ネフィリムさん (モサモサ)
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一話

○月×日

 

山で変な生き物を拾った。

 

休日、人気の少ない山で体力作りのトレーニングをしていると、獣の呻き声のような音を聞いた。

声のした方向を向くと、小型犬サイズの影がうつ伏せに倒れている姿を見て、最初は怪我をした子犬だと思って近づいたのだが、よく見ればそんな事はなく、種類すらも分からないモンスターだった。

 

影だと思っていたのは実は体色で、真っ黒なボディにオレンジ色に発光する模様をした、四足歩行のモンスター。

こちらが近づいてもピクリとも動かないので死んでいるのかと思ったが、傷らしい傷はないので生きてはいるらしかった。見捨てるのもあれなので、とりあえず持ち帰ってメシでも与えてやる事にした。

 

うちに持ち帰ったところ、母から「面倒は全部アンタが見な。責任はアタシ等が持つ」という何とも(オトコ)前な言葉を貰い、うちで飼う許可を得た。実は健康になったら適当に野に放すつもりだったのだが、これはつまり弱肉強食の世界で本来死んでいる筈の野生動物を助けるのだから、最後まで責任を持てという事だろう。ちょっと中学一年生に厳しすぎやしませんか?

 

ちなみにこの明らかに非常識なモンスターの外見については、「そういうもんだろ」の一言で片づけられた。相変わらずうちの母は器がデカいな。ちなみに父は帰って来て早々に腰を抜かしていた。

 

 

 

 

 

○月△日

 

このモンスターは随分な偏食家らしい。昨日は帰って早々に肉や魚を与えたのだが、一瞥しただけで、以降は何の反応も見せなかった。見た目にそぐわず草食動物なのかと思って野菜類も色々と与えてみたのだが、こちらも反応は無し。結局は何も食わずにその日を終えてしまった。

今日は朝から何ならば食うのだろうとか悩んでいたのだが、モンスターがジッと何かを見つめているのに気付いた。その視線の先にあったのは、以前父が母に無断で買ってきた、大昔の人が使っていたという剣の欠片だった。その時はこんなガラクタを大枚をはたいて買ったことで、()の怒りも買ってしまうことになったが、割愛しておこう。

 

試しにその欠片を与えてみた所、モンスターは嬉しそうに欠片を食べ始めた。どうやらこのモンスターの主食は鉱物だったらしい。ますますこのモンスターが何の生き物なのか気になる所ではあるが、中学生の頭で考えた所で答えは出ないだろう。

その後庭にあった石や、鉄、ステンレスなどの思いつく限りの金属類を与えてみたのだが、まったく反応しなかった。曰く付きの物品しか口にしないとは、こやつ、中々グルメである。

 

その夜、欠片がモンスターの餌となっている事に気付いた父が泣き崩れるのだが、慰めるのが非常に大変だったことを明記しておく。

 

 

 

 

 

○月□日

 

流行りの音楽番組を視聴中、普段は部屋の隅でジッとしているクロスケ(いつまでもモンスター呼びはどうかと思ったので、適当に名付けた)が珍しく動き、テレビの前に座り込んで動かなくなった。様子から察するに、どうやら音楽を聴いているらしかったのだが、理解できているのだろうか?クロスケには割と知能があるのかもしれない。

 

試しに今ハマっているアニメの歌を歌ってみたのだが、今度は音楽番組そっちのけで俺の歌を聞き始めた。プロの歌より俺の歌を選んだことに少し嬉しくなり、調子に乗って大声で熱唱していたら、近所迷惑だと鬼となった母に

ぶん殴られた。クロスケはいつの間にか音楽番組に戻っていた。ちくしょう。

 

 

 

 

 

○月◎

 

今日は珍しい物を買った。

学校からの帰り道、普段は絶対に行かないであろう骨頭品店に立ち寄った。友人たちは俺なら絶対に行かないであろう店に寄ることに心配していたが、父の宝物を文字通り食い物にしてしまった事に少なからず罪悪感があり、何かお詫びになるような品でもないかと探しに来たのだ。

その結果、店主の口車に乗せられて、あれよあれよという間に10万円もする怪しげな金属片を買ってしまった。これで俺のコツコツ溜めて来たお小遣い及びお年玉は全てパァである。

店主曰く、この金属片はさる剣の神様が振るったという雷の剣らしいが、とてもそんなものには見えない。父が買ったものは数百万もしたらしいし、値段的な意味でもパチモンを掴まされたのだろう。

 

一応帰って来た父にお詫びとして譲ったのだが、例え偽物でもその気持ちがう嬉しいと言ってくれた。少し照れ臭かったのだが、『おい』突如跳び掛かって来たクロスケに金属片をかっ攫われ、そのままバリボリと食べられてしまった。…………取りあえず言えるのは、どうやらあの店主の鑑識眼は節穴だったらしい。クロスケが食ったという事は、本当に『おい』神様の物とまではいかなくても、本物の剣の欠片だったのだろう。適正価格でなくて良かった。

まあ、結局はクロスケの腹の中に納まってしまったので、一銭たりとも帰っては来な『おい』ええい煩い!日記に集中できないじゃないか!誰ださっきから話しかけて来るのは!?

 

『おい人間。聞いているのか?』

 

…………喋った。

 

 

 

 

 

○月▽日

 

昨日は急に喋り出したクロスケに驚き、そのまま日記を書くのを止めてしまったので、今日、昨日の事を書いておく。

 

俺が拾ったクロスケは、自らをネフィリムという兵器だと名乗った。そして俺を自らを完全稼働させたマスターだと言ったのだが、何かと上から目線の口調で話す上に、「先史文明も知らぬ無知な人間如きが」とか何とか言うので、説明の途中でいい加減にキレて思いっきり蹴飛ばした。するとネフィリムも反撃とばかりに跳び掛かって来て、そのまま大乱闘となる。その数分後、鬼神となって降臨した母に、揃ってぶん殴られた。

その後は共通する恐怖の対象が出来た事で、俺とネフィリム(以後ネッさん)は和解。互いの事を語り合って仲良くなり、相棒と呼べる間柄となった。

 

さて、ネッさんに話を聞いて分かった事を色々と纏めておこう。

 

ネッさんの誕生は今からおよそ3000年前。

先史文明時代において、カストディアンと呼ばれる神の様な存在によって、統一言語という完璧な相互理解を成せる技術を失ってしまった。理解できぬ相手を恐怖した人類は、コミュニケーションによる融和ではなく、武力による殲滅を選択した。その結果生まれたのが、現代においてノイズと呼ばれる対人殺戮兵器。環境に悪影響を与えずに人類を効率的に殺戮するこの兵器は、開発当初こそ猛威を振るっていたものの、他の人類がノイズを殺せる兵器を開発したことで一気に勢いを失うことになる。(ちなみにこの兵器というのは、世界各地の伝承に語られる伝説の武器などらしい)

ノイズに対抗する兵器が生まれた以上、さらにそれに対抗する兵器が造られるのも当然なわけで、そうして作られたのが、この自律行動型兵器『ネフィリム』である。

 

だが、今俺の目の前にいるネッさんは正確にはネフィリムであってネフィリムではないのだという。

そもそもネフィリムというのは、ネフィルという言葉の複数形であり、大量に作られた全てのネフィルが共喰いによって融合、一体化することで、自律兵器『ネフィリム』として完成に至るらしい。

 

ネッさんは生まれ落ちて直ぐに他のネフィルよりもまず人間を捕食しており、その際に知性を獲得したのだという。

その結果。知性体だけが持つ、本能ではなく理性による死への恐怖から、ネフィル達に捕食されるのを恐れて逃げたのだとか。その後は自分を除いてネフィリムになっているだろう同胞から逃げる為に各地を転々とし、捨てられた対ノイズ兵器を喰らって力を付けつつ、野生動物をエネルギー源に何とか命を繋いできたらしい。

 

じゃあ何で最近は何も食べなかったのかと聞くと、肉や穀物よりも歌の方がエネルギーの摂取効率が良かったかららしい。何故歌?と問えば、歌は人類が言語の壁を超えて相互理解を行う目的で創られた技術の一つで、その目論見こそ失敗したものの、ネッさんのような超兵器を作動ないしコントロールする力があるのだという。だから音楽番組がやってる時、あんなに集中していたのか。

 

しかしながら、テレビに出ているようなプロの歌声よりも、俺が適当に歌った歌の方がより多くのエネルギーを得られるらしく、そこで俺がネッさんに適した歌声の持ち主、つまりネッさんの担い手であると判断したという。自律兵器なのに担い手が必要とはこれ如何に。

その変の事情を訊いてみれば、「いくら自律兵器でも、敵味方関係なく暴れたら意味ないだろ。敵の識別をする操縦者は必要なんだよ」と返された。ごもっとも。



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二話

○月Д日

 

最近ネッさんがカラオケに連れて行けと煩い。近所迷惑になるからと大声で歌うのを自粛しているのだが、どこから聞きつけたのかカラオケの存在を知ったネッさんが連れていけとせがむのだ。いい加減鬱陶しいが、生憎と今の俺には金がない。こないだの10万で俺の懐はスッカラカンである。

というか、仮に金があったとしても、得体の知れないモンスターであるネッさんが町中を歩けば、普通に騒ぎになる。山から連れて来た時は日が落ち始めた頃だったのが幸いして誰にも見つからなかったが、昼間っから表に出れば一躍トップニュースである。そんな話をしたら、「分かった。騒ぎにならなければ良いんだな?」と言って部屋の隅に行ってしまった。何をしているのかは分からないが、ろくでもない事でないことを祈る。

 

 

 

 

 

○月δ日

 

ネッさんには驚くべき能力が備わっていた。なんと、体を縮小して手の平サイズまで小さくなれるのだ。しかも何故か重量まで変わっている。

とにかく、これなら騒ぎになる事もあるまいとネっさんを拾った山へと出かけた。あそこは人がほとんど来ないし、騒ぐには丁度良い場所だった。

試しに何曲か歌うと、ネッさんは大喜びで俺を煽て始めた。それがエネルギー補給のためだと分かってはいたものの、悪い気はしなかったった俺は一日中歌って過ごしたのだが、そのせいで喉を痛める事となった。今度からはのど飴を常備しよう。家に帰ってから元のサイズに戻った所、ネッさんが心なしか大きくなっているような気がすると言い出した。計測の結果はほとんど誤差の範囲だが、これで成長しているのだろうか?

 

 

 

 

 

○月◇日

 

昨日も山で歌う。というか、ここ最近の休日はほぼ山で歌ってるな、俺。端から見たらどんだけ寂しい奴だよ。しかも最近じゃあ、山から変な声が聞こえるとかいう都市伝説まで出回る始末だ。

 

しかし、そんな日々もこれまでだ!何と、本日ネッさんが小遣いを貰ったのだ!……うん。俺じゃなくてネッさんが。

何はともあれ、これで一々山に行かなくて済むぜ!やったー!

 

ちなみに、歌う場所が山からカラオケに変わっただけで、やってる事は変わらない寂しい奴だということに気づいたのは、カラオケに行った帰り道だった。

 

 

 

 

 

○月@日

 

唐突だが、うちの学校は明後日から8月の終わりまで夏休みだ。これが何を意味するのかといえば、ネッさんからの歌のおねだりが増えるということだ。

今までは週に1~2日だった歌の日が、ほぼ毎日となる。ばか正直にそんなことをしてみろ。普通に喉が潰れる。何か対策を考えねばな。

 

 

 

 

 

○月&日

 

帰宅途中で事故にあった。それも全治2ヶ月とかいうふざけた規模で。夏休み全部返上じゃねえかバカヤロー。原因は相手側の運転手の不注意だ。

普通なら日記を書く気分になどならないだろうが、俺はそんな事はなかった。何とこの怪我、ネッさんなら直ぐにでも治せるのだという。そのためには人間を辞める事になるらしいので、丁重にお断りしたが。

 

マスターも守れない欠陥兵器で済まないとか謝られたが、ネッさんは別に悪くないだろう。というか、ネッさんがいなければそもそも俺は死んでいるのだが。あの事故にあった時、ネッさんは俺を守るために咄嗟に俺と一部融合し、命を繋ぎ止めてくれたのだ。

その事に感謝こそすれ、責める理由はない。これに関しては、母は良くやったとネッさんを褒めてたし、普段はネッさんにビビってる父も本気で感謝していた。

 

 

 

 

 

○月¥日

 

偶然にも、ネッさんも知らない新たな能力を発見した。融合した影響なのは知らないが、何と俺とネッさんの体を交換できるのだ。

両親や友人、ネッさんもお見舞いに来てくれるとはいえ、日がな一日ベッドの上で過ごさねばならない日々はかなりの苦痛だった。そこで冗談半分に、「ネッさんと体を交換できたら動き回れるのになー」なんて言った次の瞬間、俺とネッさんの体が入れ替わっていた。

当然ながら大混乱&大慌ての俺達だったが、そこで騒ぎを聞きつけて看護師が駆けつけてしまった。しかしここはネッさんの意外な演技力で何とか事なきを得たのだが、依然として状況は改善しないままだった。

先程は俺がネッさんと入れ替わればいい、等と言った為に入れ替わったので、もう一度入れ替わるように言ったり、強く念じてみたのだが、結局元には戻らなかった。そこで今度は俺の体に移ったネッさんが、入れ替わるように念じた。すると、一瞬の暗転の後に視界が見慣れた物へと戻っていた。どうやら体の交換権は俺の体にあるようだ。

しかしこの能力、中々に面白いのでこれからも頻繁に使用していくことになるだろう。

 

 

 

○月Ψ日

 

ネッさんが美食趣味に目覚めた。

事の始まりは、俺がネッさんの体で見舞いの菓子を食った時の事だ。菓子を食った一口目で違和感を感じ、二口目で確信した。まったく味がしなかったのだ。この事についてネッさんに訪ねてみれば、そもそも味ってなんだ?という質問が帰って来た。

 

ネッさんの体には味覚が存在しない。元々知性を得ることなど想定されていない戦闘兵器なのだから、当然と言えば当然だが。

生まれて初めて味のある食事をしたネッさんは、始めは戸惑いつつも次第に夢中になり、そして食後には「今までこんなにも素晴らしいものを知らずにいたとは……!」と凄くショックを受けていた。それからというもの、ネッさんは俺が飽きてしまった病院食を、俺の代わりに毎回食うようになった。退院したら、ネッさんと一緒に食巡りをするのも良いかもしれない。

 

 

 

 

 

○月♪日

 

特に書く内容の無い入院生活が終わり、ついに退院日がやってきた。

ネッさんと融合した影響かは知らないが、心なしか事故前より体が軽い気がする。今なら何でもできそうだ……等と調子に乗ったのが災いしたのか、退院当日に事故に巻き込まれた。幸いにも俺を含めて怪我人は出なかったが、ちょっと俺の幸運値低すぎやしませんかねぇ。

 

 

 

 

 

○月#日

 

ネッさんを連れて海に行ってきた。

既に夏は終わりを告げ、秋にまで食い込んでいるが、今年は一度も行っていないのだからと、まだ暑いうちに行っておく事にしたのだ。

しかし浜辺まで来た所で、普段は腐るほど居る海水浴客がいない事に気づく。そしてクラゲが大量発生しているから遊泳禁止、などという看板もついでに見つけた。

 

落ち込みつつも折角来たのだから海釣りでもしていくかと、借りた釣竿で糸を垂らしていると、ネッさんが沖合いからサメを捕まえてきた。俺にどうしろと言うのだろう。というか、水中活動も可能なのか。便利な体だな、ネッさん。

 

 

 

 

○月Φ日

 

ネッさんが野良犬と間違われて保健所に連れていかれた。字面だけ見たら笑えるが、実際に遭遇した俺としては笑い話にもならない。

大体いつも一緒にいるからか、俺の中ではいつの間にか居ることが当たり前になっていたみたいで、周りの目を気にするという事を忘れていた。その結果ネッさんは野良犬扱いで保健所送りになったわけで、流石に反省しなければならないだろう。幸いにもネッさんの聞き分けが良かったから怪我人も出ていないが、ネッさんが本気で抵抗したら確実に死人が出ていたのだ。

 

保健所に相談したら、今度からはしっかり首輪をつけるようにと厳重注意を貰った。当然ながらネッさんは物凄く微妙そうな顔をしていた。いくら兵器でも、流石に首輪は嫌らしい。勿論のこと、今後もネッさんに首輪をつける予定は無い。ようはバレなければ良いのだ。

 

それはそれとして、母から今回の騒動の罰として、俺は来月の小遣いカット。ネッさんは来月いっぱいに渡って食事量に厳しい制限言い渡された。ショックで二人そろってガチ泣きした。



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三話

○月○日

 

前回日記を書いてから二年近く期間が開いているが、久々に日記を書く。

前回書いてからしばらくの間、特に特筆すべき事がなかったために後回しにしていたが、いつの間にかこの日記の存在自体を忘れ去っていた。しかし今日になってこの日記の事をふと思い出し、久しぶりに書き始める事にした。

現在の俺は中学年に進学しており、高校受験を間近に控えていている。そのため、いつもはうるさいネッさんも最近は割りと静かだ。

 

美味い飯は母が作ってくれるし、最近になってようやくネッさんに慣れてきた父が餌付け感覚で菓子を買って来てネッさんに与えている。でも味のある食事は結局は俺の体限定だから、頻繁に買って来るのはちょっと勘弁して欲しい。晩飯が食えん。

 

 

 

 

 

○月※日

 

ここのところ、ネッさんがパソコンを一心不乱に見つめている。初めはグルメサイトでも見ているのかと思ったが、どうもそうではない。

何やら変化し続けるグラフような物を眺め続け、時折思い出したようにパソコンを動かす。話しかけても返事すらろくに帰って来ず、昼も夜も関係なく、ひたすらこの繰り返しである。

 

 

 

 

 

○月%日

 

ネッさんのやっている事について、父に相談してみた所、何やら慌てた様子でネッさんの所へ行ってしまった。その後二人は色々と話し込んでいたようだか、肝心の内容については分からないままだ。確か、株がどうとか言ってたが、農業でも始めるのだろうか?

 

 

 

 

 

○月〒日

 

ネッさんの貯金が凄い事になってた。この間父と話していた株とかいうのを使って稼いだらしく、これで全国食べ歩き旅行に行こうと言われた。受験勉強の息抜きには丁度いいかもしれないな。

今はもう夏休みはもう終わっているが、時期に冬休みになる。その時にでも行くとしよう。

 

 

 

 

 

○月‡日

 

今日の俺は凄くツイている!何とデパートの福引きでアメリカ旅行のチケットを手に入れたのだ!ただし一人用だったが。

時期的にも冬休み中の期間だから、問題無く行ける。ここ最近の学校の成績も良く、両親も行って良いと許可してくれた。バレなきゃ問題無いし、ネッさんも誘って行くとしよう。

 

 

 

 

 

○月「」日

 

今日から旅行でアメリカに行く。食事なんかの代金はネッさんが持ってくれるそうなので、思う存分遊びつくそう。ネッさんではないが、今からご当地グルメが楽しみである。

 

 

 

 

 

○月()日

 

帰りたい。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

アメリカ某所にある聖遺物研究所。ここでは現在、巨大な白い怪物が暴れまわっていた。

 

「■■■■ーーーッッッ!!」

 

この怪物の名は、アルビノ・ネフィリム。完全聖遺物『ネフィリム』を、正規の手段を用いずに起動した結果、暴走した姿である。

そんな怪物の前に、一人の少女が立ち塞がる。彼女はセレナ・カデンツァヴナ・イヴ。この研究所の被験者の一人であり、聖遺物『アガートラーム』のシンフォギア装者だ。彼女は暴走するアルビノ・ネフィリムを止めるため、命を捨てる覚悟でここに立っていた。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emust──きゃあっ!?」

 

突如として施設全体が激しく揺れ、同時に実験場の壁が轟音と共に崩れ去った事で、セレナは絶唱を途中で止めざるを得なくなる。

 

「見ィィつけたァッ!!」

 

壁をぶち抜いて現れたのは、黒の半袖にジーンズというラフな格好の少年。しかしその顔に被った虫の様なお面が、少年の不審者感を際立てている。少年は室内へ侵入すると同時にアルビノ・ネフィリムへ飛び蹴りをかまし、着地と同時にファイティングポーズを取った。

 

「ちょっ、ネッさぁぁぁんッ!それ俺の体ぁッ!!」

 

続いて壁の穴から現れたのは、丁度目の前に居るアルビノ・ネフィリムを大型犬程に小さくしたような、黒いネフィリム。そして黒いネフィリムが入って来るや否や、先程まで暴走していたアルビノ・ネフィリムは、明確な意思を持って黒いネフィリムを攻撃し始めた。

 

「うおっ!いきなり何しやがる!?」

 

黒いネフィリムがアルビノ・ネフィリムの攻撃を避けると、少年が隙だらけのアルビノ・ネフィリムを後ろから蹴り飛ばした。

 

「おう相棒。ようやく来たか」

 

「『ようやく来たか』、じゃねえよ!いい加減俺の体返しやがれ!お前の体と違って脆いの!扱いには気を付けんかバッキャロー!」

 

「分かった分かった。そう急くなっと!」

 

アルビノ・ネフィリムの腕による凪ぎ払いを、かがんで回避する二人。しかし回避行動がワンテンポ遅れた黒いネフィリムの頭を僅かに擦っていった。

 

「危ねえッ!今擦ったぞ!大体何だよこの白くて巨大なネッさんは!?さっきから俺ばっか狙ってんだけど!」

 

「いつぞや話した俺の同胞だ!完全体になるために、俺の体を狙っているんだろう!」

 

「傍迷惑!てかさっさと体返せぇ!」

 

などというやり取りを繰り広げながらも、アルビノ・ネフィリムの攻撃を尽く回避し、カウンターまで食らわせていく二人。しかし少年の方はともかくとして、黒いネフィリムの方は動きがどこか拙い部分が多く、見ていて危なっかしい。現に、少年は上手く躱すことができた一撃を、黒いネフィリムは正面から食らってしまった。

 

「へぶっ!」

 

「相棒!?」

 

黒いネフィリムを吹っ飛ばしたアルビノ・ネフィリムは、邪魔だとばかりに今度は少年を攻撃しようとする。

即座に回避行動を取ろうとする少年だったが、すぐ後ろに居たセレナの存在に気付き、動きを止める。

 

「ええいくそっ!」

 

「きゃっ!」

 

僅かな逡巡の後に少年はセレナを抱えると、大急ぎで部屋の端へと跳んだ。アルビノ・ネフィリムの拳が二人が先程まで居た場所を穿ったのは、その直後だった。

少年は壁際でセレナを下ろすと、ダメージから復活した黒いネフィリムと並び立った。

 

「何でこんな所に女の子が居るんだよ。保護者どこ行った!?」

 

「上で見てるあいつらじゃないのか?」

 

そう言って少年が指差したのは、上の階からガラス越しに少年達を興味深く観察している科学者達。誰一人として助けに来ようとする様子は無い。

 

「このマッドどもめ!」

 

黒いネフィリムはそう吐き捨てると、セレナをここから逃がす為に、少年と共にアルビノ・ネフィリムへと向かっていく。

 

「合わせろネッさん!」

 

「任せろ!」

 

二人はアルビノ・ネフィリムの攻撃を掻い潜って懐に飛び込むと、強烈なツープラトンキックを叩き込んだ。それを受けたアルビノ・ネフィリムは大きく後退し、そこに黒いネフィリムが追撃にタックルを仕掛けて壁に叩き付けて押さえ込む。その間に少年はセレナを抱き抱えて、自分達が入って来た穴から外へと運びだした。

 

「邪魔だから外に出てな。気が散ってしょうがねえ」

 

セレナを部屋の外へ連れ出すと、少年は再び室内へと戻って行く。その後室内から暫しの間激しい戦闘音が鳴り響くと、大型犬程だった先程とは変わり、熊程に大きくなった黒いネフィリムが、穴を更に大きくぶち抜いて飛び出して来た。

 

「ぐえっ」

 

「目的は果たした!帰るぞ!というか逃げるぞ!」

 

「ちょっ、首しまっ……」

 

黒いネフィリムは少年の襟首をくわえており、首が締まっている事に気付かずに走り去って行く。

 

「えっ、あのっ!」

 

セレナが声をかけたが既に遅く、少年達は施設に侵入する際にぶち抜いて来た天井から去った後だった。

嵐の様に去って行った彼等にしばしの間呆然としていたセレナだったが、ハッと我に返り、アルビノ・ネフィリムがどうなったのかを確認するために穴へと近づく。

 

「!!」

 

恐る恐る部屋を覗いたセレナが見た物は、片腕を半ば程で無くし、全身の所々に食い千切られた跡のある、機能停止したアルビノ・ネフィリムの姿だった。

 

「セレナ!」

 

「姉さん!」

 

セレナが死に体のアルビノ・ネフィリムを見つめていると、いの一番に駆けつけた、セレナの姉であるマリアが抱き着く。

 

「良かった……!無事で、本当に良かった……!」

 

泣きじゃくる姉を抱き締め返し、セレナはポツリと呟いた。

 

「姉さん。私、好きな人が出来たの」

 

「…………えっ?」

 

 

 

この日、セレナ・カデンツァヴナ・イヴは、生まれて初めての恋をした。

その相手が、実は少年と体を入れ替えていたネフィリムであるという真実を知らない事が、良かったのか、あるいは悪かったのかは、誰にも分からない。



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第四話

||ω・)チラ



||つミ○ポイッ



||三ササッ



||



||ω・)チラ





m(__)m遅れた上に駄文で済まぬ


○月>日

 

気分と体が落ち着いたので、昨日あった事を整理しようと思う。

 

俺達はホテルに着いた後、早速ネッさんと共に美食探しに街へと繰り出したまでは良かったのだが、俺の体で食事中のネッさんが唐突に立ち上がって言った。「俺の同胞の反応がする」と。

そのまま駆け出してしまったネッさんに連れられ、辿り着いた先は何かの研究所らしき建物だった。この時点で既に嫌な予感がビンビンしていた俺だったが、止まる様子のないネッさんに、諦めて覚悟を決めた……が、その覚悟はネッさんが次に取った行動でぶち壊された。

 

研究所に入る際、当然俺は某蛇のようなスニーキングミッションを行うものだとばかり思っていたのだが、何とネッさん、研究所の壁を素手でぶち抜いて堂々と正面から入りやがった。

どうして正面から行ったのか云々よりもまず、何で俺の体で分厚いコンクリートの壁を壊せるのかを問いたい。……え?俺が気付いていないだけで、ネッさんと融合したらこれくらい普通にできる?あ、そう……。今後スポーツは自粛しよう。このパワーは反則過ぎる。

 

ぶち抜いた壁から早速侵入しようとしたネッさんだが、俺はここでせめて顔くらいは隠して欲しいと待ったをかける。するとネッさんは懐から仮○ライダーのパチもんのお面を取り出して被った。一体いつの間に用意したのだろう?俺は見覚えがないのだが。

 

研究所に入れば当然ながら警報が鳴り響いていたのだが、ネッさんはそんな事などお構い無しに突き進んで行く。俺は警報が鳴ったのに誰も駆けつけて来ない事を不思議に思いつつも、仕方なくネッさんを追いかけた。そして進んだ先に居たのはなんと、真っ白で巨大なネッさんだった。

 

後から聞いた話だが、あれは正規の手段を用いずにネフィリムを起動させた場合に起こる、防衛機能を兼ねた暴走らしい。『正規の手段を用いない=正しい起動方法を知らない=正当な所有者ではない』という理屈で、周囲にある物を無差別に破壊しつくしてから、再び眠りにつくのだという。とんだ傍迷惑な機能だ。巻き込まれる方はたまったもんじゃねぇな。暴走時はあまり出力がないらしいが、充分ヤバイわ。

 

ネッさんの体を取り込んで完全体になろうと襲い来る暴走ネフィリムを迎え撃ち、俺達は激しい戦いを繰り広げた。その場に居合わせた、白い特撮スーツ?(ネッさん曰く、あれも先史文明の技術)を着た少女が巻き込まれるも、俺が体を張って暴走ネフィリムを押さえている間に、ネッさんが安全な場所まで運び出した。

 

ネッさんが室外に出ると同時、俺は暴走ネフィリムに弾き飛ばされ、壁に叩き付けられる。追撃に迫って来る暴走ネフィリムを見ながら諦めかけたその瞬間、視界が変転し、俺は元の体に戻っていた。ついでにネッさんはクロスカウンターで暴走ネフィリムを沈めてた。ネッさんマジパネェ。

 

しかし、起動状態でも単体であるネッさんと、暴走していても群体が一つになったネフィリムとではスペック差があるためか、ネフィリムは直ぐに起き上がろうとする。が、直後にネッさんによる追撃のムーンサルトプレスで再び沈められる。三度起き上がろうとし、今度はジャイアントスイング。

稼働時間経験の差によるものなのか、戦いはネッさんの一方的なまま進んでいった。

殴られれば突き出された腕の一部を咬み千切り、タックルをされればスレ違い様に肉を喰い千切り、懐に入れば腹から背中へと喰い破りと、着実に力を削ぎつつ自己を強化している。

しかし俺達の戦いを見ていた研究者達が、このままではネフィリムを喰い殺されると思ったのか、慌てて何やら指示を出していた。遅せぇよ!少女がピンチな時点で動けや!

 

ダメージを受けたネフィリムが機能停止する頃には、ネッさんの体は熊ほどのサイズまで大きくなっていた。そして研究者達の様子を見て、流石にこれ以上時間はかけられないと考えたのか、ネッさんは俺を連れて逃げ出した。俺の襟首をくわえて。

ネッさんが壁をぶち破って、外に少女らしき人影が見えたが、そっから先は記憶が無い。というか、酸欠で意識が飛んで気がついたらホテルのベッドで寝てた。(でもいつの間にか日記は書いていた。習慣ってすげぇ)

ついでに筋肉痛で1日中ベッドから動けなかった。こうして日記を書けるようになったのも、痛みが引いて来た夜中の事である。ちくせう。

 

 

 

 

 

○月⁉日

 

僅か1日で全身筋肉痛から復活し、改めてネッさんと融合したこのボディのチートっぷりに驚嘆しつつ、備え付けのコーヒーを入れる。ネッさんはいつもの大型犬サイズで過ごしていた。熊サイズだと普通に邪魔である。

 

軽めの朝食を取りつつ、なんとなしにテレビをつけたら、昨日この街のビル街の方で黒い謎の巨大生物が発見され、現在行方を追っているというニュースが流れていた。飲んでいたコーヒーが霧になった。

慌ててネッさんの方を振り返れば、忍び足でこの部屋から逃げ出そうとしている。即座に捕まえて尋問した。

 

ネッさんの言い分は「仕方がなかったんだッ!ネフィル状態からようやくネフィリムに成れたんだぞ?そりゃあ嬉しくてつい街中を走り回るくらいはするって!な?」とのことだ。当然ながら有罪ギルティである。

何が『な?』なのか全然分からん。テメェなんざそこの冷蔵庫に仕舞い忘れてたパンでも食ってろ。味のしない上(元々味覚はないが)にボッソボソの飯が貴様の今日の食事だ。というか暫くの間は絶対に体を貸さん。

 

言い渡された罰にギャーギャー騒ぐネッさんにイラッときた俺は、ネッさんを縛り上げて風呂に放り込み、蛇口を全開にした。なんかガボガボ言ってるが、死にはせんだろう。

 

絶賛水攻め中のネッさんは放っておいて、現状の確認と打破をしなければならない。

まず第一に、ニュースになってしまった以上、あのマッド共に俺達の居場所はほぼバレてしまっているだろう。研究所自体、ここから然程遠い場所でもないので、追手が来るのも時間の問題だ。

そのため、早急にこの街を脱出し、帰りの便の時間に合わせて空港に向かわねばならない。しかし相手は明らかに政府が関わっていそうな研究機関。そう簡単にはいかないだろう。

まさかアメリカまで来てハリウッド映画染みた逃走劇を繰り広げなきゃならんとはなぁ。……さて、行くか!

 

 

 

 

 

○月(^^)日

 

俺は今、帰りの飛行機の中で日記を書いている。時差とか色々あるので現在の正確な日時が分からんが、あと1~2時間で日本だ。

空港に着くまでマジで危なかった。一歩間違えば即実験体コースだってのに、まるで世界が俺を殺しにかかってんじゃないのか?って思うくらい、色んなトラブルに巻き込まれまくるんだからな。

 

昨日の日記を書いた後、ネッさんをリュックに詰めた俺は、まずはホテルを出ようとした。そしてその瞬間、ホテル内に凶悪な連続強盗犯が飛び込んで来たのだ。

警察に追われてこのホテルに逃げ込み、人質でも取って立て籠ろうとしたようだが、侵入と同時に先を急いでいた俺が右ストレートで沈めた。ナイフ持って叫ぼうとしてたから、一目で悪人って分かったし。

その後事情聴取をしようと近づいて来た警察を華麗にスルーし、空港行きの電車に乗るためバス停に直行。

 

二つほどバス停を過ぎた所で、銃声が響き渡る。バスジャックのようだった。犯人の位置が俺の席に近かったので、飛びかかって銃を周りの死角に入らせ、その瞬間に潜んでいたネッさんが銃をムシャリ。武器がなくなったので、暴発の可能性を気にせず力ずくで四肢の間接を外して捨て置いた。

警察を呼ぶために運転手がバスを止めると、俺は何事もなかったかの様にバスを降りて、「何か今日は物騒だなぁ」等と考えつつ近くにあったタクシーへ乗り換える。

 

もうすぐ駅かなぁ、というところで再び事件発生。何とタクシーが狙撃された。幸いにもリュックの中にいたネッさんに当たったため怪我はなかったが、それよりも狙撃された事が問題である。

すわ追手かッ!?と身構えたものの、向こうは研究のためにネッさんとその担い手である俺が欲しい筈なのだ。誘拐のために怪我はさせても、いきなり殺しにくる事はないだろう。では何なのかと考えていると、いつの間にやら武装した男たちにタクシーが囲まれていた。

やむを得ずネッさんを出そうとしたら、タクシーの運転手が銃を取り出して先程の狙撃主が居ると思わしき場所に向かって撃ちやがった。

 

それを皮切りにして戦闘が勃発。辺りには悲鳴が響き渡る。つかお前ら、街中で銃撃戦してんじゃねえよ!

詳しい事は省くが、俺達はタクシーの運転手を含めた全員をぶちのめしてその場を去った。多分襲撃者達の標的はタクシーの運転手だったんだろうけど、運が悪かったな。去るときにパトカーとすれ違ったし、全員お縄につくだろう。

その後は場所が割りと近くだったので、駅には徒歩で向かい、空港行きの電車に乗り込んだ。

 

電車に揺られること数十分。またも銃声が響き渡る。そして聞こえる乗客の悲鳴やテロリスト達の怒声。

 

 

ま た か よ !

 

 

しかも今度はアサルトライフルやらサブマシンガンやらだけでなく、バズーカや手榴弾まで完備してやがる。どこに戦争仕掛けに行くつもりだよ!マジでいい加減にしろよ!何なんだよ厄日か今日は!思わずキレてバーサーカーになっちまったよ!しばらく意識が飛んで、ネッさんに声かけられて気がついたら、テロリスト達がみんな床に沈んでたよ!イキリトか俺は!……乗客に怪我も無いみたいだし、良かったんじゃないかな。うん。また警察が来る前に、俺達はそそくさと電車を降りた。

 

二度目のバスジャックが無いことを祈りつつ、バスに乗ること小一時間。やっとの思いで空港に着いたら、凶悪なテロリストがアメリカに侵入したというニュースが流れていた。俺の乗る便までまだ少し時間があったので、スマホで軽く検索をかけてみると、何と顔写真が出てきた。さっき電車を襲撃してきた奴等の一人だった。俺は何も見なかった事にした。

 

こうして幾度も事件に巻き込まれつつも、俺は見事に帰りの飛行機に搭乗し、無事を確保したのだ。そういや、ろくにウマイ物食ってねえなぁ。元々はそれが目的で行ったのに。しょうがない、帰ったらまたグルメツアーにでも行くとしよ──

 

「動くな!この飛行機は我々がジャックし──オブォッ!?」

 

──ネッさん、お疲れ。何かステルス行動上手くなったね。誰にも見えない死角から近づいて一撃とかやるじゃん。でも俺もう疲れたよ。後はお前に任せて寝るわ。着いたら起こしてくれ。おやすみ。



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