゆらゆら揺れる。

 

「さて、時崎 狂三と風鳴 薫ね。改めて自己紹介しとくけど、私は牧村 恵子。

 

一応、あんた達の先輩よ。仮面ライダーとしてしっかり戦えるようにしてやるから、覚悟しなさい」

 

「・・・わかりました、よろしくお願いしますわ」

「はい、牧村先生!将来医者になりたい私に、色々教えてほしいのです!」

 

「私が卒業した医大行ってんの?」

「はいなのです!一年生なのです!」

 

「あー・・・じゃあ、時間が出来たら教えたげる」

「イェア!」

 

ガッツポーズを決める薫。狂三は薫の様子に苦笑していた。

 

 

今日この日、仮面ライダープロトブレイブこと、牧村 恵子が現れた事により物語は彩られていくのであった。

 




次回予告

恵子が加わり、三人体制となった仮面ライダーとしての戦いの為、特訓を行うことに・・・?


第SP話 狂三のエピソードZERO・5


「いや、私もう女の子って歳じゃ無いし、自覚あるし」


ーーーーーーーーーー


新キャラの登場です。そしてプロトブレイブです。

プロトエグゼイドこと、ゲンムも出す予定ですが、まだ先です。恵子は本編にも登場します。


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第SP話 狂三のエピソードZERO・5

お久しぶりです。今回の話は、エピソードZERO・4後書きの予告と異なる内容になっています。

書いていく内に話の内容に変更が生じた為です、それと短いです。

申し訳ございませんが、ご了承いただけると幸いです。




プロトブレイブに変身し、バグスターを倒した牧村 恵子と出会い数日後。

 

この間はゲーム病患者が出た報告もなく、平穏な日々となっている。

 

恵子は医者としての仕事が忙しく、初めて出会った日を最後に話せていない。

 

狂三は天宮市にある薫の家にいた。そこで母親の風鳴 エレナと妹の栞(中学生)と顔を合わせていた。

 

「初めまして、薫の母のエレナです。うちのお転婆長女がいつもお世話になっています」

 

「ヒドス」

 

「いえいえ、もう慣れましたわ。助けられているのは確かですのでマイナスな感情は相殺されてます。つまりZEROです」

 

「メチャヒドス」

 

「い、妹の栞です。お姉ちゃんはお転婆でお馬鹿さんですけど、よろしくお願いします」

 

「えぇ、お馬鹿さんなのはもうわかってますから」

 

(´;ω;`)ブワッ

 

母と妹と友人の口撃にギャグ顔で泣いてしまう薫だが、栞がよしよしと頭を撫でると即座に回復した。

 

エレナが入れた紅茶を一口飲んで、狂三が言う。

 

「まぁ、ここまでお付き合いがある以上途中で切り上げるのも間が悪いですから、もうしばらくお付き合いしてもよろしいです」

 

「ツンデレくーちゃん萌え〜なのです」

「お姉ちゃん、それはもう死語だよ」

「マジで?」

 

「というか薫さん、あなたIQ下がってませんか?」

 

「エルミンさん曰く、久しぶりに私を書くからリハビリも兼ねていつもよりアホの子だと聞いたのです」

 

「メタ発言はやめなさい」

 

若き乙女達の交流にエレナは、娘に良き仲間が出来た事に嬉しそうに微笑んでいた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、幻夢コーポレーション社長室。

 

檀 黎斗はパソコンのモニターに映っている仮面ライダー達の戦闘データを見て満足そうに微笑んでいた。

 

「データは上々・・・このまま集めていけば・・・ん?」

 

ここで黎斗のモニターに別のウィンドウが表示される。オンライン電話のコールである。

 

急いでマイク付きヘッドホンを付けて通話をONにするとモニターに相手の顔が表示される。

 

『久し振りだね、クロト。急に連絡をしてきて済まない』

「いえ、大丈夫ですよ。お久し振りです、アイザックさん」

 

デウス・エクス・マキナ・インダストリー・・・通称DEM社代表取締役社長、アイザック・ウェストコット。

 

イギリスに本社を置く大企業の社長が直々に連絡を入れてきたのだ。

 

『実は・・・マサムネが去年逮捕されてしまったと今更ながら耳にしてね・・・本当なのかい?』

 

「えぇ、それは事実です。父はゼロデイと名付けられた、バグスターウイルスによるパンデミックを起こした犯人として・・・」

 

ゼロデイの詳細は世間に公表されておらず、衛生省の者達によって情報規制がなされたので消えた人達は表向きは行方不明となっている。

 

ウェストコットがその情報を得るのに一年掛かったのも、その情報規制が理由であった。

 

『そうか・・・マサムネは私の親友だ。マサムネの息子である君も同じく友であると思っている。

 

すぐとは言えないが、時間が出来たらマサムネの面会に行こう。その時に君と直接あって話したいな』

 

「ありがとうございます。父も喜ぶでしょう」

 

それから他愛のない話をして通話を終える二人。マイク付きヘッドホンを外すと、黎斗は大きな溜息を吐いて背もたれに体を預ける。

 

大きな緊張から開放されたためか、汗もかいている。幻夢コーポレーションより大きな会社の社長と話した事による緊張・・・もある。

 

だがそれよりも大きいのは・・・・・・彼に対して得体のしれない感覚を覚えているからだ。

 

「はぁ・・・・・・怖かった」

 

怖い。

 

黎斗がまだ社長になる前、父の紹介で直接出会ってからこびりついて離れない程に・・・自分以上に大きな闇を感じたから。

 




次回予告

ゲーム病患者が緊急搬送され、狂三と薫と恵子の三人によるチーム医療で戦うことになる。

第SP話 狂三のエピソードZERO・6

「これより、チーム医療によるバグスターウイルス摘出手術を開始する!」


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第SP話 狂三のエピソードZERO・X

今日は狂三の誕生日ということで、エピソードZERO内での狂三の誕生日の話を書きました。

千字と少しの短編となっています。


西暦2040年6月10日。この日は、一人の少女にとって特別な日となった。

 

 

「くーちゃん!お誕生日、おめでとうなのです!」

「ありがとうございますわ、薫さん」

 

この日は、時崎 狂三の誕生日。CRの中で、テーブルの上でバースデーケーキが用意されていて、風鳴 薫が笑顔で祝福してくれた。

 

「ところで・・・どうして薫さんは今日がわたくしの誕生日なのを知ってるんですの?話した記憶が無いのですが・・・」

 

「・・・・・・聞きたいのです?」

「遠慮しますわ」

 

速攻で断った。聞いてはいけないと乙女の直感で察したのだ。

 

実は薫が狂三の事に詳しいのは、薫が初めて狂三に出会った後に風鳴の情報網を駆使して身辺調査を行ったからである。

 

薫は初対面から良い印象を持っていたが、万が一にも悪人である可能性を捨てきれず、念の為に調査を行った。

 

その後の交流で狂三は大丈夫と信頼したのだ。

 

 

話題を変えようと、狂三はケーキについて尋ねる。

 

そのケーキはフルーツケーキであり、色鮮やかな見た目でもある。

 

「このケーキは薫さんが作ったのですか?」

 

「いえいえ、私の母校・・・リディアン音楽院の友人の家族がパティシエで、その人にお願いして用意してもらったのです」

 

「リディアン・・・あぁ、私立リディアン音楽院・・・東京都内の女子高校でしたわね」

 

「私の従姉妹に翼ちゃんっていう子がいるのですけど、その子も来年入学するのですよ〜」

 

「従姉妹がいらっしゃるのですか、お会いしてみたいですわね」

 

「真面目でいい子なのです。でも直人君・・・幼馴染の男の子の前では恋する乙女で、とっても可愛いのですよ♪」

 

「まぁ」

 

などと雑談をしながら、ケーキを薫が切り分け狂三に渡す。

 

「くーちゃん、ケーキの前に・・・プレゼントなのです」

「まぁ、ありがとうございますわ」

 

ケーキとジュースが用意できた所で、薫は狂三にプレゼントを渡す。丁寧にラッピングされており、狂三が開けて中身を取り出すと、中にはぬいぐるみが入っていた。

 

「あらあら、可愛い猫さんのぬいぐるみですわ!」

 

喜びに満ちた笑顔になる狂三。その猫のぬいぐるみは、黒猫と白猫の二匹が一緒にいるものだ。

 

「黒猫がくーちゃん、白猫が私・・・この子達の様に一緒にいられたら・・・そんな想いを込めてプレゼントしたのです・・・気に入ってもらえたら嬉しいのです」

 

「ありがとうございます・・・確かに受け取りました・・・大切にしますわね」

 

薫のプレゼントに込めた想いを、狂三は確かに受け取った。二人は笑顔でケーキを食べる。

 

その姿は、仮面ライダーでも精霊でもない・・・普通の女の子としての姿であった。

 

 

「ところで・・・どうしてわたくしが猫好きなのを知ってるんですの?話した記憶が無いのですが・・・」

 

「・・・・・・聞きたいのです?」

「遠慮しますわ」

 

風鳴の情報網は、狂三の好きな動物まで調べていたのであった。



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序章 士道プロローグ
第一話 その名はEX-AID!


世界は、人々は。謎の空間地震に、未知のウィルスに脅かされている。

 

 

特殊災害指定生命体が引き起こす、空間震がある。

 

人に感染し、怪物を生み出すウィルスがある。

 

 

だが、希望はある。

 

 

特殊災害指定生命体を救える、力と優しさを持つ少年がいる。

 

そして、ウィルスの脅威から人々を救うために戦う、ヒーローがいるのだから。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

四月一日。己が通っている高校の始業式まで、後九日に迫っている。

 

 

その日、五河 士道は買い物を終えて帰宅する途中であった。

 

士道は中学一年生まで、ゲームに夢中で大会に出て優勝した事もある。

 

天才ゲーマー『S』と呼ばれていた時期もあった。

 

でも、中学二年生になってからは、高校への進学も近づいたから、ゲームも控えるようになっていった。大会も出なくなった。

 

そして、士道は幼い時交通事故で入院していたが、その時に救ってくれた医師の影響で自身でも医師を志し参考書等を買い医学を学んでいた。

 

大学も、天宮市にある医療の大学に進学する予定だ。

 

 

今の士道は、高校一年生。

始業式は四月十日だから、後九日で二年生となる。

 

歩いてる途中、喉が乾いたので近くの公園にある自販機でジュースを買って、ベンチに座って飲む

 

「ふぅ・・・」

 

一息ついて、空を見上げる。青い空に白い雲。穏やかな時間が感じられる。

 

 

しかし、今の天宮市は空間震という脅威がある。

 

空間の地震と言うべきこの現象は、三十年前にユーラシア大陸で発生した時は、死傷者一億五千万人という大災害になった。

 

その後もちょくちょく発生していて、この街・・・「天宮市」は、東京都南部から神奈川県北部までの空間震跡地に立てられた最新都市だ。

 

空間震が発生した際の避難先のシェルターの普及率が、全国一位となっている。

 

「~~~♪」

 

「ん?」

 

「~~~♪」

 

女の子の声が聞こえる。その歌声はとても綺麗で、聞いている者の心に染み込んでくるみたいだ。

 

その歌声がどうしても気になり、士道は声のする方へ向かうことにした。

 

そこは、公園の中にある木々の中。その中に一ヶ所だけ木の無い空間があった。そして、その中に歌声の主を見つけた。

 

 

「~~~♪」

 

それは、一人の女の子。歌いながら踊っており、その姿は物語に出てくるお姫様のようだ。

 

 

「すげぇ・・・」

 

思わず、つぶやいてしまった。でも、それほどに幻想的な光景だった。

 

その女の子は、士道より背が低くて幼さが多く残っている感じだ。

 

膝位まで伸びている白銀色の髪は、空から降り注ぐ太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。

 

着ている服は、白くて清楚なワンピースそれが彼女の可愛らしさを引き立てている。

 

やがて、少女は歌い終わり、踊りも止まった。

 

 

「・・・・・・」

 

パチパチパチと、ほとんど無意識に拍手をしていた。

拍手の音で、ようやく自分が拍手をしている事に気付いた位だった。

 

「えっ・・・!?」

 

少女は小さな声で、驚きながらも士道の方を向いて、目があった。

 

「えーっと、ごめん!歌声が聞こえたから気になって来てみたんだ。

 

さっきの歌、凄く良かったよ!上手かった!」

 

「・・・・・・」

 

俺が声をかけても、少女は驚いたまま固まっている感じだった。

 

「---」

「え・・・?」

 

少女は何かを言ったようだが、小さくて聞き取れなかった。

 

すると、少女は士道の近くまで小走りで駆け寄ってきた。碧眼の目が、俺を見つめる。

 

 

「あの・・・・・・本当に、上手だったのですか?」

 

「あ、あぁ!本当に、上手だったよ」

「良かった、です。歌は好きですけど、あまり自信がなくて・・・」

 

「俺は自信を持って良いと思う。あんなに上手かったんだからさ」

 

 

「あの・・・・・・私、栞です!」

「え・・・」

 

風鳴(かざなり) (しおり)・・・私の名前です」

 

「あ、えぇと・・・俺は、五河 士道」

「良い名前です!よろしくお願いいたします、士道!」

 

「あれ、風鳴って・・・もしかして風鳴 翼さんの・・・?」

 

「はい、従姉妹なのです。翼お姉ちゃんのお父さんと、私のお父さんは兄弟なのです」

 

 

「そうか・・・・・・えっと、風鳴さん?ちゃん?」

「栞・・・です。名字だと翼お姉ちゃんと被っちゃうのですよ」

 

「えっと・・・栞?」

「はいなのです!」

 

士道が名前で呼ぶと、栞は笑顔で頷く。

 

しかし何故だろう。この子に警戒心も躊躇いも無く話せるのは。

 

何故だろう。この子と初めて会った感じがしないのは。懐かしさを感じるのは。

 

それは・・・・・・士道本人にもわからない。

 

 

その後、一旦ここから離れて公園に戻ることになった。先程の歌について、詳しく感想を聞きたいそうだ。

 

ここで士道は栞が銀色のアタッシュケースを持ってきたことに気付いた。

 

「なぁ。そのケース、何が入ってるんだ?」

「え・・・あ、これですか!?これは、その・・・」

 

「ん?」

 

答えづらそうにしている栞。やがて人差し指を口元に当てて笑顔で・・・。

 

「秘密です♪」

 

可愛らしく、秘密にしたのであった。

 

その時、あるものが視界に入る。

 

「あれは!」

 

疑問に思って栞が見ている方を士道も見てみると、子供が歩いてきた。七、八歳位の男の子だ。

 

だが、体はフラフラで顔も赤い。体調不良なのはすぐにわかった。

 

栞が駆け出すのと同時に、士道も駆け出していた。栞は倒れそうになった男の子の体をそっと支える。

 

 

「大丈夫?」

 

栞が優しく訊ねる。男の子はそっと頷いた。

 

 

「すぐに病院に!」

「待ってください!」

 

栞は聴診器みたいなのを取り出して男の子に向ける。すると、何やら映像が写し出される。

 

文字やマークが出ている。

 

「やっぱり感染していた・・・しかもここまで進んでる・・・早くしないと、奴等が出ちゃいます」

 

 

画面を見ながら呟く。困惑しているのに気づいたのか、栞が士道の方を見た。

 

「士道・・・この子は」

 

瞬間・・・!

 

「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

男の子が苦痛の叫びを上げたかと思うと、体から「何か」が溢れ出て、大きな怪物になってしまった。

 

「あれは・・・・・・何だよあれ!?」

「バグスターウィルス・・・人に感染する未知のウィルスなのです」

 

 

(俺に出来ることは無いのか?)

 

そう考えたその時、栞が持っていたアタッシュケースを開ける。

 

「これは私が本来使っているのとは違うけど・・・仕方ないのです」

 

開けると、そこにはゲーム機っぽいバックル・・・・・・ゲーマドライバーとゲームソフトっぽい機械・・・・・・ライダーガシャットが入っていた。

 

ガシャットの下部分はマゼンダ色で「マイティアクションX」という文字と絵が書かれていた。

 

幻夢コーポレーションが数日前に発売したアクションゲームと同じタイトルだ。

 

ケースから取り出して、それを使おうとしたところで・・・。

 

 

士道が栞の持つゲーマドライバーとライダーガシャットを奪い取る。半分は衝動的に。

 

「士道!?」

 

「よくわからないけどな・・・・・・女の子に任せて俺は何もしないなんて出来ない!」

 

士道は、()()()()()()()()()()()()()()ドライバーを装着し、右手に持ったガシャットを起動する。

 

 

《マイティアクションX!!》

 

音声、音楽と共にマイティアクションXのロゴが出て、ゲームエリアが展開。チョコブロック型のがいくつも出てくる。

 

そして・・・。

 

 

「安心しろ・・・何とかしてみせるからよ!」

 

士道も変わった。ニヤリと野生的な笑みを浮かべる。更に目が赤くなった状態で固定される。士道の天才ゲーマー『S』としての人格だ。

 

 

「変身!!」

 

士道はゲームドライバーにガシャットを装填し・・・。

 

 

《ガシャット!》

 

《レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?》

 

《アイム ア カメンライダー!!》

 

 

士道は変身した。仮面ライダーエグゼイド、レベル1へと。

 

「士道・・・どうして!?」

栞が驚く中、士道は武器を召喚して手に持つ。

 

 

《ガシャコンブレイカー!》

 

「まだわからねぇ事多いけど、これで戦える」

 

士道はガシャコンブレイカーをバグスターユニオンに向けて、ハッキリ宣言した。

 

「ノーコンティニューで、クリアする!!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「エグゼイドが起動したか。あの子はもう適合者を見つけたのか?」

 

「しかし、妙だな。私が把握している限りの適合者は全員仮面ライダーになっているし、追加で適合者が増えたという事も無い」

 

「・・・・・・まさか」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

この体・・・一見ゆるキャラみたいで動きにくそうだが、軽やかに動くことが出来る。

 

士道はバグスターに向けて一気に走り出した。

 

バグスターが腕を降り下ろしてくるが、ジャンプしてかわして武器であるガシャコンブレイカーで一発殴った。

 

『HIT!』という文字も出てくる。

 

着地してバグスターを見ると、怒ったのか士道に向かって突進してくる。士道も背を向けて走り出すが、決して逃げる訳ではない。

 

 

マイティアクションXの主人公、マイティはお菓子を食べることで強くなる。

 

この周りのチョコブロック、利用が出来ると考え一番近くにあるチョコブロックまで走っている。

 

空中に浮いているチョコブロックまで到着したところで怪物がジャンプして、士道を押し潰そうとする。

 

士道は斜め前までジャンプして、チョコブロックをブレイカーで叩く。

 

すると、中から黄色い、ダッシュしている人の絵が書かれたメダルが現れた!

 

コレが士道が狙っていたもの、『エナジーアイテム』だ。

 

幻夢コーポレーション社が開発したゲームには、このエナジーアイテムを得ることで様々な能力を一時的に得られる、という機能がどのゲームにもある。

 

 

士道は早速出たエナジーアイテム、『高速化』を得る。

 

スピードアップしたことで、バグスターをかなりの速さで連続攻撃出来た。

 

『HIT!』の文字が『GREAT!』に変わった所で、効果が切れた。

 

 

士道はバグスターの頭を蹴って高くジャンプする。

 

倒れるバグスターに向けて、止めの一撃として高所から力を込めた一撃を叩き込んだ!

 

『PERFECT!』の文字と共に怪物も爆発。男の子も出てきた。

 

「大丈夫か!?」

 

士道はガシャコンブレイカーを投げ捨てて、すぐに男の子に駆け寄る。

 

見た感じ、傷などは無い。助け起こそうとしたが・・・。

 

スカッ

 

「・・・!?」

 

士道の手が、男の子の体をすり抜けてしまった。よく見ると、男の子の体が透けている。

 

「士道!」

 

困っていると、栞が駆け寄ってきた。

 

「栞!怪物を倒したのに、体が・・・」

 

「バグスターは、感染者のこの男の子から分離しただけ。分離させて、もう一度倒さないといけないのです。

 

そうしないと、この子は消えてしまう」

 

「消える!?」

 

「バグスターは、感染者の体を乗っ取って消したとき感染者を介さず動ける完全体になる。

 

消えた人は・・・・・・死ぬんです」

 

 

「そうだ。その女の言う通りだ」

 

説明の途中で、男の声が聞こえた。

前を見ると、細かいのが一ヶ所に集まって、人の形をなした。

 

いや、どちらかと言うと、怪人だ。

 

しかも、その怪人の周囲にも頭が鶏肉のような奴らが何体も現れた。

 

「我らバグスターの繁栄の為、人間には消えてもらう!」

 

マイティアクションXに出てくるボスキャラクター、ソルティ伯爵の姿をした怪人が高らかに宣言した。

 

「・・・・・・」

 

その言葉を聞いて、士道の心に怒りが沸き上がってくるのを感じた。

 

(こいつら、人の命を何だと思っていやがる!?)

 

 

「栞・・・あいつを倒すには、どうすればいい?」

 

「士道、その姿・・・レベル1は、感染者からバグスターを分離させることが出来る力。でも、戦闘に適しているとは言えないのです」

 

「それで?」

 

「分離したバグスターを倒すなら、真ん中のレバーを開いて、レベル2にレベルアップしてください」

 

「わかった!」

 

バックルの中央、マゼンダ色のレバーを掴み・・・。

 

「第二変身!!」

言葉の直後にレバーを開く!

 

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!!》

 

 

絵が書いてある光の壁が自動で迫ってくる。

 

それを受け入れると、体のパーツが弾けとんで、士道の体が変わった。

 

近くにあった車を鏡代わりにして見てみると、ゆるキャラのような姿から、まともな人の姿になっていた。

 

「これがレベル2か」

 

「ふん。レベルアップしようとも、私には勝てん!」

 

そう言って、ソルティが士道に攻撃を仕掛けてきた。

周りに現れた、頭が鶏肉みたいな連中・・・バグスターウィルスも攻撃を仕掛けてくる。

 

士道は投げ捨てたガシャコンブレイカーをもう一度呼び出して、周りのウィルス達を倒していく。

 

ソルティが杖で殴りかかってくるが、士道はAボタンを押す。

 

『ジャ・キーン!』

 

ガシャコンブレイカーを剣にして、受け止める。

 

栞の方を見ると、戦闘員は栞にも迫っていく。

すぐに駆け寄ろうとしたが、栞の目付きは鋭かった。

 

栞は一番前の一体の腹を蹴り、体を回転させてもう一体も蹴りつけた。

 

武器を突きつけてきた二体の腕を掴んで後ろへと投げ飛ばし、他の戦闘員達には、自分から近づいて殴り、蹴り倒していく。

 

しかし、決して長くないスカートだから、蹴る度に士道は変身して視力が良くなっている為、ハッキリと白色の下着が見えてしまう。

 

「私は大丈夫です!そっちに集中して!」

「わ、わかった!」

 

今は戦闘に集中するべく、気持ちを切り替える。

 

押しきって、ソルティを斬りつける。

Bボタンを三回連続で押して、連続で斬る。

 

ソルティは雷を放ってくるが、士道はそれをかわして力を込めて蹴る!

 

吹っ飛ぶソルティ。着地したところで、栞が倒し損ねたであろうウィルス達が士道に向かって来た。

 

「士道!」

「大丈夫だ!」

 

ガシャコンブレイカーを逆手に持って、全力で走り全てのウィルスをすれ違い様に切り裂いた!

 

爆発し、消えるウィルス達。残るはソルティだけだ!

士道の近くまで駆け寄ってきた栞が、教えてくれる。

 

「士道、左腰のスロットにガシャットを入れて、ボタンを二回押してください。それで必殺技が出せるのです」

 

「OK!」

 

栞の言う通り、機械を取り出してスロットに入れて、ボタンを押す。

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

更にもう一回押す。

 

《MIGHTY CRITICAL STRIKE!!》

 

音声の後、右足にエネルギーが溜まっていく。

そして、ソルティに飛び蹴りをくらわせた!

 

《会心の一発!》

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!!」

ソルティが爆発した。倒すことに成功したのだ。

 

《GAME CLEAR!》

 

音声と共に、マイティアクションXの絵と、GAME CLEARの文字が出てきた。

 

その後、男の子の様子を見てみると、体が元に戻った。レバーを閉じてガシャットを抜くと、変身が解けた。

 

「もう大丈夫。この子は助かりました」

「良かった。本当に良かった・・・」

 

この子を助けることが出来た。頑張った甲斐があったな・・・そう思いながら、安堵のため息を吐いたのだった。

 

その後、詳しい事情の説明は明日してくれるのだが、その時にバグスター対策組織に招待してくれる事になった。

 

その約束をして、今日は栞と別れたのだった。ちなみに、買ったCDはちゃんと回収したのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

そして、その戦いを最初から見ていた一人の男が立ち上がり・・・。

 

「新しいゲームの始まりだな・・・士道」

 

そう呟いて、静かに姿を消したのであった。




次回予告


バグスター対策組織に招待された士道。
そこで、出会いと再会と戦いが待っていた。


第二話 爆走するLAZER!


「アクセル全開!」


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第二話 爆走するLAZER!

ソルティバグスターとの戦いから翌日。五河 士道は身支度を整えていた。

 

 

今日は、栞がバグスター対策組織の紹介をしてくれることになった為だ。

 

その待ち合わせ場所として、昨日栞が出会ったあの公園が選ばれた。一緒に住んでいる妹に出掛ける旨を伝えて、士道は外に出る。

 

公園で合流してから一緒に歩いていき、ついたのは家から歩いて五分ほどの所にある病院だ。

 

『天宮総合病院』。天宮市の中で一番大きな病院だ。

士道が助けたあの男の子も、この病院に入院している。

 

栞の説明によると、ここは病院であると同時にバグスター対策組織の本部でもある。

 

組織の名は、『電脳救命センター』。

英語名でCyberbrain Room・・・・・・通称、CR。

 

衛生省の協力の元に立ち上げた組織であり、バグスターウィルスの感染者を保護したり、バグスターと戦う仮面ライダーをサポートしてくれる所だ。

 

この病院の院長が、CRの責任者を勤めているという。

以上のような説明を聞きながら、病院の裏口から入る。

 

この裏口は、CRの本部に直結するエレベーターがあって、そのエレベーターと階段でしか行けないようになっている。

 

栞についていって、エレベーターに乗る。

エレベーターを降りて、正面の扉の横に設置してあるパネルを操作すると自動で開き、部屋の中に入れた。

 

その部屋は、テーブルや椅子、パソコンやモニターがおいてある。

 

他にも、窓の外を見ると、機械に繋がれたベッドが見える。ここにゲーム病患者を保護するみたいだ。

 

 

そこには、黒いスーツを着こなした男性がいた。

 

黒いスーツを着こなした男性が、穏やかな笑顔を浮かべて俺達の所にやって来た。

 

「初めまして。君がエグゼイドの適合者、五河 士道君だね。

 

私は檀 黎斗(だん くろと)。幻夢コーポレーション社長で、仮面ライダーのシステムを開発した者だ」

 

幻夢コーポレーションの社長、檀 黎斗。日本有数のテレビゲーム開発会社であり、ゲーマドライバーとライダーガシャットを開発した人物だ。

 

「は、初めまして!五河 士道です!あなたが作ったゲーム、すごく面白くて大好きです!」

 

「ありがとう。開発者として、とても嬉しいよ」

 

「こんにちは、檀社長!」

「こんにちは、風鳴さん。今日も元気だね」

 

「はい!私はいつも元気なのです♪」

 

「そうだ、君のゲーマドライバーとライダーガシャットはメンテナンスが済んだから、渡しておくよ」

「ありがとうございます」

 

「あれ、それは栞の・・・?」

 

「はい、私のドライバーとガシャットなのです。昨日までメンテナンス中だったので代わりにエグゼイドになろうとしたら、士道が使っちゃったのですよ」

 

「そ、そっか・・・」

 

挨拶を済ませてから、士道は椅子に座り、隣に座った栞と対面して座っている壇社長から説明を受けた。

 

 

『バグスターウィルス』。

 

人間に感染することで成長するミクロ型のコンピュータウイルス。

 

感染した人間のストレスを元に増殖。バグスターウィルス感染症・・・通称、ゲーム病を発症してしまう。

 

熱や咳、めまいを経て感染が進むと、あの大きなバグスター・・・バグスターユニオンになる。

 

そして、感染者の体から分離したのが、バグスター。

士道がエグゼイドに変身して倒した、あのソルティのように。

 

 

『ゼロデイ』。

 

今から五年前に発生した、バグスターウィルスによる人間の大量消失事件。

 

幻夢コーポレーションが開発したゲームから発生したバグがバグスターウィルスに変化。テストプレイヤー達を消滅させた。

 

 

『仮面ライダー』。

 

ゼロデイがきっかけになって、日本政府はバグスターの存在を知り、衛生省を立ち上げて幻夢コーポレーションと協力して、ゲーマドライバーとライダーガシャットを開発した。

 

士道や栞が使った物がそれである。

 

そして、それらを使ってバグスターと戦いゲーム病感染者を救うための戦士が、仮面ライダー。

 

 

「五河君、君に頼みたい。バグスターを倒し、人々を救うために、君の力を貸してほしい」

 

「わかりました!俺、精一杯がんばります!」

 

社長の言葉に強く宣言する士道。

 

 

「ありがとう、五河君。では、申し訳ないが、私はこれで失礼させてもらうよ」

「社長。お忙しい中、ありがとうございましたです」

 

「構わないさ。仮面ライダーの適合者に挨拶するのは、社長として当然のことだからね。

 

五河君、機会があったらまた話をしよう」

 

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

去っていく社長。その背中が見えなくなってから、士道の脳裏に先程一瞬感じた事を思い出した。

 

 

(何で、あんなにいい人なのに・・・お礼を言ったときの社長の笑顔に・・・・・・「違和感」を感じたんだ?)

 

考えても、わからなかった。

 

 

その後、士道は栞と一緒にちょっとしたお茶会を開いていた。

 

少しでも親睦を深められるだろうから、断る理由もない。

 

他愛のない事等を話していると、ドアが開いて一人の女の子が入ってきた。

 

 

 

「栞さーん!あなたの美九が来ました・・・・・・あらぁ?」

 

「・・・は?」

 

 

士道は部屋に入ってきた女の子を見て、固まってしまった。その子は、士道が知っている女の子だからだ。

 

紫紺のロングヘアーに整った容姿、抜群のプロポーションを誇る美少女。

 

アイドルとして活動して、歌は上手いしダンスも出来る。

 

 

「・・・!だあぁぁぁぁぁぁりいぃぃぃぃぃぃん!!」

 

「美九!?何でお前ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

女の子は士道を見ると、凄く嬉しそうな満面の笑顔になり、「だーりん」と呼んで抱きついてきた!

 

「だーりんだーりんだーりん!お久しぶりですだーりんとまた会えて嬉しいですぅ!一ヶ月ぶりですよ!」

 

「あぁ・・・久しぶりだな・・・美九」

 

 

この女の子の名前は、「誘宵 美九」。

 

天宮市を中心に多くの場所で活躍しているアイドルだ。

 

美九とは、士道が中学生の時に出会っていて、その時から仲良くなって。

 

美九が抱えていた問題の解決に協力したら、何か懐かれた。しかも、だーりんと呼ぶようにもなったのだ。

 

 

「士道・・・・・・美九さんとお知り合いなのですか?」

 

栞が訪ねてきたが、不機嫌そうで、ほっぺをぷくーと膨らませている。

 

 

「ま、まぁな。俺が中学生の時に・・・」

 

「あの出会いは必然だったんですよぉ。私は、だーりんのお嫁さんになるために生まれたのです!」

 

「いきなり何言ってんだよ!?」

 

「む~~~!」

 

抱きついて離さない美九。ますます不機嫌になる栞。そして、栞も士道に抱きついてきた!

 

栞は嫉妬しているのだが、士道はその事に気付けず慌てる位しか出来なかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後。何とか落ち着いた美九が離れてくれた所で、説明タイムになった。

 

士道は美九に、自分が仮面ライダーになった事を伝えた。

 

「はぁ~、だーりんも栞ちゃんと同じ仮面ライダーになったんですか」

 

「あぁ。美九も知ってるんだな、仮面ライダーやバグスターウィルスの事を」

 

「そうですね。初めてここに来たときに聞きました」

「美九がCRに来たのって・・・」

 

 

 

「実はですね・・・私もバグスターウィルスに感染している、ゲーム病患者なんですぅ」

 

「はぁ!?美九も!?」

 

「はい。一年位前にですね。私、一人で散歩をしていたら、道端で光輝く球体を見つけたんです」

 

「光輝く、球体?」

 

「士道。結論から言いますと、その球体はバグスターなのです。

 

そのバグスターは、何らかの理由で不完全な状態になってしまったのでしょう」

 

 

「不完全な、状態・・・」

 

「はい。私がそれを発見した時に無用心に触れてしまって、バグスターウィルスに感染してしまったんです。

 

というよりも、不完全なバグスターが私の体に入ってしまった・・・・・・という方が正しいですね」

 

「ちなみに、体内に入ったのは、ドレミファビートのバグスターです」

 

ドレミファビート。音楽に合わせてリズムを刻む、リズムゲームだ。

 

そのゲームのバグスターが、美九の体に入っているのだ。

 

「そして、通りかかった私が見つけて保護。発症が無かったので、事情を説明した上で、定期的にここに来るように言ったのです」

 

「つまり、定期検診みたいな感じです」

「そうか・・・美九、大丈夫か?」

 

「ノープロブレムですぅ!熱もないしいたって健康ですよ!どうなってるんでしょうねー?」

 

「美九、少しでもおかしく感じたらすぐに言うんだぞ」

「合点了解ですぅ!」

 

ビシッと敬礼する美九。それから世間話になったが、美九がお手洗いに行ったところで、士道が栞に質問した。

 

 

「そういえば、気になったんだけど」

「何ですか?」

 

「栞はどうして仮面ライダーになったんだ?俺みたいに偶然とか?」

 

「・・・そうですね、士道には説明するのです。私達、風鳴一族は昔から国を守る"国防"を担う一族なのです。

 

五年前ゼロデイでバグスターウィルスの存在を知って、それに対処する為にお母さんが天宮市に来たのです。

 

お母さんは、優秀な医者で科学知識も豊富なのです。それでバグスターウィルス対策に適任と判断されて・・・という感じなのです。

 

それに、私と私のお姉ちゃんも一緒に来たのです」

 

「栞、お姉さんがいたのか?」

「はいなのです。私より先に仮面ライダーになって戦っていたのです。

 

といっても、四年前にバグスターとの戦いで死んでしまったのです・・・」

 

「え、あ・・・ごめん」

「大丈夫なのです。それで、私がお姉ちゃんの分も頑張らなきゃって思って、三ヶ月位前に仮面ライダーになったのですよ」

 

「・・・・・・なぁ、もしかして、風鳴 翼さんも・・・?」

 

士道は風鳴一族の話を聞いて、世界で活躍するようになったトップアーティストの名を出した。

 

彼女も栞と同じく、名字が「風鳴」だからだ。

 

「そうですね。詳しい事は話せないですけど、翼お姉ちゃんも国防に関わる重要な任に就いているのですよ」

「・・・そっか」

 

ここまで話した所で、美九が戻ってくる。その時、備え付けの電話が鳴り、栞がすぐにとって対応した。短くやり取りしてから説明してくれた。

 

「緊急連絡が入ったのです。高熱を発症して倒れた男性の体内からバグスターウィルスを検知。現在、ここに搬送中です!」

 

栞からの説明の後、患者搬送室に向かう。

それから十分もしないうちに患者の男性が運ばれてきた。

 

ベッドが機器に繋がれて、モニターに患者の状態が映し出される。

 

画面にバグスターを示すアイコンが表示される。ゲーム病に感染しているのは明白だ。

 

「士道!」

「大丈夫、戦える!」

 

士道と栞はゲーマドライバーを装着する。

 

 

《マイティアクションX!》

《爆走バイク!》

 

栞が起動したのは、爆走バイク。破壊や妨害など何でもありのレーシングゲームである。

 

「「変身!」」

 

ガシャットを起動して、仮面ライダーに変身した。

 

栞の仮面ライダーの名前は、レーザー。黄色いバイクのゆるキャラみたいな感じであり、両手に武器であるタイヤを持っている。

 

すると、男性の体からバグスターユニオンが現れた!

 

タイヤのように丸いやつだ。しかし、この部屋で戦うのは不味いのでは?と不安になる士道だが、栞は慌てずに対処する。

 

 

「特設ステージへご招待!」

 

栞が言うと、ホルダーのスイッチを押した。

 

《ステージ、セレクト!》

 

音声の後、回りの風景が一変した!

 

CRではなく、バイクレースの会場みたいな所になった!

 

「ここはゲームエリア。仮面ライダーとバグスターのバトルフィールドみたいな所です。

 

これを展開すれば、どれだけ暴れても現実に影響は一切出ないのです」

 

なるほど・・・と士道が納得していると、律儀に待ってくれていたバグスターが襲いかかってきた!

 

体を回転させて二人に突進してくるが、跳んでかわし、士道はガシャコンブレイカーで叩き、栞はタイヤからエネルギー弾を放って攻撃する。

 

しかし、バグスターはまだ迫ってくる。

 

「栞!」

「はいです!」

 

お互いに声を掛け合うだけで、何をするかが伝わる。

もう一度突っ込んでくる所をかわし、今度は二人一緒に同時に攻撃を叩き込む。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

ブレイカーとタイヤの全力同時打撃によって、ユニオンを撃破、分離に成功した。

 

分離されたバグスターは・・・。

 

 

「バリバリバリバリ四露死苦ぅ!」

 

何か暴走族っぽいやつである。自前のバイクに乗りながら、エンジンふかして何か叫んでる。

 

爆走バイクに出てくるキャラクター、「モータス」だ。

 

 

「よし、レベル2だ!第二変身!」

 

レバーを開いて、レベル2になった。だが、栞を見ると、レベル1のままだ。

 

「栞?」

「士道・・・・・・私をちゃんと『乗りこなして』ください」

 

「は?」

 

どういう事だ?と聞く前に、栞がドライバーのレバーを開いた。

 

 

「セカンド・ギア!」

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

 

《爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク!!》

 

栞が変身するレーザーのレベル2、それは・・・。

 

 

「乗っていきますか?・・・キリッ」

 

バイクである。バイクを模した人型戦士・・・ではなくバイクそのものだ。

 

「・・・・・・何でバイク?」

「爆走バイクだからなのです!」

 

「なるほど、わからん」

 

 

 

まぁ、そんなこんなで。

 

モータスがバイクに乗っているため、士道もバイク(栞)に乗って、バイクレースで勝負をする事になった。

 

「レーザーは誰かとコンビを組んで真価を発揮するタイプなのです」

 

「あぁ」

 

「それはこういう事です。一人でも走れるけど、最高の走りをするには、操縦者・・・つまりパートナーが必要なんですよ」

 

「そっか・・・だったら!」

 

士道はハンドルを握る。バイクの操縦方法は・・・まぁ何とかなるだろう!と妙に楽観視しつつ、アクセルをふかす。

 

 

「俺と栞・・・二人で一緒にあいつをやっつけて、患者を救おうぜ!」

 

「はい!あなたと一緒なら、どこまでも!」

 

モータスと並び、発車の時を待つ。そして・・・信号が青になり、士道達とモータスは同時に発車した!

 

「アクセル全開!」

 

栞が叫ぶ。士道もそれに答える様に速度を上げていく!

コースをほぼ平行して走っていく。操作は特に問題はない。

 

しかし、途中でモータスが走りながら攻撃してくる。

 

 

爆走バイクは、破壊・妨害何でもありのバイクレースゲーム。故に、向こうは平気で妨害をしてくる。

 

士道はガシャコンブレイカーを呼び出して、ハンマーのままモータスに向けて投げた!

 

「痛えぇ!っておぉぉぉぉう!?」

 

痛みで運転を誤り、そのまま倒れた。この隙に一気に差を広げる。

 

「栞!このままかっ飛ばしていくぜ!」

「OK!フルスロットルなのです!」

 

二人はさらにスピードを上げて行く。しかし・・・。

 

「甘いぜてめえらぁぁ!!」

 

何とモータスも急激な加速を行い、あっという間に二人を追い越してしまった!

 

「栞!一気に決めるぞ!」

「はい!キメワザです!」

 

士道は急加速したモータスを追い抜くと同時にトドメをさすために、栞のドライバーから爆走バイクのガシャットを抜き取り、ホルダーにセット。ボタンを一回押す。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

もう一度ボタンを押して、キメワザを発動。

 

「「これで決まりだ!」」

 

《BAKUSOU CRITICAL STRIKE!!》

 

 

音声の直後、士道はアクセル全快で走る。車体が強力な炎のエネルギーに包まれる。

 

そのエネルギーを纏ったまま超加速を行い、モータスに体当たり!

 

 

「「はあぁぁぁぁぁ!!」」

 

「な、何いぃぃぃぃ!?ぎゃあぁぁぁぁ!!」

 

纏ったエネルギーがバリアみたいになってくれたため、士道と栞は無傷。

 

だが、モータスはキメワザによって完全に倒された!そのままゴールを通過してブレーキで停止。

 

 

《GAME CLEAR!》

 

 

浮き出る爆走バイクの絵とゲームクリアの文字。ゲームエリアが解けて、元のCRに戻る。

 

男性をもう一度検査したが、バグスターウィルスもゲーム病も全部消えている。

 

今は寝ているけど、このまま安静にしていれば後遺症もなく退院できるそうだ。

 

そして、変身を解いて美九と話していた部屋に戻ると、そこでは目を輝かせた美九が待っていた。

 

「凄いです格好いいですよー!二人にお疲れさまのハグをプレゼントですぅ!」

 

「逃げるぞ栞!」

「はいなのです!美九さんのハグは、いやらしいのです!」

 

「あぁん、逃げないでくださいー!」

 

 

そのまま美九との鬼ごっこが始まってしまった。

 

 

こうして、士道のCR初訪問は終わり、この後に訪れたCRの責任者に出会い、士道は正式にCRの一員となることが認められたのであった。




次回予告


クラスメイトと偶然出会い、一緒に出掛けることになるが、そこでも事件は起こる。


第三話 戦乙女なBRAVE!


「どうしてぇ!?」


ーーーーー


美九との関係が、原作と異なります。既に攻略済みです。

後、美九は既に精霊になっていますが、誰にも明かしていません。


美九がポッピーポジションな感じです。

中学生の時の士道との出会いは、原作六巻の話で書く予定なので、お待ち下さい。


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第三話 戦乙女なBRAVE!

グラファイトさん、あなたは立派な戦士でした!

今回でブレイブが登場します。




モータスとの戦闘と、美九の秘密を知ってから三日後。四月五日。

 

三日間、バグスターウィルスの感染者が見つかったという報告も、バグスターが現れたという報告も無い。

 

 

その間に、士道はCRを訪れてバグスターに関する勉強をしたり、仮面ライダーの力を使う特訓をしたりしていた。

 

また、士道も正式にCRの一員として認められ、所属することになった。しかも、国家公務員と同じ扱いになり、給料ももらえるようになった。

 

高校生だから、それを考慮した金額だが、それでも普通にアルバイトをするよりずっと多い。

 

まぁ、そんな感じで。士道は栞の協力もあって、この三日間は結構充実している。

 

また、士道は自分の妹・・・正確には義妹の琴里にはバグスターの事や仮面ライダーの事は話していない。

 

CRに行くことも、全く別の事として話し、誤魔化している。

 

兄として、バグスターとの戦いに巻き込みたくない。そういう気持ちが強く、言い出せないのだ。

 

 

でも、もしかしたら、いずれは話さないといけないときが来るかもしれない。

 

因みに、士道は幼い時に母親に捨てられて五河家に引き取られた。

 

最初はショックで塞ぎこんでいたが、五河家の父と母、琴里のお陰で元気でいられるのだ。

 

 

士道は今、散歩をしていた。

 

今日は勉強も訓練も無し。ゆっくり出来るのだが、なんとなく散歩をしたくなって、こうして外を歩いているのだ。

 

「何も事件が起こらないってのは、ありがたい事なんだな・・・」

 

しみじみとした感じで呟いてしまう。でも、そう思うのも事実。

 

バグスターや空間震という人にとっての驚異。

それのみならず、事件や事故の無い平和な時は本当にありがたい事であると実感している。

 

 

 

「きゃっ・・・」

「っと!?」

 

考えながら歩いていたら、人とぶつかってしまった。

 

「すみません!大丈夫ですか!?」

「は、はい!大丈夫で・・・」

 

 

転んでしまった人は、士道を見て固まった。士道も固まった。その相手とは・・・。

 

「鳶一!?」

「五河君!?」

 

 

『白く、腰まで届くほどの長い髪』を持つ女の子で、士道が通っている高校のクラスメイト。

 

ぶつかってしまった事も、笑って許してくれる優しい女の子。

 

 

鳶一 折紙だった。

 

 

士道は折紙の手を取って立ち上がらせた所で、鳶一との出会いを思い出していた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道が折紙と出会ったのは、高校に入学し、新しいクラスに入ったとき。

 

士道の席の隣に座ったのが、折紙だった。

 

士道は軽く挨拶したのだが、肝心の折紙が驚いたのか、ビクッとなって顔を赤くして士道を見て、頷いただけだった。

 

いきなり男子に話しかけられて、緊張しているのか?そう思っていた。

 

 

 

 

士道が一人で、帰り支度をしていると折紙が声をかけてくる。

 

 

「あ、あの!すみません・・・」

 

「ん?」

 

「さっき、挨拶してくれたのに、失礼な感じになっちゃってごめんなさい・・・」

 

「いや、俺は大丈夫だけど・・・もしかして、その事を謝る為に残ってたのか?」

 

「う、うん。そのままにするのは悪いかなって」

 

「俺は気にしてないよ。むしろ、俺が急に声をかけちまったから、驚かしてしまったかなって」

 

「そ、そんなこと無いよ!」

「そっか、それなら良かった。改めて、俺は五河 士道だ」

 

「鳶一 折紙です」

 

士道達は改めて自己紹介をしてから、また明日と挨拶して帰ったんだ。

 

 

 

「五河君・・・やっぱり、覚えてないか。でも、変わってない・・・優しいところとか」

 

 

ーーーーーーーー

 

 

それが、士道と折紙の出会い。それから、あっという間に打ち解けて一緒に勉強したり遊んだりする仲になった。

 

「鳶一、今日はどうしたんだ?」

「散歩かな。五河君は?」

 

「奇遇だな、俺もだよ。家でじっとしてるのもなって思ってさ」

 

 

「じゃあ・・・もし良ければ、私と一緒にお散歩しない?」

 

顔を赤くしながら、訪ねてくる折紙。断る理由もないから承諾したら、嬉しそうに笑った。

 

 

それから二人は、並んで一緒に歩く。他愛の無い話をしながら街中を歩いていく。

 

途中で喫茶店に入って奥のテーブルに座って休憩している。そして、士道が一旦トイレに行って戻ってくると・・・・・・。

 

 

「・・・だめ・・・こんな事をしたら・・・で、でも」

 

折紙が、士道がケーキを食べるのに使っていたフォークを持って、それを舐めようとしていた。

 

「・・・・・・」

「・・・んぅ?・・・あぁ!?ち、違っ・・・・・・これは違うのぉ!」

 

 

気付いた折紙が、顔を真っ赤にして慌てる。

 

 

彼女はたまに、こういう時がある。

 

これまでにも、彼の所持品を勝手に持って何かしようとしていたのを、士道は知っている。

 

でも、本人は無意識にやってしまう事が多いらしい。

 

 

 

「だ、大丈夫だ・・・わかってるからな」

「うぅぅ・・・」

 

うつむく折紙の隣に座る士道。

 

 

で、士道は注文したアイスティー『愛すティー』を一口飲んでテーブルにおいた瞬間、折紙の右手が士道のアイスティーの入ったコップを掴んで自分で飲もうとしたが・・・。

 

 

 

「どうしてぇ!?」

 

折紙は左手で、右腕を抑えて止めていた。

 

 

「くっ・・・静まれ、私の右腕・・・!」

 

腕から黒い炎が出たりするのか?

 

そんなこんなで、「鳶一発作」(命名:士道)が収まり、やっと普通になった。

 

という訳で改めて散歩を再会。二人で歩いていたら、。

 

 

「ギャオォォォォォン!!」

突然、バグスターユニオンが現れ、咆哮を上げた。

 

「バグスター!」

「!?」

 

その時、折紙がバグスターの名前をハッキリと口にした。

 

「五河君、逃げて!あいつは私が何とかするから!」

 

そう言って、折紙はゲーマドライバーを取り出して装着し、ガシャットを持った。

 

 

《タドルクエスト!》

 

表示されるタイトル、展開するゲームエリア、配置されていく複数の宝箱。

 

タドルクエスト・・・剣と魔法の正当派RPGだ。

 

 

「変身!」

 

《ガシャット!》

 

《レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?》

 

《アイム ア カメンライダー!!》

 

 

その姿は、水色の騎士。

 

「仮面ライダーブレイブ。切除開始!」

 

鳶一 折紙の変身した仮面ライダー、ブレイブは長剣を持ってバグスターに向かって攻撃していく。

 

軽やかな動きでバグスターを翻弄して、長剣で切り裂いていく。

 

バグスターは口から光線を放つが、折紙は左手の盾で防いで、長剣をバグスターの頭に突き刺した。

 

そして、バグスターユニオンは倒され、患者と分離した。

 

「フハハハ!我が魔力を味わいたいのか!」

 

魔法使いのキャラ、「アランブラ」を模したバグスターが出現した。

 

ユニオンとなっていた人物、OLの女性が倒れた。

 

そこに、栞が駆けつけた。

 

「士道!遅くなってしまってごめんなさい・・・あ、ブレイブです!折紙さんですね!」

 

「鳶一を知ってるのか?」

「はい。折紙さんが仮面ライダーになったときに、ご挨拶しました」

 

「栞ちゃん!五河君を安全な所へ!」

「その必要はねぇ!鳶一、俺も戦う!」

 

士道と栞もゲーマドライバーを付けて、ガシャットを起動して変身した。

 

《マイティアクションX!》

《爆走バイク!》

 

「「変身!」」

 

エグゼイド、レーザーに変身した二人は、折紙の隣に立つ。

 

「五河君も・・・仮面ライダー!?」

「なったのはつい最近!」

 

三人でアランブラを相手にしようとしたその時、一筋の光線が士道に直撃した。

 

 

「ぐあっ!」

「五河君!?」

「大丈夫ですか!?」

 

起き上がると、アランブラの隣に新たな仮面ライダーが並び立った。

 

それは、黒いエグゼイド。既にレベル2の姿だが、感じるプレッシャーはかなりの物。

 

「・・・・・・」

「私に引けと?・・・良いだろう」

 

黒いエグゼイドは、手を振ってアランブラは下がり、姿を消した。

 

 

「・・・・・・」

黒いエグゼイドは何も言わず、士道達を睨むように見つめる。

 

まるで、彼らの動きを抑えるかのように。

 

 

「・・・っ!」

「鳶一!?」

 

折紙が斬りかかるが、黒いエグゼイドは右手で掴んで止めて、更に力を込めてへし折ってしまった!

 

しかも、士道と栞にも襲いかかり、一撃で変身が解けてしまう程の大きなダメージだった。しかも、黒いエグゼイドの周囲からウィルス達が現れた。

 

黒いエグゼイドは姿を消し、ウィルス達が襲いかかってきた。

 

 

「しょうがない・・・いくぞ!」

 

「うん!」

「はいなのです!」

 

 

栞は一番前の一体の顔を蹴り、体を回転させて複数のウィルスの足を蹴って転ばせて、倒れたやつらにパンチを叩き込む。

 

折紙は杖で殴りかかってきたのをかわして、他のウィルス達には、自分から近づいて殴り、蹴り倒していく。

 

士道は走ってきたウィルスの腹を殴り、踏み台にしてジャンプして上から他のやつらを蹴りつけていく。

 

更に、落ちている杖を拾って次々と殴っていく。

 

 

そして、少ししてウィルス達を全て倒すことに成功したが、黒いエグゼイドもアランブラもいない。

 

一体、あの黒いエグゼイドは何者なのだろうか?

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後、女性はCRに搬送。病状は進行していて、このままは危険ということらしい。

 

 

三人はアランブラを捜索することに。しかし、手分けして探しても見つからない。

 

一旦合流した三人は話し合う。

 

 

「さて・・・次はどこを探しましょうか?」

「他に探していない所って・・・」

 

「・・・・・・」

「士道?どうしたのですか?」

 

 

「・・・思い出した。タドルクエストのボス、アランブラと戦う場所を」

 

「そこって・・・?」

「教会だ」

 

「じゃあ、早速そこに行こう!早く患者さんを助けないと」

 

「・・・・・・鳶一」

「え、何かな?」

 

 

「何で仮面ライダーになってるかとか、聞きたい事はあるけど、今は一緒に戦ってくれるか?」

 

「うん、もちろんだよ!」

「私も一緒なのです!」

 

士道の差し出した手を、折紙は繋いでくれた。栞も二人の手に重ねるように置いた。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

天宮市の奥にある唯一の教会。その中にアランブラはいた。

 

「待っていたぞ、勇者たちよ!我が魔法で倒してくれるわ!」

 

 

「患者の運命は、俺達が変える!」

 

「人を苦しめる者は許さない!」

 

「やっつけるのです!」

 

《マイティアクションX!》

 

《タドルクエスト!》

 

《爆走バイク!》

 

 

「「「変身!!」」」

 

 

三人とも仮面ライダーに変身。更に、レベルアップする。

 

「第二変身!」

 

「セカンド・ギア!」

 

士道と栞がレベル2になり・・・。

 

 

 

「ステージ(ツー)!」

 

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

 

《タドルメグル!タドルメグル!タドルクエスト!!》

 

 

ブレイブもレベル2になった。それは、本物の騎士を思わせる凛々しい姿だ。

 

更に、黒いエグゼイドとの戦いで折れた剣を構える。

 

「この剣は、誰にも負けない強い剣だ!」

 

 

すると、折紙の決意に答えるように剣が光り、その姿が変わった。

 

《ガシャコンソード!》

 

炎のような刀身を持つ、タドルクエストに登場する伝説の剣、ガシャコンソードに変化した!

 

「ノーコンティンニューで、クリアする!」

 

「アクセル全開!」

 

「切除開始!」

 

 

まず折紙が斬りかかり、士道は栞に乗って縦横無尽に動き、翻弄していく。

 

「モエール!シビレール!・・・当たらない!」

 

「私を忘れないで!」

 

 

折紙はガシャコンソードのBボタンを連打。その分の連続攻撃・・・炎の剣で斬っていく。

 

 

《コ・チーン!》

 

Aボタンで、氷の剣に変わった。ガシャコンソードは、炎と氷、相反する二つの属性を持つ剣である。

 

冷気を纏ったガシャコンソードを地面に刺すと、冷気が炎を放つアランブラに向かっていく。

 

炎と冷気がぶつかり合って相殺されていくなか、士道はガシャコンブレイカーを剣にして、すれ違い様に一閃。

 

更に、折紙もガシャコンソードで一閃した!

倒れるアランブラ。折紙がトドメをさすべく動く。

 

折紙はガシャットを抜いて、ホルダーへ入れる。そしてスイッチを二回押す。

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

《TADDLE 》

 

《CRITICAL STRIKE!!》

 

キメワザを発動。折紙は飛んできたアランブラに対して、左足を軸にして、エネルギーを纏った回し蹴りを当てる。

 

それによって、アランブラは倒された!

 

《GAME CLEAR!》

 

音声と共に、タドルクエストの絵と、GAME CLEARの文字が出てきた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

CRからの連絡が入り、女性のゲーム病は完治したという。

 

その後、折紙は士道に話してくれた。

 

 

折紙が仮面ライダーになったのは一ヶ月前。

 

黎斗が折紙を仮面ライダーにスカウトして、折紙はそれを承諾したという。

 

苦しんでいる人達を頬っておけない・・・折紙らしい理由だ。

 

 

「鳶一・・・」

「私はこう見えても鍛えてるし、慣れてるから大丈夫だよ。五河君は、大丈夫?」

 

「問題ねぇよ。栞もサポートしてくれているからさ」

 

「折紙さん!士道のサポートは私の仕事なのですよ!」

 

ぎゅっと俺の腕に抱きつく栞。

 

 

「・・・えいっ」

すると、折紙も士道の反対側の腕に抱きついてきた!

 

 

「鳶一!?」

「折紙さん!?」

 

「栞ちゃん・・・私も立候補するからね!」

 

 

「折紙さんも、士道の事・・・」

「うん・・・負けないよ!」

「私も、負けないのです!」

 

 

二人が何で争っているのかはわからないけど、嬉しいやら恥ずかしいやら・・・・・・そんな気持ちのまま、士道はされるがまま固まっていた・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その日の夜。

ビルの屋上に二人の人影があった。

 

 

一人目は、ラフな格好でゲームで遊んでいる青年。二人目は、緑色のマフラーをつけた青年。

 

「なぁ、グラファイト。これから、このゲームはどうなっていくと思う?」

 

一人目の質問に、二人目、グラファイトが答える。

 

「このゲームは、仲間を増やしていくために必要なものだ、遊び感覚でやるな」

 

グラファイトは中央にモニターが、左右にAボタンと銃口・Bボタンとチェーンソーの刃が付いている取っ手付きのパットを持っている。

 

「やれやれ、まぁいいか。さぁ、ゲームの始まりだ!」

 

一人目、パラドが高らかに宣言すると、グラファイトはパットからオレンジ色の粒子を・・・・・・バグスターウィルスを散布した。

 

 

悪意は、ばらまかれ続ける。




次回予告


バグスターに向けて放たれる銃弾。それは、不思議で貞淑な少女の放ったものだった。


第四話 強きSNIPE!


「可愛いですわね・・・」


ーーーーーーーー


ブレイブに変身する折紙ですが、原作十一巻に出てきた、改変後の折紙となっています。

これは、私の好みが半分と、物語の設定が半分によって出来ています。


キバはもう少しお待ち下さい。


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第四話 強きSNIPE!

四月七日、晴れ日。

 

 

「にゃー」

 

「うふふ、にゃーん」

 

「にゃー!」

「にゃーん♪」

 

「・・・・・・」

 

五河 士道の目の前で、黒い髪の女の子が芝生に座り猫を抱えている。その表情はすごく幸せそうだ。

 

彼がいるのは、栞と出会ったあの公園だ。そこでCRによった帰り道でこの光景を目撃。気になって寄ってみたのだ。

 

だが、士道に気付かないあたり、猫に夢中になっているみたいだ。

 

人なつっこいのか、人に慣れているのか。

 

「猫、可愛いでしょう?」

「あ・・・」

 

ある程度近付いた所で、女の子が声をかけてきた。微笑みながら士道を見ている。

 

黒く、フリルのついた服を着ていて、左目を長い前髪で隠しているが、それがミステリアスな感じにマッチしているみたいだ。

 

 

「あ、あぁ。可愛いよな」

「えぇ。わたくし、猫が大好きですの」

 

「この猫は・・・」

 

「野生ではありませんわ。猫好きな女の子の一家が飼っている飼い猫ですわ。」

 

「だから人に慣れてるのか・・・」

「その一家とは猫好きとして交流がありまして。こうして面倒を見ることがありますの」

 

猫を慈しむようにそっと撫でる少女。その姿からは、本当に猫が大好きという気持ちが伝わってくる。

 

穏やかな時間が流れている。しかし、それは突然の轟音と悲鳴が打ち破ってしまう。

 

女の子は、驚いた猫が逃げないように抱きしめて音のした方角を見る。

 

 

「・・・・・・」

女の子は無言で音のしたほうに向けて走りだし、士道も慌てて後を追いかける。

 

現場にたどり着くと、そこでバグスターユニオンが現れていた!

 

銃の形をしていた。夫婦らしき二人を睨むように見つめている。

 

 

「やめろおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

士道はガシャコンブレイカーを呼び出して、ハンマーのままユニオンに向けて投げた。

 

それは命中。ユニオンは倒れた。

 

 

「大丈夫ですか!?」

「は、はい!しかし、娘が突然大きな怪物に・・・!」

 

あのバグスターユニオンは、夫婦の娘らしい。その話を聞いた少女が前に出る。

 

 

「わたくしにお任せくださいませ」

 

「あ・・・・・・狂三(くるみ)さん!」

 

「さぁ、この子を連れて安全な所へ。それと、天宮総合病院に連絡を!急いで!」

「「は、はい!」」

 

猫を抱えて、避難する夫婦。

 

 

そして、狂三と士道はゲーマドライバーを取り出して装着した。

 

「あら・・・あなたもですの?」

「あぁ。一緒に戦ってくれるか?」

 

「えぇ、えぇ。よろしいですわよ。あの子は猫好き仲間。必ずお助けいたしますわ」

 

狂三はガシャットを銃のように持って起動させた。

 

 

《バンバンシューティング!》

 

ゲームエリアが広がり、ドラム缶が複数展開する。

 

バンバンシューティング。開発中止になったシューティングゲームだ。

 

 

「変身」

 

ガシャットを回転させて、ゲーマドライバーに入れ変身した。

 

《ガシャット!》

 

《レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?》

 

《アイム ア カメンライダー!!》

 

 

《ガシャコンマグナム!》

 

 

「仮面ライダースナイプ。ミッションスタート」

 

四人目の仮面ライダー、スナイプは武器のガシャコンマグナムを持ってユニオンに立ち向かっていく。

 

《マイティアクションX!》

 

「変身!」

 

士道もエグゼイドに変身。ガシャコンブレイカーを呼び出して、剣にしてユニオンへ走り出す。

 

士道がジャンプしながらユニオンを斬っていき、狂三はガシャコンマグナムを撃ちながら、動き回りユニオンを撹乱していく。

 

 

時折、狂三がマグナムを打撃武器のように使って殴ることもあった。

 

ユニオンは一発の銃弾を撃つが、狂三はそれをかわすと、エネルギーを纏って銃弾のようになってユニオンに向けて体当たりをくり出した!

 

それが止めになってユニオンは撃破され、感染者の女の子が落ちてくるが、狂三がキャッチしてくれた。

 

「我、誕生!」

 

バンバンシューティングの敵キャラ、リボルが現れた。

 

「しかし、誕生したらすぐに撤退するように指示を受けている。ここはベースへと退却する!」

 

リボルはそう言うとすぐに消えてしまった。

 

女の子を見ると、体も時折透けて、苦しそうだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後、女の子はCRに搬送された。ご両親と狂三も付き添っている。

 

その様子を、士道と呼び出された栞と折紙も上階から見つめる。

 

 

「あの人が、スナイプ・・・」

「鳶一は、会うのは初めてか?」

 

「うん、話を聞いたことあるくらいかな」

 

「・・・・・・」

「栞?どうした?」

 

「いえ、何でも無いのです・・・」

 

栞は複雑そうな表情で狂三を見ていた気がしたが・・・あまり聞くのも野暮だと思い、聞かずにおいた。

 

女の子は、両親や狂三と話したり猫と触れあったりしているが、ゲーム病は改善しない。

 

やはり、リボルを倒さないといけないのだ。

 

 

その時、CRの職員から連絡が入り、リボルを発見したとのこと。

 

狂三を含めた四人で現場に急行する。ちなみに、すでに自己紹介は済ませている。

 

狂三のフルネームは、「時崎 狂三(ときさき くるみ)」というらしい。

 

 

ーーーーー

 

 

たどり着いたのは、取り壊し予定のマンション。その中に、複数の戦闘員を従えているリボルの姿があった。

 

「敵兵の侵入を確認!これより、排除作戦を開始する!作戦開始!!」

 

リボルの掛け声に合わせて、戦闘員達が襲いかかってきた。

 

四人は襲いかかってくる戦闘員達をかわしながら、ゲーマドライバーを装着。

 

 

《マイティアクションX!》

 

《爆走バイク!》

 

《タドルクエスト!》

 

《バンバンシューティング!》

 

 

「「「「変身!」」」」

 

 

四人同時に変身。更に、レベル2になる。

 

 

「第二変身!」

「セカンド・ギア!」

「ステージ2!」

 

 

「第弐弾」

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

 

《ババンバン!バンババン!バンバンシューティング!》

 

 

四人揃ってレベル2になる。

 

 

士道は栞に乗って、ガシャコンブレイカーを持ち、走りながら攻撃。

 

折紙はガシャコンソードを構えて、襲いかかってくる戦闘員を正確に切り裂いていく。

 

狂三も、ガシャコンマグナムで正確にウィルス達を撃ち抜いていく。

 

ガシャコンマグナムのAボタンを押して「ズ・キューン!」の音声とともにスコープ付きのライフルモードに変形する。

 

出現したスコープを覗きながら狙いを定めて、強力な弾丸を発射。その一発でたくさんのウィルス達が倒される。

 

《マッスル化!》

《高速化!》

 

士道は栞にエナジーアイテムのマッスル化を修得させて、折紙は高速化を修得。

 

攻撃力を増した栞の車体でウィルス達に体当たりを食らわせて一気に倒す。

 

折紙は高速移動を繰り返して、剣で次々と切り裂いていく。

 

そこでまたウィルス達が現れたが、そいつらが次々とリボルに変わっていく!

 

「リボルが、たくさん!?」

 

「バンバンシューティングは、雑魚キャラを乗り越えてリボルを倒すのが目的の3Dガンシューティング方式のゲームですわ。

 

ですが、時間経過によって雑魚キャラがリボルの分身とまで言えるほどに強化、増殖する上に本物のリボルは透明化して姿を隠してしまいます」

 

「開発中止になったのは、そういう理由かもしれないな!」

 

 

驚く折紙に士道と狂三さんが解説をしている間も、どんどんリボルは増えていく。

 

リボル達が一斉掃射してくる。弾丸をかわしながら、対処方法を考えていると・・・。

 

「見つけましたわ」

 

狂三さんが呟くと、弾丸の雨の中立ったまま、ガシャコンマグナムを一点に向けて・・・・・・。

 

「ばぁん」

 

一発の銃弾を放った!その銃弾は、何もない所へ。しかし、そここそがリボルがいる場所だった!

 

リボルの透明化が解けて、姿を現す。

 

 

「ぐあぁ!何故わかった!?」

「答える義理はありませんわ」

 

狂三は、ドライバーからガシャットを抜いて、ホルダーへ入れる。そしてスイッチを二回押す。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

《BANBAN CRITICAL STRIKE!!》

 

 

狂三の足にエネルギーが集中。弾丸の形をしたエネルギーを右足に纏って跳び蹴りをくり出した!

 

それは狂い無くリボルに命中。断末魔の叫びを上げてリボルは倒された。

 

 

《GAME CLEAR!》

 

 

音声と共に、バンバンシューティングの絵と、GAME CLEARの文字が出てきた。

 

ウィルス達を的確に倒し、隠れていたリボルを正確に見つけ出して倒してしまった。

 

 

時崎 狂三は・・・・・・強い。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

その後、CRに戻った士道達。女の子の様子を見てみると、ゲーム病も消えて、元気になっている姿が見えた。

 

両親も喜んでいて、狂三も嬉しそうだ。

 

 

「今回、私達はあまり役に立てなかったね・・・」

「そういう時もあるのです。めげずに頑張りましょう!」

 

「うん、ありがとう栞ちゃん」

 

 

栞と折紙が仲良く話しているなか、士道は狂三と話す。

 

 

「ありがとう。君のお陰で助かった」

「礼には及びませんわ。わたくしはやりたいようにやっただけ。ですが・・・」

 

狂三は、士道に近づいて耳元で・・・。

 

 

 

 

 

「あまり情けない様でしたら・・・・・・わたくし、あなたの持つガシャットをいただいてしまいますわよ?」

 

「!?」

 

「うふふ・・・・・・ではごきげんよう、士道さん」

 

狂三は士道から離れて、CRから出ていった。

 

 

 

可愛い女の子だが、耳元で囁かれた時には寒気を与えるような冷たさも感じられた。

 

 

とりあえず、わかったことは一つ。

時崎 狂三は、強くて不思議な女の子・・・・・・ということだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

リボルバグスターとの戦いが終わったその日の夜。狂三は天宮市の高層ビルの屋上に座っていた。

 

 

「・・・やはり、仮面ライダーはわたくし一人にするべきでしょうか」

 

狂三は呟く。誰にも聞かれないとわかっているから。

 

「いいでしょう、やってみせましょう。わたくし自身の目的のため、バグスターウィルスを根絶するため」

 

狂三が立ち上がると、その体が光に包まれ変わった。

 

黒とオレンジの神秘的なドレスのような服。そして、髪型がツインテールになったことで左目が見えた。

 

その左目は、金色の時計の文字盤となっていた。

 

「そして・・・士道さんのために・・・・・・」

 

自分自身を抱き締めるように腕を組む狂三。

 

トクン、トクンと胸が高鳴る。それは決して悪い物ではない。むしろ・・・心地いい。

 

内側から涌き出る衝動を抑えるように。それでも、抑えきれなくて、笑ってしまうけど。

 

 

「きひひ・・・・・・きひひひひひひひひひひひひひひ!!」

 

 

己の目的のため、止まらない。進む、進むしかない。

 

 

「士道さん・・・必ずあなたは・・・」

 

 

 

それこそが、そう・・・それこそが。

 

 

精霊《ナイトメア》、時崎 狂三なのだから。

 




次回から、原作一巻の話に入る予定です。


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第一章 十香デッドエンド
第一話 第一精霊・Princess


第一章の始まりです。



四月十日。この日は五河 士道にとっても、重要な日となった。

 

己が救うべき存在、その一人に出会う日なのだから。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「・・・ん・・・・・・ふあぁぁぁ・・・もう朝か?」

 

五河 士道の目が覚めた。目覚めたばかりの頭で、今日のスケジュールを思い出す。

 

今日は四月十日。士道が高校二年生に進級する日でもある。

 

 

士道がベッドから起き上がると、ドアが開いて、女の子が入ってきた。

 

「おにーちゃん、おはよー!朝だぞー・・・おぉ!もう起きてる!」

 

「おはよう、琴里。朝から元気・・・あぁ、いつも通りか。琴里も早いな」

 

「早寝早起きは、体に良いからね!」

「そうか、よしよし、いい子だな」

 

士道が頭を撫でて誉めると、くすぐったそうに、そして嬉しそうに撫でられ続ける。

 

赤い髪をツインテールにしている女の子は、「五河 琴里」。士道の義理の妹だ。

 

 

士道は幼い頃に親に捨てられ、五河家に引き取られた。その時に出来た義妹が琴里だ。

 

「今から朝ごはんを作る。先に行ってろ」

「はーい!」

 

元気よく返事して、一階に降りていく。士道も高校の制服に着替えて、一階に降りる。

 

 

一階に降りると、琴里はソファに座ってテレビを見ていた。早速朝食を作っていく。

 

卵とベーコンを炒めていく中で、「空間震」に関するニュースが流れ始めた。

 

 

「空間震、最近多くなってきてるな」

「うん・・・・・・でも、予定よりちょっと早いかな?」

 

「ん?」

「なんでもないよー」

 

「・・・そうか」

 

琴里の呟きはあまり聞こえず気になるが、年頃の女の子の事をアレコレ詮索するのもあれか。そう思い、調理に集中する。

 

ようやく完成。二人で仲良くいただきます。

 

 

「琴里。今日は始業式だけだから昼には帰ってくるけど、何が食べたい?」

 

「デラックスキッズプレート!」

 

「当店ではご用意できかねます。・・・わかった、じゃあファミレス行って食べるか」

 

「本当!?約束だよ!」

 

「あぁ、約束だ」

 

そんな会話をしながら、食べ終わった後、皿洗いをして一緒に出る。

 

途中で別れて、士道は自分の通う高校に着いた。

 

 

来禅高校。最新の設備で充実しているこの高校は、数年前に立てられ、最新のシェルター設備も完備されている。

 

士道は自分のクラス・・・二年四組に向かう途中で、友人の広人と合流した。

 

 

「よぉ士道!相変わらずイケメンだな、イケメン力を分けてくれ!」

 

「よぉ広人、だが断る」

 

教室に入って座席表を確認。その席に座る。

 

近くになった広人と話していると、折紙も登校してきた。

 

「おはよう。五河君、殿町君」

 

「おはよう、鳶一」

「おはヨーヨー!美少女な鳶一さんに朝のご挨拶をしてもらえるなんて、俺はなんて幸せなんだ!」

 

「うるせぇ」

「タコスッ」

 

広人を物理で黙らせて、席に戻す。士道の隣になった女子は折紙だ。

 

「よろしくね」

「あぁ、こちらこそ」

 

微笑む鳶一。その微笑みは、意識する男子と隣になれた事の喜びである。

 

 

「ちくしょう・・・ちくしょう・・・」

 

広人、及び他男子連中が血涙を流しているが、士道と折紙はその事に気づかず、二人で仲良く話していた。

 

その後、担任の岡峰 珠恵先生の挨拶も終わり、始業式も終えて帰宅の時間。

 

折紙も広人も先に帰った。用事があるらしい。士道も帰ろうとしたら、スマホに着信。

 

見てみると、美九からのメールだった。士道は机に座り直して、メールをしていく。

 

 

『だーりん、進級おめでとうございます! 《*≧∀≦》』

 

『ありがとな。美九も今日始業式か?』

 

『そうですぅ。三年生ですね。だーりんより一つお姉さんですぅ (* ̄∇ ̄)ノ』

 

『それは知ってる』

 

『ですよねー ( ̄▽ ̄)=3』

 

 

そんな感じでメールのやり取りをしていく。そしてメールを終えて今度こそ学校を出た。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道は琴里と約束したファミレスについたが、そこに琴里はいなかった。

 

 

疑問に思っていたら、空間震警報が発令された。

 

空間震が発生するため、シェルターに避難しないといけないが、GPSで確認すると、琴里の反応はファミレスを示していた。

 

 

(何でだよ・・・琴里は店内にいないのに!)

 

士道は心配と焦りを抱き、店を出て琴里を探そうとしたが、空間震が発生してしまった。

 

士道はとっさにファミレス内部に入って空間震の衝撃から逃れようとする。

 

それが収まってから外に出ると、ビルが吹き飛んだ所の中心部・・・士道の正面に、一人の少女がいた。

 

近くに来ると、その少女の美しさがよくわかった。

 

黒くて長い髪。ポニーテールにしているな。

紫色の鎧とドレスを足して2で割った様な神秘的なのを着ている。

 

さらに、大きな椅子に座らず足を掛けて立っていて、格好良さ可愛らしさが両立している。

 

少女も士道に気づいたのか、椅子から剣を抜いて降りてきて、突き付けてくる。

 

 

「・・・・・・お前も」

 

少女が語りかけてくる。その声は、表情は・・・。

 

 

 

「お前も、私を殺しに来たのか・・・」

 

 

悲しみと絶望に満ちている。士道は確信した。

 

 

(・・・助けたい。この子は昔の俺と同じ感じがする。両親に捨てられて、絶望していた時の俺に)

 

士道は心の中で思いながら、言葉を紡ごうと口を開いた。

 

今日この日から、士道は精霊と呼ばれる存在を救うための戦い(デート)に、身を投じる事になった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道は少女に出会った後、急に飛んできた水着みたいなスーツ着て機械で武装してた少女達の乱入によって、少女と戦闘を開始。

 

こんな状況では話はできないので、一旦離れる。

 

これからどうしようかと思っていたら、士道は光に包まれ、知らぬ場所に移っていた。

 

そこで、「村雨 令音」という眼鏡をかけた女性と出会い、会わせたい人がいると言われたのでついていく。

 

そして、たどり着いた場所・・・船のブリッジみたいな場所で、神無月 恭平という金髪の男性と出会い、そして大きな椅子に座っていた人物が士道の方を向く。

 

 

 

「ラタトスクへようこそ、士道」

 

「・・・琴里?」

 

 

士道の妹、琴里だった。しかし、リボンは黒になってる。

 

 

「えぇ、士道のかわいい妹よ」

 

「・・・まぁいい。どういうことか、説明してくれるよな?」

 

「もちろんよ、その為にここに来させたのだから」

 

そして、琴里は説明を始めた。

 

 

上のモニターに映した少女は、精霊。隣界と呼ばれる世界からこちらにやって来る生命体。

 

見た目は人間の少女。しかし、誰も敵わないほどの強大な戦闘力を持っている。

 

 

霊装という最強の盾と、天使という最強の矛を持つ存在。

 

そして、空間震は、精霊がこの世界に現れる際の余波である。

 

次に、AST。精霊を武力で根絶するための組織であり、陸上自衛隊所属である。

 

最後に、ラタトスク。俺たちが今いる空中艦《フラクシナス》を開発した組織。

 

ASTとは異なり対話による平和的な方法で精霊を救い、空間震被害を根絶するための秘密組織。

 

 

しかも、その対話とは、「会話をして好感度を上げて、デートをして、デレさせる」というものだった。

 

 

 

「それ、何てギャルゲーだよ!?」

 

「いわば、『リアルギャルゲー』ね。ヒロインの好感度を上げてルートに入り、恋してキスをする。

 

攻略に失敗してバッドエンドになったら、世界が滅ぶわよ」

 

 

「バッドエンドがデカ過ぎるだろ!」

 

「あんたなら出来るでしょ?天才ゲーマーS」

 

 

「天才ゲーマーである俺でも、リアルギャルゲー何て攻略出来るかもわかんねぇぞ!?」

 

 

琴里は士道が天才ゲーマーSだということは知っている。

 

 

「それに、本当は空間震警報が解除されてからここに呼ぼうと思っていたけど・・・」

 

 

琴里は急に士道を睨む。

 

「何で警報が解除されてないのに外に出てたの?馬鹿?死ぬの?」

 

 

士道は素直にGPSの事を話した。

 

 

「あー、そっか。それは盲点だったわ。後で調整しないと」

 

 

 

『お前も、私を殺しに来たのか・・・』

 

士道の中で、精霊の少女のあの姿が離れない。全てに絶望したようなあの表情。

 

助けたい。同情かもしれない、昔の自分と重なっているだけかもしれない。

 

それでも、放っておけない。

 

士道はあの子に教えてあげたいのだ。この世界の素晴らしい所を、人の優しさを!

 

 

(その為なら、リアルギャルゲーだって、ノーコンティニューでクリアする!)

 

心の中で決意を固め、琴里に聞く。

 

 

「琴里。精霊を救う為には、対話が必要なんだよな?」

 

「えぇ。精霊と対話して、恋をさせて、精霊の心を救う。それがあなたのやるべき事よ」

 

「手伝ってくれ」

 

 

バグスターの事もあるが、知ってしまった以上、士道にとってはもう他人事ではない。

 

それに、士道自身もあの子を助けたいと決めたから。琴里は嬉しそうに笑う。

 

「OK。このラタトスクは、精霊達と、士道個人の為に作られた組織。最大のバックアップを約束するわ」

 

「ありがとよ・・・琴里、それに皆さん」

「「「?」」」

 

皆が注目するなか、士道は言いきった。

 

 

「五河 士道です、よろしくお願いいたします!」

 

 

しっかりと挨拶して、頭を下げる。

 

すると、皆が拍手してくれた。笑顔になっているのを見るに、どうやら悪い印象は無いらしい。

 

「これから頑張りましょうね、士道」

 

 

 

その後、このブリッジに集まっている方々から自己紹介を受けた。

 

早すぎた倦怠期(バッドマリッジ)、川越 恭次。

 

社長(シャッチョサン)、幹本 雅臣。

 

藁人形(ネイルノッカー)、椎崎 雛子。

 

次元を越える者(ディメンション・ブレイカー)、中津川 宗近。

 

保護観察処分(ディープラヴ)、箕輪 梢。

 

二つ名がアレだが、優秀な人員らしい。

 

 

「・・・では、シン。今から君を地上に転送する」

「俺は士道ですよ、令音さん」

 

 

令音は、何故か士道をシンと呼ぶ。

 

士道が注意しても、呼び方を変えることは出来なかった。

 

「では士道君。明日はこの船の案内を致しますね」

「ありがとうございます、神無月さん」

 

神無月さんは、とてもいい人だ。だがドMな変態だ。琴里に足を踏まれたりして喜んでいた。

 

趣味にとやかく言うのもあれかと思い、そっとしておく事にした。

 

そして、その後。士道は地上に転送してもらった。顕現装置(リアライザ)というシステムによるものらしい。

 

 

 

その後、帰宅している途中で栞と合流した。

 

「士道!」

「栞!どうした?」

 

 

栞の話によると、自分で作ったアップルパイのお裾分けに来てくれたのだ。

 

「ありがとう、栞。もらっていいか?」

「もちろんです!」

 

アップルパイを受けとる。ここで士道は、戸惑いながらも栞に訪ねてみた。

 

「なぁ、栞・・・」

「はい?」

 

「女の子と、その・・・デートしたり恋をしないと世界が滅ぶって事になったら・・・どうしよう?」

 

「・・・・・・・・・ほえ?」

 

栞はわからないらしく、首を傾げた。

 

栞にはとりあえず、女の子と恋をしないと世界が滅ぶ、という夢を見たと言って誤魔化しておいた。

 

 

精霊やラタトスクの事は秘密にするように言われており栞にはバグスターとの戦いもあるのに、巻き込みたくないという気持ちから黙っている事にした。

 

 

(精霊を救えるかどうかは、俺にかかっているんだ。絶対に・・・あの子の笑顔を取り戻す!)

 

決意を新たに、士道の怒濤の一日は終わった。




次回予告


士道は精霊との対話の為の特訓を行うことになる。果たして上手く出来るのか?


第二話 対話の為のTraining!


「ノーコンティニューで・・・クリア出来るといいなぁ」



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第二話 対話の為のTraining!

エグゼイド最終話、すごく感動しました。同時にもっと続いてほしいと思うくらい、終わったことを寂しく感じました。




五河 士道がラタトスクの事を知った日の翌日。天気は快晴。

 

 

 

精霊を救うための手段として、士道は精霊とデートをすることになった。

 

この世界や交渉役となる士道に好感を持ってもらえば、この世界をどうこうする意思がなくなるだろう、との事。

 

しかも、心を開いた精霊とキスをすることで、精霊の力、霊力を封印することが出来る。

 

そう言う意味でも、デートは必要だという。

 

 

そんなわけで、士道は副担任として赴任してきた令音と、来禅に来ていた琴里と理科準備室で合流。

 

女心を学ぶため、『恋してリトル・マイ・シドー』(製作、ラタトスク)というゲームをやらされた。

 

 

「ギャルゲー・・・・・・リアルギャルゲーの為にギャルゲーをやるって・・・・・・」

 

「文句言わない。さっさとやるの」

 

 

「・・・では、シン。始めてくれ。普通のギャルゲーと同じく、会話を進め、選択肢が出たら適切だと思ったのを選ぶんだ」

 

 

(不安だ。琴里が開発に関わっている時点で不安しかない。今の琴里は、完全にドS。神無月さん大喜びなドS女王様なんだぞ?)

 

ロクでもない選択肢が用意されている、一見何でもないような選択肢でもそれを選んだら、罵倒と共にバッドエンド・・・そういった罠を想定しながらも、やらなければならない。

 

「ノーコンティニューで・・・クリア出来るといいなぁ・・・」

 

士道は弱音を吐きながらも、最後までやり通すべく、コントローラーを握る。

 

 

 

それからしばらくして。全てのヒロインの攻略を完了。全てのヒロインは、一発でクリアした。

 

理由としては、折紙や美九といった女の子と接してきた経験と勘によるものである。

 

すると、琴里はつまらなそうにしていた。

 

令音曰く、士道が『恋してリトル・マイ・シドー』でバッドエンドになる度に、中学生時代の黒歴史を暴露していくつもりだったらしい。

 

しかし、士道が全てのヒロインを一発クリアしたため、それが出来なくて拗ねてるのだ。

 

この事実に、士道は心の底から安心したように、重い溜め息を吐いたのであった。

 

 

 

しかし、ここで空間震警報が発令された。

 

 

「琴里!」

 

「全く、特訓の最中に出てくるなんて。士道、行ける?」

 

「自信があるとは言えないが、やってみる!」

 

「OK。一旦フラクシナスに来なさい、空間震が収まって精霊の出現を確認してから行くわよ」

 

「・・・では二人とも、人目のつかない所に」

 

 

三人は校舎の外に出て、フラクシナスへワープ。少しして空間震が発生し、校舎は半壊状態。

 

精霊が出現したのは、来禅高校の中、士道のクラスだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

夕方。士道は半壊した校舎に向かう。

 

そして、士道のクラスに、精霊の少女はいた。出会い頭に士道は剣を突きつけられたが、恐怖は感じない。

 

バグスターとの戦いで、度胸が付いたのだろう。

 

 

「また貴様か・・・」

「覚えてくれていて光栄だ」

 

「・・・答えろ。貴様、何者だ」

 

 

ここで、耳に付けたインカムから、指示が飛ぶ。話によると、フラクシナスには高度なAIが搭載されていて、会話や好感度などから選択肢を選択するのだ。

 

『士道、まずはその子の名前を聞いて』

 

「それは無理だぞ、琴里。初めて会ったとき、自分に名前は無いって言ってたぜ」

 

『なんてこと・・・』

 

 

「俺は、五河 士道。殺す気は無い」

「そんな事言って、背後から襲うつもりか。信じられん」

 

 

「そうか、人間は全て敵・・・そう考えているのか?」

 

「それが当たり前だ。私が見てきた、人間の真実だ」

 

 

「・・・っ!人間は・・・」

 

士道は、わき上がってくる衝動を抑えられない。

 

人に襲われてばかりで、人を信じることが出来なくなり、誰かからの優しさ、温もりも無く、全てが敵の中で、否定され続け、たった一人で悲しみ笑顔を失い・・・。

 

 

 

(ふざけるな!!)

 

 

 

「人間はな・・・お前を傷つける奴だけじゃねぇよ!!」

 

「!?」

 

「お前は今まで敵意とか殺意とか・・・そんな悪いことしか知らなかったんだろ!でもな、人間はそんな奴ばっかりじゃ無い!」

 

「な・・・だが、しかし!」

 

「この世界にはな、優しい人間だっている。お前に優しい世界でもある。俺もその一人だ!」

 

「し・・・しかし、やはり・・・」

 

 

あぁ、そんな顔をさせたくない。絶望して、全てを諦めたような顔を止めてくれ!

 

そんな顔はしてほしくないから。君にはきっと、笑顔の方が似合うから。

 

 

 

「俺がここに来たのは、戦うためじゃない。話がしたいからだ」

 

「話・・・?」

 

 

「あぁ、話だ!内容はなんでもいい。気に入らないなら無視していい。だが・・・!」

 

『落ち着きなさい、士道!』

 

「でも、この言葉だけは信じてほしい!」

 

 

 

 

 

「俺は、お前を・・・・・・否定しない!!」

 

 

 

 

 

士道は一番伝えたかった事を、大きな声で伝えた。

少女はすごく驚いているのか、しばらく無言だったが・・・。

 

 

「シドー・・・シドーと言ったな」

「あぁ」

 

 

「さ、先程の言葉に嘘が無いと言うならば、今すぐ私と話をしてもらおう。

 

だが、勘違いはするなよ。これはあくまでも、人間に関する情報を得るためだからな。情報、超大事」

 

 

そう言う少女はそっぽを向いているが、嬉しそうなのが一目でわかる。

 

 

「ところで、君は・・・」

 

「シドー・・・お前に頼みがある」

「ん?」

 

 

「いつまでも君では不便だが、私には名前がない。という訳でシドー、お前が私に名前をつけろ」

 

 

(お、俺に名付け親になれというのかよ!?)

 

いきなりの申し出に、困惑してしまう。

ここで、琴里から名前のアイディアが来たのだが。

 

 

『トメ』

 

「却 下」

 

士道は即却下した。そして考え直した結果。

 

 

「十香・・・・・・十香っていうのはどうだ?」

「十香・・・?」

 

「あぁ」

 

 

士道が見本として黒板にチョークで名前を書いたら、少女・・・十香も真似をして書いた。ビームで。

 

 

 

 

「これが、私の名前・・・シドー、私の名前を、呼んでくれ」

 

「十香」

「うむ・・・シドー!」

 

「あぁ!十香!」

「・・・~~~~~っ!!」

 

 

名を呼ぶ度に十香は嬉しそうな笑顔になる。

 

因みに、士道が十香と名付けたのは、初めて会った日が四月十日だから。

 

この事実は墓場まで持っていくことを誓った。

 

 

『士道。プリンセス・・・いいえ、十香の機嫌はとてもいい感じよ。後は機嫌を損ねない様に気を付けなさい』

 

「プリンセス?十香の事か?」

『えぇ、人間が彼女に付けた識別名よ』

 

「ではシドー、早速話をしようではないか!」

「あ、あぁ!」

 

 

十香はそう言うと、紫色の結界のようなものを展開して、二人を包んだ。

 

少しして、校舎を囲んでいたASTが攻撃してきたが、士道と十香は無視して色んな事を話したら、いつの間にかデートの話になっていた。

 

 

「シドー。そのデェト、とは何だ?」

 

「ん~、男の子と女の子が一緒に出掛けて、遊んだりご飯を食べたり・・・要するに、男女二人で楽しい時間を共有する・・・って感じかな」

 

「男と女が二人で・・・ううむ?」

「わからないか?じゃあ、俺とデートしないか?」

 

「シドーと・・・デェト?」

 

士道からの提案に、十香は首をかしげる。

 

 

『あら、士道から自然と誘えるなんてね。てっきり恥ずかしがって言い出せないものだと思っていたわ』

 

『・・・いい感じだよ、シン』

 

『凄いです士道君、そのまま夜の遊びまで教えてぇぇぇむ!痛いのありがとうございました!』

 

『士道君、さらりとデートに誘えるなんて凄いですよ!』

 

『しかも会話において、女の子に不快感を感じさせない誠実さもあって、素晴らしいです!』

 

『ふむ、士道君にはハーレム王の素質があるかもしれませんね』

 

『素敵ですよ、士道君!』

 

『グッジョブです・・・!』

 

 

フラクシナスクルーの皆さまから高評価を貰った。

 

 

「そうだ、明日に・・・!」

 

その時、横の壁が崩れた数秒後、ASTの攻撃が激しくなってきた!何人かは剣を持って接近戦を仕掛けてくる。

 

 

十香は士道を掴んで・・・。

 

「逃げろ、シドー!」

 

後ろへ放り投げた!!

 

廊下に転がった士道は慌てて起き上がり教室を見たが、十香は戦っていて、話は出来そうにない。

 

 

『士道、ここは引き上げなさい。デートの約束を取り付けられただけ、上出来よ』

 

「・・・・・・わかった」

 

 

士道は外に出る前に、十香に向けて言った。

 

「十香!また明日な!」

「うむ・・・・・・また明日な、シドー」

 

士道の言葉に、十香は小さく、しかしハッキリと答えた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同日、夜。

 

バグスターの幹部、グラファイトはいつものビルの屋上にいた。

 

更に、グラファイトは手に四つのガシャットを持っていた。赤、黄、黒、オレンジの四つだ。

 

グラファイトはワープして姿を消した。次にグラファイトが現れたのは、天宮市のどこかにある秘密の空間。

 

そこは窓がない、電気の明かりのみで照らされている空間。

 

「待たせたな」

「問題ねぇよ。さて、こいつらだ」

 

中には既に一人の人物がいた。金髪をツンツンにしている少年だ。

 

「これがそうか・・・」

「そうさ。魔術と錬金術によって作られた物だ」

 

少年がグラファイトに渡したのは、短剣。

 

赤い刀身に竜の鱗のような模様が付いていて、形も禍々しさが感じられるデザインになっている。

 

しかし、その短剣から感じる力はかなりの物だ。

 

「その短剣、貴重な材料もふんだんに使ってる最高の一品・・・らしい」

 

「らしい?」

「だって、これ造ったのは俺じゃあないし。俺の仲間と、俺達と手を組んでいる、人間の錬金術師だよ」

 

 

「パヴァリア光明結社、だったな」

「正解」

 

「・・・まぁいい。こいつは貰っていくぞ」

 

「おいおい、こっちへの報酬は?」

「わかっている、急かすな」

 

 

グラファイトはUSBメモリを取り出して渡した。

 

「お前達が望んだもの・・・バグスターウィルスだ」

「サンキュー」

 

バグスターウィルス入りのUSBメモリを受け取った少年は、笑顔で礼を言ってポケットにしまう。

 

「いやー、お前らの上司・・・あの黒い戦士には感謝だな。お陰で無傷でバグスターウィルスを手に入れる事が出来た」

 

「一つ聞かせろ。何故"ファンガイア"が、バグスターウィルスを欲しがる?」

 

「お前も知っての通り、俺達は人間との共存に反対している組織であり、戦いを続けている。

 

自分達の障害になるものをぶっ壊すためなら、何にでも手を伸ばすのさ」

 

「そうか・・・」

「それじゃあ、今後もご贔屓にー」

 

ワープして姿を消す少年。残ったグラファイトは、貰った短剣を見つめながら呟く。

 

 

「ファンガイア・・・終焉の革命団・・・パヴァリア光明結社か。まぁいい。俺は俺のやることをやるだけだ。バグスターが世界の支配者になるためにな」

 

グラファイトもワープして外に出る。貰った短剣が、月明かりを受けて怪しく光る。

 

 

右腕に持っている機械・・・ガシャコンバグヴァイザーに赤いガシャットを装填する。

 

《ガシャット!》

 

バグヴァイザーの銃口の部分を街に向けると、装填したガシャットのデータを含んだバグスターウィルスが一気に放出される。

 

「仲間の新しい形・・・『コラボ』。上手く出来るといいが・・・仮面ライダーが邪魔だな」

 

 

僅かな不安を抱きながらも、グラファイトは仲間を増やすために暗躍を続ける。

 

 




次回予告


対に始まる、精霊とのデート。果たして、無事にデートが出来るだろうか?


第三話 十香とDate!


「では行くぞ、デェトに!」


ーーーーーーーーーー


この小説は、私が連載しているもう一つの作品「紅牙絶唱シンフォギア」と世界観が共通しています。

シンフォギアの人物や用語が出てきたのもその為です。


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第三話 十香とDate!

十香とデートの約束をした日の翌日。

 

五河 士道は朝飯の後、来禅の制服に着替えながら、栞から貰った連絡の内容について考えていた。

 

 

栞から来た連絡とは、「幻夢コーポレーションから仮面ライダー用に開発したガシャットが四つ盗まれた」とい物だ。

 

恐らく、盗んだのはバグスターだろう。士道はそう予想した。

 

(バグスターがガシャットを盗んだのは、何が目的だ?

仮面ライダーが強くなるのを防ぐ為か?それとも・・・)

 

士道は色々と予想を立ててみたが、これといったのが思い付かなかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

午前中。来禅高校の前に到着。

 

入ってみたが、校舎が崩壊している為、やはり休校になっている。

 

 

立ち入り禁止も何のその、入っていく士道。

ここに来れば、十香に会える。そんな気がして。

 

 

しかし、敷地内を見渡しても十香の姿はない。

 

「まぁ、来るわけ無い・・・か」

 

空間震が出てないのに、精霊が出てくるわけが無い。そう思いながら諦めかけたその時。

 

 

 

 

「おい、シドー・・・・・・シドー!」

「え・・・?」

 

 

士道は声のした方を向くと、瓦礫の上に十香が立っていた。

 

「十香!?」

「遅いぞシドー!ばーか、ばーか!」

 

「おいおい、どうやってここに?」

「わからん、気づいたらここにいた」

 

十香から話を聞いたところ、ASTとの戦闘の途中、「隣界(りんかい)」という世界で眠っていたという。

 

そして、気づいたらここにいたという。隣界にいる間の記憶は無いらしい。

 

空間震を起こさずに精霊が出てくる現象があるらしい。

その事に驚きを隠せない士道。

 

 

「・・・そうか」

「そうだ。ではシドー、私とデェトするのだ!」

 

「・・・・・・そうだな、デートするか!」

「うむ!」

 

笑顔で、嬉しそうに頷いて、瓦礫から飛び降りて士道の正面に立つ十香。

 

「ところで十香」

「ん?」

 

「服、着替えようぜ。流石に目立つ」

 

精霊にとっての最強の盾、霊装は目立ちすぎる。一般人を騒がせて、最悪ASTに報告が行ってしまうだろう。

 

説得して、落ちていた卒業アルバムに写っている女子の制服を見せる。

 

すると、十香の体が光に包まれてすぐに、来禅高校の女子の制服になった。

 

 

「これでどうだ?」

「あぁ・・・似合ってる。可愛いぞ」

 

「そ・・・そうか?シドーに言われると、何か嬉しいな・・・」

 

顔を赤くして照れているような十香。

 

「では行くぞ、デェトに!」

「あぁ!行こう!」

 

こうして、士道は十香と一緒にデートをすることになった。

 

しかし・・・・・・。

 

 

「シドー!もっと、きな粉パンを食べたいぞ!」

 

「シドー、あれはどんな味がするのだ!?」

 

「シドー、もっと食べたいぞ!」

 

 

「食ってばっかりじゃねーか!どんだけ大食いなんだよ!?」

 

十香とのデートは、街の見学と食べるだけになってしまっている。

 

次々と食べていくので、財布がヤバイ。

 

 

(早く給料入んないかな・・・)

 

高校生の財布事情を考えぬ十香の食べ方。それはまさに七つの大罪の一つ、暴食。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻。陸上自衛隊、天宮駐屯地。ASTの基地でもあるその中で、隊長の日下部 燎子は書類仕事を行っていた。

 

 

「はぁ・・・」

大量の書類に溜め息を吐きながらも、黙々と続けていく。そんな中で、燎子は一人の少女を思う。

 

「全く。折紙が辞めてから、精霊との戦闘効率が下がってるわね・・・」

 

燎子の言う折紙は、士道のクラスメイトで、仮面ライダーブレイブの鳶一 折紙の事だ。

 

折紙は元々ASTの隊員であり、あらゆる面で優秀な人物だった。

 

部隊員の中には、折紙に憧れて入った者もいる程である。しかし、折紙は高校に入学する二ヶ月前に辞めてしまった。

 

理由は詳しくは聞かなかった。知りたい気持ちもあったが我慢したのだ。

 

 

「精霊を倒すことは出来なくても、撤退させることは出来る。折紙は精霊と上手く戦えていた。それが、他の隊員の士気向上に繋がってたのね」

 

しかし、折紙が辞めて以降精霊との戦闘は以前程の成果を挙げられなくなっていた。

 

精霊を撤退させるまでの時間が以前よりも掛かってしまっているのだ。

 

今までの成果は折紙に頼っていたからだという事を突き付けられ、折紙がいない今はどうするべきかを考えなければならない。

 

 

その時、少し粗いノックと共に一人の女性隊員が入ってきた。

 

「失礼します!隊長、大変です!」

 

「どうしたのよ?」

 

「空間震は起こっていませんが・・・・・・精霊、プリンセスに酷似した少女の目撃情報が入りました!」

 

「・・・・・・・・・はい?」

 

報告内容に、燎子はそんな返事しか出来なかった。

 

女性隊員の話によると。

他の隊員が非番で街を歩いていた時に、プリンセスに酷似した来禅高校の制服を着た少女・・・十香を目撃。

 

 

しかも、隣に一般人の少年・・・士道を連れ回していたのだ。

 

隊員は、プリンセスが一般人を連れ回していると思い、慌てて連絡を入れたのだ。

 

隊員から届いた写真データは、記録に残っているプリンセスの顔と確かに酷似している。

 

 

「隊長・・・どうしましょう?」

「空間震も無しに・・・偶然似ているだけか、本人か。一般人も一緒となると・・・」

 

燎子は考えた末に、指示を出す。

 

 

「観測機を使って、精霊かどうかを確かめるわ。一機ではなく、複数使用。

もし精霊だった場合は、即座に倒し一般人を保護します!」

 

「了解です!」

 

敬礼をして退室する女性隊員。燎子も急いで準備を行う。まずは、上層部に許可を貰う所からだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

琴里と令音は街中の喫茶店にいた。

 

 

「あ、令音。それいらないならちょーだい」

「・・・あぁ、構わんよ」

 

琴里が令音の前の皿の中のラズベリーを要求。

 

「んー、おいしい。何で令音これダメなんだろうねー」

「・・・すっぱいのは苦手でね」

 

そう言い令音は、砂糖を大量に入れたアップルティーを飲んでいく。

 

今日、琴里はいつも通り中学校に登校したのだが、昨日の空間震の余波で琴里の学校までも被害を受け、休校になってしまった。

 

その為、仕事が落ち着いた令音を呼んで天宮通りのカフェに来て二人で一緒にお茶していた。

 

中学校に行くつもりだったので、琴里が着ているのは中学の制服で、髪を結っているリボンの色は白である。

 

 

「・・・琴里、聞いておきたいんだが」

「なーに?」

 

ここで令音が琴里に聞いてくる。

 

 

「初歩的な事で悪いのだがね、琴里。なぜ彼が・・・シンが精霊との交渉役に選ばれたんだい」

 

「んー、誰にも言わない?」

琴里は眉を寄せながら聞く。

 

「・・・約束しよう」

令音は頷く。琴理はそれを確認すると頷き返し、続ける。

 

 

「実は私とおにーちゃんって血の繋がっていないって言う超ギャルゲ設定なの」

 

「・・・ほう?」

 

令音が小さく首を傾げる。

 

「だから私は令音の事が好きなんだよねー」

「・・・・・・?」

 

令音が再び首を傾げる。

 

「気にしなーい。で、続きだけど、何歳ごろって言ってたかな?

 

それこそ私がよく覚えていないくらいの時におにーちゃん、本当のおかーさんに捨てられて家に引き取られたらしいんだ。

 

私は物心つく前だったから憶えていないんだけど」

 

ここで、なぜか令音が眉をピクリと動かす。琴里は、その事に気付かないまま話す。

 

「年齢一ケタの子供からしてみれば母親は絶対の存在。

そんな中で母親に捨てられちゃったら、誰だって絶望しちゃうでしょ?」

 

「・・・そうだね」

 

「そういった事があったから絶望・・・ううん、負の感情に妙に敏感なの」

 

「・・・負の感情?」

 

「そ、自分は愛されないんだっていう思い、怒り、悲しみ、憎しみとか。

とにかくそう言った感情を見ると誰だろうと、どうにかしようとするの」

 

琴里は最後のラズベリーを食べて、締めくくるように言う。

 

「もしかしたら、と思ったんだ。あの精霊に勇んで向かっていくようなの、おにーちゃんぐらいしか思いつかなかったからさー」

 

その言葉に令音はなるほど、と頷く。

 

 

「・・・琴里、もう一つ聞きたい事があるんだ」

「ほぇ?なに?」

 

 

「・・・単刀直入に聞こう。シンの事、好きなのかい?無論、異性として。恋愛的な意味で」

 

琴里はブルーベリージュースを飲みながら聞いていたが、その内容に思わず。

 

 

「ぶふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

と盛大に口の中のジュースを噴出した。

 

「・・・どうしたんだい、琴里」

 

その様子に令音が不思議そうに首を傾げる。そして、琴里が吹き出したジュースが体にかかったので拭いていく。

 

 

「ゲホッゲホッ・・・・・・っ。い、いきなり何を聞くのだー!?」

 

琴里の顔は真っ赤だ。まるでトマトに赤いペンキを塗りまくったようだった。

 

「・・・精霊との交渉役にしたが、心配だろう?来禅高校での特訓で、シンを見つめる目が、愛する男を心配する女の目だったよ」

 

 

「・・・令音、今日はたくさん喋るね」

「・・・私にも、そういう時はあるさ。どうなんだい?」

 

「・・・誰にも言わない?おにーちゃんにも、秘密にしてくれる?」

 

「・・・約束しよう」

 

令音は頷く。琴理はそれを確認すると話を始めた。

 

「今から五年前かな。おにーちゃんも大分明るくなって、私とも遊んでくれるようになった位」

 

琴里は顔を伏せたまま続ける。

 

 

「五年前に、天宮市で大火災になっちゃったでしょ?その中で、おにーちゃんは必死に走って私の所まで来てくれたの。

 

炎を浴びて火傷を負っても、真っ直ぐ私の所まで来てくれた」

 

「・・・・・・」

 

「私を優しく抱きしめてくれて、もう大丈夫だって安心させてくれて・・・」

 

「・・・そうか。琴里にとって、シンは」

 

「うん・・・私を助けてくれた、ヒーロー。それからなの。おにーちゃんの事が好きになったのは」

 

顔が真っ赤になりながらも、令音に自分の想いを打ち明けた琴里。

 

「・・・話してくれてありがとう、琴里」

「まぁ、令音なら良いかなって・・・」

 

 

琴里が水を飲みながら、ふと外に目を向けたその瞬間。

 

「ぶふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

と盛大に口の中の水を噴出した。本日二回目の噴出である。

 

「・・・どうしたんだい、琴里」

 

その様子に令音が不思議そうに首を傾げる。そして体を拭く。これも二回目である。

 

「えっと・・・ちょっと非科学的かつ非現実的な物を見た気がして」

 

そう言い、琴里は外の通りの指差した。

 

「・・・・・・?」

 

令音は指差された方向に首を向け、動きを止める。

 

そしてゆっくりと首をもとの位置に戻すとアップルティーを口に含み、再び首を通りに向けると吹き出す。

 

「・・・なまらびっくり」

 

なぜ北海道弁。

 

状況は、カフェがある通りの向こう側。そこを琴里の兄である士道が女の子を連れて歩いているのだから。

 

しかも、その少女は精霊のあの少女だ。

 

 

「なぁにこれぇ」

 

琴里はとりあえずガラスについたジュースをハンカチで拭く。

 

その後、琴理は携帯を取出す。ラタトスクからの連絡は入っていない。空間震は出ていないのだ。

 

「精霊には私たちに感知されずに現界する方法があるって事?」

 

「・・・ただのそっくりさんと言う可能性は?」

 

令音の言葉に琴里はしばらく考える。

 

 

「もしそうだとしたら、おにーちゃんが普通の女の子を連れてるってことになるぞー。

 

精霊の静粛現界とどっちが非現実的かと言ったら、僅差で前者かなあ・・・・・・むぅ」

 

 

「・・・なるほど。だが、そうなると大変だな。シンを一人にしておくのも危険だ。それに、琴里がヤキモチをやいてるからね」

 

「! そ、そんな事は・・・うぅ・・・・・・」

 

令音がもう一度通りを見た時、もう二人はその場からいなくなっていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道と十香は近くのファミレスへ。

 

食べ終わった後の会計で令音と琴里(ファミレスの制服Ver)と遭遇。

 

予備のインカムを受けとり、ここからは『ラタトスク』のサポートを受けれることになった。

 

士道は早速指定された場所に向かう。するとビルが立ち並ぶハズの場所に、立派な商店街が出来ていた。地面から生やしたらしい。

 

ここでの食べ物は無料らしいから、士道の財布は助かった。十香は好きなだけ食べられることに喜んでいる。

 

その笑顔はとても可愛く、それを見ている士道も幸せな気持ちになれた。

 

 

その後、ゲームセンターできな粉パン型の抱き枕兼クッションを取って、士道は十香をある場所に案内した。

 

崖の上に有る高台だ。

 

ここは町を広く見渡せる。士道のお気に入りの場所だ。今は夕方であるから、夕日の光も相まってとても美しい。

 

「どうだ?ここは俺のお気に入りの場所だ」

「うむ!とってもキレイだ!」

 

目を輝かせる十香。しかし、その顔が暗くなっていく。

 

「私は・・・こんなにキレイな世界を壊していたのか・・・・・・やはり私は、いない方が」

 

 

「お前は、いていいんだよ!!」

「シドー・・・!?」

 

 

「お前はこの世界は、悪いことばかりじゃないってわかってくれたんだろ!?

でも、まだまだ足りない!俺がもっともっと教えてやるさ!」

 

心のままに叫ぶ。己の気持ちを十香にぶつけるように。

 

 

「助けたいんだよ、十香を!それは、義務や使命感じゃない!お前を助けたいから助ける!」

 

士道は十香を抱き締めた。離さないように、強く、優しく。

 

 

 

「シ・・・・・・シドー!?」

 

「言っただろ十香。俺は、お前を、否定しないって」

 

「・・・・・・! シドー!!」

 

十香は涙を流しながら俺を抱き締め返す。

 

「・・・私は、今までずっと、明日なんて来ないで欲しい・・・そう思っていた」

 

「十香・・・?」

 

「明日がくれば、この世界に来て、壊してしまい、メカメカ団に攻撃されてしまう。それが嫌で・・・明日なんて来ないでくれ。そんなことばかり考えていた」

 

「・・・」

 

「だが、シドーは私を受け入れてくれた。否定しないでくれた。デェトという楽しい事を約束してくれた。シドーがまた明日、と言った。

 

それから、こう思うようになったのだ。早く明日にならないかな・・・と」

 

明日を否定していた彼女が、明日を待ちわびる様になった。それをもたらしたのは、紛れもない士道の真っ直ぐな想いだ。

 

 

「全てシドーのお陰だ。シドーが受け入れてくれたから、世界の素晴らしい所を教えてくれたから。だから、ありがとう、シドー!」

 

明るい笑顔でお礼を言ってくる十香。

 

 

『全く、聞いてるこっちが恥ずかしくなるじゃない。

でも、上出来よ。好感度は最大までいったわ。最後は・・・』

 

琴里が士道に、最後にすべき事を伝えようとしたその時・・・!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「にしても、いまだに信じられないわね。精霊が空間震も無く表れて、普通の男の子と一緒に居るなんて」

 

士道と十香が立っている高台から離れた場所にある高台。

 

そこに燎子は立っていた。その目には双眼鏡が当てられており、二人を見つめている。

 

 

「狙撃許可は出ましたか?」

 

そしてのその後ろには腹ばいになり、巨大なライフルを構えた隊員がいた。

 

遠距離狙撃・・・スナイパーとして一番優秀な人物だった。

 

 

隊員が今持っているのは、《CCC》。

 

対精霊ようのライフルであり、随意意識(テリトリー)が無ければ撃った瞬間腕がへし折れる品物だが、その分威力も桁外れ。

 

霊装を纏っていない十香を殺す事も出来るだろう。

 

 

「まだよ。お偉方が協議中。まあ、様子見で終わるでしょうね。

空間震警報が鳴っておらず、避難もできていない状態で失敗したらとんでもないことになるから」

 

燎子は耳元の通信機で連絡を入れる。

 

 

「こちら狙撃班。そっちはどうなって・・・・・・え!?狙撃許可出たの!?」

 

燎子の声を聞いた隊員は、CCCのスコープの倍率を上げて、精霊を視界に収める。

 

一回深呼吸をして、気持ちを落ち着かせ、引き金を引いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道は気付いた。十香に迫る一筋の・・・!

 

「十香!」

 

士道は叫び、急いで十香を突き飛ばす。

 

「な、何をす」

 

いきなり突き飛ばされたことに十香は抗議の声を上げるがすぐにその言葉は途切れた。

 

何故なら、士道の脇腹が綺麗に円形に抉り取られているのだから。

 

 

ガシャン、という音共にCCCが倒れる。

 

燎子の声が聞こえてくるが、隊員はそれに反応出来ない。

 

ただただ、自分のやったことの恐ろしさと罪悪感に支配され、恐怖することしか出来なかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

十香はゆっくりと倒れた士道に近付き、彼を見つめる。

 

「シドー・・・・・・?」

 

士道は答えない。答えられない。

 

十香はその身に羽織っていた制服の上着を脱ぐとそれを士道にかけてやる。

 

「シドーと一緒ならできると思っていた・・・」

 

ぽつりと、十香は漏らす。

 

「どんなに大変で難しくとも、何とかできると思っていた。でも、だめだった」

 

 

「やはり、だめだった。世界は私を否定した!!!」

 

 

吼えると同時に十香は空に向かって手を掲げると空が歪み始め、黒雷が落ちる。

 

それと同時に十香が着ていた制服が霊装に変わる。

 

 

神威霊装・十番(アドナイ・メレク)!!」

 

 

その身に要所を鎧で固めた美しいドレスを纏う。

 

そして射撃が来たであろう己の背後にある遠くの高台を睨むと、かかとを地面に打ち付ける。

 

地面が砕け、そこから現れるのは大きな玉座、天使。十香はその背もたれに飛び乗る。

 

 

鏖殺公(サンダルフォン)!!」

 

そこから両刃の大剣を引き抜き、玉座から飛び降りると玉座に大剣を振り下ろし斬る。

 

その瞬間、玉座は砕け散り、その破片がに鏖殺公にまとわりついていく。

 

最後の破片が組み合わさった時、そこにあったのは10m以上もある巨大な大剣。

 

塵殺公(サンダルフォン)最強の形、全てを滅ぼす力の固まり。

 

 

最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)!!」

 

 

その大剣を十香が振りかぶると、刀身に黒い雷撃が集中していく。

 

一気にそれを振り下ろした瞬間、そこから放たれた斬撃が高台の一角を斬り裂くとその軌跡にあった物全てを切り裂き、消滅させた。

 

その衝撃を受けて、地面に墜落した燎子はその光景を見て呆然と見ることしか出来ない。

 

これまでの攻撃が遊びにしか見えない圧倒的な力。

 

十香は見つけた。見つけてしまった。士道を殺した犯人を。

 

「お前か・・・・・・殺したのは」

 

「あ・・・あぁぁ・・・・・・!」

 

隊員は動けなかった。戦う意志も無くなった。

一般人を撃ってしまった罪悪感、怒り本気を出した精霊への恐怖によって。

 

 

「その罪・・・死をもって償え・・・!!」

 

怒りと悲しみと絶望からくる涙を流しながら、十香はトドメを刺そうとした瞬間。

 

 

 

 

「十香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

上空から聞こえた声に十香は目を見開き、空をふり仰ぐ。すると空から士道が落ちてくるではないか!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

十香が霊装を纏って空へ飛んだ直後。

 

士道の体から青い炎が発火したかと思うと、何と狙撃によって開いた脇腹の穴が綺麗に塞がったのだ。

 

 

「・・・・・・俺は今、生きている!!?」

 

そんな事を言いながら飛び起きた士道。その直後、士道はフラクシナスの中にいた。ワープさせられたのだ。

 

控えていたフラクシナスのクルーに従って艦橋に走っていく。艦橋に到着すると、琴里達がいた。

 

 

「お目覚めの気分はいかが?士道」

 

琴里が艦長席に座りチュッパチャプスを口にくわえながら言ってくる。

 

「琴里、説明してくれ!十香はどうしてる!?」

 

「士道がASTの攻撃でやられてキレたお姫様が実行犯を殺しにかかってるわ」

 

「十香を止める方法はあるか!?」

 

琴里は、士道が自分が死ななかった理由よりも、十香を救う方法を聞いてくる事に、複雑な気持ちを抱きながらも問いに答える。

 

「ええ、あるわよ。これは士道にしかできないことよ」

「それは?」

 

「知らない?呪いのかかったお姫様を助ける方法なんて、一つしかないじゃない」

 

琴里はチュッパチャプスにチュッ、と口づけする。

士道はそれで何をするべきかを察した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「十香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「し、シドー!?」

 

十香は慌てて士道の元に。

重力緩和が働いて士道の体が浮遊する様になり落下が止まる。

 

十香はそのまま士道の元に飛んでいくとその体を抱きとめる。

 

 

「シドー・・・・・・本物か?」

 

 

士道が頭を撫でながら頷くと、十香は目じりに涙を浮かべ、そのままぎゅっと抱き締める。

 

「シドー・・・シドー・・・!」

「心配かけちゃって、ごめんな。俺は大丈夫だ」

 

泣く十香の頭を優しく撫でる士道。

すると、ここで最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)の力が暴走。

 

それを無くすため、十香を救う為に、士道は十香とキスをした。

 

精霊の力は封印された。それが士道の持つ力。

心を開いた精霊とキスすることで、霊力を封印出来るのだ。二人は高台の上にそっと着地した。

 

因みに、燎子はショックで動けない隊員を背負って撤退していた。

 

 

ここで、十香が一糸纏わぬ姿になっている事に気づく。士道は急いで上着を着せる。

 

顔を赤くして恥ずかしがる十香だが、士道に上目使いで訪ねる。

 

「なあ、シドー」

「ん?」

 

「また・・・デェトに誘ってくれるか?」

「・・・ああ、もちろんだ」

 

その言葉に、十香は嬉しそうな、花のような笑顔を浮かべた。

 

 

 

本来なら、ここで終わるはずだった。十香を救ってめでたし、それで終わるはずだった。

 

しかし、まだ終わらない。

 

 

 

「これが精霊の力か。大したものだな」

 

その声の直後、二人の前に突然・・・何かが着地した

 

一人は、全身が黒く、胸部分に赤い胸部装甲、右腕に赤い拳型アームを付けた怪人。頭に赤いガシャットが刺さっている。

 

もう一人は、二十代位の青年。

 

十香は士道以外の男が現れて、咄嗟に肌を隠す為に上着を深く着込む。

 

士道は、十香を庇うように前に出る。

 

 

しかし、士道はこの二人の事がわかった。こいつらは・・・・・・。

 

「見つけたぞ、五河 士道。いや・・・エグゼイド!」

 

敵・・・・・・バグスターだ!!

 

 




次回予告


始まる戦い。様々な者が交差して、激突していく。
その戦いの中で、士道は。


第四話 Clashする戦士達!


「諦めるわけ・・・・・・ねぇだろ!!」

ーーーーーーーーーー

次回は、エグゼイド五話の、グラファイト達との戦いとなります。


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第四話 Clashする戦士達!(前編)

お待たせしました。

長くなりそうなので、前編後編に分けさせていただきます。


「見つけたぞ、五河 士道。いや・・・エグゼイド!」

 

「お前・・・バグスターだな」

 

「俺はグラファイト。誇り高きバグスターの戦士!」

 

 

グラファイトは士道を指差す。

 

「エグゼイド。貴様達は多くの仲間を倒した。その罪、死をもって償え!」

 

 

「死なねぇよ。俺は生きて、戦う」

 

 

『・・・士道?一体何が起こってるの!?説明して、その男を知ってるの!?あの怪人は何!?』

「琴里、話は後だ・・・・・・行くぞぉ!!」

 

士道は叫び、グラファイトに向かって走り出す。

 

「お前は手を出すな」

グラファイトはコラボバグスターに言い、迎え撃つ。

 

 

走る士道は、その勢いを利用してジャンプ、上から殴りかかる。

グラファイトはそれを横に少し動いてかわし、すぐに右足でキックを放つ

 

士道は咄嗟に身を屈めてキックをかわしてグラファイトへ向けてアッパーを放つ。

 

しかし、グラファイトはそれを読んでいたのか余裕で回避する。

 

そして、グラファイトもアッパーを放ち、それは士道に命中した。

 

 

「がっ・・・」

「ふん!」

 

痛みで怯んだ所を、腹に突っ張りの様に掌で打撃を放つ。

 

今度は命中し、士道は少しだけだが吹っ飛び地面に倒れる。

 

「シドー!!」

「大丈夫だ!まだやれる!」

 

「ふん・・・」

 

駆け寄ろうとする十香を手で制する士道。グラファイトは士道に素早く接近し、士道の頭を掴んで放り投げる。

 

 

「はぁ!」

放り投げられ、宙に浮く士道にグラファイトはキックを放つ。命中し、十香のすぐ側まで吹っ飛ばされる。

 

 

「諦めろ。お前では俺に勝てない」

 

「シドー!!」

『し、士道・・・すぐに逃げて!そいつから離れたらフラクシナスで回収を・・・!』

 

傷つき、苦しむ士道に十香と琴里は涙声になりながらも声をかける。

 

琴里も必死だった。士道が狙撃された時も、復活出来ると判っていながらも、罪悪感と恐怖と悲しみと苦しみで押し潰されそうになっていた。

 

 

士道を精霊への交渉役という重すぎる宿命を背負わせてしまい、人々の・・・そして世界の未来を士道に背負わせてしまった。

 

その罪悪感でいっぱいだ。しかし、士道は・・・。

 

 

「諦めるわけ・・・・・・ねぇだろ!!」

 

決して諦めない。彼は立ち上がる。

グラファイトは、そんな士道の姿に少しだけだが感心した。

 

「諦めが悪いな。だが、戦士としては及第点だ。俺も戦士として、全力で答えよう」

 

グラファイトは、右手に黒いグリップを持ち、左手で中央にモニターが、左右にAボタンと銃口・Bボタンとチェーンソーの刃が付いている機械・・・「ガシャコンバグヴァイザー」を手に持った。

 

Aボタンを押して、待機音がなっている中で。

 

 

「培養」

 

その掛け声の後、バグヴァイザーを右手のグリップと合体させる。そして・・・・・・。

 

 

《INFECTION!》

 

《Let's Game! Bad Game! Dead Game! What's Your Name!?》

 

《THE BUGSTER!!》

 

 

グラファイトは光と共に、緑色の龍人の様な怪人体に姿を変えた。

 

「なっ・・・!?」

 

『な・・・あの男も怪人!?』

『・・・何なんだ、一体・・・』

 

隣の十香から、インカムから琴里や令音達フラクシナスクルーの驚きの声が出る。

 

無理もない。十香達はバグスターの事を今、初めて見たのだから。

 

 

「エグゼイド、お前を倒す。そして、精霊を殺す」

 

「・・・・・・何だと?」

「精霊の存在と力は、俺達にとっても驚異となるだろう。そうなる前に殺すのだ」

 

グラファイトの言葉に、士道は・・・・・・キレた。

 

 

 

「ふざけるなあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

怒りの叫びを上げ、グラファイトを睨み付けたまま、ゲーマドライバーを取り出して装着。

 

マイティアクションXのガシャットを取り出して起動。

 

 

《マイティアクションX!》

 

音声と共に、ゲームのタイトル画面が出て、ゲームフィールドが展開される。

 

 

「させねぇよ!十香には、指一本触れさせない!」

 

「シドー・・・?」

 

士道の人格が変わる。『S』の人格になると同時に、目が赤くなった。

 

十香も士道が変わった事に気付き、困惑してしまう。

 

士道は『S』の人格になると、性格が普段よりも好戦的な感じになり目が赤くなるのである。

 

しかし、他人を思いやり苦しむ者を救いたいという優しさは何も変わらない。

 

 

 

 

「十香の運命は、俺が変える!!」

 

 

 

「変身!!」

 

 

決意を口にした士道は、ゲーマドライバーにガシャットを入れ、エグゼイド・レベル1に変身した。

 

「第二変身!」

 

更に、レバーを開いてレベル2へ。

 

 

「シドー・・・シドーも変わって・・・」

『士道・・・?』

 

「はぁ!!」

 

士道はガシャコンブレイカーを呼び出して、グラファイトの元へ走っていく。

ここで、グラファイトだけでなくコラボの方も動き出す。

 

グラファイトは、鋭い龍の牙のような双刃の武器「グラファイトファング」を持って、士道へ斬りかかる。

 

士道は横っ飛びで避けて、コラボのパンチにはブレイカーのハンマーを叩きつけて相殺。

 

グラファイトがファングで刺突を繰り出す。刺突を避けきれず受けてしまった士道は地面に倒れ、転がる。

 

しかし、すぐに起き上がってすぐ横にあるチョコブロックを破壊してエナジーアイテムを修得する。

 

 

《高速化!》

 

高速化のエナジーアイテムを修得、高速移動を行いながら、二人のバグスターに攻撃を仕掛けていく。

 

 

高速移動を駆使して、バグスター達に攻撃を次々と当てていく。すると、グラファイトは武器を構えて動かなくなる。

 

士道が攻撃の為に接近してきたのを見計らって・・・。

 

「はぁ!」

「なっ!?」

 

居合い切りの様に横に斬りつける。それは士道に命中した。火花を散らして倒れる士道。

 

胸元を見ると、ライダーゲージは残り70%位だろう。

ゲージがゼロになったら消滅して死亡してしまう。

 

グラファイトは、今まで戦ってきたバグスターの中で一番強い。だからといって、士道に逃げるという選択肢は存在しない。

 

十香を守るために、士道は立ち上がる。

 

 

「まだ立つか、その心意気は戦士として相応しい。しかし・・・実力が無ければ、俺は越えられない!」

 

グラファイトが武器にエネルギーを溜めて、士道に向けて放とうとしたその時、背後からの攻撃がグラファイトに命中。

 

攻撃は中断された。

 

 

「ぐっ・・・誰だ!」

 

グラファイトの問いに答える様に、その人物は「地面から」姿を現した。

 

仮面ライダースナイプ、時崎 狂三だ。すでにスナイプに変身済である。

 

「お久しぶりですわね、グラファイト。会うのは四年ぶりですわね」

「貴様・・・スナイプか!」

 

 

「狂三さん!」

 

「遅くなってすみません、士道さん。グラファイトの相手はわたくしが引き受けますわ。こいつとは因縁がありまして。それと、助っ人も連れてきましたわ」

 

 

狂三が言い終えると仮面ライダーブレイブ、鳶一 折紙と仮面ライダーレーザー、風鳴 栞が駆けつけた。

 

レベル2となった折紙が、同じくレベル2になった栞を運転してやって来たのだ。

 

折紙と栞は、士道の前で停車する。

 

「五河君、遅くなってごめんね!」

「私達も加勢するのです!」

 

「ありがとう、助かるぜ!」

 

折紙が降りて、変わりに士道が乗る。アクセルを吹かしてコラボバグスターに向けて走り出す。

 

運転したままガシャコンブレイカーの剣で切り裂いていく。

 

コラボバグスターは攻撃が強い分小回りは利きづらい方なのだろう。大きな拳も空振りが続く。

 

一方、折紙と狂三はグラファイトと交戦していた。

 

決して仲が良いとは言えないが、グラファイトという共通の敵を前に、剣と銃がコンビネーションを発揮して戦う。

 

狂三が放つ銃弾を防いだ隙に折紙が斬りつける。

時折フェイントを混ぜていくなか、グラファイトは一旦距離を取る。

 

 

「・・・これを試すか」

グラファイトは、ファンガイアから貰った短剣を取り出す。

 

その短剣に力を集中させると、赤く禍々しい光が集中し・・・。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「「「!?」」」

 

降り下ろした短剣から強大な力が放たれ、それは斬撃となる。

 

その威力は、十香の天使から放たれる斬撃に匹敵する程の力になる。地面を深く長く切り裂いた。

 

 

「シドォォォォォォ!!」

 

手を伸ばす十香。巻き上がる煙から、士道が現れる。

両手に折紙と栞を抱えている。

 

しかし、変身が解けてしまっている上、体にダメージを負ってしまっている。

 

先程の斬撃をいくらか受けてしまったのだ。

 

 

十香の隣に着地して、二人を優しく下ろす。

 

「二人共、大丈夫か!?」

「士道・・・ごめん、なさい・・・です」

「足手まといに、なっちゃったね・・・」

 

 

「大丈夫だよ。十香・・・悪い、二人を見ててやってくれ」

「シドー!?シドーも傷ついているのに・・・!」

 

「・・・まだやれる」

 

士道のライダーゲージは、残り50%。

 

 

一方、グラファイトも膝をついて苦しそうにしていた。

短剣を持った左腕に痛みが走り、体力もゴッソリ削られている。

 

「ぐ・・・体への負担が大きいな。そう何度も使えない・・・・・・」

 

グラファイトが立ち上がると、士道もガシャコンブレイカーを剣にして立ち上がっていた。

 

睨み合う両者。すると、狂三が陰から現れてグラファイトを掴み、崖から飛び降りた。

 

「士道さん!グラファイトの相手はわたくしが引き受けますわ!そちらのバグスターを!」

 

「スナイプ貴様あぁぁぁぁぁぁ!」

 

落ちていく両者。残ったバグスターはコラボバグスターのみ。

 

 

気を取り直して士道がバグスターと向き合うと、また乱入者が現れた。その乱入者は。

 

 

「私が相手をしよう。エグゼイド」

 

黒いエグゼイドだ。その声はかなり強い加工が施されていて、正体は掴みづらい。

 

十香達が黒いエグゼイドの登場に驚くなか、士道は冷静に構える。

 

 

「お前・・・」

「一度、貴様と戦ってみたかった」

 

黒いエグゼイドは、左腰のホルダーから黄緑色のガシャットを取り出して起動する。

 

 

《シャカリキスポーツ!》

 

 

Xスポーツゲームの、シャカリキスポーツだ。

 

黄緑色のゲームエリアが天開される。それと同時にライダーをサポートし、共に戦う意思を持つメカ『ゲーマ』が出現。

 

 

BMX型のゲーマ、スポーツゲーマが召喚される。

自転車であるスポーツゲーマがクルクルと走る。

 

 

《ガッチョーン》

《ガシャット!》

 

ゲーマドライバーのレバーを閉じて、シャカリキスポーツガシャットを紫色のガシャットの隣に入れる。

 

 

「グレード3」

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクションX!!》

 

《アガッチャ!シャカリキ、シャカリキ!バッドバッド!シャカッとリキッとシャカリキスポーツ!》

 

 

スポーツゲーマが横向きに装着される。

 

頭にヘルメットのような飾りが付く。両肩に装備されたタイヤ、トリックフライホイールはクルクルと回り止まる。

 

 

「・・・!」

「あれが・・・!」

 

「レベル3・・・!」

「そうだ。レベルが一つ違うだけで、強さに雲泥の差が出る」

 

 

レベル3となった黒いエグゼイドは、士道に悪意の牙を向ける。

 




次回予告。

レベル3となった黒いエグゼイドの力は、士道を上回る。
士道に勝つ手はあるだろうか?


第五話 Clashする戦士達!(後編)


「ガチンコバトル、開始だ!」

ーーーーーーーーーー

士道が、『S』の人格になると、目が赤くなったまま固定されます。後、性格も好戦的な感じが出ます。

Sの人格について、分かりやすくするためです。



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第五話 Clashする戦士達!(後編)

「グレード3」

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクションX!!》

 

《アガッチャ!シャカリキ、シャカリキ!バッドバッド!シャカッとリキッとシャカリキスポーツ!!》

 

 

 

「・・・!」

「あれが・・・!」

 

「レベル3・・・!」

「そうだ。レベルが一つ違うだけで、強さに雲泥の差が出る」

 

シャカリキスポーツのガシャットを使い、シャカリキゲーマを纏ってレベル3となった黒いエグゼイドは、士道に悪意の牙を向ける。

 

 

黒いエグゼイドが仕掛けてくる前に、士道が先に仕掛ける。

 

士道はガシャコンブレイカーを持ち、ハンマーにして殴りかかる。

 

しかし、黒いエグゼイドはそれを難なく受け止めて空いている手にシャカリキスポーツのタイヤを手にもって、それを武器にして攻撃する。

 

「がはっ・・・」

 

くらった士道がよろけて横にずれるが、そこにコラボバグスターがおり、右手のパンチを当てる。

 

吹っ飛んだ士道に、黒いエグゼイドはエネルギーを集中させたタイヤをブーメランのように投げる。

 

エネルギーを纏ったタイヤが士道に命中。ダメージと共に地面に叩きつけられ、更にタイヤが操られているかのように変幻自在に動き、士道に連続でダメージを与えていく。

 

地面に落ちて、攻撃はようやく止まった。タイヤが自動で黒いエグゼイドの元へ戻る。

 

 

ここまでの攻撃で、士道はかなりのダメージを受けてしまった。

 

黒いエグゼイドの言う通り、レベル一つ違うだけで、強さに差が出ている。

 

ライダーゲージ、残り35%。

 

 

「シドー!」

「士道・・・!」

 

「五河君!」

『士道!しっかりして、士道!』

 

十香、栞、折紙・・・三人の少女が士道に駆け寄る。

琴里も通信ではあるが、士道に声をかける。

 

栞と折紙はまだ体にダメージが残っているが、動くことは出来る。

 

 

「シドー!大丈夫か!?」

 

「ぐっ・・・」

士道は体へのダメージが多いためか、返事をするのも辛そうだ。

 

そうしている間にも、黒いエグゼイドはトドメを刺すべく近づいてくる。その時・・・。

 

「ん?」

黒いエグゼイドが止まった。何故なら・・・・・・。

 

 

「頼む・・・・・・シドーをこれ以上、傷つけないでくれ!」

 

十香が士道を庇うように立っていた。両手を横に広げて、自身を盾にしているようだ。

 

 

「私を殺したいのならば、殺せ。だが・・・これ以上シドーを、この二人を巻き込まないでくれ・・・頼む」

 

「な、何を言ってるの!?」

「そんなのダメです!」

 

折紙と栞が慌てて止めようと肩を掴むが、十香がそれを振り払う。その反動で、二人は倒れてしまう。

 

顔を俯かせながら、それでも守るために。その為に己を犠牲にしようとしている。

 

「ふん・・・・・・まぁいい」

 

黒いエグゼイドは、タイヤにエネルギーを集中させて、十香に向けて投げる。

 

 

(これで良い・・・)

 

十香は心の中で覚悟を決めた。士道に救われたこの命は、士道を救うために使おう。そんな気持ちを持って、盾になった。

 

タイヤが十香の命を奪おうと迫り来る。そして・・・・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

崖から落下したスナイプ・・・狂三とグラファイトは、地面に落ちたがすぐに立ち上がった。

 

狂三は短剣の攻撃の時に影に逃げたものの、ダメージが無いわけではない。ライダーゲージが減っている。

 

グラファイトも短剣を使った反動で体にダメージが残っている。長期戦は不可能だ。

 

どちらが言うまでもなく、お互いにわかっていた。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

「奥義!」

 

狂三は、バンバンシューティングガシャットを、ガシャコンマグナムのスロットに入れる。電子音声の後、銃口にエネルギーが集まる。

 

グラファイトも武器にエネルギーをためる。

 

《BANBAN CRITICAL FINISH!!》

 

「激怒龍牙!!」

 

お互いに必殺技を発動。狂三の放ったエネルギー弾と、グラファイトの放った斬撃がぶつかり合い、大きな爆発が起こる。

 

爆発と煙が晴れると、グラファイトは狂三を探すが姿が消えていた。どうやら撤退したようだ。

 

「・・・・・・」

グラファイトは数秒回りを見回したが、いないことを確認して姿を消した。

 

 

狂三は士道達が見える所に出て、変身を解いて様子を見守る。

 

士道を庇うように立っていた十香に向けて、タイヤを投げている黒いエグゼイド。

 

投げられたそれは、十香に・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

十香に向けて、タイヤが投げられる。それは、十香に・・・・・・。

 

「おらぁ!!」

 

当たらなかった。

 

十香よりも前に出た士道がガシャコンブレイカーを力一杯振るい、タイヤを弾いた。

 

顔を俯かせながら、己の足で立ち上がっていた。

 

 

「シドー!?」

「・・・・・・ごめんな、十香」

 

「え・・・」

「俺が守るって言ったのに、こんなカッコ悪い所を見せて・・・。でも、俺は諦めない」

 

士道は俯かせていた顔を上げて・・・。

 

 

「だから、大丈夫だ十香。仮面ライダーとしても、五河 士道としても。君を護り、救ってみせる!!十香を、精霊を救うことを・・・諦めない!!!」

 

大声で己の決意を叫んだ。その直後、士道は走り出す。

 

 

「シドー・・・シドー・・・!」

 

十香は泣いていた。喜びで。精霊である自分の為に一生懸命になってくれている事が。救う、守ると言ってくれている事が、嬉しい。

 

 

「おにーちゃん・・・・・・」

 

琴里は泣いていた。心の痛みで。精霊を救うために交渉を引き受けてくれた士道。

 

それだけでも大変なのに、怪人や謎の敵と戦っている。

 

士道に任せてボロボロになっていく彼を見ている事しか出来ない自分自身が許せなくて、悲しくて。

 

 

 

チョコブロックをすれ違い様に壊してエナジーアイテムをゲットする。

 

《マッスル化!》

 

攻撃力を上昇させる赤いエナジーアイテムを、マッスル化を収得。攻撃力を上げて黒いエグゼイドに向かっていく。

 

黒いエグゼイドはタイヤを手に持って、直接殴りかかる。

 

しかし、士道は黒いエグゼイドを踏み台にして高くジャンプ。そして、マイティアクションXガシャットをガシャコンブレイカーのスロットに入れる。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

《MIGHTY CRITICAL FINISH!!》

 

ガシャコンブレイカーにエネルギーが集まる。目標は、コラボバグスター。

 

コラボバグスターは己が目標だということに気付いてロケットパンチを放つが、士道の攻撃の方が上回る。

 

ロケットパンチを粉砕し、ガシャコンブレイカーの打撃がコラボバグスターに命中。その強い一撃でコラボバグスターは倒される。

 

《GAME CLEAR!》

 

音声と共に、ゲームの絵と、GAME CLEARの文字が出てきた。

 

 

士道は赤いガシャットを入手する。

 

「なるほど・・・狙いはそれか」

「これで俺もレベル3・・・勝負だ」

 

士道は赤いガシャットを起動する。

 

 

《ゲキトツロボッツ!》

 

タイトル画面が表示されて、赤い小さなゴリラのようなロボットゲーマが出現。士道に片手を上げて挨拶し、自ら黒いエグゼイドに攻撃していく。

 

 

士道はガシャコンブレイカーを投げ捨てて、ゲーマドライバーのレバーを閉じてゲキトツロボッツガシャットを、マイティアクションXの隣に入れる。

 

《ガシャット!》

 

「第三変身!!」

 

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!!》

 

《アガッチャ!ぶっ飛ばせ、突撃!ゲキトツパンチ!ゲキトツロボッツ!!》

 

 

頭部はロボットのような意匠になり、胸部装甲も追加され、防御力も上昇する。

 

左腕には強化アーム「ゲキトツスマッシャー」が装着される。

この強化アームには腕力を10倍に強化する効果がある他、ロケットパンチの要領で射出することも可能。

 

 

仮面ライダーエグゼイド、ロボットアクションゲーマー ・レベル3、変身完了!

 

 

隙間からスチームを勢いよく吹き出し、戦闘準備は万全だと伝える。

 

「ガチンコバトル、開始だ!」

「いいだろう、かかってこい」

 

レベル3となった両者が激突する。

 

黒いエグゼイドの攻撃をかわして、士道が左腕のアームで殴る。その一撃は重く、ゲーマを装甲として纏っている黒いエグゼイドにも確かなダメージを与える。

 

黒いエグゼイドは、タイヤを両手に持ってそれを振り回して攻撃していく。

 

士道はそれを左腕のアームで受け止めてから、右足のキックを当てて引き離し、力を込めてアームでぶん殴る!

 

 

「・・・・・・っ」

 

黒いエグゼイドに大きなダメージを与えていく。

それに追撃をかけるのは士道。

 

アームでアッパーを放ち、浮いたところにジャンプして再びアームで殴り地面に叩きつけた。

 

着地する士道。ダメージを受けながらも立ち上がる、黒いエグゼイド。

 

そして、黒いエグゼイドは先程のようにエネルギーを集中させたタイヤをブーメランのように投げる。

 

しかも、今度は両方のタイヤだ。エネルギーを纏ったタイヤを操り変幻自在に動かす。

 

士道は縦横無尽に動き回る二つのタイヤに敢えて突っ込んでいく。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「!?」

 

 

突っ込んで来た士道に驚きながらも、黒いエグゼイドはタイヤで攻撃していく。

 

ダメージを受けながらも士道は止まることなく走り、接近して力を込めたパンチで黒いエグゼイドを殴る!

 

黒いエグゼイドは大きなダメージを受けるが、倒れることなく踏ん張った。

 

士道もタイヤの嵐の中に突っ込んでいきダメージを受けたが、士道も倒れることなく踏ん張った。

 

 

そして、二人は全く同じ行動をする。

 

士道はゲキトツロボッツガシャットを抜き、黒いエグゼイドもシャカリキスポーツガシャットを抜く。

 

それをキメワザスロットに入れてボタンを押す。

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

電子音声の後、エネルギーが膨れ上がっていく。

そして、ゲキトツロボッツのエネルギーが士道の右足に集まっていく。

 

 

黒いエグゼイドに、シャカリキスポーツのエネルギーが集まる。

 

そのエネルギーは、スポーツゲーマのタイヤが両方回転し、増幅していくエネルギーが右足に集まっていく。

 

両者はもう一度ボタンを押す。

 

 

《GEKITOTU!》《SYAKARIKI!》

 

《CRITICAL STRIKE!!》

 

 

士道と黒いエグゼイドが同時に走り、ジャンプする。

 

そして、士道はゲキトツスマッシャーの形になったエネルギーを纏った右足を前に出し。

 

黒いエグゼイドは、シャカリキスポーツのタイヤから送られてきた増幅エネルギーを右足に纏って右足を前に出し。

 

「「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

二人のライダーキックが炸裂し、ぶつかり合う!!

 

 

強いエネルギー同士が激突。それはぶつかり合いによってどんどん大きくなっていき・・・。

 

 

大きな爆発が発生し、両ライダーを巻き込んだ。

 

 

「シドオォォォォォォ!!」

「士道!!」

「五河君!!」

 

少女達の叫びが響く。フラクシナスから見ていた琴里も士道の無事を祈る。

 

 

そして、爆発した場所から落ちてきたのは士道だ。

黒いエグゼイドは姿を消している。爆発が起こった時に撤退したようだ。

 

フラフラしながらも、士道はゲーマドライバーのレバーを閉じてガシャットを二本抜いて変身を解いた。

 

 

「「「『・・・・・・!?』」」」

見た全員が絶句した。

 

士道は身体中傷だらけで服もボロボロ。傷口から血が出ていて誰が見てもわかるくらい多くの傷を負っている。

 

士道を救った青い炎は出ていて、傷を癒してはいるが失った体力や血は戻らない。

 

 

「良か・・・った・・・皆、ぶ・・・じで・・・・・・」

 

十香達の無事を確認した士道は安心したが、それで緊張の糸が切れたのか、意識を失って倒れてしまった。

 

意識が途切れる直前、大泣きして駆け寄ってくる十香を見た。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻。天宮市のどこかで。

 

黒いエグゼイドがダメージを負った体で歩いていたが、受けたダメージが多いためか、ふらついている。

 

ふらつきながらも歩き、パラドとグラファイトのいるところまでたどり着き、ゲーマドライバーのレバーを閉じてガシャットを二本抜いて変身を解いた。

 

その人物も傷が多く血も出ている。

 

 

「恐れているのか?エグゼイドの力を」

「まさか・・・恐ろしいのは」

 

黒いエグゼイドに変身していた男は。

 

 

「あんなに強い力を作り出せた、私自身の才能だ!!」

 

 

「ハハハ!心が踊るな。仮面ライダーゲンム・・・檀 黎斗」

 

 

幻夢コーポレーション社長、檀 黎斗だった。黎斗は士道達の前では見せなかった、狂気の笑みを浮かべた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・・・・・・・・んぁ」

 

「!シドー、気がついたか!」

「士道!良かったです・・・・・・」

「五河君、大丈夫?私達がわかる?」

 

「十香・・・栞に鳶一?ここは・・・」

「天宮総合病院よ、士道」

 

士道が寝ていたのは、天宮総合病院の病室、それも個室だった。

 

士道の周囲に十香、栞、折紙、琴里、令音の五人がいた。

 

 

「琴里。令音さんも・・・」

 

「・・・CRの責任者から全部聞いたわ。バグスターウィルスの事、CRの事、仮面ライダーの事・・・・・・全部」

 

「・・・・・・」

「一応、CRや衛生省の代表、ここにいる皆にも私達(ラタトスク)の事は説明しておいたわ」

 

「・・・ごめんな、今まで」

「本当よ」

 

琴里は士道を少し睨む様に見るが、目には涙が溜まっていた。

 

「何で今まで黙ってたの?何でもっと早く言ってくれなかったの?」

 

 

 

「・・・・・・怖かったんだよ」

 

士道は語り始める。自分の気持ちを。

 

「責任者から信頼出来る人には話して良いって言われていたけど、俺が言うのを躊躇ってた。

 

仮面ライダーになってバグスターと戦うというのは、ウィルスに感染した人の命を背負うってことだ。

 

自分が負ければその人の命も失われる。命を預かる責任の重さをハッキリと自覚してから・・・。

 

その命をめぐる戦いに大切に思う人達を巻き込むことが、怖くなった」

 

 

「知ってしまえば、巻き込まれる。巻き込まれれば、命を狙われる。

 

そうなる事を考えたら、怖くなった。俺の大切な人達までもバグスターとの戦いに・・・」

 

その時、琴里は立ち上がって士道の顔を掴んで自らの方を向かせる。

 

 

「私だって・・・おにーちゃんを巻き込んでしまった事を、今でも申し訳ないって、怖いと思ってるわよ!」

 

涙を溜めておけず、流しながらも琴里は士道に気持ちをぶつける。

 

「仮面ライダーとして戦っている事を知らないまま精霊の救済をお願いして、世界の命運を背負わせてしまった。

 

士道にはバグスターウィルスで苦しむ人の事もあるのに更なる重荷を・・・・・・ごめんなさい」

 

 

「・・・・・・俺もごめんな、琴里。これからも、俺を支えてくれるか?」

 

「もちろんよ。ラタトスク司令としても、私個人としても、おにーちゃんを支えるわ!」

 

「・・・私も、シンの味方だ」

 

「シドー!私を忘れるな!」

「十香!?」

 

「シドーは私を救ってくれた。私の命を、心を。だから、今度は私がシドーを救う番だ!」

 

「士道は一人で背負いすぎなのです。もっと頼ってくださいよ」

 

「五河君、私達は五河君の味方だよ。あなたの力になれるように、頑張るから」

 

「・・・皆、ありがとう」

 

皆の優しさを感じ、士道は礼を言った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「だーーーーーりーーーーーん!!」

「美九!?」

 

「大丈夫ですかだーりん!?だーりんが重傷を負ったと聞いて急いで駆けつけて来ました!」

 

「いや、それは良いけど何でナース服!?」

 

「私がだーりん専属のナースになるからに決まってますー!ノーコンティニューでだーりんを看病しますよぉ!」

 

突然乱入してきた美九で騒がしくなる中、折紙は考える。

 

(ラタトスク・・・精霊を討伐するのではなく、対話を通じて和解を目指す組織)

 

士道の妹、琴里から話を聞いた折紙。

 

かつて、精霊を討伐する組織であるASTに所属をしていた。今は辞めているが、それでも精霊は危険という認識がある。

 

しかし・・・・・・。

 

「こらお前!シドーが困っているではないか、今すぐ離れろ!」

 

「ホワァァァァァァァァァ!?どなたですかこの可愛い乙女はぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「ぬ!?」

「だーりんのハーレムに加わったんですか!?よろしいならば味見ですよおぉぉぉぉ!!」

 

「黙れHENTAI!」

「ミクン!」

 

「こいつは誘宵 美九。アイドルであり、事情を知っている仲間で、HENTAIだ」

 

「誘宵 美九って、あの超人気アイドルの!?」

「おぉぉ!?ツインテール美少女キター!」

 

「俺の義妹に何すんだアァァァァァァァァ!」

 

バコンッ!

 

「ミクロンッ!・・・・・・え、だーりんの妹!?ならば、私の事はお義姉ちゃんって呼んでください!」

 

「・・・は?」

 

「私はだーりんのお嫁さんになるんですよ!あなたみたいな可愛い子が義妹だなんて、私は幸せですねー」

 

「・・・は?」(低い声)

 

「き、貴様!よくわからないが、シドーは渡さないぞ!」

「美九さん!少しは自重しやがれー、なのです!」

 

「・・・モテモテだね、シン」

「助けてえー○ん・・・じゃなくて令音さん!」

 

 

士道が救った精霊、プリンセス。士道によって十香と名付けられた精霊。

 

そして、士道によって救われた「命」。

 

折紙は、十香が黒いエグゼイドに倒されそうになった時、士道を、そして自分と栞を庇った。

 

己の命よりも、士道達を優先したのだ。

その姿や士道を想う所を見ていると、普通の女の子にしか見えない。

 

 

これから先、士道は他の精霊に会うことになるだろう。

 

出会っていく精霊を見て、世界に・・・そして士道に害をなすような事をするならばともかく、そうでないなら・・・。

 

「美九さん!五河君にくっつきすぎです!」

 

折紙は決めた。今はしばらく様子を見よう、見守っていこう。精霊と士道の行く末を。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

数日後。ASTで一人の隊員が辞めてしまった。その隊員は、士道を撃ってしまった隊員だ。

 

一般人である士道を撃ってしまった恐怖と罪悪感で武器を使う所か見ることも出来なくなった・・・所謂トラウマというやつだ。

 

士道は生きているが、それを知らない。仮にそれを知っても変わらないだろう。

 

「・・・・・・はぁ」

燎子はASTのこれからを憂い、深いため息を吐いた。

 

 

 

同日。退院し、再開した学校。そこで・・・。

 

「夜十神 十香だ!皆、よろしく頼むぞ!」

「風鳴 栞です!よろしくお願いします、なのです!」

 

十香と栞が来禅高校の女子の制服を来て、士道のクラスに転校生として入ってきたのだ。

 

十香は、夜十神という名字を得てまで。後で琴里から聞いたが、ラタトスクが戸籍を作ったようだ。

 

栞は、仮面ライダーとして士道のサポートに付くためであるが、栞自身も士道と一緒にいられる時間が増えるため、アッサリと引き受けた。

 

 

「これからよろしくな、シドー!」

「よろしくお願いするのです、士道!」

 

「あぁ、こちらこそ」

 

二人が加わったことで、これから日常が騒がしくなるだろうな。そう思う士道であった。

 




次回予告。

新たなバグスターとの戦いで、折紙の意外な弱点が発覚する。それを克服するための特訓が始まる。


第六話 ブレイブのDancing!

「ノーコンティニューで、踊ります!」


ーーーーーーーーーー

CRの責任者、衛生省の代表は後に登場します。


ここで、この作品の進行について少し説明を。


デアラ原作一巻と二巻の間に、ドレミファビート、ギリギリチャンバラ、ジェットコンバットの話をやります。

ドラゴナイトハンターZの話(エグゼイド九話~十話)はデアラ原作二巻、四糸乃の話でやります。

そして、デアラ二巻と三巻の間にエグゼイド十一話~十二話の話をやります。

更に、その後は「とある精霊との話」が終わったらデアラ三巻の話となります。とある精霊は、まだ秘密です。

ご了承下さい。


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第六話 ブレイブのDancing!(前編)

お待たせいたしました。更新いたします


十香と栞が来禅高校の生徒になってから数日後。

 

学校が終わった放課後。

士道、折紙、栞、十香の四人で下校をしている途中だった。

 

 

「十香さん、学校には慣れたですか?」

「勉強はまだ難しいが皆のお陰で問題なく過ごせているぞ!」

 

「何か困った事があったら迷わず相談してくれよ」

「うむ、ありがとうシドー!」

 

「そうだ、この先に美味しいクレープ屋があるから、皆で行かない?」

「それは本当か!?是非とも行かねば!」

 

「いっぱい食べる十香さんは何で太らないのですか?羨ましいのです・・・」

「ぬ?・・・私にもよくわからないな」

 

「あんなにたくさん食べても大丈夫って・・・運動とかしてるの?」

「いや、シドーと一緒に散歩をしたりしているが、激しい運動などはしていないぞ」

 

「「羨ましい・・・」」

「何がだ?」

 

女子三人が話に花を咲かせ、士道は若干後ろを歩く。

すると、少し離れた所から十香達とは違う声が聞こえる。声からして男性のようだ。

 

 

「おい!大丈夫か?しっかりしろ!」

 

ただ事ではないと感じとり、皆で声のする方へと向かう。

 

そこでは、倒れて苦しむ女性と女性に声をかけ続ける男性の二人がいた。

 

 

「大丈夫ですか!?何があったんですか?」

「か、彼女が突然倒れて・・・」

 

「救急車は呼びましたか?」

「あ、あぁ!もちろん」

 

折紙が鞄からゲームスコープを取り出して、スキャンするとウィルスのマークが表示される。

 

「やっぱり、ゲーム病に感染してる」

折紙の呟きを証明するように、女性の体にオレンジ色のノイズが走る。

 

そして、士道達の背後から急にバグスターが飛び出した。しかも、そのバグスターにガシャットが刺さっており、体に装甲が追加されている。

 

ゲキトツロボッツの時と同じ、コラボスバグスターだ。

 

 

「イエーイ!」

DJのようにノリノリで動く。士道は刺さったガシャットを特定した。

 

「あれは"ドレミファビート"。ゲキトツロボッツと同じく、ガシャットのデータを取り込んでる」

 

「ドレミファビート、美九さんに感染してるバグスターと同じ・・・」

 

「とにかく、あいつをやっつけるのですよ!」

「あぁ。十香、二人を安全な所まで」

 

「うむ、わかったぞ!さぁ、こっちへ」

「お、おい!なんだよあれ!?」

 

「とにかく今は逃げるのだ!」

十香は女性を背負って走る。男性も慌てて追いかけた。

 

 

「おし、行くぞお前ら!」

士道がSの人格になり、ゲーマドライバーを装着。

 

折紙と栞もゲーマドライバーを装着してガシャットを起動。

 

 

《マイティアクションX!》

《タドルクエスト!》

《爆走バイク!》

 

「「「変身!」」」

 

エグゼイド、ブレイブ、レーザーに変身した士道、折紙、栞。

 

すると、コラボスバグスターが肩から音楽が流れだし、しかも音符がたくさん出てくる。

 

 

「えっと、攻撃?」

「違うな。ドレミファビートは、音楽に合わせて踊ったりボタンを押すリズムゲーム。つまり俺達もあれに合わせて踊れって事だ!」

 

「合点了解なのです!」

「え、えと、やってみる」

 

栞は自信満々に、逆に折紙は戸惑っているように返事をした。

 

そして、三人のダンスはスタート。しかし、ここで一つの問題が発覚した。

 

 

「いよっ、ほっ、はいっと」

「イエイ、イエーイ、キラッ☆」

 

士道と栞はリズムに合わせてちゃんと踊れており、士道は全てGREAT、栞はGOODの方が多いがGREATも出している。しかし・・・。

 

 

「えっと、ここで、こう?」

 

MISS、MISS、MISS

 

「あれれ!?」

 

折紙は全く踊れず、MISSを連発してしまう。そう、折紙はダンスが不得意なのだ。

 

そして、メロディが終わり全て躍り終わった所で、士道と栞は大丈夫だったが折紙はミスばかりで失敗したためダメージを受けてしまう。

 

「鳶一!?」

 

「ご、ごめんなさい・・・私、踊るの上手く出来なくて・・・」

 

「意外な弱点発覚です!?」

 

コラボスバグスターは満足そうに笑いながら去っていった。

 

追いかけようとしたが完全に消えてしまい、追いかけることが出来なかった。そのため、皆はCRへ向かうことにした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

戦闘を終えた士道達はCRへ向かった。

 

士道に加えて栞と折紙、更にCRから許可を貰った十香もCRへ。

 

そこに着いてから、まず仮面ライダーに変身する三人はCRの制服に着替える。医者の着る白衣をイメージして作られた白い制服だ。

 

Yシャツに白衣をイメージした上着を着て、男子はズボン、女子はスカートとなっている。学校の制服のような感じだ。

 

医師免許を持っていない士道達が医者の使う白衣をそのまま着るのは、流石に医者達に悪いだろう、という事で作られた制服である。

 

患者が搬送された部屋に入る士道達。十香は上の階で待っているが、窓から様子は見える。

 

 

士道は、患者と話すのは初めてであるため緊張しながらも声をかける。

 

患者は大学生位の若い女性だ。となりに彼氏の姿もある。

 

 

「こんにちわ。あなたの担当をする事になった五河という者です」

「同じく、鳶一です」

「風鳴です」

 

女性は担当するのが若い人であることに少し驚いたが、すぐに返事をした。

 

「は、はい。宇佐美 智子と申します」

「佐藤 剛士だ。その、ここの医師から事情は聞いた。智子の為にありがとう」

 

「いえ、こちらこそすぐに倒すことが出来ず、長引かせてしまってすみませんでした」

 

頭を下げる士道達。宇佐美と佐藤は士道達を怒ったりなどはしておらず、むしろ若いのに頑張ってくれている彼らに感謝していていた。

 

頭を上げた士道達は二人から事情を伺う。

 

簡単に纏めると、二人でデートをしていた時に突然宇佐美の方にオレンジ色の粉が降り注ぎ、それを吸ってしまった宇佐美が体からノイズを走らせて倒れた。

 

更に、オレンジ色の光となって分離して何処かへ飛び去っていった。

 

そして佐藤が声をかけていた所で士道達がやって来たのだ。

 

おそらく、バグスターに付けられたガシャットは、バグスターが出た後に付けられた物だろう。

 

「よし、早くあのバグスターを見つけて倒さないとな」

「はいです」

 

 

三人は一旦出て十香と合流。これからはバグスターを探し出すことにするが、その前に折紙が士道にお願いをした。

 

「五河君、お願い!私にリズムゲームのやり方を・・・上手な躍り方を教えて!」

「鳶一・・・」

 

「私、二人の足手まといになりたくない、患者さんを救いたい!その為に出来るようになりたい!」

 

頭を下げる折紙。本気である事を感じ取った士道は・・・。

 

「あぁ、わかった!」

「私も協力するのです!」

 

「シドー、私にも協力出来ることはあるか?」

「もちろんだ!十香も協力してくれるのは心強い」

「うむ!」

 

「さて、そうなるとあいつにも頼むか」

士道はスマホである人物に連絡を取る。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後、士道達はある場所に来ていた。そこは、天宮市の大型ゲームセンターだ。

 

目的はゲームセンター内の中にある、ドレミファビートの大型筐体ゲーム機だ。

 

ドレミファビートは、家庭で遊ぶタイプはリズムに合わせてコントローラーのボタンを押す。

 

対して筐体のはボタンを押すタイプの他にも床に敷いてあるマットの矢印マークを踏んで遊ぶタイプがある。

 

士道達が来たのは床マットのほうだ。

 

 

「えっと、これで・・・?」

「あぁ。ドレミファビートを攻略するなら、ドレミファビートで練習した方がいい。それに、教師はもう一人いる」

 

すると、筐体のそばにいた人物が士道達と合流した。被っていた帽子を外すと、その人物は・・・。

 

 

「美九さん!?」

 

「はーい、誘宵 美九ですよぉ!だーりんから事情は聞きました。折紙さんがしっかり踊れるようにレッスンします!」

 

美九だった。士道は現役アイドルであり歌も躍りも上手い美九に協力を要請したのだ。

 

 

「ありがとうな、美九。急なお願いなのに聞いてくれて」

 

「大丈夫ですよー。さぁ折紙さん、私に任せてくださいねぇ、手取り足取り・・・触れあいながら・・・・・・フフフフフ」

 

「やめんか!」

「ミカンッ!」

士道が暴走しかけていた美九にチョップをくらわせて止めた。

 

「なるほど、美九さんなら適任かもしれないです!」

「もちろん、俺も教えるぜ。美九と一緒にな」

 

「シドー、私は何をすればいいのだ?」

「十香は、美九が鳶一にいやらしい事をしようとしたら止める係だ。栞も同じように頼むな」

 

「つまり、折紙を守る係ということだな。任せてくれ!」

「合点了解なのです!」

 

「あぁん、だーりんひどいですぅ。私はダンスを教えるついでに折紙さんと触れあって美少女成分を補給したいだけですよー」

 

「さぁ。患者さんの為に早く済ませるぞ。ウィルス進行の関係上、長い時間は取れない。短時間で、最低限でも踊れるようになってもらうからな」

 

「大丈夫、絶対覚えてみせるから!」

「スルーですかぁ!?」

 

「ノーコンティニューで、踊ります!」

 

 

折紙は決意するが、問題は練習時間だ。

 

バグスターの存在があるため長時間の練習は出来ない。練習出来る時間が僅かしかない中、折紙は上手にダンスを踊れるようになるだろうか?

 

 




次回予告


ダンスの特訓をする折紙。僅かな時間でリズムゲームを攻略出来るのか。そして、バグスターを倒して患者を救えるか?


第七話 ブレイブのDancing!(後編)

「私のリズムを刻む!」


ーーーーーーーーーー


折紙はダンスが苦手、というのはオリジナル設定です。

次回は特訓とバトルです。


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第七話 ブレイブのDancing!(後編)

お待たせいたしました!


折紙達がゲームセンターについて、美九と合流した頃。フラクシナス司令室。

 

「・・・琴里、ちょっといいかい?」

「令音?どうしたの?」

 

「・・・数日前に出会った、風鳴 栞と鳶一 折紙について調べたんだ」

「まぁ、いい気はしないけど仕方ないと思うしか無いわね・・・・・・それで?」

 

 

令音に栞と折紙について調べさせたのは、琴里の指示によるものだった。

 

琴里個人としては、士道の仲間である二人を信じたいという気持ちがある。

 

しかしフラクシナスの司令官として、ラタトスクという組織の一員としては本当に大丈夫なのかを調べなければならない。

 

 

「・・・風鳴 栞に怪しい点は無かったよ。ただし、鳶一 折紙は・・・今は辞めているが、過去にASTに所属していた経歴がある」

 

「何ですって!?」

 

驚く琴里だが、無理もない。精霊との対話による空間震の平和的解決を計るラタトスクと、精霊を武力によって討伐しようとするAST。

 

全く正反対だし、そもそもラタトスクはASTにも知られていない秘密組織。だからこそASTを止められるというのもある。

 

 

「不味いわね。鳶一 折紙が元ASTだったなんて。そうと知らずに私達の事を話してしまったわ。

 

辞めたといっても繋がりはあるだろうし、もし彼女経由でラタトスクの存在をASTに知られてしまったら・・・・・・」

 

「大丈夫じゃないかな?」

「え?」

「・・・鳶一 折紙は私達の事をASTには話さないと思うよ」

 

「どうしてそう思うの?」

「・・・・・・勘、かな」

 

令音は曖昧にしか答えなかったが、本当に話さないという予感があった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ダンスが苦手な折紙の為に、士道と美九がレッスンを行い、十香と栞は本当に美九が折紙にいやらしい事をしないかを監視する。

 

 

「「じー」」

 

「あぁん、十香さんと栞さんに見つめられるのも良いですねー。・・・・・・コホン、それではレッスンスタートです!」

 

「よ、よろしくお願いします」

「はい♪まずは、音楽に合わせて踊るにあたって必要なのは、リズムを掴むという事ですね」

 

「リズム・・・」

「はい。曲のリズムに瞬時に対応して踊ることができる安定したリズム感を掴み取る、これを求められますね。

 

本当は他にも事やポイントはあるんですけど、時間が全然足りませんからこの一点を重点的に覚えましょう。

 

今から一曲踊ってみますね。リズムを掴めばこの通り・・・・・・」

 

美九がお手本として、曲を一曲選んで踊る。

今までの豊富な経験から曲のリズムを掴み、それに合わせてしっかりと踊って見せた。

 

 

「凄い・・・」

「おぉ!凄いではないか!」

 

「はい!とっても素敵なのです!」

「流石美九。こういうのは俺より上手い」

 

折紙も十香も栞も士道も絶賛、今を活躍するアイドルとして恥じない姿だ。

 

 

「こんな感じですぅ」

「ありがとうな、美九。鳶一、俺からもアドバイスだ。先程見た美九の躍りを脳内で自分が踊るようにイメージしてみろ。

 

脳内で踊る姿を思い浮かべて、そこに自分を当てはめてその通りに体を動かすんだ」

 

「だーりんならそうアドバイスすると思いまして、踊り自体は簡単な物にしましたよ」

 

「イメージして、リズムを掴めば・・・」

 

 

「鳶一、一度やってみるか?」

 

「うん、一回やってみる」

「わかった。ダメなところを見つけたらちゃんと教えるから、思った通りにやってみろ」

 

 

今度は折紙が踊り出す。美九のダンスを見て自分の脳内でイメージした通りに動かしていく。

 

上手くないが、体を動かすこと自体は得意であるためか少しずつだが様になっていく。

 

踊り始めて一時間。休憩を挟み、アドバイスをもらっていくにしたがって段々と上手くなっていった。

 

折紙は上手くなっていく事を自覚して喜んでいた。

そして、今は少し離れたベンチに座って休憩している。

 

美九と十香と栞の三人で踊って遊んでいる光景を眺めながら。

 

 

「ふぅ・・・」

「お疲れ、鳶一。ほら」

「ありがとう」

 

自販機で買った水のペットボトルを渡す。飲んだそれは冷えていて、踊りで熱く火照った体を冷ましてくれる。

 

 

「五河君・・・私、ちゃんと踊れてる?」

「あぁ。もう少し練習すれば、きっと大丈夫だ」

 

「良かった。私、足手まといになりたくなくて頑張ったけど、それなら安心かな」

「でも、油断はしないでくれよ。何が起こるかわからないからな」

 

「うん、わかってるよ」

「・・・それにしても、鳶一って強いよな」

 

「え?」

「仮面ライダーに変身しても、生身でも、鳶一は強いと思うぜ」

 

 

「当然だよ。だって私のこの強さは、ASTで鍛えた強さが下地になってるから」

 

「・・・え・・・AST!?」

 

折紙の突然の言葉に驚く士道。折紙の言葉は続く。

 

 

「うん・・・五河君。私は高校に入学する前まで、ASTにいたの」

「・・・・・・」

 

「五河君、聞いてほしいの。私は五年前に発生した天宮市の大火災に巻き込まれた。

 

両親は無事だったけど、その時に精霊の存在を知ってASTに入ったの」

 

「・・・・・・」

(五年前・・・天宮市の大火災・・・)

 

そのキーワードを聞いた士道の頭に、とある光景が過る。

 

 

『大■■だ、■■ないで。■■・・・本当■■■■■■ら・・・!」

 

『おに■■■■・・・た■けて!』

『■■、お■ちゃ■が必■■■るか■な!』

 

 

「・・・・・・!?」

「五河君、どうしたの!?」

 

「あ・・・ごめん。ちょっと、ビックリしてただけだ」

「そっか。ごめんね、突然こんな話をして」

 

「いや、いいんだ。それで、その・・・」

「大丈夫だよ。ラタトスクの事は、ASTには話さないから」

 

「え・・・」

「黒いエグゼイドとの戦いの時、その後に一緒にいると、十香さんは本当にいい子だって思うようになった」

 

折紙は十香を見ながら言う。

 

 

「五河君や私達の事を守ろうとしてくれた優しさがあるし、今こうして私達と一緒にいる十香さんは、本当に普通の女の子だよ」

 

「鳶一・・・」

 

「私は、精霊を・・・精霊を救いたいという五河君を信じたい」

「・・・・・・ありがとう、鳶一」

 

「うん」

お互いに笑顔で頷き合う二人。その時、CRからコラボスバグスターの出現情報が入った。

 

皆にその事を伝えて現場へ急行する事になる。

まだ、折紙の特訓は完全に終わっていないままに。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

現場に到着。街の開けた場所で、士道達がコラボスバグスターと対峙する。

 

しかし、ここで更なる敵が現れる。グラファイトだ。

コラボスバグスターを護るように前に出る。

 

 

「仮面ライダー共。俺の仲間に手出しはさせん。培養!」

 

《INFECTION!THE BUGSTER!!》

 

バグスターの姿になり、武器を構える。三人もガシャットを構える。

 

 

《マイティアクションX!》《ゲキトツロボッツ!》

 

《タドルクエスト!》

 

《爆走バイク!》

 

 

「第三!」

「ステージ2!」

「セカンド・ギア!」

 

「「「変身!!」」」

 

 

士道はエグゼイド・レベル3になりグラファイトに、折紙と栞はブレイブ、レーザー・レベル2になりコラボスバグスターに戦いを挑む。

 

美九と十香は、少し離れた所で戦いを見守っている。

 

 

士道の左腕のアームと、グラファイトの武器がぶつかり合う。

 

グラファイトの武器をかわしながら、士道はカウンターのようにアームのパンチを当てる。

 

ダメージを受けながらも、グラファイトは武器を咄嗟に士道に向けて降り下ろした。

 

士道もダメージを受けて、両者は後退。

次に士道はアームをロケットパンチのように放ち、グラファイトは武器からエネルギーを放つ。

 

ロケットパンチとエネルギーがぶつかり爆発するが、その瞬間に士道が飛び蹴りをグラファイトに当てる。

 

「やるな、これがレベル3か」

「まだまだ!」

 

 

士道とグラファイトが戦っている中で、折紙と栞もコラボスバグスターと戦っていた。

 

栞は誰も乗らない状態で自分で動き、その速さでコラボスバグスターを攻撃。

 

コラボスバグスターは栞の隙をついて音符型爆弾を放ち、命中させる。

 

大きなダメージを受けた栞は変身が解けて倒れてしまった。

 

「くっ・・・まだまだ!」

「栞ちゃん!無理しないで!」

 

「大丈夫か!栞!」

「あっちまで運びますよ!」

 

更に突っ込もうとした栞を折紙が止める。

十香と美九が栞に肩を貸して後方まで下がらせる。

 

 

「どうして、私は・・・」

 

栞は弱い自分への不甲斐なさと怒りから、一筋の涙を流しながら十香と美九に支えられ後方へと下がる。

 

 

その時、コラボスバグスターが再びメロディと共に音符を放つ。以前、折紙が踊れなかった曲だ。

 

折紙は心を落ち着かせて、一瞬で踊る姿をイメージ。そして音楽に合わせて踊り出す。

 

「それ、それ」

GOOD、GOOD、GOOD

 

「よし!」

今度はちゃんと踊れた。GOODばかりだが、それでも格段の進歩だ。

 

そしてついに、すべて踊ることが出来た。上手いとは言えないが、MISSばかりだった最初と比べると桁違いに上手くなっている。

 

コラボスバグスターは、踊りきられた事に驚いて隙を作ってしまう。

 

その隙を逃さないように折紙が動く。隣の宝箱をガシャコンソードで切って開けて、高速化のエナジーアイテムを修得。

 

高速移動しながらコラボスバグスターを切り裂く。

 

 

「ブレイブ貴様、俺の仲間を!」

 

グラファイトはコラボスバグスターを追い詰めている折紙を見て、コラボスバグスターに加勢しようとするが、士道が体を張って止める。

 

「オペの邪魔はさせねぇ!」

 

グラファイトを折紙とコラボスバグスターから引き離すように戦う。

 

 

そして折紙は、タドルクエストのガシャットをゲーマドライバーから抜いて、ガシャコンソードのスロットに装填。

 

トリガーを押して、ガシャコンウェポンでの必殺技を発動。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

《TADORU CRITICAL FINISH!!》

 

 

刀身に炎を纏わせ、高速化で高速移動をしたまま動き、両手でガシャコンソードを持ってすれ違い様に一閃!

 

炎の一閃を受けて、コラボスバグスターは倒された。

 

 

《GAME CLEAR!》

 

 

音声と共に、ゲームの絵と、GAME CLEARの文字が出てきた。

 

折紙は黄色のガシャットを入手する。

 

 

「貴様ら、またしても・・・俺の仲間を!」

グラファイトは力を込めて士道を突き放し、標的を完全に折紙に切り替えた。

 

「私はまだ、踊れる。今の私に出来る最高の躍りを!」

 

 

《ドレミファビート!》

 

 

タイトル画面が表示されて、黄色い小さなDJのようなロボット・・・ビートゲーマが出現。陽気に踊りながら音符を飛ばしてグラファイトに攻撃。

 

折紙はガシャコンソードを投げ捨てて、ゲーマドライバーのレバーを閉じてドレミファビートガシャットを、タドルクエストの隣に入れる。

 

 

《ガシャット!》

 

「ステージ3!!」

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

《タドルメグル!タドルメグル!タドルクエスト!!》

 

《アガッチャ!ド・ド・ドレミファ・ソ・ラ・シ・ド!OK!ドレミファビート!!》

 

 

頭部はDJ風インカムのついたキャップ状になっていて、胸部装甲も追加され防御力も上昇する。

 

ラジカセやスピーカー型のパーツを装着しており、その姿はまさにDJ。

 

 

仮面ライダーブレイブ、ビートクエストゲーマー・レベル3、変身完了!

 

 

「私のリズムを刻む!」

 

折紙は右腕のターンテーブルを回しメロディを流す。

 

攻めてきたグラファイトに対して、明るいメロディに合わせて動き、攻撃をかわしながら折紙自身の攻撃を叩き込む。

 

評価も全てGREATを出している。

 

 

今までの躍りが苦手な感じが嘘のように、上手く踊ることが出来ている。

 

これは、折紙が"自信"を身に付けたからだ。

 

今までは躍りが苦手であり、自分は上手く踊れないと強い思い込みがあって上手くなる事が阻害されている感じだった。

 

 

しかし、美九と士道との特訓による上達。そして先程踊りきる事が出来た喜び。

 

それが折紙はちゃんと踊れるという自信を得て、今こうして完璧に踊れる程になっていた。

 

完璧にリズムを掴み、イメージ通りに体を動かせた。それを攻撃に生かすことが出来た。

 

そして、折紙は最後まで踊りきり、メロディの最後に合わせて強烈な一撃を当てた!

 

 

《PERFECT!》

 

最高の評価であるPERFECTを出せた折紙は内心でガッツポーズを取っていた。大きなダメージを受けて倒れるグラファイト。

 

 

折紙はドレミファビートガシャットを抜いて、キメワザスロットに入れて、スイッチを二回押す。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

《DOREMIFA!CRITICAL STRIKE!!》

 

右足にエネルギーを集中。同時に、楽譜型のエネルギーが肩のスピーカーから放たれグラファイトを縛って動きを封じる。

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

動けなくなったグラファイトに、エネルギーを集中させた強烈なキックをくらわせた!

 

強力な一撃を受けて吹っ飛んだグラファイト。大きなダメージを受けて戦闘続行は出来ないが、倒せなかった。

 

「・・・くそぉ・・・!」

 

グラファイトは仲間を守れなかった事を悔しく思いながら姿を消した。

 

 

戦闘は終わった。折紙は変身を解いて、手に入れたドレミファビートガシャットを見つめる。

 

「良かった・・・ちゃんと出来た・・・!」

「よく頑張ったな、鳶一。鳶一のお手柄だ」

 

「折紙、凄かったぞ!カッコ良かったのだ!」

「折紙さん素敵です!今度私と一緒に踊りましょう!」

 

「折紙さん、良かったです・・・」

 

 

「皆、本当にありがとう!」

 

折紙は満面の笑顔で皆に感謝の気持ちを伝えた。

しかし、皆浮かれていた為・・・栞の様子がおかしいことに気づけなかった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後、ゲーム病患者だった宇佐美は無事に回復。

彼氏の佐藤と一緒にお礼を伝えて無事に退院することが出来た。

 

琴里からも電話があり、折紙本人からASTであった事などを聞いたが、折紙自身が伝えないと言ったことを話した。

 

時刻は夜。士道と折紙は二人で並んで帰っていた。美九が気を効かせて二人きりになれるようにしたのだ。

 

 

「五河君。今日は本当にありがとう。私が踊れるようになったのは、五河君のお陰だよ」

 

「気にすんなって。それに俺だけじゃなくて、皆の協力があったからだ」

 

「それでも、だよ」

「そうか・・・まぁ、鳶一の役にたてて良かったよ」

 

 

折紙は数秒程考えて、口を開いた。

 

「折紙」

「え?」

 

「折紙って呼んで。私もこれからは名前で呼ぶから。えっと、今回の事がきっかけで今までより仲良くなれたかなって思って・・・迷惑かな・・・?」

 

「そんな事無いって。わかった、俺の事も士道って呼んでくれ。これからもよろしくな、折紙」

 

「・・・!うん、よろしくね・・・士道君!」

 

士道に名前で呼んでもらえた喜びから、笑顔で名を呼ぶ折紙。士道も嬉しく思いながら、一緒に帰宅していった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・・」

同時刻。栞は電気を消して暗い自室のベッドで横になっていたが、寝ることが出来ないままだった。

 

以前から思っていた。自分は乗り手がいないと能力を出しきれず、単体では満足に戦えない。

 

 

「私は、頑張らないといけないのに・・・どうして私は・・・」

 

いつもと違う口調。明るい雰囲気は嘘のように消え失せ、悲しみが出ている。

 

「私・・・自信を無くしちゃいそうだよ・・・・・・お姉ちゃん」

 

ベッドに埋めていた顔を上げて、机の上の写真立ての中の写真を見る。

 

 

その写真には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、笑顔でポーズを決めている女性が写っていた。

 

 




次回予告


栞の様子がおかしい事に気付いた士道。そして士道は、自身と栞の"接点"と仮面ライダーとなった切っ掛けを知る。


第八話 悲しい心をSlashせよ!(前編)


「そうか・・・そうだったんだ」


ーーーーーーーーーー


今回の話に出てきた写真の女性については次回以降及び、いずれ書く予定のスナイプ(狂三)のエピソードZEROの話で描く予定です。


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第八話 悲しい心をSlashせよ!(前編)

この日、五河 士道は風鳴 栞と一緒に歩いていた。

 

栞が学校でも元気が無く、どこか暗い感じが強かったからだ。そこで、少しでも元気になれば、と士道は栞と一緒に遊ぶ事を提案。

 

栞もそれを了承して一緒に街を歩いていた。

 

 

「その、士道・・・心配をかけてしまって、ごめんなさい・・・です」

 

栞もいつもと違って元気が無く、一瞬別人に見えてしまった程だ。

 

「栞に元気が無いのは、俺だって辛い。だから、すぐにとは言わないけど、相談してくれよ。喜んで力になるから」

「うん・・・・・・」

 

やはり元気が無い。それは先日、ドレミファビートのコラボスバグスターと決着を付けたあの日からこうなっていた。

 

何かを悩んでいるのか。士道はすぐにでも訪ねたかったが、無理に聞き出すのも悪いからと、今は栞を元気にすることを優先することにした。

 

まずは一緒にカラオケにでも行こうと、道を進んでいく。すると、途中でとある場所が目に入った。

 

そこは、ごく普通の道路。特におかしい所はない。しかし・・・。

 

「ぁ・・・ぁ・・・」

「栞!?」

 

栞の様子が激変した。顔色が悪くなり、体も小刻みに震えていて、暑くないのに汗が流れ出ていた。

 

「栞!大丈夫か、栞!」

 

「っ!?」

士道に肩を揺すられ、栞は我に帰った。

 

「な、何でも・・・」

「何でも無くないだろ!・・・今日はまっすぐ帰って休んだ方がいい。送っていくよ」

 

「・・・・・・ごめんなさい」

 

栞はおとなしく頷き、帰路に着こうとしたが・・・。

 

CRからゲーム病患者が搬送されたという連絡が入り、二人で急行することになった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

CRに着いた所で、同時に着いた折紙と合流。

 

CRの制服に着替えて患者が寝ているベッドまで赴き、患者・・・初老の男性である五十嵐と少し話をしているとバグスターウィルスが活性化しバグスターユニオンが姿を現した。

 

《マイティアクションX!》

《タドルクエスト!》

《爆走バイク!》

 

「「「変身!」」」

 

 

三人はレベル1に変身。ステージセレクトでゲームエリアを変更して戦う。

 

東洋の龍のようなバグスターを、三人は軽やかに動きながら連携で追い詰める。

 

士道がガシャコンブレイカーのハンマーで殴り。

折紙がガシャコンソードで切り裂き。

栞がタイヤで殴る。

 

それを繰り返し、最後は三人同時に攻撃して患者と分離させた。

 

倒れた五十嵐を急いで下がらせて分離したバグスターと対峙する。

 

刀を持つ侍のような黒いコラボスバグスターだ。

士道はコラボスバグスターに刺さっているガシャットを見る。

 

「あれは"ギリギリチャンバラ"。プレイヤーも敵も、一撃で勝負が決まる文字通りのギリギリなチャンバラゲーム・・・厄介だな」

 

 

すると、ゲームエリア内に黒いエグゼイド・・・ゲンムが乱入。

 

《シャカリキスポーツ!》

 

ゲンムは無言のまま、シャカリキスポーツのガシャットを取り出して起動。

 

それをゲーマドライバーではなく、キメワザスロットに装填した。

 

《ガシャット!》

スポーツゲーマを召喚し、レベル3のように纏うこと無く乗る。

 

 

「黒いエグゼイドは私が!セカンド・ギア!」

 

栞はレベル2になり、自身で走ってゲンムに突っ込んでいく。

 

「待て栞!」

「士道君、来るよ!」

 

士道は栞を止めようとしたが、折紙の言うとおりコラボスバグスターが斬りかかって来た。

 

《ゲキトツロボッツ!》

《ドレミファビート!》

 

「第三変身!」

「ステージ3!」

 

士道と折紙はレベル3になり、コラボスバグスターと戦う。

 

ギリギリチャンバラは一撃のダメージが大きい為、一撃当たるだけでもヤバい。

 

だから、二人は遠距離攻撃で戦う事にした。

 

士道は左腕のゲキトツスマッシャーをロケットパンチのように放ち攻撃。

 

コラボスバグスターはかわして刀で斬りつける。

折紙がガシャコンソードを氷属性にして地面に刺してコラボスバグスターの足元を凍らせて動きを封じる。

 

音符型エネルギーを飛ばして攻撃する。コラボスバグスターはそれを全て刀で切り裂き防ぐ。

 

足元の氷も斬って動けるようにしてから、再び斬りかかってくる。

二人はすぐにかわして、攻撃に当たらないように気を付けながら戦う。

 

 

一方、栞はバイクの姿で動きながらゲンムを攻撃する。

 

ゲンムは、スポーツゲーマを巧みに操りその全てをかわしていく。

 

スポーツゲーマは自転車、故に自在に操るには高度なテクニックが要求される。

 

そのスポーツゲーマを自在に操っている時点で、ゲンムは高度なテクニックを持っている事がわかる。

 

 

攻撃してくる栞をいなし、ゲンムが体当たりで攻撃。

 

栞はその攻撃をかわしきれず受けてしまう。それが数回続き、ダメージの蓄積で動きが鈍った栞に、ゲンムがトドメをさすべく動く。

 

キメワザスロットのスイッチを二回押して、必殺技を発動する。

 

 

《キメワザ!》

《SYAKARIKI!CRITICAL STRIKE!!》

 

スポーツゲーマの車輪にエネルギーを集中。

スピードを上げて走り、ジャンプして回転。エネルギーを纏った回転攻撃で栞に向けて体当たり。

 

回転攻撃を受けて大ダメージを受けて倒れ、変身が解けてしまう。

 

「くっ・・・うぅぅ・・・!」

また負けてしまい、栞は倒れてしまう。

 

「弱いな。所詮はその程度・・・」

ゲンムはそう言ってバグヴァイザーの銃口からエネルギー弾を放つが・・・。

 

「栞いぃぃぃ!!」

 

コラボスバグスターを振り切って栞を庇う。エネルギー弾をくらって倒れる士道。

 

 

「士道・・・」

栞は士道の元に行こうとしたが、気を失ってしまった。

 

ゲンムはため息を吐いてコラボスバグスターの元へ。コラボスバグスターを回収して一緒に姿を消してしまった。

 

「栞!」

自力で起き上がった士道と折紙は栞を回収、ゲームエリアから出た。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

栞は、天宮総合病院の病室、その個室で眠っていた。ダメージが大きいのか、まだ目を覚まさない。

 

十香と琴里も知らせを聞いて、駆けつけた。

 

 

「栞は大丈夫なの?」

「あぁ、命に別状は無い。気を失っているだけだから」

「栞・・・・・・」

 

「とにかく、栞ちゃんは大丈夫だから。きっと目を覚ますよ」

 

そして、ある程度時間が経って、十香と琴里は病院内の購買へ必要な物を買いに。折紙は五十嵐の様子を見るためにCRに向かった。

 

病室にいるのは、士道と栞だけだ。

 

「栞・・・・・・」

 

 

パイプ椅子に座り、栞の様子を見る士道。

少しして、栞が目を覚ました。

 

「ここは・・・」

「栞!気が付いたか」

 

「士道・・・そうか、私は黒いエグゼイドに負けたんだ・・・それで、士道は私を庇ってくれて」

 

「大丈夫か?」

「うん・・・士道、ごめんなさい」

「大丈夫だ、栞が無事で良かった。栞は大丈夫か?」

 

「大丈夫、もう痛くないよ」

「・・・栞?」

 

栞の様子が違う。話し方が全く違い、一瞬別人に見えてしまった程だ。

 

士道の疑問に気付いた栞は説明した。

 

 

「士道・・・これが、本当の私なの。今までのは、私のお姉ちゃんの真似をしていただけ」

 

 

「お姉ちゃん・・・?それって、前に話してた人の?」

 

「風鳴 (かおる)。私のお姉ちゃんで、四年前に仮面ライダーになってバグスターと戦っていた人」

 

「・・・・・・」

 

「お姉ちゃんはお母さんと同じ医者になることを夢見て医学の勉強の為、医療の大学に入学した人で、お母さんからバグスターウィルスの存在を以前から聞いていた。

 

それで、ゲーム病になる人を救いたいって言って、仮面ライダーになった。

 

プロトガシャットの一つ、プロト爆走バイクガシャットでプロトレーザーに変身していたわ」

 

 

「プロトガシャット?」

 

「壇社長が以前開発したライダーガシャットのプロトタイプなの。

それで仮面ライダーに変身していた。でも、バグスターとの戦いに負けて・・・・・・もう会えなくなっちゃった」

 

 

栞は説明を続ける。

 

「その後、私はお姉ちゃんの分も頑張らなきゃって思って、お姉ちゃんのゲームと同じ爆走バイクを選んでレーザーになったの」

 

「・・・・・・」

 

「性格もお姉ちゃんみたいにして、お姉ちゃんのように戦う事にしたの。そうしないと、お姉ちゃんが頑張った証が・・・お姉ちゃんがいたっていう事実が消えてしまうって思ったから」

 

「・・・・・・」

 

「でも、お姉ちゃんみたいに上手く出来ない。お姉ちゃんの分も頑張らなきゃいけないのに・・・今の私は役立たずだよ・・・」

 

「栞・・・お前は一生懸命頑張っているじゃないか。

お前がいてくれたから勝てた戦いだってあった。だから、自分を卑下するような事は言っちゃダメだ。

 

そんな事ばかり言っていたら、本当にそうなってしまう」

 

 

「ありがとう、士道。やっぱり、士道は優しい。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「・・・?幼い時って・・・・・・」

 

「覚えてる?士道は、私を助けてくれたんだよ。幼い時、車に轢かれそうになった私を助けてくれた」

 

「車に轢かれそうになった・・・あぁ!?」

士道は覚えていた。確かに、士道はあの時・・・!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道と栞が通った道路。そこは、ごく普通の道路で特におかしい所はない。しかし、そこは士道にとって大変な事があった場所だ。

 

数年前、士道は親から捨てられたショックから暗くなっていた時の事。

 

その日は琴里は仕事から帰ってきた両親と一緒に出かけている為、士道は外の公園でブランコに一人で乗っていた。。

 

新しい両親とどう接すればいいのかわからず・・・でも、そんな自分が嫌になって俯く。

 

その時、士道に声をかける女の子が現れる。それが幼い時の栞だった。

 

「暗い顔をしてどうしたの?元気ないの?」

「前のお母さんがいなくなって・・・・・・新しいお父さんとお母さんと、どうやって話せばいいかわからないから・・・・・・」

 

「・・・・・・ねぇ、私と一緒に遊ぼう?」

「え?」

 

「私があなたの寂しい気持ちを、楽しい気持ちに変えるの。一緒に遊んで、元気いっぱいになるの。

 

きっと、あなたのお父さんとお母さんも元気になってほしいって思ってるよ」

 

「・・・僕は、五河 士道」

「私は、風鳴 栞。よろしくね、士道!」

 

この時の栞は、母と姉の三人で天宮市へ引っ越してきたばかりであった。故に、公園に来た時に元気の無い士道を放おっておけなかった。

 

それから一緒に遊び、それからも一緒にいる時間が増え、士道は栞のおかげで少しずつ明るくなっていく。

 

そして運命の日。この日は雨だったが栞は雨の中でもはしゃいでいた。そのまま道路に出てしまったが走っていた車に轢かれそうになった。

 

「危ない!!」

 

幼い士道は、沸き上がってくる衝動のままに走り、轢かれそうになっていた栞を突き飛ばして車から離した。

 

幼い士道は栞が車から離れた事に安心して・・・代わりに、自身が轢かれたのだ。

 

 

そして病院へ搬送され、自分を手術し命を救ってくれた医者から頑張ったご褒美としてゲーム機を貰った。これがきっかけで士道は天才ゲーマーSになっていく事になった。

 

同時に、医者に憧れ自分も医師を志す切っ掛けになった。

 

そういうところは事があったのだが、士道にとっては別にトラウマになった訳でもない。

 

女の子を助けることが出来たのだからそれでいいと思っている位である。

 

 

だがし・・・・・・。

 

栞は士道が轢かれた現場を見てしまったショックから気絶してしまい、士道の事を忘れてしまっていた。

 

この事については、士道が轢かれた所を見てしまった精神的なショックが強く、幼い栞の心を守るため脳が防衛機能を働かせ、その時の事を忘れさせたのだろう、との事だった。

 

士道も、栞に会えずに退院したのだった。

 

栞が士道の事を思い出したのは、来禅高校とは違う高校に入学した少し後に交通事故に関するニュースを見たときに思い出したのだ。

 

士道が車に轢かれそうになった自分を庇ってくれて、そのお陰で自分は助かったという事を。

 

思い出した後、仮面ライダーとなって戦いながら士道を探したがタイミングが悪かったのか出会えなかったのだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「そうか・・・・・・そうだったんだ」

 

全てを聞き終えた士道は納得した。栞に初めて会った感じがしなかったのは、過去に助けた女の子だったから。

 

 

「士道・・・私のせいであなたに大変な目に合わせてしまった。本当に・・・ごめんなさい」

 

栞は涙を流しながら、士道に謝罪した。栞と自身の"接点"、それを知った士道は・・・。

 




次回予告


士道は栞に伝えるべき事を伝え、栞は前に進む、
そして手に入れるのは、人々を救い敵を切り裂く刃。


第九話 悲しい心をSlashせよ!(後編)


「前に進み人々を救う、その為の力なんだ!」


ーーーーーーーーーー


士道と栞の出会いついては上記の通りに、自分なりに考えてこのようにしました。
士道を手術して救った人物は後に出す予定です。


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第九話 悲しい心をSlashせよ!(後編)

早めに書けたので更新します。
デアラ最新刊二冊を読みました。全部が凄かった!



士道は栞から"接点"を聞き、栞が士道に親しかった理由を知った。

 

「・・・・・・」

「士道・・・私のせいであなたに大変な目に合わせてしまった。本当に・・・ごめんなさい」

 

涙を流しながら謝る栞。士道は少し考えて、自分の素直な気持ちを伝える。

 

 

「俺はお前を悪いなんて思ってない」

「え・・・?」

 

栞は驚いて士道を見る。

 

 

「あの時の俺は、栞を助けたかったから助けたんだ。今、俺が救った命である栞はこうして生きている。それがわかっただけでも嬉しいよ」

 

士道はそっと栞の手を握る。

 

 

「栞がお姉さんの分も頑張ろうって一生懸命なのは良い。栞のお姉さんを大切に思う心の現れだから」

 

でもな、と士道は続ける。

 

 

「もう自分を責めなくていい。栞がそうやって無理している姿を見るのは辛い。お姉さんだって辛いと感じる筈だ」

 

士道は栞にわかってほしいと思いながら、優しく言う。

 

 

「今は俺が・・・いや、俺達がいる。辛い時や苦しい時は遠慮無く吐き出してくれ。

 

俺達はお前のお姉さんの代わりにはなれない。でも必ず受け止める。必ず支える。だから、お前はお前らしく走っていけばいい・・・少しずつでも前に進もう」

 

「・・・士道・・・・・・士道ぉ・・・!」

 

 

栞は士道の胸元に顔を埋めて泣き出した。今まで我慢していたのを吐き出すように。

 

士道は栞を優しく抱き締めて、頭をそっと撫でた・・・・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

それから数分後、栞は泣き止んで士道から離れた。

その表情は、久しぶりの笑顔だ。

 

「士道・・・私は、前に向かって走っていくよ。もう大丈夫、無理はしない」

 

 

「本当に良かった。やっぱり栞は笑顔が一番だ、かわいいし」

「はうっ!?」

「ん?・・・・・・あ」

 

士道は栞に笑顔が戻った安心から、思っていた事を口にした。

栞はその発言にドキッとして顔が真っ赤になり、士道も自分が言ったことを理解して顔が赤くなる。

 

「いや、あのな・・・変な意味じゃ無いぞ?」

「うん・・・わかってる、から・・・」

 

「「・・・・・・」」

お互いに恥ずかしさから黙りこんでしまう。

 

 

「甘いわあぁぁぁぁぁ!!」

「「!?」」

 

「おにーちゃん!栞と甘々な空気になりすぎだぞー!」

「よくわからないが、何かモヤモヤするぞ!」

 

すると、ヤキモチを焼いた琴里と十香が乱入。折紙も慌てて入り、二人を落ち着かせる。

 

話を聞くと、購買から戻って折紙と合流して栞の病室のドアを開けようとしたら、士道が「本当に良かった」と言った辺りからの会話が聞こえたらしい。

 

 

その後、栞は改めて自分の事や姉の事、士道との接点を皆に説明。

本当の栞の事もちゃんと受け入れて貰え、皆の結束が強くなった時間となった。

 

 

 

「何か、私だけ仲間外れにされた気がしますねー」

 

同時刻、アイドルとしての仕事を終えて控え室で休んでいた美九が呟いた。

 

後日に美九にも栞から同じ説明がされて、仲間外れになることは無かった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

栞は無事に回復し、病衣服からCRの制服に着替えて改めてCRに向かった。

 

ゲンムと共に姿を消したコラボスバグスターは、丁度街中で市民を襲っているという連絡が入り、士道と栞と折紙の三人で向かう。

 

十香と琴里はCRで待機となった。

 

 

少しして、現場に到着。コラボスバグスターは士道達が来たのを見ると、ウィルス達を召喚した。

 

三人は襲いかかる戦闘員の群れに対処していく。

 

 

士道は一番前の個体の頭を掴んで地面に叩きつけ、周囲から襲いかかってきた群れには片手で地面に手を付けて、それを支えにして体を回転させて、回転蹴りで周囲のウィルスを一掃。

 

残っていた一体に時計回りの回し蹴りをお見舞いした。

 

 

折紙は走ってきたウィルスの足に自分の足を引っ掻けて転ばせ、倒れている隙に持っていた剣を奪い、倒れている戦闘員を刺してからすぐに引き抜き、周囲の戦闘員を切り裂いていく。

 

そして、最後に持っていた剣をウィルスに向けて投げ、命中し倒れた。

 

 

栞は一番前の一体の腹を蹴り、体を回転させてもう一体も蹴りつけた。

 

武器を突きつけてきた二体の腕を掴んでお互いをぶつけさせて投げ飛ばし、ジャンプして襲いかかってきた個体を殴り、背後から奇襲してきた個体にも反応して蹴り倒していく。

 

ウィルス達を変身せずに倒した士道達。コラボスバグスターも刀を抜いて構える。

 

しかも、コラボスバグスターの隣にスポーツゲーマを纏い、レベル3となっているゲンムも現れた。

 

 

《マイティアクションX!》

《タドルクエスト!》

《爆走バイク!》

 

「第二」

「ステージ2」

「セカンド・ギア」

 

「「「変身!」」」

 

 

三人はレベル2となる。折紙はガシャコンソードを持ち、ゲンムの相手を引き受ける。

 

士道はバイクとなった栞に乗ってハンドルを捻る。

 

そして一気に加速!さらにガシャコンブレイカーを剣にしてコラボスバグスターに斬りかかる。

 

栞は走っている間、まるで体が軽くなったような感覚を感じていた。

 

体に巻き付いていた重い鎖が無くなり自由になったような、とても軽やかな気持ちだ。

 

心の重荷が取れた今の栞は、今までよりも良い戦いが出来るだろう。

 

 

コラボスバグスターは居合い斬りの体制で待機し、すれ違い様に切り裂こうとする。

 

士道は加速したままガシャコンブレイカーにエネルギーを集中。タイミングを見計らい、士道はコラボスバグスターを斬る!

 

コラボスバグスターも抜刀して切り裂こうとしたが、刀身がぶつかった瞬間、コラボスバグスターの刀が折れてしまう。

 

バイクの加速エネルギーを上乗せした一閃の方が勝ったのだ。

 

士道は栞のゲーマドライバーから爆走バイクガシャットを抜いて、ガシャコンブレイカーのスロットに入れる。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

「一人では越えられない困難な事があっても!」

「仲間と一緒なら、共に走れば・・・乗り越えられる!」

 

 

《BAKUSOU!CRITICAL FINISH!!》

 

 

爆走バイクのクリティカルフィニッシュを発動する。

 

ガシャコンブレイカーの刀身に爆走バイクのエネルギーを溜め、コラボスバグスターの回りを何度も高速で走り回転しながら連続で斬る。

 

《GAME CLEAR!》

 

最後の一閃でコラボスバグスターは倒され、ギリギリチャンバラガシャットを無事に入手した。

 

 

「やった!」

「うん、私達の勝利だね!」

 

士道と栞はコラボスバグスターを倒し患者の五十嵐を救えた事に喜んだが、まだゲンムが残っている。

 

折紙はゲンムの足止めをしていたが、ゲンムがクリティカルストライクを発動する。

 

《SYAKARIKI!CRITICAL STRIKE!!》

 

 

タイヤにエネルギーを纏わせて投擲。タイヤはブーメランのように高速で動き、折紙、そして士道と栞を攻撃。

 

その攻撃で三人の変身が解けてしまう。

 

 

「・・・・・・まだ戦える!」

 

栞は力を振り絞って立ち上がる。士道も折紙の手を取って助け起こしてから、栞に先程入手したギリギリチャンバラガシャットを渡す。

 

「必ず勝て」

「もちろん」

 

栞はギリギリチャンバラガシャットを受け取り、もう片手で爆走バイクガシャットを持って構える。

 

 

「前に進み人々を救う、その為の力なんだ!」

 

《爆走バイク!》《ギリギリチャンバラ!》

 

栞の背後に、爆走バイクとギリギリチャンバラのタイトル画面が表示され、ギリギリチャンバラの画面からチャンバラゲーマが出現。栞の前で止まる。

 

「よろしくね」

栞の言葉に頷き、再び栞の周囲を飛ぶ。

 

二つのガシャットをドライバーに入れてレバーを開き、変身する!

 

 

「サード・ギア!変身!」

 

《爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク!!》

《アガッチャ!ギリ・ギリ・ギリ・ギリ!チャンバラ!》

 

まずレベル2のバイク形態になってから、チャンバラゲーマが自動で両手足と顔のパーツに別れる。

 

そしてバイク形態から形が変わり、そこにゲーマのパーツが合わさり人型になった。

 

仮面ライダーレーザー、チャンバラバイクゲーマ・レベル3!変身完了!

 

「レーザーが人型になったな」

「うん。栞ちゃん、大丈夫かな」

「信じよう、栞を」

 

士道と折紙は栞の戦いを見守る事にした。

 

 

「アクセル全開!!」

 

栞は掛け声と共に、弓と鎌が一体化したガシャコンウェポン、ガシャコンスパローを召喚。

 

弓モードのまま手に持って、ゲンムに向けてエネルギーの矢を複数射る。

 

ゲンムはもう片方のタイヤを盾にして防ぎ、両手にタイヤを持つ。

 

そしてタイヤで殴りかかるが、栞はガシャコンスパローのAボタンを押して二つに分離させて鎌モードにして二刀流となった。

 

 

ゲンムはタイヤを二つをまとめて投げるが、栞はスパローで斬り払いタイヤを弾く。

 

しかし、その隙にゲンムは走って接近し、エグゼイドと同じガシャコンブレイカーを呼び出し、剣にして斬りつける。

 

栞は斬られてダメージを受けながらもすぐにバックステップで距離を取り、着地の直後に足に力を込めて前にジャンプ。

 

接近しスパローでゲンムを切り裂き、更に着地してから弓モードにしてBボタンを連打、至近距離でエネルギーの矢を放つ。

 

「ぐうぅぅっ!?」

「まだまだぁ!」

 

Aボタンを押して再び鎌モードにして、体の回転を利用した変幻自在の斬撃を何度もくらわせる。

 

最後に力を込めた一閃でゲンムを地に倒した。

 

レベル3の力を手に入れた栞は、その力をすぐに使いこなし大活躍を見せた。

 

 

連続攻撃で大きなダメージを受けたゲンムは己の不利を悟り、シャカリキスポーツガシャットをガシャコンブレイカーのスロットに入れる。

 

栞もギリギリチャンバラガシャットをガシャコンスパローのスロットに入れる。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

《SYAKARIKI!CRITICAL FINISH!!》

《GIRIGIRI!CRITICAL FINISH!!》

 

二人は同じ、武器にエネルギーを纏わせて攻撃するタイプのクリティカルフィニッシュを発動する。

 

走り、すれ違い様に一閃!爆発が起こる。

 

 

爆発が晴れると、そこにはゲンムしかいない。倒した訳ではない事をわかっているゲンムは栞を探そうとしたら。

 

 

《キメワザ!》

「何!?」

 

《GIRIGIRI!CRITICAL STRIKE!!》

 

電子音声に反応したゲンムは背後の上を見る。すると、ギリギリチャンバラガシャットをキメワザスロットに入れて、クリティカルストライクを発動した栞がいた。

 

必殺技がぶつかり合った直後、栞はジャンプしてガシャットをキメワザスロットに入れ、クリティカルストライクを放つ準備を整えていた。

 

キメワザの連続発動、栞はこれを狙っていたのだ。

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

栞は右足にエネルギーを溜め、飛び回し蹴りを当てた。

その威力は高く、飛び回し蹴りをモロにくらったゲンムは吹っ飛び、近くのビルに激突した。

 

栞はゲンムを捕らえようとしたが、ゲンムはバグヴァイザーを撃って煙をたてて目眩ましをする。

 

煙が晴れた時にはゲンムは姿を消していた。

 

 

ゲンムがいなくなった事を確認した栞は、ゲーマドライバーのレバーを閉じてガシャットを抜き、変身を解いた。

 

手に入れたギリギリチャンバラガシャットを見つめ、士道達の方を向いてピースをした。

 

その表情は、喜びの笑顔だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

二日後。士道は栞の自宅に招待された。

 

「こんにちは、士道君。栞の母のエレナです」

 

栞の両親は、母親の方は風鳴 エレナ。

 

栞と同じ白銀色の髪を持つ、ドイツ出身の女性である。

 

医者になることを夢見て、医療技術がかなり発達している日本に来日。そこで勉強を重ねて念願の医者となったのだ。

 

医療と科学、双方の知識に詳しい医師であり、天宮総合病院に勤務する医者だ。

 

彼女もCRの一員であり、昨日までCRを離れていたが戻ってきたのだ。

 

 

そして父親は・・・。

 

「初めまして、五河 士道君。俺が栞の父・・・風鳴 弦十郎だ。遠慮なく名前で呼んでくれ」

 

国連組織S.O.N.G.の司令官にして、"シンフォギア装者"を纏めるOTONA・・・風鳴 弦十郎であった。

 

OTONAこと弦十郎、この世界では妻子持ちになっている。二十年前、二人は運命の出会いを果たし結婚したのだ。

 

S.O.N.G.司令官としての仕事が忙しいので、あまりエレナ達の元に帰れないが、連絡は取り合っているし家族の絆は少しも変わっていない。

 

今回も士道に会うために、時間を作って帰ってきたのだ。余談だが薫は弦十郎似で、栞はエレナ似である。

 

 

「は、はい・・・初めまして・・・・・・」

「士道、緊張しすぎだよ」

「そう言われても・・・・・・」

 

カチコチに固まる士道を、何とか落ち着かせた栞。

 

「君の事は、栞から聞いている。ありがとう、栞の命と心を救ってくれて」

 

「私からも言わせて・・・・・・栞が生きていられるのもあなたのおかげ。本当にありがとう」

 

士道の事を知っていた二人は栞を救ってくれたお礼を言った。

 

「いえ、そんな・・・でも、栞の事はこれからも守っていきたいですし、一緒に戦いたい。そして、二人で前に進んでいきたいって思ってます」

 

「・・・・・・そうか」

弦十郎は微笑み、士道の頭をワシワシと撫でる。

 

「わっ!?」

 

「・・・俺もエレナも、栞がバグスターと戦うのは反対していた。栞まで薫のように消えてしまうと思うとな・・・。栞の決意に折れたが、ずっと不安だった。だが・・・」

 

弦十郎は士道を見る。その目は、士道を信頼する目だった。

 

「君になら、安心して栞を任せられる。士道君・・・頼んだぞ」

「私もサポートしていくから、よろしくね」

 

「・・・はい!」

 

士道は頷き、皆が笑顔になった。

 

「では、済まないがこれで失礼する。これから帰らないと明日の仕事に響いてしまう。士道君、もしこの先の戦いが厳しくなっても、俺達は君の味方だ。

 

困ったことがあったら、遠慮なく俺やエレナにも相談してくれ」

 

そう言って、弦十郎は電話番号とメールアドレスが書かれた紙を渡す。

 

「ありがとうございます」

 

 

「あぁ、これからもよろしくな!義息子(むすこ)よ!これからはお義父さんと呼んでくれ」

 

「・・・・・・え、えぇ!?」

「お、お父さん!?」

 

義息子発言に士道は驚き、栞も顔を真っ赤にしながら驚いた。

 

「あら、良いわね。士道君なら私も大歓迎よ、私も是非お義母さんと!」

 

エレナもノリノリである。

 

栞は顔を真っ赤にしたまま弦十郎をポカポカと叩く(全く痛くない)。それを笑いながら受け止める弦十郎であった。

 

 

「と・・・・・・ところで、弦十郎さんってどんな仕事をしているんですか?エレナさんと同じ医療関係ですか?」

 

士道は話題をそらす為と、弦十郎がどんな仕事をしているのかを聞いていなかった為に、聞いたのだ。

 

聞かれた弦十郎は特に慌てずに、「国家公務員だぞ」とだけ返しておいたのだった。

 

 

弦十郎が帰った後、士道は栞の部屋で二人一緒だ。エレナが気を効かせて、二人きりにしたのである。

 

薫の写真を見せてもらい、引っ越していた間の思い出を聞いて・・・・・・二人は同じ時を共有していた。

 

今、二人はベッドに並んで腰かけている。

 

「士道・・・本当にありがとう」

「俺はただ、したい事をした。言いたい事を言った。それだけだ」

 

「それでも、あなたは私を二度も救ってくれた。あなたは私のヒーローだよ」

 

栞は潤んだ瞳で士道を見つめ、士道と腕を組んだ。

 

 

「これからも、私と一緒に走ってくれる?辛い時は、甘えていい?」

「あぁ、もちろんだ」

 

士道の肯定の言葉を聞いて、栞は心からの笑顔になった。

 

窓から射し込む日の光が、二人を優しく包み込んだ。

 

 




次回予告


時崎 狂三が動き出した。レベル3のガシャット最後の一つを狙って。


第十話 狂三がFlying!(前編)


「これがわたくしの・・・レベル3のガシャット」


ーーーーーーーーーー

シンフォギアの登場人物、風鳴 弦十郎が登場しました。彼が栞の父親です。

エレナはオリジナルキャラです。

弦十郎と士道の語り合いは、機会があったらまた書きたいです。


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第十話 狂三がFlying!(前編)

お待たせいたしました。

やっと点を小さく出来たので、今後は小さい方を使っていきます。


この作品にも評価が付きました。高く付いていて、すごく嬉しかったです。

これからも頑張って書いてまいります!



栞がギリギリチャンバラガシャットを手に入れた日の事。

 

幻夢コーポレーション内にグラファイトがいた。

 

 

ブレイブ・・・折紙との戦いで受けた傷も癒えて動ける状態であったが、新たな仲間であるコラボスバグスターが次々と倒され、残り一体になってしまった事に怒りと焦りを感じていた。

 

「俺達の仲間が・・・くそっ!!」

 

「落ち着けグラファイト。仲間のバグスターが倒されると冷静さを失うのが、お前の悪い所だぜ。アイス食うか?」

 

「パラド・・・アイスはいらん」

 

グラファイトを落ち着かせるパラド。アイスキャンディを差し出すがグラファイトは断り、パラドは一人で食べる。

 

グラファイトはこれ以上は何も言わず、背を向けて歩きだす。

 

 

「せめてコラボスの最後の一体だけでも、完全態に・・・!」

そう言って部屋を出たグラファイトを、パラドは見つめていた。何を考えているかは、わからないが・・・・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

栞がギリギリチャンバラガシャットを手に入れた日から数日後。もうすぐ五月になる日の事。

 

 

時崎 狂三は公園で野良猫と戯れながらのんびりと過ごしていたが、ジョギングをしていた女性が突然、狂三の前で倒れてしまった。

 

「あらあら・・・」

 

狂三は女性に駆け寄り、持っていたスコープで見てみると、ゲーム病であることを示すマークが出ていた。

 

「・・・・・・」

狂三はCRに連絡を入れて、救急車が来るまで付き添った。

 

 

女性・・・・・・岩代はCRに搬送された。狂三は病室の機材でスキャンして状態をモニターで確認する。

 

ウィルスは進行しており、いつバグスターが出て来てもおかしくない。

 

ちなみに、今の狂三は黒を基調としたドレス風の私服の上にCRの制服の上着だけを着ているという姿だ。

 

 

「私は・・・・・・病気、何ですか?」

「そうですわ、このまま放っておけばあなたは消えてしまいます。ですが、わたくしが何とかしますわ」

 

「あなたが、治してくれるんですか?」

「えぇ」

 

狂三が頷くと岩代は突然苦しみだし、その体からバグスターユニオンが出現。

 

狂三はゲーマドライバーを装着して、バンバンシューティングガシャットを起動。

 

 

《バンバンシューティング!》

「変身」

 

スナイプ・レベル1に変身し、ステージセレクトで開けた草原のゲームエリアに入る。

 

コラボスバグスターは、ミサイルを口から吐き出して発射した。狂三は高くジャンプして避けて、体を回転させて巨大な弾丸の姿になり、体当たりを仕掛ける。

 

一回でなく、軌道を変えながら複数回攻撃し、トドメに上から急落下し、頭上からバグスターユニオンを攻撃。

 

その攻撃で、バグスターユニオンは限界を越えて倒された。

 

 

すると、コラボスバグスターが出現した。

 

頭に刺さっているガシャットを見て、狂三はそのゲームを特定した。

 

「"ジェットコンバット"。戦闘機を操作して空中の敵を撃ち落とす、フライトシューティングゲーム・・・・・・キヒヒ、わたくしに相応しいガシャットですわね。是非とも手に入れなければ・・・第弐弾」

 

 

ゲーマドライバーのレバーを開き、レベル2になる。

 

ガシャコンマグナムで撃つが、コラボスバグスターは飛行能力を得ている為、空を飛びながら回避していく。

 

Aボタンを押して砲身を展開させて、ライフルモードに変形させて狙いを定めて射撃を行う。しかし、それも回避されてしまう。

 

コラボスバグスターは反撃として、空中から銃弾やミサイルを撃ってくる。

 

狂三は走ってかわし、物陰に隠れた。

 

 

「厄介ですわね・・・・・・どうしましょうか」

空中にいる状態のコラボスバグスターの相手に苦戦する狂三。

 

どうやって動きを止めるかを考えていた所で、ゲームエリア内にグラファイトが現れた。

 

 

「お前が最後のコラボス。俺が守ってやる」

 

グラファイトはコラボスバグスターと一緒に姿を消した。

 

狂三は物陰から出て、先程までグラファイトがいた場所を見つめた。

 

 

数秒して、狂三は変身を解除。元のCRの病室に戻る。

ベッドの上には苦しむ岩代の姿が。

 

「・・・・・・ご安心を、必ず助けますわ」

狂三は岩代に優しく囁き、病室を後にした。

 

すると、連絡を受けて駆けつけた士道、折紙、栞の三人と合流した。

 

 

「狂三さん」

「あら、士道さん。折紙さんと栞さんも」

 

「患者の様子は?」

「バグスターが出た影響で、ウィルスは進行中。これから、逃げたバグスターを追いかけて倒しますわ」

 

 

「何か、手伝える事は?」

 

「そうですね、バグスターはグラファイトが連れていきました。ですので、グラファイトとバグスターを探すのを手伝っていただけますか?」

 

「わかった。二人も良いか?」

「「はい!」」

 

「ありがとうございますわ」

 

 

指示を出した狂三は、CRから出てコラボスバグスターを捜索する。

 

狂三一人で・・・・・・否。

 

 

「お願いしますわ、"わたくし達"」

「「「「「畏まりましたわ、わたくし」」」」」

 

()()()()()()()が狂三の背後で返事をした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

一時間後、廃工場地帯。

 

グラファイトとコラボスバグスターは工場内部で待機していた。

 

患者がゲーム病で苦しむストレスで消滅するのを待っていた。

 

少々格好悪いという気持ちもあるが、完全態にするために手段は選んでいられない。

 

グラファイトが小さく息を吐いたその時・・・・・・!

 

 

 

「「「見つけましたわ」」」

 

 

「!」

工場内部に、狂三の声が響く。それも、一人ではなく複数人の声だ。

 

グラファイトとコラボスバグスターは、すぐに工場の外に出る。すると、出口の暗がりから複数の狂三が出てきた。

 

狂三が精霊としての力を使って出した、狂三の分身達だ。

 

 

「スナイプ・・・・・・そうだ、貴様も精霊だったな」

 

複数の狂三の中央から、狂三本体が姿を現した。

手にガシャコンマグナムを持っている。

 

ガシャコンウェポンは、対応するガシャットを持っていれば変身しなくても使用可能だ。

 

 

「わたくし達、ありがとうございました。下がってくださいな」

狂三の言葉に従い、狂三の分身体達は足元の影に潜って姿を消した。

 

 

グラファイトは、ファンガイアから貰った短剣を持って構え、走って先に攻撃を仕掛ける。

 

素早く接近し、短剣を一閃。狂三はそれをバックステップでかわしてマグナムを撃つが、撃たれた弾を短剣で切り裂いて防がれた。

 

 

コラボスバグスターも援護に加わる。

 

最初と同じように空中を飛びながら撃ってくるが、狂三はそれをダンスを舞うように体を回転させながら移動してかわす。

 

そして、回転している途中に攻撃を加えていく。その弾は全てではないものの、ある程度は命中してコラボスバグスターにダメージを与えた。

 

 

グラファイトがジャンプして空中から短剣を素早く幾つもの斬撃を放つ。

 

それは真空刃のようになって、複数が空気を裂きながら狂三に襲いかかる。

 

狂三は襲い来る真空刃に対して、正面に素早く走って真空刃をかわし、グラファイトに飛び蹴りを当てる。

 

腕をクロスさせて防いだグラファイト。その上からコラボスバグスターが今まで以上の弾幕をはる。

 

しかし、狂三は既に対抗策を考えていた。

 

 

《バンバンシューティング!》

「第弐弾、変身!」

 

ゲーマドライバーを装着し、ガシャットを入れてレバーを開き、直接レベル2になる狂三。

 

狂三はコラボスバグスターの弾幕を撃ち落とそうと、弾を撃ち続ける。

 

撃たれる弾。相殺される弾。地面に着弾する弾。

狂三とコラボスバグスターの銃撃戦は続いた。

 

 

ここで、コラボスバグスターの意識が完全に狂三に夢中になった隙に・・・!

 

「っ!?」

 

コラボスバグスターは、背後から銃撃を受けて地に落ちた。

 

撃ったのは、狂三の分身体だった。一体だけ別所に隠し、コラボスバグスターを撃ったのだ。

 

空を飛ぶコラボスバグスターの隙を作る為に考えた事だ。

 

 

グラファイトもその事に気付き、狂三を倒そうと動くが、新たに現れた分身体二人がグラファイトを捕まえて拘束する。

 

「貴様ら!」

「邪魔はさせませんわ」

「大人しくしてくださいまし」

 

 

分身体がグラファイトを抑えている間に、コラボスバグスターを倒すために動く。

 

バンバンシューティングガシャットをドライバーから抜いて、ガシャコンマグナムのスロットに入れる。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

《BANBAN CRITICAL FINISH!!》

 

クリティカルフィニッシュを発動し、エネルギーが増幅された弾を撃つ。

 

その弾は、分身体の攻撃で地に落ちたコラボスバグスターに直撃。爆発して倒された。

 

《GAME CLEAR!》

 

コラボスバグスターは倒され、ジェットコンバットガシャットを無事に入手した。

 

 

「これが私の・・・レベル3のガシャット」

 

手に入れたジェットコンバットガシャットを見ていると、分身体を振り切ったグラファイトが怒りを顕にしていた。

 

 

「最後のコラボスが・・・・・・許さんぞスナイプ!!培養っ!!」

 

《INFECTION!THE BUGSTER!!》

 

グラファイトは怒りのまま怪人態になるが、グラファイトの言葉を聞いて、狂三も低い声で答えた。

 

「・・・・・・許せないのは、わたくしもですわ」

 

 

そこに戦闘の知らせを受けて駆けつけた士道、折紙、栞もやって来たが、狂三の様子がおかしい事に気付いた。

 

「あなたも消したではありませんか。プロトレーザー・・・・・・薫さんを!わたくしの新しい友達を!!」

 

 

心から沸き上がる激情を吐き出すかのように、狂三は叫ぶ。変身しているので顔も隠れているが、その表情は怒りに満ちていた。

 

 

「己の目的の為に全てを捨てた筈のわたくしに、もう一度友の大切さを思い出させてくれた薫さんを・・・・・・消したあなたが許せない!!」

 

「俺も・・・許せない・・・!友を次々と消し去る貴様ら仮面ライダーが許せない!」

 

 

狂三とグラファイト、双方の怒りに士道達は気圧されるが、栞は狂三が薫の事を大切に思ってくれていた事を知り、嬉しくなった。

 

しかし、その嬉しい気持ちも狂三とグラファイトの重圧で押し潰されていく。そして・・・・・・!

 

 

 

「スナイプウゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「グラファイトオォォォォォ!!」

 

狂三とグラファイトの戦いは、お互いの名を叫んで始まった!

 




次回予告


ぶつかり合う狂三とグラファイト。冷静さを失い、怒りのままに戦う狂三に対して、士道達は・・・。


第十一話 狂三がFlying!(後編)


「わたくしによる空の銃撃、お見せしますわ」


ーーーーーーーーーー

狂三は薫と出会った事で、原作と変わっている所があります。
詳細は狂三のエピソードZEROで語るので、お待ち下さい。


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第十一話 狂三がFlying!(後編)

お待たせしました!



「スナイプウゥゥゥゥゥゥゥ!!」

「グラファイトオォォォォォ!!」

 

 

仮面ライダースナイプ・・・狂三とグラファイトの戦いは、お互いの名を叫んで始まった。

 

グラファイトはともかく、普段から貞淑な感じの狂三まで感情を露にして叫ぶことに、駆けつけた士道達も驚いた。

 

 

走って接近する両者。グラファイトは武器にエネルギーを溜めて、破壊力を高めて狂三に向けて斬りつける。

 

狂三は体を傾けて紙一重でかわし、グラファイトの体に向けてガシャコンマグナムから弾を連射する。

 

弾はグラファイトに命中したが、グラファイトはダメージを無視して狂三を斬る。

 

狂三もダメージを受けライダーゲージが減るが、ダメージを無視してグラファイトの腕を掴んで強引に引き寄せ、頭突きを当てる。

 

ぐらついた所に、更に腹を蹴りつける。

 

 

後ろに下がったグラファイトは、再び武器にエネルギーを溜めて、今度は真空刃のように斬撃を放つ。

 

しゃがんで避けてから、低い姿勢のまま前に走りガシャコンマグナムの銃身で直接殴る。

 

グラファイトは狂三の頭を掴み、地面に叩きつける。

それを三回ほど繰り返し、横へ投げ捨てる。

 

投げられながら狂三は弾を撃ち、着地してから走りながら撃っていく。

 

 

グラファイトも狂三に並んで走り、右手にヴァグバイザーを持ちエネルギー弾を撃つ。

 

弾が外れ、地に着弾する。弾と弾がぶつかり合い、相殺される。

ある程度それが繰り返された所で、両者は再び接近戦に入る。

 

 

接近戦も激化していくが、接近戦ではグラファイトの方に分がある。狂三は武器の一撃を受けて、地を転がる。

 

「狂三さん!」

「私達も加勢します!」

 

三人はゲーマドライバーを装着し、レベル3になるべくガシャットを取り出したが・・・。

 

 

「貸しなさいっ!」

 

狂三は素早く近づくと、一番近くにいた士道と折紙からゲキトツロボッツとドレミファビートのガシャットを強引に奪った。

 

「大丈夫!?」

倒れる士道と折紙に駆け寄る栞。

 

狂三は奪ったガシャットでグラファイトに攻撃をする。

 

ゲキトツロボッツを、ガシャコンマグナムのスロットに入れてクリティカルフィニッシュを発動する。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

《GEKITOTU!CRITICAL FINISH!!》

 

銃口から、「ゲキトツスマッシャー」を模したエネルギーの固まりが発射される。

 

グラファイトは、手に持つ武器を回し盾の様にして防いだ。

 

狂三はゲキトツロボッツガシャットを捨て、ドレミファビートガシャットを入れる。

 

 

《DOREMIFA!CRITICAL FINISH!!》

銃口から、音符の形をしたエネルギー弾を連射する。

 

グラファイトは短剣に力を込めて一閃。

連射されたエネルギー弾を全て切り裂いて消してしまった。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ドレミファビートガシャットも投げ捨て、雄叫びを上げて再び接近戦を挑む。

 

 

士道と折紙は急いで狂三が投げ捨てたガシャットを回収。狂三の方を見ると、激戦になっていた。

 

激戦だが、両者は完全に防御を捨てており、ダメージを受けても無視して戦うという無茶な戦い方をしていた。

 

このままでは、共倒れということも考えられる。

狂三は傷つき、ライダーゲージは減り続ける。しかし狂三は止まらない。延々とグラファイトに攻撃を続けるように。

 

 

(このままじゃあ、狂三さんが・・・・・・!)

そこまで考えた瞬間、士道の足は自然と狂三に向かって走っていた。

 

そして、狂三とグラファイトが一旦離れた所で、狂三に抱きついて地面を転がった。

 

「士道さん!?」

驚く狂三。士道が狂三のライダーゲージを見ると、残り残り20%位しかなかった。

 

士道は素早くゲーマドライバーのレバーを閉じ、バンバンシューティングガシャットを抜いて、狂三の変身を解いた。

 

変身が解けた狂三の姿は、服も少々ボロが出ていて、体から血が出ている所もある。

 

 

「何をするんですか士道さん!?」

「エグゼイド!戦いの邪魔をするな!」

 

狂三とグラファイトの二人が士道に非難の声を上げるが、士道は先程回収したゲキトツロボッツガシャットを単体で起動した。

 

 

《ゲキトツロボッツ!》

 

ロボッツゲーマが出現し、グラファイトに向かって攻撃を仕掛ける。

 

ゲーマを召喚するタイプのガシャットは、ドライバーを付けず単体で起動すると、ゲーマを召喚して攻撃を任せる事が出来る。

 

急な事態の時に護身として使え、またちょっとした作業を手伝ってもらう事も出来る。

 

 

《ドレミファビート!》

《ギリギリチャンバラ!》

 

折紙と栞もゲーマを召喚。グラファイトに攻撃を命じる。

 

ゲーマ達にグラファイトを足止めしてもらっている間に、三人は狂三の側に。

 

 

「狂三っ!!」

「っ!?」

士道が狂三の名前を大声で呼んだ。今まで「さん」付けだったが、呼び捨てで呼んだのだ。

 

 

「落ち着け、狂三。お前が栞のお姉さん・・・薫さんの命を失う原因となってしまったグラファイトが許せないのはわかる。でもな・・・・・・。

 

怒りに飲まれたままで、グラファイトを倒せるか?冷静さも無く、闇雲に突っ込むような戦いじゃあ駄目だ!

 

お前の身に取り返しのつかない事が起こったらどうする!?薫さんがどう思うのか、お前ならわかるだろ!」

 

「士道さん・・・・・・」

 

 

「狂三さんがお姉ちゃんを大切に思ってくれているのは、妹として嬉しいです。

 

でも、もう自分を責めないでください。狂三さんが過去の辛い思い出に縛られている姿を見るのは・・・お姉ちゃんも私達も辛いですから」

 

「栞さん・・・・・・」

 

 

「私は狂三さんと多くの時間を過ごした訳では無いから、わからない事の方が多いけど・・・。

 

狂三さんは、栞ちゃんのお姉さんの為に怒れる優しい人です。でもその怒りに飲まれたまま戦ってはダメです。栞ちゃんのお姉さんだけでなく、自分自身も大切にしてください」

 

「折紙さん・・・・・・」

 

 

皆からの説得を受けて、狂三は冷静さを取り戻した。

 

数秒目を閉じて気持ちを落ち着かせてから、狂三は士道の差し出した手を握って立ち上がった。

 

そして、三人に頭を下げた。

 

 

「皆様、すみませんでした。数々の見苦しい姿、ガシャットを強引に奪ったこと、謝罪いたします」

 

「もう大丈夫か?」

「はい」

 

士道の問いに頷く狂三。士道達は安心してゲーマを下げさせる。グラファイトは狂三の雰囲気が変わったことに気付き、武器を構える。

 

「いつもの狂三ちゃん、リターンです!」

狂三は笑顔で言うと、二つのガシャットを持った。

 

一つはバンバンシューティング。もう一つは、最後のコラボスバグスターを倒して手に入れたジェットコンバットだ。

 

 

「わたくしによる空の銃撃、お見せしますわ」

 

《バンバンシューティング!》《ジェットコンバット!》

 

 

狂三の背後に、バンバンシューティングとジェットコンバットのタイトル画面が表示される。

ジェットコンバットの画面からオレンジ色の"コンバットゲーマ"が出現。空を飛んで狂三の前へ。

 

狂三と軽くハイタッチをして、狂三の周囲を飛んでいく。

 

ゲーマドライバーにガシャットを二本セットし、レバーを開いた。

 

 

「第参弾、変身!」

 

《ババンバン!バンババン!バンバンシューティング!》

 

《アガッチャ!ジェット!ジェット!イン・ザ・スカイ!ジェット!ジェット!ジェットコンバット!》

 

 

新たにバイザーが装着され、空中を飛行することが可能となり、腰の左右にあるガトリングによって高い火力を得た。

 

 

仮面ライダースナイプ、コンバットシューティングゲーマー・レベル3!変身完了!

 

 

「ミッションスタート!」

 

宣言の直後、ガトリングを持ってコンバットゲーマから噴出される炎で空を飛んだ!

 

グラファイトは武器から真空刃を複数放ち、空中の狂三に攻撃する。

 

しかし、狂三は高い機動力を活かして空を飛びながらかわし、隙を見てガトリングを放つ。

 

飛べないグラファイトは空中からの攻撃に対処できず、攻撃をくらう一方になる。

 

「舐めるなあぁぁぁぁ!!」

 

グラファイトは短剣にエネルギーを溜めて、溜まった所で一気に解放する。その範囲は広く、広範囲の攻撃を放てば当たる、と考えたのだろう。

 

 

その攻撃が狂三を飲み込む・・・・・・様に見えた。

しかし、狂三は即座に下に向かって急降下。

 

下に向かって行くことで範囲から外れてかわす。

 

更に地面間近の超低空飛行で素早くグラファイトに接近し、そのまま体当たりをして急上昇。グラファイトと一緒に空に上がる。

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

そのままガトリングをグラファイトの体に放つ。ほぼゼロ距離で連射を受けて、ダメージを多く受けたグラファイトは、連射が終わってそのまま地面に落下した。

 

「決めましょう」

 

狂三は空中を飛んだままジェットコンバットガシャットを抜いて、キメワザスロットに入れてスイッチを二回押す。

 

 

《キメワザ!》

《JET!CRITICAL STRIKE!!》

 

ガトリング砲にエネルギーが溜まり、引き金を引くと強化されたエネルギー弾が無数に発射。更に、背中からミサイルも十発発射される。

 

 

「ぐあああああ!!」

 

発射された弾の威力は大きく、防御していたグラファイトは宙に吹っ飛ぶ。

 

狂三はキックの体制を取り、足にジェットコンバットガシャットのエネルギーを溜める。背中の炎を逆噴射してグラファイトに向けてキックの体制のまま突っ込む。

 

グラファイトはすぐに短剣のエネルギーを使って前方にバリアを展開。ステンドグラスのような鮮やかな色のバリアが張られた。

 

 

狂三のキックがグラファイトの張ったバリアにぶつかる。狂三はバリアを破ろうと力を込め、グラファイトも破られない様に力を込める。

 

数秒の拮抗の末、両者の間で爆発。狂三はグラファイトから離れた。ダメージを受けているが無事だった。

 

グラファイトも着地。バリアを張っていた為倒せなかったが、大きなダメージを受けていた。

 

 

「俺は・・・仲間を・・・守れなかった・・・・・・」

 

呆然と呟き、グラファイトは静かにワープして姿を消した。

 

 

「ミッション、完了」

 

狂三も着地して、変身を解いた。流石に狂三も疲労がかなり溜まっており、倒れてしまいそうになるが・・・・・・。

 

 

「狂三!」

 

士道が受け止めた。

 

「あら・・・士道さん。ありがとうございます」

「大丈夫か?」

 

「えぇ、流石に体が痛くて疲れてしまいましたわ。という訳で士道さん。わたくしを癒してくださいまし」

「い、癒す・・・?」

 

「そうですわ。わたくしを背負って士道さんのお家まで運んで、士道さんがわたくしにマッサージ。ふふふ、わたくしを止めてくださったお礼です、私の体を触っても宜しくてよ」

 

狂三という美少女が色っぽい声と潤んだ瞳、赤い頬でそんな事を言えば、ぐらつかない男はいない。

 

現に士道は今、必死に己の理性で邪な心を抑えていた。

 

 

「「こらー!!」」

 

当然、狂三による士道への攻略等見過ごせず、折紙と栞が割って入り狂三を士道から引き離す。

 

 

「あぁん、ひどいですわぁ」

「狂三さん、あまり士道君を誘惑しないで下さい!」

「そうです!士道の純情を弄ぶのは禁止です!」

 

「残念ですわ。でも今回、わたくしを止めてくださった時の士道さんが素敵でして、ついつい」

 

「「む~」」

 

「ふふふ、今日はこの辺で。士道さん、本日のお礼は日を改めてさせていただきますわ」

 

「そんなの気にしなくて良いのに」

 

「いえいえ、わたくしが気にしますので。ですが士道さん。今後も"適合者"として戦い続けると言うのならば、グラファイトは避けられない大きな壁。

 

黒いエグゼイドの事もありますから、頑張って参りましょう」

 

「あ、あぁ・・・」

「では、ごきげんよう」

 

去っていく狂三。士道は狂三の背中を見ながら小さく呟いた。

 

 

 

 

「"適合者"って、何の事だ・・・・・・?」

 

 

 

その後、感染者の岩代はゲーム病の完治が確認されて退院。様子を見に来た狂三に感謝の言葉を述べて帰った。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同日、夜。幻夢コーポレーション内。

 

グラファイトは仲間のコラボスバグスターを守れなかったショックで落ち込んでおり、トボトボと歩いていた。

 

そして、社長室の所を通った所で、黎斗とパラドの会話が聞こえた。

 

 

「おいおい、大丈夫かゲンム?辛そうだな」

「・・・心配している表情ではないな。まぁ、わかっているだろうが、プロトガシャットの副作用だ」

 

「プロトガシャットは、使った相手に強大な力を与えてくれる。だが、体への負担も大きい。使い続ければ、何れ身を滅ぼす諸刃の剣だ」

 

「わかっている。四年前の時崎 狂三と風鳴 薫も、そして今の私もその負担を受けている」

 

「それでも使い続けるなんてな」

「自分の身を可愛がっていては、目的を達成できない」

「恐ろしいな、お前は」

 

二人の机の上には、ケースに納められたプロトガシャットが十本入っている。

 

グラファイトは二人の話を聞いて、音も立てずにその場を去った。

 

「プロトガシャット・・・・・・それがあれば!」

 

 

「・・・・・・ところでパラド、適合手術の事は知っているか?」

 

黎斗がパラドに質問する。パラドは驚くことなく平然と答えた。

 

「あぁ、人間の体内に少量のバグスターウィルスを入れて、バグスターウィルスの抗体を作るやつだろ?

 

そして抗体を持っている事が、仮面ライダーに変身する条件だ」

 

「その通りだ。しかし・・・・・・仮面ライダーに変身する者達の中に一人だけ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その人物こそが・・・」

 

パラドは笑顔で、その人物の名を口にした。

 

 

 

「五河 士道」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

コラボスバグスターとの戦いから三日後。士道がCRに入ると、狂三がいた。

 

狂三が士道に綺麗にラッピングされた袋を差し出す。袋の中はカップケーキだ。狂三の手作りである。

 

自分を止めてくれた時のお礼として、作ったという。食べた士道は味を絶賛。狂三も嬉しそうに微笑んだ。

 

 

全てのライダーがレベル3の力を手に入れた。次は、"レベル5"だ。そして五月。士道は新たな精霊と出会う事になる。

 

 




今回で、レベル3のガシャットについての話、及び第一章は終わりです。

次回から第二章、原作二巻の話に入ります。同時にエグゼイド本編の九~十話の話にもなります。


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第二章 四糸乃パペット
第一話 第二精霊・Hermit


今回から、四糸乃の話に入ります。同時に、ドラゴナイトハンターZの話も含まれます。


五月上旬のある日、この日は生憎の雨。

 

 

「シドー!クッキィというのを作ったぞ!」

「クッキーを?・・・あぁ、調理実習か」

 

「うむ、シドーの為に作ったのだ!」

 

十香の持っている箱の中には、手作りのクッキーが作られていた。

形は少々良くないが、十香は士道の事を想って作ったのだ。

 

絶世の美少女である十香が、士道の為を想い作ったという事に、士道はかなりドキッとしていた。

 

嬉しいに決まっている、食べない事はあり得ない。

 

 

「もちろん、私達も」

「だよ♪」

 

十香の後ろから、折紙と栞がピョコッと出て来て十香の隣に並ぶ。

 

二人も調理実習で作ったクッキーが入っている箱を持っている。十香と違い形が綺麗に整っている。

 

「私達も、士道君に食べて欲しくて作ったの」

「十香さん、折紙さん、私の三人でね」

「うむ!」

 

 

折紙と栞も、十香に匹敵するほどのかわいい美少女。

三人の美少女が一人の男の為にクッキーを作ってプレゼントする。

 

ちょっと恥ずかしいが、嬉しい気持ちの方が大きい士道は、一人一人にお礼を言って受け取る。

 

十香達から受け取ったクッキーを食べる士道。

 

それぞれはちゃんと美味しく出来ていて、士道は三人のクッキーの出来の良さを誉め、少女達はとても喜んだ。

 

 

来禅高校の三大美少女(士道以外の男子陣命名)である三人の愛情を独り占めしている士道。

 

他の女子は、五河のどこがそんなに良いの?と疑問に思っており、男子は・・・。

 

 

「「「「「オノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレオノレ・・・」」」」」

 

嫉妬に狂い、黒いオーラを纏って士道を睨んでいた。視線だけで人を殺せる勢いで。

その中には、士道の友である殿町 広人も含まれていた。

 

しかしその殺意の波動は、十香達三人の桃色オーラによって防がれ士道には全く届いていない。士道は十香達によって守られていた。

 

すると、美九からメールが届く。

 

『だーりん!今日、調理実習でクッキーを作ったので、放課後は一緒にお茶にしませんか?美味しい紅茶もありますよぉ』

 

(・・・・・・今日はクッキー尽くしだな)

 

士道は十香達に美九がお茶会を従っている事を話すと、皆が賛成したので美九に賛成の返事を送り、お茶会の知らせを琴里にも知らせた。

 

琴里もお茶会に賛成したため、開催は確定した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

放課後。士道は食材の買い出しの為にスーパーへ。女子達はお茶会準備のために一足先に五河家に集合している。

 

そんな士道だが、帰り道の途中で突然雨が降りだしたのだ。傘を持っていなかったので、手でガードしながら走る。

 

途中であった神社の木の下に入り雨宿りをする。

 

(最近の天気予報は外れてばかり・・・。よく降るな最近)

 

 

士道がそんなことを思っていた時だった。

 

バシャッっと水しぶきが飛び散る音が聞こえ、士道はそちらの方に視線を送る。

 

「・・・女の子?」

 

士道の目に写っていたのは、可愛いらしい意匠に身を包んだ小柄な少女だった。意匠の頭にはウサギの耳のようなのもついていた。

 

フードを深く被っているが、水色の長い髪と綺麗な瞳が見える。

 

 

そして、もう一つの大きな特徴は左手。

眼帯のようなものをつけたウサギのパペットを彼女は左手につけていた。

 

「もう片方の手に、戦車のパペットは付けてないのか・・・」

 

何故かそんな事を呟いてしまった士道だが、目は少女の方を見たままだ。

 

少女は誰もいない神社で楽しそうに跳ねていた。この雨の中なのに傘をささずに遊んでいる。

 

すると、少女が水たまりを踏んだ時に泥に足を取られたのか盛大に転ぶ・・・前に士道は慌てて少女に駆け寄り、素早く抱き抱える。

 

「大丈夫か!?」

 

士道が抱き抱えた少女が顔を上げる。そこで少女の顔が見えた。

 

ふわふわした青い髪に桜色の唇、透き通った蒼を思わせるような綺麗な瞳だ。

 

「・・・・・・!」

 

少女は士道に目を合わす。特に怪我をしている様子も無い。

 

「大丈夫みたいだな。ほら、立てるか?」

士道は優しく言い、そっと地に下ろす。

 

 

「は・・・い・・・・・・ありがとう、ございます・・・」

少女は細く小さく、しかしハッキリと感謝の言葉を言った。しかしその直後、今度は・・・。

 

「いやあ!ゴメンねお兄さん、助かったよ」

 

「しゃっ、喋ったぁ!?」

 

少女の手に付いているパペットが喋り出した。少女とは違い、大きくハッキリとした声だった。

 

士道はパペットが喋った事に驚いた。しかしその音声は青い髪の少女ではないことはすぐに気付いた。

 

少女ではなくパペットが士道に告げる。

 

「んじゃあお兄さん、バイバーイ!」

 

「え、あ、ちょっと君!?」

少女とパペットは走って行く。士道が少し遅れて少女の走っていった方向へ向かったが、少女の姿は無かった。

 

 

「パペットが無いと喋れないってことは無いよな・・・まさかあの子って」

 

士道はあの少女に少し思うことがあったが、いない以上聞くことも出来ない。士道は帰ることにした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道が家に帰ると既に家の中には十香、折紙、琴里(黒リボン)、美九、栞と女子陣が全員揃ってお茶会の準備を終えていた。

 

全員、学校から直接五河家に寄ったため制服姿だ。

 

ちなみに、琴里は令音にも声をかけたが、ラタトスクでの仕事が忙しく行けるかどうかわからないとの事だ。

 

 

「ただいま、遅くなってごめん」

「おぉ、お帰りなさいだシドー!」

 

「じゃあ、士道君が来たから今からお湯を沸かすね」

「茶葉は皆さんで決めましたよー」

 

「余った分の茶葉は譲ってくれるそうよ。太っ腹ね」

「えっへん。家はお金持ちですし、アイドル業で稼いでますからねー」

 

「シドーの席は、私と栞の間だぞ!」

「ジャンケンで決めたんだよ」

 

「くっ・・・あそこでチョキを出していれば!」

 

士道は一旦自室に戻り通学用の鞄を置いてから、十香がポンポンと叩く椅子に座った。

 

「うーん・・・この女の子だけの空間に男の俺がいて良いのか・・・」

 

「何を言うのだシドー?シドーと一緒の方が良いに決まっているではないか!」

 

「そうだよ。士道も一緒で私達は嬉しいよ」

 

そんな会話の間にお湯が沸き、全員に紅茶が行き渡る。

 

 

始まったお茶会は、個人が作ったクッキーの感想を言い合ったり、紅茶を楽しんだり、美九がお茶を楽しむ女子を見てニコニコしていたり。

 

士道も皆と一緒に楽しんでいた所で、士道は皆に神社での出来事を話した。

 

「・・・という事があったんだけどさ。あの女の子はもしかして・・・」

「精霊ね」

 

琴里は断言した。美九は「その子の話を詳しく!というか会わせてください!」と言ってたがスルーした。

 

「士道の話と特徴が一致する精霊がいるの。その精霊は"ハーミット"ね」

「ハーミット?」

 

 

「極めて大人しい性格の子よ。ASTに攻撃されても一切反撃せず常に逃げ回っているみたい」

 

「だから、現界数こそ多いものの危険度は比較的小さい。でも精霊である以上は排除しないといけない、と言われているの」

 

琴里と折紙の話を聞いて、士道は険しい表情になる。

 

「・・・十香の時と同じじゃねぇか。空間震を自分の意思で起こしている訳でもない。なのに人間の都合で勝手に悪者扱いされて、攻撃されている・・・」

 

「シドー・・・・・・私はシドーに会えて、助けてもらえて、本当に嬉しく思う。だからシドー、そのハーミットという精霊も・・・」

 

「もちろんだ、必ず助ける」

 

十香の言葉に頷く士道。そんな士道を少女達は嬉しく、また好ましく思っていた。

 

すると、チャイムが鳴ったので士道が出ると、令音が立っていた。

 

「・・・仕事が終わったから来たよ。お茶会はまだ続いているなら、私が加わってもいいかな?」

「もちろんですよ。さぁ、どうぞ」

 

士道は快く迎え入れた。令音の分の紅茶も用意して、これで誘った人数は全員揃った。

 

そして、士道は令音にもハーミットの事を話した上で、琴里と令音に聞いた。

 

「丁度良いから聞こうと思う。琴里、令音さん。ラタトスク機関について、詳しく教えて欲しい」

 

 

この問いに皆が驚いたが、同時に納得した。

 

十香にも折紙にも栞にも美九にもラタトスクについては十香の霊力を封印し、ゲンムやコラボスバグスターとの戦いの後で説明があった。

 

しかし、その説明は必要最低限だけであり、詳しくは語られていなかった。

 

協力関係を築く際に、直接出会ったCRの責任者は信頼出来る人物であったため詳しく説明したが。

 

 

士道はラタトスクの他にも、なぜ琴里が秘密結社の司令を務めているのかが気になっていたのだ。

士道の問いに琴里は頷いてから、紅茶を一口飲んで、喉を潤してから話始めた。

 

「わかった、話すわね。ラタトスク機関は簡単に言えば一種の保護団体みたいなもの。秘密結社だから世間には公表されていないけど」

 

「保護団体なのに秘密結社?」

 

「・・・十香のような"精霊"という存在自体が極秘事項だからね。

それ故にそれを保護し、一般の生活を送らせるということが存在理由なら、尚のこと世間に知れた企業では色々と不味いんだ」

 

「成る程・・・。それで、お前はいつから司令官に?」

 

「私がラタトスク機関に加入したのは、五年前。そこからの五年間は研修みたいなものだったから司令官になったのは最近なの。

五年前のことは私も記憶がほとんど無いけど、私がラタトスク機関を知ったのも、同じく五年前」

 

五年前の事については、士道も琴里も記憶がハッキリしないのだ。

 

「俺はいつ精霊の霊力を封印する力を身につけた?」

 

「士道はキスをすることで精霊の霊力を封印する力がある。この事は士道を保護した時に観測機で検査をしてわかった事。でも、どうして士道にそんな力があるのかはわからないの」

 

「そっか・・・ラタトスクでもわからないか」

「えぇ、ごめんなさい。今後も調査は継続するわ、協力してもらえる?」

 

「OKだ、わからないままよりはマシだ」

「・・・さて、話はこれで終わりかな?」

 

「今のところは。今後わからない事があったら、その時に聞きます」

「・・・わかった、その時は遠慮なく聞いてくれ」

 

そして、琴里は十香達にラタトスクの事を口外しないように念を押して、ラタトスクの説明は終わった。

 

その後はお茶会を再開したが、士道は心の中で今日出会った精霊、ハーミットについて考えていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、幻夢コーポレーション社長室。

 

檀 黎斗は十本目のガシャットの調整作業を終えて、刺していた端末から抜き取った。

 

十本目のガシャットは金色で、グリップ後部にドラゴンの頭部のような装飾が施されている。

 

タイトルは、「ドラゴナイトハンターZ」。

 

最大四人でプレイする、強力なドラゴンを討伐するハンターゲームだ。

 

 

「ここまでにしておくか」

黎斗はガシャットをしまいパソコンの電源を切って社長室を後にした。

 

無人となった社長室。そこに現れたのはグラファイト。

 

グラファイトは机の上に置きっぱなしになっている黒いケースを開けて、中に入っているプロトガシャットを見る。

 

そして、プロトガシャットの内の一本、「プロトドラゴナイトハンターZ」を抜き取って持ち去っていった。

 

グラファイトは、ドラゴナイトハンターZの敵キャラ。故に、自身のゲームと同じプロトガシャットを持ち去ったのだ。

 

 

そして、グラファイトはプロトドラゴナイトハンターZを持ったまま屋上へ。

 

「このプロトガシャットの力で、俺は・・・!」

 

呟き、覚悟を決めたグラファイトは、プロトドラゴナイトハンターZを起動。

 

《ドラゴナイトハンターZ!》

 

モノクロのタイトルが表示され、ガシャットが起動した。それをガシャコンバグヴァイザーのスロットに入れる。

 

《ガシャット!》

 

バグヴァイザーの画面にモノクロで「DRAGO KNIGHT HUNTER Z」と表示され、データが反映された。

 

その状態でバグヴァイザーのAボタンを押して・・・。

 

 

「培養!」

 

今まで通り、バグヴァイザーをグリップと合体させる。

 

 

《INFECTION!》

 

「ウオォォォォォォォォォォォ!!!」

 

《Let's Game! Bad Game! Dead Game! What's Your Name!?》

 

《THE BUGSTER!!》

 

 

プロトドラゴナイトハンターZの強大な力がグラファイトに流れ込み、雄叫びを上げる。

 

そして、グラファイトは黒い光と共に、黒色の龍人の様な怪人体に姿を変えた。

 

右腕も赤から黄色に変わっており、今まで露出していたバグヴァイザーは右腕に同化しており、外見上は見えなくなった。

 

 

プロトドラゴナイトハンターZの力で、グラファイトはレベルアップした。

 

黒龍戦士・・・ダークグラファイトバグスターへと。

 

「この力で、今度こそ・・・・・・!」

そんなグラファイトの様子を、パラドが見ている事に気付かぬまま・・・。

 

 

「グラファイト・・・・・・無理するなよ」

 

 

パラドの呟きは誰にも聞こえる事なく、静かに溶けていった。




次回予告

CRに、CRの責任者と衛生省の幹部がやってくる。黎斗が新たなガシャットを持ってきて、グラファイトは行動を起こす。

様々な事が動き出す中、新たな精霊"ハーミット"は・・・。


第二話 集結するLeaders!


「俺が必ず止める、そして・・・あの子を救う」


ーーーーーーーーーー


原作と違い、ダークグラファイトへの「培養」は、プロトドラゴナイトハンターZのガシャットを刺したバグヴァイザーで行いました。

普通に使うより、せっかくバグヴァイザーがあるから使うようにしたいと思い、このようにしました。

次回でCRの責任者と衛生省の幹部を出します。


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第二話 集結するLeaders!

今年最後の投稿です!


士道が"ハーミット"と出会った日の翌日。

 

この日、CRに呼び出された士道、折紙、栞の三人はCRの責任者であり、天宮総合病院の院長でもある人物と話をしていた。

 

「皆、突然呼び出しちゃってごめんなさいね」

「だ、大丈夫です」

 

士道は若干の汗を流しながら責任者と話している。

今の士道は緊張状態にある。理由は、まだ責任者と話すことに完全には慣れていないからだ。

 

目上の者と話す緊張感・・・はもちろんあるが、慣れていない理由はもう一つある。それは・・・・・・。

 

 

 

「もう、士道ちゃんったら緊張がまだ解けないの?私がたくっさんハグして落ち着かせてあげるわ~」

 

「院長さん、その"筋肉逞しいマッチョボディで中身がオカマ"なあなたが士道に抱きつくのはやめてほしいです」

 

「んもう、栞ちゃんたらヤキモチ妬いちゃって、可愛いわ!それに、"オカマ"なのは否定しないけど、そんなに筋肉モーリモーリかしら?」

 

「よし、早くなんとかしないと・・・」(ガシャットを構える)

「あぁん、落ち着いて栞ちゃん!」

 

「俺は大丈夫です・・・大丈夫です・・・」

 

 

「本当に大丈夫?士道君・・・汗が増えてるよ?」

 

「大丈夫だ折紙、俺に熱い視線を向けている事なんて気にしてない。掘られる(意味深)のではないかと不安になんてこれっぽっちもなってない」

 

「全然大丈夫じゃないよね!?」

 

「やれやれ・・・・・・院長、あまり彼にプレッシャーを与えないでください」

 

CRの職員に復帰した栞の母親、風鳴 エレナがため息を吐きながら言う。

 

CRの責任者であり、天宮総合病院の院長でもある人物は筋肉逞しいオカマ。男の声で女口調であるため威力もある。

 

名は、江原(えはら) 剛太(ごうた)

 

 

明るく、ムードメーカーのような感じで堅苦しさを感じさせない好人物。だがオカマだ。

 

医師としての腕はかなり優秀で、困難な手術や治療を数多くこなしてきた凄腕である。だがオカマだ。

 

医学の知識も豊富で、時に若い医師達に教鞭を振るう事がある。だがオカマだ。

 

なぜオカマなのかは本人が語らないので不明だ。

 

 

「まぁまぁ、落ち着いてねん。それでねここに呼んだ理由だけど衛生省の最高幹部の方がここに視察へ来ることになったの。

それで、皆は会ったこと無いでしょ?だから会わせておこうと思ったの」

 

「そう言えば、琴里と令音さんは会ったことあるんだよな。誰かは聞かなかったけど」

 

 

「その人の名前は、日向(ひなた) 恭太郎(きょうたろう)

今は衛生省の最高幹部だけど、かつては凄い腕を持つ名医だったのよ」

 

 

「恭太郎先生が!?」

士道が驚いて立ち上がった。

 

「あら、士道ちゃん・・・日向先生を知っているの?」

「宗次郎先生は、俺の命の恩人なんですよ」

 

「あら、そうなの?」

「はい、事故にあった俺を手術して救ってくれた先生なんです」

 

「あの事故にあった士道を・・・」

「そうか・・・優しい先生なんだね」

「あぁ、凄く優しい先生だ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、天宮総合病院の地下駐車場。黒塗りの高級車が止まり、中からスーツ姿の男性が降りてきた。

 

四十代後半位で黒い髪の男性。彼こそが元医者で衛生省の創設者にして大臣官房審議官。バグスター対策の責任者である、日向 恭太郎である。

 

 

"人を救い守る事こそが、国を守る事に繋がる。人があってこその国である"

 

そういう信念の持ち主であり、医者として活動していたのもそれが理由だ。

今でこそ衛生省の幹部だが、人を慈しみ守る信念は変わっていない。

 

車を降りて、CRに入ろうとした所で・・・・・・。

 

 

「見つけたぞ、日向 恭太郎。お前には消えてもらう」

 

そんな言葉が聞こえた直後、オレンジ色の霧のようなのが宗次郎に降り注ぐ。

 

恭太郎は咄嗟に口を手で塞ぐが、遅かった。ドラゴナイトハンターZから作り出したバグスターウィルスだ。

 

そのウィルスを浴びせたのは、人間態になっているグラファイトだ。

 

 

「バグスターの繁栄の為、邪魔な組織を上から潰す」

 

グラファイトは呟き、去っていった。

 

苦しみ、倒れる恭太郎。近くにいた人が慌てて駆け寄る。事態は急変していく。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

CRに、バグスターウィルスに感染した恭太郎が運び込まれた。すぐに士道達も駆けつける。ベッド毎機械に繋がれ、様子がモニターされる。

 

 

「・・・・・・お久しぶりです、恭太郎先生」

「久しぶりだね、士道君。まさか、こういう形で再会する事になるなんて」

 

再会の挨拶は最小限で済ませ、専用の機材で体を恭太郎の体をスキャンすると、バグスターウィルスのマークが表示された。

 

「やはりゲーム病か・・・」

「大丈夫です、恭太郎先生は必ず救います」

 

「皆、一旦上に戻ってこれからどうするかを話し合いましょう。日向審議官、少しの間席を外しますわ」

 

「わかりました、お願いします江原医院長」

 

皆は一旦上に戻り、話し合いを行おうとしたが・・・。

 

 

「すみません、お邪魔していますよ」

 

檀 黎斗がおり、エレナと話をしていたようだ。テーブルの上にはGDのロゴが入ったケースが置かれている。

 

「黎斗さん!?」

「事情は伺いました。こちらでも調べた限り、犯人はグラファイトでしょう」

 

「グラファイトが・・・」

「えぇ。そこで、これを」

 

黎斗はケースを開けて中身を見せる。その中には、金色でグリップ後部にドラゴンの頭部のような装飾が施されているガシャット・・・ドラゴナイトハンターZガシャットが入っていた。

 

しかし、プロトドラゴナイトハンターZガシャットにあったような龍の絵が書かれていない。

 

 

「ドラゴナイトハンターZのガシャット。これで仮面ライダーはレベル5になれる。五河君、どんなゲームかは知ってるよね?」

 

「はい。最大四人でプレイする、強力なドラゴン達を討伐するハンターゲームです」

 

「そう、グラファイトもこのドラゴナイトハンターZのバグスターなんだ。

ならば、同じゲームで挑むべきだろう。だが、問題はこのガシャットが未完成だということ・・・」

 

 

黎斗は皆に未完成の理由を説明した。

 

黎斗が過去に開発したガシャットのプロトタイプ、プロトガシャット。

 

 

マイティアクションX、タドルクエスト、バンバンシューティング、爆走バイク、ゲキトツロボッツ、ドレミファビート、ギリギリチャンバラ、ジェットコンバット、シャカリキスポーツ、ドラゴナイトハンターZ。

 

 

計十本の上記のプロトガシャットが存在する。

 

そのデータを元に、今士道達が使っている正規版ガシャットを開発していた。

 

ところが、ドラゴナイトハンターZを開発している途中で、グラファイトが幻夢コーポレーションに侵入しプロトドラゴナイトハンターZガシャットを奪取。

 

そのせいで、ゲーマのデータを入れることが出来ず未完成のままになってしまった。

 

 

「おそらく、そのゲーマのデータはウィルスと一緒に日向審議官に感染しているでしょう。

 

日向審議官からゲーマが出たら、そのゲーマを倒してこのガシャットにゲーマのデータを入れて欲しい。

 

そうすれば、ドラゴナイトハンターZのガシャットは完成して君達が使えるようになる」

 

黎斗はガシャットを取り出して、士道に差し出した。

 

 

「このガシャットは君に渡す。必ず日向審議官を救いグラファイトを倒してくれ」

 

「わかりました、必ず」

 

士道は頷いて、ガシャットを受け取った。黎斗はよろしく頼んだよ、と言ってCRを去った。

 

 

 

黎斗は皆に背を向けた直後、一瞬狂気の笑みを浮かべた。

 

 

 

その事に気付かなかった士道は、ベッドに寝かされている宗次郎、未完成のドラゴナイトハンターZガシャットを見る。

 

そして、昨日出会った新たな精霊"ハーミット"の事も考える。

 

 

「俺が必ず止める、そして・・・あの子を救う」

 

士道は静かに、そして力強く己の決意を宣言した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、天宮市に雨が降り始めた。精霊"ハーミット"が顕現したためだ。

 

それから少しして、ASTの部隊が現れた。

 

「攻撃開始!」

 

日下部 燎子の指示で、全員がCR-ユニットで攻撃。

"ハーミット"はAST達に攻撃する事なく、ただ避けて逃げ回るだけである。

 

 

「ねぇねぇ、一旦どこかに隠れない?」

「うん・・・」

 

パペットからの声に従い、"ハーミット"はビルの中に隠れようとする。その時・・・。

 

 

「ハーミット!覚悟!」

 

 

隊員の一人が先回りして現れ、ミサイルランチャーの銃口を"ハーミット"に向け、ミサイルを発射。

 

突然の事に"ハーミット"は対応出来ずに、ミサイルをモロにくらってしまう。

 

霊装のお陰で、ダメージはゼロ。しかし・・・。

 

 

「あーれー」

「あっ・・・!?」

 

衝撃で"ハーミット"が付けていたパペットが、手元を離れ落ちてしまった。

 

しかも直後に、"ハーミット"自身の意思と関係なく隣界へ戻されてしまい、姿を消した。

 

 

 

 

優しい精霊"ハーミット"は、今の唯一の心の支えと離されてしまった。しかし彼女はこの先、自身を救ってくれるヒーローである少年と出会う事を。

 

そのヒーローに十香と同じく心の底から恋をする程に信頼し、大好きになる事を。

 

この時の"ハーミット"は、まだ知らない。

 




次回予告

翌日に恭太郎から現れたゲーマと戦う士道達。そして、士道はパペットを無くしてしまった"ハーミット"と再会する。


第三話 Rainの中で一緒に


「ほら、一緒に行こうぜ」


ーーーーーーーーーー


四糸乃は原作よりも早くパペットを無くしてしまいました。そして士道は、グラファイトと四糸乃を同時に攻略する事になりました。

来年以降も紅牙絶唱(キバ)とEX-AID・A・LIVE(エグゼイド)をよろしくお願いいたします!


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第三話 Rainの中で一緒に

士道がドラゴナイトハンターZガシャットを受け取った日の夜。

 

士道、折紙、栞は恭太郎のゲーム病が悪化した時にすぐに動けるように、CRに泊まる事になった。

 

十香は事情を知った琴里や令音が面倒を見てくれている。途中経過はエレナが見てくれている。

 

すると、恭太郎のゲーム病が急に進行。大きなドラゴン型ゲーマが怪物になったようなものが現れた。

 

それが、恭太郎に感染したハンターゲーマのデータを取り込んだバグスターウィルスだ。

 

 

士道達はすぐにレベル1に変身して、ゲームエリアをステージセレクトで現実から切り離す。

 

ハンターゲーマは雄叫びを上げて士道達に襲いかかる。

三人はジャンプしてかわし、士道が作り出したチョコブロックを足場にしてジャンプ。

 

上空で三人が攻撃していく。ゲーマは飛びながら回避し、炎を吐きながら攻撃していく。

 

 

「空を飛んでいるから、中々攻撃が当たらないね・・・」

 

「狂三が持っている、ジェットコンバットが欲しいぜ」

 

「無い物ねだりをしてる暇はない・・・!」

 

「呼びました?」

「「「えっ!?」」」

 

後ろから、レベル3のスナイプに変身している狂三が声をかけた。

 

「いつの間に?」

「ふふ、いつの間にでしょう?さて、あのドラゴンさんを倒せば良いのでしょう?お任せくださいな」

 

狂三は空を飛びながらガトリング砲を連射して、ゲーマを攻撃していく。

 

細かく飛び回る狂三に対応が追い付かず、ゲーマはダメージをどんどん蓄積させていく。

 

そして、狂三が加速した勢いを乗せたキックでゲーマを地面に落とす。

 

「今ですわ!」

「サンキュー!」

 

 

士道、折紙、栞はレベル2になり士道と折紙はガシャコンウェポンにガシャットを入れる。

 

そして、バイクになった栞に乗り、そのまま運転してゲーマに突っ込む。

 

《キメワザ!》

《MIGHTY!》《TADORU!》

 

《CRITICAL FINISH!!》

 

折紙が冷気を飛ばしてゲーマを凍りつかせ、凍ったゲーマに栞と一緒に突進し一閃!

 

遂にゲーマを倒し爆散したゲーマのデータが現れる。ドラゴナイトハンターZのガシャットを掲げてデータを回収した。

 

それによりドラゴナイトハンターZのガシャットは完成し、ドラゴンの絵が追加された。

 

「よし・・・!」

「完成した!」

 

「やった!」

「ですが・・・日向審議官の問題は解決していないでしょうね」

 

「狂三?」

「ドラゴナイトハンターZのバグスターウィルスに感染しているならば、グラファイトを倒さないと終わらないでしょう」

 

狂三の言うとおり、恭太郎のゲーム病は消えていなかった。しかし、ゲーマのデータが消えた分、症状は軽くなっていたが危ないことには変わりない。

 

 

今も苦しむ恭太郎を見た士道は、一人CRから立ち去ろうとする。

 

「・・・・・・俺がグラファイトを探す。そして倒す」

 

「士道・・・?」

「恭太郎先生は俺を救ってくれた。今度は俺が救う番だ!」

 

士道は一人でCRを出る。自分が救うという事で頭が一杯である士道は、栞達に頼る事を失念してしまっていた・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

外に出た士道は、グラファイトを探すが見つからない。

 

外は相変わらずの雨が降っている。

 

今現在、天宮市は四糸乃とASTの戦闘で破壊された後は、AST側の"顕現装置"で生活に支障がない位には修復された為、少しずつだが人も外に出ている。

 

 

士道がグラファイトを探し続けていると・・・。

 

 

「・・・・・・ううっ」

 

可愛い意匠に身を包んだ小柄な少女、この前出会った精霊"ハーミット"の姿があった。

 

ハーミットは今にも泣き出しそうに、目に涙を溜めながら地面に両膝をつき、商店街で何かを探している様子だった。

 

士道はすぐハーミットの後ろへと行き、頭が濡れないように傘を持った腕を伸ばす。

 

霊装を纏っている為、濡れる事は無いが士道は傘を差し出す。

 

 

「大丈夫か、風邪引くぞ?」

 

士道に気づいたハーミットは、慌ててその場を離れようと立ち上がって士道に背中を向ける。

 

士道はハーミットに手を伸ばし、制止を呼びかける。

 

「ま、待て!俺だ、神社で出会った時の!君を驚かせに来たわけじゃない!」

 

そこで、士道はハーミットの手にウサギのパペットが無いことに気付いた。

 

 

「・・・君、あのウサギのパペットはどうしたんだ?」

 

「・・・!」

 

ハーミットは美しい蒼玉を思わせる瞳を大きく見開く。パペットが左手に無いことを突かれて驚いたのだ。

 

ハーミットは士道のところまで走り、士道の制服を掴む。

 

「・・・まさか、無くしたパペットを探していたのか?」

 

士道の言葉にハーミットは首を縦に振る。今にも泣き出しそうなハーミットを見て士道は言う。

 

「そうか・・・じゃあ、パペットを一緒に探そう!」

 

「え・・・!?」

「一人で探すより、俺と君で探した方が早く見つかると思ってさ」

 

士道はグラファイトを探しだし、恭太郎を治療しないといけない。しかし、泣いているハーミットを放っておく事も出来ない。

 

 

・・・そして士道は、琴里達フラクシナスのメンバーに頼る事も失念してしまっていた。

 

今のハーミットは静粛現界である為、フラクシナスでもハーミットの出現を感知していない。

 

士道が今連絡をしない為、ラタトスク側も何も知らない・出来ない状態なのだ。

 

 

「は、はい・・・ありがとう・・・・・・ございます」

 

「あ・・・そうだ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は士道。五河 士道っていうんだ。君の名前を聞いていいか?」

 

「わ、私は・・・四糸乃(よしの)・・・・・・です。パペットは、よしのんって・・・いうんです・・・」

 

「四糸乃、か。かわいい名前だな」

「っ!?・・・うぅ」

 

名前を誉められて、照れるハーミット・・・四糸乃。

 

士道と四糸乃は一緒に、よしのんを探すことになった。更にグラファイトも同時に探す事になるが、士道はその両方を一人で成そうとしていた・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

あれから、よしのんもグラファイトも見つからず。途中で休憩のため、二人は公園に向かった。

 

屋根付きのベンチに並んで座る。四糸乃は士道が買った暖かい紅茶を少しずつ飲んでいる。

 

 

「なぁ四糸乃、お前にとって、よしのんってどんな存在なんだ?」

 

気になった事を訪ねる士道。四糸乃は少しずつだが、士道に見えるようにして答える。

 

「・・・・・・よしのんは、私の、ヒーロー・・・です」

 

「ヒーロー・・・」

 

 

四糸乃は、よしのんについて話し始める。

 

「よしのんは・・・私の、理想・・・・・・です。憧れの自分、です・・・。私、みたいに弱くないし、うじうじしない、強くて格好いい・・・です」

 

士道は四糸乃の話を聞いて、思ったことをそのまま口にした。

 

「そういうもんなのか?俺から言わせてもらえば、四糸乃の方が好きだけどな。とても可愛いし」

 

「・・・っ!!」

 

士道の言葉に四糸乃は顔が真っ赤になった。そして、四糸乃は恥ずかしくなったのか、霊装のフードを深く被り顔を隠す。

 

「あれ?四糸乃、俺なんかおかしいこと言ったか?」

 

 

「そんなこと、言われたの・・・初めて・・・・・・だから・・・・・・」

 

「そ、そうか・・・。四糸乃。俺はもう一つ聞きたいことがあるんだ」

 

「・・・?」

 

「君は今までに、他の人間から攻撃を受けていた。でも一切反撃しないで逃げ回っている・・・そう聞いたんだ。それはどうしてなんだ?」

 

士道は琴里から、「ASTから攻撃を受けても、一切反撃すること無く逃げ回るだけ」と聞いてから気になっていた事を聞いたのだ。

 

 

士道が問うと、四糸乃はスカートの部分を強く握りしめ、消え入りそうな声を出す。

 

「私は、痛いのが、嫌いです・・・・・・。怖いのも・・・・・・嫌いです。

きっと、あの人たちも・・・痛いのや、怖いのは・・・嫌だと思います。だから、私は・・・・・・」

 

「なっ・・・!?」

 

士道は四糸乃の言葉を聞いて、大きな衝撃を受けた。

 

 

"相手も攻撃されたら痛い思いをして嫌だろうから、反撃しない"

 

四糸乃が言っている事はそういう事だ。四糸乃は涙を啜るようにして続ける。

 

「でも・・・私は、弱くて・・・・・・泣き虫、だから・・・一人だと、ダメです。

怖くて、どうしようもなくなって・・・・・・頭の中がぐちゃぐちゃになって・・・・・・。きっと、みんなに・・・・・・ひどいことを・・・・・・・・・」

 

 

士道は四糸乃の言葉を、拳に爪跡が出来るほど拳に力を入れて聞いていた、そして理解した。

 

四糸乃は誰よりも優しく、強い心の持ち主だと。

 

 

何も悪いことをしていないのに悪と決めつけられて攻撃される。

 

そんな理不尽な事があっても、よしのんが四糸乃の心の支えになっていたから歪むこと無く、本来の優しさと強さを保てていたのだろう。

 

士道は四糸乃の頭を優しく撫でた。

 

 

「よく頑張ったな、四糸乃」

 

「・・・・・・ふぇ?あ、あの・・・・・・」

 

「俺が必ずよしのんを探し出す!そして四糸乃にもう一度合わせる!

 

それに、四糸乃にひどい事をするやつからも、守ってみせる!つまり、俺が四糸乃のヒーローになるって事さ」

 

四糸乃の話を聞いた士道は決心した。俺が必ず救う・・・と。

 

 

「俺は必ず、君の笑顔を取り戻す。だから大丈夫。平気、へっちゃらだ」

 

真剣な表情で、でも優しい声で四糸乃に言う。

 

四糸乃は、その言葉と表情に嘘が無いことがわかり、嬉しさが込み上げてきた。それ顔が赤くなり、胸がドキドキする事を自覚した。

 

 

「あ・・・・・・ありがとう、ございます・・・・・・」

 

赤くなった顔を隠すように俯きながらも、ちゃんとお礼を言う四糸乃。

士道はそんな四糸乃の頭をもう一度、優しく撫でた。

 

 

「さて、頑張ってよしのんを探そう!」

 

士道は立ち上がり、四糸乃の方を向いて手を差しのべた。

 

「ほら、一緒に行こうぜ」

 

四糸乃は差し出された手に自分の手を伸ばして、そっと置いた。士道も小さくも暖かい手を包むように優しく握り、二人で歩き出した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

しかし、事態は士道のいない所で動き始めていた。

 

 

 

傘をさして歩いていた男性が、突然倒れたのだ。

 

「大丈夫ですか!?」

 

一人で飛び出して、連絡しても出ない士道を探していた折紙は、すぐに駆け寄って男性の具合を見る。

 

すると、オレンジ色のスパークが走る。まさかと思い、ゲームスコープで確認すると、ドラゴナイトハンターZのバグスターウィルスに感染していた。

 

だが、この男性だけでなく、その周辺にいた他の人間も同じようにバグスターウィルスに感染して、ゲーム病を発症していた!

 

折紙達の周辺にいた二十人以上の人間全員に、ウイルスが感染したのだ!

 

ウイルスに蝕まれた影響で、周囲の人達は気を失ってしまう。

 

 

「こんなに、たくさん・・・!?」

折紙は感染した人数の多さに驚きながらも、CRに連絡をして、天宮総合病院に送るように依頼した。

 

更に、栞から連絡が入る。

 

 

『折紙さん!』

「栞ちゃん!連絡は聞いたよね?」

 

『うん、でも・・・こっちもなの!』

「こっちもって、まさか!?」

 

『私のいる所でも、バグスターウィルス感染者がたくさん・・・!』

「そんな・・・!?」

 

バグスターウィルスが、天宮市の多くの人間に感染をしていた。それは、グラファイトが仲間を増やすためウィルスを広範囲に散布したからだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「わかった・・・すぐにグラファイトを!」

 

士道は折紙からの連絡で、ウィルス感染者が大量に出たことを知り、宗次郎だけでなく多くの人々を苦しめるグラファイトに強い怒りを抱いた。

 

「・・・あの野郎・・・!」

「し・・・士道、さん・・・?」

 

「!・・・ごめん四糸乃。怖がらせちゃったな」

「どう・・・したんですか・・・?」

 

「四糸乃、聞いてくれ。今、天宮市に人々を苦しめるバグスターウィルスって言うのがばらまかれているんだ」

 

「バグスター・・・ウィルス・・・?」

 

「そのウィルスをばらまいている奴をやっつけないと、人々を助けることが出来ないんだ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・そうだな。バグスターウィルスに感染した人を助ける為に戦うお医者さんって感じだな。

大丈夫だよ四糸乃。よしのんはちゃんと見つけるさ。でも、ウィルスで苦しんでいる人達も放っておけない。だから・・・」

 

 

「随分簡単に言ってくれるな」

「!」

 

背後から声をかけられた。振り向くと、そこにはグラファイトが立っていた。

 

「見つけたぞ、エグゼイド」

「グラファイト!」

 

グラファイトの姿は人間の姿だが、纏う雰囲気や力強さは以前より大幅に増している事がわかる。

 

 

「エグゼイド。貴様達と同じく、俺もレベルアップを果たした。今までのように行くと思うなよ」

 

「うるせぇ。お前は今日先生を、天宮市の人達を苦しめている。お前は絶対許さねぇ!」

 

「ならば、倒して見せろ!この俺を!」

 

 

士道はグラファイトの動きに注意しながら、四糸乃に言う。

 

「四糸乃、危ないからどこかに隠れているんだ」

「士道・・・さん・・・?」

 

「行けっ!!」

 

四糸乃は士道の鋭い言葉に驚き、体をビクッと震わせ走るように茂みの方へ。

 

しかし、士道が心配で茂みから顔を出して様子を見ていた。

 

グラファイトはガシャコンバグヴァイザーを取り出し、グリップに付けて怪人態になる。

 

士道もゲーマドライバーを付けて、ガシャットを入れて変身する。

 

 

「培養!」

《INFECTION!THE BUGSTER!!》

 

《マイティアクションX!》

「第二変身!」

 

 

それぞれの戦う姿になった士道とグラファイトに驚く四糸乃。そして降り続ける雨の中、士道とグラファイトの戦いが始まった。

 




次回予告


グラファイトとの戦いで、士道はレベル5になる。それがもたらした結果は、士道を更に追い詰める。

その時、恭太郎は士道に語りかけた。


第四話 士道のFault


「士道君、今の君は間違っている」


ーーーーーーーーーー


原作と違い、四糸乃からよしのんの話を聞くとき、四糸乃が親子丼を食べるシーンがありません。

恭太郎がウィルスに感染して、グラファイトを探さないといけない今の状況では、家に行って作る余裕が無いからです。

四糸乃とのご飯は後にお預けです。次回はグラファイトとの戦いから入ります。


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第四話 士道のFault

お待たせいたしました。前回のラストシーンを、士道とグラファイトが変身するというように変更しました。

今回の最初では変身した状態で戦いが始まりますので、ご了承ください。




雨が降る中で、エグゼイドに変身した士道と怪人態になったグラファイトの戦いが始まった。

 

士道が走り、接近してガシャコンブレイカーを降り下ろす。

 

グラファイトはそれを難なく避けるが、士道はすぐに体を回転させて横に切り、追撃を行う。

 

その追撃をグラファイトはすぐに構えた短剣で防ぎ、士道の胴を蹴る。

 

士道は後ろに吹っ飛びながらも、倒れず踏ん張り止まり、そのまま走る。

 

「はぁ!」

「甘い!」

 

士道の攻撃を難なくかわし、横からキックで攻撃。更に体制を崩した士道にパンチを数回当てて、回し蹴りで士道を倒す。

 

 

「そんなものか?ならば、さっさと終わらせる」

「んなわけ・・・ねぇだろ!」

 

士道はドラゴナイトハンターZガシャットを取り出し、起動した。

 

 

《ドラゴナイトハンターZ!》

 

音声と音楽、タイトル画面が表示され、タイトル画面から他のゲーマよりも大きいハンターゲーマが出現。その姿はまさにドラゴン。

 

ゲーマドライバーのレバーを閉じて、空いているスロットに入れ、再び開く。

 

 

「第五変身!」

 

 

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクションX!!》

 

《アガッチャ!ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナイト!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンターZ!!》

 

ハンターゲーマが士道の全身に付き、合体が完了した。

エグゼイド、ハンターゲーマー・レベル5になった。

 

だが・・・・・・。

 

 

「がっ・・・・・・!?」

 

変身した直後、士道はハンターゲーマからもたらされる力が大きすぎる事を実感した。

 

士道の全身に電気が走る。

 

今までにない感覚。まるで自分が大量の空気を送られ続ける風船になったようだ。そして、限界はすぐにやって来た。

 

 

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

大きな雄叫びを上げると、風船が割れて空気が周囲に弾けるように力があふれでて、周囲に爆発が起こった。

 

「何!?」

「きゃっ・・・!?」

 

グラファイトと四糸乃は士道の暴発に驚いた。しかし、驚く暇もなく士道が叫びながらグラファイトに襲いかかる。

 

 

走りながら左腕の銃からエネルギー弾を放ち、接近したところで右手の剣で切りつける。

 

それも力任せに振るう、とても良いとは言えない強引な太刀筋だ。グラファイトは全てを短剣で防ぎ、背中の武器を手に持って攻撃する。

 

しかし、士道は防御せず目の前のグラファイトを攻撃し続ける。

 

その戦い方は荒々しく、とても今まで通りとは思えない。それも当然だ。士道は今、ハンターゲーマの力を制御できずに暴走しているからだ。

 

 

「オォォォォォォォォォォォォォ!!」

「くっ、今のエグゼイドは獣か!だが・・・限界も近いか?」

 

グラファイトの言うとおり、今の士道は暴走状態。士道自身の限界は近い。

 

しかし、今の士道はお構いなしに暴れる。両腕の武器から放たれる攻撃でグラファイトを攻めていく。

 

右腕の剣から真空刃を複数放つ。

 

グラファイトはそれを難なく避けるが、いくつかは四糸乃が隠れている場所の近くに当たる。

 

 

「きゃあぁぁぁっ!」

 

四糸乃は悲鳴を上げて、体を小さく縮こませる。四糸乃には当たらなかったが、下手をしたら・・・・・・。

 

「・・・あ・・・?」

 

変身が解ける前、四糸乃の悲鳴を聞いた士道は理性を取り戻し・・・四糸乃のいる場所が目に入り、それが自分のせいで出来たことを理解した。

 

「俺・・・・・・が・・・・・・?」

 

「ふん・・・黒龍剣!」

 

グラファイトは呆然とする士道に、双刃にエネルギーを溜めて、X字の黒い斬撃を飛ばす。

 

 

呆然としていた士道は対応が遅れてまともに受けてしまい、大きなダメージを受けて変身が解け倒れてしまう。

 

グラファイトはつまらなそうにため息を吐き、そのまま去っていった。

 

 

四糸乃は倒れている士道の方に歩み寄る。士道は体が傷だらけで、体力もほとんど残っていない。

 

制御が出来ず、暴れまわった代償だ。

 

 

「だ、大丈夫・・・ですか・・・・・・?」

 

「・・・・・・ごめん、四糸乃・・・・・・君のいた周りがあぁなってるのは、俺が・・・・・・俺のせいで・・・・・・」

 

士道は理解していた。自分がドラゴナイトハンターZの力をコントロール出来なかったせいで、四糸乃に危害を加えそうになっていた事を。

 

今回は士道本人が直接四糸乃に攻撃をする事はなかったが、その可能性もあったのだ。

 

「し、士道さん、は・・・悪くない・・・です。私は、大丈夫です・・・から・・・」

「・・・ちくしょう・・・・・・!」

 

守ると決めた相手を守るどころか、危害を加えそうになっていた事。ドラゴナイトハンターZの力を制御出来なかった事。

 

それらは全て、自分が弱いからだ。そう思い込んでしまっていた。

 

そして士道は限界を迎え、気を失った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後。四糸乃が意思と関係なく消失(ロスト)してしまった。気を失った士道を栞が発見し、天宮総合病院のCRに搬送された。

 

病院にはバグスターウィルスに感染した多くの人々が搬送されていた。

 

病室にも入りきらず患者用のソファや廊下等にシーツをひいて、そこに寝かせて対応に当たっていた。

 

 

士道が目を覚ました時、既に翌日になっていた。栞と折紙は既に、グラファイトの捜索に当たっていて不在だった。

 

士道は起きてすぐにグラファイトを探そうとする。すると、剛太とエレナが入ってきて士道を抑える。

 

忙しい折紙や栞に変わって様子を見に来たが、士道が起きてすぐに行動を起こそうとしたので、慌てて抑える。

 

士道はまだダメージや疲労が残っており、万全では無いのだ。

 

 

「し、士道君!また寝てないと駄目よん!」

 

「離してください!このままじゃあグラファイトが・・・四糸乃が!」

 

「落ち着くのよ!今のあなたが行っても力になれないわ!」

 

「俺じゃないと駄目なんです!バグスターを倒すのも、恭太郎先生を救うのも、精霊を救うのも、俺がやらないと!」

 

士道は聞く耳を持たず、自らが行こうと暴れる。

グラファイトを倒せず、四糸乃を守るどころか一歩間違えれば傷つけていたかもしれない。

 

そのショックから、今の士道は完全に冷静さを失っていた。

 

 

その時、ドアが開いて日向 恭太郎が入ってきた。フラフラしながらも士道の元に向かう。

 

「せ・・・先生!?」

「審議官、まだ寝ていないと!」

 

「・・・すまない、士道君の声が聞こえて・・・どうしても言いたいことがあるんだ」

 

恭太郎は真っ直ぐに士道を見て、ハッキリと告げる。

 

 

「士道君、今の君は間違っている」

「え・・・・・・」

 

「医者とは、一人で一人の患者を治療するだけではない。時には、複数人の医者同士でチームを組んで一人の治療に当たることがある。

 

チーム医療というものだ。高い腕を持つドクターでも、同じドクター同士で連携しより困難な病気や怪我を治す。

 

ドクターも、仮面ライダーも、どんなに凄い知識や技術に力があっても、一人きりで出来ることは少ない。

 

だからこそ・・・そういう時こそ、他の皆と力を合わせ共に戦うべきなんだ」

 

「・・・・・・俺は・・・・・・全部を一人で・・・・・・」

 

 

宗次郎はそっと士道の頭に手を置く。

 

「士道君。何でも一人でこなそうとすることは、誰にも頼らないということは、強いということではない。それを・・・忘れないでくれ」

 

恭太郎がそこまで語った所で具合が悪くなり、剛太とエレナが病室へ戻す為に付き添う。

 

その前に、剛太も士道に言う。

 

「私が言おうとしていた事は審議官が言ってくれたわん。私から言うことがあるとすれば・・・あなたは一人じゃない」

 

三人出て、士道一人になった。士道は恭太郎の言葉で自分が間違っていた事を自覚し、深く落ち込んでしまった・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

十香は、剛太から連絡を受けてCRに来ていた。そこで、顔を俯かせ座ったままの士道を見つけた。

 

十香はそっと歩み寄り、士道の隣に座る。剛太から士道に何があったかを聞いていた十香は、士道を元気にしなければ!と意気込んでここに来た。

 

 

「シドー・・・大丈夫か?」

「・・・・・・十香」

 

十香の声に反応する士道。その声も沈んでいて暗い。

 

そんな士道を見た十香は、何も言わず、そっと士道を抱きしめた。

 

「シドー・・・・・・」

 

十香は士道を優しく抱きしめたまま、そっと頭を撫でる。すると、士道はポツポツと言い始めた。

 

 

「何が・・・何が天才ゲーマーだ。何が恭太郎先生を救うだ。何が精霊の運命を変えるだ。何が四糸乃のヒーローになるだよ。

 

一人で意気込んで、勝手に動いて、口で格好いい事を言っておきながら、ただ情けねぇばかりじゃねぇか・・・!」

 

「・・・・・・シドー。大切な人が危ない目にあってしまって、慌ててしまったのだな」

 

十香は士道に優しく、自分の気持ちを伝える。

 

 

「シドー、一人で全てを抱え込む事はしないでくれ。力を借りたい時は遠慮なく言ってくれ。

 

精霊の力を封印された私は満足に戦えない、きっと大した事はないかもしれない。

だが、私はシドーを信じて支える。それが出来るように全力を尽くす。

 

シドー、もうお前は一人で戦うのではなく、皆が一緒だ。シドーが私達を守り支えてくれるなら、私もシドーを支える。約束するぞ」

 

 

「十香・・・・・・」

「うむ・・・・・・」

 

十香に寄り添いながら静かに泣く士道。士道を優しく包む十香。その温もりは、士道の心を癒し救っていく・・・。

 

 

暫くしてから、士道は十香から離れる。

 

「ありがとう、十香。俺はもう大丈夫だ」

「本当か!?」

「あぁ、本当だ」

 

「本当の本当に、本当か?」

「本当の本当に、本当だ!」

 

「「・・・・・・あははははは!」」

 

お互いに笑い合う。士道はもう先程のような暗い感情は無くなっていた。

 

 

「十香・・・恭太郎先生、昔俺を助けてくれた先生に謝ってお礼を言いたいんだ。一緒に来てくれ」

「うむ!」

 

まだ万全では無いため、士道は十香に寄り添ってもらいながら、恭太郎の所に。

 

そして、恭太郎に十香を紹介してから、士道は恭太郎に頭を下げた。

 

「・・・先生、ごめんなさい。俺が間違ってました。これからは皆と一緒に戦います。

 

皆が俺を支えてくれるように、俺も皆を支えて一緒に戦う・・・そのようにしていきます」

 

今までの士道と違い、悩みもなくなりいつも以上に凛々しくなった士道。

 

そんな士道を見て、三人は心から安心した。

 

 

「良かった・・・今の士道君なら安心出来るな。頼む士道君。精霊を、感染者の人々を・・・私を助けてくれ」

 

「はい、俺達が必ず!」

「あぁん!士道ちゃん素敵だわーん!」

「本当に・・・」

 

士道と十香は、一緒に病室を出た。次に向かうのは栞達の所だ。

 

その途中、士道は内心でドラゴナイトハンターZのガシャットについて考えていた。

 

(ドラゴナイトハンターZは、本来は四人プレイが可能なゲーム。一人プレイも可能だが、二人以上で遊ぶ事を前提とした難易度になっている・・・)

 

(そのゲームのガシャットならば、ガシャットにだって複数人プレイのモードがあるはずだ。そうすれば、ハンターゲーマの力をコントロール出来るはずだ。

 

確か・・・ゲーム版のドラゴナイトハンターZは複数人プレイをするには、ゲームの序盤で・・・・・・)

 

ここまで考えて、士道は思い出した。ドラゴナイトハンターZの四人プレイをするにはどうするかを。

 

(そうだ、思い出した!・・・・・・でもそれをやると、栞達が嫌な思いをするかもしれないが・・・・・・でも、やるしかない!)

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

暫くして、CRの会議室に戻った士道と十香。そこには栞と折紙と狂三。さらに琴里と令音も来ていた。

 

「士道!・・・大丈夫?」

「あぁ、もう大丈夫だ。それと・・・・・・皆、ごめん」

 

士道は皆に深く頭を下げ、謝罪した。

 

 

「俺、宗次郎先生やハーミット・・・四糸乃を助ける事で頭が一杯で、皆を頼らなかった。

 

俺がやらなきゃ・・・じゃなくて、"皆で力を合わせて"じゃないといけないのに、一人で突っ走って・・・・・・ごめん。

 

皆、改めてお願いしたい。グラファイトを倒して、宗次郎先生を救い、四糸乃を救いたい。一緒に戦ってほしい」

 

士道の謝罪の言葉を聞いて、誰よりも早く動いたのは琴里だ。

 

 

琴里は士道との下がっている頭に拳骨をお見舞いした。

 

「いっ!?」

「言うのが遅い!!」

 

痛む頭を抑えながらも上げると、琴里は目に涙を溜めている。相当心配をかけてしまったのだ。

 

「ちゃんと頼ってよ!フラクシナスの皆は、令音は、私は!士道の力になりたい!

 

精霊との交渉やデートだけじゃない、バグスターとの戦いだって、バグスターウィルス感染者を救う事だって!私達も力になれる!」

 

 

「あぁ、ごめん。そしてありがとう、琴里。早速だけどお願いしたい」

 

「えぇ、何でも言って」

 

「四糸乃は手に白いウサギのパペットを付けているけど、今はそのパペットを・・・よしのんっていうんだが、それを無くしてしまっている。

 

天宮市のどこかにあるはずだ、それを見つけてほしい」

 

「了解よ。クルー総出、自立カメラや探索機もフル稼働で探すわ!」

「・・・・・・言い顔になったね、シン。格好いいよ」

 

「令音。早速行くわよ!一秒でも早く見つけるわ!」

「・・・了解した」

 

琴里は士道の頼みを了承。令音は士道の頭を優しく撫でてから、CRを出た。

 

「十香。もしかしたらこの先、四糸乃やASTを止めるために戦う可能性もある。そうなったら・・・」

 

「私も戦うのだな?任せるが良い!必ずシドーの力になる!・・・ふっふっふ、覚悟しろメカメカ団!」

 

 

もうASTと戦う気マンマンな十香を落ち着かせて、士道は栞、折紙、狂三に向き合う。

 

「そして、栞と折紙と狂三。三人には重要な事を頼みたい。皆に嫌な思いをさせてしまうかもしれないけど、どうしても必要な事なんだ」

 

士道は軽く深呼吸してから、三人にハッキリと言った。

 

 

 

「俺と戦ってくれ」

 

 

 




次回予告


士道の提案により、栞と折紙と狂三は士道一人と戦うことになる。

一方、よしのんの捜索も進む中、四糸乃は・・・。


第5話 ドラゴンをHuntせよ!


「どうした・・・?もう終わりかよ?」



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第五話 ドラゴンをHuntせよ!

令和初の更新です!次の話は、今日か明日には出したいです。

都合上、よしのんを探すシーンはカットしてしまいました。申し訳ございません。



士道、栞、折紙、狂三の四人は天宮総合病院から離れた所に来ていた。

 

士道と狂三は真剣な表情で。栞と折紙は辛そうな表情で。狂三は無表情で歩いていた。

 

そして、目的地に到着した所で、士道は皆と向き合う。

 

 

「皆・・・・・・ごめん、こんな事を頼んで。でもこれは必要な事なんだ」

 

「士道・・・・・・嫌だよ、こんなの・・・」

「士道君・・・もっと他の方法を探そうよ・・・ね?」

 

栞は涙目・涙声で首を横に降り、折紙も何とか別の方法を探そうとするが、士道は首を横にふる。

 

「駄目だ。ドラゴナイトハンターZの"もう一つの機能"を使えるようにするには、これしかないんだ」

 

 

「全く・・・・・・士道さん、お体を大事にしませんと。まだ昨日の疲労とダメージは完全に抜けておりませんわよ」

 

「狂三の言うとおりだけど、今回は・・・な」

 

 

士道が三人に自分と戦うように言った理由。それはドラゴナイトハンターZの"もう一つの機能"・・・四人プレイモードを使えるようにするためだ。

 

既に少女達には詳細を説明した上で、戦うことを要請した。栞と折紙は猛反対したが、狂三が賛成して二人を説得。

 

 

今も納得しきれていない二人に、狂三が声をかける。

 

「・・・・・・お二人共、反対なのはわかりますが士道さんの仰った事が一番確実な方法でしてよ。

 

今は時間が無いのも事実。早くしないとハーミットがどうなるかもわからない。ならば・・・やるべきですわ」

 

「「・・・・・・」」

 

狂三の言うことは正しい、頭ではわかっていても心が納得してくれないという感じだ。

 

雨が降り始めた。先程から曇りだったが、本格的に降ってきた。

 

 

すると・・・・・・。

 

「・・・やるのかやらないのか、ハッキリしろよ!!」

 

 

士道の目が赤く光り、口調が荒くなる。『S』の人格になったのだ。まだゲームもしておらず、ガシャットを起動していないにも関わらず。

 

驚く栞達を無視して、士道は続ける。

 

「四糸乃のこれからが決まる大事な時だ。俺は四糸乃のヒーローになるって約束した。その為に、今こうして無茶してるんだよ」

 

 

士道はゲーマドライバーを装着し、マイティアクションXとドラゴナイトハンターZを持って、起動した。

 

《マイティアクションX!》

《ドラゴナイトハンターZ!》

 

「行くぞ」

 

二つのデータが表示され、ハンターゲーマが現れる。

 

 

《バンバンシューティング!》

《ジェットコンバット!》

 

狂三も同じように、ドライバーを付けてガシャットを起動した。

 

「第五変身!」

「第三弾、変身!」

 

士道はエグゼイド・レベル5に、狂三はスナイプ・レベル3に変身した。

 

一方、栞と折紙は士道と戦う事の抵抗感を捨てる事が出来ず、変身出来ずにいた。

 

「栞さん!折紙さん!いつまでそうしているんですか!士道さんの話した理由を忘れましたか!?」

 

「「・・・っ!」」

 

狂三の叫びで栞と折紙は、士道の話した理由を思いだし、ドライバーを付けてガシャットを起動し、栞はレーザー・レベル3に、折紙はブレイブ・レベル3に変身した。

 

 

「さぁ、行くぞぉ!」

 

士道が体に稲妻を走らせながら、雄叫びの様に叫んで高速で接近、右手のブレードで切り裂く。

 

狂三は飛んで回避して、ガトリングを放ち士道に連続でダメージを与える。

 

しかし士道はダメージを無視して走り、狂三に向けて飛ぶ。

 

「あらあら、あなたも飛べますの!」

「おらあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

左手から強力なエネルギー弾を放つ。狂三は飛びながら回避するが、それを連続で撃ち続ける。

 

 

地上では士道が狂三に夢中になっている隙をついて折紙がドレミファビートのエネルギーを、ガシャコンソードに乗せる。

 

栞もガシャコンスパローに矢型エネルギーを溜めて・・・。

 

「士道君・・・ごめんなさい・・・!」

「ごめんね・・・士道・・・っ!」

 

折紙と栞は、本当に辛そうに・・・士道に謝りながら攻撃する。

 

地上からの攻撃が命中し、士道が地面に落ちる。

 

「どうした・・・?もう終わりかよ?」

士道は難なく立ち上がり、軽く挑発する。

 

「やれやれ、手のかかる殿方ですわね!」

 

狂三は地面をスレスレで飛んで、士道のすぐ近くまで接近して至近距離でガシャコンマグナムを連射。

 

「ぐっ・・・」

「今ですわ!」

 

倒れた士道に向けて、狂三はAボタンを押してガシャコンマグナムをライフルモードにし、Bボタンを連打して弾を連射する。

 

一点集中したエネルギー弾は士道にダメージを与えて、小さな爆発が起こった。

 

すると、ハンターゲーマが士道から分離してドラゴンの姿になった。士道のライダーゲージは、残り半分位だ。

 

 

「今だ!あのゲーマを全員で攻撃するぞ!」

士道は叫んで、痛む体に鞭打って立ち上がる。

 

士道はガシャコンブレイカーを呼び出して、ソードモードにして構える。

 

狂三もガシャコンマグナムを、栞と折紙も急いでガシャコンスパローとガシャコンソードを構える。

 

そして、四人はガシャコンウェポンにガシャットを入れて、必殺技を発動する。

 

《MIGHTY!》

《JET!》

 

《DOREMIFA!》

《GIRIGIRI!》

 

《CRITICAL FINISH!!》

 

 

四人のキメワザ・・・栞、折紙、狂三の射撃の後の士道の斬撃で殴りつける攻撃でハンターゲーマは倒された。

 

その時、光がドラゴナイトハンターZガシャットに集まり、ガシャットがゲーマドライバーから離れて四つに分離した!

 

そして、四つに分離したガシャットの後ろにディスプレイが表示され、そこにはこう書かれていた。

 

 

《四人プレイモードが解禁されました》

 

 

「やった・・・」

 

士道は変身を解除して地面に寝転がる。自分の考えが正しかった事による安心感からだった。

 

やはりというか、体は傷を負っている。炎が出て傷は癒えたが、疲労などは抜けていない。

 

「士道!」

「士道君!」

 

変身を解いた栞と折紙が、士道に駆け寄り抱きしめた。

 

 

「士道、ごめんね・・・痛かったよね」

「ごめんなさい、士道君。必要だとわかってても・・・」

 

「ごめん・・・ありがとう。二人は何も悪くない。悪いのはこんなことを強制した俺なんだから」

 

二人の頭を優しく撫でて、安心させようとする士道。実際、栞と折紙は泣いていて、体も震えていた。

 

「本当に、無茶をしますわね」

「狂三もごめん、それとありがとう」

 

「いえいえ、大丈夫ですわ」

 

何故士道が栞達に自分と戦うように言ったのか。それは、この四人プレイモードを使えるようにするためだ。

 

 

ドラゴナイトハンターZは最大四人でプレイする、強力なドラゴン達を討伐するハンターゲーム。

 

しかし、最初から四人プレイが出来るわけではない。

 

まずは一人でプレイし、チュートリアルを受ける必要がある。操作方法を学び、そこからスタートになる。

 

そしてイベントが進み実際にドラゴンと一人で戦うが、倒すとイベントシーンが流れる。

 

倒した筈のドラゴンが起き上がり、プレイヤーを倒そうとするのだ。その時、仲間のハンターが合流しプレイヤーを助けるというイベントだ。

 

この流れを経て、初めて四人プレイモードが使えるようになるのだ。

 

今士道が栞達に戦うように言ったのも、四人の仮面ライダーでハンターゲーマを倒すことが四人プレイモードを解禁する条件だと仮説を立てて、今それが見事に証明された。

 

 

「先程出たガシャットは・・・」

「四人プレイ用の、仮想ガシャットだろうな」

 

オリジナルの他に三つ増え、合計四つになっているドラゴナイトハンターZガシャット。

 

増えた三つは仮想ガシャットであり、二人~四人で使うときに出現する物である。

 

仮想ガシャットが消えて、浮いていたオリジナルが士道の手元に落ちてくる。

 

士道はそれを難なくキャッチして、ガシャットを見つめる。

 

すると、士道達の所に神無月が走ってやって来た。手にはよしのんのパペットがある。無事に発見できたようだ。

 

 

「士道君!皆さん!」

「神無月さん!」

 

「よしのんを発見しましたよ!いやぁ、私を含むスタッフ達で頑張りまして・・・って士道君傷だらけじゃないですか!?」

 

「あぁ、これは・・・」

 

「大丈夫ですか士道君!?あぁ、その痛みを私が代わりに全てを請け負いたい!そうすれば私のドMも満たされて士道君の傷が癒されるという一石二鳥だというのに!」

 

神無月のドM発言に、士道と栞と折紙は苦笑して、狂三は少し引いていた。

 

 

「コホン。さて士道君・・・こちらがよしのんですよね」

「はい、間違いないです。ありがとうございました」

 

「いえいえ、士道君が頼ってくれて私やスタッフの皆も喜んでいますよ」

 

先程と違って穏やかに語る神無月。その姿はまさに良き大人だ。これでドMでなければ・・・とは周りの誰もが思うことだ。

 

すると、士道と神無月のインカムに琴里からの通信が入る。

 

『士道、神無月!ハーミットが街中に出ているわ。しかもASTが彼女に攻撃している!』

 

「空間震は出てないのに!?」

「静粛現界でしょうね。そして運悪くASTに見つかってしまい攻撃を受けている・・・という所でしょう」

 

神無月が真剣な表情で推察する。そして、その推察は当たっていた。これで本当にドMでロリコンでなければさぞモテモテであっただろう。

 

「琴里、よしのんは神無月さんから受け取った。次はよしのんを四糸乃の元に届ける!」

 

『わかったわ!』

 

「では士道君、私もフラクシナスに戻ります。ハーミット・・・四糸乃さんの事をお願いいたします」

「はい!」

 

神無月がフラクシナスにワープで転送された。士道が栞と折紙の手を取って立ち上がったその時、天宮市の中心に大きな竜巻が発生した!

 

それは吹雪の竜巻であり、サイズも大きい。士道はすぐにわかった。あれは四糸乃が出したと・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

竜巻が発生する少し前。

 

運悪くASTに見つかってしまった四糸乃は、一方的にASTからの攻撃に必死に耐えていた。対精霊用のライフルやミサイルでの集中砲火である。

 

 

「きゃあぁぁぁぁっ!!」

 

対精霊用ロケットランチャーが四糸乃に命中。現場を指揮するAST隊長の燎子が隊員に指示を出す。

 

「総員、攻撃の手を休めないで!」

 

ASTの猛攻撃に四糸乃は恐怖心が現界を越え、守護天使の名前を叫んだ。

 

 

氷結傀儡(ザドキエル)っ!!」

 

四糸乃が手のひらを地面に叩きつけたその時、地面から白く巨大なウサギが現界した。

 

これが四糸乃の守護天使『氷結傀儡』だ。

 

 

氷結傀儡は口から更なる冷気を放つ。

 

ASTの隊員は絶対領域(テリトリー)の出力を上げることで防御するが、その領域すらも凍っていく。

 

 

「怯むな!!!」

 

領域すらも凍らせる冷気に怖じ気づいた隊員達に喝を入れるように叫ぶ燎子。その一言にASTの隊員たちは撃ち続ける。

 

四糸乃は氷結傀儡の背中に乗ってただひたすらに逃げ回っているだけ。しかしASTのメンバーは攻撃を続けた。

 

 

 

(怖い・・・怖い・・・怖い!)

 

四糸乃の心は、ボロボロだった。涙も流れていた。

 

よしのんもいない。士道もいない。今、四糸乃には敵しかいない。

 

(・・・助けて、よしのん・・・・・・助けて、士道さん!)

 

 

 

その時、四糸乃の心の現界を感じた氷結傀儡が立ち止まり大きく吠えた。

 

瞬間、急激な気温変化によって建物が凍っていく。

 

四糸乃の周りでは冷気がどんどん強くなっていき四糸乃を中心に吹雪が広がる。

 

それが氷の粒へと変化し、吹雪の竜巻となって吹き荒れる。

 

AST隊員達の目の前には、半径十数メートルほどの猛吹雪で出来た冷気の結界が出来上がっていた。

 

内部は氷の弾丸が無数に飛び交っており、突入も困難であった。

 

 

「隊長!どうしますか!」

「流石にこの中に突っ込むのは自殺行為ね。そしたら・・・」

 

燎子が指示を出そうとしたその時!

 

 

「そこまでだ!!」

 

斬撃が燎子に襲いかかる!間一髪で回避した燎子が見た先にいたのは、宙に浮かぶ少女だった。

 

来禅高校女子の制服と一体化したような、不完全ながらも霊装を身に纏っている。

 

そして天使の鏖殺公(サンダルフォン)を持っていた。

 

「これ以上、あの精霊に手出しはさせないぞ!悪の組織、メカメカ団め!!」

 

 

名を、夜十神 十香という精霊《プリンセス》だった!

 

 

(精霊の力を出そうとしたが、時間が掛かりすぎてしまった。シドー、私が必ずメカメカ団を足止めする。四糸乃とやらを頼んだぞ!)

 

鏖殺公を持って突撃する十香。

 

 

「誰が悪の組織よ!?後メカメカ団じゃなくてASTっ!!総員、目標をプリンセスに変更!!」

 

AST隊員達は、十香に攻撃をしていく。十香は宙を飛びながらかわし、攻撃を加えていく。全ては、士道と四糸乃の為に!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

吹雪の竜巻に向かっている途中、琴里から十香がASTと戦闘に入った事を告げられる。

 

十香を信じ、士道と栞と折紙と狂三は四糸乃の元に向かう。そして、ついに四糸乃のいる吹雪の結界近くに到着した。

 

近くで見ると圧巻の一言。その様子を士道は真剣な表情で見ていた。

 

「四糸乃・・・今行くぞ!」

 




次回予告

四糸乃を救い、グラファイトを倒す為に士道達は戦う。その結末は・・・。


第六話 悲しい雨からのRelease

「決着を付けよう」


ーーーーーーーーーー


ドラゴナイトハンターZの四人プレイモードについては、オリジナル設定になります。


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第六話 悲しい雨からのRelease

前話で書いた予定より遅れてしまって、すみませんでした。

この話で原作二巻の話は終わりです。その後は、エグゼイド本編の11、12話の話を書いてから次の章に入ります。


士道達は四糸乃の守護天使、氷結傀儡(サドキエル)が張った吹雪の結界の前に来ていた。

 

士道の手には、神無月から渡されたウサギのパペット・・・よしのんが握られている。

 

 

「十香も頑張ってくれているお陰でASTはいない。絶対、無駄にはしない!」

 

十香がASTを引き付けているお陰で、吹雪のドームの周りには完全に気配は無かった。

 

「でも、これをどうやって突破するの?」

 

「ASTの装備でもこれを突破何て出来ない。仮面ライダーに変身して突入・・・というのもあるけど、たどり着く前にライダーゲージがゼロになる可能性もあるから・・・」

 

栞の疑問に折紙が答えるが、どれも解決策ではない。四糸乃の拒絶の心が作り出した吹雪の結界は、それほどの力を持っていた。

 

「それ以前に、ゲーマドライバーやガシャットが壊れるかもしれませんわ。そうなったら檀社長にどう説明するつもりですの?」

 

「「あぁ・・・」」

「やれやれですわ」

 

狂三は小さくため息を吐いたが、その間も士道は真剣な表情で吹雪の結界を見つめていた。

 

そして・・・士道は決断を下し、栞達に頭を下げた。

 

 

「皆、ごめん」

 

「士道・・・?」

 

「もう無茶しちゃいけないけど、また無茶をする」

 

「え、待って士道君、何を!?」

 

 

「皆もわかってるだろうけど、俺には青い炎による回復能力がある。それ頼みであの吹雪の中を突っ切る!」

 

その提案に驚き絶句する少女達。しかし、誰よりも先に異を唱えた人物がいた。

 

 

『ふざけないでっ!!!』

 

 

怒りに満ちた大声で怒鳴ったのは琴里だ。しかし、士道は事前にわかっていたのか、すでにインカムを耳から外して、手に持っていた。

 

琴里の声は、栞達に聞こえる程だった。

 

 

『生身で結界に入る?仮面ライダーに変身もしないで?回復力頼りで?

 

吹雪の領域は外周五メートル。その範囲内は霊力を感知されたら凍らされる!

 

外縁部にいる間は傷は治らない!途中で力尽きたら死ぬわよ!!

 

そんな事を許可出来るわけ無いでしょ!!何でわかってくれないのよ!!』

 

涙声で叫ぶ琴里。叫び終わった後も、泣き声が聞こえる。

 

「やっぱりそうか・・・。この回復能力は精霊の力なんだな」

士道は自分の回復能力に確信を持ってから、琴里に言う。

 

「琴里、聞いてくれ。確かに俺のやっている事は無茶だ。自分を傷つけてでも解決しようとしてる。

 

でもな、今出来ることをやらないといけない。そうしないと四糸乃はもちろん、グラファイトのバグスターウィルスに感染して苦しんでいる人達を助けられない」

 

『・・・・・・』

 

「今の俺は、バグスターウィルス感染者を治療して救う、医者と同じなんだ。

 

医者が苦しんでいる、助けてほしいって思ってる人を放っておけっていうのか?

 

精霊についてもそうだ。今すぐに助ける事が出来る手段があるのにそれを無視しろっていうのか?」

 

『・・・・・・それは・・・・・・』

 

「今も無茶したり皆に心配をかけてばかりいる俺が言っても、説得力が無いかもしれないけど・・・頼む」

 

『・・・・・・でも、わかるけど・・・でも・・・!』

 

琴里自身もかなり葛藤していた。士道の言うとおり、四糸乃や感染者を救うためには無茶をしないといけない時もあるだろう。

 

しかし、士道が無茶をしすぎて苦しんで傷付くのも嫌だ・・・そんな気持ちで葛藤していた

 

士道はゲーマドライバーと全てのガシャットを取り出して栞に渡した。

 

「栞、預かっててくれ」

「士道待って!」

 

渡した直後に、背を向けて全力で走り出す。栞と折紙は止めようと追いかけるが、狂三が止めた。

 

「士道さんの仰る通り、今は士道さんがあの中に入るのが得策ですわ。わたくし達に出来るのは、士道さんを信じて待つことです」

 

 

狂三が止めている間に、士道はどんどん吹雪の結界に近づく。

 

『お願い止まって!やめて・・・おにーちゃん!!』

(ごめん、琴里・・・ごめん、皆)

 

士道は心の中で謝りながら、四糸乃のいる吹雪へと入っていった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「う、ふ・・・ぇぇ・・・っ」

 

結界の中央で氷結傀儡の背にうずくまり、泣いている四糸乃の姿があった。

 

「よしのん・・・よしのん・・・っ」

 

四糸乃は涙声で、自分の支えだった存在の名前を呼んだ。しかし、誰も答えない。答えてくれない。

 

四糸乃は今、世界で一人ぼっちになっていた。

 

 

その時、聞こえない筈の別人の声が聞こえた。

 

「は・あ・い!」

 

「え・・・・・・っ!?」

 

四糸乃は驚き、声のした方を見ると、結界の中心部と外縁部の境目に自分がとてもよく知る存在・・・よしのんの姿があった。

 

そして、よしのんに続いて入ってきたのは、全身傷だらけで血だらけ、服もボロボロながらもよしのんを腕に付けている士道だった。

 

「し、士道・・・・・・さんっ!?」

 

「四糸乃、約束守りに来たぜ・・・・・・!」

 

 

四糸乃の近くまで歩いてきた士道だが、いきなり倒れ込んでしまう。

 

氷結傀儡の背から飛び降り、心配してすぐに士道のもとに駆け寄る。士道の体の傷を青い炎が消し去っていった。

 

「四糸乃・・・遅くなってごめんな。怖くて辛かったのに、助けてあげられなくてごめんな。

 

でもほら、約束通りよしのんは見つけたぜ。まぁ、見つけてくれたのは俺の仲間なんだけどさ」

 

士道は仰向けになってよしのんを口をパクパクとさせたり、よしのんの手を動かしたりして、四糸乃によしのんを見せていた。

 

その様子を見た四糸乃は、最初はポカンとしていたが、言葉と現状を理解して・・・泣き始めた。

 

「う、うえぇぇぇ・・・・・・」

 

「よ、四糸乃!?大丈夫か?俺、何か悪いこと言っちゃったか?」

 

「違・・・います・・・。来て、くれ・・・嬉し・・・くて・・・!」

「そうか・・・」

 

四糸乃はすぐに士道にお礼を言った。

 

「あり、がとう・・・ございます・・・。よしのんを、助けて・・・くれて」

 

四糸乃は涙を流しながらも、その表情は笑顔だった。

士道は四糸乃の笑顔を取り戻せた事に、心から喜びを感じて、士道も自然と笑顔になっていた。

 

「次は・・・四糸乃。お前を救う番だ」

「え・・・?」

 

士道は上半身を起こして、四糸乃と正面から向かい合う。

 

「四糸乃を救うって言ったけどその為には、俺と四糸乃がキスをする必要があるんだ」

 

「・・・士道、さん・・・・・・キスって・・・・・・なん、ですか?」

 

「あ、ああ!唇と唇を合わせる事で」

 

四糸乃は士道が伝えた通り、自分の唇を士道の唇にそっと重ねた。四糸乃がいきなりキスをしたことに士道は驚いた。

 

「よ、四糸乃!?」

「ち、違い・・・ましたか?」

 

四糸乃は可愛く首を傾げていた。

 

「いや・・・・・・違わないけど」

 

四糸乃は涙を拭いて、士道に近くに座る。

 

「士道、さんの・・・言葉なら、信じます」

 

四糸乃は恥ずかしそうにモジモジとしながらも、士道を信じて行動した。

 

その時、四糸乃の体は光に包まれ、纏っている礼装と近くに座り込んでいだ氷結傀儡が光を放ち、消えていく。

 

「・・・!?」

 

四糸乃は一糸纏わぬ姿になり、氷結傀儡も完全に消滅した。

 

顔を赤くして腕を組んで胸元を隠す四糸乃に、士道は自分の上着を四糸乃にそっと肩からかけた。

 

そして、空を覆っていた暗雲は払われ、凍り付いていた天宮の街もすっかりと元どおりになっていた。

 

雲の割れ目から、暖かい太陽の光が差し込み、二人を優しく照らす。更に、二人の前に大きくて綺麗な虹が掛かっていた。

 

「暖かくて・・・綺麗、です・・・」

 

恐らく初めてであろう、日の光がもたらす温もりと虹の綺麗さに感嘆の言葉を言う四糸乃。士道は四糸乃の頭を優しく撫でる。

 

すると、栞達が士道の所に駆け寄る。十香も一緒にいる。

 

「シドー!大丈夫か!?」

「士道君!」

 

「士道!」

「あらあら、中々な光景ですわ」

 

「ひぅ・・・!?」

四糸乃は急に知らない人が四人もやって来た事に驚いて、士道の背中に隠れてしまう。

 

「大丈夫だ。この人達は俺の仲間で、四糸乃の味方だよ」

 

「おぉ、お前が四糸乃だな!私は十香、四糸乃と同じ精霊で士道に救われた者だ」

 

「私と・・・同じ・・・?」

「うむ!」

 

十香が四糸乃に挨拶をしていると、折紙と栞が士道の頭にチョップした。

 

「痛っ!?」

 

「これは、私達にいっぱい心配をかけた分!」

「それと、琴里ちゃんの分だよ!」

 

「本っ当にごめんなさい!」

皆に頭を下げる士道。狂三はクスクスと笑っている。

 

 

すると、狂三は鋭い目付きになって士道の後ろを見る。

 

士道が狂三の様子に気付いて後ろを見ると、そこにはグラファイトがいた。

 

 

「更に精霊を救った様だな、エグゼイド」

「・・・グラファイト。自分から来てくれるとは、探す手間が省けたぜ」

 

士道は立ち上がり、折紙と栞と狂三は士道の横に並ぶ。

栞から預けていたゲーマドライバーとガシャットを返してもらい、四人はゲーマドライバーを付けた。

 

十香は四糸乃を庇うように、四糸乃の前に立ち鏖殺公を構える。

 

四糸乃もグラファイトに怯えるが、士道が四糸乃に言う。

 

 

「大丈夫だ。あいつは俺達がやっつける」

 

「やっつける・・・か。その台詞、お前達に返してやる。今度こそ、お前達仮面ライダーを・・・そして精霊を殺す。バグスター繁栄の為に!」

 

「グラファイト、四年前の決着を付けましょう・・・薫さんの仇ですわ」

 

「私も戦う。お姉ちゃんの為に」

「グラファイトのウィルスで苦しむ人々を救うために」

 

「そして、四糸乃を守る為に!」

 

「決着を付けよう」

 

 

グラファイトは、プロトドラゴナイトハンターZガシャットを起動、それをバグヴァイザーに入れてAボタンを押しグリップと一体化させた。

 

 

《ドラゴナイトハンターZ!》

 

「培養!!」

 

《INFECTION!》

 

《Let's Game! Bad Game! Dead Game! What's Your Name!?》

 

《THE BUGSTER!!》

 

 

グラファイトは怪人態になった。そして、士道はドラゴナイトハンターZガシャットを起動した。

 

すると、仮想ガシャットが三つ出現し折紙、栞、狂三の手に渡った。

 

士道は『S』の人格になり、ガシャットを構えて言う。

 

 

「四糸乃の運命は・・・・・・俺達が変える!!」

 

 

力強く宣言し、それに同意するように皆がガシャットを起動する。

 

 

《マイティアクションX!》

《ファング!》

 

《タドルクエスト!》

《ブレード!》

 

《バンバンシューティング!》

《ガン!》

 

《爆走バイク!》

《クロー!》

 

変身用とドラゴナイトハンターZガシャットを起動し、ドライバーにセット。そしてレバーを開いて四人同時にレベル5に変身した!

 

 

「第五!」

「ステージ5!」

 

「第伍弾!」

「フィフス・ギア!」

 

 

「「「「変身!!」」」」

 

《アガッチャ!ド・ド・ドラゴ!ナ・ナ・ナ・ナイト!ドラ!ドラ!ドラゴナイトハンター!!》

 

《エグゼイド!》

《ブレイブ!》

 

《スナイプ!》

《レーザー!》

 

ハンターゲーマのパーツが分解され、エグゼイドにはドラゴンの頭がそのまま残る。

 

ブレイブには右腕の剣と右足装甲が付く。

 

スナイプには左腕のガンと左足装甲が付く。

 

レーザーには両腕の武器と両足の装甲が付いて人型になる。

 

四人の仮面ライダーがレベル5にレベルアップした!

 

 

「行くぜ!」

 

四人同時に駆け出す。グラファイトも双刃と短剣を持って士道達に挑む。

 

四対一で始まった戦い。ドラゴナイトハンターZ、最大四人でドラゴンを倒すハンターゲーム。今まさにその通りの戦いが行われていた。

 

 

士道が頭の連続噛みつきで攻撃する。グラファイトは全てを武器で防ぎ凌ぐ。

 

その流れでライダー達から少し離れ、双刃からエネルギー斬を放つ。

 

それは折紙の剣で全て斬り落とされ、すぐにしゃがむと折紙の後ろにいた狂三がエネルギー弾を連射。

 

それは全てグラファイトに命中。ダメージを受けて怯んだグラファイトに、折紙が低姿勢のまま走ってグラファイトの腹元に入って剣で一閃!

 

栞がジャンプして接近し、ガンでダメージを与えて着地してから剣で連続で斬る。

 

グラファイトは黒い光を短剣に纏わせて、エネルギーを高めてい斬撃を放つ!

 

四人はそれを避ける。士道が素早く接近して、尻尾を大きくしてそれを鞭のようにふるいグラファイトを吹っ飛ばす。

 

宙に吹っ飛んだグラファイトに狂三と栞が銃撃を当てて、更に士道と折紙がグラファイトの所までジャンプして踵落としで地上に叩き落とす!

 

そして、四人同時に衝撃波を放ち、グラファイトを後ろにまで吹っ飛ばした!

 

 

「バカな・・・この俺が!レベルアップした俺が!?」

 

「凄いな・・・!」

「はい・・・かっこいい、です・・・」

 

十香と四糸乃は仮面ライダー達の勇姿を心に刻むように見ていた。

 

 

「皆・・・・・・決めるぞ!」

 

士道の言葉に従い、ドラゴナイトハンターZガシャットを抜いて、キメワザスロットに入れてスイッチを二回押す。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

《DRAGO KNIGHT!CRITICAL STRIKE!!》

 

四人が同時に必殺技を発動。同時に高くジャンプし、四人並んでエネルギーを纏ってキックの体制を取りグラファイトに向かっていく。

 

途中、四人が一つになり大きなドラゴンの姿になる。そしてそれはグラファイトに向かっていく。

 

グラファイトは雄叫びを上げて、両手の武器に全てのエネルギーを込めて斬りかかる。

 

ぶつかり合い、勝ったのはライダー達だった。グラファイトに四人のキックが命中。グラファイトは大きく吹っ飛ばされ・・・地に落ちて・・・。

 

「仲間達よ・・・すまない・・・」

 

心から申し訳ない気持ちで他の仲間達に謝罪して、グラファイトは遂に倒され大きく爆発した。

 

 

《GAME CLEAR!》

 

音声と共に、ゲームの絵と、GAME CLEARの文字が出てきた。

 

プロトドラゴナイトハンターZガシャット入りのバグヴァイザーと、ファンガイア製の短剣は遠くへ飛んでいった。

 

それらはパラドが回収した。

 

「お疲れさん、グラファイト。お前の分もやってやるから・・・ゆっくり休め」

 

パラドは心からの労いの言葉を言い、静かに去っていった。

 

 

士道達は変身を解いて、グラファイトが散った場所を見つめた。

 

また、CRからグラファイトが倒された事で恭太郎を含む、多くのウィルス感染者からウィルスが消滅。全員が救われたという連絡が入った。

 

「終わりましたわ・・・・・・薫さん」

「お姉ちゃん・・・・・・」

 

狂三と栞は、グラファイトとの戦いで散った薫の事を思っていた。

 

「シドー、やったな!・・・・・・シドー?」

「士道・・・さん?」

「士道君?」

 

返事のない士道。士道はとうとう限界を迎え、倒れてしまい、意識を失った・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

三日後。天宮総合病院の病室。

 

 

三日経ってようやく目を覚ました士道。やはり今回は相当無茶をしたのだ。

 

制御できなかったハンターゲーマの負担。グラファイト戦でのダメージ。

 

それが完全に癒えていない状態でライダー三人と戦い、氷の塊が吹き荒れる吹雪の結界の中を走り、そしてグラファイトと決着を付けたのだ。

 

体にかなりの疲労やダメージが溜まっていて、目を覚ました後も、一週間程は安静にすることが絶対となってしまった。

 

見舞いに来た琴里にはかなり怒られたが、最後には士道が無事だった事に安心して泣いてしまった。

 

士道は琴里を優しく抱きしめて、頭をそっと撫でたのだった。

 

四糸乃はその後、フラクシナスの一室で過ごしており、よしのんも一緒である為に精神も安定しているが、士道に会いたがっているらしい。

 

十香や折紙に栞に狂三。更に令音や神無月に、川越等の他フラクシナスのクルーも見舞いに来てくれた。

 

そして今、美九が見舞いに来ている。

 

 

「あのですね、だーりん。私も今回は無茶をたくさんした、だーりんにプンプンですよぉ。

 

でも、だーりんは確かに四糸乃さんを助けたのですね。私から見ても四糸乃さんは良い子ですよ」

 

「・・・そうか。で、他に言うことは?」

 

「あんなに可愛い美少女がだーりんのハーレムに加わって、私も嬉しいです!」

 

「やっぱり・・・・・・っていうかハーレムって・・・」

「もちろん、私もだーりんのハーレムの一員ですよぉ。だーりん、だーいすき!」

 

「あ、ありがとう・・・」

 

美九が士道に甘え抱きつき、士道は甘えながらもお礼を言った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道が四糸乃を救出してから一週間後。士道が退院して自宅に戻った時。

 

五河家の隣には、巨大なマンションが建設されており士道は驚きのあまり、大声で叫ぶ。

 

「な、なんじゃこりゃあ!!?」

 

 

士道の隣にいた琴里は士道に言う。

 

「これは精霊専用の特殊住居。精霊が住むために強度は数千倍を誇る上、生活に必要なのは全て揃っているの。ちなみに、十香は昨日引っ越しを終えたわ」

 

「すげぇ・・・・・・」

 

 

すると青いワンピースを着て頭には白い帽子をかぶり、パペット・・・よしのんを手に持った少女・・・四糸乃が士道の所にやって来た。

 

「士道・・・さん。退院、出来たんですね・・・」

 

「四糸乃とよしのん、今日からこのマンションに住むのか?」

 

 

「・・・は、はい。よろしく・・・・・・お願いします」

 

「この前はありがとね士道くん。こうして話すのは初めて会った神社以来だね!お陰で四糸乃と再会できたし、お礼を言いたくて」

 

「お礼なんて必要ない・・・・・・こうして四糸乃が普通の女の子のように暮らせるようになって、本当に良かった」

 

「・・・全部、士道さんの、お陰です・・・。本当に・・・・・・ありがとう、ございます・・・」

 

「ありがとね、士道くん!」

 

四糸乃とよしのんは、士道にお礼を言う。そして、四糸乃は勇気を出して、伝えたい事を伝えた。

 

 

「士道さんは・・・よしのんと同じ、私の・・・・・・ヒーロー、です」

 

顔を赤く染めながらも、優しい笑顔で。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、幻夢コーポレーション社長室。

 

「全テストを完了し、データ収集も終わった。後は、このガシャットを完成させる。それによって、計画の第一段階は完了だ」

 

 

黎斗の手には、白いガシャットが握られていた。下部は白く、上部の模様が他のガシャットと異なる。

 

パソコンのモニターには、ドラゴナイトハンターZを使用しての戦闘データが表示されている。

 

「心が踊るな。そのガシャットの完成が楽しみだ」

 

パラドの言葉に黎斗はフッと笑い、白いガシャットを専用の機械に入れてパソコンを操作していく。

 

レベル5を含む、これまでのガシャットを用いてのデータが利用され、白いガシャットは完成に近づいていく。

 

 

「計画第一段階は、いよいよ最終フェーズへ移行する」

 

 

士道達が精霊や患者達を救っていく中、黎斗の計画も進んでいた・・・。

 




次回予告

檀 黎斗が動き出した。己の野望の為に士道達を利用し、士道達と戦い、そして・・・。


第七話 明かされるAmbition!


「全て・・・・・・私の計画通りだ!」


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第七話 明かされるAmbition!

お待たせいたしました!


士道が退院して三日後。十香と四糸乃も新しく建てられた精霊マンションに住み始めたが、食事等は五河家で一緒だった。

 

今日も四糸乃がやって来た。

 

 

「こ、こんばんわ・・・」

「やっほー、四糸乃とよしのんが来たよ~!」

 

「うむ、いらっしゃいだぞ四糸乃、よしのん」

「おぉー、いらっしゃいだぞー!」

 

「あぁ、二人ともいらっしゃい・・・・・・ところで、何で四糸乃はもう片方の手に戦車のパペットを付けているんだ?」

 

士道の言うとおり、四糸乃は左手によしのんを、右手に丸っこくデフォルメされた青い戦車のパペットを付けていた。

 

士道は以前、初めて四糸乃の姿を見たときに「戦車のパペットは付けてないのか」と呟いたが、まさかそれが現実になるとは思っていなかった。

 

「えっと、あの・・・よしのんが、どうしてもって・・・」

「だってね、ウサギと戦車はベストマッチなんだよ?付けるしかないじゃん」

 

「いや何でだよ?」

「・・・・・・さぁ?」

「知らないんかい!」

 

そんなコントもありつつ、四糸乃は戦車のパペットを外して十香の隣に座った。

 

 

「シドー!今日の夕飯は何なのだ?」

 

「今日は親子丼。鶏肉と卵を使った丼料理だ」

 

「おぉ!」

 

親子丼と聞いて目を輝かせる十香。四糸乃も興味深々といった感じだ。

 

士道が親子丼を作っている間に、十香と琴里と四糸乃はテレビを見る。今やっているのはニュースだ。

 

今ニュースでやっているのは、天宮市で多くの人が倒れ病院に搬送されたあの事件だ。

 

 

グラファイトが撒いたバグスターウィルスのせいだが、バグスターウィルスの存在は衛生省によって秘匿されている。

 

しかし、それによって住民に余計に不安が広がっているという。

 

そこで、衛生省ではもうすぐバグスターウィルスの存在を公表する事を決定。今、その準備を行っている事を士道は聞いていた。

 

そんな事を考えている内に、親子丼が完成。四人で食べていく。

 

十香と琴里からは絶賛され、四糸乃は目を見開き、机をバンバン叩いた後にサムズアップした。その後に美味しいと実際に言ってくれた。

 

士道は十香に四糸乃、二人の精霊を救い普通の生活を送らせる事が出来ている。

更に、グラファイトのバグスターウィルスに感染した人々に自分の命の恩人である日向 恭太郎も救えた。

 

ここまでは順調ながら、士道は何故か胸騒ぎを・・・そして嫌な予感を感じていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

翌日、学校が終わった所でCRから連絡が入る。ライダーの四人、更に手伝いとして十香と四糸乃も加わった合計六人でCRに寄る。

 

CRでは壇 黎斗が江原 剛太と話し込んでいた。更に、琴里(黒リボン)と令音も同席して話を聞いていた。

 

 

「黎斗さん・・・」

「やぁ、五河君。お邪魔しているよ」

 

六人も席について話を聞くことになった。

 

「黒いエグゼイドはバグスターと組んで活動している。これはご存知ですね」

「はい」

 

「黒いエグゼイドが使用しているゲーマドライバーと、プロトマイティアクションXのガシャットは、過去に私が開発した物です。

 

シャカリキスポーツガシャットも、完成直後に盗まれてしまった」

 

黎斗は茶を啜って、続きを話す。

 

「それらを奪って使用しているのです。どうか、黒いエグゼイドを倒して、ゲーマドライバーとガシャットを奪還して欲しい」

 

「・・・わかりました、やります。黒いエグゼイドを止めて見せます」

「ありがとう、よろしく頼むよ」

 

黎斗は笑顔で礼を言うが士道はその笑顔に、初めて会った時に見た笑顔と同じ「違和感」を感じた。

 

そして、黎斗は会社へ戻っていった。

 

「・・・・・・」

「士道?どうしたの、難しい顔をして・・・」

 

「いや、黒いエグゼイドの対処法を考えてて・・・」

本当は黎斗の事を考えていたが、確証が無いため言わなかった。

 

「士道さん・・・・・・」

「どうした、四糸乃?」

 

「さっきの人・・・怖かった、です」

「あぁ、四糸乃はまだ人に慣れてないから・・・」

 

「違うん、です・・・」

「え?」

言いにくそうにしている四糸乃に代わり、よしのんが説明した。

 

「あの人はまるでね、笑顔の奥に怖ーい何かを隠しているような感じだったんだよねぇ」

「はい・・・よしのんの、言うとおり・・・です」

 

「シドー、それは私も感じたぞ。何というか、こう・・・ゾワゾワする感じだったのだ」

 

「・・・・・・」

 

 

十香も四糸乃と同じような事を言う。士道がその事について考えていると、琴里が士道に言う。

 

「士道、私も十香や四糸乃と同じような感じを壇 黎斗には抱いたわ」

 

「琴里も・・・なのか」

 

「まぁ、女の勘ってやつだけど。今日初めて会った私達が嫌な感じを抱いたんだから、何かがあると思うわ」

 

「そうか・・・」

 

「一応、壇 黎斗にはラタトスク機関の事は話してないわ。士道の妹で、令音と一緒にCRの外部協力者という立場にいる・・・とだけ伝えたわ」

 

琴里は黎斗を警戒し、ラタトスク機関や精霊については一切話さなかった。

 

十香と四糸乃も警戒心を抱いたのか、自分から話すこともしなかった。

 

しかし、黎斗は既に精霊の存在を知っている事を、士道達は知らなかった。

 

「士道、あんたが好きなゲームの開発会社の社長だから複雑だろうけど、警戒は怠らないで」

「・・・・・・わかった」

 

「じゃあ、私はフラクシナスに行くわ。いつも通り、バグスターとの戦闘映像の記録とすぐにサポート出来るように動く準備をしておくわ」

 

 

ラタトスク機関とCR及び衛生省が同盟を結んで以来、フラクシナスの高性能カメラで戦闘映像の撮影や機関員を派遣してのサポートを行うようになっていた。

 

ちなみに、ステージセレクトでゲームエリア内の景色が変わろうとも撮影が可能になるプログラムは衛生省が開発、フラクシナスへと提供されている。

 

それを利用して撮影や音声記録が行われている。

 

 

その時、CRに連絡が入る。剛太が受話器を取って話を聞く。

 

「はぁい、CRよん・・・・・・わかったわ」

受話器を置いて士道達に言う。

 

「ゲーム病患者の人が搬送されたわん。すぐに制服に着替えてオペの準備を!」

 

士道達は頷いて、すぐに準備に入る。

 

それから、搬送されたのは大学生位の男性。機材で確認すると、シャカリキスポーツのバグスターウィルスに感染していた。

 

しかも、確認を終えた直後にバグスターが現れた。頭にシャカリキスポーツガシャットが刺さっている、コラボスバグスターだ。

 

どうやら、CRに運ばれる前から相当のストレスが溜まっていたらしい。

 

士道達がゲーマドライバーを取り出した所で、コラボスバグスターは士道達に背を向けて走り去って行く。

 

「待ちやがれ!」

士道達は慌てて追いかける。コラボスバグスターは、士道達と付かず離れずな距離を維持しながら走る。

 

 

「自転車がバイクより速いなんて、生意気だよ!」

 

「いやいや、今の栞は生身だろ!俺達は自分の足で走ってるからな!?」

 

「今はボケとツッコミを自重してえぇぇぇ!」

 

栞と士道と折紙がそんなやり取りをしながらも、コラボスバグスターを追いかけていく。

 

四糸乃は、十香がお姫様抱っこをして一緒に追いかけている。

 

そんな中、狂三は懸念を抱いていた。まるで、どこかに誘導されているようだ、と・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、無人の屋外バスケットボール場。そこに壇 黎斗がいた。

 

「そろそろか・・・」

 

黎斗は呟き、ゲーマドライバーを装着。

ガシャット本体が紫のカラーになっておりラベルに描かれているマイティも同様に黒くなっている、プロトマイティアクションXガシャットを持つ。

 

 

「計画第一段階、最終フェーズを実行する」

 

《マイティアクションX!》

 

ガシャットを起動すると、紫色のゲームエリアが展開し、背後にタイトルが表示される。

 

「変身!」

 

《ガシャット!》

 

《レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム!?》

 

《アイム ア カメンライダー!!》

 

仮面ライダーゲンム、レベル1に変身。更に、ゲーマドライバーのレバーを開いてレベル2になる。

 

「グレード2」

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

《マイティジャンプ!マイティキック!マイティX!!》

 

レベル2になり、そのまま待つ。

 

 

すると、少ししてコラボスバグスターを追いかけてきた士道達がやって来た。

 

コラボスバグスターはゲンムの隣に立ち、ゲンムは左腕をコラボスバグスターの肩に置く。まるで親しげなのをアピールするかのように。

 

 

「黒いエグゼイド・・・やっぱりバグスターと組んでるのね」

「さっさと倒しちゃおう!」

 

「だったらこれで!」

 

士道がドラゴナイトハンターZガシャットを起動。士道の持つオリジナルから仮想ガシャットが三つ出て栞達の手に渡る。

 

《マイティアクションX!》

《ファング!》

 

《タドルクエスト!》

《ブレード!》

 

《バンバンシューティング!》

《ガン!》

 

《爆走バイク!》

《クロー!》

 

変身用とドラゴナイトハンターZガシャットを起動し、ドライバーにセット。そしてレバーを開いて四人同時にレベル5に変身。

 

「第五!」

「ステージ5!」

 

「第伍弾!」

「フィフス・ギア!」

 

「「「「変身!」」」」

 

全員がレベル5になった所で、戦闘が始まった。士道と栞がゲンム・・・黎斗を、折紙と狂三がコラボスバグスターの相手をするように別れた。

 

黎斗がガシャコンバグヴァイザーをチェーンソーモードにして、士道に斬りかかる。

 

士道は少し身を屈めてドラゴンヘッドで受け止め、一気に体を上に上げる。

 

バグヴァイザーを持った腕が上に上がり一瞬無防備になった所で、栞がエネルギー弾を撃ってダメージを与え、二人で腹部を蹴って壁まで吹っ飛ばした。

 

壁に衝突し、ライダーゲージが減る。

士道達とはレベルに差が出ている上に、ドラゴナイトハンターZの能力によって四人全員のスペックが上がっている。

 

レベル2のままのゲンムに勝ち目は無い筈だが、それでもバグヴァイザーを手に戦いを続ける。

 

 

コラボスバグスターは、タイヤを二つ手に持ってそれをブーメランのように投げる。

 

エネルギーを纏い破壊力の増したタイヤだが、狂三が左腕のガンパーツからエネルギー弾を撃って二つとも撃ち落とし、折紙が素早く接近して切り裂く。

 

ダメージを受けながらも、コラボスバグスターは撃ち落とされたタイヤを回収し、手に持ったまま狂三に攻撃を仕掛ける。

 

遠距離攻撃が出来る狂三から先に倒そうとしたのだ。判断は間違っていないが、狂三には通用しない。

 

「キヒヒ・・・」

狂三は左腕のガンパーツでコラボスバグスターの腹を殴り、左足の上段キックを当ててコラボスバグスターを宙に浮かせる。

 

「はぁ!」

折紙がジャンプして、右腕のソードパーツでコラボスバグスターを斬り地に落とした。

 

同時に、士道のドラゴンヘッドに噛みつかれ、ぶん投げられた黎斗はコラボスバグスターに直撃して止まった。

 

 

「これでフィニッシュだ!」

士道の言葉に合わせて、皆がガシャットを抜いてキメワザスロットに入れてスイッチを二回押す。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

《DRAGO KNIGHT!CRITICAL STRIKE!!》

 

四人が同時に必殺技を発動。四人が付けているパーツにエネルギーが溜まり、それを同時に放った!

 

黎斗はコラボスバグスターを掴んで自分の前まで持っていき、前に蹴り飛ばして盾として利用した。

 

四人の必殺技を受けてコラボスバグスターは爆発、倒された。黎斗は爆発を受けて吹き飛ばされ、壁に直撃して倒れた。

 

 

「・・・・・・ガードベントが無ければ、即死だった」

ライダーゲージも、残り3%しかない。

 

《GAME CLEAR!》

 

音声と同時にシャカリキスポーツの絵が出現、ゲームクリアを知らせる。

 

同時に、CRに搬送された男性のゲーム病も消失し、健康な体を取り戻した。

 

シャカリキスポーツガシャットが士道の所に落ちてきて、士道はそれをキャッチする。

 

遂に、士道達仮面ライダーは十種類全てのゲームをクリアしたのだ。

 

 

「むぅ、加勢が出来なかった・・・」

 

琴里からの説明で霊力を封印された状態では、精神状態が不安定になることで精霊の力が逆流し、天使と霊装を不完全ながら顕現出来るようになる事を知っていた。

 

封印される前よりは弱いが、それでもバグスターや敵対している仮面ライダーと戦う士道達の力になることは可能だ。

 

十香はすぐにでも天使や限定霊装を纏って加勢をしたかったが、四糸乃救出の時と同じく展開に時間が掛かってしまい、加勢が出来なかった。

 

 

「よしのん、私達も・・・」

「そうだね~、僕達も十香ちゃんと同じ状態だと思うよ」

 

「うぅむ・・・精神的に不安定になると言っても毎回それをやるというのは・・・。第一、それでは時間がかかる上に不安定ではないか」

 

「・・・士道さんの役に立てないのかな・・・」

「弱気になってはダメだぞ、四糸乃」

 

「十香さん・・・」

「精霊の力を早く使えるようになろう、そして士道達の力になるのだ!」

 

「はい・・・!」

「ヒュー!十香ちゃん、かっこいい~!」

 

十香と四糸乃は、自分達を救ってくれた士道の力となり支えるために、自らに「限定霊装と天使の早急な展開」を行う事を課した。

 

 

一方、士道達は残った黎斗と対峙する。

 

「もうあなたの負けです、ゲーマドライバーとガシャットを渡して、衛生省からの裁きを受けてください!」

 

折紙が降伏を勧告するが、黎斗は無視して辺りを見渡し・・・。

 

「今こそ、"死のデータ"を手に入れる時!」

 

そう言って、開発していた新たなガシャットをバグヴァイザーに装填。

 

そして、プロトマイティアクションXガシャットをゲーマドライバーから抜いて、キメワザスロットに入れてスイッチを二回押す。

 

《ガシャット!キメワザ!》

《MIGHTY!CRITICAL STRIKE!!》

 

紫色のエネルギーを足に纏いジャンプ。そのまま飛び蹴りの体制で攻撃する。

狙いは士道達・・・ではなく、その後ろにいる十香と四糸乃。

 

 

「やめろ!!」

 

士道はいち早く動き、十香と四糸乃を庇うように立って尻尾を大きくして黎斗を叩く。

 

その威力は大きく、黎斗はまた吹っ飛ばされた。

 

「二人とも、大丈夫か!?」

「うむ、シドーのお陰で無事だ!」

「ありがとう、ございます・・・」

 

礼を言う十香と四糸乃。黎斗を見ると、立ち上がったがライダーゲージは先程の攻撃で0%・・・遂にライフが無くなったのだ。

 

「ライダーゲージが、ゼロに・・・」

ライダーゲージがゼロになると、ゲームオーバーで死んでしまう。

 

しかし・・・。

 

 

「この時を待っていた・・・」

 

黎斗は呟き、ガシャット入りのバグヴァイザーを、ガシャコンウェポンの絵が表示されている所にバグヴァイザーの銃口を刺した。

 

黒い煙のような光・・・死のデータがバグヴァイザーに吸い込まれ、装填された白いガシャットに集まる。

 

そして、画面にタイトルが表示され"死のデータ"は白いガシャットにインストールされたのだった。

 

 

「・・・・・・何で死にませんの?」

変身を解いたライダー達は、ライダーゲージがゼロになっても消えない事に疑問を抱いて呟いたが、瞬間・・・。

 

 

「ヴェアハハハハハハハハハハハ!!」

大笑いしだす黎斗。

 

「全て・・・私の計画通りだ!」

バグヴァイザーに装填されたガシャットを見る。

 

「ここまでうまく行くとは・・・流石私だ!やはり私は神の才能を持つ者なのだあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「あなた、一体何者ですの?」

「・・・良いだろう、最早正体を隠す必要も無くなった。私の名は、仮面ライダーゲンム」

 

「ゲンム!?」

黎斗はゲーマドライバーのレバーを閉じ、ガシャットを抜いて変身を解除。壇 黎斗の姿を晒した。

 

「社長・・・!?」

 

 

皆が驚く中、士道はショックを隠せず動揺しながら尋ねる。

 

「何でですか・・・・・・あんなにすごいゲームを作り出せる人が、CRの協力者が・・・何でバグスターと!?」

 

初めて会った時の笑顔の違和感で、琴里達の言う怖い感じの話を聞いて、まさかと思った。ある程度は覚悟も決めていた・・・つもりだった。

 

しかし、それでも"まさか"が真実であったショックはとても大きかった。

 

 

近付こうとした士道に、黎斗はバグヴァイザーの銃口を向けて動きを止めた。

 

「データ収集のテストプレイヤーとして、君達を利用させてもらった。全ては・・・究極のゲームを作るために!」

 

「究極のゲーム・・・?その為に色んな人達をゲーム病で苦しめたの・・・?」

 

栞の静かな怒りにも、黎斗は動じない。

 

「・・・・・・やっぱり、私の勘は当たったわね」

フラクシナスからモニターしていたクルー達の驚きの中で、琴里は静かに呟いた。

 

 

「ライダー諸君、このバグヴァイザーに入っているガシャットの完成を持って、計画の第一段階は完了した。そう、計画はまだまだ続くのさ!」

 

黎斗は高々に言う。

 

「それに、バグスターウィルスは既に天宮市の多くの人々に感染している。つまり、いつ誰が発症してもおかしくない」

 

黎斗は言わなかったが、以前取引したバグスターウィルスを渡したファンガイアの事を思い出していた。

 

あのファンガイアは東京で動いていると言ってた為、バグスターは東京にも現れる可能性がある。

 

「揃えた十個のガシャットで、私の計画を阻止できるかは・・・・・・君達次第」

 

バグヴァイザーからエネルギー弾を撃って目眩ましを行い、士道達が見ると黎斗の姿は消えていた。

 

「四年前に、社長が黒幕だと気付いていれば・・・!」

狂三は四年前に、黎斗の本性を見抜けなかった事を後悔する。

 

「黎斗さん・・・・・・」

士道はショックから抜け出せず、しばらく立ったままだった・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

黎斗は幻夢コーポレーション・・・ではなく、旧幻夢コーポレーションの社内に入った。今後はここを拠点とするようだ。

 

中には既にパラドがおり、ゲームで遊んでいた。

黎斗は息を整えながら、バグヴァイザーからガシャットを抜いた。

 

絵とタイトルが書かれたラベルが自動で生まれ、遂に十一本目のガシャットが完成したのだ。

 

「完成した・・・!計画第一段階は完了、全て私の計画通りに進行している!」

狂喜の笑みを浮かべる黎斗。パラドはゲームを中断して黎斗に寄る。

 

「お前は本当に恐ろしいな。自分の命から死のデータを取るなんて」

 

「プロトガシャットの多用で、私の命は長くなかった。ならば長くない命をガシャット完成に捧げようと決めた」

 

 

プロトマイティアクションXガシャットは、他のプロトガシャットと違いモノクロではなく色付きだが、これは正規版ガシャットの完成後にその性能・・・使用者への安全性などを一部取り入れたからだ。

 

しかしそれでもプロトガシャットであることには変わり無いため、他のプロトガシャットよりは少ないが、身体に負担が掛かる事は変わらない。

 

それを長年多用した黎斗の命は、もう長くなかった。

 

どうせ死ぬならば、その命は十一本目のガシャットを完成させる為に必要な死のデータにしてしまおう、と考えて今回の件を実行したのだ。

 

 

「それに、以前も言っただろう?自分の身を可愛がっていては、目的を達成できないと」

 

「心が踊るな!ニューゲームの、スタートだ」

 

興奮を抑えられないパラドに、黎斗は笑みを浮かべて答える。

 

新たなガシャットを完成した。そしてその力は士道達へと向けられる・・・。

 




次回予告

完成した十一本目のガシャット。その力が士道達に牙を向く。


第八話 不死身のZombie!

「闇へと消えるがいい・・・」

ーーーーーーーーーー

次回は遂に、デンジャラスなあいつが出ます。士道達はどうなるのか?


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第八話 不死身のZombie!

この話で、第二章は終わります。


黒いエグゼイド・・・仮面ライダーゲンムの正体が幻夢コーポレーション社長、檀 黎斗だと判明した。

 

黎斗との戦いの後、CRに戻った皆は剛太とエレナと恭太郎を交えて今後について話し合いを行っていた。

 

 

「あらぁん・・・まさか社長が黒幕だったなんて、気付けなかったわん・・・」

 

「えぇ・・・その事に気づけなかった事は、我々の落ち度です」

 

「私達をテストプレイヤーとして利用してたって言うけど・・・まんまと乗せられちゃってたんだね」

 

「やれやれですわ・・・あの社長の掌の上だったと考えると・・・わたくし、ゾッとしますわね」

 

「私も何となーく嫌な感じはありましたけど、流石に黒幕だということはわからなかったですねー」

 

「美九もそう思っていたのか?」

 

「そうですよ十香さん!乙女の勘は、隠し事と可愛い女の子の存在をビビッと感じ取れるのですぅ!」

 

「前者はともかく、後者は美九だけよ・・・。全く、本当に機関や精霊の事を話さなくて正解だったわ」

 

「・・・・・・確かに、一目見て黒いってわかったからね」

 

「あの、村雨先生・・・それって内面の事ですよね。まさか服装の話じゃ無いですよね?」

 

「・・・・・・・・・・・・もちろん、内面さ」

 

「四糸乃、これはヤバイよヤバイよ~。すぐにこないだのアニメで見た、ウサミミ魔法少女に変身して社長をやっつけないと!」

 

「無理だよ、よしのん・・・」

 

 

そんな話がされている間も、士道は黙ったままだった。

 

凄く面白いゲームをいくつも世に売り出した才気溢れる社長がバグスターウィルス関連の黒幕だったのだ。そのショックは大きい。

 

ここで、CRに設置した大きめのモニターに映る恭太郎が語る。

 

 

「五河指令が提供してくれた、フラクシナスが記録した映像は我々も拝見させてもらった。

 

その後すぐに省員を向かわせて調査したが、今回の件に他の社員は一切関与していない。完全に壇 黎斗が単独で動いていたようだ」

 

バグスターと手を組んではいたが、それでもこれほどの事を殆ど独力で成し遂げた辺り、やはり黎斗は油断できない。

 

「今後の幻夢コーポレーションへの対応は、我々衛生省が引き受ける。君達は引き続きゲーム病の治療及び壇 黎斗への対応を頼みたい」

 

「・・・・・・勿論です、恭太郎先生。ゲーム病の人達を救い、黎斗さんを止めます」

「士道君・・・ありがとう。我々も出来る限りのサポートをする、どうかよろしく頼む」

 

「はい!」

 

士道が強く返事をし、その場は解散となった。

 

そして翌日、CRに連絡が入った。小学生の少年がゲーム病を発症して、今CRに搬送中であると。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

少年が寝かされたベッドを専用の機材に接続。大きなモニターに状態が表示される。

 

体をスキャンすると、少年からマイティアクションXのバグスターウィルス反応が表示される。

 

「ソルティ・・・」

士道は初めて仮面ライダーに変身したときに戦ったバグスター、ソルティを思い出す。

 

少し話をしていると、少年が苦しみだし目が赤く光る。そして素早く立ち上がった。

 

「フハハハハ!久しいなエグゼイド、お前を再び塩で揉んでやる!」

「まさか、ソルティ!?・・・しかも覚えてるのかよ」

 

「我々バグスターもレベルアップしたのだ。宿主の体を乗っ取って動けるようになった!」

 

少年の声とソルティの声が重なっているが、人格及び主導権はソルティ側にある。

 

「ここは狭いな。戦える場所まで移動しようではないか!」

 

そう言うと、ソルティは走り出した。士道達も慌てて追いかける。

 

少しして、着いたのは天宮総合病院の近くにある、人気の無い工場地帯。

 

そこに着いた時、少年の体から離れてソルティが現れた。バグスターユニオンではなく、いきなりソルティの姿になっている上に、帽子の色も違う。

 

「いきなり分離状態!?」

「我々バグスターも、レベルアップしているのですよ!さぁ、お前達も塩で揉んでやろう・・・前のリベンジだ!」

 

「この子供は私が保護しますね、わっせわっせ」

 

一緒に付いてきた美九が、ソルティが抜けて倒れた少年を安全な場所まで運ぶ。十香と四糸乃も少し離れた所で見守る。

 

 

「とにかく、やっちゃおう!」

 

四人はゲーマドライバーを装着し、ガシャットを構える。

 

 

《マイティアクションX!》《シャカリキスポーツ!》

 

《タドルクエスト!》《ドレミファビート!》

 

《バンバンシューティング!》《ジェットコンバット!》

 

《爆走バイク!》《ギリギリチャンバラ!》

 

「第三!」

「ステージ3!」

「第三弾」

「サード・ギア!」

 

「「「「変身!」」」」

 

四人の仮面ライダーは、それぞれのレベル3に変身した。特に士道は、昨日の黎斗との戦いで入手したシャカリキスポーツガシャットを使用。

 

エグゼイド、スポーツゲーマーレベル3となった。

 

「よっしゃ行くぜ!」

士道の掛け声と同時に、四人が動いた。

 

士道はシャカリキスポーツのタイヤを両手に持って、それをソルティに向けて投げる。

 

タイヤはブーメランのようにソルティに向かって飛んでいくが、ソルティはマントを翻すように振るう。すると、タイヤが弾き返され士道の方に飛んでいく。

 

このままだと士道がダメージを受けてしまうが、慌てること無くガシャコンブレイカーを呼び出す。

 

ハンマーのまま手に持って、跳ね返されたタイヤを打ち返した!

 

先程以上のスピードで飛んでいったタイヤは、ソルティに直撃してダメージを受け倒れた。

 

ソルティはウィルス達を召喚、ライダー達に向かわせる。

 

しかし、ウィルス達は狂三のガトリング砲と折紙の楽譜型のエネルギーが肩のスピーカーから放たれ、一網打尽にされた。

 

「こんな展開、認められませんぞ!」

「そうか?俺達にとっては嬉しい展開だぜ!」

「だぜ!」

 

栞がガシャコンスパローから矢を、士道が再びタイヤを投げる。

 

ソルティは杖で弾き、杖から塩のような白い粒子を放って全員に攻撃を仕掛ける。

 

しかし、それは四人同時に放った攻撃で打ち消された。

 

「ノォォォォォ!私だってレベルアップしたというのに、四人がかりとはいえこんなに簡単にぃぃぃ!」

 

「仮面ライダー、なめるなよ!」

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

 

《SYAKARIKI!》《JET!》

《CRITICAL STRIKE!!》

 

《DOREMIFA!》《GIRIGIRI!》

《CRITICAL FINISH!!》

 

士道がエネルギーを最大限に溜めたタイヤを投げ、狂三がガトリング砲とミサイルを一斉に発射し。

 

折紙がガシャコンソードに音符型エネルギーを纏わせ放ち、栞がガシャコンスパローに矢を複数本生成して一斉に放った。

 

四人同時の攻撃を、ソルティは防ぐ事が出来ず喰らってしまい・・・。

 

「しょっぱーーーーーい!!」

 

そんな断末魔を上げて爆発、ソルティは倒された。

 

 

少年のウィルスは完全に消滅。美九がスコープで消滅を確認した。

 

「この子はもう大丈夫ですよぉ!」

「うむ、シドー達のお陰だな」

「はい・・・」

 

美九だけでなく、十香と四糸乃も士道達を称賛する。士道達は安心して変身を解こうとしたその時・・・。

 

 

 

「ご苦労様、CRの仮面ライダーの諸君」

 

その声と共に、一人の男がバグヴァイザーにソルティのいた場所から出た粒子・・・ソルティのデータを吸収した。

 

吸収されたデータは、バグヴァイザーの中でソルティとなったが・・・。

 

「おい!?何をする、ここから出すのだ!だs」

 

ソルティが出してくれと喚くが、男・・・壇 黎斗は無視して画面を消した。

 

 

「今のソルティはレベル5相当・・・。それを四人がかりとはいえレベル3で倒すとは、中々強くなっているじゃあないか」

 

「黎斗さん・・・・・・」

 

黎斗は最早本性を隠していない。堂々と己をさらけ出している。

 

そして、黎斗は完成した十一本目のガシャットを見せた。

 

「このガシャットは、君達を実験台にしてデータ収集したことにより完成した。君達のお陰でね・・・。

そのお礼に、君達にこのガシャットの力を見せてあげよう」

 

黎斗は黒いバックルを取り出し、それにバグヴァイザーを合体させてゲーマドライバーのようにガシャットの力を使えるドライバーにした。

 

「バグルドライバー・・・これがあればこのガシャットの力を使える」

 

黎斗はバグルドライバーを装着し、ガシャットを構え起動した。

 

 

《デンジャラスゾンビ!》

 

黒いゲームエリアが展開し、背後にタイトルが表示される。

 

デンジャラスゾンビ・・・・・・それは士道も知らないゲーム。タイトルからして、ゾンビと戦うゲームだろうか。

 

 

「グレードX(テン)、変身!」

 

《ガシャット!》

《バグルアップ!》

 

ガシャットを挿入口に入れ、隣のスイッチを押し・・・。

 

 

《デンジャー!デンジャー!(ジェノサイド!)デス・ザ・クライシス!デンジャラスゾンビ! (Woooo!)》

 

ドライバーから出現した黒い霧を纏い、同じく出現したウインドウを突き破るようにして変身。

 

骨を思わせる白と黒を基調とした左右非対称の装甲。右目が赤、左目の水色のオッドアイ。更にぎこちなく禍々しい動き。

 

いつものゲンムとはかけ離れた姿をしており、死霊とも言うべき禍々しい姿となっている。

 

十香、四糸乃、美九はその姿に恐怖を感じ震えた。

 

 

「私は・・・・・・仮面ライダーゲンム、レベルX(テン)!」

 

「レベルX(テン)・・・10!?」

「今のお前達はレベル5・・・それでは勝てない」

 

「・・・それでもやってやる!十香達は隠れてろ!・・・皆、行くぞ!」

 

《ドラゴナイトハンターZ!》

ドラゴナイトハンターZガシャットを起動、仮想ガシャットが三人に行き渡る。

 

《ファング!》

《ブレード!》

《ガン!》

《クロー!》

 

四人ともレベル5になり、四人同時にゲンムに挑んだ!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

結論から言うと、士道達は敗北した。撤退を余儀なくされる程であった。

 

レベルX(テン)となったゲンムはそれほどの強さと、特異な能力を持っていた。

 

 

四人は最初から全力で戦った。ゲンムに対して、全力で攻撃を仕掛ける。

 

しかし、ゲンムはそれを全く避けなかった。その攻撃を全て受けた。

 

しかし、その攻撃はゲンムに効いていなかった。

攻撃を受けても即座に黒い霧のようなものを纏いながら回復するように立ち上がった。

 

何度攻撃しても同じで、ゲンムは何事も無かったかのように士道達を徒手空拳で攻撃していく。

 

しかも、攻撃される度に士道達は自分達が弱くなっていく事を自覚していく。

 

「さっきからおかしい・・・どんどん力が出せなくなっていく・・・」

 

「それに、ダメージを受けてる様子もない・・・」

「いいだろう・・・教えてやる。私の胸元のライダーゲージを見てみろ」

 

「・・・・・・ゼロのまま!?」

 

胸のライダーゲージは初めから0になっており、死のデータを取るためにバグヴァイザーを突き刺した穴やカバーに入ったヒビもそのまま付いている。

 

「そうだ。ゾンビゲーマーの能力は、"不死"。どんなに攻撃を受けてもダメージを受けない。

 

ゲージが0になった瞬間の一時的に変身者への戦闘ダメージが無効化される状態が再現・維持されている。それによるものだ」

 

仮面ライダーの攻撃や必殺技が直撃しても、ダメージを受けてもすぐさま回復して無かった事にしてしまう。

 

攻撃と同時にドライバーや武器のシステムに深刻なバグを起こすプログラムを流し込むこともでき、自身の攻撃が命中するほどに戦闘能力を低下させられる。

 

更に頭部にはジャミング装置である「デッドリージャマー」も搭載されており、 ゲーマドライバーの装着者保護機能を停止させることができる。

 

以上の事を語り終えて、驚く士道達に黎斗はゆっくりと近寄る。

 

 

 

「以上の事を踏まえて、お前達に聞こう。

 

"既に死んでいる者に、どうやって死ねというんだ?"」

 

 

 

「ーーーっ!諦めるかあぁぁぁぁ!!」

士道は感じた恐怖に飲み込まれないように、叫び立ち上がる。皆も立ち上がり、ガシャットをスロットに入れる。

 

《ガシャット!キメワザ!》

《DRAGO KNIGHT!CRITICAL STRIKE!!》

 

四人が付けているパーツにエネルギーが溜まり、それを同時に放った!

 

それも黎斗はノーガードで受けるが、それもあっという間に回復して無かった事になってしまい、平然と歩いてくる。

 

どんな攻撃を受けても全く意味をなさない状態、その性能に皆が絶句していた。

 

「闇に消えるがいい・・・・・・」

 

黎斗は止めを差すべく、バグルドライバーのABボタンを同時に押して、Aボタンを押して必殺技を発動する。

 

《CRITICAL END!》

 

 

電子音声の直後、上空に飛び上がった後、高速で空中前転しながら回転蹴りを叩き込む!

 

皆はすぐに行動に移る。

全員が地面に対して攻撃して噴煙を作り、即座に撤退。

 

十香達も患者の少年を抱えてすぐに逃げ出し、全員が黎斗の必殺技を受ける前に逃げることに成功した。

 

黎斗相手に完全に"敗走"という事になったが、何とか犠牲者を出さずに済んだ。

 

「逃げたか・・・・・・まぁいい」

 

黎斗は呟き、その場を後にした。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

CRにて、状況の報告を済ませたが、重苦しい空気となっていた。

 

黎斗はレベルアップした上に不死の能力を得た仮面ライダーとなっていたのだ。

その黎斗に逃げることしか出来なかったのだから、皆は黎斗に完全に敗北したも同然だった。

 

 

「・・・・・・壇社長は相当厄介な力を得てしまった。今後の対応については慎重に行わないといけない」

 

「審議官の仰る通りだわん。ただ闇雲に戦うだけでは、どうやっても勝てないわ・・・」

 

「・・・俺は黎斗さんと戦い続けます」

「士道君・・・?」

 

皆の視線が士道に集中する。

 

「いくらとんでもない能力を得たからといって、俺達よりも強いからといって、黎斗さんの野望を止めない理由や言い訳にはなりません。

 

だから、これからも戦います。黎斗さんの野望を阻止するために、バグスターウィルスで苦しむ人達を助けるために」

 

 

士道は諦めていなかった。黎斗を止めることを・・・どんなに強くなっていても、士道は諦めない。

 

剛汰とエレナと宗次郎は、士道の意思の強さを尊重し頷いた。

 

そして少女達は、士道の真剣で力強い表情と意思に、顔を赤くして見惚れていた。

 

 

その後、皆で対策を話し合ったが、現状では良い方法が見つからなかった。

 

だが、士道のお陰で絶望的な雰囲気は無くなり皆に黎斗と戦う意思が強くなった。

 

黎斗は新たな力を得た。しかし、皆は諦めない。ゲーム病患者を救い、黎斗の野望を阻止する・・・その決意を改めて固めたのだった。

 




エグゼイド本編と違い、誰も消えませんでした。レーザーの生存です。

次回は第三章であり、デアラ原作二巻と三巻の間の物語になり、エグゼイド本編の十三話と十四話に相当します。


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第三章 八舞テンペスト
第一話 第三精霊・Berserk


三日連続更新です!

デアラのアニメが新シリーズ製作が決まり、今から楽しみです!

さて、今回登場する精霊ですが、原作より早い登場となります。理由は後書きに書きます。


仮面ライダーゲンム・レベルX(テン)との戦いから数日後。

 

壇 黎斗の野望を阻止すると改めて誓った五河 士道。そんな彼が今、何をしているのかというと・・・。

 

 

 

 

「さぁ、士道よ。この八舞 耶倶矢を選ぶがいい。

天上の甘露を味わえるぞ?」

 

「否定。耶倶矢を選んでも、得られるのはお子ちゃま体型だけです。是非、スタイルに自信のある、この八舞 夕弦に一票を」

 

「お!? お子ちゃまスタイルじゃないし!立派なレディスタイルだし!」

 

「溜息。胸の大きさが夕弦より小さい時点で、お子ちゃまです」

 

「小さ・・・っ!?私が気にしている事を~っ!」

 

「嘲笑。それが耶倶矢の限界です」

 

 

両手に花をしている。双子の美少女姉妹にして、風の力を持つ精霊。

 

八舞(やまい) 耶倶矢(かぐや)八舞(やまい) 夕弦(ゆづる)の二人である。

 

さて、何故こんなことになっているのかというと。

 

 

ーーーーーー

 

 

今朝。

 

「おはようだ、シドー!」

「おはよう、ございます・・・」

 

「あぁ、おはよう」

 

十香と四糸乃が五河家にやって来てご飯を食べる。これは当たり前の風景となっていた。

 

「シドー、今日の朝餉は何だ?」

 

「今日は焼きたてパンと野菜炒めだ」

「おぉ!」

 

どんな料理でもおいしく食べてくれる十香を見ると、作りがいもある。そう思いながら作っていく。

 

カットした野菜を油の引いたフライパンに入れて炒め、途中で、士道が作ったオリジナルの味の素(レシピは秘密)を入れて更に炒める。

 

これは士道が試行錯誤の末に編み出した物のひとつだ。

 

炒めている途中、パジャマ姿で白リボンをつけた琴里も起きてリビングに入ってきた。

 

 

「おはよ~」

「おはようだ、琴里!」

 

「おはよう。もうすぐ朝ご飯出来るぞ」

「はーい」

 

琴里は返事をすると、早速士道の隣にやってくる。

 

「おにーちゃん、何か手伝うことある?」

 

「もうほとんど終わってるからな。じゃあ、皿を並べてくれ。野菜炒めもあるから、大きめのを頼む」

 

「はーい!」

明るく返事した琴里が皿をテーブルに並べていく。琴里が並べた皿に出来立ての野菜炒めを盛る。

 

パンも焼き上がっている。バターを塗って野菜炒めを挟んで食べる。

 

これこそ野菜炒めのおいしい食べ方だ。

 

 

「「「いただきます!」」」

宣言した直後、一斉に野菜炒めを取りまくる。

 

しかし、十香が毎回多く取っていくため、山盛りにしておいた野菜炒めはみるみる減っていく。

 

士道は十香の相変わらずな食べっぷりに苦笑していた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

朝食後。片付けをして三人で学校へ向かう。

中学の琴里とは途中で別れて、十香と二人で歩いていく。

 

 

雑談しながら歩いていくと、途中で栞と折紙の二人と合流。

 

「おはよう。士道君、十香さん」

「二人とも、おはよう!」

 

「おはよう」

「うむ、おはようだ!」

四人で並んで登校する、この光景も当たり前になっていた。

 

校門に着いたところで、士道の友人である殿町 広人が士道に向かって突っ込んできた。

 

 

「士ーーー道ーーー!」

 

無言で避ける。

 

「ベフォア!」

カエルのように地面に倒れるが、すぐに復活した。

 

 

 

「士道貴様あぁぁ!美少女三人と登校?美少女を独り占めだと!?

男が一度は憧れるキャッキャウフフイベントをリアルで体験しているだと!!羨ましいんだよチキショーッ!そしておはよう!」

 

 

「おはよう。そしておやすみなさい」

「グンナイッ!?」

 

拳骨一発。これが一番早い広人への対処法。

痛がる広人だったが、一瞬で痛みが引いたのか、ケロッとして士道達の輪に入った。

 

教室に入り、各々が自分の席に着いたところで広人が話しかけてきた。

 

 

「そういや、最近多いよな」

「?何がだ?」

 

「突風だよ。ここんところ、急に強い風が吹き付けることが多くなっただろ」

 

広人の言うとおり、天気も時間も場所も問わず、世界各地で原因不明の強風が吹き荒れる事が多くなったのだ。

 

「まさか、ここでもそうなるとか?」

「んー、可能性はあるな」

 

「・・・そうか」

まぁ、強風といっても自然現象だ。必ず収まるだろう。そう思った士道は、これ以上考えなかった。

 

そこでタマちゃん先生が来たので、話は中断。ホームルームに突入。

 

 

放課後。士道は行きの時と同じ四人で下校。

 

「十香、学校には慣れてきたか?」

「うむ、勉強は難しいが、楽しいぞ!」

 

四人で歩いて、他愛のない事で盛り上がっていたその時、強風が吹き荒れる。

 

「だぁぁ!?」

 

広人の言っていた強風が、急に吹き出した。

 

「わわっ!?」

「やん・・・っ!?」

「きゃあっ!?」

 

十香と栞と折紙の悲鳴が聞こえたので急いで振り向くと、スカートがめくれて下着が見えていた。

 

白とピンクと水色であった。

 

男の子らしくそういう光景にドキドキしつつ、スカートを手で抑える三人に申し訳なく思いながら、風の吹いた方向を見ると、そこには女の子が二人で睨み合うように立っていた。

 

 

オレンジ色の髪をしていて、二人とも似たような顔立ちをしている。姉妹だろう。

 

何よりも目立つのは、服装だ。

 

ボンテージのように黒を基調とした露出の高い格好。

ベルトが巻き付いているようなものであり、首元には南京錠のようなものを付けていて、体には鎖が巻き付いている。

 

士道は精霊だ、と確信した。世界各地で起こっている突風の正体だろう。姉妹の精霊は初めてだ。

 

 

「皆・・・精霊が現れた」

「「「え!?」」」

 

士道は走って二人のいる現場へ向かい、他の三人も慌てて追いかける。

 

 

 

「夕弦よ。今宵この日、決着をつけようぞ」

「賛成。百回目のこの勝負を持って、終わりとしましょう」

 

「クックック・・・我は風の精霊王との契約者(コントラクター)。我の風は夕弦の風を上回る。大人しく降参するがよい」

 

「溜息。私達自身が風の精霊です。それに、負けるのは耶倶矢の方です」

 

どうやら仲はよくないのか二人の口論は加熱していき、ついに二人は戦おうとしだした。

 

精霊同士の衝突が危険と判断した士道は、止める為に行動する!

 

 

「折紙、ガシャコンソードを貸してくれ!」

「え!?」

「早く!」

折紙は驚きながらも、言われた通りガシャコンソードを呼び出して士道に貸す。

 

「三人はここにいろ!俺が戻ってくるまで、ここで待機だ!」

 

「シドー!?」

「士道!?」

「士道君!」

 

士道は全力で走りながらガシャコンブレイカーを呼び出して、ソードモードにする。

 

今まさにぶつかり合おうとしていた二人の間に入り、腕をクロスさせてガシャコンブレイカーとガシャコンソードを盾のようにして、二人を止めた。

 

「なっ!?」

「驚・・・愕!?」

 

「・・・痛ってぇ~!腕が痺れる感じだ・・・!」

 

精霊の攻撃を武器で受け止めたが、流石に衝撃は防げず腕に痺れるような痛みが走るが、それ以上の悪影響は無いようですぐに収まった。

 

 

「お前、一体何者だ?我らの決闘を邪魔するとは」

「俺は五河 士道。さて、ひとつ聞くが、君達は精霊か?」

 

「「!?」」

 

「俺はちょっと訳ありでな、精霊の事を知っているんだよ・・・で、お前達は何で争ってるんだ?」

 

「・・・ふ。いいだろう、教えてやる。ただし、ひとつ条件がある」

 

「何だ?」

 

士道が訪ねると、女の子はチラチラと士道の持っているガシャコンブレイカーとガシャコンソードを見ている。

 

「あなたの持ってるその剣・・・私も持ってみたいんだけど・・・」

「いいぞ、ほら。あ、青い剣は仲間から預かったやつだから乱暴にしないでくれよ」

 

士道が柄の部分を向け、それを手に取った。

 

「あ、ありがとう!私、八舞 耶倶矢!」

 

「さっきも名乗った通り、五河 士道だ。士道って呼んでくれ。それにしても君、そっちが本当の自分?」

 

「うっ・・・そうなんだよね。精霊っていう、人間を超越した存在だから、それらしい態度でいた方がいいって思って・・・・・・変かな・・・?」

 

「大丈夫だって。それくらいなら、充分個性の範囲内だって。それに、どっちもかわいいと思うぞ」

 

「!?・・・あ、ありがとう・・・」

 

耶倶矢は顔を赤くしながらお礼をいって、少し離れて、振るう。

 

 

「おおぉ!かっこいい・・・」

 

目を輝かせ、色々な方向に振るうその姿は、欲しかったおもちゃを得られた子供みたいで微笑ましい。

 

しかし、耶倶矢はちょっとドキドキする事や赤くなった顔を隠すため、あえてオーバーに振る舞っていたが士道はそこまでは気づけなかった。

 

すると、もう一人の方が士道の肩を軽く叩く。振り向くと、もう一人の子がいた。

 

「確認。あなたは耶倶矢を口説きたいのですか?」

 

「いや、そんなつもりは無くて。ただ、家族で争うなんて悲しい・・・そう思ってな」

 

「・・・家族」

 

 

「俺にも妹がいてな。兄妹を持つものとして、何か放っておけなくてな」

「納得。そうですか」

 

「まぁ、二人の事情も考えずに割り込んでごめん」

 

「謝罪。こちらも周りを考えずに戦おうとしてしまいました。謝るのはこちらです」

 

「じゃあ、改めて自己紹介な。俺は五河 士道」

 

「自紹。八舞 夕弦と申します。よろしくお願いいたします、士道。私の事は夕弦とお呼びください」

 

「OK、夕弦。早速だが、何で争っているか教えてくれないか?」

 

「了解。まず・・・」

 

ガシャコンウェポン二刀流を振るっている耶倶矢を置いて、夕弦が説明をする。

 

曰く。

 

 

二人は元々は一人の精霊だったが、何らかの原因で二人に別れてしまったらしい。

 

一人に戻ること事態は可能だが、その場合、どちらかの人格は消えてしまうという。

 

そこで、どちらの人格を残すかを決めるため、様々な方法で対決して決めようとしている。

 

「・・・・・・そうか」

「首肯。今回で百回目になります」

「夕弦よ。我は勝負方法を決めたぞ」

 

すると、満足したのか、耶倶矢が戻ってきて士道にガシャコンウェポンを返してくれた。

 

「疑問。勝負方法とは?」

 

「それは・・・・・・女性としての魅力だ!どちらが士道をデレさせるか、それで勝負だ!」

 

 

「・・・・・・え?」

「驚愕。魅力、ですか・・・・・・結論。夕弦も異論ありません」

 

「士道よ。我らはこれからお前に様々なアプローチをかける!そして、その上で我と夕弦のどちらが魅力的な女性か・・・それを決めよ!」

 

「肯定。決定権は士道の物です」

 

「・・・・・・なんでさ」

二人の話を聞いて、士道はそう呟くことしか出来なかった。

 

 

 

そして、士道は十香達と合流。折紙にガシャコンソードを返却して皆に簡単に事情を説明。

耶倶矢と夕弦には来禅高校女子の制服をコピーしてもらった。

 

士道の家に向かう途中二人は士道と腕を組んで、様々なアピールを仕掛けていく。

 

十香達は事情が事情とはいえ、嫉妬心から後ろでほっぺを膨らませたり、悲しそうな表情をしていた・・・・・・。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

そして、冒頭に繋がる。姉妹を両手に花である。

 

一応、琴里には電話で連絡済みである。一旦家に帰り、そこで話し合うことになった。

 

 

「士道よ。夕弦の脂肪と魔性の固まりに惑わされてはいかん。我の体こそ、女の魅力を体現しておるぞ!」

 

「反論。夕弦の胸には魅力と母性が詰まっています。耶倶矢のお子ちゃまスタイルには存在しないものです」

 

「お子ちゃまスタイルしつこいし!ってゆーか、平均以上だし!」

 

 

「うぅ・・・シドー・・・」

「士道・・・・・・」

「士道君・・・・・・」

 

美少女な姉妹精霊こと耶倶矢と夕弦に腕を組まれ、攻略されそうになり。十香と栞と折紙はヤキモチを妬いていて・・・。

 

「・・・・・・」

 

士道はこれから自分がどうなるのか、不安になっていた・・・。




次回予告

士道は八舞姉妹と一緒に、色々な事を経験していく中で少しずつ心を通わせていく。


第二話 デレさせWars!?


「いつから八舞の寵愛が、あの程度で終わりだと錯覚していた?」

ーーーーーーーーーー


原作より早く、二巻と三巻の間に八舞姉妹が登場となりました。

理由としましては八舞姉妹の話と、エグゼイド本編の十三話・十四話は相性が良いと思ったからです。

士道が新たなガシャットによって得た力と謎は、八舞姉妹の問題と似ている所がありまして、この話をするなら八舞姉妹も入れた方が良いと考えたのです。

五巻の話になった時は、また別の精霊とデートをする事になります。

ご了承いただけると幸いです。


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第二話 デレさせWars!?

お待たせいたしました。シンフォギアの小説更新を優先していました。


夜の五河家。そこのお風呂に二人の美少女が入っていた。

 

十香と栞の二人だ。

二人は一糸纏わぬ姿となり体を洗っていた。

 

 

「栞、背中の洗い合いをしようではないか!琴里とはやったことがあるのだが、栞とは初めてだからな」

 

「うん、お願い」

 

最初に十香が栞の背中を洗う。

 

「よいしょ、大丈夫か?痛くないか?」

「平気、へっちゃら~。十香さん上手だよ」

 

「そうか!良かった。以前琴里を洗っときは、力を入れすぎてしまってな」

「それは痛かっただろうね・・・」

 

さぞ、背中が赤くなっただろう。そう思いながら十香に洗われる栞。

 

 

「うむ、これで終わりだ」

「ありがとう」

 

シャワーで泡を洗い流してもらい、今度は栞が十香の背中を洗う。

 

「ふむ・・・・・・栞は丁寧だな、気持ちいいぞ」

「そう?良かった♪」

 

栞の洗い方はとても丁寧で、洗われている十香も気持ち良さそうにウットリしている。

 

洗い終えてからシャワーで洗い落とす。さらに、髪の毛も洗い合いをする。

 

十香は髪を少し乱暴気味に洗っていたが、それだと髪を痛めてしまうと栞が髪の丁寧な洗い方を教えていた。

 

体の全てを洗い終えて、二人で一緒に浴槽に入る。

五河家の浴槽は少女二人で入っても余裕のある大きさである。

 

「・・・・・・栞」

「はい?」

 

「何か・・・モヤモヤするのだ」

「モヤモヤ・・・?」

 

首を傾げる栞。十香は少し顔を俯かせ、胸元に手を当てながら答える。

 

「あの二人の精霊とシドーとくっついていたり、仲が良いところを見ていたら・・・胸がモヤモヤして・・・痛くて・・・何か、嫌な気持ちになって・・・」

 

十香は初めて抱く感情に戸惑いながら、感じたままに伝えた。そこまで語った十香の体を、栞が優しく抱きしめる。

 

「十香さん、私も同じ気持ち。でも、その気持ちは真っ当で尊くて、大切なものなんだよ」

 

「そう、なのか?」

 

「うん。その気持ちがあるということは、士道を心から大切に想っている証拠」

 

「シドーが、大切・・・・・・」

「私も、十香さんも・・・」

 

「うむ・・・」

 

「もう一度言うね。そのモヤモヤは、真っ当で尊くて、大切なもの。だから、どんなに苦しくてもその気持ちから逃げちゃ駄目なの」

「うむ・・・ありがとうだ、栞。少し、わかった気がする」

 

「そう?お役にたてて良かった」

 

二人は微笑みながら、引き続き入浴を楽しむ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

一方、四糸乃はリビングに通じる扉の影に隠れて中の様子を伺っていた。

 

リビングの中では、耶倶矢と夕弦にくっつかれている士道と、その正面に琴里がいて話し合っている。

 

ラタトスク司令官として、八舞姉妹と直接話して情報収集を行っているようだ。

 

「・・・士道さん・・・・・・」

先程士道から事情は聞いたが、自分から八舞姉妹と話すことは出来なかった。

 

少しずつ改善されているとは言え、まだまだ人見知りな所は残っている。

 

しかし、今隠れて見ている理由はそれだけではない。

 

士道に八舞姉妹がくっついているのを見ると、胸が痛む。嫌だという気持ちがどんどん溢れてくる。

 

士道が自分の手の届かない所に行ってしまうのではないか?・・・・・・そんな不安が押し寄せてくる。

 

四糸乃は初めて抱く感情をどうすれば良いのかわからず、リビングから離れて階段に座る。

 

「・・・・・・・・・・・・」

「うーむ・・・これは重症だねぇ。全く、士道君は罪作りな男の子だよ」

 

俯き、胸の痛みに耐えようとする四糸乃。よしのんはやれやれといった感じで慰めようとしたら、それより先に折紙が四糸乃を後ろから優しく抱きしめる。

 

「折紙さん・・・?」

「四糸乃ちゃん、不安なの?」

 

「・・・・・・はい。士道さんが・・・離れていっちゃうって・・・」

「うん、私も不安なんだ。でも、士道君は私達一人一人をちゃんと見てくれる、守ってくれる。

 

私はそんな士道君を信頼してる、だから・・・不安で痛くて苦しくても士道君は決して離れないって思えるの」

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

四糸乃は何も言わないが、心の中で自分の気持ちに向き合っていた。折紙はそんな四糸乃を優しく抱きしめたまま、そっと頭を撫でていく。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

現在、自家の琴里の部屋で琴里(黒リボン)と二人で話していた。

 

耶倶矢と夕弦の二人は「士道の部屋を見たい!」と言ったので、士道の部屋にいる。

 

 

「士道。《ベルセルク》は世界で初めて確認された、双子の精霊よ」

 

「あぁ」

 

「そして、風を操る精霊であり、非常に速く動くからラタトスクを含む精霊組織もほとんどその存在を把握出来なかったの」

 

「そうなのか・・・」

 

「今回のように、一ヶ所に留まるのは本当に稀な事。ラタトスクも最大のサポートをするけど、もし今回を逃したら・・・・・・」

 

「もう、会えないと?」

 

「プレッシャーをかけるような言い方しちゃってごめん。でも・・・」

 

言いづらそうな琴里の頭を優しく撫でる。

 

「家族がいがみ合うのは、放っておけない。何とかしてやりたい」

 

「・・・家族?」

「あぁ、家族だ」

 

「・・・あの二人が姉妹だから?私と士道みたいに?」

「俺達は兄妹だろ。まぁ、あの二人を仲直りさせる。それでいいじゃないか」

 

「そうね・・・。じゃあ、この話はこれでおしまいよ。今日の夕飯の準備を手伝うわ」

 

「あぁ、助かる。じゃあ、俺は耶倶矢と夕弦を部屋から出すから、その間に準備を頼む」

「えぇ。任せて」

 

 

琴里と一緒に立ち上がった士道が自室にいる二人を連れてこようとすると、先に耶倶矢と夕弦が戻ってきた。

 

「士道よ、今戻ったぞ!」

 

「・・・俺の部屋で何やってたか大体予想がつくが、あえて聞く。何やってたんだよ」

 

「フッ、我等は探していたのだ。色と性にまみれた色罪の書を!」

「解説。夕弦達は、男の子なら持っているであろう・・・その・・・そういう本を探していました」

 

「でも見つからないし。せっかくそういう本を頼りに士道の好みに合わせて誘惑しようとしたのに」

 

「いや、そんなもん無いからな」

「驚愕。男の子ならそういうものが好きなのではないのですか?」

 

「いや、まぁ・・・そうかもしれないけど、だからといって男なら誰でも持ってるとは限らないんだよ」

 

「ふむ・・・そういうものか・・・」

「首肯、そういうことにしておきます」

「しておくって・・・まぁいいや、今日の晩飯、食べていけよ」

 

「え、良いの!?」

「感謝、ご相伴に預かります」

 

「士道、具材は用意しておいたから、後は士道の仕事よ」

「ありがとう琴里」

 

すると丁度十香と栞が風呂から上がって出てきた。

二人ともパジャマ姿だ。折紙と四糸乃もパジャマ姿で合流。

 

「シドー、出たぞ。栞とは背中の洗い合いをしたのだ」

「お風呂、ありがとう」

 

「私と四糸乃ちゃんは、晩ご飯の後に入るね」

「はい・・・・・・あの、士道さん」

 

「ん?どうした四糸乃?」

四糸乃は士道の片手をそっと握る。

 

そのまま黙ってしまうが、四糸乃は士道ともっと触れ合いたいという気持ちと、士道が離れていってしまうのでは?・・・という不安があった。

 

そして、その手は少し震えていた。

 

士道はなぜ四糸乃が手を握ってきたか、何故震えているのか。四糸乃の表情を見て理由が薄々ながらもわかり、優しく四糸乃の手を包むようにくるむ。

 

「大丈夫だよ、四糸乃。俺はここにいる、四糸乃の手の届かない所に行ったりなんてしないから」

 

「・・・はい・・・!」

「ま、士道君にしては及第点かな~。完全にはわかってないみたいだけど」

 

士道に自分の気持ちが伝わり、温もりを与えてくれた事が嬉しく、笑顔になった。

 

よしのんは及第点を出しながらも、まだまだな評価であった。すると、今度は十香が士道に寄っていく。

 

 

「シドー・・・本当にいなくなったりしないな?」

 

十香も四糸乃も、士道が八舞姉妹に付いていって、いなくなってしまう事に心からの不安があった。

 

「あぁ、俺はちゃんとここにいるよ」

「本当の本当だな?」

「本当の本当だ」

 

「・・・わかった、シドーを信じるのだ!」

 

十香も喜び、士道の腕に抱きつく。

 

栞と折紙と琴里は、十香と四糸乃が元気になったことに安心し、士道が少しずつだが女心がわかるようになったことに安心していた。

 

「じゃあ私も士道にギュー♪」

「私も、良いかな?」

「んなっ!?・・・・・・士道、可愛い義妹も受け止めなさい!」

 

「ちょっ・・・おおお!?」

 

栞と折紙と琴里も、八舞姉妹がくっついていた事に内心でヤキモチを妬いていたので、十香達に続くように士道に抱きつく。

 

「・・・・・・夕弦、士道ってもしかして」

「確信、士道は天然の女たらしです」

 

「・・・だが、嫌な感じはせぬな。可憐な乙女達を惹き付けし禁断の果実だが、それは決して不快なものではない」

「同調。これは攻略のしがいがあります」

 

そんな騒動も何とか落ち着き、士道が夕飯を作る。八舞姉妹を含めた女子達がガールズトークで時間を潰していると、料理が完成した。

 

 

「さて、晩飯出来たぞ」

 

「「おぉ!」」

「よし・・・いただきます」

 

『いただきます!』

 

全員でいただきます。そして十香は相変わらず大食い。

そしてやはりというべきか、耶倶矢と夕弦がアピールしてくる。

 

「さぁ士道よ。我が捧げし供物を食らうがいい・・・ほら、あーん・・・」

「あ、ありがとう。あー・・・」

 

「・・・・・・士道、ちょっと可愛いし・・・」

「ん?」

「な、何でもない!」

 

すぐに普段の皮が剥がれて、素が出る耶倶矢。かわいい。

 

耶倶矢があーんで食べさせてくれたのは美味しくいただいた所で、夕弦が士道の袖を軽く引っ張る。

 

 

「要請。士道、夕弦にあーんすることを所望します」

「あ、あぁ・・・良いぜ」

 

具をとって、夕弦が小さく開けた口に入れる。

 

「モグモグ・・・美味、とてもおいしいです」

「それは良かった」

 

大人しくて静かな夕弦に、子供っぽい一面があるようだがそれは微笑ましく見れる。かわいい。

 

「「「「「・・・・・・」」」」」

「?」

 

ふと視線を感じたので見てみると、他の女子達が羨ましそうに見ていた。

 

(・・・八舞姉妹がいるからって、他の皆を放っておくのは駄目だよな)

 

士道は八舞姉妹を攻略しなければならないが、だからといって十香達をないがしろにしていいわけではない。

 

反省した士道は、十香達にもあーんをしたりされたりした。四人とも嬉しそうだ。

 

琴里は八舞姉妹を優先してと言ってたが、士道がお前も大事だからと言ったら顔を真っ赤にしながらも受け入れた。

 

その時・・・。

 

 

「お邪魔します!新たな美少女参加&だーりんにあーんをしてもらえると聞いてやって来ました!」

 

「邪魔するなら帰って~」

「はーい」

 

美九が乱入しようとして帰され「違います!させませんよぉ!」無かった。

 

「大体何で美九がここに?しかも今の状況を知ってるんだよ?」

 

「ふっふっふ、これもだーりんと美少女への愛が成せる技・・・と言いたい所ですけど、本当はこっそり覗き見してましたー」

 

「もしもしポリスメン?」

「あぁん、おまわりさん呼んじゃ駄目です!」

 

「もしもしポリスメン?」

「琴里さんもひどいですよー!」

 

「士道君、覗き見、ストーカー・・・うっ頭が・・・!」

「だ、大丈夫か折紙!?」

「大丈夫だよ十香さん・・・もう一人の私が涌き出てくるのを阻止しただけだから・・・」

 

「四糸乃ちゃん、美九さんみたいな女の子には、なっちゃ駄目だよ」

「え、あの・・・その・・・」

「栞ちゃん辛辣ぅ~」

 

「う~、皆意地悪です!本当はお菓子の差し入れに来たら賑やかなので、気になって見ただけですよー」

 

「わかってるよ、冗談だ」

「でも、私は深~く傷つきました。だから・・・そこの新しい美少女姉妹さん!私を慰めてくださあぁぁぁぁぁぁい!!」

 

「ひゃあぁぁぁ!こっち来たあぁぁぁ!?」

「戦慄、逃げられmモゴ」

 

「はぁはぁ、美少女成分がチャージされていきます・・・・・・あ、自己紹介が遅れましたー。私はアイドルやっている誘宵 美九ですよ!」

 

「「モゴモゴ」」

 

その後、士道が美九を引き剥がして落ち着いた所で改めて八舞姉妹と自己紹介しあったのであった。

 

ちなみに、士道は美九にも食べさせる事になったのであった。

 

 

そして夕飯後。八舞姉妹は精霊マンションの空き部屋の、同じ部屋に泊まる事になった。栞、折紙、美九は自宅に帰った。

 

琴里がマンションへ姉妹を案内している頃、士道は一人で風呂に入っていた。

 

「あぁ~、今日も疲れた。でも・・・耶倶矢と夕弦・・・か」

 

士道は今日出会った新たな精霊、耶倶矢と夕弦について考える。

 

二人が一人に戻る際、どちらかの人格が消える。だからこそ、どちらが残るかを決める。

 

「・・・・・・」

士道としては、二人が消えずに済む方法を見つけたい。でもそのような方法を二人が受け入れるだろうか?

 

(いや・・・ちょっと待て。二人は確か俺と会うまで99回戦っていて勝数が同じなんだよな?

 

49勝49敗1引き分けだと聞いたけど・・・二人の能力が互角だとしても、99回も決着がつかないのはあり得るのか?)

 

(流石にそれは考えづらい・・・・・・何か引っかかる。でもわからない)

 

二人の状況に違和感を感じたが、その詳細がわからず考え込む士道。

 

 

「入るぞ士道!我らが共に入浴してやろうぞ!」

「失礼。お邪魔します、士道」

 

「えええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

そこに裸体にバスタオルを巻いて、耶倶矢と夕弦が入ってきたのだ。

 

「な、何で入ってくるんだよ!?」

 

「いつから八舞の寵愛が、あの程度で終わりだと錯覚していた?」

 

「同意。夕弦達のアピールフェイズは、まだ終了していません」

 

「なん・・・だと・・・」

 

戦慄する士道に、耶倶矢と夕弦が迫っていく。

 

「さぁ士道よ、我にその身を委ねよ。さすれば桃源郷にいるかのような快楽を与えよう」

「誘惑、耶倶矢にはない魅惑の果実を授けます」

「待て待て待て待て待て!?」

 

二人が士道にくっつき、体を当てて来るが士道は必死に理性を働かせて、その誘惑に耐える。

 

数分間の攻防の末に、何とか耶倶矢と夕弦を離すことに成功。

 

湯船に浸かるままの士道の隣で、二人は体を洗い合っている。何とか耐えきった事に安心した士道。先程まで考えていたことについては、また明日考え直す事にしたのだった。

 

 

そして、耶倶矢と夕弦はパジャマに着替えて精霊マンションの自分達の部屋、その寝室で一緒に寝ていた。

 

「手強い・・・・・・!」

「同調。士道は本当に難攻不落です」

 

「・・・・・・でもさ。士道はちゃんと気遣いとか出来てるよね」

「首肯。女の子への対応はよい方です」

 

「何か、悪くないし」

「同意。悪くない感じです」

 

「・・・ふん。それでも勝つのは我だ。士道を我が存在なくして生きられぬ忠実なる者へと変えてみせよう。そして、我こそが真の八舞となるのだ」

 

「否定。勝つのは夕弦です。士道は夕弦の魅力にくらくらのメロメロとなるのです。八舞の主人格も渡しません」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

翌日。八舞姉妹のデレさせ対決も残っているなか、今日もまた日は昇る。

 

朝食は自分を含めて六人分作り、食べ終わってから学校へ。

 

士道達が学校に行っている間、大人しく留守番する事を耶倶矢と夕弦に約束させた。

 

 

そして、授業を終えて放課後。

 

八舞姉妹の為に早く帰ることにした士道が、校門まで来ると、そこには待ち人がいた。

 

「待っておったぞ士道!」

「慰労。勉強、お疲れ様です。士道」

 

八舞姉妹がやって来た。来禅の制服を着て。

 

「二人ともどうしたんだ?」

 

「フフフ、お前を待っていたのだ、士道。

勉学より解放されし時を共に過ごす時間のために!」

 

「解説。琴里から聞きました。放課後デートというやつです」

 

二人は学生デートの定番の一つ、放課後デートをしたいらしい。

副担任となった令音が、「・・・今日はインカムを着けておいた方がいいよ」と言った事に納得した。

 

『士道。放課後デートというシチュエーションで行くわよ。いつでもサポート出来るわ』

 

琴里の声がインカムから聞こえる。フラクシナスクルーもやる気に満ちている。

 

「OK、じゃあ行くか」

「うむ!」

「同意」

 

 

まず最初はゲームセンター。

 

耶倶矢と夕弦が遊ぼうとしているのは、幻夢コーポレーションが開発したゲームのアーケード版だ。

 

「くはははは!ジェットコンバットは我の得意なゲームだ!この最高難易度もクリアしてみせよう!」

 

ーGAME OVERー

 

「・・・・・・」

「嘲笑。プークスクス」

「やめてさしあげろ」

 

「鼓舞。ドレミファビート、夕弦の得意ゲームです。最高難易度を攻略してみせましょう」

 

ーGAME OVERー

 

「・・・・・・」

「ぶはははは!だっさー!」

「やめてさしあげろ」

 

 

「せっかくいいところを見せてやろうと思ったのに」

「まぁ、そういうときもあるだろ。次は何処がいい?」

 

「提案。士道、あなたが決めてください」

「俺?」

 

「首肯。士道が選んでください」

「どのような所でも、我の魔性の魅力を見せてやろう」

 

 

(そうだな・・・どこにするか)

士道が考えていると、琴里から連絡が入る。

 

『士道。フラクシナスのAIが選択肢を出したわ』

 

フラクシナスのAIが、久しぶりに選択肢を表示したのだが・・・。

 

 

『①ボウリングで勝負。②喫茶店で休憩兼アピール。③大人になれるホテルで性なる対決。

 

・・・・・・総員選択、五秒以内。ただし③、テメーはダメだ』

 

『んもう、司令ったら。③が選ばれたら士道君と八舞姉妹がアハ~ンな事をしちゃうのが嫌だからって!

ブラコンな司令が可愛すぎて昇天しちゃいギィィィィィィィ!!ありがとうございます!』

 

フラクシナスクルーの皆による集計の結果、①が選ばれた。

 

 

早速行こうとしたその時、黒いゲームエリアが展開された。更に、突然奇声を上げてバグスターウィルスの集団が現れた。

 

全てがボロボロの服装で、動きもゾンビのようにぎこちない。

 

「え、ちょっ・・・なにあいつら!?」

「驚愕・・・何ですかあれは・・・」

 

『司令、突如バグスターが出現!ゲームエリアの展開も確認!』

 

『直ちに発生箇所を確認、恐らく檀 黎斗がいるはずよ!

 

士道、そいつらはきっとデンジャラスゾンビのバグスターウィルスよ!気を付けて!』

 

「もちろんだ!」

 

フラクシナスの面々が、ゲームエリアの中心に黎斗がいると考え、その特定を急ぐ。

 

「二人は動くな、あいつらは俺が倒す!」

「「士道!?」」

 

士道はガシャコンブレイカーを呼び出し、ソードモードにしてバグスター達に斬りかかる。

 

このバグスターウィルス達は、動きがゾンビっぽい事を除けば今まで通りの強さしかない。

 

ガシャコンブレイカーを手に縦横無尽に動き回って、バグスターウィルスを切り裂いていく。

 

後ろから不意討ちを仕掛けようとしたウィルスには、回し蹴りで対抗。

 

そして三分も経たずに、バグスターウィルス達を倒してしまった。

 

『司令!士道君達がいるところに向けて、車が走っています!』

 

『停車して人が降りました・・・檀 黎斗です!士道君の所に向かっています!』

『士道、檀 黎斗がそっちに!』

 

「あぁ・・・」

 

 

「見事だ、ますます強くなっているようだね」

「黎斗さん・・・何のつもりです」

 

琴里からの報告通り、檀 黎斗が姿を現す。

 

「両手に花・・・いや、両手に精霊というべきかな?」

「!?・・・今、精霊って・・・」

 

「私は既に、精霊の存在を把握している。

それに、昨日そこの二人が喧嘩していて、君が仲裁していた所は私も見ていたよ。見かけたのは偶然だがね」

 

『何て事・・・既に精霊の存在を知ってたなんて・・・!』

 

琴里は黎斗を警戒して精霊の存在を教えなかったが、既に知っていた事は知らなかったので、士道も琴里も驚いてしまう。

 

「さて・・・本題に入ろう。五河 士道・・・君の持っているガシャットを回収する。それらは私が作った物だ、返してもらうよ」

 

《デンジャラスゾンビ!》

「グレードX(テン)、変身!」

 

黎斗はガシャコンバグヴァイザーを装着し、デンジャラスゾンビガシャットを起動し、変身する。

 

《マイティアクションX!》

「第二変身!」

 

士道もゲーマドライバーを装着し、ガシャットを起動して変身する。

 

 

「嘘・・・変身した・・・!?」

「困惑・・・一体何が・・・!?」

 

耶倶矢と夕弦は士道と黎斗が変身した事に驚き、一歩下がる。

 

その際の足音が、二人の戦いを開始を告げるゴングとなり、二人の戦いが始まった!

 




次回予告

士道は黎斗と戦うが、不死身の力を得た彼に苦戦する。
更に、戦いだけでなく大変な事が起こる・・・。


第三話 Twinsを守れ!


「こんな事になるとはな・・・」



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第三話 Twinsを守れ!

大変お待たせしてしまい、すみません!

全話の書き直しを行いました。登場人物の名前や話の追加等、結構変わっていますので、この話を読む前に読み直してくださると嬉しいです。

一応、後書きに主な変更点を書いておきますが・・・。


「グレードX(テン)、変身!」

「第二変身!」

 

黎斗がゲンムレベルXに、士道がエグゼイドレベル2に変身し、戦闘を開始した。

 

士道は八舞姉妹を守るために、黎斗はガシャットを回収するために。

 

 

士道がガシャコンブレイカーのハンマーで殴りかかる。

 

黎斗はそれをノーガードで受けるが、やはりダメージは無い。

 

「わかっているはずだ、今の私は不死身だと」

すると、黎斗はガシャコンブレイカーを呼び出し、ハンマーモードにして構える。

 

デンジャラスゾンビには専用のガシャコンウェポンが無い。よって、他のガシャットから呼び出す必要がある。

 

今のガシャコンブレイカーは、プロトマイティアクションXガシャットから呼び出したのだ。

 

士道と黎斗、二人の振るったハンマーがぶつかるが、拮抗したのは一瞬。

士道のハンマーが力負けし、士道が後ろに下がる。

 

「だったら・・・!」

 

《ゲキトツロボッツ!》

「第三変身!」

 

ゲキトツロボッツガシャットを起動して、レベル3となる。

 

素早く接近し、左腕のアームで連続で殴り、キックも混ぜた格闘を叩き込む。しかし、仰け反らせ後ろに下がらせたが結局ダメージはない。

 

「不死身だろうがなんだろうが、諦めない!」

「無駄というのがなぜわからない?」

 

黎斗はプロトバンバンシューティングガシャットからガシャコンマグナムを呼び出し、ほぼゼロ距離で士道に発砲。

 

ダメージを受け、火花をあげながらよろける。そこに黎斗がガシャコンブレイカーをソードモードにして連続で斬りつける!

 

「チィッ・・・!」

 

《ドラゴナイトハンターZ!》

「第五変身!」

 

連続でダメージを受けた士道は一旦下がり、ドラゴナイトハンターZガシャットを起動し、レベル5のフルドラゴンになる。

 

一人で焦っていた時の士道と違い、精神的にも成長した今の士道ならフルドラゴンをコントロールできる。

 

「フルドラゴンをコントロール出来るようになったか・・・・・・だが無駄だ」

 

フルドラゴンの力で攻撃を仕掛けるが、黎斗はそれを片手で受け止め、上に放り投げてムーンサルトキックで蹴り飛ばしてしまう。

 

「「士道!」」

「来るな!!」

 

駆け寄ろうとした耶倶矢と夕弦を、士道は鋭い声で制する。起き上がり、再び黎斗に向かおうとしたその時、黎斗に向けて大きめのゴミ箱が投げつけられる。

 

「シドーをこれ以上傷付けるのは、許さんぞ!」

「士道さん、大丈夫ですか・・・?」

 

「十香、四糸乃!?」

十香と四糸乃が救援に駆けつけたのだ。先程のゴミ箱は十香が投げたのだ。

 

「四糸乃と一緒に買い物に行っていたら、爆発音が聞こえてな・・・。それで駆けつけた!」

 

「士道さんに、酷いことをしないでください・・・!」

「精霊か・・・力を十全に振るえない君達に何が出来る?」

 

「行くぞ四糸乃・・・練習の成果を見せるのだ」

「はい・・・!」

 

 

 

 

 

「「変身!」」

 

二人が士道達と同じように言うと、光に包まれて天使と霊装が出現した!

 

 

封印が行われた精霊は力のほとんどを失い普通の人間に近くなる。

 

二人が仮面ライダーへの変身を参考にしたイメージを持って特訓した事によって、変身の掛け声によって天使と霊装を不完全ながら顕現出来るようになったのだ。

 

不完全な霊装は、霊装の一部が着ている服に合わさったような外見だ。

 

天使は鏖殺公はそのままだが、氷結傀儡は二メートル位の大きさになっている。

 

「精霊の力が出ている・・・だと!?」

 

「シドー達が仮面ライダーに変身するのを参考に練習したら、出来たのだ。さぁ、行くぞ四糸乃!」

 

「はい・・・!」

「四糸乃とよしのん、いっきまーす!」

 

驚く黎斗に向けて、十香と四糸乃が攻撃を仕掛ける。

 

四糸乃が氷結傀儡の口から、極寒の吹雪の竜巻を放つ。黎斗はそれをかわし、ガシャコンマグナムで四糸乃を撃とうとする。

 

しかし、事前に黎斗が避ける位置を予測していた十香は黎斗の横に先回りしており、鏖殺公で切りつける!

 

四糸乃の吹雪は、先回りする十香の姿を隠すためでもあったのだ。

 

万全ではないとはいえ精霊の、天使による一撃のダメージは大きく、黎斗は持っていたガシャコンウェポンを手放して倒れてしまう。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

《DRAGO KNIGHT!CRITICAL STRIKE!!》

 

更に、その隙を狙って士道がドラゴナイトハンターのキメワザで、エネルギーを限界までチャージした両腕の剣と銃で連続攻撃を加えていく。

 

そのダメージはすぐに回復して立ち上がるが、状況が不利と悟り無言のまま撤退していった。

 

これ以上の攻撃はないと判断した士道は、変身を解いて十香と四糸乃に助けてくれたお礼を言った。

 

「ありがとう。十香、四糸乃・・・お陰で助かった」

「何を言う、シドーの力になるのは当然ではないか!」

 

「士道さんのお役にたてて、良かったです・・・」

 

すると、戦いを見ていた八舞姉妹が士道達に駆け寄り・・・。

 

「士道!さっきまでのは何!?ちゃんと説明して!」

「同意、耶倶矢の言うとおりです。説明を要求します」

 

「落ち着けって、ちゃんと話すから。実は・・・」

 

士道が事情を説明すると、耶倶矢は目を輝かせる。

 

 

「人々を脅かす未知のウィルス、それと戦う仮面の戦士・・・・・・格好いい!士道、それ貸して!私も変身したいし!」

「ちょっ、落ち着けって!?」

 

興奮して士道に詰めより、ゲーマドライバーとガシャットを借りようとする耶倶矢を何とか落ち着かせる士道。

 

夕弦はそんな耶倶矢に呆れたのか、小さく溜息を吐く。

 

「溜息・・・はぁ。耶倶矢、そんなんだから胸も性格も好みもお子ちゃまなのです」

 

「はぁ!?」

「事実。その通りではないですか、今も昔も格好いいものに惹かれたり言い方が変だったり・・・・・・」

 

「その方が精霊っぽいでしょ!私達は人間を超えた存在だし、そのように振る舞うべきだし!」

 

「嘲笑、精霊らしさといっても・・・耶倶矢のはズレているではないですか」

 

「何ですってぇ!?ガルルルルル!」

 

「二人とも、ケンカはダメだぞ!」

「お、落ち着いてください・・・!」

 

喧嘩のように言い争う二人を、十香と四糸乃が止める。

 

だが・・・・・・この言い争いが悪かったのか・・・・・・。耶倶矢に大きなストレスがかかり・・・。

 

「あーもー!夕弦、いい加減に゛っ!?」

「・・・耶倶矢・・・?」

 

突然、言葉を止めて固まってしまう耶倶矢。そして、そのまま倒れてしまった。

 

 

「お、おい耶倶矢!?」

「耶倶矢、大丈夫か!?」

 

士道と十香が駆け寄って助け起こす。オレンジ色の稲妻が走り、まさかと思いながら士道がスコープで見てみると・・・。

 

 

「ゲーム・・・病!?」

 

耶倶矢に、ゲーム病の症状が検出された。更に、耶倶矢からバグスターが現れた。それは、アランブラだ。

 

「フハハ、アランブラ降臨である!しかし、この場はすぐに撤退するのだ!」

 

アランブラは現れてすぐに、体を粒子にして去っていってしまう。

 

 

予想外にして最悪の事態・・・・・・精霊が、耶倶矢がバグスターウィルスに感染してゲーム病を発症してしまったのだ!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

耶倶矢にバグスターウィルスが感染、ゲーム病を発症してしまう。

耶倶矢から分離したバグスター・・・アランブラは姿を消してしまい、まだ見つかっていない。

 

急いでCRに運ばれ、今は専用のベッドで横になっている。報告を聞いて、折紙と栞が駆けつけてくれた。

 

更に、琴里と令音も精霊がゲーム病という緊急事態の為か、CRに駆けつけている。

 

今、士道と夕弦が耶倶矢の側についている。

 

「士道・・・私は今、どうなってるの・・・?」

「耶倶矢・・・・・・お前は今、バグスターウィルスに感染して、ゲーム病になってしまっている」

 

「・・・・・・これが士道の言ってたゲーム病・・・そっか、このままだと私は・・・・・・」

 

「・・・・・・動・・・・・・揺・・・・・・・・・耶倶矢、夕弦は・・・・・・」

 

「こんな事になるとはな・・・・・・」

 

夕弦の顔色は悪く、今にも倒れてしまいそうで泣き出してしまいそうだ。現に今、目元に涙が溜まっている。

 

 

「大丈夫だ、二人共。感染したバグスターを倒せば、耶倶矢のウィルスは消えて健康な体に戻れる」

 

「懇願・・・・・・士道・・・お願いします!耶倶矢を・・・耶倶矢を助けてください!!」

 

堪えきれず、涙を流し士道に懇願する夕弦。

 

その必死さは本気だ。どちらが残り、どちらが消えるかを競っていたとは思えないほどに。

 

士道は夕弦の様子を見て、耶倶矢を救うことを決心する。

 

「もちろんだ、必ず助ける・・・・・・耶倶矢、俺達に時間をくれ。必ずバグスターを倒してお前のゲーム病を治してみせる」

「そうだぞ、耶倶矢!シドー達に任せれば安心だぞ!」

 

「私達に任せて、絶対助けるから」

「もちろん、私も協力するから」

「耶倶矢さん・・・・・・元気出してください・・・」

 

士道は強く、誓いの言葉を口にする。他の皆も耶倶矢を励ます。

 

「士道・・・・・・皆・・・・・・」

耶倶矢は顔を士道達の方に向けて・・・。

 

 

 

 

 

「私の事は・・・助けないで。このままで良いから・・・・・・死なせて」

 

 

 

 

 

耶倶矢以外の皆は、一瞬耶倶矢が何を言ったのかわからなかったが、今理解した。耶倶矢は・・・死ぬ気だ。

 

「ーーーっ!?何言ってんだよ耶倶矢!!」

「・・・・・・耶倶矢?」

 

士道は思わず叫び、夕弦は呆然と耶倶矢の名前を呼ぶことしか出来ない。

 

「・・・・・・・・・ごめん、でも・・・いい」

 

「・・・・・・っ!!」

 

「・・・・・・もう、いいから」

 

耶倶矢はそれきり、他の皆が何を言っても答えなくなってしまう。まるで、周囲に心を閉ざしてしまったかのように。

 

夕弦はショックの余り、泣きながらCRから走って去ってしまう。士道は十香達に耶倶矢の事を任せて、夕弦の方を追いかけていく。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「夕弦ーーーーーっ!どこだーーーーー!」

 

士道はあれから探し回っているが、夕弦の姿は見つからない。

 

川の近くにあったベンチに座って少し休みながら、耶倶矢がなぜ助けないでと言ったのかを考える。

 

耶倶矢と夕弦、二人は元々一人の精霊であり、何らかの理由で二人に別れてしまった。

現在は一人に戻った際の主人格を決めるためにあらゆる方法で争ってきた。

 

しかし、現状引き分けであり士道をデレさせる事で決着をつけようとした。

 

どちらも己が主人格になることを目指しているにも関わらず、いつまでも決着がついていない状態が続いている。

 

昨日も風呂に入っていた時に感じた違和感をもう一度考え直して・・・・・・士道の中で一つの仮説が浮かぶ。

 

「まさか・・・・・・」

確証はない、しかし今はそれしか考えられない。

 

真偽を確かめるためも含めて、改めて夕弦を探そうとしたその時、士道の前に一人の男が立ちふさがる。

 

「よぉ、士道」

穏やかな笑みで士道に声をかけてくる。

 

「俺はパラド、グラファイトと同じバグスターだ」

「っ!?」

 

咄嗟に身構える士道だが、パラドは気にせず続ける。

 

「警戒するなよ、今はお前と戦いに来たんじゃない。話をしに来たんだ」

「話・・・?」

 

 

「精霊を救いたいか?でもな、それは無理ゲーだぞ・・・・・・あの精霊とのやり取りはコッソリと見させてもらった。その上で言ってるんだよ。

 

死にたがってる奴を助けてどうする?

 

世の中には、"死こそが救い"って奴もいる。そういう奴も無理矢理生かすのが医者だというのか?」

 

「・・・・・・お前の言うことにも一理ある。確かに、死を望む者がいるのは否定しない。でも、耶倶矢は()()

 

「違う?あいつは死を望んでいただろう」

「言葉として発した事が、必ずしも本心という訳じゃねぇんだよ」

 

士道はパラドを睨みながら、ハッキリと宣言する。

 

「覚えておけ。人間も精霊も、お前が思っている程単純じゃない、言葉や表情だけでは計れないものがあるんだよ!」

 

パラドは士道の言葉に、パラドは何か思うところがあったのか、決して否定せず「そうか・・・」と呟いただけだった。

 

「俺は必ず二人を救う。お前が何を言おうと、黎斗さんが邪魔しようとも諦めねぇ!」

 

「・・・・・・なら、やってみせろよ」

パラドはあるものを取り出して、士道に向けて投げ渡した。

 

士道が見てみると、それはガシャットだ。これまでのガシャットよりも分厚く、全体が真っ黒だ。

 

「そのガシャットは、ゲンムが俺用に開発した新型のガシャットだ。

 

ただし、大量のバグスターウィルスが入っているから、人間が使ったら命に関わるかもしれないな。そいつを使ってみろ、お前の運命が決まる」

 

そこまで言って、パラドは姿を消した。士道は少しの間黒いガシャットを見ていたが、気を取り直して夕弦を探す。

 

 

そして、自然公園の中に入ったその時、ゲンム・レベルXに変身した黎斗と、黎斗と合流したアランブラが現れた。

 

 

「見つけたぞ、君のガシャットを回収する」

「我が魔法の餌食になるが良い!」

 

「・・・・・・やってやるよ」

士道は覚悟を決め、ゲーマドライバーを装着。

 

そして、パラドが渡した黒いガシャットを持つ。

 

「!?何故それを・・・パラドか!」

スイッチを押して起動し、ドライバーにセットする。瞬間・・・・・・。

 

「!?・・・・・・ア、グアアアアアアァァァァァァァァァァ!!!」

 

ガシャット内部の大量のバグスターウィルスが士道を蝕む。密度が濃く、黒い煙のようにハッキリと可視化している程に。

 

「パラドの奴め・・・中々エグい事を考える」

苦しむ士道。どんどん遠のく意識・・・・・・そんな中、士道は・・・・・・。

 

「こんな所で・・・・・・終わってたまるかあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

目が赤くなり、Sの人格になって叫ぶ。すると、バグスターウィルスが士道の遺伝子に干渉し、士道の力のデータを取り込んで更なる力を発揮する。

 

ウィルスがオレンジと青緑の二色の光となって黒いガシャットに吸い込まれ、その力によってガシャットは新たな色、名前、力を得た!

 

 

《マイティブラザーズXX(ダブルエックス)!》

 

タイトルとゲームエリアが展開される。ガシャットにも色とイラスト、名前が新たに刻まれた。

 

「第十変身!」

 

《ダブルガシャット!》

《ガッチャーン!レベルアップ!》

 

《マイティブラザーズ!2人で1人!マイティブラザーズ!2人でビクトリーX!!》

 

キャラクターセレクト画面で、今まで「?」となって隠されていたパネルが解放される。

 

それを選ぶことによって士道はダブルアクションゲーマー・レベルX(テン)に変身した!

 

レベル1と同様の体形だが、頭髪が右はオレンジ色で左は青緑色になっており更に力もこれまでのレベルとは比べ物にならないくらいに高まっている。

 

ライダーゲージも三本に増えており、今まで以上に戦えるようにもなるだろう。

 

士道はレベル1の時のように縦横無尽に動き回り、黎斗とアランブラを攻撃していく。

 

その力と動きはこれまでのレベル全てを上回っており、両者を圧倒している。

 

 

「認めん、認めんぞ!ゲームマスターの私に許可なく、ガシャットを作り出すなど!」

 

黎斗はプロトタドルクエストガシャットから、ガシャコンソードを呼び出し、氷剣に変えて地面を凍らせる事によって動きを封じようとする。

 

更に、アランブラも魔法を発動して攻撃を仕掛ける。

 

しかし、士道は高くジャンプして氷を回避。上空からの飛び蹴りで黎斗を蹴り飛ばし自分も氷の範囲から逃れる。

 

追いかけてきたアランブラに、急速接近して頭突きで吹っ飛ばしてしまう。

 

「やるな士道。レベルXのゲンムと互角・・・いや、圧倒している。エグゼイドのレベルX(テン)か」

 

パラドが木の上から、士道の様子を見守っていた。

士道は更に、レバーをもう一度閉じ再び開く。

 

「第二十変身!」

それにより士道は・・・エグゼイドは・・・。

 

《ガッチャーン!ダブルアップ!》

 

《俺がお前で!お前が俺で!(ウィーアー!)マイティ!マイティ!ブラザーズ(ヘイ!) XX(ダブルエックス)!!》

 

レベルXX・・・つまりレベル20にレベルアップした。そして・・・。

 

 

 

「「ノーコンティニューで、クリアする!・・・・・・ん?」」

 

「「ん?」」

「ん?」

 

士道が、黎斗とアランブラが、パラドが驚き目を疑った。何故なら・・・。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「・・・・・・はぁ!?」」

分裂した士道はお互いを認識し、思わず声をあげてしまった。

 

 




次回予告


士道は語る、耶倶矢の真意を。夕弦は流す、涙を。耶倶矢は・・・。


第四話 涙とReal intention


「私・・・・・・私は・・・・・・!」


ーーーーーーーーーー


変更点については、未読の方はネタバレになりますのでご注意を。


① 序章を三人称に書き直し。

② 栞と薫が風鳴一族の人間に。父親はシンフォギアの風鳴 弦十郎。一章八話後編に登場。

③ 衛生省の幹部が、エグゼイド本編と同じ日向 恭太郎に変更。

④ 一章十一話後編に、適合手術の話を追加。

⑤ エピソードZEROの一部修正。


他にも細かく直しているので、後書きを先に読んだ方も、読み直してくださると幸いです。


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第四話 涙とReal intention

投稿が遅くなってしまい、本当に申し訳ございません!

仕事が多忙であったり、家庭の事情でも忙しく、中々書く事が出来なかったのですが、少しずつ書いていました。

今は仕事も落ち着き、家庭の事情も一段落ついた感じなので、ここからは数話分書き溜めしてるのを書いていけるかなと思ってます。

久しぶりなので、変な所が無いかが不安です・・・。
今の目標は、今月中に第三章を終わらせることです。

それでは、どうぞ!


あの後、何があったかを語ろう。

 

 

士道が新たに変身したのは、エグゼイド・ダブルアクションゲーマーレベルXX。

 

オレンジ色と青緑色の二人に分裂、しかもそれぞれが独立した意思を持っていた。

 

オレンジ色の方は、ダブルアクションゲーマーレベルXX R(以降、士道R)は天才ゲーマーSの人格。

 

青緑色の方は、ダブルアクションゲーマーレベルXX L(以降、士道L)は五河 士道の人格。

 

というようになっていた。

 

しかも、士道Rは黎斗を倒すことを優先しようとする。

士道Lは耶倶矢の為に、アランブラを先に倒すことを優先しようとする。

 

両者の意見は見事に食い違い、同一人物同士のケンカになってしまった。

 

そんな様子に呆れたのか、黎斗は何も言わずにアランブラを連れて去っていった。

 

二人が気づいた時には誰もいない。士道Lが変身を解くと、士道Rが吸収されて元の士道に戻った。

 

しかしその瞬間、士道の頭に痛みが走る。

その頭痛は強く、士道は痛みで気を失いそうになるのに必死に耐え、少しして痛みが収まった。

 

士道は片手で頭を抑えながら、今の最優先事項である夕弦の捜索を再開する。

 

すると、戦闘のあった場所から離れているが同じ敷地内に夕弦で姿があった。

 

どうやら戦闘音は聞こえていなかったようで、体育座りで腕の中に顔を埋めて泣いていた。

 

 

「夕弦!」

「!・・・・・・士道?」

 

夕弦に近づいて声をかけた。夕弦は驚きながらも顔を上げて士道の姿を見る。

 

「探したぞ・・・・・・夕弦、もう一度耶倶矢の所に行こう」

「・・・・・・拒否。耶倶矢はもう・・・・・・夕弦の事なんて・・・・・・」

 

 

「あの時の耶倶矢の口から出た言葉が、耶倶矢の本心だとは限らない。確かめよう・・・・・・耶倶矢の本当の気持ちを」

 

「・・・・・・」

「行こう、例え辛い結果になるとしても聞くんだ!耶倶矢の本心を!」

 

「・・・本・・・心」

 

夕弦は迷いながらも、決心して士道の差し伸べた手を握り立ち上がった。耶倶矢の本心を聞くために・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

天宮総合病院、CR。士道と夕弦が戻ってきた。耶倶矢は変わらずであるようだ。

 

栞達の姿が無いが、少し前にゲンムとアランブラの出現連絡が入り、そちらに向かった。

 

今は剛太、十香、四糸乃、美九、琴里、令音が説得を続けていたようだ。

 

「私達も説得してみたけど・・・」

「・・・・・・俺に言わせてくれ」

 

士道は耶倶矢の隣に立ち、耶倶矢に言う。

 

「耶倶矢、そのままでいいから聞いてくれ」

「・・・・・・」

 

「耶倶矢が治療を拒否した本当の理由は・・・・・・・・・()()()()だろう?」

 

ピクリ、と反応する耶倶矢。士道はその反応を見逃さず、予想が当たっていた事を確信しながら語る。

 

 

「八舞は元々一人の精霊だったけど、二人に・・・耶倶矢と夕弦に別れた。だから二人は一人に戻った時の主人格を決めるために戦っていた」

 

「でも、少しおかしいと思った事がある。二人は確か俺と会うまで99回戦っていて勝数が同じなんだよな?

 

49勝49敗1引き分けだと聞いたけど・・・二人の能力が互角だとしても、99回も決着がつかないのはあり得るのか?ってな」

 

「最初はわからなかったけど、今ならわかる。耶倶矢、そして夕弦も()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・・・・これが真実だろう?」

 

士道の言葉に、耶倶矢と夕弦は目を見開いて驚いていた。その反応は、士道の推察が正しい事の証拠だった。

 

「耶倶矢が治さなくていいと言ったのは、自分がゲーム病で消えれば夕弦が残れるから・・・・・・お前は夕弦の為にゲーム病で()()しようとした!」

 

「自殺ですって!?」

 

琴里は思わず声に出してしまう位驚いた。他の面々も声には出さなかったが、同じくらい驚いた。

 

「精霊の能力の源・・・霊結晶(セフィラ)っていうんだっけ・・・それはゲーム病で精霊が消えるとどうなるかはわからない。

 

でも、霊結晶が残れば夕弦はそれを継いで八舞になれる。霊結晶が残らなくても、夕弦は消えることは無くなって生きていける・・・・・・そう考えたんだろう?」

 

そこまで語った士道は最後に、耶倶矢と夕弦に言う。

 

「二人とも、俺はそういうのは認めたくない。俺は二人に生きてほしい。その為の方法もある。

二人は精霊の力を大きく失う・・・それと引き換えに一緒に生きられるようになる」

 

「「!?」」

士道からの情報に、驚く耶倶矢と夕弦。

 

「俺は、二人の事をいい子だって思ってる。負けようとしたのも相手を思っての事だし、今日のデートの時も俺はすごく楽しかった。

 

それに俺がゲーム好きって知ってたから、ゲーセンに行ってくれただろ?他にも色々気を使ってくれて。

 

そういう細かい気遣いも嬉しかった。本当に優しい子達だって思った」

 

士道は耶倶矢と夕弦の手を優しく握る。

 

「そんないい子な二人を俺は助けたい。だから二人とも、本音で話し合ってみないか?伝えるんだ、自分の本当の気持ちを」

 

士道はそこまで言ってから離れ、十香達と合流。皆は一旦離れて様子を見る。

 

少しの間の沈黙。それを最初に破ったのは耶倶矢だった。

 

 

「・・・・・・夕弦」

「・・・・・・応答。何ですか」

 

「ごめん」

「え・・・?」

 

「私・・・夕弦に生きてほしかった。ぽわぽわしてて、子供っぽくて、でも優しい夕弦が消えるなんて許せなくて・・・」

 

出てきたのは、耶倶矢の本心。

 

「・・・首肯。夕弦だって、耶倶矢が消えるなんて・・・許せません。中二病で、格好つけたがりで・・・でも優しい耶倶矢ですから」

 

答えたのは、夕弦の本心。

そして、二人は同時に動いて抱きしめ合い・・・。

 

 

 

「死ぬなんて嫌だ・・・・・・消えたくない!夕弦に二度と会えないなんて、一緒にいられないなんて嫌!!

 

ゲーム病なんて病気で消えたくない!死にたくない!!夕弦と一緒に生きたい!!生きたいの!!!」

 

「同・・・意。夕弦も、耶倶矢がいなくなるなんて嫌です!

 

精霊の力を失っても構わない!生きてください耶倶矢!!あなたがいないのは嫌!!生きて!!!」

 

二人は大泣きしながら、お互いの本当の気持ちをぶつけ合い・・・すれ違いは無くなった。

 

士道達も、二人がわかり合えた事に安心した。

しかし、まだ終わっていない。アランブラを倒さなければ、耶倶矢のゲーム病はそのままだ。

 

その時、耶倶矢と夕弦は抱き合ったまま、泣いたまま士道の方を向いて、頼んだ。

 

「士道・・・・・・お願い、私を・・・・・・」

「懇願・・・・・・お願い、耶倶矢を・・・・・・」

 

「「助けて」」

 

 

士道は二人の元にかけより、抱きしめて・・・・・・。

 

「もちろんだ・・・・・・約束する!」

決意を込めた強い言葉で、二人に約束した。

 

 

八舞姉妹は、互いの本心をぶつけ合い、わかり合えた。今度は士道の番だ。

 

士道は心の中で誓った。必ず救うと、二人の運命を変えると!




次回予告

本音をぶつけ合い、生きることを望んだ八舞姉妹。その願いを叶える為に士道は戦う。


第五話 救うためのDoble battle!


「「超協力プレイで、クリアする!」」


ーーーーーーーーーー

キバの方も書いていますが、今は第三章(八舞姉妹の話)が終わるまではエグゼイドの方を集中して書いています。

キバもなるべく早く出したいと思っているので、もう少しお待ち下さい。


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第五話 救うためのDoble battle!

お待たせしました!


八舞姉妹の本当の気持ち・・・一緒に生きたいという願いを叶える為に、士道は決意を胸にアランブラと戦っている皆の元に合流する事に。

 

士道だけでなく、十香と四糸乃も士道を手伝うべく同行。琴里、令音、美九はフラクシナスへ向かうことに。

 

現場までは、フラクシナスに一旦入りそこからワープで向かうことになったが・・・。

 

「士道・・・私達も連れてって」

「耶倶矢!?何言ってんだよ、ちゃんと寝てないと!」

 

「お願い・・・士道が私達の為に頑張って戦ってくれるのに、自分はここで待ってるなんて出来ない!」

 

「懇願・・・夕弦からもお願いします、士道の戦いを見届けさせてください」

 

頭を下げる二人に、士道は考えたが彼の方が折れた。

「・・・・・・栞達に二人の守りを任せる。側にいて、決して離れるな・・・約束してくれ」

 

士道の案に、二人は頷く。士道は耶倶矢をお姫様だっこをして運び、士道、十香、四糸乃、耶倶矢、夕弦はフラクシナス経由で現場まで向かった!

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

栞、折紙、狂三はアランブラと合流した黎斗のコンビと戦っていた。

 

三人はレベル3になっているが、やはり差が大きく、苦戦していた。

 

しかし、そこにフラクシナスからのワープで士道が到着。十香と四糸乃、八舞姉妹も現れた。

 

「士道!って八舞さん達も!?」

「栞、折紙、狂三・・・二人を守ってくれ。黎斗さんとアランブラは俺が倒す!」

 

八舞姉妹を三人に預け、士道は前に立つ。十香と四糸乃は限定霊装と天使を出しており、すぐにでも攻撃できるようにしている。

 

「五河 士道・・・やはり邪魔をするか」

「当たり前だ。これ以上長引かせるつもりはねぇ」

 

既にSの人格となっている士道は、ゲーマドライバーを装着し・・・。

 

 

「二人とも生きたいって言った、助けてって言った。叶えるさ・・・・・・あぁ、絶対に叶えてみせる」

 

マイティブラザーズXXガシャットを取り出して・・・。

 

 

 

 

「耶倶矢と夕弦の・・・八舞の運命は、俺が変える!!」

 

《マイティブラザーズXX!》

 

皆に伝えるように、力強く宣言しガシャットを起動する士道!

 

 

「第十変身!」

 

士道はガシャットをゲーマドライバーに入れてレバーを開き、ダブルアクションゲーマー・レベルX(テン)に変身した!

 

 

「士道!?その姿は・・・っていうか、そんなガシャットいつの間に!?」

 

声を上げた栞を含む皆が、初めてみる士道のレベルX(テン)に驚く。

 

「話は後だ、今は・・・」

 

士道はすぐには戦わず、栞達味方側の方に手を向けると、仮面ライダー達のゲーマドライバーにデータを送信された。

 

 

「何をした!?」

 

「レベルX(テン)になったエグゼイドの効果さ。

 

"ウイルスプログラムを検知・解析してワクチンプログラムを作成、仲間のライダーと共有する"機能がある。

 

これで、あんたのゲーマドライバーにバグを起こすウィルスは一切意味をなさない」

 

レベルXとなった士道が得た新たな力は、味方を悪しきウィルスから守る力だった。

 

 

「やはりそれは不正なガシャットだ!削除してくれる!」

 

「させるかよ、お前もアランブラも倒してやる!」

 

士道はゲーマドライバーのレバーを閉じて・・・。

 

 

「第二十変身!!」

 

レバーを開き、二人で一人のダブルアクションゲーマー・レベルXXにレベルアップした!

 

「最初は悪かったな、俺」

「良いさ、それより今は・・・!」

「あぁ!耶倶矢と夕弦を救おうぜ!」

 

会話する二人の士道・・・士道Rと士道L。二人は八舞姉妹の件を通じて、わかり合えたのだ。

 

 

「ん?・・・・・・ん!?シ、シドーが二人になったのか!?」

 

「士道さんが・・・二人、ですか・・・?」

 

十香も四糸乃も、他の皆も士道に起こっている事に驚く事しか出来ない。

 

 

「俺はお前で!」

「お前は俺だ!」

 

「「超協力プレイで、クリアする!」」

二人は同時に宣言し、黎斗とアランブラに向けて走る!

 

 

 

「俺はお前で、お前は俺だ・・・・・・かぁ」

「・・・・・・」

 

「うん・・・・・・夕弦は、私で」

「・・・・・・首肯、耶倶矢は夕弦です」

 

士道の言葉に感じる物があったのか、耶倶矢と夕弦も士道の台詞を真似していた。

 

そして二人は士道の戦いを見る。自分達を救うため、戦ってくれている"ヒーロー"の勇姿を目に、心に焼き付けるように・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ダブルアクションゲーマー・レベルXXとなった士道。

ゲンム・レベルXとなった黎斗とアランブラバグスターとの戦いが始まった。

 

《ガシャコンキースラッシャー!》

 

士道Rは、専用のガシャコンウェポンである剣・斧・銃の機能が一つに纏まっている「ガシャコンキースラッシャー」(以降、キースラッシャーと表記)を呼び出し、黎斗に斬り込む!

 

士道Lはそのまま格闘戦を仕掛ける。

 

 

黎斗は、プロトバンバンシューティングガシャットからガシャコンマグナムを呼び出し士道Rを狙い撃つ。

 

士道Rはキースラッシャーのボタンを押してガンモードに切り替え、黎斗の放つエネルギー弾を全て相殺する。

 

すると、士道Rはキースラッシャーをソードモードに変えると黎斗に向けてぶん投げた!

 

「っ!?」

黎斗はギリギリで回避し、キースラッシャーは背後にあった鋼材に刺さる。

 

その直後、アランブラと戦っていた士道Lが鋼材の近くを通る際にキースラッシャーを引き抜いた!

 

士道Rは近くに士道Lがいることに気付き、投げたのだ。

 

 

「オラァ!」

士道Rが黎斗をアッパーで上空に上げ・・・。

 

「はぁっ!」

士道Lが黎斗をキースラッシャーで切り裂く!

 

その衝撃で黎斗は地に落ちた。ここでアランブラが動き出す。

 

「これまで魔法を放たずチャージしておいたのだ!くらえ・・・最大魔法、クダケチベレバッ!?」

 

魔法が放たれる前に、士道Lがキースラッシャーを士道Rに投げ渡し、素早く走りアランブラの前まで来ると、怒濤のパンチラッシュを当てて、アランブラの魔法発動を妨害する!

 

そして、力を持った込めた右足のキックを受けて倒れるアランブラ。

 

「まだまだ行くぜ!」

士道Rがアランブラの頭を掴んで上空にぶん投げると、チョコブロックが一列に並び、アランブラと士道Rの足場になった。

 

「成る程・・・」

士道Lは、士道Rの意図に気付きチョコブロックの道の真下に移動。

 

アランブラが士道Lの頭上に来るタイミングを見計らって、アッパーを放つ!

 

その衝撃でチョコブロックの道が波を作り、バランスを崩したアランブラに士道Rがキースラッシャーのアックスモードで強烈な一撃を叩き込む!

 

チョコブロックの道から落ちて、大きなダメージを受けたアランブラはもう満足に動くことも出来ない。

 

 

「耶倶矢を苦しめて、夕弦を泣かせた分だ!」

「その報い、たっぷり与えてやるよ!」

 

士道Rと士道Lは、二人同時にゲーマドライバーのレバーを閉じて、もう一度開くことでキメワザを発動!

 

 

《キメワザ!》

《MIGHTY DOUBLE CRITICAL STRIKE!!》

 

音声の後、二人の右足にエネルギーが溜まっていく。

そして、アランブラに飛び蹴りをくらわせた!

 

それだけでなく、吹き飛んだアランブラに二人は追撃をかけていく!

 

二人同時にジャンプして空中回し蹴りを連続で当てて、

レベルXに戻り縦横無尽に空中を動き回り次々と攻撃を当てて、再びレベルXXになり、二人同時にキックを当てた!

 

「私自身が、クダケチール!!」

アランブラが爆発した。倒すことに成功したのだ。

 

《GAME CLEAR!》

 

二人が着地すると音声と共に、GAME CLEARの文字が出てきた。

 

「・・・これ、どう考えてもオーバーキルだよな」

「だな・・・」

 

自分でやった事とはいえ、オーバーキルっぷりに苦笑してしまう二人。

 

 

すると、黒い霧のようなエフェクトを体から上げながら回復した黎斗がバグヴァイザーにアランブラのデータを吸収して回収。

 

更に、ガシャコンソードとガシャコンマグナムを持って構えた。

 

「まだだ・・・まだ終わらん!その不正なガシャットを・・・何だ!?」

 

黎斗は言葉を途中で切り、周囲を探る。何故なら、先程まで無かった突風が吹き荒れたからだ。

 

そして、黎斗は突風を起こしている張本人達は上空に浮かんでいた。

 

霊装・・・神威霊装・八番(エロヒム・ツァバオト)を身に纏い・・・。

 

天使・・・巨大な突撃槍、穿つ者(エル・レエム)を持っている耶倶矢と、漆黒の鎖の先端に菱形の刃の付いたペンデュラム、縛める者(エル・ナハシュ)を持っている夕弦だ。

 

耶倶矢はアランブラが倒された事でゲーム病が消えて健康な体を取り戻したのだ。

 

二人は黎斗を見下ろしており、笑っていた。

 

 

「士道のお陰で元気になれたし、あいつがバグスターのボスっぽいし・・・・・・夕弦、やっちゃう?」

「肯定、やっちゃいます!」

 

頷き合う二人。すると、半分に別れていた天使が一つになり、真の姿に戻る。

 

 

「「颶風騎士(ラファエル)!!」」

大きな弓矢となり、黎斗に狙いを定めて・・・。

 

「ヤバい!!」

 

黎斗はすぐに行動に移る。ガシャコンソードにプロトタドルクエストガシャットを入れ、ガシャコンマグナムにプロトバンバンシューティングガシャットを入れてキメワザを発動。

 

二つのキメワザを同時に放ち、重ねがけによって威力を増加させたのだ。

 

 

天を駆ける者(エル・カナフ)!!」

強大な風の力を持つ矢が放たれた!お互いの技がぶつかり合い・・・。

 

 

一瞬の拮抗の後、八舞の矢が勝ち黎斗に向かって飛んでいく!

 

黎斗は即座に逃げ出し、直撃は免れたが地面に当たった衝撃はかなりのもので、黎斗は吹っ飛ばされていったのであった。

 

天使の一撃が当たった箇所に深く大きな穴が空き、物陰に隠れていた他の皆は、八舞姉妹の力を思い知ったのであった。

 

そして、耶倶矢と夕弦は満面の笑顔で、ハイタッチを決めた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

戦いが終わった後。士道に再び頭痛が襲いかかる。意識を何とか保ったが、皆に心配をかけてしまった。

 

頭痛が収まってから事情の説明やら八舞姉妹の検診などで忙しく動くことになった。

 

そして全てが終わって夜。士道はCRの中で椅子に座り休んでいた。

 

すると、霊装姿の耶倶矢と夕弦が士道の元を訪ねてきた。

 

 

「見つけたぞ、士道!」

「二人とも・・・フラクシナスに行ったんじゃなかったか?」

 

「解答。本当はそこで検査もかねて泊まる事になりますが、夕弦達がお願いしたのです。士道に会いたいから時間をください・・・と」

 

そして、二人は士道に頭を下げた。

 

「士道・・・ありがとう!私達が二人で一緒に生きられるのも、士道のお陰!」

「感謝・・・本当にありがとうございます!」

 

「あ、頭を上げてくれって。俺はただ自分がしたいと思った事をしただけだ。エグゼイドとしても、俺個人としても」

 

「そう、なんだ・・・・・・あぁもう!夕弦、これは私達の負けだし!」

「同意。夕弦達の負けです」

 

「えっと・・・何の話だ?」

 

「士道、私達が初めてあった時さ・・・士道をデレさせた方が勝ちって言ったじゃん?」

 

「あぁ、覚えてるけど・・・それが?」

「・・・・・・溜息、はぁ。士道は鈍いです、鈍感のニブチンヤローです」

 

すると、耶倶矢と夕弦が士道の腕に抱きついた!

 

 

「宣言・・・夕弦達の方が・・・」

 

「士道にデレちゃったってこと!・・・・・・あぁもう!女の子から何言わせるし!」

 

「え・・・えぇぇぇぇぇ!?」

 

二人の発言に驚く士道だが、耶倶矢と夕弦は潤んだ瞳で顔を赤くしながらも真っ直ぐ士道を見つめていた。

 

その表情はまさに、恋する女の子そのものだった。

 

更に、肌の露出も多い霊装であるため、二人の柔らかさがダイレクトに伝わる。

 

「だから・・・・・・」

 

 

 

「「私達の運命を変えてくれて、ありがとう」」

 

耶倶矢と夕弦は同時に言うと、同時に士道の口にキスをした!口を離した二人が言う。

 

「夕弦と話し合ったの・・・お礼はキスでって・・・」

「羞恥・・・でもこれしか思いつかなくて」

 

「・・・・・・」

 

士道が突然のキスに呆気に取られていると、霊力の封印によって耶倶矢と夕弦が一糸纏わぬ姿になる。

 

「え・・・・・・きゃあぁぁぁぁぁぁ!?」

「ろ、狼狽・・・えっちです」

「うわわわわわ!?」

 

顔を真っ赤にしながらしゃがんで腕で胸元を隠す二人。士道は慌てて病衣を持ってきたのであった。

 

その後、士道は霊力封印について説明。もっと早く言って欲しかった・・・と言われたのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

それから、霊力封印後の検査も終えてゲーム病の後遺症も一切なく霊力も問題ないという事で精霊マンションに二人も引っ越しそこで暮らすようになった。

 

更に、来禅高校への編入も決まったのであった。

 

そして霊力封印の三日後。

 

 

「さぁ士道よ!我が作りし黄金に輝きし命の衣を食すがよい!」

「解説、耶倶矢と一緒にオムレツを作りました。あーんしてください」

 

「「「「むー!」」」」

「うぅ・・・」

 

今まで以上に士道にくっつき、十香、琴里、折紙、栞、四糸乃はヤキモチをやいて士道の争奪戦が始まり・・・。

 

日常に八舞姉妹が加わり、益々賑やかになっていく。

士道も、八舞姉妹を救えたことを喜びながら日常を謳歌していく・・・。

 

 




次回予告。

士道に救われた精霊達は、士道の為に温泉旅行を計画するが・・・。

第六話 皆でHot springへ!

「何だこの状況!?」


ーーーーーーーーーー

次回は、アニメ一期の六話を参考に考えたお話です。


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第六話 皆でHot springへ!

ギリギリですが、今年中に投稿できました。これで三章は終了です。


耶倶矢と夕弦の霊力を封印し、少し経った頃。この日は休日で学校も休み。後少しで六月になるという時。

 

士道は家にいる十香、四糸乃、耶倶矢、夕弦の四人の精霊達に朝食を作っていた。

 

その四人は今、テレビの放送を見ている。今放送しているのは、衛生省から全国に放送している緊急記者会見だった。

 

 

『皆様、私は衛生省官房審議官、日向 恭太郎です。本日は重大な発表があります。

 

数日前、天宮市にて発生した大規模な感染症状事件ですが、我々は既にそのウィルスの詳細を把握しております』

 

『ウィルスの名は、バグスターウィルス。感染するとゲーム病という病気を発症してしまいます』

 

『人から人に感染するということはありません。ですが、感染すれば発熱などの症状を引き起こし、患者のストレスによって増殖を続け、最後には肉体が消滅という形で死亡してしまいます』

 

『ですが、ご安心ください。既にバグスターウィルス専門の医師が適切な処置を施し、多くの人を救ったという実績があります。

 

どうか、バグスターウィルスに関して余計なデマなどに惑わされず、適切な対応をお願いいたします』

 

どのニュースもこの放送で持ちきりである。

 

天宮市のみならず全国放送がされており、ニュース番組ではバグスターウィルスについて様々な論争が起こっている。

 

「うぅむ・・・」

そんなニュースを見ながら、十香は悩んでいた。

 

「十香さん・・・どうしたんですか?」

「悩みごとなら、よしのん様に相談してごらん?」

 

「・・・・・・シドーの事だ。シドーはずっとバグスターと戦い私達精霊を救ってくれている・・・だが、最近シドーが疲れているように見えるのだ」

 

「あ・・・・・・そう、ですね。私も、士道さんが疲れているように見えます・・・・・・」

 

「特に今は頭痛もあるようだ・・・マイティブラザーズ・・・だったか。あれは力を与える代わりに使い手を蝕む闇の装備なのか・・・?」

 

「不安。このままだと、士道が倒れてしまわないか・・・心配です」

 

士道を心から想う少女達が、何とか士道を元気に出来ないかを考えていると、ニュースが終わり次の番組が始まる。

 

それは、天宮市について色んな事を紹介する十分位の番組だ。

 

『皆さん!一週間前にリニューアルした天宮極楽温泉へ是非お越し下さい!』

 

「む?」

「温泉だって、見てみる?」

 

十香が反応し、よしのんに言われて他の皆もテレビに注目する。

 

『この温泉は、施設の真下から涌き出た天然温泉をそのまま引いています!

 

疲労回復や美容など様々な効果があり、更に混浴専用浴場もあります!

 

ただし、混浴浴場のご利用には、水着の着用が条件となっております。

 

ご持参いただくか店内でレンタルをしていただくかのどちらかとなっておりますので、ご承知ください。

 

また、混浴温泉は一時間単位で貸し切りの予約も可能です。

 

他にも、楽しくご利用いただける工夫が数多くございます!是非ともお越し下さい!』

 

 

「「「「これだ!」」」」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「温泉!?」

『あぁ・・・急に十香達が行きたいって言い出してな』

 

フラクシナス司令室で、琴里が士道からの通信を受けていた。

 

「温泉ね・・・OK、すぐに手配するわ。精霊の望みを叶えるのもラタトスクの仕事だし、精霊の自発的な行動はこちらも歓迎したいし・・・・・・」

 

『助かる』

「ちなみに、どこに行きたいって?」

『天宮極楽温泉だそうだ』

 

「あぁ、あの一週間前にリニューアルしたあそこ?参加メンバーは?」

 

『俺、十香、琴里、四糸乃、耶倶矢、夕弦、栞、折紙、美九ってところだ』

 

「え、私も!?っていうか栞と折紙と美九まで!?」

 

『十香達が三人にも連絡してな・・・美九は仕事キャンセルしてでも行くってよ。令音さんは今日用事があって行けないって聞いたけど』

 

「令音は今日、休暇を取ってるから・・・」

 

『それに・・・琴里だけ仲間外れなんて絶対にしたくない』

 

「っ!・・・そ、そう・・・・・・じゃあ、行ってあげても良いわよ」

『わかった。じゃあ頼む』

「えぇ」

 

通信を終えると、神無月 恭平が声をかける。しかし、その顔はニヤケ気味だ。

 

「温泉ですか!良いですね、司令はこちらの事は気にせず楽しんできてください」

 

「・・・・・・あんた、何か企んでない?」

 

「いえいえ、そんな・・・・・・司令以外の女性の姿を自動で排除する私特製自立カメラの数を倍にして・・・・・・。

 

司令の未成熟な果実ボディをじっくりねっとりまっとり眺めようなんて・・・・・・これっぽっちも」

 

 

 

「「タイーホ」」

「え?」

 

いつの間にか、筋骨隆々な大男二人に腕を拘束された神無月。

 

「あぁぁ司令お慈悲を!おふざけを許さない某魚雷先生のお仕置きは、ドMの私でも厳しいです!!」

 

「誰よ某魚雷先生って!?・・・・・・お仕置きするのは違うやつよ。後ろを見せてあげる」

 

「え?」

 

後ろを向くと・・・。褐色肌のラタトスク機関の制服を着た少女のような少年がいた。

 

「これから行く所はとてもいいところだ!早くこーい!」

 

「えぇぇぇぇぇ!?君は数日前に入った少女に見える少年!?」

 

 

「皆さん、僕は・・・僕はね・・・ラタトスク機関員です・・・ラタトスク機関員なんですよぉぉぉ!

 

僕は新入りです。けど、副司令と戦います。ドMな人とは、僕は誰とでも、戦います!」

 

「何も変わらない、ただ副司令やるだけの暮らしに我慢出来なくなった私が、司令を求める心を呼び覚ましたんだ!坊や!」

 

「銭湯は撮影をするところじゃないでしょーっ!」

 

「違ぁう!司令を撮る為には、撮り続けなければならんから言った!」

 

「自分勝手な言い方をするな!お前な、自重心持てよ!」

 

「オ・ノーレ!!」

 

そんなやり取りをしつつ、神無月は大男と少年に連れていかれた。

 

 

「・・・・・・お兄ちゃんと温泉、か」

 

琴里は、兄としても一人の男としても好きな士道と一緒に温泉に行くことに顔を赤くしながら、ドキドキしていた。

 

ちなみに、琴里も士道との混浴目当てであるのは言うまでもない。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

そして昼頃、皆で五河家で合流。歩いて天宮極楽温泉に到着した。その途中で、美九が笑う。

 

「えへへへへへ・・・・・・久しぶりの出番、そして皆で一緒に温泉・・・・・・ぐへへへへへ」

 

「もしもしデ○レンジャー?」

「だーりん!?私はア○エナイザーじゃないです!」

 

「もしもしジャ○パーソン?」

「琴里さん!?私は帯○コンツェルンの社員でもないですよぉ!」

 

元ネタがわかる栞と折紙は苦笑し、わからない精霊組は首を傾げている。

 

西暦2044年だが、それ以前の古い作品も、若い世代に知られているようだ。

 

 

「そんな事を話してる内に、銭湯に着いたわよ」

 

琴里の言うとおり、銭湯に着いた。お金(ラタトスク機関員から渡された全員分)を支払い、持ってきた着替えやタオルを持って最初は男女で別れて楽しむことに。

 

女湯では、若い女性達が温泉を楽しんでいる。

 

「皆さんの一糸纏わぬ姿・・・ここで皆を愛する事が、罪だとでも・・・美九ユートピアァァァァァ!」

 

「ストップザミク!」

「ひゃあぁぁぁぁぁ!?」

 

美九が暴走する前に、ラタトスクの女性機関員(サポートの為に同行)がストップをかける。

 

落ち着かせた事で、被害が及ぶことなく銭湯を楽しめるようになった。

 

「もう、ひどいですー。私はただ皆さんとスキンシップしたいだけですのに」

 

「それはわかってるけど・・・あなたやり過ぎる事があるし・・・」

「うむ・・・胸を揉まれる事もあったな・・・」

 

「あうぅ・・・」

「抱きつかれた時、何か体を触られたし・・・」

「恐怖・・・美九は肉食系です」

 

「私も、美九さんの定期検診の時色々されるし」

「待って栞ちゃん、するじゃなくてされるの!?」

 

「うん・・・」

「えー?」

 

一緒に同じ温泉に入り、美九からの被害報告から士道との恋バナに花が咲いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後、事前に話していた事としてある程度入ったらロビーで合流し、混浴温泉に入ることになっていた。

 

士道は十香達との混浴を恥ずかしくも嬉しく思うのは、やはり男ということだろう。

 

そしてレンタル浴衣姿の女性陣と合流し、混浴温泉に向かう。ちなみに、二時間の貸し切りになっていた。

 

脱衣所は別れているが、温泉は同じだ。ラタトスクが用意した水着に着替え、温泉で皆と合流。

 

琴里と美九以外の女性陣の水着姿を初めて見る士道。琴里と美九も水着を新しいものにしている為に、新鮮に映る。

 

ちなみに、琴里は昔家族でプールに行ったりした時に見ているが、美九は渡したり送ったりしてくる水着写真集を見たり、プールに誘ってくるので知っているのだ。

 

栞が士道に聞く。少し恥ずかしいのか、ほんのり顔が赤い。

 

「どう?士道・・・あなたに水着姿見せるのは初めてだけど、変な所は無いかな?」

 

「だ、大丈夫だ・・・栞も皆も、似合ってるよ」

士道に水着姿を誉められ喜ぶ皆。そして、全員で同じ温泉に入る。

 

「どうだ、シドー・・・疲れはとれてるか?まだ辛いところはないか?」

 

「あ・・・・・・もしかしてその為に?」

「うむ、シドーが元気になってくれればと思って・・・」

 

「ありがとう、皆のお蔭で元気になってきた」

「そうか!良かった・・・」

 

すると、士道の周りにいる女の子達が全員、士道にくっつくように接近する。

 

「み、皆!?」

「シドー・・・・・・ありがとう」

「え?」

 

 

「私達精霊を助けるために、一生懸命になってくれて・・・・・・本当にありがとうなのだ。シドーがいてくれるから、私は幸せなのだ!」

 

「私達が、笑顔で暮らせるのは・・・士道さんがいてくれるから・・・です」

「いなくなったら、四糸乃や皆が泣いちゃうよー?責任重大だよー?」

 

「我らを救いし偉業を成し遂げた勇者たる士道を我らは、生涯支えると誓おう!」

 

「宣誓・・・夕弦達はずっと、士道の味方です」

 

「士道、私も士道の支えになりたい。私を二回も助けてくれたあなたの側にいたいの・・・」

 

「私も・・・士道君と一緒にいたいな。あなたが許してくれる限り・・・ずっと」

 

「私もだーりんがいない世界なんて考えられない位、だーりんが大好きです!ずっとずっと一緒ですよー!」

 

「私は幼い頃からずっと一緒だったのよ?これからもサポートを続けるから、頑張んなさいよね」

 

少女達がかけてくれる暖かい言葉は、士道の心を暖めてくれた。

 

「皆・・・ありがとう」

士道のお礼の言葉に、皆が頷く。

 

士道はどんなに大変な戦いも、皆と一緒なら乗り越えられる・・・そう確信すると不思議と疲れが吹き飛んでいくのを感じた。

 

そして、時間が訪れるまで、皆で温泉を楽しんだのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、天宮市上空。そこに、全身にモザイクがかかったように見える謎の存在がいた。

 

『バグスターウィルス・・・・・・やっぱり邪魔だね。でも、まだ手を出すわけにはいかない』

 

声も加工されているようにわからないようになっている。

 

『彼なら大丈夫・・・・・・そう信じたい。でも、バグスターウィルスは私の計画で最大のイレギュラー・・・・・・』

 

『何とかしないと。今の自分に出来る範囲で・・・精一杯の支援を』

 

『もう絶対に、間違えないから。もう永遠に、手放さないから。もう二度と、辛い思いなんてさせないから』

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「さて、これで準備は出来ましたわね」

 

時崎 狂三は来禅高校の女子の制服に着替えていた。ベッドの上には、来禅高校の転入書類一式が揃っていた。

 

六月に、来禅高校の生徒になるためだ。

 

 

「士道さんの事を知るには、士道さんの近くにいるのが一番ですわ」

 

きひひ、と笑いながら鏡で制服姿に変な所が無いかを確認していく。

 

「知りたいですわ・・・士道さんが二人に別れてから気になって仕方ないですわ。

 

きっと士道さんには、何か秘密があるはずです。それを知るために・・・」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「パラド、君のガシャットが完成した。持っていけ」

「やっとか!待ちくたびれたぜ」

 

パラドは笑顔で、黎斗が差し出したガシャットを受けとる。

 

「士道と遊ぶときが楽しみだ・・・心が踊るなぁ!」

「・・・・・・さて、どんなデータが取れるかな?」

 

 

様々な事が、動き出そうとしていた。




これで第三章は終了です。

次回からデアラ原作三巻の内容に入ります。


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第四章 狂三トリックスター
第一話 第四精霊・Nightmare


お待たせいたしました。今回からデアラ原作三巻の内容に入ります。

章のタイトルが"狂三トリックスター"となっていますが、狂三が士道達と本格的に関わることで、物語がこれまでよりも動き出すので、トリックスターにしました。

ご了承いただけると幸いです。


士道達が温泉を堪能した日から少し経った後。

 

仮面ライダースナイプとして士道達と一緒に戦った時崎 狂三が、転校生として士道のクラスに入ったのだ。

 

「時崎 狂三と申します。よろしくお願いいたしますわ」

 

自己紹介も優雅な雰囲気を醸し出しており、見ている者を魅了する。

 

自己紹介が終わり、一時限目が終わってからも質問攻めにあいながらも全てに的確に対応。ますます注目を受けることになる。

 

お昼休み。士道、十香、栞、折紙、耶倶矢、夕弦が狂三と一緒に屋上まで来ていた。

 

耶倶矢と夕弦は、士道達の隣のクラスに転入生として入った。姉妹二人で楽しく学園生活を謳歌している。

 

「ここなら落ち着いて話せるだろう。しかし凄い人気だな」

 

「嬉しいです。しかし、やはりこのメンバーが落ち着きますわ」

 

「確かに、それに四人の仮面ライダーが集結してるもんね」

「まぁ、ゲンムを入れると五人だけど・・・流石に学校には来ないよね?」

 

「大丈夫だぞ栞、この学園に侵入者がいた場合は購買のおばちゃんが倒してくれると聞いたことがあるのだ!

シドー、焼きそばパンときな粉パンが食べたいぞ!」

 

「十香、今日は俺の手作り弁当で我慢しなさい。っていうか購買のおばちゃんにそんな噂あるのかよ!?」

 

 

すると狂三の元に、耶倶矢と夕弦が近づいて自己紹介を始める。

 

「そう言えば、我らはちゃんと自己紹介をしていなかったな。我は八舞 耶倶矢・・・風を司る巫女なり!耶倶矢と呼ぶことを許そう!」

 

「自紹、八舞 夕弦と申します。夕弦とお呼びください」

 

「はい。時崎 狂三ですわ・・・わたくしの事も狂三で構いませんわ」

 

「ところで狂三、どうしてこの来禅高校に?」

士道が訪ねると、狂三は一旦立ち上がり背を向け、歩きながら答えた。

 

「そうですわね・・・・・・学園生活を謳歌してみたいというのもありますが、士道さんの近くにいたいのですわ。何故なら・・・・・・」

 

くるり、と士道達の方を向いて・・・一つの真実を告げた。

 

 

 

 

 

「わたくし、精霊ですのよ」

 

 

そう言った直後、狂三の姿が黒い影に纏われ変化する。

 

黒とオレンジの神秘的なドレスのような服・・・霊装の神威霊装・三番(エロヒム)を纏う。

 

そして、髪型がツインテールになったことで左目が見えた。その左目は、金色の時計の文字盤となっていた。現在も時を刻んでいる。

 

驚く皆に対し、霊装のスカートの端をつまみ少し持ち上げて頭を下げることで優雅に挨拶をする。

 

 

「改めて名乗らせていただきます。わたくしの名は時崎 狂三。精霊ですのよ。

 

人間が付けた識別名は"ナイトメア"。そして仮面ライダースナイプですわ」

 

きひひと笑うが、すぐに真剣な表情になり姿勢を戻し士道を真っ直ぐに見ながら言う。

 

「士道さん・・・あなたは十香さん、四糸乃さん、耶倶矢さん、夕弦さんを救いました。

 

あなたに問います・・・・・・あなたは、わたくしが困っていたら・・・絶望して泣いていたら、そんなわたくしを救えますか?」

 

 

狂三は、士道に試すように問う。士道は狂三が精霊であったことに驚きながらも狂三の近くに立ち、言う。

 

「狂三、俺はまだお前の事をほとんど知らない。でも・・・わかっている事がある。

 

お前は仮面ライダーとして、多くのゲーム病患者を救うために戦ってきた。

 

猫が大好きで頭もよくて、確固たる信念を持っているってな」

 

「士道さん・・・・・・」

 

「それで・・・・・・上手く言えねぇけど、そんなお前が助けてって手を伸ばすなら、俺は必ずその手を繋いで救ってみせる」

 

「・・・・・・全くもう・・・・・・えぇ、わかりましたわ。士道さんはそういうお方ですものね」

 

狂三は少しだけ微笑むと、己の姿を元の来禅高校の制服姿に戻した。

 

「士道さん、わたくしは今現在進行形で困っていますの。この高校には今日初めて来たので、右も左もわからないのです。

 

よろしければ、放課後に校舎内を案内していただけます?」

 

「・・・喜んで」

 

狂三が差し出した手に、士道はそっと自分の手を置いて約束の証としたのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同日、夕方。ASTたちは現在、模擬戦を行なっていた。

 

廃墟と化した都市を模擬戦のフィールドとして、ASTたちは来たるべく精霊との戦いに備えての模擬戦だった。

 

ところが、戦局は完全に一人の少女が優勢だった。

 

 

「「「きゃああああああああっ!!」」」

 

三人のAST隊員が、次々と空中から地面へと落下していく。

 

一人の少女が十人以上のASTの隊員たちを相手に無傷で圧倒していた。

 

陸と空から急襲してきた部隊を、対精霊用のレーザーブレード一本で次々と斬り伏せていった。

 

多方向から向かってくるASTを、撃墜していたのだ。

 

唯一立っているのは、折紙の次に優秀だった隊員一人だけ。

 

「強い・・・でも、諦めないですよ!」

 

隊員は対精霊用のレーザーブレードを引き抜き、構える。

 

様子を見ていた青い長い髪を一本にくくった少女が、隊員を称える。

 

「これだけの力の差を見せつけられて、それでも諦めようとしない姿は立派でやがりますね。さあ、かかって来やがれです!」

 

無双している少女の名前は、崇宮 真那。とある企業からASTに派遣されてきた魔術師のエース。

 

天宮市にいるとある精霊を倒すために、ここまで来たのだ。

 

ちなみに模擬戦が行われている理由は、真那がこの中に私を倒せる人がいるのか?と疑問を声に出したために、ASTの隊員たちがその力を確かめようとした結果である。

 

しかし、真那の実力はかなりのもので既に隊員の九人は地に倒れ気を失っていた。

 

「勝負です!」

 

隊員は背中のブースターを起動させ、真那へと突進する!真那はレーザーブレードを構え、相手の攻撃に備える。

 

真正面からの戦いでは勝負にならないことは、重々承知していた。

 

故に隊員は真那の攻撃範囲内入る少しだけ前に、左右の二つのスラスターをユニットから切り離し、レーザーブレードで真那を一閃した。

 

真那は隊員を薙ぎ払おうとするが、その斬撃に合わせて一閃をコントロールし、真那の攻撃を回避して後ろに回り込む。

 

隊員の一閃を防ぐと、真那の目の前には隊員が切り離した二つのスラスターが、己目掛けて飛んで来ていたのだ。

 

真那は咄嗟にレーザーブレードでスラスターを切り捨てる。

 

「これで終わりです!」

 

真那は二つのスラスターを弾き飛ばすことに意識を向けていたため、背中はガラ空きになっていた。

 

これこそが隊員が狙っていた瞬間だった。レーザーブレードの刃で、真那のガラ空きになっている背中に攻撃しようとする。しかし・・・。

 

「・・・なっ!?」

 

刃は真那の背中の前で静止しており、攻撃を防いでいた。

 

真那の随意領域(テリトリー)はかなり強く、力を加えているのに、停止している箇所から一ミリも進まない。

 

「戦い方は悪くねーです。ですが、私も過小評価をされたものです。さて、これでトドメでいやがりますよ」

 

真那が随意領域(テリトリー)の出力を上げて隊員を吹き飛ばし、落ちてくる間にレーザーブレードを構える。

 

そして一気に接近して左右に一回ずつ、最後に上から下に切り裂きトドメをさした。地面に落下していく隊員。

 

 

「・・・・・・・・・・・・ま、参りました」

 

地面に落下した隊員が、ギブアップを宣言。

 

その時、終了のブザーと共に上空のヘッドセットからの音声が鳴り響く。

 

『演習終了セット。崇宮真那三尉の勝利です』

 

その音声が、天宮駐屯基地の隊員達に現実を突きつけた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

演習終了後はASTの視聴覚室にて、新たにASTに加わる真那の簡単な自己紹介が始まる。

 

「崇宮 真那、階級は三尉であります。以後お見知り置きを」

 

真那が簡単な自己紹介を終えると、燎子が額に青筋を浮かべて真那と隊員の頭にゲンコツを下ろす。

 

そして、破壊した装備等がどれだけお金がかかるかを力説しながら説教。

 

それが終わってからようやくこれまでの精霊との戦い方を見直すため、過去の戦闘を映像を見ながら振り替えることに。

 

目の前で流されている映像は、四糸乃が吹雪のドームを作り、ASTの隊員たちが手をこまねいている時の映像だ。

 

「えっ?」

 

映像を見ていた真那が小さくだが、驚きの声を上げる。

 

吹雪のドームの中に向かって走っていく人を見て、真那は強く動揺する。

 

 

「兄様!?」

 

吹雪のドームに果敢に立ち向かって行ったのは、数秒だけ映っている五河 士道。

 

その士道を、小声で真那は兄様・・・・・・つまり兄と呼んだのだ。

 

 

士道は精霊である狂三と深く関わる事になり、更に士道を兄と呼ぶ真那も天宮市に現れた。様々な事が重なり、物語は動き出す。

 




次回予告

ラタトスクのサポートを受けながら、狂三の校舎案内を行う士道。その後、士道と真那が遂に出会うことに・・・?


第二話 校舎案内、後にReal sister!?


「兄様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


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第二話 校舎案内、後にReal sister!?

士道は屋上での会話の後に、一人で琴里に連絡し狂三が精霊としての正体を現した時、フラクシナスでも霊力の反応をキャッチした事を聞いた。

 

『間違い無いわ。フラクシナスの観測データから見ても完全に精霊の数値を叩き出している。

 

狂三は正真正銘の精霊よ。ASTがちょっかいを出して来る前にケリを付けましょう」

 

「あぁ、もちろんだ」

 

『それにしても、ナイトメア・・・ね』

「・・・狂三の識別名だよな、それがどうした?」

 

『・・・・・・空間震とは別に、昔からその手で多くの人間を手にかけた。故に”最悪の精霊”とも言われているわ、それがナイトメア』

 

「手にかけたって・・・・・・・・・まさか!?」

『そのまさかよ』

 

琴里の言う「手にかけた」の意味がわかり、驚愕と動揺を隠せないまま弁明するように言う。

 

「ま、待ってくれよ!狂三は仮面ライダーとしてバグスターと戦って、多くのゲーム病患者の命を救ってきたんだぞ!」

 

『落ち着いて士道。その事は私達も理解しているし、否定しないわ。

 

実は、ナイトメア・・・時崎 狂三については、こちらの調査によると・・・大体四、五年前くらい前から誰の命も奪わなくなったみたいなの』

 

「そ、そうなのか・・・?」

 

『えぇ。時崎 狂三が関わったと思われる幾つかの事件で、四年から五年くらい前以降は亡くなった人は一人もいないそうよ。衰弱や気絶はあるけど。

 

でも、それより前には時崎 狂三の手にかかり実際に亡くなった人がいるそうよ。

 

四、五年前から心境の変化があって、命を奪う側から守る側になった・・・・・・と思うわ』

 

「奪う側から、守る側に・・・・・・」

 

『士道。時崎 狂三を信じるなとは言わないわ、私達も否定しない。

でも念のため、一割くらいは警戒心を持っておいて。彼女については、わからない事の方が多いのだから』

 

「・・・・・・あぁ」

 

 

士道はそれだけを伝えると、琴里との通話を終えた。

 

その通話を終えた時、士道は心に溜まった色々な物を吐き出すように、少し大きく長いため息を吐いたのだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

放課後。ついに授業が全て終了し、士道たちはホームルームの時間を迎えていた。岡峰 珠恵が教室内に入室し、教卓に上がる。

 

「最近、この天宮市では衛生省から発表があったバグスターウィルスによるゲーム病が流行っています。

 

必ず家に帰ったら手洗い、うがいをする事!これを守るようにして下さいね!約束ですよ、約束!」

 

珠恵は伝言を伝えると教室から出て行き、ホームルームも終了、下校時間へとなった。

 

(バグスターウィルスは、手洗いとうがいだけでどうにかなるものじゃないけどな・・・)

 

士道は内心で苦笑しながら、こちらに足を進める狂三と合流。

 

「狂三、行こうか」

「ええ、よろしくお願いしますわ」

 

士道の隣に並んだ狂三が歩き始める。

 

『フラクシナス』のクルーたちも既に攻略体制に入っており、琴里も令音も館内に戻り、各々が全霊を尽くしていた。

 

 

そんな中、教室の扉を開けて体勢を低くし士道と狂三の動向を伺う十香がいた。

 

更に、耶倶矢と夕弦、折紙と栞も一緒だ。

 

士道と狂三はお互い楽しそうに談笑しながら歩いている。しかも、狂三が士道の腕に抱きつき、顔を赤くして慌てる士道を見て微笑んでいる。

 

 

「むうっ・・・・・・むむむ~!狂三がシドーを一人占めとは・・・・・・ずるいではないか・・・」

 

「士道め・・・我ら八舞という至高の乙女がいるというのに・・・狂三にデレデレしてぇぇぇ・・・・・・!」

 

「嫉妬、夕弦達のくっつきアピールが足りないようですね」

 

「狂三さん、私達の士道への気持ちをわかっててあんなにくっついてるっぽいなぁ・・・・・・むぅ」

 

「皆、一旦落ち着こう。まず、尾行する時は気配を極力消して、つかず離れずの距離を維持するの。

 

証拠の確保がしたいならシャッター音がしないカメラを用意して写真を撮る。

 

あるいは会話の録音がしたいなら指向性マイク・・・無理なら読唇術を身につけた方がいいよ。

 

抜き足差し足忍び足を意識せずとも自然に出来るようにして、それからー」

 

折紙が行う尾行講座に、折紙以外の面々はポカンとしてしまう。

 

「・・・・・・ハッ!し、静まれショートカットヘアーのもう一人の私・・・!私はストーカーじゃない士道君が心配なだけだからヤキモチ妬いてるのは否定できないけど・・・・・・!」

 

「だ、大丈夫か折紙!しっかりするのだ!」

「大丈夫・・・大丈夫・・・・・・ありがとう十香さん」

 

十香の声で正気に戻った折紙はもう一人の自分に打ち勝ち、気配を殺して慎重に足を進めた。他の皆も折紙の後に続く。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

天宮市の上空一万五千メートルには、空飛ぶ巨大な艦隊"フラクシナス"がある。

 

現在クルーたちは総力を尽くして士道をサポートしていた。

 

「好感度は現在、五五.五。モシモシファ○ズ状態から変化していません」

 

「精神状態オールグリーン、安定しています・・・・・・ところで、モシモシファ○ズって何ですか?」

 

 

解析用顕現装置(リアライザ)が弾き出した数値を見る限りでは、現時点では普通ということを表している。

 

モニターに琴里と神無月が集中していた時、ついに動きがあった。

 

『士道さん、どこから案内して下さるのですか?』 

『そうだな・・・まずは』

 

士道の後をつける狂三が士道に訊ねる。その時、AIが三つの選択肢を叩き出す。

 

①屋上

②保健室

③食堂•購買

 

「各自選択、五秒以内」

 

クルーたちは現れた選択肢の中からそれぞれの番号を選ぶ。

 

屋上で三票、保健室二票、もっとも少ないのが、食堂•購買の一票だった。

 

「予想通り、屋上が人気ね。③に入れたのは誰?」

 

「・・・私だ」

 

食堂•購買に票を入れたのは、令音だった。琴里は令音を見てその真意を訊ねる。

 

「理由を聞いても良いかしら?」

 

「・・・夕方まで待って、夕日が差してからの方がいい雰囲気になり、目標達成までの近道へとなる・・・そう思ったんだ。

 

それにいきなり保健室だと、シンがいかがわしい事を考えていると誤解されてしまう可能性がある」

 

 

令音の意見を聞いた琴里は、納得をして首を縦に降り、士道へ指示する。

 

「さすが令音。士道、聞こえる?」

 

琴里からの指示を聞き、士道が狂三を見て伝える。

 

 

『まずは食堂と購買を見ておこうぜ。ここには、これから世話になることがあると思うからさ』

 

『分かりましたわ』

 

士道の言葉に狂三は笑顔で了承し、士道の後を追った。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

まだ完全下校の時間までは猶予がある時間帯。

士道と狂三は誰もいなくなった食堂と購買を訪れていた。

 

「ここでの人気は焼きそばパン。カレーパンとか、コロッケパンとかも美味いけど、焼きそばパンは安いから人気がある。

 

次に食堂のメニューについてなんだが、ここでの人気は唐揚げ定食だな」

 

「そうなんですの・・・・・・あら?」

狂三は、棚に二本だけ残っている缶ジュースを発見。

 

その缶に表記されているジュースの名前を見て、"懐かしさ"を感じ微笑むと、その二本を手にとって買う。

 

「くださいな」

「はい、260円ね」

 

「狂三?」

「案内をしてくださるお礼ですわ。さぁ士道さん、リンゴジュースをどうぞ」

 

「あぁ、ありが・・・・・・狂三、これは何だ?」

 

「え?美味しいですわよ」

 

「・・・"ニューステージな白銀リンゴ味"って何だ?白銀リンゴなんて知らないが」

 

「飲まず嫌いはもったいないですわよ」

 

「・・・狂三のは、"禁断の果実な赤リンゴ味"って、神話に出てくるやつか?」

 

「気にせず飲んでみてください・・・ごくごく・・・美味しいですわ」

 

「・・・ごくごく・・・・・・美味いな」

 

「ちなみに、滅多に店に並ばないレアの"金メッキな黄金リンゴ味"、"ダークネスな黒リンゴ味"もありますわ」

 

「金メッキな時点でパチモンじゃねぇか。後、黒リンゴってどう考えても、熟しきって腐ったリンゴだろ」

 

「ふふ・・・・・・このジュース、昔は薫さんと一緒に飲んでいましたわ」

 

「風鳴 薫さんと・・・?」

「えぇ。薫さんが買ってくれて初めて飲んだのですが・・・・・・それ以来、一緒に飲むことが増えましたの」

 

狂三は、笑顔で話続ける。

 

「薫さんは、本当に不思議な方ですわ。明るくて、元気いっぱいで、人のスペースに入り込んでくる癖にいつの間にか馴染んでて・・・」

 

「狂三・・・」

 

「わたくしには、絶対に成し遂げなければならない事がありますの。絶対に立ち止まれない・・・。

 

ですが・・・・・・薫さんに出会ってから、立ち止まってしまいました・・・・・・立ち止まってしまうくらい、大切になっていましたの」

 

 

「・・・・・・」

「ごめんなさい、しんみりとしてしまいましたわね。さぁ士道さん、飲み終えたら案内の続きをお願いいたします」

 

立ち上がる二人。士道は薫の事について話している狂三の表情が鮮烈に印象に残っていた。その表情は、とても優しい笑顔だったから。

 

ちなみに、折紙は士道の飲んだ空き缶を無意識に手に入れようとして、十香達に止められた。

 

 

その後、保健室や音楽室等を案内し、士道による案内は終わり二人は帰宅するために別れたのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

案内を終えた後。士道は十香、栞、折紙、耶倶矢、夕弦の六人で帰宅していた。

 

五河家と精霊マンションは隣同士であり、栞の住む家も五河家から歩いて二~三分の距離である。

 

折紙の家も士道の家の方向にあるため、このメンバーで帰ることが当たり前になっていた。

 

「今日の晩飯は・・・・・・そうだな、ハンバーグにするか」

 

「おおっ!!それは本当かシドー!!」

『あ、私も賛成よ』

 

「あらゆる肉の集いし、旨味の塊・・・食する事で贄となりし者達の供養としよう」

「解説、ハンバーグに賛成とのことです。勿論、夕弦も賛成です」

 

「もし良ければ、栞と折紙もどうだ?一緒に晩飯にしないか?」

 

「良いの?ありがとう。お母さんは今日、病院に泊まり込みで仕事だから適当に済ませようと思ってたけど、ご馳走になるね」

 

「私も良いかな。家に帰っても一人だし」

 

 

喜ぶ十香と、士道が付けっぱなしのインカムを通して琴里も賛成の意を示す。

 

他の面々も賛成。これで五河家の晩御飯はハンバーグに決定した。

 

その時、士道達に青い髪のポニーテールに泣きぼくろが特徴の、琴里と同じくらいの少女が声をかけてきた。

 

「す、すみません!ちょっとよろしいですか?」

「ん?」

 

少女は首のペンダントの中と、士道を交互に見る。

 

「ま、間違いねーです・・・・・・この人が、この人が私の・・・・・・!」

 

そして少女は、まるで親しい仲を想像させるように表情を明るくする。

 

「・・・・・・に・・・・・・に!」

 

「に?」

 

「「「「「に?」」」」」

 

『・・・・・・に?』

 

「兄様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

少女は士道のことを兄様と呼び、士道の首に両腕を回し、士道の胸へと飛び込む!

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

 

士道達の驚愕の叫びが、辺りに響き渡った。

 

「・・・あ!し、失礼しやがりました!突然抱きついてしまって・・・ごめんなさいです」

 

少女は我に帰ったようにハッとなり、士道から離れて頭を下げて謝罪する。

 

「えっと、大丈夫だけど・・・君は?」

 

「はい、私は崇宮 真那と申します。それで、私はあなたの妹・・・正確には実妹です!

 

血の繋がりという確固たる絆を持つ関係でいやがります!」

 

『実妹ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?』

 

再び、真那以外の驚愕の叫びが、辺りに響き渡った。真那はその叫びを気にせず、士道に言う。

 

「このペンダントの中にある写真・・・この写真の人は私の兄様・・・つまりあなたでいやがります」

 

真那は自分の胸からペンダントを取り出す。そこには、幼い頃の士道と真那を思わせる二人の人物の写真があった。

 

「これは・・・・・・俺、なのか?」

 

「はい!間違いなく兄様でいやがります!」

 

士道達は真那のペンダントを見たが、それは確かに士道の顔だ。一桁後半の年代の幼い自分を彷彿とさせる。

 

真那は目に涙を溜めて、心からの嬉しさを言葉にして士道に伝える。

 

「ぼんやりとした記憶ではありますが、兄様が何処かへ行ってしまったことだけは覚えています。

 

兄様のことが心配でしたが、こうして兄様と出会うことができて、真那は幸せなんです!」

 

そう言って、真那はもう一度士道に抱きつく。士道もそれを否定せず受け入れた。

 

何故だか真那を一目見た瞬間、士道も懐かしさを抱いた。そして嘘を言っていないと直感的に理解できた。

 

故に、士道は琴里にするように優しく頭を撫でる。真那は一瞬驚きながらも、嬉しそうに受け入れる。

 

 

 

 

その光景に琴里が、嫉妬の炎を"超・爆発"させている事に気付かないまま。




次回予告

琴里と真那、義妹と実妹の熱き戦いが始まる!
一方、令音と神無月は幻夢コーポレーションで、とある人物と接触する。


第三話 義妹実妹Battle!


「義妹と実妹、どっち派でいやがるのですか!?」


ーーーーーーーーーー


ついに士道と真那が出会いました。次回は妹同士の戦いです。


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第三話 義妹実妹Battle!

久しぶりの更新です。


士道の前に現れた少女。名前は崇宮 真那。

 

士道の実妹と名乗った少女は、士道達の後に続いて五河家へと到着した。少女は五河家を見上げ、声を漏らす。

 

「おおっ!ここが兄様がお世話になっておられるお家ですか!お邪魔しやがります!」

 

よくわからない敬語を使う真那に苦笑しつつ家の廊下を進み、士道たちはリビングへと到着する。

 

「おかえりなさい、お・に・い・ちゃ・ん!」

 

やたらと『おにいちゃん』と言う部分を強調して士道の帰りを待っていた黒リボンの琴里がリビングに仁王立ちで立っていた(帰って来たタイミングに合わせて立った)。

 

真那は琴里の側まで歩いて行き、手を差し出す。差し出された手を琴里も取り、お互いに握手をする。

 

「おおっ!お家の方でいやがりましたか!うちの兄様がお世話になっています!」

 

真那はフレンドリーに琴里に接していた。琴里も特に変わった様子もなく普通に真那と接していた。

 

リビングのソファーからは十香達が士道たちの様子を興味深そうに見守っている。

 

(崇宮 真那・・・その名前、どこかで聞いたことがあるような・・・)

 

折紙は真那の名前に聞き覚えがあるような気がしたが、中々思い出せずにいた。

 

 

「なぁ・・・真那。いくつか質問があるんだけど良いか?」

 

今度は士道が真那に訊る。真那は麦茶を飲んでいたコップから口を離して笑顔で快諾する。

 

「はい!何でしょうか兄様?」

 

「・・・・・・実は俺、ここに来る前までの記憶が無いからだから母親のことも真那のことも記憶には無いんだ。何か知らないか?」

 

士道の問いを聞いて真那は表情を陰らせ、下を向く。真那は申し訳なさそうに口を開く。

 

「その事でいやがりますか・・・実のところ私もその頃の記憶はねえのです・・・。

 

ここ三年くらいの記憶は存在しやがるのですが、兄様と同じくその時の記憶は私にも・・・」

 

今まで黙り込んでいた琴里が真那の言葉を聞いて、確認する。

 

「ねぇ、士道に見せたペンダント・・・私も見ていいかしら?」

 

「はい、どうぞです!」

真那からペンダントを受け取り、中の写真を見る。

 

「確かに士道みたいだけど・・・他人の空似じゃないの?士道がこれぐらいの時にはすでに五河家に養子に来ていたわ」

 

「いえいえ、私にはわかります!ただ顔が似ているだけではありません!兄様センサーにビビッと来ましたから!」

 

「何だそのセンサー!?」

「精度百万パーセントですよ♪」

「九十九万九千九百パーセントオーバー!?」

 

「・・・・・・~~~っ!ええい、イチャイチャするなーーー!!」

 

琴里は自分以外の、精霊ではない女の子・・・しかも妹を名乗る女の子とイチャイチャ(琴里視点)していることヤキモチを止められない。

 

精霊相手ならヤキモチはあれど仕方ないと、ある程度割りきれる。

 

だが、精霊ではない普通の女の子が士道と仲良くする事には耐えられない。

 

ただでさえ、栞や折紙がいるのに実妹まで加わったら・・・!

 

 

更に、妹という大切な立場を脅かされるという恐怖心もあってか、ついついキツくなってしまう。

 

「士道はうちの大切な家族!五河家の一員で私のおにーちゃんなの!!士道を連れて行こうっていうなら、そんなことは許さないわ!!」

 

「ま、待ってください!それは誤解でいやがりますよ!連れていくつもりは全くねえです!」

 

「え?」

 

真那が返した言葉に、琴里は呆気にとられていた。

 

「兄様がこの家での生活を語られている時の表情はとても幸せそうでした。それを壊そうだなんてそんなことは真那にはできねえです。

 

ここに来るまでの道中で聞きましたけど、兄様はあなたのことをとても大切にしておられ、自慢の可愛い妹だとも仰ってやがりましたよ?」

 

「わ、分かってるじゃない・・・・・・」

 

士道がこの家での生活が幸せと思っていると真那から伝えられたことにちょっと嬉しく思っていた・・・・・・が。

 

「でもまあ、妹レベルとしては実妹である真那には負けていやがりますけどね!」

 

 

緊張感、百万パーセント。

 

真那が発した言葉に琴里が反応した。視線を槍のごとく鋭くし、なめていたチュッパチャプスを噛み潰したのだ。

 

「へぇ、面白いことを言うじゃない・・・?私から言わせてもらえば、血縁者が離れ離れ時点で紙切れのような脆くて弱い関係にしか見えないけど?

 

私は士道の妹を十年以上もやっているわ、妹レベルは私の方が断然上だと思うけど?」

 

琴里の言葉に、真那のこねかみがピクリと動き、何かオーラのようなものが可視化するほど具現化する。

 

「ハッ、片腹痛えです!それは机上の空論でやがります!義妹は所詮他人です。

 

その点、実妹は血を分けていますからね!これだけで妹レベルは雲泥の差があります!たかだか十年程度なんざアドバンテージにすらならねえです!」

 

「血縁血縁って血縁がそんなに大事なの!?他にも・・・!」

 

「笑止千万でやがります!だいたい義妹は・・・!」

 

二人の言い争いはヒートアップし、士道を含む他の皆は身の危険を感じてか、ソファーから離れて部屋の隅で様子を伺っていた。

 

「ハッ!言ってなさいよこのおたんこなす!実妹じゃ結婚だってできないじゃない!!」

 

「え!?」

「「「え!?」」」

 

「・・・・・・ハッ!?」

 

琴里の放った言葉に一同の視線が琴里へと集中する。

 

琴里は自分が何を言ったか分かると顔を真っ赤に染め、机を強く叩きつける。

 

「と、とにかく!今は私が士道の妹よっ!分かった!?」

 

「うるせーです!実妹最強伝説を知らねえでやがりますか!!」

 

 

琴里と真那は、士道に訪ねる。

 

「士道!あなたは!」

「義妹と実妹、どっち派でいやがるのですか!?」

 

予想外なことを聞かれた士道は、軽く息を吐いて言う。

 

「俺は、義妹実妹・・・そういう理由で家族に優劣なんて付けたくない。だから優柔不断って思うかも知れないが、ここでは両方って言わせてもらう」

 

「・・・わかりました、兄様が言うなら従うです」

「・・・しょうがないわね」

 

「そういや真那、お前今は何処でお世話になってるんだ?」

 

士道が言うと、真那は少し言いづらそうにしながらも答える。

 

「えーっと、その・・・私を拾ってくれた人がイギリスで会社の社長をしていまして。その会社の寮で暮らしながら働いていて・・・」

 

「俺より年下なのにもう働くとは・・・・・・ブラック企業じゃないよな?」

 

「だ、大丈夫ですよ!少しの事務と雑用の簡単な仕事ですから!」

 

真那はコップの麦茶を全て飲みきってから、帰ろうとする。

 

「とにかくお邪魔しました!兄様、時間が出来たらまたお尋ねしやがりますね!!」

 

真那は一礼して五河家を出た。今日は転校した狂三を案内し、実妹の真那と出会い・・・中々に濃い一日だったと感じたのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻。幻夢コーポレーションに神無月 恭平と村雨 令音は訪れていた。ここでとある人物に出会うためである。

 

応接室で待つ二人の所に、ようやく姿を現した。

 

 

「す、すみません!遅くなってしまいました!」

 

「大丈夫ですよ、わざわざ時間を作ってくださって、ありがとうございます」

「・・・ありがとうございます」

 

二人は立ち上がり、頭を下げる。訪れた人物も頭を下げて椅子に座る。

 

「えっと・・・衛生省の方から話は伺っています」

 

「はい、その件で参りました・・・小星(こぼし) (つくる)さん」

 

小星 作。幻夢コーポレーションの開発部に勤務する男性だ。恭平と令音は作に用があって来たのだ。

 

社長である檀 黎斗の失踪後、会社の立て直しの為に開発中止になっていたゲームの開発を着手して、無事に完成にこぎつけたのだ。

 

「あなたは、檀 黎斗が残したデータを元に新しい仮面ライダー用ガシャットを"二本"開発したと伺いました。

 

そのガシャットを開発出来る技術を持つあなたに、()()()()()()()()()()()を依頼したいのです」

 

 

「確かに、僕は五年前からガシャット開発に携わっていますし、自分でガシャットを開発したこともあります・・・」

 

「・・・我々はガシャットについてのノウハウは全くありません」

 

「そこで、ガシャットを我々と共同開発としたいのです」

 

令音と恭平の説明に、作は少し悩んだ末に・・・。

 

 

「わ・・・わかりました。僕なんかで良ければ、力になります」

 

「おぉ、ありがとうございます!では、詳しい話を」

 

その後、連携の取り方やどういうガシャット作るか。また、作業後の報酬について・・・など様々な話し合いが続く。

 

そして、話し合いが終わろうとした所で、作が二人に言う。

 

「あの・・・」

「・・・どうしました?」

 

「実は・・・少し前に僕が作った二本の仮面ライダー用のガシャット・・・その内の一本が何者かに盗まれてしまって・・・」

 

「え、そうなのですか?」

「・・・それは初耳ですね」

 

驚く二人に、作は話を続ける。

 

「二本共、僕が初めて自力で完成させたガシャットですから、思い入れがありまして・・・。

 

もし良ければ、奪還にご協力いただきたいのですが・・・もちろん、僕も協力します。出来たらで構いませんから・・・」

 

「・・・大丈夫ですよ、喜んで協力いたします」

「あ・・・ありがとうございます!」

 

令音は了承して、恭平も頷く。作も頭を下げてお礼を言う。

 

そして、ガシャットについて話す。

 

「僕が作ったガシャットは、"ナイトオブサファリ"と"ジュージューバーガー"の二本です。

 

盗まれたのは、ナイトオブサファリの方です。どうか、よろしくお願いいたします!」

 

再び頭を下げる作。恭平と令音は、二人で一緒に答える。

 

「お任せください」と・・・・・・。




次回予告

真那との出会いから少し後。士道は狂三とデートの約束を取り付ける。だが新たなゲーム病患者がCRに運ばれた。

第四話 進軍のRevol!


「もっともっと、撃たれなさい!」



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第四話 進軍のRevol!

お待たせしました。


「あ、狂三。ちょっといいか?」

 

真那と出会った翌日の放課後。廊下を歩いている狂三に士道は声をかける。

 

「はい?何でしょう」

 

「明日は開校記念日で休みだろ。明日は暇だったりするか?もしよければ、その日に俺と一緒に出掛けないか?」

 

士道が言った言葉に狂三は、あらあら・・・と察したように言う。

 

「つまり、デートのお誘いですか?」

 

「まあ、そうだな。狂三にはバグスターとの戦いでたくさん助けてもらってるし、その礼も兼ねてって感じだ・・・どうだ?」

 

「もちろんよろしいですわ。ふふふ、士道さんとのデートですか・・・初めてですから楽しみですわ」

 

狂三は士道のデートの誘いを承諾。士道は嬉しそうに微笑んでいる狂三を見て安心した。

 

「良かった。じゃあ、明日の午前十時半に天宮駅の改札前の広場を待ち合わせ場所にしよう」

 

「えぇ、わたくしは構いませんわ。士道さん、明日はよろしくお願いします」

 

狂三は士道に一礼。すると、丁度話終えたタイミングで二人のスマホにメールが。

 

見てみると、CRからの緊急連絡メールで、ゲーム病患者が発見されCRに搬送されたのだ。

 

「今が放課後で良かったぜ・・・行こう!」

「はい」

 

二人はCRのドクターとしての顔になり、士道は十香にゲーム病患者が出たことを伝え、栞と折紙を加えた四人で急いでCRに向かった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

CRでは、ライダー達四人が運ばれてきた患者の対応をしていたが・・・。

 

 

「いや~、まさか私がゲーム病っていうのにかかるなんて予想外ですよ・・・」

 

運ばれてきた患者は、崇宮 真那であった。機械でスキャンしたところ、バンバンシューティングのウィルスに感染しているのがわかった。

 

 

「イギリスでも、テレビやネットのニュースでもバグスターウィルスや、ゲーム病の事は取り上げれらていやがるんです」

 

「俺達が真那を治す・・・任せてくれるか?」

「え、えぇ・・・それはいいですけど・・・」

 

何かを気にしているのか、真那の返事はたどたどしい。すると、狂三が言う。

 

「皆さん、患者の対応はわたくしが行いますわ。皆様はその間に準備を」

 

「・・・わかった。皆、行こう」

士道は狂三と真那の様子から何かを察し、折紙と栞を連れてベッドルームから出る。

 

 

「さて・・・余計な方達は退かしましたわよ、崇宮 真那さん」

 

「最悪の精霊がお医者さんなんて・・・どういうつもりでいやがるんですか?ナイトメア、時崎 狂三」

 

真那は敵にあった戦士のように鋭い目付きで狂三を睨んでいるが、狂三は全く気にしていない。

 

 

「・・・・・・四年前まで、わたくしは自分の目的のために多くの方を手にかけてきました・・・それは否定はしませんわ。

 

ですが、ある方との出会いを切っ掛けに、わたくしは変われたのです」

 

狂三は自分の事を語りながら、真那のベッドの空いている所に座る。

 

戸惑う真那を敢えて無視して、狂三は語り続ける。

 

「精霊、ナイトメア・・・・・・そしてCRのバグスターウィルス専門ドクターで、仮面ライダースナイプ・・・・・・それもわたくしですわ」

 

「・・・・・・何を」

 

「だからこそ、真那さん・・・あなたはわたくしが治療します。どんなに嫌がっても止めるつもりはありませんわ」

 

「待っ・・・!」

話終えた狂三はさっさと去っていく。真那が止めようとしたがそのまま行ってしまった。

 

真那は困惑の表情を隠せなかった。突然の自分語りもそうだが、今の狂三は・・・。

 

 

すると、士道が入ってきた。

 

「あ・・・兄様」

「悪い、真那・・・さっきの話を聞いちまって・・・」

 

「え、あ・・・その・・・・・・もう、女の子同士の会話を盗み聞きなんて感心しねーです!」

 

「ごめん・・・・・・でも、真那の仕事って精霊が関係しているんだな」

 

「え・・・」

「俺はちょっと訳ありでな、精霊の事を知っているんだよ。それで、狂三は昔多くの人を手にかけた最悪の精霊ということも知っている」

 

「・・・・・・」

「真那・・・・・・狂三は、昔は人を手にかけるような事をしていたんだろう。

 

でも、今は違う。狂三は過去に犯した罪と向き合っている。

 

今の人々の命を救うことで、過去に命を奪った罪の償いとしているんだ」

 

「・・・償い」

「俺は狂三を信じている。あいつはいい奴だってさ」

 

士道の言葉に葛藤する様子の真那。

 

しかし、それは真那にとって大きなストレスになってしまい、バグスターウィルスが活性化。そして、リボルバグスターが出現してしまう。

 

「作戦開始ぃぃぃ!!」

そう言うと、リボルは体を粒子状にしてワープ、姿を消してしまう。

 

狂三達も加わり、士道は琴里に連絡を取る。

「リボルが消えた・・・何処に現れたか、わかるか?」

 

『ちょっと待って・・・・・・嘘、バグスターが家から少し離れた所にに現れたわ!真っ直ぐ家に行って・・・まさか五河家を壊すつもり!?』

 

「そっちで回収してワープだ、急げ!」

『わ、わかったわ!すぐに外に出て!』

 

士道の指示に慌てて対応する琴里。四人は急いで外に出る。

 

外に出てすぐにフラクシナスに回収され、三秒も経たない内に五河家の前にワープされる。

 

 

「・・・?ねぇ、令音」

「どうしたんだい?琴里」

 

「さっき、()()()()()()()()()()?」

「・・・いや、見えなかったが・・・?」

「・・・・・・?」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

五河家の前に着いたリボル。配下のウィルスを召喚し、銃を構える。

 

「我が宿主はここに住んでいる者と仲がいい・・・ならば、ここを破壊すれば凄まじいストレスとなるだろう!」

 

リボルは、進化によって宿主の記憶を読み取りストレスを与える最適な作戦を立てる能力を身に付けた。

 

ただし、全てを読めるわけではなく最近の出来事・・・数日以内で最も印象に残っている部分のみに限定される。

 

これが、リボルバグスターの進化によって得た能力である。

 

全員で銃を構え、発砲しようとしたところで、ワープしてきた士道達が現れた。

 

小さな人影(五人目)は士道達の背に隠れるように、こそっと動いて離れた。

 

「誰の許可取って、人ん家に銃を向けてんだ?」

「邪魔するなら、貴様らから倒してくれる!」

 

四人はゲーマドライバーを装着して変身する。

 

《マイティアクションX!》

《ゲキトツロボッツ!》

 

《タドルクエスト!》

《ドレミファビート!》

 

《バンバンシューティング!》

《ジェットコンバット!》

 

《爆走バイク!》

《ギリギリチャンバラ!》

 

 

「「「「変身!」」」」

 

四人がレベル3の仮面ライダーに変身したところで、戦闘を始める。

 

放たれる銃弾を、士道が左腕のアームで防ぎ、弾く。

狂三はバグスター達が撃ち終えた直後にガトリングを連射する。

 

更に、折紙がガシャコンソードから音符型のエネルギーを放ち、栞はガシャコンスパローから矢型エネルギーを放つ。

 

三人の攻撃で周囲のバグスターウィルスは全滅。更に、士道はアームを放ちリボルを吹っ飛ばす。

 

 

「次はこれだ!」

 

士道がドラゴナイトハンターZガシャットを起動。士道の持つオリジナルから仮想ガシャットが三つ出て栞達の手に渡る。

 

《ファング!》

 

《ブレード!》

 

《ガン!》

 

《クロー!》

 

ドラゴナイトハンターZガシャットを起動し、ドライバーにセット。そしてレバーを開いて四人同時にレベル5に変身。

 

「第五!」

「ステージ5!」

 

「第伍弾!」

「フィフス・ギア!」

 

「「「「変身!」」」」

 

全員がレベル5になった。リボルは反撃に銃弾を拡散して連射するが、四人が放った炎のバリアで防がれる。

 

 

 

「・・・・・・」

 

その戦いを見ていた五人目・・・崇宮 真那は、CRユニットを纏った魔術師と精霊の戦いのように激しい戦いであることはわかった。

 

ゲーム病の身でありながら、俊敏に動き隠密スキルを駆使してここまで来たのだ。

 

 

「・・・・・・過去の人々の命を奪った罪を償う為に、今の人々の命を救う・・・・・・」

 

士道から聞いた話を思い出す真那。真那にとって、精霊・・・特に狂三は排除すべき敵。

 

だが、その狂三が敵である自分を救う為に戦っている。その光景に、複雑な気持ちを抱いていた。

 

 

一方、フラクシナス内部。琴里は隠れている真那の存在を発見した。

 

「あの人影・・・崇宮 真那だったのね!」

 

「・・・見間違いでは無かったようだね。しかし、ゲーム病の状態で動けるとは・・・」

 

「あぁもう・・・一応、崇宮 真那からも目を離さないで!」

 

 

 

士道達は、アームからエネルギーを放つ攻撃にしているが、これはリボルを家に近付けさせず、攻撃を確実に防ぐためにそうしているのだ。

 

「さて、トドメですわ!」

狂三の声と共に、四人はガシャットを抜いてキメワザスロットに入れてスイッチを二回押す。

 

 

《ガシャット!キメワザ!》

《DRAGO KNIGHT!CRITICAL STRIKE!!》

 

四人が同時に必殺技を発動。四人が付けているパーツにエネルギーが溜まり、それを同時に放った!

 

リボルはそれを防ごうと最大出力で放つ。レベルの上がった攻撃は、レベル5の攻撃を相殺し爆発が起こる。

 

「フハハハハハ!これで「フィニッシュですわ!」さ、何!?」

 

《ジェットコンバット!》

 

《ガシャット!キメワザ!》

《JET!CRITICAL STRIKE!!》

 

爆発から、再びレベル3となった狂三が飛び出し、リボルにゼロ距離で銃口を突きつける。

 

ガトリング砲にエネルギーが溜まり、引き金を引くと強化されたエネルギー弾が無数に発射。

 

全てをゼロ距離で受けたリボルは耐えきれず、吹っ飛ばされながら、爆発。倒されたのであった。

 

「作戦失敗!!」という言葉を残して・・・。

 

そして、リボルのデータは駆けつけた黎斗がバグヴァイザーに回収。気付かれないように姿を消した・・・。

 

 

戦闘を終えた四人は変身を解くと、ゲーム病が消えた真那が狂三にズカズカと近づく。

 

真那がいることに驚く皆を無視して、真那は狂三の前に立ち、睨みながら言う。

 

「・・・・・・礼は言わねーですよ」

 

「礼も感謝もいらないですわ・・・代わりにまた、わたくしを狙って来なさいな」

 

「・・・・・・CRに戻ります。着替えとか取りに行かねーとです」

 

真那は士道達と一緒にCRに戻った。抜け出した事に狂三以外から軽く説教を受けながらも、真那は元気になれたことを喜んでいた。

 

狂三は、そんな真那を見て微笑んでいた。

 

自身を敵視する者であっても救う為に戦った・・・・・・その姿は、果たして本当に"最悪の精霊"なのだろうか・・・?

 




次回予告

リボルバグスターとの戦いから少し後。士道と狂三のデートが始まる。


第五話 狂三とのデートはExciting?


「もっと刺激的なの・・・・・・いかがですか?」


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第五話 狂三とのデートはExciting?

お待たせいたしました。

四章の第三話、小星との会話シーンを一部修正。

第四話でリボルを倒した後に、黎斗がリボルのデータを回収するシーンを追記しました。


真那のゲーム病を治療した翌日。

 

「令音、失礼するわよ」

 

フラクシナスの解析部屋の扉を開けて、琴里が解析部屋へと入る。令音は座っている椅子を琴里の方に向ける。

 

「・・・琴里、これを見てほしい」

 

令音が解析していたデータが映っているモニターを指差す。それは、士道と真那のDNA鑑定だ。

 

真那が五河家を訪れた際に、コップに付着した唾液からDNAを採取、士道のと合わせて解析していたのだ。

 

 

「・・・見ての通り、シンと崇宮 真那は血縁関係にある、本当の兄妹だ」

 

「・・・・・・そう、真那が言っていたことは本当だったのね。でも、どうしてASTに入隊をしているのかしら?」

 

「・・・・・・そのことなのだが、彼女はもともとASTの隊員ではなく、DEMインダストリーから派遣された社員のようだ」

 

DEM(デウス・エクス・マキナ)ですって!?」

 

DEMインダストリー社。正式名称、デウス・エクス・マキナ・インダストリー社。

 

イギリスに本社がある大企業で、電子機器、半導体、情報通信機器、医療機器などの製作している。

 

しかし、それは表の顔。裏の顔は世界中の軍や警察に顕現装置を供給している会社だ。

 

魔術師によって構成された特殊武隊も有し、精霊をターゲットにしている為、ラタトスクとは相容れない関係にあたる。

 

「なぜ真那は、DEMで魔術師なんかやってるわけ?」

 

「・・・詳しい理由はわかっていない。だが・・・」

 

普段は冷静な令音が、奥歯を噛み締めて拳を強く握り、憤りや怒りを露わにしていた。

 

「何があったの?」

 

「・・・これを見てくれ」

 

令音は画面に真那の身体の映像といくつかピックアップされた場所には、細かな数値が表示されている。それを見た琴里は驚きのあまり絶句する。

 

「ちょっと!これって!?」

 

「・・・真那の全身には、限界を超えた魔力処理が施されている。異常な強さを得られるが、寿命もかなり少なくなっている。計算した所、十年くらいだ」

 

DEM社の顕現装置はラタトスクのよりも性能が未熟なため、それを補うために人間の脳に依存せざるを得ない。

 

脳波を強化するために、頭の中に小さな機械を埋め込んでいるのだ。AST隊員も同様の処置をしている。

 

しかし、真那の場合は明らかにそのレベルを逸脱した処置が施されており、今の真那は()()()()()()のようなものだ。

 

「何とかこの事実を伝えたい・・・そして治したいと思うけど・・・あの子、素直に聞いてくれるかしら?」

 

「・・・聞いてくれると信じて、交渉するしかないかな」

 

「それは・・・そうね。令音、話は変わるけど・・・例の新しいガシャットの件は?」

 

「・・・順調だよ。後三〜四日で完成する」

 

「そう、引き続きお願いね。データは見させてもらったけど、中々凄いじゃない。あれ、栞と話し合って決めたんでしょ?」

 

「・・・あれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。きっと、栞達の力になってくれるだろう」

 

令音は画面を切り替えて、開発中のガシャットのデータを映す。そこには、栞の新しい力の形が映されていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

天宮駅の電光掲示板の横にある時計が、午前十時を示す。

 

士道は先に目的地に到着しており、目的の少女が到着を待っていた。すると電話が掛かってきた。

 

画面を見ると美九の名前が出ていた。出てみると、開口一番に自分の感情を伝える。

 

『だーりん、今の私はちょっと”おこ”ですぅ』

「急にどうしたんだよ、美九」

 

ここ最近(第四章から)、私の出番が無かったんですよぉ!

 

この世界の私は序章から出番があって、すでにだーりんにメロメロというナイスな特徴があるのに!

 

これも全部、エルミンという人のせいなんですぅ!こうなったらパイプオルガンのパイプで頭を粉砕☆デストロイですよ!』

 

「メタ発言は止めなさい・・・っていうか落ち着けって!後、エルミンって誰だよ!?頼むからもっと平和的解決方法を!」

 

『む~・・・じゃあ今度、私とも一緒に遊んでほしいです』

「了解だ、お互いの都合の良い時間があったらその時にな」

 

『やったぁ!』

 

何とか機嫌を良くした美九。そんな話を終えて通話を切る。

琴里とインカム越しに通信して今回の段取りを話していると。狂三がやって来た。

 

 

「士道さん、お待たせいたしましたわ」

 

狂三は黒一色に統一した、令嬢を思わせる私服を着ていた。

黒い髪が、ロングスカートがそよ風で小さく靡き、太陽の光を受けてキラキラと輝いている様に見える。

 

まさに、文句なしの美少女である。士道は頬を赤く染めながら感想を言う。

 

 

「・・・・・・狂三のイメージにピッタリな感じの服装だな、似合ってるぜ」

 

「うふふ、ありがとうございますわ士道さん・・・・・・それで、今日はどちらに行かれるつもりですの?」

 

士道に褒められて喜ぶ狂三。

 

そして本格的なデートが開始されようとしていた。士道は自分で考えたプランを言う。

 

「あのショッピングモールで買い物でもしよう。あそこは品揃えが豊富だし、衣服や書籍だけでなく、フードコートやアクセサリーショップなどもある」

 

「まあ、それは素敵ですわね。早速参りましょう士道さん!」

 

士道と狂三の二人は天宮駅の近くのショッピングモールを目指して歩き出した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

目的のショッピングモールに着いた二人が早速向かった先は、アクセサリーショップだった。

 

色々見ていく内に、狂三が気に入った猫のペンダントを士道が買い狂三にプレゼント。

 

喜ぶ狂三に自然と士道も笑顔になる。その後、昼食を食べ終えてから向かったのは・・・。

 

 

「な、なぁ・・・狂三。どうしてもここにいないと駄目か?」

「駄目ですわ。士道さんには、ちゃんと感想を言ってもらいませんと」

 

二人がいるのは、女性用下着売り場・・・つまりランジェリーショップである。

 

狂三に手を引かれて連れてこられたのがここであり、士道は流石に遠慮したが断り続けて精霊を不機嫌にするわけにもいかず。

 

琴里からも「行け」と言われ、中に入ることになった。

 

 

入り口からやたらとセクシーな下着が並べられており、客も九割が女性。

 

残りの一割は、自分の彼女に連れてこられた男性だが、やはり緊張のためかぎこちなかったりソワソワしている。まぁ、士道もそうなっているが。

 

「可愛らしいのがたくさんですわ。士道さん、こういうのはどうですか?」

 

買う候補を見つけた狂三。黒で精緻なレースで飾られた大人っぽいデザインだ。

 

「そ、そうだな。悪くないと思うぞ・・・・・・」

 

士道がしどろもどろになっていると、狂三はクスクスと笑いながら、それを手に持ったまま試着室の方に向かう。

 

「お、おい狂三!?」

 

「試着してみますわ。似合っているかどうか見てくださいまし」

 

「え、と・・・はい・・・・・・」

 

士道が頷くと、狂三は目の前にあった試着室に入り、カーテンを閉めた。

 

何故こうなったと考えながら近くのソファに座る。そこで居心地の悪い空気に辟易する士道の肩がちょんちょん、とつつかれた。

 

振り向くと・・・。

 

 

「「女の園の一つにようこそ」」

 

折紙と栞だった。手に袋を持っているということは、二人も買い物で来たのだろう。

 

「\(^o^)/」

 

士道は終わりを悟って有名な顔文字になってしまうが、二人はそんな士道を優しく受け入れる。

 

「大丈夫だよ、わかってる。士道君、狂三さんに連れて来られたんでしょ?さっき二人で一緒にいるのを見かけたから」

 

「狂三さん、士道に見てほしいっていうのもあるだろうけど、からかいもあるんじゃないかな?」

 

士道の両隣に座りながら、女の園にいる士道を両脇で固める。

 

 

「な、なぁ・・・俺はこういう時、どうすればいいんだ?」

 

二人は顔を見合わせて、少し笑うと声を揃えて・・・。

 

「「ちゃんと狂三さんを見て、しっかり感想を言う事♪」」

 

可愛らしく死地へ送り出した。

 

この場を切り抜けるにはそれしかない。がっくりとうなだれる士道であった。

 

 

そして遂に、試着室のカーテンが開かれる。

 

「どうでしょうか・・・?」

 

狂三が少し恥ずかしそうに足を摺り合わせながら、高校生にあるまじき黒い下着と、それとは正反対の白い肌を晒した。

 

「あら?折紙さんに栞さん・・・いらしてたんですの?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

「「わぉ・・・・・・」」

 

士道は狂三の美しさに見惚れ、折紙と栞は女同士であってもドキドキするほどの魅力を感じ取っていた。

 

「その・・・・・・凄すぎだろ。マジで似合ってて見惚れちまった」

「まぁ・・・・・・ありがとうございます♪」

 

その後、正気に戻った士道はしどろもどろながらもちゃんと感想を言って狂三を喜ばせた。

 

 

ちなみに。

 

神無月以外の男性陣の川越、幹本、中津川は狂三の下着姿の映像を言い訳を述べながら保存して持ち帰ろうとしており、椎崎と箕輪によって阻止されて。

 

「士道君のサポートに集中しなさい!WRYYYYYY!!」

「「「ギャアアアアアアア!!」」」

 

狂三が自分のタイプでは無いためか、変態化することなく真面目モードの神無月に三人がお仕置きを受けていた。

 

「・・・・・・騒がしくてごめん、士道。そのままデートを続けて」

『あ、あぁ・・・』

 

インカム越しにうるさい事を士道に謝罪し、琴里は士道のモニターに集中する。

 

 

そして今。狂三は士道に褒められた下着を購入。やっと開放されたのであった。

 

「お疲れ様、士道君」

「ちゃんと感想を言えて、偉かったよ」

 

「あ~・・・アリガトウゴザイマス」

「うふふ♪」

 

そして、デートの邪魔をしては悪いからと折紙と栞が離れようとしたその時、声をかけてくる人物が現れる。

 

 

 

「久しぶりね、時崎」

「あら・・・恵子さん!?」

 

その人物は長身で黒い髪をポニーテールにまとめている女性だった。

 

「恵子先生・・・!お久しぶりです!」

「お、鳶一か。元気そうじゃん。それに、風鳴妹も」

 

「もぉ、栞でいいって言ってるじゃないですか・・・お久しぶりです、恵子さん」

 

狂三、折紙、栞はこの恵子と呼ばれている女性を知っているようだ。恵子は士道の方を向いて自己紹介する。

 

「どーも、私は牧野 恵子。普段は外国で医者やってるんだけど、久しぶりに帰ってきたのよ。すぐ外国戻るけど」

 

「あ、初めまして。五河 士道です。狂三達とは仲良くさせてもらってます」

 

「はいよろしく。しっかし、私の知り合い三人を囲むとは中々のプレイボーイね」

「えっと・・・・・・」

 

「もぉ、初対面の人に失礼ですわよ・・・士道さん、この方は四年前、わたくしと薫さんと同じく仮面ライダーとなって戦っていたお方ですの」

 

「私のブレイブのプロトタイプである、プロトブレイブになって戦っていたの。それに、幼かった私を治療して助けてくれた人なんだ」

 

「私はお姉ちゃん経由で知り合って、それ以来仲良くさせてもらってるの」

 

「・・・・・・その通りだけど、時崎が仮面ライダーの話をするって事は、あんたも仮面ライダー?」

 

「はい、エグゼイドです」

士道はゲーマドライバーとマイティアクションXガシャットを取り出して見せた。

 

「・・・・・・そうか。まぁ、適合者として色々大変だろうけど、頑張りなよ」

 

士道は再び聞いた「適合者」という知らない言葉について、チャンスと考え思い切って聞いてみた。

 

 

「あの・・・適合者って何ですか?」

「「「「え・・・・・・?」」」」

 

その質問に、恵子だけでなく狂三達も固まってしまう。先に我に返った恵子が言う。

 

「いやいや、何言ってんの?仮面ライダーになるための必須条件よ」

 

栞が士道に詳細を説明する。

 

「えっと、ね。適合者っていうのは、体に少量のバグスターウィルスを入れて、バグスターウィルスの”抗体”を作る適合手術を受けた人の事なの。

 

それが、ゲーマドライバーやガシャットを使用する条件なんだけど・・・・・・」

 

「いや・・・俺、そんな手術を受けた覚えは無いんだけど」

 

「・・・・・・・・・って事は、何?あんたは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って事?」

 

「そう・・・・・・だと思います」

 

恵子の言葉に、士道は頷く。

 

今になって気付いたその事実に、皆は驚きのあまり固まってしまうが、栞と折紙はそれぞれが士道の手を握り、狂三は士道を正面から見て決意を込めた声で言う。

 

「士道君、大丈夫。不安にならないで」

「私達は、そういう理由で士道から離れたりしないよ」

「そうですわよ。何であれ、士道さんがエグゼイドなのは変わりませんわ」

 

「・・・・・・!」

 

三人の言葉にハッとなる士道。確かに、適合者の件を知った士道の心には「皆とは自分だけが違う」という事から皆が離れてしまうのでは・・・?という不安があった。

 

だが、それは彼女達が否定してくれた。変わらず士道の側にいてくれると言ってくれた。

 

「その・・・ありがとう・・・」

照れながらお礼を言う士道に、三人の少女は笑顔になった。

 

(やっぱりプレイボーイ・・・っていうかタラシ?)

恵子は内心でそう思いながらも、士道の謎について考えていた。

 

 

そして恵子達は勿論、士道のインカムを通じて聞いていた琴里達フラクシナスクルーの面々にも衝撃的だった。

 

「・・・・・・もしかして私達、とんでもない事を聞いちゃいました?」

「仮面ライダーへの変身に必須の条件を満たしていないのに変身できる・・・確かにこれは驚きですね」

 

皆がざわめく中、琴里は・・・。

 

「皆、落ち着いて。確かにさっきの話は驚いたけど、士道は士道よ。それは変わらないでしょ。

 

それと、こっちでも出来る限り調べてみましょう。でも、狂三の件もあるから無理はしなくていいわ」

 

「「「「了解!」」」」

 

琴里の言葉に賛同し、クルーの皆は返事をする。

 

(そうよ・・・・・・真実がどうであれ、私はおにーちゃんの味方であり続ける!)

 

心の中で決意を固めながら、琴里は支持を出していく。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道はあの後、皆で適合手術の件は出来る限り調べてみようという事で話は纏まり、狂三以外の面々と別れて二人で歩いている。

 

狂三へのお礼兼デートの筈が、自分の謎が増える事になってしまった。

 

「まさかあんな話になるとは・・・」

「まぁ、殿方にもミステリアスな一面があっても良いのではないですか?」

 

「ミステリアスの一言で済む問題か?・・・まぁでも、これから明らかにしていきたいな・・・」

 

何故、精霊の霊力を封印出来るのか。何故、適合手術を受けていないのに仮面ライダーに変身できるのか。

 

わからない事だらけだが、今回の件を切っ掛けに、士道は自分自身の謎について意識するようになる。

 

 

そして、その後は何事も無く狂三とのデートは問題なく終了。

 

「狂三・・・今日は楽しかったか?」

 

「はい、とても。またご一緒にデートをしたいですわ」

「そうか・・・良かった」

 

二人の絆は少しずつ、確実に深まっていった。

 




次回予告

琴里は真那から呼び出しを受けて、一人でとある場所に向かう。一方、パラドが遂に動き出して・・・。

第六話 突然のEmergency!

「よぉ、士道」


ーーーーーーーーーー


今回、エピソードZEROから恵子が出ました。恵子との出会いでようやく適合手術の事を士道が知りました。

というか、今回を逃すと士道が適合手術について知るタイミングがなくなってしまうので、少々強引かもしれませんが今回の話に入れました。


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第六話 突然のEmergency!

早めに更新できました。キリの良いところまでなので短めです。



士道と狂三のデートから三日後。

 

士道が授業を受けている時間帯で、『KEEP OUT!』と書かれたテープを貼られた工事現場に、琴里はある人物から呼び出しを受けて、そこへと足を運んでいた。

 

「・・・・・・確かここのはずよね」

 

琴里が階段を降りていくと、士道と同じ青い髪を持ち、ポニーテールの小柄な少女・・・真那が、瓦礫の上に座っていた。

 

「来やがりましたか」

 

「あなた、どうして・・・って聞くのは違うか。あなた、以前のバグスターとの戦いでついて来たもんね。そして私達の事を調べたって感じかしら」

 

琴里の言葉を聞いて、真那は真剣な表情になって言う。

 

「えぇ、調べましたよ。なぜ兄様をラタトスク機関のような精霊の懐柔を目論む狂った組織に加入させてやがるのですか?」

 

「アンタが所属するDEMインダストリーのような悪徳企業に狂った組織呼ばわりされるなんて、ラタトスクも落ちたものね」

 

「!?」

 

琴里が言い放った言葉に真那は驚いた。真那がDEMインダストリーの所属だと言うことを看破されたことに真那は動揺を隠せなかった。

 

「私達を舐めないでもらえるかしら?それ位はわかるわよ」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

琴里の言葉に真那は何も言えなくなった。しかし、真那にはどうしても否定しなければいけないことがあった。

 

「兄様のことは置いておきますが、DEMインダストリーを悪徳企業呼ばわりをするのは、ちょっと聞き捨てならねえですね。

 

あそこは記憶を無くした真那を救ってくれた恩のある所でいやがります。あなたが悪徳企業呼ばわりする権利はねえのでやがりますよ?」

 

真那の言葉に琴里の眉がピクリと動く。その時、琴里は真那について分からないことが、今の一言で全てが一本の線で繋がり始めていた。

 

 

「まさか、記憶は消去されて・・・・・・」

 

「・・・・・・?言いたいことがあるならはっきりと言いやがったらどうなのですか?」

 

真那は核心的なことを述べて戦慄を始めた琴里を見て、怪訝に思っていた。琴里は足を進めて真那の両肩を掴む。

 

「あなたさえ良ければ、ラタトスクに来ない?朝昼晩の三食と暖かい寝床を用意するわよ?」

 

「はあ!?急に何を言ってやがるのですか!?」

 

琴里のいきなりの勧誘攻撃に、真那は驚いた。琴里は真那に指をさし、ラタトスクに加わった際の特典を説明する。

 

「あなたのような強力な人材は大歓迎よ。今なら追加で、士道と一緒に過ごす時間も作れるようにするわ」

 

「真那はDEMを辞めて、今日からラタトスクにお世話になりやがります!!」

 

「・・・・・・・・・え〜〜〜・・・・・・・・・」

 

琴里の提示した条件に、一瞬のうちに真那は琴里の条件を喜んで呑んだ。

 

呆気ないほど簡単に勧誘できた琴里は完全に呆気にとられていたが、真那が更に話を続ける。

 

 

「ですが、もう一つ感心しねー事がありやがりますよ。

 

仮面ライダーというのになってゲーム病患者の為に戦っているのに、精霊の懐柔・・・説得?という更なる負担を増やしやがって・・・ですよ」

 

その言葉に、十香を救った時の士道とグラファイトの戦いの記憶が蘇り、思わず感情的になって叫んでしまう。

 

 

「その事なら四月に士道が仮面ライダーになっている事を知った時、死ぬ程悩んだわよ!

 

ボロボロになりながらも、精霊の為、ゲーム病患者の為に戦う士道を見た時の気持ちがわかる!?

 

・・・全身傷だらけで、血だらけで、それでも助けたい人達の為にって・・・ヒクッ・・・おにーちゃぁん・・・」

 

「ご、ごめんなさい!謝りますから泣かねーで下さいよ!ほらハンカチですよ!」

 

十香や四糸乃を救った時のボロボロな士道の姿が今でも脳に焼き付いており、その事を思い出して泣いてしまう。

 

真那が謝りながらハンカチで涙を拭いてあげる。

 

「・・・・・・兄様は誰かに強制されたのではなく、自分の意思で戦うって決めやがったんですね。なら、応援するしかねーですね・・・」

 

「グスッ・・・うん・・・」

すると、琴里の端末に神無月から通信が入る。

 

「か、神無月・・・一体どうかしたの?」

 

『司令、来禅高校にバグスターウィルスが出現しました!赤と青の二種類で数も多いです!』

 

「なんですって!?」

 

どうやら真那にも聞こえていたらしく、二人は目を見合わせていた。

 

「私は来禅高校に向かいます。兄様に危険が迫ってやがります!兄様の救出は私にお任せ下さい!」

 

「ええ、お願いするわ!」

 

琴里は真那にも協力を要請し、真那は了承して来禅高校に向かうことになった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

少し前。全ての授業が終わったと伝える終了の鐘が鳴り響く。士道は窓を見つめてボソッと呟く。

 

「今日も平和ですよっと・・・」

あれから、バグスターも新しい精霊も出現せず、平和である。

 

「でも、俺の件はわからないままだよなぁ」

「ごめんね士道、すぐにわからなくて・・・CRでも調べてるけど何もわからないって」

 

「良いって、急がなくても」

「でも、気になるよね。士道君は変身の条件を満たしてないのに変身できるっていうのは」

 

「俺だけ特別っていうのは・・・何かあるんだろうなぁ」

 

狂三とのデートの時に聞いた、適合手術の件は、色々調べているが何もわからないままである。

 

すると、帰り支度を済ませた十香が士道に声をかける。

 

「シドー、どうしたのだ?」

「ん?いや、適合手術の件だけど」

 

十香達精霊組には、士道の適合手術の件は既に伝えているが、皆士道の力になると言ってくれたのだ。

 

「まだわからぬのか・・・だが、調べてくれている者達を信じて待つしかないのではないか?」

「そうだな・・・」

 

そこまで言ったその時、廊下から悲鳴が聞こえた!士道達が廊下に出ると、バグスターウィルスがいた!

 

青いパズルがいくつも付いているようなプロテクターを着ているバグスターウィルスと、赤いボクサーのような格好をしたバグスターウィルスが複数体おり、暴れていた。

 

 

「校内に出てきやがった・・・!?」

「シドー!」

 

「わかってる、襲われてる生徒達を助けるぞ!」

「「了解!」」

 

すぐに八舞姉妹と狂三も合流。皆でバグスターウィルス達を倒すべく奮闘する。

 

「キヒヒヒヒ!さぁ、始めますわよ!」

「クハハ、我等の学び舎まで現れるとは・・・制裁が必要だな!」

「戦闘。ウィルスは駆除します」

 

仮面ライダーに変身する四人は、変身せずガシャットからガシャコンウェポンを出して戦う。

 

十香と耶倶矢と夕弦は、限定霊装を展開しなくても格闘戦だけで十分戦えた。

 

襲われていた生徒を助け逃しながら、倒していく。

 

すると、一体のバグスターウィルスが士道の肩を叩いた直後、校内の階段を駆け上がっていく。まるで、士道を案内しているかのように。

 

「皆、俺はあいつを追いかける。この場は頼む!」

「わかったぞ、気をつけるのだシドー!」

 

十香の言葉を聞き、士道は屋上を目指して全力で走る。そして屋上に続く扉の前に立っていたバグスターウィルスを一撃で倒し、扉を開ける。

 

屋上の扉を抜けた先、そこにいたのは・・・・・・。

 

 

「よぉ、士道」

「パラド・・・・・・!」

 

以前出会ったバグスターの一人、パラドだった。

 




次回予告

遂にパラドが戦う。黎斗から渡されたガシャットの力を使って。まさに、子供のように無邪気な・・・敵。

第七話 打倒SのParadox

「遊ぼうぜ!」


ーーーーーーーーーー


次回で、第四章は終わります。また、遂にパラドが変身します。


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第七話 打倒SのParadox

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今回で第四章は終了です。


「よぉ、士道」

「パラド・・・」

 

屋上にいたのは、夕弦を探していた時に出会ったバグスター、パラド。

 

不敵な笑みを浮かべながら立っているパラドに、士道は険しい表情のまま問う。

 

「校内にバグスターウィルスを出したのは・・・」

「俺だ。士道にここに来てほしかった、そうすれば士道と遊べるだろ」

 

「俺と遊ぶ?・・・・・・そんな事の為に学校の皆を巻き込みやがったのか!?」

 

「まぁな。許せないか?俺が・・・・・・なら、俺を倒してみせろ」

パラドはグラファイトが使っていたファンガイア製の短剣を取り出す。

 

士道もガシャコンブレイカーを剣にして構える。

 

「本番前のチュートリアルだ、ここでゲームオーバーになるなよ!」

 

パラドが走って士道に急接近し、短剣を振り落とす!士道はガシャコンブレイカーで受け止め、直後の隙をついて右足でパラドの脇腹を蹴る。

 

うっと呻いたパラドに更に回し蹴りを当てる。士道は深追いせず、一旦離れて隙無く構える。

 

ところが、パラドはニッと笑い短剣を縦横無尽に振るう。すると、短剣を降った軌道に合わせて斬撃となり、真空刃となって襲いかかる。その数、複数。

 

士道は横に飛んで初撃をかわす。すぐに士道は走ってパラドに接近していく。

 

斬撃によって床やフェンスが切り裂かれていく中、士道は臆する事無くかわしながら進む。

 

一度左腕を薄く斬られて血が出たがそれを無視してパラドの近くまで来れた所で左腕でアッパーを当てようとするが、パラドは咄嗟に右腕を盾にして防ぎ、右足で士道を蹴り飛ばす。

 

倒れた士道にジャンプして短剣を刺そうとするが、士道は転がって回避する。

 

お互い、互角に戦っており有効打を与えられない状態が続く。

 

すると、全てのバグスターウィルスを倒し終えた十香達が屋上へやってきた。

 

「シドー!・・・・・・その男は」

「パラド・・・バグスターだ」

 

士道の言葉に、皆が警戒心を高め構える。しかし、パラドは笑みを深める。

 

「遂にプレイヤーが揃った・・・・・・ここからが、ゲームの本番だ」

そう言って、パラドは黎斗から受け取った新しいガシャットを取り出す。

 

一つのガシャットに二つのゲームが入っている「ガシャットギアデュアル」だ。

 

《パーフェクトパズル!》

《What's the Next Stage?》

 

「変身」

 

《Dual Up!》

《Get the glory in the chain・・・PERFECT PUZZLE!!》

 

 

ダイヤルを回してパーフェクトパズルのゲームを選択した後、起動スイッチ「デュアルアップスターター」を押す。

 

出現したウィンドウがパラドを通過することで、仮面ライダーへの変身が完了する。変身後は右腰の「ギアホルダー」に装填する。

 

「仮面ライダーパラドクス、レベル50」

パラドは変身した己の名を言う。遂にパラドは仮面ライダーパラドクス・パズルゲーマーレベル50に変身した!

 

「レベル50!?」

「ゲンムも本気で作ったという事さ」

 

「・・・・・・っ!皆、行くぞ!」

 

《マイティアクションX!》

《ドラゴナイトハンターZ!》

《ファング!》

 

《タドルクエスト!》

《ブレード!》

 

《バンバンシューティング!》

《ガン!》

 

《爆走バイク!》

《クロー!》

 

「「「「変身!」」」」

「「「・・・変身!」」」

 

士道達は仮面ライダーになり、十香と八舞姉妹は限定霊装を展開する。

 

パラドは余裕を崩さず、自身の能力を説明する。

 

「ゲームエリア内のエナジーアイテムを自由自在に操る、パズルゲームだ。ゲームエリア内のエナジーアイテムを統一することが出来る」

 

自分の体をクルリと回して能力を発動し、様々な入れ物に収められたエナジーアイテムが全て露呈する。

 

更に、パラドが腕を動かすと全てのエナジーアイテムが動き出す。

 

「エナジーアイテムを、組み合わせて使えるのさ」

 

《伸縮化!》

《ジャンプ強化!》

 

二枚のエナジーアイテムを同時に使い、強化されたジャンプ力で高く飛び、ガシャットギアデュアルを取り出してダイヤルを回しホルダーに再びセットする。

 

《デュアルガシャット!》

《パーフェクトクリティカルコンボ!!》

 

音声の後、上空から両脚を伸ばしてキックを叩き込んだ!狙いは、折紙と狂三!

 

二人はすぐに動こうとしたが、伸びるスピードがかなり早く、全員の対処が間に合わず直撃してしまう。

 

その威力は凄まじい。レベル5と50・・・十倍のレベル差は絶望的だ。二人は一撃で倒され、変身解除してしまう。

 

壁に激突し、倒れる二人。皆がが駆け寄り介抱する。

 

「ハハ・・・・・・ハハハハハハハハハ!レベルの差が大きいとこんな簡単なのか。つまんなくなりそうだ、ハハハハハハ!」

 

「・・・・・・パラドォ!!」

 

士道は怒りの声を上げるが、パラドは平然としたままギアデュアルのハンドルを回す。

 

「もっと・・・・・・もっと遊ぼうぜ!」

 

《KNOCK OUT FIGHTER!》

《The strongest fist!“Round 1” Rock & Fire!》

 

「第二変身!」

 

《Dual Up!》

《Explosion Hit! KNOCK OUT FIGHTER!!》

 

ガシャットのダイヤルを左に回して「ノックアウトファイター」を選択して、仮面ライダーパラドクス・ファイターゲーマー・レベル50に変身した!

 

「遊ぼうぜ!!」

 

肩のショルダーが腕に移動、「マテリアライズスマッシャー」として両腕に装着し接近戦を仕掛ける。

 

士道と栞が交戦するが、二人掛かりでもまるで敵わない。レベル差は勿論、今のパラドは接近戦闘能力が大きく強化されている。

 

「十香さん、行って!」

「・・・わかった!」

 

「行くぞ夕弦!」

「了解、えいやー!」

 

十香と耶倶矢と夕弦が動く!

 

耶倶矢と夕弦が颶風騎士を使い、竜巻の矢を放つ。更に、十香は八枚姉妹と反対方向に移動しパラドを挟み撃ちするようにする。

 

鏖殺公をパラドに振り下ろす。パラドは両腕で受け止めるが、ガラ空きになった胴体に、士道と栞がキメワザを放つ!

 

《ガシャット!キメワザ!》

《DRAGO KNIGHT!CRITICAL STRIKE!!》

 

エネルギーを一点集中させてそれを同時に叩き込む。モロにキメワザを受けて吹き飛び、倒れるパラドクス。

 

だが、パラドクスにはたいしたダメージになっておらず、すぐに立ち上がってしまう。

 

「いいな、楽しいって気持ちが膨れ上がって・・・もっともっと味わいたい!!」

 

《高速化!》

 

そんなパラドの心境に連動するように、両腕から炎が湧き上がる。更に、すぐ隣にあった高速化のエナジーアイテムを取り、高速移動で士道以外の皆を拳で倒してしまう。

 

女子達の変身が解けて倒れてしまう。体にも痛みがありすぐには動けない。

 

「てめぇ!よくも皆を!!」

「本気でゲームするなら、お前を怒らせるのが一番だからな!」

 

《ゲキトツロボッツ!》

「第三変身っ!!」

 

士道は怒りの感情のまま、ロボットアクションゲーマー・レベル3になる。

 

ダブルアクションゲーマーではないのは、左腕の強化アームの威力はレベル50にも匹敵する力がある。

 

それを知っている士道は、ゲキトツロボッツを使ったのだ。すると、パラドに狂三が瓦礫を投げた。

 

それは仮面ライダーとしての装甲の前には意味を成さなかったが、パラドの注意は狂三に向いた。

 

「ん?」

「・・・・・・・・・キヒヒヒヒヒ!!レベル50だからといって、調子に乗らないで欲しいですわ!!」

 

立ち上がった狂三は霊装を纏い、己の天使を顕現させた。

 

 

 

刻々帝(ザフキエル)!!」

 

その瞬間、狂三の背後の影から、ゆっくりと巨大な時計が姿を現す。

 

狂三の身の丈の倍はあるほどの巨大な文字盤。その中央にある針は、それぞれ細緻な装飾が施された古式の歩兵銃と短銃。

 

「・・・・・・これが、狂三の天使!?」

 

士道達が驚く中、狂三は巨大な文字盤から短針に当たる銃が外れて、狂三の手に収まる。

 

「刻々帝、【四の弾(ダレッド)】!」

 

 

狂三がそう唱えると、時計に刻まれた『Ⅳ』の数字から、影のようなものが漏れ一瞬の内に、狂三の握る短銃の銃口に吸い込まれた。

 

時計の数字から影が漏れ出た瞬間、狂三の左目の時計が、恐ろしい速さで正方向に回った気がしたからだ。

 

狂三は、左手に持った銃の銃口を、自分の顎に押し当てて躊躇うことなく引き金を引いた。

 

 

ドン!と、銃声が鳴り響くと共に狂三の頭がグワン、と揺れる。

 

だが狂三が銃で自らを撃った瞬間、傷だらけの体が綺麗になり、まるで何事もなかったかのように綺麗に復元された。

 

「すげぇな、おい!何したんだよ」

「時間を戻した・・・それだけですわ」

 

「ハハハ!精霊って凄いな!じゃあ士道と一緒に楽しませてくれ!」

 

「士道さん!サポートしますわ、攻めて!」

「頼む!」

 

士道が走る!狂三も天使の力を使う。

 

 

「刻々帝、【一の弾(アレフ)】!」

 

すると先程のように文字盤の『Ⅰ』の部分から影が染みだし、狂三の握る短銃に吸い込まれ、そしてまたその銃口を自分の顎に当てて引き金を引く。

 

その瞬間、その場から狂三の姿が掻き消え、それと同時にパラドが横に吹き飛ぶ。

 

一の弾(アレフ)のの能力は、時を加速させる事による加速能力。加速して霊装のブーツを纏った足で蹴ったのだ。

 

吹っ飛んだ先にいた士道が左腕で全力でぶん殴る!

流石に、レベル50に匹敵する左腕の強化アームで殴られ、パラドにもダメージが入った。

 

更に、一度の攻撃ではなく何度も追撃をかけて何度も殴る!学園の皆を巻き込み、十香達を傷付けた怒りを込めて!!

 

「刻々帝、【七の弾(ザイン)】!」

 

文字盤の『Ⅶ』から染みだした影が、狂三の銃に吸い込まれ銃弾をパラドに向けて放つ。

 

銃弾がパラドに当たると、パラドの動きが完全に停止した。

 

「時間を止めて動けなくしましたわ、士道さん!」

「ナイスだ狂三!」

 

狂三に礼を言い、士道は止まっているパラドに連続パンチを叩き込む!

 

止まっている時間の許す限り、士道は先程のように左腕で殴り続ける。

 

効果が解けてダメージが纏めて入り、更に吹っ飛ぶ!屋上の床に激突し、倒れるパラド。しかし、それでも立ち上がる。

 

「・・・士道、俺は今、心が踊ってるんだよ!それが嬉しいんだ!」

 

本当に嬉しそうに、喜々を一切隠さない。そしてギアデュアルを取り外してダイヤルを回してキメワザを発動する。

 

「狂三、下がってろ!」

 

士道は狂三を下がらせ、すぐ近くにあったマッスル化のエナジーアイテムを取る。

 

それからゲキトツロボッツガシャットをスロットに入れて、キメワザを発動する。

 

 

《ノックアウトクリティカルスマッシュ!!》

《GEKITOTU!CRITICAL STRIKE!!》

 

パラドは右拳に炎を纏わせて強烈なパンチを放つ。士道も左腕のスマッシャーに集中して、パラドに殴りかかる。

 

士道の左拳とパラドの右拳が激突する。その衝撃とエネルギーがぶつかり合い、激しく光る。

 

 

 

 

 

勝ったのはパラドであった。パラドの拳が士道のスマッシャーを破壊し、そのまま倒してしまう。

 

自動で変身が解けるが・・・士道の左手は赤く腫れ上がっていた。炎が癒やすが、少し時間が掛かっている。

 

「痛・・・ッデェェェ・・・!」

 

左手の痛みで倒れたまま呻く士道に、少女達が駆け寄る。そんな士道達にパラドは歩み寄る・・・拳を燃やしたまま。

 

「もっと、俺の心を・・・踊らせてくれよ・・・・・・!!」

 

皆が士道を庇うように立ち、構える十香達。しかし、その実力差は歴然。

 

例え刺し違えてでも・・・・・・そんな考えが過ぎった。皆が覚悟を決めたその時。

 

 

空が赤く染まった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その時、上空から凄まじい霊波反応が検出。赤く染まった空から現れたのは、一人の少女。

 

濃密な焔を纏い、白い着物のような和装に、天女の羽衣と言わんばかりに絡みついた炎の帯。そして、側頭部にある二つの角があり、そして黒いリボンに赤い髪を持つ・・・。

 

 

「・・・士道、少しの間・・・力を返してもらうわよ」

「琴里・・・・・・!?」

 

精霊化した琴里であった。天使を構え、パラドを睨みながら・・・。

 

 

「さぁ・・・・・・私達のデート(戦争)を始めましょう」

 

戦いの宣言をした。




次回から第五章、琴里の話になります。


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第五章 五河シスター
第一話 第五精霊・Efreet


お待たせいたしました。久しぶりの更新ですが、少し短めになっております。


「さぁ・・・・・・私達の戦争(デート)を始めましょう」

 

身体の周囲に炎を纏わせ、空に立っている。

 

天女の羽衣のような、燃える和装・・・霊装の神威霊装・五番(エロヒム・ギボール)を着ていて、側頭部から伸びた二本の角を携えた少女。

 

その力。その姿。精霊としか思えない姿をした少女の名を、士道は一人しか知らない。

 

 

「琴里・・・・・・!?」

 

その少女は五河 琴里。ラタトスクの司令官であり士道の義妹だった。

 

パラドもその姿を認識し、仮面越しに目を輝かせる。

 

 

「新しい精霊、炎の・・・ハハハハハハ!心が踊るな!」

 

「黙りなさい、あなたは少しやりすぎたわ。跪きなさい、お仕置きタイムよ」

 

しかし琴里は鬱陶しげに鼻を鳴らし、担いでいた戦斧をゆっくりと持ち上げた。

 

 

灼爛殲鬼(カマエル)!」

 

琴里は静かに言葉を発し、炎の戦斧を凄まじい勢いで前方に振り抜いた。

 

琴里が灼爛殲鬼を振り抜いた瞬間、その先端の炎の刃が揺らめく。

 

パラドは十香達の攻撃のように受け止めようとするが、迫ってきた瞬間に危険を察知したのですぐに回避した。

 

その判断は正解だった。灼爛殲鬼の一撃は大きく、今のを避けていなかったら仮面ライダーに変身していても大ダメージは避けられない。

 

琴里はパラドに注意しながら、士道に言う。

 

「士道、すぐにこの場から逃げなさい!今のあなたは、簡単に死んじゃうんだから!」

 

琴里に言われて気付いた。あの炎が発生していない。

 

ギリギリ左手は治し終えたようで問題ないが、あの炎の力が無くなっている事をハッキリと自覚した。

 

 

「まさか、この炎の精霊って・・・・・・お前だったのか!?」

「いいから早く!」

 

琴里は強めに避難を促しながら、パラドに灼爛殲鬼で攻撃を仕掛ける。

 

だが、パラドは琴里の懐に素早く入り込み、灼爛殲鬼を振るうのに最適な距離を保つのを妨害。

 

パラドがノックアウトゲーマーで戦うのに最適な距離を保ちつつ、琴里に連続でパンチを叩き込む!

 

体に連続パンチを受けた琴里は、大きなダメージを受けて倒れる。

 

霊装を纏っていても仮面ライダーの・・・接近戦に特化し高いレベルと攻撃力を持つパラドクスの攻撃をモロに受けて、流石に無傷という訳にはいかなかった。

 

だが、琴里の全身から炎が噴き出して全身に広がっていき、琴里は身を起こす。

 

炎が収まると、一切のダメージが無くなっていた。琴里が灼爛殲鬼を構え直し・・・。

 

 

「もっと早くこうするべきだったの・・・?」

 

すると、琴里は呟き始める。だが、目からは少しずつ光が失われており、呟きも独り言のように、無意識に言い続ける。

 

 

「隠し事なんてしないで、もっと早く精霊の力を取り戻していれば、士道の力になれたの?

 

おにーちゃんがあんなに傷つかないで、苦しまないで済んだかもしれないの?

 

でもそうしていたらおにーちゃんはきずがなおらなくてもっとたいへんなことになって・・・?

 

おにーちゃんがいなくなっちゃう、いやだいやだいやだいやいやいやいや」

 

琴里がどんどん狂っていく。精霊の力に飲み込まれそうになる・・・・・・・・・その刹那、琴里の視界にパラドが映り、先程の戦いで倒れた士道の姿が浮かび・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オマエノセイデ、オニーチャンガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

人間から出たとは思えない、怒りの叫び。それは、爆発してしまった爆弾のように、噴火してしまった火山のように。

 

だがそれは・・・それだけ士道の事を大切に想っているからこそ。彼の事が大切で、大好きで、愛しているからに他ならない。

 

だからこそ、己の快楽のために彼を傷付け、苦しめた者には・・・。

 

 

「灼爛殲鬼ッッ!!!」

 

報いを与える。

 

(メギド)ッッ!!!」

 

琴里の叫びに呼応し、棍のみとなる灼爛殲鬼。更に変形し、柄の部分が本体に収納され、琴里が掲げた右手に装着。

 

肘から先を長大な棍に覆われた砲台を構えた琴里は、パラドに狙いを定めた。灼爛殲鬼を展開させて赤い光を放ち、琴里の周囲の炎を吸収。

 

「流石にやばい!」

《パーフェクトパズル!》

 

危機感を抱いたパラドはパズルゲーマーに戻り、エナジーアイテムを五枚、自分に素早く引き寄せる。

 

《回復!》《回復!》

《鋼鉄化!》《鋼鉄化!》《鋼鉄化!》

 

ライダーゲージを癒やす”回復”を二枚と、対象を一時的に鋼鉄化する”鋼鉄化”を三枚入手。腕をクロスさせて身を固める。

 

ライダーゲージを最大まで回復させ、鋼鉄化も三枚積み重ね。それ程の事をしなければならない・・・パラドにそう思わせる程の危機感を抱かせた。

 

士道達も直感で威力の高さを悟り、顔を腕で覆って踏ん張りの体制を取る。

 

次の瞬間、熱の大光線が放たれた。言葉では言い表せない圧倒的な熱量が、パラドに直撃して吹っ飛ばされた。

 

屋上を削り取ってしまうほどに強力な攻撃だった。

 

その衝撃が士道達にも襲いかかる事に・・・ならなかった。

 

「兄様!」

 

その声と同時に、声の主・・・崇宮 真那がCRユニットを纏って現れ随意領域(テリトリー)を全開にして皆を守ったのだ。

 

撃ち終えた琴里は後ろを向き、士道達が無事なのを確認すると安心したのか、膝をついて倒れてしまう。

 

士道達は慌てて駆け寄って確認すると、気を失っているようだった。

 

すぐにフラクシナスから隊員がやってきて、皆がフラクシナスの医務室へ行く事になった。

 

「士道さん・・・大丈夫ですの?」

「あぁ・・・でも、まさか琴里が・・・それに、お前・・・真那だよな」

 

「あ~、はい。兄様の妹、真那でいやがりますよ。実は私、海外の対精霊部隊に所属しているんです」

 

「そ、そうなのか!?」

「でも、ラタトスクに転職する事になりました!よろしくお願いいたします!」

 

笑顔で敬礼する真那。狂三は、突然の話に困惑する士道の顔に残っていた血をハンカチでそっと拭き取る。

 

士道も今回の事についての驚きで、まだ心の整理が出来ていないのか呆然としていた。

 

 

こうして、パラドが引き起こした来禅高校襲撃は終わったのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

パラドは灼爛殲鬼の”砲”を受けても生きていた。回復でライダーゲージを満タンにして、鋼鉄化三つで防御を固めていたおかげで保ったのだ。

 

だが、それでもしばらく起きれない程のダメージを受けていた。琴里の灼爛殲鬼による攻撃は、今確認されている精霊の中でもトップクラスの攻撃力だ。

 

それを受けて消えずにいるだけ上等である。パラドは吹っ飛ばされた先の地面に変身が解けた状態で仰向けに倒れていたが・・・。

 

 

「ハハハ・・・・・・ハハハハハハ!!あ~・・・・・・面白かった」

 

 

笑っていた。




次回予告

精霊の力を取り戻した琴里から事情を聞く士道。その口から語られるのは、五年前の出来事であった。

第二話 五年前のTruth

「五年前のあの日に・・・私は変わったの」



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第二話 五年前のTruth

空中艦フラクシナスの医務室で、士道は気を失いベッドで横になったままの琴里に付き添っていた。

 

パラドとの戦いで負った傷は、琴里の炎の力が無くなる前に完治したので問題ないが、琴里が精霊だった事は士道に大きなショックを与えていた。

 

自分の家族が・・・幼い頃から一緒に過ごした少女が、世界の災厄と呼ばれてしまっている精霊であった事に。

 

ちなみに今、医務室には十香、四糸乃、八舞姉妹、折紙、栞がいる。狂三はいつの間にか姿を消していたが。

 

更に、ラタトスクに転職したという真那だが、検査などが色々あるためすぐに入るわけではなく、もう少し出向中のASTのままになるらしい。

 

表向きには、来禅高校での事件に巻き込まれて重症を負った・・・という事にするらしい。

 

栞と折紙が琴里の額の汗を拭いたりなどの看病を行い、士道は琴里の手を握っている。

 

士道としては、手を繋いでいないと心配になってしまうからだ。

 

「シドー・・・琴里は大丈夫か?」

「大丈夫・・・だと思う。気を失ってるだけみたいだから」

 

「琴里さんが、精霊・・・」

『しかも炎だって。四糸乃とは正反対だねぇ』

 

「うーむ、琴里のあの力は凄まじいものであったな」

「首肯。破壊力で見ると、上位に入ると思います」

 

皆が琴里について語っていると、琴里がゆっくりとだが意識を取り戻し目を開けた。

 

「んぅ~・・・・・・あれ、おにーちゃん・・・?」

「琴里!大丈夫か!?俺がわかるか!?」

 

「うん・・・・・・そうだ、おにーちゃんが危なくなって、それで私は・・・・・・」

 

今の琴里はリボンを付けていないが、妹モードで話している。

 

琴里は栞に頼んで置いてあった黒いリボンを取ってもらい、付ける。

 

 

それから無言の時間が続いたが、琴里が水を一口飲んでから、自分の事を話し始めた。

 

「皆、聞いてほしいの。私は、五河家に生まれた人間。それは間違いない」

 

俯き、掛け布団を握る手を見ながら・・・。

 

「五年前のあの日に・・・私は変わったの」

 

 

琴里は少しだけだが覚えていた、五年前の事を。

 

「私は、精霊になった。正確に言えば、精霊の力を持った人間って言った方が正しいかもしれない」

 

「精霊の力を持った、人間・・・?」

 

琴里は自分が覚えている範囲の事を語る。

 

 

五年前、天宮市で大規模火災事件が起こった。それは、精霊になった直後の琴里が力をコントロール出来なかった故に起こった事だった。

 

そして、士道が既に存在していたキスによって霊力を封印できる力によって琴里の力は封印され、士道に炎による回復能力が備わった。

 

琴里は自分が精霊になった時の事は、殆ど覚えていない。

 

精霊の力もシミュレーションで訓練をしていたが、実際に使ってのはパラドとの戦闘が初めてだった。

 

そして、ここまで聞いた士道は自分も五年前の事は覚えていないと言う。琴里は、士道と琴里の記憶を、誰かが消したと推察した。

 

その後で、琴里はラタトスクに見出だされ、精霊が自分のように辛い思いをしているなら救いたい・・・と思いラタトスクに入った。

 

そして士道が精霊の説得役に選ばれたのも、精霊の力を封印する力があるのが分かった。

 

さらに士道の回復能力も、元々は琴里の灼爛殲鬼の能力である。

 

更に灼爛殲鬼の力は、琴里でも制御できないほどに強力な破壊衝動をもたらす。

 

今は落ち着いているが、いつ出てもおかしくない。

 

衝動を抑える薬は開発されており、いつでも飲めるように準備されている。

 

 

士道から戻した琴里の霊力は、いつ暴走するか分からない。

 

それを阻止するために、琴里の霊力の再封印。つまり・・・・・・十香達と同じようにキスをして霊力を封印する必要がある。

 

士道は慌てた様子ですぐにでもキスをしようとするが、琴里が抑えて止める。

 

何故、と聞く士道に琴里は・・・。

 

 

 

「わ・・・・・・私だって女の子よ。キスするなら今じゃなくてもっといい雰囲気の時というか、ちゃんとお互いの気持ちを・・・・・・。

 

私の状況を考えたら、すぐにでも封印すべきなのかもしれない。でも・・・・・・とにかく、今はダメ!」

 

顔を真っ赤にしながら、士道を注意するように・・・それでいて”何か”を期待しているように士道をチラチラ見ている。

 

女子達はすぐに察し、全員で士道を見る。士道も少しして理由が思い至り、少しのため息を吐く。

 

 

本当は、琴里の言う通り琴里の霊力をすぐに封印したほうが良いのかもしれない・・・否、琴里の心身の安全を考えるならそうするのがベストだ。

 

琴里自身もそれを重々承知している。承知の上で”わがまま”を言っているのだ。

 

 

私とデートして、デレさせて・・・と。

 

 

「琴里・・・自分の状況を分かってて言ってるのか?」

「えぇ。全て、承知の上で」

 

「・・・・・・あぁもう、分かった!ただし、危ないと思ったらすぐに、無理矢理にでも霊力を封印するからな!」

 

「・・・・・・うん、ありがとう。おにーちゃん」

 

琴里は素直に礼を言う。士道も自分は甘いと自覚しつつも、義妹のわがままを叶えたくなってしまったのだ。

 

女子達も琴里をからかいながらも、自分達もサポートする事を約束。

 

すると、令音が入ってきた。士道が琴里への対応について先程決めた事を説明。

 

「・・・・・・琴里の状況は分かっているね?」

 

「はい。でも、俺は琴里のわがままを叶えてあげたいです。琴里には俺とのデートを楽しんでほしいですから」

 

琴里は士道の言葉に顔を更に赤くし、だが喜びが上回りそれを隠すように掛け布団の中に顔を埋める。

 

「・・・・・・分かった、私達も全力でサポートする。それと・・・」

 

令音が言うには、薬で霊力の症状を抑えても状態が安定するのを待つと、二日後が最も安定する日であるという。

 

「・・・少し厳しい言い方だが、二日後を逃したらもうチャンスは無いと思ってほしい」

 

「逃しませんよ、絶対に」

 

言い切る士道。短くも力強い決意の籠もった言葉に、令音も頷く。

 

 

士道と琴里のデートが決まった・・・決行は二日後。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻。狂三は誰もいないCRの中にいて、一人でパソコンを操作していた。

 

士道の血を拭いたハンカチを、専用のスコープで分析しながら。

 

そして操作を・・・否、解析を終えた狂三は画面に表示された結果を見て、驚きながらも納得していた。

 

「・・・ようやくわかりましたわ。何故二人に分裂出来たのかも。士道さん、あなたは・・・・・・」

 

 

 

 

バグスターウィルス反応・・・()()

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 




次回予告

士道とフラクシナスクルーで、琴里とのデートプランについて会議をする。一方、黎斗側でも新たな動きがあった。


第三話 琴里とのDate plan


「我々の忠誠と愛を込めて叫べ!!」



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第三話 琴里とのDate plan

 

琴里とのデートが決まった後。

 

士道は琴里が無事だった事による安心からか、張り詰めていた気が緩んだのか、パラドとの戦闘での疲労が一気に噴出。

 

令音に言われ、琴里の事は令音に任せて二〜三時間ほど仮眠を取ることになった。士道を心配した女子達も同行、あっという間に大所帯。

 

別の部屋にあるベッドに横になると、あっという間に寝てしまう。仮眠どころか熟睡である。

 

女子達が、誰が士道と添い寝するかでバチバチと火花を散らす中、士道は夢を見た。

 

それは、琴里から聞いた話・・・五年前の、士道が十一歳だった時の風景だった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

燃えている。家が、町が燃える。その地獄のような中を幼い士道は、走り続けた。

 

「琴里・・・!」

 

琴里の名を呼びながら、地獄の化した町を走る。

 

この日は琴里の九歳の誕生日だった。そのプレゼントを買いに、士道は駅前まで出かけていたが、戻っている途中でこの火災となったのだ。

 

家に戻ろうとしたら、街が炎に包まれていた。一瞬呆然としたが、すぐに琴里の安否確認のため走り出した。

 

仕事が忙しい両親は、仕事で家を空けている。今、家には琴里一人だけだ。

 

幼い琴里はきっと逃げる事ができず泣いている、苦しんでいる・・・そう考えた瞬間、士道は走り出した。

 

「琴里ーーーーっ!!」

 

琴里の名を叫びながら、家へと走る。

 

だが、走っている途中で浅く広いクレーターを見つけ、そして、その中心に・・・幼い女の子がへたり込み、泣いていた。

 

袖と裾が広がる和装、頭部に角が出ているが髪に括られた白いリボンを見た瞬間、琴里であると察した。

 

「琴里!」

 

手にした鞄を放り、泣いている琴里に方に走る。

 

「おにーちゃん・・・・・・おにーちゃん、おにーちゃんっ!」

 

涙が止まらない顔を両手で拭い、琴里が士道を呼ぶ。

 

しかし、士道が近づいた瞬間・・・琴里の身体にまとわりついた炎が膨み、琴里が目を見開き、肩を震わせ、大声を上げた。

 

「おにーちゃん! 来ちゃだめぇぇぇぇぇっ!!」

 

「え?」

 

瞬間、士道は体積を増した炎の爆発を受け、吹き飛ぶ。

 

背中から地面に落ちた士道の身体は、全身が大火傷を負っていた。

 

全身が激痛に苛まれ、意識が遠くなっていく。

 

這うように琴里がすぐに駆け寄る。今度は炎が発せられる事はなく、琴里が士道に触れても大丈夫だった。

 

士道の瞳には、大粒の涙を流す琴里の顔が映る。

 

これ以上琴里を泣かせてはいけない。心は叫びながらも、体が動いてくれない。

 

どんどん視界が霞み、意識が薄れゆく。しかし、それでも!

 

「大丈夫だ、泣かないで。俺は・・・本当に大丈夫だから・・・!」

 

諦めず、士道は立ち上がる。心を奮い立たせて、琴里の為に力を振り絞る!

 

「おにーちゃん・・・たすけて!」

 

「あぁ、お兄ちゃんが必ず助けるからな!」

 

二人の確かに繋がれた瞬間・・・。

 

 

「ねえ、彼を助けたい?」

 

そんな声が、士道と琴里の上から響いた。更にその言葉を聞いた士道は・・・・・・。

 

 

「助けたい・・・絶対に・・・助ける・・・!」

 

士道がそんな事を呟いた。その呟きが聞こえた琴里が士道の顔を見ると・・・・・・。

 

 

士道の両眼が、赤く染まっていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「琴里っ!」

 

琴里の名を叫びながら、ガバッと起き上がった士道。周りには令音だけがいた。

 

「・・・起きたかい、シン」

「令音さん・・・・・・他の皆は?」

 

「・・・寝ているシンを中心に色々バトルをしていたけど、寝ているシンの邪魔になってはいけないと思って、退室させた」

 

「・・・何やってたんだ皆は」

 

令音は士道の呟きには答えず、代わりに琴里の現状について説明した。

 

琴里はフラクシナス内の隔離エリアにおり、薬も飲んで落ち着いているとの事だ。

 

「・・・シン、琴里とのデートについて話し合いがしたい。ついてきてくれ」

 

「はい」

 

ベッドを出た士道は令音の後に続いて部屋を出た。

 

 

通ったことのないルートを通り、令音が扉のパネルを操作すると、ピピッという音がして扉が自動でスライドした。

 

「・・・さ、入ってくれ」

 

中は広い空間になっており、中央には円卓状の机が設えられ、作戦会議室のような場所には、すでに何人ものクルー達が席に着いていた。

 

 

「ここ、会議室ですか?」

「・・・そんなところだ。空いている席に座ってくれたまえ」

 

令音はユラユラと幽霊の挙動で空いている席に座り、士道は令音の隣に座る。

 

全員の着席を確認した奥の席に腰かけていた男が、コホンと咳払いをしてから立ち上がった。

 

琴里が隔離エリアに収容されている現在、この空中艦フラクシナスの最高責任者は副艦長であり、実戦部隊副司令官でもあるドM・・・失礼、神無月 恭平である。

 

 

「良く集まってくれました、皆様。

 

緊急事態につき、司令に代わってこの私、神無月がこの場を仕切らせていただきます。

 

士道君も、しばらくお付き合い頂けると幸いです」

 

「はい、もちろんです」

 

士道が頷くと、神無月は満足げに首肯して言葉を続ける。

 

 

「では、早速本題に入りましょう。以前から司令の身体について以前から知っていた者、今回の件で初めて知った者・・・色々な方がいるでしょうが、どうか協力をお願いします。

 

議題は、二日後に迫った司令と士道君のデートプラン作成です。各々持ち寄った情報を紹介して共有しあい、心から楽しいと思える一日を演出するのです」

 

 

そう言って神無月が部屋に並んだクルー達を見回し、大きく息を吸う。

 

「・・・シン。少し耳を塞いでおきたまえ」

「え?」

 

不意に令音がそう言って、士道は首を傾げた・・・その瞬間。

 

 

 

「諸君、親愛なるラタトスク機関員諸君!我らが女神の一大事だ。日頃の御恩に報いる時だ!

 

五河 琴里司令が! 我らの助けを必要としている! それに答える気概はあるか!?」

 

「「「「「応っ!!」」」」」

 

 

神無月が叫ぶと、円卓に着いていたクルー達が一斉に大声を上げて、凄まじい豪声が空気をビリビリと震わせる。

 

「愛がでけぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

愛の大きさに思わず叫ぶ士道など気にせず、神無月は続ける。

 

 

 

「司令に誉められたいか!?」

 

「「「「「応っ!!」」」」」

 

 

「司令の心からの笑顔が見たいか!?」

 

「「「「「応っ!!」」」」」

 

 

「司令から靴の踵で足を思いっきり踏まれたいか!?」

 

「「「「「お・・・う?」」」」」

 

自分の願望が思わず出てしまい、神無月はコホンと咳払いをして改めて叫ぶ。

 

 

「我々の忠誠と愛を込めて叫べ!!」

 

「「「「「琴里様チョーイイネ!サイコー!!」」」」」

 

クルー達の熱狂が、ブリーフィングルームに響く。

 

「よろしい! ではこれより会議を開始する! 司令の希望や願望、それらすべてを成就させ、我らが司令をデレさせん!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

 

「なぁにこれぇ」

「・・・まあ、皆は琴里が大好きなのさ」

 

「はぁ・・・義兄としては嬉しいような恥ずかしいような・・・複雑な気持ちです、ハイ」

 

複雑な士道を置いて、会議は進行していく。だが、各々の願望を勝手に言ってるだけで、なかなか良案が出なかった。

 

「く・・・一体どうすれば・・・」

 

神無月が苦しげにうなり、見かねた令音が小さく息を吐いた。

 

「・・・まあ、そこまで難しく考える必要もないと思うけれどね」

「と、言いますと?」

 

「・・・そうだな。シン、琴里が行きたいと言っていた場所などはないかい?」

 

「行きたがってる場所ですか?・・・・・・あ、そうだ。CMでやってるのを見て栄部のオーシャンパークに連れてって、とか言われました」

 

「・・・ん、そうか。ならそこにしようかな?」

 

士道が言うと、令音が軽い調子で頷いた。

 

「い、いいんですか? 琴里が言ったっといっても、妹モードの時ですよ?」

 

「・・・構わないさ。四糸乃のように別人格になっていると言う訳じゃないからね。感情を発露している状態であるし、好都合なのではないかな」

 

「なるほど・・・」

 

「オーシャンパークですか・・・・・・ん?オーシャンパークという事は、司令の可愛い水着姿が見られるのですね!?」

 

「「「「「・・・っ!」」」」」 

 

神無月の言葉に、士道と令音以外のクルー達が息を詰まらせる音が聞こえる。

 

以前士道達が温泉に行った時は、誰も琴里の水着姿を見れなかったのだ。

 

そして、オーシャンパークの案がすんなりと決まったのであった。

 

それと、オーシャンパークへは士道と琴里以外にもサポートも含めて十香達精霊組や栞と折紙も加える事になった。

 

ラタトスクも琴里の為にとサポートを万全にするが、琴里はフラクシナスの面々を知り尽くしているという事もある。

 

だが、それでも成功させないといけない。

 

すると、折紙から連絡が入る。黎斗の襲撃を受け、ガシャットを奪われてしまった、と。

 

士道は令音達に説明をして、すぐに折紙の元へ向かった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道のいる部屋から出た折紙は外を歩いていたが、ゲンム・ゾンビゲーマーに変身した黎斗の襲撃を受ける。

 

同じくブレイブに変身した折紙を返り討ちにして、タドルクエストガシャットとドレミファビートガシャットを奪っていた。

 

倒れる折紙が手を伸ばすも届かず、目の前で奪われてしまったのだ。

 

更に、琴里との戦闘でまだダメージが残っている筈のパラドも動き、CRから帰る途中の狂三を襲撃。

 

パラドクスに変身し、圧倒的なレベル差とエナジーアイテムのコンボによって倒してしまい、バンバンシューティングガシャットとジェットコンバットガシャットを奪ってしまった。

 

 

知らせを聞いて駆けつけた士道は、まずは折紙の元へ。体は問題ないが、ガシャットを奪われた事実は変わらない。

 

ダメージはあるが、歩く事は問題なく出来るという事で、二人で一緒に狂三の元へ。

 

狂三は襲われた現場から動かず待機していた。士道と折紙と合流し、パラドに襲われガシャットを奪われた事を報告。

 

三人で話していると、突如黎斗が襲撃。透明化のエナジーアイテムで身を隠していたのだ。士道の所有するガシャットを奪う為に。

 

不意打ちで襲撃を仕掛け、ガシャコンマグナムで射撃。

 

その攻撃を受けて、士道はドラゴナイトハンターZガシャットを落としてしまい、黎斗によって回収されてしまう。

 

黎斗は「残りはいずれ」と言い残して撤退。まんまとやられてしまった三人・・・特に折紙と狂三は悔しさで拳を強く握った。

 

琴里を救う為のデートを前に、大変な事が起こってしまった。仮面ライダーは、これで士道と栞の二人だけである。

 

今は琴里を優先するが、琴里の件が片付いたらすぐにガシャット奪還を決意したのであった。

 

 

その後、報告を受けた栞も合流。栞は襲撃を受けなかった為、ガシャットは奪われずに済んだ。

 

この事があった後、令音から呼び出しを受けた士道と栞はある物を受け取った。

 

それは、以前から開発していた新型ガシャット。

ラタトスクと幻夢コーポレーションの共同開発ガシャット第一号となったものだ。

 

令音は黎斗によるガシャット強奪の報告を受けて、少しでも戦力の低下を防ぐため、今渡したという。

 

新型ガシャットは、マイティブラザーズXXと同じ形で、色は爆走バイクガシャットと同じ色をしている。

 

絵もタイトルも違うものになっていて、爆走バイクの発展型と言えるだろう。

 

もしかしたら、琴里とのデートの時も何かあるかもしれない。そう考えた士道は、心の中で気を引き締めた。

 




次回予告

会議の翌日、士道と精霊組はガシャットを奪われた悔しさを感じる折紙と狂三を連れて、新しい水着選びの買い物に出かける。

そして折紙と狂三からガシャットを奪った黎斗は、それを使ってある物を作り出す。


第四話 水着Selectと新たな力

「シドー、これはどうだ?」


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第四話 水着Selectと新たな力

お待たせいたしました。

それと、四章六話で真那にも協力を頼んでおきながら、五章一話で真那を出していなかった事に気付きました。本当に申し訳ございません。

これから五章一話と二話に真那のシーンを追記しました。ご了承ください。


琴里とのプールを翌日に控えたこの日。

 

士道は十香達女子達と一緒にプールで遊ぶ時に着る水着を買うために、以前狂三とのデートで買い物をしたショッピングモールに来ていた。

 

「シドー、ここから水着を選ぶのだな?」

「あぁ。料金もラタトスク持ちだけど、あまり高すぎるのは遠慮しておけよ」

 

「士道君、ありがとう。私達も誘ってくれて」

「わたくし達のため・・・ですの?」

 

「そうだな、少しでも元気になってほしくてな。嫌だったか?」

 

「ううん、そんなこと無いよ。プールは久しぶりだから嬉しい」

 

「では、お言葉に甘えて・・・参加させていただきますわ」

 

士道の注意に、皆は元気よく返事して各々が欲しい水着を決めるため、ある程度のグループに別れていく。

 

その中には、折紙と狂三も含まれていた。ガシャットを奪われ意気消沈していたが、二人を元気つけるために誘ったのだ。

 

皆が更衣室に入って着替えている間、士道は待っている事に。すると・・・。

 

「あらー、だーりん!」

「美九?」

 

水着売り場に、私服姿の美九がやって来た。士道の姿を見て嬉しそうに駆け寄る。

 

「どうしたんですかー?」

「十香達と明日オーシャンパークに行くことになってな、水着の買い物中」

 

「オーシャンパークですかぁ?奇遇ですねー、私も明日オーシャンパークに行くんですよー」

 

「仕事か?」

「プライベートです。仕事仲間からチケットを貰ったんですけど、期限が明日までなので行くことにしたんですよ」

 

「なるほど・・・・・・令音さん、美九には琴里の事を話しておきましょうか?」

 

『・・・そうだね、美九も既に精霊の事は知っている、明日来るなら話しておこう』

 

令音から許可を得た士道は、美九に琴里の事を話した。

 

「はぇ〜、琴里さんが・・・なら、私もお手伝いします!」

「いいのか?」

 

「もちろんですよ。将来の私の義妹で美少女な琴里さんの危機なら、喜んで協力しますよー」

 

「義妹って・・・後な、協力って言っておいてただ水着姿の琴里達と戯れたいっていうのもあるんじゃないか?」

 

士道の指摘に、美九は「ギクッ」と言って目を背ける。

 

「・・・・・・そ、そそそそそんな事ありませんよ〜。そんな、水着姿の琴里さんや十香さん達と密着して、ペロペロして、モミモミして・・・そんなパラダイスな一時を狙ってるなんてこれっぽっちも・・・・・・エヘヘヘヘヘヘ」

 

実際にそのシチュエーションを妄想しているのか、デレデレな顔になる美九。アイドルらしからぬ表情だ。

 

「もしもしブルー○ワット?」

「だーりん!?私はエイリアンじゃないですぅ!」

 

「いや、女の子を狙うエイリアンだろ」

「だーりんヒドいです〜。女の子同士のスキンシップですよぉ」

 

「そのスキンシップがいやらしいんだよな・・・まぁでも、琴里の為に手伝ってくれるのは助かるよ。よろしく頼む」

 

「はい、もちろんですよ」

士道と美九が話していると、試着室から十香の声がする。

 

「シドー、美九の声が聞こえるが来ているのか?」

「あぁ、美九もオーシャンパークに行くってさ」

 

「そうなのか。ところでシドー、着替えは終わったぞ」

「早く見せてくださいぃ!」

 

興奮気味の美九を抑えながら、皆の水着姿が遂にお披露目される。

 

十香は黒と紫、狂三は黒一色の標準的なデザインのビキニ。

 

栞は白と黄色の、折紙は白に銀色の華の模様が書かれたワンピースタイプ。

 

耶具矢は黒地に白のレースが、夕弦は白地に黒いレースがついたビキニ。

 

士道が興奮する美九を抑えながら感想を言っていると、四糸乃が出てこない事に気付く。

 

 

「し、士道さん・・・・・・」

 

四糸乃が声をかけてくる。士道は慌てて四糸乃の試着室の前まで行き、声をかけてからカーテンを開ける。

 

「ど、どうしたんだ四糸乃!?開けるぞ・・・って!?」

 

士道の目の前で四糸乃は、ビキニタイプの水着に腕を通した状態で、胸元を押さえながら涙目になっていた。

 

「・・・士道さん・・・」

 

小さな肢体と相まって、背徳的な禁断的な妖しい魅力に溢れる四糸乃。 

 

「か、片手だと上手く、着られません・・・・・・」

 

四糸乃が弱々しく言っているが、これらは完全に男を「その気」にさせかねない。

 

だが、士道は鋼の精神で何とか持ちこたえた・・・。

 

「士道さん、手伝って・・・ください・・・」

「ファッ!?」

 

「士道さんなら、大丈夫ですから・・・」

 

赤い頬+涙目+上目遣い+甘い声の四連コンボで士道に頼み込む四糸乃。よしのんも無言だが圧力をかけるように士道をジッと見つめる。

 

士道の鋼の精神が崩れ・・・そうになった所で美九がハァハァしながら飛びかかろうと・・・したところで十香と折紙が美九を取り押さえ、栞が四糸乃の更衣室に入って着替えを手伝い、八舞姉妹と狂三は軽くため息を吐いた。

 

その後改めて水着を選び直した結界、四糸乃は腰部分にパレオを付けた淡いピンクのワンピースタイプに決まった。

 

いつの通りのドタバタな、士道と精霊達の日常・・・だが、明日に琴里を救うためのデートが待っている。

 

だが、士道は皆でプールに行ける事に楽しみも感じていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、黎斗は自分のアジトでガシャット作成の作業を行っていた。

 

一つのパソコンに二つのガシャットを装填した装置を繋いでいる。

 

その内の片方には、タドルクエストとバンバンシューティングの二つが、もう片方にはガシャットギアデュアルと同型のブランクガシャットが入っている。

 

データを入力していき、遂に完成する。ガシャットギアデュアルと同型のガシャットで、色は赤紫色。

 

入っているデータは、タドルクエストとバンバンシューティングを発展させた新作ゲーム。

 

「遂に完成した・・・ガシャットギアデュアルβ!」

 

それは、ガシャットギアデュアルβ。変身用のギアデュアルと違い、これはゲーマ召喚のガシャットである。もちろん、変身にも使える。

 

当然、レベル50であり敵側にさらなる戦力が増えてしまった。

 

「相変わらず、私の才能が恐ろしい・・・どうだパラドォ!私の傑作の一つは・・・・・・・・・パラド?」

 

黎斗はパラドに自慢しようとしたが、アジトにパラドはいない。

 

すると、パラドの座っている椅子の上にメモが置かれている。それにはこう書かれていた。

 

『俺はしばらくプールで遊ぶぜ。ゲンムと一緒にいるよりプールで遊ぶ方が心が踊るなって事で、バイバーイ(^_^)/~』

 

「・・・・・・・・・・・・あいつめっ」

 

 

 

 

「なぁ店員、赤青の二色の水着はないか!?」

 

「で、でしたらこちらに・・・」

 

「いいな、コレ!後は浮き輪と水中ゴーグルフ○イブと水鉄砲が欲しいぜ!」

 

「お客様、某大戦隊が混ざっています!」

 

「プールは初めてだから楽しみだぜ!心が踊るなぁ!」

 

パラドもプールに行く気満々であり、心を踊らせていた。ちなみに、代金はちゃんと支払った・・・もちろん、黎斗の金で。




次回予告

遂に皆でオーシャンパークへ。琴里のために、そして皆で楽しむために遊んでいたが、ここでモータスや黎斗、パラドの魔の手が・・・。

第五話 プールで爆走Race!

「パーク内でも爆走だよ!」


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第五話 プールで爆走Race!

お待たせいたしました。久しぶりに書いたお話しですが、内容は短くなってしまいました。

申し訳ございませんが、ご了承いただけると幸いです。


 

オーシャンパーク・・・天宮駅から五駅先の駅の近くにあるテーマパーク。

 

屋内アトラクションのウォーターエリアと、屋外遊園地のアミューズエリアの二つで構成されている。

 

夏休みでは遠方からも沢山の家族連れやカップルが訪れる人気スポットだった。

 

士道は着替えを終え、屋内プールへと移動した。

 

まだ女性陣は着替え中のようで、士道は辺りの様子を一望した。

 

広大なプールや岩山のようなウォータースライダーなどが見える。

 

興味から周りを見渡していると、士道の背に元気な声がかけられた。

 

「シドー! 待たせたな!」

 

士道が振り返るとそこには、着替えを終えた十香達、そして琴里の姿があった。

 

琴里は白いセパレートタイプに、ブラ部分がホルターネックチューブトップになり、何やら妙に色っぽかった。腕組みをして、口にチュッパチャップスをくわえている。

 

「琴里、水着似合ってるぜ」

 

「そ、そんなありきたりな・・・・・・ちょっと待って士道。あなたインカムを付けてないみたいだけど?」

 

「琴里とのデートに、インカム通じて指示をもらう必要はない。

 

琴里の事は世界で一番わかってるって自負してる・・・だから、今はラタトスクの事は関係なく楽しもう」

 

「・・・・・・そ、そう」

 

士道の言葉に、琴里は顔を赤くしながら答える。「自分の事を一番わかっている」・・・そう言われたのが嬉しかったのだ。

 

「よし、早速行くか!」

 

士道の言葉に皆が頷き、準備体操をしっかり行ってから皆でプールに飛び込む!

 

プールの水は温水になっており、季節に関係なく遊べるように配慮されている。

 

「四糸乃、あっちのウォータースライダーというのを一緒に体験しよう!」

「は、はい」

 

「夕弦、我と水泳で勝負だ!」

「承諾。受けて立ちます」

 

「では栞さんと折紙さんは、わたくしと好きにやりましょうか」

「「はーい♪」」

 

士道、琴里、令音の三人以外の皆がバラバラに移動する。気を使ってるのがバレバレだが、士道に琴里を優先させるためだろう。

 

「・・・私はここでのんびりしているから、二人で楽しんでおいで」

 

令音は椅子に座り、タブレットを操作する。

 

「・・・気を使わせちゃったな・・・行こうぜ」

「えぇ・・・行きましょう」

 

士道が差し出した手を、琴里は少し照れながらも取った。そして遊びだした二人だが、特別な事は何もしていない。

 

 

一緒に泳いだり。

 

「何だあの二人、滅茶苦茶早えぇ!」

「オレンジ色の髪の子達も早いけど、この二人も中々・・・」

 

遊んだり。

 

「水中バレーやってるけど、何なのあの若い二人!?」

「ちょっ強すぎ・・・きゃああ!」

 

特別な事は無くてもお互いが楽しめているのは確かであり、二人とも笑顔であった。

 

「「「「あの二人、特別満喫してるよね・・・?」」」」

 

「いやー、遊んだ遊んだぁ」

「確かに、プールであんなに遊んだのって、幼い時以来かしら」

 

二人は今プールから上がって、テーブルでフルーツティーを飲みながら小休止中。

 

「琴里、今楽しいか?」

「・・・えぇ。わがままを言って良かったって思えてるわ」

 

「そっか、良かった・・・・・・それで琴里、大丈夫か?」

「え?・・・まぁ遊び疲れはあるけどそれくらいで」

 

「違ぇよ、精霊の力だ・・・・・・かなりキツイんだろう?」

「・・・ッ」

 

驚き言葉を詰まらせる琴里に、士道は更に言う。

 

「気付かないと思ったか?今日このプールに来た時から辛そうだったぞ」

 

士道は気付いていた。琴里がずっと無理していつも通りに振る舞っていた事に。

 

”イフリート”の力は今も確実に琴里を蝕み、苦しめている事に。

 

「・・・・・・やっぱり、わかるのね」

「当たり前だろ。何年一緒にいると思ってるんだ」

 

でもな、と士道は琴里に優しく言う。

 

「今日は俺とお前のデートだ・・・俺がいる、だからそんな辛さもふっ飛ばしてやるさ」

 

「ぁ・・・うん!」

 

琴里の苦しみは続いているが、それでも士道は琴里の気持ちを優先し、デートを続ける事にした。

 

琴里も士道の気持ちを嬉しく思い自然と笑顔になっていた。そんな二人が次に来たのは・・・。

 

「体ピッタリ心ドキドキ、カップル限定ウォータースライダー!次の方どうぞー!」

 

カップルだけが楽しめる、密着型ウォータースライダーである。

琴里は顔を真っ赤にして士道に詰め寄る。

 

「し、しししししし士道!?カップル限定って・・・カップルってぇ!?」

 

「いや落ち着けって・・・今日は俺とお前のデートだから、カップルとしても色んな事を楽しみたいんだ・・・お前と一緒にな」

 

「はうぅ・・・!う、うん」

 

士道の言葉に、琴里は俯きながらも肯定する。近くにいた若い女性スタッフもキュンキュンしていた。

 

その女性スタッフに案内され、出発口前に座った琴里を士道が後ろから抱きしめるように座った。

 

(ひゃあああああああ!お、おにーちゃんが抱きついてるよぉ!)

(琴里・・・暖かいな・・・)

 

琴里は幼い頃からずっと士道を、異性として意識して恋をしていた。

 

士道は最初は妹と思っていたが、十香達との出会いを切っ掛けに様々な一面を見せる琴里との交流を通じて、少しずつだが琴里の事も一人の女の子として見るようになっていった。

 

「では、スタートです!」

女性スタッフの言葉の直後、二人は出発。そのまま一緒に滑っていき、特に問題なくゴール。

 

プールから顔を出した二人は、ウォータースライダーを終えた後も十秒程お互いを抱きしめたままだった。

 

そして離れた後は、お互い照れながらも笑顔であった。

 

 

 

「さて・・・俺も動くか・・・」

 

そんな二人をプールに水着を着て浮き輪で浮かびながら、パラドが見ていた。

 

「もう十分遊んだだろう?ここからは、俺の楽しみのために動いてもらうぜ、士道」

 

パラドは何処からか取り出した”二機目のバグヴァイザー”を、近くにいた男性に向けウイルスを放出。

 

モロに吸い込んでしまい、倒れて苦しむ男性。パラドはそんな男性に目もくれず、プールの中を泳いでプールサイドまで移動していった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士道と琴里がもう一度プールに行こうとした時、男性が倒れたという声が聞こえた。

 

士道はもしもに備えて持ってきておいたバックからスコープを取り出して駆け寄り、見てみるとモータスの反応を検出。

 

それと同時に、モータスが実体化を果たす。

 

 

「ヒャッハー!俺様の走りは進化するぜぇ!」

 

男性から現れた爆走バイクのバグスター、モータスは叫んだ直後に乗っていたバイクのエンジンを吹かせ、パーク内部を走り出す。

 

逃げる利用客達。それに逆らって留まるのは士道。そこに栞達も合流。

 

「・・・二人共!」

令音が、士道と栞のゲーマドライバーとガシャットを投げ渡す。

 

折紙と狂三はガシャットを奪われていて変身できない為、精霊達と一緒に実体化した複数のウイルス達に対処する事に。

 

狂三は霊力を封印されていない為、完全な霊装と天使を出す。狂三以外の皆は水着と一体化した限定霊装と天使を展開した。

 

「栞!」

「うん!」

 

《マイティアクションX!》

《爆走バイク!》

 

「第二変身!」

「セカンド・ギア、変身!」

 

レベル2となり、エグゼイドはレーザーに乗りモータスを追いかける。

 

「・・・琴里、私と一緒に離れよう」

 

令音は琴里に避難を促すが、琴里は俯いたまま動かない。

 

「・・・琴里!」

「・・・・・・っ!・・・令音?」

 

「・・・ここはシン達に任せて離れよう」

「私も・・・!」

 

「・・・ここで力を暴走させてはいけない。今度こそ戻れなくなってしまうかもしれない」

 

「・・・・・・っ」

 

令音に言われて、手を引かれてプールの外に出る・・・しかし、令音は気付けなかった。

 

琴里の眼が精霊の時みたいな危険な輝きを出し始めている事に・・・。

 

オニーチャンノテキ・・・オニーチャンヲキズツケル、ワルイヤツガイル・・・

 

 




次回予告

レベルアップしたモータスとの戦いが続く中、栞は新たな力を使う。


第六話 激走のNew bike!


「このまま一気に・・・突っ込め!」



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第六話 激走のNew bike!

お待たせいたしました。前話のデートシーンに、ウォータースライダーの話を追記しておきました。

それと活動報告も出しましたので、ご覧ください。


 

プール内で発生した、爆走バイクのバグスターウイルス達。

 

琴里を先に避難させた令音、美九と折紙は逃げ遅れた一般人を避難させる。

 

「皆さん、急いで避難してください!」

 

「落ち着いて大丈夫です!落ち着かないなら、女の子限定で私がモミモミして落ち着かせますよぉ!」

 

「もしもし、ジ○イヤ?あ、避難先はあっちです!」

 

「折紙さん!?私は妖○一族じゃ無いですぅ!あ、転んだ人は大丈夫ですか?肩をお貸ししますね」

 

 

精霊達も、ウイルスを天使の力で倒していく。

 

ウイルス退治は順調だが、狂三は霊力を無駄遣い出来ない都合上、銃を撃って攻撃するしか出来ず刻々帝の力を使えない。

 

故に狂三は、霊力の消費すること無く敵と戦える仮面ライダーの力を重宝していた。しかし、ガシャットを全て奪われているため変身出来ないのだ。

 

「士道さんと栞さんは・・・」

 

狂三の視界に、レーザーレベル2に乗ってモータスを追いかけるエグゼイドの姿が映る。

 

「・・・一緒にバグスターと戦えないのは、中々もどかしいですわね」

 

狂三の呟きに、すぐ近くにいた十香が答える。

 

「大丈夫だ、狂三。シドーと栞を信じて私達に出来る事をやろう」

「・・・そうですわね、ありがとうございます十香さん」

 

狂三は微笑みながら礼を言い、二丁の銃で接近してくるウイルスを撃ち抜く。十香も塵殺公を振るい、複数のウイルスを切り伏せる。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

精霊達が奮闘する中、仮面ライダー達の戦いも進んでいた。

 

モータスは爆走を続ける。十香と四糸乃が遊んだウォータースライダーをバイクに乗って上に登っていく。

 

エグゼイド・レーザー組も追いかけ、両者はスライダーの一番上からジャンプして着地。

 

プールとパーク内の遊園地を仕切る壁を突き破って遊園地内部にまで入る。

 

 

オーシャンパークの外に飛び出たモータス、それを追いかけるライダー達。

 

レーザーレベル2に乗ったまま追いかけるが、走るモータスもレベルが上がっている為、スピードも上がっており中々追いつけない。

 

「ヒャッハー!レベルアップした俺のエンジンは絶好調ー!」

 

すでに園内では避難勧告が出ていて、人々は逃げ惑う。

 

しかしそんな中でもエグゼイドがレーザーのスピードを上げ、モータスにどんどん近付いていく。

 

そして、エグゼイドはギリギリチャンバラガシャットを借り、ガシャコンスパローを召喚。

 

左手で持ってモータスに向けて、エネルギー矢を連射。

 

モータスもジグザグに動きながらかわすが、エネルギー矢はどんどんモータスに近付き、遂に命中。

 

モータスは転倒、バイクも倒れる。ジャンプしてレーザーから離席、ガシャコンスパローのAボタンを押して鎌モードに分離。

 

エグゼイドはスパローの鎌で、モータスを斬りつける。

 

反撃の隙を与えないほど、素早く。左右斜めに数回、体の回転も含めて切り裂き、最後にX字のように攻撃。

 

モータスを斬りつけて地面に倒した直後、エグゼイドはレベル1になったレーザーにギリギリチャンバラガシャットを投げて返却。

 

《ギリギリチャンバラ!》

「サード・ギア!」

 

ガシャットを受け取り起動、レベル3になる。スパローの弓モードでモータスに射撃をしてモータスを牽制。

 

《シャカリキスポーツ!》

「第三変身!」

 

エグゼイドもレベル3となり、タイヤを持ってモータスを殴る。レーザーの牽制で体制を崩していたモータスに直撃、地面に倒れる。

 

するとここで、ゲンムレベルXに変身した黎斗が乱入をしてくる。

 

「君達のガシャットを回収する」

「ったく、しつこいな・・・栞」

 

「わかってる。あれを使おう」

 

レーザーは新しく開発された、マイティブラザーズXXと同じ形の黄色いパワーアップガシャットを取り出し、起動。

 

 

《爆走ツインバイク!》

 

繋がれた二台のバイクが並走を続けるタイトル画面が表示され、ゲームエリアが展開。

 

ゲーマドライバーのレバーを閉じてガシャットを抜き、爆走ツインバイクガシャットを入れ、レバーを開いて変身!

 

「テン・ギア!」

 

《ガッチャーン!レベルアップ!》

《大爆走!大激走!爆走ツインバイク!!》

 

栞が変身するレーザーのレベルX、それは・・・レベル1に追加装甲が付き、両手に持つタイヤのアームドユニットも若干大きくなり付いているマフラーも大きくなった。

 

背中にもタイヤを一つ背負っており、時折クルンと回る。

 

攻撃・防御共に向上した新たな姿・・・仮面ライダーレーザー、ツインバイクゲーマー・レベルX(テン)

 

「貴様らぁぁぁ!またゲームマスターの私に許可なく勝手にガシャットを!」

 

ゲンムは怒りのまま攻撃を仕掛ける。しかし、それはエグゼイドが阻止する。

 

《マイティブラザーズXX!》

「「お前の相手は俺達だ!」」

 

その間に、レーザーがモータスの相手をする。レーザーの走力はレベル1から大幅に向上しており、すぐにモータスの懐に入りタイヤで殴る。

 

更に、タイヤのマフラーから炎を吐いてモータスに攻撃。後ろに吹っ飛ばされたモータスに、マフラーから吐かれた炎を纏ったタイヤで更に殴る!

 

すると、吹っ飛ばされたモータスのすぐ近くに自分のバイクが落ちていたのを見つけて、すぐにそれに乗車。

 

バイクに乗ってのスピードで撹乱するつもりだろう。だが、栞は冷静に士道を呼ぶ。

 

「士道!」

「あいよ!」

 

「邪魔だどけ!」

「ゲムンッ!」

 

ゲンムを雑に蹴り飛ばし、栞に駆け寄る。そして、レーザーはレバーを閉じてもう一度開く。

 

「トゥエルブ・ギア!」

 

《ガッチャーン!ダブルアップ!》

 

《俺が走って!お前と走って!(ウィーアー!)爆!走!ツイン(ヘイ!) 爆走バイク!!》

 

ダブルアクションゲーマーレベルXXと同じメロディで音声が流れ、レベルXX・・・つまりレベル20にレベルアップした。その姿は・・・。

 

 

「乗っていきますか?キリッ」

「「おぉ!」」

 

その姿は、一言で表すなら「サイドカー付きバイク」である。

 

レベルXの装甲と背中のタイヤが運転席から見て左側に付いているサイドカーを構成するパーツとなり、エグゼイドXXや他のライダー達との連携が強化出来るようになっている。

 

そしてレベルXXであるため、スピードもパワーも大きく上がっている。

 

これが仮面ライダーレーザー、ツインバイクゲーマー・レベルXX!

 

エグゼイドRが運転席に乗り、運転を担当。エグゼイドLはサイドカーに乗りキースラッシャーを持って攻撃を担当。

 

「行っくよー!ノーコンティニューで・・・」

「「クリアしてやるぜ!」」

 

三人で決め台詞を言い、レーザーを操作してモータスを追いかける。

 

レベル2以上のスピードでモータスに迫るレーザー。更にエグゼイドLがキースラッシャーのガンモードで、エネルギー弾を放つ。

 

しかし、モータスもバグスターウイルスの頭部を模した爆弾を複数放つ。

 

レースゲームでよくある妨害アイテムのような物だろう。それらをエグゼイドRは巧みな運転で回避していく。

 

「患者の為にも、時間は掛けられねぇ・・・キメワザだ!」

「おう!」

 

エグゼイドRの言う通り、エグゼイドLはキースラッシャーに爆走ツインバイクガシャットを装填してキメワザを発動。

 

《ダブルガシャット!キメワザ!》

《BAKUSOU TWIN!CRITICAL FINISH!!》

 

キースラッシャーの刀身に黄色いエネルギーが集中。エグゼイドRはエンジンを全開にしてモータスに迫る。

 

モータスも負けじと爆弾をありったけ放つが、三人はそれを避けず敢えて突っ込み爆風の中を突っ切る!

 

そして爆風を飛び出してモータスの右に並んでから、キースラッシャーでモータスのバイクを切り裂く!

 

「バ、バカなぁぁぁぁぁ!?」

「くらいやがれぇ!!」

 

斬られたバイクは大爆発。モータスは爆発で吹っ飛ばされる。エグゼイド達はモータスが吹っ飛んだ方へと走り出す。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

令音と琴里はプール施設の一室に避難していた。令音は琴里の様子を見ていたが、琴里は今だに俯いたまま動かない。

 

「・・・バグスターはシン達に任せるとして・・・琴里、精霊の症状を抑える薬を打つよ」

 

「・・・・・・」

 

令音はバッグから注射器を取り出す。琴里の左腕を持って注射をしようとしたが、琴里は右腕を鋭く振るい注射器を振り落とす。

 

更に琴里は、驚いた令音を突き飛ばして立ち上がる。

 

「・・・・・・ス」

「・・・琴里?」

 

「おにーちゃンを傷付ケル、敵ハ・・・コろス」

 

瞬間、琴里の体が火に包まれ・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

モータスが吹っ飛んだ所まで駆けつけた、エグゼイドとレーザー。

 

バイクも大破して己も瀕死だが、まだ倒されていないモータスは体を引きずってエグゼイド達の所まで来たが、ゲンムは無慈悲に言い放つ。

 

「もういい、約立たずめ」

「はぁ!?約立たずだぁ!?」

 

「お前達バグスターは、私の計画を達成させるための道具だ。役に立たない道具に、約立たず以外どう言えと?」

 

「ふ・・・ふざけるなあぁぁぁぁ!!」

 

ゲンムの言葉にモータスは怒り、力を振り絞って立ち上がりゲンムに殴りかかる。だが、ゲンムは右腕アッパーでモータスを上に飛ばす。

 

そしてバグルドライバーのABボタンを同時に押して、Aボタンを押して必殺技を発動する。

 

《CRITICAL END!》

 

電子音声の直後、落ちてくるモータスに白黒二色の光状のエネルギーを纏った回し蹴りを叩き込む!

 

「あ・・・あんまりだぁぁぁぁぁ!!」

 

必殺技をモロに受けて、モータスは無念の叫びを上げて爆発。そのデータはゲンムがバグヴァイザーに吸収して回収した。

 

そして爆走バイクのウイルスに感染していた患者は、ウイルスが消滅し回復した。ゲンムが患者を救助するような形になった。

 

バグヴァイザーをバックルに戻し、エグゼイド達に向けて歩いてくる。

 

レーザーは人型のレベルX(テン)に戻って両腕のアームドユニットを構え、エグゼイドRとLもキースラッシャーとガシャコンブレイカーを構え警戒する。

 

だが、ここに更なる乱入者が現れる。

 

 

「ゲンム・・・・・・さっきのはどういう事だ。俺達が道具だと?」

 

乱入してきたのはパラドだ。だが、その表情と声色には怒りが溢れている。

 

「私は事実を言ったまでだ。お前達バグスターは、私が作る究極のゲームのための道具に過ぎない」

 

「・・・・・・心が・・・滾る!」

「なぜそこまで怒る?」

 

「俺達バグスターは、ゲームのルールに従い競い合って勝敗を決めるのが生きざまだ。

 

お前の言うように誰かの駒や道具として存在するなんてあり得ないし認めない・・・!」

 

《パーフェクトパズル!》

「変身・・・」

 

怒りを隠さず、パラドクスに変身。ゲンムに挑みかかろうとした瞬間、少し離れた場所で大きな火柱が立つ。

 

そしてその火柱の中から現れたのは、精霊《イフリート》化した琴里であった。その目は紅く光り、正気はほぼ失われているだろう。

 

これ以上、抑える事が出来なかった琴里は・・・。

 

「殺ス・・・おニーちゃんのテキを・・・コロス・・・!!」

「琴里!」

 

獰猛な笑みを浮かべ、灼爛殲鬼を持ってゲンムとパラドクスに向かって攻撃を仕掛ける!

 




次回予告

《イフリート》の力を暴走させてしまう琴里、それを止めようとする士道と栞。そして黎斗を倒そうとするパラド。

混沌とする状況で、琴里を救う事は出来るのか。


第七話 Siblingsの絆と愛

「俺は、絶対に諦めない!」


ーーーーーーーーーー


今回、レーザーのオリジナル強化形態を出しました。レベルXXをサイドカー付きにしたのは、エグゼイドのXXが二人になるのをヒントに考えました。

少しネタバレになりますが、スナイプにはレベル100までの、レーザーはレベル99までの強化形態を考えています。


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第七話 Siblingsの絆と愛

 

「殺ス・・・おニーちゃんのテキを・・・コロス・・・!!」

 

再び精霊《イフリート》の力を出してしまう琴里。

 

獰猛な笑みを浮かべ、灼爛殲鬼(カマエル)を持ってゲンムとパラドクスに向かって攻撃を仕掛ける!

 

その攻撃はかわされた。琴里は追撃をしようとするが、精霊の力に苦しみ、一旦離れていく。

 

「琴里!!」

 

エグゼイドはレベル2に戻って琴里の元に向かって走り、レーザーもそれに同行する。

 

追いかけようとするゲンムだが、パラドクスが立ち塞がる。

 

「道具の分際で・・・私を苛立たせるな・・・!」

 

ゲンムはガシャットギアデュアルβを取り出し、ダイヤルを回しスターターを押してゲーマーを召喚する。

 

《タドルファンタジー!》

 

《デュアルアップ!Satan appeared! Say“MAOU” TADDLE FANTASY!!》

 

紫色のファンタジーゲーマーを召喚。これもパラドクスと同じくレベル50である。

 

ファンタジーゲーマーは浮遊したまま動き魔法陣を展開して、そこから魔法の砲撃を放つ。

 

パラドクスは攻撃をかわしていくが、途中でウイルス達を倒し駆けつけた十香達精霊を発見。

 

パラドクスは十香達の方に動き、ゲーマーの攻撃を十香達に向くように誘導。

 

ファンタジーゲーマーの攻撃を、十香の塵殺公が切り裂き防ぐ。

 

「精霊達、アレの相手は任せるぜ。ゲンムは俺が引き受けてやる」

 

それだけ言うと、パラドクスはゲンムに向かって走る。ゲーマーの相手を十香達に押し付けたのだ。

 

「ちょ・・・あいつ押し付けていったし!」

「憤慨。面倒が増えました」

 

「ですが、あのゲーマーを放っておくわけにもいきませんわ」

「皆、私達であれを倒そう」

 

「は、はい・・・!」

「よーし、やっちゃうよー!」

 

精霊達は魔法陣を展開したファンタジーゲーマーに向けて、戦いを挑んでいく!

 

そして、エグゼイドとレーザーが琴里の元に駆けつけると、琴里は蹲って苦しそうに胸元を抑えている。

 

しかも、エグゼイドが近づいた瞬間、即座に灼爛殲鬼を持って守るはずの士道に攻撃をしてしまう。

 

ガシャコンソードの刀身で受け止めたが、それは灼爛殲鬼の熱で焼き切れ折れてしまう。

 

エグゼイドはバックステップで後方に下がり、その直後にゲーマドライバーのレバーを閉じガシャットを抜いて変身を解く。

 

「し、士道!?何をしてるの危ないよ!?」

 

「栞はそのままでいてくれ・・・琴里に対して武力で解決するのは出来ない。ここは説得で止めてみせる。俺は、絶対に諦めない!」

 

士道は説得で琴里を止めようとしていた。だが、琴里の事態が急変する!

 

「お・・・おにーちゃん・・・・・・ア、アアァァァァァァ!!」

 

士道を視界に入れて認識した途端、灼爛殲鬼の炎が琴里自身を燃やし苦しめる!

 

理由としては、琴里は先程士道に攻撃してしまった事による精神的ショックに加えて、強大な力がますます上がり琴里の耐えられるキャパシティを超えてしまったのだ。

 

「・・・!?こ、琴里いぃぃぃぃぃ!!」

 

苦しむ琴里を見て、士道は駆け寄る!そして燃え盛る炎を纏う琴里を士道は抱きしめる。

 

炎の熱は士道を容赦なく焼き苦しめるが、士道はそれでも離さない!

 

「お、おにーちゃん!?だめ、離れて!」

 

驚いた琴里が見ると、士道の肉体が焼かれ煙も出ている。すぐに離そうとするが士道自身が離れてくれない。

 

「琴里・・・俺は琴里にすっげぇ感謝してるんだぜ」

「え・・・?」

 

「母親に捨てられて閉じこもっていた時も、出られるようになった時も、その先も俺の側にいて支えてくれた。

 

琴里がいてくれたから、俺は変われた。琴里の心の強さに俺は救われた」

 

「おにーちゃん・・・・・・」

「俺は知っている。琴里は強い・・・お前の強さは精霊の力にも負けないって」

 

「うん・・・!」

 

「琴里・・・一緒に帰ろう、五河家に」

「うん!」

 

士道の言葉を聞いて、琴里は全身全霊で霊力を抑え、遂に自分の炎を消すことが出来た。

 

 

「琴里っ!!」

 

倒れた琴里の体に外傷はないが、霊装は自分自身の炎によって殆どが焼け焦げ悲惨な姿になっている。

 

士道は体の多くに火傷を負い、一部は炭のように黒くなっている。

 

「おにー、ちゃん・・・」

 

士道の声が聞こえ、動かない体を無理やり起こそうとする琴里。それを見た士道は、優しく琴里を抱きしめた。

 

「俺、まだ未熟で駄目な兄ちゃんだけど、これからも俺と一緒にいてくれ!」

 

「・・・うん!大好きだよ、おにーちゃん!!」

 

琴里は士道にずっと胸の内に秘めていた想いを伝えた。

 

士道もその気持ちに答えるようにそっと顔を近づけ、二人の唇は確かに重なった。

 

士道が琴里から唇を離すと、琴里の身を包んでいた霊装は光の粒子となって消え、士道の体内に入り込んできた。

 

一つは琴里の精霊としての力。もう一つは五年前の・・・士道が一度夢で見た五年前の火災時の記憶。

 

琴里の霊力を封印した事で、炎の回復能力も復活。多くの火傷は炎と共に消え去り元の肌に戻った。

 

琴里は霊力を士道に託すと立ち上がろうとするが体に力が入らず倒れそうになり、二人で支える。すると、栞が気付いたように横を見る。

 

「士道!」

 

栞が叫んだ直後、大きな爆発音が響く。その方向を見ると、パラドクスがゲンムを殴り地面に叩きつけていた。

 

「エグゼイドを・・・五河 士道を倒すのは俺だ!」

 

パラドクスは宣言をした直後、エナジーアイテムを三つ揃えた。それは全て同じものだった。

 

《マッスル化!》

《マッスル化!》

《マッスル化!》

 

攻撃力を上昇させるマッスル化を三枚同時に使用した事で、攻撃力が大きく向上させてからガシャットギアデュアルを取り出してダイヤルを回しホルダーに再びセットする。

 

《デュアルガシャット!》

《パーフェクトクリティカルコンボ!!》

 

キメワザを発動したパラドクスは、強力なキックをゲンムに叩き込み一撃で変身解除させた。

 

パラドクスには「攻撃を与えた相手の全防御システムを一時的に停止させるプログラムを流し込み、直接ダメージを与える」という機能がある。

 

実質的に防御無視の攻撃が可能であり、このシステムの為か不死身の能力を持つゲンム・ゾンビゲーマーレベルXを変身解除にまで追い込んだのだ。

 

自分で開発した機能によって、黎斗は敗北したと言っても過言ではない。

 

 

ボロボロになりながらも立ち上がる黎斗。変身を解いたパラド、そして士道、栞、ゲーマーを退け集結した精霊達が油断なく黎斗を見る。

 

すると、黎斗は狂気の笑みを浮かべながら言い出した。

 

「ハァ、ハァ・・・・・・クッ・・・・・・ハハハァ・・・!『五河 士道は俺が倒す』、君はそう言った・・・・・・。

 

私に歯向かった罰だ・・・・・・その望みを・・・・・・絶つ・・・・・・!」

 

黎斗は狂気の笑いのまま、()()を叫ぶ。

 

 

 

「五河 士道ゥ!

 

何故君が適合手術を受けずに、エグゼイドに変身できたのか!

 

何故新しいガシャットを生み出せたのか、何故変身後に頭が痛むのかぁ!

 

その答えはただ一つ・・・・・・!」

 

 

「やめなさい!」

「それ以上言うな!」

 

狂三とパラドが黎斗を止めようと走る。だが、間に合わない。

 

 

 

「ハァァァ・・・・・・五河 士道ゥ!

 

君が!世界で初めて・・・・・・!バグスターウィルスに感染した!

 

()()()()()()()()()だからだァァア゛ーーーーーッハハハハッ!!

 

ア゛ーーッハーッハーッハーッハッ!!!ア゛ーーッハーッハーッハーッハッ!!!」

 

 

「俺が・・・・・・ゲーム病・・・・・・?」

 

俯く士道、驚きのあまり固まる十香達。悔しそうに顔を歪める狂三。

 

怒りのまま黎斗の襟元を掴み睨みつけるパラドと、笑い続ける黎斗。

 

そんな中、俯いていた士道は顔を上げて・・・。

 

 

 

 

 

「なんだ、()()()()()()()()()。どんな理由かと思ってたけど・・・想像してたよりは()()()()()()()()()

 

拍子抜けしたかのように、あっさりと言ってみせた。

 

「・・・何?」

 

黎斗は思わず聞き返すが、士道は黎斗の言った事実を受け入れていた。

 

「・・・・・・俺は今、体内のバグスターウイルスに感謝してるぜ。こいつがあるから、エグゼイドになれた。

 

こいつがあるから、俺は精霊やゲーム病患者の為に戦う力が手に入った。だから・・・・・・」

 

士道は俯かせていた顔を、そして右腕上げる。己の中に湧き上がるものに素直に従いながら・・・。

 

 

 

「そんな暴露ネタ、俺には効かねぇよ!!」

 

そして腕を振り抜いた瞬間、一本の大剣が具現化した!その大剣は凄まじい衝撃波を生み出しながら黎斗とパラドに迫る!

 

「「ーーーっ!?」」

 

士道の放った斬撃の威力は凄まじく、二人は大慌てで後退しギリギリで回避し、そのままこの場から撤退した。

 

「シ、シドー!?どうしてシドーが塵殺公(サンダルフォン)を!?」

 

士道の手には十香が愛用している大剣・・・天使・塵殺公(サンダルフォン)が握られていた。士道は天使を顕現させたのだ。

 

「・・・はは、なんで、だろうな・・・」

 

十香の驚愕の声と皆の驚愕の視線に、士道は自分でもわかってないようで戸惑いの声で答えた。

 

塵殺公は士道が顕現させて十秒程で消えてしまい、今は「確かに塵殺公があった」という実感だけが残っていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後、フラクシナスで回収された士道が向かったのは医務室だ。

 

琴里の霊力を封印する間、十香と四糸乃、八舞姉妹と狂三は、黎斗が呼び出したファンタジーゲーマーとの戦いをしてくれたが、やはりダメージはあった。

 

故に検査を行ったが、皆が軽傷で済んでいた。

 

余談だが、狂三はフラクシナスに回収されるより前に姿を消しているため不在である。

 

更に余談だが、美九と折紙もフラクシナスにいて精霊の看病を手伝ってくれている。

 

が・・・美九が看病に託けて体を触る行為をして、折紙に止められていた。

 

琴里はまだ眠っていた。傷は完全に塞がっているため、しばらくすれば眼を覚ますそうだ。

 

 

医務室から退出して、艦橋を目指して歩いていた時、令音が士道に声をかける。

 

「・・・・・・シン、今日は本当に良くやってくれた。心から感謝を」

 

いきなり令音が頭を下げたことに、士道は慌てて令音を止める。

 

「そんな、頭を上げてください!俺は当然のことをしたまでですから!」

 

士道が令音を元の姿勢へ戻した。そして、気になっていた事を訪ねた。

 

「そう言えば何で琴里の霊力の封印は、ぶっつけ本番なのに上手く言ったんでしょうか?」

 

「・・・あぁ、それはね」

 

士道が疑問に思っていたことを話すと、令音がフラクシナスのモニターで琴里の好感度を示したデータを表示した。

 

その内容と令音の話を聞いて、士道は納得したと同時に嬉しさと恥ずかしさも感じ、顔が赤くなっていくのを自覚した。

 

 

 

少し時が経ち、夜。琴里は眼を覚ました。隣の椅子には士道が座っている。

 

「琴里・・・もう大丈夫か?」

「おにーちゃん・・・うん、大丈夫。黒いリボン、取ってくれる?」

 

琴里言われ、士道は黒リボンを渡す。慣れた手付きで結び士道と向き合う。

 

「士道・・・・・・ごめんなさい。それと・・・ありがとう」

 

「お前が無事ならそれで良いさ。それに霊力を封印出来たのは、その・・・お前が俺をあんなに想ってくれてたからこそ、だし」

 

「え?」

「いやその・・・ここに来る前に令音さんが・・・」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

令音がフラクシナスのモニターで琴里の好感度を示したデータを表示した時。

 

琴里の好感度は常に最高値が維持されているが、一部で線が消えている部分があった。

 

「・・・・・・実は好感度がMAXを超えていたんだ。だから表示されないんだ・・・カンストと言う言葉が一番正しい。

 

・・・琴里のキミへの好感度は常にMAXを維持し、下がるどころか時々上昇していたんだよ」

 

世界最高とも言えるスペックを誇るラタトスク製の観測機械ですら、カンストするほどの数値を出していた。

 

そして士道も遂に、真相に辿り着いた。

 

「・・・言っていたじゃないか。琴里は・・・・・・お兄ちゃんが大好きだと」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・・・ていう話を聞いた。その・・・俺をそんなに想ってくれて、ありがとうな」

 

「・・・〜〜〜〜〜っ!?」

 

令音に自分の恋心を、想っている当人にバラされた恥ずかしさはかなりのもので、声にならない声を上げて、掛け布団に全身を隠すようにかける。

 

「令音のバカ・・・アホー・・・」

 

「俺は嬉しかった。琴里が俺を大切だと想ってくれている事を知れて、俺も今まで以上にお前を守りたいって思えるようになったんだ」

 

士道は真剣な表情と声で言う。琴里も掛け布団から顔を出して士道を見つめ・・・。

 

一瞬だけだが、琴里が自分から士道にキスをした。そして驚く士道に琴里は心からの感謝と好意を込めて笑顔で言う。

 

「ありがとう、おにーちゃん!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻。令音はモニターを見ていた。それは精霊の士道への好感度を示す物だ。

 

霊力を封印した十香、四糸乃、耶倶矢、夕弦も琴里と同じく好感度は常にMAXを維持し、下がるどころか時々上昇していた。

 

また、狂三はわからないが栞や折紙、美九も好感度MAXだと令音は考えている。

 

見終えたモニターを消し、呟く。

 

「・・・・・・これからも頼むよ、シン」

 

その言葉には、様々な思いが籠もっていた。




次回予告

琴里一件が片付いて落ち着いた頃、士道は折紙と一緒にお出かけという名のデートを行う事に。

一方、黎斗は士道からガシャットを奪うことを諦めていなかった。

第八話 レベル50のFantasy

「魔王の力、見せてあげる!」


ーーーーーーーーーー


今回で原作四巻の話は終わりですが、ブレイブとスナイプのレベル50の話を書いて五章は終わります。

それと、今回エグゼイドで有名なあのシーンを書きましたが、士道は「それがどうした!」であり気にしていない感じです。

また天使を出せたのは、士道の精神的な成長やあの場での強い決心があったから・・・という感じです。


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第八話 レベル50のFantasy

琴里の霊力を封印して少しの日が経過した頃。士道は今、フラクシナスの医務室で検査を受けていた。

 

士道が黎斗との戦いで十香の天使「鏖殺公」を顕現させた・・・その事について、士道の体に異常が現れていないかを検査しているのだ。

 

MRIのような機器によるスキャンを終えて、装置から出て来た士道は上半身を起こす。

 

慣れない検査を終えてベッドから離れたが、ここで士道は体に力が入らなくなり、膝から崩れ落ち転んでしまう。

 

「痛った・・・まだ疲れが残ってるのか・・・?頭痛は無くなったけど・・・」

 

マイティブラザーズを使用した際の頭痛は改善されたが、天使の使用を含む、これまでの疲労が蓄積した影響なのかもしれない。

 

「・・・大丈夫かい?シン・・・」

「はい、ありがとうございます」

 

検査をしていた令音がすぐに駆け寄り、士道を助け起こす。令音に礼を言って立ち上がり、一緒に医務室を出る。

 

「・・・シン、今日は家に帰ったらすぐに睡眠を取るんだ。疲労が蓄積しているようだからね」

 

「え?いや、十香達の晩飯を作らないといけないですし」

 

「・・・先程のシンを見ては放っておけない。精霊達には事情を説明して、夕食はこちらで手配する」

 

士道の目を見ながら、真剣に言う令音。

 

「・・・檀 黎斗やバグスターの事を考えればすぐに動けるようにするべきなのはわかる。だが、休める時に休むべきだ」

 

「・・・・・・わかりました。令音さん、十香達をお願いします」

 

士道は納得し、ワープで自宅に戻り十香達と少し話をしてすぐにベッドに入ると、あっという間に寝てしまった。

 

令音は少し考え、ある事を思いつく。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻、旧幻夢コーポレーション内で檀 黎斗は苛立っていた。

 

黎斗は士道に真実を伝えることで膨大なストレスを与え、消滅させるつもりだった。

 

だが、士道の精神的な強さは予想を超えており真実の宣言は意味を成さず精霊の力で反撃を受ける始末。

 

だが、黎斗は己の野望を諦めていない。パソコンを操作してこれまで回収したバグスターのデータを反映して「究極のゲーム」作成を進めていた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

次の休みの日。今までゲーム病発生の報告も無い平和な日々が続いた。

 

士道も戦闘なく日常を送れたため、疲労具合も大分改善されている。そしてこの日は、士道は出掛ける事になっていた。

 

「士道君、今日はよろしくね」

「折紙。付き合ってくれてありがとな」

 

鳶一 折紙と一緒に。

 

理由としては、令音がこのお出かけ(デート)をセッティングしたのである。

 

士道に気分転換のためのデートを企画したが精霊相手だと、どうしても気を使って精神的疲労を無意識に溜めてしまう恐れがある。

 

この日は精霊の事を一旦除外して人間とのデートとしたのだ。候補として栞、折紙、美九の三人が上がった。

 

栞は久々に休暇を取れた母、風鳴 エレナとのお出かけがあり、士道からも家族の時間を優先して欲しいと言われ辞退。

 

美九もどうしても外せない仕事があるので、涙を流しながら辞退。

 

唯一予定の空いていた折紙が選ばれたのであった。そういう事もあり、二人でデートを行う事に。

 

折紙も令音から士道を気遣って欲しいと頼まれており、折紙は何時もより気合いを入れていた。

 

そんな二人が訪れたのは、日本舞踊を披露する舞台。折紙がたまたまチケットを入手した為、一緒に見ることになった。

 

 

会場に向かう途中、折紙は心配と不安の表情で訪ねてくる。

 

「士道君、体は大丈夫?」

 

「ん?あぁ。ここ最近はバグスターも現れてないし、ちゃんと休みを取れてるから、前より良くなったぜ」

 

「そっか・・・でも、また悪くなったらすぐに言うようにね」

「わかってる。十香達にも言われたからな」

 

「男の子って女の子の前では、痛いのや辛いのを我慢するのが格好いいって思っている感じがあるから。

 

女の子側で言うなら、大切な人が痛さや辛さを我慢して明るく振る舞われる方が悲しくて辛いんだよ・・・。

 

だから、無理をしないでちゃんと伝えるように、ね」

 

「はい、我慢ばかりで心配かけてすみませんでした」

「よろしい」

 

折紙が士道に無理や我慢をせず、元気でいてほしいという気持ちを伝える。

 

士道も、その言葉を素直に受け入れたのだった。

 

 

二人が話をしながら歩いている内に、目的地の会場に到着した。

 

ところが、会場の近くまで来たら二人の着物を着た女性が何やら揉め事を起こしていた。

 

「コラ、何ですかその動きは!」

 

一人が止めようとするが、もう一人はロボットダンスの様にカクカクとした動きばかりであり、しかも力も強いのか抑えも聞かないようだ。

 

 

そして、女性の体からバグスターウイルスが溢れ出て、女性の体を包み込む。

 

そして女性はバグスターになってしまった。

 

進化したバグスターウイルスから生まれたバグスターであり、バグスターユニオンの形態をスキップして、ゲーム病の患者の体を乗っ取る事で実体化したのだ。

 

赤い体を持つロボットのような姿・・・ゲキトツロボッツのラスボスをモチーフとしたバグスター、ガットンバグスターだ。

 

「この女の身体は乗っ取った。システム起動。レベル30(サーティ)

 

コラボスの時と同様に、右腕の強化アーム「ガットンスマッシャー」をクルクル回して士道達に威嚇する。

 

「レベル30・・・進化したウイルスだからやっぱ高けぇな。折紙、下がってろ」

 

ガシャットを奪われ所持していない折紙を下がらせ、士道はゲーマドライバーを装着。マイティアクションXとゲキトツロボッツ、二つのガシャットを起動する。

 

《マイティアクションX!》

《ゲキトツロボッツ!》

 

「第三変身!」

 

エグゼイドはレベル3となり、ガットンに向かって走る。

 

 

エグゼイドの強化アームとガットンの強化アームがゲキトツ!衝撃が周囲に広がりアスファルトが抉れる。

 

衝撃で後ろに飛んでいき、そのまま着地。強化アームを前にロケットパンチのように飛ばす。

 

ガットンも同じように飛ばしそれがぶつかり、弾かれ地面に落ちる。

 

エグゼイドは近くに落ちていたエナジーアイテム、マッスル化を広い攻撃力を上げてキックを当てる。

 

強化アームを拾い装着し直したが、直後ガットンの強化アームが背中からエグゼイドを攻撃。

 

前に吹っ飛ばされた状態からガットンの頭突きを喰らって更にダメージが入る。

 

「士道君!」

「大丈夫だ!やっぱりレベル差がデカいな・・・こうなったら」

 

駆寄ろうとする折紙を止め、マイティブラザーズXXガシャットを取り出す。

 

すると、エグゼイドの視界にエネルギー弾が折紙に向かって放たれるのが見えた。

 

「危ない!!」

すぐに動き、折紙を庇う。

 

「大丈夫!?・・・まさか」

 

エグゼイド近くにより、前を見るとそこにガシャコンマグナムを持ったゲンムがいた。

 

「さて、エグゼイドのガシャットを回収する」

ガシャットギアデュアルβを取り出し、ファンタジーゲーマを召喚する。

 

その姿に威圧感も感じられるが、折紙は臆する事なく睨む。

 

「折紙、俺はまだやれる!」

 

突如、折紙がゲーマドライバーからマイティアクションXガシャットをエグゼイドの手から奪ってしまう。驚くエグゼイドに折紙は優しく微笑んで言う。

 

「大丈夫、任せて。私も、士道君を守るから」

 

言い終えた直後、一転して真剣な表情になり、ガシャットを持ったまま走る。

 

「これが欲しかったら、私を捕まえてみて!」

「ほぉ・・・いいだろう。相手をしてやれ、ファンタジーゲーマ」

 

ゲンムの指示でファンタジーゲーマが動き出し、折紙を追いかけながらエネルギー弾を撃ち続ける。

 

折紙はAST時代に鍛えた身体能力を駆使して、周囲の建物の凹凸や高低差を利用して、縦横無尽にかわしていく。

 

そして、痺れを切らしたようにファンタジーゲーマが突進を行う。停止した折紙はその突進攻撃を受ける直前で下に飛び降りる。

 

二階分の高さだったが、無事に着地。ファンタジーゲーマーはそのまま激突。置いてあったエナジーアイテムを拾う。

 

それは、《混乱》。それを修得したファンタジーゲーマは混乱して変な動きをしながら周囲にエネルギー弾を乱射する。

 

その攻撃はゲンムとガットンに命中。ガシャットギアデュアルβを落としてしまう。

 

ファンタジーゲーマも所有者の手を離れた事で消滅、そして折紙がガシャットギアデュアルβを拾い手に入れた。

 

折紙はこれが目的で、ゲーマ相手に戦いを挑んだのだ。ゲンムは起き上がりながら言う。

 

「なるほど、考えたな。だが、そのガシャットはレベル50。レベル5までしか到達していない君に使いこなせるかな?鳶一 折紙」

 

「・・・使いこなしてみせる。士道君を守るために!」

 

後ろで見守る士道を思いながら、折紙はゲーマドライバーを装着し、ギアデュアルβのダイヤルを回す。

 

《タドルファンタジー!》

《Let's Going King of Fantasy!》

 

「ステージ50、変身!」

 

そしてドライバーにセットし、レバーを開いて変身する!

 

 

《デュアルアップ!タドルメグルRPG!タドルファンタジー!》

 

変身時には一度クエストゲーマーレベル2に近い姿になり、召喚したファンタジーゲーマと合体。

 

魔王とドラゴンを合わせたような意匠の鎧と兜をまとった姿となり、まさに魔王と呼ぶに相応しい姿になる。

 

これが仮面ライダーブレイブ・ファンタジーゲーマーレベル50!

 

 

折紙はその力の負担に苦しむが、その力を我が物にしてみせた。そして、そこからはブレイブが圧倒的な力を見せる。

 

念動力でゲンムとガットンを動かし、壁に打ち付けてダメージを与える。

 

飛行能力で宙に浮かび、闇の剣の光弾で攻撃。

 

ガットンのロケットパンチと、ゲンムのガシャコンマグナムのエネルギー弾をバリアで防いで着地。

 

バグスターウイルスの軍団を召喚し、空間の穴からミサイルの様に打ち出して攻撃までしてみせた。

 

「君が私のガシャットを使うならば、こちらも・・・」

 

折紙から奪ったタドルクエストガシャットを起動、ガシャコンソードを呼び出す。

 

そして、ガシャコンソードにタドルクエストガシャットを、ガシャコンマグナムにドラゴナイトハンターZガシャットを入れ、キメワザを発動する。

 

《TADORU!DRAGO KNIGHT!CRITICAL FINISH!!》

 

ハンターゲーマに炎を纏わせての突撃させるが、ブレイブもキメワザを発動する。

 

《TADORU!CRITICAL SLASH!!》

 

両足に赤黒いエネルギーを纏い、浮遊能力も合わせてキックを放つ!

 

炎を纏ったハンターゲーマを消し去り、ゲンムを吹っ飛ばし、ガットンを倒し女性を元に戻す事に成功。

 

更に、タドルクエストとドラゴナイトハンターZ、二本のガシャットを奪還する事が出来た。

 

「少し、侮りすぎたか・・・」

 

ゲンムはガットンのデータを回収し、撤退していった。

 

士道が救急車を呼んでいる間に折紙は変身を解いたが、直後に胸元を抑えて苦しんでしまう。

 

電話を終えた士道が折紙の異変に気付き、駆け寄る。

 

「折紙、大丈夫か!?」

「うん、ちょっと苦しいけど・・・動けるよ」

 

苦しむ理由として、力の制御が難しい事に加えて胸部を保護する鎧「ダークロードキュイラス」に搭載された装着者への負担を前提にした戦闘能力強化システムのせいで、変身者への負担が出てしまう。

 

戦闘が長引くと、肉体に負担が蓄積してしまうのだ。

 

女性が救急車で搬送され診察を受けたが、特に問題は無く明日には退院出来るとの事だ。

 

士道と折紙もCRに来ており、多少苦しみを残す折紙の側にいる士道だが、その姿を見て気付く。

 

自分が傷付き苦しむ姿を見た時の十香達も、今の自分と同じく心配で心が押し潰されそうなっていたのだろう、と。

 

(俺がもっと・・・皆に心配を掛けないくらい強くならないと・・・)

 

決心を新たにしながらも、折紙が早く良くなるようにと祈りながら、そっと折紙の手を握るのであった。

 

 




次回予告

士道と狂三が遊園地内で出てしまったゲーム病患者の対応をする中、黎斗が現れ狂三に戦いを挑む。

第九話 レベル50のSimulation

「戦艦の火力を召し上がれ!」



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第九話 レベル50のSimulation

「きひひ・・・」

 

笑い声を発しながら、時崎 狂三はその建物に足を踏み入れる。その後ろには五河 士道も一緒であり、二人共緊張を表している。

 

「狂三・・・」

「お静かに」

 

士道が声をかけたが、狂三はそれを制止する。そのまま進んで行くと・・・。

 

 

「ヴァアアアアア!!」

「キャアアアアア!!」

 

突然現れた()()()に、狂三は悲鳴を上げて士道の腕に抱きついた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

今士道と狂三がいるのは、数日前に琴里の霊力を封印したあの遊園地だ。

 

バグスターウイルス感染者が出たプールは、衛生省の許可が出るまで閉鎖中だが、遊園地は被害が少なく数日で復旧が出来たのだ。(ASTが顕現装置を使用して復旧を早めたのも理由だが)

 

その遊園地に、士道と狂三が遊びに来ていた。先程は狂三と一緒にお化け屋敷に入ったのだ。

 

狂三の方から士道を誘い、士道もOKを出した。

 

アトラクション巡りを終えて、今は芝生にシートを挽いて士道手作りの弁当を食べている。

 

「やっぱり士道さんの料理は美味しいですわね」

「ありがとうな。今日は久しぶりだから不安だったけど、上手くいったなら良かった」

 

笑顔で食べる狂三。士道の体調を考慮して料理を控えていた士道だが、最近は元の生活に戻りつつある。

 

すると、狂三が少し離れたベンチに座っている一人の男性を見つけた。士道と同じくらいの男性で俯いている。しかも少し苦しそうだ。

 

「士道さん・・・」

「・・・・・・あぁ」

 

二人は手早く片付けて、男性の元に駆け寄る。その男性を見た士道は、その正体に気づく。

 

 

「あれ・・・お前、田島か?」

「い、五河?」

 

「あら、お知り合いですの?」

「中学時代の同級生だ。学校が違うから久しぶりだけどな・・・田島、大丈夫か?」

 

男性・・・田島は頷いた。

 

「ちょっとダルいけど大丈夫・・・って五河、隣の美人さんはお前の彼女か!?」

 

「え、いやそれは・・・」

「ウラヤマシイ、ネタマシイ・・・俺はまだあの子に・・・グッ!?」

 

羨む様に言うと、ストレスからかゲーム病を発症し苦しみだす。

 

スコープで診察すると、ジェットコンバットのバグスターウイルスを検知。すぐに折紙と栞に連絡を入れる。

 

しかもその場で実体化。ジェットコンバットのバグスター、バーニアがレベル30で現れた。

 

飛行強襲ユニット『バーニアサルトジェット』を搭載し、空中からミサイルを発射しての爆撃を行う。

 

ミサイル攻撃を回避しながら、士道はゲーマドライバーを装着しガシャットを刺して変身する。

 

《マイティブラザーズXX!》

「第十変身!」

 

エグゼイドレベルXになり、キースラッシャーのガンモードでバーニアを撃って攻撃して、バーニアの撃ったミサイルは一発ずつ撃ち落とす。

 

お互い決定打を与えられないが、ここに一石を投じる者が現れる。

 

「「私達、参場!」」

 

レーザー・レベル2に乗ったブレイブ・レベル50が到着。ガシャコンソードを持ったブレイブが刀身にファンタジーゲーマーの力を乗せた赤紫色の斬撃を放つ!

 

斬撃はバーニアに直撃し墜落。一発で大きなダメージが入り、バーニアは回復のため田島の体内に潜伏した。

 

救急車呼んでくれた所で、折紙がファンタジーゲーマーの副作用で苦しんでしまう。

 

士道と栞に支えられながら、四人は田島を乗せた救急車に同伴してCRに向かった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

CR内で、ベッドの機器に繋がった田島を診察しながら、四人が事情を聞く。

 

田島は自分の通っている高校に好きな女子がいるらしく、今度遊園地でデートをすることになった。

 

だが、田島は絶叫マシンが苦手であり、その苦手意識を克服するために来ていた。だが、結局一度も乗れず悩んでいたのだ。

 

苦手を克服出来ず、好きな女子との将来に対する不安とストレスでゲーム病を発症してしまったのだ。

 

「・・・なぁ五河、お前まさか後ろ女子達とも仲が良いのか?」

「え、ま、まぁ・・・仲が良いのは確かだけど・・・」

 

「頼む!俺にそのモテる秘訣を教えてくれえぇぇぇ!!」

 

士道の肩を掴んでガクガクと揺らす田島。とてもゲーム病で苦しんでいるとは思えない力強さと必死さだ。

 

「おおおおおお落ち着けって!それについては色々言えない事情もあって」

 

チラッと女子達を見ると、栞と折紙は苦笑していて、狂三はニヤニヤしている、助けは期待できない。

 

士道は頭を回転させて解決策を考え、口にする。

 

「なぁ田島、良かったら絶叫マシンの苦手意識克服に俺も協力しようか?」

 

「え?」

「苦手意識を克服して、気持ちが前向きになればゲーム病も改善できるし告白も自信が付くんじゃないか?」

 

士道の言葉により、もう一度絶叫マシン克服のためび遊園地に向かう。

 

そして絶叫マシンに挑んだが、結果は失敗。長年の苦手意識の克服は簡単に行かなかった。

 

士道は諦めず再挑戦を促すが、田島はうまく行かない事でまたストレスをためてしまい、バーニアの再実体化が起こってしまう。

 

バーニアはジェットを噴射して空中に。士道はエグゼイド・レベルXに変身し、ステージセレクトでエリア移動を行い一般人を巻き込まないようにする。

 

栞もレーザーレベルXに変身し、タイヤから砲撃を行いエグゼイドをサポート。

 

だが、ここにゲンムに変身した黎斗も乱入。ガシャコンマグナムでエグゼイドとレーザーを攻撃していく。

 

二対二となった状況に加勢すべく、折紙はガシャットギアデュアルβを取り出・・・せない。

 

「あれ、無い!?」

ガシャットギアデュアルβが無いのだ。スカートや上着のポケットをくまなく探すが見つからない。

 

すると、狂三が前に出る。ニヤリ、と笑いながら手に持ったガシャットを折紙に見せびらかすように見せる。

 

「キヒヒ・・・折紙さぁん。これ、いただきますわよ」

「え、あぁ!いつの間に!?」

「CR内でコッソリと・・・ですわ♪」

 

狂三が持っていたのは、ガシャットギアデュアルβだ。折紙からこっそりといただいたようだ。

 

狂三は銃を取り出してゲンムに向けて撃つ。皆の注目が狂三に集まる中、不敵に笑う。

 

「このガシャットには二つのデータが入っていますわね。タドルファンタジーと、”バンバンシミュレーション”。

 

戦艦を操って敵の軍を殲滅するシミュレーションゲーム・・・わたくしにピッタリですわ」

 

「ふん・・・時崎 狂三、そのガシャットを使えば、鳶一 折紙のように苦しむようになるぞ」

 

「・・・・・・わたくしには、四年耐えた分の抗体がありますわ。それに、苦しみを背負うのは慣れていますわ」

 

(狂三さん・・・まさか、私の為に・・・!?)

 

折紙は自分に、これ以上レベル50の負担を与えない為にガシャットを奪った・・・そんな気がしてならなかった。

 

 

「腕がなりますわ・・・!」

 

ガシャットギアデュアルβのにダイヤルを、タドルファンタジーとは反対方向に回す。

 

《バンバンシミュレーションズ!》

《I ready for battleship!》

 

タイトル画面から出現したシミュレーションゲーマーを待機させ、ゲーマドライバーにガシャットを装填、レバーを開いて変身する!

 

「第伍十弾、変身!」

 

《デュアルガシャット!》

《ガッチャーン! デュアルアーップ!》

 

《スクランブルだ!出撃発進!バンバンシミュレーショーンズ!発進!》

 

シューティングゲーマーレベル2に近い姿に変身した後、召喚したシミュレーションゲーマと合体し、強力な砲撃能力を持つ形態に変身する。

 

ファンタジーゲーマーレベル50同様、負荷に苦しむ様子が見られたが数秒で克服し、完全に自分の力にしてみせた。

 

更に胸部を保護するアーマー「バトルシップアーマー」には、ブレイブレベル50同様に装着者への負担を前提にした戦闘能力強化システムが搭載されている。

 

だが四年前にプロトバンバンシューティングガシャットを使用していた事や他のライダーよりも豊富な戦闘経験あるため、折紙と異なり苦しむ様子は見られなかった。

 

仮面ライダースナイプ・シミュレーションゲーマーレベル50に変身完了!

 

 

「戦艦の火力を召し上がれ!」

「お断りだぁ!」

 

バーニアは空中に飛び、コンバットゲーマの形をした小型ユニットを呼び出して空から攻撃する。

 

全身に合計十門もの砲塔、更に強化されたレーダー機能と組み合わせることで効果的に無数の小型ユニットを殲滅。

 

その最大火力は圧巻の一言に尽きる。更に、艦載機型ユニットを放って遠隔操作、残っていた小型ユニットを全て破壊した。

 

ゲンムはスナイプを攻撃しようとするが、エグゼイドとレーザー、そしてレベル2に変身したブレイブの妨害を受ける。

 

そしてスナイプはキメワザを発動する。

 

《BANG BANG CRITICAL FIRE!》

 

バーニアをロックオンし、複数の砲撃で一気に粉砕する!爆発したバーニア、田島はバグスターから分離して無事に救出に成功。

 

更に狂三はもう一度キメワザを発動。砲撃がゲンムに向けて自動で向かっていく。

 

足止めしていた三人がゲンムから離れた直後、ゲンムは素早くガシャコンマグナムにバンバンシューティングガシャットを装填。

 

ライフルモードにして、エネルギーを一直線に撃ち出す。一瞬拮抗したが、砲撃が全てゲンムに命中。

 

ゲンムが持っていたバンバンシューティングガシャットが地面に落ち、狂三はそれを回収して奪還。

 

ゲンムは起き上がってバーニアのデータをバグヴァイザー回収、無言のまま撤退していった。

 

田島をもう一度検査した結果、ウイルスは無事に無くなりゲーム病完治が確認された。

 

そして田島は今回の一件で救われた事で前向きになれたのか、以前よりも前向きになっていた。

 

「五河、俺・・・頑張ってみる。頑張って克服して、あの子に好きだって伝えてみせる」

 

「あぁ、頑張れよ。応援してる」

 

士道が田島を激励し、二人は握手をかわす。こうして、今回のゲーム病事件は終わりを告げた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その日の夜。

 

黎斗は旧幻夢コーポレーションで項垂れていた。すぐに回復するとはいえ、流石にダメージが今までの分蓄積しているらしく、万全な状態とは言えない。

 

だが、黎斗は諦めずバーニアのデータをパソコンに移動させてから、究極のゲームを作ろうとする。しかし・・・。

 

 

「こんばんは」

「っ!?」

 

突然の声・・・パラドではない少年の声。その声の方を向くと、民族衣装を纏った中学生位の少年がいた。

 

その顔に、ステンドグラスの模様が浮かんでいるのが見えた。

 

「ファンガイアか!?」

 

黎斗はバグルドライバーを取り出して装着しようとするが、突如黎斗の背後から攻撃を受ける。

 

その衝撃を受けて、倒れる黎斗はバグルドライバーを手放してしまう。

 

少年は自分の近くに転がってきたバグルドライバーを回収、それを見てニヤリと笑う。

 

「これは貰っていくよ。僕が新たなステージに立つ為にね」

 

少年は、黎斗を背後から攻撃した存在・・・石で出来た大きな犬型人形を連れて旧幻夢コーポレーションからワープで去っていく。

 

「まさか、終焉の革命団・・・!?あいつは轟木 零士ではなかった。別の幹部か・・・?」

 

椅子を支えに黎斗は立ち上がり、ファンガイアが動き出した事に戦慄する。

 

そして数日後。バグヴァイザーを奪ったファンガイアが行動を起こし、二人の戦士と装者と精霊が共に戦う事になる。

 




次回予告

第五章・最終話 動き出すGreat evil

ーーーーー

次回は、自作品同士のクロスオーバー小説に関係する話です。


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第五章・最終話 動き出すGreat evil

自作品同士のクロスオーバーに関係するお話ですが、内容は短めです。


 

狂三がシミュレーションゲーマーの力を入手して少し経った頃、西暦2044年六月のとある日。

 

この日、誘宵 美九は女性マネージャから新たな仕事の説明を受けていた。

 

「本当ですかぁ!?本当にツヴァイウィングと一緒にお話出来るんですか!?」

 

興奮を隠さず前のめりに尋ねる美九。女性マネージャーは落ち着かせてから説明する。

 

「は、はい。ツヴァイウィングの方で、色々な歌手やアイドルと一緒に交流を深めるためのミニステージを開催しようという話があったようで。

 

その最初の一人目に、美九さんが選ばれたんです」

 

「はぁぁぁぁぁ・・・・・・素晴らしい企画です~・・・喜んでやらせていただきます!」

 

「そう言うと思ってました、ではこの話は受けるという事で。東京都心の方で行いますので、スケジュール調整をしておきますね」

 

「はーい♪」

 

大喜びの美九は笑顔でテンション高く返事する。そこで、大きな事件に巻き込まれる事も知らずに・・・。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同日。天宮市内のカフェの外にあるテーブルに座り、紅茶を飲みつつ本を読む一人の男性がいた。

 

黒いシャツとスーツを着たの男性だ。かなりの美形で、その姿はまるで天才が描いた一枚の絵画のような美しさと妖しさすら感じられる。

 

実際、周囲の客達からも注目されている。だが男性は注目される事に慣れているのか、特に気にすることなく平然としている。

 

「相席、いい?」

「どうぞ」

 

そんな男性の前の席に、中学生位の少年が座る。

 

少年の元に店員が注文を聞きに来る。少年はコーヒーを注文して前に座る男性に話しかける。

 

「相変わらず、紅茶が好きなんだね」

「あぁ、紅茶は私の相棒みたいなものさ」

 

「ふーん・・・で、本題は?」

 

紅茶に興味のない少年は本題を聞く。男性はカップを置いて話し出す。

 

「君、もうすぐ動き出すそうだね」

「そうだけど、悪い?」

 

「そんな事は無い、ただ油断しないように・・・とだけ」

 

「わかってるよ。バグヴァイザーを含めて必要な物は揃った。僕は新たなステージに進む・・・そしてこの共存世界をぶっ壊してやる」

 

「そうか、頑張るがいいさ」

 

中々物騒な話をしているが、周囲の者達は特に気にしていない(聞こえていない)ようだ。

 

少年は店員からアイスコーヒーを受け取ると、砂糖もミルクも入れず飲んでいき、三分の一飲んだところで男性と話を再開する。

 

「・・・で、そっちはどうなの」

 

「順調だよ。人工霊結晶(セフィラ)の開発・・・後もう少しさ。君も、変わった物に興味を持っているだろう」

 

「バグスターウイルスの事?轟木 零士が持ってきたサンプル・・・あれを見て、僕は確信した。あれこそ僕に必要な物だって」

 

「そうか。元はコンピューターウイルスだと言うが、あんな物を生み出してしまうとは、人間とは本当に業が深い」

 

「・・・・・・業の深さで言うなら、あんたもじゃない?」

「おっと、その通りだね」

 

お互い飲んでいた飲み物が無くなったところで、二人共席を立つ。会計は男性が行うという事で、少年はそのまま出る事に。

 

「じゃあね。終焉の革命団の()()()()()でDEMの社長・・・アイザック・ウェストコットさん」

 

「あぁ、成功を祈っているよ」

 

二人は店前で別れる。男性・・・ウェストコットは後ろを向いて、少年の後ろ姿を見ながら言う。

 

「野望を達成出来るといいね・・・終焉の革命団幹部、獣人形者(ビーストドーラー)

 

その言葉はまるで、少年の・・・獣人形者(ビーストドーラー)の未来を見据えているようであった。

 





次にキバの話を一つ投稿してから、ノベル大戦を新規の別作品として投稿します。


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第六章 凜祢ユートピア
第一話 特殊精霊・Ruler


今回から、ゲーム版「凜祢ユートピア」の話になります。ゲーム版のヒロインの話だけを書きます。


それと、この話を上げる前に以下の修正をしました。

1.幼少期の士道と栞の出会いについて書き直し(第八話 悲しい心をSlashせよ!(前編)を一部修正)。

2.士道は医者を目指して勉強中(第一話 その名はEX-AID!の一部修正)。



 

「どうして・・・士道がこんなに傷付かないといけないの?」

 

「どうして・・・士道がこんなに苦しまないといけないの?」

 

「・・・・・・私が士道を守る。もうこれ以上、傷付かないように。苦しまないように。だから・・・!」

 

「五河 士道。あの日常の中にもどりなさい・・・そして次こそは幸せな夢を・・・!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

西暦2044年、六月二十五日。五河 士道は何時も通り、朝に目を覚ましベッドから起きる・・・。

 

「おはようだぞ、シドー!」

「あー・・・・・・十香、おはよう」

 

「うむ、今日もいい朝だぞ!早速朝餉にしようではないか!」

「作るのは俺だけどな・・・」

 

二人でリビングに降りると、リビングにはすでに琴里(白リボン)、四糸乃、八舞姉妹がいた。

 

「おはよう、おにーちゃん!」

「お、おはようございます。士道さん」

 

「一時の静寂な眠りから覚めたか、我が騎士よ」

「挨拶。おはようございます、士道」

 

「おはよう。今朝飯用意するから待ってろ」

 

いつものように慣れた手付きで全員分の朝食を用意し、いつものように皆で食べて、いつものように登校する。

 

何気ない平和な日常。バグスターがいない本当に平和な・・・。

 

「あれ・・・?」

「ん?どうしたのだシドー?」

 

「いや・・・なんでもない。行こうぜ」

 

一瞬違和感を感じたが、それは本当に一瞬でありすぐに消えてしまった。そして家を出ると家の前に一人の少女が待っていた。

 

「おはよう、士道。今日は朝ごはん任せちゃってごめんね」

 

緩いウェーブの掛かったセミロングの薄い桃色の髪と、ほんわかとした性格と口調が特徴的でどこか神秘的な雰囲気を持っている。

 

「おはよう凜祢。料理は俺の趣味だし、気にする事はねぇって」

 

園神(そのがみ) 凜祢(りんね)。士道の家の隣に住む()()()であり精霊達とも仲が良い。

 

ラクロス部所属で背も女子の中では高い方であり、士道の身の回りの世話を甲斐甲斐しくこなす姿はまさに大和撫子そのもの。

 

そんな凜祢ととても仲が良いため、士道は精霊達や折紙に栞の事も含めて男子からかなり嫉妬されている。

 

「え・・・!?」

 

だが、士道から挨拶された凜祢は驚きの声を上げた。まるで「あり得ない事」に遭遇したような・・・。

 

「凜祢、どうしたんだ?」

「あ、ううん!何でもないよ・・・お詫びも兼ねて今日の夜ご飯は私が作るからね」

 

「おはようだぞ、凜祢」

「十香ちゃん、おはよう」

 

それから、皆に挨拶して一緒に登校する。途中で栞、折紙、狂三も合流。いつものメンバーで学校に着いて皆が自分のクラスに。

 

ちなみに、美九は明日行われるテレビ番組収録についての話し合いがあるそうだ。

 

授業も何事も無く終わり放課後。士道の隣に栞、折紙、狂三が寄る。

 

「士道、今日はどうするの?」

「そうだな、買い物の必要は無いし、医療の勉強も進んでるし・・・どうするかなぁ」

 

「じゃあさ、今日は久しぶりにゲームで遊ばない?もちろん、十香さん達も一緒に」

 

「お、それは良いな。でもそれは、俺が天才ゲーマーだとわかってての発言か?」

「ふふふ、今日こそ勝つかもよ?」

「えぇ。わたくし達でリベンジですわ」

 

「いいぜ、ノーコンティニューでクリアしてやるよ」

 

と、何気なく言ったこの言葉にまた何か引っかかる感覚があったが、それも一瞬で消え去った・・・。

 

それから皆でゲームセンターに。幻夢コーポレーション製のゲームで遊ぶがやはり士道が全てで一位を独占。

 

まだまだ士道には及ばぬと実感しながらも、皆は笑顔で遊んでいた。

 

そして夜。士道達が五河家で夕食を食べている頃、一人の青年・・・パラドは高台から街中にある新天宮タワーと呼ばれる巨大な植物が束ねられた様な塔を見ていた。

 

だが、パラドは知っている。新天宮タワーという塔は()()()()()()()()()()()()()、つまり今いる天宮市は偽りである事を。

 

「つまんないな・・・この世界はちっとも心が踊らない。やっぱりぶっ壊しちゃおうか」

 

そんな事を言うパラドの正面に複数の個体が現れる。

 

それらは個体ごとに赤、黒、白のローブをまとっていて一般人がイメージする天使を思わせる。

 

だが、それらは全てパラドを排除するために現れた。パラドは特に慌てずガシャットギアデュアルを使い変身する。

 

《パーフェクトパズル!》

「変身」

 

パラドクスに変身した直後レーザーの雨が降り注ぐが、パラドクスはその全てを軽やかな動きでかわし、展開されたゲームエリア内に存在するエナジーアイテムを複数得る。

 

《ジャンプ強化!》

《伸縮化!》

《マッスル化!》

 

伸縮化で体を伸ばして、ジャンプ強化で高くジャンプ。天使たちより高い位置に来てから、マッスル化で攻撃力を上げた状態で腕を伸ばし攻撃。

 

手の指を全て伸ばし手槍のようにして天使の腹を貫く。

 

そして天使を刺した手をそのまま振り回してチェーンアレイのように使い、周囲の天使達を攻撃して倒していく。

 

全て倒して攻撃し終えて手を腹から抜いて着地。追撃や増員が無い事を確認してから、変身を解く。

 

妨害が入ったのでタワーへの攻撃は中止する事にしたが、やはりあのタワーは今の世界に深い関係にある事を確認したのであった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「おかしい・・・終わったはずの世界の記憶が存続している?それにパラドも動き出した・・・凶禍楽園(エデン)の管理に異常が・・・?」

 

「いいえ、そんな事があってはならない。絶対に・・・士道の幸せの為に・・・!」

 

 




次回予告

殿町から「天狗牛」について聞いた十香達は、凜祢を含めた皆で夜に天狗牛のお参りをする事になった。

第二話 夜に行うVisit

「怖いに決まってるよ・・・」

ーーーーーーーーーー

凜祢ユートピアはNOVEL大戦 SYMPHONYの後の話ですが、その内容のネタバレになる事は書かないようにします。


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