スパイさんと拷問員さん。 (ブリキの玩具)
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1話

駄作です。誤字・脱字あったらごめんなさい。


「アリスさーん…。そろそろ情報喋って下さいよお…。

僕だって暇じゃないんだから。」

 

私はとある国の楪報員だ。敵国にスパイとしてこの国に送られたのだが、失態を犯したせいで監禁されてしまった。

この国で捕まったら、拷問されて自我が保てなくなってからボロ雑巾の様に使い捨てられると聞いていたのだが…

「お願いしますよー。」

 

この訊問員、やる気がないのか全く拷問してこない。 拍子抜けだな。この調子なら我らが帝国も…

 

「あ、今。『拍子抜けだー。私の国も勝てそうー。』とか思いましたか?」

「ッ!?」

「あー。図星ですかねー?」

 

何故ばれた!?こいつ、魔術でも使ったか?物語にしか出てこないと思っていたが…。

「能力とかじゃないですよ。すごい顔に出てますよ、アリスさん。」

 

不覚…。私ともあろうものが表情で思案していた事がバレるとは。

「まあ、そんなに落ち込まないで下さい。そうだ!」

何故こいつに慰められなければならないのか。何故か訊問中に鞄をごそごそと漁っているこいつに…。

「あ、あった!」

探し物がようやく見つかったみたいだ。

「トランプでもしましょう!」

トランプ…?大統領のか?違うだろうな。

「なんだそれは。」

「はえー!トランプ、帝国には無いんですかー!楽しいですよ!」

「トランプとはそんなに楽しいのか?」

「そりゃ勿論!この五十四枚だけで何十通りも遊び方があるんですから。」

 

そう言いながらトランプを机の上に広げ、指を指しながら説明をし始めた。

 

「これがスペード。軍隊を表しています。で、こっちがハート、僧侶です。こっちがクローバー、農民。これがダイヤ、商人。」

 

ふと、説明していない異質な二枚に目が行く。

 

「ああ、ジョーカーが気になりますか。ジョーカーは道化師なんです。なんでも、王に冗談を言っても言い権利を持っていたそうですよ。因みに、赤いのと黒いの、赤い方が序列が上らしいです。」

ふむ、ジョーカーか。

どうやら我らが帝国にあった「紙札」に似たところがあるようだな。

我らが帝国の「紙札」は剣、聖杯、農具、硬貨、それとピエロだったがな。

「じゃあ、スピードをしましょう!」

「スピード?」

「はい!プレーヤーにジョーカーを抜いたハート、ダイヤの組かスペード、クローバーの手札を渡します。」

「ふむ。」

「で、そのあとは___________。」

 

ルールを要約すると。

 

 

・その手札シャッフル

・それを相手に渡す

・そして上から四枚裏向きに並べる

・合図と共に手札の一番上を表で出す

・自分の手札をひっくり返す

・一番上にあったカードと数字が隣接しているものを置いていく

 

 

こんな感じらしい。

 

「いまいちわからんのだが。そして、私がこれをやる意味もわからん。やるとしても…。」

 

そこまで言って、私は後ろを向くような動作をした。その時にジャラと音が背中の方から鳴った。

 

「あー…そうですよね。手錠ありますもんね。」

 

そう、こいつが言うとおり私は手錠を付けられ背中側の肩より上で固定されているのだ。(腕がVの字になる構図)

 

「外されればやっても良かったんだがな…。残念だな。」

 

こんなことを言ってもはずされる訳は無いのだが、敵の前では余裕を見せておきたかったのだ。そんなことは気にせず、訊問員はまた鞄を漁り始めた。手を使わないものでもあるのか?

待つこと数分。訊問員のゴチャゴチャの鞄を眺めていると、いきなり訊問員が「あった!」と声をあげた。

 

「何を探してたんだ?拷問器具か?」

「は?この流れでなんでそれが出てくるんですか?」

 

そういいながら、訊問員は2対の鍵を取り出した。

 

「なっ…!?お前、それまさか!?」

「ていうかなんで気づかなかったんですか?外したらスピードしてくださいよ?じゃあ、外すのでじっとしててくださいねー。」

 

そういうと、訊問員は私の後ろに回り「あれ、おかしいな」とかブツブツ言いながら両手の手錠を外した。

私は力なくドサと音を立てて床に倒れた。

 

「あっ!?大丈夫ですか?アリスさん。」

「肩痛いですよね?あ!クッションいくつか持ってくるのでちょっと待ってて下さい!」

 

そして、無防備にも牢の扉を開け放したまま全速力で走っていった。

十数秒すると、えらくガタイがいい二人組が入ってきた。恐らくこいつらがホントの拷問員だろう。先程の奴で少し落ち着かせた後、凄惨な拷問をするのだろう。

すると、色の黒い奴が口を開けた。

 

「ったく、マスーの野郎。こんな状態で捕虜をおいとくなんて、糞野郎が!」

 

それについては私は同感だ。あいつはやはり異常だろう。あんな訊問員がそうそういてたまるか。

 

「ちょっと、モカウ!アリスさんを捕虜っていうの止めとけよ。可哀想だろ。」

 

…は?

 

「ああ、そうだった。すまない。」

 

そういいながらモカウという男は私の腹の下に手を入れ、肩に担いだ。

 

「おい、ラトガ。ついてこい。」

「はいはい。」

 

拷問室に連れていかれるかと思い、消しきれない恐怖を持ち運ばれた先は、だだっ広い部屋だった。中にはテーブルやソファ、テレビ等の普通の家庭にあるような物がいっぱいあった。そして、人影が2つ。そのうちの一つが、私たちに近づいてきたのが分かった。背丈は…私の半分程しかないぞ!?

 

「あーー!!モカウ!その子誰!?ねえねえ!あ、もしかして【ありす】って人?」

 

この容姿。この声。この喋り方…間違いない!この人、子供だ…。

 

「そうだぞー、ラビィ。この人がアリスだぞ。」

 

私を担いでるモカウが、気持ち悪いくらい優しい声で接している。先程まで、物凄く低い声だったのだが…。もしやロリコンか?

 

「相変わらずモカウは、ラビィと話す時だけ声色変わるねー。」

「たりめーだろ。お前らと話す声と、ラビィと話す声一緒にしたら怖がるだろがよ。」

「まあ、それにしてもさ。」

「ねえねえ!ありすさん下ろして!ラビィ、お顔見たい!」

 

そういわれるとモカウは、私をそっとソファに座らせた。

 

「大丈夫か?痛くねえか?」

「…ああ。」

 

するとラトガの方からラビィがとてとてと近づいてきた。

 

「わあ…!スッゴい綺麗!でも、お顔が疲れてる…。休んで!」

 

可愛らしいラビィに自然と笑みが溢れた。しかし、いきなり休めと言われて戸惑いが隠せなかった。

 

「…だが、寝れない。」

「えー?なんでー?ちゃんと休まなきゃだめだよー。」

 

その後も寝るのを断っていると、部屋にいたもうひとつの人影がいつの間にかいなくなっていることに気がついた。が、それに気がついたときには私をは眠りに落ちていた。




名前の由来
アリス…ワンダーランド
マスー…十二支の子(マウス)
モカウ…十二支の丑(モーォ&カウ)
ラトガ…十二支の寅(トラ&タイ【ガ】ー)
ラビィ…十二支の卯(ラビット)

まあ、次に出てくるのは竜とか蛇とかですね。


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2話

目が覚めると、私はベッドに寝かされていた。ふかふかの毛布に真っ白なシーツ、そして隣にお爺さん…。

 

「やっと目が覚めたかの。」

 

隣の爺さんは、妙に痩せ細っていて肌に鱗のようにシワができていた。もっとも特徴的なのは、鼻の下から2つの束となり左右に分かれた長い髭と、頭のてっぺんから地につきそうな程、後ろに細く伸びた髪の毛だろう。

警戒を強め、痛みを押し込み、無理に上半身を飛び上がらせた。

「ああ、そう無理に起きなさんな。体に障る。何かするなら、寝てるときにそこそこ拘束するじゃろ。」

 

まあ、確かにそうだ。爺さんの忠告通り、もう一度ベッドに横になった。毛布を掴もうと手を伸ばそうとしたが、先にお爺さんが毛布をかけてくれた。

 

「すまない。えーっと…」

「タツミじゃ。」

「すまない。タツミさん。」

「こういう時は、ありがとう、じゃ。」

「あ、ありがとう。タツミさん。」

「ふぉっふぉっふぉっ。いいんじゃよ。しかし、ウチの【ヘスネ】が悪い事をしたな。すまなかった。」

 

ヘスネ?誰だそいつ。

 

「おや、聞いとらんのか?」

 

なっ!?こいつまで!私の心を…!そんなに顔に出やすいのか。

 

「おぬし、ちょっと顔に出過ぎじゃのう…。本当にスパイかの…。それにしても、ヘスネは挨拶すらしとらんのか。」

 

タツミがブツブツと何かを言い終わると、突如天井を見上げた。

 

「ヘスネ!いるんじゃろ?ちゃんと挨拶くらいしなさい!」

 

タツミがそういうと、驚くことに本当に何者かが現れた!…部屋のドアを開けて。

 

「…どうも。」

 

部屋のドアを開けたのは、黒く細長い何かだった。タツミさんの話を流れを読み解くと、この黒く細長い何かがヘスネらしい。

 

「ヘスネ。アリスさんに謝りなさい。」

「…すみませんでした。」

「へ?なにがだ?」

「…あれ、気づいてない?」

「だから何が?」

「私、貴女、噛んだ。貴女、気絶。」

 

噛まれた…?そういえば、起きてから首の後ろが少し痒いな。無意識に首の後ろに手をやる。

 

「痛かった?ごめん。」

「いや、大丈夫だ、心配するな。私とてスパイだ。このくらいの痛み、大したことない。しかし、何故お前に噛まれると気絶するのだ?」

「私、歯の裏、一つ、毒針ある。」

「毒っ!?やはり殺そうと…!」

「あ…違う。そんなに強くない。凄く弱い。殺すなんて、怖いこと、できない。」

「あ、ああ。そうか。」

 

ヘスネとの会話中、一番気になることが起きた。

声が妙に高い…。身長からして子供ということはないだろうに、妙に高い声をしている。

もしや…。

 

「おい、ヘスネ!」

 

私が声をあげて近付くと、ヘスネはビクッと体を震わせた。

 

「え、なんでこっちにくる?やめ、怖い…。」

 

手で顔を防ぐヘスネを無視し、前に伸びた真っ黒な髪を上に上げた。

 

「…お前、女の子か。」

 

顔を見た瞬間、私は一瞬思考停止した。

顔が衝撃的だったのだ。いい意味で。

ヘスネの顔はどこをどうみても綺麗で、可愛らしかった。美しいわけではない、可愛かったのだ。身長などから考えられる年に合わない、純粋で綺麗な瞳。それが何よりも特徴的だった。

ヘスネの瞳には宝石のような輝きがあった。その黒い目は、まるでブラックオパールのようだった。少しでも気を抜くと、その美しさに吸い込まれてまともに動けなくなりそうな位だった。

 

「えとえと、ごめんなさい!」

「いや、別に謝る必要などない。…綺麗だ。」

 

あ、思わず口に出てしまった…。聞こえてないといいんだけど。

 

「わひゃあ!?」

 

聞こえてたみたいだ…。

 

「ホッホッ。仲がいいみたいじゃの。それより、他の者にも挨拶させんといかん。着いてきてくれるかの。アリス殿。」

 

「わかった。行こう。」

 

タツミが開けたドアから私も部屋を出た。

去り際にヘスネの様子を見たが、髪の上からでもわかるくらい、顔が真っ赤だった。

…かわいい。

 

ハッ!?私は今何を…?




タツミ=龍(タツ) ミは適当
ヘスネ=蛇+スネーク


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3話

スローペースですねえ。すみません。


 ゆっくりと歩を進めるタツミ殿に続き、長い廊下を歩いていく。

 コツ、コツ、という音が廊下に響き渡る。コツ、コツ、という音の間にタツミ殿の杖を

つく音が交じる。

 しばらく歩くと巨大な扉が見えてきた。それをタツミ殿が一人で開けようとしたので、

駆け寄って開けるのを手伝った。

 タツミ殿は微笑みながら、小さな声で「ありがとう。」と言った。

 

 扉を開けた先には小さめの草原が広がっていた。そこには砂埃が発生していた。部分的

に、異様な大きさで。

 タツミ殿は懐から小型の笛のようなものを取り出すと、それを吹いた。

 すると草原に発生していた砂埃は徐々に薄れていった。

「お呼びしました?」

 その中から女が出てきた。

 その女はスパッツを履き、上半身にはどこかの会社のマークであろうものしか刺繍され

ていないなんとも飾りっけのないジャージを着ていた。上半身のジャージはともかく、下

半身にスパッツしか履かないのはどうなんだ?この国のファッションなのか?私が言うの

もなんだが、

「うむ。」

「御用っすか?」

「この子じゃ。」

 タツミ殿はちらりとこちらを見た。スパッツ女はタツミ殿の視線の先にいる私を見た。

「ああ!この子が例の敵国のスパイさんっすか!」

 そういうとスパッツ女は、いきなり私の手をガシッと掴んだ。

「よろしくね!私、マーホス!みんなからはマホって呼ばれてるっす!気軽にマホって呼

んでほしいっす!」

 いきなり手を掴まれて何かされるのではないかと思い、手をひこうとしたが、マホの屈

託のない笑顔を見てやめてしまった。

 あの笑顔は凶器だ。此方の戦意を削ぎ、警戒心をなくしてくる。顔に血が集中し、フラ

フラとしてしまうし、鼻から流れ出てこようとする何かを堪えなければならない。何だこ

の感覚、ヘスネの時といい私は同性愛者になったのか?そもそも自覚がなかっただけで

元々同性愛者だった?もうわけがわからなくなってきた。

「ああ!マホ、気をつけなさいといつも言っておるじゃろ。」

「んぇ?…あ!そっか!ごめん!」

 そういうと、マホは私の手を離した。

「なんか私、手ぇ握りながら笑うと相手の顔を赤くして思考をとめちゃうみたいなんす。」

「うぇ!?ああ、うむ!わ、私はだいじょうぶだぞ!」

「ほんとっすか!嬉しいっす!」

 そういうとマホはまた私の手を掴んであの笑顔をみせてきた。しかも嬉しさからか今度

は手を掴みながら上下に振っている。

 あ、まずい。また来る!

「すまない!!やっぱり無理だー!!!!

 




明らかにシュタインズ・ゲートというアニメの阿万音鈴羽に影響されたキャラです。
なんか頭のなかに浮かんだのが之でした。


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4話

すごい感覚が空いてしまいましたね…。申し訳ないです。(まあ、こんなの読んでる人いないだろうから、何を言ってるんだ感は否めないですけど)


「はぁ…。」

 

私は長い廊下をため息を付きながら一人で歩いていた。

というのも、先ほどマホに対して嘘をつき、そのまま逃げてきてしまったからだ。

私がしばらく歩くと、前から人が歩いてくるのが分かる。

 

「あれ?アリスさん?」

 

その人物は私を何故か解放した男、マスーだった。

 

「も〜、探したんですよ?待っててくださいって言ってたのにいきなりいなくなるんだから…。」

「すまない、モカウ?とラトガ?に連れてかれてから色々あってな。」

 

マスーは「しょうがないですけど…。」と言いながら、少しの間ぶつぶつと言っていた。

それからマスーはいきなり何かを思いついたかのように私に話し始める。

 

「そういえば、ここの施設にいる皆には会いましたか?」

 

マスーの言う「みんな」とはおそらく、先ほどまでに会った個性豊かな人々のことだろう。

 

「えーっと私が会ったのは、おまえ、モカウ、ラトガ、ラビィちゃん、タツミ殿、ヘスネさん、マホちゃん、かな…。」

 

それを聞くとマスーは嬉しそうにする。

 

「よかった!それなら全員あったってことですね!」

 

更にマスーは話を続ける。

 

「ボクの自己紹介がまだでしたね。」

 

マスーは胸を張り、自信満々に自己紹介をする

 

「ボクはマスー!知っての通り、ここで訊問員、やってます!ちなみにここでは副リーダーって役職です!」

 

名前はしってるので言わなくても良かったが、わざわざ止めるようなことでもないだろう。…それにしても、こんなやつが副リーダーなのか。リーダーはタツミ殿だろうな。

 

「因みに、リーダーはラビィちゃんね。」

「なんだとっ!!?」

 

…。いやいや、冗談だろ。流石にそんなことは無いはずだ。あんな年端もいかない少女がここのリーダーだなんて。そもそもこいつはおちゃらけたところがあるから、嘘でもおかしくないな。うん。

 

「あ、あと趣味はゲーム全般ね。」

 

それはなんとなくわかっていた。

そんな話をマスーとしていると、後ろからコツコツ、と音が近づいてくる。この音は…。

 

「タツミ殿」

 

私は振り返りながら後ろの人を当てる。

 

「おお、よくわかったのお。」

 

タツミ殿は笑いながら返答する。

 

「さっきはいきなりいなくなるから何事かと思ったぞ。」

 

「うっ…!すみません…。」

 

「大丈夫じゃ。あの子にはそれらしい理由を告げておいた。」

 

「ありがとうございます。」

 

私は頭を下げながら、タツミ殿にお礼を言う。

 

「いいんじゃよ。それより、マスーと話しておったのじゃろ。わしは部屋に行くかの。」

 

そういうと、タツミ殿は再びコツコツととを鳴らしながら私達を通り過ぎようとした。

 

「あの!」

 

タツミ殿は私の声に振り返る。

 

「なんじゃ?」

 

これは聞いて置かなければ気が済まない。

 

「つかぬことをお聞きしますが、ここのリーダーはあなたですか?」

 

タツミ殿は首を縦に振る。と思い込んでいたが、予想とは違い、首を横に振る。

 

「いいや、ここのリーダーはラビィじゃ。因みに副リーダーはそこのマスーじゃな。」

 

タツミ殿は「もういいかの?」と言い、再び音を立てながら歩き始めた。

タツミ殿がいなくなっても、私はしばらくぼーっとしたままだった。それを見ていたマスーが声を掛ける。

 

「…あの〜。」

 

「なんでだああああああああああ!」

 

廊下に私の苦悩の叫び声が響き渡った。




すっごい駄文…。これはツマランティウスですね(激寒)


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5話

「落ち着きました?」

 

マスーが私の顔を覗き込みながら尋ねる。

 

「うぅ…。恥ずかしいところを見せてしまって面目ない…。」

 

マスーは私の様子がもとに戻ったことを確認すると、「よしっ」と独り言を言う

 

「アリスさんの部屋に連れていきますね!」

 

「は?」

 

今コイツ、何を言ったんだ?私の部屋に連れて行く?

 

「ですから、アリスさんの部屋に連れて行くって…。」

 

「…私の部屋があるのか?」

 

マスーは私のその言葉を聞き、不思議そうな顔をする。

 

「そりゃもちろん。じゃなきゃアリスさん、どこで寝るんですか?」

 

私はそれを聞き、「ほ、捕虜らしく牢屋で…。」

それを聞くとマスーは驚き、声を上げる。

 

「ダメですよ、そんなの!ちゃんとベッドで寝ないと疲れ、とれませんよ?」

 

「…あ、ああ。そうか…。」

 

「そうです!」

 

そう言うとマスーは私の手を取り、ズンズンと廊下を歩いて行く。

 

「あ、手…。」

 

いきなり手を握られて私は少しドキッとした。それによって漏れた声はマスーには聞き取れなかったらしく、此方を振り返りもしなかった。

…ハッ!私は今何を!?なぜこんなやつにドキッとしなければいけないのだ!

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

マスーは暫く歩くと、人るの扉の前で立ち止まる。

 

「ここですね」

 

マスーは懐から鍵の束を出すと、その中から何本かを鍵穴に誘うと試みる。4、5本目にしてやっと正解が来たのか、鍵はすんなりと鍵穴に吸い込まれていき、カチャリと鍵が開いたことを証明する音がなった。

マスーは自分から部屋に入ると、「どうぞ。」と言って、私に部屋に入るように促す。

マスーは部屋の中の廊下…というのも変だが、これしか言いようがない。その廊下にいくつかある襖等を無視して、突き当たりにある襖をスッと開ける。

 

「どうですか?趣味にそぐわなかったらもう少し家具とか考えますけど…。」

 

部屋の中は私のイメージしていたものとはかけ離れた、和室のような内装だった。

床には畳、壁には押入れ、床の間、帝国内の旅館のように障子で区切られた先にある窓、そしてその窓からは、幾多の植物があるにも関わらず均衡が取れた美しい庭。どれをとっても私の故郷を思い出させるのには十分すぎる部屋だった。

家具は、座卓の前に座椅子が一つ。収納家具として、和箪笥、茶箪笥、水屋もあった。

 

「凄い…!」

 

私は思わず感嘆の声を漏らしていた。

 

「気に入ってもらえたようでよかったです。ここがあなた方の国ではなんていうかはわかりませんが、此方で言うならリビングです。」

 

マスーは私の横を通り過ぎ、「他も教えますね。」と言い、今来た廊下を戻る。

マスーは意外にもすぐ止まり、私の方へと振り向く。その左側には横に伸びた空間があった。

 

「ここが、キッチンですね。」

 

そこには、機能に長けたキッチンとIHコンロ等の最新型のものや、冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器等、料理には欠かせないものが色々とあった。

 

「…こんなに揃えるものなのか。」

 

私はボソッと呟いた。

 

「?次、行きますよ」

 

私が何を言ったのかわからなかったのか、不思議そうにしながらも部屋の紹介を続けていくマスー。

 

「ここはトイレです。まあ、特に説明はないですね」

 

トイレは、まあ、トイレだった。取り立てて説明するようなこともない洋式のトイレに温座になっていてをシュレット付き。今までが凄すぎたので、ここは特に何も感じなかった。

 

「それでこの隣が洗面所と脱衣所です。」

 

「綺麗だな。」

 

洗面所は一人部屋のはずなのに意味もなく洗面台が2つ付いていた。やけに最新型の洗濯機と乾燥機が設置してあったのは言うまでもないだろう。

 

「それで、ここがお風呂です。」

 

マスーが曇りガラスが貼られている扉を開けながら言う。

風呂場はとても広かった。それはもう、声が出ないほどの大きさだった。

そして更に驚いたことがある。それはこの国に風呂があるということだ。あることにはあると聞いたことがあるが、あまり主流ではない上に重きを置かないと聞いていたからだ。

しかしここには立派な浴槽があった。見た感じ、檜を使っているらしい。また床も同じものが使われていた。

 

「あの、つかぬことを聞くが、床は腐ったりだとか、ぬめりが出たりしたらどうすればいいんだ?」

 

私が尋ねるとマスーはキョトンとした顔をするが、すぐに納得したかのように話を始める。

 

「ああ、それなら心配いらないですよ。この木材、防水加工も防カビ加工もされてるので、そういったことはないと思います。」

 

「あ、ああ。そうか。」

 

私は予想外の返答に戸惑いを隠せなかった。この国でこんなに風呂の技術が発達しているとは思わなかった。

 

「この国は風呂文化だったか?」

 

「いや、違いますよ。ただタツミさんが帝国の温泉?が好きみたいで、それでこの施設にも風呂の文化がかなりはいってきたんですよ。だから他ではあまり見ませんね。」

 

そうか、タツミ殿が…か。昔は我らが帝国とこの国も交流が深かったと言われているし、そのときに温泉のことを知ったのだろう。

 

「これでこの部屋のことは全て説明し終えましたよ。」

 

マスーが私を振り向きながら言う。

 

「何か不満なところとか疑問に感じたこととかありました?」

 

「不満などあるわけない。こんな素晴らしい部屋を用意していただけるなんて思ってもいなかった。ありがとう。」

 

私は素直にマスーに対して頭を下げる。

 

「い、いや、なんだか照れますね。ボクがこの部屋を作ったわけじゃないんですから、頭上げてください。」

 

私はその言葉を聞き、頭を上げる。

 

「じゃあ、これから此処があなたのお部屋です。よい生活を願っております。」

 

マスーは性格に似つかわしくなく、恭しくお辞儀をした。

私はその光景をみてクスリと笑みがこぼれた。




こんな感じで序盤は終わりですかね。
まあ、別に話が全く変わるというわけでもないんですが、仮に区切りを付けるなら此処かなって。


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