復讐者-Avenger- 正義を憎み、人間を恨んだ男 (ゔりこんどりふぁ)
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第1章 復讐者
誕生と邂逅と戦闘と
なので、合わない人がたくさんいると思います。
あっ…(察し)と思ったらブラウザバックお願いします
正義、平等、これらの言葉に疑問を持ったことはないだろうか?少なくとも俺自身はある。
酷くあやふやで、それ故に都合良く利用される。自分に不都合があれば『平等でない』と騒ぎ立て、自分に都合が良くなるように『正義の為』だと、理由をでっち上げる。
決まってこれらを求めるのは、どうしようもない愚者達で、息をして、喋り、食事をし、睡眠をとるだけのゴミだ。余計な事をしないただのゴミの方がまだマシだ。
だから、俺は決めた。このゴミを徹底的に処分する。女子供だろうが老人だろうが厭わない。これは自己満足だ。偽善だ。だが構わない。例え理解されなかったとしても、俺は成し遂げる。この腐った世界を作っている奴らの復讐を。
◇◇◇◇◇
ああっ、クソが!どうしてだ!?いつも通り
「醜いな」
俺の肩から刃が生えた。
「あぎぃ!?」
こんなバケモノに追いかけられないといけないんだ!!!
「正義の名を振りかざして、挙句それすら汚すとは貴様には誇りも無いのか?」
「うる、せぇ!!なんだよ、なんなんだてめぇは!!」
闇に紛れた黒いフードから、鋭い目だけがこちらを覗いてくる。
「復讐者。俺が憎むこの世界への」
「ふざけんなよ…………この犯罪者が……」
「それで構わない。この世界から偽りが消えるなら。時間だ、死ね」
一瞬の痛みの後、自分の首から下が見渡せた。
◇◇◇◇◇
『無差別連続殺人事件は、犠牲者の数が今日の未明に100人を越えました。この結果を重く見たヒーロー協会はーーーー』
八木俊典、オールマイトはテレビのニュースを見て考え込む。
「"ヒーロー殺し"とは別……まさか
『無差別連続殺人事件』
"ヒーロー殺し"の異名があるステインとは別のヴィランが引き起こしている連続殺人事件。殺されているのは老若男女問わず、ヒーロー、ヴィラン、どちらともが対象であり、犯行は決まって夜に行われている。案件の中には、一家全員や地区内全ての人が殺害されたものもあった。
「考えていても仕方ない。今日の会議でそれが決まるのだから」
本日、ヒーロー協会が選抜した数十名のヒーローにより、『無差別連続殺人事件』の犯人の捜索及び、逮捕あるいは抹殺の為の会議が開かれる。
オールマイトが会議の場に着くと、30分前だというのに約半分のヒーローが揃っていた。
オールマイトも席に着き、皆が集まるのを待った。
10分前には全員が揃い、雄英高校校長である、根津が
「それじゃあ、会議を始めよう」
そう告げ、前代未聞の大会議が始まった。
◇◇◇◇◇
『無差別連続殺人事件は、犠牲者の数が今日の未明に100人を越えました。この結果を重く見たヒーロー協会は、選抜したヒーローにより会議を行うとの事です』
まだ、100。その程度しか殺していなかったか。それにしても今更になって会議だと?ヒーローの名が聞いて呆れる。やはり正義や救済などの言葉に寄りかかっているような奴らは生かしておけない。
何人束になろうが、アイツらが俺の憎しみを越えない限り俺は死なない。オールマイトであってもだ。アイツこそこの世に正義を振り撒いた根源だ。アイツを殺さない限り、俺の復讐は果たせない。
待っていろ……オールマイト。平和の象徴、その矜持、俺の全てをもってお前の全てを否定する!!!
◇◇◇◇◇
会議の後、作戦の決行はその夜とされた。犠牲者を一刻も早く無くすためだ。
「嫌な感じだ……。まるで心臓を鷲掴みにされているような……」
「ならばその心臓、俺が握り潰そう」
「誰だ!!」
数メートル離れた路地の角に彼は現れた。闇と同化する全身を覆う黒いローブ。しかし、ローブが揺られる度にカチャカチャと、金属音が鳴る。
「お前らが躍起になって探している、無差別殺人の犯人。と言えば分かるか?」
「そうかお前が…………よくも罪も無い人々を!!!」
オールマイトが激昴する。生まれながらにして、優しき心を持つ彼にとって犯人である彼の行いは到底許容出来なかった。
「罪も無い、だと?罪ならあったさ。それがお前らに見えていないだけだ。いや、見ようとしていないだけか」
彼は言葉を続ける。
「そうだな。地域のヤツらを皆殺しにした時は、アイツらが個性の実験を行っていたからだ。ヤツらは地域ぐるみで子供を攫い、苛烈な人体実験の後ゴミのように山に投げ捨て、埋めていった。一家全員を殺した時は、そうだ。その家はヒーローの家系だった。ヴィランの親玉と賄賂の取引をして、マッチポンプのように稼いでいたさ。だから殺した」
「例えどんな理由があろうと、殺していい人などいないだろう!!!」
彼の言葉を信じたわけではないが、オールマイトは訴える。殺していい人などいない。罪償わせるべきだと。
「ならどうしてお前達は、鳥を、豚を、牛を、魚を、そのもの達の命を奪い、喰らいそれで平然としている?何故、人間だけは殺してはいけないんだ?貴様らは、人間を襲うものを悪だと異物だと決めつけ、攻撃し、排除する。肉食動物が危険だと駆除すれば、次は草食動物が増えすぎたと言い駆除する。他の生物に与えること無く、奪うだけの種族は人間以外にはいないんだよ。そんなヤツらなど殺されて当然だ。存在そのものが罪なんだよ人間は」
その言葉を彼は否定する。他の生物から奪うことしか出来ない人間など、死んで当然、殺されて当然だと。
「詭弁を!!」
「ほら、そうやって都合の悪い事には耳を塞ぎ、その原因を排除する。No.1ヒーローでも、結局は人間だ」
「DETROIT SMASH!!!」
渾身の技を放つオールマイト。
「そうやって、今までも聞きたくないことは、聞かないで生きてきたんだな」
だが、その拳は彼の掌に収まっていた。
「なっ!?」
「足りないなぁ、そんなんじゃ俺の憎悪を越えることは……俺の復讐は止められねぇぞおおおおおお!!!!!」
突如として、彼から赤黒いオーラが噴き出した。
「ぐっ!?」
オールマイトは思わず仰け反ってしまう。
「いい機会だ。俺の名をその心に記憶に焼き付けろ。俺の名は
『無差別連続殺人事件』その犯人はアヴェンジャーと名乗り、以後ステインと同格のヴィランとして世間に名を知られる事となる。
「さぁ、来いよ、平和の象徴……。俺を止めてみせろ!!!」
瞬間、アヴェンジャーの姿がオールマイトの視界から消える。
「ぐはっ!」
「どうしたぁ!?全然着いて来れてないぜ!?」
アヴェンジャーの拳が、肘が、脚がオールマイトの身体に突き刺さる。
「俺に武器を使わせてみろよ!!!」
「ハァ……斬り合いが好みか贋物」
「ステイン!!??」
アヴェンジャーの前に現れるはずのない男が現れた。名を、ステイン。"ヒーロー殺し"の異名を持つ最凶のヴィランである。
「お株を取られたから取り返しに来たか?」
「黙れ贋物め」
ステインの一閃がアヴェンジャーの首筋を捉えるーーーーー
「遅せぇよ。ふざけてんのか?」
しかし、アヴェンジャーは僅かに首を捻るだけで回避した。
「これは…ハァ、中々手応えがありそうだ」
アヴェンジャーがローブをバサッと広げる。ローブの内側には夥しい数の武器が携帯されていた。
「んじゃあ、もう少しやる気出させてやるぜ!!」
アヴェンジャーが取り出したのは、ベレッタのカスタム拳銃2丁。
「こいつは、どうだ!?」
「微温い」
セミオートで発射される弾丸は、決して遅いものではない。だが、ステインはハエを払うように全てを斬り捨てる。
「ヒーロー殺しは伊達じゃねぇってか。なら次だ!!」
次に取り出したのは、二振りの日本刀。
「さあさあ斬り合おうぜぇ!?」
「ハァ、いい度胸だ。俺相手に斬り合いとはな」
2人の姿がブレ、金属音だけが夜の街に響く。
「おらおらおらおらおらおらぁ!!!!!」
「おおおおおおおおおおおおお!!!!!」
斬り結んだ回数が100に届こうとした時、ステインの刀が折れた。
「もらったぁぁぁ!!!!」
アヴェンジャーの凶刃がステインに届くーーーーー!!!
「TEXAS SMASH!!!」
「がっ!?」
しかし、それはあろう事か平和の象徴によって阻まれた。
「バカな……何故?」
「人を助けるのに理由がいるのかい?さあ、アヴェンジャー第2ラウンドといこうじゃないか」
「やっぱそう来なくっちゃなぁ!!!!」
英雄と復讐者の戦いの幕が始まりを告げた。
どうしてこうなった!?
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糾弾と憎悪と閉幕と
あぁ、これだから、これだから正義の味方なんてもんは、ヒーローなんてもんは…………!!
「ふざけるのも大概にしろ。ヒーローなら救う相手くらい選べよ。犯罪者を救ってどうする?犠牲者が増えるぞ?貴様の偽善で!!」
人を助けるのに理由がいるのか、だと?答えはどちらでもない。そもそも人を助けるという前提が間違っている。嬉嬉として他者の命を奪い、当然かのようにその命を喰らい、時に気に入らないと言い廃棄する。この方法でしか食事が出来ない種族など他にいるのか?
いるはずないだろう?他の種族がいなければ必要な要素すら得られないのだ人間は。そのどうしようもない人間達の中で罪を犯した者。救う価値すらない人間の最底辺の人間。ソレを救ってどうする?
「言ったはずだアヴェンジャー。殺していい人など居ないと、同じように救われない人など居てはいけないんだよ」
「寝言は寝て言えよ。だが、その言葉を真実とし、その信念が本物だとするなら俺は貴様に1つ、問いたいことがある」
なぁ、オールマイト。
「貴様は今何をやってるんだ?」
「なんだと?」
「何をやってるんだ、と問うたのだが?今現在この世界では争いが絶えない。遠い辺境の地で苦しむ人間も多いだろう。飢えに苦しみ、己が不運を嘆き、運命を呪う。持ちたくもない武器を持たされ、殺したくない相手を殺し、罪の意識に苛まれる。そんなヤツらがこの世界には溢れている。さてオールマイト、もう一度問う。貴様は今何をやっている?」
「それは…………」
「答えられないのか?答えられないよな?何故なら貴様は自分の信念より職務を優先した。私情を優先した。全ての人を救うという信念を捨て、俺という存在を消そうとした。その過程であまつさえ犯罪者さえ救った。平和の象徴?随分と都合のいい
邪魔が入ったせいで遅れたが、今宵のこの一撃をもって訣別の儀としよう。
「満たせ憎悪、猛れ復讐の炎、この世の全てを恨む我が一撃!!!」
俺の個性『憎悪』によって最大まで強化された一撃。相手への憎しみ、恨み、その他のマイナスの感情を糧として身体強化が施されるこの個性はまさに、復讐者としての俺に丁度良い。
憎悪の、復讐の、怨嗟の、世界の叫びに身を焼かれながら死ね!!!オールマイト!!!
「あぁ、そうさ。私の一挙手一投足に、人々の願いがかけられている。だから私はアヴェンジャー、貴様に負けはしない!!!」
◇◇◇◇◇
『無差別連続殺人事件』その犯人アヴェンジャーの掃討作戦から1ヶ月。事件の犠牲者は既に1000に届こうとしていた。
アヴェンジャーとオールマイトの究極の一撃はほぼ互角。しかし、オールマイトの制限時間により撤退を余儀なくされた。
以後ヒーロー協会はヴィラン名『アヴェンジャー』を特別指名手配。全ヒーローが日夜、捜索を続けているが発見報告の1つも上がらなかった。
発見は出来ずしかし、犠牲者は増えていく一方。これについてヒーロー協会は記者会見を行う事となった。
ヒーロー協会 記者会見会場
ヒーロー協会前代未聞の記者会見。一世一代の大スクープに多くの記者が会場を訪れていた。200用意していた椅子はあっという間に埋まり、追加の100でようやく収まった。
予定時刻の19時となり、会長の根津とNo.1ヒーローオールマイト、その他協会の重役たちが現れた。
パシャパシャ!カシャカシャ!次々と記者達の手でシャッターが押され、フラッシュが焚かれる。
「今回の記者会見についてですが、まず会長の根津から発表があります」
重役の1人がそう切り出し、根津に繋げる。
「ヒーロー協会の取り決めにより、我々日本のヒーローだけでは、アヴェンジャーの対処は困難と決定されました。よって、海外から選抜した5名を戦力として新たに加えます。紹介しましょう」
根津が自分達の入ってきた扉に視線を送る。そして、入ってきたのは男性3名、女性2名、背丈はもちろん、肌の色、目の色、全てがバラバラの海外から来たヒーロー達。
「では右から。ロシアから来た雪の女王の異名を持つヒーロー、ソフィア・コロリヴァ」
白銀の髪に、蒼色の美しい瞳。まるで雪が人の姿になったような、儚げな女性。
「次はフランス。現代のジャンヌ・ダルクとされるヒーロー、ジャネット・サイン」
金色の髪、ソフィアと同じ蒼色の瞳。ジャンヌ・ダルクが生きていたのならば、このような姿だったのだろうかと思わせる。
「3番目はイギリス。ヨーロッパヒーロー連合の長、リダ・スタークス」
白い肌に、短く切り揃えられた黒髪。細身だが引き締まった身体から放たれるオーラは、彼が連合の頂点である証だろう。
「4番目は中国。中国最大のヒーロー事務所の創設者、
前の3人に比べて幾らか歳を食っているが、それでも鍛え抜かれた身体が衰えていないとわかる。
「最後、アメリカ。世界No.1ヒーローと名高いこの方、グレイブ・G・ゴトー。以上5名がアヴェンジャー討伐作戦に加わることとなりました」
海外からの助っ人参戦。翌日の朝刊はどの新聞も1面その記事で埋め尽くされていた。
付けた名前は女2人以外あんまり意味無いです。
中国人にいたってはGoogleのランダム名前生成で、それっぽいの引っ張っただけですし笑
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激突と諦観と衝撃と
個性『憎悪』
何かを恨んだり憎んだりすることで身体能力が強化される。一定のラインを越えると、身体に黒い炎を纏う。黒い炎には様々な能力があるがそれは未だに解明されていない。
海外からの助っ人。なるほど、正しい策と言える。力が足りなければ周りから借りる。人間の能力で優れているものの1つだ。しかし、この俺を止めることは叶わない。俺は世界へ復讐するまで死ねない。
さあ、噂をすればなんとやらだ。
「やぁ、
「黙れ、アヴェンジャー。罪なき者の命を奪う悪人が」
浅黒い肌に、筋骨隆々の身体、加えて赤髪………こいつがグレイブ・G・ゴトーか。世界No.1ヒーロー……即ち俺の最大の敵。だが、ヒーローなんてものに成り下がった時点で俺の勝ちだ。
「貴様こそ口を慎めよ。グレイブ・G・ゴトー。日本の政府にいくら貰ったが知らないが、助けを求めなければ来る気など無かったのだろう?金が無ければ来なかったのだろう?」
「何が言いたい……!!」
「これで伝わらないか。世界No.1ヒーローは戦闘力だけのようだ。分かりやすく教えてやる。金に突き動かされただけの偽善者が、正義の味方振るな」
「違う!!俺は日本の危機に立ち上がっただけだ!!」
日本の危機に立ち上がった?ふざけるな……ならば、ならばなぜ……
「そうだと言うのなら……なぜ今頃になった姿を現した!?犠牲者が1000に届こうとする今!!なぜもっと早く来なかった!?日本の危機というのが俺の存在だとするならば、なぜ俺の存在が明らかになった時にすぐさま駆けつけなかった!?」
「日本から要請が送られて来なかったからだ」
「求めに応じるのがヒーロー、そう言いたいのか?」
「そうだ。誰の声であろうと助けを求めるのならば助ける。それが我々ヒーローの役目だ」
ぬけぬけと………!!!
「戯言を抜かすな!!!誰の声であろうと助ける!?ならば声を上げられない者は放っておくのか!?貴様らの耳に届かない声は放っておくのか!?求められなければ応じないのか!?それが世界の頂点に立つヒーローの答えか!!ならば、この世界に平和など、平等など、正義など……存在するはずないだろう!!!」
「言いたいことはそれだけか。復讐者」
「あぁ、貴様らヒーローへの言葉はこれだけだ。後は行動と力で示す。貴様達ヒーローの間違いとこの世の醜さを!!!」
オールマイトの時とは違う。最初から全力。我が復讐の炎に薪としてくべてやる。その身を焼かれ、あの世で懺悔しろ!!!
◇◇◇◇◇
アヴェンジャーの身体が復讐の黒い炎に包まれる。
「これがオールマイトの言っていた黒い炎……なるほど大したものだ。だが、俺の個性『光』の前には全て無駄!!!」
グレイブの身体が、アヴェンジャーとは反対に白く輝く。
個性『光』
自分と触れたもの(生物以外)を光にすることが出来る。自身を光にすれば光速で移動と攻撃ができ、物体を光にすれば光速で打ち出せる。また、変化させる質量によって光速の上を行くことも可能。シンプルにして最強。並ぶ者無き最強の個性。
「『光』、か。視認出来ず、触れられず、No.1に相応しい個性と言えるな。だが、グレイブ・G・ゴトー。貴様は勘違いをしている」
「何?」
「相手から視認されず、触れられなければ攻撃を受けないとでも思っているのか?」
「ふざけた事を!!!」
グレイブがアヴェンジャーの背後に周り込み、文字通りの光速の拳を放つ。
「
光速の拳にアヴェンジャーは反応も出来ず、貫かれるーーーーー
「話を最後まで聞けよ」
ことは無かった。黒い炎が、壁となり光の拳を阻んだ。
「肉体に触れられないなら、心に触れればいいだろう?怨嗟の声を聞ききながら、絶望しろ!!!」
そしてそのままグレイブの身体が炎に包まれる。
「良かったじゃないか、グレイブ・G・ゴトー。助けを求める声がたくさん聞こえるぜ?」
そして完全にグレイブが炎に呑まれる。
『いやだ、いやだいやだいやだいやだ』
『助けて……助けて、助けて!!!』
『痛いよ、痛い痛い痛い!!誰か、誰か助けて!!』
『死にたくない、死にたくない、死にたくない』
聞こえるのは、恐怖の声。この世のマイナス全て。
「やめろ、やめてくれ。聞きたくない。聞きたくない。聞きたくない。聞きたくない聞きたくない聞きたくない。やめろやめろやめろやめろ」
「言ったじゃないか。助けを求める声が誰であろうと助けるって。目を背けるな、耳を塞ぐな。向き合え、耳を傾けろ。自分の信念を貫き通せよヒーロー」
『殺さないで、殺さないで。助けて!!!助けて助けて助けて助けて!!!』
『死にたくない、死にたくないよ。助けて、助けてよ!!』
『誰か!!!誰か!!!助けて!!!』
『いやだよいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!!助けて助けて助けて助けて!!!!』
『『『『助けてヒーロー!!!!』』』』
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
グレイブの視界は闇に閉ざされ、2度と光が差し込むことは無かった。
その日、グレイブ・G・ゴトーが死亡した事が全世界中に広まった。
世界No.1ヒーローが噛ませ役になる……
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一蹴と再戦と覚醒と
ノーマル
ハッピー
バッド
の三種類でそれぞれ思いついてはいるんですけどイマイチ決めれない。
なんなら分岐で三つ書くのも手なのですが……どうしよう。
世界No.1ヒーロー グレイブ・G・ゴトーの死亡。連日各国で各メディアがそれを取り上げ報道していた。
『正義の味方 復讐者に敗れる』
『復讐者を止められるものは居ないのか』
そんな見出しばかりが目に付いた。
「まさかグレイブが……」
「No.1が叶わなかった相手に私達の力が通用するのか?」
「弱音を吐いていても仕方ありません。今は対策を練らなければ」
「ソフィア嬢の言う通り。弱気になれば出来るものも出来なくなるぞ?」
海外ヒーロー死亡したグレイブを除く4人がヒーロー大使館に集まっていた。
「しかし対策と言ってもどうすれば?グレイブの個性『光』は正しく最強。それが敗れたとなれば……」
「1人がダメなら2人で、2人がダメなら3人そうやって人類は進歩してきたのです。私達4人が集まればアヴェンジャーだって倒せます」
リダ・スタークスの意見にソフィア・コロリヴァが応じる。
「そうです。リダの『騎士道』、ソフィアの『ダイアモンドダスト』、翁老師の『明鏡止水』、そして私の『セイント』があればアヴェンジャーも打ち倒すことが出来ます」
ソフィアの意見にジャネット・サインが同意する。我々ならば負けない。必ず勝てると。
「そうか、ならば試してみるといい」
ソレは突如として目の前に現れた。形容し難い禍々しさを身に纏い、憎悪と怨念をその目に宿す復讐の体現、アヴェンジャー。
「貴様ぁぁぁ!!!!」
リダが激昴する。彼にとってグレイブ・G・ゴトーは憧れであり目標だった。それを殺したやつが……今自分の目の前にいる!!
「いけませんリダ!!連携を取らなければ!!!」
ソフィアが止めるがリダはその静止を振り払う。
「うるさい!!私はやつを!!」
「私情に駆られてあまつさえ連携を崩す。最悪の味方だなぁ?リダ・スタークス。ヨーロッパを代表するヒーローがそれでいいのか?」
「黙れぇぇぇぇぇ!!!!!」
リダは自身の個性を発動する。
個性『騎士道』
かつて存在したという円卓の騎士。彼らの武器を現代に近い形にして呼び出せる。武器によって権能は様々であり、強力なものほど消耗が激しい。1日に呼び出せるのは5本、最上位のものならば2本が限界。だが、その日呼び出したものは、その日のみ消耗なしで何回でも呼び出せる。
「音の刃で肉片となれ!!フェイルノート!!!」
一見すればハープのようなそれは音の刃を形成する凶器。見えない刃がアヴェンジャーの首元に迫る。
「耳障りだ」
しかしそれはアヴェンジャーの黒い炎で灼き尽くされる。
「貴様はヒーロー失格だ。冷静さを保たず、相手との実力差も計らない。仲間の連携を捨てて1人で飛び込む。まるで自信過剰の新米兵士だ。誰の言葉かはもう覚えていないが、こんな言葉がある。『真に脅威なのは有能な敵ではなく、無能な味方である』とな。まさに貴様のことだよリダ・スタークス」
「くそ……!!」
リダは歯を食いしばる。己が不甲斐なさに、己が浅はかさに。
「さて、他の3人はどうだ?俺という圧倒的巨悪に対しどうする?」
「決まっています。仲間と手を取りあなたを倒す!!」
ジャネットが決意を言葉にする。
「クハハハハ!!そうか、そうか。実にヒーローらしく実に正しい。そして……俺が最も嫌悪する方法だ」
愉しそうに笑ったあと底冷えする声でアヴェンジャーは言う。
「1人で力が足りなければ2人で、ダメなら3人、4人とその数を増やす。人間が発展してきた原因のひとつだ。だが、貴様らは今リダ・スタークスが攻撃を仕掛けた時何をしていた?見ていただけだろう?やつが勝手な行動をしたからか?咄嗟のことに反応出来なかったか?違うだろう?貴様らは見限ったのだ。あの瞬間にリダ・スタークスという男を。自分達のやり方にそぐわなかったという理由だけで!!!」
アヴェンジャーは続ける。
「そうだ。人間はそうやって都合の悪いものを駆除し排除してきた。多数派は少数派を間違いと切り捨てる。1人の権力者の言うことを鵜呑みにし、疑うこと無く信じそれを他者に強要する。全く以て反吐が出る。真に仲間だと、共に命を預けあう戦友だと言うのならば、最後まで共に戦って見せろ!!!」
アヴェンジャーの黒い炎が猛り狂う。
「貴様らにはうんざりだ。だが喜べ。貴様らの援軍が来た」
「ついに見つけたぞ、アヴェンジャー!!!」
平和の象徴、オールマイト。あの日の決着を着けるために彼がやってきた。
「醜悪な正義の体現者が!!今更何をしに来た!!」
「決まっているだろう!彼らを助けに、そして君救いに来た!!」
オールマイトは告げる。アヴェンジャーを救うと、どうしようもないこの復讐鬼を。
「ふざけるな……ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
アヴェンジャーの猛り狂っていた炎が更に勢いを増し、彼の周囲を灰と化した。
「救うだと?寝ぼけているのか?」
「いいや、本気さ。私は君を救うと心に決めた」
「そうか……ククククク…ハハハハハ……クハハハハ!!!その言葉実現出来るものならしてみるがいい!!!俺の全てをもって貴様の全てを否定する!!!」
「私も今この瞬間、全てを懸けて君を救う!!!!!」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
オールマイト放つ黄金のオーラとアヴェンジャーの黒い炎がせめぎ合う。
「そうやって見境も無く人間を救おうとするから、悪はなくならない!!!!正義という名に溺れて自己の欲望を満たす奴らがいる限りこの世は腐っていく!!!前にも言ったはずだオールマイト!!救う人間を選べと!!」
「私こそ前にも言ったはずだ、救われない人などいてはいけないと!!!」
「いいだろう、そこまで言うのなら貴様に教えてやる。貴様の師匠『志村 菜奈』を殺したのは俺だ」
アヴェンジャーは言う。オールマイトの彼の恩師を殺したのは自分だと。その仇が今目の前にいるのだと。
「…………!!!!」
「どうしたオールマイト?怒りが滲み出てるぞ?その目はこれから救う相手に向けるものじゃないなぁ。俺を助けてくれるんだろ?救ってくれるんだろ?ほら、早く助けてよヒーロー!!!」
「貴様…………!!!!」
「ほらな。救われない人なんていて当然だ。人類全員に当てはまる共通点なんて、時が経てば死ぬ事ぐらいだ。それ以外は全て差があり、同じなんてことはない。これで分かっただろ?正義、平等、こんな言葉はただの飾りだと、正義の味方なんてものは存在しない。全てのものを救うことは出来ない。さあ、仇は目の前だ。殺しに来いよオールマイト!!!!!」
黒い炎がアヴェンジャーの身を包みそして、火柱が立った。
数秒の後、アヴェンジャーの姿は激しく変化していた。全身が黒い炎を纏いーーーーいや、アヴェンジャー自身が炎となっているのだ。爪は獣のように長く伸び、地面についた2足は爪と同様獣のソレであった。
『ガアアアアアアア!!!!!!』
復讐の獣が今咆哮した。
1話にひとつは人間の醜い部分を入れようと努力してます。
あとアヴェンジャーがお師匠殺したの時系列おかしくね?と思うがいらっしゃるでしょうが、殺したのは事実で、その経緯、設定は後々書きますのでお楽しみに!
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圧倒と激昴と乱入と
日間ルーキーランキング入っててその余韻に浸ってました。
お気に入り登録、感想をくれた方、ありがとうございます!!
己が黒い炎に身を包み、咆哮する姿はまさに獣。この世に復讐を誓った悪の化身。
『さぁ、貴様の信念とやらを、突き通してみろ!!!』
その口から放たれる言葉は先程とは違いノイズが混じっているように聞こえる。そして、アヴェンジャーの黒き炎が更に猛り、大使館が吹っ飛んだ。
「ぐっ!なんて熱だ、これじゃあ近づけん!!!」
「熱ならば対処可能です!!」
ソフィアの個性『ダイアモンドダスト』が発動し、分厚い氷の壁を作り出す。盾の役割と同時に、一帯の気温を下げる役割もある。
個性『ダイアモンドダスト』
雪や氷を発生、操作することが出来る。しかし、自身も寒さの影響を受けるため、連発はできない。この個性の最も特異な部分として、爆発する雪、『ダイアモンドダスト』が使用可能という点がある。
『対応が追いつかない相手に、視界をふさぐのは悪手としか言えんぞ?』
ソフィアの背後にアヴェンジャーが周り込む。
「そんなっ!?」
ドスッと、鈍い音の後にソフィアから鮮血が散る。アヴェンジャーの獣のソレとなった爪がソフィアを背後から貫いたのだ。
「がっ……!」
「ソフィア嬢!!おのれ!!!」
翁は『明鏡止水』を発動。
個性『明鏡止水』
鏡の如く揺らがない水面のような心を持つことで、身体能力が底上げされる。集中すればするほどその底上げの倍率は増し、最大限まで引き出せばその力は全盛期のオールマイトを遥かに超える。しかし、自身に過大な負荷がかかるため現在では、もって10秒。それ以上使用すれば身体が動かなくなる危険性がある。
人間を越えたスピードで接近、拳を放つ。
『おい、それが本気か?』
常人ならば対処不可。それどころか身体に風穴を開けられ、絶命していてもおかしくない。その一撃をアヴェンジャーは、攻撃の主である翁を一瞥もせずに受け止めた。
「ありえん……!!!」
『自分の拳が受け止められたのが有り得ない。随分な自信だなぁ?一体その拳でどれだけ、不都合なものを排除してきたんだ?』
「黙れ!」
続く拳、蹴り、全てが捌かれる。
『黙れ、か。敵の言葉に耳は貸さない。流石はプロヒーロー、分かっている。だが、人としては大いに間違った行為だ。
アヴェンジャーは激昴する。見たいものしか見ない、聞きたいことしか聞かない貴様らに英雄を名乗る価値などない。ーーーーそもそもアヴェンジャーにとっては、英雄などは必要なく、軽々しく人間がなっていいものではないのだが。ーーーー
『やはり人間はどうしょうもなく愚かで、醜く、汚らわしい。お前らと言葉を交わすと一層それが感じられるよ。お前もそう思うだろ?』
虚空に言葉を投げかけるアヴェンジャー。そしてそこから降りてきたのは、アヴェンジャーとは似て非なる者、正義を否定した彼とは違い、正義を求めた者。
『ステイン。正義にも悪にも染まれない半端者』
「アヴェンジャー……」
「ステイン、何故ここに!?」
オールマイトが問いかける。そしてステインは答える。
「決まっている。正しき社会のために贋物を殺しに来た」
遅れたのにも関わらず短い……m(_ _)m
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EXTRA 過去編
過去と経緯と誕生と
そんで過去編
いつからだっただろうか、正義を憎むようになったのは。
いつからだっただろうか、人を恨むようになったのは。
◇◇◇◇◇◇◇◇
その時は、母親と商店街から買い物を終え、帰路につこうとしていた。全ての落ち込んだ気持ちを晴らしてくれると思える。それほどに雲ひとつない晴天の日だった。
「帰りましょうか」
「うん!」
そして母親が俺の手を引こうとした瞬間、
ドガンッ!!!!!!!!!
遠くで鳴り響いた激しい爆発音のあと、猛烈な熱風と高速で飛翔する細やかな破片が俺達を襲った。
「危ない!」
元ヒーローであった母親は、咄嗟の判断で俺を庇うように抱き抱えた。
「痛っ!」
苦痛に歪めた母親の頬には、一筋の切り傷と鮮血が滴っていた。
「母さん!血が!」
「大丈夫よ、貴方が居ればすぐ治るわ」
その言葉通り、淡いエメラルド色が母親の傷口を包み、それが消えた後には、元の絹のような肌が覗いていた。母親の個性、『慈愛』は誰かを愛おしく思えば、自らの傷を癒すことが可能で、誰かが彼女を愛おしく思えば、その対象の傷が癒える。
「さ、早く逃げるわよ」
俺に有無を言わせず、俺を抱えたまま走り出そうとした時
「おっと?そいつぁ、ちと困るなぁ?」
今回の元凶であろう、
「爆発だけじゃ物足りなくてなぁ。やっぱりやるのは人だろ?」
同意と共にそいつは俺達の命を要求してきた。
「下衆が」
蔑みを込めた目で母親は睨みつける。
「るせぇ、クソアマ!!!」
逆上したそいつは、左腕の穴から白い粉が、右腕の穴から炎を噴き出す。そこから導き出されるのは一つ。
「吹き飛べ!!!!!」
『粉塵爆発』
ドガンッ!!!!!!!!!
先程と同じ爆発音、しかし距離はほぼゼロ。その威力は計り知れない。
「あぐっ、がっ、うっ」
母親は俺を抱えたまま商店街の入り口近くまでゴロゴロと転がる。
「大丈夫……?……怪我は?」
こんな時でも、自分の身より先に俺を心配する母親。
「大丈夫だよ!それより母さんが!」
俺は必死に母親に怪我を治すように訴える。
「焦んなくたって大丈夫。もうすぐ大通りに出られるし、そろそろヒーローが着く頃だわ」
再び淡いエメラルド色に包まれるが、明らかにさっきとは治癒速度が違う。まるで治る気配が無い。
「あら……、ヒーロー辞めてから鈍ったかしら……、こんな傷に時間かかるなんて」
「無様だなぁ、クソアマァ!!!!」
怒り狂い、顔色を憤怒に染めたあいつが俺達に迫る。
「そこまでだ
「あぁ!?」
間一髪といったところで、ヒーローが駆けつけた。そのヒーローは決してランキング上位ではないが、最近になって検挙率がぐんぐんと伸びてきたことと、自己犠牲の精神が強いことで注目を浴びているヒーローだった。
「関係の無い市民を巻き込み、街を破壊するその行為見逃すわけにはいかない!」
まさに正義の味方らしい口上を述べるヒーロー。その言葉に反応して周りの野次馬が沸き立つ。
「いいぞヒーロー!」
「お前を待ってたんだ!」
「そんな気味悪いイボイボ野郎ぶっ飛ばしちまえ!」
「黙れゴミ共!!!!!!」
ドンッ!!!!!!
そんな声援をかき消す程の爆発音で
「どいつもこいつもぉ!!!!!!!」
先程までとは違う、指向性を持たせた粉の振り撒き方ではなく、全方位に、辺り一帯を吹き飛ばすかの如く。
「さあ、クソアマも、やかましい野次馬もヒーローも!こいつでみんなおさらばだ!!!!」
「させない!!!」
ヒーローは爆発させようと炎が吹き出る直前の右腕にしがみつく。噂通りの自分の身を顧みない行動だ。だが、それにより噴出するはずだったの炎が体内に逆流する。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
身体の内側から焼け焦げる痛みに耐え切れず、
「「「「「「うおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」
「やっぱあんた最高だぜ!!」
「さすがだ!」
「あんなこと普通のやつならできねぇよ!!!」
そんな賞賛の声が次々に彼に降り注ぐ。そして間もなく救急車や消防隊が到着し、俺と母親は念の為に病院で検査を受けた。
◇◇◇◇◇◇
数日後、学校の用事で少し帰るのが遅れていた俺は暗くなる前に帰ろうと、普段は使わない裏道を通っていた。
「…………た」
ふと、聞き覚えのある声がした。
「……も…た」
それが、あの時のヒーローの声だと気づくのにそう時間はかからなかった。どうやら誰かと話しているらしい。
「あなたのおかげで、注目度もうなぎ登りだ。全くもって人間ってやつは単純だ。目の前の事しか見ようとしないんだから」
あの時のヒーローからは想像のつかない冷たく感じる言葉だった。
「ヒーローとは思えない発言だな。まあこんなことしてる時点でヒーローなんかじゃないんだがな」
「おいおい、そう言うなよ。お前ら
「しかも、命令した奴にはヒーローが来ることを教えないから、芝居くささなんて微塵も出ない」
驚きと困惑、そして怒り。様々な感情がごちゃ混ぜになりながら、なにかが奥底からせり上がってくるのを感じた。
「おい!」
「「あ?」」
その全てを吐き出すように俺は叫ぶ。
「お前たちのせいで母さんが傷ついた!お前たちみたいなゴミのせいで!!」
「おい、ガキにバレちまったじゃねえか」
「まあ、ガキの戯言で片づけられるだろうが、万が一だ。殺そう」
2人が俺に迫る。
「何が殺すだ!自分だけじゃまともに
その言葉がヒーローの琴線に触れたのだろう。
「黙れクソガキ!!てめぇに何がわかる!個性は痛覚無効なんていう戦闘向きじゃねえ個性!ここまで来るのだって必死だったんだ!だから、」
ヒーローが言葉を紡ぐ度に体が熱くなる。少しずつ少しずつ、まるで燃えるように。
「
限界だった。
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
黒い炎が俺から溢れ出す。母親の個性とは真逆の、人を傷つける為のもの。個性 『憎悪』が発現した瞬間だった。
「その楽のためだったら、誰が傷ついても良いのか!」
「俺だって苦しんだんだよ!それにてめえの母親は生きてるじゃねえか!死ななきゃいいだろ!」
これ以上こいつの言葉は聞きたくない。そこで俺が選んだ選択肢は自分の耳を塞ぐことじゃなかった。
「だまれ」
小さな黒い炎がヒーローの足首へ引火した。
「ハッ!聞いてなかったのか?俺の個性は痛覚無効!こんなチンケな炎で俺を……」
ヒーローの口が止まる。
「どうした?もしかして炎が消えない事に気づいたの?」
「ガキィ!てめぇ何しやがった!」
「どうしたも何もこれが俺の個性みたいだ。決して消えない黒い憎しみの炎」
次々に燃え移り、下半身は黒い炎に包まれきっていた。
「分かった!この事からはもう足を洗う!だから頼む!」
「たのむって何を?」
「俺を見逃してくれ!」
ヒーロー、いや男は無様に幼い俺に向かい頭を地面にこすりつける。
「この通りだ!!!だから!!」
「いやだ」
「へ?」
男の表情が固まり、絶望へと染まっていく。
「だから、いやだってば。痛覚無効で良かったじゃん。あぁ、でもそれはそれで気持ち悪いのかもね。生きたままからだが腐ってくみたいな感じで」
「い、いやだ、いやだ、死にたくない、消してくれ、消してくれよ!」
男は、まるで俺ぐらいの歳でするようなぐちゃぐちゃな泣き顔で懇願する。
「仕方ないなぁ、はい」
パチンッと指を鳴らすと炎は消えた。
「よくもてめぇ!!!!」
水を得た魚のように男は掴みかかろうとするがそれは無理な話だった。
「あ?俺の足?」
それもそうだ。何故なら
「ああ、気づかなかったみたいだね。ざーんねーん」
そして、視線を
「ひっ」
目の前の出来事に怯えきってしまったそいつは、すんなりと話を聞いてくれそうだった。
「ねぇねぇ、他にも
あえての言い方だったが伝わったようで、この近辺から少し離れたところまで、うじゃうじゃと契約者がいるようだった。
「ふーん、じゃあまとめて呼んでおいてね」
翌日、ヒーロー大量虐殺事件が記事の一面を飾った。
でもまだ終わっていなかったんだ。
子供っぽさを出すためにわざとひらがなにしてる部分があります。
最後の言葉通り過去編があと1話続きます
イボのやつはフジツボがウネウネしてると思ってもらえれば。キモッ
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