『倉元家』異世界に転生させられちゃう ~まさかの家族で異世界生活!?~ (しげちゃん)
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異世界に舞い降りちゃう

ふむ、まさか異世界召喚とはな

アニメとかで見たことはあったが、ホントに存在するとは……

 

目の前には見知らぬ光景が広がりめっちゃファンタジーしている。何故異世界となるとこうも中世っぽいのか、日本から飛ばされたならもっと日本要素あってもいいんだけどなぁ。テンプレ壊してきなさいよまったく。

 

異世界の住人達は、俺が突如現れたのに驚いたのか、皆歩く足を緩めザワザワしながらこっちを見ている。

薄ぼんやりだが恐らく言葉は分かる。何故かと聞かれればそんなこと知らん!!

俺が聞きたい今すぐにっ!!

 

なんか獣耳いるし、なんか羽生えてるやついるし、なんか飛んでる魔法使いっぽいのいるし、なんかもう色々頭が痛い。『なんか』祭りですよ俺の脳内。

 

とりあえず異世界初の第一声を是非とも言わせて頂きたい。

 

「なぜっ!?」

 

イヤイヤイヤ……もっとこうさ! この世界の為になる人一杯いるってマジで!! 

ないよー?俺なんもないよー?

この世界の事情とか知らないけどさ?

世界を救うためとかに呼んだんなら、もっと査定基準厳しくした方がいいぞまじでっ!

勿体無いよー?救えないよー?俺

そんで普通さ? マジでさ? 

 

なんかこう車に轢かれたー だとか

誰かに呼び出されたー だとか

色々あるじゃんか? ここに来るきっかけがあるじゃんか?

 

「女神も無しですか? なんかこう密室であれやこれやの対談とかあるんじゃないの!?『好きな能力与えましょう』とかあるんじゃないの!?俺知ってるもん!本に書いてたもん!!」

 

まぁいいこれは、今は無くとも後からイベントもあるはずだ。たぶん……。

ただ普通一人とかじゃない?

あるいは若者たちが数人ランダムに選ばれてー

とかならまぁ……分かる気もする。

 

だが……

 

「なんで家族ごっそりこっちに連れて来るかね!!

なんで休日の食事中の家族団欒中に召喚するかねぇ!?」

 

いやなんか戦国に行く幼稚園児の奴は確かに家族でいたけれども! 活躍してたけれども!!

泣いたけれども!!!

見てこれ! 誰が召喚したのか知らねーけど ぜんっ…………ぜん動じないでご飯食べてるよ!? 

リビングのテレビやテーブルごと召喚されたのはさておき……見てこれ召喚した誰かさんっ!!

 

親父コーヒー飲んどる場合か?ないよ?その新聞多分もう意味ないよ!?

なんで落ち着いてんの?あれですか?大人の貫禄ってやつですか!? 

 

お袋……俺もそれが何かは分かんないけど水ではないっ! 経験的に水は掴めないっ!

だからそのスライムっぽいのを無理くりコップに押し込まないでぇぇ 

なんかすっごい可哀想だからぁぁぁ!!

 

産まれたばかりの妹は仕方ないとして、もっと焦ろうよ!もっとパニクろうよ!?

え?何?俺がおかしいの?

 

「親父! お袋! なんでそんな落ち着いてんの! 倉元家最大のピンチなんですけど!?

見ろこれ!!超絶ファンタジーin倉元家なんですけど!?」

 

「何を言っているんだ 黙ってご飯を食べなさい 母さんコーヒーおかわり」

 

「はいはいー どうぞー まだあるからねー ほらあんたも早く食べなさい?」

 

イヤだ……そのスライムは是が非でも飲みたくない……

見てみろ親父を、むしろ飲まれているぞ。覆われてるぞスライムっぽい奴に。

おかしいだろ絶対、飲み物に飲まれるっておかしいだろ。

 

「いやいや!見ろよ外!いや実際は既に外にいるんだけ……ど?」

 

ふと机を見ると小刻みに振動している事に気づく

地震か?と思ったが足元みたら直ぐに分かった。

 

良かった、一人は全然落ち着いてなかった。親父足むっさ震えとる。机むっさ震えとる。 

すると流石に顔面にヘバリつくスライムに痺れを切らしたのか、ゴポゴポ言いながら引き剥がすと

 

「ふぅ……なにしたんだ武ぅぅぅぅぅ!!!」

 

「俺じゃねぇぇぇぇぇ!! 俺が倉元家で一番まともに驚いたわぁぁ!!」

 

「なーんだこれ! どーこだここ! これから仕事なんだぞぉぉぉぁぁぁぁあああああ」

 

手で顔を覆いようやく現実を見始めたようだが

そうか パニクった親父はこんな顔をするのか なんか新鮮だな

 

「落ち着け親父! 俺が言うのも何だが冷静になれ! ここは多分異世界というや……」

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

「聞けぇぇぇーーーーーぃ!!」

 

お袋は何故か路上の獣耳奥さんと談笑している

早い 順応が早い 

見て見ろあんたの旦那 地面でのたうち回ってるぞ

 

「たけるぅ ここヤマダって町みたいよ? いいところねぇ」

 

それって普通、日本の名字例で出てくるんじゃないか?

なんだ?他にもタナカとか地名あるのかこのファンタジー世界

もっとカッコいい名前あっただろうに

違うんだ俺が日本要素を求めてるのはそこじゃないんだ。そーゆー事じゃないんだ…

 

妹の櫻は無邪気に魔法を使って自分を空中に浮かせている。

もう突っ込むまい。

 

「あぶぅぅぅぅぅ」

 

とりあえず誰が召喚したのか知りませんが

今すぐ日本に返してください。

 

ー 倉元家 異世界に舞い降りちゃう ー



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親父捕まっちゃう

「倉元家緊急会議を行う!」

 

親父が腕を組み声を荒らげる。

普段おとなしめの親父だが、流石に現状況に困惑してるんだろうな。目が泳ぎまくっている。

この異世界に野ざらしにされたリビングの一室で会議とかどんな羞恥プレイなんだ。

 

お袋は談笑を終えてから椅子に腰かけると、何やら見たことない赤くトゲトゲした果実を机の上に並べ始めた。なんだこのリンゴ亜種みたいな果実は?

 

「はーい あ、これさっき近所で奥さんに頂いたのよー 食べましょー」

 

美味しそうな果実と甘い匂いなのはさておき……いつ貰ったんだ!さっきの獣耳奥さんにか!?

自分の母親とはいえ、この吸収力図り知れんな。何処でも馴染めそうだな。

それはそうとやはりこちらを見てくる視線がきつい……

 

「とりあえず場所移動しようぜ親父……町の人の視線がもっすごい恥ずかしいんだが……」

 

服装もパジャマですよ!!パ・ジャ・マッ!!

なんだこの異世界に突如現れた水玉パジャマ一家!!異世界in違和感だよ!!

この世界の為になる所か通行人の邪魔でしかないぞ!?救えねぇ!むしろ救って欲しい今この状況!!あぁ…… お願いですぅ こっち見ないでぇ……

 

「ここは俺の家で俺のリビングだ 一歩も動かん!!」

 

イヤイヤイヤ 明らかにこのままここには定住できないだろ!?

見てみろこれ!なんの公開処刑だ!見世物だよこれ!!

モニタ○ングされまくりだよ!バレてるよ!隠れてないよ!

 

「じゃあここからどーすんだ……よ?」

 

するとベ⚪キーではないが、割りと綺麗めの金髪の女性が声をかけてきた。

服装的に見回りか警備兵……といった所か?青の軍服っぽい格好で、後ろには二人の兵士が立っている。ここにも人間はいるんだなと思った矢先

 

「君たちここで何をしているんだ 通行の妨げになって邪魔だ」

 

ですよね。誰がどーみても邪魔ですよね。

 

「あ、すいません すぐどけますのでぇ」

 

おい、一歩も動かないと言ったじゃないか 

親父の威厳はどこへいったんだ 日本に置いてきたのか?

お袋に関してはもう何か買い物してんだけど、この世界のお金ないのに大丈夫?

 

「どっから持って来たんだこの木枠達は?よし解体しろ!」

 

「はっ!」

 

女性の連れの兵士達が手をかざすと

一瞬の魔法で解体された我が家のリビングは、あっという間に荷車に乗せられ運ばれていった。元リビングとして何かの材料にされることだろう。さらば思い出達よ。

 

「のぉぉぉぉ!!我が家のリビングがぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「がぁぁぁぁ♪」

 

言葉をぐんぐん吸収する妹は直ぐに真似をする。

これは気を付けねばなるまい。妹よお兄ちゃんがマトモに育ててやるからな!

親父が頑張って働いて建てた家だ。ここは感謝して見届けよう

と手を合わせ見送る。なーむー

 

「さて、緊急会議が急遽終わっちまったぞ親父 どーすんだよ?」

 

「ぐぅぅ……だが、まだ慌てる時ではない 一先ず整理して状況を確認しよう」

 

ガチャン と親父に人生初の手錠がかけられる。ほう、この世界の手錠も似たようなもんか。縄とか魔法の輪っかとかじゃないんですねぇ。スマン親父 こっち見ないでくれ。 

 

「交通妨害及び無断建築で連行する」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

首根っこを掴まれ、ズルズルと連行される父親に

空中に浮く妹が無情で可愛い一言を放つ

 

「バイバイねぇ」

 

そうだなバイバイねーだな。何か差し入れでも持っていてやろうな。

それより俺も浮きたい 教えてくれお兄ちゃんにその魔法。

 

「あら? お父さんは何処にいったの?」

 

店で談笑を終えたお袋が帰ってきた。 

買い物袋を腕に下げているがお金は!? 日本通貨いけるのか!?

 

「えらく呑気だけど、親父なら人生初逮捕くらって連行されていったぞ」

 

「あらそうなの あ、今日の晩御飯お魚にしたからねー」

 

「我が家の主って晩飯以下の扱いなんだな」

 

買い物袋から取り出したお袋の手には、魚が……なにそれこわっ!!

……それ魚なの?足生えてっけど!?

サンマの様な魚に鳥の脚っぽいのが4本ついている。種族はなによこれ!?

まぁこの世界では普通だとして、仮に受け入れたとしても

 

「てゆーかお袋 リビングがねぇ ついでに言うと最初から台所がねぇ」

 

「あらーじゃあ お刺身にしましょうか 新鮮だしおいしいわよきっと」

 

ダメだぁー

もはや会話など成立していない!異世界とか関係無しにどうしても主婦をする気か!

なんてできた母親なんだ!ありがとうっ!!

そして浮いた妹に関しては、今度は噴水の水を操り自分の分身をつくって遊んでいる。

鏡みたいな光景だが超3Dじゃないですか。

 

なにこれどっから魔法覚えてんの?なんで作れんの!?

念じればいけるのか!? 

 

ふーーーんっ!!!

 

「・・・・」

 

チクショウ!!なにこれなんで!? あれか?邪念があると無理なのか?

あわよくば魔法使って、冒険者にでもなって誉めちぎられてモテモテになる!とかそんな野望あったりするとダメなんですかね!?

 

お袋をチラッと見たら何か魔方陣書いて、即席台所出現させた後でお昼の支度を始めとる。野菜とか空中でさばいとる。もう火とか水が自由に出せとる。

 

「俺が主人公じゃないのかこの世界……」

 

ー倉元家 親父捕まっちゃうー



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家建てちゃう

「親父大丈夫か?」

 

今しがた拘留所に行き、猫っぽい人のお巡りさんから親父を返却して貰った次第だ

只今お袋達の元へ帰路中な訳だが、我が家の主は異世界に来て早々2日間拘留されたせいで心なしか若干老けた気がする……

 

「逮捕歴ついちまったぁぁぁ!! 俺はただリビングにいただけなのにぃぃぃ!!!」

 

「無事釈放されたんだからいーだろー」

 

「ほんとに? 俺が無事で嬉しいか? 頼りになるか?」

 

「……」

 

「目ぇ反らしてんじゃねぇぇ! 言えよ!嘘でも『あたり前だろ? 頼りにしてるぞ』とか言えぇぇぇ!!もっと俺を愛せぇぇぇぇ!!」

 

首をををそんなに揺らすなななな

あばばばばばばば

首がががが もげるるるるる

 

「だだ、だって見てみろよあれ」

 

二人が歩いて行きついた先には、それはそれは綺麗な木造のファンタジーなお家があった。

いつの間にか土地を手に入れ いつの間にか覚えた魔法で 親父が捕まってる間に

いつの間にか前の家より立派な家が建てられた、お袋と妹の共同制作2階建ていつの間にかログハウス。建築時間およそ5分

1階 リビング アイランドキッチン 寝室×2※ウォークイン完備 和室×2 客間×1

トイレ風呂別 露天風呂あり バルコニー 庭園 温水プール

2階 吹き抜け 子供部屋×2※ウォークイン完備 洋室×3 トイレ バルコニー

 

なんということでしょう

2日足らずで更地に立派なマイホームが誕生しました。

将来出来るかも知れない子供部屋も完備。広い庭もあり、その奥は森が続いている。インターホン代わりには斬新にもマンドラゴラが木の門に埋まり、少し引き抜くと

 

ん゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛

 

と唸る

この声量では家に届かないだろと思いつつ静かに埋め戻す。

家にあがると木の良い香りが鼻を優しく刺激し、まじアロマテラピー

しれっと回収しているリビング机も新しいリビングに見事に馴染んでいる。流石は匠。

 

「な?」

 

「異世界も悪くないじゃないか」

 

プライドとかないのかこの人

あんた捕まっとる間に女手二人で建てたというのに

あれか プライドも日本に置いてきたのか 忘れ物多いな俺の親父

「いいじゃないか魔法! 憧れた時期はあるからなぁ!

もし俺が異世界に行ったら?なんて妄想もしたもんだ はっはっはっはっはー」

 

この親にして子ありだな……

てか妄想したのにあんなにのたうち回ってたのかよ!!

まぁ分かるけども!実際俺もまだ馴染んではないけども!

 

「て訳で 職もないし俺は冒険者になることにした」

 

「歳考えろよもう40だろが」

 

「バカいうな こーゆーのはな? 何かしら力が目覚めるってもんだ

歳は関係ないしまだ38だ俺は まだ30代だ いける気しかしない!!」

 

いけない気しかしないっ!!やだもうこの人ヤル気出ちゃたよ!

 

でも冒険者か、折角異世界な訳だし俺もなってみたいな。

親子二代で伝説になっていく……一人もカッコいいが悪くない!

 

「そーゆー訳で俺はもう拘留所で登録したから お前は何か別に職探せな?」

 

「はぁ!? いやいや俺も冒険者なりたいっての! せっかく異世界に来たんだし!」

 

「冒険者は各家庭お一人様限定らしい だからお前はもう無理だ 悪いな息子 諦めろ」

 

……なんですとっ!? そんなルールありか!? 各家庭お一人様限定とか何ですか!!

安売りティッシュとか卵みたいな言い方しよってからに!!

え?なに俺 冒険者もうなれないの?来た意味ないじゃんこの異世界に!!

てか召喚した奴早く出てこいよ! 

 

いかん 俺の主人公ステータスがメキメキ下がっていく

しかも外部ではなく内部から未来の選択肢を潰されるとは、とんだ伏兵が身内にいたもんだ。就職難が危ぶまれた現実世界もさながら 異世界でもなりたい職につけないとかないわぁーーー

 

「ご飯出来たわよー ファイアで焼いてみたんだけど どうかしら?」

 

お袋はお袋でメキメキ吸収しとる

料理も洗濯も掃除も全部魔法で行い、空いた時間は何処かでパート仕事をしているらしい。

何処で見つけて来るんだ仕事 ギルドみたいな集会所あるのか?

妹に関してはもう何か妖精的な奴が一匹くっついている。

なにあの羽の子超可愛いんですけど 妹からもなんか透明の羽生えてるんですけど

ただそれってなんかこう重要な契約とかあったんじゃないの!?

重要なストーリーあったんじゃないの!?

 

しかしお片付けをする天才我が妹はこう言う

 

「ないないねー」

 

ー 倉元家 家建てちゃう ー



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予想外の魔法使っちゃう

『倉元 武は夢を見ていた

まだ高校生の彼は現在 異世界に転生し新たな生活を送っている』

 

「ここは……どこだ?」

 

『彼は先の見えない、まるで永遠に続くかの様な暗闇の空間で 自分の状況を理解できず……』

 

「えぇぇーーい!! さっきから勝手にナレーションすんな!! 誰だ!! そしてここどこだ!!」

 

「もうちょっと続けたかったのに……仕方ない

ここは君の夢の中だな 御免《すまん》な 都合的にここにしか出れんかった 顔は恥ずかしいからNGでお願いします」

 

顔出しNGとか…

こっちは初日から散々顔晒されたっての!!

これはもう一度聞かねばなるまい。

 

「で?あんた誰だよ!?」

 

「私か? んー……まぁ君達を異世界に飛ばした元凶といいますかな?」

 

こいつかぁぁぁ!!

尚更顔出せやこの野郎!!何を恥ずかしがってるんだ!!

 

「てんめぇぇが俺達をすっ飛ばしやがったのかぁぁぁ!!! 普通初日で出てくるじゃろがい!!何ほったらかして自給自足させとんじゃ!!」

 

「止まんないな文句が ゴメンて まじゴメンて」

 

「軽いわぁ!!」

 

なんだコイツは散々家族ごと巻き込んどいて…

神だか天使だか知らんがどうもダメパターンな、外れパターンな臭いがする。

 

「まぁいいや そんで? 何で俺達を異世界に? まず冒険者にすらなれてないんですけど!!

しかも魔法使えてないんですけど!? 悪を成敗するには色々不足しすぎなんですけどっ!!」

 

「なんかこう、勢いでなっちゃったよね♪」

 

「なっちゃったよね♪ じゃねーよ!! なんだ勢いって!?」

 

「俗にゆうノリという奴だな 酔い潰れた勢いで」

 

ノリっ!!理由なき異世界召喚っ!!

 

「……え? 特に理由ねーの!? 魔王討伐とか国救うとかじゃないの!? 異世界召喚てそれが醍醐味みたいな所ない!?」

 

「確かにそーゆーお願いはこっちですることもあるよ? ただ君に……君たちに関してはそーいった条約は結ばれていない そう!イレギュラーという訳だな! 好きだろ?イレギュラーって言葉!」

 

特異体質みたいな話なら男しては震える言葉だけど、このイレギュラーはあんたの失敗に値する意味ではないか!? 心なしかチッと舌打ちが聞こえた気がしたが続けて聞くとしよう。

 

「じゃあ使命もなくホントにアンタのノリで俺ら召喚されちまったのか!?」

 

「酒の勢いで好きな子に告白しちゃうとかお前もあるだろ? 後々《のちのち》後悔しちゃうやつ」

 

おっとーぅ……後悔って言っちゃうんですねぇー。それってもう完全にミスって事ですよねぇー?

 

「いや俺未成年だしその例え話は全く共感できねぇ」

 

「真面目よのー もっと人生楽しめよ若造ー」

 

なんでそんな幻滅されたような声でガッカリされなきゃならんのだ……

楽しくなるはずの人生のレール勝手に組み替えたのどこのどいつだっ!!

 

「てか後悔してんならさっさと現実世界に戻してくれよな……」

 

「それが出来るのは創造主《マスター》だけなんだよねー 無許可の転生なんてバレたら私クビになっちゃうじゃない だから絶対に言ってなるものか」

 

「……」

 

マジかこいつ! この状況で我が身を案ずるか!

 

「マスターここですぅぅぅぅ!ここに犯罪者!いえ堕天使がいますよぉぉぉぉぉ!!」

 

「やめてぇぇぇ! 呼んでも絶対来ないと分かってるけど一応やめろぉぉぉぉ!!」

 

マジかよぉぉぉ……。

世界は理不尽に回ってると思ってたけど、ここまで不条理だとは思わんかったぁぁぁ……。

 

「はぁ……この際俺の宇宙よりひろーい心でお前のミスを受け入れたとしてもだな?

 もっとさチートとかあるじゃん? ウハウハとかあるじゃん!? 美少女とかいるじゃん!? 俺に不親切だよこの世界!!」

 

「正式な手順踏んでれば多少は君の想像通りの展開にはなったかもねぇ ただ今回は私としたことが酔い潰れて非公式、裏ルート、私のプライベートでウッカリ召喚しちゃった訳なのだ ルールに縛られないって私って自由で素敵じゃない?」

 

「もうマジで捕まれよあんた」

 

「まぁまぁ ルートはどうあれ異世界なんて望んで来れる訳じゃないんだからさ」

 

ホントに後悔しとんのかこいつ……。

表情拝めないけど、全然反省してるように聞こえないんですが……。

「とにかくこれじゃあ俺の存在価値だだ下がりだよ!!埋もれてるよ キャラ的にっ!!」

 

「そこそこなツッコミキャラがあっていいじゃないか 好きだぞ? 私はそのキャラ」

 

「そんな無能なスキル要らねぇよ!! もっとこうせめて魔法使えるとかさぁ!

世界観だけで俺にファンタジー感が無いんだよぉぉぉぉぉ!!!」

 

「そんな咽び泣くなよ……おっとそうだった!君の夢に出てきた理由を忘れてた!」

 

「?」

 

声の主はそう言うと、薄暗かった空間が天から少しずつ明るくなり、小さな丸い玉が仄かに光りゆっくり降りてきた。

 

「これは?」

 

「元の世界に戻すのは無理なんだけどせめて魔法くらいは譲渡しようと思ってね 選択できないのは申し訳ないけど私の力の一部だから役に立たない事はないと思うよ さっ!それに触ってみな」

 

恐る恐る触ろうとすると、手を伸ばす前に勢いよく自分の体に向かって体の中へ消えていった。

 

「うぉっ!? 触る前に向こうから来ましたが!?」

 

「はははっ 気に入られたらしいな これで君も魔法が使えるようになったよ」

 

「マジか! 魔法いけるのか!! キタこれ!!」

 

「起きたら使ってみるといいよ んじゃっ! 私は宴会に行くから! 楽しむがいいさ!」

 

「自由すぎんだろ…… そうだあんた名前は?」

 

「ん? アリアだよぉぉぉ………」

 

徐々に声が途切れた所を見るとホントに宴会に行きおったな……。

まぁとにかく目が覚めたら魔法が使える!!

ようやくファンタジーっぽいことが始まりそうだ!

 

何だろうなー チートとまではいかないがそこそこ良いのが……

いかん!妙なフラグを立てれば俺のキャラは更にヒドイ事になりそうだ。

早く目を瞑《つむ》って起きる事にしよう。何かややこしいけど。

 

◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆

 

目覚めると朝で、体を起こすと綺麗な町並みが二階から見える。

異世界というより海外みたいだ。魔法と色んな種族がいなければ……

 

と、ふと夢のことを思い出した。

 

「そうだ! 魔法!!」

 

身体の中に昨日とは、いつもとは違う明らかな変化を感じる。

これは俗に言うマナという奴か? MP的な感じなのだろうか?

自分の中にストックされる力を確かに感じる。なんというか満腹感に近い。

 

急に手に入れた『力』だけにまだ違和感があるけど、どうやら声の主《アリア》の言うとおり魔法を使えそうだ!!

二階の部屋から階段を駆け降り外に飛び出すと、家の裏にある森でさっそく念じてみる。

魔法の出し方なんぞ知らんが、なんかそれっぽくポーズを取って手をかざしてたら出るもんなのか?

 

むむむぅ……でろーでろーでろー……魔法でろぉぉぉぉぉ!!

 

心で念じると、すぐ目の前の地面に巨大な魔法陣が展開!!

陣を中心に風が纏いメチャメチャかっこいい!!

 

「キタキタキタぁ!!」

 

……あれ? でもこれってなんの魔法だ?

肝心な能力について聞くのを忘れていた。風が纏っているからやっぱ風の魔法か?

 

と思った矢先、天から強力な光が魔法陣をめがけて落ち、自分の目の前で爆風と爆煙をあげる。

 

「のぉぉぉぉぉぉっほぉぉぉぉぉ!!?」

 

強力な爆風で飛ばされる武と、家の前に防壁をつくり守る妹、というか妖精。

 

イヤイヤイヤ!! 強力だけど死んでまう!! 術者が死んでまう!! なにこれ距離1メートル手前とかアホか!! 自分のMPっぽいのも残ってないし、なんか体がスースーする。

これはハズレだな……あの野郎よくも……

 

と爆風が起こった場所に目を移すと一人の人影が見えた。

まさか……!?

 

「やばい!! 人巻き込んだか!?」

 

と思って駆け寄り近付くと、さっきの爆風の割には森の木も倒れていない。

お袋か妹が何かしたのか?と思ったがどうも違うらしい。

 

先程の陣の中心には見知らぬ女の子がキョトンとした顔で立っていた。

彼女の服装を見て直ぐに悟った。どうやら俺の魔法は攻撃魔法ではなかったらしい。

 

「ここ……どこっ!?」

 

あぁ……この反応は見覚えがある。懐かしいと思うにはあまりにも早すぎる見たことある反応だ。

どうやら俺は……

 

異世界転生した地で異世界召喚してしまったらしい。

 

ー 倉元家 予想外の魔法使っちゃう ー



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犠牲者増やしちゃう

イヤイヤイヤ!!流石にこれはダメだろアカンだろ!!

いや可愛い 確かに可愛い子だ うん認める!!

 

見た感じ多分同い歳くらいだし? 長髪ストレート好きだし? 黒髪だし?

胸は……今後期待するとして、展開的に言えばまずヒロイン候補だ! 

俺の目の前にいるのは勿体ないくらい可愛い!!

 

しかし流石に他人巻き込むのダメでしょこれ!!

一応ある!俺にも良心とかある!両親もいるっ!

第一なんで記念すべき最初の魔法が召喚術なんだあの野郎……。

ほいでまたパジャマだよ! 今度はチェックパジャマだよ!!何だこの世界のルールか?

パジャマ着てるタイミングでしか召喚出来ないのかこの世界っ!!

 

「ここ……どこ?」

 

ボーッと立つ彼女は目をパチクリさせている。ポーズ的に扉を開けた瞬間!!みたいな感じだな。

振り返ってもドアないですゴメンね。どこでも行けるドアじゃないですゴメンね。

 

「……へぇ?」

 

ですよねそうなるよね。俺も数日前そうだったから分かる。 

合ってるよー心配しないでもその反応合ってるよー

町の中じゃないだけマシだよ?ホントに 

まぁ召喚したの俺なんだけど。

 

「まぁ驚くのも仕方ない ここは異世界という奴らしいです」

 

「はい? 確か今日は休みでさっき玄関開けて……で今は森で男の子がいて……?」

 

パジャマで外出とか結構やりよるな。それにしても

あぁ……この反応 とても新鮮だぁ

そうなんだよ これだよ このアホみたいな異世界にオロオロするのが当たり前なんだよ

あぁ……困ってるなぁ 可愛いなぁ これが普通の反応だよなぁ

まぁ召喚したの俺なんだけど。

 

「今のはなんだ武! 剣が吹き飛んだじゃないか! 

俺の愛刀ライトニングストロングデリシャ…… おや?この子は?」

 

最後デリシャスって言おうとしたか親父? なんだ?旨いのかその剣。 

ライトニングくらいで止めときなさいよ。それでも若干ダサいけど。

 

「心配せんとその愛刀とやらで、さっさと冒険者らしくドラゴンでも魔王でも倒して来やがれ」

 

「次期伝説になる男にその口の聞き方か! でもいいなドラゴンか……

よっしゃちょっと行ってくる!討伐討伐♪やっほーぅ♪やっほーぅ♪」 

 

いい歳こいたおっさんが、そんなにはしゃいでスキップしたら誰かに……

あーあ……ほーらぶつかった あらー連れてかれたなー

悪いけど今忙しいからゴメンな こっちも緊急事態だから

 

「えーっと……ここは君のお家なのかな? あれ何!? 赤ちゃん! 赤ちゃん飛んでるっ!?」

 

「あぁ俺の妹だ 可愛いだろー?」

 

「うん 可愛いー! へぇー女の子なんだー……じゃなくて!! 浮いてるよ! てか飛んでるよ!? イリュージョン!?」

 

……クッ! ノリツッコミができるのか これは新たなライバルやもしれぬ。

可愛いのが残念だがここは早々にお帰り頂きたい。決して俺のキャラがブレるからではない、これは彼女のためであるっ!!

 

しかしMPが一切増える感じがしない……たった一発の魔法で魔力がスカスカになったようだ。魔力枯渇で死ぬタイプの世界だったら一撃ゲームオーバーだったな……なんちゅー魔法最初から使わせてくれとんだ! しかしこれは時間と共に戻るのだろうか? それとも外部から自力で補給するのか? 彼女がパニックなのは当たり前だが、俺もそれなりにパニックしている。

 

「それで色々説明が欲しいんですけど 答え次第では大声で叫びますよ?」 

 

俺が拉致でもしたと思っているのか?この子は……

まぁアニメとかラノベに興味なかったら異世界なんてワードしっくりこないわな。

気がついたら森で知らない男が二人いて 一人は剣持って連れ去られたし 

まぁあれだよね めっちゃ怖いよね

 

「まぁ簡潔に説明するとだな 俺が異世界召喚される→魔法覚える→俺が君を異世界召喚する 以上だ質問あるか?」

 

「やだどうしよう!質問しか浮かばない!!」 

 

「とりあえず俺ら以外の景色を見て異世界は納得してくれ」

 

町がよく見えるように自分の体を彼女の視界からずらす

すると驚くよりも 意外と興味津々で目を輝かせていた。

 

「ほっほぉ~ 綺麗な町ですねぇ~ あ、猫耳ちゃんもいるー!可愛いぃ!!」

 

「お袋ほどじゃないがそこそこ受け入れ早いなアンタも……」

 

「あ、名前は結衣だよ えっとー……」

 

「結衣な 俺は武だ どーだ? 異世界ってのは分かったろ?」

 

「ほぉー……映画みたいな世界だねぇ 夢でも無さそうだし信じられないけど異世界は一旦理解したとして……さっそく質問して良いかね?」

 

「うむ なんでも聞きなさい」

 

「私が武に召喚されたのは嫌々理解したとして、武は誰になんでこの世界にその~ しょーかん?されたの?」

 

「アリアにノリと勢いで」

 

事実だけを簡潔に伝えると眉を潜めて表情が凍結してしまっている結衣

だって事実なんだもの! 俺もさっき知ったばかりなんだからな?

だから この人何言ってんの? の顔やめて!!

 

「アリア? ノリ? ゴメン全然分からない 想像以上に」

 

「これは俺もムカついているから どうしようもない上に今尚俺も分からないんだなこれが

 あと俺は一人じゃなくて ご覧の通り家族 一家四人で巻き込まれている」

 

後方に建てられた新築の家を指差すと、お袋がこっちに手を振っている。

はいそうなんです。家族で異世界生活中なんです。俺はまだする事さえ決まってないんです!

現実世界ではちゃんと毎日学校も行って友達と遊んで?部活で汗流して?規則正しい生活してたのに?

異世界来てニート予備軍ですわチクショウめ!!

 

地団駄踏む武に対し若干ビクつく結衣

 

「家族で?」

 

「ウォーターの魔法で水を散布させながらガーデニングして

こっちに手ぇ降ってるのがお袋で さっき連れ去られたのが親父

妹はまぁ浮いてる子だ 物理的に」

 

やはり魔法は衝撃らしくどんどん顔がひきつるが

手を振り替えして苦笑う事しかできない

 

「アハハ……えとー……いつからここに?」

 

「驚くことに早いもので3日目だ 恐いね時の流れって ホント容赦ないよね」

 

「たった3日!? 馴染み方が半端ない!!」

 

怒濤の連続衝撃に面食う彼女

あぁ……やっぱいいなぁ この反応いいなぁ

 

「それで一番大事な質問に入るんだけど……なんで私を召喚?したわけ?」

 

もっとも重要な質問に

人生最大速度で腰を折り曲げ謝罪する 今の俺の謝罪速度に敵う者はいまい!!

 

「それに関してはすいませぇぇぇぇん!! ほんっっっとーーーに申し訳ないっ!!!」

 

「ないないねー」

 

「え? え?」

 

「ついさっき魔法習得して ついはしゃいで使ったらこれですわ 本人もビックリですわ

 妹もお兄ちゃんを思ってか 一緒に謝ってる事だし以上だ よしスッキリした!」

 

「……終わりっ!!? もっと理由があるんじゃないの!?」

 

「全てに理由があると思うな」

 

「全然カッコ良くないんだけどっ!?」  

 

ー 倉元家 犠牲者増やしちゃう ー



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突然のお裾分けに驚いちゃう

ん゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛

 

門柱のマンドレイクが声をあげ、室内に植えられた魔法でリンクされた花から声が漏れる。

全然声が響かない上にもっ凄い怖い。夜だったら間違いなくチビる。

もっと鈴とかで良いと思うの。それでなくてもノックで良くないですかね?

お袋は全く違和感を感じず、掃除する手を止めてパタパタと玄関に向かっていった。

 

「はいはーい あらぁー 先日はどーもぉー」

 

しかし、いつどこで何をしてたらそんなに交流関係が広がるんだ?

 

「あらぁ 悪いわねぇ いいのかしら? 」

 

また何かお裾分けだろうか?

ここから玄関の声だけ聞けばいつもの日常なのだが、宙を浮きスヤスヤと眠る妹に、その妄想は数秒と持たない。寝息をたてて何とも気持ち良さそうに宙をフワフワ漂っている。

 

「たけるぅー ちょっと手伝ってぇー」

 

どうやら世間話も終えたようだ。手伝うって事は何かを結構大量に貰ったのかな?

ソファからよいせと腰をあげる。

 

「はいはーい また何かお裾分けー?」

 

「えぇ 魔王頂いちゃった 玄関にでも飾るから手伝ってくれる?」

 

「へぇー魔王ね……魔王!?」

 

お裾分け!?魔王お裾分け!!!?

思ってたのと全然違うし全然動いてないけどなにこれ!?岩!?彫刻!?こわっ!!でかっ!!

 

「え?魔王ってあの魔王!? お袋……あれ?どこ行った!?」

 

「我を運ぶがいいゴミよ」

 

……喋りやがったぁ!!

なにこれ目だけ動いてませんかね!? もっ凄い気持ち悪いんですけど!!

え、これ魔王なの!? なんで彫刻で、なんで我が家にお裾分けられたの!?理解に苦しむNOW!!

 

「貴様の主《あるじ》に討伐されたのだ 本当に屈辱なくらいボッコボコにされたのだゴミよ」

 

討伐!?主って親父のことか!? マジか!! マジで伝説なりよったか!!

最近帰ってないと思ったら意外と頑張ってたか!!

 

「違う 魔女にだゴミよ」

 

違うんかい。

……魔女?うちのお袋の事言ってんのか?

 

「そうだゴミ お前の主は恐ろしかったゴミ」

 

「ゴミゴミうるさいなもう!!お前の方が充分ゴミだろ!!

そんで普通に会話してっけど心読むなよ!! 読心術とか思春期には辛いぞマジで!!」

 

「ならば早く運べ 滅ぼすぞゴミ」

 

なんて生意気なやつだ。

いや、魔王なんだからこれくらい当然か。

一先ずズルズル引きずりながら玄関へと運び入れる。

……ちょっと欠けたけど大丈夫だろ。

 

「で、なんで倒された筈の魔王が石像彫刻で我が家の玄関でオブジェになってんだ?

出るたび帰るたびこれの横通るとか 超怖いな」

 

いやまぁ運んだのは俺なんだけどね。

 

「我を倒すことに憧れて、みな冒険者として精進している

その夢を壊す訳にもいかぬとお前の主が存在を残しつつ我を討伐した訳だ

我が倒されるとこの世界の収入源と食料は無くなるらしいからなぁ……あ、ゴミ」

 

いまゴミ付け忘れたなコイツ。慣れてないなら早急に止めなさいよ。

 

「こ、こっちをそんなに見るな」

 

「石像が顔赤らめてんじゃねぇぇぇぇ!! お前がヒロインとかないから!!ありえねぇから!!」

 

「我に性別などない 安心しろ」

 

どっちに安心すりゃいいんだよ……。

 

「というか冒険者でもないお袋がどうやって魔王《おまえ》の討伐を?」

 

「時給パートで冒険者の雇われ補助をしていたな まさか冒険者より強いとは思わなんだ……」

 

パートって魔王討伐してたのかよお袋っ!!

いいの!?冒険者以外が魔王討伐しちゃって!?

 

「すっごい我が追い詰められたから 腹いせに我が死んだら魔獣も魔石も無くなるぞ! と教えたら冒険者共は泣き崩れてな あれは実に爽快だった!フハハハハハ!!」

 

魔獣の肉おいしいもんなぁ 柔らかいしジューシーだし

魔石も大事な収入源だし必需品だよなぁ

まぁそれにしたって……

 

「追い詰め方が女々しいなアンタ」

 

「手段を選ばない、それが魔王ぞ?しかしパート魔女にあっさり石化され存在しつつも封印された我は 討伐メンバー以外誰にも知られる事なく、巡り巡ってここにたどり着いた訳だ」

 

お裾分けじゃなくて只の面倒事の押し付けだったかー

こんなんでも魔王だし家には誰も置きたくないわなー

 

「という訳でチャンスさえあれば復活するから 精々震えて眠るがいいゴミ」

 

「さっきまでゴミついて無かったぞ キャラがブレブレじゃないか」

 

この賑やかな非日常に2階の部屋から一人、まだ眠たげな顔をしながら出てきた。

理不尽転生者第2号の結衣である。

まぁ召喚したの俺なんだけど。

 

「今日も賑やかねぇ……異世界って毎日こうなの?」

 

「おはよー 日々驚きの連続だよマジで?」

 

「おはよ で、なにそれ?」

 

「魔王」

 

「宜しくゴミ」

 

「ホントに驚きの毎日だわ…… いちいち体力勿体ないから激しくは驚かないけど……」

 

「あのゴミは貴様の妹か? 姉か?」

 

「俺の召喚嫁」

 

「よよよ嫁とか言うな!! 言っとくけど まだ私は帰る事諦めてないからね!?」

 

あぁ……可愛いなぁ やっぱ帰りたがってるなぁ

 

「あれ?それが魔王だったら倒してジ・エンド 私現実世界へ戻れるパターンじゃないの!?」

 

「まず俺が異世界に来たのは別に魔王討伐が目的じゃない ということは

その俺が召喚した結衣も別に魔王討伐が理由ではない あぁヒロインがいたらな……ぐらいの気持ちがあって魔法使ったもんだから俺と幸せになれば現実戻れる! ……かもしれないって何度説明したら」

 

「はいそこっ!! かもしれないって大事よね!?見逃せないよね!?召喚理由めっちゃ不純だし!!」

 

あぁ……怒ってらっしゃる 可愛いなぁ 嫌がってるなぁ

 

「勝手に異世界放り出されて勝手に結婚とか無理だから!可能性微々たるものなのに そんなもんに人生全て預けるとかあり得ないから!!姫とか王女みたいだなって言われた時は少し危なかったけど!」

 

「貴様らこの世界の住人ではないのか?」

 

「まぁな ようやっと1ヶ月くらいって所だ」

 

「生まれて300年の我がこんなぽっと出の者に……」

 

「お気持ち察するよ まぁ今後は我が家の番魔王として 精々玄関の護衛宜しくな」

 

「魔王に砦の入り口を守らせるとはな……」

 

ー 倉元家 突然のお裾分けに驚いちゃう ー



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