強化版 弓の勇者の漫遊記 (エタリーヌ)
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一章
強化版 弓の勇者の漫遊記


川澄樹

異能 絶対必中

冷静で、真面目

生きること以外でする労働は嫌い。


僕の名前は川澄樹十七歳の高校ニ年生だ。特に変わったところは、将来が既に約束されていることだろう。たまたま運が良かっただけだろうけど、この異能社会で僕は勝ち組の一人だ。

 

幼少期僕の異能は《命中》だと言われていた。特にすごいわけでもなく、上位交換に《必中》がいる。自衛官なら賞が取れそうだから、鍛え始めたけど、僕の異能は実は《命中》ではなかった。そして中学の時、将来に備えて弓道や射撃を始めた。思うより当たるため、なんとなく続けていたが、気がつくとワールドジュニアカップで優勝していた。僕の結果が凄すぎたため、異能が《必中》に訂正された。その後、精密検査で金庫に隠されたマトを狙ったのだが、見事に銃弾が当たり《絶対必中》とつけられsランクの異能者になった。

 

それから、在学中に軍から高待遇で入隊を認められ、初任給を見せてもらった時は即答した。しかし、順風満帆な高校生活を送っていたものの次第に飽きてしまう。剣術も始めるが、異能で勝ててしまう。ゲームをやってみるものの、異能が発揮してつまらなくなった。

 

今思えば、凄い異能は要らないのかもしれない。そう思いつつ、射撃場を訪れ何発か撃っていた時だった。銃声が響くと、胸が熱くなるのに気がつく。手を当てると赤く濡れていて、うつ伏せで倒れてしまう。どのようになったか、わからないが、この事件は僕に嫉みを持つものの犯行だとニュースで話題になった。

 

 

意識が戻りつつある中、薄っすらと光の球が見えた。

 

『あぁ、君に決めたよ。僕の勇者様』

 

すると光の球は弓の紋章が微かに浮き出て、僕の中に溶け込んだ。

 

 

「おぉ…」

 

感嘆とする声に我に返る。視点を前に向けるとローブを着た男達が何やらこちらに向って唖然としていた。

 

「なんだ?」

 

声のするほうに目を向けると僕と同じように状況を飲み込めていないらしき男が三人いる。

一体どうなっているのであろうか?

先まで射撃場で訓練していたはずだ。辺りを見渡すと石造りの壁が目に入る。下を見ると蛍光塗料を塗られて作られたかのような幾何学模様と祭壇。その祭壇に、僕達は立たされていた。

 

しかし、何故弓を携帯しているのだろう。先まで銃を持っていたはずだ。妙に軽く、競技用より手軽かもしれない。何で持っているのか理解に苦しむが、地面に置こうとするが手から離れない。

 

「ここは?」

 

剣を持った男が、ローブを着た男達に問いていた。

 

「おお、勇者様方! どうかこの世界をお救いください!」

 

「「「「はい?」」」」

 

思わず、疑問で返してしまったが、他も異口同音だった。 

 

「それはどういう意味ですか?」

 

詳しく知る必要があったため、そのまま全て聞き返す。

 

「色々と込み合った事情があります故、ご理解する言い方ですと、勇者様達を古の儀式で召喚させていただきました」

 

「召喚……」

 

盾を持った男は、眉を寄せて馬鹿にしているようだったが、正直僕も馬鹿げていると思っている。

 

「この世界は今、存亡の危機に立たされているのです。勇者様方、どうかお力をお貸しください」

 

ローブを着た男が深々と頭を下げた。

 

「まあ……話だけなら――」

 

「嫌だな」

 

「元の世界に帰れるんだよな? 話はそれからだ」

 

盾の男はお人好しのようで、親身になっていたが、流石にあかの他人を救う義理はない。無言で貫いたが、後の二人が遮るように答えた。

 

お人好しは睨んできたが、流石にホイホイと助けるつもりはない。

他の二人は半笑いで、何か知っていそうだった。

 

お人好しは可哀想がっているが、僕は今何故こんなことになったのか知りたかった。何故僕らを拉致したのであろうか?

 

「人の同意なしでいきなり呼んだ事に対する罪悪感をお前らは持ってんのか?」

 

 剣を持った男がローブを着た男に剣を向ける。同級生に見えるあたり同世代だろう。

 

「こっちの意思をどれだけ汲み取ってくれるんだ? 話に寄っちゃ俺達が世界の敵に回るかもしれないから覚悟して置けよ」

 

「正直、助けるかどうでもいいです。あなた達の目的はなんですか?」

 

僕が答えた後、お人好しは意外そうな顔を向けた。二人と別の回答が意外だったのだろうか?

 

「ま、まずは王様と謁見して頂きたい。報奨の相談はその場でお願いします」

 

ローブを着た男の代表が重苦しい扉を開けさせて道を示す。

 

「……しょうがないな」

 

「ま、どいつを相手にしても話はかわらねえけどな」

 

「……」

 

剣と槍の男はたくましく、ついて行ったが僕は慎重にお人好しの後に続いた。

 

ついていく先に思わず息を飲んだ。どこまでも空が高く、そして中世ヨーロッパのような町並みが其処にはあった。そんな町並みに長く目を向ける暇は無く、謁見の間に辿りついた。

 

「ほう、こやつ等が古の勇者達か」

 

謁見の間の玉座に腰掛ける中年が値踏みして呟いた。

 

人を舐めるようにみる目が、スカウトに来た広報官に似ていて、好きになれない。

 

「ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。勇者共よ顔を上げい」

 

お人好しは頭をを下げたが、僕は会釈程度に済ませた。

 

「さて、まずは事情を説明せねばなるまい。この国、更にはこの世界は滅びへと向いつつある」

 

王の話をまとめると、現在、この世界には終末の予言と言うものが存在する。いずれ世界を破滅へ導く幾重にも重なる波が訪れる。その波が振りまく災害を撥ね退けなければ世界は滅ぶというのだ。

 

その予言の年が今年であり、予言の通り、古から存在する龍刻の砂時計という道具の砂が落ちだしたらしいのだ。この龍刻の砂時計は波を予測し、一ヶ月前から警告する。伝承では一つの波が終わる毎に一ヶ月の猶予が生まれる。当初、この国の住民は予言を蔑ろにしていたそうだ。しかし、予言の通り龍刻の砂時計の砂が一度落ちきったとき、災厄が舞い降りた。

 

次元の亀裂がこの国、メルロマルクに発生し、凶悪な魔物が大量に亀裂から這い出てきた。その時は辛うじて国の騎士と冒険者が退治することが出来たのだが、次に来る波は更に強力なものとなる。このままでは災厄を阻止することが出来ない。だから国の重鎮達は伝承に乗っ取り、勇者召喚を行った。

 

なんとも信じがたいが、彼らは異世界の住人で面倒ごとを押し付ける気でいる。

 

「話は分かった。で、召喚された俺たちにタダ働きしろと?」

 

「……そうだな、自分勝手としか言いようが無い。滅ぶのなら勝手に滅べばいい。俺達にとってどうでもいい話だ」

 

「赤の他人を、救済するほど暇じゃありません」

 

「確かに、助ける義理も無いよな。タダ働きした挙句、平和になったら『さようなら』とかされたらたまったもんじゃないし。というか帰れる手段があるのか聞きたいし、その辺りどうなの?」

 

「ぐぬ……」

 

王様が臣下の者に向けて視線を送る。

 

「もちろん、勇者様方には存分な報酬は与える予定です」

 

正直、報酬はどうでもいいのでリアルに戻して欲しいです。

 

「他に援助金も用意できております。ぜひ、勇者様たちには世界を守っていただきたく、そのための場所を整える所存です」

 

「へー……まあ、約束してくれるのなら良いけどさ」

 

「俺達を飼いならせると思うなよ。敵にならない限り協力はしておいてやる」

 

「……そうだな」

 

「……」

 

「では勇者達よ。それぞれの名を聞こう」

 

お人好しは何かに気がついたらしく、目を開いていました。二人もですが、問い詰める必要がありそうです。

 

剣の勇者が前に出て自己紹介を始める。

 

「俺の名前は天木錬だ。年齢は16歳、高校生だ」

 

剣の勇者、天木錬。外見は、美少年と表現するのが一番しっくり来る。顔のつくりは丹精で、体格は小柄の165cmくらいだろうか。髪はショートヘアーで若干茶色が混ざっている。切れ長の瞳と白い肌、いかにもクールという印象を受ける。

 

「じゃあ、次は俺だな。俺の名前は北村元康、年齢は21歳、大学生だ」

 

槍の勇者、北村元康。外見は軽い感じのお兄さんと言った印象の男性だ。彼女の一人や二人、居そうなくらい人付き合いを経験しているようなイメージがある。髪型は後ろに纏めたポニーテール。男がしているのに妙に似合っている。

 

「次は僕ですね。僕の名前は川澄樹。年齢は17歳、高校生です」

 

あまり、情報を渡したくないので他の二人に合わせた。次は、お人好しの番だ。

 

「最後は俺だな、俺の名前は岩谷尚文。年齢は20歳、大学生だ」

 

盾の勇者、岩谷尚文。三白眼であまり目つきが良くないが、先ほどのお人好しなところで、いい人だと伺える。顔もイケメンの部類に入るが、服装がオタクな感じを漂わせている。

 

王は岩谷を舐め回すように見て、最後に見下すように目を離した。

 

「ふむ。レンにモトヤスにイツキか」

 

「王様、俺を忘れてる」

 

「おおすまんな。ナオフミ殿」

 

勘付いたが、王は岩谷を軽蔑している。あって間もないのにこの様子は、その盾に原因があるのであろうか?

 

「では皆の者、己がステータスを確認し、自らを客観視して貰いたい」

 

「へ?」

 

疑問に思ったが、岩谷が口に出した。

 

「えっと、どのようにして見るのでしょうか?」

 

僕は見方を聞いたが、天木が呆れたように声を出す。

 

「何だお前ら、この世界に来て真っ先に気が付かなかったのか?」

 

殴りたくなる衝動を抑えて次の言葉を聞く。

 

「なんとなく視界の端にアイコンが無いか?」

 

「え?」

 

「それに意識を集中するようにしてみろ」

 

言われた通りアイコンに集中すると何か表示された。

 

川澄樹

 職業 弓の勇者 Lv1

 装備 スモールボウ(伝説武器)

    異世界の服

 スキル 絶対必中

 魔法 無し

 

スキル欄を見ると、異能が記載されていた。弓と相性が良く内心ニヤけている。

 

「Lv1ですか……これは不安ですね」

 

「そうだな、これじゃあ戦えるかどうか分からねぇな」

 

「というかなんだコレ」

 

「勇者殿の世界では存在しないので? これはステータス魔法というこの世界の者なら誰でも使える物ですぞ」

 

「そうなのか?」

 

現実の肉体を数値化して見ることが出来るのが当たり前なのだろうか? 現実であったなら、トレーニングに便利だろう。

 

「それで、俺達はどうすれば良いんだ? 確かにこの値は不安だな」

 

「ふむ、勇者様方にはこれから冒険の旅に出て、自らを磨き、伝説の武器を強化していただきたいのです」

 

「強化? この持ってる武器は最初から強いんじゃないのか?」

 

「はい。伝承によりますと召喚された勇者様が自らの所持する伝説の武器を育て、強くしていくそうです」

 

「伝承、伝承ね。その武器が武器として役に立つまで別の武器とか使えばいいんじゃね?」

 

北村が槍をくるくる回しながら意見する。確かにそれは同意見だ。絶対必中とはいえ、威力にかけては意味がない。

 

「そこは後々、片付けて行けば良いだろ。とにかく、頼まれたのなら俺達は自分磨きをするべきだよな」

 

岩谷は自分の武器に、不安をもっているようだ。何せ、盾だからだ。

 

「俺達四人でパーティーを結成するのか?」

 

「お待ちください勇者様方」

 

「ん?」

 

これから冒険の旅に出ようとしていると大臣が進言する。

 

「勇者様方は別々に仲間を募り冒険に出る事になります」

 

「それは何故ですか?」

 

「はい。伝承によると、伝説の武器はそれぞれ反発する性質を持っておりまして、勇者様たちだけで行動すると成長を阻害すると記載されております」

 

「本当かどうかは分からないが、俺達が一緒に行動すると成長しないのか?」

 

すると、ヘルプが現れ注意点を読んだ。

 

注意、伝説の武器同士を所持した者同士で共闘する場合。反作用が発生します。なるべく別々行動しましょう。

 

「本当みたいだな……」

 

今の段階では、自慢の異能も微妙だ。接近戦ができる仲間が欲しい。

 

「となると仲間を募集した方が良いのかな?」

 

「ワシが仲間を用意しておくとしよう。なにぶん、今日は日も傾いておる。勇者殿、今日はゆっくりと休み、明日旅立つのが良いであろう。明日までに仲間になりそうな逸材を集めておく」

 

「ありがとうございます」

 

「サンキュ」

 

その日は解散となり、王が用意した部屋で休むことになった。



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ベット上の会合

連続で投稿させていただきました

次回ありましたら、よろしくお願いいたします


来客室の豪華なベッドに座り、それぞれの武器を見つめながら説明に目を向けている。窓の方を見るといつの間にか日が沈んでいる。時間も忘れて、僕たちは説明を読んでいた。

 

伝説の武器はメンテナンスが不必要の万能武器である。持ち主のLvと武器に融合させる素材、倒したモンスターによってウェポンブックが埋まっていく。ウェポンブックとは変化出来る武器の種類を記載してある一覧表であると。僕は岩谷を真似て武器のアイコンにあるウェポンブックを開く。

 

開く瞬間に動揺したが、壁を越えてアイコンは長々を記載されていた。そのどれもがまだ変化不可能と記載されている。

 

集めたアイテムで、変化していくようだ。異世界ながらゲームのようである。

 

「なあ、これってゲームみたいだな」

 

岩谷が思っていたことを口に出した。それに北村が反応した。

 

「っていうかゲームじゃね? 俺は知ってるぞ、こんな感じのゲーム」

 

北村は自慢げに言い放つ。

 

「え?」

 

「というか有名なオンラインゲームじゃないか、知らないのか?」

 

「いや、俺も結構なオタクだけど知らないぞ?」

 

「お前しらねえのか? これはエメラルドオンラインってんだ」

 

「何だそのゲーム、聞いたことも無いぞ」

 

「お前本当にネトゲやったことあるのか? 有名タイトルじゃねえか」

 

「俺が知ってるのはオーディンオンラインとかファンタジームーンオンラインとかだよ、有名じゃないか!」

 

「なんだよそのゲーム、初耳だぞ」

 

「え?」

 

「え?」

 

「あまりこの手のゲームに詳しくないのですが、ファンタジー系のオンラインゲームなんですか?」

 

「違うだろう。VRMMOだろ?」

 

「はぁ? 仮にネトゲの世界に入ったとしてもクリックかコントローラーで操作するゲームだろ?」

 

ハンティング系のゲームしかしたことがないため、わからないでいる。聞く限り、様々な種類が出ているようだ。

 

「クリック? コントローラー? お前ら、何そんな骨董品のゲームを言ってるんだ? 今時ネットゲームと言ったらVRMMOだろ?」

 

「VRMMO? バーチャルリアリティMMOか? そんなSFの世界にしかないゲームは科学が追いついてねえって、寝ぼけてるのか?」

 

「はぁ!?」

 

天木が声を荒げた。思い出したが、彼が一番先にステータスの存在に気がついていた。手馴れていている印象もうなずける。

 

「あの……皆さん、この世界はそれぞれなんて名前のゲームだと思っているのですか?」

 

僕は話が食い違っていたので、題名を確認することにした。

 

「ブレイブスターオンライン」

 

「エメラルドオンライン」

 

「知らない。っていうかゲームの世界?」

 

岩谷はオタクな感じもするが、彼でさえ把握していないことから、マイナーなゲームなのだろうか?

 

「まてまて、情報を整理しよう」

 

北村が額に手を当てて、整理させようと区切りをつけた。

 

「錬、お前の言うVRMMOってのはそのまんまの意味で良いんだよな?」

 

「ああ」

 

「樹、尚文。お前も意味は分かるよな」

 

「あまり詳しくないですけど、現代技術では到底無理がありますね」

 

「俺はライトノベルとかで読んだ覚えがある」

 

「そうだな。俺も似たようなもんだ。じゃあ錬、お前の、そのブレイブスターオンラインだっけ? それはVRMMOなのか?」

 

「ああ、俺がやりこんでいたVRMMOはブレイブスターオンラインと言う。この世界はそのシステムに非常に酷似した世界だ」

 

天木の話を参考にすると、VRMMOというものは彼にとって当たり前のようにある技術で、脳波を認識して人々はコンピューターの作り出した世界へダイヴする事ができるらしい。

 

「それが本当なら、錬、お前のいる世界に俺達が言ったような古いオンラインゲームはあるか?」

 

天木は首を横に振り返した。

 

「これでもゲームの歴史には詳しい方だと思っているがお前達が言うようなゲームは聞いたことが無い。お前達の認識では有名なタイトルなんだろう?」

 

おとぎ話のようだけど、平行世界なんて言葉が頭に浮かんだ。

 

「じゃあ一般常識の問題だ。今の首相の名前は言えるよな」

 

「ああ」

 

 みんな頷く。

 

「一斉に言うぞ」

 

少し間ができて、同時に言った。

 

「湯田正人」

 

「谷和原剛太郎」

 

「小高縁一」

 

「壱富士茂野」

 

「「「「……」」」」

 

聞いたことも無い首相の名前だ。間違っても歴史の授業に出てきた試しは無い。それから、僕が聞く羽目になってしまうが、ゲームについてや小説の知識について尋ねあった。しかし、そのどれもが知らないと言う結論に至った。

 

「どうやら、僕達は別々の日本から来たようですね」

 

「そのようだ。間違っても同じ日本から来たとは思えない」

 

「という事は異世界の日本も存在する訳か」

 

「時代がバラバラの可能性もあったが、幾らなんでもここまで符合しないとなるとそうなるな」

 

なんとも奇妙な四人が集まったものだ。知識にについて僕は一番劣っているが、今の段階では彼らからもっと引き出したいと思う。

 

「このパターンだとみんな色々な理由で来てしまった気がするのだが」

 

「あんまり無駄話をするのは趣味じゃないが、情報の共有は必要か」

 

天木は鼻につく態度だが、どのような経緯だったのか話す。

 

「俺は学校の下校途中に、巷を騒がす殺人事件に運悪く遭遇してな」

 

「ふむふむ」

 

「一緒に居た幼馴染を助け、犯人を取り押さえた所までは覚えているのだが」

 

一つ下としてはとても関心が持てた。今からでも名前で呼ぶようにしたいと思う。練は脇腹をさすり、説明していることから、揉み合って刺されたのだろう。過程がどうであれ、好感が持てる。

 

「そんな感じで気が付いたらこの世界に居た」

 

「そうか、幼馴染を助けるなんてカッコいいシュチエーションだな」

 

岩谷のお世辞に、照れ気味で練が答えた。

 

「じゃあ次は俺だな」

 

次は北村だ。

 

「俺はさ、ガールフレンドが多いんだよね」

 

「ああ、そうだろうよ」

 

岩谷は納得した顔で頷く。

 

「それでちょーっと」

 

「二股三股でもして刺されたか?」

 

錬が小ばかにするように尋ねる。すると、北村は目を見開いて頷いた。

 

「いやぁ……女の子って怖いね」

 

「ガッデム!」

 

岩谷は中指を立てて顔を歪めていた。

 

次は僕の番だ。あまりに情けないから言いたくないけど、皆腹を括っている。

 

「次は僕ですね。僕は訓練の一環で射撃場に来ていたのですが、どこからか発泡が聞こえまして、その後は……」

 

「「「……」」」

 

「訓練って……」

 

「あぁ、僕は軍から内定を頂いてまして、その一環で射撃をしていたんですよ。大方、逆恨みや、誤発ですかね……」

 

「お前、何者なんだよ……」

 

練が訓練の言葉に過剰反応して、岩谷が驚きの表情で何者か聞いて来た。

 

「単純に、射撃の腕がピカイチなんですよ」

 

「お、おお。そうか……」

 

北村は少し引き気味だったが、次は岩谷の番だ。

 

「あー……この世界に来た時のエピソードって絶対話さなきゃダメか?」

 

「そりゃあ、みんな話しているし」

 

「そうだよな。うん、みんなごめんな。俺は図書館で不意に見覚えの無い本を読んでいて気が付いたらって感じだ」

 

「「「……」」」

 

ちょっと期待はずれで、ゴミを見る目で見てしまった。すると、練と北村が小声で話し始める。

 

「でも……あいつ……盾だし……」

 

「やっぱ……所もそう?」

 

「ああ……」

 

どうやら馬鹿にしているみたいで、岩谷が不機嫌になる。

 

「じゃあ元康と練は、この世界のルールっていうかシステムは割と熟知してるのか?」

 

「ああ」

 

「やりこんでたぜ」

 

情報を得るには二人が最適のようだ。戦力に期待できないお人好しは少し距離を置くことにする。

 

「な、なあ。これからこの世界で戦うために色々教えてくれないか? 俺の世界には似たゲームは無かったんだよ」

 

「そうですね。武器はあるといえ、熟知しているお二人にご教授願いたいです」

 

「よし、元康お兄さんがある程度、常識の範囲で教えてあげよう」

 

元康は小馬鹿にした表情で、岩谷の肩を組む。

 

「まずな、俺の知るエメラルドオンラインでの話なのだが、シールダー……盾がメインの職業な」

 

「うん」

 

「最初の方は防御力が高くて良いのだけど、後半に行くに従って受けるダメージが馬鹿にならなくなってな」

 

「うん……」

 

「高Lvは全然居ない負け組の職業だ」

 

「ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

岩谷は冷酷な現実に、大声で叫んだ。

 

「アップデート、アップデートは無かったのか?」

 

「いやぁシステム的にも人口的にも絶望職で、放置されてた。しかも廃止決定してたかなぁ……」

 

「転職は無いのか!?」

 

「その系列が死んでるというかなんていうか」

 

「スイッチジョブは?」

 

「別の系統職になれるネトゲじゃなかったなぁ」

 

大方、この職業が変えられないのなら武器は固定と観れる。

 

「練のの方は?」

 

岩谷は練に目を向ける。すると練は目を背けて、答える。

 

「悪い……」

 

岩谷はハズレを引いてしまったと、落ち込み始める。

 

「ふふ……大丈夫、せっかくの異世界なんだ。俺が弱くてもどうにかなるさ」

 

自虐的に吹っ切れてしまったようで、可哀想に見える。パーティー頼りにするのだろうけど、結局最後は自分次第だ。

 

「よーし! 頑張るぞ!」

 

岩谷は己に叱咤しているようだ。すると、騎士が呼びに来た。

 

「勇者様、お食事の用意が出来ました」

 

ちょうど腹も空いていた。

 

「ああ」

 

バイキング形式で、食事をするようだ。味は期待できないが、見た目はとても豪勢だ。

 

「皆様、好きな食べ物をお召し上がりください」

 

「なんだ。騎士団の連中と同じ食事をするのか」

 

練は不満がありげで、不貞腐れている。

 

「いいえ」

 

案内の人は首を振る。

 

「こちらにご用意した料理は勇者様が食べ終わってからの案内となっております」

 

同じ会場だが、流石に異世界からのお客様が優先のようで、コックたちも騒がしく慌てて作業している。

 

「ありがたく頂こう」

 

「ええ」

 

「そうだな」

 

味は薄味であるが、調理はきめ細やかで個人的に満足している。変わった風味もあるが、独特で面白く感じた。

 

「風呂とか無いのかな?」

 

「中世っぽい世界だしなぁ……行水の可能性が高いぜ」

 

「言わなきゃ用意してくれないと思う」

 

「まあ、一日位なら大丈夫か」

 

「そうだろ。眠いし、明日は冒険の始まりだしサッサと寝ちまおう」

 

みんな北村の言葉賛成し、各自部屋に戻り明日に備える。だが、僕はまだ武器やこの世界について何も知らない。少しでも理解できるようにあらかたプランを立て、武器を調べる。一応、攻撃方が理解できたので明日に備えて眠りについた。

 




引き継ぎされたい方は是非申し出てください


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